約 1,857,870 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/267.html
総括所見:スイス(第2~4回・2015年) 第1回(2002年)OPAC(2006年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/CHE/CO/2-4(2015年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2015年1月21日および22日に開かれた第1959回および第1961回会合(CRC/C/SR.1959 and 1961参照)においてスイスの第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/CHE/2-4)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/CHE/2-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/CHE/Q/2.4/Add.1)の提出を歓迎する。ただし委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、とくに以下の条約について批准または加入が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。 子供の売買、児童買春および児童ポルノに関する子供の権利条約の選択議定書(2006年9月) 障害のある人の権利に関する条約(2014年4月) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2009年9月) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2008年9月) 1952年の母性保護条約(改正)の改正に関する国際労働機関第183号条約(2000年)(2014年6月) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2014年3月) 4.委員会は、とくに以下の立法措置が施行されたことを歓迎する。 民法改正(2014年7月1日(親の権威)および2013年1月1日(成人保護法、人事法および子ども法)) 庇護法改正(2014年7月1日) 刑法改正(2014年7月1日) 里子の措置に関するオルドナンス(2013年1月1日) 連邦子ども・若者振興法(2013年1月1日) スイス刑事訴訟法(2011年1月1日) 少年刑事訴訟法(2011年1月1日) 改正連邦外国人法(2011年1月1日) 国際的な子の奪取と子どもおよび成人の保護に関する諸ハーグ条約に関する連邦法(2009年7月1日) 改正連邦被害者支援法(2009年1月1日) 子どもおよび若者のための保護措置ならびに子どもの権利の強化に関するオルドナンス(2010年8月1日) 少年刑法(2007年1月1日) 改正連邦職業専門教育訓練法(2004年1月1日) 連邦障害者差別解消法(2004年1月1日) 5.委員会はまた、とくに以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 武力紛争において軍隊または武装集団と関係している子どもを保護するための連邦外務省行動計画(2014~2016年) 人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年) HIVおよびその他の性感染症に関する国家計画(2011~2017年) 包括的スイス反貧困戦略(2010年採択)ならびに貧困防止および貧困との闘いに関する国家計画(2014~2018年、2013年採択) スイス人権専門センター(2010年設置) スイス子ども・若者政策戦略(2008年採択) 連邦障害者平等局(2004年設置) III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 留保 6.締約国が条約第5条、第7条および第40条(b)(v)(vi)に付した留保を撤回したことは歓迎しながらも、委員会は、締約国が、第10条第1項、第37条(c)および第40条第2項(b)(ii)~(iii)に付した留保をいまなお維持していることを遺憾に思う。 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ7)をあらためて繰り返すとともに、1993年6月25日にウィーンの世界人権会議で採択されたウィーン宣言および行動計画に照らして、締約国に対し、条約に付した留保でいまなお残っているものの撤回を検討するよう促す。 立法 8.条約と国内法とのさらなる一致を確保するために連邦およびカントンのレベルで子どもに関連するさまざまな立法措置がとられたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの努力が条約のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。 9.委員会は、締約国が、連邦法およびカントン法を条約と包括的に調和させるための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、締約国が2008年に「スイス子ども・若者政策戦略」を発表し、それが連邦子ども・若者振興法の採択(2011年)につながったこと、および、締約国が最近、子ども・若者政策の状況に関する報告書をまとめたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、同戦略が条約のすべての分野を網羅しているわけではないことを依然として懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約の原則および規定の全般的実現のための国家的政策および戦略を、子どもおよび市民社会と協議しながら策定しかつ実施し、もってカントンの計画および戦略の枠組みを示すよう勧告する。委員会はまた、締約国が、その包括的な政策および戦略ならびにカントンのレベルにおける関連の計画または戦略の実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分することも勧告するものである。 調整 12.委員会は、締約国の連邦制度によって生じる課題に留意するとともに、全般的な調整が行なわれていないことにより、締約国の諸カントン全体を通じて条約の実施に相当の格差が生じていることを懸念する。 13.委員会は、締約国が、自国の領域全体で平等な保護水準が達成されるようにする目的で、諸部門全体でならびに連邦、カントンおよびコミューンの各レベルで子どものための行動を効果的に調整する全面的な能力および権限ならびに人的資源、技術的資源および財源を与えられた、条約ならびに包括的な政策および戦略を実施するための調整機関を設置するよう勧告する。委員会はまた、市民社会および子どもに対して当該調整機関の一翼を担うよう呼びかけることも勧告するものである。 資源配分 14.締約国が世界でもっとも経済的に豊かな国のひとつであり、かつ相当多くの資源を子ども関連プログラムに投資していることを念頭に置きつつ、委員会は、締約国が、連邦予算およびカントン予算における予算の計画および配分について子どもに特化したアプローチを活用していないことから、子どもに対する投資の効果および条約の全般的適用状況を予算の観点から明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが事実上できなくなっていることに留意する。 15.委員会は、締約国が、連邦およびカントンのレベルにおける子どものニーズを十分に考慮に入れ、かつ、関連の部門および機関に対する子ども向けの明確な配分額、具体的指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、条約の実施に配分される資源の分配の有効性、十分性および公平性が効果的に監視および評価されることを確保するよう勧告するものである。 データ収集 16.さまざまなデータ収集システムが存在することには留意しながらも、委員会は、締約国に包括的なデータ収集システムが存在せず、かつ、条約の十分な分野、とくに被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもの集団に関する分野に関して信頼できる細分化されたデータが入手できないことを、遺憾に思う。 17.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ18)にしたがい、委員会は、締約国が、自国のデータ収集システムを迅速に改善するよう強く勧告する。データは、条約のすべての分野を対象とするべきであり、かつ、すべての子ども、とりわけ被害を受けやすい状況に置かれた子どもの状況の分析を容易にするため、とくに年齢、性別、障害、地理的所在、民族的および国民的出身ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。さらに委員会は、当該データおよび指標が、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。 独立の監視 18.スイス人権専門センターが設置されたことには留意しながらも、委員会は、あらゆるレベルで条約の実施を監視する、子どもの権利侵害の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた中央独立機関が引き続き存在していないことを依然として懸念する。 19.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ16)にしたがい、委員会は、締約国に対し、人権一般を監視するための独立の機構および子どもの権利を監視するための具体的機構(子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応すること、被害者のプライバシーおよび保護を確保することならびに被害者のためのモニタリングおよびフォローアップ活動を行なうことのできるもの)を迅速に設置するための措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、パリ原則との全面的一致を確保すべく、そのような監視機構の独立性(財政、権限および免責特権に関するものを含む)を確保するよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 20.ロマンシュ語への条約の翻訳および「財団21:持続可能な開発のための教育」の設置など、情報の普及および研修の実施のために締約国が行なっているさまざまな努力には留意しながらも、委員会は、子ども、親および公衆一般の間で条約があまり周知されていないことを懸念する。委員会はまた、子どもとともにまたは子どものために働く専門家を対象とした子どもの権利に関する研修活動が体系的でも包括的でもないことも懸念するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもにやさしい方法による条約についての意識啓発にメディアがいっそう関与するよう奨励すること、公衆向けの積極的広報活動への子どもの積極的関与を促進することおよび親をとくに対象とした措置を確保すること等の手段により、意識啓発プログラムを引き続き強化すること。 (b) 裁判官、弁護士、法執行官、公務員、教員、保健要員(心理学者を含む)およびソーシャルワーカーなど、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象とした、子どもの権利に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 子どもの権利と企業セクター 22.委員会は、多国籍企業の活動を規制するためにとられた措置および構想されている措置(スイス・ラギー戦略の策定を含む)について締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、任意の自主規制に頼るばかりであり、締約国の管轄または管理の下で行動する企業の、締約国の領域の外で展開される活動において子どもの権利を尊重する義務を明示的に定めた規制の枠組みを用意していないことを懸念するものである。 23.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) スイス・ラギー戦略を速やかに採択すること等を通じ、締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準、労働基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立するとともに、その効果的実施を確保すること。 (b) 締約国の領域で操業しまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社が、子どもの権利および人権一般のいかなる侵害についても法的に責任を問われることを確保すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.締約国がとった差別禁止措置、とくに移住者の統合の促進を目的とした措置は歓迎しながらも、委員会は、周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子ども(子どもの移住者、難民および庇護希望者、障害のある子どもならびに在留資格のない子どもを含む)に対する差別が引き続き蔓延していることを依然として懸念する。さらに委員会は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの人々に対するヘイトスピーチの発生およびそれがこれらの集団に属する子どもに及ぼす影響、ならびに、これらの人々が人種差別に関する刑法第261条bisの保護を享受していない事実について、懸念を覚えるものである。 25.委員会は、締約国が、周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子ども(とくに子どもの移住者、難民および庇護希望者、障害のある子どもならびに在留資格のない子ども)に対する差別を解消するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、寛容および相互尊重の文化を醸成するための努力を強化するとともに、性的指向およびジェンダーアイデンティティを理由とする差別を禁止する包括的な法律を採択し、かつ刑法第261条bisにこれらの自由を含めることも、勧告するものである。 子どもの最善の利益 26.子どもの「ウェルビーイング」が締約国の法体系における指導原理のひとつであることには留意しながらも、委員会は、子どもの「ウェルビーイング」という語はその意味および適用において条約に掲げられた子どもの最善の利益とは異なるという見解に立つ。したがって委員会は、子どもの最善の利益(l'interet superieur de l'enfant)が連邦およびカントンのすべての関連法に明示的に編入されておらず、かつ、子どもに関連するすべての行政手続および司法手続または政策プログラムにおいて体系的に適用されているわけでもないことを懸念するものである。 27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての委員会の一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを締約国が確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するよう、奨励されるところである。このような手続および指針は、裁判所に対して、かつ行政機関、立法機関、公立および私立の社会福祉施設ならびに公衆一般に対して、普及されるべきである。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、家事手続、保護事件、少年司法その他の分野で子どもの意見の尊重を確保し、かつ、自治体レベルの政治的計画策定および意思決定手続に子どもの関与を得るために締約国が行なっている継続的努力に留意する。しかしながら委員会は、実際には子どもに影響を与えるすべての事柄について子どもの意見の尊重が制度的に確保されかつ実施されているわけではないこと、および、実施についてカントン間の格差が存在することを懸念するものである。委員会はまた、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象としたこの点に関する研修が不十分であることも懸念する。 29.意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化するための措置をとるよう勧告する。この目的のため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 意見を聴かれる子どもの権利が、子どもに影響を与えるすべての司法手続および行政手続において適用され、かつその意見が正当に重視されることを確保するための努力を強化すること。 (b) 周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子どもに特段の注意を払いながら、子どもが、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつ、学校その他の教育施設および家庭ならびに政治的計画策定および意思決定手続においてこれらの意見を正当に重視される権利を有することを確保するための努力を強化すること。 (c) 司法、福祉その他の部門において子どもに対応する専門家が、子どもの意味のある参加を確保する方法についての適切な研修を体系的に受けることを確保すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 出生登録/名前および国籍 30.すべての子どもが登録されることを確保するために締約国がとったさまざまな法律上および政策上の措置は歓迎しながらも、委員会は、外国籍の子どもの登録に遅延があるという報告について懸念を覚える。さらに委員会は、締約国で出生した子どもであって国籍が付与されなければ無国籍となる者がスイス国籍を取得する権利を保障されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、子どもの親の法的地位および(または)出身にかかわらず、すべての子どもが可能なかぎり早期に出生登録を利用できることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、自国の領域で出生したすべての子どもについて、国籍が付与されなければ無国籍となる場合にその親の法的地位にかかわらずスイス国籍を取得することを確保するとともに、無国籍の削減に関する1961年の条約、国籍に関する1997年の欧州条約および国家承継に関連する無国籍の回避に関する2009年の欧州評議会条約を批准するよう、勧告する。 親を知り、かつ親によって養育される権利 32.委員会は、養子縁組に関するスイス民法第268条(c)および連邦生殖補助医療法第27条によれば、子どもに対してその生物学的親の身元について告知を行なえるのは当該子どもが「正当な利益」を有している場合に限られていることに留意する。委員会は、「正当な利益」の概念が子どもの最善の利益と常に一致するかどうか、依然として懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、養子または生殖補助医療によって生まれた子どもが自己の出自を知る権利の尊重を可能なかぎり確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はとくに、締約国が、自己の生物学的出自に関する情報を求める子どもの権利の前提条件としての正当な利益への言及の削除を検討するよう勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 34.委員会は、締約国において、匿名による子どもの遺棄を認める赤ちゃんボックスが規制されておらず、かつその数が増えていること(これはとくに条約第6~9条および第19条の違反である)を深く懸念する。 35.委員会は、締約国に対し、赤ちゃんボックスの使用を禁止し、すでに存在する代替手段を強化しかつ促進し、かつ、最後の手段として病院における秘密出産の可能性を導入することを検討するよう、促す。 適切な情報へのアクセス 36.委員会は、デジタルメディアおよび情報通信技術(ICT)が子どもの安全に及ぼすリスクに対応するために締約国が行なっている努力(若者のエンパワーメントおよび電子メディア関連のリスクからの若者の保護を目的とする5か年プログラムを含む)に留意する。しかしながら委員会は、これらのリスクからの子どもの保護にいまなお空白があることを懸念するものである。 37.委員会は、締約国が、「若者と暴力:家庭、学校、社会空間およびメディアにおける効果的防止」に関する連邦審議会報告書で勧告されている措置をフォローアップするとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもがデジタルメディアおよびICTにアクセスでき、かつオンライン環境において条約およびその選択議定書の全面的保護を享受することを確保するため、人権を基盤とする法律および政策を採択しかつ実施すること。 (b) ICTその他の関連産業との協力を引き続き奨励するとともに、任意の、自主規制に基づく、専門家としての倫理的な行動指針および行動基準ならびにその他の取り組み(オンラインの安全を促進する、子どもがアクセスできる技術的解決策など)の発展を促進すること。 (c) デジタルメディアおよびICTの利用に関わる機会およびリスクについての公衆一般ならびにとくに親および子どもの感受性を強化するための意識啓発、広報および教育プログラムを引き続き強化すること。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 38.暴行からの子どもの保護を強化する刑法および民法の改正があったことには留意しながらも、委員会は、体罰が、社会によって一般的に受け入れられている水準を超えない場合にはいまなお身体的暴力とみなされず、かつあらゆる場面で明示的に禁止されているわけではないことを遺憾に思う。 39.委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、あらゆる場面におけるあらゆる体罰の実行を明示的に禁止し、かつ、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進するための努力を強化するよう、促す。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 40.委員会は、子どもに対する暴力に対応するために締約国が進めているさまざまな取り組み(子どもおよび若者のための保護措置ならびに子どもの権利の強化に関するオルドナンスの採択、ならびに、成人保護法、人事法および子ども法に関連する民法改正を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、不当な取扱い、虐待およびネグレクト、性暴力ならびに家族間暴力に関する包括的なデータおよび研究が存在せず、国家的な子ども保護戦略が策定されておらず、かつ、カントンで実施されているさまざまなプログラム間の調整が存在しないことを依然として懸念するものである。 41.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する暴力のあらゆる事案(不当な取扱い、子ども虐待およびネグレクトならびに家族間暴力を含む)に関する全国的データベースを設置すること。 (b) 子どもに対する暴力の蔓延度および性質を評価するための研究をさらに実施するとともに、子どもの不当な取扱い、虐待およびネグレクトならびに子どもに対する家族間暴力の事案を防止しかつこれに介入するための包括的戦略(被害者の回復および社会的再統合のためのサービスの提供を含む)を策定すること。 (c) 子どもに対する暴力に対処するために現在設けられている制度の活動を評価するとともに、その結果およびとられた措置について次回の定期報告書で報告すること。 (d) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための全国的調整を強化すること。 (e) 子どもに対する暴力のジェンダーの側面に特段の注意を払い、かつこれに対処すること。 有害慣行 42.性器切除を禁止する新たな刑法規定が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、以下のことを深く懸念する。 (a) 性器切除の影響または脅威を受けている女子が締約国に相当数住んでいること。 (b) インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく本人の同意を得ることなく、医学的に不必要な外科的その他の処置(これにはしばしば不可逆的な結果がともない、かつ深刻な身体的および心理的苦痛が引き起こされる可能性もある)が行なわれており、かつ、このような事案について救済および賠償が行なわれていないこと。 43.委員会は、有害慣行に関する合同勧告/一般的意見(女性差別撤廃委員会31号および子どもの権利員会18号)に対して締約国の注意を喚起するともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女性性器切除の問題に対応するための防止措置および保護措置(関連の専門家の研修、意識啓発プログラムおよびこれらの行為の加害者の訴追を含む)を継続しかつ強化すること。 (b) インターセックスに関する倫理的問題について国家生体医療倫理諮問委員会が行なった勧告にしたがって、いかなる者も乳幼児期に不必要な医療処置または外科的処置の対象とされないことを確保し、当該の子どもに身体的不可侵性、自律性および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項) 家庭環境 44.連邦家庭外保育財政援助法の採択など、親としての義務の履行に関して親を支援するために締約国がとった措置は歓迎しながらも、委員会は、さまざまな形態の家族支援(保育サービスを含む)が不十分な形でしか利用できないことを依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、領域全体で子どものための質の高いケアが十分に利用できることを確保する等の手段により、家族を支援するための措置を強化するよう勧告する。 46.委員会は、締約国の法律において代理母が禁止されており、かつ国外における代理母出産の手配を抑制することが目指されていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、養子縁組の可能性を評価するための1年間の期間中の子どもの法的地位が不安定であることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 評価手続を迅速化するとともに、子どもが、締約国への到着時から正式な養子縁組までの待機期間中に無国籍とならないことまたは差別されないことを確保すること。 (b) 養子縁組に関する決定において子どもの最善の利益が思考の考慮事項とされることを確保すること。 家庭環境を奪われた子ども 48.里子の措置に関するオルドナンスの改正は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 里親養護または施設養護に措置された子どもの状況に関する信頼できるデータおよび情報が存在しないこと。 (b) 子どもの措置の選択、期間および再審査に関する基準ならびに種々の形態の代替的養護の質(里親家族の支援、研修および監視ならびに養護基準の実施を含む)について、カントン間で大きな格差が存在すること。 (c) カントンによっては里親家族の数が不十分であること。 (d) 3歳未満の子どもについては施設養護しか利用可能とされていないこと。 (e) 里親家族または施設に措置された子どもが家庭に復帰する際、生物学上の親に対する支援が限られていること。 49.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる代替的養護環境にある子どもについての情報および細分化されたデータを収集しかつ体系的に分析するための機構を設置すること。 (b) 生物学上の家族と接触する子どもの権利を引き続き尊重しつつ、必要であれば他のカントンの里親家族に子どもを措置することを可能とするため、カントン間の協力を確保すること。 (c) 子どもが代替的養護に措置されるべきか否か判断するための、子どもの最善の利益に基づいた十分な保障措置および明確な基準が自国の領域全体で適用されることを確保すること。 (d) 代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分され、かつ、里親家族に対して子育てについての体系的な研修および支援が実施されることを確保する等の手段により、締約国全域で代替的養護環境における質の高い基準を定め、かつ効果的に執行すること。 (e) 里親養護および施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを確保するとともに、子どもの不当な取扱いについての通報、監視および救済のためのアクセスしやすい回路を設ける等の手段により、措置先における養護の質を監視すること。 (f) 里親家族の奨励および募集を強化すること。 (g) 幼い子ども(とくに3歳未満の子ども)の代替的養護が家族を基盤とする環境で行なわれることを確保すること。 (h) 代替的養護環境に措置された子どもが家庭に復帰する際の親に対する支援を強化すること。 養子縁組 50.養子縁組法の改正は歓迎しながらも、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の締約国ではない出身国が関与する国際養子縁組が相当数にのぼること、および、これらの国からの養子縁組に関するデータがないことを懸念する。委員会はまた、ハーグ条約の締約国ではない国出身の子どもに関わる養子縁組手続(養親となろうとする者の評価および養子縁組についての決定を含む)において子どもの最善の利益の至高性が常に確保されているわけではないことも、懸念するものである。委員会はさらに、養子縁組手続が終結するまでの1年間、スイス人の両親によって国外から養子とされた子どもの法的地位が不確実であることを懸念する。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内養子縁組および国際養子縁組に関する統計データ(年齢、性別および国民的出身ごとに細分化されたもの)および関連の情報を体系的かつ継続的に収集すること。 (b) 国際養子縁組において子どもの最善の利益の至高性が厳格に遵守されること、および、たとえ相手国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の締約国ではない場合であっても同条約に定められたすべての保障が満たされることを確保すること。 (c) 評価手続を迅速化するとともに、国外から養子とされる子どもが、締約国への到着時から正式な養子縁組までの待機期間中に無国籍とならないことまたは差別されないことを確保すること。 親が収監されている子ども 52.収監された母親とその子どもが一緒に収容される棟がチューリッヒ州に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、親が収監されている子どもの人数および状況に関するデータ、または、子どもと収監されている親との継続的関係が十分に支援されているか否かについての情報がないことを懸念する。 53.親が収監されている子どもの権利に関する一般的討議(2011年)の際の委員会の勧告を参照しつつ、委員会は、締約国が、条約第9条にしたがい、定期的な面会ならびに十分なサービスおよび適切な支援の提供等を通じて子どもと親が個人的関係を保てることを確保する目的で、締約国において親が刑務所にいる子どもの状況に関するデータ収集および研究を行なうとともに、行なわれるすべての決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきことを、勧告する。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 54.委員会は、連邦障害者差別解消法が施行されたことおよび特別学校分野におけるカントン間協力協定が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子ども(自閉症スペクトラム障害のある子どもを含む)についての包括的データが存在しないこと。 (b) すべての州において、普通教育へのこれらの子どものインクルージョンが不十分であり、かつ、インクルーシブ教育制度が実際に十分機能することを確保するために配分される人的資源および財源が不十分であること。 (c) 障害のある子どもにとって乳幼児期の十分な教育およびケアならびにインクルーシブな職業訓練の機会が存在しないこと。 (d) とくにジュネーブ州において、自閉症スペクトラム障害のある子どもについて、その社会生活の多くの側面で差別および分離が行なわれていること。これには、乳幼児期における自閉症スペクトラムの発見が不十分であること、集中的早期発達プログラムが存在しないこと、とくに普通学校でこれらの子どもに専門的支援を提供する有資格の専門家が存在しないために普通教育にアクセスできないこと、および、自閉症スペクトラム障害のある子どもに対応する専門家の訓練が不十分であることが含まれる。 (e) とくにジュネーブ州において、自閉症スペクトラム障害のある子どもが、不当な取扱いに相当する「パッキング」法(子どもを濡れた冷たいシーツでくるむもの)のような不適切な取扱いの対象にされているという報告があること。 (f) 障害のある子どもが精神病棟に措置されることを防止し、かつ、これらの子どもが親の面会を受ける権利を恣意的に奪われないことを確保するための措置に関する情報がないこと。 55.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるとともに、具体的には以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のあるすべての子どもの状況について、とくに年齢、性別、障害の態様、民族的および国民的出身、地理的所在ならびに社会経済的背景ごとに細分化されたデータの収集および分析を行なうこと。 (b) 必要な資源を配分すること、専門家の十分な訓練を行なうこと、および、いまなお分離アプローチをとっているカントンに明確な指針を示すこと等の手段により、全国規模のインクルーシブ教育を差別なく確保するための努力を強化すること。 (c) 統合ではなくインクルージョンを促進すること。 (d) 障害のある子どもが、すべてのカントンで乳幼児期の教育およびケア、早期発達プログラムならびにインクルーシブな職業訓練の機会にアクセスできることを確保すること。 (e) すべてのカントンにおいて自閉症スペクトラム障害のある子どもの特有のニーズに対応するとともに、これらの子どもが社会生活のすべての分野(レクリエーション活動および文化的活動を含む)に全面的に統合されることを確保し、これらの子どものニーズに合わせたインクルーシブ教育が特別な学校教育および保育よりも優先されることを確保し、早期発見のための機構を設置し、専門家を対象として十分な研修を実施し、かつ、これらの子どもが、科学的知識に基づいた早期発達プログラムから利益を得られることを確保すること。 (f) 子どもの「パッキング」を法律で禁止するとともに、自閉症スペクトラム障害のある子どもが尊厳および敬意をもって扱われ、かつ効果的な保護から利益を得られることを確保するために必要な措置をとること。 (g) 障害のある子どもが精神病棟に措置されることを防止し、かつ、これらの子どもが親の面会を受ける権利を恣意的に奪われないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 健康および保健サービス 56.低所得または中所得の家庭について子どもの健康保険料が少なくとも50%減額されたことは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 小児ケアの集中化が進んでいること、および、小児科医の人数が、増えているとはいえ、十分ではないこと。 (b) 太り過ぎの子どもおよび子どもの肥満の問題が増大しており、かつ、脂肪分、糖分および塩分の多い食品のテレビ広告が過度に流されていること。 57.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが領域全体で質の高い小児科病棟治療および家庭小児科医にアクセスできることを確保すること。 (b) 太り過ぎの子どもおよび肥満に対応するための措置を強化し、青少年の間で健康的なライフスタイル(運動を含む)を促進し、かつ、脂肪分、糖分および塩分の多い食品との関連で子どもに対する食品広告の圧力を低減させるために必要な措置をとること。 母乳育児 58.委員会は、締約国の赤ちゃんの大多数が生後数か月間は母乳で育てられていること、および、授乳休憩時の報酬に関する新たな規定が採択されたことに、積極的措置として留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 生後6か月までの赤ちゃんの完全母乳育児率が低いこと。 (b) 完全母乳育児に関する保健専門家を対象とした研修が不十分であること。 (c) 締約国の病院の55%しか赤ちゃんにやさしい病院ではないこと。 (d) 乳幼児への栄養補給または母乳育児に関する国家的戦略が定められていないこと。 (e) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の規定にうち国内法で全面的に実施されているものがわずかに過ぎず、かつ、母乳代替品の販売促進がもっぱら自主的行動規範に基づいて行なわれていること。 (f) 母乳育児に関する国の勧告が世界保健機関(WHO)による関連の勧告を反映していないこと。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 母乳育児の重要性および人工栄養のリスクに関する資料にアクセスできるようにすることおよび意識啓発を行なうことにより、完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化すること。 (b) 完全母乳育児の重要性に関する保健専門家を対象とした研修を再検討し、かつ強化すること。 (c) 赤ちゃんにやさしいと認証された病院の数をさらに増やすこと。 (d) 乳幼児への栄養補給慣行に関する包括的な国家的戦略を策定すること。 (e) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が厳格に執行されることを確保すること。 (f) 母乳育児に関する国の勧告がWHOによる勧告に一致することを確保すること。 (g) 出産休暇を少なくとも6か月まで延長することを検討すること。 精神保健 60.委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)または注意欠陥障害(ADD)という診断が過度に行なわれており、かつ、それにともなって、子どもへの精神刺激薬(とくにメチルフェニデート)の処方が、これらの薬の有害な作用に関する証拠が増えているにもかかわらず増加していること、および、親が精神刺激薬による子どもの治療を受け入れない場合には子どもを退学させるという脅かしが行なわれている旨の報告があることを、懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ADHDおよびADDの診断および治療に対する非薬物療法アプローチについての調査研究を実施すること。 (b) 関連の保健機関が、教室における注意欠如の根本的原因について判断し、かつ子どもの精神保健問題の診断を改善することを確保すること。 (c) 家族への支援(心理カウンセリングおよび情緒面での支援にアクセスできるようにすることを含む)を強化するとともに、子ども、親ならびに教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家に対し、ADHDおよびADDに関する十分な情報が提供されることを確保すること。 (d) 精神刺激薬による治療を受け入れるべきであるといういかなる圧力も子どもおよび親に対してかけられないようにするために必要な措置をとること。 自殺 62.委員会は、青少年の自殺が多いことを依然として懸念する。 63.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、自殺の防止に関する国家的行動計画(そこでは子どもおよび青少年の特有のニーズが考慮されるべきである)の採択を速やかに進め、かつその効果的実施を確保するよう勧告する。 生活水準 64.連邦家族手当法が2009年に施行されたことおよび貧困に対応するためのその他の措置(包括的スイス反貧困戦略ならびに貧困防止および貧困との闘いに関する国家計画(2014~2018年)を含む)がとられていることは歓迎しながらも、委員会は、家族を対象とする補足給付(社会扶助を含む)が一部のカントンで低額のままであることを懸念する。 65.委員会は、すべての子ども(親が難民、庇護希望者および移住者である子どもを含む)が自国の領域全体で十分な生活水準を享受できるようにする目的で、締約国が、家族手当給付制度をさらに強化するよう勧告する。 G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 人権教育 66.委員会は、学校における子どもを対象とした人権教育がすべてのカントンで制度的に実施されているわけではないことを懸念する。 67.委員会は、締約国が、諸言語地域を対象とする統一学校カリキュラムに、条約および人権一般に関する義務的単位が含まれることを確保するよう勧告する。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 庇護希望者および難民である子どもならびに在留資格のない子ども 68.保護者のいない子どもによる庇護申請の優先的取扱いを求めた庇護法改正が2014年に施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、保護者のいない子どもを対象とする庇護手続において当該子どもの最善の利益が常に指針とされているわけではないこと、および、条約第10条に付された留保との関係で、仮入国許可を与えられた者の家族再統合に対する権利があまりにも制限されていることを懸念する。さらに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもの庇護希望者および難民を対象とする受入れ環境、統合支援および福祉についてカントン観に相当の格差が存在し、たとえば子どもが掩蔽壕または核兵器防護施設に収容されていること。 (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者のための「被信託人」が、子どものケアまたは子どもの権利に関する問題についての経験を要求されていないこと。 (c) 子どもの庇護希望者が中等教育へのアクセスについて困難に直面していること、および、これらの子どもが職業訓練を受けることの認可について調和のとれた実務が行なわれていないこと。 (d) 空港でも行なわれる迅速庇護手続が子どもにも適用できるとされていること。 (e) 法的な在留資格のない(サンパピエ)子どもが締約国に相当数暮らしており、かつこのような子どもがとくに保健ケア、教育(とりわけ中等教育)および職業訓練へのアクセスについて多くの困難に直面していること、および、これらの問題に対応する方法についての戦略が定められていないこと。 69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 庇護手続において、子どもの特別なニーズおよび要求が全面的に尊重され、かつ当該子どもの最善の利益が常に指針とされることを確保すること。 (b) とくに仮入国許可を与えられた者について家族再統合制度を再検討すること。 (c) 庇護希望者および難民、とくに子どもを対象とする受入れ環境、統合支援および福祉についての最低基準を領域全体で適用するとともに、子どもの庇護希望者および難民を受け入れかつケアするすべての施設が子どもにやさしいものであり、かつ適用される国際連合の基準に一致することを確保すること。 (d) 「被信託人」が、保護者のいない子どもの庇護希望者を支援するための適正な訓練を受けていることを確保すること。 (e) 子どもの庇護希望者が教育および職業訓練に効果的にかつ差別されることなくアクセスできることを確保すること。 (f) 保護者のいない子どもの庇護希望者を迅速庇護手続の適用対象から除外するとともに、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が常に尊重されることを確保するための保障措置を確立すること。 (g) 在留資格のない子どもの社会的排除およびこれらの子どもに対する差別を防止するための政策およびプログラムを発展させるとともに、教育、保健ケアおよび福祉サービスへのアクセスを実際に確保する等の手段により、これらの子どもがその権利を全面的に享受できるようにすること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ 70.軍刑法の改正によって戦争犯罪の訴追に関する限定的普遍主義が確立されたことおよび「武力紛争において軍隊または武装集団と関係している子どもを保護するための連邦外務省行動計画(2014~2016年)」が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、国以外の武装集団による子どもの徴募が明示的に犯罪化されておらず、かつ、国外で武力紛争に関与させられた可能性がある子どもの庇護希望者、難民および移住者についての統計データが存在しないことを、依然として懸念する。 71.委員会は、締約国が、国以外の武装集団による子どもの徴募を明示的に犯罪化し、かつ、この点に関わるデータ収集システムを改善するよう勧告する。 少年司法の運営 72.委員会は、新たな少年刑法(2007年)および少年刑事訴訟法(2011年)が施行されたことにより、とくに、刑事責任に関する最低年齢が7歳から10歳に引き上げられ、かつ審判前拘禁および週間の際に子どもを成人から分離する旨の定めが置かれたことに留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢がいまなお国際的に受け入れられている水準よりも低いままであること。 (b) 子どもを対象とする無償の法的援助が常に確保されているわけではないこと。 (c) 少年刑法および少年刑事手続を専門とする被告人弁護士がいまなお数人しか存在しないこと。 (d) 子どもが拘禁施設においていまなお成人から分離されていないこと。 73.少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられている水準まで引き上げること。 (b) 子どもが無償の法的援助その他の適切な援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 少年司法の運営に関与するすべての者(被告人弁護士を含む)が適切な研修を受けることを確保すること。 (d) 子どもが成人と一緒に拘禁されないことを確保するため、十分な拘禁施設を設置するプロセスを加速すること。 I.通報手続に関する選択議定書の批准 74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 J.国際人権文書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 K.地域機関との協力 76.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 77.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2~4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 78.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年9月25日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。総会が決議68/268のパラ16で定めた共通コアドキュメントの語数制限は42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2016年1月24日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/280.html
総括所見:インド(第3~4回・2014年) 第1回(2000年)/第2回OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IND/CO/3-4(2014年7月7日)/第66会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年6月2日および3日に開かれた第1885回および1886回会合(CRC/C/SR.1885 and 1886参照)においてインドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/IND/CO/3-4)を検討し、2014年6月13日に開かれた第1901回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、インドの第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/IND/Q/34/Add.1)の提出を歓迎する。これにより、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させることが可能となった。委員会は、他部門にまたがる締約国の代表団との間に持たれた前向きな対話について、大いなる評価の意を表する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 国家食料安全保障法(2013年9月10日)。 (b) 性犯罪からの子どもの保護法(2012年11月14日)。 (c) 無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年8月)。 4.委員会はまた、以下の文書が批准されたことにも評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2005年11月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2005年8月)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2007年10月)。 (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する条約、ならびに、同条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書ならびに陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2011年5月)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置がとられたことも歓迎する。 (a) 国家乳幼児期ケア・教育政策(2013年9月27日)。 (b) 国家子ども政策(2013年4月26日)。 6.委員会は、締約国が国際連合の諸特別手続による訪問を常時受け入れる意思を明らかにしたこと(2011年)に、積極的対応として留意する。 主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 7.第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(2004年、CRC/C/15/Add.228)をフォローアップするために締約国が行なってきた努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について全面的な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは部分的にしか実施されていないもの(とくに、差別の禁止、養子縁組、有害慣行、性的搾取、教育、保健、児童労働および少年司法の運営に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 第32条に関する宣言 9.委員会は、条約第32条に関する締約国の宣言は不必要である旨の見解をあらためて表明する。 10.委員会は、締約国に対し、委員会のこれまでの勧告(CRC/C/15/Add.115、パラ66およびCRC/C/15/Add.228、パラ8)にしたがい、条約第32条に関する宣言の撤回を検討するよう促す。 立法 11.委員会は、第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.5)の検討以降、締約国が、子どもの権利に関する立法上の枠組みを強化するために多くの連邦法を採択しまたは改正してきたことに留意する。しかしながら、立法ではいまなお条約の適用される範囲が完全に網羅されていない。委員会は、締約国の連邦体制内でさまざまなレベルの権限および権能が定められていることにより、子どもの権利に関する法律が異なるやり方で適用され、かつ、締約国全域で子どもの権利の実施に断片化および矛盾が生じていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が、連邦および州のレベルで、子どもの権利に関する立法上の枠組みが条約の原則および規定と一貫したかつ矛盾のないやり方で調和されることを確保するため、子どもに関連するすべての立法の再検討および改正を進めるよう勧告する。締約国は、締約国においてすべての法律がすべての子どもに同一のやり方で適用されることを確保するべきである。 包括的な政策および戦略 13.委員会は、2013年に国家子ども政策が採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 同政策を実施するための国家行動計画がまだ策定されていないこと。 (b) 州および県のレベルで進められている、国家子ども政策にのっとったそれぞれの行動計画の策定の進展に関する情報、および、同政策の効果的実施を確保するために配分される資源についての情報がないこと。 14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) あらゆるレベルにおける国家子ども政策の適用を可能にする要素を含んだ、国家行動計画ならびに州および県のレベルでの同様の計画の策定を優先的に進めること。 (b) 国家子ども政策を効果的に運用するための十分な人的資源、技術的資源および財源が時宜を得たやり方で配分されることを確保すること。 (c) 子どもおよび若者、親、非政府組織(NGO)および関心のあるその他の関連機関の積極的関与を促進し、かつその便宜を図ること。 調整 15.委員会は、締約国が、旧女性・子ども発達局を女性・子ども発達省に格上げして財源および人的資源も増やすことにより、その権限および調整の役割を強化したこと、および、国家子ども政策の実施の監視を任務とする国家調整行動グループを設置したことに留意する。しかしながら委員会は、これらの措置がまだ、子どもに関連する政策およびプログラムを実施するための、あらゆるレベルにおける省庁間の調整の改善につながっていないことを懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、条約の実施に関連するあらゆる活動を省庁間、連邦および州のレベルで調整する十分な権限を女性・子ども発達省が有すること、および、国家調整行動グループがあらゆるレベルで有効に機能することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。締約国は、同省および同グループの双方に対し、その効果的活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 資源配分 17.委員会は、計画策定および予算編成のプロセスを改善し、かつ子どものための制度およびプログラムに配分される予算を増額するために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、予算配分において子どもの保護のニーズが十分考慮されていないことを懸念するものである。委員会はまた、配分された資源の不適切な管理が生じており、かつそれが高水準の汚職によって悪化させられていること、ならびに、監視および評価のための効果的な制度が存在しないことも懸念する。 18.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議ならびに条約第2条、第3条、第4条および第6条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての社会部門、とくに教育、保護および子どもの保護に対する予算配分(連邦および州のレベルで子どものために用いるものとして使途指定される資源を含む)を相当に増額すること。 (b) 関連の部門および機関における子どものための明確な配分額を具体的に定め、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた、子どもの権利の視点を有する予算編成プロセスを確立すること。 (c) 連邦および州のレベルで条約の実施のために割り当てられる資源の配分の十分さ、有効性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。 (d) 汚職を防止しかつこれと闘うためにあらゆる必要な措置をとること。 データ収集 19.委員会は、15~18歳の子どもに関して利用可能なデータが乏しいこと、および、収集されるデータのタイプが制約されていて条約の全分野を網羅するものになっていないことを、とりわけ懸念する。 20.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、データ収集システムを速やかに改善するよう促す。すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)の状況についての分析を容易にするため、データは、条約の全分野を網羅し、かつ年齢、性別、地理的所在ならびに民族的、国民的および社会経済的背景別に細分化されるべきである。さらに委員会は、データおよび指標が関連省庁の間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。この文脈において、委員会はまた、締約国が、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)との技術的協力を強化することも勧告するものである。 独立の監視 21.委員会は、2007年に、とくに自己の権利侵害に関する子どもからの苦情を受理する権限を有する国家子どもの権利保護委員会が設置されたこと(州および連邦直轄地域における委員会の設置を含む)に留意する。しかしながら委員会は、パリ原則に全面的にのっとった委員会の委員の選任手続が定められていないこと、予算配分が不十分であること、独立機関として任務を遂行する自律性が欠けていること、および、このような委員会がまたすべての州に存在するわけではないことを、懸念するものである。 22.独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) パリ原則が全面的に遵守されることを確保するため、国家委員会およびあらゆるレベルに設置される他のすべての委員会の独立性を、資金、権限および不処罰特権の観点も含めて確保すること。委員会は、この目的のため、締約国が、国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)およびユニセフとの技術的協力を強化するよう勧告する。 (b) このような委員会を締約国全域で速やかに設置すること。 普及および意識啓発 23.委員会は、条約を普及し、かつ条約についての意識を高めるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、公衆一般およびとくに子どもたちの間で条約に関する意識が低いこと、ならびに、とられた措置の評価が実施されていないことを懸念するものである。 24.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.228、パラ24(a))をあらためて繰り返し、締約国に対し、公衆一般が子どもを権利の主体として認めることを確保する目的で、条約を普及するための努力、ならびに、意識啓発プログラムを通じて子どもの権利に関する公衆一般およびとくに子どもたちの感受性を高めるための努力を強化するよう促す。このような意識啓発プログラムには、メディアなどあらゆる形態の情報伝達手段、および、社会経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域における意識啓発のための対象を明確にした介入策が含まれるべきである。委員会はまた、締約国が、地方言語で作成された子どもにやさしい条約の訳が入手できることを確保するためにあらゆる必要な措置をとることも勧告する。 研修 25.委員会は、子どもの権利に関連する研修の実施および能力増進のために締約国が行なっている努力が不十分であり、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家の需要に対応しきれていないことを懸念する。 26.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.228、パラ24(c))をあらためて繰り返し、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(とくに法執行官、裁判官、検察官、教員、メディア、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカー、あらゆる形態の代替的養護に従事する職員および出入国管理機関)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を実施すること。これとの関連で、締約国は、とくに、意識啓発キャンペーンを実施し、具体的なマニュアルを開発し、能力構築ワークショップを実施し、かつ子どもの権利を学校カリキュラムに編入するべきである。 市民社会との協力 27.委員会は、さまざまな分野のサービス提供において締約国がNGOとの調整を図っていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、そのような協力が組織的なものではないこと、ならびに、締約国が、子どものためのサービスの提供を各州が契約したNGOに委託しているように思われること、および、しかし提供されるサービスの質の監視および評価は行なっていないことを、懸念するものである。 28.委員会は、締約国に対し、国が支援して行なわれる子どもの権利関連のすべての政策、計画およびプログラムの計画立案、実施、監視および評価に、コミュニティおよび市民社会(非政府組織および子ども団体を含む)の組織的関与を得るよう求める。委員会はまた、締約国が、NGOによって子どもに提供されるサービスの質および提供範囲を効果的に監視するための措置をとることも勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 29.委員会は、製造業関連企業の操業のために多数の子どもおよびその家族(とくにPOSCO社の製鉄所がある地域およびオディシャ州の港湾施設がある地域で暮らしている家族および子ども)が強制的に立ち退かされ、かつ先祖伝来の土地を失っていることを懸念する。委員会はまた、条約および国際人権基準が遵守されるようにするための保障措置についての情報がないことも懸念するものである。 30.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、および、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国際連合「保護・尊重・救済枠組み」に照らし、委員会は、締約国が、企業セクターが国際的および国内的な人権基準、労働基準、環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を遵守することを確保するための規則を定め、かつ実施するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 企業(とくに製造業関連企業)が国際的および国内的な環境基準および健康基準を効果的に実施することを確保し、これらの基準の実施状況を効果的に監視し、違反があった場合には適切な制裁を科すとともに被害者に救済を提供し、かつ、適切な国際的認証が追求されることを確保すること。 (c) 企業に対し、自己の企業活動により生ずる環境面、健康関連および人権面の影響ならびにこのような影響に対処するための計画についてのアセスメント、協議ならびにその全面的な公的開示を行なうよう、要求すること。 B.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 31.委員会は、さまざまな集団の子どもの間で、教育、保健ケア、安全な水および衛生設備ならびにその他の社会サービスへのアクセスに関して、また条約に掲げられた権利の享受に関して格差があることを懸念する。委員会はまた、指定カーストおよび指定部族の子ども、障害のある子ども、HIV/AIDSに感染・罹患している子どもならびに子どもの庇護希望者および難民に対する差別が根強く残っていることも懸念するものである。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 周縁化された状況および不利な立場の状況に置かれたすべてのカテゴリーの子どもに対するすべての形態の差別(複合的形態の差別を含む)に対処するための包括的な戦略を採択しかつ実施するとともに、社会的および文化的変革を促進する目的で、広範な関係者と連携し、かつ社会のあらゆる層の関与を得ながら当該戦略を実施していくための十分な人的資源、財源および技術的資源を確保すること。 (b) 周縁化された状況および不利な立場の状況に置かれた子ども(指定カーストおよび指定部族の子ども、障害のある子ども、HIV/AIDSに感染・罹患している子どもならびに子どもの庇護希望者および難民など)が、基礎的サービスにアクセスでき、かつ条約に基づく自己の権利を享受できることを確保するとともに、この目的のために十分なプログラムを採択し、かつその結果を評価すること。 33.委員会は、締約国において女子および女性に対する差別が蔓延しており、かつ、女子に対する差別を固定化する家父長制的な態度ならびに深く根づいたステレオタイプおよび慣行が根強く残っていることを深く懸念する。委員会はさらに、男子の優先および女子の不平等な地位を固定化する積年の伝統および文化的影響により、男女産み分けのための中絶、女子の嬰児殺および遺棄が依然として広く行なわれており、その結果、とくに女子に対する男子の比率が高まっていることを懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、条約の規定と一致せず、かつ女子に対する差別を固定化する根本的原因、社会的および制度的規範および慣行も考慮に入れるなどして、女子および女性に対する社会的、文化的および経済的差別を防止しかつこれと闘うために、包括的なアプローチの採択および効果的かつ組織的な行動を進めるよう促す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 第12次国家5か年開発計画にしたがい、男女比の達成目標(男子1000人に対して女子950人)の達成を確保するために緊急の措置をとること。 (b) 意識啓発、ならびに、女子差別につながる文化的規範および慣行を強化する諸要因への対処等の手段により、女子の嬰児殺および遺棄を防止するために法律上および政策上の即時的措置をとること。 (c) 男女産み分けのための中絶を防止するため、受胎前・出生前診断技術法の効果的実施を確保するとともに、規制のための機構を強化すること。 子どもの最善の利益 35.国家子ども政策(2013年)に、子どもに関連するすべての行政上および司法上の手続、政策ならびにプログラムにおける指導的原則として子どもの最善の利益の原則が編入されていることには留意しながらも、委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、子どもに影響を及ぼすすべての分野で、子どものためにおよび子どもとともに働いている専門家によって実際に一貫して適用されることを確保するためにとられた措置についての詳しい情報がないことを懸念する。 36.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するとともに、これらの手続および基準が、裁判所、行政機関および立法機関、官民の社会福祉施設ならびに伝統的指導者および宗教的指導者ならびに公衆一般に対して普及されることを確保すること。 (b) この点に関わる効果的な監視および評価のための手続を確立すること。 子どもの意見の尊重 37.委員会は、子どもの社会参加を増進させるために締約国が行なっている取り組み(「子どもレポーター」イニシアチブなど)、および、自己の権利およびウェルビーイングに影響を与える民事手続への子ども参加を増進させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、社会が一般的に子どもを権利の保有者と見ていないこと、ならびに、公的領域への子どもの参加、ならびに、家庭、学校、コミュニティおよび中央レベルで子どもが意見を聴かれる機会が不十分であることを懸念するものである。 38.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがって当該権利を強化するための措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を確立する等の手段により、関連の法的手続において意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 (b) 子どもにとってもっとも重要な問題を特定し、これらの問題に関する子どもの意見を聴き、自己の生活に影響を与える家庭の決定において子どもの意見がどの程度十分に聴かれているかを明らかにし、かつ、国および地方の意思決定において子どもが現にまたは潜在的に最大の影響力を行使しうる回路を見出すための調査研究を実施すること。 (c) 国家的政策の策定に関する公的協議(子どもに影響を与える問題に関する子どもたちとの協議を含む)を、高い水準のインク―ジョンおよび参加を前提としながら標準化するため、このような協議のためのツールキットを開発すること。 (d) 女子および被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いながら、家庭、コミュニティおよび学校(学校評議会機関を含む)において、すべての子どもが意味のある形でかつエンパワーメントされながら参加することを促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施するとともに、これらのプログラムおよび活動に関する定期的な事前事後の評価を確保すること。 C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録 39.委員会は、締約国全域で全体として出生登録率が低いことおよび出生登録率に格差があること、ならびに、すべての者の出生登録の重要性に関する関連当局および住民の意識が不十分であることに、懸念を表明する。委員会はまた、出生登録率と出生証明書の発給件数が一致していないことも懸念するものである。 40.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促す。 (a) 出生および死亡登録法(1969年)の改正を速やかに成立させ、出生登録を住民にとってアクセスしやすいものとし、かつ、出生の登録および出生証明書の速やかな発給の双方を保障すること。 (b) とくに農村地域で移動登録事務所を設置し、かつ、まだ登録されていない子どもおよび出生証明書を持たない子どもを全員登録することを目的としたキャンペーンを実施する等の手段により、出生登録率を高めるためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 定期的な大衆キャンペーンを通じ、出生登録の重要性に関する親および関連当局の意識を促進するとともに、出生登録の手続ならびに出生登録によって生じる権利および資格についての情報を提供すること。 アイデンティティに対する権利 41.委員会は、締約国の一部地域で、とくに条約第6条~9条および第19条に違反する、匿名のままの子どもの遺棄を可能とする「ゆりかご赤ちゃん受け入れセンター」が運営されていることを深く懸念する。 42.委員会は、締約国に対し、匿名のままの子どもの遺棄の慣行を終わらせ、かつ可能なかぎり早期に代替的選択肢の強化および促進を図るために、あらゆる必要な措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、家族計画サービス、十分なカウンセリングおよび計画していなかった妊娠に関する社会的支援を提供すること、ならびに、ジェンダーもしくは障害を理由とするまたは婚外子が受け入れられていないことによる乳児の遺棄を防止するための措置をとること等の手段により、乳児の遺棄の根本的原因に対処するための努力を強化するよう、促すものである。 国籍 43.委員会は、締約国とパキスタンとの国境地帯に位置する村落で生まれた子ども(カッチ・コミュニティに属する子どもなど)が無国籍になっていること、および、その結果、条約が対象とするすべての分野でその権利が制限されていることを懸念する。 44.委員会は、締約国に対し、条約第7条にしたがってこれらのコミュニティに属する子どもに国籍を与えるためにあらゆる必要な措置をとるとともに、無国籍者の地位に関する条約の批准を検討するよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 45.委員会は、締約国の憲法では宗教の自由に対する権利が保障されているものの、法律では、子どもが親と異なる宗教を選択することが認められていないことを懸念する。 46.委員会は、すべての子どもが親の宗教にかかわらず宗教の自由を享受する権利を確保するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 D.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 47.委員会は、すべての教育施設およびケア施設で体罰が法的に禁じられていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 教育施設における当該禁止規定が6~14歳の子どもについてしか適用されないこと。 (b) 施設以外のケア現場では体罰がいまなお合法的であること。 (c) しつけおよび規律の維持のための措置ならびに犯罪に対する刑としての体罰が締約国全域で禁止されているわけではないこと。 (d) 締約国の努力にもかかわらず、家庭、代替的養護の現場および学校現場ならびに行刑制度において体罰が引き続き広く用いられていること。 48.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満の子どもに対する、すべての場面におけるすべての形態の体罰を領域全体で明示的に禁止すること。 (b) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響(身体的影響および心理的影響の双方)に関する包括的かつ継続的な公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのプログラムを、子どもたち、家族、コミュニティならびに伝統的指導者および宗教的指導者の関与を得ながら導入すること。 (c) 子どもの不当な取扱いを行なった者に対して法的手続が組織的に開始されること、および、これらの者が適正に訴追されることを確保すること。 (d) 積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進すること。 (e) 既存の苦情申立て機構を、秘密が守られ、かつ子どもにやさしいものとなることを確保する目的で強化すること。 虐待およびネグレクト 49.委員会は、締約国において、家庭、代替的養護施設、学校およびコミュニティ等における子どもの暴力、虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトが広く蔓延していることへの多大なる懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.228、パラ50)。委員会は、以下のことを深刻に懸念するものである。 (a) 刑事(改正)法(2013年)上、15歳以上の既婚女子の性的虐待は犯罪とされておらず、性犯罪からの子どもの保護法(2012年)との整合性を欠いていること。 (b) 利用可能なデータによれば、締約国における強姦被害者の3人に1人が子どもであり、かつ、虐待者の50%が、子どもが知っている者または信頼および権威を有する立場にある者であること。 (c) 社会的スティグマへの恐れから、子どもの性的虐待の事案のほとんどが通報されておらず、かつ、通報された事案の訴追率に関する情報がないこと。 (d) 性的虐待の被害を受けた子どものための、子どもに配慮した治療および専門的検診サービスが不十分であること。 50.前回の勧告(CRC/C/15/Add.228、パラ51)にのっとり、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満の女子に対するあらゆる形態の性的虐待(婚姻間の強姦を含む)が全面的に犯罪化されることを確保すること。 (b) 身体的、性的および情緒的虐待を含む子どもの虐待を防止しかつこれと闘うことを目的とした包括的な戦略を、ジェンダーの側面を考慮に入れながら立案するため、子どもたちの関与を得ながら、意識啓発および教育を目的としたプログラムおよびキャンペーンをさらに強化しかつ促進すること。 (c) 性的虐待およびあらゆる場面(とくに学校)における体罰をとくに重視しながら、子どもに対する暴力のあらゆる事案に関する国家的データベースを設置するとともに、このような暴力の程度、原因および性質に関する包括的評価を行なうこと。 (d) 子どもの性的虐待のあらゆる事案が義務的に通報されることを確保するための機構、手続および指針を確立するとともに、加害者の適正な捜査、訴追および処罰を確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 子どもの性的虐待を防止し、かつ性的虐待被害者に対するスティグマに対処するための意識啓発活動を実施するとともに、アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい効果的な通報制度を整備すること。 有害慣行 51.委員会は、児童婚禁止法(2006年)が制定されたにもかかわらず、締約国において児童婚が広く蔓延していることを深く懸念する。委員会は、同法の全面的実施を妨げる障壁(社会的規範および伝統の蔓延、それぞれの宗教的コミュニティに適用される独自の最低婚姻年齢を定めた種々の人事法の存在、ならびに、同法に関する法執行官の意識の欠如)について懸念を覚えるものである。委員会はまた、ダウリーおよびデーヴァダーシーの慣行など、女子にとって害となるその他の有害慣行が蔓延していることも懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、同法が宗教上のさまざまな人事法に優越することを強調する等の手段により、児童婚禁止法(2006年)の効果的実施を確保するよう促す。委員会はまた、締約国が、女子の健康およびウェルビーイングにとって有害な児童婚を防止する目的で、態度の変革ならびにカウンセリングおよびリプロダクティブヘルス教育の開始を目的として意識啓発プログラムおよびキャンペーンを実施する等の手段により、ダウリーの要求、児童婚およびデーヴァダーシーの慣行と闘うために必要な措置をとることも勧告するものである。 ヘルプライン 53.委員会は、締約国が、チャイルドライン・インド財団と連携しながら子どものための24時間ヘルプラインを運営していることに留意する。しかしながら委員会は、当該ヘルプラインが国レベルですべての子どもにとってアクセスできるものになっていないことを懸念するものである。 54.委員会は、締約国が、国、州および県のレベルですべての子どもが24時間ヘルプラインを無償で利用できることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、ヘルプラインへのアクセス方法に関する子どもたちの意識を高め、サービスの効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供し、かつ、助言およびカウンセリング、付託サービスに関する情報ならびに必要な場合の救出活動を含むフィードバックを確保するよう、勧告するものである。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1および2)、第20条、第25条および第27条(4)) 家庭環境を奪われた子ども 55.親が乳幼児のケアを改善できるようにすることを意図した国家乳幼児期ケア・教育政策(2013年)は歓迎しながらも、委員会は、その実施がまだ開始されていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもの養育義務の履行にあたって親および家族を支援するための国家的な戦略およびプログラムが存在しないこと、ならびに、家族カウンセリングおよび子育て支援のためのプログラムが存在しないことにより、家庭における子どものネグレクト、不適切な取扱いおよび虐待のリスクが高まっていることを懸念するものである。委員会は、代替的養護制度を向上させようとする締約国の努力には留意するものの、締約国において、いまなお家庭を基盤とする養護ではなく施設措置が支配的であることを懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) ニーズを有している子ども、サービスを提供されている子どもおよび種々の形態の代替的養護を受けている子ども、親および親族養育者のための支援サービス、子どもの遺棄、ネグレクトおよび虐待ならびにとられた措置(立法措置を除く)についての細分化されたデータが存在しないこと。 (b) 里親および親族養育者のアセスメント、選抜、研修、報酬および監督、養護を受けている子どもに関する再審査手続、ならびに、子どもホームの認証、最低要件および監督ならびに公的養護を受けている子ども(国、民間、NGOまたは教会が運営する施設に措置されている子どもを含む)のための苦情申立て機構についての情報が存在しないこと。 56.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)を想起しつつ、委員会は、金銭的もしくは物質的貧困またはこのような貧困を直接の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離することの唯一の正当化事由とされるべきではないことを強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 親のための十分な支援サービスを確立するとともに、子育てのスキルに関する意識啓発プログラムおよび研修プログラム(体罰に代わる手段についてのものを含む)を採択しかつ実施すること。 (b) 子どもの施設措置を少なくする目的で、可能な場合には常に家庭を基盤とする養護を支援しかつ促進するとともに、代替的養護を受ける子どもの親族養育および里親養育の制度を確立すること。 (c) 子どもを代替的養護の対象とするべきか否かの判断に関する、子どものニーズおよび最善の利益を基礎とした十分な保障措置および明確な基準を確保すること。 (d) 里親養育および施設への子どもの措置が第三者により定期的に再審査されることを確保するとともに、子どもの不適切な取扱いおよび虐待に関する通報、監視および救済のためのアクセスしやすい回路を提供することなどにより、当該措置における養育の質を監視すること。 (e) 施設入所児のリハビリテーションおよび社会的再統合の質を可能なかぎり最大限に高める目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 養子縁組 57.委員会は、「子どもの養子縁組を規律する指針」(2011年)が出されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国において養子縁組が非公式に行なわれ続けており、かつ養子縁組手続の監督が行なわれていないこと。 (b) 養子縁組に関して異なる法律が効力を有しており、かつこれらの法律の間に矛盾があること、および、養子縁組行為の完結との関連で少年司法(子どもの養護および保護)改正法(2006年)に法的抜け穴があること。 (c) 民族的および宗教的つながりに関わらない、子どもおよび家族一般の養子縁組に関する法律がないこと。 (d) まだ適正に規制されていない代理出産の商業的利用が広く行なわれており、子どもの売買および子どもの権利侵害につながっていること。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組に関する法律を、子どもの権利条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に一致させる目的で見直すこと。 (b) 「子どもの養子縁組を規律する指針」(2011年)の効果的実施を確保し、直接または仲介者として養子縁組に対応しているすべての個人および機関の効果的な監視機構および認証制度を確立し、これらの個人および機関の数の制限を検討し、かつ、国内および国際養子縁組の手続がいかなる当事者にとっても金銭的利得をもたらさないことを確保すること。 (c) 養子縁組の過程全体を通じて子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされ、かつ、子どもの意見が、その年齢および成熟度を正当に考慮しながら、最大限可能な範囲で考慮に入れられることを確保すること。 (d) 生殖補助医療(規制)法案(2013年)およびそれに続くその他の法律に、代理出産の斡旋の定義、規制および監視について定めた規定が掲げられることを確保するとともに、不法な養子縁組を目的とする子どもの売買(代理出産の不適切な利用を含む)を犯罪化すること。締約国は、不法な養子縁組に関与したすべての者に対して対応がなされることを確保するべきである。 親が収監されている子ども 59.委員会は、6歳未満の子どもは刑務所で母親とともに暮らせること、および、締約国が最近、受刑者の子どもに金銭的援助を行なう制度を導入したことに留意する。しかしながら委員会は、親に刑を言い渡すときを含めて、子どもの最善の利益が常に考慮されているわけではないことを懸念するものである。 60.委員会は、親に刑を言い渡す際には子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきであること、および、親が子どもから分離されることにつながる刑は可能なかぎり回避されるべきであることを勧告する。委員会はまた、子どもが収監されている親とともに暮らすべきか否かを決定する際、締約国が、子どもの最善の利益を正当に考慮することも勧告するものである。その際、刑務所に関わる全般的環境および乳幼児期における親子の接触の特別な必要性に対する正当な配慮が全面的に考慮されるべきであり、かつ司法審査の選択肢も認めることが求められる。 F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3)および第33条) 障害のある子ども 61.委員会は、親による障害児の遺棄率が高いことを深く懸念する。委員会はさらに、障害のある子どもを対象としたプログラムの計画および実施に際して関連省庁間の調整が行なわれていないこと、および、障害のある子どもに対する締約国のアプローチにおいて、もっぱら施設ケアおよび医学的治療が中心に位置づけられていることを懸念するものである。 62.条約第23条および障害のある子どもの権利についての委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとるよう促すとともに、具体的には以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約のあらゆる規定および成果測定のための指標を統合した、障害のある子どものための国家的行動計画を策定するとともに、その実施に関して関連省庁間の効果的な調整を確保すること。 (b) 障害のある子どもの遺棄の防止を目的として、障害のある子どもの親を支援するために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (c) 障害のある子どもが条約に掲げられた権利(教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセスを含む)を全面的に享受できることを確保するために十分な措置をとること。 (d) 締約国全域で障害のある子どもに対する差別を防止しかつ解消することを目的として、障害のある子ども、公衆一般および特定の専門家集団を対象とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを実施すること。 健康および保健サービス 63.委員会は、締約国に、子どもの健康および保健サービスへの子どものアクセスを向上させるためのさまざまな政策およびプログラムが存在することに留意する。しかしながら委員会は、都市部と農村部との間に保健サービスの質および保健サービスへのアクセスに関する格差が根強く残っていること、ならびに、締約国が保健サービスの提供をますます民間セクターに依存するようになっていることを、深く懸念するものである。委員会はまた、住民にとって保健サービスの費用が高いこと、および、提供されるサービスの質の規制が行なわれていないことも懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 新生児死亡率が高く、かつ、締約国で毎年死亡している140万人の5歳未満児の50%が新生児であること。 (b) 締約国が行なっているさまざまな取り組みにもかかわらず妊産婦死亡率が高く、かつ、15~49歳の女性の55.3%が、子どもの出生時の低体重につながる貧血症を有していること。 (c) 子ども(とくに5歳未満児)の間で、妊産婦の栄養不良および貧血ならびに乳幼児に対する不十分な栄養の与え方と密接に関係している慢性的栄養不良(発育阻害)、消耗症(急性栄養不良)および低体重が高い水準で生じていること。 (d) 生後6月未満の子どものうち46%しか完全母乳育児の対象とされておらず、かつ生後1時間以内に母乳を与えられる子どもはわずか24%にすぎないこと。この状況は、調製粉乳が利用されていること、および、これに関連して乳児の健康状態に悪影響が生じていることをうかがわせるものである。 (e) 予防接種率の向上が芳しくなく、かつ、予防接種を完全に受けているのは子どもの21%にすぎないこと。 (f) 急性呼吸器感染症、下痢性疾患および熱病(マラリアに関連する熱病を含む)などの感染症が子どもの間で蔓延しており、いずれもが子どもの罹患および死亡の主たる原因となっていること。 (g) とくに農村部において安全な水、公衆衛生設備および個人衛生のための便益へのアクセスが不十分であり、これにともなって、屋外排泄が広く行なわれており、かつそのために子どもの健康に悪影響が生じていること(下痢性疾患による5歳未満児の死亡の約88%はこれらの要因に関連したものである)。 64.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健サービスへのアクセスおよび保健サービスの負担可能性を向上させるために民間セクターとのパートナーシップを確立し、かつ民間セクターが提供するサービスを規制する等の手段により、保健サービスへのアクセスおよび保健サービスの質に関して祖存在している格差に緊急に対処するための努力を強化すること。 (b) 子どもの健康状況を向上させるための、とくに急性呼吸器感染症、栄養不良および下痢性疾患の高い発生率に対応するための具体的な母子保健ケア政策、プログラムおよび制度に特段の注意を払いながら、保健部門に適切な資源が配分されることを確保すること。 (c) 子どもの低栄養と闘うための規定を含む国家食料安全保障法(2013年)の効果的実施を確保すること。 (d) 完全母乳育児の実践(出生時からの授乳を含む)、補完食の与え方(固形食による補完の有無を問わない)および母親のための微量栄養素補給支援を促進するための努力を増進させ、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」(WHO、1981年)の効果的実施およびその遵守を確保し、当該基準の違反を特定するために監視および通報のシステムを整備し、かつ、当該基準の違反が行なわれたあらゆる状況(調製粉乳の販売促進および配布に関与している民間企業による、調製粉乳のサンプルおよび宣伝資料の広報および配布を含む)に対して厳格な措置をとること。 (e) すべての子どもの完全予防接種を確保すること。 (f) 屋外排泄の慣行が有する健康上のリスクに関して公衆一般を対象とした意識啓発キャンペーンを実施し、とくに農村部および最貧困地域で安全な水および衛生設備へのアクセスを確保するための措置をとり、かつ、安全な水源の改善に投資すること。 (g) この点に関してとくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)との技術的協力を強化すること。 思春期の健康 65.委員会は、締約国が思春期のリプロダクティブ/セクシュアルヘルスに関する戦略を採択したことに留意する。しかしながら委員会は、国全体におけるその実施およびそれが思春期の子どもの健康に及ぼした影響についての情報が乏しいことを懸念するものである。委員会は、締約国において、思春期の女子がセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する情報およびサービス(現代的な避妊手段を含む)にアクセスできておらず、かつその結果として10代の妊娠率が高いこと、ならびに、女性の不妊手術および安全性を欠いた中絶が広く行なわれていることを、深刻に懸念する。 66.思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期のリプロダクティブ/セクシュアルヘルスに関する戦略が効果的に実施されること、ならびに、セクシュアル/リプロダクティブ教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (b) 思春期の女子および男子が、セクシュアル/リプロダクティブヘルスについての秘密が守られる情報およびサービス(現代的避妊法および女子のための合法的中絶など)に実際に効果的にアクセスできることを確保するための措置をとること。これとの関係で、締約国は、中絶に関する決定において妊娠している10代女子の意見が常に聴かれかつ尊重されることを保障するべきである。 (c) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置(ライフスキルへのアクセスおよび有害物質濫用の防止を含む)をとること。 HIV/AIDS 67.委員会は、「子どもとAIDSに関する政策枠組み」が2007年に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、手役国のHIV/AIDS感染者の相当数が子どもであること、および、これらの子どもに対する抗レトロウィルス薬の供給に関する情報がないことを懸念するものである。委員会はまた、出産前ケアサービスの対象範囲ならびにカウンセリングおよび検査へのアクセスが限られていることから、HIV陽性である多数の妊婦が特定されておらず、そのため子どもの感染リスクが高まっていることも懸念する。 68.HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2006年以来保留のままとなっているHIV/AIDS法案を採択するとともに、同法に、HIV/AIDSに感染した子どものニーズに条約にのっとって対応する具体的規定が掲げられることを確保すること。 (b) HIV/AIDSの母子感染を予防するためにとられている措置を維持するとともに、効果的な予防措置の実施を確保するためのロードマップ(行程表)を策定すること。 (c) 早期診断および早期の治療開始を確保するため、HIV/AIDSに感染した母親およびその乳児のフォローアップ治療を向上させること。 (d) 良質なかつ年齢にふさわしいHIV/AIDS関連およびセクシュアル/リプロダクティブヘルス関連の保健サービスへのアクセスを向上させること。 (e) HIVに感染した妊婦および子どもを対象とした、抗レトロウィルスによる治療および予防法へのアクセスおよびその提供範囲を向上させること。 (f) この目的のため、とくに国際連合合同エイズ計画(UNAIDS)およびユニセフとの技術的協力を強化すること。 生活水準 69.委員会は、締約国における国内総生産(GDP)の増大にもかかわらず、貧困線以下で生活している人々の割合が高いことを懸念する。委員会は、都市部および農村部のいずれにおいても子どもの貧困が蔓延していること、ならびに、子どもの生活水準に大きな格差があり、不利な立場および周縁化された状況に置かれた子どもがとりわけ脆弱な状態にあることを懸念するものである。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困と闘うためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) とくに、とりわけ貧困に陥りやすい状況にある子どもおよび家族のための社会的保護および対象特化型プログラムを通じて、子どもの生活水準に関する都市部/農村部の格差、社会的格差ならびにカーストおよび部族に基づく格差を解消するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 第12次国家5か年開発計画に掲げられている子どもの権利充足のための戦略および措置を強化する目的で、子どもの貧困の問題に焦点を当てた協議を、家族、子どもたちおよび子どもの権利に関わる市民社会組織との間で持つことを検討すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 71.委員会は、無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年)が採択されたこと、および、第1学年における子どもの就学率がほぼ100%に達していることを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに指定カーストおよび指定部族出身の子どもならびに女子の脱落率が高いことを懸念するものである。委員会はまた、通学していない子どもが多数にのぼること、第5学年における脱落率が高いこと、計算能力および識字能力が貧弱であること、教育の質が低いこと、ならびに、資格のある教員および教室が不足していることも懸念する。 72.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年)にのっとって学校開発計画を策定する等の手段により、連邦および州のレベルで同法を全面的に実施するための努力を強化すること。 (b) とくに州レベルおよび農村部において、教育の質を向上させ、かつ教員を対象として十分な研修を実施するために必要な措置をとること。 (c) 全国の学校カリキュラムに子どもの権利教育を導入すること。 (d) 周縁化された状況に置かれている子どもに対して教室の後ろに座るよう強要することなど、教育現場で行なわれているさまざまな差別的慣行に対応すること。 (e) 就学準備および乳幼児期教育プログラムの拡大を向上させること。 (f) 高い脱落率を下げるための具体的プログラムをさらに採択するとともに、通学していない子ども、児童労働者、不利な立場および周縁化された状況に置かれた子どもならびに女子が、教育に対する自己の権利を行使するにあたって支援および援助を与えられることを確保すること。 (g) 効果的な計画立案および対応のために、通学していない子どもを追跡するためのデータ情報システムを向上させ、質および学習の成果を測定し、かつ教育に関するデータと子どもの保護に関するデータの関連づけを図ること。 (h) 思春期の子どもによる中等教育へのアクセスを増進させるための措置をとるとともに、学校から脱落した子どもを対象とした、子どものスキル増進のための良質な職業訓練を促進すること。 73.委員会は、国以外の武装集団による学校施設への攻撃および治安部隊による学校の占拠について深刻な懸念を表明する。 74.委員会は、締約国に対し、あらゆる手段を用いて学校、教員および子どもを攻撃から保護するとともに、攻撃および暴力からの学校の保護を向上させるための措置の策定にコミュニティの関与を得るよう促す。委員会はまた、締約国に対し、治安部隊による学校の選挙を禁止し、かつ、必要に応じ、損した学校の再建および修理を緊急に進めることも促すものである。 乳幼児期の発達 75.国家乳幼児期ケア・教育政策が2013年9月に採択されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、無償の義務教育に対する子どもの権利法(2009年)において乳幼児期のケアおよび教育の提供が要求されていないこと、および、前掲政策がまだ実施されていないことを懸念する。 76.委員会は、0~6歳のすべての子どもに対して普遍的なかつ質の高い乳幼児期教育およびケアサービスを確保する目的で、国家乳幼児期ケア・教育政策にのっとり、乳幼児期のケアおよび教育を、教育制度の一環として無償の義務教育に対する子どもの権利法に編入するとともに、すべてのレベルにおける同政策の実施のために十分な資源を配分するよう、勧告する。 H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 77.委員会は、難民が長期査証および就労許可を申請できるようにする決定ならびにヒンズー教徒およびシーク教徒の難民による市民権取得手続を簡略化する決定など、締約国がとったいくつかの措置を歓迎する。しかしながら委員会は、たとえば言語上の障壁のためにサービスへのアクセスに関して子どもの庇護希望者および難民が苦境に直面しており、子どもの庇護希望者および難民が、教職員および同級生による学校での差別および保健サービス施設での差別を受けており、かつ、差別的態度のために公共空間で遊ぶ権利を制限されているという報告があることを懸念するものである。委員会はさらに、ミャンマーから来たロヒンギャ人庇護希望者(子どもを含む)の、締約国への不法入国を理由とする収容が常態化していることを懸念する。 78.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保護を必要とする子ども、とくに保護者のいない子どもの難民および庇護希望者を特定しかつ援助する目的で、子どもの保護のために現在設けられている制度(子ども保護統合制度を含む)を強化すること。 (b) 子どもの難民および庇護希望者に対し、社会的障壁およびこれらの子どもに対する差別を解消するための措置をとる等の手段により、教育および保健ケアへのアクセスを保障すること。 (c) 収容されている子どもの難民および庇護希望者を放免し、かつこれらの子どもが国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)にアクセスできるようにすること、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに子どもの難民および庇護希望者が締約国への不法入国/締約国における不法滞在を理由として収容されないことを確保すること、ならびに、これらの子どもに対し、庇護を求める権利および庇護手続が完了するまで締約国に滞在する権利を付与すること。 (d) 子どもの難民および庇護希望者をUNHCRに付託するための適正な付託制度を内務省のもとに設置し、かつ、このような子どもの迅速な特定および付託を促進するための標準運用手続を策定すること。 (e) 難民の地位に関する1951年条約およびその1967年議定書への加入を検討すること。 宗教的マイノリティ、指定カーストおよび指定部族に属する子ども 79.委員会は、宗教的マイノリティ、指定カーストおよび指定部族の不平等に対処し、かつその生活条件ならびに教育、保健サービスおよび社会サービスへのアクセスを向上させるために締約国が行なっている取り組みにもかかわらず、これらの集団に属する多数の子どもが条約上の多くの権利を奪われ続けていることを、深刻に懸念する。 80.委員会は、締約国に対し、すべての子どもが、その宗教的背景にかかわらず、または子どもが指定カーストもしくは指定部族の出身か否かを問わず、条約に掲げられた全範囲の権利を享受できることを確保するための努力を強化するよう促す。 経済的搾取(児童労働を含む) 81.委員会は、締約国が行なった若干の努力にもかかわらず、危険な条件下における児童労働(採鉱業、家事労働者のようなインフォーマル部門での債務労働および農業におけるものなど)を含む経済的搾取に、いまなお多数の子どもが関与させられている旨の懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.228、パラ72)。 82.前回の勧告(CRC/C/15/Add. 228、パラ73)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童労働(禁止および規制)改正法案(2012年)を速やかに採択するとともに、児童労働に関与した個人に対する制裁を含む、あらゆる形態の児童労働の防止および根絶のための包括的戦略を策定すること。このような戦略には、児童労働(そのほとんどは家事労働のようなインフォーマル部門で生じているが、危険な労働にあたる採鉱場および採石場での労働でも生じている)の態様および手度に関するデータベースの設置も含むものとする。 (b) 国際労働機関(ILO)の、就労のための最低年齢に関する第138号条約、最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する第182号条約ならびに家事労働者の適切な仕事に関する第189号条約の批准を検討すること。 (c) これとの関連で、ILO・児童労働撤廃国際計画との技術的協力を発展させること。 路上の状況にある子ども 83.委員会は、締約国の「ストリートチルドレンのための統合プログラム」の利益を多くの子どもが享受してきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国において路上の状況にある子どもが多数にのぼることに鑑みて同プログラムの効果が限定的であること、および、これらの子どもの多くが被害者とみなされるのではなく犯罪者として扱われていることを、深く懸念するものである。 84.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 路上の状況にある子どもの現状に関する体系的な評価に基づき、かつこれらの子どもたち自身の積極的関与を得ながら、この現象を防止しかつ少なくする目的でその根本的原因に対処するための包括的政策を策定しかつ実施すること。 (b) 路上の状況にある子どもを犯罪者として扱わないようにすること。 (c) NGOとの調整を図りながら、路上の状況にある子どもに対して必要な保護(家庭環境、十分な保健ケアサービス、社会サービスおよび通学の便宜を含む)を提供するとともに、この目的のために必要な人的資源および財源を配分すること。 (d) 子どもの最善の利益に合致する場合、家族再統合プログラムを支援すること。 売買、取引および誘拐 85.委員会は、「人身取引の防止ならびに商業的性的搾取を目的とする人身取引の被害者の救出、リハビリテーション、再統合および補償に関する包括的計画」が2007年12月に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの国内人身取引が高い水準で行なわれていること、ならびに、締約国が、労働および性的搾取(セックスツーリズムおよび児童ポルノを含む)を目的とする子どもの人身取引の送り出し国、目的地国および通過国になっていることを懸念するものである。委員会は、締約国において、子どもが物乞い、婚姻および不法な養子縁組のために人身取引の対象とされているという報告があることを懸念する。委員会は、子どもの売買、取引および誘拐に対処するための効果的措置がとられていないこと、ならびに、これらの活動に関するデータがないことに懸念を表明するものである。 86.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの売買、取引および誘拐に関する包括的かつ体系的なデータ収集機構を設置するとともに、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段に注意を払いながら、当該データがとくに性別、年齢、国民的および民族的出身、州または自治地域、農村部または都市部における居住、先住民族としての地位および社会経済的地位別に細分化されることを確保すること。 (b) 国内人身取引および国際的人身取引の双方の危険性について親および子どもが認識できるようにするための意識啓発活動を実施すること。 (c) 二国間および多国間の協定を締結すること等も通じ、国の枠を超えてで子どもの人身取引と闘うための南アジア諸国との協力をさらに強化すること。 少年司法の運営 87.委員会は、締約国全域の660県のうち608県で少年司法委員会が設置されていること、および、刑事責任に関する最低年齢を18歳と定める少年司法規則が2007年に出されたことなど、少年司法制度を強化するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、刑事責任に関する最低年齢がいまなお刑法で7歳とされており、これによって少年司法規則の適用が排除されることを深刻に懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 少年司法規則(2007年)で、締約国が刑事責任に関する最低年齢の引き下げを計画していると述べられていること。 (b) 少年司法委員会で働く職員の、法律に抵触した子どもが関わる事件を扱うための知識、感受性および能力がきわめて限られており、かつ、これらの委員会が十分に監督されていないこと。 (c) 法律に抵触した子どもに関するデータを収集するための情報管理システム、処理が終了していない事件にかけられる時間、委員会の全般的運用(委員会が発する命令の性質および質を含む)ならびに特別少年警察部の役割および運用が不十分であること。 (d) 鑑別ホーム(調査が完了するための一時的受け入れを目的とするもの)および特別ホーム(刑を言い渡された子どもを対象とするもの)において、法律に抵触した子どもが年齢にふさわしい形で分離されておらず、かつ、法律に抵触した子どもが保護を必要とする子どもとともに収容される場合があること。 88.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を、条約(とくに第37条、第39条および第40条)、その他の関連基準および少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)と全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を18歳と定めた少年司法規則(2007年)を実施するとともに、国際的に受け入れられる水準に当該最低年齢を維持すること。 (b) 少年司法委員会に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を提供し、子どものための専門裁判官を指定し、かつ、これらの専門裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。 (c) 法律に抵触した子どもに対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、資格のある、独立した、無償のまたは補助がある弁護士およびその他の適切な専門家による援助が提供されることを確保すること。 (d) 必要なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (e) 拘禁が必要なときは、鑑別ホームおよび特別ホームにおいて年齢にふさわしい形での子どもの分離を確保するとともに、法律に抵触した子どもが保護を必要とする子どもまたは成人とともに収容されないこと、および、拘禁環境において国際基準が遵守されること(教育および保健サービスへのアクセスとの関連を含む)を確保すること。 (f) この目的のため、少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを活用するとともに、少年司法の分野で同パネルの構成機関の技術的援助を求めること。 I.国際人権文書の批准 89.委員会は、締約国が、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書など、まだ加盟国となっていない中核的人権文書を批准するよう勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 90.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合(ASEAN)・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 91.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第3回・第4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 L.次回報告書 92.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年7月15日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短くするよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による検討を目的とした報告書の翻訳は保障できない。 93.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された調和化報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)の共通コアドキュメントに関する要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。共通コアドキュメントの語数制限は、総会が決議68/268(パラ16)で定めたとおり、42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2017年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/281.html
総括所見:ネパール(OPAC・2012年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/NPL/CO/1(2016年7月8日)/第72会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2016年5月20日に開かれた第2112回会合(CRC/C/SR.2112参照)においてネパールの第1回報告書(CRC/C/OPAC/NPL/1)を検討し、2016年6月3日に開かれた第2132回会合(CRC/C/SR.2132参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/NPL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門にまたがる締約国の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国が条約に基づいて提出した第3~5回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/NPL/CO/3-5、2016年6月3日採択)、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいて提出された締約国の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/NPL/CO/1、2012年6月15日)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 軍隊による子どもの徴募を禁じた2015年憲法の諸規定。 (b) 真実和解委員会および強制的失踪調査委員会の設置(2015年)。 (c) 学校と平和地帯に関する国家的枠組みおよびその実施ガイドライン(2011年)。 (d) 紛争の影響を受けた子どもの再統合に関する国家行動計画(2010年)。 III.一般的実施措置 調整 5.委員会は、締約国におけるすべての平和構築プロセス(これには武力紛争への子どもの関与に関する問題も含まれる可能性がある)を促進する目的で、2006年11月に平和復興省が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに関連する問題について関連機関間の調整を促進する主要な機関である中央子ども福祉委員会に意思決定の権限がないことを懸念するものである。そのため、十分な権限および明確な任務を有する調整機構が存在しない状況になっている。 6.委員会は、あらゆるレベルのあらゆる機関間で調整を図るための機構を設置する、選択議定書に基づく義務に対して締約国の注意を喚起する。委員会はまた、締約国が、中央子ども福祉委員会であれ今後設置された他の機構であれ、このような機構に対し、選択議定書に基づく活動の実施および評価を調整するための十分な能力および権限が与えられることを確保するとともに、あらゆるレベルでその任務を遂行するために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供することも勧告するものである。 包括的な政策および戦略 7.委員会は、2010年に発表された、紛争の影響を受けた子どもの再統合に関する国家行動計画を歓迎する。委員会はまた、武力紛争の影響を受けた子どもを就学させ、かつ奨学金を提供するプログラムも歓迎するものである。しかしながら委員会は、実際には、武力紛争の影響を受けたすべての子ども(とくに子ども兵士だった者および紛争中の人権侵害被害者)がこれらの取り組みの利益にアクセスできているわけではないことを懸念する。 8.委員会は、紛争の直接の影響を受けた子ども(子ども兵士または被害者など)および一方または双方の親を失ったことにより間接的影響を受けた子どもを全員包摂することを目的として、国家行動計画の評価を実施するよう勧告する。締約国は、その際、ダリットおよびマイノリティの子どもならびに(または)農村部の子どもを含む、被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払うべきである。 資源配分 9.委員会は、選択議定書の実施のための具体的な予算配分が行なわれていないことを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が、選択議定書のあらゆる分野の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源が配分されることを確保するよう勧告する。 普及および意識啓発 11.委員会は、締約国が、平和教育、人権教育および公民教育を初等中等教育のカリキュラムおよびカリキュラム資料に統合したことを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書が広く知られていないことを懸念するものである。委員会はまた、関連の専門家カテゴリーに属する者が選択議定書についての十分な研修を受けていないことも懸念する。 12.委員会は、締約国が、メディア等を通じ、とくに子どもを対象としながら、一般公衆の間で選択議定書の原則および規定を広く普及するよう勧告する。さらに、締約国は、関連するすべての専門家集団(とくに法執行に責任を負う者、裁判官、出入国管理担当者、ソーシャルワーカーおよび医療要員)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的かつ包括的な研修活動を発展させるべきである。 データ 13.委員会は、選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析および監視を行なうための組織的機構が設けられていないことに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関連するすべての分野についての包括的なデータ収集システムを確立するとともに、収集された情報を、武力紛争の影響を受けている子どもおよび武力紛争に関与している子どもの保護に関わる包括的な政策およびプログラムの立案の基礎として活用するよう、勧告する。 IV.防止 年齢確認手続 15.委員会は、締約国の王立陸軍採用規則(1962年)に基づき、18歳未満の子どもには軍隊への入隊資格がないことに留意する。しかしながら委員会は、実際には、すべての者を対象とする実効的な出生登録が現在行なわれていないため、ネパール治安部隊に入隊する者の年齢確認に信頼が置けないことを懸念するものである。この結果、不正規な出生登録または出生証明書の偽造により、18歳に達する前の者が治安部隊に採用されている可能性がある。 16.委員会は、締約国に対し、軍隊への子どもの採用を効果的に防止するため、個々の新規入隊者の年齢が一貫した体系的なやり方で確認されることを確保するよう促す。委員会はさらに、条約に基づく総括所見(CRC/C/NPL/CO/3-5、パラ25)を再確認し、締約国が、締約国のすべての子どもを対象として普遍的な出生登録および身分証明書類へのアクセスを確保するための努力を引き続き強化するよう促すものである。 人権教育および平和教育 17.委員会は、徴集兵および現役兵に対し、選択議定書の規定に関する定期的かつ義務的な教育が実施されているか否かについての情報がないことを遺憾に思う。 18.委員会は、締約国が、徴集兵および現役で軍務に就いている者を対象とする義務的カリキュラムに選択議定書の規定に関する教育が含まれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 19.委員会は、軍隊による子どもの採用を禁じた新憲法第39条第6項を歓迎する。委員会はさらに、国の治安部隊(ネパール陸軍、ネパール警察および武装警察隊)による志願隊員採用の最低年齢は18歳であること、および、これらの治安部隊による採用は、志願に基づいて、かつ自由参加の競争を通じて行なわれなければならない旨の、締約国の説明に留意するものである。しかしながら委員会は、治安部隊または国以外の武装集団による子どもの採用を処罰する具体的法律がないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、軍隊、国以外の武装集団ならびに民間警備会社および軍需産業による18歳未満の子どもの採用および使用ならびに敵対行為における子どもの使用を例外なく明示的に禁止しかつ犯罪化する目的で、刑法改正のプロセスを速やかに進めるよう勧告する。締約国はまた、15歳未満の子どもの徴募を戦争犯罪として定義しかつ処罰するとともに、国際刑事裁判所ローマ規程の批准を検討するべきである。 不処罰 21.委員会は、強制的失踪調査、真実および和解委員会法(ビクラム暦2071年)(2014年)の一部規定を無効とした2015年2月の最高裁判所判決を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の平和復興省による継続的活動には留意しながらも、軍隊および国以外の武装集団による子どもの使用および採用に関連した事件の捜査、訴追および有罪判決の件数および結果に関する情報がないことを遺憾に思うものである。委員会は、同法において、国の軍隊または国以外の武装勢力による子どもの採用が明示的に犯罪とされておらず、これらの行為が処罰されないままになってしまうおそれがあることを深く懸念する。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 強制的失踪調査、真実および和解委員会法に関する2015年2月の最高裁判所判決を全体として尊重しかつ実施すること。 (b) 軍隊および武装集団による子どもの採用および使用について迅速かつ公平な捜査が行なわれること、ならびに、実行犯とされる者が訴追されることおよび有罪判決を受けた者が十分に処罰されることを確保すること。 (c) 過去の国内武力紛争の際に行なわれた選択議定書上の犯罪の実行犯を捜査し、訴追しかつ処罰するための努力を強化すること。 域外裁判権および犯罪人引渡し 23.委員会は、締約国の法律で、締約国において永住許可を有さない外国人が締約国の利益に反してまたは締約国の住民に対して行なった犯罪についての域外裁判権が定められていることに留意する。しかしながら委員会は、双方可罰性が犯罪人引渡しの要件とされていることを懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、選択議定書で禁じられている行為(軍隊もしくは武装集団への子どもの徴集もしくは採用または敵対行為に参加させるための子どもの使用を含む)について、当該犯罪がネパール国民もしくはその他の形で締約国と緊密なつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を設定するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書上で対象とされている犯罪を理由とする犯罪人引渡しについて双方可罰性要件が適用されないことを確保することも勧告するものである。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 25.委員会は、締約国に入国する子どもの難民、庇護希望者および移住者(保護者のいない子どもを含む)であって、国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構が設けられていないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、過去に武力紛争があった国または現在武力紛争が生じている国から来た子どもの難民、庇護希望者または移住者(保護者のいない子どもを含む)であって、敵対行為に関与させられた可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構を整備するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、このような特定の担当者が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取スキルについての訓練を受けていることを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、そのような子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助が提供されることを確保するための対応要綱および専門的サービスを発展させるよう勧告する。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 27.委員会は、ネパール政府、ネパール共産党統一毛沢東主義派および国際連合との間で2009年に調印された具体的な除隊およびリハビリテーションのための枠組みにおいて、当初2973名の子ども兵士が対象とされたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの子どもについて教育上の措置しかとられておらず、心理社会的処遇、武力紛争への直接の関与から生じた精神的トラウマについてのカウンセリング、または紛争被害者としての適切な補償が提供されていないことを懸念するものである。委員会はまた、多くの子ども兵士がこのプログラムの対象とされておらず、現在、被害者として認知されることならびに適切な援助および補償にアクセスすることに関して多くの阻害要因に直面していることも懸念する。 28.委員会は、軍隊もしくは武装集団に採用されていた子どもまたは敵対行為で使用された子ども全員に対し、身体的および心理的回復のためのサービスが提供され、かつリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムへのアクセスが保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。このような措置には、これらの子どもが置かれている状況の慎重なアセスメント、これらの子どもが利用可能な法的助言サービスの強化、ならびに、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に敏感な、子どもおよびジェンダーに配慮した、かつ学際的な援助の提供が含まれるべきである。締約国は、子どもの権利条約に基づく次回の報告書で、この点に関してとられた措置および当該措置を享受した子どもの人数についてのさらなる情報を提供するよう求められる。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 29.委員会は、包括的和平合意およびその他の取決めの実施を支援するため、2007年1月にネパール平和信託基金が設置されたことを歓迎する。 30.委員会は、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施における国際連合児童基金その他の国際連合機関との協力の強化を模索するよう勧告する。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 31.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 32.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁(国防省を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 33.委員会は、選択議定書ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 34.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年1月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/64.html
総括所見:ノルウェー(第4回・2010年) 第1回(1994年)/第2回(2000年)/第3回(2005年)OPSC(2005年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/NOR/CO/4(2010年3月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月21日に開かれた第1480回および第1482回会合(CRC/C/SR. 1480 and 1482)においてノルウェーの第4回定期報告書(CRC/C/NOR/4)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、条約の2つの選択議定書の実施に関する情報も記載した第4回定期報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/NOR/Q/4/Add.1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎するとともに、締約国における子どもの状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、豊かな情報を含んだ報告書および上級レベルの部門横断型代表団との率直かつ建設的な対話を賞賛する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の法律が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 児童福祉法改正(未成年者のための児童養護センターに関する第5A章を含む)(2009年6月/7月)。 (b) 児童福祉事案を扱う専門児童委員会の設置に関する新法(2009年3月)。 (c) 反差別およびアクセシビリティ法(2009年1月)。 (d) 新移民法(2008年5月15日)。 (e) 民族、宗教等を理由とする差別禁止法(2006年1月)。 (f) 平等・反差別オンブッドおよび平等・反差別裁定委員会に関する法律(2006年1月)。 (g) 新幼稚園法(2005年6月)。 4.委員会は、締約国が、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を2003年9月に批准したことを歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 5.委員会は、条約に基づく締約国の第3回定期報告書(CRC/C/15/Add.263)および2つの選択議定書に基づく第1回報告書(CRC/C/OPAC/NOR/CO/1およびCRC/C/OPSA/NOR/CO/1)についての委員会の総括所見を実施するために締約国が行なってきた努力を歓迎するとともに、この総括所見に記載されている積極的側面、懸念および勧告ではこれらの3つの条約に基づく締約国の義務に言及されていることに締約国の注意を促す。 留保 6.委員会は、「罪を問われている少年および少年犯罪者を成人から隔離しておく義務に関して」締約国が市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に対して付した留保について懸念する。これは子どもの権利条約に基づく子どもの権利にも影響するためである。 7.委員会は、締約国に対して当該留保の撤回を検討するよう促すとともに、少年司法について触れたこの総括所見のパラ59および60に対して締約国の注意を促す。 立法 8.委員会は、法律を条約と全面的に調和させる目的で法律を改正しまたは新法を採択するために政府が行なっている現在進行中の活動に留意するとともに、条約とノルウェー法との関係の専門的検討を命じた政府の取り組み(ソーヴィッグ報告)を歓迎する。 9.委員会は、締約国が、ノルウェー法を条約と調和させるための努力を引き続き行なうよう勧告する。そのための手段には、健康に関わる事柄について意見を聴かれる子どもの権利、プライバシーに対する子どもの権利の保護および親から分離された子どもの後見に関する規則との関連で子どもの権利を基盤とする改正または新法制定を行なうことも含まれる。 調整 10.委員会は、ノルウェーで自治体の自律性が重視されていることは認識しながらも、政府と自治体の間、自治体間および自治体内の調整を向上させるための努力が効果を発揮しておらず、そのためさまざまなサービスの利用可能性、サービスへの容易なアクセスおよびサービスの調整ならびに新たな課題に応じた修正可能性が、国全体で比較可能な形で保障されていないことを懸念する。委員会は、子どもの権利を実施する自治体のサービスに、そのようなサービスの提供規模および合意された提供枠組みの遵守の度合いの面で大幅な違いがあることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、調整が行なわれていないために、脆弱な立場に置かれて権利を軽視されやすい傾向にある子どもの集団がその権利の実施に関して特別な欠陥が生じるおそれにさらされていることも、懸念する。 11.委員会は、締約国が、政府の「モニタリング向上」イニシアティブ等も活用しながら国全体で子どもの権利がどの程度実施されているかを緊密に監視し、合意された規則および枠組みをすべてのサービス提供者が遵守しているかどうか監視するための機構の活用を強化し、かつ、あらゆるレベルで調整のとれたサービスを提供するためのシステムにおいて、権利の全面的享受のために特別な援助を必要とする子どもに特段の注意が払われることを確保するよう、とりわけ緊急に勧告する。 国際協力 12.委員会は、国際協力に貢献するために締約国が行なっている力強い努力を歓迎する。委員会はまた、子どもの権利への言及が多数見られる締約国の白書「グローバル経済における企業の社会的責任」(議会宛報告書No.10 2008-2009)も歓迎するとともに、企業と人権に関する国際基準(そこでは子どもおよびその権利に対しても言及されるべきである)を策定するための国際連合の努力に対する締約国の支持にも、関心をもって留意するものである。委員会は、締約国に対し、二国間の開発パートナーとの協力においては、子どもによるその権利の享受を増進させる目的で、委員会のそれぞれの総括所見も考慮に入れるよう奨励する。 独立した監視 13.委員会は、子どもオンブズマンの任期に関して新たに採択された規則に留意するものの、子どもからの苦情を受理する権限は必要なときに子どもに即時的援助を与えるひとつの方法であり、かつ子どもの権利侵害に関わる主要な問題領域を判定するための手段として機能しうるにも関わらず、このような権限を子どもオンブズマンに与えるという委員会の提案が受け入れられなかったことを遺憾に思う。 14.委員会は、締約国が、子どもからの苦情を受理する権限および時宜を得た効果的なやり方で苦情のフォローアップを行なうための資源をオンブズマンに与えることを検討するよう、勧告する。 資源配分 15.委員会は、2010年の中央予算により自治体で新たに400のポストが創設される予定であることを歓迎するものの、自治体の高度な自律性に鑑みれば、この予算が必ずしも子どものためのサービスの向上に配分されるとはかぎらない可能性があることに留意するとともに、締約国によれば今後さらに多くのポストが必要になるとされていることにも留意する。委員会は、地理的所在によって子どもが利用可能なサービスに格差が存在し、かつこれらのサービスのなかには職員が深刻に不足しておりかつ資源も不十分なものがあるという情報(子どもからの情報も含む)を懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、子どもの基本的権利を実施するための質の高いサービスが国全体で利用可能とされることを確保するために必要な自治体向けの人員および物的資源を増加させる努力を継続しおよび強化し、ならびに、配分された資源を自治体がこの目的のために用いることを確保するための措置をとるよう、促す。委員会は、締約国が、子どものための予算配分を監視する目的で子どもの権利の視点からの予算追跡を導入するとともに、子どもの権利のための資源〔配分〕――国の責任に関する2007年の一般的討議をもとにまとめられた委員会の勧告を考慮に入れるよう、勧告するものである。 普及、研修および意識啓発 17.委員会は、条約に関する意識啓発ならびに子どもに関わる専門家および実務家の研修に関して締約国が行なっている努力は評価しながらも、にもかかわらず、この研修がすべての専門家集団を完全に網羅しておらず、義務的でなく、かつ体系的にフォローアップされていないことを懸念する。委員会は、子どもに対して責任を負う地方の公的機関が条約に掲げられた権利について十分精通していないことをとりわけ懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(子どものケアのための施設の職員、保健従事者、ソーシャルワーカーおよび法執行官を含む)の体系的研修を継続しおよび強化し、ならびに、政策立案機関および自治体の行政機関においても子どもの権利の関する意識を高めるべきであるという、これまでの勧告をあらためて行なう。委員会はまた、子どもの権利に関する包括的情報を、単科大学および総合大学における、子どもおよび家族に対応するあらゆる職業の養成カリキュラムならびにあらゆる段階の学校カリキュラムの一部とすることも勧告するものである。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) (訳者注)2が欠落しているのは原文ママ。 差別の禁止 19.委員会は、2006年1月に反差別法が施行されたこと、ならびに、やはり2006年に平等・反差別オンブッドおよび平等・反差別裁定委員会が設置され、かつ「平等促進および民族差別防止のための行動計画」が採択されたことを歓迎する。委員会は、子どもの年齢差別が法律に含まれるべきか、および、子どもが年齢を理由として差別された場合に苦情を申し立てる権利を与えられるべきかについて現在行なわれている議論に留意する。しかしながら委員会は、マイノリティおよび先住民族の子どもがスティグマを付与されかつ不当な取扱いを受けている(他の子どもによるものも含む)と感じており、かつ、障害のある子どもから自分の権利が尊重されていないという不満が出されているという情報(子どもからの情報も含む)があることを懸念するものである。 20.委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団の子ども、先住民族の子どもおよび障害のある子どもに対する差別と闘い、かつ、差別から保護されるすべての子どもの権利について子どもが幼いころから慣れ親しむようにするため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、法律の適用範囲を拡大することにより年齢を理由とする差別から子どもを保護する可能性について注意深く検討するようにも勧告するものである。 21.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち、子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 22.委員会は、2004年のケース取扱い規則および2006年の子ども法改正(いずれも監護事案における子どもの保護に言及している)、ならびに、子どもの庇護申請および人道的理由に基づく在留申請の意思決定手続を規制する2008年の新移民法において、子どもの最善の利益が指導的原則のひとつとして強調されていることを認識する。にもかかわらず、委員会は、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならないという原則がまだ子どもに影響を与えるすべての分野で適用されているわけではないこと(子どもの監護権に関わる事案および出入国管理関連の事案など)、および、子どもの最善の利益を考慮することに責任を負う者が、影響を受ける子どもの最善の利益に関して事案ごとに徹底したアセスメントを実施するための十分な訓練を常に受けているわけではないことを、懸念するものである。 23.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、すべての法規定ならびに司法上および行政上の意思決定手続(家族問題および代替的養護の問題ならびに出入国管理関連の事案に関わるものを含む)ならびに子どもに影響を与えるすべてのプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するための努力を、締約国が継続しかつ強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この原則を運用する方法に関する実際的支持を策定し、かつ、子どもまたは子どもたちの最善の利益の判断に関与するすべての者に対して研修を行なうようにも勧告するものである。 子どもの意見の尊重 24.委員会は、子ども法および児童福祉法の改正により、子どもが自己に関連する事案において意見を表明する権利を認められる年齢が12歳から7歳に引き下げられたこと、および、7歳に満たない子どもでも意見を聴かれる可能性があることを歓迎する。しかしながら委員会は、実際には、子どもの生活についての決定または子どもの生活のための取決めのすべての段階で、とくに子どものケアおよび出入国管理に関わる事案において、意見を聴かれる子どもの権利が全面的に実施されまたは効果的に実践されているわけではないことを懸念する。委員会は、健康問題に関して子どもが意見を聴かれる権利を認められるのは12歳に達して以降のみであることを遺憾に思うものである。委員会は、12の自治体で行なわれている試験的プロジェクトによって16歳以降の子どもが地方選挙で投票できるようになることに、関心をもって留意する。 25.委員会は、条約第12条を全面的に実施し、かつ行政上および司法上の手続(子どもの監護に関わる審理および出入国関連の事案を含む)ならびに社会一般においていかなる年齢の子どもの意見も正当に尊重されることを促進するための努力を、締約国が継続しかつ強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、家庭、学校、その他の子ども施設、コミュニティ、国の政策立案ならびに計画、プログラムおよび政策の評価における子どもに関わるすべての事柄について、子どもの参加を促進し、子どもがこの権利を効果的に行使できるよう援助し、かつその意見が正当に重視されることを確保するようにも勧告するものである。条約第29条にしたがい、委員会は、締約国に対し、16歳からの投票に関する試験的プロジェクトが公民教育および人権教育の提供を通じて適切に支援され、かつ、思春期の子どもの市民としての役割に対して当該プロジェクトが及ぼす影響が評価されることを確保するよう、奨励する。委員会は、締約国が意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮するよう勧告するものである。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 思想、良心および宗教の自由 26.委員会は、子どもは人間生命の基本的な疑問および課題に対するさまざまなアプローチについて公正な方向づけを与えられるべきであることを示すために現在では「宗教・生命哲学・倫理」と題されている学校科目について行なわれた教育法改正を歓迎するものの、この目標が実際にどのように実施されているかについて懸念を覚える。委員会はさらに、その教育目標がノルウェー法と両立しているかに関してめったに検討されることがない、いくつかの孤立した宗教的コミュニティの子どもについて懸念を覚えるものである。 27.委員会は、締約国が、改訂された学校科目「宗教・生命哲学・倫理」の目的がどのように達成されており、かつ、この科目の目標を十分に実施するために教員はどのような支援を必要としているかに関する研究を実施するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、孤立した宗教的コミュニティの教育上の目標および実践を、ホリスティックかつ人権志向の教育に対する子どもの権利との両立性の観点から検討するよう勧告するものである。 プライバシーの保護 28.委員会は、親が、子どもの生活の詳細をウェブで明らかにする(監護権をめぐる紛争での立場を有利にすることが目的の場合もある)際にプライバシーに対する子どもの権利を侵害する可能性があるという情報に懸念を覚える。 29.委員会は、締約国に対し、親その他の者が、子どもに関する情報であってプライバシーに対する子どもの権利を侵害しかつ子どもの最善の利益にかなわないものを明らかにすることを防止する権限を、ノルウェー・データ調査局に与えるよう勧告する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 30.委員会は、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告をフォローアップするために締約国がとった措置に、評価の意とともに留意する。委員会はとくに、親密な関係における暴力を対象とする新たな規定を刑法に含めることにもつながった、親密な関係における暴力に関する行動計画(2004~2007年)を歓迎するものである。委員会はまた、子どもに対する暴力に関する子ども法改正の提案が提出され、現在ノルウェー議会で検討されていることに、関心をもって留意する。委員会は、締約国が提供している、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表への支援をきわめて高く評価するものである。 31.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ(スロベニア))の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。とくに、委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告するものである。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 (ii) 防止を優先すること。 (iii) 子どもの参加を確保すること。 (iv) 国際的コミットメントを強化すること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための具体的なかつ期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながらおよびとくに子どもの参加を得ながら研究の勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と連携し、かつ同代表を引き続き支援すること。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 32.委員会は、父親の親休暇が10週に延長されたことを歓迎する。委員会はまた、同棲中の両親が子ども法のもとで子どもに対する共同親責任を認められるのが通例であること、および、親を能力面および責任面で援助するための家族カウンセリング・サービスが拡大されかつ強化されたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、別居および紛争の際に裁判官および専門家が十分な資質を有していない場合があること、子どもが、別居および紛争の際、その最善の利益にかなう場合に双方の親との接触を確保するための援助を受けていないこと、および、親とともに暮らす子どもの権利が親の退去強制の待機期間中に十分に考慮されていないことを、懸念する。委員会はさらに、子どもが収監中の親と継続的関係を保つことが十分に支援されていないことを懸念するものである。委員会はまた、重大なネグレクトおよび虐待の場合を除き、児童福祉機関は親の同意がなければ子どもに援助を提供できないことも懸念するとともに、このために、援助を必要としている子どもが援助を受けられていない可能性があることに留意する。 33.委員会は、締約国が、親としての責任を適確に履行できるよう親を援助するための努力を強化するとともに、カウンセリング、紛争解決または家族別離問題に関与するすべての専門家および実務家の、家族生活の継続を支援しまたは監護に関するもっとも受け入れ可能な解決策を見出す能力、および、離婚または別居の際にはあらゆる状況において子どもの最善の利益を考慮しながら双方の親との子どもの接触を援助する能力を増進させるための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、親の退去強制の際には親とともに暮らす子どもの権利が十分に考慮されるべきこと、および、刑務所当局は子どもが収監中の親と面会するための手配の便宜を図るべきことも、勧告するものである。委員会はさらに、親に通知することによって子どもに援助を提供する可能性が阻害されるおそれがあるときは親の同意とは独立に児童福祉機関に接触を図る権利を子どもに与えるよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 34.委員会は、締約国が、親と暮らすことのできない子どもが入所型養護施設に措置される件数を減らし、これに代えて可能な場合には常に里親家庭を活用するための努力を行なってきたことに留意する。しかしながら委員会は、広範な在宅援助にも関わらず、家庭養育から分離される子どもの人数が増えていることを懸念するものである。委員会は、里親家庭のすべての子どもについていずれかの監督者が指定されているわけではないこと、および、監督者が自己の任務に関する準備を十分に整えていない可能性があることに、遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、適切な選択肢がすべての場所で利用できるわけではないこと、および、そのため子どもの措置が時として運次第になっていることも懸念するものである。委員会はさらに、家族および子どもに対する在宅援助ならびに代替的養護への措置を担当する児童福祉機関が深刻な資金不足に陥っており、かつ、里親家庭または在宅の子どもに関して予防的活動およびフォローアップ活動を行なう能力も制約されていることを懸念する。 35.委員会は、締約国が、子どもに対して十分なケアおよび支援を提供できなくなるおそれがある家族についての予防的努力を拡大しおよび強化し、ならびに、予防的努力がうまくいかないときは、子どもに対してその最善の利益にしたがった養護を提供するために必要なさまざまな代替的便益を利用可能とするための資源を、児童福祉機関に対して提供するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、代替的養護下にある子どもを注意深くフォローアップし、子どもの家庭復帰の可能性を定期的に検討し、かつ、成年に達するまで子どもが代替的養護下に留まるときは成人期への移行を容易にするよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの代替的養護に関する国連指針〔PDF〕(総会決議A/RES/64/142)を考慮するようにも勧告するものである。 虐待およびネグレクト 36.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトに対応するために締約国が策定した多数の行動計画に、評価の意とともに留意する。委員会は、裁判官、専門家および弁護士を対象として、暴力および虐待ならびに暴力および虐待が疑われる場合の監護事件に関する研修が行なわれたことを歓迎するものである。しかしながら委員会は、同国の一部地域の児童福祉機関が暴力にさらされている子どもを特定しかつ支援するための資源または能力を有していないこと、および、既存のヘルプラインが子どもに十分に周知されていないことを懸念する。委員会はまた、種々の文化の家族で生じる暴力への対応および暴力と無縁な子育てに関する助言の伝達についての能力が限られていることも懸念するものである。 37.委員会は、締約国が、国のすべての地域の子どもおよび家族に対して他の文化の尊重を考慮した十分かつ適切な援助が提供され、かつ、子どもがヘルプラインおよび効果的援助を受けられるところについての情報を有することを確保するよう、勧告する。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 健康および保健サービスへのアクセス 38.委員会は、食生活向上に関する行動計画(2007年まで)および運動に関する行動計画(2005~2009年)に評価の意とともに留意する。委員会は、公立保健所制度および学校保健サービスを強化することに対する締約国のコミットメントを認めるものである。しかしながら委員会は、受領した情報(子どもからのものも含む)によれば自治体はいまなおこれらのサービスを比較可能な規模および質で提供していないことを、懸念する。 39.委員会は、締約国が、子どもが国内のすべての場所で良好な保健サービス(学校におけるものを含む)にアクセスできることを確保するよう勧告する。 思春期の健康 40.委員会は、薬物およびアルコールの問題を防止するための早期介入に関する指針が2009年に導入されたこと、および、薬物およびアルコールの濫用に関する拡大計画が2010年に開始されることを歓迎する。ここ数年、子どもおよび若者による有害物質濫用の水準が安定しておりまたは若干下降していることには留意しながらも、委員会は、この水準が依然として高いことを依然として懸念する。加えて、薬物の過剰摂取による若者の死亡件数が多いことは委員会にとって重大な懸念の対象である。 41.委員会は、締約国が、薬物濫用を減らすための努力を継続しかつ強化するとともに、思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れるよう勧告する。 精神保健 42.全国精神保健プログラムを通じて子どものための精神保健サービスが改善されつつあることには留意しながらも、委員会は、子どもおよび若者のための精神保健ケアの待機期間がますます長くなっていることを懸念する。委員会はまた、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された子どもに対してリタリンおよびコンサータのような精神刺激薬が処方される例が短期間に急速に増加していることを示す研究について、深刻な懸念を覚えるものである。 43.委員会は、締約国が、精神保健ケアの分野で子どもを対象として活動する、特別な訓練を受けた専門家の人数を増やすことを通じ、子どもおよび若者を対象とする精神保健ケア制度のあらゆる要素(予防、プライマリーヘルスケアにおける一般的な精神保健問題の治療および深刻な障害の専門的ケアを含む)を引き続き発展させるとともに、精神保健サービスにおける待機期間を短縮するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもに対する精神刺激薬の過剰処方現象を注意深く検討するとともに、ADHDと診断された子どもならびにその親および教員が広範な心理的、教育的および社会的措置および治療にアクセスできるようにするための取り組みを行なうことも勧告するものである。 有害な伝統的慣行 44.女性性器切除(FGM)および強制婚の防止のための行動計画(2008年)ならびに双方の問題に対応するためにとられた措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、強制婚および近親婚の件数が増えているという報告に懸念を覚える。委員会はまた、FGMが行なわれた事件が系統だった収集および訴追の対象となっておらず、かつ、通報された事件でさえ、資源が限られていることおよび関連機関間の調整が不十分であることを理由として警察によって却下されているという報告にも懸念を覚えるものである。 45.委員会は、締約国に対し、とくに子どもとの関連で、FGM、強制婚および近親婚の問題に対応するための防止措置および保護措置(これらの行為の加害者を訴追することも含む)を継続しかつ強化するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、これらの慣行の悪影響に関する意識を高めるためにコミュニティの指導者およびNGOと協力すること、同国で強制婚が増えているとされることの実際の理由を明らかにするために強制婚に関して収集された情報を分析すること、および、締約国の国際協力プログラムにFGMおよび強制婚との闘いを含めることを奨励するものである。 十分な生活水準に対する権利 46.委員会は、貧困線以下の生活を送っている子ども、とくに親が失業している家庭、〔親の〕教育水準が低い家庭、ひとり親家庭、複数の子どもがいる家庭および移民家族の子どもに対してますます注意が払われるようになっていることに留意する。委員会は、家族および子どもを対象とする措置は歓迎するものの、これらの措置において、貧困が発達、健康および教育に及ぼす悪影響から子どもが具体的に保護されていないことを懸念する。委員会は、世帯所得補充手当に不平等かつ非体系的な差異があることもあって貧困率が全国で明らかに異なること、および、多くの低所得家庭が暮らしている自治体住宅がより子どもにやさしい環境に改修されていないことを懸念するものである。 47.委員会は、とくに乳幼児期の具体的ケアおよび教育、発達および学習に関する不利な条件を埋め合わせるための学校における特別プログラム、不利な立場に置かれた集団の子どもの栄養状態および健康を改善するための措置、ならびに、自治体住宅をより子どもにやさしいものにするための努力によって、締約国が、貧困下で暮らしている子どもをその状況の有害な影響から保護するための努力を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、貧困家庭が、ノルウェーのどこに住んでいるかに関わらず十分な援助を受けられることを確保するよう促すものである。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 48.委員会は、質の高い幼稚園への幼児の完全通園を達成するという締約国の政策に留意するものの、新たに到着した幼い難民のインクルージョンのために使途指定の補助金が支給されているにも関わらず、移民の背景を有する子どもが十分に就園していないことを懸念する。委員会はさらに、基礎的なノルウェー語および母語による新カリキュラムにしたがっていない自治体が多く、そのため子どもの進路全般に悪影響が生じていることを懸念するものである。マジョリティ層の子どもならびに普通中等学校および職業中等学校双方の子どもを含む子どもの中退率も、委員会にとってさらなる懸念の対象である。委員会は、幼稚園および学校におけるいじめと闘うために行なわれている多くの努力を歓迎するものの、これらの場所において高水準のいじめが生じているとされることを深く懸念する。 49.委員会は、締約国に対し、早期教育の価値についてすべての親を教育し、かつすべての子ども(とくに移民の子どもおよび早期教育支援を必要とするその他の子ども)に対して良質な幼稚園への就園を保障するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国が、子どもが教室での指導によりついていけるようにするため、学校に新言語カリキュラムを導入するよう自治体に緊急に助言するとともに、伝統的に修了率がよくない集団にとくに焦点を当てながら、子どもが学校教育を修了することを確保するための措置をとるようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、学校におけるいじめと闘うための努力を継続しかつ強化するとともに、子どもたちに対し、これらの有害な行動を減らしかつ解消するための努力に参加するよう促すことを勧告する。 8.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第30条、第32~36条) 子どもの難民、庇護希望者および保護者のいない子ども 50.委員会は、締約国が明らかにしたところによれば、保護者のいない庇護希望者に関わる事案の検討は優先されなければならないことを歓迎する。委員会は、新移民法が、新たな出入国管理規則とともに、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される旨を定め、かつ子どもに在留許可を与える基準を緩和したことに、関心をもって留意するものである。委員会はまた、児童福祉法第5A章によって、保護者のいない子どもに関する責任が児童福祉機関に委譲されることも歓迎する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念を表明するものである。 (a) 武力紛争の影響を受けた子どもの特定がおざなりにされていること。 (b) 決定が行なわれるまでに時間がかかること。 (c) 後見人がしばしば過重な負担を抱えており、そのために役割を十分に果たせていないこと。 (d) 締約国が、無作法であり、文化的に配慮を欠き、かつ全般的に信頼できないと見られている年齢判定法を活用する可能性を検討していること。 (e) 受入れセンターから失踪する、保護者のいない子どもの人数が増えていること。 (f) 保護者のいない子どもの庇護希望者が児童福祉機関によって十分にフォローアップされていないこと。 51.委員会はまた、締約国が児童福祉機関の責任を15歳未満の子どもに限定し、15歳以上の子どもをそれよりも少ない援助しか受けられない状況に置いていること、および、人道的理由に基づく在留許可の決定に際しては子どものノルウェーとの結びつきが重視されるという締約国の発言にも関わらず、ノルウェーで長年暮らしてきた子どもが、ノルウェーとの結びつきを示す確固たる書類があるにも関わらず退去を強制される場合がある旨の報告があることも、懸念する。委員会はさらに、保護者のいない子どもの庇護希望者の養護教育センターをその出身国に設置しようという締約国の計画について懸念するものである。これらの子どものほとんどは戦争および紛争がはびこっている国々の出身であり、出身国では保護を保障することができないためである。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの庇護希望者のなかから武力紛争の影響を受けた子どもを注意深く特定し、かつこれらの子どものリハビリテーションおよび社会的再統合を確保すること。 (b) 手続の理解に関して子どもの庇護希望者を援助する後見人を迅速に任命するとともに、提出されている後見人制度関連法案を通じて後見人の役割を明確にすること。 (c) 庇護希望者の地位が決定されるまでの待機期間を短縮するための措置をとること。 (d) 年齢判定の手続が科学的な、安全な、子どもおよびジェンダーに配慮した公正なやり方で実施されることを確保し、子どもの身体的不可侵性が侵害されるいかなるおそれも回避すること。 (e) 計画どおり、児童福祉機関の責任を15歳、16歳および17歳の子どもにも拡大すること。 (f) これらの子どもを、ノルウェーでの滞在中、注意深くフォローアップすること。 (g) 子どもが失踪して人身取引および搾取を行なう者の手中に陥ることがないようにすること。 (h) 失踪の事案を調査し、かつ姿を隠された子どもへのアクセスを可能にする方法を見出すこと。 (i) 安全ではない避難元への子どもの送還を回避するとともに、このような子どものノルウェー滞在を、子どもがより平和的条件のもとで帰還する際に必要とされる能力および技能を身につけさせるための機会として活用すること。 (j) 子どもの将来についての決定が検討されているときは常に、当該の子どもの最善の利益およびノルウェーとの結びつきが第一次的に考慮されることを確保すること。 (k) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮すること。 売買、取引および誘拐 53.委員会は、人身取引に関する刑法の規定(第224条)が、搾取することおよび他の者を物乞いに誘い込むことも対象とされることを強調するため2006年6月に改正されたことに、関心をもって留意する。委員会は、人身取引被害者の援助および保護を全国的に調整するためのプロジェクトである「人身取引被害者援助・保護調整部局」(KOM)の存在に、評価の意とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもの人身取引被害者に関する情報が断片的であり、かつ、子どもを売った者および移送した者ならびに取引された子どもを搾取した者が効果的に裁判にかけられていないことを懸念する。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2009年に終了した行動計画の結果を評価し、かつ新しい行動計画策定のために当該検討結果を活用すること。 (b) 売買および取引の被害を受けた子どもに焦点を定めるとともに、この犯罪と闘う任務を与えられた諸部局に対して必要な人的資源および財源を配分すること。 (c) 国内に存在する人身取引被害者を系統的に特定し、人の売買、取引および誘拐を犯罪とする法律を執行し、かつ被害者が的確な処遇を受けるようにするための措置を発展させかつ実施すること。 性的搾取および虐待 55.委員会は、性的搾取および虐待の分野における刑法の新たな規定および改正(児童ポルノに関する規定および性犯罪を行なう意図で子どもと会うことに関する規定を含む)を歓迎する。委員会はまた、子どもに対する性的および身体的虐待を防止する戦略計画(2005~2009年)も歓迎するものである。委員会は、とくに性的搾取および虐待の規模を地図上で明らかにするためのマッピング・プロジェクトが実施されたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、性的虐待を含む虐待を経験した子どもに支援を提供する「チルドレンズ・ハウス」の存在にも評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、性的搾取および虐待への対応に関わる能力が限定されていることを遺憾に思う。委員会はまた、裁判官による事件の審理に関して14日という法定期限が設けられているにも関わらず、性的虐待事件の通報から審理までに非常に時間がかかっていることも懸念するものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントならびにこの問題に関する他の国際会議の成果にしたがい、防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを引き続き実施すること。 (b) より多くのチルドレンズ・ハウスをすべての県に設置し、かつこれらの施設に十分な人的資源および財源を提供すること。 (c) 搾取および虐待を受けた子どもが可能なかぎり早期に援助を得ることを確保すること。 (d) 性的搾取および虐待に関する知識が、子どもを対象として活動する専門家および子どもを保護する専門家の養成・研修プログラムに統合されることを確保すること。 (e) 14日という法定期限にしたがい、性的虐待事件の審理を迅速に行なうこと。 少年司法 57.対話中に明らかにされたように、ノルウェーで収監されている18歳未満の子どもの人数は少なく、かつ拘禁されている子どもおよび若者は収監の有害な影響を防止するための特別フォローアップを刑務所職員から受けていることには留意しながらも、委員会は、収監される子どもの人数が増えていること、および、これらの子どもが成人の被収容者と別に拘禁されていないことを懸念する。委員会はまた、刑務所の物理的環境が子どもにふさわしくない可能性があること、および、罪を犯した少年の取扱いに関する刑務所職員向けの研修が義務的でないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、犯罪を行なった15歳未満の子どもの司法的および手続的取扱いに関する情報が存在しないことも懸念する。 58.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう、促す。 とくに委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもが最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間でしか拘禁されないことを確保するとともに、適当な場合には常に、罪を犯した少年を対象とするダイバージョンの措置を積極的に追求することによって、収監されている子どもの人数を削減すること。 (b) 拘禁が行なわれるときは、法律を遵守して、かつ条約に掲げられた子どもの権利を尊重して行なわれることを確保すること。 (c) 子どもが未決拘禁の際も刑を言い渡された後も成人とは別に収容されるようにすること。 (d) 司法制度の対象とされている子どもとともに働く者、少年裁判官、刑務所吏員、保護観察官等が適切な研修を受けることを確保するために必要な措置をとること。 (e) 収監期間を更生および教育(職業訓練を含む)のために積極的に活用すること。 (f) 条約および国際基準にしたがい、犯罪を行なった15歳未満の子どもが民事上の機関または行政機関によって取り扱われることを確保するとともに、これらの子どもが代替的措置にアクセスできるようにすること。 犯罪の証人および被害者の保護 59.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも勧告する。 マイノリティ集団に属する子どもおよび先住民族の子ども 60.委員会は、マイノリティおよび先住民族の子どもの権利を確保するために締約国が行なっている努力を歓迎するとともに、「平等促進および民族差別防止のための新行動計画(2009~2012年)」、「サーミ諸語強化行動計画」および「オスロにおけるロマの生活条件を向上させるための行動計画」に留意する。委員会は、締約国が、先住民族集団に属する子どもの言語的ニーズをとくに考慮するようマスメディアに奨励する意思を明らかにしたことに、関心をもって留意するものである。しかしながら委員会は、民族的マイノリティの子どもに対する児童福祉援助の水準がはるかに低いこと、移民の背景を有する子どもの10%はその文化的背景を理由とする脅迫または暴力を経験したことがあること、および、マイノリティの背景を有する男子はマジョリティの子どもよりも頻繁にいじめを経験していることに、懸念とともに留意する。 61.委員会は、民族的マイノリティの背景を有する子どもおよび先住民族の子どもが子どものすべての権利(福祉、保健サービスおよび学校へのアクセスを含む)に平等にアクセスでき、かつ偏見、暴力およびスティグマから保護されることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告する。 9.国際文書の批准 62.委員会は、締約国が、子どもの権利の実施にも関係する国際人権文書であって締約国がまだ加盟国となっていないもの、とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、勧告する。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 63.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会(ストーティング)、関連省庁および最高裁判所ならびに適用可能なときは地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 64.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 65.委員会が採択し、かつその報告書(CRC/C/114およびCRC/C/124)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、ならびに締約国の第5回定期報告書の提出期限が第4回定期報告書の検討後3年を待たずに到来することに留意し、委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2016年10月6日(すなわち、条約で定められた第6回定期報告書の提出期限の18か月前)に提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月5日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/fbleiflsd/pages/143.html
子どものためならば、親というものは血眼になってでも何でもするものですよね。 まあ、そういう人たちばかりではないのかもしれんけれども、 少なからず自分はそういう人間でありたいと思ってはいます。 しっかり親になりたいんですよね。 そして立派ではなくとも普通に子どもが困らないぐらいには育て上げたいと考えています。 あまり考えすぎるのも良くはないのでしょうけれども、 少なからず親としての最低限はクリアしたいと思っています。 アクア・ネックレス
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/57.html
総括所見:イギリス(第3~4回・2008年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第5回(2016年)英領香港(当時、1996年)/英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/GBR/CO/4(2008年10月20日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年9月23日および24日に開かれた第1355回~第1357回会合(CRC/C/SR.1355-1357参照)において大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第3回・第4回定期報告書(CRC/C/GBR/4)を検討し、2008年10月3日に開かれた第1369回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回統合報告書、および事前質問事項に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、多部門の上級職員からなる代表団との間で持たれた率直かつ建設的な対話も歓迎するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して同日に採択された総括所見(CRC/C/GBR/OPAC/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 対話の過程で締約国から提供された、条約第22条および第37条(c)に付された留保を撤回する旨の決定に関する情報。 (b) 2004年子ども法、2006年保育法および「イングランド子ども計画」(2007年)をはじめ、条約の規定および原則に直接言及する、子どもの権利に関わる多くの法律が採択されたこと。 (c) 平等人権委員会が創設されたこと。 (d) 子どもに影響を及ぼすイングランドのすべての政策について主たる責任を有する、子ども学校家庭省(DCSF)および子ども学校家庭大臣が創設されたこと。 (e) 締約国の国内裁判所で条約が参照された事例があること。 5.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准プロセスを開始するために必要なすべての立法上その他の措置がとられた旨の締約国の発表を歓迎する。委員会はまた、第2回報告書の検討(2002年)以降、締約国がとくに次の文書を批准しまたはこれに加入したことにも、評価の意とともに留意するものである。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2003年6月24日)。 (b) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2003年12月10日)。 (c) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2004年12月17日)。 (d) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ第33号条約(2003年2月27日)。 (e) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年2月9日)。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会のこれまでの勧告 6.委員会は、これまでの締約国報告書に関する総括所見を実施するための締約国の努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部、とくに以下の点に関わる勧告が全面的に実施されていないことに、遺憾の意とともに留意する。 (a) 連合王国の第2回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.188)については、とくに、締約国の法律への条約の編入(パラ8~9)、予算配分(パラ10~11)、条約の普及および条約に関する意識(パラ20~21)、差別の禁止(パラ22~23)、体罰(パラ35~38)、教育(パラ47~48)に関わる勧告。 (b) 連合王国・海外領土についての第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.135)については、とくに、子どもの定義(パラ21~22)、ドメスティック・バイオレンス、不当な取扱いおよび虐待(パラ33~34)、薬物および有害物質の濫用(パラ51~52)、少年司法(パラ55~56)に関わる勧告。 (c) 連合王国・マン島の第1回報告書〔に関する総括所見〕については、とくに、体罰(パラ26~27)および少年司法(パラ40~41)に関わる勧告。 7.委員会は、締約国に対し、これまでの報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ――または十分に――実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。この文脈において、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年)に対して締約国の注意を喚起するものである。 留保および宣言 8.委員会は、条約第22条および第37条(c)に関する留保の撤回の発表を歓迎しながらも、締約国が、海外領土および王室属領への第32条の適用に関する留保を維持していることを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国に対し、海外領土および王室属領との関係における第32条への留保を撤回するよう奨励する。 立法 10.委員会は、とくに2004年子ども法(イングランドおよびウェールズに適用され、とくにイングランドに子どもコミッショナーを創設したもの)および2006年保育法の採択により、自国の法律を条約と調和させるために締約国が行なっている努力を評価する。しかしながら委員会は、同国全域のすべての法律において条約の原則が正当に考慮されているわけではないこと、および、締約国が条約を国内法に編入しておらず、かつ子どもに影響を及ぼすすべての法律が条約に一致することを確保しているわけでもないことを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、締約国が引き続き自国の法律を条約に一致させるための措置をとるよう勧告する。この目的のため、締約国は、この点に関わって北アイルランドにおける権利章典案および英国権利章典案の策定によって与えられた機会を活用し、たとえばこれらの法案に子どもの権利についての特別な項目を設けることによって、これらの法案に条約の原則および規定を編入することを考えることができる。 調整 12.委員会は、締約国が地方分権体制のもとで機能していること、および、このシステムのため条約の実施を調整する単一機関を設けるのが困難であることに留意する。これとの関連で、イングランドにおいて子ども若者家庭大臣官房室に責任を集中させたことならびにスコットランドおよびウェールズでも同様の発展が見られたことのような、調整のために行なわれてきた最近の努力は歓迎されるところである。にもかかわらず、委員会は、締約国全域(地方レベルを含む)で条約の包括的および効果的実施を調整しかつ評価する任務を委ねられた機関が存在しないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、締約国が、とくに地方当局が優先順位の決定および予算配分について相当の権限を有している現状では地方レベルも含めて、締約国全域で条約の実施の効果的調整を確保するべきである旨の、前回の勧告を繰り返す。この目的のため、締約国は、十分な資源を与えられ、かつ円滑に機能する調整機関が各法域に設けられることを確保することに加え、締約国全域で条約の調整および評価を行なう責任を、高い地位および注目度を有する単一の機関に割り当てることを考えることができる。 国家的行動計画 14.委員会は、「イングランド子ども計画」、「ウェールズの子ども・若者のための7つの中核的目標」および北アイルランドで策定された戦略において条約への言及が見られることを歓迎する。委員会はまた、「すべての子どもが重要である」に基づいてイングランドで進められている一連の改革も歓迎するものである。しかしながら委員会は、条約が締約国全域の戦略策定の枠組みとして日常的に用いられているわけではないこと、および、条約の原則、価値および目標の全面的実現を確保するための全般的政策が存在しないことを、依然として懸念する。 15.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の促進および保護に関与している公共部門および民間部門と協力しながら、かつ子どもの権利アプローチに基づいて、締約国全域で条約を実施するための包括的行動計画を採択するよう奨励する。その際、締約国は、2002年国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビュー(2007年)を考慮するべきである。委員会はまた、達成された進展を定期的に評価し、かつ存在する可能性がある欠点を明らかにする目的で、締約国が、行動計画の全面的実施のための十分な予算配分ならびにフォローアップおよび評価の機構を確保するようにも勧告する。これらの計画においては、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもに特別な注意が払われるべきである。 独立の監視 16.委員会は、連合王国を構成する4つのすべての社会で独立の子どもコミッショナーが設置されたこと、および、これらのコミッショナーが子どもの権利の促進および保護のために行なってきた無数の取り組みを歓迎するものの、その独立性および権限が限られていること、および、これらの機関がパリ原則に全面的に一致する形で設置されたわけではないことを、懸念する。 17.委員会は、締約国が、設置された4つのすべてのコミッショナーがパリ原則にしたがって独立性を有すること、および、とくに子どもの権利侵害について子どもまたはその代理人が行なう苦情を受理しかつ調査する任務を与えられることを確保するよう、勧告する。これらの機関に対しては、締約国全域のすべての子どもの権利が保護されるよう、その権限を効果的かつ調整のとれたやり方で遂行するために、必要な人的資源および財源が与えられるべきである。これとの関連で、委員会は、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割についての委員会の一般的意見2号(2002年)に対し、締約国の注意を喚起する。 資源配分 18.委員会は、子どもに関する支出が近年増加していることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、当該増加が貧困を根絶しかつ不平等に対処するためには十分でないこと、および、一貫した予算分析および子どもの権利影響評価が行なわれていないため、締約国全域でどの程度の支出が子どもに配分されており、かつ子どもに影響を及ぼす政策および法律の効果的実施にこれがどの程度役立っているのかを明らかにすることが困難であることを、懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、条約第4条にしたがい、かつ貧困の根絶にとくに焦点を当てながら、利用可能な資源を子どもの権利の実施のために最大限に配分するとともに、すべての法域を通じて不平等を削減するよう勧告する。このような取り組みにおいて、締約国は、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」をテーマとして行なわれた2007年9月21日の一般的討議後に委員会が行なった勧告を考慮するべきである。予算配分額が政策上の発展の実現および法律の実施にどの程度相応するものとなっているかを評価するため、子どもの権利影響評価を定期的に実施することが求められる。 普及、研修および意識啓発 20.委員会は、条約を含む国際人権文書の原則および規定について専門家に研修を実施するために締約国が行なっている最近の努力、ユニセフの「権利を尊重する学校」プロジェクトへの締約国の支援、ならびに意識啓発活動の開発および実施におけるNGOとの連携を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約に関する体系的な意識啓発が行なわれておらず、かつ、子ども、親、または子どもとともに働く専門家の間で条約に関する知識水準が低いことを懸念するものである。さらに委員会は、条約が学校カリキュラムの一部とされていないことを遺憾に思う。 21.委員会は、締約国が、とくに法定のナショナル・カリキュラムに条約を含めることによって、条約のすべての規定がおとなおよび子どもによって同様に広く知られかつ理解されることを確保するための努力をさらに強化するとともに、条約の原則および価値がすべての学校の構造および実践に統合されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに法執行官、出入国管理官、メディア、教員、保健従事者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員を対象とする、十分かつ体系的な研修を強化することも勧告するところである。 市民社会との協力 22.委員会は、報告書の作成および条約の実施において締約国が市民社会組織と協力していること(報告書の作成については公式の協議も含む)に、評価の意とともに留意する。 23.委員会は、締約国が、NGOおよび子ども団体を含む市民社会が子どもの権利の促進および実施に積極的かつ系統的に参加すること(とくに政策および協力プロジェクトの計画段階における参加を含む)、ならびに、委員会の総括所見のフォローアップおよび次回定期報告書の作成にも同様に参加することを奨励するよう、勧告する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.委員会は、差別の禁止に対する子どもの権利を連合王国の反差別法(提出予定の平等法案)に導入することによってその主流化を図る明確な機会を得て、平等法を整備しおよび強化しようとする締約国の計画を歓迎する。委員会はまた、差別の問題に関する行動計画の採択ならびにこの問題に関して行なわれている監視および情報収集の活動も歓迎するものである。しかしながら委員会は、実際には一部の集団の子ども(ロマおよびアイリッシュのトラベラーの子ども、移民、庇護希望者および難民である子ども、レズビアン、バイセクシュアル、ゲイおよびトランスジェンダーの子ども(LBGT)ならびにマイノリティ集団に属する子どもなど)が依然として差別および社会的スティグマの付与を経験していることを、懸念する。委員会はまた、子ども、とくに思春期の子どもに対する全般的な不寛容の雰囲気および公衆の否定的態度がメディアを含む締約国に存在しているように思われ、このことがしばしば子どもの権利のさらなる侵害の根本的原因になっている可能性があることも、懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、以下のものを含む措置をとることにより、あらゆる理由に基づく差別からの全面的保護を確保するよう勧告する。 (a) メディアを含む社会における、子ども、とくに思春期の子どもに対する不寛容および不適切な特性の付与に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 差別に反対する意識啓発その他の防止活動を強化するとともに、必要なときは、脆弱な立場に置かれた集団の子ども(ロマおよびアイリッシュのトラベラーの子ども、移民、庇護希望者および難民である子ども、レズビアン、バイセクシュアル、ゲイおよびトランスジェンダーの子ども(LBGT)ならびにマイノリティ集団に属する子どもなど)のための積極的差別是正措置をとること。 (c) 社会のあらゆる部門における子どもへの差別事案が、懲戒、行政的制裁または必要なときは刑事的制裁を科すことも含めて効果的に対応されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 子どもの最善の利益 26.委員会は、とくに少年司法、出入国管理ならびに移動の自由および平和的集会の分野で、子どもの最善の利益の原則が、子どもに影響を与えるすべての立法上および政策上の事柄においていまなお第一次的な考慮事項として反映されていないことを遺憾に思う。 27.委員会は、子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがい、子どもに影響を与えるすべての法律および政策(刑事司法および出入国管理の分野におけるものも含む)に十分に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 28.委員会は、イングランドおよびウェールズで子どもの死亡に関する法定調査が導入されたことを歓迎しながらも、前回の審査以降6名の子どもが勾留下で死亡したこと、および、勾留されている子どもの自傷行動の蔓延率が高いことを非常に懸念する。 29.委員会は、締約国が、防止措置の実効性を再検討することも含め、生命に対する子どもの権利を保護するために利用可能なあらゆる資源を活用するよう勧告する。締約国はまた、子どもがケアを受けているか勾留中であるかにかかわらず、子どもが予想外に死亡しまたは重傷を負ったあらゆる事案について自動的に独立のかつ公的な調査が行なわれる制度も導入するべきである。 30.委員会は、締約国が暴動鎮圧手段としての円形プラスチック弾の使用を廃止したことを歓迎しながらも、それに代えて、より有害でないことが証明されていない減エネルギー弾(AEP)が導入されたことを懸念する。委員会はまた、テイザー銃の使用がイングランドおよびウェールズで警察官に対して許可され、かつ北アイルランドにおいても試験的に許可されたこと、ならびに、いずれの場合にもこれを子どもに対して使用できることも、懸念するものである。 31.締約国は、テイザー銃およびAEPを、適用される規則および制限の対象となる武器として扱うべきであり、かつ、子どもに対するすべての有害な装備の使用に終止符を打つべきである。 子どもの意見の尊重 32.委員会は、2006年保育法を歓迎するとともに、関連の指針において、子どものためのサービスを計画する際に幼い子どもの意見を考慮することが地方当局に対して求められていること、および、視学官が学校その他の施設を訪問する際には子どもと協議することが求められていることを、歓迎する。委員会はまた、イングランドおよびウェールズにおいて、学校管理機関に対し、学校における行動についての方針を策定する際に子どもの関与を得る新たな義務が課されたことも、歓迎するものである。しかしながら委員会は、教育法および教育政策に第12条を掲げる点に関してほとんど進展がないことを懸念する。さらに、委員会は、第12条に掲げられた権利が障害のある子どもに適用されることを確保するためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、条約第12条にしたがい、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年)後に委員会が採択した勧告を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校およびコミュニティならびに施設ならびに行政上および司法上の手続において、法律上も実務上も、子どもの意見の尊重の原則を促進し、推進しかつ実施すること。 (b) 連合王国若者議会、ファンキー・ドラゴン(ウェールズ)および若者議会(スコットランド)のような子ども参加の場を支援すること。 (c) 意味のある子ども参加の機会を増加させるため、メディアを含む市民社会組織と引き続き連携すること。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) (訳者注)3が欠落しているのは原文ママ。 平和的集会の自由 34.委員会は、反社会的行動防止命令(ASBO)(後掲パラ79および80も参照)ならびにいわゆる「モスキート音発生装置」の使用および「解散命令対象地域」の概念の導入により、子どもの移動および平和的集会の自由が制限されていることを懸念する。 35.委員会は、締約国が、ASBOおよびモスキート音発生装置のようなその他の措置について、これらが移動および平和的集会の自由に対する子どもの権利を侵害するかぎりにおいて再検討するよう勧告する。これらの自由を享受することは子どもの発達にとって必要不可欠であり、これに対しては、条約第15条に掲げられた、きわめて限定された制約以外は課すことができない。 プライバシーの保護 36.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもが最終的に告発されまたは有罪と認定されたか否かにかかわらず、子どもに関するDNAデータが全国DNAデータベースに保存されること。 (b) 締約国が、子ども、とくにASBOを発令された子どもについて、このような子どもがメディアで否定的に取り上げられ、かつ公に「名指しして辱める」ことの対象とされることから保護するための十分な措置をとっていないこと。 (c) 子どもがテレビのリアリティ・ショーに出演することが、そのプライバシーに対する不法な干渉となる可能性があること。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとることを勧告する。 (a) データ保護に関するより強力な規制を導入すること等により、子どもがそのプライバシーに対する不法なまたは恣意的な干渉から保護されることを、法律上も実際上も確保すること。 (b) とくに、子どもの最善の利益に反する、子どもを公に辱めの対象とするようなメッセージを発しないようにすることにより、メディアにおける子どものプライバシーを尊重するための努力を、メディアと協力しながら強化すること。 (c) テレビ番組によって子どもの権利が侵害されないことを確保するため、テレビ番組、とくにリアリティ・ショーへの子どもの参加を規制すること。 残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 38.委員会は、やむを得ない必要がありかつ最後の手段としてでないかぎり身体的拘束および独居拘禁が用いられないことを確保するため、締約国がこれらの措置の使用を見直したことに留意する。しかしながら委員会は、実際には子どもの身体的拘束がいまなお自由の剥奪の場で用いられていることを依然として懸念するものである。 39.委員会は、締約国に対し、子どもに対する拘束が最後の手段としてのみかつもっぱら自傷他害を防止するために用いられること、および、懲戒目的のあらゆる身体的拘束手段が廃止されることを確保するよう促す。 体罰 40.委員会は、「合理的懲罰」の抗弁の適用を制限する法改正がイングランド、ウェールズ、スコットランドおよび北アイルランドで行なわれたことには留意しながらも、この抗弁が廃止されていないことを懸念する。委員会は、家庭におけるすべての体罰を禁止することに対するウェールズ国民議会のコミットメントを歓迎するものの、権限委譲の条件上、国民議会が必要な法律を制定するのは不可能であることに留意するものである。委員会は、締約国が家庭におけるあらゆる体罰を明示的に禁止していないことを懸念するとともに、子どもの体罰の事案に関していずれかの抗弁が設けられていることは、一定の形態の体罰は容認されることを示唆するものであるから条約の原則および規定に一致しないという、委員会の見解を強調する。 41.委員会はさらに、実質的にすべての海外領土および王室属領において、家庭、学校および代替的養護環境における体罰が合法であることを懸念する。 42.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.188、パラ35)を繰り返し、「体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利」についての委員会の一般的意見8号に照らし、かつ、自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会および経済的、社会的および文化的権利に関する委員会によって行なわれた同様の勧告に留意しながら、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) イングランドおよびウェールズ、スコットランドならびに北アイルランドならびにすべての海外領土および王室属領において、あらゆる法的抗弁の廃止等も通じ、優先的課題として、家庭におけるあらゆる体罰を禁止すること。 (b) 連合王国全域ならびに海外領土および王室属領において、学校ならびにその他のあらゆる施設およびその他のあらゆる形態の代替的養護における体罰が明示的に禁じられることを確保すること。 (c) あらゆる体罰から保護される子どもの権利についての公衆の意識を高め、かつ子育てにおける体罰の使用を容認する公衆を減少させる目的で、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律、ならびに、人間の尊厳および身体的不可侵性に対する子どもの平等な権利の尊重を積極的に促進すること。 (d) 積極的な子育てに関する親の教育および専門家の研修を行なうこと。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 43.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が、ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。締約国は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用するべきである。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 44.委員会は、里親養護の方が施設養護よりも望ましいとされる旨の締約国の説明に留意する。委員会はまた、ケアの対象とされている子どもにとっての成果を向上させようとする締約国の努力、および、イングランドにおける独立審査官の設置も歓迎するものである。委員会は、子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を受けていない家族が多いこと、とくに貧困のために危機的状況にある家族がそうであることを懸念する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 親のケアを奪われた子どもを支援する職員および施設への投資が不十分であること。 (b) 子どもが、親の低所得の結果として代替的養護の対象とされる可能性があること。 (c) 親の一方または双方が収監されている子どもの状況。 (d) 代替的養護の対象とされる子どもの人数が増えていることとともに、とくに、このような子どもに占めるアフリカ系の子ども、障害のある子どもおよび民族的マイノリティ出身の子どもの割合が高いこと。 (e) 代替的養護の対象とされている子どものモニタリングが、処遇の再審査に関するものも含め、不十分であること。 (f) 代替的養護の対象とされている子どもがあまりにも頻繁に措置先を移動させられていること、および、このような子どもとその親およびきょうだいとがほとんど面接交渉できないこと。 (g) 代替的養護の対象とされている子どものうち苦情申立て機構にアクセスできる子どもの人数が限られていること。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与えるための努力を強化すること。 (b) 子どもが親の低所得の結果として代替的養護の対象とされることがないようにすること。 (c) すべての措置において子どもの意見を考慮するとともに、子どもに対し、子どもがアクセスしやすい苦情申立て機構を全国で提供すること。 (d) 親の一方または双方が収監されている子どもに対し、とくに(子どもの最善の利益に反しないかぎり)親との接触を維持するためならびにこのような子どもに対するスティグマの付与および差別を防止するための支援を確保すること。 (e) とくに定期的訪問を通じ、親族家庭、里親養護、養子縁組里親家庭および他の養護施設に措置された子どもの状況をモニターすること。 (f) これほど多くの障害児が長期の施設養護の対象とされている理由を評価するとともに、このような環境にある障害児のケアおよび処遇を再審査すること。 (g) 親およびきょうだいから分離されたすべての子ども(長期の入所型施設養護の対象とされている子どもを含む)について面接交渉手続の開始を促進すること。 (h) 子どもに成人後の人生に向けた準備をさせるための訓練教育プログラムを提供すること。 (i) 親のケアを受けていない子どもに関する一般的討議(2005年9月16日)で出された委員会の勧告を考慮すること。 養子縁組 46.委員会は、アフリカ系の子ども民族的マイノリティの子どもが、同じ民族的出身の家族によって養子とされるまで長期間待機する場合があることを懸念する。 47.委員会は、子どもが、常にその最善の利益にかなう形で、かつとくにその文化的背景を正当に考慮しながら、可能なかぎり迅速に養子とされるような状況を促進する努力を、締約国が強化するよう勧告する。 48.委員会は、締約国が、国際養子縁組に関するハーグ条約について、当該条約の適用を海外領土には拡大しない旨の宣言を行なっていることを懸念する。 49.委員会は、締約国が、国際養子縁組に関するハーグ条約の適用を海外領土に拡大するために必要な措置をとるよう勧告する。 暴力、虐待およびネグレクト 50.委員会は、子どもの暴力、虐待およびネグレクトの問題に対処するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの暴力、虐待およびネグレクト(家庭におけるものも含む)の蔓延率が高いこと、および、この点に関する包括的な全国的戦略が存在しないことを依然として憂慮するものである。委員会は、子どもに対して行なわれた虐待を記録しおよび分析する包括的システムがいまなお存在せず、かつ、被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための機構が締約国全域で十分に利用可能とされていないことを、遺憾に思う。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 暴力、性的虐待、ネグレクトまたは搾取(家庭、学校および施設養護その他の養護におけるものも含む)の事案数および規模を監視するための機構を設置すること。 (b) 子どもとともに働く専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療従事者、警察官および司法関係者を含む)が、子どもに影響を与えるドメスティック・バイオレンスが疑われる事案について通報しおよび適切な行動をとる自己の義務に関する研修を受けることを確保すること。 (c) 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの被害者が法的手続中にふたたび被害を受けることのないようにするため、このような被害者への支援を強化すること。 (d) 締約国全域で、回復、カウンセリングおよびその他の形態の再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項)) 障害のある子ども 52.委員会は、障害のある子どもの状況の分析および改善に関して国レベルおよび地方レベルで行なわれている締約国の取り組みを歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子どもの社会へのインクルージョンに関する包括的な全国的戦略が存在しないこと。 (b) 障害のある子どもが、条約で保障された権利(保健サービスへのアクセス、余暇および遊びについての権利を含む)を享受するにあたって引き続き障壁に直面していること。 53.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある人の保護について定めた法律ならびに障害のある子どものためのプログラムおよびサービスが効果的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 早期発見プログラムを発展させること。 (c) (準)医療従事者および関連の職員、教員ならびにソーシャルワーカーなど、障害のある子どもとともに働く専門的職員に対して研修を行なうこと。 (d) 障害のある子どもの社会へのインクルージョンに関する包括的な国家的戦略を策定すること。 (e) 障害のある子どもの権利および特別なニーズに関する意識啓発キャンペーンを実施し、このような子どもの社会へのインクルージョンを奨励し、かつ差別および施設措置を防止すること。 (f) 障害のある人の権利に関する国際条約およびその選択議定書の批准を検討すること。 健康および保健サービス 54.委員会は、とくに相当額の投資を通じて保健サービスへのアクセスに関する不平等に対処するため締約国が行なっている努力にもかかわらず、最富裕層と最貧困層との間の乳児死亡率の格差が拡大しつつあることに示されているように、不平等が依然として問題であることを懸念する。 55.委員会は、すべての政府機関を横断する調整のとれたアプローチ、および、保健政策と所得不平等および貧困の削減を目的とする政策とのいっそうの調整を通じ、保健サービスへのアクセスに関する不平等に対処することを勧告する。 精神保健 56.委員会は、とくにイングランドにおける相当の財政投資にもかかわらず、締約国の子どもの10人に1人が診断可能な精神保健上の問題を有している一方で、そのうち約25%しか必要な治療およびケアにアクセスできていないこと、および、子どもがいまなお成人向け精神病棟で治療される可能性があることを、懸念する。委員会はまた、北アイルランドにおいて、紛争の遺産を理由として、この点に関する子どもの状況がとりわけ問題含みであることも懸念するものである。 57.委員会は、よりリスクの高い状況に置かれている子ども(親のケアを奪われた子ども、紛争の影響を受けている子ども、貧困下で暮らしている子どもおよび法律に触れた子どもを含む)にとくに注意を払いながら、精神保健上の問題を有する子どものニーズを締約国全域で満たせるようにするため、資源の追加および対応能力の向上を図るよう勧告する。 母乳育児 58.委員会は、母乳育児の促進および支援に関して締約国で近年達成された進展は評価しながらも、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の実施が引き続き不十分であること、および、母乳代替品の攻撃的宣伝が依然として一般的に行なわれていることを懸念する。 59.委員会は、締約国が「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施するよう勧告する。締約国はまた、赤ちゃんにやさしい病院をさらに促進し、かつ保育者研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。 思春期の健康 60.思春期の子どもに影響を及ぼす分野で締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、とくに下層の社会経済的背景を有する女子の間でおよび海外領土(とくにタークス・カイコス諸島)において10代妊娠率が高いことを依然として懸念する。 61.委員会は、締約国が、思春期の子どもに対して十分なリプロダクティブヘルス・サービス(学校におけるリプロダクティブヘルス教育を含む)を提供するための努力を強化するよう、勧告する。 62.委員会は、締約国(海外領土を含む)の青少年によるアルコール、薬物その他の有害物質の使用件数が多いことを懸念する。 63.委員会は、締約国が、以下の措置をとることも含め、締約国全域の青少年による有害物質の使用の問題に引き続き対応することを勧告する。 (a) 焦点の明確な防止措置を提供するため、これらの問題の根本的原因を研究すること。 (b) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスがすべての法域(海外領土を含む)の青少年にとってアクセスしやすく、かつ青少年に配慮したものであることを確保しながら強化すること。 (c) 有害物質に関する正確かつ客観的な情報を子どもに提供するとともに、その使用をやめまたは依存から脱しようとしている子どもに支援を提供すること。 生活水準 64.委員会は、2020年までに子どもの貧困に終止符を打つという政府の決意、および、2006年保育法が地方当局に課した乳幼児間の貧困削減要件を歓迎する。委員会はまた、この目標は立法措置を通じて反映されおよび執行されることになる旨の代表団の情報にも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、子どもの貧困がここ数年で削減されてきたことには留意しながらも、貧困が連合王国全域(海外領土を含む)に影響を与えている非常に深刻な問題であること、および、子どもの20%以上が持続的貧困下で暮らしているとされる北アイルランドにおいてこれがとりわけ問題となっていることを、懸念する。さらに委員会は、政府の戦略においてもっとも厳しい貧困下で暮らしている子どもの集団に十分な焦点が当てられていないこと、および、トラベラーの子どもの生活水準がとりわけ劣悪であることを懸念するものである。 65.委員会は、十分な生活水準は子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達にとって不可欠であり、かつ子どもの貧困は乳児死亡率、保健および教育へのアクセスならびに子どもの生活の日常的な質にも影響を及ぼすことを強調したい。条約第27条にしたがい、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 目標達成のための測定可能な指標を確立することも含め、2020年までに子どもの貧困に終止符を打つという目標を達成するための法律を採択し、かつ十分に実施すること。 (b) この法律およびフォローアップの措置においては、支援をもっとも必要としている子どもおよびその家族を優先させること。 (c) 必要な場合には、親および子どもに責任を負う他の者に全面的支援を与えることに加え、とくに栄養、衣服および住居に関して子どものための物的援助および支援プログラムを提供するための努力を強化すること。 (d) トラベラーに安全かつ十分なキャラバン基地を提供する地方当局の法定義務を再導入すること。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 66.委員会は、条約に掲げられた目標を保障するために締約国が教育分野で行なっている膨大な努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、経済的苦境にある親とともに暮らしている子どもの学校の成績に関して相当の不平等が根強く残っていることを懸念するものである。一部の子どもの集団、とくに障害のある子ども、トラベラーの子ども、ロマの子ども、庇護希望者の子ども、さまざまな理由(病気、家庭の義務等)で中退した子どもおよび不登校の子どもならびに10代で母親となった子どもは、普通学校か代替的教育施設かを問わず就学または教育の継続もしくは再開について問題を有しており、教育に対する権利を全面的に享受できていない。さらに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもは協議の権利をごくわずかしか有しておらず、とくに停退学に対して異議を申し立てる権利または特別な教育的ニーズ裁定委員会の決定に異議を申し立てる権利を有していないため、学校生活のあらゆる側面への子どもの参加が不十分であること。 (b) 教育内容等に関して苦情を申し立てる権利が親に限定されていること。このことは、とくに地方当局の育成下にある子ども(このような子どもについては地方当局が親の権威を有しているが、それが用いられることはほとんどない)にとって問題となる。 (c) いじめが深刻かつ広範な問題となっており、そのため子どもの通学および学習の成功が阻害されている可能性があること。 (d) 停退学件数が依然として多く、とりわけ全体として学校の成績がよくない集団の子どもに影響が生じていること。 (e) 分離教育の問題がいまなお北アイルランドに存在すること。 (f) 委員会の前回の勧告にもかかわらず、北アイルランドで11歳の時点での成績選抜が続けられていること。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの社会的背景が学校の成績に及ぼす影響を減少させるための努力を継続しおよび強化すること。 (b) 不利な立場にあり、周縁化されており、かつ学校から離れているあらゆる集団の子どもに対して〔権利の〕全面的享受を確保する真にインクルーシブな教育に対するすべての子どもの権利を確保する目的で、相当の追加的資源を投入すること。 (c) 学校に通っていないすべての子どもが良質な代替的教育を受けることを確保すること。 (d) 懲戒措置としての停退学を最後の手段としてのみ用いるようにし、停退学の件数を減少させ、かつ、学校との紛争を抱えた子どもを援助するため学校にソーシャルワーカーおよび教育心理学者を配置すること。 (e) 親のケアを受けていない子どもが、その最善の利益を積極的に擁護する代理人を確実に任命されるようにすること。 (f) 人権、平和および寛容に関する教育によるものも含め、学校におけるいじめおよび暴力に対処するための努力を強化すること。 (g) 学校、教室および学習に関わる事柄であって自己に影響を与えるあらゆるものについての子ども参加を強化すること。 (h) 自己の見解を表明することのできる子どもが、停退学に対して異議を申し立てる権利および(とくに代替的養護を受けている子どもについて)特別な教育的ニーズ裁定委員会に異議を申し立てる権利を有することを確保すること。 (i) 北アイルランドにおける分離教育に対応するための措置をとること。 (j) イレブンプラス進学先決定試験を廃止することによって北アイルランドの二層化文化に終止符を打つとともに、すべての子どもが初等学校後の就学受入れ体制に含まれることを確保すること。 余暇および遊びに対する権利 68.委員会は、「イングランド子ども計画」において、子どもの遊びに対する中央政府の投資としては過去最大の額が計上されていることを評価しながらも、ウェールズを唯一の例外として、遊びの権利が締約国のすべての子どもによって全面的に享受されているわけではないことを懸念する。これはとくに遊びのためのインフラが充実していないことによるものであり、またとくに障害のある子どもにとって当てはまる。委員会はまた、近年生じている遊び場の着実な減少により、子どもが公共のオープンスペースで集まらざるを得ない状況に押しやられる効果が生じていることも懸念するものである。しかし、このような行動は、ASBOにしたがって反社会的と見なされる可能性がある。 69.委員会は、締約国が、子どもが休息し余暇を持つ権利、その年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動を行なう権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するよう勧告する。締約国は、障害のある子どもを含む子どもに対して遊びおよび余暇活動を行なうための十分かつアクセスしやすい遊び場空間を提供することに、特段の注意を払うべきである。 8.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの庇護希望者および移民 70.委員会は、締約国が第22条に対する留保を撤回する決意を示していること、および、2007年3月に新たな庇護手続が導入されたこと(この手続のもと、子どもによるすべての庇護申請は、特別訓練、とくに子どもの事情聴取に関する訓練を受けた「専任担当者」によって検討される)を歓迎する。委員会はまた、締約国にやってきた保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる広範な改革プロセスを連合王国国境局(UKBA)が進めていること、および、連合王国国境局に対し、子どもを保護する具体的な法定義務を課す立法の計画があることも歓迎するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 自由権規約委員会も最近認知したように、アセスメントが進行中の者も含む子どもの庇護希望者が引き続き収容されており、アセスメント終了まで数週間にわたって収容され続ける可能性があること。 (b) 庇護を希望している子どもの人数に関するデータが存在しないこと。 (c) 保護者のいない子どもであって送還されなければならない者の一時受入れ状態を評価するための、後見人制度のような独立した監督機構が設けられていないこと。 (d) 2004年庇護および出入国管理法第2条で、連合王国入国時に有効な渡航書類を有していない10歳以上の子どもの訴追が認められていること。 71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第37条(b)にしたがい、子どもの庇護希望者および移民の収容が常に最後の手段として、かつもっとも短い適当な期間で用いられることを確保するための努力を強化すること。 (b) 連合王国国境局(UKBA)において、スクリーニング目的の子どもの事情聴取を行なう、特別訓練を受けた職員が任命されることを確保すること。 (c) 保護者のいない庇護希望者および移民の子どものために後見人の任命を検討すること。 (d) 庇護を希望している子ども(年齢について争いがある者を含む)の人数に関する細分化されたデータを次回報告書で提供すること。 (e) 保護者のいない未成年者が庇護を希望している事案で年齢について争いがある場合、疑わしきは申請者の利益にという原則にしたがって対応するとともに、年齢の決定方法について専門家の指導を求めること。 (f) 子どもの送還が行なわれる場合、送還後の環境(家庭環境を含む)に関する独立のアセスメントを含む、十分な保護措置をともなって行なわれることを確保すること。 (g) 有効な入国書類を持たずに連合王国に入国した保護者のいない子どもに抗弁を保障できるようにするため、2004年庇護および出入国管理法第2条の改正を検討すること。 武力紛争における子ども 72.締約国は武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に関する第1回報告書を提出しているので、委員会は、読者に対し、この項目に関する勧告については当該報告書に関わって採択された総括所見(CRC/C/OPAC/GBR/1)を参照するよう要請する。 性的搾取および性的虐待 73.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書の批准が行なわれる予定である旨の発表を歓迎するとともに、子どもの商業的性的搾取と闘うために締約国が行なっている無数の活動(被害を受けた子どもが犯罪者として扱われることを防止するための措置および子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で掲げられた方針を実施するための措置を含む)に留意する。委員会は、性的搾取の被害(海外領土におけるものも含む)を受けた子どもに関するデータが存在しないことを懸念するものである。 74.委員会は、締約国が、子どもの性的搾取および性的虐待に対する十分な対応を準備しかつこれと闘うために必要不可欠であるこれらの現象の規模に関するデータを、海外領土におけるものも含めて収集するための努力を強化するよう勧告する。締約国は常に、法律上も実務上も、児童買春を含むこれらの犯罪行為の被害を受けた子どもを犯罪者ではなくもっぱら回復および再統合を必要とする被害者と見なすべきである。委員会はまた、締約国が、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約を批准するようにも勧告する。 売買、人身取引および誘拐 75.委員会は、締約国が人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約を批准するつもりである旨の情報に、評価の意とともに留意する。連合王国反人身取引行動計画の採択は歓迎しながらも、委員会は、これを実施するために必要な資源(人身取引の対象とされた子どもに良質なサービスおよび安全な居住環境が提供されることを確保するために必要なものを含む)が提供されていないことを懸念するものである。 76.委員会は、締約国が、反人身取引行動計画の効果的実施のために必要な資源を提供するよう勧告する。委員会はまた、締約国が人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約を批准するとともに、人身取引の対象とされた子どもの保護に関する基準が国際基準を満たすことを確保することにより、自国の義務を実施するようにも勧告するものである。 少年司法の運営 77.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 刑事責任年齢が、スコットランドにおいては8歳、イングランド、ウェールズおよび北アイルランドについては10歳と定められていること。 (b) 海外領土のアンティグア、モントセラト、バミューダおよび王室属領マン島におけるものも含め、子ども、とくに16~18歳の者が成人裁判所で審理されうる事案がいまなお存在すること。 (c) 自由を奪われる子どもの人数が多いこと。このことは、拘禁が常に最後の手段として適用されているわけではないことを示すものである。 (d) 再拘留される子どもの人数が多いこと。 (e) 拘禁されている子どもが教育に対する法律上の権利を有していないこと。 (f) 海外領土において、法律に触れた18歳未満の者を成人用のものと同一の自由剥奪施設に収容する実務が行なわれていること。 (g) 最近発表された「青少年犯罪行動計画」(2008年7月)に、「青少年司法制度の透明性を高める目的で」刑事手続に処された16歳および17歳の者についての報道規制を廃止する旨の提案が含まれていること。 (h) テロ対策法案の規定が、テロ関連犯罪の容疑をかけられまたは当該犯罪で告発された子どもにも適用されること。委員会はとくに、告発前の勾留機関の延長および通告要件に関する規定について懸念するものである。 (i) タークス・カイコス諸島で自由を奪われた子どもが、子どものための拘禁施設が存在しないために最終的にジャマイカで拘禁される可能性があること。 78.委員会は、締約国が、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)を全面的に実施するよう、勧告する。 委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 委員会の一般的意見10号、とくにパラ32および33にしたがい、刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。 (b) 法律に触れた子どもの拘禁に代わる広範な措置を発展させること。また、拘禁は最後の手段として、かつもっとも短い期間で使用されるべきであるという原則を法律上の原則として確立すること。 (c) 法律に触れた子どもが、告発されている犯罪の重大性にかかわらず常に少年司法制度において対応されるものとし、けっして通常裁判所において成人として審理されることがないようにすること。 (d) 条約第37条(c)に対する留保の歓迎すべき撤回を受けて、自由を奪われた子どもが、その最善の利益にしたがって別段に判断される場合を除き、自由の剥奪が行なわれるすべての場所において成人から分離されることを確保すること。 (e) 自由を奪われたすべての子どもに対し、教育に対する法律上の権利を認めること。 (f) 子どもに対するテロ対策法案の適用を見直すこと。 (g) 海外領土の子どもが他国で自由を剥奪される場合に、条約第40条に掲げられたすべての保障が尊重され、かつその尊重状況が適正に監視されることを確保すること。締約国はまた、これらの子どもが、接触を維持しないことが子どもの最善の利益にかなうと判断される場合を除き、定期的訪問を通じてその家族との接触を維持する権利を有することも確保するべきである。 (h) 刑事司法手続のすべての段階において犯罪の被害を受けた子どもまたは犯罪の証人である子どもの権利および利益を保護するための適当な措置をとること。 79.委員会は、子どもの集まりを制限する民事上の命令であり、違反の場合は刑事犯罪に移行する可能性もある反社会的行動防止命令(ASBO)が子どもに適用されることを懸念する。委員会はさらに以下のことを懸念するものである。 (a) 当該命令の発令が容易であること、禁止される行動の範囲が広いこと、および、命令違反が刑事上の犯罪であって重大な結果につながる可能性があること。 (b) ASBOが、子どもの最善の利益にかなう措置であるどころか、実際には子どもが刑事司法制度の対象となることを助長する可能性があること。 (c) 命令の対象となる子どものほとんどが不利な立場に置かれた背景を有する者であること。 80.委員会は、締約国が、子どもに対するASBOの適用を廃止する目的で、ASBOに関する独立の見直しを実施するよう勧告する。 9.国際人権文書の批准 国際人権文書の批准 81.委員会は、締約国に対し、まだ加盟国となっていない国際人権文書、すなわち、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約、および強制失踪からのすべての者の保護に関する条約の批准を検討するよう奨励する。さらに委員会は、締約国が、委員会との対話中に発表されたように、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准を迅速に進めるよう勧告するものである。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 82.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会ならびに中央政府および地方分権政府の関連省庁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 83.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが関連の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 84.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2014年1月14日までに提出するよう慫慂する。報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。 85.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された「国際人権条約に基づく報告についての統一指針(共通コア・ドキュメントおよび条約別文書についての指針を含む)」(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月29日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/
● 同名のHTMLサイトより移行作業中。字が小さいと思われる方はブラウザで拡大して閲覧してください。 ● 管理者への連絡は yujihirano★nifty.com まで(★を@に置き換えてください)。 ● 私書箱は廃止しました。郵送先住所については個別にお問い合わせください。(2022年4月4日追記) ● 広告がページの途中にいくつも挿入される場合がありますが、不適切な広告の報告などの手段で適宜ご対応をお願いします。(2020年4月27日追記) 管理者(平野裕二)のフェイスブックアカウント 管理者(平野裕二)のnote 子どもの権利条約 子どもの権利条約(1989年):政府訳/国際教育法研究会訳締約国:196か国(2021年11月1日現在;締約国一覧)パレスチナ国(2014年4月2日)、南スーダン(2015年1月23日)、ソマリア(同10月1日)の加盟により、国連の加盟国・オブザーバー国で条約に加盟していない国はアメリカのみとなった。 国連・子どもの権利条約に掲げられている子どもの権利(分野別) 国連・子どもの権利委員会の報告ガイドライン(旧版)順(国際教育法研究会訳) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2000年):政府訳(PDF)/平野裕二訳締約国:173か国(2024年9月12日現在;締約国一覧) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2000年):政府訳(PDF)/平野裕二訳締約国:178か国(2024年9月12日現在;締約国一覧) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2011年):平野裕二訳(同選択議定書に基づく手続規則の日本語訳もあり)締約国:52か国(2024年9月12日現在;締約国一覧) 各国法 子どもオンブズパーソン/コミッショナー設置国リスト(非公式) 各国の体罰等全面禁止法 ウェールズ(英国):子どもおよび若者の権利(ウェールズ)法(2011年) 台湾:子どもの権利条約実施法(2014年) スコットランド(英国):国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法(2021年時点) Basic Act on Children (Japan, 2022) 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)関連 国連人権高等弁務官事務所:COVID-19ガイダンス新型コロナウィルス感染症と人権 参考資料 国連・子どもの権利委員会:新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関する声明 国連・社会権規約委員会:新型コロナウィルス感染症(COVID-19)と経済的、社会的および文化的権利に関する声明(抄訳) 国連・子どもの権利委員会(CRC)の動向 CRC 一般的意見/一般的討議勧告 CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) 分野別:CRC総括所見:競争主義的教育等/CRC 新型コロナ感染症と子どもの権利関連:国連・障害者権利委員会の勧告:子ども・教育(1) 手続関連CRC 定期報告書ガイドライン(第3版)/CRC 定期報告書ガイドライン(第3版)統計編 子どもの権利委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法 一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 CRC 個人通報決定一覧 日本の報告書審査(子どもの権利委員会) 第1回総括所見(1998年) 第2回総括所見(2004年) 第3回総括所見(2010年)前編(実施に関する一般的措置/子どもの定義/一般原則/市民的権利および自由) 後編(家庭環境および代替的養護/基礎保健および福祉/教育、余暇および文化的活動/特別な保護措置/フォローアップおよび普及) 子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書についての総括所見(2010年) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての総括所見(2010年)参考文献:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議編『子どもの権利条約から見た日本の子ども――国連・子どもの権利委員会第3回日本報告審査と総括所見』(現代人文社) 子どもの権利条約NGOレポート連絡会議関係資料(子どもの権利条約総合研究所) 第4回・第5回報告書審査関連総括所見(2019年) 事前質問事項(2018年2月) 分野別勧告:条約広報措置・人権教育関連/障害児関連/教育一般関連 ◆政府報告書、文書回答、総括所見(最終見解)の外務省仮訳等の資料は外務省〈児童の権利条約〉を参照。 国連・子どもの権利委員会の第3回総括所見/最終見解に対する日本政府のコメント 日本の報告書審査(その他) 社会権規約委員会第2回総括所見(2001年) 第3回総括所見(2013年) その他関連国際・地域文書 国連子ども特別総会(2002年5月)関連成果文書:子どもにふさわしい世界 子どもフォーラム:私たちにふさわしい世界 (参考)外務省:国連子ども特別総会の概要と評価 「子どもの権利の主流化」に関する国連事務総長ガイダンスノート(2023年) 少年司法関連少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則、1985年)〔前編・後編〕 少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン、1990年) 自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則、1990年) 刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針(ウィーン指針、1997年) 子どもの犯罪被害者及び証人に関わる事項における正義についてのガイドライン(2005年)〔松井仁試訳(Word)〕 子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針(2010年) 子どもの代替的養護に関する国連指針(2009年)〔厚生労働省仮訳(PDF)〕 ILO(国際労働機関)条約・勧告 → ILO駐日事務所「国際労働基準」 ハーグ条約(国際私法学会「ハーグ条約締結状況(2003年6月15日現在)」も参照)国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)〔外務省仮訳(PDF)〕 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)〔奥田安弘教授訳〕 欧州評議会子どもの権利の行使に関する欧州条約(1996年) 閣僚委員会勧告第R(98)8号「家庭生活および社会生活における子どもの参加」(1998年) サイバー犯罪条約(2001年)〔政府訳〕コンピュータ・システムを通じて行なわれる人種主義的および排外主義的性質の行為の犯罪化に関するサイバー犯罪条約の追加議定書(2003年) 閣僚委員会勧告Rec(2002)8号「デイケア」(2002年) 子どもに関わる面会交流に関する条約(2003年) 閣僚委員会勧告Rec(2005)5「居住型施設で暮らす子どもの権利」(2005年) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約(ランサローテ条約、2007年)(関連)欧州連合・子どもの性的搾取および児童ポルノとの闘いに関する枠組決定(2003年) 子どもの養子縁組に関する欧州条約(改正)(2008年) 議員会議勧告1864(2009):自己に影響を与える決定への子どもの参加の促進(2009年) 子どもにやさしい司法に関する欧州評議会閣僚委員会指針(2010年) 女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約(イスタンブール条約、2011年) 18歳未満の子ども・若者の参加についての閣僚委員会勧告(2012年) デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン(2018年) 教育現場における子どものデータ保護(ガイドライン)(2020年) 国連人権理事会・意見および表現の自由に対する権利の促進および保護に関する特別報告者の報告書:表現の自由に対する子どもの権利(2014年) 更新履歴:ページ作成(2010年6月17日)。/~/各国法に子どもオンブズパーソン/コミッショナー設置国リスト(非公式)へのリンクを追加(2022年8月24日)。/各国法にこども基本法(日本)の英訳を追加(11月12日)。/その他関連国際・地域文書に「子どもの権利の主流化」に関する国連事務総長ガイダンスノートの日本語訳へのリンクを追加(2023年8月29日)。/子どもの権利条約に「国連・子どもの権利条約に掲げられている子どもの権利(分野別)」へのリンクを追加(12月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/311.html
総括所見:イラク(OPAC・2015年) 第1回(1998年)/第2~4回(2015年)OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/IRQ/CO/1(2015年3月5日)/第68会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1962回会合(CRC/C/SR.1962参照)においてイラクの第1回報告書(CRC/C/OPAC/IRQ/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/IRQ/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IRQ/CO/2-4)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/IRQ/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、締約国が、国際的な武力紛争における犠牲者の保護に関する、1949年8月12日のジュネーブ諸条約の追加議定書(第I議定書)を批准しかつこれに加入したこと(2010年4月)を歓迎する。 5.委員会は、軍隊への入隊に関する最低年齢は18歳とされており、かつ入隊は真に自発的な意思に基づくものでなければならない旨の、選択議定書の批准時に行なわれた宣言を歓迎する。 III.一般的実施措置 法的地位 6.委員会は、選択議定書が国内法にまだ十分に統合されていないことを遺憾に思う。 7.選択議定書第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書を国内法に全面的に編入するよう促す。 包括的な政策および戦略 8.委員会は、現在のところ、子どもの徴募および武力紛争における使用の増加に対処するためのいかなる包括的な政策および戦略も存在しないことを深刻に懸念する。 9.委員会は、締約国が、締約国で活動している武装集団による子どもの徴募および使用を停止させるための包括的なかつ期限を定めた政策および戦略を緊急に採択し、かつその実施を確保するよう勧告する。 調整 10.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と効果的に闘うための調整機構を迅速に設置するよう勧告する。 資源配分 11.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、選択議定書の普及および実施を目的とする具体的予算の配分を勧告する。 普及および意識啓発 12.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発のために締約国が行なっている努力には留意しながらも、議定書の原則および規定に関する意識が全体として低いことを遺憾に思う。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定を公衆一般に対しておよびとくに子どもに対して広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。 研修 14.委員会は、子どもの権利を含む人権についての研修が、国家人権研究所によって、政府職員、教員、児童生徒、人権活動家および非政府組織のメンバーを対象として実施されていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書に関する具体的研修が実施されていないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、子どもとともにおよび(または)子どものために働いているすべての関連の専門家(とくに軍関係者、国境管理および出入国管理関係者、ソーシャルワーカーならびに医療専門職)を対象とした、選択議定書の規定に関する義務的研修プログラムを組織化するよう勧告する。 データ 16.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、選択議定書に掲げられているすべての問題に関する具体的かつ詳細なデータベースの設置を勧告する。 学校および病院への攻撃 17.委員会は、学校、レクリエーション区域および病院がしばしばあえて攻撃の対象とされていることに、このうえない懸念とともに留意する。委員会はまた、いわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)による教員および保健従事者の処刑も憂慮するとともに、複数の異なる非国家的武装部隊が、この数年間、とくに農村部の学校を占拠していることに留意するものである。 18.委員会は、締約国に対し、学校も病院も国際人道法上の保護対象民用物であり、したがって区別の原則および均衡性の原則を享受すべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 児童生徒および教員、学校、レクリエーション区域ならびに病院の特別な保護を確保し、かつ、防止措置および攻撃の際の迅速対応システムを整備すること。 (b) 病院、学校およびレクリエーション区域への攻撃を速やかに犯罪化し、捜査しかつ訴追すること。 (c) 校舎および学校施設の再建を優先的に進めるとともに、軍事的占領によって損傷した学校インフラが迅速かつ完全に復旧されることを確保すること。 性暴力 19.委員会は、いわゆるISILによって子ども、とくにマイノリティの子どもに対して組織的な性暴力(とりわけ子どもの誘拐および性奴隷化)が行なわれていることを深く懸念する。 20.条約に基づく総括所見で行なった勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4、パラ46〔パラ45〕)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 性暴力の被害を受けた子どもに専門的医療ケアを提供し、性感染症(とくにHIV)のリスクを低減する目的で72時間以内に時宜を得た医療ケアを確保し、かつ、被害者が緊急避妊および中絶のためのサービスにアクセスできるようにすること。 (b) 性暴力の被害を受けた子どもに特別な心理的ケアを提供するとともに、その身体的および心理的回復ならびに再統合を確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 加害者の訴追および処罰を確保すること。 (d) 適切な国際連合機関の技術的援助を求めることを検討すること。 IV.防止 年齢鑑別手続 21.委員会は、締約国で(とくに農村部および遠隔地において)出生登録制度が弱体なままであるために、軍隊への採用時における年齢の判断が阻害される可能性があることを懸念する。 22.委員会は、締約国が、とくに、とりわけ遠隔地および農村部において病院に民事登録のための機構を設けることおよび移動登録班を設置しかつその利用を奨励することにより、子どもが出生後直ちに登録されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、出生証明書がない場合の新規採用兵の年齢の判断は、当該新規採用兵の尊厳を尊重する他の信頼できる手段(医師による検査を含む)によって行なわれることを確保するよう勧告するものである。 志願入隊 23.委員会は、国防省の統制下で活動している覚醒評議会に子どもが関与していることを示す報告について深い懸念を覚える。委員会はまた、未成年の子どもが、偽装された身分証明カードに基づいて同評議会によって採用され、かつバグダード外の地域に設けられた検問所の配置要員として利用されていること、および、この問題に対処するための措置が不十分であることも懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、18歳と定められた最低年齢が全面的に尊重されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、入隊が真に自発的に行なわれることを確保するための保障措置を整備するよう勧告する。とくに、締約国は、これまで覚醒評議会と関係していたすべての子どもを特定するために徹底的調査を実施するとともに、これらの子どもがその後解放され、かつ心理社会的リハビリテーションおよび職業的再統合のための十分な援助を提供されることを確保するべきである。 非国家的武装集団による徴募の防止 25.委員会は、武装集団による子どもの徴募を防止するためのいかなる保障措置もとられていないことを深く懸念する。委員会はまた、武力紛争への子どもの関与における主要な要因(とくに貧困ならびに教育および経済的機会の欠如ならびに一部の民族的および宗教的マイノリティに対する差別)に対処するための措置の不十分さが証明されてきたことも懸念するものである。 26.委員会は、締約国に対し、自国の領域にいるいかなる子どもも非国家的武装集団によって徴募されないことを確保するためにいっそう積極的な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの徴募および武力紛争への関与の根本的原因に対処するとともに、コミュニティが子どもの徴募の危険性について理解し、かつ子どもを保護する方法について理解することを確保するための公的広報キャンペーンを開始すること。 (b) 被害を受けやすい状況に置かれている子どもの徴募および再徴募の防止に特段の注意を払うとともに、とくに国境管理を効果的に実施し、かつ、子どもの帰還および子どもが再徴募されないことの確保を目的とするトルコとの国境を越えた協力および情報交換の枠組みを強化することにより、難民キャンプ内外における民間人の安全および保護を増進させること。 (c) とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)および国際連合児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることを検討すること。 人権教育および平和教育 27.委員会は、初等中等学校のカリキュラムに人権教育が含まれていることには評価の意とともに留意しながらも、学校カリキュラムに平和教育が設けられていないことに懸念を表明する。 28.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しながら、委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪にとくに言及しつつ、平和および寛容に関する教育を学校カリキュラムに体系的に含めるための努力を行なうよう勧告する。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 29.委員会は、武力紛争への子どもの関与がいまなお禁止されていないことを懸念する。委員会はまた、イラク高等法廷法(2005年法律第10号)第13条で、15歳未満の子どもを国の軍隊および非国家的武装集団に徴集しもしくは入隊させることまたは国の軍隊もしくは非国家的武装集団がこのような子どもを敵対行為への積極的参加者として使用することが戦争犯罪とされている一方で、当該規定が1968年7月17日から2003年5月1日までの期間に行なわれた犯罪にしか適用されないとされているため、その後に行なわれた犯罪には適用されないことも懸念するものである。 30.委員会は、締約国に対し、国の軍隊または非国家的武装集団による18歳未満の子どもの徴募および敵対行為における使用が締約国の法律で明示的に犯罪化され、かつ2003年5月1日以降に行なわれた犯罪の実行犯が裁判にかけられることを確保するため、迅速な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程の批准を検討し、かつ、現在進行している紛争状況に関わって同裁判所の裁判権の行使を受託することも勧告するものである。 非国家的武装集団による子どもの徴募および使用 31.委員会は、非国家的武装集団、とくにいわゆるISILおよびイラクのアルカーイダによって多数の子ども(とくに、子どもの難民、障害のある子ども、親を失った子ども、路上の状況にある子どもならびにトルコ国境経由で締約国に入国したシリア・アラブ共和国およびトルコその他の国の出身の子どもなど、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)が徴募されていることを深刻に懸念する。委員会は、以下のことについてこのうえない懸念を表明するものである。 (a) 子ども(障害のある子どもまたは家族によって武装集団に売られた子どもを含む)が自爆攻撃要員として使用されていること。 (b) 子どもが、空爆からISILの施設を保護するための人間の盾として使用されており、かつ、残忍な拷問行為および殺害行為の目撃をしばしば強要されていること。 (c) 子どもが、家族を支えるために密告者、検問所の要員または武装集団のための爆弾製造要員として使用されており、かつ、徴募されて誘拐の訓練を受けさせられる子どももいること。 (d) 12歳または13歳という低年齢の子どもが、いわゆるISILによってモスルで行なわれている軍事訓練を受けさせられていること、ならびに、報告によれば、いわゆるISILが子どもに対して個人の見張りおよび逮捕の任務も与えているとされること。 (e) シリア・アラブ共和国から逃げてきた子ども(とくに男子)に対し、帰還して自由シリア軍と戦うよう圧力がかけられていること。 (f) 政府の支援を受けた民兵によって子どもが徴募されていること。 32.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の子どもの徴募および武力紛争における使用を解消するためにすべての必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう強く促す。 (a) あらゆる形態の子どもの徴募または武力紛争における子どもの使用ならびにいかなる形態であれこのような徴募および使用を幇助する行為(誘拐または売買によるものを含む)が徹底的に捜査され、訴追されかつ処罰されることを確保すること。 (b) 子どもが人間の盾として使用されているいかなる施設も攻撃されないことを確保し、かつ、子どもをその他の形態の重大な人権侵害から保護すること。 (c) 安全保障理事会決議1539(2004年)、1612(2005年)および1882(2009年)を効果的に実施する目的で、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を強化すること。 (d) 適切な国際連合機関の技術的援助を求めることを検討すること。 VI.保護、回復および再統合 テロ容疑を理由とする子どもの拘禁 33.委員会は、多数の子どもが、テロ関連の容疑でまたはテロ犯罪容疑者とのつながりが報告されていることを理由に起訴されまたは有罪判決を言い渡され、かつ拘禁施設、警察署およびいわゆる「更生センター」に収容されていることを深刻に懸念する。委員会はまた、テロ容疑者の親族である子どもが違法に逮捕され、容疑がないままに収容され、またはテロ行為の隠蔽の罪を問われていることも懸念するものである。委員会は、以下のことに深刻な懸念とともに留意する。 (a) テロ容疑で拘禁されている子どもが、拘禁中に不当な取扱いおよび拷問に相当する行為を受けているとされ、かつきわめて劣悪な(基礎的インフラを欠き、衛生および換気が不十分であり、かつ食事、水および医療ケアの質も貧弱な)拘禁環境に直面していること、および、子ども(とくに女子)がしばしば成人とともに拘禁されていること。 (b) テロ関連の容疑をかけられた子どもが超法規的施設(たとえばイラク国家情報局が運営する施設)に拘禁されているという報告があること。 (c) 子どもが、18歳に達すると同時に死刑囚監房に移送されていること。 (d) 子どもの家族に対し、子どもの拘禁に関する通知が常に行なわれているわけではないこと。 (e) 子どもが収容されている拘禁施設への国際連合関係者によるアクセスが、許可されているとはいえ、当局によって課される煩雑な官僚的手続のために相当に阻害されていること。 (f) テロ容器で拘禁されている子どもが教育および適切な心理社会的援助または専門的援助にアクセスできていないこと。 34.委員会は、締約国に対し、テロ関連犯罪を理由として訴追された子どもが少年司法関連の基準にしたがって取り扱われること、および、いかなる審理も、犯罪が行なわれたとされる時点での子どもの年齢を考慮しながら、公正な裁判に関する国際基準にしたがい、迅速かつ公平なやり方で実施されることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 拘禁されている子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできること、拘禁されている子どもの残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いの通報が公平なやり方で迅速に捜査されること、および、加害者が裁判にかけられ、かつ有罪と認定されたときはその犯罪の重大性に相応する刑罰によって制裁を受けることを確保すること。 (b) 18歳未満の者が行なった犯罪に対し、死刑および終身刑がけっして適用されないことを確保すること。明確な証明によって年齢を確定できないときは、若年者は子どもと推定されるべきである。 (c) いあかなる子どもも超法規的施設に拘禁されないこと、および、子どもの拘禁が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保するとともに、拘禁に代わる措置を検討すること。 (d) 親または近親者に対して子どもの拘禁場所が通知されることを確保し、かつ、国際連合機関および市民社会が子どもの被拘禁者にアクセスするための便宜を図ること。 (e) 子どもの拘禁が人道的な環境のもと、成人から分離される形で行なわれること、ならびに、子どもが清潔な飲料水および衛生設備、質量ともに十分な栄養ならびに身体的および心理的回復、教育ならびに社会的再統合のための措置にアクセスできることを確保すること。 (f) 少年司法制度において働くすべての専門家を対象として、条約、その両選択議定書、他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)に関する研修を実施すること。 武装解除、動員解除および再統合 35.委員会は、相当数の子どもが依然として武装集団の支配下にあり、条約および両選択議定書に違反するさまざまな行為の対象とされていることに、もっとも重大な懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国に対し、誘拐された子どもおよび子どもの戦闘員全員の解放および動員解除を確保するよう促す。委員会は、締約国に対し、被害を受けやすい状況に置かれた子どもの特有のニーズをとりわけ考慮に入れた、援助、リハビリテーション、再統合および和解のための長期的かつ包括的なプログラムを、可能なかぎり早期に策定するよう求めるものである。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 37.委員会は、締約国が、武力紛争の被害者に対して心理的支援および社会的再統合のための援助を提供する目的で国際連合機関および市民社会と協力していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、現在のところ、武装集団によって徴募されまたは使用されていた子どもに対し、いかなる形態の援助または支援(その心理社会的および身体的回復または社会的リハビリテーションおよび再統合のためのものを含む)も提供されていないことを懸念するものである。委員会はまた、隣国のシリア・アラブ共和国で武力紛争が生じていること、および、締約国が、とくにドホーク、アルビールおよびスレイマニヤにおいて、子どもを含む相当数のシリア難民を受け入れていることに鑑み、武装集団による徴募もしくは敵対行為における使用または性的虐待の対象とされた可能性のある子どもの難民またはその対象とされるおそれがある子どもの難民に対してケアおよびサービスを提供するための措置および資源配分が不十分であることに、懸念とともに留意する。 38.委員会は、締約国に対し、徴募されもしくは武力紛争で使用された子どもまたは他のいずれかの形で武力紛争に関与させられた子どもが、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのあらゆる必要な援助を提供されることを確保するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 紛争の影響を受けている子ども(とくに子どもの戦闘員、女子、保護者のいない子どもの国内避難民ならびに難民、帰還民および地雷被害サバイバー)を対象とする心理社会的支援および援助のための包括的プログラムを、非政府組織、国際機関およびコミュニティと連携して、かつ、トラウマ性の戦争経験後にこれらの子どもが有する特別な回復上のニーズに対応しながら発展させること。 (b) これらのサービスが、紛争の影響を受けているすべての地域でアクセス可能とされることを確保すること。 (c) 子どもの難民および庇護希望者ならびに移住の状況にある子どもであって、武装集団によって国外で徴募および(もしくは)敵対行為における使用ならびに(または)性的虐待の対象とされた可能性がある子どもまたはその対象とされるおそれがある子どもを可能なもっとも早い段階で特定するための包括的機構を確立するとともに、国際連合の関連の機関および計画(UNHCRおよびユニセフを含む)の技術的援助を求めること。 (d) 非公式の教育プログラム等も通じて、かつ紛争の影響を受けた地域における校舎および学校施設の復旧ならびに水、衛生設備および電気の供給に優先的に取り組むことにより、徴募されまたは敵対行為で使用された子どもが教育制度に再統合できることを確保するための効果的措置をとること。 (e) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書を批准すること。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 39.委員会は、締約国に対し、子どもに対する重大な人権侵害に関する恒常的な情報の共有および当該人権侵害への対応を促進するため、子どもと武力紛争に関する高級レベル省庁間委員会を設置するよう奨励する。 40.委員会はまた、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施におけるユニセフその他の国際連合機関との協力の強化を模索するよう勧告する。 41.委員会は、締約国が以下の文書を批准するよう勧告する。 (a) 非国際的な武力紛争における犠牲者の保護に関する、1949年8月12日のジュネーブ諸条約の追加議定書(第II議定書)。 (b) 追加の特殊標章の採択に関する、1949年8月12日のジュネーブ諸条約の追加議定書(第III議定書)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器、その部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書。 VIII.フォローアップおよび普及 42.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁(国防相を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 43.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第1回報告書、締約国が提出した文書回答および委員会が採択した関連の総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.通報手続に関する選択議定書の批准 44.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 X.次回報告書 45.選択議定書第8条第2項および条約第44条にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年5月18日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/123.html
総括所見:スウェーデン(第4回・2009年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第5回(2015年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SWE/CO/4(2009年6月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年5月27日に開かれた第1403回および第1404回会合(CRC/C/SR.1403 and 1404参照)においてスウェーデンの第4回定期報告書(CRC/C/SWE/4)を検討し、2009年6月12日に開かれた第1425回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.248)のフォローアップに関する情報を記載した、締約国の第4回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/SWE/Q/4/ and Add.1)に対する締約国の文書回答により、スウェーデンにおける子どもの状況についての理解を向上させることができたことも歓迎するものである。 3.委員会は、さまざまな省庁の専門家を擁する、締約国のハイレベルな代表団との率直かつ開かれた対話に、評価の意とともに留意する。 4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して2007年6月8日に採択された総括所見(CRC/C/SWE/OPAC/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、報告対象期間中に見られた、以下のものを含む多くの進展を歓迎する。 (a) 差別事由のひとつに年齢を含み、かつ教育制度のあらゆる部分における差別を禁止した反差別法(2009年1月1日施行)、およびその実施を担当する平等オンブズマン事務所の設置。 (b) 子どもの保護を強化するため、2008年4月に社会サービス法(2001 453)および青少年ケア(特別規定)法(1990 52)に導入された新たな規定。 (c) 犯罪の結果死亡した子どもについての調査に関する法律(2007 606、2008年1月1日施行)。 (d) 国家犯罪防止委員会(BRA)による、スウェーデン刑法第6章への新たな性犯罪規定の導入(2007年)。 (e) 保護者のいない未成年者の受け入れおよび居住に関する責任がスウェーデン移民庁から市町村へと移管されることにつながった、2006年7月1日に導入された法改正。 (f) 子どもの権利の促進および保護に関する具体的プログラムを含んだ第2次国家人権行動計画(2006~2009年)の採択および実施、ならびに、スウェーデンにおける人権の全面的尊重を確保する活動の支援を目的としたスウェーデン人権代表団の任命(2006年3月)。 6.委員会はまた、2005年に第3回報告書が検討されて以降、締約国がとくに以下の文書を批准しまたはこれに加入したことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2008年)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2005年)。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.1)の検討後に表明された懸念および勧告(CRC/C/15/Add.248参照)の多くが立法上、行政上その他の措置を通じて対応されてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、その他の懸念および勧告(独立の監視、データ収集、研修および条約の普及、家庭環境を奪われた子ども、健康および保健サービス、教育ならびに性的搾取および人身取引のような問題に関するものを含む)が十分に対応されまたは実施されていないことを遺憾に思うものである。 8.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 9.委員会は、条約が国内法体系に正式に編入されていない理由について、報告書および事前質問事項に対する文書回答で締約国が行なっている説明に留意する。しかしながら委員会は、条約が引き続きスウェーデン法として正式に承認されていないことにより、条約に掲げられた諸権利および当該権利の適用に影響が生じうることを懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法が条約と全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう慫慂するとともに、締約国が、条約をスウェーデン法として正式に承認することに向けた努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、国内法の規定が条約に掲げられた法律〔ママ〕と抵触するときは常に条約が優先するべきことを勧告するものである。 調整 11.委員会は、政府内に監視部局である子どもの権利政策調整局が設けられていること、政府と子どもとともにおよびこどものために活動しているNGOとの構造的対話の場として「子どもの権利フォーラム」が設置されたこと(2005年6月)、および、組織的比較が適用されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どものための取り組みの調整および一貫性が中央においても地方レベルでも不十分であることを懸念するものである。さらに、市町村および県が高度の自治権を享受していることには留意しながらも、委員会は、条約の実施に関して市町村、県および広域行政圏の間で大きな格差が残っていること(子どもの貧困の水準、危険な状況にある子どものための社会サービスに対して利用可能とされている資源ならびに学校間および広域行政圏間の学業成績の違いとの関連を含む)を懸念する。 12.委員会は、中央および地方の公的機関の間の十分な協力ならびに子ども、親および非政府組織との協力を確保するため、締約国が、子どものための取り組みの一貫性および調整を向上させるための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はまた、依然として残る格差に対応し、かつあらゆるレベルでの条約の実施(レーンを通じてのものも含む)を確保するため、締約国が、市町村および広域行政圏のレベルで行なわれる決定を監視しかつフォローアップするための措置を強化することも、勧告するものである。 国家的行動計画 13.子どもの権利に関わる多くの措置が掲げられた第2次国家人権行動計画(2006~2009年)の採択は歓迎しながらも、委員会は、子どもに関する具体的な国家的行動計画が存在しないことに、遺憾の意とともに留意する。 14.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な国家的行動計画を採択するとともに、当該計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ2002年総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」および中間レビュー(2007年)が正当に考慮されることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 15.委員会は、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なっている多くの活動に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもがオンブズマンに対して個別の苦情を申し立てられないことを懸念するとともに、パリ原則にしたがい、オンブズマンの役割を政府から明確に独立したものとする必要があることも懸念するものである。 16.委員会は以下の措置を勧告する。 (a) 締約国が、子どもオンブズマンに対し、個別の苦情申立てを調査する権限を与えることを検討すること。 (b) 子どもオンブズマンの年次報告書を、子どもオンブズマンの勧告を実施するために政府がとりうる措置についての提案とともに、リクスダーゲン(議会)に提出すること。 (c) 子どもオンブズマンがその権限を効果的にかつ独立して行使するための十分な人的資源および財源を有することを確保するために必要な措置を、締約国が引き続きとること。 (d) とくに県および広域行政圏間の資源格差を考慮に入れながら、すべての子どもが子どもオンブズマンにアクセスできることを確保する目的で地方事務所を設置するために必要な支援を、締約国が子どもオンブズマンに対して提供すること。 資源配分 17.条約の実施に充てられている資源の配分について利用可能とされた情報は歓迎しながらも、委員会は、子どものためのサービスへのアクセスおよびその利用可能性について、子どもが住んでいる場所により、当該サービスの内容についても執行についても格差が存在することに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が条約第4条に基づく義務をどの程度履行しているかに関する適正な評価を可能にする目的で、締約国が、条約の実施に関わる国家予算の金額および割合についての具体的情報の提供を継続しかつ強化するよう、勧告する。締約国はまた、すべての子どもが、どこに住んでいるかに関わらず、サービスに平等にアクセスできかつサービスを平等に利用できることを確保するための措置も強化するべきである。これとの関連で、委員会は、締約国が、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議を受けて委員会が行なった勧告を考慮するよう、勧告する。 データ収集 19.委員会は、保健福祉庁の統計報告書およびスウェーデン統計庁(SCB)の活動を含め、さまざまな措置がとられていることに留意する。委員会はまた、子どもの権利政策における取り組みの状況を測定しかつ監視するための指標開発を委ねられた作業部会が、条約に基づく一連の目標を活用したフォローアップ制度を提案していることにも、留意するものである。しかしながら委員会は、障害のある子どもの総数および虐待の被害を受けた15~18歳の子どもに関するデータが存在せず、かつ性的搾取の被害を受けた子どもの総数が精確でないことに対し、あらためて懸念を表明する。 20.委員会は、締約国が、子どもに関するデータを収集するあらゆる機関間で調整のとれたアプローチを確立し、かつ、あらゆる子どもの状況、とくに障害のある子ども、虐待の被害を受けた15~18歳の子どもおよび性的搾取の被害を受けた子どもに関する細分化されたデータの体系的収集を向上させるための努力を強化するよう、勧告する。 条約の普及および研修 21.政府の資金による「条約実施ハンドブック」スウェーデン語版の発刊(2008年1月)およびエーレブルー大学におけるスウェーデン子どもの権利アカデミーの設置(2007年3月)は歓迎しながらも、委員会は、条約およびその2つの選択議定書に関する子どもの意識が依然として低いままであり、かつ子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、すべての子どもが条約およびその2つの選択議定書について知り、かつ自己の権利の擁護のためにこれらの文書を活用できることを確保するための措置を強化するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子どもたち自身)を対象とする、子どもの権利も含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを確保するよう、勧告するものである。 国際協力 23.委員会は、子どもの権利の促進および保護に関するものも含む政府開発援助および国際協力への継続的コミットメントについて、締約国を称賛する。これとの関連で、委員会は、締約国が国内総生産の0.7%以上を政府開発援助に配分していること(ODA目標)に、評価の意とともに留意するものである。 24.委員会は、締約国に対し、子ども影響評価を実施すること、および、他の締約国との二国間協力において条約および選択議定書ならびに当該国に関する委員会の総括所見および勧告に特段の注意を払うこと等の手段により、国際協力の分野における活動を継続しかつ強化するよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議後に発表された勧告を考慮するよう、慫慂するものである。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、新たな反差別法を含む立法上の保障が採択されたにも関わらず、差別の禁止の原則が実際には全面的に尊重されていない旨の前回の懸念をあらためて表明するとともに、民族的マイノリティの子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住者の家族に属する子どもに対する事実上の差別ならびに排外主義的および人種主義的態度について、とくに懸念を覚える。 26.委員会は、締約国が、条約第2条の全面的遵守を監視しかつ確保するとともに、差別の禁止の原則を保障した現行法が自国の管轄内にあるすべての子どもとの関連で実施されることを確保するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、外国人法(スウェーデン法典-SFS 2005 716)、および監護権、居所およびアクセスに関連する子どもおよび親法の規定の改正を含む、子どもの最善の利益の原則を編入する新たな立法措置に留意する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益の原則が、行政領域等において実際には十分に実施されていないことを懸念するものである。委員会はまた、庇護希望者および移民である子どもの最善の利益が庇護手続において十分に考慮されていないことも、依然として懸念する。 28.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の原則の意味および実務的適用に関する意識を高め、かつ条約第3条が立法および行政措置に適正に反映されることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はまた、とくに移民庁および社会福祉機関の職員に対して定期的研修を行なう等の手段により、とくに子どもが関わる庇護事件において子どもの最善の利益の原則が基盤とされかつ手続および決定の指針となることを確保するため、締約国が適当かつ効果的な措置をとることも勧告するものである。 子どもの意見の尊重 29.意見を聴かれる子どもの権利を増強するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、学校、施設ならびに子どもおよび若者のための社会的養護サービスにおける子どもの積極的参加に関して地域格差および不十分さが残っていることを懸念する。委員会はまた、社会で自己の生活に関わる事柄についての真の影響力を何ら有していないと感じている子どもがいることも、依然として懸念するものである。 30.条約第12条にしたがい、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、子どもの意見の尊重および自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を、家庭、学校、施設、裁判所および行政機関において、立法等も通じて引き続き促進しかつその便宜を図ること。 (b) 意見を表明する力のある子どもに対してそのための十分な機会が提供されることおよびその意見が正当に重視されることを効果的に確保するための研修を、子どもとともに働くおとなが受けることを確保すること。 (c) 子どもによる積極的参加の要件をすべての市町村が満たすことを確保するとともに、子どもの意見がどの程度考慮されているか(子どもの意見が関連の政策およびプログラムに与える影響も含む)に関する定期的検討を行なうこと。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 適切な情報へのアクセス 31.委員会は、インターネット上で身元を偽って(すなわちおとなが子どものふりをして)子どもに接近しようとするいかなる意図も犯罪とする新法の制定(2009年7月1日施行予定)、および、政府委員会であるメディア評議会(Medieradet)が、インターネット上の不法なおよび有害なコンテンツと闘うことを目的として、とくにスウェーデン学校改善庁と協力しながら行なっている活動を、歓迎する。 32.委員会は、締約国に対し、条約第17条(e)に一致する形で、子どもの福祉にとって有害となる情報および資料から子どもが保護されることを確保するため、適切な法律の執行、親教育の提供、学校における教育および子どもの意識啓発によるものを含むあらゆる必要な措置を引き続きとるよう、奨励する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 33.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。とくに、委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告する。(i) 防止を優先すること。 (ii) 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv) 子どもの参加を確保すること。 (v) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報制度およびサービスを創設すること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的なかつ期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。 (d) 次回の定期報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 34.委員会は、家族から分離され、かつ里親ホームその他の施設で生活している子どもの人数が多いことを懸念する。委員会はまた、家出をする子どもまたは自宅を離れることを余儀なくされる子どもの人数についても懸念を覚えるものである。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族から分離される子どもおよび家出をしまたは自宅を離れることを余儀なくされる子どもの人数が多いことの原因に対応する措置をとるとともに、家出をしまたは自宅を離れることを余儀なくされた子どもがサービスにアクセスできかつ必要な助言および支援を受けることを確保すること。 (b) とくに、もっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供すること、脆弱な立場におかれた家族の親を対象とする親訓練プログラムを発展させ、これらのプログラムに資金を拠出しおよびこれらのプログラムを提供することならびに意識啓発キャンペーンを実施することによって子どもの施設措置を防止するためのプログラムおよび政策を、さらに発展させかつ実施すること。 (c) 自然な家庭環境の保護を優先するとともに、家族からの分離および里親養護または施設への措置は子どもの最善の利益にかなう場合にのみ用いられることを確保すること。 家庭環境を奪われた子ども 36.委員会は、代替的養護施設(民間の代替的養護または養護居住ホームを含む)の監督および監視が不十分であること、および、親のケアを受けていない子ども(民間の代替的養護に措置された子どもを含む)のための効果的な苦情申立て機構が存在しないことに、懸念を表明する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 里親ホームまたは施設(民間の代替的養護または養護居住ホームを含む)に措置された子どもの状況の十分な監督および監視を確保すること。 (b) 親のケアを受けていない子どものために効果的な、十分に周知された、独立のかつ公平な苦情申立て機構が提供されることを確保するため、必要な措置をとること。 (c) 施設養護を離れた子どもに対し、フォローアップおよび再統合のための十分な支援およびサービスを提供すること。 虐待およびネグレクト 38.スウェーデン子どもヘルプラインの存在を含め、子どもの虐待およびネグレクトに関する意識を高めかつこれを減少させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、子どもの虐待およびネグレクトその他の形態の家族間暴力が高い水準にあることを依然として懸念する。委員会はまた、家庭で暴力にさらされている子どもが必ずしも十分なケアおよび援助を受けていないことも懸念するものである。 39.委員会は、締約国が、以下の措置をとることも含め、児童虐待の被害を受けた子どもに十分な援助を提供するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 (a) 児童虐待がともなう事案を早期に発見しかつ対応すること。 (b) 子どもを虐待するおそれがある家族をとくに対象とする子育てプログラム。 (c) すべての暴力被害者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (d) 家庭で虐待の被害を受けている子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (e) スウェーデン子どもヘルプラインを支援し、子どものために24時間対応のヘルプライン・サービスを提供できるようにすること。 (f) 不当な取り扱いの悪影響に関する公的な意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン、ならびに、積極的かつ非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する防止プログラム(家族発達プログラムを含む)。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 40.締約国が障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を批准したことは歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもが文化的活動およびレクリエーション活動への参加を制約されていることに、懸念とともに留意する。委員会は、障害のある子どものための個別支援計画数が増加したことには留意するものの、締約国報告書によれば、障害のある子どもが目に見えない存在となっており、かつ社会は子どもではなく障害自体に焦点を当てることが多いことを懸念するものである。委員会は、締約国が、障害のある子どもに関する細分化されたデータの収集についての勧告を実施していないことを遺憾に思う。 41.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがい、かつ一般的意見9号(2006年)ならびに障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を考慮に入れながら、とくに以下の措置をとることにより、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を引き続き強化するよう、勧告する。 (a) 障害のある子どもの保護および社会サービス、教育サービスその他のサービスに対する障害児の平等なアクセスに関する包括的な政策を策定しかつ実施すること。 (b) 障害者の機会均等に関する基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービスへの平等なアクセスが提供されることを確保すること。 (c) 障害のある子どもに関する、細分化された正確な統計データを収集するために必要な措置をとること。 (d) 必要な支援を提供し、かつ教員が普通学校で障害のある子どもの教育を行なうための訓練を受けることを確保する等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。 健康および保健サービス 42.委員会は、補完代替医療(CAM)がヨーロッパにおいても世界的にも承認された医療分野のひとつであることに留意する。そのため委員会は、締約国が、8歳未満の子どもならびに妊婦および分娩時の女性の検査、治療およびケアにおけるCAMの利用を禁じていることを、懸念するものである。委員会は、このような禁止が、治療手段を選択する締約国のすべての個人(子どもを含む)の権利に異を唱えるものであり、かつ到達可能な最高水準の健康に対する権利の剥奪につながる可能性があることを懸念する。 43.委員会は、年齢によって区別されることなくすべての子どもがCAMの検査、治療およびケアにアクセスでき、かつ到達可能な最高水準の健康に対する権利を享受できることを確保するため、締約国が現行法の見直しおよび改正を検討するよう、勧告する。 思春期の健康 44.バーチャル青年クリニックの設置を含む努力が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、青少年の摂食障害、具体的には女子の過食症および拒食症の発生件数が多いことを依然として懸念する。さらに委員会は、運動の少なさと劣悪な食事があいまってスウェーデンの子どもの体重過多および肥満の問題が増大していること、および、現在の研究によれば、自覚されたストレスがいまなお青少年の間で問題となっていることを懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に細心の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下のことのための措置を強化するよう勧告するものである。 (a) 過食症および拒食症を含む摂食障害の発生に対応すること。 (b) 体重過多および肥満の問題に対応し、かつ青少年の間で運動を含む健康的なライフスタイルを促進すること。 (c) 青少年のストレス水準を低減させ、かつ青少年がストレスの影響に対処するのを援助すること。 (d) 治療およびカウンセリングのための措置がジェンダーに配慮したものであり、かつ部門を超えた統合的アプローチの対象とされることを確保すること。 46.委員会は、性感染症(STI)が蔓延していること、および、15~19歳の女子の間で10代の望まない妊娠率および妊娠中絶率が上昇していることに、懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が、STIの蔓延について分析しかつこれと闘うための措置を増強するとともに、10代の望まない妊娠および妊娠中絶の件数を減らす目的で、青少年を対象とする、学校内外におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育を強化し、かつ、妊娠した10代の女子に対して必要な援助ならびに保健ケアおよび教育へのアクセスを提供するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、妊娠中絶および早期妊娠に関して保健福祉庁が実施した調査に関心をもって留意し、締約国に対し、次回の定期報告書にこの調査の成果に関する情報を記載するよう慫慂する。 薬物およびアルコールの濫用 48.薬物およびアルコールの濫用の防止を目的として多数の取り組みが行なわれていることには留意しながらも、委員会は、18歳未満の薬物使用者について治療の可能性が制約されていることを懸念する。委員会はまた、18歳未満の強度の薬物使用者が何名おり、かつそのうち何名が薬物の静注を行なっているかに関する統計が存在しないことも懸念するものである。委員会はまた、親の薬物濫用により苦しんでいる子どもが多いことも懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を子どもおよび親に提供するための努力を強化すること。 (b) 有害物質濫用の影響を受けているすべての子ども(18歳未満の薬物使用者および親の薬物濫用により苦しんでいる子どもを含む)に対し、当該濫用の有害な影響を効果的に低減させることを目的とした、証拠に基づく必要な支援ならびに回復および再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。 (c) この現象の蔓延状況を判断する目的で研究を実施しかつデータを収集すること。 精神保健サービス 50.委員会は、精神保健サービスを強化するための措置がとられたこと(小児・思春期精神医学へのアクセス向上のための措置を通じて当該精神医学に特別な焦点が当てられることへの投資が開始されたこと、および、締約国がスウェーデン統計庁に対して子どもおよび若者の精神保健に関する全国調査の実施を委託したことを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、精神保健上の問題および精神疾患を有する子どもが必要な治療およびケアを受けられるようになるまでの待機期間が相当に長いこと、10代(とくに女子)の自殺および自殺未遂が多数発生していること、ならびに、異なる部門(保健、教育、社会福祉)のサービス間でいまなお欠落がありかつ調整が行なわれていないことなど、課題が残っていることを懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、十分な治療およびケアがそれを必要とするすべての子どもに対して不当に遅延することなく提供されることを確保するため、防止プログラムおよび介入プログラムの双方を含む精神保健ケア制度を強化するよう、奨励する。加えて、締約国は、関連のサービス(学校、社会的養護ホーム、少年司法制度、薬物・アルコール濫用治療センター等)間の調整の改善を確保するべきである。委員会は、締約国に対し、自殺の危機にある人々のための保健ケア資源を強化するとともに、危険な状況におかれた集団の自殺を防止するための措置をとるよう、促す。 生活水準 52.近年、貧困下で暮らしている子どもの人数が全体として減少していることには留意しながらも、委員会は、市町村内および市町村間ならびに都市町村間で子どもの貧困水準の格差が大きいことに懸念を表明する。委員会はまた、一貫して低所得の世帯で暮らす移民の子どもの割合が非常に高く、かつ、非スウェーデン系の子どもおよびひとり親世帯で暮らす子どもの経済状況が継続的に悪化していることにも、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、金融危機が、脆弱な立場に置かれたこのような集団の子どもの状況に重大な影響を与えかねないことも懸念する。 53.委員会は、締約国が、すべての子どもが貧困線以下の生活を送らないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、子ども、とくに社会的に不利な立場に置かれた家庭(ひとり親世帯を含む)の子どもおよび非スウェーデン系民族の子どもが、その居住地に関わらず貧困下で生活しないことを確保するため、締約国が特別支援措置を含む十分な措置をとることも勧告するものである。締約国は、経済危機の時期に子どもの貧困と闘うための行動計画の策定を検討するべきである。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 54.条約に掲げられた目標を保障するために締約国が教育分野で行なっている多数の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、在留許可のない子ども、とくに「隠れた子ども」および在留資格証明書のない子どもが教育に対する権利を享受していないことを依然として懸念する。しかしながら委員会は、事前質問事項に対する回答で締約国が行なった、政府はどのようにすれば教育に対する権利をさらに拡大できるかについて提案するための補足的検討の担当者を任命する計画である旨の説明に留意するものである。委員会はまた、条約に関する体系的かつ一貫した教育が学校で行なわれていないことも懸念する。 55.委員会は、締約国が、すべての子ども(「隠れた子ども」および在留資格証明書のない子どものような在留許可のない子どもを含む)が教育に対する権利を享受することを確保するための努力を追求するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、新教育法の流れを踏まえてカリキュラムに条約その他の関連の人権条約を編入するとともに、初等・中等教育のいずれにおいてもそのような教育を強化するよう、勧告するものである。 56.委員会は、教育庁が、初等中等学校の生徒に対して労働市場および雇用の前提条件に関する情報を提供していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、学校修了後に失業したままであり、学校から労働市場への移行に関していっそう対象の明確な援助を必要とするであろう青少年の人数が多いことを懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、職を見つけるために必要な職業上の能力および資格を青少年が獲得するのを支援する措置を拡大しかつ強化するよう、勧告する。労働市場へのアクセスに関して困難を有する青少年を訓練しかつさらなる資格を与える学校および施設に対しては、学校から労働市場への移行に際してそのような青少年を効果的に援助するために十分な金銭的および人的資源が与えられるべきである。 いじめ 58.学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置、とくに、児童生徒の差別その他の形態の品位を傷つける取り扱いを禁ずる法律(2006 67)の関連規定、スウェーデン教育庁の責任のもとで行なわれるいじめに関する取り組みおよび児童生徒オンブズマン(BEO)による取り組みを歓迎しながらも、委員会は、学校におけるこの現象、とくに障害のある子どもおよび外国系の子どもに対するものが根強く残っていることを依然として懸念する。 59.委員会は、締約国が、いじめと闘うためにとられる措置を強化し、かつ障害のある子どもおよび外国系の子どもに対して特段の注意を払うとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保するよう、勧告する。このような措置においては、教室外または校庭で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 60.委員会は、庇護希望者および元庇護希望者または「隠れた子ども」に対し、同国に合法的に在留している子どもと同一の条件で保健ケアおよび医療サービスを受ける権利を認めた、庇護希望者の保健ケアに関する新法(2008 344)を歓迎する。しかしながら委員会は、在留資格証明書のない子どもは緊急医療ケアに対する権利しか有しておらず、補助金も得られないことを懸念するものである。 61.委員会は、在留資格証明書のない子どもを含むすべての子どもが、同国に合法的に在留している子どもと同一の条件で保健ケアおよび医療サービスを受ける権利を有することを確保するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。 62.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れおよび居住に関する責任がスウェーデン移民庁から市町村に移管されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国の受け入れセンターから失踪する、保護者のいない子どもの庇護希望者が多いことを引き続き懸念する。委員会はとくに、これらの子どもが虐待および搾取の被害を受けやすいことを懸念するものである。後見人の問題に関する締約国の立場には留意しながらも、委員会は、保護者のいない子どもそれぞれについて、同国への到着後24時間以内に、子どもが置かれている法的状況および利用可能な法的移民手続について子どもに情報を提供することを任務とする一時的後見人(または「被信託人」)を任命することに関する法律を締約国が導入していないことを、依然として懸念する。 63.委員会は、締約国に対し、受け入れセンターで生活している子どもへの十分な支援および監督の提供、ならびに、トラウマを受けた子どもの庇護希望者への十分な心理的および精神医学的ケアを確保するための措置を強化するよう、促す。委員会は、締約国に対し、保護者のいない子どもそれぞれについて、同国への到着後24時間以内に、子どもが置かれている法的状況および利用可能な法的移民手続について子どもに情報を提供することを任務とする一時的後見人(または「被信託人」)が任命されることを確保するために必要な立法上の措置をとるよう、促すものである。委員会はまた、当該後見人の適格性および十分な資格を確保するための努力を強化することも勧告する。委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対し、締約国の注意を喚起するものである。 家族再統合 64.委員会は、締約国が、外国籍市民および無国籍者の家族移住の条件として、2010年1月1日以降、扶養要件を導入することを検討していることに、懸念とともに留意する。 65.委員会は、締約国が、認定難民の家族再統合手続への対応が積極的、公正、人道的かつ迅速なやり方で行なわれ、かつ当該手続において条約上の子どもの権利が侵害されるおそれが生じないことを確保するためにとられる措置を強化するべきであるという勧告を、あらためて繰り返す。 性的搾取および人身取引 66.委員会は、子どもの性的搾取に関する国家的行動計画の更新および売買春と性的目的の人身取引に対抗する国家的行動計画の採択、ならびに、国家犯罪防止委員会(BRA)による、スウェーデン刑法第6章への新たな性犯罪規定の導入(2007年)のような、人身取引と闘いかつ人身取引被害者に援助を提供するために締約国がとった措置を歓迎する。委員会はまた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書についての締約国の第1回報告書が最近提出されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、とくに性的および経済的搾取を目的とする子どもの人身取引が蔓延していること、および、性的搾取、売買春および人身取引の規模および様式に関して入手できるデータが限られていることを、懸念する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引から子どもを保護するため、売買春と性的目的の人身取引に対抗する国家的行動計画を全面的に実施すること。 (b) 子どもの性的搾取に関わる新たなおよび出現しつつあるリスク状況を監視しかつ予見するための措置を強化すること。 (c) 人身取引および買春を含む性的搾取の被害を受けた子どもを保護し、かつ性的虐待および搾取の加害者を裁判にかけるための措置を強化するとともに、このような犯罪の規模および様式に関するデータを次回の定期報告書で提供すること。 (d) 秘密を尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ捜査する方法について、法執行官、裁判官および検察官に対する研修を行なうこと。 (e) 第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがい、子どもの被害の防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを実施すること。 (f) 人身取引の被害を受けた子どもに対し、教育および訓練ならびに心理的援助およびカウンセリングが提供されることを確保すること。 (g) 子どもの売買、取引および誘拐を防止するための二国間協定および多国間協定に関する交渉を関係国(近隣諸国を含む)と行なうとともに、関係国間で合同行動計画を策定すること。 68.委員会は、国外で子どもの性的搾取に関与したスウェーデン市民の人数および犯罪種別に関するデータが存在しないことを懸念する。委員会はまた、加害者の捜査、訴追および処罰に関して提供された情報が限られていることも懸念するものである。委員会はさらに、保釈金の供託後に釈放された者へのパスポートの再発行を禁ずるための措置が何らとられていないとされることにも、懸念とともに留意する。 69.委員会は、締約国が、以下の手段をとること等により、子どもセックス・ツーリズムという憂慮すべき現象を防止しかつこれと闘うための努力を増強するよう勧告する。 (a) 国外で行なわれた犯罪について、犯罪者がスウェーデンに帰国したときに一貫した訴追を行なうこと。 (b) セックス・ツーリズムに関するデータおよび情報(捜査、訴追および処罰に関するものを含む)を体系的に収集するための機構を設置すること。 (c) 貧困下で暮らしている外国の子どもを虐待しかつ搾取するのは受け入れられるという考え方のような態度に取り組むための意識啓発を行なうこと。 (d) 観光における性的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた指針の遵守を向上させるため、非政府組織および観光業界との協力を強化すること。 (e) 国外で行なわれた子どもに対する性犯罪および関連の犯罪をスウェーデンで訴追するために必要な、現存するすべての双方可罰性要件を廃止する目的で、法律の見直しおよび改正を検討すること。 少年司法の運営 70.委員会は、少年司法の分野で締約国が達成したさまざまな成果を歓迎する。しかしながら委員会は、現行規則(青少年ケアに関する特別規定法(法1990 52)第15条Cおよび閉鎖型少年ケア執行法(法1998 603)第17条)上、青年拘禁センターに措置されている子どもが暴力的な行動を示し、または全般的秩序を危うくするほどに薬物の影響を受けている場合、その子どもを隔離できることに懸念を表明するものである。加えて、委員会は、このような処遇が懲罰としても用いられているという報告があることに懸念を表明する。委員会は、独居拘禁はやむを得ず必要とされると判断されないかぎり用いられるべきではなく、かつ隔離期間は24時間を超えてはならないという見解に立つものである。 71.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)および刑事司法制度における子どもに関する行動についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 適切なときは現行法を改正することも含め、独居拘禁に関する現行の実務の見直しを優先事項として行なう。 (b) この措置の使用をきわめて例外的な場合に限定し、それが認められる期間を短縮し、かつその最終的廃止を追求すること。 (c) 観護措置をとられたすべての子どもに対し、十分な法的代理が提供されることを確保すること。 犯罪の証人および被害者の保護 72.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティックバイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 8.国際人権文書の批准 73.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。 9.フォローアップおよび普及 74.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告をリクスダーゲン(議会)、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 75.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 76.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2011年9月1日までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。 77.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認され、かつHRI/GEN/2/Rev.5に掲載されている「国際人権条約に基づく報告についての統一指針(共通コア・ドキュメントおよび条約別文書についての指針を含む)」に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するようにも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/297.html
総括所見:ポーランド(第3~4回・2015年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/POL/CO/3-4(2015年10月30日)/第70会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2015年9月18日に開かれた第2033回および第2034回会合(CRC/C/SR.2033 and 2034参照) においてポーランドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/POL/3-4)を検討し、2015年10月2日に開かれた第2052回会合(CRC/C/SR.2052参照)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解の向上を可能にしてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/POL/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の条約の批准またはこれへの加入を歓迎する。 (a) 死刑の廃止を目指す、市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(2014年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約(2012年)。 (c) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2015年)。 (d) 女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約(2015年)。 4.委員会はまた、以下の立法措置がとられたことにも評価の意とともに留意する。 (a) 家族支援および里親養育制度に関する法律(2011年)。 (b) 外国人法(2014年)。 (c) ポーランド共和国防衛のための一般的義務に関する法律(2009年改正)。 5.委員会はまた、以下の政策措置も歓迎する。 (a) ドメスティックバイオレンス対策国家計画(2014~2020年)。 (b) 人身取引対策国家行動計画(2013~2015年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 留保 6.委員会は、締約国が条約第7条および第38条に付した留保が2013年3月4日に撤回されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、条約第12~16条および第24条に関する宣言を締約国がいまなお撤回していないことを、依然として懸念するものである。 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.194、パラ10)を想起するとともに、世界人権会議(1993年6月)で採択されたウィーン宣言および行動計画に照らして、締約国に対し、条約第12~16条および第24条に関する解釈宣言の撤回を検討するよう奨励する。 包括的な政策および戦略 8.委員会は、人的資本開発戦略(2020年)で、子どもに関連するいくつかの問題が取り上げられていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 同戦略でとられている措置が、条約が対象とするすべての分野を包含しているわけではないこと。 (b) 条約に全面的に合致しているわけではない措置(3歳未満児を対象とする子どものケアのための施設の開発を含む)があること。 9.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約で対象とされているすべての分野を包含する子どもについての包括的政策を策定するとともに、当該政策をもとに、その適用のための適切な要素をともなった戦略を策定し、かつ当該戦略が十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられることを確保すること。 (b) このような政策および戦略が条約に全面的に合致することを確保すること。 (c) このような政策および戦略を策定し、かつその実施の有効性を定期的に評価するための、あらゆる関係者(子どもたちを含む)との協議を確保すること。 調整 10.委員会は、条約に関連する国内の法律、政策およびプログラムの一貫性を監督する任務が、2014年、労働社会政策省に委ねられたことに留意する。しかしながら委員会は、条約の効果的実施を確保するための、省庁横断型のおよび国レベル・地方レベル間の調整機構が設けられていないことを懸念するものである。 11.委員会は、締約国が、さまざまな部門を横断して、国、県および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を有する適切な制度的機構を、高い省庁間レベルに設置するよう勧告する。締約国は、当該調整機構に対し、その効果的活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 資源配分 12.委員会は、子どものための公共支出の十分性および有効性の評価を可能とするための、特定の省庁による子どもについての予算配分額および支出額を特定するシステムが存在しないことを懸念する。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利の視点を含んだ予算編成手続を確立するとともに、関連部門および関連機関における子どものための明確な配分額ならびに具体的指標および追跡システムを定めること。 (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価する機構を設置すること。 (c) 公的対話(とくに子どもたちとの対話)および公的機関(地方レベルの公的機関を含む)に説明責任を適正に履行させることを通じて、透明なかつ参加型の予算編成を確保すること。 データ収集 14.締約国のデータ収集システムには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、全国的データ収集システムで条約のすべての分野が包含されているわけではなく、かつ、5歳未満の子どもおよび司法制度における子ども(子どもの被害者および証人を含む)についての細分化されたデータが乏しいことを依然として懸念する。 15. 実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもの状況に関する分析を容易にする目的で、データ収集システムを改善して条約のあらゆる分野およびあらゆる年齢の子どもが対象とされるようにし、かつ当該データの細分化を図ること。 (b) 収集されたデータが関連政府機関間でおよび一般公衆との間で共有されかつ分析されることをさらに推進するとともに、条約の効果的実施のためのデータの活用を促進すること。 B.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 16.委員会は、差別と闘うために締約国が行なっている努力を評価する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) あらゆる理由に基づく、生活のあらゆる側面における、かつあらゆる形態(複合的形態の差別を含む)の差別の禁止に関する包括的法律が存在しないこと。 (b) 家庭および社会における女性と男性の役割および責任についての、ジェンダーに基づくステレオタイプが根強く残っていること。 (c) ロマ系、アラブ系、アジア系およびアフリカ系の集団、イスラム教徒、ユダヤ人、国民でない者(難民、庇護希望者および移住者を含む)、障害のある者ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの子どもを含む、民族的、言語的その他のマイノリティ集団に属する子どもが差別に直面しており、かつヘイトクライムの標的となる場合もあること。 (d) ヘイトスピーチを含む人種的暴力および虐待の発生件数が、排外主義的行為および同性愛嫌悪行為と同様に増えていること。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 平等処遇法を改正することにより、あらゆる分野の、あらゆる理由に基づく差別の問題(ジェンダー、性的指向、障害、宗教または年齢に基づくもの、ならびに、教育、保健ケア、社会的保護、住居ならびに私生活および家族生活の分野におけるものを含む)が同法の対象とされ、かつ、複合的な形態の差別の定義が定められるようにすること。 (b) 刑法を改正することにより、人種主義、排外主義および同性愛嫌悪を動機とするヘイトスピーチその他のヘイトクライムを具体的な処罰対象犯罪として定めるとともに、これらの事件が徹底した捜査の対象とされることおよび加害者が裁判にかけられることを確保すること。 (c) 一般公衆ならびに国および地方の公的機関の間に存在するステレオタイプ、不寛容および差別を防止しかつ解消するための措置を再検討しかつ強化すること。 C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 国籍 18.委員会は、2014年国勢調査によれば、2000人の無国籍者(子どもを含む)および8000人以上の国籍不定の外国人(子どもを含む)が締約国に滞在しているとされていることを懸念する。 19.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 無国籍の子どもにポーランド国籍を付与するためにあらゆる必要な措置を遅滞なくとること。 (b) 自国の領域内に滞在している国籍不定の子どもの問題に対処するため適切な措置をとること。 (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討すること。 アイデンティティに対する権利 20.委員会は、締約国で、匿名での子どもの遺棄を可能にする赤ちゃんボックスの規制が行なわれておらず、かつその数が増えていることを深く懸念する。これは、とくに条約第6~9条および第19条の違反である。 21.委員会は、締約国に対し、赤ちゃんボックスの利用を禁止し、すでに存在する代替的選択肢の強化および促進を図り、かつ、最後の手段として、病院で秘密出産をできるようにすることの導入を検討するよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 22.委員会は、宗教的マイノリティに属する子どもが、公立学校で自己の宗教に関する授業を受けられず、代わりにカトリックの授業に参加しなければならないことがあることを懸念する。委員会はまた、イスラム教の授業で取得した評点が常に成績証明書に記載されるわけではないことも懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 宗教的マイノリティに属する子どもが、公立学校で行なわれる自己の宗派ではない宗教の授業への参加を強要されないことを確保すること。 (b) 教育制度法(1991年)に基づいて定められているとおり、自己の宗派に合致する授業の設置を要請できることおよびそのための手続について、親および生徒の意識啓発を図ること。 (c) カトリック以外の宗教の授業で取得した評点が成績証明書に記載されることを確保すること。 D.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) あらゆる形態の暴力からの子どもの保護 24.委員会は、あらゆる場面における体罰の全面的禁止を立法化したことについて締約国を称賛する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 近年、警察の緊急青年保護センター、青年シェルターまたは少年院で行なわれる子どもの非人道的なまたは品位を傷つける取扱いについて正式な告発が行なわれまたは有罪判決が言い渡されたことはない一方で、これらの施設における若干の不当な取扱いが明らかになっていること(移行施設における長期間の収容、規則を遵守せずに行なわれる処罰、通信の制限ならびに面会に関する苦情および面会制限を含む)。 (b) 法律で禁止されているにもかかわらず、学校、青年センターおよび代替的養護施設で体罰がいまなお用いられていること。 25.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 加害者が処罰されないことがないようにするため、子どもの不当な取扱いに関するすべての訴えについて十全な調査を行ない、かつ、そのような行為に対して司法手続を通じた適切な対応がとられることを確保すること。 (b) 現在設けられている苦情申立て機構を見直すとともに、自由を奪われたすべての子ども(刑事手続または矯正手続の過程で自由を奪われた子どもを含む)が、自己の自由の?奪、拘禁または収容の環境および処遇に関連する苦情を申し立てるための安全なかつ子どもにやさしい機構にアクセスできることを確保すること。 (c) 不当な取扱いの被害を受けた子どもに対し、ケアおよびリハビリテーションのためのプログラムが提供されることを確保すること。 (d) 体罰の禁止があらゆる場面で十分に監視されかつ執行されることを確保すること。 (e) 積極的かつ代替的な形態の規律の維持および子どもの権利の尊重を促進し、かつ体罰が子どもに与える有害な影響に関する意識を高める目的で、教員および子どものケアのための施設の職員を対象とする能力構築プログラムを強化すること。 (f) この点に関して子どもオンブズマンおよび人権擁護官との連携をさらに強化すること。 性的虐待 26.委員会は、聖職者による子どもの性的虐待の事件が真剣に受けとめられ、かつ訴追の対象とされていることに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、多くの事件がまだ表面化していない可能性があり、かつこのような虐待がいまなお継続している可能性もあることを懸念するものである。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的虐待のあらゆる事件(カトリック聖職者および他の宗教の代表者によって行なわれたとされるものを含む)が捜査および訴追の対象とされることを確保するための努力を継続すること。 (b) 被害者が十分な補償を受け、かつリハビリテーションのための支援を受けられることを確保すること。 (c) 子どもその他の者がこのような虐待を通報するための、子どもにやさしい経路を確立すること。 (d) 子どもの虐待を理由として有罪判決を受けた者が専門家として子どもに接することがないようにすることにより、子どもをさらなる虐待から保護すること。 (e) このような虐待の再発を防止するために必要な政策および措置を整備すること。 有害慣行 28.委員会は、締約国が、移住の状況にある女子ならびに女子の難民および庇護希望者の強制婚の防止に関して課題に直面していることに、懸念とともに留意する。 29.女性差別撤廃委員会と合同で採択した有害慣行に関する一般的意見18号(2014年)に照らし、委員会は、締約国が、移住者、難民および庇護希望者の間で強制婚が行なわれたすべての事案を追跡するための制度を確立し、加害者を裁判にかける目的でこのような事案の実効的捜査を行ない、かつ、被害者に対してシェルターならびにリハビリテーションおよびカウンセリングのための適切なサービスを提供するよう、勧告する。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20条、第21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境 30.委員会は、両親が仕事を見つけるために海外に出ている間、子どもが長期にわたって親のケアを受けられないままでいることを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 両親が国外に出稼ぎに出ている間に締約国に残されている子どもについての全国的調査を実施するとともに、その結果を活用し、政策およびプログラムの指針とする目的でこのような層の人口動態的詳細を明らかにすること。 (b) 親が子どもとともにいられるよう、ポーランドにおいて仕事を見つけるのに役立つ支援を提供するための包括的戦略を採択すること。 家庭環境を奪われた子ども 32.委員会は、家族支援および里親養育制度に関する法律(2011年)において、家庭環境を奪われた子どもの脱施設化が促進されていることに留意する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 2014年に、10歳未満の多数の子ども(3歳未満の子ども800人を含む)が入所養護に措置されたこと。 (b) 障害のある子どもが、入所型養護施設の子どもの約半数を占めていること。 (c) 家族支援および里親養育制度に関する法律で、1歳未満児を対象とする養子縁組待機センターを発展させることがいまなお定められており、かつ、地域養護処遇施設で、家庭環境を奪われた子どもおよび特別な健康上のニーズを有する子どもを最大45名収容できるとされていること。 (d) 家庭を基盤とする里親養育の発展に関わる進展が、とくに地区行政機関がそのための取り組みを十分熱心に行なっていないために、相対的に遅れていること。 (e) 家庭裁判所裁判官が、実務上、出身家族が子どもを養育し続けられるようにするための支援を優先させ、または家庭を基盤とする養護への措置を選択するのではなく、施設養護への子どもの措置を選択する傾向にあること。 (f) 出身家族との接触の制限が、里親養育に委託された子どもに対する処罰の一形態として用いられていること。 (g) 子どもが養護の対象とされた後、その親に対し、養育能力を高めるための適切な支援が提供されていないこと。 (h) 養護を離脱する子どもおよび若者(障害のある子どもおよび若者を含む)の社会的再統合のための支援が不十分であること、および、十分な住居が存在しないことからこのような子どもおよび若者がホームレスになり、または入所施設に恒久的に措置されたままとなっていること。 33.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 3歳未満児(障害のある子どもを含む)の入所型養護施設への措置を緊急に減らし、かつ家庭を基盤とする養護への措置を速やかに進めること。 (b) 子どものいる家族への支援および援助の制度をさらに発展させることにより、代替的養護(障害のある子どもを対象とするものを含む)の必要性の防止に努めること。 (c) 1歳未満児を対象とする養子縁組待機センターを廃止し、かつ大規模な入所型養護施設を回避する目的で、家族支援および里親養育制度に関する法律ならびに人的資本開発戦略を見直し、かつその改正を検討すること。 (d) 地区行政機関をより効果的に関与させることにより、家庭を基盤とする養護を発展させるプロセスを加速させること。 (e) 子どもが代替的養護に措置されるべきか否かを、その子どもの意見および最善の利益を考慮しながら決定するための十分な法的保障措置および明確な基準を確保するとともに、家庭裁判所裁判官の意識啓発を図ることによって当該基準を執行すること。 (f) 子どもとその家族との定期的かつ適切な接触の支援およびモニタリング(ただし、当該接触が子どもの最善の利益に一致することを条件とする)を行なうとともに、とくに、処罰の一形態としてのこのような接触の制限を禁止すること。 (g) 子どもが、その最善の利益にかなう場合には自己の家族のもとに復帰できるよう、子どもが養護の対象とされた家族に支援および援助を提供すること。 (h) 養護を離脱する子どもおよび若者(障害のある子どもおよび若者を含む)が社会に再統合できるよう、十分な住居、法律サービス、保健サービスおよび社会サービスならびに教育および職業訓練の機会へのアクセスを保障することにより、これらの子どもおよび若者への支援を強化すること。 F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 34.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 障害のある子どもの権利に関する法律および政策の実施の有効性に関するデータ、調査研究および分析がほとんど存在しないこと。 (b) 脱施設化に関わって進展が見られたにもかかわらず、とくに社会的援助制度が断片化していることを理由として、障害のある子どもの多くがいまなお施設で生活していること。社会的援助制度は、家族が子どもを家庭で養育し続けることを十分に奨励しかつ支援しておらず、また子どものライフコース全体を通じて子どもの自律および公的生活への主体的参加を支援するのに十分な包括性も備えていない。 (c) 障害のある子どもがインクルーシブ教育を受けない旨の決定を親が行なえることから、障害のある子どものかなりの割合がいまなお特別学校に通っていること。 (d) 普通学校で、障害のある子どものためのものと指定された資金が他の目的で使用される場合があり、これらの学校における教育のインクルージョン度が低下していること。 35.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関するデータ収集を強化するとともに、条約ならびに現行の法律および政策の実施の有効性に関する研究および分析を実施すること。 (b) 障害のある子どもおよびその家族のための社会的援助制度を改革することにより、その一貫性および調整を向上させ、かつ不必要な施設措置を回避すること。 (c) 障害のあるすべての子どもに対し、普通学校におけるインクルーシブ教育への権利を保障すること。 (d) 障害のある1人ひとりの子どもに対して合理的な配慮および支援が提供されることを確保するため、障害のある子ども向けの教育補助金の運用を監視するための制度を地方レベルで発展させること。 (e) 余暇活動、コミュニティを基盤とするケアおよび合理的配慮のなされた社会住宅の供給など、公的生活のあらゆる分野における障害のある子ども(知的障害および心理社会的障害のある子どもを含む)の全面的インクルージョンを促進するための措置を優先的にとること。 健康および保健サービス 36.委員会は、子どもの健康の分野で行なわれてきた努力について締約国を称賛するものの、以下のことを懸念する。 (a) 締約国で、現行の保健関連法制の一貫性および調整を確保する、公衆衛生に関する枠組み法が定められていないこと。 (b) 抑うつおよび摂食障害を有する子どもの人数が増えており、かつ子どもによる自殺未遂の件数が増加していること。 (c) 歯の問題が、子どもの間でもっとも広がっている健康問題になっていること。 (d) 子どもの過体重および低栄養の双方が同時に増加しているように思われること。 (e) 良質なプライマリーヘルスケアおよび専門的保健ケア(小児科ケアならびに子どもを対象とする歯科保健ケアおよび精神保健ケアを含む)の利用可能性が締約国において全般的に低く、かつ一部の件ではさらに低くなっていること、ならびに、締約国のすべての子どもにとってそのような保健ケアの費用が負担可能な水準になっているわけではないこと。 (f) 障害のある子どもによる保健サービスおよびリハビリテーションサービスへのアクセスが、保健サービス施設に物理的障壁があること、および、利用可能なサービスが欠如しているために長期間待たなければ治療を受けられないことを理由として、とりわけ阻害されていること。 (g) 締約国の法律で、ポーランド国民については医療ケアを無償とするとされているものの、貧困下で暮らしているロマの子どもについてはこの規定が適用されないため、これらの子どもが時宜を得た良質な医療ケアにアクセスしにくくなっていること。 37.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 健康に対する子どもの権利を考慮しながら、公衆衛生に関する枠組み法および包括的政策を策定することを検討すること。 (b) 子どもの精神保健上の問題について子ども、親および教員のさらなる意識啓発を進め、学校およびケア施設における予防活動を継続しかつ強化し、容易にアクセスできるサービス(学校看護師および学校カウンセラーなど)の利用可能性を高め、かつ、児童心理学者および児童精神科医をさらに増員すること。 (c) 歯科ケアの分野における予防活動を継続しかつ強化するとともに、子どもに対し、親に主導される必要のない歯科検診を定期的に受けに行くよう奨励する制度を導入すること。 (d) 子どもの栄養状態に関するデータ(低栄養および過体重の双方を対象としたもの)を収集し、かつ子どもの栄養状態を向上させるための措置をさらに発展させること。これらの措置には、ジャンクフードならびに塩分、糖分および脂肪分の多い食品の広告および販売促進ならびに子どもへの提供を制限するための規制が含まれるべきである。 (e) 締約国のすべての子ども(農村部に住んでいる子どもならびに社会的および経済的に不利な立場に置かれた集団の子どもを含む)を対象として、良質なプライマリーヘルスケアおよび専門的保健ケアが提供され、かつ公平にアクセス可能とされることを確保すること。 (f) 障害のある子どもが保健ケアサービスおよびリハビリテーションサービスに平等にアクセスできることを確保するため、全国的保健制度の強化を目的とする国内法、政策およびその他の措置に障害のある子どもの権利を統合すること。 (g) 自国の管轄内にあるすべての子ども(ロマの子どもを含む)が無償の保健ケアサービスに平等にアクセスできることを確保すること。 思春期の健康 38.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 学校で必修科目とされている「家族生活教育」(CRC/C/POL/3-4, para 570)において、セクシュアル/リプロダクティブヘルスについての包括的かつ年齢にふさわしい教育が行なわれていないこと。 (b) 思春期の男子および女子が、セクシュアル/リプロダクティブヘルスサービス(現代的避妊法を含む)へのアクセスに関して困難に直面していること。 (c) 不法なかつ安全性を欠いた中絶の蔓延に関する公式なデータおよび調査研究が存在しないこと。 (d) 現行法上、中絶の法的要件が厳格であり、かつ合法的中絶を実施するための明確な手続が存在しないことにより、社会的スティグマとあいまって、合法的中絶への女子のアクセスが阻害されていること。 39.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 必修科目である「家族生活教育」の範囲を拡大し、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的かつ年齢にふさわしい教育(家族計画および避妊法、若年妊娠の危険性ならびに性感染症の予防および治療に関する情報を含む)を提供すること。 (b) 思春期の女子および男子が、セクシュアル/リプロダクティブヘルスサービス(秘密が守られるカウンセリングおよび現代的避妊法を含む)に妨げられることなくアクセスできることを確保するとともに、中絶の条件に関する制限を緩和し、かつ、思春期の女子との関連で、自己の意見を表明しかつ自己の最善の利益を考慮される子どもの権利を反映させる目的で、家族計画、ヒトの胎児の保護および合法的中絶の条件に関する1993年の法律を改正すること。 (c) 合法的中絶の条件の統一的かつ非制限的な解釈および関連の手続に関する明確な基準(個人情報の秘密保持の厳格な実施を含む)を定めること。 生活水準 40.委員会は、家族を支援するためにとられた措置を歓迎するものの、以下のことを懸念する。 (a) 貧困のおそれに直面する子どもの人数が近年増加していること、および、子どもの貧困率が住民の他の層と比較してあらゆる年齢層(0~18歳)で高く、かつ子どもの10%が極度の貧困に直面していること。 (b) ひとり親家族、多子家族(子どもが3人以上いる家族)および障害のある子どもがいる家族が、複合的貧困を経験するおそれがより高い状況に置かれていること。 (c) ホームレスの子どもの人数が増加していること。 41.委員会は、締約国が、とくに極度の貧困および子どもの剥奪状況を解消する目的で、子どもの貧困を削減するための具体的達成目標を、関連の政策およびプログラムにおける明確な時間軸および指標とあわせて定めるとともに、その際、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの貧困削減のための戦略および措置の強化を目的で、子どもの貧困の問題に関する焦点化された協議を、家族および子どもたち(被害を受けやすい状況に置かれた子どもたちを含む)ならびに子どもの権利を扱ってる市民社会組織との間で持つことを検討すること。 (b) 貧困線以下の生活を送っている子ども、とくにひとり親家族、3人以上の子どもがいる家族および障害のある子どもがいる家族に提供される支援を強化するとともに、社会的保護措置において、人間にふさわしい生活水準を子どもに保障するためにかかる現実の費用(健康、栄養のある食事、教育、十分な住居、水および衛生設備に対する子どもの権利に関連する支出を含む)が対象とされることを確保すること。 (c) ホームレスを防止しかつ解消する目的で、子ども(障害のある子ども、その家族および代替的養護を離脱する子どもを含む)の特別なニーズを考慮に入れながら、住宅に関する法律、政策およびプログラムを見直すこと。このような措置に、自治体レベルにおける社会住宅の利用可能性および十分性を向上させること、ならびに、ホームレスとなるおそれのある者に対して一時的緊急シェルターを提供することを含めることも考えられる。 G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 42.委員会は、良質な教育へのアクセスに関する都市部と農村部の格差を縮小し、乳幼児期教育の提供を強化し、ロマの子どもを普通学校に統合し、かつ、外国籍の子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)に対して無償の公教育および教育支援サービスへのアクセスを保障するために相当の努力が行なわれていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 農村部および小規模な町に住んでいる子どもが、良質な教育へのアクセスに関していまなお不平等に直面していること。 (b) 就学前教育、初等中等教育および職業教育へのロマの子どもの参加率が依然として他の子どもよりも低く、かつ、ロマの子どもの多くが、ポーランド語の水準が低いことおよび文化的配慮を欠いた試験が実施されていることを理由として、普通学校の授業についていくうえで困難に直面しており、または不適切な形で特別学校に措置されていること。 (c) HIV/AIDSに感染している子どもが就学前教育および義務教育において隔離される傾向にあること。 (d) 収容センターに措置されている子どもの庇護希望者がフルタイムの教育にアクセスできていないこと。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 農村部および小規模な町における良質な教育へのアクセス(就学前教育、中等教育および高等教育へのアクセスを含む)を向上させるための努力をさらに増進させること。 (b) あらゆる段階の教育(就学前教育を含む)へのロマの子どもの参加およびインクルージョンを促進し、ロマの歴史および文化に関する教員および心理・教育カウンセリングセンター職員の意識を高め、かつ非言語的で文化的配慮のある試験が活用されることを確保するとともに、義務教育におけるロマ教育アシスタントの役割および能力を、その地位を明確に定め、その労働条件を向上させ、かつ能力構築の機会を提供することによって強化すること。 (c) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(2006年)にのっとり、HIV/AIDSに感染している子どもに対するスティグマおよび差別ならびに教育制度における隔離を解消すること。 (d) 子どもの庇護希望者が、その地位または滞在もしくは在留の期間にかかわらず、締約国の他のすべての子どもと平等な立場で教育に対する権利を全面的に享受できることを確保すること。 H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 44.委員会は、外国人法(2014年)の制定によって庇護希望者の収容に代わる措置が導入されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 外国人法において、成人の家族構成員が収容されている場合には子どもの庇護希望者をその家族構成員とともに収容することもできる旨、いまなお規定されていること。 (b) 子どもの庇護希望者およびその後見人に対し、自己の権利および義務、庇護手続ならびに利用可能なサービスについて組織的に情報を提供するための手続が存在しないこと。 (c) 保護者のいない子どもを含む庇護希望者に対し、国の資金による無償の法的援助が提供されていないこと。 (d) 家族再統合のための手続が、多くの庇護希望者および難民にとって物理的および経済的にアクセス可能となっておらず、かつ、申請者の身分証明書類および身体的確認の要件の点で要求が過度に厳しいこと。 (e) 締約国で国際保護を受けている者の大多数、とくに母子家族および多子家族が長期的に住むところのない状態または居住が不安定な状態に直面していること。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満の庇護希望者および子どものいる家族についてあらゆる形態の収容を行なわないようにし、かつ、収容前にあらゆる可能な代替的選択肢(無条件の放免を含む)を検討すること。委員会は、UNHCR「庇護希望者の拘禁に関連して適用される判断基準および実施基準に関する改訂指針」に対して締約国の注意を喚起する。 (b) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての委員会の一般的意見6号(2005年)に照らし、庇護希望者であるすべての子どもおよびその後見人に対し、自己の権利および義務、庇護手続ならびに利用可能なサービスに関する情報が組織的に提供されることを確保すること。これとの関連で、ポーランドの領域内にある外国人の保護に関する法律(2003年)を含む関連国内法の改正を検討すること。 (c) 関連の法律を改正し、かつ、子どもの庇護希望者および難民に法的援助を提供している非政府組織(NGO)に財政支援を行なうことにより、無償の法的援助の範囲を、国際保護の申請手続のあらゆる段階における、あらゆる子どもの庇護希望者および難民に拡大することを検討すること。 (d) 家族統合のための行政上の要件をより柔軟かつ負担可能なものとする等の手段により、難民およびその子どもに対して家族の一体性の原則を保障するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 特有のニーズを有する集団(シングルマザーおよび多子家族など)に対して十分な住居へのアクセスを確保し、かつ難民のホームレス化を防止するための積極的措置をとることにより、国際保護を受けている子どもの居住状態を向上させること。 マイノリティ集団に属する子ども 46.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもを含むロマに対するスティグマおよび差別がいまなお広範に存在しており、そのためロマに対する暴力およびヘイトスピーチが生じていること。 (b) 非公式な定住地で子どもとともに生活しているロマの家族が強制立退きに直面していること。 (c) 社会的保護サービスおよび社会的再統合プログラムのほとんどがロマの文化に配慮しておらず、またはポーランド国民もしくは欧州連合非加盟国の国民を対象としているため、移住者であるロマの子ども(とくにルーマニアなどの欧州連合加盟国出身の子ども)が、これらのサービスおよびプログラムへのアクセスに関して困難に直面していること。 47.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 社会一般に存在するロマへの否定的態度に対処することを目的としたキャンペーンをあらゆるレベルおよびあらゆる県で実施するとともに、ロマに対する暴力およびヘイトスピーチを防止するための効果的措置をとること。 (b) 強制立退きの防止措置を強化するとともに、立退きが避けられないときは、開発に基づく立退きおよび移転に関する基本原則および指針(A/HRC/4/18参照)にしたがってこれを実施すること。 (c) 移住者であるロマの子ども(とくに欧州連合加盟国出身の子ども)が置かれた特有の状況を評価するとともに、提供されるサービスの文化的配慮を向上させ、かつ社会プログラムの適用範囲の修正を図る等の手段により、社会的保護措置および社会的再統合プログラムへのこれらの子どもによるアクセスを促進するための措置をとること。 路上の状況にある子ども 48.委員会は、物乞いに従事している子ども(国外から人身取引により連れてこられた子どもを含む)を保護しかつ支援するための体系的努力が何ら行なわれておらず、かつ、このような子どもを代替的養護に措置する旨の決定等において、どのような保護措置が子どもの最善の利益を保障することになるのかについての一貫した政策も定められていないことを懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 物乞いに従事している子どもについてのデータを収集するとともに、このような活動の根本的原因の判断および規模の評価を目的とした研究を実施し、かつ効果的な対応をとること。 (b) 子どもの物乞いの防止および解消を図り、かつ、被害者およびその家族に対して保護ならびにリハビリテーションおよび社会的統合のための支援を提供することを目的とした包括的戦略を策定するとともに、このような戦略を策定する際、当事者である子ども、その家族および市民社会組織の自由な、主体的なかつ意味のある参加を確保すること。 (c) 物乞いの被害者である子どもに対し、その最善の利益ならびに自己の意見を表明する権利および成長につながる家庭環境への権利を保障しながら十分な保護および支援を提供するための指針を策定すること。 性的搾取および人身取引 50.委員会は、国際基準により忠実な人身取引の定義の採用を目的とし、かつ人身取引の範囲を広げて労働搾取目的の人身取引も含まれるとした刑法改正を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 現行法において、被害者であると特定された者が、人身取引の対象とされたことの直接の結果として行なった行為について処罰されないことが確保されていないこと。 (b) 人身取引の被害を受けた子どもの特定が依然として課題となっていること。 (c) 検察官および裁判官の認識が欠けているために、人身取引加害者の有罪判決率が低く、より軽い刑または執行猶予刑が科される率が高く、かつ、被害を受けた子どもの保護に関して不適切な決定(このような子どもを、必要なカウンセリングその他のサービスが提供されていない、社会的不適応の子どものための施設に措置することを含む)が行なわれていること。 (d) 人身取引の被害を受けた子どもに対して専門的なケアおよび支援を提供する公的サービスが存在しないこと。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 現行法を改正することにより、人身取引の対象とされた子どもを、人身取引の対象とされたことの直接の結果として従事させられた活動を理由として刑事訴追し、拘禁しおよび処罰することを禁止する規定を設けること。 (b) 人身取引の被害を受けた子どもの特定および保護を目的とした、十分なかつ調整のとれた機構(関連官吏間での組織的なかつ時宜を得た情報共有を含む)を設置するとともに、警察官、国境警備官、労働査察官およびソーシャルワーカーの、人身取引の被害を受けた子どもの特定能力を強化すること。 (c) 人身取引の被害を受けた子どもが有する特有の保護のニーズを考慮に入れながら、現行の国内的基準および国際的基準、ならびに、人身取引関連の法的手続で子どもの最善の利益を尊重する方法についての家庭裁判所裁判官および検察官の意識および能力を高めるための努力を強化すること。 (d) 人身取引対策国家行動計画(2013~2015年)の成果に関する評価に基づき、次期国家行動計画に、人身取引の被害を受けた子どもを特定し、保護しかつ支援するための、これらの子どもの最善の利益および特別なニーズを反映させた包括的措置を統合すること。 少年司法の運営 52.委員会は、以下のことを深刻に懸念する。 (a) 多くの子どもがいまなお、矯正手続の前および進行中に少年勾留施設に長期間拘禁されており、平均拘禁期間が3か月を超えていること。 (b) 13歳以上の子どもであって処罰対象の行為を行なったという合理的な疑いがある者またはそのような行為を理由として有罪判決を受けた者が警察の緊急留置所に拘禁されうること。 53.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 少年勾留施設における拘禁期間を最高3か月と規定した規則を執行するとともに、このような拘禁の例外的延長について、当該延長について明確な上限を設けた法的保障措置を定めること。 (b) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 54.委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 法律に抵触した子どもであって警察の留置下にある者がしばしば、関連の法律に違反して、弁護士または他の信頼できる大人の援助者の立会いのないまま、事情聴取を受け、かつ陳述を行なうことおよび調書に署名することを要請されていること。 (b) 少年司法法の改正(2014年1月2日)によって統一少年司法手続が確立され、この手続には民事訴訟法の手続が適用されるとされたために、子どもが刑事訴訟法上の手続的保障(無罪の推定、実体的真実の確認義務または疑わしきは罰せずの原則および弁護人選任権を含む)を奪われる可能性があること。 55.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法制度を条約および他の関連の基準と全面的に一致させ、かつ子どもの手続的権利を保障すること。 (b) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、国際連合児童基金、国際連合人権高等弁務官事務所およびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを活用すること。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて提出された締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPSC/POL/CO/1)のフォローアップ 56.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもの性的搾取関連犯罪についての刑事手続で、立証責任が犯罪者ではなく被害を受けた子どもに課される傾向があること。 (b) 売春に従事させられている子どもが、全面的な社会的再統合ならびに全面的な身体的および心理的回復のために必要な援助にアクセスできていないこと。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 立証責任を選択議定書が対象とする犯罪の加害者側に移す等の手段により、被害を受けた子どもの保護を確保する目的で、適用される法律の実施を増進させること。 (b) 選択議定書で禁じられている犯罪の被害を受けた子どもへの、十分なかつ無償の法的援助ならびに心理的、医学的および社会的支援の提供を強化すること。 58.委員会はまた、児童セックスツーリズム産業が国境地域で増えていると報告されているものの、委員会の前回の勧告(CRC/C/OPSC/POL/CO/1、パラ7)にもかかわらずデータがまったく収集されていないことも懸念する。 59.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) リスクの高い状況に置かれた子どもを特定し、かつ問題の規模を評価する目的で、児童セックスツーリズムの規模および根本的原因に関する調査研究を実施すること。 (b) 締約国の領域で操業しているまたは締約国の領域から運営されている、とくに観光業界の企業およびその子会社の法的責任を確保するため、立法上の枠組み(民事法、刑事法および行政法)を検討しかつ修正すること。 (c) 説明責任および透明性を向上させる目的で、子どもの権利侵害の調査および救済のための監視機構を設置すること。 (d) 児童セックスツーリズムの防止に関して観光業界および公衆一般とともに意識啓発キャンペーンを実施するとともに、旅行代理店および観光業者の間で、観光産業名誉憲章および世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。 (e) 児童セックスツーリズムの防止および解消のための多国間、地域間および二国間の取決めを通じて、児童セックスツーリズムに反対する国際協力を強化すること。 (f) 以上の勧告を実施する際、人権理事会が2008年に全会一致で受け入れた「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」を指針とすること。 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて提出された締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPAC/POL/CO/1)のフォローアップ 60.委員会は、18歳以上の者しか軍務のために義務的に徴募しまたは志願を受け入れることができないことを保障した、ポーランド共和国防衛のための一般的義務に関する法律の改正(2009年8月27日可決)を歓迎する。しかしながら委員会は、暴力の被害を受けた子どもの庇護希望者および難民を、とくにこれらの子どもが武力紛争に直面している国の出身である場合に、特定するための手続が設けられていないことを依然として懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、国外で武力紛争に関与させられた可能性のある子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)を特定するための機構を設置するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/POL/CO/1、パラ17)をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が、これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助を提供するための措置をとることも勧告するものである。 I.通報手続に関する選択議定書の批准 62.委員会は、子どもの権利の実施をさらに強化する目的で、締約国が、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 J.国際人権文書の批准 63.委員会は、子どもの権利の実施をさらに強化する目的で、締約国が、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 K.地域機関との協力 64.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施のために欧州評議会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 65.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第3回・第4回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 66.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年1月6日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 67.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがって42,400語を超えない範囲で作成された、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月28日)。