約 28,058 件
https://w.atwiki.jp/83452/pages/9386.html
――― 憂「失礼しまーす…」 私達が、控室のドアを開くと中ではメンバーが談笑していた。 本当に気心の知れた間柄だと言う感じの雰囲気だった。 ?R「んー?誰ぇ?いちごかぁ?」 ?M「な訳無いだろ」 ――― 憂「失礼しまーす…」 私達が、控室のドアを開くと中ではメンバーが談笑していた。 本当に気心の知れた間柄だと言う感じの雰囲気だった。 ?R「んー?誰ぇ?いちごかぁ?」 ?M「な訳無いだろ」 ?R「まぁなぁ…、あれぇ?あれあれぇ?」 ?M「何だよ…、変な顔して」 ?R「もしかしてぇ、澪しゃん、やきもちでしゅかー?」 ?M「違う。断じて違うぞ!」 また、黒髪の人が栗色の人の頭を叩く。 私は、何と声を掛けたら良いか分からなかったが、 カウンターの人と中野さんが私達の姿を認めて声を掛けてくれる。 ?T「あらあら」 梓「あ、唯先輩と憂!」 私は取りあえず手に持っていたケーキの箱を差し出す。 ?T「何かしらぁ」 梓「差し入れですか?そんな気を使ってくれなくても良いのに」 ?R「知り合い?」 ?M「そうみたい。ムギと梓の」 ?R「じゃあ、入って貰いなよ。あ、椅子用意するね」 栗色の人は自分から動いて椅子を用意してくれる。 ――― ?R「さぁさぁ、どうぞー」 私と憂は椅子に座らせて貰い、まるでお客のような扱いを受ける。 ?T「さぁ、紅茶をどうぞ」 ?R「おぉ!凄ぇ!これ表参道の○○のケーキじゃーん。あそこすぐ売り切れちゃうから、レアなんだよなー」 梓「律先輩、みっともないですよ」 ?M「わざわざ、ありがとうございます…、ほら、律もお礼しろよ」 私は早く、誤解を解かなければと思い、声を絞りだす。 唯「あ、あの、これ、違うんです」 メンバーの人達は、疑問の表情になる。 唯「これ、その隣の人が…」 憂「ライブ中に来てすぐ帰っちゃった人が、 私達に終了後に代わりに渡してくれって、言ってたものなんです」 上手く伝えられない私に代わって憂が説明をしてくれる。 ?T「誰からかしらね」 ?R「あ、そう言えば、何かメッセージカード付いてるわ」 黒髪の人がさっと、栗色の人の手からカードを抜き取る。 ?M「えーと?」 ?T「うふふ、謎のケーキは、一体誰からの贈り物なのでしょう~?」 黒髪の人はそのメッセージカードを見ると少し渋い顔をする。 ?T「えっと…、イニシャルでI.Wって書いてあるわね、 それで、こっちの押し花は…、ニガヨモギかしら?」 ?R「いちごじゃん。なんだよ、来てたのか」 梓「ニガヨモギの押し花って珍しいですね」 ?M「からかい」 ?R「は?」 ?M「花言葉だよ」 栗色の人は一瞬、考え込むような表情になったあと、噴き出す。 ?R「ぷははっ」 カウンターの人もつられて、楽しそうに笑う。 ?T「色んな意味にとれるわよねー、澪ちゃん?」 黒髪の人は、憮然とする。 ?M「ムギも律も笑い過ぎだ」 この場の和やかな雰囲気に、私と憂は逆に居心地が悪くなる。 唯「もう、いこっか?」 憂「うん」 私達は立ちあがる。 唯「あ、あの、それじゃ、私達も行きますね」 憂「梓ちゃん、今日のライブ教えてくれてありがとう。凄い楽しかった」 メンバーの人達も中野さんも私達が帰ろうとするのが唐突に感じたようで、 少しびっくりしている。 梓「あ、うん、またやる時に連絡するね」 ?T「今日は来てくれてありがと~」 ?M「次の時も是非来てくれな」 栗色の人だけは、何か考え込むような表情になっている。 ?M「律、あいさつぐらいちゃんとしろよ」 ?R「んー?んー、なんかさ、何か思い出しそうなんだよなぁ」 ?M「は、何言ってるんだよ」 栗色の人は前髪が少し長いようで、 考え込んでいる間も、何度か髪をかき上げる。 ?R「あー、邪魔くさいなー!」 黒髪の人は栗色の人が髪を邪魔くさそうに掻き上げるのに慣れているらしく、 テーブルに転がっていたヘアバンドを栗色の人に手渡す。 ?M「ほら、律、これ」 ?R「お、澪、サンキュー」 栗色の人は前髪をヘアバンドで上げる。 私はその前髪を上げた姿を見て、色々な事を思い出す。 ?R「うっし…、あー!」 唯「あー!」 私と田井中さんが声を上げたのはほぼ同時だった。 他の人も分かる。 こっちは秋山さん。 それで、こっちは琴吹さんだ。 ――― 律「そっか、梓の知り合いって平沢さんだったんだな」 唯「あ、あの、高校の時はごめんなさい」 律「今でも怨んでます」 言葉だけ聞けばぎょっとするけど、 田井中さんの様子からは全然そんな感じは伝わって来なかった。 でも、秋山さんは一応フォローを入れるつもりなのか、 田井中さんに突っ込みを入れる。 澪「そう言うのはギャグにならないから」 私の方が恐縮してしまう。 唯「い、いや、大丈夫ですから…」 ――― 私のこの夜、色んな話をした。 高校の部活でバンドが出来ない事が確実になった当初は、 実際に私を凄い怨んだ事。 高校外でバンド活動を始めた事。 今まで、そうやって活動して来た事。 このライブハウス兼クラブのオーナーは琴吹さんで、 今日のようにライブをやると、 高校の時の同級生達が集まってくれると言う事。 そう言えば、フロアには何人か見覚えのある顔があって、 それはこの話を聞けば当たり前だし、 全体に漂っていた家庭的な雰囲気と言うのも当然だった。 律「だから、集客出来てても、プロは遠いって感じだけどね」 澪「わ、わたしはまだ目指してるぞ?!」 紬「私も~」 梓「私は元々プロ志向ですから」 律「あれ?」 皆は声を合わせて笑う。 私も憂もそのみんなの中に入っていた。 ――― あの初めての日から、四ヶ月が経っていた。 私は、まだ一日二時間程度だが、単純作業のバイトをしている。 最初の給料は憂にプレゼントを買って帰った。 二月目からは家にお金を入れないと、と思ったけど、 どうしても欲しいものがあったので、 憂に頼み込んで次の月からに伸ばして貰った。 そうして買ったのが一本のアコースティックギターだった。 名機や高級モデルでも何でも無くて、 リサイクルショップに並んでいた安物だ。 そして、時々、梓ちゃんや純ちゃんと一緒に、 街角に立ってストリートミュージシャンみたいな事をしている。 人通りの多い道でやっていても、 客はギターケースの上にちょこんと座っているあずにゃん一匹と言う事が多くて、 猫がいるのに客がこないのだから、 要するに、あずにゃんには招き猫の才能はまったく無いみたいだった。 梓「唯先輩って、上達早いですね、才能ありますよ」 唯「いやぁ、先生が良いからだよ~。梓ちゃんの教え方上手いから」 梓「そ、そんな事ないです。ゆ、唯先輩の才能が凄いんです」 唯「そうかなあ…。でも、そんなおだてられたら調子乗っちゃうよ?」 梓「乗ってくれても良いです」 唯「えへへ、梓ちゃんは良い子だねぇ」 そう言って、手をギュって握ると、梓ちゃんは顔を赤らめる。 ――― 放課後ティータイムの皆は、最近私に一つの提案をしてくる。 律「なぁ、唯?」 唯「何?」 律「バンド一緒にやんねー?」 唯「私には無理だよぉ。だって、まだ上手く弾けないし」 律「いや、そんな事ねぇって、たった一月でこれだもん。 唯、才能あるよ、保証するって」 唯「でも…」 澪「そうだよ、唯はやれてるよ。 律なんか十年近くやってるのに、まだ、上手く合わせられない時があるんだからな」 律「澪?!」 紬「私も唯ちゃんの加入は凄く良いと思うな。 この前駅前で聞いたアレンジとか、唯ちゃんがやったんでしょ? あれ、凄く素敵だったもの」 ――― 憂は以前のように翳りのある表情をしないようになった。 前は笑っている時でも、どこか暗い面を感じさせたけど、今は心から笑えているみたいで、 それはきっと、私が憂を鎖に繋ごうとしなくなったからだと思う。 もう、私は憂を繋ぎとめる必要は無いし、 憂も自分からこちらにリードを放る必要は無い。 憂「ねえ、お姉ちゃん」 あずにゃんの散歩に二人して付き合っている時に、突然憂が私の名前を呼ぶ。 唯「何?」 憂「ただ、呼んでみただけ」 唯「変な憂」 私達は顔を見合わせて笑い合う。 私は何で怯えていたんだろうか。 それはきっと私が一人ぼっちで、憂以外の誰もいなかったからなのだろう。 でも、今は一人じゃないので、逆に憂との間に絆を強く意識出来る。 Someday,sometime in the future I will turn around and see there’s nothing to be found. But you’ll come running back to me. Everyday we’ll be together. だから、私はもう君を繋ぎとめるような事はしないんだ。 That good continue(!!!) 戻る
https://w.atwiki.jp/kyojin-ogasawara/pages/286.html
1 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2009/05/16(土) 10 08 39.03 ID znqfznBm (うんこを食っては)いかんのか? 7 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2009/05/16(土) 10 29 58.16 ID M79qfgaN 地産地消 9 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2009/05/16(土) 10 34 59.63 ID IDunBn4i 1 マジレスすると 飲食したり消化する際にも微量ながらカロリーを消費、水分も汗として皮膚から蒸発、更には髪や皮膚の新陳代謝でも蛋白質が使われるので、実際は永久機関にはならない件 15 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2009/05/16(土) 10 54 58.16 ID w9BrSrUe 9 つまりキンタマと繋ぎ合わせれば水分も蛋白質も補給できるな 16 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2009/05/16(土) 10 56 42.22 ID zQVoBr9h ガッツの本体はバット 世間で小笠原と呼ばれている肉塊は付属器官に過ぎない http //live23.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1242436119/
https://w.atwiki.jp/src_review/pages/486.html
【君と僕(俺)の手のひらを、ホチキスの針で繋ぎ止めたい】 シナリオ名が長いのに興味持ってやったが、ある意味笑った。 これを他人に勧めるのはセクハラだと思う。いろいろ自己責任で。 というか年齢制限的にOKなのか? 【君と僕(俺)の手のひらを、ホチキスの針で繋ぎ止めたい】 病んでいるシナリオ。良い意味でも悪い意味でも。 作者が天然でやっているのか、ギャグでやっているのかは不明。 最近この手のシナリオ多いんじゃないか? 1話だけなので、ストーリーについては何とも言えないが、 (飛影はそんなこと言わない+クリムゾン)÷笑ゥせぇるすまん という印象。 よく解らんが、真っ先に連想したのが喪黒福造だった。 戦闘の難易度は皆無。 弟を追って×××を○○○んでやれば、 次第に「お願いもっとー!」とか言い出し始めて、 何か、死ぬ。そして主人公のレベルが上がる。何のレベルだそれは。 ハッキリ言っておすすめはしない。出来ない。 この手の話を嫌う人は間違いなくいるだろうからだ。 笑える人には笑えるだろうけども。万人向けではないと思う。 【君と僕(俺)の手のひらを、ホチキスの針で繋ぎ止めたい】 前置き このシナリオは、清らかで健全な青少年にとって 毒にも薬にもなるかもしれません。取り扱いにはご注意を 尚、18歳未満の方には、このレビューの閲覧を推奨しません あなたは18歳未満ですか? はい いいえ にア殺してでも うばいとる 物語 一時期、物議を醸し出した問題作の最新話 半年以上ぶりの更新だが、内容はあいもかわらずカッ飛んでいる 挿すか挿されるか、そんな雰囲気が良いんじゃねーかと言わんばかりの 穴があったら挿すのが当然だろ。女子供はすっこんでろと言わんばかりの 実にコミカルな物語が繰り広げられているので、マニアにはおすすめ 登場人物 尽く狂っている が、どこかコミカルさを感じさせる(例:戦闘中の台詞)狂い方なので 怖さを感じさせる部分は無い。何処か別世界の狂人達。絵空事的 それ故、感情移入も全く出来ないが 戦闘 おじ様の菊花散らせば、それで終了 難易度? 豚の躾にそんなもんないよ。うん、ない 総評 以上のように良い意味でも悪い意味でも狂ったシナリオ それだけに、初見のインパク値は相当のもので この手のインパク値は、人によって物書きの励みとなる それだけでもプレイする価値はあるんじゃないだろうか 賢者モード後 ………… ………………ふう しかし、冷静に賢者モードに入ってみると、色々と気になる点も目立つ 色々な裏に隠されがちだが、物語として面白いか? と聞かれれば言葉を濁さざるを得ない。 まだ話には続きがあるようなので、現時点での結論は出せないにせよ、だ インパクトに絆された頭を冷やして省みれば やってる事はホモ、レイプ、レズ、イジメ、殺人、近親相姦、人身売買、腐etcetc それらがごちゃ混ぜになっただけの代物であって、ただのナンセンスに収まっている バラバラのそれらの要素をどのように昇華、あるいは消化させるのか 作者の手腕に、不安と期待が募るのは確かだ もしかして、ホチキスの針で繋ぎ止めたいという題名は その事を現していたりなんかするのだろうか 作者がそこまで考えているなら、ただただ脱帽の一言 いくらなんでも深読みし過ぎか
https://w.atwiki.jp/guilmono/pages/143.html
牛若丸 弁慶が宝石ルチル落としました - 2012-11-02 19 56 49
https://w.atwiki.jp/marowiki002/pages/817.html
【分類】 思いつき 独自研究創作 企画案 目次 【分類】 【概要】 【参考】モチーフ 関連項目 タグ 最終更新日時 【概要】 主にアニメ。 人気の出た番組の続編までの間や分割2期の間に5分程度の縮小・簡易番組をやる。 一話完結。 本編から内容が独立していてもしていなくてもいい。 色々な人に監督・演出・絵コンテ・脚本などをさせてみる。作画重視なら新規カットが多くなる? 演出重視なら公式MADになる? 脚本重視ならラジオドラマになる? 設定重視なら解説・総集編になる? 企画重視なら実写になる? 新人・若手育成の場にいい? 本編に下手なオリキャラ・オリストを入れて延命するよりはいい? 【参考】 モチーフ ウルトラファイト ぷちます ネット版仮面ライダー レヴィアタン ミルキーホームズ 帰宅部 関連項目 項目名 関連度 備考 創作/分担計画 ★★★ 創作/無駄や失敗・事故などを減らす方法 ★★★ 創作/ネタ回テンプレ ★★★ 創作/プロデューサーに求められること ★★★ 創作/ニコニコ動画向けのタイアップ企画 ★★★ 創作/動画マンの給与待遇は改善されるべきか? ★★★ 創作/衣装監修及びタイアップ ★★★ 創作/計画的な漫画や小説の制作チームの作り方 ★★★ 創作/酷いアニメ企画 ★★★ 創作/商業ベースの制作計画 ★★★ 創作/制作スパン比較 ★★★ 創作/無意味の可能性 ★★★ 創作/アニメの二部構成 ★★★ 創作/オリジナルの重圧 ★★★ 創作/制作チーム・ラインの耐久年数 ★★★ 創作/宴番組案 ★★★ 創作/スタッフとキャリアアップ ★★★ 創作/キャラデザの分業化 ★★★ 創作/勉強会の配信企画 ★★★ タグ 創作 最終更新日時 2013-10-26 冒頭へ
https://w.atwiki.jp/guilmono/pages/202.html
名称 罠難易度 ドロップモンスター 旗本の盾 313~329 足軽兵 ナイトプレート 191~210 力士 力士の帯 358~374 小太刀 313~329 忍者 獅子王刀 - 牛若丸 源氏の小手 626~ ★虎の巻 - 鬼丸国綱 626~ 弁慶 源氏の鎧 - ★七つ道具 - 奇跡のコイン 480 ミラクルラビット ★うさぎのしっぽ -
https://w.atwiki.jp/src-today/pages/188.html
2008/12/2 『君と僕(俺)の手のひらを、ホチキスの針で繋ぎ止めたい』第3話更新 2日、佐伯飴氏のシナリオ『君と僕(俺)の手のひらを、ホチキスの針で繋ぎ止めたい』の第3話が更新される。 【佐伯飴氏】【シナリオ】【オリジナル】【等身大】 【文責 プラチナ木魚】
https://w.atwiki.jp/llnj_ss/pages/1570.html
元スレURL せつ菜(歩夢さんと恋人繋ぎをしてしまいました……!) 概要 SIF告知動画のアレのその後 タグ ^優木せつ菜 ^上原歩夢 ^短編 ^あゆせつ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/chisakiss/pages/38.html
千咲ちゃん、天真先輩と手繋ぎデートする 内容 本文 感想コメント 内容 記憶喪失になって地下室に閉じ込められていたガヴリールが、タプリスに連れられて謎の塔を上っていくお話。 本文 ――――――――――――――――――(00/40)―――――――――――――――――― ―薄暗い石畳の部屋― ガヴリール「ん……」 ガヴリール「あれ、私……寝ていたのでしょうか」 ガヴリール「……それにここは、どこでしょう」 ガヴリール「どこかの地下、のように思えますが……」 ガヴリール「部屋の中には何もありませんし」 ガヴリール「どうして、私はこんなところに……」 ガヴリール「あ、あれ……うそ……」 ガヴリール「何も……思い出せない」 ――――――――――――――――――(01/40)―――――――――――――――――― ドンドンッ ガヴリール「誰か! 誰かいませんか!」 ガヴリール「……」 ガヴリール「はぁ、ドアも外から鍵がかけられているみたいですし」 ガヴリール「壁にも特に細工などはありませんね……」 ガヴリール「ど、どうすれば……」 ガヴリール「でも、慌てても仕方がありません」 ガヴリール「大人しく座って、思い出せることがないか、考えてみましょう」 ―― ガヴリール「……あれ」 ガヴリール「いけない、少し眠って……」 ガチャ ガヴリール「ッ!? ド、ドアが……」 ギィッ ガヴリール「……だ、誰?」 タプリス「……やっと、見つけました」 ――――――――――――――――――(02/40)―――――――――――――――――― タプリス「まさか、こんなところに、いらっしゃるなんて……」 タプリス「探すのに手間取ってしまって、ごめんなさい」 タプリス「随分、お待たせしてしまいましたよね」 タプリス「……でも、もう大丈夫ですから」 タプリス「さぁ、行きましょうか」 ガヴリール「あの……」 タプリス「どうしました? 天真先輩」 タプリス「あ、どこか調子が悪かったりします?」 タプリス「でしたら、少し休んでからでも……」 ガヴリール「えっと……」 タプリス「……?」 ガヴリール「あなた……どなたですか?」 ――――――――――――――――――(03/40)―――――――――――――――――― タプリス「……ッ」 ガヴリール「ごめんなさい、私、自分の名前以外、思い出せなくて……」 ガヴリール「あなたは、私のお知り合いみたいですけど……」 タプリス「……そうですね、こういう可能性だってあったんですよね」 タプリス「わかってたとしても、やっぱりつらいです……」 ガヴリール「あの……、どうしました?」 タプリス「い、いえ、何でもありませんっ」 タプリス「わたしはですね、天真先輩の後輩で」 タプリス「とても、とーっても、先輩にお世話になった者です」 タプリス「ですから、その恩を少しでも返したくて……」 ガヴリール「……」 タプリス「だから、その……ですね」 ガヴリール「は、はい」 タプリス「天真先輩、あなたを助けにきました」 ――――――――――――――――――(04/40)―――――――――――――――――― タプリス「とはいえ、いきなり知らない人にこんなこと言われても」 タプリス「怖いだけですよね、あははは……」 ガヴリール「そ、そんなことは……」 タプリス「で、でも、これだけは信じてください」 タプリス「わたしは絶対に、先輩を裏切ったりしません」 タプリス「絶対に先輩を、ここから救い出してみせますから!」 ガヴリール「……」 タプリス「わたしが言えるのはここまでです」 タプリス「……それでも、わたしを信じてくれるなら」 タプリス「わたしの手をとってください」スッ ガヴリール「……」 タプリス「……」 ガヴリール「……ごめんなさい」 ――――――――――――――――――(05/40)―――――――――――――――――― タプリス「そ、そうですよね……」 タプリス「そんな、すぐに見ず知らずの人を信じるなんて、無理ですよね」 ガヴリール「いいえ、そうじゃないの」 タプリス「えっ」 ガヴリール「私なんかのために、ありがとう」 ガヴリール「なぜかはわからないけど、あなたの言葉は……」 ガヴリール「すっ、と胸の中に入ってきて、私を安心させてくれる」 ガヴリール「そんな気がしますから」 タプリス「先輩……」 ガヴリール「それに……ここに一人で居たって、何も始まらないし」 ガヴリール「だったら私は、あなたに賭けてみたい」 タプリス「あ、ありがとうございます、先輩」 ガヴリール「お礼を言うのはこちらの方。改めて、本当にありがとう」 ガヴリール「こんな私ですが、よろしくお願いしますね」 ぎゅっ タプリス「はい、任されました」 タプリス「……絶対に、手を離さないでくださいね」 ――――――――――――――――――(06/40)―――――――――――――――――― ―薄暗い通路― タプリス「ここを抜けると、吹き抜けになっている塔の一階に出ます」 ガヴリール「塔、ですか?」 タプリス「はい、高い高い塔です。100階まであると言われています」 ガヴリール「すごい高さですね……」 タプリス「ええ、それをわたしたちは今から、上っていくんです」 ガヴリール「えっ……ど、どこまでですか?」 タプリス「もちろん、一番上までですよ」 ガヴリール「そ、そうですか。上りきる自信がないですけど……」 タプリス「大丈夫です、階段の傾斜はそこまできつくありませんし」 タプリス「ちゃんと休憩も挟みます」 ガヴリール「一番上には何があるんですか?」 タプリス「それは……ごめんなさい」 タプリス「わたしの口からは言えないんです」 タプリス「でも、先輩にとって、とても大切なものですから」 ――――――――――――――――――(07/40)―――――――――――――――――― ―塔1階 はじまりの広間― ガヴリール「すごいですね……上は、本当に吹き抜けになっています」 ガヴリール「床に彫られているのは、フクロウですかね」 ガヴリール「今にも動き出しそうで美しいです……」 タプリス「わたしたちが歩くのは、あそこからです」 ガヴリール「か、壁に沿って、螺旋のように階段が続いているみたいですが」 ガヴリール「一番上が、全然見えませんね……」 タプリス「ここからだと……少し見えづらいかも、ですね」 ガヴリール「あなたは、ここを上ったことがあるんですか?」 タプリス「いえ、厳密にはありませんが……」 タプリス「似たような塔なら、一度だけ上ったことがあります」 ガヴリール「なるほど。それで、そんなに詳しかったのですね」 タプリス「あはは、ある程度はですけどね」 タプリス「準備がよろしければ、出発しましょうか」 ガヴリール「はい、大丈夫です。もともと、何も持っていませんしね」 タプリス「わかりました、では行きましょう」 タプリス「つらくなったら、いつでも言ってくださいね、休憩しますから」 ガヴリール「はい、ありがとう」 ――――――――――――――――――(08/40)―――――――――――――――――― ―塔11階― コツコツコツ タプリス「大丈夫ですか? きつくありませんか?」 ガヴリール「ふふっ、あなたったら、さっきからそればっかり」 ガヴリール「もしかしたら、一階上がるごとに言ってるんじゃないかしら」 タプリス「そ、そうですかね。そんなつもりはなかったんですが」 ガヴリール「大丈夫です、全く問題ありませんよ」 ガヴリール「あなたが前で、私の手を引いてくれていますから」 ガヴリール「あなたの方こそ、疲れたら言ってくださいね」 タプリス「わ、わかりました。ありがとうございます」 ガヴリール「いえいえ、どういたしまして」 タプリス「ふふっ」 ガヴリール「どうしました? 笑ったりして」 タプリス「記憶を失ってても、やっぱり先輩は先輩だなって」 ガヴリール「えっ、どういうことですか?」 タプリス「いえ、何でもありません。先を急ぎましょうか」 ――――――――――――――――――(09/40)―――――――――――――――――― ―塔25階 赤の回廊― ガヴリール「あれ、階段がここで途切れていますね」 タプリス「やはり、ここにもありましたか……」 ガヴリール「えっ」 タプリス「この塔にはこうやって、回廊になっている階がいくつかありまして」 タプリス「反対側に回らないと、次の階に行けないんです」 ガヴリール「そうなんですか……でも、今まで階段ばかりでしたし」 ガヴリール「こうやって平坦な場所を歩くのも、気分転換になって」 ガヴリール「良いかもしれませんね」 タプリス「……そうでもないんです、ここは」 ガヴリール「ど、どういうことですか?」 タプリス「先輩、今からわたしが言うことを、絶対に守ってくださいね」 ガヴリール「は、はい」 タプリス「この回廊では、何が起こったとしても……」 タプリス「絶対に、振り返らないでください」 ――――――――――――――――――(10/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「わ、わかりました……ですけど」 ガヴリール「もし……振り返ってしまったら、どうなるんです?」 タプリス「先輩にとって、よくないことが起こります」 ガヴリール「よくないこと……」 タプリス「それはきっと、取り返しがつかないことです」 ガヴリール「わ、わかりました……気をつけますね」 タプリス「大丈夫です。わたしと手を繋いで、しっかり歩けば」 タプリス「すぐ次の階段に着きますから」 ガヴリール「は、はい」 タプリス「では行きましょうか」 コツコツコツ ガヴリール「……」 タプリス「……」 『ようやくここまでたどり着いたのね、ガヴリール』 ――――――――――――――――――(11/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「う、後ろから誰かの声が……」 タプリス「駄目です、天真先輩。彼女の言葉を聞いてはいけません」 タプリス「彼女は惑わす者、なんですから」 ガヴリール「惑わす者?」 タプリス「ええ、先輩を永久にここに閉じ込めるべくして、生まれた存在です」 タプリス「だから、どんな言葉であろうと、耳を傾けてはいけません」 『ずっとここで待っていたのよ、あんたの永遠のライバルとしてね』 ガヴリール「なんでしょう、思い出せないはずなのに」 ガヴリール「なんだかとても、懐かしい感じがします……」 タプリス「それも、彼女の狙いです、だから……」 『私は長い時間をかけて、ついに世界のすべてを、この手中に収めたわ』 『これで私の心は全て、満たされるはずだった』 『……でも、そうはならなかった。一つだけ、心にぽっかりと穴が空いていたの』 『そう、それはね。あんたにだけ……、一度も勝てなかったことよ』 ――――――――――――――――――(12/40)―――――――――――――――――― 『このままじゃ私は、悔やんでも悔やみきれない』 『勝ち逃げだなんて、絶対に許さない』 『……私と勝負しなさい、ガヴリール』 ガヴリール「……」 『もちろん、ただでとは言わない……もしあんたが勝てば……』 『私の世界の半分を、あんたにくれてあげるわ』 『だからもう一度だけ、私と勝負を――』 ガヴリール「……ごめんなさい」 ガヴリール「私、世界になんて興味はないし」 ガヴリール「勝負なんてもっとそう。あなたと争うくらいなら」 ガヴリール「私の負けで構わない」 『……そう、それがあんたの答えなのね』 ガヴリール「ええ、ごめんなさい……そして、さようなら」 『ふんっ……せいぜい、後悔するといいわ』 タプリス「せ、先輩……」 ガヴリール「さ、行きましょう」 ――――――――――――――――――(13/40)―――――――――――――――――― ―塔42階― コツコツコツ ガヴリール「……ありがとうね」 タプリス「えっ、突然どうしました?」 ガヴリール「いえ、さっきの回廊を抜けられたのは」 ガヴリール「あなたのおかげ。だから、ありがとう」 タプリス「そ、そんな、違いますよ。天真先輩の心が強かったからです」 タプリス「わたしはただ、少し助言をしただけですから」 ガヴリール「……あなたがずっと、手を握っていてくれたから」 タプリス「えっ」 ガヴリール「私も、心を強く持てたんだと思うの」 ガヴリール「だから、私を助けてくれて、ありがとう」 タプリス「は、はい。ど、どういたしまして、です」カァァ ガヴリール「ふふっ、すっかり照れてしまって、かわいい」ナデナデ タプリス「……ッ」 ガヴリール「あら、ごめんなさい。頭を撫でられるのは嫌でしたか?」 タプリス「い、いえっ、そうではなくて、その……」 タプリス「もしかして、無意識だったんですか?」 ガヴリール「そうですね、確かに」 ガヴリール「自然と、手が伸びてしまいました」 タプリス「先輩はよく、わたしの頭を撫でてくれたんです、だから……」 タプリス「何か思い出してもらえたのかなって思って」 ガヴリール「ごめんなさい、そこまでは……」 タプリス「そ、そうですよね。大丈夫です、ゆっくり焦らずにいきましょう」 ――――――――――――――――――(14/40)―――――――――――――――――― ―塔50階 白の回廊― タプリス「ようやく50階、半分到達ですね」 ガヴリール「また階段が途切れている……ということは」 タプリス「ええ。ここも、です」 タプリス「一度、乗り越えている先輩でしたら、大丈夫ですよ」 タプリス「さぁ、行きましょう」 ぎゅっ ガヴリール「は、はい」 コツコツコツ 『やっと、お会いできましたね、ガヴちゃん』 ガヴリール「……ッ」 タプリス「天真先輩、優しい声色に騙されてはいけません」 『私はあなたのことをずっとずっと、待っていたんです』 『そして、ずっとずっと、会いたかった……』 『だって私は、あなたと一番お付き合いが長い……』 『言わば、幼馴染のようなものですから』 ――――――――――――――――――(15/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「……幼馴染?」 『あなたは、全てを忘れてしまいましたが』 『私はあなたのことを、小さい頃から知っているんです』 『初めてお会いした時も、そして、お友達になった時も』 『……あなたの記憶が失われてしまったことは、本当に仕方のないこと』 『ですから、私が一から、あなたに教えてあげます』 『私の知る、あなたの全てを……』 ガヴリール「私の、全て……」 タプリス「……」 『……今、あなたと一緒にいる子』 ガヴリール「えっ?」 『その子は、いったい何者なのでしょうか』 『私は、その子のことを何も知りません』 ガヴリール「そ、そんな……」 『もしかすると、記憶を失ったガヴちゃんに取り入り、騙して』 『陥れようとしているのかもしれません』 ――――――――――――――――――(16/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「違います! この子はそんなんじゃ……」 『そうではない、と本当に言えますか?』 ガヴリール「えっ……」 『あなたは今、その子に言われて、この塔を上っていますが』 『最上階に何があるのか、知っていますか?』 ガヴリール「そ、それは……」 『やましい理由がなければ、隠す必要なんてないはず』 『真実を言わないということは、あなたを騙していることと同義なんです』 ガヴリール「……」 『さぁ、私と行きましょう、ガヴちゃん』 タプリス「……天真先輩」 ガヴリール「……」 ――――――――――――――――――(17/40)―――――――――――――――――― タプリス「……全ては、先輩にお任せします」 タプリス「ですが……ですけど、これだけは、信じてください」 ぎゅっ タプリス「わたしは絶対、先輩に嘘はつきません」 ガヴリール「……」 『この世に 絶対 ほど、信用のできない言葉はありません』 『ですから、私と一緒に――』 ガヴリール「……お断りします」 『今なんと言って……』 ガヴリール「お断りします、と言ったんです」 『どうしてですか、そんな子を信じるというのですか』 ガヴリール「この子が本当に、私を陥れようとしているなら」 ガヴリール「こんなにも震えた手で、私の手を握るはず、ありません」 タプリス「……ッ」 ――――――――――――――――――(18/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「信じてください、という強い決心の裏で」 ガヴリール「私の言葉を待ちながら、こんなにも怯えている」 ガヴリール「この子の情味あふれる仕草や、私への思いやりの心は」 ガヴリール「私にとって、信じるに値します」 ガヴリール「ですから、あなたとは一緒に行けません」 『そうですか、わかりました』 『そこまで言うのでしたら、私は止めません』 『どうぞご自分の目で、真実を確かめてきてください』 ガヴリール「えぇ、ご忠告、感謝します」 ガヴリール「それでは……さようなら] ガヴリール「……あなたとは、もっと違う形でお会いしたかった」 『ええ、私もです。それでは、ごきげんよう』 ガヴリール「さぁ、行きましょうか」 タプリス「は、はい……」 ――――――――――――――――――(19/40)―――――――――――――――――― ―塔64階― コツコツコツ ガヴリール「……」 タプリス「……」 ぎゅっ ガヴリール「……どうしました?」 タプリス「えっ、あ、その……す、すみません」 タプリス「ちょっと考え事をして、力んでしまって……何でもないですからっ」 ガヴリール「……そうですか」 タプリス「は、はい」 ガヴリール「……」 タプリス「……」 ガヴリール「すみません、ちょっといいですか?」 タプリス「えっと、何でしょう」 ガヴリール「私、足に疲れが溜まってきてしまって」 ガヴリール「ここ、ちょうど踊り場になっていますし」 ガヴリール「少し休憩しませんか?」 タプリス「あ……ごめんなさい、気づかなくて。わ、わかりました」 ――――――――――――――――――(20/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「見てください。下がもう、ほとんど見えません」 タプリス「ええ、もう64階ですから」 ガヴリール「……お隣、座ってもいいですか?」 タプリス「は、はい、どうぞ」 ガヴリール「……」 タプリス「……」 ガヴリール「あの」 タプリス「あのっ」 ガヴリール「あ、あなたからどうぞ」 タプリス「いえ、先輩の方から」 ガヴリール「……ふふっ」 タプリス「……あははっ」 ガヴリール「……この手のぬくもりと」 ガヴリール「あなたがどれだけ、私を大事に思ってくれているかという気持ちから」 ガヴリール「私にとっても、あなたがどれだけ大切な存在だったのかが、よくわかります」 ガヴリール「たとえ記憶を失ってても、私のどこかで、それを憶えている」 ガヴリール「そんな気がするんです」 タプリス「先輩……」 ――――――――――――――――――(21/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「最上階で、何が待っていようとも」 ガヴリール「あなたとならきっと……乗り越えられる気がします」 タプリス「はい……、わたしの決意も固まりました」 タプリス「先輩を必ずや、最上階までお連れします」 タプリス「それがわたしの……使命であり、望みですから」 ガヴリール「ええ、ありがとう。でも……」 ガヴリール「私たちは、先輩と後輩の仲だったんでしょう?」 タプリス「は、はい、そうですけど」 ガヴリール「だったら、そんな使命とか、堅苦しいことは抜きにしましょう」 ガヴリール「そうですね……、手繋ぎデートなんてどうでしょうか」 タプリス「て、てててっ、手繋ぎデートですかっ」 ガヴリール「ええ。その方が、気楽に楽しく進めそうで良いじゃないですか」 タプリス「そ、そうです、かね。そ、そうですね……、恐縮です」カァァ ガヴリール「ふふっ、顔を真っ赤にしちゃって、かわいいんだから」ナデナデ ガヴリール「それでは、そろそろ行きましょうか」 タプリス「あ……」 ガヴリール「どうしました?」 タプリス「あの……、えっと……もう少しだけ……」 タプリス「もう少しだけ……このままでも、いいですか?」 ガヴリール「……ええ、もちろんですよ」 ――――――――――――――――――(22/40)―――――――――――――――――― ―塔75階 紫の回廊― タプリス「おそらくここが、最後の回廊です」 ガヴリール「そうですか……、なんだか前の二つと雰囲気が違いますね」 タプリス「ですが、ここまで乗り切ってきた先輩なら、問題ありません」 タプリス「わたしの手を、離さないでくださいね」 ガヴリール「ええ、もちろん」 コツコツコツ 『久しぶりね……ガヴ』 ガヴリール「……ッ」 『こんな形でも、また、あなたに会うことができて、よかった』 『だって本当なら、あの時点で……』 『私たちはもう、二度と会うことはできなくなってたんだもの』 『だから、本当に嬉しい』 ――――――――――――――――――(23/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「記憶に無いはずなのに……どうして……」 『ねえ、ガヴ。憶えてる? 私たちが初めてあった時のこと』 『私が下界に来て早々、道に迷って困っていた時に』 『あなたは優しく、声をかけてくれたよね』 『そして、友達になってくださいって、言ってくれたよね』 『私、あの時、本当に嬉しかった』 ガヴリール「この声は……特に、頭に響いてきて……」 タプリス「先輩……」 『堕天してしまってからは、本当に手がかかる子だったけど』 『素っ気ない態度をとりつつも、大事なときにはいつも』 『一緒に、付き合ってくれた』 『私が落ち込んでいるときにはいつも、励ましてくれて』 『そして、優しく……してくれた』 ――――――――――――――――――(24/40)―――――――――――――――――― 『私が風邪を引いたときなんか、一目散に駆けつけてきて』 『普段は料理なんてしないのに、張り切っちゃって……』 『正直、味は微妙だったけど、本当に、本当においしかった』 『だって、あなたの真心がこもっていたんだもの』 ガヴリール「……」 『だからね、ガヴ。あなたにはお礼を言いたい』 『私と友達になってくれて、ありがとう』 『私と出会ってくれて、ありがとう』 『そして、あなたと過ごした日々に、ありがとう』 ガヴリール「……本当に」 タプリス「えっ」 ガヴリール「この子の言っていることは……本当に嘘なんでしょうか……」 タプリス「そ、それは……」 ――――――――――――――――――(25/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「頭ではいけないってわかってるのに」 ガヴリール「心のどこかで……この子の優しさを憶えてる……」 ガヴリール「本当に迷惑をかけたって、憶えてる……」 タプリス「先輩……」 『私はここで、あなたをずっと見守っているから』 『たとえ一人になっても、あなたの幸せをずっと願っているから』 ガヴリール「……ッ」 『最後に、ずっと伝えることができなかったけど』 『私は、そんな不器用で優しいあなたのことが……』 『大好きでした』 ――――――――――――――――――(26/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「……ッ!」クルッ タプリス「先輩っ!?」 『ありがとうね、私を選んでくれて』 『これからは二人で、ここにいましょう?』 『そう、永遠に――』 ガヴリール「うそ……、何も、ない……?」 ゴゴゴゴゴゴゴッ タプリス「いけない! 先輩、急いで! 天井がっ!!」 ガヴリール「なっ!?」 ピシッ ピシピシッ ガヴリール「だめっ、間に合わな――」 タプリス「先輩、危ないっ!!」ガバッ ――――――――――――――――――(27/40)―――――――――――――――――― からんからん ガヴリール「せ、背中が……」 タプリス「……先輩、無事ですか?」 ガヴリール「ええ、なんとか……って……」 タプリス「えへへ、ゴホッ……間に合って、よかった」 ガヴリール「う、うそ……あなた、両脚が……」 ガヴリール「い、今、瓦礫をどけるから!」 ガヴリール「ぐっ……ぐぐぐぐっ……」 タプリス「無理です……こんな大きいの、とても動かせません」 ガヴリール「どうして……どうして、私なんかをかばって……」 タプリス「身体が勝手に……ゴホッ、動いて、しまったんです」 タプリス「仕方がないじゃないですか」 ガヴリール「……私のせいなのに」 ガヴリール「私があなたの言いつけを破って、振り返ってしまったせいなのに」 タプリス「……それも、仕方がないんです」 ガヴリール「えっ」 タプリス「あの方が言っていたことに、嘘偽りはなかった」 タプリス「ですからわたしは……」 タプリス「改めて先輩が、ほんとに本当に優しい方なんだってわかって」 タプリス「嬉しかったです」 ――――――――――――――――――(28/40)―――――――――――――――――― ゴゴゴゴゴゴゴッ ガヴリール「この音は……」 タプリス「じきに、ここも完全に、崩れます……」 タプリス「どうやら、わたしは……ここまでの、ようです」 ガヴリール「だめです! あなたを置いてなんて行けません!」 タプリス「もう時間が、ありませんから……よく聞いてください」 タプリス「これから、最後の力を、振り絞って……」 タプリス「先輩を……階段まで、転移させます」 ガヴリール「なっ!?」 タプリス「本当は……使いたく、なかったんですけどね」 タプリス「わたし、動けなく、なっちゃうから」 タプリス「でも……今なら、使うことができそうです」 ガヴリール「やめて、お願いだから……」 タプリス「一緒に行くって約束……守れなくて、ごめんなさい」 ガヴリール「……ッ」 ――――――――――――――――――(29/40)―――――――――――――――――― タプリス「すみません、先輩……まだ、そこに、いますか?」 ガヴリール「えっ……」 タプリス「もう、目が、よく見えなくて……」 ガヴリール「……ッ」 ぎゅぅぅ タプリス「あっ……」 ガヴリール「いやっ! 絶対に嫌っ! あなたを置いて行くくらいなら、私もここに――」 タプリス「それ、以上は、だめです。先輩……」 タプリス「先輩は……進まないと、いけないから」 タプリス「最上階へ、たどり着かないと、いけないから」 ガヴリール「どうして!? 最上階にいったい、何があるっていうの!?」 ガヴリール「あなたを見捨ててまで行く価値なんて、本当にあるっていうの!?」 タプリス「……はい」 ガヴリール「……ッ」 タプリス「わたしは……そのために、来たんですから」 ――――――――――――――――――(30/40)―――――――――――――――――― タプリス「そうだ、最後にこれを……」スッ ガヴリール「これは……あなたの髪飾り……」 タプリス「はい……これ、先輩に、もらったもの、なんですよ」 ガヴリール「私が……?」 ガヴリール「……ッ」 ガヴリール「これは……あぁっ、そんな……」 ゴゴゴゴゴゴゴッ タプリス「……時間です、先輩」 タプリス「神よ、我に力を」 パァァァッ ガヴリール「いやっ、やめてっ!!」 タプリス「今まで、本当にありがとう、ございました」 ガヴリール「お願いだからっ……、タプリスッ!!」 タプリス「……ッ」 ガヴリール「私もう、絶対に忘れない! あなたのこと、忘れないからっ!」 ガヴリール「だからお願い! こんなこと、やめてっ!」 ガヴリール「お願い、だからぁ……」 タプリス「やっと、わたしの名前……呼んでくれましたね」 タプリス「これで、思い残すことは……ありません」 パァァァッ ガヴリール「いやっ……いやぁぁぁぁぁっっ!!」 ガヴリール「タプリスーーーーッ!!」 タプリス「さようなら、天真先輩」ニコッ ――――――――――――――――――(31/40)―――――――――――――――――― ゴゴゴゴゴッ ズドンッ ―塔76階― シュンッ ガヴリール「あぁ、あぁぁっ……」 ガヴリール「わ、私が……タプリスを……」 ガヴリール「私が、守ってあげなくちゃ……いけなかったのに」 ガヴリール「大切な後輩を……守ってあげなくちゃ、いけなかったのに……」 ガヴリール「……」 ガヴリール「ごめっ……ぐすっ……ごめんなさい、タプリス……」 ガヴリール「本当にごめんなさい……」 パサッ ガヴリール「これは……あの子の、髪飾り」 ガヴリール「……」スッ ぎゅぅ ガヴリール「……」 ガヴリール「……タプリス、そうですよね」 ガヴリール「あの子が望んでいたことを、叶えなきゃ……」 ガヴリール「私が、叶えなくちゃ……」 ――――――――――――――――――(32/40)―――――――――――――――――― ―塔85階― タッタッタッ ガヴリール「急がないと……、もっと急がないと……」 ガクッ ガヴリール「……ッ」 バタンッ パサッ ガヴリール「いたっ……あっ……」 ぎゅっ ガヴリール「……これは、絶対に落とさない」 ガヴリール「大丈夫……まだ走れる」 ガヴリール「こんなの、あの子の痛みに比べたら、なんでもない」 ガヴリール「絶対に、たどり着いてみせる」 タッタッタッ ――――――――――――――――――(33/40)―――――――――――――――――― ―塔100階― ガヴリール「はぁ……はぁ……やっと、着いた」 ガヴリール「ここは……庭園? 空が眩しい……」 天使「遅かったな」 ガヴリール「えっ……あ、あなたは……」 天使「待ちくたびれたぞ」 ガヴリール「私、なの……?」 天使「ああ、そうだよ。お前は、私だ」 ガヴリール「ねぇ、教えて! ここはいったい何なの!?」 ガヴリール「どうして、私がもう一人、ここにいるの!?」 ガヴリール「私はどうして、ここに来なければならなかったの!?」 天使「おいおい、質問は一つずつにしろよ」 ガヴリール「あ、ごめんなさい……」 天使「その様子だと、あいつはここまで、来られなかったようだな」 ガヴリール「タプリスのことを知っているの?」 天使「……まずは順に話していこうか」 ――――――――――――――――――(34/40)―――――――――――――――――― 天使「ここは私の記憶の遺跡、お前らは塔って呼んでたけど」 天使「実際はここがスタート地点。お前のいたところが、おそらく最下」 天使「そして、私はお前を見つけて、ここに連れて来なければならなかった」 天使「けど私は、ここで体の維持をしなくてはならず、ここを動けない」 天使「だから、タプリスにお前を探させたんだよ」 ガヴリール「では、私とあなたは、どういう……」 天使「お前はな、私がはるか昔に捨てた、別の人格」 ガヴリール「なっ……」 天使「今までは必要なかったから、放っておいたんだけど」 天使「そのせいで、記憶まで失ってしまったみたいだな」 ガヴリール「……」 天使「でも、とある理由から、お前が必要になったんだ」 ガヴリール「私が……必要……?」 天使「ああ。でもまさか、あんな奥の、そのまた奥にいるとは思わなかったよ」 天使「お前のことを一番慕っていた、あいつに任せて正解だった」 ガヴリール「……あの子がどうなったか、知っているんですか」 天使「もちろん」 ガヴリール「どうしてそんな……平然としていられるんですか」 ガヴリール「あなたが私なら、あなたにとっても大事な存在じゃないんですか!?」 天使「ああ、そうだよ。だから、お前を呼んだんだ」 ガヴリール「そ、それは、どういう……」 天使「お前と私が、一つになるためにな」 ――――――――――――――――――(35/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「私とあなたが、一つに、ですって……」 天使「ああ、お前も私の一部だからな」 天使「あいつが慕ってたお前がいないと、あいつも寂しがるだろ」 天使「それに何より、全ての私が揃わないとダメなんだよ」 ガヴリール「全てって、どういうことです……?」 天使「まぁ、それはやってみればすぐにわかる」 ガヴリール「やってみればって……そんな大雑把な」 天使「あいつに会いたくないのか?」 ガヴリール「……ッ」 天使「私は、会いたい。だからこうして頼んでいる」 ガヴリール「……」 天使「あいつにもう一度会うために、協力してくれないか」 ガヴリール「一つになったら、私はどうなるんですか?」 天使「そうだな。たぶん、私が主人格だから……」 天使「お前はあまり、出てこられないだろうな」 ガヴリール「そう、ですか。でも、あの子にもう一度、会えるんですね」 ガヴリール「あの子がもう一度、笑ってくれるんですね」 天使「ああ、約束する」 ガヴリール「……わかりました、お願いします」 ――――――――――――――――――(36/40)―――――――――――――――――― 天使「手を合わせて……」 ガヴリール「こう、ですか?」 天使「ああ、準備はいいか?」 ガヴリール「はい、いつでも」 天使「それじゃあ、いくぞ」 ガヴリール「あの子のことを、頼みました」 天使「ああ……頼まれた」 パァァァッ ―――――― ―――― ―― ――――――――――――――――――(37/40)―――――――――――――――――― ―病室― ピッ ピッ ピッ 老ガヴリール「思い、出した……あの頃の、天使学校時代の……」 老ガヴリール「あの子が、慕っていた、私を……」 老ガヴリール「ようやく、見つけることができた……」 老ガヴリール「これでやっと、みなに……会いにいける」 老ガヴリール「サターニャ、ラフィエル、ヴィーネ……」 老ガヴリール「そして……タプリス」 老ガヴリール「私も、お前たちのところへ……」 ピッ ピッ ピーーーーーッ ――――――――――――――――――(38/40)―――――――――――――――――― ガヴリール「ん……ここは……」 サターニャ「あ、ようやく来たみたいね」 ヴィーネ「まったく遅いのよ、ガヴったら」 ラフィエル「まさか、ガヴちゃんが一番長生きするなんて思いませんでしたね」 ガヴリール「お、お前たち? ってことは、ここが……」 ラフィエル「ええ、ご想像のとおりです。お久しぶりですね」 ガヴリール「そうか……、お前も元気そうで何よりだ、ラフィエル」 サターニャ「来て早々だけど、とりあえず勝負よ!」 ガヴリール「は? 何言ってるんだよ」 サターニャ「景品はそうね、世界の半分なんてどうかしら」 ガヴリール「そんなのやるわけねーだろ」 ガヴリール「お前は何も変わらないな、サターニャ」 ヴィーネ「ガヴ……」 ガヴリール「ヴィーネ、心配かけたな。もう大丈夫だ」 ガヴリール「私はもう……どこにも行かない」 ヴィーネ「うんっ……うんっ……」 ガヴリール「ところで……あいつは?」 ――――――――――――――――――(39/40)―――――――――――――――――― タプリス「……遅いです、天真先輩」 ガヴリール「すまん、ちょっと忘れ物を取りに行っていてな」 ガヴリール「お前は知ってるだろうけど」 タプリス「そうですね、無事にお届けできたみたいで、よかったです」 ガヴリール「あと、もうちょっと、だったけどな」 タプリス「うぅ……先輩の意地悪」 ガヴリール「まぁ、なんだ。その……おほんっ」 ガヴリール「タプリス。また、会えましたね」ニコッ タプリス「あ、あぁ……あの頃の先輩……」 ガヴリール「これをあなたに、返さないと」 タプリス「これは……わたしの髪飾り?」 ガヴリール「付けてあげますね」スッ ガヴリール「やっぱりあなたにはこれが、よく似合います。かわいいです」 ぎゅぅぅ タプリス「えへへ……また先輩に会えて、嬉しいです」 ガヴリール「ええ、私もですよ」 ガヴリール「もう絶対に、タプリスのことを忘れたりしません」 ガヴリール「だから、ずっとずっと、私と一緒にいてくださいね」 タプリス「はいっ、先輩!」 おしまい ――――――――――――――――――(40/40)―――――――――――――――――― SS一覧へ このページのトップへ 感想コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/sexyvoice/pages/349.html
「泊めて」 ロボは何気なしに手にした缶コーヒーを派手に落っことした。 【繋ぎあって未来へ】 いつもの部屋なのに。 何だかいつもと違う場所のように居心地が悪い。 いつもなら並んで見てるテレビも、何となく距離を空けて。 事の起りはこうだ。 昼間近所のコンビニで立ち読みしていると、ポンと肩を叩かれた。 振向くとそこにはニコが立っていたが、普段見た事ない大きめの バッグを持っていた。そして一言こう言ったのだ。 「今晩泊めて」 それからとりあえず訳が解らないまま部屋に戻って来た。 異常に乾く口元を潤そうと、買って来たコーヒーを飲むが味がわからない。 うっかり落してしまったため、凹んでしまっていた。 「そんなに驚いた?」 平静を装っていたものの、ドキッとして思わず噴いて咳込んだ。 「ゲホ…ッて、あのね!ニコ自分が何言ってるのか解ってるの?」 ティッシュを渡しながらニコはさらりと答えた。 「うん、泊めてって頼んでるんだけど」 ロボは金魚のように口をパクパクさせて慌てている。 両親は親戚の結婚式、姉の一海も留守で今夜はニコ1人なのだ。 「だったら、友達のうちに行けばいいでしょ!何で俺ん家なの」 「その予定だったんだけど、その子んち急に予定が入って無理に なっちゃったんだもん。仕方無いじゃん。鍵、一海ちゃんが持っ てっちゃったし…」 「だからって…俺一応男だよ?いくらニコが子供でも、マズイよ~やっぱり」 子供、って言葉にちょっとカチンときたニコは、 「もういい!ロボには頼まない」 と叫んでバッグを手にすると玄関に向った。 「ちょちょ、ってどこに行くのニコ!?」 靴を履きながら 「…公園とか…いざとなったらロボみたいなのが居そうな所もあるし」 ロボは凍り付いた。 「だ、ダダダダダメーーーッ!!!!」 ニコの前に回り込むとドアの前で通せんぼして叫んだ。 「絶対ダメ!テ、テレクラなんてどんな男が来るか解んないでしょっ! も~しょうがないな、き、今日だけだからね。解った?」 余りのうろたえ振りに一瞬キョトンとしたが、次の瞬間「プッ」と吹出した。 「ニコ!何がおかしいの」 「ううん、何でもない。ありがとうロボ」 「ったく」 プッとふくれるロボについて部屋へ上がる。 「(…ネットカフェのつもりだったんだけど)」 まぁいっか、と肩をすくめて荷物を置いた。 多めに作っといてあげるねと言ったニコの作ったカレーを夕飯に食べ、 今度は普段のように並んでテレビを見ている。 だが、2人の口数が少ない。気軽に肩など叩けない、そんな雰囲気 があった。 「あ、の、飲み物いる?」 と沈黙に耐えられなくなったロボが慌ててすくっと立上がると、 いきなりキスシーンが画面一杯に映し出された。 思わず生唾をゴクリと言わせて食い入る様に画面に釘付けになるロボ。 が、横で訝しそうに見つめるニコの視線に気付くと 「う、うわぁぁぁっっ!!」 と慌ててキッチンへ駆込んだ。勢い余って流しへぶつかったため、何か が落ちる音がする。 「い、いかんいかん!落着け。大の大人があれ位でブツブツ…」 そんなロボの姿にニコは半ば呆れて深く溜息をついた。 両手にジュースの入ったコップを持って座ったロボに、ニコはさらりと言った。 「今日一海ちゃんもお泊りなんだよねー」 「ふーん、…って、えっ!?てことはエエエエーーーッ!!!!」 目と口を目一杯開けて頭を 抱えて騒いでる。 「(思った通りの反応するなぁ)」 醒めた目でニコはロボを見た。 「気になる?」 「そりゃあそうでしょ!あ~もう知りたくなかったアアアア~」 一体何を妄想してるのやら。溜息と同時にチクリと胸が痛むのにどきり として、ニコは思わず胸を押さえた。 そんな様子に気付いたロボが 「ん?どうかした?」 と聞いてくる。 「…あのね」 「うん?」 一瞬間を置いて静かに切出す。 「私が誰かとそうなったらどう思う?」 固まるロボ。 「だっ…」 同時にニコの肩を掴んで叫んだ。 「ダメ!絶対絶対ダメ!」 「ロボ…」 何となく安堵したその次の言葉にニコは衝撃を受ける。 「一海ちゃんだけでも嫌なんだからさ~、ニコまで変な想像させないでよ」 ニコの表情が曇っていくのをロボは気付かないまま捲し立てる。 「そーゆーのは大事に取って置きなさい。本当に好きな人に逢うまで」 鼻の奥がつんとする。 「まだ子供なんだからさ」 もうダメ! 「…って聞いてんのニコ……うわっ!何泣いてんの!?」 気付いた時にはポロポロ涙が零れてしまっていた。 「ロボの馬鹿!」 当のロボはただ愕然としていた。 こんな時どうしていいか解らない。 いつもなら頭をくしゃっと撫でてやるのに、それさえもためらわれた。 「私は一海ちゃんじゃない」 「?…当り前でしょ」 「なら私の事は関係無いじゃない」 ニコは何を言っているのだろう。…まさか妬いてる?いやそんな筈は…。 「なら私が誰を好きになってどうなっても平気でしょ」 違う。そんなんじゃないんだ。 「違うよ」 ロボは優しく言った。ニコの頬を伝う涙を拭いながら。 「そりゃ一海ちゃんがなんて想像すんのはいい気しないけどさ~」 ニコはまだ顔を上げない。 「ニコは、そのままでいいんだよ」 「………」 「そのままがいいんだ」 ちらと目を向ける。 「誰かに取られるのは…嫌だよ」 伏目がちに呟くロボが居た。 「今、居なくなったら…淋しいよ…」 「今だけなの?」 我慢出来ずに言ってしまったニコの言葉に驚いて顔を上げたが、 そのままロボはニコの目を見て決意したように答えた。 「ニコが居てくれるなら、ずっと居て欲しいよ」 そう言うと自然に互いに顔を寄せ、短い軽いキスをした。 「ニコが好き」 言ってしまった。 まだ子供だから、自分は待てる自信がないから、 それまで側にいてくれるか解らないから、 言えなかった短く重い言葉。 もう引返せない。一度言ってしまったら、もう今までの2人とは違うのだ。 ロボはまだ涙の残るニコの頬を拭うと、そっと抱き締めた。 「…ロボ」 「うん」 「私を奪っても…構わないよ」 「へっ!?…だ、ダメだって、いくらなんでもまだ早いでしょー」 バッと身体を離すと、両手をバタバタさせて首を振る。 「私がまだ子供だからって言うんだよね、きっと」 ロボは答えない。 「…待てるの?」 「…待てる、と思う」 「辛くない?」 ちょっと考えたが、恥かしそうにちょっと笑った。 そんなロボを見てニコは決心した。 「私は構わないよ」 「ニコ…」 そう言うとニコはそっとロボにもたれ掛っててきた。 これ以上ニコを咎めたら反って傷付けてしまうかもしれない。 そう思ったロボはついに覚悟を決めて肩を抱いた。 「いいの?」 こくん、と頷くニコがただ愛しかった。 そしてさっきよりゆっくり強いキスをした。 キスに酔う間もなく、強くそれでいて小さく震えるロボの 舌がニコの唇を押し開こうとする。 されるがままにそれを受け入れると、ゆっくり舌を絡めながら身体 を横たえて行く。 ツーと透明な糸を引きながら唇をようやく離すと、ニコの首筋にキス をし、舌を這わせる。 ぴく、と肩を震わせ、首筋に流れる心地好い痺れの様な感覚に、 ニコは思わず声を漏らした。 吐息に紛れた小さな喘ぎをロボは見逃さなかった。そのまま今度は ゆっくりTシャツの上から、まだ成熟仕切っていない胸の膨らみに触れた。 恥かしさに唇を噛みながらも、こみ上げる熱さに堪らず 「……んん、っ」 と身体をよじる。 構わずロボは裾から手を入れ、少しの間ブラの上から胸をまさぐり、 背中に手を回しゴソゴソし始めた。 多分、ホックを外しに掛ったのだろうと思ったニコは、背中を反らし てロボの指を招き入れた。 慣れていないのか、それでもなかなか上手く外れないためニコが身体を起した。 「…ゴメン」 恥かしそうに謝るロボを見てニコは少し笑った。 それで緊張がほぐれたのか、服を脱がされゆっくり肩紐を下ろされた 下着からちらとこぼれた胸を見られても、もう恥かしさは無かった。 むしろ、そこに触れて来る唇の感覚を待望んでいたかの様に先程と はうって変わってはっきりと切ない声を上げた。 「あ、あ、んんっっ、…はぁ…」 何度も繰返し漏れる声に興奮し、ロボは夢中で小さな突起に口づけた。 胸の上でロボの頭を掻きむしりながら、舌で転がされる胸の尖端の 敏感さに自分ではない様な声を上げている事実に戸惑いながらも、 確実にその行為にのめり込んで行く。 そのうち、ロボの片手がショートパンツに掛った。 自分が身体を起すと、ニコのそれを脱がした。 それから自分の下着以外の物を全て脱ぎ捨て、 寝転がっていた床からニコを抱上げてベッドに運んだ。 冷たいシーツの感触を背中に感じながらキスの雨を受け取り、ニコは 初めて見るロボの裸に胸を高鳴らせた。 大きな背中に手を回す。 そうしてまた胸に快感が走るのを味わっていた。 「可愛い…」 また激しく舌を絡ませながらキスをし、右手を下半身に回した。 ぎこちなく下着の上からまだニコ自身も触れた事のない部分を指で なぞり始めた。 ぴくり、と反応する身体が示す様に下着の上からでも様子がわかった。 「ねえ、濡れてるのわかる…?」 耳元で囁かれる声に、ニコは恥かしさの余り首を振る事しか出来ない。 それに興奮したのかそのまま下着に手を掛け、一気に足首まで引き下ろした。 「やっ…!だ、ダメッ」 小さな抗議を制するかのように足の間に割って入り、今度は直接 指で濡れたそこを触り始める。 「……っあ、あ、あっ!ダメ、ダメぇ!!」 背中をのけ反らせてさっきより激しく声を上げた。 「ダメなら…止めちゃおうか?」 ちょっと意地悪く拗ねたフリをしてロボは指の動きを止めた。 「………っ。いじ、悪…」 紅潮した顔で睨むニコに微笑みかけてまたキスをし、再び指を動かし始める。 「あ、あああっ、ん、ん、ふっ…うあっ……はあ、」 夢中でロボにしがみついたままニコは理性が薄れてゆく。 怖い。どこまで行ってしまうのだろう…。 得体のしれない不安に駆られながらも、それを止めてくれとは言えなかった。 気付けばロボは唇をそこに押当てている。 「やだ、恥かしいし、…汚いよ…」 「ニコのだったら構わないよ」 舌での愛撫にさっきより更に切ない声を上げるうちに、いきなり背中に 電流が走るのを感じた。 「や、ダメ、…っ!ああああ………んんっ!」 呼吸が一瞬止り意識が遠のいた。 …はあっと息をしながらふと目を開けると、心配そうに覗き込むロボ が居た。 「…イッちゃったの?」 多分そうなのだろう、こくんと頷いた。 「もう、してみてもいい?」 「うん」 「ニコ、力抜いて……嫌ならすぐに言ってね」 ロボが下着を脱いで初めてそれを間近で見たニコは一瞬怯んだが、 深呼吸すると目を閉じた。 だが、 初めてあてがわれた物は予想以上の痛みでニコの中に押入って来る。 苦痛に顔を歪ませながらも何とか耐えるが、逃げ腰の身体は気持ち とは裏腹に上へ上へと逃げてしまう。 ガン!と鈍い音がして2人とも頭を押さえた。 ベッドの上部に頭をぶつけたのだ。 いたた、と頭を押えながら、思わず目を合わせて2人は笑った。 「やめよっか」 ロボは頭をさすりながら言った。 「もう充分だよ」 とニコの頭をくしゃっと撫でる。 「そんな…ダメだよ」 ロボは私の為に我慢するつもりなんだ、と思った。 だってまだ彼自身は治まる様子は無い。 中途半端で辛い筈だ。その優しさがニコには堪らなかった。 「大丈夫、して」 「ニコ」 ロボは本当にこれ以上無理をさせたくはなかったのだ。だが、 「奪ってって言ったじゃない…」 涙を浮かべ始めたニコを見て、決心した。 「わかったよ。もうやめないからね、いいの?」 頷くニコを抱き締め、再びそれを彼女へ納めようとした。 なかなか上手くいかずに何度もキスをしながら、ようやく繋った2人は 夢中で互いにしがみつき何度も相手の名を呼んだ。 広い肩ごしに揺れて見える天井を視界一杯に感じ ながら、ニコは 「も、もうダメだ、ニコ…」 と言って自分の胸に何かを弾けさせて果てたロボにしがみついたまま、 まだ少し残る痛みと高まる狂おしさに涙を浮かべた。 どれ位こうしていただろう。 さっきまでは気まずいだけだった沈黙も、今は不安のかけらもない。 ただ、 こうしているだけで全てがどうでもいい気持ちになる。 互いの心音だけが耳をくすぐる。 「大丈夫?」 「もう平気だよ」 少しだけ赤くシーツを汚してしまったので、新しいバスタオルを敷いた感触が 少しくすぐったい。 「ニコ…ありがとう」 「ロボ…」 優しく頭を撫でながら愛しさに目を細める。 「もう、ニコがもう少し大人になるまで我慢する!」 「…出来るの?」 うーん、としばらく考えては首を振るが、やっぱり恥かしそうに 小さく笑った。 それを見てニコも笑った。 優しく頭を撫でられながら、ニコはこの仕草がとても好きだと思う。 これから私達ははどうなるのかな? 未来のことなんかわからない。 不安じゃないと言えば嘘になる、けど。 私達はきっと繋っていられる。 握りあった互いの手を頬ずりしながらニコは言った。 「ロボ」 「ん?」 「離さないでね」 私はずっと側にいるから “FIN”