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110 遙かなる時空の中で3・十六夜記 sage 2006/05/28(日) 21 13 04 ID 3aBYZ1IJ 新ルート+新キャラ追加のファンディスク。 物語前半、三草山戦で「平家が三草山に布陣している隙に手薄になった本拠地福原を急襲しよう」というヒノエの提案を容れると新ルート・平泉ルートへ。 九郎軍の本拠地急襲が大成功し、九郎が平家に「勝ちすぎた」為、壇ノ浦で頼朝による排斥が起こり、行き場を失くした九郎一行が平泉へ逃げ込む展開になる。 「還内府」将臣は壇ノ浦で合流。ただし、頼朝につく(母親が人質になっている為)景時が離脱する。 景時の代わりに銀が参入。このルートでは銀・九郎・景時のEDが追加、他の八葉は従来のルートからの派生でEDが追加されている。 【平泉ED】 攻めてきた源氏軍を退け、奥州の独立を確保。有川兄弟と共に元の世界に帰る。 【十六夜ED】 八葉との新ED。朔と白龍には追加EDなし。本編EDとは京・現代が逆になる。 【恋愛ED】 銀及び平知盛とのED。隠しEDである知盛EDは大団円前夜から分岐。 【新キャラ】(平泉の人たち) ・藤原秀衡:幼い九郎を匿った豪放磊落な平泉当主。 落ち延びてきた九郎一行を喜んで迎え入れる。 ・藤原泰衡:九郎の幼馴染。ツンデレ過ぎて誰にも理解されない。 捨て犬や行き倒れを拾う癖がある。 ・銀 :泰衡の郎党。記憶を失いぼろぼろになって行き倒れていた所を泰衡に拾われた。 九郎と神子の護衛の従者を任じられる。平知盛に瓜二つ。 素性は清盛の五男・平重衡。 なお、清盛家は三人揃って金属性なので、神子の属性は火にしておくと楽です。特に知盛。 171 遙か3十六夜リズルート sage 2006/04/25(火) 04 02 03 ID ??? 基本は蜜月をこなしながらノーマルルートと同じストーリー。 平家をどんどん倒していって、最終的に清盛を倒す。 その後、望美はリズヴァーンが好きだから一緒にいたい、と言うが、 リズは鬼である自分といてもしあわせになれない、と言って 望美の前から去ろうとする。 ここから選択肢によって恋愛EDとバッドEDに分岐。 恋愛EDは、それでも先生が好き!一緒にいたい!と言う望美にほだされて 結局は一緒に生きていくことを決める。ふたりでしあわせ。 バッドEDは、リズに捨てられた望美が 「平和な世界では先生が一緒にいてくれない。戦乱の世の中なら一緒にいてくれる」 「先生を迫害するこの京が許せない」と考えて、 はぐれ武士などを集めて神子軍を作り、戦を起こし、 せっかく平家を倒して平和になったはずの京に攻め込んでいく。 (九郎や景時らと敵対することになる) 京に攻め入る直前、望美の前にリズが現れ、 「こんな選択をさせてしまったのは自分のせいだ、だがそれなら共に堕ちよう」 みたいなこといって、ふたりで炎に包まれる京に攻めていく。 ただ好きな人と共にいるためだけに、仲間を裏切り、罪もない多くのものを殺し、 安息の未来などないけれど、一緒にいられるならそれでいい。 完 175 遙か3十六夜景時ルート sage 2006/04/25(火) 13 54 53 ID ??? 遙か3十六夜景時ルート 遙か3無印基本設定は分かってる前提でいいのかな? (ここらへんは省略で) 最初の分岐は3章、三草山での戦闘。 無印では三草山を攻めるが、ヒノエの助言と望美の進言により、 一気に平家の本拠地福原を攻めることに。 ここで平家の戦力を大きく削ぐことに成功。源氏は大きな勝利を掴む。 しかしそれは一方、九郎を危うい立場に追い込むことになる。 兵の信頼を集め大きな力をつけていく九郎を疎ましく思い、 頼朝が九郎討伐の計画を練りはじめる。 飛んで5章。 源氏は福原攻めで追い詰めた平家を一気に壇ノ浦で叩く。 源氏の勝利にみなが沸き返る中、 突然頼朝が九郎に謀反の罪を着せ処刑しようとする。 驚き戸惑う一同。もちろん謀反など濡れ衣(頼朝のでっち上げ)。 そんな中、景時は望美たちから離れ、頼朝側に付き、九郎らを攻撃する。 このとき景時の身から、八葉の証である宝玉が離れ、八葉ではなくなる。 176 遙か3十六夜景時ルート sage 2006/04/25(火) 13 56 21 ID ??? 頼朝に追われ、京へも戻れない一行は、九郎が昔世話になった奥州・平泉へ向かうことに。 (このとき、平家から単身頼朝を狙ってきた将臣とも合流) 何とか平泉にたどり着いた九郎や望美たちを、 平泉を治める藤原秀衡はあたたかく迎え入れてくれる。 しかし、九郎たちが平泉にたどり着けたのも、実は頼朝の罠。 謀反人である九郎らを匿ったということで平泉を攻め、 一気に九郎も奥州藤原氏も潰そうという計画だった。 やがて平泉に頼朝軍が迫ってくる。頼朝軍を指揮しているのは景時。 自分たちを裏切り頼朝に付いた景時をみんなは責める。 しかし望美は景時を信じ、決戦前夜、朔と共に彼に会いに行く。 ここでは結局和解することは叶わず、最終決戦へ。 頼朝軍と平泉軍が戦う中、望美たちは北条政子に会い、景時の真意を聞かされる。 景時は「奥州平泉を落としたら、九郎らの命は助ける」と頼朝と約束していた。 つまり、景時は九郎らを助けるために頼朝側に残り、平泉を攻めていた。 それを知った望美たちは、急いで景時のいる大社へ向かう。 景時は藤原泰衡を倒すが、政子は約束を破り九郎らを殺そうとする。 そのため景時は望美を守るため政子に銃を向ける。 そのとき離れていた宝玉が再び景時の身に宿る。 景時も望美らと共に荼吉尼天と戦うことを決意。 177 遙か3十六夜景時ルート sage 2006/04/25(火) 13 57 02 ID ??? 景時が望美たちの側に付いたことで、北条政子(荼吉尼天)と最終決戦。 荼吉尼天が倒れ、頼朝軍はいったん平泉から撤退することに。 景時は軍奉行である自分の役目を果たすため、 また、誰かが頼朝軍を撤退させる指揮をしなくてはならないため、 頼朝に処刑されることも覚悟で軍を率いて鎌倉へ戻ることを決める。 必ず望美の元に帰ると約束を残して…。 ここでエンディング曲とスタッフロール。 歌が終わると突然エンディングスチル。 何故か景時は望美と共に現代にいて、ラブラブしあわせに暮らしましたとさ。 おわり 注)エンディング前と後の間に何があったのかなどの説明は一切なく、 本当に突然現代にいるスチルになる。 179 遙か3十六夜銀ルート sage 2006/04/26(水) 02 55 02 ID ??? 銀ルートは時空跳躍で2周しないとクリアできないから ちょっと長いですよ。 一度望美は知盛と壇ノ浦で戦って、知盛を殺したあと、 時空跳躍で春の京(冬の宇治川でも可)に戻ってきた、というところから。 2章春の京、六波羅。 かつては平家の邸が建ち並んでいたが、都落ちするときに平家が自ら火を放ち、 今は焼け跡に人々が市を開いていたりする。 そこにある焼け落ちた桜を見ていると、 望美の意志ではなく、勝手に時空跳躍が起こってしまう。 たどり着いたのは数年前(2年前?)の、平家が栄えていた頃の六波羅。 どうやら当時の平家の誰かの邸に飛ばされたらしい。 そこで望美は御簾越しに一人の公達に出会う。 御簾越しなので姿ははっきり見えないが、声は知盛にそっくり。 それは知盛なのか、それとも別人なのか。 確かめる前にまた時空跳躍が勝手に起こり、 望美はもとの春の京の六波羅に戻ってくる。 3章から平泉にたどり着くまでは景時ルート 175-176と一緒。 その平泉へ向かう途中、九郎を助けるために藤原泰衡に派遣されたという 「銀(しろがね)」と名乗る男に出会う。 この銀という男は知盛にそっくりで、望美は驚きを隠せない。 見た目はそっくりなものの、性格は正反対。 好戦的な知盛と違い、銀は物腰柔らかでやさしい。 話を聞くと、銀は以前の記憶を失っており、 怪我をして倒れているところを泰衡に助けられ、 それ以後泰衡に仕える様になったという。 壇ノ浦に沈んだ知盛の死体は上がっていない。 もしかして知盛は生きていたのか、銀は知盛なのか…? 180 遙か3十六夜銀ルート sage 2006/04/26(水) 02 58 08 ID ??? 平泉に到着した望美たちは、藤原秀衡にあたたかく迎えられ、 久々に穏やかな日々をすごす。 銀は、泰衡より神子の世話をするよう命じられ、望美たちと行動を共にする。 はじめは「知盛なのではないか」と、知盛の姿を重ねて銀を見ていた望美だが、 共に過ごすうちに「銀は銀。知盛ではない。 たとえ知盛だとしても、今ここにいるのは銀だ」と思うようになる。 そしてだんだんと惹かれあう望美と銀。 一方、平泉のあちこちで異変が起こり始める。 「呪詛の種」と呼ばれるものが平泉のあちこちにばら撒かれ、 平泉の龍脈を穢すようになる。どうやら鎌倉方(頼朝)の仕業らしい。 神子の力で呪詛を消していくが、そのすべてを見つけることができない。 龍脈を穢されたことにより白龍は力を失い子供の姿に。 神子である望美にも影響が現れ、具合が悪くなる。 望美のことを心配する銀。 銀が望美に惹かれるたび、人形のように虚ろだった銀の心に感情が戻っていき、 同時に失っていた記憶もだんだんとよみがえってくる。 自分が一体何者なのか、何故ここにいるのか…。 すべてを思い出した銀は、愛する望美を救うため、 望美に「あなたを愛しています」と告げて、心を完全に閉ざしてしまう。 それにより龍脈も元に戻り、望美も元気を取り戻すが、 その代償に、銀はまるでロボットのように 「はい、神子様、ご命令を」と繰り返すばかりになってしまった。 もう望美がいくら呼びかけても抱きしめても、 心を閉ざしてしまった銀は応えてくれない…。 呪詛と銀の関係や、銀の正体はまだここでは明かされないまま。 銀を助けるために望美は時空跳躍をする。 もう一度春の京(2周目)へ。 181 遙か3十六夜銀ルート sage 2006/04/26(水) 03 02 14 ID ??? 再び春の京、六波羅。 かつてここで時空跳躍をして出会った人は銀なのではないかと思い、 もう一度あの平家の邸へ行きたいと望美は強く願う。 すると時空跳躍が起こり、再び数年前の六波羅へ。 御簾越しに出会うその公達は、知盛ではなく銀だと確信する。 しかしここは過去の時空なので、銀は当然望美のことを知らない。 ろくに話をする間もなく、再び時空跳躍で望美は元の時空に飛ばされそうになる。 飛ばされる間際、望美は銀に 「あなたと私はいつか未来で出会う、そのときには必ずあなたを助ける」と告げる。 また、そのときに偶然銀を呼ぶ声が聞こえ、 銀の本当の名前が「平重衡」であると分かる。(ちなみに重衡は知盛の弟) 銀とつかの間の逢瀬を果たし、望美はまた春の京へ戻ってくる。 そこから先はまた1周目と同じストーリーで平泉へ。 銀とも再び出会う。 呪詛の種が撒かれ、望美が具合が悪くなるあたりまで同じ。 頼朝は着々と平泉を攻める準備をしている。 対する平泉もそれを迎え撃つ準備をしている。 そんな中、藤原泰衡が、荼吉尼天に対抗する力として白龍の神子の力を手に入れるため、 具合の悪い望美を柳の御所に軟禁する。 呪詛のせいで具合の悪い望美は逃げることも出来ない。 九郎らも望美を助けようとするが、望美を人質に、高館に軟禁されてしまう。 銀は、主である泰衡の命令には背けないと、 望美の世話は焼くものの、軟禁から逃がしてはくれない。 けれどその中でさらに惹かれあい、銀は心と記憶を取り戻していく。 心を取り戻した銀は、望美を柳の御所から逃がそうとする。 しかしその途中、泰衡に追いつかれ、追い詰められる。 そこで、泰衡から、まだ見つかっていない最後の「呪詛の種」は 銀自身なのだと知らされる。 182 遙か3十六夜銀ルート sage 2006/04/26(水) 03 06 13 ID ??? かつて、銀=重衡は、源氏との戦で頼朝に捕まってしまう。 そこで平泉を攻めるための道具として、 荼吉尼天に記憶を奪われ、魂に呪詛を刻まれていたのだった。 呪詛は魂に刻まれているので、銀が心をなくしたままなら呪詛は発動しない。 けれど、望美に惹かれ心を取り戻すたびに呪詛も強くなるという仕組み。 (1周目で銀が心を閉ざしたのは、心を閉ざせば呪詛も閉ざされるから) 呪詛の元である銀を殺そうとする泰衡。 銀も、自分の存在が望美を苦しめているため、おとなしく泰衡に殺されようとする。 泰衡に斬られ、銀は急な崖下へ落ちてゆく。 銀がいなくなったことで、龍脈も元に戻り、望美も元気を取り戻すものの、 銀を殺した泰衡を許すことが出来ない。 だが言い争う間もないまま、平泉に頼朝軍が攻めてくる。 平泉にとって脅威なのは、頼朝軍そのものではなく、 頼朝に与している荼吉尼天(北条政子)。 それに対抗する力として、泰衡は大社に政子を封じ込め、 望美から奪った白龍の逆鱗で頼朝軍を焼き滅ぼそうとする。 敵とはいえ、白龍の力で人々を殺そうとすることに望美は抗うが、泰衡の力に敵わない。 そんなとき、大社に死んだと思っていた銀が現れる。 本来なら死んでしまうような崖だったが、 皮肉にも呪詛が、魂が肉体から離れる(=死ぬ)のを防いでくれた。 泰衡の攻撃を受け、ぼろぼろになりながらも望美の元にたどり着く銀。 そのときふたりの魂がふれあい、神子の浄化の力で銀の呪詛が消える。 白龍の逆鱗を泰衡から奪い返し、鎌倉と停戦し和議を結ぶよう説得する。 春が来る頃、平泉と鎌倉の和議が成立。平和が訪れる。 望美も元の世界に帰ることになるが、銀も共に来てくれることに。 みんなに見送られ、望美と銀、将臣と譲は現代に帰ってゆきました。 このあとエンディング曲とスタッフロール。 エンディングスチルは現代でラブラブなふたりなんだけど、 結婚式なのか、タキシードとドレス姿なのでした。 おわり 183 遙か3十六夜銀ルート sage 2006/04/26(水) 03 07 38 ID ??? 追記。 犬萌えの人が萌える、というのは、 泰衡に仕えている銀や、神子に従っている銀が、従順で犬っぽい感じだからかと。 あと、本物の犬で「金(くがね)」ってのがいて それと対比した名前で「銀」だったり、 話の中で泰衡に駄犬呼ばわりされたりと、いろいろ犬関連のネタがあったりする。 184 147 sage 2006/04/26(水) 06 49 49 ID ??? 179-183 トンクスです。 そうか…銀ルートだと知盛は完全死んだことになってるんですね。 (兄弟が再会するのかも…なんて思っていたんですけど) それにしても時空跳躍しまくりで混乱しそうですねw 気になっていたのでありがとうございました。 185 名無しって呼んでいいか? sage 2006/04/26(水) 14 30 51 ID ??? 184 再会とはちょっと違うけど、 十六夜知盛ルートで 知盛と重衡が一緒にいる場面がほんのちょっとだけどあるよ。 和議前日の夜、望美が気になる相手に会いにいけるんだけど、 そこで知盛を選び、かつ絆が足りなくて失敗の場合、 知盛と重衡が一緒に出てくる。 本当にほんのちょこっとなんだけどね。 ルート失敗だし。 320 遙か3十六夜記・譲ルート sage New! 2006/07/11(火) 13 58 17 ID ??? 十六夜記の個別(蜜月)ルートは三段階のイベントと終章・EDだけ。 全体の流れは終章までノーマルEDと全く同じです。 1.二章・春の京にて 譲の姿が見当たらなかったので、弓の稽古先まで迎えに行くことにした神子。 実は現代でも、教室を覗くと忙しそうで声を掛けられなかったりしていた。 折角こちらでは昔のように一緒に居られるので、遊びに誘うつもりだった。 行ってみると稽古は終わったところで、市を見に行くことに。 そこで団子っぽいお菓子を美味しそう、という神子に譲が買ってあげると お店のおばさんに「いいねえ若いってのは 新婚さんかい?」と言われる。 動揺する二人。というか神子もだけど主に譲。 帰ってきて「色々(神子的には市が)面白かった」と言うと 譲が(新婚さんのことか?!)と焦って肩透かしを食らったりする。 2.四章・夏の熊野にて 睡眠不足で顔色の悪い譲を神子と将臣が心配し、昼寝するように言う。 しばらくして譲の夢見が悪かったことを思い出し、様子を見に行くことに。 やはりうなされている譲に声を掛けて励ますと、少し落ち着いたようだった。 夕方になり、よく眠れた、ありがとうと礼を言いにくる譲。 ひょっとしてあの時起きてた?と寝顔を覗いていたので少し照れるが、お礼は 昼寝するようにと言ったことに対してだった。よく眠れたならよかった、で終わり。 3.六章・秋の京にて 庭に譲が植えた花が咲いたことを教えてあげようと譲を探す神子。 声が聞こえたので覗いてみると、弁慶に怪我の手当てをしてもらっていた。 話の内容が自分のことだったので、その怪我は前に庇われた時のものだと気付く。 何かを必死に成し遂げようとしている神子を支えたいと譲は言う。 弁慶は神子に気付いており、譲が無茶をしないように言ってやれと去る。 何度も譲に庇ってもらい、怪我を負わせていた。神子は自分の無力さを謝る。 みんなが傷ついたりいなくなるのは嫌だ。もっと力があればいいのに。 そう思ったとき、白龍の鈴の音が聞こえた。 そのときは一瞬だったけれど、夜、皆を守る力があればと思うとまた鈴の音。 周りの景色が見えなくなり、真っ白な空間に飛ばされる。 訪ねてきた譲の声がして、気がつくと元の部屋に戻っていたが 何故八葉は神子を守るんだろう。龍神の神子にも大したことはできない。 もっと強い力が欲しいと願うと、また真っ白な空間に飛び、白龍の声がした。 ここは白龍と神子とが溶け合う場所で、神子が白龍を喚んだからここに来たのだと。 神子が力を求めるなら叶える。しかし誰も失わずに済む力というのは神の域の力。 人の身でそれを望んではならない。それは人には痛みになるから。 神子の意識はそちらにあるまま、身体がふらふら何処かへ歩き出す。 (この辺りは遙か1や2の最後の物忌みを思い浮かべるとわかり易いかと) 譲が必死に呼ぶので、白龍は帰るように促す。 神子が人として幸せである為、不完全な自分に、神子自身を捧げてはいけない。 「私」を喚んではいけない。そう言われたところで身体の方に意識が戻る。 今のは何だったんだろう?よくわからず、神子であることを不安を感じる二人。 やせ我慢をして笑う神子に何もしてやれることはないのかと、譲は悔しく思う。 つづく 321 遙か3十六夜記・譲ルート sage New! 2006/07/11(火) 13 59 22 ID ??? 4.終章・壇ノ浦決戦前夜 白龍の神子の力が何なのか、今更ながら不安に思い、考えようと小島に上陸する神子。 時空を超えるのは逆鱗の力。呪詛を祓う、怨霊を封印する、それとは全く違う 自分が自分でなくなるようなあの感覚は何だったのだろう。 あの時譲が止めてくれなかったら、自分を失っていたのかもしれない。 自分の力のことすらわからないなんて、と思っているところに譲が心配して来る。 不安だと言う神子に、皆がいるし、白龍の五行の力が戻れば帰れる筈と譲は励ます。 何とか神子の不安をなくそう話すうち、龍神の神子には強い力があると口を滑らせる。 それは神子には初耳で、口ごもる譲に、丁度そのことを考えていたからと強く話を促す。 譲が星の一族に聞いたところによると、龍神の神子には龍脈の五行の力を具現化する力があり 一部ではなく、龍脈の力そのもの、龍神を具現化、つまり召喚することができるらしい。 でも白龍は仲間として居るから、望美の場合はそれには当てはまらないだろうと。 もし龍神を召喚して、それだけ大きな力が使えれば安心だという神子を、譲は強く止める。 書物には身を捧げる、その身を供物とする、とあり、どんな危険があるかわからない。 神子はそれは確かに怖いけれど、大切な人を守る為なら、召喚するかもしれない、と言う。 譲は食い下がり、神子も、自分が譲を心配するように譲も自分を心配していると理解するが 力のことを思うと白龍の鈴の音が聞こえてきて、龍神を召喚できるのだろうかと思う。 5.終章・ラスボス戦後 封印される直前、清盛は自分の身を捧げ、黒龍の逆鱗に呪詛を残した。 白龍の力でも、皆の力を合わせても、穢れの嵐を鎮めることができない。 そこで神子は白龍に確認する。自分を捧げれば貴方を召喚することができるかと。 譲はただの言い伝えだと言うが、そうまで怖れることで、真実だと神子にはわかった。 このままでは穢れが治まらないと言う神子に、譲は断固として反対する。 絶叫に興味がおありのようなので、そこは抜粋します。 「あなたが犠牲になっていいはずない!」でもこの世界が、という神子に大絶叫。 「世界なんて――っ そんなものどうなったってかまわない! あなたと引き換えにできるものなんて、ない!!」 それでも世界を、譲を守りたいという自分の願いの為、神子は龍神を召喚する。 白い龍が現れて穢れは祓われ、嵐は治まったけれど、神子と白龍は戻らなかった。 半年後。譲は元の世界に戻る方法も探さず、京の景時の邸にいた。 神子が守った世界はとても美しいけれど、そこに神子はいない。 景時や朔は心配して気遣うが、譲は何をする気力も湧かなかった。 最後まで神子に守られるばかりで、不安が現実になったことを悔いるばかり。 神子を守りたいと願っていたのに、何も出来なかった。 自分が消えればよかった。世界が平和になったって、なんの意味もない。 微笑んで欲しい。声が聞きたい。会えるのなら、世界の果てにだって行くのに。 譲の手元に残されたのは、白龍の逆鱗のペンダントだけだった。 6.スタッフロール後・ED部分 何もない、真っ白な虚ろな空間の中を彷徨う神子。いつかこの中に溶けていくのだろうか。 それでも、譲を守れたのだから後悔はない。辛い思いをさせてしまったけれど。 そう思っていたところに、譲が呼ぶ声がする。記憶の中の声ではなくて、本物の譲の声。 どうしてここに、と尋ねる神子に、譲はただ会いたかった、と答える。 理屈はわからないけど来られたからいい。一度身を捧げた神子を取り返すことで 何か問題が起こったとしても、神子を取り戻せるならどうだっていい。 神子が守り通した、神子が幸せでいられる世界に帰ろう。と譲が言って終わり。 恐らく京EDと言われています。因みにEDタイトルは『世界の果て』です。 逆鱗の音がしたから逆鱗パワーで連れてってもらえたのではないかと。 実際そこ何処よとか、いや何で半年後?とか、気にしちゃいけません説明なんてないし。 譲の先輩への執念は両手でも足りない年数かかってますので、何処だって行けるんです、多分。 長くなってごめんなさい。貧乏性なので詳細削れなかったorz 451 遙か3十六夜 弁慶 sage New! 2006/10/16(月) 23 36 23 ID ??? 十六夜イベント1 梶原邸にて弁慶の部屋を見せてもらう。 物が多くて足の踏み場もない。 十六夜イベント2 熊野にて宿の子に誘われ、かくれんぼ。 二人で塗り籠の中に隠れる。 弁慶と九郎は小さい頃こういう遊びとは無縁だったらしい。 穏やかな日々とは本来こういうものなのだと弁慶は言い、そしてなにやら考え込む。 十六夜イベント3 御家人が戦が勝った後のことを弁慶に相談しにくる。 ふと、これからのことを考えるが今の戦が終わったとしても戦いはまだ続くことに気付く望美。 弁慶は「僕でなかったなら君に穏やかな日々をあげられたのに…」と一人呟く。 終戦前夜 明日で白龍の神子としての戦いは終わる。 弁慶は望美に元の世界に帰ることを勧めた。 「帰りたくない」という望美に では、もし一緒に望美の世界に行けたなら、という話をして望美と別れる。 その後弁慶は鎌倉殿の戦力を確認し、まだまだ戦は終わらないことを確信す 452 遙か3十六夜 弁慶 sage New! 2006/10/16(月) 23 39 29 ID ??? 最終戦後 清盛を倒した八葉と神子。 清盛は弁慶に「お前も我と同じ、戦を求めずにいられない」という言葉を残し消える。 戦いは終わり、五行は満ちた。今なら元の世界に帰れる。 弁慶は「君は君の世界に帰りなさい。」と告げる。 望美は別れを拒むが、これ以上一緒にいて君を傷付け続けることはできない、 自分はここでやらねばいけないことがある、と。 弁慶の意思は固く、結局望美は一人で元の世界へ戻ることに同意する。 「最後に見る君が笑顔であって欲しい。だから笑っていて」 二人の住む世界は分かたれた。 仲間に責められながらも、弁慶は「これでよかったんだ」と自分に言い聞かせる。 その後、史実通りに九郎は鎌倉殿に追われ平泉に逃げる。が、とうとう追っ手がやってきた。 「とうとうここまでか…」と観念する九郎に弁慶は「まだ策はある」と言う。 「君は北へ逃げなさい。そして決して振り返ってはいけない。そうしたら策は成らない」 弁慶を信じ、逃げる九郎。だが策などなかった。弁慶は命を賭して九郎を逃がそうとしたのだった。 雪が降る中、鎌倉殿の追っ手と対峙する。 矢が何本も体に刺さり意識が薄れる中、弁慶は望美の幻を見る。 思い出したかったのは笑顔なのに幻は泣き顔だった。 しかし望美は幻ではなかった。時空を超えて再び弁慶を追いかけてきたのだ。 追っ手が「龍神の神子だ」と騒ぐが、 自分はもう神子ではない一人の人間として弁慶を助けに来たのだと剣を構える。 追っ手を倒し、二人は望美の世界で共に暮らすこととなった。 453 遙か3十六夜 弁慶 sage New! 2006/10/16(月) 23 50 46 ID ??? 最後の部分が重要かと思ってそれ以外は結構あっさりめに書いた 薄すぎたらごめん ちなみに終戦前夜と最終戦後に「帰りなさい」と言われるが ここで選択肢間違えると一人で帰ることとなりそのまま完(BADEND) 454 450 sage New! 2006/10/17(火) 19 30 30 ID ??? 451-453 いえ、よくわかりました。有難うございました! 面白そうなのでやってみようと思います。 BADENDもちょっと気になるw 455 名無しって呼んでいいか? sage New! 2006/10/19(木) 00 08 55 ID ??? 454 弁慶ED投下さんではないけど、「元の世界へ帰りなさい」と言われ しつこく「嫌だ一緒に居たい」を選ぶ→BADED 弁慶の「それでは君の嫌がる事をしましょうか。まずは…そうだな」と 脅すような台詞にしぶしぶ現代へ帰る神子、だったと思う。
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死恐怖症。 タナトフォビア。 死そのもの、またはそれに関連した事柄に対する恐怖症の俗称。 意識の喪失による無。 死に伴う孤独や痛み。 理不尽で悲惨な死。 生や死そのものの不可解さ。 死ぬことによる他人からの忘却。 身近な誰かの死。 これらについて病的な恐怖心を滲ませる人間は、タナトフォビアに羅患している可能性があるとされる。 彼ら、彼女らにとって人生は絶望の旅路だ。 どんなに楽しい時間を過ごしていても死の影が常に付きまとう。 集合体や高所への恐怖症とは違い、解放されることはない。 何年後、遅くても何十年後には必ずやってくる恐るべき「おしまい」を恐れながら生きていくしかない。 ◇◇◇ 努力することは素晴らしい。 努力しないで現状に文句を垂れる者は浅ましい。 金。 社会保障。 愛。 幸福。 足りない足りないとほざく有象無象の何と惨めなことだろう。 しかし、しかしだ。 世の中には、ほんの一定数だが、いる。 努力する、しないではなく。 そもそも、努力すらさせてもらえない人間が。 未来はいつだとて閉ざされ、一筋の希望も見えやしない。 立って外に歩き出そうにも、物理的な障害があるから叶わない。 そんな中で希望を抱こうとすれば、痛みと苦しみが笑いながらやってくる。 そんな、世界に嫌われているとしか思えないような人間が、この世には確実に存在する。 九條未咲という少女もまた、その一人だった。 鎖に繋がれて、いつでも薄暗い部屋の中で一人きり。 犬用の餌皿に乱暴に盛り付けられた食事と一日一杯の水だけで体の健康を維持する暮らし。 体を壊せばおしまいだ。 殴られ、罵られ、放置されて死んでしまう。 だから未咲は体を猫みたいに丸め、温めて必死に祈る。 どうか、風邪だけは引きませんように。 病気だけは、しませんように。 神さま、わたしはまだ死にたくありません―― そう。 彼女は、世界に愛されていなかった。 運命に、蛇蝎のごとく嫌われていた。 ◇◇◇ ……その日は、いつもより少し「しつけ」が長かった。 きっかけは、少女の母親が旦那を問い詰めたことだった。 女の旬を過ぎてなお変わらない嫉妬深さを持つ彼女は旦那のメール履歴を漁り、浮気の証拠を発見して突き出したのだ。 何しろただでさえ遊び人、浮気性な男だ。 これまでにもこんなことは何度もあった。 浮気がバレて、母親が激怒して、父親が何か口を返して大喧嘩になる。 大抵その皺寄せは少女に来るところも、ずっと変わらない。 ただ、ひとついつもと違うのは。 今日は――最初から父親の方も虫の居所が悪かったことだ。 問い詰められた父親は母親に拳を振るった。 一も二もなく、顔面を殴り飛ばした。 そこから始まるのは、物を投げ合い、口汚い暴言を飛ばし合う地獄絵図。 喧嘩の激しさがいつもより上なのだから、当然、来る皺寄せもそれだけ大きくなる。 母が、父が。 かわるがわる現れて、少女を殴り、蹴り、辱めた。 おまえのせいだと。 おまえみたいな陰気な娘がいるのが悪いと。 それに対し少女は謝るだけだ。 自分の正当性なんて、聞き入れられるとはとっくに思っていない。 いや、それ以前に。 自分が正しいという考えさえ、ずっと昔にどこかへ置き去りにしてしまった。 殴られ、叩かれ、意識は時折火花を散らして飛んでいく。 その度に寝ていると咎められ、蹴り起こされてはまた同じことを繰り返す。 少女には、もはや冷静な頭なんてものは残っていなかったが―― 同年代の子供に比べてただでさえ発育の悪い彼女なのだ。 このまま嬲られ続けていれば、今日こそは保たなかったろう。 何せ終わる兆しが一向になく、どんどん振るわれる手足の勢いは増している。 掴まれ、投げ飛ばされるようになったらいよいよだ。 鈍器で殴りつけられるようになったらそろそろだ。 頭を直接床にぶつけられるようになったら、もうすぐだ。 「その時」は近いと、未咲にもなんとなく分かった。 生物としての直感だった。 それがあるなら、生物としての本能も当然ある。 いや――それどころか彼女の本能は、常人のものよりずっと上であった。 虐げられて痛め付けられ、あらゆる希望と尊厳を奪われてもなお。 それだけは明確に、変わることなく少女の中にある。 少女は空っぽだ。 九條未咲は人形だ。 それでも。 人形は一つだけ、願いを持っていた。 死にたくない。 生きていたい。 どんなに不運でも、生きていられればいい。 死ぬのはこわい。 どんな痛いことよりも、死ぬことだけがこわい。 声をあげようにも意味のある声が出せない。 暴れたくても手足が竦む。 結果、聾者のように意味の通らない呻き声をあげるだけ。 ――神さま、神さま、どうかわたしを助けてください。 わたしは死にたくない、死にたくないんです。 それだけなんです、生きていたいんです。 だって死ぬのはこわいから。 死んだ後に何があるのかなんて誰にもわからない、天国や地獄が本当にある保証はどこにもありません。 おそろしい血の池で溺れるのも、金棒を持った鬼に叩かれるのも我慢できます。 でもなにもない暗闇で動けないまま放っておかれるのは耐えられません。 だから、だから、だから、だから! どうか助けてください、わたしをひとりにしないで! その声に、しかし散々少女を嫌っている天の神が応えることはなく。 怒りに肩を震わせている父親は、ゆっくりと硝子の灰皿を振り上げた。 あれで殴られれば、未咲の脆い骨など軽々と砕かれてしまうだろう。 加えて狙いは頭部。 言わずと知れた人体の急所。 絶望に顔を染め、逃げようと足を動かすが足は鎖で繋がれている。 もうだめだ。 もう、どうにもならない。 筆舌に尽くしがたい恐怖に震えながら、最後の抵抗として目をつぶる。 そして未咲は、神さまを恨んだ。 たとえ自分がこれからどこに行くにしろ、どこにも行かないにしろ、ずっと恨み続けてやる。 子供じみた、だからこそ何より強い想いを発して。 父の手に握られた灰皿が、その小さな頭にゆっくりと迫り…… 「■■■■■■■■」 少女の目の前で――その首が胴を離れた。 飛び散る飛沫が煤けた服を久々の水気で染めていく。 怒りの形相を浮かべたままの首が畳の上に落ちる。 それからやや遅れて、首から上をなくした父の体が崩折れた。 「……え……?」 その先に、見慣れない男がいた。 右の手首から先を父の血でべっとりと汚して、全身も未咲と同じく返り血に塗れた青年。 錆びついた槍と泥や煤で汚れた鎧を纏った、美しいのにどこか「ズレた」見た目の騎士だった。 顔は狂ってしまっているかのように口元だけ笑顔を浮かべている。 いや、事実狂っているのだろう。 何故なら正気の人間に、こんな目はできない。 騎士の目に宿る瑠璃色は、静かなる狂気の光で満ちていた。 突然静かになったことを不審に思ってか、襖を開けて母親が顔を覗かせる。 そこに、騎士は無言で携えた槍を突き出した。 母親もまた、何が起こったかすら分からないまま、絶命。 眉間に大穴を開けて、間抜けに口を半開きにして無様に死んだ。 「■■■■■■■■」 時間にして、たった二十秒ほど。 たったそれだけの時間で、何年にも渡り九條未咲を苛んできた「地獄(かてい)」は完膚なきまでに崩壊した。 九條家の人間は今や、未咲しかいない。 暴力と暴言に始まり、あらゆる悪意を向けてきた両親は一瞬にして殺された。 この――おぞましい騎士の手で。 底知れない妄執を香らせる美丈夫によって、ゴミのように命を絶たれた。 それを見て、未咲はおずおずと口を開く。 殺された父と母。 その死体を交互に一度だけ見て、震えを押し殺して声を発した。 「かみさま、ですか?」 「■■■」 違う、といったように聞こえた。 「■■、■■■■■■」 何を言っているのかは理解できないが―― 未咲にはひとつ、わかったことがある。 この人はきっと、いい人ではない。 しかし、自分を助けてくれる。 自分を死から遠ざけてくれる。 永遠に、近づけてくれる。 ……それを証明するように、 九條未咲の手の中には、 小さな翼付きの指輪が握られていた。 ◇◇◇ 九條未咲は、歴史に詳しくない。 義務教育をまともに受けていないのだから当然だが、それだけに彼女は自分のサーヴァント……『バーサーカー』を本物 の騎士なのだと疑いもせずにそう信じ込んだ。 しかし、それは誤っている。 部分的に見れば当たっているが、真実はその真逆だ。 バーサーカーは騎士ではない。 騎士を名乗り、自分を騎士と信じ、その末に天寿を全うした「妄信の怪物」。それが彼だ。 ついぞ自身の在り方を正しく見つめることなく、妄想症(パラノイア)に身を委ね続けた奇人。 彼の活躍を記した前後編の小説は、かの聖書の次に世界中で多く読まれたという――彼はまごうことなき精神異常者であ りながら、世界中の誰からも深く愛された。 弱者から奪わず、常に自分が信じるままの高潔な騎士であり続けた男。 精神を病んでいながら、深い見識と様々な技術で立ちはだかる問題を解決してのけた彼。 錆びた槍と煤けた防具、痩せた駄馬と一人の臣下だけを連れて果てない旅に出た滑稽で幸福な愚か者。 彼は風車を巨人と呼んで突撃し、地平線に数え切れないほどの大軍勢を見た。 そんなもの、実際にはどこにもいないにも関わらず。 けれどそれは、彼にとってはれっきとした真実の世界なのだ。 ゆえに彼は狂戦士(バーサーカー)。 狂気にして正道を成す、矛盾したピエロ。 彼はかつて、自らの名をこう名乗った――「伝説の騎士」ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと。 だが、それは偽りの名である。 彼の真実はアロンソ・キハーナという下級貴族で、間違っても騎士などではない。 その現実さえ逞しい妄想でねじ曲げて、今彼は此処にいる。 助けを求めた一人のか弱い幼娘の願いに応えて、 虚弱な体を彼女の「信じる気持ち」で武装して、ドン・キホーテは仔雲の地に召喚された。 「わたしね、生きたいの」 血の臭いがまだ辛うじて届いていない、九條家のリビング。 ソファに腰かけたバーサーカーの膝上にちょこんと座って、未咲は彼に自分の願いを口にした。 「死にたくない。ずっとずっと生きていたい」 永遠。 永遠だ。 終わらない寿命がほしい。 それは年相応の願望ではとてもなく、しかしタナトフォビアの患者としては当たり前の願いごとだった。 一生抱え続けなければならない恐怖から解放される、そのどれほど幸福なことか。 「だから、たすけてください」 バーサーカーの顔を見上げる。 乾いた血飛沫を、つたない指先で剥がして。 「わたしに、永遠(ずっと)をください」 バーサーカーは意味の通る言語は発さない。 だが彼は、この「伝説の騎士」は、少女の懇願にゆっくりと首を縦に降った。 彼は強い。 夢見た姿なのだから当然だ。 しかし本来なら、さしもの彼も自分の妄想だけでは人類史に名を残した英雄達に比べれば弱小の半端者止まり。 このように高ランクの狂化を施すことで、どうにか中級サーヴァントとして運用できる程度の三流英霊。 にも関わらず、今のバーサーカーは上級サーヴァントに匹敵するステータスを得ていた。 ドン・キホーテは妄想の産物。 アロンソ・キハーナの夢見る気持ちから生まれた架空の騎士。 それだけに、彼の強さは信じる思いの強さに依存する。 九條未咲は、自分を助けてくれた彼に強い信頼の念を捧げていた。 ――軟禁同然で虐げられ続ける毎日と、 ――間近に迫った死の運命から救い出してくれた、 ――神さまよりずっと優しい無敵の騎士。 その信頼が、何よりバーサーカーを強くする。 ドン・キホーテは九條未咲の最後の希望。 だから強い。どこまででも強くなる。 今まで何一つ掴めなかった幸薄の少女に、望むだけの永遠をやるために。 ――騎士道物語『ドン・キホーテ』は、此処に再開された。 【クラス】 バーサーカー 【真名】 ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ(アロンソ・キハーナ) 【出典】 ドン・キホーテ 【性別】 男 【属性】 混沌・善 【身長・体重】 190cm・80kg 【ステータス】 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運A 宝具C+++ (本来のステータス) 筋力C 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運A 宝具C+++ (スキル「妄信の怪物」によるステータス) 筋力A 耐久A 敏捷B 魔力E 幸運A 宝具C+++ (宝具『騎士道物語』によるステータス) 【クラススキル】 狂化:B 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。 【保有スキル】 妄信の怪物:EX 自らを別な存在と信じ込む余り、自己を物理的に変革させる究極のパラノイア。 揺るがぬ妄想を以って人々に希望を与え、正義を執行し、その旅路を世界中に知られた彼の場合ランクは規格外。 自身の筋力、耐久、敏捷のステータスを1ランクアップさせる。 またこのスキルはAランクの「精神汚染」も兼ね備えており、狂化スキルと相俟って彼の精神に干渉することは極めて困難 となっている。 伝説の騎士(偽):A 「妄信の怪物」に由来する自己強化スキル。 何かを守るために戦う時、誉れある戦いに臨む時、筋力、耐久、敏捷に更なるバフが施される。 Cランク相当の「無窮の武錬」スキルを始めとした様々な戦闘系スキルも内包しており、彼の戦闘能力はこのスキルに裏打 ちされたものである。 専科百般:B かつて正真の貴族をも驚愕させた、狂人とは思えないほどの深い見識や技術の数々。 戦術・学術・隠密術・暗殺術・詐術・話術・その他総数32種類に及ぶ専業スキルについて、Cランク以上の習熟度を発揮で きる。 とはいえ今回はバーサーカーで召喚されているため、実質的に使用できるスキルの数はそこから多少減る。だが隠密・暗殺 術を用いたアサシンの真似事、狂いながらも的確に駆使する戦術や学術に基づいた対応力など、彼は持てる才能を聖杯戦争 の中で存分に発揮してのけるだろう。 【宝具】 『騎士道物語(ドン・キホーテ)』 ランク:C+++ 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:1 ――彼に伝説はない。それどころか、彼は正当な騎士ですらない。 妄想と憧れだけで遍歴の旅を繰り広げ、その活躍を世界中の人間に愛された、人類史上最も幸福な精神異常者。 そんな彼が魅了され、絶えず抱き続けた底なしの妄想が昇華された対己概念宝具。またの名を、自己改変・世界侵食宝具。 彼の活躍を強く望み、信じる者がある限り、彼は決して挫けない。進み、ねじ伏せ、夢見た騎士道を実現させる。 「妄信の怪物」「伝説の騎士(偽)」という二つの虚構で徹底的に支えられた戦闘技能は宝具の効果で更に高められ、彼の 武芸は人類史に名高き無双の戦士達と比べても何ら遜色のない領域にまで達している。宝具の効果は信じる強さと状況に依 存し、誰かを守る時に最大となる。 更に真名解放を行うことで、一時的にだが自身の脳内に存在する幻想風景を外部に投影することができる。 風車の巨人、地平を埋め尽くす大軍勢、背筋も凍るおぞましい魔竜。 生半なサーヴァントでは、彼の見る過酷な世界を生き抜くことなど出来はすまい。 【武器】 錆び付いた槍と防具一式。 愛馬ロシナンテは今回は置いてきている。 ライダーのクラスで召喚されると、ステータスは落ちるがロシナンテも同伴で呼び出されるらしい。 【人物背景】 本名、アロンソ・キハーナ。 世界中で聖書の次に読まれたという小説、「ドン・キホーテ」の主人公。 しかし当聖杯戦争では彼はれっきとした実在の人物であり、その勇ましくも滑稽な旅路をミゲル・デ・セルバンテスが書き 留め、出版したという設定。 彼は当初、何の変哲もない下級貴族の男だった。 が、当時の欧州で大流行していた騎士道物語と出会ってから、彼は変わる。 自らをドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと名乗り、まるで自身が本物の騎士であるかのように振る舞い始めたのだ。 そう――アロンソ・キハーナは物語に没頭するあまり、重篤な妄想症(パラノイア)に取り憑かれてしまったのである。 痩せ馬に跨って各地を駆けた彼は時に笑い者にされたが、不思議と彼には尊敬と友情が集まった。 本来彼はスキルの存在を踏まえても三流以下の弱小サーヴァントで、狂化を施してようやく使い物になるレベルの存在だ。 にも関わらず今回これだけのスペックを持つサーヴァントに仕上がっているのは、ひとえにマスターの境遇が大きい。 虐げられ、辱められ、あらゆる未来を幼くして奪われた悲運の童女。 彼女は「ドン・キホーテ」以外の希望を知らない。だから、誰より彼を強く信じる。 信じる想いがある限り、信じる想いから生まれた妄想の騎士は無敵。 最後の希望は斯くして立ち上がった。 【特徴】 藍色の瘴気を全身に帯びた、長身痩躯の美丈夫。常に口元に笑顔を浮かべている。 本来彼は壮年の男だったとされるが、そこはこの手の妄想の常、顔立ちが美化されている。仕方ない。 金髪を腰の下ほどまで長く伸ばし、瞳には美しくも狂気的な瑠璃色の光が煌めいている。 【サーヴァントとしての願い】 騎士としての本分を尽くす。 【マスター】 九條未咲(くじょう・みさき) 【武器】 なし 【能力】 なし。体力がなく、虚弱で、幸が薄い。 【特徴】 身長136cm、体重34kg。夕焼け色の瞳を持つ。 灰髪ショートヘアで頭頂部には二本のアホ毛があるのが特徴。 襤褸布のように煤けた上下の寝間着姿。 【人物背景】 十三歳の少女。本来なら中学生だが、学校には通っていない。 一人称「わたし」、二人称「あなた」「君」「◯◯さん・くん」。 遊び人の父親とヒステリー持ちの母親のもとに生まれ、双方のストレスの捌け口として使われ続けてきた。 ほぼ軟禁同然の形で虐待されてきたため、実年齢より言動がいくらか幼い。 バーサーカーにより両親は既に殺害され、ようやく真の意味での自由を手にすることとなる。 永遠に幸せに生きたい。彼女の願いはただそれだけ。 幸せになるため努力することすら許されなかった籠の中の鳥は、妄想の騎士により連れ出された。 抱える病みは『タナトフォビア』。死を恐れ、忌む。死にたくない。生きていたい。それがすべて。 【マスターとしての願い】 幸せに、永遠に生きたい
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登録日:2012/04/16(月) 11 27 17 更新日:2023/06/10 Sat 08 32 40NEW! 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 お調子者 ず〜じぇれぇ〜♪ キックボード シュウゾウ・マツタニ レジェンズ 主人公 光の戦士 吹き抜ける風 小学生 岡村明美 愛すべきバカ 明日は明日の風が吹く 松岡修造 ←ではない 泣き虫 涙腺崩壊 腹筋崩壊 部長 風のサーガ 高所恐怖症 関係ねーよ! 何がどうなってんのか全然わかんねーけど、そんなの関係ねーよっ! オレ達…、11年の付き合いなんだぜ!? 『レジェンズ~甦る竜王伝説~』の主人公。 CV 岡村明美 【概要】 ニューヨークに住む11歳の少年で、家族と3人暮らしをしている。日系アメリカ人で、愛称は「シュウ」。 「い」の字Tシャツがお気に入りらしく、いつも着用している。また、サンダルを履いている。 ブルックリン101小学校に通っており、同級生のメグとマックとは幼なじみにあたる。通学時はキックボードを使用する。 少年野球チーム「リキリキリッキーズ」に所属している。戦績は負けっぱなしだが、シュウ本人は気にしていない。 明るくお調子者な性格で、可愛い女の子には目がない。 臨時教師として赴任してきたレジェンズマニアのハルカ(美人バージョン)やハーピーのアンナには、真っ先に一目惚れした。 それ故にメグから嫉妬されたり、チョップを受けることも良くある。 ブルックリン大橋とイーストリバーが見える古い時計台が秘密基地で、「風」を感じることができるお気に入りの場所。 …が、実は高所恐怖症で、とても高い所に上がると大泣きする。 独自のネーミングセンスを持ち、相手をあだ名で呼ぶことが多い。その為シュウから本名で呼ばれるキャラは少ない。 主な一例 シロン:ねずっちょ、でかっちょ、天駆けるミスターねずみ男 ディーノ:キザ山キザ夫 BB:おばっちょ ランシーン:わるっちょ→いいっちょ 基本的におふざけ要員だが、その天真爛漫な性格によって救われた人物も多い。 【作中での活躍】 野球の試合を終えたある日、DWCに勤務する父親のサスケから、話題のおもちゃ「タリスポッド」を貰う。 だがその翌日からBB達に狙われるようになり、追い詰められた末に偶然、ウインドラゴンのシロンをリボーンする。 この事件がきっかけで風のサーガに選ばれ、『レジェンズ』の物語は始まった…。 サーガに選ばれたとはいえ、シュウにその自覚は全くと言っていい程なく、ねずっちょ状態のシロンの扱いもぞんざい。 宝物の野球カードを取り戻す為にタリスポッドを手放そうとしたことがあり、シロンも「何でこいつがサーガなんだ?」と思っていた模様。 だが、感情が高ぶると周りに風を起こし、低空だが飛ぶこともできる。この力にはランシーンも一目置いていた。 家族想いな性格でもあり、とにかくシロンのことを家族に隠そうと必死になっていた。 家族をBB達とのゴタゴタに巻き込みたくない一心から、シロンに向かって「お前、もうウチ来んなよ…」と言い放ったこともある。 その後のガリオン覚醒やエレメンタルレギオンの件もあり、シロンは一度自分の元から離れてしまう。だが花火大会の日にはシロンの元へ駆け付け、そのピンチを救った。 なぜ駆け付けたのかというと、「一緒に花火を見る為」。何だかんだでシュウらしい。 シロンからは一貫として「風のサーガ」と呼ばれているが、シュウ本人はその呼び名があまり好きではない。 なのでいつも「シュウって呼んでみ?」と呼びかけるが、「呼ばねーよ」と返されてしまう。 四大レジェンズが集結してからは『レジェンズクラブ』を設立。自らは部長となってクラブを取り仕切ったりテーマソングを作ったりした。 以下、終盤ネタバレにつき注意! CEOによるジャバウォック復活を止める為、闇のレジェンズ達と戦うシュウ。だが、CEOの部下の黒水晶が彼に迫る。 その時、母親のヨウコがシュウを庇い、黒水晶に寄生されてしまう。 ヨウコを部屋に運ぶシュウだったが、何もすることができず…彼女は黒水晶に取り込まれてしまった。 家族を、自分達の戦いに巻き込んでしまった。 家族を、守れなかった。 その事実にシュウは絶望に打ちひしがれる。 シュウが涙する光景を見た傷だらけのシロンもまた、涙と共に咆哮した…。 風は止まり、レジェンズウォー開戦のカウントダウンは始まった。 しかし、かつて心を通わせたアンナの必死の説得を受け、シュウは再び立ち上がる。 サーガの力を発動させ、シロンとランシーンをあるべき姿――カネルドウインドラゴンに戻すと、アンナにヨウコのことを託し、DWCに軟禁されたメグ達の救出に向かった。 救出には成功したものの、心を失ったシロンによりレジェンズウォーは開戦。シュウ達は異世界レジェンズキングダムに飛ばされる。 そこで出会った光のレジェンズ達の導きで、心の欠片(ねずっちょ)を抱え、相棒の元へと走り出す。 一度はレジェンズ同士の殺し合いに怯えてしまうが、ヨウコの幻に励まされ、シロンの心を取り戻すことに成功。 その結果、シロンはシルフの力を借りて6マス戻ることができた。 実は、預言書『螺旋の書』に記載された「吹き抜ける風」はシュウのことを指す。 対となる「渦巻く風」はシロンのことであり、この2人が力を合わせれば、レジェンズの宿命を変えることができるという。 6マス戻った世界で、シュウは仲間達と共に光のエレメンタルレギオンをリボーン。 「光の戦士」としてジャバウォックの体内に突入し、取り込まれていたハルカの母親・ラドを救う。 ランシーンの決死の行動(*1)で宇宙に上がったジャバウォックが消滅したことでヨウコも黒水晶から解放され、再会を果たすことができた。 しかし。 宿命を変えた代償は、余りにも大きすぎた。 戦わない道を選んだレジェンズ達は消滅し、地球に還る運命にある。それと同時に、レジェンズと関わった者の記憶も消えてしまうのだ。 アンナの消滅を茫然と見届けたシュウは、消えゆくシロンに向かって「名前を呼んでから行け」と言う。 いつも通りの漫才のようなやり取りをしたシロンは、青空へと飛び去って行った。 ―――シュウの名前を呼びながら。 あ、な、何なんだよオメー。ちゃんと言えんじゃねーかよ!バッカだなーオメー。まったくもー、照れ屋チンなんだからよ!このでかっちょモ… バカかよ…。何もう消えてんの?オレが…呼び返してないじゃん…? ねずっちょ…、副部長…、でかっちょ…、天駆けるミスターねずみ男ぉ…… …し…、シロン…っ…、シロ――――――――――ン!!!! それから時は流れ―――いつもの野球の試合の帰り道、シュウは1匹のハムスター(?)とすれ違う。 そう、それこそが…。 【余談あれこれ】 劇中では(キャラソン以外)よく変な歌を歌う。その為持ち歌も他のキャラより多め。 ◇レジェンズクラブの歌 「ず〜じぇれぇ〜♪」から始まるクラブのテーマソング。演歌調で、何気にメンバーの名前の頭文字が入っている。グリードーのコマンド覚醒の鍵となり、好評だった為か後にリクエストコーナーで再び流された。元ネタはセクシーコマンドー部の歌。ってことはシュウはマサルさんの後継者…? ◇レジェンズクラブ応援歌 「ま〜た変なのが始まったよ…」(byシロン)その名の通り、クラブの応援歌。相変わらずカオスな歌詞となっており、シロンとG.W.ニコルの面々も突っ込んでいる。DWCに突入する時にも歌っていた。 ◇ずんだらめの歌 「お〜れが作ったずんだらめ〜のう〜た〜♪」。実は『十兵衛ちゃん』のバンカラトリオの歌が元ネタ。 ◇風の街でオマエとオイラ キャラクターソング。ねずっちょのコーラス(合いの手)入りで、ある意味デュエット。。最終回後に聴くと涙腺崩壊兵器と化す。 フルネームは『今、そこにいる僕』の主人公・松谷修造から。中の人も愛称も同じであることから、大地丙太郎監督のセルフパロディと思われる。 GBAのゲーム『甦る試練の島』『サインオブネクロム』ではサブキャラとして登場。前者ではレジェンズパークで主人公と出会い、トーナメント戦では戦うことになる。後者では異世界に飛ばされてシロンとはぐれたり、BBそっくりのセイレーンにより熱を出して寝込んだりと大変な目に遭う。 オイラの名前を呼ぶときにちょっぴり オマエは照れ臭そうに 昨日と同じに風は吹いてるから オマエが照れ臭そうに 何気なくこの街角に きっと戻るのだろう でかっちょー!この項目の追記・修正よろしくなーっ! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] あの最終回を見て、「記憶は消えても絆は消えない」と思ったのは私だけ?英語サブタイもそれっぽいし… -- 名無しさん (2013-10-11 22 55 22) 歴代のサーガでもシュウは異例中の異例なんだろうな。もはや異物レベルで。だからこそレジェンズ達を運命や過去の呪縛から開放できた。 -- 名無しさん (2020-11-20 13 08 37) 名前 コメント
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現在確認している参加者の名簿です 随時更新。 フルネーム パトリオット 「アハアハ、冗談じゃないわぁ」「殺しても殺してもキリがないわねぇ」「権限に基づく簡易裁判…はい死刑よぉ。この場で即執行するわぁ」 性別 ♀ 年齢 27 種族 人間 職業 魔狩人 容姿 身長172cm 体重56kg。燃え立つような紅い長髪で艶のある整った顔立ち。瞳は深く濁った鳶色の眼。余裕のあるネイビーカラーのインバネスコートを着用している。 装備 “ウィッチハンターX001-03 Sawed off”プロイセキア帝国で製造されたレバーアクション式ライフル銃のソードオフカスタム。射程距離の低下と引き換えに、携帯性を向上させた。独特のレバーアクションを使いこなせば、回転弾倉式拳銃並の連射も可能。また、儀礼済の水銀弾頭を用いるため霊的存在に対しても有効。莫大な製造コストに加え、魔術ほどの効果は見込めないとして数丁ほど試作されたところで開発中止となった。なお、彼女は帝国に軟禁されている南方からの技術者にカスタムを強要させる際、数人殺害している。※モデルは、ウィンチェスターM1873 “マインゴーシュ”左手用の短剣であり、通常のダガーより若干長く幅の広い護拳が付いているため良く手を護る。本来は防御用の近接装備だが、使い手が優れていれば敵の肋骨の隙間に差し込むなど攻撃にも十分活用できる。 “魔狩人の外套”深い紺色のインバネスコート。背には魔狩人を示す紅い紋章が刻まれている。 “スティールハントグラナーテ”プロイセキア帝国の最新型柄付き手榴弾であり、火薬が詰まった薄い金属製の容器と木の柄によって構成されている。形状から、ポテトマッシャー(じゃがいも潰し)という俗称がついている。 “委任状”魔狩人には調査・裁判・執行に際しての義務を果たすための権限が与えられている。 能力 “超感覚”極限まで研ぎ澄まされた第六感と呼ぶべき感覚。幾度となく死神の鎌を潜り抜けてきた彼女が最も信頼する武器である。 設定 先々代皇帝により設立された公式教団機構の異端審問官であり聖堂魔狩人。その聖なる義務は、プロイセキア帝国と市民を魔の勢力とそれらに従う者から守護することである。彼女は生粋の愛国者であり、魔狩人の使命と義務の遂行に有能さを示す。しかし、その『狩り』の実情は罪ある敵を斃せるならば巻き添えでどれだけの人命が損なわれようと、何らの痛痒を覚えることはないというエスカレートの一途を辿っている。 別キャラ ユーキ フルネーム ピリカ 「アチキはピリカなのら!」 性別 ♀ 年齢 不明 種族 妖精 職業 フェアリー 容姿 体長30cmほど黄色とピンクを基調にした蝶の羽ポニテ 装備 能力 自分が不幸になった分、幸運を他人に分け与える能力 設定 神出鬼没の妖精族。妖精の輪を通り抜けて、世界各地を当てもなくふらふらとする人間を警戒する者も多い妖精族においては珍しく人懐っこく、独特の共通語で愛嬌を振りまく赴くままに行動する節があり、しばしば厄介ごとに自ら首を突っ込む羽目になる尤も、そうして自分が災難に見舞われる分、他の誰かを幸福にできるのだが好奇心フェアリーを殺す 別キャラ ネーネィ、マイア、メシュリエ、ライム、ララ、ルル フルネーム フランチェスカ=スタンフォード 「『武器』って面白いよね!」 性別 ♀ 年齢 18 種族 人間 職業 武器商人 容姿 身長160cm程度ラフな格好商売相手にはスーツ茶色がかった長い髪 装備 鍵の束 アーミーナイフ 能力 異世界から様々な物を呼び寄せられる 商人としてのずば抜けた才能 設定 ハイレリア群島諸国出身の武器商人。火薬から大剣、銃まで大体のものはそろえている。ハイレリアや周辺国では名の知れた武器商人であり、貴族の血筋を引いているため国のトップにコネがある。肌身離さず持っている鍵の束は様々な魔物や「材料」を召還するために必要なものであり、魔界や異世界と一時的につながりを作ることができるが、何が召還されるかは本人にも分からない。この術を使ってアバカンをこの世界に召還してしまったが、2人ともそんな事は全く気にかけずユナを含めて本当の兄妹のように仲が良い。護身用に持っているナイフの使い方はアバカンから教えてもらった。故郷に戻ることは殆ど無く、基本的に世界を駆け巡って商売をしている。現在はレパヴリア共和国のヴェリアプルに滞在。通称はフラン等ではなく何故か「フィル」 別キャラ アバカン、ユナ フルネーム フレデリック.G.バーンズ 「総員、第1種戦闘配備!」「援護する!突っ込め!」 性別 ♂ 年齢 30代前半 種族 人間 職業 傭兵 容姿 迷彩服、黒髪、 装備 突撃銃、分隊支援火器、近接武器、投擲武器、擲弾筒 能力 様々な銃器及び搭乗兵器の運用、操縦 錬金術による銃弾、弾丸の錬成、指揮能力 設定 地球からこの世界に迷い込んだ元傭兵。この世界に迷い込んでしばらくして特殊な錬金術が使えるようになり、それを利用して現代兵器を使っている。ある事件をきっかけに南方連合へと自前の傭兵団と共に向かい、そこで要塞の総司令官となる。要塞は近代改修が行われ、そこで半ば軍隊となった傭兵たちを指揮していたが、突如現れた魔力嵐が原因で、原点の地ヴェリアプルに一機のヘリと少しの部下と共に舞い戻ってきてしまう。昔はアバカンと名乗っていたが、これはコードネームであり、最近になって実名を公表した。 別キャラ ユナ=クルス、フランチェスカ=スタンフォード フルネーム ボロウズ 「「・・・・・・・・・・・。」【しばし静止】」「「・・・・・・・・・あぁ」」 性別 ♂ 年齢 ???(数えていない) 種族 リザードマン 職業 鍛冶師 容姿 リザードマン人間の体にイグアナの頭を乗っけたような外観表面は緑の鱗に覆われていて尻尾が生えている普段は茶色のローブ仕事時は半ズボン 装備 仕事に使うハンマー以外特に無し 能力 鍛冶師としての腕 口から火を吹ける 設定 人の世に興味を持ちリザードマンの社会と絶縁して人の世に降りてきたその後山奥で生活する偏屈な鍛冶師に弟子入り 超一流ともいえる腕を手に入れる師匠が没した後は世界を回りその腕を振るってきた そのため『流浪の鍛冶師ボロウズ』は世界でも名の知れた通り名になる発言・行動 共に極めて遅く せっかちな人を怒らせることも しかし本人 かなり頑張っているらしいが改善されている節無し 別キャラ [[]] フルネーム ヒビキ・シン 「り、りリュウ……り、りリュウ・シン……お、弟、わ、わたしの……」「う、うん……!、あ、あり、がとう、こ、この街、いい、ば、場所……」 性別 ♀ 年齢 17 種族 人間 職業 魔楽器の奏者 容姿 身長:160cm 体重:41kg。黒い長い髪に華奢で痩せた身体、白い肌と整った容姿を持つ当初はぼさぼさの髪にボロボロの服、がりがりに痩せ細った身体だったが服をリュウに見繕ってもらい、宿で入浴し、食事を取り、状態を改善した。 装備 “音撃のオカリナ”ヒビキがアルマティアで出会った魔楽器職人にもらった物楽器自体に魔翌力が宿る、魔楽器である吹いた曲に反応し、音の聞こえる範囲にその効果をもたらす。攻撃に使えば攻撃魔法と同等の威力を出すことも可能であるが、ヒビキは補助、回復用の曲しか知らないため、攻撃は高音による衝撃波のみに留まる。 “装甲の音叉”これも魔楽器職人にもらった物で魔楽器の一種鳴らした者の全身を魔力のベールが覆い、ある程度の防御力や魔法耐性を賦与してくれる。 能力 “英雄の行軍歌”魔楽器で奏でる曲魔法の一曲勇猛果敢な英雄の活躍を称えた曲で、聴いたものの、攻撃性と俊敏性を助長し、戦闘における各肉体能力を強化する。 “平穏の夜想曲”平穏な夜の静けさを描く歌で聴いたものの精神を安定させ、混乱を鎮める。 “抱擁の交響曲”暖かい、人の温もりと陽の優しさを感じさせる曲聴いたものの自己治癒力を助長、強化し傷を塞ぐ。 “愚者の輪舞曲”不思議で奇妙な曲調の感じのつかめない曲聴いたものの攻撃魔法の効果をある範囲、威力共にある程度軽減させる “賢帝の追複曲”壮大で、しかし繊細でどこか優しげな曲聴いたものに掛けられた魔法効果や呪いを解除する(しかし、共にある程度止まりで、あまりに強力な物な術式や呪いは解除できない) “衝撃波”音撃のオカリナから高音を発し、衝撃波を発生させ相手にぶつける技現在ヒビキが持てる唯一の攻撃手段と言える。 設定 幼い頃に人身売買で貴族に買われ、生き別れたリュウの双子の姉幼くして経験させられた貴族の鬼畜な行為での精神的ショックや、その後の奴隷的暮らしのために、言葉をちゃんと話すことが出来ない、そして、他人に、特に男性に強い恐怖心を植え付けられ、かなり人見知り。貴族の元を逃げ出し、ヴェリアプル近くまで来るも、食うや食わずでのたれ死にすんでの所を武闘戦線に保護され、街まで連れてきてもらう。なお、魔楽器は両方とも、旅の魔楽器職人が偶然出会ったヒビキを哀れんで、与えたもの。 別キャラ リュウ
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地球をアイスピックでつついたとしたら、ちょうど良い感じにカチ割れるんじゃないかと言うくらいにに冷え切った朝だった。いっそのこと、むしろ率先してカチ割りたいほどだ。 自宅のベッドから発せられている甘美な誘惑を全力で振り切り、通学のための身支度を済ませようと、一階の洗面台に向かった。 鏡の前に立ち、鏡面世界の自分に対面を果たす。うっし。本日も男前だ。朝の光で自慢の金髪が輝いていやがる。 そして真冬の水道水を顔面にかけた。 「くはあ!冷てー!」 身震いするほど凍てつく冷水のおかげで、眠気覚ましの効果は抜群だ。 「さてと。お母さんが起きる前に朝飯を作んねーとな」 確か冷蔵庫に卵が大量にあったから、オムレツでも作るか。 「いただきます」 俺特性であるフワとろオムレツと目玉焼きをテーブルの上に配膳をし、母親と共に手合わせる。 「わるいね。本当なら私が作るべきなんだろうが」 「いいさ。お母さんは昨日遅かったわけだし。早起きくらいどうってことねーよ」 我が家は母親と俺の二人暮らしなので、母親が仕事で遅いときは、こうやって俺が朝飯を作ってやっている。 父親はどうしたって?俺が中坊の時に死んじまったよ。 「よしよし。本当に良い子だね、お前は。見た目ヤンキーなのに」 ヤンキーは関係ないだろ。これでも進学校に通っている、れっきとした真面目高校生だ。 朝食を終え、俺にとって大切な日課である紫煙を堪能していた時、微かな機械音が居間に流れているのを感じた。 携帯電話を手に取り、ディスプレイに目を通す。一体誰だよ。こんな朝っぱらから。 『着信 ハル』 あの女が人の迷惑を顧みないのは、いつものこんだが、勘弁して欲しいものだ。他にイタ電相手がいないのか?俺もだが。 『出るのが遅い。せっかくこのあたしがかけてやってるんだから、1コールで出なさい』 「おかけになった電話番号は、現在、電波の届かない所にございます」 とりあえず切っておいた。理由?なんかイラッときたからだよ。 『……なにしてんのよ?あんまりふざけると死刑にするわよ』 「で、こんな朝からなんのようだ?涼宮ハルヒさん」 電話口に現れたのは、朝から不機嫌エンジン全開な涼宮ハルヒである。 彼女との出会いは、桜がとっくに散り、映画業界陰謀短期集中型一過性休日集合週間なる別名「ゴールデンウィーク」が過ぎたあたりの、日本晴れの日だった。 その日、俺は退屈な学業を終え、早々と帰宅に勤しんでいると、駅前の大通りにて、涼宮ハルヒが頭の悪そうなアホヤンキーにからまれていたのだ。 今思い返せば退屈なだけだったと思う。 暇つぶしと下心が7:3くらいの心境で、躊躇うことなくそのアホヤンキーをぶっ飛ばしていた。 「なに?正義の味方きどり?寒いわ」 この言葉が彼女の第一声である。恩着せがましく聞こえるだろうが言わせてくれ。それは無いだろ。 「別に。ただの暇つぶし。他意は……ちょっとしかない」 それだけ聞くと、涼宮ハルヒは長髪を翻し、まるで俺の事など記憶からデリートしたかのように、その場を去っていた。お互い第一印象は良い方ではなかったと思う。 だが、話はここで終わりではない。 その後も、俺達は幾度となく様々な場所でこいつと顔を会わせるようになった。ある時は学校の学食で。ある時は、たまたま入ったコンビニで。 まあ、お互い目立つからな。顔を覚えちまうと、どうも目に付くようだ。 最初こそ無視しあっていたが、そんな偶然を一ヶ月も共用していると、何だかバカらしくなり、気がついたら話しかけてた。 多分、お互い退屈してたんだろ。街で出会った同級生。俺と涼宮ハルヒの関係を言葉で表すとこんな物だろ。 『ちょっと、聞いてるの?返事くらいしなさいよ』 「聞いてるよ。今日学校サボるから足になれだろ?勘弁してくれ。こう見えて、俺はヘタレでビビリの小心者なんだ。学校サボるなんて恐れ多いことできるか」 『そのツラで何を今さら。どうせ便所で煙草フカしながら話してんでしょ?だからあんたは背が低いのよ。古泉君みたいに健康的に生きなさい』 「お前は俺の母親か」 『は?ふざけてんの?』 この女はなんでこんなケンカ腰なんだ?もう少しフレンドリーに話せよ。ツラはいいのに。もったいない。 『いーい!?あたしは光陽園駅にいるから、つべこべ言わずにとっとと来なさい!』 勘弁してくれと言いたい。しかしこの状況では、かけ直しても出ないだろう。なにより電話代の無駄である。どうせ無料通話分だろうが。 しかしどうもしっくり来ない。涼宮ハルヒがワガママで自己中心的な言動を取るのはいつもの事だが、いままで相手の状態を考慮せずに突っ走ることはなかった。 涼宮ハルヒが無理難題を言うときは「今ならあたしの言う事を聞いてくれる」と、考えてないようで考えているのだ。俺と古泉一樹くらいしかわからんだろうが。 煙草を携帯灰皿に捨てて、深ーく深呼吸。やれやれ、気にならんわけじゃないしな。冬休みが近い今日ぐらい、サボっても問題ないだろう。表向きはそれなりに品行方正な学園生活を送っていたわけだし。 襲撃みたいに唐突な電話を切り、煙草を吸い終えると、父親の眠る仏壇に手を合わせた。あー、とりあえずいってきまーす。お父さん、サボることは内緒にしといてくれよ。 光陽園駅前は朝の通勤ラッシュでごった返していたが、その美しい黒髪は見る者全てを魅了してやまなかった。これでもうちょっと素直ならな。 乗ってきた中型バイクを光陽園駅の入り口で仁王立ちをする涼宮ハルヒの前に横付けに停車した。 「遅い」 いや、ロボットみたく言われたことしかできないような美人は魅力的ではない。涼宮ハルヒはこのくらいでちょうど良いのかも。 「道が混んでいたんだよ」 その上、バイクってのは構造から言って、風を全身に受けなきゃならないから、冬はあまり走りたくない。 しかし、カエルを捕食する蛇のように睨みつける涼宮ハルヒの目は、いつもより陰りが見える。寝不足か? 「だったらもっと早起きしなさい」 「お前の予定を予言して早起きしろってか?俺は超能力者じゃねーぞ」 「あたりまえじゃない。超能力者なんか、そう簡単に現れるわけないでしょ」 だろうね。「実は僕は超能力を使用できまして、世界平和のために日夜戦っています」なんてことがいきなりおこるか。 大体、そんな世界平和組織が、一般人に話を持ってくるわけが無い。仮面を被った昆虫人間が所属する組織よろしく、内部で秘密厳守な命令でも下っているさ。多分。 「で、俺は制服姿のお前を、どこに連れて行けばいいんだ?」 サボるならもっと目立たない格好で来いよ。まぁ、こいつの場合は目立つから制服脱いでもあんまり変わらんだろうが。 「あんたも制服じゃない」 俺は母親を悲しませたくないだけだ。結構無理して進学校に通わせてくれている母親に「学校サボる」なんて言えなかった。これでも罪悪感は感じているんだよ。 「あたしも家からそのまんま出てきたから、仕方ないのよ」 急な思いつきか。急なのは今に始まったことじゃないが、考えずな行き当たりばったり行動なんて珍しい。 周りにはそう思えるだろうが、彼女は頭の回転と行動力が異様に早いだけ。早すぎて常人には着いていけないのが現状である。 「別に今さら見つかってもいいわよ。成績は良いから、学校側は黙認するだろうし」 そうでしたね。一学期の期末試験は学年トップでしたね。俺は……まぁ中盤より上くらいだ。 「それじゃあとっとと行くわよ」 「どこへ?」 男性のように豪快に股を開いてシートに跨る涼宮ハルヒに聞いてみた。 「あんたはあたしの指示通り走行すればいいの」 涼宮ハルヒに予備のヘルメットを渡し、グリップを回す。 メタル色のマフラーから排ガスが漏れる。それでは交通法規を守って出発進行。 バイクを走らせること数時間。ダラダラと寄り道しながら着いた場所は、西宮南部に面した大阪湾が一望できる丘だった。 「で、ここに何の用だ?まさか寒中水泳でもしたくなったとか言うなよ」 「そんなわけないでしょ」 シートから降りて、減らず口と共にヘルメットを投げ返してきた。 すると、彼女はその場にしゃがみこんでジッと海を見始めた。一体なにがしたいのか。 「……理由なんかないわよ。ただ、なんとなく海が見たかっただけ」 俺のほうを見ずに、抑揚無い言葉で話し始めた。 「いや、無いわけじゃないわ。知ってるでしょ?あたしん家が、あんまり上手くいってないことくらい」 前に聞いたことがある。涼宮ハルヒの両親は、ここ数年ほど、離婚の話で盛り上がっているとかな。 「原因は……まぁあたしなんだけどね。小学生の時くらいまでは優等生で通ってたあたしが、中学に上がった途端、奇妙奇天烈な行動ばかり起こしたから。 そのせいで二人とも責任のなすりつけ合いになって……バカよね。別に二人のせいなんかじゃないのに」 なんでこんなにいたたまれない気分になるのだろうか?とりあえずポケットから煙草を取り出し、場繋ぎのためにも火を灯すことにした。 「あたしは別に後悔なんかしてない。あたしの人生だもん。好きに生きるわ」 「……してない「つもり」だった?」 「……うん。今朝、起きたらママと親父がケンカしてたのよ。しかも、察する限り一晩中寝ないで。どんだけ言い足りないのよ。 それ見てたら、「このまま自分のやりたいように好き勝手生きてもいいの?」って思っちゃって……」 なるほどね。なぜ俺「だけ」が彼女の思いつきに付き合わされた理由がわかった。なぜなら涼宮ハルヒの狭い交友関係の中で、俺だけが片親だからだ。 十代後半くらいの子供だったら、大多数は両親揃っているはずだ。 でも俺は違う。俺は母親と二人暮らしってことに関しちゃ嫌気はさしていないが、困っていないわけでもない。 そして涼宮ハルヒは、家庭に問題を抱えている。それも自分のせいで。 お互い特殊な家庭を持つ身の上であり、俺なら黙って話を聞くぐらいはしてくれると思ったんだろう。 「ハル。俺は聖人君子なんかじゃない。だから「お前の気持ちはよくわかる」なんてことは言わない。つーか言えない」 だって俺は「涼宮ハルヒ」じゃないからな。 「だから理解できる努力をする。話したいことが他にもあるんだろ?」 話してもらうだけでいい。 聞くだけでいい。 今の俺の役割は、彼女を理解すること。それだけだ。 理解した上で、どうにかするのは俺の役目じゃない。誰の役目かって?さぁな。こいつを無償の愛で愛せるような聖人君子くんだろ。 その後は日が暮れるまで、涼宮ハルヒの一人話が繰り広げられた。内容は……特に思い出すほど重要な事柄ではなかった。他愛もなさすぎて語る必要も無いね。 俺と涼宮ハルヒが光陽園駅に戻ってきた頃には、肌寒い冬の夜空が頭上に広がっていた。おぉおぉ。みんな寒そうに歩いてやがる。 「はい、到着」 「寒い。あんた、あたしに風引かせるつもり?」 自分で命令しといてめちゃくちゃ言ってやがる。そんな短いスカートでバイクに跨る君が悪い。ついでに言うとバックミラーには何度か写ったぞ。君の下着が。あぁ、はしたない。 「死ね」 結構な言い草である。 「それじゃあ俺は帰るぞ。じゃあな」 「ふん。じゃあね」 涼宮ハルヒから受け取ったヘルメットをシート下のトランクにしまい、エンジンキーを回す。グッドバーイ涼宮ハルヒ。 「ずいぶんと遅くなっちまった」 バイクを法廷速度を時速五キロメートルほどオーバーで、気持ーち早めに走らせ、月が支配する世界を疾走していた。今日の晩飯は何かな~と。 呑気な事を考えていたせいか失念した。交通法規の大原則は、歩行者優先であると言うことを。 「なっ!?」 眼前の十字路を横切る人影にフラッシュライトが当たり、その顔が、一瞬だけ驚愕に目を見開いた。 アスファルトをこするタイヤの音。 摩擦熱のせいで焦げ臭い。 道路に投げ出せれた長い黒髪。 「……ハァ……ハァ……」 咄嗟の出来事のわりに、上手く反応できたのは神の気まぐれかもしれない。謎の人影に衝突する瞬間に片足でブロック塀を蹴り飛ばし、なんとかバイクの軌跡を逸らすことができた。 「てめぇ!こんな夜道でいきなり飛び出してくんじゃねーよ!もう少しで潰れたガマガエルみてーにするところだったじゃねーか!」 バイクから降り、飛び出した人影の襟首を吊るし上げる。この制服は北高のセーラー服だな。小学生じゃねーんだから、いきなり飛び出すんじゃねーよ! と、ここでその人物の顔が月明かりに照らし出された。 「ごめんなさいね。ちょっとボーっとしてたわ」 かなりの美人がそこにいた。それこそ涼宮ハルヒとタメを張れるくらいの超絶美人女子高生のな。 「……ったく、勘弁してくれ」 こんだけの美人が謝っているんだ。怒る気も失せた。少々名残惜しいが、彼女の襟から手を離すことにした。 すると手を離した瞬間、この轢きそこなった彼女は、マジマジと俺の顔を覗き込んできた。なんのつもりだ?生憎俺は君の幼馴染でも生き別れた兄貴でもねーぞ。多分。 「ん……なんでもないわ。お構いなく」 いや、構うわ。はっきり言って良い気分はしない。 「ふーん……そう、それじゃあね」 満足したのかどうかは知らんが、彼女は手の平をヒラヒラと振りながら、眼前の宵闇へと溶けていった。 もしもこれが月曜九時の恋愛ドラマなら、今頃バックコーラスが大音量で流れているだろう。そしてここから恋が始まかもな。 だけど彼女の微笑は、そんな恋愛ドラマには似つかわしくない程に酷く不気味で、それこそ生気の無い、能面やマネキンが口元を無理矢理歪めたようだった。 「……っくそ。なんなんだ、この寒気は」 体中の血管が根こそぎ吹雪に晒されたような欝感覚。もしかしたら背後に雪女かなんかがいて、耳元に氷の息吹でも吹きかけているのかもしれない。もちろんただの比喩だが。 交通事故未遂と寒波のせいで、中も外も冷やしてしまった俺だが、慣れ親しんだ自宅の玄関を開き、なんとか安堵の吐息を漏らせた。 「ただいまぁ~、なぁ聞いてくれよ。実はさっきそこで交つ……お母さん?」 唯一の家族である母からの返事が返ってこない。 おかしいな。今日は仕事が休みだから家にいるはずなのに。昼寝でもしてるのか?つっても、もう夜だが。 「……お母さん?出かけてるのか?」 今にも幽霊が飛び出てきそうなほどに静かで不気味な狭い廊下を歩き、リビングの扉を開く。 「なんだよ。いるじゃないか。「おかえり」くらい言ってくれよ」 母は電灯も点けずに、リビングの食卓の上でうつ伏せで突っ伏していた。 その姿を見て、こんなに寒いのに何故か汗がダラダラと流れ落ちる。 しかも俺の足が母に一歩一歩近付くことに、体内の発達した直感力と、卓越した危機察知能力がレッドアラートで警鐘を鳴らしている。そう、その姿はまるで……。 「……おい!?お母さん!?」 そこにあったのは、ナイフではらわたを抉り出された母の遺体だった。 「つまり自宅に帰って来た時には、既に母親が亡くなっていたと」 「……はい」 俺よりいくらか歳を取ったくらいの若い女性刑事が、凛とした言葉で遺体の状況を聞いてきた。 現在の時刻は22時15分。本格的に胃が給料の支給を求めている。 だが残念ながら口が食物を受け入れてくれそうも無いため、胃袋にはもう少し我慢してもらおう。 リビングにて母の遺体を発見した俺だが、なぜか頭だけは恐ろしいほどに冴え渡っていた。 誰がどう見ても死んでいるのがわかる。よって119番ではなく、速攻で110番。10分後には制服警官数人に、若い女性刑事と初老の男性刑事が家にいた。 母の死因は腹部を鋭利なナイフで切り裂かれたことによる失血死らしい。即死ではなく、数分間は意識があったようで、惨い殺しだったと警官が語るのを聞いた。 そして今は「簡単な取調べ」を受けるために、火サスではお馴染みの取調室にて、半軟禁みたいなことをされている。 「オーケー。それではもう一度聞くわね。君は母親の死亡推定時刻、どこで何をしていたのかしら?」 女性刑事の瞳が、探る様に鈍く煌いた。 「何度も言わせないでください。光陽園学院には行かず、サボって遊んでいました」 女性刑事は手元の紙にボールペンを走らせた。 まさか俺が母親を殺したと疑っているのだろうか? ……無理も無いよな。気分は悪いが、アリバイだって「サボって遊んでいた」なんて曖昧だし、最近は真面目に学校に通っていた。 それを今日いきなり学校を休み、その日にこんな事件が起きたんだ。俺が警官なら絶対疑う。 「それではそのアリバイを証明することはできるかしら?」 「……はい。その時一緒に遊んだ友達が」 そこまで発言した瞬間、取調室の扉が勢い良く蹴り飛ばされた。 「ちょっと!あんたのママが死んだって本当なの!?」 取調室の扉に暴行を働いた少女こそ、俺のアリバイを証明する人物です。もう少しおしとやかに登場できないのか?パンツ見えそうだぞ。 「うっさい!それより本当なの!?」 涼宮ハルヒの瞳が、驚くほどに無の光を放った。どんな顔をしていいのか分からないのだろう。 「ご覧の通りだ。母親は殺されて、俺は取調べを受けている」 つーかよく来てくれたな。確かに証言のために呼んだが、正直あまり期待はしてなかったよ。 「あたしだってこのくらいの分別はつくわよ」 そうかそうか。これで俺はこの取調べから解放されるな。そう思ってありふれたパイプ椅子に腰を下ろし、涼宮ハルヒが口を開くのを待ち望んだ。 だが、 「ハルヒ!」 またも取調べ室に突撃してくる人物がいた。それも二人。取調べ室ってのは、こんなにも騒々しい物なのか? 「親父にママ!?なんでここにいるのよ!?面倒だから黙って出てきたのに!」 そう言えば前に一度だけ涼宮ハルヒの家にお邪魔した時、この二人を見たことがあった。どこかで見たと思ったが、両親だったか。 父親は呼吸を荒くしながら涼宮ハルヒの方を睨みつけている。だが対照的に、母親の方は目元をハンカチで拭いながらメソメソと泣いている。 おいおばさん。なんであなたが泣いてるんだよ。泣きたいのはこっちだ。 「まさかお前が警察にご厄介になるなんて……恥ずかしくないのか!?」 「ちょっと親父!なに勘違いしてるのよ!?あたしじゃなくてこっちの」 「言い訳は聞きたくない!」 めちゃくちゃなオヤジだな。聞きたいのか聞きたくないのかどっちだよ。混乱してんじゃねーよ。 「まったく!お前はいつからこんな子に育った!こんなガラの悪そうな少年と仲良くなったり、最近は帰りも遅いじゃないか!」 「そんなの関係ないでしょ!あたしが誰と連もうかあたしの勝手よ!」 「大体ハルヒがそうなったのも、お前の育て方が悪かったからだ!だから市立じゃなくて光陽園にしかいけないんだ!」 「わ、私のせいだって言うのですか!?あなたが家庭を顧みることができたらこんな」 「うるせぇっ!」 怒号と共に、目の前の無機質なアルミ机が吹き飛び、室内にいた全ての人間が俺を注視する。 「こんな警官に見られた場所でワーワー喚きやがって!恥ずかしくねーのかよ!?」 ふざけた抜かしてんじゃねーよ!子供が大切だと思うなら、こんな場所で口喧嘩なんかするな。 「おら、もう結構だ。とっとと家に帰って家族会議でも離婚調停でも何でもしてくれ。ハッキリ言って迷惑だ。消えろ」 ここに警察がいなかったら、絶対にこのクソオヤジに飛び蹴りの一つでもかましていたはずだ。友人の親?知るかよ。 「あんたらは親ですらない。親だったら子供の気持ちを汲んでやれよ」 もううんざりだ。どうにでもなれ。 「彼女を帰していいのか?君のアリバイを証言する人物だろ?」 女刑事は「何考えてるんだこいつ」と怪訝な表情で俺を見据えている。 どうでもいいよ。だって俺は無実だし。アリバイ証明なんか必要ないね。 「そうか。ではもう一度初めから聞かせてもらえないか」 「なんでもどーぞ……と言いたい所ですが、そろそろトイレに行かせてくれませんか?本気で漏らしそうなので」 プチ軟禁状態にされて数時間もイスから動いてねーんだ。そろそろ水分抜かな、恥ずかしい事態になりそうだ。 「それもそうだな。ここで小休止を取ろう。新川、彼をトイレまで案内してやってくれ」 「かしこまりました。森警視」 監視付きかよ。勘弁してくれ。 トイレ内部はそれなりに清潔さを保たれており、これなら落ち着いて用を足せる。 「って、見られて喜ぶ性癖は無いのですが」 見られて無けりゃな。 「それは失礼。だが、取調べ中の人間から視線を外すわけにはいけませんので」 勘弁してくれ。そんな風に放尿シーンをジッと見られては出せるもんも出せない。この初老刑事は、何故こんなにも実直なのだろうか。 「逃げたりしませんよ。つーか逃げられません。だってここは三階ですよ?」 トイレの窓の外には月が世界を照らしており、十二月らしい寒風が吹き荒れている。こんなところからどうやって逃げろって言うんだよ。 うんざりな取調べとは言え、逃げてなんになる。そりゃ拘束緊迫軟禁プレイなんて勘弁して欲しいが、大体逃げたりしたら俺が加害者として断定されそうでだ。 ここはうんざりな取調べに、うんざりするほど付き合うくらいしか逃げ道はないのさ。 「新川警部、鑑識から報告がありました」 トイレの外で、三十代前後くらいの男性が声を張ってきた。 この声は多分、俺の家にやって来た制服警官の一人だ。胸元に名札があって、田丸(裕)とかって書いてあったな。 「失礼、少しここを離れますので、用が済みましたら呼んでください」 へいへい。と軽い口調で返事をしておいた。 こんなトイレから脱出困難なことくらい新川警部にもわかっているのだろう。じゃなきゃこうも簡単に目を離してくれるはずがない。 「……悪いな新川警部。俺にはここでノンビリしてる時間なんかないんだ」 トイレの窓を全開にし、寒波を顔面に浴びる。っへぷし! 鼻をすすって窓の下を見ると、一つ下層のトイレの窓が視認できる。さらに目を凝らせば、同じく最下層の窓も。 「さすがに窓は閉ってるな……あ~仕方ない」 制服のシャツの袖を二つに破る。これを簡易式バンテージにして…… 「一つ間違えたら重傷。間違えなくても軽傷。勘弁してくれ」 溜息を漏らしながらも、窓から外へと身を乗り出し、柔い手すりを掴む。そういやなんかの映画で、こうやって懸垂トレーニングをしてる筋肉マンがいたっけ。 「さぁて、男をみせろ。頼むから間違っても笑いを見せるんじゃねーぞ。絶対に笑えない事態になる」 呼吸を整え、自分なりにタイミングを計り……アン、デゥ、トゥルワ! 手すりから一思いに手を離し、飛び下り自殺まがいの荒芸をした。 「うるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 最下層のトイレの窓を握り拳が捕える。 窓ガラスが飛び散り、腕に小さなガラスが突き刺さったが、何とかトイレ内部の壁を掴むことができた。 ギリギリ成功である。あと一瞬遅かったら、鉄筋コンクリート相手に正拳突きをブチ込むところだった。 ハードなスタントモノマネのせいでガラスが突き刺さった箇所から血が流れ出ているが、今はそんなことどうだっていい。 手すりから手を離し、無事とは言い難いが警察署の敷地内に脚を踏ん張ることができた。 署内から騒がしい空気が感じられたため、一目散にその場から駆け出すべきである。 出血箇所を手で押さえながら、全力疾走。とにかくここから離れないと。 繁華街のビルに、パトカーのサイレンがやかましく反響している。 「バーカ。そんな小回りの効かないパトカーで、俺が捕まるかよ」 裏路地と裏道を渡り歩き、廃ビルと工事現場を抜け続けたおかげで、今のところはこちらに追いつく気配は無い。 あのまま警察に任せて取調べを受けてるべきだったかもしれない。 だけどな、殺されたのは俺の母親なんだぜ?それなのにそのまま丸投げなんかできるか。 「警察なんかに任せられるか。俺が絶対に母親を殺した野郎を捕まえる」 学ランの裏ポケットからタバコを取りだし、火を灯す。 「覚悟しろよ殺人鬼。世の中には絶対に喧嘩売っちゃならない相手がいるってことを教えてやるよ」 煙を吐き、気分が高揚してから携帯電話のダイヤルをプッシュしていく。 「もしもし、俺だ。ちょっといいか?」 受話器の奥で、電話相手の溜息が聞こえてきた。こんな夜分遅くに電話かけてスマンとは思ってるよ。だがな、お前しか頼れる奴がいないんだよ。 「やれやれ。と言うべきですかね」 「だから悪かったと言ってんだろうが。古泉」 笑顔が癖の男には珍しく、厄介なことに巻き込まれたと言わんばかりにウンザリしているのは古泉一樹である。 涼宮ハルヒと僅かに交流を持てた頃、古泉一樹と出会った。五月と言う中途半端な時期に転校してきたことから、彼女に「謎の転校生」と呼ばれている。一体どこの国基準で謎なんだか。涼宮王国か?ハルキングダムか? それ以来涼宮ハルヒは事あるごとに古泉一樹を財布にし、色々場所や施設へと連れまわした。それって世間一般的にはカツアゲと言う行為なんだぜ? いや、カツアゲとは言わんか。なぜならこいつは涼宮ハルヒにベタ惚れしているからな。言うならば、双方合意の上のデートもどきである。両方困ってなければいいか。 「今、とても失礼なこと考えていますよね?」 さぁ?なんのことだか。 「まったく。いくら取り調べが嫌だからと言って、三階から飛び降りるなんて馬鹿ですよ。見てくださいよ。この血だらけの包帯」 ああ、血も滴るいい男だな。って、ごめんなさいごめんなさい。シリアスパートに戻すので、110番を押さないでください。 「僕の両親がカナダに出張していたから良い物を……もう少し自分の身を大事にしてください。死ぬ気ですか?」 「死ぬ気なわけねーだろ。死ぬ気でなんかしようとする奴は死ぬだけだ」 ああでもしなきゃ逃げられなかったからな。 すると古泉一樹は「ああこの馬鹿には何を言ってもダメだ」と悟ったのか、無言のまま包帯や消毒薬を片していった。 「……なぁ、ところでお前の両親は元気してるか?」 古泉一樹が救急箱を片す所を見ながら、なんとなく聞いてみた。いや、聞かずにはいられなかったと言うべきか。 「……えぇ。先日カナダから電話がありましたので。正月には一時帰国をすると」 そうか。と答え、古泉一樹から借りた毛布を被り、上質なソファーに身体を休める。 「家に入れてくれてありがとな。明け方には出てくから、それまで辛抱してくれよ」 この寒空で野宿なんかしたら死んでしまう。かと言ってホテルに泊まる金も無い。だからこうやって信頼できる奴の家に転がり込むぐらいしかできなかった。 古泉一樹は良い奴さ。容疑者であり逃亡者である俺を「友人だから」と言う理由だけで上げてくれた。 だからこそ甘えるのは一晩だけだ。彼にも迷惑がかかるし、俺が気にする。 「それでは僕は自室に戻ります。おやすみなさい」 一人暮らしにはもったいないくらい広いリビングの灯りが落ち、青白い月の光が俺の身体を照らす。 「……畜生……お母さん……なんで死んじまったんだよ……」 毛布と暗闇が顔を隠してくれるからいいが、嗚咽だけはどうにもならない。ひょっとしたら、自室で寝ている古泉一樹にも聞かれているかもしれない。 でも、今まで必死に我慢してきた涙が、ここに来てダダ漏れだしてしまった。 人間である以上、死は避けられない。 だけど……こんな終わり方、唐突すぎるだろう! 俺はまだ母親に甘えたいんだ!生んでくれてありがとうって言ってないんだ! ちくしょう。畜生。チクショウ。 止まらない。どうやら俺は自分が思っている以上にヘタレでカッコ悪いガキのようだ。 毛布の中で母親と歩んできた記憶の逆流に呑まれ、結局一睡もできなかった。 第二章へ続く
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CMWC NONEL COMPETITION6 已むを得ず、無題 作:塩瀬絆斗 これまで推測していた《釣針の五種類》によれば、この記号の並びは「AIUE」を表しているのだ。躊躇うことはなかった。今の俺にはどんなことでもが手がかりとなっているのだから。この四つの記号は「ダイスケ」を示すに違いない。そして、この推測は先ほど考えた段階的複雑性にも合致しているように思えたのだ。四つの記号の一番最後のものは「け」であるが、「か行」は《直線形状》を除外してはじめの行である。つまり、この行に相当する記号は段階的複雑性において初期的な役割を担っているのではないか。「け」の《中心形状》は、Zの斜めの棒が上下の棒に対して垂直をとっている形になっている。他 の《中心形状》と比較すると複雑性の面では最も初期に位置しているだろう事が容易に想像できるのだ。それは「だ」にもいえることで、俺が手に入れている「が行」は《中心形状》が尖山型だった。段階的複雑性によれば、これ以降の行はこれより複雑な形状でなければならない。「だ」の記号はそれに合致しているように思えた。もっとも、「が行」と比較すると、《中心形状》が角形や円形で、上下に張り出しているものは複雑性の面では逆行しているような気もするのだが。ともあれ、俺は新たに「か行」、「さ行」、「だ行」を手に入れた。これならば穴埋めの作業は飛躍的に進むはずだ。(判明文字を示す。未解読文字は×) き×し×そう××こうそくし×い×× ×す××う×いえ×あい××××××い せ×××××あ×か××い××いうこ× ×し×せおそ×く×す××せいこう す×だ×うそ×ご×だいすけ×× ×××し××い×××××んきん し××か×さん×ん×××××う ××あ×え×だいすけ×こ×あんご う×き×し×そう××××しかい どくす××う×いえかいどくさ× ××で×がさ×い×う×し× サイモン・シンは解読作業には一種の快楽があるのだろうと言った。その通りだった。俺は今の自分が置かれた状況を忘れて解読に没頭していたのだ。 穴埋めの後に俺に訪れたのは、達成感だった。そこには「拘束」、「成功」、「解読」といった単語が読み取れたのだ! この解読法は間違っていないのだ。そして、これは間違いなく指示書だった。となると、どこかに「盗む」というような言葉があるに違いない。しかし、俺が次に目を付けたのは六行目の右端の三つの記号だ。穴埋めでは「んきん」となっている。俺は先ほど「監禁」という言葉が入っているのではないだろうかと推測したのだが、それに似ているのだ。しかし、これは「監禁」ではない。なぜなら、最初の「ん」の前が、二番目の「ん」の前にある記号の《中心形状》と一致していないからだ。これは「軟禁」といっているのではないだろうか。ただし、これは確実ではない。そこで俺が目を転じたのは、一番最後の一文字分の未解読部分だった。この一文字は《釣針の五種類》から、「お段」の文字を示している。そしてこれは指示書だ。ここには命令が、つまり、「~しろ」と書かれているのではないだろうか。そこで、少し考えを進めてみることにした。 段階的複雑性だ。 《中心形状》は、「さ行」は円形が上向きに付いている。それとは逆のものもある。円形が下向きについている場合だ。これは「さ行」の次の行ではないだろうか。《中心形状》には円形や角形が上下に飛び出ているものもある。もしかすると、その前段階である、《中心形状》が上か下に飛び出ている記号が関係しているのではないだろうか。もし円形が下に飛び出ているものが「た行」だとすれば、その次の行は円形が上下に飛び出ているものがくる、という具合だ。そして上下に飛び出るものは二種類あって、右が上に出て左が下に出ているもの(右上突出)、右が下に出て左が上に出ているもの(左上突出)、だ。上突出、下突出、右上突出、左上突出……四種類だ。そしてこれに円形と角形の違いが加わり、八種類。「あ行」と「か行」はこの部類には含まれないから除外して「さ行」から「わ行」までを数えると、その数は八。笑いがこみ上げてくる。そしてどうだろう! 尖山型がその後の濁点行を示しているとすると、上下突出と右上突出、左上突出で、その数は四つになる。「が行 」「ざ行」「だ行」「ば行」だ。最後に残った「ぱ行」はこの暗号に記されなかったのだろう。 もし、一番最後の文字が「ろ」を表しているとすると、この論理は支えられる。この記号は角形左上突出「お段」だ。円形突出型はその組み合わせが「は行」で終わる。ということは、「ま行」は角形上突出型になっているはずだ。こうなれば、芋づる式だ。「や行」は角形下突出。「ら行」と「わ行」が角形の右上か左上突出になっているはずだ。そして、一番最後の記号が「ろ」ではないかという推測はこれに競合しない。となれば、最後の記号は「ろ」だろう。さらに分かることがある。もし最後の記号が「ろ」であれば、上下突出の後には左上突出がくるのだ。現に「だ行」は左上突出になっている。「が行」が尖山上突出。「ざ行」は自動的に尖山下突出になり、その後の「だ行」が尖山左上突出になっているのだ。 この推測を足がかりにして穴埋めを進めていくと、それはするすると解けていったのだ。 きりしまそうじをこうそくしないふを ぬすむようにいえばあいによつてはたい せつなひとをあずかつているというこ をしめせおそらくぬすみはせいこう するだろうそのごはだいすけをみ はりにしてれいのへやへなんきん しろほかのさんにんはべつのよう じをあたえるだいすけはこのあんご うをきりしまそうじにわたしかい どくするようにいえかいどくされ るまでにがさないようにしろ (霧島ソウジを拘束し、ナイフを盗むように言え。場合によっては大切な人を預かっているということを示せ。おそらく盗みは成功するだろう。その後はダイスケを見張りにして例の部屋へ軟禁しろ。他の三人には別の用事を与える。ダイスケはこの暗号を霧島ソウジに渡し、解読するように言え。解読されるまで逃がさないようにしろ) 俺はどっと疲れを覚えたが、それ以上の戦慄を覚えた。それは、この指示書に俺の名前が間違いなく記されていたからである。 俺は狙われていた……! なんてことだ。なぜ俺が? 逮捕協力の情報を警察へ渡したからだ。《アイコノクラスト》が報復に動いたのだ! だが、この指示書には殺人の話は書いていない。「他の三人」への別の用事というのは、暴行事件のことだろうか。いや、そんなことよりも、指示書と実際の出来事の間に微妙な違いがあることのほうが気になる。それは例えば、「ナイフを盗」ませるようにいっているにもかかわらず、俺は包丁を盗むように強要された。俺に暗号を渡したのはダイスケではなく、あの蛇の男だった。そもそも、この暗号はあの四人よりも上位の人間が書いているように思える。リーダーだろうか。しかし、凶悪な少年グループである《アイコノクラスト》のリーダーの指示をきちんと遂行しないのは問題がありはしないだろうか。内部にちょっとした諍いが起きている? どういうことだ……。 なにが起こっている? 誰がダイスケを殺した? 6、コミカル・エクスプロージョン 「大丈夫か?」 いつの間にか寝てしまっていたようだ。拘置室の外にあの刑事が立っていた。今は何時だろう。窓の外からは光が差し込んでいた。 「また話を聞きたい」 「ええ」 俺はそう返事をして立ち上がった。しかし、同時に寝惚けていた頭に《釣針暗号》のことが浮かび上がってきたのだ。 「そうだ、俺、あの暗号を解読したんです!」 「なんだと?」 刑事は俺がポケットから紙を取り出すのを驚いた表情で眺めていた。 俺はすべてを説明した。 「……なるほど」刑事は難しい声を漏らした。「君ははじめから狙われていた、と。だが、それだけでは君の殺人の容疑は晴れないだろう。その文章が君の殺人の動機を後押ししているように見える。部屋に軟禁されたことによって殺害の理由が生まれたのだ、と」 「……そんな」 朝から気の滅入ることだった。 俺は昨日と同じ取調室で刑事と相対していた。 「彼女が今日も署に来てるぞ」 刑事の最初の一言はそれだった。俺の脳に一気に血液が廻るのが分かった。ユウリ! 「相当君のことが心配なんだろう。『彼はいつ解放されるんですか』『彼は大丈夫ですか』と矢継ぎ早に質問されたよ。なんとも答えられなかったのが残念だったが、いい子じゃないか」 「……ええ。監禁されたときもずっと彼女のことを考えていました。……そうですか、ユウリが……」 「会ったり物の受け渡しは許されている。後で面会するといい」 「そうですね」 刑事の姿勢が正される。目つきが変わったのが分かる。 長い言葉のやり取りがあった。疲労感が募る。ユウリは大丈夫だろうか。 時計を見る。午前十一時三十分。今日は……確か九月三十日だった。 こんなときにこんなことを思うのは馬鹿馬鹿しいが、現実逃避をしたいんだろう。《電ミス》の競作募集は今日で締め切りだった。今日の二十三時五十九分五十九秒だ。とてもじゃないが、間に合わない。この時間を過ぎても投稿を許されるだろうが、それでは俺のプライドが許さなかった。ああ……、小説家になるという漠然とした夢が随分遠くへ行ってしまったような気がする。俺は家に帰れるだろうか。冤罪という言葉が耳のそばを弾丸みたいに掠めていく。そんなのは嫌だ。しかし、警察は俺が犯人であると考えている。 俺は――……。俺がすべてに決着をつけるしかない。 考える俺が解離していくような気がした。刑事の質問に答える俺がいて、それとは別に考える俺がいる。 まずなんとしても解決しなければならない問題は、密室の問題だった。糸を施錠ツマミにくっつけてそれを換気扇の隙間から引っ張るというのは施錠ツマミの強度から考えて難しいだろうと思われた。それに、テープでくっつけたとすると、万が一テープが取れなかった場合に重大な証拠になるだろう。俺が現場を見たとき、施錠ツマミにはそんなものはなかった。結果としてなかったのかもしれないが、犯人が証拠を残す可能性を孕んだままトリックを実行するとは思えない。そして鍵は俺が持っていたから、犯人は確実に施錠ツマミに細工を施したのだろう。ドアノブを外したのだろうか。しかし、あのドアノブのネジは随分特殊な形状をしていた。それに、内側のドアノブを外すにはやはり部屋の中にいなければならない。換気扇を外すのも無理だろう。枠が錆び付いて動かすことも出来ない。それ以前にあそこに体を入れるにはかなりの大男でないと高さが足りない。普通の人間なら手が届くくらいだろう。そして、そんな大男だったら、あの隙間から出入りするのは不可能だ。そして、も したとえ隙間から出入りできても、結局、枠は部屋の内側からしかつけることが出来ない。窓に関しても同様のことがいえるだろう。ドア周りは外へ通じる少しの隙間も出来ないような構造になっていた。となると、やはり犯人は換気扇の隙間から何らかの方法で施錠したのだ。そして、その方法はもはや糸しかないのだろうと思う。 俺は刑事に言った。 「密室のことですが、犯人は糸を使って施錠ツマミを回したんじゃないでしょうか。それ以外に考えられないんです」 「ふむ」刑事は俺が犯人である可能性も考えている。そのための深い唸りなのだろう。「実はそれは試してみた」 「本当ですか?」 「ああ。ただ、テープで施錠ツマミにくっつけたんだがテープは張り付いたままな上に施錠ツマミを回転させることすら出来なかった。一本の糸では力が不足するんだ。二本や三本で、というのではない。力のかかり方が、施錠ツマミを回転させるには不十分なのだ。施錠ツマミは開錠状態で反時計回りに九十度回転するが、ツマミの上下に異なる方向で力が加わればうまくいくはずだが……そうなると、反対側にも窓がなくては難しい。それに、部屋を隔てた位置だから犯人は二人以上いたことになる。それでは、君を犯人と考えている我々は君の共犯を探さなければならない。あの子が共犯だというのなら別だが」 「バカな!」それは信じられない物言いだった。「俺は犯人じゃないし、あいつだって違う!」 刑事は分かっている、というように軽く手を挙げて見せただけだった。 刑事との話は大した進展も見せることなく休憩に入った。 面会室の扉の前で、俺は少し身だしなみを整えていた。 「ソウジ君」 昨日会ってから一日も経っていなかったが、久し振りに彼女の顔を見たような気がした。 「ユウリ」 俺たちは互いに名を呼んで触れ合った。 「大丈夫?」 「ああ」 しかし、彼女の顔には隈が目立って見えた。 「お前、寝てないのか?」 「……心配で」 「ダメだろ、ちゃんと寝ないと」 「でもソウジ君が警察にいるのに寝ていられないよ」 「心配するな。俺は絶対大丈夫だから」 ユウリと言葉を交し合う。それは束の間の幸せであった。 しかし――。 なぜだろうか。先ほどから俺の全身を包み込むこの悪寒は。総毛立ち、粟立ち、精神がざわめく。額からは脂汗が吹き出していた。 ダメだ。そんなのは、ダメだ。俺は去来したものを拒み続けた。 そんなことは、絶対にない。 だが、それは――。俺を占めていくそれは……。 ユウリを見る視界が滲んでしまう。止め処なく涙が溢れていた。 「どうしたの、ソウジ君!」 頭を抱える。違うんだ。違う。絶対に違うんだ。優しいんだ。そんなことなんて絶対にしないんだ。認められない。却下だ。でも涙が止まらない。信じたくない。 ――すべてを闇に葬り去るか? 心の奥から声が聞こえる。それは解離した俺の、考える俺の声のようだった。しかし、それは紛れもない俺だった。 「ソウジ君、しっかりして! 今誰か呼んで来るから」 「……いや、いいよ。大丈夫」 そう言うのが精一杯だった。 確かめないと。そうだ、確かめないと。だって、これが本当のことだって決まっていないんだから。そうだ、笑って首を振るに違いない。そうだ、そうに決まってる。笑って――。 「私は犯人なんかじゃないよ」 って! 7、AUDI, das ist “With the LEGO”! 「聞きたい、ことがあるんだ……」 「なに?」 ユウリが俺の顔を覗き込む。それだけで、俺は何も言えなくなってしまう。でも、言った。それは彼女を信じているからでもあったからなのだと思う。 「君は……」唾を飲み込む。それは重い重い重力子だった。「なんて言えばいいんだろう……。君は、俺が、あの部屋に閉じ込められていることを、知っていた?」 「どうしたの、急に?」 笑ってる。そうだ、そうだ。でも内奥から湧き出る、何かは俺を突き動かしていた。もしかしたらあの刑事の言葉がずっと俺の心の奥底に突き刺さって光を放ち続けていたのかもしれない。そうだ、これが俺の自家製の大義名分だって、俺は自分に言い聞かせているんだ。なぜならそれは絶対に間違っていることだから。 「この事件の犯人の条件は、まず第一に、ダイスケがあの部屋にいることを知っていなければならないっていうことだ。そして、それを知っていたのは俺とあの三人組だ。でも、実はもうひとりいる。《釣針暗号》を書いた奴だ。三人組は事件のときにアリバイがあって、犯行に及ぶことが出来なかった。俺は犯人じゃないから、自然的に犯人はその《リーダー》ってことになる」 「急にどうしたの? もしかして、事件が解けたの?」 「まあ、そう言うことになるのかもしれない。俺は間違っていると思うけど」 「すごい!」ユウリは目を輝かせた。「さすがソウジ君だね。なんでも出来ちゃうんだから」 「そうかな……。で、その《リーダー》は俺を指名して、拘束するように言っていたんだ。つまり、俺は待ち伏せされていた。でも、どうやって俺を待ち伏せしたんだろうか。俺は自分の家の前で囲まれたんじゃないのに。犯人は、俺があの道を通るって知っていたんだ。でも、そんなことを知っている人はいなかった。――君以外には」 「どういうこと?」 非難するような目で俺を見る。怒っているんだ。そうだ、それは当たり前だ。誰だって疑われるのは嫌いだ。信じていたいし、信じられていたいんだ。 「君は、俺が拘束されていることも知っていた。俺があの英語のメッセージで伝えたからだ。君は、あのメッセージに気が付いていた。君は俺が部屋を脱出した後に、まずダイスケに施錠を解かせた。そして転がっていた包丁で彼を殺害した。密室トリックはごく簡単なものだった。施錠ツマミにがっちりはまる大きさの輪をタコ糸で作るんだ。その輪の、施錠ツマミの上下に当たる部分に長い糸をくくりつける(輪と糸のくくりつけの順序は逆の方が効率がいい)。施錠ツマミの上から出る糸は換気扇の隙間から外へ。下から出る糸は反対側へ引っ張りたい。施錠ツマミの上下に異なる方向への力を加えたいからだ。しかしそれが問題だった。だからダイスケの死体を利用した。君はダイスケの死体を部屋のドア側の左隅に移動させて彼を滑車代わりに使ったんだ。でも、これだけだと服の生地の摩擦が強すぎて、滑車の代わりが出来ない。といって、首などに糸をかければ痕が残ってしまうかもしれない。だからゴミ袋を被せたんだ。滑りやすくするようにね。ダイスケの体を通してその糸も換気 扇から外へ出しておく。そしてドアを閉めて外へ出る。換気扇の外から糸を引っ張るんだ。施錠ツマミの上部の糸は左方向の力を加える。でも、その力だけでは不十分なんだ。しかし、ダイスケの体を滑車代わりにした下方の糸は上方の糸とは反対の右方向の力を加える。その二つの力が組み合わさると施錠ツマミはようやく回転して施錠が可能になるんだ。施錠ができたら、上方に繋いだ糸を部屋の内側方向へ強く引っ張る。すると、輪が施錠ツマミからすっぽ抜けてしまう。後は糸を引っ張って回収する。迷彩柄のバンダナは俺から《電ミス》の競作についての話を聞いたときのことから残そうと思ったのか。施錠を確認した君は、俺が来ているであろう自分の部屋へ急いだんだ。だから、君の部屋の前で、俺は君に背後から声をかけられたんだ。俺の部屋に行っていたというのは嘘だったんだ。一番の決め手は、君以外に俺を待ち伏せさせることができた人がいなかったっていうことだ。君からの連絡があって、タイミングよくあの四人組が現れたんだから……。それに、昨日の君の言葉がある 。君は実際にあの三人組の顔を見たことがないのに、連行される三人組が俺を拘束した連中だと断言していた。俺を担当した刑事は俺の話で三人の内のひとりが蛇に似ていると知っていたが、実際には見てもよく分からなかったと言っていたのにね」 ユウリは黙って俺を見つめていた。 どうして否定してくれないんだ。ほら、どんでん返しだ。そうじゃないと面白くない。 「はあ」ユウリの口から溜息が漏れた。「やっぱ、殺しとくべきだったのかな」 なんだって? 今ユウリはなんて言った? 誰か巻き戻ししてくれないか。 「マスコミが少年グループって繰り返すのはいい隠れ蓑だったんだけどね。あたし女だし。女の子が《アイコノクラスト》のリーダーだなんて誰も思わないよね」 悪戯っぽい笑みだった。なんていうことだ。いつもの彼女じゃない。 しかし、辻褄が合うのも道理だった。指示書と実際の四人組の行動に微妙な違いがあったのは、女に扱き使われているという意識が芽生え始めたからだろう。ちょっとした反抗心が彼らをひねくれさせたのだ。それに指示書の、盗みは成功するだろう、という楽観的な言葉と、先ほどユウリが口にした言葉、「なんでも出来ちゃうんだから」。そこに、共通して俺の能力を認める姿勢が垣間見えるのだった。 「いつ分かったの?」 「つい今しがたさ……」自暴自棄だ。なんでこんなことになってしまったんだろう。「君のことを考えて、君の事を見た。その時に、神様が妙な考えをふっと投げ込んできやがったんだ……。ユウリ、本当なのか?」 「ダイスケはね、警察にあたしたちの情報をリークしてたんだよ。だから、あいつの付き合ってる女を拉致したの。そうしたら大人しくなったけど、あいつが存在する以上あたしたちはずっと危険に晒されているわけでしょ。だから、粛清しようと思ったの。でも、ただ殺すだけじゃ、ダメ。そこでソウジの出番よ。ソウジはあたしたちのメンバーの逮捕に協力した。だから、鉄槌を下そうと思ってね。そこで、ソウジに罪を被せてダイスケを粛清する計画を立てた。あは、一石二鳥ってやつ。これ、ソウジと付き合う前の話ね。計画には自信があった。部屋に閉じ込められたソウジがすぐに脱出することも分かってた。あたしのことが心配だもんね。ご苦労ご苦労。あ、でもこの隈は本物。ソウジが逮捕されるまでは安心できないもん」 ――つまり、ユウリは今回の計画のために俺と……。俺はそんな女を心から……。 涙なんか枯れた。こんなドン底ってあるか? 何してくれてんだよ、運命の女神。その前髪を引っこ抜いてやろうか? 俺はユウリと一回もあんなこともそんなこともしてないんだぞ。その理由も今分かったが。 そのときだった。面会室のドアが開き、あの刑事が顔を出した。 刹那。 ユウリの細い体が俺と彼女とを隔てる机を飛び越していた。手を付いてくるりと俺の背後へ立ち首に腕を絡ませる。その手にはバタフライナイフが握られていた。 「近寄らないで。あたしはこのまま出て行くから、邪魔しないでよね。善良な市民が死ぬよ」 刑事はただ狼狽した。何が起こっているのかまったく見当が付いていないようだった。 「おい、やめるんだ」 「命令しろなんて言った? 邪魔するなって言ったのよ。この男の首、掻っ切るよ」 「分かった。邪魔はしない」 刑事は両手を挙げてユウリの――こんなに可憐なのに悪魔的な少女の言葉を聞き入れた。 俺はユウリに抵抗しなかった。できなかった。まだ信じていたから。情けないと思う。でも、彼女をずっと信じていたかった。 「ねえ、拳銃って持ってるの?」 「いや、普段は装備倉庫にある」 「じゃあ、そこに案内して」 「何を考えてる?」 「兵力増強。《アイコノクラスト》っていうくらいだから破壊能力ないとね」 刑事は身構えたままユウリと、俺とを見つめた。 「ソウジ君は君の恋人じゃなかったのか?」 「まあ――仮契約ってやつ?」 「ソウジ君、君しか彼女を止められない。やめるように言ってくれ」 俺は答えなかった。もし連れ去られるならそれもいい。この世なんてどうにでもなれ。 「ねえ、“ソウジ君”殺すよ」 「分かった。だが、待ってくれ。倉庫には鍵がかかってる。それを開けさせてからじゃないと中には入れない」 刑事の目は俺に注がれていた。随分親切にしてくれた。 恩返しなんて期待してるんだろうか。そうだろうな。武器なんか持ち逃げされたら絶対に職を失うもんな。家族はいるんだろうか。なんかいい父親っていう感じがするな。家族はいい。心の居場所だから。 俺は自分の両手に目を落とした。随分綺麗な手じゃねえか。今まで苦労なんてそんなにしてこなかったものな。そつなく生きてきたんだ。多分これからも。 深呼吸した。 刑事は面会室のドアのところに立って、ユウリの進路を塞いでいるように見えた。時間稼ぎだろう。この間に狙撃部隊とかを外に待機させているんだろうか。そうしたら、もしかするとユウリは撃たれて死んでしまうかもしれないな。それはすごく惜しいし、嫌なことだ。ユウリはかわいい。優しい。理解がある。頭もいいだろう。気が利くし、スタイルがいい。こんな女の子を喪ってはいけないだろうな。それに、この先、俺がこんな子と一緒になれるなんてないだろうな。 もう一度深呼吸した。 どうすりゃいいんだ。外に出ればユウリが殺されるかもしれない。今下手なことをすれば俺の首から血が吹き出るだろう。どんな窮地だよ。まさに《電ミス》だ。なんで現実に演じなきゃいけないんだ。俺は書いて送るだけでいいんだ。いや、もう今日中に出すのは無理だろうな。何もかも終わりだ。俺の人生――平凡。まあ、最後にこうしてドラマが生まれたからよしとするか。警察で人質事件なんて新聞の一面だぜ。美少女が犯人で、俺はその恋人ってことになるんだろうな。 「頼む」 刑事の口がそう動いたような気がした。 もういやだ。 「刑事さん」俺は疲れ切った口を動かしていた。「もうユウリの好きなようにやらせてくださいな。どうせ、彼女が捕まっても《アイコノクラスト》は存続し続けるでしょう。ここで起こったことなんか些事なんだ。さあ……。俺は大人しくユウリに従います。さあ――」 「見損なったぞ」 「ソウジはよく分かってるよ。ここを出たら部下にしてあげよう」 そうかい。 刑事の目。俺の心を突き動かそうとする。 そうかい――……。 だったら、ちょっと頑張ってみてやってもいいんだぜ。 ユウリを失う? 刑事の信用を失う? 自分の命を失う? 否だ。 全部取る! 新聞の一面だって、だ! もう俺は決めた! 「ユウリ、ちょっとごめんな」 「え?」 俺は思い切り肘をユウリの腹にめり込ませた。そうさ、手加減なんて一切しなかった。殺す気でやった。それは半分嘘だが。 「うぐっ!」 ナイフが手元から床へ跳ねた。ユウリが苦しんでいた。当然だ。肋骨にぶち込んだ。 「でかした、ソウジ君!」 刑事が駆け寄ろうとする。 「ちょっと待ってください!」 俺は倒れこむユウリを見つめた。苦しんでる姿もかわいいんだ。こいつは本当に完璧な女なんだ。ただ、ちょっとひねくれちまった。 深く息を吸い込む。 「おい、俺はお前が好きだ! こんな事するんじゃねえ!」 矛盾してるかなんてどうでもいい。 無理やりその体を起こさせる。 「こんな事して損するな! 普通の女になれ! 俺が絶対大切にしてやる!」 「ば、馬鹿じゃないの……」 ユウリが忌々しげに俺を見つめる。 「そうだよ、俺は馬鹿だ。それでお前を好きになっちまった。でも、好きだっていうのは馬鹿でも誰でも本当なんだ。俺がお前を叩き直す。付いて来い、絶対だ。放さないぞ」 ユウリの口元に笑みが浮かび上がった。そう、笑えばいい。かわいい女には笑顔が似合うんだ。 「……もう、好きにしてよ」 それきり彼女は目を閉じてしまった。俺の腕に重さがさらにかかった。 「ということです。刑事さん聞きましたか」 刑事は唖然としながらも口を開け放したまま頷いた。 「ただし」死んだ化け物が起き上がったみたいにユウリが口を開いた。「治療代はソウジ持ちでね。……すごく痛い」 「はい」 8、タイトルは最後に 俺が諸々の用事から解放されたのは夜も十時になってからだった。 ユウリは病院へ運ばれて、治療が終わり次第事件についての処罰が待っているということだった。これまでの《アイコノクラスト》での犯罪もこれで暴かれていくのだろうか。いや、俺が暴いていく舵取りをしなければならないのだ。それは、もうあのときに覚悟した。それに、俺は知っていた。俺の一撃で苦しむユウリの表情に、どこか安心したような響きが混じっていることに。これまでの日常から彼女は抜け出したかったのかもしれない。俺が彼女を救い、変えていくんだ。それが使命なんだ。だから、俺は彼女と出逢ったに違いない。 部屋のベッドに倒れこんだ。 色々なことがありすぎた。今日で三か月分くらいは生きた気がする。 しかし、改めて驚いた。自分のあの行動力に。人は変われるのかもしれない。違いない。人を心から好きになるということが、俺を変えたんだ。 そうさ、間違いなくユウリは俺にとって人生を転換させる運命の女神だったのだ。 では、いっちょ、小説家の夢も……。そう思い起き上がってあることに気付いた。時計の針は十時半を過ぎていた。あと一時間半だ。間に合うか? まさに窮地だった。 パソコンを立ち上げ、キーボードに向かう。 脳裏を駆け巡っていく、これまでの光景。世界が変わって見えた。その映像が俺の指を動かしていく。文字が止め処なく溢れていく。 ――間に合え! 【了】 . . .
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登録日:2022/03/28(月) 15 00 00 更新日:2024/03/17 Sun 13 43 35NEW! 所要時間:約 ? 分で読めます ▽タグ一覧 コルネリアス・ルッツ ルッツ ローエングラム王朝 上級大将 偽ワーレン 元帥 射撃の名手 殉職 銀河帝国 銀河英雄伝説 銀河英雄伝説登場人物項目 銀英伝 智者は智におぼれる。ヤン・ウェンリーのカレンダーも残りすくないぞ。 コルネリアス・ルッツは、銀河英雄伝説に登場する人物。 ゴールデンバウム王朝及びローエングラム王朝に仕えた軍人で、射撃の名手として名高い。 OVA版の声優は堀勝之祐、Die Neue These版では野島裕史が務める。 ■[来歴]■ 登場時系列としては、OVA版外伝の『決闘者』が初となる。 当時は少佐で、決闘の代理人として候補したラインハルト・フォン・ミューゼル大尉に対し、慣れぬ旧式の火薬式銃の使用方法をアドバイスしている。 その後はラインハルトが開いた元帥府に招集されている。当時の階級は中将。 アムリッツァ星域会戦では第12艦隊を強襲し、ボロディン中将の旗艦を含んで残8隻まで削り切る戦果を挙げる。 続くアムリッツァ会戦ではキルヒアイス率いる別動隊としてワーレン中将共々に参加し、自由惑星同盟の残存艦隊を後背から突く事に成功する。 リップシュタット戦役では引き続きキルヒアイス旗下で辺境星系の鎮圧を担当。そのためラインハルトの元で戦っていた諸将と比べて出番は少なめ。 更に言えばこの後の帝都オーディンへの急襲ではガイエスブルグ要塞に残留したため活躍していない。 リップシュタット戦役を終えてラインハルトが帝国の実権を握るとその戦功により大将に昇進している。 ラグナロック作戦では、ロイエンタール指揮下で第9次イゼルローン攻略作戦に従事。 この時、ロイエンタールとレンネンカンプの衝突に際して仲裁を行い、年上であるレンネンカンプも従ったことから信頼信用は決して低くないことがうかがえる。 ヤンがイゼルローンを放棄した際には要塞内部に仕掛けられた罠の可能性に勘付いて調査を実施し、爆弾解除を成し遂げた。 そのままイゼルローン要塞の要塞司令官として駐留し、以後のバーミリオン開戦には参加していない。 同盟領制圧後、ローエングラム王朝勃興と同時に上級大将に昇進した。 第10次イゼルローン要塞攻略戦では、ヤンが仕掛けた5回の罠に引っかかったと思わせて艦隊を出撃させる。 しかし彼らが遺していった本物の置き土産により要塞制御システムが無力化され、再度ヤン艦隊によるイゼルローン要塞の攻略成功を成し遂げられてしまう。その後はトゥール・ハンマーによって艦隊の数割を損失し惨敗、撤退する。 この失態によって前線から遠ざけられ、フェザーン警備司令官に左遷されてしまう。そこで代理総督邸の爆弾テロ事件に巻き込まれるが、入院先の看護師と恋愛関係になるなど慶事もまた訪れた。 ラインハルトがハイネセンへ行幸するにあたり、ロイエンタール弑逆の嫌疑が噂されていたため、自分が無任所である事と「妹夫婦が新領土にいるので顔を見たい」と理由をつけて同行する。 しかし旧同盟領・ガンダルヴァ星系の惑星ウルヴァシーで発生した動乱によってラインハルトが危機に陥ると、負傷したナイトハルト・ミュラーらと一緒に逃がすため単身で殿を務める。一個小隊ほどの追撃を抑えきるが、旗艦ブリュンヒルトの発進に気を取られているうちに銃撃を受け死亡する。 元々嫌疑がかかっていた所にラインハルトが信を置いて行幸したにもかかわらず、その管轄下で皇帝狙いの攻撃で重臣を失う事件が起こった事でロイエンタールはさらに追い詰められ、第二次ランテマリオ会戦の戦端が開かれる起因に繋がってしまった。 彼の死後、ラインハルトによって元帥号が授けられているが、これは「生きて元帥杖を手にするつもり」と約束したルッツへの罰だと言い放っている。 ■[人物]■ 普段は温和な性格だが、直情型のビッテンフェルトに「(興奮すると目の色が藤色の彩りを宿す事から)ポーカーするときにサングラスが必要な男(*1)」と称されるほど内に秘める熱情は大きい。 また沈着かつ豪胆と称されるようでもあり、特に艦隊運用では諸将に見られるダイナミックな戦術は好まないが堅実で過不足なく任務を実行できる人物である。 ヤン・ウェンリーからは名将と、メルカッツ提督からは屈指の用兵家と称される事からも、彼の手腕は窺える。 知謀でも劣っていた訳では無く、自由惑星同盟が放棄したイゼルローン要塞を再奪取後に置き土産が無いか隈なく捜査したり、ハイドリッヒ・ラング率いる内国安全保障局を警戒するなど一介の将としての才覚を見せている。 真面目な人物である一方でかなりの冗談口も叩く方。 ラインハルトの『芸術の秋』で古典バレエの観賞に同行させられたビッテンフェルトを笑い話の種として扱ったが、その直後に詩の朗読会に同行するよう要請が下ると頭を抱えているシーンがあった。 また数少ないアイゼナッハの声を二度聞いた人物で、高級士官クラブ「海鷲」でコーヒーカップを落とした彼の「しまった」と喋るのを聞き漏らさなかった。この時同席していたミッターマイヤーと、「あいつ口が利けたのか」と語ったり、「夫人と接吻くらいはするだろう」と彼の寡黙さを冗談めかしていたりする。 ラインハルト元帥府の将官の中ではワーレンと並んでキルヒアイスと行動を共にしていた期間が長く、 「親友贔屓で今の地位にいるわけではない」と決して軽んじていたわけではないのだが、それでも数で同等のリッテンハイム艦隊を烏合の衆と見なして自ら率いる高速艦800隻でかき回す姿には感服していた。 この再評価もあってか、キルヒアイスが死亡する原因となったパウル・フォン・オーベルシュタインには「心にもない弔辞を読んでやるために先に死んでやるものか」と豪語するほどの嫌悪感を見せていた。 ■[係累]■ クララ フルネームは不明。フェザーン警備司令官として赴任後に代理総督邸で起こった爆弾テロで負傷した後、入院した病院で知り合った女性。 婚約はしていたようで、ラインハルトのハイネセン行幸の際には空港で見送る姿が見られた。 ルッツの死後は従軍看護婦育成のために設立された『ルッツ基金』のメンバーとして参画。同時にルッツに与えられるべきだった10万帝国マルクの下賜を謝絶し、この基金の運用資金に回されている。 ユリウス・エルスハイマー ルッツの妹の夫。ロイエンタールの指揮下で新領土の民事長官を務めている。 ロイエンタールの反乱の際には怯えながらも面と向かって、「公人として」皇帝への反逆に加担できないこと、「私人として」ルッツの死の責任が明確にされていない以上、義兄の仇ともいうべき相手に味方することに耐えられないと告げた。ロイエンタールも「勇気と正義に適う」としてエルスハイマーを軟禁にとどめ、叛逆に加わっていないことを示したミッターマイヤー宛の書状を持たせた。 ロイエンタール敗走後は彼から新領土の全権を預かり、帝国軍に統治権を引き渡した。 ■[部下]■ ホルツバウアー 中将。作中では明確にされていないが、自信と兄をルッツに助けてもらったことがあり、そのことから強く敬愛しているらしい。 第二次ランテマリオ会戦では、上官の復讐戦のために旧ルッツ艦隊を率いてミッターマイヤーの指揮下に加わり、クナップシュタイン艦隊を壊滅させた。 オットー・ヴェーラー 中将。第10次イゼルローン要塞攻防戦時に、ルッツが駐留艦隊を指揮して出撃した後に要塞の守備を任される。 しかしヤン艦隊が先の攻防戦の時に仕込んだ要塞無力化のキーワードによって防御システムを無効化され、侵攻してきたヤン艦隊の陸戦部隊に対し装甲擲弾兵部隊を投入し艦隊帰還までの時間を稼ごうとするが、トールハンマーの封印を解除され艦隊が帰還できない状況に追い込まれてしまった。 ヴェーラーは部下の安全な退去を条件に要塞の明け渡しを決め、自身は失陥の責任を取り白いテーブルクロスを敷き、その上でブラスターで頭を打ち抜き自害した。 ■[余談]■ ワーレンとの混同 OVA版では、度々容姿が似ているアウグスト・ザムエル・ワーレンと見分けがつかないとネタにされている。ワッツとかルーレンとか言われたり。 髪型や全体的な容姿が似ている事や、OVA版初期の方ではキルヒアイスの副官として両名が一緒の画面に映るシーンもあり、その影響で両者の人相が混合してしまった人も多いのではないだろうか。 道原版ではゴツゴツした四角い姿のワーレンと細面のルッツの形で区別されている。 Die Neue These版ではルッツは金髪の美男子なのに対し、ワーレンは茶髪ツーブロックのケツ顎筋肉とかなり差別化されている。それはそれでワーレンが誰なのか分からない人が続出したが 追記・修正はヴァルハラでいただきますが、どうかそれが遠い未来のことであるように……。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] フジリュー版はイメージ的にワーレンと容姿逆だよなぁと思う今日この頃。 -- 名無しさん (2022-03-28 22 47 33) せめて武器の携帯は射撃の名手であるルッツにも認めさせてキルヒアイスと二人体制にすべきだったよなあ・・・。 -- 名無しさん (2022-03-28 23 47 15) 名前 コメント
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ラノで読む 「我々は差別されている!」 教壇の前に立ち、井上《いのうえ》花子《はなこ》さんはそう言った。 わたしは友人のみっちゃんに連れられて、ある集会に出ていた。それは強力すぎる、あるいは制御できない異能を持つ生徒たちが集まり、学園生活に対する不満を言い合うと言う後ろ向きな集会だった。 わたしはそんな集会には興味無かったし、そういう異能を持っていても特に学園生活に対する不満や愚痴はなかった。だけどみっちゃんがどうしても一度出て欲しいと言うもんだから仕方なくきたのだ。 しかし、思っていたよりもこの集会の人数は多かった。辺りを見回すと、参加者は二十人以上いるように思える。学園の空き教室を使い、『差別被害者の会』の会長である花子さんがここで熱弁を振るっていた。 「ねえ、ほら。花子さんってかっこいいでしょ。あの人は私たちのリーダーなの。花子さんのおかげで私たちは差別に立ち向かえるのよ!」 わたしの隣に座るみっちゃんの目は輝いていて、とても「怪しい集会だね」なんて言える雰囲気ではなかった。周囲の人たちも花子さんの話を聞いてうんうんと頷いたり、中には涙を流したりしている人もいた。 不気味だ。 それがわたしがこの集会に抱いた第一印象である。 「我々は不当な扱いを受けている。学園の上層部は我々を危険で凶悪な存在と捕え、隔離したりリミッターの装着を強要する。××××××という蔑称で我らを呼んだこともあった。我々が持つ異能は言うならば才能だ。決して障害者や奇形ではない。彼らのような人のお荷物になるだけの存在ではない。我らは進化した人間なのだ。それにも関わらず、学園の人間共は我々を異質な存在として扱う。これは明らかな差別だ。生まれ持った才能のために、不自由な生活を強いられるなんてとても耐えられない」 そう言って花子さんは腕を振り、オーバーアクションで学園の差別意識をみんなに語った。 花子さんはとても美人で、そう熱く語る様はすごくかっこよかった。 彼女の必死な語り口に、わたしも次第に引きこまれていく。 「学園の人間はクズだ。連中は大した力を持たない癖に、我々を侮辱する。それはなぜか。彼らは我らを恐れているのだ。だから差別をし、陥れようとしている。我々は平等のために戦わなければならない。優秀で力を持つ人間が上に立つことこそが、真の平等だ。下等な旧世代の駄人間共などすべて死んでしまえばいい。やつらはラルヴァよりも残酷で下劣な生き物だ。生きる価値の無い無能共だ。やつらの差別に我々は屈するわけにはいかない!」 そう言って花子さんはバンっと教壇を叩く。 すると、周囲の会員たちは「うおおおおおおお!」と蜂起したように叫び声を上げ、会場は熱気に包まれていく。 「これは聖戦だ。自由と平等を勝ち取るための戦争だ。みなのもの覚悟はいいか、我らが力を合わせれば勝てない相手などいない。卑しい差別主義者共を我々の手で葬り去るのだ!」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 ビリビリと部屋が揺れ、わたしも感動してしまった。 そうだ。わたしもちょっと前に異能の訓練で強力すぎるからと言う理由で参加を拒否されたことがある。 あれもまた差別だ。 わたしは差別をされたのだ。 そう思うと、わたしの中にも怒りがふつふつと湧き立ち、周囲の会員や、みっちゃんと同じように叫んでいた。 そしてわたしも『差別被害者の会』に入会した。 わたしの仕事は差別主義者への報復だった。みっちゃんや、他のメンバーと一緒に無能で役立たずで、そのくせ差別ばかりする学園の生徒たちの襲撃を始めた。 わたしたちの異能は学園側から制御され、監視をされているせいで使えない。だから仕方なく金属バットを武器にわたしは手始めにクラスメイトの女子を襲った。その子は美人で頭がいいという理由で、男子から人気があった。その彼女はわたしを見下すような目で見ていた。ような気がする。 そんな差別主義者には鉄槌が必要だった。 わたしは彼女が帰路につくのを見計らって襲撃した。 彼女はわたしがひそかに想いを寄せていた田中くんと手を繋いで歩いていた。 そんなことは関係なくわたしは彼女を何度も何度も金属バットで殴った。パーカーを被り、サングラスにマスクをしているため顔はばれていないだろう。田中くんはみっちゃんが拘束していた。彼はおしっこを漏らしていた。情けない。異能を持たない男なんてみんなこんなものだ。弱くてみじめったらしい生きる価値の無いゴミのような存在。わたしたちのような高等な人間とは違う。わたしは田中くんの頭にもバットを振り下ろした。 わたしが入会してしばらくして、新たな入会希望者がやってきた。 そのうちの一人はアフリカから留学してきた黒人の異能者だった。 「我々の会に外人はいらない。やつらがスパイを送り込んでくる可能性だってある。何よりこの地球上に日本人以外に優れた人種など存在しないのだ。我々が欲しいのは強く優秀な人材。汚らしい肌のゴミは早く失せろ」 その留学生は登校拒否になったらしい。 当然だ。集団の結束が大事なのに、そこに異分子となる危険性のある存在はいらないだろう。 その次にやってきた入会希望者は異能の暴走で両足を無くした男の子だった。 「ぼくもみんなに復讐したいんだ。ぼくの身体が不自由だからってクラスのみんながお荷物だっていじめるんだ。どうか入会させてください」 「駄目だ。我々の会にもお荷物の無能はいらない。貴様見たいな弱者は差別されて当たり前だ。それは差別ではなく当然のことなのだ。失せろ。そして一生部屋に引き籠っているがいい。我ら新人類にゴミは不必要だ」 花子さんはそう吐き捨て、ウジ虫を見るような嫌悪のまなざしを男の子に向けた。 そうだ。ここは強者が集う会なのだ。そしてその強者である我々が差別されることがおかしいのだから。彼らのような弱者は排他されて当然だ。それから花子さんは不細工で気持ち悪い女子や男子も次々と入会を拒否し、『差別被害者の会』の存在を知った彼らを口止めをしてきた。 「きみも随分といい働きをしてくれるね。幹部に昇格をしてあげよう」 ある日、花子さんにそう言われたわたしは、感激で涙が溢れてきた。 わたしは認められたのだ。 差別が溢れかえるこの間違った世界でも、受け入れてくれる人はいるのだ。 わたしたちのような存在が受け入れられる。そんな理想の社会のためにわたしたちは戦う。 「それできみに仕事を頼みたいのだが。B棟で軟禁されている我らと同じ強力な異能者を助け出してほしい。その少年もまた不当な扱いを受け、差別に苦しんでいるに|違いない《、、、、》」 「わかりました」 「っとその前に……」 わたしはある物を花子さんから手渡された。 手に伝わる重たくて冷たい感触。 それは拳銃だった。 「これは」 「幹部になったご褒美よ。もしその少年が抵抗したら迷わず撃ちなさい。我らの仲間になる意思がないものは、生きている価値なんてありはしないのだから」 「……はい」 そうしてわたしはB棟に侵入した。 大した警備も無く、なんなく入ることができた。渡された地図に従いわたしは少年のいる部屋に向かい、その扉を開いた。 そこにはゲームをして遊んでいる少年がいた。 「お姉ちゃん誰?」 「わたしはキミを助けにきたの。ここに閉じ込められているのはもう嫌でしょ?」 「そんなことないよ。別に不便なんてないし」 「強がらなくてもいいのよ。わたしはキミと同じなんだから。キミもきっとみんなの役に立てる」 「いやだね。ぼくの異能は危険なんだ。ここから出るわけにはいかない」 「そんな差別主義者たちの安全なんて考える必要はないわ。きみは選ばれた存在なんだからもっと堂々としていなさい」 「差別なんてされてないよ。学園の人も施設の人もみんな良い人たちばかりだよ」 少年は怪しむような目でわたしを見て、怒ったように言った。 わたしはポケットの中に手を突っ込み、その中の拳銃に触れる。 「可哀想に。キミは洗脳されているのね。飼いならされているのね。でも大丈夫――」 「ぼくは可哀想なんかじゃない!」 少年はそう叫んだ。 わたしは無意識のうちに拳銃を取り出して、少年に向けていた。 少年は下を向いていて、拳銃に気づいていなかった。 「ぼくが可哀想だなんて決めつけるな。ぼくが差別されているなんて決めつけるな。お前らこそ差別主義者じゃないか!」 その言葉を聞いた瞬間、わたしははっと頭がクリアになった。 なぜ自分が拳銃を握っているのかわからなくなった。 どうして。 どうしてこうなっているんだろう。 どこで間違えたんだろう。 何を間違ったんだろう。 頭の中が混乱する中、引き金にわたしの指がかかる。 そしてわたしは、わたしは―― 終わり トップに戻る 作品保管庫に戻る
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編集の前にトップページか参戦作品でガイドラインを読んでから編集してください。ガイドライン違反の内容は削除対象となります。 「機動戦士Ζガンダム」 放映日時 TV版:1985年3月2日~1986年2月 劇場版:第一部 機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者- 2005年5月28日公開 劇場版:第二部 機動戦士ΖガンダムII A New Translation -恋人たち- 2005年10月29日公開 劇場版:第三部 機動戦士ΖガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛- 2006年3月4日公開 概要 TV版機動戦士Zガンダムに新規映像と新解釈を盛り込んだ富野 由悠季による新訳版。 20年近く前の映像と新規作画の映像とをミックスするという大胆な手法でも話題となった。 ストーリー 地球連邦とジオン公国による一年戦争から8年後の宇宙世紀0087年。地球在住の特権階級の権益を代表する地球連邦軍のエリート部隊「ティターンズ」と、その専横的な支配に反発するレジスタンス組織「エゥーゴ」の間で、連邦を二分する戦乱が始まろうとしていた。ティターンズの拠点であるスペースコロニー・グリーンノアに住む少年カミーユ・ビダンは、些細な事からその戦いに巻き込まれてしまう。権威主義的な軍人への私的な反発心から、ティターンズの新型モビルスーツであるガンダムMk-IIを奪取。偵察任務に就いていたエゥーゴのクワトロ・バジーナ大尉と運命的な出会いを果たす。その後、かつての一年戦争の英雄アムロ・レイや強化人間の少女フォウ・ムラサメを始めとした多くの出会いの中で、少年は大きく成長していく。物語中盤以降では、ジオン再興を目論むハマーン・カーン率いるアクシズも参戦し、三つ巴の戦いが繰り広げられていくこととなる。 基本的な運用 登場人物 カミーユ・ビダン 本作の主人公。17歳。 自分の女性的な名前にコンプレックスを持っておりすぐに人を殴る。それがきっかけでガンダムMk-IIに乗ることに。遊びでやってんじゃないんだよー! 「カミーユ」という名はフランスあたりではふつうに男の名前である。 初っ端から生身の人間相手にバルカンをぶっ放すというとんでもない事をしでかす。おかげで現在でもマジキチ扱いされている。 ニュータイプとしての能力は歴代でも最高といわれTV版ではその強すぎる能力故に精神が疲弊していく。劇場版では迎える結末が大きく異なる。 監督曰く、映画のカミーユは溜め込まず受け流す術を知ったとの事。 前作ではシンの親友兼アドバイザーとして活躍。今作でもシンとの友情は変わらない。 ビーム・コンフューズのみ新録をしている。そしてリアル系では珍しく「技名」を叫ぶ。「武器名」ならちょくちょくいるのだが……。 クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル) 27歳。今作では00のコーラサワーより年下である。 サングラスをかけて変装しているが、その正体はなんと、ジオンのエースだった赤い彗星ことシャア・アズナブルである!(棒)原作では割りといろんな人にバレてたけどハマーン以外はみんな空気読んでた。 相変わらず赤が好きなようである。 暗殺されたエゥーゴの指導者ブレックス・フォーラの遺志を受けて、その跡を継ぐ。 今回はいつものアレはないので安心して育てられる。 ファ・ユイリィ 17歳。 カミーユの幼馴染。フラウ・ボゥを彷彿とさせるほどカミーユからぞんざいに扱われる。だけど最終的にはカミーユのパートナーの地位を得る。 カミーユの世話を焼きたがるあまり、エゥーゴのパイロットとなる。 主な搭乗機はメタス。 アポリー・ベイ ジオン公国時代からのシャアクワトロの部下その1。階級は中尉。今回は百式の武器で参戦。劇場版で苗字がつきました。やったね! アポリー・ベイは偽名で本名はアンディ。 シャトルの操縦もこなす。 ロベルト ジオン公国時代からのクワトロの部下その2。階級は中尉。今回は百式の武器で(ry同僚のアポリーは苗字まで付いたのにロベルトは据え置き、ロベルトが何をした。 ロベルトは偽名で本名はリカルド・ヴェガ。 スパロボやってるとアポリーとセット的なイメージを持ちがちだが、実はかなり初期に戦死している。アポリーが戦死したのは後半。 アムロ・レイ 24歳。 一年戦争で活躍した当代随一のエースパイロット。その能力から連邦に危険視され、軟禁されていた。まぁたった一機で戦局を覆す能力を持ったパイロットなんて危険視されて当たり前だわな。 領地を出られない以外は一応、待遇は国賓クラス。彼女もできました。 カツに説得されカラバに参加。当初はブランクから戦うことに怯えていたが、徐々に勘を取り戻し若きニュータイプであるカミーユを導いていく。でも地球を離れることはできなかった。そこをつっつかれると怒る。 搭乗機はリック・ディアス。TV版ではディジェに乗り換えるが、劇場版にはディジェが登場しない(SRWZでは隠し機体で登場)。 顔は劇場版、しかしノーマルスーツは逆シャアなのは前作から。 機体 Zガンダム/ウェイブライダー 全高:19.8m、重量 28.7t 後半の主役機。Z計画で開発された可変型MS。 ウェイブライダーに変形する事で、単独での大気圏突入及び大気圏内での単独飛行が可能。SFSとしても使用可能でありドダイのように使う事もできる。 TV版ではその設計にカミーユが関わっていたが、劇場版では関与していない。 物語終盤では機体に搭載されたバイオセンサーと、カミーユのニュータイプ能力が共鳴し、超常的な性能を発揮する事もあった。 今回新たに「ビームコンフューズ」を習得。サーベルのビーム部をライフルで弾いて範囲攻撃するというもの。「パイロットが『技名』を叫ぶ」という宇宙世紀シリーズでは唯一の『技』(『武器名』ならば無くもない)。 新録があるアムロもビームコンフューズ用のセリフが用意されている。 バイオセンサーが多少不調なのか、ウェイブライダー突撃はできないがハイパービームサーベルは使える。この武装はニュータイプLV4が必要だが、参戦時カミーユはニュータイプLV3で、使えるまで結構な経験値を必要とする。 百式 全高:18.5m、重量 31.5t Z計画で開発された機体。パイロットはクワトロ・バジーナ。金色のMS第一号。この金は耐ビーム・コーティングを施された結果なのだが、「対ビーム効果があればいいなー」程度で効果は低い。 紛れも無いガンダムタイプなのだが、「ガンダム」の名が無いためアムロのABには対応していない。 ガンダムとしての名はδガンダム(デルタガンダム)、γガンダムであるリック・ディアスの次に開発されたからである。 「百年使えるMS」という願いを込めて名付けられた機体だが、クワトロに僅か半年でおじゃんにされた。ラスボス級に二人掛りでボコられたんだから仕方が無い。むしろよく大破せずに生き残った。 一方ジュドーはデチューンされた百式でネオジオンのMS相手に無双していた。 敵の攻撃を回避する事を基本コンセプトにしているため、盾を持たない。 バックパックは任意に着脱が可能であり敵に向けて飛ばすことができる。 メタスとともに可変機として開発が進んでいたが、変形トラブルにより可変機としての開発は断念された。 少し自粛したZと比べると寧ろ強化が目立つ、希少な続投組。 メガバズーカランチャーはどこからともなく飛んでくる。流石にアーガマの名前は出さないけど相変わらず照準は定まらない。 ビームライフルを外すと物凄く恥ずかしい事になる。初撃が外れてるのに「遅い!」と言いながらさらにビームライフルを乱射しながら突っ込むクワトロ… メタス 全高:19.4m、重量 40.1t Z計画によって開発された黄色いボディの試作型可変MS。レコアが搭乗し、後にファが搭乗する。劇場版では各人用に2機登場。 あくまでMA時のテスト機であるため、MS状態は上半身と下半身が数本のパイプで繋がれているだけのやっつけ形状。 グリプス戦役の最後まで戦い抜いた機体だが、当然ながら修理装置などは積んでいない。逆にエネルギーや弾薬などの補給機として働いていた。劇場版では百式のメガバズーカランチャーのエネルギー供給役をやっている。 ビームサーベルを6本も積んでいるという設定がある。 補足 前作はifルートが正史では?とよく言われているが、そうなるとハマーンとは和解している事になる。 公式ページで特に表記されていないが今回も劇場版設定で参戦である。前作ではちゃんと劇場版表記だったため、発売前は「今回はTV版になるのでは?」という予想も見受けられた。 過去参戦作品 スーパーロボット大戦 第2次スーパーロボット大戦 第3次スーパーロボット大戦 スーパーロボット大戦EX 第2次スーパーロボット大戦G 第4次スーパーロボット大戦 第4次スーパーロボット大戦S スーパーロボット大戦F スーパーロボット大戦F完結編 スーパーロボット大戦COMPACT スーパーロボット大戦64 スーパーロボット大戦リンクバトラー スーパーロボット大戦COMPAC2第1部 スーパーロボット大戦COMPAC2第2部 スーパーロボット大戦COMPAC2第3部 スーパーロボット大戦IMPACT スーパーロボット大戦α スーパーロボット大戦α外伝 第2次スーパーロボット大戦α 第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ スーパーロボット大戦A スーパーロボット大戦R スーパーロボット大戦COMPACT3 スーパーロボット大戦D スーパーロボット大戦Scramble Commander スーパーロボット大戦MX スーパーロボット大戦GC スーパーロボット大戦XO スーパーロボット大戦Scramble Commander the 2nd劇場版準拠 スーパーロボット大戦A portable 声優のみ劇場版
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地球をアイスピックでつついたとしたら、ちょうど良い感じにカチ割れるんじゃないかと言うくらいにに冷え切った朝だった。いっそのこと、むしろ率先してカチ割りたいほどだ。 自宅のベッドから発せられている甘美な誘惑を全力で振り切り、通学のための身支度を済ませようと、一階の洗面台に向かった。 鏡の前に立ち、鏡面世界の自分に対面を果たす。うっし。本日も男前だ。朝の光で自慢の金髪が輝いていやがる。 そして真冬の水道水を顔面にかけた。 「くはあ!冷てー!」 身震いするほど凍てつく冷水のおかげで、眠気覚ましの効果は抜群だ。 「さてと。お母さんが起きる前に朝飯を作んねーとな」 確か冷蔵庫に卵が大量にあったから、オムレツでも作るか。 「いただきます」 俺特性であるフワとろオムレツと目玉焼きをテーブルの上に配膳をし、母親と共に手合わせる。 「わるいね。本当なら私が作るべきなんだろうが」 「いいさ。お母さんは昨日遅かったわけだし。早起きくらいどうってことねーよ」 我が家は母親と俺の二人暮らしなので、母親が仕事で遅いときは、こうやって俺が朝飯を作ってやっている。 父親はどうしたって?俺が中坊の時に死んじまったよ。 「よしよし。本当に良い子だね、お前は。見た目ヤンキーなのに」 ヤンキーは関係ないだろ。これでも進学校に通っている、れっきとした真面目高校生だ。 朝食を終え、俺にとって大切な日課である紫煙を堪能していた時、微かな機械音が居間に流れているのを感じた。 携帯電話を手に取り、ディスプレイに目を通す。一体誰だよ。こんな朝っぱらから。 『着信 ハル』 あの女が人の迷惑を顧みないのは、いつものこんだが、勘弁して欲しいものだ。他にイタ電相手がいないのか?俺もだが。 『出るのが遅い。せっかくこのあたしがかけてやってるんだから、1コールで出なさい』 「おかけになった電話番号は、現在、電波の届かない所にございます」 とりあえず切っておいた。理由?なんかイラッときたからだよ。 『……なにしてんのよ?あんまりふざけると死刑にするわよ』 「で、こんな朝からなんのようだ?涼宮ハルヒさん」 電話口に現れたのは、朝から不機嫌エンジン全開な涼宮ハルヒである。 彼女との出会いは、桜がとっくに散り、映画業界陰謀短期集中型一過性休日集合週間なる別名「ゴールデンウィーク」が過ぎたあたりの、日本晴れの日だった。 その日、俺は退屈な学業を終え、早々と帰宅に勤しんでいると、駅前の大通りにて、涼宮ハルヒが頭の悪そうなアホヤンキーにからまれていたのだ。 今思い返せば退屈なだけだったと思う。 暇つぶしと下心が7:3くらいの心境で、躊躇うことなくそのアホヤンキーをぶっ飛ばしていた。 「なに?正義の味方きどり?寒いわ」 この言葉が彼女の第一声である。恩着せがましく聞こえるだろうが言わせてくれ。それは無いだろ。 「別に。ただの暇つぶし。他意は……ちょっとしかない」 それだけ聞くと、涼宮ハルヒは長髪を翻し、まるで俺の事など記憶からデリートしたかのように、その場を去っていた。お互い第一印象は良い方ではなかったと思う。 だが、話はここで終わりではない。 その後も、俺達は幾度となく様々な場所でこいつと顔を会わせるようになった。ある時は学校の学食で。ある時は、たまたま入ったコンビニで。 まあ、お互い目立つからな。顔を覚えちまうと、どうも目に付くようだ。 最初こそ無視しあっていたが、そんな偶然を一ヶ月も共用していると、何だかバカらしくなり、気がついたら話しかけてた。 多分、お互い退屈してたんだろ。街で出会った同級生。俺と涼宮ハルヒの関係を言葉で表すとこんな物だろ。 『ちょっと、聞いてるの?返事くらいしなさいよ』 「聞いてるよ。今日学校サボるから足になれだろ?勘弁してくれ。こう見えて、俺はヘタレでビビリの小心者なんだ。学校サボるなんて恐れ多いことできるか」 『そのツラで何を今さら。どうせ便所で煙草フカしながら話してんでしょ?だからあんたは背が低いのよ。古泉君みたいに健康的に生きなさい』 「お前は俺の母親か」 『は?ふざけてんの?』 この女はなんでこんなケンカ腰なんだ?もう少しフレンドリーに話せよ。ツラはいいのに。もったいない。 『いーい!?あたしは光陽園駅にいるから、つべこべ言わずにとっとと来なさい!』 勘弁してくれと言いたい。しかしこの状況では、かけ直しても出ないだろう。なにより電話代の無駄である。どうせ無料通話分だろうが。 しかしどうもしっくり来ない。涼宮ハルヒがワガママで自己中心的な言動を取るのはいつもの事だが、いままで相手の状態を考慮せずに突っ走ることはなかった。 涼宮ハルヒが無理難題を言うときは「今ならあたしの言う事を聞いてくれる」と、考えてないようで考えているのだ。俺と古泉一樹くらいしかわからんだろうが。 煙草を携帯灰皿に捨てて、深ーく深呼吸。やれやれ、気にならんわけじゃないしな。冬休みが近い今日ぐらい、サボっても問題ないだろう。表向きはそれなりに品行方正な学園生活を送っていたわけだし。 襲撃みたいに唐突な電話を切り、煙草を吸い終えると、父親の眠る仏壇に手を合わせた。あー、とりあえずいってきまーす。お父さん、サボることは内緒にしといてくれよ。 光陽園駅前は朝の通勤ラッシュでごった返していたが、その美しい黒髪は見る者全てを魅了してやまなかった。これでもうちょっと素直ならな。 乗ってきた中型バイクを光陽園駅の入り口で仁王立ちをする涼宮ハルヒの前に横付けに停車した。 「遅い」 いや、ロボットみたく言われたことしかできないような美人は魅力的ではない。涼宮ハルヒはこのくらいでちょうど良いのかも。 「道が混んでいたんだよ」 その上、バイクってのは構造から言って、風を全身に受けなきゃならないから、冬はあまり走りたくない。 しかし、カエルを捕食する蛇のように睨みつける涼宮ハルヒの目は、いつもより陰りが見える。寝不足か? 「だったらもっと早起きしなさい」 「お前の予定を予言して早起きしろってか?俺は超能力者じゃねーぞ」 「あたりまえじゃない。超能力者なんか、そう簡単に現れるわけないでしょ」 だろうね。「実は僕は超能力を使用できまして、世界平和のために日夜戦っています」なんてことがいきなりおこるか。 大体、そんな世界平和組織が、一般人に話を持ってくるわけが無い。仮面を被った昆虫人間が所属する組織よろしく、内部で秘密厳守な命令でも下っているさ。多分。 「で、俺は制服姿のお前を、どこに連れて行けばいいんだ?」 サボるならもっと目立たない格好で来いよ。まぁ、こいつの場合は目立つから制服脱いでもあんまり変わらんだろうが。 「あんたも制服じゃない」 俺は母親を悲しませたくないだけだ。結構無理して進学校に通わせてくれている母親に「学校サボる」なんて言えなかった。これでも罪悪感は感じているんだよ。 「あたしも家からそのまんま出てきたから、仕方ないのよ」 急な思いつきか。急なのは今に始まったことじゃないが、考えずな行き当たりばったり行動なんて珍しい。 周りにはそう思えるだろうが、彼女は頭の回転と行動力が異様に早いだけ。早すぎて常人には着いていけないのが現状である。 「別に今さら見つかってもいいわよ。成績は良いから、学校側は黙認するだろうし」 そうでしたね。一学期の期末試験は学年トップでしたね。俺は……まぁ中盤より上くらいだ。 「それじゃあとっとと行くわよ」 「どこへ?」 男性のように豪快に股を開いてシートに跨る涼宮ハルヒに聞いてみた。 「あんたはあたしの指示通り走行すればいいの」 涼宮ハルヒに予備のヘルメットを渡し、グリップを回す。 メタル色のマフラーから排ガスが漏れる。それでは交通法規を守って出発進行。 バイクを走らせること数時間。ダラダラと寄り道しながら着いた場所は、西宮南部に面した大阪湾が一望できる丘だった。 「で、ここに何の用だ?まさか寒中水泳でもしたくなったとか言うなよ」 「そんなわけないでしょ」 シートから降りて、減らず口と共にヘルメットを投げ返してきた。 すると、彼女はその場にしゃがみこんでジッと海を見始めた。一体なにがしたいのか。 「……理由なんかないわよ。ただ、なんとなく海が見たかっただけ」 俺のほうを見ずに、抑揚無い言葉で話し始めた。 「いや、無いわけじゃないわ。知ってるでしょ?あたしん家が、あんまり上手くいってないことくらい」 前に聞いたことがある。涼宮ハルヒの両親は、ここ数年ほど、離婚の話で盛り上がっているとかな。 「原因は……まぁあたしなんだけどね。小学生の時くらいまでは優等生で通ってたあたしが、中学に上がった途端、奇妙奇天烈な行動ばかり起こしたから。 そのせいで二人とも責任のなすりつけ合いになって……バカよね。別に二人のせいなんかじゃないのに」 なんでこんなにいたたまれない気分になるのだろうか?とりあえずポケットから煙草を取り出し、場繋ぎのためにも火を灯すことにした。 「あたしは別に後悔なんかしてない。あたしの人生だもん。好きに生きるわ」 「……してない「つもり」だった?」 「……うん。今朝、起きたらママと親父がケンカしてたのよ。しかも、察する限り一晩中寝ないで。どんだけ言い足りないのよ。 それ見てたら、「このまま自分のやりたいように好き勝手生きてもいいの?」って思っちゃって……」 なるほどね。なぜ俺「だけ」が彼女の思いつきに付き合わされた理由がわかった。なぜなら涼宮ハルヒの狭い交友関係の中で、俺だけが片親だからだ。 十代後半くらいの子供だったら、大多数は両親揃っているはずだ。 でも俺は違う。俺は母親と二人暮らしってことに関しちゃ嫌気はさしていないが、困っていないわけでもない。 そして涼宮ハルヒは、家庭に問題を抱えている。それも自分のせいで。 お互い特殊な家庭を持つ身の上であり、俺なら黙って話を聞くぐらいはしてくれると思ったんだろう。 「ハル。俺は聖人君子なんかじゃない。だから「お前の気持ちはよくわかる」なんてことは言わない。つーか言えない」 だって俺は「涼宮ハルヒ」じゃないからな。 「だから理解できる努力をする。話したいことが他にもあるんだろ?」 話してもらうだけでいい。 聞くだけでいい。 今の俺の役割は、彼女を理解すること。それだけだ。 理解した上で、どうにかするのは俺の役目じゃない。誰の役目かって?さぁな。こいつを無償の愛で愛せるような聖人君子くんだろ。 その後は日が暮れるまで、涼宮ハルヒの一人話が繰り広げられた。内容は……特に思い出すほど重要な事柄ではなかった。他愛もなさすぎて語る必要も無いね。 俺と涼宮ハルヒが光陽園駅に戻ってきた頃には、肌寒い冬の夜空が頭上に広がっていた。おぉおぉ。みんな寒そうに歩いてやがる。 「はい、到着」 「寒い。あんた、あたしに風引かせるつもり?」 自分で命令しといてめちゃくちゃ言ってやがる。そんな短いスカートでバイクに跨る君が悪い。ついでに言うとバックミラーには何度か写ったぞ。君の下着が。あぁ、はしたない。 「死ね」 結構な言い草である。 「それじゃあ俺は帰るぞ。じゃあな」 「ふん。じゃあね」 涼宮ハルヒから受け取ったヘルメットをシート下のトランクにしまい、エンジンキーを回す。グッドバーイ涼宮ハルヒ。 「ずいぶんと遅くなっちまった」 バイクを法廷速度を時速五キロメートルほどオーバーで、気持ーち早めに走らせ、月が支配する世界を疾走していた。今日の晩飯は何かな~と。 呑気な事を考えていたせいか失念した。交通法規の大原則は、歩行者優先であると言うことを。 「なっ!?」 眼前の十字路を横切る人影にフラッシュライトが当たり、その顔が、一瞬だけ驚愕に目を見開いた。 アスファルトをこするタイヤの音。 摩擦熱のせいで焦げ臭い。 道路に投げ出せれた長い黒髪。 「……ハァ……ハァ……」 咄嗟の出来事のわりに、上手く反応できたのは神の気まぐれかもしれない。謎の人影に衝突する瞬間に片足でブロック塀を蹴り飛ばし、なんとかバイクの軌跡を逸らすことができた。 「てめぇ!こんな夜道でいきなり飛び出してくんじゃねーよ!もう少しで潰れたガマガエルみてーにするところだったじゃねーか!」 バイクから降り、飛び出した人影の襟首を吊るし上げる。この制服は北高のセーラー服だな。小学生じゃねーんだから、いきなり飛び出すんじゃねーよ! と、ここでその人物の顔が月明かりに照らし出された。 「ごめんなさいね。ちょっとボーっとしてたわ」 かなりの美人がそこにいた。それこそ涼宮ハルヒとタメを張れるくらいの超絶美人女子高生のな。 「……ったく、勘弁してくれ」 こんだけの美人が謝っているんだ。怒る気も失せた。少々名残惜しいが、彼女の襟から手を離すことにした。 すると手を離した瞬間、この轢きそこなった彼女は、マジマジと俺の顔を覗き込んできた。なんのつもりだ?生憎俺は君の幼馴染でも生き別れた兄貴でもねーぞ。多分。 「ん……なんでもないわ。お構いなく」 いや、構うわ。はっきり言って良い気分はしない。 「ふーん……そう、それじゃあね」 満足したのかどうかは知らんが、彼女は手の平をヒラヒラと振りながら、眼前の宵闇へと溶けていった。 もしもこれが月曜九時の恋愛ドラマなら、今頃バックコーラスが大音量で流れているだろう。そしてここから恋が始まかもな。 だけど彼女の微笑は、そんな恋愛ドラマには似つかわしくない程に酷く不気味で、それこそ生気の無い、能面やマネキンが口元を無理矢理歪めたようだった。 「……っくそ。なんなんだ、この寒気は」 体中の血管が根こそぎ吹雪に晒されたような欝感覚。もしかしたら背後に雪女かなんかがいて、耳元に氷の息吹でも吹きかけているのかもしれない。もちろんただの比喩だが。 交通事故未遂と寒波のせいで、中も外も冷やしてしまった俺だが、慣れ親しんだ自宅の玄関を開き、なんとか安堵の吐息を漏らせた。 「ただいまぁ~、なぁ聞いてくれよ。実はさっきそこで交つ……お母さん?」 唯一の家族である母からの返事が返ってこない。 おかしいな。今日は仕事が休みだから家にいるはずなのに。昼寝でもしてるのか?つっても、もう夜だが。 「……お母さん?出かけてるのか?」 今にも幽霊が飛び出てきそうなほどに静かで不気味な狭い廊下を歩き、リビングの扉を開く。 「なんだよ。いるじゃないか。「おかえり」くらい言ってくれよ」 母は電灯も点けずに、リビングの食卓の上でうつ伏せで突っ伏していた。 その姿を見て、こんなに寒いのに何故か汗がダラダラと流れ落ちる。 しかも俺の足が母に一歩一歩近付くことに、体内の発達した直感力と、卓越した危機察知能力がレッドアラートで警鐘を鳴らしている。そう、その姿はまるで……。 「……おい!?お母さん!?」 そこにあったのは、ナイフではらわたを抉り出された母の遺体だった。 「つまり自宅に帰って来た時には、既に母親が亡くなっていたと」 「……はい」 俺よりいくらか歳を取ったくらいの若い女性刑事が、凛とした言葉で遺体の状況を聞いてきた。 現在の時刻は22時15分。本格的に胃が給料の支給を求めている。 だが残念ながら口が食物を受け入れてくれそうも無いため、胃袋にはもう少し我慢してもらおう。 リビングにて母の遺体を発見した俺だが、なぜか頭だけは恐ろしいほどに冴え渡っていた。 誰がどう見ても死んでいるのがわかる。よって119番ではなく、速攻で110番。10分後には制服警官数人に、若い女性刑事と初老の男性刑事が家にいた。 母の死因は腹部を鋭利なナイフで切り裂かれたことによる失血死らしい。即死ではなく、数分間は意識があったようで、惨い殺しだったと警官が語るのを聞いた。 そして今は「簡単な取調べ」を受けるために、火サスではお馴染みの取調室にて、半軟禁みたいなことをされている。 「オーケー。それではもう一度聞くわね。君は母親の死亡推定時刻、どこで何をしていたのかしら?」 女性刑事の瞳が、探る様に鈍く煌いた。 「何度も言わせないでください。光陽園学院には行かず、サボって遊んでいました」 女性刑事は手元の紙にボールペンを走らせた。 まさか俺が母親を殺したと疑っているのだろうか? ……無理も無いよな。気分は悪いが、アリバイだって「サボって遊んでいた」なんて曖昧だし、最近は真面目に学校に通っていた。 それを今日いきなり学校を休み、その日にこんな事件が起きたんだ。俺が警官なら絶対疑う。 「それではそのアリバイを証明することはできるかしら?」 「……はい。その時一緒に遊んだ友達が」 そこまで発言した瞬間、取調室の扉が勢い良く蹴り飛ばされた。 「ちょっと!あんたのママが死んだって本当なの!?」 取調室の扉に暴行を働いた少女こそ、俺のアリバイを証明する人物です。もう少しおしとやかに登場できないのか?パンツ見えそうだぞ。 「うっさい!それより本当なの!?」 涼宮ハルヒの瞳が、驚くほどに無の光を放った。どんな顔をしていいのか分からないのだろう。 「ご覧の通りだ。母親は殺されて、俺は取調べを受けている」 つーかよく来てくれたな。確かに証言のために呼んだが、正直あまり期待はしてなかったよ。 「あたしだってこのくらいの分別はつくわよ」 そうかそうか。これで俺はこの取調べから解放されるな。そう思ってありふれたパイプ椅子に腰を下ろし、涼宮ハルヒが口を開くのを待ち望んだ。 だが、 「ハルヒ!」 またも取調べ室に突撃してくる人物がいた。それも二人。取調べ室ってのは、こんなにも騒々しい物なのか? 「親父にママ!?なんでここにいるのよ!?面倒だから黙って出てきたのに!」 そう言えば前に一度だけ涼宮ハルヒの家にお邪魔した時、この二人を見たことがあった。どこかで見たと思ったが、両親だったか。 父親は呼吸を荒くしながら涼宮ハルヒの方を睨みつけている。だが対照的に、母親の方は目元をハンカチで拭いながらメソメソと泣いている。 おいおばさん。なんであなたが泣いてるんだよ。泣きたいのはこっちだ。 「まさかお前が警察にご厄介になるなんて……恥ずかしくないのか!?」 「ちょっと親父!なに勘違いしてるのよ!?あたしじゃなくてこっちの」 「言い訳は聞きたくない!」 めちゃくちゃなオヤジだな。聞きたいのか聞きたくないのかどっちだよ。混乱してんじゃねーよ。 「まったく!お前はいつからこんな子に育った!こんなガラの悪そうな少年と仲良くなったり、最近は帰りも遅いじゃないか!」 「そんなの関係ないでしょ!あたしが誰と連もうかあたしの勝手よ!」 「大体ハルヒがそうなったのも、お前の育て方が悪かったからだ!だから市立じゃなくて光陽園にしかいけないんだ!」 「わ、私のせいだって言うのですか!?あなたが家庭を顧みることができたらこんな」 「うるせぇっ!」 怒号と共に、目の前の無機質なアルミ机が吹き飛び、室内にいた全ての人間が俺を注視する。 「こんな警官に見られた場所でワーワー喚きやがって!恥ずかしくねーのかよ!?」 ふざけた抜かしてんじゃねーよ!子供が大切だと思うなら、こんな場所で口喧嘩なんかするな。 「おら、もう結構だ。とっとと家に帰って家族会議でも離婚調停でも何でもしてくれ。ハッキリ言って迷惑だ。消えろ」 ここに警察がいなかったら、絶対にこのクソオヤジに飛び蹴りの一つでもかましていたはずだ。友人の親?知るかよ。 「あんたらは親ですらない。親だったら子供の気持ちを汲んでやれよ」 もううんざりだ。どうにでもなれ。 「彼女を帰していいのか?君のアリバイを証言する人物だろ?」 女刑事は「何考えてるんだこいつ」と怪訝な表情で俺を見据えている。 どうでもいいよ。だって俺は無実だし。アリバイ証明なんか必要ないね。 「そうか。ではもう一度初めから聞かせてもらえないか」 「なんでもどーぞ……と言いたい所ですが、そろそろトイレに行かせてくれませんか?本気で漏らしそうなので」 プチ軟禁状態にされて数時間もイスから動いてねーんだ。そろそろ水分抜かな、恥ずかしい事態になりそうだ。 「それもそうだな。ここで小休止を取ろう。新川、彼をトイレまで案内してやってくれ」 「かしこまりました。森警視」 監視付きかよ。勘弁してくれ。 トイレ内部はそれなりに清潔さを保たれており、これなら落ち着いて用を足せる。 「って、見られて喜ぶ性癖は無いのですが」 見られて無けりゃな。 「それは失礼。だが、取調べ中の人間から視線を外すわけにはいけませんので」 勘弁してくれ。そんな風に放尿シーンをジッと見られては出せるもんも出せない。この初老刑事は、何故こんなにも実直なのだろうか。 「逃げたりしませんよ。つーか逃げられません。だってここは三階ですよ?」 トイレの窓の外には月が世界を照らしており、十二月らしい寒風が吹き荒れている。こんなところからどうやって逃げろって言うんだよ。 うんざりな取調べとは言え、逃げてなんになる。そりゃ拘束緊迫軟禁プレイなんて勘弁して欲しいが、大体逃げたりしたら俺が加害者として断定されそうでだ。 ここはうんざりな取調べに、うんざりするほど付き合うくらいしか逃げ道はないのさ。 「新川警部、鑑識から報告がありました」 トイレの外で、三十代前後くらいの男性が声を張ってきた。 この声は多分、俺の家にやって来た制服警官の一人だ。胸元に名札があって、田丸(裕)とかって書いてあったな。 「失礼、少しここを離れますので、用が済みましたら呼んでください」 へいへい。と軽い口調で返事をしておいた。 こんなトイレから脱出困難なことくらい新川警部にもわかっているのだろう。じゃなきゃこうも簡単に目を離してくれるはずがない。 「……悪いな新川警部。俺にはここでノンビリしてる時間なんかないんだ」 トイレの窓を全開にし、寒波を顔面に浴びる。っへぷし! 鼻をすすって窓の下を見ると、一つ下層のトイレの窓が視認できる。さらに目を凝らせば、同じく最下層の窓も。 「さすがに窓は閉ってるな……あ~仕方ない」 制服のシャツの袖を二つに破る。これを簡易式バンテージにして…… 「一つ間違えたら重傷。間違えなくても軽傷。勘弁してくれ」 溜息を漏らしながらも、窓から外へと身を乗り出し、柔い手すりを掴む。そういやなんかの映画で、こうやって懸垂トレーニングをしてる筋肉マンがいたっけ。 「さぁて、男をみせろ。頼むから間違っても笑いを見せるんじゃねーぞ。絶対に笑えない事態になる」 呼吸を整え、自分なりにタイミングを計り……アン、デゥ、トゥルワ! 手すりから一思いに手を離し、飛び下り自殺まがいの荒芸をした。 「うるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 最下層のトイレの窓を握り拳が捕える。 窓ガラスが飛び散り、腕に小さなガラスが突き刺さったが、何とかトイレ内部の壁を掴むことができた。 ギリギリ成功である。あと一瞬遅かったら、鉄筋コンクリート相手に正拳突きをブチ込むところだった。 ハードなスタントモノマネのせいでガラスが突き刺さった箇所から血が流れ出ているが、今はそんなことどうだっていい。 手すりから手を離し、無事とは言い難いが警察署の敷地内に脚を踏ん張ることができた。 署内から騒がしい空気が感じられたため、一目散にその場から駆け出すべきである。 出血箇所を手で押さえながら、全力疾走。とにかくここから離れないと。 繁華街のビルに、パトカーのサイレンがやかましく反響している。 「バーカ。そんな小回りの効かないパトカーで、俺が捕まるかよ」 裏路地と裏道を渡り歩き、廃ビルと工事現場を抜け続けたおかげで、今のところはこちらに追いつく気配は無い。 あのまま警察に任せて取調べを受けてるべきだったかもしれない。 だけどな、殺されたのは俺の母親なんだぜ?それなのにそのまま丸投げなんかできるか。 「警察なんかに任せられるか。俺が絶対に母親を殺した野郎を捕まえる」 学ランの裏ポケットからタバコを取りだし、火を灯す。 「覚悟しろよ殺人鬼。世の中には絶対に喧嘩売っちゃならない相手がいるってことを教えてやるよ」 煙を吐き、気分が高揚してから携帯電話のダイヤルをプッシュしていく。 「もしもし、俺だ。ちょっといいか?」 受話器の奥で、電話相手の溜息が聞こえてきた。こんな夜分遅くに電話かけてスマンとは思ってるよ。だがな、お前しか頼れる奴がいないんだよ。 「やれやれ。と言うべきですかね」 「だから悪かったと言ってんだろうが。古泉」 笑顔が癖の男には珍しく、厄介なことに巻き込まれたと言わんばかりにウンザリしているのは古泉一樹である。 涼宮ハルヒと僅かに交流を持てた頃、古泉一樹と出会った。五月と言う中途半端な時期に転校してきたことから、彼女に「謎の転校生」と呼ばれている。一体どこの国基準で謎なんだか。涼宮王国か?ハルキングダムか? それ以来涼宮ハルヒは事あるごとに古泉一樹を財布にし、色々場所や施設へと連れまわした。それって世間一般的にはカツアゲと言う行為なんだぜ? いや、カツアゲとは言わんか。なぜならこいつは涼宮ハルヒにベタ惚れしているからな。言うならば、双方合意の上のデートもどきである。両方困ってなければいいか。 「今、とても失礼なこと考えていますよね?」 さぁ?なんのことだか。 「まったく。いくら取り調べが嫌だからと言って、三階から飛び降りるなんて馬鹿ですよ。見てくださいよ。この血だらけの包帯」 ああ、血も滴るいい男だな。って、ごめんなさいごめんなさい。シリアスパートに戻すので、110番を押さないでください。 「僕の両親がカナダに出張していたから良い物を……もう少し自分の身を大事にしてください。死ぬ気ですか?」 「死ぬ気なわけねーだろ。死ぬ気でなんかしようとする奴は死ぬだけだ」 ああでもしなきゃ逃げられなかったからな。 すると古泉一樹は「ああこの馬鹿には何を言ってもダメだ」と悟ったのか、無言のまま包帯や消毒薬を片していった。 「……なぁ、ところでお前の両親は元気してるか?」 古泉一樹が救急箱を片す所を見ながら、なんとなく聞いてみた。いや、聞かずにはいられなかったと言うべきか。 「……えぇ。先日カナダから電話がありましたので。正月には一時帰国をすると」 そうか。と答え、古泉一樹から借りた毛布を被り、上質なソファーに身体を休める。 「家に入れてくれてありがとな。明け方には出てくから、それまで辛抱してくれよ」 この寒空で野宿なんかしたら死んでしまう。かと言ってホテルに泊まる金も無い。だからこうやって信頼できる奴の家に転がり込むぐらいしかできなかった。 古泉一樹は良い奴さ。容疑者であり逃亡者である俺を「友人だから」と言う理由だけで上げてくれた。 だからこそ甘えるのは一晩だけだ。彼にも迷惑がかかるし、俺が気にする。 「それでは僕は自室に戻ります。おやすみなさい」 一人暮らしにはもったいないくらい広いリビングの灯りが落ち、青白い月の光が俺の身体を照らす。 「……畜生……お母さん……なんで死んじまったんだよ……」 毛布と暗闇が顔を隠してくれるからいいが、嗚咽だけはどうにもならない。ひょっとしたら、自室で寝ている古泉一樹にも聞かれているかもしれない。 でも、今まで必死に我慢してきた涙が、ここに来てダダ漏れだしてしまった。 人間である以上、死は避けられない。 だけど……こんな終わり方、唐突すぎるだろう! 俺はまだ母親に甘えたいんだ!生んでくれてありがとうって言ってないんだ! ちくしょう。畜生。チクショウ。 止まらない。どうやら俺は自分が思っている以上にヘタレでカッコ悪いガキのようだ。 毛布の中で母親と歩んできた記憶の逆流に呑まれ、結局一睡もできなかった。 第二章へ続く