約 1,857,934 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/32.html
国連・子どもの権利委員会の一般的意見/一般的討議勧告 一般的意見 「条約のさらなる実施を促進し、かつ締約国による報告義務の履行を援助するために」(子どもの権利委員会暫定手続規則73条)作成される文書。他の人権条約機関も一般的意見または一般的勧告と呼ばれる同様の文書を採択してきており、それらは主に以下の2つの機能を果たすとされる(Alston, P., et. al., International Human Rights in Context, Clarendon Press, Oxford, 1996, pp.522-535)。 (1) 特定の条項について締約国報告書に記載されるべき情報を具体的に挙げること (2) 特定の条項の意義や機能、その実施のために必要とされる措置等について条約機構としての正式な解釈を示すこと 一般的意見は、締約国の選挙によって選ばれた委員で構成される条約機関が、多数の締約国報告書を審査してきた経験にもとづいて採択した正式な文書であり、国際人権法の発展の重要な要素を構成するものである。そこに示された見解は、厳密な意味での法的拘束力こそ有しないものの、条約の規定に関するひとつの権威ある解釈として、締約国の政府や裁判所等によって正当に尊重されなければならない。日本の裁判所においても、少数ではあるものの、自由権規約による一般的意見が「〔自由権規約の〕解釈の補足的手段」として用いられた例がある(外国人登録法にもとづく指紋押捺の拒否を理由とした逮捕に対する国家賠償請求事件に関する1994年10月28日の大阪高裁判決〔判例タイムズ868号59頁・判例時報1513号71頁〕)。 一般的意見1:第29条1項:教育の目的(2001年) 一般的意見2:子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割(2002年) 一般的意見3:HIV/AIDSと子どもの権利(2003年) 一般的意見4:子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達(2003年) 一般的意見5:子どもの権利条約の実施に関する一般的措置(2003年) 一般的意見6:出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い(2005年) 一般的意見7:乳幼児期における子どもの権利の実施(2005年) 一般的意見8:体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利(2006年) 一般的意見9:障害のある子どもの権利(2006年)(関連)国連・障害者権利委員会・一般的意見4:インクルーシブ教育を受ける権利(2016年) (関連)国連・障害者権利委員会との共同声明「障害のある子どもの権利」(2022年3月) 一般的意見10:少年司法における子どもの権利(中編・後編)(2007年)〔日本語訳全文(PDF)〕注/一般的意見10は一般的意見24(2019年)によって置き換えられた。 一般的意見11:先住民族の子どもとその条約上の権利(2009年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見12:意見を聴かれる子どもの権利(その2・その3)(2009年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見13:あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利(その2・その3)(2011年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見14:自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項)(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見15:到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見16:企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務について(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見17:休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(後編)(2013年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見18:有害慣行(後編)(2014年;女性差別撤廃委員会との合同一般的勧告/一般的意見)〔日本語訳全文(PDF)〕〔内閣府仮訳PDF〕 一般的意見19:子どもの権利実現のための公共予算編成(第4条)(後編)(2016年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見20:思春期における子どもの権利の実施(後編)(2016年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見21:路上の状況にある子ども(2017年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見22:国際的移住の文脈にある子どもの人権についての一般的原則(2017年:移住労働者権利委員会との合同一般的意見)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見23:出身国、通過国、目的地国および帰還国における、国際的移住の文脈にある子どもの人権についての国家の義務(2017年:移住労働者権利委員会との合同一般的意見)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見24:子ども司法制度における子どもの権利(2019年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見25:デジタル環境との関連における子どもの権利(2021年)〔日本語訳全文(PDF)〕 一般的意見26:とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境(2023年)〔日本語訳PDF〕 一般的意見27(予定):司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利(20XX年)〔コンセプトノート日本語訳〕 OPSC実施ガイドライン(子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の実施に関するガイドライン、2019年)〔日本語訳全文(PDF)〕(参考)子どもの売買および性的搾取(児童買春、児童ポルノその他の性的虐待表現物を含む)に関する国連特別報告者:子どもの売買および性的搾取の防止、子どもの保護ならびに被害を受けた子どものリハビリテーションに関するチェックリスト(2022年) 子どもの権利条約第5条に関する子どもの権利委員会の声明(2023年) 移住労働者権利委員会一般的意見2号:非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利(2013年) 一般的意見3号(子どもの権利委員会の一般的意見22号) 一般的意見4号(子どもの権利委員会の一般的意見23号) 一般的意見5号:身体の自由および恣意的拘禁からの自由に対する移住者の権利ならびにこれらの権利と他の人権との関係(2021年) その他の人権条約機関の一般的意見(勧告)日本語訳全般:日本弁護士連合会(日弁連)・国際人権ライブラリー 女性差別撤廃委員会:内閣府男女共同参画局・女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW) 人種差別撤廃委員会:ヒューライツ大阪・委員会の一般的意見 障害者権利委員会:JDF(日本障害フォーラム)・障害者権利条約に関連した動き 一般的討議の勧告 「条約の内容および趣旨に関するより深い理解を促進するため、……条約のひとつの特定の条文または関連する主題」(委員会暫定手続規則75条)をテーマに選んで委員会が開催する討議。「テーマ別討議を行なう日」という意味でTheme Dayと呼ばれることも多い。 おおむね年に1回、秋の会期(9~10月)に開かれるのが通例。関連の国際機関、NGO、専門家等が幅広く参加し、2つ程度の分科会に分かれて議論するのが最近の慣例である。その議論をもとに、委員会は、国際機関、締約国、NGO等がとるべき措置について勧告を採択する。 1992年:武力紛争における子ども 1993年:子どもの経済的搾取 1994年:子どもの権利の促進における家族の役割 1995年:女子 1995年:少年司法の運営 1996年:子どもとメディア 1997年:障害のある子ども 1998年:HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子ども 1999年:子どもの権利条約10周年記念会議:達成と課題(国連人権高等弁務官事務所との共催) 2000年:子どもに対する国家の暴力 2001年:家庭および学校における子どもへの暴力 2002年:サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割 2003年:先住民族の子ども 2004年:乳幼児期における子どもの権利の実施 2005年:親のケアを受けていない子ども 2006年:意見を聴かれる子どもの権利 2007年:子どもの権利のための資源配分――国の責任 2008年:緊急事態下における子どもの教育への権利 2009年:子どもの権利条約採択20周年記念会議(※とくに勧告なし) 2011年:親が収監されている子ども 2012年:国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利(第61会期〔2012年9~10月〕に行なわれた決定により、今後の一般的討議は隔年開催とされた) 2014年:デジタルメディアと子どもの権利 2016年:子どもの権利と環境 2018年:人権擁護者としての子どもの保護およびエンパワーメント一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 2021年:子どもの権利と代替的養護 更新履歴:ページ作成(2011年7月28日。トップページよりコピーし、解説を追加)。/~/一般的意見26号の第1次草案の日本語訳へのリンクを追加(2023年1月1日)。/移住労働者権利委員会の一般的意見5を追加(1月25日)。/一般的意見26号の日本語訳へのリンクを追加(9月1日)。/一般的意見一覧の下に「子どもの権利条約第5条に関する子どもの権利委員会の声明」を追加(10月13日)。/一般的意見27(予定)について記載(2024年2月8日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/230.html
総括所見:アイルランド(OPAC・2008年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)/第3回・第4回(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/IRL/CO/1(2008年2月14日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年1月23日に開かれた第1299回会合においてアイルランドの第1回報告書(CRC/C/OPAC/IRL/1)を検討した。この検討は、締約国の代表団が、第39会期に採択された委員会の決定第8号にしたがって報告書の技術的審査を選択したため、代表団の出席を得ずに行なわれたものである。委員会は、2008年2月1日に開かれた第1313回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書の提出、および、選択議定書で保障されている権利に関してアイルランドで適用される立法上、行政上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれた、委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/IRL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2006年9月29日に採択された以前の総括所見(CRC/C/IRL/CO/2)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、締約国が以下の文書を批准しまたはこれに加入したことを歓迎する。 (a) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年4月)および国際刑事裁判所法の制定(2006年10月)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(1999年)。 (c) 非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(議定書II)(1999年)。 5.さらに委員会は、国際協力の分野における締約国の活動(武力紛争の影響を受けている子どもを保護するための行動に対する財政支援の提供を含む)に、評価の意とともに留意する。 I.実施に関する一般的措置 普及および研修 6.委員会は、締約国が、軍の要員を対象として平和活動に関する人権研修を実施するための努力を行なっていること、および、子どもおよび子ども兵士の保護に関するモジュールで選択議定書が取り上げられていることを、心強く思う。委員会はまた、選択議定書の本文が外務省のウェブサイトで利用可能とされていることにも留意するものの、選択議定書に関して締約国が国レベルで行なっている普及および研修のための活動が全体としては軍隊を対象としたものおよび軍事研修に限定されており、かつ、公衆一般に対して選択議定書を普及するためにとられた措置が不十分であることを、遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国が、軍隊、および国際的活動に配置される要員を対象とした、選択議定書の規定に関する研修を引き続き実施するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団(保健従事者、ソーシャルワーカー、教員、公務員、検察官、裁判官、ならびに、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および難民のためにならびにこれらの子どもとともに働く公的機関など)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修のためのプログラムを発展させることも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じて、公衆一般ならびにとくに子どもおよびその親に対し、選択議定書の規定を広く知らせるよう勧告する。 独立の国内人権機関 8.子どもオンブズマン事務所が子どもからまたは子どもに代わって提出された苦情を調査する権限を有していることは歓迎しながらも、委員会は、子どもオンブズマン法(2002年)第11条1項(b)にしたがい、同事務所が、「国の安全保障または軍事活動に関係しまたは影響する」いかなる行為も調査できないとされていることを遺憾に思う。さらに委員会は、オンブズマン(国防軍)法に基づいて2004年に国防軍オンブズマンが設置されたことは歓迎しながらも、同オンブズマンが、国防軍の組織、構成および配置に関わるいずれかの事柄、軍の刑務所または拘禁場所の運営に関わる行為、および、安全保障または軍事情報に関連しまたは影響する行為については調査できないとされていることを、遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国が、18歳未満の子どもとの関連で国防軍がとった行動を子どもオンブズマン事務所の権限下とする目的で、子どもオンブズマン法(2002年)第11条1項(b)の改正を検討するよう勧告する。 II.防止 志願採用 10.国防軍規則および管理訓令の規定によって18歳未満のすべての軍要員が国外役務から除外されていることには留意しながらも、委員会は、現行規則の例外規定によって「訓練生」の合法的採用が認められていること(16歳以上であれば採用が可能)、および、1954年国防法第54条により、非常時に18歳未満の者の常設国防軍への編入が認められていることを、懸念する。委員会はまた、軍隊にいる18歳未満の子どもが、その軍要員としての地位を理由として、軍法(1954年国防法)の対象とされる場合があり、かつ2001年子ども法に基づき18歳未満の者に与えられている保護から除外されていることも、懸念するものである。 11.委員会は、選択議定書の締約国の圧倒的多数が子どもの志願採用を認めていないことに留意する。したがって委員会は、締約国に対し、全般的により高い基準を通じた子どもの保護を促進する目的で、アイルランド国防軍への採用に関する最低年齢を17歳から18歳に引き上げるよう、奨励する。 12.委員会はまた、アイルランド国防軍の政策条項に基づき、18歳に達していない者がいずれかの「敵対的」事件にさらされる可能性は実質的に無視できる旨、締約国が保証していることに留意する。しかしながら委員会は、18歳未満の国防軍構成員が武器の取扱い訓練を受けていることを懸念するものである。委員会は、子どもを対象として「軍事的要素」のあるこの種の活動を行なうことは、平和および安全が子どもの全面的保護にとって不可欠であることを強調する選択議定書の精神に完全には一致しないという見解に立つ。 13.委員会は、締約国に対し、選択議定書の精神を全面的に尊重し、かつあらゆる状況下で子どもを全面的に保護する目的で、国防軍が提供する兵器取扱い訓練に軍学校生徒が参加できる最低年齢を18歳に引き上げることを検討するよう、奨励する。委員会は、締約国が、国防軍のすべての組織に対し、選択議定書および他の関連の国際基準の規定に関する十分な情報および研修を提供するよう、勧告するものである。 III.禁止および関連の事項 立法 14.委員会は、締約国の国内法で、15~18歳の者による敵対行為への直接的関与が法律で明示的に禁じられていないことに、懸念とともに留意する。委員会は、国防軍規則および管理訓令にしたがって策定されている、18歳未満のすべての軍要員を国外役務から除外する旨のアイルランド国防軍管理政策は、選択議定書第1条で求められている、18歳未満の者が武力紛争に従事しないようにするための十分な保障ではないという見解に立つものである。 15.委員会は、締約国に対し、選択議定書の精神を全面的に尊重し、かつあらゆる状況下で子どもを全面的に保護する目的で、国の内外に関わらず18歳未満の者を敵対行為に直接関与させることを明示的に犯罪化するよう、奨励する。 16.委員会は、2006年に国際刑事裁判所(ICC)法が制定されたこと、および、同法第12条1項で、15歳未満の子どもを軍隊または武装集団に徴募することに関する域外裁判権の行使について定められていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、15~18歳の子どもに関するこのような裁判権の設定は双方可罰性の要件に服するとされていることを、遺憾に思うものである。 17.軍隊または武装集団への子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもを徴募しかつ敵対行為に子どもを関与させる犯罪について、双方可罰性の基準を課すことなく域外裁判権を拡大することを検討すること。 (b) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること。 IV.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 18.委員会は、国家子ども戦略(2000~2010年)で難民としての地位を求める保護者のいない子どもについて言及されており、かつ、このような子どもが最善の国際的慣行(指定ソーシャルワーカーおよび指定後見人の提供を含む)にしたがって取り扱われるとされていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもの庇護希望者および難民を特定するための機構が設置されておらず、またはその身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の具体的戦略が定められていないことを、懸念するものである。これとの関係で、委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の監督およびこのような子どもに提供されているケアが不十分であることについての懸念(CRC/C/IRL/CO/2、パラ64-65)を、あらためて表明する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) アイルランドに入国する子どもの難民および庇護希望者であって、国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを可能なもっとも早い段階で体系的に特定することを可能にする機構を導入すること。 (b) これらの子どもの状況を注意深く評価するとともに、選択議定書第6条3項にしたがい、これらの子どもに、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、文化的配慮および子どもに対する配慮がありかつ学際的な援助を直ちに提供すること。 (c) 自国の管轄内にある子どもの難民および庇護希望者であって母国において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある者についてのデータを体系的に収集すること。 (d) この点に関してとられた措置についての情報を次回の報告書に記載すること。 20.これとの関連で、委員会はさらに、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(パラ54~60)に対し、締約国の注意を喚起したい。 V.国際的な援助および協力 国際協力 21.委員会は、武力紛争の影響を受けた子どもの保護および支援を目的とした多国間および二国間の活動に対する財政支援(地雷問題について活動している組織への多大な支援を含むが、これに限るものではない)について、締約国を賞賛する。 22.委員会は、締約国に対し、武力紛争における子どもの保護を目的とした行動のための国際協力の分野における活動(財政支援の提供を含む)を継続するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子ども(およびとくに武力紛争の影響を受けている子ども)に関する援助支出の評価および監視を可能とするため、アイルランド援助プログラムに関わる財政データの細分化を検討することも、勧告するものである。 武器輸出および軍事援助 23.委員会は、国内法をEU集積法に一致させることを目的とする輸出品統制法案が2007年2月に公表されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、当該法案において、子どもが徴募されまたは敵対行為で使用されている可能性のある国が武器の最終目的地であることが、販売からの除外基準として具体的に挙げられていないことを遺憾に思うものである。 24.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは敵対行為で使用されていることがわかっている――またはその可能性がある――国が最終目的地である場合における武器の販売の具体的禁止規定の導入を検討するよう、勧告する。 VI.その他の法規定 25.子どもの売買と武装集団への徴募が関連している可能性があることに鑑み、委員会は、締約国が、2000年9月7日の署名した子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准を進めるよう、勧告する。 VIII.フォローアップおよび普及 26.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会(ウラクタス)、下院(ドイル)、上院(シャナズ)、国防省および該当する場合には州の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 27.加えて、選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。 28.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合定期報告書(提出期限・2009年4月27日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2013年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/229.html
総括所見:アイルランド(第2回・2006年) 第1回(1998年)/第3回・第4回(2016年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IRL/CO/2(2006年9月29日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年9月20日に開かれた第1182回および第1184回会合(CRC/C/SR1182 and 1184参照) においてアイルランドの第2回定期報告書(CRC/C/IRL/2)を検討し、2006年9月29日に開かれた第1199回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の包括的な報告書の提出、および、アイルランドにおける子どもの状況についてさらなる情報を提供してくれた、事前質問事項に対する詳細な回答(CRC/C/IRL/Q/2 and Add.1)を歓迎する。委員会はさらに、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた実りのある開かれた対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によるフォローアップ活動および達成された進展 3.委員会は、以下のような新法および政策措置が採択されたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 地位平等法および教育(福祉)法(2000年)。 (b) 人権委員会法(2000年および2001年)。 (c) 子ども法(2001年)。 (d) 子どもオンブズマン法(2002年)。 (e) 特別なニーズを有する者のための教育法(2004年)。 (f) 「われらが子どもたち――その生活」と題する国家子ども戦略(2000年)、「位置について、用意、さあ遊ぼう」(Ready, Steady, Play)と題する国家遊び政策(2004年)、および、2001年に検証が実施された国家貧困対策戦略。 4.委員会は、以下のものを含む、子どもの権利の保護に関連する国際条約が批准されたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年11月)。 (b) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(2000年12月)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年4月)。 5.委員会は、条約の実施に関する第1回報告書の検討後、委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.85)をフォローアップするためにとられたさまざまな措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 国家子ども局(NCO)および国家子ども諮問評議会が設置されたこと(2001年)。 (b) 子どもオンブズマンが任命されたこと(2004年)。 (c) 子ども大臣官房が設置されたこと(2005年)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会の前回の総括所見をフォローアップしかつ実施するためにとられたさまざまな措置は歓迎しながらも、委員会は、表明された懸念および行なわれた勧告の一部(とくに権利の保有者としての子どもの地位、および、政策および実務における子どもの権利基盤アプローチの採用に関するもの)について、まだ十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうちまだ十全な対応が行なわれていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法および実施 8.委員会は、法的枠組みをさらに発展させるためにとられた措置は歓迎するものの、とくに1997年および2001年の子ども法における具体的規定の制定のペースが遅いことから法的枠組みの効果的実施が阻害されていることを、依然として懸念する。委員会は、前回の総括所見で委員会が勧告したように条約が国内法に編入されていないことに、遺憾の意を表明するものである。 9.委員会は、締約国に対し、関連の子ども法で未制定のままとなっている子どもの権利の保護のための規定を制定するため、優先的課題としてあらゆる必要な措置(資源の配分を含む)をとるよう促す。委員会は、締約国に対し、条約を国内法に編入するためにさらなる措置をとるよう奨励するものである。 国家的行動計画 10.委員会は、子どもたちの生活向上およびその権利の保護の増進のための主要な文書として、2000年に国家子ども戦略が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、同戦略に掲げられた行動および目標の指針となる総括的原則、ならびに、その策定に際して行なわれた裾野の広い協力および公的協議(非政府組織(NGO)および学界とのものを含む)にも、評価の意とともに留意するものである。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 権利基盤アプローチがすべての活動に適用されることを確保するため、同戦略の達成状況を評価すること。 (b) 同戦略の目標および活動の実施に関する具体的期限を定めること。 (c) 同戦略の実施のために具体的予算配分を行なうこと。 12.委員会は、締約国が、同行動計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ、子どもに関する国連総会特別会期(2002年5月)で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」が考慮されることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国家子ども戦略の実施および監視を参加型のかつホリスティックな方法で進めるとともに、これらの活動の状況および効果に関する情報を次回の報告書で提出するよう、勧告するものである。 独立の監視 13.委員会は、アイルランド人権委員会および子どもオンブズマン(人権一般の促進および保護ならびにとくに子どもの権利および福祉に対応する同オンブズマンの事務所を含む)が設置されたことを歓迎する。子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情を調査する権限が具体的に含まれていることは歓迎しながらも、委員会は、いくつかの制限が課されていることにより、刑務所および警察署に収容された子どもに関わる調査において子どもオンブズマンの権限が妨げられる可能性があることを、懸念するものである。 14.委員会は、子どもの権利侵害を生じさせるおそれがある間隙の可能性を解消する目的で、締約国が、子どもオンブズマンとともに、オンブズマン事務所の調査権限の範囲を制限する特定の規定を再検討し、かつその改正を提案するよう勧告する。 15.オンブズマン事務所が独立して職務を遂行できることを確保するため、委員会は、締約国が、ウラクタス(国民議会)および財務省を通じてオンブズマン事務所に直接財源を提供する方法および手段を追求するよう、勧告する。委員会はまた、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に対しても、締約国の注意を喚起するものである。 データ収集 16.委員会は、とくに国家子ども戦略の枠内におけるNCOの調査研究機能を通じて達成された、統計データの収集における進展に留意するとともに、アイルランドの子どもたちの生活を探求する「全国子ども縦断研究」が委託されたことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、文書回答において締約国から提供された情報および新たな国家データ戦略への言及(CRC/C/IRL/Q/2/Add.1)にも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、年齢、性別、民族ならびに農村部および都市部の別によって細分化された、子どもに関する体系的かつ包括的なデータが存在しないことを依然として懸念する。このようなデータは、アイルランドでとくに脆弱な立場に置かれた子ども(虐待、ネグレクトまたは不当な取扱いの被害者、ストリートチルドレン、障害のある子どもおよび施設養護を受けている子どもを含む)の状況の分析を可能としてくれるはずである。 17.委員会は、締約国が、細分化されたデータの体系的かつ包括的な収集を条約に一致する形で発展させるためのさらなる措置を、中央統計局ならびに他の政府省庁および政府機関の役割の強化等も通じてとるよう勧告する。このようなデータは、子どものための政策およびプログラムの創設、実施および監視のために活用されるべきである。 普及、研修および意識啓発 18.委員会は、締約国が、前回の勧告に応じ、関連の公的機関および公衆一般の間で条約を普及しかつ周知するためのさらなる措置をとったことに、評価の意とともに留意する。とくに委員会は、条約が国家子ども戦略とあわせて普及されていること、ならびに、NCOおよび子どもオンブズマン事務所がそれぞれのウェブページ等を通じて意識啓発活動を行なっていることを歓迎するものである。 19.委員会は、締約国に対し、子どもにやさしい資料も含んだ定期的なかつ全国規模の意識啓発キャンペーン、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに学校、保健サービスおよび社会サービスで働く専門家ならびに法曹および法執行官)を対象とする重点対象型のキャンペーンおよび必要な研修等を通じ、条約の規定がおとなおよび子どもの双方によって広く知られかつ理解されることを確保するための努力をさらに強化するよう、奨励する。 3.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) (訳注)番号の振り間違いは原文ママ。 差別の禁止 20.委員会は、人種主義と闘う国家行動計画の策定(2005年)、および、とくに同計画の5つの目的(保護、包摂、供給、承認および参加)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国のすべての子どもが差別の禁止の原則を平等に享受しているわけではないおそれがあり、かつ、異なる民族性を有する子どもおよびマイノリティに属する子どもがいっそう高い水準の人種主義、偏見、固定観念および外国人嫌悪に直面していることを、懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、人種主義と闘う国家行動計画が全面的に実施され、かつ、子どもたちの間の、とくに初等中等教育における人種主義、偏見、固定観念および外国人嫌悪に対応するための措置に具体的注意が向けられることを確保するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 22.委員会は、子どもの最善の利益の尊重を確保するための措置が一部の分野でとられたことに留意するものの、この原則への対応がいまなお不十分であることを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益の一般原則がいかなる区別もなく第一義的に考慮され、かつ子どもに関連するすべての法律に全面的に統合されることを確保すること。 (b) この原則が、政治上、司法上および行政上のすべての決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいても適用されることを確保すること。 子どもの意見の尊重 24.委員会は、子ども議会および若者議会等も通じて子どもの意見の尊重を促進するためにとられた措置、および、中等学校における実効的な生徒評議会の設置に関して見られた進展に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、訴訟後見人に関する具体的規定が定められていないこと、ならびに、これらの措置が体系的かつ包括的なやり方でとられていないこと、および、地方レベルの公的機関および主題別の公的機関への対応が行なわれていないことを、懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマンが受理する苦情の多くが子どもの意見が尊重されていないことに関わるものであることにも、留意する。 25.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが、とくに家庭、学校その他の教育施設、保健部門およびコミュニティにおいて、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明し、かつその意見を正当に重視される権利を有することを、憲法上の規定等も通じて確保するための努力を強化すること。 (b) 子どもに対し、自己に影響を与えるいかなる司法上および行政上の手続においても意見を聴かれる機会が与えられ、かつその意見が子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に重視されることを確保すること。これには、とくに子どもが親から分離される事案において、1991年子どもケア法で定められた独立代理人(訴訟後見人)が利用されることの確保も含む。 (c) 意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された勧告を考慮すること。 4.市民的権利および自由(第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) プライバシーの保護 26.子ども裁判所で訴追される子どものプライバシーが保護されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、上級裁判所で訴追される子どもに対して同一の保護が与えられていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国が、プライバシーの保護を子どもが関係するすべての法的手続に拡大するために必要な措置をとるよう、勧告する。 4.家庭環境および代替的養護(第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) (訳注)番号の重複は原文ママ。 親の責任 28.委員会は、家族支援制度の分野における多くの発展、とくに家族支援庁の設置、6歳未満の子どもがいる家庭への四半期給付の導入および有給産前産後休暇の段階的延長を歓迎する。しかしながら委員会は、これらの制度において裾野が広い子ども中心のアプローチがとられておらず、かつ、支援プログラムについての責任および支援サービスの提供責任が異なる政府機関に割り当てられていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 異なる政府省庁のもとで提供されている支援サービスについて、これらのサービスの質および到達度を評価し、ならびに存在する可能性がある欠点を特定しおよびこれに対応するための徹底的検証を行なうこと。 (b) 危険な状況にある家族および子どもに提供されるソーシャルワークサービスを拡大し、週7日・24時間体制のサービスとすること。 家族再統合 30.委員会は、1996年難民法で、家族再統合に関する十分な法的枠組みが定められていることに留意する。しかしながら、条約第10条にしたがって行なわれる家族再統合は、移民を含む他の状況にも適用されるものである。委員会は、再統合を求める家族構成員が手続上の情報にアクセスできないこと、および、意思決定過程で子どもの最善の利益の原則が考慮されていないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族に関する理解の発展によりよく対応する目的で、1996年難民法における家族の定義の見直しを検討すること。 (b) 難民法で定められた状況以外の家族再統合に関する法的枠組みの確立を検討すること。 (c) いかなる法律上または行政上の手続においても、子どもが関わる決定を行なう際には子どもの最善の利益の原則が常に第一義的に考慮されることを確保すること。 親のケアを受けていない子どものための代替的養護 32.委員会は、里親養護、ならびに、親のケアを受けていない子どものために法定機関および非法定機関によって運営されている入所センターの査察を行なう社会サービス査察官が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、社会サービス査察官が、まだ法律上の根拠に基づいて設置されておらず、委任された職務を遂行するために必要な資源を欠いており、かつ親のケアを受けていないすべての子どもを保護するわけではないことを、懸念するものである。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会サービス査察官がその職務を遂行するための法律上の根拠を創設し、かつ、その権限を、必要とされている養護に関わらず、親のケアを受けていないすべての子どもに拡大するための措置を検討すること。 (b) 養護センターを退所する若者のフォローアップおよびアフターケアを確保し、かつそのための対応を行なうための努力を強化すること。 養子縁組 34.委員会は、現行法が、とくに国際養子縁組における保護との関連で国際基準に全面的に一致しているわけではなく、かつ子どもの最善の利益を考慮していないことを、依然として懸念する。委員会はまた、現行法を見直すためにとられている措置に時間がかかっていることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、法改正を実行しかつ実施するための努力を速やかに進めるとともに、関連するすべての法律が国際基準に一致することおよび子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保するよう、勧告する。 暴力、虐待およびネグレクト 36.児童虐待およびネグレクトの問題に対応するために締約国が行なっている努力(児童虐待通報ガイドラインの策定、通報されたすべての児童虐待事案の詳細な調査および子どもの性的虐待に関する全国規模の意識啓発キャンペーンの開始を含む)は歓迎しながらも、委員会は、児童虐待の防止のための包括的な国家的戦略または措置が整備されていないこと、および、支援サービスへのアクセスに時間がかかることを、依然として懸念する。 37.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「子ども最優先:全国ガイドライン」を引き続き見直すとともに、法的根拠に基づいて当該ガイドラインを確立することを検討すること。 (b) 通報された虐待およびネグレクトのすべての事案について十分な調査および訴追が行なわれること、ならびに、虐待およびネグレクトの被害者が身体的回復および社会的再統合についてのカウンセリングおよび援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 虐待、ネグレクトおよびドメスティックバイオレンスに対する十分な対応を発展させること、地域的、全国的および国際地域的調整を促進することならびに感受性強化、意識啓発および教育のための活動を実施することを含む、包括的な児童虐待防止戦略を策定すること。 (d) 子どもとともに働くすべての被用者およびボランティアについて採用前の評価が実施されること、ならびに、就業期間中、これらの者に対して十分な支援および研修が提供されることを確保すること。 38.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究を背景として、委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告する。加えて委員会は、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に対して締約国の注意を喚起し、かつ、同報告書に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励したい。 体罰 39.家庭内の体罰の禁止について見直しが進められており、かつ親教育プログラムが開発されてきたことには留意しながらも、委員会は、家庭内の体罰がいまなお法律で禁じられていないことを深く懸念する。 40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.85、パラ39)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁止すること。 (b) 体罰が受け入れられないことについて、親および一般公衆の感受性強化および教育を進めること。 (c) 体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進すること。 (d) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を考慮すること。 5.基礎保健および福祉(第6条、第18条3項、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 41.2005年障害法および国家障害戦略(2004年)のような立法上および政策上の進展は歓迎しながらも、委員会は、法的枠組みにおいて、障害のある子どもの具体的ニーズならびに必要な保健サービスおよび教育上の便益への障害児によるアクセスについて不十分な対応しかとられていないこと、ならびに、子ども法の規定の多くがまだ全面的に制定されていないことを、依然として懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの具体的ニーズに対応する、インクルーシブなかつ権利基盤型の法的枠組みを採用するとともに、現行法の規定のうち障害のある子どもに関連するすべての規定を実施すること。 (b) 予防およびインクルージョン、障害のある子どもを対象とする利用可能な支援およびサービス、ならびに、障害のある子どもに対する社会の否定的な態度との闘いに焦点を当てた意識啓発キャンペーンを、子どもたちの関与を得ながら行なうこと。 43.委員会はまた、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議(1997年10月6日)の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れながら、障害のある子どもに関連する現行の政策および慣行を見直すことも促す。 健康および保健サービス 44.委員会は、国家子ども戦略の目標第3号およびプライマリーケア戦略の策定を含む、締約国が多くの政策文書で表明している決意を歓迎する。しかしながら委員会は、この点に関する包括的な法的枠組みが存在しないこと、および、条約第24条に規定された保健ケアサービス(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもを対象とするもの)の質およびこれらのサービスへのアクセスを保障する法定指針が策定されていないことを、依然として懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの健康上のニーズに対応する総括的な法律を採択すること。 (b) 対象を明確にした資源を提供し、かつ保健ケアサービスの質に関する法定指針を確立することにより、保健ケアサービスの利用可能性および質が国内全域で維持されることを確保すること。 (c) 子どものための既存の保健ケアサービスに対して配分される資源が、全部門、すなわち公共部門、コミュニティ部門およびボランティア部門の利益となる、戦略的なかつ調整のとれたやり方で活用されることを確保すること。 (d) 子どもの難民および庇護希望者のニーズに対して、かつ現行の「トラベラーの健康に関する国家戦略」を実施することによりトラベラー・コミュニティに属する子どものニーズに対して、特段の注意を払うこと。 46.2001年精神保健法を歓迎し、かつ、締約国が、子どもおよびその家族の精神保健に関連する十分なプログラムおよびサービスがないことを認識していることには留意しながらも、委員会は、精神保健上の困難を有する子どもが、スティグマに対する恐れから既存のプログラムおよびサービスにいまだにアクセスできておらず、かつ、18歳未満の一部の子どもが精神医学施設で成人として取り扱われていることを、懸念する。 47.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.85、パラ20および38)をあらためて繰り返すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健省担当国務大臣が2003年に任命した精神保健政策専門家グループの知見を全面的に活用し、かつその勧告を実施すること。 (b) スティグマを防止するための意識啓発キャンペーンおよび感受性強化キャンペーンを行なうとともに、早期介入プログラムに焦点が当てられることを確保すること。 (c) 精神保健上の困難を有する子どもが18歳未満の子どもをとくに対象とするサービスから利益を得られることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。 思春期の健康 48.子どもによるアルコールの消費に対処するための多くの政策措置(国家アルコール政策、アルコール問題戦略特別委員会、および、子ども・若者に関する議会委員会がこの問題に対して払っている注意を含む)には留意しながらも、委員会は、青少年によるアルコールの消費水準が高いことを依然として懸念する。 49.委員会は、締約国が、とくに包括的戦略(これには、意識啓発活動、〔ならびに、〕子どもによるアルコールの消費および子どもを対象とする広告の禁止が含まれるべきである)を策定しかつ実施することにより、子どもによるアルコールの消費に対処するための努力を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、思春期の健康に関する委員会の一般的意見4号(2003年)に対しても締約国の注意を喚起するものである。 50.アルコール問題戦略特別委員会の創設は歓迎しながらも、委員会は、男子および思春期の男性の自殺率が上昇しているという報告について懸念を覚える。委員会はまた、法定年齢に満たない段階での有害物質の濫用と自殺率との間に関連があると思われることも懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、新たな10か年計画「自殺防止に関する国家行動戦略」、および、アルコール問題戦略特別委員会の第2次報告書の勧告を実施するよう促す。 52.社会的・人格的保健教育が中等学校のカリキュラムに編入されていることには留意しながらも、委員会は、リプロダクティブヘルスに関する必要な情報に対し、青少年が十分にアクセスできていないことを懸念する。当該教育は選択科目であり、親は子どもに当該教育を受けさせないことが可能である。委員会はまた、過去10年間に性感染症が目立って増加したことが報告されており、かつ若い女子の感染リスクがとりわけ高いことも、懸念する。 53.委員会は、締約国が、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する、とくに青少年を対象とする情報およびサービスへのアクセスを増進させるための努力を強化するとともに、これらの情報およびサービスを学校カリキュラムに限定するのではなく、広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンに加えて青少年の日常的な生活環境でもアクセスできるようにすることを、勧告する。 有害な伝統的慣行 54.委員会は、一部の移民コミュニティがアイルランドで女性性器切除(FGM)を行ない続けていることに、懸念とともに留意する。委員会は、FGMが条約違反であることを強く強調するものである。 55.委員会は、締約国に対し、たとえば法律でFGMを禁止すること(域外裁判権の設定を可能とすることも含む)、および、FGMの著しく有害な影響についてすべての層の住民の感受性強化を図る、対象の明確なプログラムを実施することを通じて、FGMの慣行を終わらせるための努力を引き続き行なうよう促す。委員会は、締約国が、FGMの慣行を防止するために、地方レベルのあらゆる関連のパートナー(教員、助産婦、伝統的保健従事者、宗教的指導者および共同体の指導者を含む)の関与および動員を図るよう、勧告するものである。委員会はまた、1995年1月21日に行なわれた、女子に関する一般的討議の際に採択された勧告(CRC/C/38参照)に対しても、締約国の注意を喚起する。 生活水準 56.委員会は、順調な経済的発展が全般的な貧困水準の削減に寄与してきたことを認識する。しかしながら委員会は、とくに脆弱な状況に置かれた多くの子どもが、所得が全国的な所得中央値よりも相当に低いままの世帯で暮らしていることを、依然として懸念するものである。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困が削減され、かつ、経済的苦境が発達に及ぼす悪影響から子どもが保護されることを確保する目的で、国家貧困対策戦略を効果的に実施し、かつ経済的苦境下で暮らしている家族への支援を強化すること。 (b) 最高水準の貧困を経験している家族を援助するための追加的かつ重点対象型手当として、現行の普遍的子ども手当給付への補足手当を導入すること。 (c) 現行の政策および戦略を全面的に実施するとともに、とくに脆弱な立場に置かれた子どもがいる家族を対象とするサービス(保育、保健ケアおよび住宅を含む)およびその補助のための予算配分を増額すること。 (d) 低所得家庭を対象とする負担可能な社会住宅への投資を増額すること。 6.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 58.委員会は、教育に対する権利についての法律上および政策上の枠組みを発展させかつ強化するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、公立初等学校における教育および教材の「事実上」の費用が親の負担とされている例があること、子どもの意見および具体的ニーズが常に十分に考慮されているわけではないこと、ならびに、トラベラー・コミュニティに属する子どもおよび障害のある子どもの間でとりわけ高い中退率が見られることを、懸念するものである。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、子どもの具体的ニーズに関する適切な専門的評価を実施し、特別なニーズを有する子どもに対して技術的および資料的支援を提供し、学校の子どもが自己のウェルビーイングに関わるすべての事柄について意見を聴かれる権利を有することを確保し、かつ、すべての子どもに平等を基礎として教育を提供する目的で全般的な学級規模を縮小するための努力を継続することにより、子どもの特別なニーズが考慮される教育環境を創設するための措置を引き続きとること。 (b) 校舎、レクリエーションのための設備および便益ならびに学校の衛生環境の改善および向上に対しても予算配分が向けられることを確保すること。 (c) いじめの現象と闘うために必要が措置がとられること、および、いじめの影響について敏感なかつ子どもに配慮したやり方による対応がとられることを確保すること。 (d) 作成された「トラベラー教育戦略」を刊行しかつ普及するとともに、トラベラーの問題および異文化間アプローチに関する教員の感受性を高めるため、教員を対象とした研修活動を実施すること。 60.委員会は、締約国の第1回・第2回定期報告書に関する総括所見(CERD/C/IRL/CO/2)で人種差別撤廃委員会が提起した、非宗派学校または多宗派学校が初等教育施設総数の1%に満たない旨の懸念をあらためて表明する。 61.委員会は、締約国に対し、非宗派学校または多宗派学校の設置を促進し、かつ学校への受入れにおける差別を解消するために現行法の枠組みを改正するよう奨励した人種差別撤廃委員会の勧告(CERD/C/IRL/CO/2、パラ18)を全面的に考慮するよう、奨励する。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 62.多数の政府省庁、地方当局および保健委員会を対象とするいくつかの活動および責任を掲げ、かつ子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動を享受する機会を増進する「国家遊び政策」のような取組みは歓迎しながらも、委員会は、レクリエーション施設の創設が政治的および財政的にほとんど重視されておらず、かつ、住宅に対する需要の高まりによって遊び場および公共空間の発展がさらに阻害される可能性があることを、懸念する。 63.委員会は、締約国が、子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動を享受するための施設の創設をいっそう重視するよう勧告する。 7.特別な保護措置(第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条b~d、第32~36条) 子どもの難民および庇護希望者 64.2006年出入国管理・在留・保護法案を通じた、庇護希望手続に関する最近の視点には留意しながらも、委員会は、保護者のいない子どもまたは親から分離された子どもが、とくにサービスおよび独立の代理人へのアクセスとの関連で、庇護手続の際にいまなお十分な指導、支援および保護を受けられていない可能性があることを懸念する。 65.委員会は、締約国が、政策、手続および実務を国際法上の義務および他の文書(国連難民高等弁務官およびセーブ・ザ・チルドレンが作成した「望ましい実務に関する声明」を含む)に掲げられた原則と一致させるために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもが公的機関または親のどちらの養護下にあるかに関わらず、支援サービスに関する同一の基準および当該サービスへの同一のアクセスが適用されることを確保するよう、奨励するものである。委員会はまた、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対しても、締約国の注意を喚起する。 少年司法の運営 66.委員会は、2001年子ども法で刑事責任年齢が7歳から12歳に引き上げられ、かつ反証がないかぎり当該最低年齢は14歳と推定されることになったことを歓迎するものの、同法のこの部分が施行されなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、子ども法のこの部分が、重大な犯罪についての刑事責任年齢を10歳に引き下げた2006年刑事司法法に移管されたことに、深い失望を覚えるものである。 67.委員会は、締約国が、2001年子ども法で定められた刑事責任年齢に関する規定を復活させるよう勧告する。 68.委員会は、法務・平等・法改正省のもとにアイルランド青年司法局が設置されたことは歓迎するものの、これが法的根拠に基づいて設置されたわけではないことを遺憾に思う。委員会はまた、2006年刑事司法法に定められた反社会的行動命令が、とくに命令違反が犯罪とみなされることから、「危険な状況に置かれた」子どもを刑事司法制度にさらに接近させる効果を有するであろうことも、懸念するものである。さらに委員会は、命令の種類および内容に関する裁判官の裁量が広く認められていることから、非難対象の行動に比例しない措置につながる可能性があることを懸念する。 69.委員会は、以下のことを勧告する。 (a) 締約国が、アイルランド青年司法局の法的根拠を定めるとともに、当該司法局が、条約に基づいた、子ども志向および権利基盤型の青年司法政策を起草し実施することに高い優先順位を与えるべきこと。 (b) 反社会的行動命令が、緊密な監視の対象とされ、かつ、防止措置(ダイバージョン制度および家族会議を含む)が尽くされた後の最後の手段としてのみ利用されるべきこと。 70.委員会は、2002年に施行された2001年子ども法で法律により定められた警察ダイバージョン・プログラムの設置に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、2006年法によって、当該プログラムの適用が「反社会的行動」を行なった10歳以上の子どもにまで拡大されたことを懸念するものである。委員会はさらに、当該プログラムへの受入れが、将来の刑事手続において刑の言い渡しとみなされうることを懸念する。 71.委員会は、「反社会的行動」を行なった子どもを警察ダイバージョン・プログラムの対象にできないようにし、かつ、当該プログラムの受入れが将来の刑事手続において刑の言い渡しとみなされることはけっしてできないようにすべきことを、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、自由の剥奪が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するため、一連の代替的措置を優先課題として実施するよう促すものである。 72.拘禁される18歳未満のすべての子どもは別個の拘禁施設――いわゆる「子ども拘禁院」――に収容されるよう定めるという締約国の意図には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、16歳および17歳の子どもが、18~21歳の男性を対象とする閉鎖型の中度警戒拘禁センターである聖パトリック施設に拘禁されており、教育のための便益もなんら提供されていないことを深く懸念する。加えて委員会は、子どもオンブズマンが、当該施設から提出される苦情の調査および警察署の査察から除外されていることを懸念するものである。 73.委員会は、締約国が、拘禁を最後の手段として用いるためにあらゆる努力を行なうよう勧告する。拘禁が避けられないと考えられる場合、委員会は、締約国が、18歳未満の子どもに対して別個の拘禁施設を用意するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもが現に収容されているすべての拘禁場所を子どもオンブズマンの調査権限および査察権限の対象に含めるため、あらゆる努力を行なうよう奨励する。 性的搾取および性的虐待 74.性犯罪者からの公衆の包括的保護について定めた2001年性犯罪者法には留意しながらも、委員会は、買春の被害を受けた子どもおよび児童ポルノに関する情報がないことを懸念する。 75.委員会は、締約国が、焦点の明確な措置を策定する目的で児童買春、児童ポルノならびにその他の形態の子どもの性的搾取および性的虐待に関する情報収集および調査研究を実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、この点に関する詳細な情報を次回の報告書で提供するよう要請する。 売買および取引 76.子どもの人身取引・児童ポルノ法(1998年)および人身取引・性犯罪法案(2006年)には留意しながらも、委員会は、誘拐および売買または取引(目的または形態の如何を問わない)の被害を受けた子どもの状況に関する具体的情報がないことを遺憾に思う。 77.条約第34条および第35条に照らし、委員会は、とくに、人身取引と闘うための包括的戦略の採択および実施、ならびに、人身取引被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置(シェルター、カウンセリングおよび医療ケアの提供を含む)の整備に関する女子差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/IRL/CO/4-5)をあらためて繰り返す。委員会は、締約国に対し、人身取引に関するさらなる情報およびデータ(とくに子どもに関するもの)を次回の報告書で提供するよう要請するものである。 マイノリティに属する子ども 78.委員会は、締約国報告書(とくに差別の禁止および児童福祉に関する第3章)および事前質問事項に対する文書回答(とくにトラベラー問題に関するハイレベル部会報告書に関するもの)で提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、トラベラー・コミュニティに属する子どもの権利の享受を増進させること、ならびに、とくに教育、住居および保健サービスへのこれらの子どもによるアクセスを促進することを目的とする、十分な承認、対応および積極的措置がまだ図られていないことを、依然として懸念するものである。 79.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人種差別撤廃委員会から求められたとおり(CERC/C/IRL/CO/2、パラ20)、トラベラー・コミュニティを民族的集団として承認することに向けていっそう具体的に行動すること。 (b) 子どものウェルビーイングの向上を目的とした政策および戦略ならびに具体的措置のさらなる基礎とするため、保健、住居および教育の分野において、トラベラー・コミュニティに属する子どもにとくに焦点を当てながら、調査研究または包括的ニーズ評価を実施しまたは既存の調査研究および評価を活用すること。 (c) トラベラー・コミュニティ特別委員会の勧告を実施すること。 (d) とくに教育、保健サービスおよび居住施設の享受ならびにこれらへのアクセスとの関連でトラベラー・コミュニティに属する子どもの権利の享受を増進させるためにとられた措置に関する詳細な情報を、次回の報告書で提供すること。 80.委員会は、子どもおよび若者の間でアイルランドの言語および文化を促進するための努力、ならびに、ロマの子どもの周縁化および社会的排除を防止するために行なわれている努力についての具体的情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。 81.委員会は、締約国に対し、次回の報告書でさらに詳しい情報を提供するよう要請する。 8.子どもの権利条約の選択議定書 82.委員会は、締約国が表明したとおり、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書についての第1回報告書(提出期限・2004年12月)を受領することを待望する。 83.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への署名(2000年)を歓迎するとともに、締約国の意思にしたがってこの選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 84.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連省庁、ウラクタス(国民議会)および関連の地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 85.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 86.委員会は、締約国に対し、2009年4月27日(すなわち第4回報告書の提出期限)までに第3回・第4回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年受領する報告書が多数にのぼることを理由とする、例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2013年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/148.html
総括所見:デンマーク(第3回・2005年) 第1回(1995年)/第2回(2001年)/第4回(2011年)OPAC(2005年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/DNK/CO/3(2005年11月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月26日に開かれた第1072回および第1073回会合(CRC/C/SR.1072 and 1073参照)においてデンマークの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.3)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定期報告書の作成に関するガイドラインにしたがって作成された締約国の第3回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/DNK/3)に対する文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、デンマークにおける子どもの状況に関する理解を向上させることができたことを歓迎する。委員会は、締約国に対し、グリーンランドにおける子どもの状況に関する情報を記載してくれたことについて評価の意を表するものである。しかしながら委員会は、ファロー諸島に関する十分な情報が報告書に含まれていなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、関連省庁の専門家を含む締約国代表団との率直かつ建設的な対話に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、代表団にグリーンランドの代表が1名参加していたことについても評価の意を表するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下のものを含む、報告対象期間中に見られた多くの積極的発展を歓迎する。 (a) 子どもの権利条約の実施について全般的進展があったこと。 (b) 子どもの権利の促進および保護に関するものも含む政府開発援助に対し、引き続きコミットメントを示していること。 (c) 外国人法および統合法が改正され、保護者のいない子どもの庇護希望者の法定代理人について定められたこと。 (d) 子どもの性的虐待に関わる刑事手続の進行に関して司法運営法が改正されたこと。 (e) 若者関連の問題について政府に助言を行なう若者フォーラムが設置されたこと。 5.委員会はまた、以下の文書の批准を歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書(それぞれ2002年9月および2003年8月) (b) 国際刑事裁判所ローマ規程(2001年6月)。 (c) 国際組織犯罪防止条約を補足する、人、とくに女性および子どもの取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2003年9月)。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.6)の検討後に表明されたさまざまな懸念および勧告(CRC/C/15/Add.151参照)への対応が立法上、行政上その他の措置を通じて行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくに国内法への条約の編入、条約の普及、思春期の健康および少年司法制度に関するものへの対応が十分ではないことに留意するものである。 7.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしか実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。 留保 8.委員会は、締約国が法改正を行なう予定であり、それによって第40条に付した留保の適用範囲を限定できる可能性がある旨の、代表団によって提供された情報を歓迎する。 9.委員会は、ウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、第40条に付した留保の全面的撤回に向けた努力を継続するよう、勧告する。 立法および実施 10.委員会は、条約が国内法に正式に編入されていない理由についての報告書および事前質問事項への文書回答における締約国の説明、および、締約国は条約の全面的実施のために精励している旨の代表団の発言に留意する。委員会はさらに、締約国が、欧州人権条約を含む他の地域的文書を国内法に編入していることに留意するものである。 11.委員会は、締約国が、国内法令が条約と全面的に一致することを確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、国内法の規定が条約に掲げられた権利に抵触するときは常に条約が優先するべきことを勧告するものである。 調整 12.委員会は、条約の実施を調整する任務を委ねられた家族・消費者問題省の設置を歓迎するとともに、テーマ別の調整のための臨時省庁間委員会が役割を果たしていること、および、自治体が2006年中に一貫した子ども政策を策定しなければならないことに留意する。しかしながら委員会は、国レベルにおいておよび国と地方レベルとの間で包括的調整がどのように確立されるのかがいまなお不明確であることを、懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、条約の包括的かつ効果的実施を国の全域で確保する目的で締約国のすべての政策を効果的に調整する、家族・消費者問題省の能力を強化するよう、勧告する。 国家的行動計画 14.委員会は、さまざまな部門別行動計画には留意しながらも、包括的な国家的行動計画がいまなお存在しないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、さまざまな部門別行動計画を包含し、条約のすべての分野を網羅する包括的な国家的枠組みにこれらの行動計画を位置づけることによってこれらの計画間に存在する可能性がある食い違いに対応し、かつ、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」を考慮に入れた、国家的行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。 データ収集 16.委員会は、とくに事前質問事項に対する文書回答で提供されたデータの量に評価の意とともに留意するものの、これらのデータにはいまなお欠落があるという締約国の懸念を共有する。委員会はさらに、グリーンランドおよびファロー諸島における条約の実施についての統計データがないことを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、条約の実施の全体像を理解するために必要なデータを収集するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、グリーンランドおよびファロー諸島における条約の実施についての詳細なデータを次回の定期報告書で提供するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告するものである。 子どものための資源 18.条約の実施に振り向けられた資源配分について利用可能とされた情報は歓迎しながらも、委員会は、グリーンランドに関する情報がきわめて限られていることを懸念する。 19.委員会は、締約国が条約第4条に基づく義務をどの程度満たしているかに関する適正な評価が行なえるようにする目的で、とくにグリーンランドおよびファロー諸島における条約の実施に関わる国家予算の額および割合についての具体的情報の提供を継続しかつ強化するよう、勧告する。 独立の監視機構 20.委員会は、国家子ども評議会が監視の役割を担っており、かつ、その役割および職務について現在締約国で議論が行なわれている旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、同評議会の財源が削減されたことを懸念するものである。 21.国内人権機関に関する一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、条約の実施を監視するための独立機関(オンブズマン事務所または国家子ども評議会など)を指定し、またはそのための別個の機関を設置するよう、勧告する。当該機関に対しては、個別の苦情申立てに対応する権限が与えられ、かつ必要な人的資源および財源が提供されるべきである。 研修/条約の普及 22.締約国が努力を行なっていること、および、条約の普及が継続的プロセスであり、かつ国家子ども評議会の活動において高い優先順位を与えられていることには留意しながらも、委員会は、条約に関する体系的なかつ一貫した教育が学校で行なわれていないことを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約その他の関連の人権条約をカリキュラムに編入するとともに、初等学校および中等学校の双方においてこれらの条約に関する教育を強化すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカーおよび保健従事者)およびとくに子どもたち自身を対象とする、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止 24.委員会は、人種または民族的出身を理由とする直接間接の差別を禁止し、かつ嫌がらせおよび差別するよう指示することを禁止する規定を含む民族平等法が2003年5月に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、民族的マイノリティの子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住者家族に属する子どもに対する事実上の差別ならびに人種主義的および排外主義的態度についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.151参照)をあらためて表明するものである。これとの関連で、委員会は、社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.102参照)および人種差別撤廃委員会が表明した懸念と見解を一にする。 25.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、すべての子どもに対するあらゆる形態の事実上の差別を防止しかつ撤廃するための努力を強化するよう、勧告する。 26.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするための行動計画の作成が進められているという情報を歓迎する。委員会は、当該計画の内容および実施に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請するものである。 子どもの意見の尊重 27.委員会は、行政上の意思決定プロセスにおいて、12歳の未満を含む子どもの意見がいっそう考慮されるようになっていることを歓迎する。 28.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもとともに働くすべてのおとなが、自己の意見を表明する力のある子どもに対してそのための十分な機会が提供され、かつその意見が効果的に考慮されるようにするための訓練を受けることを確保すること。 (b) すべての自治体が、子どもおよび若者による積極的参加の要件を満たし、かつ、子どもの意見がどの程度考慮されているか(子どもの意見が関連の政策およびプログラムに及ぼした影響を含む)について定期的に検討することを確保すること。 3.市民的権利および自由 適切な情報へのアクセス 29.子どもによるインターネットの利用について研究し、かつそのような利用に関する一連の「交通安全規則」を策定しようとするメディア評議会の取り組みは歓迎しながらも、委員会は、インターネット上で発見しうる不適切な資料および違法な資料の量が多いことを懸念する。 30.委員会は、締約国に対し、条約第17条(e)にしたがって子どもがその福祉にとって有害な情報および資料から保護されることを確保するよう、奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 家族再統合 31.委員会は、家族再統合の資格を認められる子どもの年齢制限を18歳から15歳に引き下げる法改正について、依然として懸念を覚える。 32.委員会は、締約国が、家族再統合の手続が条約第1条と全面的に一致することを確保するためにあらゆる措置をとるよう、勧告する。 代替的養護 33.委員会は、家庭外養護に措置される子どもが増えていることに懸念とともに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 家庭外措置の必要性に関する徹底したアセスメントが常に行なわれているわけではないこと。 (b) 若年の子ども(0~7歳)の相当数が3回以上の措置を経験していること。 (c) 民族的マイノリティの子どもが、人口比に照らして過剰に代替的養護施設に措置されていること。 (d) 子どもとその親との接触がきわめて限られていること。 34.委員会は、締約国が、家庭外養護への措置を可能なかぎり回避する目的で、子どもおよびその親を支援するための努力を強化するよう勧告する。とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どものいかなる措置も、当該措置の必要性に関する全面的アセスメントの後に行なわれることを確保すること。 (b) すべての事案で、子どもの措置の前に作成される行動計画に目標およびその達成手段が盛りこまれること、および、当該計画が子どもの積極的参加を得て策定されることを確保すること。 (c) 家庭外養護の対象とされた子どもにとっての継続性を確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (d) デンマーク系以外の民族的出身の里親家庭および施設職員を募集するため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) 子どもとその親との定期的接触を、当該接触が子どもの最善の利益に反しないときは常に積極的に促進しかつ支援すること。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 35.委員会は、児童虐待と闘うための行動計画を社会問題省が採択したこと(2004年)を含むさまざまな取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、字王虐待およびネグレクトその他の形態の家族間暴力が高い水準で発生していることを、依然として懸念するものである。 36.委員会は、締約国が、以下の措置をとること等を通じ、児童虐待の被害者である子どもに十分な援助を提供するための度慮kを継続しかつ強化するよう、勧告する。 (a) 児童虐待をともなう事案の早期発見および処理。 (b) あらゆる形態の児童虐待を防止しかつこれと闘うための、子どもの関与を得て行なう公衆意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン。 (c) 子どもを虐待するおそれがある家庭をとくに対象とした子育て訓練プログラム。 (d) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (e) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (f) 全国的なヘルプライン「ボーネ・テレフォン」への支援およびこれとの連携を強化すること。 37.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 38.委員会は、一部自治体で障害のある子どもの保育に関する政策が定められていない可能性があること、および、子どもの最善の利益が常に尊重されているわけではないことを懸念する。 39.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どものニーズがすべての自治体の政策で全面的に考慮されることを確保すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービスへの平等なアクセスが提供されることを確保すること。 (c) 必要な支援を提供し、かつ、教員が普通学校で障害のある子どもを教育する訓練を受けることを確保する等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。 健康および保健サービス 40.委員会は、とくに学校および保育所における健康促進プログラムならびに喘息、アレルギーおよび全般的ウェルビーイングに関わる問題防止のための取り組みを含む保健プログラム「健康な生涯」が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、運動の少なさおよび栄養バランスの悪い食事があいまって生じる体重過多の問題がデンマークの子どもの間で増大しつつあることを懸念するものである。委員会はまた、グリーンランドで乳児死亡率が高くかつ栄養不良の発生件数が多いことも懸念する。 41.委員会は、締約国が、子どもの体重過多および肥満に対応するための努力を継続しかつ強化するとともに、条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)に細心の注意を払うよう、勧告する。とくに締約国は、肥満を予防しおよびこれと闘うための努力ならびにグリーンランドにおける栄養不良を削減しおよび予防するための努力を強化するよう、促されるところである。委員会は、締約国が、乳児死亡率が高い問題に対処するため、遠隔地および農村部における出産前ケア政策を引き続き改善するよう、勧告する。 精神保健サービス 42.精神保健ケアサービスを強化するためにとられた措置は認知しながらも、委員会は、相当数の子どもおよび若者が成人向けの精神医学センターに措置されていることなどの課題が残されていることを懸念する。委員会は、グリーンランドにおける自殺率がとくに青少年の間で高いことを深く懸念するものである。 43.委員会は、締約国に対し、子どもおよび若者が成人向けの精神医学センターに措置されることを回避する目的ですべての子どもおよび若者に十分な治療/ケアが提供されることを確保するため、精神保健ケアの発展を継続しかつ強化するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、とくにグリーンランドにおける青少年の自殺を防止するための措置を強化するよう、勧告するものである。 44.委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることを懸念する。 45.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療についてさらなる調査研究(子どもの心理的ウェルビーイングに対する悪影響の可能性も含む)を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。 十分な生活水準 46.委員会は、締約国が貧困および社会的排除の防止のための行動計画を策定したこと、および、この計画に子どもおよび若者に関する節が設けられていることに留意する。しかしながら委員会は、社会的に不利な立場に置かれた家庭の子どもおよび民族的マイノリティの子どものニーズが同計画に全面的に反映されていない可能性があることを、懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、すべての子どものニーズが満たされることを確保するとともに、子ども、とくに社会的に不利な立場に置かれた家庭の子どもおよびデンマーク系ではない民族的出身の子どもが貧困下で暮らすことのないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 48.委員会は、すべての若者がその民族的背景に関わりなくデンマークの教育制度において平等な教育機会を享受できるようにすることを目的とする統合向上作業部会および「すべての若者が必要とされている」キャンペーンを含め、締約国がとっているさまざまな措置を歓迎する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもが初等中等教育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとること。 (b) 民族的マイノリティの教育の促進に特段の注意を向けながら、教育における人種的格差を是正するための努力を強化すること。 50.学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置(教育環境法を含む)は歓迎しながらも、委員会は、この現象が学校で根強く生じており、かつ子どもおよび若者の関与/包摂が不十分であることを依然として懸念する。 51.委員会は、締約国が、いじめと闘うための措置を強化し、かついじめの削減を目的とした取り組みへの子どもの参加を確保するよう勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民および庇護希望者 52.子どもの庇護希望者の法的地位を向上させ、かつそのニーズに対していっそうの注意が払われることを確保するために外国人地位向上法および統合法が改正されたことには留意しながらも、委員会は、受入れセンターにおける環境について依然として懸念を覚える。委員会はとくに、十分な心理的支援およびレクリエーションの機会を提供する能力が限られていることを懸念するものである。委員会はまた、保護者のいない子どもの庇護希望者が受入れセンターから多数失踪していることも懸念する。 53.委員会は、締約国が、受入れセンターの環境を向上させ、かつ、保護者のいないすべての子どもの庇護希望者に資格のある後見人が任命されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、受入れセンターから失踪する保護者のいない子どもに関する研究を実施するとともに、これらの子どもの権利の尊重に関してその研究の成果を指針とすべきことを勧告するものである。委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対して締約国の注意を促す。 薬物およびアルコールの濫用 54.委員会は、締約国において薬物およびアルコールを消費する子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親に対し、薬物およびアルコールの濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供すること。 (b) 薬物を使用している子どもおよびアルコールを濫用している子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。 (c) 薬物およびアルコールの濫用の被害を受けた子どもを対象とした、回復および再統合のためのサービスを発展させること。 性的搾取 56.委員会は、国家警察庁長官官房によって、インターネットを通じて行なわれる犯罪、とくに児童ポルノに関する事件の捜査に対応する特別IT捜査部局が設置された旨の、事前質問事項に対する文書回答で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、性的虐待を描写する画像が製造されていることおよび子どもを関与させるポルノが増加していることを深く懸念するものである。委員会はさらに、インターネット上に「児童エロチカ」画像が存在すること、および、子どもが性的サービスを提供するよう奨励されかつ操作されていることを懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり子どもの商業的性的搾取に関する国家的行動計画を策定する等の手段を通じ、子どもの商業的性的搾取を防止するための努力を強化すること。 (b) 子どもを関与させたエロチックな画像の配布を犯罪化する等の手段により、児童ポルノと闘うための十分な措置をとること。 (c) 被害者の回復および再統合のための措置を強化すること。 (d) 子どもに配慮したやり方で性的搾取の事案を受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象とする研修を行なうこと。 少年司法の運営 58.委員会は、少年〔司法〕運営法が最近(2004年)修正され、法律に触れた15歳未満の子どもに対してとることのできる措置について明確かつ網羅的な規則が盛りこまれたことを歓迎する。しかしながら委員会は、独居拘禁が行なわれていること、および、深刻な行動上の問題を抱えた18歳未満の者が青年施設に収監されていることを懸念するものである。 59.委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の一般的討議にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 現在行なわれている独居拘禁の慣行を優先的課題として見直し、この措置の使用をきわめて例外的な事案に限定し、この措置が認められる期間を短縮し、かつその最終的廃止を追求すること。 (b) 困難な行動を示す18歳未満の者を収監しまたは施設に収容する慣行を廃止するための措置をとること。 (c) 法律に触れた15歳未満の子どもに関する規則を全面的に実施するとともに、条約第40条にしたがい、このような子どもが適正な手続きを経ずに自由を剥奪されないことを確保すること。 8.フォローアップおよび普及 フォローアップ 60.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、国の議会ならびに適用可能なときは州または地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 61.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回〔ママ〕定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 9.次回報告書 62.委員会は、締約国の定期的なかつ時宜を得た報告を評価するとともに、締約国に対し、2008年8月17日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/148参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、次回の定期報告書に、グリーンランドおよびファロー諸島に関する情報が含まれることを期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/115.html
総括所見:フィジー(第1回・1998年) 第2回~第4回(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.89(1998年6月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年5月25日に開かれた第461回および第462回会合(CRC/C/SR.461-462)においてフィジーの第1回報告書(CRC/C/28/Add.27)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年6月5日に開かれた第477回会合において。 A.序 2.委員会は、委員会が設定したガイドラインに従った締約国の第1回報告書、および事前質問リスト(CRC/C/Q/FIJ/1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。これにより、委員会は締約国における子どもの権利の状況を評価することが可能になった。委員会はまた、締約国の代表団との率直な、自己批判的なかつ協力的な対話も歓迎するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国において、子ども調整委員会(CCC)、保健社会福祉省の子ども部、および警察庁の児童虐待部のような、子どもの権利に関するいくつかの行政機構、監視機構および保護機構が最近設置されたことを評価する。 4.委員会は、CCCおよび締約国報告書の作成への非政府組織の参加に、評価の意とともに留意する。 5.委員会は、子どもポルノグラフィーの防止に関する1997年の子ども法改正に留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、締約国が特別な性格を有していること、330の島々から構成されている地形であること、人口が比較的少なく、かつそれが多様なかつ点在する共同体によって構成されていること、および経済構造が最近変化したことに留意する。 D.主要な懸念事項 7.法改正の分野で締約国が構想している措置には留意しながらも、委員会は、締約国の立法と条約の原則および規定とを調和させる必要があることに懸念を表明する。これとの関連で、委員会はまた、子ども青少年法の制定プロセスのペースが遅いことも懸念するものである。 8.既存の調整機構および監視機構のことは承知しながらも、委員会は、とくにマイノリティ・グループに属する子ども、施設ケアのもとで暮らす子ども、女子、および農村部で暮らす子どもを含む最も傷つきやすいグループの子どもたちに対応した、条約が対象とするすべての領域に関する体系的な、包括的なかつ細分化された質的および量的データの収集機構が存在しないことを懸念する。 9.委員会は、子どものためのオンブズパーソンまたはコミッショナーのような、子どものための独立した苦情申立ておよび監視の機構が存在しないことを懸念する。 10.委員会は、子どもの利益のために用いられる資源の予算配分に関する優先領域を特定するにあたって締約国が行なっている努力にも関わらず、条約の規定の全面的実施のための人的および財政的資源の配分が不充分であることを懸念する。 11.条約を普及し、子どものためにおよび子どもとともに働く専門家に対して条約の規定および原則に関する研修を行ない、かつ条約をフィジー語およびヒンズー語に翻訳するための締約国の努力は認めながらも、委員会は、これらの措置は不充分であるとの見解に立つものである。委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループに対する充分なかつ体系的な研修が行なわれていないことを、依然として懸念する。 12.委員会は、締約国が、立法、行政上のおよび司法上の決定、ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいて、条約第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に掲げられた一般原則を全面的に考慮に入れていないように思えることを、懸念する。 13.委員会は、女子16歳・男子18歳に設定されている最低婚姻年齢が差別的でありかつ条約の原則に反することに対し、懸念を表明する。 14.条約第2条の実施に関しては、とくに教育および保健サービスへのアクセスとの関わりで、すべての子どもが条約で認められた権利を全面的に享受することを確保するためにとられた措置が不充分である。一部の傷つきやすい立場に置かれたグループの子ども、とりわけ女子、障害児、農村部またはスラムに暮らす子どもおよび婚外子のことがとくに懸念される。これとの関連で、委員会は、法律において「非嫡出子」(婚外子)という用語が用いられていることは、条約第2条に掲げられた差別の禁止の原則に反すると考えるものである。 15.委員会は、出生登録システムが、条約第7条のあらゆる要求に一致していないことを懸念する。 16.体罰の使用を法律により禁止するためにCCCがフィジー法改正委員会に提出した発議のことは承知しながらも、委員会は、体罰がいまだに親によって用いられていること、および、学校内部規則が、とくに条約第3条、第19条および第28条にしたがってこの有害な慣行を禁ずる明示的規定を掲げていないことを、依然として懸念する。 17.委員会は、家庭の内外における不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)に関する意識が不充分でありかつ情報が存在しないこと、法的保護措置ならびに適切な財政的資源および人的資源が不充分であること、および、このような虐待を防止しかつそれと闘うための充分に訓練された職員が存在しないことを、懸念する。 18.養子縁組に関する現行法が再検討されていることは承知しながらも、委員会は、現行法が条約の原則および規定を反映しておらず、かつ不法移送および不返還から子どもを効果的に保護していないことを、懸念する。 19.乳児死亡率および5歳未満児死亡率を削減するための締約国の努力は認識しながらも、委員会は、栄養不良が蔓延していること、妊産婦死亡率が高いこと、離島において保健サービスへのアクセスが限られていることを、なお懸念する。 20.青少年の健康の分野で締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、若年妊娠率が高くかつ増加していること、青少年の間で性行為感染症が発生していること、10代の自殺が生じていること、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービス(学校外におけるものも含む)への10代によるアクセスが不充分であること、およびHIV/AIDSの予防措置が不充分であることを、とくに懸念する。 21.障害児の状況に関して、委員会は、保健、教育および社会サービスに対するこのような子どもの効果的アクセスを確保し、かつ社会への彼らの全面的インクルージョンを促進するために締約国がとった措置が不充分であることに、懸念を表明する。委員会はまた、障害児とともにおよび障害児のために働く、充分に訓練された専門家の人数が少ないことも懸念するものである。 22.義務的初等教育制度が1997年に段階的に確立されたことには留意しながらも、委員会は、この制度がまだ全面的に実施されていないことを懸念する。委員会はまた、脱落率が高いこと、および質の高い教育へのアクセスが不平等であることに関して懸念を表明するものである。委員会はさらに、締約国において公的な就学前学校制度が存在しないことを懸念する。 23.委員会は、現行の最低就業年齢(12歳)が低いことを懸念する。委員会は、児童労働、および子どもの性的搾取も含む経済的搾取に関するデータが存在しないことを懸念するものである。 24.委員会は、締約国の子どもにますます影響を与えつつある薬物およびアルコールの濫用の問題に対応するための措置が不充分であることを懸念する。 25.委員会は、不当な取扱い、性的虐待および経済的搾取の対象となった子どものリハビリテーションの措置が不充分であること、および司法制度に対する彼らのアクセスが限られていることに、懸念を表明する。 26.少年司法の運営が子ども法によって規制されていることには留意しながらも、委員会は、この法律が条約第37条、第40条および第39条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のような他の関連の基準と全面的に両立しているかどうかについて懸念する。とくに委員会は、ケア・センターの子どもを対象とした法律相談が行なわれていないこと、身柄拘束が最後の手段として用いられていないこと、および拘禁センターの状態が劣悪であることを懸念するものである。最低刑事責任年齢に関して、罪を犯した10歳以上17歳未満の少年が特別な司法手続を享受することは承知しながらも、委員会は、最低刑事責任年齢が低い(10歳)ことをとくに懸念する。17歳以上18歳未満の子どもが少年司法制度のもとで審理されていないことも懸念の対象である。 E.提案および勧告 27.委員会は、締約国に対し、子ども青少年法および子どもの権利に関わる他の立法の制定プロセスを速めるためにあらゆる必要な措置をとるよう奨励する。委員会はまた、締約国が、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、憲法改正法案(1997年)において条約の原則および規定が考慮に入れられるよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、子どもの権利条約にとくに言及することを構想するようにも勧告するものである。 28.委員会は、締約国が、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約および拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を禁ずる条約を含む、他のすべての主要な国際人権条約の批准を構想するよう勧告する。これらはすべて、子どもの権利に影響を与えるものである。 29.委員会は、締約国が、子ども調整委員会を通じて調整の努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、条約が対象とするさまざまな領域における、傷つきやすい立場に置かれたグループに属する子どもを含む子どもの状況に関してあらゆる必要な情報を収集するために、細分化されたデータの収集のための包括的システムを発展させるようにも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的でとくにユニセフの国際協力を求めるよう奨励する。 30.委員会は、締約国に対し、子どものためのオンブズパーソンまたはそれに相当する苦情申立ておよび監視のための独立機構の設置をさらに検討するよう奨励する。 31.委員会は、締約国に対し、条約第4条の全面的実施にとくに注意を払い、かつ、地方および中央のレベルで資源の適切な配分を確保するよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に用いて、必要な場合には国際協力の枠組みにおいて、かつ差別の禁止および子どもの最善の利益(条約第2条および第3条)の原則に照らして確保されるべきである。 32.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を条約の原則および規定と調和させるよう勧告する。 33.条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる司法上のおよび行政上の手続においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業、プログラムおよびサービスの発展および実施においても、適切に反映されるべきであるというのが委員会の見解である。委員会は、締約国に対し、条約第12条に照らして子どもの参加権に関する公衆の意識を向上させるための体系的なアプローチをさらに発展させるよう奨励したい。 34.委員会は、一部のグループ、とくに女子、障害児、施設ケアのもとに置かれている子ども、農村部に暮らす子ども、スラムで暮らしている子どものような貧しい子ども、および婚外子に対する差別を解消するために、より積極的なアプローチをとるよう勧告する。 35.委員会は、締約国が、条約第7条に照らして出生登録システムを向上させるためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、新生児を登録する両親の義務に関する意識啓発キャンペーンを開始するようにも勧告するものである。 36.委員会は、体罰を法律によって包括的に禁ずること、および、体罰の悪影響に関する意識を喚起し、かつ学校、家庭および施設ケアにおける規律の維持およびしつけが条約第28条に照らして子どもの尊厳に一致する方法で行なわれることを確保するための措置をとることを、勧告する。 37.条約第19条に照らし、委員会はさらに、家族間暴力および子どもの性的虐待を含む家庭における不当な取扱いを防止しかつそれと闘うために、締約国が、法改正も含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、あらゆるタイプの子ども虐待を防止しかつ被害を受けた子どものリハビリテーションを行なうための社会プログラムを確立するよう提案するものである。このような犯罪に関する法律の執行が強化されなければならない。特別な証拠法則、および特別調査官もしくは地域共同体の窓口のような、児童虐待の苦情に対応するための充分な手続および機構が発展させられるべきである。 38.とくに条約第3条、第10条および第21条に照らし、委員会は、締約国に対し、養子縁組ならびに不法移送および不返還に関わる法改正のプロセスを速めるよう奨励する。委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約への加入を構想するよう提案するものである。 39.委員会は、締約国が、青少年の健康に関する政策、およびリプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスの強化を促進するよう勧告する。委員会はさらに、青少年の健康上の問題、とくに若年妊娠の規模を理解するために包括的かつ学際的な研究が行なわれるべきであると提案するものである。委員会はまた、青少年およびその家族を対象とした、子どもに優しいケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるために、財政面でも人材面でもさらなる努力が行なわれるようにも勧告する。 40.障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児に対する差別を減らすための意識啓発キャンペーンを構想し、障害児のための特別教育のプログラムおよびセンターを設置し、かつ社会へのそのインクルージョンを奨励するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の養成および研修のために技術的協力を求めるよう勧告するものである。この目的で、とくにユニセフおよび世界保健機構の国際協力を求めることができる。 41.委員会は、義務教育制度の全面的実施を速め、かつもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもの教育へのアクセスを向上させるために、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 42.委員会は、条約第32条および他の関連の国際文書の規定を全面的に実施するために、法改正もむさらなる措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約への加入を検討するよう奨励するものである。さらに、経済的搾取、または、危険があり、子どもの教育を妨げ、もしくはその健康または身体的、心理的、精神的、道徳的または社会的発達にとって有害となる恐れのあるいかなる労働をも防止しかつそれらと闘うための努力が行なわれなければならない。家庭において働いている子どもを全面的に保護するため、その状況にとくに注意が向けられるべきである。委員会は、締約国が、この領域でとくにユニセフおよびILOの技術的協力を求めることを構想するよう勧告する。 43.委員会は、締約国が、子どもによる薬物および有害物質の濫用を防止しかつそれと闘うための努力を強化し、かつ、学校内外の広報キャンペーンを含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。 44.委員会は、売買春およびポルノグラフィーにおける子どもの使用ならびに子どもの売買および誘拐を含む子どもの性的経済的搾取を防止しかつそれと闘う目的で、条約第34条の規定を全面的に実施するために法改正を含むさらなる措置をとるよう勧告する。 45.条約第39条に照らし、委員会は、締約国が、不当な取扱い、性的虐待および経済的搾取の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・センターを設置するためにさらなる努力を行なうよう勧告する。 46.少年司法の運営に関して、委員会は、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のようなこの領域の他の関連の国際基準の規定を同国の立法、法律、政策、プログラムおよび実務に全面的に統合するため、締約国があらゆる措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、法に抵触したケア・センターの子どもを対象とした法律相談に関する規定を見直すこと、身柄拘束は最後の手段としてのみ使用すること、および拘禁センターの環境を向上させることを、勧告するものである。委員会は、締約国が最低刑事責任年齢を引き上げ、かつ、少年司法制度のもとで審理される者の年齢を18歳に引き上げるよう、強く勧告する。さらに委員会は、締約国が、少年司法における技術的助言および援助に関する調整委員会を通じて、とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワークおよびユニセフの国際的援助を求めることを検討するよう勧告するものである。 47.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに同報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような幅広い配布は、政府、議会および関心のある非政府組織を含む公衆一般の間で、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/167.html
総括所見:シンガポール(第2~3回・2011年) 第1回(2003年)OPAC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SGP/CO/2-3(2011年5月2日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月20日に開かれた第1590回および第1591回会合(CRC/C/SR.1590 and 1591参照)においてシンガポールの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/SGP/2-3)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第2回・第3回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/SGP/Q/2-3)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国の状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、ハイレベルなかつ多部門から構成された代表団との前向きな対話も評価するものである。 II.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、2003年に締約国の第1回報告書を検討して以来の、多くの前向きな発展を歓迎する。これには、以下のもののような、立法上その他の措置の採択も含まれる。 (a) シンガポールおよび他国における子どもの性的搾取を犯罪化した、2007年10月の刑法改正。 (b) 子どもがシンガポール籍の母を通じて市民権を取得することを可能にした、憲法第122条の改正(2004年4月)。 (c) 中央青少年指導庁(CYGO)および公的後見人庁の設置(2010年)。 (d) 国家家族評議会(NFC)の設置(2008年5月)。 (e) 地域裁判所(2006年6月)および子ども養護裁判所(2008年5月)の設置。 (f) 専門の裁判手続であるCHILD(子どもの最善の利益/対審構造緩和)の導入(2008年7月)。 (g) 就業が認められるための最低年齢に関するILO条約(第138号)の批准(2005年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 4.締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.220、2003年)を実施しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、そこに掲げられた多くの勧告について十分なフォローアップが行なわれていないことに懸念を表明する。 5.委員会は、締約国に対し、締約国の第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの(独立の監視、子どもの定義、差別の禁止、子どもの意見の尊重、親の責任、障害のある子どもおよび少年司法等の問題に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。これとの関連で、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年、CRC/GC/2003/5)に対して締約国の注意を喚起するものである。 宣言および留保 6.委員会は、前回の総括所見における勧告(CRC/C/15/Add.220、パラ7)にも関わらず、締約国が、条約第12条、第13条、第14条、第15条、第16条、第17条、第19条および第37条に関する多数の宣言ならびに第7条、第9条、第10条、第22条、第28条および第32条に対する留保をいまなお維持していることを、深く遺憾に思う。委員会は、条約のこれほど多くの条項(子どもの意見の尊重の原則も含む)に関する宣言および留保が継続していることについて重大な懸念を表明するものである。これらの宣言および留保は、条約に基づく締約国の義務の全面的および効果的実施を妨げる障壁となるからである。 7.1993年世界人権会議のウィーン宣言および行動計画に照らし、かつ締約国によってすでに相当の措置がとられていることに鑑み、委員会は、締約国に対し、条約に関する宣言および留保をこれ以上の遅滞なく撤回するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。 立法 8.委員会は、子どもの生活条件および発達の向上に貢献する、子どもの権利の分野におけるいくつかの法律(刑法および子ども・若者法を含む))の改正が行なわれたことを歓迎する。しかしながら委員会は、最近の立法上の進展にも関わらず、条約が国内法に全面的には編入されておらず、かつ締約国において直接適用可能とされていないことに、懸念とともに留意するものである。 9.委員会は、締約国に対し、条約のすべての原則および規定が国内法体系に全面的に編入されることを確保するよう、促す。 調整 10.委員会は、締約国による条約の実施の調整および監視において子どもの権利条約に関する省庁間委員会(IMC-CRC)が果たしている積極的役割に留意する。しかしながら委員会は、省庁間委員会の所掌事項に、子どものためのすべての政策およびプログラムの調整がいまなお含まれていないことを懸念するものである。 11.委員会は、締約国が、条約に関する省庁間委員会の所掌事項、職務および能力を拡大して子どものためのすべての政策およびプログラムの調整を含めるよう、勧告する。委員会はまた、省庁間委員会が条約の実施の監視および評価について定期的に報告を行なうこと、および、その報告書が社会のあらゆるレベル(子どもを含む)で広く普及されるべきことも、勧告するものである。 国家的行動計画 12.委員会は、子どもに関わるさまざまな部門別戦略が策定されてきたことについて、積極的な対応として留意する。しかしながら委員会は、これらの戦略にともない、実施のための具体的な行動計画が策定されることはほとんどないことを懸念するものである。委員会は、締約国が条約実施のための包括的な国家的行動計画(NPA)を策定していないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、締約国が、子どもおよび家族に関するさまざまな戦略を、条約の全面的実施を確保することを目的とした子どものための包括的な国家的行動計画に基づいて調和させるよう、勧告する。国家的行動計画は、権利を基盤とし、かつ条約のすべての原則および規定を網羅したものであるべきである。NPAは、国レベルの開発計画、戦略および予算と連携し、かつ、すべての子どもによるすべての権利の享受に関わる進展を効果的に測定するための、具体的な、期限の定められたかつ測定可能な目標を掲げることが求められる。 独立の監視 14.子どもが権限のある部門別機関に苦情を申し立てられることには留意しながらも、委員会は、締約国が、条約上の子どもの権利の充足を恒常的に監視すること、ならびに、子どもの権利の侵害に関する苦情を受理しおよび独立の立場から調査することを目的とした独立機構を設置していないことを、依然として懸念する。 15.委員会は、前回の総括所見に掲げられた勧告(パラ13)をあらためて繰り返し、締約国に対し、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を全面的に考慮に入れながら、パリ原則(総会決議48/134)にしたがった独立機構を設置するよう、促す。このような機関に対しては、条約が対象とするすべての分野について、子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる苦情を受理しかつ調査する明確な権限が与えられるべきである。このような機関に対しては、すべての子どもがアクセスでき、かつ、職務を十分に果たすために必要な人的資源、財源および技術的資源を提供されることが求められる。 データ収集 16.委員会は、締約国の報告書および事前質問事項に対する回答で提供された詳細な統計データに留意する。しかしながら委員会は、とくに子どもに対する暴力、人身取引の被害を受けた子どもおよび子どもの性的搾取に関するデータが不十分であることを懸念するものである。 17.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起し、委員会は、条約が対象とするすべての分野、とりわけ暴力、人身取引および子どもの性的搾取について、とくに年齢(18歳未満の者)、性別、民族的および社会経済的背景ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団別に細分化されたデータが収集されることを確保する目的で、締約国が、子どもに関する国レベルの中央データベースを設置し、かつ条約に一致した指標を開発することによってデータ収集機構を強化するよう、勧告する。 普及および意識啓発 18.委員会は、条約に関する子どもおよび公衆一般の意識を高めるために締約国が行なっているさまざまな取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもおよび公衆一般を対象とする教育および意識啓発には継続的に注意を向けることが必要であると考えるものである。したがって委員会は、締約国に対し、子ども、その親およびより幅広い公衆に対して条約(子どもを対象としてとくに立案した適切な資料を含む)を引き続き普及するよう、奨励する。 研修 19.子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として条約の原則および規定に関する研修を行なおうとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する専門家集団の研修活動が依然として不十分であることを懸念する。 20.委員会は、社会福祉の現場ならびに法律上および行政上の手続において条約の原則および規定が広く適用されることを確保する目的で、締約国が、専門家に対して研修を行なう努力を強化するよう勧告する。 市民社会との協力 21.ボランティア福祉団体を含む市民社会との協働に対する「たくさんの支援の手」アプローチには留意しながらも、委員会は、役割について明瞭さが欠けていること、および、政策決定レベルまたは報告プロセスにおける市民社会との協力が限られていることを、懸念する。 22.委員会は、締約国が、条約の実施のあらゆる段階(政策立案も含む)および今後の定期報告書の作成において、いっそう制度的なかつ調整のとれたやり方で非政府組織(NGO)の関与を得るよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」に関する一般的討議(2002年)の勧告を考慮し、かつ、サービスを提供している民間団体の監督を、当該サービスが権利を基盤としたものであることを確保する目的で改善することも、勧告するものである。 国際協力 23.条約第4条に関して、委員会は、国際協力の取り組み、とくに国連平和維持活動ならびに二国間および多国間の人道上の行動に対して締約国が行なっている貢献に留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国の経済が相対的に安定しているにも関わらず、国際的に合意された目標、とくに子どもを特別に重視したミレニアム開発目標に向けられた政府開発援助(ODA)についての情報が存在しないことに、留意するものである。 24.委員会は、締約国に対し、ODAに関する情報を透明化するとともに、対国内総生産比0.7%というODAについての国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めおよび二国間協力において子どもの権利の実現が優先課題となることを確保することも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、締約国の提携国に関して委員会が採択した総括所見および勧告に特段の注意を払うよう、促す。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の勧告を考慮するよう、慫慂するものである。 子どもの権利と企業セクター 25.委員会は、締約国が、その管轄下にある国内企業および多国籍企業を対象とし、かつ、人権理事会が2008年に採択した国連・ビジネスと人権枠組みにしたがった、子どもの権利に関わる企業の社会的責任(CSR)指標を採択していないことを懸念する。国連・ビジネスと人権枠組みは、人権を保護する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際の、効果的救済措置に対する被害者のアクセスという3つの原則から構成されるものである。 26.委員会は、締約国が、シンガポール企業(シンガポールに本社を置く多国籍企業も含む)が子どもの権利について報告するための枠組みを定めるよう勧告する。その際、委員会は、締約国が条約の関連規定を適用するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、とくに国連・ビジネスと人権枠組みをとりわけ子どもの権利との関連で民間企業および公共企業体の活動に適用することについての世界中の経験を、正当に考慮するよう奨励する。 B.子どもの定義(条約第1条) 27.委員会は、イスラム法運用法(AMLA)の改正により、イスラム教徒の女子の最低婚姻年齢が16歳から18歳に引き上げられたことを歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見における勧告(パラ22)にも関わらず、子ども・若者法(2010年の法律第15号による改正法)がいまなお16~18歳の子どもを対象としていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、国内法における子どもの定義を条約にしたがって調和させるためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が子ども・若者法の適用を拡大し、18歳未満のすべての者を対象とするよう勧告するものである。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.委員会は、差別の禁止の原則が市民に限定されており、条約第2条で定められているように、親の地位に関わりなく締約国の管轄内にあるすべての子どもに対して適用されていない旨の、前回の総括所見(パラ24)で指摘した懸念をあらためて表明する。さらに委員会は、女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する差別がいまなお根強く残っている旨の報告について懸念を覚えるものである。 30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の管轄内にあるすべての子ども、とくに女子、障害のある子どもおよび外国系の子どもに対し、条約に定められた権利をいかなる種類の差別もなく尊重しかつ確保するため、法律を改正すること。 (b) あらゆる形態の差別(被害を受けやすい状況に置かれたあらゆる集団の子どもに対する複合的形態の差別を含む)に対応し、かつ差別的な社会的態度と闘う包括的な戦略を採択しかつ実施すること。 (c) 広範な関係者との調整を図り、かつ社会のあらゆる部門の関与を得ながら、社会的および文化的変革、ならびに、子どもの平等の支えとなる、誰もがその可能性を発揮できる環境づくりを促進するような努力を行なうこと。 (d) 事実上の差別の効果的監視を可能とするため、ジェンダー、人種、民族的出身または社会的背景および障害の別に細分化されたデータを収集すること。 (e) そのような努力を監視し、かつ設定目標の達成に向けた進展を定期的に評価するとともに、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載すること。 子どもの最善の利益 31.委員会は、子ども・若者法(2010年の法律第15号による改正法)に指導的原則としての子どもの最善の利益が含まれていること、ならびに、子どもの最善の利益の原則を促進するための各種プログラム、とくにCHILD(子どもの最善の利益/対審構造緩和)およびIMPACTプログラムが設けられていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに関わる法律のほとんど、ならびに、司法上および行政上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいて子どもの最善の利益の原則への言及が見られないことを、懸念するものである。 32.委員会は、子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがって第一次的に考慮され、かつ、自国の法律、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼす政策、プログラムおよびサービスに全面的に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 33.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、施設、司法制度および社会一般において自己に影響を与える広範な問題についての子どもの意見表明が制限され、かつしばしば妨げられていることを依然として懸念する。委員会はまた、自己に影響を与える司法上および行政上の手続において子どもに意見を表明するよう制度的に促す正式な手続が設けられていないことも、遺憾に思うものである。 34.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭その他の場面において意見を聴かれる子どもの権利を積極的に促進するとともに、あらゆる文脈(学校その他の子ども施設、裁判所および行政機関ならびに政策立案プロセスにおけるものも含む)において、自己に影響を与えるすべての事柄について子どもが意見を表明できるようにする正式な手続を設けること。 (b) 子ども・若者法を含む法律を改正し、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明する子どもの権利を含めること。 (c) 条約第12条に関する宣言の撤回を検討すること。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 名前および国籍 35.子どもが母からの継承によって市民権を取得することを可能にした2004年4月の憲法改正は歓迎しながらも、委員会は、この改正法が適用されるのは2004年5月15日移行に生まれた子どものみであることに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国にいまなお多数の無国籍児が存在すること、および、特定の状況において、子どもが憲法第129条2項(a)に基づき市民権を剥奪される可能性があることを、懸念するものである。 36.委員会は、締約国に対し、子どもが市民権を剥奪されることを防止する目的で国籍法を改正するとともに、シンガポール国籍の母の子であって2004年前に生まれた子ども全員に市民権を付与することを検討するよう、勧告する。 表現、結社および平和的集会の自由 37.子どもがいくつかの場で意見を表明するよう奨励されていることには留意しながらも、委員会は、これらの場がきわめて限られており、かつ、表現の自由(公に苦情を申し立てる権利および情報を受ける権利を含む)ならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを、懸念する。委員会は、表現ならびに平和的集会および結社の自由に対する権利が憲法で保障されているにも関わらず、これらの権利が実際には厳しく制約されており、かつ、自己の意見を公に表明する自由が引き続き制限されていることを、懸念するものである。 38.委員会は、締約国が、表現、結社および平和的集会に対する子どもの権利が全面的にかつ実際に実施されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、条約第12条、第13条および第15条に関する宣言を、撤廃の方向で見直すことも奨励するものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 39.体罰の使用の制限および抑制を図る教育プログラムおよび指針には留意しながらも、委員会は、笞打ちを含む体罰がいまなお家庭、学校および施設における合法的な形態のしつけおよび規律と見なされていることについての深い懸念を、あらためて表明する。 40.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰(笞打ちを含む)を、これ以上のいかなる遅滞もなく、法律で明確に禁止すること。 (b) 体罰に代わる手段としての積極的かつ非暴力的な形態の規律について、引き続き、教員ならびに施設および少年拘禁所で働く職員を対象とした体系的研修を行うこと。 (c) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響についての、親、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を引き続き進めるとともに、体罰の代わる手段としての、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育ておよびしつけを促進すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに、子どもに対する暴力に関する事務総長独立専門家〔ママ〕が強調した、期限の定められた以下の優先課題を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長独立専門家〔ママ〕と協力するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 42.委員会は、家族に対して親教育および金銭的援助を提供するために締約国が努力していること、および、高度のニーズを有する家族への支援を向上させる目的で機能不全家族に関する省庁間委員会が設置されたこと(2007年)に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、このような家族が、子どもの養育責任に見合った十分な支援を受けていない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、保育所保育扶助(CFAC)制度の資格要件が厳格であるため、低所得家庭およびひとり親家庭が負担可能な保育にアクセスできないことも懸念する。 43.委員会は、子どもの養育責任を担う親および法定保護者の能力を高める目的で、締約国が、カウンセリング、親教育および安定した家庭環境を支えることにつながるその他の意識啓発プログラム等も通じ、親および法定保護者に対する支援およびサービスを強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、保育所保育扶助(CFAC)制度の資格要件(母親の就労要件を含む)を見直し、かつ、低所得家庭およびひとり親家庭が負担可能な保育にアクセスできることを保障することも、勧告するものである。 44.委員会は、外国人人材雇用法の適用により、一部の子どもが親から分離される結果が生じていることを懸念する。これは、「Sパス」および「雇用パス」カテゴリー以下の労働許可しか得ていない移住労働者は、労働許可証管理官の事前の承認がなければシンガポールの市民または永住者と婚姻することが許されておらず、かつ、妊娠を理由として就労許可が取り消され、その結果、退去強制が行なわれる場合もあることを踏まえての懸念である。 45.委員会は、締約国に対し、親からの子どもの分離を回避する目的で出入国管理に関わる法律および政策(とくに出入国管理法および外国人人材雇用法)を見直すとともに、条約第9条および第10条に付した留保の撤回をあらためて検討するよう、促す。 家庭環境を奪われた子ども 46.委員会は、親が子ども養護裁判所に対して正式な苦情を申し立てることができ、かつ8~16歳の子どもが施設(ときには非行少年と同じ施設)に措置される可能性がある「親の手に負えない子ども」制度の、締約国による扱いについて深い懸念を表明する。委員会は、この制度が子どもにスティグマを付与し、かつ、可能性を発揮させるのではなく懲罰的な措置としてとらえられる可能性があることを遺憾に思うものである。委員会はまた、「親の手に負えない子ども」制度が、子どもまたは若者の親または保護者に対し、子どもまたは若者の養育および福祉について主たる責任を負うよう奨励する2010年の子ども・若者(改正)法案に一致しないことにも留意する。 47.委員会は、締約国が、2009年の総会決議64/142に掲げられた子どもの代替的養護に関する指針を考慮し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの施設措置が最後の手段として、かつ適切な司法的監督のもとでのみ用いられることを確保する目的で、「親の手に負えない子ども」に関する政策を再検討すること。 (b) 子どもおよび家族の問題の根本的原因、現行制度の有効性およびそれが子どもに与える影響についての、ジェンダーに配慮した研究を行なうこと。 (c) 子どもおよび家族に対し、カウンセリング、子育てスキル訓練、必要な場合には適切な治療、および他のあらゆる保護措置を最優先で提供すること。 (d) 配慮に満ちた安全な環境で成長する子どもの情緒的ニーズに関する、親、専門家および公衆を対象とした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を行なうこと。 養子縁組 48.委員会は、子どもの養子縁組法に、国際基準にしたがった子どもの権利の保護措置の多くが欠けていることを懸念する。委員会はまた、十分な保護の保障(司法機関による許可および中欧監督機関を含む)なくして養子縁組が行なわれている事案があること、および、養子縁組目的で子どもの売買が行なわれているという報告があることも、懸念するものである。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子とされたすべての子どもの登録情報を保管すること。 (b) 養子縁組手続の対象とされた子どもの権利の保護を確保するための中央機関を設置すること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を遅滞なく批准すること。 虐待およびネグレクト 50.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトの問題に対処するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに対して行なわれる虐待を発見し、記録しかつ分析するための包括的制度が設けられていないことを懸念するものである。委員会は、子どもとともにまたは子どものために働く専門家に対し、子どもの虐待の通報義務が課されていないことを遺憾に思う。 51.委員会は、締約国が、防止措置をとり、虐待およびネグレクトの悪影響に関する公衆教育プログラムを実施し、かつ虐待の被害を受けた子どもに対して保護および回復のための十分なサービスを提供することにより、児童虐待の問題に対応するための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもとともに働く専門家を対象とした、子どもの虐待およびネグレクトが疑われる事案について通報を行ないかつ適切な行動をとる義務的要件を設けるとともに、この点に関する研修が行なわれることを確保することも奨励するものである。 F.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 52.障害のある子どものための「特別教育」学校に対して公的機関が資金および訓練を提供していることには留意しながらも、委員会は、「特別教育」学校がボランティア福祉団体によって運営されており、かつ公的機関の管轄下にないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもがいまなお教育制度に全面的には統合されておらず、かつ、障害のある子どもおよびそのニーズに関する量的および質的データがいまだに存在しないことを、依然として深く懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法(2003年)の適用を拡大し、障害のあるすべての子どもを対象に含めること。 (b) 特別なニーズを有する子どもに対し、インクルーシブ教育を提供すること。 (c) 障害のある子どもおよびその具体的ニーズに関する量的および質的データを収集しかつ分析するとともに、このような子どもを対象とする適切なプログラムおよび政策の策定のためにこれらのデータを活用すること。 (d) 教員、ソーシャルワーカー、(準)医療従事者および関連の職員のような、障害のある子どもとともに働く専門職員を対象として、子どもの権利の視点からの研修を行なうこと。 (e) 障害のある子どもが、早期介入サービスおよび普通学校への統合に時宜を得た形でアクセスできることを確保するため、さらに多くの資源を配分すること。 (f) 障害のある子どもがいる家族への支援を強化すること。 (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書の批准を検討すること。 (h) 障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 思春期の健康 54.委員会は、保健指標が非常に優れた水準のまま維持されており、かつ締約国において質の高い保健ケア・サービスが広く利用可能とされていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、思春期保健サービスが不十分であること、性感染症に罹患する青少年の人数が増えていること、および、青少年の自殺が多数発生していることを懸念するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康的なライフスタイルを促進するためのプログラムを強化すること。 (b) リプロダクティブヘルスを含む思春期の健康についての包括的政策を採択すること。 (c) 性感染症、とくに感染経路および有害な影響に関して青少年を教育すること。 (d) 青少年の自殺リスク要因に関する調査研究を行ない、かつ防止措置を実施すること。 (e) 子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮すること。 母乳育児 56.母乳育児を奨励するために締約国が行なった努力(母性保護関連法の改善を含む)には留意しながらも、委員会は、完全母乳育児の実践率が低いことについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、赤ちゃんにやさしい病院として認証された病院がゼロであること、シンガポール乳児用食品販売倫理委会(SIFECS)の国内基準に国際基準に一致しない要素が一部含まれていること、および、母性保護関連法で授乳休憩が保障されていないことも、懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、子どもを生後6か月まで母乳のみで育てることの重要性に関する意識啓発の努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、主要な産科病院が「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブ(BFHI)に基づく基準を満たしかつ認証を受けることを確保すること、SIFECSの国内基準を見直し、強化しおよび執行しならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択しおよび実施すること、母性保護関連法に授乳休憩を含めること、ならびに、職場における母性保護に関するILO第183号条約(2000年)の批准を検討することも、求めるものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 58.委員会は、締約国の学校制度によって達成されている、学業面における高度な優秀性を認識しかつ称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 前回の総括所見の勧告(パラ43)にも関わらず、締約国の管轄内にあるすべての子ども(とくに市民でない者)が義務教育法の対象とされ、かつ無償の初等学校にアクセスできているわけではないこと。 (b) 教育制度の高度に競争主義的な性質によって過度なストレスが生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害される可能性があること。 (c) マイノリティ、とくにマレー系の生徒が教育指標面で立ち遅れていること。 (d) 学校カリキュラムに人権教育を含めるために十分な努力が行なわれてこなかったこと。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国の管轄内にあるすべての子ども(市民でない者も含む)を対象に含めるとともに、この目的のため、条約第28条に付した留保を見直すこと。 (b) すべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の高度な競争主義を軽減するために学校制度を見直すとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力をさらに強化すること。 (d) たとえば、すでに存在する遅れを取り戻すための特別かつ一時的な積極的差別是正措置プログラムを通じ、学業面での発達についてマイノリティ(とくにマレー系)の生徒を支援するための努力を強化しかつ加速すること。 (e) 教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、あらゆる教育段階の公式カリキュラムに人権教育を含めるための努力を強化し、かつ子どもの教育における人権の促進について教員の研修を行なうこと。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 60.委員会は、締約国が難民の処遇に関するいかなる条約にも加盟していないことを懸念する。委員会はまた、難民の処遇を規律する法律が締約国にまったく存在しないこと、および、個別事案ごとの処遇は恣意的取扱いにつながる可能性があることも懸念するものである。 61.委員会は、締約国に対し、国際基準にしたがって子どもの庇護希望者および難民(とくに保護者のいない子ども)の保護のための法的枠組みを策定するとともに、難民の地位に関する1951年条約およびその1967年議定書、無国籍者の地位に関する1954年条約ならびに無国籍の削減に関する1961年条約の批准を検討するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)を考慮するようにも勧告するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 62.締約国が2004年に雇用法を改正して最低就労年齢を12歳から13歳に引き上げたことには留意しながらも、委員会は、最低就労年齢が義務的就学〔修了〕年齢よりも低いことを懸念する。委員会はまた、児童労働〔者〕の労働条件および生活条件の監視に関する情報が締約国報告書にまったく記載されていないことにも留意するものである。 63.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもの経済的搾取を防止するための努力を強化するとともに、とくに、最低就労年齢を引き上げて義務教育法で定められた義務的就学〔修了〕年齢(15歳)と調和させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、児童労働〔者〕の労働条件および生活条件を調査しかつ監視するとともに、次回の報告書にその情報を記載することも勧告するものである。 性的搾取および虐待 64.委員会は、締約国の管轄下にある者が行なう商業的性的搾取からの子どもの保護を増進させた刑法改正(第224条)を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点について重大な懸念を表明するものである。 (a) 関連の国内法において、最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約第3条(b)に掲げられた一連の禁止規定(とくにポルノの製造またはポルノ的な演技のために子どもを使用し、斡旋しまたは提供することの禁止)が全面的に網羅されていないこと。 (b) 子どもの性的搾取および虐待(子どもセックスツーリズムを含む)と闘うために締約国がとった行動が限られていること、および、そのような虐待の加害者が処罰されないままでいること。 (c) 締約国から提供された統計情報が示しているように、そのような事案が過少報告されている可能性があること。 (d) 性的搾取の被害を受けた子どもがしばしば売春犯と見なされ、かつそのように扱われていること。 (e) 締約国の管轄下にある者が行なった子どもの性的搾取について域外裁判権があるにも関わらず、締約国が、国民または永住者に対し、子どもセックスツーリズムを理由とする捜査、訴追または有罪判決の言い渡しをほとんど行なっていないこと。 65.委員会は、締約国に対し、条約第34条に基づく義務を履行するとともに、性的虐待および搾取の通報に対する組織的対応を優先課題として発展させるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の目的のために効果的措置をとるよう促すものである。 (a) 最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約第3条(b)に法律を一致させること。 (b) 子どもに対する性犯罪の加害者がしかるべく裁判にかけられ、かつ適切な刑罰による制裁を受けることを確保する目的で、性的搾取および虐待の行為を犯罪化した法律を実施するための努力を強化すること。 (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものために、子どもがリハビリテーション、回復および社会的再統合のためのサービスを提供されるシェルターを設置すること。 (d) 被害者の人数および推移を確認するためのデータを収集する目的で、効果的かつ体系的な監視機構を設置すること。 (e) 観光における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範を策定するとともに、観光業界およびメディアのいっそう積極的な関与を推進すること。 売買、取引および誘拐 66.委員会は、国内法で子どもの売買、取引および誘拐が犯罪化されていることを歓迎するとともに、人身取引および買春の被害者のための便益およびプログラム、とくにホットライン、カウンセリング、翻訳および入所サービスの提供に関して締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、法的枠組みおよび行なわれている努力にも関わらず、締約国が人身取引の対象とされた子どもの目的地国となっており、かつ、それでも締約国報告書に記載された関連のデータでは著しく少ない事件数しか報告されていないことを、懸念するものである。さらに委員会は、締約国が、通報された人身取引事件のすべてを捜査し、または適切な刑罰によって加害者を処罰しているわけではないこと、および、一部の事案では、人身取引の被害を受けた子どもが出入国管理法違反を理由に犯罪者として扱われ、かつ逮捕されていることを、懸念する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが関係するすべての人身取引事件、とくに商業的性的搾取を目的とする人身取引事件が迅速かつ徹底的に捜査されること、ならびに、加害者が訴追されおよび適切な刑罰によって処罰されることを確保すること。 (b) 人身取引の被害者である子どもが犯罪者として扱われることを防止するため、あらゆる必要な立法上の措置をとること。その際、とくに、このような子どもが拘禁されないこと、リハビリテーションのための適切なケアを提供されること、家族と再結合できるようにされること、および、人身取引加害者に対する司法手続に主体的に参加するのに十分な期間、締約国の領域への在留を許可されることを確保すること。 (c) 締約国における子どもの売買、取引および誘拐の性質および規模に関する研究を、市民社会の関与を得ながら実施すること。 (d) 締約国の領域内で人身取引がどの程度問題になっているか、および、子どもの人身取引が被害者にどのような有害な影響を与えるかについて公衆の意識啓発を図ること。 (e) 子どもの人身取引を防止する目的で、出身国、通過国および目的地国との、二国間および多国間の協定および協力プログラムを強化しかつ拡大すること。 (f) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。 (g) とくにILO/IPEC、国際移住機関および非政府組織との協力を強化すること。 少年司法の運営 68.締約国に独立した少年司法制度が存在することには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、前回の総括所見(パラ45)にも関わらず以下の問題があることを深く懸念する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢が依然としてきわめて低い(7歳)こと。 (b) 罪を犯した少年に対する規律措置として、体罰および独居拘禁がいまなお用いられていること。 (c) 7~16歳の男子が、刑法その他の法律上の多くの犯罪について笞打ちその他の形態の刑罰の対象とされていること。 (d) 18歳に満たないときに行なった犯罪について有罪判決を受けた者に対し、終身刑が言い渡される可能性があること。 (e) 16~18歳の子どもが子ども・若者法(CYPA)に基づく保護の適用対象外とされており、少年裁判所における告発の対象とされない場合があるとともに、その氏名が成人犯罪者の登録簿に記載されること。また、知的障害がある16~18歳の子どもが引き続き成人裁判所における審理の対象とされていること。 69.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで緊急に引き上げること。 (b) 法律を改正し、罪を犯した少年を対象とするすべての拘禁施設で、体罰および独居拘禁の使用を禁止すること。 (c) 刑の言い渡しおよび拘禁において子どもの最善の利益が考慮されること、ならびに、自由の剥奪が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で適用され、および、撤回の方向で定期的に再審査されることを確保すること。 (d) 18歳未満の子どもの終身刑を廃止するとともに、当面、現在終身刑を言い渡されている子どもが、その釈放、再統合、および、社会で建設的な役割を果たすための能力の獲得のための教育、処遇およびケアを受けることを確保すること。 (e) 子ども・若者法に定められた特別な保護を16~18歳の子どもにも拡大するとともに、刑事司法制度において、知的障害のある若年犯罪者に対して適切な考慮が行なわれることを確保すること。 (f) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、必要に応じて少年司法の分野における技術的な助言および援助を求めること。 犯罪の被害者および証人である子ども 70.委員会は、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮に入れながら、十分な法律上の規定、手続および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび犯罪の証人であるすべての子ども(虐待、ドメスティックバイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人など)が司法に効果的にアクセスでき、かつ条約に定められている保護を提供されることを確保するよう、勧告する。 マイノリティまたは先住民族の集団に属する子ども 71.委員会は、民族的、宗教的または言語的マイノリティに属する子どもおよび先住民族の子どもの、自己の文化を享受しかつ自己の宗教および言語を実践する権利の執行に向けて締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、マレー人を含む一部の民族的マイノリティ集団を周縁化させているいくつかの政策に関する、現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連の不寛容に関する特別報告者の懸念を共有するものである。 72.委員会は、締約国が、人種間の調和を確保し、かつ同時にマイノリティの子どもが平等な機会を有することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、民族的マイノリティ集団、とくにマレー人が、自己の文化を享受し、かつあらゆる生活領域で自己の宗教および言語を実践する権利を保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとることも勧告するものである。 地域機関および国際機関との協力 73.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約の実施を目的として、ASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。 I.国際人権文書の批准 74.委員会は、子どもの権利に関連し、かつとくに子どもの権利の充足を増進させる国連の中核的人権文書のうち締約国がまだ加盟していないものを批准するため、締約国が緊急の措置をとるよう勧告する。これらの文書とは、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約およびその選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、女性に対する差別の撤廃に関する条約の選択議定書である。 75.委員会は、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく報告義務を履行するよう求める。 J.フォローアップおよび普及 フォローアップ 76.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 77.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、子どもおよびメディアが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 78.委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合定期報告書を2017年11月3日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国に対し、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/159.html
総括所見:ニュージーランド(第3~4回・2011年) 第1回(1997年)/第2回(2003年)/第5回(2016年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/NZL/CO/3-4(2011年4月11日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月19日に開かれた第1588回および第1589回会合(CRC/C/SR.1588 and 1589参照)においてニュージーランドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/NZL/3-4)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/NZL/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、多部門から構成された代表団との間に持たれた前向きな対話も歓迎するものである。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国による最新版の共通コアドキュメント(HRI/CORE/NZL/2010)の提出(2010年9月30日)を歓迎する。 4.委員会はまた、とくに以下のことを歓迎するものである。 (a) 改正子ども、若者およびその家族(青少年裁判所の管轄および命令)法の採択(2010年)。 (b) 改正子ども養護法の採択(2008年)。 (c) 改正子どもの地位法(2007年)。 (d) 改正子ども扶養法(2006年)。 (e) 改正社会保障(家族のための労働)法(2004年)。 (f) 子ども養護法(2004年)。 (g) 子どもコミッショナー法の制定(2003年)。 5.委員会は、第2回定期報告書の検討(2003年)以降、締約国がとくに以下の文書を批准しまたはこれに加入したことに、評価の意とともに留意する。 (a) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2007年3月)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約(2008年9月)。 (c) 無国籍の削減に関する1961年条約(2006年9月)。 (d) タバコの規制に関する2003年のWHO枠組み条約(2004年1月)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、これまでの報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.216およびCRC/C/OPAC/CO/1)を実施しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、これらの所見に掲げられた勧告の一部について十全な対応が行なわれていないことに、遺憾の意とともに留意する。 7.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの、とくに調整、差別の禁止、虐待およびネグレクト、児童労働ならびに少年司法に関するものを実施し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップするため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。これとの関連で、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2004年〔ママ〕)に対して締約国の注意を喚起するものである。 留保 8.委員会は、同国の一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に関する具体的留保の撤回を阻害する要因の除去に向けて行なわれている努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、この作業がまだ留保の撤回に帰結していないことを深く遺憾に思うものである。委員会はまた、トケラウに対する条約の適用に関してこれまでのところなんら進展が見られないことも遺憾に思う。 9.委員会は、前回の勧告を繰り返し、締約国に対して以下の措置をとるよう促す。 (a) 一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付した留保を撤回すること。 (b) 条約の適用をトケラウの領域に拡張すること。 立法 10.委員会は、子どもの権利の分野における最近の立法上の進展にも関わらず、条約およびその選択議定書との国内法の調和が(たとえば養子縁組法の分野で)完了しておらず、かつ、子どもに影響を与えるすべての国内法の相互の調和さえ図られているわけではないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、子ども、若者およびその家族法の改正法案第6号が2007年から議会に上程されていることも懸念するものである。 11.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに関連する現行国内法が首尾一貫しておりかつ条約と一致していること、および、国内法が既存のいかなる慣習法(マオリの慣習法を含む)にも優越することを確保すること。 (b) 条約およびその選択議定書の原則および規定が締約国のすべての子どもに適用可能とされることを確保すること。 (c) 議会において、子どもに関連するすべての法律を優先的に検討すること。 調整 12.委員会は、社会開発省が締約国における条約の実施の主務機関であること、および、社会部門における諸局の活動プログラムの調整を確保する目的で、社会開発省次官を議長とする、社会部門関連省庁の高級職員のフォーラムが設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利にとくに関連した調整機構が存在しないことを遺憾に思うものである。 13.前回の勧告(CRC/C/15/Add.216、パラ11)にしたがい、委員会は、締約国が、締約国全域における条約の実施が高級レベルでかつ効果的に調整されることを確保するための常設機構を設置するよう、勧告する。 国家的行動計画 14.委員会は、包括的行動は国家的行動計画の策定ではなく協働的な活動プログラムを通じて追求されている旨の締約国の説明に留意する。にもかかわらず、委員会は、条約が、具体的な政策および戦略の策定のための枠組みとして恒常的に活用されているわけではないことを、遺憾に思うものである。委員会はとくに、条約に定められた原則および権利の全面的実現を確保するための包括的政策が存在しないことを懸念する。 15.委員会は、締約国に対し、条約および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を実施するための包括的な政策およびこれに対応する国家的行動計画を、子どもの権利の促進および保護に関与している官民諸部門と協力しながら、かつ子どもの権利アプローチを基盤として、採択するよう奨励する。その際、締約国は、「子どもにふさわしい世界」と題された総会第27回特別会期の成果文書およびその中間レビュー(2007年)を考慮に入れるべきである。委員会はまた、締約国が、包括的な政策および行動計画の全面的実施を可能にする目的で、達成された進展の評価および存在しうる欠陥の特定を恒常的に行なう、フォローアップおよび評価のための機構が存在することを確保するようにも勧告する。 資源配分 16.委員会は、子どもに関する支出が近年増加していること、および、貧困削減のための税額控除が導入されたことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、貧困の根絶および不平等への対応のためには当該増加では十分でないことを懸念するものである。さらに委員会は、子どものための配分額を予算策定手続において明確に特定することがいまなおできないため、締約国が子どもに関して行なっている支出の追跡およびその効果の評価が妨げられていることを、遺憾に思う。 17.委員会は、締約国が、子どもの権利を実施するための戦略的配分額を具体的に定め、その実施を追跡し、かつ結果および効果を監視することを可能にするような子ども予算の策定の試行を開始するよう、勧告する。その際、締約国は、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関して2007年9月21日に行なわれた一般的討議の際の委員会の勧告(2007年)を考慮するべきである。締約国は、国連児童基金(ユニセフ)その他の技術的援助を求めることを検討してもよいと思われる。 普及および意識啓発 18.委員会は、条約の普及および条約に関する意識啓発のために行なわれている取り組みに、関心をもって留意する。にもかかわらず、委員会は、親、養護者、教員、ユースワーカーおよび子ども等の間で、条約に関する意識が依然として限定されていることを遺憾に思うものである。 19.委員会は、親、養育者、教員、ユースワーカーおよび子どもとともに働くその他の専門家を含む一般公衆ならびに子どもたち自身によって条約の規定が広く知られることを確保するため、締約国が、普及および意識啓発のための活動を強化しかつ拡大するよう勧告する。締約国は、その取り組みにおいて非識字者および正規の教育を受けていない者も対象とされることを確保するための措置をとるべきである。 研修 20.子どもとともに働く警察官、保護観察官および教員を対象として子どもの権利に関する研修が行なわれていることは歓迎しながらも、委員会は、そのような研修において、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家が対象とされていないことを遺憾に思う。 21.委員会は、締約国が、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(すべての法執行官、教員、保健従事者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員ならびに国家部門および地方政府の職員を含む)を対象とした、このような専門家の条約上の責任に関する体系的研修を発展させかつさらに強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、あらゆる段階の教育および専門家養成の公式カリキュラムに人権教育が含まれるべきことを勧告するものである。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団を対象として、かつ、とくに新兵募集に従事する軍の職員、裁判官、検察官、出入国管理官、ソーシャルワーカーおよびメディアの間で、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の規定についての体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを発展させることも、勧告する。 子どもの権利と企業セクター 22.委員会は、ニュージーランド企業および締約国の管轄に服するその他の事業体が国内外で行なう活動について、とくにビジネスと人権に関する「保護・尊重・救済」枠組みにしたがった企業の社会的責任指標を採択することを、締約国がまだ検討していないように思われることに留意する。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された当該枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 23.委員会は、締約国に対し、ビジネスと人権に関する「保護・尊重・救済」枠組みを民間企業および公共企業体の活動に適用することについての世界中の経験を正当に考慮するとともに、企業部門が、企業の社会的責任に関する国際的および国内的基準を、とくに子どもの権利の尊重との関連で遵守することを確保するための規則を定めかつ実施する目的で効果的な措置をとることを検討するよう、奨励する。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.「若者の声:若者の選択」プロジェクト、および、マオリの状況を改善する目的で、とくに教育および保健の分野で締約国が行なっているさまざまな努力には関心をもって留意しながらも、委員会は、サービスへのアクセスが不平等であることに明らかなように、子どもを含むマオリ住民に対する差別が引き続き行なわれていることを依然として懸念する。 25.委員会は、締約国が、以下の措置等をとることにより、あらゆる事由に基づく差別からの全面的保護を確保するよう勧告する。 (a) マオリの子どもおよびその家族によるサービスへのアクセス格差に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 差別に対する意識啓発活動その他の防止活動を強化するとともに、必要であれば、脆弱な状況に置かれた子ども(マオリおよび太平洋諸島民の子ども、子どもの難民、移住者である子ども、障害のある子どもならびにレズビアン、バイセクシュアル、ゲイおよびトランスジェンダーの子どもならびにこれらの集団の者とともに住んでいる子どもなど)のための積極的差別是正措置をとること。 (c) 社会のあらゆる部門で生じた子どもに対する差別の事案が、懲戒措置、行政上の制裁または必要であれば刑事的制裁等によって効果的に対応されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 子どもの意見の尊重 26.委員会は、家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもの意見が十分に尊重されていないことに、遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、子どもが公共領域で意見を表明できる手段がないこと、締約国が、子どもに影響を与える可能性がある法律および政策を立案する際に子どもの意見を制度的考慮していないこと、および、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利が十分に尊重されていないことも、遺憾に思うものである。 27.委員会は、締約国が、条約第12条にしたがい、かつ意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮に入れ、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利の尊重の原則を、家庭、学校およびコミュニティならびに施設ならびに行政上および司法上の手続において、立法上も実務上も促進し、その便宜を図りかつ実施すること。 (b) 法律および政策の立案に際し、子どもの意見を制度的に考慮すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 体罰 28.委員会は、矯正を目的とする親の有形力の合法的使用を廃止した、刑法(1961年)第59条1項の新規定を歓迎する。 29.委員会は、締約国が、刑法第59条1項に関する公衆の意識を高めるとともに、子育てにおける積極的かつ非暴力的な形態のしつけを引き続き促進するよう、勧告する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力するとともに、とくにユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 31.委員会は、とくに立法上および制度上の改革ならびにさまざまなサービス機関間の政策および実務の統合を通じ、家族支援を向上させようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、一部の下位集団、とくに貧困、アルコール、薬物または孤立を理由として危機的状況に置かれている家族が、子どもの養育責任を果たすにあたって十分な援助を受けていないことを懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたり、地方レベルにおける時宜を得た対応によって適切な援助を行なうための努力を強化するよう、勧告する。これには、子育てに際してカウンセリングを必要とする親向けのサービス、アルコールまたは薬物に関連する問題の治療のためのサービス、および、マオリおよび太平洋諸島民については、その親としての役割を果たせるようにするための文化的に適切なサービスが含まれる。 養子縁組 33.委員会は、国内養子縁組について子どもの同意が要件とされていないこと、および、養子縁組法の見直しが現在保留とされていることを遺憾に思う。委員会は、「開放的養子縁組」ではない養子縁組の場合、養子が、自己の実親の氏名が記載された書類に20歳に達するまでアクセスできないことに、遺憾の意とともに留意するものである。 34.委員会は、締約国が、国内養子縁組について適切な形で子どもの同意が要件とされることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、養子縁組法を条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約と一致させる目的でその見直しを再開し、かつ適切な形で改正することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、養子が自己に関する書類にアクセスできる年齢を最低でも18歳まで引き下げるよう、勧告する。 虐待およびネグレクト 35.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトの問題に取り組むために締約国が行なっている努力、とくに、資金の増額、家族間暴力閣僚級チームの設置、家庭における暴力に関する行動のための特別委員会、児童虐待に関する独立専門家フォーラムの設置等を通じて防止の分野で行なわれている努力の強化を歓迎する。しかしながら委員会は、家庭における子どもの虐待およびネグレクトが広く蔓延しており、かつ、この点に関する全国規模の包括的戦略が定められていないことを、依然として憂慮するものである。委員会は、子どもに対して行なわれた虐待を記録しかつ分析する包括的システムがいまなお設けられておらず、かつ、被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための機構が締約国全域で十分に利用可能とされていないことを、遺憾に思う。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 暴力、性的虐待、ネグレクト、不当な取扱いまたは搾取(家庭、学校および施設その他の養護下におけるものを含む)の事案数および規模を監視するための機構を設置すること。 (b) 子どもとともに働く専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療専門家、警察官および司法関係者を含む)が、子どもに影響を与える家族間暴力が疑われる事案について通報を行ないかつ適切な行動をとる義務についての研修を受けることを確保すること。 (c) 被害者が法的手続中に再度の被害を受けないことを確保するため、暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの被害者のための支援を強化すること。 (d) 国の全域において、回復、カウンセリングおよびその他の形態の再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。 E.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 健康および保健サービス 37.委員会は、「優良児」(Well Child)プログラムがほぼ100%の母子を網羅していること、および、6歳未満の子どもは開院時間中に無償のプライマリーヘルスケアにアクセスできることに、関心をもって留意する。子どもの健康状態に関する格差に対応するための、焦点の明確な政策および取り組みを実施することに対する締約国のコミットメントは歓迎しながらも、委員会は、とくにマオリ住民と締約国のその他の住民との間に見られる乳児死亡率の格差、および、マオリの子どもの間でより低い傾向がある予防接種率の格差に表れているとおり、不平等が引き続き存在していることを懸念するものである。 38.委員会は、すべての政府省庁間で調整のとれたアプローチを採用し、かつ保健政策と所得不平等および貧困の削減を目的とする政策との間の調整を向上させることを通じ、保健サービスへのアクセスにおける不平等に対応するよう勧告する。 母乳育児 39.委員会は、生後6か月までの完全母乳育児を奨励しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、ニュージーランドの子どものうち生後3か月の時点で母乳のみで育てられている子どもは半数しかおらず、かつ生後6か月の時点で母乳のみで育てられている子どもは8%に満たないことを、依然として懸念する。委員会はまた、マオリの子どもは他の子どもに比べて生後4か月前に固形物を与えられる可能性が高いことも懸念するものである。 40.委員会は、締約国が、完全母乳育児の利点に関するマオリ住民の意識を高めることにとくに焦点を当てながら、生後6か月まで母乳のみで育てられる乳児の人数を増やすための努力を引き続き行なうとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施するよう勧告する。締約国はまた、赤ちゃんにやさしい病院をさらに促進し、かつ看護師研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。 思春期の健康 41.委員会は、思春期の健康に影響を及ぼす分野で締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、とくに社会経済的に下層に属する女子またはマオリの背景を有する女子の間で10代の妊娠率が上昇していること、および、10代、とくにマオリの10代の自殺率が高いことを懸念するものである。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校で青少年に対して適切なリプロダクティブヘルス・サービス(リプロダクティブヘルス教育を含む)を提供し、かつ青少年の健康的なライフスタイルを促進するための努力を強化すること。 (b) 対象の明確な防止措置を提供する目的で青少年の自殺行動の根本的原因についての研究を行なう等の手段により、引き続き締約国全域でこの問題への対応を行なうこと。 生活水準 43.委員会は、生活水準の向上のために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、近年、子どもの貧困の規模が下降していることには留意しながらも、いまなお締約国の子どもの約20%が貧困線以下の生活を送っていることを懸念するものである。 44.委員会は、締約国が、不利な立場に置かれた家族およびその子どもが持続的に貧困から脱することを可能にする適切な支援を提供するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、同時に、貧困線以下に留まっている家族およびその子どもに対して引き続き援助を提供するよう、勧告する。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 45.委員会は、改正教育法およびマオリ教育戦略(2008~2012年)をはじめとする、教育の領域で締約国が行なっている多数の努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、在留資格のない子どもに対し、無償教育へのアクセスが法的に保障されていることも歓迎するものである。しかしながら委員会は、一部の集団の子ども、とくに障害のある子ども(特別な教育上のニーズを有する子ども)、農村部に住んでいる子ども、マオリ、太平洋諸島民およびマイノリティの子ども、子どもの庇護希望者、10代の母親、中退者ならびにさまざまな理由から不登校になっている子どもが、普通学校であるか代替的教育施設であるかに関わらず就学または教育の継続もしくは再開について問題を有しており、教育に対する権利を全面的に享受できていないことを懸念する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 乳幼児を対象とする無償の教育およびケアが〔週〕20時間しか利用可能とされておらず、かつ、多くの子ども、とくに窮乏している子どもにとってのアクセスが限られていること。 (b) 多くの公立学校が親に対して「寄付」の圧力をかけていること。 (c) いじめが深刻かつ広範な問題となっており、子どもの通学および学習の成功を妨げている可能性があること。 (d) 停退学件数が多いこと、および、その影響が、一般的に学業成績の低い集団の子どもにとくに及んでいること。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもが、少なくとも社会的に不利な立場に置かれた家族および子どもに対しては無償で提供される、質の高い乳幼児期の教育およびケアにアクセスできることを確保すること。 (b) 子どもの民族的(文化的・地域的)ならびに社会的背景がその就学および通学に及ぼす悪影響を低減させるための努力を継続しかつ強化すること。 (c) 真にインクルーシブな教育に対するすべての子ども(不利な立場に置かれた、周縁化されたおよび学校から距離のあるすべての集団の子どもを含む)の権利を確保するため、相当の追加的資源を投入すること。 (d) 退学または停学の懲戒措置は最後の手段としてのみ用いること、停退学の件数を削減すること、および、学校生活に関してリスクを有する子どもを援助するため学校にソーシャルワーカーおよび教育心理学者が配置されることを確保すること。 (e) 親が圧力によって学校に寄付させられないこと、および、親がそのような寄付をしないまたはできない場合に子どもに汚名が着せられないことを確保すること。 (f) 人権、平和および寛容に関する教育等も通じ、学校におけるいじめおよび暴力を解消するための努力をさらに強化すること。 休息、余暇、レクリエーションおよび文化的活動 47.委員会は、十分な数の放課後ケアサービスおよび放課後活動プログラムが親および家族に対して利用可能とされていないことに、遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、存在するプログラムも十分な資金を得ておらず、かつ地理的に公平な分布となっていないことも懸念するものである。 48.委員会は、締約国が、学齢の子どもを対象とする放課後および休暇期間中のサービスおよびプログラムを発展させ、かつこのようなサービスおよびプログラムに対して十分な資金を配分するよう、勧告する。このようなプログラムは、家庭外で子どもに構造化された監督を提供すること、必要に応じて補習サービスを行なうこと、および、その他のやり方では親が金銭的に負担することのできないサービスに子どもがアクセスできるようにすることを含む、複数の機能を果たすことが可能である。締約国は、これらのプログラムが、すべての親およびその子どもにとって金銭的におよび地理的に平等にアクセス可能なものとなることを、可能なかぎり確保するよう求められる。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第38~40条および第37条(b)~(d)) 経済的搾取(児童労働を含む) 49.委員会は、2004年に「子ども就労プログラム」が策定されたことに関心をもって留意しながらも、児童労働を含む経済的搾取に関する委員会の前回の勧告に対応するための努力がなんら行なわれてこなかったことを、深く遺憾に思う。さらに委員会は、15~18歳の子どもが危険な労働現場で働くことが認められていることをとくに懸念するものである。 50.委員会は、18歳未満のいかなる者も危険な労働現場で働くことを認められないことを確保するため、締約国が、立法上の措置であるか他の措置であるかを問わず、適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)を批准するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.216、パラ48)もあらためて繰り返すものである。 性的搾取および虐待 51.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書を批准するための作業が進んでおり、かつ、残された課題については現在下院〔ママ〕に上程されている子どもおよび家族保護法案を通じて対応される旨の、締約国の説明に留意する。委員会はまた、商業的性的搾取および虐待と闘うために締約国が行なっている活動にも留意するものである。しかしながら委員会は、移民の女子が売買春の搾取を受けていること、および、性的搾取の被害を受けた子どもに関するデータが存在しないことを懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書の批准を妨げるいかなる要因も解消する目的で、子どもおよび家族法案を遅滞なく採択するよう奨励する。委員会は、締約国が、売買春における移民の女子の搾取と闘うために十分な措置をとるとともに、子どもの性的搾取および虐待の規模に関するデータを収集するための努力を強化するよう、勧告する。このようなデータは、これらの問題に対する十分な対策を策定するために必要不可欠である。 ヘルプライン 53.委員会は、締約国に3つの子どもヘルプラインが設けられていることに、関心をもって留意する。しかしながら委員会は、これらのヘルプラインが通話料無料の短い電話番号を通じて1日24時間アクセス可能なものとなっていないことを、遺憾に思うものである。 54.委員会は、締約国が、フリーダイヤルによる24時間のアクセスを可能とするための十分な資金を子どもヘルプラインに配分するよう、勧告する。委員会はさらに、子どもヘルプラインが、3ケタまたは4ケタの電話番号により、国内のどこからもアクセス可能なものとなるべきことを勧告するものである。 少年司法の運営 55.委員会は、刑事責任年齢が低いことに関する懸念をあらためて表明するとともに、締約国が、重大犯罪および累犯についての刑事責任年齢を、これらの犯罪について明確に定義することなく14歳から12歳に引き下げ、かつ刑事上の成年を17歳のまま維持していることを、遺憾に思う。拘禁施設における少年と成人の分離について条約第37条(c)に付された留保(この総括所見のパラ8および9参照)の解除に向けて相当の前進が行なわれたという締約国の説明には留意しながらも、委員会は、法律に抵触した18歳未満の女子が年長の女性被拘禁者と同じ拘禁場所に収容されていることに、懸念を表明するものである。委員会はまた、「家族集団会議」の存在にも関わらず、司法機関が修復的アプローチよりも懲罰的アプローチを用いることの方が多いことも遺憾に思う。 56.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.216、パラ50)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)を全面的に実施するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 委員会の一般的意見10号、とくにパラ32および33にしたがい、刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。 (b) 刑事上の成年を18歳に定めることを検討すること。 (c) 法律に抵触した子どもの拘禁に代わる幅広い措置を発展させるとともに、拘禁は最後の手段としてかつもっとも短い期間で用いられるべきであるという原則を、制定法上の原則として確立すること。 (d) 条約第37条(c)に付した留保の迅速な撤回がなされるまでの間、自由を奪われたいかなる子どもも、男女を問わず、分離しないことがその子どもの最善の利益にかなう場合を除き、すべての拘禁場所において成人から分離されることを確保すること。 (e) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHR〔人権高等弁務官事務所〕およびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法および警察の研修の分野における技術的助言および援助を求めること。 犯罪の被害者および証人である子ども 57.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたすべての子どもおよび(または)そのような犯罪の証人が条約で求められている保護を提供されることを確保するとともに、その際、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20添付文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 マイノリティ集団に属する子ども 58.委員会は、締約国に対し、先住民族集団に属する子どもの状況を向上させるための努力において、先住民族の権利に関する特別報告者が2010年7月のニュージーランド訪問後に行なった所見および勧告(A/HRC/15/37/Add.9)を、ワイタンギ条約に掲げられた諸原則に関するものも含めて考慮に入れるよう、奨励する。委員会はまた、先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)に対しても締約国の注意を促すものである。 H.国際人権文書の批准 59.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准を迅速に進めるよう、勧告する。 60.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。 I.フォローアップおよび普及 61.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 62.委員会は、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、メディアその他の専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 63.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2015年5月5日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/247.html
総括所見:バチカン(OPAC・2014年) 第1回(1995年)/第2回(2014年)OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/VAT/CO/1(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1853回(CRC/C/SR.1853参照)において法王聖座(Holy See)の第1回報告書(CRC/C/OPAC/VAT/1)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、法王聖座による第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、法王聖座の多部門型代表団との間にもたれた建設的対話も歓迎するものである。 3.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、子どもの権利条約に基づいて法王聖座が提出した第2回定期報告書についての総括所見(CRC/C/VAT/CO/2)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/OPSC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、法王聖座による以下の条約の批准を歓迎する。 (a) 過度に傷害を与えまたは無差別に効果を及ぼすことがあると認められる特定通常兵器の使用の禁止または制限に関する条約(議定書I、IIおよびIIIとともに1997年7月22日に批准)。 (b) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1998年2月17日)。 5.委員会は、法王聖座が「軍事機関」または「軍隊」を有さないことに留意する。委員会はまた、法王警護スイス衛兵部隊の最低入隊年齢が19歳であることにも留意するものである。 6.委員会は、武力紛争の影響を受けているコミュニティ間の平和および和解に関する教育に世界中のカトリック学校が関与していることを歓迎する。 III.一般的実施措置 普及および研修 7.委員会は、とくに徴募される被害および武力紛争に関与させられる被害を受けた子どもとともに働く者を対象として選択議定書を普及するため、法王聖座が、その権威のもとに活動する個人および機関を通じて行なった活動についての情報がないことを遺憾に思う。 8.委員会は、法王聖座が、選択議定書の規定に関する意識啓発活動および研修活動を支援するための努力を強化するよう勧告する。 IV.防止 選択議定書で言及されている犯罪を防止するためにとられた措置 9.委員会は、ローマ法王が、あらゆる状況における子どもの搾取(武力紛争における子どもの使用を含む)を断固として非難し、かつ、とくに被害を受けやすい状況にあって徴募のおそれに直面している子どもを援助するための防止プログラムを世界中で促進していることに、評価の意とともに留意する。 10.委員会は、法王聖座が、武力紛争における子どもの徴募および使用を防止するために引き続きその権威を活用するよう、勧告する。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 11.委員会は、武力紛争で子どもを兵士として徴募しかつ使用すること(これは「教会の社会教説綱要」で容認できない犯罪とみなされている)に対する明確に非難を歓迎する。委員会はまた、「刑事上の問題に関する補完的規範-第4編:戦争犯罪」を掲げた2013年7月11日のバチカン市国法第8号において、15歳未満の子どもを兵士として徴募しかつ使用することが犯罪とされていること、および、そのような子どもの徴募および使用が戦争犯罪と定義されていることにも、積極的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、法王聖座が、武力紛争における18歳未満の子どもの徴募および使用を犯罪化していないことを懸念する。 12.委員会は、法王聖座に対し、バチカン市国刑法が選択議定書第2条および第4条と一致することを確保し、かつ、武力紛争における18歳未満の子どもの徴募および使用を犯罪化するよう、促す。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 13.委員会は、武力紛争への関与が徴募された子どもにもたらす長期的影響に注意を喚起する目的で法王聖座が行なってきた多数の訴えを歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、そのような子どもの権利の保護に関して法王聖座の権威のもとにある個人および機関を支援するためにとった具体的措置について、不十分な情報しか提供されなかったことを懸念するものである。 14.委員会は、法王聖座が、被害を受けた子どもの権利の保護のために法王聖座の権威のもとに活動している個人および機関に対し、財政支援を含む援助を提供するよう勧告する。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 15.委員会は、徴募され、かつ武力紛争に関与させられた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためにカトリック系の学校および機関が発展させてきた多数の取り組みを歓迎する。委員会は、子ども兵士の救出および社会的再統合を目的としてウガンダのカトリック教育局が発展させてきたプロジェクト、および、イエズス会難民サービスによる子ども兵士のための一時受入れセンターの設置(コンゴ民主共和国・南キブ州)のようなプロジェクトに、とくに積極的な対応として留意するものである。 16.委員会は、法王聖座が、徴募され、かつ武力紛争に関与させられた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための取り組みを引き続き支援するよう、勧告する。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 17.委員会は、法王聖座に対し、武力紛争における子どもの徴募および使用を撤廃することに向けた主要な役割を国際的舞台で引き続き果たしていくよう奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 18.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 19.委員会は、選択議定書ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 20.武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書およびこの総括所見に掲げられた勧告の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/269.html
総括所見:カンボジア(OPAC・2015年) 第1回(2000年)/第2~3回OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/KHM/CO/1(2015年2月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月12日に開かれた第1931回会合(CRC/C/SR.1931参照)においてカンボジアの第1回報告書(CRC/C/OPAC/KHM/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合(CRC/C/SR.1983参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/KHM/Q/1 and Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年8月3日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~3回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)、および、2015年1月30日に採択された、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/KHM/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、締約国が以下の文書に加入しまたはこれを批准したことを歓迎する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器ならびにその部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書(2005年12月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年5月)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年4月)。 (d) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1999年7月)。 (e) 1949年のジュネーブ諸条約(1959年6月)ならびにその第1および第2追加議定書(1998年7月)。 (f) 過度に傷害を与えまたは無差別に効果を及ぼすことがあると認められる特定通常兵器の使用の禁止または制限に関する条約(議定書I、IIおよびIIIとあわせての批准)(1997年3月)。 5.委員会は、カンボジア王国軍の軍人に関する一般法(1997年11月6日付)および義務的軍役法(2006年12月22日付)に基づき、義務的軍役および契約軍役の双方の登録年齢が例外なく18歳と定められていることに評価の意とともに留意する。 III.実施に関する一般的措置 調整 6.カンボジア国家子ども評議会が、国防省を含む関連省庁との効果的な連携を発展させ、かつ州、地区およびコミューンのレベルで機構を設置してきたことには留意しながらも、委員会は、これらの努力に選択議定書の実施の監視が十分な形で含まれていないこと、および、カンボジア国家子ども評議会の下に設置された既存の機構がその任務の遂行にあたって選択議定書を全面的に含めているわけではないことを懸念する。 7.委員会は、締約国が、カンボジア国家子ども評議会の調整責任に、部門別省庁ならびに政府および州のすべてのレベルを横断する形で選択議定書の実施の効果的監視を行なうこと(その地方分権化された機構によるものも含む)が全面的に含まれることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 8.委員会は、選択議定書に基づく子どもの権利の充足における進展を恒常的に監視すること子どもからの苦情を受理しかつこれに対応することを目的とした、国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがった独立の国内人権機関の設置が遅れていることを懸念する。 9.前回の勧告(CRC/C/KHM/CO/2-3、パラ15)に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書に基づく権利の充足状況を監視し、かつ子どもにやさしい迅速なやり方で子どもの苦情に対応するための独立機構を設置するよう促す。 普及、意識啓発および研修 10.選択議定書がクメール語に翻訳されたことおよび軍要員を対象とする研修活動が実施されていることは歓迎しながらも、委員会は、このような研修が組織的なものではないこと、ならびに、関連省庁、子どもおよび一般公衆の間で選択議定書についての情報を普及し、かつ選択議定書に関する意識啓発活動を発展させるために限られた努力しか行なわれてこなかったことを、遺憾に思う。委員会はまた、研修講座が体系的なものではなく、かつ主として軍人を対象としていることにも、懸念とともに留意するものである。 11.委員会は、締約国が、政府職員および法執行官(州レベルの職員を含む)の間で選択議定書の原則および規定を周知させること、ならびに、親、教員、学生、子どもおよび市民社会関係者の間で意識啓発を図るための具体的広報キャンペーンを発展させることを目的とした普及の努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、関連のすべての専門家集団、警察学校および軍要員(国際平和維持活動に参加する軍要員を含む)を対象とした、選択議定書の規定および国際人道法に関する体系的かつ包括的な教育モジュールを含めることにより、研修活動を強化することも勧告するものである。 データ 12.委員会は、選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析および監視を行なうための組織的機構が設けられていないことを遺憾に思う。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関連するすべての分野についての包括的なデータ収集システムを確立するとともに、収集された情報および統計を、武力紛争の影響を受けている子どもおよび武力紛争に関与している子どもの保護に関わる包括的な政策およびプログラムの立案の基礎として活用するよう、勧告する。 IV.防止 年齢確認手続 14.出生登録を確保するために締約国が全国規模で行なっている努力には留意しながらも、委員会は以下のことを依然として懸念する。 (a) とくに遠隔地および村落においてならびに路上の状況にある子どもの間で出生登録の水準が低いこと。 (b) 生後30日間の登録期間制限、登録遅延に対する制裁および住所要件など、出生登録キャンペーンの効果的実施を妨げる阻害要因があること。 (c) 偽造書類を発見するための措置が設けられていないこと(これは年齢確認手続の有効性に影響を及ぼす可能性がある)を理由として、軍隊および軍学校における現行の採用手続の実施に欠陥が生じていること。 15.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう求める。 (a) 前回の総括所見で委員会が勧告したように(CRC/C/KHM/CO/2-3、パラ37)遠隔地および村落に住んでいる子どもならびに路上の状況にある子どもを含む子どもの徴募を防止するための手段として、移動班なども通じ、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続しかつ強化すること。 (b) 出生登録手続へのすべての者によるアクセスを促進する目的で、あらゆる阻害要因を取り除くこと。 (c) 専業要員または請負要員を採用するすべての軍機関および警察機関ならびにすべての軍学校によって現行の採用手続が遵守されることを確保するとともに、18歳未満の者による偽造書類の使用を発見するための措置を設けること。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 16.委員会は、違反について何らの制裁も定められていないこと、および、締約国の法律が以下の点について定めていないことを懸念する。 (a) 戦時または平時において、締約国の軍隊で18歳未満の子どもを採用しまたは使用することを明示的に犯罪とする規定。 (b) 国以外の武装集団および(民間警備隊の統制に関する通達第3557号によって規制されている)民間警備業者が18歳未満の子どもを採用しまたは使用した場合の刑事責任。 (c) 敵対行為への直接参加の定義。 17.委員会は、締約国が刑法を改正し、王国軍、国以外の武装集団および民間警備業者・会社における18歳未満の子どもの採用および使用を明示的に犯罪化する規定ならびに敵対行為への直接参加の定義を設けるよう勧告する。 域外裁判権および犯罪人引渡し 18.委員会は、締約国の法律において、域外裁判権の行使が、犯罪の実行時に締約国の国民であった被害者に対して重罪が行なわれた限られた事案の場合にしか認められていないことを懸念する。委員会はまた、締約国が二国間協定を結んでいない国への犯罪人引渡しが双方可罰要件に服することも遺憾に思うものである。 19.委員会は、締約国が、国内法によって、選択議定書が対象とするすべての犯罪(軍隊もしくは武装集団への子どもの徴集もしくは徴募または敵対行為における子どもの使用を含む)について、当該犯罪がカンボジア国民もしくは締約国の住民によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合に域外裁判権を設定しかつ行使できるようになることを確保するために必要な、あらゆる法律上および実務上の措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、選択議定書上の犯罪に関わる犯罪人引渡しについて双方可罰性要件を廃止するよう勧告するものである。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 20.18歳未満の子どもは軍隊で役務を行なうことを認められていない旨の締約国から提供された情報には留意しながらも、委員会は、カンボジア-タイ国境沿いの紛争の際、軍服を着た子どもがいたという報告があることを懸念する。 21.委員会は、締約国に対し、制服を着たいかなる子どももカンボジア-タイ国境沿いにいないことを確保するとともに、武力紛争に関与させられた可能性のある子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助を提供するよう促す。 22.委員会は、とくに締約国の管轄内にある子どもの庇護希望者、難民および移住者ならびに保護者のいない子どものなかから、国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを特定するために設けられている機構についての情報がないことを、遺憾に思う。 23.委員会は、締約国が、武力紛争に関与させられた可能性のある子どもを早い段階で特定し、かつ、このような特定の担当者が子どもの権利、子どもの保護および子どもにやさしい面接スキルについての訓練を受けていることを確保することにより、締約国の管轄下にある子どもの庇護希望者、難民および移住者ならびに保護者のいない子どもの全面的保護を確保するための機構および手続を設けるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、そのような子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための十分な援助が提供されることを確保するよう勧告するものである。 身体的および心理的回復のための援助 24.地雷除去およびリスク教育のためのプログラムに関して締約国が進めてきた努力は認知しながらも、委員会は、依然として子どもが地雷および爆発性戦争残存物によって死亡しかつ(または)障害を負う高いリスクに直面していることに懸念を表明する。委員会はさらに、地雷に関しておよび爆発性戦争残存物の被害者のために現在行なわれているプログラムで、被害を受けた子どもが十分に保護されておらず、かつこのような子どもの特有のニーズが対応されていないことを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、地雷および爆発性戦争残存物から子どもを保護する目的で、地雷啓発プログラムおよび地雷除去活動を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、被害を受けた子ども(とくに残存地雷および爆発性戦争残存物を原因とする障害のある子ども)の特有のニーズに適合した十分なサービスが提供されることを確保し、かつこれらの子どもに対して身体的および心理的リハビリテーションおよび社会的援助を提供するため、子どもにやさしいプログラムの開発を検討することも勧告するものである。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 26.委員会は、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施における国際連合児童基金、国際連合人権高等弁務官事務所その他の国際連合機関との協力の強化を模索するよう勧告する。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 27.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 28.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁(国防省を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 29.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 30.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2016年2月8日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/48.html
総括所見:アメリカ(OPSC・2008年) OPAC:第1回(2008年)/第2回(2013年) OPSC:第2回(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/USA/CO/1(2008年6月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年5月22日に開かれた第1320回会合(CRC/C/SR.1320)においてアメリカ合衆国の第1回報告書(CRC/C/OPSC/USA/1)を検討し、2008年6月6日に開かれた第1342回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、選択議定書を実施するためにとられた立法上、行政上、司法上その他の措置に関する相当の情報を与えてくれる、締約国の第1回報告書(ただし委員会の報告ガイドラインにしたがって書かれてはいなかった)および事前質問事項に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルな部門横断型代表団との開かれたかつ建設的な対話も歓迎するものである。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して同日に採択された総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.全般 積極的側面 4.委員会は、人身取引を監視しかつこれと闘う目的で行なわれている広範な国際援助活動(人身取引(TIP)局が行なう技術協力、研修、意識啓発および被害者援助も含む)を歓迎する。 5.委員会は、司法省犯罪局、連邦捜査局および「行方不明の子どもと搾取された子どものための全国センター」の提携によって国内の児童買春と闘うために行なわれている「イノセンス・ロスト(失われた無垢)」イニシアチブを歓迎する。 6.委員会はさらに、以下のものを含む無数の法律が成立したことを歓迎する。これは、子どもの商業的性的搾取との闘いにおける締約国のコミットメントを実証するものである。 (a) 児童買春について責任を負う者を訴追するための州のプログラムを強化し、かつ合衆国および他の国々の人身取引被害者に対する援助を増進させた、人身取引被害者保護法(2000年)ならびに2003年および2005年の同再授権法。 (b) 国外で子どもに対する性犯罪を行なった締約国市民を訴追する域外裁判権を拡大したPROTECT〔今日の子どもの搾取を終わらせるための訴追的救済措置その他の手段〕法(2003年)。 (c) 子どもを対象とする性犯罪者の処罰をより厳しくし、かつ子どもに対する犯罪の公訴時効を撤廃した、アダム・ウォルシュ子どもの保護および安全法(2006年成立)。 7.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことも歓迎する。 (a) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年2月12日)。 (b) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年12月23日)。 (c) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ第33号条約(2007年12月12日)。 II.データ データ収集 8.委員会は、子どもの商業的性的搾取に関するデータの収集および研究の実施に関する締約国のコミットメントおよび努力に留意しながらも、選択議定書が対象とする問題に関する機能的なデータ収集システムが存在しないことを主たる理由として、締約国における子どもの売買、児童買春および児童ポルノについての利用可能な情報が不十分であることを懸念する。さらに委員会は、人身取引の定義が、国際連合組織犯罪条約を補足するパレルモ人身取引議定書に掲げられた定義を広く解釈する人身取引被害者保護法(2000年)に基づいていることに留意する。これとの関連で、委員会は、子どもに対する広範な犯罪活動を相互に差異化することなく人身取引と定義することで、選択議定書が対象とする活動についての細分化されたデータおよび分析的情報を収集すること、ならびに、被害者を特定し、かつ国内的および国際的レベルでこれらの犯罪を防止しおよびこれと闘うための適切な戦略を特定することに困難が生ずる可能性があることを、懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするあらゆる問題についてのデータを収集し、分析しおよび監視するための、包括的かつ体系的機構を発展させかつ実施することを検討するよう、勧告する。データは、とくに犯罪の性質ならびに〔被害者の〕年齢、性別、民族、社会経済的地位および所在ごとに細分化されるべきである。データ収集および研究の対象範囲には、合衆国本土および島嶼領域ならびに合衆国が主権を行使しているその他の海外自治領のすべてを含めることが求められる。委員会はまた、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野におけるプログラムおよび活動の策定に際し、選択議定書で用いられている定義または締約国が締結した他の国際基準に掲げられた定義を使用することを検討するようにも、勧告するものである。 III.実施に関する一般的措置 国家的行動計画 10.委員会は、人身取引、とくに国境を越える人身取引と闘うためにいくつかの計画およびプログラムが採択されかつ実施されてきたとはいえ、選択議定書の実施ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根絶のための全般的戦略が存在しないことに留意する。 11.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての問題に包括的に対処するための国家的行動計画を策定し、かつその実施のために十分な人的資源および財源を提供するよう勧告する。 選択議定書の実施の調整 12.委員会は、司法省、国務省および保健社会福祉省など、選択議定書の実施を担当するいくつかの政府省庁があることには留意しながらも、これらの省庁間ならびに連邦、州および地方の公的機関間の調整水準が不十分であることを懸念する。委員会はまた、政府機関と、選択議定書が対象とする分野で活動している非政府組織との調整がしばしば不十分であることにも、懸念とともに留意するものである。 13.委員会は、締約国が、連邦および州のいずれのレベルにおいても、選択議定書が対象とする分野で活動するさまざまな機関および政府省庁間の調整を強化するよう勧告する。締約国はまた、選択議定書の実施および評価に関する非政府組織との調整を強化することも奨励されるところである。 普及および研修 14.委員会は、締約国が全般的に質の高い研修資源および研修施設を有していることに留意し、かつ、「行方不明の子どもと搾取された子どものための全国センター」が裁判官、検察官および法執行官に対して提供している、子どもの性的搾取の捜査および防止に関する研修を歓迎する。しかしながら委員会は、連邦および州のいずれのレベルでも選択議定書の体系的普及および選択議定書に関する体系的研修が行なわれておらず、また選択議定書およびそこで対象とされている事柄に関わる諸問題があまり知られていないことを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる関連の専門家集団(法執行官、裁判官、弁護士、ソーシャルワーカーおよび保健ケアワーカー、出入国管理官および税関職員、宗教的指導者およびコミュニティの指導者、市民社会組織ならびに養子縁組に関する認証団体を含む)を対象とする、選択議定書の規定についての体系的な教育および研修を継続しおよび強化すること。 (b) 学校カリキュラムおよび子ども向けの適切な資料を活用することにより、住民、とくに子どもおよび親の間で選択議定書の規定を普及するための措置を強化すること。 (c) 選択議定書第9条第2項に照らし、市民社会およびメディアと協力しながら、あらゆる適当な手段による情報提供、教育および訓練を通じ、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の防止措置および有害な影響に関する公衆一般(子どもを含む)の意識を促進すること。そのための手段には、適切な言語への翻訳を行なうとともに、このような情報提供プログラム、教育プログラムおよび研修プログラムに対するアクセスへの、コミュニティならびにとくに子どもおよび被害を受けた両性の子どもの参加を奨励することも含まれる。 資源配分 16.委員会は、相当量の財源が人身取引の防止のために配分されていることに留意しながらも、そのうち人身取引の被害を受けた子どもおよび選択議定書が対象とする他の犯罪の被害者にとくに配分される資源はごく少ない割合に留まっていることを懸念する。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書の実施のための予算配分額、とくに選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どものためのサービスに充てられる配分額について、次回報告書でいっそうの情報を提供すること。 (b) 犯罪の防止、被害を受けた子どもの保護およびリハビリテーションならびに議定書が対象とするすべての犯罪の加害者の訴追を目的とするプロジェクトおよび計画を、とくに地方のレベルで発展させかつ実施するために必要な人的資源および財源を提供すること。 (c) 子どもにとくに焦点を当てた予算編成に対し、人権アプローチをもって臨むこと。 国内人権機関 18.必要な法律およびサービスのほとんどは州の管轄事項であることから、選択議定書の実施を監視するための独立機関を連邦レベルで創設するのが困難であることは認識しながらも、委員会は、選択議定書の実施を監視するオンブズマンのような機関が連邦または州のレベルに設けられていないことを懸念する。 19.委員会は、連邦政府および州政府が、パリ原則にしたがって、選択議定書を監視しおよび促進するための人権機関を創設することを検討するよう勧告する。これらの機関に対しては、その権限を履行するのに必要な人的資源および財源が提供されるべきである。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止 20.委員会は、児童虐待およびネグレクトを防止するための締約国の取り組みには留意するものの、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに対して依然として焦点が当てられていないことを懸念する。委員会はまた、防止のための努力が主として国の特定地域に限定されており、締約国に存在する、脆弱な立場にあって選択議定書が対象とするすべての犯罪の被害をとりわけ受けやすい相当に大規模な集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、移民の子ども、先住民族の子どもおよび困難な家族状況で暮らしている子どもなど)が対象とされていないことも、懸念するものである。 21.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根絶はその助長要因に対応するホリスティックなアプローチをとることによって促進されるという見解に立ち、締約国が、貧困および周縁化のような、子どもが子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムの被害を受けやすくなることを助長する根本的原因に対応するための努力を強化するよう勧告する。防止のための努力においては、このような慣行の被害をとくに受けやすい子どもを締約国全域で保護することに、特段の注意が向けられるべきである。 22.委員会は、子どもの搾取をともなう性的サービスへの需要を減少させることに焦点を当てたプログラム(意識啓発キャンペーンを含む)が少ないことを懸念する。 23.委員会は、防止措置および訴追措置の両方を通じ、子どもの搾取をともなう性的サービスへの需要に対応するよう勧告する。防止措置には、とくに、子どもの性的搾取に対する需要を生み出している個人および集団を対象とした公衆意識啓発キャンペーンが含まれるべきである。 児童買春 24.委員会は、被害者中心アプローチに焦点を当てたプログラムによって児童買春に対応しようとする締約国の努力に留意する。しかしながら委員会は、子どもの買春の現象が締約国において広範に広がっておりかつ増加しつつあるという情報を懸念するものである。委員会はまた、児童買春法の執行が州レベルではきわめて低調であり、かつ保護プログラム、研修および教育のために配分される資源が十分ではないという情報も懸念する。 25.委員会は、締約国が、児童買春(人身取引によって同国に連れてこられた外国の子どもを関与させるものおよび「国内」児童買春の双方)と引き続き闘うよう勧告する。これとの関連で、委員会はとくに、締約国が、州レベルの児童買春法の執行および実施を監視するとともに、意識啓発キャンペーンおよび研修を含む保護プログラムのための人的資源および財源を増加させることを検討するよう、勧告するものである。 児童ポルノ 26.委員会は、国内的にも世界規模の現象としても児童ポルノと闘うために締約国が行なっている努力(この点に関わる無数の捜査および訴追も含む)を評価しながらも、締約国が世界最大の児童ポルノの製造国、配布国および消費国のひとつであること、ならびに、新たな技術の台頭によって促進される子どもがらみのサイバー犯罪の発生件数が増加していることを、懸念する。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童ポルノに関する現行法の枠組みの執行を向上させること。 (b) 技術の日進月歩の性質に対応するために必要な措置をとる努力を強化すること。 (c) 児童ポルノの被害を受けた子どもを特定しかつ援助するための措置を強化すること。 (d) 児童ポルノを防止しかつ処罰するための国際協力を引き続き強化すること。 セックス・ツーリズム 28.委員会は、「旅行および慣行における性的搾取から子どもを保護するための行動規範」の運用が2004年に開始されたこと、および、PROTECT法(2003年)の採択により、国外で児童セックス・ツーリズムに関与した締約国の国民について50件以上の起訴および29件の有罪判決がもたらされたことを歓迎する。委員会はまた、カンボジア、コスタリカ、ブラジル、ベリーズおよびメキシコのような国々における、合衆国の児童セックス・ツーリストを対象とした抑止キャンペーンおよび広報キャンペーンへの資金拠出も評価するものである。しかしながら委員会は、締約国が依然として児童セックス・ツーリストの主たる送り出し国のひとつであるという情報を懸念する。 29.委員会は、締約国が、外国で貧困下で暮らしている子どもを虐待しおよび搾取することは容認されるという考え方のような態度に対抗するための意識啓発も含め、セックス・ツーリズムと闘うためにとっている措置を引き続き強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、とりわけ、観光客をとくに対象とする意識啓発キャンペーンを通じて責任ある慣行を促進し、かつ、旅行および慣行におけるあらゆる形態の子どもの商業的性的搾取と闘うために旅行業者、メディア、NGOおよび市民社会組織と緊密に協力することにより、セックス・ツーリズムを防止するためのさらなる措置をとるようにも勧告するものである。 違法な養子縁組 30.委員会は、国際養子縁組に関するハーグ条約が最近批准されたことを歓迎するとともに、国務省が中央当局として特定されたことに留意する。これとの関連で、委員会は、利益目的の者が、ハーグ条約第22条第2項(a)および(b)に掲げられた要件および資格(清廉性、専門的能力および説明責任を含む)を遵守しなければならないとはいえ、中央当局の権能の行使を認められる可能性があることを懸念する。委員会はまた、現行規則によれば、国外の生母に対する産前費用その他の費用の支払いが依然として可能であるという情報も懸念するものである。 31.養子縁組目的の子どもの売買に対する保護措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組目的の売買の発生件数を抑制するため、国際養子縁組に関するハーグ条約を十分にかつ効果的に実施すること。 (b) 認証機関のみならず承認を受けた個人も非営利の目的のみを追求することを確保すること。 (c) 子どもの積極的勧誘となる可能性があるあらゆる形態の行為(産前費用その他の費用の支払いを含む)を明示的に禁ずること。 (d) 売買の目的に関わらず、子どもの売買、とくにインターネット経由で行なわれる売買のすべての事案を防止しかつ処罰するための努力を強化すること。 (e) 子どもの最善の利益の原則およびハーグ条約で保障されている保護措置が、ハーグ条約に加盟していない国からの養子縁組の場合にも平等に尊重されることを確保するよう努めること。 (f) アメリカ人である子どもが第一次的には合衆国で養子とされることを確保するため、国際養子縁組法(2000年)第303条(a)(1)(B)に掲げられた補完性の原則を実効的に適用すること。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 32.委員会は、締約国において、児童ポルノ、不法な性的目的による子どもの州際輸送および子どもの人身取引に関するおおむね発展した十分な法律が連邦レベルで設けられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、州法と連邦法との間に若干の不一致があることにより、議定書が対象とするあらゆる犯罪の定義および禁止に関して一定の空白が生ずる可能性があることを懸念するものである。これとの関連で、委員会はとくに以下のことを懸念する。 (a) 児童買春そのものを定義しまたは禁ずる連邦法が存在しないこと。 (b) 児童ポルノに関わる活動は連邦レベルでは重罪であるのに対し、一部の州では軽罪でしかない可能性があること。 (c) 選択議定書が対象とする犯罪の未遂または当該犯罪へのあらゆる形態の参加が連邦法および州法において必ずしも処罰の対象とされていないこと。 33.委員会は、刑法がもっぱら各州の管轄事項であることから、締約国が、選択議定書が対象とするすべての犯罪が全国で選択議定書第2条および第3条にしたがって定義されかつ禁止されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 連邦および州の両方のレベルで、選択議定書第2条および第3条にしたがって児童買春を定義しかつ禁止すること。 (b) 選択議定書上のすべての犯罪を、連邦および州の両方のレベルで、その重大な性質を考慮した適切な刑罰によって処罰できるようにすること。 (c) 選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の未遂および共謀または当該犯罪への参加が選択議定書第3条第2項にしたがって処罰されることを確保すること。 34.委員会はさらに、子どもの権利の保護をさらに向上させるため、アメリカ合衆国が続いて子どもの権利条約の締約国となるよう勧告する。 裁判権および犯罪人引渡し 35.委員会は、合衆国外で行なわれたセックス・ツーリズムおよび児童ポルノ関連の犯罪について締約国が域外裁判権を設定できることは歓迎しながらも、一部の連邦法(18 U.S.C., paragraphs 1585 and 1587など)で定められている犯罪者の国籍に基づく締約国の域外裁判権が、選択議定書が対象とするすべての犯罪に及ぶわけではないことを懸念する。委員会はまた、連邦法に、被害者が締約国の国民である場合の域外裁判権の主張について一般的定めが置かれていないことにも留意するものである。 36.委員会は、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムをともなう行為の責任者を訴追しおよび処罰するための枠組みを強化する目的で、締約国が、第4条に列挙されたすべての事案について裁判権を設定するよう勧告する。さらに委員会は、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪を国外で行なった容疑がある者が自国の領域内にいる場合であって、締約国がその者を他の締約国に引渡さないときは、犯罪が行なわれた国が選択議定書の締約国ではない場合または国内法でこれらの行為を犯罪としていない場合であっても、締約国が当該容疑者を訴追できるようにすることも勧告するものである。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 37.委員会は、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもを刑事司法制度において保護するためにとられた措置(支援者にアクセスできること、子どもが証言を行なうべきではないと判断されるときは法廷における直接の証言に代わる手段が認められること、閉鎖回路テレビ(CCTV)による子どもの証言が多くの州で活用されていること、子どもの事情聴取の専門家が存在することおよび発達の観点から適切な質問方法が用いられていることを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、州法において子ども、とくに売買春に関与した子どもの逮捕および訴追を免除することがまだ統一的慣行となっていないことから、被害を受けた子ども、とくに合衆国内における人身取引の被害者である子どもおよび売買春に利用された子どもが処罰されまたは犯罪者扱いされる事例がある旨の情報を懸念するものである。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書に基づくいずれかの犯罪の被害を受けた18歳未満のすべての者が、そのこと自体を理由として、連邦または州のレベルで犯罪者にも処罰の対象にもされないことを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が、被害を受けた子どもの保護に関する上限年齢が全国的に18歳と定められることを確保するよう勧告する。 (b) 選択議定書に掲げられた犯罪の被害を受けた子どもが刑事司法制度において取り扱われる際、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 選択議定書第8条第1項に照らし、連邦および州の両方のレベルで、刑事司法手続のあらゆる段階における、18歳未満のすべての被害者および証人の保護を確保すること。締約国はまた、これとの関連で、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国際連合指針(国連経済社会理事会決議2005/20参照)を指針とするべきである。 被害者の回復および再統合 39.委員会は、人身取引被害者保護法により、合衆国において、市民でない者であって重大な形態の人身取引の被害を受けた者(商業的性的行為を行なうよう誘導された18歳未満の者を含む)が同国での在留を認められ、かつ一定の公的扶助を難民と同一の程度で受給する資格を有することに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、他国からの人身取引の被害者である子どもは一定のサービスを利用可能であるものの、国内の商業的性的搾取の被害を受けた子どもに対しては十分なサービス(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のために必要な一時避難シェルターを含む)が用意されていないことが多いことを、懸念する。委員会はさらに、場合によって、性的搾取目的の人身取引の被害を受けた外国人が身元の明らかでない人身取引被害者として退去強制させられる可能性があるという情報を懸念するものである。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書第9条第3項にしたがい、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた男女すべての子どもに対し、十分なサービス(全面的な社会的再統合ならびに全面的な身体的および心理的回復のためのサービスを含む)が利用可能とされることを確保すること。 (b) 議定書が対象とする犯罪の被害を受けた外国人の子どもが、退去強制されるのではなく、その身体的および心理的回復のために必要なサービスを与えられることを確保すること。出身国への帰還が子どもの利益に照らして最善の選択肢であると考えられるときは、出身国の状況に関わる十分なアセスメント(可能であれば家族環境に関するものも含む)が行なわれるべきである。 (c) 選択議定書第8条第4項にしたがい、議定書で禁じられた犯罪の被害者とともに活動する者を対象とする適切な研修、とくに法律および心理学に関する研修を確保するための措置をとること。 (d) 選択議定書第9条第4項にしたがい、この議定書に掲げられた犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。 VII.国際的援助および協力 41.委員会は、締約国が、人身取引との国際的闘いに相当の貢献を行なってきたことを歓迎する。委員会はまた、ニューメキシコ州とメキシコのチワワ州との協力に関して対話中に提供された情報も、人身取引との闘いにおける望ましい実践例を確立するものとして歓迎するものである。 42.委員会は、締約国が、選択議定書にしたがい、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムをともなう行為の防止、摘発、捜査、その責任者の訴追および処罰に正当な注意を向けながら、多国間、地域間および二国間の取決めによる国際協力を強化するよう勧告する。これらの取決めは常に、子どもの最善の利益にかない、かつ国際人権基準を尊重するものであるべきである。 43.委員会は、締約国に対し、選択議定書を十分に適用するための措置の策定、実施および評価における国際連合の機関およびプログラム(地域間プログラムを含む)ならびに非政府組織との協力を継続するよう、奨励する。 44.委員会はまた、締約国に対し、貧困、低開発および脆弱な制度的能力のような、子どもが子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムの被害を受けやすくなることを助長する根本的原因に対応するための国際協力の強化を促進することも奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 (a)フォローアップ 45.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府省庁、連邦議会、上院および州当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 (b)普及 46.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに委員会が採択した総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 47.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、2010年1月23日を提出期限とする次回報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月20日)。