約 1,857,906 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/131.html
総括所見:ベラルーシ(第3~4回・2011年) 第1回(1994年)/第2回(2002年)OPAC(2011年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/BLR/CO/3-4(2011年4月8日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月25日に開かれた第1596回および第1597回会合(CRC/C/SR.1596 and 1597参照)においてベラルーシの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/BLR/3-4)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の報告書および事前質問事項(CRC/C/BLR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルな代表団の出席および積極的対話により、締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことに、評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年2月4日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/BLR/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての総括所見(CRC/C/OPSC/BLR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法上の措置を積極的な対応として歓迎する。 (a) 犯罪防止法(2009年)。 (b) 外国人市民および無国籍者に対する難民資格、追加的保護および一時的保護の付与に関する2008年6月23日の法律第354-3号。 (c) 機能不全家族の子どもの国による保護に関して一部法律を完成させかつ改正することに関する法律(2008年1月5日施行)。 (d) 両親を失った若年者または親のケアを奪われたその他の若年者の社会的保護に関する2005年12月21日の法律第73-Z号。 (e) 特別な発達上のニーズを有する者の教育(特別教育)に関する2004年5月18日の法律第285-Z号。 (f) 子どものネグレクトおよび少年非行の防止システムの基盤に関する2003年5月31日の法律第200-Z号。 5.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2004年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、および、同条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2003年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、条約に基づく締約国の第2回定期報告書の検討時に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.180)への対応が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返すものである。 7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書に関する総括所見の勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの、とくに、条約との一致を確保するための法律の見直し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがった独立した監視機構の設置、条約の実施における非政府組織(NGO)の関与、NGOの登録および活動の促進ならびに少年司法の運営に関するものに対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.委員会は、締約国が、2002年に委員会から勧告されたように、法律を条約と調和させることを目的とする法律の完全な見直しを行なっていないことを遺憾に思う。委員会はさらに、締約国における子どもの権利が、議会が制定する法律ではなく主として大統領令によって規律されているように思われることを懸念するものである。委員会は、これらの大統領令がすべて議会により採択される法律に移行されるわけではなく、かつこのプロセスに時間がかかり過ぎることを懸念する。 9.委員会は、締約国が、条約の規定および原則との全面的一致を確保するため、すべての国内法および関連の行政指針の包括的見直しを行なうべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、大統領令を議会制定法に移行するプロセスを加速することにより、子どもの権利の促進および保護に関していっそうの安定を確保するよう、勧告するものである。 調整 10.委員会は、省庁間にどのような調整機構が設けられており、かつ、どの省庁が条約の実施を調整する主務機関なのかに関する情報が存在しないことを遺憾に思う。委員会はさらに、この2年間、国家子どもの権利委員会が機能していなかったことを懸念するものの、2011年から構成の異なる新たな国家子どもの権利委員会が設置される計画である旨の、締約国代表団の情報に留意するものである。 11.委員会は、締約国が、国家子どもの権利委員会を強化しかつその再活性化を図るか、または条約の実施を調整するための新たな効果的制度を設置するとともに、国、広域行政圏および地方のレベルで効果的な調整機構が設置されることを確保するよう、勧告する。 国家的行動計画 12.委員会は、子どもの権利に関わるいくつかの計画およびプログラムが採択されたことに留意する。これには、子どもの状況の改善およびその権利の保護のための国家的行動計画(2004~2010年)、2006~2010年の期間で実施される大統領プログラム「ベラルーシの子どもたち」(2015年まで実施期間が延長されるとともに、定期的評価のためのシステムが設置され、かつ実施のための資源が配分される予定)および20以上の部門別プログラムが含まれる。しかしながら委員会は、国家行動計画についてその実施のための十分な資源が提供されていないこと、および、このように多数の計画およびプログラムが存在するために取り組みの混乱および重複が生じる可能性があることを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、種々の計画およびプログラムを、条約およびその選択議定書のすべての分野を網羅した、子どもに関する単一のかつ包括的な国家的行動計画に統合するとともに、同計画に対してその実施のための十分な資源を提供し、当該計画の効果的実施を確保するための確固たる監視評価システム(地方レベルにおけるものを含む)を確立し、かつ、市民社会および子どもたち自身を含むすべての関係パートナーのいっそうの関与を促進するよう、勧告する。 独立の監視 14.委員会は、条約およびその選択議定書の実施を監視する任務を委ねられた、国レベルの独立した機構が締約国に存在しないことを懸念する。委員会は、この役割は国家子どもの権利委員会によって履行されており、したがって新たな独立機構は必要ないという締約国の立場に懸念を覚えるものである。 15.委員会は、締約国が、パリ原則に全面的に一致し、かつ子どもの権利の保護および促進における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を反映した、条約およびその選択議定書の実施の監視を任務とする独立のかつ効果的な国レベルの機構を設置するよう、勧告する。締約国は、当該機構が、18歳未満のすべての子どもによってアクセス可能であり、子どもの権利侵害に関する苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限を与えられ、かつこれらの苦情に効果的に対応するための人的資源、財源および技術的資源を有することを確保するべきである。締約国は、この点に関して国連人権高等弁務官(OHCHR)の技術的援助を求めるよう、奨励される。 資源配分 16.2011~2015年を対象とする諸計画で子どものために配分される国内総生産(GDP)の割合を高めようとする意思があることは歓迎しながらも、委員会は、締約国における予算策定手続において子どもに配分される資源を明確に特定することができないため、子どもに関する支出の追跡およびその効果の評価が妨げられていることを、遺憾に思う。 17.委員会は、締約国が、子どもの権利の実施のための戦略的配分を行ない、その実施を追跡し、かつ配分の結果および効果を監視することを可能にするような予算策定の試行を開始するよう、勧告する。政策、戦略およびプログラムの実現に予算配分がどのように役立ったかを評価するため、子どもの権利に関わる効果評価が定期的に実施されるべきである。その際、締約国は、子どもの権利のための資源配分――国の責任に関して2007年9月21日に行なわれた一般的討議の際の委員会の勧告(2007年)を考慮するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることを検討するべきである。 データ収集 18.委員会は、とくに国レベルの社会経済データベース「ベラルーシインフォ」の創設を通じ、子どもに関わる分野のデータ収集を強化しようとする締約国の努力を評価する。しかしながら委員会は、マイノリティ集団に属する子ども(とくにロマの子ども)の状況ならびに無国籍の子どもおよび子どもに対する暴力のような、条約で対象とされている多くの具体的分野について情報が存在しないことを懸念するものである。 19.委員会は、委員会〔ママ〕が、子どもに対する暴力、少年非行、児童労働、遺棄、移住、マイノリティ集団(とくにロマ)に属する子ども、無国籍の子どもならびにHIVに感染しおよびHIVの影響を受けている女性および子どもにとくに注意を払いながら、細分化されたデータの収集を強化するよう、勧告する。 普及、研修および意識啓発 20.委員会は、同国の学校で子どもの権利の課程が教えられていることには留意するものの、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに一般公衆の間で条約に関する意識の水準が低いことを懸念する。 21.委員会は、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(法執行官、教員、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカーおよびあらゆる形態の代替的養護に従事する者を含む)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修が行なわれるべきことを勧告する。委員会はさらに、締約国が、条約で定められた権利に関する一般公衆、とくに子ども(学校に行っていない子どもを含む)の意識を高めるための努力を増強するよう、勧告するものである。 22.委員会はまた、締約国が、メディアが子どもの権利(とくに子どもの尊厳およびプライバシーに対する子どもの権利)を尊重し、条約の普及を支援し、かつ番組に子どもの意見を含めることを確保することも、勧告する。委員会はさらに、締約国が、メディアに対し、とくに子どもの権利に関する専門職倫理綱領を定めることを奨励するよう、勧告するものである。 市民社会との協力 23.委員会は、市民社会組織の登録(および再登録)のための委員会が閉鎖され、かつその職務が法務省に移管されたこと(市民社会組織およびその連合体(協議会)の登録に関わるいくつかの問題についての2006年10月6日の大統領法第605号)に留意する。しかしながら委員会は、実際には、とくに登録のために必要とされる手数料が高額であることにより、締約国の市民社会組織が登録に際して困難を経験していることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、登録を受けないまま活動するNGOの活発な構成員である者が刑法第193条により犯罪者とされることを含む、NGOの困難な活動条件についても懸念を覚えるものである。 24.前回の勧告(CRC/C/15/Add.180、パラ23)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、非政府組織の登録および活動を促進しかつ非登録NGOの構成員であっても犯罪者とされないようにする目的で、法令ならびに司法上および行政上の実務を見直すよう促す。 子どもの権利と企業セクター 25.法人の法的責任に関する法律案を策定するための努力は歓迎しながらも、委員会は、同法がまた議会に提出されていないことを懸念する。 26.委員会は、法人の法的責任に関する法律を速やかに制定するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、国連・ビジネスと人権枠組みにしたがい、企業セクターが、とくに子どもの権利との関連で、企業の社会的責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規則を策定しかつ実施するよう、勧告するものである。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された国連・ビジネスと人権枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 27.委員会は、ジェンダーの平等に関する国家的行動計画(2008~2010年)が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、ジェンダーに基づく差別が締約国で大規模に行なわれており、かつ性別に基づく差別をとくに禁ずる法律が定められていないことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、ロマの子どもに対するいやがらせが行なわれており、かつこれらの子どもが保健ケア、教育および社会サービスへのアクセスとの関連で差別を経験していることも、懸念する。 28.委員会は、締約国に対し、性差別主義的および人種主義的態度および行動を含む差別と闘うための努力を強化するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、子ども(とくにロマの子ども)に対する差別を、とりわけ教育制度およびメディアを通じて防止しかつ根絶することに高い優先順位を置くよう、勧告するものである。委員会はまた、2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書に対しても、締約国の注意を促す。 子どもの最善の利益 29.委員会は、子どもの最善の利益の原則が締約国の法律、とくに外国人市民および無国籍者に対する難民資格、追加的保護および一時的保護の付与に関する2008年法に体系的に反映されていないことを懸念する。 30.委員会は、締約国が、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の原則が、子どもに影響を与えるすべての法令ならびに司法上および行政上の手続に反映されることを確保するための検討を実施するとともに、実際にも、子どもに影響を与えるすべての行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、自己に影響を与える決定についての子どもの意見が、とくに家庭においてめったに正当に考慮されないことを懸念する。委員会はさらに、子どもに対し、自己に影響を与えるすべての司法上および行政上の手続(親の権利の剥奪の事案を含む)において、その年齢および成熟度にしたがって意見を聴かれる機会が提供されていないことを懸念するものである。委員会は、子どもが親の同意を得ずに裁判所に訴えを起こし、かつ法的援助を求めるために達していなければならない年齢が高いこと(14歳)を懸念する。 32.委員会は、一般公衆を対象とする意識啓発プログラム等も通じ、子どもが、公使双方の領域で、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明する権利を認められ、かつこれらの意見が正当に重視されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、関連の法改正等も通じ、子どもが司法上および行政上の手続に参加し、かつ自己の見解を知らせることができることを確保するよう、勧告するものである。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を促す。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 名前および国籍 33.委員会は、締約国における無国籍者の人数の多さに留意するとともに、締約国に在留する無国籍の子どもの人数および状態についてのデータが存在しないことを懸念する。 34.条約第7条にしたがい、委員会は、締約国に対し、無国籍を防止する目的で、可能なかぎり国籍を取得するすべての子どもの権利の実施を確保するよう、促す。とくに、締約国は無国籍の子どもに関するデータを収集するべきである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の技術的援助を求めるよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、無国籍者の地位に関する1954年の条約、無国籍の削減に関する1961年の条約、国籍に関する1997年の欧州条約、および、国家承継に関連する無国籍の回避に関する2009年の欧州評議会条約の批准を検討するよう、勧告するものである。 表現の自由、結社および平和的集会の自由ならびに適切な情報へのアクセス 35.国家青少年政策の基盤に関する法律が2009年に施行され、青少年の結社の自由について追加的保障が定められたことには留意しながらも、委員会は、表現の自由(情報を受ける自由を含む)ならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が法律上も実務上も保障されていないことを懸念する。委員会はさらに、2010年12月の大統領選挙との関連で行なわれたデモの際に青少年が拘禁されたことも懸念するものである。 36.委員会は、条約第13条、第15条および第17条にしたがい、表現の自由、結社および平和的集会の自由ならびに適切な情報へのアクセスに対する権利の全面的実施の保障を確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 37.委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が締約国で正当に尊重されかつ保護されていないことを懸念する。委員会は、とくに以下のことについて懸念を覚えるものである。 (a) 市民部隊として組織され、一般教育学校および職業訓練学校を含む教育施設の巡回を行なっているとされる情報提供者の目的および活動。 (b) 礼拝しまたは宗教もしくは信念との関係で集会を開く自由ならびにこれらの目的のための場所を設置しおよび維持する自由も含む宗教の自由に対して課されている制限。 38.委員会は、条約第14条3項にしたがい、かつ宗教または信念に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する宣言(1981年)を考慮に入れ、締約国が、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するよう勧告する。 体罰 39.犯罪に対する刑としての体罰は違法であり、かつ教育施設の規則で体罰が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、体罰が、家庭では合法とされており、刑事制度および代替的養護の現場を含む施設では明示的に禁じられておらず、かつ社会で広く受け入れられていることを、依然として懸念するものである。 40.委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設におけるあらゆる形態の体罰を禁止し、かつ体罰の有害な影響に関する意識を高めるための措置を発展させるとともに、子どもの尊厳と一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれるべき、家庭、施設および刑事制度における代替的形態のしつけおよび規律を促進するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.180、パラ40(d))をあらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2007年〔ママ〕)に対して締約国の注意を促すものである。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、ユニセフ、OHCHR、世界保健機関(WHO)および他の関連の機関、とくに国際労働機関、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、UNHCRおよび国連薬物犯罪事務所ならびにNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 42.委員会は、経済的困窮およびアルコールの濫用が、家族の解体、ネグレクト、虐待および親のケアの剥奪の高い発生件数につながる主要な要因に数えられていることを懸念する。委員会はさらに、血縁の家族から分離される子どもの人数が多いこと、および、子どもの養育責任を遂行する親の能力を高め、分離を防止し、かつ家族の再統合を奨励するための措置が十分な効果を上げていないことを、懸念するものである。さらに委員会は、大統領令第18号にしたがって行なわれる子どもの親からの分離が、必ずしもその子どもの最善の利益にのっとって行なわれるわけではない可能性があることを懸念する。 43.条約第9条および第18条にしたがい、委員会は、締約国が、家族という単位を子どもの成長およびウェルビーイングのための自然な環境として認め、親および法定保護者に対し、子どもの養育責任を遂行するその能力を高めることを目的とした支援サービスを提供するための措置を強化するよう、勧告する。さらに、大統領令第18号は法律に移行されるべきであり、当該法律においては、子どもの最善の利益のために分離が必要な場合を除いて子どもが親から分離されないことを確保するための、あらゆる必要な保護措置が定められるべきである。 44.委員会は、締約国が、扶養義務に関する判決の承認および執行に関する条約、扶養義務の準拠法に関する条約、および、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約の批准を検討するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 45.いくつかの入所型養護施設が閉鎖され、それにともなって家庭型養護制度の拡大および国内養子縁組件数の増加に向けた進展が見られることには留意しながらも、委員会は、多数の子どもが依然として入所型養護を受けていることを懸念する。 46.委員会は、締約国が、代替的養護を必要とする子どもが施設ではなく家庭型養護に措置されることおよび可能なときは常に家庭に復帰することを確保するための努力を増強するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、条約第25条および総会が採択した子どもの代替的養護に関する指針〔PDF〕に照らし、代替的養護に措置された子どもに関する包括的な定期的再審査機構を確保するよう、勧告するものである。 養子縁組 47.委員会は、養子縁組に関する法律において、子どもの最善の利益、および、生物学的親または保護者の十分な情報に基づく同意を得る必要性が十分に考慮されていないことを、懸念する。 48.委員会は、締約国が、すべての養子縁組案件において、子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされ、かつ親または法定保護者が当該養子縁組について十分な情報に基づく同意を与えていることを確保するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト 49.子どもを虐待およびネグレクトから保護するために締約国が行なっている努力、ならびに、回復およびリハビリテーションのためのサービスを提供しているシェルターおよびセンターが利用可能であることには留意しながらも、委員会は、締約国において防止の水準が低く、かつ虐待およびネグレクトの被害を受ける子どもの人数が多いことを懸念する。 50.委員会は、締約国が、ドメスティックバイオレンスを防止しかつこれと闘い、ドメスティックバイオレンスの防止および抑止に関する法律を採択し、かつ、ドメスティックバイオレンスの事案への対処法について専門家を体系的に訓練するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 E.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害のある子どもの社会への統合を促進するためのリハビリテーション・プログラムおよび職業訓練プログラムが実施されていることに、積極的側面として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子どもに関する国レベルの包括的政策が締約国で定められていないこと。 (b) 障害のある子どもに関する近代的なデータ収集システムが存在しないこと。 (c) 知的障害のある多くの子どもがいまなお入所型施設で生活しており、教育その他のコミュニティを基盤とするサービスへのアクセスを享受していないこと。 (d) とくに農村部において、子どもの養護の専門家が十分に存在せず、かつ良質なサービスへのアクセスが困難であること。 (e) 全障害児の半数近くが普通教育制度の枠外に留まっていること。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 明確な目標を定めた、障害のある子どもに関する国家的政策を策定すること。 (b) 障害のある子どもの分野で近代的なデータ収集システムを発展させること。 (c) 知的障害のある子どもおよび若者ならびにその家族の健康に関するWHOヨーロッパ宣言(2010年11月、ブカレストにおいて、ベラルーシを含むWHOヨーロッパ地域の保健大臣全員が支持)にしたがい、知的障害のある子どもに関する政策を策定すること。 (d) 重度障害のある子どもが家族とともに暮らせるようにするため、このような子どもの親に十分な支援を提供すること。 (e) 専門家に対して体系的研修を行なうとともに、障害のある子どもが良質なサービスにアクセスできることを確保すること。 (f) 障害のあるすべての子どもが教育にアクセスできることを確保するとともに、可能なかぎり、障害のある子どもを主流の教育に統合すること。 健康および保健サービス 53.委員会は、子どもの健康水準を向上させるための措置、とくに妊産婦死亡率および新生児死亡率の削減を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、第一に呼吸器疾患(2008年に72%)、ならびに事故、怪我および中毒を主な理由として、子どもの有病率が依然として高いことを懸念するものである。委員会はさらに、子どもの権利法第5条が子どもに対する無償の治療について規定しているにも関わらず、一時在留許可を有する外国籍および無国籍の子どもが無償の治療の利用に際して困難に直面していることを、懸念する。 54.委員会は、締約国が、締約国での一時在留許可を有するすべての子ども(外国籍および無国籍の子ども双方)に対して無償の治療を保障する等の手段により、すべての子どもの健康状態を向上させるための努力を引き続き強化するよう、勧告する。 55.委員会は、やがて確実に死にいたる疾病または生命を脅かす疾病に罹患した子どもの緩和ケアに対する締約国のコミットメント、および、最近の「子どもの緩和ケアに関する命令」の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、緩和ケアの大部分はNGOによって提供されており、十分な財政支援も行なわれていないことを懸念するものである。 56.条約第4条、第6条および第24条に照らし、委員会は、締約国が、子どもに緩和ケアを提供するための資金拠出機構を設置し、かつ、NGOが提供する緩和ケアサービスを支援するよう、勧告する。 環境保健 57.締約国が、チェルノブイリ原発事故の影響を受けている地域で復興のために相当の努力を行なってきたことには留意しながらも、委員会は、チェルノブイリ原発事故が子どもの健康に根強く悪影響を及ぼしていることに関わる懸念、とくにヨウ素欠乏症に関連して被災地で子どもの甲状腺がんが多発していることに対する懸念を、あらためて表明する。 58.委員会は、締約国が、チェルノブイリ原発事故の影響を受けている子どもに提供される専門的保健ケアを引き続き向上させ、かつ放射能汚染関連疾患の早期発見および予防のための努力を強化するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 思春期の健康 59.委員会は、性感染症の発生件数が多いこと、思春期女子による妊娠中絶の水準が高いこと、ならびに、喫煙、過度なアルコールの消費および薬物の使用が青少年にとって重大な健康上のリスク要因となっていることを懸念する。委員会はまた、青少年がHIVの流行にとくに影響を受けやすいことも懸念するものである。委員会はさらに、若者にやさしい医療カウンセリングおよびHIV検査が、すべての子どもにとって、かつ締約国の領域全体で平等に利用可能となっていないことを懸念する。 60.委員会は、締約国が、性感染症、望まない妊娠の防止、喫煙および有害物質の濫用、ならびに健康的なライフスタイルの促進をとくに重視しながら、思春期の健康の向上に関する国家的戦略を策定しかつ採択するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、包括的なHIV広報啓発キャンペーンならびに若者にやさしいHIV検査およびカウンセリングを促進しかつ拡大するよう、勧告するものである。 精神保健 61.自殺の防止および自殺未遂者への援助の提供のための措置が承認されたこと(2007年7月9日の命令第575号)および国家自殺防止プログラム(2008~2012年)が策定されたことには留意しながらも、委員会は、防止措置が有効ではなく、かつ子どもの自殺件数が増えていることを依然として懸念する。 62.委員会は、締約国が、国家自殺防止プログラムを実施し、青少年の自殺を防止するための措置を増強し、かつ精神保健ケアサービスを強化するよう、勧告する。 生活水準 63.委員会は、最低生存費以下で暮らしている子どもの人数が減少したことを歓迎する。子どものいる家庭に対して児童手当その他の給付が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、貧困の影響を不相応に受け続けている、子どもが3人以上いる家庭およびひとり親世帯の状況について懸念を覚えるものである。 64.委員会は、発達に対する子どもの権利を確保する目的で、とくにもっとも周縁化されかつ不利な立場に置かれた家族に焦点を当てながら、領域内のすべての子どもに対して十分かつ持続可能な生活水準を確保するための努力を増進させるよう、勧告する。委員会は、貧困の根本的原因を調査し、かつこれに対応することを勧告するものである。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 65.委員会は、就学前教育施設が都市部で広く利用可能であり、かつ農村部においても程度は劣るものの利用可能であることを歓迎する。初等教育が9年間でありならびに義務的および無償であることには留意しながらも、委員会は、相当の割合(10%)の子どもが学校に行かないままであること、および、隠れた費用負担が残っていることを懸念するものである。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 農村部における就学前教育施設の利用可能性を高めること。 (b) 義務教育から脱落した子どもが学校に復帰することを確保するための努力を行なうこと。 (c) 初等教育が、教科書および学校教材も含めて完全に無償であることを確保すること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第38~40条ならびに第37条(b)および(d)) 子どもの庇護希望者および難民 67.委員会は、外国人市民および無国籍者に対する難民資格、追加的保護および一時的保護の付与に関する法律が2008年に採択されたことを歓迎する。同法は、子どもの庇護希望者および難民がベラルーシ市民と同等な立場で保健上および教育上の便益に平等にアクセスできること、および、難民が家族再統合に対する権利を有していることを明示的に定めたものである。しかしながら委員会は、同法が、庇護の正当事由としてジェンダーに関連する迫害を含めておらず、または子どもの最善の利益の原則を反映していないことを、遺憾に思うものである。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 在留資格のない子ども、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもの庇護申請を審査する際、子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として明示的に特定するとともに、これらの子どもを収容センターに措置しないこと。 (b) 庇護および移民を担当する職員を対象として、庇護および補完的保護を規律する法律の適用に関する研修(子どもに特有の形態の迫害を考慮することに関する研修を含む)を行なうこと。 (c) 適切な保護措置を掲げた二国間協定の調印等も通じ、保護者のいないベラルーシ国籍の子どもの送還および再統合に関する決定が、子どもの最善の利益を第一次的に考慮しながら行なわれることを確保すること。 (d) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)に掲げられた委員会の見解を考慮すること。 性的搾取および人身取引 69.人身取引、不法な移住および関連の不法行為に対する対策プログラム(2008~2010年)は歓迎しながらも、委員会は、締約国が依然として、性的搾取をとくに目的とする人身取引被害者である女性および子どもの送り出し国、通過国および受け入れ国であることを懸念する。 70.委員会は、締約国が、とくに子どもの性的搾取および人身取引と闘うための努力を引き続き行なうよう、勧告する。委員会は、被害を受けたすべての子どもに対し、十分な保護、ならびに、迅速な回復およびコミュニティへの再統合のための専門的援助が提供されるべきことを勧告するものである。 少年司法の運営 71.委員会は、子どもによる犯罪が減少し、およびこれに応じて収監刑に服する子どもの人数も減少していること、ならびに、地域奉仕活動のような収監刑に代わる措置の使用が増えていることを、歓迎する。少年司法の概念に関する大統領令案には留意しながらも、委員会は、締約国がいまなお包括的な少年司法制度の設置に着手していないことを懸念するものである。委員会はさらに、罪を犯した少年に対して長期の自由剥奪刑が科されていること、再犯の水準が高いことおよび釈放後のプログラムが存在しないことを懸念する。 72.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条(b)、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう、促す。委員会は、締約国に対し、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮するよう促すものである。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国のすべての地域で少年裁判所を設置し、かつ訓練を受けた少年裁判官を任命することも含め、包括的な少年司法制度を設置すること。 (b) 可能なときは常に、調停、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような拘禁に代わる措置をいっそう活用しながら、少年犯罪の問題に対し、条約で唱道されているホリスティックなアプローチで臨むこと(たとえば根本的な社会的要因に対応すること)。 (c) 自由の剥奪が最後の手段として、重大な犯罪に対して、かつ可能なもっとも短い期間で〔のみ〕用いられることを確保すること。 (d) 社会への再統合を促進し、かつ再犯を防止する目的で、再統合のための釈放後のプログラムを実施すること。 (e) ユニセフおよび少年司法に関する機関横断パネルに対し、少年司法の分野における技術的援助を求めることを検討すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 73.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引のような犯罪の被害を受けたすべての子どもおよび(または)そのような犯罪の証人が条約で求められている保護を提供されることを確保するとともに、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての〔国連〕指針を全面的に考慮するよう、勧告する。 H.国際人権文書の批准 74.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書、とくに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその議定書、ならびに、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 I.フォローアップおよび普及 75.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、国民議会、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 76.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 77.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年10月30日までに提出するよう慫慂する。同報告書にはこの総括所見のフォローアップについての記載が含まれるべきである。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促すものである。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 78.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/308.html
総括所見:イスラエル(OPSC・2015年) 第1回(2002年)/第2~4回(2013年)OPAC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/ISR/CO/1(2015年7月13日)/第69会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年5月28日に開かれた第2007回会合(CRC/C/SR.2007参照)においてイスラエルの第1回報告書(CRC/C/OPSC/ISR/1)を検討し、2015年6月5日に開かれた第2024回会合(CRC/C/SR.2024参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/ISR/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の部門横断型代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、東エルサレムを含むパレスチナ被占領地域(以下OPT)およびシリア領ゴラン高原被占領地域に住んでいる子どもについての情報およびデータの提供を締約国が提供しなかったために、選択議定書の実施に関する同国の説明責任に影響が生じている旨の従前の懸念(CRC/C/ISR/CO/2-4、パラ3参照)をあらためて表明する。委員会は、締約国に対し、OPTにおける壁の建設の法的帰結に関する国際司法裁判所の勧告的意見 [1] を遵守し、かつ、イスラエルおよびOPT(ヨルダン川西岸およびガザ地区を含む)ならびにシリア領ゴラン高原被占領地域において選択議定書の全面的適用を確保する自国の義務にしたがうよう、促すものである。 [1] 国際司法裁判所「パレスチナ被占領地域における壁の建設の法的帰結」(2004年7月9日付の勧告的意見)、パラ163(3)A参照。 4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づいて締約国が提出した第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/ISR/CO/2-4、2013年6月14日採択)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づいて提出された第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/ISR/CO/1、2010年1月29日採択)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった、以下のものを含む措置を歓迎する。 (a) 刑法第214条(b3)の改正(改正第118号(2014年)-わいせつな刊行物へのアクセス)。 (b) セクシュアルハラスメント防止法(法律第5758-1998号)の改正(改正第10号(2013年)-第3条(a)(5A))。 (c) 「未成年者の画像を含むわいせつ物の刊行、所持およびこれへのアクセスに関する事件の扱い」と題した刑事問題担当検事副総長のガイドライン(2014年12月11日付)。 (d) 押収および没収に関する共助条件に関する国際司法共助法の改正(2010年10月)。 (e) 性暴力軽罪被害者援助法(法律第5769-2008号)の制定(2008年)。 (f) 人身取引禁止(法改正)法(法律第5766-2006号、人身取引禁止法)が制定され(2006年10月)、かつその規定のほとんどが刑法に編入されたこと。 6.委員会は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を締約国が批准したこと(2008年7月)に、評価の意とともに留意する。 7.委員会は、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 警察内にサイバー犯罪部が設置され、かつ未成年者間のサイバーセックス犯罪を捜査する特別班が設けられたこと(2013年)。 (b) 児童買春への対処方法を改善するための協働行動計画を策定する特別省庁間チームが設置されたこと(2012年)。 (c) 買売春に関与している未成年者の特定およびリハビリテーションの促進を目的として、社会問題・社会サービス省によって「積極的発見計画」および「路上捜索と開放空間」プログラムが開始されたこと。 (d) 性犯罪の被害を受けた子どもを対象として、2008年以降、国民保険機関およびラシ財団が設置し、かつ社会問題・社会サービス省が運営する無償の心理治療プログラムが実施されていること。 データ収集 8.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪を網羅した、細分化されたデータを包括的に収集するシステムが設置されていないことを懸念する。 9.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野の分析、監視および影響評価を確保するための包括的なデータ収集機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国籍、民族的出身、社会経済的背景および都市部・農村部の居住別に細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、起訴件数および有罪判決件数についてのデータを収集することも求められる。 III.一般的実施措置 国家的行動計画 10.委員会は、選択議定書で対象とされているすべての問題を包摂した、子どもに関する包括的な政策および戦略が定められていないことを遺憾に思う。 11.条約に基づく総括所見(CRC/C/ISR/CO/2-4、パラ10)を参照しながら、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野でとるべき必要な措置を含み、かつその実施のための十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられた、子どもに関する包括的な政策および戦略を採択するべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。防止、〔ならびに、〕被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合にとくに焦点が当てられるべきである。委員会はまた、締約国に対し、このような政策および戦略が恒常的に評価されることを確保するようにも奨励する。 調整および評価 12.委員会は、締約国から提供された、選択議定書の実施には多くの政府機関が関与している旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施に関してさまざまな政府機関間の調整を確保する全般的機構が設置されていないことを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、条約およびその〔2つの〕選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の監視および評価に関して指導的役割を果たし、かつ効果的な一般的監督を行なえる調整機関を指定するよう勧告する。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 普及ならびに意識啓発および研修 14.委員会は、情報の普及、研修の実施(子どもとともにおよび子どものために活動している捜査官、警察の少年担当捜査官ならびに教育心理学者を対象とするものを含む)、および、小中学校における防止プログラムを通じた意識啓発のために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、一般公衆の意識啓発のための全般的計画が存在せず、かつ、これらの取り組みで選択議定書の全分野が網羅されているわけではないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に対して体系的に周知するための努力をさらに強化すること。 (b) 関連の政府機関、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に効力しながら、選択議定書で対象とされているすべての問題および選択議定書上の犯罪からの保護措置(国内法で定められているものを含む)についての意識啓発プログラムを発展させること。 (c) 研修活動が、体系的かつ学際的であり、かつ選択議定書で対象とされているすべての分野を含んでいること、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(とくに、締約国全域の、あらゆるレベルの裁判官、検察官、ソーシャルワーカー、法執行官および出入国管理官)を対象として実施されることを確保すること。 資源配分 16.委員会は、締約国から、選択議定書に基づく活動のためにとくに配分されている予算についての情報が提供されていないことを懸念する。このような情報が存在しないことは、選択議定書の実施を評価することの妨げとなる。 17.委員会は、締約国が、選択議定書の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源を配分するよう勧告する。 独立の監視 18.人権の保護および促進のためにさまざまな機関が果たしている役割は認知しながらも、委員会は、条約およびその〔2つの〕選択議定書に基づく進展を恒常的に監視しかつ評価する任務を委ねられた独立の機構を設置するべきである旨の従前の勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ17およびCRC/C/ISR/CO/2-4、パラ16)以降、締約国によって限られた進展しか達成されていないことを懸念する。 19.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがって、国および地方のレベルにおける条約の実施の進展の監視および評価、ならびに、子どもからの苦情に対する、子どもに配慮した迅速なやり方による対応を目的とした子どもオンブズパーソンを設置するためのプロセスを速やかに進めるよう勧告する。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条(1)および(2)) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 20.選択議定書で禁じられた犯罪を防止するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、これらの措置において選択議定書上の犯罪がすべて網羅されているわけではないことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国が、被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもをとくに対象とする十分なプログラムを実施していないこと。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子どもを特定しかつ監視するための十分な機構が整備されていないこと。 (c) 締約国における子どもの性的搾取、とくに児童買春および児童ポルノ(インターネット上のものを含む)の規模に関して存在する情報が不十分であること。 21.委員会は、締約国が、選択議定書のすべての分野を網羅した防止措置を拡大しかつ強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子ども(性暴力および家族間暴力の被害者である女子、路上の状況にある子ども、施設で暮らしている子ども、ベドウィン人、パレスチナ人およびアラブ系イスラエル人の子どもならびに移住労働者および庇護希望者の子どもなど)を含む、締約国の領域全体の子どもを対象とした特別防止プログラムを確立すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を特定するための機構および手続を確立し、かつ、これらの子どもを対象として心理社会的支援および意識啓発プログラムを行なうこと。 (c) 子どもの性的搾取、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノ(インターネット上のものを含む)の規模を評価する目的で研究を実施すること。 児童セックスツーリズム 22.委員会は、イスラエル観光業者・旅行代理店協会が世界観光機関の世界観光倫理規範を採択することにつながった観光省による努力を含めて、児童セックスツーリズムの防止のために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、効果的な規制の枠組みが存在せず、かつ、国外における児童セックスツーリズムの防止およびこれとの闘いを効果的に進めるためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童セックスツーリズムのあらゆる事案を防止しかつこれに対処するため、効果的な規制枠組みの確立および実施を進め、かつあらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとること。 (b) 児童セックスツーリズムの防止および撤廃を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力をさらに強化すること。 (c) 児童セックスツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを継続するとともに、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を普及すること。 (d) あらゆる関係者に対し、「旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範」への署名およびその遵守を奨励すること。 出生登録 24.委員会は、とくに子どもの移住者、庇護希望者および難民が出生証明書を有していないことにより、選択議定書上の犯罪を捜査する際の被害者の年齢確認ならびに被害者による医療サービスおよびリハビリテーションへのアクセスが妨げられる可能性があることを懸念する。 25.委員会は、締約国が、締約国の領域内にいるすべての子どもが出生証明書にアクセスできることを確保するための措置を緊急にとるよう勧告する。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2)および(3)、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 26.人身取引禁止(法改正)法(法律第5766-2006号、人身取引禁止法)および刑法の関連規定には留意しながらも、委員会は、刑法において選択議定書上のすべての犯罪が十分に明記されているわけではないことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 選択議定書第2条(a)および第1条第1項(a)(i)で対象とされているすべての形態の子どもの売買が、人身取引とは異なる犯罪として分類されているわけではないこと。 (b) 子どもの強制労働が子どもの売買のひとつの形態として犯罪化されていないこと。 (c) 刑法第199条、第201条、第202条および第203条に基づく児童買春関連の犯罪について刑の加重が行なわれるのは、被害者が14歳未満である場合または被害者が14歳以上であって当該犯罪者のケアおよび責任のもとにある場合のみであること。 27.委員会は、締約国が、刑法その他の関連の法律を引き続き改正し、選択議定書第2条および第3条と完全に一致させるよう勧告する。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 子どもの売買を選択議定書第3条にしたがって定義し、規制しかつ犯罪化すること。これには、子どもの売買――人身取引と類似してはいるものの同一ではない概念――のひとつの形態である子どもの強制労働の犯罪化も含まれる。 (b) 18歳未満のすべての子どもが刑法によって全面的かつ平等に保護されることを確保すること。 28.国際的な代理母出産の取決めを規制するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、隠れた子どもの人身売買および(または)性的虐待の可能性の防止を目的とした、国外の代理母が出産した子どもの親になる予定の者の適性審査を行なう適切な手続が存在しないことを懸念する。 29.委員会は、締約国が、国際的な代理母出産の取決めを通じて生まれた子どもの保護を確保するため、より厳格な政策を整備するよう勧告する。 加賀者の訴追 30.委員会は、選択議定書上の犯罪事件の捜査件数が少ないこと、これらの事件のうち訴追に至るのはわずかな割合にすぎないこと、ならびに、児童買春および児童ポルノ関連の犯罪に対する刑罰が犯罪の重大性に常に相応しているわけではないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 加害者が十全な捜査の対象とされ、かつ訴追されることを確保すること。 (b) 児童買春および児童ポルノ関連の犯罪に対する刑罰が犯罪の重大性に相応するものとなることを確保するとともに、とくに、未成年者から性的サービスを受けることについて厳罰化を図ること。 域外裁判権 32.委員会は、選択議定書上の犯罪に関する域外裁判権の行使を可能とする具体的な法的根拠が存在しないことを懸念する。 33.委員会は、締約国が、とくに犯罪を行なったとされる者が締約国の国民でありもしくは締約国の領域に常居所を有する者である場合または被害者が締約国の国民である場合に選択議定書第3条第1項に基づく犯罪についての域外裁判権を設定するため、法律を見直すよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条(3)および(4)) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 34.証拠法(法律第5715-1955号)改正(子どもの保護)法(子どもの保護法)の採択およびクライシスセンターの設置をはじめ、刑事手続において子どもの被害者および子どもの証人を保護するためにとられている広範な措置は歓迎しながらも、委員会は、子どもの保護法の規定が14歳未満の子どもにしか適用されないことを懸念する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 証拠法(法律第5715-1955号)改正(子どもの保護)法を選択議定書および適用される他の国際法に全面的に一致させること等の手段により、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護し、かつ、とくに、18歳未満のすべての子どもが選択議定書上の犯罪からの全面的保護を享受できることを確保すること。 (b) 18歳に達していない子どもの被害者および子どもの証人全員に対し、刑事手続における特別保護措置が義務的に適用されることを確保すること。 (c) 十分な法律の規定および規則を通じて、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもおよび(または)当該犯罪の証人である子ども全員に対し、条約および選択議定書上で要求されている保護が提供されることを確保すること。 (d) 子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮すること。 被害者の回復および再統合 36.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪についてその被害を受けた子どもの回復および再統合を確保するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、これらの措置は改善しうると考えるものである。 37.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもに対して適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに全面的な社会的再統合のための援助を含む)が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもに短期的、中期的および長期的支援を提供するためのプログラムを発展させること。 (b) 人身取引または性的搾取もしくは経済的搾取を目的とする売買の対象とされ、またはその他の形で選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものための専門サービスおよび十分な援助を、直接またはサービス提供機関を通じて自国の領域全体でさらに強化するとともに、このような目的で十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(とくにもっとも被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を対象として適切な宿泊施設へのアクセスを促進しかつ強化するために必要な措置をとるとともに、このようなインフラが質量ともに十分に利用可能とされ、かつ十分な設備を備えることを確保すること。 VII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 38.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされているすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 39.委員会は、締約国が、締約国における子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 40.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会(クネセト)ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 41.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 42.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、〔子どもの権利〕条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年4月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/262.html
総括所見:英国(OPSC・2014年) 条約:第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2008年)/第5回(2016年)OPAC(2008年) 英領香港(当時、1996年)/英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/GBR/CO/1(2014年7月8日/技術的理由により2014年7月11日に再発行) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年5月30日に開かれた第1882回および第1883回会合(CRC/C/SR.1882 and 1883参照)において大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第1回報告書(CRC/C/OPSC/GBR/1)を検討し、2014年6月13日に開かれた第1901回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/GBR/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国代表団との建設的対話を評価する一方で、代表団に北アイルランドおよびスコットランドの代表が含まれていなかったこと、ならびに、最近になって選択議定書の適用が拡張されたジャージー代官管轄区についてまったく情報が提供されなかったことを、遺憾に思うものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2008年10月に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回統合定期報告書に関する総括所見(CRC/C/GBR/CO/4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/GBR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 4.締約国が選択議定書の批准をジャージー代官管轄区に拡張したこと(2014年4月)には留意しながらも、委員会は、選択議定書の適用がまだ英国の他のすべての海外領土および王室属領に拡張されていないことを懸念する。委員会は、締約国が、選択議定書の適用をこれらの領域に拡張するためにあらゆる措置をとるとともに、条約に基づく次回の定期報告書に、これらの領域における選択議定書の実施についての情報を記載するよう、勧告する。 II.一般的所見 積極的側面 5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった、以下のものを含むさまざまな措置を歓迎する。 (a) 「子どもおよび若者の権利(ウェールズ)の評価尺度」(2011年1月)および「子どもの権利事業計画」(2014年4月)の採択。これにより、ウェールズ政府のすべての大臣は、いかなる職務を行なう際にも、子どもの権利条約およびその選択議定書に掲げられた権利および義務を正当に考慮する法的義務を負う。 (b) 人身取引に関連する多くの問題を具体的に扱っている刑事司法(北アイルランド)法(2013年)の採択。 (c) 改正により、臓器提供への同意表明に関して代理人を任命する選択権を子どもに認めた、移植(ウェールズ)法(2013年7月)の採択。 6.委員会は、締約国による以下の条約の批准に、評価の意とともに留意する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(2009年6月)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約の選択議定書(2009年2月)。 7.委員会は、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度の創設ならびに国家的な計画およびプログラムの採択に関して達成された進展を歓迎する。 (a) 内務省による「子どもおよび弱者への性的暴力に関する国家グループ」の設置(同グループは、2014年の秋に新たな国家的行動計画の発表を予定している)。 (b) イングランド・ウェールズ担当国家警察主管が公刊した、子どもに対する性犯罪の捜査に関する手引き。 8.委員会はさらに、締約国が、国際連合の諸特別手続による調査をいつでも受け入れる姿勢を公式に明らかにしたこと(2001年3月)に、評価の意とともに留意する。 III.データ データ収集 9.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての犯罪の特定、記録、付託およびフォローアップを国および地方のレベルで行なえるようにし、かつ選択議定書の実施における進展の分析および評価を行なうための包括的なデータ収集システムを設置していないことを、深刻に懸念する。「全国付託機構」(National Referral Mechanism)の存在には留意しながらも、委員会は、当該機構により収集されるデータが地域別に細分化されておらず、かつ子どもの人身取引事案に限定されていること、および、選択議定書で対象とされている他の犯罪の特定、記録またはフォローアップが行なわれていないことを懸念するものである。 10.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野について、北アイルランドおよびスコットランドを含む締約国の管轄地域全域でデータの収集、分析、監視および影響評価を行なうための、包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いつつ、とくに男女別、年齢別、国民的および民族的出身別、地理的所在別ならびに社会経済的背景別に細分化されるべきである。被害を受けた子どものうち回復のための援助を提供された子どもの人数ならびに訴追および有罪判決の件数についてのデータ(犯罪の性質別に細分化されたもの)も収集することが求められる。委員会はまた、締約国が、管轄地域全域でデータ収集の調整を図り、かつ、さまざまな地域に関するデータを収集する際の共通指標システムを確立することも勧告するものである。 IV.一般的実施措置 子どもの権利条約の一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 立法 11.とくにイングランドおよびウェールズで選択議定書関連の法律が多数採択されたことには留意しながらも、委員会は、このような取り組みにおいてもっぱら人身取引に焦点が当てられていること、および、子どもの売買など選択議定書で対象とされているすべての犯罪に対応する包括的法律がないことを懸念する。委員会はまた、締約国の権限委譲行政のもと、現行法の策定が断片化されたアプローチによって個別に進められてきたために、締約国の管轄全域を通じた選択議定書上の義務の適用に矛盾が生じていることも懸念するものである。委員会はさらに、イングランドおよびウェールズを対象とする2003年性犯罪法および2008年性犯罪(北アイルランド)令において、13歳または16歳未満の子どもしか保護の対象とされておらず、一方で16~18歳の子どもはこれらの法律の埒外に置かれていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪(子どもの売買、子どもの人身取引、児童買春および児童ポルノを含む)が包括的な法律に基づいて対象とされることを確保するとともに、自国の管轄全域(北アイルランドおよびスコットランドを含む)を通じて選択議定書上のすべての義務の一貫した適用を確保するよう、強く勧告する。委員会は、次のことを具体的に勧告するものである。 (a) 選択議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施する目的で、イングランド、ウェールズ、スコットランドおよび北アイルランドのすべての国内法で子どもの売買の定義(人身取引の定義に似ているものの同一ではない)を修正すること。 (b) 18歳未満のすべての子どもが選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されることを確保するため、現行法、とくに2003年性犯罪法、2008年性犯罪(北アイルランド)令およびイングランドおよびウェールズを対象として提案されている現代的奴隷制法案を改正しかつその調和を図ること。 国家的行動計画 13.選択議定書に関連するさまざまな行動計画、とくに「子どもおよび弱者への性的暴力に関する国家グループ」の活動に関する行動計画、人身取引戦略および提案されている現代的奴隷制行動計画の存在は歓迎しながらも、委員会は、選択議定書で対象とされているすべての問題に対応するための包括的な計画および統合された国家的戦略が存在しないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、自国の管轄全域で選択議定書を実施するための統合された、包括的かつ全般的な国家的行動計画および戦略を策定しかつ採択するとともに、当該国家的行動計画に対し、その実施のための十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されるべきことを勧告する。この目的のため、締約国は、ストックホルム(1996年)、横浜(日本、2001年)およびリオデジャネイロ(ブラジル、2008年)で開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動アジェンダならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に特段の注意を払うべきである。 調整および評価 15.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノへの対応について、締約国全域のさまざまな政府、制度およびその他の機関間の調整が行なわれていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、選択議定書に基づく活動の実施および評価の全般的調整のための国家的機構が締約国で設けられていないことを懸念するものである。委員会はまた、イングランドおよびウェールズにおいて選択議定書の実施に関する責任および調整の系統が複雑であるために(反人身取引については内務省が統括しており、人身取引の対象とされた子どもを含む子どもの被害者のケアおよび支援については教育省および地方政府が責任を負っている)、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事案の取扱いにおいて焦点およびアプローチの違いが生じていることに、懸念とともに留意する。 16.委員会は、締約国が、選択議定書に基づく活動の監視および評価について、各部門の省庁を横断し、かつ中央政府から地方レベルの政府に至るまで指導力を発揮しかつ効果的な一般的監督を行なう能力を備えた、上級レベルの権威を有する部局を指定するとともに、当該部局に対し、効果的にその職務を果たすための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、アプローチの一貫性を確保する目的で、選択議定書の実施のための法律および政策の策定および実施を進めながら4つの法域全体で諸政府間の調整の改善を確保することも勧告するものである。 独立の監視 17.委員会は、現代奴隷制法案で行なわれている反奴隷制コミッショナー設置の提案に留意する。にもかかわらず、委員会は、同コミッショナーに対し、その役割を効果的に遂行するための十分な資源、確固たる権限または制定法上の独立が与えられない可能性があることを懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、提案されている反奴隷制コミッショナーに対し、その役割を効果的に履行し、かつ選択議定書に基づく子どもの権利を確保するために十分な資源および確固たる権限ならびに完全な独立が与えられることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、現代奴隷制法案に、反奴隷制コミッショナーが関連の議会に直接報告できるようにするための規定を含めるよう勧告するものである。 普及および意識啓発 19.委員会は、締約国の諸政府が、子どもの性的搾取および人身取引についての広報情報を作成しかつ普及するためにさまざまなグループと連携してきたことに留意する。委員会はまた、締約国が、子どもが虐待の被害者および加害者にならないようにすることを目的とする「これが虐待だ」等の公的意識啓発キャンペーンを開始したことにも留意するものである。にもかかわらず、委員会は、このような取り組みにおいて、選択議定書で対象とされているすべての犯罪および問題(臓器移植もしくは強制労働に従事させることを背景とするまたは養子縁組を目的とする子どもの売買等)に焦点が当てられているわけではないことを懸念する。委員会はまた、締約国が選択議定書の普及に対して体系的かつ包括的アプローチをとっていないために、政府機関、警察、司法機関、公衆、子どもたち自身および子どもとともに働く専門家の間で選択議定書についての理解および意識が低水準に留まることが助長されてきたことも懸念するものである。 20.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に広く知らせるための努力を倍加させるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 選択議定書に関連する問題を初等中等学校のカリキュラムに体系的に編入すること。 (b) 市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に効力しながら、選択議定書で対象とされている問題についてのキャンペーンを含む意識啓発プログラムを発展させること。当該プログラムは、締約国のすべての法域において、また子どもがアクセスしやすい形式で利用可能とされるべきである。 研修 21.委員会は、子どもとともに働く専門家を対象として行なわれている、子どもの性的搾取および子どもの人身取引に関わるさまざまな研修活動(「子どもの搾取とオンライン保護センター」を通じて提供されているものを含む)を評価する。委員会はまた、スコットランドにおいて、子ども保護委員会が、子どもの保護に従事するすべての職員の研修上のニーズが満たされることを確保している点にも留意するものである。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として学際的研修を実施するための努力が体系的でも十分でもないこと、および、このような研修が、選択議定書で対象とされているすべての分野には及んでおらず、かつ子どもとともに働く最前線の専門家(とくに保健ケア専門家および地方警察官)までは対象として実施されていないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書で対象とされている問題についての研修の費用をまかなうための資源が締約国で十分でないことも懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、とくに締約国のあらゆる行政段階における警察の構成員、保健専門家、裁判官、検察官およびソーシャルワーカーを対象とした、選択議定書に関する学際的研修を強化するよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、そのような研修を実施し、かつその効果の体系的な計画および評価を行なうために必要な資源を使途指定方式で配分するよう促すものである。 資源配分 23.委員会は、とくに犯罪の防止および被害を受けた子どもに対する援助の提供に関わって、選択議定書を実施するためのものとされる活動に割り当てられた予算配分額が明確に特定可能となっていないことを遺憾に思う。 24.委員会は、締約国が、とくに、防止ならびに被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会復帰ならびに選択議定書で対象とされている犯罪の捜査および訴追を目的としたプログラムを開発しかつ実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、選択議定書で対象とされているすべての分野の実施のための十分な資源が締約国全域で公平に配分されることを確保する目的で、あらゆる可能な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、条約に基づく次回の報告書で、この分野でとられた措置についての情報を提供することも勧告するものである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条(第1項~2項)) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 25.委員会は、子どもコミッショナー事務所による「暴力集団およびグループにおける子どもの性的搾取に関する調査」以降、イングランドおよびウェールズで暴力集団およびギャングにおける子どもの性的搾取を防止するために締約国が行なってきた多くの改正に、積極的側面として留意する。委員会はまた、子どもにとっての主要なリスクを特定し、かつ子どもが性的搾取の被害者となることを防止するための一助として、国家犯罪対策庁(NCA)および具体的にはNCAの下に設置された「子どもの搾取とオンライン保護センター」(CEOP)が行なっている活動にも留意するものである。しかしながら委員会は、立法への合意に関する動議が承認されていないために、権限が委譲されている分野についてはNCAが北アイルランドで権限を有しておらず、したがってNCAの一部であるCEOPが北アイルランドで全面的に活動を行なえる状況になっていないことを、強く懸念する。委員会はさらに以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国が76か所の「シュアスタート」子どもセンターを閉鎖したこと。同センターは、被害を受けやすい状況に置かれた子どもおよびその家族に実際的支援を提供し、かつ子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因(貧困等)に対象する一助となるものである。 (b) 子どもを虐待する可能性がある者に対応するための措置が不十分であること。 (c) 選択議定書上の犯罪を行なった者の起訴および有罪判決の件数が少ないこと。 (d) 行方不明と報告されている子ども、人身取引によって締約国に強制的に連れてこられた子どもまたはとくに北アイルランドの施設の子どもなど、これらの犯罪の被害者となるリスクがとくに高い子どもを特定しかつ対応をとるための、明確な省庁横断的システムが設けられていないこと。 (e) 搾取の対象とされやすい、保護者のいない子どもの移住者、子どもの庇護希望者または人身取引の対象とされた子どもにとって「ベッド・アンド・ブレックファスト」タイプの宿泊施設はふさわしくないと定めた制定法上の指針にもかかわらず、これらの子どもが引き続きこのような宿泊施設に収容されていること。 26.委員会は、締約国に対し、被害を受けやすい状況におかれた子どもをあらゆる形態の搾取から効果的に保護するための努力を継続するとともに、イングランドおよびウェールズで開始された改革プログラムを実施するための効果的な地域的連携、戦略的計画立案および研修を確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、締約国の管轄全域を通じて選択議定書の全面的実施を確保する目的で、権限委譲によって異なる地域に住む子どもの権利の享受に差別が生じないようにすること、および、「子どもの搾取とオンライン保護センター」のような機構が北アイルランドにも拡張されることを確保するための保障措置を確立するようにも促すものである。委員会は、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これ以上の「シュアスタート」子どもセンターのいかなる閉鎖も直ちに中止するとともに、これらのセンターにおける、アクセスしやすくかつ質の高いサービスのための予算の増額および十分な資源の提供を進める目的であらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもを虐待する可能性がある者に適合した措置を整備すること。 (c) 選択議定書で対象とされている犯罪についての訴追率および有罪判決率を向上させるため、法執行機関に対し、捜査に関するより多くの資源および体系的な研修を提供すること。 (d) 路上の状況にある子ども、暴力集団またはグループとの接触または関係を有している(とくにイングランドの)子ども、子どもの非正規移住者および入所施設で暮らしている子どものような、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもを対象とする防止プログラムを発展させること。これらの子どもが身体的および性的虐待の被害者とならないようにすることに、特段の注意が向けられるべきである。 (e) 保護者のいない子どもの庇護希望者、子どもの非正規移住者および人身取引の被害者である子どもが、十分な保護および保護を受ける権利を認められ、かつ安全かつ十分な居住設備を提供されることを確保すること。締約国はまた、子どもの身体的および心理社会的健康ならびに暴力または搾取からの保護を確保するため、このような子どものために行なわれるケアの取決めが資格のある者によって定期的に監督されかつ評価されることも確保するべきである。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条第2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 27.委員会は、イングランドおよびウェールズで適用される2003年性犯罪法および2008年性犯罪(北アイルランド)令において、被告人が、13~16歳の子どもの性的搾取に関わる一部の重大犯罪(性的目的での勧誘後に子どもと会うこと、子どもと性的活動を行なうことまたは子どもを対象とする性犯罪の便宜を図ることなど)について、被害者が16歳以上であると信じた旨の主張を行なえることを懸念する。委員会はまた、そのような主張が行なわれた場合、被告人がこれを「信じたのは合理的でなかった」ことの立証責任が検察側に課されることにより、被害を受けた子どもに対してさらなる反対尋問が行なわれ、かつその結果として再被害が生じるおそれがあることも懸念するものである。 28.委員会は、人身取引に関連する現行法の規定を統合するためにイングランドおよびウェールズで現代奴隷制法案を導入し、かつスコットランドで人身取引と闘うための別個の法律を策定する目的で締約国が現在行なっている努力に積極側面として留意しながらも、これらの努力においてはほぼ完全に人身取引にだけ焦点が当てられており、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が対象とされているわけではないことを深刻に懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 現代奴隷制法案(法案)において子どもに立法上の焦点が当てられておらず、かつ、一部の態様の犯罪(強制労働または利得を目的とした子どもの臓器移植など)が選択議定書第2条および第3条にしたがって子どもの売買と定義されていないこと。 (b) 当該法案が、現状、被害を受けた子どもの特有の脆弱性またはニーズを考慮しておらずまたはこれに対応していないこと。 29.委員会は、締約国に対し、選択議定書上、「子ども」の文言は18歳未満のすべての者に適用されることを想起するよう求めるとともに、したがって18歳に達するまでのすべての子どもが選択議定書で対象とされているあらゆる態様の犯罪から保護されることを確保するために法律を改正するよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 2003年性犯罪法の反証を許す推定条項に、子どもの被害者については立証責任が転換される旨の規定が含まれることを確保すること。 (b) 現代奴隷制法案を徹底的に再検討し、選択議定書第2条および第3条で定義されているすべての態様の犯罪(強制労働、利得を目的とした子どもの臓器移植、利得を目的とした子どもの養子縁組および子どもの売買など)が含まれること、および、被害を受けた子どもの特有の脆弱性およびニーズへの対応が行なわれることを確保すること。 子どもの人身取引 30.委員会は、締約国において数千人の子どもたちがとくに性的搾取および労働を目的として取引され続けていることを強く懸念するとともに、数百人の子どもがアフリカの家庭から誘拐され、人身取引によって残忍な宗教儀式(いわゆるブードゥーまたはジュジュの儀式)目的で締約国に連れてこられているという報告があることについて最大限の懸念を表明する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 人身取引および選択議定書で対象とされているその他の犯罪の加害者の訴追件数および有罪判決件数が締約国全域で著しく少ないために、加害者の不処罰が生じていること。また、検察官が、有罪判決を確実にする目的で、他の罪名(強姦または誘拐など)による人身取引加害者の告発をしばしば選択していること。 (b) 2012年自由保護法に基づき、締約国の法域外で子どもの人身取引の手配を行なった外国人はイングランドおよびウェールズで犯罪を行なったとされるものの、同法の適用範囲が北アイルランドには及んでいないこと。 31.委員会は、締約国に対し、労働搾取、性的搾取およびその他の形態の搾取を目的とした子どもの人身取引(宗教的儀式目的のものを含む)を摘発しかつ訴追する法執行機関および司法機関の能力を強化するよう促す。委員会はさらに、締約国が、選択議定書および人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)にしたがって子どもの人身取引に関する具体的法律を制定するとともに、子どもの人身取引罪が締約国全域で一貫した定義および訴追の対象とされることを確保するよう、勧告するものである。 児童セックス・ツーリズム 32.委員会は、締約国の市民(有罪判決を受けた性犯罪者であって他国で孤児院および慈善団体を設立した一部の者を含む)が国外に渡航して子どもを性的に虐待していることを深く懸念する。さらに委員会は、警察長協会の委託によって最近実施された2003年性犯罪法の検討(デイビーズ報告書)において、締約国の法律および域外捜査協定では、英国の性犯罪者が国外渡航することにも、これらの者が国外で犯罪を行なった際に訴追することにも成功しておらず、そのため子どもが英国の渡航者による搾取および虐待の危険にさらされているという認定が行なわれていることを懸念するものである。 33.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 英国の性犯罪者が国外で行なう子どもの性的搾取を防止するため、デイビーズ報告書の勧告の実施および国内法(2003年性犯罪法を含む)の見直しを緊急に進めること。 (b) 子どもに対する域外性犯罪行為を捜査するため、これらの犯罪を担当する単一の専門警察部局を設置するとともに、これらの犯罪を捜査しかつ訴追するための十分な研修および資源を用意すること。 (c) 国外で子どもの性的搾取に関与した締約国国民の特定、捜査および訴追を強化するためにあらゆる必要な法律上および制度上の措置をとるとともに、渡航禁止の厳格化等の手段により、子どもの性的虐待を行なったとして有罪判決を受けた者またはそのような容疑をかけられている者の移動を制限しかつ/または出国を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 (d) 児童セックス・ツーリズムの有害な影響について観光業界に働きかけを行ない、旅行代理店および観光業者の間で国連世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及するとともに、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名および児童セックス・ツーリズムを防止するために行なっている取り組みについての公的報告を奨励すること。 域外裁判権 34.委員会は、イングランドおよびウェールズにおける締約国の国内法で、選択議定書第4条第2項に掲げられたすべての犯罪についての域外裁判権が設定されていないことを懸念する。委員会はまた、締約国における域外裁判権の適用が双方可罰性要件を条件としていることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、締約国全域(権限委譲行政区を含む)の国内法において、選択議定書で対象とされているすべての犯罪についての域外裁判権を、双方可罰性を要件とすることなく設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。 犯罪人引渡し 36.委員会は、犯罪引渡しのための他の条約上の根拠がない場合、2003年犯罪人引渡し法第193条によって、英国が、自国も加盟している国際条約の加盟国と犯罪引渡し関係を持つための枠組みが提供されていることに、積極的側面として留意する。しかしながら委員会は、双方可罰性の原則が満たされなければ犯罪人引渡しを検討できないとされていることを懸念するものである。委員会はまた、スコットランドにおいて、被害者が英国の国民であるものの犯罪実行地がスコットランド外である場合の犯罪人引渡しに関する法的規定が2009年性犯罪(スコットランド)法第55条および2010年刑事司法・許認可(スコットランド)法第46条にないことにも、懸念とともに留意する。 37.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての犯罪に関する犯罪人引渡しについて双方可罰性要件を撤回するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、たとえ二国間協定が締結されていない場合でも、犯罪人引渡し(スコットランドで行なわれるものを含む)の法的根拠として選択議定書を援用するようにも勧告するものである。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 38.委員会は、締約国から提供された、被害を受けた子どもの特定および支援のプロセス(とくに全国付託機構)を見直している旨の情報および人身取引の被害を受けた子どものための専任代弁者制度を最近試験的に設置した旨の情報に、積極的側面として留意する。委員会はまた、締約国が、現代奴隷制法案について被害者中心のアプローチをとっており、かつ同法案に基づく被害者の免訴を可能とする制定法上の抗弁を導入したことにも留意するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの、締約国の刑事司法制度における取扱いについて。また、被害を受けた子ども、とくに人身取引の被害を受けた子どもがさまざまな罪名(利得を目的とする売春の実行または教唆/管理、売春宿の経営、窃盗および大麻草の栽培を含む)で逮捕されかつ告発されていること。 (b) 危険な状況ある子どもまたは選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子ども(とくに、被害を受けた子どもの特定について十分な訓練を受けていない出入国管理官と接触するのが一般的である、港に到着した子ども)の特定に対する、全国的なかつ機関横断型のアプローチが定められていないこと。 (c) 被害を受けた子どもに対し、資格のある弁護士代理人に無償でアクセスする権利が認められておらず、かつ、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子ども(人身取引被害者を含む)に対して独立した後見人を任命していないこと。 (d) 入国許可発給手続(家族再統合事案における手続を含む)に子どもの最善の利益の評価が含まれていないこと、および、年齢鑑別に関する法定指針が定められていないために実務担当者が判例および鑑定意見に依拠しなければならず、年齢鑑別のために用いられている手法の質のばらつきおよびこれらの手法における一貫性の欠如が生じていること。 (e) 被害を受けた子ども(人身取引の対象とされた子どもを含む)が、それぞれの法域で被害賠償を受けることとの関連でさまざまな実際上および法律上の障壁に直面していること。 39.選択議定書第9条第3項に照らし、委員会は、締約国が、選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもに対し、十分なかつ無償の法律扶助ならびに心理的、医療的および社会的支援を提供するよう勧告する。委員会は、具体的には、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するための機構および手続を設置する(刑事司法制度における訴追を行なわない明確な義務を定めることも含む)とともに、これらの子どもが法執行機関および司法機関によって犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。 (b) ジェンダーおよび年齢に配慮した事情聴取手法についての訓練を受けた有資格の専門家が友好的かつ安全な雰囲気のもとで行なう、被害を受けた子どもの身元の明確かつ包括的な評価(締約国が計画しているように人身取引の被害を受けた子どもを対象とするものおよび主要な港湾で実施されるものを含む)を確保するための全国的制度を確立すること。 (c) 刑事司法手続において子どもの最善の利益を保護するため、資格のある法定後見人を可能なかぎり迅速に任命することを優先させるとともに、被害を受けた子どもが、後見人の任命まで庇護申請手続その他の手続に付託されないことおよび有資格の弁護士代理人に無償でアクセスする権利を認められることを確保すること。 (d) 被害を受けた子どもの権利および利益を保護する目的で、人身取引の被害を受けた子どもを対象とする入国許可発給手続(家族再統合事案における手続を含む)に子どもの最善の利益の評価が含まれることを確保するとともに、年齢鑑別手法の一貫性を確保するために年齢鑑別についての法定指針が採択され、かつ当該鑑別が科学的な、安全な、子どもおよびジェンダーに配慮した公正なやり方で実施されることを確保すること。 (e) 北アイルランドおよびスコットランドを含むすべての法域で、被害賠償を受ける権利についての体系的情報を提供すること等も通じ、被害を受けた子どもが権利侵害についての被害賠償にアクセスすることが促進されかつ保障されることを確保すること。 VIII.被害者の回復および再統合 40.委員会は、スコットランドにおいて、子ども(スコットランド)法第22条に基づき、地方当局がその地域の子どもの福祉を保護しかつ促進する義務を有していることに、積極的側面として留意する。委員会はまた、締約国がイングランドおよびウェールズで虐待の被害を受けた子どものための制度横断的治療を試験的に実施していること、および、犯罪被害者実務規範(2006年、「被害者規範」)に基づき、犯罪被害者に最低水準の支援を受ける法的権利が認められていることにも、積極的側面として留意するものである。しかしながら委員会は、被害者規範において、子どもの被害者に対する保健面の支援、社会的支援および心理的支援との関連で権利がほとんど保障されていないこと、ならびに、子どもの被害者を対象とする既存の心理的支援サービスは不十分であり、かつ締約国全体で異なっていることを懸念する。委員会はまた、被害を受けやすい状況に置かれた子どもを対象とするサービス提供を強化するための追加的措置が掲げられている当該実務規範および2008年子ども青年法が北アイルランドには適用されないことも懸念するものである。 41.委員会は、締約国に対し、その管轄地域全体で、選択議定書で対象とされているすべての犯罪の被害を受けた子どもの回復および再統合(このような被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的、心理的および心理社会的回復を含む)のための包括的措置を採択するよう促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもを対象とする子ども中心のサービスへのアクセスを増強するために十分な人的資源、財源および技術的資源を配分するとともに、必要なときは締約国の管轄地域全体で児童精神保健専門家および心理社会的支援サービスにアクセスできるようにすること等の手段により、医療ケア、心理社会的ケアおよび心理的ケアのためのサービスを引き続き発展させること。 (b) 人身取引、買春およびポルノグラフィーの被害を受けた子どもの救出、送還、リハビリテーションおよび再統合の指針となる明確な措置(被害を受けた外国籍の子どものための特別な援助ならびに「最善の利益認定」に基づく送還およびフォローアップに関する明確な手続を含む)をとること。 (c) これらの勧告に実施に際して国際連合難民高等弁務官事務所の技術的援助を求めること。 IX.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 42.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいかなる犯罪についてもその防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 X.通報手続きに関する選択議定書の批准 43.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 XI.フォローアップおよび普及 フォローアップ 44.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 45.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 XII.次回報告書 46.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2015年6月14日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/91.html
総括所見:インド(第2回・2004年) 第1回(2000年)/第3回・第4回(2014年)OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.228(2004年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年1月21日に開かれた第932回および第933回会合(CRC/C/SR.932 and 933参照)においてインドの第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.5)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがった締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/IND/2)に対する文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、締約国における子どもの状況についてより明確な理解が得られたことにも留意するものである。委員会は、条約の実施に直接関与するハイレベルな代表団の出席により、締約国における子どもの権利についての理解を向上させることができたことを認知する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、条約の実施のために連邦および州のレベルで行なわれた多くの活動、とくに以下の活動を歓迎する。 (a) 6~14歳のすべての子どもを対象とする無償の義務教育について定めた憲法(第86次改正)法(2002年)の採択。 (b) 受胎前・出生前診断技術(性選択禁止)法(1994年)の2003年改正の採択。 (c) 子どもの権利に対して重要な影響を及ぼす、女性の自助グループ結成のための全国プログラムの開始。 (d) 初等学校へのアクセスの拡大。 (e) データのより包括的な収集。これにより、女子および非特権化された社会集団の子どものより平等な参加および教育に関して若干の進展が達成されたことが明らかになった。 (f) フリーダイヤルの「チャイルドライン」の開設。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、非常に多数の人口および高い人口増加率が条約の実施を妨げる主要な要因であることを認知する。加えて、極度の貧困、大規模な社会的不平等および根強く残るきわめて差別的な態度、ならびに自然災害の影響が、条約に基づいて締約国が負っているすべての義務を履行するうえで深刻な困難となっている。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.10)の検討後に委員会が表明した意見および行なった勧告(CRC/C/15/Add.115)の一部、とくにパラ13(法律の実施)、15(調整)、17および19(監視)、29,31および33(差別の禁止)、37(出生登録)、39~41(拷問)、45(暴力)、47(障害のある子ども)、49および51(基礎保健)、53および55(生活水準)、57~60(教育)、64(武力紛争)、66~71(児童労働)ならびに80~82(少年司法の運営)に掲げられたものが十分に対応されていないことを、遺憾に思う。 6.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 第32条に関する宣言 7.条約第32条を漸進的に実施するために締約国がとった多数の措置に照らし、委員会は、この宣言の必要性について深刻な疑問を覚える。 8.前回の勧告(CRC/C/15/ADD.115、パラ66)にしたがい、かつウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第32条に関して行なった宣言を撤回するよう促す。 立法 9.委員会は、条約が裁判所で援用可能であり、かつ最高裁判所が条約に基づくさまざまな決定を採択してきたことを歓迎する。しかしながら委員会は、国内法、ならびにとくに家族問題を規律する宗教法および属人法が条約の規定および原則にまだ全面的に一致していないことを、依然として懸念するものである。 10.前回の勧告(前掲、パラ11)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の規定および原則が締約国全域で実施されることを確保する目的で、連邦および州の双方のレベルで、現行の立法上その他の措置(宗教法および属人法を含む)を注意深く吟味すること。 (b) 国内法の実施および幅広い普及を確保すること。 資源 11.一部の社会サービスのための予算配分額を増加させるためにとられた努力には留意しながらも、委員会は、教育のための予算配分額の増加が遅く、かつ他の社会サービスに配分される資金が停滞しまたは減少さえしていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「利用可能な資源を最大限に用いて」子どもの権利を実現するために配分される予算の割合を増加させること、ならびに、これとの関連で、適切な人的資源の供給(国際協力を通じてのものも含む)を確保すること、および、子どもに提供される社会サービスに関わる政策の実施が優先事項とされ続けることを保障することを目的として、あらゆる努力を行なうこと。 (b) 予算配分額が子どもの権利の実施に及ぼす影響を評価する方法を開発するとともに、この点に関わる情報を収集しかつ普及すること。 調整 13.委員会は、女性・子ども発達局が子どもの権利条約の実施に関わるすべての活動の調整を担当する機関であること、および、全国的な調整機構が2000年1月に設置されたものの、2000年9月に一度会合を開いたにすぎないことに留意する。しかしながら委員会は、条約の実施を担当するさまざまな機関間の調整を、連邦および州のレベルでならびに連邦政府と州との間で強化することがなお必要とされているという見解に立つものである。 14.委員会は、とくに実施プロセスの効率性を向上させることおよび当該プロセスの結果として差別が生じるいかなる可能性も低減させまたは解消することを目的として、締約国が、条約の効果的実施を連邦レベルで、連邦レベルと州レベルの間でかつ州の間で調整するための国家的機構を強化するよう勧告する。 国家的行動計画/国家子ども憲章 15.委員会は、1974年の「子どものための国家政策」および1992年の「子どものための国家行動計画」の存在に留意するとともに、国家政策に代わる「国家子ども憲章」についての議論および子どものための新たな行動計画の起草が進められていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、国家子ども憲章が子どもの権利基盤アプローチを採用しておらず、かつ条約のすべての権利および原則を明示的に盛りこんでいないことを懸念するものである。 16.委員会は、条約のすべての分野を網羅し、ミレニアム開発目標を盛りこみ、かつ「子どもにふさわしい世界」を反映した新たな子どものための行動計画を、関連するすべてのパートナー(市民社会を含む)と協議しながら採択すること、その全面的実施のために必要な人的資源および財源を配分すること、ならびに調整および監視のための機構を整備することを目的として、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、国家子ども憲章を迅速に採択するとともに、同憲章が子どもの権利基盤アプローチを採用し、かつ条約のすべての権利および原則を網羅するようにするよう、勧告するものである。 独立の監視体制 17.委員会は、国家人権委員会の存在に留意するとともに、国家子どもの委員会法案(2003年)が2003年12月10日に議会に提出されたことを歓迎する。 18.前回の勧告(前掲、パラ19)に照らし、委員会は、連邦および州のレベルにおける条約の実施の進展を監視しかつ評価するため、締約国が、国内機関の地位に関するパリ原則(総会決議48/134)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがい、子どものための独立した国家委員会を可能なかぎり迅速に設置するよう勧告する。 NGOとの協力 19.委員会は、サービス提供の分野におけるNGOとの協力および条約に関連するさまざまなプログラムの準備へのNGOの関与に留意するものの、この協力が体系的なものではないことおよびNGO活動の監督が行なわれていないことを懸念する。 20.委員会は、条約の規定の実施においてNGOがパートナーとして果たす重要な役割を強調するとともに、前回の勧告(前掲、パラ23)にしたがい、締約国が、連邦、州および地方における条約の実施のあらゆる段階(政策立案を含む)ならびに今後の定期報告書の起草に、より体系的かつ調整のとれたやり方でNGOの関与を得るよう勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割 」というテーマで2002年に行なわれた一般的討議の勧告(CRC/C/121、パラ630)を考慮に入れるとともに、とくにサービス提供者の登録および認可のシステムを改善することにより、サービス提供に従事する民間機関の監督を向上させるよう勧告するものである。 データ収集 21.委員会は、とくに子どもに関わるあらゆる問題に対処する計画およびプログラムについての予算の配分額および推移に関するデータを収集する新しいシステムを通じてデータ収集を改善するために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の領域についてのデータが不十分であることを依然として懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢、社会的地位(指定カーストおよび指定部族または宗教的コミュニティ)ならびに都市部および農村部の別に細分化されたデータおよび指標の収集システムを発展させるとともに、これを公的に利用可能とするよう勧告する。当該システムは、とりわけ脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅するべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための政策およびプログラムの立案にこれらの指標およびデータを活用するよう奨励する。委員会は、締約国が、とくにユニセフ、UNDPおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 研修および普及 23.委員会は、前回の総括所見の普及およびさまざまな意識啓発キャンペーンを歓迎するものの、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働いているすべての専門家集団が条約およびそこに体現された権利基盤アプローチについて十分な認識を有していないことを、依然として懸念する。 24.前回の勧告(前掲、パラ25)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会的動員を通じて子どもの権利に関する社会の感受性を強化するため、条約の原則および規定を普及する努力を強化し、かつこれらの努力を体系的なものとすること。 (b) 条約の実施を阻害する慣習および伝統を根絶するためのプログラムに、議員ならびにコミュニティの指導者および宗教的指導者の体系的関与を得るとともに、非識字の人々および遠隔地の人々を対象とするコミュニケーションのために創造的措置をとること。 (c) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに裁判官、弁護士、法執行官、公務員、自治体および地方の職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象として、条約の規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。 (d) 初等段階および中等段階の学校カリキュラムならびに教員養成カリキュラムで、子どもの権利を含む人権教育をさらに促進すること。 (e) とくにOHCHR、ユネスコおよびユニセフの技術的援助を求めること。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 25.条約第2条に照らし、委員会は、女子、一部の州、農村部およびスラムで生活している子ども、ならびに、一部のカーストおよび部族集団ならびに先住民族集団に属している子どもによる条約上の権利の享受の水準が著しく異なることを深く懸念する。 26.委員会は、もっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象としたプログラムのための予算配分額を増加させることも含む政策の見直しおよび方向転換を通じて社会的不平等に対応するため、あらゆるレベルで調和のとれた努力を行なうとともに、とくにユニセフの技術的援助を求めるよう、勧告する。 27.委員会は、指定カーストおよび指定部族ならびにその他の部族集団に属する子どもに対し、根強くかつ相当な社会的差別が行なわれていることを深く懸念する。このような差別は、とくに、1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法の違反が多いこと、このような違反が裁判所によって扱われる件数が少ないこと、および、同法に定められた特別裁判所を設置していない州が過半数にのぼることに反映されている。 28.委員会は、締約国が、憲法第17条および条約第2条にしたがって、「不可触性」の差別的慣行を廃止し、カーストおよび部族を動機とした虐待を防止し、かつそのような慣行または虐待に責任のある国または民間の行為者を訴追するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに、憲法第46条にしたがい、締約国は、とくにこのような集団の地位を高めかつこのような集団を保護するための特別措置を実施するよう奨励されるところである。委員会は、1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法、1995年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)規則および1993年清掃肉体労働者雇用法の全面的実施を勧告する。委員会は、締約国に対し、社会の態度を変革する目的で、とくに宗教的指導者の関与を得ながらカーストに基づく差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを遂行する努力を、引き続き行なうよう奨励するものである。 29.委員会は、女子に関する国家行動計画および行動綱領を歓迎するものの、女子に対する差別的な社会の態度および有害な伝統的慣行が根強く残っていることを深く懸念する。これには、低い就学率および高い中退率、若年婚および強制婚のほか、婚姻、離婚、乳児の監護および後見ならびに相続のような分野でジェンダーに基づく不平等を固定化させている、宗教に基づく民事的地位法が含まれる。 30.委員会は、締約国に対し、女子に関する国家行動計画を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう促すとともに、保護法を執行するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、とくに家庭におけるジェンダー差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを遂行する努力を継続することも奨励するものである。女子をいまなお差別する伝統的な慣行および態度を根絶する努力を支援する目的で、政治的指導者、宗教的指導者およびコミュニティの指導者を動員することが求められる。 31.女子および脆弱な立場に置かれた集団(指定カーストおよび指定部族に属する子どもなど)による権利の享受を向上させるための特別一時プログラムその他の活動は歓迎しながらも、委員会は、これらの集団と同様の状況にあるその他の子どもが同一の利益を享受していない可能性があることに懸念を表明する。 32.委員会は、現在行なわれているおよび今後行なわれるすべての特別一時プログラムについて、その成功を評価し、かつその継続、拡大および普及が正当な理由を見出す目的で、具体的な目標および予定表を定めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、性別、カーストもしくは部族、または正当化できない差別に至る可能性がある他のいずれかの特徴に基づくのではなく子どものニーズおよび権利に基づいた教育上その他の諸給付を配分するための特別プログラムの策定を開始するよう、勧告するものである。 33.委員会は、受胎前・出生前診断技術(性選択禁止)法(1994年)の2003年改正に留意するものの、0~6歳の年齢層の男女比がこの10年間で悪化したことを依然として深く懸念する。 34.ジェンダー差別に関する勧告(パラ30)に加え、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 受胎前・出生前診断技術(性選択禁止)法(1994年)の実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 親、コミュニティ、法執行官等の参加を得た大規模な意識啓発キャンペーンをさらに発展させるとともに、選択的中絶および女子の嬰児殺しの慣行を終わらせるために制裁を科すことも含むあらゆる必要な措置をとること。 (c) 経済政策および社会政策に関するプログラムを計画する際にジェンダー影響研究を行なうこと。 35.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置のうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 36.委員会は、いくつかの州および地区において子どもの評議会、団体およびプロジェクトを設置することにより子ども参加を増進させようとする取り組みを歓迎するものの、子ども、とくに女子に対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、施設およびコミュニティ運営のレベルにおける子どもの意見の尊重がいまなお限定されていることを依然として懸念する。委員会はさらに、子どもの権利および福祉に影響を及ぼす民事上の手続における子ども参加を保障した法規定が実質的に存在しないことに、遺憾の意とともに留意するものである。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設ならびに司法上および行政上の手続における子ども(とくに女子)の意見の尊重を促進するとともに、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加の便宜を図ること。 (b) 親、教員、政府の行政職員、司法関係者、子どもたち自身および社会一般に対し、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利についての教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどの程度考慮されているかについて、それが関連の政策およびプログラムに与えた影響も含めて定期的に検討すること。 3.市民的権利および自由 出生登録 38.委員会は、締約国における出生登録制度を再検討する意思があること(CRC/C/93/Add.5、パラ281)を歓迎するものの、子どもの約46%が出生時に登録されていないことを依然として深刻に懸念する。 39.前回の勧告(CRC/C/15/Add.115、パラ37)にしたがい、委員会は、締約国が、計画どおり2010年までに(CRC/C/93/Add.5、パラ284)すべての出生が時宜を得た形で登録されることを確保するためにいっそうの努力を行なうとともに、農村部において登録に関わる研修および意識啓発の措置をとるよう勧告する。委員会は、移動登録所ならびに学校および保健施設における登録係の設置のような措置を奨励するとともに、締約国がとくにユニセフおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 国籍に対する権利 40.委員会は、インドに在留するパキスタン人難民およびモハジールの子ども(それぞれラージャスターン州およびアーンドラ・プラデーシュ州に在留)が無国籍であることを懸念する。 41.委員会は、締約国が、条約第7条にしたがってこれらの子どもに国籍を与えるための措置をとるよう勧告する。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を受けない権利 42.委員会は、拘禁施設における子どもの不当な取扱い、拷問および性的虐待の報告が多数存在し、かつ、法執行官による子どもの殺害の主張があることを懸念する。 43.前回の勧告(CRC/C/15/Add.115、パラ39-41)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 拷問および他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約を批准すること。 (b) 逮捕、尋問および警察での勾留中ならびに拘禁センターにおける不当な取扱いに関する法執行官に対しての苦情を受理する、子どもに配慮した機構を設置すること。 (c) 苦情を子どもに配慮したやり方で捜査しかつ訴追すること。 (d) 子どもの人権に関して法執行官を研修する努力を強化すること。 (e) 第39条に照らし、拷問および(または)不当な取扱いの被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するため、あらゆる適当な措置をとること。 体罰 44.委員会は、2000年12月にニューデリー高等裁判所が行なった、その管轄内にある学校における体罰の禁止についての決定に留意するものの、他の州の学校のほか、家庭または子どものためのその他の施設における体罰が禁じられておらず、かついまなお社会で受け入れられていることを依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設における体罰を禁止するとともに、体罰に代わる子どものしつけおよび規律の方法について家族、教員ならびに子どもともにおよび(または)子どものために働くその他の専門家を教育するための教育キャンペーンを行なうよう、強く勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 46.母親が子どもの自然な保護者であることは父親の場合と変わらないという最高裁判所の判決(Githa Hariharan v. Bank of India事件、1999年2月18日)には留意しながらも、委員会は、法律上、子どもに関する主たる責任はいまなお父親が有していることに懸念を表明する。 47.条約第18条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもの養育および発達については双方の親が共通の責任を有するという原則が承認されかつ実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 養子縁組 48.委員会は、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約が最近批准され、かつ国内養子縁組が重視されていることを歓迎するものの、締約国に養子縁組に関する統一の法律および手続が存在しないこと、ならびに、関係する子どもの権利の尊重を監視し、かつ締約国内外の養子縁組をフォローアップするための効果的な措置がとられていないことについての懸念をあらためて表明する。委員会はさらに、認証を受けていない機関が行なう養子縁組の登録および管理が行なわれていないことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内養子縁組に関する法的枠組みを見直すとともに、新たに批准した1993年ハーグ条約を実施するためにあらゆる必要な措置(中央当局による新たな指針の採択を含む)をとること。 (b) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の関連規定の適用を全領域に拡大すること。 (c) 条約第21条を反映した厳格な規則にしたがい、あらゆる宗教の子どもについて養子縁組が可能であることを確保すること。 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い 50.委員会は、締約国において子どもの暴力、虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトが広く蔓延しており、かつこの問題と闘うための効果的措置がとられていないことを懸念する。委員会はさらに、性的虐待に関する法律が時代にそぐわなくなっていることを懸念するものである。 51.条約第19条に照らし、かつ前回の勧告(前掲、パラ45)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および施設におけるあらゆる形態の身体的および精神的暴力(子どもの性的虐待を含む)を禁止するため、新たな立法上の措置をとり、かつ時代にそぐわない法律を改正すること。 (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンその他の適当な措置を実行すること。 (c) 苦情を受理し、監視しかつ調査する効果的な手続および機構(必要なときは介入も含む)を設置すること。 (d) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事案を捜査しかつ訴追すること。 (e) 被害者のケア、回復および再統合のための便益を提供すること。 (f) 学際的かつ部門横断型のアプローチを用いながら、不当な取扱いの発見、通報および処理について、親、教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官、保健専門家および子どもたち自身を訓練すること。 (g) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 5.基礎保健および福祉 52.委員会は、保健問題に対処するための第9次および第10次5か年計画の間に開始された多数の国家的計画およびプログラムに留意する。にもかかわらず、委員会は、無償のかつ良質なプライマリーヘルスケアが利用できずかつ(または)アクセス不可能であること、専門家による付添いのない自宅出産が急増していることもあって妊産婦死亡率が悪化していること、予防接種率が低いこと、低出生体重児の数が多いこと、発育不全、削痩または低体重の子どもが多いこと、微量栄養素欠乏症が蔓延していること、ならびに、母乳のみの育児および適切な乳児食の導入の割合が低いことを、依然として深刻に懸念するものである。委員会はさらに、一部の州で環境汚染(具体的にはヒ素および鉛による汚染)が広がっていること、ならびに、安全な飲料水および十分な衛生設備にアクセスできない住民の割合が高いことに懸念を表明する。最後に、委員会は、訓練を受けておらず資格を有していない者が伝統医療および近代医療を実践していることに懸念を表明する。 53.委員会は、締約国が、子どもの健康状況を改善するための効果的政策およびプログラム策定の努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、すべての子どもが無償のかつ良質なプライマリーヘルスケアにアクセスできることを確保すること、伝統医療および近代医療の実践を規制しかつ監視すること、母乳育児を含む健康的な栄養習慣を促進すること、予防接種率を向上させること、安全な飲料水および十分な衛生設備へのアクセスを増進させること、ならびに、環境汚染の問題に効果的に対処することも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、子どもの健康改善を目的とした、とくにWHOおよびユニセフとの協力および援助の追加的集団を追求するよう奨励する。 HIV/AIDS 54.委員会は、新規感染の根絶を2007年までに達成することを目的とする「国家AIDS予防統制政策」(2001年)が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、子どもおよびおとなに対して抗レトロウィルス薬を無償で提供するという決定も歓迎するものの、HIV/AIDSに感染しかつ(または)その影響を受ける子どもの人数が増加していることを依然として懸念するものである。委員会はさらに、これらの子どもが社会および教育制度で差別を経験していることについて懸念を表明する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号を考慮に入れながら、HIV/AIDSを予防するための努力を強化すること。 (b) 母子感染を予防するための措置を、とくに妊産婦死亡を削減するための活動と組み合わせかつ調整することによって強化するとともに、親、教員その他の者のHIV/AIDS関連の死亡が、家族生活に対する子どものアクセスの減少、養子縁組、情緒的ケアおよび教育の面で子どもに及ぼす影響に対処するための十分な措置をとること。 (c) とくにHIV/AIDSに感染しかつ(または)その影響を受けている子どもに対する差別を少なくする目的で、HIV/AIDSに関する思春期の子ども(とくに、脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども)および住民一般の意識を高めるための努力を強化すること。 (d) とくに国連エイズ合同計画のさらなる技術的援助を求めること。 障害のある子ども 56.委員会は、障害者(機会均等、権利保護および完全参加)法(1995年)の存在および2001年国勢調査における障害の考慮には留意するものの、統計データおよび障害児に関する包括的政策が存在せず、かつ差別がいまなお広く存在することを依然として懸念する。また、障害のある子どものための便益およびサービスが限られていること、障害のある子どもとともに働く訓練を受けた教員の人数が限られていること、ならびに、教育制度および社会一般への障害児のインクルージョンを促進するための努力が不十分であることに対しても、懸念が表明されるところである。委員会はまた、障害のある子どものための特別教育プログラムに配分される資源が不十分であることにも、懸念とともに留意する。 57.前回の勧告(前掲、パラ47)にしたがい、かつ障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもに関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らし、締約国は以下の措置をとるよう勧告される。 (a) 障害のある子どもに関する包括的政策を確立すること。 (b) 障害のある子どもに関する十分なかつ細分化された統計データを収集するための効果的措置をとるとともに、障害を予防しかつ障害児を援助するための政策およびプログラムを発展させる際に当該データを活用すること。 (c) 障害の予防および共生のための早期発見プログラムを発展させる努力を強化すること。 (d) 障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ可能なかぎり障害児を普通学校制度に包摂すること。 (e) とくに障害のある子ども(精神保健上の問題を有する子どもも含む)の権利および特別なニーズに関する公衆および親の感受性を強化するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 (f) 職業訓練を含む特別教育および障害のある子どもの家族に対する支援のための資源(財源および人的資源の双方)を増加させること。 (g) とくにWHOに対し、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員(教員を含む)の養成および研修のための技術的協力を求めること。 有害な伝統的慣行 58.委員会は、ダウリーおよびデーヴァダーシーに関わる事件のような有害な伝統的慣行の存在を深く懸念する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ダウリー禁止法(1961年)ならびにカルナータカ州デーヴァダーシー(人身奉納禁止)法(1982年)および同規則(1982年)を執行すること。 (b) 男女の子どもの健康、生存および発達にとって有害なあらゆる種類の伝統的慣行を禁止しかつ根絶するため、立法上のおよび意識啓発のための措置をとること。 (c) とくに農村部に伝統的態度を変革し、かつ有害な慣行を抑制する目的で、コミュニティの指導者、実務家および一般公衆の参加を得ながら、感受性強化のためのプログラムを強化すること。 60.委員会は、女子の若年婚および強制婚の割合がきわめて高く、女子の健康、教育および社会的発達に悪影響が生じうることを懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童婚禁止法(1929年)を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 若年婚および強制婚を防止する目的で、NGOおよびコミュニティの指導者と協力しながら教育プログラムおよび意識啓発プログラムを強化すること。 (c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、精神保健サービスならびに青少年に配慮したカウンセリング・サービスを強化するとともに、これらのサービスを青少年がアクセスできるようにすること。 十分な生活水準 62.国民総生産の増加にも関わらず、委員会は、締約国において貧困が広く存在しており、かつ、十分な生活水準に対する権利(清潔な飲料水、十分な住居およびトイレへのアクセスを含む)を享受していない子どもがいまなお多いことを懸念する。委員会はさらに、生活条件の向上を意図しつつ、子どもをその居住地から分離し、子どものニーズに対応する用意の整っていないことが多い新たな環境へ移転させる、避難およびリハビリテーションのためのプロジェクトの悪影響について懸念を覚えるものである。 63.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた家族に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するための努力を強化するよう、勧告する。前回の勧告(前掲、パラ53)に照らし、委員会はさらに、締約国が、強制的な居住地移動、避難およびその他のタイプの非自発的な人口移動のいかなる発生も防止するよう、勧告するものである。 6.教育、余暇および文化的活動 64.委員会は、6~14歳のすべての子どもを対象とする無償の義務教育について定めた憲法(第86次改正)法(2002年)の採択、女子の就学者数を増加させるために締約国が行なっている継続的努力、および給食計画を歓迎する。就学率の上昇には留意しながらも、委員会は、6000万人の子どもが初等学校に通学していないことを深刻に懸念するものである。委員会はさらに、低下しているとはいえ非識字の水準が高く、かつ、教育へのアクセス、初等学校および中等学校への出席ならびに中退率の面で男女間に著しい格差があることを、懸念する。委員会はまた、これらの率に関わる著しい格差が、異なる州の間、農村部と都市部との間ならびに富裕層と貧困層および不利な立場に置かれた集団との間にも存在することも懸念するものである。委員会はさらに、訓練を受けた教員、学校および教室の数が不十分であり、かつ関連の学習教材が存在しないことによって教育の質に影響が生じていることを懸念する。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第29条1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目的を達成するために教育制度を改善するとともに、子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムに導入すること。 (b) 都市部、農村部およびもっとも開発が遅れている地域のすべての女子および男子ならびに指定カーストおよび指定部族に属する子どもが教育機会に平等にアクセスできることを漸進的に確保するための努力を強化すること。 (c) 乳幼児期教育の重要性に関する意識を高め、かつ乳幼児期教育を教育の一般的枠組みに導入すること。 (d) 学校生活のあらゆるレベルにおける子どもの参加を奨励すること。 (e) 教育の質を向上させ、かつ、中退率を下降させること等も通じて教育運営における効率性の向上を確保するため、必要な措置をとること。 (f) 資格のある教員の雇用人数を増やし、かつ、これらの教員に対してより多くの研修機会を提供すること。 (g) 教員の欠勤を抑制するためにあらゆる必要な措置をとること。 (h) 学校のインフラを向上させること。 (i) ユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 7.特別な保護措置 66.委員会は、少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)第32条1項(iii)にしたがい、かつNGOの力強くきわめて重要な関与を得ながら、政府の支援も受けて約50の都市/地区にフリーダイヤルの「チャイルドライン」が設置されたことを歓迎するものの、これらの「チャイルドライン」を同国のすべての地区に設置するペースが遅いことを懸念する。委員会はさらに、既存のサービスの能力不足のため、これらの「チャイルドライン」を経由して子どもが援助および支援を求める通話に対し、必ずしも十分な対応が行なわれていないことを懸念するものである。 67.委員会は、締約国が、締約国のすべての地区にフリーダイヤルの「チャイルドライン」を設置しかつ強化するために必要な人的および金銭的支援を提供するとともに、委員会に対する次回報告書の提出日を目標期日として定めるよう勧告する。さらに、委員会は、援助を求めて子どもから(または子どもに代わる者から)かかってくる通話に既存のサービス(とくにNGO)が十分な対応を行なえるよう支援し、かつ必要なときは新たなサービスを設置するために、必要な措置をとるよう勧告するものである。 武力紛争 68.委員会は、紛争地域、とくにジャンムー・カシミール州および東北部諸州における状況が子ども、とくに生命、生存および発達に対する子どもの権利(条約第6条)に深刻な影響を与えていることを懸念する。委員会は、子どもがこのような紛争に関与し、かつその犠牲になっているという報告があることにきわめて深刻な懸念を表明するものである。 69.条約第38条および第39条に照らし、委員会は、締約国が、武力紛争の影響を受けている子どもの保護、ケアならびに身体的および心理社会的リハビリテーションを目的とした人権法および人道法の尊重を、とくに子どもによる敵対行為へのあらゆる参加との関連で確保するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもに対して権利侵害が行なわれた場合に公正かつ徹底的な調査が行なわれ、かつ責任者が迅速に訴追されること、ならびに被害者に対して公正かつ十分な補償を行なうことを確保するよう、求めるものである。 子どもの難民 70.インドは、難民および庇護希望者の受け入れに関する締約国の寛容な政策を歓迎するものの、これらの集団に関する法律が存在しないことを依然として懸念する。 71.条約第22条に照らし、委員会は、締約国が、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書への加入を検討するとともに、身体的安全、保健、教育および社会福祉の分野等で子どもの難民および庇護希望者の十分な保護を確保し、かつ家族の再統合を促進するための包括的立法を採択するよう、勧告する。 経済的搾取(児童労働を含む) 72.委員会は、第10次国家児童労働事業計画に留意するものの、経済的搾取に関与させられている子どもが多数にのぼり、かつ、その多くは、とくにインフォーマル部門において、家内制企業において、家事労働者としておよび農業において、危険な条件下で(債務労働者としての労働も含む)働いていることを著しく懸念する。委員会はさらに、雇用に関する最低年齢基準がほとんど執行されておらず、かつ、使用者が法律を遵守することを確保するための適切な処罰および制裁が科されていないことを非常に懸念するものである。 73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1986年児童労働(禁止および規制)法、1976年債務労働(制度廃止)法および1993年清掃肉体労働者雇用・乾燥式便所建設(禁止)法の全面的実施を確保すること。 (b) 1986年児童労働法を改正し、家内制企業ならびに政府の学校および訓練センターが子どもの雇用の禁止から除外されないようにすること。 (c) 児童労働防止のための、コミュニティを基盤とするプログラムを促進すること。 (d) 就労のための最低年齢に関するILO第138号条約ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約を批准すること。 (e) 労働上の危険に関して公衆一般、とくに親および子どもの意識を高め、かつ、使用者団体、労働者団体および市民組織、労働監察官および法執行官のような政府職員ならびにその他の関連の専門家を関与させかつ訓練するための努力を強化すること。 (f) ILO/IPECと引き続き連携すること。 子どもの性的搾取/子どもの人身取引 74.委員会は、南アジア地域協力連合(SAARC)・売買春目的の女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する条約が批准されたこと、女性および子どもの人身取引および商業的性的搾取と闘うための行動計画が採択されたこと、とくに性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもおよび女性の人数に関するデータを収集するための研究が開始されたこと、および、「目的地および送り出し地において商業的性的搾取目的の子どもの人身取引と闘うための試行プロジェクト」が行なわれていることを歓迎するものの、1986年不道徳取引防止法で人身取引が定義されておらず、かつその適用範囲が性的搾取に限定されていることを依然として懸念する。加えて、委員会は、買春およびポルノグラフィーを含む性的搾取の被害を受ける子どもが増えていることに懸念を表明するものである。また、このような虐待および搾取の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのプログラムが不十分であることに対しても、懸念が表明される。 75.条約第34条および第35条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 不道徳取引防止法の適用範囲をあらゆる形態の子どもの人身取引に拡大し、かつ、人身取引の対象とされた子どもが常に被害者として取り扱われることを確保すること。 (b) 子どもの人身取引および商業的性的搾取の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (c) 国家行動計画を実施するために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供すること。 (d) 学際的および部門横断型のアプローチを採用するとともに、子どもの性的搾取および人身取引を防止しかつこれと闘うための措置(とくに親を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育プログラムを含む)をとること。 (e) 加害者が裁判にかけられることを確保すること。 (f) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがって、人身取引の被害を受けた子どもが家族と再統合することを促進し、かつ性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して十分なケアおよび再統合のためのプログラムを提供する政策を強化すること。 (g) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 (h) これらの問題に関する活動を行なっている非政府組織と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 ストリートチルドレン 76.委員会は、ストリートチルドレンに関する統合プログラムの存在を歓迎するものの、とくに締約国の構造的状況ならびに防止および家族支援のための積極的政策およびプログラムの欠如を理由として、締約国でストリートチルドレンの人数が増えていることを依然として懸念する。 77.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ストリートチルドレン、とくに女子を保護し、かつ、とくに家族に対する援助ならびに十分な住居の提供および教育へのアクセスの保障を通じてこの現象を防止しかつ低減させることを目的として、ストリートチルドレンが多数にのぼりかつ増加している問題に対処するためのストリートチルドレンに関する統合プログラムを強化しかつ拡大すること。 (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支援するため、必要なときは公式の身分署名書類も提供しつつ、これらの子どもが十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。 (c) 身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用の被害を受けた子どもが、回復および再統合のためのサービス、警察による逮捕および不当な取扱いからの保護、ならびに、家族およびコミュニティとの和解のための効果的サービスを提供されることを確保すること。 (d) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 少年司法の運営 78.委員会は、少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の制定に留意するものの、刑事責任に関する最低年齢が当該新法で定められておらず、かつ刑法に見られる最低年齢(7歳)がなお有効であることを依然として懸念する。委員会はさらに、最高裁判所が、犯罪が行なわれた日は容疑者が少年であるかどうかの判断には無関係であると決定したこと(CRC/C/93/Add.5, box 8.7)を懸念するものである。委員会はさらに、新法を執行するための機構がほとんどの州で設置されておらず、かつ新法がジャンムー・カシミール州には適用されてないことを懸念する。加えて、委員会は、自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられていないことに懸念を表明するものである。最後に、委員会は、テロリズム防止法(2002年)が特別裁判所による子どもの訴追を認めており、かつこれらの事件で用いられる手続が条約第37条、第40条および第39条を尊重していないことを、深く懸念する。 79.委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致する少年司法制度を実施するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 80.加えて、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)を改正し、刑法で定められているものよりも高くかつ国際的に受け入れられている規範を反映した刑事責任に関する最低年齢を定めるとともに、当該年齢を犯罪が行なわれたときの年齢と見なすこと。 (b) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の適用をジャンムー・カシミール州に拡大すること。 (c) テロリズム防止法(2002年)を改正し、子どもへの適用に際しては条約第37条、第40条および第39条その他の関連条項が全面的に尊重されるようにすること。 (d) 少年司法(子どものケアおよび保護)法(2000年)の全面的実施のために必要な州における執行機構を緊急に設置するため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) 少年司法制度に関与するすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムを強化すること。 (f) 更生および再統合のためのプログラムを強化すること。 (g) 自由の剥奪は最後の手段としてのみ用いること。 (h) とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討すること。 マイノリティ/先住民族の子ども 81.委員会は、マイノリティ(未開部族集団を含む)に属する子どもの状況とともに、これらの子どもが保健ケア、予防接種および教育を含む社会サービスに限られた形でしかアクセスできていないこと、および、これらの子どもの、生命および生存に対する権利、自己の文化を共有する権利ならびに差別から保護される権利が侵害されていることについて、懸念を覚える。 82.パラ29の勧告に加え、かつ先住民族の子どもの権利に関する一般的討議の際に行なった勧告(CRC/C/133、パラ624)にしたがい、委員会は、締約国が、未開部族集団の発展に関して労働福祉常任委員会が行なった勧告(2002年)を実施し、かつ(または)これについて必要なフォローアップを行なうよう勧告する。 8.選択議定書 83.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう奨励する。 9.文書の普及 84.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。委員会は、締約国がこの点に関する国際協力を要請するよう勧告する。 10.報告書の定期的提出 85.委員会が採択し、かつ会期別報告書(CRC/C/114およびCRC/C/124参照)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国が、条約で定められた第4回報告書の提出期限(2010年1月10日)の18か月前である2008年7月10日までに次回の報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は、第3回および第4回報告書を統合したものとなろう。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月2日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/70.html
総括所見:中国(第1回・1996年) 第2回(2005年)/第3回・第4回(2013年)OPSC(2005年)/OPAC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.56(1996年6月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年5月28日および29日に開かれた第298回~第300回会合において中国の第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書が一般指針に従って作成されていることに留意する。委員会は、報告書の自己批判的な要素を評価するものである。ただし、報告書においては、国内の法律上および行政上の規定の実際の適用状況よりその内容のほうに焦点が当てられていることも留意される。委員会はまた、委員会が提示した事前質問事項に対する締約国の回答も歓迎するものである。 3.委員会は、報告書の作成にさまざまな省庁その他の機関が関与したことに、満足感とともに留意する。委員会は、委員会の前で報告書の説明を行なう代表団にこれらの省庁の多くの代表が参加するようにしてくれたことに対して、締約国に謝意を表するものである。委員会は、委員会との建設的な対話に携わることに関して締約国および代表団が前向きな姿勢を見せたことを歓迎する。委員会は、代表団が、条約において規定されている権利および原則が中国のすべての子どもたちに保障されるようになるまでには克服すべきさまざまな困難が残されていると率直に認めたことを、評価するものである。 B.積極的な要因 4.委員会は、近年、一般的な生活水準の目ざましい向上が記録されてきたことに留意する。委員会は、さらに、子どもに関する事業概要が国レベルで策定されかつ30の省および自治区のすべてにおいても策定されつつあり、かつ、1990年の子どものための世界サミットで採択された宣言および行動計画に掲げられた目標のフォローアップとして実施されつつあることに、留意する。北京で開かれた第4回世界女性会議のフォローアップとしての政策概要が作成されつつあることも、留意されるところである。 5.乳幼児死亡率の削減に関して、とりわけ予防接種の実施範囲の維持、予防接種率の向上および子どもの栄養不良に焦点を当てた多大な努力によって、締約国が目ざましい成果を達成したことは、称賛に値する。母乳育児の保護、促進および支援ならびに子ども病院の設置に関する締約国の積極的姿勢も、歓迎されるところである。 6.就学率の向上のために締約国が行ないかつ支援しているさまざまな活動も、注目に値する。締約国が、社会的および経済的発展を促進する方途として教育を支える重要性を認識していることも、留意されるところである。貧困地域の子どもたちの援助を目的とした「希望計画」、および、女子の就学または復学による初等教育の修了を促進するための「春の蕾計画」には、とくに言及しなければならない。 7.委員会は、また、報告書に、子どもの権利に関わるさまざまな法律および行政規則が発展させられかつ導入されてきたという情報が記載されていることにも留意する。義務教育法、未成年保護法ならびに障害者保護法および「障害者援助運動」による活動が留意されるところである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 8.中国の子どもの数が世界の子ども人口の5分の1を占めていること、および、人口が締約国の広大な領土全体に広がっていることを考慮に入れ、委員会は、管轄下にあるすべての子どもたちのニーズを満たす上で中国が抱えている任務は、経済的および社会的領域に限らず、膨大な課題を提示していることに留意する。 9.締約国が述べたように、締約国の一部で歴史的な封建的伝統が若干引き継がれていることおよび他の有害な態度が根強く残っていることが、子どもたちの生活および健全な成長に悪影響を与えている。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、子どもの権利条約の実施を促進しかつ調整するためにさまざまな機構が設置されていることに留意する。ただし、国、省および地方の各レベルにおける条約の実施状況を監視することに関しては、それが効果的であるようにするために十分な措置がとられていないことを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、教育、保健および社会保障を始めとする社会サービスの提供およびこのようなサービスへのアクセスに関して、都市部と非都市部の間および地域間に広く格差が存在することを、懸念する。 12.社会保障の領域で十分な措置がとられていないことが、親に対する将来の養護および支援に関して子どもに過剰に依存する状況につながってきたのではないかというのが、委員会の見解である。このことが、男子優先のような、女子および障害児の権利の保護および促進に好ましくない影響を与える有害な伝統的慣行および態度が変わらず続く原因になってきた可能性もある。 13.委員会は、刑事責任年齢に関するものを始めとする子どもの定義についての問題を検討し、国内法および関連の手続が、条約の規定および一般原則、とくに子どもの最善の利益を正当に考慮に入れたものになるようにすることが必要であると感ずるものである。 14.委員会の見解では、子どもとともにまたは子どものために働く専門職を始めとする大人の間で、および、子どもたち自身の間で、条約の規定および原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条に関する意識を喚起するための措置が十分にとられていない。 15.ジェンダーおよび障害を理由とする差別の問題に取り組むための措置には留意しながらも、委員会は、選択的な嬰児殺に結びつく慣行が根強く残っていることを、依然として懸念する。 16.世帯登録を通じてすべての子どもたちが登録されるようにするための措置が効果的であるかどうかについて、深刻な懸念が残る。締約国が認めるように、登録がなされないのは、関連の法律および政策ならびに登録の欠如が子どもの法的地位に与える悪影響に関して、親が知らないことが原因かもしれない。伝統的な居住地から人々が移住してくることも、同様の困難を生ぜしめる可能性がある。登録制度に欠陥があることは、子どもの取引、誘拐、売買および不当な取扱い、虐待もしくは放任といった領域を始めとして、子どもたちの権利を促進しかつ保護するための基本的な法的保障が奪われることにつながる。これとの関連で、「未登録女子」の状況も、彼女たちの保健および教育への権利に関して、委員会の懸念するところである。 17.委員会は、依然として、子どもたちの市民的権利および自由の実際の実施状況に関して懸念する。委員会は、思想、良心および宗教の自由に関する子どもの権利は、条約をひとつのものとしてとらえるアプローチに照らして確保されるべきであること、および、この権利の行使に関する制限は条約第14条3項と一致したものしか課すことができないことを、強調したい。 18.委員会は、福祉施設で養護されている子どもたちの状況をとりわけ深刻に懸念する。委員会は、そのような施設におけるきわめて高い死亡率は、真剣に懸念すべき理由となると考えるものである。委員会は、とくに、施設において子どもたちが成人から分離されるようにするためにとられた措置および職員に研修を施す上でとられた措置を評価しながらも、条約第3条3項によって求められている、子どもたちに質の高い養護が提供されるようにするためにとられた措置が不十分であることについて、依然として深く懸念する。 19.委員会は、いまだに通学していない子どもたちが中国において多数存在することについて、締約国が表明した懸念を共有するものである。委員会は、また、チベット自治区を始めとするマイノリティ地域において通学状況が他の地域よりも悪く、教育の質が劣悪であり、かつ、中国語による十分な教育を始めとするバイリンガル教育制度を発展させるために十分な努力が行なわれていないという報告があることも、懸念する。このような欠陥は、中等レベルおよび高等レベルの学校に進もうとするチベット人その他のマイノリティの生徒を不利な立場に置く可能性がある。 20.マイノリティに属する子どもたちによる宗教の自由への権利の行使に関しては、委員会は、条約第30条に照らし、チベットの宗教的マイノリティの人権侵害との関連で深刻な懸念を表明する。宗教的原則および手続に対する国家介入は、チベット人の少年少女世代全体にとって、きわめて不幸な事態のように思える。 21.委員会は、国内法において、16歳から18歳の間の子どもたちに対して2年間の執行猶予付で死刑を科すことが認められているように思えることを、依然として懸念する。子どもたちに執行猶予付の死刑を科すことは、残虐な、非人間的なまたは品位を傷つける取扱いまたは罰を構成するというのが委員会の見解である。さらに、刑法において、罪を犯した14歳から18歳の間の少年に対し、とくに深刻な犯罪については合法的に終身刑を科すことができるとされていることも、留意されるところである。終身刑は「改悛」または「報奨」を理由に減刑できるとされており、かつ、中国の司法の状況に照らせば終身刑が減刑措置の利益を得られるということもわかるとはいえ、委員会は、条約が、18歳未満の者が犯した犯罪に対しては死刑も釈放の可能性のない終身刑も科してはならないと規定していることを強調したい。上記の国内法規定は、条約の原則および規定、とくに第37条(a)に一致しないというのが委員会の見解である。 22.加えて、委員会は、中国の現行少年司法制度において十分な法的保護がどの程度整っているかについても、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもの審判前拘留の間の親によるアクセス、子どもに対する法的援助の提供の可能性、および、子どもの弁護のための準備に充てられる時間が十分かどうかということについて、かつ、無罪推定の原則、および、第40条2項(a)に反映された「法律なしに犯罪なし、法律なしに処罰なし」の原則に関して、懸念を表明する。 23.委員会は、近年子どもたちの誘拐が急増しているという締約国の懸念を共有するものである。これとの関連で、委員会は、子どもの売買、取引および性的搾取の問題を防止しかつそれと闘うためにとられた措置が十分とは思えないことについて、深刻な懸念を表明したい。 E.提案および勧告 24.条約第6条に締約国が付した留保が依然として必要かどうかという点に関して委員会で交わされた議論、および、締約国によって提供された、留保に関して調整を検討することはいとわないという情報に照らし、委員会は、締約国に対し、条約への留保を撤回の方向で再検討するよう奨励する。 25.委員会は、国内の法的枠組みの包括的再検討を行なうよう勧告する。そのような再検討の際には、条約の規定および原則を指針としても支えとしても活用すること、および、国レベルのみならず、子どもの権利に影響を与える地方レベルの立法上のおよび行政上の措置をも包含することが、必要である。 26.委員会は、締約国が、子どもの権利のためのオンブズパーソンのような独立機関の設立の可能性について検討するよう勧告する。このような機構は、福祉、教育および少年司法の領域を始めとする子どもの権利の領域で活動する機関を監視する上でも、こうした領域で浮上する問題のより迅速な発見に貢献して建設的な解決策を可能にする上でも、重要な役割を果たしうるものである。 27.委員会は、子どものための世界サミットのフォローアップのための事業概要を発展させかつ実施するために全国で行なわれている活動に留意しながらも、子どもの権利に関する将来の事業概要、開発計画、プログラムまたは行動計画は、条約のすべての規定および原則に基づいて作成するよう勧告する。 28.締約国は、子どもの状況に関して、細分化された統計的データその他の情報を収集することに対し、系統だったアプローチで望むための力を強化するためさらなる措置をとるよう、促されるものである。委員会は、締約国がこの問題を真剣に検討するよう勧告する。そのようなデータおよび情報の分析は、子どもの権利の実施のためのプログラムを立案する上で、もうひとつのかつ重要な手段となるからである。 29.子どもの権利に関する条約の原則および規定を、ラジオおよびテレビといったマスメディアの活用を始めとして、全国で広く普及すべきだというのが委員会の勧告である。この点で、委員会は、締約国が国連児童基金の協力を要請してはどうかと提案する。国内の主要なマイノリティの言語に条約を翻訳することは、このような普及活動に欠かせない部分である。 30.委員会は、また、条約の原則および規定に関する教育を、子どもたちとともにまたは子どもたちのために働いているさまざまな専門職の研修プログラムに組み入れるための措置をとるようにも勧告したい。このような専門職には、ソーシャルワーカー、福祉施設職員、医師、保健および家族計画事業の従事者、教員、裁判官、弁護士、警察官、矯正施設職員ならびに軍隊関係者、および、政府の職員ならびに意思決定者が含まれる。 31.委員会は、条約第4条の実施のために現在とられている政策の再検討を勧告する。委員会は、そのような再検討を行なうに当たっては、子どもの権利のための資源の配分、とくに保健および教育に関わる資源の配分における、地域ごとのおよび都市部と非都市部との格差を削減するための措置に関して焦点が当てられるべきだと強調したい。 32.同様に、委員会は、社会保障の提供に関してさらに注意を向け、かつ、検討を行なうよう勧告する。家族が子どもたちに、とくに自分たちが老年に達したときの養護の提供に関して過剰に依存することを避けるため、対応策がとられるべきだというのが委員会の見解である。 33.条約の一般原則の実施を確保するために、さらなる措置が求められる。条約第12条に関しては、子どもたちに対し、参加し、かつ、自分たちの意見が聴かれれかつ考慮に入れられる機会を提供することにさらなる関心が払われるべきだというのが、委員会の見解である。保護を受ける存在としてだけではなく、権利の主体としての子どもに関する意識を発展させることが重要である。委員会は、虐待または放任の苦情の申立ておよび調査に関して、そのような侵害がとくに家庭内暴力および施設または矯正施設における虐待から生じている場合に、子どもたちが利用できる手続が効果的なものになっているかどうかを再検討することに対して、さらなる関心を払うよう提案する。 34.委員会は、女子が直面している問題に取り組むために一致した行動が求められているという締約国の見解に、同意する。女子および男子の平等に関するキャンペーンを行ない、かつ、そのような平等に関する意識を人々の間に喚起するために締約国がとっている措置は認めながらも、委員会は、女子に対する差別を防止しかつ撤廃し、かつ、この点で共同体に対して指導を与えるための努力を支援する上で、地方の指導者その他の指導者に対してもっと積極的な役割を果たすよう要請することを提案する。 35.締約国によって提供された情報から、委員会は、子どもの間での障害の発生率は低いものの、障害児が遺棄および差別の犠牲者になっていることに留意する。この点で、委員会は、障害を理由とする差別を防止しかつそれと闘うために必要とされる措置に関して、締約国がさらなる調査を行なうよう勧告する。 36.家族計画に関する政策は、子どもたち、とくに女子の生命をいかなる形でも脅かすことのないように策定されなければならないというのが、委員会の見解である。委員会は、この点で、その政策が促進する目的が第24条を始めとする条約の原則および規定に沿ったものになるようにするため、大衆および家族計画政策の従事者に対し、はっきりとした指導を行なうよう勧告する。締約国は、女子の遺棄および嬰児殺ならびに女子の取引、売買および誘拐と闘うための力強くかつ包括的な措置を維持するため、さらなる措置をとるよう促される。 37.委員会は、1982年および1990年に行なわれた2度の人口調査の結果に関して締約国から提供された情報を認め、かつ、新たに生まれた女子が登録されないことが、子どもの男女比率の不均衡の主要な原因となっていることに留意する。委員会は、女子の出生の過少報告を削減するための措置を締約国がとっていることに留意しながらも、登録の重要性に関する意識をさらに広げるための緊急措置をとるよう勧告する。人口の国内移動といった最近の変化に照らし、委員会は、締約国は、既存の登録制度が効果的なものかどうかについて再検討する可能性を検討するようにも勧告する。 38.子どもたち、とくに遺棄された子どもたちが、とくに里親託置および養子縁組を通じて家庭的な環境で成長できる可能性を促進するために、締約国はさらなる措置をとるべきであるというのが委員会の見解である。委員会は、また、締約国が、国内養子縁組を容易にする上で国内法が効果的なものになっているかどうかを評価するため、条約の原則および規定、とりわけ第20条および第21条に照らして、養子縁組に関する現行法の再検討を行なうようにも提案する。 39.締約国は、福祉施設における子どもたちの状況を改善するため、さらなる措置をとるよう促される。この点で、委員会は、条約の原則および規定、とくに第3条3項および第25条に、締約国の特段の注意を促したい。委員会は、このような施設の職員に施されている研修をさらに見直すよう、勧告する。研修は、養護を提供する上で最も効果的な教育的、専門的および子ども中心のアプローチを確保するという観点から見直されるべきである。職員が効果的に監督され、かつ、そのような施設の子どもたちの処遇が定期的に見直されるようにするための措置も必要とされている。締約国との対話の過程で提起されたその他の問題に照らし、委員会は、また、福祉施設を監視し、かつ、そのような施設に十分な財源を供給するための現行制度の見直しに関しても、さらに考慮するよう提案する。条約第4条、第23条、第24条、第28条および第45条にも照らしながら、委員会は、こうした問題に関する知識へのアクセスを容易にし、かつ、専門知識および経験を共有するという枠組みの中で、国連児童基金、世界保健機構および国連教育科学文化機関に対し、この点における締約国との協力を要請する可能性について、検討するよう提案する。 40.委員会は、チベット自治区その他のマイノリティ地域の子どもたちが自分たちの言語および文化に関する知識を発展させ、かつ、中国語を学習する機会を全面的に保障されるようにするための措置を再検討するよう、提案する。こうした子どもたちを差別から保護し、かつ、高等教育へのアクセスを平等に確保するための措置がとられるべきである。 41.委員会は、締約国が、上記20項で表明された懸念に対する建設的な対応を模索するよう勧告する。 42.委員会は、18歳未満の子どもたちの状況に関する点が指摘された、拷問禁止委員会によって採択された所見の内容に同意するものである。委員会は、少年司法に関わる締約国の現行法ならびに行政上の措置および手続を、条約、とりわけ第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営の領域に関わる他の文書、とくに「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則の原則および規定と一致するようにするため、全面的に見直すよう勧告する。委員会は、この点に関して締約国が、〔国連〕人権センターを始めとする関連の国連機関に対し、援助を要請する可能性を検討するよう提案したい。 43.児童労働の問題に関しては、委員会は、締約国に対し、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の締約国となる可能性を検討するよう奨励する。 44.最後に、委員会は、締約国の報告書、委員会における同報告書の議論および委員会が報告書の審査後に採択した総括所見を、最大限に広く普及するよう勧告する。 45.条約第44条4項の規定に照らし、委員会は、この総括所見のパラ18、21、22および23で提起された懸念に関して、委員会に対してさらに文書による情報を提供するよう要請する。委員会は、この情報を1997年12月までに受領することを望むものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月13日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/130.html
総括所見:ベラルーシ(第2回・2002年) 第1回(1994年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2011年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.180(2002年6月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年5月27日に開かれた第786回および第787回会合(CRC/C/SR.786 and 787参照)においてベラルーシの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.15)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2002年6月7日に開かれた第804回会合において。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第2回報告書が提出されたこと、および、事前質問事項(CRC/C/Q/BEL/2)に対する文書回答が迅速に提出されたことを歓迎する。委員会は、ベラルーシにおける条約の実施に直接関与しているメンバーが締約国の代表団にひとりしかいなかったことは遺憾に思いつつ、建設的な対話、および、対話の際に行なわれた提案に対する前向きな反応に留意するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、締約国が、国内法を条約の規定とさらに調和させるために多数の法律を採択したこと(新民法および1999年に採択された新婚姻家族法ならびに子どもの権利法の2000年改正を含む)に留意する。 4.国際条約法が1998年に採択されたことにより、条約のような国際条約の規範が現行法の一部となり、したがって裁判所で直接援用できるようになったことは、委員会の歓迎するところである。 5.委員会は、前回の勧告(1994年2月7日付のCRC/C/15/Add.17、パラ11)に照らし、国家子どもの権利委員会が1996年に設置されたことに留意する。 6.委員会は、前回の勧告(前掲パラ11)にしたがい、子どもの権利の保護に関する国家的計画(1995~2000年)が1995年4月19日付大統領令第150号により採択され、かつ、2001年5月24日付大統領令第281号で承認された大統領プログラム「ベラルーシの子どもたち」(2001~2005年)によりフォローアップされていることを、認識する。 7.委員会は、1999~2004年の期間を対象とする国家人権教育計画が1999年3月に採択されたことを歓迎する。 8.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を締約国が採択したことを歓迎する。委員会はさらに、ベラルーシが、前回の勧告(前掲パラ13)どおり、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に署名したことに留意するものである。 C.条約の実施における進展を阻害する要因および困難 9.委員会は、経済的移行を理由として悪化し、かつ家族、とくに子どもの多い家族および農村部で生活している家族に影響を与えている貧困がいまなお締約国における条約の全面的実施を阻害していることを、認知する。さらに委員会は、チェルノブイリ原発事故の悪影響が根強く残っており、住民一般に、ならびにとくに子どもの健康および発達に影響を及ぼしていることに留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 前回の勧告 10.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.6〔ママ〕)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(1994年10月24日付CRC/C/15/Add.28〔ママ〕)の一部、とくにパラ11、12、14および15に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されているところである。 11.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 12.子どもの権利に関してとられたさまざまな立法措置には留意しながらも、委員会は、国内法と条約の規定および原則との全面的両立性に関する懸念(CRC/C/15/Add.17、パラ6)をあらためて表明する。委員会はまた、立法に条約の包括的な権利基盤アプローチが十分に反映されていないことも懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の原則および規定との全面的一致を確保するため、権利を基盤とする視点からの現行法の包括的見直しを引き続き行なうこと。 (b) これとの関連で、とくにユニセフの援助を求めることを検討すること。 調整 14.1996年に国家子どもの権利委員会を設置することによって調整を向上させようとした締約国の努力は認めながらも、委員会は、同国家委員会が基本的には諮問機関であることに懸念とともに留意する。委員会はさらに、大統領プログラム「ベラルーシの子どもたち」(2001~2005年)の実施プロセスが監視されかつ見直されていることに留意するものである。 15.委員会は、締約国が、中央および地方の公的機関間で活動を効果的に調整し、かつNGOおよび市民社会のその他の部門と協力する等の手段により、国および地方のレベルで子どもの権利の実施および監視を調整する常設機関が設置されることを確保するべきである旨の勧告(前掲パラ11)をあらためて繰り返す。 独立の監視 16.独立した監視機関の設置に関して現在行なわれている議論には留意しつつも、委員会は、条約の実施における進展の恒常的監視および評価を任務とし、ならびに子どもによる苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた、国レベルの全般的機構が存在しないことに懸念を表明する。 17.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関するパリ原則(総会決議48/134)にしたがい、国内人権機関の一部としてまたは子どもオンブズマンのような別個の機関として、独立した効果的機構を設置するよう奨励する。当該機構は、十分な人的資源および財源を提供され、かつ子どもが容易にアクセスできるものであるべきであり、ならびに以下のことを任務とするべきである。 (a) 条約の実施を監視すること。 (b) 子どもに配慮した迅速なやり方で子どもからの苦情に対応すること。 (c) 条約に基づく子どもの権利の侵害に対して救済を提供すること。 これとの関連で、委員会はさらに、締約国が、とくにユニセフおよびOHCHR〔人権高等弁務官事務所〕の技術的援助を求めることを検討するよう勧告する。 子どものための資源 18.住民の生活水準の低下を防止しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どものための予算配分が、子どもの権利の促進および保護に関する国および地方の優先的課題に対応し、ならびに子どもに提供されるサービスに関して農村部と都市部との間に存在する格差を克服しおよび是正するためにはいまなお不十分であることに、懸念を表明する。 19.条約第4条に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 包括的な貧困削減戦略等も通じ、家族、とくに子どもが多い家族、農村部に住んでいる家族およびひとり親家族の生活水準の低下を防止するための努力を引き続き行なうこと。 (b) 子ども、とくに社会でもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実施のために、利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で資金が配分されることを確保する目的で、子どもの権利に関わる問題についての優先的課題を明確に特定すること。 (c) 子どもに関する支出の影響および効果を評価する目的で、国および地方のレベルで子どもに支出されている予算の額および割合を明らかにすること。 データ収集 20.委員会は、条約が対象とするすべての分野に関するデータが細分化されていないことに懸念を表明する。委員会はさらに、子どもに関するデータが、子どもの権利の分野における進展を評価する目的で、かつ同分野における政策立案の基礎として、十分なやり方で活用されていないことに留意するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた集団(経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、農村部で暮らしている子ども、施設の子ども、障害のある子どもおよびチェルノブイリ原発事故の結果の影響を受けている子どもを含む)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関する細分化されたデータを体系的に収集しかつ分析する機構を強化すること。 (b) 条約の実施および監視を目的とする政策およびプログラムの立案および評価のために、これらの指標およびデータを効果的に活用すること。 (c) この点に関してユニセフの技術的協力を求めること。 市民社会との協力 22.委員会は、最近になっていくつかの非政府組織が設立されたにも関わらず、とくに市民的権利および自由の分野における条約の全面的実施に市民社会の関与を得るために行なわれた努力が不十分であることに、懸念を表明する。委員会はさらに、非政府組織が困難な登録手続を経なければならないこと、および、とくに外国からの資金拠出が制限されており、そのため非政府組織の有効性および独立性が制約される可能性があることに、深い懸念とともに留意するものである。 23.委員会は、市民的権利および自由に関するものも含む条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとる旨の勧告(前掲パラ12)をあらためて繰り返すものである。 (a) 条約の実施のあらゆる段階を通じ、とくに市民的権利および自由との関連で、子どもとともにおよび子どものために活動する非政府組織(とくに権利を基盤とする組織)および市民社会のその他の部門のいっそう制度的な関与を得ることを検討すること。 (b) 自由権規約委員会の勧告(CCPR/C/79/Add.86、パラ19)にしたがい、非政府組織の登録および活動を促進する目的で法令および行政実務を遅滞なく見直すこと。 研修/条約の普及 24.前回の勧告(前掲パラ17)にしたがい、条約の普及ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修のための努力が行なわれてきたことは認めながらも、委員会は、これらの措置を強化する必要があると考える。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに地方レベルでおよびメディアを通じて条約を促進するための、いっそう創造的な手法(絵本およびポスターのような視聴覚補助手段の活用も含む)を発展させること。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員および学校管理者など)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続しかつ強化すること。 (c) とくに、1998年国際条約法の効力および裁判所で条約を直接援用する可能性について、司法機関を対象とする十分な研修を行なうこと。 (d) 非政府組織および市民社会のその他の部門の関与を得る目的で、とくにユニセフ、ユネスコおよびOHCHRの技術的援助を求めること。 2.一般原則 一般原則 26.委員会は、差別の禁止、子どもの最善の利益(第3条)、子どもの生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)の原則が、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、ならびに、子どもに関連する国および地方双方のレベルの政策およびプログラムに全面的には反映されていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告(前掲パラ11)をあらためて繰り返す。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関わるあらゆる関連の法律に適切な形で統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のすべての決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいてこれらの原則を適用すること。 (c) あらゆるレベルの計画および政策立案、ならびに、社会保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関によるあらゆる行動においてこれらの原則を適用すること。 差別の禁止 28.委員会は、差別の禁止の原則が、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、農村部で暮らしている子ども、施設の子ども、障害のある子ども、ロマの子どもおよびチェルノブイリの影響を受けている子どもを対象として、とくに十分な保健ケアおよび教育のための便益へのこれらの子どもによるアクセスとの関連で全面的には実施されていないことを、懸念する。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 差別にさらされている子ども、とくに脆弱な立場に置かれた前掲の集団に属する子どもの状況を監視すること。 (b) このような監視の結果に基づき、あらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定すること。 30.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 31.子どもの意見を聴くことを認めた規定には留意しながらも、委員会は、裁判官または他の意思決定機関がこの点に関して有している裁量権が強すぎることを懸念する。 32.第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 意見を表明するのに十分な成熟度を備えたすべての子どもが、その子どもに影響を与えるすべての司法手続および行政手続で意見を聴かれることを確保すること。 (b) 親、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに公衆一般を対象として、子どもが意見を聴かれ、かつその意見を真剣に考慮される権利を有していることについて周知するためのキャンペーンを実施すること。 3.市民的権利および自由 33.委員会は、第13条、第15条および第17条の実施が制限されていることに、懸念とともに留意する。 34.委員会は、締約国が、条約第13条、第15条および第17条で認められた表現の自由、結社および平和的集会の自由ならびに適切な情報へのアクセスに対する権利の全面的実施を、すべての子どもに対して保障するよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 35.委員会は、離婚率が高いことならびにひとり親家庭の数および親によるネグレクトの事案の数が増えていることを含め、ベラルーシで家族の解体現象が広がりつつあることに、深い懸念とともに留意する。子どものいる家庭手当法(2002年4月1日)など、締約国が家族の強化のために若干の措置をとっていることには留意しながらも、委員会は、貧困削減戦略の実施を含む家族志向政策を扱っている公的機関間で調整が行なわれていないこと、防止措置が皆無に近いこと、および、職業ソーシャルワーカーが機能不全家族に対応するための十分な訓練を受けていないことに、懸念を表明するものである。 36.条約第18条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族の解体を防止しかつ家族の発展を強化するための措置を引き続き策定すること。 (b) 親教育、カウンセリングおよびコミュニティを基盤とするプログラム等を通じ、子どもの養育責任に関する助力を家族に提供するための社会的援助および支援を向上させること。 (c) ソーシャルワーカーを十分に訓練すること。 (d) とくにユニセフの国際援助を求めること。 家庭環境を奪われた子ども 37.婚姻家族法に掲げられた公式な脱施設化優先政策には留意しながらも、委員会は、里親養護その他の形態の家族を基盤とする代替的養護が十分に発展しかつ利用可能とされていないため、家庭環境を奪われて施設に措置される子ども(障害のある子どもを含む)の人数が多いことに、重大な懸念を表明する。加えて委員会は、施設が、資源がないことを理由として、非常に質の低い居住環境およびケアしか子どもに提供しておらず、かつ、子どもが自己の措置に関する懸念および苦情を伝達する効果的機構を有していないことに、懸念とともに留意するものである。 38.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの遺棄を防止しかつ削減するため、戦略の策定および意識啓発活動の発展を含む効果的措置をとること。 (b) 里親養護、家庭的里親ホームその他の家族を基盤とする代替的養護を増やしかつ強化するための効果的措置をとること。 (c) 子どもの施設措置は最後の手段としてのみ行なうこと。 (d) 施設の環境を改善するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) ソーシャルワーカーを含む施設職員に対して支援を提供しかつ研修を行なうこと。 (f) 養護を受けている子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応し、養護の質を監視し、ならびに条約第25条に照らして措置の定期的再審査を確立するための効果的機構を設置すること。 (g) 施設養護を離れた子どもに対し、フォローアップおよび再統合のための十分な支援およびサービスを提供すること。 虐待およびネグレクト 39.委員会は、家庭、学校その他の施設における子どもの不当な取り扱いおよび虐待に関する情報および意識が不十分であることに、懸念を表明する。 40.条約第19条および委員会の前回の勧告(前掲パラ40)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの慣行の規模、範囲および性質を評価する目的で、ドメスティックバイオレンス、子どもに対する暴力、不当な取り扱いおよび虐待(性的虐待を含む)についての研究を行なうとともに、子どもに対する身体的および精神的暴力ならびにネグレクトの発生件数を記録するために創設された統計システムを実施すること。 (b) 子どもの不当な取り扱いおよび虐待を防止しおよびこれと闘い、ならびに態度の変革に寄与するための十分な措置および政策(公的キャンペーンを含む)を採択し、かつ効果的に実施すること。 (c) 被害を受けた子どもの保護(プライバシーに対する権利の保護を含む)を向上させる目的で、ドメスティックバイオレンスならびに子どもの不当な取り扱いおよび虐待(家庭における性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査手続および司法手続において効果的に調査すること。 (d) 家庭、学校その他の施設におけるあらゆる形態の体罰を禁止し、かつ体罰の有害な影響に関する意識を高めるための措置を発展させるとともに、子どもの尊厳と一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれるべき、家庭における代替的形態のしつけを促進すること。 (e) 条約第39条にしたがい、子どもに対し、法的手続における支援サービス、ならびに、強姦、虐待、ネグレクト、不当な取り扱いおよび暴力の被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための支援サービスを提供するための措置をとること。 (f) 「家庭および学校における子どもへの暴力」(CRC/C/111参照)ならびに「子どもに対する国家の暴力」(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告を考慮すること。 (g) これとの関連で、とくにユニセフおよびWHOの国際協力および技術的援助を求めること。 5.基礎保健および福祉 健康および保健サービス 41.妊産婦および子どものケアのためのサービスならびに子どもの健康を向上させるためのさまざまなプログラムを再編しようとする努力には留意しながらも、委員会は、子どもの有病率が上昇していること(新生児のHIV感染数の増加を含む)、結核がほぼ流行病と言えるほど広がっていること、ならびに、とくに低所得世帯および子どもが3人以上いる家庭の子どもの間でヨウ素欠乏症および栄養上の問題が多数発生していることを、懸念する。委員会はさらに、交通事故率および自動車事故率が高く、かつ自殺率の高さも子どもに影響を与えていることに留意するものである。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 妊産婦死亡率、周産期死亡率および乳児死亡率をさらに減少させるため、効果的な周産期ケアの促進に関するWHO戦略を引き続き実施すること。 (b) すべての子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもが、無償のかつ良質な基礎的保健ケアにアクセスできることを確保すること。 (c) 乳幼児期の発達に対する統合的かつ多層的アプローチを確保するため、健康および栄養に焦点を当てた国レベルの政策を策定すること。 (d) 母子感染の予防に焦点を当てながら、新生児のHIV感染数の増加に対応すること。 (e) 子どもの怪我を予防する目的で、子どもを事故および怪我から保護するための十分な法律を策定し、国レベルの政策的優先事項および目標に怪我の予防を含め、かつ受傷事故管理プログラムを開発すること。 (f) 子どもの自殺の規模および原因を評価するために包括的かつ学際的な研究を行なうとともに、この現象を防止しかつこれと闘うための十分な政策およびプログラムを発展させること。 (g) とくにWHOおよびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。 思春期の健康 43.委員会は、薬物、アルコールおよびタバコに依存する子どもおよび青少年の人数が増えていること、10代の妊娠中絶が多いことならびに若者の間でHIV/AIDSの件数が増加していることに、懸念とともに留意する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 全国規模の包括的プログラムである「青少年を対象とする医療活動および回復力強化活動」(1999~2003年)およびHIV予防国家戦略計画(2001~2003年)を効果的方法で実施するとともに、思春期の健康(精神保健を含む)に関する政策を促進するための努力を増強すること。リプロダクティブヘルスおよび有害物質濫用に対して特段の注意が向けられるべきであり、かつ学校における健康教育プログラムがさらに強化されるべきである。 (b) 思春期の健康上の問題(性感染症およびHIV/AIDSの悪影響を含む)の規模および性質を評価するために包括的かつ学際的な研究を行なうとともに、十分な政策およびプログラムを引き続き発展させること。 (c) 健康教育訓練プログラムの有効性をとくにリプロダクティブヘルスとの関連で評価し、かつ、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意を得ずにアクセスすることのできる、若者に配慮した、秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるため、さらなる措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)をとること。 (d) とくにUNFPA〔国連人口基金〕、ユニセフ、WHOおよびUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕の技術的協力を求めること。 環境保健 45.委員会は、子どもの間でさまざまな疾病(がん、免疫不全および貧血症を含む)の件数が増加していることを含め、チェルノブイリ原発事故の悪影響が根強く残っていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、チェルノブイリ原発事故被災者への援助が完全に人道的なものに留まっており、長期的政策に焦点を当てたものとなっていないことに留意するものである。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) チェルノブイリ原発事故の影響を受けている子どもに提供される専門的保健ケアを、その心理社会的側面も含めて引き続き向上させること。 (b) 放射能汚染関連疾患の早期発見および予防のための努力を強化すること。 (c) 被災者援助に対する長期的開発アプローチにいっそう焦点を当てること。 障害のある子ども 47.障害のある子どもを統合するための努力には留意しながらも、委員会は、障害のある子どもの人数が増えており、かつこのような子どもを施設に措置する慣行が行なわれていることに懸念を表明する。委員会はさらに、障害児がいる家庭に対する支援が不十分であることに、懸念とともに留意するものである。 48.条約第23条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの障害の原因およびその予防方法を明らかにするための研究を行なうこと。 (b) 障害のある子どもの状況を評価し、かつそのニーズに効果的に対応する目的で、このような子どもの状況が監視されることを確保するための措置をとること。 (c) 障害のある子どもの状況および権利に関する意識を高めるための公的意識啓発キャンペーンを実施すること。 (d) 障害のあるすべての子ども、とくに農村部で生活している子どものためのプログラムおよび便益に対して必要な資源を配分するとともに、このような子どもが家族とともに自宅で生活できるようにするための、コミュニティを基盤とするプログラムを強化すること。 (e) 障害のある子どもの親を、カウンセリングおよび必要なときは金銭的支援によって支援すること。 (f) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/86)および「障害のある子どもの権利」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に照らし、教員に対して特別研修を行ない、かつ学校をいっそうアクセスしやすいものとする等の手段もとりながら、障害児の普通教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励すること。 6.教育、余暇および文化的活動 教育 49.学校カリキュラムに人権教育を含めるために締約国が行なった努力は認めながらも、委員会は、ベラルーシ語による教育の利用可能性が、乳幼児教育から中等教育に至るまでますます制限されつつあることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、中等教育で学ぶ子どもの人数が減少していること、および、とくに中等制度における教育水準に大きなばらつきがあり、低所得地域および農村部にとって不利益が生じていることに、留意するものである。 50.条約第28条および第29条に照らし、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) ベラルーシ語による教育が利用でき、かつ、ロマの子どもおよび他のマイノリティに属する子どもが良質な教育にアクセスできることを確保すること。 (b) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号にしたがって第29条1項に挙げられた目標を達成するため、全国で教育の質を向上させること。 7.特別な保護措置 人身取引、性的その他の形態の搾取 51.委員会は、ベラルーシが、性的その他の形態の搾取を目的とする子ども(とくに女子)の人身取引の送り出し国および通過国であるという情報に懸念を覚える。委員会は、この現象、ならびに、人身取引に関連していることが多い性的搾取、薬物濫用および薬物取引への子どもの関与ならびに経済的搾取のような問題についての情報および知識が欠けていることに留意するものである。 52.条約第32~36条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および人身取引関連の問題(性的搾取、薬物濫用および薬物取引への子どもの関与ならびに経済的搾取など)の範囲および原因を評価する目的でこれらの問題に関する研究を行なうとともに、これらの問題を防止するための効果的な監視措置その他の措置を策定しかつ実施すること。 (b) 社会統合プログラムを発展させること等の手段により、子どもの人身取引、性的搾取、薬物の濫用および取引ならびに経済的搾取と闘い、かつこれらを根絶すること。 (c) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、子どもの性的搾取および商業的搾取に反対する国家的行動計画を策定しかつ採択すること。 少年司法の運営 53.委員会は、少年司法の運営に関わる状況についての重大な懸念(前掲パラ10)をあらためて表明する。新しい刑法および刑事訴訟法に基づき、少年事件は特別な訓練を受けた裁判官によって検討されうること、および、少年司法を担当する別個の部門を設置するかどうかについての議論が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、包括的な制度がまだ確立されていないこと、検察官および弁護士が少年事件を扱う訓練を受けていないこと、ならびに、拘禁が最後の手段として用いられておらず、かつ拘禁に代わる措置が稀にしか適用されていないことに、懸念を表明するものである。さらに、少年拘禁センターの環境が非常に劣悪であり、更生の可能性がほとんど提供されていないことが留意されるところである。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の特別制度を速やかに確立するとともに、その完全な独立性ならびに十分な人的資源および財源を確保すること。 (b) 少年司法制度を、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)のようなこの分野における他の関連の国際基準と可能なかぎり早期に全面的に一致させる目的で、少年司法制度に関わる法律および実務を引き続き見直すこと。 (c) 18歳未満のすべての者が少年司法の運営の分野における特別な保護措置の利益を享受することを確保すること。 (d) 未決拘禁を含む拘禁は、最後の手段としてのみ、可能なかぎり短くかつ法律で定められた期間を超えない範囲で用いるとともに、子どもが常に成人から分離されることを確保すること。 (e) 可能なときは常に、未決拘禁その他の形態の自由の剥奪に代わる措置を活用すること。 (f) 非行、犯罪および薬物依存のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。 (g) とくに、少年の処遇のあらゆる側面を対象とした効果的な苦情申立て手続へのアクセスを保障することを目的として、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則を法律および実務に編入すること。 (h) 第39条に照らし、少年司法制度に関わることになった子どもの回復および社会的再統合を促進するための適当な措置をとること。 (i) 「少年司法に関する技術的助言および援助についての国連調整パネル」を通じ、とくにOHCHR、国連国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフに対して援助を求めること。 8.報告書の普及 55.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.報告書の定期的提出 56.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的報告書の提出に関して困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、第4回報告書の提出期限である2007年10月30日までに提出するよう慫慂するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/101.html
総括所見:モンゴル(第3~4回・2010年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MNG/CO/3-4(2010年3月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※先行未編集版のまま配布 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月12日および13日に開かれた第1456回、第1458回および第1460回会合(CRC/C/SR.1456、CRC/C/SR.1458およびCRC/C/SR.1460参照)においてモンゴルの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/MNG/3-4)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/MNG/Q/3-4 and CRC/C/MNG/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、締約国の子どもの状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、締約国のハイレベルな代表団との建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年1月29日に採択された、子どもの権利条約の2つの選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/MNG/CO/1およびCRC/C/OPAC/MNG/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の法律の制定を含め、条約の実施を目的として多くの立法上その他の措置がとられたことを歓迎する。 (a) ヨウ素添加塩によるヨウ素欠乏症予防法(2003年)。 (b) HIV/AIDS予防法(2004年)。 (c) 母乳代替品法(2005年)。 (d) 障害のある市民法(2005年)。 (e) 子どもおよび家族に対する金銭援助法(2006年)。 5.委員会はまた、以下の法律の改正にも留意するものである。 (a) 社会福祉法(2005年)。 (b) 教育法(2006年)。 (c) 刑事訴訟法(2007年)。 6.委員会は、締約国が障害のある人の権利に関する条約に加入し(2009年)、かつ経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書に署名したこと(2009年)に、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32、2005年)の検討後に行なわれたいくつかの懸念表明および勧告について対応が行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、他の懸念および勧告については不十分なまたは部分的な対応しか行なわれていないことを遺憾に思うものである。 8. 委員会は、締約国に対し、とくに立法、データ収集、差別の禁止、体罰、養子縁組、虐待、ネグレクト、不当な取扱いおよび暴力、生活水準ならびにストリートチルドレンの状況との関連で、これまでの総括所見の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告の十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 9.国内法と条約との調整を図るために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、一部の法規定が条約の原則および規定と全面的に一致しておらず、かつ法律の実施が遅いことを依然として懸念する。 10.委員会は、締約国が引き続き法律を条約の原則および規定と調和させ、かつ国内法の実施を強化するべきであるという勧告を、あらためて繰り返す。委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する包括的法律を策定しかつ実施するよう奨励するものである。 調整 11.委員会は、子どもの問題に対応する3つの機関の存在に表れている、子どもの権利に対処しようとする政治的意思に留意する。しかしながら委員会は、あらゆるレベルで、かつとくに地方レベルでこれらの機関間の調整が不十分であることを懸念するとともに、子どもの権利を実施するための機構を明確にする必要性をあらためて指摘するものである。委員会はさらに、国家子ども評議会がその予定表にしたがって定期的会合および運営活動を行なってきていないことに留意するものである。 12.委員会は、締約国が以下のことに努めるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 政策立案および子どもの権利の積極的実施を担当する国の機関および地方の国家機関の体制を見直すこと。 (b) 調整機関としての国家子ども局の権限を強化するとともに、同局に対し、活動を遂行するための十分な財源および人的資源を提供すること。 国家的行動計画 13.2002~2010年の期間を対象とする「子どもの保護および発達のための国家行動計画」には留意しながらも、委員会は、その実施、監視および評価のための機構に関する情報、ならびに、2007年〔ママ〕以降、子どもの権利に関する後継行動計画が存在するのか否かに関する情報が存在しないことを遺憾に思う。さらに、委員会は、子どもの権利を実施かつ促進するための包括的な国家的行動計画が存在しないことを遺憾に思うものである。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2002~2010年の期間を対象とする国家行動計画を評価しかつ監視すること。 (b) 市民社会を含むすべての関連のパートナーと協議しかつ協力しながら、2010年以降の期間を対象とする新たな国家行動計画を策定し、採択しかつ実施すること。当該計画には、人的資源および財源を十分に配分するとともに、その実施において達成された進展を定期的に評価し、かつ存在しうる欠陥を明らかにするフォローアップおよび評価のための機構を組みこむものとする。 独立の監視 15.委員会は、国家人権委員会(NHRC)が行なっている活動、および、3名の委員のうち1名が子どもの問題に対応する権限を与えられていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、子ども自身が苦情を申し立てられないことに、懸念とともに留意するものである。 16.委員会は、締約国に対し、NHRCが、アクセスしやすくかつ子どもにやさしい苦情申立て機構を通じて子ども自身からの苦情を受理する権限および能力ならびに権利侵害に対する救済措置を求める能力および権威を有することを確保するため、 子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、必要な措置をとるよう奨励する。 資源配分 17.委員会は、社会予算、とくに国家予算の20%に達する教育予算を増額するために締約国が行なっている努力を認識する。にもかかわらず、委員会は、経済危機およびインフレならびに汚職が子どもの権利に対する持続可能な投資に悪影響を及ぼしてきたこと、ならびに、子どもの基本的権利の享受のための資源が後退しかつ存在しなくなるおそれが根強く残っていることを、懸念するものである。委員会は、広大な領域を有する国における地域間ならびに農村部および都市部間の格差、ならびに、著しく不利な立場に置かれた家族および子どもによる既存の支援プログラムへのアクセスの困難に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、子ども現金手当プログラムを中止するという政府の決定を遺憾に思うものである。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 採鉱活動から得られた資源を管理する人間開発基金に基づくものも含む子どものための資源を増加させること。 (b) 国家予算の一環としての子ども予算(教育、保健、暴力の防止、レクリエーション)を、内外のいかなる経済的衝撃または自然災害からも保護すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、必要に応じて国際協力も求めながら、子ども時代への効果的投資額をはっきりと明らかにする国家予算指標追跡システムを活用するよう、奨励する。 (c) 以下の手法を導入すること。子どもの人間開発に対する真の効果を保障するための、成果ベースの予算策定。 農村部および都市部間の不均衡ならびに地域間格差を縮小し、かつ、具体的目標(特定地域における飲料水の供給、および教育インフラの構築など)を達成することを目的とした、戦略的予算策定。 (d) 子ども予算の動向の透明かつ定期的な測定値を明らかにすることを志向した、利用者にやさしい指標システムを構築すること。 (e) 子どものための資源を侵食する汚職行為を防止しかつ調査するため、最近設置された国家汚職対策局を強化すること。 (f) ドナー活動を支える見返り資金を提供するとともに、可能なかぎり海外援助への依存を少なくすること。 データ収集 19.委員会は、政府機関のウェブポータルサイトを通じた国家情報センターの設置および現在進められている諸事業のような、子どもに関する統計データの収集のために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下の点について懸念を表明するものである。 (a) 国家統計局とその他の政府機関との間で、子どもに関連する統計の収集、分析および報告に関する調整が行なわれていないこと。 (b) 困難な状況で生活している子どもに関する全国的データの蓄積および分析が不十分であること、ならびに、子ども保護システムが地方分権化されておりかつ未発達であることを理由として、子どもの保護に関する全国的統計が入手できないこと。 (c) 信頼できる統計データの収集、処理および取得に関する困難が根強く残っていること。 20.委員会は、締約国に対し、国家統計局が、具体的には調整との関連でその任務を遂行するのに十分な人的資源、技術的資源および財源を有することを確保するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、18歳未満のすべての子どもに関するデータを収集し、既存のデータおよび新たなデータを分析し、かつ、公共政策および積極的差別是正プログラムの策定のために実証的証拠を活用するよう、勧告するものである。 普及、研修および意識啓発 21.委員会は、専門家の研修、公衆意識啓発キャンペーンならびにモンゴル語およびカザフ語で入手可能な条約についての資料を通じ、子どもの権利に関する情報の普及を向上させるために締約国が行なった努力を認知する。にもかかわらず、委員会は、とくに農村部および遠隔地において、関連の専門家集団、コミュニティ、親および子どもたち自身の間で条約に関する意識が不十分であることに、懸念とともに留意するものである。 22.委員会は、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(法執行官、議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員およびメディアを含む)を対象とする、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および感受性強化措置を通じて、とくに子ども、親および子どもとともに働く専門家の間で条約を普及しかつその原則および規定についての公衆の意識を高めるための努力を増強しかつ強化するよう、勧告する。その際、住民の言語上のニーズを考慮に入れるものとする。 市民社会との協力 23.委員会は、締約国報告書作成のための協議のプロセスに非政府組織(NGO)および子ども代表が参加したことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、政策の立案および監視ならびに条約を実施するための戦略の策定へのNGOの参加が限定的であることに留意するものである。 24.委員会は、条約の規定の実施において市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、子どもの権利の促進および実施ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成における、NGOおよび子ども団体を含む市民社会との協力および調整(政策の策定および協力事業への市民社会の参加を含む)を強化するよう勧告する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、脆弱な立場に置かれた子どもを差別から保護するための措置が原則としてはとられてきたことに留意する。しかしながら委員会は、ジェンダーに基づく差別が男子および女子の双方に影響を与えていること、および、実際には、子どもが、とくに子どもの民族集団、障害、生活水準もしくは子どもの家族の生活集団を理由としてまたは子どもの居住地によって不平等な取扱い(alag uzdeg)を経験していることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、西部地域の住民ならびにカザフ系マイノリティその他のマイノリティの間に存在する不平等についても懸念を覚える。 26.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を監視しかつ確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、社会のすべての部門における子どもへの差別の事案に対して効果的対応がなされることを確保するよう促すとともに、このような具体的情報が、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する情報とともに、次回の定期報告書で提供されることを要請する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、子どもの最善の利益を第一次的に考慮する現行国内法が豊かに存在することに留意する。にもかかわらず、委員会は、実際には規定が十分に執行されていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の一般原則がすべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に編入されることを確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 29.委員会は、すべての子どもに対して安全な、安心できる、かつ暴力のない環境を確保するための機構を洗練させる目的でとられた締約国の措置、および子どもを保護する法律の存在を評価する。にもかかわらず、委員会は、子どもがますます事故(交通事故および馬その他の家畜に乗っているときの事故を含む)の被害を受けており、かつ、2005年の副首相令の実施および執行が不十分であることをひとつの理由として、子どもの騎手の負傷および死亡が引き続き起きていることを、遺憾に思うものである。 30.条約第6条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国のすべての子どもの生命に対する権利の保護を強化するため、あらゆる努力を行なうこと。 (b) 事故防止に関する意識を高め、かつ事故防止に関する公衆情報キャンペーンを行なうための努力を強化しかつ継続すること。 (c) 現行の国家怪我予防計画の医療志向を補完する、より幅広い対策を策定すること。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、締約国が子どもの意見の尊重の原則を関連法制に編入したことに留意しながらも、実際には、現行規定の執行が不十分なことを理由として、この原則が実施されていないことを遺憾に思う。さらに、委員会は、子どもの参加に関する国家政策案(2005年)がまだ議会承認を得ていないことを遺憾に思うものである。 32.委員会は、締約国の第2回報告書に関わる前回の勧告(2005,CRC/C/15/Add.264、パラ26)を想起しつつ、締約国が、子どもの意見の尊重の原則をさらに促進し、推進しかつ実施するとともに、家庭、学校、コミュニティレベル、施設ならびに司法上および行政上の手続における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を促進するよう、勧告する。委員会はまた、議会が子どもの参加に関する国家政策案を承認し、かつ条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮することも勧告するものである。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 出生登録 33.委員会は、2006年以降、締約国で出生証明書が無償で発行されていることに留意する。しかしながら委員会は、出生登録率が高いにも関わらず、とくに国内移住、出生登録所の遠さ、および、出生登録の重要性に関する牧民家族の意識の欠如を理由として、出生の10%近くが登録されていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国が、遠隔地および牧民家族の子どもにとくに焦点を当てながら、すべての子どもを登録するための努力(期限後の登録を無償で行なえる機会の提供も含む)を継続しかつ強化するよう、勧告する。 適切な情報へのアクセス 35.子どもによる情報技術へのアクセスが改善された旨の情報、および国民的マイノリティを対象とする公共テレビ・ラジオ番組に対する締約国の支援は歓迎しながらも、委員会は、一部の番組について、子どもの発達上および教育上のニーズを満たし、かつ内容および情報が年齢相応のものであることを確保するための改定が必要であることに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子ども、とくに遠隔地および農村部に住んでいる子どもに対し、その年齢およびニーズに一致する適切な情報への公平なアクセスを全面的に保障するための努力を強化すること。 (b) 子どもが適切な情報にアクセスできることを全面的に保障しつつ、子どもを有害な情報から保護するための適切な指針を策定すること。委員会はさらに、締約国が、「子どもとメディア」に関する一般的討議から生まれた委員会の勧告(1996年、CRC/C/57、パラ242-257)を考慮するよう、勧告する。 体罰 37.委員会は、しつけおよび規律のための措置の関係で行なわれる子どもの体罰に対処するために行なわれた努力には留意するものの、子どもが生活するあらゆる場面において体罰が広範に観測されているという懸念をあらためて表明する。 38.委員会は、締約国に対し、あらゆる場面(家庭および代替的養護制度を含む)における、しつけおよび規律の手段としてのあらゆる形態の子どもの体罰を防止しかつ終わらせるための法律を導入しかつ執行するよう、促す。さらに、委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革し、かつ、代替的形態のしつけおよび規律が、子どもの人間の尊厳と一致する方法でおよび条約(特に第28条2項)にしたがって、ならびに体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/GC/2006/8)を考慮しながら行なわれることを確保する目的で、子どもの関与を得ながら公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのキャンペーンを実施するよう、勧告するものである。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 39.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する暴力に関する東アジア・太平洋地域協議(バンコク、2005年6月14~16日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 以下の勧告に特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力を撤廃するための関わる同研究の勧告の実施を優先させること。子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 子どもに対する暴力のジェンダーに関わる側面に対応すること。 (c) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的、精神的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (d) 次回の定期報告書において、子どもに対する暴力に関する研究の勧告を締約国がどのように実施したかに関する情報を提供すること。 (e) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)に対し、前掲の目的のための技術的援助を求めること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 40.委員会は、基礎的な社会サービスを提供し、子育てスキルに関する自習教材を開発し、かつ子どもの養育に関する専門家による援助を親に提供するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、家族法改正に関する決定が2006年以来まったく行なわれていないことに懸念を表明するとともに、シングルマザーが世帯主である家族が増加していること、および、親のケアを受けていない子どもの新たな集団(親の出稼ぎにより取り残された子どもおよび一時的に家族の世帯主となっている子どもを含む)が形成されていることに留意するものである。 41.委員会は、困窮している親および家族に対して可能なかぎり必要な支援を提供すること(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ34)ならびに非暴力的な、積極的なしつけおよび規律の手法を促進するプログラムおよび教育プログラムを発展させること(パラ30)を求めた締約国への勧告を、あらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) ホロー(小地区)およびソム(郡)のレベルに家族支援センターを設置するとともに、これらのセンターに十分な専門的資源(子どもの権利に対応する訓練を受けたソーシャルワーカーを含む)を提供すること。 (b) 家族法改正を採択すること。 (c) 受益者が養育手当にアクセスできることを確保すること。 (d) 子どもの権利に関する専門のソーシャルワークサービスを導入し、子どもおよびその家族のためのこれらのサービスが効果的に実施されるようにするための法的環境および体制を向上させ、かつ、実績モニタリングのための手続を設けること。 家庭環境を奪われた子ども 42.委員会は、家族から分離された子どものための代替的養護サービスを導入し、子どもを養護する施設および職員を対象とした養護および質に関する最低基準を整備し、かつ、親族養護および里親養護プログラムを優先するためにとられた措置を認知する。しかしながら委員会は、養護施設の体系的な監督および管理が行なわれていないこと、子どもが養護施設に送致される際に措置の再審査またはケースマネジメント・サービスが行なわれていないこと、および、施設措置に代わる手段を提供しうる体系的かつ全国的な児童福祉体制が整えられていないことを、懸念するものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供し、かつ意識啓発キャンペーンを実施する等の手段によって入所型養護センターへの子どもの措置を防止することに焦点を当てたプログラムおよび政策を発展させること。 (b) 入所型養護センターの子どもが家族と再統合できるようにするため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 基準規範を定めるとともに、とくに必要な人的資源および財源の供給を確保することにより、条約第25条にしたがい、施設に措置された子どもについて定期的再審査を行なう包括的機構を設置すること。 (d) 2009年11月20日に採択された国連総会決議A/RES/64/142に掲げられた、子どもの代替的養護に関する国連指針〔PDF〕を考慮すること。 養子縁組 44.国内および国際の養子縁組を規制するためのさまざまな立法措置には留意しながらも、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の実施担当機関に関する情報がないこと、養子を受け入れようとする家族のための支援サービスが存在しないこと、養子縁組を審査し、監視しかつフォローアップする機構が存在しないこと、里親養護および養子縁組に関する統計がないこと、ならびに、国内養子縁組の手続全体を通じた子どもの意見〔の尊重〕に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はさらに、国際養子縁組の手続が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に全面的に一致していないことを懸念するものである。 45.委員会は、委員会の前回の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ36)を繰り返しつつ、締約国に対し、里親養護および養子縁組(スクリーニングを含む)を規律する包括的な国家的政策および指針ならびにこの点に関する中央監視機構を確立するよう促す。委員会はまた、締約国が、国内および国際の養子縁組を規律する手続が子どもの最善の利益にしたがって、かつ条約第21条および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の原則および規定に全面的に一致される形で進められることを確保するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、関連の制度的基盤を確立するとともに、とくに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の実施に対応する権限および能力を備えた国家機関を設置するよう、提案する。 虐待およびネグレクト 46.子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うために行なわれてきた活動は認知しながらも、委員会は、子どもの虐待およびネグレクトが根強く生じており、とくに女子に影響を与えていること、および、子どもの保護のための包括的戦略が存在しないことを懸念する。さらに、委員会は、強姦および近親姦を禁じた現行法の規定が十分に執行されていないこと、男子に対する犯罪への制裁および女子に対する犯罪への制裁が平等でないこと、ならびに、強姦を含む性的虐待の被害を受けた子どもがしばしば十分な保護および(または)回復のための援助を受けておらず、犯罪の加害者として扱われる可能性さえあることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、家庭における性的虐待が国内刑法に基づいて訴追されまたは処罰される割合が低いことを遺憾に思う。 47.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭におけるあらゆる形態の子どもの虐待および暴力を禁止し、かつ強姦および近親姦の禁止規定を執行すること。 (b) 子どもの虐待の原因を明らかにしかつこれに対処し、危害を防止し、かつ子どもに対する暴力および有形力の行使ならびに子どもに関わるネグレクトに対応する目的で全国レベルの基礎研究を実施するとともに、その知見に基づき、虐待の被害を受けた子どもの保護および回復のための全国的システムを発展させること。 (c) 家庭および施設における暴力、性的虐待およびネグレクトの事案数ならびに規模を監視するための機構を強化し、かつ、これらの機関間の調整を向上させること。 (d) 子どもの虐待に関する通報機構を確立すること。 (e) 子どもとともに働く専門家が、子どもに影響を及ぼす家族間暴力が疑われる事案を通報しかつ適切な行動をとる自己の義務について研修を受けることを確保すること。 (f) とくに子どもの虐待およびネグレクトを防止する目的で、意識啓発キャンペーンを強化し、かつ情報、親に対する指導およびカウンセリングを提供すること。 (g) 虐待およびネグレクトの被害を受けた男女の子どもが十分な支援を受け、かつ回復、カウンセリングその他の形態のリハビリテーションのためのサービスに平等にアクセスできることを確保すること(子どもおよびその家族に対して無償の心理カウンセリングを行なうセンターをすべてのアイマグ(県)に設置することも含む)。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 48.締約国が行なった努力は認知しながらも、委員会は、障害のある子どもが直面している多数の問題について依然として懸念を覚える。とくに、委員会は、障害者の法的定義が広すぎること、および、法律上の規定の矛盾が障害者に悪影響を与えていることを懸念するものである。さらに、委員会は、インフラが適切に整備されていないことならびに教育、社会福祉および保健サービスに障害児がアクセスできないことによる障害児の社会的排除について、著しい懸念を覚える。委員会は、全般的に、障害のある子どもが「尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で、十分かつ人間に値する生活」を享受するうえで直面している困難に留意するものである。 49.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を引き続き強化し、かつ、とくに以下の目的のために条約第23条および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮するよう、勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する正確なかつ細分化されたデータを国および地方のレベルで収集するとともに、障害のある子どもに関するデータベースを設置すること。 (b) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を策定すること。 (c) 障害のある子どもが教育(職業訓練を含む)に対する権利を可能なかぎり最大限に行使することを確保すること。 (d) とくに地方レベルで必要な専門的資源(たとえば障害に関する専門家)および財源を利用可能とし、ならびにコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親支援グループ、および専門家の研修を含む)を促進しおよび拡大するため、いっそうの努力を行なうこと。 (e) 家族支援およびコミュニティの関与にとくに焦点を当てながら、障害のある乳児および未就学児を対象とした早期発見・早期介入サービスを発展させること。 (f) 障害のある子どもに対する積極的かつ差別のない理解および見方を奨励するため、子ども、親、家族、養育者およびコミュニティの間で公衆の意識啓発のための取り組みを行なうこと。 健康および保健サービス 50.保健分野で締約国がとったさまざまな措置を歓迎し、かつ乳幼児死亡率の低下に留意しながらも、委員会は、微量栄養素の欠乏および慢性的栄養不良を反映して、とくに5歳未満の男子の間で発育阻害およびくる病が根強く生じていることを懸念する。委員会はさらに、保健予算の減少傾向について懸念を覚えるとともに、予算のほとんどがインフラおよび身体的健康のために配分されており、情緒的健康および社会的支援(薬物およびアルコールを使用する子どもを対象とするものも含む)が軽視されていることに留意するものである。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) プライマリーケア・サービスにとくに注意を払い、もっとも脆弱な立場に置かれた家族のニーズに対応し、かつ、子どもの健康の社会的決定要因に十分に対応するための現代的公衆衛生アプローチを適用しながら、すべての子どもに最高水準の健康が提供されることを確保する保健ケア制度を引き続き発展させること。 (b) 母子の保健ケアおよび発達を担当する政府機関の、国および地方のレベルにおける設置を検討すること。 (c) 条約第24条(c)に照らし、安全な飲料水へのアクセスおよび衛生的な慣行を向上させるための措置を強化すること。 (d) 母性保護に関するILO第183号条約(2000年)を批准すること。 52.さらに、委員会は、締約国が、高い栄養不良率に緊急に対応するとともに、子どもの基礎的な健康および栄養、母乳育児ならびにビタミンAおよび亜鉛による強化または補完の利点、個人衛生および環境衛生ならびにリプロダクティブヘルスについての情報を親および養育者に対して提供するための、コミュニティを基盤とするプログラム、意識啓発キャンペーンおよび微量栄養素キャンペーンを発展させるよう、勧告する。 思春期の健康 53.委員会は、アイマグ(県)の中心部およびウランバートルの諸地区において青少年にやさしい保健サービスのモデルを発展させようとする努力に留意し、かつ、全国AIDS委員会が再設置されたことに評価の意図ともに留意する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関する情報(思春期の健康問題に関する細分化されたデータ、リプロダクティブヘルス問題についての情報および既存の思春期保健サービスに関する情報を含む)が不十分であることを遺憾に思うものである。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康問題の性質および規模を理解する目的で、青少年の全面的参加を得ながら包括的研究を行なうとともに、思春期の健康に関する政策およびプログラムを立案する基盤としてこれを活用すること。 (b) 条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を正当に考慮しながら、すべての青少年を対象とするリプロダクティブヘルス・サービス(学校における性教育およびリプロダクティブヘルス教育ならびに若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよび保健ケアのサービスを含む)を促進し、かつこれへのアクセスを確保すること。 精神保健 55.委員会は、子どもの精神保健問題に対応するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、抑うつ、ストレス、タバコおよび薬物への依存ならびに行動障害の影響を受けやすくなっている子どもがとくに都市部の子どもの間で増えており、かつ、これらの公衆衛生上の問題に積極的に対処する効果的な予防介入策がとられていないことに、強い懸念を表明するものである。委員会は、締約国における子ども、とくに女子の自殺について非常に懸念を覚える。 56.委員会は、締約国が、WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、重度の精神保健上の問題を有する子どもおよび青少年を対象とした外来および入院による精神保健サービスを含む)を備えた包括的かつ全国的な子どもの精神保健政策を、影響を受けている子どもにスティグマを付与することのないような形で策定するよう勧告する。委員会はまた、初等学校および寄宿学校に初めて出席する子どもが、その認知t系、社会的および情緒的発達上のニーズを支えるための援助を利用できるようにすることも勧告するものである。 生活水準 57.委員会は、同国において広範な貧困が根強く残っていることに懸念とともに留意し、かつ、生活水準に関する地域格差が大きいことに懸念を表明する。委員会は、都市部と農村部の環境に大きな不平等があることをもっとも懸念するものである。さらに、委員会は、所得関連の指標ならびに食料、住居、教育、安全な水、十分な衛生設備および安全な衛生慣行へのアクセスによって数値的に明らかにされているように、多くの子どもの全般的生活水準がきわめて低いことを懸念する。委員会はまた、都市スラム地域で生活している子どもの状況、および、ゲルで瀝青炭を燃やして暖をとることによる健康上の影響にも、懸念とともに留意するものである。 58.委員会は、締約国が、食料を入手しやすくし、かつ水および衛生設備ならびに個人衛生、住居および教育の質を向上させることに特段の注意を向けながら、子どもの生活水準を向上させるための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地域的格差を縮小するための措置をとり、かつゲルの暖房のための代替的措置の発見に努めるよう、勧告するものである。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 59.委員会は、無償義務教育を提供し、かつ寮費を負担するために締約国が行なった投資を歓迎する。委員会はまた、学校を「子どもにやさしい」ものにするために行なわれた努力にも留意するものである。さらに、委員会は、子どものためのサービスの提供においてソーシャルワーカーが重要な役割を果たしていること、および、教育現場で働くソーシャルワーカーの職務記述書に子どもの保護の役割が含まれていることにも留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭における男子の役割についての文化的態度によって中退率がいっそう高められていることを理由として、教育を受ける男子の割合が深刻に少ないことに、懸念を表明するものである。委員会は、教育施設において体罰または心理的圧力が根強く用いられていることに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、遠隔地にあり人口密度が低い農村部に住む牧民家族の子ども、首都に移住した家族の子どもおよびインフォーマルな採鉱活動に従事しているコミュニティの子どもを含む子どもによる教育サービスへのアクセスが、とくに就学前段階で限られていることを懸念するものである。委員会はまた、学校、幼稚園の学級および物理的便益(備品、トイレおよび警備設備など)が不足していることにも、懸念とともに留意する。牧民コミュニティのニーズに寮が応えていることには留意しながらも、委員会は、子どもによる家族との接触が必ずしも保障されていないことを懸念するものである。 60.条約第28条その他の関連規定に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教育におけるジェンダー格差および地域格差に対応するとともに、学校を中退した子どもまたは学業と仕事(家庭における無給の仕事を含む)のバランスをとらなければならない子どもを対象とする、認証を受けた非公式教育プログラムを発展させることを検討すること。 (b) 可能なときは常に子どもの文化および子どもが家族との接触を維持する必要性を考慮に入れながら、牧民コミュニティの子どもの教育および生活のための便益(寮および寄宿学校を含む)の利用可能性および質を引き続き向上させること。 (c) 子どもにやさしい学校の基準が策定され、かつ学校および教員の実績評価で活用されることを確保すること。 (d) 移動学校およびインターネットへのアクセスの普及のような革新的手段を通じて教育を提供するための努力を引き続き行なうこと。 (e) ソーシャルワーカーに対し、コミュニティを基盤とするサービスを拡大する目的で子どもおよび家族に注意を向けられるようにすべく、その新たな責任を遂行するための十分な研修、資源および支援を配分するとともに、予防、回復およびカウンセリングに子どもとの活動を含めること。 (f) 子どもとともに働く専門家、親、子どもおよび一般公衆の間で子どもの権利に関する理解を強化するとともに、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を奨励し、子どもとともに働く専門家(とくに教員)の子どもに対する積極的態度を醸成し、かつ情緒的暴力に反対する意識を高めるような教育手法を促進すること。 (g) 学校カリキュラムに人権教育(条約その他の子どもに関わる関連の人権文書を含む)を編入するとともに、国連の全加盟国が2005年7月14日に採択した「人権教育のための世界プログラム」第1段階行動計画(総会決議59/113B)を実施するための措置をとること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 61.委員会は、子どもがスポーツ、芸術その他のレクリエーション活動に従事できる場所が存在しないこと、ならびに、子どもおよび青少年が会議および集まりを持ち、かつ余暇時間の活動に参加できる場所が乏しいことに、懸念とともに留意する。 62.委員会は、締約国に対し、子どもにやさしい場所を設置するともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 地域コミュニティ、学校、子ども施設その他の地域資源とともに、コミュニティの遊び場およびユースセンターを設置すること。 (b) 家族がともに自由時間を過ごせる場所の数を増やすこと。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 63.委員会は、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入しようとする締約国の意思には留意するものの、そのためにとられた措置が遅々としていることを懸念する。委員会は、移住者、難民および庇護希望者の子どもに関してまったく情報が入手できないことを遺憾に思うものである。 64.委員会は、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)を批准するよう求めた締約国への勧告(CRC/C/15/Add.264、2005年、パラ57)をあらためて繰り返す。さらに、委員会は、締約国が、条約第22条その他の関連規定を考慮し、締約国にいる子どもの庇護希望者および難民に対して全面的な保護およびケアならびに保健サービス、社会サービスおよび教育へのアクセスを確保するためあらゆる実行可能な措置をとるよう、勧告するものである。さらに、委員会は、子どもの庇護希望者および難民に関する細分化されたデータを入手し、かつ包括的政策の指針とするためのデータベースの設置を勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准することも勧告するものである。 児童労働を含む経済的搾取 65.委員会は、法律の一部の規定、とくに義務教育および就労の最低年齢に関する国内法が相互に矛盾しているという、前回の総括所見の懸念(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ9)をあらためて表明する。委員会はさらに、児童労働、とくに危険な労働に従事する子どもの割合が上昇していることを示す報告について懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、学校を中退してとくに採鉱コミュニティ、サーカスおよび農業で働く子どもが多いこと、ならびに、このような子どもが、社会サービスに限られた形でしかアクセスできておらず、かつ最悪の形態の児童労働、金の処理に用いられる化学物質による中毒および業務上または慣習的その他の災害にさらされていることに、懸念とともに留意する。 66.委員会は、締約国が、とくに以下の手段によって児童労働の悪影響を監視しかつこれに対応するため、緊急の措置をとるよう勧告する。 (a) 最悪の形態の児童労働と闘うこと。 (b) 条約および関連のILO条約を指針として、相互に矛盾する法律の調和を確保するために必要な改正を行なうこと。 (c) 児童労働の悪影響に関する意識を高めるためのキャンペーンを立案しかつ実施すること。 (d) 低年齢の働く子どもに対して非公式教育の授業を、かつより年長の子どもに対して技能訓練を提供すること。 (e) ILOおよびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。 路上の状況にある子ども 67.委員会は、子どもが路上で生活することを防止するために締約国が行なった努力には留意しながらも、都市部および郊外の居住区ならびに新たに形成されたスラムでストリートチルドレンの人数が増えていることを、依然として非常に懸念する。委員会はさらに、子どもが路上で生活するようになる原因についての情報が入手できないことおよび信頼できる統計データがないことを懸念するものである。委員会は、子どもを路上から追い払うために警察が行なっている迫害についての情報を遺憾に思う。 68.委員会は、締約国に対し、子どもを路上に駆り立てる根本的原因を理解し、かつこれらの原因に対応するための状況分析を実施するとともに、脆弱性および保護を必要とする子どもの迅速評価を行ない、かつストリートチルドレンのニーズに対応する既存のプログラムおよびプロジェクトのマッピングを実施するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 路上の状況にある子どもの意見を聴かれる権利を保障し、かつ路上の状況にある子どもの権利(警察による収容に代わる措置、子どものリハビリテーションおよび再統合を含む)を充足する、権利を基盤とする包括的な政策を立案すること。 (b) 路上の状況にある子どもについての意識啓発を図ること。 (c) ストリートチルドレンに対応するすべての専門家(警察官、ソーシャルワーカー、メディアの構成員および社会一般の構成員を含む)の能力構築を図ること。 (d) 子どもの権利および子どもの保護について警察に研修を行なうこと。 性的搾取および虐待 69.委員会は、子どもの性的搾取を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定するために中央および地方の政府機関が実施した措置(子どもを危険な状況に置く根本的原因および要因に関する調査研究および記録を含む)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、性的搾取の被害者の多く(とくに女子)が犯罪者として扱われており、かつ十分な保護サービスを提供されていないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、加害者の捜査および訴追が行なわれていないことを懸念する。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子ども、とくに女子の性的搾取の防止措置を強化すること。 (b) 被害者を保護し、回復および社会的再統合のための十分なサービスおよびプログラムを提供し、かつ、被害者が犯罪者として扱われないことを確保すること。 (c) 家庭における性暴力の被害者に関する意識啓発を強化するとともに、秘密保持を尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ調査する方法についての、法執行官、ソーシャルワーカー、裁判官および検察官を対象とする能力構築研修を強化すること。 (d) データ収集および諸機関間の情報共有を向上させること。 (e) 回復のための援助を優先的に行ない、かつ、教育および訓練ならびに心理的援助およびカウンセリングが被害者に提供されることを確保すること。 (f) 性的搾取および虐待の事件が通報された場合に捜査が迅速に実施され、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 売買、取引および誘拐 71.子どもの人身取引と闘うために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、性的その他の搾取(採鉱労働など)を目的とする人身取引が締約国でいまなお問題となっていることを懸念する。委員会はさらに、人身取引の規模に関する信頼できる情報が存在しないことを懸念するとともに、人身取引の防止ならびに被害者の保護および援助のために現在実施されている措置およびプログラムの多くが、国家財源による支援をほとんどまたはまったく受けることなく、NGOおよび国際機関によって行なわれていることを遺憾に思うものである。 72.委員会は、前回の総括所見の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ65)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 国際的および国内的な取引および売買からの子どもの保護を確保するため、あらゆる措置をとること。 (b) 売買および取引の根本的原因(ジェンダーに基づく差別および貧困を含む)に対応するための努力を強化すること。 (c) 売買および取引の被害を受けた子どもに対し、その回復および社会的再統合のための包括的な社会的および心理的援助を提供する目的で、この分野の政策およびプログラムに対して十分な資源(人的資源および財源)を配分すること。 (d) 子どもの売買および取引に関するデータを収集しかつ細分化するためのシステムを確立すること。 (e) 関連のパートナーと連携しながら、防止および意識啓発のための活動を行なうこと。 ヘルプライン 73.委員会は、現在、多くのNGOが並行して子どものためのヘルプライン事業を行なっていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、国際的基準にしたがった、全国的に利用可能な、フリーダイヤルの、十分に機能するチャイルド・ヘルプラインが締約国で利用可能となっていないことに、懸念とともに留意するものである。 74.委員会は、締約国が、ヘルプラインを確保し、かつとくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国のすべてのソム(県の下の行政区画〔郡〕)およびバグ(ソムの下の行政区画〔村〕)で毎日24時間アクセス可能な、24時間開設されている〔重複はママ〕3ケタのフリーダイヤル番号を割り当てること。 (b) 意識啓発活動、研修および能力構築のために十分な資金を配分すること。 (c) 子どもを援助するためのヘルプライン・サービスが十分に機能するための資源を確保すること。 少年司法の運営 75.委員会は、法的に認められる子どもの未決勾留期間の制限、初犯者に対して義務的に科される最低刑の軽減ならびに「少年委員会」および「ゲル・フレー・センター」に対する支援等により、子どもの権利の保護を確保する法的枠組みを向上させるために締約国が行なった努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 子どもが未決勾留センターで不十分な環境に直面していること。とくに、勾留中の自白の強要および警察による暴力の苦情が増えていること、ならびに、警察の勾留場で子どもがしばしば成人から分離されていないこと。 (b) 締約国の多くの地域で専門の少年裁判所および訓練を受けた少年裁判官が存在しないこと。 (c) 締約国が犯罪を行なった者の制裁に焦点を当てた懲罰的アプローチをとっており、拘禁された子どもに対して再統合の機会または援助もいかなる教育も提供されていないこと。 76.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)と全面的に一致させるべきであるという前回の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ68)を、あらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 未決勾留中の子どもの権利を保護するとともに、子どもが勾留中に自白の強要および警察による暴力にさらされず、かつ警察の勾留場で成人から分離されることを確保すること。 (b) 締約国のすべての地域で専門の少年裁判所を設置し、かつ訓練を受けた少年裁判官を任命すること。 (c) 少年司法制度に関与するすべての専門家が、子どもにやさしい関連の国際基準に関する研修を受けることを確保すること。 (d) 自由を奪われた子どもの権利を保護するとともに、子どもの拘禁環境を監視し、かつ、少年司法制度の対象とされている間、子どもが家族との定期的接触を維持することを確保すること。 (e) 少年犯罪問題への対応について条約で唱道されているホリスティックなアプローチをとる(たとえば根底にある社会的要因に対処すること)とともに、可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕活動または刑の執行停止のような、拘禁に代わる措置を活用すること。 (f) 子どもに対し、手続の早い段階で法的援助その他の援助を提供すること。 (g) 子どもに対して基礎的サービスが提供されることを確保すること。 (h) 子どもによる苦情を受け付けかつ処理するための、独立した、子どもにやさしく、かつアクセスしやすいシステムを設置するとともに、法執行官および看守が行なった人権侵害の事案を捜査し、訴追しかつ処罰すること。 (i) 少年司法に関する国連機関横断パネルに対し、少年司法および警察の研修の分野におけるさらなる技術的援助を要請すること。 (j) 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いと闘うために適当な措置をとるとともに、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(1984年)の批准を検討すること。 犯罪の証人および被害者の保護 77.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 8.国際人権文書の批准 78.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書(とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書)を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 79.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を最高人民会議(議会)、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 80.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 81.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2014年10月20日までに提出するよう慫慂する。この次回報告書は120ページを超えるべきではなく(CRC/C/118(2002年)参照)、かつ子どもの権利条約の2つの選択議定書の実施に関する情報も記載されるべきである。 82.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関間会合で承認された「国際人権条約に基づく報告に関する調和化指針(共通コアドキュメントおよび条約別の文書に関する指針を含む)」(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/211.html
総括所見:ネパール(OPSC・2012年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)/第3回~第5回(2016年)OPAC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/NPL/CO/1(2012年7月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年6月4日に開かれた第1706回会合(CRC/C/SR.1706参照)において、選択議定書に基づくネパールの第1回報告書(CRC/C/OPSC/NPL/1)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、豊かな情報を含み、分析的かつ自己批判的である締約国の第1回報告書、および、委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/NPL/Q/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第4回〔第2回〕定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/15/Add.261)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな措置、とくに以下の法令の採択を歓迎する。 (a) カーストに基づく差別および不可触制(犯罪および違反)法(2011年5月)。 (b) ドメスティックバイオレンス統制処罰法(2009年4月)。 (c) 人の取引および移送統制法(2007年7月)および2008年の同法実施規則。 (d) 児童福祉ホームの運営に関する最低基準規則(2007年)。 (e) ジェンダー平等法(2006年)。 (f) 女子の法廷婚姻年齢を男子のそれ(20歳)まで引き上げ、かつ男女の家族構成員双方が子どもの出生登録を行なうことを認めた、一部のネパール法改正法(2006年11月)。 5.委員会はまた、以下の国際事件文書の批准も歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年1月)。 (b) 国際組織犯罪防止条約(2011年12月)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年5月)。 (d) 強制労働の廃止に関する国際労働機関第105号条約(2008年8月)。 (e) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2007年6月)。 (f) 南アジア地域協力連合・子どもの福祉についての地域的対応に関する条約〔南アジアにおける子どもの福祉の促進のための地域的取り決めに関する条約〕(2006年)。 (g) 南アジア地域協力連合(SAARC)・売買春目的の女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する条約(2005年)。 6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する諸制度の創設ならびに国家的な計画およびプログラムの採択における、以下のものを含む進展を歓迎する。 (a) 子どもにやさしい地方自治を促進するための3か年計画(2010~2013年)。 (b) 「子どものための国家行動計画(2004/05~2014/15年度)」。 (c) 「性的搾取および労働搾取を目的とする子どもおよび女性の人身取引に反対する国家行動計画」。 (d) ネパール警察における女性子ども局の設置。 (e) 女性および子どもに関する政府の措置を検討する「女性と子どもに関する立法議会委員会」および女性議員同盟の創設(2009年)。 (f) 人身取引の対象とされまたは性的搾取を受けた子どもを直ちに救出しかつ救援を提供するための「緊急子ども救出基金」の設置。 III.データ 7.締約国報告書に記載されたデータに評価の意とともに留意し、かつ、ネパール警察、法務総裁府および最高裁判所によって関連のデータが収集されていることに留意しながらも、委員会は、選択議定書で対象とされているすべての事案の記録、付託およびフォローアップを可能とし、かつ選択議定書の実施における進展を分析しかつ評価するための包括的なデータ収集システムが設けられていないことを懸念する。 8.委員会は、締約国に対し、パートナーの支援を得ながら包括的かつ中央集権化されたデータ収集システムを設置するとともに、達成された進展を評価し、かつ選択議定書を実施するための政策およびプログラムの立案に役立てるための基礎として、収集されたデータを分析するよう促す。データは、選択議定書が対象とする犯罪についての分析を容易にするため、年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景によって細分化されるべきである。委員会は、締約国が、この点に関してとくに国連児童基金(ユニセフ)および国連開発計画との技術的協力を強化するよう、勧告する。 IV.実施に関する一般的措置 立法 9.選択議定書との関連で採択された多数の法律について締約国を称賛しながらも、委員会は、選択議定書が国内法体系に全面的に編入されることを確保するために必要な措置を締約国がとっていないことに、懸念を表明する。委員会はまた、締約国が、16歳未満の子どもにしか適用されない1992年子ども法の改正をまだ完了させていないことも懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、選択議定書が国内法体系に全面的に編入されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、子ども法の改正プロセスを加速させ、かつ、同法および子どもに関連するすべての法律において18歳未満のすべての子どもが保護されることを確保することも促すものである。 国家的行動計画 11.選択議定書に関わるさまざまな行動計画、とくに「子どものための国家行動計画(2005年~2015年)」、「児童労働に関する国家基本計画(2011~2020年)」および「性的搾取および労働搾取を目的とする子どもおよび女性の人身取引に反対する国家行動計画」が存在することは歓迎しながらも、委員会は以下の懸念を表明する。 (a) これらの行動計画が、対象集団の点でも行なわれる活動の態様の点でも重複していることから、その有効性が阻害され、かつ全般的実施についての責任が希薄になること。 (b) 子どもに関する国家的な行動計画と、郡子ども福祉委員会(DCWB)が策定する行動計画との連携が不十分であること。 (c) 国および地方のレベルで策定される計画において明確な達成目標および指標が明らかにされていないことが多く、かつ介入および活動を支える十分な予算も配分されていないこと。 12.委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) さまざまな行動計画を、選択議定書のすべての規定を網羅する単一の「子どものための国家行動計画」に編入し、かつ明確な達成目標および指標を定めることを検討すること。この計画は、それぞれ1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された、第1回・第2回・第3回子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れたものであるべきである。 (b) 予算ニーズの包括的アセスメントを実施するとともに、選択議定書の実施のための活動を支える明確な予算配分額を確立すること。 (c) 改訂「子どものための国家〔行動〕計画」の実施における進展および課題を評価する目的で、監視および評価のための計画を確立すること。 調整および評価 13.委員会は、締約国における選択議定書の実施の調整については女性・子ども・社会福祉省(MoWCSW)が責任を負っていることに留意する。しかしながら委員会は、この調整が依然として不十分であり、かつ、調整機構の評価に関する情報が締約国から提供されなかったことを懸念するものである。委員会はとくに、調整を担当する省の資金が不十分であること、調整機能を有する他の機関(中央子ども福祉委員会(CCWB)および75か所に設けられている郡子ども福祉委員会(DCWB)を含む)が多数存在すること、および、子どもの保護に関わるこれらすべての公的機関の役割および権限が明確に定義されていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女性・子ども・社会福祉省が、さまざまな部門を横断して、かつ国から県および郡の段階に至るまで選択議定書の実施を効果的に調整するための十分な権限ならびに人的資源、財源および技術的資源を有することを確保することにより、調整に関わる同省の役割を強化しかつ評価すること。 (b) 子どもに関連する既存のさまざまな機関の活動を合理化し、かつ、中央および郡双方の段階における任務および責任を明確に再定義する目的で、組織面の徹底的見直しを行なうとともに、これらの機関に対し、中央および郡の段階における行動を可能とし、かつその指針となるような、必要な資源、指針、標準活動手順および手続を提供すること。 普及および意識啓発、 15.条約および2つの選択議定書の原則および規定を学校および大学のカリキュラムならびに専門家養成機関のカリキュラムに編入しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもを含む一般公衆および専門家双方の間で選択議定書に関する意識を高めるための措置が不十分であることを懸念する。 16.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 選択議定書に関わる問題を、初等中等学校のカリキュラムに体系的に編入すること。 (b) コミュニティ、子どもおよび被害を受けた子どもと緊密に協力しながら、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止措置および有害な影響に関する意識啓発プログラムを発展させること。これらのプログラムは、締約国のすべての言語で、かつ非識字者にとってアクセス可能な形式で利用可能とされるべきである。 (c) 関連するすべての専門家集団、とくに警察官、裁判官、検察官、メディア代表およびソーシャルワーカーならびに中央〔子ども〕福祉委員会および郡子ども福祉委員会の委員の間で、選択議定書を普及すること。 (d) とくにこのような犯罪が発生するおそれが高い地域における、選択議定書の規定についての意識啓発を支援するため、市民社会組織、メディアおよび民間部門との協力を発展させるとともに、鍵となるメッセージを一般住民およびとくに子どもの間で普及させるためにメディアを活用すること。 研修 17.委員会は、関連の専門職、とくに警察および司法制度関係者が、選択議定書に関する不十分な研修しか受けていないことを懸念する。 18.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに警察官、弁護士、検察官、裁判官、医療スタッフ、ソーシャルワーカー、出入国管理官およびメディアを対象とする、選択議定書の規定についての、体系的かつジェンダーに敏感な教育および定期的な研修を強化するよう、勧告する。 資源配分 19.委員会は、とくに犯罪の防止および被害を受けた子どもに対する援助の提供に関して、選択議定書の実施に配分される資源が欠けていることを懸念する。委員会はとくに以下のことを懸念するものである。 (a) 新法の実施を支えるための費用分析が全般的に実施されていないこと。 (b) 選択議定書を実施するための活動のほとんど(郡子ども担当官の給与の支払いを含む)について、その資金が国際協力を通じておよび非政府組織によって拠出されていること。 (c) きわめて高い水準で発生している汚職により、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止し、かつこれと闘うために利用可能な資金が非常に減少していること。 20.委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定に関わるプログラム(とくに犯罪捜査、法的援助ならびに被害者の身体的および心理的回復)を立ち上げるための人的資源、技術的資源および財源を通常予算から使途指定方式で拠出する等の手段により、選択議定書を実施するための予算配分額を増加させるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、汚職の防止およびこれとの闘いを効果的に進め、かつ汚職行為を訴追するために即時的措置をとることも促すものである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 21.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止するためにとられた多数の措置、ならびに、とくに、ダリットおよび先住民族のコミュニティならびに周縁化されたおよび不利な立場に置かれた家庭の子どもをとくに対象としたプログラム、政策およびプログラムへの子ども参加の促進、および、とくに女性の非識字と闘うための措置を、歓迎する。しかしながら委員会は、現行の法律、行政措置、社会政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因および助長要因(とくに広範な貧困、ジェンダー差別、安全ではない移住、および、包括的な子ども保護制度の欠如)に対応するには不十分であることを、懸念するものである。委員会は、以下のことをとくに懸念する。 (a) とくにダリットに対する強いカースト差別が継続しており、かつ女性および女子に対する法律上および事実上の差別が蔓延していること。 (b) シングルマザーならびに外国人、難民および無国籍者と婚姻した母親が子どもの出生登録に関して困難に直面していることから、このような子どもが選択議定書上の犯罪の被害をきわめて受けやすい状況に置かれていること。 (c) もっとも脆弱な状況にある子どもの集団(とくに子どもの国内避難民および難民、障害のある子ども、ならびに、人数が増えている子どもの路上生活者)を対象とする優先的措置がとられていないこと。 (d) ドメスティックバイオレンス統制処罰法(2009年)に基づくドメスティックバイオレンス被害者の保護が不十分であり、男子が性的虐待から保護されておらず、かつ、家庭および教育施設における子どもの性的虐待が多数発生していること。 22.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対処し、かつもっとも脆弱な状況に置かれた子どもに焦点を定めた、包括的かつ重点対象型のアプローチを採用するよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、貧困削減戦略、および、不利な立場に置かれたおよび周縁化された家族を対象とする支援的な社会的保護措置(子どもに対するケアおよび保護の責任を親がよりよい形で履行できるよう支援するための、子ども中心の早期介入プログラムを含む)を強化するよう、促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 「不可触制」の禁止の効果的実施のために積極的措置をとるとともに、その際、社会的および文化的変革を推進し、かつ、周縁化されたコミュニティに属する子どもの平等を支えて主体的行動を可能とする環境の創設を促進するため、社会のあらゆる層の関与を得ること。 (b) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 女子に対する差別である法規定を廃止するとともに、公衆教育プログラム(女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/NPL/CO/4-5、パラ18(a))にしたがい、ジェンダー役割の固定化と闘うためにオピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じて女子に対する社会的差別を解消するため、あらゆる必要な措置をとること。 (d) もっとも脆弱な状況に置かれた子どもに焦点を定めた防止プログラムを発展させるとともに、とくに、路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。警察による陵虐、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用からこのような子どもを保護することに、特段の焦点が当てられるべきである。 (e) 防止戦略に、子どもの性的搾取の根本的原因に数えられるドメスティックバイオレンスおよび子どもの性的虐待に対応するための主要な活動が編入されることを確保すること。 養子縁組 23.委員会は、ネパール人である子どもの養子縁組の承認に関する「諸条件および手続」が2008年に採択され(2011年改正)、ネパールからの国際養子縁組に関する実務上の法的枠組みとされていること、および、国際養子縁組の計画および管理に関する中央当局である国際養子縁組管理委員会が設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、不法な養子縁組からの子どもの保護がいまなお不十分であり、このような状況のために養子縁組目的の子どもの売買が行なわれる可能性があることを懸念するものである。委員会はとくに以下のことを懸念する。 (a) 国際養子縁組手続における大規模な不正の件数が増えていること。 (b) 非公式な養子縁組が行なわれており、これにともなって子どもが家事労働者として搾取される高い危険性が生じていること。 (c) 締約国で赤ん坊の取引および密輸の事件が起きていること、および、勧誘、威迫または誘導の結果として子どもを譲渡する家族についての報告があること。 (d) 締約国が報告書で認めているように、いわゆる「孤児院」および「ストリートシェルター」を運営する外国人ペドファイル(小児性虐待者)によって子どもが虐待される事件が起きていること。 24.委員会は、締約国に対し、養子縁組に関与するすべての者が適用可能な国際法文書にしたがって行動することを確保するためにあらゆる法律上および行政上の措置をとる、選択議定書第3条5項に基づく自国の義務を想起するよう、求める。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) ネパール人の子どもの養子縁組に関する厳格な基準を策定しかつ実施するとともに、すべての養子縁組関連事案において、親の責任の停止および(または)子どもの分離を防止するためにあらゆる手段が尽くされたことが明確な基準のひとつとされることを確保すること。 (b) 国内養子縁組および国際養子縁組に関する現行の機構および手続を緊急に見直すとともに、養子縁組事案を担当する専門家が、事案をハーグ条約に照らして審査しかつ処理するために必要な技術的専門性を全面的に備えることを確保すること。 (c) 子どもが搾取されることを防止するため、近親者その他の者に子どもを措置する慣行を規制しかつ監視すること。 (d) 不正な養子縁組、子どもの密輸、ならびに、子どもの性的搾取および虐待を目的とする無許可のシェルターおよび「孤児院」の開設のすべての事案について調査を行なうこと。 (e) 2009年に署名した国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約、および、国連・国際組織犯罪防止条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)を批准すること。 児童セックス・ツーリズム 25.児童セックス・ツーリズムと闘うために締約国が国内機関および非政府組織と連携しながら行なっている努力、および、「観光を通じてのペドフィリア(小児性虐待)および子どもの商業的性的搾取対策委員会」の設置(2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもが外国人のペドファイルによって性的に搾取される事件が締約国で多数発生しており、かつ、路上の状況にある子どもおよびスラム地区の子どもがこの形態の性的虐待および搾取の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることを、懸念する。 26.委員会は、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムを防止しかつ解消する目的で、効果的な規制の枠組みを策定しおよび実施し、ならびに必要なあらゆる立法上、行政上、社会上その他の措置をとるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、多国間、地域間および二国間の協定による国際協力を強化するよう奨励するものである。委員会はさらに、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でWTO〔世界観光機関〕の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促す。 有害慣行 27.委員会は、デウキ(宗教的義務を履行するために女子を神に捧げること)、ジュマ(宗教的儀式を行なわせるために幼い女子を僧院に捧げること)、カムラリ(家事労働をさせるために地主の家族に女子を提供すること)およびバディ(バディ・カーストの間で広く行なわれている売春の慣行)のような、締約国でいまなお根強く残っており、かつ選択議定書第2条(a)に基づく締約国の義務の重大な違反である有害慣行について、条約に基づく締約国の第4回報告書についての総括所見で表明した懸念(CRC/C/15/Add.261、パラ67)を想起する。委員会はまた、早期婚および強制婚が蔓延していることも懸念するものである。「ダナ・カーネ」の場合、子の挙式と引き換えに親が金銭を受け取っており、これは子どもの売買に相当する。 28.委員会は、締約国に対し、子どもの身体的および心理的ウェルビーイングにとって有害であり、かつ子どもの売買の諸形態であるすべての慣行を根絶するため、緊急にあらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、Sapana Pradhan Malla and others v. Government of Nepal事件(2006年)でネパール最高裁判所が命じたように大規模な意識啓発措置をとること等も通じ、児童婚を禁止した法律の効果的実施を確保するための積極的措置をとることも促すものである。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2項および3項)ならびに第5~7条) 現行刑事法令 29.委員会は、法律が選択議定書の規定に全面的に一致することを確保することに対して締約国の代表団が示した決意を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の一部の規定が国内法に編入されたにも関わらず、国内法がいまなお選択議定書のすべての規定に全面的に一致しているわけではないことに、懸念とともに留意するものである。とくに委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 刑法〔原文はCountry Code〕で選択議定書上のすべての犯罪が網羅されていないこと。 (b) 選択議定書第3条で定義されているあらゆる形態の子どもの売買が犯罪化されているわけではないこと。 (c) 児童買春を定義しかつ処罰し、または子どもを売買春のために周旋しまたは供給する行為を処罰する、具体的な法規定がないこと。 (d) 締約国のいかなる法律(「サイバー法」としても知られる電子取引およびデジタル署名法を含む)においても、児童ポルノについて具体的に扱われていないこと。 30.委員会は、締約国に対し、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるとともに、18歳未満のすべての子どもが選択議定書によって全面的に保護されることを確保するよう、促す。とくに、締約国は、以下の行為が犯罪化されることを確保するべきである。 (a) 性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植もしくは強制労働に子どもを従事させることを目的として、いかなる手段によるかは問わず、子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ること、または、養子縁組に関する適用可能な国際法文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すことによる、子どもの売買。 (b) 児童買春の目的で子どもを提供し、入手し、周旋しまたは供給すること。 (c) 児童ポルノを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売しまたは所持すること。 (d) これらのいずれかの行為の未遂および共謀またはこれらのいずれかの行為への参加。 (e) これらのいずれかの行為を広告する資料の製造および配布。 31.委員会は、性的搾取の被害を受けた子どもがいまなお、1970年公益犯罪統制法の規定にしたがい、公の秩序および犯罪を紊乱したとの理由で逮捕されるおそれがあることに、深刻な懸念を表明する。 32.委員会は、締約国に対し、被害を受けた子どもの逮捕および訴追に用いられている1970年公益犯罪統制法の規定を廃止するとともに、選択議定書上のいずれかの犯罪の被害を受けたいかなる子どもも犯罪者として扱われないことを確保するよう、促す。 33.委員会は、人身取引と闘うために締約国が行なっている努力、とくに、人身取引の防止およびこれへの対応のための取り組みを支援する中央委員会および地区委員会の設置に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、毎年数千人の子どもが国内外で取引の対象とされていること(主として性的搾取および労働搾取が目的ではあるが、サーカスでの使用、強制的物乞い、強制婚、奴隷化および臓器売買が目的であることもある)、および、子どもの人身取引が増加していることを深く懸念するものである。これとの関連で、委員会は、女性差別撤廃委員会が留意したとおり(CEDAW/C/NLP/CO/4-5、パラ21)、人の取引および移送(統制)法(2007年)の実施が不十分であることを懸念する。 34.委員会は、締約国に対し、法律の効果的実施を確保するとともに、とくに、児童買春が行なわれている売春宿その他の場所を摘発しかつ閉鎖するための効果的制度を速やかに確立するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、郡レベルの人身取引対策委員会の設置を完了させ、かつ村落開発委員会レベルにおける委員会の設置を開始すること(そのために既存の体制を活用することが考えられる)とともに、人身取引対策に取り組んでいる諸機関(人(とくに女性および子ども)の取引に関する特別報告者を含む)に対し、その役割を効果的に遂行するために必要な人的資源、財源および技術的資源を提供することも、促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、パレルモ議定書を批准するよう促す。 裁判権および犯罪人引渡し 35.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪に関する域外裁判権の設定および選択議定書で扱われている犯罪を行なった者の引渡しの可能性について締約国の法律が曖昧なままであることに、懸念を表明する。 36.委員会は、締約国に対し、国内法によって、選択議定書が対象とするすべての犯罪について域外裁判権を設定できかつ行使できることを確保するよう、促す。委員会はまた、二国間協定がない場合に、締約国が、選択議定書第5条を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることも勧告するものである。 選択議定書上の犯罪の訴追 37.委員会は、締約国、とくにカトマンズ盆地の「キャビンレストラン」、ダンスバーおよびマッサージパーラーならびに締約国の主要都市において数千人の子どもが売買春に関与しているにも関わらず、売買春が行なわれている場所からこのような子どもを救出するためにとられた措置が限定されていることに、深い懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 現在検討が進められている子ども法の改正案において、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもの事件の発見、通報、付託、捜査、取扱いおよび調整のための手続および機構がいまなお定められていないこと。 (b) ネパール警察が、申し立てられた告発を捜査するための十分な体制、能力および権限を欠いていること。 (c) 法執行機関および司法機関に対する不信が広がっていることを主たる理由として、子どもの人身取引の事件に相当の通報漏れがあること(これらの機関は、市民に対して事件の通報をやめさせようとし、かつ紛争当事者に対して事件の私的解決を奨励することが多い)。 (d) 人身取引関連の捜査の文脈において犯罪の見逃しが依然として蔓延しており、かつ、これが官吏で高水準で行なわれている汚職の結果であることが多いこと。 38.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪を摘発し、加害者を逮捕しかつ裁判にかけるための法執行機関の配置および能力を強化するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもの事件の発見、通報、付託、捜査、取扱いおよび調整について、改正子ども法で明確な手続を定め、かつそのための機構を設置すること。 (b) 子どもおよび親が事件を私的に解決するよう奨励されず、かつ選択議定書上の犯罪の加害者が裁判にかけられることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件に公的機関が直接関与した事案に対して一切の寛容を排したアプローチをとるとともに、汚職および犯罪見逃しの問題に対し、優先的課題と位置づけて精力的に対応すること。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 39.23郡の警察署内に女性・子どもサービスセンター(WCSC)が設置されたことには留意しながらも、委員会は、これらのセンターが、刑事司法手続の前、最中および後に子どもおよびその家族を十分に保護するために必要な資源を欠いていることに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 法執行機関が、子どもに配慮した捜査手続(非公開捜査を含む)を組織的に活用しているわけではないこと。 (b) 被害を受けた子どものプライバシーおよび安全の保護が確保されておらず、かつ、禁止規定の存在にも関わらず、メディアが被害を受けた子どもの写真を掲載していること。 (c) 被害を受けた子どもに対し、無償の法律扶助、または刑事司法手続中の児童心理学者およびソーシャルワーカーによる支援が提供されていないこと。 (d) 証言することに同意した子どもの証人が、特別な保護措置の対象とされておらず、かつ、不利な証言をする相手である犯罪者による報復のリスクから十分に保護されていないこと。 40.委員会は、締約国に対し、刑事司法手続のすべての段階で、選択議定書で禁じられた慣行の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための適切な措置をとるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下のことを確保するよう促すものである。 (a) 女性・子どもサービスセンターがすべての郡で利用可能とされ、かつ、これらのセンターが子どもに配慮した捜査手続(子ども向けに設計された特別事情聴取室および子どもに配慮した尋問手法を含む)を活用すること。 (b) 子どもの最善の利益にかなう恒久的解決策が明らかにされかつ実施されるまで、手続全体を通じて、被害を受けた子どもの手引き役および寄り添い役を務める後見人が任命されること。 (c) 被害を受けた子どもが、捜査および裁判の手続全体を通じて配慮のある取扱いをされ、かつそのプライバシーの保護が尊重されること。 (d) 被害を受けた子どもに対し、無償の法律扶助、および、刑事司法手続中の児童心理学者およびソーシャルワーカーによる支援が提供されること。 (e) 捜査、訴追および審理の際に子どもと被告人が直接接触することのないようにすること、および、非公開捜査の積極的活用を確保するためにあらゆる人的資源、技術的資源および財源が提供されること。 (f) 子どもの証人が報復から十分に保護されることを保障するため、法律上および実務上の措置がとられること。 被害者の回復および再統合 41.人身取引の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび緊急保護のためのセンターが設置されたことには留意しながらも、委員会は、被害を受けた子どものケアおよび保護に関する明確な手続および基準(心理社会的支援の提供、最善の利益認定に基づくケア・アセスメント、一時的および恒久的解決策、ならびに、子どもが成年に達するまでのフォローアップを含む)が存在しないため、子どもがさらなる危険にさらされていることに懸念を表明する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 人身取引の被害を受けた子どものためにいくつかのリハビリテーションセンターおよび緊急シェルターが設置されたにも関わらず、予算上の制約のため、子ども中心のサービスがもっぱら利用不可能なままであり、かつその拡大および改善が制限されていること。 (b) 法律において、被害を受けた子どもが無償の治療、精神保健ケアその他のケアを受けるいかなる権利も定められていないこと。 (c) 賠償が人身取引被害者に対してしか利用可能とされていないこと。 42.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためにあらゆる適切な措置をとり、かつ、これらの措置が子どもの自尊心および尊厳を促進するような環境のなかでとられることを確保するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) とくに遠隔地に住んでいる子どもを対象として、子ども中心のサービスへのアクセスを促進しかつ高めるためにあらゆる必要な措置をとるとともに、これらのサービスに十分な設備および体制が備わることを確保するため、これらのサービスに配分される予算を増額すること。 (b) 被害を受けた子どもの救出、賠償、リハビリテーションおよび再統合の指針となる明確な措置をとるとともに、被害を受けた子どもが無償の治療、精神保健ケアその他のケアを受ける権利を法律で定めること。 (c) 選択議定書第9条4項にしたがい、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。 VIII.国際的な援助および協力 43.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、南アジア地域協力連合(SAARC)・子どもに関する地域的対応条約〔南アジアにおける子どもの福祉の促進のための地域的取り決めに関する条約〕および同・売買春目的の女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する条約を実施するよう、奨励するものである。 44.委員会は、締約国に対し、選択議定書の効果的実施を目的とする措置を策定しかつ実施するにあたり、国連の機関およびプログラムならびに非政府組織と引き続き協力するよう奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 45.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる〔行動〕を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 46.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書〔ママ〕および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 47.第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書(2010年3月13日の提出期限が過ぎている)に記載するよう要請する。委員会はまた、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に基づく第1回報告書(提出期限・2009年3月2日)を可能なかぎり早期に提出するようにも慫慂するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/204.html
総括所見:イスラエル(第1回・2002年) 第2~4回(2013年)OPAC(2010年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.195(2002年10月9日)/第31会期s 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、10月2日に開かれた第829回および第830回会合(CRC/C/SR.829 and 830参照)において、2001年2月20日に受領されたイスラエルの第1回報告書(CRC/C/8/Add.44)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第1回報告書(期限を7年以上過ぎて提出されたもの)が報告ガイドラインにしたがっており、非常に詳細であり、分析的であり、かつ部分的に自己批判的であることに留意する。締約国がパレスチナ被占領地域における条約の実施に責任を負っていることにかんがみ、委員会は、パレスチナ被占領地域の子どもの状況についていかなる情報も存在しないことを深く遺憾に思うものである。委員会は、議論の前および最中に追加資料が提供され、かつ豊かな情報を記載した文書回答が提出されたことを評価する。委員会はまた、高い資質を有する部門横断型の代表団の存在が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に貢献したことも評価するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 子どもと法律に関するロトレビー委員会ならびに子どもの権利の増進を専門とする各種の議会委員会(子ども法委員会および子どもの地位増進委員会を含む)の設置および活動、ならびに、自治体レベルにおける子どもの地位地方委員会の設置。 (b) 立法が子どもの権利に及ぼす影響についての情報法(2002年)ならびに未成年である被害者の権利および子どもの法律扶助に関する法律を含む、進歩的な法律が制定されたこと。 (c) 家庭、学校その他の施設における体罰が禁じられたこと。 (d) 締約国における人権の促進および保護に市民社会が(公益訴訟等も通じて)積極的に関与しており、かつ裁判所が条約の条項に基づく多くの判決を言い渡していること。 (e) アラブ系イスラエル人の教育のための積極的差別是正措置プログラム。 (f) 窮乏する家庭(たとえばひとり親家庭)を支援するためのさまざまな措置。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.現在の暴力の状況を踏まえ、委員会は、条約を全面的に実施するうえで締約国が抱えている困難を認識する。双方に対してテロ行為が継続的に行なわれており、とくにパレスチナ人の自爆工作員によりイスラエル人の民間人(子どもを含む)が意図的かつ無差別に標的とされかつ殺害されている最中にあって、委員会は、根強く残る恐怖の雰囲気、および、平和にかつ安全に存在する締約国の権利を認識するものである。同時に委員会は、パレスチナ領域の違法な占領、民間人地域の爆撃、超司法的殺害、イスラエル国防軍による均衡性を欠いた武力行使、住宅の破壊、インフラの破壊、移動の制限およびパレスチナ人に対する日常的な屈辱的行為によって暴力の連鎖が助長され続けていることを、認識する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 5.委員会は、この地域の子どもたちにとっての平和的なかつ安定した未来は、国際人権法および国際人道法を基礎としてのみ達成できることを強調する。国際人権法および国際人道法を遵守することは、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域で暮らすすべての人々の平等な尊厳の尊重を保障するうえで、必要不可欠である。 立法 6.委員会は、子どもの権利の分野における新法の制定に留意する。しかしながら委員会は、これらの措置の実施が、不十分な予算配分を含む諸要因によって阻害されていることを懸念するものである。 7.委員会は、締約国が、現行法の効果的実施を確保しかつ強化するため、必要な資源(人的資源および財源)の配分を含むあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 8.委員会は、とくに子どもの権利の分野における新法(すなわち〔たとえば〕条約の実施に関する法律および平等を基礎とする良質な教育に対する権利についての法律)の提案を通じて子どもの権利促進キャンペーンを行なっている、さまざまな議会委員会のコミットメントを歓迎する。 9.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもの権利に関わる法律の迅速な公布およびその効果的実施を確保すること。 (b) 条約の規定および原則を編入した包括的な子ども法の採択を検討すること。 (c) 十分な資源の配分を通じて、これらの議会委員会の活動を引き続き支援すること。 10.委員会は、とくに属人法の分野における宗教法が条約の原則および規定に一致していない可能性があることを懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、宗教法の解釈を基本的人権と調和させるためにあらゆる可能な措置をとるよう奨励する。 調整 12.委員会は、条約の実施を調整する中央機構が存在しないために、包括的なかつ一貫した子どもの権利政策の達成が困難になっていることを懸念する。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国および地方の行政段階においてならびにこれらの段階間で部門を横断した調整および協力を進めるための中央機関を設置すること。 (b) 包括的であり、人権を基盤とし、かつ協議および参加を基調とする開かれたプロセスを通じて定められる、子どものための国家的行動計画(条約の実施を含む)の作成および実施を確保すること。 データ 14.委員会は、締約国から提供された包括的な統計集を歓迎するものの、条約の実施における進展の評価を可能とするデータの十分な分析が行なわれていないことを懸念するとともに、パレスチナ被占領地域に住んでいる子どもについてのデータがまったく提供されなかったことを遺憾に思う。 15.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約が対象とするすべての分野について、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(すなわち〔たとえば〕遠隔地に住んでいる子ども)およびパレスチナ被占領地域に住んでいる者を含む18歳未満のすべての者に関するデータを収集すること。 (b) 進展を評価し、かつ条約実施のための政策を立案する目的でこのデータを活用すること。 監視体制 16.苦情を申し立てるためのさまざまな回路(すなわち〔たとえば〕「オープンライン」、保健省オンブズマン等)が子どもに対して開かれていることには留意しながらも、委員会は、これらの機構の対応が、条約の効果的実施を確保する目的で十分に調整されていないことを懸念する。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しかつ評価する任務を委ねられた独立機構が設置されていないことを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 既存のさまざまな苦情申立て機構が条約の実施に効果的に貢献することを確保するため、これらの機構間の調整を向上させること。 (b) 人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しかつ評価するための独立した国内人権機関の設置を検討すること。当該機関は、十分な資源を提供され、子どもにとってアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮した方法で受理しおよび調査し、ならびにそれらの苦情に効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。 資源配分 18.委員会は、景気後退を背景として、社会支出に関する予算削減の提案が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利に悪影響を及ぼすであろうことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 利用可能な資源を最大限に用いることにより、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。 (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえばアラブ系イスラエル人の子ども、ベドウィン、外国人労働者の子ども)のための予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。 (c) 予算配分が子どもの権利の実施に及ぼす影響を制度的に評価すること。 市民社会との協力 20.現在蔓延している条件下においては、とくにパレスチナ被占領地域において、条約の規定の実施について市民社会および国際人道機関が重要な役割を果たすことを認識し、委員会は、市民社会および国際人道機関の取り組みに全面的に協力しかつその便宜を図るために締約国が行なっている努力が不十分であることを懸念する。 21.委員会は、締約国が、非政府組織および国際機関(国連機関を含む)との協力を強化するとともに、これらの組織が子どものための活動を遂行する際の要員の安全および対象となる子どもへのアクセスを保障するよう、勧告する。 研修/条約の広報 22.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力を歓迎するとともに、締約国全体で条約をいっそう幅広く普及する必要があることを代表団が認知したことに留意する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で、すべての公用語により、条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字でありまたは正規の教育を受けていない、脆弱な立場に置かれた集団を積極的に対象とするための取り組みも含む)を強化し、拡大しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方行政職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教職員ならびに保健従事者など)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.子どもの定義 24.委員会は、イスラエル法において、子どもの定義に関して、イスラエルの子ども(たとえば〔すなわち〕1962年の後見および行為能力法および青年(審判、処罰および処遇方法)法に基づき18歳未満の者)とパレスチナ被占領地域のパレスチナ人である子ども(すなわち軍令第132号に基づき16歳未満の者)との間に差別があることを懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、軍令第132号のうち子どもの定義に関わる規定を廃止するとともに、これとの関係で国内法が条約第1条および第2条に一致することを確保するよう、勧告する。 3.一般原則 差別の禁止に対する権利 26.委員会は、条約第2条に反して締約国で差別が根強く残っており、かつ差別の禁止が憲法上明示的に保障されていないことを懸念する。とりわけ委員会は、とくに宗教法の文脈における女子および女性への差別、宗教上の事由にもとづく差別、経済的、社会的および文化的権利(すなわち〔たとえば〕教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセス)をアラブ系イスラエル人、ベドウィン、エチオピア人その他のマイノリティ、障害のある子どもおよび外国人労働者の子どもが享受する際の不平等、および、被占領地域におけるパレスチナ人の子どもの権利および自由の享受における不平等を懸念するものである。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第2条にしたがい、すべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するための効果的措置(必要に応じて法律を制定しまたは廃止することも含む)をとること。 (b) 積極的差別是正措置の取り組みに関わる努力を強化すること。 (c) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うための、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) このような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。 (e) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(国連総会決議45/158付属文書)の批准を検討すること。 28.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 29.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が子どもに関わるすべての法律に編入されておらず、かつ、たとえばユダヤ律法裁判所による実務において常に考慮されているわけではないことを懸念する。 30.委員会は、締約国が、法律においても実務においても条約第3条が全面的に編入されるようにするための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 生命に対する権利 31.委員会は、現在の武力紛争の前および最中にすべての主体によって行なわれた、締約国におけるすべての子どもの殺傷を深く遺憾に思う。委員会は、子どもの発達を深刻な形で損なう、このような恐怖の雰囲気の影響について著しく懸念を覚えるものである。 32.委員会は、締約国および関連するすべての非国家的主体に対し、以下の措置をとるよう強く促す。 (a) 暴力を終わらせるために即時的かつあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもが徴募され、かつ紛争に参加しないことを確保するために即時的かつあらゆる必要な措置をとること。 (c) 子どもが殺害されたすべての事件を直ちにかつ効果的に調査するとともに、加害者を裁判に付すこと。 (d) これらの人権侵害の被害を受けた子どもに対し、十分な補償、回復および社会的再統合の可能性を与えるためにあらゆる必要な措置をとること。 33.最後に委員会は、締約国が、上記の勧告の実施に関する情報を第2回報告書に記載するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、クネセト〔イスラエル議会〕、学校およびコミュニティにおける討議ならびに裁判所(すなわち〔たとえば〕青年(ケアおよび監督)法および青年(審判、処罰および処遇方法)法)等において子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設、裁判所(ユダヤ律法裁判所を含む)および行政機関(すなわち〔たとえば〕決定措置委員会)における、子どもに影響を及ぼすすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子ども参加を引き続き促進すること。 (b) 子どもが十分な情報を得たうえで意見および見解を表明するのを援助し、かつこのような見解が考慮されるようにするため、親、教職員、ソーシャルワーカーおよび地方公務員を対象とした、コミュニティの現場で実施されるスキル訓練プログラムを開発すること。 4.市民的権利および自由 拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰からの保護 36.委員会は、逮捕および尋問中にならびに拘禁場所(すなわちマアレ・アドゥミム、アドライム、ベイト・エル、フワラ、ケドゥミン、サレムおよびグッシュ・エツィオンの各警察署ならびにテルザ、ラムレー、メギドおよびテルモンドのような刑務所)において、警察官がパレスチナ人の子どもに対して行なう非人道的なまたは品位を傷つける行為ならびに拷問および不当な取扱いの訴えおよび苦情があることを、深刻に懸念する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。 (a) 締約国にいるパレスチナ人その他の子どもの逮捕、尋問および拘禁に関与するすべての者が条約の原則および規定を全面的に遵守するようにするための訓令を定め、かつ厳格に執行すること。 (b) 警察官その他の政府職員によって拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰が行なわれたすべての事件を効果的に調査し、かつ加害者を裁判に付すこと。 (c) これらの人権侵害の被害者に十全な注意を払い、かつ十分な補償、回復および社会的再統合の機会を提供すること。 (d) 上記の勧告に実施に関する情報を次回報告書に記載すること。 5.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/放任/不当な取扱い 38.委員会は、家庭、学校および子どもをケアするその他の施設におけるあらゆる形態の暴力および虐待を防止しかつこれと闘うために締約国が行なっている多くの努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに包括的戦略および十分な資源が欠けていることを理由として、これらの努力の効果が限られているように思えることを懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および子どもをケアするその他の施設における暴力および虐待を防止しかつこれと闘うための、国レベルの包括的戦略(これにはとくに子どもの不当な取扱いおよび虐待の性質および規模を評価するための研究が含まれるべきである)を策定するとともに、これらの慣行に対処する政策およびプログラムを立案すること。 (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) 苦情の受理、監視および調査(必要な場合の介入も含む)を行なうための手続および機構を強化すること。 (d) 被害者のケア、回復および再統合を行なうための十分な資源を配分すること。 (e) 不当な取扱いの事案の特定、通報および処理について、教職員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健従事者を研修すること。 40.委員会は、里親家庭が提供するケアを向上させるために締約国が行なっている努力(たとえば研修および支援プログラム)に留意するものの、いまなお相対的に多くの子どもが施設ケアのもとで生活し続けていることを懸念する。 41.委員会は、締約国が、とくに里親家庭の数を増やすための公的プログラムの実施および十分な財源その他の資源の提供によって、里親養護システムをさらに強化するよう勧告する。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 42.委員会は、障害のある子どもの権利および特別なニーズに対応するために締約国が行なっているさまざまな努力に留意する。しかしながら委員会は、このようなニーズと提供されるサービスとのあいだに大きな乖離があること、および、ユダヤ人の子どもに提供されるサービスとアラブ系イスラエル人の子どもに提供されるものとの間に乖離があることを、依然として懸念するものである。 43.委員会は、締約国が、障害のある子どものニーズが充足され、かつ必要なサービスが提供されることを確保するための資源(人的資源および財源)を優先的にかつ対象が明確化された形で配分する努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、アラブ系イスラエル人の子どもがユダヤ人の子どもと同じ水準および質のサービスを受けることを確保するよう、勧告するものである。 保健 44.委員会は、とくにイスラエル国防軍が課した措置(道路の封鎖、外出禁止令および移動の制限ならびに経済および保健に関わるパレスチナのインフラの破壊を含む)の結果として、パレスチナ被占領地域の子どもの健康および保健サービスが深刻に悪化していることを深く懸念する。特に委員会は、これによって生じている遅延および保健従事者への干渉、基礎的医薬品の不足、ならびに、市場の崩壊および基礎食糧品の価格高騰による子どもの栄養不良について懸念を覚えるものである。 45.委員会は、締約国が、パレスチナ人のすべての子どもに対し、基礎的ニーズおよび健康のためのサービス(医薬品および医療従事者を含む)への安全なかつ無条件のアクセスを保障するよう、勧告する。 46.委員会は、国民健康保険法においてすべてのイスラエル市民が対象とされている旨の情報を歓迎するものの、ユダヤ系イスラエル人とアラブ系イスラエル人とのあいだに根強くかつ顕著な保健指標の格差が残っていることを、依然として懸念する。 47.委員会は、締約国に対し、利用可能な保健サービスの利益をすべての市民が平等に得られることを確保するため、資源の配分を強化しかつ増加させるよう勧告する。 十分な生活水準 48.委員会は、脆弱な立場に置かれた家庭(たとえばひとり親家庭)への支援を向上させるために締約国が行なっている活動には留意するものの、社会福祉予算が最近削減されたこと、および、とくに大家族、ひとり親家庭およびアラブ人家庭で暮らしている子どもの貧困率がきわめて高いことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、貧困根絶のための包括的戦略を策定しかつ実施するとともに、当該戦略に対して十分な財源および人的資源を提供するよう、勧告する。 50.委員会は、パレスチナ被占領地域において住宅およびインフラの大規模な破壊が行なわれていることを深く懸念する。これは、これらの地域の子どもにとって、十分な生活水準に対する権利の深刻な侵害である。 51.委員会は、国際人道法、とくに文民の保護に関するジュネーブ条約を参照しながら、締約国が、(文民と戦闘員との)区別の原則および(文民に対して過度な危害を及ぼす攻撃の)均衡性の原則を全面的に遵守するとともに、したがって住宅、上水道およびその他の公益設備を含む非軍事目標の破壊を回避するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような破壊の被害者に対し、住宅の再建のための支援および十分な補償を提供するよう勧告するものである。 7.教育 教育 52.委員会は、イスラエル国防軍が課した措置(道路の封鎖、外出禁止令および移動の制限ならびに学校インフラの破壊を含む)の結果として、パレスチナ被占領地域の子どもによる教育へのアクセスが深刻に悪化していることを懸念する。 53.委員会は、締約国が、条約にしたがい、パレスチナ人のすべての子どもが教育にアクセスできることを保障するよう、勧告する。その第一歩として、締約国は、パレスチナ被占領地域全域で開校時間中の移動の制限が解除されることを確保するべきである。 54.委員会は、教育予算が近年の支出削減から保護されている旨の情報を歓迎するものの、アラブ系イスラエル人層における教育への投資および教育の質がユダヤ人層におけるそれよりも相当に低いことを懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、積極的差別是正措置を継続しかつ強化するとともに、アラブ層の教育に配分される予算をさらに増加させるよう、勧告する。 56.委員会は、条約第29条に列挙された教育の目的(人権、寛容および性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの尊重の発展を含む)が、締約国全体を通じ、明示的にカリキュラムの一部とされているわけではないことを懸念する。 57.委員会は、締約国および関連のすべての非国家的主体(パレスチナ自治政府を含む)が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮にいれ、とくに人権、寛容および性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの尊重の発展との関連で、すべての初等中等学校のカリキュラムに子どもの権利を含む人権の教育を含めるよう、勧告する。この努力において、宗教的指導者の動員が図られなければならない。 8.特別な保護措置 武力紛争 58.委員会は、テロリズムが締約国の子どもの権利に及ぼす影響、および、軍事行動がパレスチナ被占領地域の子どもの権利に及ぼす影響について深刻な懸念を覚える。さらに委員会は、レバノン南部における地雷除去の取り組みとの関連で締約国の協力が不十分であること、および、同地域で行なわれたイスラエル国防軍の作戦の被害を受けた子どもに対して救済措置が提供されていないことを、懸念するものである。 59.委員会は、締約国およびその他の非国家的主体が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約に掲げられ、かつ国際人道法で保護される子どもの権利を全面的に尊重した、軍隊その他の要員を対象とする交戦規則を策定し、かつ厳格に執行すること。 (b) 武力紛争において子どもを使用することおよび(または)目標とすることを控えるとともに、条約第38条を全面的に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を可能なかぎり、遵守すること。 (c) レバノン南部における地雷除去の取り組みに全面的な支援および協力を提供するとともに、レバノン南部におけるイスラエル国防軍の行動により被害を受けた子どもが十分な補償、回復およびリハビリテーションの機会を得られるようにすること。 (d) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を批准し、かつ全面的に実施すること。 性的搾取 60.委員会は、未成年者の商業的性的搾取と闘うための省庁間・機関間委員会の設置、その活動およびこの分野におけるNGOの関与に留意する。しかしながら委員会は、これらの取り組みその他の努力の効果がいまのところ限られていることを懸念するものである。 61.委員会は、締約国に対し、とくに必要な財源その他の資源を提供することにより、未成年者の商業的性的搾取に対応するこれらの努力の有効性を高めるためのあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 少年司法の運営 62.委員会は以下のことを懸念する。 (a) イスラエルおよびパレスチナ被占領地域における子どもの定義に関してなど、子どもに関わる法律が異なる形で適用されていること。 (b) パレスチナ被占領地域における子どもの逮捕および尋問に関わる実務のあり方。 (c) 軍令第378号および第1500号、ならびに、長期にわたる子どもの独居拘禁を認めている可能性があり、かつ適正手続の保障、法的援助へのアクセスおよび家族の面会について規定していない他のすべての軍令。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の規定、とくに第37条、第39条および第40条が、北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針のようなこの分野における他の関連の国際基準とともに、少年司法制度の法律および実務に全面的に統合されることを確保すること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間でかつ裁判所の許可を受けて用いられること、および、18歳未満の者が成人と拘禁されないことを確保すること。 (c) 子どもが法律扶助および独立のかつ効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (d) 子どものリハビリテーションおよび社会的回復の分野について専門家の研修を行なうこと。 (e) 諸軍令の規定のうち、少年司法の運営に関する国際基準に違反するものをすべて廃止すること。 9.選択議定書 64.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう、奨励する。 10.報告書の普及 65.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、締約国のあらゆる行政段階においてかつ公衆一般(関心のある非政府組織を含む)のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 66.委員会が採択し、かつ委員会の第29会期報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、締約国による報告が相当に遅延していることを認識しながら、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的な報告を開始するうえで困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2008年11月1日までに、単一の統合報告書として第2回、第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年10月19日)。
https://w.atwiki.jp/lolitamovie/pages/41.html
266 :名無シネマさん :03/04/24 09 00 ID qvqw7CfE ミツバチのささやき ←暗ぃ やかまし村の子どもたち ←おしり(・∀・)イイ!!が遠目の1カットのみ やかまし村の春夏秋冬 ←(´・ω・`) ショボーン ・・・2才萌えの人ならヌードがあるが おもしろ荘の子どもたち ←この時代の下着は(´・ω・`) ショボーン 正直(;´Д`)ハァハァを期待して借りてはいけない。 前回は一勝一敗、今日は4敗だった。