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「はっ……ふぁ……やぁん……しんちゃん、そこすごぃょ……あたってるぅ……」 「ここら辺?……う……くぁ……そんな締めたら……」 からだがぶつかる音が部屋に響いている。お互い相手に夢中で、汗だくだろうと気にならない。むしろそっちの方が、強く結びついている実感を持てる。 「ぁっぁ……ひゃ……ぅぁ……いきそ……イっちゃう、いっちゃ……んむ!」 腰を動かし続けながら、唇を重ねる。ふたばはキスが好きだ。特に、イく直前にこういう風にされるのがたまらないらしい。 何だか一体感というか、征服感というか、とにかくふたばが自分のものになっている感じがするので、俺自身好んでやっている。 「んちゅ……ぷぁ、ぁふぅ……あっ……あむ……っは……」 必死になってキスを求めてくるふたば。この熱にうかされたような表情は、俺だけが知っている。そんなことを思うと、自然に俺の方にも力が入るわけで。 「あっ?!あ、あぁ!?イく!しんちゃん!いっしょ、に……ふあああああ?!」 「ぐ……ふたば……っ!!」 キスを止めて余力を全部腰に注ぎ込む。ギリギリまで引き抜いて、一気に奥まで突き上げて、ひたすらそれを繰り返した。 相手の鼓動や息遣いをもっと感じたくて、お互いにお互いを抱きしめて、からだ全体を色んな液体でぐちゃぐちゃにして、名前を呼び合って。 (セックスって、やっぱすごいのな) 頭の片隅でそんなことを思いつつ、俺は果てた。ちなみにしっかりゴムは付けている。いつか生で……とは思うけど。俺達にはまだ早い。 「……はぁ……はぁ……はぁ……」 「……大丈夫か、ふたば?」 「ん……だいじょぶ……」 どうやらふたばもちゃんとイけたらしい。男冥利に尽きる。気怠げなふたばの頭を撫でてやる。今日はこれで何回目だろう。3回くらいだったか。 「えへへ……」 「……そろそろやめとくか?」 「んー……お昼作ってあげて、っておばさん言ってたしね……」 しばらく余韻に2人で浸った後は、証拠隠滅タイム。シーツなどベッド周りのものを急いで洗濯機にぶち込み、使ったゴムやティッシュなんかも念入りに処理。 シャワーは別々に浴びる。一緒に浴びた時もあるけれど、俺もふたばも我慢出来なくなってそのままシてしまい、色々とバレそうになったことがあった。 もう覚え立ての頃のような、サルみたいに相手を求める時期はお互い卒業したのだ。自重くらい出来る。多分。 今日は水曜日。たまたま祝日で、ふたばは朝から俺の家に来ていた。因みに、両親は日帰りで温泉に行っている。姉さんは大学入学を機に独り暮らし中。 つまり、ベタな2人きりのシチュエーション。そして俺もふたばも健全な高校生である。やることの相場は決まっているのだ。 事後処理も一段落してから、簡単に昼食を作る。俺は監視役、というかアドバイザーである。 俺でも分かるくらい、明らかに手順や分量を間違えていたら注意してやる。まぁ間違えたところで、味はほぼ保証されているのだから不思議だ。野生的なセンスとかなんだろうか。 「ごちそうさま」 「お粗末さま。お茶とか飲む?」 「お願いするかな。しかし料理も普通になってきたなぁ」 「ふふーん。私も成長したんですよーだ」 (成長、か) 目の前のこいつは本当に成長したと思う。色々力加減も覚えたし、今は恥じらいなんかもそれなりに見せてくれる。 今日も朝から俺の部屋に突撃してきたのだが、着替え中で半裸の俺を見ると、顔を真っ赤にして慌てて出て行った。 まぁ、その後すぐにお互い裸になったから全く意味が無かったけれど。それとこれとは話が別らしい。 とにかく俺の目の前で着替えようとしたり、ブラジャーも装着せず動き回っていた頃に比べると、大きな進歩である。 そういえば、ふたばが初めてまともにブラを付けたのは、中学の夏休みだったか。あのハプニングは刺激が強すぎだった。部屋で目を閉じると、おっぱいが脳裏を掠める日々が続いたくらいだ。 その原因であるふたばは無自覚で、毎日のようにやってきては、寝不足で具合の悪い俺を心配してくれるのだから、始末に負えなかったことこの上ない。 「……あ、そうだ。しんちゃん、今日買い物付き合って」 「ん?ああ、いいけど」 しばらく昔のことを思い出していた俺は、ふたばの声で現実に引き戻された。買い物か。実に女の子らしい頼みだ。 今思い出していた中学の頃のふたばからは考えられないくらい、女性的になってきたふたばを見ていると、父親のような感慨深さがある。 「で、どこに行くんだ?」 「ちょっと遠出になるかも。〇〇って所」 「〇〇か。俺はあんまり行ったことないな」 「私も無いよ」 「はぁ?どうすんだそれ」 「みっちゃんと千葉氏が行ってるはずなんだ」 「あー……同級会の打ち合わせだっけ」 「っていう名前のデートだねぇ」 「だよなぁ」 あいつらが最近一緒に出掛けているのはとうに知っている。長女が素直じゃないだけで、もうお互い意識しているのはバレバレだ。 「……覗き見とかは止めた方が……」 「違うもん!……多分。ちょっと見てみたい、というか、心配というか」 「違わないじゃんか……まぁ、分からないわけじゃ無いけど」 他人の恋愛に口を挟む趣味はないけれど、千葉も長女も、他人とは言えないくらいには交流があるのだ。俺も正直興味はある。 それに、どちらにも小学校以来やられっ放しだったこともある。ちょっとばかり茶化してやろうか、なんていうあくどい考えが頭をよぎった。 「……覗きはよくない。でも俺達も買い物しに来たってことにしちまえば問題ないか」 「さっすがしんちゃん!愛してるぅ!」 「はいはい……バレた時に面倒だから、一応買い物もちゃんとな」 「実際買いたいものはあるから大丈夫だよ。新しいジャージとか」 「うんうん」 「新作ゲームも出てたっけ。ねぇ、一緒に買おうよ!」 「おう」 「あ、それから下着選ぶの手伝って?」 「ぶふぉっ?!」 ジャージ、ゲームまでは問題無かったのに、いきなり下着とか何を言い出すんだこいつは。思わずお茶を吹いた。 成長したとはいえ、未だにおかしな所で恥じらいや遠慮が無い。たまにこういう不意打ちがくるのだ。いや、狙ってやっているのかもしれないが、とにかく心臓に悪いといったらありゃしない。 「な、何でお前の下着選びを俺が……」 「え?だって、しんちゃん以外の誰かに見せたりしないよ?」 「いやそりゃあそうかもしれないけど」 「あ、『かもしれない』とかひどーい。私はしんちゃん一筋だよ?浮気とかするつもり全然無いし」 「論点をすり替えるんじゃありません」 「あーん、しんちゃんが冷たいっスー♪」 ふたばはけらけら笑っている。ふざけているのだ。最近こういう風にふたばからやり込められることがあるが、その時は決まって語尾が小学生時代に戻る。 この状態のふたばに対して、俺は未だ勝ったことがない。ある意味一番ふたばの成長を感じる瞬間だ。 「とにかく下着選びに付き合えとか、男にとっちゃ相当辛いものがあるんだぞ。悪いがその時は別行ど……」 「……好みの下着だったら、スる時喜んでくれるかなぁ、って思ったんだけどなぁ」 「……う」 「しんちゃん好きだったもんね、半脱ぎでシたりするの」 「い、いやいやいやいや!?あれはほら!覚え立てでとにかくお互いシたくてたまらんかった時期だったろ?!その、俺もマンネリを防ごうかと……」 「言い訳はいけないよしんちゃん。それに私に嘘つくの苦手でしょ?そもそもからして苦手なのに」 確かに嘘は苦手だ。ふたばの言う通り、特にふたばに関係する嘘はすぐにバレる。 昔は単に天然かと思いたかったけれど、搦め手やらを交えてくる今、ふたばが完全に小悪魔であることが証明されてしまった。いや正確には天然の小悪魔と言うべきか。 長女の無駄なSっ気と、三女の変な狡猾さを足して割ったような節があるように思う。次女だからなのかは知らんが、何もそんなものの中間は取らなくてもいいだろうに。 たちの悪いもの2つが合わさったようにも思える一方、シている時のふたば同様で、これも俺限定らしく、全く嬉しいやら悲しいやら複雑な気分である。 「ほらほらぁ、早く本当のこと教えて?」 「ぐ……」 ここまでされても、こういうふたばも可愛いなぁ、と俺自身思っている時点で完敗だ。将来尻に敷かれるのが目に浮かぶ。まぁそれも悪くはないと思うけれど。 「す、好きだよ確かに……」 「何がぁ?」 「くっ……その、は、半脱ぎで、スるの」 「……じゃあ、スる時に私が好みの下着付けてたら?」 「……嬉しいです」 紛れもなく本音である。自分の好きな娘が、自分の好みの下着を付けていて、喜ばない男なんて果たしているのだろうか。 ましてふたばはスタイル抜群なのだ。裸もすごく綺麗だけれど、下着姿、それも半脱ぎだとまた違う魅力がある。何よりエロい。 「だったら、私の下着選び、手伝ってくれるよね?」 「……どんなの買わせても恨むなよ」 もうやけくそだ。こうなったらとことん選んでやる。ふたばでさえ恥ずかしがるようなのを見繕ってやろう。 小中と全力で否定して来たが、最近は開き直ってきた感もある。そう、俺は変態だ。むしろ男はみんなそうなのだ。これに関しては、千葉の人類総変態説を支持せざるを得ない。 「わぁお、しんちゃんったら大胆!」 「はぁ……もう降参だよ。ていうか、千葉達の様子見に行くならそろそろ準備しないと間に合わねーぞ?」 「そうだね。私はこのまま……」 「俺のTシャツだろ。着替えてからちゃんと自分のシャツとジャージを着なさい」 「むー、分かったよぅ」 「全く……さて、俺も支度するか」 「あ、しんちゃん」 「ん?まだ何かあるか?」 「下着買ったらさ、」 「いーっぱい、愛してね?」 そう耳元で囁くと、ふたばはニコニコしながら俺の部屋の方へ向かった。着てきたジャージなんかが置きっぱなしだから当然である。 俺はというと、唖然としてふたばの背中を見ていた。顔は熱いし声も出ない。ふたばもふたばで、背中を向ける瞬間、ほっぺが赤かった。 自分も恥ずかしくなるような台詞を言うんじゃない、と激しくツッコミたいところだが、それが反則級に可愛いのだから許してやろう。どうやら俺は、もうふたばから離れられそうもないのであった。 / 今日は色々楽しかったなぁ。みっちゃんと千葉氏のやり取りは、見ていてなかなか飽きなかった。 日付が変わったくらいの時間帯。まだ眠くなかった私は、昼間の光景を思い出し、布団の中でくすくす笑っていた。 しかしあの様子でまだ一線を越えていないのは、みっちゃんがチキンだからだろう。千葉氏も大変だ。 昔は豚さん呼ばわりされていて、性格は鶏なみっちゃん。これでおっぱいが牛並、とかならバランスが取れている気がするのに。まぁ何のバランスかは知らないけれど。 そこは千葉氏の頑張りどころかもしれない。彼はエロ方面の知識は沢山持っているはずだ。おっぱいくらい何とか出来るんじゃないか。 それにしても、痴女痴女言われていた割に意外にうぶで、エロ方面に疎くなってしまっているみっちゃんなんて、千葉氏との相性抜群じゃないか。 それにみっちゃんみたいな性格なら、スる時は完全に無防備だろう。普段とのギャップからくる可愛さは、グッとくるものがあるに違いない。 千葉氏は変態さんだ。そういうのを喜ばないわけがない。そして好きな人が喜んでくれるなら、みっちゃんも最大限それに応えるだろう。意外と尽くすタイプなのだ。 (変態……しんちゃんもすっかり変態さんだなぁ) 自分から挑発しちゃったから仕方ない面はあるけれど、それでもあの下着はレベルが高過ぎるように思う。 そう、昼間いじめすぎた時の宣言通り、しんちゃんは私が恥ずかしがるくらいの下着を選んだのだ。思い出すだけで顔が熱い。 正直ガーターベルトのオプションまで付くとは思わなかった。店員さんが心なしか面白そうな目をしていたのは気のせいだと思いたい。 しんちゃんがいつか言っていたことだけれど、昔から私はしんちゃんをドキドキさせてばかりだったらしい。私からすれば、今は逆の方が多いと思う。 私がしんちゃんを大好きなこと自体は、小さな頃から変わりない。でも恋人という特殊な距離感が、しんちゃんの魅力を改めて私に実感させる。 単なる『大好き』が、改めて恋人になったことで、より内容を持つようになったという感じ。小学生の時から女の子に人気があった理由を今更噛みしめているところだ。 たまにいじわるをするのも、本音を言うとしんちゃんに会う度ドキドキさせられることへの仕返しで、単なる強がりの一種と言っていい。 しんちゃんはまだ気付いていないようだし、もう少し私が慣れるまで出来れば気付かれたくないものだ。 思い出したり考えたりしてる内に、そろそろ瞼が重くなってきた。明日は朝練もある。しっかり休んで備えるとしよう。 目を閉じて感覚が鋭敏になったのか、ふとごそごそしている物音に気付く。甘い声も漏れている。またみっちゃんだろうか。それともひとか。どちらにせよ、私はあんまり気にしない。 因みに私は、しんちゃんと恋人になってからそういうのを殆どしなくなった。それまでは、それこそしんちゃんを想像して色々シたりすることも多かったのだけれど。 (……もったいないんだよね) この一言に尽きる。基本的にちょっとの期間我慢すれば、想像しなくとも現実のしんちゃんに色々シてもらえるのだ。むしろ我慢した分だけ快感が増すように思う。 そこら辺の認識は、ひととかなり差がある。まぁ、妄想なら色々出来る、っていうひとの言い分も充分理解出来るけれど。みっちゃんの意見は知らない。 なぜなら、姉妹間エロトークが始まるとそそくさと逃げ出してしまうからだ。やっぱり可愛い。私達姉妹の中で一番可愛いのはみっちゃんである、というのはひととの共通見解だ。 (……もしかしなくても、みっちゃんみたいなのが普通なんだろうな) 小学生の時からエロ本を収集していた私とひとの方が、世間一般にはおかしいのだろう。 今日私がしんちゃんに言ったことば。あれはいじわるの延長のつもりだった。実際しんちゃんの顔を真っ赤にすることには成功したみたいだし。 でもあれは、まさしく私の、ちょっぴり行き過ぎないやらしい部分の表れだったんじゃあないのか。いやそうに違いない。 だってさっきから、というか下着を買ってからずっと、頭の片隅で、その下着を付けた私を、しんちゃんがどう扱ってくれるのか、生々しく想像している自分がいるのだ。 どういう言葉を囁いてくるか、どういう風に抱きしめてくれるか、キスは激しいか、おっぱいのどこら辺を責めてくるか、どんな体位でスるか、そもそも回数はどうか。 あぁ、考えただけでゾクゾクしてしまう。私はエッチで、いやらしい子なんだと思う。ただししんちゃん限定だけれど。 しんちゃんも、私に対してだけは存分に変態さんになって欲しい。それを全部受け止めてあげたい。みっちゃん同様、私も尽くすタイプなのだ。 そうだ。昼御飯を誉めてもらったことだし、明日いきなりお弁当を作って行ってあげようか。 しんちゃんのクラスにいきなり現れる私。戸惑うしんちゃん。実は私もドキドキしているだろうからおあいこだ。強引に腕を引っ張って、2人で屋上ランチと洒落こもう。 ―― 『はい、あーん♪』 『よ、よしてくれ、恥ずかしいから』 『誰も見てないのに?』 『そういう問題じゃなくてだな……』 『……しんちゃん私のこと嫌いになっちゃったんスね……しくしく……』 『違うわ!?そしてあからさまな嘘泣きはやめなさい!!』 ―― おぉ、想像するだけでもなかなか良い感じ。それに『はい、あーん』というのはまだ実践したことがないのだ。すごくやってみたい。よし、お弁当決定だ。 そうと決めた以上、早々と寝なければいけない。目覚ましの時間を調整した後、ギュッと目を瞑る。さてさて明日が楽しみだ。 夜は更けていく。ドキドキワクワク、幸せな気分で、私は眠りに落ちていった。
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まだまだ合宿中 京太郎「えーっと……皆さん練習は?」 白望「……休憩中」京太郎の右膝で膝枕 胡桃「そうそう、休憩休憩」京太郎の左膝で充電 エイスリン「キュウケイ、ダイジ!」京太郎の左肩にもたれかかる 豊音「そうだよー。ちゃんと休む時は休まないと駄目だよー」京太郎の背中に抱きつき 塞「……いや、この状況は何?私がお茶淹れてに行ってる間に何があったの?」 京太郎「なんか対局が終わって」 豊音「順位が1位から好きな場所選べるって条件だよー」 白望「2位だった……」 胡桃「ぎりぎり3位」 エイスリン「サイゴ……」 塞「私は!?」 白望・胡桃・エイスリン・豊音「早いもの勝ち」 塞「酷っ!!」 塞「むぅ……4人ともますます積極的になってるな……私も何かするべきなのかな……」 塞「また朝と同じ……いや、同じことじゃ駄目……いっそ私をプレゼントとか……そうだ!」 京太郎「……ふぅ、風呂に先輩達4人が乱入してくるなんてな」 京太郎「しかもタオル無しとか……頭から離れねー」 京太郎「塞さんどうしたんだろ……ま、いいや。とにかくもう寝よう」 ガラッ 京太郎「布団は敷いておいたし、早く布団に入ってと」 バサッ 塞「い、いらっしゃい……」裸リボン 京太郎「!?」 塞「は、早く入って!」 京太郎「いや、あのその格好……」 塞「ああ……時間かかったけど、なんとか1人で巻いて……」 京太郎「そうじゃなくて!色々、見えそうってか見えてるってか……」 塞「あ、朝も言ったけど……好きにしていいよ?」 京太郎「あ、あー……えっとですね……」 塞「わ、私を……あげるから、ね?」 京太郎「塞さん……俺」 ガラッ 胡桃「いた!って塞何やってんの!?」 白望「そんな格好……私も脱ぐ」 豊音「わわ。じゃ、じゃー私も…」 エイスリン「マケナイ!」 京太郎「ちょ、なんで全員脱いでるんですか!?」 塞「そーだよ!それに皆はお風呂行ったんでしょ!次は私!!」 京太郎「そういう問題でも無いと思いますけどね!」 白望「京太郎……嫌?」 京太郎「お、おもちが……やはり一番大きいのは……」 豊音「わ、私も負けないよー」 エイスリン「ム……ナクハナイ!!」 胡桃「今誰見てそれ言った!?」 塞「駄目!!京太郎には私をあげるんだから!!」 宮守の京太郎争奪戦はまだまだ、まだまだ続く カンッ!!
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廃車手続きした方がいい車というのは、どのような車を指すのでしょう。 端的に言えば、完全に動かなくなった不動車ということになります。 事故などで、中も外もいかれてしまった車は、廃車にするしかないでしょう。 ただ、廃車にするかどうか微妙な車もあるので、何でもかんでも廃車にすればいいというものではありません。 あくまで、廃車は最後の手段であることを忘れてはいけません。 たとえ事故車であっても、中身のパーツは充分に生かせる場合があります。 日本の車は海外で人気があるので、事故車でも最近は買取してくれるところがあります。 事故車専門の買取業者もあって、そうしたところに依頼すれば、廃車費用がいらないだけでなく、逆にお金がもらえる場合があります。 つまり、廃車手続きをする前に、色々と検討する手段はあると言うことです。 不動車や事故車でも中古車業者で買取ってくれる可能性はあるので、まずは、動かせなくなった車でも、すぐに廃車手続きをしないで、中古車買取業者に問い合わせをしてみることです。 動く可能性がない車でも、部品が生きていれば、買取してくれる可能性があります。
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182: 名前:サスライ☆09/06(日) 19 01 59 私は太子と呼ばれた男をジィと見てた。黒髪のオールバックでタレ目、そして貴族特有の白布に金を散りばめた中華服を手本の様に着ている。 私とは遠く離れた存在であり助ける理由等、天文学的数字が関与する程あり得ない。明日は水虫に侵された火星人が侵略してきてもおかしくは無いだろう。 「何で助けたのさ?」 「コイツが税を不当に懐に入れていて罰を与えようと探していたら偶然貴様が殴られそうだったからだ」 彼は冷たく淡々と、私を掴んでいた役人をカカトで踏みながら答える。グリグリと…。 彼は役人を片手で担いで私に背を向ける。役人は都に戻され、新しい役人が都から来るのだろう。 「と ころで、何で殴ったのさ」 「…?」 「殴らなくても一声かければ良かったじゃないのさ」 問いかけに彼は歩くのを止めた。彼は上を向いて担いでいない方の手でアゴに手を当てた。 そして数秒して、彼は役人を地面に落とし、肩や手やらの動きから推測するに懐から何やら取り出して書き始めた。 すると私に振り向いて紙を渡す。字が書いてあるが勿論学の無い私にそんな物は読めない。 「これを、役所まで持っていって『神封太子の命令だ』と言って来い…。 マトモな飯くらいなら喰える」 そう言って彼こと神封は、また役人を担いで去って行った。 突然過ぎて呆然として、結局答えを聞いていない事に気付く。 184: 名前:サスライ☆09/06(日) 20 40 50 183 そうですか。そりゃ嬉しい♪ならば、少し頑張りましょう † † † 役所に例の紙切れを手渡すと、手渡された側は猜疑(サイギ)の表情を私に向けた。私は学が無い分そういう感情を読むことには自信がある。勿論役人を殴った時の神封の感情も。 あれは『焦燥(ショウソウ)』。則ち焦りだ。 ワキガに侵された木星人が近々攻めてくる予定で、それに焦ってるのかも知れないといったのが私程度の予想だが、学の無い私だから恐らく違うだろう。 無駄な事を考えている内に何やら部屋に案内された。向こうは、はじめと打って変わって敬語を私に垂れる程に頭が低い。猜疑は残っているが。 「こちらにございます。お嬢様」 「…凄い」 私はアゴの骨が外れるかと思う位に呆然とした。 何やら柔らかそうな布団と敷物に、ヒノキの机に棚。棚には沢山の本がある。そして埃らしい物は見当たらない。 「これ、タダで使って良いの?」 「ハイ。太子の命令で御座います」 何か泣けてきた。恵まれた事はあっても、ここまで恵まれた事は無い…。 掌を顔に当てて膝を付く。自分の感情がよく解らなくなってきた。 その時、後ろから神封と同じく私より少し歳上っぽい男の陽気な声がする。 「たっだいま~。って、俺の部屋で何してるの~?」 私はバカだから、神封の感情は解っても考えは解らない。てか、何と無くだけど頭が良くても解らない気がするよ…。 187: 名前:サスライ☆09/07(月) 13 38 41 俺の名は千鳥 笑(チドリ シャオ)。15の若さだがこの地方の警備兵の師範をしている。 何でそんな奴がそんな役職かは、俺が代々王族が使う千鳥流武術の長男だからであり、何でこんな田舎にいるかは、千鳥流の長男は、若い内は独りで修業する義務があるからだ。 とは言え、腐り切った事に定評のある都に居るよりはずっと気楽だ。田舎の山で一週間程修業して、役所に用意された余り使わない部屋に帰ってくる。 で、帰ってきたら知らない奴が俺の部屋で泣き崩れていた訳なんだが、どう解釈してくれようか。 困り顔の俺に役人が何やら「太子が、コレを師範に」と、紙を渡して来た。 あのインテリ野郎の封が俺に? 見たときは目が開きすぎて血の涙が出ると思った。デカイ熊に出会った時より驚きだ。そこに書いてあるのは、要約するとこんなトコである。 「笑 か。お前の部屋をコイツに譲れ、お前に選択肢は無い。太子命令だからな。 どうせ使わないだろうから俺の部屋じゃ無くて、お前の部屋にした。 お前は仲良く大自然でパンダとでも一緒に寝床を探せ」 破りてぇ…。 その時、俺の中で何かが弾けそうだったが、泣き崩れていた奴の顔が目に入る。 「やっぱ、ダメ…?」 兎、小鳥、猫、色々と比喩出来るがそんな弱々しい表情で俺に語りかける。 封のヤロウ…、俺がこういう表情は弱いって知った上でやってやがるだろ。 くれてやるよチクショウめ。 188: 名前:サスライ☆09/07(月) 15 10 37 千鳥師範はその後、客間で寝ていて、何故か頻繁に私に会いに来てくれる。因みに神封太子に出会うとよく殴り合いになるが挨拶の様なモノらしい。 偉い人は何を考えているか本当に解らない。 ココに来て三ヶ月が経つ。こう時間が経つと御伽の国の様な感覚にも慣れてくる。未だに不満を感じて、ジロジロ見てくる役人が居るが千鳥師範や神封太子曰く、「俺等も似た様な扱いだから気にするな」の事。 ところで、私に名前が出来た。銀世界になった田んぼの油絵を見てたら、何か勝手に『銀田一 雪』と命名された。照れ臭いが気に入っている。 さて、三ヶ月とは意外に長いモノで、ここの環境に慣れてきて自然に『神封太子』、『千鳥師範』と呼ぶようになったり、敬語になったり、メイド服になったりしている。 千鳥師範と神封太子に着せられて、その後二人はメイド服の好みについて二時間程熱く議論した挙げ句に殴り合いになった。 偉い人は何を考えているか本当に解らない。 そう言えば、ある日の事だ。私が神封太子に本を教わっている最中こんな話になった。 「神封太子なんて止めてくれ」 「……え?」 「そ うだな。神封・兄、繋げてシェンフォニーとでも呼んでくれ」 「そんな!?恐れ多いです神封太子!」 「太子命令だ」 「あう~」 神封太子改めシェンフォニー様は、その呼び方を偉く気に入っていたが千鳥師範がそれを呼ぶと殴り合いになる。うわぁ、ミンチより酷ぇ(建物が壊れる的な意味で)。 偉い人は何を考えているか本当に解らない。 190: 名前:サスライ☆09/09(水) 14 42 38 「フッフッフ、甘いね♪ギャグが小説で小説がギャグ。小説とギャグは表裏一体にして宇宙の神秘なのだよ!」 「いきなり何を電波に目覚めとるんスか、馬鹿主!」 過去を説明途中に、レスに返信とか言った感じの電波に目覚めたシェンフォニー様に対して私はチョップした。 彼が痛そうに頭をさする状況、兎に角話を続けなければグダグダになるといった危機感を感じた。昔、毒キノコで死にそうになったのがフラッシュバックする。 「…と、言う訳で私がシェンフォニー様に拾われた後です。 シェンフォニー様に学問を教わり、笑師範は相変わらず修行三昧で、たまに帰って来ては貴方と殴り合いになりました。そんな日常は幸せでした」 シェンフォニー様は指を絡めて下を向き、頷く。まるで懺悔する様に。 「ああ、大体思い出して来たよ。笑とは良く下らない事で喧嘩したっけな…。 懐かしい」 シェンフォニー様は下を向いている上に髪で隠れて表情が見えない。只、泣いてる様にも見える。【今は亡き】笑師範の事を、思い出したのだろう。 あの後の戦争の悪化。そこでシェンフォニー様は彼を守れなかった。救えたけど、守れなかった。それを思い出しているのだろう。 私は黙って紅茶を注ぐ。 191: 名前:サスライ☆09/10(木) 21 09 50 HOST a2P2WiEOwpslpqha_softbank.co.jp 私と千鳥師範とシェンフォニー様で部屋で話していて、シェンフォニー様が輸入品の紅茶を飲んでいた時だ。千鳥師範が言った。 「トコロで、封がシェンフォニーなら俺は下の名前で読んでくれよ♪」 「分 かりました笑師範。」 「あっるぇ、なんか封よりスムーズだよ~」 「お前は下の名前で呼ぶ事に違和感が無いからな」 身長的な問題と背を曲げてるか立ててるかの違いで千鳥師範改め笑師範が見上げる形になる。シェンフォニー様は相変わらず優雅に紅茶を啜っていた。 「アッ ハッハ。自分が上だってのかコノヤロー」 「そこまで理解するなんて。明日の天気は空から大量の胸毛でも降ってくるかな」 「よし表に出やがれコノヤロー」 「あ、雪。紅茶は処分してくれて構わない」 笑師範が親指で示した先に向かう時にシェンフォニー様は私に言い残し、直後殴り合いの音がする。ワッショイワッショイ的な。 一人部屋に残され紅茶を飲みながら窓を見た。以前居た村が見下ろせる。色々幸福に変わった。 しかしこのままで良いのだろうか。何時からか生きる為、私の中には誇りが刻まれていた。【私は自分の力で生きている。だから偉い】と。 今の自分はどうだろう。まるで私らしく無いと思う。しかし紅茶を飲み干した。 「このままで良い訳ないなあ…」 一人ごこちる。 196: 名前:サスライ☆09/12(土) 17 17 49 私は向日葵 社。 早速だが、ひまわり研究所には貴族が来る事は無い。有るとしたら前上司の神封太子が友人をからかう為に商品を購入する位だ。 しかし今日は別の貴族が来ていた。小太りの貴族は部屋見て、機材見て、眉間にシワを寄せて散々文句垂れた後にやっと嫌々席に付く。 「態々都からお疲れ様です」 「ああ。だが私は忙しいのでね、直ぐに都に帰らねばならない」 つまり都にサッさと帰りたいって事だろうに。素直に言わない所がまた頭に来る。 さて、貴族本人が来たと言う事は最近の戦争の押され気味に拍車が掛かった件だろう。技術者として私を求めているのか。 だが私の都に帰る気は0どころかマイナスだ。しかしこの陰湿な貴族は私の心を動かす。 「単刀直入に言おう。君のカラクリを全て譲渡したまえ。で、無ければ都に来たまえ」 つまり『全て渡せ』。 そういう事か。コイツ、井時が私の弱味と知っている!もし、断って都に行かなくても普通に井時を兵士として使う気だ。 貴族のほくそ笑みがシャクに触る。私は冷や汗を垂らす。汚い手で心臓を握られた気分だ。 197: 名前:サスライ☆09/12(土) 18 21 08 満月を眺めるボクは井時 晶。社と一緒に住んで暫く、一つ解ったのは社は意外と面白い。からかいながらも親しみを。そんな毎日は充実だ。 これから月光浴にでも行こうかと考えたその時、社の声がして振り向くと、彼は大きな旅行鞄を担いでいて突然口走る。 「…これには札束がギッシリ入っている」 「銀行強盗でも、した…?」 ボクは冗談を吹っ掛けるが無反応。これは解る、覚悟した人間だ。 そして今日の朝に起こった事を社は言うと心に衝撃を受けた。何時かそうなるのでは無いか頭ではあったが、心が認めたく無かったのだ。 ボクは此処に来て始めて顔を焦らせる。対称に腹をククっているのか社は冷静だ。 社は旅行鞄を押し付けると指を裏口に向ける。 「表口だと見られる可能性があるからな」 「そ、そんな…」 「喧しいぞ井時 晶!私をまた逃げる臆病者にする気か!」 社の目には独特の真っ直ぐな光がこもっていた。人間だった時に見てきた。テコでも動かない、武人の目。そんなボクに出来るのは一言を浴びせる位だ。 「死ぬなよ…?」 裏口の扉を開いて、ボクは駆ける。夜風が染みて月光は遠ざかる。その時、聞こえる筈の無い社の声がした。 「幸せに、なれ…」 198: 名前:サスライ☆09/13(日) 18 40 17 私は都に行かない事を告げた。すると貴族は面白い位に顔を真っ赤にして机を叩く。おお、脂肪まみれなクセに強そうだ。サンプルを取ってみたいね。 「人形は何処かね!?私は『全て』のカラクリと言ったんだ。帝国直々に渡された人形が有る筈だろう」 いや、偶然の産物で帝国のモンじゃ無くね?何なのそのジャイアン理論。そういやコイツ、ジャイアンみたいな顔してるな。やはり歌で窓を割れるのだろうか。 兎も角。これで無いと言えば反乱とでも見なされ最悪極刑だ、でもそんなつもり等はサラサラに無い。この貴族のカリスマ程も無い。極刑になりたくないのは兵士時代の生への執着か、はたまた井時の一言か… 私は逃げる臆病者にはならない。研究者には研究者なりの戦い方がある。研究者はアイデアの世界、私もそれに習おうか。 貴族の濁った目を見て、うわ、マジで汚い目付きしてんなコイツ。まあ、汚物を見ながら告げる。 「人形は実験に使った結果、壊れてしまいました」 「何だと!?どうしてくれるのかね」 臭ぇ息吐くなぁ。コイツ生物兵器かなんかじゃね? 「まあ、お陰で人形と同等の物を作る方法を見つけました」 懐から取り出した資料を渡す。この交換条件にて、輪帝国は人形兵の投入によりエピソード共和国に対し、一時的に勝利を納めるのである。 199: 名前:サスライ☆09/14(月) 21 10 49 ひまわり研究所に日光が差し込む。照明無しでも物が見える太陽の偉大さを感じると同時に、自分の小ささを思う。 取り敢えず一段落ついて今、突然に思ったんだ。もしかして私はマゾではないのかと。 これを聞いても引かない勇者諸君に理由をお聞かせしよう。取り敢えず私は椅子に腰を掛けて足を組んだ。前方机にあるコーヒーに手を掛けて砂糖を入れようとする時に慌てて砂糖の容器の中身を舐めて砂糖と分かる。 あれは井時が来て間もない頃だ、コーヒーを飲もうとして砂糖を入れたら実は井時によって塩にすり替えられていた。そして次の日、また塩にすり替えられていた。また次の日、流石に三度目は無いなと思いつつも砂糖を舐めたら、味の素だった…。 と、言う訳で確認が武道家が朝起きて正拳突きを練習するような領域にまでなったのである。 しかしこう何も無くては退屈だ。何か面白いモノでもないか。 ボゥとしていると扉を叩く音がした。また銀田一か。私は嬉し半分で扉に向かった。 200: 名前:サスライ☆09/14(月) 21 30 51 【200レス記念番外編】 と、言う訳で200レス行きました~!皆様のお陰です♪ 司会は私、辰凪館のメイド長にしてシェンフォニー様のブレーキ役、銀田一 雪でお送りします。 「アッ ハッハ、何を言っている?それではまるで俺にブレーキが無いみたいじゃないか」 いや、その通りですからね!?シェンフォニー様、貴方の悪行の数々はバッファローマンもビックリですよ、砂糖の容器の中身を砕いたデンプンと入れ替えたり。 「バッファローマンとは、作者が産まれる前の懐かしいネタだね。 あ~、そうそう。井時に話を聞いたら対抗心が燃えてきてさ」 いや、んなコトに対抗心燃やさなくて良いですから!どこの二番煎じ連載漫画ですか!?打ち切りの臭いがプンプンしますよ。 「うん。流石に俺も飽きてきた、そこで編み出したのが必殺技、『シェンフォニーウェーブ』だ」 何ですか、その荒ぶる鷹の構えは…、そして何ですか、その中二病丸出しの名前は… 「先 ず、雪の紅茶と緑茶を入れ替えて…」 いやいやいや、そりゃ流石に無理がありますって! 「大丈夫。ソ連の編み出した色料は緑茶を紅茶に見せれる」 この世界にソ連無いでしょ、てかソ連スゲェ。 「最後に一つ。実は俺にブレーキは付いてるが雪の反応が面白くて、ついアクセルを踏んでしまう」 突拍子無いけど、取り敢えずはハリセンで殴らせて頂きます。 201: 名前:サスライ☆09/15(火) 16 18 52 「何故、私の助手なんぞになりたがる?所謂日陰者の助手なんぞに。だ」 「だからです。貴方程の人が敢えて日陰者にあるから日陰者だった私はそれを選ぶのです」 上のやり取りを社さんとして、銀田一 雪、ひまわり研究所の助手に就職成功。このニュースはシェンフォニー様と笑師範の間を稲妻の、もしくはダオスレーザー(初期ティルズのボスの技。トラウマ並の破壊力を誇る)の如く駆けたらしい。 直後彼らは呆然としつつ、お互いがお互いの頬をつねり、殴り合ってやっと夢で無いと理解したそうな。 偉い人は本当に何を考えているか解らない。 初期格闘ゲームの様に痛々しい青アザを顔に付けた二人は口々に言う。異常な顔と常識的な台詞のギャップに吹き出しそうになった。 しかし何とかこらえる事に成功した、ミラクルメイドパワーで。 「助手っつーとヤッパ薬を作ったり、ネジを締めたりすんの?」 「いや、正統な授業な訳では無いから雑用だろう。資料の整理やデータ作り、他には掃除だな」 やはり、こういう事はシェンフォニー様の方が一枚上手らしい。因みに、太子権限で私を正統な学士にする事も出来るが、私が自立したい気持ちを組んでか一度もその話題にはならなかった。 204: 名前:サスライ☆09/15(火) 20 34 23 私が社博士の助手になって暫く、植物データの採集に山に来た訳で山に来て早速見たのが、笑師範の立ちションだったので思わず悲鳴を上げて後頭部にハイキックを喰らわし顔面を木に打ち付けさせて気絶させてしまった。 気絶している笑師範はその内起きるから良いとして、私も随分乙女になったモノだと思う。博士に「思ったよりマトモだ…」と言われた事を思い出した。 数分後、笑師範が起きると記憶が飛んでるらしく、必死に誤魔化そうと世間話を挿入した。どんな流れかこんな話題になる。 「笑師範って修行で山に居るんですよね?」 「違ってたら仙人か、山マニアか、なんかだな」 「何故、笑師範は修行するのですか。義務だからですか?」 「話 聞けよ…。まあいい、ほら、アレを見ろ」 指の差す方を見るとそこは村が上から見れた。山だからだ。田畑が微笑ましい田舎だと思う。 「地 図なんか紙に書かれた物よりも、俺にとっての世界とは俺の認めたモノだ。そしてあれも俺の世界…」 正拳、回し蹴り、裏拳、正拳。笑師範は舞う様に技を空間に放つ。暖かい風が私達を、否、世界を包む。 「この美しい世界を守りたいんだ」 「笑師範…」 貴方に「美しい」は流石に似合いません。と、言おうとしたがKYな気がするので止めておいた。 207: 名前:サスライ☆09/17(木) 14 33 46 シェンフォニー様(ついでに笑師範)の所には本が兎に角沢山あったがこの研究所は量より質と言った勢いで珍しい本が沢山ある。 資料整理をしている最中についつい魅入っていたら後ろから都からの手紙で作ったハリセンで叩かれるくらいだ。 今回見つけた、そんな仕事をサボるきっかけになる本がこの『未確認生物集』である。歴史的に考えると確実に居る筈だが発見例が皆無な生物をまとめた物らしい。 開くとこれまた素敵なゲテモノをスケッチした皆様、しかしたまにマトモな生物もいる。見た目ならヒトと変わらない生物も居た。 「未確認生物、【オーガ】。興奮すると角が生えて強靭な力を…」 へぇ。【鬼】って実在したんだなぁ。驚いていると廊下を駆ける音がした。え、まさか監視カメラでもついてんの!? 扉をバンと開ける音がする。心臓が跳ね上がるというのは、もしくは喉から手が出るとはこんな感じか。いや、後半違うけど取り敢えずは驚いて背中に本を隠した。 「銀田一!…」 何だろうか酷く焦った声。イヤな予感がして後ろを見ると、目を見開き息を枯らす予想以上に焦った博士が居た。 「… エピソード共和国が攻めてきた!ここらは戦場になるぞ!」 私は凍り付き、本が床に落ちる音はヤケに乾いていた。 208: 名前:サスライ☆09/17(木) 16 06 48 俺、神封は不快だった。朝からヤケに倦怠感がある癖に仕事をしなければいけないからだ。嫌な事とは続くモノで、今日は笑が山から帰ってくる日で、その笑は今私の部屋でゴロゴロしてる。不快な余り気に入りの万年筆を指でへし折ってしまった。 「封~、暇~。なんか面白い話して~」 「鏡を見ろ。私と話をするなんかより、ずっと面白いぞ」 「あ゛~、 んだとコンニャロ表出やがれ~」 「よし。更に面白い顔に…ん?」 殴れば少しはスッキリするか。楽しみを目の前に嫌なニュースが立ち塞がる。 俺が今やっている仕事とは軍に用いる鉄兵(人形兵には劣るが活躍する量産品)の承認と、外交に関する報告書に対する意見なのだが、何か引っ掛かる。取り敢えず軍の師範をしている笑に聞く。 「…なあ笑よ。人形兵が配備されたのは何時辺りだったか」 「んあ。確か2年位前だったんじゃね?」 「……そうか」 人形兵配置位置、他国からの情報、都の内部情勢。それ等から今の敵の動向を推測する。 ここは田舎でロクに人形兵が居ない。居ても鉄兵程度だ。 エピソード共和国は人形兵、鉄兵に苦戦してから引くが調子に乗った都は追い討ちをかけている。 「ヤバい!至急偵察部隊をこれから言う位置に配備しろ、人形兵開発者の社博士と太子である俺を狙ったエピソード共和国が攻めてくるかもしれん」 嫌な事とは続けて起こるものだな。 銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き9
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154: 名前:サスライ☆08/10(月) 22 33 39 俺、シェンフォニーが教師をやって思ったのは「色々なヤツが居るな」と、言う事だ。 実のところ、真面目に授業を受けている奴なんて一握りで、他の奴は自分の事に精を出す。 つまり、自分の事で精一杯なんだろうなぁ… そんな奴等を見て、それぞれの生き方というものを学ばせて貰った。 記憶喪失に多大な刺激となる。 結局は他の奴から学ばせて貰うのが一番手っ取り早い。 鼓動がする。 この鼓動は何だろう。 思いあたる事と言えば昨日、井時のプリンを食べた罪を雪になすり付けた事だ。 まあ、違うだろうが。 と、言うよりもそんな日常のネタで終わらせたい。 井時が黒くて、雲吉がフリーダムで、 そして隣には必ず雪が居る。 そんな日常の一コマであって欲しいが、違うことは本能が告げている。 『生徒』とは、自分を探す事が多い。そんな奴等に向き合って記憶喪失に多大な刺激を受けた。 記憶が、戻って来ている…。 脳裏に場面がページを高速で捲るように巡る巡る浮かび上がる。 嗚呼、俺は確か 死ぬ為に戦場に向かい、そして…!! しかし、今の俺は廊下を見る。これから廊下を渡り、職員室に行かなくてはいけない。これが今の俺だ。 俺は俺だ。 だから一息、言葉をもらした。 「ま、ど~でもいっか♪」 足取りは何処となく軽い。 155: 名前:サスライ☆08/11(火) 15 28 06 「彼はそう簡単に変わらない」 と、先程自分で言ってみせたが不安の波が再び押し寄せる。 波は私の心臓を呑み込み、暗くて冷たい世界へ連れ去ろうとしていた。 いけない。 何を弱気になっているのだか、何か別の事でも考えて明るくなろう。 そう言えば晶ちゃんが何か私を見て言っていたな。プリンがどうのこーの… 「… あ゛!まさか、私がプリンを食べたことになってる!?」 結論に達する。私の心臓は一気に跳ね上がり、その衝撃波はチッポケな波なんか惑星の向こうまで跳ね返す。 確かシェンフォニー様は、まとめをする為に職員室に向かっている! ならばこの先の廊下だ。 今日一日雑用をしていたから地理はお手の物。 首を洗って待っておれ! とか、考えている間に見えるのは歩くシェンフォニー様。 私は足音を東洋の隠密顔負けの忍び足で消して、素早く近付き、ハリセンを振り上げ… そしてズベシャッ!と転ぶ。 しかも一回転して転ぶ。新体操なら10点だ。 「な、なにぃ…」 「ふっふっふ…雪、甘いな!俺が雪の臭いに気付かないとでも思ったか! バナナの皮を仕掛けさせてもらった!」 なんか発言が変態チックですよ!?馬鹿主! 156: 名前:サスライ☆08/12(水) 17 43 31 私は呆れていた。それを形容するなら未だに「チェキラ★」を使う人間をリアルで見た位の呆れだ。 もっとも、シェンフォニー様ならやりかねないが。まぁ、今はシェンフォニー様に呆れている訳では無い。実際「チェキラ★」をしてる訳では無いし。 だからと言ってバナナの皮を使った事に呆れている訳でも無いし、 それに私が地味に引っ掛かった事に呆れている訳で無ければ、 シェンフォニー様の顔に私がバナナの皮により滑った時拍子に手からスッポ抜けた鉛仕込みのハリセンが上から直撃して、彼が頭を押さえてながらも言葉にならない悲鳴をあげながら廊下を転がっている事に呆れている訳でも無い。 自分がシェンフォニー様の記憶【なんか】で怯えていた事だ。 プリンの事なんかで吹き飛ぶ様な悩み、ある意味自分の罠で自爆している彼。 そんな事に何を真剣に悩んでいたんだか…。 こんなのに悩む自分が世界で一番頭が悪く、そして幸せなのでは、ないのかと感じる。 決めた。 言おう。グジグジ悩む位なら。 彼の記憶を言ってしまおう。 私は心で気合を入れて、 ハリセンを拾い上げ、 取り敢えずシェンフォニー様に追い討ちの一撃をかけた。 流石に手応えがあるなぁと思いました…あれ、作文? 157: 名前:サスライ☆08/13(木) 23 10 34 この世はモノクロだ。それで十分だ。 俺、新木 タオはそう思う。 ゴチャゴチャ色を塗りたくったトコロで本質は変わらない。 葉だって、季節毎に色が変わるが結局は葉でしかない。 シェンフォニー教諭の隣に雪さんが居ようと、彼は俺と同じ肉食獣。 …嘘だ。 そうやって自分を誤魔化すことでしか己を認められない。 嫉妬している。 雪さんは暗黒に落ちるか、空白になるかのシェンフォニー教諭を染めてくれている。 第三の選択である『色』が存在している事に嫉妬しているのだ。 そう、世界がモノクロに見えると言うことは自らがモノクロであると言う事に他ならないのだ。 嗚呼、暗いなぁ… 嗚呼、何もないなぁ… サングラス越しの世界は世界を物理的にモノクロにした。更にモノクロに感じて単なる廊下の冷気を極寒の吹雪に変えてみせた。 その時、救助の声がする。 「タオー!! 太郎をバナナの皮に滑らせてやろうぜ★」 文哉の声。そこで感じるのは彼のキョトンとした表情。 「あれ、どうしちゃったのぉ?何時ものノリはどーしたノリはぁ!」 ふと我に帰る。そこに太郎の声が来た。 「声がでかくて全部聞こえてるんだけど~?」 …世界は色で決まる訳では無いのかもな。こうして音もあれば、感触もある。 「よし、じゃあ太郎にバナナの皮をぶつけてやろう♪」 俺は何時も通り馬鹿馬鹿しい声を上げる。 サングラスの向こうに暖かさを感じた。そんな一日であった。 158: 名前:サスライ☆08/13(木) 23 13 19 第六話 完 159: 名前:サスライ☆08/15(土) 13 44 57 第七話 ボクは誰だっけ? 始めに浮かんだ疑問。視界は低い事から背が小さい事が分かる。 この人達は誰だっけ? 周りにはライフルを構える傷だらけの4人程の男達。 ここは、ドコ…? 自分の尻を見ると、そこには柔らかい椅子があった。 これは知っている。これはボクの様な【アンドロイド】の休眠装置。通称【カプセル】だ。 そのきっかけで記憶が芋ヅル式に脳内から発掘されてくる。 と、その時、ライフルを向けてた男達が邪魔する様に口を動かす。 「貴様は何だ!? エピソード共和国の手の者か!?」 エピソード共和国…確か、ボクの知ってるのは護る騎士の国であり、自ら戦争をするよーな国じゃなかった。 しかし、ライフルに刻まれた年代を見ると此処はどうやらボクが【休眠】してから15世期程後の世界らしい。 ならば道徳観位は変わっててもおかしくない。 つまり、情報が少なすぎるんだ。 情報を聞くためにボクはリーダー格の男のライフルを奪い、後ろに回り込み、銃を突きつけ、口を開く。 「… 君達の国ってさ、15世紀前はどんな名前だった?」 どうやって動いたか。 高速で動いたんだ。 少し、人間の目では捉えきれない速度なダケだけど。 これが、ボクと輪帝国の出会いだった。 その後、ボクの身体を基に人形兵や鉄兵といった輪帝国の主力平気が作られる事になる。 160: 名前:サスライ☆08/17(月) 18 26 12 銃口を更に押し付ける。しかしリーダー格の男は怯えの表情を取らなかった。 寧ろ周りの小物臭い部下の皆さんが怯えてる位だ。「フヒー!」と。 「ふむ。 取り敢えず私達の国は15世紀前は~」 リーダー格の背が小さくて、伏せ目の白髪。しかし若い男は淡々と説明する。まるで自分の命の事等、他人事であるかの様に。 取り敢えず状況は把握した。 どうやらエピソード共和国と輪帝国は貿易をしていたそうだが、エピソード共和国が交易のメインに使っていた品物を輪帝国が開発出来るようになり、買わなくなった。 しかし押し売りをしようとするエピソード共和国。 買わない事を理由に戦争。 エピソード共和国は本来軍事国家であり、輪帝国は押される一方である。 「つまり押し売りの逆ギレなんだ?」 「うむ。 向こうは軍事に費用をかけている訳だから他が疎かになる。 これで貿易が成り立たないと軍備を縮小しなければいけないからな」 ボクのカプセルが埋まっていた砂地よりも砂っぽい表情で彼は冷静に分析をしている。 この時は訳も分からず同調した。今思えばボクも似たような境遇だったからかも知れない。 自分がどうでも良いと言う意味で。 それこそ、この小説の話数が実は間違っていのを作者が気にしてる位にどうでも良い。 161: 名前:サスライ☆08/19(水) 16 18 38 ジリジリと日が肌を照らす。海辺のワカメだったら臭いがキツくなる温度だ。 日光はは二つの小さな人影を作った。一つは銃を突き付けているボクで、もう一つは銃を押し付けられた隊長。 あ、ついでに彼の部下とかも居たっけ。どうでも良いけど…。 ボクは彼等に問い掛けると隊長のみが呆然としていなかったので答える事が出来た。 隊長はその死んだ魚の様な眼を持つ顔から、腐ったワカメの臭いがしそうな台詞を吐く。魚だけに淡白に。 「ふむ。白旗を振るから捕虜、だろうな」 「捕虜になったらどうなるの?」 「酷い扱いだろう。腐ったワカメが食事に出てもおかしくは無いと思うのだよ」 「君はそれで良いの…?」 「ふむ。私は隊長だが、錬金術師でもあってね。 大好きな実験が出来ないのは残念だが、それだけだ」 15世紀前の物語の台詞にこんなのがあった。 人は自分を見る事が最も不快な事である。 だからボクの顔は無表情だが(影の薄い部下に後から聞いた。因みに影の薄い部下は丈治とは関係無い)、 コメカミには青筋が浮かび、 ライフルの柄で彼の後頭部を引っ叩くとライフルは手元で震える振動を起こす。 ところで、『震える振動』ってナンダロ… 162: 名前:サスライ☆08/22(土) 01 35 25 謎の少女に頭を打たれた衝撃だろうか、隊長である私には名案が浮かんだ。 アイデアとは、過去の様々な体験が寄り添い、突拍子も無く浮かんでくる物だとしたなら、 このアイデアは殴られたせいだ。殴られた理由は分かる。彼女が私と同じ目をしていたからだ。 自分を見て憤りを感じて、感情を抑えられなかったからだ。 それが殴るという選択肢に繋がり、その考えに至った時、自分は何でこんな目をしているのかと思えば、 欠けている事に気付く。『私である』といった『誇り』が。 それは傲慢なのかも知れない。しかし負の感情では無くて、寧ろ無くてはいけないもの。容量を間違えれば破滅に向かうだけだ。 傲慢は、薬にとても似てる。 だからこそ、私は今の行動に移っていた。これを打破できる行動だ。 打破すると言う事は自らを護ると言うこと。なんと誇り高い行動なのだろう。 土砂を疾風が如くに、駆け抜ける。後ろに部下が付いてきてるが正直二の次だ。 行き先は我が国。詰まる所… 今、私は逃げている! 誇りだと? 私は誇りを護る為ならば手段は選ばん! 言ってる事が逝っている様に聞こえるのは気のせいだ! 163: 名前:サスライ☆08/23(日) 13 41 49 ザワザワ、ガヤガヤと隊長が逃げた反対側から多数ジャンルな人の声の混ぜ合わせがする。 恐らくは輪帝国の敵国であるエピソード共和国の兵だろう。 ところで、エピソード共和国は軍事国家らしい。素人考えだが、エピソード共和国はあんまりご飯が美味しく無さそうだ。 それに、さっきの隊長は錬金術師。 と、言う事は匿ってくれるかも知れないし、金が沢山ありそうで美味しいご飯にありつけそうだ。 ボクの中で、アンドロイドになる前のの記憶… 【人間だった】頃の記憶が呼び覚まされる。 † † † それは、かつてボクと共に居た人であり、ボクをアンドロイドに変えた人との記憶。 その人は言う。 「アンドロイドに変えた事で、君が僕を恨んでいなくて良かったよ。 だって、君をアンドロイドに変える事で病気から救えても、君が私から離れたら私は恐らく砕けてしまう。 君の命は、それ程までに尊いんだ…」 その人はその後ボクを抱いて泣き出した。 † † † その人が居なくなって世界に大した価値を感じなくなった。 そして、ボクは、何世紀かすれば面白い世界になるかなと眠りについた。 声のする方に戦闘の構えをとる。勘違いしないでよ… これは、え~と、 お腹が空いてたからなんだから! 164: 名前:サスライ☆08/24(月) 08 11 05 ボクは戦う、蟻の様に群がる敵と。あれ?蟻って事はボクは甘いお菓子? や~、照れるなぁ… でもむさい男はお断り。ボクはヒゲモジャ顔の首裏に手刀を加えて気絶させる。 「これを乗り越えたらあの人は褒めてくれるかなぁ…」 呟いて、目付きの悪い男の肩を外す。一気に目が開かれて冷血が苦悶の表情に変わる。しかし、ボクは上の空で目をキラキラさせていた。 「あの人は、撫でてくれるかなぁ…」 ボクは次々と相手を戦闘不能にしていくが、上の空の顔の目は昔の少女漫画の様にキラキラしていた。 今なら「テクマクマヤコーン」って言えば変身出来る気がするし、 今なら「イナズマキーク!」と、跳び蹴りを放てば宇宙怪獣を倒せる気がする。 …ネタがマイナー過ぎたかな。お腹空いたなぁ。 「大尉!あの小さいのは何でありますか!?帝国の生物兵器でありますか!?」 「恐らくは、だな。それにしても奇怪な目付きをしてやがる。 くっつけりゃ良いってモンじゃねーぞ! アイツにホントの萌えって物を…グワー!」 「大尉~!」 なんかムカついたから大尉って奴の肩を痛目に外しておいた。 そんな大尉はボクに叫ぶ。 「くそ…なんなんだよ、テメエは!」 「ボク?ボクは… 井時 晶だ」 これは、ボクが村雲島に来る前の話…。 165: 名前:サスライ☆08/25(火) 20 43 59 向日葵 社(ヒマワリ ヤシロ)。 錬金術師である。輪帝国から命を受け、村雲島で秘密裏に何かの研究を進めていた。その護衛に天童 宗厳やクロガネを置いた。 そして、かつては輪帝国で一兵団で隊長を任され、井時 晶の第一発見者である。 これが私のプロフィールだ。こればかりを見れば輝かしい事この上無い。 しかし、これは恥ずべき事なのだ。 私は、逃げている最中に罪悪感に囚われていた。女子供を置いて逃げたから? いや、この様にせざるを得ない自分に、帰ってきた誇りが手を広げて呆れているのだ。 どうしようもなく、泣きたくなった。 そこで、追っ手が来ない事に気付く。何故だと考えを追加させていると部下が声を張り上げてライフルを構える。 「人影が来ます!」と。 しかし手を下ろす合図で、私はライフルを下ろさせた。人影とは井時 晶だと視認出来たからだ。 本能的に脳内で私は無理にでも罪を否定する。 生きてたから良いではないか!逃げなければ誇りもクソも無いだろう! しかし、もう一つの本能は正直だ。 私の涙は頬をつたい、彼女に駆け寄り抱き締めた。戦争中、敵か味方かも分からない彼女をだ。 そして叫ぶ。 「生きていてくれてありがとう!私の罪を軽くしてくれて!!」 「そんな事より、お腹減ったなぁ…」 何故だか余計に安心した。 166: 名前:サスライ☆08/26(水) 18 53 3 戦場から逃げた私は同時に軍そのものから逃げた。 逃げると言っても反旗を翻した訳でも無く、脱退したと言う意味で、 脱退は神封と言う名前の、上官が上に掛け合ってくれたのと、井時 晶のコピーを造ると言った理由から流れる様にスンナリ行った。寧ろ、国から研究資金が来た位だ。 造るつもりなど毛頭無いのに…。 その資金を以て私は町外れに研究所を建てた。勿論井時も『研究対象』と言う名目で一緒に住んでいる。 本音は井時に私と同じ孤独感を感じたからなのだが。 彼女は椅子に意味もなく反対に座り背もたれに腕を乗せて、腕にアゴを乗せて意味もなく回転しつつ、 メロンパンを口に入れながら何故か私に喋れている。 「ねぇ、社…」 「ふむ。何かね?」 私は失敗作だが味はまぁまぁの紫色の粒入り茶をビーカーで飲みながら話を聞く。 「もしかして、社ってホモの人?」 「ブッ!!ブホァ!!ゲホゲハァ!!」 茶を吹いてむせるというテンプレートな行動を起こしながらも彼女を睨む。 「な~ん~で~、そう思うのかねぇ~?井時晶くぅ~ん」 「だって女と一つ屋根の下で何もしてないじゃないか」 口を清潔なハンカチで拭い、冷静さを取り戻す。 「それは君が子供だから… 「15 世紀は歳上…♪」 酷い屁理屈を見た!因みに淑女諸君!私は女性の扱いが解らないだけだから誤解しない様に!! 167: 名前:サスライ☆08/27(木) 17 47 31 我が研究所の今日の夕飯はステーキである。向かいのテーブルには井時が座り、そのステーキを見て、言う。 「青いステーキなんて始めて見た。とても不味そうだ…」 「仕方ないだろう。売れ残りをなるべく無駄にしたくないんだ」 私は生活する為に商品作りの研究をしている。科学者(最近では錬金術師をそう呼ぶらしい)が言うのも変だが国から渡された資金には、なるべく頼りたく無いのだ。 だからアイデアを出し続ける悪戦苦闘の毎日を続けているが、中々成功の商品にはならない。 このステーキも『低コストな肉』と言う専売文句で作り上げた物だが、売れ残ってしまった。 因みに評判は、 「見た目が不味そう」 「カエルみたいな味がする」 「社、メロンパン買ってきてよ」 「あ、じゃあ私ジャムパン」 「私フランスパンね~」 …との大評判だ。悪い意味で。てか後半関係なくね? まあ、アイデアは幾らでも出る。昔は天才だ何だの言われて嫌な気分になったが助かっている。 井時との平和な生活に感謝しつつ、ナイフをステーキに入れると頭でアイデアが浮かんだが、それは暫く封印される事になる。 アイデアとは兵器、『人形兵』の作り方であったからだ。 取り敢えず肉を頬張り、呟く。 「不味いな…」 「うん…」 井時もそれに肯定した。 169: 名前:サスライ☆08/31(月) 15 34 29 私の名前は向日葵 社で、研究所の名前とは大抵持ち主の名前が付く。故にこの研究所の名前は『ひまわり研究所』だ。 …なんだこの名前? メルヘンチック過ぎやしないだろうかと思うと同時に、向日葵の研究しかしていないと誤解されやしないかと思うと同時に、なんで平仮名なんだろうと考えさせる。 「君、ネーミングセンス無いから…」と言われて、井時に付けさせた名前と思い出す。 全く、「愚連明光アックスボンバー研究所」の何が悪いのだが皆目見当がつかない。 と、まぁ、そんな研究所だが客は多い。 理由は三つで私の研究進度を進める為に憲兵がやって来るのと、技術提供を求めるのと(小さな村の為に技術者が少ない)、利益狙いに私の元にやって来るのだ。 例を上げてみようと思う。 先ずは兵士の場合。 「さて、向日葵君。研究の進み具合はどうかね?」 「難解ですね」 そう言って、何時も解らない振りをして追い返す。このまま戦争が終われば有難い。 二番目に技術を求める場合だ。 「ねぇ、向日葵さん。植物に盗聴器を忍び込ませられるかしら?」 「可 能ですね」 「そうなんだ。じゃあ頼むわ。彼氏が近々女と飲みに行くらしいから直ぐにね♪」 …あれ?もしかして私は犯罪の手助けをしていないだろうか。 そしてもう一つ… こいつが一番厄介だ。 「今日こそ貴方の助手にさせてもらいますよ!」 私の利益狙い。それが彼女、銀田一 雪である。 172: 名前:サスライ☆09/01(火) 12 28 22 トコロ変わって現代。社博士の事を思い出しつつ、私、銀田一 雪はどこからシェンフォニー様に話したものか考えていた。 博士がブレンド法を開発した紅茶を淹れながら。 博士と言えば、はじめの頃は何かと「一人で十分だ」と門前払いをうけた。 でも、たまに誰かが居た気がするのだが、どうも思い出せない…。 頭に何か引っ掛かる。 私もシェンフォニー様に「あんな事」をした分、記憶が曖昧だからなぁ。そのせいでシェンフォニー様は記憶が殆んど飛んだから私はまだ、マシと安心付ける。 さて、紅茶が二人分淹れ終わる。一つはシェンフォニー様で、もう一つは晶ちゃんの分だ。 場所が近い分、晶ちゃんの地下室に紅茶を持って行く。 彼女に頼まれた、ちょっと口に出せない様な同人誌と一緒に。仲間が増えて嬉しいモノだ。 「只 の腐女子菌ジャネーノ?」 黙れ雲吉。その口を腐った牛乳を拭いた雑巾で縛ってやろうか? まあ、何はともあれ「井時室(地下室)」に付く。私は晶ちゃんに本と紅茶を渡した。 「しかし晶ちゃん、そのブレンド好きだよね~」 「まあね…。 懐かしい気分になれるからかな」 「…ふ~ん? トコロで、私達ってどっかで会ったっけ?」 引っ掛かっていた事を言うと彼女は紅茶を吹き出し、カップからの反射で顔面パックみたいに紅茶を顔に付けた。 「そ、そ、そそそそんな筈無いじゃないか!」 ま、いいか。シェンフォニー様のヤツが冷めちゃうし。 176: 名前:サスライ☆09/03(木) 12 06 18 シェンフォニー様に何時も通り紅茶を渡して、ボケの後にボディーブローを加えると深呼吸する。 横隔膜は私の度胸、酸素は私の気迫。目を見開いて過去を語る決意をする。 「シェンフォニー様、ちょっと真面目な話をします」 「…ふむ。 過去か。良いだろう、君が言いたいのならば俺は拒まない」 ボディーブローから復活した彼は私と目を合わせた。 なんだ、私が過去を隠している事、解っていたんですか… 「トコロで雪…」 「如 何なさいました?シェンフォニー様。ボケだったらサッカーボールキックしますよ?」 「う~ん、でも無理だろ だって雪の足、震えてるもん」 ホントだ。過去に集中し過ぎて気付かなかったが、私は未だに、過去を語り今を失う事が怖いらしい。 シェンフォニー様は溜め息を一つ吐いて私の顔を覗き込む様に見た。 普段見上げている側としてはギャップが激しくて威圧感がある。 そのまま彼は顎に手を当てて一考。顔を傾げて口を開く。 それは、地面から来た様に低い声だった。 「だからトイレは早く済ませ…プギャー!!」 「アンタにシリアスを求めた私がバカでした!」 彼は顎を蹴り上げられて吹っ飛んだ。復活には時間がかかりそうで面倒な事になったと感じる。 そして足の震えは消えていた。 179:名前:サスライ☆09/05(土) 20 16 35 私に過去は無かった。只、日の当たらない路地裏で育ち野良猫の様に暮らしていたのは覚えている。 多分、その頃の歳は12~14位じゃなかったかな ワラで造った不細工な家の中、私は役人から盗んだサツマイモをかじっていた。 焼いていないので味気無いが、食べれる物があるだけで十分。何の為に生きるかとか、考えもしなかったし死にたいとも思わなかった。 かじっていた時だ、何やら、上流階級独特の革靴の音がして身を隠す。多分役人が私を追って来たのだろう。 だから捕まる事になるのだ。この家は怪し過ぎるし、それに火をつけようとしたから必死で飛び掛かったら掴まれた。 この後殴られるんだろうな。捕まった時は大抵そうだからわかってる。 でも、泣かない。水分が勿体無いから。恐らく私は仮面よりも無表情なのだろう。 役人が私の顔を殴ろうとした時だ、来ると思っていた時に拳はやって来なかった。 代わりに、頬を殴られる役人の顔があった。 「貴 様、何をしている?」 「な、なにをす… テェ、太子!?ええとですね、これは税を盗んだ小僧に罰を…」 「ほう。不当に懐にソレを納めている貴様が言える事か?」 「ヒ、ヒィ!お許しを!」 役人は私を自然に離していて、偉そうな人に懇願して、滑稽だった。 これが、私と神封兄様(シェンフォニー様)との出会い… 銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き8
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707 名前:ゲーム好き名無しさん (ガラプー KK5f-/lT4)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 08 04 23.09 ID ZyoFEkM/K 実際、気心知れた仲間と馴れ合いながらやってるセッションの方が楽しいし、 打ち合わせ無しでも、PLの趣向知ってれば、それこそ商業リプレイの『ような』セッション運営になったりもするけど コンベってそういう場じゃ無いていうか、 むしろ、オーソドックスに遊んで気が合えば、 そういうふうに遊べるようになれる仲間を探せる名刺交換会みたいな素晴らしい場なのに、 なぜか一定数勘違いちゃんが出るよなぁ… 客ならまだしも、運営側が…なこともあって、 オープンコンベって聞いて行ってみたら、全卓全システム 「なお、前にここで私のゲーム参加した方は続きとなりますのでキャラ継続して使ってください」 な一話完結型キャンペーンで、卓紹介だけ見てそっと帰ったあのコンベは今でも元気じゃろか 711 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ 817b-wF3E)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 12 51 59.71 ID wq1Dmjlc0 [1/2] 707 「なお、前にここで私のゲーム参加した方は続きとなりますのでキャラ継続して使ってください」 全部これだったのか、やるなとは言わないけど事前にコンベの概要に書いておく内容だよな 714 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ 1c9d-/G50)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 15 35 28.19 ID cUfB6jea0 707 オープンコンベって聞いて行ってみたら、全卓全システム 「なお、前にここで私のゲーム参加した方は続きとなりますのでキャラ継続して使ってください」 オープンコンベ(卓がオープンだとは言ってない)か・・・ ていうか何故にそんな内輪環境オープンにしたんだろうか? 715 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ df0a-ChPp)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 15 51 19.04 ID zYkfGetY0 [2/2] 714 途中から新規参加可能だからでは? 卓もオープンだろう 途中参加の人が置いてきぼりにならないか心配ではあるが 716 名前:ゲーム好き名無しさん (スプー Sdb8-hI2V)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 16 55 00.98 ID V5Dj968id セッション募集型オンセサイトのノリをそのままコンベンションでやったってことか 717 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイW ed83-4qA/)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 17 29 56.51 ID 20sV6uqL0 コンベというよりはオープン例会という感じのノリやね 718 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ 817b-wF3E)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 18 01 49.76 ID wq1Dmjlc0 [2/2] 置いてきぼりにはなるじゃないかな セッションの内容が読めるわけでもないし、新規以外のPCが知らない事を話してるのは何それだし それが嫌いな人は元々来ないだろうけど、 707を見るに知らされてなかったようだし 719 名前:ゲーム好き名無しさん (ワッチョイ ba5b-ChPp)[sage] 投稿日:2016/06/02(木) 19 17 36.50 ID GCbe7pI50 やるならやるで構わんけど、告知に含めとけって話だよな スレ437
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…おい! -- (名無しさん) 2012-08-12 11 38 01 にっぽん族の存在わすれてた! -- (名無しさん) 2012-08-12 13 39 23 今までにない形で驚いている。 見所を集めてみたみたいなもの? -- (とっしー) 2012-08-16 23 28 06 居酒屋で酔っ払った客二人がかみ合わない掛け合いの末に注文したことを忘れていた料理で舌鼓をうつ。盛り上がる二人以外は平然と経過を見ているようななんとも形容し難い空気でした -- (名無しさん) 2014-12-03 17 39 20
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「また君を……。」の続き。 原作ルルーシュ転移。 帝都の休日系世界線。 生まれ落ちた場所は。 箱庭と呼べる世界だった。 衣服も。 物も。 住むところも。 身の回りにある総てが。 自身の為だけに用意された世界。 何一つとして自らの力で手に入れた物ではない、ただ与えられただけの環境。 管理された幸せと無情の愛を本当の幸福だと信じながら。 仲の良い兄弟達と笑い、遊び、喧嘩した日々。 そこに存在していた総てが。 無自覚な悪意を振り蒔く大人達によって作られていただけの偽りの優しさとは知らず。 ただ……、ただ安寧のままに時を過ごしていた。 だが――。 いつまでも続いていくのだと思っていた平穏な箱庭世界は。 その環境を作り出した無自覚な嘘に塗れた大人達の都合によって形を失い。 やがて。 壊れ行く。 “弱者に用はない” なぜ母を守らなかったのか? 起きたことに対する家族としての当然の抗議を、その男は一言の下に切り捨てた。 訪ねた相手は自らの父であり、訪ねたのは父の子である自分だというのに。 『くだらぬ。お前はそんなことを伝えるためにブリタニア皇帝の貴重な時間を割かせたのか? 愚かしい。我が息子ながら何たる愚かしさよ』 そのたった一言に、幼い心は如何ほどの傷を負ったのだろう。 あの男にとって自分など居ても居なくてもどうでもいい存在。 幾らでも替えの利くただの政治道具。 その時より俺は男を父として見なくなった。 例え真意がどうであったにせよ。 子を、家族を護らぬ男が父親であるはずがない。 冷たい目をした男への憧憬は消え失せ。 俺の世界は灰色に変わっていった。 そんな冷たい男に何も知らぬまま総てを奪われ辿り着いたのは遠い異国。 そこには、一人の少年が居た。 少年は箱庭世界から放り出されてしまった俺と、心と体に大きな傷を負った妹を暖かく迎え入れてくれた。 味方などいない。 この世界の何処にも。 信用できるのは血を分けた我が妹だけ。 それがこの世界の不変の理なのだ。 あの時。 少年と出会うまでの間、ずっとそう考えていた。 世界に覇を唱えんとし、その実は自分達こそが誇大妄想に取り付かれていた勝手極まりない大人達の“侵略”という行いは、この異国に於ける自分と妹に悪意となって返っていた。 侵略者の子。 呪われた皇子と皇女。 人質。 住民達が持つ感情は至極当然の事だろう。 罪なき者を、その地で平和に暮らしている住民達の国を攻め滅ぼし殺戮を続けるあの男の血を持つ子供がどう思われるかなど、容易に想像が付く。 それを単純に敵だと思えたのは、今にして思えばきっと幼さから来る反発もあってのことだったのだと思う。 しかし。 そんな中にあってもたった一人だけ偏見の目で視ることなく受け入れてくれたのがあの生涯の友となった少年であった。 暑い夏。 晴天の下で出掛けた砂浜で魚釣りをした。 自分と身体が不自由な妹と、そして少年の三人だけで。 少年との力比べで己の貧弱さを改めて思い知らされたのもその時だ。 自分よりも力のない妹。 何もできないと思っていた妹よりも釣り竿の扱いが下手だと思い知らされたのも。 『くそっ。なんなんだこの釣り竿は』 自分の要領が悪くて真っ直ぐ飛ばせないだけだというのに竿の所為にして少年に笑われたり。 『次こそは君に勝ってみせるぞ』 『負けず嫌いなやつだなあ』 『それがお兄さまですから』 結局自分は0で少年と妹は8匹も釣れて。 それが自分の負けず嫌いを大きく刺激したり。 何でもないことだったけれど。 あの男の箱庭にいた時よりもずっと充実した……、生きている……。 そう、生きていることを実感できる。 そんな毎日。 少年と共に作った。 少年と妹の三人で作り上げた優しい日常。 追いやられた新天地にて見つけた自分達の新しい居場所。 その未だ幼い精神では気付く事無き本当の優しさの中で、俺は短く儚い幸せを知ったんだ。 本当の幸せとは何もない日常の中にこそ存在していたのだと。 物が無くとも。 お金が無くとも。 父や母など居なくとも。 幸せという物は有ったのだと。 だが。 その小さな優しさと居場所さえ、この冷たい世界と大人達は奪い去る。 ただ静かに生きたかった。 ただ自らの居場所を護りたかった。 それだけを望んでいたのに子の心など顧みることのない大人達は心配していると言いながら平気な顔をして平穏を壊し略奪していく。 どうして奪う? なぜ壊す? 何もしていないのになぜ世界はこんなにも多くの悪意を振り向けてくるんだ。 そんなにも悪い事なのか? 小さな幸せを手に入れたいという願いはそんなにも望んではいけない程の大それた願い事だとでもいうのか? まるで自らという存在を拒絶するかのように奪われていく幸せな時間。 お前に幸せは必要ない。 お前とお前が護ろうとする者総てはこの世界に生きる事を許さない。 世界より突き付けられし冷たい刃はただ何も語らずその意思のみを示し続けてきた。 ならば……。 ならばそんな世界は要らない。 そんな冷たい世界は……。 ただ静かに生きようとする権利さえ剥奪するような世界は……。 俺のこの手で 息の根を止めてやるッ! そして大切な人達の為に真の優しい世界を作り上げる。 幸せな時を焼き尽くし破壊していく戦火の中で立てた誓い。 そこから……総ては始まった。 だが……そうやって歩み走り続けたその先で知る。 その決意は。 その決意と自らの意思は。 自分達を排除したこの世界と。 偽りの優しさを押し付けてきた嘘塗れな醜い大人達と。 ――なにひとつ変わらない身勝手な考えでしかなかったのだと。 ねえ…… ゼロって…… 弱い者の味方なんだよね…… なら…… なんで ――――私のお父さんを殺したんだろう―――― restart 憎しみに囚われて突き進むが余り、自らが否定した大人達と同じ事をしていたことにさえ気付けなかった。 『お父さん、優しくて……』 憎しみは。 『私っ、ぶたれたこともなくてっ……』 憎しみを生み。 『なんにも悪い事……、なのに……、どうしてっ……?』 憎しみは。 『なんでお父さんっ……わたしっ……、』 大切な者をも。 『いやっ……いやァァァァァァ――!!』 ――傷付ける。 簡単に分かる筈の法則にすら。 曇り淀んだ己が眼では……、気付なかった……。 護ろうとした物がこぼれ落ちて行く。 作りたいと思う世界とは真逆の世界が見え始める。 くすぶり続ける憎悪に身も心も支配されながらエゴを押し付ける身勝手な王となった俺は、数多の命とそこにある日常を奪い。 壊した。 失われる命の数だけ憎しみは増大し。 肥大化し行く人々の憎悪は更なる悲劇と戦火を産む。 終わる事なき憎しみの連鎖の果てに残っていたのは、孤独という名の牢獄だけ。 優しさの代りに憎しみを、生の代りに死を振りまき続けた自らには相応しい牢獄の中で、漸く気付いた己が過ち。 自らが戦いを起こさねば。 理を曲げる力を憎しみのままに使い続ける事をしなければ。 失われる事はなかったであろう多くの命。 “王の力は人を孤独にする” 魔女の忠告通りとなった自らを取り巻く環境は愛した者さえも失われてしまうという冷たく暗い深淵の世界だった。 そう、日常に生きていた優しい“彼女”を。 いつも眩しい笑顔を浮かべていた明るい彼女を。 俺は……、奈落の底へと突き落としてしまった。 彼女の肉親の命を奪い。 彼女を深く傷付けただけには飽きたらず。 遂には――。 彼女自身の命さえも。 奪う切っ掛けを作り出した。 かつての俺と同じ平穏な世界で生きていただけの彼女を巻き込んでしまったのは、誰あろう彼女を愛した自分自身。 恨まれてもいい。 憎まれてもいい。 いや……。 寧ろそれをこそ望んでいた。 大切な者を奪った俺を憎み抜いてくれ。 君の抱いた憎しみでどうか俺の存在を抹消してくれ。 自らの望みを優先して世界を巻き込んだあの大人達と同じ汚れた血の流れるこんな俺を……。 君の手で……。 いつしか、あの大人達に負けないくらい身勝手な人間と成ってしまった俺は知らずのうちに望んでいた。 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという存在を、未来永劫に憎み続けて欲しいと。 俺は彼女が好きだった。 いつも俺だけを見てくれていた彼女が。 いつも傍に居てくれた彼女の事が。 だから俺は俺を許せなかった。 大好きな彼女から総てを奪った俺自身を。 好きだからこそ憎まれていたい。 好きだからこそ俺のような人間を好きで居続けてくれることに堪えられない。 憎まれる人間で有らねばならないのだと分かっているからこそ。 せめて君にだけは愛されていたいと思う気持ちとは裏腹に。 世界中の人間に許されても。 君だけには許されてはならないのだという相反した思いを抱く矛盾に塗れた俺を。 世界で一番大切な君から。 君の大切だった物全てを奪い去ってしまった。 愚かで。 身勝手で。 醜くて。 救い様のない程の卑怯者であるこの俺を。 彼女はそれでも 消え行く命の狭間にあっても こんな俺を 身勝手を極めてしまった愚かな男を その無限とも言える大きな愛で ただ……優しく……。 包み込んでくれた……。 * ……ル …ルル ルルってば 「ん――」 遠くから、それでいて直ぐ近くから聞こえた声に。 暗く閉ざされていた視界が開かれる。 幼き頃より歩んできた道程を映すスクリーンが消え。 もう居ない筈の彼女の姿が視界の先に現れた。 長く伸ばされた艶やかな栗色の髪。 いつも俺を映してくれていた薄い緑色の瞳。 それは、この腕の中で息を引き取り。 もう二度と会うことが出来なくなってしまった少女の姿だ。 嘘か本当かの確認さえ不可能な死後の世界とされる場所。 Cの世界には居るかも知れない彼女が。 此処に居る。 ということは。 この身が無事に死を迎えられたという事なのだろうか? ……。 嬉しい……な。 死後の世界があるなど半信半疑であり信じていなかったが、例えこれが幻であっても俺は嬉しかった。 君ともう一度再会できたのだから。 「迎えに来てくれたんだね……」 死の間際に観るという幻でもいい。 世界の悪意が作り出した偽りの君であってもいい。 君にもう一度触れたい。 ただ、もう一度だけ、君に触れたい。 「え…? ちょ、ちょっとルル……?!」 いいじゃないか。 俺は君を失ってから、ずっとこうして君と触れ合える瞬間を夢見てきたんだ。 心行くまで君と触れ合いたいという俺の想いを。 どうか理解してほしい……。 シャーリー……。 ――ゴホン。んっ、んんっ…… 五月蠅いな いまシャーリーとの再会を喜んでいるところなのに── ゴホンっゴホンっ! いい加減にしろ五月蠅いぞっ! ランペルージ君っ、君は私の講義がそんなにつまらないのかねっ?! * 突如として響いたのは怒りの色を帯びた声。 夢見心地のふわふわした感覚が薄れ、止まっていた思考が急速に加速していく。 ぼやけたセピア色の世界が消え行き、戻ってくるのは色彩豊かな景色。 「ん……」 色を取り戻した景色の中に見つけたのは、顔を真っ赤にしたシャーリーの姿だった。 「シャー、リー…?」 「ル、ルル……」 俺の手はその彼女の右頬に触れていて……。 「聴いているのかねランペルージ君ッッ!」 再び響いた怒声にシャーリーの頬から慌てて手を離しつつ、折り曲げ伏せていた身体を素早く起こした。 「春先だからといって気が緩みすぎだぞッ、それも名門中の名門たる我がアッシュフォードに中途編入した分際で堂々と居眠りとは貴様私を舐めてるのかっ!?」 怒りを露わにする“アッシュフォード学園大学教授”。 クスクスと聞こえる笑い声。 「も、申し訳ありませんでしたっ…、」 (夢……だったのか……) 遠い…… とても遠い日の……夢。 本当は一年にも満たない過去の話だというのに、もう何十年と昔のように感じてしまう“あの頃の”夢。 ふと隣を見遣ると、まだ頬を赤くしたままのシャーリーが此方を気にしている。 血の海に沈む青白い顔をした彼女ではない、正真正銘生きているシャーリーの頬は生気に溢れていた。 どうやら俺は――居眠りをしていたようだ。 * 昼休み。 「ル~ルく~ん、チミは一体どんな夢を見ていたのかね~? んん~? ほれほれ~正直に言ってみ~」 講義中の居眠りに続く失態を近くで見ていたらしい友人がしつこく問い質してくる。 「だから夢など見てないと言ってるだろ」 外側に跳ねている青みがかった黒髪の少年。 友達という関係を築いてよりまだ一年と経っていないがその性格も口癖も俺は良く知っていた。 貴族相手の非合法チェス勝負では散々一緒に金を巻き上げた。 修学旅行を休まざるを得なかったときには花火で迎えてくれた。 楽天的でお調子者で遊びの天才。 生徒会では書記を務め、恋には一途。 いつも周りに気を配ってひっそり生きる俺の学園生活に色を添えてくれた得難き友達――リヴァル・カルデモンド。 だがそれは、飽くまでも似て非なる別人の話だ。 今目の前にいるのはかつての俺と友達だったリヴァルとは違う別の軌跡を辿ってきたであろうまた別のリヴァルなのだから。 無論、彼だけではない。 凡そ此処に来てから知り合った総ての人が、俺の知る人達とは別の人間だった。 (新世界……か) 死を迎えた先に広がっていた平和な世界。 来ないと思っていた、来てはならないと思っていた明日。 日本とブリタニアが同盟を結び歩む戦火なき優しい世界。 俺はいま、そんな優しい世界で新しい人生送っている。 (みんな同じだ……あの頃と……) リヴァルはお調子者で、ミレイ会長はお祭り好きで、ニーナは研究が好きで。 そこに生きる人達との触れ合いは、まるであの学園生活の続きのようにも思え毎日が楽しかった。 そして、彼女は……。 「誤魔化すなよ~、シャーリーにあんなことしておいてさぁ」 「だからあれはシャーリーの頬に何か付いていたからとってやろうとしてただけだと何度も説明しただろう」 シャーリー・フェネット。 向こうで俺が好きだった……俺のような自分勝手な男を好きでいてくれた心優しい少女の存在に、どれほど俺は救われたのだろう。 (運命……なのかな?) スザクの手に掛かり死んだ筈の俺が富士の樹海にいて、そこを調査に訪れていた彼女の父ジョセフ・フェネットに拾われたのは、果たして偶然だったのだろうか? 俺がナリタ連山で命を奪ってしまった彼と同一の人間に拾われ、俺が愛したシャーリーと再び出逢う。 (まるで……。そうまるで導かれるように俺は彼女と再び出逢った) 出逢い、そしてもう一度恋をした。 連れて行かれたフェネット家は、いまジョセフの仕事の都合で東京に居を構えている。 地質学の第一人者として、日本や東南アジアの国々から様々な調査を依頼される為に此方へ引っ越してきたのだという。 ブリタニアよりも遥かに多くのサクラダイトが埋蔵されている日本の地質調査は枚挙に遑が無い。 その為国内の学者だけでは到底手が足りないとして同盟国や友好国の地質研究グループにも積極的に呼び掛けては日本への招聘を行っているらしい。 妙な話だが、日本が地質学者の出稼ぎ先と成っているような状況だ。 ジョセフはブリタニア政府から幾つもの地質調査を命じられて成果を上げてきた人間であり、調査グループの長も勤めている関係からいの一番に声が掛かっていた。 ブリタニア国内での大きな仕事を終えたばかりで暫くの間はフリーとなっていた処に政府筋より声が掛かり、日本行きが決定したと聞いているが。 『私は仕事の関係で家を留守にする事が多くてね。娘にはいつも寂しい思いをさせているんだ。そこで提案があるのだが、良ければこのまま家で暮らさないか?』 富士の樹海で出逢った時に記憶喪失であると偽った俺はジョセフに引き取られていたが、日本を拠点にフィリピンやインドネシアなどへも仕事で飛んでいる所為か、あまり家には帰れないという彼はこのまま家の子にならないかと提案してきたのだ。 当初は迷った。 世界の迷い子である俺に居場所はない故その申し出は大変嬉しかったのだが、本当に良いのだろうか? 多くの人の命を奪い人生を壊してきた俺が、今更居場所を与えられてぬくぬくと平穏に生きるなど許されない事ではないのかと。 しかし、結果として俺は思い悩んだ末にジョセフの提案を受け入れる。 その動機と成ったのは、やはりシャーリーの存在だった。 向こうで護れなかった彼女と同じでいて、非なる彼女。 だが、世界は違えどやはりシャーリーはシャーリーだ。 明るくて、父が大好きで、水泳部員で、生徒会の……大学では学生自治会の一員。 ジョセフに引き取られた日。つまり世界の迷い子となったあの日からずっと観てきたが、なにひとつ違わず俺の知るシャーリーと同じだった。 声も、性格も、怒った顔も、“記憶喪失”な俺を気遣ってくれるその優しさも。 魂を同じくする者故にとでもいうのか? 俺はかつてと同じ様に、再び彼女に惹かれていった。 だが、その想いを伝えることが出来ないでいる。 それはいま抱いているこの想いがシャーリーに向けられた物なのか? それとも“彼女”を意識した物なのか? 自分でも良く分からないからだ。 “彼女”の影を引き摺っていたことは確かだ。 シャーリーと“彼女”は同じ存在なのだから。 故にこの気持ちが“彼女”への想いを前提としたものであったならば、それはシャーリーに対する侮辱であるとして伝えることを躊躇してしまうのだ。 シャーリーと再び出逢い自分の想いを再確認したからこその悩み。 袋小路に陥った想いをどうすれば良いのか? この答えを持つ者は他ならぬ自分自身でありながら、俺は自分で答えが出せないでいた。 「そうやって隠すと? はいはい分かった分かりましたぁ。はぁ~あ、いいよなぁ~お前は。そう暢気に構えてられてさぁ」 軽い調子で言ってくれるリヴァルだが、俺の事情を知らない彼には想像も付かないだろう。 好きである女性が同じ女性であるからこそ伝えられないで居るこの悩みというのは。 だが同時にリヴァルの抱えている悩みも俺には想像できない物だ。 「まだ、諦めてないのか?」 「まだっていうかさ、そう簡単に諦められる訳ないだろ……。無理だぁ~、不可能だぁ~、ってのは分かってるんだけどさ。なんていうの? ほら、ゴールインするまでは~ってやつ?」 「そこまでの想いがあるのなら告白くらいはしたらどうだなんだ。してはいけないという法律もないし心は自由なのだからな」 自分の事は差し置いておきながら俺は平然と言い放つ。 どこかで彼の出す答えを求めているのかも知れない。 答えを出すことが出来ない彼がその答えを自身で出したとき、自分が追い求める答えへもまた辿り着けるのではないのかと思うから。 そう、リヴァルもまた恋をしているのだ。 しかしその恋は越えようとしても越えられない大きな壁によって阻まれた、成就させるのが殆ど不可能に等しい恋。 それは彼自身が良く理解しているようだが、それでも想いを断ち切ることが出来ないでいるらしい。 「馬鹿、無理に決まってるだろ。相手は公爵家令嬢で、それも幼少の砌より決められた婚約者まで居るんだぜ? その婚約者ってのが――」 “ルルーシュ殿下なんだぞ?” リヴァルが想いを寄せている相手。 それはアッシュフォード公爵家のミレイ・アッシュフォード公爵令嬢。 此方でも同じく先輩・後輩、会長・書記の関係だったらしい、あのミレイ会長だった。 友達になったばかりの頃に恋の悩みがあるという話を聞いたときから予想はしていた。 相手はきっとミレイ会長だろうなと。 「どんな裏技を使ったら平民の俺の割り込む余地があるっていうのさ……」 無論この恋は実らないだろう。 最初から諦めるというのは嫌いだが、どう足掻いても不可能な事は存在する。 かつての世界ではブリタニアを壊すとまで決意し、結果壊してしまった俺であっても、制度の枠内から物事を打破するのは容易ではないと知っている。 植民地人――イレヴンという立場に在りながら実力と謀略でラウンズにまで上り詰めた俺の知るスザクが内側から国を変えようとして変えられなかったように。 『枠内』、という物に収まっている以上は、所詮それなりの処までが限界なのだ。 出来ればバックアップする形で彼の恋の成就に力添えをしたいと思っている。 俺も伝えられない想いを抱いている関係上他人事であるとは思えないし、なにより友達だから。 しかし、この世界でも変わらぬブリタニアの国家としての形、枠がそれを許さない。 言わずもがな、神聖ブリタニア帝国というのは大きく分けて13の階級より成り立っている絶対的階級制国家だ。 細かく分ければさらに多くの階級が階位内に存在する程の厳格さを持つ……。 市民生活、給金、仕事。 ありとあらゆる方面で階級によって固定化された『枠』が存在している。 ミレイ会長は高等部在籍時は生徒会長。大学進学後はアッシュフォード学園学生自治会長として学園内では貴族・平民の区分無く誰とでも付き合ってはいる物の、一歩外に出ればブリタニアの大貴族――アッシュフォード公爵家令嬢としての身分を持つという、本来平民のリヴァルでは接することさえ不可能な身分差のある相手だ。 第1階位Commoner(平民)と第2階位Knight of honor(武勲侯)第3階位Knight(騎士)この範囲内ならばまだ可能だ。 1階級上の武勲侯、2階級差の騎士。ここまでは努力次第では平民にも到達できる場所である為に、世間的にも制度的にも婚姻関係を結ぶに当たっての壁となる障害はほぼ皆無。 しかし3階級上の第4階位Baron(男爵)からは状況が一変して、目に見える形で貴族と平民の壁が立ち塞がるようになるのだ。 更に言えば同じ貴族内でも第5階位Viscount(子爵)と男爵の力関係が雲泥の差となって表れるように、男爵とそれ以下では完全な別枠扱い。 上に行けば行くほどに階級差による権力の固定化と力の差は大きくなり、細分化された同一階級の中でも第6階位Earl(伯爵)の上位まで進むと最早平民との差は天地の差といっても過言ではない程の開きとなってしまう。 俗に言う大諸侯とは領地持ちの第7階位Margrave(辺境伯)以上を指すが、広義には上位伯爵からそう呼称しても問題は無い処に此処からもう一つ大きな壁が存在していると言えた。 そしてミレイ会長のアッシュフォード家第9階位Duke(公爵)と、第1階位平民リヴァルとの間には都合9階級にも及ぶ絶望的な壁、『枠』が存在している。 大貴族と平民が結ばれるという創作上の物語はあっても、現実で結ばれる例は基本的に存在しない。 ブリタニアの階級制度が内包する厳格さは、世界が違うとは言えあの国の皇族であった手前良く知っていた。 その俺が言う。 この枠を崩すのは実質国を破壊するような行為だと。 平和な世界で皇族・貴族・平民が手を取り助け合っている理想的な国となっている以上、枠の破壊や制度の転換など百害あって一利無し。 では、枠の中で有り得ぬ前例を作り出せるのかといえば、これもまた『否』だ。 例外的に平民出身の皇妃マリアンヌが居たが、彼女の場合はその騎士としての天性の素質を発揮し、軍内部兼階級制度の枠内にて一代限りの選ばれればだが例外的に特進可能な第11階位Knight of Rounds(ナイト・オブ・ラウンズ)にまで上り詰めたうえに、日本で言うところの【ブリタニア五・六事変】または【ブリタニア5月クーデター】。 1997年5月6日に発生して多くの犠牲を生んだ通称【血の紋章事件】において、現在在位中の第98代帝シャルルの側に付き、反乱軍に加わっていた当時のラウンズを幾人も討ち取るという功績を挙げていた。 その戦いの中でシャルルとの信頼を築き上げた彼女は第1階位平民からの第12階位Imperial family(皇族)という、軍や警察、会社での階級とは違い、基本的に変えることが出来ない国家制度としての階級に於いて11階級特進をやってのけたのだ。 あの自分勝手な大人代表の母を知る者としては英雄視されているマリアンヌの本当の顔が気になったが。 とにかく、例え平民でも国家の英雄ともなれば話が違ってくるという前例でもあったわけだ。 だが、この例を持ち出すのは無意味にも程がある。 何故ならば、リヴァルは英雄でもなければ天性の素質を一つたりとも持ち合わせていない、正真正銘ただの平民にして大学1回生なのだから。 これでは前提条件からして破綻していた。 しかもリヴァルのライバル……悪いが、彼ではライバルにも成れないであろう、俺と同一の存在にして別人な彼。 神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがミレイ会長の婚約者として立ちはだかっていた為に、勝ち目はゼロに近い。 天文学的数値を持ち出せば或いは可能性を見出せないこともなかったが、ブリタニアの国家制度である階級の『枠』がその僅かな可能性をも潰していた。 もちろんこの枠から脱する方法は非合法ながら幾らか存在する。 その一例としては、ミレイ会長が公爵家令嬢という身分を捨ててリヴァルと駆け落ちし、アッシュフォード公爵家の手が届かないところまで逃げるといったものだ。 深く愛し合う男女の逃避行。 匿ってくれたり支持してくれたりする人間とて何処かに現れるかも知れない。 そうして逃げた先で全てを忘れ別人として生きる。 別人として生きたことがある経験上、逃避行その物は成功確立0ではないと個人的にはそう思う。 但し。 これにはたった一つにして最大の前提条件が必要だ。 (ミレイ会長がリヴァルに好意を抱いてくれているのならば、なんだがな) そう、これは会長がリヴァルと両想いであり、そこまでの覚悟がリヴァルに有った場合を前提とした話。 しかし、聴くところに依ると残念ながら会長の心はルルーシュへと向いているようだった。 生憎鈍いという表現の塊みたいな彼の方は会長のアプローチに気付いて居ないという専らの噂だが、彼も自らの婚約者であり、長き時を同じ学舎で送り続けている彼女を嫌ってなどいないだろう。 自分で言うと自惚れているようにしか聞こえない物の、ルルーシュは聡明で思慮深く何でもそつなくこなしてしまう相当優秀な男だ。 リヴァルとシャーリーが学生自治会に所属し、彼もまた同組織に所属しているという関係から彼の話題は良く上がる。 現役の学生皇子様なのだから興味を持つのも話題に出るのも当然と言えば当然であったが。 彼等以外でも他の学生の話やシャーリー伝手でジョセフが面会したりすることもあって彼の人となりを伺い知る機会は多く、様々な話しを総合した結果99.9%リヴァルの勝ち目は無いと断定せざるを得なかったのだ。 (ふ……、俺が俺を評価する。これほど奇妙な事もないな) 「な~にをニヤついてんだこの殿下のバッタモンは~。俺が悩んでるのがそんなに笑えることなのかよ~」 「あ、ああ悪い。ちょっとした思い出し笑いというやつだ。気にするな」 最初の頃、アッシュフォードに編入となった俺は当然出だしからで躓いた。 高校も通ってない扱いの俺が超が頭に付く名門のアッシュフォードに入れるわけがないからだ。 この世界に戸籍なんてないただの記憶喪失者。それが俺という存在。 大学への編入には高卒という学歴が必要。基本的にであって全ての大学で必要なのでもないがしかしアッシュフォードという名門中の名門に入るには……まあ、言うまでもない事だ。 ではどうやって編入されたか? それは他でもない政府筋にまで顔が利くジョセフのコネと当のアッシュフォード公爵家のゴリ押し。 正確には俺の存在を知ったミレイ会長の「面白そう」の一言で、編入可能となったのだ。 あの会長のことだ、恐らくは駐日ブリタニア総領事を勤める祖父にでも頼み込んだのだろう。 「殿下そっくりな人間が居て面白そうだから入れてあげたい」などという軽い感じで。 もちろん編入に当たってはIQテスト、アッシュフォード及びコルチェスター高等部卒業程度認定試験、アッシュフォード学園大学編入試験、等々の通常の入学や編入とは異なるより高いハードルをクリアしなければならなかったが……。 無論俺はクリアした。これでも勉強には自身がある。 唯一この世界の歴史についてだけは不安があったが、それもジョセフの所有する歴史書を読みあさり、日本の国立図書館通いが成果を上げて見事合格ラインの点数を取ることが出来た。 そうしてアッシュフォード学園大学への編入資格を得て編入となった訳だが、言うまでもなく大騒ぎになった。 『で、で、で、殿下っ! 殿下が二人ィィィィ!!』 『う、うそ~マジ!? そっくりってレベルじゃないわよこの人っ!』 まあ、想定内の反応だった。 髪型、虹彩、慎重、体つき、声。 総てが双子かと思われる程にそっくりだとくれば騒ぎにもなる。 しかもそっくりな相手が世界最大の超大国神聖ブリタニア帝国の第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとなればな。 だがこの世に二人も同じ人間は存在しない。 そして彼は双子ではなく正真正銘一人で生まれてきた。 では俺という存在は、ルルーシュ・ランペルージは何者なのかとなる訳だが、これもやがてはそっくりな他人ということで落ち着く様になる。 (世界に幾つもの例があるのは助かったが、確かに不思議ではあるな) この世に瓜二つな人間は三人居るという。 細かい部分を分析してもまったく同じの人間すら不思議なことに存在するのだ。 まあ世界全体で70億も80億も人間が居ればどこかしらまったく同じになる人間も出て来るだろう。 俺という存在はその非常に稀な例の一つとして認識されていた。 そもそも、それ以外に解釈のしようがないからだ。 この種の世界中に似たケースは幾つもあるという前例が後押しとなってくれたのは良かったのだが、万が一の確認としてDNA検査を強要されたときは焦った。 同一人物ならばこそまったく同じ型になる筈だから。 態々そこまでする理由は皇帝の隠し子なのではないかという疑惑が持ち上がったからだ。 言わずもがな98代帝シャルルは歴代のブリタニア皇帝の中でも最も多く妃を持つ恋多き男。 皇家の血を絶やさぬ為とする一夫多妻なのは当たり前だが、それにしてもシャルルが娶った女性は多いのだ。 無論のこと、その女性達との間に設けた皇子・皇女もまた総勢3桁に上るという前代未聞の人数。 となれば明らかになっていないだけで市井の女性と関係を持ち子を授かった事もあるのではないか? 次々に妃を娶り子を設ける程の超人的な精力を持った彼ならば、妃以外と関係を持ってもおかしくないのでは? といった、実に不敬極まりない話しが宮廷で持ち上がったそうだ。 多くの妃に取り囲まれて詰め寄られた本人は「絶対に無いっ!」と否定したらしいが念のためにと。 (皇子と似ているからとはいえ記憶喪失の平民相手に大騒ぎをするなど、向こうでは考えられない事だ) 採血をされたときに事の真相を話してくれた皇族の専属医という医者は面白可笑しく話していた。 平和なのだろう。皇帝も“あの男”とは比べるのも愚かな程に多くの人間から慕われているのだろう。 (父親か) …………ルルーシュが、彼が少し羨ましい。 偽りの愛ではなく、俺が終ぞ手に入れられなかった。触れることすらできなかった本当の父の愛を受けている彼のことが。 学生自治会の人間ではない俺は隠し子騒ぎの際に少し顔を合わせただけだが。 「身内の馬鹿騒ぎに巻き込んで済まなかった」と心から謝罪していた彼と顔を合わせた時、あまりにそっくりで鏡を見ているような錯覚を覚え彼と二人して驚いていたがただ一点、その瞳には憎しみの色が無い事に気付く。 誰かを憎悪しなくても良い環境で育ってきたであろう事を伺い知れるその事実に、俺は思わず問い掛けていた。 『ルルーシュ殿下は……陛下を……、御父上を愛しておられるのですか?』 問い掛けた自分を殺したくなるほど怖気の走る質問であったが、彼の答えを聞いてその怒りは霧散してしまう。 『ふん……。そうだな……。色々と騒ぎを起こしては親族から煙たがられているむさ苦しく迷惑な鬱陶しい男だが』 一度言葉を切った彼は逡巡しながらも言い切ったのだ。 “あんなのでも……大切な父上だから、な。まあ……、愛してはいるよ……” 少し照れ臭そうに「今のは誰にも言わないでくれ」と口止めする彼に、俺が感じたのは少しの嫉妬と言い知れぬ歓び。 “優しい世界に生きる俺は、歪んだ自己満足な愛ではない本当の愛をあの男から受けている” かつて夢見た場所に居る自分が羨ましくもあり微笑ましかった。 そして思う。 家族の愛を手に入れられなかった俺の分まで幸せになり、破壊と殺戮を繰り返してきた俺の分まで人に優しい君で居て欲しい。 君には幸せになる権利があり、そして民を幸せにする義務があるのだから。 悪逆皇帝である俺が出来なかった総てを君にはやって貰いたい物だと。 (ふ、考えても詮無きことか) 誰に望まれなくとも彼ならそうするだろう。 家族と民を愛し護るシャルルに育てられた彼なら。 採血の結果についてだが、幸いにも俺とルルーシュの型は完全一致しなかった。 非常に酷似した型で殆ど同一らしいが、細部において僅かな違いがあったらしい。 こればかりはどうしてなのか自分でもわからない事であったが、消えてしまった俺のギアスが何らかの作用を身体に与えていた可能性が拭いきれない。 (コードもギアスも、その詳細については未だ謎が多いからな) 此方の世界ではどれだけ研究が進められているのか不明なれど基本的にあの力は未知の物だ。 どうして相手の精神を操ったり出来るのか? あの力を生み出したというが、どうやって生み出したのか。それも人の手で。 総て分からず仕舞いだが消えて良かったと。 そう思う。 (もう、力が暴走することも。誰かの尊厳を踏みにじったりする事もしなくていいんだ) ふと、思い出したのは。 桃色の髪を持つ腹違いの妹のこと。 (ユフィ) ギアスの力を暴走させ、最後はこの手で殺害し貶めてしまったユーフェミア。 まだ会った事はないが、ブリタニア第三皇女たる彼女と平民である自分では相見える事もないと思っているが、当然、彼女もこの世界には居る。 (駐日ブリタニア大使補佐官か) 2018年から駐日大使に就任したコーネリアの補佐として共に来日したらしいが彼女らしいと思う。 学業よりも皇族としての勤めを優先する辺りが特に。 (……) ふと思った。 もしも、もしもだ。 もしも彼女と相見えるようなことがあったとき、俺は普通の対応を取れるのだろうかと……。 自分自身が手に掛けた彼女に。 望まぬままに命を奪ってしまった彼女に。 (まあ……出会うことなんて、無いだろうがな……) (………そういえば) ユフィといえば、とんでもない婚約発表をしていた事を思い出した。 予想だにしない事ばかりするのが彼女であったと覚えているが、あの婚約発表の会見には度肝を抜かれた。 もしも俺の親友だった向こうのスザクが観たら我を失いそうな程に。 会見その物は普通の婚約会見だ。 相手との出逢いから馴れ初めまで。 実に良くお似合いな雰囲気でお互い深く愛し合っている事をテレビ越しにも伺い知ることはできた。 だが、その相手がまさか―― (還暦の老――) 「おいルル聞いてんのかよ俺の話!」 「ん? あ、ああ聞いてるよ」 編入時から色々あった出来事を振り返っていた俺はリヴァルの声に引き戻される。 (…………) また……。 今度ゆっくり振り返ろう。 今はリヴァルの件もあるし。 俺自身の事でも頭がいっぱいだ。 あの頃の夢を……。 あの時の夢を見た所為か余計にシャーリーへの想いと“シャーリーへの想い”がせめぎ合っている。 同じだからこその悩み。 いつかは伝えられる日が来るだろうか? 今の俺が抱えている二つにして一つの。 一つにして二つのこの想いに、自分なりのケジメをつけられた時。 その時にこそ伝えられるだろうか。 『restart』 俺の再スタートは 新しいスタートは まだ 始まったばかりだ おまけ 「よし! 決めたぞルル!」 「なんだ、結論が出たのか」 声色からして何かしらの決意をしたようにも感じたが、どうするんだ? 「俺、勇気を出して会長に告白する!」 どうやら固めたみたいだ。 「頑張れ。告白するのはタダだし平民とはいえ学生自治会書記の立場にいる君なら会長に近い立ち位置だ。タイミングさえ合えばいつでも出来るだろう」 応援しよう。 あのルルーシュが相手では多分、いや絶対に大撃沈な気もするが、誰を好きになるかは自由だ。 「会長が卒業するまでには!」 (……) 「……俺は今すぐという感じで聞いていたんだが」 「いや~あはは、やっぱりいざとなると色々考えちゃってさァ~、振られたらもう絶望的だし学生自治会所属だから毎日顔合わせるわけでその後ずっと針の筵っぽくなりかねないしさァ。ルルーシュ殿下とも気まずくなったら怖いし……」 これは……駄目かも知れないな。 結局胸に秘めたままで終わらせそうなパターンだ……。
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私は今杉ちゃんの家に向かっている。杉ちゃんはみっちゃんと同じ高校に通っているし、実は個人的な付き合いもある 私の女子高とみっちゃんたちの高校はわりかし近所で、帰り際に偶然出くわすことも少なくないのだけれど、 そういう時に一緒にファーストフード店や喫茶店なんかに入って会話をするぐらいには仲がいい 小学生の頃に比べると自重しているけれど、やっぱり杉ちゃんのみっちゃんフェチは異常だ。でも、その点を除けば、 数少ない常識人で、ものすごく付き合いやすい。他にも家事関係や背丈や……その、胸のこと……など共通点も多いので、 お互いに相談役として重宝しているのだ。ちなみに、お店に入った時は必ず杉ちゃんが奢ってくれている こっちの家計に気を遣ってくれているのだ。出費が抑えられるのは正直ありがたい。もちろん申し訳ないとは思うけれど、 そういう発言をすると、「いいのいいの、その分みつばが肥えると思うと面白いし」といつもからから笑って返してくる こっちはお金に余裕があるから、とかいうニュアンスの発言をしないあたり、小学生の頃と比べて成長しているなぁ、と思う まぁ、代わりにみっちゃんの近況を根掘り葉掘り聞いてくるあたり、相変わらずだと呆れてしまうけれど 同じ高校なのに、去年も今年も違うクラスで寂しいんだろう。結構可愛い人間なんだ、彼女は。みっちゃん、杉ちゃんに 出来るだけ構ってあげてね。みっちゃんがお腹いっぱい食べられるのは、間接的とはいえ杉ちゃんのおかげなんだよ でも、今日は彼女の家に遊びに行くわけではない。もしかしたら、結局そうなるのかもしれないけれど。それでも私は、 このことに関してはちょっと不服だと言わざるを得ない。きっかけは月曜日だった / 「三女さん!」 「げ」 「おはよう!!」 「う、うん。おはよ……」 机に鞄を置いてまだ3秒も経っていない。登校して一息つく間もなく、私はおそらく今日最大の関門に相対してしまった 土曜日にいつものお出かけに比べて随分遅く帰ってきたみっちゃんから話を聞くまでもなく、こうなることは予想済みだった 千葉君とみっちゃんのデート先で、偶然にも吉岡さんはバイトをしていたのだ。恋愛関係なら何にでも喰らいつく彼女が、 全然そういうのに興味がない私でさえやきもきするくらい、恋する乙女化しているみっちゃんを見てしまったのだ その場でどんなことになったのかは聞いていないけれど、女子高に入って更に磨きがかかった強化型欠陥恋愛レーダーと、 明後日方面への妄想を遺憾なく発揮したに決まっている。同じ高校に通う私にも、何らかの矛先が向かってこないわけがない 「三女さん!!」 「は、はひぃ!?」 (うっわ、めっちゃ目を輝かせてる……一体何を言われるんだろ……『姉妹での愛憎劇、大変だろうけど頑張ってね!!』 とか?いやいや……『いけないよ、いくら好きだからって、みつばちゃんは実のお姉ちゃんなんだよ?!』……ああっ、 こっちの方がありえる!全くどうすればそんな発想に至るのか……とんだ淫乱眉毛だよ!) 「楽しみだねっ!」 「え?!」 (『楽しみ』?『楽しみ』って何が?!……『千葉君とみっちゃんの結婚式、私も行くからね!』……うーん、なんか みっちゃんは喜びそうだけど……『千葉君とみっちゃんの赤ちゃん、名前どうするのかな?!』……うわ、千葉君死ぬな ……パパもついに冗談抜きの犯罪者に……『千葉君と三女さんがそこまで進んでたなんて思わなかったよう!もう!何で 相談とかしてくれないの?……で、出産はいつ?』……うわあああああああああこっち?!こっちで来るの!?) これは過去最大の戦いになりそうだ……ガチレンジャー、天国のチクビ、チブサ……私に力を下さい…… 「同級会、みんな来るといいなぁ」 「……えっ」 「だから、同級会!サプライズで今週の土曜日にやるんだって!……みつばちゃんから聞いてないの?」 「何……それ?」 「お、いたいた!おい、お前ら!」 「あ、宮ちゃん!こっちこっち!」 「え、え?」 「吉岡から話は聞いてるぞ。楽しみだなぁ!ふたばや松岡とはなかなか会えないし」 「だねぇ、男の子なんか連絡も取れない人も多いし……カッコよくなってたりするのかなぁ?そして新しい恋が……きゃー!」 「ははっ、吉岡はそればっかりだなっ☆」 「あ、あのほぅ……」 結局私は終始置いてきぼりをくらい、わけがわからないまま一日を過ごし、気付くともう放課後になっていた 「……帰ろう」 とりあえず自分の想定の斜め上をぶっちぎる事態が起こっていることは理解できた。今やるべきことは、みっちゃんの尋問だ 「……あ、千葉?……うん、うん。そうね……水曜が祝日で助かったわよ……ん、まぁそんな感じかしら。一応私も何か 考えとくから、あんたもちょっとは考えなさいよね……あ、もちろんいやらしい企画は全面却下よ?……盛大に溜め息を ついてんじゃないわよこのド変態!……え?ツイスター……えっと、あのマットみたいな?あれ結構えっちじゃない?…… !!……なにそれ……ほんと?!……わ、わかったわ。とりあえずツイスターは許してあげる……そうね、後は水曜に…… うん……はぁ?スイーツ?そんなのんびりしてらんないでしょ!私だってそのくらい分かってるわよ……ま、まぁ?あんたが、 連れてってくれるなら、別に……いいけど、さ。……えっ?あ、あらそう。じ、じゃあ楽しみにしといてあげようかしら?…… きっ、期待なんてしないけど?……ん、とりあえずもう退けないもの……まぁ、この際楽しんじゃいましょ……うん、また」 「ふぅ……」 「……おたのしみでしたね」 「ぎゃあああああ?!あんた、そうやって心臓に悪い感じで話しかけんのやめなさい!……ってかいつ帰ってきたのよ……」 「よかったねー、千葉君がどっかに連れて行ってくれるみたいじゃない」 「む……ま、まぁ期待はしてないわよ……ほんとよ!?期待なんてしてないし?!」 「……ツンデレとか今更感があるんだけど、悲しいかなみっちゃんにはよく似合う……」 「そ、そんなんじゃないわよ?!」 ちょっと素直になったかと思えばこれだ。全く呆れる以外ない。まぁこのまま姉いびりを続けるのも一興だけれど、 今はその前に聞き出さなければいけないことがあるんだ 「まぁまぁ落ち着きなよ。それより同級会ってどういうことなの?」 「うっ……それは、ええと……」 「……ぽちっとな」 『あぁん……ふぁ……はげしいよぅ……ちばぁ……むにゃむにゃ……』 「?!な、何よそれ?!」 「ゆうべは おたのしみでしたね」 「わ、私昨日はおn……げふん!……し、シてないわよ?!」 「寝言だよ。土曜日のね。ちなみに私は珍しく早起きしたみっちゃんがなぜかこっそり洗濯機を回したことを知っt」 「いやあああああああああああ!?話す!話すから今すぐその録音を消しなさい!即刻抹消しなさい!?」 「中学生男子レベルだね。もしくは眠りながらシてたのかな?なんか熟練者っぽいねそれ。おっさん?」 「ひとはあああああああああああああ?!」 「はいはい」 さすがに可哀そうだ。ちゃんとこれはデリートしてあげよう まぁ、バックアップはとっくの昔に取っているのだけれど。ちゃんとした関係になったら千葉君に高く売ってあげようかな 家計も助かるし、何より千葉君なら大喜びするに決まっている。これ以上、姉の恋に対する援護射撃になるものもあるまい 「言い訳?」 「うう……仕方ないじゃない……」 「それで同級会を開くって嘘ついたの?……考えなしにもほどが……」 「だって!吉岡の奴、昔とは比べ物にならないくらいひどくなってたじゃないの!あんなの聞いてないわよ!?」 「それは、確かにそうだけど……」 吉岡さんは学校でも妄想を爆発させたりするけれど、たいていその処理は私と宮下さんに任される。慣れてるでしょ、 何とかしてくれ、という無言の圧力に憤りを感じないわけじゃないけれど、実際私たちくらい慣れてないと、妄想モードの 彼女には太刀打ち出来ないのだ。全くあのたくましすぎる想像力はどこから来るのか。作家の父親の遺伝とかなんだろうか 「それに……同級会やろうって言ったの、最初は千葉だし……」 「そうなの?」 「なんか、『まぁ任せろ』とか耳元で……囁いてきたり……して……さ」 「……」 「でもでも!一応、私もね?いつかそういうの開きたかったの!で、それ、千葉には少し話したことあったんだけど…… もしかしたら、それ覚えててくれたのかなぁ?アイツ……」 「……惚気はいいから要点を話してくれないかなぁ……?」 「の、惚気なんかじゃ」 「レコーダーの中身ご近所に配るよ?」 「……とっ、とにかく!任せろっていって、千葉が吉岡にあれこれ言い始めたの!道で偶然会ったのは認めるが、そういう 関係とかはない、そんで昔話してて盛り上がったから、いっそ同級会でもやるかっていう流れになって、ゆっくり相談する ために適当に落ち着ける場所にでも入ろう、みたいな感じに……」 「なるほどね……で、それをダシに水曜日は再びデート、と」 「ち、違うってば!いい加減にしなさいあんた!……そりゃ、ちょっとはそういう気も……いやいや!……言い訳の関係で、 私とアイツで司会進行とか、企画とかやらなくちゃいけなくなったのよ!言っちゃった以上、私は本気でやるつもりだし」 「へぇ……場所はどうするの?」 「……一応、杉崎から許可貰ったわよ……条件付きだけど」 これは実際仕方ないかもしれない。あの状態の吉岡さんを落ち着かせるには、多分かなり上手なやり方だろう。なかなか 千葉君もやるじゃないか。ちょっと評価が上がった。みっちゃんももう場所の確保はしているようだし、さっきの発言から、 事実前々からそういうことはやりたかったようだ。本気なんだろう (卒業して5年かぁ……) みんなどうしているだろうか。我が家は3人とも違う学校で、それぞれの学校には鴨小時代の友達もちらほらいるから、 他の人に比べれば彼ら彼女らの情報は多い。とはいえ、直接会ったり出来るのならそうしてみたい気もする。私にとっても、 多分みんなにとっても、鴨小6-3時代はとても思い出深いものだろうから 「……で、手伝えることはある?」 「え?」 「開くって決めちゃったんでしょ。みっちゃんや千葉君だけじゃ心配だし……まぁ手を貸してあげるよ」 「ひとは……」 小学生のころに比べて私も随分変わったものだ。めんどうだとか行きたくない、というような感情は出てこない。そりゃそうだ 私は確かに人見知りだけど、友達や知り合いがどうでもいいわけじゃないのだから。ここは積極的に手伝おうと思う 「で、何から始めるの?こういうのは早めに色々やっておかないと面倒だよ?」 「……あの……」 「みんなには連絡した?……してないよね。私が今知ったんだし。サプライズとか言って急に召集かけて人数集まらなかったら 悲惨だから、ちゃんと告知しないとね。予算とかはどうするの?パーティーゲーム一式くらいなら、使いそうなものを適当に リストアップして、みんなで持ち寄ったりすればいいと思うけど……あぁ、パーティーといったらやっぱりビンゴだね。 景品とかもちゃんと決めないと。そこら辺は杉ちゃんにも相談しようか」 「……ひとは!」 「何?」 「……そういうのは私と千葉がやっておくわ。あんたには、一つ大事な頼みが……」 / 「全く……本人にしっかり許可を取ってほしいなぁ」 思わず文句が口をついた。みっちゃんの頼み。それは杉ちゃんの示した条件でもある 『龍太の家庭教師を引き受けてほしい』 こんなの私を名指ししているようなものだ。みっちゃんは勉強に関しては可もなく不可もなく、といったところだけれど、 明らかに人様にものを教えられる性格ではない。ふたばは全くの論外。というか彼女は陸上で国内トップクラスレベルにまで 上り詰めてしまったから、何かと忙しいのだ。確か今日は祝日で普通に休みだけれど、同級会の方には正直来れるかさえ怪しい (というかその前に、私に直接頼めばいいのに……) 多分、珍しく低姿勢で頼みごとをしてきたみっちゃんに対して、意地悪をせずにはいられなかったのだろう。家庭教師の件は、 その内私とお茶でもする時に頼むつもりだったんだろうけれど、そこにちょうど良くみっちゃんが現れたのだ。杉ちゃんは けっこう頭がいいから、どうせこうなることも予測していたに違いない。全くめんどくさい友情だ。みっちゃんから話を聞いた その日の内に杉ちゃんに連絡した私は、ちょっとだけ彼女をいびってやった。さすがに悪いと思ったのだろう、豪華なスイーツを 用意してくれるそうだ。ちゃんとパパとみっちゃん、ふたばの分を持ち帰り出来るよう念押しもしておいた 今は水曜、時間は正午前。来るのは昼過ぎで構わないという話だったけれど、私は早めに杉ちゃんの家にお邪魔させてもらった ちなみにみっちゃんは今頃千葉君とデート、もとい買い出しやら相談やらをしている頃だ。いい御身分である 「久しぶりねぇ、いつ以来かしら?」 「高1の時、龍ちゃんの誕生日でお邪魔させてもらって以来、ですね」 「あらあら、もうそんなになるのね!遠慮せずいつでも来ていいんだからね?」 「恐縮です」 「ふふ、かしこまらなくてもいいのよ?もう少ししたら龍太も帰ってくるけど、それまではゆっくりしていてね」 「はい、お言葉に甘えて」 かしこまってしまうのは仕方がない。何せ娘さんのお小遣いで、色々なお店で飲食させてもらっているのだ。本人からはいつも 気にしないでと言われるけれど、こういう時くらいいいだろう。まぁこの人もそういうことは微塵も気にしないんだろうが やっぱりこの人は完璧美人だ。いつ見てもそう思う。むしろこっちが成長して、彼女の細かい気配りだとか、女性らしい物腰の 柔らかさだとか、昔は気付かなかった所にもはっとすることが多くなった今の方が強くそう思う。杉ちゃんも順調に母親に 似てきているように見える。結構高校でも人気があるらしいという噂も聞いた。まぁ当然だろうな しばらく杉ちゃんのお母さんと近況を報告し合っていると、パタパタ足音が聞こえてきた。杉ちゃんだろう じゃあ後はごゆっくり、とウィンクをしてお母さんは出 「いらっしゃい!えっと……ごめんね」 「ううん、もういいんだよ。杉ちゃんのみっちゃんに対する愛情がどんなに歪んでいるかよく分かったからね」 「……手厳しいわねぇ……」 「……ふふ、冗談だよ」 「はぁ……まぁ、とにかく引き受けてくれてありがと」 「別に。これくらいなら大丈夫」 「あらそう?今後も頼んじゃおうかしら」 「場合によりけり、かな。でも何で正規の家庭教師さん呼ばないの?」 「それがねぇ……龍太は勉強できるのよ。むしろ私より出来るんじゃないかしら?実際家庭教師とかいらないの」 「うーん……確かにそういう気もするかな。龍ちゃん色々天才肌だし」 「でしょ?でもあいつ、最近全く勉強しないの。というか分かってるくせにテストとか真面目に解かないのよね」 「……何で?」 「分かんない。全く、あいつ未だにわがままだし俺様だし、とにかく扱いづらいのよねぇ」 「ふふ、可愛いんじゃない?そういうの」 「そう思えるのはうちのママとあんたくらいよ……何かパパはあえて何も言わない、って感じだし」 「……男同士、何か分かりあえるものがあるのかもね。たまにしんちゃんがうちに来ると、パパすっごいご機嫌だし」 「早くふたばと結婚しなさい、って感じねそれ」 「あはは……で?」 「ああ、えっと。そんであいつに、ちゃんと勉強しろって私が言うの。でも『うるせー出てけー』ってね」 「目に浮かぶようだねぇ」 「そこであんたにお願いするわけよ」 「……できれば勉強させるようにするか、最悪なんで勉強しないのか理由を探って欲しい、と」 「さすが、理解が早くて助かるわ……家族以外で龍太が心を開くとしたら、あんたしかいないからね。申し訳ないんだけど」 「うん。分かったよ。頭撫でてあげれば、多分色々話してくれるんじゃないかな」 龍ちゃんは小さい頃から私になついてくれていた。特に頭を撫でてあげると、暴れている時だろうがすぐに大人しくなるのだ 去年の誕生会の時も、はしゃぎ過ぎて疲れた龍ちゃんの頭を撫でて寝かしつけてあげたっけ (……?……頭を撫でる……何かあったような……) 『俺が、頭撫でられるようになったら――』 「あぁ……多分それは無理よもう」 「……え?」 何か思い出しかけていたので、一瞬意識が逸れていて、反応が遅れてしまった。形になりかけていた回想が消えていく 「……『無理』?それに『もう』って?」 「ああ、それは会えば分かるわよ。いやぁ、男の子ってすごいのねぇ……」 どこか遠くを見るような、でも優しげな目で、くすくす笑う杉ちゃん。一体龍ちゃんがどうしたというのだろうか 「たっだいまー……お?この靴……おい姉貴!ひと姉ちゃんもう来てんの?!」 玄関の方から、こっちに慌ただしくやってくる足音。龍ちゃんだ。勢いよく扉が開いて、私は久しぶりに龍ちゃんと対面した 「こら!姉貴ってのはやめなさいって言ったでしょ?!お・ね・え・さ・ま!」 「うるせ―俺の勝手だ」 「きーっ!全く可愛くないったらありゃしないわ!」 「男に可愛いとか侮辱だぞ。だから姉貴は彼氏出来ないんだよ。男心ってのを分かってない」 「なっ?!あっ、あんた本気で怒るわよ?!それにあんたこそ、乙女心を分かってないわよ!」 「いいもん。俺ひと姉ちゃんのことさえ分かればいいし……」 「あ、あのほぅ……」 2人が私の方を向く。まず最初に私は確認しなければならない 「この人……どちら様……?」 ずるっ、と音が付きそうなほど分かりやすく、杉ちゃんの右肩ががっくり下がった。男の子の方は、目を輝かせている 「ちょ……あんた、さすがに声とかで分かるでしょ……」 「へっへーん!ひと姉ちゃんやっぱりびっくりしやがったな!俺だよ、お・れ!」 ずいずいと男の子が私に近寄ってくる。ちょっと屈み気味になって、私に目線を合わせてから、彼は言った 「龍太だよ!杉崎龍太!このちんちくりんな姉貴の弟!もう小6だぜ!」 「ちんちくりんってあんた……!!」 「龍……ちゃん?あなたが?ほんとに?」 「おう!見違えたろ!」 確かに声は龍ちゃんそのものだし、にかっと笑った顔も龍ちゃんそのものだ。だけど、去年会った時の龍ちゃんは、まだ私より 小さかったはずだ。でも私の目の前に立っている龍ちゃんは、私なんかより全然大きい。何が起こったんだ、これは 「え、えと、龍ちゃん?何でそんなに……」 「成長期ってやつだ!」 「そうだとしても20センチ以上伸びるなんて誰も思わないわよ……」 「に、20センチ?!」 「パパやママに色々聞いて、ちゃんとその通りにしたんだぜ!運動とか食い物とか、かなり気をつけたしな」 20センチ。ということは、今龍ちゃんの身長は170センチ弱はあるのだ。そりゃあ私なんか余裕で越えているだろう 私の記憶の中の龍ちゃんは、ちょっと私より小さくて、生意気だけれど、本当は素直で可愛い感じの、年下の男の子だった でも今の龍ちゃんは、私より背が高くて。ちょっと注意して観察すると、筋肉とかも付いてそうな身体つきで。 とてもじゃないが、年下の男の子としては見れそうもない感じになっていた。男子三日会わざれば刮目して見よ、とは 誰の言だったか。まぁ私は龍ちゃんと半年以上も会っていない計算だし、元のニュアンスからも微妙にずれているんだけれど、 目をひんむくほど驚いた点は強調できるだろう。それほど龍ちゃんの成長は劇的に見えたのだ 「あらあら、お帰り龍太」 「おう、ただいま!」 「今日はひとはちゃんから勉強見てもらうのよね?ちゃんとひとはちゃんの言うこと聞いて勉強するのよ?」 「分かってるって!」 「あんた……私の時とはえらい違いね……」 「当たり前じゃん。ひと姉ちゃんの方頭良いし。姉ちゃんちんちくりんだし」 「むきーっ!?そのちんちくりん言うのをやめなさいよ!!ていうかちんちくりん言うならひとはも……」 「はいはい喧嘩しないでね?みくちゃん、ママ手伝って欲しいことがあるから、ちょっと来てくれない?」 「え、でもそうなると……」 「龍ちゃん、ひとはちゃんのエスコート、できるわよね?」 「え、えすこーとって……」 「任せろー!」 「よろしい。じゃあ、みくちゃんはママと来て。ね?」 「ああ、ママ、そんなに引っ張んなくても……」 「え、え?……ええ?」 杉ちゃんはお母さんに連れられて行ってしまった。残されたのは私と、龍ちゃんの2人。杉ちゃんのお母さんが、去り際にまた ウィンクを残していったけれど、果たしてあれはどんな意味があったんだろう 月曜といい今日といい、最近の私は自分の想定外の状況に流されまくっている気がする 杉ちゃんとお母さんが出て行ったあと、龍ちゃんは私を自分の部屋に連れてきた。ドアを開けて先に私を室内に入れる。一応、 エスコートと言えるのかもしれない。龍ちゃんの部屋なら、何回も入ったことがある。ガチレンジャーごっこもここでしたし、 龍ちゃんの頭を撫でながら本を読んだり、一緒にお昼寝したのもこの部屋だった。去年も彼を寝かしつける時に、私がおんぶして この部屋まで運んだのだ。ちょっと重かったけど、当時の龍ちゃんは私にとって実の弟みたいなもので、可愛くて仕方なかった だから、重いからといって私が彼の『ひと姉ちゃんおんぶしてー』という要望を却下することは無くて、しょうがないなぁ、と 呆れた素振りをしておいて、内心他の誰でも無い私を指名してくれたことを喜んでいたのだった でも龍ちゃんは、もう私じゃおんぶ出来ないような体格だ。どう考えてもこちらがおんぶされる側になってしまった。部屋の中は 龍ちゃんらしい感じがするが、この部屋の主である龍ちゃんがあまりにも変わってしまって、ちぐはぐな印象さえ持ってしまう そして何より、私は今の龍ちゃんのことを可愛いとは思えない。嫌いではないのだけど、その感情がどうしても認めがたくて、 私は半ば混乱していた。あの可愛かった龍ちゃんが、姉ちゃん姉ちゃんと私に付いて回った龍ちゃんが?こんなに―― 「おーい」 「……」 「ひと姉ちゃん」 「……」 「姉ちゃんってば」 「はぅ゛あ゛?!」 「とりあえず問題終わったぞー」 「えっ、あ、ああ、そう、そっか。うんうんえらいなぁはっはっは」 「へへへぇ、だろー?」 そうだった。とりあえず前後不覚な状態だった私は、名目上龍ちゃんの家庭教師であることを思い出して、溜まっている宿題の 一部を適当に解かせていたんだ。その後龍ちゃんのベッドに腰を下ろして、思考にふけっていたのだ。時計を見る 「15分……え、あの量で15分?早い」 「本気になればこんなもんだぜ」 「……ということは意図的に本気を出していなかったわけだね」 「まぁなー」 あっけらかんと龍ちゃんは言い放つ。手を抜いていたのを自分から認めた。今日の狙いからすれば、一歩前進だろう。その理由を 聞き出すことができれば、とりあえず目的達成である。自分の役割を思い出して、私にも思考力が戻ってきた。見た目が変わった とはいえ、冷静に接すると龍ちゃんは龍ちゃんであった。自信満々で生意気で、可愛げもある。こっちが勝手にびっくりして、 普通じゃなくなっていただけだ。とすれば、今私が尋ねれば、割とすんなりと、勉強をしなかった理由も教えてくれるに違いない 「……ねぇ龍ちゃん、教えてくれるかな。何で最近勉強真面目にしてなかったの?杉ちゃん心配してたよ?」 「……」 龍ちゃんはこっちをじっと見つめている。うう、やっぱり変わり過ぎだろう。変に緊張してしまうじゃあないか。とその時 「……はっはっはっはっはっは!」 「うええ?!」 破顔したかと思うと、高らかに龍ちゃんは笑いだした。まただ。また私の想定外のことが起きている。訳が分からない。変な声が出てしまった。そして私がおろおろしている隙に、龍ちゃんは私の目の前に立っていた。すごく得意げな顔をしている 「りゅ、りゅう、ちゃん……?」 「ふふーん、計・画・通・り」 「ええ?」 「……ひと姉ちゃん、立ってくれねーかな?」 「えっ、あっ……は、はい」 言われるがままに立ちあがる。今の私は、龍ちゃんの操り人形のようなものだろう。私の目の前には龍ちゃんの首元。ちょっと 喉仏が目立ち始めている。以前なら大体龍ちゃんの頭のてっぺんが、私の目線の高さだったというのに。あぁ、やっぱりこの子も 男の子なんだなぁ、と改めて実感する 「よーし。これで約束達成だな」 「え?」 「ほれほれー好きだぞーひと姉ちゃん」 「あ!?」 不意に頭が少し重くなる。ちょっとだけ暖かい温度。髪を梳かれる感覚。柔らかい掌の感触。これは、そう。龍ちゃんが、私の 頭を、撫でている?私が、龍ちゃんの手に、撫でられている?そう認識した途端に、顔がすごく熱くなってきて、胸の奥の方が 締め付けられるような錯覚に陥って、さっきまでの感情が蘇ってきて、そして―― 「……ぅぁあ゛……」 「?!おい!ひと姉ちゃん!?」 無様な効果音を口から吐き出しつつ、私は意識を手放した
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「お邪魔しまぁす!」 「あぁ、いらっしゃい」 「おぉ、しんちゃんのお姉さん!こんにちはっス!」 「こんにちは。信也まだ部活から帰ってきてないから、居間でゆっくりしててね。今麦茶出すから」 「はーい!」 夏休みの宿題を教わりに、ふたばちゃんがやってきた。長期休暇の日常風景とも言える。 この娘はとにかく弟に懐いていて、平日だろうが休日だろうが、暇さえあればとりあえず我が家にやってくるのだ。 もう中学生の彼女が、相変わらず遠慮なく同級生の男子の家を訪れることは、一般的にはちょっと問題なのかもしれないけど、 双方の親達は既にふたばちゃんと弟が結婚する、くらいの感覚で扱っているし、私自身、彼女は実の妹のような感じで好ましく思っている。 たまに、あぁ、普通に『お姉ちゃん』と言ってくれないかなぁ、と思うこともある。私の個人的な願望だ 丸井さん家の三姉妹は、少々性格とかに問題があるかもしれないが、間違いなくみんな可愛いらしいと思う。その中でも、ふたばちゃんは特に可愛い。 まぁこれは、小さい時から弟と一緒に遊んであげたりだとか、頻繁に会っているからとか、そういう補正もあるだろうけれど。 多分、三つ子の中でも一番綺麗になるだろうな。健康的で、笑顔の素敵な美人さんになってくれるんじゃないか、 と母さんと一緒に期待しているのは、本人にも弟にも内緒。それにしても弟も果報者だ。こんなに将来性のある女の子なんて、そうそういない。 色々考えている内に、麦茶の準備が終わった。今日は暑いから、ふたばちゃんも喉が乾いているだろう。美味しそうに麦茶を飲む彼女を想像して、頬が緩んだ。 「お待ちどうさま」 「ありがとうっス!」 ふたばちゃんにコップを渡すと、10秒も経たない内に一気に飲み干してしまった。淹れたこっちも嬉しくなる飲みっぷり。 ぷは、と一息ついた彼女は、まだまだ飲み足りない様子。コップを差し出してくるふたばちゃんがやっぱり可愛くて、私はにへらとしてしまった。 (……あれ?) コップを受け取る時、不意にふたばちゃんの胸元に目がいった。彼女は将来性がある、と思う要素の一つ、それは彼女の発育の良さである。 この年齢にして、既に未来の魅力的な体型を期待させていることは、近しい人なら誰でも知っている。同じ女性としては羨ましい限りだ。 信也はそれで日々悶々としているみたいだけれど。男の子って難しい。でも確かに、彼女が無邪気すぎる部分もあるから仕方ないんだろう。 そんなふたばちゃんだから、本来は彼女自身気を遣うべきなのだ。小学生の時は、キャミソールにスパッツという恐ろしく挑戦的な格好をしていて、こっちが色々心配してしまった。 本人に自覚が無いこともあったが、アウトだけどギリギリセーフ扱い、という感じで周りが黙認していたのだから驚きである。 まぁ私と母さんも、軽装なのをいいことに色々試着させて楽しんでいたりしたので何も言えたものじゃないのだけれど。可愛いは正義でいいじゃないか。 しかし中学生になった以上、そこら辺はしっかりしないといけない。特に男子中学生なんて、ほぼ頭の中はエロスしかないの生き物のようだし。 誰とでも屈託なく接するふたばちゃんが、何かの間違いでいやらしい事件とかに巻き込まれないとも限らないのだ。大抵は相手がぶちのめされる気もするけれど とにかく、私はふたばちゃんと言えど、中学生になったのだし、当然下着とかはきっちり身に着けているものだと思っていた (……これ、付けてないんじゃないの……?) しかし目の前の彼女を見るに、ブラはしていないんじゃないか。夏服だからキャミソールくらい見えるのは分かるが、その下の体のラインが少々生々しい気がする。 (セクスィー……いやいや、何考えてるんだ私……) とりあえずふたばちゃんの胸元をさりげなく注視しつつ、麦茶のおかわりをコップに注ぐ。私の勘違いかもしれないが、ちゃんと観察しなくては。とその時。 「あ」 「おぉ?!危ないっス!」 ガン見し過ぎて手元がおろそかになり、ふたばちゃんに渡しかけているコップを、私は滑らせてしまった。とっさに彼女が反応してキャッチしてくれたので、コップは傷一つつかずに済んだけれど。 「あはは!びしょびしょ!」 「あ゛あ゛あ゛?!ごっ、ごめんねふたばちゃん、今タオルとか持ってくるから待っててね!?」 中身の方は盛大にふたばちゃんにかかってしまった。制服の白いシャツは、ちょっとシミが残ったりしてしまうかもしれない。 しかし申し訳ないと思う傍ら、私はさっきの自分の認識が間違っていないことを確信していた。この娘、ブラを付けていない。 (……濡れ透け……けしからん!) これは刺激が強すぎる。信也みたいなうぶには特に。部屋からタオルのついでに色々持ってこよう。シャツは私の時から使っているものみたいだから、あげてもいいかもしれない。 そして今一番必要であろうアレは、とりあえずレンタルしてあげよう。 「千葉め……何てものを見せてくれやがったんだ……」 部活の練習が終わった帰り、偶然千葉に出会った俺は、いつものごとくあいつのルーチンワークに付き合わされることになった。エロ本探索である。 千葉曰わく 『エロ本収集は紳士のたしなみ……捨てる神がいて、それを拾う俺達も、いつしか子供に夢を運ぶ存在になっていくのです……』 だそうだ。あほか。 付き合うと言っても、俺は見張りである。そもそもそういう本に抵抗がある俺に何で手伝わせるんだあいつは。付き合う俺も俺だけれど。 結局は付き合いが深い俺を信用しているんだろう。こんな場面で信用されてもしょうもない気がするのは、気のせいにしておこう。 だが、今日の探索は一味違ったのだった。小学生の時からずっと続けているから、たとえ千葉がふざけて俺にエロ本を見せてきたとしても、 俺が拒否反応を示すことなんて分かりきっていることで、わざわざそんな無駄なことをするなんて、普通は無いのである。そう、普通は。 「おーい」 「ん?終わったのか?いつもより速いな」 「いやいや、まだ獲物はあるんだ」 「じゃあどうした?……俺は見ないぞ、先に言っておくけど」 「察しがいいなぁ。まぁ付いて来いよ」 強引に橋の下のスペースに連れて来られる俺。ここは歩道からは死角になっているのだ。橋の土台の部分は、スプレーの落書きで埋め尽くされている。 まぁ、よろしくない行為をしたり、そういう種類の兄ちゃん達が集まるような場所、ってことだ。今は昼間だから、そんな奴らは当然いないけれど。 ちなみに千葉は、いつぞやの不良達とここで会ったりするらしい。しかも結構仲良くやっているそうだ。中学の同級生とかも誘ってエロ本品評会を開催しているとか。 千葉曰わく『エロスを愛する気持ちに、卒業なんて無いんだ』とのこと。こいつら大丈夫なんだろうか。 「さて、このエロ本だ。ランクはA-。割と上物だな」 「だから見せんなって……」 千葉は近くの茂みに隠してあった一冊のエロ本を取り出す。ランクは保存状態や内容によって10段階程度あるとかなんとか言ってたっけ。どうでもいいけど。 「いやいや兄ちゃん、騙されたと思って見てみろよ!ほれほれ」 「あーもうやめろって!こんなもん見て……も……」 俺も一般的な男子中学生であって、そういうものに全く興味が無いわけじゃない。しかし、千葉を始めオープン過ぎる奴らに囲まれて育ったせいか、変に抵抗感があるのだ。 でもやっぱり本能には勝てないようで、チラッと千葉が開いているページを見てしまったんだ。本当にチラッと。 「……え?」 「ふふふ、やっぱり反応しやがったか」 「お、おい……それ」 「気になるならしっかり見りゃいいじゃん」 「……」 にやにやしている千葉から、エロ本を受け取る。一度閉じてしまったから、さっきのページがどこだか分からなくなってしまった。 1ページずつ確かめながら探す。問題の写真以外の女の子の写真が目に入って来て何かもやもやした気持ちになるけど、無理やり無視してひたすらページをめくる。 「……!あった……これ……」 ようやく見つけたページに写っていたのは、ちょんまげみたいに髪を結んで、体操服とブルマ姿の、大きい胸を露わにした女の子。肝心の顔の部分は破れていてよく見えない。 「……ふた……ば?…………いや、そんなわけあるか!」 冷静になるとそんなこと有り得ない。チラッと見てしまったせいで、勘違いしただけだ。実際細かく見ると全然違うじゃないか。 ふたばの脚はこんなに太くない。もっとバランスよくふっくらした感じで、綺麗な脚だ。写真の女の子は正直むっちりし過ぎで、エロ本としては逆効果なんじゃないかと思う。 次にお腹だ。中学から陸上を始めたから、あいつのお腹は引き締まっている感じなのだけど、こっちは弛んでいる 。 最後に胸。写真の子は確かに大きい胸だと思う。でも若干垂れ気味で残念な感じだ。この写真の子は、豊満と言うよりかは太っていると表現するのがぴったりだろう。 ふたばの胸は……もちろん、まだ見たことは無いんだけれど、でも多分、もっと綺麗な形で、適度に大きくて、柔らかくて…… 「……おーい、さすがにガン見し過ぎだろ」 「……はっ?!」 「どうだ、ちょっとはグッと来たろ?」 「ばっ、馬鹿言うなよ!こんな脚も腹も太くて、垂れてる胸の女なんて、ふたばに似てるわけが……」 「ほー。自爆するとはなぁ」 「なっ?!」 「別にふたばに似てるなんて俺は言ってないぞ?……なるほど、つまりお前にとってのふたばは、脚が細くて、腹も引き締まってて、おっぱいにも張りがある、と」 「ち、千葉ぁ!」 「よっ!むっつり変態優等生!」 「違う!!」 「違わないって……そろそろ自分に素直になろうぜ?」 「バカ野郎!や、やめろよそういう言い方!」 とまぁ、こんな具合に終始からかわれたというわけだ。千葉は俺の取り乱した姿を見て、満足して帰っていった。無駄に時間を使わされたようなものだ。今日はふたばが来ると言うのに。 そう、あんなエロ本を見せられた後に、俺はふたばに勉強を教えてやらなきゃならんのだ。否応なく、さっきの写真とかが頭に浮かんでしまうだろう。 実際、好きな娘を連想させるようなエロ本なんて見てしまったら、下の方もある程度は反応するに決まっている。 (……あぁっ!?ダメだダメだっ……!考えるな、考えるな俺……) さっきの写真と全く同じような、あられもない格好のふたばが簡単に想像出来てしまう。 綺麗な脚、引き締まったお腹、多分まだちょっと小振りだけど、女性らしい胸。 一番問題なのは、想像の中のふたばが、どんなポーズを取っていようと必ず『しんちゃん』と呼びかけてくることだ。 胸をさらけ出したふたばが、パンツ姿になったふたばが、寝そべって誘うような感じのふたばが……ことごとく『しんちゃん』と俺に笑いかけてくるのだ。 もう時間的に、ふたばは家で待っている頃だろうか。今日はやりづらいことこの上ないに決まっている。 ふと気づくと、ポツポツと雨が降り始めていた。天気予報では1日中晴れとか言っていたがどうだろう。通り雨とかで終わるんだろうか (……ちょうどいいかもな) 色々と過熱気味な頭を冷やすにはうってつけかもしれない。雨宿りとか、どこかで傘を手に入れるとかいう選択肢は放っておこう。 だんだん強くなってくる雨に敢えて打たれるかのように、俺は家に向かって走りだした。 ふたばちゃんにとりあえず古い体操服を貸してあげてから、ふと気付くと雨が降り出していた。天気予報も派手に外れることはあるらしい。 「……午後練……あぁもう!」 「学校行くんスか?」 「もともと今日は午後からの練習だったからね。でもこのタイミングで雨はなぁ……」 「うわぁ……何か雨強くなってるみたい」 「そうね……準備はしてあるから、ひどくならない内に出ちゃおうかな。ふたばちゃん、信也が来るまでお留守番お願い出来るかな?」 「了解っス!」 「うん、いい返事。よろしくお願いね」 ふたばちゃんに見送られつつ、私は玄関を出た。こういう日はとにかく防具が蒸れる。ただでさえ急な雨で憂鬱だというのに、練習のことを考えると溜め息が止まらないのであった。 傘をさして学校へ向かう。雨だしたまにはバスでも使おうかな。そんなことを思っていたら、前から誰かが走って来てすれ違いになった。 「……信也?」 一瞬だったからはっきりとは分からなかったけれど、中学生くらいの男の子だった。振り返って確かめようとしたけれど、もう姿は見えない。 (まぁ、傘は持って無いよね……あの子の分の傘も持ってきておけば良かったかな) この雨にどの程度打たれていたのかは分からないけれど、かなり濡れているのは間違いないだろう。風邪なんかに罹らなければいいが。 そう考えると、ふたばちゃんも危ないかもしれないな。彼女は元気な割に病気がちなのだ。信也からうつされてしまうかもしれない。 (……うつされるって……ちょっといやらしいかも……) 天気は雨だが季節は夏。そして2人はもう中学生だ。何か間違いが起こってしまうかもしれない… ……おっと、自分は何を考えているのか。邪推が過ぎる。こんなのいらない心配に決まっているのに。 雨のせいで思った以上に学校到着が遅れそうだ。こんな日に練習に遅刻したら、先輩から何を命じられるか分かったもんじゃない。 2人が少し気掛かりだったけれど、余裕が無くなってきた私は、とりあえず歩調を早めて学校へ向かった。空を見ると真っ黒な雲。これは本格的に急ぐ必要がありそうだ。 さっきすれ違いになったのは多分姉さんだったと思う。そういや今日は午後練だったっけ。ということは、家にふたばがいる場合、俺はあいつと2人きりになるわけだ。 (2人きり……いかんいかん危ない危ない!!) また変な想像をしかけた頭を思いっ切り横に振って、無理やり空にする。わざわざ濡れ鼠になってここまで走って来た意味が無くなるところだった。 正直普段でさえ、ふたばと2人きりになる時は色々大変だ。嬉しいのは事実だけれど、無防備過ぎるあいつの仕草に翻弄されて、精神的に恐ろしく疲労する。 加えて今は、エロ本のショックがまだ残っている。これで変なハプニングが起きたりしたら、色々まずい。 何も起こりませんように、と願いつつ、いつの間にか着いていた我が家の玄関を開ける。すっかり見慣れた陸上用シューズを確認。やはりふたばはもう来ていた。 「ただいまー……」 とりあえず帰宅の挨拶をする。返事が無い。もう俺の部屋にいるんだろうか。そうなると一度部屋から出て貰わないとな。 あいつは俺が着替えはじめてパンツ一丁になったところで、全く気にしないのだろう。ぼけっと見ているに違いない。 でもこっちは滅茶苦茶恥ずかしいのだ。というか少しは恥ずかしがって欲しい。僅かばかりの俺のプライドがズタズタになってしまう。 「……おかえりー!」 「お?」 ちょっとばかり反応が遅い。どこにいるんだ、あいつ? 「おーい!ふたばー?」 「……おトイレー!」 あぁ、トイレにいたのか。少しでも顔を合わせるまでの猶予が伸びたと考えるならラッキーだろう。今の内に着替えておくとするか。 「雨で濡れちまったから着替えてるよー!そのまま部屋にいるからー!」 「……あーい!」 さて、急いで着替えだ。汗を吸ったユニフォームと一緒に、制服のシャツとかも洗濯かごに放り込む。ズボンは部屋で干すか。 パンツも濡れてしまったから、部屋に行ったらまずパンツを替えなくては。その瞬間ふたばが入って来たら目もあてられないが、さすがにあいつもノックぐらいするだろう。 部屋に入った俺は、ハンガーにズボンをかけると、大急ぎでパンツを替えた。これで大きな心配は無いだろう。 あとはTシャツを、とタンスに手をかけた時だった。階段を上がって来る元気な足音。間違いなくふたばだが、何でそんなに慌ただしいんだろうか? 「しんちゃーん!」 「げ?!おま……ノックくらいし……ろ!?」 勢いよく開く扉。反射的に手近にあった枕を抱える俺。ふたばよ、頼むからノックくらいしてくれ。幼なじみとはいえ、ここは男の部屋なんだぞ。 まぁ、妙に慌ただしかった時点で予想しておくべきだったか。しかし問題はそこでは無い。ふたばの格好だ。 「えへへー、しんちゃんのお姉さんのだよ!ほら、『佐藤』って!」 「あ、あぁ……そうだな、はは……」 「前は中学もブルマだったんだねぇ。小学生に戻ったみたい!」 よりによって、さっきのエロ本とほぼ同じ格好で出てくるとは全く予想外だった。ちなみに昨今の流れなのか、俺達の代から体操服はハーフパンツで統一されている。 つまり、本来中学生のふたばのブルマ姿なんて拝めないはずなのだ。しかも胸の名前欄には『佐藤』の文字。いやらしさ倍増である。 既に色々フラッシュバックしていて、俺のパンツはテントが張っているかのように膨らんでいる。とっさに枕を抱え込んだ自分を誉め称えたい。 とはいえ身動きが取りづらいので、さり気なくシーツを引っ張ってきて、下半身を隠す。後は適当に話でもして、俺のアレが鎮まるまでやり過ごさなければ。 「な、何でそんなの着てんだ?姉さんのって言ってたけど」 「麦茶こぼれちゃって……制服は今乾燥機にかけてるところだよ」 「ああ、そういや乾燥機回ってたかもな……」 「……しんちゃん寒いの?」 「え?」 「シーツ被ってる……」 「あ、ああ、そうそう!ちょっと濡れちまったからさ。うん。だから上も着替えないとな。風邪ひいちまうしな。あはは……」 シーツのことに触れられて一瞬焦ったが、うまく誤魔化せた。Tシャツは脱ぎかけで替えていないし、雨の水分で肌に張り付いて結構冷たいのは事実だ。 着替えをすると言って、ここは一度ふたばに御退場願おう。非常にピンチだが、ちょっと光が見えてきた気がする。 「着替える?」 「ああ、うん。だから……な?」 「ほぇ?」 「いや、その、恥ずかしいから……」 「うん」 「一度部屋から……」 「だったら私も着替える!」 「……はい?」 「私も着替えればおあいこで恥ずかしくないでしょ?」 「いや待て何だそりゃ!?色々間違ってるぞ?!」 「……もーう。しんちゃんはやっぱり恥ずかしがり屋さんだなぁ。私から先に着替えるよ?」 「話聞いてー?!」 光なんて無かった。どこで間違った。どうしてこうなった。しかしこういう時のふたばは何を言っても聞いてくれないのを分かっている自分が悲しい。 「実はちょっと……胸のあたりがきつくて……」 「あぁそらそうかもな……って何言わせんだよ!?」 「んー!!もう我慢出来ない!窮屈なの嫌!しんちゃんのシャツ貸してね!」 「ちょ、いや待て待て!!」 体操服に手をかけるふたば。止めようとしつつ腕で自分の視界を隠す俺。いや、落ち着け自分。ふたばは少なくともキャミソールは着ているはずだ。 発育が進んでいるとはいえ、キャミソール姿のこいつは小学生の時沢山見ているじゃないか。まだそっちの方が、俺も冷静になれるんじゃなかろうか。 そうすれば、とりあえず無理やりふたばを部屋から出すくらいは出来そうだ。大丈夫、まだ何とかなる。 絶賛混乱状態の頭を振り絞ってそう判断した俺は、視界を腕で遮るのをやめた。こういうのはチラチラ見えると余計にいやらしく感じてしまう。 発育が進んでいる分、小学生の時より刺激的なのは明らかなので、開き直って真正面から受け止めた方がいい。 さぁ来いふたば。俺は、お前のキャミソール姿なんて、見慣れているんだからな。取り乱したりするもんか。 「……あぁ!きつかったぁ……しんちゃんシャツ貸して?あと風邪ひいちゃうから早く着替えないと……しんちゃん?」 「……お、お前、キャミソール……は……?」 「濡れたから今乾燥機だよ?」 「……ぶ、ぶらじゃぁ……」 「ああ、これもお姉さんから借りたの!ねぇ、似合うかな?」 キャミソール姿を期待していた俺に、敢えて視界を遮らなかったのが災いして、ふたばのブラ姿がクリーンヒット。 上はブラジャー、下はブルマ。想像通りの綺麗な体のラインが丸分かりである。何だこのエロさ。それで無邪気に『似合うかな?』とかにっこりしながら聞いて来ないで欲しい。 あれか、顔も赤いしもしかして確信犯なのか。そうだとするとひどい天然か、とんだ小悪魔である。さすがの俺も、本当に飛びかかる寸前だ。 「お、お前なぁ!?いい加減にしないと、俺だって……」 我慢の限界だ、恨むなよ、とか俺は言いたかったんだろうか。でもそれは、ドカンという凄まじい音と光に遮られて、尻切れとんぼになってしまった。 同時に、明かりが消えて部屋が真っ暗になる。 「うお?!」 「きゃあ?!」 どうやら雷のようだ。音の大きさからして、相当近くに落ちたように思える。いきなり真っ暗になったのは停電したからだろう。 見事に何も見えない、というのは不安だったが、さっきまでの状況はリセットされた。正直助かったと言える。 あのままだと、冗談抜きでふたばを襲ったりしてしまったかもしれない。本当に良かった。ほっ、と胸を撫で下ろす。 今の隙に着替えようかとも考えたけれど、さすがに暗闇では動きづらい。まぁ少しだけ余裕が戻って来たし、状況を打開する何かを考えなくては。 「し、しんちゃあん……」 「……ふたば?」 暗闇からふたばの声が聞こえる。妙に弱々しい声。一体どうしたんだろう。 「おい、どうし……あ?!」 「怖いぃぃ……」 そういやこいつ、怖いものに耐性が無いんだった。いきなり真っ暗になってびっくりしてしまったんだろう。 (いやしかしこれは……やばい!) 身動きが取れない。雨に打たれてきて冷たかった体が、暖かいものに包まれる。いや、しがみつかれているのか。 「あばば……ふ、ふたば!ちょ、ちょっと離れて……」 「怖いよぅ……」 「うぁ……」 柔らかい肌が、直に接している感覚。ふたばの匂い。強く抱きつかれて、それらが更に強くなる。耳元で聞こえる、か細いふたばの声。 ちょっと収まっていたはずの下半身は、過去最大級の自己主張を続けている。もし、これ以上ふたばが動こうものなら、文字通り決壊してしまうに違いない。俺の理性も同じだろう。 唯一まともに動かせる腕をでたらめに動かす。正気でいる間に、ふたばを引き離したり出来ないだろうか。指先がふたばの肌に触れる。 一瞬びくっ、とふたばの体が反応して、しまった、と思い反射的に手を離す。その拍子に、指が何かに引っかかった感触があって、ぱさり、と軽い何かが落ちるような物音がした。 「きゃあっ?!」 「え!?」 パニックで色々よく分からなくなっていたが、決定的にやってはいけないことをしてしまった、という強い確信だけはあった。 次第に目が慣れてきて、ぼんやりと自分の部屋の輪郭が見えてくる。外は雨でカーテンも閉まっていたが、もともとそこまで暗かったわけではないようだ。 雷の強い光に目がやられてしまって、相乗効果で何も見えなくなっていた、というのが実際のところらしい。薄暗いとはいえ、はっきり物を認識出来る程度の光はあった。 さて、目が見えるようになったのはいいが、俺は爆弾に抱えられているようなものである。さっきの物音がしてから、ふたばは黙ったままだった。 恐る恐る視線を下の方に持っていく。お馴染みのちょんまげ。恨めしそうに見上げて来る瞳は、心なしか涙を溜めている。ちょっぴり赤いほっぺたが可愛いと思った。 更に視点を下げた俺は、大体のことを把握し、あぁやっぱり嫌な予感って当たるよなぁそうだよなぁ、と自分で納得して。 「……しんちゃんのえっち……」 好きな娘の生おっぱいを見た瞬間、鼻血を吹いてぶっ倒れた。