約 1,857,934 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/122.html
総括所見:スウェーデン(OPAC・2007年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)/第5回(2015年)OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/SWE/CO/1(2007年7月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月25日に開かれた第1238回会合においてスウェーデンの第1回報告書(CRC/C/OPAC/SWE/1)を検討した。この検討は、締約国の代表団が第39会期に採択された委員会の決定第8号にしたがって報告書の技術的審査を選択したため、代表団の出席を得ずに行なわれたものである。委員会は、2007年6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関してスウェーデンで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPAC/SWE/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回定期報告書に関して2005年1月28日に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.248)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった、スウェーデン軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の宣言を歓迎する。 5.委員会は、紛争を経験しているまたは紛争後の状況下にある多くの国々で行なわれている、子ども兵士のリハビリテーションおよび再統合のためのプロジェクトへの貢献について締約国を称賛する。 6.委員会は、あらゆる形態の人身取引(国境内における取引を含む)の犯罪化を戦務および強制労働のような他の形態の搾取にも拡大した、人身取引に関する刑法の改正規定(2004年7月1日施行)に、評価の意とともに留意する。 7.委員会は、子どもの権利の促進を目的とした締約国の国家人権行動計画(2006~2009年、政府通告2005/06 95)、および、同行動計画に基づいてスウェーデンにおける人権の全面的尊重を確保する長期的活動を支援するためのスウェーデン人権代表団の設置(ToR 2006 27)を歓迎する。 8.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書草案作業部会において、兵士として18歳未満の子どもを使用することの例外なき禁止を唱道し、かつその後は選択議定書の普遍的批准を促進するうえで締約国が果たしてきた積極的役割に、評価の意とともに留意する。 9.委員会はまた、締約国が、欧州連合総務・対外関係理事会が2003年12月に採択した子どもと武力紛争に関する指針の実施に貢献していることにも、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 10.委員会は、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程第6条、第7条および第8条に列挙された犯罪(とくに、15歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することを戦争犯罪として犯罪化した第8条2項(b)(xxvi))を独立した犯罪として導入することを目的として、刑法およびいわゆる国際犯罪に関する規定の改正を進めていることに留意する。 11.委員会は、軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、締約国が、刑法改正のために行なっている努力を加速させるよう勧告する。 普及および研修 12.委員会は、締約国の国家人権行動計画(2006~2009年)が、教育制度内でも公衆一般の間でも人権に関する知識および情報を増加させることを目的としていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、締約国の軍が、セーブ・ザ・チルドレン・スウェーデンと連携しながら、選択議定書および関連の問題に関する研修を行なっていることにも、評価の意とともに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国が国レベルで実施している選択議定書関連の普及活動および研修活動が、全体として軍隊および軍事訓練に限定されていることを懸念する。 13.委員会は、締約国が、軍隊および国際的作戦に配備される要員に対し、引き続き選択議定書に関する研修を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くあらゆる関連の専門家集団(教員、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および移民とともにおよびこのような子どものために活動する公的機関、弁護士ならびに裁判官など)対象とする、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修プログラムを発展させることも、勧告するものである。 2.子どもの徴募 志願による青年の軍事活動 14.委員会は、志願制防衛組織の全体防衛青年活動に参加する18歳未満の志願隊員はスウェーデン軍に採用されたものとは見なされえないと締約国が明言していることに留意する。委員会はまた、18歳未満の志願隊員がこれらの課程に編入する場合、親その他の監護権者の同意が必要であることにも留意するものである。しかしながら委員会は、これらの青年活動に参加する18歳未満の志願隊員が火器の訓練を行なうことに留意する。委員会は、子どもにとって「軍事的要素」を有するこれらの種類の活動は、平和および安全な環境が子どもの全面的保護にとって不可欠であることを強調する選択議定書の精神に全面的には一致しないとの見解に立つものである。 15.委員会は、締約国に対し、選択議定書の精神を全面的に尊重しかつあらゆる状況において子どもに全面的保護を提供する目的で、志願制防衛組織が行なう火器訓練に参加する志願隊員の最低年齢を16歳から18歳に引き上げるよう奨励する。委員会は、締約国が、18歳未満の者に火器訓練および軍隊式訓練を行なうすべての志願制防衛組織に対し、選択議定書および他の関連の国際基準の規定に関する十分な情報提供および研修を行なうよう、勧告するものである。 3.国際的な援助および協力 被害者の保護 16.委員会は、欧州の主要な武器輸出国のひとつである締約国が、武器輸出管理に関わる国際的および地域的協力(武器の責任ある移転を促進するための基準および原則の策定を含む)に積極的に参加し、かつ、軍事支出に関わる透明性の重要性および武器製造に関する国際的な輸出管理誓約を一貫して促進してきたことに、留意する。委員会はまた、締約国が、国レベルで先進的な武器輸出管理を実施していることにも留意するものである。締約国の武器輸出が拡大していることを考慮に入れ、委員会は、スウェーデンの法律および指針において、18歳に満たない者が軍または国の軍隊とは異なる武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している国との軍需資材の取引を廃止することを目的とした、武力紛争への子どもの関与に関する明確な言及がないことを遺憾に思う。 17.委員会は、締約国が、武器その他の軍用機器の輸出に関する国内法、指針および実務において、18歳に満たない者が軍または国の軍隊とは異なる武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している可能性がある国への武器および軍用機器の直接間接の輸出が明示的に禁じられることを確保するよう、勧告する。 財政援助その他の援助 18.委員会は、武力紛争の影響を受けた子どもの保護および支援を目的とする多国間および二国間の活動への目覚ましい財政支援について締約国を称賛するとともに、とくに、スウェーデン国際開発庁(SIDA)が子どもの権利に明確に焦点を当てていることを歓迎する。委員会は、戦争の影響を受けた子どものためのプログラムを行なっている多数の国連機関、とくにユニセフおよび子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表に対する締約国の年次拠出を歓迎するものである。委員会はまた、さまざまな国内的および国際的非政府組織に対して提供されている財政支援にも、評価の意とともに留意する。 19.委員会は、締約国が、防止活動ならびに選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合にとくに焦点を当てながら、選択議定書の全面的実施に対する財政支援その他の援助(武力紛争に関与した子どもの権利に対応するための多国間および二国間の活動を含む)を継続しかつ強化するよう、勧告する。 4.武装解除、動員解除および社会的再統合に関してとられた措置 社会的再統合の措置 20.委員会は、スウェーデンで庇護を申請するすべての保護者のいない子どもに代理人(ゴードマン〔後見人〕)を任命すると定めた、保護者のいない子どもの特別代理人法(2005 429)が2005年7月1日に施行されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、代理人の任命に時間がかかる可能性があり、かつ代理人の人数が実際のニーズに応えるには不十分であることに、懸念とともに留意するものである。 21.委員会は、徴募されまたは敵対行為で使用され、かつスウェーデンで庇護を申請しているすべての保護者のいない子どもに対し、スウェーデンへの到着後24時間以内に代理人(ゴードマン)を任命する手続を迅速化する目的で、締約国が、保護者のいない子どもの特別代理人法(2005 429)の改正を検討するよう勧告する。委員会は、締約国が、名簿に掲載されているすべての代理人を対象として、徴募されまたは敵対行為で使用された子どもの心理的ニーズに特段の注意を払いながら十分な研修を行なうよう、勧告するものである。 22.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用された保護者のいない子どもを含む)の受け入れに関する責任が、2006年7月に移民庁から市町村に移管されたことに留意する。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れに同意した市町村がわずかしかないこと、および、措置を待つ間、これらの子どもが一時的収容施設に措置されていることに、懸念とともに留意するものである。市町村が広範な自治権を有していることから、委員会は、サービスの提供がすべての市町村で十分とはいえないおそれがあることを懸念する。 23.委員会はさらに、スウェーデン移民庁が武力紛争に関与した子どもの庇護希望者に遭遇したときは、スウェーデンの他の公的機関がこれらの子どもに支援およびケアを提供できるよう、通知を行なわなければならないとされていることに留意する。 24.締約国は、保護者のいない子どもの庇護希望者全員が、受け入れ先の市町村がどこであるかに関わらず、社会サービスおよび保健サービスならびに居住場所を含む十分なサービスにアクセスできることを確保するべきである。委員会は、締約国に対し、武力紛争に関与した子どもの庇護希望者が、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのあらゆる適切な援助を受けることを確保するよう、促す。 25.委員会はまた、締約国が、その管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって国外で徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもについてのデータを体系的に収集することも勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に留意するよう勧告するものである。 5.フォローアップおよび普及 フォローアップ 26.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府(レゲーリンゲン)、議会(リクスダーゲン)ならびに県および市町村、ならびに、子どもオンブズマン、スウェーデン軍、スウェーデン戦略商品検査局(ISP)、郷土防衛隊および志願制防衛組織に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 27.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、子どもおよびその親が広く入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が選択議定書を公衆一般に広く知らせることも勧告するものである。 6.次回報告書 28.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第4回定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/63.html
総括所見:ノルウェー(OPAC・2007年) 第1回(1994年)/第2回(2000年)/第3回(2005年)/第4回(2010年)OPSC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/NOR/CO/1(2007年7月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月25日に開かれた第1238回会合においてノルウェーの第1回報告書(CRC/C/OPAC/NOR/1)を検討した。この検討は、締約国の代表団が第39会期に採択された委員会の決定第8号にしたがって報告書の技術的審査を選択したため、代表団の出席を得ずに行なわれたものである。委員会は、2007年6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関してノルウェーで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPAC/NOR/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回定期報告書に関して2005年6月3日に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.263)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった、ノルウェー軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の宣言を歓迎する。委員会はまた、敵対行為への直接参加、軍隊への義務的徴募ならびに国の軍隊とは異なる武装集団における兵士の徴募および使用に適用される最低年齢要件を締約国が満たすことを確保するために行なわれた、郷土防衛法および軍役義務法の改正(2001年1月19日の法律第3号)ならびに刑法改正(2002年6月18日の法律第54号)も歓迎するものである。 5.委員会は、締約国が世界中の多くの和平プロセスおよび和解プロセスにおいて調整役として積極的役割を果たしており、かつ、紛争時および紛争後の状況ならびに和平プロセスにおいて人権の実現を強化するための努力を行なっていることについて、締約国を賞賛する。この文脈において、委員会は、女性と平和および安全保障に関する安全保障理事会決議1325 (2000)を実施するためのノルウェー政府の行動計画(2006年3月8日)を歓迎するものである。 6.委員会は、南の子どもおよび若者のための締約国の戦略「30億の理由」を歓迎する。これは、武力紛争を防止し、紛争の平和的解決を促進しおよび永続的かつ安定した平和を構築するためにノルウェーがアフリカ、アジアおよびラテンアメリカで行なっている、精力的な経済上、政治上および外交上の努力を強化するものである。委員会はまた、軍隊への子どもの徴募を防止し、かつ、子ども兵士の武装解除、動員解除および地域コミュニティへの再統合ならびに保護およびリハビリテーションを促進することに対する締約国のコミットメントも歓迎する。 7.委員会は、武力紛争における子どもの問題を国連安全保障理事会の議題に掲げ続け、かつその位置づけを強化するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 実施に関する一般的措置 立法 8.委員会は、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程第6条、第7条および第8条に列挙された犯罪(とくに、15歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することを戦争犯罪として犯罪化した第8条2項(b)(xxvi))を独立した犯罪として導入することを目的とした刑法改正を進めていることに留意する。とくに委員会は、刑法草案で提案されている第103条1項(e)が、18歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することを戦争犯罪として犯罪化することとしており、したがって国際刑事裁判所ローマ規程よりも高度な基準を導入しようとしていることを、歓迎するものである。 9.委員会は、軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、締約国が、刑法改正のために行なっている努力を加速させるよう勧告する。 10.委員会は、18歳に満たない郷土防衛隊青年部隊の志願隊員はノルウェー軍に採用されたものとは見なされえないと締約国が明言していることに留意する。委員会は、18歳未満の志願隊員は動員の対象とされもしくは軍の構成員として編入されることはなく、実践的訓練に参加せず、または他のいかなる形でも戦争類似の活動に参加しないことに留意する。郷土防衛隊法に掲げられたこのような保護措置にもかかわらず、委員会は、子どもにとって「軍事的要素」を有するこれらの種類の活動は、平和および安全な環境が子どもの全面的保護にとって不可欠であることを強調する選択議定書の精神に全面的には一致しないとの見解に立つものである。郷土防衛隊青年部隊の志願隊員は軍事懲戒の対象とされないことに留意しながらも、委員会は、この軍事懲戒権からの除外が慣行および軍事懲戒権法(1988年)の解釈に基づくものであり、〔子どもに対する軍事懲戒が〕法律で明確に禁じられていないことを懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、選択議定書の精神を全面的に尊重しかつあらゆる状況において子どもに全面的保護を提供する目的で、郷土防衛隊に入隊する志願隊員の最低年齢を16歳から18歳に引き上げるよう奨励する。委員会はまた、締約国が、18歳に満たない郷土防衛隊青年部隊の志願隊員はいかなる種類の軍事懲戒の対象にもしてはならないことを法律で命じるようにも、勧告するものである。 普及および研修 12.委員会は、子ども兵士の問題に関する意識を高めるために締約国が行なっている努力を心強く思う。たとえば、委員会は、国防大臣の主催で2007年3月26日に開催され、国の行政機関、軍隊、非政府組織(NGO)およびメディアの代表が一堂に会した子ども兵士(選択議定書の適用範囲も含む)に関する全国会議に、評価の意とともに留意するものである。委員会はまた、締約国の軍隊が、セーブ・ザ・チルドレン・ノルウェーと連携しながら、選択議定書および関連の問題に関する研修を行なっていることにも、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国が国レベルで実施している選択議定書関連の普及活動および研修活動が全体として軍隊および軍事訓練に限定されていることを懸念するものである。 13. 委員会は、締約国が、軍隊および国際的作戦に従事する要員に対して引き続き選択議定書に関する研修を行なうとともに、この点に関する市民社会組織との協力を継続するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くあらゆる関連の専門家集団(保健従事者、ソーシャルワーカー、教員、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および移民とともにおよびこのような子どものために活動する公的機関、弁護士ならびに裁判官など)対象とする、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修プログラムを発展させるようにも勧告するものである。 国際的な援助および協力 被害者の保護 14.委員会は、締約国が、子どものための国家行動計画(主要目標9)に、戦争および紛争を経験した子どもならびに保護者のいない未成年者としてノルウェーに到着した子どもの難民の保護、リハビリテーションおよび統合を含めていることを賞賛する。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の過半数は紛争地域からノルウェーにやってきたこと、および、たとえば2004年には審査された申請の60%が却下されたことに留意する。委員会は、締約国が、ノルウェーから母国に送還された子どもの庇護希望者および難民(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)をフォローアップするための十分な戦略を定めていないことに、懸念とともに留意するものである。 15.委員会は、締約国が、市民社会を含む関連のパートナーと協力しながら子どものための国家行動計画を実施するための具体的措置を引き続きとり、かつ、同計画を全面的に実施するための十分な予算配分およびフォローアップ機構の整備を行なうよう勧告する。徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもの庇護希望者および難民であってノルウェーから母国に送還された者について、委員会は、締約国が、これらの事案をフォローアップするための措置(適切な二国間の措置を含む)をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、実行可能な場合にはこれらの子どもに関する個人的フォローアップ戦略を定めるよう奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に留意するよう勧告する。 財政援助その他の援助 16.委員会は、戦争の影響を受けた子どものためのプログラムを行なっている多数の国連機関、とくにユニセフに対する目覚ましい財政支援について、締約国を賞賛する。委員会はまた、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表、ならびに、セーブ・ザ・チルドレン、ノルウェー難民評議会および子ども兵士使用廃絶NGO連合のようなさまざまな国内的および国際的非政府組織に対する締約国の支援も歓迎するものである。委員会はまた、締約国がこの分野で行なっている二国間活動も心強く思う。 17.委員会は、締約国が、防止活動ならびに選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合にとくに焦点を当てながら、選択議定書の全面的実施に対する財政援助その他の援助(武力紛争に関与した子どもの権利に対応するための多国間および二国間の活動を含む)を引き続き提供するよう、勧告する。 武装解除、動員解除および社会的再統合に関してとられた措置 社会的再統合の措置 18.選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関して、委員会は、締約国が一部の受入れセンターにおいて庇護希望者である親に指導を提供していること、および、危機心理学センターによって開発された、難民の子どものトラウマおよびストレス後症候群スクリーニング法が臨床試験の段階に入ったことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)の監督およびこのような子どもに提供されるケアならびに受入れセンターで暮らす子どもに提供される心理的および精神医学的サービスが不十分であるという懸念をあらためて表明する(2005年6月3日に採択された、締約国の第3回定期報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.263)、パラ41-42参照)。委員会は、場合により、保健ケアを必要としているものの在留許可を得ずに締約国に在留している子どもが、適正に登録されていないとの理由で保健サービスへのアクセスを否定される可能性があること、および、そのなかには国外で徴募されまたは敵対行為で使用された子どもも含まれている可能性があることに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会は、以下のことを遺憾に思う。 (a) 保護者のいない子どもの庇護希望者および難民のための全国的な後見人制度が設けられていないこと。現行の後見人制度では、後見人の採用および研修の質がすべての自治体で十分とはいえない可能性がある。 (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)に関する責任が、2007年10月1日より2つの公的機関、すなわちノルウェー移民局(保護者のいない子どもの庇護希望者のうち15~17歳の者)と児童福祉サービス(保護者のいない子どもの庇護希望者のうち15歳未満の者)との間で分担されること。委員会は、保護者のいないすべての子どもの庇護希望者(選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもも含む)に対し、できれば同一のサービス担当機関のもとで適切な保護およびサービスが提供されるべきであるという見解に立つものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 徴募されまたは敵対行為で使用されたことがあって現在受入れセンターで暮らしている子どもに対し、十分な支援および監督ならびに十分な心理的および精神医学的ケアが提供されることを確保するための措置をとること。 (b) 受入れセンターにおける親指導プログラムの提供を拡大し、かつ、危機心理学センターによって開発された、難民の子ども(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)のトラウマおよびストレス後症候群スクリーニング法を早期に実施するための努力を強化するための措置をとること。 (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および難民(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)のための、統一された全国的後見人制度の設置を検討すること。 (d) 保護者のいない子どもの庇護希望者全員に平等なサービス提供を保障するため、このような子どもに関する責任を、児童福祉サービスのような子どもの権利志向の単一の公的機関に集中させることを検討すること。 20.委員会はまた、締約国が、その管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって母国において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもについてのデータを体系的に収集するようにも勧告する。 フォローアップおよび普及 フォローアップ 21.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会、議会(ストーティング)ならびに県および自治体ならびに適用可能なときは子どもオンブズマン、ノルウェー軍および郷土防衛隊に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 22.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、子どもおよびその親が広く入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が選択議定書を公衆一般に広く知らせることも勧告するものである。 次回報告書 23.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第4回定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月5日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/94.html
総括所見:カンボジア(第1回・2000年) 第2回(2011年)OPAC(2015年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.128(2000年6月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年5月24日に開かれた第629回および第630回会合(CRC/C/SR.629-630参照)において、2000年5月24日に提出されたカンボジアの第1回報告書(CRC/C/11/Add.16)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年6月2日に開かれた第641回会合において。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/CAM.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国の代表団との建設的対話を心強く思うとともに、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する反応を歓迎するものである。委員会はまた、条約の実施に直接関与する高位の代表団が出席してくれたことにより、委員会が締約国における子どもの権利の状況を十全に評価できたことも歓迎する。 B.積極的側面 3.委員会は、カンボジアが、人権保護のための6つの主要国際文書の締約国であることを歓迎する。締約国が、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約を批准したこと(1999年)も歓迎されるところである。 4.委員会は、締約国が、子どもの権利条約に掲げられた権利の保護を1993年憲法(第48条)に盛りこんだことを歓迎する。 5.カンボジア政府と人権高等弁務官事務所が調印し、人権に関する技術的援助および助言サービスのプログラムを開設した了解覚書(1996年)は、委員会の歓迎するところである。 6.委員会は、ILO最低年齢条約(第138号)の批准(1999年)およびカンボジア政府とILO/IPECによる了解覚書の調印(1997年)のような、児童労働と闘うために締約国がとった措置を歓迎する。 7.委員会は、締約国の第1回報告書の作成および条約の実施に非政府組織が参加していることを歓迎する。 C.条約の実施における進展を阻害する要因および困難 8.委員会は、とくに20年以上に及ぶジェノサイド、武力紛争および政治的不安定ならびに長年にわたる締約国の孤立を理由として、締約国が条約の実施に関して多くの困難に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国のきわめて困難な社会経済的状況により、子どもを含むもっとも脆弱な立場に置かれた集団に影響が生じており、かつその権利の享受が妨げられていることにも留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 9.締約国の立法上の枠組みにおいて条約のいくつかの規定が網羅されており、かつ新法を起草するための努力が行なわれていることは認識しながらも、委員会は、条約を全面的に尊重するためには国内法をなお見直し、かつ新法を制定する必要があることを依然として懸念する。現行法が執行されていないことも懸念の対照である。 10.委員会は、現行法を条約の規定、とくに一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)と一致させる目的で、その見直しを行なうよう勧告する。その際、出生登録、家庭および代替的養護ならびに少年司法の分野に特別な注意を払わなければならない。委員会はさらに、締約国が、現在進行中のおよび今後の法律起草プロセス、とくに民法草案、刑法草案および刑事訴訟法草案に、子どもの権利に関わる問題を盛りこむよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるよう奨励する。 調整 11.委員会は、条約の実施の調整を担当するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)が設置されたことは歓迎するものの、その任務を締約国全域で全面的にかつ効果的に履行する同評議会の能力について懸念を表明する。とくに、評議会が人的資源および財源を欠いていることに対して懸念が表明されるところである。 12.委員会は、締約国が、国、地域および地方のレベルで条約の実施を調整することに関するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)の役割を強化するため、国際協力等も通じて効果的な措置をとるよう勧告する。CNCCに対してより実質的な人的資源および財源を提供し、かつ子どもの権利の分野で活動する非政府組織とのより緊密な協力および調整を確立するため、いっそうの努力が行なわれるべきである。 監視 13.委員会は、条約の実施を監視する締約国の能力が限られていること、および、条約に基づく権利の侵害についての子どもからの苦情を登録しかつこれに対応する独立の機構が存在しないことを、懸念する。 14.委員会は、締約国が、条約の実施を監視し、ならびに、自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情に子どもにやさしい方法でかつ迅速に対応し、かつそのような侵害に対して救済を提供する独立の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)の設置を検討するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもが当該機構を効果的に活用することを促進するための意識啓発キャンペーンを実施するよう提案するものである。 データ収集 15.委員会は、教育管理情報システムおよび保健情報システムのような、データ収集の分野で締約国がとった措置を歓迎する。にもかかわらず、条約が対象とするすべての分野(子どもの虐待および不当な取扱い、マイノリティ集団に属する子ども、女子、農村部の子どもならびに売買、取引および買春の被害を受けた子どもを含む)についての体系的、包括的かつ細分化された量的および質的データを収集するための機構が存在しないことに、懸念が表明されるところである。 16.委員会は、条約が対象とするあらゆる分野を包摂する目的で、データ収集システムの開発および強化を継続するよう勧告する。当該システムは、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する基盤として、18歳未満のすべての子どもを含み、かつ脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視するべきであり、かつ、条約の規定の実施を向上させるための政策立案の一助として活用されるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフの国際援助を求めるよう奨励する。 予算配分 17.数十年間の戦争の結果、締約国のインフラおよび社会サービスのほとんどが破壊されたことは認識しながらも、委員会は、「利用可能な資源を最大限に用いて」予算を配分することに関わる条約第4条の規定に十分な注意が払われていないことに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が、利用可能な最大限の資源が子どものための保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに配分され、かつ、脆弱な立場に置かれたおよび周縁化された集団に属する子どもの保護に特段の注意が払われることを確保することを優先するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにドナーによる「カンボジア協議グループ」の調整枠組みのなかで、国際社会との開かれた協力を継続しかつ醸成するよう奨励するものである。 条約の普及 19.学校カリキュラムに条約を含めることなど、条約の原則および規定に関する広範な意識を促進するためにとられた措置は認識しながらも、委員会は、これらの措置を強化する必要があるという見解に立つ。 20.委員会は、子どもの権利に関する社会の感受性を高めるため、締約国が、条約の原則および規定を普及するための努力を強化するよう勧告する。マイノリティ集団の間ならびに農村部および遠隔地における条約の普及がとくに重視されるべきである。委員会は、締約国に対し、この分野に関してとくにユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。 専門家の研修 21.委員会は、子どもともにおよび子どものために働く専門家を対象とする研修に関して、締約国がOHCHRおよびユニセフと協力しながら行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、現行プログラムをさらに発展させてすべての専門家集団を対象にしなければならないとの見解に立つものである。 22.委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、自治体職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象とする、条約の規定に関する体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを、引き続き実施するよう奨励する。これとの関連で、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を引き続き要請することが考えられる。 2.子どもの定義 23.委員会は、締約国の法律で子どもの法的定義が明確に定められていないことを懸念する。とくに、性的同意および刑事責任に関する法律上の最低年齢が定められていないことに懸念が表明されるところである。 24.条約の原則および規定に照らし、委員会は、締約国が法律に子どもの定義を設けるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、新法の起草過程で、刑事責任および性的同意に関する最低年齢の編入を考慮するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、婚姻の最低年齢に関する法律を執行するよう勧告する。 3.一般原則 25.委員会は、締約国の国内法に条約の一般原則を編入するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 26.委員会は、条約の一般原則(すなわち差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)が、子どもに影響を当たるすべての関連の法律に掲げられ、かつ、子どもに関連するすべての行政上および司法上の決定ならびにすべての政策およびプログラムにおいて考慮されるよう、勧告する。子どもを権利の主体ではなく客体としてとらえる伝統的な見方を変革するため、コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む公衆一般の意識啓発およびこれらの原則の実施に関する教育プログラムが強化されるべきである。 差別の禁止 27.条約第2条に関して、委員会は、ジェンダー、民族的出身、HIV/AIDSの感染の有無および障害を理由とする差別の様式が存在することに、懸念を表明する。とくに、締約国の憲法がクメール系市民の権利にしか触れていないことに対し、懸念が表明されるところである。 28.委員会は、締約国が、条約に掲げられたすべての権利がいかなる区別もなくすべての子どもによって享受されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに女子による教育へのアクセスとの関連で、女子差別を解消するための効果的措置をとるよう勧告するものである。路上で生活しかつ(または)働いている子どもおよびマイノリティ集団に属する子ども(とくにベトナム系の子ども)に対する差別を解消するための努力が行なわれなければならない。さらに、委員会は、これに関連して自由権規約委員会(1999年、CCPR/C/79/Add.108、パラ17)および人種差別撤廃委員会(1998年、CERD/C/304/Add.54、パラ11~13)が締約国に対して行なった勧告を支持する。 4.市民的権利および自由 出生登録 29.条約第7条の実施に関して、委員会は、出生登録が義務ではなく、そのためすべての子どもが出生時に登録されているわけではないことに懸念を表明する。 30.委員会は、締約国が、いかなる種類の差別もなくすべての子どもにとって出生登録を義務的なものとする目的で、条約の原則および規定にしたがって国内法を見直すよう勧告する。クメール系ではない市民の子ども(その法的地位は問わない)または難民も、カンボジアで出生したときは、たとえカンボジア国籍を得る権利がない場合でも、出生時に常に登録されるべきである。委員会はさらに、締約国が、とくに出生時に登録されなかった子どもが登録されることを確保するため、住民票(閣僚会議令第73号)および戸籍(同第74号)に関する現行閣僚会議令(いずれも1997年)を執行するための効果的措置をとるよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、出生時にすべての子どもを登録することを奨励する意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的のためにユニセフその他の国際機関の国際協力を求めることを検討するよう、奨励する。 国籍 31.委員会は、締約国の国籍法(1996年)がクメール系ではない子どもに対する差別につながるおそれがあり、かつ、条約第7条に違反して、マイノリティ集団に属する子どものような、カンボジアで出生した多数の子どもが無国籍のままとなるおそれがあることを懸念する。 32.委員会は、差別となる可能性があるすべての事由を撤廃し、かつ子どもが無国籍となることを防止する目的で、締約国の国籍法を条約に照らして見直すよう勧告する。 子どもの参加権 33.子どもの参加権に関しては、家庭、コミュニティ、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するために締約国がとった措置が不十分であることに対し、懸念が表明される。 34.条約第12~17条に照らし、委員会は、家庭、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するため、法改正を含むさらなる措置をとるよう勧告する。子どもの参加権に関する公衆の意識が、家庭、コミュニティ、諸施設および学校において高められなければならない。 適切な情報へのアクセス 35.委員会は、子どもの福祉および発達にとって有害な情報および資料から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための法律が存在しないことを懸念する。 36.条約第17条に照らし、委員会は、締約国が、有害な情報、とくに残酷な暴力およびポルノグラフィーを含むテレビ番組および映画から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための特別法を制定するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもとメディアに関する一般的討議(1996年)の際に行なった委員会の勧告(CRC/C/57)を考慮するよう勧告するものである。 5.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 37.委員会は、子どもが里親に委託されまたは養子とされるよりも児童福祉センターまたは児童ホームに措置される傾向にあること、このようなセンターの運営に関する規則が存在しないこと、ならびに、HIV/AIDSの流行によって両親を失う子どもの数が増えていること、および、この状況に対処するために利用可能な措置が限られていることを、懸念する。 38.委員会は、児童福祉センターへの措置を回避するため、締約国が、相談およびコミュニティを基盤とするプログラムを通じて子どもにとって最善の環境としての家族を促進し、かつ子どもの世話をできるよう親のエンパワーメントを図るために、効果的措置をとるよう勧告する。 39.委員会は、締約国が、子どもの施設その他の形態の代替的養護に関する政策および規則を策定するよう勧告する。より多くの子ども、とくにHIV/AIDSの流行によって両親を失った子どもを対象とすることができるよう、社会サービスを強化しおよび拡大しなければならず、ならびに里親家族のような代替的形態の養護を発展させなければならない。委員会はさらに、これらの目的のために十分な財源および人的資源を配分するよう勧告する。この点に関わる国際的な技術的および財政的援助も勧告されるところである。 養子縁組 40.条約および国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に一致した新たな国際養子縁組法の起草に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、国内養子縁組に関する現行法が条約にしたがっていないこと、および、現行の養子縁組手続は尊重されないのが通例であり、かつ汚職および虐待が顕著に見られる旨の報告があることを、依然として懸念する。違法な非公式の養子縁組が蔓延していることに対しても、懸念が表明されるところである。 41.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する法律を制定するプロセスを継続し、かつ国内養子縁組に関する現行法の法改正を行なうよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)への加入を検討することに対する締約国の前向きな姿勢に留意し、これを奨励するものである。さらに、委員会は、締約国が養子縁組局を強化するよう勧告する。これとの関連で、とくにユニセフの国際的援助を求めることが考えられる。 子どもの虐待および不当な取扱い 42.家庭の内外における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の規模および有害な影響に関する意識が不十分であること、児童虐待を防止しかつこれと闘うための資源が財源および人的資源ともに不十分であること、ならびに、ケアおよびリハビリテーションのための措置(虐待の被害を受けた子どもが利用可能な便益を含む)が不十分であることに対し、懸念が表明される。 43.とくに条約第19条および第39条に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設および社会一般における児童虐待および子どもの不当な取扱いを防止しかつこれと闘うための効果的措置(学際的プログラムの設置ならびにケアおよびリハビリテーションのための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はとくに、このような犯罪に関する法執行が強化されるべきであること、ならびに、子どもが司法に迅速にアクセスできるようにし、かつ犯罪者が処罰されないことを回避するため、児童虐待の苦情に対応する、十分かつ子どもにやさしい手続および機構が設立されるべきであることを、提案するものである。さらに、この問題に関する社会の伝統的態度と闘うための教育プログラムを設置することが求められる。委員会は、締約国に対し、この目的のためユニセフおよび国際的非政府組織の国際協力を求めることを検討するよう、奨励するものである。 6.基礎保健および福祉 生存および発達に対する権利 44.委員会は、とくにポリオに対する全国的な予防接種プログラムを発展させることに関する政府の能力の再構築を目的とした、保健省ならびにいくつかの国連機関(WHO、ユニセフ、UNDPおよびUNFPA)との国際協力イニシアティブである「保健制度の強化」を歓迎する。にもかかわらず、締約国の乳児死亡率および5歳未満児死亡率が依然として地域で最高の部類に入ることについて、懸念が表明されるところである。子どもの栄養不良も懸念される領域である。 45.委員会は、締約国が、現在の小児期疾病の発生態様において非識字、清潔な水が供給されないことおよび食糧事情が不安定であることが果たす重要な役割を認識した部門横断型アプローチをとることにより、小児期の罹病および死亡の問題に対処するよう勧告する。注意深くかつ包括的な調査研究により収集された基準データをもとに、優先領域が特定されなければならない。このような戦略においては、ほとんどの保健ケアが保健施設外でおよび国の統制の及ばないところで行なわれていることを考慮しなければならず、かつ、とくに隔離されたコミュニティのニーズも認識しなければならない。加えて、委員会は、効率的なプライマリーヘルスケア部門を確立するための措置(小児期疾病に関する医師等への相談を奨励するための戦略も含む)を整備するよう勧告する。これの関連で、委員会は、締約国に対し、引き続き国際機関と協力しながら活動するよう奨励するものである。 HIV/AIDSの影響を受けまたはこれに感染した子ども 46.HIV/AIDSの予防および感染者のケアのために締約国がとった措置は認識しながらも、委員会は、締約国におけるHIV/AIDS感染率の増加の度合いが地域最大であり、かつ、とくに母子感染を理由として子どもがもっとも影響を受けている集団のひとつに数えられることに、深い懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が、HIV/AIDS予防のための効果的措置(意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを含む)を引き続きとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/80)を考慮するよう勧告するものである。これとの関連で、とくにユニセフ、WHOおよびUNAIDSの国際的技術的援助を引き続き要請することが求められる。 障害のある子ども 48.委員会は、長期に及んだ武力紛争の結果、締約国における障害の水準が世界で最高レベルのひとつであることに深い懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、障害のある子どものためのサービスのほとんどがNGOによって提供されており、かつ、これらのNGOがケアおよびリハビリテーションのためのサービスの水準を現状どおり高いまま維持するためには相当の資源が必要とされることに、留意するものである。 49.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発見させ、障害のある子どもの施設措置に代わる措置を実施し、差別を減少させるための意識啓発キャンペーンを計画しおよび実施し、特別教育のためのプログラムおよびセンターを設置しかつ教育制度および社会への障害児のインクルージョンを奨励し、ならびに、障害のある子どものための私立施設の十分な監視を確立する目的で、この分野で活動しているNGOと緊密に連携し、かつその活動を支援するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修について技術的協力を求めるよう勧告するものである。 健康および保健サービスに対する権利 50.とくに、とりわけ農村部において医療従事者および公衆衛生従事者が不足しておりかつプライマリーヘルスセンターの数が不十分であることを理由として、保健サービスへの子どものアクセスが限られていることに対し、懸念が表明される。また、保健ケアおよび医薬品の費用負担が大きいことにより、家族が債務を負いかつさらなる貧困に陥ることに対しても、懸念が表明されるところである。 51.委員会は、貧困家庭および周縁化されたその他の集団に属する子どもによるアクセスを保障するため、保健ケア・サービスおよび医薬品を改善しかつ拡大するよう勧告する。 思春期の健康 52.委員会は、妊産婦死亡率が高く、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する教育および相談サービス(学校制度外のものを含む)に対する10代のアクセスが限られており、かつ避妊手段の使用水準が低いことに懸念を表明する。また、思春期の精神保健の問題に対して十分な注意が向けられていないことについても、懸念が表明されるところである。 53.委員会は、締約国が、思春期の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブヘルス教育を強化するための基盤として、思春期の健康問題(精神保健を含む)の規模を判断するための包括的かつ学際的な研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、青少年を対象とする子どもにやさしいカウンセリング・サービスならびにケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるため、さらなる努力を行なうことも勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 54.教育制度を改善するため、国際機関と協力しながら締約国が現在進めている努力は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務とされていないこと、初等学校の就学率は相対的に高いものの、農村部および遠隔地に学校が設けられていないため良質な教育に対する平等なアクセスが確保されていないこと、通学に関してジェンダー格差があること、留年率および中退率が高いこと、ならびに、マイノリティ集団に属する子どもの過半数がいかなる形態の教育にもアクセスできていないことに対し、懸念を表明する。 55.委員会は、初等教育をすべての子どもにとって無償かつ義務的なものとすること、就学率を高めかつ中退率および留年率を減少させること、ならびに、とくに貧しい子ども、女子、マイノリティ集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもによる学校へのアクセスを向上させることを目的として、締約国が引き続き効果的措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、教育部門に対する予算配分を増額し、教員の能力を向上させるための研修を提供し、学校カリキュラムを子どものニーズにより関連したものとし、職業訓練および非公式教育(就学前および中等段階におけるものも含む)の機会を拡大し、かつ、教育制度の効果測定のための評価システムを確立することにより、教育制度を改善するための措置を引き続きとるよう勧告するものである。 8.特別な保護措置 子どもの難民 56.保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法的枠組みが存在しないことについて、懸念が表明される。 57.委員会は、締約国が、関連の国際基準にしたがって子どもの難民の権利を保護するための法律を導入し、かつ、家族から分離された可能性がある子どもの難民を援助するための家族再統合手続を策定するため、必要な措置をとるよう勧告する。この点に関して、UNHCRの技術的援助を求めることが考えられる。 武力紛争の影響を受けている子ども 58.18歳未満の子どもを軍隊に徴募することを禁じた法律の制定、および、軍隊に残っている未成年兵士の動員解除に対する締約国の前向きな姿勢は歓迎しながらも、委員会は、元子ども兵士の社会的再統合および身体的リハビリテーションのための措置が不十分であることに懸念を表明する。また、最近の武力紛争の間に締約国の領域に多数の地雷が埋設され、子どもたちの生命を脅かしていることに対しても、懸念が表明されるところである。 59.委員会は、締約国が、子ども兵士の特定、動員解除および心理的リハビリテーションならびに社会への再統合のための効果的措置をとるとともに、子ども兵士のさらなる徴募を防止するため、軍の職員を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、未成年兵士のリハビリテーションおよび再統合のために引き続きユニセフと協力しながら活動するよう勧告するものである。 60.地雷の問題に関して、委員会は、締約国が、紛争後の地域における地雷除去のための予算配分を増額し、かつ、地雷関連の事故を防止するための意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、地雷撤去のために引き続き国際機関と協力しながら活動するよう勧告するものである。 経済的搾取 61.委員会は、インフォーマル部門、農業および家族の文脈におけるものも含む、働く子どもの人数が多いことを懸念する。現行労働法の執行が不十分であることに対しても、懸念が表明されるところである。 62.委員会は、締約国が就労へのアクセスについての最低年齢に関わる労働法の規定を執行し、労働査察官に対して児童労働を監視するための研修および手段を提供し、かつ、違反者に対して適当な制裁を適用するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、危険な形態の労働から子どもを保護する法律を制定するよう勧告するものである。委員会は、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する新たなILO条約(第182号、1999年)の批准を検討していることを認知し、批准を奨励する。 性的搾取および人身取引 63.性的搾取と闘うための特別法の制定および子どもの性的搾取に対抗する5か年行動計画(2000~2004年)の採択ならびにこの分野における他の関連の措置は歓迎しながらも、委員会は、児童買春ならびに子どもの売買および取引が広範な現象となっており、これらの問題に関する新法の執行が不十分であり、かつ、被害者にリハビリテーションを提供するための訓練を受けた人材および施設が不足していることに、懸念を表明する。 64.委員会は、締約国が、法律を強化する方向でその見直しを行ない、かつ当面は性的搾取を禁ずる現行法を全面的に執行するとともに、行動計画を全眼的に実施すること、計画の実施のために人的資源および財源の双方を十分に配分すること、性的搾取の被害を受けた子どものリハビリテーションのための社会サービスを強化しおよび拡大すること、違反者を訴追すること、ならびに、とくに近隣諸国との二国間協力を強化しおよび国境管理を増強することを勧告する。委員会は、締約国が、とくにOHCHRおよびユニセフのさらなる技術的援助を求めるよう、提案するものである。 少年司法の運営 65.法律に触れた子どもの状況に関しては、この分野における特別の法律、政策およびプログラムの欠如、子どもが成人とともに収監されている旨の報告、告発されず、かつ弁護士または裁判所にもアクセスできないまま長期にわたって拘禁されている子どもの状況、ならびに、拘禁されている子どもが殴打その他の不当な取扱いを受けている疑いがある旨の報告に対し、懸念が表明される。 66.委員会は、締約国が、条約の原則および規定、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような、この分野における他の関連の国連基準を考慮に入れながら、少年司法制度を確立するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、自由を奪われた子どもの状況および少年非行の防止にとくに注意を払いながら、法律に触れた子どもの状況に関する包括的な政策およびプログラムを策定するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国に対し、とくに少年司法に関する調整パネルを通じてOHCHR、国際犯罪防止センター、ユニセフおよび少年司法国際ネットワークの技術的援助を求めることを検討するよう、勧告する。 報告書の普及 67.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月8日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2015年12月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/198.html
総括所見:シリア(第1回・1997年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.70(1997年1月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年1月16日および17日に開かれた第360回~第362回会合(CRC/C/SR.360-362)においてシリア・アラブ共和国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)を検討し、委員会の総括所見を採択した。 (注)1997年1月24日に開かれた第371回会合において。 A.序 2.委員会は、政府代表団との間で交わされた建設的対話に対して評価の意を表明したい。委員会は、シリア・アラブ共和国によって第1回報告書および事前質問票(CRC/C/Q/SYR.1)への文書回答が提出されたことを歓迎しながらも、条約の原則および規定が実際にどのように実施されているかに関する情報が提供されず、同国の子どもの状況に関するより詳細な全体像を得ることができなかったことを、遺憾に思うものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が国内法に全面的に受容されており、かつ、民法および刑事手続法において、その規定がシリアで効力を有する国際条約の規定と矛盾する場合には適用されないと明示的に規定されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約の原則および規定との一致を確保するために国内法の多くの規定が現在見直されつつあることも歓迎するものである。 4.委員会は、子どもの福祉のための高等委員会を閣僚レベルに設置したこと、シリアにおける条約の実施を監視するために国内子ども委員会を設置したこと、および、1990年代における子どもの生存、保護および発達に関する世界宣言を実施するための国内行動計画を採択したことなど、政府によって行なわれた取り組みを歓迎する。 5.委員会は、教育があらゆる段階で無償であることおよび1981年の義務教育法(第35号)によって初等段階の教育が義務的であることに、評価の意とともに留意する。 6.委員会はさらに、政府が第1回報告書、委員会との議論の議事要録およびここに採択された総括所見を刊行するつもりであることに、評価の意とともに留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、領土の一部が占領されている結果、締約国が全領土に管理権を行使する立場になく、そのため締約国のあらゆる地域で条約の実施を確保することはできないことに留保する。この文脈において、委員会はまた、軍事支出に相当の予算が割り当てられ、かつ社会部門に配分される予算が不十分であるために、条約に基づく権利を子どもが享受することが阻害される可能性があることにも留意するものである。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、締約国が条約第14条、第20条および第21条に付した留保が幅広い性質のものであることにより、これらの条項で対象とされている権利を実施することに対する締約国の決意の性質に関して誤解が生じかねないことを懸念する。 9.全国レベルで子どもの福祉の問題を取り扱う権限を有した政府機関が存在することは歓迎しながらも、委員会は、条約の実施に対する包括的なアプローチを発展させるにあたり、こうした機関の間ならびに全国機関および地域機関の間での調整が不十分であることに、懸念を表明する。 10.委員会は、教育、保健、児童労働、難民である子どもおよびマイノリティに属する子ども、女子、少年司法の運用の対象となった子ども、障害児、虐待または不当な取扱いの犠牲となった子どもならびに路上で暮らしかつ/または働いている子どもにとくに力点を置いて、達成された進展を評価しかつ子どもに関わってとられた政策の影響を評価できるように、あらゆる集団の子どもとの関わりで、かつ条約が対象としているすべての領域について、信頼しうる量的および質的データを体系的に収集するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 11.条約の原則および規定に関する意識を促進するために行なわれた取り組みは認めながらも、委員会は、その原則および規定が子ども、親、行政職員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に広く知られるようにするための措置が不十分であることを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会はとくに、警察の構成員およびその他の法執行官、司法職員、あらゆる教育段階の教員、ソーシャルワーカーならびに医療従事者を対象として子どもの権利の分野で行なわれた研修が不十分でありかつ体系的なものでないことを懸念するものである。委員会はまた、公衆の間で、子どもおよびおとなの双方に向けた形式で、かつその教育レベルにしたがって条約の本文を刊行しかつ普及するための措置がとられていないことも懸念する。 12.委員会は、子どもの最善の利益、差別の禁止ならびに子どもの意見の尊重および家庭、学校および社会生活に参加する子どもの権利が国内法に全面的に反映されておらず、かつ現実に実施されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、関連の国内法が条約に基づく子どもの定義と一致していないこと、とくに刑事責任年齢(7歳)および雇用にアクセスできる年齢が低いことを懸念する。 13.委員会は、女子に対する差別的態度(早期婚の慣習を含む)および婚外子に対する差別的態度が依然として残っていることに対し、懸念を表明する。さらに、女子の婚姻年齢が男子のそれより低いことは、条約、とくに第2条との両立性に関して疑問を生ぜしめるものである。 14.条約第4条の実施に関して、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を、とくに保健および教育に力点を置いて、締約国が利用可能な手段を最大限に用いて確保するためにとられた措置が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会はとくに、最も脆弱な立場に置かれた子ども、とりわけ貧困下で暮らしている子ども、女子、障害児、虐待の被害を受けた子ども、マイノリティ集団に属する子どもおよび路上で暮らしかつ/または働いている子どもの権利を保護するための政策、措置およびプログラムが不十分であることを懸念するものである。 15.難民である子どもおよびシリアで生まれたクルド人の子どもの状況は、条約第7条に照らし、委員会の懸念の対象である。これとの関連で、委員会は、シリアで生まれた難民の子どもを登録するための便益が存在しないこと、および、シリアで生まれたクルド人の子どもが、シリア当局によって外国人またはマクトゥーミーン(未登録者)のいずれかと見なされ、かつ、出生時に他の国籍は有していないにも関わらず、シリア国籍を取得する上で行政上および実際上の困難に直面していることに、留意する。 16.教育に関して、委員会は、中等教育段階の中退率がとくに女子の間で高いこと、教員/生徒の割合が高いことならびに十分な学習用および教育用の便益が存在しないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、学校カリキュラムでいまなお人権教育および子どもの権利教育のプログラムが掲げられていないことに留意するものである。 17.委員会は、家庭における不当な取扱いおよび虐待を防止しかつそれと闘い、かつそのような不当な取扱いおよび虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を提供するための適切な措置がとられていないこと、および、この件に関して情報が提供されていないことを懸念する。委員会はまた、体罰は法律で禁じられているにも関わらず、学校における規律の維持のための措置としてしばしば体罰が行なわれていることにも、懸念とともに留意するものである。 18.委員会は、子どもの最低雇用年齢が低すぎること、および、家内制産業で働く子どもが最低雇用年齢、夜業の禁止および有害な職業に関する他の保護措置を含む労働法(1959年第91号法)の関連規定で保護されていないことに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、農業部門で児童労働の搾取が行なわれているという報告があること、および、この現象と闘いかつそれを防止するために利用可能な手段が農村部において存在しないことに、懸念を表明するものである。 19.委員会は、締約国の少年司法の運用の制度が条約第37条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則といったこの分野における他の関連の国連基準に一致していないことに、懸念を表明する。委員会はとくに、子どもが非常に低い年齢から自由を奪われうること、および、子どもの施設ケアに代わる措置を見つけることにこれまで十分な注意が払われてきていないことに、留意するものである。 E.提案および勧告 20.委員会は、締約国に対し、条約第14条、第20条および第21条に関する留保を再検討するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国が解釈宣言を行なうことにより、これらの特定の権利に関する締約国の立場を明確にする上で望ましい効果が得られる可能性があることを強調するものである。 21.児童福祉高等委員会および全国子ども委員会の設置を歓迎しながらも、委員会は、これらの委員会を通して、子どもの権利の保護ならびにそれに関するさまざまな政策およびプログラムの実施に携わる、中央および地方の行政機関と諸機関との間の縦の調整を増大させかつ組織化するために、さらなる努力を発展させるよう勧告する。 22.委員会は、データ収集システムを改善するとともに、当該システムにより、さらなる行動が必要とされている部門の特定および達成された進展の評価を、条約が対象としているすべての領域において、全国で、かつとくに困難な状況にいる子どもも含めたあらゆる集団の子どもとの関わりで可能にするため、適切かつ具体的な細分化された指標を特定するよう勧告する。 23.委員会はまた、締約国が、条約第42条に照らして、条約の原則および規定に関する公衆の意識を促進する分野でその活動を継続しかつ強化すること、および、子どもとともにおよび子どものために働く行政職員および専門家(警察の構成員およびその他の法執行官、司法職員、あらゆる教育段階の教員、ソーシャルワーカーならびに医療従事者を含む)の継続的な研修のためのプログラムを創設することを、勧告する。委員会はまた、現在進められている学校カリキュラムの見直しのなかで、教育プログラムへの条約の一般原則の導入がとくに重視されるべきことも勧告するものである。 24.委員会は、締約国が、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益、差別の禁止ならびに子どもの権利の尊重および家族、学校および社会生活に参加する子どもの権利に関わる原則を正当に考慮しながら、条約と国内法との全面的一致を確保する目的で努力を継続するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、適切な場合にはいつでもこれらの原則を反映した具体的規定を法律に導入すること、および、女子の最低婚姻年齢、刑事責任年齢ならびに雇用および家内制手工業での仕事にアクセスできる最低年齢に関わる規定を優先課題として見直し、かつ条約の原則と一致させることを勧告するものである。 25.委員会は、広く存在している女子差別を防止しかつそれと闘うための情報キャンペーンを開始するよう勧告する。委員会はまた、婚外子の保護のために適切な積極的是正措置をとるようにも勧告するものである。 26.委員会はまた、条約第4条に照らし、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現の予算配分に、保健および教育ならびに最も不利な立場に置かれた集団に属する子どもによるこれらの権利の享受をとくに重視しながら、優先順位を与えるようにも勧告する。これとの関連で、委員会は、児童福祉高等委員会および全国子ども委員会の決定が予算に直接かつ即時の影響を与えるようにすることを目的として、全体的な計画および予算配分に責任を持つ省庁がこれらの機関の活動に全面的に関与するよう提案するものである。 27.シリアで生まれた難民である子どもおよびシリアで生まれたクルド人の子どもが条約第7条に基づく権利を享受することに関して、委員会は、登録される権利および国籍を取得する権利は、条約第2条にしたがい、とりわけ子どもまたはその親もしくは法定保護者の人種、宗教または民族的出身に関わりなく、いかなる種類の差別もなしに、シリア・アラブ共和国の管轄下にあるすべての子どもに保障されるべきであることを強調する。委員会はまた、締約国が、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同条約の議定書ならびに1961年の無国籍の削減に関する条約の批准を検討するようにも勧告するものである。 28.委員会は、当局が、家庭における不当な取扱いおよび虐待ならびに学校における体罰の問題に特段の注意を向けるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、家庭または学校におけるあらゆる形態の身体的または精神的罰を防止しかつそれと闘うための情報キャンペーンおよび教育キャンペーンを行なうこと、および、そのような不当な取扱いまたは虐待の被害を受けた子どもが利益を得られるようにすることを目的とした苦情申立ての仕組みを創設することの必要性を強調するものである。委員会はさらに、そのような不当な取扱いおよび虐待の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための仕組みを創設するよう、勧告する。 29.委員会はさらに、労働法(1959年第91号法)のうち雇用に関わる子どもの保護規定を見直し、かつ条約、とくに第32条と一致させるよう勧告する。委員会は、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するよう提案するものである。 30.委員会は、締約国が、条約第37条、第39条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則といったこの分野における他の国連基準の精神にしたがって少年司法制度の改革を行なうことを構想するよう、勧告する。この目的で、委員会は、締約国が〔国連〕人権高等弁務官/人権センターおよび事務局の犯罪防止刑事司法局の技術援助プログラムを利用するよう提案するものである。委員会はさらに、少年司法の運用の対象となった子どもの苦情を受け付けかつ検討する独立監視機関の設置を、シリア当局がしかるべき形で検討するよう提案する。 31.委員会は、条約の原則および規定の精神にしたがって締約国が行なっている法律の見直しおよび政策の採用を踏まえ、とくに保健および家族計画、教育および人権教育ならびに子どもの虐待(早期婚および家庭における子どもの性的虐待を含む)の分野で、ユニセフならびに国内の非政府組織および国際的非政府組織と緊密に協力しながら研究を行なうよう勧告する。 32.最後に、締約国がその第1回報告ならびに委員会との議論の議事要録およびここに採択された総括所見を刊行する意図があることを想起しながらも、委員会は、条約第44条6項に照らし、政府、議会および関心のある非政府組織を含めた一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起することを目的として、そのような刊行物を公衆一般が広く利用できるようにするよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/116.html
総括所見:バヌアツ(第1回・1999年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.111(1999年11月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1999年9月24日に開かれた第566回~第567回会合(CRC/C/SR.566-567) においてバヌアツの第1回報告書(CRC/C/28/Add.8) を検討し、1999年10月8日に開かれた第586回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書、および委員会の事前質問票(CRC/C/Q/VAN/1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国と行なった建設的かつ開かれた対話に心強い思いを感じ、かつ、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する積極的な反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接携わる代表が出席したことにより、締約国における子どもの権利の状況をいっそう十分に評価できたことを認める。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国が、権利を侵害された子どもによる苦情を処理する権限を与えられたオンブズマン事務所を設置する取り組みを行なったことを評価する。これとの関連で、委員会は、学校における体罰の使用の禁止を促進し、かつ条約の原則および規定に関する警察の意識の向上を促進するためオンブズマンが行なっている努力に留意するものである。 4.委員会は、条約が英語およびフランス語で入手可能とされたこと、および締約国が条約をビスラマ語に翻訳したことに留意する。 5.委員会は、プライマリーヘルスケアのサービスの分野で締約国が行なった努力により、子どもの生存および発達の機会が向上したことに留意する。 C.条約の実施を妨げる要因および困難 6.委員会は、締約国が直面する社会経済的、地理的および政治的困難により条約の全面的実施が妨げられてきたことを認める。とりわけ、委員会は、孤立しておりかつきわめて連絡困難なものもある分散した島々の地域共同体の子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで、締約国が課題に直面していることに留意するものである。委員会は、締約国がサイクロン、タイフーン、津波および洪水のような天災の被害を受けやすいこと、およびこの点に関して課題に直面していることを認める。委員会はさらに、人的資源の利用可能性が限られていることも条約の全面的実施に悪影響を与えてきたことに留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 D.1 実施に関する一般的措置 7.委員会は、国内法および慣習法が条約の原則および規定を全面的に反映していないことに懸念を表明する。委員会は、締約国が、条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で国内法の見直しを行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が包括的な子ども法の制定を検討するようにも勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるよう勧告するものである。 8.締約国が子ども事務所および国家子ども委員会の設置提案を作成したことには留意しながらも、委員会は、その提案がまだ実施されていないこと、およびこれらの機関の作業方法が明確に規定されていないことを依然として懸念する。委員会は、当該提案が可能なかぎり早期に実行に移されること、および当該事務所および委員会が効果的に設置されることを確保するため十分な資金が配分されることを確保する目的で、締約国があらゆる必要な措置をとるよう強く勧告するものである。 9.委員会は、締約国が、保健、人口および家族計画、栄養、水の供給および環境衛生、農業、牧畜および漁業ならびに教育に焦点を当てた子どものための国内行動計画(1993~2000年)を作成したことに留意する。しかしながら、委員会は、この計画を実施するための予算が具体的に配分されていないことを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、子どものための国内行動計画を実施するためにあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国がとくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 10.委員会は、達成された進展の監視および評価、ならびに子どもに関わって採択された政策の影響の評価を行なう目的で、条約が対象とするあらゆる領域についてかつあらゆるグループの子どもとの関連で細分化されたデータを体系的かつ包括的に収集することを可能とするデータ収集機構が、締約国に存在しないことを懸念する。委員会は、締約国が、条約に一致した包括的なデータ収集システムを発展させるよう勧告するものである。このシステムは、18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ、障害をもった子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、および、離島および都市部の不法占拠地域で生活する子どもを含む、とくに傷つきやすい立場に置かれた子どもを具体的に重視するべきである。 11.委員会は、条約第4条に照らし、子どもにために予算を配分することに対して十分な注意が払われていないことを依然として懸念する。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利が利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで実施されることを確保するために予算を優先的に配分することにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励するものである。 12.委員会は、条約に関する情報の普及に関して締約国が行なっている努力に留意し、かつ、とくに人口の82%が離島地域で生活していることに照らして直面している課題を認識する。しかしながら、委員会は、条約およびそこに掲げられた権利中心アプローチに関する一般層の認識が依然として不十分であることを懸念するものである。委員会は、締約国が、絵本およびポスターのような視覚的補助具によるものも含め、条約を促進するためにいっそう創造的な方法を発展させるよう勧告する。加えて、委員会は、条約の原則および規定を促進するにあたって伝統的なコミュニケーション手段を用いるよう勧告するものである。委員会はまた、裁判官、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として十分かつ体系的な訓練および(または)感受性増進を行なうようにも勧告する。委員会はさらに、地域共同体の首長、宗教的指導者、NGOおよびメディアを含む市民社会の子どもの権利に関する感受性を増進し、かつ条約の普及および促進へのその参加を促進するために努力するよう勧告するものである。締約国がとくに人権高等弁務官事務所、ユニセフおよびユネスコの技術的援助を求めることが提案されるところである。 D.2 子どもの定義 13.委員会は、刑事責任年齢(10歳)が低いことに関して懸念を表明する。委員会はまた、男子の法定最低婚姻年齢(18歳)と女子のそれ(16歳)とのあいだに格差があることも懸念するものである。委員会は、締約国が、国内法を条約の規定および原則と全面的に一致させるためその見直しを行なうよう勧告する。 D.3 一般原則 14.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定ならびに政策およびプログラムにおいて条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることを、懸念する。条約の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、あらゆる法改正、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与える事業、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するためにさらなる努力が行なわれなければならないというのが、委員会の見解である。 15.委員会は、伝統的な慣行および態度が条約、とくに第12条の全面的実施をいまなお制限していることを懸念する。委員会は、子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励するため、締約国が、地域共同体の首長、宗教的指導者および市民社会の関与を得て体系的アプローチを発展させることを追求するよう、勧告するものである。 D.4 市民的権利および自由 16.学校における体罰が法律で禁じられていることは承知しながらも、委員会は、伝統的な社会の態度が家庭、学校、ケア制度および少年司法制度ならびに社会一般における体罰の使用をひきつづき奨励していることを、依然として懸念する。委員会は、締約国が、体罰の悪影響に関する意識を喚起し、かつ、家庭、学校、ケア施設その他の施設において代替的形態の規律の維持およびしつけが子どもの尊厳に一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれることを確保するための措置を強化するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、親、教員および施設で働く専門家を対象として、代替的形態の処罰の使用を奨励するためカウンセリングその他のプログラムを提供するよう勧告する。加えて、委員会は、学校における体罰の禁止の全面的かつ効果的実施を確保するため、あらゆる必要な措置をとることを強く勧告するものである。 D.5 家庭環境および代替的養護 17.子どもの性的虐待を含む家族間暴力を防止しかつそれと闘うためのデータ、適切な措置、機構および資源が存在しないことは、委員会にとって重大な懸念の対象である。条約第19条に照らし、委員会は、これらの慣行の規模および性質を理解し、十分な措置および政策を採択し、かつ態度を変えることに資する目的で、締約国が性的虐待を含む家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、家族間暴力ならびに子どもの不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)の事件が、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつ、子どもに優しい司法手続のなかで適切に調査され、かつ加害者に対して制裁が科されるべきことも勧告するものである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条にしたがって強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合すること、および、被害者が犯罪者扱いされかつスティグマ(烙印)の対象となるのを防止することを確保するための措置も、とらえるべきである。委員会は、締約国がとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めるよう勧告する。 D.6 基礎保健および福祉 18.委員会は、健康状況全般を向上させるため締約国が行なっている努力に留意する。とりわけ、委員会は、過去10年のあいだに乳児死亡率および5歳未満児死亡率のいずれもが急速に減少したこと、および、予防接種の対象範囲が相当に拡大したことに留意するものである。委員会はまた、締約国が食糧栄養プログラムを実施したことにより、栄養不良の発生件数が減少したことにも留意する。しかしながら、委員会は、マラリア、呼吸器系感染症および下痢性疾患によって締約国の子どもの生存および発達がひきつづき脅かされていることを懸念するものである。委員会はまた、訓練されたヘルスワーカーの人数が不十分であること、保健従事者の分布に地域共同体間で大きな格差があること、一部の島の地域共同体において保健サービスへのアクセスが限られていること、および、とくに遠隔地において衛生状態が悪くかつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることも、懸念する。委員会は、子どもの健康状態を改善し、かつプライマリーヘルスサービスへのアクセスの向上を促進するため、締約国が適切な資源を配分し、かつ包括的な政策およびプログラムを発展させるよう勧告するものである。委員会は、締約国が、妊産婦、子どもおよび乳児の死亡件数を減少させ、母乳育児の実践を向上させ、かつ、とくに傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うための努力をひきつづき行なうよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、安全な飲料水へのアクセスを高め、かつ衛生状態を改善するために追加的な措置をとるようにも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、プライマリーヘルスケアを向上させるためにユニセフ、WHOその他と行なっている技術的協力プログラムを継続するよう奨励する。 19.障害をもった子どもへの援助およびそのリハビリテーションに関する「バヌアツ障害者協会」の活動には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、障害児の権利を保護するために行なわれてきた努力が不十分であることを依然として懸念する。委員会は、締約国が、障害児のためのプログラムおよび施設に対して必要な資源を配分するよう勧告する。障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子どもの権利」に関する一般的討議の日に採択された委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ障害児の教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励することも、勧告されるところである。委員会は、締約国が、とくにユニセフおよび世界保健機関に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く者の訓練のための技術的協力を求めるよう勧告する。 20.委員会は、事故、自殺、暴力および中絶を含む青少年の健康の分野において、プログラムおよびサービスの利用可能性が限られていることおよび十分なデータが存在しないことに懸念を表明する。委員会は、10代の妊娠および性行為感染症(STD)の発生件数が多くかつ増加していること、および、青少年のあいだでアルコールおよびタバコの使用が蔓延していることをとくに懸念するものである。委員会は、とくに事故、自殺、暴力、アルコール消費およびタバコの使用との関連で、締約国が青少年の健康に関する政策を促進するための努力を増進するよう勧告する。委員会はさらに、若年妊娠およびSTDの悪影響を含む青少年の健康上の問題に関して、包括的かつ学際的な研究を行なうように提案するものである。加えて、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意なしでアクセス可能な子どもに優しいカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が十分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることも勧告されるところである。締約国は、青少年を対象としたリプロダクティブ・ヘルス教育プログラムを強化し、かつ、リプロダクティブ・ヘルスに関するあらゆる訓練プログラムに男性が含まれることを確保するよう、促される。 D.7 教育、余暇および文化的活動 21.委員会は、とくに離島の地域共同体における伝統的教育の役割の重要性に留意する。委員会は、初等教育がいまなお締約国のすべての子どもを対象として義務的かつ無償のものになっていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、教育へのアクセスが限られていること、女子の就学率が低いこと、識字率が低いこと、教育の質が貧弱であること、全体的に関連の教材その他の資源が存在しないこと、および、訓練を受けた/資格のある教員の人数が不十分であることに、重大な懸念を表明する。教育カリキュラムに地方言語を導入するための努力が行なわれていないことも懸念されるところである。教育が子どもの行動に悪影響を与えると依然として考えている親が多い。条約第28条1項(a)に照らし、すべての者を対象とした無償の義務教育を合理的な年数内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を締約国が2年以内に作成し、採択し、かつ委員会に提出するよう約束することが、勧告されるところである。委員会はさらに、制度のあらゆる段階における教育へのアクセスを向上させ、女子の就学率をとくに中等段階で高め、追加的な指導手段として地方言語を導入し、かつ教育の全体的質を改善する目的で、締約国が教育制度の研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、教育の重要性を促進し、かつこの点に関する文化的態度に前向きな影響を及ぼすため、公衆教育キャンペーンを行なうようにも勧告するものである。締約国がとくにユニセフおよびユネスコの技術的協力を求めることが勧告されるところである。 D.8 特別な保護措置 22.委員会は、児童労働および子どもの経済的搾取に関するデータが不十分であることを懸念する。中等教育へのアクセスが限られていること、およびその結果として子どもが早期に雇用されていることを踏まえ、委員会は、締約国がとくにインフォーマル部門における児童労働および経済的搾取に関する研究を行なうよう提案するものである。 23.委員会は、少年司法手続を含む司法との関連で締約国が直面している問題について懸念する。委員会は、少年非行を取り扱う伝統的な方法に関して提供された情報を認知し、かつ締約国が以下のことを行なうよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならび少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の国際連合基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するための措置をとること。 (b) 少年司法制度に携わるすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する訓練プログラムを導入すること。 (c) 少年司法および警察の訓練の分野において、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワーク、ユニセフおよび少年司法技術的助言援助調整委員会の技術的援助を求めることを検討すること。 24.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む一般公衆のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、幅広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。
https://w.atwiki.jp/wikiwiki2/pages/86.html
無縁社会の正体河合隼雄・長田弘 『子どもの本の森へ』 岩波書店 1998.2 (河合)子どもの本は人間の心の働きをすっぱりと書いているのが魅力。 紹介図書リスト フィリッパ・ピアス Ann Philippa Pearce 1920/1/23 - 2006/12/21 『ハヤ号セイ川をいく』 県立 市民 市立 1955 Minnow on Say 県立 『トムは真夜中の庭で』 県立 市民 市立 1958 Tom's Midnight Garden 県立 幽霊を見た10の話 県立 市民 『まぼろしの小さい犬』 県立 青森 市立 1962 A Dog So Small 県立 バウム オズの魔法使い (河合)アメリカで箱庭療法の最後にオズの魔法使いを置く。 県立(訳、原書) 市民7F児・文学J93ハ 市立IW081イ 石井桃子 ノンちゃん雲に乗る スティーブンソン 宝島 7F録音(カセット) おだんごぱん 県立 7F児・昔話絵本JMEワキ国1 市立JEフ 井伏鱒二 『しびれ池のカモ』 県立 7F児・文学Jイ 市立IW081イ ロフティング ドリトル先生物語全集全12巻 原著8F海外資料W933L 県立 スティーブンソン 自殺クラブ 県立(訳、原著) 市立書庫J933ス カウフマン 赤い月と暑い時(1,2) 市立書庫943カ デフォー ロビンソン・クルーソー (大人の物語) 県立(完訳、原著) 7F児・文学J93テ 市立(原著、書庫) 大学旧(正・続2冊、岩波) スウィフト ガリヴァー旅行記 (大人の物語) 県立 9F 市立(原著、書庫正・続) 大学新908.3Y99.6 マルタン・デュ・ガール チボー家の人々 チボー家のジャック ル=グウィン 『ゲド戦記全4巻』 県立(訳、原書?) 7F児・文学J93ル 市立933ル クローバー (ル=グウィンの母の作) 『イシ 北米最後の野生インディアン』 県立 8F社会科学389.2ク 大学旧935.Kr6 イシ 二つの世界に生きたインディアンの物語 県立 7F書庫 市立書庫J933ク エンデ モモ はてしない物語 モンゴメリー 『赤毛のアン』 県立(訳、原書) 市立(完訳)933モ オールコット 若草物語 県立(訳、原書) 7F児・文学J90コ 市立書庫J933オ ケストナー エミールと探偵たち 飛ぶ教室 『点子ちゃんとアントン』 リンドグレーン 『名探偵カッレくん』 県立(2005) 7F児・文学J94リ(1986) 市立(2005)IIW081イ コルチャック 子どものための美しい国 6F読むY91コ 市立書庫J989コ バリー ピーター・パンとウェンディ (無意識の住人:河合) ローリングズ 子鹿物語全3巻 (ディグニティがテーマ) 県立 7F児・文学J93ロ ザルテン バンビ 県立 市立J943ザ 宮澤賢治 風の又三郎 (モリブデン鉱採掘のためにやってきた) 『銀河鉄道の夜』 (死の送りの物語) アンネ・フランク アンネの日記(完全版) 県立 7F児・文学J94フ 市立949フ 大学旧 トルストイ 人はなんで生きるか 県立(1986) 9F 市立書庫J983ト イワンのばか 県立(2000) 7F児・文学J98ト 市立IW081イ カルヴォーノ みどりの小鳥 県立 7F児・昔話JS97カ 河合隼雄 「明恵 夢を生きる」 県立 8F人文科学140.8カ9(河合隼雄著作集 9) 大学新146.1Ka93 カニグズバーグ Elaine Lobl Konigsburg 1930.2.10 - カニグズバーグ著作集1-9 市民7F児・文学 市立J933カ 県立 クローディの秘密 1967 From the Mixed-up Files of Mrs. Basil E. Frankweler 『魔女ジェニファとわたし』 1967 Jennifer, Hecate, Macbeth, William McKinely, and Me, Elizabeth ロールパン・チームの作戦 1969 About the B'nai Bagels 『ぼくと<ジョージ>』 1970 George ドランゴンをさがせ 1974 The Dragon in the Ghetto Caper マーヒー 足音がやってくる 県立 9F 市立書庫J933マ めざめれば魔女 9F 市立書庫J933マ ホワイト シャーロットのおくりもの 県立 9F 市立(2006)J933マ ノース はるかなるわがラスカル 7F外国文学933ノ 市立書庫J933ノ 河合隼雄 少年動物誌 県立 8F自然科学480.4カ8 市立書庫J480カ グレーアム 『たのしい川べ』 県立 7F書庫岩波世界児童文学集4 市立J908イ4 × ファージョン ムギと王子さま トールキン 指輪物語全9巻 県立(訳、原書) 7F児・文学J93ト 市立書庫J933ト (絵本) レオーニ あおくんときいろちゃん 県立(原著、訳) 7F児・易しいお話JYEレオ 市立書庫JEシ ミルン クマのプーさん 県立 7F児・文学J93ミ 7F児・大きい絵本J93ミ(英語版)市立BM書庫 リンゴグレーン 長くつ下のピッピ 県立 7F児・文学J94リ 市立J943リ カール はらぺこあおむし 県立 7F児・楽しい絵本JEカル 市立りんごコーナーRCEP(原著) バンサン アンジュール:ある犬の物語 県立 7F児・絵本JEハン国4 市立JEブ トミー=アンゲラー 『すてきな三にんぐみ』 県立 7FJEアン 市立JEウ シュルヴィッツ よあけ ウィリアムズ しろいうさぎとくりうさぎ シルヴァスタイン Shel Silverstein 『ぼくを探しに』 県立 6FY76シル 市立 大学 公 The Missing Piece 市立G E H センダック 『かいじゅうたちのいるところ』 バートン ちいさいおうち グリーン 二十一の短篇 センダック まどのそとのそのまたむこう クーニー にぐるまひいて センダック ちいさなちいさな えほんばこ 全4巻 ウェルズ ローアン・オーク邸のゆうれい:フォークナーのゆうれい話 大図解 九龍城 岩波書店 谷川俊太郎 『ことばあそびうた』 県立(2冊) 7FJ91タ国2 市立(2冊) 大学 「絵本 平家物語」 講談社 (安野光雅絵) 県立 6F楽しむY76 市立書庫726ア × 北原白秋訳 まざあ・ぐうず 原民喜のガリヴァー旅行記 9F 長田弘 感受性の領分 × 漫画吾輩は猫である コールズ 子どもの神秘生活:生と死、神・宇宙をめぐる証言 県立 8F社会科学371.4コ 三遊亭円朝作 怪談 牡丹灯籠 7FB913.7サ 大学旧 柳田国男 「明治大正史 世相編」 チェコフスキー 2歳から5歳まで 9F 市立376.1チ マルシャーク 森は生きている 県立 7F児・文学J98マ 市立IW081イ 初版グリム童話集全4巻 白水社 県立 7F外国文学943ク 市立943グ 大学943G86 アーサー・ランサム全集全12巻 県立 7F児・文学J93ラ × ルイス ナルニア国物語全7巻 星の王子さま
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/213.html
総括所見:イタリア(第1回・1995年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.41(1995年11月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年10月31日および11月1日に開かれた第235回~第238回会合(CRC/C/SR.235-238)においてイタリアの第1回報告書(CRC/C/8/Add.18)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年11月17日に開かれた第259回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国が、ハイレベルかつ学際的な代表団を通じて、委員会とのオープンかつ実りのある対話に携わってくれたことに謝意を表する。委員会は、事前質問事項(CRC/C.10/WP.2)に記載された質問への回答としてイタリア代表団が文書回答を提出したこと、および、対話の途中で統計データが提供されたことを歓迎するものである。この補足的情報のおかげで委員会が締約国との建設的対話に携わることが可能になったことに満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国報告書の作成に関する委員会のガイドラインに政府が従っていないこと、および、事前質問事項で取り上げられているいくつかの問題が未回答のままになっていることに遺憾の意を表する。 B.積極的な側面 3.委員会は、1991年の条約発効以来、子どもの権利を促進しかつ保護するためにイタリア政府がとった立法上および行政上の措置を歓迎する。委員会は、イタリアにおいて条約が自動執行力を有しており、したがってイタリアの裁判所による直接適用が可能でありかつ実際に適用されてきたこと、および、法の抵触がある場合には国内法よりも国際人権基準が優先するという原則をイタリアが採用していることを、評価するものである。委員会はまた、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を目的とした予備的措置がとられたことも歓迎する。 4.委員会は、イタリアにおいて、子どもの権利の保護および監視のためのさまざまな機関および機構、とくに、議会内に設置された子ども問題特別委員会、首相官邸内に創設された家族・社会問題部、子どもに関するデータ収集を委託されている国家子ども保護センター、および、同国家センターによって収集されたデータを分析し、かつ議会に対する年次報告書を作成する国家未成年問題検討局が設置されたことを歓迎する。 5.委員会は、児童保健および児童福祉の分野で達成された進展(とくに周産期死亡率の顕著な減少を含む)に、満足感とともに留意する。 C.主要な懸念事項 6.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための活動を監視する、総合的かつ統合された機構が存在しないことを懸念する。委員会は、さまざまな関係政府機関間のならびに全国レベル、地方レベルおよび自治体レベル間の調整が不十分であること、および、条約のすべての領域を対象とした、かつイタリア国内のすべての集団に属する子どもを考慮に入れた包括的なデータ収集ネットワークが必要であることを、強調するものである。このようなデータ収集ネットワークは、子どもの権利に関する目標設定型の事業を実施し、かつ立法上および行政上の措置の効果を評価する上で必要不可欠である。 7.委員会は、条約の原則および規定が子どもおよび大人の間で同様に広く知られるようにし、かつ、子どもに関わるさまざまな専門家集団を対象として条約の原則および規定に関する十分な研修を行なうための措置が不十分であることを懸念する。 8.条約第4条の実施に関して、委員会は、経済的、社会的および文化的権利が利用可能な資源を最大限に用いることにより実施されることを確保するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。委員会にとっては、締約国内においても、かつ国際開発援助の文脈のなかでも、社会部門に対して不十分な支出しか行なわれていないように思える。委員会はまた、子どもに関する問題に対する市民参加が立ち遅れていることも懸念するものである。 9.委員会はまた、条約の基本原則、とくに第2条、第3条および第12条が国内法および政策立案において常に十分に反映されているわけではないことも懸念する。 10.委員会はまた、締約国の北部と南部間に依然として際立った経済的および社会的格差が存在し、そのことが子どもたちの状況に悪影響を与えていることも懸念する。 11.差別の禁止に関わる条約第2条に関して、委員会は、貧困家庭およびひとり親家庭の出身の子ども、外国人およびロマの子どもならびに婚外子といった、脆弱なおよび不利な立場に置かれた集団の子どものニーズを評価しかつこれに対応するためための十分な措置がとられていないことを懸念する。委員会は、このような不利な立場に置かれた集団に属する子どもが、世間の眼によってスティグマを付与され、学校を中退し、非公然労働または非合法活動にさえ従事する(組織犯罪活動で利用されることを含む)可能性がより高いことを懸念するものである。 12.委員会は、身体的および性的虐待ならびに暴力を含む児童虐待が家族内に存在すること、これとの関連で刑法によって与えられる保護が不十分であること、および、そのような虐待の被害を受けた子どもが心理社会的に回復するための十分な措置が欠けていることを見過ごせない。 D.提案および勧告 13.委員会は、政府部局間ならびに中央、地方および自治体の公的機関間等における条約の実施の調整および監視を目的とした、全国的かつ恒久的な機構を発展させるよう勧告する。委員会はまた、政府が、子どもの権利のために活動している非政府組織とのいっそう緊密かつ活発な協力を検討するようにも提案するものである。このような措置は、市民社会との継続的対話、および、子どもの権利の促進および保護の分野における政府の活動の吟味を促進することに貢献できる。 14.委員会は、子どもの権利の分野における十分な政策立案を確保する目的で、子どもに関するデータ体系的データ収集および子どもに関係する問題(家族構造の変化を含む)についての調査研究を行なう勧告する。 15.委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定を子どもおよび大人に対して同様に広く知らせるための系統的アプローチをさらに発展させることにより、子どもの権利の促進に関する一般の意識を高め、かつ子どもの権利の促進に対する市民の参加を向上させるよう奨励したい。同様に、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家(教員、ソーシャルワーカー、法執行官、司法職員および国連平和部隊のイタリア派兵部隊要員を含む)のカリキュラムに、条約に関する研修が編入されるべきである。 16.締約国は、条約の規定および原則、とくに差別の禁止、子どもの最善の利益および子どもが自由に意見を表明する権利の原則を法律および実務に全面的に反映させるため、努力を継続すべきである。これとの関連で、委員会は、婚内子および婚外子の平等な取扱いを全面的に確保する目的で現行法を修正するよう、勧告する。 17.貧困下で暮らしている子ども、南部の子ども、ロマの子どもおよび外国人の子どものようなとくに脆弱な立場に置かれている子どもに対する差別的な態度および偏見が悪化することを防止するため、さらなる措置がとられるべきである。政府は、このような子どもの取扱いに関して、かつ、このような子どもがイタリア社会に可能なかぎり最大限に統合することに好ましい環境を創り出すための、いっそう積極的な立場および首尾一貫した政策を採用することを検討するべきである。条約第18条および第27条に照らして家族が子どもの養育責任を果たすことを援助する目的で、責任ある子育ておよび困窮家庭に対する支援のために包括的な措置をとることにより、家族の崩壊を制限し、施設に措置される子どもの数を減らし、かつ、施設措置の利用を最後の手段に限定することが求められる。 18.委員会は、イタリア政府に対し、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に照らし、条約第4条の全面的実施に特段の関心を払うよう奨励する。委員会はまた、依然として存在する経済的および社会的格差を克服する方向に向けて、中央、地方および自治体のレベルで資源を公正に配分する必要があること、および、ひとり親家族を含む、社会で最も不利な立場に置かれている集団に対して特段の関心を払う必要があることも強調するものである。 19.委員会はまた、締約国が、子どものための社会的優先課題をいっそう重視できないかどうか評価することを目的として、条約の原則を、国際開発援助を強化する枠組みとして利用するようにも提案する。 20.委員会はまた、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の明確な防止および禁止ならびに家庭における体罰の禁止が国内法に反映されるべきことも提案する。 21.委員会は、労働力としての子どもの違法な使用を防止し、かつ少年非行および犯罪活動における子どもの利用を防止するため、不利な立場に置かれている家族への援助を含む措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、条約第28条に照らし、職業教育の導入のために学校のカリキュラムの十分な修正を行なうことが、中退率の削減に貢献し、かつ、子どもが違法な労働市場に参入しまたは犯罪活動にさえ関与することを防止する役に立つと思われることも、提案されるところである。 22.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答、その検討の議事要録ならびに委員会の総括所見を、締約国内で可能なかぎり広く配布し、かつ、議会に送付してさらなる議論およびフォローアップを求めるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国家未成年問題検討局が議会に提出する年次報告書を委員会に送付することも要請するとともに、当該年次報告書、および、今後5年間の具体的な目標および時間的枠組みを掲げた行動計画において、イタリアの第1回報告書の検討の際に委員会が特定した優先領域(関連の議事要録に記録されている)を考慮に入れるべきことを提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/129.html
子どものような恋 「あれ、姫条君?」 目の前で驚く小波美奈子に、姫条はむすっとした表情で言った。 「美奈子、これから暇か?」 ここは大学の校門前。 姫条は彼女である美奈子を連絡せずに迎えにきていたのだが、美奈子と一緒に出てきた人物の顔を見て機嫌を損ねていた。 「え、うん。大丈夫だよ」 「美奈子……それじゃ、また明日な」 「あ、うんまたね! 珪君!」 美奈子の横をすり抜けて、葉月珪が姫条を一瞥して去って行った。 姫条はまだムカつきながら、美奈子にヘルメットを投げて寄越した。 「乗りや」 「うん!」 笑顔で答える美奈子は、姫条のバイクの後ろにまたがった。 それを確認して姫条もバイクに乗る。 「どこ行くの?」 「……俺の家」 「お腹空いてるの?」 「何でや?」 「いや、なんか機嫌悪そう?」 姫条の機嫌が悪いのに気付いたらしい美奈子だが、原因は空腹と思っているようだ。 俺はどんだけお子様やねん。 と、心の中で突っ込むが、先ほどから葉月と一緒に歩いていた美奈子に嫉妬しているのだから、空腹で機嫌が悪いのと大差ない。 「ほな行くで。しっかり掴まっときや」 「はあい」 今口を開くと余計なことを言いそうなので、姫条は美奈子が自分の腰を掴んだのを確認するとアクセルを回した。 自宅に着いてから、姫条は無言でコーヒーを入れていた。 不機嫌の原因は葉月だけではない。 「ねえ姫条君。今日晩ご飯、何か作ろうか?」 これだ。 この、姫条君という美奈子の呼ぶ呼び方にもムカついているのだ。 高校の卒業式の日に姫条から告白してOKをもらい、付き合いはじめて2年。 順調な交際を続けていたが、未だに美奈子は姫条の事を名前で呼んでくれない。 葉月の事は珪って呼ぶのに、何でやねん…… そこで姫条は気付いた。 やっぱり葉月が原因だ。 子どもみたいと言われるかもしれないが、それだけ姫条は美奈子に惚れている。 男の嫉妬は醜いなどというが、関係ない。 腹が立つものは仕方ないのだ。 「……なあ、美奈子ーーー」 「ん? なあに?」 可愛らしく首を傾げる美奈子に、姫条は入りたてのコーヒーをカップに注いで手渡しながら尋ねた。 「お前、葉月の事好きなんちゃうんか?」 「ーーーは? え? 珪君? どうして?」 言った後に少し後悔したが、もう後には引けない。 きょとんと姫条を見上げる美奈子に、姫条はまたぎりぎりと胸がかきむしられる。 美奈子の口から珪という単語が出る度、どんどんと深みにはまって行く。 「今日も一緒に帰っとったし、なんか仲良さそうやんか。高校の時もなにかと一緒におったみたいやし」 ほかの聞き方があるはずなのに、どうしても刺のある言葉になってしまう。 美奈子は訳が分からないといった顔で、じっと姫条を見つめていた。 「あいつのこと、もし好きなんやったら、無理して俺と付き合ってくれんでもええんやで?」 「……どうしてそんなこと言うの?」 姫条は我に返った。 美奈子の声が微かに震えている。 「あ、いやっ、ちゃう……」 「もしかして、誰か好きな人でも出来たの?」 「ーーーはあっ?」 姫条は驚いた。 美奈子の言った言葉に目が丸くなる。 「そんな遠回しな言い方しなくてもいいのに……そっか。だから今日なんか機嫌悪かったんだね」 そう言って美奈子はコーヒーをテーブルに置くと立ち上がった。 「ごめんね。私そういうの鈍いから全然気付かなくって……」 「お、お前何言うてんねん!」 慌てて美奈子の腕を掴む。 「他に好きな人が出来たから、別れて欲しいって事でしょ?」 「アホっ! んな訳あるか! ちゃう、俺が言いたいのは……ああ~~~~! もうっ!」 がばっ! と美奈子を抱きしめると、姫条は何度もごめんと謝った。 「ちゃうねん! そうやないねん……俺、葉月と仲良うしとる美奈子見て嫉妬しててん……あいつの事は珪君って呼ぶのに、俺のことはいつまでたっても姫条君やしーーーせやからホンマは俺じゃなくて葉月の事が好きなんちゃうかって……」 もやもやを吐き出した姫条は、少しだけスッキリした。 なんという自己満足。 そんな姫条の気持ちが伝わったのか、美奈子がぎゅっと姫条の背中に腕を回す。 「ーーー姫条君の、馬鹿……」 小柄な美奈子の体は姫条の腕の中にすっぽりと収まる。 女の子特有の柔らかな感触が、姫条の心を落ち着かせて行く。 ああ、こんなにも美奈子は自分の近くにいるというのに、何を一人で勝手に落ち込んで美奈子にまで八つ当たりをして…… 大人になりきれない自分が情けなくなる。 「まどかって呼んで?」 美奈子の髪にキスを落としながら言った。 それに静かに美奈子は答える。 「……まどか」 「もう一回」 「まどか」 「うん」 「まどか…………の、ばかっ!!」 ドンッ! 「わあっ!?」 姫条は突然突き飛ばされ、反動でソファーに倒れた。 驚いた顔のまま見上げると、美奈子が怒った顔で睨んでいる。 「す、すまんっ! 悪気はなかったんや! ただちょっとばっかり素直になれんかっただけやねん!」 「違うもんっ!」 「……は?」 泣きそうな顔で怒る美奈子に、姫条は体を起こしてじっと足下を睨みつづける美奈子の手を遠慮がちに引いた。 美奈子は引かれるまま姫条の隣りに座る。 向かい合うように座ると、美奈子が姫条から視線を逸らしたまま言った。 「高校の時の事、覚えてないの?」 「高校の時? どういうことや?」 「ーーー前に私がなっちんの真似してまどか君って呼んだら、すっごい嫌そうな顔して『その呼び方勘弁して~な』って言ったじゃない」 「……あ」 姫条は背筋が凍った。 確か、まだ美奈子と仲良くなりはじめた頃、奈津実に「まどか」と呼ばれていたのを美奈子が聞いて、まどかと呼んだことがあった。 まどかという名前が嫌いで人に名前で呼ばれるのを嫌がっていた姫条は、美奈子にやめてくれと言ったのだ。 固まって何も言わない姫条に、美奈子はふうとため息を吐いた。 「だからずっとまどかって呼ぶの我慢して姫条君って呼んでたのに、それを珪君の事を持ち出して変なこと言い出すなんて信じられない……私、本当に別れようって遠回しに言われてるのかと思っ……」 そこで美奈子はとうとう涙を零した。 「うわっ、泣かんといてや! 俺が悪かった。今回ばかりはほんまに全面的に俺が悪いっ! あ~もう、俺のアホっ!」 急いで近くにあったティッシュを数枚引き抜いて美奈子に渡す。 美奈子はそれを引ったくるように取ると、ちーんと鼻をかんだ。 「ぐすっーーー私が、まどか以外の男の人を好きになる訳ないじゃない……」 姫条は一瞬言葉を失った。 なんてストレートな言葉だろう。 嫉妬して空回りしていた自分があまりにもちっぽけで、子どもで、くだらなく見える。 こんなに美奈子の事が好きなのだと、改めて気付かされる。 「すまん……せやけど、その言葉。そっくりそのままお前に返すで?」 「まどか……」 「それから、関西人に馬鹿は禁物や。アホって言わな」 「ーーーまどかのアホ」 まだ涙の止まらない美奈子の体を優しく抱きしめ、姫条は心に誓った。 もう、二度と回りくどいことはしない。 ずっと、大切にすると。 END =あとがき= 最後までお読みくださり、ありがとうございました。 なんだろう……なんか自分で書いててイラッとしました。 なんでだろう?(二度言う。笑) というか、もしかして私ってば姫条のSSは初書きじゃない?すげー。 何年前からときメモやってるんだよ。ってぇ話しですよ。それに姫条好きなのに。 お題は「子どものような恋」で突発的に書いたんですが、嫉妬の仕方を子どもっぽくしてみたつもりです。 うん、あくまでつもり。。 そして関西弁はしつこいようですが偽物…以下略♪ 管理人、ときメモやる時相手の名前呼ぶのあんまり変えないんですよね。 面倒というか、忘れるんでw だから、姫条の事も「まどか」って呼んだことなかったんで、今回書けて少し満足です。 しかしまどかって名前素敵ですよね〜。もし子どもがいたら「まどか」とか「かおる」って名前付けたいっすw それでは、また~ お帰りの際は、窓を閉じてくださいv ときメモGSに戻る
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/157.html
総括所見:ニュージーランド(第2回・2003年) 第1回(1997年)/第3回・第4回(2011年)/第5回(2016年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.216(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月18日に開かれた第896回および第897回会合(CRC/C/SR.896 and 897参照)において、ニュージーランドの第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.4)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合(CRC/C/SR.918参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、包括的であり、優れた形式および内容を有しており、前回の勧告のフォローアップについて詳細に記述され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確に理解することを可能にした、締約国の定期報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、対話についておよび議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応について歓迎の意を表するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が、ILOの最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を2001年に批准したこと、国連・国際組織犯罪防止条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を2002年に批准したこと、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に1998年に加入したこと、および、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を1999年に批准したことを、歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.3)の検討後に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.71)に掲げられた勧告の実施に対して締約国が注意を払ってきたことは認めながらも、委員会は、一部の勧告について十分な対応が行なわれていないことに懸念とともに留意する。委員会はとくに、刑事責任年齢および最低就労年齢を含む国内法の条約との調和に関する勧告(パラ23)、ならびに、体罰の禁止、および、不当な取扱いおよび虐待の被害者の回復を確保するための機構の設置に関する勧告(パラ29)について懸念を覚えるものである。 5.委員会は、これらの懸念をあらためて表明するとともに、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に表明するために持続的努力を行なうよう、促す。 留保 6.締約国が条約に付した留保の撤回を検討中であることには留意しながらも、委員会は、このプロセスの進みが遅く、かつまだ留保の撤回に至っていないことに失望の念を抱く。委員会は、締約国の一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付された具体的留保について、依然として非常な懸念を覚えるものである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付された留保の撤回のために必要な、法律および行政手続の変更をいっそう迅速に進めること。 (b) 条約の適用をトケラウに拡張する目的で、トケラウの住民との議論を引き続き行なうこと。 立法 8.締約国が、1993年人権法との両立性を確保するために国内法の全般的再検討(「一貫性確保2000」)を行なったことに留意しつつ、委員会は、子どもに影響を与える法律の包括的再検討がこれに含まれていなかったこと、および、国内法が条約の原則および規定に全面的には一致していないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国が、子どもに影響を与えるすべての法律の包括的再検討を開始し、かつ、法律を条約の原則および規定と調和させるためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 調整および国家的行動計画 10.委員会は、ニュージーランドの「子どものための課題」および「若者発達戦略」が2002年に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための政策およびサービスの調整がいまなお不十分であるという締約国の懸念を共有するものである。 11.委員会は、締約国が、条約、「子どものための課題」および「若者発達戦略」を実施するすべての主体および関係者による活動を調整するための常設機構を設置するよう、勧告する。これらの文書が全面的に実施されかつ効果的な調整の対象とされることを確保するため、十分な財源および人的資源が配分されるべきである。 独立の監視 12.委員会は、子どもコミッショナー事務所を強化するための努力に留意するとともに、同事務所が子どものために行なっている活動および国家人権委員会の活動を歓迎する。しかしながら委員会は、国家人権委員会と子どもコミッショナー事務所との間で活動の重複が生じる可能性があること、および、後者がその活動を効果的に遂行するための十分な資源を有していないことを懸念するものである。 13.国内人権機関に関する一般的意見2号に照らし、委員会は、締約国が、子どもコミッショナー事務所および国家人権委員会が同様に独立していることおよび両機関が同一の政治的機関に報告することを確保し、かつ、これらの2つの期間の関係(それぞれの活動の明確な分担を含む)を定義する目的で、子ども法に関してコミッショナーが現在議会に提出している討論を活用するよう勧告する。加えて委員会は、締約国に対し、子どもコミッショナー事務所に対してその委任事項を遂行するための十分な人的資源、物的資源および財源が与えられることを確保するよう、促すものである。 子どものための資源 14.委員会は、貧困が根強く残っているにも関わらず、締約国が、前回の勧告どおり、経済改革政策が子どもに与える影響についての包括的研究を行なっていないことを懸念する。委員会はさらに、子どものための予算配分額に関する利用可能なデータが存在しないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どものための予算配分額に関する細分化されたデータを収集し、かつ、経済政策に関わるすべての取り組みが子どもに及ぼす影響を体系的に評価するよう、勧告するものである。 データ収集 16.委員会は、収集されるデータの性質と条約の原則および規定との間に整合性が存在しないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、先住民族の子どもに関する細分化されたデータに特段の注意を払いながら、条約のすべての分野を網羅したデータ収集システムを発展させるとともに、すべてのデータおよび指標が、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保するよう、勧告する。 普及および研修 18.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分な認識を有していないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般公衆およびとくに子どもたちを対象とした子どもの権利に関する公衆意識啓発キャンペーンを、マスメディア等を通じて行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、施設および子どもの拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を行なうこと。 2.子どもの定義 20.委員会は、刑事責任に関する最低年齢(10歳)が低すぎること、法律に抵触した18歳未満のすべての者に対して特別な保護が提供されているわけではないこと、および、就業に関する最低年齢が定められていないことに、懸念とともに留意する。 21.委員会は、締約国が、条約の原則および規定との一致を確保する目的で、子どもに影響を与えるさまざまな法律で定められた年齢制限を見直すよう勧告する。委員会はまた、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げ、かつ、これがすべての犯罪に適用されることを確保すること。 (b) 子ども、若者およびその家族法(1989年)の適用を、18歳未満のすべての者に対して拡大すること。 (c) 就業が認められるための単一のまたは複数の最低年齢を定めること。 3.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、締約国も認めているように、マオリの子ども、マイノリティの子ども、障害のある子どもおよび市民でない者のような、脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する差別が根強く残っていることを懸念する。委員会は、マオリ、太平洋諸島およびアジア系の子どもに関する諸指標が相対的に低い値を示していることを、とりわけ懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、差別の禁止を保障する現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を強化するとともに、いかなる事由に基づくものであれ、脆弱な立場に置かれたすべての集団に対する差別を撤廃するための積極的かつ包括的な戦略を採択するよう、勧告する。 24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、たとえば若者議会を通じ、国および地方のレベルで意思決定プロセスに子どもたちを包摂するために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、自己に影響を与える行政上および司法上の手続において意見を聴かれかつ考慮される子ども個人の権利が法令に体系的に記載されていないことを、懸念するものである。 26.委員会は、条約第12条にしたがい、意見を聴かれかつ考慮される子ども一人ひとりの権利が法令に適切な形で統合されかつ適用されることを確保するため、締約国が、子どもに影響を与える法令(子ども養護法案のような提案中の法律案を含む)の再検討を行なうよう、勧告する。 4.市民的権利および自由 不当な取扱いを含む暴力 27.委員会は、児童虐待の蔓延に関する締約国の懸念を共有するとともに、虐待の防止および回復に関する援助の提供を目的としたサービスに対して十分な資源が与えられておらず、かつその調整も不十分であることに、遺憾の意とともに留意する。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 虐待被害者援助のためのサービスおよびプログラムを拡大するとともに、これらのサービスおよびプログラムが、被害者のプライバシーを尊重する、子どもに配慮したやり方で提供されることを確保すること。 (b) 家庭、学校および施設における児童虐待を防止するためのプログラムおよびサービスを増やすとともに、これらのサービスを提供する、十分な資格および訓練経験を有する職員の人数を十分に確保すること。 (c) 脆弱な立場に置かれた家族および虐待被害者のためのサービスの調整を引き続き向上させること。 体罰 29.委員会は、法律の見直しが行なわれたにも関わらず、締約国が、親が子どものしつけのために合理的な有形力を用いることを認めた1961年刑法第59条をいまなお改正していないことを、深く懸念する。家庭における積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進するために政府が行なっている公衆教育キャンペーンは歓迎しながらも、委員会は、条約ではあらゆる形態の暴力(体罰を含む)からの子どもの保護が要求されており、かつ、これととあわせて法律および保護される子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンが行なわれるべきであることを、強調するものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律を改正して家庭における体罰を禁止すること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りながら、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび人間の尊厳に対する子どもの権利の尊重の促進を目的とした公衆教育のためのキャンペーンおよび活動を強化すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 31.委員会は、とくにソーシャルワーク登録法(2003年)の採択および入所型施設における苦情処理委員会の設置を通じて子どもの保護および代替的養護を強化しようとする締約国の取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子ども・若者・家族サービス局がその責任を効果的に履行するのに十分な財源および人的資源を与えられていないことを、依然として懸念するものである。捜索および押収に関する警察の権限について締約国から提供された追加的文書回答は歓迎しながらも、委員会はまた、代替的養護に措置されている子どもに対して行なわれる身体検査および持ち物検査の回数が増加している旨の報告があることも、懸念する。 32.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより子ども保護システムを強化するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 (a) ソーシャルワーカーおよび子ども保護システムで働く要員の資質を向上させるとともに、資格のある専門的職員を職に留めておくための措置を定めること。 (b) 子ども・若者・家族サービス局と子どもにサービスを提供している機関との間の調整を改善するための効果的措置をとること。 (c) 施設養護が最後の手段としてのみ用いられることを確保しつつ、代替的養護に配分される財源を増加させること。 (d) 条約第25条にしたがい、養護措置の対象とされたすべての子どもが、その処遇についておよび自己の措置に関連するあらゆる事情について定期的再審査を受けることを保障するための努力を強化すること。 養子縁組 33.委員会は、締約国が養子縁組に関する法律を改正しようとしていることを歓迎する。ただし委員会は、予定されている改正が、条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の原則および規定に全面的には一致していないことを、懸念するものである。 34.養子縁組に関する法律の改正の検討にあたり、委員会は、締約国が、第12条および意見を聴かれ、かつ子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視される子どもの権利に対し、特段の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものでる。 (a) 一定の年齢に達した子どもについては、養子縁組に対する本人の同意を要件とすること。 (b) 自己の実親に関する情報に可能なかぎりアクセスする養子の権利を確保すること。 (c) 子どもが元のファーストネームのいずれかを維持する権利を可能なかぎり確保すること。 6.基礎保健および福祉 35.委員会は、1998年に「子ども健康戦略」が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、予防接種率が100%ではないこと、ならびに、乳児死亡率および子どもの受傷率が相対的に高いことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの健康にかかわる指標がマオリ住民の間で全般的により低くなっていることにも、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「子ども健康戦略」を実施するために十分な人的資源および財源を配分すること。 (b) 予防接種の完全実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、相対的に高い乳児死亡率および受傷率に効果的に対応する、親および家族を対象とした予防保健のためのケアおよび指導を発展させること。 (c) 民族的コミュニティ間、とくにマオリ住民における保健指標の格差に対応するためにあらゆる必要な措置をとること。 思春期の健康 37.委員会は、若者の自殺率、10代の妊娠率および青少年のアルコール濫用率が高いこと、ならびに、若者向けの精神保健サービスの水準が、とくに農村部においてかつマオリの子どもおよび入所型施設の子どもに関して不十分であることについての締約国の懸念を共有する。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに若者自殺防止プログラムを強化することにより、若者の自殺、とりわけマオリの若者の自殺に対応するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) とくに、性教育を含む健康教育をが高カリキュラムの一部とし、かつ避妊手段の使用に関する情報キャンペーンを強化することにより、10代の妊娠率を削減するための効果的措置をとること。 (c) 青少年によるアルコール消費の増加に対応するための効果的な防止措置その他の措置をとるとともに、とくにマオリの子どもを対象としたカウンセリング・サービスおよび支援サービスの利用可能性およびアクセス可能性を高めること。 (d) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスがすべての青少年(マオリの子どもならびに農村部および入所型施設の子どもを含む)にとってアクセスしやすくかつ適切であることを確保しながら、強化すること。 障害のある子ども 39.委員会は、障害のある子どもが社会のあらゆる側面に全面的に統合されているわけではないこと、および、諸サービス、とくに教育制度におけるサービスが、障害のある子どもの家族にとってしばしばアクセス困難なものとなっていることを、懸念する。 40.委員会は、締約国が、「ニュージーランド障害戦略」、とくに普通教育および社会のその他の側面への障害児の統合に関わる諸側面を実施するために十分な人的資源および財源が配分されることを確保するよう、勧告する。 生活水準 41.委員会は、締約国の子どもの相当な割合が貧困下で暮らしており、かつ、女性が筆頭者であるひとり親家庭ならびにマオリおよび太平洋諸島民の家族が不相応な影響を受けていることを懸念する。 42.条約第27条3項にしたがい、委員会は、締約国が、親(とくにひとり親)および子どもに責任を負う他の者が十分な生活水準に対する子どもの権利を実施することを援助するために適切な措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、マオリおよび太平洋諸島民の家族に提供される援助においてその伝統的な拡大家族体制が尊重されかつ支援されることを確保するよう、勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 43.委員会は、マオリを対象とする2言語教育の発展を歓迎する。しかしながら委員会は、異なる民族的集団の子どもの間で就学率および中退率の格差が根強く残っていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、退学に関する方針および隠れた教育費用負担の増加が、とくにマオリの子ども、妊娠した女子、特別な教育上のニーズを有する子ども、低所得家庭、市民でない者および新規移民にとって教育へのアクセスの制限につながっていることも、懸念する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国のすべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保すること。 (b) 義務教育に関する法律を執行し、かつ妊娠のような恣意的事由による退学を禁止するとともに、義務教育年齢の生徒であって正当な理由で退学させられた者が他の場所で就学できることを確保すること。 (c) 2言語教育のためのプログラムを強化する等の手段により、就学率および中退率に関する民族的集団間の格差に対応するための効果的措置をとること。 (d) プライバシーに対する生徒の権利を尊重しつつ、生徒の行動上の問題に対応するためにあらゆる必要な措置(学校における良質なカウンセリング・プログラムの提供を含む)をとること。 8.特別な保護措置 子どもの難民 45.委員会は、子どもの難民の統合および機会均等を確保するために締約国が提供しているサービスに留意する。しかしながら委員会は、この点に関して行なわれている活動が、統合という所期の目標を達成するうえで完全に効果的なものとはなっていない可能性があることを懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、子どもの難民を社会に統合するための努力を引き続き行なうとともに、現行プログラム、とくに語学訓練について、その有効性を向上させるための評価を実施するよう勧告する。 子どもの経済的搾取 47.委員会は、雇用における18歳未満の者の保護が条約の原則および規定に全面的には一致していないことを懸念するとともに、就業が認められるための最低年齢が定められていないことについての懸念(前掲パラ20参照)をあらためて表明する。 48.委員会は、締約国が、18歳未満のすべての被雇用者を保護する法律を再検討しかつ強化するために進められているプロセスを加速させるよう勧告するとともに、締約国に対し、ILO第138号条約を批准するよう奨励する。 少年司法 49.「青少年犯罪戦略」および青少年犯罪者特別委員会ならびに家族集団会議の活用には留意しながらも、委員会は、刑事責任年齢が低いこと、および、法律に抵触した18歳未満のすべての者に対して特別な保護が提供されているわけではないことに関する懸念(前掲パラ20参照)をあらためて表明する。委員会はさらに、罪を犯した少年が、女子であれ男子であれ成人の犯罪者から分離されておらず、かつ、警察の留置房に数か月間勾留されることさえあることを懸念するものである。 50.委員会は、パラ21に掲げた勧告をあらためて繰り返すとともに、さらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の討議(1995年、CRC/C/69)も照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 法律に抵触したすべての少年が審判前および審判後の拘禁の際に成人と別に収容されるよう、十分な青少年施設が利用できることを確保すること。 (c) 少年司法における家族集団会議の活用について体系的評価を行なうこと。 9.選択議定書 51.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に署名はしたものの批准していないことに留意する。 52.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 53.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 54.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2008年11月5日、すなわち第4回報告書の提出期限の18か月前までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/107.html
各国の体罰等全面禁止法(年代順) 2024年6月30日現在、67か国。1979年:スウェーデン 1983年:フィンランド 1987年:ノルウェー 1989年:オーストリア 1994年:キプロス 1997年:デンマーク 1998年:クロアチア、ラトビア 2000年:ドイツ、ブルガリア、イスラエル 2002年:トルクメニスタン 2003年:アイスランド 2004年:ルーマニア、ウクライナ 2005年:ハンガリー 2006年:ギリシア 2007年:オランダ、ニュージーランド、ポルトガル、ウルグアイ、ベネズエラ、スペイン、トーゴ 2008年:コスタリカ、モルドバ、ルクセンブルグ、リヒテンシュタイン 2010年:ポーランド、チュニジア、ケニア、コンゴ共和国、アルバニア 2011年:南スーダン 2013年:マケドニア、ホンジュラス、カボベルデ 2014年:マルタ、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン、サンマリノ、エストニア、ニカラグア、アンドラ 2015年:ベナン、アイルランド、ペルー 2016年:モンゴル、パラグアイ、スロベニア、モンテネグロ 2017年:リトアニア 2018年:ネパール 2019年:コソボ、フランス、南アフリカ、ジョージア 2020年:日本、セーシェル、ギニア、(メキシコ) 2021年:韓国、コロンビア 2022年:ザンビア、モーリシャス 2023年:ラオス 2024年:タジキスタン注/カッコした国名は、親による体罰などを禁止する法律が可決されたものの、体罰全面禁止国としてまだ認定されていない国。 (参考)英国:スコットランド(2019年)/王室属領ジャージー代官管轄区(2019年)/ウェールズ(2020年) 条文出典:Susan H. Bitensky, Corporal Punishment of Children A Human Rights Violation, Transnational Publishers, New York, 2006およびGlobal Initiative to End All Corporal Punishment of Childrenのサイトほか。 日本における暴力防止キャンペーンについては、子どもすこやかサポートネットのサイト等を参照。 スウェーデン(1979年) 子どもと親法6.1条「子どもはケア、安全および良質な養育に対する権利を有する。子どもは、その人格および個性を尊重して扱われ、体罰または他のいかなる屈辱的な扱いも受けない」(1983年改正) フィンランド(1983年) 子どもの監護およびアクセス権法1章1条3項「子どもは理解、安全および優しさのもとで育てられる。子どもは抑圧、体罰またはその他の辱めの対象とされない。独立、責任およびおとなとしての生活に向けた子どもの成長が支援されかつ奨励される」 ノルウェー(1987年) 親子法30条3項「子どもは、身体的暴力、またはその身体的もしくは精神的健康を害する可能性がある取扱いの対象とされない」 オーストリア(1989年) 民法146条(a)「未成年の子は親の命令に従わなければならない。親は、命令およびその実施において、子供の年齢、発達および人格を考慮しなければならない。有形力を用いることおよび身体的または精神的危害を加えることは許されない」 キプロス(1994年) 家庭における暴力の防止および被害者の保護について定める法3条1項「この法律の適用上、暴力とは、いずれかの不法な行為、不作為または行動であって、家族のいずれかの構成員に対して家族の他の構成員が身体的、性的または精神的損傷を直接加える結果に至ったものを意味し、かつ、被害者の同意を得ずに性交を行なうことおよび被害者の自由を制限することを目的として用いられる暴力を含む」(1994年/2000年改正、刑法154章) デンマーク(1997年) 親の監護権/権限ならびに面接交渉権法改正法1条「子どもはケアおよび安全に対する権利を有する。子どもは、その人格を尊重して扱われ、かつ、体罰または他のいかなる侮辱的な扱いも受けない」 クロアチア(1998年) 家族法88条「親その他の家族構成員は、子どもを、品位を傷つける取扱い、精神的または身体的処罰および虐待の対象としてはならない」(旧87条、2003年に条文番号変更)(関連規定)家族法92条「親は、子どもを、他の者による品位を傷つける取扱いおよび身体的虐待から保護しなければならない」 ラトビア(1998年) 子どもの権利保護法9条2項「子どもは、残虐に扱われ、拷問されまたは体罰を受けず、かつ、その尊厳または名誉を侵害されない」 ドイツ(2000年) 養育における有形力追放法(民法)1631条2項「子どもは、有形力の行使を受けずに養育される権利を有する。体罰、心理的被害の生起その他の品位を傷つける措置は禁じられる」(関連規定)青年福祉法16条1項「母、父その他の法定保護者ならびに青年は、家庭における教育の一般的促進のためのサービスを提供される。当該サービスは、母、父その他の法定保護者の教育上の責任がよりよい形で遂行されることに寄与するためのものである。また、有形力を用いることなく家庭における紛争状況を解決する手段を示すためのものでもある」 ドイツに関する邦語参考文献荒川麻里「ドイツにおける親の体罰禁止の法制化:『親権条項改正法』(1979年)から『教育における暴力追放に関する法律』(2000年)まで」 カイ=デトレフ・ブスマン(湯尾紫乃訳)「ドイツの家庭内養育における暴力禁止の効果」古橋エツ子編『家族の変容と暴力の国際比較』明石書店・2007 ブルガリア(2000年) 子ども保護法11条2項「すべての子どもは、その尊厳を害するあらゆる養育手段、身体的、精神的その他の態様の暴力、〔ならびに〕その利益に反するあらゆる形態の影響から保護される権利を有する」 イスラエル(2000年) 最高裁が、イスラエル国 対 プローニット(State of Israel v. Plonit)事件判決において、実質的にあらゆる体罰を犯罪化(体罰を理由とする抗弁を認めず、また体罰の日常的使用はたとえ重大な傷害につながらなくとも児童虐待に相当すると判示)。国会も、親、保護者および教員に対する不法行為訴訟における「合理的懲戒」の抗弁を廃止(不法行為法改正9号)。 トルクメニスタン(2002年) 子どもの権利保障法(2002年)24条3項:「子どもの尊厳を貶めること、体罰、〔および〕子どもの精神的または身体的健康にとって有害なその他の身体的虐待は認められない」 家族法(2012年)85条2項:「子どもの尊厳を貶めること、脅し、体罰、〔および〕子どもの精神的または身体的健康にとって有害なその他の身体的虐待は認められない」 89条2項:「親の権利を実施するにあたり、親は、子どもの身体的および精神的健康、〔ならびに〕その道徳的発達に損害を与えてはならない。教育手法から、放任的な、残虐的な、……品位を傷つける取扱い……は除外されるものとする」 アイスランド(2003年) 子ども法28条「子の監護には、精神的および身体的暴力その他の品位を傷つける行動から子を保護する監護者の義務が含まれる」 ルーマニア(2004年) 子どもの権利保護促進法28条「子どもは、その人格および個性を尊重される権利を有し、体罰またはその他の屈辱的なもしくは品位を傷つける取扱いを受けない。子どものしつけのための措置は、その子どもの尊厳にしたがってのみとることができ、体罰または子どもの身体的および精神的発達に関わる罰もしくは子どもの情緒的状況に影響を及ぼす可能性のある罰は、いかなる状況下においても認められない」 同90条「いずれかの種類の体罰を実行することまたは子どもからその権利を剥奪することは、子どもの生命、身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達、身体的不可侵性ならびに身体的および精神的健康を脅かすことにつながるおそれがあるので、家庭においても、子どもの保護、ケアおよび教育を確保するいずれかの施設においても、禁じられる」 ウクライナ(2004年) 家族法150条7項「親による子どもの体罰およびその他の非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰は禁じられる」 ハンガリー(2005年) 子どもの保護および後見運営法6条5項「子どもは、その尊厳を尊重され、かつ虐待(身体的、性的および精神的暴力、ケアの懈怠ならびにいずれかの情報によって引き起こされる被害)から保護される権利を有する。子どもは、拷問、体罰およびいずれかの残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける処罰または取扱いを受けない」 ギリシア(2006年) 家族間暴力禁止法4条「子どもの養育の文脈における、しつけのための措置としての子どもに対する身体的暴力に対しては、〔親の権限の濫用に対する対応を定めた〕民法第1532条の対応が適用される」 オランダ(2007年) 民法1:247条 1.親の権限には、未成年の子をケアしおよび養育する親の義務および権利が含まれる。 2.子のケアおよび養育には、子の情緒的および身体的福祉、子の安全ならびに子の人格の発達の促進への配慮および責任が含まれる。子のケアおよび養育において、親は、情緒的もしくは身体的暴力または他のいかなる屈辱的な取扱いも用いない。 ニュージーランド(2007年) 刑法59条(親の統制) (1)子を持つすべての親およびこれに代わる立場にあるすべての者による有形力の行使は、当該有形力が情況に照らして合理的であり、かつ次のいずれかの目的のために用いられる場合には、正当と認められる。 (a) 子または他の者に対する危害を防止し、もしくは最小限に留めるため。 (b) 子が犯罪に相当する行為に携わり、もしくは携わり続けることを防止するため。 (c) 子が攻撃的なまたは破壊的な行動に携わり、もしくは携わり続けることを防止するため。 (d) 望ましいケアおよび子育てに付随する通常の日常的職務を遂行するため。 (2) 1項のいかなる規定またはコモンローのいかなる規則も、矯正を目的とする有形力の行使を正当化するものではない。 (3) 2項は1項に優越する。 (4) 子に対する有形力の行使をともなう犯罪との関わりで行なわれた、子の親またはこれに代わる立場にある者に対する告発について、当該犯罪がきわめて瑣末であることから起訴することに何の公益もないと考えられるときは、警察にはこれを起訴しない裁量権があることを、疑いを回避するために確認する。 ポルトガル(2007年) 改正刑法152条「何人も、身体的または心理的な不当な取扱い(体罰を含む)、自由の剥奪および性犯罪を行なったときは、当該行為を繰り返し行なったか否かに関わらず、1年から5年の収監刑に処す」 ウルグアイ(2007年) 民法等改正法(2007年11月20日) 第1条 2004年9月7日の法律第17.823号に以下の条を追加する。 「第12条bis(体罰の禁止) 親、保護者、および、子どもおよび青少年の養育、処遇、教育または監督に責任を負う他のすべての者が、子どもまたは青少年の矯正または規律の一形態として、体罰または他のいずれかの屈辱的な罰を用いることは禁じられる。 ウルグアイ子ども青少年機関、その他の国の機関および市民社会は、次のことについて共同の責任を負う。 a) 親、および、子どもおよび青少年の養育、処遇、教育または監督に責任を負う他のすべての者を対象とする意識啓発プログラムおよび教育プログラムを実施すること。 b) 体罰その他の形態の屈辱的取扱いに代わる手段として、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態の規律を推進すること。」 第2条 2004年9月7日の法律第17.823号第16条Fの規定を次の規定に代える。 「f) 子どもまたは被保護者の矯正にあたり、体罰または他のいずれかの種類の屈辱的取扱いを用いないこと。」 第3条 民法第261条ならびに第384条第2文および第3文を廃止する。 ベネズエラ(2007年) 子ども・青少年保護法32条A すべての子どもおよび若者は、よく取り扱われる権利を有する。この権利には、愛、愛情、相互の理解および尊重ならびに連帯に基づく、非暴力的な教育および養育を含む。 親、代理人、保護者、親族および教師は、その子どもの養育および教育にあたり、非暴力的な教育および規律の手段を用いるべきである。したがって、あらゆる形態の体罰および屈辱的な罰は禁じられる。国は、社会の積極的参加を得ながら、子どもおよび若者に対するあらゆる形態の体罰および屈辱的な罰を廃止するための政策、プログラムおよび保護措置が整備されることを確保しなければならない。 体罰とは、子どもの養育または教育における力の行使であって、子どもおよび若者の行動を矯正し、統制しまたは変化させるためにいずれかの程度の身体的苦痛または不快感を引き起こす意図で行なわれるものをいう(ただし、当該行為が刑罰の対象とならないことを条件とする)。 屈辱的な罰とは、子どもおよび若者を養育しまたは教育するため、その行動を規律し、統制しまたは変化させる目的で行なわれるいずれかの形態の取扱いであって、攻撃的な、人格を傷つける、おとしめる、汚名を着せるまたは嘲笑するものとして理解しうる(ただし、当該行為が刑罰の対象とならないことを条件とする)。」 同358条 子どもの養育責任には、子どもの尊厳、権利、諸保障または全般的発達を侵害しない適切な矯正措置を用いながら、自己の子どもを養育し、しつけ、教育しおよび世話しならびに金銭的、道徳的および情緒的に支えおよび援助する、父および母の共有の義務および権利(この義務および権利は平等でありかつ逸脱不可能である)を含む。したがって、あらゆる形態の体罰、心理的暴力および屈辱的な取扱いは、子どもおよび若者を害するものであり、禁じられる。 スペイン(2007年) 2007年12月20日の民法改正により、「合理的かつ節度のある」矯正手段を用いる親の権利に関する規定を削除するとともに、154条で、親/保護者はその責任を果たすにあたり子どもの身体的および心理的不可侵性を尊重しなければならないと規定。 トーゴ(2007年) 子ども法353条「国は、親または子どもに対して権限または監護権を有する他のいずれかの者によるあらゆる形態の暴力(性的虐待、身体的または身体的暴力、ネグレクトまたは不注意、虐待を含む)から子どもを保護する」 同357条「身体的および心理的虐待、体罰……は第356条第2項に定められた処罰の対象となる」 同376条「学校、職業訓練所および施設における体罰その他の形態の暴力または虐待は、禁じられる。これには、いずれかの施設もしくは孤児院、障害児リハビリテーション・センター、接受センターもしくは更生センター、病院、再教育センターまたは一時的か恒久的かを問わず子どもが養育される他の場所を含む」 コスタリカ(2008年) 改正家族法143条「親の権威は、子どもを導き、教育し、養育し、監督しおよび規律する権利を与えかつ義務を課すものであって、いかなる場合にも、未成年者に対する体罰の使用または他のいずれかの形態の品位を傷つける取扱いを公認するものではない」 子ども・青少年法24条bis(体罰その他の品位を傷つける形態の取扱いから自由な規律に対する権利)「子どもおよび青少年は、母、父または保護者および養育者または教育施設、保健施設、シェルター、青年拘禁施設その他のいずれかのタイプの施設の職員から、助言、教育、ケアおよび規律を受ける権利を有する。このことは、これらの者に対し、体罰または品位を傷つける取扱いを用いるいかなる権限も与えるものではない」 モルドバ(2008年) 改正家族法53条4項「未成年者は、親または親に代わる者による体罰を含む虐待から保護される権利を有する」 同62条2項「親が選択する子どもの教育方法から、虐待的行動、あらゆる態様の侮辱および不当な取扱い、差別、心理的および身体的暴力、体罰……は排除される」 ルクセンブルグ(2008年) 子ども・家族法2条「家庭および教育共同体において、身体的および性的暴力、世代間の侵犯、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いならびに性器切除は禁じられる」 リヒテンシュタイン(2008年) 子ども・若者法3条 1.子どもおよび若者は、子どもの権利に関する条約に掲げられた権利および次の措置に対する権利を有する。 a. とくに差別、ネグレクト、暴力、虐待および性的虐待からの保護。 b. 暴力のない教育/養育。体罰、心理的危害その他の品位を傷つける取扱いは認められない。 c. 自己に関わる社会的、政治的、経済的および文化的状況への参加。 d. とくに裁判所および行政との対応において、その成熟度および年齢にしたがって意見を表明しかつ聴かれること。 e. その最善の利益が優先されること。 2.子どもは、自己の権利が侵害されたと考えるときは、オンブズパーソンに連絡することができる。 ポーランド(2010年) 改正家族法96条「未成年者に対して親の配慮、養育または代替的養護を行なう者が、体罰を用い、心理的苦痛を与え、かつ他のいずれかの形態で子どもに屈辱を与えることは禁じられる」 チュニジア(2010年) 2010年7月26日の法律第2010-40号により、刑法319号から「子どもに対して権限を有する者による子どもの矯正は、これを処罰しない」旨の文言を削除。 ケニア(2010年) 憲法29条(人身の自由および安全) すべての者は、人身の自由および安全に対する権利を有する。これには、次の権利を含む。 …… (c) 公的なものか私的なものかを問わず、いかなる形態の暴力の対象にもされないこと。 (d) 身体的なものか心理的なものかを問わず、いかなる方法による拷問の対象にもされないこと。 (e) 体罰の対象とされないこと。 (f) 残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を受けないこと。 コンゴ共和国(2010年) 子ども保護法53条「子どものしつけまたは矯正のために体罰を用いることは、禁じられる」 アルバニア(2010年) 子どもの権利保護法21条(あらゆる形態の暴力からの保護) 子どもは、以下の形態のいかなる行為からも保護される。 a) 身体的および心理的暴力〔注/「身体的暴力」とは、「子どもに対して損傷を与えようとするすべての試みもしくは実際の身体的損傷または傷害(体罰を含む)であって偶発的ではないもの」をいう(3条(c))〕 b) 体罰ならびに品位を傷つけるおよび屈辱的な取扱い c) 差別、排除および侮蔑 d) 不当な取扱いおよび遺棄 dh) 搾取および虐待 e) 性暴力 同3条(f) 「体罰」とは、親、きょうだい、祖父母、法定代理人、親族または子どもに法的責任を負う他のいずれかの者によって、たとえその程度がもっとも軽いものであっても、痛みまたは苦痛を引き起こす目的で力の行使に訴えることにより行なわれるいずれかの形態の罰をいう。体罰には、殴打すること、責め苛むこと、暴力的に揺さぶること、火傷を負わせること、平手で打つこと、蹴ること、つねること、ひっかくこと、噛むこと、叱責すること、行為を強要すること、および、身体的および精神的不快感を引き起こすための物質を用いることのような諸形態を含む。 南スーダン(2011年) 暫定憲法17条1項「すべての子どもは、次の権利を有する。…… (f) 親、学校管理者その他の施設管理者を含むいかなる者による体罰ならびに残虐なおよび非人道的な取扱いも受けないこと。……」 マケドニア(2013年) 改正子ども保護法(2013年)12条2項:「あらゆる形態の性的搾取および子どもの性的虐待(いやがらせ、児童ポルノ、児童買春)、強制的周旋、子どもの売買もしくは取引、心理的もしくは身体的な暴力およびいやがらせ、処罰その他の非人道的な取扱い、あらゆる種類の子どもの搾取、商業的搾取および虐待は、基本的な人間としての自由および権利ならびに子どもの権利を侵害するものであって、禁じられる」 ホンジュラス(2013年) 政令第35-2013号(14条:親の懲戒権を認めていた民法231条を削除/5条:家族法191条を以下のように改正) 親は、親の権威を行使するにあたり、その子の方向づけ、ケアおよび矯正を行ない、かつ、その子の身体的および精神的能力の発達に一致する形で、その包括的発達にとってふさわしい指導および方向づけを与える権利を有する。 親、および、一時的か恒久的かにかかわらず〔子どもおよび青少年の〕ケア、養育、教育、処遇および監督に責任を負うすべての者は、体罰を用い、または子どもまたは青少年の矯正またはしつけの形態としていかなる態様の屈辱的な、品位を傷つける、残虐なもしくは非人道的な取扱いを用いることも、禁じられる。 国は、権限のある国の制度を通じ、以下のことを保障する。 (a) (親向けの意識啓発・教育プログラム、略) (b) 体罰その他の形態の屈辱的な取扱いに代わる手段として、積極的な、参加型の、かつ非暴力的な形態のしつけを推進すること。 カボベルデ(2013年) 子ども・青少年法31条 (1)家族は、子どもおよび青少年の全面的発達を可能にし、かつその身体の不可侵性に影響を及ぼすいかなる行為からも子どもおよび青少年を保護する、愛情に満ちた安全な環境を提供しなければならない。 (2)親は、矯正の権利を行使するにあたり、暴力、体罰、心理的危害およびその尊厳に影響を及ぼす他のすべての措置(これらの行為はすべて許容されない)を受けない養育に対する子どもおよび青少年の権利を常に念頭に置かなければならない。 マルタ(2014年) 改正刑法(2014年)339条1項 以下のいずれかに該当するすべての者は、人身に対する侵害の罪で有罪となる。(中略) (h) 他のいずれかの者を矯正する権限を有する者が節度の限界を超えたとき。 ただし、いかなる疑念も回避するため、いかなる種類の体罰も、常に節度の限界を超えたものとみなされるものとする。 ブラジル(2014年) 改正子ども・青少年法18-A条 子どもおよび青少年は、その親もしくは拡大家族の構成員、当該子ども等について責任を負う者、社会的および教育的措置を実施する公務員、または当該子ども等のケアまたは処遇、教育もしくは保護を委託された他のいずれかの者によって行なわれる、矯正、しつけ、教育または他のいずれかの名目の形態としての体罰または残酷なもしくは品位を傷つける取扱いを利用されることなく、教育されかつケアされる権利を有する。…… ボリビア(2014年) 子ども・青少年法146条 (1)子どもおよび青少年は、相互の尊重および連帯を基礎とする、非暴力的な養育および教育から構成される良好な取扱いについての権利を有する。 (2)母、父、保護者、家族構成員および教育者の権威を行使するにあたっては、子育て、教育および教育において非暴力的な手法が用いられるべきである。身体的な、暴力的なおよび屈辱的ないかなる罰も、禁じられる。 アルゼンチン(2014年) 民商法647条「あらゆる形態の体罰、不当な取扱い、および、子どもおよび青少年を身体的にまたは精神的に傷つけまたは損なういかなる行為も、禁じられる。……」 サンマリノ(2014年) 家族法改正法57条改正「子どもは、保護および安全に対する権利を有し、体罰または子どもの身体的および心理的不可侵性にとって害となるその他の取扱いを受けない」 刑法234条改正「(体罰の禁止)矯正または規律の権限を行使する際に体罰を行ないまたは他の威迫的もしくは抑圧的な手段を用いたいかなる者も、当該の罰または手段によって、加害者の権限下にある者または加害者に委託された者に身体もしくは精神への危険または疾病が生じたときは、第1級禁固刑または親権の行使の禁止、解任、解職もしくは専門資格の剥奪に処すものとし、当該行為によって第156条に定めるいずれかの事件が生じたときは第3級禁固刑に、または当該行為が死亡につながったときは第5級禁固刑に処すものとする」 エストニア(2014年) 児童福祉法24条 (1)子どもをネグレクトし、子どもを精神的、情緒的、身体的または性的に虐待し(子どもに屈辱を与え、脅かし、もしくは身体的に罰することを含む)、かつ、子どもの精神的、情緒的または身体的健康を危うくする他のいずれかの方法によって子どもを罰することは、禁じられる。 (2)子どもの虐待を防止するため、子どもの法的代理人は、懲罰登録法に基づく他の者の懲罰記録についての情報を入手する権利を有する。 (3)子どもの行動が当該子ども自身または他の者の生命または健康を直接かつ直ちに危うくするものであって、会話、説得または言葉で落ち着かせようとする試み等を通じてこの危険を回避することが不可能であるために、子どもを養育する者、子どもを相手として働いている者または子ども保護ワーカーが、子どもを抑制するために、子どもに身体的、精神的または情緒的危害を引き起こさず、かつ子どもの権利および自由を可能なかぎり侵害しない限度で有形力を用いなければならないときは、本法にいう子どもの虐待にはあたらない。 (4)本法の適用上、有形力の使用が認められるのは、子どもを脅かす危険または子どもが及ぼす危険を回避する目的に照らして比例性および必要性を有する限度で子どもの動作を制限する場合のみである。罰を目的とする有形力の使用は、認められない。 ニカラグア(2014年) 2014年家族法280条 父、母その他の家族構成員、保護者、または息子もしくは娘に法的に責任を負う他の者は、子どもの健康、身体的不可侵性ならびに心理的および人格的尊厳を危険にさらすことなく、かつ、いかなる状況下においても矯正またはしつけの形態として体罰またはいずれかの態様の屈辱的取扱いを用いることなく、子どもに対し、子どもの発達しつつある能力に一致する形で適切な指示および指導を与える責任、権利および義務を有する。 (略) 家族・若者・子ども省は、他の国家機関および社会との調整を図りながら、体罰およびその他の形態の屈辱的しつけに代わる手段としての積極的な、参加型のかつ非暴力的な諸形態のしつけを促進する。 アンドラ(2014年) 刑法476条改正:「いずれかの者を軽度に虐待しまたは身体的危害を加えたいかなる者も、禁固刑または6000ユーロ以下の罰金に処す。当該虐待が体罰に当たるときは、禁固刑を科すものとする」 ベナン(2015年) 2015年子ども法 第39条 親、または子どもに法的責任を負う他の者は、子どもが人道的にかつその人間の尊厳を尊重しながら扱われることを確保するような方法でしつけが実行されることを確保する。いかなる場合にも、子どもの身体的不可侵性の侵害または拷問もしくは非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いに相当する罰が行なわれてはならない。いかなる罰も、教育的意図を有し、かつ説明をともなうものでなければならない。 第119条 あらゆる形態の体罰は、学校、専門的学習センターおよび保育施設においてこれを禁ずる。 第130条 国は、家庭、学校および他の官民の施設におけるしつけおよび規律維持にあって、体罰または他のいかなる形態の残虐なもしくは品位を傷つける取扱いも行なわれないことを確保する。 第220条 養護を受けている子どもに対するいかなる形態の体罰その他の暴力もこれを禁じ、違反に対しては刑事罰を科す。 アイルランド(2015年) 2015年子ども最優先法 合理的懲戒の抗弁の廃止 第28条 1997年非致死性対人犯罪法を改正し、第24条の次に以下の条を挿入する。 「第24条A (1)合理的な懲戒に関するコモンロー上の抗弁は、これを廃止する。」(第2項以下略) ※訳者注/子ども最優先法の条文番号は法案(PDF)による。 ペルー(2015年) 子どもおよび青少年に対する体罰その他の屈辱的な罰の使用を禁止する法律 第1条 法律の目的 子どもおよび青少年に対する体罰その他の屈辱的な罰の使用を禁止すること。 当該禁止は、家庭、学校、地域、職場およびその他の関連の場所を含む、子どもおよび青少年が存在するすべての場所で適用される。 第2条 定義 この法律の適用上、次の文言は次のように理解される。 1.体罰:養育権限または教育権限の行使における有形力の使用であって、子どもおよび青少年の行動を矯正し、管理しまたは変化させる目的で一定の程度の苦痛または不快感を引き起こすことを意図したもの。 2.屈辱的な罰:養育権限または教育権限の行使において、子どもおよび青少年の行動を矯正し、管理しまたは変化させる目的で行なわれる、侮辱的な、品位を傷つける、価値を貶める、汚名を着せるまたはあざけるすべての取扱い。 改正子どもおよび青少年法第3-A条(上記法律により新設) 子どもおよび青少年は、例外なく、よい取扱いを受ける権利を有する。このことは、親、後見人または法定代理人および教員、行政機関、公的機関もしくは私的機関または他のいずれかの者による包括的な保護が提供される調和的、支援的かつ愛育的な環境において、ケア、愛情、保護、社会化および非暴力的教育を受ける権利を意味する。 よい取扱いを受ける権利は、子どもおよび青少年の間でも相互に適用される。 モンゴル(2016年) 子どもの権利法 7条1項 子どもは、あらゆる社会的場面における犯罪またはいかなる形態の暴力、体罰、心理的虐待、ネグレクトおよび搾取からも保護される権利を有する。 子ども保護法 2条6項 親、保護者ならびに子どもおよび青少年のケア、処遇、指導および教育に責任を負う第三者が子どもの養育および子どもの誤った行動の懲戒の際に行なうあらゆる態様の身体的および屈辱的な罰は、これを禁ずる。 5条4項 子どもの教育、養育およびケアに際し、親、法定保護者、親族および教員は、非暴力的なしつけの方法をとるものとする。 パラグアイ(2016年) 子どもおよび青少年の望ましい取扱い、建設的な子育ておよび矯正またはしつけの手段としての体罰もしくはあらゆる態様の暴力からの保護の促進に関する法律 第1条 望ましい取扱いに対する子どもおよび青少年の権利ならびに体罰または屈辱的な取扱いの禁止 すべての子どもおよび青少年は、望ましい取扱いに対する権利ならびに自己の身体的、心理的および情緒的不可侵性を尊重される権利を有する。この権利には、自己のイメージ、アイデンティティ、自律、考え方、気持ち、尊厳および価値観の保護を含む。 矯正およびしつけの一形態としての子どもおよび青少年の体罰および屈辱的な取扱いは、とくにそれが親、指導者、保護者または子どもおよび青少年の教育、ケア、指導もしくは何らかの取扱いに責任を負ういずれかの者によって行なわれるときは、これを禁ずる。 子どもおよび青少年は、とくに、建設的な子育てのための指針を実施することによる指導、教育、ケアおよびしつけを受ける権利を有する。 第5条 体罰および屈辱的な取扱いの禁止 子どもまたは青少年に関連して保健、教育、文化、レクリエーション、保護、雇用または治安に関する政策、計画およびプログラムを実施する国の機関は、次の目的のための資源を提供しなければならない。 a) 親ならびに子どもおよび青少年の養育、教育、ケアまたは保護に責任を負うその他の成人を対象とした、教育相談活動、建設的な子育てに関する指導および望ましい取扱いの推進のためのプログラムの策定および実施。その際、とくに社会経済的地位、年齢、ジェンダーアイデンティティ、障害、民族および文化など、とりわけ被害につながりやすい諸条件を考慮するものとする。 b) 子ども期および青少年期に関連した業務を行なっている政府職員を対象とした、望ましい取扱いの推進、体罰および残虐なまたは屈辱的な取扱いの禁止ならびに権利侵害があった場合の保護機構に関する研修。 c) この法律の規定に違反する行為の通報、調査および是正を奨励するための規則および機構の策定および実施。 d) 子どもおよび青少年の教育を目的としたしつけの形態としての体罰および屈辱的な取扱いの使用を助長する諸要因の根絶を奨励するための政策、計画およびプログラムの策定。 e) 統合的相談および負担可能、持続可能かつ良質なケアが存在しかつ利用できることの確保。 f) あらゆるレベルおよび公的機関における、建設的な子育ておよび望ましい取扱いの推進ならびに子どもまたは青少年の権利の全面的行使の保障。 g) 国、県および自治体のレベルにおける、望ましい取扱いに対する子どもおよび青少年の権利の促進。この取り組みは、国家子ども青少年評議会ならびに県および自治体の子ども青少年評議会を通じて、それぞれこの目的のための行動および資源を共有しながら進めるものとする。 スロベニア(2016年) 家族内暴力の防止に関する法律(改正) 第3条a 子どもの体罰の禁止 (1) 子どもの体罰は、これを禁ずる。 (2) 子どもの体罰とは、子どもに対するあらゆる身体的な、残虐なもしくは品位を傷つける取扱いまたは子どもを罰する意図で行なわれる他のあらゆる行為であって、教育の手段としての身体的、心理的もしくは性的暴力またはネグレクトの要素を有するものをいう。 モンテネグロ(2016年) 改正家族法 第9条a(1)子どもは、体罰または他のいかなる残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いの対象にもされない。 (2)第1項の禁止は、親、保護者および子どもをケアしまたは子どもと接触する他のすべての者に対して及ぶ。 (3)第2項に掲げられた者は、第1項に掲げられたいかなる取扱いからも子どもを保護する義務を負う。 リトアニア(2017年) 子どもの権利の保護の基本原則に関する法律(改正条文抜粋) 第2条〔定義〕 1.体罰-たとえ小規模なものであっても身体的苦痛を引き起こすために、またはその他のやり方で子どもを身体的に拷問するために有形力が用いられるすべての罰。 2.子どもに対する暴力-子どもが経験する他の者の作為または不作為であって、子どもに対して身体的、心理的、性的、経済的もしくはその他の影響を与えもしくはネグレクトに至り、そのために子どもの生命、健康、発達、名誉および尊厳に対する被害および脅威をもたらすもの(家族間暴力および体罰を含む)。 第6条 9.国は、子どもが、親、その他の子どもの法的代理人または子どもの世話をする他のいずれかの者から受けるおそれのあるあらゆる形態の暴力(体罰を含む)から保護されることを確保するため、あらゆる適切な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。 第10条 2.子どもは、その親、その他の法的代理人、子どもと同居している者またはその他の者によるあらゆる形態の暴力(体罰を含む)から保護される権利を有する。 第49条 1.子どもの親またはその他の法的代理人は、子どもが自己の義務を果たそうとしなかったことまたは規律に違反したことを理由として、自己の判断にしたがい、子どもに適切な懲戒(ただし、体罰および他のあらゆる形態の暴力を除く)を加えることができる。 ネパール(2018年) 子ども法 7条 5.すべての子どもは、その父、母、その他の家族構成員もしくは保護者、教員または他のいずれかの者によって行なわれる、あらゆる態様の身体的または精神的暴力および処罰、ネグレクト、非人道的な振舞い、ジェンダーに基づくまたは差別的な虐待、性的虐待ならびに搾取から保護される権利を有する。 コソボ(2019年) 子どもの保護に関する法律 第24条 1.体罰および子どもの尊厳を害しかつ低減させる懲戒措置(諸形態の身体的および精神的暴力ならびに子どもの品位を傷つけ、子どもを辱めかつ子どもを不適切な状況に置く諸行動を含む)は、家庭、教育施設、子どものケアのための施設、法典および司法制度、職場ならびにコミュニティのそれぞれの環境において、禁じられる。 2.いかなる者も、子どもを拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いならびに体罰および品位を傷つける取扱いの対象とすることを禁じられる。 3.教育関係者および学校関係者は、懲戒および支配の手段として体罰を用いるべきではなく、尊重および正義を基礎として職務を遂行しかつ実践を積み重ねるべきである。 4.関連省庁は、体罰の有害な影響に関する意識を高めるためのプログラムの発出および確立を確保するとともに、以下のものを立案しかつ創設する。 4.1 体罰が品位を傷つける結果をもたらすことに関する教育および意識啓発 4.2 家庭および教育施設で非暴力的なしつけおよび規律維持の手法を促進する子育て支援プログラム フランス(2019年) 民法第371-1条(「通常の教育的暴力の禁止に関する法律」により、以下に太字で表示した第3項を追加) 1.親の権威は、子の利益を最終目的とする権利および義務の総体である。 2.親の権威は、子の人格を適正に尊重しながら、子をその安全、健康および道徳において保護し、その教育を確保しかつその発達を可能にする目的で、子の成年または未成年解放まで父母に委ねられる。 3.親の権威は、いかなる身体的または心理的暴力も用いることなく行使される。 4.両親は、子の年齢および成熟度にしたがい、子に関わる決定に子を参加させる。 南アフリカ(2019年) 最高裁判所判決(9月18日)により、コモンローで認められてきた「合理的なまたは節度のある懲戒(reasonable or moderate chastisement)」の抗弁を廃止。(解説) ジョージア(2019年) 子どもの権利に関する法律 第24.5条 親または子どもの養育に責任を負う者が、子どもの養育または教育の過程で、子どもに対する体罰または他の残虐な、品位を傷つけるまたは非人道的な取扱いおよび/もしくは処罰を含むやり方を適用することは、これを認めない。 第53.2条 子どもの体罰、拷問または他のいずれかの残虐な、品位を傷つけるもしくは非人道的な取扱いもしくは処罰は、家庭、就学前教育施設または一般教育施設、代替的養護サービス、医療施設および/または精神医療施設、刑事施設ならびに他のいかなる場所においても、これを禁止する。このような行為の実行は、ジョージアで施行されている法律に基づいて処罰される。 日本(2020年) 児童虐待の防止等に関する法律(2019年改正) 第14条 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治29年法律第89号)第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。(2項略) 児童福祉法(2019年改正) 第33条の2(1項略) 2 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる。ただし、体罰を加えることはできない。(3項・4項略) 第47条(1項・2項略) 3 児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第六条の三第八項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親は、入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。 厚生労働省「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」〔PDF〕(2020年2月) 民法(2022年12月改正) 第821条 親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。 ※あわせて第822条(懲戒権規定)を削除し、第821条(親権者の居所指定権)を第822条に変更。 セーシェル(2020年) 子ども法(2020年改正) 第70.B条 (1)他のいかなる法律の規定にかかわらず、いかなる子どもも体罰の対象とされない。 (2)前項の規定に違反したいかなる者も、犯罪を行なったものとし、有罪判決とともに罰金25,000SCR〔セーシェルルピー〕もしくは2年以下の収監を科しまたはこれを併科する。ただし、その前に裁判所が、当該犯罪者と子どもとの関係を考慮しながら、当該案件を処理する他の適切な手段を検討することを条件とする。 注/「体罰」は、同法第2条に新たに設けられた定義規定で、「親の権限、または子どもに関する責任、子どもの監護、子どもへのアクセス、子どものケア、扶養もしくは管理から派生する権利もしくは権限を行使するにあたって、規律を維持しまたは規則を執行するために子どもに対して行なわれるすべての種類の身体的罰」と定義されている。 ギニア(2020年) 子ども法(2019年12月可決/2020年6月施行)(条文出典) 第767条 子どもに対するあらゆる形態の体罰、身体的罰または言葉による罰および残虐な、非人道的な、品位を傷つけるまたは屈辱的な取扱いは、家庭、教育現場、職業上の現場、行政の現場、司法現場その他の現場のいずれで行なわれるかにかかわらず、明示的に禁止される。 第768条(体罰を合理的なものとして正当化することはできない旨の宣言/行政機関または司法機関への通報義務) 第769条(学校および刑事施設における体罰の明示的禁止) メキシコ(2020年) ※保留 女児、男児および青少年の権利に関する一般法改正(改正内容概要)注/Global Initiative to End All Corporal Punishment は、メキシコ連邦を構成する32州のうちまだ州法で体罰を全面禁止していない11州で法改正が行なわれた後に、メキシコを体罰全面禁止国として認定する見込み。 韓国(2021年) 民法第915条(親権者の懲戒権)の削除(改正内容概要) コロンビア(2021年) 2021年5月14日の法律第2089号 第1条 親または子どもおよび青少年に対して親としての権威を行使する個人は、その信条および価値観にしたがって子どもを教育し、育てかつ矯正する権利を有する。唯一の限界として、子どもおよび青少年に対し、体罰、残虐な、屈辱的なまたは品位を傷つける取扱いおよびあらゆる態様の暴力を用いることは、禁じられる。この禁止は、子どもおよび青少年が成長するさまざまな環境のそれぞれにおいて子どもおよび青少年のケアに責任を負う他のいかなる者に対しても、適用される。 ※第3条でも「矯正、制裁またはしつけの方法として「体罰、残虐な、屈辱的なまたは品位を傷つける取扱いおよびあらゆる態様の暴力を用いること」を禁止。 ザンビア(2022年) 子ども法(2022年法律第12号)22条:「子どもに対する罰としての体罰は、これを加えてはならない」 モーリシャス(2022年) 2022年子ども法 第14条(1)何人も、子どもの矯正またはしつけのための措置として子どもに体罰または屈辱的な罰を与えてはならない。 ※「体罰または屈辱的な罰」とは、「有形力の使用または物質の使用(ただしこれらの手段に限られない)を通じ、子どもに痛みまたは苦痛を引き起こすすべての形態の罰」をいう(第14条(3))。 ラオス(2024年) 2006年子どもの権利利益保護法(2023年改正) 第57条(2) 親、保護者その他の者は次の行為を禁じられる。(……)体罰、殴打、叱責およびその他の形態の子どもの拷問による身体的虐待…… タジキスタン(2024年) 子どもの教育および養育についての責任に関するタジキスタン共和国法(2024年) 第16条(子どもの養育における親の義務) 親は、子どもの養育に際して次の責任を負う。 〔中略〕 8)教育の過程で子どもに対して暴力(体罰を含む)を用いないこと。 9)子どもの尊厳を尊重し、かつ、子どもに対する残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを認めないこと。〔後略〕 第17条(親に代わる者の権利および義務) 親に代わる者は、親との関連で本法第14条〔子どもの教育における親の権利〕、第15条〔子どもの教育における親の義務〕および第16条が定めるすべての権利および義務を有する。ただし、タジキスタン共和国の法律で異なる手続が定められているときは、この限りでない。 第20条(教員の権利および義務) 教員は、子どもの教育および養育に際して次の権利および義務を有する。 〔中略〕 8)教育の過程で子どもに対して暴力(体罰を含む)を用いないこと。 9)子どもの権利、自由および尊厳を遵守しかつ尊重するとともに、子どもに対する残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを認めないこと。〔後略〕 第21条(子どもの教育の分野における侵害行為の防止)〔略〕 第22条(子どもの教育の分野における侵害行為を防止するための措置)〔略〕 (参考)英国 スコットランド(2019年)子ども(暴行からの平等な保護)(スコットランド)法 第1条 (1) 親の権利または子どもの監督(charge)もしくは監護(care)から派生する権利の行使における子どもの体罰は正当と認められ、したがって暴行ではない旨の法の規則は、その効力を失う。 (2) 2003年刑事司法(スコットランド)法第51条(子どもの体罰)は廃止される。 第2条 スコットランド諸閣僚は、第1条の効力に関する公衆の意識および理解を促進するために適切と考える措置をとらなければならない。 王室属領ジャージー代官管轄区(2019年)子ども・教育(改正)(ジャージー)法 第1条 2002年子ども(ジャージー)法を第2条および第3条にしたがって改正する。 第2条 2002年法の第35条(16歳未満の子どもに対する危害またはネグレクト)のうち、親、教員または法律に基づいて子どもを管理する他の者には子どもに対して体罰を行なう固有の権利があると推定される旨を定めた第5項を削除する。 第3条 2002年法の第79条(合理的な体罰の抗弁の制限)を次の規定に置き換える。 第79条(合理的な体罰の抗弁の廃止) (1)慣習法に基づく子どもの合理的な体罰のいかなる抗弁も、これを廃止する。 (2)したがって、子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、当該体罰が慣習法のいずれかの規則の適用上 (a) 合理的な処罰または (b) 容認可能な行為のいずれかを構成するという理由で正当化することができない。 (3)本条において「体罰」とは、子どもとの関連で、子どもを処罰する目的で、子どもの身体に対し、暴行を構成するような身体的行為を行なうことをいう(当該行為に処罰以外の理由があるか否かを問わない)。 第4条 1999年教育(ジャージー)法の第36A条(合理的な力を用いる職員の権限)における「体罰」の定義を改正後の2002年法第79条(3)の規定と揃え、体罰は許されないことを明確にする。子どもに危害が及ぶことを防止するための合理的な力の行使(たとえば道路に飛び出した子どもを引っ張って戻すことなど)は引き続き認められる。 第5条(雑則、略) ウェールズ(2020年)子ども(合理的処罰の抗弁の廃止)(ウェールズ)法 1.コモンロー上の合理的処罰の抗弁の廃止 (1)コモンロー上の合理的処罰の抗弁は、ウェールズで行なわれる子どもの体罰との関連では、これを廃止する。 (2)これにともない、ウェールズで行なわれる子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、合理的処罰にあたるという理由で、これを正当化することはできない。 (3)同様に、ウェールズで行なわれる子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、他のいずれかのコモンロー上の規則の適用上認められた行為であったという理由で、これを正当化することはできない。 (4)本条の適用上、「体罰」とは、処罰として行なわれるすべての殴打(battery)をいう。 (5)(略:英国2004年子ども法第58条の修正) 2.(略:施行に関する規定) 3.(略:法律の略称に関する規定) 更新履歴:ページ作成(2011年10月25日)。なお、ニュージーランドまでの資料は2007年5月31日に旧サイトに掲載した内容を一部修正したもの。/~/日本を追加(2020年2月28日)。/セーシェルを追加(6月1日)。/メキシコを追加(12月11日)。/韓国を判断保留のまま追加(2021年1月9日)。/ギニアを追加(1月29日)。/韓国が体罰全面禁止国として認定されたことにともない、法改正達成国数を62か国に修正(3月26日)。/コロンビアを追加(8月19日)。/ザンビアを追加(2022年11月8日)。/モーリシャスを追加。日本の民法改正を追加(12月13日)。/ラオスを追加(2024年5月1日)。/タジキスタンを追加(8月29日)。