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Just away! ◆RPDebfIIlA 殺し合い。 突如集められた総勢70人の前で、繭という少女が課した理不尽なゲーム。 海に囲まれて外界と断絶された謎の島で繰り広げられる、血を血で洗うバトルロワイアル。 互いの命の奪い合いの果て、最後に残った者は願いを一つ叶えられるという。 しかし、それを良しとせず、どうにかして抵抗しようとする者も大勢いる。 古代中国では「蠱毒」という、ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、共食いさせる呪術がある。 この殺し合いはまるで人間で共食いさせる「蠱毒」そのもの。 そんな人の命を虫ケラと同等にしか見ていないような狂気のゲームなど、断じて許せるものではない。 一方で、殺し合いに乗る者もいる。 それは殺し合いに巻き込まれた大事な人を救うために敢えて残酷な選択をする者もいれば、 願いを叶えるために乗った者、あるいはちょっとした認識のズレから殺人を犯す者、 あるいは純粋に戦いを楽しみたいだけの者まで様々だ。 D-4南方に立つチャイナ娘・神楽は、主催者の繭に立ち向かわんとする者達の一人であった。 「あのモジャモジャ女ァ!!ふざんじゃないヨ!!私が夜兎族だからって殺し合いに乗ると思ったら大間違いアル!!」 支給された黒いカードから出てきた番傘を片手に、どこにいるかもわからない繭へ向かって叫ぶ。 神楽は戦闘種族の生き残りでありながら、命ある者を殺すことを非常に嫌っている。 夜兎の血、夜兎の本能に屈さず、その力を誰かを護るために使うことを願う彼女にとって、殺し合いは到底受け入れられるものではなかった。 「でも…あそこには夜兎族が私の他にいたアル」 集められた白い部屋、大勢の人間の中でちらりと見えたその姿を神楽は思い出す。 その顔を見間違えるはずがない。神楽とは正反対の、闘争本能のままに生きる夜兎。 その名を確認するために、腕輪の白いカードに映る画面を見る。 「銀ちゃんに新八、マヨ、ヅラ、マダオに……バカ兄貴…!」 そこには慣れ親しんだ面々に加え、神楽の兄の名前があった。 その名は神威。風化したはずの夜兎の風習「親殺し」を実践し、神楽の父・星海坊主の片腕を奪った戦闘狂。 あいつのことだ、殺し合いを心から楽しんで嬉々と人を殺してまわるであろう。 そんな危険な人物を放っておくわけにもいかないし、神楽には夜兎の血に流されて殺戮の限りを尽くす兄を止める役目がある。 「神威は私がなんとかしなきゃいけないネ」 兄をよく知る神楽は、神威を見つけ出すべく動くことに決めた。 一刻も早く神威を見つけ、なんとしてでも止めなければ最悪の場合数十人が彼の犠牲になるだろう。 幸い、神楽の知る人物はあっさりと殺されるタマではない。 銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラとは今まで何度も死線を超えて来たし、マダオも妙に悪運が強いのでそう簡単には死なないだろう。 できるなら合流したいが、あいつなら大丈夫だ、と思えるくらいには信頼できる。 そうとなったら、ここでじっとしているわけにもいかない。 どこへ向かおうかと周囲を見回していると、ある建造物が神楽の目に入った。 二つの玉の間にそびえ勃つ棒。神楽のいるD-4地区からはっきりと見えるくらいには巨大な一物。 夜の中でも煌々と輝いている金属の兵器。 その名も――。 「あれは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないアルか。完成度高けーなオイ」 ◆ ◆ ◆ 怪我に構うことなく、花京院は走り続ける。 ここまでの全速力で走り続けたら普通の高校生ならばばててしまうのだが、この状況が殺し合いであれば話は別だ。 生き延びるため、こんなところで死なないためにも疲労で膝をついている暇はない。 あの超人・範馬勇次郎を一瞬の内に葬った見えざる敵を振り切らなければならない。 (『ハイエロファントグリーン』に反応はない。もう追ってきてはいないのか…?) 花京院は研究所を出てからは『ハイエロファントグリーン』を紐状にして自分の背後数十mまで展開し、追ってくる敵を探知しながら逃げていた。 しかし後ろを振り返っても敵の姿は闇夜のせいで見えず、『ハイエロファントグリーン』の紐が破壊された感覚もない。 一度は撒いたかとも思ったが―― (いや、安心するにはまだ早いッ!) 花京院は足を休めることなく走る。 敵のスタンド能力が詳しくわかっていない以上、立ち止まることは死を意味する。 暗闇の先に、敵スタンド使いの本体が潜んでいてもおかしくないのだ。 幸い、このまま南下すれば旭丘分校へ続く橋があるはずだ。 そこを経由すれば、当初の目的地である旭丘分校へ行くことができる。 「あれは…」 花京院がしばらく走り続けて、そろそろ橋に到着するかという頃。 前方を見据えると、鉄製で先端部がデカくなった棒とその左右に鎮座している玉が見えた。 それが一体ナニかは考えたくもないが、恐らくは端を渡りきってすぐの場所にあるネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲なるものだろう。 そして橋の入口付近に、人が立っていることに気づく。 背丈が花京院より頭一つ分小さい、チャイナ服を着た少女だ。 そういえば白い部屋に集められた者の中には巻き込まれた無関係な少女、果てには小学校に入っているかどうかもわからないほど幼い女の子もいた。 「あれは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないアルか。完成度高けーなオイ」 花京院に背を向け、何故か視線の先にあるネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の感想を言っている。 このゲームに乗っているかどうか問い正したいところだが、事態は一刻を争う。 「すまない、そこの君!」 すかさず話かけた――が。 「誰アルか!」 少女の得物の番傘を突きつけられる。 ここが殺し合いの場であるからか、ピリピリした雰囲気に陥りやすい。 「今は信じてもらうしかないが、僕はこの殺し合いには乗っていない!とにかく、話はあとだ!ここを離れないとッ!」 見えざる敵がすぐそこに迫っているかもしれないのだ。 花京院は急ぐあまり、問答無用で神楽の手を引いて橋へ向かおうとする。 「いきなり汚らしい手で触るんじゃないヨ!光ったメロンみたいな一本糞垂らしやがって!!」 このような強引な行動がいきなり受け入れられるはずもなく、手を振り払われた。 仕方ない、と花京院は急ぐ気持ちを抑えて神楽に事情を説明しようとするが、その前に一つ引っ掛かることがあった。 「…光ったメロン、とは?」 「お前の目は節穴アルか!お前のケツの穴からずっと向こうに伸びてんじゃねーか!!もしかしてあまりの恐怖に緑色のウ○コ脱糞したことにすら気づいてないアルか?気持ち悪っ!!」 「…君はスタンドというものを知っているかい?」 「スタンドって何アルか?」 …間違いない。この少女は『ハイエロファントグリーン』が見えている。 花京院の背後から伸びている、紐状になったスタンドが見えているのだ。 腰のあたりから出ていることを差引いても糞と間違われたことには心外だったが、 スタンドの見えない者とは根の部分で分かり合うことが出来ないという考えを持っていた花京院にとってこの事実は衝撃的であった。 思えば、研究所で遭遇した範馬勇次郎も花京院のスタンドを目で追っていた。 スタンドの可視化――これも繭のスタンド能力なのだろうか? …いや、考えるのは生き延びてからだ。 今はこの少女に納得のいく説明をして、共にあのおぞましい敵から逃れなければ! 「信じてくれとは言わないが――」 今のところ『ハイエロファントグリーン』に反応はない。 もしかしたら僕たちの背後には本当に敵はいないのかもしれない。 ◆ ◆ ◆ 「…本当に一瞬で死んだアルか?」 「ああ。その男はあまりにもあっけなく死んだ。ほんの一瞬の間に」 限られた時間の中、花京院の口から範馬勇次郎のこととその死の瞬間、そしてその勇次郎をこの世から消し飛ばした見えざる敵から逃亡中であることが語られた。 花京院の話を聞くに、殺し合いを楽しんでいた勇次郎は神楽の兄と重なる部分がある。 そして、超人とも形容できる戦闘能力を持った勇次郎を瞬時に葬る敵。 神楽も聞いただけでその能力の詳細はわからないが、とてつもなく危険であることはわかる。 「今にもそいつが追いついてくるかもしれない。今すぐ出発しないと僕たちの命が危ないんだ!」 「透明人間だか光学迷彩だか知らないが、敵が見えないことは分かったヨ。でも、これからどこ行くアルか?」 「そこにある橋を渡って旭丘分校へ行く。学生の集まりやすそうな場所だ」 一応、神楽も花京院の言うことを信じており、殺し合いには乗っていないようだ。 しかし、その信頼を得るために思ったより時間を取ってしまった。 敵が近づいてきてもおかしくないのだが、『ハイエロファントグリーン』は敵を感知せず、背後には誰もいない。 ここまでくると撒いたと思ってもいいのかもしれない。 流石の花京院の心も焦燥より安心の占める割合が大きくなってきていた。 「…私は橋渡るの反対アル」 今にも動き出し、橋へ向かおうとしていた花京院を神楽が止める。 花京院が振り返ると、神楽の深刻な表情が見えた。 「あの橋逃げ場少ないし…なんだか嫌な予感するネ」 神楽の直感が、あの橋を渡るな、と告げていた。 戦闘種族としての本能がそう感じさせているのか、単なる勘かはわからない。 「逃げ場が少ない…か」 確かに目前にある橋は人間が5人ほど並んで渡れるかどうかといった幅で、逃げ場が少ないという神楽の意見は的を射ている、と花京院は考える。 花京院が『姿の見えない敵』からここまで逃げることができたのは、いかなる方向にも逃げることのできる外にいたからだ。 だが、もし橋の上のような狭い空間で襲われたら、どこへ逃げればいいのか。 仮に水辺へ身を落とそうとも、水中で動きが鈍くなったところを突かれるであろう。 見えざる敵があの橋の上で待ち伏せしていて、橋を渡ったと同時に範馬勇次郎同様、攻撃を避けきれず消し飛ばされることもあり得る。 待ち伏せ。頭に浮かび上がった可能性を顧みて、花京院は安心に浸って緩んでいた精神を引き締めた。 「――わかった。なら、ここから西へ行って基地を経由して墓地へ向かおう。今は奴から逃げることが最優先だ」 仮に橋に敵が潜んでいるとするならば、目と鼻の先に敵がいることになる。 今は敵から距離を離し、捕捉されないようできる限りの尽力をするべきだ。 その思いの元、花京院は身体に疲労が溜まっているにも関わらず駆け出した。 神楽も花京院に続いて橋を後にする。 月の光が、暗黒から逃れようとする彼らを照らしていた。 【D-4/橋入口付近/一日目・深夜】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:疲労(中)、脚部へダメージ(小)、腹部にダメージ(中)、自信喪失気味 [服装]:学生服、『ハイエロファントグリーン』(紐) [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:繭とDIOを倒すために仲間を集める 1:少女と共に『姿の見えないスタンド使い』から逃れるために基地方面へ向かう。 2:承太郎たちと合流したい。 3:ホル・ホースと『姿の見えないスタンド使い』には警戒。 4:スタンドが誰でも見れるようになっている…? [備考] ※DIOの館突入直前からの参戦です。 ※繭のことをスタンド使いだと思っています。 ※互いの自己紹介を省いたため、神楽の名前をまだ知りません。 ※スタンドの可視化に気づきました。これも繭のスタンド能力ではないかと思っています。 ※索敵のため、腰から紐状のハイエロファントグリーンを背後から数十mに渡ってはわしています。 【神楽@銀魂】 [状態]:健康 [服装]:チャイナ服 [装備]:番傘@銀魂 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~2枚 [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗らないアル 1:神威を探し出し、なんとしてでも止めるネ 2:銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラ、マダオと合流したいヨ 3:『姿の見えないスタンド使い』を警戒してるアル 4:結局こいつのメロン色の一本糞は何アルか [備考] ※花京院から範馬勇次郎、『姿の見えないスタンド使い』についての情報を得ました。 ※互いの自己紹介を省いたため、花京院の名前をまだ知りません。 【番傘@銀魂】 日光に弱い体質である夜兎族の標準装備。主に外出時に日傘として差している。神楽に支給。 見た目は普通の番傘であるが、戦闘時にはマシンガンのように弾丸を発射する。 また、砲撃や爆発にも耐えるほどに強度が高く、傘を開けば敵の攻撃を防ぐ盾になり、傘を閉じると棍棒のようにそのまま殴りつけることが可能な殴打武器となる。 悪寒を感じた神楽。それが元で考え直し、待ち伏せの可能性を考慮した花京院。 二人のどちらかが欠けていれば、その命はなかったであろう。 なぜならば、橋の上には文字通り暗黒空間への入り口が大口を開けて待ち構えていたのだから。 D-4とE-4を繋ぐ橋。 夜空の元で、渡る者もいない寂しい場所の虚空に黒点が浮かび上がる。 その黒点は徐々に大きくなっていき、やがてツノのついた不気味な顔を形作った。 その巨大な口の中からは男の姿が見て取れる。 「橋をわたると思ったが…フフ おしい」 ヴァニラ・アイスは、走り去って豆粒のように小さくなっていく花京院と神楽の後姿を見ながら呟いた。 研究所にいた時点で花京院を見失っていたが、花京院が脱出に使った窓枠の方角からD-4南へ向かっていることは分かっていた。 花京院がそのまま橋を渡って南下するであろうことは容易に推測でき、間抜けにも橋を渡ったところを暗黒空間に飲み込んでやろうと待ち構えていたのだ。 橋はそれなりに狭く、たとえ存在を勘付かれようとも逃げ場がない。 そこを渡れば『クリーム』に確実に飲み込まれていたであろう。 「あのくそガキが余計なことを吹き込んだせいで行先を変えたか」 花京院の隣にいるチャイナ服の少女を見て、小賢しいサルが、と内心で毒づく。 あの娘がいなければ、ヴァニラは花京院を葬ることができた。 「まあ、いい……。花京院が他の奴らと群れればまとめて消し去ることができるからな…」 そう言ってヴァニラは『クリーム』で再度姿を消す。 花京院が他の参加者と合流することはかえって好都合だ。 人は集団の中で群れていると安心する。特に殺し合いの状況では、同じ志を持つ者と一緒にいればそれは顕著に表れる。 そして、安心して緊張の糸が切れたところを不意打ちしてまとめて暗黒空間に飲み込めば効率がいい。 「花京院…あの娘も、貴様がいずれ出会う仲間諸共、このヴァニラ・アイスの『クリーム』で消し去ってやる」 花京院が集団の一員になるまで泳がしておくのもいいかもしれない、と思いながら、ヴァニラ・アイスは花京院と神楽を追った。 【D-4/橋上/一日目・深夜】 【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [服装]:普段通り [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0~3、範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、範馬勇次郎の不明支給品0~3枚 [思考・行動] 基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする 1:花京院と神楽を追い、殺す 2:承太郎とポルナレフも見つけ次第排除。特にポルナレフは絶対に逃さない 3:花京院を泳がせて、集団で群れているところを不意打ちで一網打尽にするのもいいかもしれない [備考] ※死亡後からの参戦です ※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました 時系列順で読む Back ネクロウィッチ Next 本性の道 投下順で読む Back あいあいびより おおきなやまをみた Next 本性の道 007 穿つべきピリオドは―― 花京院典明 070 僕の修羅が騒ぐ 神楽 070 僕の修羅が騒ぐ 007 穿つべきピリオドは―― ヴァニラ・アイス 070 僕の修羅が騒ぐ
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++第一話 僕は使い魔①++ 「あんた誰?」 突然目の前に現れた少女はそう言った。 「ぼくは……花京院……典明だ」 答えながら花京院典明は記憶を探った。 ここはどこだ? 彼女は誰だ? それに……ぼくは何で生きている? エジプトのカイロで、ぼくは死んだはずだ。『世界(ザ・ワールド)』というスタンドを操り、自在に時を止めることのできるDIOに殺されたはずだ。 承太郎は? ジョースターさんは? ポルナレフは? ……みんな生きているのか? ふらつく身体に鞭を打って叩き起こす。 周囲を見てみるが、視界の全体が黒っぽくなっている。 顔を抑えてみると、サングラスが掛かっていた。どうやら黒みがかっているのはそのせいらしい。 外して、見回してみる。 目の前にはきれいなピンクのブロンドの少女、周囲には日本人ではない少年少女たちが大勢並んでいる、広がる景色は草原。どこを見てもエジプトとは結びつかない。 「君、すまないがここがどこか教えてくれないか」 「あんた、どこの平民?」 つっけんどんな態度で、少女は逆に質問してきた。 その態度に少し反感を覚えるが、堪えた。 「平民ってどういうことだ?」 「あんた平民でしょ。貴族にそんな口聞いて言いと思ってるわけ?」 「貴族?」 聞いたことはあるが、めったに使わないその言葉に花京院は首を傾げる。 「そう。私は貴族、あんたは平民。こうやって口を聞くことさえありえない関係なのよ」 尊大そうな態度で腰に手を当て、少女は花京院を睨みつけた。身長差があるゆえ、自然と見上げる形になる。 威圧しているようだが、少女が子供っぽいせいか効果は薄い。 花京院がなんと言うべきか迷ったその時、 「ミス・ヴァリエール。そろそろ『コントラクト・サーヴァント』にかかりなさい。これ以上時間は掛けられない。次の授業が始まってしまう」 人垣の中から一人の中年男性が現れた。黒いローブを着て、大きな杖を片手に下げている。頭は眩しいほどに輝いていた。 「で、でも、ミスタ・コルベール。平民を使い魔にするなんて聞いたことありません」 「確かに古今東西人を使い魔にした事例はないが、春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。呼び出した使い魔を変更することはできない」 「そんな……」 少女はまだ文句を言おうと口を開くが、そこから言葉は出ない。どんなことを言っても、コルベールを説得できないと思ったのだろう。 その様子を見ていたコルベールは少女の肩に手を置くと、花京院の方を向かせた。 「では、儀式を続けなさい」 「…………はい」 しぶしぶながら、といった様子で少女は花京院の目の前に立った。 「あ、あんた、感謝しなさいよね。平民が貴族にこんなことされるなんて、普通一生ないんだから」 きれいな声で少女は呪文を唱えた。 突然、すっと花京院の額に杖を置くと、少女は距離を詰めてきた。 困惑して花京院は一歩下がろうとするが、 「いいからじっとしてなさい」 怒ったように少女が言うので立ち止まる。 少女はものすごく緊張しているらしく、杖を握った手が白くなっていた。 一旦少女は視線を落とすと、再び上げた。その目には決意がみなぎっている。 そして、背伸びするような形で、少女は花京院と唇を重ねた。 「な……!」 あまりの不意打ちに、花京院は飛びのいてしまった。 何をするんだ? 一体、どういうことだ……? 花京院の動揺を無視して、少女はコルベールの方を向いた。 「終わりました」 「うむ。『コントラクト・サーヴァント』は成功のようだ」 満足そうに頷いて、コルベールは花京院を見た。 次の瞬間、身体に激痛が走った。 「ぐうぅ……!」 息が止まりそうなほど痛い。左手の甲が焼け付くようだ。 焼きゴテを直に当てられているかのようなその痛みで、気が遠くなってきた。 気力を振り絞り、花京院は耐えた。 しばらくすると痛みはやわらぎ、やがて完全に治まった。 おそるおそる左手に目をやると、そこには古代文字らしきものが刻まれていた。擦ってみるが、にじむことも薄れることもない。 「珍しいルーンだな」 いつの間にか側に立っていたコルベールが言った。 花京院は後ろに下がり、声を荒げた。 「なんなんだあなた達は!」 「さて、じゃあ皆教室に戻るぞ」 くるりと背を向けると、コルベールは宙に浮いた。 あまりに自然な動きだったので、一瞬その異常さに気付かなかった。すぐにそのことに気付いた花京院は口をあんぐりと開けて、その様子を見つめた。 と、飛んだ? 糸を仕掛けるしても天井が無いから無理だろうし、スタンドの姿もない。一体、どうやって……? 周りを囲んでいた他の生徒たちも一斉に浮き上がった。 ありえない。一人ならなんとか説明はつけられても、こんな全員が一度に浮くなんてありえるはずがない。 浮いた生徒たちは滑らかな動きで、遠くにある城のような石造りの建物の方へと飛んでいった。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」 口々にそう言って、笑いながら飛び去っていく。 草原に残ったのはルイズと呼ばれた少女と花京院だけになった。 二人っきりになると、ルイズはまずため息をついた。それから花京院の方を向き、目じりを吊り上げた。 「あんた、なんなのよ!」 「それは僕のセリフだ。君たちは一体なんなんだ? それに、さっき空を飛んでいた。あれは何だ? 手品なのか?」 「ったく、どこの田舎から来たかしらないけど、説明してあげる」 頭痛がするのか、ルイズはこめかみに指を当てながら説明した。 ここはトリステイン魔法学院であるということ。 貴族とは魔法を使えるもののことを指すこと。 この世界にはドラゴンやグリフォンやマンティコアなどがいること。 そして、自分はルイズに召喚され、使い魔になったということ。 どれも突拍子もない話で、簡単には信じることができなかった。 「冗談だろう?」 「あんた相当田舎から来たみたいね」 心底呆れ果てたように、ルイズは首を振る。 空を飛んだ人たちを見たとはいえ、それが全て本当のことだとは思えなかった。半分は信じても、疑いが半分残っている。 「信じるも信じないもあんたの勝手だけど、とりあえず戻るわよ」 二人は石造りの建物に向かって歩き出した……。 To be continued?→
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tes
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「…………『法皇の緑』。自分の前に辺り構わず『触手の結界』を張り巡らせ…… 網状にして絡めとり……弾丸の威力を激減させた」 「でも血だらけじゃねぇかッ! 全部防げなかったんだろ!? 急いで傷を埋めて……!? 」 F・Fの手が止まった。いや、俺が止めた。 治療の邪魔をするなと言わんばかりの顔。刺し殺されそうな鋭い視線が今にも俺を貫きそうだ。だが、退くつもりはねぇ。 「止めろ……もう手遅れだ。傷口を塞いだとしても……流れた血液は戻らねぇ。 コイツはお前と出会う前から負傷に負傷を重ねて来たからな……どのみち失血死するぜ」 「ちょっと待てよッ! 確かにアタシと人間の造りは違うけど…… アタシはこれまでどんなに酷い怪我をした奴も皆治療してきた。血液の代用が出来ていないとは限らねぇぞッ! 」 「じゃあ花京院の傷を全部埋めてる間に……こっちがどうなってもいいんだな」 俺は旦那を指差して、F・Fに詰め寄る。 「旦那はスタンド使いじゃあない……ただの人間だ。俺たちよりも脆い。 片や治る見込みの薄いスタンド使い、もう片やほっとけば危険な一般人……どっちを治すかは明白だろうがッ! てめーだって酷い怪我なんだぜ? いくらプランクトンでもこれ以上『身を削る』って大丈夫なのかよ」 「一匹でもいれば『水』がある限りアタシは復活するぜッ! 」 「その『水』がないんだろうがよ……今ここにあるのは支給された『水』だけなんだぜッ! まさか旦那や花京院の分の『水』を使うとか言いだすんじゃあねぇだろうな? 「何言ってんだ……アタシの持ってる水2つ分を使えば……ハッ! そうだ……アタシのディバッグは…… さっきエアロスミスの銃弾を受けて穴ボコになっちまったんだッ! やべぇ、やべぇよぉやべ―――――――――――――」 ドグォオ―――オオオオオオ―z___ンッッッ!!! ……泣きっ面に蜂ってのはこうゆう事を言うんだろうな。 慌ててバッグの所へ走っていくF・Fが光に包まれていく。 その光が……俺にはあの世からのお誘いにしか見えなかった。 それだけ……俺の精神も相当動揺してるってことか。 そんな気分にさせる位の現実が…………今、俺達を包んでやがる。 「熱……い……体が……焼ける………アタシのデェいバッグガァぁ……『火』を……吹いたァ…… まるで……爆、弾でモ……仕掛……けぇられ……てた……みてーに……なん……て、こ、た…… 『ライク・ア・ヴぁーじん』………子、機が……4、コ入っ、てた……それが……えあろすみすの……銃、撃で 破、壊?……仕掛……け……られていた……爆、弾に……引、火……何と、かし、な、いと……皆…治せ、な……こ…… こ、こ、焦げ、るゥ……焦げ……こげ…… コゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲ……」 …………ナランチャ達も行方知れずだしよ……もう、駄目だな……このチームは。 完全解散だ……。 「旦那、ちょっとの間我慢しててくれや……」 俺は旦那を担いでこの忌わしき路地を後にした。 向かう先は【D-6】の病院だ。回復役が死んじまった今……俺にはこれしか旦那を治す手段は無いからな。 悪く思うなよ花京院、F・F……これはてめーらの自業自得だぜ。 お前らを恨んでたわけじゃあねーがよ……だからと言って救う義理はねぇ。 ま、ここまで無事に生き残れたのは素直に感謝してるがな……。 それじゃあな。俺が地獄に行ったら、天国から祝ってくれよ。 ……ん? ……何だ……この大声は……誰かがスピーカーかなんかで喋ってんのか……? ………………………承太郎!? 4時から5時だって!?…………場所は…………なるほどな。 大体……理解したぜ……なるほど仲間集めをしようって腹づもりか。 だが今は旦那を病院に連れていくのが先だ。どうするかはその後考えればいい。 次から次へと……神様は中々休ませてくれねぇな…………。 * * 視界がかすんでゆく……肉体が崩れてゆく……。 ――――どうしたのかね……花京院君。折り入って話がしたい等とは―――― ――――放送までもう時間がありません。ジョースター卿、単刀直入にお話したい事があります。 …………ポルナレフの事です。奴の正体……奴の真意の全てをお話します……! ―――― ホル・ホースは……行ってしまった……ジョースター卿をつれて……。 ――――……なるほど。彼もまた、DIOの腹心だったわけだな―――― ――――僕はこれからF・Fさんやナランチャ君にもお話しようと思ってます。奴を野放しには出来ない―――― ――――……花京院君、その必要はない―――― 最初からわかりきっていた事だったのに……。 ――――彼は……『J・P・ポルナレフ』だよ。正真正銘…………私達の仲間だ。 君が言っているホル・ホースという男とは別人だよ―――― ――――……なぜ奴ををかばうんですかッ!? あいつは絶対に我々を裏切りますッ! ―――― ――――私達が最も憎むべき敵は彼ではない……荒木だ。 今すべき事は……皆が一致団結して奴を倒すことなのだよ。それは彼もわかっているはずだ。 ――――ジョースター卿……あなたはお人好しすぎます!! 奴は心の中であざ笑っている! あなたを! ―――― ――――君がこれから……F・F君達にそんな事を言えば……彼らはポルナレフ君を問い詰めるだろう。 だが、それだけでは終わるとは思えない。一度そんな事が起こってしまえば……。 また誰かが誰かを疑い、問い詰め、争いを起こすやもしれん……。 私は……皆がお互いを信じられなくなるような関係にはしたくはない―――― 僕は……止める事が出来なかった……。 ――――……もうすぐ放送だ。私はこれから1階のロビーに行くよ。F・F君たちがいるはずだ。 花京院君も後でナランチャ君と一緒にロビーに来てくれ。勿論、ポルナレフ君の事は喋ってはいかんぞ―――― ――――……ジョースター卿、あなたの考えはよくわかりました。この事は誰にも話しません―――― ――――ありがとう花京院くん。君は本当に優しい青年だ―――― ――――その代わりに約束してください……『1人で勝手にDIOに会わない』と。 ――――なん……だと? 私が……DIOに?―― ――――まさか気づいていないとお思いですか。あなたは……たった1人で奴と決着をつけようとしている。 DIOは僕達の共通の敵のはずです。1人で全部背負い込もうなんて無茶です。 僕達を巻き込きたくないから? ……ふざけないでください。 卿が僕達に内緒でやろうといている事は……卿のおっしゃる『信じていない』のと同義ではありませんか。 それだけは……止めると『約束』してください。絶対にッ! 僕達を信じたいのなら……僕達を裏切る行為は止めていただきたいッ! ―――― ――――…………君には適わないな…………わかった…………約束しよう―――― F・Fさん…………治、療を……。 * * 俺、ナランチャ・ギルガはアヴドゥルを始末した後もジョンガリ・Aと共にいた。 早くジョージさん達と合流したいところだが、ジョンガリ曰くまずはF・Fさんの捜索が先決らしい。 彼女の持ってる『ライク・ア・ヴァージン』の親機から離れてしまうと、 ジョンガリの手首についている子機が爆発するからだ。 確かに今コイツに死なれたら俺が路頭に迷っちまうからな……付き合うしかねぇ。 「なぁ……ジョンガリよ……F・Fさんは見つかったのか? あんまり黙られても困るぜ」 「お前は俺に縛られた縄をしっかり持ってればいいだろう……俺は自分でこれを外せないんだからな」 「っつっても」 「ムッ! 今何か聞こえなかったか!? 」 「な、何がだよ」 「耳を澄ませろ……これは……」 ――……しは!!!承太郎の支給品!!!ヨーヨーマッです!!! 花京院!!!ポルナレフ!!!アブドゥルに連絡です!!! 承太郎は!!!4時から5時まで!!! 運命の車輪戦の休憩所!!!ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!!! ―― 「い、今花京院とポルナレフって……」 「承太郎……空条承太郎か……我が心の支え……DIO様の宿敵……」 「おいおいジョンガリ…………?」 「…………花京院、アブドゥル…………これは……」 「おいジョンガリ聞いてんのかよッ! おめーまさかあの放送で言ってた場所へ行くんじゃあねーだろーなッ!? 」 「聞いてるぞこの腐れ脳みそ……F・Fの話を忘れたか? 全ては奴と合流してからだ」 「そ、そうかよ……後な、おめーが言わなくても今の話……俺はジョージさんに話すぜ」 「勝手にしろ。どうせこの大きさの音なら奴らも聞いているだろう」 ……なーんか怪しいけど、俺もジョージさん達には早く会いたいし……。 まぁ、アヴドゥルの始末に色々と手助けしてもらったからな……さほど気にするまでもないか。 「おいナランチャ、ちょっといいか? 実は頼みがあるんだが……」 * * ――……運命の車輪戦の休憩所!!!ダニエル・ダービー戦の戦場に居ます!!! ―― ……花京院達との戦闘が終わった矢先にこのような“知らせ”を入れてくるとはな。 荒木……偽者の花京院の次は偽者の承太郎か? 【E-6】を根城にさせまいと私に餌を吊るしたつもりか。 片腹痛い。その手には乗らんぞ。せっかく汗水垂らして得た安息の場を捨てるはずがなかろう。 この【E-6】が見るも無残な景色になるまでは……私の背中が脅かされる環境にならない限りはここを動かん。 ナランチャ達は私がエアロスミスにやられたと勘違いさせたから、しばらくは安心だろう。 エアロスミスの銃撃による街の被害は小さくはないが、隠れる場所はまだいくらでもある。 天ぷらのカスが置かれたネズミとりのように……ここにやって来たネズミ共は確実に潰してやる。 「……なにかの間違いに決まっている…………何かの間違いさ」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド ……そう、意外とネズミという物は総じて鬱陶しいものだ。 何でも食べるいやしさ……、 場所を選ばず寝る浅ましさ…… ところ狭しと繁殖し続けるしぶとさ…… 食う、寝る、子どもを産むの3つしか行動概念がない。 「ほら……しゃべり出すぞ……今にきっと目を覚ましてくれる……」 そのガツガツしたところが……自身が人間で良かったと私に気づかせてくれる。 やはりネズミはどこまで行ってもネズミだ。潰せる時に潰しておこう。 私と同じく、ヨーヨーマッという者の放送に導かれたネズミめ……これも定めか。 「アヴドゥルさん……そうでしょ?……荒木に操られているんでしょう? し……正気に戻ってくれ! たのむ……アブドゥルさん!! 」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド 「生きていたか花京院……いや、花京院典明の……まがい物が」 * * 「……再起不能にならなかったのか? エアロスミスの銃撃で」 僕の目の前に立つ男は……僕の死に驚くわけでもなく、相変わらず冷静だった。まるで他人事のように。 思えば彼とは数十日の間しかの付き合いしかない。だが、彼は真に気持ちがかよう人間の1人だった。 承太郎とポルナレフはどこにいるのだろう。ジョースターさんやイギーのことを考えると背中に鳥肌が立つのはなぜだろう。 それは彼らが目的の一致した初めての仲間だったからだ。DIOを倒すという……目的! この世界でもそれは変わらない。荒木を倒すという……目的! いずれは彼らとも気持ちがかよい合っていたはずだ。ジョースター卿、ナランチャ君、そして………… 「アタシが……花京院を治療したんだ。間一髪だったけどな。 ジョースターさんのおかげだ……あの人が自分に支給された水をこっそり置いていってくれたんだ。 花京院の分の水だけじゃあ…………『水分』が足りなかったぜ。マジで感謝してるよ………」 ……F・Fさん。感謝しているのはこちらのほうです。 燃え尽きようとするギリギリの所で、あなたは自分の体の中にあるほとんどのプランクトンを僕に注いでくれた。 ただ……その突貫工事のせいで彼女は首だけになってしまった。 ライク・ア・ヴァージンの爆破の被害も重なって、もとあった彼女の体は水分ゼロの死体となり、 彼女の首輪もライク・ア・ヴァージンの爆発で誘爆してしまったらしい。 今、彼女の生首は……僕の胸部と融合している。自分の体にもう一つの顔があるのは実に奇妙な感覚だが……。 水分共有の為とはいえ……首輪が無くなった代わりに僕の体に寄生しなければならないとは皮肉なものだ。 「いくら命の恩人とはいえ……いや人ではなかったか。そんなにその生首が大事か? 」 せせら笑う友人を僕は黙殺し『法皇の緑』を出現させる。 状況が状況なだけに本来の威力でエメラルドスプラッシュを打ち込むのは難しい。 そして本体が両肩を負傷しているとはいえ、『魔術師の赤』の戦闘力には適うとは思えないからな。 だがやるしかないッ!一瞬だ……全ては一瞬で終わる。近距離で、高圧縮に高圧縮を重ねて! 『おいアヴドゥル。こいつらビビッてるねっ! せっかく背中のハンデがあるのにさぁ~お前よっぽど強いんだねっ! 』 「黙ってろと言ったろうチープトリック。……花京院、貴様何か企んでいるな」 「答える必要はない! 」 背中から聞こえるチープ・トリックのヤジなんぞ気にしている場合じゃあない。 一歩ずつ距離を詰める……アヴドゥルさんは壁にもたれているから横移動しか出来ない。 彼が『法皇』の攻撃を左右に回避できるかどうかギリギリの距離まで、 つまり自分にとっては、彼の「C・F・H」が回避できるかどうかギリギリの距離まで……僕は詰め寄る。 そこに、合図などいらなかった。 「エメラルド・スプラッシュ!」 「C・F・H(クロスファイアハリケーン)ッ!」 * * ……一つの闘いが幕を閉じた。 アタシはただ見てることしか出来なかったけれど……この二人の対峙は忘れないだろう。 徐倫の父親はこんな奴らと旅をしていたんだな。 「終わったな。花京院……アタシ達の勝ちだ」 花京院がホッと胸を撫で下ろしたのか、安堵の息がアタシの頭に吹きかかった。 『魔術師の赤』も動かなくなった。くちばし、両手、両足は完全に封じられている。 「『タイラップスネーク』……『法皇の緑』を糸状にして、『魔術師の赤』の手足とくちばしを縛り上げた。 これでもう炎は出せませんし、アヴドゥルさんは動けません。いつもより高密度の糸ですから千切られませんよ」 最初から『C・F・H』はよける気満々で本当の狙いは生け捕りだったなんてなー……てっきり殺すんだと思ったぜ。 花京院の足下では、当のアヴドゥルが間抜けなポーズで座り込んでいる。 背中が見えないように壁にもたれさせたのは、花京院なりの武士の情けかね。 「アヴドゥルさん……聞いてください。僕はあなたを殺すつもりはありません。 あなたが何故僕達を殺そうとしたかはわかりませんが、何か事情があるのでしょう。 しかし出来れば……アナタに協力してもらいたいのです。荒木、DIO打倒の手助けを」 ……はあああ!? 何言ってるんだよ花京院ッ!? 依頼はともかく理由を言えーーッ!! 「あなたならきっと妙案を思いつくはず。 ……この街は謎だらけです。あなたは何故生きているのか……? そしてF・Fさんは首輪が破壊してもどうして何事もなく生きていられるのか……? 首輪なんて彼女には何の脅威にもならない事くらい荒木だってわかっていたはず。 とにかく……僕はあなたを僕達の仲間として改めて迎えいれたいのです……ナランチャ君は怒るでしょうけど」 もう……びっくりし過ぎて声が出ねえ……どんだけお人好しなんだよ……ハッ! 「もしジョースター卿がここにいたら……きっと僕と同じ事をしたと思うんです。 あなたは僕を信じていないかもしれませんが……僕はあなたを信じますよ。それが『仲間』でしょう? 全ては……そこから始まるんですかっ……ら」 ……すげー……すげーよ花京院。お前のような奴を……本当の仲間っていうんだろうな。 過去にアタシと戦った徐倫を見てるみてーだ。あの時も……アタシはこんな感じで生首状態だったんだよな。 アヴドゥルは声には出してあいが、顔を見れば驚いていることがありありとわかる。 そりゃそうだよな。仲間のアタシだってびっくりしているんだから。 まぁ……これでひとまず一件落着ってところか。 アタシも本格的に回復しないと皆の治療は出来ないし、ジョージさん達も探してぇ(ポルナレフは後でボコるがな)。 「なぁ花京院……そろそろジョンガリにやった時みたいに『法皇の緑』を侵入させたらどうだ。 アヴドゥルの体内によ……今のお前じゃ運ぶ気力はねぇだろ? 」 その時、アタシの頭にポタポタと何かが垂れてきた。なんだ? 雨……か? こんな街でも雨が降るんだな。荒木が支配した世界だから常に晴れ模様だと思ったのに。 今のアタシは顔を見上げる事が出来ないから雨が見えないのが残念だが、これで完全回復が出来るぜ。 「なぁ花京院……アタシ達はマジで運が良いよなぁ……? 」 * * 「お~いジョンガリィ……どうだ? 色々とわかったかよ?」 「ああ、色々とわかった。これでお前のスタンドの基本性能は把握した。 弾丸のスピード、射程距離、破壊力……面倒をかけたな」 「別にいいって……しっかしジョージさん達遅いよなぁ……全然現れる気配がしねぇ。 やっぱり何かあったんじゃあねえか? その腕輪も警報鳴らさなくなったしよぉ」 「わからん……だがこの腕輪はF・Fと俺が近づきすぎると警報を鳴らさなくなるからな……」 ヨーヨーマッというスタンドからの放送を聴き終えた俺達は、しばらく【E-6】の端にいた。 ライク・ア・ヴァージンが爆発する様子もないし、いずれジョースター共がここに来るだろうと考えた。 そして奴らが俺達の所に来るまでの時間稼ぎの為……ナランチャに頼んでエアロスミスの性能を調べさせてもらったのだ。 だがこれは建前。 ナランチャにはまだ話していないが、我がマンハッタン・トランスファーは弾丸の進行方向を変える能力がある。 エアロスミスの弾丸が俺のスタンドでも運搬可能なのか……これが本当に調べたかった事実。 スタンドの発射する弾丸にそれが通用するかどうかは微妙な線だったが……どうやらこの世界では可能らしい。 嬉しいよ。これで俺はますますナランチャを利用できるんだからな。 ライフルの時のように一度に何発まで転送可能なのかはわからんがな……少なくとも転送は可能なわけだ。 しかし……てっきりジョースター共と一緒にいると思っていたのにな。 風の流れでお前達を発見した時は本当に感動したよ。 エアロスミスがアヴドゥルを攻撃して間もなく、俺の体に巻きついていた『法皇の緑』がほどけて消えた時…… まさかとは思ったが……よりによってアヴドゥルと行動を共にしていたとはな。……どうゆう風の吹き回しだ? 俺は風の流れを察知する。アヴドゥルは……仕留め損ねたみたいだな。ナランチャには黙っておくか。 これで二回もミスをしたことになる……チッ、久々の転送能力の使用で勘が鈍ったのだろうか……。 流石にもう一度狙撃したらバレるかもしれん……まあいい。弾丸は確実に頭部を破壊したのだからな。 誰も俺が暗殺をした事実に気づいてはいまい……弾丸を撃ったナランチャ本人ですらな……クックックック…… これでカリは返したぞ……………花京院典明!! * * * * 「うわああああああ花京院ンンンーーッ!!しっかりしろぉーーーッ!! 」 ……何が起こったのかわからなかった。 私、モハメド・アブドゥルを説得していた花京院典明が……気がつけば頭から血を流し、脳漿を垂らしていた。 当然奴の体はそのままバランスを崩して地面に倒れ臥す……私を拘束していた『法皇の触手』もボロボロになって消えた。 今は……生首女が花京院に大声で叫び続けているが、返事はない……まさに一瞬だった。 生首女は私の顔を睨み付ける。奴の髪は花京院の頭から流れた血ですっかり真っ赤に染まっていた。 だが、私には何も言い返すことができない。 私にも状況が理解できていないことは……向こうにもわかっているだろうがな。 「アヴドゥルッ!てめーの水をアタシに借せッ! てめーの水分を利用して花京院の傷を治療するんだ」 何を……馬鹿な事を言ってるんだコイツは。頭が吹っ飛んで脳が出ているんだぞ。治療もクソもない。 しかも私の体から水分を抜くだと……ふざけた事を言ってくれるな。 そんな言い分が通ってたまるか。ただでさえ私はコイツ……花京院のことを疑っているのに。 だが……気になるといえば気になる。偽者にしては……意外にも正義の意志を私は感じた。 それほどまでに……精巧につくられているのだろうか……昔戦った『審判』の土人形ですらここまでのレベルでは……。 ――……この街は謎だらけです。あなたは何故生きているのか……? そしてF・Fさんは首輪が破壊してもどうして何事もなく生きていられるのか……? ―― うーむ……反論したい事もあるが、確かにこの世界は不思議なことばかりだ。 荒木も一度私の炎をかき消しているし……一体全体どうなっているんだ? 「おいッ! 時間がないんだよアヴドゥルッ! 水分ならなんでもいいんだよボケッ! お前の体でもいいんだよォォ水分があればァァ……さっさとよこせよコン畜ショォォッ!? 」 「……調子に乗るなよ下等生物がッ! 頭部を破壊されて無事な人間がいるか……それとも何か? この花京院は水をかけたらすぐ元に戻る土人形とでも言いたいのか? 確かにこいつが言っていた謎や仲間云々には一理あるが……だからといって偽者を治す義理はないッ! 第一何故この私が見ず知らずの貴様なんぞの頼みを受けねばならんのだ………… プランクトン如きが偉そうな口ぶりで命令するんじゃあないッ! 」 下等生物を横目に私は花京院からディバッグを奪い取る。 そして私が合図を送ると、『魔術師の赤』は目の前にいるうるさい生物に炎を炸裂させた。 炎は段々花京院の死体にも広がっていき……一気に全てを焼き尽くしてゆく。 「うおぁぁぁぁぁぁぁぁみんなァァァァ徐リィィィィィィン………………」 奴が黒コゲを通り越し完全に消滅してゆくのを確認し、私はバッグの荷物を確認する。 肩が少しばかり痛むが我慢して調べてみるとそこには食料一式、アーミーナイフか。 食料意外、どれも私には必要のないものだな。ついでだ、こいつらもまとめて焼却処分してしまおう。 「ん?……何故だ? これは……CDか?それも二枚。何故だ?ナイフは黒コゲになったというのに……。 まるで壊れていない……これはいつからあったんだ? ……まあいいか。別にこんな物に興味はない」 ……こうして、新たな食料を手にいれた私は今、偽者の花京院との決闘の場を後にしようとした。 しばらくはこの【E-6】に潜伏しよう。街が崩壊して隠れる場所が無くなったらまた考えればいい。 ん?……そういえばチープ・トリックはさっきからずっと黙りっぱなしだな。まさか消えたなんてことは……。 『何こっちを見てんだよ……喋られたら困るんだよねっ? だから黙っててやったんだからねっ! 勿論……誰かとまた遭遇したら能力説明するんだけどねっ……』 やはり現実はそう甘くはないか。 こんな事だったら支給品をちゃんと確認しておいて、紙を誰かに開けさせるんだった。 ……あの半狂乱のハンサム男とかにな。 * * ハアッ……ハアッ……冗談じゃあねぇ……冗談じゃあねぇよォ……。 広瀬康一……なんて事しやがるんだよォ……ゲームに乗ったとか、スタンドで言い触らしやがってッ! 畜生……耳が痛ぇ。 おかげでどいつもこいつも容赦無く俺を襲ってきやがるゥ……もう嫌だ、俺はもうゴメンなんだよォ。 仲間呼び集めたきゃ勝手にやっててくれよォ……そんなに人を殺したいんなら俺以外の奴を殺ってろよォッ! あのブ男……『ホテルから出てきた奴らを襲うフリをしろ』とか無茶な命令しやがって……。 危うくこっちは死にそうだったんだぞッ! 火……火…火ィィィ……火なんかッ使うんじゃねぇよッッ……。 ああ……もう、限界だ………隠れよう……街の外れに……ひっそりと隠れよう……。 あそこがいいな……あの別荘地帯の辺りなら……流石に誰も来やしないさ……きっと……。 【別荘地帯への道(D-7)/一日目/日中~午後】 【噴上裕也】 [スタンド]:『ハイウェイ・スター』 [状態]:無傷。疲労。全身に返り血。錯乱。耳が痛い。 [装備]:無し [道具]:無し [思考]: 1)死への恐怖 。康一のエコーズの断末魔が他の人に聞かれていないか不安。 2)特に、ジョースター一味やリキエル達に出会い、殺される事への恐怖。 ※噴上の走り去る方向は北(別荘地帯)です。 ※ヨーヨーマッの放送は聞いてました。 【お人好し過ぎる司令塔をフォローする会(会員2名・非会員ジョージ他1名)A班】 【杜王町東の病院の近くの道(E-6)/1日目/日中~午前】 【ジョージ・ジョースター1世】 [スタンド]:なし [時間軸]:ジョナサン少年編終了時 [状態]:腹部に一発銃弾が被弾。未治療。 [装備]:レミントン2連装デリンジャー(予備弾あり)、トニオさんの包丁 [道具]:支給品一式(狙撃銃の予備弾、水はありません)ライター [思考・状況] 1) 気絶? 2)【E-5】へ拠点を移し、今後の策を練る。 3)危険人物相手には実力行使もやむを得ないが、出来る限り争いは阻止 4)荒木の打倒 ※『ホル・ホースの正体を花京院がバラさない』の交換条件として『第三放送後一人でDIOに会わない』に合意しました。 ※ホル・ホースの正体に気づきましたが、知らない振りをしています。 ※アヴドゥルが炎の探知機が使えることをしりません。 【ホル・ホース】 [スタンド]:『皇帝』 [時間軸]:エジプトでDIOに報告した後 [状態]:軽い怪我は全身にしているが、F・Fの治療により大体健康 [装備]:狙撃銃(フル装填) [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1)旦那……しっかりしな。 2)病院へ行こう。アヴドゥル、ナランチャ達とはこのまま会えなくなってもいい。 3)第三放送後に杜王グランドホテルへ行く予定だが、あくまで予定。 4)ジョージを上手く利用してとにかく生き残りたい ※ジョースター卿が、DIOの父親ということはやっぱおかしいと思っています。 ※DIOから『ジョナサン・ジョースター』の名を『肉体を奪った相手』という情報と、 プッチ神父がDIOの仲間だという事を忘れています。(ナランチャの伝言を聞いてもピンとこなかったようです) ※アヴドゥルが炎の探知機が使えることをしりません。 【お人好し過ぎる司令塔をフォローする会(会員2名・非会員ジョージ他1名)B班】 【市街地(E-6)/1日目/日中~午前】 【ナランチャ・ギルガ】 [スタンド]:『エアロスミス』 [時間軸]:ヴェネチア入り後 [状態]:失明(F・Fの処置により傷は塞いだが、視力は全く回復していない) [装備]:ヌンチャク、ハート型の飾り(@DIO) [道具]:支給品一式 ・拾ったガラスの破片 [思考・状況] 1)ジョージさん、F・F達と合流したい。 2)1の後、E-5へ移動する。 3)DIOは恐いが、DIOを恐れて人を殺すのはもっとイヤだ。 4)ブチャラティやジョージさん達に会いてぇ。まさか、俺みたいになってねぇよな? 5)色々ありすぎてこんがらがってきた。わけわかんねぇ。 ※ナランチャは、マンハッタン・トランスファーの能力を『気流を読んで情報収集』だと思ってます。 銃弾の進路を曲げ、中継する能力をまだ知りません。 ※アヴドゥルが炎の探知機を使えることを知りません。 ※アヴドゥルは始末したと思っています。 ※自分が花京院を殺したとは気づいてません。 【ジョンガリ・A】 [スタンド]:マンハッタン・トランスファー [時間軸]:徐倫にオラオラされた直後 [状態]:胴にF・F弾の傷(止血はして貰ったが、F・Fの治療は無し) 両手を縛られた状態。 逃げられないようにナランチャが縄紐をしっかり持っている。 [装備]:無し [道具]:『ライク・ア・ヴァージン』子機(右手首装着) [思考]: 1)F・F(『ライク・ア・ヴァージン』の親機)を探した後、【E-5】に行く。 2)ナランチャを利用して、ディオ以外の人物の抹殺。 3)DIO様の伝言は何か、ナランチャから訊き出す。 4)3の後、こいつらから逃れる術を見付ける。(ヨーヨーマッの放送も意味も気になる) 5)徐倫の名前が放送で呼ばれたら、その12時間後に『トラサルディー』へと舞い戻る。 ※ジョンガリはアヴドゥルが炎の探知機を使えることを知りません。 [備考]:『ライク・ア・ヴァージン』子機×1 『ライク・ア・ヴァージン』は、優勝者が身につけていた場合、『荒木』が解除してくれます。 それ以外の方法では事実上『解除』は不可能に近く、親機から50m以上離れた子機は爆発します。 威力は手首を吹き飛ばすに十分なもの、下手すれば死ぬこともありえます。 また、爆発の前や親機から離れすぎると警報音が鳴り響きます 【E-6】のどこかに黒コゲになった親機がありますが、警報が鳴らなくなった理由はF・Fの首輪の破壊です。 これにより持ち主=死亡と誤認されたために機能凍結し、アヴドゥルが燃やした事により機能停止しました。 【市街地(E-6)/一日目/日中~午後】 【モハメド・アヴドゥル】 [スタンド] 『魔術師の赤』 [状態] 両肩破壊。両肩にダメージ。両腕が辛うじて動かせる程度 [装備] 背中に『チープ・トリック』 [道具] 支給品一式(食料のみ2人分) [思考・状況] 1)『ゲーム』全てを自分の幻覚の世界だと思い込み、スタンド能力の本体である荒木を倒そうとしている。 2)登場人物は全て荒木のスタンドの一部なので、全員自分を騙し攻撃しようとしていると思い込んでいる 3)街が崩壊するまで【E-6】で潜伏。待ち伏せて敵を倒す。 ※アブドゥルは『チープ・トリック』の存在に気づいています。 ※花京院の言っていた言葉がちょっと気になっています。 ・自分が生き返ったという花京院の意味 ・F・Fの首輪に対する謎 ※アヴドゥルは、マンハッタン・トランスファーの能力を『気流を読んで情報収集』だと思ってます。 銃弾の進路を曲げ、中継する能力をまだ知りません。 ※【E-6】の花京院の遺体とF・Fが燃えた尽きた物の側にはこれらが放置されています。 ・アーミーナイフ(黒コゲ) ・フー・ファイターズのスタンドDISC(スタンド能力が使用可能になるかはわかりません) ・フー・ファイターズの記憶DISC (体内に装備すると『F・Fがアヴドゥルに燃やされるまでの記憶』が見れる可能性があります) ※・『ライク・ア・ヴァージン親機』は【E-6】のどこかにありますが、 F・Fがライク・ア・ヴァージン子機×4の爆発に巻き込まれた為、黒コゲになっています。 【花京院典明 死亡】 【F・F 消滅】 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② 花京院典明 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ナランチャ・ギルガ 98 因果 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ホル・ホース 98 因果 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ジョージ・ジョースター1世 98 因果 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② F・F 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② ジョンガリ・A 98 因果 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② モハメド・アヴドゥル 98 因果 94 《UNLUCKY COMMUNICATIONS》 その② 噴上裕也 102 『誤解』と『信頼』
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ダーグブルーの水平線が、日の出と共に柔らかなピンク色に変わっていく。 暖かな日差しと、木々のざわめく音、優しい潮騒が砂浜に座り込む二人の人影を包みこんでいる。 しかし、普段なら心和むであろうこの光景も 今の二人の心を休ませることは出来ないらしい。 「そんな・・・アヴドゥルが死んだ?」 がっくりと膝をついた花京院典明がそうつぶやいた。 自分よりもはるかに戦闘経験が豊富なあのアヴドゥルが? 「ねぇ、これだけ騒ぎとか起こってるんだから誰か気づいてくれるよね? 警察とか助けに来てくれるよねっ??」 花京院から距離をとって座っていたグェスが言う。 荒木の部屋から生還してから今まで一言も口を利かなかった彼女だが、 あの不安をかきたてる放送に思わず口を開かずにはいられなかったようだ。 時間の経過というやつは、彼女の精神を話が出来るまでに回復させたらしい。 もっとも、支給品なのであろう物体は花京院に取られまいとしっかりと抱きしめたままであったが。 グェスのそんな様子をゆるゆると横目でみながら花京院は非情な現実をつきつける。 「残念ながら・・・その可能性は限りなくゼロに近いと思われます。 僕のスタンドを無効化したあの力、そして先ほどの放送、あの態度。 このゲームを邪魔されないという絶対の自信があるのでしょう。 第三者が助けにきてくれるなんていう甘い期待はしない方がいい。」 アヴドゥルの死という事実に投げやりな言い方になっていたかもしれない。 そんな花京院の言葉は、グェスを打ちのめすには十分すぎる材料だった。 「もう嫌っ!!何なのよ!わけわかんない!!」 今まで溜まりに貯めてきたストレスが花京院の言葉で爆発してしまったらしい。 ついには砂浜にへたりこんで泣きじゃくり始めた。 「殺し合いって何よ!あたしなんかが勝てるわけないじゃん! 出してよっ!ここから出してよぅ・・・!」 子供のように涙を流すグェスの姿に花京院は再び罪悪感で心が冷えてゆくのを感じた。 人間、自分よりパニックに陥った者を見ると冷静になるものである。 (さきほどの荒木の邪悪さを感じ取れなかった事といい、この反応といい、 彼女は間違いなく一般人だ・・・) それを考えると、彼女のような人間までこの殺し合いに参加させた荒木に対する怒りが ふつふつと沸き上がった来る。 (もし承太郎達がこの事を知ったら・・・ハッ!? そうだ・・僕が一番にすべき事はここで打ちひしがれてる事じゃない。 承太郎達に荒木の情報を伝え、一刻も早く荒木を倒し、 彼女のような巻き込まれた人達をこの糞ったれなゲームから解放することなんじゃないか! なんのために自分は命を賭けてまで荒木から情報を聞き出したのではなかったのか! そ の た め に は っっ!!) 「グェスさん!!」 いきなり自分の名前を呼ばれた事と、バッ!!と振り返った花京院に気押され、 グェスは思わず後ずさった。 「ななな何よ!?」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 花京院は大きく息を吸い込むんでこう言い放った。 「僕の仲間になってくれませんか!?」 バァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!! という効果音が聞こえてくるんじゃないかなってなくらい堂々とした宣言であった。 「・・・・・・・・・・えええええええええええええぇ!? ちょっ・・・おまっ・・・・それって・・・あんたと一緒に あたしにあの荒木飛呂彦っていうおっさんと戦えってのかよォ~~~ッ! 無理無理無理無理絶対無理!死ぬって!」 ぶんぶんと首を振るグェスに、花京院はしっかりと目を見つめて言った。 「心配はいりません、貴女の事は僕が命をかけても守りますから。」 「んな大袈裟な」 「貴女のおかげで思い出せたんです。ここにみんながいたらどうするかって。 アヴドゥル・・・死んでしまった僕の仲間の名前です・・・。 もしアヴドゥルがここにいたならば、こんな殺し合いはすぐにでもやめさせて、自分の命を賭けてでも 他の参加者が生還できるような手段を考えるでしょう。 彼は・・そういう人でした。」 『Yes,I Aam!!チッチッ♪』という声が聞こえたような気がして花京院はわずかに微笑した。 一方のグェスは花京院の瞳の力強さに思わず目をそらしてしまう。 「あ・・・あたし弱いよ?能力だってあんたみたいに強くないし ただちっちゃくするだけだし。きっと足手まといに」 「僕は戦力として貴女を仲間にしたいのではありません。 ただ、僕と一緒に行動してほしいだけなのです。 いや・・・・別に仲間じゃなくてもいい、僕と友達に・・・なって下さい。」 友達。その言葉にグェスは自分の体の震えがピタリと止まるのを感じた。 徐倫と友達になりたっくて「グーグードールズ」で人形にしたのはいいものの、おもいっきり反撃され。 わけもわからずこの変な殺し合いに参加させられ。 そして今、自分の目の前に立っているこの男は友達になってくれと言っている。 わけがわからない。今日一日で変化が多すぎる。 しかし・・・パンク寸前のグェスの頭を「友達」という言葉が埋め尽くしてゆく。 グーグードールズをつかわなくてもいい友達。 他の人と同じような普通の友達。 肩を並べて歩ける友達。 それはひょっとすると、自分がこの能力に目覚める前から ずっと欲してきたものではないのだろうか? 殺し合いに巻き込まれた恐怖心より、「友達」という言葉の甘美さが ゆっくりとグェスの心を傾けていく。 「うぅ・・・・わかった、友達でいいのなら・・・・。」 「ありがとうございます。」 グェスはごしごしと涙をぬぐうと 一礼を返す花京院に自分から近づいてゆき、立ち止まった。 「よろしく、えーとMr.花京院?」 と、おずおずと手を差し出したグェスに、花京院は微笑んで手を握り返した。 「花京院、でかまいません。僕も貴女の事はグェスと呼ばせていただきますので。 ・・・・・友達はお互い呼び捨てにしあうものです。」 「そ・・そうよね!じゃあ、か花京院」 「グェス」 「花京院」 「グェス」 「花京院」 水平線のダークブルーはもう見えない。キラキラと輝きはじめた水面を背に 握手を交わす二人を日差しが包み込んでゆくーーー ハッ!? 「いや、何か恥ずかしいし!?おかしいし何この空気!?」 グェスは思わず花京院の手を振り払った。顔が真っ赤である。 「???空気?別におかしな感じは・・・まさか、新手のスタンド使いかっ!?」 「そうじゃねぇし!!あぁそうだ花京院!これ!」 この空気を変えようとグェスは今まで抱きしめていた荷物をバン!! と花京院に突き出した。 「グェス・・・これは?」 「いやねー?ほら花京院と荒木がジャンケン?だっけ?やってる時に、 荒木のおっさんあたしの方全然注意払ってなかったみたいだったからさ、 ランプ今のうちに取り返せないかなーとか思ったわけですよ。 んでグーグードールズこっそり出して、取りに行かせたはいいんだけど、 ランプとるまで根性なかったから・・・代わりにっていったら変だけど 机の上にあったのをその・・・パチっちゃいました。 あ、でもたいしたもんじゃ無いと思うよ?開かないし。」 照れ隠しで早口になっている。 花京院はグェスの手ににぎられたその本を見つめた。 かなり古いものなのだろう、表紙は色あせ角は降り曲がっていた。 所々破れたり、濡れて乾いたかのような箇所も見られた。 もし・・・・この光景を荒木飛呂彦が見たら悲鳴を上げていたかもしれない。 その本の表紙にはこう捺印されていたからだ。 「荒木飛呂彦の日記」と。 【花京院とグェスの友達百人計画】 【D-9サルディニアの海岸/1日目/早朝】 【グェス】 【時間軸】:脱獄に失敗し徐倫にボコられた後 【状態】:落ち着いた、ちょっと恥ずかしい 【装備】:なし 【道具】:支給品一式 荒木飛呂彦の日記 【思考・状況】 1.友達として花京院に協力する 2.とにかく生き残りたい 3.ゲームに勝つ自信はない 4.徐倫には会いたくない 5. ヴァニラやばい。ヴァニラやばい。 【備考】 グェスは、エルメェスや他の刑務所関係者は顔見知り程度だと思っています。 空条承太郎が空条徐倫の父親であると知りました 荒木飛呂彦の日記は開く事が出来ないようです。 荒木飛呂彦は日記が無くなった事にまだ気づいていません。 【花京院典明】 【時間軸】:ゲブ神に目を切られる直前(目、顔に傷なし。恐怖を乗り越えていない) 【状態】:とても喉が渇いている。恐怖は乗り越えたようです。黄金の精神。 【装備】:なし 【道具】:ジョナサンのハンカチ(ジョナサンの名前入り)、ジョジョロワトランプ、支給品一式。 【思考・状況】 1.自分の得た情報を信頼できる人物に話す。(承太郎、ジョセフが望ましい) 2.仲間と合流しなければ… 3.巻き込まれた参加者の保護 4.安心して飲める水が欲しい。 5.荒木の能力を推測する ※水のスタンド(=ゲブ神)の本体がンドゥールだとは知りません(顔も知りません) ※ハンカチに書いてあるジョナサンの名前に気づきました。 ※水や食料、肌に直接触れるものを警戒しています。 ※4部のキャラ全員(トニオさん含む)を承太郎の知り合いではないかと推測しました。 ※1で挙げている人物は花京院が100%信頼できて尚かつ聡明だと判断した人物です。 決してポルナレフやイギーが信頼出来ないという訳ではありません。 ※荒木から直接情報を得ました 「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 81 いいのかい、ホイホイついてきて?僕は参加者でもかまw(ry ② 花京院典明 114 Friends Will Be Friends 81 いいのかい、ホイホイついてきて?僕は参加者でもかまw(ry ② グェス 114 Friends Will Be Friends
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「なあオイ花京院さんよぉ、黙ってないでもうちっとなんか喋ったらどうだよ?」 「………………」 D-7北東の路上。 花京院典明は『人捜し』のため周囲を調べつつ、ただひたすらに北上を続けていた。 「ヒヒヒ、ひょっとしてどうせ歩くなら野郎二人よりも女と一緒の方が―――とか考えてるってか? なんならおれが叶えてやろうか」 「………なんのためにわたしがきさまと並んで歩いているのだと思っている」 「冗談だっての―――しっかしマジな話、ホントにこっち来てよかったのかねえ?」 「わたしは西から来たが奴はいなかった………きさまが隠れていた南東の方に来ていないのならば、北―――すなわちこちらの可能性が一番高い。 手がかりはこれきりだが、きさまにも他に当てなどないのだろう」 「っていわれてもねぇ~~~、わかんなかったら人に聞く………ってのはどうだ? 近くに誰かしらいねーのか?」 「先程の二人の他にはすぐ接触できそうな距離に参加者は見当たらない………きさまがその騒がしい口を閉じていてくれるならば、あるいは見つかるかもしれんがな」 (何処にいる………空条承太郎………) スタンドも駆使して周囲を探るが、目当ての人物―――空条承太郎の姿は何処にも確認できない。 せめて手がかりぐらいは残っていないかとも考えるが、痕跡は何一つ見つからなかった―――そもそもこの時点で承太郎は大規模な戦闘などに巻き込まれたりしていないのだから当然だが。 そして、歩き続ける花京院のすぐ近くで彼にひたすら話しかけているのは当の捜し人、空条承太郎―――無論本物ではなく、その正体はスタンドで『変装』している彼の同行者である。 ラバーソール―――本名かどうかはわからないがそう名乗った男は、同行者としては先程まで一緒にいた山岸由花子に勝るとも劣らない存在だった―――悪い意味で。 DIOに金で雇われているというこの男は欲望をそのまま形にしたような存在であり、彼の下品な口調は信用できそうな要素など欠片も見られないうえにいちいちこちらを苛立たせる。 さらにいえば彼はDIOに忠誠を誓っているわけではないため、今でさえいつ襲い掛かってきてもおかしくない人物であった。 それでも我慢して同行させているのは、彼のスタンド『黄の節制』の存在、これに利用価値を見出したからだ。 承太郎に変装した彼と並んで歩いていれば彼らの知り合い―――DIOの敵が間違いなく接触を試みてくるだろうから、そこで不意をつくのもたやすい。 さらにもうひとつ、聞き出した『黄の節制』の防御能力がいざ承太郎と戦う局面において役に立つと考えていたからである。 ―――忌々しいことだが未来において自分が敗れた可能性が高い以上、一人で挑むということはすなわち敗北を意味すると言っても過言ではない。 となれば承太郎と戦う前に戦力のひとつでも確保しておく必要がある………すぐに承太郎本人を追う以上、この時点で花京院の頭からラバーソールと別行動して効率的に敵を始末していく選択肢は自然と消滅し、彼との同行を選んだのだ。 だが花京院にとって、それらの利点と現在感じている不快感がつりあうかどうかはまた別の問題であった。 ―――そもそも何故彼らが承太郎ひとりに集中してその足取りを追っているのかというと、話は彼らが出会って情報交換を終えたころまで遡る。 ラバーソールとの情報交換………というよりお互いの一方的な話だったが、相手の話の中には有益な情報があった。 ―――すなわち、彼が殺し合いの開始後に空条承太郎と遭遇していたということ。 承太郎一人を始末したところでジョースター一族が根絶やしになるわけではない。 だが、少なくとも彼が死ねば子孫を残すことも、DIOと戦うことすらも無くなるため、何らかの形で未来の『運命』は変わると信じていた。 すぐにラバーソールの記憶を頼りに承太郎と遭遇したという場所を訪れてみたのだが……… 「………………いないな」 「ったりめーだろが。会ったっつってもまだ夜も明けてねーころだ、とっくにどっか行っちまったに決まってんだろーがよ、このタコッ!」 やはりとでもいうべきか、到着したときには時既に遅く目的の相手は同行者の言う通り、どこか遠くへ去ってしまった後のようであった。 花京院はどうにか承太郎の足取りをつかむべく、ひとまずスタンドで近くの参加者を捜索する。 「………やや東に星の模様の服の男、その少し南に原住民風の男………か」 「………ん? オイ、もうちょっと詳しく教えやがれ」 小さく呟いただけだったがラバーソールが耳聡く聞きつけ、何か思い当たることがありそうな顔で聞いてきた。 花京院が相手の容姿を告げると、頬を掻きつつ微妙そうな顔で言う。 「あー、あのガキにサンドマンのヤローか………そいつらは放っとこうぜ。さっき承太郎のフリしてダマしてやったからな……… あいつら恐ろしくせっかちな上に人の話ぜんぜん聞かねーから、むしろ本物の承太郎と会ったら問答無用で殺そうとするんじゃないかねえ、ヒヒヒ」 結局彼らはその二人との接触を避け、交換した情報のみから推測して北を目指すことを決め、歩き出した。 そして話は冒頭へと戻るのだが――― 「………なあオイ花京院さんよぉ、アンタ実際あの得体の知れない承太郎に勝てるのか? ンン~?」 「策はある」 現在の花京院はこの選択は失敗だったか、と思い始めていた。 ここまで承太郎の手がかりは全く得られていないどころか、油断も隙もない同行者が襲い掛かってくるのを警戒して自身のスタンドを近くに待機させているため広範囲の索敵も行えずにいた。 それに加えて、誰とも遭遇できずにラバーソールの好き勝手な無駄口や意味のない行動を一人で相手し続けることにもなり、次第にストレスもたまってくる。 いっそのこと襲い掛かってきてくれたほうが楽かもしれない………顔には出さずともそう思いつつ、花京院はひたすら歩を進めていった。 ―――その後も移動中の彼らが他の参加者と遭遇することが無かったのは単に巡り合わせが悪かったからか、はたまた誰かにとっての幸運、あるいは不幸だったのか。 ともあれ、そんな彼らにようやく変化が訪れたのはじきにC-8が禁止エリアになろうかという時刻のことであった。 # 「コイツどっかで見たことあるんだよな………確かDIO………様の部下の………なんて奴だったかな」 「………………」 C-7の路上に差し掛かったとき彼らの目に飛び込んできたのは首無しの死体―――いや、首はすぐそばに転がっていたため正確には『無い』わけではなかったが、ともかくそういう死体。 これまでスタンドによる索敵で死体を見かけたことはあったのだが、知った顔でない上に持ち物が奪い去られていることから無視してきた。 だがこの死体はデイパックを所持したままであるということ、そして進路上にありわざわざ避ける必要はないという二点の理由から、彼らはこの死体のある道へと足を踏み入れたのだった。 そこでラバーソールが首をひねりつつ生首のほうを見て「見覚えがある」と言い出して足を止め………しばらくして彼はどうにか記憶の中の回答に辿りつく。 「あーそうそうダンだな、スティーリー・ダンって奴だ。能力はしらねーが」 「………DIO様の部下」 それを聞いた花京院は死体を検分し始める。 ―――周りには争いの跡は全く無い………死体と血痕が無ければここで何かが起こったとは思えないほどだ。 ―――ダンのデイパックの中には、ほとんど………というよりひとり分にしては多すぎるほどの支給品が残っている―――基本支給品を除けば、使い道のなさそうな物ばかりだが。 ―――首と胴体はさほど離れていないところにあるにもかかわらず、彼の首輪はどこにも見あたらない。 ―――そして、首の切断面………『切断された』というよりは『ちぎりとられた』という表現のほうが適切といえそうな痕跡。 そこまで調べて胴体に軽く触れたところで花京院はある事実に気付き眉をひそめ………ラバーソールもそれを見て訝しむ。 「なんかあったか?」 「………まだ微かに温かい」 「………へぇ」 ふざけた言動が多いとはいえラバーソールも裏に生きる人間である。 その言葉の意味―――すなわち、犯人はまだ近くにいるかもしれないということを瞬時に理解し気を引き締める。 だが、花京院の様子から即座に襲撃を受ける様子はなさそうだと判断するとすぐにその表情は元に戻り………彼の注意は別のものへと移っていく。 その間、花京院は『犯人』について考えていた。 (不必要そうな道具は放置、その一方首輪は持っていったということは主催者に反抗する意思あり、さらに首の切断面からするとおそらく刃物は用いていない……… そして、この辺りにいた参加者でDIO様の部下を殺害しそうな人間を考えると最も有力なのは――――――やはり空条承太郎か) 実際のところ花京院の推測は的中だったのだが、彼本人はあくまで自身の持つ情報のみから導き出したものという認識のため確信までは持っていなかった。 ひとまずラバーソールの意見も聞いてみるかと顔を上げたところで、彼はダンの胴体に黄色いスライムが纏わりついている、という異様な光景を目にする。 当然、誰の仕業かは一目瞭然だったので花京院はスライムの主に向かって問いかけ、相手もそれに答えた。 「何をしている」 「見て理解しやがれってんだこの田ゴ作が、死体なんてもう用はねーだろ? おれがいただいて養分にしちまうんだよ、ドゥーユゥーアンダスタンドゥ?」 「………構わんが急げ、犯人を追う」 空条承太郎を相手どる以上、多少信用できないとはいえ戦力は多いに越したことはない。 となればラバーソールのこの行動は結果的にプラスへとつながるかもしれない………そう考えると花京院は捕食を許可し、無表情のまま再び歩き出そうとする。 一方、そんな彼の考えを欠片も理解していないラバーソールはどこまでも自分の意思で突っかかっていった。 「あん? てめーイカレてんのか? こんな奴の仇討ちなんてする必要ねーだろ」 「きさまの話が真実ならば、こいつを殺した奴はすなわち、DIO様の敵に位置するということだ」 「………ヒヒヒ、ご熱心なことで………まるで恋する少女みたいでッ!!?」 その言い回しが気に入らず―――『恋する少女』という部分で山岸由花子を思い出したからなのだが―――途端に不機嫌になった花京院はギロリと相手を睨みつける。 ラバーソールは一瞬たじろいだものの、それ以上の追求は無かったため言葉を続けた。 「ヒ、ヒヒヒ………で、花京院さんよぉ。その敵とやらを追うにはどっち行きゃあイイのかわかってんのかねぇ?」 ラバーソールからすれば何の気なしに出てきた軽口であったが、受けた花京院はその問題に改めて腕を組み考える。 (………そうだ、誰が犯人だとしても『どちらに向かった』のか………それがわからないことには―――) 「北か?西か? まさかそろそろ禁止エリアになる東に突っ込むなんてマヌケなことはしねーよなぁ?」 未だ話し続ける同行者から視線をはずすと花京院は地図を取り出し、しばらく眺めつつ考えを巡らす。 そのすぐ横のラバーソールは死体を食うことに夢中………というわけではなく、花京院をちらちらと横目で見ていた。 正直彼からすれば、まだ対策らしい対策も思いついていないのにあの得体の知れない承太郎と遭遇しかねない行動は避けたかったのだが……… (油断してる………わきゃねーよな。クソッ、『こいつ』さえ無けりゃ………) ダンの死体をスタンドで捕食する間、ラバーソールは先程花京院と出会って彼の話を聞いた直後のことを思い出していた……… # 「―――以上だ、きさまに心当たりのある人物はいるか?」 「いねぇーな………しっかしアンタ、マジでDIOに忠誠誓ってんのかよ? 人の心変わりってな恐ろしいねェ、ヒヒヒ」 「………………」 「まあ、その肉の芽がモノホンかどうかはしらねーが、おれとやる気ならとっくにやってる以上嘘じゃなさそーだな………で、結局アンタ何がしてーんだよ」 「無論、ジョースター達を始末する………特に重要なのは空条承太郎だ。やつだけは、一刻も早く始末しなければならない………きさまにも手伝ってもらうぞ」 ―――ラバーソールと花京院が遭遇した場所からさほど離れていない民家。 花京院は自身の目的と今まで遭遇してきた参加者の情報を話し終えたところでラバーソールに聞くが、相手の反応はちゃんと答えているのかどうかすら怪しい曖昧なもの。 もっとも、花京院のほうも今対峙している相手がアレッシーの言っていた『自分に変装したスタンド使い』だとして、そういう男の情報に過大な期待など元からしていない。 ………ただ彼が知る未来において、どうも自分がDIOの敵になったというのは事実らしく、それ自体に利用価値は見出しつつも内心複雑な思いを抱いていた。 ひとまず自分がDIOの味方だということだけ再確認させると、ラバーソールに協力するよう視線を向ける。 だが……… 「………ん? 手伝えって? おれが、てめーをか? ヒヒヒ………ゴメンだね! おれはおれの好きにやりてーからな」 「………………」 「そもそも、おれへの態度がなっちゃいねぇんじゃねえのか? 協力しろってんならそれなりの誠意ってもんをみせてもらわねーとなぁ?」 ニヤニヤ笑いながらラバーソールは拒否する。 彼の立場からすれば目の前の花京院もジョースター一行であることに変わりはない。 DIOの支配下にあるとはいえ、自分の知る限りそこから逃れて敵に回った相手に協力する、しかも先程本能で危険と判断した承太郎を追うなどまっぴら御免であった。 またお互いに相手への信頼など持ちあわせていないため、自然と彼らの会話は平行線をたどる。 「誠意………? ふん、うぬぼれるな。わたしが誠意を見せる相手はただひとり、DIO様だけだ」 「ヒヒヒ………んじゃあこの話はなしだな。おれは勝手にやらせてもらうぜ」 「それもできない相談だな」 「あん?」 ラバーソールはしばし言葉の意味を考え………次の瞬間には相手がやる気になったのかと思い下品な笑みを浮かべつつ、構える。 しかし……… 「へえ~? んじゃあ今この場でおれに食われる準備ができましたってか? うれしいね「その通りだ」………は?」 相手が割り込ませた言葉に耳を疑う。 今、目の前の男はなんと言ったのか? 目を白黒させるラバーソールに対し花京院は静かに続ける。 「その通りだ、わたしを食いたいのなら………食わせてやる」 次の瞬間ラバーソールは仰天した…… ふつう相手に捕食されそうになったら食われまいとする! DIOへの忠誠心があるならなおさら食われるわけにはいかない!! その脅しで有利に交渉をしかけるはずだった! しかし! 花京院は…逆におもいっきり食われようとしたッ! (ヒ、ヒ、ヒッヒヒヒ………こいつ、スタンドも―――) 「きさまはおそらくこう考えているだろう………こいつ、スタンドも出さずに何を考えているのか、と」 (………………) 「スタンドは『すでに出している』………………食いたければ勝手に食えばいい」 それを聞いたラバーソールは視線を動かして辺りを見回すが………『法皇の緑』の姿はどこにもない。 そうこうしているうちに花京院が再び口を開いた。 「ただし――――――きさまが食った後はわたしの好きにさせてもらうがな」 「………………ゲッ!!?」 言い終わると同時にラバーソールの両手が「勝手に」動き、自らの首を絞めはじめる。 その様子はまさに数時間前の光景の焼き直し………ただ異なるのは、犠牲者が山岸由花子ではなくラバーソールという点。 「確かに『きさまのスタンド』にわたしでは勝てんかもしれん………だが『きさま自身』はどうかな?」 「グ………ガガ………ッ」 自分の意思ではもがくことすらできず、スタンドは―――出せたとしても、自らの呼吸が止まる前に相手を捕食することは出来そうもない。 苦しみながらもラバーソールは舌打ちしつつ後悔していた。 (クソッ!もう気付きやがるとは………だから『こいつとだけは』戦いたくなかったんだ!!) 打撃も斬撃も、熱や冷気さえも無効化する自身のスタンド『黄の節制』。 そんな彼がジョースター一行の中で唯一警戒しなければならないと考えていたのが目の前の男―――花京院の『法皇の緑』である。 油断した拍子に自分の体内に侵入され、操られてしまえばいかにスタンドが無敵とてどうしようもない。 すなわち、ジョースター達と戦う際に彼だけは万が一にも近くにいてもらっては困る―――シンガポールでも花京院本人を遠ざけておき、その隙に彼に化けて承太郎を始末して残りは他の追っ手にまかせるつもりだったのだ。 現在のように相手がひとりだけ、しかも味方の立場ならばどうにでもできるという期待があったのだが、その考えは大甘だった―――いまさらながらにラバーソールは理解した。 脅しは十分と判断した花京院が一旦手を自由にすると、ラバーソールは途端に卑屈になって喋りだす。 「じ………冗談だ、冗談! まさかおれと仲間われしようっていうんじゃあないよな!? DIOの部下同士、仲良くやろうぜ? おい!」 「………わたしは寛大だ。きさまの態度も、下品極まりない言動にも目をつぶろう………だが、これだけは言っておく」 命が惜しい相手は口先だけでも反抗の意思はないことを示してくる―――これまた似たような展開。 ワンパターン………そう表現することも出来るが、『定石』だけでねじ伏せられる相手にわざわざ『奇策』は必要ないのだ。 先程はこの時点で妥協した花京院だったが今度は下手に出ず、相手を睨みつけたまま大仰なポーズを取ると厳かに言った。 「DIO『様』だ………部下というなら、あの方には敬意を払え」 「わわ、わかってるって、おれにとってもDIO………様は大事な雇い主様だからな、な!」 「………………」 その言葉を受けてようやくラバーソールの全身は自由を取り戻す。 だがスタンドが出て行った様子は無く、彼の態度は低いままであった。 そして機嫌をとろうとでもしたのだろう、口を滑らせて今後の行動を決定付ける情報を漏らしてしまう。 「そ、そうだ! あんたにとっておきの情報があるぜ! 結構前だが、おれはこっから少し北で承太郎本人と会ったんだ!」 「なに………!? すぐにそこまで………待て、今の話は本当か? もし口からでまかせだった場合は………」 「し、心配いらねーって! この状況で嘘はいわねー!」 花京院はハッキリ言って彼の言葉など信用していなかった。 だがひょっとしたら真実かもしれないと思ったら………万が一でも真実だという可能性があるのなら………そう考えると、相手の話を聞かないわけにはいかなかった。 「………まあいい、さわりだけ話せ………」 「お、おう………まあ最初から話すとだ、おれはコロッセオのちょい北で―――」 「………きさまの頭脳がマヌケなことはよくわかった………………それとも」 「あん?」 相手の無知さに呆れつつも、眉ひとつ動かさずに花京院は続ける。 「空条承太郎は、実際そんな無駄口ばかり叩く男なのか? ならば別に構わんが―――」 # (ヒヒヒ、大真面目な顔であの発言―――無駄口を叩きまくる?『あの』承太郎が? ほんとケッサクだったねえ。 思わず想像して笑い転げちまって………って違うだろが!) ラバーソールはうっかり別方向に行きかけた思考を元に戻す。 ………そう、今まで同行という言葉を用いてきたこの二人の関係、断じて対等なものではなかった。 ラバーソールは花京院に力で脅され、反抗すれば殺されるという状態で強制的に連れてこられていたのだ。 何故花京院が相手を力づくで使役する方法を選んだのかというと、山岸由花子との一件で彼が懲りていたこともある。 つまり、いかに立場上『敵』ではなくとも、このような相手と対等な関係を結ぶ必要などない、首輪でもつけて上下関係をはっきりさせておかない限り、同行にメリットなど欠片もないということ。 すなわち花京院は最初からラバーソールと『対等』にも『仲間』にもなる気は無かったのだ………! 実際、ラバーソールの性格を考えるとこの方法は実に正しいと言えるが、勿論相手にしてみればたまったものではなかった。 改めてラバーソールは自分の状態を再確認する。 現在、体は自由に動くしスタンドも使える―――だが、今も自分の体内に潜んでいる『法皇の緑』が花京院の意思ひとつでいつでも自分を始末できるというのはおそらく事実である。 操る条件としてスタンドを体内に侵入させる必要があるということはわかっているが、それをどう防げというのか。 スタンドで体内をガードする、あるいはこのまま体内に閉じ込めて捕食してしまうというのも考えたが、『黄の節制』は空気を通さない上に相手のスタンドは紐状になれる。 わずかでも隙間があれば相手は脱出、攻撃共に思いのままであり、逆に隙間が無ければ自分が窒息してしまう。 また花京院本体に肉片を取り付かせて逃げても、射程外に離脱する前に操られて終了というのが関の山………そこまで考えてラバーソールの額に一筋の汗が浮かんだ。 (………ん? ひょっとしていまのおれ、『脱出不可能』なんじゃあ………ま、まさかな! なんか手はあるだろ! えーとまだ残ってた支給品は確か………) と、その時。 考えを巡らすラバーソールの耳に遠くから微かに何か―――自動車のエンジンがかかるような音が飛び込んできた。 花京院の方へと顔を向けるとどうやら彼にも聞こえていたらしく、音の発生源と思われる方角を眺めつつ話しかけてくる。 「………聞こえたか? 西のほう、車のエンジンがかかる音がした」 「ん? ああ、なーんかそれっぽい音はしたような………」 音の正体に関して深く考えていないラバーソールを尻目に花京院は即座にスタンドを音の方向へと伸ばす。 チャンスかと思うラバーソールだったが、すぐに紐状のスタンドが自分の口から伸びつづけていることに気付いて全部出て行ったわけではないと理解する。 ―――実際『法皇の緑』の一部だけではその人間を操ることはできないのだが、その事実を知らないラバーソールに反抗はできなかった。 そして『法皇の緑』が遠くに確認したのは―――高級そうな車が、道を左折して曲がり角へと消えていく光景。 その車が見えなくなるまでの『一瞬』………そう、本当に一瞬。 もしも承太郎がきちんとダンの死体の後始末をしていれば、花京院たちがこの場で立ち止まることは無かった―――そうなっていれば、生まれなかったかもしれない瞬間。 だが、確かにその一瞬のうちに花京院は車の運転席にてハンドルを握る男の姿を捉えていた。 「………空条承太郎」 花京院の知る姿―――元々の記憶にあった彼とも、殺し合いの最初に爆破された彼とも微妙に異なるその姿……… ラバーソールもその点については話の中で触れていたため、人違いという可能性も想定はしていた。 しかし、実際に見たことによりその考えは雲散する―――あそこまで似た人間が、他にいるはずがない。 追跡はその場で終了―――このタイミングで仕掛けるのは得策でないと判断し、スタンドを呼び戻すと即座にラバーソールのほうへと向き直った。 「………承太郎を発見した。追うぞ、急げ………取り逃すことなど許されん」 「オイ、まだ首が残って―――」 「無駄口は控えろ、それともわたしに逆らう気か?」 戻した『法皇の緑』をちらつかせる。 それを見たラバーソールも胴体はすでに捕食し終えていたため、食い下がらずに従う。 「お、おう、しゃーねえな………んー、どっかにゴミ箱でもありゃあ、マイケル・ジョーダンばりのダンクでこの首をぶちかましてやるんだがねぇ」 「一塁ベースに………いや、さっさと来い」 「チキショー、エラそうにしやがって………っていうか相手は車だろ? んな急いだって追いつける保障はねーんだからもうちょいゆっくり行こーぜ?」 ラバーソールを半ば強引に促し、花京院は足早に歩きだす。 ………あるいは、この時彼が抱いていた焦燥感―――DIOのためにジョースターを始末することを誓っておきながら未だに何も出来ていない自身の不甲斐なさが、遂に出口を見つけて溢れ出たのかもしれない。 傍から見てもそれが感じとれるぐらいに気迫がこもった足取りで花京院は進みだす。 そこにラバーソールもしぶしぶ着いていくが、彼の素顔はひどく歪んでいた。 (とはいったものの、あくまで早歩き………ま、全力疾走して追いついたときにはすっかり息切れしてました、じゃあとんだ笑いものだしな……… クソ、付け入る隙が見当たらなすぎてホント笑えてきちまうぐらい冷静だなコイツ………しょうがねえからここはおとなしく従って―――) 今までラバーソールは花京院に対して無駄口を叩いて歩みを止めたり、必要以上に自分を警戒させて広範囲の索敵を封じることでのらりくらりと追跡を遅らせていれば承太郎の足跡を見失い、そのうち諦めるかと思っていた。 だが彼にとっては不幸なことに、承太郎は捕捉されてしまった―――となるとどうやら近いうちに決戦となる可能性が高そうである。 かといって花京院から逃げられない以上、往生際の悪い彼もさすがに腹をくくって――― (―――いられるかっての! ジョーダンじゃあねえ! さっさとスタンドの対策してコイツを食っちまわねえと、おれのほうが使い捨てられちまう! 承太郎を追うのはともかく、このおれがロクに日の光も浴びてねーようなレロレロのメロン野郎にこんな扱いされるのはメチャゆるさんよなああああ!!) ―――いなかった。 意外と余裕がありそうにも見えるのだがそれもそのはず、ラバーソールにはひとつだけ希望があったのだ………自分が生かされているという事実が。 いつでも殺せるとまで脅迫しておいて承太郎を倒すのに同行しろ、と指示してくるのは自分の能力が『必要』とされているという証拠。 つまり、よっぽど下手な行動でも取らない限り花京院は自分を殺す気はない………おまけに近くの敵は花京院が勝手に見つけてくれるため、歩く間自分が周囲に気を配る必要もない。 (要するに、ハンサムラバーソールさまがこの立場をひっくり返すようなアイデアを思いつく時間はまだあるってワケだ、ヒヒヒヒヒ) 立場上は花京院の下僕のような存在のラバーソールだが、彼は彼なりに現在の状況を利用していたのである。 もっともそれも浅知恵………例えば次の放送で承太郎の名が呼ばれ、自分が用済みと判断されたときはどうするのか………などといったことは何一つ考えていないのだが。 未来では味方となる男―――空条承太郎を殺さんとする男、花京院典明。 逆に未来では敵となる男―――花京院典明と共に行動する男、ラバーソール。 加えてどちらも完全に自分の意思で行動しているわけではないこの奇妙な二人組み。 信頼や協調性など欠片も存在せぬまま、彼らは当面の目標である承太郎へ向けてゆっくりと、だが確実にその距離を縮めていくのだった……… 【C-7 南部 / 1日目 昼】 【偽スターダストクルセイダース】 【花京院典明】 [スタンド] 『ハイエロファント・グリーン』 [時間軸] JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前 [状態] 健康、肉の芽状態 [装備] ナイフ×3 [道具] 基本支給品、ランダム支給品1~2(確認済) [思考・状況] 基本行動方針 DIO様の敵を殺す。 1.空条承太郎を追跡し、始末する。 2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。 3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。 4.機会があれば山岸由花子は殺しておきたい。 5.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。 ※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。 【アレッシーが語った話まとめ】 花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。 ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。 アレッシーもジョースター一行の仲間。 アレッシーが仲間になったのは1月。 花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。 【山岸由花子が語った話まとめ】 数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。 広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。 東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。 【ラバーソール】 [スタンド] 『イエローテンパランス』 [時間軸] JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前 [状態] 疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている [装備] なし [道具] 基本支給品一式×4、不明支給品2~4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ! 1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。 2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ? ※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。 ※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。 ※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。 ※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。 【備考】 C-7南部路上のスティーリー・ダンの死体のうち胴体がラバーソールによって捕食されました。所持品もラバーソールが回収し、首だけがそのまま放置されています。 二人が聞いた車の音は第143話『本当の気持ちと向き合えますか?』で承太郎たちがぶどうが丘高校から出発したときのものです。 二人は体力を消耗しない程度の(承太郎たちの車よりもやや遅い)ペースで承太郎たちを追跡しています。 そのため車が走っている間(第148話『大乱闘』で空条邸に駐車するまで)には追いつけません。 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 前話 登場キャラクター 次話 128 目に映りしものは偽 花京院典明 161 She s a Killer Queen 128 目に映りしものは偽 ラバーソール 161 She s a Killer Queen
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++第十話 使い魔の決闘④++ 花京院は驚いていた。 剣を握ってからの自分の変化に。 左手に刻まれたルーンが光っている。 体が羽のように軽い。空を飛べそうなほどに、軽い。 その上、左手に握った剣が体の一部のように馴染む。 ……不思議だ。剣を使ったことはないのに。 眼前に立つギーシュが、ゆっくりと剣を振りかぶった。 右足で踏み込み、そのまま振り下ろすつもりだ。 右肩から左脇にかけて、いわゆる袈裟切りというやつだ。 そんな推測する余裕さえあった。 相手の剣の軌道上に自分の剣を構える。 剣と剣がぶつかる瞬間、剣を傾ける。 攻撃を受け流され、力んでいたギーシュはバランスを崩した。 その隙に足を引っ掛ける。 ゆるやかに過ぎていく視界の中で、ギーシュの体が大きな弧を描く。 ギーシュは仰向けに倒れた。 状況が理解できていないようで、ぽかんとした表情で花京院を見上げている。 花京院は無言で剣を突き立てた。 ギーシュの頭……ではなく、そのすぐ横に。 「続けるか?」 「……僕の負けだ……完全…敗北だ」 剣を放り投げ、ギーシュは両手を上げた。 それを見届けると、花京院は剣から手を放した。 ――あの平民、やるじゃないか! ――ギーシュが負けたぞ! などと見物していた連中から歓声が巻き起こる。 戦いが終わったからか、急に全身に疲労を感じた。 騒がしい観客たちに背を向けて、花京院は歩き出そうとした時、 「何やってんのよ!」 歓声を割くような一声が、その場に響いた。 全員の視線が一点に注がれる。花京院も目を向ける。 そこには怒気をまとったルイズが仁王立ちしていた。 「ルイズ……」 花京院は続いて何を言おうか迷った。僕は勝ったぞ、と言いたいわけではない。迷惑をかけたな、……そうでもない。ただ一言、言いたいだけだ。 足を引きずりながら花京院はルイズの前に立った。 「……すまなかった」 ルイズは目を引ん剥いて花京院を見た。 花京院は小さく微笑むと、歩き出そうとした。 しかし、花京院はまさに満身創痍、限界ぎりぎりの状態だった。 足がもつれ、体勢を崩してしまった。 倒れる寸前に花京院は何かにしがみつき、体勢を維持することに成功した。 ほっとしたのは一瞬だった。 「……こ、こここ」 ルイズの声が耳元で聞こえる。 朦朧とする意識の中で、花京院は事情を理解した。 どうやら倒れそうになった自分は思わずルイズに抱きついてしまったらしい。 いくら疲れていてもどうなるかはわかる。 花京院は脱力しながら次の絶叫を聞くことにした。 「こ、ここ、このバカー!!」 花京院の右の頬に鋭い痛みが走る。 見事な平手打ちだった。 今の一撃がとどめとなり、花京院は完全に意識を失った。 + + + 朝の光で、花京院は目を覚ました。 体中の包帯を見て、思い出す。 ……そうだ。僕はギーシュと決闘をして勝った後、気絶したんだ。 起き上がろうとすると、身体の節々が痛んだ。 どれぐらいの間寝ていたのかはわからないが、傷はまだ完治してないらしい。 なんとか起き上がって、周囲を見回す。 ルイズの部屋だった。どうやらルイズのベッドで寝ていたようだ。 視線を落とし、左手のルーンを見る。 決闘の最中にこのルーンが光り出したら、体が羽のように軽くなり、体の一部のように剣が動いたのだ。 今、左手のルーンは光ってはいない。 ……なんだったんだ、あれは。 そんなことを考えながら左手を見つめていると、ドアがノックされた。 「どうぞ」 花京院が答えると、ドアが開いて一人のメイドが入ってきた。 ここでは珍しい黒髪とその顔には見覚えがあった。 「シエスタじゃないか」 「お目覚めですか? カキョーインさん」 「ああ。ところで、あの後……?」 「あれから、ミス・ヴァリエールが、ここまであなたを運んで寝かせたんですよ。先生を呼んで『治癒』の呪文を、かけてもらいました。大変だったんですよ」 「『治癒』の呪文?」 「そうです。怪我や病気を治す魔法ですよ。ご存知でしょう?」 「いや……」 花京院は小さく首を振った。ここでの常識は異世界から来た花京院には通じない。 それにしても、魔法とは随分種類が豊富なようだ。治療するのもあれば、土人形を動かしたり、炎や風を操ることもできる。 もしかすると、そんなメイジと戦うことがあるかもしれない。そのために対策を立てておいたほうが良いかもしれない。 「あ、でも、治癒の呪文のための秘薬の代金は、ミス・ヴァリエールが出してました。だから心配しなくていいですよ」 黙っているから、お金の心配をしていると思われたらしい。 「秘薬の代金ってやっぱり高いのかい?」 「まあ、平民に出せる金額ではありませんね」 また一つ借りが出来てしまったようだ。 ここに召喚し、命を救ってくれたこと。 そして、秘薬の代金を払い、怪我を治してくれたこと。 いずれこの世界を去るときには返すつもりだが、今はまだ借りておこう。 花京院は立ち上がろうとして、顔をしかめた。 「ぐっ……」 「まだ動いちゃダメです! あれだけの大怪我では、『治癒』の呪文でも完璧には治せません! ちゃんと寝てなきゃ!」 手を貸そうとするシエスタを制して、花京院はベッドに座った。 体はまだ本調子ではないので、無理は控えておく。 「お食事をお持ちしました。食べてください」 シエスタは銀のトレイを花京院の枕元に置いた。 「ありがとう。僕はどれぐらいの間寝ていたんだ?」 「三日三晩、ずっと寝続けていました。目が覚めないんじゃないかって、みんなで心配してました」 「みんな?」 「ええ。厨房のみんなです……」 シエスタはそれからはにかんだように顔を伏せた。 花京院はその不思議な行動を見つめる。 「どうしたんだ?」 「いえ、あの……、すいません。あのとき、逃げ出してしまって」 「謝るほどのことじゃないだろう。それに、平民と貴族の立場を考えれば仕方ないとも……」 「い、いえ!」 花京院の言葉をさえぎり、シエスタは大きな声を出した。 きょとんとして見つめる花京院に照れるようにシエスタは赤くなる。 「確かに前は怖かったです……けど! もう、そんなに怖くないです! 私、感激したんです! 平民でも、貴族に勝てるんだって!」 興奮するシエスタを見て、花京院はふと思う。 なぜ、あの時勝てたのだろう。僕はあの時既に限界だった。しかし、剣を握った瞬間、何かが起きたんだ。剣を握った瞬間……? ふと視線を落とし、花京院は左手のルーンを見つめた。 「……ん?」 「どうかしましたか?」 「いや、なんでもない」 シエスタに答えながら花京院はもう一度左手を見た。 剣を握った瞬間、光を放ったルーン文字。それがわずかにではあるが、薄くなっているような気がした。注意して見なければ気付かないほどの違いだ。 あの時もこれが影響したのか? それで、何かの力を使ったから薄くなった……? 考えてみようにも情報が足り無すぎるので、今は深く考えないことにした。 何気なく頭を掻いて、右腕も治っていることに気付いた。痛みは残っていたが、折れた骨はくっついているようだった。 「この腕も魔法で?」 「ええ、そうですよ」 「たった三日で……」 複雑な気持ちで包帯を撫でて、花京院は呟く。 「カキョーインさん。魔法に驚くのもいいですが、ミス・ヴァリエールにお礼を言っておいた方がいいですよ。看病してくれていたのは彼女なんですから」 シエスタは視線を机の方に向ける。 ルイズは椅子に座り、机に突っ伏して眠り込んでいた。 「ルイズが?」 「はい。包帯を取り替えたり、顔を拭いてあげたり……。ずっと寝ないでやっていたから、お疲れになったみたいですね」 静かな寝息を立てながら眠っている。長い睫毛の下に隈が出来ていた。 相変わらず、寝顔は可愛らしい。年相応の可愛さがある。 ふと、ルイズが身じろぎした。 「ふぁああ」 大きなあくびをして、伸びをする。それから、ベッドの上の花京院に気付いた。 「あら。起きたの」 「あ、ああ。色々とすまなかった。それと、看病ありがとう」 「怪我は?」 「痛みはあるが動けないほどでもない」 「そう。だったら……」 ルイズは頷くと、顎の先で机の上を示した。 机の上には籠があり、洗濯物の山が積まれている。 訳がわからず、ルイズに視線を戻すと、「洗濯」と一言言った。 要するにそれを洗えという意味らしい。 「ミス・ヴァリエール! カキョーインさんはまだ――」 「黙りなさい」 「そんな……」 「ギーシュを倒したからって待遇は変えないわよ」 シエスタの言葉をあっさり切り捨て、ルイズは花京院を睨みつける。 今にも噛み付かんばかりのルイズの形相に花京院は内心苦笑する。 ……優しいのか、厳しいのか。よくわからないな。 どうやら、それは表情に出ていたようだ。 「何笑ってるのよ!」 「いや、なんでもない」 慌てて、花京院は首を振る。 一見険悪にも見えるその二人の様子に、シエスタはおろおろしながら花京院を見た。 大丈夫、というように花京院が頷くと、シエスタはルイズと花京院の顔を交互に見てから部屋を出て行った。 部屋にはルイズと花京院だけになった。 なんだか興奮しているルイズにどう対処すべきか花京院が考えた時、ルイズが言った。 「いい? 忘れないで! あんたはわたしの使い魔なんだからね!」 指を突きつけ、勝ち誇ったように胸を張っている。 子供が背伸びしているようなその光景に、花京院はやはり苦笑するしかなかった。 『わたしの使い魔』。彼女はそう言ったが、それはいつまでのことなんだろう。明日までか、一週間後なのか、それともこのままずっとか。予測することすら難しい。 けれど、それまでは彼女の使い魔でありたい。 密かに花京院はそう思った。 To be continued→
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097 我が侭な物語 ◆dKv6nbYMB. エスデスから逃れたほむらと花京院は、病院で医療品を探していた。 「...あまり置いてませんね」 「まあ、広川が求めるものが殺し合いである以上、そこまで期待するべきじゃないだろう」 本当は、めぼしい物は入れ違いとなった佐倉杏子が持って行ってしまったのだが、二人がそれを知る由はない。 「さて、早速傷口の消毒をしよう」 「...その前に、いいですか」 「なんだい?」 「その、お互いに支給品を確認しませんか?お互いに使いやすい物もあるかもしれませんし、手当をしている間に襲撃される可能性もありますし...」 ほむらの支給品は、帝具『万里飛翔マスティマ』。空を飛べるだけではなく羽根を飛ばすことで武器になるのだが、生憎使い方をよく知らないほむらではこの帝具は武器にはなりえない。 そのため、ほむらは一刻も早く武器を手に入れたかったのだ。 花京院は少し考え込む素振りを見せる。 「...わかった。ちょうど、わたしには使え無さそうな物があったからな。きみに使えるものがあればいいが...」 そして、二人はそれぞれの支給品をデイパックから取り出した。 花京院が取り出したのは、一振りの剣とベレッタ。 ほむらが取り出したのは、万里飛翔マスティマ。 「...なんだい、これは」 花京院の現実的な支給品と比べれば、そんな言葉が出ても仕方ないだろう。 「...空が飛べるらしいです」 「それはすごいな」 「実際に試したわけじゃないんですけどね。飛べる時間も限られているようですし」 「ふむ...しかし、この殺し合いでは、飛べることはあまりアドバンテージにはなりそうもないな」 花京院の言葉には、ほむらも同意だった。 まず、飛ぶ行為自体が目立つ。エスデスのような好戦的な者が近くにいれば狙ってくれと言っているようなものだ。 次に、この殺し合いには異能力を持つものが多くいるということだ。 空を飛ぶことによる最大の利点は、相手の攻撃が届かない事。 しかし、自分の知る限りでも、氷をとばせるエスデスに、遠距離攻撃だけでなく、リボンで相手を引きずりおろせるうえ、足場を作れる巴マミがいる。 それに、能力だけでなくとも、銃火器で狙撃されれば十分に危険だ。 よほどのことが無い限りマスティマは使い道はないだろう。 「わたしの方は何の変哲もないものだが...そうだな、きみの護身用としてはこの刀がいいんじゃないかな」 花京院がほむらに渡したのは、刃渡りがとても美しい刀。 刃物に関してはド素人のほむらですらそう思うほど、その刀は美しかった。 「いいんですか?」 「ああ。私には『体質』があるからね。自衛くらいはこれでできる」 「...ありがとうございます」 欲をいえば、使い慣れているベレッタを欲しかった。 しかし、先のエスデスの件から、銃を欲しがる一般人などいないだろうと思い直し、まだ包丁などの家庭用品に近い刀で了承した。 刀は刀で使い道はある。 この刀の切れ味がどの程度かはわからないが、時間停止と組み合わせればかなり強力な武器となるだろう。 ほむらは受け取った刀をデイパックにしまった。 「さてと。今後の方針は応急手当をしながらでもいいかな?」 「はい」 消毒液、脱脂綿、ガーゼ...治療に必要な物を揃え、花京院はほむらに手を差し伸べた。 「しみるかい?」 「だいじょうぶです」 ほむらの傷口に優しく消毒をしながら、花京院は語りかける。 「さて、今後の方針だが...わたしはここに留まるのもありだと思っている」 一旦、ほむらの手当を止め、花京院はデイパックからタブレットを取り出す。 「わたしたちのいる場所は病院だ。おそらく、負傷した参加者の多くはここを目指すことになるだろう」 「でも、それって...」 「ああ。負傷した参加者を狙う、ゲームに乗った参加者も目指す可能性は高い」 しかし、と花京院は言葉を一旦区切る。 「きみの友達も連れてこられているのだろう?ならば、わかりやすい目印となる場所で待っていた方がいい」 花京院の言う事は尤もだった。 この地図には、『地獄門』『DIOの館』『音ノ木坂学院』など特徴的な施設が多くある。 おそらく、参加者になにか関連する施設の名称であることは想像に難くなく、知り合いが複数いる参加者はそこを目指すだろう。 それに対して、自分達に関連する施設が見当たらない。 『廃教会』は佐倉杏子の家かもしれないが、わざわざそこを目指すのは彼女くらいだろう。 自分達も知る一般的な名称で、見滝原にもある場所は『病院』『図書館』『発電所』の三つ。 この中で一番便利と思われるのはやはり病院だ。医療器具があれば、魔法少女の魔力も節約できる。 それに、ほむらの知る四人、特にまどかは優しい子だ。 自分が怪我をしていないにしても、他の怪我人を気遣って病院を目指す可能性は高い。 「ただ、問題はここが端の方だということだ。遠くにいる参加者は危険を冒してまで来ようとは思わないだろう」 会場の中央部なら集まりやすいのだが、いかんせんここは端の方。 周辺ならともかく、B-8にある発電所やG-7の闘技場辺りにまどかがいれば、此処で待っていても会える可能性は低い。 自分たちが知っている施設は少ないとなると、確固たる自信を持ってここを目指すという意思は持てない。同行者がいれば、そちらの要求に合わせてしまうだろう。 花京院に残ってもらって自分は別の場所を探したいとも思ったが、DIOのこともある。 ほむらは、エスデスがDIOを殺そうとしていることを花京院に伝えていない。 もし伝えれば、彼はエスデスを倒しにいこうとする。しかし、あの圧倒的な力には、自分たちでは相手にならないだろう。 時間停止を使って殺すことはできるかもしれないが、もしDIOが本当に悪人だった場合、そして殺し合いを破壊し広川たちと戦うときに、あれほどの戦力がいなくなるのも惜しい。 それに、DIOを敵視しているのはエスデスともう一人、アヴドゥルという人がいるらしい。 もしもアヴドゥルがまどかと出会い、DIOは危険だと伝えていれば、まどかと花京院が出会ってしまった時、間違いなく問題が生じるだろう。 そうなると、花京院から離れるべきではないと思う。 「それに、ここが浮遊島というのも厄介だ。周りが海などならまだ助かる望みはあるかもしれないが、奈落に落ちたら最後だ。遠くにいるのなら、わざわざ落ちる危険がある場所には立ち寄らないだろう」 「奈落?」 「ああ。きみと会う前にA-1に寄って確認したんだが、底が見えない真っ暗闇だったよ」 「真っ暗闇...太陽が出たら、底が見えるんでしょうか?」 「どうだろう。ちょうどここからも見えるし、確認してみようか」 席を立ち、窓から外を確認すると、少しの足場を残して、そこから先は文字通り底が見えない奈落だ。 まだ陽が昇りきっておらず、辺りも薄暗いとはいえ、こうも底が見えないのは不気味そのものだ。 「どう思います?」 「幻覚...と決めつけるのは早計かな。現実的に考えればこの浮遊島も奈落も有り得ないものだが...」 「有り得ない?」 「基本的に島というのは海や地面が無いと成り立たないものだからね。この浮遊島というものは自然的な法則を無視しているんだ」 「自然的法則...」 花京院の言葉について、ほむらは考える。 花京院が指摘するまでは、この島についてなんの疑問も抱いていなかった。 この島はおかしい。改めて考えればわかることだ。 浮遊する島。底が見えない奈落。 常識から外れているものが当たり前のように存在しているのだ。 (おかしいものが、当たり前...) ほむらは知っている。 おかしいことが当たり前のようにできる世界のことを。 ほむらは持っている。 それを確かめる手段を。 故に、ほむらは口にした。 「なら、調べてみませんか?」 ほむらの怪我の応急処置を終えたあと、ほむらと花京院は病院と奈落の境目、つまり崖っぷちに立っていた。 「...本当にやるつもりかい?」 「はい。大丈夫です、テストのついでに少し調べるだけですから」 ほむらが円盤状のマスティマに触れると、両肩から僅かに離れた場所へ浮き、翼が生える。 それと同時に、ほむらの身体が僅かに浮き上がる。 (...説明書の通り、飛ぼうと思えば飛べるみたいね) 「それでは、行ってきます。もし放送から10分以内に戻って来なければ、私を置いて花京院さんの思った通りに行動してください」 そう言うなり、ほむらは奈落へと降りていった。 (...この辺りでいいかしら) ある程度まで降下すると、今度は滑空し奈落に対して平行に飛ぶ。 やはりというべきか、奈落には底が見えない。 欲をいえばこちらも調べたいと思うが、飛行時間に限界があるため無茶はできない。 それに、今回調べたいのは奈落ではない。 ほむらが着目したのは、会場の端。 島の端ではなく、地図上の端。即ち、奈落によって徒歩ではいけない場所だ。 わざわざ低く飛んでいるのは、奈落の底を確認するためだけでなく、どこにいるかわからない敵に姿を見られるのを防ぐためだ。 やはりというべきか、こちらも奈落と同様先が見えない。 (もし、これが私の予想通りなら...) どれほど飛行しただろうか。 突如、ほむらの眼前に巨大な壁が現れた。 暗がりで見えなかったのではない。本当に、突然壁が現れたのだ。 壁に沿って上昇し、頂上まで辿りつく。 誰もいないことを確認すると、マスティマの羽根を消し、地上へと降り立った。 (やっぱり...!) ほむらが確認できたのは、発電所と思われる施設。即ち、ここはB-8地点であることがわかる。 つまり、この会場に行き止まりはなく、C-1からB-8まで一瞬で移動したことになる。 ここから考えられる答えは二つ。 ひとつは、この会場が地球ではない小さな星のひとつだということ。 インキュベーターという異星人のことを知らなければ、こんなことは思いつかなかった。 しかし、地球と同様にこうして人間が普通に生きていられる基準を満たす星などあるのだろうか? いや、そんな星があれば巷でもっと話題になっているはずだ。若しくはインキュベーターだけがそんな星を知っている可能性もある。 しかし、この場には魔法少女ではない人間が複数名いる。 魔法少女の素質を持つ者には、第二次成長期の少女であることが最低条件だ。 それ以外の者には、インキュベーターに干渉できないし、奴らの方からも直接は干渉ができないはず。 これらを踏まえると、『インキュベーターは魔法少女もその素質を持たない者でも、誰にも気づかれない内に他の星へ転送することができる』という前提が無ければ成り立たないこの可能性は限りなく低いといえる。 もうひとつの可能性...ほむらは、こちらの可能性の方がかなり高いとふんでいた。 気が付いたら同じ場所から出られなくなっていた。 現実にはありえないものが当たり前のように存在している。 見覚えのある建築物が存在する。 これらを両立するものを、ほむらは身を持って知っている。 (この会場は、魔女の結界によく似ている) ほむらが考えたもう一つの答え。それは、この会場自体が魔女の結界であるということ。 勿論、普通の魔女ではなくインキュベーターがなにかしら手を加えたであろう魔女の結界だ。 お菓子だらけの空間。 地面が無く、上下左右など方向感覚がメチャクチャな空間。 自分の住んでいた街を丸ごと模倣した空間。 魔女の結界の中では、とにかく常識の理屈が通じないものが存在する。 魔女が狙った標的を、気付かぬうちに結界内に連れ込むこともできる。 それに対して、この会場の浮遊島。 全く底が見えない奈落。 ワープしたとしか思えない現象。 いつの間にか集められた大勢の人間。 参加者に関係があると思われる施設の数々。 魔女の結界と共通点がありすぎるのだ。 故に、ほむらは『この殺し合いの会場は、魔女の結界によるものである』と結論を出した。 もしこの仮説が真実なら、魔女を探し出して殺してしまえば殺し合いを続けることは困難になるだろう。 勿論、この仮説に確たる証拠があるわけではない。 しかし、この調査でインキュベーターが関わっている可能性はかなり跳ね上がった。 ならば、魔女を探す手間をかけることは無意味ではないはずだ。 問題は、『魔女が誰で、どこにいるのか』だ。 単純に考えれば、自分の知る中では魔法少女は五人。魔女はこの五人の誰かがそうであると考えるのが定石だろう。 しかし、参加者である以上、殺し合いの途中で殺されてしまうような場合も考えられる。 そんなことがあれば、終了を待たずしてバトルロワイアルは存続困難となる。 なら、この五人がこの会場を作っている魔女である可能性は極めて低いだろう。 (...ちょっと待って。そうは言い切れないんじゃないかしら) そもそも、本来ならば魔女という存在はまどかの祈りで過去や未来、全ての時間軸から消し去られた。 自分が魔女と成り果てたのは、インキュベーターがソウルジェムを外界から隔離し干渉不可能な状態にしたからだ。 その結界に、まどかや美樹さやか、佐倉杏子、巴マミなど知り合いが取り込まれたのは、インキュベーターが内側から誘導し連れ込むことだけは可能にしたからだ。 つまり、この会場が魔女の結界内ならば、インキュベーターが干渉しない限り作ることができない。 そして、魔女の存在を知らなかったインキュベーターが干渉する可能性が高いのは、やはり魔女を唯一知る暁美ほむらだろう。 自分の知らない者たちがいる件に関しては、インキュベーターが記憶になにか細工をすればできないことはないかもしれない。 ならば、現状、尤も簡単に殺し合いを終わらせられる可能性が高いのは... (...私が、死ぬこと?) インキュベーターの狙いがなにかは分からない。 しかし、魔女が死ねば、結界は崩れ去り、この殺し合いは優勝者を待たずして終わるだろう。 そうなれば、まどかは助かり、奴らの狙いを防ぐことができる。 (...でも、もしかしたら、そう思わせることこそ奴らの狙いなのかもしれない) もしも自分が魔女であることを知れば、自害してでもこのバトルロワイアルを終わらせようとするのは奴らも知っているはず。 ならば、奴らの目的は『暁美ほむらの死』を利用することにあるかもしれない。 どうやってかはわからない。 ただ、奴らは今まで人間の理解を超える方法で策をろうじてきた。 ならば、その方法については考えるのは後に回そう。 とにかく、いまは生きよう。少なくとも、自分が魔女であることが判明するまでは。 そう思い直し、花京院の待つ病院へと戻ろうとマスティマを発動させたときだ。 ―――ザザッ 『おはようしょくん』 (くっ...まずいぞ、これは) 花京院は焦っていた。 ほむらに潜航させていたハイエロファントグリーンが、突如解除されてしまったのだ。 (まさか勘付かれて逃げられた...?そうなれば、わたしの立場が無くなってしまう!) もしも、花京院がゲームに乗った者だと言いふらされれば、それだけ多くの敵を作ることになってしまう。それは避けたい。 しかし、何かしらの偶然でほむらから解除されてしまっただけかもしれない。 とにもかくにも、ほむらを探し出さねば答えはわからない。 花京院は、ハイエロファントグリーンに辺りを観察させた。 間もなく発見したのは、少女と女性の二人組。 (あの女...!) あの蒼く長い髪に、グンバツなスタイル。 間違いない、エスデスだ。 (まずい、奴にはわたし一人では勝ち目はない!) どう考えても始末すべき厄介な女ではあるが、生憎ここには花京院一人しかいない。 不意打ちのエメラルドスプラッシュでも傷一つ付けられなかった奴だ。 アヌビス神はほむらを操る手段のひとつとして渡してしまったし、そのほむらも何処へと消えてしまった。 この場にあるのは、拳銃ひとつとハイエロファントグリーンだけ。 まともに戦ったところで勝ち目はないだろう。 傍に居る少女を人質にとろうとも考えたが、そこまで近づけば、エスデスに気付かれてしまうだろう。 (ここは、大人しくしておくべきだろう) 幸運にも、エスデスは病院をほとんど調べようとはせず、病院の裏側にいる花京院に気付かずに去っていった。 その数分後、ノイズ音と共に、広川の放送が始まった。 エスデスのインパクトに気を惹かれ、出会いがしらに殺害したはずの鹿目まどかの存在に気付かなかったのは、花京院にとって幸か不幸か。 それは誰にもわからない。 (16人か...) 放送を聞いた花京院は、なんとなくそう思った。 ここに来てからすぐに殺害した少女の名もあるのだろうが、花京院はそれほど興味がなかった。 (悪くは無いペースだな) 花京院の目的は、DIOを優勝させること。わずか6時間で16人も死んだのなら、それだけDIOを脅かそうとする者は少なくなる。 (もっとも、ジョースター一行、及びエスデスとかいう女が誰一人として脱落していないのは残念だが) ジョースター一行。DIO様の敵であり、いずれは自分が戦わなければならない相手。 エスデス。先程発見したばかりなので死んでいなくて当たり前だが、ほむらの話やあの氷を生みだす能力から判断すれば、必ずやDIO様の厄介な種となる。 (できれば、あまり危険は冒したくないものだが...) もしも、肉の芽が無くとも忠誠を誓ったヴァニラ・アイスやンドゥール、エンヤ婆といった生粋のDIO信奉者ならばこんなことを思いもしないだろう。 肉の芽を植え付けれた花京院も、DIOのために命を捧げることはできる。 しかし、単純にDIOへの恐怖を突かれて肉の芽を植え付けられた彼には、『可能な限り危険な目には遭いたくない』という防衛本能が自然と働いていた。 未だ能力を知らないジョースター一行、当面の大敵であるエスデスへの対抗策を練りながら、ほむらがここへ戻ってくるのを待つことにした。 それから数分後、こちらへと戻ってくるほむらを見て、花京院は内心ホッと胸を撫で下ろした。 「無事でなによりだ。お疲れさま」 「この会場に端はありませんでした」 花京院の労いの言葉もロクに聞かず、ほむらはデバイスを取り出し地図の画面を開いた。 「このC-1から真っ直ぐ北上するとC-8に出ることになります」 「ほむらちゃん?」 「会場の端へと飛ぶのに必要な時間はおよそ2、3分。時間を空けて飛べばマスティマも問題なく使えるはずです」 まるで花京院など眼中にないかのように、ほむらは得た情報を述べていく。 花京院から見れば、ほむらはどう見ても焦っていた。 再びハイエロファントグリーンをほむらに潜航させるのも容易くできるほどにだ。 「花京院さんの探すDIOの屋敷も飛んでいけば時間を短縮できます。 そこで、これから目指す場所は エスデスと合流するコンサートホール。 DIOさんが目指すであろうDIOの屋敷。 私の知り合いが目指す可能性があるかもしれない廃教会に絞りたいと思います。 花京院さんはどこから探すのがいいと思いますか?」 なにをそんなに焦っているのか、花京院には思いもよらなかったが、自分に選択権があるのなら好都合だ。 エスデスが人を集めているというコンサートホールか。 DIOが目指す可能性の高いDIOの屋敷か。 ほむらの知り合いの目指す可能性がある廃教会か。 それとも、最初の提案通りに病院で参加者が来るのを待つか。 「わたしは...」 花京院が出した答えは――― 巴マミ。 私は、あの人が苦手だった。 強がって無理しすぎて、その癖誰よりも繊細な心の持ち主で... あの人の前で真実を暴くのは、いつだって残酷すぎて、辛かった。 でも、決して嫌いじゃなかった。 だって、あの人は――― 『魔女としてのきみが、無意識のうちに求めた標的だけがこの世界に入り込めるんだ』 不意に、私の魔女の結界について説明するインキュベーターの言葉が脳裏をよぎった。 もしも...もしも、私が心の底から彼女を拒絶していれば、彼女は死ななかったのだろうか。 その答えはわからない。 けれど、私に出来るのは前に進むことだけ。 そう、まどかを救い、この命が尽きるそのときまで。 【C-1/病院の裏側の崖/一日目/朝】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ(新編 叛逆の物語)】 [状態]:疲労(中)、ソウルジェムの濁り(小) 全身にかすり傷 精神的疲労(中) [装備]:見滝原中学の制服、まどかのリボン [道具]:デイパック、基本支給品、万里飛翔マスティマ@アカメが斬る! アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(まどかの支給品) [思考]: 基本:まどかを生存させつつ、この殺し合いを破壊する 0:これからの方針を決める。 1:まどかを保護する。 2:協力者の確保。 3:危険人物の一掃 4:まどかの優勝は最終手段 5:DIOは危険人物ではない...? 6:信用を置ける者を探し、自分が魔女かどうかの実験をする。(杏子が有力候補) [備考] ※参戦時期は、新編叛逆の物語で、まどかの本音を聞いてからのどこかからです。 ※まどかのリボンは支給品ではありません。既に身に着けていたものです ※魔法は時間停止の盾です。時間を撒き戻すことはできません。 ※この殺し合いにはインキュベーターが絡んでいると思っています。 ※時止は普段よりも多く魔力を消費します。時間については不明ですが分は無理です。 ※エスデスは危険人物だと認識しました。 ※花京院が武器庫から来たと思っています(本当は時計塔)。そのため、西側に参加者はいない可能性が高いと考えています。 ※一度解除されましたが、再び花京院のスタンド『ハイエロファントグリーン』の糸が徐々に身体を浸食しています。ほむらはそのことに気付いていません。 ※この会場が魔女の結界であり、その魔女は自分ではないかと疑っています。また、殺し合いにインキュベーターが関わっており、自分の死が彼らの目的ではないかと疑っています。 【万里飛翔マスティマ@アカメが斬る!】 翼の帝具。装着することにより飛翔能力を得ることが可能。 翼は柱を破壊する程度の近接戦闘は描写から可能であり、無数の羽を飛ばして攻撃することも出来る。 飛翔能力は三十分の飛翔に対し二時間の休息が必要である。 奥の手は出力を上昇させ光の翼を形成し攻撃を跳ね返す『神の羽根』。 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [装備]:額に肉の芽 [道具]:デイパック、基本支給品×2、油性ペン(花京院の支給品)、ベレッタM92(装弾数8/8)@現実、花京院の不明支給品0~2 まどかの不明支給品0~1 [思考・行動] 基本方針:DIO様を優勝させる。 0:これからの方針を決める。 1:ジョースター一行を殺す。(承太郎、ジョセフ、アヴドゥル) 2:他の参加者の殺害。ただし、今度からは慎重に殺す。 3:DIO様に会いたい。また、DIOの部下が他にもいるかどうか確かめたい。 ※参戦時期は、DIOに肉の芽を埋められてから、承太郎と闘う前までの間です ※額に肉の芽が埋められています。これが無くならない限り、基本方針が覆ることはありません。 ※肉の芽が埋められている限りは、一人称は『わたし』で統一をお願いします。 ※この会場内のDIOが死んだ場合、この肉の芽がどうなるかは他の方に任せます。 ※『ハイエロファントグリーン』が他人に憑りついたとき、意識を奪えるかどうかは他の方に任せます 時系列順に読む Back Future Style Next 正義の戦士たちよ立ち上がり悪を倒せ 投下順に読む Back Future Style Next 正義の戦士たちよ立ち上がり悪を倒せ 047 笑う女王と嗤う法皇 花京院典明 099 再会の物語 暁美ほむら