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「終わったから今から行きます。…ふふっうん、またあとで。」 いそいそと身支度をしながら軽く鼻歌なんか歌っちゃって…浮かれてる あきらに陽の空気をかもしだすのっちがかばんを肩にかけた 「えらいウキウキしてどこ行くの?」 「ん〜?内緒♪」 「デート?」 「…内緒」 わかりやすい奴め 「のっちだってもう大人だもんねー」 ゆかちゃんがそうちゃちゃを入れると、嬉しそうに笑って 「そう言うことです。じゃあまた明日!」 足取り軽く行ってしまった 「ゆかたちも帰ろっか」 表情も声もいつもと変わらない かわいいゆかちゃんがかわいく笑う 「どっかでご飯食べてく?」 「んーうち帰る」 「じゃあ材料買ってかなきゃ」 「そだねー」 にこにこしてなんでもないような顔して …当たり前か、泣くわけにはいかないもんね ご飯作ってる時も食べてる時も 完璧ないつものゆかちゃん …をしてるつもりなんだろうな ゆかちゃん、自分では気付いてないかもしれないけどね さっきから一度も目が笑ってないよ? それどころかその目、あたしのこと見えてないでしょ? 髪をなでてくれる手 まっすぐに見てくれなきゃダメなはずの視線は少しズレてる 今きっと、のっちのこと考えてる 今じゃない、ずっと ずっとずっとのっちのこと考えてる 引き寄せられる力が強い 耳に手をかけて優しくなでて でも舌は遠慮なしにあたしを奪おうとしてくる 我慢しきれないとこ、好きだよ 好きだけどちょっと意地悪してもいい? 「ん…ね、ゆかちゃん」 「何?」 「のっち今頃どうしてるかな?」 ズレてた視線が初めてあたしを捕らえてくれた 「…こうしてるんじゃない?」 苛立ちも焦躁も我慢しきれないとこ、それでも好きだよ
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#blognavi タコだよ?さんと合作しました。初コラボ。 ビートルズでこういうジャケットありませんでしたっけ? カテゴリ [タコだよ?] - trackback- 2006年02月01日 02 03 04 名前 コメント #blognavi
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「……ん」 6 00ちょっと前。いつもより30分くらい早い起床。目覚ましは鳴っていない。自然と起きたのだ。とりあえず目覚ましのスイッチはOFFにしておく。 (……洗濯の用意……) もう長いこと家事全般をやっているおかげで、基本的に寝覚めはいい。でもさすがに下半身の違和感と、ああやっちゃったという後悔。 この2つのせいで気分はかなり悪い。昨日まではみっちゃんを注意出来る立場だったのに、今日からは同列である。姉には悪いが相当やるせない。 (……あれ?) パンツを替えてから、もう1人の姉の姿が見当たらないことに気付いた。トイレにでも行っているのだろうか。だとすれば、鉢合わせになると面倒だ。 ふたばは身内の様子にはかなり敏感である。今の私の状態だと、変に勘ぐられるかもしれない。 しんちゃんとの関係が本格的になってからは、前にも増して注意力が強化されたような節もある。 それはしんちゃんとの交際を通じて、彼女が女の子から女性になった、ということの表れなのだろう。因みに初体験の話は非常に参考にさせてもらった。 (……私もいつか……) 昨晩の妄想をちょっとだけ思い返す。龍ちゃん(大)は16歳くらいの設定で、そうなると私は20を既に超えているということになる。 これから定期的に龍ちゃんに会うのだから、私の初体験はそれよりも早い時期になるだろう。龍ちゃんの成長を考えれば、下手をすると年内まで有り得る。 犯罪っぽい気もするが、その背徳感がなかなか良い。私の貧相な裸を目の当たりにして、取り乱してしまう龍ちゃんもポイントが高いだろう。むふぅ。 そんな龍ちゃんに対して、お姉さん振ろうと余裕綽々を装い接する自分もまた乙なものだ。或いは全く逆に、獣みたいに強引にされるのも捨てがたい。 「……あ」 いけない。昨晩の情熱がまたぶり返しそうだ。下半身が切なくなってきたのは気のせいではない。思わず声が出てしまう。 冷静になろう。今やるべきは出来る限り家族にバレないようにパンツを処理ることだ。いつも通り朝食も作らないといけない。快楽に身を委ねている暇はないのだ。 目下の問題はふたばの所在だけれど、部屋に戻って来るのを待っているのも正直惜しい。そもそもトイレに行ったという予想が外れている可能性もある。 少し迷ったけれど、私は部屋を出ることにした。 部屋を出ていきなり違和感に襲われる。料理の匂いだ。しかも肉を思いっきり焼いているような。 「……ふたばなの?」 パパとは考えにくいし、みっちゃんはまだ夢の中。残るは現在所在不明なふたばだ。最近料理を教えていたし、可能性は無いわけではない。でも突然どうしたのだろう。 (しんちゃんのためかな) 昨日は佐藤家に朝から遊びに行って、しんちゃんにお昼を作ってあげたらしい。誉められたんだよ、と夕飯の時に嬉しそうに語っていた。 あの様子と今の状況を組み合わせると、お弁当とかを作っている可能性が一番妥当だ。昼食用なら肉を焼いているのも頷ける。 しかしどうしようか。我が家は狭い。洗濯機の場所に行く過程で、確実にふたばに見つかってしまうに決まっている。 元々洗濯は朝一番にやっていることだし、何事も無かった風を装い、普段通りにするのが一番安全だろうか。 そもそも私自身がボロを出さなければ怪しまれる可能性も低いのだ。ポーカーフェイスもそれなりに自信がある。 (普通に、普通に) 自分に言い聞かせながら、いつも通りゆっくり階段を降りていく。料理の匂いもだんだん強くなってきた。 それにしてもこんなに強く香りがすると言うことは、相当の量の肉を焼いているのかもしれない。冷蔵庫の中身を思い出しつつ、後で注意しないとな、と思った。 「……な」 「あー、ひとおはよー!ちょっと早起きだね!」 キッチンにはふたばが立っていた。ちゃんとエプロンも付けている。私にすぐに気付いて話かけてきた。まぁここまでは良くありそうな光景だ。だけれど。 「火、火ぃ消して?!早く!!」 「ほぇ?」 「『ほぇ?』じゃなくて!天井や壁をよく確認しなさい!!あぁもう!?」 さすがに普通のフライパンが中華鍋のごとく火を吹いている光景はギャグだと思いたい。そりゃあ匂いもするはずだ。 ふたばの反応が鈍いので、駆け寄って自分で火元を閉める。おろおろしている姉にタオルを濡らすように指示。即座に火柱を上げるフライパンに被せていく。 肉の量自体は普通の様だけど、何を思ってこんな火力で焼いたのか。むしろどうやってこの火力を実現したのだろう。壁や天井が黒くなるなんてやり過ぎもいいところである。 黒いだけで、ひどく焦げているわけじゃなかったのは不幸中の幸いだった。ふたばの馬鹿力に任せて、黒ずみが固着する前に全部綺麗にさせる。 「終わったよー」 「はぁ……大事に至らなかったから良かったようなものを」 「……ごめんなさい……」 さすがに反省はしているようだ。一歩間違えば火事になるところだったのだから当然である。していなかったら物置にぶちこむ所だ。 「どうしてあんなことになるまで気付かなかったの?」 「うぅっ、そのぅ……」 「……私、ベタなのは嫌いだよ?しんちゃんのことを考えていたら、っていうフレーズから始める言い訳はやめてね」 「……えへ☆」 (図星かよ!!) 呆れて声も出ない。バカップルじゃなく真性のバカだ。ここまで来ると怒るのもアホらしい。 まぁそれほど強い想いっていうのは大切なものだと思う。そこは否定しない。当分何かペナルティを課すのは決定だけれど。 しかし早朝だというのに、肉体的にも精神的にもかなり消耗した。汗もかいてしまったけれど、朝シャワーは家計によろしくない。 だから私は、とりあえず持っていた布で汗をふこうとしたのだ。しかし、隠し持っていたその布を顔に当てる直前に、その布本来の用途を思い出して動きを止める。 (危なっ!?) というかこのパンツはまだ若干湿っぽいのだ。そんなのを顔に当てていたら、と思うと恐ろしく嫌な気分である。 「……ぱんつ?」 「あ」 しまった。迂闊過ぎる。なんでこの場で出してしまったんだ。昨日の私の行為はバレていないにせよ、明らかに妙な光景である。何か言い訳を…… 「……ははぁん……昨日のはひとだったんだ……」 (バレてたー!?) 何ということだ。声とかが漏れないようにしていたのに。というかパンツを見てそれに結び付けるとか、どんな思考回路だ。 ……あぁ、そうだった。昨日まではみっちゃんがこんな感じで、洗濯物が増えるなぁとか嫌味を言っていたのは他ならぬ私なのだ。 ふたばもそこら辺の事情は知っているわけだから、パンツを持っている、いつもより早起きだ、ということなどから連想しやすいのは当然である。 つまりみっちゃんが大体悪い。長女のクセして本当にとんだ雌豚だよ! ……と八つ当たりするものの、自業自得な面があるのは勿論理解している。いよいよ自分がみっちゃん並だというのを改めて思い知るようで、非常に最悪な気分だ。 はうあ゛あ゛あ゛、と声にならない声を発して固まった私の肩を、ふたばがポンと叩く。 なんだ、そのすごく納得しているような表情は。うんうん、とか、そういう仕草は何だか惨めな気持ちになるからやめて欲しい。 「……洗濯機を回す準備、出来てるからね?」 「……うわあああああああああ?!」 ふたばの言葉に、『うん、全部分かってるからね、安心してね』と言うかのような無駄に優しい表情に、私は絶望を覚えた。穴があったら入りたいとは正にこのことである。 近年稀に見るひどい1日の始まりであった。
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タカシを求め、唇を吸う。呼吸が苦しくなった所で、一度力を緩めると、タカシが唇を 離して言った。 「これで、満足か?」 私は首を横に振って、タカシを見つめて答えた。目が潤んでいるのが分かる。 『……ううん。もっと。もっと、くっ付きたい……』 するとタカシが、私を掻き抱いて唇を、今度はいきなり強く押し付けてきた。半開きに なった口から、舌が出て、私の唇をなぞる。私はそれを受け入れ、口の中に入ってきた舌 を舌で絡め取った。 『んっ……んん……ううんっ……』 クチュ……チュパ……チュル……と、湿った音が部屋に響く。タカシの舌が引っ込むと、 今度は私が、自分の舌をタカシの口の中に入れ、舌を絡ませる。興奮し、息が荒くなる。 体が熱くなってもうどうしようもなくって、何も考えられなくて、ただひたすらに私は、 タカシの唇を求めていた。 『ふぁ……フゥ……もっと……』 甘えた声を出し、キスをおねだりする。舌を差し出すと、タカシも舌を出して、絡ませ てくる。タカシが上、私が下になって、しばらく唇を合わせずに舌だけでキスをする。そ れからまた、激しく唇を重ね合わせた。 『フッ……ウン……ンンッ……んあっ……!!』 しばらくキスを続けているうちに、ようやく私の欲求も収まってきた。そろそろ終わり にしようかなと思っていると、ふと、私は気付いた。私を抱き締めるタカシの手が、随分 と下に下がって来ている事に。 ――もしかして……? キスを続けながら、半分覚めた頭で様子を探る。うん。やっぱり、手が次第に腰から、 お尻の方に下がって来ていた。体を押し付けると、下半身が、熱く、固くなっているのが分かる。 ――タカシってば……このまま…… 収まりかけた心臓の動悸が、再び高まる。私の心が一瞬揺らいだ。このまま、タカシに 全部委ねてしまいたいと、体が語りかける。脳裏に、友子や英子達の言葉もフラッシュバッ クして来る。誘惑が、私を押し流そうとしていた。 119 :2/5:2011/09/25(日) 22 21 04.31 ID vbuJ3V150 ――でも……やっぱり、ダメ……!! 最後の最後で、理性が蘇る。そして私は、タカシの手を拒絶するように身じろぎした。 タカシの手が、ピクッと動いて、離れる。そして、唇を離してタカシが私を見た。私もタ カシを見る。そして、次の瞬間、私はパッとタカシから身を離した。 「ゴ、ゴメン…… 俺、抑え切れなくて……」 タカシが、小さな声で謝った。その顔には後悔と、そして悔しさが滲んでいた。私は慌 てて首を横に振る。 『あ、謝る必要はないわよ…… 別に、男だったらその……普通の反応だし……』 ここでタカシを傷付けたら、関係が終わっちゃうかもしれない。それは絶対イヤだった から、私はタカシを非難する事はしなかった。しかし、今度はタカシが首を振って言った。 「いや、でも……かなみに嫌な思いさせたんだろ? だったら、やっぱり謝らないと…… 俺ばっかり、先走って……」 『嫌じゃないわよ!!』 思わず、考えもせずに、私は口走ってしまった。タカシの驚いた顔を見て、たった今の 自分の発言を思い返した途端、恥ずかしさで顔がボンと爆発してしまう。タカシの顔が見 ていられなくて、顔を背けつつ、私は言葉を続けた。 『嫌じゃない……けど、ダメなの!! 今は!!』 激しく顔を横に振って、強く主張する。タカシはしばらく、呆然と私を見ていたが、私 が落ち着くのを待って、ためらいがちに聞いて来た。 「嫌じゃないなら……何でだよ? 今日は、その……準備してないから、とか……そういう事か?」 『違う!! それもあるけど……でも、違うの!! そういう事じゃないの!!』 否定する私に、タカシは戸惑った様子を見せた。ややあって、またタカシが聞いて来る。 「じゃあ、何でだよ? 俺と……いやその……男と、えっと……エッチな事はしたくない んじゃないのか?」 それにも、私は首を横に振る。 『だから言ってるじゃない!! 嫌な訳じゃないって…… ただ、ダメなんだもん……』 まるで、子供のような態度を見せる私に、タカシはしばらくジッと見つめていたが、や がて一つため息をついて言った。 「理由……よかったら、聞かせてくれよ。何でダメなのかさ」 120 :3/5:2011/09/25(日) 22 21 24.13 ID vbuJ3V150 その質問に答えるのは、さすがに躊躇いがあった。しかし、ちゃんと答えないと、タカ シに誤解されてしまうかもしれない。友達とかに相談して、余計な話が膨らんでしまうか も知れない。だったら、ちゃんと答えた方がいい。私は覚悟を決めた。 『……だって……もしかしたら、出来ちゃうかもしれないじゃん。その……赤ちゃん……』 「は?」 小さく驚きの声を上げるタカシに、私は縋り付いて言った。 『エッチな事したら、出来ちゃうかも知れないでしょ? でも、そうなっても私達まだ高 校生だよ? 結婚だって出来ないのに……そんなの、出来る訳ないよ……』 タカシはジッと私は見つめていた。それから、真面目な顔で頷いて言った。 「俺だって、それくらいの知識はあるよ。だから、その……いざって時の為に、ちゃんと その……コンドームだって買ってあるし。ちゃんとすれば、大丈夫じゃないか?」 『無理。ちゃんとなんて……信用出来ないもん』 タカシは不満気な顔で言い返そうとして、グッと口をつぐんだ。それから少しの間、私 と睨めっこして、やがて降参するように手を上げた。 「分かったよ。本番はダメだってんだろ? でも、さ。その……スキンシップ程度なら、 どうなんだよ……? た、例えばさ。手とか、その……口で、とか…… あと、俺もかな みを愛撫する程度だったら……」 『それもダメ!!』 私は強く否定した。余りにも断固とした口調だったので、タカシが思わず引いてしまう ほどだった。しかし、気圧されつつも、タカシが答える。 「いや、だってさ。それなら、子供は出来ないだろ? かなみが心配する事は何にもない じゃん。別に、本番までしなくたって、かなみがしてくれるって言うなら、俺はそれだけ で満足出来るから……」 『ダメなの!! 絶対!! だって、我慢出来ないもん。絶対、最後までってなっちゃうもん!!』 強硬に否定する私に、タカシは首を横に振って言った。 「我慢するって。いや。べつに我慢するって程でもないかな? とにかく、絶対かなみを 傷つけるような真似はしないから」 『だって……キスだけだって、我慢出来なかったから……もう少しで……』 121 :4/5:2011/09/25(日) 22 21 43.99 ID vbuJ3V150 「あれは、かなみの気持ちを知らなかったから…… それに、無理強いするつもりなんて 全然なかった。ちょっとでも嫌がったら止めようって、そう思ってたし。だから、俺を信 用してくれよ」 タカシが真っ直ぐに私を見て言う。優しい目。信頼に値する目だ。もちろん、そんなの 知ってる。知ってるけど、恥ずかしいから言葉を濁してきた。言えない。だけど、言わな くちゃ。涙目になって、私は首を横に振った。 『違うの。違うの。タカシじゃないの』 「え?」 私の言葉に、タカシが驚いた顔で私を見返す。恥ずかしさで全身が火傷しそうに火照っ ている中、私はタカシを見つめ、涙をボロボロ零しながら頷いた。 『我慢出来ないの…… あたしだもん。タカシに触られたら……エッチな事されたら、絶 対、最後までしてってなっちゃうもん。我慢なんて出来ない。避妊なんて考えられない。 気持ちいいことだけしか考えられなくなっちゃうもん……』 言い終わると、恥ずかしさが更に増してきて、私はぐしぐしと泣いてしまった。ややあっ て、タカシが言う。 「けど、俺がしっかり、コントロールすれば……」 それに、私は拳で涙を拭いつつ、腫らした目でタカシを見て言った。 『あたしがおねだりしても、出来るの? 欲しい欲しいって言っても……我慢出来る?』 「ううっ……」 これには、さすがのタカシも呻いて言葉も出なかった。もうここまで来たら毒を食らわ ば皿までと、私は告白する。 『さっきだって……タカシが、お尻に手を伸ばそうとした時だって……もう少しで、流さ れそうになっちゃったんだから…… このまま、最後までされたいって…… キスだけで、 そうなっちゃうのに……そっから先になんて進んだら……もう、抑えられなくなっちゃうもん……』 我ながら、何と恥ずかしい事を口走っているのだろう。もう、太陽の中にいるような熱 の中で溶けて消えてしまいたいくらいだ。 すると、タカシが一つため息をついた。そして、いきなり私の体を抱き寄せ、そのまま ギュッと抱き締める。 123 :5/5:2011/09/25(日) 22 23 07.84 ID vbuJ3V150 『キャッ!? ちょ、ちょっと……いきなり何すんの……よっ……』 こんな状態で抱き締められたら、私がどれだけ熱くなってるのかバレバレになってしま う。いやもう、見ただけで分かるか。とにかく、言葉で抵抗するのが精一杯で、もはや拒 否する力なんて微塵も無かった。そうしたら、タカシが私の耳元に唇を寄せて、言った。 「……分かった」 『え?』 聞き返しつつ、タカシを見ると、タカシの優しげな顔が間近にあった。タカシはコクン と一つ頷いて、言う。 「かなみの言う通り、我慢する。18歳……いや。大学生になって……ちゃんと就職が決ま るまで、かなみには手を出さないよ」 『タカシ……?』 小さく、名前を呟くと、信頼してくれとばかりにもう一つ頷いて、それからもう一度タ カシは、耳元に口を寄せて言った。 「その代わり、責任が取れるようになったら……それまで我慢してた分、たっぷりと返し て貰うからな。毎晩、かなみの腰が抜けるまで責め立てるから、覚悟しろよ」 その言葉に、私の体にくすぐったいような感覚が走る。それに身じろぎしつつ、私はタ カシを睨み付けて言った。 『無理よ。そんなの』 一呼吸おいて、言葉を続ける。 『だって……それより前に、タカシの方が果てるもん』 強気にそう言うと、タカシはクスリと笑って頷いた。 「かもな。どうやら、かなみの方が、俺より遥かにエッチらしいし」 『う……っ!! うるさいバカ死ねっ!!』 恥ずかしさの余り、罵りの言葉を吐きつつも、私はタカシの体にすっぽりと埋まって、 身を委ねるのだった。 終わり ちなみに敢えて書かなかった題名は「二人とも責任が取れる年になるまで、絶対にエッチはNGと言い張るツンデレ」でした。 エロなんて期待しちゃダメですよ。
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72: 名前:サスライ☆06/03(水) 21 50 39 筋肉。嗚呼素晴らしきかな筋肉。 ボク、井時晶は同人誌を読みながら何となく思った。 人はこれを神の声とでも言うのだろうか、どうでもいいけど。 あ、筋肉は筋肉でも引き締まったタイプで、決してレスラーみたいなムチムチがタイプって訳じゃ無いからね!ここ重要! と、読んでいる内に何時の間にか時間を喰ってしまったらしい。 ここに時計は無いけどそういうのは感覚で分かるモノだ。 …あ、時計と言えば忘れてた。時計屋さんに時計を発注したんだった。 こないだの宴会で思った。 ボクも皆と一緒の時間を過ごしている実感が欲しい。 だから時計を一つ、置こうと思った。そう言えばこの部屋の始めてのインテリアになる。 え。だったら地下室から出れば良いって? こういうのは形からなの!ボク的に とは言え、外にあまり出たくない。直射日光とか他人のギャアギャア声とか、 何より同人誌途中だしなぁ。 そんな事を考えてまた時間が進む。苛々して同人誌を読む。そしてまた時間が進む。 あれ…、ボクって何気に駄目人間? まあ、うやむや考えても仕方がない。先ずは時計を回収しなきゃ。 でも、外には出たくないから… 「よし、雪に頼もう!」 あれ…、ボクって何気に駄目人間? 73: 名前:サスライ☆06/05(金) 19 24 51 俺、シェンフォニーの目の前には雪が居る。口元をひきつらせて無理矢理笑っているが、目は笑っていなかった。 笑っていないどころか、耐性の無いものはその目を合わせただけで450ミリリットル程のトラウマをぶっかけられそうだ。 「私のプリンを置いといて天童さんとデートですか~、 … へぇ~」 ヤバい。髪の毛から足の爪先まで、身体中の警報がフル稼働している。 因みに宗厳は顔色を悪くして何とか刀に手をかけようとしているが、震えて上手く身体が動いていない。 兎に角、一城の主たるもの屈してはいけない。 「いや、屈しておけよ」 黙れ雲吉。思想を読むな。 俺はドス黒い炎を背部に燃えたぎらせる雪に平等なる交渉を申し込む。そう、先ずは話してからだ。 「まぁ、落ち着け。宗厳に会ったのは偶然だ」 デートの誤解を解くために先ずは偶然を主張する。宗厳は怯えたハムスターの様な顔で必死に頷いていた。 「ほぅ?で、何故に【服屋】の前に天童さんが居るので?」 これは彼女に『流行』というのを教える為だ。鉄兵にシールというセンスはどうかと思い、流行を教えようと思った。 先ずは彼女の軍服マントをどうにかしなければと、感じ服屋まで移動したのだ。 しかしこれを急に言うと言い訳臭くなる。まずは聞く体勢をとらせなければ。 「待て!話せば分かる!」 「言い訳には鉄拳制裁!」 スゲェ痛ぇ。 74: 名前:サスライ☆06/07(日) 09 09 14 俺を殴って、 俺は体が少し浮いて吹っ飛んで、 雪は宗厳が手をパタパタさせながらここまでの話をダイジェストして 納得して、 俺に一言。 「それならそうと早く言って下さい、拳が痛いじゃないですか」 「色々突っ込み所あるけど、取り敢えず拳>俺なんだ?」 雲吉が肩に降り立つ。このヤロウ、ちゃっかり逃げやがって。 † † † 服屋の中では雪は目を活き活きとさせていた。 たまにクルクル回ったりしている。 そして宗厳は周りをキョロキョロとするだけ。詰まりどう反応すれば良いか解らないのだ。 「やっぱり天童ちゃんには女の子っぽい服が似合いますな~」 頬を紅潮させて、息を荒くさせながら両手でつまんで持ってくるは黒い布にフリル付きの服。 リボン等のオプションがフリルを一層際出せる。 人はそれを、「ゴスロリ」と呼ぶ! 「さぁ、天童ちゃん!次はコレ!」 な!?そんな物まで着ろと!?それに私の事は天童さんと言えと言ってるだろう! と、薄ピンクのワンピースを着た彼女は言いたいのだと思うが、戸惑いが「あう~あう~」とのみ言わせる。 こちらを見て、苦笑いと眼で訴えかける。「これが流行なのか」と。 俺は苦笑いと眼で語りかける。「い~や、雪の趣味♪」 その時の宗厳は神も仏も無いような顔をしていた。 75: 名前:サスライ☆06/09(火) 19 20 41 笑われる!これを種に未だかつてない陵辱を味合わされるのではないか!? 私、天童 宗厳は今までの人生でこれ程まで予測不能にして対応不可な事態に陥った事など無かった。 大体何だと言う!このヒラヒラした西洋物の布は!何やら「ゴスロリ」と称される服にも似たような素材が使われていた。 装飾ならば勲章(クンショウ)や刺繍(シシュウ)等もっと分かりやすい物を取り付けるべきではないか!? …あ、いやまて。フリルに軍隊の威圧ある勲章や刺繍がついたらついたで、非常にバランスが取れていない。 井時なんかにそれを見せたら「混ぜりゃいいってもんじゃないよね…」と、鼻で笑われてしまう! 嗚呼、御免なさい御免なさい!勲章さん、決して私は貶めるつもりなど毛頭ありませんから~! 「あう~あう~…」 「天童さ~ん、着替え終わりました?」 この服をチョイスした雪の声がカーテンの向こうから聞こえてくる。 もう着替え終わってはいる。しかし、しかしだ… 「は、恥ずかしい…」 うぅ…、なんか「物騒だから」と刀は没収されてしまったし、私は今、何の力も無い。だから自信が無い。 「あ~、も~、出来てるならお披露目ですよ!」 「ち、ちょっと待っ…」 カーテンを引く音により小さな声は掻き消された。 http //v.upup.be/?EvnmMijdwu 76: 名前:サスライ☆06/09(火) 21 45 19 俺、シェンフォニーは当然だが外に居た。 カーテンの近くに居続ける訳にもいかないし、婦人服のコーナーをウロウロする訳にもいかないが故にもあり、当然だ。 しかし、紳士服のコーナーに居ないのは物騒な物、つまり宗厳から没収した刀を持っているからだ。 宗厳の様に開き直って浮世離れした格好なら小道具もありだが、 俺の様にスーツで、年齢不詳で、只者でないオーラが漂ってる奴が刀なんか持って店内をうろついていたら警察呼ばれるっての。 と、言うわけで人目離れた路地裏で現在暇を玩んでいた。 パシリ、パシリ… 刀を回転させては掴み、掴み、繰り返す。 刀故に、回転速度を間違えたら鞘から落ちるし、鞘からズレただけでも手が切れる可能性がある。 だからアレだ、良い子は真似しちゃ駄目だぞ。ここで「できねーよ」とか考えた人は突っ込みの才能があるぞ、 雪みたいに。 「なぁ、雲吉よぉ。女の着替えってこうも時間がかかるもんかねぇ」 「モノによるけどパーツの多い服とかあるし、あーだこーだ悩む時間はかかるね」 なーんでコイツは鳥のクセにこうも人間臭いかなぁ…。マジ的確なんですけどー。 77: 名前:サスライ☆06/09(火) 22 13 59 暇だから刀を構えてみた。居合の体勢だ。 「ん、どうしたシェンフォニー?中二病か?」 「ん、そうかも知れんね」 「止めてくれ 中二はキツい 髭男」 「アッハッハ、五七五になってるとこに殺意を覚えるね★ 100グラム10円にして切り分けちゃうぞ♪」 鼻歌調に言葉を放ち、リズムに合わせて目の前の壁に立て掛けた角材に居合を放った。 居合に風は無い。空気を切り裂いたからだ。 手応えもあまり無い。角材を素通りしたからだ。 チン、スコン、ビュウ。 左から鳴った音の順に 鞘に刀を納めた音。 角材が真っ二つに割れた音。 そして、切り裂いた空気がめくれて今度こそ渦巻く風になる音だ。 居合の成功。しかし俺の心にあるのは満足感では無く、むしろ空虚感だった。 「… なんなんだよ」 下を向いて、呟く。 今の俺は正面から見たらうつ向いている様に見えるだろう。 「なんで、失敗しねぇんだよ…」 刃潰しをして実は鉄棒とあまり変わらない刀を抜き、そこには自分の顔が映っていた。 無表情の白け顔が。 「俺は、何者なんだよ! なんで戦いだけは強いんだよ! こんなになって何をしたかったんだよ!」 自分に対する理不尽な叫びを刀に向ける。気付けば涙が垂れていた。 「これじゃ、化け物じゃねぇか…」 下を向きながら刀を鞘に納める。怒りを押し込める様に。 78: 名前:サスライ☆06/09(火) 22 44 13 私は銀田一 雪。天童ちゃんを着せ替え人形にして萌える、至極普通のメイド。 「あぁ、萌えるわぁ~」 「貴様。なんなんだ、その幸せそうな顔は! 凄く対応に困る!」 私は天童ちゃんの揉み上げをピョコピョコと動かして顔面デストロイヤー。 つまり表情を崩しながら言った。 「良いんですよ~、木偶人形でも~★ウフフ~♪」 「うわっ、駄目だコイツ!早くなんとかしないと!」 そうやって天童ちゃんの焦る顔にニヤケながら次はお揃いでメイド服も良いなぁとか考えていたら、 嫌な予感がした。 「…どうした?」 「嫌な予感がします。名残惜しいですが着せ替えはまた今度にします」 店員に服の代金を渡すと天童ちゃんの腕を引っ張って店を飛び出した。 尚、天童ちゃんの服装はフリルのままである。 † † † 「勘」と「何となく」はイコールでは無い。 過去の経験から抽象的に確信を掴むのが勘であり、 漠然と今の気分のままに動く事が何となくである。 つまり今回のは「勘」だった。気分は天童ちゃんの着替えに向かっていて、 シェンフォニー様、刀、暇、路地裏。 これ等のワードが嫌な確信を掴ませる。 だから私は見てしまったのだ、シェンフォニー様のあまり見せない感情を。 「これじゃ、化け物じゃねぇか…」 どうしようも無い事をどうにかしようとする『自暴自棄』である。 79: 名前:サスライ☆06/09(火) 23 22 56 路地からシェンフォニー様を覗いていた私は、彼にどう接するモノかと思う。 いっその事覗いていたと言うか?いや、無理をして「格好つける」だろうな。 なら何時も通りに振る舞うか。それは彼の為にならないだろう。 私は、私の世界から彼を失わせない。 誓った筈だ。彼が記憶を失う前から。だから私は彼の心を削りたく無い。 また、彼が心を削る事は私の心を削る事に直結するのだから余計にだ。 (どうするのだ?) 天童ちゃんが小声で話しかける。私は戸惑った。状況に戸惑っている訳では無い、無力さに戸惑っているのだ。 そんな時、天童ちゃんの姿が目に入る。 なんと可愛らしいか。 普段が軍服マントな分もあるが、それよりも元が可愛らしいから女の子らしい服はとても映えて見えた。 勿論軍服マントの天童ちゃんを否定している訳では無い。むしろアリだ。 気丈で可愛らしい。それに合っていれば何でも似合うと思うし、 それが天童 宋厳という一個人だ。 (…簡単な、そう簡単な事です。だから安心してください) 私は目を弓にして、天童ちゃんを撫でて路地裏に足を踏み入れた。 薄暗さが不安にさせる、でも、その先にシェンフォニー様が居るなら怖くは無い。 奈落の果てに堕ちるとはこの様な感覚なのだろうか、と、自問自答をしてみた。 80: 名前:サスライ☆06/09(火) 23 51 35 そこにはシェンフォニー様が居た。1メートル程度だと言うのに、どうにも距離を感じた。 彼は天童ちゃんの刀を杖にした状態で胡座をかいて、言う。 「なんだ。早かったんだな」 こうして見ると何時もと違う事に気付く。 肩は落ちているし、目に光が無いし、口調が遅い。 総合的に、とても小さな存在に思えた。今なら私でも殺せると思える程に。 「シェンフォニー様、立って下さい」 「…ん?しゃーねぇなぁ」 彼は面倒臭そうに刀を杖代わりにして立ち上がる。極力、力を使いたくないそれは虫に似ていた。 虫の様に小さく、何時この世界から無くなってもおかしく無い存在。 何時もが天真爛漫な分ギャップで酷く脆く見えるのだ。 それでも彼を信じる。これから私が行う行動により砕けないと信じ切る虚勢。 私は覚悟をした。鼓舞の為に「うわあああ!」と叫びたい、しかし我慢する。 「雪、一体どうし…!?」 彼は戸惑った。どう反応すれば良いか解らないというよりは相手が私故の戸惑いに目を見開く。 包容 それが私のとった行動。只、ひたすらに強く抱き締める。 そして耳元で言った。彼が誇り高いという一個人であるという事を。 「シェンフォニー様は変わりません。 だから、屈しないで下さい。自分自身に」 更に小さな声でそっと、ワガママを付け足す。 「共 に生きましょう。死ぬまで、一緒ですから…」 81: 名前:サスライ☆06/10(水) 18 10 55 H 「流派・宗厳輪拳が奥義、 ゴンザレスハリケーン!」 俺の意識が正しければ、フリルを纏う宗厳が突然懐にタックル調に潜りこみ、 同時に雪が離れ、宗厳が俺を抱き締め、 回転しながら垂直に跳躍。現在位置は空中で、視界は渦巻き続ける。 「なあ、雲吉」 「あ?」 渦巻く世界で視界にちらほらと見える白い影に向かって話しかける。 「実はコイツ、刀…いんなくね?」 「お前限定だよ。多分」 拳を手のひらに打ち付けて納得を表したかったが遠心力がそれを認めてくれなかった。 ああ、青空は綺麗だな。 「なぁ、雲吉…」 しかし返事は無い。見ればこちらに路地の地面がが迫って来ていて、青空は見えなくなっていた。 いや、落ちてるのか… 回転していないのは遠心力を衝撃に生かす為なんだろうな。 まぁ、あれだよ。 俺は腕を、迫る地面に掲げた。元気玉みたいな体勢だなぁ 衝撃。腕に衝撃が走ると同時に砂ぼこりが舞う。 この砂ぼこりが全部コショウだったら大惨事だな。 「よし宗厳! 取り敢えず、いきなりストロングスタイルな必殺技をかけてきた訳を聞こう!」 俺は倒立のまま話しかけた。 「わ、笑われると思ったからにゃ…」 うわーお、舌を噛んだよ。なんか良いなぁ。 俺は倒立のまま暢気だった。 82: 名前:サスライ☆06/10(水) 18 34 34 薄暗い、と、言うよりは落ち着いた雰囲気。それは明かりが在るが故の安心感からの表現か。 喫茶店;「ジョージ」。今日は集団だから、私こと銀田一 雪と愉快な仲間達はカウンター前の席では無くてテーブルを使わせて貰っていた。 シェンフォニー様がキザったらしくコーヒーカップを揺らめかしながら言う。 「俺は現在、両手に華な状態だが思ったんだ!」 「ほう、華とは嬉しいですがどんな?」 「は、華!?わ、私を褒めても何も…!」 私は何時も通りに淡々と返して、「シェンフォニー様菌」に免疫が無い天童ちゃんはモジモジしていた。 「この小説には巨乳がいないと!」 「… うわぁ」 「…うわぁ」 取り敢えず苦笑いで目潰しを一人指一本、してみた。彼は目をおさえて「目がぁ!目がぁ~!」と叫びつつ上半身を暴れさせる。 「ハイハイ、バカはいいですから」 「いや、ちょ、マジ痛いんだって…」 「バカはいいですから!」 「ちぇっ」 口を尖らせて顔を覆う手を開く。そこには平然とした彼が居た。 恐らく目潰しの直前に、超反応で後ろに身を引き眼球へのダメージを殺し感触のみをこちらに残したのだろう。 「オチが無ぇな」 言うな!雲吉! 83: 名前:サスライ☆06/10(水) 18 55 26 つまり天童ちゃんの話をまとめるとこうだ。 シェンフォニー様にこの姿を見られる→からかわれる→シェンフォニー様を殴る 「ならば、からかわれる前に殺ってしまえと?」 「……」 彼女はピストン運動よろしく、首を必死にうなずき続かせる。 その表情はぎこちなく、目は丸く、耳まで真っ赤にして、理解してくれと必死だった。 「な らしょうがないですね♪」 「……♪」 私に許され、彼女は表情を崩して純粋な笑顔を見せた。 やべぇ、萌える。後光が差してるよ… 重要だからもう一度言うが、萌える! 「イヤイヤイヤ!」 「どうしました?」 「俺、アレを喰らっていたら大惨事だから! 具体的には潰れたトマトだから!」 そこで私は肩を落として微笑み一つ。そして指差す。 「貴 方の能力ならアレ位余裕でしょう?安心して見れますよ」 そこで私は【二回目】となる彼の本気で驚く顔を見た。面食らったとでも言った方が正しいのかも知れないが。 彼は、物凄く小さな声で言った。丸聞こえだが。 (そういう力の使い道もあるか…) 目を弓にして微笑む彼に私は彼の二つの言葉に対しての返答をした。 「だから安心して殴られて下さいね♪」 87: 名前:サスライ☆06/11(木) 10 29 10 「ハイハイ。宗厳はクレープ、雪ちゃんはプリンだったか」 (久し振りの出番の)丈治さんが、まだ温かいクレープとカラメルをかけたばかりのプリンをそれぞれの手に持って来た。 そして流れる様に机に出される。 「んで、請求書はと…」 (最近空気と化していた)丈治さんはそう言うと請求書の薄い紙をシェンフォニー様の胸ポケットに突っ込んだ。 「あれ、何で俺に突き付けるかな~」 「はて、俺は『お代はシェンフォニー持ち』と宗厳から聞いてるんだがなぁ」 シェンフォニー様は天童ちゃんに視線を移す。クレープに気を取られていて、シェンフォニー様に気付くのに30秒程かかった。 「忘れたのか、私は自給自足だぞ? 持ち合わせ等一文も無いわ!」 胸を張り、豪快に、男らしく、彼女はホームレス発言をした。 そして目を伏せながら私を見てくる。私は笑顔で答えた。 「両手に華で男が代金を払うのはフラグですよね♪」 「……華?」 「いっぺん死にます?」 彼は鼻で笑い、私も花の乙女の笑顔で対応した。 「だって雪って男らしいじゃん」 「ほう、どの辺りが?」 「主に年齢に対して胸部が…ぐわー!」 私は彼のスネを思いっきり蹴った。花の乙女の笑顔で。 『花の乙女はねぇよ』 だから思想に割り込むな! 88: 名前:サスライ☆06/12(金) 17 29 44 シェンフォニーと雪はいつも見てて楽しいと思う。 私はクレープをかじりつつ、頬を緩ませてドタバタ喜劇を見ていた。 私の頬が緩んでるのは二人はクレープを食べてるからだとでも思っているのだろう。 しかし、理由を問われたら、違うと答えると思う。 本人達に自覚があるかは知らないが仲むつまじい二人が仲むつまじい行為をしているのは微笑ましいし、見ると優しい気分にもなれる。 「あ、シェンフォニー様!プリンを横取りしないで下さい!」 「あ~、暴れるなら外でね」 丈治、居たんだ…。影が薄くて解り辛いよ。 影が薄いものばかり食べてるからそうなるんだよ地味キャラめ。 「しかたありませんね。シェンフォニー様!後でアイアンクローです」 「ほう、やってみろ… このシェンフォニーに対して!!」 私は益々頬を緩ませる。しかし、同時に沸き起こる感情もあった。 下腹のあたりから胃にかけて捻るように込み上げてくる嫌な感触を巻き起こす感情。 嫉妬。 羨ましかった。大切な人が近くに居るという事が。 何で私じゃいけないの?と、疑問をなげかけたくなる位に。 取り敢えずウサをはらすためにクレープを口に入れる。頬が緩む。 やっぱクレープが美味しいから優しい気分になっているだけかも知れない。 銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き4
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209: 名前:サスライ☆09/17(木) 17 03 51 笑から報告書を渡されると今までの心に重力の無い感覚が無くなったが、逆にそれが重くのし掛かる。 やはりクロか。重要人物狙いとあってか逃げ場は全て固められている。 が、顔に関する知識はアヤフヤらしい。これは敵が比較的に小勢力な分、偵察に予算が掛けられなかったのと、村を落とすついでに俺と博士も亡き者に出来ると踏んだ算段か。舐めおって。 「笑…ウグッ!」 「俺が敵を引き付けるからお前は雪を連れて逃げろってか?聞けないな」 笑の方に振り向くと突然殴られた。少数勢力だから敵を引き付ければ逃げ場を作る事が可能。コイツは妙な場面で鋭いから質が悪い。 そして俺を見下ろしながら叫ぶ。 「殴り合いじゃいっつも灰色決着だったけどよ、純粋な戦じゃ俺の方が強いって知ってんだろ? それに、テメェ以外の誰が雪を守れるんだよ!?アアン?」 腰に手を当てて俺をチンピラの様に上から睨んで来る。俺は口についた血を拭(ヌグ)うと、敵に太子とバレない様に私服に着替える準備をした。呟きが漏れてしまう。 「……ありがとう」 「キメえ事言ってね~で早く行っちまいな。 追い付くから」 210: 名前:サスライ☆09/18(金) 20 27 02 絹服の袖を通して、綿糸で固定する。肌触りが自然過ぎて逆に気持ち悪い。 俺、笑は多分「ワライ」って呼ばれているのだろうから言って置こう。俺は「シャオ」であると。 と、こんな俺がこんな封みたいな中華服を着るのは俺が封のふりをして敵を引き付ける為だ。鏡を見て、ポーズを作って、封よりも似合うんじゃないかと思う。 流石俺!惚れちまうじゃないか! と、ポーズを付けてる時に俺を後ろから見る下っぱ兵士が鏡に見えた。際どい沈黙が場面を支配、これを「オワタ現象」と呼ぶ。俺命名。ネーミングセンスまで素晴らしい俺! 鏡にヒビがあるな、前からあったに違いない。 「あ、あの~、笑師範…。報告ですが良いでしょぅか?」 「ああ、断ったら逆にスゲーよ」 「偵察に気付いた敵戦力は進軍を開始。30分後には第一波が直撃する模様。場所と数は…」 想像より少ないな、これは逃げ場を固めるのに使いたいからだろう。 じゃあ、誘き寄せようか。 「俺 自ら…に、向かう」 「ん。そこって一番敵が攻め易い所ですよね」 だから良いんだよ。敵に太子がソコに居るって事を知らせる。んで、全滅させてソコに引き付ける。 穴だらけ?良いんだよ。俺、強いもん 211: 名前:サスライ☆09/19(土) 16 06 37 これは最前線で戦っていた、とある一兵卒の言葉である。 あの姿は、千鳥流による肉体強化を超えた何かでした…。武神、魔神、最終兵器。色々な言い方はありますが、一番シックリと来るのはやっぱり最初にあの姿を見た時に漏れた一言ですか…。 私達は敵を引き付ける為に千鳥師範が神封太子に入れ替わる事を聞かされた時は正直、無謀だと感じていましたね。だってロクに顔を知らない神封太子が戦っている事を教える事が条件でしょう?だから必然的に最前線に立つ事になるんです。 故に来たんですよ… 「我が名は神封。死にたい者からかかってこい!」 でも普通、最前線で有名になる可能性なんて一握りですよ。三國志じゃあるまいし。言っちゃいけませんが私は途中で師範は力尽きると思っていました。 でも、あれは、あれは、あれは、あれは、あれは、あれは、あれは、あれは、あれは、アアアアアアアア! す、すみません。取り乱しました。取り敢えずです。そんな堂々と言えば銃弾が一斉に飛んで来ますよね?普通に避けられませんよね? 彼は… 「うおりゃああああ!」 ライフルの弾を【弾きながら突進】したんですよ。勿論生身で。その時、呟いていたんです。 「…鬼」と。 212: 名前:サスライ☆09/19(土) 17 04 52 私はエピソード共和国で今回の作戦の司令を任されている者だ。階級は准将。 私はキセルを飲みつつ、貧乏揺すりをしていた。最前線の報告が遅い。 最前線の敵兵の数はそこまで多くないからてこずる様な事でも無いし、牽制だから危なくなれば撤退するように言っている筈だが…。 急ぐ音と血の臭い。報告がやって来たか。見ると血まみれの兵士とソレに肩を貸している兵士の二人。血まみれの兵士は武装からして牽制に使った尖兵だ。 「どうした!最前線で何があった!?」 「コ イツはもうロクに息も出来ない状況なので私めがコイツの言った事を代弁させて頂きます!」 肩を貸している方が口を開く。あれは逃げ道を囲む部隊の者か。つまり、尖兵は命からがら撤退。それを逃げ道に居たヤツに発見された訳だな。 「尖兵は全滅です!」 「バカな!?いくら鉄兵と言えどもそこまでの深手を負わせられる筈が無いだろう!?」 「鉄兵ではありません、【神封】と名乗る人間に全滅です!」 「武 器は!?」 「徒手空拳。則ち素手にライフル5、機関銃2の部隊は全滅です!」 合点がいった …ここには天才が居たな。成る程、つまり神封とは自己を護るためサイボーグと化した新型の人形兵。いや、生物兵器か。 だからこんな田舎に太子と天才が暮らして居たのか! † † † こうして間違った情報が流れていく… 213: 名前:サスライ☆09/19(土) 17 51 09 【BGM;未来への咆哮】 これからが本番だ。神封が居ると分かった敵は最前線に流れ込んで来るだろう。俺、笑はそれを皆に伝えて、殆ど他の小競り合いに行ってしまった。 「結局残ったのは3人と、鉄兵達か…」 周りを見渡すと何とも最前線では頼り無く思える面子だ。しかし、負ける気がしなかった。 俺は中華服の邪魔な下を破いてバンダナにし、頭に巻いた。それを3つ作って他の奴等にも渡す。 「最高級の絹で作ったバンダナだ。格好良いだろ。鉄兵はゴメンな…流石にデカ過ぎるわ」 代わりに、鉄兵の腕にソレを巻いた。鉄兵達は腕を高らかに上げる。喜んでやんの、可愛いヤツだな…。そして俺は叫んだ。怒声よりも高潔で、演説よりも下染な声を。 大地が唸(ウナ)る、草木が唸る、風が唸る、天が唸る、そして宇宙まで唸れよ俺の声! 「いいか、残った奴等全員馬鹿野郎だ。 俺みたく千鳥流を深く使える訳でもねーのにノコノコ付いて来やがった」 すると周りから声がする。「一番の馬鹿は貴方でしょう」とか「師範だけ良い格好させませんよ」とか「ゴチャゴチャ言わんで下さいよ」とか。全く、お前等よ… 「お前等最高だぜ!良いか、俺等は最強だ!絶対に負けない、それを弱い者虐めしか出来ない奴等に見せてやれ! お前等、やああああああって…やるぜぇ!」 「「「応!」」」 この美しい世界を守る為に… 214: 名前:サスライ☆09/20(日) 18 15 15 龍虎咆哮。独特の呼吸により肉体強化をする千鳥流の代表である。が、出来て精々、鉄兵を蹴り飛ばす程度だろう。 だが俺には、どうしてもこの技はその程度では無いと言う確信がある。 相手はロケットランチャーを構えていた。避ければ俺の後ろの森が繁った自然の要塞が爆破されて、敵が村に入り易くなる。 「逃げて下さい、殺したく無いんです!」 「じゃあテメエが逃げろ。こちとら腹くくってんだ!」 「この、分からず屋ああ!!」 思ったより情けない音をあげながらロケットが飛んできた。これを受けたら死ぬんだろうか。 こんな奴に? 戦士を見下した虐めしか出来ない卑怯モンに? 「フ ザケルナヨ?」 敗けたくない。守りたい。 ところで封から聞いたんだが、どんな天才でも脳ミソは大して働いてないらしい。なら、その扉をこじ開けて勝利への幕開けとしよう。 龍虎咆哮、この技に更に改造を加える。全てを守りたい想いで改造を加える。今俺が、格闘家が何十年もかけてやっと出来る事をやり遂げた事を俺は知らない。 「玄武咆哮!」 爆炎が舞い、瓦礫が弾け、ロケットを受けた俺は間抜けな顔の奴の眼前に現れる。 「よぉ~。さっきぶりだな、会いたかったぜぇぇ!」 強化繊維の上から回し蹴りを喰らわせて、吹っ飛んで、何処まで行ったか確認するのが面倒になった。 215: 名前:サスライ☆09/20(日) 18 42 32 何か後ろが騒がしくなって来た。敵が増えて来ているのは分かるが、それでも気配が多い。 チラリと毛の様な物が見えた。それで確信した。 二人一組で戦っている敵が居る。前衛と後衛といったトコロか。でも、構わず突っ込む。 「どけどけどけぇい!俺様のお通りだ!」 機関銃(マシンガン)の弾を弾きながら進む俺、格好良いが骨がきしむ…。 肉体強化のやり過ぎで肉と骨に限界が来はじめて来ているのだ。でも、負けない。 驚いた顔をしている前衛の機関銃に下段蹴りを放つ。すると後衛が機関銃をこちらに向けようとした。 普通なら終わりだが、俺達には力強い味方が付いている。 「ア オオオン!」 オペラよりも高らかな雄叫び。 野生の狼。そいつが機関銃を口で奪い取り、更に別の狼が喉笛に噛み付く。 …この鳴き声、修行で世話になった奴じゃねぇか(敵的な意味で)。助けに来てくれたのか、良く見ると他にも沢山似た様なのが居た。昔散々泣かされた熊だったり、食い物取られた猿だったり、触ろうとしてボコボコにされたパンダだったり…。 「昔の敵が助けに来てくれるってか、頼もしいねぇ!」 最早、骨のきしみは何処かに行っていた。 216: 名前:サスライ☆09/21(月) 16 44 40 勝てる。周りの3人も俺レベルじゃないが龍虎咆哮を使い、とっくに銃弾は切れてるのに刀で戦い、圧していた。同時に獣も独自のタフネスと機敏さと剛力で銃弾に負けていない。 思わず片目から涙が出る。やっぱり世界は偉大だと感じたからだ。 敵も退却が大量に出て来た時だった、鉄兵が味方のフォローに入るのが目に入る。装甲を貫かれたのがその一瞬後だ。 何かと考える事はしない、アドレナリンだらけで志の元に動く事しかしない。 【よくも友達(ダチ)を殺りやがったな】と。 接近して見えるは弾頭でも槍でも剣でも無い。千鳥流を使えない兵士の抜き手が鋼で出来た鉄兵の装甲を貫いていた。 オイルが漏れて引火して爆発する。 仇を討つため木を蹴る。体が浮く、更に蹴って更に浮く。これを繰り返すと木から木へのピンボールになり、翻弄になる。 月光の影を利用して森の奥の木の枝に飛び移ると弾性を利用して跳躍した。蹴り足を構えて上からの飛び蹴りで狙うは仇。 近付くにつれて徐々に顔が近くなる。見覚えのある顔だ、「殺したくない」とかほざいて俺にロケットを放った男。 「てめえかああああ!!」 217: 名前:サスライ☆09/21(月) 18 50 08 俺の恨みを思い知れ。叫んで飛び蹴りを放っている時には敵は避けられない間合いに居る。しかし敵は避けずに頭を此方に向けてきた。つまり俺の蹴りに頭突きで対抗しようと考える訳だ。 因みに、俺の蹴りは鉄兵の装甲を貫くどころか、大木を一撃で折れる。 そして運命の交差。 結果は蹴りの軌道が反れたの事。何かおかしい。 何故、俺の身体はバランスが悪くなっているんだ? 何故、俺の脚から大量の血が出ているんだ? 何故、奴の額に角が生えているんだ? 角に俺の肉が付いていた。つまり、蹴りを角で反らしたついでに脚を貫いた訳だ。何故、角なんかある。恐らく鬼かなんかが実は実在していて、覚醒したんだろう。うん、納得。 奴の意識は半分飛んでいる様で、同じ言葉を繰り返すのみ。 「殺したくない、殺したくない、殺したくない、殺したくない…!」 念仏の様にブツブツと「殺したくない」を繰り返す鬼。見下して、やられて、この期に及んで殺っといて、あまつさえ理性が無くなる位に力に振り回されて、それか。 ふざけんな。「殺したくない」なんて、相手より強い事が前提だろ?圧されてる奴が何をほざいてやがる。 「テメエは俺等の何だってんだよ!ゴラァッ!!」 218: 名前:サスライ☆09/21(月) 23 58 41 【BGM;英雄】 服で脚を固く縛って止血する。まだだ、まだ終わらんよ。止血が終了するとキッと鬼を睨んみ、他の敵兵と平等に機関銃を弾いた時みたく突貫する。 口から焔でも角から小さな毒針でも目からビームでも何でも来い、全て弾いてやる。 が、予想外に何も無くて俺達は取っ組み合いになった。野郎、野生のゴリラに腕力で勝る龍虎咆哮モードの俺に対等になってやがる。向こうは無傷、俺は重症。それでも俺は張り合うのを止めない。 「ちょっっと、角がついたからって偉そうにしてんじゃねーぞゴラァッ!!」 コイツには敗けたくない。その想いもある、しかし根幹の想いは正反対のモノだった。割と対立するモノとは同じモノから派生するのかも知れない。 ライフルの時も機関銃の時も今も、決して怖くない訳じゃない。寧ろ物凄く怖い。 しかし、俺の後ろには守らなきゃいけない物がある。守らなきゃいけない世界がある。 世界を守るのは何時もヒーローと相場が決まってるモノだ、だからそれに習う。ヒーローは、強大な敵にも怯まない! 「うおおおぉぉ!!」 † † † そこからは、よく覚えていない。只、鬼が途中で意識を取り戻した瞬間にソイツは今度こそ逃げた事は憶えている。言い訳に何かグダグダ言ってたけど記憶に無かった。 222: 名前:サスライ☆09/22(火) 18 12 07 「太子、エピソード共和国の兵が、退いて行きます!」 避難所で、雪と一緒に聞いた俺は雪を脇に担いだ。何故か、頬を赤らめているが、まあいい。 今は笑の安否の確認が先決と、考える以前に細胞が訴える。一応、近くに馬が居るがそれでは遅い。独特の呼吸で、肺に酸素を注ぎ、代謝を限界まで上げる。それが、もたらすのは、馬よりも強い脚力。 これが、龍虎咆哮だ。 疾風の如く翔るは、我が身体。風害の如く草木を薙ぎ倒すは、我が拳。目指すは阿呆。しかし、死んではいけない、高潔な阿呆。 「「間に合えぇぇぇ!」」 叫びは二つで、同時。一つは、自分の口から。もう一つは、脇から。雪も想っているのだ、あの阿呆を。 これで間に合わなくて、何の為の千鳥流か!何の為の友か!何の為の太子か! 笑が、何時も修行に使う山。ここが、本日最前線となった場所だ。村を一望出来、かつ、兵を潜らせ易い。これ程征服すれば、攻め落とし易い場所は、この辺りには無いだろう。 村が、見える。何時も通りの、田舎村だ。川音が、聞こえる。せせらぎは、心を洗うようだ。そして、笑が居た。 血塗れで、包帯だらけで、致命傷ばかりで、それでも、敵がやって来る方向へ未だに、構えを取り続けている。 「笑…」 朝日が昇る、直ぐ前の時間だった。 ませんが頑張って下さい、そして合格して来て下されば拍手喝采でお迎えしましょう♪ 225: 名前:サスライ☆09/23(水) 18 59 40 笑は、俺達に振り向かずに、フラフラ揺れながら、呟く様に答えた。声は枯れ尽きて、砂漠の風の、印象を受ける。それは砂漠の様に、逞しいのも、印象なのだろう。 「封…何で…居る?さっさと、逃げ…ろ」 「終 わったんだ、敵は退いた。予想だが、敵の司令官が、お前の火力に怯んで逃げたんだ」 暫し、沈黙が続く。10秒にもならない時間が、30分にも、思える。沈黙を破ったのは、笑。 振り向いただけ。なのに、轟音より、壮大な気がした。想像以上に、血塗れの顔は、微笑んで見える。 「あ の…鬼野郎も…また来ると…思ったら…来ないたぁ、そんな…」 「いいえ!違います!」 声は、後ろから。そこには、負傷だらけで、動けなくなって、木にもたれ掛かっている兵士。そいつは、バンダナを巻いていた。 「あの鬼は、そうでなくとも、来ません!何故なら、確かにアレはあの鬼が、師範に怯んで、逃げたからです!」 「そうか…、俺って…スゲェ…だろ?鬼も…大国も…逃げ出す…。スーパーヒーローだ」 そして俺は、笑を担ごうと近付く。このまま、死んでは、スーパーヒーローもクソも、無いだろう。と。 そして、笑に触った時、俺は理解した。否、理解してしまった。 「笑、お前…!?」 「…解るよ。そろそろ…お迎えが…来るん、だ」 226: 名前:サスライ☆09/23(水) 18 59 45 笑は、俺達に振り向かずに、フラフラ揺れながら、呟く様に答えた。声は枯れ尽きて、砂漠の風の、印象を受ける。それは砂漠の様に、逞しいのも、印象なのだろう。 「封…何で…居る?さっさと、逃げ…ろ」 「終 わったんだ、敵は退いた。予想だが、敵の司令官が、お前の火力に怯んで逃げたんだ」 暫し、沈黙が続く。10秒にもならない時間が、30分にも、思える。沈黙を破ったのは、笑。 振り向いただけ。なのに、轟音より、壮大な気がした。想像以上に、血塗れの顔は、微笑んで見える。 「あ の…鬼野郎も…また来ると…思ったら…来ないたぁ、そんな…」 「いいえ!違います!」 声は、後ろから。そこには、負傷だらけで、動けなくなって、木にもたれ掛かっている兵士。そいつは、バンダナを巻いていた。 「あの鬼は、そうでなくとも、来ません!何故なら、確かにアレはあの鬼が、師範に怯んで、逃げたからです!」 「そうか…、俺って…スゲェ…だろ?鬼も…大国も…逃げ出す…。スーパーヒーローだ」 そして俺は、笑を担ごうと近付く。このまま、死んでは、スーパーヒーローもクソも、無いだろう。と。 そして、笑に触った時、俺は理解した。否、理解してしまった。 「笑、お前…!?」 「…解るよ。そろそろ…お迎えが…来るん、だ」 銀田一 雪さんとシェンフォニー様と後、なんかの話 続き10
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#blognavi 「お前が抵抗しないようにに決まってんじゃん。どぅーゆーアンダスタァン?」 これはこれからすることが、本当に自分の予想通りのことだと裏付けるような。 ひでぇ。 なんでだよ。信じたくない。 ひたすらに恐怖、恐怖、恐怖。 「や、めろ…よぉ!水尋…!!」 「ぶはー!俺がそれでやめるわけねー!いい加減学習しろよ、ばーか!お前、ほんっと糞だな! あー、お前に名前呼ばれるとすっげぇ腹立つ。 」 おもいっきり、笑う。 その笑みの中には残虐なものしか見えない。 座っている椅子が蹴られ、床におちる自身。 「糞なりに、俺を楽しませてみろよ?」なんて言葉 そしてまた大きく嗜虐的笑み。 一つ一つが、いちいち響いて、その度に震える。 じわりと目が霞むのは涙だろう。 いやだ、こんなの。 こんな恥辱受けるくらいなら死んだ方がマシだって言っても過言ではない気がした。 ジッパーが降ろされる音。どうにもできないでいる自分。ただ未知の行為に怖がる、だけ 下着の上から触れられて、一際大きく反応してしまう。 「…ひ、ゃっ、ん…」 自分の口から出ているのが疑わしいくらいの情けない声だ。 唇を切りそうなくらい、噛み締める。もう出すまいと、思って。 一通り反応をみて、水尋は下着に手をかけた。 躊躇することなく一気に下げられて自分のものが露わになる。 触れられるのを直視できなくて目を硬くつむって、それでもなおじわりと溢れてくる涙。 もうこれ以上するなよ 嫌だぁ こんなの、こんなのは 怖い 水尋を、憎く感じた 多分 初めて 震える体はずっとそのままで、恥ずかしさで顔は紅潮しているだろう。 水尋はまた楽しげに笑い、「なーなにからしてほしー。言ってみろよ。」なんて問う。 「…や、めろぉ…離せぇ…。お前…後で、ぶっ、殺して…やる、からなぁ…ぜってぇ…殺す。」 許さねぇ、とそう思った。確実にその時。 繋がってるのを区切ってるので中途半端官漂う切れ目…!! いつも感想ありがとうです。椎名のお陰でかけます私! カテゴリ [妄想文] - trackback- 2006年11月24日 04 42 22 名前 コメント #blognavi
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詳しい事は中央駅の方を先にご覧ください 2009年6月14日(日)18 14 04 それは、18 00放送開始のニュース(レス)での速報が銃火店テロ?事件での最初のレスであった ※以下録音 472 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 18 14 04 テレビ「速報です。只今シベリア中央駅でテロを発生させているテロリストが(下に続く) 「シベリア重火器店に行く」と発言をした事が分かりました。重火器店のみなさん、そして近辺にいる人はご注意ください」 473 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 18 16 40 何だ重火器店か ここは関係ないけどもしかすると襲われるかも 474 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 18 17 39 テレビ「ここで訂正です 472の文章の中で重火器店とテロップに表記されましたが(下へ) 銃火器店の間違いでした。訂正してお詫び申し上げます」 475 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 18 19 12 まぁココには武器・弾薬が腐りそうな程ありますしねぇ・・・。 476 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 19 57 フェイファー・ツェリザカの銃弾下さい 477 :テロリスト:2009/06/14(日) 18 21 21 [@ @] ( ) / / / 478 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 22 30 477 つ「フェイファー・ツェリザカ」 カチ! 来たな! 479 :テロリスト2:2009/06/14(日) 18 23 22 動くな 480 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 18 23 54 只只只 これ以上来ると作動しますよ 481 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 25 12 477、 479 つ「フェイファー・ツェリザカ」 おいおい、動くと打つぜ! 482 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 18 26 15 いきなり向けないでくれませんか?(パン!)(´・д・)つr-Σ=- 483 :テロリスト2:2009/06/14(日) 18 27 06 ひゃっはー 484 :サンシュット ◆eehJLdmrV2 :2009/06/14(日) 18 28 05 477 479 お前らか!うちの店から弁当盗んだアホは! 弁当1個分稼ぐのにどれだけ売ればいいと思ってんだ! つ【FN5-7】(ガチャ) 動くと撃つぞ! 485 :テロリスト:2009/06/14(日) 18 29 20 [@ @] ( )つライフル / / / 486 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 30 11 477、 479 つ「フェイファー・ツェリザカ」 よし、いまイギリスへ 王室関係者を装ったことを通報した! 軍がもうすぐ来るぞ!ていうか俺が始末して良いそうだ 487 :テロリスト2:2009/06/14(日) 18 30 35 腹に爆弾 投降する 488 :テロリスト2:2009/06/14(日) 18 31 47 ドーン 自爆 489 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 34 47 487、 488 つ「フェイファー・ツェリザカ」 させるか!(爆発する前に導線に発砲!) ダン!きちんと警察に行ってもらおう! 490 :テロリスト:2009/06/14(日) 18 35 36 [@ @]この隙に逃げましょう ( )つライフル / / / 491 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 18 36 19 テロリスト2の爆死を確認 店内にクレイモアを設置済み 私は裏から外に出ます 492 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 37 16 490、 487 つ「フェイファー・ツェリザカ」 左胸に発砲! ダン 抹殺完了 493 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 18 37 52 テロリスト2はアーカードに撃たれ爆死 494 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 18 38 29 (お店の)ボールベアリングのクレイモア地雷150個(勝手に)設置したけどこれで大丈夫かな 495 :テロリスト:2009/06/14(日) 18 39 40 被弾 だだだだだだだ 496 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 39 46 さてと、俺はそろそろで帰る 497 :サンシュット ◆eehJLdmrV2 :2009/06/14(日) 18 40 07 あーあ死んじゃったか 店でこき使おうと思ったのに ま、いいや帰りますか 498 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 18 40 59 494後でキチンと撤去しましょうね、探知機を使用して・・・ 499 :テロリスト:2009/06/14(日) 18 41 40 ばたり 500 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 18 42 13 493 高威力が故に導火線どころか信管吹っ飛ばして起爆したんですかね; 494 出るとき大変ですね 495 頭にもう一発 つ [AS Val] プシャッ 私はしばらく付近を警戒しますね 火事場泥棒みたいなのが出たら縛っときますので 501 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 18 44 58 では 499の遺体はハンバーグ工場へ配達致します。 502 :サンシュット ◆eehJLdmrV2 :2009/06/14(日) 18 46 47 500 おにぎりとお茶置いときます 警戒頑張ってください 503 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 18 46 57 テロリストのポケットからポトリ 十字軍の勧め 504 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 18 51 10 503念のため証拠品として押収しておきましょうか? 505 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 18 55 13 502 ありがとうございます ありがたく頂きますね 504 一応警察に渡した方が良さそうかもです それまで、こちら側で解析してデータを取って置きますか 506 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 18 56 38 503 十字軍? このローマ野郎が! つ「フェイファー・ツェリザカ」 むかつくんで燃やして良い? 507 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 18 57 29 505一応特殊部隊員ですが・・・(wikiを見れば載ってますよ、名前は違いますが) 508 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 19 04 10 507 了解です 一応事件の処理等は警察署側の仕事ですかね ただ、いまいち警察が機能してないようなので 死体が腐る前に特殊部隊側で片付けた方が良さそうですね 509 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 19 05 15 帰りようの ユーロファイター持ってきた! 510 :キリスト教信者:2009/06/14(日) 19 05 42 事件のことを聞きたい 511 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 19 07 17 510 一般人が首を突っ込んで良いことじゃありません! 512 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 19 07 56 510 駅構内で発砲したテロリストが、 キリスト教系過激派 513 :キリスト教信者:2009/06/14(日) 19 09 11 死んだのか 514 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 19 09 55 512 おっと失礼 駅構内で発砲したテロリストに仲間1人が加わり、戦闘地帯を通りここを襲撃した 報道等で詳しく分かると思います あと、最近のキリスト教系過激派の動きについて教えて頂けるとありがたいです 515 :キリスト教信者:2009/06/14(日) 19 11 48 土産物だ つ箱 カチカチカチ 516 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 19 12 45 515 爆弾か・・・ 皆は伏せておけ つ「フェイファー・ツェリザカ」 ダン!(起爆) ダーン! 517 :キリスト教信者:2009/06/14(日) 19 13 12 ボン 518 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 19 15 10 517 右腕は吹き飛んだぞ! 519 :キリスト教信者:2009/06/14(日) 19 17 43 報復が来る ばた 520 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 19 18 48 お前らの過ちは英国に喧嘩を売ったことだ! 521 :アーカード・ショボン ◆v.S.2GeT8Y :2009/06/14(日) 19 19 43 520は 5198あて 522 :警備士長:2009/06/14(日) 19 25 02 479 警備だ! 何だお前らは! つ[MP5] 降伏しろ! 523 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 19 30 13 522テロリストみんなしんだ 524 :名無し、ゲリコマ:2009/06/14(日) 19 32 27 522 遅いですよ・・・; 525 :吸血さん ◆19HeApFB9s :2009/06/14(日) 19 39 35 うーん、僕はこれでも無宗教ですから大丈夫でしょう 後はこの証拠品をZippoで燃やして・・・あれ?何か文字が浮かんできた・・・? 526 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2009/06/14(日) 19 41 05 テロリストの名簿 武装した二名は「テロリスト」「キリスト教信者」「十字軍」 などと名乗り、各地で同様の行為を行った。 また、この事件に対する隊員の過剰ともいえる応戦は シベリア各地に不満をもたらした。
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みす
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※第一話 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 20 53 34.97 ID ueDQ2zE00 [2/9] 転校生まつりん 第二話 「スターシステム? いいえ、タイトル詐欺です」 色々あったけど、ようやく放課後である。 夕日が、教室の窓から眩しいくらいに差し込んでいる。すっかり日が落ちるのも早くなったもんだ。 「まあ、あれから三ヶ月経ってるしなあ」 「三ヶ月? 何のことじゃ?」 唐突に横から口を出してきたのは、誰あろう、今日まさに転校してきた我らが(?)まつりんである。 「これもメタだ」 「むぅー、だから“めた”って何なのじゃぁ」 餌を溜め込んだリスみたいに、ほっぺたを膨らませるまつりん。 可愛いなこいつ、と素直に思った俺は、気づくと頭を撫でてしまっていた。 (しまった!)と思うが、もう遅い。 「な、なな、いきなり何するんじゃたわけぇっ!」 予想通りに甲高い声が教室に響く。ちょっと周りの視線が痛い。 「だって可愛かったんだからしょうがないだろ!」 なのに負けじと、若干ボリュームダウンして叫ぶ俺はどうかしてるZE! 「な、何がじゃ馬鹿者!?」 どうやら先ほどの萌え動作は完全に無意識だったらしく、なぜ誉められたか本人はわかっていないので、よかった。 と、その時、また別のやつから声をかけられる。 「よお、どうしたお二人さん」 「どちらさまでしたっけ?」 「真田だっ! なんで赤の他人みてえな扱い受けなきゃいけないんだよ!」 「あー、まつりんに席を譲るために強制的に一番前の列に移動させられた真田さんでしたかー」 「ああそうだよ、その真田ですよ。なんだお前、まだ笑ったこと気にしてるのかよ」 「いやもう気にしてないって、冗談だ。紹介するよ纏、こいつは真田って言って――」 「いやだから、最初っから俺いただろうがっ! なんで初登場みたいな感じになってんの!? 纏ちゃんにもしっかり自己紹介したしなっ」 「く、くふふふ、なんじゃ主ら、いちいち面白いのう」 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 20 56 28.35 ID ueDQ2zE00 [3/9] 纏は、俺たちの漫才が気に入ったらしく、子供みたいに無邪気に笑っている。 「みたいってか、まんま子供か」 「誰のことを言っておるのじゃ、たわけ!」 俺の呟きを聞き逃さず、ぷりぷり怒りだす纏。そういうとこがだよ、とは口に出さずにおく。 「あはは、すっかり打ち解けたみたいだね、二人とも」 今度は、真田の馬鹿とは違ったやつから声がかかる。 「お、榊」 そこには、中性的で柔和そうな顔立ちが特徴の、俺の悪友その2がいた。こいつこそ、真田と違い初登場である。 「む、誰じゃ?」 「よろしくね、西城院さん。僕の名前は、榊。そこの二人の、まあいわゆる腐れ縁ってやつさ」 「そうなのか! こちらこそ、よろしくなのじゃ」 知り合いが増えて嬉しいのか、笑って挨拶を返す纏。 と、ここで、真田が何かを思い付いたように声をだす。 「四人揃ったとこでいいこと思い付いたぜ」 「何だ」「何かな」「なんじゃ?」 真田の陽気な声に異口同音の疑問が寄せられる。 「せっかくだしよ、纏ちゃんにここら辺を案内してやろうぜ。勿論、纏ちゃんが良ければだけどな」 「へえ、良いな、それ」 「おお! 正直、越してきたばかりじゃから、助かるのじゃ!」 すぐに同意する俺に、どうやら纏も乗り気なのだが―― 「あー、その、ごめん。僕は、ちょっと用事があって」 「何だよ、最近どうも付き合い悪いなお前」 そう言う俺に、あいつは曖昧に笑うだけだった。 「あれ、タカシは知らなかったのかよ。こいつめ、彼女が出来たんだぜ?」 「はあ、マジかよ!?」 丸っきり初耳だぞおい。 「しかも、その相手が“鉄の女王”だってんだから、さらに驚きだ」 「ん、鉄の?」 何だその、中2丸出しなあだ名は。何となく、某ラノベの“炎の魔女”を思い出させる。 「四組の静原って娘だよ。恐ろしく美人なんだが、どんなときでも表情を変えない鉄の顔だから、ついたあだ名が、“鉄の女王”。まあ鉄面皮ともかけてるらしいがぁあぁぁああ!?」 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 20 58 02.55 ID ueDQ2zE00 [4/9] やつの声は、途中で野獣のような悲鳴に変わった。 別に真田が、突然おかしくなったのではなく、榊がやつの脇腹を鉄拳で撃ち抜いたのだ。 纏は、いきなりの事態に目を白黒させるが、 「ま、真田が悪いわな。得意気に解説するだけならともかく、彼女の悪口は鬼門だろ」 そう、榊はそういうやつだ。非常に友達思いな反面、自分の気に入った人が貶されると我慢ができない性格なのだ。 「ぐっ、げほっげほ……わ、悪かった榊、俺はそんなつもりじゃなかったんだがつい」 「うん、気をつけてね。僕のことはともかく、彼女を悪く言うと許さないよ? ……あ、西城院さんごめんね、いきなり」 そう謝るこいつに対して、纏は意外にも感心したように言う。 「いや、良いのじゃ。自分の好きな女子(おなご)を貶されて怒るのは当然じゃし、それほど素敵な娘なのじゃろ?」 「はは、西城院さんは器が大きいな。……うん、彼女は、誤解されてるけど、本当は、根は優しい良い娘なんだよ」 榊は誇らしげに言った。 しかし、こうなると…… 「お前、丸っきり悪者ってか馬鹿みたいだな真田」 「う、うるせえ!」「まあ真田だし」「まあ真田じゃからのう」 真田の情けない声に、異口同音の同意が重なった。 「うぅ、纏ちゃんまで……」 ひとしきり真田をみんなで笑った後。 「まずい、約束の時間に遅れちゃう。じゃ、じゃあ悪いけど、また今度誘ってよみんな」 と、慌てたように、榊は教室の外へ駆けていった。 「本当に、恋人を大切にしておるのじゃのう。……なんだか、その娘が羨ましいくらいじゃ」 何やら、纏はごにょごにょと呟いてこちらを見上げていた。 「ん? どした、纏?」 「な、なな、何でもないわ、たわけ!」 ……なぜだか、理不尽にも怒鳴られた。何なんだ、一体。 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 20 59 47.05 ID ueDQ2zE00 [5/9] と、榊と入れ替わるようにして、俺たちの担任が教室に入ってきた。 どうも、肩をいからせて、お怒りのご様子だ。まさかとは思うが、その相手は、 「こらあ、真田! お前、昼休みの補習、さぼりやがったな!」 ああ、やっぱりこの馬鹿だった。 「あぁっ!? やっべ、わすれてた……」 「忘れてたじゃねえ! 今日と言う今日は、放課後に居残ってもらうぞっ」 この様子では、事情を話して見逃してもらうのも無理そうだ。 「くそ、悪いな、そういうわけだから、二人で楽しんできてくれ」 真田は諦めたように項垂れて、大人しく連行されていった。 「ははは、一気に二人っきりになっちまったな」 「そ、そうじゃのう」 なんだか、纏はあたふたしているが、また突っ込むと地雷かもしれないのでやめとこう。 しかし、結局二人っきりとなると、 「まるで放課後デート、みたいだな」 「で、ででででーとじゃと!? い、いきなり何を言うておるんじゃ主は!」 「あ、いや、例えだよ、例え。にしても、照れすぎだろ」 「て、照れとらんわ!」 と言いつつ、顔が真っ赤な纏である。 「ここら辺を案内するなら――そうだな、俺たちの行きつけの喫茶店があるんだが、そこ行くか? まあ、日を改めても良いけどさ」 「ふん。別に良いわ、二人でも。先の戯れ言を気にしてるようで馬鹿らしいしの」 実際、気にしてたじゃんとは思うが、やはり間違いなく地雷なので言わない。 そんなわけで、俺は学校に程近い、行きつけの喫茶店へと、纏を連れてやってきた。 ……やってきた、のだが。 「榊のやつ、ここで待ち合わせてたのかよ……」 そう、外からもよく見える、窓際の席で、おそらくは先ほど聞いた静原とかいう娘さんと仲良さそうに話しているのである。 いや、件の噂通り、彼女さんは終始仏頂面なんで、ぶっちゃけあんま仲良さそうには見えないけど。 「はー、しかし確かに美人だなありゃ。榊のやつもやるねえ」 「何を人の女子に見とれとるか、たわけが!」 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 21 01 50.33 ID ueDQ2zE00 [6/9] 思わず嘆息していると、纏に思いっきり、向こうずねを蹴られた。 ぐぐっ、という呻きが、口から漏れる。 「いっててて。何するんだよまつりん」 「気安く呼ぶでないわ。まったく、わしが目の前にいるというのに……」 またもや何やらぶつぶつ、独り言をこぼした後、 「むぅ、しかしどうするのじゃ、結局。流石にあの中に入るのは無粋じゃろう」 「だな。予定を変えて、ゲーセンとかどうよ」 「げーせん!? それは、世に言う、げーむせんたーというやつか?」 目を輝かせて言ってるし、どうも行ったことがないようだ。 「じゃ、決まりだな……と」 「おお、こっちに気づいたようじゃな」 見れば、榊がこっちを向いて、微笑みながら手を振っていた。俺たちも笑って振り返すが…… (あいつ、纏の方見すぎじゃないか) あいつは昔から、良い意味でも悪い意味でも、女に優しいのだが、流石に今は不味いんじゃなかろうか。 「ほら、そろそろ行こうぜ」 そう思った俺は、纏を急かした。 「うむ、そうじゃの。くふふふ、初めてのげーむせんたーじゃ♪」 そう言って、快活に笑う纏はやっぱり、とても高校生には見えない。 「やっぱ、まんま子供だよなあ」 「な、なんじゃと、このうつけもの!」 そう怒る様も、微笑ましい。 「いやいや、可愛いって意味さ」 「な、ななな、なにを馬鹿なことを言っておる、たわけたわけたわけ!」 可愛らしく叫びながら、顔を真っ赤にしている纏。 「そしてやっぱり、“まつりん”だな、うん」 「何を一人で納得しておるのじゃっ、馬鹿者!」 まつりんの子供みたいな甲高い声が、夕暮れに染まる町に響いたのだった。 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 21 02 33.60 ID ueDQ2zE00 [7/9] 僕は、微笑みを浮かべながら、可愛らしい転校生と友人に手を振っていた。 また、タカシが何か逆鱗に触れたらしく、西城院さんが怒っているのが、遠くからでもわかった。 彼らの姿は、まるで自分達を見てるみたいでなんだかおかしくなる―― 「あいたっ! ちょっ、むみさん!?」 「あなたは、何を、私を差し置いて一人でにやけているのかしら」 心当たりはありすぎるほどにあるけれど、いきなり足の甲を踏み抜くのは酷すぎないだろうか。 「あ、いや、その、友達が通りかかったからさ」 「へえ、随分とまあ、可愛らしいお友達ね」 「もしかして、むみさん妬いて――」 「るわけないでしょう、馬鹿。……あ、すみません」 明らかに“図星”ゆえの速度で否定したむみさんは、店員を呼び止め、ケーキやらプリンやらパフェを矢継ぎ早に注文していく。 「もしかしなくても、会計って」 「食べきれなかったら、あなたも食べて良いわよ?」 「あ、答えるまでもないんだね。……ていうか、ダイエットは」 「何か言ったかしら」 「何でもないです」 「ふん」 まあ、確かに今回は僕にも落ち度があった。 そして、例えそうじゃなくても、むみさんのためなら全財産を失ったって、きっと後悔はしないのが僕だ。 「それに何より、嫉妬してるむみさんは可愛いし」 「妬いてないって言ったでしょう馬鹿」 「だって、さっき“随分とまあ、可愛らしいお友達ね”って言ったでしょ?」 それが何? と言いたげに小さく首をかしげるむみさん。――ああもう、いちいち仕草の一つ一つまでもが可愛いんだから、たまらない。 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/27(木) 21 03 40.13 ID ueDQ2zE00 [8/9] 「でも、あそこには女の子の西城院さんだけじゃなくて、タカシっていうもう一人の友達もいたんだよ」 「えっ? そ、そんなこと!?」 「本当だって、もう」 思った通り、彼の方には気づいていなかったのだ、僕の世界一可愛い恋人は。 「だから、嫉妬してるむみさんは可愛いって言うのさ。僕が他の娘に良い顔をしてると思い込んで、男子がいたことには気づいてないんだもの」 「う、あ、あぅ……」 何も言い返せず、クールそうな顔がどんどん朱に染まっていくむみさんは、筆舌に尽くしがたいほど可愛かった。 「それにしても、僕が世界で愛している女の子は、むみさん一人だけだってことを、いい加減理解してほしいなあ」 そんな台詞を告げると、ただでさえ赤面していたむみさんは、耳元まで真っ赤になってしまう。 そして、何度か口を開きかけてから結局、 「うるさい、馬鹿」 とだけ、呟いたのだった。 第二話「スターシステム? いいえ、タイトル詐欺です」完 つづくはずがない