約 1,857,872 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/154.html
総括所見:オーストラリア(第2~3回・2005年) 第1回(1997年)/第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.268(2005年10月20日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月13日に開かれた第1054回および第1055回会合(CRC/C/SR.1054 and 1055参照) においてオーストラリアの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/129/Add.4)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回・第3回統合定期報告書の提出、および、事前質問事項に対する時宜を得た回答を歓迎する。これにより、委員会は締約国における子どもの状況に関する理解を向上させることができた。委員会はさらに、部門横断型のかつハイレベルな代表団との建設的かつ開かれた対話を評価するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。 (a) 家族・コミュニティサービス省の設置および「家族・コミュニティ強化戦略」イニシアティブの開始。 (b) 家族、若者および子どもに影響を与える政策、プログラムおよびサービスに関する連邦、州および準州の政府間の調整の向上を図る全国機関「ファミリーズ・オーストラリア」の設置。 (c) 子どもの性的搾取に対抗する国家行動計画「明日の子どもたち」(2000年)。 (d) 人身取引根絶のための国家行動計画(2003年10月)。 (e) オーストラリアにおける人権保護のための新たな国家的枠組みの運用開始(2004年12月23日)。 4.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎したい。 (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1998年8月25日)。 (b) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約(2003年4月29日)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年7月1日)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.31)を1997年に検討した際に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.79)のほとんどについて対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念および勧告(とくに先住民族の子どもがいまなお直面している特別な諸問題、体罰、若者のホームレス化の蔓延、入管収容下にある子ども、少年司法、および、少年司法制度の対象とされる先住民族の子どもの割合が不相応に高いことに関するもの)への対応が不十分でありまたは部分的であることに留意するものである。 6.委員会は、締約国に対し、第1回報告書の総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものについていっそう効果的なフォローアップを行ない、かつ第2回・第3回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告について具体的かつ効果的なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 7.委員会は、第37条(c)に付された締約国の留保は不必要であるとの見解に立つ。当該留保の背景にある論理と条約第37条(c)との間に矛盾はなんら存在しないように思われるためである。実際のところ、締約国がその留保において表明している懸念については、 自由を奪われたすべての子どもが、「子どもの最善の利益に従えば成人から分離すべきでないと判断される場合を除き」成人から分離されるものとし、かつ「通信および面会によって家族との接触を保つ権利を有する」と定めた第37条(c)によって十分に配慮されている。 8.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が留保の全面的撤回に向けた努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 立法および実施 9.委員会は、条約との適合性を確保する目的で、締約国が現行法および新法を注意深く吟味していることを評価する。しかしながら委員会は、裁判所が法律の不確定なまたは曖昧な点を解決する一助とするために条約を検討しかつ考慮することは可能であるのに対し、国内法の一致しない規定を無効とする目的で司法機関が条約を活用することはできないことを、依然として懸念するものである。 10.委員会は、締約国が、国内法および国内実務を条約の原則および規定と一致させ、かつ、子どもの権利が侵害された際に効果的救済措置が常に利用可能とされることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。 国家的行動計画 11.委員会は、2005年末までに「乳幼児期のための国家的アジェンダ」を策定することを任務とする特別委員会を家族・コミュニティサービス省が設置したこと、および、最近改訂された「国家行動計画」に留意するものの、子どもに影響を与える可能性がある人権問題に具体的に対応する、子どものための包括的政策が国レベルで定められていないことを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国に対し、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(2005年)も考慮しながら「乳幼児期のための国家的アジェンダ」の策定を完了させるとともに、その全面的実施のために必要な予算を提供するよう、奨励する。同時に委員会は、締約国が、子どもに関する総会特別会期(2002年5月)で採択された文書「子どもにふさわしい世界」に掲げられた宣言および行動計画を考慮に入れながら、子どものための「国家行動計画」を策定しかつ効果的に実施するよう、勧告するものである。この計画は、すべての州および準州で条約を適切に実施することを可能とする、具体的な目標、戦略および保障された資源を有することが求められる。 調整 13.委員会は、州および準州の政府が子どもに関する政策の調整および監視機構を強化してきたことに留意する。しかしながら委員会は、2002年に設けられた子ども・若者問題担当大臣の地位が、2004年後半に子ども・若者問題担当政務官(家族・コミュニティサービス大臣の下位)に格下げされたことを懸念するものである。 14.委員会は、子ども・若者問題担当政務官が子どものための法律および政策を国全体で発展させ、調整しかつ監視できるよう、締約国が、同政務官に対して十分な権限ならびに人的および財政的支援を与えるよう勧告する。 独立の監視 15.委員会は、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州およびタスマニア州で子どもコミッショナー職が創設されたこと、および、連邦レベルで人権・機会均等委員会(HREOC)が存在していることを歓迎する。子どもの権利の分野におけるHREOCのきわめて貴重な活動は認知しながらも、委員会は、子どもの権利をとくに担当する委員がHREOCに存在しないこと、および、この10年間でその資金が相当に削減されてきたためにその人員ならびに個別の苦情申立て、公的調査および政策活動に効果的に対応する能力に深刻な影響が生じてきたことを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、HREOCに対して十分な人的資源および財源を提供することにより、HREOCが独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがって子どもの権利の実施を独立の立場からかつ効果的に監視できることを確保するよう、勧告する。加えて、締約国は、諸州および諸準州のオンブズマン事務所内に、子どもに関わる問題に対応する特別部局を創設することも可能である。 子どものための資源 17.委員会は、子どものケアおよびウェルビーイングに関わる多くの分野で予算配分額が増加しているにもかかわらず、先住民族の子どもおよび脆弱な立場に置かれた他の集団が引き続きその生活水準、健康および教育の面で相当な向上を必要としていることに留意する。 18.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに先住民族の子どものように不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。 データ収集 19.オーストラリア統計局が現在、データの範囲および質を向上させるために子どもおよび若者について利用可能な情報の再検討を行なっている旨の情報は歓迎しながらも、委員会は、とくに特別な保護および脆弱な立場に置かれた集団の分野でデータ収集に欠落があることに留意する。 20.委員会は、締約国が、とくに特別な保護を必要としている子どもの集団別の細分化が可能になるような方法で条約のあらゆる分野に関するデータが収集されることを確保するため、既存のデータ収集機構を強化するよう勧告する。 研修/条約の普及 21.委員会は、オンライン政府戦略および国家人権教育委員会の設置等を通じて条約に関する意識を促進するために同国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 22.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を普及し、かつ、とくに子どもたち自身および親の間で条約に関する公衆の意識を高めるための努力を継続するよう、勧告する。 23.委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団、とくに法執行官ならびに必要に応じて議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者その他の専門家を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置をとるための努力を強化することも勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 24.委員会は、人種的、民族的および宗教的差別に対抗して行なわれている取り組みには留意しながらも、とくに基礎的サービスの提供およびアクセス可能性の面でアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもに影響を与えている差別的格差の存在に特段の懸念を覚える。さらに委員会は、とくに一部集団の子ども(子どもの庇護希望者、ならびに、アラブ人およびイスラム教徒を含む民族的および(または)国民的マイノリティに属する子どもなど)に対する差別的態度およびスティグマが存在し続けていることを懸念するものである。これとの関連で、委員会はまた、テロ対策法の執行が一部集団の子どもに副作用を与える可能性があることも懸念する。 25.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する事実上の差別および差別的態度を防止しかつ撤廃するための行政上および司法上の措置を定められた期間内に強化するとともに、テロ対策法の執行に際し、条約に掲げられた権利が全面的に尊重されることを確保することも、勧告するものである。 26.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する条約第29条1項についての委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、この原則が、多くの法律および政策に掲げられている一方で、たとえば代替的養護の分野における法律および政策の実施段階で常に反映されているわけではないことを懸念する。 28.委員会は、締約国が、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則の効果的実施を、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて確保するための努力を強化するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、条約第12条を全面的に実施するために締約国が行なっている努力には留意するものの、子どもに影響を与える司法上および行政上の手続において子どもの意見が常に十分に考慮されているわけではないことを懸念する。さらに、全国若者ラウンドテーブルの存在には留意しながらも、委員会は、ラウンドテーブルへの子どもの参加が実際には限られていること(参加者の平均年齢は2004年には20歳であった)、および、ラウンドテーブルにおいて地域的均衡がとれているとは限らないことに、懸念を表明するものである。 30.委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明する子どもの権利が家族法改正で明示的に定められるべきことを勧告する。さらに委員会は、子どもをとくに対象とするラウンドテーブルを設置し、かつ、公平な地理的分布の原則にしたがって参加者を選ぶよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 アイデンティティの保全 31.委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの分離についてHREOCが1997年に実施した全国調査(「彼らを家庭に」)において、先住民が過去の政策によってそのアイデンティティ、名前、文化、言語および家族を奪われたことが認められたことに留意する。これとの関連で、委員会は、家族の再統合を援助し、かつ先住民が自己の家族を追跡するうえで役に立つ記録へのアクセスを改善するために締約国が行なっている努力を歓迎するものである。 32.委員会は、締約国に対し、1997年のHREOCの報告書「彼らを家庭に」の勧告を全面的に実施するための活動を可能なかぎり継続しかつ強化するとともに、自己のアイデンティティ、名前、文化、言語および家族関係に対するアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの権利が全面的に尊重されることを確保するよう、奨励する。 適切な情報へのアクセス 33.この点に関する締約国の措置(児童ポルノおよび児童虐待関連資料にアクセスし、これを送信しおよび利用可能とするためのインターネットの使用を対象とする新たな罪名を設けた電気通信犯罪その他の措置法(2004年)、および刑法改正(自殺関連資料犯罪)法(2005年)を含む)は歓迎しながらも、委員会はなお、子どもがとくにインターネットを通じた暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされていることについて懸念を表明する。 34.委員会は、締約国が、モバイル・テクノロジー、ビデオムービー、ゲームその他の技術(インターネットを含む)を通じて暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされることから子どもを効果的に保護するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの福祉にとって有害な情報および資料に関する子どもおよび親双方の意識を高める目的でモバイル・テクノロジー、メディア広告およびインターネットを活用するためのプログラムおよび戦略を策定するよう、提案するものである。締約国はまた、メディアの有害な情報にさらされることから子どもを保護し、かつ子ども向けの情報の質を向上させる目的で、ジャーナリストおよびメディアとの協定を発展させるようにも奨励される。 体罰 35.委員会は、家庭における体罰が、「合理的な懲戒」という名目および州法におけるその他の同様の規定に基づいてオーストラリア全域で合法とされていることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、ほとんどの州および準州で政府立学校および一部の私立学校における体罰は禁止されたものの、多くの民間教育施設において、かつサウスオーストラリア州およびノーザンテリトリーでは政府立学校および市立学校の双方において、いまなお体罰が合法とされていることを懸念するものである。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭における体罰、ならびに、すべての州および準州の公立学校および私立学校、拘禁センターならびにあらゆる代替的養護の現場における体罰を禁止するために適当な措置をとること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識を高めつつ、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに子どもの権利の尊重を促進することを目的とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを、子どもの関与を得ながら強化すること。 4.家庭環境および代替的養護 親のケアを受けていない子どもの代替的養護 37.委員会は、近年、家庭外養護の対象とされる子どもの人数が相当に増加していること、および、家庭外養護の対象とされている先住民族の子どもが人口比に照らして不相応に多いことに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 代替的養護に措置される子どもの安定性および安全性が確保されていないこと。 (b) 子どもがその家族との接触を維持するのが困難であること。 (c) 医療ケア(たとえば身体保健、歯科保健および精神保健のサービス)が不十分であること。 38.委員会は、家庭外養護に措置される子どもの人数を減少させる目的で、締約国が、たとえばもっとも脆弱な立場に置かれた家族を明確に対象とすることにより、現行の家庭支援プログラムを強化するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) たとえば、里親養護の対象とされている子どもによる、十分な医療ケアへの平等なアクセスを向上させることにより、里親養護のための支援を強化すること。 (b) 里親養護の監督を強化するとともに、子どもを実の家族と再結合させる目的でこの種の措置が定期的に再審査されるようにすること。 (c) 里親養護の対象とされている子どもが実の家族との接触を維持することを促進し、かつそのための便宜を図ること。 39.委員会はまた、締約国が、とくに先住民族の家族を対象とする支援を強化することにより、家庭外措置の対象とされる相当数の先住民族の子どもの人数を減少させるため、定められた期間内に最大限の努力を行なうことも勧告する。委員会はさらに、締約国が、「先住民族の子どもの措置に関する原則」を全面的に実施するとともに、代替的養護を必要とする先住民族の子どものための適当な解決策を先住民の家族内で見出すため、先住民族のコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化するよう、勧告するものである。 親が収監されている子ども 40.「受刑者とその家族」プログラムをはじめ、この問題に対応するために行なわれている努力には留意しながらも、委員会は、親のいずれかが収監されている子どもが相当数にのぼり、かつ、この集団における先住民族の子どもの人数が人口比に照らして相当程度不相応に多いという情報があることを、懸念する。 41.委員会は、締約国が、これらの子どもに十分な支援(カウンセリングを含む)を提供しかつ、子どもの最善の利益に反しない場合には常に収監されている親との接触の便宜を図るための措置を継続しかつ強化するよう、勧告する。 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い 42.この問題に対応する締約国の活動および措置(先住民族コミュニティにおける家庭内暴力を減少させようとする2つのプログラムを含む)には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、児童虐待がオーストラリアの社会にとって依然として主要な問題のひとつであり、子どもの身体的および精神的健康ならびに教育上および就労上の機会に影響を及ぼしているという締約国の懸念を共有する。委員会はさらに、子どもが高水準のドメスティックバイオレンスにさらされていることを懸念するものである。 43.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待および子どもに対する暴力を防止しかつこれと闘うための措置を引き続きとるとともに、児童虐待の発生の通報を奨励するための措置を強化すること。 (b) 通報された虐待および暴力の事案について十分な捜査および訴追を行なうこと。 (c) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (d) 虐待の被害を受けた子どもに対して十分な保護を提供すること。 (e) 周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭における暴力の根本的原因に対応するための措置を強化すること。 44.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の研究および政府に送付された関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年6月14~16日にタイで開かれた東アジア・太平洋地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 45.障害のある子どもの権利に対応する締約国の取り組みには留意しながらも、委員会は、とくに先住民族の障害児、障害児の代替的養護および遠隔地または農村部に住んでいる障害児に関するデータとの関連で、障害児に関する情報が不足していることを懸念する。委員会はまた、政府の作業部会が、いわゆる「意思決定」障害のある子どもの不妊手術の問題に対応しようとしていることにも留意するものである。 46.障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、現在行なっている努力を積極的に継続し、かつ以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 障害のある子どもに関するデータの収集について国レベルで一貫したアプローチをとること。 (b) 障害のある子どもが生活のあらゆる分野に完全に参加する均等な機会を有することを確保するとともに、公衆の否定的な態度を変革するための公衆意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) とくに地方レベルで必要な専門的資源(すなわち障害の専門家)および財源を利用可能とするためいっそうの努力を行なうとともに、コミュニティ基盤型のリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しかつ拡大すること。 (d) 「教育に関する障害基準」を実施するとともに、教育面で不利な立場に置かれている生徒(障害のある生徒を含む)の識字能力、計算能力その他の学習成績を向上させることを目的とした重要な重点対象プログラムである「識字能力、計算能力および特別な学習上のニーズ・プログラム」に対して十分な支援を行なうこと。 (e) 障害の有無に関わらず子どもの不妊手術を禁止するとともに、望まない妊娠を防止するその他の措置(たとえば適当なときは避妊薬の注射)を促進しかつ実施すること。 健康および保健ケアサービスへのアクセス 47.委員会は、体重過多および肥満の予防、母乳育児の促進ならびに怪我の予防および管理との関連で締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、全国的に栄養過多、体重過多および肥満が問題になっているのに対して先住民族の子どもの間では栄養不良および低栄養が生じていることを、依然として懸念するものである。さらに、先住民族の乳児死亡率がここ数年低下していることを示唆する研究にも関わらず、委員会は、先住民族の子どもと先住民族でない子どもとの間に健康状態の格差があり、かつ、農村部および遠隔地に住んでいる子どもが保健ケアに平等にアクセスできていないことを、依然として懸念する。 48.委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた集団に属する子ども(とりわけ先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子ども)にとくに注意を払いながら、すべての子どもが保健サービスに対する同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、先住民族の子どもと先住民族でない子どもとの栄養状態の格差を克服するため、定められた期間内に十分な措置をとるよう勧告するものである。 49.委員会はまた、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることを懸念する。 50.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療(精神刺激薬が子どもの身体的および心理的ウェルビーイングに与える悪影響の可能性も含む)についてさらなる調査研究を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。 思春期の健康 51.委員会は、若者の自殺を減少させるために締約国が近年行なっているさまざまな努力を歓迎するものの、若者の自殺率がとくに先住民族の子どもおよびホームレスの青少年の間でいまなお高く、かつ、精神保健上の問題および有害物質濫用が増加していることを依然として懸念する。 52.委員会は、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)に照らし、締約国に対し、とくに精神保健サービス(有害物質濫用の予防およびこれへの対応を含む)に焦点を当てながら、若者の自殺防止のための努力を継続しかつ強化するよう、奨励する。 HIV/AIDS 53.委員会は、HIV/AIDSが子どもに対して及ぼしている脅威と闘うために締約国が行なっている努力(AIDS、セクシュアルヘルスおよび肝炎に関する新設の大臣諮問委員会を含む)に留意しつつも、AIDSと診断される先住民族の人数がこの4年間で2倍以上増えたことを示す最近の報告について懸念を覚える。 54.委員会は、締約国が、HIV/AIDSの問題を引き続き注意深く検討するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針を考慮に入れながら、HIV/AIDSの拡散を防止するための努力を継続すること。 (b) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもに対する差別を軽減する目的で、青少年(とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する青少年)および住民一般の間でHIV/AIDSに関する意識を高めるためのキャンペーンおよびプログラムを確立することにより、締約国が行なっている努力を強化すること。 (c) 先住民族コミュニティに適合させた、文化的配慮のあるセーフセックス・キャンペーン等も通じ、先住民族の間でAIDSの診断数が顕著に増えている状況に緊急に対応すること。 生活水準 55.委員会は、先住民族の住宅およびインフラについて連邦政府が行なっている相当の支出、および、好ましい取り組みである「コミュニティ住宅・インフラ整備プログラム」には評価の意とともに留意するものの、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地に住んでいる子どもの生活水準がいまなお不十分であることについての懸念をあらためて表明する。 56.委員会はまた、締約国が公式な貧困線の定義を定めていないことにも留意するとともに、劣悪な生活条件が子どものウェルビーイングおよび発達に及ぼす影響について十分な考慮が行なわれていないことを懸念する。 57.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、負担可能な住宅の選択肢を提供するための努力を強化するとともに、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地に住んでいる子どもの生活水準を引き上げるためにあらゆる可能な措置をとるよう、勧告する。 58.委員会はさらに、締約国が、経済的苦境が子どもの健康的発達に与える悪影響を緩和するための措置を発展させる目的で、経済的苦境が子どもに及ぼしている影響に対応し、かつこれに関する体系的調査を行なうよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 59.この分野で締約国が行なっている努力(「職業・教育・訓練中保育プログラム」を含む)は認知しながらも、委員会は、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地に住んでいる子どもが教育との関連で深刻な困難に直面していること、ならびに、とくにこれらの子どもの成績が他の子どもよりも低いことおよびその中退率が高いことを、引き続き懸念する。 60.委員会は、全国「安全な学校」枠組みおよびウェブサイト「いじめ。絶対ダメ!」のような、学校におけるいじめと闘うためにとられた措置は歓迎するものの、広く蔓延しているこの慣行が、これに関係する子ども(とくにその心理的健康、学業成績および社会的発達)に及ぼす影響についての締約国の懸念を共有する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(すなわち先住民族の子ども、ホームレスの子ども、遠隔地に住んでいる子ども、障害のある子ども等)との関連で条約第28条および第29条が全面的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 学校が醸成する子ども同士の関係についていっそう深く知るために生徒、職員および親を対象とする定期的調査を行なう等の手段により、学校におけるいじめの現象と闘うための適切な措置を引き続きとること。 (c) 公教育政策および学校カリキュラムのあらゆる側面に完全参加および平等の原則が反映されることを確保し、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつこのような子どもに対して必要な援助を提供すること。 7.特別な保護措置 入管収容下にある子ども 62.委員会は、子どもの拘禁は最後の手段としてのみ行なうという原則を受け入れた最近の1958年移民法改正(2005年7月29日施行)を心強く思うとともに、子どものいる家族はすべて入管収容施設からコミュニティ収容体制への移行の対象となる旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、オーストラリアの領域に不法に存在する子どもがいまなお自動的に――形態の如何を問わず――行政収容の対象とされ、その状況のアセスメントが行なわれるまで放免されないことを、依然として懸念するものである。とくに、委員会は以下のことを深刻に懸念する。 (a) 行政収容が必ずしも最後の手段として用いられておらず、かつもっとも短い適切な期間で終了していないこと。 (b) 入管収容の環境がきわめて劣悪であり、子どもの精神的および身体的健康ならびに全般的発達に有害な影響を与えていること。 (c) 収容環境を独立の立場から監視する正規のシステムが設けられていないこと。 63.委員会はさらに、一時保護査証を付与された子ども(いかなる渡航書類も持たずに同国に到着した子ども)が家族再統合の権利を有しておらず、かつ社会保障、保健サービスおよび教育へのアクセスも制限されていることを懸念する。 64.委員会は、締約国が、HREOCの報告書「最後の手段?」に掲げられた勧告を実施するとともに、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮しながら、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準と全面的に一致させるよう、勧告する。とくに締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 出入国管理との関係で子どもが自動的に収容されることのないこと、および、収容が最後の手段としてかつもっとも短い適切な期間でのみ用いられることを確保すること。 (b) 出入国管理との関係で子どもが収容されてから48時間以内に、当該子どもを収容する真の必要があるかどうかについて裁判所または独立の審判機関の評価を求めること。 (c) 入管収容が必要でありかつ子どもの最善の利益にかなっていると見なされるときは、当該収容の対象とされる子どもが置かれる環境を相当に改善し、かつ国際基準に一致させること。 (d) 出入国管理との関係で収容された子どもの収容の定期的再審査を保障すること。 (e) 子どもまたはその家族構成員が一時保護査証または一時人道査証を保持している場合に家族再統合を認めることを検討すること。 (f) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見/支援制度の速やかな創設を検討すること。 (g) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加盟を検討すること。 ホームレスの子ども 65.若者のホームレス化の問題について、国家ホームレス戦略および「絆の再生」プログラム等の手段により締約国が真剣に検討している旨の情報は歓迎しながらも、委員会は、教育上および人間上の問題に影響を受ける可能性もいっそう高まり、かつ有害物質濫用および性的搾取にさらされる度合いも高くなるホームレスの子どもの状況について、懸念を表明したい。 66.委員会は、締約国が、とくに住居、健康および教育との関連で、ホームレスの子どもの緊急のニーズおよび権利に対応するための努力を強化するよう勧告する。さらに、締約国は、ホームレスの子どもに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用から回復しかつ社会的に再統合できるようにするための十分なサービスを提供するとともに、実行可能なときは家族との再統合を促進するべきである。 性的搾取および人身取引 67.「人身取引根絶のための国家行動計画」の採択(2003年10月)、および、とくに人身取引および児童ポルノを犯罪化した2005年の刑法改正など、人身取引および強制売春の防止との関連における若干の前向きな進展は歓迎しながらも、委員会は、オーストラリアが、性産業において人身取引の対象とされる女性および女子の目的地国であり続けていることを懸念する。 68.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員着は、締約国が、性的搾取および人身取引と闘うための行動計画の効果的実施に向けた努力を強化するとともに、とくに子どもとの関連で問題の性質および規模を評価するための包括的研究を実施するよう、勧告する。 69.締約国はまた、オーストラリアが加盟している国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の加盟国となるようにも奨励される。 有害物質濫用 70.委員会は、とくに先住民族コミュニティで行なわれている有害物質の濫用、および、とくにオーストラリア中部の遠隔地で暮らしているコミュニティの間で行なわれている、リスクの高いガソリン吸引行為について懸念を覚える。 71.委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもの意識啓発にとくに焦点を当てながら、有害物質濫用の問題を継続的に監視するよう奨励する。締約国はまた、薬物および有害物質を濫用する子どもを対象とする、無償のかつ容易にアクセス可能な薬物濫用治療および社会的再統合サービスを発展させるようにも奨励されるところである。 少年司法の運営 72.多くの州および準州で利用可能な少年の第バージョンの選択肢、および、先住民族であるオーストラリア人の収監率を削減するための戦略など、少年司法の分野で締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、法律に抵触する先住民族の子どもの割合が人口比に照らして不相応に高いという締約国の懸念を共有する。 73.さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 14歳までは刑事責任を有しないと推定される(コモンロー上の責任無能力)とはいえ、刑事責任年齢(10歳)が低すぎること。 (b) 精神疾患および(または)知的障害を有する子どもが過剰に少年司法制度の対象とされていること。 (c) クイーンズランド州において、法律に抵触した17歳の子どもが特定の事件において成人として審理される可能性があること。 (d) 18歳未満の者を対象とする義務的量刑法(いわゆる「三振アウト法」)が、ウェスタンオーストラリア州刑法にいまなお存在すること。 (e) 一部の州および準州の地方立法で、たむろしている子どもおよび若者の警察による排除が認められていること。 74.委員会は、締約国が、条約(とくに第37条、第40条および第39条)、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む、少年司法の分野における他の関連の国連基準、ならびに、少年司法に関する一般的討議の際に行なわれた委員会の勧告(CRC/C/46、パラ203-238参照)に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告する。これとの関連で、委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げることを検討すること。 (b) 法律に抵触した18歳未満の者が、最後の手段としてでなければ自由を剥奪されず、かつ、成人と分離しないことが子どもの最善の利益にかなうと見なされる場合を除いて成人と別に拘禁されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 先住民族の子どもが過剰に刑事司法制度の対象とされている状況を緊急に是正すること。 (d) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者に、司法手続によらずに対応すること。 (e) 子どもの拘禁環境を改善し、かつ国際基準に一致させること。 (f) ウェスタンオーストラリア州の刑法体系における義務的量刑を廃止するための措置をとること。 (g) クイーンズランド州において、17歳の子どもを成人司法制度の対象から除外すること。 (h) 若者が一部の場所に集まることに関連している可能性がある問題に、必ずしも警察による対応および(または)犯罪化によらずに対応するとともに、この点に関わる法律の見直しを検討すること。 先住民族集団に属する子ども 75.先住民族保育支援プログラムをはじめ、締約国の公的機関がとった多数の措置にも関わらず、委員会は、とくに健康、教育、居住、雇用および生活水準との関連で、先住民族であるオーストラリア人が置かれている全般的状況について依然として懸念を覚える。 76.委員会は、先住民族問題に関する政府および政府機関への主要な政策諮問機関であったアボリジナル・トレス諸島民委員会(ATSIC)が廃止され、これに代わって大臣特別委員会が設置されたことに留意する。 77.委員会は、締約国が、先住民族の子どもが文化的に適切なサービス(社会サービス、保健サービスおよび教育を含む)に平等にアクセスできることを確保するための政策およびプログラムを――先住民族コミュニティと協議しながら――引き続き発展させかつ実施するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、ATSICの廃止が先住民族の子どもの最善の利益にかなっているかどうかを評価する目的で、先住民族問題の運営に関する新体制の評価が早期に行なわれるべきことを勧告するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 78.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の批准が間近であり、かつ武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准するための措置がとられた旨、対話の際に締約国が保証したことを歓迎する。 79.委員会は、締約国が、可能なもっとも早い時期に子どもの権利条約の両選択議定書の当事国となることを勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 80.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会の構成員、議会ならびに州および準州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 81.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 82.委員会は、締約国に対し、第4回定期報告書(この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照))を2008年1月15日までに提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年1月30日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/62.html
総括所見:ノルウェー(第3回・2005年) 第1回(1994年)/第2回(2000年)/第4回(2010年)OPSC(2005年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.263(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月24日に開かれた第1036回および第1037回会合(CRC/C/SR.1036およびCRC/C/SR.1037参照)においてノルウェーの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.1)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.126)のフォローアップに関する情報を含む締約国の第3回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことを歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/NOR/3)に対する締約国の文書回答により、ノルウェーの子どもの状況についての理解を深めることができたことも歓迎するとともに、締約国の代表団との率直かつ開かれた対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のものを含む、報告対象期間中に見られた多くの積極的発展を歓迎する。 (a) 子どもの権利条約の実施について全般的進展があったこと。 (b) 条約が2003年に国内法に編入されたこと。 (c) 意見を聴かれる子どもの権利の適用範囲をさらに強化しかつ増進させる改正が特定の子ども関連法について行なわれたこと。 (d) 子どもの間で条約に関する意識を高め、かつ報告プロセスに子どもの参加を得ることを目的とする「18歳になるまでの人生」(Life Before 18)プロジェクトが開始されたこと。 (e) 国家人権行動計画(2000~2005年)が採択されかつ実施されていること。 (f) 2003年4月に刑法が改正され、人身取引がとくに犯罪化されたこと。 (g) 締約国が、とくに教育分野における国際援助および国際協力に対し、継続的かつ傑出したコミットメントを示してきたこと。 (h) 子どもの権利の保護を強化するための多くのプログラムおよび国家的行動計画が実施されていること(2001年「子ども・若者とインターネットに関する行動計画」、2002年「移民の背景を有する子ども・若者に関する行動計画」、2003年「女性および子どもの人身取引と闘うための行動計画」、「児童青少年犯罪と闘うための行動計画(2000~2004年)」、「人種主義および差別と闘うための行動計画(2002~2006年)」、ならびに、「女性性器切除と闘う政府の努力-2002年」および「強制婚と闘うための新たな努力-2002年」と題されたプログラムを含む)。 (i) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への関与に関する子どもの権利条約の選択議定書がそれぞれ2001年および2003年に批准されたこと。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、勧告の多くが実施されてきたことに評価の意とともに留意するものの、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.2)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.126)の一部、とくにパラ19(条約に関する研修および教育)、21(差別の禁止)、27(思想、良心および宗教の自由)、31(親の分離)、41(精神保健サービス)および43(保育サービス)に掲げられたものへの対応が不十分であることに、遺憾の意とともに留意する。 5.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう促す。 立法および実施 6.委員会は、国内法を条約に全面的に一致させるためにとられた多くの措置を歓迎する。しかしながら委員会は、出入国管理、運営機関への子ども参加および宗教的自由のような一部分野の国内法については、実際の実施が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するためにさらなる注意が必要とされることに留意するものである。 7.委員会は、締約国に対し、国内法が条約と全面的に一致しかつ一致し続けることを確保するための努力を継続するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、裁判官に対して子どもに関わる事件における条約の直接適用可能性についての研修を、かつ中央政府および自治体の職員に対して条約についての研修を行なうよう奨励するものである。 調整 8.委員会は、中央および地方の両方のレベルにおいて、とくに地方当局との関連で、子どもおよび若者のための努力の調整および一貫性を向上させる必要があるという懸念を締約国と共有する。 9.委員会は、中央および地方の公的機関間の十分な協力ならびに子ども、若者、親および非政府組織との協力を確保するため、子どもおよび若者のための努力の一貫性および調整を向上させるための努力を引き続き強化するよう勧告する。 独立した監視体制 10.子どもオンブズマンが行なっている重要な貢献は認知しながらも、委員会は、子どもオンブズマンが子ども家族問題省に依存しているように思われることから、その活動を行なううえで制約に直面していることに留意する。 11.委員会は、締約国が、子どもオンブズマンの独立性をさらに高めるよう勧告する。 データ収集 12.委員会は、十分に整備された締約国のデータ収集システムを高く評価するものの、暴力を受けた子どもおよび後期中等学校に入学せずまたは後期中等学校を中退した子どもの状況に関する統計データが存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、移民の子どもならびに施設および里親家庭で暮らしている子どもに関して利用可能なデータが限られていることも、遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国に対し、子どもの状況に関するデータ、とくに暴力および虐待を受けた子ども、後期中等学校に入学せずまたは後期中等学校を中退した子ども、代替的養護制度の対象とされている子どもならびに移民の子どもに関するデータの体系的収集を向上させるため、引き続き努力するよう勧告する。 資源配分 14.この点に関してとられた措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもが利用可能なサービスの範囲が、サービスの内容面でも実行面でも、子どもが国内のどこに住んでいるかによってさまざまであることを懸念する。 15.委員会は、締約国が、子どもに提供されている資源の水準および内容を評価しおよび分析するための研究を実施するとともに、必要なときは、自治体の地理的所在または規模にかかわらずすべての子どもに対してサービスへの平等なアクセスおよびサービスの平等な利用可能性を確保するための措置をとるよう、勧告する。 研修/条約の普及 16.委員会は、この分野で締約国がとったさまざまな措置にもかかわらず子どもおよび若者の間で条約に関する意識が低く、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。委員会は、これとの関連で、学校では人権について後期中等教育の選択科目としてしか教えられていないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもの権利に関する教育を初等教育および中等教育双方のカリキュラムに編入すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子ども自身)を対象とする、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的研修プログラムを確保すること。 (c) 委員会の一般的意見が普及されかつ翻訳されることを確保すること。 2.一般原則 差別の禁止 18.この分野で締約国がとっている継続的措置にも関わらず、委員会は、一部の子どもがその宗教的または民族的背景を理由として学校および社会で直面している差別について懸念する。 19.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の事実上の差別を防止しかつ解消するための努力を引き続き強化するよう勧告する。 3.市民的権利および自由 思想、良心および宗教の自由 20.委員会は、学校科目「キリスト教の知識と宗教・倫理教育」の教授に関する、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書に基づく自由権規約委員会の見解(2004年11月3日、CCPR/C/82/D/1155/2003)に留意する。これとの関連で、委員会は、「キリスト教の知識と宗教・倫理教育」の教授を条約第15条に掲げられた宗教の自由に対する権利と全面的に一致させるため、教育法の改正が計画されている旨の締約国の情報を歓迎するものである。委員会は、締約国に対し、これらの改正を採択しかつ制定するプロセスを加速させるよう奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 21.委員会は、ノルウェーに子どもがいる外国籍の者が重大犯罪を行なった結果として恒久的に退去を強制される事案において、子どもの最善の利益が十分に考慮されていないことを懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、親の退去強制に関わる決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう促す。 家庭環境を奪われた子ども 23.委員会は、家庭から分離されて里親家庭または他の施設で暮らしている子どもが多いことを懸念する。これとの関連で、委員会は、家庭環境からの子どもの分離に関わる実務を見直すことに対する締約国の前向きな姿勢に留意するものである。 24.委員会は、締約国が、実親に対する十分な支援等も通じ、家庭から分離される子どもの人数が増加している原因に対応するための措置をとるよう勧告する。〔委員会は、〕締約国に対し、自然な家庭環境の保護を優先するとともに、家庭からの分離および里親養護または施設への措置が、それが子どもの最善の利益にかなう場合に最後の手段としてのみ用いられることを確保するよう、奨励するものである。 措置の定期的審査 25.子ども家族問題省の努力は歓迎しながらも、委員会は、監督担当者の人数が十分でなく、かつ監督担当者が研修を受けていないために、里親家庭に措置された子どもの定期的審査が不十分であることを懸念する。 26.委員会は、締約国が、里親家庭または施設に措置された子どもの状況が十分に監督されることを確保する努力を追求するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 27.委員会は、家庭内暴力にさらされている子どもが常に十分なケアおよび援助を受けているわけではないことを懸念する。 28.委員会は、締約国が、家庭内暴力にさらされている子どもまたは親が精神病患者および(もしくは)薬物濫用者である子どもに十分な援助を提供するための努力を引き続き強化するよう勧告する。そのための手段には以下のものが含まれる。 (a) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (b) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (c) 周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭における暴力の根本的原因に対応するための措置を強化すること。 (d) 不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育キャンペーンおよび防止プログラム(積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する家族発達プログラムを含む)を実施すること。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 29.委員会は、障害のある子どもによる文化的活動およびレクリエーション活動への参加が制約されていることに、懸念とともに留意する。 30.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に採択した委員会の勧告(CRC/C/69, paras. 310-339)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービス(文化的活動およびレクリエーション活動を含む)への平等なアクセスが提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 基礎保健および福祉 31.委員会は、摂食障害(過食症および拒食症)の発生件数が多いことを依然として懸念する。さらに委員会は、運動の少なさおよび栄養バランスの悪い食事があいまって生じる体重過多の問題が子どもの間で増大しつつあることを懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に細心の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が、摂食障害の発生に対応し、かつ思春期の子どもの間で健康的なライフスタイルを促進するための措置を強化するよう勧告するものである。 精神保健サービス 33.子どもおよび若者を対象とした精神保健サービスを強化するためのとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、援助およびケアを受けるまでの待機時間のような課題が残されていることを懸念する。委員会はまた、子どもおよび青少年を専門とする精神医学者および心理学者が足りないことも懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、支援を必要としている子どもおよび若者に対して十分な治療およびケアが遅滞なく提供されることを確保するため、精神保健ケアの発展の速度を速めるよう奨励する。 35.委員会は、子どもおよび青少年の自殺件数が多く、若い女性および男性の死亡の4件に1件が自殺であることを、依然として深く懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、自殺の危機にある人々のための保健サービス資源を強化し、かつ、危険な状況に置かれた集団内で生ずる自殺を防止するための措置をとるよう促す。 十分な生活水準 37.委員会は、継続的低所得世帯で暮らしている移民の子どもの割合が高いことに、懸念とともに留意する。 38.委員会は、締約国が、すべての子どものニーズが満たされることを確保するとともに、いかなる集団の子どもも貧困線以下の生活を送ることがないことを確保するためあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 39.委員会は、学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置、とくに子どもオンブズマンによる取り組みを歓迎するものの、この現象が多くの学校で根強く生じていることを依然として懸念する。 40.委員会は、締約国が、いじめと闘うための措置を強化し、かついじめの削減を目的とした取り組みへの子どもの参加を確保するよう勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 41.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者のうち締約国の受入れセンターから失踪する子どもが多いこと(2003年には33名)に懸念を表明する。委員会は、このような子どもが虐待および搾取の被害を受けやすいことをとりわけ懸念するものである。委員会はまた、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)の監督およびこのような子どもに提供されるケアならびに受入れセンターで暮らす子どもに提供される心理的および精神医学的サービスが不十分であることも懸念する。さらに、委員会は、庇護申請の処理があまりにも遅いことを懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、受入れセンターで暮らす子どもに対する十分な支援および監督、ならびに、トラウマを負った子どもの庇護希望者に対する十分な心理的および精神医学的ケアが提供されることを確保するための措置を強化するよう促す。委員会は、受入れセンターにおける保護者のいない子どもの庇護希望者のための援助およびケアが児童福祉制度下の他の施設で提供されているものと同一の水準に達するよう、受入れセンターにおけるこれらの子どもの状況を、資源および十分な訓練を受けた有能な職員の面で向上させるよう勧告するものである。締約国はまた、庇護申請がより迅速に処理されることを確保するためにさらなる措置をとることも求められる。 薬物濫用 43.委員会は、締約国において薬物およびアルコールを消費する子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、親の薬物濫用のために苦しむ子どもの人数が多いことも懸念するものである。委員会は、これとの関連で、子どもおよび青少年の薬物濫用問題を防止するための試験的プロジェクトが多くの自治体で開始されていることに留意する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親に対し、有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供するための努力を強化すること。 (b) 薬物および麻薬を使用している子どもが(犯罪者ではなく)被害者として扱われ、かつ回復および再統合のための必要なサービスを提供されることを確保すること。 (c) 子どもおよび青少年の薬物濫用問題の防止に関するプロジェクトを拡大し、より多くの自治体が対象とされるようにすること。 性的搾取および性的虐待 45.委員会は、締約国において子どもおよび若者の性的虐待が発生していることを懸念するとともに、この問題に関する最近の研究が存在しないことを遺憾に思う。 46.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的虐待の性質および規模、ならびに、虐待の被害をとくに受けやすい集団を特定する目的で虐待された子どもの特質を評価するための、包括的研究を実施すること。 (b) 子どもおよび青少年の性的虐待と闘うための措置を強化すること。 (c) 子どもの証言が適切な方法で記録されること、および、事情聴取を行なう者が必要な専門的資格を有することを確保すること。 売買、取引および誘拐 47.女性および子どもの人身取引と闘うためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、性的搾取目的の女性および子どもの人身取引が締約国で依然として問題であることを懸念する。 48.委員会は、締約国に対し、性的搾取および人身取引と闘うための計画を効果的に実施するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、この分野で深刻な問題に直面している国々/地域への協力を拡大するとともに、子どもの人身取引および性的搾取の性質および規模を評価し、かつこの形態の搾取の被害をとくに受けやすい集団を特定するための研究を実施するよう、奨励するものである(注)。 (注)この問題に関する委員会のその他の懸念および勧告は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて提出されたノルウェーの第1回報告書に関する委員会の総括所見に記載されている。 8.フォローアップおよび普及 フォローアップ 49.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 50.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 9.次回報告書 51.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、この点に関する締約国の実績を評価するとともに、締約国に対し、条約で予定されているとおり2008年2月6日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/148参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月5日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/212.html
総括所見:ベトナム(第3~4回・2012年) 第1回(1993年)/第2回(2003年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/VNM/CO/3-4(2012年8月22日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年5月31日に開かれた第1702回および第1703回会合(CRC/C/SR.1702 and 1703参照)においてベトナムの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/VNM/3-4)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の定期報告書(CRC/C/VNM/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/VNM/Q/3-4/Add.1)の提出により、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、建設的なかつ開かれた対話について、評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法上の措置がとられたことを積極的対応として歓迎する。 (a) 人身取引禁止法(2011年)。 (b) 障害者法(2010年)。 (c) 養子縁組法(2010年)。 (d) 保健ケア保険法(2008年)。 (e) 国籍法(2008年)。 (f) 教育法(38/2005/QH11)(2005年)およびその改正(44/2009/QH12)(2009年)。 (g) 子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)。 4.委員会は、締約国が2011年に国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准したことを歓迎する。 5.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書第5条1~4項について締約国が批准時に付した留保が撤回されたことを歓迎する。 6.委員会はまた、子ども関連のさまざまな国家的目標プログラム、制度上および政策上の措置、ならびに、とくに以下の計画が導入されたことも歓迎する。 (a) ベトナムの子どものための国家行動計画(2011~2020年)。 (b) 貧困削減計画(2011~2020年)。 (c) 社会経済開発計画(2011~2015年)および社会経済開発戦略(2011~2020年)。 (d) 子どもの保護に関する国家プログラム(2011~2015年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の前回の報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.200、2003年)、ならびに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/VNM/CO/1)に基づく第1回報告書についての委員会の総括所見(2006年)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の多くの懸念および勧告について対応が不十分であることを遺憾に思うものである。 8.委員会は、締約国に対し、未実施のまたは実施が不十分な勧告(立法、調整、資源の配分、独立の監視、条約に関する広範かつ体系的な研修、差別の禁止、子どもの最善の利益、アイデンティティに対する権利、教育および保健ならびに少年司法に関するものを含む)に対応するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップするよう、促す。 立法 9.委員会は、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)の採択、および、国内法を条約と調和させるために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、とくに子どもの定義および少年司法との関連ですべての法律が条約に一致しているわけではないこと、および、法改正の進展ペースが遅いことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、子どもの権利に関連するすべての法律の一貫性が不十分であること、および、このような法律の実施のために配分される資源が不十分であることも、懸念する。 10.委員会は、締約国が、国内法を条約に全面的に一致させるために法改正を継続するよう、勧告する。とくに立法および法改正プロセスの加速化との関連で、子どもの定義および少年司法に対して特段の注意が向けられるべきである。委員会はまた、締約国が、条約の実施を支えるため、法律の調整および一貫性を強化することも勧告する。「法体系発展戦略」の効果的実施が進められるべきであり、かつ、子ども関連の法律(とくに子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)および2013年に予定されている同法の改正ならびに同法を実施するための諸政令)の効果的執行のために、十分な資源が配分されるべきである。 調整 11.子どもの問題に関する調整が2007年に労働・傷病兵・社会問題省に移管されたことには留意しながらも、委員会は、国から省、県および町村の行政段階への権限移譲が、従前の調整機関の地方委員会がすべて解散したことに照らし、とくに地方段階において、条約の実施における一貫性のなさを助長してきたことを懸念する。この文脈において、委員会は、町村段階における調整機構が十分でないこと、および、町村段階で子どもの問題を担当する十分な人的資源が存在しないことを、依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、国、省、県および町村段階間の調整を強化することにより、すべての省における条約の一貫した適用を確保するための効果的機構を発展させるよう、勧告する。その際、締約国は、労働・傷病兵・社会問題省内の子ども保護・栄養局が強化され、かつ、同局に対し、国、省、県および町村段階で包括的な、一貫したかつ整合性のある子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、促されるところである。 国家的行動計画 13.2011~2020年の期間を対象とする子どものための国家行動計画がまもなく採択される予定であることには留意しながらも、委員会は、子どもに影響を与える既存のさまざまな国家的政策およびプログラムの間で適正な一貫性および調整が確保されていないため、一部の政策の効果が弱まり、かつ一部の部門で権限の重複が生じていることを、懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どものための国家行動計画をいかなる遅滞もなく採択し、かつその実施のために十分な資金を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、条約の全体としての実施を支える計画、プログラムおよび政策の一貫性および調整を強化するようにも促すところである。その際、締約国は、子どもの権利を引き続きすべての政策および国家的プログラムの主流に位置づけるための取り組みを進め、かつ効果的実施のための十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、奨励される。委員会は、締約国が、子どもに関連する政策、計画およびプログラムをさらに洗練させる目的で、これらの政策およびプログラムを引き続き監視しかつ評価して進展および成果を追跡するよう、勧告するものである。 独立の監視 15.委員会は、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)で概観したような、子どもの権利の促進および保護のための独立した監視機関が存在しないことに関する前回の懸念(CRC/C/15/Add.200、パラ12)を、あらためて強く表明する。 16.委員会は、締約国が、子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがい、その独立性および有効性を保障するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供された、独立の監視機関を設置するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの権利を含む人権の包括的かつ体系的監視を確保する目的で、パリ原則に一致した、十分な財源および職員を有する独立の人権機関を速やかに設置するよう、奨励するところである。 資源配分 17.教育および保健に対する予算支出が近年増えていることに留意し、かつ、急速な社会経済的発展の過程で締約国が直面している課題は認識しながらも、委員会は、子どものために配分される資源が乏しいこと、および、とくに乳幼児期、子どもの保護、教育および保健の分野で子どもに関する配分額および支出額に格差があることを、依然として懸念する。これにより、とくに遠隔地に住む子ども、障害のある子どもならびに民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子どもに影響が生じている。委員会はまた、締約国の子どものための使途指定付の資源に関する具体的情報がないことも懸念するものである。審査対象期間中に汚職と闘うために行なわれた努力(汚職対策法(2005年)の採択およびその後の汚職対策運営委員会事務所の設置を含む)は承知しながらも、委員会は、汚職が高水準で発生しており、そのため子どもの権利の実施のために利用可能な資金が減少していることを、なお懸念する。 18.委員会は、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の成果である委員会の勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施のために配分される財源の水準を見直し、かつ必要なときは当該水準を高めるとともに、そのための予算配分を優先させること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもの保護を含む社会的保護のための政策およびプログラムにいっそうの資源を配分するとともに、その際、社会的および経済的に不利な立場に置かれたおよび周縁化された子ども(とくに遠隔地に住む子ども、障害のある子どもならびに民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子ども)に対して特段の注意を払うよう、促す。 (b) 予算全体を通じて子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているかに関する追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、 国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用する能力を発展させること。 (c) 可能であればとくに子どもたちの関与を得ながら、公の対話を通じた、透明なかつ参加型の予算策定手続を確保すること。 データ収集 19.委員会は、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)の改正で予定される、子どもに関するデータ収集についての新たな規則を導入しようとする締約国の意図にも関わらず、条約のすべての分野を対象とする中央データ収集システムが存在しないことを、依然として懸念する。委員会はまた、子どもの権利の享受に関する利用可能なデータ、とくに社会部門、子どもの保護、路上の状況にある子ども、搾取の状況下にある子どもおよび農村部の子どもに関する細分化された統計が限られていることにも、懸念を表明するものである。 20.委員会は、締約国に対し、子どもが有するすべての権利の実施を監視する目的で、子どもに関するデータ収集についての規則策定の計画を追求するよう奨励する。委員会は、関連のすべての省庁を通じて共有される標準化された子どもの権利指標を備えた中央データ収集システムを採用するべきである旨の、締約国に対する勧告をあらためて繰り返すものである。収集されたデータは、進展を評価し、かつ条約実施のための政策およびプログラムを策定するための根拠として分析することが求められる。締約国は、その際、締約国のすべての子どもの状況に関する分析を容易にする目的で、収集されたデータが年齢、ジェンダー、居住場所、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されることを確保するよう、勧告されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもに対する暴力、子どもの虐待および搾取(性的および経済的搾取を含む)、路上の状況にある子どもならびに遠隔地および農村部の子どもといった、配慮を要する分野における統計の収集に焦点を当てるよう、促す。 普及および意識啓発 21.委員会は、子ども、公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間で、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについての知識が限られていることに、懸念を表明する。委員会は、対話の際に締約国から提供された、条約が8つの民族的マイノリティ言語に翻訳された旨の情報に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が、それ以外のマイノリティの文字言語には翻訳されておらず、かつマイノリティ集団の間で十分に普及されていないために、民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子どもが有する、自己の基本的権利および基本的自由を知る権利が不相応に阻害されていることを、依然として懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、さまざまな教育段階のすべてのカリキュラムに子どもの権利の問題を編入するためにいっそうの努力を行なうとともに、子ども、家族ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間で行なう意識啓発プログラム(条約に関するキャンペーンを含む)を強化するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、人権教育のための世界プログラムの枠組みで勧告されているとおり、人権教育に関する国家的行動計画の策定を検討するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国に対し、子どもを含むマイノリティ住民に対し、条約が当該マイノリティ自身の言語で適切な形で配布されることを確保するとともに、実際の普及を確保するための効果的措置をとることも、促す。 研修 23.子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とする若干の研修についての情報にも関わらず、委員会は、このような研修が依然として散発的であり、かつ子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家を対象として体系的に実施されているわけではないことを、遺憾に思う。 24.委員会は、子どもともにおよび子どものために働くすべての専門家(とくに法執行官、検察官、裁判官、弁護士、教員、保健従事者およびあらゆる形態の代替的養護の現場で働く要員)を対象とした、子どもの権利に関する体系的、義務的かつ継続的な研修を確保するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 市民社会との協力 25.委員会は、ベトナム子どもの権利保護協会の設置(2008年)等を通じて、締約国における市民社会環境の醸成に関して達成された進展を歓迎するとともに、結社法案に留意する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの権利の充足状況を監視する目的で市民社会が活動できる余地が限られていることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもの権利の充足に関して、市民社会と政府期間との間で効果的な調整および協力が行なわれていないことを懸念する。 26.委員会は、市民的権利および自由との関連も含め、条約の規定の実施において市民社会がパートナとして果たす重要な役割を強調する。締約国は、条約の実施の全段階を通じて、市民社会、とくに権利基盤型の非政府組織(NGO)ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の市民社会部門との協力を、引き続きいっそう組織的に強化するよう奨励されるところである。委員会は、締約国に対し、結社法案を施行するための努力を加速させるよう、促す。 B.子どもの定義(条約第1条) 27.締約国が、条約にしたがって「子ども」の年齢を引き上げる目的で子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)を改正しようとしていることには留意しながらも、委員会は、締約国においては、現行の同法にしたがい、16歳未満の者しか子どもとみなされていないことを懸念する。 28.委員会は、締約国に対し、子どもの年齢に関する定義を条約に定められた定義にしたがって18歳まで引き上げる目的で、国内法およびとくに子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)を改正する努力を加速させるよう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.委員会は、脆弱な立場に置かれたさまざまな集団の子どもに対する差別を解消するため、審査対象期間中に締約国が行なった努力を承知する。これには、民族的マイノリティに属する子ども、障害のある子どもおよび移民の子どもに対する教育および保健サービスの提供を向上させるための、特別措置の採択も含まれる。しかしながら委員会は、法律および慣行において子どもが引き続き差別されており、かつ、脆弱な状況に置かれた締約国の子どもに対する直接間接の差別が根強く残っていることを、深刻に懸念するものである。とくに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 障害のある子どもに対するスティグマおよび差別的な社会的認識が継続しており、そのためこのような子どもがあらゆる場面で周縁化されていること。 (b) キン人に属する子どもと民族的マイノリティ集団に属する子どもとの間で、健康、教育および社会的保護のためのサービス提供に関する格差が根強く残っていること。これとあいまって、民族的マイノリティに対する社会の否定的見方も存続している。 (c) 移民の子どもが、登録されておらず、かつ基礎的な公共サービスにアクセスできないことの結果として、周縁化されていること。 (d) 女子に対する社会的差別が行なわれている結果、女子の学校中退およびとくに山岳地帯における女子の早期婚が生じており、かつ、このような差別が、女子の胎児を中絶する慣行の結果でもあること。 30.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもが、いかなる理由による差別も受けることなく、条約上の平等な権利を効果的に享受できることを確保するとともに、この目的のために以下の措置をとるよう、促す。 (a) 障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別、とくに教育制度および保健制度ならびに必須サービスの提供に関する差別の効果的解消を確保するため、速やかにあらゆる必要な措置をとること。締約国はとくに、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ23(a))で表明されたとおり、障害を理由とする子どもへの差別が法律で明示的に禁じられることを確保するために国内法を改正すること、あらゆる場面において障害のある子どもの積極的イメージを促進するための措置をとること、および、意識啓発を図り、かつ障害のある子どもに関連づけられたスティグマと闘うためのキャンペーンを開始することを、勧告される。 (b) ダーバン宣言および行動計画のあらゆる関連規定を全面的に考慮しながら、民族的マイノリティがその顕著な特質によって処罰されないことを確保する、民族的な差別および不寛容の防止に関する包括的かつホリスティックな戦略を採択し、かつ効果的に実施すること。その際、民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子どもにとくに焦点を当てながら、すべての集団の子どもが社会サービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (c) 反差別のためのすべての政策およびプログラムに移民の視点を含めるとともに、移民の子どもにとってのサービスへのアクセスを向上させるために既存のサービスのあり方を変更すること。 (d) 女子の学校中退、とくに山岳地帯における女子の早期婚および女子の胎児を中絶する慣行に焦点を当てながら、女子に対するあらゆる形態の差別を解消するためのキャンペーンを含む公的意識啓発プログラムを開始するとともに、反差別のためのすべての政策およびプログラムにおいてジェンダーが主流に位置づけられることを確保すること。 (e) これらの政策およびプログラムの進展および成果を緊密に追跡する、監視および評価のための特別システムを設置するとともに、達成された進展について、次回の定期報告書で委員会に情報を提供すること。 子どもの最善の利益 31.委員会は、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)に子どもの最善の利益の原則が導入されたことを歓迎するとともに、さまざまな法案(2004年法の改正案を含む)にこの原則が全面的に編入されていることに留意する。しかしながら委員会は、この原則がまだ子どもに影響を与えるすべての法律に含まれておらず、この原則に関する知識が依然として不十分であり、かつ、司法上および行政上の決定においてこの原則が十分に適用されていないことを懸念するものである。 32.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則を重視するすべての法案の採択を完了させるための努力を強化するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が子どもに影響を与えるすべての法律に統合されること、および、当該原則が広く知られ、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいてこの原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告するものである。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励される。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。 生命、生存および発達に対する権利 33.委員会は、多くは予防可能である怪我、ならびに、とくに溺水、交通事故および家庭内事故に関連した怪我が子どもの重要な死亡原因のひとつであることに、懸念とともに留意する。 34.委員会は、締約国が、子どもの怪我の予防に関する国家プログラム(2011~2015年)の効果的実施等も通じ、子どもを怪我、とくに溺水、交通事故および家庭内事故から保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国の政策およびプログラムにおける優先課題および目標に、引き続き事故の防止を含めるよう勧告するものである。委員会はこのほか、締約国に対し、子どもの溺水を防止する目的で学校カリキュラムに水泳の授業を導入しようとする意図を追求するとともに、子ども、親および公衆一般の交通安全意識を高めるための公的キャンペーンを強化するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 35.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を司法上および行政上の手続においても認めたさまざまな立法上の措置(子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)および民事訴訟法(2004年)を含む)が審査対象期間全体を通じてとられてきたこと、および、省および国レベルで子どもが意見表明を行なうための場が設けられていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) この原則の重要性に関する十分な意識が欠けていること、および、意見を聴かれる子どもの権利が裁判審理を含むすべての場面で組織的に適用されているわけではないこと。 (b) 国、地域または地方の段階において、子どもに影響を与える法律および政策が策定される過程で子どもとの組織的教義が行なわれておらず、かつ、子どもに関わる今後の行動計画の策定への子ども参加に関する、より具体的な指針が策定されていないこと。 36.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 意味のある子ども参加を制度的なものとする目的で、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を考慮されかつ参加する子どもの権利に関する、十分な資金を与えられた意識啓発プログラム(とくに親、教員、政府の行政職員、司法関係者および社会一般を対象とするキャンペーンを含む)を実施すること。 (b) 子どもにやさしい活動方法を通じて子ども評議会を強化し、かつ子どもの意見が十分に重視されることを確保する等の手段により、子どもに関連する法律および政策の策定に、子どものいっそうの関与を得るための措置をとること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 37.委員会は、締約国がとった多数の立法上および行政上の措置により、近年、出生登録率が相当に上昇したことを承知する。このような措置には、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)で出生登録に対する権利を法的に承認したこと、および、2007年の段階で出生登録手数料を廃止したことが含まれる。しかしながら委員会は、出生登録率における地理的および民族的格差が根強く残っており、2つの最貧地方(西北部および中部高原)で依然として登録率が最低であることに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、親、とくに遠隔地の親が、出生登録の要件および重要性を常に理解しているわけではないことを懸念する。 38.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ32)を想起しながら、締約国が、農村部および山間部で暮らす子どもに特段の注意を払いながら、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続しかつ強化するとともに、社会的および民族的背景ならびに親の在留資格に関わらず出生時に登録されるすべての子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンを行なうよう、勧告する。 アイデンティティの保全 39.委員会は、民族的集団および先住民族集団の子どもが、他とは異なるアイデンティティを保全しかつ行使するにあたって限られた可能性しか享受できないことを懸念する。 40.条約第8条に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どものアイデンティティの保全が全面的に尊重されることを確保するとともに、民族的マイノリティ集団をマジョリティであるキン人に同化させようとするすべての努力を解消するための効果的措置をとるよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団および先住民族集団に属する子どもの権利(名前、文化および言語など)を説明する立法上および行政上の措置をとるよう、促すものである。 結社、表現および情報へのアクセスの自由 41.委員会は、対話の際に締約国から提供された、子どもには締約国において結社を結成できる正式な可能性がある旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、実際には子どもの結社の自由が厳しく制限されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもの表現の自由が著しく制限されていること、および、子どもが締約国において情報への限られたアクセスしか享受できていないことに、懸念を表明する。この文脈において、委員会は、すべての情報源――およびとくにメディア――が政府の統制の対象とされており、多様性の余地がないことを懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、子どもにとって必要な、真正なかつ現実の結社の自由を確立する目的で、とくに結社法の採択を速やかに進めることによって法改正を行なうよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの表現の自由に対するすべての制限を廃止するための効果的な措置をとるとともに、子どもが多元的な意見に触れられることを保障する目的で、あらゆる形態の、国内外の多様な情報源から得られた情報および資料にアクセスする子どもの権利を確保するよう、促すものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 43.委員会は、締約国が、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約への加入を検討していることに留意する。しかしながら委員会は、多くの子どもが、薬物拘禁センターにおける行政拘禁の際、不当な取扱いまたは拷問(独居拘禁罰を科されることによるものも含む)を受けてきており、かつ現在も受けているという報告があることに、深い懸念を表明する。 44.条約第37条(a)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 薬物依存問題との関係で行政拘禁の対象とされている子どもに対する、あらゆる形態の拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を防止し、禁止し、かつ子どもをこのような取扱いから保護するために、あらゆる必要な措置をとること。 (b) このようなセンターにいる子どものために、容易にアクセスでき、かつ苦情について決定を行なう正式な権限を有する苦情申立て機構を導入すること。 (c) 子どもの拷問または不当な取扱いが行なわれたとされるすべての事案について迅速な、独立のかつ効果的な調査が行なわれることを確保するとともに、適切な場合には実行犯を訴追すること。 (d) 被害者に対してケア、回復、補償およびリハビリテーションのための措置を提供すること。 (e) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約を批准するとともに、その選択議定書の批准を検討すること。 体罰 45.委員会は、家庭における体罰が蔓延していること、および、しつけの手段として平手で叩くことをいまなお適切と考えている親が多いことを、懸念する。対話の際に締約国が行なった、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)の改正に体罰の禁止を含める予定である旨の宣言には留意しながらも、委員会は、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ34(e)にも関わらず、締約国が、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁止する法律をまだ成立させていないことを、依然として懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)を考慮にいれながら、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰が明示的に禁止されることを確保する目的で、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)について構想されている改正を含む国内法改革を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの保護に関する国家プログラム(2011~2015年)の効果的実施等も通じ、体罰が子どものウェルビーイングに及ぼす有害な影響、および、子どもの権利にしたがった、体罰に代わる積極的なしつけおよび規律のための手段に関する、親および一般公衆の意識啓発を図るよう勧告するものである。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境を奪われた子ども 47.委員会は、路上の状況にある子ども、孤児、遺棄された子どもまたは自宅からの立ち退きを余儀なくされた子どもであるかに関わらず、家庭環境を奪われた子どもに関する信頼できる情報が存在しないことを懸念する。これには、このような状況にある子どもの特定、このような子どもの人数を限定するための防止措置、および、このような子どもの状況を改善し、かつ家族と再統合させるための努力に関する情報も含まれる。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境を奪われたすべての子どもに関する包括的調査を行ない、かつこのような子ども全員の全国的な登録簿を創設すること。 (b) 子どもの保護に関する国家計画(2011~2015年)の対象に、家庭環境を奪われた子どもも含めること。 (c) 家庭環境を奪われた子どもの発生を防止しかつ減少させる目的で根本的原因への対処を行なう包括的政策を、当事者である子どもの積極的関与を得ながら策定しかつ実施すること。 (d) このような状況にある子どもを対象とする、子どもが容易にアクセスできる十分なサービスを備えたアウトリーチプログラムを創設すること。 (e) それが子どもの最善の利益にかなう場合には家族再統合プログラムを、またはコミュニティを基盤とする代替的養護およびサービスを、支援すること。 代替的養護 49.委員会は、家庭環境を奪われた子どもの養護の脱施設化に向けた進展(具体的な社会援助政策の策定を含む)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子ども(とくに障害のある子ども、HIVに感染している子ども、両親または親の一方が死亡した子どもならびに遺棄された子どもおよび望まない妊娠により生まれた子ども)の施設措置が広く行なわれていることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国における子どもの施設措置の規模に関するデータが信頼できないことを懸念する。入所施設における養護についての国家的最低基準が策定されたことは承知しながらも、委員会は、ほとんどの入所型養護施設において条約の原則が遵守されていないこと、入所施設における子どもの身体的虐待および性的搾取が報告されていること、ならびに、家庭環境を奪われた子どもが施設に長期間措置されていることを、非常に懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益および子どもの意見を可能なかぎり考慮しながら、子どもの脱施設化(子どもを家族と再統合させることも含む)のための、明確な時間枠および予算を備えた戦略を策定すること。 (b) 子どもを対象とするすべての入所施設が、十分な資金ならびに人的資源および技術的資源を備え、登録され、かつ代替的養護施設として活動する公的認可を受けることを確保するとともに、これらの施設による、養護についての国家的最低基準の厳格な遵守を確保すること。 (c) 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)を考慮にいれながら、代替的養護への措置のプロセス全体を通じて子どもの権利が尊重されることを確保するための明確な指針を策定し、かつ、養護の質の体系的かつ定期的な審査および関連の専門家の定期的研修(子どもの権利に関するものを含む)を確保すること。 (d) 施設に措置される子どもの人数を減少させる目的で、コミュニティを基盤とする代替的養護の政策およびプログラムを発展させること。 (e) 代替的養護の現場における児童虐待についての苦情の受理、調査および訴追のための機構を設置するとともに、虐待の被害者が苦情申立て手続、カウンセリング、医療ケアおよび他の適当な回復援助にアクセスできることを確保すること。 養子縁組 51.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の主要な原則にしたがった養子縁組法が2010年に承認されたこと、および、2003年の決定第337/2003/QB-BTP号に基づいて国際養子縁組局(DIAが設置されたことを歓迎する。委員会はさらに、国際養子縁組は国内における他のあらゆる選択肢が尽くされた後の最後の手段とみなされている旨の締約国の発言、および、対話の際に締約国から提供された、2011年には子どもの養子縁組件数が減少した旨の情報に、留意するものである。 52.このような発展を継続させるため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組法の実施を強化し、かつその効果的執行のために十分な資源を配分するとともに、DIAが国際養子縁組を効果的に監視できるようにその権限を強化し、かつDIAに対して十分な人的資源および技術的資源を提供すること。 (b) 子どもの権利条約第21条(d)にしたがって、すべての民間養子縁組斡旋機関の効果的かつ組織的な監視を確保し、民間養子縁組斡旋機関の数をいまよりもさらに限定するための選択肢を考慮し、かつ、養子縁組プロセスがいかなる当事者の金銭的利得ともならないことを確保すること。 (c) 養子縁組の対象とされなければ家庭環境を有さないことになる子どものために、引き続き国内養子縁組を促進すること。 子どもに対する暴力(子どもの虐待およびネグレクトを含む) 53.国内法が、子どもに対する暴力についてのさまざまな規定を擁し、かつ児童虐待を禁じていることには留意しながらも、委員会は、条約第19条で定められた定義にしたがったあらゆる形態の子どもの虐待およびネグレクトが国内法の対象とされていないことを、依然として懸念する。委員会は、子どもおよびとくに女子に対する暴力および虐待が広がっていること、家族間暴力(子どもの身体的および性的虐待ならびにネグレクトを含む)を防止しかつこれと闘うための適切な措置、機構および資源が存在しないこと、子どもにやさしい通報手続が設けられていないこと、被虐待児のためのサービスへのアクセスが限られていること、ならびに、これらの点に関するデータが存在しないことに、懸念を表明するものである。 54.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)を考慮にいれながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第19条にしたがってあらゆる形態の子どもの虐待を対象とするために国内法を改正するとともに、改正された法律を、とくに法執行官、司法関係者および子どもともにまたは子どものために働く専門家の間で普及すること。 (b) 子どもの虐待およびネグレクトに関する苦情を、子どもに配慮したやり方で受理し、監視しかつ調査するための全国的システムを強化すること。 (c) 南アジア地域協議(イスラマバード、2005年5月19~20日)の成果および勧告を考慮し、かつジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (d) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (e) あらゆる形態の暴力から子どもを保護するために必要な政策、プログラム、監視制度および監督制度を設置する政府の義務が行政上の措置に反映されることを確保すること。 (f) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所、世界保健機関、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所、国連薬物犯罪事務所およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)および第33条) 障害のある子ども 55.委員会は、障害のある人の権利に関する条約を批准しようとする締約国の意図に留意する。しかしながら委員会は、教育に対する権利との関連で障害のある子どもが置かれている、危惧すべきほど不利な立場(障害のある子どもの52%は学校にまったくアクセスできておらず、かつ圧倒的多数が初等学校を修了していない)について、非常に懸念を覚えるものである。委員会はさらに、学習または発達が遅れている子どもの教育について訓練を受けた教員がおらず、かつ十分な教育設備および教材が存在しないこと、および、専門教員の学校配置について地域格差があることに、懸念とともに留意する。委員会はこのほか、障害のある子どもの権利行使を妨げている障壁が、このような子どもの社会的インクルージョンを阻害する社会の社会的および経済的構造から生ずる問題としてではなく、その子どもの障害の結果としてとらえられており、その結果、障害のある子どもの高い施設措置率にもつながっていることを、懸念するものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに法的保護を提供するため、障害のある人の権利に関する条約の批准を速やかに行なうこと。 (b) 障害のある子どもとの関連で権利基盤アプローチを発展させるために現行の政策およびプログラムを見直すとともに、障害のある子どもによる学校へのアクセスをさらに促進する目的で、インクルーシブ教育および授業料無償政策を効果的に実施すること。 (c) 障害のある子どもが質の高いインクルーシブ教育へのアクセスを享受できるよう、農村部に住む障害児にとくに焦点を当てながら、インクルーシブ教育についてのスキルを有する十分な人数の教員を全校に配置すること。 (d) 広範に存在するスティグマおよび差別に対抗するため、公衆の意識啓発を図り、かつ、意識啓発および社会変革のためのこれらの介入に障害のある子どもを包摂すること。加えて、障害のある子どもを施設に措置する傾向を弱め、かつコミュニティを基盤として子どもをケアする解決策を追求すること。 (e) これとの関連で、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 健康および保健サービス 57.委員会は、締約国の保健指標が改善されたこと、とくに、妊産婦死亡率ならびに5歳未満児死亡率および乳児死亡率が減少し、かつ締約国における平均余命が情報したことを評価する。しかしながら委員会は、以下のように子どもの生存および発達に関わる一部の重要分野で進展が見られないことを、依然として非常に懸念するものである。 (a) 5歳未満児の発育阻害率および栄養不良率が、農村部においておよび民族的マイノリティの子どもの間ではるかに高くなっていること。 (b) 農村部においておよび民族的マイノリティ集団の間で新生児の死亡がより頻発しており、その原因として質の高いサービスおよび診療所の欠如が挙げられていること。 (c) 完全母乳育児率が依然としてきわめて低く(19%)、地域格差があり、かつ乳幼児に対する栄養の与え方についての親の意識が欠けていること。 (d) 予防接種率に民族的および地理的格差があること。 58.委員会は、締約国が、すべての地域のすべての子どもを対象とする保健ケアサービスについての共通基準を促進する目的で即時的措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 急性および慢性の低栄養に関わる地域格差を縮小させる目的で、乳幼児に対する前向きな栄養の与え方に関わる栄養上の戦略、政策および法律を策定すること。 (b) 県保健センターおよび町村保健所が利用可能な資源を増やすとともに、これらの施設が、とくに妊産婦保健ケアならびに新生児、乳幼児および就学前児童のケアとの関連で十分な人的および物的資源を有することを確保すること。 (c) 関連の政府職員を対象とするキャンペーン、情報提供および研修、妊産婦病棟で働く職員の研修ならびに親の教育を含む意識啓発措置を通じて、生後6か月間の完全母乳育児の慣行を向上させるための即時的措置をとること。また、とくに栄養製品および母乳代替品の販売促進に関する政令第21号の改訂を通じ、母乳代替品の販売促進に関わる現行の販売促進規制の監視を強化するとともに、同政令の違反者、とくに母親に対して人工乳の宣伝および無料試供品の提供を行なった者に対して措置がとられることを確保すること。 (d) 民族および地理的所在に特段の注意を払いながら、乳児および就学前児童の予防接種率を高めるための措置(意識啓発キャンペーンおよびサービス提供の拡大を含む)をとること。 思春期の健康 59.委員会は、思春期の健康に関する情報がないこと、および、10代の中絶が広く行なわれているという報告があることに、懸念を表明する。委員会はさらに、青少年による、避妊手段ならびにリプロダクティブヘルスに関するサービス、援助およびカウンセリングへのアクセスが限られていることを懸念するものである。 60.委員会は、締約国に対し、思春期の健康に関するデータを収集し、かつ次回の定期報告書で委員会に報告するよう、促す。子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、意識啓発を図り、かつ青少年がセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わるサービスにアクセスできるようにすること、10代の妊娠および中絶の件数の増加に対応すること、ならびに、避妊手段ならびにリプロダクティブヘルスに関する良質なサービス、援助およびカウンセリングへのアクセスを促進することを、勧告するものである。 HIV/AIDS 61.委員会は、HIV/AIDS予防との関連で見られた進展に評価の意とともに留意するものの、HIV/AIDS関連の法律の執行が弱いこと、および、HIV/AIDSに感染した子どもがスティグマを付与され、より施設に措置されやすく、かついっそう学校から中退する傾向にあることを、依然として懸念する。委員会はこのほか、締約国におけるHIV感染の規模についての情報が信頼できないことにより、政策および予防機構の断片化が生じていることを懸念するものである。 62.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、HIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37付属文書)を考慮するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの影響を受けている子どもが学校を中退せず、かつインクルーシブ教育を享受できることを確保することも目的としながら、法執行官、教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とする研修を実施する等の手段により、HIV/AIDS関連の法律の効果的執行を確保するためにあらゆる措置をとること。 (b) HIV/AIDSに感染した子どもへのスティグマと闘うキャンペーンも含む意識啓発プログラムを開始するとともに、とくにコミュニティを基盤とする子どものケアおよび援助のためのサービスを設置することにより、HIV/AIDSの影響を受けている子どものいる家族が、子どもを施設に行かせずに家庭環境のもとに留めておけるような環境を醸成すること。 (c) 条約の4つの一般原則である差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)をとくに重視しながら、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合するとともに、HIV/AIDSの影響を受けている子どものための国家行動計画(~2010年)を、2020年までの「ビジョン」とあわせて効果的に実施すること。 (d) 信頼できるデータを生成する目的で、保健関連の細分化されたデータの質および規模を、その収集および活用の両面で向上させること。 薬物および有害物質の濫用 63.薬物依存の子どもを対象としたコミュニティを基盤とする治療の導入計画について、対話の際に締約国から提供された情報には留意しながらも、委員会は、以下のことを非常に懸念する。 (a) 薬物依存の子どもが行政拘禁制度の対象とされていること。 (b) 薬物拘禁センターで子どもの不当な取扱いが行なわれているという報告があり、かつ査察が行なわれていないこと。 (c) これらのセンターに拘禁されている子どもが成人から分離されていないこと。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物依存の子どもを対象とした行政拘禁制度の改革計画を追求するとともに、コミュニティを基盤とする治療に焦点を当てながら、このような状況にある子どもの自由の剥奪に代わる措置を発展させること。その際、締約国は、子どものリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムが提供されることを確保するべきである。 (b) 薬物拘禁センターを監視するための効果的制度(定期的査察を含む)を確立するとともに、これらのセンターにおける子どもの虐待のあらゆる事件を、加害者を裁判にかけ、かつ被害を受けた子どもに救済を提供する目的で効果的に調査すること。 (c) 子どもの被拘禁者がすべての拘禁現場で成人から分離されることを確保し、かつ子ども用の拘禁房が利用可能であることを保障すること。 生活水準 65.貧困削減のために締約国が相当の努力を行なっており、世帯貧困率が毎年2%下降するという成果を生み出していることに留意し、かつ、締約国が2010年に最貧国グループから低中所得国グループへと移ったことに留意しながらも、委員会は、締約国において多数の子どもがいまなお貧困下で暮らしており、かつ子どもの貧困が一部の民族的マイノリティおよび移民集団に不相応に集中していることを、深く懸念する。加えて、現在進められている、清潔な水および農村衛生に関する国家的重点目標プログラムには留意しながらも、委員会は、とくに農村部においておよび民族的マイノリティ住民の間で安全な飲料水の供給に関する深刻な欠落が存在すること、ならびに、家庭および学校における衛生設備が不十分であり、子どもの健康および子どもを在学させておく能力に影響が生じていることに、懸念を表明するものである。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもがいる低所得家庭を対象とした社会扶助現金移転プログラム(政令第67号/政令第13号)を強化しかつ維持するとともに、このような支援が、民族的マイノリティ系のすべての貧困家庭および準貧困家庭、インフォーマル労働者の家族ならびに移民家族に対しても適用されることを確保すること。 (b) 国家貧困削減プログラムの効果的実施も通じて、周縁化された集団ならびにとくに民族的マイノリティおよび移民集団の貧困と闘うための努力を、子どものニーズおよび権利に関わる問題にとくに焦点を当てながら、強化すること。これとの関連で、締約国は、すべての者(とくに子どもを含む)の機会均等を促進するための措置、ならびに、とくに雇用、教育および子ども向けのサービスに焦点を当てた保健ケアに関連して、民族的マイノリティ集団および先住民族コミュニティの経済的な成長および発展を刺激するための措置をとるべきである。 (c) 対象である受益者が、その権利および利益に関わる決定についての十分な協議および参加を通じて積極的に関与することを確保すること。 (d) 委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ42)にしたがい、安全な飲料水および衛生設備に関わる、十分な資金的裏づけのある政策およびプログラム(清潔な水および農村衛生に関する国家的重点目標プログラムを含む)を、とくに農村部において策定しかつ実施するとともに、学校の子どもが衛生設備に公平にアクセスできることを確保すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 67.委員会は、教育開発戦略計画(2001~2010年)および万人のための教育国家行動計画(2003~2015年)の採択を歓迎する。委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ48)、とくに予算配分額を増加させ、初等中等学校就学率を高め、かつ周縁化された集団に対する金銭的な教育インセンティブを発展させるべきである旨の勧告を実施しようとする努力を評価し、かつ、民族的マイノリティに属する子どもを対象として二言語教育を提供するために締約国がユニセフと共同で行なっている努力を評価しながらも、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 乳幼児期の発達を目的とする国営の施設およびプログラムが不足していること。 (b) 無償の初等教育に関する憲法上の規定にも関わらず、実際には教育関連の費用が課されており、最貧層ならびに主として民族的マイノリティの子どもおよび移民の子どもに影響が生じていること。 (c) 民族的マイノリティの子どもとキン人の子どもとの間に、学校へのアクセスに関する著しい格差が引き続き存在していること。 (d) 主としてアクセスの欠如、貧困に関わる理由および言語上の障壁を理由として、初等中等学校段階における、とくに民族的マイノリティの子どもの中退率が引き続き高いこと。 (e) 民族的マイノリティおよび先住民族集団を対象とした、母語を基盤とする教育へのアクセスが限られていること。民族的マイノリティおよび先住民族の教員の人数が不十分であり、かつ、これらの教員を対象とした、二言語教育に関する適切な研修が行なわれていないこと、および、民族的マイノリティまたは先住民族集団に属する子どものための教科書の質が低いことにより、このような集団に属する子どもの、自己の独自の言語を十分に学習しかつ保全する権利が阻害されていること。 (f) 民族的マイノリティ向けの寄宿学校に在学している子どもの状況の監視に関する情報がないこと。 (g) 教育の質が低く、かつ、教育手法が不適切であって子どもの参加を可能にしていないこと、および、教員の能力が低いこと、ならびに、人権教育(とくに子どもの権利)が学校カリキュラムに含まれているかどうかについての情報がないこと。 68.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮し、かつ以下の措置をとるよう、勧告する。 (a) 5歳未満児のすべてのニーズを網羅するホリスティックなアプローチを用いながら、十分な資金的裏づけのある乳幼児期発達プログラムを開発すること。また、5歳未満児を対象とする幼稚園教育完全普及プログラム(2010~2015年)を速やかに採択しかつ実施すること。 (b) 教育がすべての者にとって事実上無償とされることを確保するとともに、民族的マイノリティ集団の子どもおよび移民の子どもを含む、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとくに注意を払うこと。その際、とくに、すべての間接的費用を撤廃し、かつ、経済的に不利な立場に置かれた家庭の子どもを対象とする教育支援機構を導入すること。 (c) 委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ48(a))にしたがい、すべての集団の子どもに対して教育への平等なアクセスを確保する目的で、とくに女子についておよび農村部において学校へのアクセスを高めるためにあらゆる適切な措置をとるとともに、すべての子どもを対象として良質な教育に対する権利を確保すること。 (d) 学校中退率に関する民族的および地理的格差を縮小する目的で、民族的マイノリティに属する子どもおよび農村部に住んでいる子どもを対象として、第2の機会教育プログラムのような効果的な積極的差別是正措置をとること。 (e) 民族的マイノリティの子どもがより幅広い社会に完全参加できるようにするため、マイノリティ言語を初期学校段階における教授手段と定め、かつこれらの子どもが両方の言語に熟達することを目的とした民族的マイノリティ集団向けの二言語教育を支える、十分な資源の裏づけがある政策を開始すること。民族的マイノリティ言語の話者である教員に対する研修および指導の提供を強化すること。また、教科書の内容の執筆に参加するよう地元教員に要請することにより、民族的マイノリティに属する子どものための良質な学校教科書を発行することに対し、十分な資金を提供すること。 (f) 民族的マイノリティ向けの寄宿学校を監視するための効果的システム(定期的査察を含む)を確立するとともに、すべての児童虐待事案について調査を行なうこと。 (g) 教員に対して合理的給与を支払うことにより、教員が良質な授業を行なえるようにすること。教育専門家の関与を得て、カリキュラムおよび教授手法の徹底的改革が行なわれるべきである。学校カリキュラムに、子どもの権利を含む人権が含まれることを確保することが求められる。 (h) ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 経済的搾取(とくに児童労働) 69.委員会は、締約国で、とくにインフォーマル部門における児童労働が依然として広がっていること、最低労働年齢が相対的に低いままである(軽易労働について12歳)であること、労働監察の立ち入り調査が限定されていること、および、薬物拘禁センターに収容されている子どもが労働を義務づけられており、したがって強制労働をさせられていることを、非常に懸念する。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 容認できない条件下における児童労働(低年齢児の労働および危険な条件下での労働を含む)を撤廃するために即時的かつ効果的な措置をとること。 (b) 子どもを労働力人口へと押しやる根深い社会経済的要因に対応するための効果的措置、とくに児童労働を回避する目的で学校出席率を高めかつ学校中退率を低減させるための効果的措置を実施すること。 (c) とくに通達21/1999/TT-BLDTBXHを改正し、かつ子どもは13歳以上でなければ「軽易労働」で雇用されることはできないと定めることにより、国内法令を就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)と調和させるために必要な措置をとるとともに、子どもを保護し、かつ子どもの強制労働を使用した者が訴追されることを確保するために労働法の執行を強化し、かつ、賠償および制裁を行なうこと。 (d) 労働監察において労働環境のすべての側面(薬物拘禁センターにおける子どもの強制労働の使用およびインフォーマル部門における児童労働を含む)が包括的に監視されることを確保するため、労働監察を向上させること。 (e) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号(1999年)にしたがい、薬物拘禁センターにおける子どもの強制労働の慣行を防止しかつ終了させる目的で、政令第135号(2004年)の法的改正によるものも含む効果的措置をとること。 (f) この点に関してILO・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めること。 性的搾取および人身取引 71.委員会は、子どもの商業的性的搾取および人身取引と闘うためにとられた、さまざまな立法上および行政上の措置を歓迎する。しかしながら委員会は、児童買春が増えていること、買春目的のものを含む(ただしこれに限られない)子どもの人身取引件数が増加していること、および、主として貧困関連の理由で商業的性的活動に従事する子どもの人数が増えていることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、性的搾取を受けた子どもが警察によって犯罪者扱いをされる可能性が高いこと、子どもにやさしい特別通報手続が設けられていないこと、および、刑法の一部の規定(児童買春に関わる第254~256条を含む)が16歳未満の子どもにしか言及していないことを、懸念する。 72.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。 (a) 売買春対策行動計画(2011~2015年)および人身取引対策行動計画(2011~2015年)を十分に実施する等の手段により、児童買春および子どもの人身取引と闘うための努力を強化すること。 (b) 脆弱な立場に置かれた集団の子ども(ストリートチルドレンおよび貧困家庭または準貧困家庭の子どもを含む)に焦点を当てながら、子どもの性的搾取および虐待を防止するための戦略を策定しかつ実施すること。 (c) 子どものセックスワーカーが犯罪者としてではなく被害者として扱われることを確保するため、行政法および刑法を改正しかつ普及すること。子どもにやさしい通報手続を発展させるとともに、被害を受けた子どもがこれらの手続について知り、かつこれにアクセスできることを確保すること。また、性的搾取および人身取引の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムならびに秘密が守られるカウンセリングサービスを発展させること。 (d) 委員会の前回の勧告(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1、パラ11(a))にしたがい、選択議定書第3条に列挙されているすべての行為を、これが18歳未満のすべての者に対して行なわれたときには明示的に犯罪とする目的で、国内法を子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に調和させること。 (e) 国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准を検討すること。 少年司法の運営 73.少年司法の一部分野における進展にも関わらず、委員会は、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ54)への全面的対応が締約国によって行なわれていないことを遺憾に思うとともに、とくに以下のことについて懸念を表明する。 (a) 包括的な少年司法制度が存在しないこと(少年裁判所が設置されていないことを含む)、および、現行措置が16歳未満の子どもしか対象としていないこと。 (b) 若年犯罪者の人数が増えており、かつ若年犯罪者に対応する締約国の制度が懲罰的なものであること。 (c) 子どもの拘禁に代わる選択肢が限られており、かつ更生および再統合のためのプログラムが存在しないこと。 74.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) とくに18歳未満のすべての子どもが少年司法制度の対象とされるようにすることにより、刑法、刑事訴訟法および行政違反行為〔取扱い〕令が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するため、これらの法令の改正を速やかに進めること。 (b) 専門の少年裁判所、および、子どもを対象とする専門の警察保護部局を設置すること。 (c) ダイバージョンおよび自由の剥奪に代わるその他の措置に焦点が当てられることを確保するため、少年司法制度に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、更生および再統合のためのプログラムが提供されることを確保すること。 マイノリティ集団に属する子ども 75.委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団に属する子どもとマジョリティ人口に属する子どもとの間に存在する、条約が対象とするすべての分野における権利の享受の格差を縮小するためにあらゆる効果的措置をとるとともに、前掲の諸パラグラフで勧告されているとおり、生活水準、保健および教育に特段の注意を払うよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、マイノリティ問題に関する国連独立専門家の報告書(A/HRC/16/45/Add.2)および人権と極度の貧困の問題に関する国連独立専門家の報告書(A/HRC/17/34/Add.1)に掲げられた勧告、とくにマイノリティ関連の勧告を遵守するための努力を強化するとともに、この点に関して達成された進展について、委員会に対する次回の定期報告書で報告するよう、促すものである。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく勧告(2006年)のフォローアップ 76.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の批准時に締約国が行なった、「18歳未満の者は、国の独立、主権、統一および領土保全を保護するための緊急の必要がある場合を除き、軍事的戦闘に直接関与しない」旨の宣言が維持されていることを、依然として懸念する。委員会はさらに、締約国がまだ国際刑事裁判所ローマ規程を批准していないことに、懸念を表明するものである。 77.委員会は、締約国が前掲宣言を撤回するよう勧告するとともに、締約国に対し、18歳未満の者が「敵対行為に直接参加」するべきではないと定めた、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書第1条を想起するよう求める。委員会はまた、締約国がローマ規程の批准を検討することも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、選択議定書に基づく勧告(CRC/C/OPAC/VNM/CO/1)の実施およびフォローアップに関する情報を、委員会に対する次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく勧告(2006年)のフォローアップ 78.委員会は、委員会が行なった勧告(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1)のフォローアップに関する情報がないことを懸念する。 79.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施に関するフォローアップおよび情報を、委員会に対する次回の定期報告書に記載するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、選択議定書に基づく前回の勧告(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1)、とくに刑法が選択議定書上の犯罪、域外裁判権および犯罪人引渡しについて十分に網羅することの確保に関わる勧告が遵守されることを確保するよう、勧告するところである。 I.国際人権文書の批准 80.委員会は、締約国が、まだ加盟国となっていない国連の中核的人権条約およびその選択議定書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約、難民の地位に関する1951年条約および同1967年議定書、無国籍者の地位に関する1954年条約ならびに無国籍の削減に関する1961年条約を批准するよう、勧告する。加えて締約国は、家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)を批准するよう勧告されるところである。 J.地域機関および国際機関との協力 81.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、ASEAN政府間人権委員会およびASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 82.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国民議会、関連省庁、最高裁判所ならびに広域行政機関および地方行政機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 83. 委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 84.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年9月1日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 85.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年11月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/245.html
総括所見:アメリカ(OPAC〔第2回〕・2013年) OPAC:第1回(2008年) OPSC:第1回(2008年)/第2回(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/USA/CO/2(20013年6月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2013年1月16日に開かれた第1761回会合(CRC/C/SR.1761参照)において、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づくアメリカ合衆国の第2回定期報告書(CRC/C/OPAC/USA/2)を検討し、2013年2月1日に開かれた第1784回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第2回提起報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/USA/Q/2/Add.1)の提出を歓迎し、かつ、多部門から構成される代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第2回定期報告書に関して2013年2月1日に採択された総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/2)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 III.一般的所見 4.委員会は、「政権は条約の目標を支持しており、かつ、どのようにすれば(子どもの権利)条約の批准に向けていよいよ行動を起こせるか再検討する意図を有している」旨の、対話の際に代表団によって表明された保証を歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ34)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもの権利の保護を包括的なやり方で向上させるために条約の批准手続を加速させるよう促すものである。 積極的側面 5.委員会は以下の法律の制定を歓迎する。 (a) 子ども兵士責任追及法(公法第110-340号、2008年10月3日)。 (b) 子ども兵士防止法(公法第110-457号、2008年12月23日)。 6.委員会はまた、選択議定書の実施に関連する分野でとられた積極的措置、とくに子どもの徴募および武力紛争における使用(国以外の武装集団におけるものを含む)と闘う国際機関その他の機関への締約国の支援も歓迎する。 III.実施に関する一般的措置 生命、生存および発達に対する権利 7.委員会は、対話の際に締約国から提供された、文民の死傷者は過去2年間に減少した旨の情報に留意する。にもかかわらず、委員会は、報告対象期間中にアフガニスタンで米軍が行なった攻撃および空爆の結果、数百人の子どもが死亡した(その理由としてとくに予防策の欠如および無差別な武力行使が報告されている)という報告があることを憂慮するものである。委員会は、実際には2010年から2011年にかけて子どもの死傷者数が倍増したことに、重大な懸念を表明する。委員会はさらに、子どもの殺害に責任を負う軍隊構成員が常にその責任を問われてきたわけではないこと、および、家族の苦情について救済が行なわれていないことに、深刻な懸念を表明するものである。 8.委員会は、締約国に対し、締約国は文民(とくに子ども)の保護に責任を負っているのであって、これはあらゆる軍事作戦において優先されるべきであること、および、締約国は区別の原則、均衡性の原則、必要性の原則および予防の原則にしたがって文民の死傷を防止すべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 子どもを含む文民の殺害および回復不能な受傷がこれ以上起こらないことを確保するため、具体的なかつ確固たる予防措置をとり、かつ無差別な武力行使を防止すること。 (b) 米軍によって子どもの権利が侵害された旨のあらゆる訴えが透明な、時宜を得たかつ独立したやり方で調査されることを確保するとともに、これらの侵害の加害者が裁判にかけられ、訴追され、かつ有罪が認定された場合は制裁を受けることを確保すること。 (c) 攻撃および空爆の被害を受けた子どもおよび家族が常に救済および賠償を受けることを確保すること。 立法 9.委員会は、選択議定書の遵守状況を向上させるために2008年子ども兵士責任追及法が制定されたことには留意しながらも、同法が18歳に達するまでの子どもの徴募を犯罪化していないことを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が、18歳に達するまでの子どもを徴募することおよび〔敵対行為に〕関与させることを犯罪化するために2008年子ども兵士責任追及法を改正することを検討するよう、勧告する。 留保 11.委員会は、批准時に「了解」として提出された選択議定書の規定の制限的解釈を維持する旨の締約国の決定、および、とくに敵対行為への直接参加の定義に関する制限的解釈を遺憾に思う。 12.委員会は、これらの了解は選択議定書第1条への留保に相当すると考えるものであり、したがって、武力紛争の状況にある子どもの保護を向上させるため、締約国はこれらの了解を撤回するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ7、2008年)をあらためて繰り返す。 独立の監視 13.委員会は、締約国の半数以上の州で子どもアドボケイトまたは子どもオンブズマンの事務所が設置されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所によってその役割および独立度がさまざまであること、ならびに、選択議定書上の子どもの権利の充足における進展を恒常的に監視し、かつ子どもからの苦情を受理してこれに対応する、パリ原則にしたがった独立の国内人権機関の設置に関して進展がないことを遺憾に思うものである。 14.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(CRC/GC/2002/2)、および、パリ原則にしたがって独立の国内人権機関を設置する必要性について多数の国連人権機関が行なってきた勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、このような国家的独立機構を設置するよう促すとともに、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所をまだ設置していない州に対し、選択議定書上の権利の充足状況を監視し、かつ権利侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしい方法で迅速に対応する同様の責任を委ねられた、このような事務所を設置するよう奨励する。 普及および意識啓発 15.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定が一般公衆、子どもおよびその家族の間で広く普及されることを確保するよう勧告する。 研修 16.委員会は、国防総省その他の機関が、軍事要員および軍隊のための業務に従事する文民要員の年次訓練に選択議定書についての研修を編入した旨の、締約国から提供された情報を歓迎する。 17.委員会は、締約国に対し、軍隊のすべての軍事要員および文民要員を対象とした選択議定書についての研修を継続するよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、子どもに対応するすべての要員(とくに、庇護希望者・難民である子どものためにおよびこれらの子どもとともに活動する公的機関、警察、弁護士、裁判官、軍法会議判事、医療専門家、ソーシャルワーカーならびにジャーナリスト)が選択議定書についての研修を受けることを確保するよう、勧告するものである。 データ 18.委員会は、委員会が前回勧告したように(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ11、2008年)、自国の管轄内にあって徴募されまたは敵対行為において使用された可能性があるすべての子どもを特定しかつ登録する目的で中央データ収集システムを設置するためにとられた措置についての情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、締約国が、子ども兵として徴募されもしくは敵対行為において使用され、抑留され、回復不能な傷を負わされまたは殺害された庇護希望者または難民に関する具体的データを収集していないことにも、懸念を表明するものである。 19.委員会は、自国の管轄内にあって徴募されまたは敵対行為において使用された可能性があるすべての子どもを特定しかつ登録すること、ならびに、そのような慣行の被害を受けた子どもの難民および庇護希望者に関するデータが適正に収集されることを確保することを目的とした中央データ収集システムの設置を勧告した、前回の総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ12、2008年)をあらためて繰り返す。すべてのデータは、とくに性別、年齢、国籍、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されるべきである。また。武力紛争の結果として抑留され、回復不能な傷を負わされまたは殺害された子どもについてのデータも収集されるべきである。 IV.防止 志願入隊 20.委員会は、軍に入隊した新兵のおよそ10%が18歳未満であることに懸念を表明するとともに、締約国が志願入隊年齢を18歳に引き上げる意図を有していないことを遺憾に思う。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 新兵募集の方針および実務(人数割当制を含む)が、選択議定書第3条第3項に掲げられた保護措置を損なっており、かつ18歳未満の子どもの入隊の自発的性格を疑わせるものとなっていること。 (b) 前回の総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ15)で指摘したとおり、学校が、「ひとりの子どもも落ちこぼれさせない法」に基づき、軍の新兵募集担当者が中等学校の生徒の氏名、住所および電話番号の一覧表にアクセスできるようにすることを要求されていること、ならびに、そのような情報を開示しないよう要請する権利について親が常に告知されているとは限らず、かつ親または法定保護者の同意が常に得られているわけではないこと。 (c) 親および子どもが、学校で行なわれる軍務職業適性一連検査(ASVAB)が任意であることまたは当該検査が軍隊と関連していることをしばしば承知しておらず、かつ、場合により、生徒に対して当該検査は義務的なものであると告知されているという報告があること。 21.委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ16、2008年)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、全般的により厳格な法的規準を通じて子どもの保護を促進しかつ強化するため、現行の志願入隊年齢を再検討して18歳に引き上げるよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) とくに「ひとりの子どもも落ちこぼれさせない法」を改正することによって新兵募集の方針および実務を再検討するとともに、新兵募集の実務において18歳未満の者が積極的に対象とされないことを確保し、新兵募集担当者の人数割当制を廃止し、かつ、軍の新兵募集担当者による学校の敷地へのアクセスが制限されることを確保すること。 (b) 事前に親の同意を得ることなく生徒についての情報を開示することを禁止するとともに、新兵募集の方針および実務が子どものプライバシーおよび不可侵性の尊重に一致したものとなることを確保すること。これとの関連で、委員会は、締約国が、新兵募集担当者の違法行為について効果的に調査し、制裁を課し、かつ必要なときは訴追を行なうことによって、新兵募集担当者の不正および違法行為の監視および監督を継続しかつ強化するよう勧告する。 (c) 学校、親および生徒が、ASVABへの参加に同意する前に、当該検査が任意であることを知っていることを確保すること。 (d) 新兵募集担当者による不正事案の報告件数ならびに苦情申立ておよび言い渡された制裁の性質に関する情報を次回の定期報告書で提供すること。 22.委員会は、17歳の現役兵士が、本質的に危険な任務を果たすよう要請される可能性があり、かつ敵対行為に間接的にまたは直接参加する危険にさらされるおそれがある「危険任務手当」(HDP)または「切迫危険手当」(IDP)の支給該当地域に配備される可能性があることを、深刻に懸念する。委員会はまた、2010年の会計監査院報告書で強調されているように、法定年齢未満の志願者の申請書に親の署名が得られていないことにも懸念を表明するものである。 23.委員会は、締約国が、HDPおよびIDPが支給される地域への18歳未満の者の配備を禁止し、かつ、米軍への入隊を希望する法定年齢未満の新兵について親の同意を確実に得るよう勧告する。 軍事学校 24.委員会は、少年予備役将校訓練部隊(JROTC)が任意のプログラムであることに留意する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもが、JROTCプログラムへの登録は任意である旨、常に適正に告知されているわけではないこと。 (b) 学校によっては、このプログラムが定員超過のクラスに登録した生徒の代替登録先として利用されていることがあり、その場合、子どもが登録を取り消せば履修単位を得られないこと。 (c) 締約国も認めているように、JROTCに登録した子どもが武器の使用訓練を受けている可能性があること。 (d) 登録された子どもについてのデータが存在せず、かつ陸軍将校候補生部隊で行なわれている活動に関する情報(とくに火器の取扱いに関するもの)がほとんどないこと、および、11歳という若年の子どもの登録も可能であること。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族および子どもが、JROTCプログラムが任意のものであることについて適正に告知されることを確保すること。 (b) JROTCが正規の学校活動の代替として利用されないことを確保すること。 (c) 前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ20、2008年)で委員会が勧告したとおり、子どもを対象とする軍隊様式の訓練(火器の使用を含む)を禁止するとともに、子どもを対象とするいかなる軍事訓練においても人権の原則が考慮されること、および、その教育内容が連邦教育省によって定期的に監視されることを確保すること。 (d) 次回の定期報告書で、陸軍将校候補生部隊に登録された子どもおよびこのような子どもが行なっている活動に関する、性別、年齢、国籍、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されたデータを提供すること。 人権教育および平和教育 26.委員会は、人権教育および平和教育ならびに選択議定書に関する知識の学習が、初等中等学校カリキュラムの必須学習事項として、かつ教員養成プログラムにおいて、具体的に編入されていないことを遺憾に思う。 27.委員会は、締約国が、選択議定書にとくに言及しながら、すべての学校(軍事学校を含む)のカリキュラムに人権教育および平和教育を含めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、〔高等教育における〕人権教育ならびに教員および教育者、〔公務員、〕法執行官ならびに軍隊要員を対象とする人権研修に焦点を当てた「人権教育のための世界プログラム」第2段階(2010~2014年、A/HRC/15/28参照)のための行動計画を検討しかつ採択するよう、勧告するものである。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 28.委員会は、2008年子ども兵士責任追及法が15歳未満の子どもの徴募を犯罪化したのみであり、したがって選択議定書第6条第1項に一致していないことに懸念を表明する。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳に達するまでの子どもの徴募および武力紛争における使用を犯罪化するために2008年子ども兵士責任追及法を改正すること。 (b) 子どもに影響を与えるすべての法律を包括的に見直すとともに、国内法および国内政策を選択議定書の原則および規定に全面的に調和させるためにあらゆる必要な措置をとること。 30.委員会はまた、締約国が以下の国際文書の批准を検討するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ24および25)をあらためて繰り返す。 (a) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1977年6月8日の追加議定書(議定書I)。 (b) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1977年6月8日の追加議定書(議定書II)。 (c) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する1997年9月18日の条約。 (d) 国際刑事裁判所ローマ規程。 犯罪人引渡し 31.委員会は、締約国が、15歳未満の子ども兵を徴募しまたは使用する犯罪について広範な裁判権を採用していることに留意する。しかしながら委員会は、15歳未満の子どもを徴募し、かつリベリアにおける武力紛争で使用した戦争犯罪の容疑があるリベリア市民(合衆国住民)が、2012年3月に移民判事の決定を受けて自国へ送還されたこと、および、その結果、同人が現在では処罰を完全に免れていることを遺憾に思うものである。 32.委員会は、締約国に対し、不処罰を防止しかつこれと闘う目的で、武力紛争における子どもの徴募および使用についてのすべての訴えが適正に捜査され、かつ、容疑者が実効的に追及されかつ裁判にかけられることを確保するよう、奨励する。 VI.保護、回復および再統合 武装集団と関係のある子どもの取扱い 33.子どもが長期間、場合によっては1年またはそれ以上の期間拘禁されている旨の前回の所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ28、2008年)に照らし、委員会は、締約国が子どもを引き続き逮捕し、かつ国防総省の収容施設で拘禁していることに、深い懸念とともに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 子どもが引き続き拘禁施設に収容されたままであり、これらの子どもへのアクセスが赤十字国際委員会(ICRC)およびアフガニスタン独立人権委員会に対してしか認められていないこと。 (b) 子どもが一般的に法的援助へのアクセスを否定されていること。 (c) 子ども兵とされる者が拷問ならびに(または)不当な取扱いおよび人権侵害的な尋問を受けていること、ならびに、ウマル・カドル(Omar Kadr)の事件で、裁判官が、カドルが収容中に受けた不当な取扱いに関する重要な証拠の提出を弁護側に対して禁じたこと。 (d) 成人から分離されるのは16歳未満の子どものみであること。 (e) アフガニスタンの収容施設に移送された子どもが拷問および(または)不当な取扱いに直面していること。 34.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) すべての子どもが、子どもとして処遇され、かつ、成人とともに拘禁されるのではなく、子どものニーズに対応するためにとくに設計された別の施設に拘禁されることを確保すること。 (b) 拘禁された子どもの拷問および(または)不当な取扱いが疑われる事案を公正に調査するとともに、加害者が裁判にかけられ、かつ、有罪が認定された場合はその犯罪にふさわしい刑罰をもって制裁を受けることを確保すること。 (c) 子どもが、最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間でのみ拘禁されること、および、あらゆる場合に拘禁に代わる手段が優先されることを確保すること。 (d) 18歳未満のすべての子どもがあらゆる状況下で少年司法制度によって扱われることを確保するとともに、年齢について疑いがあるときは若年者を子どもと推定すること。 (e) 拘禁されている子どもにかけられている罪状の調査を、公正な裁判の基準にしたがって迅速かつ公平に実施すること。 (f) 国連児童基金(ユニセフ)およびその他の人道援助機関に対し、拘禁されている子どもへの即時的なかつ妨害のないアクセスを認めること。 (g) 拘禁されている子どもが、無償かつ独立の法的助言援助および独立の苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (h) いかなる子どもも、拷問および不当な取扱いを受ける危険があるという相当の根拠があるとき、とくに信憑性のある訴えまたは報告について完全な評価が終わっていない場合には、アフガニスタンの収容施設に移送されないことを確保すること。 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 35.委員会は、移民国籍法(INA)第212条(d)(3)(B)(i)(8 USC § 1182(a)(3)(B)(i))にしたがい、国土安全保障省からテロ組織とみなされている非国家的武装集団に「物質的支援」を提供し、このような武装集団から「軍隊様式の訓練」を受け、またはこのような武装集団とともに戦った子どもが、締約国における庇護を拒否されることを懸念する。委員会はまた、締約国が、元子ども兵について一般的に裁量的免除を認めておらず、かつ、たとえその子どもが強迫されて行動していた場合にもそのような免除を認めようとしないことも、懸念するものである。委員会はさらに、締約国における難民の定義に基づいて実体的資格認定を行なう際、子どもの最善の利益が直接の役割を果たしていないことを懸念する。 36.委員会は、選択議定書第7条に照らし、締約国が、選択議定書に反する行為の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび社会的再統合を確保するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、「テロ活動」禁止規定が適用されなければ申請している保護または利益を受ける資格がある元子ども兵を対象として、庇護、難民としての保護またはその他の永続的地位の申請を個別事案ごとに好意的に検討することを可能とするため、当該規定の裁量的免除を導入するよう促すものである。委員会はまた、締約国が、合衆国の難民認定手続に基づいて実体的資格認定を行なう際、子どもの最善の利益および自己の最善の利益を考慮される子どもの権利を全面的に顧慮することも勧告する。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 37.委員会は、アフガニスタンに設けられた締約国の拘禁施設に拘禁されている子どもが、職業教育を含む教育へのアクセスをほぼ完全に奪われてきており、かつ現在も同様の状態であることを懸念する。委員会はまた、拘禁されている子どもおよび釈放された子どもであって徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもが利用可能な身体的および心理的回復のための措置が不足していることも懸念するものである。 38.委員会は、締約国に対し、拘禁されている18歳未満の子どもが全員、教育にアクセスできるようにすることを促す。委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPAC/USA/CO/1、パラ39(h)、2008年)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、国防総省の収容施設に拘禁されているすべての子どもが十分な身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置にアクセスできることを確保する目的で、あらゆる必要な措置をとることも促すものである。このような措置には、これらの子どもの状況について注意深くアセスメントを行なうこととともに、選択議定書にしたがい、これらの子どもの身体的、心理的および情緒的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に敏感な、子どもに配慮した、かつ学際的な援助を提供することが含まれるべきである。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 39.委員会は、子どもの徴募の防止および元子ども戦闘員の社会への再統合を目的とした国際的プログラムへの相当の財政支援を歓迎する。これとの関連で、委員会は、締約国が、武力紛争における子どもの徴募および使用を撤廃するための多国間および二国間の活動に対する財政支援を継続しかつ強化するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、選択議定書第7条に照らして、現行の多国間、二国間その他のプログラムを通じ、ならびに選択議定書上の被害者である子どもを対象としてリハビリテーションおよび社会的再統合を実施するための総会規則にしたがって設置された自発的基金を通じ、技術的協力および財政援助を含む援助を提供することも促す。 武器輸出および軍事援助 40.委員会は、2008年子ども兵士防止法が、政府軍または政府の支援を受けている武装集団(準軍事組織、民兵または民間防衛隊を含む)が子ども兵を徴募しかつ使用していると事務総長によって特定された国の政府に対する特定の態様の軍事援助を禁止し、かつこれらの政府に対して軍用機器を直接販売することの許可も禁じていることは歓迎しながらも、以下の点について深い懸念を表明する。 (a) 2008年子ども兵士防止法で、免除が締約国の国益にかなう場合には軍事援助または軍事機器販売のいかなる禁止についても大統領による免除が認められていることから、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への、小型武器および軽兵器を含む武器の輸出が可能となっていること。 (b) 子どもを徴募しもしくは使用している国、子どもを殺害しもしくは子どもに回復不能な傷害を負わせている国、子どもに対して強姦その他の形態の性暴力を行なっている国または武力紛争の状況下で学校および(もしくは)病院への攻撃を行なっている国として武力紛争と子どもに関する2012年事務総長報告書で挙げられている国々(A/66/782-S/2012/261付属文書1~2)について、免除が認められたこと。 41.委員会は、締約国に対し、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への武器(小型武器および軽兵器を含む)の輸出およびあらゆる種類の軍事援助を全面的に禁止する規定を定め、かつ適用するよう促す。この目的のため、締約国は、このような国々に関する大統領による免除が認められないようにするために2008年子ども兵士防止法を改正するよう奨励されるところである。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 42.委員会は、締約国が、子どもの権利の履行をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(OPIC)を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 43.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府省庁、下院、上院、最高裁判所および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 44.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した第2回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 45.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、2016年1月23日を提出期限とする次回の第3回・第4回統合定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/294.html
総括所見:ポーランド(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2015年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.194(2002年10月30日)/第31会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年10月1日に開かれた第827回および第828回会合(CRC/C/SR.827 and 828参照)において、1999年12月2日に提出されたポーランドの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.12)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況に関する理解をいっそう明確にしてくれた、締約国の第2回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/POL/2)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国から派遣された部門横断型の代表団に評価の意とともに留意するとともに、率直な対話、ならびに、議論の際に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の原則の多くを具体化した新憲法を1997年に採択したことを歓迎する。 4.委員会は、締約国が、ポーランド全域における子どもの権利の監視に責任を負う子どもオンブズマン事務所を2000年に設置したこと、ならびに、子どもの権利および条約の実施に関連する政府の政策の評価において議会監査庁が役割を果たしていることを歓迎する。 5.委員会は、条約をさらに実施するためにとられたさまざまな立法措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 地域家庭援助センターの設置について定めた、社会福祉法を改正する1998年7月24日の法律。 (b) 地域家庭援助センターを基礎とする社会福祉の枠組みのなかで家族の保護および子どものケアに関する一貫した制度を創設した、社会福祉法および年金法を改正する2000年1月7日の法律。 6.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准したことを歓迎する。 7.委員会はまた、締約国が、家族問題全権事務所に代わる機関として、家族問題・男女平等政府全権事務所を創設したこと(2001年)にも留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 8.委員会は、自由市場経済への移行の結果、締約国が引き続き経済的困難および高い失業率に直面していることを認知する。これによって地域格差および貧困の増大が生じており、そのため、被害を受けやすい状況に置かれた、子どものいる家族の福祉および生活水準に悪影響が生じてきた。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 留保および宣言 9.委員会は、締約国が条約第7条および第38条に付した留保ならびに第12~17条および第24条に関して行なった宣言の撤回を検討するプロセスが2001年に再開された旨の、代表団によって提供された情報を歓迎する。 10.ウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国が条約に付した留保および条約について行なった宣言をいずれも撤回するプロセスを継続しかつ完了させるよう奨励する。 立法 11.1997年に新憲法が採択されたことおよびその後国内法の改正が行なわれたことには留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、いまなおすべての国内法において条約の規定および原則が全面的に遵守されているわけではないことを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国に対し、国内法が、とくに少年司法、保護者のいない庇護希望者および子どもの性的搾取の分野で条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 調整 13.委員会は、子どもおよび若者に関する政策の調整は国家教育スポーツ大臣が担当する旨の閣僚評議会議長の決定、および、締約国が国家的行動計画を策定中である旨の代表団の情報に留意する。それでも委員会は、さまざまな省庁によっておよび諸行政段階において運営されている活動およびプログラムが調整を欠いていることを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、国家教育スポーツ省に対し、政策調整に関する責任を効果的に履行するための十分な財源、人的資源および物的資源が提供されること、ならびに、子どもとともにおよび子どものために活動する諸省庁間およびあらゆる行政段階間で協議および調整を図るための適切な機構が設置されることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 15.委員会は、前述のとおり、子どもオンブズマン事務所の設置および議会監査庁が果たしている役割を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どもオンブズマン事務所のための資源が十分でないことを懸念するものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに関する問題を評価する内部監視機関としての議会監査庁の役割を強化するとともに、国および地方双方における条約の実施の監視および自己評価のための包括的制度を確立すること。 (b) 子どもオンブズマンに対し、その責任を履行できるようにするための十分な資源を提供すること。 (c) 国および地方双方のレベルで子どもの権利および子ども政策を監視するにあたり、非政府組織よび市民社会組織と連携すること。 資源配分 17.委員会は、中央予算における子どものための配分額が、2000年から2001年にかけて減少しており、かつ、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応すること、ならびに、子どもに提供されるサービスに関して農村部と都市部との間に存在している格差を克服しかつ是正することのためには不十分であることに、懸念とともに留意する。 18.困難な経済状況は認識しながらも、委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いて」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先的に位置づけることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。締約国が行政改革およびサービス提供の地方分権化のために行なっている努力に留意しつつ、委員会は、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いながら、子どもの経済的、社会的および文化的権利を平等に実施する農村部および都市部の地方政府の能力強化を図るよう、勧告するものである。 データ収集 19.委員会は、事前質問事項(CRC/C/Q/POL/2)に対する文書回答に掲載された追加の統計データ、および、省庁間のデータの交換を改善し、かつその比較および分析を促進する目的で「E-ポーランド」というプログラムが開始される旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、ジェンダー別にとくに細分化されたデータがごくわずかであること、および、条約が対象とするすべての分野についてデータおよび指標が利用可能であるわけではないことを、依然として懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 現行のデータ収集・指標システムが、ジェンダー別に、かつ適切なときはマイノリティおよび民族的集団別ならびに都市部および農村部の別に、細分化されることを確保すること。現行のデータ収集システムは、条約が対象とするすべての分野(少年司法制度、および、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもに提供される援助のあらゆる側面を含む)が含まれるようにするため、関連の省庁および公的機関の援助を得て拡大されるべきである。当該システムにおいては、とくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども(虐待、ネグレクトまたは不当な取扱いの被害を受けた子ども、障害のある子ども、民族的集団に属する子ども、子どもの難民および庇護希望者、法律に抵触した子ども、働いている子ども、路上で生活している子ども、商業的性的搾取および人身取引に関与させられている子ども、ならびに、農村部および経済的に窮乏している地域の子どもを含む)を具体的に重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅することが求められる。 (b) 条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のためにこれらのデータおよび指標を活用すること。 市民社会との協力 21.活気のある市民社会の存在にもかかわらず、委員会は、条約を実施するために政府が行なっている努力に非政府組織が全面的に関与しているわけではないことを懸念する。 22.委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、国および地方のレベルで、条約の実施のあらゆる段階(政策立案を含む)を通じて、より体系的なかつ調整のとれたやり方で非政府組織の関与を得るよう勧告する。 普及 23.条約の原則および規定に関する意識を促進するための締約国の取り組みおよび子どもオンブズマンの多くの活動には留意しながらも、委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団ならびに子ども、親および公衆一般が、条約およびそこに体現された権利基盤アプローチについていまなお十分に認識していないことを懸念する。 24.委員会は、締約国が意識啓発のための努力を強化するよう勧告するとともに、締約国に対し、とくに議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、保健従事者(心理学者を含む)、ソーシャルワーカーおよび宗教的指導者ならびに子どもおよびその親を対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施するよう奨励する。 2.子どもの定義 25.委員会は、刑事責任に関する明確な最低年齢が定められておらず、かつ、場合によって10歳という低年齢の子どもも刑として教育的措置を言い渡される可能性があることを懸念する。 26.委員会は、少年が関わる事件における手続についての法律(1982年)で少年が13~17歳の者とされていることから、締約国が、すべての事件で刑事責任に関する最低年齢を13歳と定め、当該年齢に満たない子どもに対しては矯正措置または教育的措置のいずれも刑として言い渡すことはできないようにすることを勧告する。 3.一般原則 差別の禁止 27.委員会は、被害を受けやすい状況に置かれた一部の集団の子ども(ロマその他の民族的マイノリティの子ども、施設で暮らしている子ども、障害のある子ども、貧困家庭の子どもおよびHIV/AIDSに感染している子どもを含む)との関連で差別の禁止の原則が十分に実施されていないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、これらの子どもが十分な保健サービス、教育サービスその他の社会サービスに限られた形でしかアクセスできていないこと、および、人種的動機に基づく暴力が行なわれており、かつ警察が被害者を保護していないという報告があることを懸念するものである。 28.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を増進させるとともに、あらゆる理由に基づく、かつ被害を受けやすい状況に置かれたあらゆる集団に対する差別を解消するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、勧告する。 29.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条第1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、行政上および司法上の手続において子どもの意見を考慮するよう求めるために締約国が行なっている努力に留意するものの、実際には、とくに保護者のいない子どもの難民申請者、罪を犯した少年および施設に措置された子どもが関わる手続ならびに監護権をめぐる審判において、この原則が常に実施されているわけではないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、裁判所およびすべての行政機関による子どもの意見の尊重ならびに自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を促進しかつその便宜を図るため、立法を含む効果的措置をとること。 (b) とくに親、教員、政府行政官、司法機関、ローマカトリック教会およびその他の宗教的集団ならびに社会一般に対し、自己の意見を考慮され、かつ自己に影響を与える事柄に参加する子どもの権利についての教育的情報を提供すること。 4.市民的権利および自由 良心および宗教の自由 32.委員会は、公立学校で宗教の授業に代えて倫理の授業に子どもを出席させる親の選択権を保障する規則があるにもかかわらず、実際には、そのような選択を可能にする倫理の授業をほとんどの学校が実施していないこと、および、生徒は親の同意を得なければ倫理の授業に出席できないことを懸念する。 33.委員会は、締約国が、すべての公立学校で、子どもが、子どもの発達しつつある能力に一致するやり方で提供される親の指示を得て、宗教の授業または倫理の授業のどちらに出席するかを自由に選択することが認められることを確保するよう、勧告する。 不当な取扱いおよび暴力 34.委員会は、家族間暴力に対処するための「ブルーカード」プログラムが開始されたことには留意するものの、子どもの虐待ならびに家庭および学校における暴力が締約国で依然として問題となっており、かつ、子どもの虐待およびネグレクトについての苦情を受理しかつこれに対応する全国的制度が存在しないことを懸念する。委員会はまた、虐待の被害者およびその家族に対する回復および再統合の支援が限られていることも懸念するものである。さらに委員会は、家庭、学校および刑務所等のその他の施設においてならびに代替的養護の文脈で、体罰が広く実践されていることを懸念する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに配慮したやり方で苦情の受理、監視および調査を行ない、かつ必要な場合には事件を訴追するための全国的制度を設置するとともに、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象としてこの点に関する研修を実施すること。 (b) 家族間暴力の被害者および加害者の双方に(介入または処罰に留まるのではなく)適宜支援および援助を提供し、かつ、暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできるようにすることを目的とした包括的かつ全国的な対応制度を、とくに地方行政が家庭危機センターを設置するための十分な資源を有していないコミュニティで、設置すること。 (c) 問題の規模を適正に評価する目的で、虐待の加害者および被害者に関するデータ(ジェンダー別および年齢別に細分化されたもの)を収集するための機構を確立し、かつ、虐待に対応するための政策およびプログラムを立案すること。 (d) 家庭、学校および他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すること。 (e) 子どもの不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育プログラムを実施するとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律維持を促進すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 36.委員会は、締約国の多数の子どもが施設で生活しており、かつ、その相当の割合が本来の孤児ではなく「社会的」孤児であることを懸念する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの施設措置の定期的再審査が子どもの意見および最善の利益を考慮しながら行なわれることを確保するとともに、可能なときは常に、適切なカウンセリングおよび支援を提供しながら子どもをその家族に再統合させること、または施設措置以外の形態の養護を得られるようにすることを目指すこと。 (b) 里親家族にいっそうの金銭的支援を提供し、かつ里親家族のカウンセリングおよび支援のための機構を増やすことにより、里親養育制度を拡大すること。 (c) 子ども自身が置かれている環境での介入および子どもに対する援助をソーシャルワーカーがよりよいやり方でできるようにするため、ソーシャルワーカーの能力およびスキルを向上させること。 (d) 閉鎖が予定されている施設に現在入所している子どもが十分な情報を提供され、かつ自己の将来の措置に関する決定に参加できること、および、これらの子どもが社会的保護に対する権利を引き続き保障されることを確保するための手続を確立すること。 6.基礎保健および福祉 38.子どもの健康指標が良好であり、かつ継続的に改善されていることには心強い思いを感じながらも、委員会は、にもかかわらず、健康的ではない行動およびライフスタイルが増えていること、ならびに、母乳育児を続ける母親の割合が低いことを懸念する。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに子どもおよび若者の間で健康的なライフスタイルを促進することにより、健康促進・健康教育プログラムの有効性を高めること。 (b) 母親に対し、生後6か月間は乳児を母乳だけで育てることおよび母乳育児を2年間継続することを奨励し、かつその利点に関する教育を行なうための措置をとること。 障害のある子ども 40.委員会は、障害のある子どもが全員、統合された学校および教育プログラムに出席する機会を有しているわけではないこと、ならびに、場合によって、自宅に近い場所で適切なプログラムが設けられていないために、障害のある子どもが施設に措置され、または定期的に通学しないこともあることを懸念する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設で生活する障害のある子どもの人数を減らし、かつ、これらの子どもを普通教育・職業訓練プログラムならびに社会活動、文化活動および余暇活動に統合するための、期限付きの計画を策定すること。 (b) 障害のある子どもにとってアクセシブルかつ適切であり、かつ社会への完全参加の確保につながる統合教育の便益がこれらの子どもに対して提供されることを確保するため、ポヴィヤト(郡)に対して十分な財源、人的資源および組織的資源を提供すること。 思春期の健康 42.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 10代の妊娠率が相対的に高く、かつ、リプロダクティブヘルスに関する教育またはサービスに思春期の子どもが限られた形でしかアクセスできていないこと。 (b) 思春期の子どもの喫煙が過度に蔓延していること。 (c) アルコール、薬物および違法物質の濫用が10代の間で増えていること。 43.委員会は、締約国が、思春期の子どもをとくに対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関するかつ喫煙ならびに薬物およびアルコールの危険性に関する健康教育・意識啓発プログラムを、学校、地域クラブ、家族センターおよび子どもとともに活動しているその他の施設に導入するよう勧告する。 7.教育 44.委員会は、貧困家庭の子どもに対して教科書を給付し、かつすべての学校にコンピューターを備え付ける新たな取り組みには留意しながらも、都市部と農村部との間で、とくに幼稚園ならびに課外のプログラムおよび活動との関連で、教育へのアクセス、学校の物的条件および教室の差をめぐる格差が広がりつつあることを依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより、農村部の子どもが、労働市場に参入しまたは能力に応じて大学レベルの教育に進むためのスキルを与えてくれる良質な教育の機会を平等に持てることを確保するよう、勧告する。 (a) 農村部ですべての子どもを対象とする十分かつ適切な幼稚園施設が設けられることを確保しながら、とくに子どもと同世代の友人間の交流を涵養するプログラムおよび乳幼児期の教育の利点に関する親教育プログラムを通じて、子どもの認知的、社会的および情緒的発達を促進するための革新的手段を追求するとともに、条約第29条第1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目的に教育制度を適合させ、かつ、子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムに導入すること。 (b) 農村部および貧困コミュニティに対し、都市部の学校と同一の質の教育および同一水準の課外プログラムを提供できるようにするための追加資金が提供されることを確保すること。 (c) 貧困家庭の子どもまたは農村部の子どもが、大学進学準備のために普通中等学校に通学できるようにするための奨学金その他の形態の金銭的支援にアクセスできることを確保すること。 8.特別な保護措置 子どもの難民および保護者のいない未成年の庇護希望者 46.委員会は、難民事案の処理をいっそう速やかに進めるために締約国が行なっている努力に留意するものの、保護者のいない未成年者による申請の処理が、難民申請を行なうそのような未成年者の法的代理人(このような代理人は行政上の事項についてのみ責任を負い、子どもの最善の利益にのっとって行動する義務を負わない)を選任する煩雑な手続によって滞っていることを懸念する。さらに委員会は、難民申請の処理が終了するのを待っている子どもが、緊急収容棟に収容される場合には教育の機会を与えられず、かつ場合によって罪を犯した少年とともに収容されていることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 難民認定処理に関する現行法を改正して、保護者のいないすべての未成年者に対し、当該未成年者について責任を負い、その意見を考慮しながら当該未成年者の最善の利益にのっとって行動することを義務づけられる法的後見人が直ちに選任されることを確保すること。 (b) 一時的に緊急収容棟に措置された子どもが罪を犯した少年とともに収容されないこと、および、当該収容がもっとも短い可能な期間でのみ行なわれ、かつ法律により定められた上限である3か月を超えないことを確保すること。 (c) 緊急収容棟もしくは難民受け入れセンターにおいてまたはその他の形態のケアを受けながら難民申請の処理の終了を待っているすべての子どもが、教育に全面的にアクセスできることを確保すること。 性的搾取および人身取引 48.人身取引の防止および被害者の送還のための地域的プログラムへの協力の取り組みを締約国が強化していることには留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、ポーランドが依然として、性的搾取目的で人身取引の対象とされる子どもの送り出し国、目的地国および通過国になっていることを懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国際労働機関(ILO)の最悪の形態の児童労働条約(第182号)、および、 国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准する旨の意向に沿った対応を進めるとともに、それぞれストックホルム(1996年)および横浜(日本、2001年)において開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり、子どもの商業的性的搾取に関する国家的行動計画を策定すること。 (b) 買売春およびポルノ的資料の制作に従事させられた18歳未満のすべての者が、犯罪者として扱われず、かつ全面的保護を享受できることを確保すること。 (c) 法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象として、苦情申立てを子どもに配慮したやり方で受理し、監視し、捜査しかつ訴追する方法についての研修を実施すること。 (d) 人身取引および強制買売春の被害を受けたすべての者が、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 少年司法 50.委員会は、未決勾留措置として、または少年矯正施設における行為への懲罰として、緊急棟に著しく長い期間収容される少年が多いことを懸念する。加えて、委員会は、すべての少年拘禁施設が、家族との接触を維持する子どもの権利を保障し、または十分な生活水準を提供しているわけではないことを懸念するものである。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年開催)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 緊急棟への収容が認められる期間の上限を3か月と定めた規則を執行すること。 (c) 自由の剥奪を最後の手段としてのみ用いるとともに、自由を奪われた子どもの権利(拘禁環境に関わるものを含む)を保護すること。 マイノリティ集団に属する子ども 52.委員会は、ロマの状況の改善を目的とした試行事業が一部の件で行なわれているにもかかわらず、ロマがいまなお広範な差別に苦しんでおり、場合によっては教育、保健および社会福祉に対するロマの子どもの権利が阻害されていることを懸念する。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会一般で、ならびに、とくに保健サービス、教育サービスその他の社会サービスを提供する公的機関および専門家の間に存在するロマへの否定的態度に対処することを目的としたキャンペーンを、あらゆるレベルおよびあらゆる県で開始すること。 (b) すべてのロマの子どもを普通教育に統合することおよび特別学級へのロマの子どもの隔離を禁止することを目的とし、かつ、ロマの子どもがコミュニティにおける第一就学言語を学ぶための就学前プログラムを含む計画を策定しかつ実施すること。 (c) ポーランド社会でロマについての理解、寛容および尊重を促進するため、すべての学校を対象とした、ロマの歴史および文化を含むカリキュラム資料を開発すること。 9.子どもの権利条約の選択議定書および条約第43条第2項の改正 54.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書をまだ批准していないことに留意する。 55.委員会は、締約国が子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 56.最後に、条約第44条第6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 57.委員会は、締約国の報告の遅延を認識しつつ、条約第44条に定められた規則を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調したい。これを担当する委員会は、子どもの権利の実施における進展を定期的に審査する機会を持てるべきである。これとの関連では、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことがきわめて重要になる。締約国が条約に基づく義務をふたたび全面的に遵守するようになることを援助するため、委員会は、例外的措置として、締約国に対し、第4回定期報告書を、当該報告書について条約が定める提出期限、すなわち2008年7月7日の前に提出するよう慫慂するものである。この報告書は、第3回および第4回報告書を統合したものとされる。 更新履歴:ページ作成(2017年2月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/268.html
総括所見:スイス(OPSC・2015年) 第1回(2002年)/第2~4回(2015年)OPAC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/CHE/CO/1(2015年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1963回会合(CRC/C/SR.1963参照)においてスイスの第1回報告書(CRC/C/OPSC/CHE/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合(CRC/C/SR.1983参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/CHE/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書に関する総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会はさらに、締約国がとくに以下の文書を批准したことに評価の意をもって留意する。 (a) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2014年3月) (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2006年10月) (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年10月) (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2006年10月) 5.委員会は、選択議定書の実施の分野で締約国がとった、以下のものを含むさまざまな措置を歓迎する。 (a) 数次の刑法改正により、人身取引の定義が拡大され、自発的買春に関する年齢制限が16歳から18歳に引き上げられ、かつ児童ポルノを所持することなく消費する行為が犯罪化されるとともに、とくに人身取引、子どもとの性的行為および子どもとの性的行為を掲載した一定の態様のポルノグラフィ―へのアクセスについて有罪判決を受けた者が、子どもと常時接する活動を行なうことまたは子どもと接触しもしくは接近することを禁じられたこと。 (b) 連邦憲法および刑法の改正により、とくに思春期前の子どもを関与させた性犯罪を訴追する権利およびこのような犯罪の処罰は時効の対象とされないことが保障されたこと。 6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度の創設ならびに国家的計画およびプログラムの採択に関して達成された進展を歓迎する。 (a) 人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年)の採択 (b) サイバー犯罪調整部、ならびに、連邦警察のスイス人身取引・移民密輸対策調整部および子どもに対する犯罪・ポルノグラフィ―部がそれぞれ2003年および2007年に設置されたこと。 III.データ データ収集 7.委員会は、包括的なデータ収集システムおよび選択議定書上のすべての犯罪を網羅する細分化されたデータが締約国に存在しないために、議定書上の犯罪を監視しかつ評価する締約国の能力が限られていることを懸念する。 8.条約に基づく総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4、パラ16および17)を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析、監視および影響評価を行なう包括的かつ体系的な機構を設置しかつ実施するよう、勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい立場に置かれた集団の子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。犯罪の性質によって細分化された、訴追件数および有罪判決件数についてのデータ収集も求められる。 IV.一般的実施措置 国家的行動計画 9.委員会は、防止、意識啓発、刑事訴追、被害者の保護および支援ならびに連携の分野で23の措置を掲げた、人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年)の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされているすべての問題を含んだ、子どもに関する包括的な政策および戦略が存在しないことを遺憾に思うものである。 10.条約に基づく総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4、パラ10および11)を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書で求められているすべての分野における包括的措置を掲げ、かつ、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供される包括的な政策および戦略を採択するよう、勧告する。防止、被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に、特段の焦点が当てられるべきである。委員会はまた、締約国に対し、このような政策および戦略が定期的に評価の対象とされることを確保するよう奨励する。 調整および評価 11.委員会は、さまざまな連邦省庁および社会問題カントン長官会議から構成され、委員会の勧告のフォローアップを担当する作業部会の設置を構想しているという、締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、連邦およびカントンのレベルで諸議定書の実施の全般的調整が行なわれていないことを懸念するものである。 12.条約に基づく総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4、パラ12および13)を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の監視および評価について、各部門を横断し、かつ連邦、カントンおよびコミューンのれべるで指導力を発揮しかつ効果的な一般的監督を行なう能力を備えた調整機関を指定するよう勧告する。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するべきである。 普及および意識啓発ならびに研修 13.委員会は、人身取引に関する意識啓発のための全国キャンペーンの計画(2017~2018年)が現在作成されている最中である旨の情報に留意する。委員会はまた、若者とメディアに関する全国的プログラムの実施等も通じて、ニューメディア関連のリスクに関する意識啓発を目的とした情報の普及および研修の実施のために行なわれているさまざまな努力にも留意するものである。しかしながら委員会は、とられた措置が体系的ではなく、かつ選択議定書のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に体系的に周知するための努力を強化すること。 (b) 関連の政府機関、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に効力しながら、選択議定書で対象とされているすべての問題およびそのような慣行への対策として国内法で定められている保護措置についての意識啓発プログラムを発展させること。 (c) 研修活動を拡大しかつ強化するとともに、このような活動が体系的かつ学際的であること、選択議定書で対象とされているすべての分野を含んでいることならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(とくにあらゆるレベルの裁判官、検察官、ソーシャルワーカー、法執行官および出入国管理官)を対象として実施されることを確保すること。 資源配分 15.委員会は、締約国が、選択議定書に基づく活動のためにとくに配分される予算についての十分な情報を提供していないことを懸念する。このような情報が存在しないことは、選択議定書の実施にとって相当の障壁である。 16.委員会は、締約国が、連邦およびカントンのレベルにおける選択議定書の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源を配分するよう勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 17.議定書で禁じられている犯罪を防止するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、諸措置が断片的であり、かつ議定書のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国に、被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもをとくに対象とするプログラムが存在しないこと。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子どもを特定しかつ監視するために設けられた機構が不十分であること。 (c) 防止活動が、締約国の財政的支援が限られたなかで非政府組織によって行なわれていることが多いこと。 18.委員会は、締約国が、選択議定書のすべての分野を網羅した防止措置を拡大しかつ強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子ども(ロマの子どもまたは他の民族的マイノリティの子ども、施設に措置された子ども、路上の状況下で暮らしている子ども、移住の影響を受けている子ども、子どもの庇護希望者および難民ならびに家族間暴力の被害者である女子を含む)を対象とする特別防止プログラムを確立すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を特定するための機構および手続を確立し、かつ、これらの子どもを対象として心理社会的支援および意識啓発プログラムを行なうこと。 (c) 関連の非政府組織を支援すること。 (d) 子どもの性的搾取および人身取引(とくに、とりわけインターネット上の児童買春および児童ポルノ)の規模を評価する目的で研究を実施すること。 児童セックス・ツーリズム 19.委員会は、観光業における性的搾取から子どもを保護するために締約国、オーストリアおよびドイツが合同で行なっている教育キャンペーンおよび「旅行・観光業における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範」の策定など、児童セックス・ツーリズムを防止するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、効果的な規制の枠組みが存在せず、かつ、国外における児童セックス・ツーリズムの防止およびこれとの闘いを効果的に進めるためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。 20.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 児童セックス・ツーリズムを防止しかつ撤廃する目的で、効果的な規制枠組みを確立しおよび実施し、ならびに、あらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとること。 (b) 児童セックス・ツーリズムの防止および撤廃を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力をさらに強化すること。 (c) 児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、かつ、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。 (d) これらの企業に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条第2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 21.選択議定書の規定をよりよく反映させるために行なわれた連邦憲法および刑法の改正は歓迎しながらも、委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が刑法に十分に明記されているわけではないことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 選択議定書第2条(a)および第1条第1項(a)(i)で対象とされているすべての形態の子どもの売買が、人身取引とは異なる犯罪として分類されているわけではないこと。 (b) 締約国において、情報通信技術を利用して性的目的で子どもを勧誘すること(グルーミング)および性的メッセージまたは写真を交換すること(セクスティング)をとくに取り上げた法律が定められていないこと。 (c) 児童ポルノ〔に関連する禁止行為〕の定義に、裸の子どもを映しているものの特定の文脈に照らしてポルノ的とはみなされない画像およびビデオの製造、販売および配布が含まれていないこと。 (d) 選択議定書上の犯罪を処罰する刑法の規定のなかに、いまなお16歳までの子どもしか保護の対象としていないもの(とくに子どもをポルノ的資料に接触させることを処罰する規定)があること。 22.委員会は、締約国が、刑法その他の関連の法律を、選択議定書第2条および第3条と完全に一致させる目的で引き続き検討しかつ改正するよう勧告する。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 子どもの売買――人身取引と類似してはいるものの同一ではない概念――を議定書第3条にしたがって定義し、規制し、かつ犯罪化すること。 (b) 情報通信技術を利用して性的目的で子どもを勧誘すること(グルーミング)および性的メッセージまたは写真を交換すること(セクスティング)ならびに特定の文脈における裸の子どもの画像またはビデオの製造、販売および配布を含む、選択議定書上のすべての犯罪が明示的に犯罪とされることを確保すること。 (c) 18歳未満のすべての子どもが刑法によって全面的に保護されることを確保すること。 域外裁判権 23.刑法第5条に掲げられた子どもに対する犯罪を訴追する際の域外裁判権の行使に双方可罰性が必要とされていないことは歓迎しながらも、委員会は、双方可罰性要件の不適用が、18歳未満のすべての子どもの被害者または選択議定書で対象とされているすべての犯罪を網羅しているわけではないことを懸念する。 24.委員会は、締約国が、国内法において、選択議定書で対象とされているすべての犯罪および18歳未満のすべての子どもの被害者について域外裁判権(双方可罰性の基準を満たさない場合の域外裁判権を含む)を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項) 被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 25.連邦被害者支援法で被害者への援助に関する最低基準が定められていることには留意しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) これらの基準の実施に関してカントン間に格差があること。 (b) 児童ポルノとの関連で被害者の特定が不十分であり、人身取引の被害を受けた子どもが法執行機関によって被害者と認められないことが多く、かつ、搾取されまたは物乞いもしくは盗みを強要された子どもがしばしば被害者とみなされないこと。 26.委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための措置を強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 連邦被害者支援法で定められた基準がすべてのカントンで平等に適用されることを確保すること。 (b) 議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが犯罪者ではなく被害者とみなされること、および、被害を受けた子どもの特定に責任を負う者(裁判官、検察官、法執行機関、ソーシャルワーカー、医療スタッフ、移民担当職員および被害を受けた子どもを支援するその他の専門家を含む)が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取技法についての研修を受けることを確保すること。 刑事司法制度における保護措置 27.刑事訴訟法に子どもの被害者および証人のための特別規定が置かれていることは歓迎しながらも、委員会は、幼い子どもが十分に保護されていないこと、および、子どもの被害者を支援するスタッフが十分な訓練を受けていないことを懸念する。委員会はさらに、選択議定書が対象とする犯罪の加害者のためのプログラムについての情報がないことを懸念するものである。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子どもに対し、選択議定書で求められている保護が提供されることを確保すること。 (b) 裁判官、検察官、警察、ソーシャルワーカー、医療スタッフならびに子どもの被害者および証人を支援するその他の専門家が、刑事手続および司法手続のすべての段階における子どもにやさしいやりとりに関する研修を受けることを確保すること。締約国は、この点に関して、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである。 (c) これらの犯罪の加害者のためのプログラムを導入すること。 被害者の回復および再統合 29.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの回復および再統合を確保するための措置が限定的であることを懸念する。とくに委員会は、被害を受けた子どものための専門のサービスおよびセンターがすべてのカントンで利用可能とされておりかつ資金を提供されているわけではなく、かつ、安全な収容施設が存在しないことを懸念するものである。 30.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもに対して適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに全面的な社会的再統合のための援助を含む)が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもに短期的、中期的および長期的支援を提供するためのプログラムを発展させること。 (b) 人身取引、性的搾取もしくは経済的搾取を目的とする売買の対象とされた子どもまたはその他の形で選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに必要とされる専門サービスおよび十分な援助を、直接またはサービス提供機関を通じて自国の領域全体で確立するとともに、十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (c) 犯罪の被害を受けた子ども(とくにもっとも被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を対象として適切な宿泊施設へのアクセスを促進しかつ強化するために必要な措置をとるとともに、このようなインフラが質量ともに十分に利用可能とされ、かつ十分な設備を備えることを確保すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 31.委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止ならびにその摘発および捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 32.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 33.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 34.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2016年1月24日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/322.html
総括所見:中華民国/台湾(第1回独自審査、2017年) 台湾・子どもの権利条約実施法 CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) 原文:英語 日本語訳:平野裕二(翻訳にあたっては台湾政府による中文訳も適宜参照した)〔日本語訳PDF〕 子どもの権利条約の実施についての中華民国/台湾の第1回報告書に関する総括所見 I.はじめに 1.2014年6月、中華民国(台湾)の立法院は、子どもの権利条約実施法(「実施法」)を可決した。同法は2014年11月20日に施行され、CRCの国内法上の調和化の枠組みを提供している。2016年4月22日、台湾の立法院はCRCの採択を支持する法案を可決し、これを受けて総統は2016年5月にCRCへの加入書に署名した。 2.行政院は、実施法にしたがって2016年11月に第1回国家報告書を発表し、その英語版は2017年3月に利用可能とされた。第1回国家報告書の審査を行なうため、台湾政府は、子どもの権利に関する国際的な独立専門家5名を招聘して独立審査委員会(「審査委員会」)を設置した。5名の専門家とは、ヤープ・ドゥック(委員長・オランダ)、ジュディス・カープ(イスラエル)、ナイジェル・カントウェル(英国/スイス)、ローラ・ランディ(北アイルランド)およびジョン・トービン(オーストラリア)である。 3.審査委員会は、2017年3月に審査委員会に提出された台湾の第1回報告書を検討した。審査委員会は、子ども団体および子どもたちのグループを含む市民社会組織から報告書を受領した。審査委員会は、2017年6月に台湾に対する事前質問事項を提出し、2017年9月に詳細な文書回答を受領した。審査委員会はまた、事前質問事項および事前質問事項に対する国の回答を受けて市民社会から提出された多数の追加報告書も受領した。 4.審査の一環として、2017年11月20日、審査委員会は子どもたちおよび市民社会のメンバーと非公開の会合を持った。審査委員会は、2017年11月21日および22日、政府代表団と公の対話を行なった。審査委員会は、2017年11月24日にこの総括所見を採択して発表した。 5.審査委員会は、CRCを実施するために台湾政府が行なっている真剣かつ誠実な努力を認知する。審査委員会は、関連するすべての省庁および政府機関の代表が出席した審査における政府との建設的対話に、大いなる謝意を表明するものである。市民社会およびとくに子どもの積極的参加も、審査プロセスにとって必要不可欠であった。 6.審査委員会は、審査委員会に実質的支援および後方支援を提供してくれたことについて、衛生福利部(およびとくにそのCRCチーム)に謝意を表明する。 II.国際人権条約の承認 7.審査委員会は、CRCのみならず次の国際人権条約も採択する旨の台湾の決定を歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約 (b) 市民的および政治的権利に関する国際規約 (c) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 (d) 障害のある人の権利に関する条約 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 立法 8.審査委員会は、CRCが留保なしに接受されたことおよびCRCの実施のための特別法が採択されたことに、評価の意とともに留意する。審査委員会は、政府が、国内法を条約の規定と調和させることを目的として国内法の見直しを継続するなかで、子どもの権利影響評価のプロセスを実行するよう勧告する。 9.審査委員会は、実施法を改正し、国内法の規定との抵触がある場合にはCRCの規定が優先されることを明示するよう勧告する。 10.審査委員会は、政府に対し、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関するCRCの両選択議定書を採択するよう奨励する。 包括的な国家的行動計画 11.審査委員会は、政府が、広域行政圏および地方の当局、市民社会組織、関連の専門家、子どもおよび親の関与を得ながら、CRCの実施のための国家的かつ包括的な行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。 調整 12.審査委員会は、子どもおよび若者の権利と福祉に関する政策の調整および促進を任務とする「子どもおよび若者の福祉および権利促進チーム」が設置されたことおよび行政院の「子どもおよび若者の福祉および権利の促進のための委員会」が設置されたことを歓迎する。審査委員会は、政府が、これらのチームおよびグループに対し、その任務を遂行するための十分な権限が与えられ、かつ十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう勧告する。 13.審査委員会は、立法院に子ども委員会を設置するよう勧告する。同委員会は、子どもおよびその人権に影響を与える立法提案の作成にあたり、子ども、関連の職能団体および市民社会と協議するべきである。 独立の監視 14.審査委員会は、台湾がまだ独立の国内人権機関(「NHRI」)を設置していないことに懸念とともに留意する。 15.審査委員会は、CRC委員会が一般的意見2号(2002年)で行なっている勧告にしたがい、子どもの権利を監視するための専門部署を有するNHRIまたは子どもオンブズマン事務所もしくは子どもの権利コミッショナーのいずれかを、遅滞なく設置するよう勧告する。このような機関はパリ原則を遵守するものであるべきであり、かつ、官民の部門に関連して子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情申立てを、子どもに配慮したやり方で、申立人のプライバシーおよび保護を確保しながら受理し、調査しかつ処理することができるべきである。 苦情申立て手続 16.審査委員会は、教育、社会福祉、保健および少年司法の現場で子どもに提供されている苦情申立ての機会についての情報に、評価の意とともに留意する。 17.審査委員会は、苦情申立ての機会および手続に関する情報をすべての子どもが受け取るべきであることを勧告する。政府は、これらの手続が子どもにやさしいものであること、子どもに対して十分な支援(適切なときは親または権限のあるNGOによる支援を含む)が提供されること、および、子どものプライバシーが保護されることを確保するべきである。さらに審査委員会は、政府が、苦情を申し立てた子どもおよび子どもに代わって苦情を申し立てた者を報復、脅迫または他の悪影響から保護するために必要な措置をとるよう勧告する。苦情申立て手続は独立の再審査に服さなければならない。 資源配分 18.審査委員会は、第1次子ども予算を提出したことについて政府を称賛する。審査委員会は、公共予算編成に関する子どもの権利委員会の一般的意見19号(2016年)にのっとり、政府が、公の対話(子どもたちとの対話を含む)を通じて透明なかつ参加型の予算編成を確保するとともに、資源の配分および使用の十分性、有効性および公平性を監視しかつ評価するための機構(地方当局レベルにおけるものを含む)を設置するよう勧告する。 データ収集 19.審査委員会は、家庭環境および代替的養護、保健および福祉、教育ならびに特別な保護措置などの分野における子どもの権利の実施に関わる統計情報の提供を評価する。 20.実施に関する一般的措置についての子どもの権利委員会の一般的意見5号に照らし、審査委員会は、政府が、データ収集システムをさらに改善するとともに、中央データ収集部署の設置を検討するよう勧告する。収集される情報は、条約のすべての分野を網羅し、かつ、ジェンダー、年齢、都市部/農村部の別ならびに先住民族的背景および民族的背景ごとに、ならびに、妥当かつ適切な場合には障害、国籍および性的指向ごとに、細分化されるべきである。 意識啓発および研修 21.審査委員会は、子どもの権利に関してさまざまな省庁が中央レベルで提供している研修および地方レベルで提供されている研修に留意する。しかしながら審査委員会は、研修の質および有効性に関する情報がないこと、および、焦点が主として公務員に当てられているように思われることを懸念するものである。 22.審査委員会は、政府が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療専門家、施設養護および里親養護の仕事をしている専門家ならびに子どものための特別な保護措置の分野で働いている専門家、警察、裁判官および検察官ならびに少年司法の分野で働いているその他の者など)を対象として、子どもの権利に関する研修を確保するよう勧告する。すべての研修において、CRCの一般原則(差別の禁止に対する権利、第1次的考慮事項としての子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利ならびに意見を聴かれる権利)および発達しつつある能力の原則に、特別な注意が向けられるべきである。すべての研修を継続的な監視および評価の対象とすることが求められる。親に対しても、学校、地方政府、福祉・保健サービスおよびメディアを通じて子どもの権利に関する情報が提供されるべきである。 市民社会および企業セクターとの協力 23.審査委員会は、政府と市民社会組織との肯定的関係および開かれた対話を称賛する。審査委員会は、台湾における子どもの権利の実現をさらに進めていく手段として、このような協力を奨励する。 24.企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についてのCRC委員会の一般的意見16号(2013年)を参照しつつ、審査委員会は、政府が、とくに子どもの就労および労働条件、メディア(ソーシャルメディアおよびインターネットを含む)ならびに環境保護の分野で企業セクターが子どもの権利を遵守することを確保するための規則を定めかつ実施するよう、勧告する。 B.子どもの定義 25.審査委員会は、台湾における成人年齢が20歳であることに留意する。審査委員会の任務は18歳未満の者に限定されている。しかしながら審査委員会は、台湾におけるCRCの実施が、18歳または19歳の若者に対する権利の適用可能性に関する不整合および混乱を生み出す可能性があることを強調したいと考えるものである。 26.審査委員会は、政府が、国際条約機関の勧告にしたがって最低婚姻年齢を男女ともに18歳と定めることにより、現行の最低婚姻年齢の調和を図る法律の制定を公約としていることに、評価の意とともに留意する。 C.一般原則 差別の禁止(第2条) 27.審査委員会は、とくに被害を受けやすい立場に置かれた子ども(先住民族の子ども、LGBTIの子ども、障害のある子どもおよび無国籍の子どもなど)に対する差別を防止し、かつこれらの子どもを差別から保護するためのさまざまな法的規定に関して提供された情報に、評価の意とともに留意する。しかしながら審査委員会は、これらの規定を確保し、かつ性別平等教育法の実施への抵抗に対処するための政策およびプログラムの有効性に関する情報がないことを懸念するものである。 28.審査委員会は、国が、子どもたち、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家および市民社会と継続的に協議しながら、引き続き、とくに被害を受けやすい立場に置かれた子どもの差別を受けない権利に関する意識啓発キャンペーンの促進および支援を図り、かつ、子どもの差別を禁じたさまざまな法的規定の全面的実施を確保するために必要な措置をとるよう勧告する。 第1次的考慮事項としての子どもの最善の利益(第3条第1項) 29.審査委員会は、子どもの保護に関連する立法および民法により、裁判所その他の公的機関による決定は子どもの最善の利益に基づいて行なわれなければならないとされていることに留意する。審査委員会は、政府が以下のことを確保するよう勧告するものである。 (a) この権利が、子どもの最善の利益に関する〔CRC〕委員会の一般的意見14号と一致する形で解釈されること。 (b) この権利が、立法上、行政上および司法上のあらゆる手続および決定ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすあらゆる政策、プログラムおよびプロジェクト(出入国管理および少年司法に関する法令を含む)において一貫したやり方で統合されかつ解釈されること。 生命、生存および発達に対する権利(第6条) 30.審査委員会は、子どもの自殺率および自殺未遂率の高さを国が認知していることに留意するとともに、国が、子どもおよび若者の自殺の原因を評価しかつこれに対処し、かつきわめて高い水準にある子どもの自殺を減らすために現在行なっている努力を拡大するよう勧告する。 意見を聴かれる子どもの権利(第12条) 31.審査委員会は、学校および地方政府の委員会の委員に子どもを含めるためにとられてきた措置を歓迎するとともに、とくに国民教育課程綱要審議会に子どもが含まれていることを称賛する。しかしながら審査委員会は、社会文化的態度により、子どもが家庭、学校およびより広いコミュニティにおいて自由かつ安全に意見を表明することが制約され続けていることに、懸念を表明するものである。 32.審査委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関するCRC委員会の一般的意見12号に対して政府の注意を喚起するとともに、政府が条約第12条にしたがってこの権利の実施を強化するための措置をとるよう勧告する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもたちにとってもっとも重要な問題およびこれらの問題に関する子どもたちの意見をあらゆる場面でもっともよい形で聴ける可能性がある方法を特定するための調査を実施すること。 (b) 家庭、学校およびコミュニティにおいてすべての子どもが意味のある形でかつエンパワーされながら参加することを促進するため、親、教員、ソーシャルワーカー、裁判官および子どもとともにまたは子どものために働くその他の者を対象とする研修プログラムおよび意識啓発活動を実施すること。 (c) 立法および政策立案の過程で子どもたちの意見が聴かれることを可能にする機構を設置することにより、国レベルでの子ども参加を強化すること。 (d) 子どもが意見を聴かれる自己の権利について情報を提供され、かつその権利を意味のある形で行使するための支援を受けられることを確保する等の手段により、関連の行政手続および法的手続において意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 D.市民的権利および自由 国籍を取得する権利(第7条第1項) 33.審査委員会は、養子とされていない無国籍の子どものうち中華民国(台湾)の国籍を取得できる子どもを増やすために政府が行なっている努力を歓迎する。審査委員会はとくに、子どもの母親が移住者であり、かつ父親が知れない場合に、母親が子どもを連れずに帰国したときに生ずる子どもの資格および地位関連の問題についての報告に留意するものである。審査委員会は、これらの子どもが無国籍のままにならず、または台湾の他の子どもが受ける資格を有しているいかなるサービスまたは給付も奪われないことを確保するため、政府があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 表現の自由に対する権利(第13条) 34.審査委員会は、大人が否定的態度を有していることおよび子どもが処罰への恐怖心を抱いているために、表現の自由に対する権利の行使が、とくに学校において実際には制限される場合があるという報告について懸念を覚える。審査委員会は、政府が、子どもがあらゆる場面で表現の自由に対する権利を享受できることを確保するとともに、たとえば学校内外における生徒新聞または生徒通信その他の刊行物の制作および配布を促進しかつ支援するよう勧告する。 結社の自由および平和的集会の自由に対する権利(第15条) 35.審査委員会は、20歳未満の子どもおよび若者が自分たち自身の結社を設立できず、かつ親または保護者の許可がなければ既存の結社の構成員にもなれないことに、懸念とともに留意する。このような立場は結社の自由に対する子どもの権利と両立せず、かつ子どもの発達しつつある能力を尊重していない。 36.審査委員会は、子どもが、その年齢、成熟度および発達しつつある能力にしたがって、いかなる差別もなく、結社の自由および平和的集会に対する権利(平和的抗議に対する権利を含む)を全面的に享受できることを確保するため、政府が必要な立法上その他の措置をとるよう勧告する。 プライバシーに対する権利(第16条) 37.審査委員会は、教員が、法律に定められた理由以外の理由で生徒の私物の検査を行ない、かつ秘密とされるべき子どもの情報を開示してきたという報告に、懸念とともに留意する。審査委員会は、プライバシーに対する権利へのこのような不法かつ恣意的な干渉から子どもを保護するため、政府があらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。教員に対しては、関連の規則に関する情報を提供し、かつこれらの規則に違反した場合には懲戒手続の対象とすることが求められる。 拷問または他の残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを受けない権利(第37条(a) 38.審査委員会はまた、矯正施設その他の入所施設における独居拘禁および抑制手段の使用についても懸念を表明する。審査委員会は、政府が、独居拘禁の使用および独居拘禁が行なわれる条件を規律する規則が条約第37条および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(「ハバナ規則」、パラ67)と全面的に一致することを確保するとともに、これらの規則が尊重されることを保証するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに審査委員会は、政府が、抑制手段の使用を規律する規則がハバナ規則に掲げられた基準(パラ63および64)に一致することを確保するため、当該規則の見直しを行なうよう勧告するものである。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1項および第2項、第20条、第21条、第25条ならびに第27条第4項) 家族支援 39.子どもの養育責任に関して金銭的その他の形で親を支援するためにさまざまな措置が用意されていることを歓迎しながらも、審査委員会は、ひとり親世帯(離婚後の世帯を含む)および低所得かつハイリスクの一部世帯が十分な支援にアクセスできていない可能性がある旨の報告に留意する。審査委員会は、政府に対し、このようなすべての世帯を包摂する目的で適切かつ必要な支援へのアクセスを拡大するため、あらゆる実現可能な措置をとるよう促す。 不法移送および不返還(第11条) 40.審査委員会は、子どもの不法移送の通報が義務的なものとされておらず、かつ通報件数は不法移送の被害者である子どもの人数の一部しか反映していない可能性があるという情報に留意する。さらに、法律上の規定はこのような移送を防止するのに不十分であるように思われる。 41.審査委員会は、台湾が、子どもの不法移送および(不)返還の事案に対応するための拘束力のある文書として、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)を採択するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子どもおよび代替的養護(第9条第1項および第20条) 42.審査委員会は、入所型養護の使用およびその運用のあり方について懸念を覚える。審査委員会は、親/家族から分離されているまたは分離されなければならない子どもの入所型養護施設への措置を削減するための措置を政府がとってきたことに留意する。審査委員会はまた、入所型養護を受けている子どもの人数が顕著に減少しつつある一方、入所型養護を行なう国以外の提供機関の数が増加し続けていることにも留意するものである。審査委員会は、認可、査察および監査のために現在設けられている制度のもとで、質の保障が効果的に行なわれていない可能性があることを懸念する。審査委員会の理解によれば、、私立施設に対して現在提供されている資源では、資格のある十分な人数の職員を採用しかつ雇用し続けることができない可能性がある。審査委員会は、過剰定員のために、家庭を基盤とする養育ではなく入所型養護施設に子どもを措置するインセンティブが生じる可能性があることを懸念するものである。審査委員会は、政府が、この過剰定員の理由を検討するとともに、子どもの代替的養護に関する国連指針に一致する、代替的養護を必要する子どものもっとも適切な措置を確保するようなやり方で資源を配分するよう勧告する。 43.審査委員会は、公式な親族養育を受ける子どもの割合を高めるという政府の目標を歓迎する。審査委員会は、政府が、親族養育者になれる可能性がある者についての資格および補助金に関わる負担の大きい一部の要件を緩和することによって、現在進んでいる親族養育の増加をどの程度促進できるか検討するよう提案するものである。 44.審査委員会はまた、里親養育(特別なニーズを有する子どもの養育に関連するものを含む)を促進する政府の政策、ならびに、このことが含意する里親養育者の研修および支援の強化も歓迎する。審査委員会は、政府がこの政策を継続しかつ強化するよう勧告するものである。 45.審査委員会は、政府が、子どもの代替的養護に関する国連指針にのっとり、とくに措置が必要になることを防止するために家族を支援しかつ強化すること、および、このような子どもを対象として家庭を基盤とする養育の利用を推進しかつ促進することによって代替的養護制度の脱施設化を図るための、包括的なかつ予算の見積もりをともなう戦略を作成するよう、勧告する。 46.さらに審査委員会は、代替的養護への子どもの措置があらゆる場合に家庭裁判所の決定に基づいて行なわれること、そのような措置の期間が法律で定められること、および、措置期間の延長は裁判所の決定によって、かつ法律の定める基準を満たす形で行なわれることを確保するため、政府が必要な立法措置をとるよう勧告する。審査委員会がとりわけ懸念するのは、措置が必要でありかつ子どもの最善の利益にのっとっているか否かの評価に裁判所がまったく関与することなく、親が自己の子どもの措置を手配できるようになっていることである。 47.審査委員会は、不当な取扱いを受けている子どもおよび差し迫った重大な危険に直面している子どもが72時間を上限とする保護的措置の対象とされうること、および、この措置が裁判所の決定により3か月間繰り返し延長できることに留意する。審査委員会は、公的機関が、子どもが家族のもとに復帰できない場合の長期処遇計画の作成を、緊急入所施設に2年間滞在した後でなければ要求されないことを懸念するものである。 48.審査委員会は、政府が、CRC第25条および子どもの代替的養護に関する国連指針にしたがい、代替的養護を受けている子どものあらゆる措置を定期的に再審査する効果的システムを確立するよう勧告する。緊急施設および入所型施設への措置の再審査に特別な注意を払い、当該措置が子どもの最善の利益に照らしていまなお必要であるか否か、および(または)、家庭を基盤とする形態の代替的養護に子どもを措置することが可能か否かを、最低でも毎年評価することが求められる。政府はまた、子どもがある代替的養護現場から他の現場へと頻繁に移動させられることを防止するために必要な措置もとるべきである。 49.最後に、子どもの代替的養護に関する国連指針にのっとり、審査委員会は、代替的養護制度から離脱する子どもを対象として、このような子ども(および該当する場合にはその家族)が養護から離脱するプロセスに向けて準備できるようにし、かつ、適切な期間、あらゆる必要なアフターケア支援を提供する、効果的かつ適正な政策およびプログラムを整備することの重要性を強調する。 国内・国際養子縁組(第21条) 50.審査委員会は、年間の国内養子縁組件数が国外における台湾の子どもの養子縁組件数よりも少ないことに留意するものの、近親間養子縁組および継親養子縁組の解消率が高いことに、懸念とともに留意する。審査委員会は、これらの解消の原因を分析すること、解消率を低下させるための是正措置をとること、および、当事者であるすべての子どもに適切な養育を確保するためにあらゆる必要な努力を行なうことを勧告するものである。審査委員会は、国内で養子縁組を行なおうとする者がしばしば特別なニーズを有する子ども(障害のある子どもおよび年長の子どもを含む)を引き取りたがらない場合があり、したがってこのような子どもにとっては国際養子縁組が唯一の解決策と見なされる場合があることを認識しながらも、政府に対し、意識啓発を図り、かつこのような子どもの国内養子縁組を促進するよう促す。 51.審査委員会は、政府による国際養子縁組手続の監督(民間養子縁組斡旋機関の認可および監視を含む)の水準および実効性について懸念を覚える。審査委員会は、台湾が、台湾からのおよび台湾への国際養子縁組の事案に対処するための拘束力のある文書として、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を採択するよう勧告するものである。 F.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 52.審査委員会は、子どもに対する暴力に対処する為に政府がとったさまざまな行動(とくに体罰およびいじめに関するもの)、および、ハイリスクの子どもおよび若者ならびに不利な立場に置かれた6歳未満の子どもにサービスを提供するプログラムを歓迎する。 53.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの活動その他の活動を継続しかつ強化するとともに、CRC委員会が一般的意見13号(2011年)で示した指針および勧告を考慮しながら、あらゆる場面(家庭を含む)におけるあらゆる形態の暴力を防止しかつこれらの暴力から子どもを保護するための、複数年次にわたる包括的な国家的行動計画を策定しかつ実施すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を2030年までに終わらせること(持続可能な開発目標の目標のひとつ(ターゲット16.2))に貢献する国および地方ならびにNGOの活動を含む同行動計画の実施のために、必要な人的資源および財源を提供すること。 54.審査委員会は、「学校でのいじめ防止指針」を歓迎するものの、その実施に関する具体的情報がないこと、ならびに、被害者その他の者による通報およびフォローアップ機構が実効性を欠いていることを懸念する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 監視および通報のための手続が実効的なものとなることを確保するため、子どもたちと協議しながらこれらの手続を見直すこと。 (b) いじめが被害者である子どもおよび学校共同体に与える悪影響についての、教員および生徒双方の理解および意識を増進させること。 (c) 安全な教室づくりのための教員の能力を強化するとともに、被害者および目撃者に対していじめの事案を通報するよう奨励すること。 (d) 被害者および加害者である子どもならびにいじめの影響を受けている可能性があるその他の子どもを対象として、実効的なカウンセリングおよび修復的実践を行なうこと。 55.ネットいじめとの関連で、審査委員会は、政府がプラットフォーム運営者に対し、防止およびネットいじめに関する苦情申立てのための適切なサービスおよび機構を発展させかつ強化することを促すよう勧告する。 56.審査委員会は、学校および施設で体罰が法律で禁止されている旨の情報を歓迎する。しかしながら、家庭における体罰は禁止されておらず、かつ学校における体罰の使用は続いている。 57.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) CRC委員会の一般的意見8号に一致する形で、家庭における体罰を明示的に禁止する規定を採択すること。 (b) 体罰ならびにその他の形態の品位を傷つける取扱いおよび屈辱的な取扱いの悪影響に関する意識啓発および教育キャンペーンを実施するとともに、肯定的行動を促進するための代替的手法に関する情報を提供すること。 (c) 公立・私立の学校および施設で働くすべての者が体罰を使用しないことを確保するため、あらゆる適切な措置をとること。 (d) 子どもに対する暴力が疑われるすべての事案を適切な機関に通報することの重要性について、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を教育すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1項~第3項および第33条) 障害のある子どもの権利(第23条) 58.審査委員会は、政府に対し、障碍者権利条約に関する審査委員会の勧告を実施するよう促す。審査委員会はさらに、政府が、障害のある子どもに関する正確なかつ細分化されたデータの収集を確保するとともに、以下のことを確保するための適切な措置をとるよう勧告するものである。 (a) これらの子どもが農村部で適切な学校教育にアクセスできること。 (b) これらの子どもが、学校教育の修了後、意味のある就労に移行できること。 (c) これらの子どもが、たとえば共融〔障害の有無等にかかわらずすべての子どもが利用できる〕遊び場の開発を通じ、遊び、余暇およびレクリエーションのための意味のある機会を享受できること。 (d) これらの子どもが、自分自身およびその家族のための適切な支援サービスを受けられること。 59.審査委員会は、入所型施設で暮らしている障害のある子どもの人数が多いことを懸念する。審査委員会は、政府が、コミュニティを基盤とする環境で暮らし、かつインクルーシブな普通学校にアクセスできる障害のある子どもの人数を増やすための5か年戦略を採択したことを歓迎するものである。 健康に対する権利(第24条) 60.審査委員会は、すべての子どもが、その能力にかかわらず、医学的治療を受けるために親の同意を得なければならないことを懸念する。このような立場は、十分な理解力を有する子どもは、親が同意を与えることに消極的な場合を含め、医学的治療に同意する能力を有していると説明する子どもの権利委員会の見解と一致しない。 61.審査委員会は、子どもの医学的治療のために必要とされる同意〔に関する規定〕がCRC、とくに第5条および第12条と一致することを確保するため、政府が関連の法律を改正するよう勧告する。審査委員会はまた、CRC委員会が一般的意見12号(パラ102)で行なっている、各国は同意権が子どもに移行する特定の年齢を定めた法律を採択するべきである旨の勧告の実施を政府が検討することも勧告するものである。 62.審査委員会は、子どもに対して専門的な精神保健サービスを提供するために政府が行なっている努力(地域メンタルヘルスクリニック、精神保健を専門とする専門家および子ども向けホットラインの提供を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、精神保健上の問題を経験する子どもの発生(とくに高い自殺率)および提供されるサービスの有効性について懸念を覚えるものである。 63.審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 精神保健上の課題を有する子どもおよび若者の自殺に関するデータを引き続き収集すること。このようなデータは、可能かつ適切である場合には、課題の性質、年齢、ジェンダー、農村部/都市部の別、先住民族としての地位および性的指向ごとに細分化されるべきである。 (b) 子どもに提供されるサービスの有効性について、ヘルプラインにアクセスした子どもの付託率および付託の結果に関するデータも含めて監視および評価を行なうこと。 (c) 精神保健サービス(子どもにやさしい予防サービスを含む)が、健康に対する権利についてのCRC委員会の一般的意見15号に一致する形で利用可能性、アクセス可能性、需要可能性および適切な質を備えていることを確保すること。 (d) 子どものための精神保健サービスの開発、実施および監視に役立てるため、CRC第12条に一致する形で子どもたちの意見を積極的に求めること。 64.審査委員会は、子どもの肥満の問題に対処するために政府が行なってきた一連の取り組みを歓迎する。しかしながら審査委員会は、以下のことを勧告するものである。 (a) 政府がこのような取り組みの有効性の評価および監視を行なうこと。 (b) 学校で子どもの体重測定を実施する際、プライバシーに対する子どもの権利が保護され、かつ子どもに屈辱を与えないようなやり方で測定が行なわれることを確保するために慎重な配慮をすること。 65.審査委員会は、政府が、2011年以降、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育を子どもに提供するためのプログラムを漸進的に導入してきたことに留意する。審査委員会はまた、このプログラムの有効性および適切性についてさまざまなグループが相当の懸念を有していること、性感染症の発生率が高いこと、および、いまなお10代の妊娠が相当数発生していることにも留意するものである。 66.審査委員会は、政府が現行のプログラムを見直し、その有効性を向上させかつ適切性を確保するために何らかの修正が必要か否かを評価するよう勧告する。このような見直しにおいては、子どもおよび青少年、親のグループ、保健専門家および教育者を含むすべての関係者との協議が行なわれるべきである。 67.審査委員会はさらに、当該見直しにおいて、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する現行プログラムが以下の要件を満たしているか否かの評価を行なうよう勧告する。 (a) 社会権規約委員会がセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する一般的意見22号で行なった思春期の子どもに関する勧告、ならびに、CRC委員会が思春期の健康と発達(一般的意見4号)および思春期における子どもの権利の実施(一般的意見20号)についての一般的意見で行なった勧告に一致していること。 (b) 年齢相応であり、かつエビデンスに基づいていること。 (c) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する、LGBTIを自認している子どもおよび障害のある子どもを含むすべての子どもの権利の保護が目的とされていること。 (d) CRC第12条に一致する形で、プログラムの立案、実施および評価において子どもたちの意見が取り入れられていること。 (e) 尊重しあう関係についての情報、および、性的活動を行なうようになる前に子どものエンパワーメントを図るための措置が含まれていること。 (f) 妊娠した女子に対し、適切な情報および支援サービスを提供していること。 (g) 親を対象として、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに対する子どもの権利を理解するための教育を実施していること。 68.審査委員会は、環境の質およびこれが自己の健康に及ぼす危害の可能性に関する懸念を子どもたちから聴取しており、政府が、環境が子どもたちの健康に及ぼす影響を監視するための措置をとるよう勧告する。審査委員会はまた、政府が、子どもの権利と環境に関する2016年の一般的討議を受けてCRC委員会が行なった勧告を考慮し、子どもたちが環境に関してまたは子どもの健康に関連するその他の事柄に関して政府に懸念を表明できるようにする制度または手続を発展させ、かつこれらの懸念に対して十分な立法上その他の行動で対応することも勧告するものである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 教育に対する権利(第28~29条) 格差の縮小 69.審査委員会は、6~15歳の義務教育において学費が無償とされていることを歓迎する。にもかかわらず、審査委員会は、私立の職業学校および高級中学校に通う生徒が、学費その他の学習費用および生活費を払うために融資の申請を行なわなければならない状況が拡大していることを懸念するものである。 70.審査委員会は、教育部(「MOE」)が、私立の職業学校および高級中学校の学費に関する全般的検討を行なうとともに、この点に関して、経済的に不利な立場に置かれた生徒を私立学校による過度な請求から保護するための審査制度を設けるよう、勧告する。審査委員会はさらに、政府が、債務の返済について困難を経験している生徒を援助するための適切なプログラムを導入するよう勧告するものである。 就学前教育施設 71.審査委員会は、公立および非営利の幼児園が不足しており、かつ、私立幼児園に子どもを入園させる親の金銭的負担が重いことを懸念する。委員会はまた、幼児教育保育法第7条を遵守できるようにするためには地方当局が追加の人的資源および財源を用意しなければならないことも懸念するものである。 72.審査委員会は、地方政府が公立幼児園を増設し、より多くの親が子どものための質の高い教育および保育にアクセスできるようにすることを援助するための「公的教育・保育サービス最大化事業(2017~2020年)」を歓迎する。 73.審査委員会は、政府に対し、公立幼児園の増設および訓練を受けた幼児園教員数の増加との関連で同事業の実施の有効性を評価し、かつ、離職率の高さに対処するためこれらの教員の賃金を改定するよう、奨励する。審査委員会は、政府が、公立幼児園の学費を無償化し、かつ私立幼児園の学費を負担可能なものとすることを目指すよう勧告するものである。 遠隔地および農村部における教育のための予算配分 74.審査委員会は、政府が遠隔地および農村部の子どもの教育に追加的資源を配分する決意を示していることを認知する。しかしながら審査委員会は、このような資源の配分が、これらの地域の子どもに対して質の高い教育を確保するうえでは必ずしも十分ではない可能性があることを依然として懸念するものである。審査委員会は、政府が、農村教育および遠隔地教育のために引き続き追加的資源を配分するとともに、子どもがCRC第28条および第29条に一致する形でどの程度教育に対する権利を享受できているか監視するための措置をとるよう、勧告する。 子どもの権利と公民教育 75.審査委員会は、人権およびとくに子どもの権利を、あらゆる形態のおよびあらゆる教育段階におけるカリキュラム(国民教育課程綱要を含む)の必修項目とすることを勧告する。審査委員会はさらに、年齢および能力を問わずすべての子どもを対象としたアクセスしやすい資料を制作すること、および、子どもの権利に関する知識および訓練を教員の必須要件とすることを勧告するものである。審査委員会はさらに、MOEが、公民教育および市民性教育における子どものエンパワーメント関連の活動を支援するよう勧告する。 校務に関する生徒代表の参加 76.審査委員会は、高級中等教育法が生徒の自治団体の創設について規定していることを認知するものの、同法が効果的に実施されていないことを懸念する。審査委員会は、MOEが、私立学校を含むあらゆる学校における、選挙または運営に学校職員が介入することのない生徒の自治団体の設立をモニタリングするよう勧告するものである。審査委員会はさらに、校務および生徒の教育上の関心について扱うすべての学校委員会に、自治団体の代表が実質的に参加するようにすることを勧告する。 カリキュラム指針改革 77.審査委員会は、試験がきわめて重視され、かつカリキュラムが柔軟性を欠いているために生徒が自分自身の教育上の関心を追求できる範囲が限定された状況下で生じている、高い学業成績を収めることへの圧力の結果、生徒に引き起こされているストレスについて懸念を覚える。審査委員会は、カリキュラムをより柔軟で、生徒の関心により合致した、かつ生徒にとってストレスがより少ないものとする目的でMOEが現在進めているカリキュラムの見直しを歓迎するものである。審査委員会は、MOEに対し、生徒の効果的参加を得ながらこの見直しのプロセスを継続するよう奨励する。 中退した生徒 78.審査委員会は、学校を中退した生徒を対象とするすべてのサービスが統合されているわけではないことを懸念する。審査委員会は、政府がこれらのサービスを統合し、かつ、このような生徒を支援するために十分な資源が配分されることを確保するよう勧告するものである。 懲戒措置 79.審査委員会は、学校が生徒の懲戒に関する独自の指針を作成できることに留意するとともに、このために子どもが連座罰のような恣意的かつ不法な懲戒措置の対象とされる可能性があることを懸念する。審査委員会は、政府が、子どもの権利と両立する懲戒措置の概要を示した通知を学校に対して発し、かつこれを公開するよう勧告するものである。 80.審査委員会は、学校で軍訓教官が雇用されていることを懸念し、このような慣行を可能なかぎり速やかに漸次廃止するよう勧告する。 体罰 81.審査委員会は、学校における体罰の禁止が十分な監視および執行の対象とされていないことを懸念する。審査委員会は、禁止規定の効果的実施を確保するためにMOEがあらゆる必要な措置をとり、かつこの措置を用いた教員に対して適切な制裁を科すことを勧告するものである。 不服申立て機構 82.審査委員会は、生徒の苦情申立てに関して現在設けられている不服申立て手続の実効性について懸念を覚える。審査委員会は、政府が、あらゆる学校(私立学校、輔育院、矯正学校および中途学校を含む)が行なった不法な管理上の決定または措置に関する個別の不服申立てに対応するための、秘密が守られかつ安全な通報手続を用意する独立の機構を設置するよう、勧告するものである。生徒は、そのような審理において意見を聴かれ、かつNGOによるものを含む独立の代理人をつけることを認められるべきである。 休息、遊びおよび余暇に対する子どもの権利(第31条) 83.審査委員会は、子どもが学校またはその他の学校外教育機関で非常に長い時間を過ごしていることを深く懸念する。審査委員会は、政府が、学業成績に関連して子どもに加えられる圧力を軽減することにつながるのではないかという思いから、国の試験制度改革を進めてきたことに留意するものである。 84.審査委員会は、学校が子どもに対して十分かつ定期的な自由時間を提供することを確保するため、学校の1日のあり方を見直しかつ規制するよう勧告する。さらに審査委員会は、政府が、十分な睡眠をとらないことならびに遊びおよび余暇にアクセスできないことが子どもの学習および発達ならびに身体的および精神的健康に及ぼす有害な影響について、親および教員を教育するための措置をとるよう勧告するものである。 85.審査委員会は、安全な遊び場の提供を通じ、都市環境において子どもが遊びの空間にいっそうアクセスできるようにするために政府が行なっている努力を称賛する。審査委員会は、政府が、障害のある子どもを含むすべての子どもが遊びにアクセスできること、および、子どもが自然環境のなかでこの権利を享受できることを確保するべきであることを強調するものである。休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)を参照しつつ、審査委員会は、政府および地方当局が、十分かつ持続可能な資源をともなった遊び・余暇政策を採択しかつ実施する等の手段により、休息および余暇に対する子どもの権利ならびに子どもがその年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に参加する権利を保障するための措置を実施するよう、勧告する。審査委員会は、政府が、コミュニティ、地方および国の各段階で、遊び政策ならびに遊びおよび余暇に関連する活動の企画、立案および監視において子どもたちの全面的関与を得るよう勧告するものである。 86.審査委員会は、先住民族の文化および言語を含む多様な文化についてすべての子どもが学べるようにするために行なわれている努力に留意する。審査委員会は、政府に対し、子ども、その家族およびマイノリティ・コミュニティと協議しながらこれらの活動を見直しかつ拡大するよう奨励するものである。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第34条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 先住民族の子ども(第30条) 87.審査委員会は、先住民族の子どもの権利を保護するために政府がとっている多数の措置および国家原住民族委員会が果たしている重要な役割を歓迎する。 88.審査委員会は、政府が、先住民族コミュニティ(当該コミュニティ出身の子どもを含む)と連携しながら、先住民族の子どもの権利を保護するための特別措置を引き続き実施し、監視しかつその有効性の評価を行なうよう勧告する。審査委員会はさらに、政府が以下の点に特別な注意を払うよう勧告するものである。 (a) 先住民族の子どもの乳児死亡率を削減するための措置。 (b) 先住民族の子どもが、適切な資格を有する教員により、自己の先住民族言語で教授を受けることができること。 (c) 先住民族の子どもが教育のため農村部から都市部に移転した際に提供される援助。 (d) 部族協同組合による就学前教育施設の設置を支援するための措置(十分な資源の配分、ならびに、そのような就学前教育施設の設置、職員配置および運営への先住民族コミュニティの関与を含む)。 (e) 先住民族コミュニティにおける慣習的な代替的養護体制の支援。 (f) 親を対象とする文化的に適切な教育および支援サービスの提供。 児童労働(第32条) 89.審査委員会は、低年齢の子どもを含む子どもが、しばしば長時間労働をともなう条件および(または)子どもの健康および発達にとって有害となる可能性がある条件のもとで働いているという報告に、懸念とともに留意する。審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 仕事の性質、年齢、ジェンダーおよび子どもの背景(先住民族出身、農村出身または都市部出身)別に細分化された、働いている子どもの人数についてのデータを収集すること。 (b) このような子どもの権利を保護するために適切な措置をとること。 薬物濫用(第33条) 90.審査委員会は、薬物濫用の防止のためにとられているさまざまな措置(地方における濫用防止センターの設置および「ドラッグにノーと言おう」プロジェクト、ならびに、薬物依存の子どもの治療のための医療施設の指定など)を歓迎する。しかしながら審査委員会は、これらの措置の有効性に関する情報がないことを懸念するものである。 91.審査委員会は、必要に応じてこれらの措置を調整しまたは強化する目的で、政府が、薬物使用者である子どもおよび青少年の関与を得ながら、これらの措置の実施およびその有効性に関する評価を定期的に実施するよう勧告する。加えて、審査委員会は、政府が薬物の使用を犯罪ではなく健康問題として扱うよう勧告するものである。 性的搾取および性的虐待(第34条) 92.審査委員会は、子どもおよび若者の性的搾取防止法が2015年に採択されたこと(2017年1月1日施行)、ならびに、子どもが巻きこまれる性売買の防止および性犯罪の捜査の強化を目的とした関連の諸計画が採択されたことを歓迎する。しかしながら審査委員会は、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもの緊急措置が長期間にわたって延長されうる一方、延長の根拠が明確でないことを懸念するものである。さらに審査委員会は、性的虐待の被害を受けた子どもが、司法(刑事)手続において、加害者とされる者にとって不利な証人となる場合に、人権に関する国際的な基準および勧告を全面的に遵守した保護が必ずしも提供されていないことを懸念する。 93.審査委員会は、政府が、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもの緊急措置の延長の根拠を法律で具体的に定めるとともに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第8条、および、子どもの犯罪被害者および証人に関わる事項における正義についての国連経済社会理事会決議2005/20の勧告に掲げられた規則を遵守する目的で、司法手続における証人としての子どもの被害者の保護に関する現行規定を見直し、かつ必要な場合には改正するよう、勧告する。 拘禁環境(第37条) 94.審査委員会は、子どもが自由を奪われている間に不当な取扱いを受けているという報告があることを懸念し、政府が以下のことを確保するための効果的な措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第37条および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則が全面的に遵守されること。 (b) 自由を奪われた子どもとともに働くすべての職員に対し、このような子どもの権利に関する情報が提供されること。 (c) 自由を奪われた子どもの不当な取扱いに関するすべての訴えが全面的に調査されること。 少年司法(第40条) 95.審査委員会は、少年非行の防止のために政府がとっている措置について、また少年事件処理法に基づいて優れた構造の少年司法制度が設置されていることについて、評価の意とともに留意する。しかしながら審査委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 少年事件処理法でさまざまな年齢制限および分類が用いられているため、7~12歳の子どもが少年(刑事)司法統計で扱われることにつながっていること、および、刑事責任に関する最低年齢(MACR)が14歳とされていることから12歳および13歳の子どもの扱いが明確ではないこと。 (b) 子どもの問題行動を地位犯罪として刑法に含めることにより、このような行動が犯罪化されていること。 (c) ほとんどの場合に法的援助が有償であるため、事実上、少年司法手続全体を通じ、刑法に抵触した子どもおよび少年に対して法的その他の援助が提供されていないこと。 96.少年司法における子どもの権利についてのCRC委員会の一般的意見10号に照らし、審査委員会は、政府が少年司法制度をCRCおよび他の関連の基準に全面的に一致させることを勧告する。とくに審査委員会は、政府が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われまたは認定された14歳未満の子どもには、少年事件処理法ではなく子どもおよび若者の福祉および権利保障法に基づいて対応するとともに、その目的で必要な立法上その他の措置をとること。 (b) 地位犯罪を廃止するとともに、問題行動を有する子どもに対し、子どもおよび若者の福祉および権利保障法の文脈において必要な支援および保護を提供すること。 (c) 刑法に抵触した子どもに対し、法的手続の最初からおよび全体を通じ、資格のある者による独立の法的援助が提供されることを確保すること。 (d) 審判前拘禁が厳格に必要とされる期間を少しでも超えて続けられないことを確保する目的で、裁判所/裁判官による審判前拘禁の再審査が定期的に(2週間おきに行なうことが望ましい)行なわれなければならない旨、法律により定めること。 (e) 自由の剥奪をともなう刑が最後の手段であることを確保すること。 97.審査委員会は、少年司法制度内に修復的司法のための機構が設けられておらず、かつダイバージョンのための措置も限られていることに留意する。審査委員会は、政府が、修復的司法のための措置を導入する可能性を模索し、かつ、裁判手続の開始前にとられる真正なダイバージョンのための措置を促進するよう、勧告するものである。 J.普及 98.審査委員会は、第1回報告書、事前質問事項に対する文書回答およびこの総括所見を、同国の言語で広く利用可能とするよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2019年10月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/109.html
総括所見:フランス(第2回・2004年) 第1回(1994年)/第3回・第4回(2009年)/第5回(2016年)OPAC(2007年)/OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.240(2004年6月30日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年6月2日に開かれた第967回および第968回会合(CRC/C/SR.967 and 968参照)においてフランスの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.26)を検討し、2004年6月4日に開かれた第971回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがって作成された締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎するものの、当該報告書に海外県および海外領土についての情報が記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、若干遅れて提出されたものの、締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、事前質問事項(CRC/C/Q/FRA/2)に対する文書回答を歓迎するものである。委員会はさらに、ハイレベルな代表団の参加に評価の意とともに留意するとともに、率直な対話、および、提起された多くの質問に対して代表団のメンバーが提供した回答を歓迎する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書が締約国によって批准されたこと、ならびに、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が批准されたことを歓迎する。委員会は、以下の者のような、条約の実施に関連した積極的進展に、評価の意とともに留意するものである。 (a) 締約国が近年行なった、多数の法令の採択(とくに以下のもの)。性犯罪の防止および抑止ならびに未成年者の保護に関する1998年6月17日の法律の規定。 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年5月29日のハーグ条約(1998年3月7日の法律第98-147号)の発効(1998年10月1日)を受けてとられた措置、および、関連の、国際養子縁組に関する2001年2月6日の法律。 離婚の際の補足手当に関する2000年6月30日の法律。 相続権に関わる婚外子差別を撤廃する、遺族配偶者および遺児の権利に関する2001年12月3日の法律。 親の権威に関する2002年3月4日の法律。 姓に関する2002年3月4日の法律。 子ども時代の保護に関する2004年1月2日の法律。 (b) 委員会の勧告のフォローアップとしてとられた措置、とくに、子どもオンブズマンの設置(2000年3月6日の法律)、フランスにおける子どもの権利調査委員会および子どもの権利に関する議会代表団の設置(2003年2月13日の法律)ならびに危機にさらされる子ども時代に関する国家監視機関(2004年1月2日の法律)の設置。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.15)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.20)の一部、とくにパラ11、17(第30条への留保)、13、19、20(地域間格差)、14(自己の出自を知る権利)、22(最低婚姻年齢)、23(子どもによる意見表明およびその正当な重視)、24(児童虐待の防止)、26(少年司法)および27(義務教育を修了していない子ども)に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。委員会は、これらの懸念および勧告がこの文書でもあらためて繰り返されていることに留意するものである。 5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、権利の主体としての子ども観をすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに編入することも促すとともに、締約国に対し、留保および両方の宣言を撤回するようあらためて慫慂するものである。 立法 6.委員会は、立法と条約の整合性を確保する目的で国家人権諮問委員会が立法に関して果たしている助言の役割、および、非政府組織がこの点に関して果たしている積極的役割に留意する。委員会はまた、子どもの権利に関する法改正のプロセスも歓迎するものである。 7.委員会は、締約国に対し、研修の必要性、監視機構および十分な資源の提供を考慮に入れながら、条約に関連するすべての法律の実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、生命倫理の分野で法律を採択するための努力を続行することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、条約の直接適用可能性に関する情報を次回の報告書で提供するよう要請する。 実施、調整、評価および国家的計画 8.委員会は、重層的な主体が条約の実施に関与していることに留意するものの、締約国も留意しているとおり、これらの主体間で調整が行なわれていないことを懸念する。とくに委員会は、県の責任が増大していることにより、調整の不十分さとあいまって、条約の実施における重複および相当の格差が生じかねないことを懸念するものである。特定の問題に責任を負う権限ある期間を特定することも困難になる可能性がある。条約第2条に照らし、委員会はまた、締約国報告書が海外県および海外領土について簡単にしか触れていないことも懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関して格差または差別が生じるいかなる可能性も減少させかつ解消する目的で、国レベルと県レベル(海外領土および海外県も含む)との間で条約の実施を全般的に調整するための機関を設置するよう、促す。締約国は、当該機関に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な人的資源および財源ならびに十分かつ定義の明確な権限が与えられることを確保するべきである。 資源配分 10.委員会は、とくに社会的援助の配分の調和を図るためにとられた措置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、前回の結論(CRC/C/15/Add.20、パラ13)でも留意したように、とくに移住者の家族のような貧困家族の居住との関連で、社会でもっとも脆弱な立場に置かれた集団の状況ならびにその経済的および社会的権利に対応するためにとられた措置が不十分であることを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を「利用可能な資源を最大限に用いて」確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。 データ収集 12.委員会は、自国の管轄下にある地域全体を通じ、条約が対象とするすべての分野に関する細分化されたデータの収集について締約国が消極的であることを遺憾に思う。このようなデータは、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関わる政策の影響評価にとってきわめて重要である。 13.委員会は、締約国に対し、データ収集のための中央登録機関を設置するとともに、条約が対象とするあらゆる分野を編入した包括的なデータ収集システムを導入するよう促す。当該システムは、とくに脆弱な立場に置かれた子どもを具体的に重視しながら、18歳未満のすべての子どもを網羅したものであるべきである。このような情報には海外県および海外領土も含めることが求められる。 研修/条約の普及 14.委員会は、条約の普及、および条約を周知するためにさまざまな省庁がとった措置に関して報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が条約の精神を十分に知りかつ理解しているわけではない可能性があるという見解に立つものである。 15.委員会は、締約国に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(とくに議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者および必要に応じて他の者)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を施すための努力を引き続き行なうよう、奨励する。 2.子どもの定義 16.委員会は、条約第40条3項(a)の明示的規定にも関わらず、締約国が刑事責任に関する最低年齢を定めていないことを懸念する。委員会はまた、国内法が、女子(15歳)と男子(18歳)で異なる最低婚姻年齢を定めていることに関する懸念もあらためて表明する。このような法律は、性別に基づく差別であり、かつ若年女子の生存および発達に影響を及ぼす可能性があることに加え、強制婚との闘いをいっそう困難にするものである。 17.委員会は、締約国が、国際的に受け入れられる水準であり、かつその年齢に達しない子どもは刑法に違反する能力を有しないと推定される、刑事責任に関する最低年齢を定めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が最低婚姻年齢を見直すことにより、強制婚との闘いに資する条件を整備し、かつ子どもの発達を可能なかぎり最大限に確保すべく、女子についての年齢を男子についての年齢まで引き上げることを検討するよう勧告するものである。 3.一般原則 差別の禁止 18.委員会は、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための独立機関を2004年に設置する計画を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに経済的および社会的権利の分野で差別が根強く残っており、とりわけ海外県および海外領土に居住している子ども、外国人の子どもおよびいわゆる「サン・パピエ」〔資格外滞在者〕ならびに婚外子との関連で社会的統合が疎外されていること、および、実際には一部地域で出身、皮膚の色、宗教、名前その他の地位に基づく差別がいまなお続いていることを、懸念するものである。 19.委員会は、前回の懸念および勧告(CRC/C/15/Add.20、地域格差に関するパラ19)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、現行法を条約と一致させかつその効果的実施を確保する(出身、皮膚の色、宗教、名前その他の地位に基づく差別が実際には根強く残っている状況を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとることも含む)目的で、現行法を見直すよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、法律から差別的用語を削除するための立法手続を迅速に進めることを勧告するものである。 20.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 21.委員会は、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利を強化するため、締約国が行なった立法上の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、法律が一貫していないこと、および、実際上、立法の解釈および子どもの「分別能力」の有無の判断によって子どもがこの権利を否定される可能性が残り、または子ども自身の要請が条件とされるおそれがあるために差別が生じる可能性があることを、依然として懸念するものである。加えて、委員会は、実務上、ほとんどの裁判官は子どもの聴聞について積極的ではなく、かつ、これまで性的虐待の被害を受けた子どもが裁判によって救済されてこなかった旨の、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者の結論(E/CN.4/2004/9/Add.1、パラ85および89)について懸念を覚える。 22.委員会は、締約国が、子どもの意見の尊重に関わる矛盾点を解消する目的で法律を見直すよう勧告する。さらに、条約第12条にしたがい、自己に影響を与えるすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子どもの参加を、単なる可能性ではなく子どもにも知らされた権利として、家庭、学校、施設ならびに司法上および行政上の手続において引き続き促進しかつその便宜を図ることが、奨励されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもが自由に意見を表明でき、かつその後はこれらの意見が正当に重視されることを奨励するような雰囲気をつくり出す目的で、親、教員および校長、政府の行政職員、司法機関、子どもたち自身および社会一般に教育的情報を提供するよう、奨励する。 4.市民的権利および自由 出生登録 23.委員会は、2002年1月22日に採択された、自己の出自を知る権利についての法律に留意する。しかしながら委員会は、条約第7条に掲げられた権利が締約国によって全面的に尊重されていない可能性があること、および、母が希望する場合にはその身元を秘匿する権利が認められていることは条約の規定と一致しないことを、依然として懸念するものである。さらに、委員会は、仏領ギアナにおける出生登録水準が低いことを懸念する。 24.委員会は、差別の禁止の原則(第2条)および子どもの最善の利益の原則(第3条)に照らして第7条の規定、とくに可能なかぎり自己の親を知る子どもの権利が全面的に執行されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、仏領ギアナにおける出生登録の状況に対応するための努力を継続しかつ強化することも奨励するものである。 宗教の自由 25.委員会は、憲法で宗教の自由が定められていること、および、教会と国の分離に関する1905年の法律が信仰に基づく差別を禁じていることに留意する。委員会は同様に、締約国が公立学校の非宗教性を重視していることを認識するものである。しかしながら、条約第14条および第29条に照らし、委員会は、宗教に基づくものを含む差別が増加しているという訴えについて懸念を覚える。委員会はまた、公立学校における宗教的標章および服装に関する新法(2004年3月15日の法律第2004-228号)が、子どもの最善の利益の原則および教育にアクセスする子どもの権利をないがしろにすることによって逆効果となり、所期の成果を達成できない可能性があることも懸念するものである。委員会は、同法の規定が、同法の施行から1年後に評価の対象とされる予定であることを歓迎する。 26.委員会は、同法の効果を評価する際、締約国が、条約に掲げられた子どもの権利の享受状況を評価プロセスの重要な基準として用いるとともに、個人の権利が侵害されないことおよび子どもがこのような法律の結果として学校制度その他の場面から排除されまたは周縁化されないことを保障しつつ、公立学校の非宗教的性質を確保する代替的手段(調停を含む)も検討するよう、勧告する。学校の服装規則については、子どもの参加を奨励しながら公立学校自身が対応するほうが、望ましい結果につながる可能性がある。委員会はさらに、締約国が、新法の結果学校を退学させられた女子の状況を引き続き注意深く監視し、かつこれらの女子が教育にアクセスする権利を享受できることを確保するよう、勧告するものである。 情報へのアクセス 27.委員会は、CD-ROM、ビデオカセットおよびゲームならびにポルノ的出版物の販売またはこれらの媒体へのアクセス可能性に関する適切な法律または指針が存在しないことにより、子どもがその福祉に有害となるおそれのある情報および資料にアクセスすることが容易になっていることを懸念する。 28.委員会は、とくに印刷媒体、電子媒体および視聴覚媒体における暴力およびポルノグラフィーの有害な影響から子どもを保護するため、締約国が法的措置を含む必要な措置をとるよう、勧告する。 拷問その他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いおよび処罰(第37条(a)) 29.委員会は、第37条(a)に関する情報、および、自由を奪われた子どもならびに官吏による不当な取扱いの行為および不当な取扱いに相当する可能性がある拘禁環境についての前回の勧告(CRC/C/15/Add.20、パラ26)に関する情報が、締約国報告書に記載されていないことを懸念する。 30.委員会は、締約国に対し、子どもの拘禁環境および取扱い、ならびに、あらゆる形態の不当な取扱いを根絶するという決定について行なわれたいずれかのフォローアップについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載するよう促す。委員会は、自由の剥奪は常に、真に最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で構想されるべきであり、かつ心理的回復および社会的再統合にも特段の注意がはらわれるべきであることを想起するものである。 5.家庭環境および代替的養護 家族再統合 31.委員会は、認定を受けた難民を対象とする家族再統合手続の期間が長く、しばしば1年を超えることもあることを懸念する。 32.委員会は、締約国が、家族再統合手続への対応が積極的に、人道的にかつ迅速に行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 養子縁組 33.委員会は、国際養子縁組の過半数が1993年ハーグ条約を批准していない出身国との間で行なわれていることに留意するとともに、認証機関を通じてではなく個人的経路を通じて行なわれる国際養子縁組の割合が高いことを懸念する。 34.委員会は、仏領ポリネシアにおける国内養子縁組についての法律および慣行が条約の規定と全面的に一致していない可能性があることを懸念する。 35.条約第21条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 実務が養子縁組の分野における新法と一致することを確保すること。 (b) 法律の実施のために必要な国のプログラムおよび補完的規制のための文書が策定されることを確保すること。 (c) 法律の効果的実施および監視のために十分な人的資源その他の資源が利用可能とされることを確保すること。 (d) 国際養子縁組の事案への対応が、条約(とくに第21条)およびフランスが批准している1993年ハーグ条約の原則および規定に全面的にしたがって行なわれることを確保すること。 (e) 人権侵害を生起させるおそれがある慣行を回避し、かつ子どもの権利が擁護されることを確保するため、仏領ポリネシアで国内養子縁組に関する法律および慣行を採択すること。 虐待およびネグレクト 36.委員会は、2000年9月に発表された児童虐待と闘うための行動計画に関して締約国報告書で提供された情報を歓迎する。委員会はまた、医療従事者が懲戒的制裁の対象とされることなく虐待および不当な取扱いの事案を通報することを認めた、子どもの保護に関する2004年1月2日の法律第2004〔-1〕号も心強く思うものである。しかしながら、憂慮すべき状況下で死亡する15歳未満の子どもの1週間ごとの人数に関する情報は、委員会にとって重大な懸念の理由となる。委員会はまた、とくに被害者の証言の録画または録音を認めた1998年6月17日の法律第98-468号が実施されていないことも、とりわけ懸念するものである。 37.委員会は、虐待およびネグレクトのさらなる発生を防止し、かつその被害者に対して十分な治療プログラムを提供することを目的として、締約国が、児童虐待およびネグレクトを防止しおよびこれと闘いならびに問題の規模について住民(子どもとともにおよび子どものために働く専門家を含む)の感受性を強化するための努力を続行するよう、勧告する。さらに、委員会は、締約国に対し、1998年6月17日の法律を全面的に実施し、かつこの点についての研修が行なわれることを確保するよう、促すものである。 体罰 38.委員会は、締約国が、体罰は全面的に受け入れ不可能であり容認できないと考えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場における体罰が明示的に禁じられていないことを依然として懸念するものである。 39.委員会は、締約国が、家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場における体罰を法律で明示的に禁止するよう、勧告する。委員会はさらに、条約第28条2項に照らし、とくに家庭、学校および養育施設において、積極的かつ非暴力な形態のしつけおよび規律に関する意識を高め、かつこのようなしつけおよび規律を促進するよう勧告するものである。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 40.委員会は、「プラン・アンディスコール」(Plan Handiscol)のような、障害のある子どもを普通学校に統合するためのプログラム、およびこの点に関して見られた進展を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、これらのプログラムが依然として不十分であること、および、これらの努力の対象とされず、主な負担を家族のみが負いながら適切なケアを受けないままでいる子どもが多すぎることを、懸念するものである。さらに、委員会は、障害を発見するための努力が十分ではない可能性があることを懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、現在の努力を積極的に続行し、かつ引き続き以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/86)および障害のある子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および慣行を見直すこと。 (b) 子どもの障害を発見するための努力および生徒の全般的ニーズがよりよく評価されることを確保するための努力を教育制度内で行なうこと。 (c) 障害のある子どもが教育に対する権利を可能なかぎり最大限に行使できることを確保し、かつ普通教育制度へのこれらの子どもの統合を促進するための努力を続行すること。 (d) 必要な専門的資源(障害の専門家)および財源をとくに地方レベルで利用可能とし、ならびにコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しおよび拡大するため、いっそうの努力を行なうこと。 (e) 公衆の否定的態度を変革するための意識啓発キャンペーンを強化すること。 健康および保健サービス 42.委員会は、母親、乳児および学齢の子どもの保護について締約国報告書に記載された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、保健ケアおよび保健サービスのこの側面が県の責任とされていることに留意するとともに、これとの関係で、諸地域圏間で不平等が生じる可能性があることを懸念するものである。委員会は、とくに以下の点について懸念を覚える。 (a) 精神医学サービスが存在しないこと。 (b) 資格外移住者による保健ケアへのアクセスが「条件付」とされていること。 (c) 母乳のみの育児を促進しかつ奨励する全国機関が設けられていないこと。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 十分かつ持続可能な資源(人的資源および財源)が供給されることを確保するための努力を強化すること。これには、十分な人数の保健ケア専門家の養成、保健ケアワーカーに対する十分な給与の提供、および、とくにもっとも不利な立場に置かれた地域における保健ケア・インフラへの投資のための資源配分も含む。 (b) 母乳育児を促進するための全国的機構(評価および調整を含む)を設置すること。 思春期の健康 44.委員会は、思春期の子どもに焦点を当てて2004年6月に開催される予定の家族に関する会議、ならびに、とくに16歳未満の子どものタバコの使用を減らすための行動など、締約国がとっている立法上の措置その他の行動を歓迎する。委員会は、自殺率が高いこと(この年齢層の死因の第2位に位置している)、10代の妊娠数が相対的に多いこと、精神保健サービスが不十分であること、および、提供されているサービスが青少年のニーズに適合していない可能性があり、そのためプライマリーヘルス・サービスにアクセスする青少年の意欲の低減につながっていることについての締約国の懸念に留意するものである。 45.委員会は、締約国が、思春期の健康政策を促進し、かつ学校における健康教育プログラムを強化するための努力を増強するよう勧告する。委員会はさらに、健康教育訓練プログラムの有効性をとくにリプロダクティブヘルスとの関連で評価し、かつ、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意を得ずにアクセスすることのできる、若者に配慮した、秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるための措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)を勧告するものである。委員会はさらに、思春期の子どもを対象とする精神保健プログラムおよび精神保健サービス(専門の精神医学サービスを含む)を発展させるよう、勧告する。 生活水準 46.委員会は、子どものために必要な生活条件を確保する第一次的な責任は親にあることに留意しながらも、貧困水準が悪化していることについての経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の懸念(E/C.12/1/Add.72)を共有する。委員会は、このような状況が子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達に悪影響を及ぼしていることを懸念するものである。委員会はまた、一部の集団の子どもについて家族手当へのアクセスに関する制限が設けられていることも懸念する。 47.委員会は、締約国に対し、条約第27条にしたがってすべての子どもの生活水準を向上させかつ物的援助および支援プログラムを提供するための努力を強化することにより、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための措置をとるよう、奨励する。家族に対する配分に際しては、子どもがフランスの領域に入国した態様が条件とされるべきではない。 7.教育、余暇および文化的活動 48.委員会は、締約国が16歳まで無償の義務的学校教育を提供するために努力していること、および、学校が統合および平等の場所と見なされていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、一部の学校に対して「要注意」校のレッテルが貼られていること、および、学校における意思決定プロセスへの意味のある子ども参加が行なわれていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、障害のある数千人の子どもが教育に対する権利を奪われていることを懸念する。 49.委員会は、締約国に対し、条約第28条および第29条に一致する形ですべての子どもが教育に対する権利を享受し、かつ、条約第3条に一致する形で障害のある子どもが可能なかぎり普通教育に統合されることを確保するための努力を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れながら続行するよう促す。委員会は、締約国に対し、義務教育に対する公共支出の水準を高めるよう奨励するものである。さらに、締約国は、学校生活に関わる意思決定プロセスへの子どもの参加に寄与し、かつこれを促進するよう奨励される。 8.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 50.委員会は、保護者のいない未成年者が収容区域に収容されている間、法定代理人に代わる「特別管理人」による援助を提供することによってこれらの未成年者の状況に対応しようとしている、締約国の努力に留意する。しかしながら、委員会はまた、このような状況にある未成年者の人数が着実に増加していること、および、新法の実施が依然として課題となっていることにも留意するものである。保護者のいない外国人未成年者は、引き続き自由を奪われ、かつ成人ともに拘禁されている。委員会はまた、空港に到着した保護者のいない子どもが、司法が介入せず、かつその家族の状況についての評価も行なわれないまま、出身国に創刊される場合があることも懸念する。委員会はさらに、これらの子どもによる、その権利を保護するための基礎的サービスへのアクセスを調整しかつ促進するための明確な指示が存在しないことを懸念するものである。これに加えて、年齢決定手続には誤認の余地があり、未成年者に対して本来受ける資格のある保護が与えられないことにつながるおそれが生じている。 51.委員会は、締約国が、この分野における努力を続行し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ニーズに応じた対応ができるよう、情報および統計の収集に関して調整のとれたアプローチを確保すること。 (b) 基礎的サービス、とくに教育、保健および法的援助を保障することを目的とした措置の方向性を定め、かつこれらの措置を調整する規範を確立すること。 (c) 現在用いられている方法よりも正確であることが証明されている最近の年齢決定法の導入を検討すること。 経済的搾取 52.委員会は、子どもを経済的搾取から保護するための立法上その他の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、不法な強制労働ネットワークが活動を続けており、かつ、外国人の子どもが、十分精力的な対策がとられていないネットワークの犠牲になっていることを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、条約第32条ならびに締約国が批准した就労の最低年齢に関するILO第138号条約および最悪の形態の児童労働に関する第182号条約にしたがって、とくに外国人の子どもを対象として活動を続けている人身取引・搾取ネットワークを解体し、かつ、この分野で活動している非政府組織との協力およびこれらの組織に対する支援を強化するための措置を、国内的および国際的レベルで精力的に続行するよう勧告する。 性的搾取、人身取引 54.委員会は、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(ストックホルム、1996年)の後、子どもを虐待および不当な取扱いから保護するための国内行動計画が採択されたことに留意する。翌1997年には、虐待された子どもの保護が国家的優先課題である旨、宣言された。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が2002年11月のフランス訪問後の報告書で指摘したとおり、子どもの人身取引、売買春および関連の問題が生じていることを懸念するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの人身取引および商業的性的搾取の原因、性質および規模を評価するため、包括的研究を実施すること。 (b) 子どもの性的虐待および人身取引の問題に関する専門家および一般公衆の感受性を、メディア・キャンペーンを含む教育を通じて強化し、かつ協力関係を確立する等の手段により、性的搾取および人身取引の発生を減少させかつ防止するための措置をとること。 (c) 子どもの人身取引の送り出し国の公的機関との協力関係を確立し、またはすでに存在する協力関係を強化すること。 (d) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、非政府組織との協力を増進させることも含む調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護(防止、証人保護、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)を増強すること。 (e) すべての子ども(15~18歳の子どもを含む)の個別の苦情を受理しかつこれに効果的に対応するための、秘密が守られ、アクセスしやすくかつ子どもに配慮した機構が確立されることを確保すること。 (f) 子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象とした研修を実施すること。 有害物質濫用 56.委員会は、薬物濫用一般およびとくに低年齢の子どもの薬物濫用が増えていることを懸念する。 57.委員会は、締約国に対し、有害物質濫用の防止の分野における活動を継続しおよび拡大し、ならびに薬物濫用の被害者である子どもに対応するリハビリテーション・プログラムを支援するよう、奨励する。 少年司法 58.委員会は、とくに司法の方向性および計画に関する2002年9月9日の法律第2002-1138号および犯罪の進化に対する司法の適応に関する2004年3月9日の法律第2004-204号との関連で、教育的措置よりも抑圧的措置を優先させる傾向にある、少年司法分野における立法および実務についての懸念をあらためて表明する。法律の規定には、警察による未成年容疑者の留置期間を4日まで延長できること、および、警察が10~13歳の子どもの身柄を最長24時間拘束できることが含まれる。委員会はまた、危険な状況にある子どもを保護する責任が行政機関に転嫁され、そのため司法機関には抑圧的機能しか委ねられない可能性があることについてオンブズマンが表明した懸念にも留意するものである。委員会は、未成年の刑務所収容者数が増加していることおよびそれにともなって環境が悪化していることとの関連で子どもオンブズマンが表明した懸念を共有する。さらに、閉鎖型教育施設を導入したことの影響がまだ明らかになっていない。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議も踏まえながら、少年司法に関する基準、ならびに、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 拘禁(未決勾留を含む)は最後の手段としてのみ、可能なかぎり短い期間で用いるとともに、未成年者が成人から分離されることを確保すること。 (c) 懲罰的措置は、適正手続および法的援助を保障したうえで司法機関のみがとることを確保するため、国内法を見直すこと。 (d) 第39条に照らし、少年司法制度に関わることになった子どもの回復および社会的再統合を促進するための適当な措置(当該再統合を促進するための十分な教育および認証を含む)をとること。 (e) 非行、犯罪および薬物依存のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。 マイノリティ集団に属する子ども 60.委員会は、フランスのすべての子どもは法律の前に平等であり、宗教の自由に対する権利、私事について自己の言語で表現する権利および文化的活動に対する権利を有している旨の、締約国報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、法律の前における平等では、事実上の差別に直面している可能性がある一部のマイノリティ集団(ロマなど)による平等な権利の享受を確保するためには不十分であるおそれがあることを、依然として懸念するものである。委員会は、締約国が、自国の立場の再検討および条約第30条に付した留保の撤回を検討していないことを遺憾に思う。 61.委員会は、締約国に対し、とくに国連条約機関および人種主義と不寛容に反対する欧州委員会(ECRI)の勧告、とりわけ子どもに関わる勧告がフォローアップされることを確保することにより、人種主義、外国人嫌悪、差別および不寛容を防止しかつこれらと闘うための措置を引き続きとるよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団に属する子どもについての立場を再検討し、かつ第30条に付した留保の撤回を検討するよう促すものである。 9.報告書、文書回答、総括所見の普及 62.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる行政レベルおよび一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。全国子どもの権利の日(11月20日)を、とくに県を含む国の代表、非政府組織、子どもオンブズマンその他の参加を奨励することにより、条約の実施(とくにこの総括所見の実施を含む)に弾みをつける目的で活用することが求められる。 10.次回報告書 63.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合的報告書(この報告書は120ページを超えるべきではない。CRC/C/118参照)を2007年9月5日までに提出するよう慫慂するとともに、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。当該報告書には、フランス海外県および海外領土における条約の実施についての情報が記載されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2010年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/205.html
総括所見:イスラエル(OPAC・2010年) 第1回(2002年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/ISR/CO/1(2010年3月4日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月19日に開かれた第1475回会合(CRC/C/SR.1475参照)においてイスラエルの第1回報告書(CRC/C/OPAC/ISR/1)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/ISR/Q/1/Add.1)を歓迎するものである。委員会は、国防総省の代表を含む多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話により、子どもの権利一般に対するイスラエルのより広範なコミットメントの一環である選択議定書の実施に光が当てられたことを評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、〔条約に関する〕締約国の第1回報告書に関して2002年10月4日に採択された従前の総括所見(CRC/C/15/Add.195)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 4.委員会は、国際法における国家責任にしたがい、かつ現在蔓延している状況のもとで、条約および選択議定書の規定は、とくに締約国の公的機関または代理者が行なう行為のうち条約に掲げられた権利の享受に影響を与えるすべての行為との関連で、パレスチナ被占領地域の子どもの利益のために適用されることをあらためて繰り返す。委員会は、「パレスチナ被占領地域における壁の建設の法的帰結」に関する勧告的意見において国際司法裁判所が立証したように、人権法および人道法は同時に適用されることを強調するとともに、選択議定書が人道法に明示的に言及していることを想起するものである。 5.委員会は、選択議定書の全面的実施について締約国が有している困難に留意する。委員会は、恐怖の雰囲気が根強く残っていること、および、一部にテロ攻撃を行なう者もいるパレスチナ人武装集団によって、子どもを含むイスラエル人の民間人が意図的かつ無差別に標的とされかつ殺害されていることを認識するものである。同時に委員会は、パレスチナ領域の違法な占領、民間人地域の爆撃、超司法的殺害、イスラエル国防軍による均衡性を欠いた武力行使、住宅の解体、〔ならびに、〕教育、保健ケア、清潔な水および就労へのアクセスの否定をもたらす壁の建設および移動制限が行なわれており、そのいずれもがパレスチナ人の子どもに深刻な影響を及ぼしていることを認識する。委員会は、パレスチナ人に対する日常的な屈辱的行為によって暴力の連鎖が助長され続けていることを、あらためて指摘するものである。 I.積極的側面 6.委員会は、最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約を締約国が批准したこと(2005年3月15日)に、積極的側面として留意する。 7.委員会は、徴募されまたは武力紛争で使用された庇護希望者である子どもに対し、武力紛争において子ども兵士として使用されたことを理由に難民としての地位が認められている旨の、締約国から提供された情報を歓迎する。 II.実施に関する一般的措置 差別の禁止 8.委員会は、イスラエルの法律において、イスラエルの子ども(18歳〔未満〕)とパレスチナ被占領地域の子ども(軍令第132号によれば16歳〔未満〕)との間で子どもの定義に関する差別が引き続き設けられていることを懸念する。 9.委員会は、締約国が、軍令第132号のうち子どもの定義に関わる規定を廃止するとともに、これとの関係で国内法が条約に一致することを確保するべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 生命、生存および発達に対する権利 10.委員会は、締約国の管轄内で行なわれている、子どもの生命、生存および発達に対する権利の侵害について懸念を覚える。委員会は、イスラエル人の子どもも影響されていることには留意しながらも、パレスチナ人の子どもが不均衡に脆弱な立場に置かれていることを懸念するものである。委員会は、2008年12月および2009年1月の「鋳造鉛」(Cast Lead)作戦の際、均衡性を欠いた暴力、文民の区別の欠如ならびに人道上および医療上の援助の妨害を理由としてガザの子どもがこうむった深刻な人権侵害(これらについては、とくにガザ紛争に関する国連事実調査団によって記録されており、その報告は総会(A/HRC/RES/S-12/1)および人権理事会(A/HRC/RES/S-12/1)の支持を受けている)について、重大な懸念を表明する。さらに委員会は、パレスチナ被占領地域、レバノン南部およびシリア領ゴラン高原被占領地域の一部に敷設された締約国由来の対人地雷によって、子どもの生命が脅かされていることを懸念するものである。 11.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 武力紛争における民間人の保護についての最低基準を定めた人道法(戦時における文民の保護に関する1949年のジュネーブ条約を含む)に掲げられた均衡性および区別の基本的原則を遵守するため、速やかな措置をとること。 (b) パレスチナ人の子どもの生命に対する権利に特別な注意を払うこと。委員会は、締約国に対し、緊急に封鎖を解除し、かつ住宅、学校および病院の再建を支援するよう勧告するものである。 (c) 子どもに直接間接の影響を及ぼす勧告にとくに注意を払いながら、ガザ紛争に関する国連事実調査団の勧告にしたがうこと。 (d) パレスチナ被占領地域、レバノン南部およびシリア領ゴラン高原被占領地域の対人地雷をすべて除去するとともに、必要に応じてそのための国際協力を求めること。 普及および意識啓発 12.委員会は、締約国がとった措置に関する情報には留意しながらも、選択議定書に関する一般公衆の意識が低いままであることを懸念する。 13.委員会は、選択議定書第6条2項に照らし、締約国が、選択議定書の原則および規定が一般公衆に対してならびにイスラエル人およびパレスチナ人双方の子どもの間で広く普及されることを確保するよう、勧告する。 研修 14.委員会は、関連の専門職種、とくに軍隊、警察および少年司法関係者が選択議定書の規定に関する十分な研修を受けていないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、軍隊構成員を対象とした、選択議定書の規定に関する具体的研修をともなう人権研修を強化するよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、子どもとともに活動する関連の専門家集団、とくに検察官、弁護士、裁判官、法執行官、ソーシャルワーカー、医療専門家、教員、メディア専門家ならびに地方および地区官吏を対象とした、選択議定書の規定に関する意識啓発、教育および研修のプログラムを発展させるよう勧告するものである。 締約国は、次回の報告書でこの点に関する情報を提供するよう慫慂される。 データ 16.委員会は、パレスチナ被占領地域の子どもの状況についていかなる情報も提供しないという対応が締約国によって繰り返されたことを遺憾に思う。委員会はさらに、武装集団に所属している子どもおよび治安犯罪について告発されかつ訴追された子どもの人数に関するデータが存在しないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国に対し、条約に基づく次回定期報告書において関連の情報を提供し、かつパレスチナ被占領地域についてのデータもそこに記載するよう、促す。 III.防止 義務的徴募 18.委員会は、対話の過程で締約国から提供された、18歳未満の者が敵対行為に直接参加することはできない旨の情報に留意しながらも、締約国が、18歳未満の者を義務的徴募の対象として指定することにより、選択議定書第2条を全面的に遵守していないことを依然として懸念する。委員会は、締約国から提供された、18歳未満の者が戦闘部隊に徴募されることもありうるという情報について、懸念を覚えるものである。 19.委員会は、締約国が、法律を改正し、かつ義務的徴募に関する政策が選択議定書の規定と一致することを確保するよう、勧告する。 志願入隊 20.委員会は、志願入隊に関する最低年齢が17歳であり、かつこれらの志願兵を武装任務に配置することは認められていないことに留意する。 21.委員会は、選択議定書の締約国の大多数が子どもの志願入隊を許可していないことに留意する。したがって委員会は、締約国に対し、全般的により高い法的基準による子どもの保護を促進する目的で、軍隊への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げるよう、奨励するものである。 軍事教育 22.委員会は、生徒に対して入隊志願および従軍戦闘任務の志望をあからさまに奨励するプログラムのような、軍役とタルムード学習とを結合させたプログラム(hesder yeshivas)のカリキュラムが、条約第29条に掲げられた教育の目的および人権の価値観に反することを懸念する。 23.委員会は、いかなる軍事教育においても人権の価値観および条約第29条が考慮されるべきこと、および、このようなプログラムの教育内容が教育省によって定期的に監視されるべきことを、勧告する。さらに委員会は、締約国が、すべての生徒(軍事・宗教学習を受けている生徒も含む)が独立の苦情申立て機構にアクセスできることを確保するよう、勧告するものである。 人間の盾および密告者としての子どもの使用 24.委員会は、パレスチナ人の子どもが人間の盾および諜報目的の密告者として使用される慣行が根強く残っていることを深く懸念する。さらに委員会は、締約国が、Adalah et al. v. Commander of the Central Region et al.事件におけるイスラエル最高裁判所判決(HCJ 3799/02、2005年6月23日付判決)の遵守状況に関する情報を提供しないことを遺憾に思うものである。イスラエル軍がパレスチナ人の子どもを人間の盾として使用している(2008年12月および2009年1月の「鋳造鉛」作戦時の使用を含む)ことを示す報告にかんがみ、委員会は、対話の過程で締約国から提供された、捜査が開始された旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、このような捜査が遅れており、かつその成果に関する情報が存在しないことを懸念するものである。 25.委員会は、締約国に対し、人道法の厳格な遵守を確保し、Adalah et al. v. Commander of the Central Region et al.事件のイスラエル最高裁判所判決にしたがい、かつ国防軍役法第5746号(1986年)をしかるべき形で改正するよう、促す。さらに委員会は、締約国に対し、このような犯罪の報告について迅速かつ公正な捜査を行なうとともに、責任者が適正に訴追され、かつ適当な刑罰による制裁を受けることを確保するよう、促すものである。 平和教育 26.委員会は、イスラエルの学校において平和教育を推進するための努力に関して締約国から提供された情報に留意するものの、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域で平和教育が著しく限定的であることを懸念する。委員会は、パレスチナ被占領地域で教育にアクセスできないことを懸念するものである。さらに委員会は、教育において推進されている価値観と、とくにイスラエルの教育制度が過度に軍事化されていることおよび学校カリキュラムの一部として必修の軍事科目が含まれていることとの対照を懸念する。 27.委員会は、締約国が、教育カリキュラムが条約第29条に一致することを確保するよう勧告するとともに、イスラエルおよびパレスチナ双方の学校制度に平和教育を体系的に導入するよう奨励する。この目的のため、委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮するよう奨励するものである。委員会は、イスラエルおよびパレスチナ双方の子どもたちを集めて、平和教育を推進するための合同の取り組みを行なうよう奨励する。 IV.禁止および関連の事項 立法 28.委員会は、イスラエル刑法で定められた違法な軍事活動についての規定には留意しながらも、選択議定書で対象とされている犯罪が具体的に含まれているわけではないことを懸念する。 29.子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 刑法を改正し、子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用に関する選択議定書の規定の違反を明示的に犯罪化する規定を導入するとともに、敵対行為への直接参加の定義を定めること。 (b) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定にしたがうことを確保すること。 域外裁判権 30.委員会は、締約国は15歳未満の子どもの強制的徴集または志願に基づく編入の戦争犯罪について域外裁判権を執行することができる旨の、締約国の発言に留意する。しかしながら委員会は、このような裁判権を行使できる具体的な法的根拠が存在しないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪に関する域外裁判権を設定する目的で国内法を見直すよう、勧告する。 32.委員会は、締約国が、国際社会ですでに広く支持されている以下の国際文書の批准を検討するよう勧告する。 (a) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(1977年)。 (b) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書II)(1977年)。 (c) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)。 (d) 国際刑事裁判所ローマ規程(1998年)。 (e) クラスター弾に関する条約(2008年)。 V.保護、回復および再統合 テロリスト容疑による子どもの訴追 33.委員会は、パレスチナ被占領地域における子どもの逮捕および尋問の慣行に関わって2002年に行なわれた勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ62および63)に締約国がしたがっていないことを、深刻に懸念する。委員会は、軍令(具体的には第378号および第1591号)の規定が少年司法の運営および公正な裁判を受ける権利に関する国際基準に違反し続けていることに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、少年司法に関する基準を軍事裁判所内で編入しようとする試みについての情報に、懸念とともに留意する。 34.委員会は、2005年から2009年にかけて2000人以上の子ども(12歳という低年齢の子どももいる)が治安犯罪の容疑をかけられ、告発されないまま最長8日間勾留され、かつ軍事裁判所によって訴追されていることに、重大な懸念を覚える。委員会は、治安犯罪の容疑をかけられた子どもが非人道的かつ品位を傷つける環境において長期の独居拘禁および虐待の対象とされていること、弁護人による代理および通訳による援助が不十分であること、ならびに、親族がイスラエルへの入国を拒否されるために家族による面会が不可能であることを、とくに懸念するものである。委員会は、子どもが最長6か月の期間で繰り返し更新できる行政拘禁命令の対象にされている旨の情報があることを憂慮する。最後に委員会は、これらの件について締約国から提供された情報が不十分であることを遺憾に思うものである。 35.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 2002年に勧告されたとおり、軍令第378号および第1591号を廃止すること。 (b) 子どもに対する刑事手続を軍事裁判所でけっして進めず、かつ子どもを行政拘禁の対象としないこと。 (c) 少年司法に関する基準が管轄内のすべての子どもに適用されること、および、いかなる裁判も、公正な裁判に関する最低基準にしたがい、速やかにかつ公平に実施されることを保障すること。 (d) テロ対策を進めるなかでの人権および基本的自由の促進および保護に関する特別報告者から勧告されたとおり(A/HRC/6/17/Add.4、パラ55)、テロ犯罪のいかなる定義も国際的な基準および規範に一致することを確保すること。 36.委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの拘禁は最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保すること。年齢に関して疑義がある場合、若年者は子どもと推定されるべきである。 (b) 治安犯罪を行なったとして罪を問われた子どもの拘禁が、その年齢および脆弱性にしたがった適切な環境で行なわれることを確保すること。 (c) 親または近親者に子どもの拘禁場所を通知し、かつ接触を認めること。 (d) すべての子どもに対し、十分な、無償のかつ独立した法的助言の援助を提供すること。 (e) 子どもに対し、自己の拘禁の定期的かつ公平な再審査を保障すること。 (f) 拘禁された子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。拘禁された子どもの残酷な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いの報告は、速やかにかつ公平なやり方で調査されるべきである。 (g) 教育プログラムおよびレクリエーション活動、ならびに、拘禁されたすべての子どもの社会的再統合のための措置を提供すること。 (h) 少年司法制度で働くすべての専門家を対象として、条約、選択議定書、他の関連の国際基準、および、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号についての研修を行なうこと。 身体的および心理的回復のための援助 37.委員会は、イスラエル人の子どもの身体的および心理的回復について提供された情報に留意するものの、パレスチナ人の子どもに対して利用可能とされているこのような措置についての情報がないことを遺憾に思う。とくに委員会は、「鋳造鉛」作戦によってガザの子どもがこうむった心理的影響、および、これらの子どものための援助の欠如を深刻に憂慮するものである。委員会はさらに、対人地雷の被害を受けた子どものリハビリテーションのために十分なプログラムが設けられていないことを懸念する。 38.イスラエル国防軍が民間人に対して行なった均衡性を欠く攻撃の結果として子どもが心理的トラウマを負っていることにかんがみ、委員会は、締約国に対し、イスラエル人であるかパレスチナ人であるかを問わず、影響を受けたすべての子どもの身体的および心理的回復のための援助を提供する責任を担うよう、促す。さらに委員会は、締約国が、対人地雷の被害者である子どもをとくに対象とするプログラムを支援するよう、勧告するものである。 VI.国際的な援助および協力 国際協力 39.委員会は、締約国が安全保障理事会決議1612(2005年)を支持する旨の情報を歓迎するとともに、締約国が、安全保障理事会決議1612(2005年)および1882(2009年)を自国の管轄内で効果的に実施する目的で、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力をさらに強化するよう勧告する。 武器輸出 40.委員会は、イスラエルが相当の武器輸出国であることを認めるとともに、2007年に採択された法律(イスラエル安全保障貿易管理法第5767-2007号)により、このような物資の輸出が、子どもの権利の尊重を考慮したアセスメントにしたがって規制されている旨の締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されている国への武器輸出が明示的に禁じられていないことを懸念するものである。 41.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地である武器の販売を法律で明示的に禁止するよう、勧告する。 VII.フォローアップおよび普及 42.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、教育省、内閣およびクネセト〔議会〕に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 43.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般および子どもたちが広く入手できるようにすることを勧告する。委員会は、締約国が、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域の双方でこれらの勧告が普及されることを確保するよう、具体的に要請するものである。 VIII.次回報告書 44.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書(提出期限:2008年11月1日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年10月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/174.html
総括所見:フィンランド(第2回・2000年) 第1回(1993年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.132(2000年10月16日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年9月19日に開かれた第643回および第644回会合(CRC/C/SR.643 and 644参照)において、1998年11月18日に提出されたフィンランドの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年10月6日に開かれた第669回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたこと、追加情報が提供されたこと、および、事前質問事項(CRC/C/Q/FIN/2)に対する文書回答が締約国によって提出されたことを、歓迎する。委員会は、対話の際に追加情報を提供するため代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全般的進展について締約国を称賛するとともに、包括的な社会保障制度ならびに子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、とりわけ無料の保健ケア、無償教育、長期の母性休暇、母と父の両方を対象とする親休暇および広範な保育制度に対する満足感をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ3参照)。委員会はまた、1990年代前半の景気後退が子どもに及ぼす影響を低減するために締約国が努力を行なったこと、および、子どもの福祉を左右する基盤が維持されてきたことも歓迎するものである。 4.委員会は、新たな法律が最近採択され、かつ、国内法を条約の原則および規定に一致させるための改正が行なわれたことを歓迎する。委員会はとくに、委員会の前回の勧告で勧告されたように(CRC/C/15/Add.53、パラ29参照)、政府が提案した法律によって未成年者からの性的サービスの購入および児童ポルノ資料の所持が犯罪化され、かつセックスツーリズムに関わる刑法改正によってフィンランド市民が国外で行なった性的虐待関連の犯罪が犯罪化されたこと、家族再統合の促進を目的として1999年外国人法が改正されたこと、ならびに、社会への移民の統合を促進し、かつ庇護希望者の受け入れ手続を定める法律が採択されたことに、留意するものである。委員会はまた、社会保健省が、子どもの商業的性的搾取を防止するための国家的プログラムを作成したことも歓迎する。 5.委員会は、国内における子どもの権利の実施の監督を任務とする、子ども問題担当の副議会オンブズマンが1998年に設置されたことを歓迎する。 6.委員会は、政府が1997年に寛容の促進および人種主義との闘いに関する政策指針を発表したことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、社会福祉サービスおよび保健ケア・サービスのあり方に関する政府の全国プログラム(1998~2001年)において民族的マイノリティの健康および福祉の促進のための活動が行なわれたこと、移民の子どもが教育に平等にアクセスできること、および、移民自身の言語による教育を促進するための措置がとられてきたことにも、留意するものである。 7.委員会は、児童福祉の全国的平準化制度により、自治体の経済状況に関わらず、必要に応じた適切なサービスへの子どものアクセスが向上していることを歓迎する。委員会はまた、フィンランド地方自治体協会が、2000年1月、自治体における子どもの権利条約の実施を促進する目的で子ども政策プログラムを採択したことにも、評価の意とともに留意するものである。加えて委員会は、とくに子どもおよび若者に影響を与えている精神的問題を考慮に入れた、社会福祉および保健に関する行動計画に、満足感とともに留意する。 8.委員会は、フィンランドが、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を最初に批准した国のひとつであり、かつILO・児童労働撤廃国際計画(IPEC)に対する主要なドナー国のひとつであることについて、同国を称賛する。 9.委員会は、国連本部で開催されたミレニアム・サミット条約イベントの際、フィンランドが子どもの権利条約の2つの選択議定書に署名したこと(2000年9月7日)を歓迎するとともに、締約国が2001年春に両選択議定書を批准するための措置をとろうとしていることに留意する。 C.さらなる進展を妨げる要因および困難 10.地方当局および広域行政圏当局に対する責任の委譲は地域コミュニティの関与を増進させる可能性があるものの、そのことにより同時に、条約の解釈、その適用および予算配分に関して地方および広域行政圏ごとの差異が存在することにより、条約の原則および規定の全面的かつ平等な実施が阻害されているように思われる。 D.主要な懸念事項 1.実施に関する一般的措置 調整 11.委員会は、政府内に子どもに関する中央担当部局が設けられておらず、かつ、子どもに関わるビジョンのある政策を調整し、かつ条約の実施を監視するための機構が中央および地方のいずれのレベルでも存在しないことを、依然として懸念する(CRC/C/15/Add.53、パラ11参照)。 12.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現のためのいっそう調整のとれた政策および行動を確立する目的で、政府内に子どもに関する中央担当部局を設け、かつさまざまな省庁間および中央・地方当局間の調整機構を設置するためにさらなる措置をとることを検討するよう、奨励する。 地方レベルにおける実施 13.委員会は、締約国において意思決定、行政およびサービス提供の地方分権化が大規模に進められていることにより、中央レベルから自治体に対して相当の権限が委譲されていることに留意する。しかしながら、すべての自治体が、社会でもっとも脆弱な集団、とくに貧困家庭、ひとり親家庭ならびに障害児、難民およびマイノリティの子どもに対して同一水準の社会政策および社会サービスを提供しているわけではない。 14.委員会は、締約国が、自治体当局による条約のあらゆる側面の実施に関する評価を行なうこと、および、自治体レベルで条約が効果的に実施されることを確保するためにあらゆる努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はまた、すべての自治体の子どもが基礎的社会サービスから等しく利益を受けられることを確保するための、統合的な監視制度または監視機構を設置するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.53、パラ23参照)も、あらためて繰り返すものである。 予算配分 15.委員会は、低所得家庭または障害のある子どもがいる家庭に対して地方当局が提供している福祉サービスの規模および水準が、自治体当局が利用可能な財源、これらの当局が定めた優先順位、および、ニーズを評価しかつ援助を供与するために用いられているシステムに相当の違いがあることもあって、全国のさまざまな自治体で不平等なものとなっていることを懸念する。これらの格差は、子ども、とくに障害のある子どもが、国内のどこに居住するかによって、福祉援助に不平等な形でしかアクセスできずまたは異なる水準の福祉援助が提供されるという、いずれかの効果を有するものである。 16.委員会は、締約国に対し、たとえば、条約の規定の実施に関する、かつ第2条にしたがった国レベルの最低基準および最低資源配分額を定めることにより、すべての子どもがその居住地に関わらず同一水準のサービスに平等にアクセスできることを保障する方法を検討するよう、促す。 データ収集 17.フィンランドの子ども統計に関する1998年の報告書、および、フィンランド社会を子どもの視点から革新的やり方で検討した子どもの生活条件に関する2000年の特別報告書など、統計の編纂に関する新たな取り組みは認知しながらも、委員会は、条約がとくに地方レベルでどの程度実施されているかを評価するためには、子どもの問題に関するデータおよび指標の恒常的かつ大規模な収集および分析をさらに発展させる必要があることに、留意する。 18.委員会は、締約国が、条約に一致した包括的なデータ収集システムを引き続き発展させるよう、勧告する。このシステムは、とくに脆弱な立場に置かれている子ども(虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、障害のある子ども、低所得家庭の子ども、法律に抵触した子どもならびに移民およびマイノリティの子どもを含む)をとりわけ重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅したものであるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約の効果的実施および監視のための政策およびプログラムの立案に際して指標およびデータを活用するよう、奨励する。 オンブズパーソン 19.子どもの権利を実施するための副議会オンブズマンが任命されたとはいえ、委員会は、国レベルのオンブズパーソンの設置に関する議論が継続していること、および、副議会オンブズマンの経験に基づいて締約国がこの点に関する最終的決定を行なうものとされていることに留意する。 20.委員会は、締約国に対し、他の北欧諸国の積極的な経験を考慮に入れながら国レベルの独立した子どもオンブズパーソンの設置を真剣に検討するとともに、財政上の考慮のみで決定が左右されないようにすることを慫慂する。 条約の原則および規定の普及 21.条約に関する情報の普及に関して締約国が行なっている努力(条約本文をサーミ語で刊行したことも含む)には留意しながらも、委員会は、条約の原則および規定が社会のあらゆるレベルで普及されているわけではないことに、懸念を表明する。加えて委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が体系的ではないことに留意するものである。 22.委員会は、締約国が、絵本およびポスターのような視覚資料等も通じて条約を促進するためのいっそう創造的な手法を発展させるとともに、条約を学校カリキュラムに編入するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約をロマの言語その他のマイノリティ言語に翻訳することおよび主要な移民集団の言語で条約を入手可能にすることを検討するよう、奨励するものである。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、とくに自治体委員会の委員および公的機関に焦点を当てながら、体系的な研修および(または)感受性強化措置をとることも勧告する。 2.一般原則 一般原則 23.委員会は、締約国が、社会福祉サービス利用者の地位および権利に関する法律のような最近の法改正において、子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利の原則を含めるための努力を行なったことに留意する。 24.委員会は、締約国に対し、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、発達に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)を自国の法律および政策によりよい形で反映させるため、引き続きあらゆる必要な措置をとるよう慫慂する。 子どもの最善の利益 25.子どもの最善の利益の原則を尊重するために締約国が相当の努力を行なっていることは認知しながらも、委員会は、とくに自治体当局がこの原則を必ずしも全面的に考慮していないこと、および、さらに、保護者のいない子どもの庇護希望者および難民の最善の利益が必ずしも第一次的に考慮されていないことを、懸念する。 26.条約第3条に照らし、委員会は、締約国が、上述の状況において最善の利益の原則の意味を余すところなく考慮すること、および、子どもに影響を与えるすべての決定においてこの原則が第一次的に考慮されることを確保するためにさらなる努力が行なわれるべきことを、勧告する。 発達に対する権利 27.条約第6条に関して、委員会は、発達に対する権利を締約国がどのように実施しているかについて締約国報告書で明示的言及がないことに留意する。 28.委員会は、締約国に対し、身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達に対するひとりひとりの子どもの権利というの視点から、自国の行動計画、戦略、政策およびプログラムを再検討するよう奨励する。 意見を聴かれる子どもの権利 29.委員会は、とくに子どもの監護をめぐる事案および裁判所に持ちこまれた面会交流紛争において、子ども、とくに12歳未満の子どもの意見が必ずしも全面的に考慮されていないことに、懸念を表明する。。 30.委員会は、締約国が、司法手続の影響を受ける12歳未満の子どもが十分に成熟していると見なされるときは常に意見を聴かれ、かつ、このような意見聴取が子どもにやさしい環境で行なわれることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどの程度考慮されているか、および、子どもの意見が政策立案および裁判所の決定、プログラムの実施ならびに子どもたち自身にどのような影響を与えているかについての定期的検討を行なうことも、勧告するところである。 3.市民的権利および自由 子ども参加 31.後期中等段階における生徒参加については認知しながらも、委員会は、とくに初等段階および前期中等段階の教育における子どもの参加に十分な注意が払われていないことを懸念する。 32.あらゆる段階の教育における子どもの参加権に関して政府が行なっている活動に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、とくに自分たちに関わる教育活動への子どもの参加を増進させるための効果的措置をとるよう奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 親からの分離 33.委員会は、失業率が高く、かつ子ども関連の手当に悪影響を与える予算措置がとられていることにより、子どもがいる家庭の純所得が相当に減少していることについて、深刻な懸念を表明する。 34.委員会は、締約国の経済が近年向上していることを考慮に入れ、締約国が、とくに里親養護または施設への子どもの措置を回避する目的で、子どもがいる家庭に対していっそうの資金を配分し、かつこれらの家庭に対して適切な支援を提供するための効果的な措置を発展させるよう、強く勧告する。 35.委員会は、家庭外に措置される子どもが近年増加していることに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が、明らかに子どもの最善の利益にかなう場合に限り、かつ可能なもっとも短い期間で子どもが家庭外に措置されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 家族再統合 37.移民の統合および庇護希望者の受け入れに関する法律(1999年)により、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れのあり方について若干の改革が導入されたことには留意しながらも、委員会は、家族再統合の手続にいまなおきわめて長い時間がかかること、および、このことが当事者の子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを、懸念する。 38.委員会は、締約国に対し、庇護申請の処理および子どもの定住の手続が遅延する理由を、その短縮を図る目的で検討するよう奨励する。 虐待およびネグレクト 39.締約国が家庭における子どものあらゆる体罰を禁じた世界で2番目の国である(1983年の子どもの監護およびアクセス権法)とはいえ、委員会は、子どもの対する暴力(家庭における性的虐待を含む)の件数について懸念を覚える。委員会はまた、この現象に関する情報がないことも遺憾に思うものである。 40.委員会は、締約国が、家庭における子どもへの暴力の発生を防止するとともに、これが不可能であった場合には、その発生を適時に発見し、早い段階で介入し、かつ、子どもとともに活動する特別訓練を受けた人員を備えた、防止、治療およびリハビリテーションのための子どもにやさしいプログラムおよびサービスを発展させることを目的とした追加的措置をとることを検討するよう、勧告する。 5.基礎保健および福祉 慢性疾患児 41.委員会は、慢性疾患児がいる家族が人材面でも財政面でも必ずしも十分な支援を受けられていないことに、懸念とともに留意する。 42.障害のある子どもの権利を確保するために締約国が行なっている努力を認めつつ、委員会は、締約国が、慢性疾患児がいるすべての家族に対して平等な支援および援助(専門スタッフの助力も含む)を提供するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 入院している子ども 43.委員会は、経費削減措置のために多数の小児病棟がすでに閉鎖されまたは閉鎖のおそれに直面していること、および、子どもが成人病棟で(成人と同室の場合さえある)ケアを受けていることを、懸念する。 44.委員会は、このような状況を監視するよう求めた広域行政圏当局への最近の要請に留意しつつ、締約国が、入院している子どもに対し、ヨーロッパ入院児連盟(EACH)の入院児憲章にしたがった適切なケアを確保するための効果的措置をとるよう、勧告する。 精神保健サービス 45.精神医学サービス、とくに小児および若者向けの精神医学に対して政府としての支援を提供するために追加的資金が配分されていることは認知しながらも、委員会は、精神病の子どもが成人と同じ施設に措置されていることについての懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ16参照)。さらに委員会は、心理学者および精神科医の人数が不十分であることから、精神保健サービスおよび子どものための専門家による対応を受けるまでの待機期間が長く、かつこれらのサービスおよび専門家へのアクセスが遅延していることについて、締約国とともに懸念を表明するものである。 46.委員会は、締約国に対し、子どもが精神保健サービスにいっそう適時にアクセスできるようにし、かつ精神病の子どもが成人と同じ施設に措置されるのを防止する目的で、とくにフィンランドの北部および東部ならびに資源が他の自治体よりも少ない小規模自治体において小児精神科医および小児心理学者の不足に対応するよう、奨励する。 保育サービスおよび保育施設 47.委員会は、自治体が母子福祉クリニックのサービスを提供していることに評価の意とともに留意するものの、これらのクリニックのあり方およびこれらのクリニックに対する資源の提供に関して自治体間で違いがあることを懸念する。 48.委員会は、締約国が、母子クリニックによって提供されるサービスからすべての子どもが同程度の利益を得られることを確保するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育に対する権利 49.委員会は、一部自治体で経済的要因による教員の解雇が行なわれており、これが授業に対しておよび教育の質に対して悪影響を及ぼす可能性があることに対し、締約国とともに懸念を表明する。 50.委員会は、締約国が、国の諸地域間ならびに種々の学校および教育施設間における平等を確保するため、改正された学校関連法制を実施するよう勧告する。 7.特別な保護措置 保護者のいない子ども、子どもである庇護希望者難民 51.委員会は、保護者のいない未成年者が庇護申請を行なった場合に成人と同じ方法による事情聴取の対象とされることを懸念する。さらに、保護者がいない未成年の庇護申請者のための代理人制度が設置されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、保護者のいない未成年の庇護申請者の代理人に対して十分な資源および研修を確保するために十分な努力が行なわれていないことに、懸念を表明するものである。また、子どもの難民を対象とした、その子どもの言語による教育が利用可能とされているのは、十分な資源を提供できる自治体のみであるようにも思われる。 52.委員会は、締約国が、子どもの難民の受け入れを対象とする職員の研修(とくに子どもの事情聴取技法に関するもの)および保護者のいない未成年の庇護申請者の代理人の研修のために十分な資源を確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民が、その立場および居住地に関わらず同一水準のサービス(とくに教育)に平等にアクセスを認められるようにするための措置を検討することも、奨励するものである。 53.委員会は、戦争の影響を受けている地域の出身であり、かつトラウマ性の経験の被害を受けた可能性のある子どもの庇護希望者および難民が多いことに、懸念とともに留意する。 54.委員会は、締約国が、締約国への到着と同時に特別な支援を必要とする子どもを特定するためにあらゆる努力が行なわれることを確保するとともに、このような子どもおよびその親に対して十分な心理的援助を提供することを検討するよう、勧告する。 有害物質濫用 55.委員会は、締約国の青少年の間で薬物(とくに強度の薬物)の使用ならびにアルコールおよびタバコの濫用が増えているという報告に、懸念を覚える。さらに委員会は、現在の児童福祉サービス制度ではサービスのニーズの増加に対応できないことに留意するものである。 56.委員会は、薬物政策に関する原則決定(1999年)に評価の意をもって留意するとともに、締約国に対し、前向きな文化的変革のためのエンパワーメントを図り、かつ意識啓発および防止のための措置(学校における薬物教育を含む)を継続するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、子どもにとくに適合した治療療法およびリハビリテーション・サービスを行なうため、児童福祉サービス制度にいっそうの資源配分を行なうよう、勧告するものである。 性的搾取 57.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.53、パラ19および29参照)にしたがい、性的搾取からの子どもの保護を向上させるために締約国が実施した法律の見直しその他の措置は評価しながらも、委員会は、フィンランド人の子どもセックスツーリストが売春を行なう子どもを求めて近隣の旧ソ連諸国に旅行する現象に、深い懸念とともに留意する。 58.委員会は、締約国に対し、このような現象と闘うための十分な措置をとるとともに、フィンランド市民が国外で行なった子どもの性的虐待および搾取の事件を捜査しかつ訴追するための国際協力を継続するよう、促す。 マイノリティまたは先住民族集団に属する子ども 59.委員会は、ロマの子どもの学校中退率が高いことに関する懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ18参照)。 60.委員会は、特別教育を発展させかつ社会的排除を防止するために締約国がとった措置(学校の授業におけるロマ語の地位の強化、ロマ語による教育資料の開発および教員養成など)に留意し、これらの措置の実施を勧告する。委員会は、締約国に対し、この分野における努力を継続するとともに、委員会に対する次回の定期報告書で、これらの措置がロマの子どもに与えた影響についての情報を提供するよう、要請するものである。 締約国報告書の普及 61.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、第2回定期報告書、委員会が提起した事前質問事項および締約国が提出した文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した報告書についての総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。