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「私、世界のウメポーは、過去数回に渡り、JCでありおぱいちゃんである岡井千聖ちゃんに淫らな行為を行った事を深く反省し・・・」 「えりかちゃん、私そのネタよくわかんないよーケッケッケ」 「だぁっってぇえ~・・・!」 えりかちゃんはおもむろにテーブルに突っ伏した。 ラジオの収録日。お茶でも飲まない?とえりかちゃんをスタジオ近くのカフェに呼び出した私は、数日前千聖の家で話したことを打ち明けた。 「千聖、言ってたよ。えりかちゃんの考えてることがわからないって。辛そうだった。・・ねええりかちゃん、これから千聖とどうするの?」 「いや・・・どうすると言われましても・・・」 どうにも煮え切らない態度で、えりかちゃんはキャラメルマキアートをスプーンでぐちゃぐちゃにかき混ぜている。ついいじめてみたくなって、私はちょっとした切り札を使ってみた。 「私、千聖と寝たよ。」 ブーッ!!! カ゛ッシャハ゜リーン ス゛コー 「ひいいいいいいい!!!」 えりかちゃんは昭和のコントみたいに、考えられるリアクションを全部披露した後、ものすごい形相で私を見た。 「あ、一緒のベッドで寝たって意味だよ?ケッケッケ」 「え?な、なんだーびっくりした!」 「でも胸はいっぱい触った。1時間ぐらい。ぷにゅぽよーん。」 「ええ!?」 赤くなったり青くなったり、えりかちゃんは歩行者用信号機みたいだ。 まっ昼間のカフェで話すようなことじゃないのに、なぜか私は今日に限って饒舌だ(よくない方向に)。声をひそめて、話を続ける。 「千聖、最近キレイになったよね。あれってえりかちゃんのおかげっていうかせいっていうか。やっぱりああいうことしてると、女性ホルモンが活性化してどうのこうの」 しったか愛理を披露していると、さらにえりかちゃんの顔はげっそりしていく。 「ねえ、えりかちゃん。前にも言ったと思うけど、私は別にえりかちゃんと千聖がそういう関係でもいいと思ってるんだよ。舞ちゃんも千聖狙いっぽいけど、私はえりかちゃんの方がいいと思うなあ。何かすっごい、和んでるし。」 「愛理・・・」 「でも、えりかちゃんが千聖を傷つけたりするなら、話は別。そんなんなら、私が千聖を幸せにするから。とかいってwケッケッケ」 「ションナ!」 えりかちゃんは頭を抱えてしばらくうめいた後、「ちょっと、考える。」と言って黙り込んだ。 「うん。ごゆっくり」 暇つぶしに読みかけの文庫を開いてみたものの、あんまり中身が頭に入ってこない。 胸を触る以上のことをしてないのは本当だけど、私はあの夜結構グラついていた。ずっと前、トイレでもう少し踏み込んだことをした時のような感情がよみがえっていた。千聖がカワイイわんちゃんの着ぐるみじゃなかったら、本当に何をしていたかわからない。 “忘れましょう。・・・私たち、何もしなかったわ。” お泊りの翌日、千聖はそんな風に言って柔らかく笑った。 “明日からも、これまでどおり。愛理は私の大切な友達。・・・ライバル。そのままでいましょう” その顔は恋に悩む中学2年生なんかじゃなくて、よくわかんないけど“女”って感じがした。全てを見透かしたように、悠然と、包容力すら感じさせるようなたたずまい。 お嬢様の千聖はすっごく大人で、優しくて、・・・ちょっとだけしたたかだった。 「えりかちゃん、そろそろいいかな?」 「・・・・・よしっ、決めた。」 もう時間だ。声をかけると、えりかちゃんはカップに残っていたマキアートを飲み干して、おもむろに立ち上がった。 「ねえねえ、決めたって、どうするの?」 「それは内緒です。」 えりかちゃんはやっといつもの余裕綽々なえりかちゃんに戻って、ふふんと笑ってみせた。 私が今日、こうしてえりかちゃんに急な決断を迫ったのにはわけがある。 こうして関わってしまった以上、どうしても2人の今後のことを、この目で見届けたかった。 私と、千聖と、えりかちゃん。 3人っきりになれるチャンスは、今日しかなかったから。 「おはようございます。」 「おはよーちっさー。」 「おつかれー。」 スタッフさんからの今日の進行についての説明が一区切りついた頃、千聖がブースの中に入ってきた。 「今日は、よろしくお願いします。」 挨拶とともに席に着いて、今度は千聖もまじえた打ち合わせが始まった。 そう、今日のキューティーパラダイスのゲストは、千聖だった。私はそれで、今日中にどうにかしたいとはりきっていたのだった。 “この辺は雑談っぽく・・・” “曲の最中に指示を出すから・・・・・” 私の横で、千聖が長いまつげをパタパタさせながら、スタッフさんの指示を聞いている。普段はどちらかというと愛嬌のある千聖の顔は、その一方で、真面目なシチュエーションではとても大人びて見える。私はこの神秘的な横顔が好きだった。 「千聖、わからないとこある?」 「え?・・・いいえ、今のところは特に。ありがとうえりかさん。」 ふいにえりかちゃんに話しかけられた千聖は、一点に集中した少し険しい顔を崩して、とても嬉しそうに笑った。心なしか、えりかちゃんの視線も優しい。 「千聖とラジオなんていつぶりだろうね?」 「私、今日は楽しみにしていたの。えりかさんとも、愛理ともご一緒できるんて嬉しいわ。」 えりかちゃんと舞ちゃんは、千聖のことをほとんど“ちっさー”とは呼ばない。 舞美ちゃんと栞菜はほとんど“ちっさー”呼びで、私となっきぃは半々ぐらい。 自他共に認める「変なところで」頑固者なえりかちゃんが“千聖”呼びにこだわるのには、何か理由があるのだろうか。あるとしたらそれは、千聖を幸せにしてくれるものなのだろうか? 頭を打って急にお嬢様になって、普通じゃない状況で千聖が感じている葛藤や不安は、とても他人が理解できるものじゃない。 だから、えりかちゃんにはきちんと千聖と向きあってほしい。千聖の心を癒すために始めた“行為”なら、そしてもしそれを今後も続けるのなら、いつまでも最初の目的を忘れないでほしい。 そんな風に考えるのは、私の傲慢なのかな・・・? 「千聖、ちょっといい?」 事前準備が全て終わって、本番まで30分ぐらい時間が空いた。その時、えりかちゃんが唐突に千聖に話しかけた。 「え?ええ・・・」 「ごめん愛理、ちょっと待ってて」 いつものヘタレ気味な態度はなりをひそめて、えりかちゃんはキリッとした顔で、千聖の手首を掴んでブースを出ていった。 きっと、さっき私が決断を迫った例の件について話すんだろう。できればリアルタイムで聞きたかったけれど、ここは思いっきり人の目があるし、2人だけにしかわからないいろんな事情というのもあるだろうから仕方ない。 私はまた読書をしようと本を取り出した。しばらく没頭していると、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。 「千聖・・・?どうしたの?」 千聖がドアを思いっきり開けた。私の姿を確認すると、すごい勢いで飛びついてきた。 「愛理ぃ、えりがじゃんがフカ゛フカ゛フカ゛フカ゛フカ゛」 興奮していて、何を言ってるのかよくわからない。・・・ん? 「千聖?今、えりかちゃんって」 「え、えりかちゃんが何か変なことしてきた!何で?わけわかんない。何か変なことしてきたの!」 大事なことだから2回言いました。じゃなくて、千聖は、唐突にもとの千聖の喋り方に戻った。・・・多分、喋り方だけじゃなくて、内面も・・・ 「千聖、待って!」 続いて、青ざめたえりかちゃんが戻ってきた。こちらはもう半泣きだ。 「・・・まあまあ、とりあえず落ち着こう。」 パニック状態の人が2人もいると、本能的に冷静になれるものなのかもしれない。私はとりあえずひっついてくる千聖を宥めながら、えりかちゃんも前に座るように促した。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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大丈夫、私は一人じゃないし、いざとなったら店員さんだって動いてくれるはず。 愛理の手を引っ張って、ぐんぐん奥へ進んでいく。 「このっ・・・・・」 変態め!2人を解放しなさい!! ウサギ人間をにらみつけてそう叫ぼうとしたのだけれど、どうも様子がおかしい。 みぃたんとえりかちゃんのまん前に陣取るその人は、腕組み足組みふんぞりかえって、威圧感と貫禄はかなりのものだった。 でも、超華奢。 どう考えても大人の体つきじゃない。っていうか、 「舞ちゃんじゃん!」 「ぶははははははははは」」 もう耐え切れんとばかりに、みぃたんとえりかちゃんがテーブルを叩いて笑い出した。 「なっきぃ反応よすぎ!ねえねえ何で“このっ”って言ったの?何で何で?」 「“このウサギ野郎!”って言おうとしたの?あっはっはっは!」 くっ・・・! 年長者2人がかりの言葉責めに、顔が真っ赤になる。 いったん顔を上げた二人は、私のみかん星人Tシャツを見てさらに吹き出した。 「みかんー!」 背後で愛理が耐え切れずに「ケッケッケ」と笑い出す声が聞こえた。 うさぎ舞ちゃんの細い肩もカタカタ震えている。 ヒドいケロ!とんだドSグループだ! 「もーなっきぃはやっぱり最高だね。おいで。」 涙を流しながら、みぃたんは私の腰を抱いて横に座らせてくれた。 「本当なっきぃはかわいいなあ。」 「ちょ、ちょっとそんなことより、何でうさぎ?」 私の質問に答えるように、舞ちゃんがおもむろにうさぎの首を取った。 たっぷり笑ったから、機嫌はかなりいいみたいだ。はにかんだ顔が可愛い。 「・・・なんか、目立つかなと思って。」 「いや、目立つけど誰だかわかんないよ。」 好きな歴史上の人物は徳川家康。モノマネもできます。 好きな言葉は一石二鳥。でも使い方はちょっと変。 舞ちゃんはしっかりものだけど、やっぱりどこか天然で変わった子だった。 「・・・じゃあ、全員揃ったところで。」 えりかちゃんはお誕生日席に移動して、私のみかん星人と目が合わないように若干上を見ながら、話を始めた。 「多分みんな気づいてると思うけど、今日は栞菜と千聖の件で集まってもらいました。」 わかっていたこととはいえ、みんな昨日のあの光景を思い出したのか、一気に緊張が走った。 「ウチはあの後栞菜を送っていったんだけど、かなり落ち込んでたのね。本当にひどい状態だった。だから、すぐ助けてあげなきゃって思って。」 「、ちっさーも同じ。泣けなくなっちゃうぐらいすごいショック受けてた。それで、えりと相談して、今日この場を設けたの。」 「・・・・なんで、2人はあんな風になったの?」 えりかちゃんたちの報告を聞いて、舞ちゃんが静かに問いかけた。 「それは・・・ごめん、私が勝手に言っていいことじゃないから。ちゃんと仲直りできたら、舞にも直接話がいくと思う。もうちょっと待ってて。 でも、これだけは言っておくけど、どっちか一人が悪くてああなったんじゃないの。 多分気持ちのすれ違いと誤解がたくさん積もっちゃっただけなんだ。 あとね、できるだけ舞と愛理となっきぃには中立でいてほしい。 正直、私はちっさーからいっぱい話を聞いたから、きっとこの件に関してはちっさー寄りの考えになっちゃうと思うのね。」 「そうそう。ウチは逆に栞菜とずっといたから、今は特に栞菜の気持ちが心配でたまらない。」 「・・・・要は、ニュートラルでいてってことだね。」 愛理がつぶやくと、2人は5秒遅れて「ニュー・・そ、そ、そうそう。・・・多分。」と言った。 舞ちゃんもしばらく考え込んでから、小さなうなずきとともに「わかった。」と短く返事をした。 「なっきぃも了解。」 本当は詳しい話が聞きたくてたまらなかった。 あんなにも当事者2人が傷つき果てた事件を、このままうわべだけ知って素通りなんてできるはずがない。 でも、みぃたんたちがそう言うなら待ってみようと思った。 今は先入観なしで、2人の手助けをしてあげるべきなんだ。 「で、具体的に何を?」 「うーん、まあ何をするってわけでもないんだけどさ、ここで2人を見守ってあげて。」 見守る? 「今からウチは栞菜の家に行って、栞菜をつれてここに戻ってくるから。千聖にはもう連絡してあって、もう一時間もしないでここに来ると思う。 ウチらが変に口出しするんじゃなくて、2人でとことん話し合ってほしいから、みんなは本当に緊急の時だけ手を差し伸べて。」 「わかった。」 「お店の人には、サプライズを仕掛けたい子がいるから、私たちの姿が見えづらい席に案内してって頼んであるから。」 さすがお姉さんコンビ。ぬかりないな。 「じゃあ千聖が来るまで、何か適当にオーダー・・・・・おっと」 テーブルの上に出しっぱなしになっていた、えりかちゃんのケータイが光った。 「やっばい、千聖だ。・・・もしもし?」 えりかちゃんは声をひそめて電話に出た。 いつもならマナー違反!とたしなめるところだけれど、正直、会話の内容が気になる。 「えっあと1駅?ウチまだなんだよ。・・・・うん、ごめん。待ってて。」 どうやらもうすぐ着いてしまうらしい。 ちょっとあわてているえりかちゃんを観察しながら、お冷に入っていた氷をごりごりとかじった。 二言三言交わした後、えりかちゃんはおもむろに口元を手で覆って、ニヤニヤしながら電話を切った。 ぶはっ 私の口から飛び出た氷が、愛理のおでこにゴチンとぶつかった。 「なっきぃ何やってんの!?」 「え、え、え、えりかちゃん・・・・・!」 幸か不幸か、私はかなり耳が良い。口を隠したって、斜め横の人の声ぐらいなら拾えてしまう。 えりかちゃんはエロカの顔になりながら、こんなことを言っていた。 「待たせちゃうけどごめんね、お詫びに今度すごいのしてあげるからね、千聖。トロントロンにしてあげる。」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ “「なっきぃ?寝てるの?なっきぃ」 ソファで転寝していると、頭の上から声が降ってきた。 んー・・・眠いから、ちょっと後で・・・ 「なっきぃ?」 うー・・・うるさーい・・・ ・・・? 「!!!うわあ!起きてます!」 何度も呼びかけられるうちに意識が覚醒して、寝ぼけ半分だった私の頭はその声の主を正確に認識した。慌てて飛び起きて、反射的に正座なんかしてしまう。 「起きちゃった?ごめんごめん。って私が起こしたのか」 独特なだはは、という笑い声を上げながら、彼女――みやびちゃん、は顔を近づけてきた。 「な、何?」 「んーん。・・なっきぃって、可愛いなって思って。」 何を言ってるんだろう。自分のほうが、よっぽど美人で可愛いくせに。 「そんなことない・・・よ」 なぜか掠れる声。そんな私の反応を見たみやびちゃんの目が、なぜだか怪しく光った。猫とか、虎とか、そういうシュッとした感じの動物みたい。綺麗なのに、何か怖い。 「何怯えてるの?」 そんな私の反応が面白かったのか、みやびちゃんはまただははと笑って、そっとうなじに手を回してきた。 「なっきぃって、昔から、何か私に弱いよね。」 「えっ・・・違・・・」 「違わないでしょ?」 「ひゃあ!」 みやびちゃんの目が、妖しく半月型に眇められるのに見とれていたら、指先で背骨をツーッと撫でられた。その指が、Tシャツの裾から中へ侵入してくる。 「だめ・・・」 「嬉しいくせに。」 胸に、アソコに、みやびちゃんの指が押し付けられる。わけのわからない涙がこぼれて、みやびちゃんの唇がそれを掬い取る。 「あ・・・あぁ・・・・」 「可愛いね、なっきぃ」 ぼんやり霞む頭の中で、私は1枚の写真のことを思い出した。腕組みをするみやびちゃんの傍らで、私も同じポーズをしているショット。まるで舎弟みたいだ、といろんな人から散々からかわれたけれど、私はこの写真が気に入っていた。 「なっきぃは、みやのだからね」 吐息混じりの声は、私の体を凍りつかせて支配する。 思えば、あの写真の頃から、私はもうみやびちゃんの虜だったのかもしれない。獲物を捕らえた獣みたいに支配されて、弄ばれて、ゆっくり捕食されていく。それは私にとって、恐怖ではなく快感だった。 「みやのもの。そうでしょ?なっきぃ」 「う・・・」 歯を食いしばったままがくがくうなずくと、みやびちゃんは満足そうにゆっくりうなずいた。私の体を這う指が、いっそう激しさを増す。 「あ・・・だめ、だ・・め」 「可愛いよ、なっきぃ」 長く伸ばした爪が、体の敏感なところをひっかくのが痛くて気持ちいい。 「あぅ・・」 みやびちゃんにとって、これはほんの暇つぶしなのかもしれない。ただ、そこにいたから構っただけなのかもしれない。 それでもいい。否、むしろ、そのほうが嬉しい。こうして遊ばれた後、冷たく捨てられることを考えたら、もっと興奮が高まる。 「なっきぃはエッチだね・・・」 「みや・・・ちゃん・・・」 数十分後、私が果てるまで、みやびちゃんの悪戯は続けられた。” 「・・・・ふぅ。」 所変わって、自室のベッドの上。 やることやり終わって、賢者タイムに突入した私は、妙に冴えた頭で枕元のペットボトルに手を伸ばした。 「みやニー・・・悪くないケロ。」 あの後ちさまいニーで第一回戦を終えて、何となくベリーズのDVDを見ていたら、どういうわけか再びムラムラしてきてしまったのだった。 そこで、厳正なる抽選の末、みやびちゃんを使わせていただくことになったわけで・・・だけどこんなに(自分の中で)盛り上がるとは思わなかった。 だがしかしBUT、多分、現実のみやびちゃんはMだと思う。残念だ。あんな素敵な眼力をお持ちだっていうのに。でもその辺を、自分好みにカスタマイズできるのが○○ニーの良いところだと思う。何を言ってるんだ私は。 今日はさすがに、3回戦に及ぶ元気はもうない。ベッドにもぐりこむと、私は枕に顔を押し付けて目を閉じた。 本当は、ずっと前から自覚はあった。私は多分、性欲が強い。でも、今のところ異性ではうまく妄想できない。それならそれでいいと思うけど。 とにかく、これは私のトップシークレットだ。みぃたん以外の人でもお世話になることができるとわかった今、私のひそやかな楽しみの幅は広がった。 「キュフフフ・・・」 乾いた笑い声が、喉の奥を震わせる。 明日は、誰にしようかな・・・・ まぶたが完全に下りる瞬間まで、私はそんなことを考えていた。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/87.html
レッスンスタジオの最寄り駅の改札を通って、私はすぐにトイレに駆け込んだ。 心臓が鳴りすぎて止まるんじゃないかってぐらいドクドクと音を立てている。 吐くかと思ったけれど、冷たい便器に腰掛けているだけで少しは心が落着いた。 「私がキッズじゃなくて、エッグだから?」 ゆっくり呼吸を整えながら、もう一度さっきの言葉をなぞってみる。 考えてみたら、すごい言葉じゃないか。 ちっさーを戸惑わせるだけじゃなくて、自分自身にも刃物を向けるようなものだ。 キッズのみんなは優しい。 キュートだけじゃなくベリーズにも私をのけものにするメンバーはいないし、まるで私もキッズの一員だったかのように接してくれる。 でも本当に些細なことで隔たりを感じることはやっぱりあって、私はそのたびにどうしようもない寂しさや疎外感を味わっていた。 今更こんな風に自滅するまでもないじゃない。 いや、ちっさーを巻き込んだからむしろ自爆テロか。余計にたちが悪い。 ――♪♪♪ そんな馬鹿なことを考えていたら、ふいにメールの受信音が鳴り響いた。 ケータイを開くと、愛理からメールが着いている。 “今どこにいるの?みんな心配してるよ><ちさとも気にしてるみたい” そっか・・・たぶんまだ、ちっさーは私の言葉に傷ついたままなんだ。 そう思ったら、また心臓が高鳴り始めた。 今度は痛みじゃない、むしろ、ジェットコースターでてっぺんを目指すまでのあの高揚感に近い。 ちっさーにあんな顔をさせられるのは、私しかいないんだ。 私だけが知っている、ちっさーの感情を揺さぶるスイッチがあるんだ。 私だけの、ちっさーが。 「・・・何考えてるんだ、私。」 こんなのはまともな発想じゃない。 わかっていても、心の奥からあふれ出てくる感情は否定できない。 私はきっと、特別なちっさーが欲しいんだ。 お嬢様になる以前のちっさーと私は、まあまあ良好ぐらいの関係を保っていたように思う。 私は常にどこか特定の輪に入っていなければ不安になるタイプの寂しがりで、 ちっさーは誰でもいいから常に適度に構われていたいタイプの寂しがり。 同じ寂しがりでもその方向性は正反対だったから、ずっと一緒にいるということはなかった。 真面目な話なんて全くせず、お馬鹿な遊びだけは2人で誰よりノリノリでやるような、ある意味で一番薄いつながりだったのかもしれない。 一人っ子で、人との間に強いつながりを求める私にとっては えりかちゃんと舞美ちゃんはお姉ちゃん。 愛理は相方。 いつもまっすぐで頼れるなっきぃとは同級生コンビ。 舞ちゃんは年齢よりかなり大人っぽいから妹っていうより、よきライバルという感じだった。 でも、ちっさーは・・・私にとって何なのだろう。 頭を打ってからのお嬢様ちっさーとは、愛理と3人でよく一緒にいるようになった。 前みたいにふざけっこはしなくなったけれど、ファッションやメイクの話で盛り上がったり、会話の幅は広がった。 それでもちっさーはやっぱり愛理との方が仲がいいみたいだったし、2人だけでお買い物に行って私は誘われなかったということもあった(このことはもう引きずるなってえりかちゃんに言われてるけど・・・) それで私は、ちっさーを「私の妹」と発言するようになった。 私のパシイベでもそう言ったし、ちっさーの時にもそういうメッセージを送った。 ちっさーは「ありがとう、栞菜。嬉しいわ。」なんて言ってくれたけど、私なんかよりえりかちゃんや舞美ちゃんを頼っているのは明らかだった。 なっきぃとの結びつきだってずっと前から強い。 私はどうにかして、みんなみたいに、ちゃんと中身の伴った私だけのちっさーを手に入れたくてたまらなくなっていた。 そして、さっき・・・とてもとても歪んだ形だけれど、ちっさーへの罪悪感と引き換えに、それを少しだけ手に入れることができた。 私にだけ、誰にも見せないような傷ついた顔を見せるちっさー。 これからはあの一言を言うだけで、簡単に特別なちっさーを引き出すことができる。 こんなひどい感情は、まだ誰にも打ち明けることはできない。 愛理に返事は打たず、ケータイをかばんに放り込んでトイレを出た。 タイミングよくホームに入ってきた電車に飛び乗って、窓の外を眺める。 本当にこれでいいの? そう思いながらも、窓に映る私の顔はカサカサに乾いた心のまま少しだけ笑っていた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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中段当たるとスゲー減る! なにこれ!? 中段当たるとスゲー減る! なにこれ!? そういうゲームです。今回コラボしている鉄拳は、「中段が通るとフルコンで5割ぐらい平均で持っていくゲーム」です。(2D格ゲーで言うと、「屈大Kが刺さったらノーゲージで5割+画面端で起き攻め」ぐらいのゲームです) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前へ 千聖は不思議な子だ。 ずいぶん長い付き合いになるけれど、昔の千聖はとにかく明るくて、無邪気で、いたずら好きで、絵に描いたような子供らしい子供だった。 誰にでも分け隔てなく接する千聖はみんなに可愛がられていた。 キッズにいたときからすでに浮きがちだった私なんかといるより、中心のグループで楽しそうに大口開けて笑っているほうがふさわしい。 そう思っていたんだけれど、なぜか千聖は私に対して強い興味を示してきた。 「ももちゃん、大好き。」 「ももちゃん、かわいいー」 そんな風にストレートな言葉で私を褒めて、日に焼けた顔をクシャクシャにして抱きついてきた。 どうして、私に? そう思わないこともなかったけれど、何の計算もなくただ純粋に慕われるというのは決して悪い気分じゃなかった。 そして千聖は私にだけじゃなく、ある意味同じような境遇だった舞波ともすごく仲が良かった。 千聖は見た目どおり男の子っぽい性格で、こと人間関係においてはやたらとあっさりしたものを好むから、私たちぐらいのゆるい関係が好ましかったのかもしれない。 私も千聖といる時は肩の力を抜くことができて、2人ではしゃいだりたわいもない話をしているだけで、ゆったりした安心感に包まれていた。 どんな状況でも自分を受け入れてくれる人がいる、ということがどれほど尊いことなのか、私は千聖と接することで知った気がする。 私が先にデビューが決まってからも、千聖の態度は全く変わらなかった。 ある意味キッズで取り残されてたメンバーであるにも関わらず、屈託のない笑顔でベリーズ工房全員をハイタッチで送り出してくれた。 あの時の千聖の手の感触は、今でも忘れられない。 そして、千聖は今でもあの頃と全然変わらない態度で、私の側に寄り添ってくれる。 大人になっていくうちに失ってしまう子供らしい感受性やひたむきさを、千聖は14歳の今でもまだたくさん内に秘めて成長している。 その分、年のわりに大人びている舞ちゃんや愛理と比べてずいぶん子供っぽいところはあるけれど、私は千聖の純粋さをいつまでも守ってあげたい、と思っていた。 今の千聖の「秘密」を梨沙子から聞いたときは、表には出さなかったけれど、かなり動揺した。 何だ?お嬢様って。 私の頭には、昔の少女漫画みたいにブリブリピンクのドレスを着た縦ロールの千聖が、超ワガママになって高らかにオホホ笑いをしながら練り歩く薄気味悪い姿がよぎった。キモッ! もちろん実際見たらそういうことではなくて、言葉遣いと所作がとても綺麗になって、あとは足を閉じて座るようになったりしたのが目立つ変化みたいだ。あとは、服装とか。 千聖が私の小指を直そうとするように、私が千聖の足をガッと閉じさせるのが2人の間のお約束だったのに、それをする必要がなくなったのはちょっと寂しい。 まあ、だからといって、今の千聖に失望したとかそんなことはまったくない。 千聖がどう変わろうとも、私の千聖に対する気持ちは揺ぎ無いものだ。 千聖が私を支えてくれたように、私も千聖を助けたいと思うのは自然なことだ。 中2トリオにも、キュートのメンバーにもできないような方法で、千聖を守ってあげる。 きっと、私にしかできないことがあるはずだから。 「あれ?もも、梨沙子は?」 みんなが待つ控え室まで戻ると、みやが首をかしげてこっちを見た。 「一緒に戻ってくるのかと思ってたんだけど。」 「あー、愛理と千聖がお見舞いしてた。また少し経ったら見てくる。」 「じゃあ次私が行くよ。」 「いやっいい!ももが行ってくるから!」 まだ千聖がいるかもしれない。3人とも気が昂ぶってる今、私以外の誰かと接するのは危ない気がした。 「・・・なんかもも、今日変だね。梨沙子もだけど。」 まぁが口を開くと、みんないっせいにうなずいた。 「変といえば、千聖もちょっと変だったよ。さっき廊下で見かけたけど。」 「千聖?」 「ちがっ!千聖は関係ないでしょ!」 今ここでその話を膨らまされると困る。 慌てて割ってはいると、また訝しげな視線を向けられてしまった。 「・・・まあ、別にいいよ。ももがうちらに心を開かないのなんて、前からじゃん。どうせ、ベリーズはキュートと違って、家族的じゃないからね。」 さっきまでのケンカ口調とは違う、ちょっとしずんだような声で徳さんが皮肉っぽく笑った。 「ももぉ。」 あー。困った。 「ねえ、ももってば・・・」 「ごめん!今のはももが悪い。でも、いろいろ話すのはまだ待ってて。事情があるの。 ちょっと私、もう一回梨沙子のところ行ってくる。」 返事も待たないで、私は逃げるように部屋を出た。 女の子の集団って、本当に難しい。 一人で空回りして、私は何をやってるんだか。 ケンカ中とはいえ、徳さんのあの表情を思い浮かべたら胸が痛んだ。 次へ TOP
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前へ 雪の降る高原に、私は一人ぼっちでいた。一面真っ白で、何も見えない。 不安にかられて歩いていると、遠くの方から楽しそうな笑い声が近づいてきた。 「かまくら作ろう。」 「みんなで座れるソファを作ろう。」 「ソリで遊ぼうよ。」 なぜか懐かしい気持ちになる。キュートの皆だ。私は声のする方に向かって走り出す。 「舞美ちゃん。」 雪玉を栞菜にぶつけようとふざけている舞美ちゃんに声をかける。 振り向かない。 二度、三度と名前をよんでも、私のことなんか気が付かないみたいに誰も反応してくれなかった。 怖くなって舞美ちゃんに飛びつこうとしたけれど、私の体は舞美ちゃんをすり抜けた。雪の中にしりもちを付く。 「栞菜。えりかちゃん。ねえってば!」 とっさに投げた手元の雪さえ、誰にも届かずに地面に落ちた。 「楽しいね。」 「面白いね。」 「あっちでソリ競争やろうよ。」 またみんなが遠ざかっていく。 誰も私に気づいてくれない。私なんかいなくて当たり前のように、世界が循環していく。 嫌だ、舞はここだよ。誰か私を見つけて。ここにいるんだよ。 「舞ちゃん。」 ふりむくと、ベージュのハンチングを被った千聖が立っていた。 「舞ちゃん。遊ぼうよ。」 おそるおそる、差し出された手に触ってみる。 すり抜けない。暖かい千聖の手が、ぎゅっと握り返してくれた。 「舞ちゃん手冷たくなってるー」 千聖はうへへって楽しそうに笑っている。 よかった、千聖元に戻ったんだね。そして、ちゃんと舞のこと見つけてくれた。 誰も気づいてくれなくても、千聖だけは。 「皆のとこ行こう。一緒にソリ乗ろうよ。」 手を引っ張られて、転がりそうになりながら2人で走る。 「千聖。私、千聖にまだ謝ってない」 「なーに?聞こえないよぅ」 「うわっ」 千聖があんまり早く走るから、私はつまずいて転んでしまった。 手が離れる。千聖は気づいていないかのように、笑い声をあげながらみんなの輪の中に入っていく。 待って、やだよ。千聖、千聖!!」 「舞!大丈夫!?」 ・・・・・・? いきなり、舞美ちゃんのドアップが目の前にきた。 「舞、大丈夫?うなされてたけど」 何だ。夢か。千聖の手だと思って握っていたのは、舞美ちゃんの手だったのか。 「あれ、ここ・・・」 「ああ。タクシーの中でぐっすり寝てたから、とりあえず家にお泊りしてもらうことにしたんだ。舞のママには連絡してあるから、大丈夫。」 壁にかかっている時計を見ると、もうすぐ日付が変わるぐらいの時間だった。 よっぽど熟睡していたんだろうな。レッスンスタジオを出てからここにたどり着くまでのことが全く思い出せない。 「なっきーは?」 「家に帰ったよ。舞によろしくって。」 「ふぅん」 目が覚めてくると、今日一日にあったことが次々と頭をよぎっていく。 ダンスレッスン中に栞菜となっきーがケンカして、なっきーが居残り練習をするっていうから、ロビーで待っていた。 約束していたわけじゃないけど、千聖のことを話したかった。 なっきーは千聖のことを話せる、唯一の理解者だったから。ついさっきまでは。 しばらくたってもなっきーが階段を降りてこなかったから、様子を見にロッカーまでいくと、中で「あの千聖」が歌を歌っていた。 なっきーとの約束で、最近は挨拶ぐらいはするようにしてたけれど、やっぱりなるべく係わりを持ちたくなかった。 前の千聖と同じで、自分のパートと愛理のパートだけをずっと練習している。 何だよ。頭打っても愛理のことはちゃんとライバルだって覚えてるんだ。私が千聖にとってどんな存在だったのかも忘れちゃったくせに。 苛立つ気持ちを押さえて、廊下の端まで移動する。ちょうど入れ替わるようなタイミングで、なっきーがロッカーに入っていった。 しょうがない。もし2人が一緒に出てきたら、今日はあきらめて帰ろう。・・・話ぐらいは、聞いてもいいよね。 そう思ってドアの前まで行くと、千聖がなっきーに「私のライバルは愛理です」とかなんとか言っていた。 たよりない変なお嬢様キャラに変わっても、そういうことははっきりした口調で言えるんだね。むかつく。 そして、次になっきーが信じられないことを言った。 「千聖は変わってないね。前の千聖のままだね。」 その後のことは、あんまり覚えていない。 なっきーに文句を言ったような貴がする。 千聖を怒鳴りつけた気もする。 もしかして、暴力を振るったのかもしれない。 気がついたら、舞美ちゃんにすがりついて大泣きしていた。 こんなに泣いたのは初めてかもしれない。まだこめかみが痛い。 「舞、熱いココア入れたから、あっちで飲もう。」 こんな真夏に、Tシャツにハーフパンツでホットココアって。 「ありがとう。」 カップを受け取って、口をつける。 熱いけど、おいしかった。舞美ちゃんはかなりの天然だけど人の好みをよく記憶していて、 たまにこういう風にお茶を入れてくれることがあると、いつもそれぞれが一番おいしく飲めるように気を使ってくれる。 「おいしい?」 汗だくだくになりながら、舞美ちゃんが首をかしげる。 「うん。舞は砂糖少な目でミルクが多いのが好き。ちゃんと覚えていてくれたんだ。」 「そりゃあそうだよ、大好きなキュートのことですから。みんな特徴あって面白いから、なんか覚えちゃうんだよね。 愛理は味薄めでしょ、栞菜はココア粉大目にミルクたっぷり。ちっさーなんてココアも砂糖もミルクもがんがん入れて!とか言ってさ。・・・・あ、」 「・・・いいよ、別に。舞の勝手で今の千聖を受け入れられないだけなんだから、そんな風に気使わないで。」 心がかすっかすになっていたけど、まだ笑顔を作ることぐらいはできた。 「ねえ、舞。千聖のことなんだけど」 「今はその人の話したくない。」 「舞。・・・・ううん、そうか、それじゃ仕方ないね。違う話しよっか。あのさ、友達の話なんだけどね、最近。・・・」 舞美ちゃんの顔がちょっとだけ曇ったけれど、それを打ち消すように不自然に明るく振舞ってくれた。 「うそー。ありえないよ。」 「でも本当なんだって、私もびっくりしちゃってさあ」 “・・・バカじゃないの、周りの人傷つけて、あんた何で笑ってんの” 舞美ちゃんに調子を合わせて、楽しげに話す自分を、もう1人の自分が責めている声が聞こえた気がする。 会話が盛り上がれば盛り上がるほど、心には虚しさが降り積もっていった。 次へ TOP
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前へ 「何でって」 上目づかいで盗み見た千聖は少し眉を寄せて、一生懸命考え込んでいるみたいだった。 「ねぇ~なんか言ってよぉ千聖ぉ。」 中2にしてはずいぶん豊かなたゆんたゆんに猫みたいに顔を擦り付けたら、千聖は高い笑い声を上げて身をよじった。 「ごめんなさい・・・きっと、理由なんてないんだと思います。」 「ちょっとぉ、散々考えてその結論とか!」 甘えモードでむくれてみせる。 「だって、好きな人とは自然に一緒にいたくなるものですから。桃子さんの側にいたいことや、なにかお役に立ちたいと思うことは、私にとって当たり前のことなんです。 舞さんや、梨沙子さんや愛理のことも大好きですが、私にとっては桃子さんと過ごす時間も比べ物にならないくらい尊いものだから。我慢だなんて、少しもしていないわ。」 「・・・・いやー、長文喋るね。ももびっくりしたよ。あのアホの千聖が。」 「あ、あほ?」 私は照れ隠しに千聖をからかう。本当に、今の千聖は何のためらいもなくストレートに言葉をぶつけてくるからたまらない。 嬉しいんだけどむずがゆいような感覚がたまらなくて、もう少し駄々っ子桃子に付き合ってもらうことにした。 「まあでも、千聖がもものことだぁーい好きなのはわかった。ありがとね。 じゃあ今度は、もものどこが好きなのか言って。とりあえず100個!はい、よーいスタート!」 「ひゃくっ!?え、えーと・・・笑顔が可愛らしくて好きです。」 「ほーい。じゃあ次!」 「歌声が好きです。」 こんな調子で、千聖はほとんど淀みなく私の長所をあげてくれた。 前の千聖だったらどうかな?同じこと3回ぐらい言って、逆ギレして10個もいかないでやめてたかも。 千聖は照れ屋で、しかも言葉をよく知らないところがあるから、本当に伝えたいことをちゃんと言えなくて落ち込んだりトラブルになったりすることがよくあった。 そう考えると、このお嬢様千聖はある意味で今までの千聖の代弁者なのかもしれない。 聡明で落着いていて、優しいけれど理路整然と自分の意見を堂々と言うことができる。 この千聖を手放したくない人たちの気持ちはよくわかる気がした。 「さーて、よく頑張ったね千聖。じゃあ次は、いよいよラス1だよ。どうぞ!」 「・・・」 あれ? 今までスラスラ答えてくれていたのに、千聖は急に黙ってしまった。 「千聖?もう限界?」 「あ・・・・違うんです。私、桃子さんの大好きなところだったらまだいくらでも言えるから、最後の1つを決めかねてしまって。」 心底困った顔で私を見つめてくる。 お・・・お!これは、なかなかすごい羞恥プレイだ。背中のかけないところがむずむずするような感覚。 「ちーさーとー!照れるってそういうの!ほら早く決めて決めて!」 「んと、はい、決めました。桃子さんの一番好きなところ。・・・いつもプロのアイドルであり続けるところです。」 プロ。 それは私にとって敬称であり蔑称である不思議な言葉だった。 「もーちょい、くわしく。」 「私にとって、桃子さんはアイドルとしての憧れです。 いつでも笑顔を絶やさない桃子さんの強さも、ファンの方をとても大切になさっている暖かさも、可愛らしい歌声も、誰もがうっとりしてしまうような握手も。 私は色黒だし、桃子さんみたいに可愛らしい振る舞いもできないけれど、握手の心得だけは真似させていただいたりしてます。 今までも、これからもずっと、私の1番のアイドルは桃子さんです。」 ――ああ。 きっと私は、こういう風に全面的に肯定されたかったんだ。 私はずっと、自分のアイドルとしての振る舞いに、プライドを持って頑張ってきた。 「やりすぎ」「キモイ」なんていう陰口も跳ね飛ばすぐらいの気持ちで、私なりの道を歩んできたつもりだった。 強いね、とはよく言われる。自分でもそう思う。 それでもふとした瞬間によぎる不安感・・・本当に、このままでいいの?という疑問に、心が揺れることもあった。 今の千聖の言葉は、そんな私の思いも全てを総括して認めてくれたように感じられた。 間違ってなかったんだ。 これで良かったんだ。 不思議な安堵感に包まれて、私は千聖の肩に顔を埋めた。 「桃子さん。」 「・・・泣いてないからね。」 「はい。」 無条件に自分の存在そのものを肯定してくれる人が、この世の中にどれほどいるだろう。 私の可愛い妹がそうしてくれたように、私も彼女の全てを受け止めて、守ってあげたい。 そう思った。 次へ TOP
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前へ どれぐらいの間、こうやって一人でいたんだろう。 物音一つしない部屋では時間の感覚はどんどん奪われて、全く見当がつかない。 私はこのままずっと、ここに閉じこもっていた方がいいのかもしれない。それがベリーズとキュートのためだと思った。 “千聖の気持ちはどうでもいいの?” さっきの愛理の言葉がずっと胸に突き刺さっている。 元に戻ることこそが、千聖にも私たちにとっても一番いいことだと信じていた。 みんなで力を合わせれば、必ず元の千聖になってくれると思っていた。 千聖の今の状態が永遠に続くなんて考えたくなかった。 必死だった。 舞美ちゃんと一緒に千聖に関するマニュアルを作ったり、マンツーマンで元の千聖の振る舞いを教えたり、どうにかして私の千聖を取り戻したかった。 そこに今の千聖への思いやりは存在していなかった。 どんなひどい仕打ちも微笑んで許してくれていたのに、私は。 前の千聖と同一人物だって認められなくても、例えば新しいメンバーを迎えるような気持ちで、もっと優しく接してあげることぐらいはできたはずだ。 そうすれば、ゆっくりでも私はあの千聖と自分なりにしっかり向き合えたかもしれない。 「何でこんなことになっちゃったんだろう。」 今頃みんなは千聖を囲んで、これからのことなんかを話し合ってるかもしれない。 キャプテンはもちろん、面白い好きもののちぃや意外と面倒見のいいみやも、すぐに新しい千聖になじんでいくだろう。熊井ちゃんも、茉麻も、梨沙子も、ももちゃんも、千聖にとって一番いいことをキュートのみんなと一緒に考えてくれるはずだ。 自分の気持ちを優先していたのは、私だけ。 そんな私に、千聖のことを偉そうに主張する権利はない。 「千聖・・・・」 手を見つめれば、さっきの千聖の体温がよみがえる。 もう一度千聖に触れたい。 前の千聖に戻らなくても、千聖が千聖であることを確認させてほしい。 忘れることなんてできないけれど、私に前へ進む勇気を与えて欲しい。 その時、うつむいていた私の視界が急に翳った。 顔を上げる。 「嘘・・・・・・・」 どうして。 どうして、私の居場所がわかってしまうんだろう。 どうして、私が今一番望んでいることがわかってしまうんだろう。 あんなにたくさん傷つけたのに、どうして。 「舞さん。」 いつもと変わらない、穏やかな顔をした千聖が立っていた。 半月型の優しい瞳が、私を見つめる。 先の丸っこい可愛い指が、私の前髪をいたわるように撫でる。 「何でここがわかったの?」 「・・・自分でもわからないわ。でも、わかったのよ。舞さんの居場所が。不思議ね。」 千聖は上品な仕草で、私の横にそっと腰をおろした。 「もうみんなに話したの?」 「いいえ。私からは何も。皆さんとお話するよりも、私は舞さんを探したかったから。ベリーズのみなさんには、舞美さんたちがご説明をしてくださるみたい。」 「千聖・・・・・」 一人になりたい。でも誰かそばにいてほしい。 そんな私の矛盾した気持ちに、千聖だけは気づいてくれたんだ。 私はまた、無意識に千聖の手首を掴んでいた。 「ここにいて。」 「ええ。」 「舞のそばにいて。」 「ええ。」 千聖は手首を握る私の手の上にそっと手を重ねた。私はまだ空いている方の手で、ゆっくりと千聖の顔に触れた。 「くすぐったいわ。」 長いまつげ、あったかいほっぺた、丸い鼻、形のいい唇。 私の指先が私の心に、この人は岡井千聖なんだと伝えてくる。 “舞ちゃん。” “舞さん。” 前の千聖と、今の千聖の笑顔が、頭の中でゆっくりと重なっていく。 私は千聖の手を取った。 そのまま、2人の手を千聖の胸に押し当てた。 「ごめんね。千聖、ごめんね。前の千聖の心も、ちゃんとここに入っているのに。私はわかっていたのに、認めたくなかった。・・・・いなくならないで、千聖。」 次へ TOP
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前へ 今日みたいに衣装合わせのみの場合は、メイクさんはつかない。 私はメイクが好きだから入念にやるけれど、キュートはわりとすっぴん派も多い。 今も鏡に向かっているのは、私以外は栞菜となっきぃぐらいだ。 乳液でベースを作って、私物のファンデを塗りこんでいく。 ふと自分の顔から目線をずらすと、鏡ごしに千聖と目が合った。 にっこり笑いかけてくれたのに、私の心臓はズキンと痛んだ。 取り繕うように唇をつりあげて微笑みを返すと、目を逸らしてまたメイクに没頭した。 ああ。ヤバい。 まためーぐーるーが頭をよぎった。 千聖のことを考えると、ひどく心が乱れる。 日傘なんかさしてしずしず歩く姿を見てちょっと楽しくなったり、お嬢様の千聖のちょっとした仕草に、前の千聖の要素を見出してなぜか落ち込んだり、自分でもわけのわからない感情に振り回されてしまう。 いったい私は、千聖にどうなってほしいのだろう。 前の千聖が懐かしいといっても、舞ちゃんのようにハッキリと「前の千聖に戻ってほしい」と思っているわけでもない。 かといって愛理のように「このままでいてほしい」というわけでもない。 自分の気持ちが自分でも理解できてないのに、千聖を助けるために動くというのはなかなか難しかった。 だから少し距離を置いて、千聖を、みんなを観察する側にまわった。 必要以上に接しなければ、表向きはいつもの梅田えりかでいられる。 きっとこの胸の痛みも、時間がたてば自然に解決する。 これは千聖は関係なく、私の個人的な問題。 そう割り切っていたのに、なっきぃには見抜かれてしまっていた。 「えりかちゃん、冷たい。」 さっきなっきぃに言われた言葉が、今更胸を刺し始めた。 なっきぃはストレートに物を言い過ぎるところがあるけれど、ちゃんと本質を見抜いて喋る子だ。 おそらくある程度は、私の心情を理解してくれているんだろう。 あーあ。気をつかわせたくないから目立たないようにしていたのに、上手くいかないものだ。 この分だと、千聖自身にも何らかの変化を感じ取られているかもしれない。 「えりかさん。」 あの子はなっきぃと似た意味で、周りの変化に敏感すぎるところがある。 「あの、えりかさん。」 「あーもう、ウチ本当だめだよー・・・ってうおおい!千聖!」 気がつくと、空いていた隣の椅子に千聖がちょこんと座っていた。 驚きのあまり、上の空で引いていたアイラインがものすごい太さになってしまった。プリンセステンコーか。 「ご、ごめんなさい。私ったら、驚かせてしまって。後の方がよかったかしら。」 「ううん。大丈夫。私がボーッとしててこんな顔にね。・・・どうかした?」 「いえ、あの・・・あの・・・」 何だか様子がおかしい。胸の前に手を置いて、私の顔を覗き込んだと思ったら目を逸らす。 「大丈夫だよ。ウチ、口は固いよ?」 とりあえず千聖の口元まで耳を近づけると、柔らかい吐息と一緒に、小さな声が耳に入り込んできた。 「あ、あの、下着が・・・」 「え?うん」 「さっき、下着が壊れてしまって・・・あの、それで」 ええええ? 「ど、どうしてよ。下着って、上の方だよね?壊れたってきょにゅ」 ・・・・うになりすぎたから?とは口が裂けても言えない。相手はお嬢様だ。 「それで、あの、どうしたらいいのかと思って。」 「で、何でウチに?愛理たちでいいんじゃない?」 「あ・・・ごめんなさい。迷惑ですよね。こんなこと」 千聖は悲しそうにうつむいてしまった。 「千聖、違うの。ごめん。迷惑とかじゃなくて・・・なんていうか私の問題で・・・」 嫌な沈黙が流れた。 千聖に話さなきゃいけないことはたくさんある。 でも、私の心の葛藤を、ここで千聖にすべてぶつけるわけにはいかない。 優しい千聖は全て受け止めようとして、私と一緒に押しつぶされてしまうかもしれない。 ・・・よし。 「千聖。一緒に来て。見てあげますよブラでもなんでも!」 千聖の二の腕をガシッと掴んで、ドアを目指して進む。 言葉なんて、何の意味があるというのか。 ここは、うちの全力リーダーを見習うことにした。 「ちょっ、どこいくの?えり?ブラが何だって?」 「すぐ戻る!・・・あ、なっきぃ。」 「え?」 「さっきはありがとうね。」 なっきぃに、ウィンク付きで投げチューをしてみた。 返って来たオエッて声は聞こえなかったことにしようっと。 次へ TOP