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前へ 「どうしたの。」 テレビを消して、パパとママは私が喋りだすのを待ってくれた。 「お姉ちゃんのことなんだけど。」 「うん。」 「あの、お姉ちゃんは・・・・・・頭が変になったの?心の病気とか。これから、そういう病院に通ったりしなきゃいけないの?」 声が震えた。 こういうことは簡単に言ってはいけないことだと、前に学校の先生が言っていた。 「明日菜。」 「私、お姉ちゃんをバカにしてるわけじゃないよ。でも、絶対に今お姉ちゃんはおかしい。パパもママも何にも言わないけど、そのこともおかしいと思う。」 瞼の裏がじわっと熱くなってきた。怒られるかもしれない。でも私は下を向かないでパパとママをまっすぐ見つめた。 ママが席を立って、私の隣に移動してきた。 「・・・・明日菜。言いづらいことを言わせてしまってごめんね。明日菜はお姉ちゃんが心配なんだって、ちゃんとパパもママもわかってるよ。」 「うん。」 緊張が解けて、じわっと涙がこみあげてきたから、慌てて思いっきり鼻をかんだ。 「お姉ちゃんのことだけど、パパと相談してしばらく様子を見ようってことになったの。 学校もそうだし仕事もこれから忙しくなるらしいから、病院へ行く時間を増やすよりも家でゆっくりできる時間を作ってあげたいと思ってる。」 パパがうなずいて、話を続ける。 「性格は変わったけど記憶には問題ないみたいだし、どっちみちしばらくは傷の手当てで通院はするから、何かあったらすぐ見てもらえるよ。」 「でも、でもさ。お姉ちゃんのファンの人はお姉ちゃんを嫌いになっちゃうかもしれないよ。今までと違いすぎるもん。」 お姉ちゃんは「少年」なんてあだながついてるぐらいボーイッシュなキャラだったから、全然違うお嬢様っぽいキャラになってしまったらきっとがっかりする人もたくさんいると思う。 キュートのメンバーだってあんなに戸惑っていたんだ。これって結構大変なことなんじゃないかな。 「そうだね。その話は、さっきお姉ちゃんともした。でもやっぱり、お姉ちゃんは自分の性格が変わったことがわからないみたいなんだ。 部屋が汚いとか、自分なりにいろいろ違和感はあるみたいなんだけど。 ファンの人と接する時はなるべく元の性格に近いように振舞いたいから、もともとどういう性格だったのか教えて欲しいって言ってた。 だから明日菜にも、お姉ちゃんのこといろいろ助けてあげて欲しいな。」 「うん・・・・・。わかった。でもやっぱり私は、元のお姉ちゃんがいいな。パパとママはそう思わないの?」 「思わないよ。ママにとっては、どんな千聖でも千聖に変わりないから。千聖が元に戻りたいっていうなら、いくらでも協力するけどね。」 パパもうなずいている。 そういうものなのか。私はまだ子供すぎて、ちょっとよくわからない。 「さあ、そろそろママ達寝るよ。明日菜も明日学校あるんだから、眠くなくてもゴロゴロしてなさい。」 「うん。お休み。」 抜き足差し足で寝る部屋に戻ると、相変わらずお姉ちゃんは幼虫みたいに小さく丸まって眠っていた。 「もっとこっち寄っていいのにな。」 私はタオルケットを体に巻きつけて、こっそりお姉ちゃんの背中に引っ付いた。 お姉ちゃんは体温が高くて、赤ちゃんのミルクみたいなちょっといいにおいがするから、 今までも内緒でくっついて寝たことが何度かあった。 今日のお姉ちゃんにも同じ事して大丈夫かな・・・としばらく様子を伺っていたら、 「明日菜。」 「うっわ」 もそもそと体の位置を動かして、お姉ちゃんが振り向いた。 「ごめん。あっち戻るから。」 「いいのよ。ここにいてちょうだい。」 お姉ちゃんは私の髪を何度か撫でて、優しく笑った。 ちょっとドキドキする。ずっと私より子供っぽいと思ってたのに、年齢よりずっと大人の女の人みたいに感じた。 「明日菜、もし私が何か不愉快なことをしたら、すぐに言って頂戴ね。 なるべく家族に迷惑をかけないように気をつけるから。」 「何で。迷惑って。別にいいよ今までどおりで。だって」 ・・・家族でしょ。 そう言いかけて、私はママがいってた「どんな千聖でも千聖に変わりない」という意味がちょっとだけわかった気がした。 「明日菜?」 「とにかく、これからもいつもと同じだよ。お休み!」 全部言葉にするのは恥ずかしかったから、強引に遮って自分のスペースに逃げ込んだ。 「・・・・ありがとう。」 ちょっとだけ涙声でお姉ちゃんが呟いた。もう。泣かれると困っちゃうよ。 これからお姉ちゃんがどうなっていくのかわからないけれど、私がいっぱい守ってあげなきゃ。 「じゃあ今度こそお休み。」 「おやすみなさい。」 手を差し出すと、お姉ちゃんは笑って握ってくれた。いっぱい疲れて、いっぱい悩んだ一日だったけれど、どうやらいい夢が見られそうな気がした。 次へ TOP
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梨沙子たちが熱い友情を確かめ合っている姿を確認してから、私はそっと医務室のドアを閉めた。 お姉さんなんだから、ここは3人の成長した姿を一緒に喜んであげるべきなんだろうけど 「まったく、何やってんだろう私は。」 そのことよりもはるかに大きな自己嫌悪で、心が晴れなかった。 高校生にもなって、幼稚な自分が情けない。 私が徳さんと揉めていたせいで梨沙子を構ってあげられなくて、ただでさえ少ない梨沙子の心と頭の容量をパンパンにしてしまった。 優しくてデリケートな梨沙子はお腹を痛くして、撮影を中断をしなければいけない事態に陥った。 様子を見に行こうとするメンバーを止めたのは正解だった。 何となく、千聖が梨沙子のところにいる気がしたから。 まあ、その時の私の態度がまた顰蹙をかったみたいなんだけど。 考えてみたら、私には今のベリーズでこの人!という仲良しがいないのだった。 最近はボーノの活動もあって、みやと一緒にいることもあるけれど、それでもみやの隣を私の定位置と言うにはしのびない。少なくとも、みやにとってはそうだろう。 例えばだけど、仲良し2人組を作れといわれたら、 まぁとくまいちょーはテッパン。 キャプテンと徳さんとみや・・・はキャプかみやどっちかが徳さんと組んで、組まなかった方が梨沙子とペアになるのかな。別に嫌々とかじゃなく、まあ自然な成り行きで。 それで、私は一人ぼっちか。 「うわあ。」 単なる妄想なんだけど、リアルに考えたら何だか凹んだ。 もうずっと昔のことだけど、私はベリーズの中で浮きまくっていた。 皆と足並みを揃えないで、一人で理想のアイドル像に近づこうとする私の姿は勘に障るものだったのかもしれない。 それでも私は、アイドルになったからには一番を目指したかった。 別に一人でも平気。私は友達を作るためにここにいるんじゃないって思っていた。 そんな私も、同じように皆と群れなかった舞波とは不思議と波長があって、あぶれたもの同士と言わんばかりに隅っこで2人ぼっちになっていることが多かった。 お互い輪に入れないことを愚痴るでもなく、話すことがあるなら話すし、なければ話さないけど一緒にいるような、とてもドライで、でも2人にとってはすごく心地よい関係だったと思う。 だから彼女がベリーズを卒業するラストコンサートでも、私は舞波の思いに答えるため、たった2粒涙を落とすだけのお別れにした。 あれから私は、一度も舞波と連絡を取っていない。 それでも、舞波への気持ちはあの頃と少しも変わっていない。 私にとって、今でもベリーズでの一番の仲良しは、舞波しかいないのかもしれない。 昔に比べたら私も妥協することを学習したし、皆も私を認めてくれて距離は縮まった。 今はベリーズ工房が大好きだと、本心で言える。 それでもふとした瞬間、ここは私の居場所なのだろうかと胸騒ぎを覚えることがある。 前だけ見て全力で走り続けて、つまずいて転んだら手を差し伸べてくれるメンバーはいるだろうか? 「・・・・ちさと。」 ふいに口をついて出たのは、密かに私の支えとなってくれている可愛い妹分の名前だった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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風の噂 大航海Onlile内で聞いた噂や情報をこっそり載せるページです 誹謗、中傷は厳禁です^^; いろんな情報 名前 以上、4Gamer情報・・・ - SweetHeart 2010-10-03 08 25 48 しかもそのNPCの名前が,どこにでもいるような,なんの変哲もないNPCなんですよ。そのうえ,アイテムはレアドロップで。 - SweetHeart 2010-10-03 08 25 09 さらに「あのイベント」のときにしか行かなかったんじゃないかな? という場所らしい・・・ - SweetHeart 2010-10-03 08 24 37 ドッグ拡張券を落とすNPCは,みなさんがあまり立ち寄らない海域にいます。 - SweetHeart 2010-10-03 08 23 51 ドッグ拡張券はルクソール神殿の深層ボスドロップで出るらしい・・・ - - SweetHeart 2010-08-16 21 12 14
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ベッドサイドに腰掛けた千聖の太ももに手を置いて軽く撫でると、千聖は小さく息を呑んで体を揺らした。 「・・・何にもしないよ。まだ。」 ちょっとからかうだけで、千聖の顔は耳まで真っ赤になる。 「嬉しかった。」 「え・・・?」 「千聖が部屋替えしようって提案してくれて。もちろん千聖と一緒の部屋っていうのが一番良かったんだけどね、たまにはあんまり一緒にならない人と同室っていうのも面白いかなって。 私がいつも一人部屋なの気になってたんでしょう。ありがとね。」 千聖はさらに顔を赤くして、口の中で何かモコ゛モコ゛呟きながらうつむいた。 千聖の気づかいは本当にさりげなすぎて、いつも見落としてしまう。 人懐っこいわりに、意外な程不器用な千聖。私はその健気な優しさに気付くたび、泣きそうなほど切ない気持ちを覚える。 「千聖も、寝っ転がって。」 千聖は見返りを求めて、人に優しくしてるわけじゃない。 それでも私は千聖に何かしてあげたかった。 「・・・服に、しわがついてしまうわ。」 「ちょっとなら大丈夫だよ。」 静かに体を横たえた千聖の耳に触れる。 「っ・・・」 遠くの方で、なっきぃや舞美たちが弾けるような明るい声ではしゃいでいる。外に出て、みんなで遊んでいるんだろう。 楽しそうな声が聞こえているのに、こんなに静かな場所で私たちは。 「えりかさん」 顔を近づけると、千聖は深く目をつぶって唇を寄せてきた。 「・・・だーめ。」 指で押しとどめられて、少しだけ不満そうな顔になる千聖。 こんな行為にも一応私なりのルールがあって、例えば、口と口でキスをしない。押し倒さない。上に乗っからない。・・・指突っ込まない。 これを守ることで、私と千聖はどうにか仲間であり友人である今までの関係を保っていられるのだと思う。 「梅さん、チューするの好きじゃないの。」 嘘だけど。 「で、でも、いつもえりかさんは私の体に・・・その、えと、唇で・・・」 「私がするのはいいんだよ。」 「あっ」 手を繋いで、空いている側の手で体のラインを辿る。 「えりかさん・・・」 掠れた声で私の名前を呼んで、千聖はいきなりしがみついてきた。 千聖のあったかい息が、私の胸に染み込む。背中が粟立った。 こんな真昼間に、これから仕事なのに、私たちはなんてことやってるんだろう。 投げ出した足が絡み合う。少し汗ばんだ肌同士がしっとりとくっついて、もう引き返せなくなりそうだった。 千聖が私にこういう行為を求める時は、2パターンある。 単純に、気持ちいいことを楽しみたいとき。これは今みたいなパターン。 それから、漠然とした不安や寂しさに襲われて、誰でもいいから体に触れて欲しいとき。これも、たまにある。 最初は胸を触るぐらいだった関係が、だんだんとエスカレートしている。こんなんでいいのかと思いつつも、私は楽しい方へ流されてしまう性格で、今この瞬間も千聖との行為を楽しんでいることは否定できない。 「可愛いよ、千聖。胸大きいね。お尻ちっちゃいね。足長いね。」 「ゃ・・・恥ずかしい・・・」 私のアホな言葉責めに、千聖はいちいち反応する。 その仕草がいちいち扇情的で、私はどうしようもなく理性を揺さぶられる。 「えりかさん、私・・・」 千聖が再び、唇を近づけてきた。 あっヤバイ。 物思いにふけっていたから、気付いたら避けることができなそうな距離になっていた。 「ダメだって・・・」 「おーい!!!!えり、ちっさー、出てこれる?みんなでバトミントンやってるんだけど、どう?一緒にやらない?」 その時、ガンガンと全力ノックの音とともに、舞美の元気な声が外から聞こえた。 バトミントン・・・何て健全な遊びなんだろう。 「あ、うん。準備して行くね。」 「えりかさん・・・!」 めずらしく、千聖がとがめるような声を出した。 「・・・ごめん。でも、怪しまれちゃうよ。ね、みんなのとこ行こう?」 私は体を起こすと、千聖のワンピースを綺麗に整えた。 顔を見ることはできなかった。泣きそうになっているのは気配でわかった。 「先に、行っててください。ちゃんと追いかけます。」 千聖は早口でそう呟いて、体を離した。 これでよかったのかな・・・?でも、今の千聖と私の「秘密」を守るためには、最善策のはずだった。 「ごめんね、千聖。」 「・・・いえ、いいんです。ちょっと、寂しかっただけです。」 寂しかった?どうして? 私の疑問は宙に浮いたまま、千聖は洗面所へと消えてしまった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/58.html
「もー!こんなことだろうと思った!いい?千聖。何でも興味持つのはいいことだけど、やっていいことと悪いことっていうのがあるの! 世の中にはね、千聖が想像もつかないような変質者がいっぱいいるの! こんな格好でね、パンツなんて見せてたらね、ヒドイ目にあっちゃうんだから!もしなっきぃが変態だったらどうするの! ていうかどうせみぃたんがけしかけたんでしょう!まったく困っちゃうなあ!」 「ごめんなさい・・・」 犬耳千聖は叱られた小犬みたいにしょんぼりして私の言うことを聞いてくれているけど、猫耳みぃたんは全然ケロッとしてこんな顔从 ・ゥ・从している。キー! 「・・・まあいいや、千聖がわかってくれたなら。さ、じゃあメイクしようか。」 「もう?お茶飲んで落ち着いたら?」 「いいよ。このテンションのままの方が上手くやれそう。」 私は多少頭に血が上って、アドレナリン出まくっている状態がベストみたいだ。 妙に頭が冴えて、いろいろアイデアが浮かんでくる。 「えーとまず、みぃたんからね。とりあえずその耳としっぽを外す!」 「ちぇー」 クレンジングでおひげを綺麗にぬぐって、ここに来る途中に本屋さんで買ったゴスロリ雑誌(別に張り切ってないんだから!)をパラパラとめくる。 私はこういうことに結構こだわるタイプだから、イメージにぴったりくるやつを延々探し続けた。 もちろん、飽きてまた変な遊びを始めようとする2人を牽制しながら。 「よし、これにする。みぃたんは色が白くて目力があるからー、こうやってこうやって、こんな感じか!」 シミュレーションしつつ、みぃたんの顔にじっくりとメイクを施していった。 失敗すること3回目ぐらいで、どうにか納得のいく仕上がりになった。 「でーきーた!みぃたん鏡見てよ!なっきぃの自信作だよキュフフ♪」 「どうれ。・・・・うーわーなっきぃ超すごい!これ何っ、何っ、舞美じゃないみたい!すっごーい!」 気持ちいいほどみぃたんが喜んでくれて、恥ずかしいけれど嬉しくてにやにやしてしまった。 つけまつげにラメ入りカラーマスカラ。コーラルピンクのポンポンチークにチェリーピンクのグロス。 これでもかっていうほどのガーリーメイクのみぃたんは、見事にちょっと気の強そうな甘ロリ美人に変身した(自画自賛)。 「でも、これ本当に超厚塗りなんだねー。こんなにガッチリやったら、自分でも誰だかわからないよーとかいってw じゃあお次は・・・あれ?ちっさー。」 待ちくたびれてしまったのか、千聖はみぃたんのベッドで丸くなってスースー寝息を立てていた。 「かわいいねえ。本当にワンちゃんみたいだ。ちっさーは本当に犬顔だねえ。」 犬耳も首輪もそのままだから、みぃたんのいうとおり、魔法か何かで人間になった小犬みたいだった。 呼吸に合わせて規則正しく膨らむおなかやむにゅむにゅ動く口元を見てしばらく癒されていたら、みぃたんがツンツン突っついてきた。 「・・・ヤッちゃいますか。」 「え!?ちょっとみぃたんさっきの話聞いてなかったの?そそそういうふしだらなことはぁ」 「なっきぃなに言ってんの?舞美はぁ、ちっさーが寝てるうちにメイクやっちゃおうって言ったんだよ。 やーいなっきぃ欲求不満ーとかいってw」 くっ・・・・! 「そ、そうだね!なっきぃもそう思ってたところだよ!欲求不満とか意味わかんない。さあ、やるずょ!」 「噛んだーw」 みぃたんも手伝ってくれたおかげで、千聖のメイクはわりとすんなりできた。 「ちょっとさぁこれ、メイク完璧じゃない?私たち天才メークアーティストだよみぃたん!千聖早く起きないかな。起こしちゃだめいかな。目開けた顔見たいなあ。みぃたん?」 「・・・脱がせちゃいますか。」 「え!?ちょっとみぃたんさっきの話聞いて(ry」 「なっきぃなに言って(ry」 くっ・・・・! まあ、私は全然欲求不満なんかじゃないんだけど、一向に起きる気配のない千聖を軽く衣替えさせることになった。 「スカートはこれでいいんだけどさ、舞美としては、もっとこのちっさーのでっかーを強調する方向でね。」 「でっかーいうな。」 とりあえずこれいらないよね、とみぃたんは千聖の胸元を隠していたフリフリのケープを脱がそうとしはじめた。 「んー・・・?」 体をごそごそやられて、さすがに異変に気がついたのか、千聖がパチッと目を開けた。 「ん、う、えっ!いやー!誰!?何をなさるの!」 あまりにメイクのノリが良すぎたのか、馬乗りになって服を脱がしてこようとしている美女がみぃたんだということに気づいてないみたいだ。 「早貴さん、助けてくださいぃ・・・」 「ふははは、誰も助けすっ!すけになど来ないさ!私は怪盗、じゃなくてびそうじょ仮面、じゃなくて、えーと、とにかくそっち系」 「・・・大丈夫千聖、それみぃたんだから。」 何だかどっと疲れが出て、私は2人の攻防に決着がつくのを待つことにした。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/228.html
前へ 「えっ!!戻ったの?本当に!!!」 翌日のレッスン前、ロッカー室で会ったなっきぃに、私は昨日のことを話した(もちろん経緯は省いたけど)。 「うん、急になんだけど。私もびっくりしたよー」 「そっか・・・元に戻ったんだ・・・・」 なっきぃは感慨深そうに何度かそうつぶやくと、キュフフ♪と笑いながら着替えを再開した。 「嬉しそうだね。」 「うん、嬉しいよ。元気キャラの千聖に会うの久しぶりだもん。あっでもね別にお嬢様が嫌だったってわけじゃないんだよ?」 「わかってるよぅ」 なっきぃは前の千聖とすごく仲が良かったから、きっといろんな思いがあるんだろう。鼻歌なんて歌っちゃって、これは相当機嫌がいいぞ。 「おはよー。」 「あっ舞ちゃんお疲れ様。あのね、今愛理に聞いたんだけどぉ」 続いて入ってきた舞ちゃん、栞菜、舞美ちゃんへと、どんどん情報が流れていく。 「えーそうなんだ!ちっさー元通りかぁ」 「・・・そ、そう!それはそれは!おめでたい!」 「よ、よかったね?ん?良かったのかな?良かったんだよね?」 くったくのない舞美ちゃんと比べて、どことなく挙動不審な栞菜と舞ちゃん。これは、私も当事者だからわかる。 お嬢様の千聖とやらしーこと(栞菜は未遂、舞ちゃんはチューしたらしい)をした手前、元気キャラの千聖とどう接していいのか―あるいは、千聖がどこまで覚えているのかが気になるんだろう。 「大丈夫、そのへんの記憶はあいまいみたい。」 「・・・本当?」 私のエスパーな言付けに、2人はあからさまにほっとした顔になった。 「おはよう、遅くなっちゃった!」 最後に真打ち登場。えりかちゃんと千聖が、すこし急ぎ足でロッカー室に入ってきた。みんなの注目が千聖に集まる。千聖が口を開いた。 「おはようございます、みなさん。今日もよろしくお願いします。」 ――あ、れ? ポカーンとする私達をよそに、2人は急いでジャージに着替え始める。 「ちょっと、お嬢様のまんまじゃん!」 「え、だってだって、昨日は確かに」 見れば服装もお嬢様の時のまま、ふわふわファーの白いワンピースなんか着ちゃって、これはどうみても元気っ子千聖じゃない。 「ちょちょちょ、えりかちゃん。」 大方着替え終わったえりかちゃんの腕を掴んで、端っこに移動する。 「何でお嬢様に戻ってるの?」 「・・・あー、元気な方の千聖が良かった?ちょっと待ってて。」 「ええ?待っててって・・・えりかちゃーん?」 えりかちゃんは千聖のところに戻って二言三言交わした後、手をつないでロッカールームから出て行ってしまった。 「ほら行くよ、千聖。」 「はい。」 昨日の帰り際同様、えりかちゃんは完全に千聖を手中に収めている感じがした。「行こう」じゃなくて「行くよ」って。別にいいんだけどさ。 「愛理ぃー。」 2人の足音が消えると、待ち構えていたように、栞菜と舞ちゃんが詰め寄ってきた。 「普通にお嬢様じゃん!いや普通じゃないけど!」 「どういうこと?一時的に戻ったって事だったの?」 「いやぁ~・・・」 なっきぃにいたっては、私を問いつめる元気もないみたいだ。期待した分、へこむ度合いも大きかったらしい。舞美ちゃんに頭を撫でられてるその目は、かすかに潤んでいる。 「なんか、ごめんねなっきぃ。」 「・・・ううん、愛理は悪くないよ。一度元に戻ったなら、また何かの拍子に前の千聖になるのかもしれないし。」 そんな話をしていると、5分ぐらいで2人は戻ってきた。 「お待たせ。ふっふっふ」 「お、おはよー・・・あれ、なっきぃ泣いてる?大丈夫?」 えりかちゃんの後ろから顔をひょっこり出した千聖は、“なっきぃ”と言った。・・・前の千聖の、独特の口調で。 「ちっ・・・・・ちさとおおおおお!!」 「うわっどうしたの?なっきぃ泣かないでよぅ!」 飛びついてギューギュー抱きしめてくるなっきぃを、千聖は戸惑いながら抱き返してにっこり笑った。 もう口調からして全然違う。お嬢様の千聖のふわふわオーラはどこへやら、ちっちゃめな体中から元気オーラが出ている。 「ちっさー、久しぶりだね!」 「記憶とか大丈夫?」 「うん?うん、よくわかんないけど、別に大丈夫だよ。元気だよ。」 千聖を真ん中にして盛り上がる輪を尻目に、私は再びえりかちゃんを突っついて手招きした。 「よかった、みんな喜んでるね。」 「いや、うん。それはそうなんだけどさぁ」 ―えりかちゃん、いったい何をしたの? 私の表情から行間を読んだのか、えりかちゃんは人差し指を唇の前に立てて「愛理には後で言うから。」とウインクしてきた。 次へ TOP
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「りーさん。じゃなくて、りぃちゃあん!・・・・ちょっと違うわね。りーちゃん♪りーちゃ・・・」 しばらくぼんやり窓の外を眺めたあと、いきなり千聖は私の名前を呼ぶ練習を始めた。 り、りーさんだって。ププッ 真面目な顔で名前を連発されるのがおかしくて思わずフンッと鼻息を漏らしてしまった。 「ん?」 千聖が顔を近づけてくる。私は慌てて寝返りを打つふりでごまかした。 「暑いのかしら・・・」 目を閉じていても、至近距離で見つめられているのが気配でわかる。 何だか甘い匂いがする。とっても甘い、バニラみたいな。 多分これは私の好きな魔女っぽいブランドの香水だ。 そういえばさっき頭をゴーンとやってやった時も、ふわっと香っていたかも。 ちょっと高いし大人っぽいアイテムだから、まだ買おうか検討中だったのに、まさか千聖に先を越されてしまうなんて。 プロレスやスポーツじゃ千聖に負けていたけど、オシャレ関係は絶対私の方が詳しいし気を使っていたはず。 何か悔しいな。千聖、前はシャンプーの匂いぐらいしかしなかったもん。 「ずるい。」 「ひゃっ!な、なんだーりーちゃん起きてたの?びっくりしたぁ。」 ブランケットから目と鼻だけチョコンと出して、千聖を睨んでやった。 「りーちゃん倒れたって聞いて、心配だからあいりんと様子みにきたんだよ。・・・で、ずるいって何が?千聖が?」 「知らないもん。」 「何だよぅそれ~」 さっきとは表情も喋り方も全然違う。今は、私が一番よく知ってる千聖だ。 「今あいりんが飲み物会に行ってるからね。何かやってほしいこととかあったら言って?」 あぁ、でも笑い方とかはやっぱりちょっと違うな。何かお姉さんぽい。 「千聖、何でもしてくれるの?・・・・じゃあさ、悩み相談に乗ってくれる?ももと違って、本当に相談したいことがあるの。」 「悩みかあ。うん、私でよければ!」 私はゆっくりと起き上がって、ベッドに腰掛けている千聖の手を握り締めた。 「あのね、私、友達の内緒話を偶然聞いちゃって。」 「うん。」 「でもち・・・その子は私がまだそのことを知らないって思ってて、全然話してくれないのね。他の子は知ってることなのに。」 あれ・・・・。何か目がじわじわ熱くなってきた。 「でね、わ、私にだって、ちゃんと教えてほしいの。ずっと前からの仲間だし、できることがあったら手伝いたいのに。知らないふりするの、辛いよ。」 「りーちゃん。」 繋ぎあった私と千聖の手の上に、私の涙がポツポツと落ちた。 泣いたりするつもりなんかなかったのに、いちどあふれ出したら止まらなくなってしまった。 まともに顔を見たらもっとワンワン泣いてしまいそうだったから、おでこをゴチッとぶつけて歯を食いしばった。 「りーちゃんは・・・・その人のこと、すごく大切なんだね。」 「うん。私千聖のこと、大切だと思ってるよ。」 「・・・・・えっ・・」 あっ 千聖の手がピクッと反応した。 うつむいた私の目線の先で、柔らかそうな唇が、何かを言おうとしてるように閉じたり開いたりを繰り返している。 「あっ、と、えと、今、のは、あっ、ちがくてっ」 ど、どうしよう。 ゆっくりおでこを離すと、千聖と思いっきり目が合った。 千聖の目は不思議な色をしている。 黒目がとても大きくて、いつもきらきらしていて、私の憧れている魔女みたいに、全部を見通してしまうような魔力があるような気がする。 この目に見つめられたまま何か聞かれたら、きっともうごまかせない。 千聖の口が開く。 お願い、何も言わないで。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/99.html
○| ̄|_ 今の私の気持ちを記号にすると、まさにこんな感じだった。 「舞美ちゃん、鈍すぎる。」 わりとよく言われる言葉だけれど、さすがに今日ばかりは反省せざるをえない。 まさか、私だけが何も気づかなかったとは・・・・。 最近は何の事件もなく、平和だったはずのキュートに、いきなり超緊急事態が発生した。 ダンスレッスンの休憩中、舞ちゃんと喋っていたら、いきなり「どうしたの!?」となっきぃの甲高い声がした。 あわてて振り向いたら、栞菜とちっさーが床に座り込んで泣いていた。 「えっ」 何事? 今の今まで特にケンカをしている様子もなかったのに、いきなりの展開に頭がついていかない。 「千聖!」 舞ちゃんは半分私を押しのけるような感じで、千聖のところへ走っていった。 栞菜にはすでにえりがついているけれど、どう見ても栞菜の方が大変な状況に見えたから、私は後ろから背中をさすってあげることにした。 あんまり興奮しすぎたからか、過呼吸みたいになってしまっている。 栞菜はすごく感受性が強いから、ネガティブな出来事にはとても弱い。 「大丈夫、大丈夫」と声をかけていると、少しずつだけれど落着いてきたみたいだ。 「えりかちゃん、これ。飲ませてあげて。」 愛理がスポーツドリンクを持ってきた。 「ありがとう。・・・舞美、ちょっと背中ポンポンするのストップね。」 「あ、うん。」 私は手持ち無沙汰になってしまったので、今度はちっさーの様子を見ることにした。 ちっさーにはなっきぃと舞ちゃんがついている。 もうちっさーは泣いていなかったけれど、まったく生気のない目をしていた。 「千聖ぉ、どうしたの」 べそかきながら介抱するなっきぃにも、強く手を握る舞ちゃんにも、何の反応も示していない。 ちっさーの瞳は、いつも光を取り込んでキラキラしている。 その綺麗な瞳が今は輝きを失って、人形みたいに虚ろな表情だった。 これは普通のケンカじゃない。 鈍感な私もそれは理解できた。 問題は、ここからどうすればいいかだ。 話し合いができるような状態じゃないし、レッスンを再開できるとも思えない。 「舞美。今日はもう栞菜帰らせてもいいかな。ウチが送るから。」 一人で考え込んでいると、えりに後ろから肩をたたかれた。 栞菜はまだひどく泣きじゃくっていて、崩れ落ちるような体勢で愛理にしがみついている。 確かに、一度ここから離れて落ち着かせたほうがよさそうだ。 「うん、そうだね。」 「じゃあ、マネージャーさんたちに言ってくる。」 あ、それは私が。と言う前に、えりは走って行ってしまった。 何か私、全然役に立ててない。 じゃあタクシーでも、と思ったら、もうすでに愛理が連絡を取ってくれていた。 「なっきぃ、顔洗ってきたら?千聖には舞がついてるから、大丈夫だよ。」 私があたふたしているうちに、舞ちゃんにうながされてなっきぃが立ち上がった。 「あ、じゃあ私一緒に行く。」 そこはなっきぃじゃなくてちっさーに付くべきだろうと言った後で気がついたけれど、今更撤回するのもおかしいから、なっきぃの肩に手を回して一緒に外へ出た。 「何か、びっくりしたね。」 「うん・・・こないだ2人が様子おかしかった時、ちゃんと相談に乗ってあげればよかった。」 あれ?心当たりがない。 「そんなことあったっけ?今日いきなり変な感じになっちゃったのかと思ってた。」 「ほ、ほら、あの、皆にみぃたんちで遊んだ写真見せてた時、栞菜が先帰っちゃったでしょ?なんか千聖落ち込んじゃってて。」 「あぁ~、あれか!」 情けない話だけれど、今の今まで記憶の中からすっぽ抜けていた。 「あの後もさ、2人ちょっと変だったでしょ。栞菜が千聖にすごいいろいろしてあげてるって感じだったけど、全然楽しそうじゃないの。」 「・・・・ごめん、それ全然気づかなかったよ。」 「もーー!みぃたん、鈍いよぅ・・・・みんなで気にしてたのにー!」 口尖らせて文句を言われて、じわじわと気持ちが落ちてきた。 私、本当にリーダーでいい、の、かな・・・・? TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「千聖?おーい・・・」 私の腕にしがみついていた千聖は、力を失ってぐったりともたれかかってきた。 千聖の好きな観覧車の眩い電飾が、小麦色の肌を照らしている。瞳は閉じられたまま、軽く体を揺すっても反応しない。 ――やりすぎちゃったかな・・・ 今日の私は少し変だった。 日中デートを楽しんでいた時から、何だかよくわからないけれどずっとムラムラしていた。 キラキラグロスでおめかしした唇とか、上目でまっすぐに見つめてくる子犬みたいな目とか、・・・服をボイーンと押し上げてるお胸、とか。 山手通りからの帰り道、舞ちゃんと愛理に呼び止められなかったら、私はもしかしてどこかのトイレに千聖を連れ込んで、軽く1回戦を行っていたかもしれない。 正直、どこから私達のデートコースが割れたのかとても気になるけど、そういう意味ではあそこで合流したのは正解だったのかもしれない。 ただ、問題はその後。 舞ちゃんは観覧車の中で千聖にぶちゅっとキスをかまし、(消したら呪われそうなので写真はデジカメに残ってる・・・)私を煽った。 舞ちゃんの千聖に対する気持ちは知っていた。二人で旅行に行くと行って先に挑発したのは私。にもかかわらず、こういう事態は予測できなかった。舞ちゃん・・・いえ、舞様を見くびっていた。 ただ、いつものヘタレえりかと決定的に違っていたのは・・・この事件が私の嫉妬心を呼び起こしたこと。心が折れて、このまま何もせずにホテルで朝を迎えることも、自分の性格ならありえることだったのに。 千聖を渡したくない。自分だけのものにしたい。 今頃、こんな気持ちを覚えるなんて。ずっとずっと、千聖の思いから逃げて、体だけ繋ぎ止めて苦しめてきたのに。そして、私はもう、ずっとそばにいることはできなくなってしまうのに。 それでも、千聖が私をまだ必要としてくれるなら。私は今からでもその思いを受け止めるだけ受け止めたい。 そんな決意の後、私はむさぼるように何度も千聖の小さな唇を奪った。“千聖は舞のもの”そのおきまりの言葉にすら、嫉妬を覚えた。 何かに操られるみたいに、言葉で千聖を恥ずかしがらせて、初めて指を千聖の体に繋げた。私の千聖だ、って今更主張したくなって、持て余した思いをぶつけてしまった。 「千聖・・・」 どうしよう、本当に愛しくてたまらない。 強く抱きしめて、千聖の匂いを感じるだけで、涙がこぼれそうになる。もっともっと触りたい。夜景の綺麗なホテルで、2人っきりで、我慢なんてできそうになかった。 「・・・んん」 そんな私の気持ちを感じ取ってくれたのか、私にもたれかかるようにぐったりしていた千聖が、私の腕の中でもそもそと身を捩った。 「えり、か、さん」 「起きた?・・・ごめんね。ひどくしちゃった」 「いえ、あの・・・・大丈夫、れす」 舌たらずに答えた後、千聖はおそるおそるといった感じに、お湯の中へ目線を落とした。 「もう抜いたから、大丈夫」 こういうダイレクトな言い方は、きっと千聖を恥ずかしがらせる。案の定、耳まで真っ赤にした千聖は「あ、そんな、私・・・」とフガフガ口ごもって抱きついてきた。 「さっきの千聖、ぴくんぴくんしてて可愛かった。もっとちっさー食べたーい!とかいってw」 「もう・・・今日のえりかさんは意地悪だわ」 抗議の声もどこか甘く響いて、また私達は自然に唇を寄せていた。 「・・・ベッド、行こう」 「ええ。」 いつぞやのコテージの時みたいに、舞美が降りてきてくれれば、かっこよくお姫様抱っこでもしてあげられたのに。残念ながらノーマル仕様の私じゃ、肩を抱いてあげることぐらいしかできなそうだ。 洗面所に戻って、千聖の髪にドライヤーを当てる。 ふにゃっと柔らかいくせっ毛に、私の愛用のトリートメントが馴染んでいく。 「ちょっと髪傷んじゃってるみたいだから、えりかスペシャルトリートメントね。」 「ウフフ。覚えれば私も出来るかしら?お風呂上がりに明日菜や弟がジャレてくると、どうしてもドライヤーがおろそかになってしまって・・・」 「千聖ったら、乙女になっちゃって。前の千聖だったら、こういうの全然気にしなかったのに。」 モデルを目指すと決めたときから、私はもともと関心の強かった美容について、さらに追求するようになっていた。 メンバーからスキンケアやヘアケアについて聞かれることも増え、千聖にスキンケアやヘアケアについてレクチャーすることも今まで何度かあった。 今だって、とりたててスケベなことをしてるわけじゃなく、単にヘアケアのコツを教えているだけのつもりだった。それなのに、なぜかまたムズムズした感情が湧き上がってくるのを感じた。 おそろいで着ている備え付けのバスローブは、千聖には腕も胸元もぶかぶかで、小麦色の肌がそこかしこからチラチラ覗いている。ドライヤーをかけつつ、その適度にぷっくりした肌についつい見惚れてしまう。 そもそも、大人っぽいバスローブは千聖にはあんまり似合っていない。キャラじゃないっていうのもあるし、何と言ってもまだ中学生だ。無理をして大人と同じ格好をしていることが、やけに淫靡なことのように感じられる。 「・・・できたよ、千聖。家でやるときはちゃんとタオルドライして、トリートメント付けるのも忘れちゃダメだよ。」 「はい、ありがとうございます」 胸が熱くなるのを止められないまま、何とか平静を装う。 ドライヤーを止めて、天使のリングがわかるように髪をパラパラと摘んで見せると、千聖は嬉しそうに笑ってくれた。 「ちさと」 「え?」 喉に貼りついたような、妙に乾いた声が出る。 私は後ろから千聖を抱きしめて、緩い襟ぐりに手を差し入れた。 「あっ」 逃げようとする肩を捕まえて、そのまま鏡の前の椅子に座らせる。さっきの行為の余韻で変化したままの胸の先に触れると、千聖は身をよじった。 「や・・・」 「千聖、鏡見て。」 無言で首を横に振るくせに、千聖はこっそり視線を鏡に向けている。私も鏡越しに、妙に真面目な顔で千聖の胸を弄る自分と目が合う。当たり前だけど、こういうことをしている自分たちを客観的に見た事がなかったなかったから、少し興奮した。 「千聖、ウチの香水の匂い好きって言ってたよね?一緒の匂いになろう」 ポーチの中から、小さなアルミの缶を取り出す。リップクリームやワセリンみたいな質感のそれを指でなぞると、千聖の胸の谷間に摺りこんだ。 「んぅ・・」 暖かくて弾力のあるその場所から、自分と同じ匂いが立ちこめる。所有物、なんて言うつもりはないけれど、千聖がほっぺたを紅潮させて、「えりかさんとおなじ・・・」とはにかんで笑ってくれたのが嬉しかった。 もう少し塗り広げようと、腰の紐を緩める。想像以上にバスローブは小柄な千聖には大きかったようで、一気に上半身がほとんど露になる。あわてて体を隠そうとする手を握りこんで、唇を合わせる。 しかし・・・なんていうか、女の子同士のエッチって、もっと可愛くてスマートなものかと思ってた。佐紀の家で見たレズものAV(・・・)は可憐な感じがしたのに、今鏡に映ってる私は、髪はバサバサ目はギラギラで、自分でいうのも虚しいけど、必死すぎ。 「えりか、さん」 眉を寄せた千聖と、視線がぶつかる。目にうっすら涙をためていて、これはちょっといきすぎたかと思って、体を離そうとした。 「ごめん、やりすぎ?」 だけど、千聖の手は私の指を離さなかった。乱れて落ちたバスローブの下から、褐色の肌が全部現れて、私の首に手を回す。 「ベッドに・・・」 子犬のような黒く濡れた瞳が、獰猛な動物みたいに、ギラッと鈍い光を放つ。 前の明るい千聖が、コンサートや舞台で本気の興奮状態に陥ったときに見せるのと同じ表情。魅力的だと言われている笑顔と同じぐらい、私の心を惹き付ける、精悍な顔。 「えりかさん、ベッドに連れて行って・・・」 完全に裸になってしまっているのも厭わず、耳元で千聖は妖しくささやきかける。高めの体温と、熱く篭った吐息に背中が強張る。 部屋からバスルームに来た時と同じように、また唇を重ねながらベッドに向かう。 くっつけては離れて、また合わせて。真っ白なシーツの上に倒れこんでも、まだキスは続いた。 ――♪♪♪ その時、ベッドサイドの千聖のバッグから、電子音が鳴った。 千聖はわりとめんどくさがりだから、おおまかにしか着信音をわけない。友達、仕事、家族、ぐらいだと言っていた。だから、これが誰からなのかは千聖にもわからないはず。 千聖が好きだと言っているアーティストの曲が、私たちの間を通り抜けるように流れ続ける。 「出ないの?」 「だって・・・」 急に現実に戻されたからか、千聖はきょとんと困った顔で私を見つめた。 着信音は止まない。私はキスの続きをしようとしない。千聖はあきらめたようにもたもたと体を起こして、バッグを探った。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 「はー!疲れたぁ。」 カレー、ご飯、丸パン、そしてアイスをたっぷり食べて、みんなでゲームをやって、撮影が終わった。 盛り上がりすぎて少し時間が押してしまったから、とりあえず一度千聖とコテージに戻った。 「元気な人は後で舞美たちの部屋に集合!」なんてまだまだ元気な舞美ははしゃいでたけど、うちらはどうだろうか。 今日はいろんなことがあって疲れてしまったから、ちょっと厳しいかもしれない。 私はベッドにダイブして、お隣の様子を伺った。 「千聖?寝るなら着替えた方がいいよ。風邪引いちゃうからお布団入って。」 「んー・・・」 千聖は私服のワンピースのまま、小さく丸まって横になっている。喋るのも面倒なのか、完全に生返事だ。 「ほら、千聖。」 しかたないなあ。私はもたもた起き上がると、千聖のベッドに移動した。 「着替え手伝うよ。はい、バンザイして」 背中のリボンを緩めて、頭側からガバッとワンピースを脱がせる。 ・・・あらあら、今日のおブラは白ですか。薄いピンクのフリルが可愛い。 仕事上、メンバーの下着姿なんて見慣れているけれど、わざわざ自分で脱がせたりなんだりするのはやっぱりちょっとドキドキする。 「パジャマ、バッグに入ってる?」 「・・・」 返事がない。目を閉じたまま、むにゅむにゅと口だけが動いている。寝言モードにまで入ってしまってるなら、これは当分起きそうにないな。 私は千聖のかばんを探った。前みたいにTシャツ短パンが入ってるのかと思いきや、 「・・・ねぐりじぇ。」 丈の長い、薄いブルーのお姫様みたいなお召物が鎮座していた。なんだこれは。パフスリーブとプリーツが可愛らしい、いかにも高そうな柔らかい素材だった。舞美が好きそう、こういうの。 「えーこれ、どうやって着せたらいいんだろう。」 私もネグリジェは何枚か持っているけれど、こんなお値段の張りそうなのは持っていない。きっとママにおねだりしたか、お小遣いをためて買ったんだろう。これは、間違っても破いたり汚したりしたくない。 かといって、このまま下着で放置するわけにも・・・ええい、仕方ない! 私は自分のバッグから、パジャマ代わりの水玉のガウンを取り出した。 これなら着脱も簡単!腕を通して、帯を締めるだけ。 あっという間に着替えを終わらせて、掛け布団をかけてあげれば、千聖の就寝準備は終わりだ。 あ、私?私は、前になっきぃからもらったミカン野郎Tシャツがあるから大丈夫!LED発光だから暗闇でも光るよ! ・・・本当はお昼の続きをしたかったけれど、疲れた千聖を起こしてまでやることじゃない。こんな風に、寝顔を眺めてるだけでも満足。 “えりかちゃんは、ちっさーのことが好きなんだよ” 「いやっ、そんなわけない!違う違う!」 さっきの栞菜の妄想劇場を、必死で頭から振り払う。 私ももう17歳。恋というのがどんな感情なのか、さすがに理解しているつもりだ。 恋っていうのはもっと、甘くて苦くて切なくて苦しくて、心が張り裂けそうなものだ。 千聖にエッチなことするときに生まれる感情は、そんなんじゃない。 正直千聖のちっちゃくてふにふにした体はとても抱きごこちがいいし、ずっと腕の中に閉じ込めていたくなってしまうのは否めない。あの子供みたいな顔が気持ちよさにとろけていくのを見るのも好き。お嬢様のくせに、びっくりするほど色っぽい声を出すのもなんかいい。 でもそれはドキドキじゃなくて、どちらかといえば和みや癒しの感情に近いと思う。だからこれは恋じゃない。恋であってはいけない。 “そういう愛の形だってあるんだよお姉ちゃん” 「ああーうるさいうるさい!お黙り、栞菜!」 私は脳内で語りかけてくる栞菜を追い払って、シャワーを浴びにいくことにした。 家から持ってきたバブルバスの素で、浴槽をもっこもこにする。大好きな薔薇の香りがただよい始めて、ちょっと興奮していた私の心も落ち着いてきたみたいだ。 ピンクの泡に体を沈めて、しばし考え事にふけることにした。 どうしようかな、これからの私と千聖のこと。 栞菜はおかしなことをいいつつも全面的に私の味方のようだし、愛理も面白がってはいるものの、千聖が決めることだと言っていた。 舞ちゃんはあんなことを言ってるけれど、実際に私たちが何をしているのかわかっていない。ていうか、中学1年生の女の子の考えが及ぶような行為じゃない。多分。舞美はもっとわかってない。 ・・・なっきぃとは結局あの後じっくり話す時間が持てなかったから、誤解を解くことも意見を聞くこともできてない。 本当になっきぃの言うように、私のしていることが千聖にとってよくないことなら、それは即やめなくちゃいけないとは思う。 でも私の本音を言えば、しばらくこの関係を続けていたい。 千聖を救って癒してあげる行為だと思っていたけれど、本当に心を癒されているのは私の方かもしれない。 “えりかちゃんは、ちっさーのことが好きなんだよ” 「・・・・わかんないよ、そんなの」 さっきまでは、違う!と否定できた脳内栞菜の囁きに、今は即答できない自分がいた。 次へ TOP