約 24,298 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1218.html
Report.15 長門有希の憂鬱 その4 ~過激派端末の強襲~ 部室での会話の後、なし崩しに涼宮ハルヒと朝倉涼子は、一緒に帰ることになった。 「何であんたと一緒に帰らなあかんのよ……」 【何であんたと一緒に帰らなきゃならないのよ……】 「まあまあ。たまにはええやん。」 【まあまあ。たまには良いじゃない。】 ふてくされたようなハルヒと対照的に、涼子は上機嫌に見えた。 涼子は、見かけ上、喜怒哀楽がはっきり現れるように設定されている。その点では長門有希と対照的。しかしその内実は、あくまで基礎的な人間の観測データに基づき計算された、『恐らくこのようなものだろう』というモデルを基に構築されたものに過ぎなかった。過ぎなかったが。 二度の『死亡』と『復活』を経て、今や涼子は人間に存在する『感情』に限りなく近いものを獲得した。その『感情』が、涼子を上機嫌な表情にさせていた。涼子の誘導は成功した。ハルヒは、有希に会いたいと思っている。今や、有希に対する負の感情は、わずかばかりの気まずさと罪悪感を残すばかりとなっていた。 ハルヒと涼子二人の帰り道。二人は他愛のない話に裏話を追加した、意外とためになる話をしていた。 どこか寄り道でもしようか、と話していた時、急に空の色が変わった。そして同時に、涼子にある異変が起こった。情報統合思念体に接続できない。そして襲い掛かる高負荷。 (っ……!? 何、これ!?) 彼女の五感が、次々に感度を落としていく。そして緩やかに拘束される身体能力。 (普通の人間と同じくらいしか能力が無くなってる……っ!) ハルヒも異変に気付いた。 「ちょ……! 何、これ……!? 急に空が変な色に……それに、物音もせえへんようになって……」 【ちょ……! 何、これ……!? 急に空が変な色に……それに、物音もしなくなって……】 灰色に塗り潰されたような世界。まるでハルヒが生み出す閉鎖空間のよう。生命の気配が感じられないことも同じ。しかし、決定的に違っていることがあった。そこに『神人』の気配はない。この空間の発生は、ハルヒの能力によるものではない。 (これは……空間封鎖!?) 空間封鎖は、涼子達、情報統合思念体の勢力が得意とする手段。広く言えば、情報統合思念体と起源を異にする広域帯宇宙存在も空間封鎖を行うが、彼らの手法は術式が違う。 今のこの空間封鎖は、光学的には偽装しているが、紛れもなく涼子が良く知る勢力の手法だった。 (そんな……情報統合思念体の一派の行動だったら、わたしが感知できないはずないのに……!) 今の空間封鎖は、全くの不意打ちだった。焦る涼子。涼子はハルヒの手を取った。 「ちょっと!? 何すん……」 言いかけたハルヒの言葉が止まる。ハルヒの手を取った涼子の顔には、焦燥の表情が浮かんでいた。そして、冷や汗で、顔も手のひらも、じっとりと濡れていた。 「……涼宮さん。わたし、今の状況は、わたし達がはぐれたらあかんような気がすんの。」 【……涼宮さん。わたし、今の状況は、わたし達がはぐれちゃいけないような気がするの。】 「……分かった。」 涼子のただならぬ気配に、ハルヒもおとなしく涼子の手を握り返す。命の気配が感じられないこの空間で、握り締めた掌だけが、命の存在を伝えている。 『江美里! 江美里っ! 応答して!!』 涼子は協力者である別のインターフェイスに交信を試みるが、応答はない。 (まずい……完全に孤立した……) しかも現状は、涼子は宇宙的な力をほとんど使用できない。身体能力は、辛うじてハルヒの能力に勝っている程度。人間の枠を超えた能力は使えない。例えば、もし肉体を損傷しても、即座に修復することはできない。 「誰かに連絡を……」 「あかん! 携帯は圏外やわ!!」 【だめ! 携帯は圏外だわ!!】 ハルヒは、携帯電話の画面を睨み付けながら答えた。 (この状況は……わたしを無力化させるため……? だとしたら、相手の目的は……) 涼子は、たとえ情報統合思念体と接続していなくても、通常の人間以上には高度な思考力を持つように設計されている。ただし、この設計は、あくまで不測の事態に対処するために設けられた『セイフティネット』。この設計が役に立つような事態は、本来あってはならない非常事態。早急な事態への対応が求められる。 そして涼子は思い当たった。 涼子を無力化することを、実行し得るのは誰なのか。 涼子を無力化することで、得をするのは誰なのか。 ……すなわち、この事件の首謀者は誰なのか。 (これは……過激派……! まずい! あいつらの目的は……っ!) その時涼子は何かに気付いた。そして迷わずハルヒの腰にタックルした。 「おわ……っ!」 不意にタックルを喰らい、盛大に地面に叩き付けられるハルヒ。 「痛いなー、もう! いきなり何すん……」 怒鳴りかけたハルヒの声が止まる。ハルヒの腰にしがみつく涼子は、衣服の肩の辺りを赤く染めていた。 「ちょっ、どないしたん!?」 【ちょっ、どうしたの!?】 「涼宮さんの死角から、何かが飛んできて……」 起き上がりながら答える涼子。ハルヒを助け起こすと、何かが飛んできた辺りを睨み付ける。そこには何の痕跡も見付ける事はできなかった。あるのはただ、誰もいない、何もない空間。 しかし、涼子は気付いていた。 飛翔体の軌道。出現時間。出現場所。飛行速度。 これらはすべて、涼子がその存在に気付き、取るべき行動を判断し、実行した時に、ちょうど涼子の肩を掠めるように設定されていた。 (これは……涼宮さんじゃない、わたしを狙った攻撃!?) 『涼宮ハルヒの観測と保全』が任務である今の涼子は、もしハルヒに危害が加えられるような事態になれば、最優先でハルヒを守る行動を取るであろうことは、容易に推測できる。だから、その危機がより切迫しているほど、涼子は確実に、ハルヒを守る行動を取る。場合によっては、身代わりに攻撃を受けることもあるだろう。 それが『奴ら』の狙い。 通常の涼子なら、そのような切迫した状況でも、難なくハルヒも自分も守れる。 では、情報統合思念体のサポートなしでは? 端末単体の能力で対処せざるを得ない状況では? 涼子が危機を『回避』する可能性を奪うことができる。確実に攻撃できる。 そしてまた、これはハルヒにとって強力な精神攻撃ともなる。 涼子は、ハルヒを庇って負傷する。そうして損傷を蓄積したところで、止めを刺す。 ハルヒから見れば、ハルヒを庇ったせいで涼子は怪我をし、そして殺害されることになる。 『自分のせいで人が苦しみ、死んでしまう』 これはハルヒに、己の無力さと自己の存在意義を強く意識させる事象となる。自らに『力』と『存在意義』が欲しいと強く願ったハルヒからは、間違いなく、巨大な情報爆発が観測できる。 これが『奴ら』のシナリオ。合理的で、的確な洞察。 また飛翔体。今度はハルヒの正面から。 涼子は飛翔体の射線上に躍り出ると、手ではたいて飛翔体の軌道を変えた。涼子達の背後にあった庭木の天辺が切り落とされた。 (随分と舐められたものね……さっきは不覚を取ったけど、いくら情報統合思念体との接続が切れてるからって、そう簡単にやられてたまるもんですか! これでもわたしは、『あの』長門有希の代理者なんだから!) 『奴ら』の思い通りにはさせない。たとえこの身が果てようとも、ただではやられない。少なくともハルヒだけは逃がしてみせる。それが朝倉涼子の意思。そして長門有希の意思。涼子は覚悟を完了した。 「涼宮さん、わたしのそばから離れんとってよ。」 【涼宮さん、わたしのそばから離れないでよ。】 涼子は、ハルヒを背に庇う位置に立ちながら言った。 「朝倉、あんた……今さっきの、アレ、どうやってやったん……!?」 【朝倉、あんた……今さっきの、アレ、どうやってやったの……!?】 ハルヒは、恐怖と好奇心が7:3の割合で混合された瞳で、涼子に尋ねた。 「それは……ふっ!」 答えの途中で涼子は両手を身体の前で素早く広げた。後方にあるブロック塀に、貫通痕が二つできる。 「実は少々、武術の心得があって……はっ!」 右足でアウトサイドキック。後方の電柱がえぐられる。 「少々ってレベル違(ちゃ)うやろ、コレは!?」 【少々ってレベルじゃないでしょ、コレは!?】 ハルヒのツッコミ。涼子は、前方から視線を外さず答える。 「……カナダに行ってる間に、マーシャルアーツの先生の下で武者修行を……やぁっ!」 左手で飛翔体を掴もうとするが、失敗。後方で植木鉢が弾け飛び、窓ガラスが割れた。 (だめだ……全然見えない。せめて何が飛んで来てるのか分からないことには……) それに、肉体の損傷を修復できない以上、素手での対処にも限界がある。涼子の手は、飛翔体を弾いた時の損傷で、所々出血している。損傷の蓄積は望ましくない。 (ここは涼宮さんの能力に賭けるしかないか。少なくとも今のわたしの能力では対処できないわね。) 「朝倉……大丈夫? その手……」 心配そうに聞いてくるハルヒに、涼子はすかさず誘導を仕掛けた。 「問題ない……って言(ゆ)うたら、嘘になるかな。正直、あんまりよろしくないわ。せめて、飛んで来(き)とぉ物(もん)を止めるか掴むかできれば、それ使って叩き落とせるんやけど……残念ながら、成功のイメージが湧かへんわ。」 【問題ない……って言ったら、嘘になるかな。正直、あんまりよろしくないわ。せめて、飛んで来てる物を止めるか掴むかできれば、それ使って叩き落とせるんだけど……残念ながら、成功のイメージが湧かないわ。】 「成功の……イメージ……」 ハルヒは思案顔で呟く。 (さあ、想像して、涼宮さん。成功のイメージを……わたしが、飛んでくる『何か』を掴む姿を。) 次々に飛来する飛翔体。涼子は両手両足をフル稼働させて処理していくが、次第に処理が飽和していく。 真正面に飛翔体。近い。よけられない。捌き切れない。そう思った時、涼子に見える景色がスローモーションになる。 (……! 見切った!) 涼子は両手で挟むように、飛来する『それ』を掴んで受け止めた。 「……鉄筋!?」 ハルヒが恐る恐る覗き込み、驚いた。飛翔体の正体は、コンクリート構造物の補強に使われる『鉄筋』だった。 涼子の誘導は功を奏した。ハルヒは『成功のイメージ』を作り上げた。それはハルヒが、『そうなること』を願うことに他ならない。かくしてハルヒの望み通りに周囲の環境が書き換えられ、涼子は飛翔体を掴み取ることに成功した。 「こんな物(もん)が次から次へと飛んで来てたんやね……」 【こんな物が次から次へと飛んで来てたのね……】 言い終わらないうちに、涼子は飛んでくる鉄筋を、右手に持った鉄筋で真下に叩き落とした。激しい金属音と共に、足元に転がる鉄筋。素早く涼子は落ちた鉄筋を拾う。両手に鉄筋を持った涼子は仁王立ちになった。 一度成功のイメージを作らせてしまえば、後は話が早い。情報統合思念体との接続は切れたままでも、今はハルヒの情報改変能力の援護を受けている。ハルヒが成功のイメージを思い描く限り、涼子に『負け』はない。涼子は両手の鉄筋を巧みに操り、的確に飛来する鉄筋を叩き落としていく。 (こうやって物質に干渉してきている以上、『奴ら』も何か端末を介して情報操作を行っているはず。そいつを見付けてどうにかしないと。) 涼子は感覚を研ぎ澄まして、周囲の気配を探るが、ここは相手の作り出した空間。かつて涼子が自ら言ったように、この空間は、相手の情報制御下にある。相手の意のままに操れる。通常時ならともかく、今の涼子では、索敵は不可能。ここもやはり、ハルヒの力を借りるしかない。涼子はハルヒに話を振る。 「誰か知らんけど、相手も相当卑怯で臆病やと思わへん? 姿も見せへんで、こそこそ女二人を物陰から狙い撃ちなんて。」 【誰だか知らないけど、相手も相当卑怯で臆病だと思わない? 姿も見せないで、こそこそ女二人を物陰から狙い撃ちなんて。】 「そうやね……確かに、かなりヘタレかもしれへんわ。」 【そうね……確かに、かなりヘタレかもしれないわ。】 ハルヒが話に乗ってきた。涼子は更に話を続ける。 「こういう時、敵は姿を現して、主人公にボコボコにされるべきやと思わへん?」 【こういう時、敵は姿を現して、主人公にボコボコにされるべきだと思わない?】 「主人公……」 「どう見ても、わたしらが主人公やんな? 常識的に考えて。」 【どう見ても、わたし達が主人公じゃない? 常識的に考えて。】 「……確かに、この状況では、悪役はあっさり姿を見破られて、ボコボコにどつき回されるんがオチやわ。」 【……確かに、この状況では、悪役はあっさり姿を見破られて、ボコボコにどつき回されるんがオチだわ。】 涼子は畳み掛ける。 「ほな、わたしらで、その状況を再現してやらへん?」 【じゃあさ、わたし達で、その状況を再現してやらない?】 ハルヒは、100Wの笑顔で答えた。 「うん、それ賛成!」 再び索敵に集中する涼子。今度はハルヒの能力の援護付きで。 「……そこっ!」 言うや否や、涼子は何もない空間に、手にした鉄筋を投げ付ける。メジャーリーガーのバックホーム返球のごとく、一直線に何もないはずの空間を貫く鉄筋。中空で鉄筋が、何かに当たったかのように弾ける。すかさず走り込んだ涼子が、その空間を鉄筋で殴り付ける。しかし何かの力に弾き飛ばされ、涼子は元いた場所まで押し戻された。 「……手応えあり。」 涼子が殴り付けた空間が歪み、人型を取る。 「…………」 絶句するハルヒ。姿を現した攻撃者をしばらく呆然と見つめていたハルヒは、ぽつりと呟いた。 「……ねえ、朝倉。言(ゆ)うても良い?」 【……ねえ、朝倉。言っても良い?】 「どうぞ。」 「……あたしら、こんな奴に苦しめられとったんやな。」 【……あたし達、こんな奴に苦しめられてたのよね。】 「そやね。」 【そうね。】 「……何(なん)か、めっちゃ腹立ってきたんやけど。」 【……何(なん)か、すごく腹立ってきたんだけど。】 「その反応は、たぶん正しいと思うわ。」 「……あたしら襲うより、銀行かどっか行った方がええと思わへん?」 【……あたし達襲うより、銀行かどっか行った方が良いと思わない?】 「ある意味、悪役らしい格好と言えなくもないとは思うかな。」 「……ねえ、朝倉。こいつ、しばいて良い?」 「危ないから、下がっとって。」 【危ないから、下がってて。】 「……どつき回して、蹴り倒して、大阪湾に沈めたろか思うんやけど。」 【……どつき回して、蹴り倒して、大阪湾に沈めたろかと思うんだけど。】 「代わりにやっとくから。何しよるか分からへんから、下がっとって。」 【代わりにやっとくから。何してくるか分からないから、下がってて。】 「……ケツの穴から手ぇ……」 「女の子が『奥歯ガタガタ言わす』とか言わない。それに、女かもしれへんで?」 【女の子が『奥歯ガタガタ言わす』とか言わない。それに、女かもしれないわよ?】 「……女やったら、ヒィヒィ言わす。」 【……女だったら、ヒィヒィ言わす。】 「えっちなのはいけないと思います。」 姿を現した攻撃者は、覆面姿だった。性別は分からない。覆面が完璧だったから。 『奴』は『ストッキング』で覆面していた。 ――変態が、そこにいた。 女子高生二人組(うち一人は、両手に鉄筋を持っている)と、女性用の下着であるストッキングで覆面した人型が対峙する。人間の言葉で言うと、非常にシュールな画だった。 覆面の攻撃者は、無言で手らしきものを涼子に向けて突き出した。途端に、攻撃者の背後に鉄筋が数本出現し、涼子に向けて撃ち出された。涼子は両手の鉄筋で、それらを残らず叩き落とす。人型が間合いを取りながら数度、それが繰り返された。 こちらの攻撃の届かない距離まで離脱して射撃してくることを感知した涼子は、させじと素早く間合いを詰めて、鉄筋で殴り掛かった。その攻撃を、瞬時に手らしきものの中に出現させた鉄筋で防ぐ攻撃者。もう片方の鉄筋で殴りつけようとする涼子に、今度は攻撃者がもう片方の手らしきものに鉄筋を出して殴りつける。涼子は攻撃を中断し、繰り出された攻撃を防がざるを得なかった。 そうして数度、鉄筋での攻防が続いた後、両者はいったん離れて睨み合う。 外見上は、相変わらず睨み合い、時折攻撃者が鉄筋を撃ち出しては、涼子がそれを叩き落とすという状態。しかし、実は先手の取り合いで、両者の間には仮想段階での攻防がものすごい勢いで繰り広げられている。 正にハルヒが望んだ『超能力』が眼前で展開されている状況。しかし、ハルヒはそれに気が付いていなかった。 彼女は口ではいくら不思議を追い求めることを言っていても、心の中ではそのようなものは存在しないと否定する、自己矛盾の塊。眼前に繰り広げられる、超能力者VS美少女女子高生という奇抜な光景を、どこか遠くの景色を眺めているかのような瞳で見つめていた。 ハルヒには、眼前の光景が酷く現実的でないものに思われた。白昼夢を見ているように感じられた。まるで、あの冬休みの合宿で見た白昼夢のように。 「あんまり激しく動いたら、見えるでー……」 【あんまり激しく動いたら、見えるわよー……】 ぼそりと投げやりに呟くハルヒ。彼女は急速に現実感を喪失していった。希薄になる『成功のイメージ』。 ハルヒの呟きが聞こえたわけではないだろうが、まるでそれを合図にしたかのように、睨み合いを続けていた涼子と攻撃者の均衡が崩れた。 攻撃者は同時に撃ち出される鉄筋の数を急増させた。鉄筋による射撃への対処が遅れ気味になっていく涼子。攻撃者は印を切るように、激しく手らしきものを動かすと、今までより高い位置に、膨大な数の鉄筋が出現した。まさしく雨のように大量の鉄筋が涼子に襲い掛かる。とても迎撃できる数ではない。 「朝倉――――!?」 ハルヒの叫び声は、鉄筋が地面に突き刺さる音にかき消された。 「くっ……! だ、だい、じょう……ぶっ……」 涼子は倒れ込んで巧みに鉄筋の直撃をかわしていた。しかし、地面に突き刺さり折れ曲がった鉄筋に阻まれて、身動きが取れない。このまま追撃されれば、今度は持たないだろう。 「大丈夫って……そんなん、全然大丈夫そうに見えへんわ!!」 【大丈夫って……そんなの、全然大丈夫そうに見えないわよ!!】 ハルヒが叫ぶ。涼子は静かな声で答えた。 「大丈夫。あなたがわたしを信じてくれる限り……わたしは負けへん。」 【大丈夫。あなたがわたしを信じてくれる限り……わたしは負けない。】 「そんな都合の良い精神論をしてる場合違(ちゃ)うやろ――――!?」 【そんな都合の良い精神論をしてる場合じゃないでしょ――――!?】 「信じて!」 朝倉の叫びに、ハルヒはぴたりと止まる。 「前にも言(ゆ)うた通り、わたしは、成功のイメージを信じて行動すれば、上手くいく時があると思うんよ。さっきも成功のイメージができたから、現実に成功したし。『信じる』ことって、やっぱりすごい力なんやで。」 【前にも言った通り、わたしは、成功のイメージを信じて行動すれば、上手くいく時があると思うの。さっきも成功のイメージができたから、現実に成功したし。『信じる』ことって、やっぱりすごい力なのよ。】 涼子は、何とか一つずつ動きを阻む鉄筋を引き抜きながら、続ける。 「せやから、涼宮さんが彼女に会いたいって願えば、きっとすぐに会えるって。もしかしたら、今この場に助けに来てくれるかもしれへんで?」 【だから、涼宮さんが彼女に会いたいって願えば、きっとすぐに会えるって。もしかしたら、今この場に助けに来てくれるかもしれないわよ?】 ――それは涼子の『賭け』だった。 このまま追撃を受ければ、そう長くは持たないかもしれない。しかし、ハルヒを上手く誘導して長門有希を復活させられれば、涼子の任務は達成される。長門有希なら、こんな状況でも上手くやってくれるだろう。『あの』長門有希なのだから。 「有希が……助けに来る……?」 「だって、ヒロインのピンチに颯爽と助けに現れるのは、ヒーローのお約束やろ?」 【だって、ヒロインのピンチに颯爽と助けに現れるのは、ヒーローのお約束でしょ?】 顔を赤らめるハルヒ。 「もうそろそろ、現れてもええん違(ちゃ)う? あなたのヒーローが。」 【もうそろそろ、現れても良いんじゃない? あなたのヒーローが。】 そう言った涼子の声に釣られて、有希の姿を思い描くハルヒ。 攻撃者は、先ほどより更に大量の鉄筋を出現させていた。大量の鉄筋が涼子に襲い掛かったその時。 何か硬いものが破壊される音。涼子達の近くの空間にひびが入る。そこから飛び出す、小柄な人影。無言のショートカットが揺れる。人影が手をかざし、何やら早口で呪文のようなものを唱えると、たちまち鉄筋の雨が爆散した。 ――涼子は、賭けに勝った。 ←Report.14|目次|Report.16→
https://w.atwiki.jp/tfei/pages/53.html
今日の授業は、そのほとんどが期末テストの返却にあてられた。相変わらず数学と物理の点数が今一歩、といったところで、その他はおおかた及第点。クラスメート達はそれぞれの得点によって笑ったり落胆したりしていた。わたしはあそこまで大きなアクションを取らないし、たぶん表情だってさほど変わることはないのだろう。それはいわゆるポーカーフェイスなのだろうか?いや、表情を動かしたくたって、わたしの顔はきっとその意思に反して動かないと思う。 昼食は相変わらずパンを持ち込んだ。口の小さな、というより食べるのがあまり早くないわたしには丁度いい。ひとつふたつ食べるだけで昼食としては充分だから重宝している。 「なーがとさん」 昼休み、いつものように読書にふけっていたわたしのところに朝倉さんがやってきた。わたしはとっさに返事をしようと思ったのだが、いかんせん急なことなので声が出ない。結果的に、無言のまま視線だけを向ける羽目になってしまった。そんな自分が情けなくて、忌々しい。 「今後の日曜日なんだけどね、友達と一緒に、パーティやろうと思ってるのよ」 朝倉さんはそう言って、次にわたしの耳元で、まるで政府の機密情報でも持ってきたかのように小声で囁いた。 「だから、長門さんも一緒に来ない?」 「わたしが?」 「そう。誰だって1人だけでクリスマスイブを過ごしたいわけじゃないでしょう?まあ1日早いんだけどね」 「……」 「もう、そんな躊躇わないでよ。無理なら無理で構わないけれど……そうだ、ひとつだけ長門さんに言っておいてあげる」 「……なに?」 「自分が来ても盛り上がらないと思ってるなら、場を盛り上げることに関しては心配しなくてもいいわよ」 「……どうして?」 「手芸部の友達が出し物を計画してるらしいのよ。あ、会場はうちのクラスの剣持[けんもち]さんの家だから、私たちのマンションからもけっこう近いと思うわ。でね、えーっと、そう、その剣持さんが晩ご飯を振る舞ってくれるって言ってくれてるの。何よりも、みんな長門さんが来たら喜ぶわよ!」 「みんな、わたしのことは知らないと思う」目立つ生徒でもないし、とまでは言わなかった。 「何言ってるのよ。6組の長門有希と言えばかなり有名よ、いやもちろん悪名なんかじゃなくてね……博学なる才媛にして北高イチの読書家、さらには学年トップクラスの長距離ランナーで尚かつバイリンガル、しかも色白な冬美人として、5組で知らない生徒なんていないわ」 「いつの間にそんなことに」しかも微妙に身に覚えのないことまで。 「いや、わたしが長門さんを宣伝してるのよ――もちろん女子陣にだけに、だけどね」 「……」 わたしの知らないところでいったい何をしてくれているのだろう、この人は。わたしは反論もできないし止めることもできない。もちろん賛成もできない。 「でもね、その宣伝だけじゃ長門さんの魅力は半分も伝わらないと思うの」 「……どうして」 「だって、本物の長門さんはこんなにかわいいんですもの。ケバくしなくたって、ちょっときれいにしただけで男子たちがほっとかないわよ」 「そんなこと、」 「どうかしら?やってみればわかるんじゃない?実はここだけの話、もう『長門さんオシャレ化計画』は動き出してるのよ」 「それは、いったい」ネーミングセンスについてはもう知らない。 「名は体を表す、っていうのはまさにコレね。文字通りの長門さん改造プロジェクトよ」 改造とは何だ、改造とは。わたしは昔少しだけテレビで見た某バッタ仮面と黒タイツの戦闘員を思い浮かべてぞくりとした。 「戦闘員のほうは生身の人間でもある程度太刀打ちできるそうよ。あと『ショッカー』って戦闘員のことじゃなくて悪の組織の名前なんですってね……閑話休題、そう、長門さん改造プロジェクトだけど」 その呼び方はやめてほしい。『長門さんオシャレ化計画』のほうがまだマシだ。実態は変わらないけれど、建て前としてはそっちのほうがいい。 「じゃあ、その『長門さんオシャレ化計画』だけど、ビフォーアフター的な演出がしたいのよ。だから、普段の長門さんの写真が欲しいわけ。まあ剣持さんの家に来た時に撮ってもいいんだけど、せっかくだから今撮るわ!」 「え、そんな、急に」 「カメラなら準備してあるわよー。本当に便利な世の中になったわねぇ」 朝倉さんはわたしのスキをついて写真を撮ってしまった。無駄に速い。 「大丈夫、パソコンのフルスクリーンで見られるサイズで撮ったわ。本当に、技術の進化はすごいわよねぇ……」 技術云々と言うより前に、朝倉さんの抜かりのなさのほうに問題があるというものだ、良くも悪くも。それでいったいこの写真はどうするつもりだろうか。気にはなったが、何となく問わないほうがいいような気がして、わたしは口をつぐんだ。いくら朝倉さんでも、必要以上に流布するようなことはしないだろう。 「自分に自信がないみたいだけど、長門さんは素材がいいからきっと自分でも驚くわよ」 「そんなことがある、のかな」 「あるわ!映画でもあるじゃない、『スーパーサイズ・ミー』っていうのが……違う!それじゃないわね。『7月24日通りのクリスマス』よ!長門さんは聞いたことない?」 「ない」どちらもない。前者はタイトルが気になる。 「ちょっと変わった癖のある地味なOLが、突然意中の男性と再会して、一気に恋愛に発展する話。こないだレンタル屋で借りたのよ。あまりにベタベタだから逆に安心して観られたわ。長門さんも観てみない?」 「……観てみる」 「なら今日あたりうちに来る?長門さんの食費だって浮くし、食事は2人の方が楽しいしね」 「わかった」 わたしと2人で楽しいの、と問うことはやめにした。今日は朝倉さんの好意に甘えさせてもらうことにしよう。この季節だから、ひょっとしたらまたおでんかな……シチューなんかも得意そうに見える。おそらくその予想は外れてはいないはずで、要するに朝倉さんはオールラウンダーなのだが、それでも十八番の料理というものはあるだろう。 「じゃ、長門さん、そういうわけだから今日は一緒に帰りましょ。6限目終わったら迎えに来るわね。それじゃっ!」 朝倉さんは文字通り風のように去ってしまった。時計を教室の時計に目をやると、なるほど今は予鈴3分前。5限目が移動教室なら、そろそろ準備を始めてもいい頃合いだ。わたしは次の授業、現代文のテキストとノートを鞄から取り出した。いけない、テストの問題用紙を忘れた。今からでも朝倉さんのところに借りに行こう。 結果的に言えば朝倉さんはまだ5組にいてくれて、そのおかげでわたしは忘れ物を帳消しにすることができた。いつもいつも朝倉さんには世話をかけっぱなしだ。どうやって恩返しをしようか?何かわたしがしてあげられることがあればいいのに、と思うや否や、校内に鳴り響くウェストミンスターの鐘が5限目の始まりを告げた。 「ねぇ、長門さん」 夕方、嫌になるほど延々と続いているというのに、ちっとも生徒たちを加速させてくれることもない坂道を下りながら、朝倉さんはわたしに言った。夕日がまぶしい。しかし、それが地平線の下にもぐってしまうまでにかかる時間は、ずいぶんと短くなってしまった。 「昼間は調子に乗って聞き忘れてたけど……長門さんは、できることなら自分を変えたいと思う?いや、その言い方だと語弊があるわね……そう、ある日突然、魔法使いが長門さんの前に現れて、ちょうどシンデレラのように長門さんを華やかにしてくれるとしたら、長門さんはその魔法使いに頼ると思う?」 「……わからない」 わたしは曖昧な口調で答えた。突然尋ねられたからわからない、というのもあるけれど、むしろいくら時間をかけて考えたところで、わからないものはわからないと思う。 「どちらかと言えば?」 「選ぶの?」 「そうよ」 「……変わりたい、かもしれない」 「何ですって?」 「……変わりたい」 「もう1回」 「変わりたい」 「大きな声で!」 「変わりたい!」 わたしは叫んだ。もちろん普段なら絶対に叫んだりすることはないのだが、朝倉さんの前なら、不思議と叫んでもいいような気がしたからだ。 「合格。そこまで言えるなら文句なしね。長門さんはわたし達が責任を持って綺麗にしてあげる。来週を楽しみに待っていること。約束よ?」 「うん」 わたし達は途中スーパーに寄り、夕食の買い出しをした。わたしも土日は料理するようにしているからこのスーパーにはよく来るけれど、朝倉さんは何を買うか迷うこともなく、次から次へと食材を買い物カゴに入れていく。買うものが完全に決まってしまっているのだろうか。わたしなど、何を買うべきか2時間も3時間もかけて迷ってしまうこともあるというのに。 「長門さん、こないだあげたカイロってもう使い切った?」 「まだ、3つある」 「そう。どうしよう……とりあえず買っておこうかしらね」そう言って朝倉さんは3パックほどカイロを手に取り、カゴに放り込んだ。 「ありがとう」 「いいのいいの。何だかんだ言って、長門さんもきっちりお金払ってくれてるし。気にすることないわ」 「でも」 「何回も言ってるじゃない。わたしは好きでやってるんだから、長門さんが負い目を感じる必要はないのよ」 「……ごめん」 すぐ謝る癖も治しなさい、と言われた。本当に申し訳ない。 マンションのエレベーターの中で朝倉さんは言う。 「長門さんは一旦自分の部屋に帰ってて。夕食の準備をしておくから……そうね、6時半くらいかな。うーん、やっぱり7時にして、7時。それまで勉強なり読書なり、昼寝しててもいいわよ。長門さんの部屋に電話かけて起こしてあげる」 「……起きておく」 「そう。うっかり寝てしまわないようにね。あとパジャマとお風呂用品持ってきて」 「うん」わたしは小さく首肯した。以前、うっかり寝てしまって朝倉さんとの約束をすっぽかしてしまったことがある。 「じゃあ、また後でね。くれぐれも来るのを忘れないように」 「……分かってる」 わたしの反論が聞こえたか聞こえなかったかは定かでないけれど、朝倉さんはエレベーターを降りた。手を振る朝倉さんの笑顔を、ドアは両側から塞いでいった。 そのままエレベーターはあっという間に7階へと駆け上がってゆく。否、引き上げられるのだろうか?確かそうだったと思う。また図書館で調べておこう。エレベーターの駆動系統についての本を探すよりは、百科辞典があれは問題ないだろう。 特にやるべきこともないので本を読んで時間を消化することにした。木星まで向かうロケットの乗組員たちの話。わたしは木星まで行きたいとは思わないけれど、その木製までの旅に欠ける並々ならぬ情熱は見て取れる。 1作目がもう40年近く前の発表なのだ。年ごとに進む宇宙科学の発展に対してもよく耐えていると思える。確かに今となっては調査結果と合わないこともあるが……、ならば人類が月に到達するよりも前に、ここまで壮大なSF構想が作り出せる作家など他にいるだろうか。わたしは、ノー、と答えたい。 ソビエト連邦の英雄的宇宙飛行士の名を冠したロケットは、遺棄された(という表現を敢えて使わない人々もいたが)ロケットとドッキングし、木星への近接飛行[フライバイ]をおこなっていた。しかし、きっと着陸はできないだろう。言わずもがな木星はガスの塊なのだ。もし、このロケットが木星に“着陸”したら……わたしはこの小説を読むのをやめにしてしまうかもしれない。この小説に限ってそんなチープなミスはありえない、という不思議で不安定な信頼感と同時に、わたしの頭の中には唐突にそんなギャンブルが思い浮かんだのである。 サイエンス・フィクションはあくまで現代の――この場合なら“1964年の”科学技術の上に積み上げられているものであるべきであり、そこから離れてはならないとわたしは考えていた。それだと完全なファンタジーだ。どれだけリアルでも、どうしてもほんのわずかに興醒めしてしまう。 あくまで現代の延長線上にあるものだから、SFには独特のリアリティが常につきまとう、否、つきまとっている必要があるのだ。 わたしが宇宙に惹かれて、もう何年になるだろうか。もうかなりの作家、かなりの冊数を読んだと思うのだが、いつまで経っても読み切れる気はしない。 アイザック・アシモフ、ロバート・ハインライン、フィリップ・K・ディック、スティーブン・バクスター、ダン・シモンズ。そしてわたしが誰よりも心酔しているのがこの、アーサー・C・クラークだった。 わたしは栞を挟み、文庫本を閉じる。机の上にその本を放り出し、準備を整えて部屋を出た。カーディガンは置いていこう。どうせ2フロアの移動だけだ。しかもエレベーターで。いや、たまには階段を使おう、寒さは身にこたえるけれど。 Next Back to Novel
https://w.atwiki.jp/nendoroido/pages/87.html
No.123 長門有希 消失Ver.(海賊版) 参考画像
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3276.html
食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋・・・とまあ色々な「秋」がある訳だが、所詮それらは勝手に付けられたものに過ぎず、俺にとっては全くと言っていいほど当てはまらなかった。俺にとって今年の「秋」は―――年中そうなのではあるが―――「疲労の秋」だった。 そんな秋も無事に終わり、赤道直下に憧れはじめた冬。「疲労の冬」を覚悟していた俺にとっては想定外の出来事が起きたんだ。 ・・・ ・・ ・ 「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」 騒々しい声が部室に響き渡る。おい、長門ほど・・・とまでは言わんがもう少し静かに出来んのか?毎日聞かされる俺の身にもなってくれ。耳が痛い。で、何がどうしたって? 「あたしのプリンが無くなってんのよ!こんなことするのキョンしかいないでしょうが?」 やれやれ。俺はお前のプリンなぞ食べたことはないしこれからもそんな予定は無いね。食ったら何を言われるか・・・ 「だからアンタ以外に誰が食べるっていうのよ!?大体アンタは」 「あなた」 突然ハルヒの声が遮られる。おお、長門。庇ってくれるのはありがたいんだが何も出ないぜ?しかもハルヒは証拠もなしに引き下がるようなやつじゃないんだ。 長門はくるりとハルヒの方に向き直り告げる。 「あなたは昼休みにプリンを食べた。12時47分16秒のこと」 ハルヒはぽかんと口を開け間抜け面をしていたが、あぁ!と一言言うと・・・ってやっぱりお前だったのか。俺を疑うのも大概にしてほしいね。 「そう言われてみればそうだったわね。有希、ありがと」 長門は2ミリほど頷き、 「いい。それよりも彼に謝罪したほうがいい」 「いいのよ。キョンは下っ端だし私は団長よ?」 おいおい。それはいくらなんでも酷いんじゃないか?お前が団長かどうかはどうでもいいが、俺が下っ端ってのは・・・ 「団員その1」とかなんとかじゃなかったのか? 長門は少し―――ほんの少しだがむっとした顔で言う。 「彼のことを下っ端呼ばわりするのはやめてほしい。」 鳩が豆鉄砲を食らったようってのはまさにこんなことなんだろうな。ハルヒはもちろん俺や古泉、朝比奈さんまでそんな感じだった。 「何よ?あたしがキョンの事をどう呼ぼうが勝手でしょ?あいつはあたしより下なの!!」 ―――長門さん?どうされたんですか?なにか決意に満ちたような眼で顔を上げた長門の口から出た言葉はまさに驚愕の一言に尽きるものだった。 「そのような団なら私はやめる。この部屋から出てって。」 そういえばここは文芸部室だったな・・・ってSOS団をやめる!?お前の任務はハルヒの監視じゃなかったのか!? ハルヒのほうも売り言葉に買い言葉なのだろう。 「もういいわ!出てけばいいんでしょ!?あ、パソコンとかはあげるわ。もう・・・使わないだろうしね!!」 と言って出て行くハルヒに俺たちは何も言えなかった。 しばらくして、案の定古泉の携帯がなる。 「・・・閉鎖空間です。では」 とこちらを恨めしそうに一瞥すると肩を落とし出て行った。 おいおい古泉。今回は俺のせいじゃないだろ?あいつの自業自得さ。これでむやみに突っかかってこなくなればいいんだがな。・・・おや、朝比奈さん。どこへ行かれるのですか? 「ちょっと涼宮さんの様子を見てきますね」 古泉とは比べ物にならないくらい癒し効果が出ているであろう声でそう告げると、軽やかに部室から出て行った。 2人きりになり、急に広くなった部屋にどこか閑寂さを感じる。と、ここで1つの疑問が湧いてくる。何故長門はハルヒにあそこまで怒っていたのか、だ。宇宙人にも虫の居所とやらがあるんだろうか。 「なあ長門。どうしてあんなに怒ってたんだ?」 わずかに顔をあげた長門から発せられた言葉は俺が予想だにしないものだった。 「あなたは涼宮ハルヒの事を名前で呼ぶ。私の事は名字で呼ぶ。何故?」 予想外の質問に意表を突かれ、少し思考が停止してしまったがすぐに再起動させる。そういえば何故だろうな。付き合いの長さは大差ないはずだが。 「すまん。分からん」 正直にそう告げるしかなかった俺をどうぞ罵ってくれ。俺だってもう少し気の聞いた事を言いたかったんだが・・・ 「では私の事も名前で呼んでほしい。」 少し首を傾げ、「ダメ?」とでも言いたそうな目で見られたら・・・断れるわけがない。いや、断る理由なんてないのだが。 「わかった・・・有希」 満足そうに頷き読書に戻った長t・・・有希の顔は少し綻んでいる気がした。 翌日、体を温めるには十分すぎる通学路をせっせと登る。 何だってこんな所に学校を建てたのか。こんな場所を指定したやつは真性のサディストに違いないね。 一通り悪態を吐き終え、ふと顔を上げると――――いた。遠目からでも不機嫌さが見て取れる我らが団長、涼宮ハルヒが。 この分じゃ古泉は一晩中バイトだったな。ま、触らぬ神に崇りなし。わざわざ舌禍に巻き込まれに行くほど俺はマゾヒストじゃないんでね。 一定の距離を保ちつつ歩いていると、正に「軽い」という一語に尽きる男に肩を叩かれる。 「よっキョン。・・・っと、あれ涼宮じゃねえか。あーあ、また嫁と喧嘩でもしたのか?」 にやにやしながら話しかけてくる谷口にまともに返答をする気になれないので適当にあしらっておくことにする。 そうこうしているうちに学校に着き、授業が始まった。 結論から言おう。俺は今日の授業には全く集中できなかった。言わずもがな、後ろの席のやつの所為である。詳しくは俺の背中を見てもらえば一目瞭然なのだが、如何せん、そういう訳にもいかんので簡単に説明させてもらおう。 毎時間、無言で、後ろから、シャーペンで、攻撃されていた。 言葉にすると立った20字程度で大したことないのだが、実際絶え間なくこれをやられた俺の背中はとうに悲鳴をあげ、一瞬でも気を緩めようものなら俺の口からも出ていただろう。 授業が終わると多少はスッキリしたのか、「じゃあね」の一言を残すと、今日の団活はどうするんだという俺の問い掛けにも応じず帰っていった。 習慣と言うのは恐ろしいもので、気付けば今日も文芸部室に向かっていた。扉をノックし返事を待つが、反応がない。そこで部室には有希しかいないであろう状況を理解する。 カチャリと小気味よい音を立て扉を開く。ここで、もう文芸部室はSOS団のものではないという事を思い出し、尋ねる。 「入ってもいいか・・・有希?」 「いい」 歯切れのいい返事が来たのを聞き中へと入る。 ・・・寒い。普段ならストーブが点いているはずなのだが・・・? 有希は平気だろうかと思ったが、夏でも汗一滴かかなかった姿を思い出し合点する。 だが俺は自他共に認める普通の人間なんでな。ストーブ点けさせてもらうぜ。 部室に来たのはいいのだが、する事がない。今ならいけ好かない超能力者のボードゲームの誘いにも飛びつくだろう。 ・・・やはりこの状況はなんとかせねばなるまい。 「なあ、SOS団に復帰しないか?」 「断る」 間髪入れずに返ってくる拒否の言葉。 どうしちまったんだ、有希? 「あなたはあれでいいの?」 いいって・・・何がだ? 「涼宮ハルヒ」 ハルヒが何で出てくるんだ?確かに昨日は些か頭に来たが、いつもの事だ。 有希の真意がわからない。とりあえずいいとでも答えておくか。 その旨を伝えると、有希は少し考え込んだ後言う。 「それならば1つ条件がある」 条件?なんだ。出来る限りのことはするつもりだぜ? 「涼宮ハルヒがあなたに謝罪する事」 ・・・以外に根に持つタイプなのか?だが残念な事に、それは俺の意思ではどうにもならない。 あいつに直接言ってくれるか?明日ここに連れてくるからさ。 「了解した」 と言い本を閉じると有希は帰っていった。 定刻より少し早めに帰った有希。1人取り残された俺はしばらくぼーっとしていたが、あまりに暇なので帰る事にした。 あくる日の業後、俺は恐る恐る後ろを向き話しかける。 「なあハル―――」 「うるさい」 相変わらずご機嫌斜めなようだ。だが今日は引き下がるわけには行かないんでな。 「一緒に文芸部室に来てほしい。有希がSOS団復帰について話したい事があるそうだ」 「有希?あんたいつから名前で呼ぶ事になってんのよ」 ・・・こいつと会話のキャッチボールは成立したためしがないな。 「今はそんな事どうでもいいだろ。な、頼むよ」 「はぁ・・・ わかったわよ。行けばいいんでしょ」 案外素直に承諾してくれたハルヒ。よし。じゃあ行くか。 道中ハルヒは押し黙り、一言も会話を交わさなかった。部室前に着き、扉を叩く。「入って」と珍しくレスポンスがあり、俺とハルヒは中へ入る。 椅子に腰掛け有希を見る。 「彼に謝って」 開口一番、単刀直入にそう言った有希。ハルヒは少し面食らったようで返答に詰まっていた。 「そうしたら私はSOS団に戻る」 もうこちらからは話す事はないといった感じでハードカバーに目を戻す。 少し面食らったようでハルヒは 「・・・ちょっと顔洗ってくるわ」 と言って立ちあがった。 構わないが戻ってこいよ?お前がいないと話が進まん。 「わかってるわよ」とやけに素直に返事をし出て行った。 ふう。同じ沈黙でも有希となら心地よい。一息つくと急に眠気と疲れがどっと襲ってくる。ここ2、3日いろいろあって授業中寝てないからな。ふと顔を上げると有希がこちらを見ている。 「どうしたの?」 いや、最近寝不足でな。疲れてるんだ。 そう告げると、とことこと歩いてきた。と、次の瞬間俺の額に何かが当たる。お察しの通り有希の額だ。 当惑している俺を尻目に有希が言う。 「熱はない」 バタンという音とともに扉が勢いよく開く。もちろんさっき出て行ったあのお方だ。 「このエロキョン!有希に何してんのよ!」 という叫び声と同時に蹴りが来る。 痛ってーなハルヒ!何しやがんだ! 「アンタこそ何してんのよ!どうせ無理矢理させてたんでしょ!」 有希に何かを無理強い出来るやつがいたら見てみたいね。 見ればハルヒは有希に「あんな男は有希にあわない」だのなんだの如何に俺が駄目な男であるか懇々と説明していた。 「いい」 有希がハルヒの言葉を遮る。「でも・・・」と反論しかけるハルヒを信じられない発言がとめた。 「私は彼の事が好き。だからいい。」 ぽかんと口を開けて有希を見つめるハルヒ・・・と俺。 あー・・・今何て言った?俺の耳がおかしくなけりゃ・・・いや、聞き違いに決まってる。 だがほんのり頬を朱に染めた有希を見るとあながち聞き間違いともいえないわけで。 我に返ったハルヒの「正気なの!?」という問い掛けに首肯する有希を見て、俺の聴力もまだまだ捨てたもんじゃないなと思う。 そうか・・・有希は俺の事が好きなのか・・・・・有希が――――俺を!?告白されちゃったのか?どうする?どうする俺?などと脳内会議を開くも 「――い。アタシだってキョンの事がすきなのに!!」 というハルヒの馬鹿でかい声であえなく閉会。 あー・・・何だって?ほんの数分前に思った台詞を繰り返す。 お前が負けず嫌いなのは知ってるが何もこんな事まで張り合う必要はないんじゃないか? 「あなたは黙ってて」 「アンタは黙ってなさい」 ピシャリとはねつけられた俺はその後熱心に話し込む2人を見、入り込む余地はないと確信し部室を後にした。 つづく・・・かな
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1175.html
ガチャ ハルヒ「あれ、有希だけ?まあいいや、今日の活動は休みにするから。あんたといてもつまらないから私は先に帰るね!」 バタン ガチャ みくる「うわ、こいつだけかよ……根暗がうつるといけないから帰ろーっと」 バタン ガチャ 古泉「おや、長門さんだけですか。キョンたんのいない部室などに用はありません。帰らせてもらいます」 バタン 長門「初めてですよ……この私をここまでコケにしたおバカさん達は…… …ゆ……ゆるさん……絶対に許さんぞ虫けらども!!じわじわとなぶり殺しにしてくr」 ガチャ キョン「あれ、長門だけか」 長門「……」コクン キョン「そっか。今日の活動は休みらしいぞ。せっかくだから一緒に帰るか?」 長門「……」コクン ――次の日 ガチャ ハルヒ「あれ今日も有希だけ?まあいいや、私帰るから。それにしても有希って本読んでばっかだから、本当に置物みt」 長門「涼宮ハルヒを私の部屋に転送、拘束する」 ハルヒ「ちょっなによこれ!?いやあぁーー!!」 パシュン ガチャ みくる「うわっまたこいつd」 長門「朝比奈みくるを私の部屋に転送、拘束する」 みくる「うお!?んだよこれ!うわあぁ!」 パシュン 古泉「おy」 長門「古泉一樹をw(ry」 パシュン 長門「フフッ……これで全部……」 キョン「よ、また長門だけか」 長門「……」コクン キョン「今日もハルヒは帰っちまったみたいだからな。俺らも帰ろうか」 長門「……」コクン ――長門帰宅後 ハルヒ「ちょっと!!何で私が十字架に磔になってんのよ!!」 長門「わざわざ説明ありがとう」 みくる「何で私が天井から首輪で吊されてるんですかぁ!?しかもこれ、爪先立ちしてないと首がしまっちゃいますぅ!」 長門「わからない人は、ひ〇らしのなく頃にをプレイするように。」 古泉「なんで僕が亀甲縛りに……ハァハァ」 長門「なんとなく」 ……… …… … 長門「さて、なんでこんなことになってるかわかる?」 みくる「何なんですか!?ここ、どこですか!?なんd」 バキッ!! 長門「質問に質問で答えるな。あと、今さら猫をかぶるな」 みくる「あうぅ……」 ハルヒ「……」 古泉「……(ハァハァ)」 長門「わからないの?」 ハルヒ「……」 古泉「……(ア、ソロソロデソウ)」 長門「……最近のあなた達の私に対する対応」 パシーン!! ハルヒ「痛っ!!」 長門「目に余るものがある」 パシーン!! 古泉「うぁっ!!(モウゲンカイ!)」ドピュ 長門「涼宮ハルヒ、言うに事欠いて私が置物ですって!?」 パシーン!! ハルヒ「うぐっ!!……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 長門「朝比奈みくる、あなたは私をなんだと思ってるの?」 バキッ!! みくる「きゃっ!足払いしないでぇ……首が…カハッ」 長門「私が何回あなたの危機を救ったことがあると思う?なんなら今から情報連結解除してもいいのよ?」 ドカッ!! みくる「ケハッ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 長門「……今から、特別の計らいであなた達を家に帰す。」 ハルヒ「!!」 みくる「!!」 古泉「!?(エ、ボクニハナニモナインデスカ!?)」 長門「今後私に対して粗相があった場合……次はない」 ハルヒ「……ごめんなさい……」 みくる「……もうしません」 古泉「……(ホウチプレイデスカネ?)」 長門「……肝に銘じておけ」 パシュン パシュン パシュン ――次の日 ガチャ ハルヒ「あ、長門様だけでしたか。本日も活動を休止しようと愚考する所存でありまして……」 長門「そう」 ハルヒ「それでは失礼します」 バタン みくる「あ、長門さんだけですか。私、僭越ながら先に帰宅させていただきます」 長門「そう」 みくる「失礼させていただきます」 バタン ガチャ 古泉「おy」 長門「そう」 バタン ――廊下 ハルヒ「あー何で私があんなドS娘のいいなりに……ムカつくわ」 みくる「いい加減にしろって感じですよね」 古泉「……(イヤ、アアイウノモワルクナイデスネ)」 ハルヒ「ちょっと調子に乗りすぎよね」 みくる「今度みんなでシメちゃいますかぁ?あはははh」 ガチャ 長門「あなた達の会話は筒抜け」 ハ・み「げぇ!長門!」 長門「当該対象三名を私の部屋に転送、拘束する」 ハルヒ「いやあぁーー!!」 みくる「きゃーー!!」 古泉「うわっ!(wktk!)」 パシュン パシュン パシュン ガチャ キョン「よ」 長門「……」 キョン「みんなはどうした?」 長門「先に帰った」 キョン「そっか。じゃあ俺らも帰ろうか」 長門「……」コクン キョン「……?何か機嫌良さそうだな。いいことでもあったか?」 長門「そう(フフッ……今日も楽しみだわ……)」 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1208.html
ガチャ ハルヒ「あれ、有希だけ?まあいいや、今日の活動は休みにするから。あんたといてもつまらないから私は先に帰るね!」 バタン ガチャ みくる「うわ、こいつだけかよ……根暗がうつるといけないから帰ろーっと」 バタン ガチャ 古泉「おや、長門さんだけですか。キョンたんのいない部室などに用はありません。帰らせてもらいます」 バタン 長門「初めてですよ……この私をここまでコケにしたおバカさん達は…… …ゆ……ゆるさん……絶対に許さんぞ虫けらども!!じわじわとなぶり殺しにしてくr」 ガチャ キョン「あれ、長門だけか」 長門「……」コクン キョン「そっか。今日の活動は休みらしいぞ。せっかくだから一緒に帰るか?」 長門「……」コクン ――次の日 ガチャ ハルヒ「あれ今日も有希だけ?まあいいや、私帰るから。それにしても有希って本読んでばっかだから、本当に置物みt」 長門「涼宮ハルヒを私の部屋に転送、拘束する」 ハルヒ「ちょっなによこれ!?いやあぁーー!!」 パシュン ガチャ みくる「うわっまたこいつd」 長門「朝比奈みくるを私の部屋に転送、拘束する」 みくる「うお!?んだよこれ!うわあぁ!」 パシュン 古泉「おy」 長門「古泉一樹をw(ry」 パシュン 長門「フフッ……これで全部……」 キョン「よ、また長門だけか」 長門「……」コクン キョン「今日もハルヒは帰っちまったみたいだからな。俺らも帰ろうか」 長門「……」コクン ――長門帰宅後 ハルヒ「ちょっと!!何で私が十字架に磔になってんのよ!!」 長門「わざわざ説明ありがとう」 みくる「何で私が天井から首輪で吊されてるんですかぁ!?しかもこれ、爪先立ちしてないと首がしまっちゃいますぅ!」 長門「わからない人は、ひ〇らしのなく頃にをプレイするように。」 古泉「なんで僕が亀甲縛りに……ハァハァ」 長門「なんとなく」 ……… …… … 長門「さて、なんでこんなことになってるかわかる?」 みくる「何なんですか!?ここ、どこですか!?なんd」 バキッ!! 長門「質問に質問で答えるな。あと、今さら猫をかぶるな」 みくる「あうぅ……」 ハルヒ「……」 古泉「……(ハァハァ)」 長門「わからないの?」 ハルヒ「……」 古泉「……(ア、ソロソロデソウ)」 長門「……最近のあなた達の私に対する対応」 パシーン!! ハルヒ「痛っ!!」 長門「目に余るものがある」 パシーン!! 古泉「うぁっ!!(モウゲンカイ!)」ドピュ 長門「涼宮ハルヒ、言うに事欠いて私が置物ですって!?」 パシーン!! ハルヒ「うぐっ!!……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 長門「朝比奈みくる、あなたは私をなんだと思ってるの?」 バキッ!! みくる「きゃっ!足払いしないでぇ……首が…カハッ」 長門「私が何回あなたの危機を救ったことがあると思う?なんなら今から情報連結解除してもいいのよ?」 ドカッ!! みくる「ケハッ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 長門「……今から、特別の計らいであなた達を家に帰す。」 ハルヒ「!!」 みくる「!!」 古泉「!?(エ、ボクニハナニモナインデスカ!?)」 長門「今後私に対して粗相があった場合……次はない」 ハルヒ「……ごめんなさい……」 みくる「……もうしません」 古泉「……(ホウチプレイデスカネ?)」 長門「……肝に銘じておけ」 パシュン パシュン パシュン ――次の日 ガチャ ハルヒ「あ、長門様だけでしたか。本日も活動を休止しようと愚考する所存でありまして……」 長門「そう」 ハルヒ「それでは失礼します」 バタン みくる「あ、長門さんだけですか。私、僭越ながら先に帰宅させていただきます」 長門「そう」 みくる「失礼させていただきます」 バタン ガチャ 古泉「おy」 長門「そう」 バタン ――廊下 ハルヒ「あー何で私があんなドS娘のいいなりに……ムカつくわ」 みくる「いい加減にしろって感じですよね」 古泉「……(イヤ、アアイウノモワルクナイデスネ)」 ハルヒ「ちょっと調子に乗りすぎよね」 みくる「今度みんなでシメちゃいますかぁ?あはははh」 ガチャ 長門「あなた達の会話は筒抜け」 ハ・み「げぇ!長門!」 長門「当該対象三名を私の部屋に転送、拘束する」 ハルヒ「いやあぁーー!!」 みくる「きゃーー!!」 古泉「うわっ!(wktk!)」 パシュン パシュン パシュン ガチャ キョン「よ」 長門「……」 キョン「みんなはどうした?」 長門「先に帰った」 キョン「そっか。じゃあ俺らも帰ろうか」 長門「……」コクン キョン「……?何か機嫌良さそうだな。いいことでもあったか?」 長門「そう(フフッ……今日も楽しみだわ……)」 おわり
https://w.atwiki.jp/tradingfigure/pages/122.html
長門 有希 (アイドルVer.) 製品情報 全高 13.1cm 全幅 8.1cm パーツ構成 本体 台座 1 補助パーツ 2 製品概要 補助パーツがなくても安定して立てられる。 登場作品 涼宮ハルヒの憂鬱
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1195.html
「長門、湯加減はどうだ?」 「いい」 「そうか」 湯加減といえば風呂である。しかし風呂といえば長門なんてこたない。 別に今俺はやましいつもりで長門を風呂に入れているわけではない。 妹が長門といっしょに風呂に入りたいだなんていきなりわめき散らすのが悪い。 それでは恒例、つまるところの回想シーンへ……… 何者かに閉じ込められて長門が倒れた事件や努力賞が似合う古泉の 推理ゲームやその他の道楽が終わり新年を新たに向かえ、今のところ大きな 懸案事項がひとつだけ残っているという状態で新学期は始まった。 ハルヒはというと、これまた何やら訳の分からん個人活動に専念しているらしい。 そろそろ生徒会のお役所御免になる事態が起きそうだ。起きなければいいのだが… いつもの効果音で今日の活動も終了。至っていつも通りである。大変喜ばしい。 ただひとつ、帰り際の長門のセリフでこの時点から今日いつもと違う日となった。 長門が、本という間接的手段を用いずに 「あなたの家の猫の様子を確認したい。できればこれからあなたの家に行きたい」 なんて言い出すんだからな。まあ夏休み末のイベントのときSOS団のメンツはうちの おふくろの知るところとなったし、妹は元から知っている。問題ないだろうさ。 俺は重大な誤算をしていた。いや元から算段など無しで長門を家に連れてきてしまった。 うちのおふくろが長門の食いっぷりに見惚れていたことをすっかり忘れていた。 とまあつまり、あれだ。三毛猫にだけしか用事はなかった長門だが、結局のところ 俺の家でさんざん妹に遊ばされ夕飯にまで付き合わされ…今に至る。 「キョンく~ん、覗いちゃダメにょろよ?」 お前はいつから鶴屋さん2号になったんだ。人の口調を真似るのはよしなさい。 「てへっ」 反省の色全く無しの返事が返ってくる。長門は終始無言。まさか沈んでるわけないよな。 とりあえず長門は着替えなんてもって着ている筈もなく、まああの身体なら 余計なもので服が汚れるだのなんてのはないだろうけれどもそれだと外見的にまずい。 とにかく昔履いていた半ズボンやTシャツで綺麗なものを探さなければ。 そうこうしている内に妹はタオル1枚でゆでタコになって戻ってきた。風引くからさっさと パジャマを着ろ。長門はまだ湯船のようだ。パンツは無いけど仕方ない我慢してもらおう。 「これを置いておくから着てみてくれ。サイズが合わなかったら取り替える」 「大丈夫」 頼むからTシャツに合わせて体つきを変えるなんて奇妙なことは止めてくれよ。 うちの家族には冗談はあまり通用しないたちなんだ。 長門が風呂から上がってきた。お前妙に顔赤くないか? 「入浴による熱の発散が上手く機能していない。必要時間以上湯に使っていたせいだと 考えられる」 あーそれは、俺のせいか。すまん。 「別に…いい」 かすかに火照った長門の顔を拝見しつつ、このまま変な事態にならないようにするためにも 俺は理性をフル動員で着替えをもった長門を連れて家に帰ろうとする。 「待ってぇー!!!!」 あ、見つかった。 帰ろうとする長門の腰にしがみつき、こら半ズボンが脱げる長門は今ノーパンだぞ馬鹿! 長門も長門で少しは抵抗してくれ。等身大着せ替え人形に変わり果ててもらっちゃ困る。 すったもんだでそのまま妹の部屋に連れられていく長門。こうなったら俺はもう寝るしかない。 さっさと寝ちまって明日主にハルヒ達3人に見つからないように登校するしか俺が 生き延びる選択肢は残っていない。やれやれ、もう神様なんて信じてやらねえ。 「ぬぉわっ!?」 ななにゃにゃがと!? 「私は、長門」 いやもうそんなことは三年前だか一年前くらいにとっくに知っていることで俺が言いたいのは そういうことじゃなくて、なんでTシャツ短パンでついでにノーパンのお前が俺にボディープレスを しつつ頬にキスなんてとんでもなくありがたいと言うかありえないことをしてくれているんだ。 「あなたの妹が私にあなたを起こす様指示した」 妹の指示なんて無視してのんびしてくれていても良かっただろうに。 「嫌?」 耳元でそんなおねだりみたいなセリフを言わないでくれ俺がおかしくなっちまいそうだ。 大体どこでそんな高等技術を習得してきたんだ、長門よ。しかも頬が赤らんで… 「昨日の入浴からの余熱が排熱されない。由々しき事態」 そんなこと言われてもお前の火照った顔のせいで思考回路がフリーズ中だ。 「緊急処置を取る」 どうやってさ。なんでもいいから早くしてくれ…。 「了解した。唾液に異常のある熱のデータを添付。あなたに送る」 なんだか分からんが唾液って言わなかったか? 「言った。すこし我慢して」 目をつぶった長門の顔が鮮明にクローズアップってうわ… 長門の熱された唇が俺の唇に当たり長門の唾液が俺の口に1滴だけ滴り落ちた。 その瞬間、瞬く間に沸騰するような感覚の後俺の体温は急上昇、熱っ…。 暫くのぼせていた俺だったが、気づいた頃にはいつも通りの制服姿で俺の枕元で座っている 長門が俺のおでこに手を当てていた。ひんやりしていてなかなか気持ちがいい。 「あなたの母親と妹にはあなたが突発的な熱を出したと伝える」 そうしてくれ。それにしてもこんな熱を持った状態でお前は一晩も耐えたのか。すごいな。 「原因は不明。なんらかの問題によって私の体温調節機構に不順が生じた」 そうか。しかしこのまま暫くこうしていて欲しいなんて甘えたことを口にするつもりは無い。 「そろそろ学校へ行かないといけないんじゃないのか?このままだとまずいことに成る気がする」 「分かった。私は放課後まで通常通り授業に参加していたことにする」 うんそれじゃぁまた…なぁ?授業に参加していたことにするって長門お前。 「SOS団の活動には確実に出席する。それまでは私に看病させて欲しい」 お前熱じゃあるんじゃないか?なんてボケをかましたら失望されるだろう。俺は、 「分かった。任せる」 それだけ言って目を閉じた。 扉の入り口で黄色い声と白色の声が話し合っている。 俺が熱を出して学校を休みその看病を長門がするということを伝えているのだろう。 暫くしてまた額に冷ややかで柔らかい感触が降り立った。 「熱がいつ下がるかはあなたの体力によって変わる。今日中に治ると断言出来ない」 無言で頷いておく。しばらくして緩やかな眠気に誘われ俺は睡眠をとることにした。 長門が妹となにやら話をしている。訂正、妹が一方的に喋っている。 そういえば長門の顔、特に普段とかわりない気が… 「キョンくんはねー」 「かぜで寝こんだことが無いからかんびょーされたことが無いんだよー」 「分かった」 「それとねー」 「明日は有希ちゃんがキョンくんを起こしてあげてー」 そんなことをいいつつ妹は長門の方にボディプレスの要領で飛び込んだ。 「キョンくんなかなか起きないからこうするといいんだよー」 何勝手なことを抜かしやがる。長門に起こされるなら普通に起きれるさ。 「分かった」 さっきから分かったしか言ってないじゃないか…こんな感じで今朝のことは吹き込まれたのだろうか 「それでねー有希ちゃん」 「何?」 「有希ちゃんは… 起きなさああああああああああぁぁぁぁぁぁっぁぁぁい!!!!!!!!!!! ビクンと身体が反応しそのまま目の前のハルヒ?に頭突きした後ベッドの角に後頭部を打ちつけ 悶える俺。足のほうでうめき声がする。 「やれやれですね」 古泉の声。 「あ、あの、あの…ふ、二人とも大丈夫ですかぁ?」 朝比奈さんの声。 「大ぃっ丈夫じゃないわよバカキョン!!!!」 耳に響く耳に響くこのアホが…。 「全くだらしないわね。熱なんかで学校はおろかSOS団までも休むなんて」 お前の思考回路の学校とSOS団の順位を正せ。 「おやおや、ここまで涼宮さんと張り合えるならすぐに元気になりますね」 解説ならもうちっと医者っぽいセリフを頼みたいところだね 「残念ながら私には医療の知識も経験も無いのでそんな勝手なことは出来ませんね」 夏の合宿での演技はどこへ行った。 「私が出来るのはせいぜい演技までですよ」 うるさい黙れ近づくな耳元で息を吹きかけるな そんなこんなで団員達は帰っていった。ハルヒの奴が 「仕方がないわ。私は団長だから団員の看」 「すまんが今日は一人で養生させてくれ」 古泉が携帯を手に取り頭を掻きお先に失礼しますと言って帰っていった。 すまんが古泉、今回は許してくれ。あとで裏庭のコーヒーでも奢るから。 「もういいわ、そんなに言うなら一人でなんとかしなさいよ!これで明日学校に来ないなんて言うんじゃ 絶対に許さないからね!それと、今週末は喫茶店でキョンの奢りだから。良いわね!さあ帰りましょ! 有希!みくるちゃん!」 長門は無表情で、朝比奈さんは肩を震わせながら 「お大事にしてくださいね」 なんてマザーテレサのような一言を残して去っていった そして夜も更けてきた。そろそろ寝るのに丁度いい頃合だが俺は待たなければいけない。 誰かって?決まってるだろ。 コンコンと俺の部屋のドアをいちいちノックして来るような人さ。 「どうぞ」 ドアが開く 「すべての責任はわたしにある」 それ前にもどっかで聞いたな。古泉よろしくの私立病院だったか。 「私は私の不明な行動パターンの選択に抗えなかった」 正夢ってのはときどきあるらしい。 「私には問題は無かった。あなたを一時的な高熱状態にしたのは私の独断専行」 それくらいなら俺は文句は言わんよ。一度やってみたかったんだろう?看病ってヤツを。 「あなたから高熱の元とされる情報を取り除かないといけない」 分かったが、それは具体的にどういうことをするんだ。 「情報を送ったときと全く逆のことをすればいい」 まさか今度は俺が長門に? 「そう」 その後のことは察して欲しい。とにかく熱は収まった。 そして裏道から二人で登校する俺と長門。別々に登校しようという俺の提案は長門に よって脆くも崩れ去った。だが悪い気はしないね。丁度肩の辺りに頭を添えて俺の 左腕を右手でロックしているこいつとなら。SOS団に通じるメンツに見られてなきゃいいがな。 それでまあ、結局見つかるのがSOS団の方程式らしい。 この後俺はハルヒによって無理難題を押し付けられる羽目と成るのはまた別の話である。 そして最後に、妹を近いうちに賞賛してやらねばならんね。 Fine
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1153.html
~ある日の放課後~ 今日は団長自らコスプレ衣装を買いに行ってしまったため部活はない 一人いつものように部室で読書を終えてから帰ろうとする長門の前に 女子A「やぁ長門さん♪」 長門にとってはよく知る顔が三つならんでいた 女子B「ちょっとプレゼントがあるんだけどぉ」 女子C「長門さんってすごい臭いからね~はい石鹸、食べて」 長門「・・・」 彼女たちはどうやら極端に表情に乏しいこのインターフェイスが気に入らないようだった (実を言うとそのインターフェイスの整った顔に不満があるらしいが) ちょくちょくこういう陰湿なイジメをしてくる たまにハルヒが助けてくれるのだが今日は期待できないだろう 長門「・・・」 女子A「オラなんとか言えよ」 女子B「いただきます、でしょ♪」 何故わたしは朝倉涼子のようにできないのだろう わざわざ敵を作ってまで 異様な存在にしてまで何故わたしの対話能力のレベルは低く設定されているのだろう だが長門にとってそんなイジメはさしたる苦痛でもなかった 彼女たちを満足させるため渡された石鹸を口に近付ける とそのとき 教師「おいおまえらっ!何をしてるっ!」 女子A「チッ・・・なんでもありませーん」 女子C「長門さんと話してるだけでーす」 いきなり現れた体格の良い教師に威圧され散っていく女子ABC 彼はたしか長門のクラスの副担任 教師「おい、大丈夫か長門?」 長門「・・・はい」 教師「・・・あいつらに虐められてるのか?」 長門「・・・」 教師「・・・先生がいつでも相談にのってやるからな?」 ふと何かを思いついた表情をつくる教師 教師「そうだ、あいつらが待ち伏せてるかもしれないな、車で家まで送ってやろう」 長門「・・・いえ」 教師[「遠慮するな、なんだか雨も降ってきそうだしな」 長門「・・・」 下駄箱まで付いてきながらしつこく言い寄る教師 空模様をみるかぎり雨が降る様子なんて無い 長門「・・・いいです」 教師「いいって、長門のマンションけっこう遠いだろ?」 強引に、まるで連れ込まれるかのように助手席に座らされる長門 長門「・・・」 ~車内~ 教師「なあ、他の女子とうまくいってないのか?」 長門「・・・」 教師「何か困ったことがあったらいつでも先生に相談してもいいんだぞ?」 長門「・・・」 教師「ほら、俺も教師として生徒には信頼してほしいんだよ」 長門「・・・」 教師「俺もけっこうたくさんの生徒をみてきたが有希のことは少し心配なんだよ、なあ?」 長門「・・・」 運転中だというのに気を遣うような仕草で長門の肩に手を置く教師 だが端から見ればとても気を遣ってるようには見えない 教師「おまえの担任の○○先生なんてそーいうゴタゴタに無関心だし・・・」 長門「・・・」 一方的に話し続ける教師 しかしその異常さに本人はまるで気が付いていない どんどん語調が早くなっていく 目に焦燥の色がうかぶ 長門「(この人・・・様子がおかしい・・・それに)」 もうマンションについてもいい頃だというのに 一向に雨が降りそうもない車の外に広がるのは見なれない風景 教師が乾いた笑いとともに言う 教師「ハハハ・・・いやすまん、大事な書類を学校に届けなくてはいけないんだ」 長門「・・・」 教師「いったん俺の家に寄るぞ?ハハハ・・・悪いなァ」 普通なら長門を送ってからでいいだろう 普通なら事前にそう言うだろう 普通なら・・・ 長門「(・・・彼は異常)」 長門の思考に判断がくだる、教師に見えないように携帯電話を取り出す 最近、「彼」が連絡を取るためにと長門に持たせたものだ 以前二人で選びに行った記憶が脳裏に浮かぶ 「どうせ金は自由にできるんだろ?最新機種でもいいんじゃないか?」 「・・・そう」 「おお・・・最近のはすごいんだな・・・でもキャッチホンっつーのは使わないよな」 「・・・」 「どーする?どれがいい?」 「・・・あなたの好きにして」 「・・・(いや長門さん?その台詞はまずいんじゃあ)」 記憶を閉じる 情報統合思念体にとっては驚くほど「アナログ」なその端末を操作する 電話帳を開くまでもなく・・・完璧に記憶している「彼」の番号を押す 一度だけ呼び出し音を鳴らし、切る 非通知にはしていなかったはずだ 車が着いたのは男の一人暮らしにしてはやや大きめの家だった 教師「ほんとーにすまん。ちょっと探し物してくるからさ」 長門「・・・」 教師「・・・中で少し待っててくれ」 長門「だが断る!」 教師「!?」 長門「なんでもありません・・・遠慮します」 一瞬ふざけた台詞がでたのは俺が空気嫁てないと感じたからだろうか 日曜日の朝、一人真面目に文章を打ち込んでいる俺は滑稽だろうか ちなみに自宅にジョジョは全巻持っている、一番好きなのは4部 最近ではリンゴォ戦を読むたびテンションを上げている あそこで真に格好いいのはむしろジャイロの方だよな 閑話休題 教師「ん?どうしてだ?大丈夫だ、変なことはしないぞ」 長門「・・・」 笑いながら早口で言う、しかし、目は決して笑っていない 長門「・・・あなたは信用するに足らない、帰る」 教師「・・・なあ、有希をいつも助けてくれる、涼宮ハルヒ」 長門「・・・」 教師「 い つ で も 退 学 に で き る ん だ ぞ ? 」 長門「・・・!」 長門の目が一瞬驚愕と、わずかな恐怖に見開かれる 教師「どうする?守ってくれる人間がいなくなるなぁ?」 教師はどうやら勘違いをしているようだ 自分のいじめはどうでもいい、別に殺されたってバックアップがいる だが涼宮ハルヒの退学?それだけは絶対に阻止しなければならない 教師「注意してもバニーガールの格好で校内をうろついていたな・・・」 長門「・・・」 教師「学校側が認めていないのにゲリラのように部活を作っている」 長門「・・・」 教師「映画の撮影だとかで屋上で花火で遊んでいたり」 長門「・・・」 教師「それに噂じゃあパソコン研究部のパソコンを恐喝し、奪ったらしいじゃあないか?」 長門「・・・」 教師「いままでは成績の良さでうやむやになっていたが、これらはすべて校則違反だ」 長門「・・・」 教師「俺が問題にすれば、退学だ」 目の前の男は世界の危機だと解っているのだろうか? 涼宮ハルヒの退学、SOS団の解散。 それが何を生むか解っているのだろうか? いや解っているはずがない 長門「・・・愚か」 瞬時に長門の口が校則で動く 目標の情報連結の解除の準備をする だが・・・ 教師「なあ有希、もういいだろ。中に入れ」 長門「・・・」 強引に腕を取られ、部屋のなかへ連れ込まれる長門 情報連結の解除は・・・しない ただ・・・電話を待つ ~室内~ 長門は乱暴にベッドに押し倒される 汗臭くて汚い、男のベッド 華奢なその体に教師がのしかかってくる 教師「ハァハァ・・・いい子だからな?抵抗するなよ・・・」 長門「・・・」 血走った目で長門を睨む 興奮してか涎が長門の頬に垂れる 教師「有希は本当に大人しいなぁ・・・どこまで無表情でいられるかなぁ・・・」 大柄な体を密着させながらスカートの中に手を滑り込ませ、尻を弄る 長門「・・・ッ」 その嫌悪感に僅かにヒューマノイドの顔が歪む 反応に気を良くした男がその手にさらなる力をかけたとき 無機質な携帯のバイブレーションが鳴り響く スカートにしまったその端末の光る画面には「着信中」の文字が浮かんでいる 無視して行為に及ぼうとする教師、だが 教師「(親が心配して電話してきたのかもしれない)」 教師「(放置するのは・・・怪しまれるか)」 仕方がなく 教師「出ろ、なんとか誤魔化せ。ただし妙なことを言ったら・・・殺す」 本気で殺しそうな切羽詰まった目、しかし長門はその言葉を半分も聞いていなかった 素早い動作で携帯を取り出すと、通話ボタンを押す 相手が喋るより速く、喋る 長門「許可を」 沈黙。 教師も、電話をかけてきた相手も状況が飲み込めない様子。 長門「情報操作能力使用の許可を」 かまわず長門が続ける 明らかに「妙なこと」を喋っているが、教師が予測したような助けを呼ぶ声には聞こえない 電話の向こうで誰かが話している 慌てているような、心配しているような、でも真剣な声 長門「いや、涼宮ハルヒとは直接関係ない」 教師「おい・・・誰なんだ?親じゃないのか?」 長門「・・・わたしの問題」 長門が話す 長門「教師に性行為を迫られている」 一瞬場が凍り付き 教師が携帯を奪おうと手を伸ばす それより速く、携帯から声が響く 教師にもハッキリ聞こえる 『やっちまえ!!!!』 長門「・・・そう」 教師「おまえっ・・・ふざけるなっ!」 激昂し携帯を奪おうと長門に掴み掛かる教師、大柄な体が震えている 教師「誰だ、誰に言った!そいつもお前もブッ殺して・・・!?」 そこで長門の異変に気づく さっきまで思う存分引きずり回していたその矮躯が 体重なんて自分の半分ほどしかなさそうな小柄な少女が まるで鉄の塊にでもなったかのように動かない 長門「ブッ殺す・・・?」 違った 幾ら力をかけても自分の体が動かなかった 金縛り、なんて陳腐な表現しか出来ない現象が教師を襲う 長門「ブッ殺すと判断した・・・そのときスデに」 行動は終わっていた 朝倉涼子のようなインターフェイスではない、 何の抵抗も出来ないその有機体の塊は一瞬でその場から消え失せていた 長門「・・・終了した」 今だ通話中の携帯に話しかける ~通話中~ 『そうか・・・そいつはどうした?』 長門「刑務所、性犯罪で逮捕、懲役六年」 『そっか、別に俺はいなかったことにしてもよかったと思うんだが?』 長門「生きてきた痕跡、関わった人間すべてを操作するのは多少面倒」 『そうか、トーチとは反対だな』 長門「・・・トーチ?」 『・・・妄言だ、忘れてくれ』 長門「・・・そう」 『でもわざわざ俺の許可を待つこともないだろ?』 長門「・・・」 『状況は解らないが・・・結構、ピンチだったんだろ?』 長門「・・・涼宮ハルヒに関すること以外での情報操作能力は自重するよう」 『・・・』 長門「・・・あなたの頼みだったから」 長門「・・・何?」 『今度からは・・・ハルヒと同じくらい自分を大切にしてくれないか?』 長門「・・・何故?」 『・・・頼む』 長門「・・・そう」 弱々しく聞こえた「彼」の言葉が、何故だかひどく嬉しくさせた 何故だろう? 『じゃあ話は変わるが』 長門「・・・何?」 『あ~長門のクラスにABCって女子がいるだろ?』 長門「・・・」 『是非「転校」させてやってくれ』 声の主はもう笑っている 長門「・・・記憶の消去、記憶の植え付け。両方やらなくちゃあいけないのが」 『・・・』 長門「・・・SOS団、団員のつらいところ」 『・・・なあ長門』 長門「何?」 『・・・最近へんな本でも読んだか?』 長門「・・・別に」 宇宙人が、その場で一人 声色は完全に普段の調子から変えず だが、たしかに微笑みながら言った。 お わ り 。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1162.html
「長門、湯加減はどうだ?」 「いい」 「そうか」 湯加減といえば風呂である。しかし風呂といえば長門なんてこたない。 別に今俺はやましいつもりで長門を風呂に入れているわけではない。 妹が長門といっしょに風呂に入りたいだなんていきなりわめき散らすのが悪い。 それでは恒例、つまるところの回想シーンへ……… 何者かに閉じ込められて長門が倒れた事件や努力賞が似合う古泉の 推理ゲームやその他の道楽が終わり新年を新たに向かえ、今のところ大きな 懸案事項がひとつだけ残っているという状態で新学期は始まった。 ハルヒはというと、これまた何やら訳の分からん個人活動に専念しているらしい。 そろそろ生徒会のお役所御免になる事態が起きそうだ。起きなければいいのだが… いつもの効果音で今日の活動も終了。至っていつも通りである。大変喜ばしい。 ただひとつ、帰り際の長門のセリフでこの時点から今日いつもと違う日となった。 長門が、本という間接的手段を用いずに 「あなたの家の猫の様子を確認したい。できればこれからあなたの家に行きたい」 なんて言い出すんだからな。まあ夏休み末のイベントのときSOS団のメンツはうちの おふくろの知るところとなったし、妹は元から知っている。問題ないだろうさ。 俺は重大な誤算をしていた。いや元から算段など無しで長門を家に連れてきてしまった。 うちのおふくろが長門の食いっぷりに見惚れていたことをすっかり忘れていた。 とまあつまり、あれだ。三毛猫にだけしか用事はなかった長門だが、結局のところ 俺の家でさんざん妹に遊ばされ夕飯にまで付き合わされ…今に至る。 「キョンく~ん、覗いちゃダメにょろよ?」 お前はいつから鶴屋さん2号になったんだ。人の口調を真似るのはよしなさい。 「てへっ」 反省の色全く無しの返事が返ってくる。長門は終始無言。まさか沈んでるわけないよな。 とりあえず長門は着替えなんてもって着ている筈もなく、まああの身体なら 余計なもので服が汚れるだのなんてのはないだろうけれどもそれだと外見的にまずい。 とにかく昔履いていた半ズボンやTシャツで綺麗なものを探さなければ。 そうこうしている内に妹はタオル1枚でゆでタコになって戻ってきた。風引くからさっさと パジャマを着ろ。長門はまだ湯船のようだ。パンツは無いけど仕方ない我慢してもらおう。 「これを置いておくから着てみてくれ。サイズが合わなかったら取り替える」 「大丈夫」 頼むからTシャツに合わせて体つきを変えるなんて奇妙なことは止めてくれよ。 うちの家族には冗談はあまり通用しないたちなんだ。 長門が風呂から上がってきた。お前妙に顔赤くないか? 「入浴による熱の発散が上手く機能していない。必要時間以上湯に使っていたせいだと 考えられる」 あーそれは、俺のせいか。すまん。 「別に…いい」 かすかに火照った長門の顔を拝見しつつ、このまま変な事態にならないようにするためにも 俺は理性をフル動員で着替えをもった長門を連れて家に帰ろうとする。 「待ってぇー!!!!」 あ、見つかった。 帰ろうとする長門の腰にしがみつき、こら半ズボンが脱げる長門は今ノーパンだぞ馬鹿! 長門も長門で少しは抵抗してくれ。等身大着せ替え人形に変わり果ててもらっちゃ困る。 すったもんだでそのまま妹の部屋に連れられていく長門。こうなったら俺はもう寝るしかない。 さっさと寝ちまって明日主にハルヒ達3人に見つからないように登校するしか俺が 生き延びる選択肢は残っていない。やれやれ、もう神様なんて信じてやらねえ。 「ぬぉわっ!?」 ななにゃにゃがと!? 「私は、長門」 いやもうそんなことは三年前だか一年前くらいにとっくに知っていることで俺が言いたいのは そういうことじゃなくて、なんでTシャツ短パンでついでにノーパンのお前が俺にボディープレスを しつつ頬にキスなんてとんでもなくありがたいと言うかありえないことをしてくれているんだ。 「あなたの妹が私にあなたを起こす様指示した」 妹の指示なんて無視してのんびしてくれていても良かっただろうに。 「嫌?」 耳元でそんなおねだりみたいなセリフを言わないでくれ俺がおかしくなっちまいそうだ。 大体どこでそんな高等技術を習得してきたんだ、長門よ。しかも頬が赤らんで… 「昨日の入浴からの余熱が排熱されない。由々しき事態」 そんなこと言われてもお前の火照った顔のせいで思考回路がフリーズ中だ。 「緊急処置を取る」 どうやってさ。なんでもいいから早くしてくれ…。 「了解した。唾液に異常のある熱のデータを添付。あなたに送る」 なんだか分からんが唾液って言わなかったか? 「言った。すこし我慢して」 目をつぶった長門の顔が鮮明にクローズアップってうわ… 長門の熱された唇が俺の唇に当たり長門の唾液が俺の口に1滴だけ滴り落ちた。 その瞬間、瞬く間に沸騰するような感覚の後俺の体温は急上昇、熱っ…。 暫くのぼせていた俺だったが、気づいた頃にはいつも通りの制服姿で俺の枕元で座っている 長門が俺のおでこに手を当てていた。ひんやりしていてなかなか気持ちがいい。 「あなたの母親と妹にはあなたが突発的な熱を出したと伝える」 そうしてくれ。それにしてもこんな熱を持った状態でお前は一晩も耐えたのか。すごいな。 「原因は不明。なんらかの問題によって私の体温調節機構に不順が生じた」 そうか。しかしこのまま暫くこうしていて欲しいなんて甘えたことを口にするつもりは無い。 「そろそろ学校へ行かないといけないんじゃないのか?このままだとまずいことに成る気がする」 「分かった。私は放課後まで通常通り授業に参加していたことにする」 うんそれじゃぁまた…なぁ?授業に参加していたことにするって長門お前。 「SOS団の活動には確実に出席する。それまでは私に看病させて欲しい」 お前熱じゃあるんじゃないか?なんてボケをかましたら失望されるだろう。俺は、 「分かった。任せる」 それだけ言って目を閉じた。 扉の入り口で黄色い声と白色の声が話し合っている。 俺が熱を出して学校を休みその看病を長門がするということを伝えているのだろう。 暫くしてまた額に冷ややかで柔らかい感触が降り立った。 「熱がいつ下がるかはあなたの体力によって変わる。今日中に治ると断言出来ない」 無言で頷いておく。しばらくして緩やかな眠気に誘われ俺は睡眠をとることにした。 長門が妹となにやら話をしている。訂正、妹が一方的に喋っている。 そういえば長門の顔、特に普段とかわりない気が… 「キョンくんはねー」 「かぜで寝こんだことが無いからかんびょーされたことが無いんだよー」 「分かった」 「それとねー」 「明日は有希ちゃんがキョンくんを起こしてあげてー」 そんなことをいいつつ妹は長門の方にボディプレスの要領で飛び込んだ。 「キョンくんなかなか起きないからこうするといいんだよー」 何勝手なことを抜かしやがる。長門に起こされるなら普通に起きれるさ。 「分かった」 さっきから分かったしか言ってないじゃないか…こんな感じで今朝のことは吹き込まれたのだろうか 「それでねー有希ちゃん」 「何?」 「有希ちゃんは… 起きなさああああああああああぁぁぁぁぁぁっぁぁぁい!!!!!!!!!!! ビクンと身体が反応しそのまま目の前のハルヒ?に頭突きした後ベッドの角に後頭部を打ちつけ 悶える俺。足のほうでうめき声がする。 「やれやれですね」 古泉の声。 「あ、あの、あの…ふ、二人とも大丈夫ですかぁ?」 朝比奈さんの声。 「大ぃっ丈夫じゃないわよバカキョン!!!!」 耳に響く耳に響くこのアホが…。 「全くだらしないわね。熱なんかで学校はおろかSOS団までも休むなんて」 お前の思考回路の学校とSOS団の順位を正せ。 「おやおや、ここまで涼宮さんと張り合えるならすぐに元気になりますね」 解説ならもうちっと医者っぽいセリフを頼みたいところだね 「残念ながら私には医療の知識も経験も無いのでそんな勝手なことは出来ませんね」 夏の合宿での演技はどこへ行った。 「私が出来るのはせいぜい演技までですよ」 うるさい黙れ近づくな耳元で息を吹きかけるな そんなこんなで団員達は帰っていった。ハルヒの奴が 「仕方がないわ。私は団長だから団員の看」 「すまんが今日は一人で養生させてくれ」 古泉が携帯を手に取り頭を掻きお先に失礼しますと言って帰っていった。 すまんが古泉、今回は許してくれ。あとで裏庭のコーヒーでも奢るから。 「もういいわ、そんなに言うなら一人でなんとかしなさいよ!これで明日学校に来ないなんて言うんじゃ 絶対に許さないからね!それと、今週末は喫茶店でキョンの奢りだから。良いわね!さあ帰りましょ! 有希!みくるちゃん!」 長門は無表情で、朝比奈さんは肩を震わせながら 「お大事にしてくださいね」 なんてマザーテレサのような一言を残して去っていった そして夜も更けてきた。そろそろ寝るのに丁度いい頃合だが俺は待たなければいけない。 誰かって?決まってるだろ。 コンコンと俺の部屋のドアをいちいちノックして来るような人さ。 「どうぞ」 ドアが開く 「すべての責任はわたしにある」 それ前にもどっかで聞いたな。古泉よろしくの私立病院だったか。 「私は私の不明な行動パターンの選択に抗えなかった」 正夢ってのはときどきあるらしい。 「私には問題は無かった。あなたを一時的な高熱状態にしたのは私の独断専行」 それくらいなら俺は文句は言わんよ。一度やってみたかったんだろう?看病ってヤツを。 「あなたから高熱の元とされる情報を取り除かないといけない」 分かったが、それは具体的にどういうことをするんだ。 「情報を送ったときと全く逆のことをすればいい」 まさか今度は俺が長門に? 「そう」 その後のことは察して欲しい。とにかく熱は収まった。 そして裏道から二人で登校する俺と長門。別々に登校しようという俺の提案は長門に よって脆くも崩れ去った。だが悪い気はしないね。丁度肩の辺りに頭を添えて俺の 左腕を右手でロックしているこいつとなら。SOS団に通じるメンツに見られてなきゃいいがな。 それでまあ、結局見つかるのがSOS団の方程式らしい。 この後俺はハルヒによって無理難題を押し付けられる羽目と成るのはまた別の話である。 そして最後に、妹を近いうちに賞賛してやらねばならんね。 Fine