約 1,857,936 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/107.html
各国の体罰等全面禁止法(年代順) 2024年6月30日現在、67か国。1979年:スウェーデン 1983年:フィンランド 1987年:ノルウェー 1989年:オーストリア 1994年:キプロス 1997年:デンマーク 1998年:クロアチア、ラトビア 2000年:ドイツ、ブルガリア、イスラエル 2002年:トルクメニスタン 2003年:アイスランド 2004年:ルーマニア、ウクライナ 2005年:ハンガリー 2006年:ギリシア 2007年:オランダ、ニュージーランド、ポルトガル、ウルグアイ、ベネズエラ、スペイン、トーゴ 2008年:コスタリカ、モルドバ、ルクセンブルグ、リヒテンシュタイン 2010年:ポーランド、チュニジア、ケニア、コンゴ共和国、アルバニア 2011年:南スーダン 2013年:マケドニア、ホンジュラス、カボベルデ 2014年:マルタ、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン、サンマリノ、エストニア、ニカラグア、アンドラ 2015年:ベナン、アイルランド、ペルー 2016年:モンゴル、パラグアイ、スロベニア、モンテネグロ 2017年:リトアニア 2018年:ネパール 2019年:コソボ、フランス、南アフリカ、ジョージア 2020年:日本、セーシェル、ギニア、(メキシコ) 2021年:韓国、コロンビア 2022年:ザンビア、モーリシャス 2023年:ラオス 2024年:タジキスタン注/カッコした国名は、親による体罰などを禁止する法律が可決されたものの、体罰全面禁止国としてまだ認定されていない国。 (参考)英国:スコットランド(2019年)/王室属領ジャージー代官管轄区(2019年)/ウェールズ(2020年) 条文出典:Susan H. Bitensky, Corporal Punishment of Children A Human Rights Violation, Transnational Publishers, New York, 2006およびGlobal Initiative to End All Corporal Punishment of Childrenのサイトほか。 日本における暴力防止キャンペーンについては、子どもすこやかサポートネットのサイト等を参照。 スウェーデン(1979年) 子どもと親法6.1条「子どもはケア、安全および良質な養育に対する権利を有する。子どもは、その人格および個性を尊重して扱われ、体罰または他のいかなる屈辱的な扱いも受けない」(1983年改正) フィンランド(1983年) 子どもの監護およびアクセス権法1章1条3項「子どもは理解、安全および優しさのもとで育てられる。子どもは抑圧、体罰またはその他の辱めの対象とされない。独立、責任およびおとなとしての生活に向けた子どもの成長が支援されかつ奨励される」 ノルウェー(1987年) 親子法30条3項「子どもは、身体的暴力、またはその身体的もしくは精神的健康を害する可能性がある取扱いの対象とされない」 オーストリア(1989年) 民法146条(a)「未成年の子は親の命令に従わなければならない。親は、命令およびその実施において、子供の年齢、発達および人格を考慮しなければならない。有形力を用いることおよび身体的または精神的危害を加えることは許されない」 キプロス(1994年) 家庭における暴力の防止および被害者の保護について定める法3条1項「この法律の適用上、暴力とは、いずれかの不法な行為、不作為または行動であって、家族のいずれかの構成員に対して家族の他の構成員が身体的、性的または精神的損傷を直接加える結果に至ったものを意味し、かつ、被害者の同意を得ずに性交を行なうことおよび被害者の自由を制限することを目的として用いられる暴力を含む」(1994年/2000年改正、刑法154章) デンマーク(1997年) 親の監護権/権限ならびに面接交渉権法改正法1条「子どもはケアおよび安全に対する権利を有する。子どもは、その人格を尊重して扱われ、かつ、体罰または他のいかなる侮辱的な扱いも受けない」 クロアチア(1998年) 家族法88条「親その他の家族構成員は、子どもを、品位を傷つける取扱い、精神的または身体的処罰および虐待の対象としてはならない」(旧87条、2003年に条文番号変更)(関連規定)家族法92条「親は、子どもを、他の者による品位を傷つける取扱いおよび身体的虐待から保護しなければならない」 ラトビア(1998年) 子どもの権利保護法9条2項「子どもは、残虐に扱われ、拷問されまたは体罰を受けず、かつ、その尊厳または名誉を侵害されない」 ドイツ(2000年) 養育における有形力追放法(民法)1631条2項「子どもは、有形力の行使を受けずに養育される権利を有する。体罰、心理的被害の生起その他の品位を傷つける措置は禁じられる」(関連規定)青年福祉法16条1項「母、父その他の法定保護者ならびに青年は、家庭における教育の一般的促進のためのサービスを提供される。当該サービスは、母、父その他の法定保護者の教育上の責任がよりよい形で遂行されることに寄与するためのものである。また、有形力を用いることなく家庭における紛争状況を解決する手段を示すためのものでもある」 ドイツに関する邦語参考文献荒川麻里「ドイツにおける親の体罰禁止の法制化:『親権条項改正法』(1979年)から『教育における暴力追放に関する法律』(2000年)まで」 カイ=デトレフ・ブスマン(湯尾紫乃訳)「ドイツの家庭内養育における暴力禁止の効果」古橋エツ子編『家族の変容と暴力の国際比較』明石書店・2007 ブルガリア(2000年) 子ども保護法11条2項「すべての子どもは、その尊厳を害するあらゆる養育手段、身体的、精神的その他の態様の暴力、〔ならびに〕その利益に反するあらゆる形態の影響から保護される権利を有する」 イスラエル(2000年) 最高裁が、イスラエル国 対 プローニット(State of Israel v. Plonit)事件判決において、実質的にあらゆる体罰を犯罪化(体罰を理由とする抗弁を認めず、また体罰の日常的使用はたとえ重大な傷害につながらなくとも児童虐待に相当すると判示)。国会も、親、保護者および教員に対する不法行為訴訟における「合理的懲戒」の抗弁を廃止(不法行為法改正9号)。 トルクメニスタン(2002年) 子どもの権利保障法(2002年)24条3項:「子どもの尊厳を貶めること、体罰、〔および〕子どもの精神的または身体的健康にとって有害なその他の身体的虐待は認められない」 家族法(2012年)85条2項:「子どもの尊厳を貶めること、脅し、体罰、〔および〕子どもの精神的または身体的健康にとって有害なその他の身体的虐待は認められない」 89条2項:「親の権利を実施するにあたり、親は、子どもの身体的および精神的健康、〔ならびに〕その道徳的発達に損害を与えてはならない。教育手法から、放任的な、残虐的な、……品位を傷つける取扱い……は除外されるものとする」 アイスランド(2003年) 子ども法28条「子の監護には、精神的および身体的暴力その他の品位を傷つける行動から子を保護する監護者の義務が含まれる」 ルーマニア(2004年) 子どもの権利保護促進法28条「子どもは、その人格および個性を尊重される権利を有し、体罰またはその他の屈辱的なもしくは品位を傷つける取扱いを受けない。子どものしつけのための措置は、その子どもの尊厳にしたがってのみとることができ、体罰または子どもの身体的および精神的発達に関わる罰もしくは子どもの情緒的状況に影響を及ぼす可能性のある罰は、いかなる状況下においても認められない」 同90条「いずれかの種類の体罰を実行することまたは子どもからその権利を剥奪することは、子どもの生命、身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達、身体的不可侵性ならびに身体的および精神的健康を脅かすことにつながるおそれがあるので、家庭においても、子どもの保護、ケアおよび教育を確保するいずれかの施設においても、禁じられる」 ウクライナ(2004年) 家族法150条7項「親による子どもの体罰およびその他の非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰は禁じられる」 ハンガリー(2005年) 子どもの保護および後見運営法6条5項「子どもは、その尊厳を尊重され、かつ虐待(身体的、性的および精神的暴力、ケアの懈怠ならびにいずれかの情報によって引き起こされる被害)から保護される権利を有する。子どもは、拷問、体罰およびいずれかの残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける処罰または取扱いを受けない」 ギリシア(2006年) 家族間暴力禁止法4条「子どもの養育の文脈における、しつけのための措置としての子どもに対する身体的暴力に対しては、〔親の権限の濫用に対する対応を定めた〕民法第1532条の対応が適用される」 オランダ(2007年) 民法1:247条 1.親の権限には、未成年の子をケアしおよび養育する親の義務および権利が含まれる。 2.子のケアおよび養育には、子の情緒的および身体的福祉、子の安全ならびに子の人格の発達の促進への配慮および責任が含まれる。子のケアおよび養育において、親は、情緒的もしくは身体的暴力または他のいかなる屈辱的な取扱いも用いない。 ニュージーランド(2007年) 刑法59条(親の統制) (1)子を持つすべての親およびこれに代わる立場にあるすべての者による有形力の行使は、当該有形力が情況に照らして合理的であり、かつ次のいずれかの目的のために用いられる場合には、正当と認められる。 (a) 子または他の者に対する危害を防止し、もしくは最小限に留めるため。 (b) 子が犯罪に相当する行為に携わり、もしくは携わり続けることを防止するため。 (c) 子が攻撃的なまたは破壊的な行動に携わり、もしくは携わり続けることを防止するため。 (d) 望ましいケアおよび子育てに付随する通常の日常的職務を遂行するため。 (2) 1項のいかなる規定またはコモンローのいかなる規則も、矯正を目的とする有形力の行使を正当化するものではない。 (3) 2項は1項に優越する。 (4) 子に対する有形力の行使をともなう犯罪との関わりで行なわれた、子の親またはこれに代わる立場にある者に対する告発について、当該犯罪がきわめて瑣末であることから起訴することに何の公益もないと考えられるときは、警察にはこれを起訴しない裁量権があることを、疑いを回避するために確認する。 ポルトガル(2007年) 改正刑法152条「何人も、身体的または心理的な不当な取扱い(体罰を含む)、自由の剥奪および性犯罪を行なったときは、当該行為を繰り返し行なったか否かに関わらず、1年から5年の収監刑に処す」 ウルグアイ(2007年) 民法等改正法(2007年11月20日) 第1条 2004年9月7日の法律第17.823号に以下の条を追加する。 「第12条bis(体罰の禁止) 親、保護者、および、子どもおよび青少年の養育、処遇、教育または監督に責任を負う他のすべての者が、子どもまたは青少年の矯正または規律の一形態として、体罰または他のいずれかの屈辱的な罰を用いることは禁じられる。 ウルグアイ子ども青少年機関、その他の国の機関および市民社会は、次のことについて共同の責任を負う。 a) 親、および、子どもおよび青少年の養育、処遇、教育または監督に責任を負う他のすべての者を対象とする意識啓発プログラムおよび教育プログラムを実施すること。 b) 体罰その他の形態の屈辱的取扱いに代わる手段として、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態の規律を推進すること。」 第2条 2004年9月7日の法律第17.823号第16条Fの規定を次の規定に代える。 「f) 子どもまたは被保護者の矯正にあたり、体罰または他のいずれかの種類の屈辱的取扱いを用いないこと。」 第3条 民法第261条ならびに第384条第2文および第3文を廃止する。 ベネズエラ(2007年) 子ども・青少年保護法32条A すべての子どもおよび若者は、よく取り扱われる権利を有する。この権利には、愛、愛情、相互の理解および尊重ならびに連帯に基づく、非暴力的な教育および養育を含む。 親、代理人、保護者、親族および教師は、その子どもの養育および教育にあたり、非暴力的な教育および規律の手段を用いるべきである。したがって、あらゆる形態の体罰および屈辱的な罰は禁じられる。国は、社会の積極的参加を得ながら、子どもおよび若者に対するあらゆる形態の体罰および屈辱的な罰を廃止するための政策、プログラムおよび保護措置が整備されることを確保しなければならない。 体罰とは、子どもの養育または教育における力の行使であって、子どもおよび若者の行動を矯正し、統制しまたは変化させるためにいずれかの程度の身体的苦痛または不快感を引き起こす意図で行なわれるものをいう(ただし、当該行為が刑罰の対象とならないことを条件とする)。 屈辱的な罰とは、子どもおよび若者を養育しまたは教育するため、その行動を規律し、統制しまたは変化させる目的で行なわれるいずれかの形態の取扱いであって、攻撃的な、人格を傷つける、おとしめる、汚名を着せるまたは嘲笑するものとして理解しうる(ただし、当該行為が刑罰の対象とならないことを条件とする)。」 同358条 子どもの養育責任には、子どもの尊厳、権利、諸保障または全般的発達を侵害しない適切な矯正措置を用いながら、自己の子どもを養育し、しつけ、教育しおよび世話しならびに金銭的、道徳的および情緒的に支えおよび援助する、父および母の共有の義務および権利(この義務および権利は平等でありかつ逸脱不可能である)を含む。したがって、あらゆる形態の体罰、心理的暴力および屈辱的な取扱いは、子どもおよび若者を害するものであり、禁じられる。 スペイン(2007年) 2007年12月20日の民法改正により、「合理的かつ節度のある」矯正手段を用いる親の権利に関する規定を削除するとともに、154条で、親/保護者はその責任を果たすにあたり子どもの身体的および心理的不可侵性を尊重しなければならないと規定。 トーゴ(2007年) 子ども法353条「国は、親または子どもに対して権限または監護権を有する他のいずれかの者によるあらゆる形態の暴力(性的虐待、身体的または身体的暴力、ネグレクトまたは不注意、虐待を含む)から子どもを保護する」 同357条「身体的および心理的虐待、体罰……は第356条第2項に定められた処罰の対象となる」 同376条「学校、職業訓練所および施設における体罰その他の形態の暴力または虐待は、禁じられる。これには、いずれかの施設もしくは孤児院、障害児リハビリテーション・センター、接受センターもしくは更生センター、病院、再教育センターまたは一時的か恒久的かを問わず子どもが養育される他の場所を含む」 コスタリカ(2008年) 改正家族法143条「親の権威は、子どもを導き、教育し、養育し、監督しおよび規律する権利を与えかつ義務を課すものであって、いかなる場合にも、未成年者に対する体罰の使用または他のいずれかの形態の品位を傷つける取扱いを公認するものではない」 子ども・青少年法24条bis(体罰その他の品位を傷つける形態の取扱いから自由な規律に対する権利)「子どもおよび青少年は、母、父または保護者および養育者または教育施設、保健施設、シェルター、青年拘禁施設その他のいずれかのタイプの施設の職員から、助言、教育、ケアおよび規律を受ける権利を有する。このことは、これらの者に対し、体罰または品位を傷つける取扱いを用いるいかなる権限も与えるものではない」 モルドバ(2008年) 改正家族法53条4項「未成年者は、親または親に代わる者による体罰を含む虐待から保護される権利を有する」 同62条2項「親が選択する子どもの教育方法から、虐待的行動、あらゆる態様の侮辱および不当な取扱い、差別、心理的および身体的暴力、体罰……は排除される」 ルクセンブルグ(2008年) 子ども・家族法2条「家庭および教育共同体において、身体的および性的暴力、世代間の侵犯、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いならびに性器切除は禁じられる」 リヒテンシュタイン(2008年) 子ども・若者法3条 1.子どもおよび若者は、子どもの権利に関する条約に掲げられた権利および次の措置に対する権利を有する。 a. とくに差別、ネグレクト、暴力、虐待および性的虐待からの保護。 b. 暴力のない教育/養育。体罰、心理的危害その他の品位を傷つける取扱いは認められない。 c. 自己に関わる社会的、政治的、経済的および文化的状況への参加。 d. とくに裁判所および行政との対応において、その成熟度および年齢にしたがって意見を表明しかつ聴かれること。 e. その最善の利益が優先されること。 2.子どもは、自己の権利が侵害されたと考えるときは、オンブズパーソンに連絡することができる。 ポーランド(2010年) 改正家族法96条「未成年者に対して親の配慮、養育または代替的養護を行なう者が、体罰を用い、心理的苦痛を与え、かつ他のいずれかの形態で子どもに屈辱を与えることは禁じられる」 チュニジア(2010年) 2010年7月26日の法律第2010-40号により、刑法319号から「子どもに対して権限を有する者による子どもの矯正は、これを処罰しない」旨の文言を削除。 ケニア(2010年) 憲法29条(人身の自由および安全) すべての者は、人身の自由および安全に対する権利を有する。これには、次の権利を含む。 …… (c) 公的なものか私的なものかを問わず、いかなる形態の暴力の対象にもされないこと。 (d) 身体的なものか心理的なものかを問わず、いかなる方法による拷問の対象にもされないこと。 (e) 体罰の対象とされないこと。 (f) 残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を受けないこと。 コンゴ共和国(2010年) 子ども保護法53条「子どものしつけまたは矯正のために体罰を用いることは、禁じられる」 アルバニア(2010年) 子どもの権利保護法21条(あらゆる形態の暴力からの保護) 子どもは、以下の形態のいかなる行為からも保護される。 a) 身体的および心理的暴力〔注/「身体的暴力」とは、「子どもに対して損傷を与えようとするすべての試みもしくは実際の身体的損傷または傷害(体罰を含む)であって偶発的ではないもの」をいう(3条(c))〕 b) 体罰ならびに品位を傷つけるおよび屈辱的な取扱い c) 差別、排除および侮蔑 d) 不当な取扱いおよび遺棄 dh) 搾取および虐待 e) 性暴力 同3条(f) 「体罰」とは、親、きょうだい、祖父母、法定代理人、親族または子どもに法的責任を負う他のいずれかの者によって、たとえその程度がもっとも軽いものであっても、痛みまたは苦痛を引き起こす目的で力の行使に訴えることにより行なわれるいずれかの形態の罰をいう。体罰には、殴打すること、責め苛むこと、暴力的に揺さぶること、火傷を負わせること、平手で打つこと、蹴ること、つねること、ひっかくこと、噛むこと、叱責すること、行為を強要すること、および、身体的および精神的不快感を引き起こすための物質を用いることのような諸形態を含む。 南スーダン(2011年) 暫定憲法17条1項「すべての子どもは、次の権利を有する。…… (f) 親、学校管理者その他の施設管理者を含むいかなる者による体罰ならびに残虐なおよび非人道的な取扱いも受けないこと。……」 マケドニア(2013年) 改正子ども保護法(2013年)12条2項:「あらゆる形態の性的搾取および子どもの性的虐待(いやがらせ、児童ポルノ、児童買春)、強制的周旋、子どもの売買もしくは取引、心理的もしくは身体的な暴力およびいやがらせ、処罰その他の非人道的な取扱い、あらゆる種類の子どもの搾取、商業的搾取および虐待は、基本的な人間としての自由および権利ならびに子どもの権利を侵害するものであって、禁じられる」 ホンジュラス(2013年) 政令第35-2013号(14条:親の懲戒権を認めていた民法231条を削除/5条:家族法191条を以下のように改正) 親は、親の権威を行使するにあたり、その子の方向づけ、ケアおよび矯正を行ない、かつ、その子の身体的および精神的能力の発達に一致する形で、その包括的発達にとってふさわしい指導および方向づけを与える権利を有する。 親、および、一時的か恒久的かにかかわらず〔子どもおよび青少年の〕ケア、養育、教育、処遇および監督に責任を負うすべての者は、体罰を用い、または子どもまたは青少年の矯正またはしつけの形態としていかなる態様の屈辱的な、品位を傷つける、残虐なもしくは非人道的な取扱いを用いることも、禁じられる。 国は、権限のある国の制度を通じ、以下のことを保障する。 (a) (親向けの意識啓発・教育プログラム、略) (b) 体罰その他の形態の屈辱的な取扱いに代わる手段として、積極的な、参加型の、かつ非暴力的な形態のしつけを推進すること。 カボベルデ(2013年) 子ども・青少年法31条 (1)家族は、子どもおよび青少年の全面的発達を可能にし、かつその身体の不可侵性に影響を及ぼすいかなる行為からも子どもおよび青少年を保護する、愛情に満ちた安全な環境を提供しなければならない。 (2)親は、矯正の権利を行使するにあたり、暴力、体罰、心理的危害およびその尊厳に影響を及ぼす他のすべての措置(これらの行為はすべて許容されない)を受けない養育に対する子どもおよび青少年の権利を常に念頭に置かなければならない。 マルタ(2014年) 改正刑法(2014年)339条1項 以下のいずれかに該当するすべての者は、人身に対する侵害の罪で有罪となる。(中略) (h) 他のいずれかの者を矯正する権限を有する者が節度の限界を超えたとき。 ただし、いかなる疑念も回避するため、いかなる種類の体罰も、常に節度の限界を超えたものとみなされるものとする。 ブラジル(2014年) 改正子ども・青少年法18-A条 子どもおよび青少年は、その親もしくは拡大家族の構成員、当該子ども等について責任を負う者、社会的および教育的措置を実施する公務員、または当該子ども等のケアまたは処遇、教育もしくは保護を委託された他のいずれかの者によって行なわれる、矯正、しつけ、教育または他のいずれかの名目の形態としての体罰または残酷なもしくは品位を傷つける取扱いを利用されることなく、教育されかつケアされる権利を有する。…… ボリビア(2014年) 子ども・青少年法146条 (1)子どもおよび青少年は、相互の尊重および連帯を基礎とする、非暴力的な養育および教育から構成される良好な取扱いについての権利を有する。 (2)母、父、保護者、家族構成員および教育者の権威を行使するにあたっては、子育て、教育および教育において非暴力的な手法が用いられるべきである。身体的な、暴力的なおよび屈辱的ないかなる罰も、禁じられる。 アルゼンチン(2014年) 民商法647条「あらゆる形態の体罰、不当な取扱い、および、子どもおよび青少年を身体的にまたは精神的に傷つけまたは損なういかなる行為も、禁じられる。……」 サンマリノ(2014年) 家族法改正法57条改正「子どもは、保護および安全に対する権利を有し、体罰または子どもの身体的および心理的不可侵性にとって害となるその他の取扱いを受けない」 刑法234条改正「(体罰の禁止)矯正または規律の権限を行使する際に体罰を行ないまたは他の威迫的もしくは抑圧的な手段を用いたいかなる者も、当該の罰または手段によって、加害者の権限下にある者または加害者に委託された者に身体もしくは精神への危険または疾病が生じたときは、第1級禁固刑または親権の行使の禁止、解任、解職もしくは専門資格の剥奪に処すものとし、当該行為によって第156条に定めるいずれかの事件が生じたときは第3級禁固刑に、または当該行為が死亡につながったときは第5級禁固刑に処すものとする」 エストニア(2014年) 児童福祉法24条 (1)子どもをネグレクトし、子どもを精神的、情緒的、身体的または性的に虐待し(子どもに屈辱を与え、脅かし、もしくは身体的に罰することを含む)、かつ、子どもの精神的、情緒的または身体的健康を危うくする他のいずれかの方法によって子どもを罰することは、禁じられる。 (2)子どもの虐待を防止するため、子どもの法的代理人は、懲罰登録法に基づく他の者の懲罰記録についての情報を入手する権利を有する。 (3)子どもの行動が当該子ども自身または他の者の生命または健康を直接かつ直ちに危うくするものであって、会話、説得または言葉で落ち着かせようとする試み等を通じてこの危険を回避することが不可能であるために、子どもを養育する者、子どもを相手として働いている者または子ども保護ワーカーが、子どもを抑制するために、子どもに身体的、精神的または情緒的危害を引き起こさず、かつ子どもの権利および自由を可能なかぎり侵害しない限度で有形力を用いなければならないときは、本法にいう子どもの虐待にはあたらない。 (4)本法の適用上、有形力の使用が認められるのは、子どもを脅かす危険または子どもが及ぼす危険を回避する目的に照らして比例性および必要性を有する限度で子どもの動作を制限する場合のみである。罰を目的とする有形力の使用は、認められない。 ニカラグア(2014年) 2014年家族法280条 父、母その他の家族構成員、保護者、または息子もしくは娘に法的に責任を負う他の者は、子どもの健康、身体的不可侵性ならびに心理的および人格的尊厳を危険にさらすことなく、かつ、いかなる状況下においても矯正またはしつけの形態として体罰またはいずれかの態様の屈辱的取扱いを用いることなく、子どもに対し、子どもの発達しつつある能力に一致する形で適切な指示および指導を与える責任、権利および義務を有する。 (略) 家族・若者・子ども省は、他の国家機関および社会との調整を図りながら、体罰およびその他の形態の屈辱的しつけに代わる手段としての積極的な、参加型のかつ非暴力的な諸形態のしつけを促進する。 アンドラ(2014年) 刑法476条改正:「いずれかの者を軽度に虐待しまたは身体的危害を加えたいかなる者も、禁固刑または6000ユーロ以下の罰金に処す。当該虐待が体罰に当たるときは、禁固刑を科すものとする」 ベナン(2015年) 2015年子ども法 第39条 親、または子どもに法的責任を負う他の者は、子どもが人道的にかつその人間の尊厳を尊重しながら扱われることを確保するような方法でしつけが実行されることを確保する。いかなる場合にも、子どもの身体的不可侵性の侵害または拷問もしくは非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いに相当する罰が行なわれてはならない。いかなる罰も、教育的意図を有し、かつ説明をともなうものでなければならない。 第119条 あらゆる形態の体罰は、学校、専門的学習センターおよび保育施設においてこれを禁ずる。 第130条 国は、家庭、学校および他の官民の施設におけるしつけおよび規律維持にあって、体罰または他のいかなる形態の残虐なもしくは品位を傷つける取扱いも行なわれないことを確保する。 第220条 養護を受けている子どもに対するいかなる形態の体罰その他の暴力もこれを禁じ、違反に対しては刑事罰を科す。 アイルランド(2015年) 2015年子ども最優先法 合理的懲戒の抗弁の廃止 第28条 1997年非致死性対人犯罪法を改正し、第24条の次に以下の条を挿入する。 「第24条A (1)合理的な懲戒に関するコモンロー上の抗弁は、これを廃止する。」(第2項以下略) ※訳者注/子ども最優先法の条文番号は法案(PDF)による。 ペルー(2015年) 子どもおよび青少年に対する体罰その他の屈辱的な罰の使用を禁止する法律 第1条 法律の目的 子どもおよび青少年に対する体罰その他の屈辱的な罰の使用を禁止すること。 当該禁止は、家庭、学校、地域、職場およびその他の関連の場所を含む、子どもおよび青少年が存在するすべての場所で適用される。 第2条 定義 この法律の適用上、次の文言は次のように理解される。 1.体罰:養育権限または教育権限の行使における有形力の使用であって、子どもおよび青少年の行動を矯正し、管理しまたは変化させる目的で一定の程度の苦痛または不快感を引き起こすことを意図したもの。 2.屈辱的な罰:養育権限または教育権限の行使において、子どもおよび青少年の行動を矯正し、管理しまたは変化させる目的で行なわれる、侮辱的な、品位を傷つける、価値を貶める、汚名を着せるまたはあざけるすべての取扱い。 改正子どもおよび青少年法第3-A条(上記法律により新設) 子どもおよび青少年は、例外なく、よい取扱いを受ける権利を有する。このことは、親、後見人または法定代理人および教員、行政機関、公的機関もしくは私的機関または他のいずれかの者による包括的な保護が提供される調和的、支援的かつ愛育的な環境において、ケア、愛情、保護、社会化および非暴力的教育を受ける権利を意味する。 よい取扱いを受ける権利は、子どもおよび青少年の間でも相互に適用される。 モンゴル(2016年) 子どもの権利法 7条1項 子どもは、あらゆる社会的場面における犯罪またはいかなる形態の暴力、体罰、心理的虐待、ネグレクトおよび搾取からも保護される権利を有する。 子ども保護法 2条6項 親、保護者ならびに子どもおよび青少年のケア、処遇、指導および教育に責任を負う第三者が子どもの養育および子どもの誤った行動の懲戒の際に行なうあらゆる態様の身体的および屈辱的な罰は、これを禁ずる。 5条4項 子どもの教育、養育およびケアに際し、親、法定保護者、親族および教員は、非暴力的なしつけの方法をとるものとする。 パラグアイ(2016年) 子どもおよび青少年の望ましい取扱い、建設的な子育ておよび矯正またはしつけの手段としての体罰もしくはあらゆる態様の暴力からの保護の促進に関する法律 第1条 望ましい取扱いに対する子どもおよび青少年の権利ならびに体罰または屈辱的な取扱いの禁止 すべての子どもおよび青少年は、望ましい取扱いに対する権利ならびに自己の身体的、心理的および情緒的不可侵性を尊重される権利を有する。この権利には、自己のイメージ、アイデンティティ、自律、考え方、気持ち、尊厳および価値観の保護を含む。 矯正およびしつけの一形態としての子どもおよび青少年の体罰および屈辱的な取扱いは、とくにそれが親、指導者、保護者または子どもおよび青少年の教育、ケア、指導もしくは何らかの取扱いに責任を負ういずれかの者によって行なわれるときは、これを禁ずる。 子どもおよび青少年は、とくに、建設的な子育てのための指針を実施することによる指導、教育、ケアおよびしつけを受ける権利を有する。 第5条 体罰および屈辱的な取扱いの禁止 子どもまたは青少年に関連して保健、教育、文化、レクリエーション、保護、雇用または治安に関する政策、計画およびプログラムを実施する国の機関は、次の目的のための資源を提供しなければならない。 a) 親ならびに子どもおよび青少年の養育、教育、ケアまたは保護に責任を負うその他の成人を対象とした、教育相談活動、建設的な子育てに関する指導および望ましい取扱いの推進のためのプログラムの策定および実施。その際、とくに社会経済的地位、年齢、ジェンダーアイデンティティ、障害、民族および文化など、とりわけ被害につながりやすい諸条件を考慮するものとする。 b) 子ども期および青少年期に関連した業務を行なっている政府職員を対象とした、望ましい取扱いの推進、体罰および残虐なまたは屈辱的な取扱いの禁止ならびに権利侵害があった場合の保護機構に関する研修。 c) この法律の規定に違反する行為の通報、調査および是正を奨励するための規則および機構の策定および実施。 d) 子どもおよび青少年の教育を目的としたしつけの形態としての体罰および屈辱的な取扱いの使用を助長する諸要因の根絶を奨励するための政策、計画およびプログラムの策定。 e) 統合的相談および負担可能、持続可能かつ良質なケアが存在しかつ利用できることの確保。 f) あらゆるレベルおよび公的機関における、建設的な子育ておよび望ましい取扱いの推進ならびに子どもまたは青少年の権利の全面的行使の保障。 g) 国、県および自治体のレベルにおける、望ましい取扱いに対する子どもおよび青少年の権利の促進。この取り組みは、国家子ども青少年評議会ならびに県および自治体の子ども青少年評議会を通じて、それぞれこの目的のための行動および資源を共有しながら進めるものとする。 スロベニア(2016年) 家族内暴力の防止に関する法律(改正) 第3条a 子どもの体罰の禁止 (1) 子どもの体罰は、これを禁ずる。 (2) 子どもの体罰とは、子どもに対するあらゆる身体的な、残虐なもしくは品位を傷つける取扱いまたは子どもを罰する意図で行なわれる他のあらゆる行為であって、教育の手段としての身体的、心理的もしくは性的暴力またはネグレクトの要素を有するものをいう。 モンテネグロ(2016年) 改正家族法 第9条a(1)子どもは、体罰または他のいかなる残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いの対象にもされない。 (2)第1項の禁止は、親、保護者および子どもをケアしまたは子どもと接触する他のすべての者に対して及ぶ。 (3)第2項に掲げられた者は、第1項に掲げられたいかなる取扱いからも子どもを保護する義務を負う。 リトアニア(2017年) 子どもの権利の保護の基本原則に関する法律(改正条文抜粋) 第2条〔定義〕 1.体罰-たとえ小規模なものであっても身体的苦痛を引き起こすために、またはその他のやり方で子どもを身体的に拷問するために有形力が用いられるすべての罰。 2.子どもに対する暴力-子どもが経験する他の者の作為または不作為であって、子どもに対して身体的、心理的、性的、経済的もしくはその他の影響を与えもしくはネグレクトに至り、そのために子どもの生命、健康、発達、名誉および尊厳に対する被害および脅威をもたらすもの(家族間暴力および体罰を含む)。 第6条 9.国は、子どもが、親、その他の子どもの法的代理人または子どもの世話をする他のいずれかの者から受けるおそれのあるあらゆる形態の暴力(体罰を含む)から保護されることを確保するため、あらゆる適切な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。 第10条 2.子どもは、その親、その他の法的代理人、子どもと同居している者またはその他の者によるあらゆる形態の暴力(体罰を含む)から保護される権利を有する。 第49条 1.子どもの親またはその他の法的代理人は、子どもが自己の義務を果たそうとしなかったことまたは規律に違反したことを理由として、自己の判断にしたがい、子どもに適切な懲戒(ただし、体罰および他のあらゆる形態の暴力を除く)を加えることができる。 ネパール(2018年) 子ども法 7条 5.すべての子どもは、その父、母、その他の家族構成員もしくは保護者、教員または他のいずれかの者によって行なわれる、あらゆる態様の身体的または精神的暴力および処罰、ネグレクト、非人道的な振舞い、ジェンダーに基づくまたは差別的な虐待、性的虐待ならびに搾取から保護される権利を有する。 コソボ(2019年) 子どもの保護に関する法律 第24条 1.体罰および子どもの尊厳を害しかつ低減させる懲戒措置(諸形態の身体的および精神的暴力ならびに子どもの品位を傷つけ、子どもを辱めかつ子どもを不適切な状況に置く諸行動を含む)は、家庭、教育施設、子どものケアのための施設、法典および司法制度、職場ならびにコミュニティのそれぞれの環境において、禁じられる。 2.いかなる者も、子どもを拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いならびに体罰および品位を傷つける取扱いの対象とすることを禁じられる。 3.教育関係者および学校関係者は、懲戒および支配の手段として体罰を用いるべきではなく、尊重および正義を基礎として職務を遂行しかつ実践を積み重ねるべきである。 4.関連省庁は、体罰の有害な影響に関する意識を高めるためのプログラムの発出および確立を確保するとともに、以下のものを立案しかつ創設する。 4.1 体罰が品位を傷つける結果をもたらすことに関する教育および意識啓発 4.2 家庭および教育施設で非暴力的なしつけおよび規律維持の手法を促進する子育て支援プログラム フランス(2019年) 民法第371-1条(「通常の教育的暴力の禁止に関する法律」により、以下に太字で表示した第3項を追加) 1.親の権威は、子の利益を最終目的とする権利および義務の総体である。 2.親の権威は、子の人格を適正に尊重しながら、子をその安全、健康および道徳において保護し、その教育を確保しかつその発達を可能にする目的で、子の成年または未成年解放まで父母に委ねられる。 3.親の権威は、いかなる身体的または心理的暴力も用いることなく行使される。 4.両親は、子の年齢および成熟度にしたがい、子に関わる決定に子を参加させる。 南アフリカ(2019年) 最高裁判所判決(9月18日)により、コモンローで認められてきた「合理的なまたは節度のある懲戒(reasonable or moderate chastisement)」の抗弁を廃止。(解説) ジョージア(2019年) 子どもの権利に関する法律 第24.5条 親または子どもの養育に責任を負う者が、子どもの養育または教育の過程で、子どもに対する体罰または他の残虐な、品位を傷つけるまたは非人道的な取扱いおよび/もしくは処罰を含むやり方を適用することは、これを認めない。 第53.2条 子どもの体罰、拷問または他のいずれかの残虐な、品位を傷つけるもしくは非人道的な取扱いもしくは処罰は、家庭、就学前教育施設または一般教育施設、代替的養護サービス、医療施設および/または精神医療施設、刑事施設ならびに他のいかなる場所においても、これを禁止する。このような行為の実行は、ジョージアで施行されている法律に基づいて処罰される。 日本(2020年) 児童虐待の防止等に関する法律(2019年改正) 第14条 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治29年法律第89号)第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。(2項略) 児童福祉法(2019年改正) 第33条の2(1項略) 2 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる。ただし、体罰を加えることはできない。(3項・4項略) 第47条(1項・2項略) 3 児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第六条の三第八項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親は、入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童等の福祉のため必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。 厚生労働省「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~」〔PDF〕(2020年2月) 民法(2022年12月改正) 第821条 親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。 ※あわせて第822条(懲戒権規定)を削除し、第821条(親権者の居所指定権)を第822条に変更。 セーシェル(2020年) 子ども法(2020年改正) 第70.B条 (1)他のいかなる法律の規定にかかわらず、いかなる子どもも体罰の対象とされない。 (2)前項の規定に違反したいかなる者も、犯罪を行なったものとし、有罪判決とともに罰金25,000SCR〔セーシェルルピー〕もしくは2年以下の収監を科しまたはこれを併科する。ただし、その前に裁判所が、当該犯罪者と子どもとの関係を考慮しながら、当該案件を処理する他の適切な手段を検討することを条件とする。 注/「体罰」は、同法第2条に新たに設けられた定義規定で、「親の権限、または子どもに関する責任、子どもの監護、子どもへのアクセス、子どものケア、扶養もしくは管理から派生する権利もしくは権限を行使するにあたって、規律を維持しまたは規則を執行するために子どもに対して行なわれるすべての種類の身体的罰」と定義されている。 ギニア(2020年) 子ども法(2019年12月可決/2020年6月施行)(条文出典) 第767条 子どもに対するあらゆる形態の体罰、身体的罰または言葉による罰および残虐な、非人道的な、品位を傷つけるまたは屈辱的な取扱いは、家庭、教育現場、職業上の現場、行政の現場、司法現場その他の現場のいずれで行なわれるかにかかわらず、明示的に禁止される。 第768条(体罰を合理的なものとして正当化することはできない旨の宣言/行政機関または司法機関への通報義務) 第769条(学校および刑事施設における体罰の明示的禁止) メキシコ(2020年) ※保留 女児、男児および青少年の権利に関する一般法改正(改正内容概要)注/Global Initiative to End All Corporal Punishment は、メキシコ連邦を構成する32州のうちまだ州法で体罰を全面禁止していない11州で法改正が行なわれた後に、メキシコを体罰全面禁止国として認定する見込み。 韓国(2021年) 民法第915条(親権者の懲戒権)の削除(改正内容概要) コロンビア(2021年) 2021年5月14日の法律第2089号 第1条 親または子どもおよび青少年に対して親としての権威を行使する個人は、その信条および価値観にしたがって子どもを教育し、育てかつ矯正する権利を有する。唯一の限界として、子どもおよび青少年に対し、体罰、残虐な、屈辱的なまたは品位を傷つける取扱いおよびあらゆる態様の暴力を用いることは、禁じられる。この禁止は、子どもおよび青少年が成長するさまざまな環境のそれぞれにおいて子どもおよび青少年のケアに責任を負う他のいかなる者に対しても、適用される。 ※第3条でも「矯正、制裁またはしつけの方法として「体罰、残虐な、屈辱的なまたは品位を傷つける取扱いおよびあらゆる態様の暴力を用いること」を禁止。 ザンビア(2022年) 子ども法(2022年法律第12号)22条:「子どもに対する罰としての体罰は、これを加えてはならない」 モーリシャス(2022年) 2022年子ども法 第14条(1)何人も、子どもの矯正またはしつけのための措置として子どもに体罰または屈辱的な罰を与えてはならない。 ※「体罰または屈辱的な罰」とは、「有形力の使用または物質の使用(ただしこれらの手段に限られない)を通じ、子どもに痛みまたは苦痛を引き起こすすべての形態の罰」をいう(第14条(3))。 ラオス(2024年) 2006年子どもの権利利益保護法(2023年改正) 第57条(2) 親、保護者その他の者は次の行為を禁じられる。(……)体罰、殴打、叱責およびその他の形態の子どもの拷問による身体的虐待…… タジキスタン(2024年) 子どもの教育および養育についての責任に関するタジキスタン共和国法(2024年) 第16条(子どもの養育における親の義務) 親は、子どもの養育に際して次の責任を負う。 〔中略〕 8)教育の過程で子どもに対して暴力(体罰を含む)を用いないこと。 9)子どもの尊厳を尊重し、かつ、子どもに対する残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを認めないこと。〔後略〕 第17条(親に代わる者の権利および義務) 親に代わる者は、親との関連で本法第14条〔子どもの教育における親の権利〕、第15条〔子どもの教育における親の義務〕および第16条が定めるすべての権利および義務を有する。ただし、タジキスタン共和国の法律で異なる手続が定められているときは、この限りでない。 第20条(教員の権利および義務) 教員は、子どもの教育および養育に際して次の権利および義務を有する。 〔中略〕 8)教育の過程で子どもに対して暴力(体罰を含む)を用いないこと。 9)子どもの権利、自由および尊厳を遵守しかつ尊重するとともに、子どもに対する残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを認めないこと。〔後略〕 第21条(子どもの教育の分野における侵害行為の防止)〔略〕 第22条(子どもの教育の分野における侵害行為を防止するための措置)〔略〕 (参考)英国 スコットランド(2019年)子ども(暴行からの平等な保護)(スコットランド)法 第1条 (1) 親の権利または子どもの監督(charge)もしくは監護(care)から派生する権利の行使における子どもの体罰は正当と認められ、したがって暴行ではない旨の法の規則は、その効力を失う。 (2) 2003年刑事司法(スコットランド)法第51条(子どもの体罰)は廃止される。 第2条 スコットランド諸閣僚は、第1条の効力に関する公衆の意識および理解を促進するために適切と考える措置をとらなければならない。 王室属領ジャージー代官管轄区(2019年)子ども・教育(改正)(ジャージー)法 第1条 2002年子ども(ジャージー)法を第2条および第3条にしたがって改正する。 第2条 2002年法の第35条(16歳未満の子どもに対する危害またはネグレクト)のうち、親、教員または法律に基づいて子どもを管理する他の者には子どもに対して体罰を行なう固有の権利があると推定される旨を定めた第5項を削除する。 第3条 2002年法の第79条(合理的な体罰の抗弁の制限)を次の規定に置き換える。 第79条(合理的な体罰の抗弁の廃止) (1)慣習法に基づく子どもの合理的な体罰のいかなる抗弁も、これを廃止する。 (2)したがって、子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、当該体罰が慣習法のいずれかの規則の適用上 (a) 合理的な処罰または (b) 容認可能な行為のいずれかを構成するという理由で正当化することができない。 (3)本条において「体罰」とは、子どもとの関連で、子どもを処罰する目的で、子どもの身体に対し、暴行を構成するような身体的行為を行なうことをいう(当該行為に処罰以外の理由があるか否かを問わない)。 第4条 1999年教育(ジャージー)法の第36A条(合理的な力を用いる職員の権限)における「体罰」の定義を改正後の2002年法第79条(3)の規定と揃え、体罰は許されないことを明確にする。子どもに危害が及ぶことを防止するための合理的な力の行使(たとえば道路に飛び出した子どもを引っ張って戻すことなど)は引き続き認められる。 第5条(雑則、略) ウェールズ(2020年)子ども(合理的処罰の抗弁の廃止)(ウェールズ)法 1.コモンロー上の合理的処罰の抗弁の廃止 (1)コモンロー上の合理的処罰の抗弁は、ウェールズで行なわれる子どもの体罰との関連では、これを廃止する。 (2)これにともない、ウェールズで行なわれる子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、合理的処罰にあたるという理由で、これを正当化することはできない。 (3)同様に、ウェールズで行なわれる子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、他のいずれかのコモンロー上の規則の適用上認められた行為であったという理由で、これを正当化することはできない。 (4)本条の適用上、「体罰」とは、処罰として行なわれるすべての殴打(battery)をいう。 (5)(略:英国2004年子ども法第58条の修正) 2.(略:施行に関する規定) 3.(略:法律の略称に関する規定) 更新履歴:ページ作成(2011年10月25日)。なお、ニュージーランドまでの資料は2007年5月31日に旧サイトに掲載した内容を一部修正したもの。/~/日本を追加(2020年2月28日)。/セーシェルを追加(6月1日)。/メキシコを追加(12月11日)。/韓国を判断保留のまま追加(2021年1月9日)。/ギニアを追加(1月29日)。/韓国が体罰全面禁止国として認定されたことにともない、法改正達成国数を62か国に修正(3月26日)。/コロンビアを追加(8月19日)。/ザンビアを追加(2022年11月8日)。/モーリシャスを追加。日本の民法改正を追加(12月13日)。/ラオスを追加(2024年5月1日)。/タジキスタンを追加(8月29日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/172.html
総括所見:東ティモール(第1回・2008年) 第2回・第3回(2015年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/TLS/CO/1(2008年2月14日)/第47会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年1月16日に開かれた第1289回会合において東ティモール民主共和国の第1回報告書(CRC/C/TLS/1)を検討し、2008年2月1日に開かれた第1313回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、子どもの権利条約に基づく締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/TLS/Q/1)に対する文書回答(CRC/CTLS/Q/1/Add.1)の提出を歓迎し、締約国が包括的な共通コアドキュメント(HRI/CORE/TLS/2007)を提出したことに満足感とともに留意し、かつ、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう、求める。 A.積極的側面 4.委員会は、子どもの権利条約(「条約」)およびその選択議定書ならびに国際刑事裁判所ローマ規程に留保を付さずに加入したことを含め、締約国が主要な7つの国際人権文書に加入したことを祝福する。 5.委員会は、国内人権機関である人権・正義監視官が設置されたことを歓迎し、締約国が国家子どもの権利委員会の設置を計画していることに留意し、かつ、中央住民登録局が創設されたことを称賛する。 6.委員会は、条約に基づく第1回報告書の提出に至るプロセスにおいて広範な協議が実施され、かつ国連機関の強力な支援があったことに留意する。 B.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、東ティモールの最近の歴史、ならびに、その結果として生じたインフラの破壊、行政能力の衰退および執行機構の弱体化に照らし、締約国が、条約で保護されている権利の全面的に実施に関して特段の困難および課題に直面していることに、留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 立法 8.委員会は、国内法を条約に一致させようとする締約国の努力に留意する。しかしながら委員会は、少年司法および教育を含む多くの分野で一貫した立法上の枠組みが存在しないように思われること、および、条約の実施に役立つ諸法律の採択が遅れていることについて、懸念を覚えるものである。 9.委員会は、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼすあらゆる分野で一貫した立法上の枠組みを発展させるための努力、および、子どもに関わるすべての国内法および行政規則が権利を基盤とし、かつ条約の規定および原則に一致したものとなることを確保するための努力を、継続しかつ強化するよう勧告する。委員会は、民法、刑法、教育法、ドメスティックバイオレンス法、養子縁組法、監護/保護監督法、および、子ども法などとくに子どもに関わるその他の法令を含むあらゆる必要な法律を、速やかに採択するよう促すものである。 国家的行動計画 10.締約国の第1回報告書で提供された情報に基づき、委員会は、子どもの権利を実施するための総合的な国家的行動計画がまだ策定されていないことに留意する。 11.委員会は、締約国が、期限の定められた子どものための国家的行動計画を採択するよう、勧告する。当該行動計画は、国家開発計画および国家人権行動計画を根源とし、かつ、2002年の国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」および「子どもにふさわしい世界+5宣言」を正当に考慮しながら、条約に掲げられた子どもの権利を包括的に網羅したものであるべきである。委員会はまた、達成された進展を定期的に評価し、かつ存在する可能性がある欠点を明らかにする目的で、締約国が、行動計画の全面的実施のための十分な予算配分ならびにフォローアップおよび評価の機構を確保することも勧告するものである。 調整 12.条約の実施に関して、委員会は、人権アドバイザー事務所が、社会連帯省国家社会復帰局および教育文化省によってとられる国レベルの実施措置の調整を担当していることに留意する。委員会はまた、国家社会復帰局が機関横断アプローチの策定プロセスのさなかにあることにも留意するものである。委員会は、国家子どもの権利委員会を設置し、子どもの権利の実施プロセスの支援を担当させることが意図されていることを歓迎する。 13.委員会は、締約国が、国および地方の双方で子どもの権利に関与しているさまざまな政府の機関および機構間の調整を強化するとともに、単一の機関または部門横断型機構に対し、条約の実施に関わる活動の調整を委ねるよう、勧告する。委員会は、締約国が、実効性のある国家子どもの権利委員会を設置するための努力を速やかに進めるとともに、同委員会に対し、国および広域行政圏の双方における調整を委ねるよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、条約の実施の調整および評価において市民社会の構成員、子どもの権利の専門家およびその他の専門職の関与を得るよう勧告する。 独立の監視 14.委員会は、人権・正義監視官の設置を歓迎するものの、子どもの権利に関わる当該機関の役割についてなんら具体的情報が提供されなかったことを遺憾に思う。 15.委員会は、子どもから申し立てられた苦情を、保護者の同意を得る必要なく受理し、調査しかつこれに対応できる、適切な人員および資源を与えられた子どもの権利担当部局が監視官事務所内に設置されるべきことを勧告する。締約国は、国内人権機関の地位に関する原則(「パリ原則」)および子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割についての委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)にしたがい、同部局が、監視官事務所内で、全面的に独立した監視機構として職務を遂行できることを確保するべきである。同部局の体制は、締約国の領域のあらゆる場所にいる子どもがその機能を利用できるようなものであることが求められる。 資源配分 16.締約国が、資源の限られた状況下で、競合しあう多くのニーズに直面していることは認識しながらも、委員会は、締約国が、条約の実施に関連した予算配分額に関するいかなるデータも提供しなかったことを遺憾に思う。 17.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、関連の予算配分において子どもの権利の視点が全面的に考慮されることを確保する目的で、とくに社会部門に関わって包括的な予算の見直しを行なうよう、奨励するものである。 データ収集 18.委員会は、条約が対象としている多くの分野で、締約国の子どもの状況を監視しかつ評価するためのデータが利用可能とされていないことに留意する。委員会は、このようなデータはきわめて重要であり、かつ、政策の計画および優先順位の設定に関して締約国の指針となる可能性があると考えるものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約が対象としているすべての分野についてデータが収集されることを確保する目的で、国家統計局の技術的能力を強化し、子どもに関する国レベルの中央データベースを設置し、かつ条約に一致した指標を開発するための努力を行なうこと。このようなデータは、特別な保護を必要としている子どもの集団別に加え、たとえば年齢層、性別および都市部/農村部の別によって細分化されるべきである。 (b) これらの指標および収集されたデータを、条約を実施するための政策およびプログラムの立案を促進する目的で活用すること。 (c) 関連の専門家集団を対象としてデータ収集に関する研修を行なうこと。 (d) ユニセフ、および、この分野で関連の専門性を有しているその他の機関との協力に努めること。 市民社会との協力 20.委員会は、市民社会組織に関する法律が採択されたことを歓迎し、かつ政府機関と非政府組織との連携例に留意しながらも、このような協力をさらに強化する余地があるという見解をとるものである。 21.委員会は、限られた資源がもっとも有効に活用されることを確保するため、相互の信頼を基礎とする、非政府組織とのいっそう緊密な協力を奨励する。委員会は、締約国が、条約の実施のあらゆる段階を通じて子どもとともにおよび子どものために活動する市民社会組織の設立および関与を組織的に促進するよう、勧告するものである。 条約の普及および研修活動 22.委員会は、教員、司法職員その他の関連の専門家集団を対象として子どもの権利に関するものも含む人権研修を行なうことに加え、条約に関する情報を普及し、かつ政府機関および市民社会全体を通じてその原則および規定に関する意識を促進する目的で、ユニセフその他の国連機関および非政府組織と協力しながら締約国が行なっている努力を、心強く思う。 23.委員会は、条約に関する情報を、ラジオ番組その他のメディア等も通じ、適切な言語で、子ども、親、コミュニティの指導者、市民社会組織および政府機関の間で体系的に普及しするための努力、および、関連するすべての専門家集団に対し、条約の規定および原則に関する、目標の明確な定期的研修を行なうための努力を、締約国が国際社会と協力しながら継続するよう勧告する。 2.子どもの定義(第1条) 24.委員会は、憲法第9条により、かつ条約が国内法の枠組み直接編入されたことにより、締約国が子どもを18歳未満のすべての者として定義していることに留意する。しかしながら委員会は、現在適用されている女子の最低婚姻年齢が低すぎることを懸念するものである。 25.委員会は、最低婚姻年齢を18歳と定め、かつ男子および女子の双方に平等に適用されるようにすることを目的として、締約国が法律をさらに見直すよう勧告する。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 26.委員会は、とくに婚外子を含む子どもを差別から保護するための特別規定が締約国の憲法に含まれていることを称賛する。しかしながら委員会は、帰還民の子ども、洗礼証明書を所持していない子ども、家族構成員間の性的関係から生まれた子どもおよび障害のある子どもを含む一部の集団の子どもが、事実上の差別(もっとも重要な問題として教育へのアクセスに関わる差別)に直面していることに、懸念とともに留意するものである。 27.第2条にしたがい、委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、前掲の集団の子どもに付与されるスティグマを克服し、かつ、このような集団に属する一部の子どもが教育へのアクセスまたは他のいずれかの権利もしくは資格の享受に関して直面している障壁を取り除く目的で、締約国が、感受性の強化および意識啓発を含む立法上、政策上および教育上の措置を活用するよう、勧告するものである。 子どもの最善の利益 28.委員会は、締約国が、子どもにとくに関わる法律の規定を改正し、かつ関連の公的機関の能力を強化する途上にあることに留意する。条約第3条にしたがい、関連の行政措置および司法手続において子どもの最善の利益の原則がいっそう優先されることを確保するうえで、これらの積極的措置が役立つ可能性があるとはいえ、委員会は、いまのところ、子どもに関わる意思決定、たとえば養子縁組に関する意思決定においてこの原則が第一次的に考慮されているようには思われないことを、懸念するものである。 29.委員会は、締約国が、子どもに関わるすべての法律および実務に条約第3条を全面的に編入し、かつ、子どもの最善の利益の原則の意味および実際的適用に関する意識啓発を図るよう、勧告する。委員会は、締約国が、法律を見直す過程で、この原則が関連の法令に十分に反映され、かつ、子どもに関わるすべての意思決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるようにすることを目指すよう、勧告するものである。 生命、生存および発達に対する権利 30.委員会は、栄養不良が深刻な問題となっていることに加え、乳児死亡率が高いことを懸念する。 31.委員会は、締約国が、乳児死亡率を削減し、かつ栄養不良の問題に対応するためのあらゆる必要な措置(とくに後掲「健康および保健サービス」に掲げられた措置を含む)に優先的に取り組むことにより、条約第6条の全面的実施に努めるよう勧告する。 子ども参加および子どもの意見の尊重 32.委員会は、締約国が、子どもに影響を与えるすべての事柄において子どもの意見が正当に重視されることを確保する必要性は、新たな法律、基準および手続の起草の際に考慮されてきたと明言したことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの意見の尊重の概念が十分に理解されているとは思われないこと、および、関連の決定(行政上および司法上の手続におけるものも含む)が行なわれる際、何が子どもの最善の利益である可能性があるかを確定させるにあたって子どもの意見がほとんど求められていないことを、懸念するものである。 33.条約第12条に照らし、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 市議会のような地方レベルにおけるものも含め、子どもの権利に影響を及ぼす可能性があるいかなる手続(とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる行動)においても、意見を聴かれる子どもの権利を子どもの年齢および成熟度にしたがって確保するための措置の実施を強化する目的で、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励する目的で、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに教員およびソーシャルワーカー)および市民社会(コミュニティの指導者および宗教的指導者ならびに非政府組織を含む)の関与を得ながら、体系的なアプローチおよび政策を発展させるよう努めること。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 34.委員会は、中央住民登録局が創設されたこと、締約国が子どもの名前の登録を促進するための措置をとってきたこと、および、締約国が出生証明書の発行を開始したことに留意する。しかしながら委員会は、これらの努力にも関わらず出生登録率がいまなおきわめて低く、かつ、民法案および住民登録法案が依然として承認および採択待ちの状態であることを、懸念するものである。 35.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、出生登録の利点について世論を喚起しかつ動員するための努力を強化することおよび登録担当者を養成すること等の手段により、出生登録制度の改善にさらに取り組むよう促す。委員会はまた、締約国が、民法案および住民登録法案を速やかに完成させかつ承認することも勧告するものである。 36.委員会はさらに、締約国が、移動出生登録、病院との協力その他の革新的アプローチに関わる最近の経験から得られた教訓の体系的適用を目指すとともに、登録実務における一貫性の欠如に対応するため宗教的機関と緊密に連携するよう、勧告する。 適切な情報へのアクセス 37.委員会は、締約国の多くの子どもがマスメディアその他の情報源に限られた形でしかアクセスできていないことに留意するものの、締約国で新たなメディアを発展させるための革新的措置がとられていることは評価する。 38.委員会は、締約国が、多様な情報源からの適切な情報、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報に対する子どものアクセスを向上させるよう、勧告する。 39.委員会は、締約国に対し、子ども向けの適切な印刷媒体および番組の発展を正当に考慮しながら、活発なマスメディアを発展させるための措置を引き続きとるよう奨励する。 拷問および品位を傷つける取扱い 40.委員会は、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約に締約国が加入したことを歓迎するものの、警察によっておよび刑務所制度において子どもの品位を傷つける取扱いが行なわれているという訴えがあることを懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、前掲条約に定められた最低基準を厳格に遵守し、かつ、いかなる子どもも、いかなる種類の非人道的なまたは品位を傷つける取扱いも受けないことを確保するよう、促す。 体罰 42.委員会は、体罰が家庭で一般的に見られる現象であり、かつ学校その他の教育現場で子どもの規律を維持するために頻繁に用いられているという報告があることを懸念する。 43.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校制度その他の教育現場を対象とした意識啓発キャンペーン等も通じ、あらゆる場面における体罰を明示的に禁止するよう、勧告する。 5.子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 44.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの関与を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) 前述の目的で、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めること。 6.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭を奪われた子ども 45.委員会は、子どもがさまざまな理由で家族から分離される慣行が広く存在しており、かつ、当該分離が通常は子どもの最善の利益であると見なされていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、外国の占領の結果として家族から分離された子どもという特有の問題にも留意するものである。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが、条約第9条に定められた状況がある場合を除き、意思に反して親から分離されないことを確保すること等を目的として、家族支援プログラムを発展させ、かつ親からの子どもの分離をともなう慣行を規制するための努力を強化すること。 (b) 遺棄およびネグレクトに関連した分離事案について、定期的なフォローアップの措置をとること。 (c) 家族から分離されるおそれのある子どもまたはすでに分離された子どもを保護するため、救援活動関係者の間で「親から分離された子どもおよび保護者のいない子どもに関する国家指針」を広く普及すること。 47.委員会は、締約国に対し、外国の占領の結果として家族から分離された子どもの未解決事案、とくに親の明確な同意なくして子どもが親から分離されたままになっている事案を解決するための努力を引き続き行なうよう、奨励する。 代替的養護および施設養護 48.委員会は、子どもの施設措置を規制し、かつ施設における養護水準を向上させるための適切な手続を定めることを目的とした、子ども養護センターおよび寄宿舎法令案について進められている作業を歓迎する。しかしながら委員会は、一方で貧困が広範にかつ根強く存在しており、かつ、他方でさまざまな施設を運営する個人による積極的勧誘が行なわれているように思われる結果、施設養護に対する需要が高く、かつ多数の施設が設置されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、措置の定期的再審査のための信頼できる体制が整えられていないように思われるために、このような状況が悪化していることにも留意する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族に対する援助の提供に関する包括的政策を策定し、かつコミュニティを基盤とする補足的なサービスおよび保護制度を発展させることによって、代替的養護に措置される多数の子どもの人数を削減すること。 (b) 代替的養護への子どもの措置が、権限のある学際的な専門家集団による、子どものニーズおよび最善の利益についての慎重なアセスメントに基づいて行なわれることを確保すること。当該アセスメントは明確な基準に基づいて実施され、かつ司法審査の対象とされるべきである。また、親のケアを受けていない子どもに関する委員会の一般的討議(2005年9月)の際に採択された勧告(CRC/C/153、パラ636-689)を正当に考慮しながら、当該措置が条約第25条にしたがって定期的に再審査されることを確保すること。 (c) 子ども養護センターおよび寄宿舎法令案を完成させかつ採択するとともに、新たな施設の恣意的設置を制限するための措置をとること。 里親養護 50.委員会は、子どもが非公式な取決めに基づいて血縁家族ではない家族とともに暮らす現象が締約国で一般的に見られることに留意するとともに、締約国が里親養護制度に関する枠組みを策定中であることを歓迎する。 51.委員会は、現在行なわれている、子どもが血縁家族ではない家族とともに暮らす非公式な取決めを漸進的に規制するため、慎重に管理された措置がとられるべきことを奨励する。その際、条約で認められた諸権利(子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重の原則を含む)および前掲パラ49(b)の勧告が正当に考慮されるべきである。 養子縁組 52.委員会は、養子縁組との関連で存在している問題を締約国が認識していることを評価するとともに、国内養子縁組および国際養子縁組に関する法律の完成まですべての養子縁組手続が停止されている旨の、代表団から提供された情報に留意する。委員会はまた、締約国が養子縁組指針の起草中であることにも、満足感とともに留意するものである。 53.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(1993年)を批准するとともに、養子縁組において子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保しながら、同条約および子どもの権利条約の規定にしたがった養子縁組法を採択するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト 54.委員会は、締約国が、虐待、ネグレクト、暴力および不当な取扱いの問題との関連で国内法を強化し、司法機関の能力構築を図り、かつ公衆の意識を高めるための努力を継続中である旨の情報を歓迎する。委員会はまた、締約国が家庭および学校における暴力に対応するためにパートナーと連携しながら活動していることにも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、児童虐待事案が司法制度で十分に対応されていないこと、および、子どもに対する暴力事案の大多数が通報されていないことを懸念する。 55.条約第19条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の身体的および性的暴力(家庭における性的虐待を含む)を禁止する目的で、ドメスティックバイオレンスおよび家庭における児童虐待のあらゆる側面に関する研究を実施し、この問題の規模および性質、ならびに、子どもに対する暴力に対応するための法的措置の効果についての評価を行なうこと。 (b) ドメスティックバイオレンスおよび児童虐待を防止しかつこれに対応するための包括的な国家的戦略を策定するとともに、子どもの虐待および不当な取扱いの事案の発見、通報および処理について親および専門家の研修を行なうこと。 (c) 15歳未満の女子の性的虐待の事案について子どもの親または保護者による申立ての要件を削除すること等も通じ、苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的な手続および機構を設置すること。また、虐待された子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保すること。 (d) 暴力および虐待の被害を受けたすべての子どもが、十分なケア、カウンセリングならびに回復および再統合のためのサービスをともなう援助にアクセスできることを確保すること。 (e) 暴力、虐待および不当な取扱いの被害を受けた子どもについての報道にメディアが前向きに関与することを奨励しかつ促進するとともに、メディアが子どものプライバシー権を全面的に尊重することを確保すること。 (f) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 7.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 56.委員会は、障害者に関する国家政策の立案のために締約国が行なっている努力を心強く思う。しかしながら委員会は、高い障害児率を固定化する機能を果たしている要因(劣悪な妊産婦保健水準および正規の保健サービスからの隔離を含む)が根強く残っていることを懸念するものである。委員会は、障害のある子どもがしばしば普通教育およびコミュニティの生活から排除され、かつ入所施設に措置されていることを遺憾に思う。 57.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)および障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)を考慮しながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する十分な統計データを収集するとともに、社会における障害者の機会均等を促進する、障害に関する包括的かつ具体的な国家的政策を策定するにあたってそのような細分化されたデータを活用すること。 (b) 障害のある子どもが、十分なかつ標準化された社会サービスおよび保健サービス(早期介入サービス、心理サービスおよびカウンセリング・サービスを含む)にアクセスできるようにすること。 (c) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (d) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分に訓練されることを確保すること。 (e) 施設の子どもの権利が十分に保護されることを確保すること。 (f) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を批准すること。 (g) とくにユニセフおよびWHOとの技術的協力を追求すること。 健康および保健サービス 58.委員会は、国連機関その他のドナーとの連携により拡大予防接種プログラムが成功裡に確立され、予防接種率が相当に上昇する成果につながってきたことを歓迎する。委員会はまた、締約国が、ユニセフの支援を得て、栄養不良の根本的原因を明らかにする国家栄養戦略を作成したことにも、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的な進展にも関わらず、委員会は、締約国において子供の栄養不良が高い水準にあり、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率がきわめて高く、かつ、思春期保健ケアが不十分であることを懸念する。加えて、ティモールの子どもがマラリア、はしか、腸チフスおよびデング熱のような疾病ならびに呼吸器系および消化器系の感染症に非常に罹患しやすいことも、懸念の対象である。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内全域の母子が良質なプライマリーヘルスケア、カウンセリングおよび必須医薬品にアクセスできることを確保するため、コミュニティの構造を基盤とする保健政策を立案すること。 (b) 保健部門に適当な資源が配分されることを確保するとともに、子どもの健康状態を向上させるための包括的な政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。 (c) とくに産前産後保健に関わる良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障することにより、乳児および5歳未満児の死亡を削減するための措置(助産婦および伝統的産婆の研修プログラムを含む)を引き続きとること。 (d) 健康的な摂食習慣の教育および促進(「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」にしたがい、子どもの健康、発育および発達のための理想的食べ物を提供する比類なき方法としての母乳育児を促進することも含む)を通じ、子どもの栄養状態を改善するための努力を強化すること。 (e) リプロダクティブヘルスを含む思春期の健康の促進のための効果的サービスを提供する努力を強化すること。 (f) 子どもの健康的な発達にとって中核的である予防措置(安全な飲料水へのアクセスを向上させることおよび有効に処理された蚊帳の使用を増加させることなど)に加え、十分な保健ケアおよび治療を提供するための革新的措置(適当なときに移動保健班を活用することなど)等も通じ、マラリア、はしか、腸チフスおよびデング熱のような疾病ならびに呼吸器系および消化器系の感染症の脅威に対抗するための措置を継続しかつ強化すること。 (g) この点に関して、世界保健機関(WHO)、ユニセフおよび関連の専門性を有するその他の機関の技術的援助および協力を引き続き求めること。 生活水準 60.委員会は、締約国の貧困率が高いことを懸念するものの、特別な状況にあるまたは特別なニーズを有する社会的集団を支援するために社会連帯基金を設置しようとする締約国の最近の取り組みを心強く思う。委員会はまた、国家開発計画によって設置された国家開発財団に、子どものための一連の具体的措置が含まれていることにも、評価の意とともに留意するものである。委員会は、住居へのアクセスが不十分であることおよび土地所有に関して適切な規制が行なわれていないことから生じている諸問題について懸念を覚える。 61.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 効果的な貧困削減措置に資源を配分すること、および、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を実施しかつ監視する能力を強化することを通じ、貧困と闘うための努力を強化すること。 (b) 十分な住居へのアクセスを向上させるとともに、土地所有を規制するための継続的努力が土地の公平な配分につながり、かつ貧困緩和に役立つことを確保すること。 (c) 社会サービスへのアクセスを向上させるための努力を行ない、もっとも脆弱な立場に置かれた集団をとくに対象とするセーフティネット・プログラムを発展させ、かつ、すべての家族に最低限の生活水準を確保するための社会保障制度の設置を検討すること。 有害な伝統的慣行 62.委員会は、とくに農村部において、非常に幼い女子を対象とした――慣習法に基づく――取り決め婚の慣行が行なわれていることを懸念する。委員会は、このような慣行が子どもの権利条約の規定および原則に違反することに留意するものである。 63.委員会は、女子が婚姻を強制されないことを確保する目的で、締約国が、とくに非常に幼い女子が慣習法上の慣行に基づいて婚姻させられているコミュニティにおいて、若年婚の有害な影響に関する意識を高めるための措置をとるよう、勧告する。 8.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 64.委員会は、締約国が劣悪な教育インフラを受け継いだことを認知するとともに、1999年の事件後の緊急対応が、貧困下で暮らしている子どもおよび農村部の子どもの就学率も含む就学率の向上および初等学校の教員の増員につながったことに、評価の意とともに留意する。委員会は、締約国がユニセフと連携して開始した「100のやさしい学校」プロジェクトを称賛するものである。しかしながら委員会は、締約国において6~11歳の子どもの多数がいまなお就学していないこと、第6学年に進学する子どもが50%に満たないこと、および、一部農村地域で学校へのアクセスに問題が残されていることを、懸念する。委員会はまた、教員養成の水準が不十分であること、締約国も認めているようにもっとも基本的な教材が欠乏していること、および、学校におけるポルトガル語への移行が理解力の水準に影響を及ぼす可能性があることも、懸念するものである。 65.条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。 (a) 教育部門の法的土台とするべく提案されている法律の制定を急ぐこと。 (b) 憲法第59条にしたがって9年間の初等教育を義務的なものとするための規定が関連法に含まれること、および、すべての子どもがいかなる金銭的障害もなく無償の初等教育に平等にアクセスできることを確保すること。 (c) 教育政策枠組みで構想されているようにすべてのスコ(村)に初等学校を設置し、かつ、適切な輸送手段ならびに必要に応じた交通インフラの維持および向上により農村部に住んでいる子どもによるアクセスを促進すること等を通じ、就学率および在学率をさらに上昇させるための漸進的措置を引き続きとること。 (d) 多言語的学校制度からポルトガル語への移行期間中、理解力の問題に引き続き正当な注意を払うこと。 (e) 適切な資格を有する初等中等学校教員を効果的に採用しかつ(または)養成するための措置を案出すること。 (f) 初等段階後の教育への女子の参加を向上させるため、ジェンダーに基づく偏見およびステレオタイプに対応するための措置をとること。 (g) 学校給食プログラムを強化しかつ拡大するとともに、学校補助金プログラムを実施すること。 (h) 乳幼児の発達を刺激し、かつ就学の準備をさせるため、このような子どものケアおよび教育のための便益を拡大すること。 (i) 職業訓練の機会を拡大するとともに、職業訓練・技術訓練プログラムの分野における教会および非政府組織との協力を強化すること。 (j) 教育部門をさらに向上させるため、ユニセフおよび関連の専門性を有するその他の機関との協力を継続すること。 教育の目的 66.相対的に短い期間で学校制度を向上させるために締約国が行なっている努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、訓練を受けていない教員の割合が高いため、教育の質に深刻な影響が及んでいることに懸念を表明する。委員会は、教育カリキュラムにおいて先住民族文化にいっそう注目する必要性について締約国が検討していることを歓迎するものである。 67.条約第29条に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教員を対象として適切な着任前研修および現職者研修を行ない、かつ教員の適切な生活賃金を確保することを通じ、教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。 (b) 公式な学校カリキュラムに、人権に関する教育(子どもの権利に関するものを含む)および重要なライフスキルについての教育(リプロダクティブヘルスの問題および10代の妊娠の問題に関連したものも含む)を含めること。 (c) 教育カリキュラムが先住民族の文化および言語の性質を正当に考慮しながら開発されることを確保すること。また、学校およびコミュニティを基盤とする教育を通じ、先住民族の遺産および伝統的芸術形態に焦点を当てながら、文化的な意識および実践を発展させかつ促進すること。 (d) とくに国連教育科学文化機関(ユネスコ)、ユニセフおよび非政府組織の技術的協力を引き続き求めること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 68.委員会は、学校を基盤とするスポーツおよびレクリエーションに対して締約国が向けている関心、および、学校制度外で行なわるスポーツ関連の活動およびイベントに対して提供されている支援を歓迎する。委員会はさらに、文化的な意識および実践を発展させかつ促進するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意するものの、十分に訓練された教員およびコーチならびに適当な参考文献が存在しないことによる障壁が存在することを懸念するものである。 69.条約第31条に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 十分な資源配分および技術的協力プロジェクト等も通じ、子どものスポーツ、遊びおよび文化的活動への焦点を維持しかつ強化すること。 (b) 学校およびコミュニティのレベルで、リソースパーソンとして若者の参加を得ながら、遊び場、競技場、子どもセンターおよび若者センターならびにその他のレクリエーション・スペースを維持しかつ創設するとともに、東ティモール全域で図書館へのアクセスを拡大すること。 70.正規の教育カリキュラムに先住民族文化を統合することに加え、締約国は、文化的な意識および実践を促進するうえで役に立つ可能性がある、コミュニティを基盤とする取り組みを推進するための措置を検討しかつ実施するよう、奨励される。 9.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第49条〔ママ〕、第37条(b)および(d)、第30条、第32~36条) ストリートチルドレン 71.委員会は、もっぱら社会経済的要因ならびに家庭における虐待および暴力を理由として路上で働きまたは生活している子どもの状況について、これらの子どもがさらされているリスクに照らし、懸念を覚える。 72.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 防止のための国家的政策を策定する目的で、同国におけるストリートチルドレンの存在の規模、性質および根本的原因を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) ストリートチルドレンに対し、第12条にしたがってその意見を考慮に入れながらシェルター、回復のための措置および社会的再統合のためのサービスを提供し、かつ十分な栄養および必要な保健ケアならびに教育へのアクセスを提供すること。 (c) 可能でありかつ子どもの最善の利益にかなう場合に家族の再統合を図るための政策を策定すること。 (d) ストリートチルドレンに付与されるスティグマに対応するための公的意識啓発キャンペーンを実施すること。 (e) ユニセフまたは他の関連の機関の技術的援助を求め、かつNGOと協力すること。 少年司法の運営 73.委員会は、締約国が、刑事責任年齢を引き上げ、かつ、16~21歳の若年犯罪者を対象とする特別規定が別の法律で定められる旨を定める真刑法案を起草したことに留意する。委員会はさらに、締約国が、法執行官および子ども保護要員を対象とする組織手続規則を策定したことに留意するものである。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、司法制度において公正に取り扱われる子どもの権利の保護が不十分であることに、懸念とともに留意する。 74.委員会はさらに、未決拘禁が、適用される規則で定められた期間の上限を超えてしばしば延長されること、拘禁されている子どもが成人の被拘禁者から常に厳格に分離されているわけではないこと、および、修復的司法措置が組織的に考慮されていないことに、留意する。 75.委員会は、締約国が、条約第37条、第40条および第39条、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(「北京規則」)、少年非行の防止に関する国連指針(「リャド・ガイドライン」)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(「ハバナ規則」)、ならびに、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10)を正当に考慮しながら、少年司法に関する基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する適切な最低年齢制限を定めることにとくに焦点を当てながら、少年司法法制を完成させるための努力を急ぐこと。 (b) 裁判官その他の専門家を対象として少年司法問題に関する体系的研修を行なうとともに、罪を犯した少年が適切な法定代理人を恒常的に利用できることを確保すること。 (c) 子どもの自由の剥奪が最後の手段としてのみ行なわれることを確保し、コミュニティを基盤とする再統合プログラムおよび同様の修復的司法措置を継続しおよび拡大し、ならびに、拘禁がやむを得ないときは、子どもが成人の被拘禁者から分離され、かつ自由の剥奪に関する決定について再審査が行なえることを確保するための措置をとること。 (d) 国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフ、OHCHRおよび非政府組織も参加する国連・少年司法に関する機関横断パネルの技術的援助を求めること。 経済的搾取 76.委員会は、締約国が旧労働法を改正中であり、かつ新労働法を完成させる途上にあることに留意する。しかしながら委員会は、締約国で、とくにインフォーマル部門において児童労働が引き続き広く存在していることを懸念するものである。委員会は、子どもの労働および福祉に関わる問題の担当が国家社会サービス/社会復帰局であることに留意する。 77.委員会は、締約国が、国際労働機関(ILO)およびユニセフと連携しながら、児童労働を防止しかつこれと闘うための努力を強化するよう勧告する。 78.委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告する。 (a) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准すること。 (b) 新労働法が、前掲ILO条約に掲げられた基準に全面的に一致することを確保すること。 (c) 十分な資源および権限を与えられた十分な人数の労働監察官を通じ、最低年齢が厳格に執行されることを確保すること。 薬物濫用 79.委員会は、ヤシ酒およびタバコの消費を例外として、子どもによる有害物質濫用の流行パターンが知られていないことに留意する。 80.条約第33条に照らし、委員会は、締約国が、防止に関する国家的政策を策定する目的で子どもの有害物質濫用の流行パターンに関する調査研究を実施すること、喫煙に関連した健康上のリスクについて子どもおよび親の意識を高めるためのあらゆる適当な措置をとること、ならびに、子どもに対するアルコール飲料(ヤシ酒を含む)の販売を防止する目的で国内法の見直しおよび更新を行なうことを、勧告する。 売買、取引および誘拐 81.締約国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書を提出しているので、当該報告書に関して採択された総括所見を参照するよう要請される。 武力紛争における子ども 82.締約国は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書を提出しているので、当該報告書に関して採択された総括所見を参照するよう要請される。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 83.委員会は、締約国が、これらの勧告を政府および議会の構成員に送付して適切な検討およびさらなる行動を求める等の手段により、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 84.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティの指導者および子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 85.委員会は、締約国に対し、第2回・第3回統合定期報告書を、第3回報告書の提出期限の18か月前である2013年11月16日までに提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年多数の報告書を受領することによる例外的措置である。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 更新履歴:ページ作成(2012年3月16日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/166.html
総括所見:シンガポール(第1回・2003年) 第2回・第3回(2011年)OPAC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.220(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月26日に開かれた第908回および第909回会合(CRC/C/SR.908 and 909参照)においてシンガポールの第1回報告書(CRC/C/51/Add.8)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解をいっそう明確にしてくれた、包括的かつ優れた形式および内容の第1回報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/SIN/1)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、率直な対話について、および、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応について、歓迎の意を表するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、締約国の子どもの生活水準が高く、かつ、とくに質の高い保健サービスおよび教育サービスならびに住居を広く利用できるようにすることによって、子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施するために相当の努力が行なわれていることに、評価の意とともに留意する。 4.委員会は、2003年に義務教育法が採択されたことを歓迎する。 5.委員会は、締約国が、親および子どもの双方を対象とする、子どもの権利に関する意識啓発資料(子どもにやさしいパンフレットおよびリーフレットを含む)を作成しかつ普及していることに、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 宣言および留保 6.委員会は、締約国が条約への加入時に行なった、第12条~17条、第19条および第39条に関する宣言ならびに第7条、第9条、第10条、第22条、第28条および第32条に対する留保について懸念を覚える。 7.世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国が条約に関する宣言および条約に対して付した留保を撤回するよう勧告する。 立法 8.実のところ、条約の原則および規定のほとんどが実際に実施されていることは認めながらも、委員会は、国内法に条約のすべての原則および規定が全面的に反映されているわけではないことを、依然として懸念する。 9.委員会は、締約国が、法律の包括的見直しを行なうとともに、国内法が条約の原則および規定と一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 調整 10.委員会は、条約の実施の監督について責任を負う、子どもの権利条約に関する省庁間委員会が設置されたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どものためのすべての政策およびプログラムの調整が省庁間委員会の所掌事項に含まれておらず、かつ、そのような常設の調整機構が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、締約国が子どものための国家的行動計画を策定していないことも、遺憾に思う。 11.委員会は、締約国が、条約に関する省庁間委員会の所掌事項および職務を拡大して子どものためのすべての政策およびプログラムの調整を含めるとともに、条約の全面的実施を目的とし、かつ子どもに関する国連総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」を考慮した、子どものための国家的行動計画の策定に着手するよう、勧告する。 独立の監視 12.委員会は、子どもからのものも含む苦情申立てに効果的に対応しようとする、政府および個々の省庁の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、条約の実施における進展を定期的に監視しかつ評価することを所掌し、かつ、条約が対象とするすべての分野に関する、子どもからのものも含む個別の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた独立機構が存在しないことを懸念するものである。 13.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがって、十分な人的資源および財源を与えられおよび子どもが容易にアクセスでき、ならびに、条約の実施を監視し、子どもに配慮した迅速なやり方で子どもからの苦情に対応し、および条約上の権利の侵害に対する救済措置を提供する、独立のかつ効果的な機構を設置するよう、奨励する。 子どものための資源 14.委員会は、国家予算の相当の割合が保健および教育に充てられていることに、評価の意とともに留意する。それでも委員会は、子どものための社会サービスに配分される資源が、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であり、かつ、同様の経済発展水準にある他の国々の予算配分に匹敵していないことを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、以下の対応をとることにより、条約第4条の全面的に実施に特段の注意を払うよう勧告する。 (a) 「利用可能な資源を最大限に用いることにより」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させること。 (b) 支出の影響を評価する目的で、かつさまざまな部門で子どもに提供されているサービスの費用、アクセス可能性、質および実効性の観点からも、公共部門、民間部門およびNGO部門において子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定すること。 データ収集 16.委員会は、報告書および事前質問事項に対する文書回答において締約国から提供された相当量の統計データを歓迎する。同時に委員会は、条約の実施に関する総合的成果指標および質的データが存在しないことに関する締約国の懸念を共有するものである。 17.委員会は、締約国が、子どもに関する量的および質的データを収集しかつ分析するための中央機構を設置するとともに、子どもに関する総合的成果指標を開発するための努力を強化するよう、勧告する。 普及および研修 18.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識していないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般公衆およびとくに子どもを対象とした、子どもの権利に関する公的意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教職員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。 国際協力 20.東南アジア諸国連合内で締約国が行なっている国際協力には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、国内総生産の0.7%を政府開発援助に配分するという国際連合の数値目標を実施するよう奨励する。 2.子どもの定義 21.委員会は、子ども・若者法が16歳未満の者にしか適用されないこと、ならびに、刑事責任に関する最低年齢(7歳)および就業に関する最低年齢(12歳)が低すぎることを懸念する。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子ども若者法の適用を拡大し、18歳未満のすべての者を対象とすること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (c) 就業に関する最低年齢を、義務的学校教育の終了年齢である15歳まで引き上げること。 3.一般原則 差別の禁止 23.委員会は、差別の禁止の原則が市民に限定されていること、女性または障害のある人に対する差別が憲法で明示的に禁じられていないこと、および、女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する社会的差別が根強く残っていることを、懸念する。 24.委員会は、締約国が、法律の改正によりジェンダーまたは障害に基づく差別を禁止するともに、締約国にいるすべての者に対してそれが適用されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに公的な教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを通じ、とくに女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する社会的差別と闘うためにあらゆる必要な積極的措置をとるよう、勧告するものである。 25.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することを要請する。 子どもの最善の利益 26.委員会は、子どもに関わるあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならないという原則が、国および地方のレベルにおける締約国の法律、政策およびプログラムに全面的には反映されていないことを、懸念する。 27.委員会は、締約国が、法律および行政上の措置を再検討することにより、条約第3条が正当に反映されること、および、行政上、政策上、司法上その他の決定が行なわれる際にこの原則が考慮されることを確保するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを懸念する。 29.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために子ども・若者法が改正されることを確保するとともに、裁判所、行政機関および学校が、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見を尊重することを促進するため、立法を含む効果的措置をとること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつそれが政策およびプログラムならびに子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうこと。 4.市民的権利および自由 30.委員会は、締約国の出入国管理法および市民権法の諸要素が条約第2条および第7条と全面的には一致していないことを懸念する。とくに委員会は、シンガポール籍の母と外国籍の父との間に国外で生まれた子どもが自動的にシンガポール市民権を取得するわけではないこと、および、このような場合に母が「登録による市民権」の申請を義務づけられていることを、懸念するものである。 31.委員会は、市民権法および出入国管理法において、国籍およびアイデンティティに対する子どもの権利が差別なく、可能なかぎり尊重されることを確保する目的で、締約国がこれらの法律を見直しかつ必要な改正を行なうよう勧告する。 体罰 32.委員会は、体罰が、家庭、学校および施設においてならびに罪を犯した男子少年を対象とする罰のひとつの形態として法律で認められていることに、懸念とともに留意する。 33.委員会は、締約国が法律を改正し、家庭、学校、施設および少年司法制度における体罰を禁止するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、体罰が子どもに及ぼす否定的影響に関する、対象を明確にした公的意識啓発キャンペーンを実施するとともに、教職員ならびに施設および少年拘禁所で働く職員を対象として、体罰に代わる手段としての非暴力的形態の規律に関する研修を行なうよう、勧告するものである。 5.家庭環境および代替的養護 親の責任 34.委員会は、家族および子どもに対してカウンセリングおよび援助を提供し、かつ、親子間の困難を、裁判所に訴えることなく子どもの最善の利益に一致したやり方で解決しようとする締約国の努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、親には自分の子どもが「親の手に負えない」として申立てを行なうことが可能であり、かつ、法律によれば、当該申立てによって子どもが非行少年施設に措置されることもありうるために、このような状況に置かれた子どもが法律上全面的に保護されていないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもが家にひとりで残されていることに関する締約国の懸念も共有する。 35.委員会は、締約国が、危険な状況に置かれた家族に支援およびカウンセリングを提供するための努力を継続するとともに、子どもが「親の手に負えない」という理由で親が子どもに対する裁判手続を開始することをできないようにしつつ、困難な状況に置かれた子どもの全面的保護を確保する目的で、法改正を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、働く親を支援し、かつ子どもが家にひとりで残されることを防止するための措置を拡大するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 36.委員会は、虐待の苦情申立てに対応し、かつ被害者およびその家族を援助する目的で、児童虐待保護班および家族保護部などの機構が創設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、過少通報が依然として問題となっており、かつ、ソーシャルワーカー、教員および医療従事者に対し、児童虐待が疑われる事案の通報が法律で求められていないことを懸念するものである。 37.委員会は、とくに、児童虐待が疑われる事案を適当な公的機関に通報するようソーシャルワーカー、教員および医療従事者に対して求める立法上の措置をとることを通じ、締約国が、子どもの不当な取扱いおよび虐待の事案の通報を奨励するための措置を強化するよう、勧告する。 6.基礎保健および福祉 38.委員会は、子どもに関する保健指標が非常に優れた水準に達しており、かつ、前掲パラ3で留意したように質の高い保健サービスが広く利用可能とされていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、完全母乳育児率が相対的に低いこと、および、若者の自殺率が上昇していることを依然として懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の採択および実施、赤ちゃんにやさしい病院としての病院の認証取得ならびに母性休暇の延長を通じ、乳児が生後6か月は母乳のみで育てられることを促進するための努力を強化すること。 (b) 思春期保健サービス、とくにカウンセリングサービスおよび自殺防止プログラムを強化すること。 障害のある子ども 40.特別教育サービスが締約国で広く利用可能とされていることには留意しながらも、委員会は、障害のある子どもが教育制度に全面的には統合されておらず、かつ、障害のある子どもおよびそのニーズに関する量的および質的データが存在しないことを、懸念する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法(2003年)の適用を拡大し、特別学校および障害のあるすべての子どもを対象に含めること。 (b) とくにカリキュラムおよび教育学的サービスを向上させることを通じ、障害のある子どもの、普通教育および社会一般へのいっそうの統合および参加を促進すること。 (c) 障害のある子どもおよびその具体的ニーズに関する量的および質的データを収集するとともに、このような子どもを対象とする適切なプログラムおよび政策の策定のためにこれらのデータを活用すること。 7.教育、余暇および文化的活動 42.前掲パラ4で留意したように、委員会は、2003年に義務教育法が採択されたこと、および、締約国において質の高い教育サービスが広く利用可能とされていることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の管轄内にあるすべての子どもが義務教育法の対象とされ、または無償の初等学校にアクセスできているわけではないことを懸念するものである。委員会はまた、教育制度の高度に競争主義的な性質によって子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあることも、懸念する。最後に、委員会は、学童保育所が提供するサービスの質の監視について懸念を覚えるものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国内のすべての子ども(定住者以外の者も含む)を対象に含めるとともに、すべての子どもの通学を確保するため同法の実施を監視すること。 (b) 締約国のすべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保し、かつ、低所得層の家族が就学前教育にアクセスできることを確保すること。 (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の競争主義を軽減するための効果的措置をとるとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力を強化すること。 (d) 学童保育所および始業前および放課後にケアを提供するその他の機関の質が包括的に監視されることを確保するための措置をとること。 (e) カリキュラムの一環として人権教育を含めること。 8.特別な保護措置 少年司法 44.委員会は、刑事責任に関する最低年齢が低すぎること、法律に抵触した18歳未満のすべての者が特別な保護の対象とされているわけではないこと、および、罪を犯した少年を懲戒するために体罰および独居拘禁が用いられていることを、懸念する。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (c) 子ども・若者法を改正し、罪を犯した18歳未満のすべての者の特別な保護を確保すること。 (d) 罪を犯した少年を対象とするすべての拘禁施設(警察署を含む)で、体罰(むち打ちを含む)および独居拘禁の使用を禁止すること。 (e) とくに少年の拘禁および更生のための役務に関わる少年司法制度改革に際し、とくに国連人権高等弁務官事務所の技術的援助を求めること。 9.選択議定書 46.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准していないことに留意する。 47.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 48. 最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 49.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2007年11月3日、すなわち第3回報告書の提出期限までに、単一の統合報告書として第2回および第3回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月8日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/208.html
総括所見:オーストラリア(OPSC・2012年) 第1回(1997年)/第2回・第3回(2005年)/第4回(2012年)OPAC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/AUS/CO/1 and Corr.1(2012年9月24日/2012年10月12日) 原文:英語(平野裕二仮訳)※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年6月5日に開かれた第1709回会合(CRC/C/SR.1709参照)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/OPSC/AUS/1)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/AUS/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/AUS/CO/4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/AUS/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことに、懸念とともに留意するものである。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で進められているいくつかの積極的取り組み、とくに以下の取り組みを歓迎する。 (a) 「人身取引と闘うための国家行動計画」。 (b) 「明日の子どもたち:子どもの商業的性的搾取に反対するオーストラリア国家行動計画」。 (c) 「人身取引と闘うためのオーストラリア治安維持戦略(2011~2013年)」。 5.委員会はさらに、締約国が、開発協力および政府間協力を通じ、アジア太平洋地域で選択議定書上の犯罪を根絶するために行なっている支援を歓迎する。 III.データ 6.委員会は、選択議定書が対象とする子どもの売買、児童買春または児童ポルノのあらゆる側面に関するデータを収集するための体系的機構が存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、選択議定書に関わる犯罪についての包括的データが連邦レベルで存在しないことに、懸念とともに留意するものである。 7.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野を網羅したデータの収集、分析、監視および影響評価のための、包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう、勧告する。データは、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとりわけ注意を払いながら、とくにジェンダー、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位によって細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。委員会はまた、締約国が、さまざまな州および準州を対象とした、データを収集する際の共通指標システムを確立することも勧告する。 IV.実施に関する一般的措置 立法 8.委員会は、国内法が、選択議定書上のすべての犯罪を全面的に編入しているわけではなく、かつこれらの犯罪の禁止および犯罪化について調和化されていないことを懸念する。 9.委員会は、締約国に対し、国内法を選択議定書と調和させるための努力を継続するよう促す。とくに委員会は、締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条に基づく自国の義務にしたがい、子どもの売買、児童買春および児童ポルノのあらゆる事案を定義しかつ禁止するよう、勧告するものである。 国家的行動計画 10.「子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画」、「人身取引と闘うための国家行動計画」および「人身取引と闘うためのオーストラリア治安維持戦略」は歓迎しながらも、委員会は、このような国家的政策で、選択議定書を実施し、かつこれらの計画の成果を測定するための日程表、指標、鍵となる活動および具体的措置が定められていないことを懸念する。委員会はまた、これらの計画間の調整に関する情報がないことも遺憾に思うものである。 11.委員会は、締約国が、「人身取引と闘うための国家行動計画」および「子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画」に、選択議定書で取り上げられているすべての問題をとくに対象とする別個の包括的行動計画が含まれることを確保するとともに、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、国家的行動計画を通じて選択議定書を実施するための日程表、指標、鍵となる活動および具体的措置を定めることも、勧告するものである。 調整および評価 12.委員会は、選択議定書の実施に関する調整機関が存在しないことに、懸念とともに留意する。ニューサウルウェールズ州およびビクトリア州では、警察署のみが実施機関に挙げられている。このことは、防止および保護のための努力(意識啓発活動、研修、カウンセリングおよび再統合のための努力を含む)の効果的な全般的調整に関する懸念を生じさせるものである。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施の調整を担当する調整機関または調整機構を国および州/準州の双方のレベルで設置するとともに、これらの機関または機構に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。 普及および意識啓発 14.委員会は、公教育制度において、子どもの権利の問題に関する教員および生徒の意識を高めるために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において選択議定書が体系的かつ包括的に普及されていないことにより、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを、懸念するものである。 15.委員会は、選択議定書第9条2項にしたがい、締約国が、公衆、とくに子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家の間で選択議定書の規定を広く知らせるため、適切な媒体、教育キャンペーンおよび専門家研修キャンペーン等も通じてあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 研修 16.委員会は、法執行官を対象として行なわれている、人身取引被害者の発見および捜査実務に関するさまざまな研修プログラムに、積極的対応として留意する。にもかかわらず、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害者のカウンセリングおよびリハビリテーションの分野で、適切なスタッフの養成および研修が行なわれてないことを懸念するものである。 17.委員会は、コミュニティおよびその他の関係者の関与を得た参加型のプロセスを通じて開発された、選択議定書で対象とされているすべての分野に関する学際的な研修プログラムに対し、締約国が、使途が指定された十分な資源を配分するよう勧告する。このような研修は、子どもとともにおよび子どものために働く、連邦および州/準州段階のすべての関連の専門家集団、省庁および機関を対象として行なわれるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、研修プログラムの効果および関連性を高める目的で、選択議定書に関するすべての研修プログラムについて組織的評価が行なわれることを確保するよう、促す。 資源配分 18.委員会は、連邦、州および準州の段階で選択議定書を実施するための活動に割り当てられた、明確に特定可能な予算配分額についての情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。 19.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のために特定可能な予算配分を行なうよう勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 20.国際人身取引と闘うための締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書上の具体的犯罪に関わる防止措置が依然として不十分であることを遺憾に思う。とくに委員会は、子どもの商業的性的搾取を防止するための措置がとられておらず、かつ、アボリジナルの女子およびホームレスの子どものような脆弱な立場に置かれた集団を保護するための措置が不十分であることを、懸念するものである。さらに委員会は、貧困など、選択議定書上の犯罪の基底にある根本的原因に対する十分な対応が行なわれていないことを懸念する。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第9条1項で求められているとおり、選択議定書上の犯罪のいずれかの被害者にとくになりやすい子どもの保護に特段の注意を払うため、あらゆる可能な措置をとること。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくにそのような脆弱な立場に置かれた集団を対象とする意識啓発プログラムを実施するよう、勧告する。 (b) 根本的原因、問題の規模ならびに保護措置および防止措置の存在を明らかにする目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの性質および規模に関する調査研究を実施するとともに、目的および対象の明確な措置をとること。 児童セックス・ツーリズム 22.委員会は、児童セックス・ツーリズムに対応するために締約国が行なっている取り組みを歓迎するものの、さらなる努力がなお必要であることに留意する。とくに委員会は、旅行〔・観光〕業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範に署名した締約国の企業がほとんどないことを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムと闘うための努力を強化するよう促す。これとの関連で、委員会は、締約国が、児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でUNWTO〔国連世界観光機関〕の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、勧告するものである。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2項および3項)ならびに第5~7条) 現行刑事法令 24.人身取引、性的搾取およびオンラインの性的虐待について連邦、州および準州の法的枠組みで定められている規定には積極的対応として留意しながらも、委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条で定められたすべての犯罪を具体的に定義しかつ禁止していないこと。とくに委員会は、子どもの売買が、選択議定書で求められているように具体的犯罪として定義されかつ犯罪化されていないことを懸念する。 (b) 選択議定書上の犯罪に関する立法が州および準州の間で非常に異なっていること。とくに委員会は、締約国にいる16~18歳の子どもの一部が選択議定書上の犯罪から全面的に保護されているわけではないことを懸念する。委員会は、多くの州および準州において、児童買春および児童ポルノが16~18歳の子どもについて犯罪とされるのは被告人が信頼または権威を有する立場にある場合のみであることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、選択議定書上の関連の犯罪の一部について、その犯罪化が性的同意年齢(ほとんどの法域では16歳)と関連づけられていることも懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、国内法の規定を見直し、かつこれが選択議定書の規定に全面的に一致することを確保するよう、促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 選択議定書にしたがって、子どもの売買(とくに、選択議定書第3条1項(a)(i)bおよびc、1項(a)(ii)ならびに第5条にしたがい、不法な養子縁組、強制労働に子どもを従事させること、および、利得を目的とした子どもの臓器移植のための子どもの売買)を選択議定書にしたがって定義しかつ犯罪化すること。 (b) 18歳未満のすべての子どもが全面的に保護されるよう、選択議定書上のすべての犯罪を定義しかつ犯罪化すること。 26.児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムの加害者が訴追されかつ有罪判決を受けた事案には積極的側面として留意しながらも、委員会は、選択議定書上の他の犯罪、とくに子どもの売買および児童買春について捜査および訴追が行なわれていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪が捜査されること、および、加害者とされた者が訴追されかつ適正な制裁を受けることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を次回の定期報告書で提供するよう、勧告するものである。 法人の責任 28.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連した作為または不作為についての法人(企業を含む)の責任を限定された形でしか問えないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、企業については奴隷制に関わる意図的なまたは無謀な行為の責任しか問えないことを懸念するものである。 29.委員会は、選択議定書第3条4項にしたがい、選択議定書に関連した犯罪について法人の責任を問えることを確保するため、締約国が国内法を改正するよう勧告する。 裁判権および犯罪人引渡し 30.委員会は、オーストラリア市民が国外で児童セックス・ツーリズムに関与した事件において、締約国が域外裁判権を行使していることに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、域外裁判権が及ぶのは、オーストラリアの市民または永住者が16歳未満の子どもとの性的活動に関与し、その便宜を図りまたはそれから利益を得た犯罪のみであって、16~18歳の子どもについては、被告人が信頼または権威を有する立場にある場合にしか域外裁判権が適用されないことに、懸念とともに留意するものである。 31.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての犯罪(被害を受けた子どもが16~18歳である場合のセックス・ツーリズムも含む)について裁判権を確保するため、国内法を改正するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約上、子どもは18歳未満のすべての者と定義されていることを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国が、1996年、2001年および2008年にそれぞれストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された成果文書を考慮するよう勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 被害者の回復および再統合 32.委員会は、オーストラリア赤十字社が運営する「人身取引被害者支援プログラム」のようなプログラム、および、さまざまな州警察部隊内に設置された被害者支援部局に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の 被害者について、その回復および再統合のための措置を整備していないことを懸念するものである。とくに委員会は、締約国が、選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となりやすいホームレスの子どもおよび路上の状況にある子どもについて、その再統合のための具体的措置をとっていないことを懸念する。 33.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害者に対して適切な援助(このような被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的、心理的および心理社会的回復を含む)を確保するための措置をさらに強化するよう、促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国の領域全体で児童精神保健専門家へのアクセスおよび利用可能性を確保する等の手段により、被害を受けた子どもに対して医学的、心理社会的および心理的ケアを提供する専門のサービスを引き続き発展させること。 (b) 社会サービスの利用可能性を高めること。 (c) 選択議定書第9条4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。 (d) 〔正誤表により削除〕 (e) これらの勧告の実施について国連児童基金(ユニセフ)および国際移住機関(IOM)の技術的援助を求めること。 (f) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害をとくに受けやすいホームレスの子どもおよび路上の状況にある子どもについて、その再統合のための具体的措置をとること。 VIII.国際的な援助および協力 34.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府の構成員、議会、地域機関および適用可能な場合には他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 36.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 37. 第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。/正誤表(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1/Corr.1 of 12 October 2012)にしたがい、パラ33(d)を削除およびパラ35を修正(11月5日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/157.html
総括所見:ニュージーランド(第2回・2003年) 第1回(1997年)/第3回・第4回(2011年)/第5回(2016年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.216(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月18日に開かれた第896回および第897回会合(CRC/C/SR.896 and 897参照)において、ニュージーランドの第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.4)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合(CRC/C/SR.918参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、包括的であり、優れた形式および内容を有しており、前回の勧告のフォローアップについて詳細に記述され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確に理解することを可能にした、締約国の定期報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、対話についておよび議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応について歓迎の意を表するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が、ILOの最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を2001年に批准したこと、国連・国際組織犯罪防止条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を2002年に批准したこと、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に1998年に加入したこと、および、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を1999年に批准したことを、歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.3)の検討後に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.71)に掲げられた勧告の実施に対して締約国が注意を払ってきたことは認めながらも、委員会は、一部の勧告について十分な対応が行なわれていないことに懸念とともに留意する。委員会はとくに、刑事責任年齢および最低就労年齢を含む国内法の条約との調和に関する勧告(パラ23)、ならびに、体罰の禁止、および、不当な取扱いおよび虐待の被害者の回復を確保するための機構の設置に関する勧告(パラ29)について懸念を覚えるものである。 5.委員会は、これらの懸念をあらためて表明するとともに、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に表明するために持続的努力を行なうよう、促す。 留保 6.締約国が条約に付した留保の撤回を検討中であることには留意しながらも、委員会は、このプロセスの進みが遅く、かつまだ留保の撤回に至っていないことに失望の念を抱く。委員会は、締約国の一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付された具体的留保について、依然として非常な懸念を覚えるものである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付された留保の撤回のために必要な、法律および行政手続の変更をいっそう迅速に進めること。 (b) 条約の適用をトケラウに拡張する目的で、トケラウの住民との議論を引き続き行なうこと。 立法 8.締約国が、1993年人権法との両立性を確保するために国内法の全般的再検討(「一貫性確保2000」)を行なったことに留意しつつ、委員会は、子どもに影響を与える法律の包括的再検討がこれに含まれていなかったこと、および、国内法が条約の原則および規定に全面的には一致していないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国が、子どもに影響を与えるすべての法律の包括的再検討を開始し、かつ、法律を条約の原則および規定と調和させるためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 調整および国家的行動計画 10.委員会は、ニュージーランドの「子どものための課題」および「若者発達戦略」が2002年に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための政策およびサービスの調整がいまなお不十分であるという締約国の懸念を共有するものである。 11.委員会は、締約国が、条約、「子どものための課題」および「若者発達戦略」を実施するすべての主体および関係者による活動を調整するための常設機構を設置するよう、勧告する。これらの文書が全面的に実施されかつ効果的な調整の対象とされることを確保するため、十分な財源および人的資源が配分されるべきである。 独立の監視 12.委員会は、子どもコミッショナー事務所を強化するための努力に留意するとともに、同事務所が子どものために行なっている活動および国家人権委員会の活動を歓迎する。しかしながら委員会は、国家人権委員会と子どもコミッショナー事務所との間で活動の重複が生じる可能性があること、および、後者がその活動を効果的に遂行するための十分な資源を有していないことを懸念するものである。 13.国内人権機関に関する一般的意見2号に照らし、委員会は、締約国が、子どもコミッショナー事務所および国家人権委員会が同様に独立していることおよび両機関が同一の政治的機関に報告することを確保し、かつ、これらの2つの期間の関係(それぞれの活動の明確な分担を含む)を定義する目的で、子ども法に関してコミッショナーが現在議会に提出している討論を活用するよう勧告する。加えて委員会は、締約国に対し、子どもコミッショナー事務所に対してその委任事項を遂行するための十分な人的資源、物的資源および財源が与えられることを確保するよう、促すものである。 子どものための資源 14.委員会は、貧困が根強く残っているにも関わらず、締約国が、前回の勧告どおり、経済改革政策が子どもに与える影響についての包括的研究を行なっていないことを懸念する。委員会はさらに、子どものための予算配分額に関する利用可能なデータが存在しないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どものための予算配分額に関する細分化されたデータを収集し、かつ、経済政策に関わるすべての取り組みが子どもに及ぼす影響を体系的に評価するよう、勧告するものである。 データ収集 16.委員会は、収集されるデータの性質と条約の原則および規定との間に整合性が存在しないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、先住民族の子どもに関する細分化されたデータに特段の注意を払いながら、条約のすべての分野を網羅したデータ収集システムを発展させるとともに、すべてのデータおよび指標が、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保するよう、勧告する。 普及および研修 18.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分な認識を有していないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般公衆およびとくに子どもたちを対象とした子どもの権利に関する公衆意識啓発キャンペーンを、マスメディア等を通じて行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、施設および子どもの拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を行なうこと。 2.子どもの定義 20.委員会は、刑事責任に関する最低年齢(10歳)が低すぎること、法律に抵触した18歳未満のすべての者に対して特別な保護が提供されているわけではないこと、および、就業に関する最低年齢が定められていないことに、懸念とともに留意する。 21.委員会は、締約国が、条約の原則および規定との一致を確保する目的で、子どもに影響を与えるさまざまな法律で定められた年齢制限を見直すよう勧告する。委員会はまた、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げ、かつ、これがすべての犯罪に適用されることを確保すること。 (b) 子ども、若者およびその家族法(1989年)の適用を、18歳未満のすべての者に対して拡大すること。 (c) 就業が認められるための単一のまたは複数の最低年齢を定めること。 3.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、締約国も認めているように、マオリの子ども、マイノリティの子ども、障害のある子どもおよび市民でない者のような、脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する差別が根強く残っていることを懸念する。委員会は、マオリ、太平洋諸島およびアジア系の子どもに関する諸指標が相対的に低い値を示していることを、とりわけ懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、差別の禁止を保障する現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を強化するとともに、いかなる事由に基づくものであれ、脆弱な立場に置かれたすべての集団に対する差別を撤廃するための積極的かつ包括的な戦略を採択するよう、勧告する。 24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、たとえば若者議会を通じ、国および地方のレベルで意思決定プロセスに子どもたちを包摂するために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、自己に影響を与える行政上および司法上の手続において意見を聴かれかつ考慮される子ども個人の権利が法令に体系的に記載されていないことを、懸念するものである。 26.委員会は、条約第12条にしたがい、意見を聴かれかつ考慮される子ども一人ひとりの権利が法令に適切な形で統合されかつ適用されることを確保するため、締約国が、子どもに影響を与える法令(子ども養護法案のような提案中の法律案を含む)の再検討を行なうよう、勧告する。 4.市民的権利および自由 不当な取扱いを含む暴力 27.委員会は、児童虐待の蔓延に関する締約国の懸念を共有するとともに、虐待の防止および回復に関する援助の提供を目的としたサービスに対して十分な資源が与えられておらず、かつその調整も不十分であることに、遺憾の意とともに留意する。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 虐待被害者援助のためのサービスおよびプログラムを拡大するとともに、これらのサービスおよびプログラムが、被害者のプライバシーを尊重する、子どもに配慮したやり方で提供されることを確保すること。 (b) 家庭、学校および施設における児童虐待を防止するためのプログラムおよびサービスを増やすとともに、これらのサービスを提供する、十分な資格および訓練経験を有する職員の人数を十分に確保すること。 (c) 脆弱な立場に置かれた家族および虐待被害者のためのサービスの調整を引き続き向上させること。 体罰 29.委員会は、法律の見直しが行なわれたにも関わらず、締約国が、親が子どものしつけのために合理的な有形力を用いることを認めた1961年刑法第59条をいまなお改正していないことを、深く懸念する。家庭における積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進するために政府が行なっている公衆教育キャンペーンは歓迎しながらも、委員会は、条約ではあらゆる形態の暴力(体罰を含む)からの子どもの保護が要求されており、かつ、これととあわせて法律および保護される子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンが行なわれるべきであることを、強調するものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律を改正して家庭における体罰を禁止すること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りながら、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび人間の尊厳に対する子どもの権利の尊重の促進を目的とした公衆教育のためのキャンペーンおよび活動を強化すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 31.委員会は、とくにソーシャルワーク登録法(2003年)の採択および入所型施設における苦情処理委員会の設置を通じて子どもの保護および代替的養護を強化しようとする締約国の取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子ども・若者・家族サービス局がその責任を効果的に履行するのに十分な財源および人的資源を与えられていないことを、依然として懸念するものである。捜索および押収に関する警察の権限について締約国から提供された追加的文書回答は歓迎しながらも、委員会はまた、代替的養護に措置されている子どもに対して行なわれる身体検査および持ち物検査の回数が増加している旨の報告があることも、懸念する。 32.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより子ども保護システムを強化するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 (a) ソーシャルワーカーおよび子ども保護システムで働く要員の資質を向上させるとともに、資格のある専門的職員を職に留めておくための措置を定めること。 (b) 子ども・若者・家族サービス局と子どもにサービスを提供している機関との間の調整を改善するための効果的措置をとること。 (c) 施設養護が最後の手段としてのみ用いられることを確保しつつ、代替的養護に配分される財源を増加させること。 (d) 条約第25条にしたがい、養護措置の対象とされたすべての子どもが、その処遇についておよび自己の措置に関連するあらゆる事情について定期的再審査を受けることを保障するための努力を強化すること。 養子縁組 33.委員会は、締約国が養子縁組に関する法律を改正しようとしていることを歓迎する。ただし委員会は、予定されている改正が、条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の原則および規定に全面的には一致していないことを、懸念するものである。 34.養子縁組に関する法律の改正の検討にあたり、委員会は、締約国が、第12条および意見を聴かれ、かつ子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視される子どもの権利に対し、特段の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものでる。 (a) 一定の年齢に達した子どもについては、養子縁組に対する本人の同意を要件とすること。 (b) 自己の実親に関する情報に可能なかぎりアクセスする養子の権利を確保すること。 (c) 子どもが元のファーストネームのいずれかを維持する権利を可能なかぎり確保すること。 6.基礎保健および福祉 35.委員会は、1998年に「子ども健康戦略」が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、予防接種率が100%ではないこと、ならびに、乳児死亡率および子どもの受傷率が相対的に高いことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの健康にかかわる指標がマオリ住民の間で全般的により低くなっていることにも、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「子ども健康戦略」を実施するために十分な人的資源および財源を配分すること。 (b) 予防接種の完全実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、相対的に高い乳児死亡率および受傷率に効果的に対応する、親および家族を対象とした予防保健のためのケアおよび指導を発展させること。 (c) 民族的コミュニティ間、とくにマオリ住民における保健指標の格差に対応するためにあらゆる必要な措置をとること。 思春期の健康 37.委員会は、若者の自殺率、10代の妊娠率および青少年のアルコール濫用率が高いこと、ならびに、若者向けの精神保健サービスの水準が、とくに農村部においてかつマオリの子どもおよび入所型施設の子どもに関して不十分であることについての締約国の懸念を共有する。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに若者自殺防止プログラムを強化することにより、若者の自殺、とりわけマオリの若者の自殺に対応するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) とくに、性教育を含む健康教育をが高カリキュラムの一部とし、かつ避妊手段の使用に関する情報キャンペーンを強化することにより、10代の妊娠率を削減するための効果的措置をとること。 (c) 青少年によるアルコール消費の増加に対応するための効果的な防止措置その他の措置をとるとともに、とくにマオリの子どもを対象としたカウンセリング・サービスおよび支援サービスの利用可能性およびアクセス可能性を高めること。 (d) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスがすべての青少年(マオリの子どもならびに農村部および入所型施設の子どもを含む)にとってアクセスしやすくかつ適切であることを確保しながら、強化すること。 障害のある子ども 39.委員会は、障害のある子どもが社会のあらゆる側面に全面的に統合されているわけではないこと、および、諸サービス、とくに教育制度におけるサービスが、障害のある子どもの家族にとってしばしばアクセス困難なものとなっていることを、懸念する。 40.委員会は、締約国が、「ニュージーランド障害戦略」、とくに普通教育および社会のその他の側面への障害児の統合に関わる諸側面を実施するために十分な人的資源および財源が配分されることを確保するよう、勧告する。 生活水準 41.委員会は、締約国の子どもの相当な割合が貧困下で暮らしており、かつ、女性が筆頭者であるひとり親家庭ならびにマオリおよび太平洋諸島民の家族が不相応な影響を受けていることを懸念する。 42.条約第27条3項にしたがい、委員会は、締約国が、親(とくにひとり親)および子どもに責任を負う他の者が十分な生活水準に対する子どもの権利を実施することを援助するために適切な措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、マオリおよび太平洋諸島民の家族に提供される援助においてその伝統的な拡大家族体制が尊重されかつ支援されることを確保するよう、勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 43.委員会は、マオリを対象とする2言語教育の発展を歓迎する。しかしながら委員会は、異なる民族的集団の子どもの間で就学率および中退率の格差が根強く残っていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、退学に関する方針および隠れた教育費用負担の増加が、とくにマオリの子ども、妊娠した女子、特別な教育上のニーズを有する子ども、低所得家庭、市民でない者および新規移民にとって教育へのアクセスの制限につながっていることも、懸念する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国のすべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保すること。 (b) 義務教育に関する法律を執行し、かつ妊娠のような恣意的事由による退学を禁止するとともに、義務教育年齢の生徒であって正当な理由で退学させられた者が他の場所で就学できることを確保すること。 (c) 2言語教育のためのプログラムを強化する等の手段により、就学率および中退率に関する民族的集団間の格差に対応するための効果的措置をとること。 (d) プライバシーに対する生徒の権利を尊重しつつ、生徒の行動上の問題に対応するためにあらゆる必要な措置(学校における良質なカウンセリング・プログラムの提供を含む)をとること。 8.特別な保護措置 子どもの難民 45.委員会は、子どもの難民の統合および機会均等を確保するために締約国が提供しているサービスに留意する。しかしながら委員会は、この点に関して行なわれている活動が、統合という所期の目標を達成するうえで完全に効果的なものとはなっていない可能性があることを懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、子どもの難民を社会に統合するための努力を引き続き行なうとともに、現行プログラム、とくに語学訓練について、その有効性を向上させるための評価を実施するよう勧告する。 子どもの経済的搾取 47.委員会は、雇用における18歳未満の者の保護が条約の原則および規定に全面的には一致していないことを懸念するとともに、就業が認められるための最低年齢が定められていないことについての懸念(前掲パラ20参照)をあらためて表明する。 48.委員会は、締約国が、18歳未満のすべての被雇用者を保護する法律を再検討しかつ強化するために進められているプロセスを加速させるよう勧告するとともに、締約国に対し、ILO第138号条約を批准するよう奨励する。 少年司法 49.「青少年犯罪戦略」および青少年犯罪者特別委員会ならびに家族集団会議の活用には留意しながらも、委員会は、刑事責任年齢が低いこと、および、法律に抵触した18歳未満のすべての者に対して特別な保護が提供されているわけではないことに関する懸念(前掲パラ20参照)をあらためて表明する。委員会はさらに、罪を犯した少年が、女子であれ男子であれ成人の犯罪者から分離されておらず、かつ、警察の留置房に数か月間勾留されることさえあることを懸念するものである。 50.委員会は、パラ21に掲げた勧告をあらためて繰り返すとともに、さらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の討議(1995年、CRC/C/69)も照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 法律に抵触したすべての少年が審判前および審判後の拘禁の際に成人と別に収容されるよう、十分な青少年施設が利用できることを確保すること。 (c) 少年司法における家族集団会議の活用について体系的評価を行なうこと。 9.選択議定書 51.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に署名はしたものの批准していないことに留意する。 52.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 53.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 54.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2008年11月5日、すなわち第4回報告書の提出期限の18か月前までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/49.html
総括所見:イギリス(第1回・1995年) 第2回(2002年)/第3回・第4回(2008年)/第5回(2016年)英領香港(当時、1996年)/英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.34(1995年2月15日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年1月24日および25日に開かれた第204回、第205回および第206回会合(CRC/C/SR.204-206) において大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.11)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年1月26日に開かれた第208回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国との建設的な対話に携わる機会が得られたことを評価し、かつ、委員会の事前質問票(CRC/C.7/WP.1参照)に対する政府による文書回答が時宜を得て提出されたことを歓迎する。委員会は、締約国の代表団によって口頭で提供された追加的情報が、委員会が提起した問題の多くを理解しやすくさせる上で大いに助けになったことを、歓迎するものである。口頭による追加的情報は、締約国の第1回報告書が、条約で定められたさまざまな権利の実施を阻害する要因および困難に関する充分な情報を欠いていたという委員会の所見に照らして、とくに有益であった。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国がイングランドおよびウェールズに適用される子ども法を採択したことに留意する。委員会はまた、締約国が条約の適用を多くの属領に拡大したことにも注意を払うものである。委員会は、スコットランドにおける子ども聴聞を規制する手続に関わる条約第37条への留保の撤回を検討する意思が締約国にあることを、歓迎する。 4.さらに、委員会は、乳児突然死症候群を削減するため、および学校におけるいじめの問題と闘うために締約国が行なった取組みを歓迎する。加えて、委員会は、子どもの性的虐待の問題に取り組むためにとられた措置にも意を強くするものである。このような措置には、この深刻な問題に取り組む際の学際的アプローチを唱道しかつ促進する「共同作業」イニシアチブの発展によるものも含まれる。 5.委員会は、子どもの雇用の領域における立法を見直すこと、および、家族、家族間暴力および障害に関わる問題について新法を提出することに対する政府の決意に関して委員会が受け取った情報を歓迎する。同様に、委員会は、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関する1993年のハーグ条約を批准するという政府の意思も含めて、養子縁組の領域でさらなる立法を通過させるためにとられた措置を歓迎するものである。委員会は、制定法としての効力を有し、かつ1993年教育法の枠組みにおいて発展させられてきた、特別な教育的ニーズを持った子どものための実践要綱に留意する。 6.委員会は、就学前教育の提供を充実させることに対する政府の決意に留意する。委員会は、同様に、保健に関わる公的機関および非政府組織との協力のもとに子どもサービス計画を制定するよう地方の公的機関に義務づけるという、締約国による最近の取組みを評価するものである。 C.主要な懸念事項 7.委員会は、締約国が条約に対して行なった留保が幅広い性質のものであることを懸念する。このことは、条約の趣旨および目的との両立性に関して疑念を生ぜしめるものである。とくに、国籍出入国法の適用に関わる留保は、第2条、第3条、第9条および第10条も含む条約の原則および規定と両立しないように思える。 8.委員会は、子どもの権利に関する条約の実施に関して効果的な調整機構がどの程度存在するかについて、依然として不明瞭さを感ずる。委員会は、子どもの権利の実施を調整しかつ監視するための機構を、第三者的なものも含めて設置することについて充分な検討が行なわれたかどうか懸念するものである。 9.条約第4条に関して、委員会は、経済的、社会的および文化的権利の実施を、利用可能な資源を最大限に用いて確保するためにとられた措置が充分かどうかについて、懸念する。委員会には、締約国においても、および国際開発援助の流れにおいても、社会部門に充分な支出が配分されていないように思える。委員会は、社会で最も傷つきやすい立場に置かれたグループに属する子どもが基本的権利を享受できるようにすることについて充分な検討が行なわれたかどうか疑問に思うものである。 10.委員会は、北アイルランドに暮らしている子どもが経験している困難、および当地における緊急立法の運用が子どもに与える影響について、締約国の第1回報告書にほとんど情報が記載されていないことに留意する。委員会は、緊急立法下における子どもの不当な取扱いを防止するための効果的保護措置が存在しないことを懸念するものである。これとの関係で、委員会は、同じ立法のもとで、10歳という幼い子どもを告訴なしで7日間拘束することが可能であることに注意を払う。また、路上の人を制止し、尋問しかつ捜索する権限が緊急立法によって警察および軍隊に与えられていることが、子どもがひどい扱いを受けているという苦情につながってきたことも、留意されるところである。委員会は、この状況が、そのような苦情に関する捜査および行動のシステムへの信頼を失わせることにつながるのではないかと、懸念する。 11.委員会は、条約の一般原則、すなわち第2条、第3条、第6条および第12条の規定の実施を確保するためにとられた措置が不充分なように思えることを、懸念する。これとの関係で、委員会は、子どもの権利の尊重に影響する保健、教育および社会保障のような領域における立法に、子どもの最善の利益の原則が反映されていないように思えることに、とくに注意を払うものである。 12.差別の禁止に関わる条約第2条に関して、委員会は、その実施を確保するためにとられた措置が不充分であることに懸念を表明する。とくに、委員会は、子どもに対する市民権の承継に関して、条約第7条および第8条に矛盾する形で非婚の父親に適用される制約が、子どもに悪影響を与える可能性があることを懸念するものである。加えて、委員会は、一部の民族的マイノリティの子どもが、よりケア措置の対象になりやすいように思えることを、懸念する。 13.さらに、条約第6条に照らし、委員会は、さまざまな社会経済的グループの子どもおよび民族的マイノリティに属する子どもの健康状態に懸念を表明する。 14.条約第12条の実施に関して、委員会は、イングランドおよびウェールズの親が子どもを学校の性教育プログラムの一部に出席させないことができる場合も含めて、意見を表明する子どもの権利に充分な注意が向けられていないことを懸念する。このような決定、および子どもの退学を含む他の決定において、子どもは、条約第12条に基づいて求められているように、意見を述べるよう制度的に促されず、かつ、その意見も正当に考慮されない可能性がある。 15.委員会は、貧困下で暮らす子どもの数が増えていることに、懸念とともに留意する。委員会は、子どもが路上で物乞いをしかつ眠るという現象がより目立つようになっていることを認識するものである。委員会は、若者の手当の受領資格に関する規則の変更が、若いホームレスの数の増加の原因になったのではないかと懸念する。締約国における離婚率の高さおよびひとり親家庭および10代の妊娠の数の多さは、懸念とともに留意されるところである。これらの現象は、手当の支給額の充分さおよび家族教育の利用可能性および効果に関するものを含めて、多くの問題を提起するものである。 16.委員会は、子どもの身体的および性的虐待について委員会が受け取った報告に心を痛める。これとの関係で、委員会は、家庭における合理的な懲罰に関する国内法の規定について不安を感ずるものである。このような法規定に合理的な懲罰という曖昧な表現が掲げられていることは、それが主観的かつ恣意的な形で解釈されることに道を開く可能性がある。したがって、委員会は、子どもの身体的不可侵性に関わる法的およびその他の措置が、第3条、第19条および第37条も含めた条約の規定および原則と両立しないように思えることを懸念するものである。委員会は、同様に、私的な財源により運営されている学校は、そこに通う子どもに体罰を行なうことがいまだに認められていることを懸念する。このことは、条約第28条2項も含めた条約の規定と両立しないように思える。 17.締約国における少年司法制度の運営は、委員会にとって一般的懸念の対象である。刑事責任年齢の低さ、および少年司法の運営に関わる国内法は、条約の規定、とくに第37条および第40条と両立しないように思える。 18.委員会は、1994年刑事司法公共秩序法の規定の一部について依然として懸念する。委員会は、同胞の規定が、とくにイングランドおよびウェールズの12~14歳の子どもに「拘束訓練命令」を適用する可能性を定めていることに、留意するものである。委員会は、そのような拘束訓練命令を幼い子どもに適用することが、少年司法の運営に関わる条約の原則および規定、とくに第3条、第37条、第39条および第40条と両立するかどうかについて懸念する。とくに、委員会は、イングランドおよびウェールズの拘束訓練センターおよび北アイルランドの訓練学校の運営および設置に関する指針の理念が、拘禁および処罰に力点を置いているように思えることを、懸念するものである。 19.委員会は、同様に、社会福祉制度のもとでケア措置された子どもが北アイルランドの訓練学校に拘束される可能性があり、かつ、将来的にはイングランドおよびウェールズの訓練光速センターに措置される可能性があることを、懸念する。 20.委員会はまた、1988年刑事証拠(北アイルランド)令が条約第40条、とくに無罪の推定への権利および証言または有罪の自白を矯正されない権利と両立しないように思えることも、懸念する。北アイルランドにおいて、警察の尋問に対して沈黙を守ることが10歳以上の子どもの有罪認定の裏付けとして用いることができることが、留意されるところである。審判における沈黙も、同様に、14歳以上の子どもの不利益に用いることができる。 21.ジプシーおよびトラベラーの子どもの状況は、とくに基本的サービスへのアクセスおよびキャラバン基地の提供に関して、委員会にとって懸念の対象である。 D.提案および勧告 22.委員会は、とくにこの点に関して世界人権会議で達成されかつウィーン宣言および行動計画に盛りこまれた合意に照らして、締約国に対し、条約に対する留保を撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励したい。 23.委員会は、締約国が、政府省庁間および中央および地方の政府系公的機関の間の調整も含め、条約の実施を調整する目的で国内機構を確立することを検討するよう提案したい。さらに、委員会は、締約国が、英国全体で子ども法および子どもの権利に関する条約の監視を行なう恒久的機構を確立するよう提案するものである。さらに、非政府組織、とくに締約国において子どもの権利の尊重の監視に携わっている非政府組織と政府との定期的かつより緊密な協力を促進するための手段を確立することが、提案されるところである。 24.条約第4条の実施に関して、委員会は、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に関わる第3条の規定を、中央政府および地方政府の各段階における政策決定の指針とするよう提案したい。このようなアプローチは、義務教育を修了しかつフルタイムに就業していない子どもに対する手当の支給に関するものも含めて、中央政府および地方政府のレベルにおける社会部門への資源配分についての決定とも関わるものである。委員会は、社会的および経済的不平等の拡大および貧困の増加の問題を克服するために追加的努力を行なうことの重要性に留意する。 25.英国における子どもの健康、福祉および生活水準に関わる問題に関して、委員会は、さまざまな社会経済的グループの子どもおよび民族的マイノリティに属する子どもの健康状態に影響を与える問題、および、子どもおよびその家族に影響を与えるホームレスの問題に優先的に対応するための追加的措置を勧告する。 26.委員会は、条約第42条に従い、締約国が、条約の規定および原則を子どもにも大人にも同様に広く知らせるための措置をとるよう勧告する。教員、警察、裁判官、ソーシャルワーカー、ヘルスワーカー、およびケア施設および拘禁施設の職員のような、子どもとともにまたは子どものために働く専門家の養成カリキュラムに子どもの権利に関する教育を盛りこむことも、提案されるところである。 27.委員会は、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に関わる第3条および意見を周知させかつその意見を正当に考慮される権利に関わる第12条の規定を、子どもの権利を実施するために行なわれる立法上のおよび行政上の措置および政策において盛りこむことに対し、さらなる優先順位を与えるよう提案したい。締約国が、家庭および地域におけるものも含む自己に影響を与える決定への子どもの参加を促進するため、さらなる機構を確立する可能性を検討することが提案されるところである。 28.委員会は、北アイルランドにおいて緊急に人種関係立法を導入することを勧告し、かつ、この問題に関するフォローアップを行なう政府の意思について締約国の代表団から提出された情報に意を強くする。 29.委員会はまた、条約の原則および規定との一致を確保するため、国籍および出入国に関する法律および手続の見直しを行なうようにも提案したい。 30.委員会は、家族教育の提供によるものも含めて、子どもに対する責任について親を教育するためにさらなる措置をとるよう勧告する。家族教育は、両親の責任が平等であることを強調すべきである。政府が10代の妊娠の問題を深刻なものとしてとらえていることは認めながらも、委員会は、10代の妊娠を減らすために、防止中心のプログラムの形をとった追加的努力が必要とされていることを提案する。防止中心のプログラムは教育キャンペーンの一環として行なうことも可能である。 31.委員会はまた、社会における暴力の問題を克服するためにも追加的努力が必要とされているという見解に立つものである。委員会は、条約第3条および第19条に掲げられた規定に照らし、家庭における子どもの体罰を禁止するよう勧告する。とくに第19条、第28条、第29条および第37条で条約が認めている身体的不可侵性への子どもの権利との関係で、かつ子どもの最善の利益に照らして、委員会は、締約国が追加的教育キャンペーンを行なう可能性を検討するよう提案するものである。そのような措置は、家庭における体罰の使用に関する社会の態度を変え、かつ、子どもの体罰の法的禁止の受容を促進する上で役に立つはずである。 32.教育に関わる問題に関して、委員会は、退学に対して異議申立てをする子どもの権利を効果的に確保するよう提案する。自己に関わる学校運営上の問題に関して意見を表明する機会を子どもたちに提供することを確保するための手続の導入も、提案されるところである。さらに、委員会は、教員の養成カリキュラムに子どもの権利に関する条約についての教育を盛りこむよう勧告する。条約の一般原則および第29条の規定に照らし、教授法が条約の精神および哲学に影響を受け、かつそれを反映するよう勧告されるところである。委員会はまた、締約国が、子どもの権利に関する条約についての教育を学校カリキュラムに導入する可能性を検討するようにも提案したい。民間の財源によって運営されている学校における体罰の使用を禁ずるため、立法措置が勧告されるところである。 33.委員会はまた、締約国が、北アイルランドの学校におけるアイルランド語による教育、および統合学校教育に対してさらなる支援を行なうようにも提案する。 34.委員会は、現在北アイルランドにおいて運用されている、少年司法の運営制度に関わるものも含めた緊急立法およびその他の立法を、条約の原則および規定との一致を確保するために見直すよう勧告する。 35.委員会は、少年司法の運営制度が子ども中心のものになることを確保するため、法改正を継続するよう勧告する。委員会はまた、少年非行を防止するために、締約国が、条約に掲げられかつリャド・ガイドラインによって補完された必要な措置をとることも勧告したい。 36.さらに具体的には、委員会は、英国全域で刑事責任年齢を引き上げることを真剣に考慮するよう勧告する。委員会はまた、子どもの権利に関する条約の全面的尊重を確保する目的で、新たな1994年刑事司法公共秩序法の注意深い監視を導入するようにも勧告するものである。とりわけ、とくに12歳~14歳の子どもへの拘束訓練命令、不定期の身柄拘束、および15歳~17歳の子どもに対して科すことが可能な刑の倍増を認めた同法の規定は、条約の原則および規定との両立性との関わりで見直されるべきである。 37.子どもの雇用に関わる問題について検討されている法改正の流れにおいて、委員会は、締約国がその留保を撤回の方向で見直すことを検討するよう、希望を表明する。同様に、委員会は、政府がILO第138号条約の締約国となる可能性を検討してもよいのではないかと希望を表明するものである。 38.子どもに影響を与える性的搾取および薬物濫用の問題も、さらなる防止措置をとることとの関連も含めて、緊急に対応されるべきである。 39.委員会は、条約第39条の規定の実施に対してより注意を向ける価値があるという見解に立つものである。とくに放任、性的搾取、虐待、家庭内紛争、暴力、薬物濫用の犠牲となった子どもおよび少年司法制度における子どもの身体的および心理的回復および社会的再統合を促進するための措置がとられることを確保するため、プログラムおよび戦略が発展させられるべきである。そのような措置は、国内的文脈にあってはもちろん、国際協力の枠組みにおいても適用されるべきである。 40.加えて、委員会は、教育への権利も含めてジプシーおよびトラベラーのコミュニティに属する子どもの権利のための積極的措置をとること、および、これらのコミュニティのために適当な形で指定したキャラバン基地を充分な数だけ確保することを、勧告する。 41.委員会はまた、香港属領における条約の実施に関する情報を1996年までに委員会に提出するようにも勧告する。 42.委員会は、締約国に対し、締約国報告書、委員会における同報告書の議論の議事要録、および同報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を広く普及するよう奨励する。委員会は、これらの文書に対し議会の注意を促すこと、および、そこに掲げられた行動のための提案および勧告のフォローアップを行なうことを提案したい。これとの関連で、委員会は、非政府組織とのより緊密な協力を継続するよう提案するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月22日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/66.html
総括所見:ベトナム(第1回・1993年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.3(1993年2月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1993年1月19日および20日に開かれた第59回、第60回および第61回会合(CRC/C/Sr.60-61)においてベトナムの第1回報告書(CRC/C/3/Add.4)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1993年1月28日に開かれた第73回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、その報告書に関して、かつ高級レベルの代表団を通じて委員会との建設的かつ率直な対話に携わったことに関して、評価の意を表する。委員会は、ベトナムが条約への署名およびその批准を行ない、かつその実施に関する報告書を提出したアジアで最初の国であることに、満足感とともに留意するものである。委員会は、委員会のガイドラインにしたがって作成されたその報告書が包括的なものであることを評価する。 3.報告書、および議論の過程で締約国代表によって提供された詳細な追加情報により、子どもの権利条約およびそこに規定された人権水準に基づいて約束された義務を締約国が遵守しているかどうかについて、委員会は包括的な見解を得ることができた。 B.積極的な側面 4.委員会は、全国で条約の規定の実施を確保するためにベトナム政府が行なった努力に、満足感とともに留意する。国民議会により「子どもの保護、ケアおよび教育に関する法」および「初等教育の全国的普及に関する法」が1991年8月に制定されたこと、「ベトナム子ども年」(1989~1990年)が布告されたこと、「子どもの保護、ケアおよび教育に関する政令」の最初の10年間(1979~1989年)における実施および関連の活動の国家的見直しが行なわれたこと、および、新国民憲法において子どもの権利が明記されたこと──これらのすべての進展は、条約の実施に向けた重要な措置である。委員会は、子どものための世界サミットのフォローアップ措置として「子どものための国内サミット」が開かれ、かつ、同サミットによってベトナムの「子どものための国内行動計画 1991~2000年」案が承認されたことに、満足感とともに留意する。委員会は、条約の実施を監視するために、国レベルで「子どもの保護およびケアのための委員会」が設置され、かつ、州、地方および地域共同体レベルにおいてもそのような委員会が設置されたことをとくに重視するものである。 C.条約の実施を妨げる要因および困難 5.委員会は、ベトナムにおける中央計画経済から市場経済への移行が新たな社会問題を生み出しまたは旧来の社会問題を悪化させており、そのことが子どもの状況に悪影響を与えていることに留意する。同国のへき地における古くからの伝統も、条約の規定の適用を困難にさせているものである。委員会は、ベトナム政府が条約の実施を阻害している既存の困難をよく承知していることに留意し、かつ、この点に関する報告書の率直さおよび開かれた姿勢をおおいに評価する。委員会はさらに、政府が、こうした困難な状況にあっても子どもの問題が可能なかぎり最高の優先順位で扱われることを確保するために、国内的および国際的行動を通じてあらゆることをする旨の決意を表明したことに留意するものである。 D.主要な懸念事項 6.委員会は、ベトナムで進行している経済改革が子どもの状況に与える悪影響に懸念を表明する。委員会はまた、さまざまなマイノリティ・グループに属する子ども、とくに同国の山岳部で暮らしている子どもの状況も懸念するものである。委員会は、国内の刑事法制において非行を行なった子どもの長期の収監が規定されていることは条約第37条に一致しないこと、および、刑法に違反したとして申し立てられまたは罪を問われているすべての子どもは条約第40条で構想されている保障を認められるべきであることに、留意する。委員会はまた、同国の一部地域に偏見が根強く残っているために女性および女子に対する差別が生じていることにも懸念を表明するものである。非都市部における子どもの状況は、たとえば保健および教育の可能性との関わりで一般的な懸念の対象となる。路上で暮らしかつ(または)働いている子ども、子ども売買春および子どもポルノグラフィーの数が増加していることも、条約の実施に関するかぎり法執行官に対して充分な訓練が行なわれていないことと同様に、懸念の対象である。 E.提案および勧告 7.委員会は、ベトナム政府が、経済改革がもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループ、すなわちベトナム社会の子どもに与える悪影響を最小限のものとするために、国内的に、かつ国際的な援助および協力も利用しながら、あらゆる必要な措置をとることがとりわけ重要であると考える。さまざまなマイノリティ・グループに属する子ども、非都市部で暮らす子どもおよび都市部において路上で暮らしかつ(または)働いている子どもたちに特段の注意が払われるべきである。最後の点に関しては、この現象の根本的原因をさらに研究し、かつ、この問題を解決するための適切な戦略を発展させる必要があると思われる。 8.条約第37条、第39条および第40条ならびに法執行官行動綱領ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する〔国連〕規則のようなこの分野における他の国際基準の規定を充分に反映させるため、刑法が適切な形で改正されるべきである。これとの関連で、委員会は、〔国連〕人権センターがベトナムで法執行官のための訓練コースを開催するよう勧告する。 9.子どもの権利の保護に関する世論の感受性を増進するため、条約の本文がすべてのマイノリティ・グループの言語に翻訳され、かつ可能なかぎり広く普及されべきである。青少年組織および非政府組織は、条約に関する意識を全国で喚起するために積極的な役割を果たすことができる。 10.委員会は、条約第44条4項にしたがい、少年司法に関する追加的情報を、委員会の会期前作業部会がその情報を検討し、秋の会期で委員会に報告することを可能にするため、1993年6月までに委員会に提出するよう提案した。ベトナム政府によって委員会に提出された報告書および委員会の議事録を国内で刊行し、かつ可能なかぎり広く普及することが勧告されるところである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月9日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/303.html
総括所見:ベルギー(OPSC・2010年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/BEL/CO/1(2010年6月18日)/第44会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年6月2日に開かれた第1521回および第1523回会合においてベルギーの第1回報告書(CRC/C/OPSC/BEL/1)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書が提出されたこと、および、委員会の事前質問事項に対する回答が時機を失することなく提出されたことを歓迎する。委員会はまた、部門を横断した代表団の出席、および、代表団との率直なかつ開かれた対話も評価するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国が、選択議定書に基づく報告についてのガイドライン(2006年採択)にしたがわなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回・第4回定期報告書について2010年6月11日に採択された総括所見(CRC/C/BEL/CO/3-4)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書への締約国の第1回報告書について2006年6月9日に採択された総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、以下の法令が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 人身取引および人の密輸ならびに搾取的施設経営者の行動との闘いを強化する目的でさまざまな提案〔規定〕を改正する2005年8月10日の法律。 (b) 人身取引および人の密輸との闘いに関する2004年5月16日の勅令。 (c) 刑事案件についての国際司法共助に関する2004年12月9日の法律。 (d) 刑事犯罪からの未成年者の保護の範囲を拡大する2000年11月28日の法律。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことも称賛する。 (a) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2009年4月27日)。 (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2005年5月26日)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2004年8月11日)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(2002年5月8日)。 6.委員会はさらに、以下の措置を歓迎する。 (a) 人身取引・人の密輸対策国家行動計画(2008年7月)。 (b) 人身取引・人の密輸情報分析センター(CIATTEH)の設置。 (c) 人身取引および人の密輸との闘いに関する省庁間調整班(主管庁:司法省)の再開。 (d) 判事、連邦警察および締約国の軍隊を対象として実施されている、選択議定書で対象とされている分野についての具体的研修。 (e) 選択議定書で対象とされている分野における国際的な援助および協力のための幅広い活動。 II.データ データ収集 7.条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野についてのデータ収集の調整を〔国家〕子どもの権利委員会が担当するようになったことには留意しながらも、委員会は、利用可能なデータおよび調査研究が限られていること(とくに、児童セックスツーリズムについて、子どもの売買、児童買春および児童ポルノ目的の人身取引の対象とされた子どもについて、ならびに、選択議定書上の犯罪の被害者に対する回復および再統合のための援助ならびに補償についての、信頼できるデータが存在しないこと)を遺憾に思う。 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに被害者および加害者の年齢、性別、出身別に細分化されたデータを収集するための機構を設置すること。 (b) 国家子どもの権利委員会に対し、データに関する調整役を効果的に果たすために必要な財源および人的資源を提供すること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ対策の実施状況を評価する目的で、収集されたデータが注意深く検討されることを確保すること。 III.一般的実施措置 立法 9.委員会は、司法機関がいまなお選択議定書の適用可能性について決定する手続を終了していないことに懸念を表明する。委員会はまた、締約国の法律で人身取引と売買が混同されている結果、選択議定書第3条で定義されている子どもの売買が、締約国の刑法において、具体的に犯罪とされていないことも懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法体系において選択議定書が直接適用されることを保障するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施するためには、法律において子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)に関わる自国の義務が充足されていなければならないことを想起するとともに、選択議定書上の犯罪であるこの行為に明示的に言及されることを確保するよう、求めるものである。 11.委員会は、子どもの調達および児童ポルノに関する事件で手続を打ち切るための法的事由(「社会的影響が限られていること」、「散発的行為であること」または「事件を調査する能力が制限されること」など)が存在していることに、深刻な懸念を表明する。委員会は、これらの法的事由が、被害を受けた子どもが救済を得る権利を侵害するものであり、かつ加害者の不処罰につながると考えるものである。 12.委員会は、締約国に対し、子どもの調達および児童ポルノに関する事件で刑事手続を打ち切るための法的事由を見直し、かつ、選択議定書出対象とされているすべての犯罪が適正に訴追されることを確保するよう、促す。 国家的行動計画 13.委員会は、具体的な「人身取引・人の密輸対策国家行動計画」が2008年7月11日に採択されたことに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの撤廃のための全般的戦略が締約国で定められていないことに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、2001年の「子どもの商業的性的搾取対策国家行動計画」および同計画の評価に関する情報がないことを懸念する。 14.委員会は、締約国に対し、2001年の「子どもの商業的性的搾取対策国家行動計画」が部門横断アプローチを基礎とし、かつ選択議定書のすべての分野に関する行動のための一貫したかつ包括的な枠組みのもとであらゆる関係者を結集させることを確保することにより、同計画を速やかに改訂するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、同計画の実施のために十分な資源が配分されかつ監視機構が確立されること、ならびに、同計画の活動および同計画の評価に市民社会および子どもたちが高い水準で参加することを確保することも促すものである。 選択議定書の実施の調整 15.言語共同体レベルで調整機構が設置されていることには留意しながらも、委員会は、さまざまな省庁および言語共同体レベルの関係公的機関の間で子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連する政策の調整を担当する特定の機構が連邦レベルで設けられていないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、締約国による選択議定書の実施を、連邦レベルでならびに省庁間および公的機関間(言語共同体レベルの機関を含む)で、子どもたちの積極的参加を得ながら調整しかつ評価するための機関を設置するよう勧告する。さらに、締約国が、当該調整機関に対し、その任務を効果的に遂行できるようにするための具体的かつ十分な資源を提供することも勧告されるところである。 普及および意識啓発 17.委員会は、2004年と2005年に実施された子どもの性的搾取に関する意識啓発キャンペーン、および、人身取引に関する意識啓発のために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、関連の専門家集団、子どもたちおよび公衆一般の間で選択議定書の具体的規定に関する意識を高めるための努力が不十分であることを懸念するものである。 18.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに、教育制度のあらゆる段階の学校カリキュラムに選択議定書の規定を統合し、かつとくに子どもを対象とする適切な資料を作成することにより、選択議定書の規定を、公衆一般、とくに子どもたちおよびその家族に対して引き続き広く知らせること。 (b) 市民社会と協力しながら、かつ選択議定書第9条第2項にのっとり、あらゆる適切な手段、教育および研修による情報提供を通じて、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の有害な影響に関する公衆一般(子どもたちを含む)の意識を強化しかつ促進するとともに、このような意識啓発プログラムおよび広報・教育プログラムへの、コミュニティならびにとくに男女双方の子どもおよび被害者である子どもの参加を奨励すること。 研修 19.人身取引に関する若干の研修活動が実施されてきたこと(連邦警察の人身取引担当部署が外交職員向けに実施した研修会など)には留意しながらも、委員会は、このような研修において、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、または選択議定書のすべての規定が十分に含まれているわけではないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連のすべての専門家および公衆一般を対象とする、選択議定書で対象とされているすべての分野についての研修資料および研修課程の開発に対し、十分な、かつ使途指定された資源を配分すること。 (b) 警察官、検察官、裁判官、医療スタッフ、社会福祉職員ならびにメディアおよび他の関連の専門家集団を含む専門家を対象として、選択議定書のすべての分野を網羅した研修活動(研修資料および研修課程の開発を含む)をを継続しかつ強化すること。 資源配分 21.委員会は、選択議定書を実施するために行なわれる活動に割り当てられる、明確に特定可能な予算配分が行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、警察および司法制度に対し、選択議定書で対象とされている犯罪についての告発を捜査するための十分な人的資源および財源が提供されていないことも懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関連する活動のための予算配分額を明確に特定するよう求める。委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている犯罪の防止、時宜を得た捜査および効果的訴追ならびに被害を受けた子どもの保護、ケアおよび社会的再統合を国内全域で確保する目的で、使途指定をともなう予算基金を通じ、さまざまな地方行政地域間で平等に資源を配分するよう促すものである。 IV.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーの防止 選択議定書で禁じられている犯罪を防止するためにとられた措置 23.委員会は、「ベルギー・インターネット安全向上プロジェクト」および不法養子縁組を防止するための措置など、非政府組織(NGO)と提携した防止措置の発展を歓迎する。しかしながら委員会は、ベルギーにおけるこれらの現象の発生件数は比較的少ないため、言語共同体はこれまでのところ選択議定書の主題をとくに対象とする政策を定めまたはこのような政策に投資していない旨の、締約国の発言について懸念を覚えるものである。 24.委員会は、締約国に対し、児童買春に関する現象学的研究を実施するべきである旨の国家子どもの権利委員会の勧告をフォローアップするとともに、この研究の範囲を、選択議定書出対象とされているすべての分野(これらの現象の根本的原因を含む)に拡大するよう奨励する。 セックスツーリズム 25.委員会は、セックスツーリズムに関連した刑法上の域外適用規定の存在について外交官全員の注意を喚起した外務省の通達、および、セックスツーリズムと闘うためにフランドル地域でとられているさまざまな措置に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、児童セックスツーリズムに関与したベルギー国民に対してとられる措置についての情報がないことを懸念するものである。 26.委員会は、締約国に対し、児童セックスツーリズムの防止およびこれとの闘いについて第一義的責任を負うのは締約国であることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、この点に関していっそう実際的な行動をとるとともに、とくに、観光客をとくに対象とする大規模な啓発キャンペーンを組織し、かつ、旅行および慣行におけるあらゆる形態の子どもの性的搾取と闘うために旅行手配業者、メディア、NGOおよび市民社会組織と緊密に協力するよう、促すものである。 V.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーならびに関連する事項の禁止 現行刑事法令 27.委員会は、刑事司法制度における未成年者の保護に関する新たな法律(2000年11月28日)、および、人身取引および人の密輸ならびに搾取的施設経営者の行動との闘いを強化する目的でさまざまな提案〔規定〕を改正する2005年8月10日の法律の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の批准時に締約国が行なった宣言および同意に関する締約国の国内法(2006年2月9日)に掲げられた児童ポルノの定義が、子どもを視覚的に表現したものに限られていることを懸念するものである。 28.委員会は、児童ポルノに関する国内法において、実際のまたはそのように装ったあからさまな性的活動に従事する子どもをいかなる手段によるかは問わず描いたあらゆる表現または主として性的目的で子どもの性的部位を描いたあらゆる表現が対象とされることを確保するため、締約国が刑法を改正するよう勧告する。 29.第3条第3項にしたがい、選択議定書上の犯罪が適切な刑罰による処罰の対象であることには留意しながらも、委員会は、子どもに対する性的犯罪に関する有罪事件で禁固刑が言い渡される割合がきわめて低いことに懸念を表明する。委員会はまた、子どもが関わる買春のための売春宿を経営していたとして2000~2007年に有罪判決を言い渡された者のうち収監刑に処された者がひとりもいないことに、特段の懸念とともに留意するものである。 30.委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている犯罪がベルギー刑法においても犯罪とみなされること、および、これらの犯罪が科料または自由の剥奪をともなわない制裁のような軽い刑による制裁の対象とされないことを確保する目的で、刑法の規定の改正を検討するよう促す。 裁判権および犯罪人引渡し 31.委員会は、2000年11月28日の法律によってベルギーの裁判所および審判所の域外裁判権限が拡大されたこと、および、たとえ被害申立てまたは正式な通告が行なわれていない場合、不法行為がその行為地国で犯罪とされていない場合および当事者がベルギー国籍を有していない場合であっても、裁判官には子どもの性的搾取の事件を審理する権限があることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の域外裁判権において被害を受けた16~18歳の子どもが対象とされていないことを懸念するものである。委員会はまた、締約国が裁判権を設定した事件に関する情報がないことも懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、ベルギーの裁判所および審判所の域外裁判権限が16~18歳の子どもの性的搾取にも適用されることを確保するために法改正を行ない、かつ、この選択議定書をこれらの犯罪に関する犯罪人引渡しの法的根拠とみなすよう促す。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 33.委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの保護のためにとられた措置(連邦警察内に人身取引対策部署が設けられていること、あらゆる形態の子どもの虐待を担当する付託判事が裁判管轄区ごとに指名されていること、および、被害を受けた子どもの二次被害を防止する目的で2000年から聴聞の録画が使用できるようになったことを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、保護者のいない外国人の子どもの事件で、子どもの聴聞の録画を認めた規定がほとんど活用されていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、聴聞の録画の使用を認めた規定が保護者のいない外国人の子どもにも平等に適用されることを確保することも求めるものである。 35.委員会は、人身取引の被害を受けた外国人の子どもが締約国で十分に保護されていないことにより、子どもが選択議定書上の犯罪の被害をいっそう受けやすくなっていることに、深い懸念を表明する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) これらの子どもが、捜査に協力した場合に限って在留を認められていること。 (b) 2004年5月の後見法において、保護者のいないヨーロッパ出身の子どもが、後見人による援助を受けることから排除されていること。 (c) 1999年から2005年にかけて、人身取引の被害を受けた数百人の子どもが受け入れセンターから失踪していること。 (d) とくに小規模都市において、子どものための受け入れセンターの定員が不足しているために、人身取引の被害者であって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもが成人とともにセンターに措置されていること。 36.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪(人身取引を含む)の被害を受けたすべての子どもに対して保護を提供する自国の義務を遵守し、かつ、これらの子どもに対し、法的手続に協力する意思または能力の有無にかかわらず在留許可を付与すること。 (b) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもであるすべての庇護希望者に対し、その国籍にかかわらず、庇護手続の期間中、後見人が任命されることを保障すること。 (c) 養育者から分離された子どもおよび保護者のいない子どもの保護、とくにその特定、年齢鑑別、登録、家族追跡、後見、最善の利益の判断、処遇および治療を向上させること。 (d) 受け入れセンターおよびシェルターに収容された子どもがすべての言語共同体で十分な援助を受け、かつ人身取引または再度の人身取引のおそれにさらされないことを確保するため、被害を受けた子どもにこれらのセンターで対応する専門家の、子どもの権利に関する知識およびスキルを増進させること。 (e) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに援助を提供する入所施設を増設すること。 (f) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮すること。 VII.国際的な援助および協力 多国間、地域間および二国間の取り決め 37.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、(とくに近隣諸国との)多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 法執行 38.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックスツーリズムをともなう行為の防止、摘発、捜査、訴追および処罰を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めによって国際協力を強化するための努力を継続するよう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 39.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見を内閣、議会(上院および代議院)ならびに該当するときは言語共同体および州レベルの政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、この総括所見が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 40.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、締約国のすべての公用語で子どもおよびその親が入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、選択議定書を子どもおよび公衆一般に広く周知することも勧告するものである。 IX.次回報告書 41.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第5回・第6回統合定期報告書(提出期限・2017年7月14日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/125.html
総括所見:スウェーデン(OPSC・2011年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)/第5回(2015年)OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/SWE/CO/1(2012年1月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年10月3日に開かれた第1662回会合(CRC/C/SR.1662参照)においてスウェーデンの第1回報告書(CRC/C/OPSC/SWE/1)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1669回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、豊かな情報を含み、分析的かつ自己批判的である締約国の第1回報告書、および事前質問事項(CRC/C/OPSC/SWE/Q/Add.1 and Add.2)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。委員会は、部門横断型の締約国代表団との建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第4回定期報告書について採択された総括所見(CRC/C/SWE/CO/4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/OPAC/SWE/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに性的目的で子どもと親しくなろうとする行為を犯罪化した刑法第6章第10条aの採択(2009年7月1日)を歓迎する。 5.加えて、委員会は、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2005年)が締約国によって2010年5月に批准されたことに、評価の意とともに留意する。 II.データ 6.委員会は、包括的なデータ収集システムが設置されていないことを懸念する。委員会は、締約国における児童買春および人身取引の被害を受けた子どもに関する全国的な統計データが存在しないことを、とくに遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書の実施に関わるあらゆる分野で体系的データ収集を行なうための機構をさらに発展させかつ中央集権化すること。 (b) 議定書上の犯罪にとくに関連し、このような犯罪のすべての被害者および加害者を網羅し、かつ年齢、性別、地理的所在および社会経済的背景ごとに細分化されたデータを収集するための、調整のとれたシステムを設置すること。 (c) 選択議定書上のすべての犯罪の根本的原因および蔓延の度合いならびにこれらの犯罪に対応するために実施されている政策および提供されているサービスの効果に関する、質的および量的な研究および分析を行なうこと。 III.実施に関する一般的措置 宣言 8.委員会は、第2条(c)について、同条の「あらゆる表現」(any representation)という文言は児童ポルノの「視覚的表現」に関連するものとしてのみ解釈すると述べる締約国の宣言により、あらゆる形態の児童ポルノに対応するための選択議定書の全面的実施が阻害されることを懸念する。 9.委員会は、あらゆる形態の児童ポルノへの対応に関して選択議定書を全面的に実施するため、締約国が第2条(c)に関する宣言の撤回を検討するよう、勧告する。 立法 10.委員会は、条約およびその選択議定書が締約国の法律に全面的に編入されていないことを遺憾に思う。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国の法律で、選択議定書第1条、第2条および第3条に定められたすべての犯罪が具体的に定義されかつ禁じられているわけではないこと。 (b) 性的搾取がそれにふさわしい刑事的制裁の対象とされていないこと。 (c) 締約国の判例および法律が、15歳以上の子どもの被害者に対し、一貫して十分な保護を提供しているわけではないこと。 (d) 未成年者の性的行為の購入および性的姿態をとらせる目的での子どもの搾取のような犯罪が「子どもに対するそれほど重大ではない性犯罪」に分類されていること。 11.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとること等の手段により、条約およびその選択議定書を自国の法律に全面的に編入するよう勧告する。 (a) 商業的性的搾取が刑事司法制度においてそれにふさわしい制裁の対象とされることを確保すること。 (b) 子どもの虐待の被害者全員、とくに15歳以上の被害者に対して十分な法的保護が提供されることを確保すること。 (c) 未成年者の性的行為の購入および性的姿態をとらせる目的での子どもの搾取に関する、「子どもに対するそれほど重大ではない性犯罪」という評価を再検討するとともに、このような犯罪が領域外で行なわれた場合の双方可罰性要件の削除を検討すること。 (d) 選択議定書第1条、第2条および第3条に基づく、子どもの売買のあらゆる事案を定義しかつ禁止する義務と全面的に一致する法律を制定すること。 委員会は、締約国に対し、議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施するためには、立法において子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)に関わる義務が充足されていなければならないことを想起するよう求めるものである。 国家的行動計画 12.委員会は、〔子どもの性的搾取に関する〕締約国の国家的行動計画および売買春と性的目的の人身取引に対抗する行動計画に留意する。しかしながら委員会は、国家的行動計画の更新が2012年に延期されたことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、選択議定書の実施のための全般的戦略を締約国が定めていないこと、および、選択議定書上の犯罪につながる根本的な需要要因に対応するためにとられた措置が依然として不十分であることを、懸念するものである。 13.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施のための包括的枠組みを定めるよう促す。その際、委員会は、締約国が、以下の手段をとることにより、選択議定書の違反につながる需要要因に対処するための措置を考慮に入れるよう、勧告するものである。 (a) 犯罪者(女性および少年の犯罪者を含む)についてさらなる調査研究を行なうこと。 (b) キャンペーンを含む意識啓発措置を増やしかつ向上させること。 (c) 防止措置の活用を増やしかつ強化すること。 調整および評価 14.委員会は、選択議定書の違反に関する機関間の連携および能力が依然として不十分であることを懸念する。この文脈において、委員会はさらに、締約国が、選択議定書の実施および関連する広域行政圏および地方の公的機関間におけるこのような努力の調整を担当する諸機関の監視および評価のための制度を設置していないことを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施および関連する広域行政圏および地方の公的機関間におけるこのような努力の調整を担当する諸機関の監視および評価のための制度を設置する等の手段により、選択議定書上の違反に対応するための機関間の調整を強化する実際的措置をとるよう、促す。 普及および意識啓発 16.委員会は、一般公衆および子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で選択議定書に関する意識が低いままであることに、懸念とともに留意する。 17.委員会は、締約国が、選択議定書第9条2項にしたがい、適切なメディア・キャンペーン、教育キャンペーンおよび専門家研修キャンペーンをとる等の手段により、その規定を公衆、とくに子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家の間で広く知らせるために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。 研修 18.売買春と性的目的の人身取引に対抗する行動計画との関連で行なわれている締約国の研修プログラムには積極的取り組みとして留意しながらも、委員会は、選択議定書が対象とする犯罪に関わるリスク要因の特定およびこれへの対処ならびにこのような違反の事案(外国人被害者が関わるものを含む)を通報しかつ処理する方法および機関についての知識が、子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で低いままであることを懸念する。 19.委員会は、締約国が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を対象として、選択議定書に関する研修プログラム(選択議定書に関連するリスク要因の特定ならびにそのような違反に対応するための関連のフォローアップ手続、および、そのような犯罪の発生が疑われる事例に具体的に関連するものを含む)を体系的に行なうよう、勧告する。委員会はまた、外国人被害者が関わる事案に関連の専門家が効果的に対応できるようにするため、当該研修プログラムに社会文化的感受性に関する内容を含めることも勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 20.委員会は、4つの国民年金基金が共同で設置している倫理評議会が、基金の投資先である国外企業の、環境および人権に関する国際条約に関わる環境上および倫理上の配慮について検討していることに、関心とともに留意する。 21.委員会は、海外投資を行ない、または国外企業の子会社もしくは関連会社を通じて活動する国営法人(国の年金基金を含む)が、条約および選択議定書の精神にしたがってこれらの文書に基づく犯罪を防止しかつ当該犯罪からこれらの国々の子どもを保護する要件を、相当な注意をもって遵守するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、国外におけるすべてのスウェーデン企業の投資および活動を、同様に、適切な形で規制するよう勧告するものである。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 22.委員会は、以下の点との関連も含め、議定書上の犯罪を防止するための措置が不十分であることを懸念する。 (a) 犯罪者を対象とするケアおよび更生のためのサービスを利用できるのが収監された犯罪者のみであり、かつ、その結果、拘禁をともなわない経済的処罰の対象にしかされない大多数の犯罪者に対してそのような防止措置が適用されないこと。 (b) 学校カリキュラムでインターネット上の安全に関する訓練が義務化されていないこと。 (c) 有罪判決を受けた性犯罪者が、子どもとともに働くことを一貫して禁じられているわけではないこと。 (d) 脆弱な立場に置かれた、保護者のいない未成年の庇護希望者および非正規移民の子どもまたは在留資格証明書のない子どもが保護されていないこと。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 議定書上の犯罪を行なった加害者(収監刑の対象とされなかった者を含む)全員に対し、更生措置およびカウンセリングが提供されることを確保すること。 (b) 学校カリキュラムに、インターネットの安全な利用に関する義務的訓練を含めること。 (c) 有罪判決を受けたすべての性犯罪者が子どもとともに働くことを禁ずるための措置をとること。 (d) 子どもの養護を委託された者の管理を増強すること等の手段により、保護者のいない庇護希望者または移民の状況にある子どもを対象として十分な保護措置が提供されることを確保すること。 子どもセックス・ツーリズム 24.委員会は、子どもセックス・ツーリズムと闘うための締約国の取り組みの向上に留意する。しかしながら委員会は、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への、締約国における企業の署名率が低いままであることを懸念するものである。委員会はさらに、子どもセックス・ツーリズムならびに前掲行動規範および世界観光機関(UNWTO)の世界観光倫理規範に関する公衆の意識水準が低いことを懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムを防止しかつ根絶するため、効果的な規制の枠組みを定めかつ実施するとともに、あらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムの防止および根絶のための多国間、地域間および二国間の取り決めによって国際協力を強化するよう、奨励するものである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でUNWTOの世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促す。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 26.児童ポルノの多くの側面(このような資料の閲覧など)が犯罪とされていること、および、児童ポルノについての刑法上の規定における子どもの定義がより幅広いものとなっていることは歓迎しながらも、委員会は、締約国の刑法で選択議定書に掲げられたすべての犯罪が網羅されているわけではないことを、依然として懸念する。とくに、委員会は以下のことを深く懸念するものである。 (a) 子どもの性的虐待を描写した文字情報および音声が禁じられていないこと。 (b) 子どもの第二次性徴期の発達が終了しているとき、または子どもが未成年であることが写真および付帯状況から明らかでないときは、児童ポルノの描写、配布、購入、譲渡等が犯罪とされないこと。 (c) 児童ポルノ関連の犯罪が、スウェーデン刑法第6章の性犯罪ではなく同第16章の「公の秩序」犯罪と見なされていること。 (d) あらゆる種類のポルノ的画像が禁じられているにも関わらず、個人的閲覧用のクラフトスケールの制作およびその後の描画の所持については例外が認められていること。 (e) 子どものポルノ的描画の輸入および輸出が法律で明示的に禁じられていないこと。 (f) 処罰が犯罪の重大性に比例しておらず、しばしば罰金および短期の収監しか定められていないこと。 (g) 性犯罪の被害を受けた子どもに関わる事件で、とくに子どもを対象にしようとした加害者の故意が、裁判所が考慮する一貫した要素となっていないこと。 27.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条と全面的に一致するようにするとともに、刑法が実際に執行されること、および、不処罰を防止するために加害者を裁判にかけることを確保するよう勧告する。とくに、締約国は以下の行為を犯罪化するべきである。 (a) 売買春目的で子どもを提供し、入手し、周旋しまたは供給すること。 (b) 児童ポルノを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売しまたは所持すること。 (c) これらのいずれかの行為の未遂および共謀またはこれらのいずれかの行為への参加。 (d) これらのいずれかの行為を広告する資料の製造および配布。 裁判権および犯罪人引渡し 28.締約国の法律でそこに定められた犯罪についての域外裁判権が認められていることは歓迎しながらも、委員会は、未成年者の性的行為の購入および性的姿態をとらせる目的での子どもの搾取の犯罪について双方可罰性要件が残っていることを遺憾に思う。 29.委員会は、締約国が、国内法によって域外裁判権(選択議定書上のあらゆる犯罪に関する、双方可罰性の基準を課されない域外裁判権を含む)を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。 30.委員会は、議定書上の犯罪を行なった者の引渡しについては犯罪人引渡し協定が必要とされないことに留意する。しかしながら委員会は、このような犯罪人引渡しに制限が課されていること、とくに議定書上の犯罪の一部について双方可罰性要件が設けられていることを懸念するものである。委員会はさらに、1年以上の収監刑をともなう犯罪のすべてについて犯罪人引渡しが行なわれるわけではない可能性があること、および、締約国の国民はほぼ例外なく犯罪人引渡しの対象にできないことを、懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、議定書上の犯罪に関する犯罪人引渡しの制限、とくに双方可罰性要件および刑法上の最低刑要件を削除するよう勧告する。委員会はさらに、議定書第5条5項にしたがい、締約国が、犯罪人引渡しの請求を拒否した場合に当該事件を自国の権限ある機関に付託して訴追するために適切な措置をとるよう、勧告するものである。 法人の責任 32.委員会は、締約国が、条約およびその議定書に基づく犯罪に関する法人の責任の確立についてさらなる措置をとっていないこと、および、法人に対する制裁が依然として金銭的処罰に限定されていることに、懸念とともに留意する。 33.委員会は、締約国が、金銭的処罰に加え、これらの犯罪の再発を効果的に防止するための措置がとられることを確保するための法律および相応する刑事上、民事上または行政上の制裁が設けられることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、企業に対して以下のことを奨励するよう慫慂するものである。 (a) 子どもの商業的性的搾取に関する倫理方針を定めること。 (b) 供給業者との契約にそれぞれの条項を含めること。 VI.被害を受けた子どもの権利および利益の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 34.性的搾取の被害を受けた子どもを保護するための措置は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもの性的搾取の実効的訴追率が低く、この10年では事件の85~90%がまったく訴追に至っていないこと。 (b) 犯罪被害者ポータルサイトが十分に子どもにやさしいものではないこと。 (c) 在留許可の取得がしばしば認められないために、人身取引被害者の脆弱性が悪化させられていること。 (d) 被害者に対する出廷の強制を禁ずる規定が存在しないため、国連・国際組織犯罪防止条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)が遵守されていないこと。 35.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 性犯罪者をより組織的かつ効果的に訴追するための機構を設置すること。 (b) 犯罪被害者ポータルサイトを子どもにやさしくかつアクセスしやすい形で利用可能とすること。 (c) 人身取引によってスウェーデンに連れてこられた子どもが在留許可を受けられるための便宜を図ること。 (d) 立法上および手続上の規定がパレルモ議定書と全面的に一致することを確保すること。 被害者の回復および再統合 36.委員会は、性的搾取および売買春を目的とする人身取引の被害者のためのリハビリテーション・プログラムの開発がストックホルム市に委託されたことを歓迎する。委員会はさらに、ストックホルム市が、締約国の資金提供および委託を受けて安全な帰還プロジェクトも運営していることを歓迎するものである。しかしながら委員会は、外国人の子どもが締約国の子どもと同一の質的水準を有する援助および保護サービスを受けていないことを懸念する。委員会はさらに、リハビリテーション・プログラムおよび安全な帰還プロジェクトのいずれもがストックホルム地域に限定されていることを懸念するものである。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、性的搾取および売買春を目的とする人身取引の被害者のために計画されているリハビリテーション・プログラムを迅速に実施することにより、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(とくに外国出身の子ども)に対し、その全面的な社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のための援助を含む適切な援助が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 選択議定書第9条4項にしたがい、被害を受けたすべての子ども(締約国の国民または定住者ではない子どもを含む)が、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを保障するとともに、加害者から被害賠償を得られない事案のために被害者補償基金を設置すること。 (c) リハビリテーションおよび安全な帰還のためのプログラムを領域内の全域で利用可能とするための措置をとること。 ヘルプライン 38.児童ポルノ、性的目的の子どもの人身取引および子どもセックス・ツーリズムを通報するためのホットラインが設けられていることには留意しながらも、委員会は、このホットラインが締約国による資源面での十分な支援を享受していないこと、および、このホットラインに関する一般公衆の意識(子どもの間における意識も含む)が低いことを懸念する。さらに委員会は、行方不明の子どもに関する欧州共通ホットライン番号「116 000」が締約国でまだ実施されていないことを懸念するものである。 39.委員会は、締約国が、ホットラインに対し、その効率性、継続性および可視性(子どもの間におけるものおよび締約国の国民が領域外で行なった議定書上の犯罪の発生に関するものも含む)を確保するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、行方不明の子どもに関する欧州共通ホットライン番号「116 000」を領域内で迅速に運用するために必要な措置をとるよう、勧告するものである。 VII.国際的な援助および協力 40.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 VIII.国際的および地域的人権文書の批准 41.委員会は、締約国が署名しながらまた批准していない、関連する多数の国際的および地域的人権文書があることに留意する。これには、とくに、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ第34号条約(1996年)、子どもの権利の行使に関する欧州条約(1996年)、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2007年)、サイバー犯罪に関する欧州評議会条約(2001年)、および、コンピュータ・システムを通じて行なわれる人種主義的および排外主義的性質の行為の犯罪化に関するサイバー犯罪条約の追加議定書(2003年)が含まれる。 42.委員会は、締約国に対し、同国が署名したあらゆる関連の国際的および地域的人権文書を速やかに批准するよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、同国がまだ加盟していない国際人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討することも、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 43.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁および地方当局、司法府、ならびに、それぞれ県および地区のレベルに設けられた子どもの保護に関する委員会および小委員会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 44.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 45.選択議定書第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。/国連の正式文書に基づき、先行未編集版に基づく訳を修正(2012年2月26日)。旧パラ20および40が分割されたことによりパラグラフ総数が43から45になったが、「年齢に関する加害者の故意」が「とくに子どもを対象にしようとした加害者の故意」に修正された(パラ25(g))ほかは、基本的に技術的修正に留まる。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/139.html
総括所見:ウクライナ(OPAC・2011年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/UKR/CO/1(2011年4月11日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月28日に開かれた第1602回および第1603回会合(CRC/C/SR.1602 and 1603参照)においてウクライナの第1回報告書(CRC/C/OPAC/UKR/1)を検討し、2011年2月3日に開かれた第1611回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書(CRC/C/OPAC/UKR/1)および委員会の事前質問事項(CRC/C/OPAC/UKR/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するものの、締約国が提出した第1回報告書で、選択議定書に基づく第1回報告に関する改訂ガイドラインが遵守されていなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、第1回報告書でも事前質問事項に対する文書回答でも、締約国がその領域全体で選択議定書をどのように実施しているかに関する包括的情報が提供されなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年2月3日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回定期報告書について採択された委員会の総括所見(CRC/C/UKR/3-4)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.積極的側面 4.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった、国軍への志願入隊(契約制)に関する最低年齢は19歳である旨の宣言に、積極的側面として留意する。 5.委員会は、締約国が、軍隊または武装集団による不法な徴募または使用から子どもを保護するためのパリ・コミットメントならびに軍隊または武装集団に関係した子どもに関するパリ原則および指針を2007年に支持したことを、歓迎する。 6.委員会は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器ならびにその部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書が2004年5月に批准されたことを歓迎する。 II.実施に関する一般点的措置 訳注/章番号の誤りは原文ママ(以下同) 法的地位 7.憲法の規定に基づき、選択議定書は国内法としての地位を有している旨の情報には留意しながらも、委員会は、選択議定書がその領域全体で直接適用可能であり、かつ国内裁判所で直接援用可能か否かについて、締約国が明確にしなかったことを遺憾に思う。 8.選択議定書上の犯罪の防止をさらに強化する目的で、委員会は、締約国が、国内法制度における選択議定書の直接適用可能性を確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、選択議定書を国内法に全面的に編入することを検討するよう、勧告するものである。 普及および意識啓発 9.教員、保健ケアワーカーおよび子どもの問題に関する業務を行なっている公務員を対象とした教育研修活動の際、条約および選択議定書の規定についての議論が行なわれている旨の情報には留意しながらも、委員会は、選択議定書の原則および規定に関する一般公衆の意識が低いままであることを依然として懸念する。 10.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、メディアの関与の拡大ならびに学校における意識啓発のためのプログラムおよび活動等も通じ、選択議定書の原則および規定を公衆一般およびとくに子どもに対して広く知らせるための努力を増強させるよう、勧告する。 研修 11.委員会は、国際平和維持活動に参加するウクライナ軍要員を対象として武力紛争における子どもに関する義務的研修(条約および選択議定書に関する内容も含む)が行なわれていることを歓迎するとともに、子どもの保護に関する活動指針によってこのような研修をさらに強化できることに留意する。にもかかわらず、委員会は、軍隊の構成員、司法機関、教員、ウクライナ国境警備部職員、ウクライナ国家民族・宗教委員会の職員、家族支援および社会的・心理的リハビリテーションセンターの職員およびウクライナ特別輸出公社(UkrSpetsExport)社員を対象とする、選択議定書に関する研修についての情報がないことを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、締約国の軍隊の構成員ならびに子どもとともに働く関連の専門家集団(とくに教員、司法関係者、国境管理および出入国管理の職員、ウクライナ国家民族・宗教委員会の職員、家族支援および社会的・心理的リハビリテーションセンターの職員ならびにウクライナ特別輸出公社(UkrSpetsExport)社員)を対象とする、選択議定書に関する研修プログラムを発展させるよう、勧告する。委員会はさらに、国際平和維持活動に参加するウクライナ軍要員を対象とする、武力紛争の状況下における子どもの保護に関する活動指針を策定するよう、勧告するものである。 データ 13.委員会は、武力紛争に関与した子どもに関わる諸側面および選択議定書上の犯罪に関する体系的なデータ収集(15~18歳の子どもの庇護希望者および難民に関する公式統計を含む)が行なわれていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の過半数が、子どもが武力紛争に関与していた国またはそのことが知られている国の出身であることを懸念するものである。 14.委員会は、徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある子どもの庇護希望者および難民についてのデータが利用可能とされることを確保するため、すべての子どもの庇護希望者および難民についてのデータを体系的に収集するよう、勧告する。 II.防止 軍学校 15.委員会は、締約国において軍事中等教育の長い伝統があること、および、このような教育が、脆弱な立場に置かれた集団の子どもの社会的保護の機能を果たしてきたことに留意する。委員会はさらに、軍事(一般徴兵軍務)法(第20条)により、高等士官学校または軍事学部のある高等教育機関への入学に関する最低年齢が17歳であることに留意する。これとの関連で、委員会は、現在のところ、この年齢に達しないままそのような学校で学んでいる子どもはいない旨の情報に、満足感とともに留意するものである。しかしながら委員会は、少なくともひとつの中等学校において、15歳以降の子ども、より具体的には両親を亡くした子どもおよび軍隊要員の子どもを対象とする2年間の集中的軍隊員養成教育が行なわれていた旨の報告があることを、懸念する。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 17歳未満のいかなる子どもも軍事中等学校に入学しないことを厳格に確保するとともに、両親を亡くした子どもおよび軍事中等学校に通学している可能性がある17歳未満の子どもに対し、一般中等学校への統合の機会を提供すること。 (b) 教育の目的に関する一般的意見1号(2001年、CRC/GC/2001/1)を正当に考慮しながら、軍事学校に通学しているすべての子どもが条約、とくに第28条および第29条に一致したやり方で教育を受けることを確保すること。 平和教育 17.委員会は、事前質問事項に対する文書回答で提供された、人権尊重の醸成は高等軍事教育機関の目的のひとつである旨の情報を歓迎する。さらに、条約および選択議定書が第5~第9学年で学習されており、かつ高等軍事教育機関における国際人道法に関する試験で出題されていることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、締約国の学校カリキュラムに平和教育を体系的に含めるためのプログラムが存在しないことを、懸念するものである。 18.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照し、委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪にとくに言及しながら、学校カリキュラムおよび教員の養成研修課程に平和教育を含めるための努力を行なうよう、勧告する。 III.禁止および関連の事項 現行刑事法令 19.委員会は、子ども保護法第30条に基づき、軍事作戦または武力紛争への子どもの参加が禁じられていることを歓迎する。さらに、2006年の刑法改正により、人身取引の対象とされた子どもを武力紛争で使用することが犯罪とされ(刑法第149条)、かつ最長12年の収監刑が定められたことを歓迎しながらも、委員会は、18歳未満の者の徴募および武力紛争における使用が国内法で明示的に禁止も犯罪化もされていないことを、遺憾に思うものである。 20.委員会は、締約国が、子どもを徴募しかつ敵対行為に関与させることに関わる選択議定書の規定の違反が刑法で明示的に禁止されかつ犯罪とされることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、軍のすべての規則、教範、標準作戦手続その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保するよう、勧告するものである。 裁判権 21.刑法第8条にしたがい、外国人は重大犯罪および国際条約に定められた犯罪について責任を問われうることには留意しながらも、委員会は、刑法で、選択議定書上の犯罪に関する域外裁判権が具体的に認められていないことを懸念する。さらに、締約国が国際刑事裁判所ローマ規程に署名したことには留意しながらも、委員会は、批准のためには憲法改正が必要であることに留意するものである。 22.委員会は、締約国が、国内法により、敵対行為における子どもの強制的徴集および募兵に関わる戦争犯罪について域外裁判権を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、憲法(第142条)を改正し、かつその後に国際刑事裁判所ローマ規程を批准するための努力を増強するよう、促すものである。 IV.保護、回復および再統合 身体的および心理的回復のための援助 23.委員会は、家族支援および社会的・心理的リハビリテーションセンターにおいて、武力紛争に関与した子どもに対する援助が提供されていること(武力紛争地帯に住むイラクの子どもへの健康面および社会的リハビリテーションのための援助(2004年)ならびに国外で敵対行為に参加した子どもの難民に対する心理的および社会的援助を含む)を、歓迎する。にもかかわらず、委員会は、以下のことについて懸念を表明するものである。 (a) 国外で徴募されまたは敵対行為において使用された子どもの難民または庇護希望者に対する心理的および社会的援助を義務的なものとする、国内法の規定が存在しないこと。 (b) 子どもの難民または庇護希望者が国外で徴募されもしくは敵対行為において使用されたまたはその可能性があるかどうかを明らかにする機構が設けられていないこと。 (c) 締約国で、子どもの難民または庇護希望者を含む子どもの年齢を判定する標準的手法が確立されていないこと。 (d) 庇護希望者および難民に対する無償の通訳サービスが整備されていないこと。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 徴募されもしくは敵対行為において使用されたまたはその可能性があるすべての子ども(子どもの難民および庇護希望者を含む)に対する身体的、心理的および社会的援助の提供を継続しかつ強化するとともに、当該援助が法律による規制を受けることを確保すること。 (b) 徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある子どもを特定するための機構(難民認定手続におけるものを含む)を設置すること。 (c) 難民認定の事由に子どもの徴募および武力紛争における子どもの使用を含めることを検討すること。 (d) 子どもの難民および庇護希望者を含む子どもの年齢を判定するための、標準的な手続および手法を導入すること。 (e) 難民法の改正により、無償の通訳および法的援助に対する、あらゆる年齢の庇護希望者および難民の権利に関する規定を設けること。 V.国際的な援助および協力 武器輸出および軍事援助 25.委員会は、ソビエト連邦の解体後に締約国が相当量の小型武器および軽兵器(SALW)を継承したこと、および、締約国が当該兵器の輸出について定期的に報告する努力を行なっていることに、留意する。にもかかわらず、委員会は、子どもが徴募されまたは敵対行為において使用された国にSALWが輸出されていること、および、兵器によって子どもが脅かされる可能性がある国にその輸出が行なわれていることを、深く懸念するものである。さらに委員会は、子どもが武力紛争に関与している国または関与した可能性がある国への小型武器および軽兵器の販売および輸出をとくに禁じた法律が存在しないことを、懸念する。 26.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 兵器の輸出(小型武器および軽兵器の輸出を含む)に関する情報の定期的報告および公表のための努力を継続しかつ強化するとともに、当該輸出物資の最終使用者に関する情報を公的報告書に記載するための措置をとること。 (b) 国内法で、子どもが武力紛争に関与していたことがわかっている国または現に関与している国への小型武器および軽兵器の販売および輸出が明示的に禁じられることを確保すること。 (c) 以下の目的のために地域機関および国際機関の援助を求めることを検討すること。(i) 武器輸出に関する関連の地域的行動規範の基準を適用すること。 (ii) ウクライナの兵器輸出が子どもに及ぼす影響に関する包括的分析を行なうこと。 フォローアップおよび普及 27.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を、国防省、閣僚およびヴェルホーヴナ・ラーダ(議会)に送付することにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 28.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会の総括所見を、公衆一般、メディアおよびとくに子どもたちが広く入手できるようにすることを勧告する。 次回報告書 29.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約に基づく次回定期報告書報告書(提出期限2018年9月26日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。