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バレンタイン 「…不幸だ」最近は使うことのなかった言葉が不意に零れた。そう呟いた少年、上条当麻は手に持っていた箱の中身を再び見る。見間違いでありますように、と切実な思いを込めながら。しかし、現実はやはり残酷なのだ。交通事故。目の前で子供が轢かれそうになってるのを見過ごせるはずがなかった。その結果、箱の中身は歪な形へと変わり果てたチョコレート。落とさないようにとポケットに忍ばせたメッセージカードはクシャクシャ。衣服の何箇所かは擦り破れ、血が滲んでたりするのだが、(やべー。今から着替えに帰る時間も、替えを用意する時間もねーのに)彼の意識は既に別の所にあった。風紀委員の白井黒子は交通事故の知らせを受け現場に来たのだが、明らかに見覚えのある忌々しい姿が目に映る。何やらブツブツと言ったままで、こちらに気づいてないようだ。「…上条さん」「呼び出したのは俺だしな、、アイツ待ってるだろうし」「上条さん聞こえてませんの?」「つか今、何分だ?…遅刻じゃねーか!急がねぇと」「上条さんお待ちなさい!…行ってしまわれましたわね」「しかし、待ってる等と言ってましたが。…まさか相手はお姉様?キィエエエエッ!」「この黒子の目が黒いうちは!『白井さん早く事情聴取するわよ』…はいですの」2月14日同時刻「…遅い」呟いた少女、御坂美琴は待ち合わせの度に使う言葉を今日も発していた。約束の時間の30分が過ぎようとしても一向に姿も見えなければ、連絡も来ない。不意にポケットに入ってるモノに意識を向ける。この日のために作ったものが入っているのだが、正直不安になる。必ず貰うであろう他の人達からのチョコに勝ちたくて、あの2人に相談した結果出来たのは、到底使えそうにないチョコになった。(いや、でも呼び出してきたのはアイツからだったし...も、もしかしてこ、こここ告白されたり!?えへへ。私が電話しようと思った時にアイツからかかってきたもんね!ふ。ふふふ…)妄想空間を堪能している少女は無意識化で微弱な電気を帯び始める。それが次第に周囲に迸ろうとする瞬間を、少年は目撃した。「おい御坂!電気!!」ズタボロの体で走りながら叫ぶ。両手を動かし止めるようジェスチャーも忘れない。「ふぇ?」(とうまだ!あれ、両手広げてどうしたんだろう?…もしかしてこのまま、だだ抱きついてくるつもり?///)「美琴、電気漏れてるから!」(…!!美琴!いま美琴って!美琴っ言った!!名前呼ばれた!!えへへ///)「…ふにゃああ」「ミコトセンセーッ!!」 「ったく。何とか間に合ったから良かったものの、最近多くないか漏電」「ごめん」(勘違いしてたなんて言えるわけがない!)「でさ、気になってんだけどそれどうしたのよ?」「何がだよ?」「アンタ血出てるわよ。あ、動かさないで消毒するから」「いつも思うけど準備いいなお前」「か、勘違いしてんじゃないわよ、アンタの為に持ち歩いてるわけじゃないから!」「それは分かってるけどさ、何ていうか…」「何ていうか、何よ?」「御坂ってツンデレさんなのか?」「ダチの言ってたツンデレの特徴通り『…バチバチ』すみません冗談です」「ったく。はい、終わったわよ」「おう、相変わらず手際良いな。ありがとな御坂」「誰かさん一人のおかげですっかりなれてしまったせいかしらね」「で、こんな忙しい日に呼び出してどうしたのよ?」「え、あーいや、御坂も誰かにチョコ渡しに行くのか?」「わわ私!?私は別に…ん?御坂も?」(ギクッ!)「もしかしてアンタ誰かに渡すつもり?あのシスター?それとも二重瞼の女か?」「インデックスでも五和でもねえよ、、つか、どっちにしろこれはもう渡せねぇよ」「頑張って作ったんだけどなー、ボロボロになったからな」「…じゃあ誰に渡すつもりだったのよ…」(あの2人以外にもこいつの周りには女の子沢山いるからなぁ)「お前にだよ」(こいつの手作り良いなぁ)「御坂だぞ?」(…その子が羨ましいなぁ)「美琴センセーにですよ」「わ、私っ!?」「そう言ってるだろ?けど、これはもう渡せねぇしな」「悪いな御坂、わざわざ来てもらったけど今日は『それちょうだい』…へ?」「作ってくれたんでしょ?形なんか関係ないわよ、だからちょうだい?」「お前がいいなら良いけどよ、ほら」「ありがと。あ、どうして私なの?」「あー…日頃の感謝とかです」「ふーん。何々、御坂へ。いつもありがとう。宿題見てもらったり…」「ぎゃあああああ!!」「お前!いつそれを奪った!?」「これと一緒に渡したのアンタでしょ?」「…バカな!?」「夕飯作ってもらったり御坂と居る時間が多くなったよな」「美琴センセー、お願いですから音読は勘弁して下さい」「つか、帰ってから読んでください。お願いです」「もう読み終わってるわよ?最後の一行以外」「でさ、これ直接は言ってくれないの?」「…お前が好きだ」「…こんな時くらい名前で言いなさいよ」「わかったよ…美琴が好きだ!」「…私もさ、アンタに渡す、じゃないか。アンタに受け取って貰いたいものがあるのよね」「絶対に返品不可だけど、それでもアンタはいる?」少年が静かに頷いたのを確認した少女は円筒状のものを取り出し自分の口に塗る。塗られたそれがチョコレートだと認識するのに時間は掛からなかった。「…私もねアンタが、当麻が好き」その言葉を告げた少女は少し背伸びをして、二つの影を一つの影に変えた
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/被害者 被害者・必要悪 インドネシア、バリ島。 ここでは、バリ・ヒンドゥーと呼ばれる独特の宗教が一般的だ。 インドのヒンドゥー教より比較的階級制度も優しい。 『『海だー!!』』 しかし、この平穏な地にグレムリンの遺物が流入したとの情報が入った。 『すっごく綺麗ね!!!』 ここに派遣された理由はそれの回収およびその原因の殲滅。 『美琴の話?』 しかし、これは建前にすぎないだろう。 見え隠れするのはここの魔術事情にも口出ししたいという、 上層部の汚い野心。 『もう!! 何言ってんのよ!!!』////// ステイル=マグヌスは吐き気を覚えながらもこの地に立つ。 『俺にとっては美琴の水着姿のほうが目に毒でさ』 16歳とは思えぬその風貌。 神父というカテゴリーに入れていいものか考えさせるのは、 その深紅の髪、バーコードの入れ墨。 極めつけは口にくわえたタバコである。 二年前、上条と出会ったころと違う点と言えば、 少し成長したその表情と、 『なによ、見たくなかったの?』 目の下のすんごいクマぐらいだろう。 『いいえー、中毒者故に見ないと禁断症状が出てきちゃいます』 「ローラ=ステュアートは世界を自分の思うままに動かしていたが、 それは、自分にとって大事な人物を守るためだった。 さらには自分の行動による選択肢で、 最も犠牲者の少ない方法を選んでいたのよな。」 『……実はわたしも、当麻病末期患者なの』 ステイルに声をかけて来たのはクワガタ頭の魔術師、 天草式十字凄教の建宮斎字である。 『じゃあ、しょうがないな、一生離れられないな』 彼の体には二年前に比べ、生傷が増えていた。 『えー、それはそうかな?』 「奴が正しいとは言わない。 あれの選択はやはり、間違っていたのよ。 しかし、あの魔女がいたからこそ守られていた平和もあった。 それの引退が直接世界に影響を出し始めている。 それだけの話なのよな」 『え? どーいうこと?? そしてどこに行くの美琴たん!!?』 「ふん、なら僕たちがその平和を守ればいい。 確かに、僕がこの問題を片づけても、笑うのは上層部のクズだけだ。 だが解決したのが、たまたま旅行に来ていた科学側の人間なら……」 『たんいうな!! あーこれ以上離れたら、当麻成分がなくなって わたし死んじゃうかもー!!!』 「しかも、魔術側にもおおきな影響力を持つ人間ならそうはいかない、か。 ははは、解決の方法に、誰かさんの影響が見え隠れしているのよな」 『なにおう!! そんな悲劇は起こさせねぇ!! 美琴が死ぬなんて幻想は、オレがぶち殺してやる!!!』 「…………やめてくれ、そいつのせいで疲労が半端ないんだ」 『(やばい、当麻がカッコよすぎて気絶しそう///////) じゃあ早くわたしを捕まえて―』 「あら、認めちゃったのよ? そういえばすごい隈なのよな」 『まてー』 「1年前から激務でね」 『こっちよー』 「1年前?……あー、土御門から連絡があった時にはびっくりしたのよな」 『まてまてー』 「たしかに、必要悪の教会には僕みたいに男も所属している。 しかし、イギリスは魔女の国だ。比率は偏る。 3分の2は女性なんだ、失意に沈んで動けない彼女たちの仕事も回ってきてね。 そういえばそっちの、五和は立ち直ったのかい?」 『えーい』ビリビリ 「……まだ時間がかかるのよな。 八つ当たりでやられる敵がかわいそうなのよ。 オレの生傷も増えてく一方だし……」 『電撃はやめろよなー』パキーン 「第四次世界大戦とまではいかなかったが、 当時あっちこっちで不穏な動きが見られたしね。 ウレアパディー、ソーズティ姉妹にアニェーゼ部隊、 第二王女キャーリサ、前方のヴェント、バードウェイ、オティヌスが 学園都市に突っ込もうとした時の後始末もまだ残ってる」 『どうせ効かないんでしょー って捕まっちゃった』 ステイルと建宮は大きくため息をつき、 振り返って今回の切り札二人に視線を向ける。 『おかげで美琴成分が急激に減りました。 補充させてください』 『わたしも当麻成分が不足したの。 補充の方法は……』 『当然』 『『くちづ「さあ、こんな問題さっさと片付けよう。いくぞ!!!」 この後、黒幕を倒すために、 上条と御坂が北欧旅行も楽しんだことは言うまでもない。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/被害者
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へたくそゆーとぴあせいさく【登録タグ NexTone管理曲 VOCALOID さいね へ スズム 曲 殿堂入り 鏡音リン】 作詞:スズム 作曲:スズム 編曲:スズム 唄:鏡音リンAppend 曲紹介 「ねえ、先生。本当の世界はどこにあるの?」 スズム氏の3作目。 寂しいことも糧にして。(作者コメ転載) PVは さいね氏 が手掛ける。ギターは ぎぶそん氏 が演奏。 アルバム『ケビョウニンゲン』にRefineバージョンが収録されており、「続・へたくそユートピア政策」も収録されている。 アルバム『八日目、雨が止む前に。』の初回限定版Bにも収録されている。 歌詞 あの頃 見えてた 夢とか キミとか――― 帰り道 石を蹴って 笑ってた ボクたちは 何もかも 前向きにと 起立・礼 守ってた いつからか 傷だらけで ボロボロの 仮面かぶって 捨てられた 空き缶は 知らんフリ 大人になってた 温室育ちで 欠落知らずの 与えられた世界じゃ分からない 教科書に広がる世界 あまりに空っぽで眩しくて 誰かさんは笑って指を差した 「可哀相ね」 遊ばずに勉強するし 忘れ物も一つもしない だから褒めてよね 真面目なボク 等身大の愛でさ 帰り道 石を探して ちょっとだけ 寄り道だ 何もかも 全部守った ボク達は 怒られた いつからか 嘘をついて バレバレの 笑顔作って 捨てられた 童心は 踏みつける 大人になってた 先生は言った 常識大事と みんな同じ顔してる訳だ 教科書に広がる世界 あまりに空っぽで悲しそう 誰かさんはこっそり耳打ちした 「それでいいの?」 帰ったら宿題するし 自由帳は公式塗れ だから褒めてよね 真面目なボク 等身大の愛でさ ねえ 先生教えて 本当の世界を 驚いた顔してる仮面 教科書に広がる世界 大人たちに都合がよくて ボクは知ってる それは全部違うよ 「答えてよ」 遊ばずに勉強したら 忘れちゃうの 大事な思い 世間体じゃないよ 真面目なボク 等身大の反抗 「本当の温もりをさ」 コメント 追加乙!作成待ってる! -- 名無しさん (2013-05-24 22 35 30) 作成待ってます!! -- 名無しさん (2013-05-24 23 46 14) 楽しみ!! -- 名無しさん (2013-05-25 07 53 04) やばい//// -- 名無しさん (2013-05-25 09 44 27) 歌詞追加しました。誤字などありましたら、修正お願いします。 -- 名無しさん (2013-05-25 14 55 25) 歌詞お疲れ様です! -- 名無しさん (2013-05-25 15 54 28) 歌詞ありがとうございます -- 名無しさん (2013-05-25 16 18 44) 作成乙!今回もとても好き -- 名無しさん (2013-05-25 17 47 20) 作成乙!とてもいい曲で一発で気に入りました♪ -- 名無しさん (2013-05-25 18 13 10) 作成乙です!すごく爽やかな感じで、歌詞も素敵です! -- 名無しさん (2013-05-25 19 20 51) 追加乙!歌詞も曲調も声も絵も大好きです -- 名無しさん (2013-05-25 20 09 15) 今までのスズムさんの曲で1番好き!爽やかでいい!声も好き! -- 名無しさん (2013-05-25 22 18 35) スズムさんの新曲いいですね!v( ̄Д ̄)v -- 椿 (2013-05-26 18 49 00) めっちゃ好きです! 共感できるし最高です! -- 璃悠 (2013-05-26 19 13 08) このよーな曲ほんと作ってみたい -- 羨ましい (2013-05-27 22 42 29) 前半から後半への歌詞の展開が大好き -- 名無しさん (2013-05-28 16 37 00) スズム君最高!!! -- ぺこ (2013-05-31 21 18 43) 乙~♪ -- 名無しさん (2013-06-04 12 14 53) 爽やか -- 名無しさん (2013-06-06 21 24 41) 歌詞が好きです。ところで、殿堂入り曲一覧に入っていなかったのはなぜでしょうか? -- 名無しさん (2013-06-07 21 11 06) 乙です。歌詞好きだわー -- 名無しさん (2013-06-07 21 29 30) めっちゃ好きです!今までで一番好きかも! -- ゴル (2013-06-08 17 18 58) 爽やか!!! -- 名無しさん (2013-06-16 18 02 32) メッチャ好きです‼爽やか‼ -- 名無しさん (2013-06-17 21 37 07) これやばい大好き(≧∇≦)歌詞が共感できる。あとPVもすきーq(^-^q) -- 名無しさん (2013-06-19 16 14 29) メジャーアルバム出さないか! -- 名無しさん (2013-06-19 16 31 54) キーボード綺麗^^ -- 名無しさん (2013-06-21 00 51 25) スズム君最高!!この曲大好き!! -- ユイト (2013-06-22 13 46 11) スズム君大好き(* v *) この曲すごく好きだからCD化してほしい! -- ピカリン♪ (2013-06-23 12 57 35) 受験生ですが、勉強よりも大切な何かを探しに行ってきます。 -- 暇人 (2013-06-25 21 55 23) great melody,great lyrics,totally great 3 -- 名無しさん (2013-09-13 14 01 36) めちゃ好き!CD買っちゃった( 〃▽〃)ずっとリピートしてる -- どーりー (2013-09-16 01 03 37) さわやか -- 名無しさん (2013-09-29 13 28 52) スズムさん爽やか系も!!CDの曲全部好き! -- 名無しさん (2013-10-07 06 48 58) スズムさん天才!! めっちゃイイ歌! -- 名無しさん (2013-10-28 00 27 44) この曲は最高すぎる。泣ける -- しゃるん (2013-11-10 20 24 25) スズムさんの曲最高! いつも、聴いて元気貰ってます!! -- 名無しさん (2013-12-17 15 50 12) 勉強ばっかりじゃいけません -- 名無しさん (2013-12-29 20 20 39) 凄くイイ!間奏のピアノがきれいです!! -- 名無しさん (2014-04-27 10 46 37) なんか響くね… -- 名無しさん (2014-06-09 12 39 07) スズムくんはほんとに凄いと思う!! -- 名無しさん (2014-08-25 14 08 36) はまったぁぁーーーー!(≧∀≦) -- 泉莉 (2014-09-09 20 46 46) 流石スズム君!天才だね(^O^) -- けい (2014-09-10 18 29 33) この曲大好き♡ -- 奏優 (2014-09-29 19 35 34) 続・へたくそユートピア政策も動画でればいいのに… -- 名無しさん (2014-10-27 16 08 47) ステキな歌で感動です。 -- 名無しさん (2014-10-31 21 34 34) ヤバい。自分好みの曲すぎて、好きになった。 -- 名無しさん (2014-11-04 18 38 56) これやばいです、これのPVが可愛いです!! -- 鳥になりたい (2014-12-23 21 27 03) はぁーーー!最高1感動曲 -- asa (2015-01-22 09 46 17) 素敵です…! -- なゆ (2015-01-31 21 56 50) 最後の子が桜色タイムカプセルに出てくる子に似てる? -- 名無しさん (2015-02-19 21 40 40) さすがです♪♪いい曲だぁ -- asa (2015-02-21 13 55 52) 桜色タイムカプセルと関連性があるのかな? -- 咲杳 (2015-03-31 11 51 01) はまりました!大好きになりました。スズムさんの曲はほとんどほれますww -- 眞架 (2015-05-08 20 42 44) PV綺麗すぎてやばいw -- 名無しさん (2015-06-18 21 21 52) もうなにこれ大好き///何ですかスズムさん神なんですか -- 名無しさん (2015-07-27 17 31 56) ああ何だ・・・ただの神か -- 名無しさん (2015-07-27 17 32 48) ニコニコ動画とアルバム収録のやつだと音が微妙に違いませんか? -- 名無しさん (2015-08-17 15 46 59) この曲を聞いて受験を頑張ろうと思いました -- 名無しさん (2015-12-13 10 35 13) スズムさん凄い!(*゚Д゚艸) -- 名無しさん (2016-09-22 12 26 12) 名前 コメント
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imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 作者:Narses#z 作品概要 後でここに記載 ジャンル 作品を読む
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男になりたい。そう思った。 大人になりたいと思ったことはない。男になりたい、そう思った。 あれ、これって誰だったか、俳優の台詞だったかな。 「シンジ、ずいぶん髪が伸びちゃったね。」 「うん、まあ……このまま伸ばすのも面白いかな……と。」 「よし、アタシが切ったげる。」 「え?いや、いいよ。」 「いーから、ここに座んなさい! そんなふうに伸ばされちゃ、アンタが誰かさんに見えてくるから!」 誰かさん、つまり加持さん。 アスカが憧れていた、その人。 僕にとっても憧れたくなる存在。 ミサトさん程の人でも身を預けることの出来る人。 ああいう人を、本当の男っていうんだろうな。 「ほら!アタシも上手いもんでしょ。」 「うん……あはは、すっかり元通りになっちゃったな、僕。」 「ご不満?アンタはそれでいいよ。」 「え……?」 「アンタはそのままで良いっていったの。」 「そ、そう……ありがと。」 もはや、加持さんのことなど見向きもしてないんだね、アスカ。 僕をまっすぐ見つめてくれている。 嬉しい。素直にそう思う。 でも、これは僕がそう仕向けたため。 そう、僕は加持さんの様になりたかった。 格好だけでもいい。アスカに認められる様になりたかった。 僕を認めて欲しかったのは以前のアスカだ。「今のアスカ」じゃない。 僕は以前のアスカにも愛されるようになろうとした。それで辻褄が合う様に。 「シンジ、ゴメン……あのね、今日は行けない。」 「え、どうしたの?体でも……」 「うん……実はいうと、そうなんだ。ああ、心配はいらないわよ。 ほら、健康な女性なら必ずある……あれ。」 「あ、ああ……」 「ゴメンね。今日はお休みにしようよ。」 「いや、いいよ。僕一人で行ってくる。」 「でも……」 「大丈夫。それに畑に休みは無いよ。」 嬉しかった。 なんだかアスカが僕に甘えてくれているようで嬉しい出来事だった。 でも、以前のアスカならどうだろう? エヴァに乗っていた頃、僕にライバル心を剥き出しにしていたアスカ。 僕のシンクロ値を、僕に実戦で勝つことばかりを意識していた彼女。 『ほら、君の望む通りになってきた。 畑に休みは無い、か。なかなか格好いいことを言うじゃないか。』 カヲル君…… 『ね?気分が良いだろう。君は彼女にとって唯一の、頼るべき男なんだ。』 もう止めてよ……止めてよ、カヲル君…… 『君が望んだんだよ。君が望んだ女性に、堂々と胸をはって俺は男だと言える。 こんな素晴らしい生活が送れるなんて、まるで夢のようじゃないか?』 カヲル君……それじゃ、聞くけどさ。 何故、アスカは目を隠しているの?別に見えないわけじゃないのに。 何故、問題のない目を何時までも包帯で隠しているの? 『……』 そら、見てみろ。何も言えないじゃないか。 アスカはあの目を、綾波の目を…… 『そうだね……どうしてだろうね?』 それは……それは…… 「畜生!こんな目玉、くりぬいてやるッ!」 アスカ!? どんどんどんどんどんどんっ!ガチャッガチャガチャッ! 「アスカ!どうしたのアスカ!」 アスカの部屋の、閉ざされたドアの向こうから聞こえてきた彼女の絶叫 僕は思わずドアに駆け寄りノックし、マナーをかえりみずにドアを開けようとした。 「ねぇアスカ!お願いだからここを開けてッ!アスカッ!」 どうしたというの、アスカ。いったい何が…… 『判りきったことじゃないか。せっかくの左目をくりぬきたい? どうやら、彼女の中に邪魔者がいるようだね。』 カヲル君……君は何を…… 『君が恐れていた、君がうとましく思っていた彼女の魂。 君を罵倒し、さげすみ、足蹴にしていた彼女がそのドアの向こうにいるんだよ。』 な、何をいってるんだ。僕はうとましいなんて…… 『どうやら、この世界に存在してはならない異物がドアの向こうにいるようだ。 どうする?君が作ったこの世界に居てはならない、君にとって恐ろしい……』 うるさいッ!! 僕は……僕は心配してるんだ。アスカが変になっちゃうんだろうかと、本当に心配なんだ! 「ねぇアスカ!アスカ!アスカ!アスカ!」 がちゃ…… 「……アスカ。」 「ゴメンね、シンジ。びっくりさせちゃったね。」 アスカが出てきた。 左目を手で隠して、むしろ僕のことを心配するような顔をして。 「ゴメンね、シンジ。びっくりさせちゃったね。」 そう言いながら、僕の体を抱きしめた。 僕の全身に伝わるアスカの体。女性らしい感触が僕の脳天まで直撃する。 でも、アスカは左目を見せようとはしない。 それは何故? 「アスカ、その、目は……」 「前にも言った通りよ。この目だけは、アンタに見せられない。」 「でも、アスカ……」 「お願い、私のこの目を見ようとは思わないで。シンジ、お願いだから。」 ……何故? 『ふうん……判るかな、碇シンジ君? 綾波レイの目を、彼女は見せない。自分のものじゃないその目を拒絶している。 判るかな、シンジ君。彼女の中では、二つに分裂している。 以前の彼女と、今の彼女が争っているんだよ。』 ……え!? 『あの紅い目を拒絶する意識。以前の彼女がそうさせている。 今の彼女が隠しているもの、それは紅い目を拒絶したいと思っている自分の気持ち。』 それはどういう…… 『右のもともとの彼女の目と。左の紅い綾波レイの目と。 右の目に依然として宿る古い彼女の意識と、左目の綾波レイの魂と……』 そんな、馬鹿な! 『さあ、シンジ君。君は再び選ぶ必要があるね。 理想と現実。君はどちらを選ぶのかな。』 選ぶって……カヲル君!? 『ナイフなら、あっちの部屋にある。』 だんだん早くなる僕の鼓動……嘘だ、僕は本気でそんなことを考えているの!? 嘘だよ!絶対に嘘だ!僕に出来るわけ無い!そんなことを僕がする訳ないじゃないか! 落ち着け……落ち着け、シンジ……落ち着け…… 「わかったよ、アスカ。ごめんね、その……取り乱して。」 アスカが、見れない。思わず僕はアスカに背を向ける。 一瞬でも、そんなことを考えた自分が許せない。 僕は……なんて、おぞましい…… 再び、僕の全身がスパークした。 僕の体を、アスカは後ろから抱きしめたのだ。 「ごめんね、ホントに……その、シンジ……」 僕の耳をくすぐる甘い声。こんなアスカの声、今まで聞いたことがない。 「シンジ、今夜は一緒に寝ようよ。」 くッ…… アスカ、僕は、僕は、僕は…… 「アスカ、その……やっぱり、まだ……」 出来ない。抱けない。今の僕がアスカと一緒になれる訳がない。 自分がまるで、媚薬を嗅がせて相手を思い通りにする卑劣な男に見えてくる。 「判った。シンジ、ごめんね。」 「ううん……僕こそ……」 (最低だ、俺って。) 「おやすみ、アスカ。」 「おやすみ。」 思い出したくもない自分の行為が、脳裏にありありとフラッシュバックとなって蘇る。 今、彼女に触れた右手こそ……をした手。 気持ち悪い。おぞましい。この場で吐いてしまいそうだ。 今の自分の顔、とても彼女に見せられない。 『さて、どうすれば消せるのかな?そのおぞましい思い出を。』 カヲル君。君は…… 君は、僕に何をさせようとしているの?
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「つまりマスターバートこそ、イロスマの命である」 人物 空想世界を司るマスターの一人でイロスマの世界のマスターを担当している 大きさ以外はバートと似ている 性格 常に冷静で真面目に振舞っており適切な判断でバート達に指令を下す 反面チャラけている一面もあり、Ⅹの冒頭部分では捨てられたことを笑い事の様に説明しバート達の怒りを買ったこともある イロスマにおけるマスターバート 初登場はシンプルの最終戦に相手として登場、一度はデキットを倒すなどマスターとしての威厳を見せたが写輪眼を使いすぎたため動きが止まりデキットにフルボッコにされて敗北し死亡したかと思われたが その後はアニマルジャングルにて生きていることが判明した〔あ、マスター死んだら終わってるか〕 しかし最終回にて謎の病にかかり生死の狭間をさまよったがバートたちが体の中に入り病原体を滅ぼしたことによって一命を取り留めた その後下水道に流されたバートを救いだす しかしそんな矢先居場所を追いやられてしまい危機を脱するべくスターピース〔全財産を払い借金をしローンして手に入れたものらしい〕を食べて巨大な浮遊島になりその後も司令官として現在に至る 第6章では半年前に具現化していくガンにかかっていたがバートたちの身を案じて自力で直そうと具現化したガンを砂漠の迷宮に封印していた事を告白しバートたちにガンの駆除を依頼する サイドストーリーにおけるマスターバート サイドストーリーでは原作と違い島を離れることも多く。時には自ら戦闘に参加することもあり司令官として活躍を見せる〔第2章 第5章〕 補足 実際のところ初代の時からマスターをしていたらしい〔初代ステージいにしえの王国より〕 キャラクターを動物にすることもできる〔アニマルジャングル〕 片方の目がなくどういった経歴で片目を失ったのかは不明 DXでは万華鏡写輪眼〔6年間かけて会得したらしい〕を使えたがいつの間にか消えていた 外見はバートと似ているがおそらく肉親関係ではない 食道から心臓にかけて穴をあけられたが特に悪影響は見られない為自然治癒したと思われる 心臓の中はマスターメイドの影響で圧縮空間になっておりかなり広い空間である マスターメイドのアメを食べたことがありそれがきっかけで大騒動になったこともある 食べ物は噛まずに飲み込んでいるらしい 技 一つの世界を任されているマスターだけあって技も多い 急降下アタック 空高く飛んで急降下する技、使った後の台詞によると痛いらしい 誰かさん入ってました 飲み込んで吐き出す技。バートにも伝授している 月読 DXで使った幻術。相手に死ほどの苦痛を与え精神を破壊する 口寄せの術 バーマーに倒されたバートたちを救助するために使用した空間転移術の一つ マスターミサイル 口から小型ミサイルを打ち出す マスターソード SSで使用。口から巨大な剣を出す マスターバースト SSで使用した。カズキの破壊バーストを超える破壊力を誇るマスター専用究極奥義。すさまじい威力の破壊光線を打ち出す。
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「ちょっとロボ!いつまで寝てんのよっ」 快晴の休日、部屋中に響き渡る二コの雷に夢の途中だったロボは重い瞼をこじ開ける。 「…え~まだいいだろ~」 「天気いいんだから、お布団干さないとっ。さっさと起きる!」 早く顔洗ってきなよっと追い立てられて身の置き所がなくなったロボは 溜息混じりに二コに逆らったら後が怖いからなぁと心の中で呟きながら渋々とベッドを後にした。 「うーん気持ちいいなあ」 一仕事終えてそよぐ風と暖かい陽気に二コはほっとひと息つく。 「おっと、そうだ。誰かさんのご飯を作らなきゃ」 そのつもりで来たんだしと威勢よく立ち上がった途端、不安定なベッドの上で 危うくよろけそうになった寸前のところでタイミングよく戻ってきたロボが慌てて受け止めてくれた。 「はあ~、セーフ。大丈夫二コ?」 「うん、ありがとうロボ」 素直に感謝を述べる二コだったが、当の本人は何やら意味ありげに首を捻っている。 その可笑しな様子に…いや元々可笑しな男だけどと内心思いながらもどうしたの?と問う。 「いやー、こういう立ち位置もなかなか新鮮なもんだなぁと思って」 「へ?これが?」 二コは改めて今の状況を確認した。言われてみればそうかもしれない。 ベッドに立つ自分といつも見上げているロボとの身長差がなくなっている。 なにげに至近距離で絡み合う視線に二コは急に恥ずかしくなって思わず俯いてしまった。 「二コ」 ロボの指先が二コの触れると顎をくいっと持ち上げじっと見つめ返す。 「俺はいいなーと思った女性と2分、目を見て話すと好きになるな」 力強い眼差しに一瞬ドキッとした。と同時にどこかで聞いた台詞だなと二コは気付く。 「…さて、朝食は何がいいかなぁ」 「ええぇ!?なんでそうなるの~」 あっさり受け流されたショックにロボは涙目で二コに訴えかける。 「ねえ、それさぁ、前に一海ちゃんにも同じようなこと言ってたよね?」 「え?あ~」 そういえばそうだったかな?と気まずさに愛想笑いを浮かべるが そこは二コの性格なんて知り尽くしているロボのこと、ただで引き下がりはしない。 「でも、二コもホントはちょっとドキッとしたでしょ?」 顔を覗きこみニヤリと口元を歪める。 「そ、そんなことないもんっ。あたしご飯の用意するから、いいかげん離してよ」 そう言って振りほどこうとした長い腕を逆に背中にまわされて、ロボが耳元で囁く。 「作らなくていいよ。二コさえいれば俺は満たされるから。ていうか、今日は外は熱くなりそうだし 部屋に篭ってずーっと栄養補給をしておくのが一番だと思うよ。ねぇ?二コ」 「はあ?何の関係がっ…て、ちょっ!?やだ押し倒さないでよ!もうっ朝っぱらから盛るなって!」 「まあいいじゃん♪」 「よくなーーい!!」 窓辺の陽だまりで小鳥達がさえずる穏やかな朝、ふたりの甘く長い時間は始まったばかり。 おわり
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勝たなきゃ? ノンノン。レースは勝ってもいいし負けてもいいもんだ。大事なのは精一杯楽しむこと。その結果勝とうが負けようがいいじゃねぇか。出し切ったんだからよ。それがレースってもんさ。 ……もっとも、楽しんだ先の勝利ならウェルカムだがね 誰かのために走る? ナンセンス。走るのは常に自分のため、そうだろう? 自分のために走れないヤツってのは要するにあれだ。車だ車。ま、新幹線でもなんでもいいぜ。とにかく、いくら速くたって自分の意思じゃ走れやしない。自分のために走れやしない。そんなつまらんもんにオレはなりたくないね 夢を背負って? 0点だ0点。夢は背負うもんじゃない、魅せるもんだ ああ、この嬢ちゃんはダメだ。 誰かの言った綺麗事を真に受けて口にしているだけ。自分だけの意思ってもんがない。そんな嬢ちゃんじゃ絶対に本物にはなれないだろうさ はじめてグローリア嬢と出逢ったとき、そう思ったんだ。どこにでもいる、夢見がちなレディだってな ……いや、思っても口には出さないぜ? むしろ応援したとも。嬢ちゃんを傷つけるオレはオレじゃない。そんな話はどうでもいいんだよ。大事なのはここからだ、ボス まあ、アンタならこれから話すこともいちいち口に出さなくてもわかってるんだろう? だが聞い てくれ、これはオレの決意表明みたいなもんだ。らしくない? 酷いねぇボス。こう見えてアツい女さ、オレは ……グローリア嬢は本物だった。紛れもない本物さ。誰かの言葉を囀ってるだけのオウムじゃない。本気の本気で誰かのための理想になろうって思って口にして、本当にそうなった。見下してて悪かったよ。アイツは嬢ちゃんなんてかわいいもんじゃなかった。狂ってやがるぜ、ホント グローリア嬢がなっちまった理想ってのはあまりにも美しく、鮮烈で、儚くて、残酷だった。 シンボリの、いや、敢えて呼ぼう。シンボリレクイエムを黒い死神に変えちまった 『絶望の黒』 文屋の野郎も上手いこと言うねぇ。まさしくシンボリレクイエムは絶望を振り撒いた。皇帝の再来、なんて肯定的な意見……いや、ダジャレのつもりじゃねぇって……それこそ皇帝じゃあるまいし……アンタ実はちょっとふざけてんな? ったく、こっちは大真面目だってのに あーで、で、だ。巻くぞ。 皇帝さながらの強さでシンボリレクイエムは勝ち続けている。誰かさんの理想を引き継いで、背負っちまったからな。好きなことをやめて、笑うこともやめて、限界を超え続けている。このままじゃグローリア嬢の二の舞だ。ブッ壊れちまう。あ? 友達意識とかそういうのあったのね? ボス、アンタはオレのことなんだと思ってやがる。情に厚いぜ、パストラルさんはよ。だから── 今日、オレはオレの信念を曲げる この宝塚記念で絶対に勝つ 絶望の黒を、大切な……っ、……はぁ、言ってやるよ。偉そうなクセにビビりで泣き虫でどっか抜けてるアホ。やたらスイーツに凝ってて食い意地の張った大切なオレのダチ公、シンボリの嬢ちゃんに戻す アイツのために走る 大切なダチ公を失わないために走る。もうひとりのダチ公、あっちがアホならこっちはバカだ。かわいい顔してオレよりイカれたイケメンメンタルしやがって! ムカつく! そんなバカが笑って戻ってこれる世界であるために、オレは走る 夢も、背負ってやる 仮にもダチ公共が背負ってる夢だ。手伝ってやってもバチは当たらんだろうさ ……だから、オレを見ていてくれ、ボス。いつもと違うオレで魅せてやるから 不甲斐ない走りをかまし続けたオレが、ダチ公の為に勝ちに行くところをよ。見ててくれ
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―197X年 鎌倉市 ついにやってきた日本定住の第一歩の日。 ドイツの巡洋艦だった私が日本へ住むことになった流れはまぁ~それは色々ありましたとも。 それは置いとくにしても、今更、それも東西に分裂してしまったドイツに戻る気は無いかな。 あの頃の知り合いだってきっと散り散り。それならと、あの英潜女……アブソルートさんと、なーちゃんと一緒にやってきたワケ。 あの子らは都内に住むらしいけど、私は"元艦船の入居者優遇"の文字に釣られて鎌倉市内のアパートに決めた。 ……そう、契約書書くまで忘れてたのだけど。私誰かさんのおかげで人間の戸籍だったのよね。優遇対象外じゃん!馬鹿!! まぁでも、きれいな海も近くてそう悪い場所じゃない。きっと、戦争中と違ってのんびり過ごせるはず。 「はぁ~疲れた!」 ダンボールも崩さず、ベッドに倒れ込む私。こうやって一人になれるのはいつぶりだろう? ついさっきまで引越屋……のフリをしたMI6の連中が部屋に居たけど、もう静かなものね。 ついウトウトしてしまう……けど、そうだ、こんなことをしてる場合じゃない。 アブソルートさんにもらった"引っ越しソバ"とやらを、両隣に配らないと!! 思い出した私はダンボールを開け、仄かに黒っぽい不思議な半生の麺が入った袋を取り出す。 これが"引っ越しソバ"。日本人は引越しの挨拶にこのソバなる麺類を配ると言っていた。理屈はわかんない。 わかんないけど……そういう習慣があるなら、きっと悪いものじゃないはず。あとで自分で買って食べてみよっと。 "ピンポーン" 私の部屋から出て右隣の部屋を訪ねてみる。 「はーい」 中からちょっと幼い声と共にドタドタと足音が聞こえてくる。 がちゃり、とゆっくり開くドア。 「どちら様ー?」 出迎えてくれたのはブロンドでツインテール、青い目の女の子だ。 「えっと、今日となりに越してきました、イエナって言います」 「イエナぁ?ドイツ人なの?」 「あ~……ドイツ系、かな……?」 「かな?って何よソレ」 「あはは……」 「ま、良いわ。私はステーシー。元・合衆国海軍駆逐艦よ」 わぁ、ホントに元艦船が住んでるんだ。 「わざわざここへ越してきたってことはイエナも元艦船なの?」 「それは……どうかな?えへ……」 こういう時元艦船と言って良いものかいつも困るので、笑って誤魔化している。 「ヘンなの。イエナが元艦船でもそうじゃなくてもステーシーには関係のないことよ」 なんというか、気の強い女の子って感じ。 「あ、それで、これ、引越しの挨拶に持ってきました!」 ソバを差し出す。 「ふーん?ねぇ、ローセツ!今日越してきたお隣さんがなんかくれるって!」 もう一人居るのか。そりゃそうか。いくら元艦船でもこんな幼い見た目の子一人では生活しづらいだろうし。 奥の方から玄関へやってきたのはローセツと呼ばれたであろうちょっと背の高い女の子。 滅茶苦茶色白で、立体感さえ消え失せるほどの真っ黒な長い髪の……なんだか少し、実在感の薄い子。 「イエナって言うんだってサ」 そう言われると、何やらメモ帳を取り出し書き始め、渡される。 『臘雪(ろうせつ)といいます 素敵なお隣さんを歓迎します』 微笑む臘雪ちゃん。筆談をする理由が何かあるのだろうけど、別に気にする必要もないか。 「素敵だなんて照れちゃいます。あ、これ、ご挨拶の品です」 ソバを臘雪ちゃんに手渡すと、彼女は深々とお辞儀をし、ニッコリする。 臘雪ちゃんはステーシーちゃんに何か問いかけるようなジェスチャーをしている。 「そうね、せっかくなら天ソバがいいわ!あとでお買い物行きましょ!」 ジェスチャーで会話が成り立ってる。凄い……。 「それでは、お邪魔しました~」 ……こっちのお隣さんはいい人そうで、ちょっと安心。 "ピンポーン" 今度は左隣。 "ガチャッ" 「ひっ!?」 いきなり開いて変な声出ちゃった。 開いたドアの隙間から見えるのは……なんだか幽霊みたいな……女の子……かどうかもよくわからない。 「どちら様」 「アッえっときょっ今日となりに引っ越してきたイエナと申しまっ……!」 「落ち着いて、別に取って食ったりしない」 「す、すみません……ちょっと気が動転しちゃってて…」 「……突然開けてごめん。新しい隣人だとは思わなかったから」 扉が全部開く。全体像を見ても、やっぱり幽霊みたいという印象は拭えない。顔も無表情だし。 「イエナ、って言うの?よろしく。私は……」 そう言うと彼女は目線を外して、少し困った顔をして考え込んでしまった。 表札を見ても何も掲示されていない。名乗る名前が無いのかな……? 「……アマミズ、でいい」 「アマミズさん!よ、よろしくお願いします!」 「呼び捨てで構わないよ」 「いえいえそんな……あ、これ、ご挨拶の品です」 「ふーん、外人なのにソバなんて、変わってる」 「ヘン……ですかね?」 「いや、悪い意味じゃなくてね」 「ええ……?」 「何にしても、このソバはありがたくいただくよ。隣人としてよろしく、イエナ」 「はい、よろしくお願いします!お邪魔しました!」 「そうだ、ふたつとなりの臘雪には会ったか」 「えっ?ええ、先程挨拶しました」 「そっか。良い子だろう、彼女は」 「そう……ですね?」 「きっと貴女も仲良くなれる。それじゃ」 "バタン" ……なんだか変わってるけど、それでも悪い人ではなさそう……なのかな? ふたつ隣の事も知っていた様子だったし。 「ただいま~……って、誰も居ないんだけどさ」 まだまだ生活空間というには程遠い部屋。 そこに突然、電話のベルが鳴る。 引っ越し直後に電話をかけてくるヤツなんて心当たりがないけど……まだ誰にも教えてないし。 とはいえ放置しても仕方ないので、受話器を取る。 「あの、もしもし…」 「元独軍偵察巡洋艦イエナで合ってるか?」 「ひっ!?」 「そう驚くな。私は防衛庁広報課の後野だ」 「そんなお方がこの私に何用ですかね!?」 「何、ちょっと貴艦とお茶したいだけだ。お茶代は出す。どうだ?」 「……良いでしょう。いつ、どこですか」 待ち合わせの約束をして、受話器を置く。 想像していたようなのんびり生活は、今しばらくお預けかもしれない。 (おわり)
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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第48弾 ●仕様上のご注意● #45『ホイッスル』の後日のイメージです(直接のつながりはありません)。 負けるな比呂美たんっ!本編後日談シリーズ(いつそんなシリーズ出来たんでしょう?)の時系列は下記の通り です。細かい部分で整合性は取れていないと思いますが、基本的には同じイメージを元にしております。 45 ホイッスル NEW 48 オーバータイム 46 託された想い 44 またね 41 お留守番 43 桜並木からのプレゼント 47 魔法の呪文 工事中(未定) 40 憧れのひと 42 ごほうび 工事中(未定) 作者はドラマCDその他の内容に接触しておりませんので公式後日談?との間にはおそらく大きな乖離があるか と思います。 へっぽこなのは仕様です。 『オーバータイム』 仲上家での定期的な夕食を共にした後、比呂美のアパートまでの薄暗い道のりを歩くふたり、そんな時ふたりの 話題は… 学校での事、部活の事、絵本の事、明日の天気の事… ふたりとも他に話したいことはそれなりにあったはずだが、すでにお互いをよく知っている間柄である為、話題 にできる事といえば、そんな当たり障りの無い事ばかり、それ以外はお互いを知りすぎていて遠慮が先にたち、深 みのある会話はあまりはずまない。何気ない日々の出来事に対して関心のある風を装っての会話に終始するのがやっ とであった。 そう、間が持たないのである。 幼馴染であるふたりにとって「お付き合い」といってもそれまでと何かが劇的に変わるわけでもなく、ただ、そ れまでとは違う関係だ、という意識ばかりが先走り、その事に困惑する場面が目立っていた。 もちろんお互い離れ離れであれば今頃お互いが何をしているだろうと気にかかり、共に暮らしていた日々のリズ ムを思い出しながら相手を思い、傍に居たら居たでお互い意識しすぎて何も手につかない。 ふたりきりで何か話しているだけで内心胸が高鳴り、話し終えればどこか内心ホッとする。 片方が何か気にすると、相手もそれを察して先回りしてフォローする繰り返し、よく知る間柄で今さら何かを変 えるというのは思ったより難しかった。 そんな眞一郎と比呂美の見つけ出したふたりきりの時間。比呂美のアパートまで送った後の部屋での短い逢瀬…。 タイムリミットは比呂美の淹れたコーヒーを眞一郎が飲み干すまでの短い時間…。 ◇ 今日は失敗した。 誰かの帰りを少しでも引き止めたくて比呂美はテレビをつけた。 ちょうどテレビは人気ドラマをやっていた、比呂美は別段興味など無かったがクラスメイトの間で少し口にのぼ る程度には流行っていた、そんな番組…。 同じ屋根の下で暮らしていた時もテレビを並んで見た記憶などは無い。誰かさんはどんな番組が好みなんだろう、 などと考えながらそのままにしておいた。ところが、このような番組を見つけない事のツケがやってきた。画面の 中で恋人同士が男女の絆を深めだしたのだ。比呂美は内心動揺し、リモコンに伸ばしたくなる手をどうしたものか 迷った。だが、見始めて少し経ってしまった今となってはチャンネルを変えるのもあからさまに不自然だし、それ にそんな事をしてはまるで相手を信用していないみたいだし…。結局どうしてよいか分からずに誰かの顔をまとも に見れず俯く事しか出来なかった。それでなくとも比呂美の部屋という場所は、比呂美のあの日の言葉がふたりに 何かを想起させ、お互い手が触れてしまわぬよう、必要以上に気を遣う羽目になっているというのに…。 CMの切れ目がくると眞一郎は慌ててコーヒーの残りを飲み干し、逃げるように部屋を辞していった。 比呂美はとうとうなにも声をかける事が出来なかった。 ひとり部屋に取り残された比呂美はリモコンでテレビを切った。 誰かが居なくなった後、急に静かになった部屋で比呂美は後悔した。あの日、世界で一番恥を掻きたくないひと の前で言ってしまった恥ずべき自分の言葉をどうしたらよいか分からなかった。 先程までと同じ位置に座った。しかし、つい先程まで座っていたひとの残滓がよけい孤独感をより強くさせた。 さっきまで目の前にいた相手が今は居ない。堪らなくなるほど不安だった。もう来てはもらえないだろうかとの不 安、嫌われたり、避けられてしまう事への不安。こんな時、いっそ絆を深くしてしまえばと… あの時と同じ事を つい考えそうになってしまう… 自分の心の弱さに何かがあふれそうになる。 そっと目尻を拭いながら、時折、時計の秒針を眺めた。誰かは今頃はどのあたりだろうと想像した。 いつも眞 一郎が自宅に戻った後でくれるメールを待って、携帯電話の画面の中でポーズを作っている想い人をずっと眺め続 けていた。 ◇ 待つ時間は長い… あんなドラマをわざと見せたとでも思われていないだろうか? もしかして嫌われてしまっただろうか? メールをくれなかったらどうしよう… 帰宅後のメールをくれる約束はしていない… こちらからなにかメールしてみようか でも、 もし機嫌を損ねていたら… もし、返事をもらえなかったら… 画面の中の笑顔が滲んだ… この時は楽しかったのに… 見上げたテーブルの上 残されたコーヒーカップ 手にとるとすっかり冷えている よほど慌てて飲んだのだろう、底の方に飲み残しが見えていた カップの冷たさが嫌な想像を掻き立てる 頭の中で何かが囁きかける 見つめる黒い液体に何かを重ねてしまう カップを持ち上げた手がそのまま唇に近づき… 誰かが口をつけた痕に思わず何かをしそうになり… ふと我に返る そんな事… … でも、反対側なら… 残ったコーヒーがもったいないし… 震える手でそのまま口元へ… ブルルルル… !! ビクッと身がすくんだ 思わず室内を見回す もちろん誰も居ない 携帯の着信を知らせる振動音だと気付くまで一瞬、間があった ドクドクと胸の高鳴りが収まらない 身体中の血液が逆流でもしているみたいな感覚… 携帯電話を取り上げて 小さな画面の中に見つけたのは 画面の中でいつも笑っている誰かからのメッセージ 『今着いた これから宿題する 解らない所があればアテにしてます』 それだけだった 時計を見るとちょうど帰宅した頃合だった 緊張感の無い内容に思わず苦笑した 肩の力が抜ける 宿題… 先回りしておかないと… 鞄に手を伸ばそうとして止まった 慌ててカップを持つと流しへ急いだ それをなるべく見ないようにしながら 蛇口を開け手早く洗った スポンジで丁寧に まるで何事も無かったように… 比呂美は机に着きノートを取り出しながら気がついた 今度は熱いコーヒーにしよう 飲み頃になるまで少し時間がかかるように… その熱いカップを手にした誰かさんはどんな表情をするだろうか? 思わず想像して口元が綻んだ そうそう熱いコーヒーの言い訳も考えておかないと… ついでにお菓子も用意して… それから… ◇ 結局、比呂美が宿題に取り掛かることが出来たのは眞一郎からの最初の問い合わせメールが着信してからだった。 了 ●あとがき ご無沙汰しております。 前作以降下書きは何本か書き進めていたのですがドラマCDで公式後日談が出るらしいとの事だったので、それ なら今さらへっぽこSSでもないだろうと工事を中止しておりました。 作者は作品としての「true tears」に関しては残念ながら複雑な感想しか持ち合わせておりません。 (これを説明しようとすると膨大な文量になりそうなので控えます) ただ比呂美に出逢えた事は良かった事だろうと考えております。 ドラマCDが気にならないといえばウソですが、どうも本編のシナリオ関係のスタッフの方々と作者の価値観は すれ違ったままだったのではないかと思っていますので比呂美じゃないですが『そっとしておいて』ほしいと思っ ていたりします。 ドラマCDの内容に接触したくなくて比呂美スレにもアクセスしておりませんでした。 最近、他アニメのSSっぽいものを書いていたらなんだか気になって工事を再開させてしまいました。 作者はどうやら耐えてがんばっている女性が好みのようですね。 あと、微量の百合属性がありそうだとも気付いてしまいました。