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「っ・・・ちょっとー!!!!何なのこれ、友理奈ちゃん!!!」 叫ぶ私にひらひらと手を振って、友理奈ちゃんは部屋を出て行ってしまった。私は唯一自由になる足で、床をバンバン踏み鳴らす。 どうしてこうなった・・・・ オフだし一緒に遊ぼうよ!という珍しいお誘いを受けて、私は友理奈ちゃんと渋谷でお買い物を楽しんでいた。某狼界隈では相性極悪コンビとしてテッパンの私たちだけれど、服を見たりお茶したり、結構楽しかった。・・・はずなのに。 夕食のちょっと前ぐらいの時間に「ちょっと行きたいところがあるんだ」と友理奈ちゃんに連れて行かれたのは、ドラマとかなら悪い人たちがたむろしているような、いかにも怪しげな路地裏。 「ちょっとぉ~・・なに、ここ。」 「まあまあ、いいからいいから。」 背中を押されて降りた地下階段の奥には、重そうな黒い扉。うながされるままに中に入ると、10畳ぐらいの部屋の真ん中でロッキングチェアが1つ、ぽつんと揺れているだけで、他には何もなかった。 「なかさきちゃん、そこ座って?」 振り返ると、ちょうど友理奈ちゃんが、ドアを閉めたところだった。鍵のかかる音が、妙に大きく響く。 「座って?」 友理奈ちゃんはいつものほえっとした笑顔を封じ込めて、ふいに真顔になった。ちょっとドキッとする。 背が高くて、地顔は結構キリッとしている友理奈ちゃんは、こう見ると美人、というよりイケメンだ。思わず言われるがままに、その怪しい椅子に腰を下ろしてしまった。 「目、閉じて?なかさ・・・・早貴。」 「あぅ」 「可愛いね、早貴。やっと2人になれた。」 耳元でそうささやかれ、腰が砕ける。激しく攻められるのもたまらないけど、これはこれで・・・ 「友理奈ちゃん・・・」 「早貴・・・」 ガシッ 「えっ」 目を開けると、友理奈ちゃんは私の両手首をつかんで、バンザイさせていた。 「な・・・」 文句を言う間もなく、ガチャッと嫌な音がして、私の手はそのまま動かなくなった。 「な・・・なに、これ・・・」 なんと、その椅子の両縁には、手枷がついていた。あわてて体をよじると、ぐにゃーっと視界が歪む。 「いぃーっ!なんなのこれ!」 「暴れないほうがいいよ。その椅子、ゆりかごみたいになってるから、安定性がないの。私もさっきひっくり返っちゃったよ。あはは」 「もうっふざけないでよ!これ外して。」 「ダメドゥエース。ハズサナイヨウニッテイワレテマース。」 「は?誰に!」 「じゃ、準備があるから後でね、なかさきちゃん。」 「ちょっと、準備って!?」 わめく私にかまわず、友理奈ちゃんはどこかへ歩いていってしまった。どうやら、奥に隠し扉があったらしい。 「もう、友理・・・熊井―!!!!」 そして、冒頭に至る。 もう、本当に意味がわからない。あのラブラブデートはいったいなんだったんだろう。おまけに、こんなコンクリート打ちっぱなしの寒々しい部屋に放置されて・・・・ 「うっ・・・うっ」 涙が出てきた。でもそれを拭くことすらできない。私はいたぶられるのは好きだけど、放置プレイは好きじゃないんだってば! 「ごっ・・・ごめんなさぁいっ・・!早貴が悪かったなら、謝るからぁ・・・!一人にしないで!」 静寂に耐え切れず、そう叫ぶ。すると、友理奈ちゃんが消えていった隠し扉の方向からコツ、コツと小さな音が聞こえてきた。そして、静かにドアが開く。 「なんっ・・・」 文句のひとつも言ってやろうかと口を開いた私は、そのまま絶句した。 部屋に入ってきたのは、友理奈ちゃん・・だけじゃなかった。 「いやー、なっきぃがそう言ってくれるのを、ウチはずっと待ってたよ。」 まるで某3年B組担任教師のような口調で満足げにうなずく・・・えりかちゃん。 「あはは、なっきぃすごい体勢だねー。これって揺り椅子?揺らしちゃえーオラオラnksk!とかいってw」 「ギュフー!」 心底楽しそうに、大きな手で椅子をガコガコ揺らす舞美ちゃん。そして、それを見て、超爆笑している友理奈ちゃん。 「Bello・・・」 それは、Buono!に対抗するかのように作られた謎の即席(?)ユニットだった。いや、それはこのさいどうでもいい。なぜ、この場所にみぃたんやえりかちゃんがいるの?わけがわからない。 「な・・・なに、その格好。」 「うっふん」 ハーフカットのレザージャケットの下に、エナメル地のボンテージ風キャミソール。長い脚を強調するかのような、超ミニ半透けペチコート。 元々ハードテイストなBello!の衣装をさらに卑猥に魔改造した、どこからどう見ても超ハードな女王様ファッションだ。 「ふふふ、似合う?なっきぃ、こういうの好きでしょ」 ハーフカップのキャミから半乳がこぼれ落ちているえりかちゃんが、つつっと私の顎を撫でた。 「べ・・・別に私はそんな趣味ないし」 はい、嘘です。こういう素敵なおねいさま、じゃなくて女王様は大好物です。あぁ、傍らで笑うみぃたんの白いふとももがまぶしい・・・ 「こ、こんなところに連れてきて、どういうつもり?早くこれ、外してくれないかな。」 とはいえ、やられっぱなしも癪だから、私はHG風のサングラスで「フォー」とかいってはしゃいでる友理奈ちゃんを睨んだ。 「ん?だって、なかさきちゃんはUmelyのにくどれいなんでしょ?そのはってんとじょうのにくたいはUmelyにもてあそばれるためにそんざいしてるんでしょ?」 「うっ・・梅田ぁ!」 思わずいつものノリで突っ込むと、えりかちゃんは私の顎に添えた手に少し力を入れた。 「痛っ・・・」 「Umelyだってば。」 何だ、その指摘は。 「だってなっきぃ、約束したでしょ?私の玩具になるって。あの後、千聖が来てなしくずしみたいになっちゃったけど、ちゃあんと覚えてるよ。千聖の身代わりになる、だったっけ?だったら、こういうこともちゃんとこなさないとね。」 えりかちゃんは、数日前に私(と途中から千聖)に対して行ったあの気持ちい・・・じゃなくて、おぞましい行為を反芻するように、うっとりと目を閉じた。 「何勝手なこと言ってんの!大体、千聖の身代わりでこういう・・・・・・え?ちょ、それって、まさかえりこちゃん、千聖にこんなことまで」 あまりにも聞き捨てならないその言葉に、さらに追及を深めようとしたところで、自分の意思とは関係なく、いきなり体がぐわっとのけぞった。 「はーい、おしゃべり終わり!!なっきぃ、Yajimyとも遊んでくれなきゃ寂しい!とかいってw」 「ギュフ!」 「あはは、なっきぃすごい顔!とかいってw」 Yajimy、ことみぃたんが後ろから思いっきり椅子を引いたらしい。えりかちゃんの方を向いていたはずの私の視線は、強制的に上を向かされてしまった。 もちろん、ロッキングチェアーだから、完全にひっくり返るということはないけれど・・・ジェットコースター類がほとんど苦手な私にとっては、これだけでも相当な恐怖だ。 「み、みぃたん、やめ・・・ひいいい!怖い怖い!」 それなのに、Yajimyさんときたら、「あっはっは!」なんて笑いながら、ガクンガクンと椅子を揺らしてきた。視界がぐらつく。 「ギュフゥ・・・」 弱りきった私に満足したのか、「なっきぃ。」と逆さ向きのみぃたんの顔が近づいてきた。顔にかかる髪の先がくすぐったい。やだやだ、こそばゆいのは趣味じゃないケロ! YajimyさんとLilyさんはUmelyさんと同じ衣装なのに、どうして半乳Bello!ーンしてないの?すっかすかですやん!とか言ってみたら、いつかの柿の種のようにガーッとしてくれるだろうか?あの窒息感は忘れられないケロ・・・ などとちょっと頭の可哀想な妄想に浸っていると、今度は頭上から「あはーんうふーん」と大変なまめかしい声が響いてきた。 「ちょ、それっ・・・!」 天井から降りてきたスクリーンに映し出されているそれは・・・不本意ながら、最近耳になじんでしまっている、件のDVD「超特急痴漢電車ナントカカントカ」だった。 “ぐへへ、××が×××で××だぜ” 「消して!今すぐ!」 みぃたんが椅子の頭を引いたままだから、逆さづりでちょっと息苦しいけれど、私の視界にはおなじみ痴漢男とちょっと無理のある女子高生の半裸が映っていた。 「そうはいかないよ、なっきぃ」 「何でよ!」 薄ら笑いのえりかちゃんが無言で指差すその場所では、友理奈ちゃんが画面に食い入るように見入ったまま、一心不乱にメモを取っていた。 「友理奈ちゃん!」 「だって、ちゃんと勉強しておかないと、なかさきちゃんの大切な初めてをいただくんだからげろげろーおえっぷきもちわるー何だこの男は。」 「え、それはお気遣いいただきまして・・・じゃなくて!だよねーそいつキモイよねー・・・じゃなくて!なに言ってんの!そんなDVD、テキストにふさわしくな・・・じゃなくて!友理奈ちゃんは女の子なんだから、私の初体験がどうとかっておかしいでしょ!」 「おかしくないよ。」 もはやどこから突っ込んでいいのかわからない私を、妙に冷静な顔のみぃたんがじっと見ていた。 「うん、おかしくないよ。」 「・・・・どういう、意味。」 三人は無言でうなずき合うと、そろって私の横に移動した。みぃたんが椅子の縁を手放したから、、視界が正面に戻る。 「な、何。怖いんだけど」 「「「せぇーのっ」」」 いっせいに、その短すぎるペチコートがペロリとめくられる。 「ちょっと!何でノーパ・・・ぎいえええええええ!!!!」 自分の絶叫で、鼓膜が破れるかと思った。いや、それどころじゃない。私は今、信じられないものを目の当たりにしている。 「そんな声出さなくてもー。ウチ傷ついちゃう。」 「なっきぃうるさーい!とかいってw」 「あれ?なかさきちゃん知らなかったんだっけ?」 「ひ・・・ひぇえ・・!」 アゴが外れたみたいに、がくがくしてまともに声がでない。 何で。どうして。おかしい。ありえない。 ボンテージ姿の、三人の長身美少女の、すらりと伸びたおみ足の付け根には、女の子にあるはずのない、“アレ”がにょきにょきチャンピョンしていたのだった。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 「あいりん」 お会計が済んで外に出ると、目を三日月にした千聖が、ニコニコしながら私を待っていた。 「おまたせー」 「・・・グフフ」 あ、イタズラ思いついた時の顔してる。思わず反射的に身構える。 テレパシーな仲とはいえ、千聖が私には考えも着かないような事を考えてるときは、さすがにその心や行動は読めない。 もちろん、千聖の悪ふざけは相手を選んで繰り出されるものだから、私が対象なら、例えばなっきぃがやられるような手ひどい目には合わされないだろう。でも、一応は警戒を・・・ 「来て、あいりん」 千聖の小さい手が、私の手首を掴んでひっぱる。 「待って待って、どこ行くの?」 「ンだまぁっててぇ、ンついてきてぇ~」 「「文句なんかはぜったいイ~ヤ~!」」 示し合わせたように、“なっきぃ節”で歌声が揃って、思わず顔を見合わせて笑う。 もう、いっか、どこに連れてかれても。 「それって全部、それって全部ぅ」 「君の戦法♪」 歌いながら改札をくぐって、ホームに着いたらまた「「挨拶なんてできなぁい♪」」と声が重なった。 「・・・ホームだけにね。ケッケッケ」 「てか、今日テレパシー絶好調じゃない?さすが高2コンビ!」 その後も電車内で、迷惑にならない鼻歌でこそこそ歌を合わせたところで、千聖が軽く腰を上げた。 「次、降りよ!」 「え?なんで?」 いいからいいから、と促されるがままに降車した場所は、事務所の最寄り駅。 ついでに、さっきまでダンスレッスンをしていたスタジオも併設されている。 「忘れ物?」 「んーん、違うけど。でも一緒に来て」 あいかわらず、千聖の手は私の手首を握り締めたまま。 ちょっと痛いけど、なんとなく嬉しかったり。 千聖は人懐こそうに見えて、意外とドライだったりするから、あんまし長時間ベタベタしたりさせたりを好まないのに、どうしても私を繋ぎとめておきたいって言ってくれてるみたいだから。 「・・・おーい、岡さーん」 予想通り、というか他にめぼしい建物がないからだけど・・・千聖は事務所の中へと入っていった。 時間が時間だけに、もうあんまり人がいなくなっているけれど、見知った社員さんたちに挨拶をしながら、私たちは奥へ進んでいく。 大きな階段の根元にある、自販機の前で、千聖は唐突に足を止めた。 無言でお財布を取り出すと、迷いもせずにボタンを押していく。 「はい、あいりんの」 差し出されたのは、私が最近お気に入りで飲んでいる、ヨーグルト飲料の缶。 と言っても、ここ数日はグループを離れた個人活動が多かったから、これがマイブームだっていうのは知らないはずなんだけど・・・。 「なんか、これ飲みたそうだなって思って。当たり?」 「・・・さすがです、千聖さん。ケッケッケ」 まあね、私と千聖の間で「なんで?」なんていう言葉はナンセンス。わかるものは、わかる。それだけ。理屈じゃない。 受け取ったジュースはよく冷えていて、いつも以上に美味しく感じられた。 「あいりんさ・・・ここ、覚えてる?」 しばらくの沈黙の後、千聖がポツリとしゃべりだした。 視線の先には、大きな階段。 もう何千回も上がったり降りたりを繰り返している、何の変哲もない場所にある、ごく普通の階段。 だけど、私には千聖の言わんとすることがわかっていた。 「うん、もちろん」 当たり前のようにそう返すと、千聖は安心したように微笑んだ。 「私、ここから落ちて、人格分かれるようになっちゃったんだよね」 しゃがみこんで、指で床をなでる千聖。 無感情とも違う、喜怒哀楽のどれにも当てはまらない、不思議な顔をしている。・・・私が、ひそかに好きだと思っている表情。神秘的で、近寄りがたくて、テレパシーさえ弾いちゃうような、千聖だけの世界。 元の明るい千聖と、お嬢様みたいに優雅な千聖。 今もまだ、自分が二つの人格を持って生きていることについて、千聖は普段何も言わない。 おそらく、私以外の℃-uteのみんなも、千聖がお嬢様の千聖をどう思っているか、知らないのだと思う。 舞ちゃんやなっきぃが、それとなくそういう話題をふっても、千聖は巧みに受け流してしまう。 「・・・私さ」 千聖はかがんだままの姿勢で、私を見上げた。 だから、私は千聖の横に膝を着いて、目線を合わせた。・・・そうするのが、正しいような気がしたから。 「あいりんがいてくれて良かったって思う」 「うん」 「いっつもさ、人格がお嬢様になってる時のことって、ぼんやりとしかわかんないんだけどさ・・・あいりんは頭打って変わっちゃった私のこと、何にも変わらずに受け止めてくれたでしょ。そういうのは、何となく覚えてるんだ。記憶っていうか、気持ち的な部分で。 他のみんなの対応が嫌だったって言ってるんじゃないよ。とまどうのが普通だもんね」 本当に嬉しかった、とはっきりした口調で千聖は言った。 まっすぐな声と視線に、千聖の気持ちがギュッと詰まっているみたいで、なんだかくすぐったい気持ちを覚える。 「だってさ、千聖は千聖でしょ。 仮に千聖が千聖じゃなくなってたとしても、千聖は千聖だと思うし」 「・・・ねー、意味わかんないんだけど」 千聖はやっとほっぺたを緩めて、いつもの千聖の顔で笑ってくれた。 「てか、何かね、わかった気がする。あいりんがそうやっていつでもあいりんだから、千聖もいつでも千聖でいられるんだよね」 「嬉しいなあ、それ」 何でもポジティブにとらえちゃって、時にKYだなんて言われちゃう私にとっては、単純に千聖の言葉が嬉しく思えた。 「そうだ・・・1個、聞いてもいい?」 「どーぞどーぞ」 「何で今日、千聖の誕生日、祝ってくれたの?」 「あー・・・」 今更といえば今更なその質問。 私は手元のジュースを一気に飲み干すと、ムフフと笑った。 「なになに?」 「16歳の岡井さんを、独占したいなあと。何となくね。特に意味はなかったんだけど、自分の中で盛り上がっちゃって」 実際、あんまり深い意味はなく、思いつきでやったことだから・・・あれ、でも、素直に答えちゃって失礼だったかな? でも千聖は「あいりんウケるー」なんておっきい声で笑ってくれてるから、まあ、よかったんだろう。 「そろそろ帰ろっか」 「うん」 差し出された手を素直に握って、私たちは事務所の玄関を出た。 千聖にしろ、私にしろ、こんなに長時間スキンシップをはかるのは珍しい事だった。 お互いが「そうしたい」って思うタイミングが合っていて、素直に実行に移せる間柄。甘えたいっていうのともまた違う、どこまでも心を裸にできる関係。 千聖もそう思ってくれてるといいな、なんて考えながら、私は少し手に力を込めた。 「・・・最近、私のこと、ライバルっていってくれないね。千聖」 素直ついでに、そんな言葉が口をついて出る。 すると千聖は足を止めて、まじまじと私の顔を見た。 「そんなの、今更?」 「・・・だね」 なぜか得意げにふふんと鼻を鳴らすと、千聖はまた足を前に進めた。 ――こんな調子で言葉がないから、いろいろ邪推されちゃったりもするんだろうな。 別にいいけど。千聖も別にいいって思ってるはずだからね。 「今日、楽しかった。ありがとね!」 「うん、私も」 「じゃあ、またね」 「うん、また明日ね」 乗り換えの駅のホームで、さほど余韻に浸るでもない、私たちらしい“バイバイ”。 一人電車に乗り込んでからも、つないだ千聖のあったかい手のぬくもりが残っているみたいで、自然と顔が綻んでしまう。 誰にもわかんない気持ちでも、二人だけしか通じない思いでも。 17歳の千聖と私も、こうやってゆるりと繋がっていくんだろうな、って思うだけで、私の心はわくわくと弾んでしまうのだった。 次へ TOP
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【妄想属性】幼女シリーズ 【作品名】いろんな幼女 2009/08/21:普通の幼女 2009/10/07:ナイフを持った幼女: 2010/01/05:デリンジャーを持った幼女 2010/05/16:怪力幼女 2010/05/30:堅牢幼女 2010/07/17:敏捷幼女 2011/02/12:木刀を持った幼女 2011/07/19:硫酸を持った幼女 2012/02/23:竹槍を持った幼女 2012/03/20:サブマシンガンを持った幼女 2013/01/09:スパナを持った幼女 2013/01/12:スタンガンを持った幼女 2013/01/30:たいまつを持った幼女 2013/03/12:チェーンソーを持った幼女 2016/03/27:鞭を持った幼女 2016/05/11:ショットガンを持った幼女 2016/05/29:鎖分銅を持った幼女 2016/06/04:催涙スプレーを持った幼女 2016/07/27:2人の幼女 2016/09/22:3人の幼女 2016/10/07:5人の幼女 2016/10/20:7人の幼女 2016/11/30:10人の幼女 2016/12/31:15人の幼女 2017/03/04:30人の幼女 2017/04/08:14万5296人の幼女 2017/04/16:1363万4685人の幼女 2017/04/19:1億2686万人の幼女 2017/05/12:73億人の幼女 2017/09/24:すべてが幼女になる 2017/10/26:あらゆる全てより多い幼女 2018/04/23:半分の幼女 2018/06/07:ハムの幼女 2018/08/20:爪楊枝1000本を持った幼女 2019/03/27:フラッシュライトを持った幼女
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ソフトドリンクを飲み放題にして食べ物はみぃたんと愛理が適当に注文していった。 「いももち食べたい!」とか「こんがりあつあつ~♪」とか食べ物が絡むと本当に愛理は テンションが高くなる。まぁ、今日はめぐと栞菜がいるから総スルーで大丈夫でしょ。 「じゃあ、梅吉からこれを引いていって」 「? 早貴さん、これは?」 「キュッフッフ。今日の為に密かに作ってきたくじ引きだよ。キューティーランドの時と 同じ様に曲を決めようと思ってね」 「おぉっ! で、歌う人はどうするの?」 「メンバーの名前を書いた紙も用意してあるから先に曲を決めてそのまま名前が書かれた くじも引くって事で」 「じゃあ、梅田えりか。引きますッ!」 1曲目/セブンティーズVOW 「へ~、カップリング曲も入ってるんだ」 「今回はアルバム曲無しなの。で、まっさらから絶好調までカップリングも入れて24曲 だから丁度8人で割り切れるでしょ」 歌い手/村上愛 「……ってこれめぐ歌える?!」 「えり、私を見くびらないでよ」 妙に自信満々のめぐに首を傾げながらも曲名を紙にメモしてみぃたん、めぐ、私と順に くじを引いていき栞菜まで引き終わるとメモした曲のリクエスト番号を入力した。 「じゃあ、一番手。村上愛で『セブンティーズVOW』! めぐ、歌っちゃって!!」 「はじめてだから~戸惑うけれど~♪ 見守ってくれて~ありがとう♪」 「「「「「「「か、完璧過ぎる(わ)んですけどッ!?」」」」」」」 めぐのあまりにも完璧な歌にそれこそ本当に戸惑ったけれど無事一巡目が終わり 食べ物と飲み物も来た事で『いただ℃-ute♪』の挨拶で食べ始めた。 「それにしてもめぐ、完璧過ぎじゃなかった?」 「フフンッ。だから見くびらないでって言ったじゃん。そう言えばお嬢様の千聖も歌上手いね。 初聞きだから知らなかった」 「フフフッ。愛さんに褒めて貰えるなんて嬉しいです」 「お嬢様になったばっかりの頃は大変だったんだよ~。天使の声(エンジェルボイス)で」 「そうそう。『僕らの輝き』が全然勇ましくなかったもんね」 「フフフッ。えりかさん、栞菜さん。そのお話はもうお止しになって。自分でも恥ずかしいわ」 穏やかな空気で会話している4人。……本当、めぐって適応力高いなぁ。初めて千聖が お嬢様になった時の私を含めた6人の慌て振りはすごかったっていうのに。 ふと気になって舞ちゃんを見ると小さい悲鳴が出そうになった。……青筋、立ってません? めぐがあっさりとお嬢様の千聖を受け入れちゃったからだろうなぁ。 なら、空気変えないと。 「じゃあ、二巡目ッ!! 今度は誕生日の月が早い順で引いていって」 「って事は2月生まれの私から? あ、でも舞ちゃんと一緒だよ?」 「そこは二人でじゃんけんでもして決めて」 じゃんけんの結果、舞ちゃんから先に引く事になった。みぃたん、私、愛理と続き最後に 千聖まで引き終わるとさっきと同じ様にリクエスト番号を入力した。 「えっと、岡井千聖で『大きな愛でもてなして』! 千聖、宜しく~♪」 「大きな愛でもてなして~♪ 大きな愛でもてなして~♪」 「「「ハァーーーー*´Д`ーーーーン!!!! もてなす♥ もてなす~♥」」」 「「「「……………」」」」 ……今、最高に見てはいけないものを見てしまった気がする。ツッコミの鬼のめぐでさえ 何も言えずにいるのだから。因みに梅吉、栞菜(ここまではまだいい……のかな?)、 舞ちゃん(!?)の3人が『萌え~♥』になった事を報告させて頂きます。 千聖の次に私が『都会っ子 純情』を台詞付きで歌い(これがめっちゃ恥ずかしい…)、 栞菜が愛理をじっと見つめながら『残暑 お見舞い申し上げます』を歌いきった。 そして二巡目も終了しこのまま三巡目に入ろうという時に舞ちゃんを見ると何か梅吉に 耳打ちをしている。所々聞こえたその内容に私は以前の様に噛み砕いていた氷を噴き出して しまいそうになった。 「なっきぃ? どうかした?」 「あ、ううん。……何でも…ない」 「うち、ちょっと千聖と舞ちゃんと御手洗い行って来るね」 「う、うん」 ……聞こえた部分の会話はこんな感じ。 ――梅吉、舞のお願い聞いてくれる? ――千聖を元に戻す? 何で? お嬢様の千聖はまだ嫌い? ――なら皆に言ってもいいんだよ? 梅吉が千聖に×××し… ――す、すみません舞様。めぐがいるこの場でそれだけは勘弁して下さい。 キュフフ。私に聞こえちゃったら意味無いよ、梅吉。久し振りにやろうかな? 八・つ・裂・き♪ ◇ ◇ ◇ 「あーー! めぐと栞菜も来てるの?!」 「「………へっ?」」 御手洗いから戻って来た千聖の反応にめぐと栞菜が戸惑った。みぃたんと愛理も頭に ?マークを浮かべてるし。 「何言ってるの? 千聖。私達最初から参加してるよ」 「めぐ待って! ……元の人格の千聖?」 「舞が梅吉に頼んだの。梅吉は千聖の人格の切り替えが出来るから」 「ちょっと舞ちゃん! そう簡単に千聖の人格を変えないでよ!!」 「あ、愛理?」 「それで……千聖の人格を巡って私と喧嘩になっちゃったんじゃん。私…もう」 「ち、違うの愛理。舞ちゃんの話も聞いて」 梅吉の言葉に愛理は立ち上がっていた腰を渋々下ろす。何が何だか良く分からない千聖も 席に着いて舞ちゃんは小さく深呼吸した後に一気に話し出した。 504 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2009/12/25(金) 18 22 47 「去年もそうだったけどパーティーに参加したのはお嬢様の千聖だったでしょ? しかも 終わるまでずっと」 「うん」 「お嬢様の千聖は千聖の時の記憶もあるって言ってた。でも千聖は? 千聖はお嬢様の時の 記憶が無いんだよ? だから舞……」 「……分かった。千聖にもパーティーを楽しんでもらおうと思ったんだね」 「……………うん」 「ごめん、舞ちゃん。私、考え無しに舞ちゃんの事責めて」 「あ、気にしないで。舞もその事を忘れてたわけじゃないけど結果的に愛理を傷つけそうに なっちゃったし」 「栞菜。……私、いまいち状況が把握出来ないんだけど」 「めぐ。……ここは大人しく見守ってるのが親心だよ」 「あーーッ! 千聖、馬鹿だからよく分かんないけど折角のパーティーで暗いの無し!! 早く歌おうよ」 「キュフフ。そうだね。じゃあ、三巡目ッ!! 今度は背の低い順で引いていって」 「千聖が一番は決定だね。問題は……」 「栞菜! 身長対決にやっと終止符を打つ時が来たわね!」 「めぐ! 悪いけど負ける気しないよ!」 「うちから見たら勝手にやってて感じなんだけど」 「ねぇ、この対決ってなっちゃんも参加じゃない?」 「……めぐ! 栞菜! 二人共まとめてかかって来るケロ!!」 「「「「「……………」」」」」 結果、千聖の次に私、めぐ、栞菜と続き梅吉が引き終えてリクエスト番号を入力した。 ……何なんだろう。この凄まじい敗北感。 「なっきぃ。……ひょっとして落ち込んでる?」 「あ、大丈夫、大丈夫。じゃあ矢島舞美で『まっさらブルージーンズ』! みぃたん、 頑張って~!!」 「8人最高ーッ!! まっさらブルージーンズー♪」 「「「「「「「声、響き過ぎーー!」」」」」」」 みぃたんの後は愛理の『美少女心理』、舞ちゃんの『甘い罠』と続き梅吉が涙声になりかけで 『桜チラリ』を歌いきった。もうなのかまだなのか分からないけど改めて思ってしまう。 ……卒業、しちゃったんだなって。 「グスッ。ご、ごめん。なんかしんみりさせちゃったね。大好きな曲だからさ」 「ほ、ほら舞美ちゃん。この空気を何とかする!」 「じゃ、じゃあ本日のメインディッシュの登場ッ!! クリスマス限定デザートの 『X`masマウンテンツリーパイ』(\580×2)ですッ!!」 「「「「「「「おおーーーーッ!!」」」」」」」 「あ、これがあるから舞美ちゃん……」 「うん。『グランデチョコフラッパ』を頼まなかったの。……あっちの方が良かった?」 「いやいやいや。こっちの方が嬉しい!」 「分けられなさそうだから各自フォークで上手く食べ…って千聖! 舞ちゃん!」 「「美味しーーーーいッ!!」」 「めぐ、ここはアノ台詞を言っていいと思うケロ」 「O.K.……二人共、後で呼び出しです!!」 「「そ、それはご勘弁を~~」」 「「「「「「あははははっ」」」」」」 ◇ ◇ ◇ デザートも食べ終わり本当にめぐが御手洗いに千聖と舞ちゃんを呼び出した(!?)後、 アンコールという事になった。これは最初から私の中で企画していた事だけど。 「本当に本当に最後ッ!! ラスト二曲にいきたいと思いますッ!!」 「なっきぃ。曲は決まってるの?」 「『Big dreams』と『SHINES』はどうかな? 2人一組でワンコーラス毎に交代で 歌っていくの」 「それいいね。じゃあ、うちは舞美とGAM(Great あたし 舞美)復活でッ!!」 「栞菜は愛理とッ!」 「ちょっと栞菜! 抱き付かないで離れてッ!」 「舞はと・う・ぜ・ん・千聖とッ!!」 「千聖もと・う・ぜ・ん・舞とッ!!」 「……って事は必然的に」 「私と一緒だね、なっきぃ」 「ですよね~~」 二曲のリクエスト番号を入力する。流れ出すイントロ。自然と皆が肩を組み出して横一列に 並んでいた。 「「大きな夢があるのだから~♪ もっと元気に生きていこう~♪」」 みぃたん達から私達へ。私達から愛理達へ。愛理達から千聖達へ。 横へ横へと流れて行くマイク。それは『SHINES』の時も同じで最後の大サビは8人での 合唱になった。 久し振りに合った8人の声。うん、やっぱり℃-uteは何人になってもこの8人なんだと思う。 「歌ったね~」 「うん! 歌った~~」 「あ、質問質問。歌い終わった今更なんだけどさ、めぐと栞菜ってひょっとして この日の為に……」 「フッフッフッ。……本当に今更だね、愛理」 「フッフッフッ。……連絡をもらった次の日から放課後にはカラオケ漬けだったカンナ」 「「プロ……。ある意味プロ以上」」 「千聖は? 楽しかった?」 「うん! すごく!!」 「お嬢様の千聖も?」 「えっと…それはよく分かんないんだけど胸が暖かい感じがする」 「喜んで……くれたのかな?」 「きっとそうだよ。すごく楽しそうにしてたじゃん!」 予定してた時間までまだあるという事であとはずっとお喋りしていた私達。 昔の事、今の事……。ここに来るまで色々あった℃-uteの時間を皆で共有するように。 そして時間終了の5分前の電話が鳴った。 「じゃあ、帰り支度しよっか」 「ってもう完璧なんだけどね」 「来年……どうしよっか?」 「今度は私が階段から落ちて人格変わったりして…とか言って」 「舞美ちゃんの人格が変わるのか。……案外いいかも」 「だね。天然さんじゃなくなりそうだよね」 「ちょっと! 否定してよ!!」 「今年もお願いしておこうよ」 「そうだね。去年の予約を守ってプレゼントまでくれたサンタさんに」 「「プレゼント?」」 「「「「「めぐと栞菜も来てくれた事♪」」」」」 「あ、やばい。……涙腺にきた」 「か、栞菜も涙腺にきた」 また来年。 今年もサンタさんにプレゼントの予約をして私達は部屋をあとにした。 まだ早いけど微かに聞こえたベルの音はきっと気のせいなんかじゃない筈だよね。 「「「「「「「「Merry Christmas♪」」」」」」」」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 「あ、熊井ちゃん笑った!もう元気?」 「うん、何か元気でた!」 千聖は目いっぱい手を伸ばして、自分よりもずっと大きい熊井ちゃんの頭を撫でた。 熊井ちゃんも熊井ちゃんで、ちょっと頭を下げて触りやすいようにしてあげながら、さっきの暗黒顔はどこへやらニコニコしている。 今鳴いたカラスが・・・と思ったけれど、2人が笑い合っているのは何だか可愛いから、そのまま黙って見守ることにした。 ――別の星の人、か。 熊井ちゃんはもう自分で言ったことも忘れて千聖とはしゃいでいるけれど、改めてその言葉を反芻しながら千聖を観察していると、私の中で燻っていた違和感がまた大きくなってきた。 千聖はこういうヒラヒラしたスカートは穿かなかったはず。 千聖はこんな凝ったメイクはしなかったはず。 千聖はもっと大きな声で笑ったり泣いたり怒ったりしていたはず。 「もー!熊井ちゃんウケるぅ!私そんなこと言ってないよー」 のけぞってケラケラ笑う時も、パンチラ防止に足に力が入っている。手はお上品に口元を隠す。 熊井ちゃんを見つめる顔が、何だかお母さんのように優しい気がする。 お母さんて、それじゃあ私と千聖は 「茉麻ちゃん?」 「キャラが被るじゃん!」 「・・・えっ?」 「あっ、ごめん。別になんでもないよ?」 いきなり話しかけられたから、うっかり変なことを口走ってしまった。 よく考えたら、キャラは被らないよね。だって私はお母さんキャラだけど、結構豪快だしガサツだし、今千聖がやってる感じとはまた違う。 「茉麻?キャラが被るって、誰と?」 あ、ヤバイ。熊井ちゃんの興味をひきつけてしまった。こうなると、熊井ちゃんは納得いく説明を受けるまですっぽんみたいに食いついて離れてくれなくなる。 「別にたいしたことじゃないよー。何か千聖とキャラ被ったりしてって思っただけ。」 「ははは、何でー?全然違うじゃん、ねー千聖?」 千聖もケタケタ笑っている。 「だよねー。何か今日の千聖がママっぽいから。でも何か、今日の千聖は女の子らしいからお嬢様ママって感じだね。」 ・・・・・・・・・・・・ あれ? 何か変なこと言ったかな? 千聖が目を見開いて、私の顔を凝視したまま固まった。 「え、ご、ごめん!まぁと被るとかやだった?」 無言で首を横に振る千聖。 「何か言っちゃいけないこと言った?」 「あ・・・ぁの」 急に、千聖の表情が変わった。 ギュッと眉間にしわを寄せて、何かに耐えるように俯いてしまった。 「千聖?ちょっと、本当にどうしたの?」 「ごめんなさい、私」 千聖はいきなり立ち上がると、廊下を走り出した。 「待って!」 私は筋力と瞬発力だけは結構ある。後を追いかけると、千聖はさっきまでいたトイレに駆け込むところだった。 「まーさー・・・待ってよー早いよー」 「先行くから!さっきのトイレね!」 くまくました喋り方と走りの熊井ちゃんをひとまず置いて、私は千聖に専念することにした。 「千聖!千聖!どこ?」 幸いなことに、個室は一個しか鍵がかかっていなかった。 ここにいるんだ。 私は呼吸を整えて、まずは小さくノックをした。 「千聖?ここでしょ?」 「・・・・・・ごめんなさい、私、大丈夫です。」 ・・・喋り方、違ってる。 何だか声も細くて、どう考えても別人だ。 でも今はそれより。 「ねえ、千聖。私なんか気に障ること言ったなら謝るよ。」 「あの、違うんです。茉麻さんは、悪くないんです。」 「まあささんて・・・」 いろいろ聞きたいことはあるけれど、これ以上刺激するのはよくない気がする。かといって、このまま放っておくわけには絶対いかない。 「いた!まーさ!」 そのうちに熊井ちゃんがヘロヘロになりながらもトイレに入っていた。 「千聖、いるの?」 「あっちょっ」 熊井ちゃんはいきなりドアをガンガンたたき出した。 「千聖?ごめんね、私が首絞めたから?」 「ひっ!・・・あの、本当に私、違うんです。友理奈さんのせいじゃありません。」 熊井ちゃんは千聖の言葉遣いに驚いて、怯えた子供みたいな顔になった。 「ま、茉麻・・・何で?ユリナさんって言われた。」 そういわれても、私にもわけがわからない。 「千聖、とりあえず、よかったら出てきてくれないかな。私たちも何が何だか。」 「う、うん。説明してほしいな。千聖。」 ついつい夢中になって、ちょっと大きい声で2人がかりの説得を始めてしまった。 長身の熊井ちゃんに、これまた体格のいい私が、トイレを囲んで騒いでいる。 ・・・・これ、はたから見たらいじめみたいに見えるんじゃなかろうか。 「ちょっと!何してるの!千聖がそこにいるの?」 悪い予感というのはあたってしまうものだ。 独特のキャンキャン声。 振り向くと、トイレの入口に腕組みをしたなっきぃが目を吊り上げて立っていた。 次へ TOP
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「あれっちっさーは?」 結局千聖を残して先に外へ出た私を見て、舞美が首をかしげた。 「うん、後で来るって。」 「そっか。じゃあ、今適当に円になってやってるからどっか入って?」 「うん・・・」 結果的に千聖を傷つけることになってしまって、私はものすごく落ち込んでいた。だから気が入らず、あんまり考えもせずに、一番近くの輪の切れ目にお邪魔してみた。 「えりこちゃん。」 「うぅっわ!」 しまった。すぐ右側になっきぃがいて、にっこり笑っている。 いつもはリスやネズミみたいで可愛いその笑顔が、今日はホラーがかっている。怖い。 「キュフフ、そんなに警戒しないでよぅ。この位置関係じゃ、えりこちゃんになっきぃスマッシュくらわすことはできないでしょ?」 なっきぃは飛んでくるシャトルを器用に返しながら、淡々とした口調で語りかけてくる。 「・・・私はね、えりこちゃん。」 「は、はい。」 「千聖に悲しい顔をさせたくないわけ。えりこちゃんは遊びのつもりで千聖にいろいろしてるのかもしれないけれど、えりこちゃんは千聖の未来を破壊してるかもしれないんだよ。」 「破壊って、」 「だってそうでしょ。今の千聖はまだ赤ちゃんみたいなものなんだよ。その透明で綺麗な心に、えりかちゃんが勝手に変な色をつけたら、千聖は、千聖は・・・」 いつのまにかなっきぃはポロポロと涙をこぼしていた。泣き虫なっきぃの通り名はだてじゃない。 「ど、ど、どうしたの!なっきぃ?羽根でも目に入った?」 あわてて駆け寄ってくるメンバー。誰もさっきの会話を聞いていなかったみたいで、私に事情を聞いてくる人はいない。 「・・・ん、ごめん。大丈夫。ちょっと目洗ってくるから。」 なっきぃは男らしくぐぃっと涙を拭うと、一人で水道の方へ走っていった。 「どうしたんだろうねー。」 「おなかでも痛くなっちゃったかな?」 なっきぃの体調を案じるみんなの会話に、私は入ることが出来なかった。 私は、千聖をおもちゃにしていたのか。そんなつもりはなかったけれど、少なくともなっきぃにはそういう風に解釈されてしまった。 基本的に先のことは考えない性格の私は、今この瞬間、千聖と私が気持ちよくて楽しいならそれでいいと思っていた。誰に迷惑をかけているわけでもないし、私がしていることはそんなにたいしたことじゃない・・・・はず。 それでもさすがに今のなっきぃの言葉は重くて、私もさらに気持ちが落ちてきてしまった。 「えりかちゃん、千聖遅いね。もうそろそろ集合時間なのに。」 いつのまにか栞菜が私の横に移動してきていた。 「あ・・・うん。ウチ迎えに行って来る。」 「あっ、そうだ、えりかちゃん。いつでもいいんだけど、今日ちょっと話があるんだ。」 「ウチと?・・・うん、時間あったらね。」 上の空なまま、栞菜をあしらってしまったけれど、私はふと栞菜がなっきぃと同じ部屋だったことを思い出した。あと、舞美も。 まさか、なっきぃから二人に話が?・・・いや、なっきぃはまだ不確定なことを勝手に他人に喋ったりするタイプじゃない。口が固いからこそ、ああやって一人で重く受け止めてしまうんだろう。 まあ、どちらにしても後でわかるか・・・ 私は急ぎ足でコテージに戻った。 「千聖?」 玄関で名前を呼んでみても、返事がない。ベッドにも、椅子にも姿がない。 「千聖、どこ?」 靴を脱いでベッドの淵に回りこむと、膝を抱え込んだ千聖がちっちゃくうずくまっていた。 「千・・・」 覗き込んだ千聖の顔は、あの虚ろな表情になっていた。 何も映さない、一人ぼっちの世界に入ってしまったときの顔。 どうしよう、私があんな放り出し方をしたから辛くなっちゃったんだ。物みたいに扱われて、それで「寂しい」なんて言ったんだ。 「ごめん、千聖。私が無神経だった。戻ってきて。」 いつもならゆっくり時間をかけて体に触れて千聖の心を取り戻すのだけれど、今はそこまでしていられない。 髪を撫でて、ほっぺたを寄せて、私の体温をわける。 「・・・・えりか、さん・・・・?」 いつもよりさらに悪いかつぜつで、千聖が私の名前を零す。あと一息かもしれないけど、もうタイムリミット。 私は千聖の顎を指で救って、顔を上げさせた。 少し茶味がかったその瞳を見ないように目を閉じて、ほんの一瞬だけ、唇と唇をくっつける。 本当に触れるだけだったから、唇の感触なんて全然わからなかった。ほっぺにキスするのと同じようなもの。 でも、 ああ、これだけはやっちゃいけないって決めてたのに・・・ 顔を離すと、みるみるうちに千聖の瞳に光が戻る。 「・・・あの、今」 「特別だからね。もうしないから。梅さんキスするの嫌いなんだよ。それより、早く行こう。もう時間だから。」 「・・・・・・はい。」 おずおずと差し出してきた手を取って、玄関へ向かう。 千聖の顔がほんのり色づいて、はにかんで微笑むのが視界の端に映る。私はますます、自分のしていることが正しいのか間違ってるのかわからなくなってしまった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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被告の証言- いやいや、だから違うの。たしかに多少はしたけど、・・・千聖そんな顔しないで! あの後空き部屋に入って、千聖にこれからどうしたいか聞いたの。そしたらまたえりかさんにいろいろしてもらいたいってカワイイこというからウチも考えちゃって。 で、それなら完全に“そういう関係”をやめるんじゃなくて、もう少し軽くしようっていう話をしてたら千聖が「それは、どれくらいのことなのかしら?今、していただけるの?」っていうから・・・千聖フカ゛フカ゛しないで!最後まで聞いて! それで、しばらくそこでちちくりあってたら急に千聖が黙り込んで、また1人の世界にいっちゃったのかと思ったら、急にフカ゛りだして、「やめてよえりがぢゃん変態!」って叫んで逃げちゃったの。 え?具体的に何をしてたかって?それは、まあ、ほら、ちっさーのでっかーをたy・・・千聖、お菓子投げないで! というわけで、ウチにも何が何だかわからないんだよ。いきなり千聖が元に戻ったっていうのはたしかなんだけど・・・ 原告の証言- だから何ていうんだろう本当にいみわからないっていうかだって何かボーっとしてて気がついたら何ていうんだろうえりがぢゃんが胸とかすごい何かいっぱい触ったりしてて 怖くて何かヘンタイだと思ったから暴れて何ていうんだろう逃げたら愛理は全然普通で何かよかったし安心したけどえりがぢゃんが 「・・・にゃるほど。」 2人の話を頭の中で整理していると、「私絶対そんなこと言ってない!」と千聖がえりかちゃんに食ってかかっていた。 「だってお嬢様の千聖に言われたんだもん!」 「だから、なんで千聖がお嬢様なの?」 一応千聖には、頭を打って千聖がお嬢様になっていたことは伝えた。でも、千聖本人は実感がなみたいで・・・ 「千聖、仕事で避暑地のコテージに泊まったのは覚えてる?」 「うん、覚えてる。舞美ちゃんと栞菜と一緒にアスレチックした。なっきぃとアイス作った。」 「・・・ウチと同じ部屋だったことは?」 「うん。・・・でも、私途中からあいりんの部屋に行ったよね?なんでかわかんないけど」 ―どうやら、千聖は“自分がお嬢様キャラに変わっていたこと”“えりかちゃんとエッチなことしてたこと”に関する周辺記憶は、まだらになってるみたいだ。哀れ、えりかちゃん! 「だから、もう、わけわかんないけど、千聖はえりかちゃんとそそそそういう変態的なことはしないから!」 「変態・・・」 千聖はガッチリ私の二の腕を握って離さない。えりかちゃんのことを警戒しているみたいだ。 お嬢様の千聖はともかく、“こっちの千聖”は、案外下ネタに対する耐性がない。小学生レベルの「ウ●コ」「チ●●」程度だったら大笑いするけれど、とにかく自分に関わるエッチ系の話は本当にダメみたいだ。 「胸のこと言われるのやだ」なんて真っ赤な顔で言われたこともあったっけ。そんな千聖が、大好きなお姉ちゃんのはずのえりかちゃんに誰もいない部屋で体を触られてたとなったら、本気でパニックになるのもしかたない。 「・・ちなみに、私が千聖の家に泊まりに行ったことは覚えてる?」 「もちろん!千聖が犬の着ぐるみで、あいりんはカッパだったよね。歌ったりマニキュアしたり。」 「そうそう♪」 よかった。乳触り魔だとは思われてないらしい。 「ギギギギ・・・・」 えりかちゃんは“愛理だってお嬢様と相当なことしてるだろうが!”と恨みがましい視線を飛ばしてきたけれど、気付かないふりをしてみた。・・・私まで当事者だなんて知ったら、千聖はもうラジオどころじゃなくなってしまいそうだ。 ほどなくして、本番の時間がやってきた。 ジングルの後、えりかちゃんと私がしばらく2人でトークするのを、千聖は出番まで黙って聞いている。 千聖は意外に頭の切り替えが早い。さっきまでえりかちゃんをほとんど痴漢扱いしていたのに、今は心を落ち着かせて、私達のおしゃべりに聞き入っているみたいだ。・・・とはいえ、テーブルの下の手は、私の手をしっかり握ったままだったけれど。 「はい、今日のゲストは岡井千聖ちゃんでーす!」 「どーも、よろしくおねがいしまーす!」 千聖の出番が来た。 そのテンションは見知った・・・というか、長年付き合ってきた千聖のもので、懐かしいような面映いような不思議な気持ちになる。 相変わらずえりかちゃんは少ししょんぼりしたままだったけど、さすがに少しまずいと思った千聖がフォローを入れつつ、収録は進んでいった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 - +52
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私は昨日までの出来事を包み隠さず話すことにした。 特に、あの言葉・・・ 「私がキッズじゃなくて、エッグだから?」 こんなひどい言葉でちっさーを戸惑わせて縛り付けていたと告白するのは、とても勇気のいる行為だった。 それでも、私のために家にまで来てくれたえりかちゃんには、どうしても打ち明けなければいけないことだと思った。 怒られても、嫌われてしまっても仕方ない。 私なりの誠意をえりかちゃんに示したかった。 「そっか、2人はそのことで昨日ぶつかっちゃったんだ。」 「心配かけてごめんなさい。」 えりかちゃんは私を罵るわけでもなく、ただ優しく髪を撫でながら話を聞いてくれた。 「栞菜・・・ウチの方こそごめんね。」 「えっ・・・どうして?」 「最初に2人が変な空気になったのは、舞美が写真を持ってきたあの日だよね? ウチはとっさに千聖だけかばって連れて行っちゃったけど、もうちょっと突っ込んで2人の話を聞いてあげるべきだった。 いつもそうなんだよね。ウチはお尻をあげるのが遅いから、こうやって誰かが傷ついてからじゃないと何にもできない。一人で悩んで、本当に辛かったでしょ。」 ああ、どうして。 どうして私の周りの人たちは、こうも優しすぎるんだろう。 どうして私じゃなくて自分を責めるんだろう。 また泣いてしまいそうになる。 でも今はまだ冷静に話さなくちゃいけない時だから、私は両手でほっぺたをバチンと叩いて気合を入れなおした。 「もう私、ちっさーに嫌われちゃったよね。あんなに怒った顔、見たことなかった。」 「ううん。それはない。」 それでも謝りたい・・・と続けようとした私を、えりかちゃんが遮った。 「あの日ね・・・栞菜を送った後、舞美から電話があったんだけど。 ちっさーがすごく落ち込んでるけどどうしようって言ってた。 栞菜を傷つけてしまったって、どうしてあんなことを言っちゃったのかって、自分を責めてたみたい。」 「そんな、でも悪いのは私だよ。」 「たしかに、栞菜の言ったことはルール違反だね。 でも、千聖は栞菜のこと嫌いになんてなってない。またいつでも元の関係に戻れるよ。 きっと色々なタイミングが合わなくて、歯車がかみ合わなくなっちゃったんじゃないかな。 いつも穏やかに見えたって、千聖も人間だからね。どうしても虫の居所が悪い事だってあるよ。」 そこまで言った後、いきなりえりかちゃんのおなかが“グーッ”と鳴った。 「・・・もうっ!えりかちゃん!すごいいいこと言ってたのに!」 「あははっごめん!ウチ朝ごはんもまだなんだよー。タピオカじゃ物足りなかった。」 そういうわけで、私たちはお昼を食べるために場所を変えることになった。 商店街のアーケードで日差しを避けながら、肩を並べて歩く。 「私きっと、えりかちゃんみたいになりたかったんだ。えりかちゃんが栞菜にしてくれるように、ちっさーのお姉ちゃんになって、いっぱい可愛がりたかった。 ちっさーは自由な子だから、いつでも一緒にいられないのはわかってた。 だから、いつでも心が通じているっていう証拠が欲しかったのかもしれない。」 「あせっちゃったんだね。」 えりかちゃんは、いつも私の気持ちをわかってくれる。だからこうして、安心して何でも話せるんだ。 私もちっさーにとって、そういう存在になりたかった。 「千聖は、いつも不安でたまらないんだよ。」 「えっ?う、うん。」 何だろう・・・急に話が飛んだ。 「時々ね、すごく遠い目をして、心が全然違うところに行っちゃってるの。 かと思うと、何かに怯えたみたいに必死で甘えてきたり。・・・怖いんだろうね、お嬢様じゃなかった自分のことを自分で認識できてないから、混乱しちゃうことも多いだろうし。」 ちょっと独り言っぽくなってたけれど、えりかちゃんはいきなり私の方を向いて「だからね」と続けた。 「栞菜は栞菜にしかできないことっていうのがきっとあるから、そういうので千聖を助けてあげたらいいんじゃないかな。今はわからなくても、そのうち見つかるよ。」 「・・・・・・じゃあえりかちゃんにしかできないことっていうのは、ちっさーとエッチすることなの?」 バターン! すごい。コテコテのリアクションだ。 えりかちゃんは昔の漫画みたいに、腰を抜かしてしりもちをついた。 「な、な、な、な、なんでそれを、じゃなくて、何言ってんの栞菜!」 「・・・嘘、本当にそうなの!?」 私ももう15歳だし、レズキャラにされちゃうほど、ぶっちゃけそういう知識には長けている。 撮影旅行の温泉以来、えりかちゃんとちっさーが時々妙な視線を絡ませていることには薄々気がついていたけれど、現実だとわかると結構ショックだった。 「も、もしかして付き合ってるの?」 「いや、そういうわけじゃないけど。ていうか、最後まで何かしたわけじゃないし。」 最後って、最後って何!えりかちゃん! 「・・・ウチは、千聖のシェルターになってあげたかったの。 ウチのところにくれば、ほんの少しの時間でも寂しさや不安を忘れて、気持ちよく過ごせるみたいな。 本当はこういうの良くないんだろうけどね。だからウチも栞菜に偉そうなことはいえないよ。」 「いや、そんな。・・・・変なこと言ってごめん。」 何がいいとか悪いとかまだ私には難しすぎてわからないけれど、えりかちゃんがちっさーを思いやる気持ちだけは理解できた気がする。 「みんなには内緒だからね。特に、なっきぃに知られたら八つ裂きにされちゃう。」 「わ、わかってるよ。お姉ちゃんが困ることはしない。」 「よし、安心した。じゃあ、行っておいで、栞菜。」 えりかちゃんはいきなり立ち止まって、私の背中をポンと押した。 「え?だってお昼・・・」 私はえりかちゃんの指差す店をじっと見て、硬直した。 何の変哲もない、よく見かけるファミレス。 でもその窓際の席には、 「ちっさー?」 頬づえをついて、ボーッとしているちっさーの姿があった。 「ウチは行かないね。2人で気が済むまで話して。頑張れ、私の妹!」 「・・・・・ありがとう、お姉ちゃん大好き! 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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いろんな人に突っ込み/2006年03月20日/そういや いろんな人に突っ込み/2006年03月20日/あした #blognavi
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そこにあるのは、おもちゃの手錠。 数日前、打ち合わせの席に、「キューティーミニスカポリスガールズってどうかな?ケッケッケ」と愛理が持ってきた物だった。 結局その話は笑って流れたはずなのに、どういうわけか私のカバンの中に入っていた。 返さなきゃと思いつつ、習慣になっている“痴漢のアレ”を妄想する時に使わせてもらったりしていたので、結局私の手元から離れていないという経緯がある。 千聖を押し倒したまま、思いっきり手を伸ばして手錠を掴む。ガチャッと大げさな音がして、千聖の視線がそれに釘付けになった。 「舞ちゃん」 「うるさい」 「ねえ、やだ。やめて」 手首にわっかを通そうとすると、さすがに千聖は身を捩った。 「話があるんじゃなかったの?だから千聖舞ちゃんち来たんだよね?」 そこまでは覚えてるのか。 千聖はお嬢様から前の人格に戻るとき、前後の記憶があいまいになってたりすることがある。そういう時は少し遡って、千聖が把握していることを確認しながらしゃべるのがキュート内でのルールだった。私は千聖のことなら何でもわかってるから、いちいちそんなのしないけど。 「ねえ、明日ゲキハロじゃん。千聖用事ないなら今日は帰りたい。遊ぶなら違う日にしようよ。舞ちゃん・・・ちょっと、やだってば!」 千聖は私のわがままを封じようとする時、こうやってお姉ちゃんの口調になって諭そうとしてくる。でも生憎、今はそれに従ってあげる気分ではなかった。私を説得するのに夢中になってるところを見計らって、もう一度千聖の手首を掴んだ。 今度はうまくいった。丸いわっかのなかに、右の手が収まる。 「最悪・・・」 千聖はそうつぶやいてから、あわててまだ自由な左手を背中に隠した。 こんなことになって困った顔をしているけど、怒ってはいないみたいだ。まだ私が何を考えてるのか、わかってないのかもしれない。 私は私で、なぜか妙に落ち着いていた。ドアの外からは、家族の楽しそうな声が聞こえる。この状況で千聖が大きな声を出したり、ママがうっかり部屋に入ってきたら、大変なことになるというのに。 千聖の目をまっすぐ見つめたまま、私は手錠のもうかたっぽのわっかを引っ張った。繋がれると思ったのか、千聖はまた身を捩った。 「・・・違うから。暴れないで」 私は苦笑して、それを自分の左手首にはめた。冷たい金属を通して、私と千聖がつながる。 「・・・・なにやってんの、舞ちゃん」 「ねえ、千聖はどこまで覚えてるの?」 その声をさえぎるように、私は千聖の耳元に顔をうずめてささやいた。 「ひゃあ」 甲高い声。あのDVDみたいなエロい声ではないけれど、ぞくっとするような興奮が体を突き抜ける。 「どうなの?」 「ちょ、耳くすぐったい。やめて。何が?」 「だから、舞とエッチなことしたの覚えてるの?」 「え」 千聖の動きが止まった。口を半開きにしたまま、私の顔をまじまじと見つめる。 「私、舞ちゃんともそういうことしてたの・・・?」 ――も、って。さっきも“舞ちゃんもなの?”とか言ってたけど・・・きっとえりかちゃん本人に聞いたんだろう。キュートのみんなは、このことを勝手に話したりはしないはず。 でも、いつ?どこで?どうやって?どこまで聞いたの?それで、千聖はどう思ったんだろう? 私はいつでも千聖のことを把握していたいのに、こうやってえりかちゃんに先を越されてしまう。こういうのは不本意だし、悔しい。 「舞と海でキスしたり、舞のこと温泉で触ったりしたの覚えてないの?千聖が触ったんだよ。裸で」 「や、え、嘘。ちが、だってそんな」 千聖は赤くなったり青くなったりしながら、自由になるほうの手で私を押しのけようとした。 「大人しくしてってば。」 その手を自分の指で握りこんで、恋人つなぎにする。千聖の手のひらはひどく湿っていて、ドクンドクンと鼓動が伝わってくるぐらい緊張していた。 「千聖・・・」 本日二回目のキス。 ビクッと跳ねる左手を全力で押さえる。千聖は手錠の方の手は動かさないはず。・・・変に力が入れば、私の手首に傷がついちゃうかもしれないから。 「・・・顔、振らないで。唇切れちゃうよ」 小さくて柔らかい唇に、軽く歯を立てながらそんなことを言ってみる。その一言で千聖が動かなくなったから、今度角度を変えたりして何度も啄ばむ。さすがに舌を入れたりはできなかったけど、さっきのよりはずっと大人のキスができた。頭がくらくらする。 鼻から漏れる息がくすぐったい。チュッと音がするたびに、千聖がもじもじ動くのがたまらない。千聖も私の唇の感触を感じてるんだと思うだけで、私は毎晩“アレ”をする時みたいなそわそわした気持ちになった。 数分間後、やっと唇を離すと、千聖はぼんやり目を開けていた。ずっとくっつけていたからか、いつもより少し唇が濡れてぷっくりしている。呆然とした表情のまま、私の顔を見て、ゆっくり何度か瞬きを繰り返す。 「わ・・わたしに、どうしろっていうの・・・?」 明るい千聖らしくもない、泣き出しそうな声。こんな顔されたら、いつもならごめんと謝り倒していたかもしれないけれど、今の私は完全に悪いスイッチが入ってしまっているみたいだ。 「いいでしょ、キスぐらいしたって。どうせえりかちゃんとだってしてるんでしょ」 「・・・してないよ。たぶん。あんまり。えりかちゃんがそう言ってた。なんか、そういう、ルールだってえりかちゃんが」 千聖は一度言葉を切って私から目を逸らすと、「これ、痛いから外して。」と手錠のついてる手を軽く動かした。 「やだ。」 「ねえ、舞ちゃん!」 「えりかちゃんえりかちゃん、ってうるさい千聖。」 「だって舞ちゃんが聞いたんじゃん!ねー、もうやだってば。本当に。ていうか、何で手錠とか持ってるの?ヘンタイじゃーん」 「うるさいな。愛理のだから、これ」 「でも舞ちゃんが持ってるんだから舞ちゃんがヘンタイでしょ。今使ってるし。ねえ、あと重いから上乗っかるのやめて」 お嬢様の千聖とじゃありえないような、久しぶりのちさまいバトル。こんな状況じゃなかったら私も楽しんでいただろうけど、正直それどころじゃない。 案の定、このやりとりが面白くなってきた千聖は、笑うような場面じゃないのに目が半月になっている。だから、私は声のトーンを変えてみた。 「ねえ千聖、私が千聖にどうしてほしいのかって聞いたよね?」 また笑顔が消えた。 「舞ちゃん、そういうのやだってば・・・」 その乾いた声は無視して、あんまり体重をかけないように馬乗りになる。大好きな千聖のことを支配しているみたいな錯角を覚えて、少し優越感が高まった。 「っ!舞ちゃん!」 私はおもむろに自由な方の手を伸ばすと、千聖の胸を掴んだ。自分のとは全然違う感触。ふにゃっと指が沈む。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -