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「……にわか雨の悪竜?」 「そうです。」 ダンスのレッスンの後、わたし達のダンスの師匠である「みのりママ」から、衝撃?の事実が伝えられました。 「にわか雨の悪竜。ここ最近頻発するにわか雨の原因です。危険度は『丁』……まあ現代風に言えば『Eランク』といったところでしょうか。駆け出しの貴女達に相応しい相手と言えるでしょう」 「もちろん油断はできません。負ければずぶ濡れどころでは済みませんよ」 「『儀式』はローカル局の放送が入ります。まず間違いなく大雨の中の『儀式』になるでしょうから観客に期待はできません。よってどこまで『信仰』が集められるかは未知数です」 「本番は1週間後、気合いで乗り切りなさい」 みのりママは、脅すような発破をかけるような感じで話を締められました。 ついに来た! わたし達の初ライブ! 「ここ最近のにわか雨って竜さんのせいだったんですね〜」 「1週間後かあ、ドキドキしてきた!」 「レッスンの成果が試されるってわけだなー!」 「舞踊と歌唱だけでなく『剣武』も大事になりそうだけど」 「「「うえ」」」 『剣武』。実際に刀を振り回して竜と戦う時の話です。みゆき以外は、3人ともちょっと苦手なんです。 京都の「皇座(すめらざ)」にいらっしゃる「巫女」さまなら剣武なしの歌と踊りだけで大悪龍すら鎮められるんですけど……わたし達はそんなに力がないから、どうしても「舞」だけじゃなくて「武」が必要になってくるんです。 ちゃんとこっちのレッスンもやってるんですけど、やっぱり歌とダンスの方が好きですね。 さて、「本番」の日付が決まったので、私たちのレッスンもさらに苛烈に……じゃなかった、実践的になってきました。 腕を、脚を、もっと強く伸ばして! 音楽に合わせたステップはもっと正確に!力強く! ボーカルは全身を使って響くように、届けるように! 剣武は舞の所作を取り入れつつ、相手から目を逸らさずに速く深く切り込む! 普段の勉強もあるし、毎日へとへとになりながら、みんなそれぞれ自分の家に帰るのでした。
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【巫女名】帯刀 いづな(たてわき いづな) 【出身地】日本 【身長】158cm 【体重】48kg 【年齢】17 【3size】78/57/81 【一人称】私 【血液型】A型 【好きな食べ物】栗羊羹 【イメージカラー】蘇芳 【アライメント】中立・悪 【所属組織・グループ】百鬼夜行→イリーガル・パニッシャーズ 【最大シンクロ率】74% 【私服】赤い着物を着流し、地下足袋、首に爆弾 【巫女装束】くたびれた地味な配色の着物の浪人風、編笠、草履 長い黒髪を総髪にした紅い瞳の少女。 物静かだが剣の道を極めようと鍛錬を重ねる愚直な性格。 そして、その胸の内には常に「何かを斬りたい」という衝動に囚われている。 これは降ろした鎌鼬からの影響であり、シンクロ率が上がるに連れて次第に強くなっていく難儀な宿業であった。 或いは使命と夢を放棄して巫女を辞するか。 或いは心の赴くままに剣を振るい人も龍も構わず切り捨てるか。 或いはそのような辻斬り紛いの剣鬼となる前に自ら命を断つか。 否、使命も夢も棄てずに剣を振るい続けたい。 その欲望を叶えるためにいづなは最終的に『イリーガル・パニッシャーズ』の門を叩いて管理される道を選ぶこととなった。 現在は組織が「心置き無く斬ってもいい相手」を指定してくれるので、自由は無いがそれなりに充実した日々を送っている。 【神名】鎌鼬 【権能】辻風一迅・木枯らし斬舞 疾風の如き剣捌きで敵を切り刻む。その太刀筋は速すぎて断面から出血がしない程。刀身からは常に風の鎌が放たれているため鍔迫り合いに強く、刺突すれば傷の内側からズタズタに引き裂く。 剣圧で真空の刃を飛ばせるのである程度の遠距離であってもカバーできる。 【信仰度】妖怪としての知名度は高い。一部地域では悪神に分類されている。
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「もしも」一話で誕生日にオロチの襲撃が無く、二人だけの誕生日が行われていたら… 「もしも」一話で誕生日にオロチの襲撃が無く、二人だけの誕生日が行われていたら… を妄想してみた↓この千歌音ちゃんの言葉だけでもハァハア度の高さが伺えるw (明日は今までの誕生日とは違うの 明日のことを思っただけでこの胸の高鳴りが押さえられないくらい 本当に、特別な一日) 毎年、繰り返されるもはや義務的となった行事 姫宮邸の大広間に村や学校、姫宮の仕事関係の人々を招いての誕生会 代表者からの型どおりのお祝いのスピーチに始まり、粛々と進行されていく誕生会に少し飽き飽きしていた しかし…今年は違う 心がときめいていた 千歌音の視線は常に一人の人を追っていた 会場の隅っこで目立つ服装でいるわけもなく、静かに佇んでいる少女…来栖川姫子 そう、彼女の存在だけが今日の千歌音の心の全てを占めていた あと数時間の後、二人っきりの時間がもてる 千歌音は一刻も早くこの退屈な時間が過ぎることを願っていた 姫子といえば、そんな千歌音の心を知ってか知らずか、早乙女真琴と離れることなく時折、屈託の無い笑顔を見せていた (あの笑顔を自分だけのものにしてしまいたい…) 寮生活をしている生徒達の門限が9時である為、6時から始まったパーティーーは2時間を経過したところで終わりを告げる 千歌音は出席してくれた人々を見送った 姫子は今頃、乙羽の手引きにより千歌音の部屋に通されているはずだ 千歌音は最後の人を見送ると、急いで自室に向かった 「姫子!!」 部屋に入ると姫子は中央に置かれているソファに腰を掛けていた 千歌音の顔を見るとニコニコと太陽のような笑顔で迎えてくれた やっと二人だけの時間…千歌音は部屋の鍵を掛けると姫子の隣りに腰を降ろした テーブルの上には乙羽によって用意されたワインとグラス、幾つかのオードブルにケーキがある 「さぁ、二人だけの誕生会をはじめましょうか?」千歌音はグラスにワインを注いだ 「あの、千歌音ちゃん…私、ワインは無理だよ」姫子は手を振って断る 「一口ぐらいだったら大丈夫よ お祝いだもの、少しだけつきあって」 「う、うん…」 「せっかく蝋燭に火が灯ってるし…」千歌音は部屋の電気を消した ぼーっと蝋燭の明りが浮かび上がり、神秘的な雰囲気を醸し出す 「お誕生日おめでとう、姫子…」千歌音はグラスを掲げた 「お誕生日おめでとう、千歌音ちゃん…」グラスが交わった 「蝋燭の明り…凄く綺麗だね」うっとりとしてグラスに口をつける姫子 可愛い…その横顔を見ながら千歌音は思った 口に含んだワインも味もいつもよりは格別に美味しく感じられた 「あ、千歌音ちゃんの今日のドレス姿も凄く綺麗だよ 本当に見とれちゃったし…」 「そう…姫子だってそのワンピースとても似合ってるわよ…可愛いわ」薄いピンクが姫子の肌の色にピッタリだと千歌音は思った 姫子は照れくさそうにワインを口に含む 「私ね…本当に嬉しいの 千歌音ちゃんと同じ誕生日でこうして二人でお祝い出来るなんて」 「私もよ 姫子…」 「千歌音ちゃんの誕生日が凄すぎて、仲のいいマコちゃんでさえ私の誕生日忘れてるみたいだったし…あ、でも大神くんは覚えてくれてたな」 「大神さん…が?」 「うん…本当は今日二人で会えないかって誘われてたんだけど」そこで姫子はアッと口を手で押さえた (千歌音ちゃんと大神くんって…つきあってるっていう噂…) まずかったかな…千歌音の気を悪くさせたと思って姫子は慌てた 「あ、あの…特別な意味はないと思うよ 大神くんとは幼馴染で…それだけだから…その、千歌音ちゃんと大神くんが親しいのは知ってるし、 別に二人の仲を邪魔するつもりなんてないし…」 「姫子?私と大神さんって何でもないわよ ただのクラスメートだけれど?」 「でも…みんなが言ってるよ お似合いのゴールデンカップルだって…」 千歌音はクスクスと笑った 「そんなのただの噂でしょ 彼とは本当に何もないもの」 「それより…」千歌音はグラスを傾け少し目を伏せながら言った 「姫子と大神さんが幼馴染だなんて始めて知った…もしかして彼の事…好きなの?」 「えっ…そういうわけじゃないけれど…」姫子はあきらかに動揺している、と千歌音は思った 「小さい頃から…守ってくれたから 嫌な事があっても…大神くんがその後で楽しい時間を作ってくれたの…」 そう、そういうことなの…姫子の恋愛感情は大神ソウマに向けられている 千歌音の心は沈んでいく 二人の間に暫しの沈黙の時間が流れた 「あ、あの…」姫子は千歌音が急に黙り込んでしまったことに戸惑っていた 「ち、千歌音ちゃんは…好きな人いる?」千歌音はハッとして顔を上げた 「千歌音ちゃんは私と違ってみんなからモテモテだし、色んな人から告白されてるって聞いてるから…その、選ぶのも大変かなあって…えへへ」 千歌音はグラスのワインを飲み干すと姫子の方を見た 「好きな人…いるわよ 誰か知りたい?」その熱っぽく潤んだ瞳を見て、姫子はドキっとした 千歌音の顔が近づいてくる 気がつけば千歌音の艶やかな唇が目の前にあった (えっ…)姫子は瞬間的に目をつぶっていた 「姫子…」千歌音は姫子の耳元で囁く 「やっぱり…教えてあげない…」耳に直接かかる千歌音の熱い息…ゾクゾクとする 「大神ソウマに心を奪われているあなたなんかに…教えたくない」 「!?」(千歌音ちゃん…怒ってる)姫子は千歌音を見た (千歌音ちゃん、やっぱり大神くんの事が好きなんだ…だから、私の事怒ってる…どうしよう) 長い黒髪に隠れて千歌音の表情を知る事は出来ない 姫子はただ戸惑うばかりだった 「あの…千歌音ちゃん…ごめんね、私…」 「姫子…」千歌音の手が伸びてきて姫子の頬を触る 「私からの…誕生日プレゼント、受け取ってね」 返事をする間も無かった 千歌音の顔が目の前にきたかと思うと、生暖かく湿った感触が姫子の唇に重ねられていた 「!?」(うそ…キスしてる…千歌音ちゃんと…) 重ねられた唇は少しずつ動いていた やがてヌルッと千歌音の舌が姫子の唇を押し入ってきた時に姫子は体をビクリと震わせ、彼女から逃げていた 「そんなに…嫌…なの?」千歌音は酔っているのだろうか?瞳を潤ませ上気した顔つきで迫ってくる 「ど、どうして…何でこんな事するの?」姫子はたじろぎソファから立ち上がった 「ごめんね…」千歌音の手が伸びて姫子の手首を掴んだ 痛い程、強い力… 「こんな想い…絶対口にしてはいけないと思ってた でもね…」 千歌音は姫子を引き寄せると抱きしめた 「このままじゃあなたを誰かに盗られちゃう…」 「ち、千歌音ちゃん…」 「好き…あなたが好き…好きよ、大好き」耳元で何度も囁かれるその言葉に姫子の頭は混乱していた 千歌音は姫子から見たら仰ぎ見上げることしか出来なかった憧れの対象… 親しい友達になれただけでも信じられなかったのに、それが今は愛を囁かれてるなんて… 「嫌なら…嫌だったら言って…もう二度とこんな事しない あなたにはもう…近づかないから…」 「そんな…」もう近づかない?それって今までみたいな二人の関係が終わってしまうって事なの? 嫌だ…そんなのは絶対に でも言葉が上手く出てこない どうしよう… 姫子の目から涙が零れ落ちた 「姫子…」姫子が体を震わせ泣いているのに気がついた千歌音は体を離した 悲しげな目をして姫子の顔を覗き込む 「…そう…やっぱりあなたを苦しめてしまったのね…」 千歌音は扉に向かってゆっくりと歩き出した ガチャッと鍵が開けられる音がする 「まだ…寮の門限には間に合いそうね 車で送らせるから…行きましょう」 千歌音は振り向く事なく言う 「ごめんね…せっかくの誕生日だったのに 嫌な思いをさせてしまったわ…本当にごめんね」 (きっと千歌音ちゃんを怒らせてしまったんだ…) 昨日、玄関先で見送った千歌音の表情が頭から離れない 悲しげな、苦悶に満ちた表情…今まで見た事のない表情… 本当なら昨日は千歌音の家に泊まって楽しい時間を過ごすはずだった 今朝だって二人して仲良く登校していたかもしれないのに… 結局、あれだけ悩んで買い求めた誕生日プレゼントも渡せず、未だ姫子の鞄の中にあった 嫌なんかじゃない、ただ驚いただけ…自分にとってはファーストキスだったわけだし、そう、まだ自分の気持ちがハッキリとわかっていないだけ 頭が混乱してるだけ…だからもう一度ちゃんと向き合えば…姫子は思った (千歌音ちゃんと…ちゃんと話したい…誕生日の続きもちゃんとしたい) 姫子の背後で黄色い声が上がった 「宮様ーっ」 振り返ると千歌音が颯爽と登校してくるところだった (千歌音ちゃん…) 千歌音は周りの生徒たちに「ごきげんよう」と優雅に声を掛けながら真っ直ぐに歩いてくる 姫子は立ち止まり千歌音を待った 「あ、あの…」一瞬の風を感じた「えっ…」 千歌音は姫子の存在など全く眼中に入らないかのように足早に横を通り過ぎて行ってしまった (もう近づかないから…)千歌音の言葉が甦る 姫子はその時、初めて理解した 千歌音が自分から離れてしまう事が現実におこっているのだと 「姫子ーっ、どーしたボーッとして」 「マコちゃん…」 姫子は校庭のベンチに座っていた その視線の先にはテニスコートで打ち合っている千歌音と大神の姿があった 「いつ見てもあの二人はお似合いだなぁ」真琴のその言葉に心が痛む そう、誰だってあの二人を見ればお似合いだと思うだろう 自分だってあの二人はお互いに好意をもっているものだと誤解していたのだから 「おー、神さまがこっちに来るぞ」 テニスを中断した大神が足早に姫子たちの元にやってきた 「来栖川…ちょっといいか?」 「大神くん…」 真琴はニヤニヤ笑いながら手を振りその場を離れていく 「今度の日曜日、村の祭りがあるだろ?その…誕生日に渡せなかったものがあるから…一緒に行かないか?」 「え、でも…」 「五時に迎えに行く」大神は赤面しながらそう告げるとコートに戻っていった 姫子は次の瞬間、千歌音の姿を探していた 千歌音の姿はいつの間にかコートから消えていた (神さまに誘われたのに行かないって!?アホかアンタは…せっかくのチャンスなのに) 躊躇い、行かないと言った姫子に真琴は呆れていた (大事なものってのは失くしてからその大事さに気づくんだよ) 大事なもの…それは自分にとって本当は何なんだろうか? 午後から降り出した雨 傘を用意していなかった姫子は真琴をアテにしていたが、部活のミーティングがあるというので仕方なく一人で帰宅する 暫く玄関先で雨が弱まるのを待っていたが、変わらない様子に姫子は諦めて寮まで走った 10月の冷たい雨が体を濡らした ただでさえ走れば転ぶという特技を持っている姫子のこと、後ろから来た車を避けようとして案の定、足を滑らせた そして…かなり豪快に転んだ 「イッター…」鞄が飛び中の荷物が飛び出てしまった 「あっ…」水溜りに浸かってしまったそれは姫子のとても大切にしているもの 千歌音がくれたアルバム… あわてて拾い上げたが、泥まみれになってしまっている 「ヤダ…こんなに汚れちゃって」姫子は袖口を使って拭いたが、白い表紙なのでかえって汚れが広がってしまった 「どうしよう…どうしよう…」涙が溢れてきた 姫子はアルバムを抱きしめていた そう、本当に大切な大事なもの (大事なものってのは失くしてからその大事さに気づくんだよ)真琴の言葉が甦る 自分にとって大事なものはこのアルバムの中で笑顔を向けていてくれるこの人だったのに… 姫子は雨にうたれながら泣き続けた 「ごめんね、私やっぱり一緒には行けないから」 日曜日、大神の誘いを断った姫子はひとり祭りの会場へ向かった 普段は静かなこの村もこの日ばかりは一気に賑わう 近郊の街からも人が集まってくるので、祭り会場はかなりの人でごった返していた 姫子は人の波に揉まれながら、ただひとりの人の姿を探して彷徨っていた 手紙を読んでくれたらきっと来てくれる…姫子はそう信じた 昨日、姫子は姫宮邸を訪れた 千歌音は不在だったが、応対に出た乙羽にこの手紙を千歌音に渡して欲しいと頼んだ (千歌音ちゃん…) 篝火で囲まれた特設舞台では神楽が舞われていて観客が大勢集まっていた その中で人々の熱気と篝火の暑さで姫子の頭はのぼせそうだった なんだか頭がくらくらしてくる… (!?)…その時、暖かい手が指に絡みつくようにしっかりと姫子の手を握った 姫子は横に立つその人の顔を確かめると、寄り添い肩にもたれかかった 「千歌音ちゃん…来てくれてありがとう…」 あとは言葉にならなかった 千歌音に引っ張られるようにしてその場所から離れ、人気の無い場所へと移動する 「汗…すごいわよ 具合悪いの?」千歌音は姫子の額に浮かぶ汗を指先で拭った 「熱…あるみたい」千歌音は自分の額をつっくけた 「千歌音ちゃん…」心臓が高鳴る 熱っぽいのはきっと千歌音ちゃんのせいだよ、と姫子は思った 「風邪ひいたかもね…雨の中…濡れてたでしょ」千歌音は額をくっつけたまま言う 「知ってたの?…」 「姫子のことは…いつも見てるから いつも姫子の姿を探してしまうから」 熱い息がかかる 「ごめんね…あの時だってすぐに飛んでいって助けてあげたかったのだけれど もう…姫子に近づいちゃいけないって…」 「ヤダ…そんなの嫌だ」姫子は千歌音の背中に腕をまわした 「千歌音ちゃんが離れていってしまうなんて絶対に嫌っ…側に居て…お願い」 「姫子…」 「…すき…千歌音ちゃんのことが好き…大好き」 「姫子…でも」千歌音は姫子の頬に手をあてた 「姫子の好きと私の好きは…きっと違う 私の好きはね…友達としての好きじゃない あなたを抱きしめてキスしたいって…そういう欲望の塊の好きなのよ」 「違わないよ…私も…私も」姫子は目を閉じて顔を上向きに上げた 「姫子…」 「千歌音ちゃんの事考えただけでドキドキが止まらない…千歌音ちゃんに嫌われたら…私、たぶん生きていけないよ」 千歌音の指が姫子の唇をなぞる 「本当にいいの?」千歌音の言葉にそっと頷いた ほどなくして熱い唇が重なった ただ唇を合わせるだけのキスだったけれど、それでも二人の気持ちがひとつになれた瞬間だった 「誰かに…見られちゃうわね」千歌音は唇を離すと少し照れ笑いをした 見られても構わないと思って姫子はギュッと強く千歌音に抱きついた 「千歌音ちゃんと一緒に居られるのなら…どんな辛いことにだって立ち向かえるよ…例えね学校のみんなに虐められても平気…」 「あなたにもう辛い思いなんてさせないから…私が守ってあげる、絶対に」 少しだけ遠回りしたけれど、私達の気持ちは重なり合った 思えば私はあの最初に薔薇の園で出逢った頃から、彼女に恋をしていたんだと思う ただ…少しだけ自分の気持ちに自信が持てなかっただけ、確信が持てなかっただけ… 「ねぇ…千歌音ちゃん…誕生日の続き…ちゃんとしたい」 「ええ…姫子」二人はしっかりと手を握り合って、祭り会場を後にした
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「初めての夜に」 「お土産買ってくるからいい子にして待ってるんだよ」マコトはまるで子供をあやすが如く言って寮を去って行った 夏休みが始まり、大多数の寮生達は一時期帰省をする 部活や補習、家庭の事情等で夏休みでも寮に留まる生徒はいる…姫子もその中のひとりだ 天涯孤独な姫子には…帰る家は無い 寂しくないと言ったら嘘になるが、それでもここを離れたくない理由もあった 賑やかなマコトが去った後の部屋でひとり、山のように出された宿題と格闘していた 明日からは成績が不良だった数学と物理の補習も受けなければならない 姫子にとっては、夏休みは決して楽しいものではなかった 夕方になりようやく涼しい風が吹いてきた頃、姫子は勉強で使いすぎた頭を休める為散歩に出かけた 姫子の足は自然と「薔薇の園」へ向っていた …そう都合良く、自分の逢いたい人が待っているわけでもなく…姫子は少し苦笑して、大木の下に腰を降ろした (千歌音ちゃん…夏休みはどうしているんだろう?) 千歌音は自分と違う意味で忙しい人だから、きっと夏休みになったからとはいえ逢える機会なんてほとんど無いんだろうな、と思う でも…一日でもいいから大好きな千歌音と過ごすことが出来たら、どんなに楽しいことであろうか… 姫子はささやかな夢を抱いていた 「姫子、姫子…」ほんの一瞬だけ記憶が飛んだような気がしたのはどうやら寝てしまっていたから…らしい 軽く体を揺すられて瞼を上げると、目の前には千歌音の姿があった あまりにも極至近距離にその端正な顔があったので、姫子の目は一瞬にして醒めた 「わわ…千歌音ちゃん」 「こんなところで寝てるなんて」千歌音は笑った「夏だからといって風邪ひくわよ」 「う、うん…ここに座っていたら気持ちよくなっちゃってつい…それより千歌音ちゃんはどうしてここに?」 「生徒会の仕事があったから…少し休憩と思ってここに来てみたのだけれど」 それは半分本当で半分は嘘、千歌音は心の中で呟いていた 生徒会室の窓からあなたの姿を見つけたから追いかけてきたのよ、と 「そっか、やっぱり千歌音ちゃんは夏休みでも忙しいんだね」 「そうでもないわ…」千歌音は姫子に伝えたい言葉を躊躇っていた 「姫子は…夏休みの間は寮にいるの?」そんな事聞かなくても、とうに調べはついていた 姫子には帰る場所がない、ルームメイトの早乙女さんは帰省している、残っている寮生は極少数…そう、ふたりきりで過ごせるチャンスがいくらでもあることを でも、それも姫子が同意してくれたらの話しであるけれど… 「補習受けなくちゃいけないし…ほら、私、千歌音ちゃんと違ってデキ悪いし」 姫子は笑いながら言う 千歌音は思った この子はいつもこうだ 自分の前では決して、身の上の不幸とかは話さないし、悲しいとか寂しいとか口には出さない いつも笑っていてくれる…嬉しいけれど、切ない…とても切なくなる 「それにね…千歌音ちゃんもずっとこっちにいるんだし…えへへ」 「!?」千歌音はその言葉を聞いて覚悟を決めた 「姫子…私ね、一度寮に泊まってみたかったの 招待してくれないかしら?」 「本当に?」姫子は丸い目を更に丸くして信じられないといった表情を見せた 「本当に遊びに来てくれるの?」 「ええ、姫子が招待してくれるのなら」 「勿論だよ!!あっ…でも…」姫子は困惑した表情を見せる 「寮長に許可とか取らなきゃいけないし…他の人が知ったらきっと大騒ぎになっちゃうよ…千歌音ちゃん、落ち着いて過ごせないかも…」 「だからね…」千歌音は悪戯っぽく笑う「みんなには内緒で…こっそりと行くの これは私と姫子だけの秘密よ」 「大丈夫かな?」 「ええ、大丈夫よ」千歌音の妙に自信のある物言いに姫子は安心したようだ 「うん、それじゃいつにする?千歌音ちゃんの都合に合わせるから、いつが予定、空いているか言って」 すぐに、一日でも早く…今日でもいいのよ、千歌音は心の中で呟いていた 「そうね…明日なら…空いているんだけれど」逸る心を抑えて口に出した言葉 「えっ…明日」姫子は部屋が乱雑のままであることを思い出して焦っていた (掃除しなきゃ…明日までには片付くかな?ヤダなあのままじゃ千歌音ちゃんにだらしのない子だと思われちゃう) 「ダメ…なのかしら?」 「ううん」姫子は少し顔を赤くして言う「いいよ、明日ね…じゃあ、寮の裏門はわかるよね?裏の非常口の鍵は開けておくから、そこで9時に待ってるよ」 「ええ、わかったわ」 「じゃ、じゃあ…明日ね ごめんね、私ちょっと用事を思い出したから行くね」 姫子は手を振りそそくさと薔薇の園から出て行ってしまった 「姫子…」千歌音はそんな姫子の後姿を見送りながら、もしかして迷惑だったの?と心が沈んだ 姫子といえば一刻も早く乱雑なままの部屋を片付けて、千歌音を迎え入れる万全の態勢を整えておきたかっただけなのであったのだが… 普段は宮殿のような部屋で過ごしているであろう千歌音を一晩とはいえ、こんな寮に泊まらせるにはそれなりの気を遣う 千歌音に不快な思いをさせてはならないと姫子はそれなりに頑張って、部屋を飾った…とはいえ、出来ることは限られていたのだけれど 塵ひとつなく掃除を念入りにし、シーツを新しいものに替え、花を飾る あと数分でこの質素な部屋には千歌音という何よりも華やかな飾りが添えられるのだ 姫子は逸る気持ちを抑えて、約束の30分も前から裏門に出て千歌音を待った 誰かを待つというのは楽しいようでもあり、実は切ないものだ もし、来てくれなかったらどうしよう、出掛けに急に用事が出来たとか途中で事故に逢ってたりしないだろうか…ふと頭を過ぎる不安 何だかこんな気持ちって恋人を待つ気持ちに似てるのかな?姫子はそんな事を考えてひとり顔を赤らめていた (私ってやっぱり変なのかな?千歌音ちゃんにこんなにドキドキしてるなんて…) 時間の経過がこんなにももどかしいものだったなんて… 「姫子?」暗がりの中から足音が聞こえて千歌音が姿を現した 「千歌音ちゃんっ」姫子は時計を見て千歌音が約束の時間より早く来てくれたことに喜んだ 「顔…赤いみたいだけれど大丈夫?」 「う、うん平気」姫子は千歌音が持っていた荷物を取り上げると満面の笑みを見せた 「良かった…本当に来てくれて」 私があなたとの約束を破るはずなんてないでしょ、千歌音はその可愛らしい笑顔を見て心が昂ぶる 「さぁ、中に入ろう」 姫子に導かれて、非常口から入り二階へと上がる しんと静まり返った寮内…普段ならこの時間はまだ寮生の活気に満ち溢れているのだが、今寮内に残っている生徒は数人程度 おかげで千歌音は身を隠すことなく堂々と姫子の部屋まで辿り着くことが出来た 「ここだよ、入って」8畳程の広さに二段ベットと学習机がふたつ、本棚にクローゼット… 部屋の真ん中には花が飾られた小さなテーブル シンプル過ぎるほどの部屋だったが、姫子の努力の甲斐もあって小奇麗に整理整頓されていた 「可愛いお部屋ね」千歌音の反応を見て、姫子はホッと胸を撫で下ろした 千歌音が少なくとも不快な感じを抱かなかった事に安堵する 千歌音にしたら、例えどんな廃屋であったとしても姫子と一緒に過ごせる場所なら不平なんて言うはずも無いのだけれども… ふたりは千歌音が持参してくれたケーキやクッキーを食べて楽しい時間を過ごす 他愛も無い話しをして、笑いあう時間… 開け放たれた窓からは涼しい夜風が入り込んで来る 山間部なので夜になればかなり気温も下がるので、7月後半のこの頃はまだクーラーは必要としない でも姫子も体温は上がりっぱなしのようだった 何故なら千歌音が自分にピッタリと身を寄せるようにして座っているから… (千歌音ちゃん…どうしてこんなに近づいているんだろう?) お風呂を家で済ませてきたという千歌音からは、何とも良い香りが漂ってくる 姫子は自分の体が徐々に汗ばんでくることに気がついていた (千歌音ちゃんの胸…さっきから腕に当ってるんだけど)柔らかくて何ともいえない良い感触… 姫子は顔を赤くし頭を振る (何考えてるんだろ…私ったら これじゃ変な人だよ) 「姫子どうかした?」 「う、ううん…何でも無い」姫子はさりげなく千歌音から離れた 「も、もうこんな時間になっちゃったね」楽しい時間というのは、残酷な程に早く流れていく 「おしゃべりに夢中になってたから…千歌音ちゃん、そろそろ眠いでしょ」 時計の針はもう12時を指そうとしていた 「いつまでも明りついてたら見回りとかきちゃうかもしれないし」 「そうね…じゃあ寝ましょうか」 千歌音は持参したネグリジェに着替えた それはこんな部屋にはおかしいくらい不似合いなもの… (わぁ…凄く色っぽい)姫子はそんな千歌音の姿をマトモに見ることが出来なかった 自分はといえば、いつものパジャマの上だけの姿…あまりにも対照的な二人の格好だった しかし、姫子は気づいていなかった パジャマの上だけを羽織るという無防備なその格好は千歌音にとって刺激的すぎるものであったということを… 「千歌音ちゃんは私のベッド使ってね そんなベッドで悪いんだけれど」 本当に千歌音を二段ベッドの下に寝せるなんて忍びないのだけれど… 「姫子は?」 「私は床の上に布団敷いて寝るから」姫子はクローゼットの中から予備の布団を出して床の上に敷く 千歌音はいそいそと寝支度をする姫子の姿を目でじっと追っていた 姫子にとってはいつもマコトの前でしている格好、恥ずかしいとも変だとも思った事はない ただ楽な格好だったから…しかし千歌音にとっては屈む度に見える下着や露出している肌の多さ、明りに透けて見える体のライン等全てが刺激的だった 「こっちで一緒に寝ない?」ふいにかけられた言葉 「えっ…でも、それじゃ千歌音ちゃんが狭くて窮屈だよ」 「大丈夫よ…」千歌音は手招きをする「来て…」 「う、うん…」 千歌音にとっては慣れない場所だから仕方ないのかな、などと思いながら姫子は部屋を明りを消し千歌音とともにベットの中に入る 「狭くて寝づらかったらいつでも言ってね 私すぐにあっちに移るから…」 「平気よ…」千歌音の息遣いがすぐ側で感じられた 「ねぇ、姫子…姫子はいつもそんな格好で寝てるの?」 「う、うん…変かな?マコちゃんには何も言われないし…」 「変じゃないわ…」そう、早乙女さんにはいつもその無防備な格好を見せているのね… 変なんかじゃない…可愛いわよ、姫子…とても… 「お腹出して風邪ひかないようにね」千歌音はフフと笑った 「マコちゃんにも良く言われるんだ『姫子ー、腹出して寝てると風邪ひくぞー』って…それでね、マコちゃんが私のベッドの中に入ってきて『抱き枕』ってギューっとして暖めてくれるんだけれど」 「抱き枕?」 「うん…マコちゃん抱き枕すると気持ち良くて熟睡できるって言って、別に私も嫌じゃないんだけれど、でもそれって何か私が太ってるみたいで…」 無邪気に話す姫子に千歌音は微かな苛立ちを感じていた マコトに抱かれて眠る姫子の姿…想像するだけで心が軋みをあげてくる 姫子が私以外の人に向けている笑顔…姫子が私以外の人の腕の中で安らかな寝息を立ててるなんて… 千歌音はキュッと唇を噛んだ 嫉妬…そう完全に私は早乙女マコトに嫉妬している… 「姫子…」千歌音は手を伸ばし、やや乱暴に姫子を引き寄せた 「千歌音ちゃん?」 「抱き枕って…こんな感じかしら」 姫子を背後から抱きしめるようにして、足を絡めた 「ど、どうしたの?」 「私にも…姫子の抱き枕…ちょうだい」 密着した体からお互いの体温が伝わり合う マコトとは全然違う感触に姫子はドキドキした (千歌音ちゃんの体…熱い…)心臓の鼓動もハッキリと伝わってくる 「早乙女さんとは…いつもこうしてるんでしょう?」囁くように言う千歌音 なんだか体がゾクゾクしてくる 「い、いつもってわけじゃないよ…時々…」 「…そう…で、他には何をするの?」 「何って?」 「こうして抱きしめて、姫子の体温感じて…その後は…何もしないわけ?」 (千歌音ちゃん…何だか怖い…どうしちゃったんだろう) 姫子は体を捩って離れようとしたが、思いの外力強く抱きしめられていて上手く身動きがとれなかった 「ふ、ふざけてくすぐったりするだけ…それだけ…それだけだよ」 「そう…なら良かった…」何?姫子には千歌音の言った言葉の意味が理解出来ないでいた 次の瞬間、髪の毛を掻き揚げられて首筋に生暖かいものを押し付けられた 「!?」体に電流が走ったような衝撃を受けた 千歌音は姫子の首筋に唇を押し付けている それはゆっくりと場所を移動しながら何度も繰り返された 「ち、千歌音ちゃん…」暗闇に響くチュッチュという音、千歌音の荒くなった息遣い…姫子の体は硬直したかの如く動けなくなっている 「…こういうことはされてないのね…」 千歌音の手がパジャマの胸元から入り込んできて、姫子の胸を触る 「あっ…」最初は形をなぞるように優しタッチで… やがてキャミソールが少しずつたくし上げられて直に胸を触られた 千歌音の長い指が絡み付いてくる 最初はふざけてじゃれついている延長の事かと思った しかし違う…これはマコトとのじゃれ合いとは明らかに違うものだ 「だ、ダメだよ…」やっとのことで発した姫子の声は弱弱しかった しかし千歌音は止めることなく、掌全部を使って胸を揉みはじめた 「姫子…好き…好きよ」後ろから囁かれるその言葉に姫子の体は熱くなる 信じられなかった、でもこれは夢なんかじゃない…千歌音が自分に対して愛の言葉を囁いている 仰ぎ見る憧れの対象だった、親友であったはずの千歌音が… 「姫子…」千歌音は上半身を起こし、姫子の顎を掴んだ 「んっ…」ふいに塞がれた唇 重ねられた唇からは甘い薔薇のような香りがした その匂いに酔ってか気が一瞬遠くなりかけた時、ヌルッと千歌音の舌が口内に侵入してきた 拒否する事など出来ない一方的なディープキス それは遠慮なく姫子の舌と絡み合った 「あ、あ…」姫子の目から一筋の涙が零れ落ちた この涙は何?嫌だとかいう感情ではない…遠い昔に記憶が引っ張り込まれるような、切ない感じ… 何故だろう?この感じは… 姫子はいつしか無意識のうちに千歌音の背中に手を廻していた 「姫子、姫子…起きて」朝の眩しい光と聞き慣れた声に姫子は目覚めた 「おはよう…さぁ、仕度して」いつもと変わらない千歌音の笑顔 「うちに行って一緒に朝食を摂りましょう 補習は9時からでしょ…十分に間に合うわ」 「千歌音ちゃん…?」まだ頭がぼんやりとしている のろのろと起き上がると、自分が半裸状態である事に気がつき慌ててシーツに包まった (昨夜…)顔から火が出そうになる(何で…あんな事になっちゃったんだろう…) 千歌音は背中を向け荷物をまとめ帰る準備をしていた 姫子はその様子を見て、慌てて下着をかき集め着替えを始める 何事もなかったかのように流れていく時間… 寮を出て姫宮邸に向う 二人は無言のままだった 姫子は恥ずかしくて千歌音の顔さえまともに見ることが出来ない 一歩下がるようにして歩いていた 「姫子…」ふいに千歌音が立ち止まった 「ごめんね…私の好きは…ああいう好きだから」振り向く事なく千歌音は言う 「千歌音ちゃん…」 「私の好きは欲情の塊…あなたが誰かのものになっちゃう前に自分のものにしたいって…そんな自分勝手な自己満足な愛情なのよ…最低だわ もう…嫌いになっちゃったでしょ?」 振り向いた千歌音の目にはうっすらと涙が光っていた (千歌音ちゃんが泣いている…千歌音ちゃんは苦しんでいるんだ…私のせいで) 姫子は胸が痛くなった 昨夜キスされた時の切ない思いがフラッシュバックされる 切ない…込み上げてくる切ないこの想い 姫子は千歌音の腕の中に飛び込んでいた 「…嫌いになんかなれるはずない…なれるはずないじゃないっ」 「姫子…」 「ごめんね…気がついてあげられなくて 私がずっと千歌音ちゃんのこと苦しませていたんだね…ごめんね」 「姫子…」二人は強く抱きしめてあった きっと…こんなふうになる事を望んでいたのは私自身だったのかもしれない、と姫子は思っていた 遠い遠い記憶の中に残されている想いを感じとった瞬間… 姫子は自ら唇を重ねていた ~end~ ~早乙女マコトの後日談~ お盆も終わって寮に戻ってみると、何だか姫子の様子が変わっていたんだ うーん、上手く言えないけれど「恋する乙女」みたいに輝いているんだよね…私が留守の間に何かあったのかな? 抱き枕も拒否されるようになっちゃったし(ノД`)シクシク 外泊届け出す回数も増えた あやしい…今度、とっちめて吐かせてみようと思う
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r―-、 __ ... -―, { .゚ . . __`´__. . . . . . 。. | !゚/ `´ `ヽ. . 。/ // イ__,ハノ,__」 i }. ノ、 めんどくさい! \!ル゚ ̄_ ゚̄ト! |_/ |ハ、|__〉 |」ノ/ 再投票するのも. (( ___>rュ<リノ__ めんどくさい! `ー―‐l . Y . . f――‐' | . .0 . . ト、_\ )). ぶわー | . . . o.o| `)ノ | . . o.○| ´ `lノ^"lノ´ 基本情報 陣営 村 役職系統 巫女系 実装バージョン Ver. 1.5.0 β9~ 特殊な判定 本人表記 巫女 特徴 本人視点はただの巫女、しかしその実態は 再投票が発生してしまうと自分から封印されに行ってしまう はた迷惑な劣化職。(巫女の能力は失われていないが。) とはいえ人馬を見れば分かるように 「自殺できる」というのはこれ以上無い真証明手段である。 だがこちらは自覚ができないため 狙って再投票にしてもらうのはほぼ不可能。 どう騙るか 騙り易い巫女と違いこちらはほぼ不可能。 そもそも自覚できないため騙るも何も無い。 なお、真巫女と対立したときに再投票が発生、 そして再投票で真巫女がショック死してしまった場合 間違いなく騙ったほうは吊られてしまうため要注意。 参考ログ タイトル モード 備考 ログ
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神無月の巫女 ハアハアスレ投下もの 「夜景の中で…」 「神戸に…でございますか?」夕食後、千歌音の突然の申し出に乙羽は戸惑っていた 「急で悪いのだけれど、あさって出かけたいからホテルと切符の手配お願いできるかしら」 「は、はい…かしこまりました」すぐに手配をします、と告げて部屋を辞した乙羽の心は揺れていた お嬢様は変わられた…乙羽は思う この春に高校に進まれて、「特別に親しい」友人が出来たらしい 私はまだその相手の顔も知らなければ名も知らない… お嬢様に仕えて十余年あまり、これまで私は親しい友人の存在は確認したことがない お嬢様はより高みを目指す特別なお方、それ故、一般人の友人の存在など必要もなかったし、邪魔だとも考えていたから… そしてそれはお嬢様も同じ考えだと思っていた そう信じて疑わなかった私にとってお嬢様のこの「小さな革命」は大きな衝撃を与えた… しかし…命令だ メイドの立場である私がお嬢様の申し出に異を唱えることなんて出来はしない 乙羽は姫宮家のご令嬢が宿泊するに相応しいホテルに連絡を入れた 「車で送ってもらうのではなく、電車を乗り継いで行きたい」という千歌音の要望に応えて切符の手配も済ませる 友人と遠出して宿泊をする…それは初めての経験…千歌音をそんな行動に駆り立てたものは何なのか? 乙羽は深い溜息をついていた 千歌音は少し先走った事を後悔していた 数日前、何気なく姫子と交わした会話の中で彼女が神戸で開催されている写真展に行きたがっている事を知った それはたぶん姫子の独り言の類 「でも、神戸は遠いし、お小遣いも足りないから無理だな」と姫子は早々に諦めていた 独り言を言って自己解決し、納得してしまう姫子のよくやる事 …しかし、千歌音は聞き逃さなかった この子を神戸に連れ行ってあげたい、好きな写真展を見せてあげたい、喜ぶ笑顔が見たい 千歌音はすぐさま写真展の事について調べた そして展示期間がもうじき終わってしまう事をする 千歌音はすぐに心を決めた…行こう、二人で…と しかし、まだ姫子の了承を得たわけではない でも…この興奮にも似た逸る気持ちを抑える事は出来なかったのだった 「えっ…ダメだよ そんなに千歌音ちゃんに負担かけるわけにはいかないよ」 予想通りの答え 顔を赤くし、手を振り戸惑いの表情を見せる お金の心配はしなくていいから一緒に写真展に行こう、と誘った後の姫子のリアクション 可愛い…思わず抱きしめたくなる 「私と…一緒じゃ嫌?」少し意地悪な質問…姫子が嫌だと言うはずはないと千歌音にはわかっていたから 「嫌なんかじゃないよ…誘ってもらって凄く嬉しい でもね…」 「じゃあ行きましょう」千歌音は姫子の手をとった 「私が姫子と一緒に行きたいの 二人で…夏休みの楽しい思い出を作りましょう」 吸い込まれそうなその千歌音の瞳の輝きに姫子は思わず頷いてしまっていた 姫宮邸の広い食堂 大きなテーブルにひとり座して夕食を摂る千歌音は上機嫌そのものだった いつも使用人たちに囲まれてひとり味気ない食事を摂る千歌音だったが、今晩は違う 明日のことを考えるだけで胸が高鳴り、顔がほころんでくる 食後のお茶さえ、こんなにおいしく感じたことはあっただろうか?と千歌音は思っていた 乙羽はそんな千歌音の様子を複雑な思いで見つめていた (お嬢様…そんなに明日が楽しみなのですか 服まで仕立て直してそのお友達に渡してあげるなんて…それ程まで…) 乙羽は千歌音が見立てた一着のワンピースのサイズを直して欲しいと頼まれた お友達にホテルでディナーを摂る時に着てもらうのだという 千歌音には少し子供っぽいその可愛らしいワンピースを着るのは一体どんな子なのか? 乙羽は見えない相手に嫉妬を感じぜずにはいられなかった 「乙羽さん、服のサイズ直しは終わったかしら?」 「はい…既にお荷物の中に」 「そう、ありがとう」千歌音は穏やかな微笑みを見せた 「お天気…晴れるとよろしいですね」夕方から振り出していた雨… 「そうね、でもたぶん大丈夫よ」千歌音はフフと笑う 「てるてる坊主作っておいたから」 「…はあ…」お嬢様ったらいつの間にそんな事まで…乙羽は思わずエプロンの裾をギュッと掴んだ 「まるで遠足の前の小学生みたいでしょ 自分でもおかしいとは思ったのよ」 いいえ…お嬢様 乙羽は心の中で呟く お嬢様は遠足の前でもそんな事はしませんでしたよ…いつも冷静沈着なお嬢様がこんなに心を浮かされてる姿を見るのは初めてですよ…と 「お嬢様に…そんな事までさせるなんて…」乙羽の小さな呟き 「何?」 「そのお友達は…きっと素晴らしい方なんでしょうね」きっと自分はひきつった笑顔をしているだろうと、乙羽は思った 「ええ…」少し頬を染めて千歌音は言った「太陽のような子…きっと私を照らしてくれるお日様…そんな子よ」 翌日、願いが通じたかのような晴天 千歌音はまだ朝早い天火駅で姫子を待つ 実のところ、昨夜は興奮の為なかなか寝付けないでいた 浅い眠りを何回か繰り返し、そして結局夜明け前には目覚めてしまっていた 眠くないといったら嘘、でもそれでもこれからの事を考えると目は冴えるばかりだ 朝の弱い姫子のこと…始発電車に間に合うかどうか 千歌音がふと不安を過ぎらせた時、朝靄の中から走り寄ってくる影に気づいた 「千歌音ちゃーん」息を切らせて姫子が姿を現した 姫子、そんなに走ると転ぶわよ、と声を掛けようとしたその瞬間、やはり姫子は転んだ 「イタタタ…」「大丈夫?」駆け寄った千歌音に手をとられて立ち上がる姫子は恥ずかしそうに笑った 「千歌音ちゃんは時間に正確だから待たせてはいけないと思って走ってきたの ほら私って何やるのも遅いから」 「大丈夫よ 時間にはまだ余裕があるわ」 千歌音は姫子と手を繋ぎホームに向った 確かにこの辺境の地から神戸に出るまでには時間がかかる しかし何も無理をして始発の電車に乗る必要もなかった けれど…少しでも長く姫子と一緒に居る時間が欲しかったから… 「始発電車に乗るなんて初めて…神戸に行くのも初めて…」姫子は子供のようにはしゃいでいた 「友達と外泊するのも修学旅行以来だし…初めてがいっぱいだよ 千歌音ちゃんのおかげで初めてがいっぱい…ありがとう、千歌音ちゃん」 天使のような笑顔だと千歌音は思った 少し心配してしまう丈の白いミニスカートにタンクトップの上に羽織った白いパーカー…姫子らしい可愛らしい服装 そう、その姿は本当に千歌音には天使に見えた やがて電車がホームに滑り込んできてふたりは乗車した ふたり以外はだれもいない車内 ボックス席に向かい合わせで座る 「はい、どうぞ」千歌音は乙羽が用意してくれたサンドウィッチを渡した ありがとう、といって嬉しそうに頬張る姫子のその姿を見て千歌音はただ幸せな気持ちになれた ゆっくりと流れていく二人だけの時間 何気なく交わす言葉のひとつひとつが楽しい ぽつりぽつりと乗客も増えてきた頃、お腹もいっぱいになった姫子は軽く欠伸をした 「眠い?」千歌音のその言葉に姫子は少し顔を赤らめて言った 「実はね、昨夜は全然眠れなくて…今日のこと考えたらドキドキしちゃって色々と考えてたら結局朝になっちゃったから」 そう…私と同じだったのね 千歌音は嬉しかった 姫子が自分と同じ気持ちだった事が… 千歌音は姫子の隣りに移る 「乗換えの駅までまだまだだから…寝てていいわよ 肩貸してあげる」 千歌音の手が背中に廻り姫子を優しく引き寄せる 「…あ、ありがとう…」姫子は恥ずかしそうに言うと目を閉じた 千歌音の温もりと電車の揺れが姫子を眠りの世界へと誘う やがて聞こえてきた小さな寝息…千歌音はそれを確認すると紅茶色の髪にそっと口付けをした いくつかの電車を乗り継ぎ、神戸に着いたのはお昼前 「うわぁ…人が多いな」駅に降り立った姫子の感想 姫子は千歌音のようにずっと天火明村で育ったわけではない 高校に入るまでは地方都市ながらそれなりの都会で生活をしていたわけだから、こんな街並みに驚くのも変な話しだが… しかしまだ数ヶ月とはいえ、のんびりと時間が流れているあの村で生活を送っていたら何だか自分が浦島太郎になったような気がしてきておかしかった 千歌音は普段は田舎暮らしをしているとはいえ、そこは大富豪のお嬢様…色々と各地に出かけてもいるのであろう 何の迷いもなく都会の街を颯爽と歩くその姿を姫子は頼もしく思う 姫子はまるで散歩に連れ出された子犬のようにヒョコヒョコと千歌音について歩いた 人の波に幾度となくぶつかった姫子は思わず千歌音に手を繋いで欲しくて手を伸ばした …が慌てて引っ込める ここは天火明村のような田舎じゃない 小学生でもないのに女同士手を繋いで歩いていたらきっと変に思われるだろう 千歌音に恥をかかせるわけにはいかない 「姫子?大丈夫?」千歌音は振り向いて姫子を気遣ってくれる 「タクシー乗り場までもう少しよ でもその前にお昼を食べましょう」千歌音はそう言うとさりげなく姫子の手を握って歩き出した 嬉しかった…考えてみたら天火明村に居たって学校の皆がいたらこんなことは出来ない 今だけのほんの少しの時間…姫子は甘えることにした 昼食を摂った後、タクシーに乗り写真展の会場に向った ここも相変わらずの人の多さ…雑誌で紹介されていただけあって人気があるんだなと姫子は思った 「行くわよ 姫子」千歌音の長い指が姫子の手に絡んでくる 「あ、あの…」ふいに口から出た言葉 「千歌音ちゃんは…嫌じゃないの?」「何が?」 「こんな風に手を繋いで歩いてると…その…」 「嫌なはずないでしょ…それにね姫子が迷子になったら困るもの それとも姫子は嫌なの?」 「ううん、そんな事ない…嬉しい…」嫌なはずなんてあるわけない 姫子はギュッと千歌音の手を握った 「凄いなー…私もこんな風に撮れるようになりたいなぁ」 「あ、これも凄いよねー」「わぁー、綺麗な写真」姫子はとても上機嫌ではしゃいでいる 千歌音はそんな様子を見て、連れてきて本当に良かったと思った 姫子のこんな笑顔を側で見られるだけで幸せになれる…本当に欲しかったものはこの笑顔なのだから 時間の経過も忘れて、結局、閉展時間ギリギリまでそこにいた ポートタワーの近く、神戸市街の瞬くネオンを見下ろせる最上階の高級ホテルの一室 姫子はそこから見える素晴らしい夜景にただ見とれていた 「本当に…素敵…」 高速道路の流れがまるで光の帯のように見える 高校生の身分でこんなホテルに泊まるとは思っていなかった姫子はただ驚くばかりだった この部屋はいわゆるスイートルームと呼ばれる部屋 大富豪のお嬢様である千歌音にとっては、たいした事ではないのだろうけれど姫子にとっては軽い眩暈さえ感じるものだ 「姫子…」ふいに呼ばれて振り向くと千歌音は一着の服を持っていた 「もうじきディナーが運ばれてくるからこれに着替えて…」渡されたそれはいかにも高級品であろう、薄いピンクのワンピース 「私のお古だけれどサイズは直してあるから…あなたにプレゼントするわ」 「でも…」とてもお古なんて思えない…もしかして一度も袖を通してはいないのでは?と姫子は思った 「さぁ、早く着替えてらっしゃい」姫子は隣りの寝室へと押しやられた 「いいのかな…?」千歌音のありとあらゆる心遣い…無下に断ったらきっと千歌音を傷つけるだろう…姫子は着替えを始めた 「あの…」着替えを終えて部屋を出ると、いつの間にか千歌音も着替えを済ませていた 「良く似合ってるわ サイズもピッタリに仕上がってるわね」 良く似合っているのは千歌音の方だ、と姫子は思った 対照的な深いブルーのシンプルなデザインのイブニングドレス仕様… 出された肩が何とも色っぽい きっと千歌音が着るものを選んでいるのではなく、着られるものが千歌音を選んでいるのだと姫子は思った ルームサービスによる豪華なディナーが始まる 姫子にとっては勿論こんな経験は初めて…今日は寮の食事ではない 目の前には見た目も美しいフランス料理のコースが並ぶ 注がれたワインにさえも戸惑いを感じていた 「乾杯しましょう…」千歌音に促されてワイングラスを持つ 「今日の…良き日に…私達ふたりの素敵な夜に…乾杯」 千歌音の心をくすぐるような甘い言葉、窓の外に広がる美しい夜景、豪華で美味な食事、そして初めて口にするワイン…何もかもが姫子を酔わせていくようだった まるで魔法をかけられたような素敵な時間が過ぎてゆく シンデレラにかけられた魔法なら12時を過ぎたら消えてしまう 私にかけられた魔法はいつ消えてしまうのだろうか、と姫子は風呂上りで火照った体を涼めながら思っていた 千歌音から「広いお風呂だから一緒に入ろう」と誘われたが、どうにも恥ずかしくて辞退し先に入浴を済ませた 女同士なのだから別に意識する事も無かったのであろうけれど… 姫子は今日あった楽しい時間を思い出しながら、相変わらず絶景な夜景を眺めていた 「本当に…楽しかったな…千歌音ちゃんにちゃんと御礼言わなくちゃ…」 そこへ入浴を済ませた千歌音がやってくる 「そんなに…夜景が気に入った?」風呂上りの千歌音は艶々しく更に色っぽさを醸し出している 「う、うん…凄く素敵だよ…」それは夜景に対してかそれとも千歌音の妖艶に対して言ったのか…良くわからない 「あのね…ありがとう」姫子は言う 「こんなに素敵な時間を与えてくれて…今日一日、凄く楽しかった…ありがとう」 「…いいのよ 私だってとても楽しかったのだから…姫子がね楽しそうな笑顔を見せてくれたからそれでいいの」 優しい千歌音の微笑み…出逢ってから何度も姫子の前で見せてくれる表情 いつでも困っている時に手を差し伸べてくれる、誰よりも気遣ってくれる優しい人…もうずっと頼りっぱなしだ 「あの…千歌音ちゃん…」姫子は思い切って口に出してみる 「私…千歌音ちゃんにはしてもらってばかりでしょう?だから…御礼じゃないけれど…私に何か出来ることある? 千歌音ちゃん、してもらいたい事とかあったら言って…私じゃ出来る事なんか限られてることわかっているけれど… それでも千歌音ちゃんが望むことがあるならしてあげたいの…」 千歌音は驚いたように暫く姫子の顔を見つめていたが、やがてゆっくりと近づいてきた 「…何でもいいの?」 「う、うん…私に出来る範囲のことでなら…お金のかかることとかは無理だけれど、何か欲しいものとかあるのなら言って…」 千歌音は姫子の顎に手をかけた 「えっ…」 「欲しいものは…あるの…」 「欲しいものはあるの…いつだって手の届く場所に」 「でもね…」千歌音の表情が寂しげに揺れた 「きっと触れてはいけないのよ…触れたらきっと…私の前から消えてしまうだろうから」 「千歌音ちゃん…」 「失いたくはないから…絶対にそんなのは嫌…でもね触れたくて、触れたくて… 心が壊れそうになる時もある…どっちも私の本当…」 「ごめんね…姫子…」千歌音の顔が近づいてくる 潤んだその瞳を見たら姫子は次に起こるであろう行為を拒否する事なんて出来なかった (千歌音ちゃんは苦しんでいる…きっとそれは私のせい…)姫子は目を閉じてその行為を受け入れた 生暖かく柔らかな感触が唇に重なった 体が少しだけ震える しかしそれは重なってすぐに離れた 「嫌じゃ…ない?」 千歌音の問いに姫子は首を振る (嫌じゃない…何故だろう、前にもこんな光景があったような気がする) これはデジャブーだろうか?それとも… 姫子の考えを遮るように二度目の口付けはふいに 「んっ…」 一度目とは比べ物にならない程の激しく情熱的なキス 唇を割って入ってきた舌はまるで口内を犯すがごとく動き回る (…この感触は…)姫子の手はいつしか千歌音の背中に廻されていた -----レースのカーテンの隙間からは光が瞬く神戸の夜景が見えていた 「あ、あっ…千歌音ちゃん…」切なく唇から漏れる声…私は今、ベットの上で千歌音ちゃんに抱かれている 何故こうなったのかは…上手く説明できそうにもない ただ…千歌音ちゃんが私を求めたから?千歌音ちゃんの涙を見たから?いいえ、多分違う 私達ふたりの間には「運命の絆」があるとわかったから… 唇を重ねる度に肌を触れ合わす度にそれは確信へと変わっていく 今はそれがどんな運命だったのか、これからまたどんな運命に導かれていくのかは知る由もない ただ私は知っている 私の肌の上を這う千歌音ちゃんのこの手が、遠い昔から私を護ってくれていたと、 そしてこれからも私を護ってくれるということを… 私はその白く美しい手を取り口付けをする 感謝と愛情を込めて… 私達の運命はまた廻り出す---------- おわり
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 二人の夏旅行 ◆M2vRopp80w氏 真夏の日差しが降り注ぐ道を一台のリムジンが走る。 姫子が車の窓から外を見るとそこには、どこまでも続く澄みきった青く広い空と海が広がっていた。 「うわぁ…見て千歌音ちゃん!海だよ。」 久しぶりに見た海に感動する姫子。 (やっぱり誘ってよかった…) 嬉しそうな姫子の顔を見て千歌音は微笑む。 あのデートのお返しに、千歌音は姫子を姫宮家の別荘へ誘った。 別荘は天火明村から大分離れた県外にある。 長い車の旅も終えて、リムジンから降りると目の前にはまるでちょっとしたホテルのような建物がそびえ立っていた。 「さぁ、ついたわ。ここが姫宮家の別荘よ。」 (こ、これ別荘なの…まるでホテルみたい…) 姫宮邸ほどではないが、姫子が想像していた別荘をはるかに上回っていた。 姫子が呆然として別荘を見上げていると中から数人のメイド達が出迎えてくれた。 実は本当は乙羽も来る予定だったのだが、千歌音が離れた姫宮邸からメイド長である自分まで離れる訳には行かなかったらしい。 姫子も一緒に別荘へ行くと言った時は、殺気らしきものを感じたが…。 二人は中に入り広間のソファーに座り、一息つく事に。 冷たいアイスティーを飲みながら、今後の予定を話す。 「しばらく休んだら何しましょうか?ここはすぐ近くに海があるし、山までほんの少し歩けば滝とか川もあるのよ。」 「…う~ん。じゃあ、せっかくだし海へ行きたいな。」 「ふふっ…姫子、ずっと車の中で海を見ていたものね。」 「だって久しぶりなんだもん。」 クスクスと笑う千歌音に姫子は恥ずかしそうにそう言った。 「そうね、私も久しぶりにここの海が見たいし…海水浴でもしようかしら。」 「千歌音ちゃーん。早く早く!」 ピンクの水着の上に白いパーカーを着た姫子が、浜辺で千歌音を手招きする。 目の前に広がる真っ白な砂浜に青い海が姫子を興奮させた。 まるで子供の頃に戻ったように。 遠くから水色の水着をまとった千歌音が姫子の下に走って来る。 「姫子ったら早いんだもの。」 ちょっと置いていかれた千歌音は苦笑いしながらやって来た。 「あ…ご、ごめんね。つい…」 「ふふっ、いいのよ。姫子が喜んでくれたなら。」 「………」 「姫子?」 千歌音が姫子を見上げてると、なんだかぼうっとした顔で姫子が千歌音を見つめていた。 「どうしたの姫子?」 「えっ、あ…ううん、何でもないの!」 姫子は顔を赤らめ両手を振った。 (千歌音ちゃん、水着姿も素敵なんだもん…見とれちゃうよ) プライベートビーチで、2人きりの時間を満喫する姫子と千歌音。 海で泳いだり、パラソルの下で寝そべって日光浴も楽しんだ。 「千歌音ちゃん」 「?」 姫子の声に振り向くと、カシャッと姫子がカメラで千歌音を撮った。 「きっと綺麗に撮れてるよ」 「もう、さっきから姫子ったら私ばかり撮ってない?」 ぷくっと頬を膨らませ、反論する千歌音。 姫子はカメラを置いて千歌音の下へ駆けてくる。 「だって水着姿の千歌音ちゃんなんてめったに見れないもん。この際に撮って置かないとね。」 「も、もう…っ!」 恥ずかしげもなくそんな事を言ってくる姫子に、照れた千歌音は海水をピシャッとかけた。 「きゃっ…やったね、千歌音ちゃん!」 姫子も千歌音に負けずにかける。 二人ではしゃぎ、海水をかけ合っていると突然波が千歌音の足をさらった。 「きゃっ…!」 「千歌音ちゃん…危ない!」 バランスを崩した千歌音を姫子がとっさに抱きとめた。 「大丈夫?千歌音ちゃん!」 「え、ええ…ありがとう姫子。」 千歌音が姫子から離れようとすると、ギュッと姫子の腕に引き寄せられた。 「姫子…?」 顔を上げると姫子の顔が間近にあった。 「千歌音ちゃん…」 「ひ…め…」 唇が近づいてくる。 触れ合おうとしたその時…。 「お嬢様ー!」 「 …っ!! 」 遠くから千歌音を呼ぶメイドの声が聞こえた瞬間、二人は慌てて離れた。 「な、何?どうかしたの?」 少し戸惑ったように千歌音はメイドに尋ねる。 「お電話が入っております。メイド長の乙羽様からです。」 「乙羽さんから?ちょっと待っていて。すぐに行くから。」 「かしこまりました。」 一礼したメイドは別荘の中へ戻って行く。 「ごめんなさい、姫子。ちょっとだけ外すわね」 千歌音は申し訳なさそうに姫子に謝った。 「ううん、気にしないで…」 千歌音が別荘へ入って行ったのを確認すると、ひとり残された姫子は気まずくてもう少しで千歌音の唇に触れるはずだった自分の唇を指で押さえた。 (私ってば…) あの後、戻ってきた千歌音としばらく海水浴を楽しんだ姫子は夕食の時間までにシャワーを浴びる事にした。 数十人は入れるであろう広い浴室の中に入り、シャワーの栓をひねる。 突然浴室のドアの向こうから声がした。 「姫子?」 「…千歌音ちゃん?」 「私も入っていい?」 「えっ、ええと…うん。」 ここは千歌音の別荘なのに断りなんて聞く必要はないのだが。 そんな事を考えていたら、浴室のドアが開く音がした。 姫子の横にやって来た千歌音は隣のシャワーの前に立つ。 ちらっと千歌音を見ると、白い肌が姫子の視界に入った。 (やっぱり…綺麗だなぁ、千歌音ちゃんは…) 長く艶やかな黒髪、真っ白な肌、引き締まった腰、すらりと伸びた手足。 その千歌音の身体を熱いお湯が濡らしていく。 姫子がその様子をじっと見つめていると、千歌音が不意にこちらを見た。 「なぁに?」 「えっ…あ、えっと…海水浴楽しかったね。」 姫子は慌ててごまかすように話題を出す。 「ええ、明日はどこか行きたい所はある?」 「そ、そうだなぁ…そうだ、ここら辺にお土産なんて買うお店とかある?」「お土産?そうね、車に乗って町までいけばお店があるわ。行ってみる?」 千歌音が近づいて姫子の顔を覗く。 「…っ!う、うんっ。マコちゃんにもお土産買って行こうかなって思ってたから…」 姫子は千歌音の身体から顔を逸らした。 「…そう?確か町に、カフェもあったし…明日はそこでゆっくりして、明後日に山にでも行ってみましょうか?」 姫子の様子に小首を傾げながら千歌音は予定を立てていく。 姫子は適当に相槌を打ちながら頷いた。 「じゃあ先に上がるわね。」 「う、うん…」 千歌音は一通りシャワーを浴びると先に浴室を出て行った。 「はぁ…何やってるんだろう…私…」 姫子は溜め息をついた。 頭から離れないさっきの千歌音の裸体を、消そうとするようにシャワーのお湯をさらに熱くした。 夕食中、姫子は急にさっきの事を思い出して千歌音に尋ねた。 「そういえば、乙羽さんから何の用だったの?」 「ああ、無事にこちらに着いたか確認の電話よ。あと姫子にもよろしくって…」 「そっか…千歌音ちゃん?どうかしたの?」 何故か急に考え込む千歌音。 「そう言えば、乙羽さん…くれぐれも気をつけるように言ってたけど…何の事かしら?」 姫子は何故か悪寒を感じた気がした。 翌日、二人で車に乗り町へ出ると様々なお土産屋がならんでいた。 お菓子やその町の特産品、色んなお土産に目移りしながらどれにしようかと千歌音と相談し購入した。 観光客も多い為か、町には結構オシャレなカフェがあった。 その中の一軒のオープンカフェに入る。 「…じゃあお願いします。」 注文を済ませ、二人で過ごす貴重な時間。 天火明村では二人でこんなにゆっくり過ごす時間はあまりない。 姫子は大学やバイトに、千歌音は中学に通っていて、ましてや姫宮の一人娘なのだ。 暇なはずはない、お互い何かと忙しい。 「久しぶりだね。二人きりで過ごすの。」 「そうね、私も夏休みでも忙しいし…姫子も大学やバイトがあるものね。」 「千歌音ちゃんありがとう。こんな素敵な別荘へ誘ってくれて…こんな素敵な時間を作ってくれて…」 姫子は千歌音に感謝の気持ちを伝える。 千歌音とこうして過ごす時間は、姫子にとって最も幸せな時だ。 「…そんなこと…」 千歌音は姫子の手を取り、両手で包み込んだ。 「私が姫子と一緒に来たかったの。姫子と一緒だから。あの時、姫子が言ってくれたでしょう?私と一緒だから楽しいって…私も姫子と同じだから…姫子と一緒だから楽しいの。」 綺麗な瞳で見つめ返す千歌音に、姫子はドキドキしながら千歌音の手を空いた手で包む。 「千歌音ちゃん…」 気持ちいい風が吹く。 こんな穏やかで大切な人と幸せな時を過ごせて、姫子は世界一幸せ者だと思った。 その日の朝は天気が良かった。 山の中には滝と小川があるらしく、二人で見に行く約束だった。 帽子とお弁当なども忘れずに持って行く。 しばらく二人で手を繋いで森の中を歩いて行くと、どこからか水の流れる音が聞こえる。 「もうすぐ着くわ、ほら。」 千歌音が指を指した場所を見ると小川を見つけた。 その小川は澄みきっていて、中の魚や岩まで見えるほどだ。 「凄く綺麗な川だね。」 「そうでしょ。この先の上流に行くと滝があるの。さぁ、行きましょう。」 「うん。」 上流へ登って行くと辺りの空気が冷たく感じた。 滝の流れる大きな音が聞こえる。 「ほら、見えて来たわ。」 遠くの方にさほど大きな滝ではないが、確かに立派な滝があった。 「うわぁ…。」 近くまでいくと、寒いくらいに涼しく感じる。 「気持ちいいね、水も綺麗だし。こんな場所があるなんて。」 姫子はうーんと気持ち良さそうに背伸びをした。 「こうするともっと気持ちいいわよ。」 千歌音は靴を脱ぎ、岩場に座って川の水の中に足を入れる。 姫子も千歌音の隣に座って同じように足を入れた。 川の水は冷たくて、歩き疲れた足を癒やしてくれる。 二人は持ってきたお弁当を食べてのんびりと自然の中で過ごす。 いつもの慌ただしい日常を忘れ心も体も癒されていくのを感じた。 昼を過ぎたあたりだろうか。 空を見上げるとさっきよりも雲が増えている。 「もしかしたら雨が降るかも…残念だけれど、そろそろ帰りましょうか?」 「そうだね、じゃあ帰ろうか千歌音ちゃん。」 荷物を片付けて、二人で山を降りて行くと空はどんどん暗くなり、ポツリポツリと雨が振り出した。 二人は急ぐが、雨足はさらに強くなっていく。 服はもう既に濡れてしまっていた。 本当なら雨が収まるまで雨宿り出来ればいいのだが。 こんな山の中では…。 そんな事を考えながら急ぐ姫子の腕を、突然千歌音が掴んだ。 「どうしたの、千歌音ちゃん!?」 「まって姫子、こっち。」 千歌音は姫子の手を取り、帰りの道とは違う草むらの中を歩いて行く。 (どこに行くんだろう?) 「あ…」 さらに奥へ進むと、急に道が開けた。 「あそこでしばらく雨宿りしましょう。」 千歌音が指を指した先には、小さな小屋があった。 中に入ると農業に使うような道具が色々と並んでいる。 思った以上に中は広く、きちんと片付けられていて雨宿りするにはちょうど良かった。 「ここって…?」 「ここの近くに姫宮家の菜園があるの、そこの道具小屋よ。昔ここに来た事を思い出したの。まだあって良かったわ。」 「そうなんだ。」 「あ…姫子、髪が濡れてる。」 姫子の服と髪は雨で濡れてしまっていた。 千歌音が白いハンカチを取り出し、姫子の髪や頬を拭いてくれる。 「私はいいから、千歌音ちゃんだって濡れてるよ。風邪でもひいたら…」 そう言いかけて、姫子は言葉を詰まらせた。 背伸びをして姫子の髪を拭いてくれる千歌音の胸元に目を奪われた。 千歌音の服が濡れて下着が透けている。 姫子は息を飲み込んだ。 千歌音の髪は濡れ、艶やかな桜色の唇が色気を醸し出している。 「姫子?」 千歌音が姫子の視線を辿ると、服が透けている事に気づいた。 「…っ。」 千歌音は耳まで真っ赤にして、胸元を両腕で覆う。 「あ、えっと…その…ちゃんと拭いた方がいいよ。風邪…ひくといけないし…」 ハッと我に返った姫子は、慌てて詰まらせていた言葉を出す。 「え…ええ…」 気まずい雰囲気が流れる。 「あの…私、むこう向いてるから。」 姫子は千歌音から背を向けて壁の方に向かい合った。 しばらくすると衣擦れの音が聞こえた。 いま後ろで千歌音が服を脱いでいる。 (千歌音ちゃんの裸なんて何度も見てるじゃない…私ってば…) いまさら恥ずかしがる事なんて無いはずなのに、姫子の心臓は今までにないくらい高鳴っている。 「姫子…」 後ろから千歌音の声が聞こえる。 (もう済んだのかな…?) そう思って振り返ると千歌音が上半身の前をはだけ、瞳を潤ませて立っていた。 「千歌音ちゃん…!」 驚いた姫子は、前を向いて千歌音の裸から視界を遮った。 「……っ!」 だが、千歌音は姫子の背中に抱きついてくる。 背中に感じる千歌音の胸の感触。 (もしかして…私、誘われてる…?) 姫子の心臓がさらに高鳴った。 「ごめんなさい。でも、やっと…本当に…」 千歌音は姫子の服をギュッと掴み、小さな声を絞り出すように呟いた。 「二人きりになれた…」 千歌音が顔を背中にうずめる。 「千歌音ちゃん…っ。」 その瞬間、姫子はたまらず振り返り千歌音を抱きしめた。 「あっ…」 千歌音を引き寄せ、小さな唇を塞ぐ。 二人の唇が重なった。 はだけた胸に手を重ねると、下着越しに温かな体温が伝わってくる。 「千歌音ちゃん…千歌音ちゃん…」 唇を重ねながら千歌音の名前を呼ぶ。 「ひ…めこ…っ」 服に手をかけていくと、白い肩が露わになった。 そのまま一気に脱がしていく。 パサッと床に服が落ちた。 「ごめんね、千歌音ちゃん…もう私…っ」 姫子はそのまま千歌音を肩を抱きしめて囁く。 「我慢できない…」 「姫子…」 千歌音は姫子に応えるように首に手を回した。 激しい雨の音にかき消されないように、千歌音の声に耳を済ませながら首筋にキスをする。 「…ん…っ…」 耳を甘く噛みながら、ブラジャーのホックに手をかけた。 ブラジャーを外すと白くて豊かな胸が露わになる。 できるだけ優しく触れて、乳房を揉んでいると千歌音の呼吸が乱れていくのが分かった。 「綺麗な胸…白くて、大きくて、柔らかくて…」 「そんなこと…」 姫子が胸を褒め称えながら千歌音を見つめると、頬は赤らんで黒い瞳はキラキラと潤んでいた。 「本当だよ。千歌音ちゃんは全部綺麗だもん…」 指で胸の先端を撫でると、千歌音が切なそうに瞳を揺らした。 顔や肩にキスをしながら下へとさがっていく。 胸にたどり着いてその固くなった実を口へ含んだ。 「……っ…ぁ」 千歌音の腕が姫子の頭を引き寄せて抱きしめる。舌先でつついていると固さが増していくのが分かった。 立ったままの千歌音の脚が震えていた。 「千歌音ちゃん、肩に掴まって。」 姫子の肩に手を掴まらせて、身体の重心を安定させる。 唇で胸を愛撫しながら、指先はゆっくりとさらに下に降りていく。 「ぁ…っ!姫子…」 その指先を千歌音のスカートを捲って中にスッと忍びこませた。 脚を撫で上げながら、下着の上からその場所に優しく触れる。 「汚れちゃうから脱ごうね。」 そう言って、姫子は下着に手をかけると千歌音が息を飲む声が聞こえた。 指に下着をかけて下におろしていく。 「脚上げて。」 脚を上げさせて下着を脱がさせると、今度はスカートも脱がさせる。 これで千歌音は、何ひとつ身にまとっているものは無くなった。 その美しい裸体を姫子の前に晒している。 「綺麗だよ、千歌音ちゃん…」 その美しい裸体を姫子がうっとりと見つめている。 「…あんまり…見ないで…」 姫子は恥ずかしそうに俯いて、顔を真っ赤にしている千歌音の腕を掴んで引き寄せた。 「きゃっ‥!」 姫子のもとに倒れこんできた千歌音を床に押し倒す。 「あっ…やだっ…!」 いきなり膝に手をかけて脚を開かせた。 千歌音が驚きと非難の声を上げる。 目の前の姫子に全てをさらけ出した千歌音。 姫子の視線が一点を見つめている。 「やっ…」 恥ずかしさのあまり瞳をギュッと瞑った。 「あっ…!」 姫子がそこに顔をうずめた。 「だめっ…やめてっ!汚いから…っ」 千歌音が姫子の顔を引き離そうとするが、力の入らない手では抵抗すらできない。 姫子の手に手首を掴まれて、動きを封じられる。 「大丈夫だよ、千歌音ちゃん…」 「でもっ、汗とかかいているし…それに…」 「誘ったのは千歌音ちゃんだよ、いまさら止められないよっ…」 姫子はもう感情を抑えきれないとでも言うように、再び顔をうずめた。 「あ…姫子っ…!」 千歌音の視界が涙で歪んだ。 「んっ…はぁ…っ」 姫子の舌が触れてくる。 その場所を時には優しく、執拗に、我を忘れて。 「千歌音ちゃん…」 姫子は許しを請うように、こちらを見ながら舌で愛撫し続けている。 「全部もらってもいい?…千歌音ちゃんの…」 指が入り口に少し侵入した。 「あ…」 何を言ってるか分かっている。 まだ入れたことのないその奥は、姫子にすらまだ上げてはいない。 初めての経験に不安を感じたが、相手は大好きな人だ。 拒否する理由はどこにもなかった。 (姫子になら…私…) 千歌音がこくりと頷いたのを確認して、姫子の指が奥へ入る。 「っあ…‥」 千歌音はまだ幼い。 中も狭くて姫子の指はすぐにそこへ到達した。 それはその奥を守るように膜を作っている。 姫子は身を強張らせる千歌音を抱き寄せて、安心させるように額にキスした。 「少し痛いかもしれないけど‥ごめんね」 そう言った瞬間、姫子の指がさらに奥へと進む。 そして…。 「……あっ」 千歌音はその瞬間、姫子の手によって守られていたものが破られた事を感じた。 「いっ…‥」 すぐに痛みを感じた。 ギュッと姫子にすがりつく。 「千歌音ちゃん、痛かった?大丈夫?」 姫子が心配して千歌音の頭を優しく撫でる。 しばらく指を動かさずにじっとしていたら、千歌音が姫子の方へ顔を向けた。 「もう、いいから…」 「でも…まだ痛むでしょ?」 「大丈夫…まだ少し痛むけど…」 「いいの?」 千歌音が頷いた。 姫子はありがとうと言って唇を重ねる。 ゆっくりと優しく指を動かすと、千歌音が首を反らした。 「あっ…姫子…っ」 いままでは入り口までだったが、初めて入った千歌音のその奥は温かくて脳まで溶けてしまいそうだった。 雨の音がまだ微かに聞こえる。 きっとまだ降っているのだろう。 姫子はそんな事を考えながら千歌音を抱き続けた。 「お嬢様方!ご無事でしたか!」 別荘へ戻ると、帰って来ない二人を心配したメイド達が慌てて出迎えに来た。 「大丈夫よ、心配かけてごめんなさいね。少し雨宿りをしていたものだから…」 先ほどの雨が嘘のように、空は晴れている。 あの後、雨が止むまで二人で抱き合ったまま、あの小屋で過ごしていた。 ただの通り雨だったのだろう。 思ったよりもすぐに止んでしまった。 二人で着替える為に部屋に戻る途中、千歌音が姫子の腕に自分の腕を絡まてきた。 「ねぇ、姫子…今度はちゃんとお返しさせてね。」 「お返し?お返しならもうして貰ったよ。」 「そうじゃなくて…いつも姫子にばかりにしてもらってるから…その…」 顔を赤くして見上げてくる千歌音の顔を見て、姫子は自分の顔まで赤くなるのが分かった。 (そっか…だから千歌音ちゃん、私を誘ってたんだ…) 千歌音が言うお返しとはきっとそうゆう事なのだろう。 姫子は答える代わりに、千歌音の手をキュッと握った。 「千歌音ちゃん、花火やらない?」 別荘で過ごす最後の夜、姫子はこっそりと買って持って来た花火を取り出して千歌音を誘った。 浜辺で出て、波の音しか聞こえない静かな海の前で夏旅行最後の夜を過ごす。 花火もあっという間にほとんど終わり、最後の線香花火に火をつけた。 「楽しかったね。本当に来てよかったな。」 「来年も二人で来ましょうか?ここに…」 「本当?いいの?」 「ええ、もちろん。」 綺麗な千歌音の横顔を見て姫子は耳元で囁いた。 「…お返しもまだ貰ってないしね。」 「な…!もう、姫子っ…」 二人で笑い合って、寄り添い夜空を見上げた。 (私、きっと忘れない…千歌音ちゃんがくれた素敵な思い出…) だがこの時二人は思ってもみなかった。 この先に再び二人を引き裂く運転が待ち受けていたなんて…。 何も知らない二人をただ夜空に浮かぶ月が静かに見つめていた。 終わり。
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 初めてのチョコ 初めて会ったのは雪の積もった道端。 倒れていた少女を姫子と下女数人が見つけた。 下女に囲まれながら姫子は倒れている少女へと手を差し伸べる。 それを見た下女の一人が、汚れたようなものを見るような目で倒れている少女を睨み付け姫子に囁く。 「姫様、汚れますわ」 「イズミ、バカなことを言わないの、それより…これは大変だわ、大丈夫?貴女、お名前は?」 その少女は長い黒髪に長襦袢を一枚着ており明らかに寒そうだった。 息を切らしながら声を吐き出してくる「ひ、姫宮…ち、千歌音です」 そして姫子と顔を合わした瞬間、両者は顔をピンク色に染めた。 一瞬だった、その顔にはお互いがなにかを感じ取った…まさに言う、一目惚れというものだ。 「っ!ああ…そ、そう…私、私は来栖川姫子よ、よろしくね、千歌音」 「は、はい…ひ、姫子」 微笑みかけてきた姫子に安心したのか千歌音も微笑んで名前を呼び返す。 それを見た下女数人が騒いだ、特に長い青髪でカール丈にしている少女が千歌音に掴みかからん勢いで騒ぎ出す。 「なあっ!?あ、貴女ねえ!姫様に対してなんですの!?」 「おやめなさい!」 「だ、だってこの子、私達の姫様に向かって――」 「聞こえなかったのイズミ?」 「…うう、は、はい」 「それよりこのままでは風邪を引いてしまうわ、屋敷へ連れて行きましょう」 その会話を聞きながら千歌音は意識が遠のいていった――。 気がつくと大きな広間にいた、下女数人と正面に姫子がいる。 「大丈夫?どこか痛むところはない?そうね…このままではいけないわ、なにか着たほうがいいわね」 「は~い、では私が準備します(はあ、どうしてこんな子をお屋敷に、それも姫様のお部屋に…)」 「いえ、私が用意するから結構よ」 と、姫子は立ち上がり後方へと向かうと引き出しを探り一枚の華やかな着物を取り出す。 「これを着るといいわ」 それを見たイズミが発狂する。 「なっ!?そ、それは姫様専用の!い、いけませんこのような子に姫様のものを――」 「いいのよ、いいの…私が着せたいもの、ね、千歌音もこれでいいわよね?」 お日様のような優しい微笑みでそう言われ、困惑していた千歌音も小さな口調で「……はい……」と答えた。 イズミがいきり立つ。 「あ、貴女ねえ!少しは遠慮ってものを――」 「イズミやめなさい!私の言うことが聞けないの?」 「う……わ、わかりました、お部屋へと案内します」 渋々従った表情で千歌音をキッと睨み付けると悔しそうな表情で着物を着せる。 そして、下女全員で姫子に頭を下げると千歌音を連れて部屋を出る、そして少したつと千歌音に向き直り、先ほどとは打って変わって まるで上から見下ろすような表情で軽く睨むと両腰にそれぞれ手を当てて話し始める。 「貴女、姫宮さん?少し姫様に優しくされたからっていい気になってるのではございません?」 「…ひめ…さま?」 「そうですわ、何百年とと続く来栖川の一人娘でらっしゃいますの、非の打ち所のないお方、私達のお姫様こと姫様 はっきり申し上げますけれど貴女とでは身分や立場が違いすぎますことよ、あまり勘違いなさらないよう、わかって頂けるかしら?」 「貴女なんか姫様と口を利けるような人間じゃないのよ」「まったくですわ」 イズミを含めた下女達にそれぞれ言われ千歌音が困惑する、すると――。 「はい、そこまで」 髪の短い少女が現れた、イズミ含めたお嬢様風の下女達とはまた雰囲気の違う女の子だ、この子も下女の一人だろう。 「さ、早乙女さん、な、なんですの?わ、私達は姫宮さんに――」 「いいから行け!」 怒鳴られひいっと退散していく下女達を尻目にその少女は千歌音に近づく。 「私は早乙女真琴、よろしく千歌音」 「どうして私の名前を」 「ああ、乙羽さんから聞いたから…ってあ、部屋に案内するから、こっちだよ」 身寄りのない千歌音はこうして男子禁制でもある来栖川のお屋敷で下女として働くことになった。 しかし、千歌音は病弱なためほとんどの日を一日布団で過ごした、下女としての時間はないに等しかった。 働いても少ない時間で仕事は簡単で楽な仕事だけ、決して厳しい仕事を与えられることはなかった。 そしてそういう千歌音に姫子はなにも言わない、それどころか微笑んで千歌音の身体を心配するだけだった。 通常は下女に厳しい如月乙羽も千歌音にだけはなぜか甘い、それでいて食事の量は他下女と同等で食事は部屋でとることを許され、千歌音に対しては身体を考えた食事を与えられる。 だから、その優遇を気に入らないと当然のごとく同じ下女からは嫉妬を買う。 掃除の最中に嫌味を聞こえるように言われる「いいご身分ですこと」とイズミ達からの嫌がらせは仕事時は常にあった。 そんな毎日が続いたある日、2月14日。 「ごほっ…ごほっ!」 その日の朝から咳が酷くて寝込んでいた。 「はあっ…ごほっ!」 隣では姫子が看病してくれている。 「千歌音…どこか他に苦しいところはない、大丈夫?」 「はい…ごほっ、大分よくなりました、いつもすみません姫様」 「私は私がしたいからしているのよ、それよりちゃんと寝てなさい」 「はい、すみません」 起き上がっていた千歌音が頭を下ろし再び横になる。 千歌音の頬が染まっているのは熱だけのせいではない、姫子が近くにいるからだ。 色んな仕草にドキドキしてしまう、シルクのような髪に触れる仕草。 そしてそれは姫子も同じ、千歌音といると胸がドキドキする、こんな気持ちはいままで感じたことがない。 あの日、千歌音と初めて出会ってから…こういう気持ちを抱くようになった。 「千歌音……好き」 眠っている千歌音の黒髪に軽く触れると額に唇を寄せていく…そして触れる寸前。 「お嬢様」 乙羽の声に我に返ると静かに離れた。 「なに」 「少しよろしいでしょうか」 「千歌音の傍にいまはいたいの、ごめんなさいね」 「姫宮さんには下女をつけます、そろそろ来栖川家一人娘としての自覚と立場をお持ちください」 少し強い口調でそう言われ姫子は黙る。そしてため息をつくと「わかったわ」の声と同時に部屋を出て行った。 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」 真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」 千歌音は夕方に目を覚ました、気分がよくなったのか布団から起きて着替える。 そして部屋を出た、そうだ、今日はバレンタインデー、好きな人にチョコレートを上げるイベントの日だ。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 千歌音は姫子の顔を浮かべながら調理場へと向かう。 が、皆同じ目的なのか調理場は下女でいっぱいだった、クッキーを焼く音などが聞こえる、下女は誰も千歌音と年のそう変わらない少女ばかりだ。 そして、チョコの材料、居場所などは大きくスペースをとったイズミ、ミサキ、キョウコの3人が占領していた、それに他の下女達までいるから千歌音が作る場所はない。 悲しそうな目でイズミを見つけていた千歌音…と後ろを振り返ったイズミと目が合う。 「あら姫宮さん…貴女今頃起きてきてなんですの?」「貴女いつまで寝てらしたの?」「いま何時だと思ってらっしゃいますの?」 それぞれの声に戸惑う。「わ、私はその…」 他の下女達も作業を止め千歌音を見つめていた。 「なにか私に言いたいことでもおありですの?なんだか材料を使いすぎですわ~とでも言いたい顔ですわね、チョコを作りたいと、貴女何様ですの?」 「い、いえそんな…私は」 「貴女、少しムシが良すぎると思いません?」 いつの間にか千歌音は下女達に囲まれていた。 「貴女…今日一日なにをなさってらしたの?なにかお仕事なさって?」 両腰にそれぞれ手を当てて訪ねてくるイズミに答えられない。 「なんとか言ってはいかが?」 ミサキ、キョウコも小さく「くすっ…」と微笑み見守る、事情を知っていて問い詰めているのだ。 「…ません」 「はあ?」 「なにもしてません、ね…寝てました」 その言葉に顎に手をやり呆れた表情のイズミ。 「まあ…寝てました?私達は朝早くから起きて、お仕事してるのに、貴女だけ寝てましたと…で、夕方に起きてチョコだけは作りたい… 貴女恥ずかしくありませんの?」 「……」 「それから姫宮さん、貴女、ずっと姫様に看病して頂いてたんですって?」 調理場がざわっと騒がしくなった。 「まあいくらなんでもそれはねえ、少し目をかけて頂いてるからって貴女だけ特別扱いされてるなんてね~」 イズミ達全員に責め立てられている千歌音は言い返せない、全て事実だからだ。 「貴女の食事代だってただではございませんのよ?」 そして次の非難が飛び出そうとしていた瞬間に声が聞こえた、短髪の女の子だ。 「もうやめなイズミ」 「さ、早乙女さん…な、なんですの?」 「あのさ、一人を皆で囲んで、そういうの私嫌いなんだ」 「なっ!?わ、私は事実を言ってるだけですわ」 「だから一対一で言いな、それともそこの2人がいないとなにも出来ないとか?」 とミサキ、キョウコを指差す。 「な、なんですって~!?」 「それからそこ占領しすぎ、千歌音にも少し分けてあげなよ、出ないと姫様に言う」 「な、なんで私が……はあっ」 と姫子を出されては弱いのか「す、少しだけですわ」と渋々従った様子だ。 「っ…あ、ありがとうイズミさん」 「ご、誤解なさってるようですが貴女のためにやったわけでは――」 「はい、わかってます…でも、ありがとう」 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」 千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。 「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」真琴と意気投合した千歌音は一緒にチョコレートケーキ作りに取り組んだのだった――。 「っ…み、みやさ…?っ…わ、私は…さ、さあ続きを!」千歌音が微笑むとイズミは顔を真っ赤にして慌てたように作業を続けた。「はは照れてる、照れてる、さ、千歌音作るよ。私も手伝うからさ、好きなんだろ?姫様のこと」 「…っ!は、はい…」「…っ!は、はい…」
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  神無月の巫女 エロ総合投下もの 姫千歌風呂 その1   「千歌音ちゃーん、居る?」 ここん、と軽やかなノックに続いて、姫子がドアの隙間から顔を出す。 そのタイミングではノックはまるで用を成していないのだけれど、そんな事気づいても いないのだろうはしゃぎようが可愛らしくて、千歌音は目を細めた。 「ええ、姫子。どうしたの?何か用?」 「えと…別に、用ってほどの事じゃないんだけど…ごめん、邪魔だった?」 手に持っていた本を閉じて姫子を室内に招き入れる。窓からの光が丁度手元に 差し掛かるころだったので、そろそろ読書も終わりにしようと思っていたところだった。 なにより、一人読書に勤しむなんて、いくら読書の秋とは言え勿体ない。 せっかく姫子と一緒にいられる休日なのだから。 「いいえ、そんな事は無いわ。用事なんて無くて良い、いつでも私の部屋に来てくれて 構わないのよ、姫子」 姫子をこの屋敷に迎え入れて、一緒に暮らすようになってからもう数ヶ月はたつのに、 いまだに姫子はどこか遠慮がちに邸内を歩く。その様が慣れ親しんでくれないと寂しくもあり、 また可愛らしくもあるのだ。 もう大人と言っても良い歳になっているのに、きょろきょろと少し怯えたように慣れぬ屋敷で 過ごす姫子はなんだか小動物じみていて、やはり千歌音の知る姫子なのだと少し嬉しくもなる。 「うん。…えへへ」 たとえば、こういう笑顔に。 髪は幾分短くなって、大人の面差しを見せる姫子だけれど、千歌音に向ける顔やふとした 仕草は昔のままで。 それが、どうしようもなく千歌音の心を温める。冷たく閉ざされた数年間を越えて。   「…ふふ。姫子、お茶は何が良い?」 「あ!そうだ、私ね、千歌音ちゃんをお誘いに来たの」 ぽん、と手を打ってニコニコと姫子が説明するには、先刻一人で庭を散歩していて、 裏庭にひっそり建つ紅葉の美しい東屋を見つけたのだそうだ。 「あぁ、東屋…そういえば、忘れていたけれど裏庭にもそんなものがあったわね」 裏庭はたしか秋の庭。秋を彩る木々と植物たちを多く配置してあった筈だ。他の季節に 庭のどの場所が美しいのかまでは、今は思い出せなかった。 「それでね、千歌音ちゃんがよければそこでおやつ…じゃない、お茶できないかな、って」 「そうね…」 くすり、と笑って、ふと考えをめぐらせる。 この時期なら、お茶は、お茶請けは何が良いだろう。 姫子の身体が冷えてはいけないから、ブランデーなどを持って行っても良いだろうか。 姫子も一応もう大人であることだし―― 「千歌音ちゃん?」 黙りこむ千歌音に不安になったのか、姫子が上目遣いで千歌音の袖を引いて、 千歌音の物思いは中断された。 「…駄目、かな?」 そんな姫子の様子に、自然に頬が緩んで笑いが漏れてしまう。 答えなんて、決まっている。 「もちろん、大賛成よ」 名前を知っていたり知らなかったりする裏庭の木々は、秋のまだ高い陽に照らされて とても眩しく輝いている。ひらひらと舞い落ちる黄葉した葉が、その向きを変えるごとに 光を浴びて綺麗だった。 「わ…やっぱり綺麗」 「あ、姫子。あまり急ぐと転んでしまうわよ」 簡単なティーセットを持って裏庭へ向かう。後ろからたしなめる様に、でも楽しげに 響く千歌音の声に、姫子はなんだかとても幸せな気分になった。 こんな風に、声が届く距離にお互いが居るってなんて贅沢な事なんだろう。 ただ、一緒にいるだけで。言葉を交わせるだけで、こんなにも嬉しい。 目を奪われる程の景色の美しさよりも、ずっと感動的だった。 くるりと振り向くと、微笑む千歌音の顔がすぐ近くにあって、心が浮つくような感じがする。 「大丈夫だよ、もう私、子供じゃないんだから。ね、千歌音ちゃん早く――ッ!?」 ぐらり、と身体が傾ぐ。踵が何かに引っかかったのだ。 ――転ぶ。 分かっていても後方に身体が傾いでいるから、もうどうしようもなくて。 「…っ!」 息を呑んで目を閉じる姫子の耳に、切羽詰ったような千歌音の声が聞こえた。 「姫子!」 ――ゆっくりと丁寧に包帯を巻く。 傷の上に当てられたガーゼを押さえて、包帯を巻きつける音だけが、微かに室内に 響いていた。 たおやかな細い手に青白いそれが巻きつけられる様が、痛々しくてなんだか哀しい。 「ごめん…っ、千歌音ちゃん、ごめんね、私のせいで」 「姫子に怪我が無くて良かったわ」 千歌音は、転びかけた姫子をかばって傷ついたのだった。 後ろ向きに倒れこんだはずなのに、気がついて目を開けば姫子は千歌音に抱きしめ られていた。したたかに背中を打ちつけたのだろうに、千歌音は平気な顔をするから すぐには気づかなかったけれど、千歌音は姫子を庇って怪我をしていたのだ。 「急ぐと危ないって言ったでしょう?下草に隠れて分かりにくいけれど、あのあたりは 庭石の段差が大きいの」 千歌音の声はどこまでも優しい。 「長袖を着ていて良かった。…これはね、姫子。受身を取る時に小石で傷つけただけ だから、そんなにたいした怪我ではないのよ」 「千歌音ちゃん…っ、でも手首だって捻って…」 「ね?泣かないで、姫子。姫子に泣かれる方が、ずっと痛いわ」 包帯の巻かれた右手で、柔らかく姫子の頬を撫でて、優しく覗き込んでくる。 「ごめんね、千歌音ちゃん…」 「良いのよ、姫子。…なんだか、思い出すわね」 千歌音が、ぽつりと呟いた。 「え?」 「あの時とは、反対だけれど…」 なんだか懐かしげな声音と遠くを見る目に、姫子もようやく思い当たった。 千歌音と過ごした一夜の思い出。 姫子にとっては数年、千歌音にとっては生まれてからの十数年。それだけの 年月が経った今でも心の奥に確かに眠っている最後の優しい時間のこと。 「そっか…うん、あったね、こんな事。あの時は私が怪我してて、千歌音ちゃんが 手当てしてくれたんだよね」 温かくて、そしてどうしようもなく切ない気持ちになる、ひとときの記憶。 「ええ」 「あの時の千歌音ちゃん、すごく優しかったなぁ…」 「あら、今の私は優しくない?」 くすり、と千歌音が笑う。つられて姫子も笑った。 いつも、こうして千歌音は姫子に元気をくれる。 「今度は、私が優しくする番だね」 「え?」 頬に当てられていた千歌音の手を取って軽く口付ける。包帯の上からだけれど、 千歌音は軽く身じろぎして頬を染めた。 「千歌音ちゃんの怪我が治るまで、私が千歌音ちゃんのお世話するから!」 「千歌音ちゃん。はい、あーん」 「え?ひめ…来栖川さん?」 「ほら、利き手の怪我だから、ナイフ使いにくいでしょ?」 「いえ、でもね」 「……来栖川さま?そのようなことなさらずともお嬢様のお食事は本日、きっちり一口サイズに 切り分けてお出ししております。来栖川様のお手を煩わせずとも…ええなんでしたらこの私が」 「でも、千歌音ちゃんが怪我したの私のせいですし…。はい、あーん」 「あ…」 「…えへへ。美味しい?千歌音ちゃん」 「ええ」 「冷えてきたね。…んと、上着はっと…」 「あ、姫子。そのくらい自分で…」 「だめ。千歌音ちゃんはじっとしてて?…これで良いかな。はい、腕貸して」 「……来栖川さま?お嬢様のお召しかえは私ども侍女が致します。お客様のお手を 煩わせずとも…」 「ううん、今日は私がしたいんです。乙羽さんたちは休んでいてください」 「ちょっと失礼するわね」 「あ、千歌音ちゃんどこ行くの?」 「え?あ、その……お手洗いに」 「あ、うん」 「……」 「…えと、て、手伝えること無いよね?外で待ってるから、困ったことがあったら呼んでね」 そんなこんなで、今日は一日中千歌音には姫子がべったりくっついて回って、 甲斐甲斐しく世話を焼いたのだった。 「お風呂も?」 「当然じゃない。怪我してるんだから、一番大変だもの」 「でも、そのね、姫子。姫子が私のために色々してくれるのは嬉しいのだけれど、 ちょっと恥ずかしいわ」 「え?お風呂なんていつも一緒に入ってるよ?」 「お風呂のことだけじゃなくて。その、人目があるでしょう?」 「あ…そっか。気がつかなくてごめんね、千歌音ちゃん」 「分かってくれたのなら良いのよ」 「でも、お風呂は二人っきりだから大丈夫だよね!さ、行こ。千歌音ちゃん」 「あああ…」 姫子に手を引かれて浴場へ向かう。 足腰に怪我をしているわけではないから、手を引いてもらわなくても普通に歩ける のだけれど、姫子の手のぬくもりが心地良くて黙っていた。 姫子がこうして甲斐甲斐しく千歌音の身の回りのことを世話してくれるというのは、 人目があれば気恥ずかしいけれど、その実すごく嬉しいことでもあった。 何かにつけて千歌音の用事を探し、ちょこちょこと動き回る姫子は本当に可愛い。 くす、と笑うと、姫子が怪訝そうに振り向いて曖昧に笑った。 そうこうするうちに、脱衣所にたどり着く。 「じゃ、脱ごうか千歌音ちゃん」 「ええ」 言うなり、姫子は自分の荷物を適当な棚に置いて、千歌音の背後に回る。 千歌音が何を言う暇もなく、脇のスカートのホックを外して、チャックを下ろしにかかった。 「あっ!…姫子。片手でも脱ぐだけなら出来ると思うの…」 姫子に着衣を脱がされるなんて、初めてのことではないけれど。 侍女や乙羽たちに入浴の付き添いを任せることもあるけれど。 やはり、姫子にこんな明るいところで脱がされて、見られてしまうというのは恥ずかしい。 浴室のように湯煙が身体を隠してもくれないから、なおのことだ。 「だーめ。千歌音ちゃん、ちょっと足上げてくれる?」 腰元から姫子の声がする。それに従って片足ずつ上げ下げすると、するりとスカートが 落とされて、抜き取られた。 「ん…」 さわさわと肌をすべる布の感触と、腿に添えられた姫子の手の感触に微かに声が 漏れて恥ずかしかった。 姫子に聞かれていないと良いのだけれど。 心臓の鼓動を落ち着けるように胸に手を当てるけれど、そんな事で落ち着くはずも無くて。 ドキドキしてやたらと過敏になっている自分の身体を、千歌音はもてあましていた。 手遊びにショーツの縁のあたりをなぞる姫子の指が、熱く感じられる。 スカートを籠に置いて、姫子が立ち上がった。 「千歌音ちゃんの脚、やっぱり長くて綺麗…。じゃ、次は上だね」 満面の笑みでそんなことを言いながら、前に回りこんで一つずつ丁寧にシャツの ボタンを外していく。 見ていられなくて、千歌音は視線をそらした。 シャツの前を全部外して、姫子はそれを肩を滑らせて落としていく。 その動作が妙にゆっくりで、じれったく感じられて。 布地と一緒に肩を、腕を滑る姫子の手の感触にぞくぞくした。 片腕ずつ抜き取って、床に落ちる前に姫子がシャツをすくい上げる。それを、 スカートと同じく籠に入れて、そのまま背中に手を回された。 「っ姫子、後ろからのほうが外しやすいんじゃ…」 「大丈夫だよ、千歌音ちゃん。慣れてるもん」 「…っ」 どうして、とは、何に、とは聞けない。 意識しているのかどうか知らないけれど、今の姫子は意地悪だと思う。 無邪気に笑いかけてくるから、なおさらだ。 ――何も、こんな時に情事を思い出させるようなことを言わなくても。 俯いて目をそらす千歌音を、姫子は首をかしげて覗きこんだ。 「千歌音ちゃん?もしかして熱でもあるの?」 「いいえ…っ、大丈夫だから、姫子…はやく」 もしかして怒ってるのかな? 心当たりは…無いわけでもない。 千歌音の身体はやっぱりものすごく綺麗で整っていて、しかもこんな明るいところで まじまじと見る機会なんて無かったから、ついじろじろ見てしまったり、余計なところを 触ってしまったりした。 それが嫌だったのかもしれないし、時間が掛かると脱ぎ掛けだから寒いのかもしれない。 「うん。ごめんね、千歌音ちゃん」 すべすべの背中に手を回して、ホックを外す。外し方は心得ているから、金属の かっちりしたそれは、いとも容易く外れて肩紐が緩んだ。 下着の圧迫から開放されても、千歌音の胸はぴんと張っていて、真ん中には 深い谷間が影を作っているから、ちょっと羨ましいと思う。姫子だとこうはいかない。 姫子だって特別小さい訳でもないけれど、やっぱり大きい胸は女の子には憧れ なのだった。 落ちかかる布を剥ぎ取ろうと摘み上げると、千歌音の両腕が胸を庇うように組まれた。 「…千歌音ちゃん、腕どけてくれないと脱がせられないよ」 「……ん…」 頬を紅潮させて、千歌音が片方ずつ肩紐から腕を抜いていく。 その仕草と表情が妙に色っぽくて、心臓の鼓動が強さを増した。 ただでさえさっきからドキドキしっぱなしなのに…。 いけない、と自制する。 これから千歌音ちゃんのお世話をして、お風呂に入るんだから。 いけないことを考えていては駄目だ。 「――はい。遅くなってごめんね、千歌音ちゃん」 極力千歌音を見ないように目をそらしながら、姫子は最後の一枚を 両足から取り去ると、千歌音を浴室に送り出した。 「私もすぐ行くから、ちょっと待っててね」 脱衣所と浴室とを仕切るドアが閉まったのを見て、姫子も急いで服を脱ぎ始める。 「…どうしよう。大丈夫かな、私…」 「お待たせ、千歌音ちゃん」 「え、ええ」 タオルを身体に巻いて浴室へ行くと、千歌音はもう鏡の前に座って身体を洗う 準備をしているところだった。 「じゃあ、洗うね」 後ろに跪くと、柔らかいスポンジを選んで石鹸を泡立てる。 白くしなやかな腕を取って、そっとこすり始めた。細い手首から肘、無駄が無いのに 柔らかい二の腕、まろやかで小さな肩。 綺麗な肌。千歌音の肌は、羨ましいくらいに白くて、頬擦りしたくなるくらい滑らかだった。 いっそ、スポンジなんかでなくて手で直接触れたいと思ってしまうくらいに。 こんな風に擦って、傷がついてしまわないか心配になる。 「千歌音ちゃん、痛くない?」 「ん…大丈夫よ」 「良かった。気持ち良い?」 「っ…!え、ええ……」 何故か身を強張らせて、千歌音が俯く。 それに、先ほどから千歌音は姫子と目を合わせようとしない。 「千歌音ちゃん?」 「なんでもない…から」 首を傾げながら両肩に手を置いて、ふと鏡の中の千歌音を見て、姫子は息を呑んだ。 うわ……っ。 艶っぽい。 白い肌、完璧なくらいに整ったプロポーション。 背中を流すために今は肩から前面に、身体を隠すように流れる艶々の黒髪。 軽く伏せられた目に、微かに寄せられた眉。 上気した頬と、ほんのり色づいた身体。 それらすべてが、どうしうもなく艶かしかった。 目が離せない。心臓がドキドキして、耳の奥が痛いほどにうるさい。 それなのに、何故かはっきりと聞こえるのだ。 千歌音の薄く開かれた唇から漏れる、艶を帯びた吐息が。 「姫子…?」 鏡の中の千歌音が、鏡越しに姫子を見る。すぐに視線は伏せられてしまったけれど、 それは姫子をハッとさせた。 「あっ、ご、ごめんね千歌音ちゃん」 慌てて目を戻して、肩から背中を洗い始めるけれど、一度意識してしまえば、 もう駄目だった。 泡立てたスポンジで擦りながら、首筋から肩、背中から腰のラインにうっとりしてしまう。 ――どうしよう。触れたい。 スポンジが邪魔でどうしようもない。 何度もスポンジを往復させて、背中を洗い上げる。力を入れるのが恐いから、 その分丁寧に擦って綺麗にした。 元々、洗う必要があるのか疑問なほど綺麗な肌ではあるけれど、そういう 問題じゃないだろう。 「千歌音ちゃん…前、洗うね。包帯が濡れるといけないから、右手上げておいて」 一方の肩から前に垂らされた長い髪を、背中に流す。 「あ、ええ……」 大人しく従って、千歌音が軽く腕を上げる。その脇を通してスポンジを当てた。 前に回りこむのが、なんだか気恥ずかしくて。正面から千歌音を見たら、 もうどうしようもなくなってしまいそうだったから。 後ろから抱きしめるように腕を回して身体を密着させる。 「ひ、姫子…っ」 「こうしないと、安定しないから…」 これは本当。 背中側から力を加えて洗う分には良いのだけれど、前面から…となると、 ともすれば後ろにひっくり返してしまいそうで恐いのだ。 多分に、千歌音と触れ合っていたいという気持ちもあるのだけれど。 肌に、スポンジを走らせる。 「あ…っ、く…、…ぅん」 すぐ近くで熱い吐息と共に漏れ出る小さな声に、ゾクゾクして我を忘れてしまいそうだった。 鏡は視界に入っていて、少し目を下ろせば直接今洗っているところを確認できる けれど、それを直視する勇気が無いから、どうしても手元がおぼつかなくなってしまう。 洗いやすいお腹から擦っていて、胸の膨らみにスポンジを持った手が触れるたび、 その豊満さを実感してドキリとした。 ――いつまでもお腹ばかり擦ってたら変…に思われるよね。 文字通り手探り状態で、姫子は千歌音の胸元にスポンジを這わせた。 「…っ!」 千歌音の身体が、びくりと跳ねる。 でも何も言っては来ないから、良いのだろうと判断してスポンジを動かし始めた。 「ん…っ、…っふ」 時折、堪えるような吐息が、千歌音の唇から漏れる。 どうして千歌音はそんな声を出して、姫子を悩ませるのだろう。 どうしよう。 ドキドキして、なんだか手元がおぼつかない。 「あっ」 「……んんっ!」 手元が滑って、姫子の手が直接千歌音の胸に触れる。 「ご、ごめんね、千歌音ちゃん…」 すぐにスポンジを持ち直すために手を引こうとして、ふと違和感を感じた。 ――え?あれ? どうして姫子は、こんなにも優しく触れてくるのだろう。 ぼんやりとした頭で、千歌音はそんなことを考えながら、姫子に身体を任せていた。 痛いわけがない。 柔らかいスポンジで、本気を出してさえ決して強いとも言えない姫子の力で。 ――それどころか、むしろ。 堪え切れなくて、時折声が漏れてしまう。 姫子は何も言わないけれど、気付いているのだろうか。 気付いていないといい。段々呆けていく思考の中で、それだけをただ願った。 いっそ、痛いくらいに力を込めて擦ってくれたら良いのに。 そしたら、こんな風にならなくて済むのに、と思う。姫子が優しくしてくれるのは、 気遣ってくれるのは、本当に嬉しいのだけれど。 そうこうするうちに、姫子の手が前に回る。抱きしめられて背中が姫子の胸に密着して しまって、ドキリとする。 触れた肌から、心臓の鼓動が伝わってしまうのではないかと思うと、千歌音は 気が気ではなかった。肌が熱い。まだ湯船に浸かっても居ないのに、のぼせてしまいそう。 相変わらず優しく優しく千歌音の肌を滑る姫子の手に、涙が出そうだった。 身体の中がじりじりしている。耐えられないくらいに。 どうしたら良いのだろう。こんな風になっていることに気付かれたらと思うと、恥ずかしくて 消えてしまいたい心持になる。 不意に。 姫子の手がずれて、スポンジでない肌が直接、過敏な胸に触れた。 「んんっ!」 ――しまった。 不覚にも声が出てしまって、姫子が慌てて手を引こうとする。 その動きが胸を刺激して、目を瞑って声を堪えるのに必死だった。 身体は強張って、反応してしまったけれど。 と、姫子の動きが止まる。妙に長い静止に、訝ってそろそろと目を開ける。 ちらと鏡を見ると、姫子がなんだか呆けた顔で、ぼんやりと鏡の中の千歌音を見ていた。 頬が紅潮している。姫子の手が少し動いて、指先が胸先に触れた。 「あっ…!姫…」 「あれ?…ええと、あの、その……千歌音ちゃん、もしかして」 頭を振る。 いやだ。恥ずかしい。 それ以上、何も言わないで欲しい。続く言葉を聞きたくない。 でも。 「もしかして――感じて…る?」 「…っ!」 ――慙愧に堪えない。 此処が、寝所であれば。 そういう時だったのなら、まだ素直になれるけれど。 姫子は千歌音の世話をしてくれているのに、怪我をしているから身体を洗って くれているだけなのに……と考えると、それに感じてしまっている自分がどうしようもなく 淫らな生き物になってしまったような気がするのだ。 姫子の顔を、視界の端にでも見ていられなくて。 千歌音はただ、俯いて頭を振った。
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【グループ名】オリュンポス 【活動地域】地中海地方 【神話体系】ギリシャ神話(一部ローマ神話) 地中海地方を中心に活動している巫女グループ。 元は同地域を守護する自警組織だったが、昨今の時流に乗ってアイドルグループに転向した。 世界的に地名度の高い神話体系を司るだけあって、『臨界者』複数人を含めた幅広く質の高いメンバーが集められている。 この世界におけるトップクラスの実力を誇ると称されるに相応しい精鋭集団。 メンバー イリス=A(アルター)=イルテリアス(リーダー) グラロス=イポヴリキオン(自称「超ボス」) カサンドラ=イプシランティス ソフィア=カラマンリス コリンナ=アタナシアディス クロエ=ノロシダ コロニ・アトパイオス カロス・マルガタリ レイナ•ブラックローズ ヴァレンティナ・タスカ ミモザ=ナルキッサ テオドシア=コスモブロス フィラメナ=アガペッサ エウフィミア=バイコヤーニ カリス=ラリス キュテリラ=アンゲロプロス フィアンメッタ・ランド ルディア(半分ソロ) オッタビア=グリエルモ(裏方) フィアマ・ロッシ(裏方) ルナ・ボウ(移籍) アストリア=ディアマンティス (移籍) ゾイ=アンブロシア(脱退) 関係者 マリヤ=ノヴァツスキー (マネージャー) 一部メンバー同士間のコメント CASE イリス=A(アルター)=イルテリアス グラロス 我にとって唯一友という存在がいるとすれば、汝がそれに当たるのだろうな。時折「イリス」なのか「ゼウス」なのか曖昧になる我とは異なり、自我を保っている意志の頑なさは驚嘆する。強き者。尤も、「我の次に」という冠が頭に付くがな。 カサンドラ 苦手……ではない。我が身に宿りし主神の神格が何故か怯えているだけで……。うむ、今度共に茶でもどうだ?……断る?そうか……そうか……。…………難儀だな。 コリンナ もう少しばかり明朗さを覚えれば、我やグラロスと並び立つことも夢ではない。それとハデスにあまり「キモい」などと言ってくれるな。彼の冥府神の心は傷が奔り易い。当代風に言い表すならば「豆腐メンタル」という奴だな。わかり易かろう。 クロエ 些か浅慮な面が見受けられるが、真っ先に龍へ切り込む危険な役目を率先して務めるその姿勢は軍神を宿すに相応しい。だが勇猛と蛮勇は紙一重。努々履き違えるなよ。 オッタビア 表舞台に立つ我等と異なり、脚光を浴びることのない任だろうとも誇りを抱いて臨む姿には我を含めて皆が感謝している。ただ語気を少しばかり柔らかくすることを勧めるぞ。いや、汝が別段常に憤っているわけではないことを我は承知している。だが、分別の付かぬ者もいる故な。 CASE グラロス=イポヴリキオン イリス なーにがリーダーじゃーい!だったらわたしさまは「超ボス」なのだ!何?「ならば此方は『超超リーダー』」?ま、負けたっ!?ぐぬぬ……、お、覚えておれよー! カサンドラ 何者にも高圧的だが、イリスをあしらっている時が一番楽しそうに見えるのだ。あれが最近流行りの「つんでれ」というものなのか?いや、おそらく違うな……。うーむ、昔はあんなに素直で可憐だったのに……。時の流れとは残酷だのう。 コリンナ ボソボソ喋るので何を言っておるのかわからーん!言いたいことが有るならはっきり言わぬか!……おぉう!?泣くな!わたしさまもちょっと言い過ぎたのだ!だから少しずつ直していこう?な? クロエ あちこちに噛みつこうとする気性の荒さは感心せんのう。喧嘩にせよ地位にせよ、どちらが上か下かに拘るなぞ馬鹿馬鹿しいのだ。何?「お前が言うな」?いや、でもわたしさま超ボスだし!超偉いし! オッタビア わたしさまのトリアイナ(三叉槍)の調整に買って出てくれるのでよく世話になっているのだ。しかし無闇に「じぇっと」や「どりる」を付けようと魔改造しようとするのは如何なものか……。ポセイドンの奴も「マジ無いわー」と呆れておるのだ。 CASE カサンドラ=イプシランティス イリス 好きよ。ついイジめたくなっちゃうくらいに。最強の主神の巫女がたった一人の女に傅くなんて、これ以上面白いことなんて無いでしょう?ゾクゾクしちゃう。楽しませてくれるなら幾らでも妾が愛を注いであげる。 グラロス 「昔は可愛かったのに」ですって?えぇ、今じゃすっかり美しくなったものね。時間は女を変えるのよ。逆にあなたは少し丸くなったかしら。いや、体型の話じゃなくて。 コリンナ オドオドとした態度に苛立ちを覚えるわね。妾が見たいのは踏みつけられたら情けなく泣き叫ぶ姿ではなくて、奮起して反骨心を燃やす姿なの。だから精々乗り越えてみせなさい。「女神の試練」を。 クロエ その納得できないもの全てに牙を剥こうとする向こう見ずな性格、なかなか良いじゃない。ヘラと違って妾は「英雄」が好きよ。力が欲しいのなら声をかけてちょうだい。たっぷり調教してあげる。 オッタビア 生まれついてのハンディキャップに負けず、己の為すべきことを弁えてる実直さには好感を覚えるわ。それと面白いことにあなたを前にすると、普段はお喋りなヘラが急に黙るのよ。ヘファイストスのせいかしら?ふふっ、親子って難しいのね。 CASE コリンナ=アタナシアディス イリス 目をかけてくれているのは理解してますけど、あまり期待しないでください。ウチは見合ってない癖に運良く強いカード(神)を引いただけなので……。え?「我と同じだな」?……………はぁ。 グラロス イリスさんと同じく尊大だけど結構話しやすい人。小さいのにすごく強いのは素直に羨ましいです……。ウチなんて図体ばかり大きいだけの役立たずなのに……。 カサンドラ トレーニングの面倒を見てもらっているので一応師匠にあたるんでしょうか?でも、厳しいし泣き落としが通用しない人なので結構苦手……かも。なんかウチにだけメニューが多いような気がしますし……。 クロエ 正反対のタイプなので性格面で合わないところはありますけど、ドラゴンとの戦いではよく戦車に乗せてもらってます。フヒッ……自分でやる理不尽コンボって楽しい……。 オッタビア 声が大きいので会話が噛み合わない……。いや、ウチの声が小さいのが悪いんですけど。仲良くなるキッカケ作りに、今度空を飛べるアイテムでも頼んでみようかな。いや、迷惑かも……。うーん、どうしましょう。 CASE クロエ=ノロシダ イリス 『オリュンポス』入ってソッコーケンカ仕掛けたらボコられた。マジでつえー。ま、でっけぇ目標が出来たことは良いことに違いねぇ。いつか必ず勝ァつ! グラロス 色んな意味で人間味が薄れてる『臨界者』の中じゃケッコー話が通じる方だな。ガキみてぇなナリだが下の連中をよく見てる。偉そうだけど良いヤツ。 カサンドラ グループ内で一番おっかねぇ女。コイツが笑ってる時は大抵碌でもねぇコト考えてやがる。ぼーっとしてると無茶振り吹っ掛けられるから要注意だな。 コリンナ 笑顔が不気味な得体の知れないヤツ。こっちから話しかけたら飛び上がって逃げるしよ。露骨にビビってるヤツにまでケンカ売るようなマネは流石のアタシもしねぇってば。せっかく歳はタメなんだし、一度腹を割って話そうぜ。 オッタビア また今度槍と戦車の改造頼むぜ!とびきりかっけーヤツをな。アレスの野郎も俄然ノリ気だから遠慮はいらねぇ!思う存分やっちまえ! CASE オッタビア=グリエルモ イリス 難しい言い回しをすっからたまーに何が言いてぇのかわかんねぇけど、アタイみてぇな偏屈を雇ってくれてんのは感謝してるさ。さて大将、本日のご注文は? グラロス よく茶を飲む間柄だが、武器に関してのセンスだけは合わねぇなぁ。絶ッッッ対ぇ改造を施した方がイカしてるってぇのに。もっとロマンってモンを学べ!ロマンを! カサンドラ 「一度ステージに出てみないか」、だってぃ?いんや、そういうのとはとっくに折り合いつけてっから遠慮しとくぜ。今の状態が一番アタイの性に合ってらぁ。……おおっとぉ、お前さんが素直に謝るなんて!ははっ、珍しいこともあんだな。 コリンナ 暗い!湿っぽい!声が小せぇ!せっかく良いツラとでっけぇガタイで生まれたんだから、もっと手前ェに自信を持って前向きやがれってんだ!そうすりゃ自然と実力も伴って来るってもんよ。 クロエ 好き勝手改造させてくれるお得意の客だぜぃ。お互い口が悪ぃから小競り合いはしょっちゅうすっけどな。ま、そいつも気の置けない仲の証にゃ違いねぇってこった!なぁ、ダチ公!