約 32,169 件
https://w.atwiki.jp/j-kojima/
ニュース 世田谷自治体PJ 情報集 新規作成 -- 小島 淳 (2007-12-25 18 17 18) 名前 コメント *
https://w.atwiki.jp/kshoseki/pages/1.html
■現代自治体再編論
https://w.atwiki.jp/jlgc/pages/20.html
英国の地方自治体では従来、行政府は議会の各委員会が執行機関となる議会統治型の類型であり、日本のように議会と行政府が並立し、行政府のトップが直接公選により選出される大統領型とは大きく異なってきた。しかしながら、従来の委員会中心の議会制度は、会議に多大な時間が費やされる等の非効率性や、誰が実質的な決定をしているのかが判りにくい等の透明性の欠如が批判されてきた。 この批判に対し、政府は、「2000年地方自治法(Local Government Act 2000)」で、議会については、従来型の議会全体で行ってきた政策決定とその評価に係る責任の所在を、政策決定に責任を持つエグゼクティブ(内閣構成議員)と政策評価を担当するバックベンチャー(一般議員)(*1)に明確に区分することとし、一方首長については、直接公選首長を採用するか否かについて選択することができるとした。 その後制定された「2007年地方自治・保健サービスへの住民関与法(Local Government and Public Involvement in Health Act 2007)」(以下「2007年地方自治法」という。)により、さらにこの方針が徹底された。 その結果、現在、全てのイングランドの地方自治体(人口85,000人未満の小規模地方自治体は除く。)(歴史的経緯から独特のしくみを持つシティ・オブ・ロンドン・コーポレーション(City of London Cooperation)と、地方自治体ではないグレーター・ロンドン・オーソリティー(Greater London Authority)も除く。)に対し、 議会から選出されたリーダーが率いる内閣が政策決定を行う「リーダーと内閣(Leader and Cabinet)」制 直接公選された首長と議会又は首長により選出された内閣が政策決定を行う「直接公選首長と内閣(Mayor and Cabinet)」制 の2つの地方自治体構造(Executive Arrangementと総称される。)のうちいずれかを選択することが義務付けられている。(2000年地方自治法第11条、2007年地方自治法第62条、2007年地方自治・保健サービスへの住民関与法政府解説(Local Government and Public Involvement in Health Act 2007 Explanatory Notes)(以下「2007年地方自治法政府解説」という。)第157項) ただし前述のとおり、人口85,000人未満の小規模地方自治体は、従来からの「委員会」制を採用できる(Alternative Arrangements)。(2000年地方自治法第31,32,33条、2007年地方自治法第71条、2007年地方自治法政府解説第176項) 異なる制度への移行には、議会の議決が必要である。 「直接公選首長と内閣」制の採用にあたっての手続きは、次の3通り存在する。 有権者の5%以上の請願により、住民投票が行われる形 議会が、その議決により、直ちに「直接公選首長と内閣」制を採用する形 議会が、その議決により、住民投票に諮ることを決める形 なお、1度住民投票を行い過半数を獲得できなかった場合、次の住民投票は10年間行うことはできない。(2000年地方自治法第27条、34条、2007年地方自治法第64、65、69条、2007年地方自治法政府解説第174項) 現在のところ、(1)リーダーと内閣制は299、(2)直接公選首長と内閣制は11、(3)委員会制は42の地方自治体が採用している。(*2) 上記の2つの地方自治体構造における、議会と執行機関の関係はそれぞれ次のとおりである。 (1) 「リーダーと内閣(Leader and Cabinet)」制 この形態は従来の委員会の機能を内閣に集中したものであり、リーダー(任期4年)の指揮の下、内閣が日々の政策に関する意思決定、執行機能を担う。 リーダーは本会議において任命され(議会は議会自ら定める条件のもとリーダーを罷免することもできる。(2007年地方自治法第67条44c、2007年地方自治法政府解説第170項))、それ以外の内閣構成員(任期4年)はリーダーにより任命される。(リーダー、及び内閣構成員となれるのは、議員だけである。)内閣構成員の人数はリーダーを含めて10名以内という上限が定められている。(2000年地方自治法第11条(8)、2007年地方自治法第62条、2007年地方自治法政府解説第159項) リーダーは内閣の議長となり、内閣の一員でもある。 一方、内閣構成員ではない議員(バックベンチャー)は、通常、政策評価委員会(Overview Scrutiny Committee)の構成員となる。 政府が示したモデルの中で、最も多くの地方自治体に採用されている。従来の「委員会」方式に最も近く、議員、職員とも特定の者に権限が集中することへの反対が根強いことを示している。 なお、事務部局は議会から任命された事務総長(Chief Executive)のもと、リーダー、内閣及び政策評価委員会に対する必要な助言及び支援や各部局における政策実施等を行う。 【図表2-1 「リーダーと内閣」制】 (2) 「直接公選首長と内閣(Mayor and Cabinet)」制 この形態は、内閣(内閣構成員となれるのは議員だけである。)が日々の政策に関する意思決定、執行機能を担う点、また首長が内閣の議長となり内閣の一員でもある点は先に述べた「リーダーと内閣」制と同じである。しかし、その大きな違いは、内閣を率いる首長が、地方自治体の有権者により直接選挙される公選首長(任期4年)であるという点である。 この直接公選首長は、議長(Chairman/Mayor)の持つ儀式への出席など対外的に地方自治体を代表する役割と、リーダー(Leader)の役割を併せ持つことになり、また何より、「リーダーと内閣制」のリーダーとは異なり、議会にその任命を依存しておらず(「直接公選首長と内閣」制の首長は議会により罷免されることもない。)、直接住民の投票で選ばれているため、強力なリーダーシップを発揮することになる。 なお、事務部局については「リーダーと内閣制」と同様である。 「直接公選首長と内閣」の是非を問う住民投票の結果、2002年にワトフォード、ドンカスター、ハートルプール、ルイシャム、ミドルズブラ、ノース・タインサイド、ニューハム、ベドフォード、ハックニー及びマンスフィールドにおいて、さらに2005年にトーベイにおいてこの制度が採用された。 なお、「Mayor」という呼称は、ここで使用されている「直接公選の首長」を指すもののほか、イングランドにおいて、従来より慣習として次のとおり使用されているため、注意が必要である。 ディストリクトカウンシルのうち、歴史的に「バラカウンシル」という名称を使用している自治体の、カウンシル(議会)の議長 ロンドン区の、カウンシル(議会)の議長 議長を従来より「Mayor」と称していた自治体が、「直接公選首長と内閣」を採用した際の対応は、自治体により分かれ、その後は議長をMayorと称することをやめる場合と、引き続き議長もMayorと呼び結果として二人の「Mayor」が存在することとなる場合とがある。 【図表2-2 「直接公選首長と内閣」制】 (3) 委員会制(Alternative Arrangements) 議会と執行機関との基本的な関係は上記の2類型(Executive Arrangementと総称される。)であるが、人口85,000人未満の小規模地方自治体のみ、従来からの委員会制度を採用することができる 。(*3) 議会は、地域住民から直接選挙により選出される議員によって構成され、地方自治体における最高の意思決定機関である。また同時に、議会は執行機関でもあり、行政分野又は地域別に委員会もしくは補助委員会を設置して行政の執行にあたり、最終的な責任を負う。ただ、議長(ChairmanまたはMayor)は、実質的な政治的権限を有しておらず、議会多数党の議員により互選されるリーダー(Leader)がその権限を有しており、施策の決定や運営に大きな影響力を与える。 委員会は、本会議(Full Council)によって適宜設置される。 これに対し、事務部局は、常勤の職員である事務総長(Chief Executive)により統括され、議会やその委員会の指示により行政事務を執行する。また、事務部局全般にわたる統合・調整を図るため、主要部局長により構成される主要部局長行政管理チーム(Executive Management Team)が設置されている地方自治体が多い。 【図表2-3 「委員会」制】 【図表2-4 直接公選首長制の導入を目指してこれまで行われた住民投票】 (注) 下記のうち、太字が過半数を獲得したものである。また、★印は、2000年地方自治法で導入され、2007年地方自治法で廃止された「直接公選首長とカウンシル・マネージャー(Mayor and Council Manager)」制を目指したものである。その他は「直接公選首長と内閣」制を目指したものである。 自治体名 実施日 賛成票数 賛成票割合(%) 反対票数 反対票割合(%) 投票率 Berwick-upon-Tweed 2001/6/7 3,617 26 10,212 74 64 Cheltenham 2001/6/28 8,083 33 16,602 67 32 Gloucester 2001/6/28 7,731 32 16,317 68 31 Watford 2001/7/12 7,636 52 7,140 48 25 Doncaster 2001/9/20 35,453 65 19,398 35 25 Kirklees 2001/10/4 10,169 27 27,977 73 13 Sunderland 2001/10/11 9,375 43 12,209 57 10 Brighton Hove 2001/10/18 22,724 38 37,214 62 32 Hartlepool 2001/10/18 10,667 51 10,294 49 34 Lewisham 2001/10/18 16,822 51 15,914 49 18 Middlesbrough 2001/10/18 29,067 84 5,422 16 34 North Tyneside 2001/10/18 30,262 58 22,296 42 36 Sedgefield 2001/10/18 10,628 47 11,869 53 33 Redditch 2001/11/8 7,250 44 9,198 56 28 Durham 2001/11/20 8,327 41 11,974 59 29 Harrow 2001/12/6 17,502 43 23,554 57 26 Plymouth 2002/1/24 29,559 41 42,811 59 40 Harlow 2002/1/24 5,296 25 15,490 75 25 Newham 2002/1/31 27,263 68 12,687 32 26 Southwark 2002/1/31 6,054 31 13,217 69 11 West Devon 2002/1/31 3,555 23 12,190 77 42 Shepway 2002/1/31 11,357 44 14,438 56 36 Bedford 2002/2/21 11,316 67 5,537 33 16 Hackney 2002/5/2 24,697 59 10,547 41 32 Mansfield 2002/5/2 8,973 55 7,350 45 21 Newcastle-under-Lyme 2002/5/2 12,912 44 16,468 56 31.5 Oxford 2002/5/2 14,692 44 18,686 56 34 ★Stoke on Trent 2002/5/2 28,601 58 20,578 42 27 Corby 2002/10/1 5,351 46 6,239 54 31 Ealing 2002/12/12 9,454 45 11,655 55 10 Ceredigion 2004/5/20 5,308 27 14,013 73 36 Isle of Wight 2005/5/5 28,786 43.7 37,097 56.3 60.4 ★Fenland 2005/7/14 5,509 24.2 17,296 75.8 33.6 Torbay 2005/7/14 18,074 55.2 14,682 44.8 32.1 Crewe and Nantwich 2006/5/4 11,808 38.2 18,768 60.8 35.3 Darlington 2007/9/27 7,981 41.6 11,226 58.4 24.6 Bury 2008/7/3 10,338 40.1 15,425 59.9 18.3 Stoke-on-Trent 2008/10/23 14,592 41 21,231 59 19.23
https://w.atwiki.jp/career_design/pages/30.html
第1回オフ会 講演概要 講演会&オフ会の風景 講演概要 1 日 時:平成15年6月27日(金)16時~18時 2 場 所:名古屋国際センター5階 第4、第5会議室 3 内 容:以下のとおり (1) 講演 ① 講 師:森貞述高浜市長 ② テーマ:「住民自治の確立とこれから求められる職員像」 ③ 内 容 ・今日、6月27日は企業にとっては、株主総会が集中する特別な日である。シャンシャン大会で済む時代は終わり、まさにガバナンスが問われている。 ・自治体も同じである。あえて経営と言わせていただくが、自治体経営のあり方が問われている。三重県の北川前知事はマニフェストを提唱された。これは従来、抽象的な表現だった公約を期限付、数値付にするものである。 ・経常利益日本一のトヨタは取締役の報酬が2,100万円であるが、カルロス・ゴーンにより立ち直ったとはいえ、トヨタとは開きがある日産の役員報酬は、1億4千万で、トヨタの約4倍である。これをどう考えるか。 ・かつて地方自治体の置かれている立場は護送船団であったが、今後は、勝ち組と負け組に二極分化する。 ・企業に起きている変革と同じ現象が、自治体にも降りてくる。基礎的自治体が自立するときである。 ・後で新聞(6・27日経新聞朝刊)を回すが、最高裁の小法廷で固定資産税に関して評価額を実勢価格より高く設定するのは違法との判決が出た。かつて土地を持っていることが価値であったが、活用しなければ価値がない時代になった。 ・固定資産税や都市計画税は市町村にとって基幹税(6割)であるので、この判決の持つ意味は大きい。 ・持続可能な自立した都市を目指す必要がある。「じりつ」にはもう一つあって自律」-身の丈にあった分相応ということも大事である。 ・マーケット・オリエンテッド、コンシューマー・オリエンテッドということ、つまり市民志向でいくべきである。 ・自治体は、これまで供給側の論理でやってきたが、今後は需要者側の論理が求められる。 ・納税者である市民には3つの顔がある。株主、利用者、パートナーの三つである。供給者側の論理は通用しない。「予算、人がない」ということをよく言うが、ない中でサービスをどのように提供していくかである。 ・職員が「市長が恥をかくといけない」とレジュメをくれたが、書いたものを読むのが苦手なので置いておきます。 ・任期中のことを振り返ると第一のターニング・ポイントは再開発事業だった。JR名古屋やほとんどの地方都市の駅前再開発が頓挫している。高浜市ではあえて専門学校(日本福祉大学)をもってきた。 ・職員には方程式の答えを求めるのではなく「プロセスを大事にせよ」と言っている。結果の責任は首長が取れば良い。 ・第二のターニング・ポイントは高齢社会の問題である。かつて高齢化、国際化、情報化(今と違う意味)ということが言われたが、あれもこれもはできない。何を選択するかが重要。行政は黒子に徹しながら、その担い手となる素地を育てて いく。 ・12年1月に地方分権一括法と介護保険法が成立したが、これが第三の転機である。この介護保険の導入により市町村が自己決定、自己責任を持つこととなった。高浜市も福祉自治体として福祉ユニットを活用することになった。 ・介護保険では、県と市町村の関係から国と自治体の関係へと変化する中で市町村の力量が試された。供給側でないものを生み出した。 ・第四番目の転機としては、市町村合併を含めた流れである。来年4月から地域福祉が努力義務となった。地域福祉については住民、地域を切り口に考える。 ・住民参加については、職員も住民として参加する。恥ずかしい話だが、第四次総合計画までは策定をコンサルに丸投げだったが、住民の参画を得てワーキング・グループがコンサルを入れずに作った。これにより職員のレベルが上がった。 ・港湾の管理について、プレジャー・ボートの放置の問題がある。PFI手法を取るにはVFMの考えが要る。NPOを入れた高浜マリンクラブを作った。職員にとって挑戦していく手法となる。どれだけのエネルギーを使うかを学習するプロセスである。 ・家族ケアと施設の中間にユニット・ケアがあり、第一号を杉並区がつくり、高浜市は第二号である。 ・財政がきつくなったときに、いろいろな選択肢、引出しを持っていることを示す。 ・社会福祉法人の理事を県会議員がやっている場合が多いが、彼らは大規模特養を求めている。 ・挑戦を続けていけば、風穴を開けることができる。 ・首長が政治を使ったら職員は育たない。担当を飛び越していくと、職員の発想を殺すことになる。職員を生かし、職員が対応している状況を把握することから始まる。政治を使うときはお礼を言ってもらうときだけにしている。 ・首長の任期は4年であるが、自治体は企業と同じゴーイング・コンサーンである。 ・合併の問題には行政資源の最大化合併過程にある圧力から職員が鍛えられるがある。合併圧力を跳ね返すための切磋琢磨が必要。企業には小が大を飲む合併や対等合併があるが、自治体の場合は、小が大を飲む合併や対等合併はありえない。 ・職員には強いものを徹底的に伸ばせと言っている。高福祉、高負担と言い切っている。自治体OBの方は、大変と言われる。(悪い意味) ・統一地方選挙では「ただにします」という発言が多かったが、受益と負担の関係が要ると思う。 ・常に他との違いを際立たせていくことは、いばらの道だがやらなければならない。 ④質疑応答、意見交換 冒頭のトヨタと日産の役員報酬の話は、ゴーンが社員に痛みは強いるが成果が出れば、他はどうあろうと横並びではなく、ちゃんと報いるということだと思う。 Q)ブレーンはいないが、経済紙を参考にされているということだが、市民の声をどのようなアンテナでつかむようにしているのか。 A)父親との約束で家業(醸造業)はやめないことにしているので、消費者の声は商売からも入ってくる。ものごとには経済事象から入るようにしている。それが自治体にどう返ってくるか。成果主義でやっていくことが求められる。定型的に 求められるものではない。選挙の時期も声が入るが、市長室に閉じこもらないで現地や現場へ出かけるようにしている。「よきに計らえ」では、良い情報しか入らない。「高浜市行政行動規範」をつくって唱えるようにしている。 Q)市民満足と職員満足の関係についてどう考えるか。 A)悩ましい問題であるが、「自治体職員は」という枕詞に対してどちらに重きを置 くか。職員の時間単価とパート職員の差も考えないといけない。公認会計士に「役所の職員は変わらない」と言われる。市内の企業の経理を見ていると公務員は まだまだ恵まれているということだ。拠って立つところは税ということ、市民の 納税意識を考えないといけない。賃金では職員満足は難しいが、登用や研修では図っている。 Q)住民が怒らない、自治体が再建団体にもならないことが問題ではないか。 A)「マーケット・セグメントしろ」と言っている。自治体はあまねく公平と言われるが、そうやれるか。郵便局はあまねく公平だそうである。自治体職員の最後の砦は政策形成能力だと考えている。 Q)NPOの活用について A)行政が仕切ってはダメ。自己実現することから始めなければ何も出来ない。自立した組織になることが重要。宅老施設の食事について、料金などに差が出ると不 公平との意見もあったが、各施設の判断に任せた。「金は出しても口を出すな」である。行政にとって重要なのは就労の場を確保することである。職員の雇用が大事か、地域の自治が大事かを考えなくてはならない。時代とともに担い手が変わっていく。NPOに変わるものもある。職員はもっと高度な計画立案などに注力することが重要である。 4 連絡事項 次回は8月下旬から9月上旬にかけ、尼崎市の白井市長をゲスト・スピーカーに関西地区で開催する。     講演会&オフ会の風景 当日、高浜市森市長を講師に講演会を行いました。 参加者は全国から集まった会員22名です。 森市長を囲んで真剣な質疑がおこなわれました。 素晴らしい講演会となったと思います。森市長を始めお世話に なりました参加者の皆様に厚く御礼申し上げます。
https://w.atwiki.jp/career_design/pages/26.html
■基調講演(概要) ※全文を読まれる場合はこちら 発表者:稲継 裕昭(大阪市立大学大学院法学研究科長) 1 公務員制度改革 公務員制度改革という言葉はよく聞かれるが、いくつもの誤解がある。改革推進派と改革抵抗勢力の両方があるのが普通だが、みんな賛成している。 ただし、賛成の中身が違う。様々なアクターで各論がバラバラである。 国家公務員制度改革の場合であるが、与党では、自民党行革本部や自民党政務調査会で進めたものの、公明党では閣議決定後に一部クレームがついた。制度官庁では、内閣官房で進められたものの、総務省人事恩給局や人事院は蚊帳の外に置かれた。各省大臣官房では、政策官庁は未来志向で変える人材を求める意向が強かったが、事業官庁は今抱えていることを粛々と変えていく人材を求めるなど異論が多かった。 職員団体は団体によって様々だが、労働基本権と天下り批判に注目し、経済界は天下り批判と公務員の働きぶりへの注文が多かった。マスコミは人件費削減と天下りや今のシステムに注目し、様々な有識者グループは様々な意見があり、かみ合わない議論が展開されている。 それでは、制度の改革が必要であるかと思われるが、現行法の枠内での制度・運用改革ができるはずである。制度趣旨と運用実態の乖離が最大の特徴である。 例えば能力実績給与の導入論があるが、これは現行法にもあるのであり、運用実態が変わらなければ制度を改革したことにはならない。他に、内部昇進を意味するクローズドキャリアシステム、遅い選抜システムと積み上げ型報奨の年功所列制度、他国と比べ異端の労働基本権の制約が現行制度の特徴である。 さて、今次の公務員制度改革は、2001年12月の「公務員制度改革大綱」(閣議決定)があり、これには「2006年予定」と「地方も」の記述がある。2000年9月自民党行革本部で始まり、12月の行革大綱、2001年1月には橋本担当大臣 と経産官僚によって内閣官房行革事務局公務員制度改革室が発足した。 なお、1990年代にも公務員制度改革はあったが、制度官庁間の綱引きともいえるものであった。 また、国家公務員制度改革は外からの改革とも言える。官への信頼低下、バブル崩壊等による経済政策不信、リクルート事件以降の不祥事等による制度改革の大合唱による改革であるからである。 2 地方公務員「制度」改革 国(自治省・総務省)において、2001年の閣議決定後、総務省公務員課での法案づくりが検討されたものの、現行法の枠内での制度・運用改革を求められた。 また、地方公務員制度改革は内からの改革とも言え、改革の先鞭役でもある。現行法の様々な取り組みの中で組織の問題を抱えていたからである。 例えば30年代から40年代の大量採用世代の高齢化により、いびつな年齢構成となり、ポストの増設、意思決定の遅延、上昇志向をなくした職員が増えてしまった。これは牧歌的な地方自治行政時代ならば対応可能であったが、1990年代以降の自治体を取り巻く大きな嵐には対応できなくなった。1993年の細川連立政権誕生以降、地域発で対応の必要のある問題が急増したことから分権改革が進んだ。1994年から1995年頃から財政悪化は共通認識となった。 NPMという言葉は1990年頃、イギリスのクリストファーフッドによって始まり、1996年から1997年に日本に持ち込まれ、あっという間に広まった考えである。また、1980年代以降の情報公開による住民からの突き上げも増え、それまで行われていた官官接待が明らかになり、批判が強くなったのも大きい。 これまでは地方が中央をもてなすこととこのことが許されることと認識されていたことが、これで批判され、なくなった。 また、インターネットなど情報の伝達スピードの革命的な発展により、他の自治体の政策をすばやく知れるようになった。また、従来の自治体職員向け雑誌は実務記事や昇任試験対策であったが、現在の主流は新たな取り組みの紹介 である。 さて、現場では短期間にNPMを初めとする様々な大改革が行われてきたが、改革メニューのホッジポッジ(ごった煮)で大混乱が起きている。 コンサルタントは初めに知識を吸収するために格安で請負い、パッケージ化して他自治体に売るようになった。しかし、現場ではそれを安易に利用する場合があるが、時代環境の変化に組織が対応できていないなどでうまくいかないここ とが多い。専門的部分で使うのはいいが。 また、組織の要である人事制度を変えることが必要で、対応できる組織への改革と合わせて対応できる人材を育成しなければならない。改革の最大の抵抗勢力は特権階級でもある人事と財政のうちの守旧派である。この既得ステータス に手をつける必要がある。 3 組織・人事制度改革を考える際に考慮すべきいくつかの「ギャップ」 首長は4年任期の政治家であり、40年勤続保証の職業公務員とは認識のギャップがある。首長のミッションは「住民福祉の向上」など曖昧であり、再選されるかが評価基準である。 しかし、首長にとってはアウトカムであり、不確定な外部要因が多い。ベースにある単位を比べると、首長は2~3年くらいを見ている場合が多く、変革の必要性を直に実感している。ただし就任初年度は予算や人事が決まっているのがネックである。 一方、職員は、10年、あるいは次の昇任等を見ているなど様々で、現場での煩わしさは実感できるものの、変革の必要性を実感しにくいものである。そこで、面従腹背といった行動パターンとなりうる。そこで、打開策として、首長がミッショ ンを示し、目標、グループの目標へと降ろす取り組みが必要である。 また、人事制度を改革し、目標を共有し、それを実感できる職員の育成が必要である。 職員間のギャップもある。団塊以前と団塊、団塊と中堅・若手、同年代の中でも「考える職員」と「作業しているだけの職員」、「作業能率がよくて時間内に終了する職員」と「効率が悪くて残業手当がもらえる職員」などがある。オイルショック以前は「でもしか公務員」が多かったが、以降急変し、自治体職員のポテンシャルが向上した。 しかし、一方で「こんなはずじゃなかった」と考えるなど、モチベーションやモラールは低下していった。優秀な職員とは組織や時代により可変的である必要がある。 組織のミッションを遂行するに足る職員とは頭脳明晰・成績優秀、改革連呼の職員とは限らない。地に足のついた仕事ができているかが大事である。NPMのブームの中、心地よい響きにとらわれることなく、日々の業務をこなし、今までのベースで改革を自ら実行する職員を指す。 人事、財務、企画は間接部門であり、これらの官房系統組織が「我々はサポート組織である」という意識改革が必要である。そのため建制順の一番下に置くべきである。これは国民にとってどうでもいいものがトップにある現状の改善であ る。既に佐賀県庁では昨年度から経営支援部門として一番下に置いている。 4 人材育成・人材開発の方向性 研修所研修で人材が育つかを職員アンケートしたところ、「育つ」との回答は10%であった。人事部と職員の認識にはギャップがあり、「自学」とその刺激が人材育成の鍵である。 例えば新しい仕事を任されたことで自ら成長したと認識する場合が多い。そのためには、人事管理と人材育成の連携が重要で、従来の職場外研修と自己啓発補助・職場研修の組み合わせから、今後は人事諸制度・職場研修と職場外 研修というシステムへの変更が必要である。 さらにこれには、ジョブローテーションと仕事の与え方の仕組みを考えた上で変えていく必要があり、自学を促す人事評価制度が必要である。これまで勤務評定は地方公務員法でやらなければならないのにかかわらずやっていない自治体が多かった。 人事評価の目的と役割は以下の2つである。職員の今の状態を知り、評価して、それに基づいて政策を立て実施すること、行動規範を提示して職員の行動を変えることである。 評価は期待の表明であり、期待する人物像を示す。人事評価することで、職員の能力が向上し、それが住民のサービス向上となる連鎖が大切である。 また、人事評価も組織業績を上げるための1つの手段にすぎない。 自学を促す「研修」とするためには、職場からどういう人をどうキャリアデザインしていくかが大切である。職場外研修とその改革は、研修担当者の能力が問われている。 自己啓発研修と呼ばれているものは、高次の自学をしている職員へのサポートとすべきである。 すなわち、これからは、行政研修から行政研究とし、自学をいっそう刺激するものとして、サポートしていくことが大切である。研修を受けさせるという発想からモチベーションを上げる方向が必要なのである。 (概要録以上) ■基調講演全文記録 自治体職員有志の会「シンポジウムin西宮」基調講演録 1.日 時 平成17年8月27日(土)14時30分~15時15分 2.場 所 西宮フレンテホール 3.講 師 稲継裕昭教授(大阪市立大学大学院法学研究科長・法学部長) 4.テーマ 公務員制度改革と人材開発 5.内 容 以下のとおり 皆さんこんにちは。稲継でございます。宜しくお願い致します。 今日、私に与えられたテーマは「公務員制度改革と人材開発」です。お手元の資料の32ページ以降のところにレジュメがあり、概ねこれに沿ってお話をさせて頂きます。 1.公務員「制度」改革 「公務員制度改革」につきましては、皆さん最近何度も何度も聞いておられると思いますが、この「公務員制度改革」はいくつもの誤解があると思います。まず改革というと、郵政の民営化でもそうですが、改革に賛成する者と反対する者が存在する事が普通の改革だと思います。しかし公務員制度改革については誰でも賛成ですので、9.11の総選挙の争点にはなりません。誰でも賛成ですが、賛成の中身がそれぞれ違います。様々なアクターがいて、それぞれの争点毎に改革の推進勢力と抵抗勢力がぶつかり合っている、それが公務員制度改革です。ですから「公務員制度改革にあなた賛成ですか」と聞かれて「反対です」と答える人はおそらく誰も存在しません。そういう意味では非常にミステリアスなワードであり、マジックワードであると私は思っています。 国家公務員制度改革についてまず考えてみると、お手元に多くのアクターをレジュメに書き込んでおります。与党、自民党の行革本部、以前は太田本部長のもとで検討が進められましたが、その後、前総務相である片山虎之助を委員長とする片山委員会ができ、ある程度の方向が出されました。自民党の政務調査会、この中にも財政改革委員会というものが存在し、ここでかなり公務員、特に人件費について相当議論がなされている最中です。それから公明、これは公務員制度改革大綱の閣議決定に賛成した与党の一員ですが、その後に国家公務員の第1次試験合格者数、最終合格者数の4倍という事について、待ったをかけています。 制度官庁はたくさんあります。内閣官房行革事務局、ここは2001年の省庁再編と同時に公務員制度等改革推進室がスタートしました。そこで主に活躍したのは経済産業省の官僚の方々で、むしろ本来の制度官庁である人事院、総務省人事恩給局はどちらかといえば蚊帳の外に置かれていたという事がこのアクターの環境です。 各省の大臣官房、政策官庁と事業官庁では公務員制度改革についてどの様に持っていくかという事について相当異論があります。政策官庁は未来志向でどんどん変えていこうという人材を求めています。しかし事業官庁としては、今抱えている様々な事業を粛々とやっていける人材が欲しいという事です。それに伴って求める人材が異なってきます。また、あるいは現業をたくさん抱えている省の大臣官房秘書課は組合交渉が非常にしんどいので、どちらかと言えば改革勢力に対する抵抗勢力と見られがちです。 職員団体についても一致しているわけではなく、全国組織の連合組織と各省の中央団体、それから各省の出先機関毎のそれぞれの職員団体と非常な戦闘的な組合から非常に温厚な組合まで様々あります。この職員団体はどちらかというと労働基本権の回復を言い、どちらかと言うと天下り批判を展開します。 経済界もやはり天下り批判という点では一致するが、公務員の働き振りについて相当強い注文を付けます。 マスメディアに至っては、天下り批判をするところから様々な人件費の批判をするところ、それから今のシステム自体に問題点を感じているところまで様々です。 有識者もA、B、Cと書いていますがたくさんグループがあり、仰っている方々毎に様々な論点があり、必ずしもかみ合わない議論が展開されています。 制度の改革と言われる訳ですが、今の制度自体が問題であるか、現行法を変える必要性があるのかという議論があります。現行法の枠内で様々な制度、運用改革が出来るのではないかという事が私の持論です。現行制度の特徴についてはレジュメに書いていますが、一番の特徴は「制度趣旨と運用実態の乖離している」という事が日本の公務員制度の特徴です。非常にシニカルな見方かもしれませんが、本来法律で規定されているもの、それから法制度が予定していた趣旨というものを実は実現していません。そうでないところで運用実態があります。法制度外のところで運用実態が変わらなければ結局何も変わらないというのが公務員制度だと思います。 例えば能力実績主義、現行制度を能力、実績に見合った給与に変えなければならないとマスメディアは盛んに書きます。そして現行法を変えなければだめだと言いますが、現行法でも能力実証主義が書かれていますので、能力、実績に基づいた公務員制度にしようと思うと、今の制度趣旨を徹底すればできます。ところが、それは各省の大臣官房秘書課毎にそれぞれ思惑が違い、組合毎に思惑が違うため、なかなか一致した結論となりません。 その他にもクローズドキャリアシステム、遅い選抜システムと積み上げ報奨、労働基本権の制約を書いています。内部昇進が徹底している事が一つの特徴です。同時採用、同時選抜、同時昇進がある一定の年齢まで続く、これは見方を変えれば年功序列という事になるかもしれません。 それから労働基本権が制約されている事は、諸外国から比べれば非常に特異な事例であり、人事院という制度も諸外国の例を見れば、珍しい例です。 こういった特徴がある現行公務員制度ですが、(1)に書いた様に制度と実態が乖離しているのに、制度を変える議論ばかりしている、それで何が変わるのか、私のいつも申し上げている事です。 今次の公務員制度改革を見ていくと、2001年12月に公務員制度改革が閣議決定されました。この閣議決定の中では、「2006年に制度改革を行います、地方もこれに合わせてやります」と書かれています。当時、公務員の間には大きな衝撃が走りました。2001年1月から省庁再編によって、内閣官房行革事務局が発足し、元総理大臣が行革担当大臣になるという異例なことがありました。そして、彼が経済産業省官僚の方々、特にT参事官と新聞でよく書かれた方がタッグを組んで、公務員制度改革をやろうとされました。これが2001年3月の大枠、最終的に12月の閣議決定につながりました。 この一連の流れは90年代の公務員制度改革の流れとかなり違います。90年代にどういう事があったか皆さん思い出して頂きたいと思いますが、制度官庁間の綱引き、人事院と総務庁人事局の綱引きがあり、それに対し各省の大臣官房秘書課から様々な投げかけがありました。 そもそも制度改革のきっかけは1990年代に入ってからの官僚不祥事、特にキャリア官僚、労働事務次官、文部事務次官などキャリア官僚トップが逮捕されるという、想定されていなかった事態が起こったことにありました。従来の日本の公務員制度では、現場の官僚やノンキャリが不祥事を起こすことはあっても、キャリア官僚が将来の天下り、80歳まで面倒見てくれる恩恵を棒に振ってまで、数百万程度の事で妥協するはずがないと誰もが信じきっていました。 ところが90年代に入り、単にリクルートや福祉汚職だけではなく金融不祥事がありました。官庁の中の官庁、大蔵省の不祥事では、非常にいかがわしいところに高級官僚が足繁く通っていたことが明るみに出ました。これはマスコミネタになり、お茶の間のワイドショーに公務員の不祥事が毎日の様に出るようになりました。 この官への信頼低下、それから経済政策の失政、特にバブル崩壊に対する不信(「大蔵省は何をやっていたんだ」との声)、様々な不祥事が、公務員制度「改革」の大合唱へとつながりました。このように、国家公務員制度改革は、外からの改革がその特徴と言えるでしょう。 2.地方公務員「制度」改革 他方、地方を見てみますと、2001年の閣議決定で地方も国に合わせて改革を行う事になり、総務省公務員課で法案を作りました。ただやはりこの地方公務員制度と呼ばれるもの、又は地方公務員法と呼ばれるものも国家公務員と同じように、制度趣旨と運用実態の乖離がありました。これが一番大きな特徴であり、法制度改革といっても「何を変えるの」と聞きたいわけです。 地方公務員の場合は、様々な問題を露呈していた為に、むしろ国より先じて改革が始まっています。国の各省庁に比べて地方自治体の方が、改革の先導役になってきていると思っています。地方の場合は、いわば内からの改革エネルギーが働いています。 様々な問題とは、団塊の世代、これから2007年以降退職を迎える方々ですが、昭和30年代後半から昭和40年代前半に大量採用した集団が、どんどん高齢化していったことがまずあげられます。「管理職になってしまった集団」とあえて言わせて頂きますが、彼らが従来係長になるであろう年齢に係長になれないとすると、これは非常に可哀想な事であるという事から、係長同格ポストの主査を作る、あるいは課長になっていたはずの年齢に課長になっていないとすると可哀想であるとの温情から、人事課は一生懸命様々なポストを作るという、ポストの増設を行ってきました。 それによりある程度の上昇志向なり、モチベーションダウンを避け得てきたのですが、逆に言えばポストの増設によって意思決定が遅延するなどの様々な問題が起きてきました。これは今日お越しの皆様が一番良く実感しておられるところだと思います。 年功序列で管理職に「なってしまった」集団があります。多分牧歌的な地方自治の時代であれば、それでも十分対応できたかもしれません。霞ヶ関で意思決定をし、県庁に下ろし、県庁から市町村に下ろし、その通り実行する。独自の自治体行政であると言いつつも、国の各省庁からの財政誘導があり、そちらにシフトするという事をやってきた時代、あまり考えずに県に聞けば良い、中央省庁に聞けば良いという時代があったかもしれません。しかし90年代以降、自治体を取り巻く大きな嵐が吹き荒れているように私自身感じています。 特に分権改革は93年連立政権誕生以降加速しました。55年体制が崩壊し、従来の中央での意思決定の仕組みが相当変わりました。従来は自民党の政調会と各省との事前折衝で概ね政策が決定されてきた政策決定プロセスがありますが、与党8党の連立政権が誕生し、この様な意思決定システムが相当変わってきました。変わってきたことが良いのか悪いのかという評価はここでは避けます。93年に誕生した細川連立政権の総理大臣は元熊本県知事、内閣官房長官は元滋賀県知事という県の長をやった方々が中央政界のトップとなりました。更にこの時期から地域で生起する様々な問題が起き、特にバブルが崩壊した頃から「どうしてくれるんだ」という対応の必要がある問題が急増し、財政悪化も徐々に見えてきました。92年頃はあまり認識されませんでしたが、94、5年頃から本格的に「どうやらこのままではアカンみたいや」という事が共通認識となりました。 更に、自治体が国より遥かに先んじて始めていたと思いますが、80年代から情報公開がかなり進んでいました。その為に住民からの突き上げを誘う事になりました。特に接待費の公開を求める住民要求に対して、裁判所が次々に公開の判断を下した事で、様々な官官接待が自治体レベルで明らかになってきました。この官官接待が実は自治体を90年代以降大きく変える1つの突き上げ要因となったと思います。この官官接待で明らかになった事は、それまで地方が中央の官僚をもてなし、それで情報を取る事は当たり前であり許される事だという事が地方自治体職員の間に共有されていたということでした。それに対しては、その後マスメディア、住民から様々な批判が出た事で、最終的には「どうやら官官接待はいけない事である」と気づき始めました。更にマスメディアの論調が厳しくなった90年代後半以降相当無くなってきました。 次に「NPMの潮流」と書いています。NPM(New Public Management)ですが、今から10年前、例えば1995年に「NPMをご存知の自治体職員の方おられますか」と聞くと誰も手が挙がらない、しかし今「NPMをご存知ない方は手を挙げて下さい」と聞くとほとんど挙がらない、つまり今ではほとんどの方が「NPM」という言葉を知っています。ところがあまりにも急速に広まりすぎた為に、それについての様々な誤解もたくさんあると私は思っています。この言葉を発明したのは、クリストファー・フッドというイギリスの行政学者でありますが、1990年にこの言葉を出し、欧米諸国では1990年前半にあっという間に広がりました。ところが日本に入ってきたのは、96、7年ぐらいではないかと私は思います。それ以降にようやくこの「NPM」が入ってきましたが、入ったと同時にあっという間に広がり、2001年には経済財政白書に「NPMとは」という解説が出る時代となりました。経済財政白書に出たおかげで、地方自治体は更に大慌てとなり、「これはいかん」という事で誰もが勉強し始めました。ちょうど「NPM」と書いてある本が何冊か本屋に並んでおり、「どうやらこれが正しいNPMだ」と誰もが信じ、一気に数年の間に流されてしまった様に感じます。 少し話がそれますが、上に見てきたような様々な流れの中で、私が是非指摘しておきたい事は、「90年代以降の情報伝達スピードの革命的な発展」です。他の自治体の政策を知り得るスピードと言っても良いかもしれません。従来、80年代までであると、皆さんがどうやって他の自治体の政策を知ったかというと、その自治体にヒアリングに行くか、あるいは何らかの勉強会に出て行って教えてもらうか、あるいはここに書いている様な自治体職員向けの雑誌、「自治実務セミナー」「行政EX」「地方自治職員研修」といった雑誌で知るという事だったと思います。これは後ろの2つ、1番前の本もそうですが、どちらかと言えば昇任試験対策の雑誌であり、「いろんな自治体がこんな事をやっていて、これがこれからの日本を変えていく」という事はほとんど載っていませんでした。「地方公務員法何条に基づくとこうである。○、×」と解説が載っている、これが当時の雑誌でした。ところが90年代後半以降、市販雑誌が相当充実してきました。皆さんも購読しておられると思いますが、「ガバナンス」あるいは従来の「地方自治職員研修」も相当中身を変えてきています。こういった雑誌+総務省が発行している雑誌、「地方財務」や「地方公務員月報」といった雑誌も、実務解説から新たな取り組みを紹介するという方にここ10年変わってきました。こういった情報伝達の媒体があると同時にインターネットの普及というものが、情報伝播の即時性に革命的な進展をもたらしました。住民は他の自治体と比較した場合の遅れを知り自分の住む自治体に直接働きかけたりするようにもなりました。 これがプラスであったのか、マイナスであったのか、これは両方あったかもしれません。NPMの話に戻りますと、現場での大混乱をもたらしました。種々の行財政改革の取り組みをやろうとしている所に「NPM」という言葉が入ってきたために、どこの自治体においても次から次へとNPM型の改革メニューが目白押しとなりました。しかしどうであったか。皆さんの自治体を振り返って頂くと分かりますが、大混乱が起きてしまいました。現場の自治体は大混乱、「事務事業評価システムを入れます」と事務事業評価担当課が全部局に流す、現場では「なんだこれは」「また新しいシステムが増えた」「やり方が分からない」。質問する。「それぞれ考えてやって下さい」、「考えても分からない」という流れを90年代の終わりからどこの自治体でも経験された事だと思います。 改革メニュー「ホッジポッジ」と書いています。これは「ごった煮」と日本語で訳します。おでんの中に色々な具材が入っているイメージです。改革メニューが「ごった煮」されたのが90年代後半以降の事です。カタカナ文字が氾濫する、「PFI」、「BPR」「BS」などのアルファベットスープが並ぶ様な改革メニューが大規模に押し寄せてきました。コンサルタントの方が、商品としての改革プログラムを販売し始めたのも90年代後半からです。特に事務事業評価システムを始めとする、様々な改革プログラムをセットで販売しました。コンサルタント会社は、一番最初に導入しようとする自治体については、まず知識を吸収する為に格安で請け負い、その後同等のパッケージとし他の自治体に販売する事を戦略としていました。 実はこれに対応できなかった現場が多くあったと思います。ある自治体で適用できた事が他の自治体でも適用できるとは限りません。コンサルタント会社としては、改革パッケージとして販売することでコストを抑え、安くおろす事ができますが、それぞれ個別の自治体ごとに作成すると高額となり、入札において負けてしまうので、改革パッケージを売り込む戦略をとりました。そのため現場の自治体が混乱しました。 私は一概にコンサルタント会社を批判しているわけではありませんが、市職員が自ら専門的知識をもって改革プログラムを作るのであれば、コンサルタント会社を利用する事も有効であると考えますが、既存の改革パッケージを買うという行動は絶対に取ってはいけないと思います。 この大改革の波が必ずしもうまくいかなかった理由としては、組織のバリエーションがあり、ある改革がうまくいったからといって別の自治体でもうまくいくとは限らないという事があげられます。そして次にレジュメにも書いているように、時代環境の変化に組織が対応できていなかった事が大きいと思います。なぜならば組織の要、一番の柱である人事制度がそのままであったからです。一番大事なところがそのままで、改革パッケージ、アルファベットスープ、カタカナメニューがどんどん押し寄せたために、90年代以降の自治体の大混乱があるのだと思います。 90年代以降、自治体では様々な対応が必要だったにもかかわらず、十分対応する事が出来なかった事を皆様自身も感じておられると思います。上の方にやる気の無い管理職がたくさん座っていた事も事実でした。その様な中で、「対応できる組織への改革」、「対応できる人材を育成する」必要があると考え、「人事制度に手を付ける必要性」があると私はこのレジュメで結論付けています。 「改革の最大の抵抗勢力は財務課と人事課(のうちの守旧派)」であると書いていますが、これもややシニカルな考え方です。しかしひょっとすると大部分の人は賛成してくれるかもしれません。財務課と人事課は自治体の中で特権階級であると私は思っています。財務課と人事課はものすごく力を持っています。財務課はお金の配分権限、人事課は何か抵抗すると「お前動かすぞ」といったものすごい権限を持っています。私は財務課よりむしろ、人事課の方が持っている権限は大きいと思います。彼らは「エスタブリッシュメント」としての既得ステータスをあまり手放したくはなく、どちらかと言えばあまり面倒な事はしたくありません。従来のままであれば、自分達は役所の中ではずっと陽の当たる道を進み、将来は非常に偉い部長や局長になれるので余分な事はしたくないというのが、一般の人事課あるいは財務課の職員の反応ではないかと思います。改革をしてしまうとそれぞれの権限が少なくなってしまいます。 最近では財務課が枠配分で各所属にお金の配分を行ってもらうようにするところが増えてきました。そうすると財務課の査定権限が消えてしまい、政策配分、つまり留保財源の査定権限のみしか残らない事になり、従来の脅しが通用しなくなります。しかしそれを覚悟の上で、財務課の改革をいろいろな自治体で行っているところです。 人事課は従来、人の配置をする権限、絶大なる権限を持っていました。Aという仕事からBという仕事に移されたら、皆さんにとってものすごく大きな影響があります。「お前の給料を千円上げるぞ、下げるぞ」というよりも、「お前はここの課長であるけれども、今度はここの課長に行ってもらうからな」という方が、その人にとって遥かに大きな影響力があります。実は人事課が持っているその権限が、人事課改革によって制限される恐れがあります。ブラックボックスの中での威嚇効果が無くなる改革を行う事を人事課は恐れ、1つの判断材料にしています。しかしながら90年代以降の自治体改革の中では、「画竜点睛」の人事改革、組織改革に手を付けざるを得ない、やらなければならないと私は思っています。 3.組織・人事制度改革を考える際に考慮すべきいくつかの「ギャップ」 人事改革、組織改革を考える際には、考慮すべきいくつかの「ギャップ」があります。1つは首長と職員との間のギャップ、2つ目は職員と職員との間のギャップ、3つ目は官房系統組織と現場組織との間のギャップです。 首長と職員については、後のディスカッションでのメインの材料ですので、ここではそれほど詳しくは申し上げませんが、首長はやはり政治家です。4年任期で選ばれた政治家です。対して職員は地方公務員法上身分保障され、60歳の定年まで雇用保障されています。その間には当然認識のギャップがあります。 日本の首長のミッションは、イギリスのエージェンシーの長、ニュージーランドの省庁の次官と比べると非常に曖昧です。「住民福祉の向上」、しかしその様なものがたくさん並んでいます。最終的にそれがどのようにどれだけ良くやったかが評価されるか、従来の評価基準によると選挙に通るかどうか、信任されるかどうかであったと思います、しかし再選されるかどうかという事はアウトカム要素がたくさんあります。首長の権限範囲外の事件事故が起こったり、国の政策変更があったりしても選挙結果に影響があります。4年間一生懸命やってきてものすごく成果が上がっているのに、吉本興業の人気タレントがボンと出てきてそちらが勝ってしまう事があります。首長にすれば「一生懸命やってきたのになぜ住民は理解してくれないのか」という事になりますが、大規模な自治体になればなるほど住民は非常に冷ややかです。不確定な外部要因があまりにも多いという事が、従来の首長の仕事の特徴であるともいえます。さらに、首長にとっては任期の4年間でどれだけ自分の政策を実現できるかを考えます。2-3年を単位として改革を目指すことも多いでしょう。しかし当選した当初の1年は既に予算が走り始めており大きな改革は出来ませんし、翌年度の予算編成もある程度終わっている時期に首長になるという事もあるかもしれません。そうなると従来の予算、人事をそのまま引き継ぐ形で首長にならざるを得ないという制度上、1つのネックがあります。 これに対し、職員にとっては定年まで勤める事ができるという非常に長いスパンの自分自身の生活、自分自身の人生、自分自身のライフデザイン、キャリアデザインがあります。これが良い事か、悪い事かとは言いませんが、この様な状況の中で、「変革、変革」と盛んに口にする首長が出てきた場合に、どの様に反応するかというと、様々な反応があるでしょう。多くの改革派首長と言われる方々、古い土地柄の首長と話をしてみると、「職員は面従腹背なんですよ」と言われます。特に「管理職レベルの上の方の職員は、4年の任期が過ぎるのをじっと待っており、その間に降格されない様に一生懸命持ちこたえているのが従来の職員のスタンスである」と答えた首長がたくさんおられます。 首長は普段、非常に高度で極めて上質な情報に日々接しています。また首長同士の意見交換や他団体との比較、クリアにされた財政データに接しており、日々変革の必要性を実感しています。しかし従来の人事、組織、予算を引きずってやらざるを得ず、職員は面従腹背です。これを打開していく必要がありますが、その方法としては後で議論になると思いますが、ミッションを示し、目標を示し、それを更にグループの目標に下していくというカスケードダウンに取り組む必要があります。また人事制度を改革して変革の必要性を実感できる職員、目標を共有できる職員を育成する必要があると思います。 2つ目の職員と職員とのギャップについてですが、団塊以前と団塊世代、団塊と団塊より若い世代との間のギャップです。先ほど20世紀型公務員と21世紀型公務員という分け方もありました。様々な職員同士の間のギャップがあると思います。「考える職員」と「作業しているだけの職員」、「作業効率が良くて時間内に終了する職員」と「作業効率が悪くて残業手当がもらえる職員」という様に、様々職員の間にギャップがあります。一般評価として「自治体職員は能力が無い」という評価がある一方で、「自治体職員は極めて優秀である」という評価もあります。私はどちらも正しいと思います。特に昭和40年代前半までは、「でもしか公務員」が入っていた事が比較的多くありました。30年代、40年代前半まで多かったと思います。しかしオイルショック以降、それは急変しました。民間企業への就職が非常に狭き門となり、非常に優秀な方々が自治体に入ってきた事で、若手のところで自治体のポテンシャルがぐっと上がりました。ところが現場に入ってみると「こんなはずではなかった」と彼らは感じました。上司の課長、係長に全然やる気が無い職員があまりにも多いために、彼らのモチベーションが低下していくという事が40年代後半から50年代に起きました。 「優秀な職員」の意味は、組織により時代により可変的です。道路公団の橋梁談合と書いていますが、道路公団の中においてはどれだけ天下り先を確保できるかという事が、優秀な理事の1つのファクターであったかもしれません。これは今、マスコミの批判にさらされているところです。 私は「組織のミッションを遂行するに足る職員」が優秀な職員であると思いますが、これは必ずしも頭脳明晰、成績優秀ではなく、また「改革、改革」と連呼する職員でもないと思います。日々の職務を十分にこなしながら、しかし変革しなければならない事に気づき、そこに手を付けていく事が必要なのではないでしょうか。つまり従来の職務遂行能力、対人能力と言われたその能力をベースに持ちつつ、最近の自治体職員に求められている、いわゆる問題解決能力、課題解決能力も併せて身に付けていく事が必要となってくると思います。その後者の方だけ、つまり改革が必要であるという事を連呼するだけの職員であれば、私はむしろ組織にとってマイナスになる可能性があります。そういう異端児が居ても良いのかもしれませんが、それは従来の職務を粛々と行っている職員にとってみれば目障りなものでしかないかもしれません。そのギャップをどの様に解決したら良いかについては、私自身まだ良く分かっていませんが、改革連呼の職員と従来の職務を割りと淡々と行っている職員のどちらを重視すべきかという事は、非常に難しい事であると思います。要はどちらでも出来る職員になれるに越した事はないと思います。 3つ目は官房系統組織と現場組織と書いています。人事、財務、企画は間接部門でありますが、この官房系統組織の意識改革が不可欠です。「我々はサポート組織である」という意識を人事や財務が持てるようになると、その組織はかなり変わってくるのではないかと思います。「建制順の変更の提唱」と書いています。建制順というのは、もともと軍隊の編成方針のことですが、転じて政府公報の優先順位を意味します。中央省庁の建制順は、2001年の省庁再編で大きく変わり、従来は一番下位であった郵政省や自治省がトップである内閣府の次に位置づけられました。総務省は「我々は偉くなった」と言っておりますが、国民にとってはどうでもいい事が、官僚組織の中では非常に重要な順番であったりします。 県庁でも市役所でも建制順で言えば、一番上に総務部があり、その中に人事課があるという事が多くあります。上にあるので、総務部人事課は威信をもって仕事をしているのかも知れませんが、本来、サポート組織であるので、一番下にもってきて、上の方に事業部局があるのが当然であると考える事も出来ます。 これは佐賀県庁が昨年の4月から始めていますが、経営支援本部という事で、サポート部門を建制順で一番下にもってくる大改革を行いました。これにより人事課職員の意識改革も相当進むに違いないと考えました。 4.人材育成・人材開発の方向性 最後のページに移ります。今申し上げた様なギャップの解消、自治体の組織改革を進める事がネクストステージであり、自治体改革の最後の一歩であると思います。ではどの様に人材開発をするのか、自治体の人事担当部局の方と話をしてみると、「人材開発、人材育成は研修所の仕事ですよ」と答えられる方がまだおられます(私はほぼいないと思っていましたが)。ところが、「研修所の研修で果たしてそれで人が育つのですか」という職員アンケートを取ると、イエスはだいたい10%を切ります。「では皆さんはどういう時に成長しましたか」と聞くと、「新しい仕事を任せられ、この1年間でものすごく成長した」との答えが多く返ってきます。「視察や合同研修で他の組織の人と接触して認識を深めたとき」「仕事を達成して上司や同僚からほめられたとき」といったものがそれに続きます。人事部と職員の認識には大きなギャップがあります。 「研修所で大学の稲継教授の話を聞いて成長しましたか」と聞いても、「はい」と回答する事はまずありません。その様な事で成長するはずがありません。現場で仕事をしながら覚え、工夫を考え、責任を任されて初めて成長していきます。人が伸びることの基本は「自学」であり、その刺激が人材育成の鍵なのです。 ここを強調させていただきますが、「人は自学で育つ」。これは、研修所研修を何十回も受講した私自身が思います。私は何も、研修所研修がまったく不要だと言っている訳ではありません。自学を刺激する、自学を側面からサポートする研修所研修が必要となってくると思います。 自学を刺激するためには、人事管理と人材育成の連携が必要です。 従来型で言うと職場外研修(研修所研修)プラス自己啓発研修(自己啓発の2分の1補助)、そしてシステム化されていない職場研修がセットになって、人材育成基本方針や職員研修基本方針を作成されている自治体が多いと思います。これを、人事諸制度の工夫、職場研修、プラス、職場外研修に展開していく必要があります。 「人はどういうところに育つのか」を考えた時に、人事の諸制度に手を付けて、ジョブローテンションや仕事の与え方の仕組みをまず考えた上で、職場研修(OJT)をシステム化し、更にそれらを補助するものとして職場外研修を組み合わせていく事が、人材開発にとって非常に重要であると考えています。 人事評価制度につきましては、先ほど小堀さんより岸和田市の紹介がありました。自治体の勤務評定につきましては、地方公務員法上行わなければならないのですが、実際に行っている自治体は50%未満です。法律で行わなければならないと書かれているにも関わらず、ほとんどの自治体で行われていない理由は、やはり従来の勤務評定制度に対し非常にアレルギーがあるからです。これは昭和25年に人事院方式というものが開発され、「この人の性格は温厚」などの項目がある人事院の評定方式を各省庁が昭和30年代に入って使い始めました。自治体においてもこの人事院方式を真似したところが多くありました。しかし果たしてこれで公平な人事評価が出来るのか、勤勉手当に差をつけることができるのかと思えるようなお粗末な評価シートも多くあり、それに基づく人事評価制度が行われていました。 実際の問題として、昭和32、33年に「教員勤評闘争」という非常に大掛かりな闘争がありました。これは愛媛県の教育委員会で定昇を3割ストップしなければ財政が持たないという状況が明らかになり、勤評を入れ、現場の校長が勤評を行い、それに基づき3割の人の定期昇給をストップするという事でした。これについては相当な反発が起こりましたが、文部省は「これは使える」と全国的なレベルでこれを広げていこうと考えましたので、全国的な反対闘争が起こりました。現場で評価を強いられた校長の自殺が、昭和32、33年にかなりの数に上りました。自治体職員、教育委員会にとっては非常に不幸な歴史を背負っています。この勤評闘争という大きなトラウマがあるために、勤務評定に対し、自治体の職員、人事課、職員組合に非常に大きなアレルギーがあります。 しかし人事評価の目的をもう一度考えてみると、人事評価の目的と役割は、「職員の今の状態を、知り、評価し、それに基づき政策を立てて実施する」という事が一つ、それから「職員の行動を変える、行動規範の提示」すなわち、評価は期待の表明であり、期待する人材を指示するという事が評価のもう一つの役割です。人事評価をする事によって職員の能力を向上させることは、住民サービスの向上にも繋がります。人事評価も組織業績をあげるための手段であり、組織のパフォーマンスを上げるための一つの手段に過ぎません。給与に差を付けるか否かは、実は住民にとってどうでもよい事です。住民は、一人ひとりの職員が住民のために適切なコストで一生懸命働いてくれることを望んでいます。人事評価はそれを担う一つのツールに過ぎません。その事から考えると、給与や昇任に結びつけるか否かという議論はどちらかというと二次的な議論になってしまいます。 最後になりますが「自学で人は育つ」と申し上げました。自学を促す研修とするために、やはり研修は職場であり、どういう仕事をその人に割り当てるのか、どういうキャリアデザインでそれをジョブローテションしていくのかという事がまず一番重要な事だと思います。また職場外研修とその改革ですが、職員研修所が不要であるという事では全くないと思います。しかし従来の様な「入って何年目にこの研修を全員が一斉に受けましょう」などの研修メニューでいいのでしょうか。それで人材を育成する事になっていますでしょうかという事です。例えばジョブローテションと組み合わせて、この職場に行った場合にはこういう研修を受けるセットメニューで考える、それぞれの必要に応じてカフェテリアメニューで研修を選ぶ事が出来る様にしていく事も考えていく必要があり、研修担当者の能力が問われていると思います。 それから自己啓発研修で問われているもの、従来2分の1に費用の補助がほとんど唯一のものでありましたが、もっと高次なもの、つまり自学をしている職員に様々なサポートをしてあげるという事をこれから役所として考えていく必要があるのではないかと考えます。 一番最後に書いておりますが行政研修という考え方から、むしろ研修を受けさせるのではなく、自学で人は育っていくのでそれをサポートする為のいろいろな仕組みを作る、自学をしようとして行政を研究する職員を様々にサポートするという事がこれから必要になってきます。小堀さんの話の引用になりますが、「誉められる、認められる、達成感が与えられる」、「自分はこういう研究を行った、こういう成果を上げた」という事が、非常に大きなモチベーションに繋がっていくのではないかと思います。 時間が参りましたので私の話は以上で終わります。ご静聴ありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/career_design/pages/47.html
「自治体職員有志の会」規約 1 主 旨 自治体職員有志の会(以下「この会」という。)は、次に掲げる主旨で運営するものとする。 (1) 自治体職員が自らの所属や立場を離れて、自治体のあり方や職員の能力向上について自由に議論する。 (2) メンバー同士、意見が違ってもお互いに尊重する。 (3) 何らの政治性を帯びるものではなく、特定の自治体や首長を支持したり、批判する場にしない。 2 目 的 この会は、心から誇りを持つことができる新たなワークスタイル、自立した高い志をもつ職員になるための職場環境のあり方などを検討するため、次に掲げる場において議論し、行動し、情報共有することを目的とする。 (1) メーリング・リスト(以下「ML」という)というネット上で随時、議論する。 (2) 1年に3~4回の割合で、首長などを講師に迎えての講演会と共に開催するオフ会というフェイス・ツー・フェイスの 場で議論をする (3) 議論をした成果については、それぞれの会員が所属の組織への政策提案などの形で活かすように努める。 (4) 議論の経過については、会員以外の自治体職員と情報共有を図るため、会のホームページなどで公表する。 3 入会資格 この会には、自治体関係者が入会できるものとし、自治体関係者でない民間企業の方やコンサルタント、シンクタンク、学識者の方については、会員としては入会できない。 (1) 自治体職員は、氏名、所属、自己紹介を事務局に連絡することで入会できる。 (2) 地方議会議員と任期付き職員の方については、現に入会している職員の紹介があれば入会できる。 (3) 入会資格がない学識者、民間企業、コンサルタント・シンクタンクやNPOの方については、オフ会やMLで会員の了解を得れば、アドバイザーや顧問として参加を求めることができる。 (4) 講演会等でお世話になった自治体首長については、本人の了解があれば、当会顧問に就任いただくことができる。 4 議論の方法 MLやオフ会の場を問わず、議論する場合は相手の誹謗中傷につながる表現にならないように留意するものとする。 (1) この会のMLの管理人は、誹謗中傷の恐れのある発言については、当該発言者に注意を促すことができるものとする。 (2) ML及びオフ会の場での発言を別の場所で引用することは自由であるが、匿名扱いにすること。実名にする場合は、当人の了解を得てからにすること。 5 世話人 過半数のメンバーの同意により、メンバーの中から当会の世話人を選任する。各世話人と役割は以下のとおりである。なお、選任は「オフ会」で行い、任期は次期「オフ会」までとする。 (1) 広報担当世話人:報道用資料の作成、報道機関への対応 (2) ホームページ担当世話人:ホームページの編集内容について総括管理を行う (3) メーリングリスト担当世話人:MLの運営について総括管理を行う (4) 講演会&オフ会担当世話人:次期オフ会等の企画・募集・運営を行う 6 事務局 過半数のメンバーの同意により、メンバーの中から当会の事務局を務める者を指名する。事務局以外の会員は、必要に応じてサポートするものとし、事務局も必要に応じてサポートする者を指名することができるものとする。また、事務局の役割として、「当会の運営事項、講演会など催しなどの事務連絡」「当会ホームページ及びメーリングリストの管理・運営」「その他当会運営上必要なこと」とする。 7 その他 この取り決めの改廃については、会員から事務局へ提案し、それをオフ会の場などで会員に諮るものとする。 8 運用開始 この取り決めは、平成15年8月29日から運用する。
https://w.atwiki.jp/career_design/pages/4.html
自治体職員有志の会オフィシャルページ 自治体職員有志の会Yahoo Groups(要登録)
https://w.atwiki.jp/earthquakematome/pages/255.html
ページ最終更新日時:2011/03/24 12 29 59 アクセス人数 - 人 本日 - 人 自治体によっては、住宅、生活資金、体・メンタルの健康や教育など総合的な支援体制で被災者をバックアップするところもあります。 その他の被災者受け入れ情報 一時避難場所住宅提供各地市町村都道府県・政令指定都市学生・児童の受け入れ被災児童・学生の転入についての自治体のページまとめ透析患者を受け入れる自治体の情報まとめ 目次: 北海道 東北 中部・北陸 近畿 中国・四国 九州 北海道 北海道 北海道 道外被災者の方々の受入れに関する住宅・教育等生活全般の各種相談を一元的にお受けします 東北 秋田 大仙市 避難者サポートセンター開設 親類縁者の有無にかかわらずサポートします 中部・北陸 福井 福井県 本県への移住についての総合的な相談窓口を開設 勝山市 災害被災者移住等相談窓口の開設について 近畿 大阪 大阪府 「被災者生活相談窓口」のご案内 中国・四国 島根 島根県 東北地方太平洋沖地震による被災者の方々の受け入れに関するご相談 (参考 東日本大震災・島根県が被災者受け入れで生活費支給 山陰中央日報 (3月19日) 高知 高知県 被災者の方々の高知県への受け入れについて 九州 長崎 長崎県 東北地方太平洋沖地震の被災地に対する支援について(参考 長崎県 避難経費すべて負担 被災者支援策 西日本新聞(3月23日 00 12))
https://w.atwiki.jp/jlgc/pages/56.html
基礎情報 中央政府の構造 英国議会の現状 サッチャー政権からブラウン政権までの経緯 EU憲法 ・ユーロ参加動向 地方自治体の法律上の位置づけ パートナーシップを活用した中央政府と地方自治体の新たな関係
https://w.atwiki.jp/career_design/pages/39.html
第7回オフ会 日 時 2005年5月20日(金) 15:00 ジョン万次郎研究家・永國淳哉氏講演「土佐のスピリット」 16:00 橋本知事との意見交換 会 場 : 龍馬の生まれた街記念館(高知市上町2-6-33) 1.意見交換会概要 2.オフ会案内文 自治体職員有志の会 高知オフ会~橋本知事との意見交換会 <司会> ■ 会を代表した挨拶(事務局) 今回が第7回目となる。これまで自治体トップと意見交換をしてきたが、とても貴重な場だった。雑誌の記事投稿もやった。仕事への反映もそれぞれ行っている。2年前、橋本知事との出会いがきっかけとなって会ができた。今日は人事、自治体改革のありかたを意見交換していきたいと思っている。積み上げではなく未来からの発想で自由な意見交換できればと思う。 ■ 知事からひとこと 会のことは夕部さん等から聞いていた。たいへん心強い。今日は楽しみであるし、怖い感じもある。一問一答となっているが、質問する際には自分の意見や主旨、アイディアもあわせて話してほしい。 ====知事との意見交換===== ■ はじめに 1 知事としての実感 (1)NHKにおられときにもった行政へのイメージと知事として携わる行政とはどのような点を感じているか。 (2)NHKにおられるときと、知事になられてからと、自分の変わったところ、変えていないところを教えてほしい。(例えば信念とか生活のリズムとか) 【橋本知事】 知事になってもう14年目になる。知事になった当時、よく聞かれた質問は記者と知事との仕事の違いというものだった。私は記者時代、社会部の所属で、世の中の森羅万象を相手にしていたが、知事も同じ。とまどいはなかった。仕事の仕方についても、記者は情報を整理して記事にするが、知事もいろいろな情報をもとに事業や政策を実行し、説明責任を果たしていくということで、同じである。記者として培った能力が生かせる。マスコミがもっと行政に進出してほしいと自分の経験から思う。 記者時代と今との役所の仕事に対して感じる点の違いだが、役所仕事の徹底ぶりに感心する。前例踏襲。また、公平平等ということに対して気を使いすぎている。もっと柔軟に時代の変化にあわせていければと考えており、意識改革の中でもこの点を言い続けている。 仕事に対する信念と考え方は記者時代と同じ融通無碍。何事にも柔軟に対応していこうと記者時代から思っていたし、今も同様である。 ■ 自治体のあり方について 2 県のあり方 より住民と密接に関わる市町村への権限の移譲が進み、市町村の役割が大きくなっているが、地方分権の時代に県が果たすべき役割はどのようなことだと考えているか。県の仕事で私が思い浮かぶのは教育と警察くらいしかない。これからの時代、県の役割としては自治が組めない地域への行政サービスの提供や広域での調整業務が主になると私は思うが、その点についてどのように考えるか。 【橋本知事】 県の役割は自治体によって違うと思う。高知県の場合、合併によって市町村数35になるが、それでも人口1万人未満の市町村が19残る。こうした中では地方分権における役割が大きくというより、負担の方が大きくなるといった面があると思う。一般論としての県の役割はなかなか言えなくなっている。それぞれの自治体の体力によっても違うので、理想がなかなかかかげられないが、小さい自治体の広域的な仕事を代わりに担ったり、そうした自治体がやっていけるような連合体をつくるお世話をしたりといったことはあると思う。将来的なことを言えば、基礎自治体が強くなれば県は必要なくなる時代はくるとは思うが、5年10年くらい先ではまだまだだろう。 3 分権と合併 平成の大合併に際して地方分権との兼ね合いから、知事はどのように考えているか。高知の馬路村は合併しない宣言をされている。率直なところ知事はどう感じているか。 馬路村は強い意志を持っているのはネットで調べて感じたが、人口も減少しており、財政的に実際にやっていけるとは思わないが。 【橋本知事】 率直なところ馬路村はすばらしいと思う。自分たちで頑張れるところまで頑張ってみるという自治体が望ましいと思っている。地方分権は行政の中での権限の移譲、配分である。自治ということからいえば、将来の地域の人が自ら判断することが重要であり、それは合併も同じ。国や県が強制するものではない。ただ、ここまで財政状況が厳しくなると国の意図として合併をさせようという強い意思が働いている。なので、地域の思いは評価しながらも、自治体経営の規模を大きくするという合併は選択肢としてはありうるだろう。馬路村のような強い意思があればいいが、そうでなければ一緒になった方が安全だろうという気持ちはあるので、合併は有力な選択肢であるという説明はしてきたところである。合併せずに残ったところは独立宣言したところか合併相手がないところであった。そういう中なので県の役割は揺れ動いている。 実際の馬路村にいくと、人口減少という雰囲気はない。どうなっても続いていけるだろう。人口が1000人になったところがいくつかの自治体と合併して8000になってもいかがなものか、とは思う。規模のメリットを想定して合併特例法はあるので、小さな町村では生かせないだろうと思われるが、結構やっていけると感じているし、期待ももっている。 4 道州制 今後、地方制度の第二幕として道州制などが考えられている。たとえば、四国州として、四国が一体となって行政を行うことが考えられている。しかし、目的やビジョンなく単なる数字合わせの道州制ではいけないと思う。たとえば、瀬戸内海という資源を活かすという目的では、環瀬戸内海州というのもあると考える。そこで、四国州となったとき、もし知事が州知事になるとしたら、その四国が一体となるビジョン、目的を聞きたい。知事個人としての発言でかまわないのでお聞かせ願いたい。四国を初めて統一したのは確か長曾我部氏なので高知県知事にお聞きすることは相応しいとい思う。 【橋本知事】 四国州ということに夢を持っての質問だとは思うが、道州制にはよく注意しなければいけない。市町村合併の議論にしても地域から出てきた議論ではなく、国の意思で進んできたものである。道州制にしても、以前、平松大分県知事が言っておられた頃は、地方分権の受け皿になる基盤にあるものをつくっていこうという、地方から出てきた議論であったはずなのだが、地方制度調査会等で議論されている道州制の方向は、国と地方の権限の関係を将来に向けて続けていくためにでてきたものであると思っている。なので、あまり現状の中で制度の未来を語ってしまうことは危険が多い。そのような議論にのるのではなくて、地方から議論をしていこうという意志をもって進めていくことが大事なのだが、地方にそれだけの議論をする余裕がないのが心配だ。 中四国一緒ならそれにこしたことはないが、海も隔てており難しいだろう。四国は風土が違うからこそいいので、四国というブロックでの取り組みはやりやすいと考える。愛媛県知事との話で、防災関係の指示を高知県から一本化したら、という話もあったし、ソフトの面でもいろいろとできることはある。そのような取り組みが大事であって、今の制度の議論に乗ってしまった議論は追い込まれると思う。 ■ 改革について 5 改革の取組の考え方とその方法論 いわゆる改革派知事のさきがけとして、宮城県の浅野知事とともに全国の都道府県をリードされていることに敬意を表する。 行政経営品質の導入やコンピテンシー等県政の改革ツールや職員のキャリアデザインの取組について全国の自治体に先駆けて導入されているが、なかなか浸透していかず、一部を除いて組合的思考を常としている職員や議会からは賛同を得られていない状況と推測する。他の自治体や民間企業でも見受けられることと思うが、今後の戦略としてこの状況をブレークスルーするためにどのようなことが必要で、どういったことを考えているのかお聞かせ願いたい。人はディスカウント(けなすこと)では動かず、ストローク(ほめること)が大事だと言われるが、時にはスピードを重んじ、改善ではない痛みを伴う荒療治も必要だと感じている。 【橋本知事】 結論からいうと戦略はもっていない(笑)。組合との問題は荒療治で変えていくということで、ある程度できたのではないかと思う。ただし、職員の意識を変えたり、また能力開発などは同じような荒療治でやっていくことは難しい。まだ、能力開発の研修はこちらが自信をもてるようになれば、ある程度強制的に受けさせて人事登用につなげていけるが、経営品質は意識を変えるということなので、そういうことにはならない。行政の中の経営品質というのは陳情の処理量を5件から10件にする、というようなことではなくて、県民の思いに添って物事を考えていく、創意工夫をしよう、というものの考え方なので、取組はなかなか難しい。2:6:2でいえば上の2の人をどんどん使っていろいろな仕事をしてもらうことで、仕事の仕方をみて皆が学ぶということを待つしかないと思っている。 6 アウトソーシング アウトソーシングの対象業務に関心がある。もし、自治体の「内向き志向」「身内主義」を徹底的に排するならば、その温床となっている人事、給与、総務、庶務事務等の分野を率先してアウトソーシングして、間接分野の大胆なリストラと、トップ直属のリーダーシップが現場と直結する仕組みが必要と思っている。 また、NPOによる行政委託の批判(体のよい下請け・安請け)があるが、セクター間のパートナーシップを推進するという視点からも、間接部門を温存せず、部門ごと丸ごとアウトソーシングすることが必要と考える。 アウトソーシング推進に関する知事のねらいと、内向き志向を破壊するという視点で、まずは中枢部門である間接業務を率先して戦略的にアウトソーシングしていくことについての知事の考えをお聞きしたい。 【橋本知事】 結論からいえば大賛成だし、アウトソーシングはそうあるべきだと思う。アウトソーシングには財政の厳しさ、公務員への目の厳しさなどが背景にあるが、「仕事をもっと楽しくしていくためにアウトソーシングをしていく」というのが職員向けの切り口だろうと思う。書類づくりばかりしていても楽しくない。そんなことではなくて、そのような事は外部に任せて、本来自分たちがやらなければいけないことをやっていくことが大事だ。仕事そのものをもっと楽しくし、休みの日は家族で過ごしていくためのひとつのツールとしてアウトソーシングがある。 そのためには行政が担わなければいけないコンピテンシーにあたる事業はなにか、ということが重要になる。県庁にはいろいろな事業はあるが、それを1件ずつ縦でみていけばNPOの話にあったような業務の委託になってしまう。そうではなくて、仕事を横でみていくことが大事だ。間接業務である庶務や総務なども一括して任せるという方法をとることによって30~50%のアウトソーシングが可能になる。30~50%のアウトソーシングをしていくということには、仕事の仕方そのものを変えていくのだ、という趣旨がそこにはある。 人事、総務、財政のアウトソーシングも大賛成だ。人事等の仕事を出していくのは,職員全体にショックを与える意味でも大切なことだ。こうしたことができるんだ、ということが、自分たちの仕事を大きく見直していこうというきっかけにつながる。総体として間接業務を出していくことが重要だ。 NPOとの関わり、協同の仕組みであるが、企画の段階からNPOに参画してもらって、任せていき、企画から実施までやってもらうという協働関係を築いていくことが重要である。役所がきめてその事務を委託することではNPOは育たない。 7 これまでを踏まえての質疑 ○ 有志の会メンバー 私は風土改革に興味ある。北川知事もそうであったように、改革するときトップに共感してついていく職員がどれだけいるかが大事と思う。 そこでズバリ聞きたいが、県庁職員の方で自分に共感してついてこようという職員は何人くらいいるか。 【橋本知事】 おそらく10人はいるだろうが(笑)、全体で何人かというのはなかなか分からない。先ほど2:6:2の話があったが、上の2割がそのような意識になって動いていければいいと思う。あとの6と2は足さえ引っ張らずに黙ってくれたら十分だ。 高知県も徐々にではあるがそのようになってきているとは思うが、職員の方としてはいかがですか? ○ メンバー 徐々に増えていると思います(笑)。 職員は部局長についていくこととなるが、部局長が戦略をしっかりと把握しているかが大事である。部局長の戦略を確かめようという思いは持っているか。 【橋本知事】 以前、部局長や課長に自分の持ち場の経営方針がわかっているか、県の経営方針がわかっているか、と聞いたら、わかっていると答えた人は一人もいなかった。実体的にはそうなのだろう。せっかくみんなでつくった方針なので、ことばだけでも頭の中にいれることが必要だと思う。 経営品質ということでは、何年か前に部局長ととまりこみの研修をやったが、最近やっていないので、またやりたいと思う。 ○ メンバー 職員の意識をかえる、風土をかえることがほんとにできるのかと私は考えている。長野県の場合、昔は外からのやっかい事を部局長にかからないようにする職員が有能だと考えられていたが、今はやっかい事があれば、指示があったらやるといった感じになった。知事が変わって始めた電話で名前を名乗ることも、名乗る人も名乗らない人もいる。 そういった事を考えると、ほんとに意識が変わるのかと思う。疑うことも大事だと思うのだが、知事はどう考えるか。 【橋本知事】 結論からいうと私も疑いながらやっているが、確実に変わっているという実感はある。しかし、一方でやっていることをやめたらまた元に戻るのではという不安はある。不安を感じながらでもやらなければいけないということだろう。県民から提案を受けても、結局要望、陳情ばかりというのも事実だが、そういった方々と接しないまま終わるのではなくて、会話やコミュニケーションがあれば県民の考え方の質も高まってくると思う。会話の中でその内容が本当の思いつきなのか、それとも県の政策を知らないからなのか、といったことが分かるし、もし県の説明不足ということであればその対策をとることができる。県民との会話やコミュニケーションといった場がないままで県庁の意識だけをかえてもだめである。 ○ メンバー 2007年問題から、相当の公務員が退職すると言われているが、退職された人は自治体のサポーターになっていくのではないかと思う。そのため、退職者を対象に地元の帰るトレーニングをやればいいかと思っているが、知事はどう考えるか。 【橋本知事】 トレーニングで何ができるかということはあるが、そういった方々は強い力になると思う。そのための仕掛けはとても大切だろう。昔は公務員が退職するとややこしい人になるというのが常だったが、そういった方々が活動していけば大きな力になるに違いない。住民力を活用すればコミュニティが崩壊しないし、新しい公共サービスも生まれる。とても重要だ。 だけど、どんなトレーニングをやればいいだろうか? → (メンバー) 私が言ったことは、「あきらめの壁をぶちやぶった人々」を書いた中尾英司さんが提案されたもの。退職の数年前に、職場の洗脳をとくプログラムをすると、地域が豊かになるし、行政にとってもいいというものである。とても大事なことと思う。 →(橋本知事) 洗脳がとければいいが(笑)。ぜひ読んでみよう。 ○ メンバー 私が市長だったら、職員の長所や家族構成等までも掌握して組織をつくっていきたいと思うが、知事はどの程度の職員を掌握しているか。 また、太平洋側からの高速道路の考えについてお伺いしたい 【橋本知事】 一般の知事より職員はよく知っていると思う。職員提案やメールなどで知ることができる。 徳島からの高速道路は地域高規格道路として計画がある。かなり自己負担が多いので見通しはたっていない。 →(メンバー) 私の首長は知事のように立派ではない。どのような志をもって仕事をしていけばいいのか。 →(橋本知事) 上の人がどうであれ、市民との関係をつくっていって、ムーブメント(社会を変えていく動き)をつくるという仕事をしていくことにつきる。上司は関係ない。それらは割り切ってやっていけるはずだ。 ■人事等について 8 人事管理、給与関係 多くの自治体では「わたり」の改革が困難な中で、高知県では平成8年にわたりを廃止されたが、その時に職員組合との抵抗に対してどのように対抗したのか。またその時の改革に対する知事の信念と考え方と、改革成功のポイントをどのように考えているか、教えて頂きたい。 【橋本知事】 わたりに限らず、組合とはいろいろなことで対立した。私が知事になった頃は人事を発表する前に組合三役に見せて了解をもらうといったこともあったが、それをやめることから始まった。やみ専従もあったが、税金の二重取りだからおかしいのでは、と説明して組合からやめてもらった。 わたりについても、本来そういうことはおかしいでしょう?につきる。わたりは職員の向上心や責任感も不明確になり、県民サービスも向上しないので、そういった弊害をいろいろな場で説明してきた。粘り強く話しをしていって実現したと思う。 その実現は県民の支持があったからできたのだと思う。知事選挙についても2度目から組合は対立候補を応援している。そういう中で自分が選挙に勝ったから実現できた、ということもあるだろう。そのような構図の中で勝てなければ、実現は難しかったと思う。わたり等の問題は公務員制度問題の根源であるので、多くの県民に知っていただき問題意識をもってもらうことがポイントだ。 9 人事 知事の立場での人事評価や人事異動について伺いたい。幹部職員については指導力や能力等をきちんと把握して異動していかないと、全く逆の人間が配置された場合には若手職員に大きな影響を与える場合もある。知事の目の届く範囲はどのクラスまでか、また留意されている点、実際の手続きはどのようにしているか。 【橋本知事】 事務方のつくった人事異動案に抵抗はない。また、議会からの口ききも受け付けていない。副知事の人事においては、同意したからといって議会はから平気で部局長人事の指名がきたことがあるが、議会体質は変わっていないな、と思った。 異動に際しては課長までは私が一人ずつ見ながらやる。班長については人事担当が異動表をつくるので、それをもとに説明を受け、気づいたところは意見を言っている。人事は知事が一方的な思いでやるべきではなくて、毎日の積み重ねの中で情報を持っている担当とやりとりしながら決めていくことが望ましい。 評価基準は県民の視点と改革の視点があるか、ということだ。それが日々の評価に生かせればいいし、コンピテンシー型能力研修に組み合わせていかしていければいいと思っている。コンピテンシーは課長や部長といった階層型ではなくて、仮に福祉なら福祉の分野での必要なメニューを提示して、能力をつけてもらうといったことが理想だろう。そうすればきちんと意識と能力をもった職員が配置できる。 抜擢登用がいいということではないが、専門性をもった人をきちんと配属されることが大事。今の農林部長は課長から部長になった。その職員は若い頃から園芸に携わった人物で専門性も高いので、県庁の中でもなぜあいつが、ということにはなっていないと思う。 ■ 最後に知事から 改革をめざすということは片意地張ることではない。今日集まった皆さんは改革の意識をもった人だと思うが、多分職場では浮いていたり、また皆さんを変わり者と思っている自治体が多いと思う。そのためには仲間を増やしていくのが大事だ。 ただし、問題なのは、改革の意識を持ち、改革を目指す人は思いや流儀があるので、お互いの仲が良くなくて仲間割れが起こる可能性があるということ。反面、2:6:2でいえば、後ろの6や2は一体感がある。なので、上の2が改革思考であれば、あまり手法等で喧嘩をせずに、小異を捨てて大同につく思いでやってくれればやりやすいと思う。議論は必要だが、最初のところではぐっと飲みこんで一緒にやっていけば強い力になるだろう。 第7回オフ会案内文 「全国自治体職員有志の会」高知オフ会のご案内   「モノ言わぬ公務員」から「良いことを言い実行する公務員」 への脱皮を目指す全国の自治体職員 VS. 橋本大二郎高知県知事 (永國淳哉氏講演含) 自治体及び自治体職員を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。自治体職員も住民から支持されることはもとより、さらに「なりたい自治体」「やりたい仕事」「なりたい自治体職員」を自らキャリアデザインすることが必要な時代となりました。この共通した課題を考えていくために全国の自治体職員有志が集まり、「自治体職員有志の会」が設立され、「自治体首長を招いたオフ会・シンポジウム開催」「メーリングリストによる意見交換」などを通じて、課題整理と改革提言活動、日常の業務の改革・改善を行っています。   このように、意見交換をさらに発展させ、自治体職員のキャリアデザインを可能とする制度改革などへの提言につなげていくため、オープンな意見交換の場として自治体首長、学識者等を招いて、シンポジウムやオフ会を開催していますが、平成15年6月にスタートしたオフ会は、今回の高知で7回目。これまで、森高浜市長(愛知県)、白井尼崎市長(兵庫県)、後藤臼杵市長(大分県)、穂坂志木市長(埼玉県)、逢坂ニセコ町長(北海道)、浅野宮城県知事を講師にお迎えしています。   日 時 2005年5月20日(金)14:30受付開始 15:00―16:00 ジョン万次郎研究家・永國淳哉氏講演 「土佐のスピリット」(仮題) 16:00-17:30 橋本知事との意見交換 17:30-17:50 名刺交換会 18:10―20:10 懇親会(別会場) 会 場 : 龍馬の生まれた街記念館(高知市上町2-6-33)   ○問い合わせ先 中村祐介(高知県人権課 ***-***-****) 夕部雅丈(高知県建設検査課 ***-***-*** 職場 TEL ***-***-***) 自治体職員有志の会事務局(大島博文 神戸市職員 ***-****-****)