約 1,857,871 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/77.html
総括所見:フィリピン(第1回・1995年) 第2回(2005年)/第3回・第4回(2009年)OPAC(2008年)/OPSC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.29(1995年2月15日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年1月10日および11日に開かれた第185回、第186回および第187回会合(CRC/C/SR.185-187)においてフィリピンの第1回報告書(CRC/C/3/Add.23)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年1月26日に開かれた第208回会合において。 A.序 2.委員会は、子どもの権利条約の締約国になった最初の国々のひとつであるフィリピンの第1回報告書が提出されたことに、満足感とともに留意する。委員会は、同報告書が委員会のガイドラインに従っていること、および、同報告書に、条約が実施される法的枠組みについての詳細な情報が記載され、かつ締約国が直面した困難についての若干の言及が見られることに、評価の意を表するものである。委員会は、事前質問票(CRC/C/7/WP.3)に掲げられた質問への回答として政府により文書で提出され、かつ会期前に委員会に送達された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、とられた措置の具体的効果に関する情報が欠けていたことに遺憾の意とともに留意するものである。 3.多数のメンバーからなるフィリピンの代表団によって補足的な情報が提供され、かつ、代表団が多様な部門でさまざまな子ども関連の問題に従事しているメンバーから構成されていたことにより、文書によって受領された情報を補完すること、および開かれたかつ建設的な対話に携わることが可能になった。 B.積極的な側面 4.委員会は、フィリピン政府が子どもの権利の促進および保護に堅い決意を示していることに留意する。委員会は、子どもの権利の促進および保護をとくに目的とした新法の制定およびプログラムの採択を通じて、国内法を条約に一致させるために締約国が行なった努力を歓迎するものである。このような達成としては、1990年の子どものための世界サミットを受けて、子どものためのフィリピン国内行動計画「フィリピンの子どもたち:2000年およびそれ以降」が採択されたことを挙げることができる。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、締約国が地理的および文化的に多様であること、フィリピン諸島の7000の島々に住民が散らばっていること、ならびに、幅広い経済的および社会的格差が締約国に存在することに、留意する。 6.委員会はさらに、武力紛争が子どもに及ぼす悪影響も含めて、民主化の過程における政治的不安定から生じている困難を認識する。 7.委員会はまた、自然災害が子どもの状況に悪影響を及ぼしてきたことにも留意する。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、法改正の分野における真剣な努力および達成にも関わらず、国内法を条約に全面的に一致させるためにとるべき措置が残っていることを懸念する。このような措置には、刑事責任に関する最低年齢、性的同意に関する最低年齢、最低就業年齢、義務教育の年齢制限、婚外子の地位、拷問の禁止、国際養子縁組、および、自由の剥奪および物乞いの犯罪視を含む少年司法の運営に関わる立法に関するものが含まれる。 9.子どもの状況を監視するための効率的な機構が存在しないことは懸念の対象である。これとの関連で、委員会は、信頼できる質的および量的データが存在しないこと、プログラムを実施する手段が不足していること、および、とられた政策の進展および影響を評価するための指標および機構が存在しないことに留意する。 10.委員会は、同様に、予算配分に関わる条約第4条の規定に充分な注意が払われていないように思えることを懸念する。締約国における予算配分のバランスが社会部門とその他の部門とのあいだでとれていないこと、および、軍事支出の割合が高いため子どもに関わる問題が犠牲にされていることは、懸念とともに留意されるところである。これとの関連で、委員会は、締約国の富が不平等に配分されていることおよび条約で規定された権利の享受に格差があることにより、都市部の貧しい子ども、農村部で生活する子どもおよびマイノリティ(または「文化的」コミュニティ)に属する子どもが不利益をこうむっていることに、懸念を表明する。 11.委員会は、出生後の子どもの登録を確保するうえでの困難、および、登録されなかった子どもが基本的権利および自由の享受に関して直面している問題について懸念する。 12.委員会はまた、女子、障害児、国際結婚により生まれた子ども、出稼ぎ労働者の子ども、働く子ども、および武力紛争の影響を受けている子どもを含む一部のカテゴリーの子どもが条約で認められた権利を全面的に享受することを確保するために実際的な措置がとられていないことにも懸念を表明する。 13.委員会は、家庭において児童虐待(性的虐待を含む)および放任が存在することに、深刻な危機感を覚える。このことは、子どもが遺棄されまたは家出し、人権侵害のさらなる危険に直面する事態につながることが多い。 14.委員会はまた、警察または軍隊要員による事例も含めて、暴力が高いレベルで発生していることおよび子どもの不当な取扱いおよび虐待が多数行なわれていることにも見過ごせない。委員会は、子どもの虐待および放任と闘う政府の努力が防止の観点からも制裁の観点からも不充分であることに、懸念とともに留意するものである。そのような子どものリハビリテーションのための措置が存在しないことも懸念の対象である。そのような侵害の加害者を訴追および処罰し、または、これとの関連で行なわれた決定をペドファイル(小児性的虐待者)に対するものも含めて公開するために効果的な措置がとられていないことは、住民のあいだに、加害者が処罰されない状況が蔓延しており、そのため権限のある公的機関に苦情を申し立てても無駄であるという気持ちをもたらすことにつながる可能性がある。 15.教育への権利に関して、委員会は、とくに女子、農村部または遠隔地で生活する子ども、および武力紛争の影響を受ける子どもとの関わりで、条約の関連の原則および規定の全面的実施に関してほとんど進展が見られないことに懸念とともに留意する。委員会はまた、職業訓練の機会が存在しないこと、初等教育における中退率が高いこと、および中等教育における就学率が低いことも、不安に感ずるものである。 16.農村部からの移住、極端な貧困、遺棄および家庭における暴力の状況により、路上で生活しかつ(または)働くことを余儀なくされ、基本的権利を奪われ、かつさまざまな形態の搾取にさらされる子どもが多数存在しかつ増加していることは、深い懸念の対象である。 17.少年司法の運営の制度の現在の体制、およびそれが条約および少年司法に関わる他の国際基準の原則および規定と両立していないことに関しても、具体的な懸念が表明されるところである。 E.提案および勧告 18.委員会は、締約国がひきつづき国内法と条約の規定とを調和させるよう勧告する。性的同意および刑事責任に関する年齢制限の引上げ、婚外子に対する差別の解消、拷問の禁止、および少年司法の運営に関わる法規定の見直しが、真剣に考慮されるべきである。委員会はまた、締約国が、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を構想するようにも提案する。委員会はまた、政府が、条約に掲げられた規定の尊重および効果的実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるようにも勧告するものである。 19.条約の実施およびその監視に携わるさまざまな政府機関のあいだの調整が確保されるべきであり、かつ、非政府組織とのいっそう緊密な協力に向けて努力が行なわれるべきである。 20.条約の監視機構を強化するための措置がとられるべきである。子どもの権利の全面的享受を目的としたプログラムの進展および効率性を評価するため、質的および量的なデータおよび指標が開発されるべきである。子どもの権利の実施に関する監視報告書も広報されるべきである。 21.公的機関は、充分な資源が子どもに配分されることを確保するために、もっとも傷つきやすい立場に置かれたグループのニーズに特別に配慮しながら、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な努力を行なうべきである。 22.教員、裁判官、ソーシャルワーカーおよび警察官のようなさまざまな専門家グループを対象として、いっそう子どもの権利中心の研修プログラムが組織されるべきである。そのようなプログラムは、子どもの基本的権利および子どもの尊厳の感覚の促進および保護を強調すべきである。家族生活教育を提供し、かつ親の責任に関する意識を発展させるため、さらなる努力が行なわれるべきである。委員会は、非政府組織および子どもおよび青少年のグループに対し、アドボカシー(権利擁護)のための行動の一環として態度を変える必要性があることに注意を向けるよう奨励する。 23.委員会は、条約第2条に規定された差別の禁止の原則が全面的に適用されなければならないことを強調する。一部のグループの子ども、とくに遠隔地の子ども、「文化的」コミュニティに属する子ども、女子、障害児および婚外子に対する差別を解消するため、いっそう積極的なアプローチがとられるべきである。 24.委員会は、締約国が、子どもに向けられたあらゆる暴力および子どもの不当な取扱い、とくに性的虐待に対する行動を強化するよう勧告する。子どもに対する不当な性的行為の防止を目的としたプログラムを増加させるべきである。この現象の深い原因が真剣に探究されるべきである。委員会はまた、この点に関する態度を変え、かつこの点に関する態度に影響を与えるうえで、非政府組織および子どもおよび若者のグループの積極的な参加も奨励する。 25.締約国は、子どもの不当な取扱いの苦情に対応するための充分な手続および機構を発展させること、子どもの権利侵害の事例が正当に調査されること、およびそのような調査の結果が広報されることを確保するべきである。 26.委員会は、最低就業年齢に関するものを含む第32条の規定を実施するためにさらなる措置をとり、かつ、締約国における児童労働を防止しかつそれと闘うための努力を行なうよう勧告する。インフォーマル部門で働いている子どもにとくに注意が向けられるべきである。委員会は、締約国が、この領域についてILOの技術的援助を求めるよう勧告する。 27.委員会は、締約国が少年司法の運営の制度の包括的改革を行なうこと、および、その改正にあたって、条約、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の国際基準の原則および規定を指針とすることを、勧告する。委員会は、法執行官、裁判官および司法の運営に従事するその他の職員に対する研修を組織すること、および、そのような研修の一部を少年司法制度に関するこれらの国際基準に割くことを、提案するものである。委員会は、この領域における技術的援助の必要性を強調し、かつ、締約国に対し、この点に関して国際連合人権センターおよび犯罪防止刑事司法部にそのような援助を求めるよう奨励する。 28.委員会はまた、締約国が提出した報告書、その検討の議事要録および委員会の総括所見を、締約国においてできるだけ広く普及するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/186.html
総括所見:タイ(OPAC・2012年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)/第3回・第4回(2012年)OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/THA/CO/1(2012年2月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年1月25日に開かれた第1683回会合(CRC/C/SR.1683参照)においてタイの第1回報告書(CRC/C/OPAC/THA/1)を検討し、2012年2月3日に開かれた第1698回会合(CRC/C/SR.1698参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/THA/Q/Add.1)の提出を歓迎するとともに、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、開かれた、率直かつ建設的な対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/THA/CO/3-4)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、軍役法(1954年)および国防省規則(2000年)に基づき、現役および非現役の軍隊要員の登録年齢が18歳と定められていることに、評価の意とともに留意する。 III.実施に関する一般的措置 立法 5.委員会は、とくに18歳未満の子どもを軍隊に徴募することの犯罪化との関連で、選択議定書の規定が国内法に全面的には編入されていないことを懸念する。 6.選択議定書第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定を国内法に全面的に編入し、かつ18歳未満の子どもを軍隊に徴募することを明示的に犯罪化するための措置をとるよう、促す。 調整 7.委員会は、国家子ども・若者発達促進委員会が選択議定書の実施を調整するための機構である旨の締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、条約に基づく総括所見(CRC/C/THA/CO/3-4)を参照しつつ、子どもの権利に関する政策およびその実際の実施が社会開発・人間安全保障省内の諸機関その他の機関に割り当てられており、かつ、条約および選択議定書に基づく、国および国以外のあらゆる関連の主体の活動の調整を担当する全般的な調整機構が存在しないことを、懸念するものである。 8.委員会は、条約に基づく総括所見を参照しつつ、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会(社会開発・人間安全保障省内のものを含む)の間でよりよい調整が行なわれることを確保するとともに、条約およびその選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の実施の監視および評価に関して、部門別省庁を横断し、かつ中央政府から地方政府のレベルに至るまで指導力を発揮しかつ有効な一般的監督を行なうことのできる単一の部局を指定するよう、勧告する。 普及および意識啓発 9.委員会は、選択議定書がタイ語に翻訳され、かつ政府機関および非政府機関を含むさまざまな機関に対して普及されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間で体系的かつ包括的な普及および意識啓発活動が行なわれていないことを懸念するものである。 10.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、広報および教育のための体系的プログラムを発展させることにより、選択議定書の原則および規定が一般公衆、子どもならびに関連の中央当局および地方当局の間で広く普及されることを確保するよう、勧告する。 データ 11.委員会は、選択議定書で対象とされている多くの分野についてのデータおよび統計、とくに軍事学校に就学した18歳未満の者、ならびに、広く行なわれている武装暴力に関与したまたはその可能性がある子どもの難民および庇護希望者の人数が存在しないことを、遺憾に思う。 12.委員会は、条約に基づく総括所見を参照しつつ、締約国が、条約および選択議定書の実施に関連するすべての分野についての包括的なデータ収集システムを設置するとともに、広く行なわれている武装暴力の影響を受けている子どもおよびこれに関与している子どもの保護に関わる包括的な政策およびプログラムを立案する際の基礎として、収集された情報および統計を活用するよう、勧告する。委員会は、締約国が、この点に関して国連児童基金(ユニセフ)の援助を求めるよう勧告するものである。 IV.防止 志願入隊 13.18歳未満の者が村落防衛訓練に参加することを禁じた省規則第2号(仏歴2554年)(2011年4月)は歓迎しながらも、委員会は、南部国境県の村落自警団(チョー・ロー・ボー、Chor Ror Bor)が行なう一連の活動に子どもが非公式な形でつながりを持ち、正規の構成員と同一または同様の任務を遂行しているという報告があることを懸念する。委員会はさらに、適用される規則が明確ではなく、かつ規則について主要な官公吏が認識していないこと、現行の政策および手続が実施されていないこと、ならびに、効果的な監督および説明責任の履行が行なわれていないことから、子どもがチョー・ロー・ボーと公式かつ非公式につながりを持ちやすくなる状況が生じてきたことを、懸念するものである。 14.委員会は、締約国に対し、子どもがチョー・ロー・ボーに非公式に関与することを防止しかつ禁止するために必要な措置をとるよう、促す。委員会はさらに、締約国が、主要な官公吏を対象とした、村落自警団への子どもの公式および非公式な関与に関する監視および説明責任の履行のための効果的な機構を設置するとともに、そのような徴募を禁じた法律に関する主要な官公吏の意識を高めるよう、勧告するものである。 軍学校 15.委員会は、出席のための最低年齢が16歳以上である学部段階において、カリキュラムに兵器の取扱い、陸海空の兵站、軍事規律および国際法のような軍事科目が含まれていることを懸念する。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 軍学校による選択議定書の規定の遵守を確保する目的で、自国の管轄下にあるすべての軍学校の包括的再審査を行なうこと。 (b) 軍学校に入学するすべての生徒について、性別、年齢、社会経済的背景および地理的所在ごとに細分化されたデータを収集する、中央集権化され、かつ定期的監視の対象とされる包括的な登録システムを設置すること。 (c) 軍学校が選択議定書の規定を遵守することを確保するため、教育省、国防省および子ども保護委員会による当該学校の定期的合同監視を行なうことを検討すること。 (d) 軍学校において、18歳未満の子どもに火器の使用訓練を行なわせることが明確に禁じられることを確保すること。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 17.委員会は、1956年刑法および子ども保護法(2003年)を含む締約国の法律において、軍隊、村落自警団または国以外の武装集団による18歳未満の者の徴募および(または)使用が明示的に犯罪とされていないことを、懸念する。 18.軍隊または武装集団による子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国が、軍隊、村落自警団または国以外の武装集団への子どもの徴募および関与を法律で明示的に犯罪とするよう、勧告する。 裁判権 19.委員会は、締約国の法律において、子どもの不法な徴募および敵対行為における子どもの使用の犯罪についての普遍的裁判権が設定されていないことを懸念する。委員会は、選択議定書上の犯罪についての裁判権を行使するためには双方可罰性が必要であること、および、犯罪人引渡しの条件として締約国と要請国間に条約が締結されていなければならないことを、遺憾に思うものである。 20.委員会は、締約国が、選択議定書で禁じられている行為(子どもを軍隊または武装集団に徴収しもしくは入隊させることまたは子どもを使用して敵対行為に積極的に参加させることを含む)に関する、当該犯罪がタイ国民または締約国と他の密接なつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の裁判権について、刑法または他の法律において明示的に定めるよう勧告する。委員会はまた、締約国が国際刑事裁判所ローマ規程を批准することも勧告するものである。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 21.委員会は、タイの公式なおよび非公式なキャンプで生活している、元子ども兵士を含む子どもの庇護希望者および難民(いわゆる「国外避難民」)が保護されておらず、かつ、難民/庇護希望者のなかから元子ども兵士を特定するための機構も存在しないことを、懸念する。委員会はまた、特定および保護のための十分な措置がとられていないため、ミャンマーに強制送還される人々のなかにミャンマーを脱出した子ども兵士も含まれている可能性があり、このような子どもがミャンマーで再度の徴募および(または)脱走罪を理由とする拘禁に直面するおそれがあることも、懸念するものである。委員会はとくに、キャンプの子どもが、ミャンマーからやってきてタイ国境内で活動する、国以外の武装集団による徴募および再徴募の危険にさらされていることを懸念する。 22.選択議定書第7条に基づく締約国の義務に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の管轄下にある子どもの庇護希望者および難民全員に関する、全国的なデータ収集・登録システムを設けること。 (b) 国外で武力紛争に関与したまたはその可能性がある子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)を特定するための機構を設置するとともに、当該特定を担当する要員が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取技法について訓練されることを確保すること。 (c) 武力紛争に関与したまたはその可能性がある子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な支援を提供すること。 (d) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた可能性がある子どもまたはそのような被害を受けるおそれがある子どもの、出身国へのいかなる強制送還も直ちにとりやめること。 (e) ミャンマーからやってきてタイ国境内のキャンプで活動する、国以外の武装集団による子どもの徴募および再徴募を防止すること。 (f) この点に関して国連難民高等弁務官(UNHCR)およびユニセフの技術的援助を求めること。 非常事態立法に基づく子どもの逮捕および拘禁 23.委員会は、南部国境県において子どもが戒厳令および非常事態令に基づく逮捕および拘禁の対象とされている旨の報告があることを懸念する。委員会はとくに、これらの治安維持関係法上、子どもの行政拘禁が禁じられておらず、かつ30日まで継続することができるとされており、その際、子どもが不当な取扱いおよび隔離拘禁または成人の被拘禁者と同じ房での拘禁の対象とされていることを、懸念するものである。 24.委員会は、締約国に対し、18歳未満の子どもに対する刑事上または行政上の手続を禁じ、かつ軍事拘禁センターへの子どもの拘禁を禁止する目的で、治安維持関係法を見直すよう求める。委員会は、18歳未満のすべての子どもが、あらゆる状況下で少年司法制度による扱いの対象とされるべきことを勧告するものである。 VIII.国際的な援助および協力 国際協力 25.委員会は、締約国が、赤十字国際委員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施におけるユニセフその他の国連機関との協力の増進を模索するよう、勧告する。 VIII.フォローアップおよび普及 26.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁および地方当局ならびにそれぞれ中央および県に設置されている子ども保護委員会および同小委員会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 27.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 28.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/177.html
総括所見:フィンランド(第4回・2011年) 第1回(1993年)/第2回(2000年)/第3回(2005年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/FIN/CO/4(2011年8月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年6月9日に開かれた第1628回および第1629回会合(CRC/C/SR.1628-1629参照)においてフィンランドの第4回定期報告書(CRC/C/FIN/4)を検討し、2011年6月17日に開かれた第1639回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第4回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/FIN/Q/4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するものの、締約国が、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく定期報告書をまだ提出していないことを遺憾に思う(訳注)。委員会は、議会オンブズマン、子どもオンブズマンおよび非政府組織のような関係者の意見が締約国報告書に含まれていることに、前向きな対応として留意するものである。委員会は、締約国における子どもの状況についての理解の向上を可能にしてくれた、開かれたかつ前向きな対話を評価する。 (訳注)武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書については2005年に第1回報告書の審査が行なわれている。同選択議定書のその後の実施状況に関する情報が第4回定期報告書に記載されていなかったという趣旨か。 II.締約国がとったフォローアップ措置および達成した進展 3.委員会は、以下のもののような条約実施のためにとられた立法上の措置の採択を含め、報告対象期間中に多くの前向きな発展が見られたことを歓迎する。 (a) 子ども福祉法(2007/417)(2008年)およびその改正(2010年)。 (b) 児童ポルノ頒布防止措置法(1068/2006)(2007年)。 (c) 青年法(2006/72)(2006年)およびその改正(2011年)。 (d) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約施行法(2011年)。 (e) 保健ケア法(1326/2010)(2010年)。 (f) 基礎教育法の改正(2010年)。 (g) 母子保健サービス、学校保健ケアおよび生徒保健ケアならびに子どもおよび若者のための予防的口腔保健ケアに関する政令(380/2009)(2009年)およびその改正(338/2011)(2011年)。 4.委員会はまた、以下のものを含む国際文書の批准/これへの加入も歓迎する。 (a) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ第34号条約(2010年)。 (b) 無国籍の削減に関する1961年条約(2008年)。 (c) 国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年)。 (d) サイバー犯罪に関する欧州評議会条約(2007年)。 5.委員会はまた、以下のものを含む政策およびプログラムの採択も歓迎する。 (a) 子どもの体罰を減少させるための国家行動計画(2010~2015年)。 (b) 子ども・若者政策発展プログラム(2007~2011年)。 (c) 社会福祉および保健ケアに関する国家発展プログラム(2008~2011年)。 (d) 国家ロマ政策(2009年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条(6項)) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第3回定期報告書の検討(2005年)後に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.272)に対する対応が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの懸念および勧告がこの総括所見でも繰り返されていることに留意するものである。 7.委員会は、締約国に対し、第3回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち十分に実施されていないもの(民族的マイノリティの子どもおよび移民の子どもに対する差別、子どもの意見の尊重、子どもの庇護希望者の権利、子どもの脱施設化ならびに思春期の健康に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.委員会は、条約の実施に関連する憲法的、法的および規範的枠組みを強化するために締約国がとった立法上の措置に留意しつつ、条約および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の適用範囲を全面的に網羅する統合的な立法上の枠組みが存在しないことを、依然として懸念する。 9.委員会は、締約国が、法律および行政規則が条約および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の原則および規定に全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、条約上のすべての権利を包含する統合的法律の起草を検討するよう、勧告する。 調整 10.子どもの福祉、とくに社会サービス、保健サービスおよび子どもがいる家族の所得保障の発展については社会保健省が責任を負っていることには留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関するプログラムおよび政策の豊富さを考慮すれば、同省は――同省の責任が子どもの権利の一部の分野のみに限定されていることから――国、広域行政圏および自治体のレベルならびに関連のあらゆる機関間における条約実施の全般的調整を担当する、十分な調整機構としては機能できない可能性があることを、依然として懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、あらゆるレベルおよび関連のあらゆる機関間で子どもの権利政策の実施を調整する効果的な機構を設置するための措置をとることを確保するよう、求める。その際、締約国は、当該機構に対し、国、広域行政圏および自治体のレベルで包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、促されるところである。 国家的行動計画 12.委員会は、「子ども・若者政策発展プログラム」および「子ども、若者および家族のウェルビーイングのための政策プログラム」を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、条約を全面的かつ効果的に実施するための、権利を基盤とする包括的な政策および調和のとれた計画をまだ採択していないことを、遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国が、条約の全面的実施のための包括的な政策および行動計画を策定するよう、勧告する。このような政策および計画の立案に際しては、総会第27回特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビュー(2007年)に対して適切な注意が払われるべきである。委員会はさらに、行動計画には、すべての権利を実施し、かつすべての子どもによるすべての権利の享受に関する進展を効果的に監視するための、具体的な、期限の定められた、かつ測定可能な目標および達成目標が掲げられるべきことを、勧告する。行動計画については、その実施のために必要な財源、人的資源および技術的資源の適切な配分を確保するため、諸部門、国および自治体の諸戦略および予算との連携が図られるべきである。 独立の監視 14.委員会は、議会オンブズマンと子どもオンブズマンとの間で権限が分担されており、議会オンブズマンは子どもの権利侵害に関する苦情(子ども自身からのものを含む)を受理できる一方、子どもオンブズマンは子ども政策の監視を担当していることに留意する。しかしながら委員会は、子どもは議会オンブズマンの苦情申立て手続について承知しておらず、またはその活動方法について理解していない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマン事務所に提供される資源が不十分であることも懸念する。 15.委員会は、締約国が、国内諸機構の異なる苦情申立て手続に関する一般公衆(とくに子ども)の意識啓発を図るとともに、議会オンブズマンと子どもオンブズマン間の協力を増進させるよう、勧告する。委員会はまた、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)への注意を喚起しつつ、締約国に対し、その独立性、有効性およびアクセス可能性を保障するために必要な人的資源、財源および技術的資源がこの国内機構に対して提供されることを確保するようにも求めるものである。 資源配分 16.委員会は、自治体が公共サービスの提供およびその資金に関して広範な自治権を享受していることに留意するとともに、このために、子どもおよび青少年のためのサービスに対する一部自治体の資源配分が不十分となり、子どもに対する資源配分に地域的格差が生じる可能性があることを、懸念する。締約国が条約に基づいて負う、自国の管轄下にある子どもの権利を充足する義務に照らし、委員会は、国レベルで包括的な評価、記録および監督が行なわれておらず、そのため国レベルで力のない統制システムしか存在しないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 各自治体が利用可能な資源を考慮に入れながら、自治体に対し、子どもの権利の実施を確保するためにとくに配分される十分な資源を提供すること。 (b) 適切な水準の配分を確保しながら、子どものニーズを満たすために各自治体ごとに配分される予算額の効果的監視を確立すること。 (c) 子どものための予算配分額を監視する目的で子ども予算(子どもの権利の視点に立った予算追跡)を導入するとともに、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 18.委員会は、脆弱な状況に置かれた子ども(貧困の影響を受けている子ども、障害のある子ども、マイノリティ/移民の子どもおよび代替的養護に措置されている子どもを含む)の生活条件に関して入手可能なデータが不十分であることを懸念する。委員会はまた、子どもに対する虐待、ネグレクトおよび暴力ならびにこれらの子どもに対して提供されているサービスについての統計が限定的であることも懸念するものである。 19.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関する統計のシステムおよび分析を強化するとともに、貧困、暴力、障害のある子ども、マイノリティ/移民の子どもおよび家庭を奪われた子どもについての政策およびプログラムの参考となるデータが収集されかつ活用されることを確保するよう、促す。委員会は、締約国が、とくに年齢、性別および民族的背景ごとに細分化された、18歳未満のすべての者および条約が対象とするすべての領域に関するデータを領域全体で体系的に収集しかつ分析するための能力を、引き続き強化するよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 20.委員会は、政府の「子ども、若者および家族のウェルビーイングのための政策プログラム」の目的のひとつに採用された、条約の普及および関連の研修に関する情報ならびに条約20周年記念キャンペーンに関する情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、親および子どもとともに働く専門家を含む一般公衆の間で条約に関する意識の水準が低いことを、依然として懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、子ども、親および子どもとともに働く専門家を含む一般公衆の間で条約ならびに条約に基づく国内法および他の関連の国際文書に関する知識を高めるための努力を増強するよう、勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(とくに法執行官、教員、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカーおよびあらゆる形態の代替的養護で働く者)を対象とする十分かつ体系的な研修の強化も勧告するものである。 国際協力 22.委員会は、締約国が、2010年に国内総所得(GNI)の0.56%を国際援助に充てたこと、および、対GNI比0.7%という国際合意目標を2015年までに達成すると決意していることに、留意する。委員会は、締約国に対し、2015年までに対GNI比0.7%という国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する者である。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するようにも奨励する。委員会は、締約国が、その際、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案するものである。 子どもの権利と企業セクター 23.委員会は、フィンランドに本社を置く企業による児童労働の直接的または間接的使用が禁じられておらず、かつ、児童労働を用いて製造された製品の輸入または販売について企業に制限が課されていないことを遺憾に思う。委員会はまた、子どもの栄養状態に影響を与え、かつ小児期の肥満およびその他の健康上の悪影響を助長する不健康な食品の販売宣伝を制限する法的規制が存在しないことも、懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、国外で事業を行なうフィンランド企業およびフィンランドに本社を置く多国籍企業のサプライチェーンを効果的に監視するための制度を設けることにより、これらの企業による児童労働の使用を禁ずるための枠組みを定めるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの健康に悪影響を与える不健康な食品の販売宣伝を制限することも勧告するものである。委員会は、締約国が、とくに国連「ビジネスと人権枠組み」にしたがい、企業セクターが、とりわけ子どもの権利との関連で、企業の社会的責任に関する国際的および国内的基準を遵守することを確保するための規則を採択しかつ実施するよう、勧告する。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された当該枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、反差別法の改正、とくにその適用範囲の拡大のために締約国が努力していること、および、処遇均等オンブズマン事務所を設置する計画があることに留意する。しかしながら委員会は、障害のある子ども、子どもの移民および難民ならびにロマの子どものような民族的マイノリティの子どもに対する差別が蔓延していることを依然として懸念するものである。委員会はまた、ロマの社会的排除および構造的差別が、ロマの子どもの有害物質濫用の増加、精神保健上の問題および劣悪な生活水準につながっていることも懸念する。 26.委員会は、締約国に対し、障害のある子ども、子どもの移民および難民ならびに民族的マイノリティの子どもに対するあらゆる形態の差別と闘う努力を強化するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、とくにメディアおよび教育制度を通じ、差別の防止および根絶を高い公的優先課題と位置づけるよう勧告するものである。締約国はとくに、国家ロマ政策にしたがい、ロマに対する民族差別およびその社会的排除と闘うためにとられる措置を強化し、かつ、すべてのロマの子どもに対して十分な生活水準を確保するべきである。委員会は、締約国が、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載するよう勧告する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、子ども福祉法(2007年)に、福祉措置に関する子どものニーズの評価における子どもの最善の利益概念が含まれていることを歓迎するものの、締約国の他の法律には子どもの最善の利益に対する包括的言及がないこと、および、子どもに影響を与える決定においてこの原則が十分に理解されまたは考慮されていないことを遺憾に思う。 28.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、子どもおよび青少年の参加に関する欧州評議会の政策レビューに、締約国が試行国として参加していることを歓迎する。委員会はまた、子ども福祉法に基づき、子どもがその年齢に関わらず意見を聴かれる権利を有していることも歓迎するものである。しかしながら委員会は、行政手続法によれば自己に影響を与える事柄について個別に意見を聴かれる権利を有するのは15歳以上の子どもだけであること、外国人法上、12歳未満の子どもは原則として意見を聴かれていないように思われること、および、監護事案において子どもが十分に意見を聴かれていないことを、懸念する。委員会はまた、意見を聴かれる障害児の権利が適正に実現されていないことも懸念するものである。委員会はさらに、12歳に達した子どもを法廷外で聴聞するための代替的方法が十分に活用されていないこと、および、このような子どもが口頭審理への出席を強制される場合があることを、懸念する。 30.委員会は、締約国が、国内法で定められた年齢制限を廃止し、18歳未満のすべての子どもが、その子どもの成熟度にしたがい、自己に影響を与える司法上および行政上の手続(監護事案を含む)において適正に意見を聴かれることを確保するよう、勧告する。子どもは、子どもの最善の利益の原則を考慮に入れ、子どもにやさしい方法で意見を聴かれるべきである。障害のある子どもを含む子どもの意見は、その子どもの年齢および成熟度にしたがい、正当に重視されるべきである。これ(訳注)には、とくに、公開法廷ではなく秘密が守られる条件下で子どもの意見を聴くこと、および、ビデオ/オーディオ機器を活用することが含まれる場合がある。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するものである。 (訳注)子どもにやさしい方法による意見聴取を指すと思われる。 C.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 31.委員会は、有害物質濫用に関連した問題を有する親と暮らしている子どもが多いこと、および、子どもとともに働く専門家がとくにこれらの子どもに対して十分な注意を払っておらず、かつこれらの子どもに対応するための実務的知識をしばしば有していないことを、懸念する。委員会はまた、監護紛争がきわめて長く続くことに対する前回の懸念(CRC/C/15/Add.272、パラ26)もあらためて表明するものである。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 資源を増加させ、家族カウンセリングおよび親教育を提供する社会サービスを強化するとともに、子どもとともに働くすべての専門家(ソーシャルワーカーおよび保健ケア専門家を含む)の研修を行なうこと。 (b) とくに有害物質濫用に関連した問題を有する家族との関連で、防止サービスならびに早期支援介入措置を強化すること。 (c) 離婚を考えている親のための家族調停サービスを増進させるとともに、子どもの監護をめぐる紛争が、子どもの最善の利益を考慮しながら適切な期間内に解決されることを確保すること。 家庭環境を奪われた子ども 33.子ども福祉法が、とくに子どもの養護受け入れおよび緊急措置に関するいっそう厳密な規定を置き、かつ代替的養護は第一次的には小規模かつ家庭的な単位で提供されるよう求めていることは歓迎しながらも、委員会は、実際には施設に措置される子どもの人数(連続しての措置を含む)が増えていること、里親養護への措置件数が不十分であること、ならびに、代替的養護への措置、養護計画、および措置決定の定期的再審査に関する基準を定めた全国的な統一基準が存在しないこと、および、代替的養護施設の監督および監視が不十分であることを、懸念する。委員会はまた、親のケアを受けていない子ども(施設の子どもを含む)のための効果的な苦情申立て手続が存在しないことも懸念するものである。委員会はさらに、施設の子どもが必ずしも普通教育に統合されておらず、かつ必要な精神保健サービスを必ずしも受けていないことを懸念する。さらに委員会は、子どもが実の家族との再統合を目的とする代替的養護を受けている間、実の家族に対して支援が行なわれていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 代替的養護を必要とする子どもが施設ではなく家庭的養護および里親家庭養護に措置されることを確保するための努力を強化するとともに、とくに里親養護および里親の支援のための資源を増加させることにより、公的養護を受けている子どもの連続的措置を回避するための措置をとること。 (b) 代替的養護の現場で子どもとともに働くすべての専門家(里親および監督担当者を含む)に対し、研修を行なうこと。 (c) 代替的養護の対象とされる子どものアセスメントおよび措置、養護計画、および措置決定の定期的再審査に関する全国的な統一基準を定めるとともに、里親ホームまたは施設に措置された子どもの状況が十分な監督および監視の対象とされることを確保すること。 (d) 親のケアを受けていない子どもを対象とした、効果的な、よく周知された、独立したかつ公平な苦情申立て機構が整備されることを確保するために必要な措置をとること。 (e) 施設の子どもが普通教育に統合され、かつ必要に応じて精神保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (f) 可能なときは、代替的養護を受けている子どもがやがて実の家族と再統合できるようにする目的で、実の家族に対して支援を提供すること。 委員会は、締約国に対し、子どもの代替的養護に関する指針〔PDF〕を考慮するよう勧告するものである。 体罰 35.委員会は、子どもの体罰を解消するための国家行動計画(2010~2015年) を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに家庭において体罰が引き続き容認されかつ用いられていることを、依然として懸念するものである。 36.委員会は、締約国が、とくにおとなおよび子どもの組織的な意識啓発、適切な、積極的かつ非暴力的な形態のしつけの促進、および、――特別な支援を必要とする子どもの親および子育て実践に関して困難を有している親に特別な注意を払いながらの――継続的な監視を通じ、あらゆる場面における体罰を禁じた法律の全面的実施を確保するよう、勧告する。 児童虐待およびネグレクト 37.委員会は、児童虐待およびネグレクトに関わる事案またはこれに関する政府の政策について締約国から情報が提供されなかったことを遺憾に思う。 38.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮しながら、さまざまな形態の児童虐待およびネグレクトの発生件数および蔓延率ならびに児童虐待およびネグレクトを防止するための国の政策に関する研究を実施するとともに、次回の定期報告書でこの点に関するいっそう詳しい情報を提供するよう、勧告する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 39.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所および世界保健機関(WHO)、ならびに、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所および国連薬物犯罪事務所を含む他の関連の機関ならびに非政府組織(NGO)パートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 40.障害のある人の個別ニーズに基づいた援助を強調する障害者サービス援助法改正(2009年)、および障害政策プログラム(2010~2015年)は歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どものための保健ケア・サービスの供給が一部自治体で不十分であること、および、この点について締約国が財政的コミットメントを示していないことを、依然として懸念する。委員会はまた、物理的環境および公共交通機関における障壁のために障害のある子どもが移動を制限されており、したがって障害のある生徒の隔離水準が高いことも懸念するものである。さらに委員会は、教員が障害のある子どもとともに働く十分な訓練を受けておらず、かつ、障害児がいる家族が、その子どものリハビリテーションを支援するための十分、良質かつ先端的な支援または教育的指導を受けていないことを懸念する。 41.条約第23条〔および〕障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 良質な保健ケア・サービス、公共建築物および交通機関にアクセスし、かつ普通学校で教育を受ける障害児の平等な権利を保障する、ホリスティックな法律上および政策上の枠組みを確立すること。 (b) 障害のある子どものために十分な数のパーソナル・アシスタント、通訳サービスおよび移送サービスを確保すること。 (c) 障害および特別なニーズを有する子どもを教育する、教員の能力を向上させること。 (d) 障害児がいる家族に対して教育的指導を提供することにより、これらの家族を支援すること。 (e) 障害のある人の権利に関する条約の批准手続をさらに迅速に進めること。 健康および保健サービス 42.委員会は、子どもおよび若者を対象とした健康診断および健康教育を導入した保健ケア法の採択(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、学校に常駐する医療職員(子どもに心理カウンセリングを提供する職員も含む)が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、有害物質濫用の問題を有する妊婦が治療へのアクセスに関して困難を抱えていること、および、有害物質を濫用する母親のもとに生まれた子どもの発達に対して締約国が十分な注意を向けていないことも、懸念する。 43.委員会は、締約国が、学校に医療職員(子どもに心理カウンセリングを提供する心理学者を含む)が常駐するようにすることを勧告する。委員会はまた、締約国が、有害物質濫用の問題を有する妊婦が時宜を得た良質な医療上の援助および治療を受け、かつ、そのような母親のもとに生まれた子どもに対して援助および支援が提供されることを確保するようにも、勧告するものである。 精神保健 44.委員会は、抑うつ率が高いことおよび自殺件数が多いこと(近年起きた2件の学校発砲事件を含む)、ならびに、子どものための精神保健サービスが不十分であることを懸念する。委員会はまた、注意欠陥・多動性障害および注意欠陥性障害の診断を受けた子どもに対する精神刺激薬の処方が減少していないことも、懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものための精神保健サービスを強化し、かつ必要な検査および治療へのアクセスを保障するとともに、自殺防止措置を増強すること。 (b) 子どもに対する精神刺激薬の処方を監視するとともに、注意欠陥・多動性障害および注意欠陥性障害の診断を受けた子どもならびにその親および教員が、より広範な心理的、教育的および社会的措置および治療にアクセスできるようにするための取り組みを行なうこと。 (c) 子どもが行なう可能性のある精神刺激薬の濫用を監視する目的で、物質の種別および年齢にしたがって細分化されたデータの収集および分析の実施を検討すること。 母乳育児 46.委員会は、母乳育児推進のためのフィンランド国家行動計画が2009年に採択され、かつ母乳育児推進フォローアップ部会によってその監視が行なわれていることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の母乳育児率が、上昇したとはいえ低いままであることを依然として懸念するものである。委員会はまた、現在、母乳育児に関する情報の大多数はオンラインでのみ入手可能であり、母親が他の手段を通じて母乳育児情報にアクセスできないこと、ならびに、母乳育児の重要性に関する意識および教育が欠けていることも、懸念する。 47.委員会は、締約国が、母乳育児の重要性および人工栄養のリスクについての資料にアクセスできるようにし、かつこれらの点に関して公衆の教育および意識啓発を図ることにより、母乳育児を促進するための努力を強化するよう、勧告する。 思春期の健康 48.委員会は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスの促進に関する行動計画(2007~2011年)が策定されたこと、および、国家公衆衛生機関内に子ども・青少年健康局が創設されたこと(2007年)を歓迎する。しかしながら委員会は、青少年によるアルコールおよびタバコの濫用の水準が高いことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、アルコールおよびタバコの悪影響に関する意識啓発を図ることによって青少年がアルコール、タバコおよび有害物質を濫用しないようにし、かつ、子どもおよび青少年の健康的なライフスタイルおよび消費パターンに対する貢献を確保する目的でマスメディアの関与を得るための措置を強化するよう、勧告する。 生活水準 50.委員会は、在宅保育手当および私的保育手当に関する法律の改正(2010年)により、在宅保育手当が増額され、自営業者の受給資格が拡大され、かつ父性休暇期間が延長されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、貧困下で暮らす子どもおよび有子家族(とくに3歳未満の子どもがいる家族)の数が過去10年間で倍以上になり、かつ、子ども手当および親手当が事実上減額されてきたことを、依然として懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた家族(若年家族、ひとり親および多子家族の子どもをを含む)を支援し、かつ十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障するための努力を強化するよう、求める。委員会はまた、子どもの貧困に対する効果的対応がとられるようにする目的で、締約国が、子どもの貧困に関するデータの包括的な収集および分析のために必要な措置をとることも、勧告するものである。 E.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 52.委員会は、脆弱な状況に置かれたさまざまな集団の子ども(ロマの子どもを含む)が教育制度において直面している困難(不登校率の高さ、低成績、特別教育学級に措置される子どもの多さおよび中退率の高さを含む)について懸念を覚える。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもおよびその家族に対してよりよい支援を提供する目的で、さまざまな文化および子どもが直面している困難に関する教員の知識を増進させ、かつ、学校におけるロマ人の専門家(とくに特別ニーズ補助教員)の採用を増やすこと。 (b) 教員の養成および研修ならびに学校カリキュラムにマイノリティの権利を含めること。 (c) 子どものフィンランド語活用能力および社会的スキルを向上させ、ならびに、学校への移行をいっそう容易にし、かつ学校におけるつまづきおよび中退を防止する目的で、子どもが保育プログラムに出席していない親に対し、子どもを乳幼児期発達プログラムに参加させるよう奨励する対象を増やすこと。 54.子どものいじめを防止するためのプロジェクトが設けられたことは歓迎しながらも、委員会は、女子に対するセクシュアルハラスメントおよびジェンダーを理由とするいやがらせが広く行なわれており、かつ、インターネット上のいじめおよび携帯電話によるいじめを含むいじめが行なわれている旨の報告があることを、依然として懸念する。委員会は、学習に関する強化支援または特別支援を導入した基礎教育法改正(2010年)を歓迎しつつも、締約国の子どもの優秀な学業成績にも関わらず、多数の子どもが学校に満足していないことを依然として懸念するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態のいじめおよびいやがらせと闘うためにとられる措置(教員および学校で働くすべての職員ならびに生徒の、学校における多様性を受け入れる能力を向上させ、かつその紛争解決スキルを向上させることなど)を増進させること。 (b) 学校における子どものウェルビーイング(意見を考慮される権利を含む)にいっそうの注意を払うとともに、学校に対する子どもの不満の原因に関する調査を実施すること。 (c) 前掲の勧告の実施に際し、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮すること。 乳幼児期のケアおよび教育 56.委員会は、専門家が不在であること、職員ひとりあたりの子どもの人数が多いこと、および、最低基準が定められていないために保育/就学前教育の質が低いとされていることなど、乳幼児期の教育に欠点があることを懸念する。小学1年生および2年生に対して朝および午後の活動が用意されていることは歓迎しながらも、委員会は、そのような活動の提供が自治体に対して要求されていないため、親が仕事と家庭生活のバランスをとりにくくなっていることを懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、乳幼児期に関するすべての規定をまとめた、乳幼児期のケアおよび教育に関する新たな一般的法律を起草するよう、勧告する。当該法律は、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(2005年)を考慮に入れ、かつ欧州委員会「乳幼児期の教育およびケアに関する報告書:われらがすべての子どもに対し、明日の世界のための最善のスタートを」(COM (2011 66)、2011年2月17日)に基づいて、子どもの権利の視点を強化するものであるべきである。委員会はさらに、とくに、集団の規模が限定され、かつ「保育の継続性」関係がよりよい形で保障されるように保育職員の増員および職員対子ども比の改善を図ることによって、乳幼児期教育プログラムの実施率および質を向上させるよう、勧告する。 F.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 性的搾取 58.委員会は、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約施行法(2011年)および児童ポルノ頒布制限措置法(2007年)の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、デジタルメディア(インターネット)における子どもの性的虐待およびセクシュアルハラスメントについての研究が行なわれていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准手続に時間がかかっていることも遺憾に思う。 59.委員会は、締約国が、デジタルメディア(とくにインターネット)における性的虐待およびセクシュアルハラスメントの規模について研究するとともに、デジタルメディアにおける暴力を摘発し、加害者を処罰し、かつこれと闘うために必要な法律上、行政上および政策上の措置をとるための体制を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくにインターネット上の子どもの性的搾取と闘う目的で十分な資源を配分しかつ政府の行動および調整を増進させるとともに、防止、被害を受けた子どもの回復および再統合のためのプログラムおよび政策が、1996年および2001年の「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」(それぞれストックホルムおよび横浜)ならびに2008年の「第3回子どもおよび青少年の性的搾取に反対する世界会議」(リオデジャネイロ)で採択された成果文書にしたがったものとなることを確保するようにも、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准をいっそう速やかに進めるよう、促す。 子どもの庇護希望者および難民 60.委員会は、庇護政策および難民政策において子どもの最善の利益の原則を考慮する2006年移住政策プログラム、および、保護者のいない子どもの家族再統合について定め、かつ医学的診断による年齢鑑別手続を法律による規制の対象とした外国人法改正(2010年)に留意する。しかしながら委員会は、締約国で庇護を求める子どもを収容する慣行について依然として懸念を覚えるものである。さらに委員会は、16歳以上の庇護希望者が受入れセンターの成人棟に収容されること、および、保護者のいない未成年者のための精神保健サービス、治療ケアおよび精神医学的ケアが不十分であることを、懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)に照らし、庇護希望者の年齢について疑問があるときは灰色の利益を認めて当該庇護希望者を子どもとして扱うとともに、庇護希望者が年齢鑑別結果について異議を申し立てられるようにすること。 (b) 16歳以上の庇護希望者を受入れセンターの成人棟に収容しないようにするとともに、保護者のいない未成年者に対して十分な精神保健サービス、治療ケアおよび精神医学的ケアを提供すること。 (c) 子どもの庇護希望者の収容が、それに代わる措置を適用することができない場合に、最後の手段として、可能なもっとも短い期間で行なわれることを確保すること。 ヘルプライン 62.委員会は、締約国が、電話およびインターネットを用いた子どものためのヘルプラインに対する恒久的かつ十分な資金を確保するとともに、欧州連合「子どもの権利に関する報告書」にしたがって116 000の欧州統一番号を実施するよう、勧告する。委員会はまた、子どもヘルプラインが子どもの保護のための基本的手段であり、かつ子どもに対する暴力の防止および摘発に向けた手段であることを、締約国が認めるようにも勧告するものである。 先住民族集団およびマイノリティ集団に属する子ども 63.委員会は、ロマ・マイノリティおよびサーミ先住民族集団に属する子どもがロマニ語およびサーミ語による保健サービス(精神保健サービス、治療ケアまたは精神医学的ケアを含む)を受けていないことを懸念する。委員会はまた、ロマニ語およびサーミ語による教育サービスおよびレクリエーション活動の水準が不十分であること、ならびに、サーミ語によるこのようなサービスおよび活動がその主要居住地域に限定されていることも、懸念するものである。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国の計画およびプログラムへの、ロマおよびサーミの子どもの権利の統合状況を監視しかつ評価すること。 (b) ロマおよびサーミの子どもが、自己の言語による、文化的に配慮された教育および保健ケア・サービス(サーミのホームランド外に住んでいるサーミの子どものためのものを含む)に対する権利を有することを確保すること。 (c) とくに学校カリキュラム、教員の養成および研修、教員向け資料の作成およびサーミの子ども向けのメディア・コンテンツの提供に関して、スウェーデンおよびノルウェーの政府といっそう緊密に協力すること。 (d) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を考慮すること。 (e) 独立国における先住民族および種族民に関するILO第169号条約(1989年)を批准すること。 G.国際人権文書の批准 65.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ加盟国となっていない中核的国連人権文書、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、拷問等禁止条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 H.フォローアップおよび普及 フォローアップ 66.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 67.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 I.次回報告書 68.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年7月19日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 69.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/50.html
総括所見:英領香港(1996年) イギリス:第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2008年)/第5回(2016年)英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) 中国:第2回(2005年)/第3回・第4回(2013年)中国:OPSC(2005年)/OPAC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.63(1996年10月30日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年10月2日および3日に開かれた第329~331回会合(CRC/C/SR.329-331参照)においてグレートブリテン・北アイルランド連合王国直轄地域(香港)の第1回報告書(CRC/C/11/Add.9) を検討し、1996年10月11日に開かれた第343回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国が、その報告書および委員会の質問票に対する文書回答の双方を期限通りに提出したことに対し、謝意を表する。委員会は、冒頭発言において代表団が情報提供を行なったこと、および委員会における対話が協力の精神に裏打ちされていたことを歓迎する。 3.委員会は、香港地域が、1997年7月1日に中華人民共和国に返還される際に主権の変更が行なわれることをめぐって、特別な状況に直面していることに留意する。委員会はまた、報告の準備を始めとする香港に対する条約の継続的適用に関わる問題が、合同連絡グループを通じて英国政府と中国政府との議論の対象になっていることにも留意する。 B.積極的側面 4.1993年に親子条例が制定され、かつて非嫡出子に適用された法的不利益が取り除かれたことが留意される。委員会はまた、障害をもつ者の地域への統合を目的とした障害差別条例が採択されたことも歓迎する。 5.委員会は、保護者が家庭で子どもを付添いなしの状態に置いておくことの危険に取り組むため、政府がさまざまな措置をとっていることを歓迎する。 6.社会福祉庁が、とくに子どもの虐待に関する通報を受けることを目的としたホットラインをどのように運営しているかに関する情報は、評価の意とともに留意される。委員会はまた、思春期の子どもたちに共通の健康問題に関する意識を促進するためにとられた措置、およびこの問題に関する電話に対応するために保健庁中央保健教育部にホットライン・サービスが設置されたことにも留意する。思春期の子どもたちに共通の健康問題に関する訓練事業において、中等学校の生徒がヘルス・アンバサダー(健康大使)に任命されていることも、大いなる関心とともに留意されるところである。同じように、学校に通う6~18歳の子どもの健康上のニーズに対応するための事業である「生徒保健サービス」が新たに開始されたことは、温かく歓迎される。健康の促進および疾病の予防のための努力を前進させることを目的として、「保健促進基金」が設立されたことについても同様である。 7.委員会は、病院をより赤ちゃんおよび子どもに優しいものにするために行なわれた取組みに、評価の意とともに留意する。このような取組みには、病院の小児科病棟の施設の改善のためにとられた措置、および小児科病棟の子どもたちには遊び場を、子どもが入院している親には子どもとともに過ごすための場を提供するためにとられた措置が含まれる。委員会はまた、とくに条約第26条および27条の実施に際して利用可能な給付との関わりで、「包括的社会保障扶助計画」に向上が見られたことも歓迎する。 8.委員会は、大学によって現在進められ、かつ政府が資金を出している、子どもの権利に関する5つの調査プロジェクトに関して代表団から提供された情報を歓迎する。 9.委員会は、香港警察に対する苦情申立てを検討するための独立機関を設置するよう奨励する。 C.主要な懸念事項 10.1994年9月に条約の適用範囲が香港にも拡大された際、英国政府は条約に対し、香港地域に適用されるさらなる留保を付した。締約国が留保の撤回をなお決定していないことは、とくにそれが子どもの労働時間、少年司法および難民の問題に関わっているだけに、委員会の遺憾とするところである。 11.委員会は、人権法の採択を歓迎するものの、同法が定着していないことに留意する。委員会は、その条文が子どもにも適用される2つの主要な人権規約を承認する規定が同法に含まれていることは認知しながらも、同法において子どもの権利に関する条約への具体的言及がないことを、遺憾に思うものである。この点に照らし、かつ、政府が機会均等法を採択しかつ機会均等委員会を設置するために積極的な措置をとったことを踏まえ、ジェンダーの平等に関して追求されたのと同様の戦略が子どもの権利に関してとられていないことは、委員会の遺憾とするところである。政府が、条約の原則および規定に照らして定期的に立法および政策を再検討する姿勢を見せていることを踏まえ、委員会は、その再検討の過程で、子どもの権利に関する独立の監視機関を設置する可能性、および子どもの権利に関する立法の採択に当たって系統だったかつホリスティックなアプローチを追求する可能性に対して充分な優先順位が与えられていないように思えることを、懸念する。 12.条約の規定を実施するための政策および事業を遂行することを目的としたさまざまな機構の設置に関して積極的な措置がとられたことには留意しながらも、委員会は、子どもの権利に優先順位が与えられることを確保するための、関連の政府機関の間の調整活動が充分かどうか、依然として懸念する。 13.委員会は、条約の一般原則、とくに第3条および第12条で掲げられた原則の全面的な実施を確保するために充分な措置がとられていないことを、懸念する。このことは、とりわけ、子どもの権利を促進しかつ保護するための政策的措置の選択、立案および適用に関して当てはまる。この点で、政策の立案および意思決定の過程に、子どもに与える影響の分析を組み入れるシステムがいまだに整えられていないことが、留意される。また、委員会の見解では、子どもが家族、学校および社会において果たすべき役割についての見方に関わってある種の態度がいまだに残っていることにより、香港における条約第12条および第13条の規定の実施が速やかに受け入れられない可能性がある。 14.中国からの不法移民の子どもの状況、およびその状況のために、香港と中国とで家族が引き裂かれている問題に関して生ずる諸問題に関して、委員会は、このような子どもおよび家族のための滞在許可件数の引上げ幅(105件から150件)は、現在中国に6万人いると推定されている、1997年7月1日以降香港に居住する権利を有する可能性がある子どものニーズを満たすには明らかに不充分であることを懸念する。 15.子どもの虐待、放任および子どもに影響を与える事故の多発の問題に取り組むための措置がとられたにも関わらず、これらの問題はなお懸念を生ぜしめる余地を残している。同じように、青年の自殺の問題も含めた思春期の子どもたちの精神的健康の問題は、委員会の深刻な懸念の対象である。 16.委員会は、母乳育児を奨励するための措置が不充分なように思えることを、懸念する。委員会は、赤ちゃん向けの粉ミルクが、この件に関する国際的指針に逆行して病院で無料配布され続けていることに留意する。同じように、とりわけ育児休暇および子育て中の母親の雇用条件に関する法規定がどの程度条約の原則および規定と両立しているかは、隠然として委員会の懸念の対象である。 17.委員会は、とくに学校カリキュラムの中で人権教育に必要な地位を与えることとの関わりで、条約第29条の実施に対して充分な注意が払われてきていないように思えるとの見解をとるものである。 18.香港の収容センターにおけるベトナム人の子どもの取扱いに関わる幅広い問題は、委員会が深く懸念するところである。委員会の見解では、このような子どもたちは過去も現在も、同地域への難民のさらなる流入を抑えようとする政策の犠牲になっている。状況が複雑であることは論を待たないが、このような子どもたちの収容を続ける政策は条約と両立しない。 19.加えて、委員会は、刑事責任年齢が低いことは条約の原則および規定と両立しないという見解をとるものであり、かつ、刑事責任年齢を引き上げないという決定が行なわれたことを遺憾に思うものである。 D.提案および勧告 20. 条約の原則および規定を実施するためには、とくに「子どもの最善の利益」の原則、および、政府が国際的な場において、世界人権会議で採択された最終文書も含めて「子ども最優先の原則」に同意してきた事実に照らして、子どもの問題に優先順位を与えることが必要である。したがって、政策の選択肢および提案を立案するに当たっては、同時にそれが子どもに与える影響を評価することにより、意思決定担当者が、政策立案に当たって子どもの権利への影響をよりよく承知できるようにするよう、勧告する。また、委員会が勧告する、子どもの権利の実施に対するホリスティックかつ包括的なアプローチが国内法において反映され、かつ正当に考慮に入れられるようにするための措置をとることも、提案されるところである。委員会は、子どもの権利に関わる政府の政策の実施を監視することを具体的な目的とした、独立機構の設置を勧告する。独立機構は、子どもの権利のために行なわれた活動を公衆および立法機関に知らせる上でも重要な役割を果たしうることが、留意される。委員会はまた、子どもの権利を、香港の主権の委譲に関わる問題についての議論で全面的に取り上げ、かつ、この件および関連の問題に関する合同連絡グループでの対話で高い優先順位を与えるよう勧告する。 21.委員会は、香港における子どものための包括的戦略の発展との関わりも含め、条約の監視および実施に市民社会および非政府組織をより緊密に関与させるための努力を奨励する。 22.子どもの権利を促進しかつ保護するための継続的努力、とくに条約第4条の実施に関わる努力の一環として、委員会は、子どもの権利に関する政策および事業の制度的調整を行なうための現行システムが効果的かどうかについて、とくに子ども虐待との関わりでさらなる評価を行なうよう勧告する。さらに、委員会は、年齢層による統計的データの収集および分析が条約第1条の規定に従って行なわれるようにするよう、提案したい。委員会はさらに、条約のすべての原則および規定の実施の進展を監視するための指標の発展および活用について、研究を実施しまたは奨励することを検討するよう、提案する。 23.香港の住民の間で人権および子どもの権利に関する意識を高めるための継続的努力との関わりで、委員会は、一般公衆に子どもの権利に関する条約について知らせ、かつ専門家の研修事業に人権および子どもの権利についての教育を盛りこむためにさらなる措置をとることを検討するよう、提案する。委員会は、将来の市民意識調査に、公衆が条約ならびにその原則および規定についてどの程度の意識および理解を持っているかに関する質問を盛りこむよう、奨励する。 24.委員会は、とくにジェンダーおよび民族的出身に基づく差別ならびに障害児および婚外子に対する差別に関して、差別の防止、差別との闘いおよび寛容の促進に対する意識を高めるためにとられた措置の効果を評価することをさらに検討するよう、提案したい。 25.条約第12条の実施に関して、委員会は、子どもが権利の主体であるという観点から、家庭、学校および社会における子どもの参加について、この問題についての勧告を立案する方向での研究を行なうよう奨励する。 26.委員会は、とくに香港と中国とで引き裂かれている家族に関して困難が生じていることとの関連で、中国からの不法移民の子どもの問題に取り組むため、さらなる措置をとる必要がある旨、勧告する。家族の再統合のための待機期間を短縮し、滞在許可定数を引き上げ、かつ将来生じるであろう問題に対処するための他の措置を検討するために、子どもの最善の利益に照らして緊急に行動を起こすべきだというのが委員会の見解である。 27. 委員会は、子ども虐待の問題に対処するために行なわれている重要な努力を、いま一度認知したい。にも関わらず、委員会は、このような子どもの権利侵害の防止のためには社会の態度がさらに変化する必要があるとの見解をとるものである。このような変化は、体罰ならびに身体的および心理的虐待を受け入れないことのみならず、子どもの固有の尊厳をより尊重することについても必要となる。 28.最近、児童虐待のケースに対応するためソーシャルワーカーの採用人数が増加しているにも関わらず、委員会は、専門家ひとり当たりの仕事の負担がいまなお高すぎる可能性があり、このような問題に取り組むためいっそうの措置をとるべきかどうか、さらに研究する価値があるとの見解をとるものである。委員会は、家庭で子どもを付添いなしの状態に置いておくことを防止するための措置としても、地域における保育センターの設置に高い優先順位を与え、その設置をさらに熱心に追求するための努力を行なうよう、奨励する。加えて、委員会は、家族計画教育事業を将来再検討する際に、子ども虐待の防止に関する同事業の効果が確実に評価されるようにするための取組みを行なうよう奨励する。 29. 障害児の状況の改善に関して、委員会は、学校の構造の改革への投資、および障害児のニーズに合わせて教員が授業方法を調整しかつ適応することを援助するための研修の支援を始めとして、障害児を普通学校に統合するための努力を行なうよう、奨励する。 30. 委員会は、母乳育児を促進しかつ奨励する政策を支えるためにとられている措置の効果を調査するよう、奨励する。病院で赤ちゃん向けの粉ミルクが無料配布されている問題、および条約で規定されている母乳育児奨励義務と雇用条件とが両立しているかどうかの問題を、そのような見直しにおいて欠かさないよう勧告されるところである。 31.委員会は、学校におけるプレッシャーと思春期の子どもの健康問題との関連の可能性を、報告に関する議論の中でこれらの問題に関して表明された懸念を踏まえて調査するよう提案する。委員会はまた、若者の自殺の理由および子どもの自殺を防止するための事業の効果もさらなる研究に値するのではないかとも提案する。 32.委員会は、子どもの権利に関する条約についての教育も含めた人権教育を、すべての学校のコア・カリキュラム課目として導入するよう勧告する。委員会は、そのためには学校の時間割においてこの課目に充分な時間を割り当てる必要があることに、留意する。委員会はまた、子どもに生活の手段を備えさせ、かつ子どもの意思決定および人権の視点に立った分析的思考能力を奨励する上でこのような取組みがどの程度効果的だったかを判断するため、人権に関する意識啓発および人権教育についての評価を将来行なうようにも提案したい。委員会はまた、条約第12条の精神を踏まえ、懲戒措置およびカリキュラムの発展に関する議論への参加も含めて、学校における子どもの参加により高い優先順位を与えるよう勧告したい。条約第31条がより全面的に実施されるようにするための方法および手段についても、さらなる研究の価値があるように思える。 33.収容されているベトナム人の子どもの状況に関して、委員会は、過去の誤ちが今後繰り返されないようにするため、この問題についての現在のおよび以前の政策の評価を行なうよう勧告する。委員会は、収容所に残っている子どもに対しては、条約の原則および規定に照らした解決策を見つけなければならない旨、勧告する。したがって、彼らの収容状況の著しい改善を確保するための措置が直ちにとられなければならず、かつこのような子どもたちを将来的に保護するための他の措置が実行に移されなければならないというのが、委員会の見解である。 34.委員会は、刑事責任年齢の問題に関わる立法を、条約の原則および規定に照らしてその年齢を引き上げる方向で、見直すよう勧告する。 35.委員会は、締約国報告書、委員会における議論の議事要録およびこの総括所見を一般に幅広く配布しかつ普及することを勧告する。 36.委員会は、政府が、この総括所見に掲げられた提案および勧告を実現するためにとった措置に関する進展報告書を、1997年6月末までに作成するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月22日)。
https://w.atwiki.jp/endlesswiki/pages/74.html
AND ENDLESS summer edition 2007 子どものナイフ the Children Dagger 2007.8.23~9.2 シアターΧ 【キャスト】 ヴォルフィー:西田大輔 コンスタンツェ:田中良子 ジョルジュ:村田雅和 スゥイージー:芳賀恵子 クレメンティ:山田能龍 サリエリ:佐久間祐人 ミッケル:伊藤寛司 シカネーダー:加藤靖久 バルバラ:中川えりか ランゲ:岩崎大輔 レオポルト:村田洋二郎 イリシアス:一内侑 ヴァン:竹内諒太 オーギュスト:八巻正明 アウエル:安藤繭子 女 :宮本京佳 男 :黒川賢一 【あらすじ】 1791年12月5日——。 ウィーンの自宅にて ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 死去。 彼の死にまつわる謎は多い。 そしてこれはもう一つの話。 もう一つの部屋で行われていた 彼にまつわる大事なもう一つの話。 ——そのナイフを、私は確かに見たんだ。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/140.html
総括所見:ウクライナ(第3~4回・2011年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)OPSC(2007年)/OPAC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/UKR/CO/3-4(2011年4月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月28日に開かれた第1602回および第1603回会合(CRC/C/SR.1602 and 1603参照)においてウクライナの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/UKR/3-4)を検討し、2011年2月3日に開かれた第1611回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/UKR/3-4)および委員会の事前質問事項(CRC/C/UKR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、報告書の自己批判的性格によって締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことを称賛する。委員会は、締約国の部門横断型の代表団との建設的かつ開かれた対話について評価の意を表明するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/UKR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法上その他の措置を積極的な対応として歓迎する。 (a) 後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律(2010年12月)。 (b) 児童ポルノ対策法(2010年1月)。 (c) 両親を失った子どもおよび親のケアを奪われた子どもの社会的保護に関する法律(2005年)。 (d) 子どものための国家行動計画法を通じた、子どものための国家行動計画(2010~2016年)の策定。 (e) HIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画(2010年5月)。 (f) 子どものホームレス化およびネグレクトの防止のための国家プログラム(2006~2010年)。 5.委員会はまた、以下の文書について批准または加入が行なわれたことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年2月)。 (b) 死刑の廃止を目指す、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(2007年7月)。 (c) 扶養義務に関する判決の承認および執行に関する条約(2007年4月)。 (d) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約(2007年4月)。 (e) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(2006年)。 (f) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2010年9月)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、前回の締約国報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.191)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1)を実施するために締約国が行ない、前向きな成果をもたらしてきた努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の懸念表明および勧告の多くについて不十分なまたは部分的な対応しか行なわれていないことを遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見の勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの(資源配分、データ収集、条約およびその議定書との国内法の調和、拷問および不当な取扱い、少年司法の運営、家庭環境を奪われた子ども、性的搾取および虐待ならびにマイノリティ集団の子どもに関わるものを含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告について十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.条約その他の国際条約と国内法との間に矛盾がある場合は前者が優越することを歓迎し、かつ子ども保護法(2001年)および児童養護の施設、サービスおよび専門施設に関する法律の改正(2007年)に留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する国内法が依然として不十分であり、条約およびその選択議定書を立法面でさらに実施する余地が相当あることを懸念する。 9.委員会は、締約国に対し、すべての国内法の包括的見直しを行なって条約の全面的一致を確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、条約およびその選択議定書の規定を全面的に編入した包括的な子どもの権利法の採択を検討するよう、勧告するものである。 調整 10.委員会は、2010年12月に開始された行政改革(大統領令第1085/2010号)を背景として、子どもに関わる締約国の政策およびプログラムの持続可能性に課題が生じていることを懸念する。行政の改革および合理化の必要性は認めながらも、委員会は、家族・青少年・スポーツ省が解散し、その職務が教育科学・青少年・スポーツ省の下に置かれた国家青少年・スポーツ局に移管されたことおよび解散した省と結びついていた中央政府諸機構が解体されたことにより、子どもの保護の分野における既存の専門的および技術的能力が脅かされていることを、とりわけ懸念するものである。加えて委員会は、当該改革に先んじて、子どものケアおよび保護に関わる責任および職務の移譲についての明確な計画が策定されなかったことに、懸念とともに留意する。 11.委員会は、行政改革により、子どものための政策の効果的な調整および実施がさらに阻害され、かつもっとも危険な状況に置かれた子どもの支援、保護および防止のためのサービスが悪化する可能性があることを、懸念する。これとの関連で、委員会はさらに、子ども関連の国の政策の立案および実施に関わる行動を調整する省庁間子ども期保護委員会の役割が、特定の問題に関する情報交換に限定されているという報告があることを懸念するものである。委員会はさらに、同省庁間委員会が常設機関ではないことを遺憾に思う。 12.現在進行中の行政改革との関係で、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの権利について責任を負う中央および地方の政府機関についてその機能を包括的に見直すとともに、新体制において諸責任が適切に移譲されかつ明確に定義されることを確保すること。 (b) 政府の子ども政策の主要な優先事項、とくに児童養護改革の実施における継続性を確保すること。 (c) 改革にしたがって教育科学・青少年・スポーツ省による子ども政策の効果的調整を確保するとともに、これとの関連で省庁間子ども期保護委員会の役割および権限を見直すこと(高級レベルの国家機関を委員会の議長に指定することを検討し、かつ、省庁を横断した効果的調整を確保するために同委員会を常設機関とすること等の手段をとることも含む)。 (d) 前掲勧告の検討に際して国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めること。 国家的行動計画 13.委員会は、子どものための国家行動計画法を通じ、締約国が2009年に子どものための国家行動計画(2010~2016年)を採択したことを歓迎する。同法を実施するための2010年度国家プログラムが支持されたことには留意しながらも、委員会は、2010年に当該国家プログラムに配分された資金が限られていること(承認されたプログラム予算の0.3%)、および、実施面で限られた進展しか見られなかったことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、2011年については同法の実施のための資金拠出が保障されており、かつ、中央および地方のレベルで実施状況を監視するための一連の指標がユニセフの協力を得て開発された旨の、締約国代表団から提供された情報に満足感とともに留意する。 14.委員会は、締約国に対し、子どものための国家行動計画(2010~2016年)の効果的実施を確保するとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 国家行動計画を実施するための年次国家プログラムに対し、2016年まで十分な資金を配分するとともに、各年次の予算法で、同計画に対する資金拠出を独立の予算項目として確保すること。 (b) 省庁間子ども期保護委員会による諸活動の調整を確保すること等の手段により、子どものための国家行動計画の実施が効果的に監視されることを確保すること。 独立の監視 15.委員会は、議会の人権コミッショナーによって子どもの保護、平等および差別の禁止に関する特別代表が任命されたこと、および、コミッショナー事務所に子どもの保護およびジェンダーの平等担当部局が設置されたことに、積極的措置として留意する。委員会は、同コミッショナーが子ども・女性に対する暴力ならびに子ども・女性の人身取引を優先分野としたことを歓迎するとともに、ウクライナにおける子どもの権利の国による遵守および保護に関する同事務所の特別報告書(2010年)を称賛するものである。さらに、コミッショナー事務所が子どもの苦情を受理しかつ検討する権限を有しており、かつ同事務所のすべての部局にそのような苦情の審査を担当する専門家が1名ずつ配置されていることには留意しながらも、委員会は、条約およびその選択議定書の実施を審査するための具体的任務および十分な資源を与えられた独立の機構が存在しないことについての懸念(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ27)をあらためて表明する。 16.委員会は、子どもの権利の包括的かつ体系的な監視を確保する目的で、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関に地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがった個別独立の国家的機構を設置するために必要な措置をとるよう、強く勧告する。この目的のため、委員会は、締約国が、ウクライナにおける子どもオンブズマンの導入に関する法律の採択を検討するよう、勧告するものである。委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがい、締約国が、この国家的国内機構に対してその独立性および有効性を確保するための十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。 資源配分 17.委員会は、官民の制度または組織を通じて子どもに用いられている国家予算の額および割合を体系的に明らかにするよう求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ18(d))が実施されていないことを懸念する。貧困削減・防止プログラム(2010~2015年)草案には留意しながらも、委員会は、子どもおよび子どものいる家族が当該草案で目立った扱いを受けていないことを懸念するものである。加えて委員会は、必要な社会サービスの資金拠出が個々の行政圏の財政力に基づいて行なわれていること、および、締約国もこの制度が適切に実施されていないと認めていることを、懸念する。 18.委員会は、締約国に対し、子どものための資源配分に関する政策および分析を向上させ、かつ、中央および地方のレベルにおける予算配分が実際のニーズおよび実施の有効性に相関して行なわれることを確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、貧困削減改革において、低所得家庭への社会的援助および手当ならびに子どもの保護に焦点が当てられることを確保するよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、その際、子どものいる家族の貧困に対する具体的対応が貧困削減・予防プログラム(2010~2015年)で行なわれることを確保するよう、促す。 データ収集 19.委員会は、国家行動計画の実施を監督する開発情報(DevInfo)システムの設置等を通じ、子どもの保護政策を監視しかつ評価することを目的とする効果的なデータ収集システムを確立するために締約国が現在行なっている努力を評価する。にもかかわらず、委員会は、子どもに関する包括的なかつ細分化されたデータを備えた国レベルのデータベースが引き続き存在しないことを、依然として懸念するものである。とくに委員会は、拷問、ドメスティックバイオレンスその他の形態の虐待および不当な取扱いを受けるおそれがある子ども、性的搾取および虐待の被害を受けた子ども、マイノリティ集団の子どもならびに子どもの難民および庇護希望者に関する統計が存在しないことを、懸念する。 20.委員会は、年齢、性別ならびに民族的および社会経済的出身によって細分化された、子どもの権利の遵守に関する包括的データを備えた国レベルのデータベースを創設するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。とくに、当該システムにおいては、権利を侵害されやすい状況にあって特別な保護措置が必要な可能性のある子どもに十分な注意が向けられるべきである。 普及、研修および意識啓発 21.委員会は、条約に関する広報資料の現在の量が少なくかつ質も悪いこと、および、子どもに対応する専門家集団の研修が不十分であることを懸念する。とくに委員会は、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカー、教員、出入国管理官、司法関係者およびメディア代表を対象とした子どもの権利に関する研修が限られていることを、懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、公に配布するための条約に関する広報資料の量および質をさらに高めるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカー、教員、出入国管理官、司法関係者およびメディア代表に焦点を当てながら、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした条約に関する研修を強化することも、奨励するものである。 市民社会との協力 23.子どもNGO連合が設置されたことおよび国家行動計画の策定に市民社会組織の積極的参加を求めたことなど、子どもの権利の保護における市民社会の役割の強化を目的とした措置は評価しながらも、委員会は、市民社会の代表との締約国の協力が、相当程度、国際機関または民間部門の団体との協力を通じて間接的に行なわれていることを、懸念する。 24.委員会は、締約国が市民社会との直接の協力を強化するよう勧告するとともに、締約国が、市民社会(非政府組織および子ども団体を含む)が子どもの権利の促進および実施に積極的かつ体系的に関与することを求めかつ奨励するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ24)をあらためて繰り返す。これには、政策およびプロジェクトの計画段階ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成に市民社会が参加することも含まれる。 B.子どもの定義(条約第1条) 25.委員会は、前回の勧告にも関わらず、婚姻に関する法定最低年齢について男女間に差別があること(男子18歳・女子17歳)を懸念する。委員会はさらに、子どもの最善の利益にかなう場合には14~18歳の子どもの婚姻を登録することが民法で認められていることを懸念するものである。委員会はまた、性的同意に関する明確な法定最低年齢がまだ定められていない旨の懸念(CRC/C/15/Add.191、パラ25)も、あらためて表明する。 26.委員会は、締約国に対し、国内法で女子および男子双方について18歳が最低婚姻年齢とされることを確保するため、民法を改正するよう促す。委員会はさらに、締約国が、例外として認められている最低婚姻年齢を16歳に引き上げる目的で法律を見直すとともに、そのような例外的事情とは何なのかについて法律で明確に規定するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、性的同意に関する明確な法定最低年齢を確立するよう求める。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 27.委員会は、締約国で人種的動機に基づく犯罪の件数の増加が報告されていること、とくに過激な若者グループおよびスキンヘッズによる排外主義的および人種主義的活動の報告があることを懸念する。この流れで、委員会は、子ども団体および若者団体を支援する国の資金の配分において「愛国教育」が優先事項に挙げられるのが一般的であることを懸念するものである。委員会はさらに、差別の禁止の原則が、障害のある子ども、マイノリティ集団の子ども(とくにロマの子ども)、路上の状況にある子ども、HIV/AIDSとともに生きている子どもならびに子どもの庇護希望者および難民との関係で、実際上、全面的には実施されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもの権利の保護との関連における差別の禁止の原則への明示的言及が国内法にないことを懸念するものである。 28.委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもが、いかなる事由による差別もなく条約上の権利を享受することを確保するよう、促す。委員会はさらに、同国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 異文化間の対話、寛容および多様性の尊重を促進するプログラムを、子ども団体および若者団体を支援する国の資金拠出の優先的プログラムに挙げることなどにより、若者の人種主義的および排外主義的活動と闘うための効果的措置をとること。 (b) 前掲の集団に属する子どもの状況の監視を強化するとともに、これに基づき、これらの子どもおよび脆弱な立場に置かれたその他の集団の子どもに対するあらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定すること。 (c) 差別の禁止の原則、および、条約第2条に掲げられたあらゆる事由に基づく子どもに対する差別の禁止を国内法に編入すること。 子どもの最善の利益 29.委員会は、国の政策およびプログラムが子どもの最善の利益の観点から体系的に分析されていないことを懸念する。とくに委員会は、親のケアを奪われた子どもおよび法に触れた子どもに関わる法律および政策への同原則の統合が不十分であることを懸念するものである。 30.委員会は、国の政策の計画およびプログラム立案の際、子どもの最善の利益が十分に考慮されることを確保するためのシステムおよび手続を確立するよう、勧告する。委員会はとくに、少年司法および児童養護制度に関わる法律、政策およびプログラムについて、そこに子どもの最善の利益が全面的に統合されることを確保する目的で見直しを行なうよう、勧告するものである。 生命、生存および発達に対する権利 31.委員会は、締約国の乳幼児死亡率、子どもの死亡率および妊産婦死亡率が依然として高いことを懸念する。産前ケアおよび分娩直後のケアを向上させるために現在行なわれている努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、2003年以降、乳幼児死亡率が上昇していることに懸念を表明するものである。加えて委員会は、赤ちゃんにやさしい妊産婦施設の数が限られており、農村部の保健施設の8%にしか達していないことを懸念する。 32.委員会は、締約国が、産前ケア、産科ケアおよび新生児期ケアに関わる保健ケアサービスを強化することにより、乳幼児、子どもおよび妊産婦の死亡に対処するための努力を増強するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、産前ケア、産科ケアおよび新生児期ケアに従事する有資格の保健専門家を増員するとともに、これらの専門家が、子どもに敏感に対応する子育ておよび健康的なライフスタイルについての研修を受けることを確保し、かつこのような子育ておよびライフスタイルを促進するよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、プライマリーヘルスケアにおける「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブの拡大を促進するよう勧告する。締約国は、このような取り組みにおいて農村部を優先するよう促されるところである。 子どもの意見の尊重 33.養子縁組との関係で子どもの意見を聴くことを認めた家族法の修正には積極的対応として留意しながらも、委員会は、民事上および行政上の手続ならびに少年司法の運営との関係では子どもの意見が依然として聴かれていないことを、懸念する。この流れで、委員会は、立法上、行政上および司法上の決定ならびに家庭および学校において子どもの意見の尊重がどのように保障されているかに関する情報がないことを、遺憾に思うものである。委員会はさらに、2007年の勧告(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ6)を想起しつつ、コミュニティおよび公的生活への子どもの真正な参加が行なわれていないこと、および、締約国が、意思決定プロセスへの子どもの参加は依然として原則ではなく例外であると認めていることに、懸念とともに留意する。 34.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 司法上および行政上の手続の影響を受ける可能性がある子どもに意見を表明しかつ聴かれる権利を認めるため、民事訴訟法の改正を検討すること。 (b) 新たな「少年に関わる刑事司法の発展の概念」に、意見を表明しかつ聴かれる子どもの権利が公式に含まれることを確保すること。 (c) 意見を聴かれかつ表明する権利が教育法で明示的に規定されることおよび教育法が生徒評議会の設置について定めることを確保するため、教育法を見直すこと。 (d) 家庭、学校およびコミュニティにおいて意見を聴かれる子どもの権利の尊重の原則を促進し、その便宜を図りかつ実施するとともに、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を確保すること。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 35.子どもの登録を義務化した家族法改正は心強く思いながらも、委員会は、1か月以内に子どもを登録しなかった場合に非課税最低賃金の1~3〔か月〕分のの過料が科されることを懸念する。さらに、ロマの子どもが登録されないことは稀であるという締約国からの情報には留意しながらも、委員会は、教育、保健サービスおよび雇用にアクセスするために必要な身分証明書類を持たないロマが多いことに関する人種差別撤廃委員会の懸念(CERD/C/UKR/CO/18、パラ11)をあらためて繰り返すものである。 36.委員会は、締約国に対し、民族および社会的背景に関わらずすべての子どもが無償のかつ義務的な出生登録を効果的に利用できることを確保するため、積極的誘引策をとるよう促す。委員会は、締約国がその際、親が子どもを登録しないことに対するいかなる懲罰的過料も廃止するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、ロマのすべての子どもの登録を奨励しかつ確保するための意識啓発キャンペーンを強化するよう、求める。 名前および国籍 37.委員会は、締約国報告書(CRC/C/UKR/3-4)パラ58で述べられているように、以下の事情があるときは子どもが締約国によって市民権を離脱させられる可能性があることに、懸念を表明する。(a) 子どもおよび少なくとも一方の親が国外永住のために出国し、かつ少なくとも一方の親がウクライナ市民権を放棄するとき。(b) 子どもが出生時にウクライナ市民権を取得し、かつ出生時に少なくともいずれかの親が外国人または無国籍者であった場合、当該市民権は、子どもの居所に関わらず、いずれかの親の申請によって離脱することができる。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国籍に対する子どもの権利、および、いかなる事由によってもかつ親の地位に関わらず国籍を剥奪されない子どもの権利を法律上も実務上も保障するため、法律を改正すること。 (b) 無国籍者の地位に関する1954年の条約および無国籍の削減に関する1961年の条約を批准すること。 表現ならびに結社および平和的集会の自由 39.委員会は、表現の自由に対する子どもの権利が国内法で明示的に保障されていない旨の締約国の情報に、遺憾の意とともに留意する。結社および平和的集会の自由に関して、委員会は、若者および子どもの公的団体に関する法律で、政治的な集会およびデモへの子どもの参加ならびに政治的および宗教的主義にのっとった子どもの結社(CRC/C/UKR/3-4、パラ62)が禁じられていること、および、このような規定は条約第15条2項に掲げられた制限の範囲と両立しない可能性があることを、懸念するものである。 40.条約第13条に照らし、委員会は、締約国に対し、表現の自由に対する子どもの権利が国内法で明示的に保護されることを確保するよう、求める。委員会はさらに、締約国に対し、条約第15条で保障された結社および集会の自由に対する子どもの権利との両立性を確保するため、若者および子どもの公的団体に関する法律の包括的見直しを行なうよう、促すものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 41.委員会は、とくに地区警察署における最初の尋問の際に、子どもを含む被拘禁者が不当な身体的取扱いを受けているという訴えが相当数にのぼることを、深く懸念する。とくに委員会は、民警隊員が自白を引き出す目的で少年に対して行なう拷問および不当な取扱い、ならびに、ウクライナ国境警備隊による収容中に移住者の子どもに対して行なわれる拷問および不当な取扱いの訴えがあることに、重大な懸念を覚えるものである。委員会はさらに、家庭、学校、刑事制度および代替的養護の現場における体罰が禁じられているにも関わらず、家庭で体罰が広範に用いられているという報告があることを懸念する。この文脈において、子どもの権利に関するおよびこのような行為が禁じられていることに関する子どもおよび公衆の意識および理解の水準が低いことは、委員会にとって深刻な懸念の対象である。 42.委員会は、締約国に対し、子どもに対する拷問およびあらゆる形態の不当な取扱いを禁止しかつ撤廃するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 民警およびウクライナ国境警備隊の隊員を対象とした、拷問および不当な取扱いの禁止ならびに少年司法に関わる国際基準についての包括的研修を開始すること。 (b) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書に基づき、締約国が国レベルの防止機構を公式に設置するまでの間、「移動グループ/チーム」(CCPR/C/UKR/CO/6/Add.1、パラ11およびCAT/C/UKR/CO/5、パラ12参照)等による、自由を奪われた子どもに関する独立した監視を強化すること。 (c) 子どもに対する拷問または不当な取扱いが訴えられているすべての事件について迅速な、独立のかつ効果的な調査が行なわれることを確保するとともに、適当なときは犯罪者を訴追すること。 (d) 拷問および不当な取扱いを防止する法的保護措置の尊重を向上させる目的で、自由を奪われた子どもによる司法へのアクセスに関する研究を行なうこと。 (e) 前向きかつ非暴力的な子育てを促進する意識啓発キャンペーンおよび公衆の教育等を通じ、現行法の禁止規定の効果的実施を確保することにより、家庭その他の場におけるあらゆる形態の体罰を終わらせること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 43.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299参照)に関して、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力し、かつその技術的援助を求めるとともに、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくに国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助も求めること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 44.委員会は、出生時および子ども時代のその後の段階で家庭環境を奪われる子どもの割合が高いことを懸念する。これとの関連で、委員会は、家族法(第143条3項)が、重度の身体的または精神的障害をもって生まれた子どもおよびその他の「重要な事情」がある子どもの遺棄を許容していることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どものいる家族の保護および援助を目的とする国の機関の数が不十分でありかつ質が劣悪であること、ならびに、このような機関を監視しかつ評価するシステムが存在しないことを、深く懸念する。親の権利を停止する裁判所の判決がこの3年は減少していることに留意しながらも、委員会は、親の権利の剥奪が依然として多数行なわれており、家庭環境を奪われる子どもの人数が容認しえないほど多数にのぼっていることを憂慮するものである。 45.委員会は、締約国に対し、家族法第143項3項を改正して条約第9条と一致させるよう促す。委員会は、締約国に対し、とくに、親の義務の懈怠に関わる懲罰的措置から、子どもの養育責任を履行する能力の増進を目的とする、有子家庭のための支援システムおよび社会手当の強化へと移行することによって家族を強化するために必要な支援および資源を提供する努力を強化するよう、促すものである。これとの関連で、委員会は、代替的養護または施設への子どもの措置は最後の手段として、かつ子どもの最善の利益にかなう場合にのみ行なうべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ48(d))をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が、窮乏している家族(ひとり親を含む)に対する国のサービスおよび支援を効果的に監視しかつ評価するためのシステムを整備することも勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 46.委員会は、貧困、失業、家族解体および労働移住によって家庭環境を奪われる子どもの人数が激増していることを、深く懸念する。子ども保護制度改革のための国家プログラムが承認されたこと(内閣決議第1242号)、および、里親家族および家庭型子どもホームのような代替的養護制度をさらに発展させるための取り組みが強化されていることには留意しながらも、委員会は、改革のための明確な戦略が存在しないため、焦点がいまなお脱施設化へと転換させられていないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、入所型養護のもとに留まっている子どもが多数にのぼること、および、家族の再統合のためのサービスが存在しないことを懸念する。委員会はさらに、とくに施設養護への子どもの措置を監視する子ども問題局の人的配置水準が不十分であることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国に対し、子ども保護制度改革のための国家プログラム(内閣決議第1242号)にしたがって脱施設化政策を強化するとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 拡大家族、里親家庭およびその他の態様の家庭型措置先への子どもの措置を拡大すること。 (b) 家族の再統合の促進を目的とした法令上の枠組みを強化すること。 (c) とくに子ども問題局の技術的資源、人的資源および財源を強化する等の手段により、子どもの養護に関わるすべての取り決め、とくに障害または特別なニーズを有する子どもの施設措置を効果的に監視すること。 (d) 上述の勧告の実施において、子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)〔PDF〕および「親のケアを受けていない子ども:緊急に行動する必要性」に関する欧州評議会議員会議決議1762(2010)を考慮すること。 養子縁組 48.委員会は、両親を失った子どもおよび家庭環境を奪われた子どもの国内養子縁組を奨励するための努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、実親がその同意の結果について十分な情報を提供されることを確保するための保障が存在しないこと、および、養親となろうとする者が自ら子どもを選択できることを含め、法律に乖離があることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が、委員会の前回の勧告(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ30)どおり、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をまだ批准していないことを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、批准のための法案が2010年12月に提出され、議会による緊急の検討が求められた旨の情報を心強く思うものである。 49.委員会は、締約国に対し、実親が手続についておよび自己の子どもの養子縁組に対する同意の意味するところについて十分な情報の提供を受けることを確保するための法律を制定するよう、求める、委員会はさらに、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に加入するよう勧告するものである。 虐待およびネグレクト 50.2005年以降、家庭内暴力事案の統計的記録が作成されていること、および、子ども期保護法で子どもに対するあらゆる形態の暴力が禁じられたことには積極的対応として留意しながらも、委員会は、あらゆる場面で子どもの虐待およびネグレクトが大規模に行なわれており、かつ増加していることを憂慮する。委員会はまた、子どもの虐待およびネグレクトの事案のうち通報および調査の対象となるものの割合が低く、かつこのような犯罪の訴追件数がきわめて限られていることも、懸念するものである。さらに委員会は、被害を受けた子どもおよび家族のすべての構成員(暴力を振るわない親または虐待もしくはネグレクトを行なう親を含む)が利用可能な心理社会的支援およびカウンセリングのプログラムを含め、親の責任の強化を目的とする保健上および社会上の防止措置が不十分であることを、懸念する。加えて委員会は、家庭外でのケア(特別教育および社会的更生のための施設を含む)で生じた虐待およびネグレクトの事案に関するものも含め、子どもの虐待に関する体系的な調査研究およびデータ収集が行なわれていないことを懸念するものである。委員会はさらに、14歳以上の子どもが裁判所に直接保護を求める家族法(第18条)上の権利が周知されていない可能性があることを懸念する。 51.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう、促す。 (a) 子ども期保護法に関する公衆の意識を向上させ、ならびに、同法の違反を発見しかつ調査するソーシャルワーカーおよび法執行官のスキルおよび能力を増進させる等の手段により、子ども期保護法の効果的実施を確保すること。 (b) カウンセリングおよび親としてのスキルの訓練のような防止措置をとり、かつ虐待およびネグレクトの悪影響に関する公衆教育プログラムを実施すること。 (c) 被害を受けた子ども、虐待またはネグレクトを行なう親および他の家族構成員に対し、十分な保護、および心理社会的支援のような十分なサービスを提供すること。 (d) 子どもとともに働く専門家が、子どもの虐待およびネグレクトの発見ならびに子どもの虐待およびネグレクトが疑われる事案を通報しかつ適切な行動をとる義務についての研修を受けることを確保すること。 (e) 子どもの虐待に関する包括的データを体系的に収集しかつ分析するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。委員会はさらに、虐待およびネグレクトの発生を少なくするための適切な措置を締約国が編成する際、かつ、虐待およびネグレクトが行なわれた事案に対応するための適切な責任追及の機構を設置する際、このようなデータが参考にされるべきことを勧告する。 (f) 子ども、親および子どもとともに働く専門家の間で家族法第18条に関する意識を高めるための、焦点の明確な取り組みを促進すること。 F.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 52.委員会は、障害のある子どもおよびその家族を対象とした教育サービス、社会サービスおよび保健サービスが依然として不十分であることを懸念する。とくに委員会は、知的障害のある子どが教育に平等にアクセスすることを確保するうえで多くの障壁が残っていること、および、早期介入および特別教育が行なわれていないために障害のある多くの子どもが施設に措置されていることを、遺憾に思うものである。さらに委員会は、子どもが障害の有無に関わらず生後3年間は乳児院に措置されており、かつこのような子どもが病状を有していると認定されるために、その発達および生活の質に悪影響が生じ、かつ施設化がさらに強化されることを懸念する。 53.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがい、かつ非政府組織と協力しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利を保護し、かつ、このような子どもが自分自身の家庭環境およびコミュニティ環境で教育サービス、社会サービスその他のサービスに平等にアクセスできるようにするための、包括的政策を策定すること。委員会は、締約国が、その際、知的障害のある子どもおよび若者ならびにその家族の健康に関するWHOヨーロッパ宣言(2010年にWHOヨーロッパ地域加盟国が支持)で強調されたすべての優先事項に対応するよう、勧告する。 (b) 子どもの施設措置を防止するため、親の組織と協力しながら、障害のある子どものための早期介入サービスおよびその家族に対する支援を発展させかつ強化すること。 (c) 障害のある子どもを対象とした入所施設におけるこれらの子どもの権利の状況を緊密に検討する監視システムを設置するとともに、当該監視において市民社会組織の参加が重視され、かつ行動に関する勧告をフォローアップするための具体的措置が組みこまれることを確保すること。 健康および保健サービス 54.委員会は、保健部門への予算配分額が低いまま(国内総生産(GDP)の3.6%)であり、無償の保健ケアサービスに関する憲法上の規定が絵に描いた餅となっていることを懸念する。現在進められている保健ケア改革および保健ケアに関する義務的社会保険法案には積極的対応として留意しながらも、委員会は、プライマリーヘルスケア制度の基盤が不十分であり、かつ保健ケアサービスの費用負担が高いために、貧しい家族、とくに農村部で生活している家族による保健サービスへのアクセスに悪影響が生じていることを、懸念するものである。同国の乳児死亡率および子どもの死亡率が高いことにかんがみ、委員会は、生後6か月までの乳児に対する母乳育児が減少していること、および、母乳代替品の販売促進に関する国際基準が十分に執行されていないことを懸念する。加えて委員会は、近年、公衆が予防接種に対する不信感を抱くようになっており、2009~2010年の子どもの予防接種率が急激に減少したという報告があることを懸念するものである。 55.条約第24条に照らし、委員会は、締約国に対し、保健部門への予算配分額を増やし、かつ資金の透明性を確保するよう促す。委員会は、現在進められている保健ケア改革において、プライマリーヘルスケア制度および農村部における保健サービスの質が優先されるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、母乳育児の促進を強化し、かつ母乳代替品の販売促進に関する国際基準を執行するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの予防接種に対するコミットメントを新たにするとともに、この点に関する事実に基づいた情報を一般公衆に提供することも、促すものである。 思春期の健康 56.若者の間で健康的なライフスタイル、責任ある親のあり方およびリプロダクティブヘルスを促進するクリニックが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、思春期の健康が悪化しており、かつクラミジアのような一部の性感染症が増加しているという報告があることを懸念する。委員会は、意識水準が低いこと、サービスが存在しないことおよび思春期の健康を専門とする保健実務家の人数が限られていることが主要な助長要因であることを懸念するものである。委員会はさらに、10代の妊娠中絶件数が多く、妊産婦死亡の主たる原因となっていることを懸念する。これとの関連で、委員会は、14~18歳の子どもの妊娠中絶に関わる決定が親と共同で行なわれることに留意するものである。 57.委員会は、締約国が、思春期の健康問題に関する包括的研究を実施するとともに、これを思春期の健康政策および学校カリキュラムにおけるプログラムを立案する際の基盤として活用するよう、強く勧告する。委員会は、このようなプログラムにおいて、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、10代の妊娠、危険な妊娠中絶および性感染症の予防に焦点が当てられるべきことを、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、とくに農村部において、思春期の保健ケアのための人員、便益およびサービスに投資するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、10代の妊娠中絶に関わる妊産婦の死亡を削減するために緊急の措置をとるとともに、妊娠中絶に関わる決定において子どもの意見が常に聴かれかつ尊重されることを法律上も実務上も確保するよう、勧告するものである。委員会は、締約国がユニセフの技術的援助を求めるよう勧告する。 精神保健 58.2009~2010年における精神医学的援助の向上を目的とする保健省令第176号が2009年に採択され、かつ児童精神医学がその優先課題のひとつに挙げられたことは歓迎しながらも、委員会は、成人および子どもと対象とする国レベルの包括的な精神保健政策が存在しないことを懸念する。委員会はさらに、子どもの自殺の件数が多く、とくに農村部で暮らしている子どもおよび男子がその影響を受けていることを懸念するものである。 59.委員会は、締約国が、WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、外来および入院による子どもにやさしい児童精神保健サービスを含む)を備えた、包括的かつ全国的な児童精神保健政策を策定するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、学校で利用可能な心理相談サービスおよびソーシャルワーカーを増やす等の手段により、子どもおよび若者の自殺の防止を目的とした努力を強化することも、勧告するものである。委員会は、締約国がWHOの技術的援助を求めるよう勧告する。 薬物、タバコ、アルコールその他の有害物質の使用 60.委員会は、子どもの間で薬物注射が行なわれることが増えており、とくに収監されている子ども、移住労働者の親に置いていかれた子どもおよび路上の状況にある子どもがその影響を受けていること、および、薬物の使用がHIV感染の主要な理由のひとつになっていることを、深く懸念する。委員会は、危険な状況に置かれたこれらの子どもの治療およびリハビリテーションを目的とする、若者にやさしい専門のサービスが存在せず、かつ、法律上および態度上の障壁によりそのようなサービスへのアクセスが妨げられていること(2011年1月18日付内務省麻薬執行局命令第40/2/1-106号など)を、深く懸念するものである。委員会はまた、締約国の麻薬戦略(2010~2015年)においてこれらの問題が十分に考慮されておらず、かつ、薬物所持者に関する新たな規則によって、危険な状況に置かれた青少年が刑事司法制度と関わりになることが増える可能性があることも、懸念する。加えて委員会は、子どもに対するタバコおよびアルコールを販売を禁じた現行法が有効でなくかつ十分に執行されていないこととも関連して、子どもによるタバコおよびアルコールの使用が高率にのぼっており、かつ使用開始年齢が低いことを深く懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、非政府組織と連携しながら、子どもおよび若者の薬物使用に関わる憂慮すべき状況に対応するための包括的戦略を策定し、かつ、条約にしたがった、科学的知見に基づく広範な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSに関する最近の立法上の進展、および、ユニセフの主導により成果を収めている、もっとも危険な状況に置かれた青少年を対象とする試行プログラムをもとに、子どもおよび若者を対象とする、薬物依存の治療および健康被害軽減のための、若者にやさしい専門的サービスを発展させること。 (b) 薬物の所持または使用を理由として子どもを犯罪者として扱う法律を改正する等の手段により、刑法によってこのようなサービスへのアクセスが妨げられないことを確保すること。 (c) 危険な状況に置かれた子どもとともに働く保健従事者および法執行官がHIV予防について十分な研修を受けること、ならびに、危険な状況に置かれた子どもに対する法執行官による虐待が捜査されおよび処罰されることを確保すること。 (d) 子どもに対するアルコールおよびタバコの犯罪を禁じた規定の執行を強化するとともに、子どもおよび若者による有害物質の使用および濫用の根本的原因に対処すること。 HIV/AIDS 62.委員会は、子どものHIV感染率およびAIDSに起因する死亡率が高いこと、ならびに、予防面の進展にも関わらず、母子感染率が依然として高いことを憂慮する。国家HIV/AIDSプログラム(2009~2013年)および最近採択された後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律は歓迎しながらも、委員会は、2006年にはHIV/AIDSとともに生きている登録済みの子どもの半数強しか抗レトロウィルス治療を受けていなかった旨の情報(CRC/C/UKR/3-4、パラ108)が示すように、HIV/AIDSとともに生きる子どもがケアおよび支援のためのサービスにアクセスできていないこと、ならびに、HIV/AIDSに関わる必須の技術、設備および治療のための資金が限られていることを、懸念するものである。HIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画には留意しながらも、委員会はさらに、もっとも危険な状況に置かれた15~19歳の青少年(薬物使用者、路上の状況にある子どもおよびセックスのために搾取されている子ども)がますますHIV/AIDSに感染しやすくなっていることを懸念する。委員会はまた、学校における、HIV/AIDSとともに生きている子どもに対する事実上の差別についても懸念を覚えるものである。 63.委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号を想起しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 国家HIV/AIDSプログラム(2009~2013年)およびHIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画の効果的実施を、これらのプログラムに対して十分な公的資金および資源を配分することによって、確保すること。 (b) HIV/AIDSの影響を受けているまたはHIV/AIDSのリスクに直面している子どもおよび若者(路上の状況にある子どもおよび有害物質濫用に苦しんでいる子どもを含む)の人権の尊重にとくに焦点を当てながら、後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律を実施するためにあらゆる措置をとるとともに、秘密が守られ、かつ若者にやさしいサービスへのアクセスを確保すること。 (c) 青少年および一般公衆を対象とした、HIV/AIDSその他の賤感染症に関する広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを強化すること。 生活水準 64.家族、子どもおよび若者への支援が2010年度国家経済社会開発計画の社会的優先課題に挙げられていることは歓迎しながらも、委員会は、子どものための締約国の社会保護制度が不十分であることに重大な懸念を覚える。委員会は、多子家庭または3歳未満児のいる家庭の登録貧困発生件数が最大であることに、特段の懸念とともに留意するものである。汚職対策法案には評価の意とともに留意しながらも、委員会はさらに、締約国における汚職の水準が高いことを深刻に懸念する。 65.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、国家経済社会開発計画およびその後の貧困削減プログラムの実施に際し、子どものための国家行動計画を子どもに関する戦略的政策ツールとして位置づけるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、貧困戦略および保護のための戦略において、脆弱な立場に置かれた有子家庭をとくに明確な対象とするよう促すものである。汚職と効果的に闘う目的で、委員会は、締約国に対し、ウクライナにおける汚職の防止および汚職対策の原則に関する法律を遅滞なく採択するよう、促す。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 66.委員会は、学齢の子どもの人数が減少していることにより、教育施設がとくに地方で削減されており、かつ農村部にすんでいる子ども、ロマの子どもおよび障害のある子どもによる教育へのアクセスが制限されていることを懸念する。委員会はさらに、就学前教育施設の数が減少しており、子どもの61%しか就学前教育施設に就学していないことに、特段の懸念とともに留意するものである。締約国が教育に対する公的支出の水準を相対的に高いまま維持していること(GDPの6.2%)は認めながらも、委員会は、締約国において公教育制度に対する資金拠出が不十分であり、かつ教員の給与が低いことに関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/UKR/CO/5、パラ30)をあらためて繰り返すとともに、教育インフラの質が貧弱であることについて懸念を表明する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教育部門に配分される支出の対GDP比を高めることにより、公教育制度に対して十分な資金が拠出されることを確保すること。 (b) 教育施設数および学校その他の教育機関に通う子どもの全般的人数が減少していることの原因およびこれに関して考えられる解決策についての分析を行なうこと。 (c) インクルーシブ教育を導入し、かつ特別なニーズを有する子どもの社会的統合を促進するとともに、脆弱な立場に置かれた集団の子ども(前掲の集団を含む)が教育制度において差別されないことを確保すること。 (d) 農村部における就学前教育および一般教育の利用可能性、アクセス可能性および質を高めること。 (e) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 教育の目的 68.第9学年段階で人権教育が義務的とされていることには積極的対応として留意しながらも、委員会は、人権の尊重および促進ならびに異文化間の理解および寛容が締約国における教育の基本的原則としてとくに挙げられていないことを懸念する。委員会はさらに、学習上の困難、学校倦怠感、同じ学校の生徒との関係における心理的不安感および教員から拒絶されているという感覚を有する子どもが多数にのぼることにかんがみ、現行の教育制度が子どもの学習スキル、自尊感情および自信を十分に発達させていないことを懸念するものである。 69.委員会は、締約国に対し、人権教育のための世界プログラムで勧告されているように人権教育に関する国家的行動計画を策定するよう、促す。これとの関連で、委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国がユネスコ、ユニセフおよびOHCHRの援助を求めるよう勧告する。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 70.委員会は、所得が不十分であること、文化的施設およびプログラムが設けられていないことおよび機会がないことを理由として、文化的生活および活動に参加できない子どもが多数にのぼることを懸念する。この流れにおいて、委員会は、子どもの間でテレビの視聴ならびにコンピュータークラブ通いおよびゲームセンター通いが増えていること、ならびに、これに応じて、効果的な監視制度が設けられていないために、そのような場所に子どもが訪れることについての規制が遵守されていないことを懸念するものである。 71.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、休息および余暇に対する子どもの権利、子どもがその年齢にふさわしいスポーツ、遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するよう、強く勧告する。とくに委員会は、締約国が、スポーツ、教育および文化的活動のための機関、便益およびプログラムの数を領域全体で増やすよう勧告するものである。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 72.難民および援助または一時保護がふさわしい者に関する法案、および、保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる国の機関間の協力についての訓令案には留意しながらも、委員会は、医学的および心理的治療ならびに通訳のような国の援助およびサービスに対する子どもの庇護希望者および難民のアクセスとの関連で法律上および行政上の欠陥があることを、懸念する。委員会は、締約国が法定代理人を任命しないために、保護者のいない子どもおよび身分証明書類を持たない子どもの庇護希望者による庇護手続へのアクセスが制限されていることを、とりわけ懸念するものである。保護者のいない子どもの庇護希望者がときには数か月間にわたって収容され、かつ退去強制の対象とされていることは、委員会にとって特段の懸念の対象である。委員会はさらに、 15~18歳の子どもの難民数に関する公式な統計が利用可能とされていないことを懸念する。この流れにおいて、委員会はまた、締約国の出生登録手続が、条約第7条に基づく権利を子どもの庇護希望者に対して保障していない可能性があることも懸念するものである。 73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 難民および援助または一時保護がふさわしい者に関する法案を遅滞なく採択するとともに、当該新法において、認定難民の子どもに対して派生的に難民資格が保障されることを確保すること。 (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者が庇護手続ならびに援助および保護(無償の通訳へのアクセスを含む)に効果的にアクセスできるよう、このような子どもに対して迅速に法定代理人が任命されることを確保すること。 (c) いかなる子どもの庇護希望者または難民もその自由を奪われないことを確保すること。 (d) 保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる国の機関間の協力についての訓令案を採択すること。 (e) 難民および庇護希望者の登録に関わるデータ収集および情報保存のための効果的システムを設置し、かつ庇護希望者である子どもおよび難民に関する公式統計において18歳未満のすべての者が網羅されることを確保するため、迅速な措置をとること。 (f) 締約国で生まれた庇護希望者の子どもの出生登録およびこのような子どもに対する出生証明書の発行を確保するため、現行規則を改正すること。 児童労働を含む経済的搾取 74.締約国で最悪の形態の児童労働が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、インフォーマル経済および違法経済活動、とくに違法な炭鉱、セックス産業および路上物乞い組織で働く15歳未満の子どもの人数が多いことに関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/UKR/CO/5、パラ21)をあらためて繰り返す。委員会は、対話の際に締約国代表団が認めたように、炭鉱で働く子どもの人数が多いこと、および、インフォーマル部門における児童労働の実態を明らかにするうえで課題が存在することを、依然として深く懸念するものである。委員会はさらに、子どもに関する現行労働法の違反(困難なおよび危険な条件下における子どもの雇用を含む)が大規模に行なわれていることを懸念する。ゴスナゾルトルーダ(Gosnadzortruda、国家労働法遵守監督局)が行なっている労働監察について事前質問事項に対する文書回答で提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、同局がインフォーマル経済部門、および家庭における児童労働を監視する権限を有していないことを懸念するものである。 75.委員会は、締約国に対し、とくにインフォーマル部門における搾取的児童労働を撤廃するためにすべての適当な措置をとるよう、促す。具体的には、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) ゴスナゾルトルーダが児童労働に関する法律の厳格な順守を確保する体系的かつ効果的な観察を行なえるようにするため、同局に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。 (b) ゴスナゾルトルーダの権限を拡大し、インフォーマル経済部門および家事領域も網羅することを検討すること。 (c) 児童労働撤廃国際計画が運用している児童労働モニタリングシステムの活用を通じ、インフォーマル部門における児童労働の監視を増進させること。 (d) とくに、ゴスナゾルトルーダおよび他の法執行機関の監察官を対象として児童労働に関する国際基準についての研修を行なうことを通じ、児童労働に関する現行法に違反した者に対して適用可能な制裁の効果的執行を確保すること。 (e) 違法な炭鉱で働く子どもならびに露天で石炭の分別および運搬に従事する子どもの特定に関してILO・条約勧告適用専門家委員会が行なった、最低年齢条約(1973年、第138号)に関する2010年の個別意見に掲げられた勧告を、締約国におけるこのような最悪の形態の児童労働をいかなるものであれ根絶する目的で、全面的に実施すること。 路上の状況にある子ども 76.委員会は、締約国も「深刻な」問題として認めている(CRC/C/UKR/3-4、パラ12)、路上の状況にある子どもの人数が多いことを深く懸念する。委員会は、このような子どもがHIV/AIDS、性的搾取、強制労働および警察による暴力のような、健康関連のリスク(有害物質および薬物の濫用に関わるものを含む)にさらされやすいという報告があることを、深刻に懸念するものである。これとの関連で、委員会は、路上の状況にある子どもの保護および社会的再統合のための社会サービス(衣服、宿泊所、保健ケアおよび教育の提供を含む)の利用可能性およびアクセス可能性が限定されていること、ならびに、薬物を濫用する子どもを対象とするリハビリテーションセンターの本格的ネットワークが存在しないという情報があることを、懸念する。委員会はさらに、路上の状況にある子どものためのシェルターの収容能力が著しく不十分であることを懸念するものである。加えて委員会は、路上の状況にある子どもの権利の保護およびその社会への再統合の促進に関して、非政府組織との協力が全般的に行なわれていないことを懸念する。 77.委員会は、締約国が、国際のおよび国際的な非政府組織と協力しながら以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが路上の状況に置かれることの防止、このような子どもの支援および社会的再統合のための国家的戦略を策定すること。 (b) 路上の状況にある子どもが利用可能なシェルターおよび心理社会的リハビリテーションセンターの数を増やし、かつその質を高めること。 (c) 路上の状況にある子どもの全面的発達を支援するため、このような子どもに対し、十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保すること。 性的搾取および虐待 78.委員会は、2010年に児童ポルノ対策法が採択されたことを、性的虐待からの子どもの保護の増進、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書との国内法の調和に向けたきわめて重要な一歩として歓迎する。さらに、刑法の改正によって売買春への関与に対する刑罰が引き上げられ、かつ被害者が青少年または若年であることが加重要素と位置づけられたこと(第303条)を歓迎しながらも、委員会は、締約国がまだ児童買春の明確な禁止を法律に編入していない旨の懸念(CRC/OPSC/UKR/CO/1、パラ17)をあらためて表明するものである。委員会は、これとの関連で、児童買春を含む売買春対策法案、および、選択議定書上のすべての犯罪に関わる地方政府の協力を強化するための訓令集に留意する。委員会はさらに、以下の点について重大な懸念を覚えるものである。 (a) 子どもの性的虐待、搾取ならびに売買春およびポルノ的資料への子どもの関与の事案数が増えていること。 (b) インターネットで児童ポルノを利用する者の人数が憂慮すべきほど多いこと(1か月あたり500万人)、および、ポルノ的ウェブサイトが締約国における全インターネット・トラフィックの70%を占めていること。 (c) これとの関連で刑事事件の手続が開始されることがきわめて少なく、かつ訴追の成功例に関する情報も存在しないこと。これとの関連で、委員会は、未成年者問題を担当する警察部局に十分な要員が配置されていないことの悪影響に、懸念とともに留意する。 (d) 性的搾取および虐待の被害を受けた子どもに援助を提供することをとくに目的とするリハビリテーションセンターの数が著しく限られていること。 (e) 性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもに関する、年齢、性別ならびに民族的および社会経済的出身ごとに細分化された統計が存在しないこと。一方で委員会は、内務省がこの目的のためのデータベースを設置する計画であることに留意する。 79.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに児童買春および他のあらゆる形態の子どもの性的搾取との関連で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と国内法とを調和させるための努力を引き続き増進させること。 (b) 開発情報(DevInfo)システムとの関連も踏まえながら、性的搾取および虐待ならびに選択議定書上のその他の犯罪の被害を受けた子どもに関するデータ収集のシステムを設置するとともに、この点に関わるデータベースを設置しようとする内務省の計画を進めること。 (c) 地方レベルで選択議定書上の犯罪を効果的に防止しかつこれと闘うための訓令集を採択するとともに、これとの関連で、性的虐待および搾取に関わるすべての防止活動および保護活動において、根本的問題である貧困に対応すること。 (d) 未成年者問題を担当する警察部局屁の技術的資源、人的資源および財源を増加させる等の手段により、性的搾取および虐待ならびに児童ポルノの事件を摘発しかつ調査するソーシャルワーカーおよび法執行機関の能力を強化すること。 (e) 性的搾取および虐待ならびに選択議定書上のその他の犯罪の被害を受けた子どもへの援助の提供を専門とするリハビリテーションセンターの利用可能性およびアクセス可能性を高めること。 (f) 前掲の勧告を実施するため、ユニセフその他のパートナーの援助を引き続き求めること。 売買、取引および誘拐 80.「未成年者」に関する特別規定を掲げた、人身取引に関する刑法第149条の改正には留意しながらも、委員会は、刑法がいまなお子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に一致していないことを、依然として懸念する。さらに、人身取引の分野で、人身取引対策国家プログラム(2007~2010年)の採択を含む多数の取り組みが行なわれていることは認めながらも、委員会は、ウクライナがヨーロッパにおける人身取引の最大の送り出し国のひとつであり続けていることを、依然として懸念するものである。これとの関連で、委員会は、子どもの人身取引に関与した者の訴追に関する情報がないことを遺憾に思うとともに、必要不可欠な防止手段として、対象を明確にした広報およびのための意識啓発キャンペーンを行なう必要があることに留意する。 81.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施のための規則を実施するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、当該措置に関して次回の定期報告書で報告すること。 (b) 子どもの人身取引および売買に関する国内法を選択議定書と一致させるための努力を引き続き行なうこと。 (c) とくに国外での仕事、モデル業、留学および美人コンテストへの参加の約束を通じて誘惑されることの危険性に焦点を当てながら、子どもの人身取引に関する広報および意識啓発のためのキャンペーンを強化すること。 (d) 内務省下のサイバー犯罪・人身取引対策局に対して必要な資源を配分する等の手段により、子どもの人身取引として訴えられたすべての事件の捜査を強化するとともに、責任者が裁判にかけられることを確保すること。 (e) ユニセフ、国際移住機関その他のパートナーの技術的援助を求めること。 ヘルプライン 82.委員会は、委員会が勧告した(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ34)ように、危険な状況に置かれた子どもまたは保護を必要とする子どものための無償のヘルプラインが設置されたこと(トラストライン、およびラ・ストラーダ・ウクライナが設置したものなど)を歓迎する。 83.委員会は、締約国が、非政府組織と協力しながら子どものためのヘルプラインをさらに強化しかつ拡大するとともに、これらのヘルプラインが、3ケタの番号であり、ヘルプラインにとっても利用者にとっても費用負担がなく、かつ24時間利用可能であることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども関連のプログラムおよび学校における情報提供により、利用可能なヘルプラインに関する子どもの意識を高めるよう勧告するものである。 少年司法の運営 84.子どものための国家行動計画(2010~2016年)に掲げられた少年司法制度体制は歓迎しながらも、委員会は、この点に関わる改革のペースが遅いことを懸念する。とくに委員会は、少年司法の発展の構想を実施するための作業部会が2010年4月に廃止され、この取り組みに代わって、ウクライナにおける少年に関わる刑事司法の発展の構想が導入された旨の情報に、懸念を覚えるものである。委員会は、法に触れた子どもに関わる懲罰的アプローチへの後退の危険性があることを深く懸念する。このような危険性は、子どもの未決拘禁および審判中の拘禁が頻繁に行なわれていること、収監刑を言い渡される少年の割合が高いこと、ならびに、収監者に占める子どもの割合が高いことにも表れているところである。委員会はさらに、刑法第102条1項および3項(e)に基づき、法に触れた16歳および17歳の子どもが最長15年という長期の収監刑の対象となることを懸念する。 85.加えて委員会は、刑事責任に関する最低年齢が14歳と定められているにも関わらず、締約国が、「社会的に危険な行動」をとった11~14歳の子どもを対象とする社会的更生施設を運営していることに、深刻な懸念を覚える。委員会はさらに、議会人権コミッショナーがこれらの施設を「特別少年拘置施設」と呼んでいること、および、2009年には1000人以上の子どもがこれらの施設に送致されたことに、最大の懸念とともに留意するものである。さらに、罪を犯した子どもの再非行率が高いことにかんがみ、これらの子どもの社会的再統合のためのサービスおよび支援(職員配置も含む)の水準が低いことは、委員会にとって特段の懸念の対象である。 86.委員会は、締約国に対し、子どものための国家行動計画に掲げられたとおりの少年司法制度を設置するよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、新たな「ウクライナにおける少年に関わる刑事司法の発展の構想」およびその実施のために採択される予定の法律が、条約その他の関連の基準(少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む)に全面的にしたがったものとなることを確保するよう、促すものである。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 実際の少年司法制度が、懲罰的な制度から、可能なときは常に調停、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような自由の剥奪に代わる措置を促進する修復的な少年司法制度へと発展することを確保すること。 (b) 少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)にしたがい、刑事責任に関する単一の年齢を法律により定め、かつ実務上も確立すること。 (c) 前号の勧告にしたがい、社会的に危険な行動を行なったという理由で有罪と認定された11~14歳の子どもが拘置されうる社会的更生施設の廃止を検討するとともに、ケアのための代替的措置を発展させること。 (d) 法律に触れた子どものための心理社会的リハビリテーションおよびプログラムを確保するため、家族、子どもおよび若者のための社会センターの専門家を対象とする研修の実施およびその増員等を通じ、社会的支援サービスを強化すること。 (e) 前掲の勧告の実施に際し、ユニセフを含む国連国別チームおよびOHCHRの技術的援助を求めること。 子どもの犯罪被害者および証人 87.刑事手続参加者の安全法の規定には留意しながらも、委員会は、国内法が刑事司法手続における子ども特有の保護措置について定めていないことを懸念する。たとえば、売春に関与した子どもは法執行機関および裁判所によって被害者として扱われるのが通例である旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、これが法律によって義務づけられていないことを懸念するものである。 88.委員会は、締約国が、犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを法律上も実務上も確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、犯罪の被害者および証人である子どもは公的機関によってけっして犯罪者として扱われるべきではないという委員会の立場をあらためて表明するものである。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 89.締約国に多数の民族的マイノリティが存在することにかんがみ、委員会は、民族的マイノリティが直面する問題を特定しかつ解決するための措置が締約国によってとられておらず、かつ、教育、雇用、住居および社会サービスへのアクセスに関わるこれらのマイノリティの状況に関するデータ収集システムが設けられていないことを、懸念する。委員会はさらに、民族的マイノリティに属する子どもに対して警察が行なう暴力を終わらせるための措置について、事前質問事項に対する文書回答に情報が記載されていないことを遺憾に思うものである。ロマの子どもを普通教育制度に統合するための努力には留意しながらも、委員会は、ロマおよびクリミア・タタールの子どもが教育、保健ケアその他の社会サービスにアクセスしようとする際の障壁が根強く残っていることを、懸念する。 90.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 人種差別撤廃委員会が勧告しているように(CERD/C/UKR/CO/18、パラ7)、反差別法案を遅滞なく採択すること。 (b) 締約国における民族的マイノリティの状況および当該マイノリティによる権利の享受についての包括的研究を行なうとともに、その研究の知見に基づき、自国の政策、措置および文書が差別なく適用され、かつ、その際、すべてのマイノリティに属する子どもの権利(条約上の権利を含む)の保護が目的とされることを確保するための介入策を発展させること。 (c) 普通教育および中等教育においてインクルーシブ教育体制を導入すること等の手段により、ロマおよびクリミア・タタールの子どもに焦点を当てながら、マイノリティに属するすべての子どもに対して教育への権利を確保するための努力を強化すること。 I.国際人権文書の批准 91.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書、とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 92.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における条約の実施に向けて欧州評議会と協力するよう、勧告する。 K.フォローアップおよび普及 93.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会(ヴェルホーヴナ・ラーダ)、関連省庁、最高裁判所および適用可能なときは地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 94.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 95.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年9月26日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求める。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 96.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/214.html
総括所見:イタリア(第2回・2003年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.198(2003年3月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月16日に開かれた第840回および第841回会合(CRC/C/SR. 840 and 841参照)において、2001年3月21日に提出されたイタリアの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.13)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合(CRC/C/SR.862参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがった、付属文書をともなう第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、報告書の批判的性格およびその作成に至るまでの参加型プロセスを歓迎するものである。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/ITA/2)への文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、締約国における子どもの状況に関していっそう明確な理解を得られたことにも留意する。委員会はまた、締約国代表団との間に持たれた前向きな対話にも留意するとともに、条約の実施に直接従事するハイレベルかつ大規模な代表団の出席により、締約国における子どもの権利に関する理解を向上させられたことを認知するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の2つの選択議定書が批准されたこと。 (b) 子どもに関する特別議会委員会および国家子ども・青少年監視機関(法律第451/97号)が設置されたこと。 (c) 国家子ども・青少年資料分析センターが設置され、子どもに関する印象的な量のデータおよび調査研究を収集してウェブサイトで利用可能としていること。 (d) 子どもおよび青少年の権利および機会の促進について取り上げ、国家子ども・青少年基金の設置について定める規定を掲げた法律第285/97号が採択されたこと。 (e) 子どもに被害を与える買春、ポルノおよびセックスツーリズムの搾取を禁じた法律第269/98号が採択されたこと。 (f) 女性性器切除反対キャンペーンが展開されていること。 (g) 障害のある子どもが普通学校に広く包摂されていること。 (h) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が批准されたこと。 (i) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約が批准されたこと。 C.主要な懸念事項および勧告 前回の総括所見 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.18)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.41)の一部、とくに、パラ13~15および22に掲げられた、条約の実施の調整、差別の禁止および子どもの不当な取扱いに関するものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書でもあらためて繰り返されているところである。 5.委員会は、締約国に対し、まだ実施されていない前回の勧告およびこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 1.実施に関する一般的措置 立法 6.委員会は、多くの実体的法律が採択されてきたこと、および、その一部で条約に言及されていることに留意する。加えて委員会は、検討中の法案(少年司法および教育に関するものを含む)について締約国から提供された情報を歓迎するものである。 7.委員会は、締約国が、引き続き法律を厳密に見直すとともに、国および地方の法律が、権利を基盤とし、条約を含む国際基準に一致し、かつ効果的に実施されることを確保するよう、勧告する。 資源 8.委員会は、若い世代の育成は投資分野のひとつであるという展望を提示した、「子ども・青少年問題に関するイタリアの協力の指針」が採択されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が、条約第4条で定められているとおり「利用可能な資源を最大限に用いて」実施されていないことを、依然として懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、子どもおよびその家族に配分される資源を引き続き可能なかぎり増加させるとともに、子どもに支出される予算の割合を分析し、優先課題を特定し、かつ「利用可能な資源を最大限に用いて」資源を配分する目的で、締約国全域のあらゆる部門別予算および総予算の分析を行なうよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外務省の国際開発援助協力によって行なわれる活動にこの原則を適用することも勧告するものである。 調整 10.委員会は、子どもに関わる政策およびプログラムを国、州および地方のレベルで調整する国家子ども・青少年監視機関(法律第451/97号)が設置されたことを歓迎する。加えて委員会は、この国家的監視機関が、子どもに関わる優先順位の設定および子どもに関わるすべての行動の調整を目的として2年ごとに子どものための国家的行動計画を起草する責任を負っていることに、評価の意とともに留意するものである。委員会はさらに、国と州の間で諸活動を調整し、かつ州および国のレベルにおける政策の実施を監視することを目的として、国・州会議(Conferenza Stato-Regioni)の定期的会合が開かれていることに留意する。委員会は、このような調整が十分ではないこと、および、いくつかの具体的問題に関する調整がこの国家的監視機関の外で行なわれていることを懸念するものである。委員会はまた、非政府組織(NGO)との調整が構造化された形で行なわれていないことも懸念する。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 前回勧告した(CRC/C/15/Add.41、パラ13)ように、子どもの促進および保護のための政策の実施に関する、国、州および地方のレベルにおける政府機関内および政府機関間の効果的調整(とくに国家監視機関および国・州会議によるもの)を強化すること。 (b) とくに地方レベルで、子どもの権利のために活動しているNGOとのいっそう緊密かつ積極的な協力が行なわれることを確保すること。 (c) 国家監視機関の活動に対する子ども参加を奨励すること。 国家的行動計画 12.委員会は、子どものための新たな行動計画に関する討議が議会で行なわれる予定であること、および、締約国が、子どもに関する国際連合総会特別会期(UNGASS)の成果文書である「子どもにふさわしい世界」を実施するための別の計画を策定する可能性について検討していることに、留意する。委員会は、これらの2つの計画の間で不一致が生じる可能性があることを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家行動計画を採択するため、その検討を速やかに進めること。 (b) 国家行動計画と、UNGASS成果文書を実施するための計画との調和を確保すること。 (c) 子どもに関して達成された進展の効果的な監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の効果的評価を行なうこと。 独立の監視体制 14.委員会は、4つの州に子ども時代護民官事務所が設置され、かつ国の子ども護民官を設置するための努力(とくに議会上程中の法案を含む)が行なわれていることに留意するものの、州および地方のレベルで子ども個人の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、条約の実施を監視するための独立した中央機構が存在しないことを、依然として懸念する。 15.委員会は、締約国が、条約の実施を監視しかつ当該実施における進展を評価するため、独立した国内人権機関の一部として(独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号参照)、かつ人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(「パリ原則」、国連総会決議48/134付属文書)にしたがって、可能であれば国レベルの独立した子どもオンブズマンを設置するための努力を完了させるよう、勧告する。当該オンブズマンは、子どもがアクセスしやすく、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限を与えられ、かつ、これらの苦情に効果的に対応する態勢を備えたものであるべきである。委員会はさらに、国および州の機関の間で適切な連携を発展させるよう勧告する。 データ収集 16.委員会は、とくに国家子ども・青少年資料分析センターの設置を通じてデータ収集を向上させるために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が対象とする一部領域についてのデータが不十分であることを依然として懸念するものである。委員会はまた、データ収集がいまなお家族中心アプローチに基づいて行なわれており、子どもが自律した人間としてとらえられるアプローチが採用されていないことも、懸念する。委員会はさらに、データ収集を担当するさまざまな機関およびさまざまな州の間で一貫性が欠如していることを懸念するものである。 17.前回の勧告(前掲パラ14)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた集団(障害のある子ども、ロマの子ども、移住者家族に属する子ども、保護者に付き添われないままイタリアに入国した子ども、暴力の被害を受けた子どもならびに経済的および社会的に不利な立場に置かれた世帯の子どもを含む)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを体系的に収集しかつ分析するための機構を強化すること。 (b) 条約の実施および監視のための政策およびプログラムを立案しかつ評価するにあたって、これらの指標およびデータを有効に活用すること。 (c) 国および州の双方のレベルで、さまざまな機関によるデータ収集プロセスの一貫性を確保すること。 研修/条約の普及 18.委員会は、とくに国家子ども・青少年資料分析センターを通じて条約普及のための努力が行なわれていること、および、とくに、公民教育に子どもの権利が含まれていることに評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、普及、意識啓発および専門家の研修に関わる活動が常に体系的かつ対象の明確なやり方で行なわれているわけではないことを、依然として懸念するものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラムを強化しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止 20.委員会は、締約国で差別に関するいくつかの監視機関が設置されたこと、および、法律第40/98号(出入国規則および外国人の状況に関する規則)に差別についての規定が掲げられていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、マイノリティに対する人種主義的事件、公的発言におけるヘイトスピーチの使用、および、とくに保健、社会福祉、教育および居住の分野で貧しい子ども、ロマの子ども、イタリア人以外の子ども(保護者のいない未成年者を含む)および障害児が経験している、経済的および社会的権利の享受における格差について懸念を覚えるものである。 21.条約第2条およびその他の関連条項ならびに前回の勧告(前掲、パラ17および18)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンのようなあらゆる適当な措置をとるとともに、人種差別撤廃委員会の勧告(A/56/18、パラ298および320)を実施すること。 (b) 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連の不寛容のいかなる行為も犯罪とし、かつこれらの行為に対して適当な刑事制裁を科すための努力を強化すること。 (c) 子どもによる権利の享受における既存の格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、この評価に基づき、積極的措置を通じて差別を防止しかつ解消するための必要な措置をとること。 (d) 地方自治体への権限委譲プロセスにより、子どもが属する州の豊かさに基づく子ども間の格差の解消が増進されることを確保すること。 (e) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもへの資源および社会サービスを引き続き優先させ、かつその対象を明確化すること。 (f) 拘禁されている外国人の子どもの状況を速やかに研究し、これらの子どもの全面的権利(とくに教育に対する権利)を差別なく確保し、かつ社会への統合に対するこれらの子どもの権利を確保すること。 22.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」(2001年)で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち条約に関わるものについて、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書で記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 23.委員会は、憲法裁判所が子どもの最善の利益の原則を憲法上の原則と位置づけたことを歓迎するものの、締約国の政策およびプログラムの実施において子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が全面的には適用されておらずかつ適正に統合されていないことを依然として懸念する。 24.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則がすべての法律および予算ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、条約第12条に掲げられた一般原則が実際上全面的には適用されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利が、子どもに影響を与える手続(とくに親の別居、離婚、養子縁組もしくは里親養護の事案)または教育において不十分にしか保障されていないことを懸念するものである。 26.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 裁判所における手続および行政上の手続を規律する立法において、自己の意見を形成する能力のある子どもがその見解を表明する権利を認められ、かつ当該見解が正当に重視されることが確保されるべきこと。 (b) 脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般におけるすべての子どもの参加権がとくに重視されるべきこと。 (c) この原則の実施に関する、公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきこと。 3.市民的権利および自由 アイデンティティに対する権利 27.委員会は、養子が、成年に達した後にかつその子どもの最善の利益であることが証明された場合でさえ自己の実親の素性を知ることができないことを懸念する。委員会はさらに、婚外子が、母および(または)父によって認知されなければ、法律上は母も父も有しないことになるのを懸念するものである。 28.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子であるか、いずれの親からも認知されていない婚外子であるかに関わらず、自己の親の素性を知る子どもの権利が尊重されることを可能なかぎり確保すること。 (b) (マルクス対ベルギー(Marckx v. Belgium)事件における欧州人権裁判所の決定および「母親は常に確定している」(mater semper certa est)という原則にしたがって)婚外子が出生時から法的に母を有することを確保し、かつ(「安易な」子どもの遺棄を防止する方法として)父によるこれらの子どもの認知を奨励する目的で、法律を緊急に見直しかつ改正すること。 (c) 婚外子の法的地位に関する欧州条約を批准すること。 思想の自由 29.委員会は、締約国報告書(パラ147)で述べられているように、子ども、とくに小学生の子どもが、主としてカトリックの信仰を取り上げている宗教の授業を欠席した場合に周縁化されるおそれがあることを、懸念する。加えて委員会は、親、とくに外国出身の親が、宗教の授業が義務的なものではないことを常に理解しているわけではないことを懸念するものである。 30.条約第2条、第14条および第29条に照らし、委員会は、締約国が、親(とくに外国出身の親)が関連の書式に記入する際、カトリックの信仰に基づく授業は義務的ではないことを確実に理解するようにすることを勧告する。 拷問および不当な取扱い 31.委員会は、法執行官が子どもに対する不当な取扱いを行なっているという訴えがあること、および、とくに外国人およびロマの子どもに対する虐待が蔓延していることを、深く懸念する。 32.前回の勧告(前掲パラ20)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の犯罪を刑法に編入すること。 (b) 逮捕、尋問および警察留置の際にならびに拘禁センターにおいて行なわれる不当な取扱いについての法執行官に対する苦情を受理するための、子どもに配慮した機構を設置すること。 (c) 警察および憲兵隊ならびに拘禁センターの専門家を対象として、子どもの人権に関する体系的研修を実施すること。 4.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 33.委員会は、養子縁組および里親養護に関する法律第184/83号(法律第149/2001号による改正法)が締約国全域で広く実施されていないこと、および、いまもなお里親養護よりも施設に措置される子どものほうが多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、社会的保護の目的で施設に措置され、かつ時として罪を犯した少年とともに施設に措置される子どもが多いことにも、懸念を表明するものである。加えて委員会は、国家子ども・青少年資料分析センターによる1998年の研究によれば、施設入所期間がきわめて長くなる場合があること、家族との接触が常に保障されるわけではないこと、および、これらの施設のうち19.5%は適正な認可を受けていないことを、懸念する。 34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律第184/83号の実施を確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 防止措置として、親の教育およびカウンセリングならびにコミュニティを基盤とするプログラム等を通じ、子どもの養育責任に関して家族を援助するための社会的な援助および支援を向上させること。 (c) 里親養護、家庭的里親ホームおよび家族を基盤とする他の代替的養護のような、施設措置に代わる諸形態を発展させるために効果的措置をとるとともに、子どもの施設措置は最後の手段としてのみ行なうこと。 (d) 独立機関による施設の定期的査察を確保すること。 (e) 養護を受けている子どもからの苦情を受理しかつこれに対応する効果的機構を設置し、養護の水準を監視し、かつ、条約第25条に照らし、措置の定期的審査を確立すること。 養子縁組 35.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を締約国が批准したことを歓迎するものの、関係する認可斡旋機関によって国内養子縁組の手続および費用が異なることを依然として懸念する。 36.条約第21条に照らし、委員会は、締約国が、以下のことのために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国全域の認可斡旋機関の間で国内養子縁組の手続および費用を調和させること。 (b) 前掲ハーグ条約を批准していない(送り出し)国との間で二国間協定を締結すること。 暴力、虐待およびネグレクト 37.委員会は、子どもの不当な取扱い、虐待および性的搾取に関する行動の調整のための国家委員会が設置されたこと、および、総合的戦略が採択されたことを歓迎する。加えて委員会は、性暴力に関する法律第66/96号およびドメスティックバイオレンスに関する法律第154/2001号が制定されたことを歓迎するものの、子どもの虐待および(または)ネグレクトに関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを、依然として懸念するものである。さらに委員会は、子どもに対する暴力に関して法律に年齢制限が定められており、14歳または16歳(加害者との関係による)以上の子どもは同一の保護から利益を受けられないことを、懸念する。 38.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) このような慣行の規模、範囲および性質を評価する目的で、子ども、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する、とくに家庭および学校で行なわれる暴力、不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)についての研究を実施すること。 (b) 子どもの虐待を防止しかつこれと闘う目的で、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを発展させること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力からの特別な保護について設けられている年齢制限に関する法律を改正すること。 (d) 現行諸制度の活動に関する評価を実施し、かつこれらのタイプの事案に関与する専門家に対して研修を行なうこと。 (e) 被害を受けた子ども(そのプライバシー権も含む)の保護の向上を確保する目的で、ドメスティックバイオレンスならびに家庭における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査手続および司法手続を通じて効果的に調査すること。 5.基礎保健および福祉 基礎保健 39.委員会は、「病院における子どもの権利憲章」の採択を歓迎するとともに、交通事故による子どもの死亡件数およびHIV/AIDSに感染した子どもの人数が劇的に減少したことに留意する。しかしながら委員会は、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもが保健サービスの利用にためらいを覚えていることを懸念するものである。 40.委員会は、締約国が、すべての子どもを対象として保健サービスへのアクセスを促進し、かつ、すべての子どもが利用可能な保健サービスを求めるように親に対して奨励するための積極的措置をとるよう、勧告する。 思春期の健康 41.委員会は、青少年の間で心理的障害(とくに摂食障害)が広く蔓延していること、および、青少年(とくに外国系の青少年)の中絶件数が相対的に多いことを、懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスが思春期の子どもにとってアクセスしやすく、かつこれらの子どもに配慮したものであることを確保しながら強化するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、青少年の心理的障害の原因および背景に関する研究を実施すること。 (b) とくに性教育を含む健康教育を学校カリキュラムの一部とし、かつ避妊手段の利用に関する情報キャンペーンを強化することによって10代の妊娠率を削減するために、さらなる必要な措置をとること。 6.教育 43.委員会は、義務教育期間を8年から10年に延長する法律第9/99号が採択され、かつ教員の養成および研修を改善するためのさまざまなプログラムが実施されていることを歓迎するものの、後期中等教育における中退率が高く、かつ、子どもの文化的および社会経済的背景ならびにジェンダー(女子のほうが男子よりも中等教育修了証書を取得する人数が多い)、障害および民族的出身のようなその他の要因によって子どもの教育上の成果に差異があることを、依然として懸念する。加えて委員会は、学校でいじめが蔓延していること、および、教育において子どもの意見が考慮されていないことを懸念するものである。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 後期中等教育における中退率を削減するための努力を強化すること。 (b) 女子および男子の間ならびに異なる社会的、経済的または文化的集団の子どもの間に見られる教育上の達成についての不平等を解消し、かつすべての子どもに良質な教育を保障するために、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 学校におけるいじめその他の形態の暴力を防止するための十分な機構および体制を、子どもたちの参加を得ながら設置するための措置をとるとともに、これらの戦略の策定および実施に子どもたちを含めること。 (d) 締約国全域の法律において、条約第12条が反映され、かつ、自己の教育に関するあらゆる事柄(学校規律を含む)について意見を表明しかつそれを正当に重視される子どもたちの権利が尊重されることを確保すること。 7.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 45.委員会は、外国人の子ども保護委員会が設置されたこと、および、出入国管理に関する法律第40/98号で、保健へのアクセスに関わって条約への具体的言及が見られることを歓迎する。しかしながら委員会は、保護者のいない未成年者を受け入れる十分な態勢が整えられていないこと、さまざまな州で保護者のいない未成年者に対応する手続の調和が図られていないこと、法律第189/2002号の新たな規定で資格外移民の拘禁が認められていること、政令第113/99号の実施によって十分なフォローアップが行なわれない送還が増加していること、および、未成年者の在留許可に関して2000年に変化が生じたことを、依然として懸念するものである。 46. 条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ、子どもが庇護を希望しているか否かにかかわらず、委員会は、締約国が子どもに関して以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および(または)性的搾取の被害を受けた者に特別な注意を払いながら、保護者のいない未成年者のための特別受け入れセンターを十分な数だけ設置するための努力を強化すること。 (b) これらのセンターにおける滞在が可能なもっとも短い期間に留められ、かつ、受け入れセンターでの滞在中および滞在後に教育および保健へのアクセスが保障されることを確保すること。 (c) 締約国全域で保護者のいない未成年者に対応するための、子どもの最善の利益にかなう調和化された手続を可能なかぎり早期に採択すること。 (d) 子どもの最善の利益にかなう場合には援助をともなう送還が構想され、かつこのような子どもについてフォローアップが保障されることを確保すること。 経済的搾取 47.委員会は、締約国における児童労働について国立統計研究所が最近発表した報告書に留意するとともに、この現象が締約国で広く蔓延していることに懸念を表明する。 48.委員会は、締約国が、最近の研究に基づき、とくに意識啓発活動および関連する要因の発見を通じて児童労働を防止しかつこれを解消することを目的とする、具体的かつ対象の明確な目標を掲げた包括的戦略を策定するよう、勧告する。 性的搾取および人身取引 49.委員会は、子どもを対象とする買春、ポルノおよびセックスツーリズムの搾取を禁じた法律第269/98号が採択され、かつ、「児童虐待ならびに性的目的の未成年者および女性の人身取引に対抗する政府の行動についての省庁間調整委員会」が設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において性的目的で人身取引の対象とされる子どもが多いことを、依然として懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1996年および2001年の〔子どもの〕商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがい、性的目的の子どもの人身取引を防止しかつこれと闘うための努力を強化すること。 (b) 法律第269/68〔ママ〕号の実施状況を、とくに同法が性的搾取の「需要側」の問題を扱っている点について監視すること。 (c) この分野の政策およびプログラムに対し、十分な資源(人的資源および財源の双方)が配分されることを確保すること。 少年司法の運営 51.委員会は、少年司法制度の改革が行なわれようとしていることに留意する。委員会は、少年司法制度において外国系の子どもおよびロマの子どもに対する差別が行なわれていること、子どもの拘禁環境を監視する独立の体制が設けられていないこと、ならびに、少年司法制度関係者の研修が不十分であることを、懸念するものである。 52.委員会は、締約国が、少年司法制度の改革に際し、条約の規定および原則、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準を全面的に統合するよう、勧告する。 53.とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 外国系の子どもおよびロマの子どもに対する差別を防止しかつ解消するため、意識啓発キャンペーンおよび関係者の十分な研修によるものも含むあらゆる必要な措置をとること。 (b) 未成年者を対象とする受け入れセンターおよび刑事施設への、公平な独立機関による定期的訪問を認めるとともに、自由を奪われたすべての子どもが、独立の、子どもに配慮したかつアクセスしやすい苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (c) 少年司法の運営に責任を負う者を対象として、子どもの権利に関する研修を実施すること。 マイノリティ集団に属する子ども 54.ロマの子どもの状況を向上させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが困難な社会的状況にあり、かつこれらの子どもによる教育および保健サービスへのアクセスが不十分であることを、依然として懸念する。加えて委員会は、この集団の子どもに対し、時として締約国の職員からも差別が行なわれていることを、深く懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、社会的排除および差別を防止し、かつロマの子どもがその権利(教育および保健ケアへのアクセスを含む)を全面的に享受できるようにするための包括的かつ積極的な政策およびプログラムを、ロマのNGOと協力しながら発展させるよう勧告する。 8.報告書の普及 56. 最後に委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した定期報告書を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、委員会が提起した事前質問事項に対する文書回答、関連の議事要録および報告書について委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.次回報告書 57.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2008年10月4日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/206.html
総括所見:オーストラリア(第4回・2012年) 第1回(1997年)/第2回・第3回(2005年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/AUS/CO/4(2012年8月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年6月4日および5日に開かれた第1707回および第1708回会合(CRC/C/SR.1707 and 1708参照)においてオーストラリアの第4回定期報告書(CRC/C/AUS/3-4〔ママ〕)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがって提出された締約国の第4回定期報告書(CRC/C/AUS/4)、および、委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/AUS/Q/4/Add.1)を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/AUS/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことを積極的対応として歓迎する。 (a) 締約国のすべての法律について、その可決前に、オーストラリアが加盟している7つの中核的国際人権文書で認められまたは宣言された人権および自由との両立性評価が行なわれなければならないと定めた、2011年・人権(議会精査)法(2011年)。 (b) 子どもが双方の親と意味のある関係を持つ権利を、これが安全である場合には引き続き促進する一方で、家族法制度における子どもの安全を優先させる、2011年・家族法改正(家族間暴力およびその他の措置)法(連邦法)。 (c) 乳幼児期の教育およびケアについて国レベルの質的枠組みを定めた、2010年・教育およびケアサービス国家法。 5.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの署名も歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年)。 (b) 拷問および他の〔残虐な、〕非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2009年)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2009年)。 (d) 障害のある人の権利に関する〔条約の〕選択議定書(2009年)。 (e) 女性に対する〔あらゆる形態の〕差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2008年)。 6.委員会はまた、以下の制度的措置および政策措置も歓迎する。 (a) 「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画(2010~2022年)」(2010年)。 (b) 「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み(2009~2020年)」(2009年)。 (c) 「国家乳幼児期発達戦略」(2009年)。 (d) 全国若者フォーラムの創設(2008年)。 (e) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもに関わる「盗まれた世代への国家的謝罪」(2008年)および「忘れられたオーストラリア人およびかつての子ども移民への、総理大臣による国家的謝罪」(2009年)。 (f) 「不利な立場に置かれた先住民族の格差縮小のための国家的統合戦略」(2008年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.前回の報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.268)を実施するための締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことを懸念する。 8.委員会は、締約国に対し、第2回・第3回統合定期報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないもの(とくに条約第37条(c)への留保、立法、調整、子どもの意見の尊重、結社の自由、体罰および少年司法の運営に関するもの)に効果的に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 9.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ8)にも関わらず、締約国が、条約第37条(c)に付された留保を撤回していないことを遺憾に思う。委員会は、当該留保の背景にある論理と条約第37条(c)の規定との間に矛盾はなんら存在しないように思われるため、第37条(c)に付された締約国の留保は不必要である旨の見解(CRC/C/15/Add.268、パラ7)を、あらためて繰り返すものである。委員会はさらに、締約国がその留保において表明している懸念については、 自由を奪われたすべての子どもが、「子どもの最善の利益に従えば成人から分離すべきでないと判断される場合を除き」成人から分離されるものとし、かつ子どもは「家族との接触を保つ権利を有する」と定めた第37条(c)によって十分に配慮されている旨の見解を、あらためて繰り返す。 10.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が留保の全面的撤回に向けた努力を継続しかつ強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ8)を、あらためて繰り返す。 立法 11.委員会は、条約の諸側面を実施するためのいくつかの法律を連邦および州のレベルで通過させる目的で締約国が行なってきた努力に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国の国内法において条約に全面的かつ直接の効力を与える包括的な子どもの権利法が国レベルでは引き続き存在しないこと、および、そのような法律を通過させた州が2つしかないことを、依然として懸念するものである。この文脈において、委員会はさらに、締約国が連邦制をとっていることから、このような法律が存在しない結果として領域全体における子どもの権利の実施に断片化および不整合が生じており、そのため、同様の状況に置かれた子どもが、どの州または準州に居住しているかによって権利の充足の度合いが異なるという事態に陥っていることに、留意する。 12.委員会は、締約国が、国内法および国内実務を条約の原則および規定と一致させ、かつ、子どもの権利が侵害された際に効果的救済措置が常に利用可能とされることを確保するための努力を強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ10)を、あらためて繰り返す。さらに委員会は、締約国が、条約および諸選択議定書の規定を全面的に編入し、かつ締約国の領域全域におけるこれらの規定の一貫した直接適用についての明確な指針を提示する、国レベルの包括的な子どもの権利法の制定を検討するよう勧告するものである。 調整 13.委員会は、2007年の政権交代後も、家族・住宅・コミュニティサービス・先住民族問題大臣が子どもの権利に関する国レベルの責任を引き続き負っている旨の、締約国の説明に留意する。しかしながら委員会は、連邦制によって、条約の一貫した実施のための活動の調整に関する実際的課題が生じており、その結果、締約国の州および準州における条約の実施に相当の格差がもたらされていることを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、条約の実施に責任を負う機関および省庁の政策および戦略の一貫性を領域全域で確保することについてオーストラリア連邦諸政府評議会に助言を提供する、十分な人的資源、技術的資源および財源を有する専門的な機関または機構の設置を検討するよう、勧告する。委員会はまた、家族・住宅・コミュニティサービス・先住民族問題省に対し、子どもの権利に関する調整責任を果たすための具体的権限、能力および資源が提供されるべきことも、勧告するものである。 国家的行動計画 15.「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画」、「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み(2009~2020年)」および「国家乳幼児期発達戦略」の採択には留意しながらも、委員会は、条約を全体として実施するための包括的な国家的行動計画が存在しないこと、および、これらの計画の実施を連携させる明確な機構が設けられていないことを、依然として懸念する。 16.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を全般的に実現するための、かつ州および準州が同様の計画または戦略を策定するための枠組みとなりうる包括的戦略を、子どもおよび市民社会と協議しながら策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、この包括的な戦略および行動計画の実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告するものである。 独立の監視 17.委員会は、締約国のすべての州および準州において子どもコミッショナーまたは独立の監視機関が設置されていることを評価する。委員会はまた、締約国が、国家子どもコミッショナー(NCC)の設置のための法律を提出したことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、NCCに対して当初配分される支援が、とくに子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情に対して十全かつ迅速な対応および救済を行なう実効的能力を与えられることとの関連で、その任務の全面的実現を確保するためには十分でないことを、懸念するものである。さらに委員会は、独立の立場から子どもの権利を監視する既存の機構および他の関連の制度に、アボリジナルおよびトレス諸島民の代表が十分に存在しないことを懸念する。 18.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)および条約第4条を考慮にいれながら、委員会は、国家子どもコミッショナーに対し、十分な人的資源、技術的資源および財源が提供され、かつ、子どもからまたは子どものために提出される苦情に子どもに配慮したやり方で迅速に対応することとの関連も含めて職務を効果的に遂行するために必要な免責が保障されることを確保するため、締約国が適切な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民のコミュニティで子どもの権利が効果的に監視されることを確保するため、締約国が、国および(または)州/準州のレベルでこれらのコミュニティの子どもの問題を担当する副コミッショナーを任命することを検討するよう、勧告するものである。 資源配分 19.締約国が世界でもっとも豊かな経済国のひとつであり、かつ相当量の資源を子ども関連のプログラムに投資していることを心に留めつつ、委員会は、締約国が、国および州/準州段階の予算の策定および配分に関して子どもに特化したアプローチを用いていないことから、子どもに対する投資の効果および予算的観点からの条約の全般的適用状況を明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが実務上不可能となっていることに、留意する。 20.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議の際に委員会が行なった勧告に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が、国、州および準州の段階で子どものニーズを十分に考慮し、関連の部門および機関において子どもに明確な配分を行ない、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、条約の実施に充てられる資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構を設置するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえばアボリジナルおよび(または)トレス諸島民系の子どもならびに障害のある子ども)を対象とした戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保するよう、勧告する。 データ収集 21.委員会は、条約の実施に関連するデータの収集を向上させるためにオーストラリア統計局が行なっている継続的活動、とくに、子どもの発達およびその背景に焦点を当てた「オーストラリアの子どもに関する縦断的研究」および「先住民族の子どもに関する縦断的研究」を歓迎する。委員会はまた、「オーストラリア乳幼児期発達指標」、および、政府の資金により障害のある人々に提供されているサービスについての全国的に比較可能なデータの対照など、データ収集に関して締約国が進めている取り組みにも、積極的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、これらのデータが、民族性、子どもの難民、移民および国内避難民、子どもの虐待およびネグレクトならびに性的搾取の被害を受けた子どもといった、条約の重要な分野について細分化も分析もされておらず、かつ乏しいかまたは入手不可能であることを、依然として懸念する。 22.委員会は、締約国が、とくに特別な保護を必要としている状況に置かれた子ども別の細分化が可能になるような方法で条約のあらゆる分野に関するデータが収集されることを確保するために既存のデータ収集機構を強化するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ20)をあらためて繰り返す。この点について、委員会は、このようなデータにおいて18歳未満のすべての子どもが対象とされ、かつ民族性、性別、障害、社会経済的地位および地理的所在に特段の注意が払われるべきことを、具体的に勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 23.委員会は、締約国が、自国の報告書および他の条約機関の報告書を司法長官のウェブサイトで利用可能とする取り組みを行なっていること、全国子ども・若者法律センターに資金を提供していること、および、全般的に人権教育を促進していることを、評価する。しかしながら委員会は、子ども、子どもとともにまたは子どものために働く専門家および一般公衆の間で条約に関する意識および知識が引き続き限られていることを、依然として懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、提案されている国家人権教育行動計画の中核的目標のひとつに、子どもの権利に関する公衆教育を含めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、学校カリキュラム、および、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を対象とする養成研修プログラムに、人権および条約に関する必修モジュールを含めることを検討するよう、勧告するものである。 国際協力 25.委員会は、締約国が、2016-2017年度の政府開発援助(ODA)の水準を現行の対国民総所得(GNI)比0.35%から0.5パーセントに引き上げる意図を有していることに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国の経済発展が先進的状況にあるにも関わらず、この水準が、GNPの0.7%をODAに支出するという国際合意目標よりも相当に低いことを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国が、すべてのODAプログラムが開発に対する人権基盤アプローチに一致することを求める具体的政策を定めていないことにも留意する。 26.委員会は、締約国に対し、持続可能な開発を確保し、かつすべての援助受領国が自国の人権法上の義務を履行できることを保障する目的で、可能な場合には子どもの権利に焦点を当てながら、開発援助に関するすべての政策およびプログラムについて一貫した人権アプローチをとるよう、促す。委員会は、締約国が、その際、援助プログラムに対する子どもの権利基盤アプローチを導入するとともに、当該援助受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう、提案するものである。さらに委員会は、締約国に対し、ODAに関する国際合意目標(対GNP比0.7%)を達成するためのロードマップの実施を加速するよう促す。 子どもの権利と企業セクター 27.委員会は、コンゴ民主共和国、フィリピン、インドネシアおよびフィジーなど、子どもが立退き強制、土地の収奪および殺害の被害を受けている国々での深刻な人権侵害にオーストラリアの鉱山会社が参加しかつ加担しているという報告について懸念を覚える。さらに委員会は、オーストラリア企業がタイで経営している漁業企業で国際基準に違反する児童労働および子どもの労働条件が見られるという報告について懸念を覚えるものである。さらに、オーストラリア鉱業協会による、持続可能な環境に関する自主的行動規範(「不朽の価値」)が存在することは認知しながらも、委員会は、オーストラリアの鉱山企業による直接間接の人権侵害を防止するうえで当該行動規範が不十分であることに、留意する。 28.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年4月7日の人権理事会決議8/7および2011年6月11日の人権理事会決議14/7(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 説明責任、透明性および人権侵害の防止を向上させる目的で、締約国の領域または海外で行なわれた人権(とくに子どもの権利)の侵害に関する、オーストラリア企業およびその子会社の法的責任を確保するための法的枠組み(民事法、刑事法および行政法)を検討しかつ修正するとともに、監視機構、調査体制およびこのような侵害の是正措置を確立すること。 (b) 子どもの権利の尊重、人権侵害の防止および人権侵害からの保護ならびに説明責任を確保する目的で、オーストラリア企業またはその子会社が活動している国々との協力を強化するための措置をとること。 (c) 子どもの権利侵害の発生を防止するための措置がとられることを確保する目的で、自由貿易協定の締結に先立って人権影響評価(子どもの権利影響評価を含む)が実施される慣行を確立するとともに、オーストラリア輸出信用機関が、海外投資を促進するための保険または保証を提供する前に、人権侵害のリスクに対処できるようにするための機構を設置すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.「オーストラリア国民――オーストラリアの多文化政策」および締約国の「反差別のための国家的パートナーシップおよび戦略」は歓迎しながらも、委員会は、人種差別全般が依然として問題となっていることに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 基礎的サービスの提供およびこのようなサービスへのアクセス可能性の観点から、ならびに、刑事司法制度および家庭外養護の対象とされることが相当過剰であることも含め、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもが深刻かつ広範な差別に直面していること。 (b) とくに子どもの保護、発達およびウェルビーイングの観点から「格差縮小」に掲げられた目標を推進するためのプログラムの有効性について、独立の評価が行なわれていないこと。 (c) 生徒の就学・出席促進措置として、学校を無断欠席している子どもの親について福祉給付金の懲罰的減額が認められていることも含め、締約国のノーザンテリトリー緊急対策法案(2007年)が懲罰的性質を有していること。 (d) アボリジナルおよびトレス諸島民に影響を与える政策立案、意思決定およびプログラム実施プロセスにおいて、当事者との協議および当事者参加が不十分であること。 (e) 性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別からの保護を提供する連邦法が存在しないこと。 30.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。委員会は、その際、締約国が、意識啓発その他の差別防止活動を、このような活動を学校カリキュラムに統合し、かつ必要なときは脆弱な状況に置かれた子ども(アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもならびに非アングロサクソン系オーストラリア人の子どもを含む)のための積極的差別是正措置をとること等も通じて強化するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもおよびその家族によるサービスへのアクセスの格差に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 「格差縮小」に掲げられた各目標の、とくに子どもの保護、発達およびウェルビーイングの観点からの策定、計画、実施および見直しについて報告するため、「アボリジナル・トレス諸島民運営グループ」の設置および当該グループに対する資源の提供を検討すること。 (c) ノーザンテリトリー緊急対策法案(NTERB)(2007年)、とくにそこに掲げられた生徒の就学・出席促進措置について、NTERB上の措置が均衡のとれた、かつ形式および効果の両面で非差別的なものとなることを確保する目的で、徹底した評価を実施すること。 (d) アボリジナルおよびトレス諸島民に影響を与える政策立案、意思決定およびプログラム実施プロセスへの、当事者の効果的かつ有意味な参加を確保すること。 (e) 性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別からの保護を提供する連邦法を制定すること。 子どもの最善の利益 31.委員会は、子どもの最善の利益の原則が広く知られておらず、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、この原則が適切に統合されておらず、かつ一貫して適用されていないことを懸念する。この文脈において、委員会は、庇護希望者、難民および(または)入管収容の状況下にある子どもの最善の利益の原則に関する理解およびその適用が不十分であることを、とくに懸念するものである。 32.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が広く知られ、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいてこの原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励されるところである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。委員会は、この勧告の実施にあたり、庇護希望者、難民および(または)入管収容〔の状況〕下にある子どもについての政策および手続において子どもの最善の利益が正当に優先されることを確保することに対し、締約国が特段の注意を払わなければならないことを強調するものである。 子どもの意見の尊重 33.委員会は、締約国が、政府、青少年部門および若者間のコミュニケーション回路としてオーストラリア若者フォーラムを設置したことを歓迎する。しかしながら委員会は、15歳未満の子どもおよび(または)アボリジナルまたはトレス諸島民系の子どもの意見を考慮するための場が引き続き不十分であることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、学校において、自己に影響を与える方針および意思決定への、意味がありかつエンパワーメントに基づいた子ども参加を促進するための機構が不十分であることを懸念する。さらに委員会は、締約国の1958年・移民法(連邦法)において、出入国管理官が、家族とともにやってきた子どもの事情聴取を家族とは別に行なうことを義務づける規定が設けられていないことを懸念するものである。 34.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、条約第12条にしたがい、意見を聴かれる子どもの権利の実施を引き続き確保するよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、あらゆる行政段階ならびに家庭、コミュニティおよび学校(生徒評議会を含む)において、脆弱な状況下にある子どもに特段の注意を払いながら、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するよう、勧告するものである。さらに委員会は、1958年・移民法において、移住プロセスのあらゆる段階で子ども(非正規移住の状況にある子どもを含む)の意見の尊重が保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 35.委員会は、出生登録との関連でアボリジナルが直面している困難について懸念を覚える。とくに委員会は、識字水準の低さ、出生登録の必要性および利点に関する理解の欠如ならびに公的機関が提供する支援の不十分さから生じる、出生登録を妨げる要因が解決されていないことを懸念するものである。委員会はさらに、出生証明書に事務管理費が課されることが、経済的に不利な状況にある人々にとって追加的障害となっていることに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国に対し、出生登録の重要性に関するアボリジナル住民の意識を高め、かつ非識字者による出生登録の便宜を図るための特別な支援を提供する等の手段により、オーストラリアで生まれたすべての子どもが出生時に登録され、かつ登録の障壁となる手続的要因を理由として不利な立場に置かれる子どもがひとりも出ないことを確保するために、出生登録プロセスを子細に見直すよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、出生証明書を子どもの出生時に無償で発行するよう促すものである。 アイデンティティの保全 37.委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民の多数の子どもが家庭およびコミュニティから分離され、かつ、とくにその文化的および言語的アイデンティティの保全を十分に促進しない養護の対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、親が締約国で市民権を放棄しまたは喪失した場合に子どもの市民権も取り消されうることに留意するものである。 38.委員会は、締約国が、自己のアイデンティティ、名前、文化、言語および家族関係に対するアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの権利の全面的尊重を確保する目的で、国連自由権規約委員会および先住民族の人権および基本的自由の状況に関する特別報告者等からも勧告されたとおり、「彼らを家庭に」報告書の勧告の実施における進展を検討するよう、勧告する。条約第8条に関して、委員会はさらに、締約国が、いかなる子どもも、その親の地位に関わらずいかなる根拠によっても市民権を剥奪されないことを確保するための措置をとるよう、勧告するものである。 結社の自由 39.委員会は、一部の州および準州の地方立法において、グループで平和的に集まっている子どもおよび若者の警察による排除が認められていることに関する前回の懸念(CRC/C/15/Add.268、パラ73(e))をあらためて表明する。 40.委員会は、締約国が、若者が一部の場所に集まることに関連している可能性がある問題に、警察による対応および(または)犯罪化以外の措置によって対応するとともに、この点に関わる法律の見直しを検討するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ74(h))をあらためて繰り返す。 プライバシーの保護 41.委員会は、オーストラリア情報コミッショナー事務所が、子どもの個人情報の取扱いにおけるオーストラリア・プライバシー法の適用についての指針を明らかにしたことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国で、子どものプライバシー権を保護する包括的法律が定められていないことを懸念するものである。さらに、1998年・プライバシー法(連邦法)に基づき、プライバシー権侵害についての苦情を聴取する権限がオーストラリア情報コミッショナー事務所に与えられていることには留意しながらも、委員会は、子どもに特化し、かつ子どもにやさしい機構が設けられていないこと、および、利用可能な機構は政府機関および政府職員ならびに大規模な民間組織に対する苦情に限られていることを、懸念する。委員会はまた、ウェスタンオーストラリア州およびノーザンテリトリーの法律で「反社会的行動」を行なった者(未成年者を含む)の個人的詳細の公表が認められていることも含め、刑事手続に関与した子どものプライバシー保護が不十分であることも、懸念するものである。さらに委員会は、保健サービス、とくにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するサービスを受けている子どものプライバシー権が確保されていないことを懸念する。 42.委員会は、締約国が、プライバシー権を掲げた包括的な国内法の制定を検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、プライバシー侵害に対する苦情を申し立てる子どもを対象とする、子どもに特化し、かつ子どもにやさしい機構を設置するとともに、刑事手続に関与した子どもの保護を強化することも促すものである。とくに委員会は、締約国に対し、2010年・禁止行為命令法(ウェスタンオーストラリア州)のような、罪を犯した子どもの詳細の公表を認めた法律を廃止するよう、促す。 体罰 43.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ36)にも関わらず、家庭ならびに一部の学校および代替的養護現場における体罰が、いわゆる「合理的な懲戒」という名目のもと、締約国全域で合法とされているままであることを遺憾に思う。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ36)をあらためて繰り返す。 (a) すべての州および準州において、家庭、公立および私立の学校、拘禁センターならびに代替的養護現場における体罰を明示的に禁止するため、あらゆる適切な措置をとること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りつつ、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに子どもの権利の尊重を促進することを目的とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを、子どもの関与を得ながら強化しかつ拡大すること。 45.加えて委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 「合理的な懲戒」が子どもの暴行の告発に対する抗弁として用いられないことを確保すること。 (b) 子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(法執行官、医療専門家、教育専門家を含む)を対象として、子どもに対する暴力のあらゆる事案の速やかな発見、対応および通報のための研修が行なわれることを確保すること。 (c) ドメスティックバイオレンスと体罰との間に存在する可能性がある関係についての、独立の立場からの研究の実施を検討すること。 子どもおよび女性に対する暴力 46.委員会は、同国において女性および子どもに対する高い水準の暴力が蔓延していることに重大な懸念を覚えるとともに、ドメスティックバイオレンス、合法的な体罰、いじめおよび社会におけるその他の形態の暴力の共存が相互に関連しあっており、状況の段階的拡大および悪化が助長されている固有の危険性があることに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) アボリジナルの女性および子どもがとくに影響を受けていること。 (b) 障害のある女性および女子の不妊手術が行なわれ続けていること。 (c) 被害を受けた子どもが家族と再統合した場合の監視システムが存在しないこと等の理由により、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもの再統合プログラムが依然として不十分であること。 (d) 家族構成員が暴力の加害者である事案および(または)女性が被害者ではなく加害者である事案に注意が向けられておらず、かつこのような事案に関する具体的手続も設けられていないこと。 (e) 学校、インターネットその他の状況で行なわれる子どもへの暴力に対応するためにとられている既存の措置について、定期的かつ体系的な評価が行なわれていないこと。 47.条約第19条および第37条(a)に基づく締約国の義務、ならびに、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を強調しながら、委員会は、締約国に対し、暴力を減少させるための一般的枠組みとして連邦法を策定するとともに、州および準州段階における同様のかつ補完的な法律の制定を促進するよう、促す。委員会はまた、締約国が、「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画(2010~2022年)」に基づく規定を実際に運用するため、以下のような措置を含む具体的行動計画を採択することも、勧告するものである。 (a) アボリジナルの女性および子どもの間で高水準の暴力が振るわれることを助長する要因が十分に理解され、かつ国および州/準州の計画でこれらの要因への対応がとられることを確保すること。 (b) 障害の影響を受けており、かつ同意ができない女性および女子の不妊手術を防止するための厳格な指針を策定しかつ執行すること。 (c) ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもに対し、家族再統合と同時に効果的なフォローアップ支援を確保するための機構を設けること。 (d) いずれかの親または他の家族構成員が加害者である事案についての代替的対応を発展させること。 (e) 具体的諸計画のなかで、かつ「オーストラリアの子ども保護のための国家枠組み」の3か年行動計画の一環として、学校における体罰およびいじめ、インターネットを通じての暴力ならびにその他の場面における暴力を含む暴力対策の実施状況を監視すること。 48.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)に関して、委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 49.家族に提供される支援を強化しようとする締約国の継続的努力は歓迎しながらも、委員会は、養護を受けている子どもの人数が増え続けていること、および、保育の利用可能性および質が依然として不十分であることを懸念する。 50.委員会は、締約国が、すべての家族タイプおよびすべての子どもを対象として現在とられている措置の有効性を体系的に評価するよう、勧告する。委員会は、その際、締約国が、とくに民族、ジェンダー、社会経済的地位および地理的所在の別に細分化されたデータを収集し、かつ、養護措置の対象とされる子どもの割合の減少および(または)上昇と、これらの子どもの家族に提供されている措置との相関を明らかにするよう、勧告するものである。委員会はさらに、このような評価の知見が、現行の家族支援プログラムを強化するための適切な措置(良質な保育施設が利用できかつ過度な負担を求められないこと、家族援助給付が十分であること、および、最近承認された有給親休暇の取得資格が妥当であることを確保することも含む)を締約国が実施する際の指針としても散られるべきことを、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 51.委員会は、家庭外養護措置の対象とされる子どもの人数が相当に増加しており(2005年から2010年にかけて約51%増)、かつ、子どもの養護措置につながる基準および決定を記録した全国的データが存在しないことを、深く懸念する。委員会はまた、締約国の家庭外養護制度の不十分さおよびそこで生じている人権侵害について広く報告されていることも、深刻に懸念するものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 子どもの不適切な措置。 (b) 養育担当者のスクリーニング、研修、支援およびアセスメントが不十分であること。 (c) 養護の選択肢の不足していること。家庭を基盤とする養育担当者への支援が貧弱であること、および、養護によって悪化する(または引き起こされる)精神保健上の問題が存在すること。 (d) 健康、教育、ウェルビーイングおよび発達の面で、養護を受けている若者にとっての成果が一般住民層の場合よりも芳しくないこと。 (e) 養護を受けている子どもの虐待およびネグレクト。 (f) 18歳に達して養護を離れる子どもに対して提供される、準備のための支援が不十分であること。 (g) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもがしばしばコミュニティ外に措置されていること、および、これとの関係で、アボリジナルの養育担当者を増員する必要があること。 52.委員会は、締約国に対し、子どもの虐待およびネグレクトが大規模に行なわれている根本的原因を検討するためにあらゆる必要な努力を行なうとともに、子どもが養護措置の対象とされる理由についての全般的データを、このような子どもの人数を減少させる目的で当該理由への対応を行なうために明らかにするよう、促す。委員会はさらに、締約国が、とくに、家庭外養護措置の対象とされる子どもの人数を減少させる目的でもっとも脆弱な立場に置かれた家族を明確にし、かつ必要なときは家庭を基盤とする養護を優先させることにより、現行の家庭支援プログラムを強化するための措置をとるべきである旨の前回の勧告を、締約国に対してあらためて繰り返すものである。さらに委員会は、締約国に対し、代替的養護に措置されている子どもの状況を向上させるために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供するとともに、以下の措置をとるよう、求める。 (a) 条約第25条で求められているとおり措置の定期的審査を行なうとともに、その際、子どもの不当な取扱いの兆候にとくに注意を払うこと。 (b) 保育ワーカーおよび家庭外養護の養育担当者の選抜、研修および支援に関する基準を策定するとともに、これらの養育者の定期的評価を確保すること。 (c) それぞれの子どもが有する個別のニーズに対して効果的対応が行なえることを確保するため、ソーシャルワーカーを増員すること。 (d) 養護を受けている子どもに対し、保健ケアおよび教育への平等なアクセスを確保すること。 (e) ネグレクトおよび虐待の事案を通報し、かつ加害者に対して相応の制裁を与えるための、アクセスしやすく、効果的な、かつ子どもにやさしい機構を設置すること。 (f) 移行の計画に早い段階から関与できるようにし、かつ離脱後にも援助を利用できるようにすることにより、若者に対し、養護を離れる前に十分な準備の機会および支援を提供すること。 (g) 「先住民族の子どもの措置に関する原則」を全面的に実施するとともに、代替的養護を必要とする先住民族の子どものための適当な解決策を先住民の家族内で見出すため、先住民族のコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化するべきである旨の、委員会の前回の勧告を遵守すること。 養子縁組 53.委員会は、締約国の8か所の法域のうち、養子縁組前の養子(12歳以上)の同意を要件としている法域が3か所のみであることを懸念する。さらに委員会は、養子縁組手続が子どもの最善の利益を最高の考慮事項として進められていないことを懸念するものである。 54.委員会は、同意および養子縁組手続における法定代理人へのアクセスに関する規定を全面的に実施し、かつ養子縁組手続における決定が子どもの最善の利益を最高の考慮事項として行なわれることを確保するという、〔子どもの権利〕条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に基づく義務を遵守する目的で、締約国が、すべての州および準州が必要に応じて養子縁組法を改正することを確保するための措置をとるよう、勧告する。 虐待およびネグレクト 55.委員会は、子どもが双方の親と意味のある関係を持つ権利を、これが安全である場合には引き続き促進する一方で、家族法制度における子どもの安全を優先させることとした、国レベルの家族法の改正を歓迎する。しかしながら委員会は、ドメスティックバイオレンスの発生率が引き続き高いこと、および、子どもとともにまたは子どものために働く専門家(医師その他の医療従事者および教員を含む)による虐待およびネグレクトの可能性がある事案を認識しかつこれに対応するために締約国がとっている研修アプローチが依然として不十分であることに、留意するものである。 56.委員会は、脆弱性が高まった状況にある家族に支援を提供し、かつ、家庭における子どもの虐待およびネグレクトならびに暴力を防止しまたは緩和するため、締約国が早期介入アプローチ(出産前の機関における介入も含む)を優先させるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような早期介入アプローチを補完する形で、スティグマをともなわない模範的実務方針およびプログラム(虐待の被害を受けた子どもが、子どもの保護に関わる意思決定のさまざまな段階で、集中的な家族支援サービス等も通じ、家族と前向きに再統合できることを優先させかつ支援するもの)の全国的検証を行なうよう、勧告するものである。 E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 57.委員会は、締約国が実施した、生産性委員会による障害者支援制度のアセスメント(2011年7月)を評価する。しかしながら委員会は、同委員会の知見に留意しつつ、現行の障害者支援制度は「十分な資金を得ておらず、不公正であり、断片化されていて非効率であるとともに、そこでは障害のある人々にほとんど選択権がなく、適切な支援に確実にアクセスできるという保障もなく、また障害のある子どもは、決定的に重要な時宜を得た早期介入サービス、人生の移行期の支援、および、家族または養育者の危機および崩壊を防止するための十分な支援をしばしば受けられていない」という懸念を共有するものである。さらに、締約国が5年をかけて障害児教育基準(2005年)を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、障害のある子どもの教育到達度と障害のない子どものそれとの間に相当の格差があることを依然として懸念する。この報告書〔総括所見〕ですでに述べた非治療的不妊手術に関する懸念をさらに敷衍させる形で、委員会は、そのような不妊手術を禁止する法律が定められていないことが差別的であり、かつ障害のある人の権利に関する条約第23条(c)に違反していることを、深刻に懸念するものである。さらに委員会は、締約国の法律において、障害を理由として移民申請を却下することが認められていることを懸念する。 58.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある子どもを、そのニーズに差別的ではない方法で効果的に対応するために速やかにかつ正確に特定する目的で、障害に関する明確な法律上の定義(学習障害、認知障害および精神障害に関するものを含む)を定めること。 (b) 障害のある子どもの養育に関する親のための支援措置を強化するとともに、そのような養護の措置が検討されるときは、当該検討が子どもの最善の利益の原則を全面的に顧慮しながら行なわれることを確保すること。 (c) 障害のある人の権利に関する条約にしたがった社会モデルアプローチを採用し、障害のある子どもが平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを阻害する態度面および環境面の障壁に対応するとともに、障害のある子どもとともにまたはこのような子どものために働くすべての専門家に対してしかるべき研修を行なうこと。 (d) とくに地方段階で必要な専門的資源(すなわち障害の専門家)および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうとともに、コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親支援グループを含む)を促進しかつ拡大すること。 (e) 障害のある子どもが教育に対する権利を行使できることを確保し、かつ、障害のある子どもを可能なかぎり最大限に普通教育制度に包摂する体制を整える(そのための手段には、資源に関わる現在の不備を具体的に明らかにするための障害児教育行動計画の策定を検討することも含む)とともに、障害のある子どもの教育上のニーズに対応するための措置の実施に関する、具体的日程をともなう明確な目標を定めること。 (f) 障害の有無に関わらず、すべての子どもの非治療的不妊手術を禁じる差別禁止法を制定するとともに、厳格に治療上の理由に基づく不妊手術が行なわれるときは、これが子ども(障害のある子どもを含む)の自由なかつ十分な情報に基づく同意の対象とされることを確保すること。 (g) 移民法および庇護法を含む締約国のすべての法律において、障害のある子どもが差別されず、かつ障害のある人の権利に関する条約第23条に基づく締約国の法的義務が遵守されることを確保すること。 健康および保健サービス 59.委員会は、締約国における子どもの健康水準が全般的に満足のいくものであることを評価する。しかしながら委員会は、農村部および遠隔地に住んでいる子ども、家庭外養護を受けている子どもならびに障害のある子どもの健康に関わる格差、ならびに、とくにアボリジナルの子どもと非アボリジナルの子どもとの間にある健康状態の相違について、懸念を覚えるものである。 60.委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた集団に属する子ども(とりわけ先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子ども)にとくに注意を払いながら、すべての子どもが保健サービスに対する同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ48)を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国に対し、保健面で現在存在する欠陥の重要な根本的原因である社会経済的不利益に対処するよう、促すものである。 61.さらに委員会は、締約国が、すべての保健専門家を対象とした、子どもの権利に関する義務的研修の実施を支援するべきであるという、健康への権利に関する特別報告者の勧告を検討するよう、勧告する。 母乳育児 62.委員会は、子どもが生後6か月になるまで完全母乳育児を続ける母親がおよそ15%にすぎないことを懸念する。2007-2008年度予算で母乳育児の教育および支援に特別資金を配分した締約国の取り組みは歓迎しながらも、委員会は、締約国で「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が効果的に執行されていないことを依然として懸念するものである。 63.委員会は、働く母親による産後6か月の完全母乳育児を支援するような改正を検討する目的で、締約国が、新たに定められた有給親休暇制度ならびに他の関連の立法上および行政上の措置を見直すよう、勧告する。委員会はまた、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」およびその後の関連決議を実施するための監視機構を設置することも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、「国家母乳育児戦略」に十分な資金を提供し、かつ、「国家母乳育児戦略」の実施において利害関係者としての産業代表の参加を得る慣行を取りやめることにより、母乳育児の促進、保護および支援に優先的に取り組むよう、勧告する。締約国はまた、「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブをさらに促進し、かつ看護師研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。 精神保健 64.委員会は、精神保健に対する締約国の資金拠出水準が依然として他の先進諸国よりも相当に低いことから、精神保健サービスを求める子どもおよび若者が、そのようなサービスへのアクセスの制限およびサービスを受ける際の相当の遅延にしばしば直面していることを、懸念する。この文脈において、委員会は、オーストラリア保健福祉研究所が2010年に刊行した保健研究で述べられている、劣悪な精神保健は子どもおよび若者にとっての健康問題の筆頭であり、かつ0~14歳の子ども(23%)および15~24歳の若者(50%)の疾病負荷を助長する最大の要因である旨の懸念を、共有するものである。さらに委員会は、締約国全域で、とりわけアボリジナルのコミュニティで若者の自殺率が高いことを懸念する。委員会は、締約国のウェスタンオーストラリア州が、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)の治療のために現在用いられている薬の有効性を調査する研究を実施したことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、現行の診断手続では、これらの障害に関連する潜在的な精神保健上の問題への対応が十分に行なわれない可能性があり、その結果、ADHDおよびADDと診断される子どもの相当な増加および(または)このように診断された子どもに対する精神刺激薬の誤処方が生じていること(これは深刻な懸念の対象である)を、依然として懸念するものである。 65.子どもおよび若者にやさしい精神保健上の支援およびサービスへのアクセスが重要であることを強調し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび若者の精神保健上の問題が高い割合で発生していることの直接間接の原因に対応するための措置をとることにより、オーストラリア保健福祉研究所の保健研究をフォローアップすること。その際、とりわけ有害物質濫用、暴力および代替的養護現場におけるケアの質の不十分さと関係する自殺およびその他の障害に、とくに焦点を当てること。 (b) 早期介入サービスの利用可能性および質を向上させること、教員、カウンセラー、保健専門家および子どもと働くその他の専門家の研修および職能開発を進めること、ならびに、親に対して支援を提供することのために、具体的資源を配分すること。 (c) 精神保健上の問題のリスクがとくに高い子どもおよびその家族を対象とする専門的保健サービスおよび重点対象戦略を発展させるとともに、このようなサービスを必要とするすべての者に対し、その年齢、性別、社会経済的背景、地理的出身および民族的出身等を正当に考慮しながらアクセス可能性を確保すること。 (d) 上記の勧告の計画および実施にあたり、これらの措置の策定について子どもおよび若者と協議すること。同時に、家族およびコミュニティの支援の向上を確保し、かつ関連のスティグマを削減する目的で、精神保健に関する意識啓発を進めること。 (e) 子どもに対する精神刺激薬の処方を注意深く監視するとともに、ADHDおよびADDと診断された子どもならびにその親および教員に対し、より幅広い心理的、教育的および社会的措置ならびに治療を提供するための取り組みを進めること。また、子どもが行なう可能性のある精神刺激薬の濫用を監視する目的で、物質のタイプおよび年齢にしたがって細分化されたデータの収集および分析を行なうこと。 HIV/AIDSならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルス 66.委員会は、締約国の若者の間で性感染症(STI)感染率が顕著に増加していること、および、セーフセックスを実行する若者の割合が低いと報告されており、かつHIV/AIDS以外のSTIに関する意識水準が低いことを、深く懸念する。委員会はさらに、アボリジナルの人々および社会経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域の人々のSTI感染率がはるかに高いことに、留意するものである。 67.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を強調しながら、委員会は、締約国が、青少年に対し、とくにHIVおよびこれに加えて他のSTIとの関連で性およびリプロダクティブヘルスに関する教育を提供するための努力を強化するとともに、とくにアボリジナルおよび社会経済的に不利な立場に置かれたコミュニティの間で、避妊手段、カウンセリングおよび秘密が守られる保健サービスのアクセス可能性を向上させるよう、勧告する。 生活水準 68.資格のある親(臨時雇用、パートタイム就労および季節就労の女性を含む)に対して18週間の有給親休暇を認める制度が最近承認されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、この制度が、多くの世帯にとって十分な所得ではない可能性がある全国最低賃金の水準に固定されており、かつ、完全母乳育児のために必要な6か月よりも短いことに、懸念とともに留意するものである。締約国において貧困線下で生活している人々の割合が、とくにアボリジナル住民、移民および庇護希望者ならびに障害のある人々の間では約12%であることにかんがみ、委員会は、さまざまな態様の補助金、税の控除および還付ならびに低所得家庭を対象とするその他の支援を含む一連の措置がとられていることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、これらの措置が、援助を必要としているすべての家庭にとって公平に利用可能なものとなっておらず、かつ、居住場所その他の差別につながる要因による区別なしに提供されているわけでもないことを、依然として懸念するものである。 69.委員会は、親(とくに母親)が、新生児のケアおよび母乳育児を行ないながらなお十分な生活費を得られるようにすることを確保するために有給親計画制度を注意深く監視するとともに、18週の有給期間経過後、乳幼児の良質なケアを維持し、かつ少なくとも生後6か月まで母乳育児を継続できるようにするための適切な便益を利用可能とするよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、貧困の決定要因に関する理解の向上を可能とするホリスティックな反貧困戦略を策定し、当該戦略を社会的および地理的に位置づけ、かつ、ジェンダー、年齢、出身、居住場所、教育水準およびこれに類する他の要因にしたがった具体的措置をとるべきである旨の、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の勧告(E/C.12/AUS/CO/4、パラ24)にも賛成するものである。 70.アボリジナル系オーストラリア人を対象とする住宅改修資金の追加、および、アボリジナル系オーストラリア人の社会経済的条件の向上を目的とする「格差縮小」戦略は歓迎しながらも、委員会は、締約国において子どもおよび若者のホームレスが多数発生しており、国が提供する社会宿泊施設も定員面で厳しい制約に直面していることを、深く懸念する。さらに委員会は、締約国が、さまざまな集団の特定のニーズを反映する、文化的に適切な住宅サービスを提供できていないことを懸念するものである。 71.委員会は、締約国が、子どもおよび若者のホームレスの問題に対応するための取り組みの再検討を迅速に行なうとともに、この問題に対応するための枠組みを、子どもおよび若者の具体的経験を正当に考慮しながら向上させかつさらに発展させるための指針として、この再検討の知見を活用するよう、勧告する。さらに、その際、締約国が、アボリジナルの子ども、新規来住コミュニティの子ども、養護から離脱しようとしている子どもならびに地方コミュニティおよび遠隔地の子どもを対象とする具体的戦略を策定することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、ホームレスとなるおそれがある子どもおよび若者のニーズに対する反応性を強化するため、教育、所得支援、保健制度、障害者サービス制度および雇用制度を含む社会サービスならびにこれらのサービス間の調整を向上させるよう、勧告する。 親が収監されている子ども 72.締約国が、裁判所に対し、言い渡す刑が有罪判決を受けた者の家族に及ぼす「蓋然的効果」を考慮するよう求める法律を有していることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、アボリジナル系オーストラリア人の収監率が人口比に照らして著しく過剰であること、ならびに、とりわけ深刻なこととしてアボリジナルの女性が過剰に収監されている結果、その子どもが、文化的に適切ではない代替的養護先に一時的にかつ不安定な形で措置される事態がしばしば生じていること、および、家族再統合率が低いことに、懸念とともに留意する。 73.「親が収監されている子どもの権利」に関する一般的討議(2011年)の際に行なわれた委員会の勧告を参照し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 危険な状況にある家族に支援サービスを提供することによって収監を防止し、かつ、子どもの収監および家族構成員からの分離を回避する目的でダイバージョンその他の代替的措置を活用するため、あらゆる司法上および行政上の体制を見直すこと。 (b) 犯罪の根本的原因に対処し、かつ危険な状況にある家族に対して防止サービスおよび早期介入サービスを提供することを促進する、重点対象プログラムの実施に対して資源および支援を提供すること。 (c) 子どもの最善の利益にかなうときは、子どもが収監されている期間全体を通じ、親子間の関係の維持に対して資源および支援を提供すること。 (d) 逮捕時にその場にいたかどうかに関わらず情報を知らされる子どもの権利を尊重しかつ充足するとともに、子どもからの情報または情報の共有の申請が、子どもの最善の利益を考慮し、かつ関係者にいかなる不利な結果ももたらさないようにしつつ、子どもにやさしいやり方で対応されることを確保する義務を履行すること。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 74.委員会は、締約国の「国家先住民族教育行動計画(2012~2014年)」および「先住民族の乳幼児期発達に関する国家的パートナーシップ協定」を歓迎する。しかしながら委員会は、先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもが教育へのアクセスに関して深刻な困難に直面しており、アボリジナルの生徒の識字水準、計算能力水準その他の達成水準がアボリジナル以外の生徒よりも相当に低いままであることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.268、パラ59)を、あらためて表明する。委員会はさらに、このような状況が、教育制度において、英語話者ではない子どものニーズに対応する十分な措置がとられていないことによって悪化していることを懸念するものである。そのため、このような子どもが不就学、出席不良および中退により陥りやすく、かつ中等段階教育を修了する可能性も低くなる状況が生じている。 75.委員会は、個々のアボリジナル教育戦略が、従前の政策の成功を基礎とし、かつアボリジナル・コミュニティ、教育部門、コミュニティ団体および専門家集団(ソーシャルワーカー、研究者、ヘルスワーカーおよび警察など)の連携に基づく長期的アプローチにのっとって進められることを確保するため、締約国が、「格差縮小」政策枠組みのなかで、州および準州の政府の効果的な調整および監督を行なうよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国および州の双方の段階で二言語教育モデルを保護しかつ促進するための、十分な人的資源、技術的資源および財源を確保するよう勧告するものである。 乳幼児期のケアおよび教育 76.委員会は、締約国の子どもの教育・ケア品質管理庁が乳幼児期の教育およびケアに関する「全国品質枠組み」の実施および監視を行なっていること歓迎する。しかしながら委員会は、4歳未満の子どもを対象とする乳幼児期のケアおよび教育が引き続き不十分であることに留意するものである。さらに委員会は、締約国における乳幼児期のケアおよび教育の大部分が民間の利益追求機関によって提供されており、その結果、ほとんどの家族にとってそのサービスが手の届かないものとなっていることを懸念する。委員会はさらに、このようなサービスを提供する主体がかなりの割合で民間機関であることから、「乳幼児期のケアおよび教育に関する全国品質枠組み」の適用および遵守が限定されていることを懸念するものである。 77.委員会は、締約国が、以下の措置をとること等により、乳幼児期のケアおよび教育の質および範囲をさらに向上させるよう勧告するものである。 (a) このようなケアが、子どもの全般的発達を包摂するホリスティックなやり方で提供されることを確保し、かつ親の能力を強化することも目的としながら、0~3歳の子どもに対するこのようなケアの提供に優先的に取り組むこと。 (b) 国営施設か民間施設のいずれによるものであるかに関わらず、無償のまたは手が届く範囲の乳幼児期ケアの提供を考慮することにより、乳幼児期のケアおよび教育の、すべての子どもにとっての利用可能性を高めること。 (c) 乳幼児期のケアおよび教育を提供するすべての主体が「乳幼児期のケアおよび教育に関する全国品質枠組み」にしたがうことを確保すること。 学校のいじめ 78.「全国学校安全枠組み」および「いじめ。絶対だめ!」プログラムなど、学校におけるいじめと闘うために締約国がとっている措置は歓迎しながらも、委員会は、いじめが引き続き広範に行なわれており、現行の枠組みではあらゆる形態のいじめに全面的に対応するうえで不十分であることが明らかになっていることを、依然として懸念する。 79.一般的意見13号を参照しつつ、委員会は、締約国が、とくに、すべての学校において教職員を対象とする教育的および社会教育学的手法を導入しかつ強化すること、親および子どもの関与を得ること、学校計画の適切な監視体制を確立すること、ならびに、いじめの事案を調査しかつこれに対応する能力を強化することによって、学校におけるいじめを防止しかつこれに対応するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 80.委員会は、入管収容施設に収容された子どもおよび脆弱な立場に置かれた家族を代替的形態の収容(コミュニティを基盤とする収容体制および入管通過収容を含む)に移行させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 締約国の移民法が、庇護希望者もしくは難民である子どもまたは非正規移住の状況にある子どもについて、期間制限がなく、かつ司法審査の対象とされない義務的収容を定めていること。 (b) 庇護手続および難民認定手続において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されておらず、かつ、考慮される場合にも、最善の利益の判断について十分な訓練を受けた専門家による対応が一貫してとられているわけではないこと。 (c) 保護者のいない未成年者の法的後見が、入管収容および難民認定ならびに査証申請についても責任を負っている移民・市民権大臣に委ねられる場合に、利益相反が生じるおそれが大きいこと。 (d) 2011年8月の高等法院決定(原告M70/2011 対 移民・市民権大臣事件)において、締約国がマレーシアとの「難民交換」を試みたことは、庇護希望者が保護の必要性評価のための効果的手続にアクセスできるようにし、庇護希望者に対して難民認定が行なわれるまでの保護を提供し、かつ、難民資格を認められた者について出身国への自主的帰還または第三国定住が行なわれるまでの保護を提供する国際法および国内法〔上の義務〕に違反すると判示されたにも関わらず、締約国が引き続き、庇護申請および難民申請をいわゆる「領域外処理」の対象とする政策を追求していること。 81.委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準に全面的に一致させるよう、促す。締約国は、その際、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮するよう、促されるところである。さらに委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ64)をあらためて繰り返す。これに加え、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 庇護希望者もしくは難民である子どもまたは非正規移住の状況にある子どもを収容する政策を再検討するとともに、入管収容が行なわれるときは、当該収容が期間制限および司法審査の対象とされることを確保すること。 (b) 移民および庇護に関する法律および手続において、すべての出入国管理手続および庇護手続で子どもの最善の利益が第一次的考慮事項とされることを確保するとともに、最善の利益の判断が、最善の利益認定手続について十分な訓練を受けた専門家によって一貫して行なわれることを確保すること。 (c) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見/支援制度を速やかに設置すること。 (d) 原告M70/2011 対 移民・市民権大臣事件における高等法院判決にしたがうとともに、とくに、庇護希望者に対する十分な法的保護を確保し、かつ、庇護申請のいわゆる「領域外処理」および「難民交換」の政策の試みを確定的に放棄すること。また、最善の利益の判断が行なわれることなくアフガニスタンに送還された子どもの苦境に関する報告書の評価を行なうこと。 さらに委員会は、締約国が、国連難民高等弁務官「国際的保護に関するガイドライン第8号:1951年条約第1条A(2)および第1条Fに基づく子どもの庇護申請」の実施および難民の地位に関する1967年議定書の批准を検討するよう、勧告する。 少年司法の運営 82.委員会は、以前の勧告にも関わらず、締約国の少年司法制度が国際基準に一致するためにはいまなお相当の改革が必要であることを遺憾に思う。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国によって、刑事責任に関する最低年齢を引き上げるための措置がなんらとられていないこと(CRC/C/15/Add.268、パラ74(a))。 (b) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者が、司法手続によらない適切な代替的措置を用いて対応されることを確保するための措置がなんらとられていないこと(CRC/C/15/Add.268、パラ74(d))。 (c) 18歳未満の者を対象とする義務的量刑法(いわゆる「三振アウト法」)が、ウェスタンオーストラリア州刑法にいまなお存在すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(f))。 (d) 締約国の州であるクイーンズランド州の刑事司法制度において、法律に抵触した17歳の子どもが全員が引き続き成人として審理されていること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(g))。 83.さらに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 17歳の者の大多数はより幅広い受刑者集団から分離されて収容されているとはいえ、成人矯正センターに収容される子どもの事例がいまなお存在すること。 (b) 締約国のカンバイ青年拘禁センターおよびビンベリ拘禁センターにおいて、子どもの被拘禁者の虐待が行なわれたという報告があること。 84.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。さらに委員会は、以下の措置をとるよう求めた前回の勧告をあらためて繰り返すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げることを検討すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(a))。 (b) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者に、司法手続によらずに対応すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(d))。 (c) ウェスタンオーストラリア州の刑法体系における義務的量刑を廃止するための措置をとること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(f))。また、ビクトリア州で同様の法律を制定することの断念を検討すること。 (d) クイーンズランド州において、17歳の子どもを成人司法制度の対象から除外すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(g))。 (e) 罪を犯したすべての子どもが独自の矯正センターに収容されることを確保するため、必要な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (f) 青年拘禁センターにおける虐待の事案を調査しかつこれに対応するための、アクセスしやすく効果的な機構を速やかに設置すること。 H.国際人権文書の批准 85.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書およびすべての中核的人権文書(強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、および、家事労働者に関する国際労働機関第189号条約を含む)に加入するよう、奨励する。 I.フォローアップおよび普及 86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会、広域行政機関および適用可能なときは地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 87.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 88.委員会は、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告の実施およびフォローアップに関する具体的情報を記載した第5回・第6回統合定期報告書を、2018年1月15日までに提出するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/53.html
総括所見:イギリス(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2008年)/第5回(2016年)英領香港(当時、1996年)/英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.188(2002年10月9日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年9月19日に開かれた第811回および第812回会合(CRC/C/SR.811 and 812参照)において、1999年9月14日に提出された大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.3)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、同報告書が委員会の報告ガイドラインにしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会は、事前質問事項(CRC/C/RESP/UK/2)に対する文書回答、および付属文書で提供された追加情報を歓迎する。委員会はまた、子ども若者部およびさまざまな省庁の上級職員からなる代表団(地方分権政府の代表を含む)の出席が、開かれた対話、および締約国における条約の実施に関する理解の向上に寄与してくれたことに、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 条約第32条および第37条(d)に付された2つの留保が撤回されたこと。 (b) 国際労働機関(ILO)の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)が批准されたこと。 (c) 1998年人権法が施行されたこと。 (d) 北アイルランドにおいて聖金曜日協定にしたがって和平プロセスが進められていること、北アイルランド人権委員会を設置する1998年北アイルランド法が制定されたこと、北アイルランド警察オンブズマンが設置されたこと、および、人種関係(北アイルランド)令(1997年)が発布されたこと。 (e) 子ども若者部が設置されたこと、および、締約国全域で、子どもに焦点を当てた新たな体制が政府内で発展していること。 (f) 締約国の国際援助において子どもの権利が促進されていること。 (g) 200年子ども(リービングケア)法および2000年ホームレス法が採択されたこと。 (h) 1997年ハラスメントからの保護法、1997年性犯罪者法、および、家庭内暴力およびドメスティック・バイオレンス(北アイルランド)令(1998年)が採択されたこと。 (i) イングランド、ウェールズおよびスコットランドにおいて学校体罰の廃止が完了し、かつスコットランド学校基準等法(2000年)が採択されたこと。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、条約の批准に内在する法的義務にもかかわらず、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.1)に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.34)に掲げられた懸念および勧告の多く、とくにパラ22-27、29-36、39、40ならびに42に掲げられたものへの対応が不十分であることを懸念する。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されている。 5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告および懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保および宣言 6.締約国が第37条(d)および第32条に付された留保を撤回したことは歓迎しながらも、委員会は、出入国管理および市民権に関する広範な留保(これは条約の趣旨および目的に反するものである)を撤回する意図が締約国にないことを、依然として懸念する。加えて委員会は、締約国において子どもがいまなお成人とともに拘禁されていることを理由として、締約国が第37条(c)に対する留保を撤回する立場にないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が成人とともに拘禁される子どもの人数を減らすための努力を行なってきた一方、もはや当該留保の撤回を妨げているのは資源面での考慮のみであるように思えることを懸念する。 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.34、パラ22および29)にしたがい、かつウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、成人と同じ施設における子どもの拘禁を終わらせ、かつ第37条(c)に対する留保を撤回するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、第22条に対する留保について、締約国の法律は条約第22条にしたがっているのでこの留保は形式的には不必要であるという締約国の見解を踏まえ、撤回の方向で再検討するようにも歓迎するものである。 立法 8.欧州人権条約に掲げられた諸権利を国内法に編入する1998年人権法が施行されたことには留意しながらも、委員会は、欧州条約に掲げられたものよりもはるかに幅広い子どもの権利条約の規定および原則がいまだ国内法に編入されておらず、かつ新法において条約が全面的に遵守されることを確保するためのいかなる正式な手続も存在しないことを、懸念する。委員会は、スコットランドの教育制度が第12条を遵守することおよびウェールズの保育制度における体罰が禁じられることを確保するなど、地方分権政府において条約との両立性を確保するための若干の法改正が導入されたことに留意しながらも、締約国が、国内法が領域全体で条約と両立することを確保していないことを、依然として懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、すべての法律において条約が遵守され、かつ条約の規定および原則が法律上および行政上の手続で広く適用されることを確保する目的で、条約の権利、原則および規定を国内法に編入するよう奨励する。締約国はまた、条約の規定に関する研修を行ない、かつ条約をより広く普及することも奨励されるところである。 資源 10.条約を実施するための資源が増加していること、子どもに関する支出を明らかにするために予算を分析する方向に向けて若干の前向きが動きが見られること、子どもの貧困を2010年までに半減させ、かつ一世代のうちに根絶することが国家的目標とされていること、ならびに、地域的対象を明確にした子どものためのサービスを通じて子どもの貧困および社会的排除に対処するための戦略および政策がとられていることには留意しながらも、委員会は、条約が、条約第4条で定められているように「利用可能な資源を最大限に用いて」実施されていないことを、依然として懸念する。 11.委員会は、子どもに関する支出の割合を明らかにし、優先課題を特定し、かつ「利用可能な資源を最大限に用いて」資源を配分する目的で、締約国が、締約国全体のおよび地方分権政府におけるすべての部門別予算および総予算の分析を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、国際開発省の活動においてもこの原則を適用するよう勧告するものである。 調整 12.委員会は、地方分権政府で創設された他の機関に加えて2001年に子ども若者部が設置されたことは歓迎するものの、締約国全域で条約の実施を調整する中央機構が存在しないことにより、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策が実現しにくくなっていることを依然として懸念する。それぞれの地方政府に対する権限委譲プロセスが進められていることにより、北アイルランド、スコットランド、イングランドおよびウェールズのさまざまなレベルの政府間ならびに諸政府および地方当局間で、締約国全体を通じた条約の実施の効果的調整を行なう必要性が、いっそう差し迫ったものとなっている。 13.委員会は、前回の勧告(前掲、パラ23)にしたがい、締約国が、締約国全体(地方分権政府も含む)で条約の実施を調整する役割を、十分な権限および資源を有し、非常に注目されやすく、かつ容易に特定可能な恒久的機関に割り当てるよう勧告する。 行動計画 14.委員会は、ウェールズ国民議会が策定した「子ども若者戦略」において条約が枠組として用いられたことを歓迎するものの、これが締約国全体に当てはまるわけではないことを依然として懸念する。委員会は、条約に基づきかつ締約国全体で適用される全般的戦略を公表しかつ実施するという、文書回答においておよび締約国代表団主席によって行なわれた決意表明に、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、政策策定に対して権利基盤アプローチがとられていないこと、および、条約が、締約国全体のあらゆる行政段階で戦略策定のための適切な枠組みと認められてきたわけではないことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、総合的な子どもの権利観に基づく国家的行動計画が存在しないことも懸念する。 15.委員会は、締約国に対し、締約国全域で条約を実施するための包括的行動計画を早期に採択しおよび実施するよう奨励する。その際、「ケアの前進のための道」を考慮に入れるとともに、開かれた、豊富な協議をともなう参加型のプロセスを通じ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえば貧困世帯の子ども、マイノリティ集団の子ども、障害児、ホームレスの子ども、ケアの対象とされている子ども、16~18歳の子ども、アイリッシュおよびロマのトラベラーの子どもならびに庇護希望者など)に特別な注意を払うことが求められる。 独立の監視機構 16.委員会は、ウェールズで独立した子どもコミッショナーが設置されたことを歓迎するものの、とくに権限移譲の対象とされていない事柄との関連で同コミッショナーの権限が限られていることを懸念する。委員会は、北アイルランドおよびスコットランドで子どものための独立した人権機関を設置する計画があることを歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国がイングランドにおいて子どものための独立した人権機関をまだ設置していないことを、深く懸念する。 17.委員会は、前回の勧告(前掲)にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもを対象として条約のあらゆる権利を監視し、保護しおよび促進するため、人権の促進および保護のための国内機関に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)にしたがい、締約国全域でおよび国レベルで、広範な任務および適切な権限ならびに資源を有する独立した人権機関を設置すること。このような機関は、子どもが容易にアクセスでき、自ら活動方針を決定することができ、子どもの権利の侵害について子どもに配慮したやり方で調査を行なう権限を与えられ、かつ、子どもが自己の権利の侵害に対する効果的な救済を得られることを確保するようなものであるべきである。 (b) すべての人権機関がそれぞれの立法機関との関係で正式な助言の職務を有すること、および、これらの機関が相互に公式なつながり(協力関係を含む)を確立することを確保すること。 (c) 国内人権機関に対して十分な資源および適切な職員を提供すること。 (d) これらの機関の設置および活動に子どもおよび子ども団体が効果的に関与することを確保すること。 データ収集 18.委員会は、事前質問事項への文書回答で提供された統計データ、最近刊行された子どもおよび若者に関する統計、ならびに、毎年「子ども白書」を刊行したいという子ども若者部の意図を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とする分野についてのデータを収集しおよび分析する全国的機構が存在しないことを、なお懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野について18歳未満のすべての子ども(もっとも脆弱な立場に置かれた集団を含む)に関する細分化されたデータを収集する全国的システムを設置すること、および、進展を評価しかつ条約の実施のための政策を立案する目的でこれらのデータを活用するよう勧告する。委員会は、イングランド、北アイルランド、スコットランドおよびウェールズにおけるならびに締約国全体に関する定期的報告書を作成するとともに、連合王国およびスコットランドの議会ならびに北アイルランドおよびウェールズの国民議会において、これらの報告書に関する幅広い公開の議会討議を促進するよう奨励するものである。 研修/条約の普及 20.委員会は、スコットランドで教育に対する権利基盤アプローチが採用されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、最近の研究によればほとんどの子どもが条約に掲げられた権利を知らないことを、とりわけ懸念するものである。したがって委員会は、締約国が、条約に関する十分な普及活動、意識啓発活動および研修活動を体系的な、かつ対象を明確化した方法で行なっていないことを懸念する。 21.前回の勧告(前掲、パラ26および32)ならびに条約第42条に照らし、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の行政組織の間における、条約およびその実施に関する情報の普及を相当に拡大すること(脆弱な立場に置かれた集団に積極的に情報を届けるための取り組みも含む)。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者など)を対象とする、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 22.人種関係(北アイルランド)令(1997年)の採択、および、国籍法における婚内子と婚外子の差別を終結させることに関する締約国のコミットメントは歓迎しながらも、委員会は、差別の禁止の原則が、締約国のすべての場所において、すべての子どもを対象として全面的に実施されているわけではなく、かつ、とくに障害のある子ども、貧困家庭の子ども、アイリッシュおよびロマのトラベラーの子ども、子どもの庇護希望者および難民、マイノリティ集団に属する子ども、ケアの対象とされている子ども、拘禁されている子どもならびに16~18歳の子どもに関して、経済的、社会的、文化的、市民的および政治的権利の享受に不平等があることを、懸念する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 差別にさらされている子ども、とくに脆弱な立場に置かれている前掲の集団に属する子どもの状況を監視すること。 (b) イングランド、スコットランド、北アイルランドウェールズにおける子どもによる権利の享受の状況を、比較しながら監視すること。 (c) このような監視の結果に基づき、あらゆる形態の差別の解消を目的とした、対象が十分に明確化された具体的行動を掲げる包括的戦略を策定すること。 (d) 婚姻した父のみならず非婚の父を通じても国籍の承継を可能とするため、国籍法を改正すること。 24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 25.子どものケアおよび保護に関わる法律に子どもの「福祉」が掲げられていることには留意しながらも、委員会は、子どもの最善の利益を第一次的に考慮するという原則が、子どもに影響を及ぼす締約国全域の法律および政策、とくに少年司法制度および出入国管理実務に一貫した形で反映されていないことを懸念する。 26.委員会は、前回の勧告(前掲、パラ24)にしたがい、締約国が、子どもに影響を及ぼす締約国全域のすべての法律および政策、とくに少年司法制度および出入国管理実務において、最高の考慮事項のひとつとしての子どもの最善の利益を採用するよう勧告する。 生命に対する権利 27.委員会は、北アイルランドにおいて、円形プラスチック弾が暴動鎮圧手段として引き続き用いられていることを懸念する。これは子どもを傷つけるとともに、その生命を危うくさせる可能性もあるためである。 28.拷問禁止委員会の勧告(A/54/44、パラ77(d))の勧告にならい、委員会は、締約国に対し、暴動鎮圧手段としての円形プラスチック弾の使用を廃止するよう促す。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、締約国全域の行政機関、地方当局および市民社会において子どもの参加および子どもとの協議がますます奨励されるようになっていること、地方当局のサービス計画立案において子どもとの協議プロセスが確立されたこと、子ども若者部に若者諮問フォーラムが設置されたこと、ならびに、締約国のあらゆる場所で子どもおよび若者のためのその他の場(スコットランド若者議会など)が設けられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国全域の法律、たとえば離婚に関わる司法上の手続、養子縁組、教育および保護に関する法律に、第12条の義務が一貫した形で編入されていないことを懸念するものである。加えて、委員会は、1989年子ども法に掲げられた、法的手続における独立の代理に対する子どもの権利が体系的に行使されていないことを懸念する。委員会はまた、教育において、児童生徒が自己に影響を与える事柄について組織だった協議の対象とされていないことも懸念するものである。委員会は、締約国の子どもの諸集団が、自分たちの意見が正当に考慮されていないという気持ちを表明していることに留意する。 30.委員会は、締約国が、条約第12~17条にしたがい、社会のすべての子ども集団の、組織だった、意味のある、かつ効果的な参加(たとえば生徒会を通じた学校における参加を含む)を促進し、その便宜を図り、かつこれを監視するために、さらなる措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、第12条の両方の項の義務を法律に一貫した形で反映させるためにさらなる措置をとるとともに、裁判手続および行政手続(離婚および別居の手続を含む)において、自己の意見を形成する力のある子どもが意見を表明する権利を認められ、かつその意見が正当に重視されることを確保するよう、勧告するものである。委員会はさらに、子どもに影響を及ぼすプログラムおよび政策の立案において、子どもが表明した意見が考慮されかつ影響を与えることを可能にするような手続を設置するよう、勧告する。 3.市民的権利および自由 名前および国籍ならびにアイデンティティの保全 31.最近の養子縁組および子ども法案(2002年)には留意しながらも、委員会は、婚外子、養子とされた子どもまたは受精補助医療を背景として生まれた子どもに、その生物学的親の身元を知る権利が認められていないことを懸念する。 32.条約第3条および第7条に照らし、委員会は、その出生の事情にかかわらずすべての子どもおよび養子とされた子どもが可能なかぎりその親の身元に関する情報を得られるようにするため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い 33.委員会は、2000年4月から2002年2月にかけて、296名の子どもが、刑務所で使用された拘束および統制措置によって傷害を負ったという最近の数字に、特段の懸念を覚える。加えて、委員会は、入所型施設および拘留施設において身体的拘束が頻繁に用いられていること、ならびに、子どもが少年拘禁施設および刑務所の独居拘禁房に措置されていることを、懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、条約、とくに第37条および第25条との一致を確保するため、締約国全域の拘留施設、教育施設、保健施設および福祉施設における拘束および独居拘禁の使用を見直すよう促す。 体罰 35.委員会は、1995年の勧告(前掲、パラ32)後、イングランド、ウェールズおよびスコットランドのすべての学校において体罰が廃止されたことを歓迎するものの、当該廃止がまだ北アイルランドのすべての私立学校を対象とするところまで拡大されていないことを懸念する。委員会は、ウェールズ国民議会があらゆる形態の保育(家庭的保育を含む)における体罰を禁ずる規則を採択したことを歓迎するものの、このような文脈におけるすべての体罰を禁止する法律がイングランド、スコットランドおよび北アイルランドではまだ整備されていないことを、非常に懸念するものである。 36.前回の勧告(前掲、パラ31)に照らし、委員会は、締約国が「合理的懲罰」の抗弁をあくまで維持するとし、家庭におけるあらゆる子どもの体罰を禁止する方向に向けた実質的な行動を何ら起こしていないことを、深く遺憾に思う。 37.委員会は、「合理的懲罰」の抗弁を削除するのではなく制限するという政府の提案は、とくにそれが子どもの尊厳の重大な侵害であることから、条約の原則および規定ならびに前掲の勧告に一致しないという見解に立つものである(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の同様の見解も参照。E/C.12/1/Add.79, para. 36)。さらに、このような提案は一部の形態の体罰は容認されることを示唆するものであり、したがって積極的かつ非暴力的な規律を促進するための教育的措置を阻害することにつながる。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 「合理的懲罰」の抗弁を削除し、かつ現行法で対象とされていない家庭その他のあらゆる文脈におけるすべての体罰を禁止するための法律を、締約国全域で緊急に採択すること。 (b) 子どもおよび親ならびにこれらの者とともにおよびこれらの者のために働くあらゆる者の関与を得ながら、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに人間の尊厳および身体的不可侵性に対する子どもの平等な権利の尊重を促進するとともに、体罰の有害な影響に関する公衆教育プログラムを実施すること。 4.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 39.委員会は、家庭内暴力およびドメスティック・バイオレンス(北アイルランド)令(1998年)、虐待からの子どもの保護に関する通達10/95号、教育機関の役割、スコットランド学校〔基準〕等法(2000年)およびスポーツにおける子どもの保護部の設置(2001年)のような、児童虐待の分野で行なわれた取り組みに留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭における暴力およびネグレクトの結果、毎週1名ないし2名の子どもが死亡していることを深く懸念するものである。委員会はまた、締約国全域で、家庭、学校、施設、ケア制度および拘禁環境における子どもへの暴力(性暴力を含む)が蔓延していることも懸念する。委員会はまた、子どものネグレクトの水準が悪化していることにも、深い懸念とともに留意する。委員会は、これらの現象の規模を抑えるための、調整のとれた戦略が存在しないことを憂慮するものである。委員会はとくに、子どもの死亡について十分かつ体系的なフォローアップが行なわれていないこと、および、16歳未満の子どもに対する犯罪が記録されていないことに留意する。ケア制度について、委員会は、私的に里親託置された子どものための一貫した保護措置が存在しないことに留意する。委員会は、法廷で証言する子どもを支援するために政府がとった措置は歓迎するものの、子ども保護制度の役割に関する公的教育が行なわれていないことに留意するものである。 40.前回の勧告(前掲、パラ31)にしたがい、かつ条約第3条、第6条、第12条、第19条および第37条に照らし、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの死亡に関する法定調査制度を導入すること。 (b) 暴力の結果による子どもの死亡を減らし、かつ子どもに対するあらゆる形態の暴力を減らすための、調整のとれた戦略を策定すること。 (c) 代替的養護下にあるすべての子ども(私的に里親託置された子どもも含む)を対象として、法律上の一貫した保護措置を確保すること。 (d) 学校等も通じ、子どもの死亡および児童虐待を減らすことを目的とした、子どもの保護における法定機関その他のサービス機関の役割に関する情報をともなう大規模な公衆教育キャンペーンおよびプログラムを実施すること。 (e) 虐待、不当な取扱いおよびネグレクトの事案を受理し、監視し、捜査しかつ訴追するための効果的な手続および機構を設置すること。その際、虐待を受けた子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保すること。 (f) 子どもに対するすべての犯罪を英国犯罪調査に記録すること。 (g) 被害者のケア、回復および再統合のための体制を整えること。 (h) 被虐待児のための守秘対応センターへの全面的支援を通じて通報制度を強化するとともに、不当な取扱いの事案の特定、通報および取扱いに関する研修を教員、法執行官、ケアワーカーおよび保健専門家に対して行なうこと。 5.基礎保健および福祉 41.乳児死亡率が低下したこと、および、全国的保健サービスの計画において子どもに新たに焦点が当てられるようになったことは歓迎しながらも、委員会は、健康および保健サービス(精神保健サービスを含む)へのアクセスに関する、社会経済的地位および民族と結びついた不平等(たとえばアイリッシュおよびロマのトラベラーの乳児死亡率が高いことなど)が締約国全域で根強く存在すること、母乳育児率が相対的に低いこと、および、非合法であるにもかかわらず女性性器切除が根強く行なわれていることを、依然として懸念する。 42.委員会は、健康および保健サービスへのアクセスに関する不平等を少なくし、母乳育児を促進しおよび「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採用し、ならびに、教育上その他の措置を通じて女性性器切除の禁止を執行するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 思春期の健康 43.10代の妊娠件数を削減するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、締約国において10代妊娠率が高いことを依然として懸念する。委員会は、マンツーマンのメンター制度、ならびに精神保健上の問題の発見およびこれへの対応に対する学際的アプローチを歓迎し、かつ全英優先課題指針(1999~2002年)に子どもの精神保健が導入されたことには留意するものの、多くの子どもが精神保健上の問題に苦しんでおり、かつ若者の自殺率がいまなお高いことを依然として懸念するものである。委員会は、同性愛およびトランスセクシュアルの若者が、自己の性的指向にしたがって生きられるようにするための適切な情報、支援および必要な保護にアクセスできていないことを懸念する。委員会はさらに、若者の性感染症感染件数が増加していることを懸念するものである。 44.前回の勧告(前掲、パラ30)にしたがい、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに(独立の「10代の妊娠に関する助言グループ」が勧告しているように)性教育を含む健康教育を学校カリキュラムの一部とし、すべての子どもが避妊手段を利用できるようにし、ならびに、秘密が守られかつ青少年に配慮した助言および情報その他の適切な支援へのアクセスを向上させることを通じて10代の妊娠率を削減するために、さらなる必要な措置をとること。 (b) 手当の受給資格および子育て講座との関連で、16歳未満の若い母親に関する政策を見直すこと。 (c) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスが思春期の子どもにとってアクセスしやすく、かつこれらの子どもに配慮したものであることを確保しながら強化するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、自殺の原因および背景に関する研究を実施すること。 (d) 同性愛およびトランスセクシュアルの若者に十分な情報および支援を提供すること。委員会は、締約国に対し、代表団が行なった意思表明に留まらず、適用可能なときは1988年地方自治法第28条を廃止するよう奨励する。 生活水準 45.委員会は、締約国において貧困下で暮らしている子どもの割合が高いことを著しく懸念する。このことは、これらの子どもによる条約上の多くの権利の享受を制限し、かつ、これらの子どもの間で死亡、自己、妊娠、劣悪な居住環境およびホームレス化、栄養不良、教育面での失敗および自殺の発生件数が高まることにつながるものである。委員会は、子どもの貧困を解消するという締約国の決意およびこれに関連して行なわれている取り組みは歓迎するものの、締約国全域を対象とする、効果的かつ調整のとれた貧困根絶戦略が存在しないことに留意する。 46.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの貧困の解消をさらに迅速に行なうため、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」あらゆる必要な措置をとること。 (b) 若者のホームレス化の原因およびその結果に対応するための努力の調整を向上させ、かつこのような努力を強化すること。 (c) 16~18歳の者を対象とする給付および社会保障手当についての法律および政策を見直すこと。 6.教育、余暇および文化的活動 教育 47.委員会は、教育予算の増加、および、教育改善措置地区等の取り組みを通じて識字能力および数学の水準を高めるために締約国がとった措置、ならびに、幅広いシティズンシップ教育プログラムの開発を歓迎する。さらに委員会は、条約第12条を反映させるためにスコットランドで進められている法律の発展を歓迎するものの、同様の法律は締約国全域で必要とされていること、および、指針では第12条を実施するための措置としては不十分であることに留意するものである。委員会は、停退学率がいまなお高く、もっぱら特定集団の子ども(黒人の子どもを含む民族的マイノリティ、アイリッシュおよびロマのトラベラー、障害のある子ども、庇護希望者等)に影響が生じていること、および、子どもの社会経済的背景およびその他の要素(ジェンダー、障害、民族的出身または養護に関わる地位)によって子どもの教育上の成果が著しく異なることを、懸念する。さらに、委員会は、学校におけるいじめが広がっていることを懸念するものである。委員会は、刑務所および少年拘禁センターで自由を奪われている子どもが教育に対する法律上の権利を有していないこと、このような子どもの教育が教育担当省庁の責任とされていないこと、および、このような子どもが特別な教育上のニーズに対する支援を受けていないことを、とりわけ懸念する。委員会はさらに、ケア制度の対象とされている子どもの大多数および10代の母親が基礎的な教育修了資格を得ていないことを懸念するものである。委員会は、北アイルランドにおける統合学校の発展を歓迎するものの、統合されている学校は全体の4%に過ぎず、引き続き分離教育が主となっていることを、依然として懸念する。 48.条約第2条、第12条、第28条および第29条に照らし、かつ委員会の前回の勧告(前掲、パラ32)にしたがい、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国全域の法律で、第12条が反映され、ならびに自己の教育に関わるすべての事柄(学校懲戒を含む)について意見を表明しかつその意見を正当に重視される子どもの権利が尊重されることを、確保すること。 (b) 停学または退学を削減し、締約国全域の子どもが停退学の前に意見を聴かれる権利および停退学に対して異議を申し立てる権利を有することを確保し、かつ、停退学の対象とされた子どもが引き続きフルタイムの教育にアクセスできることを確保するため、適当な措置をとること。 (c) 異なる集団の子ども間における教育上の達成および停退学率の不平等を解消し、かつすべての子どもに適切な質の教育を保障するため、あらゆる必要な措置をとること。 (d) 拘禁されている子どもが教育に対する平等な法律上の権利を有することを確保し、かつケアの対象とされている子どもの教育を向上させること。 (e) 家庭および学校における子どもへの暴力に関する一般的討議で採択された委員会の勧告に照らし、いじめその他の形態の学校における暴力を防止し、かつこれらの戦略の策定および実施に子どもを含めるための措置をとり、かつそのための十分な機構および体制を設置すること。 (f) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れながら、すべての初等中等学校および教員養成のカリキュラムに条約に関する教育および人権教育を含めること。 (g) 相当数の親の要求を満たすため、北アイルランドの統合学校の予算を増額するとともに、その増設を促進するための適当な措置およびインセンティブを導入すること。 (h) 10代の母親の継続教育を促進しおよび奨励するため、このような母親を対象とする教育プログラムを発展させること。 (i) 学校民営化が教育に対する子どもの権利に及ぼす影響の評価を実施すること。 7.特別な保護措置 子どもの庇護希望者/難民 49.委員会は、1994年に〔NGOである難民評議会に〕子ども助言者委員会が設置されたことを歓迎するとともに、家族とともにまたは自分自身で庇護を請求する子どもの人数が増えていることを認識する。委員会は、これらの子どもの収容は条約の原則および規定と両立しないことを懸念する。委員会はさらに、〔庇護希望者等の居住地の〕分散システムはよりよい統合を阻害し、かつ人種関連の事件の拡大につながる可能性があること、庇護を希望する子どもを一時居住先に措置することは保健または教育へのアクセスのような基本的権利を侵害する可能性があること、申請の処理に数年かかる場合があること、子ども助言者委員会の資金が常に十分であるわけではないこと、および、現在進められている庇護制度および出入国管理制度の改革において子どもの庇護希望者の特有のニーズおよび権利が対応されていないことを、懸念するものである。 50.条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ、子どもが庇護を希望しているか否かにかかわらず、委員会は締約国が子どもに関して以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第37条に一致する形で、保護者のいない未成年者の収容は控えることを方針とし、かつ、収容の合法性を迅速に争う権利を確保すること。いかなる場合にも、収容は常に最後の手段であり、かつもっとも短い適当な期間で用いられなければならない。 (b) 子どもの難民および庇護希望者が教育および保健のような基礎的サービスにアクセスでき、かつ、庇護を希望する家族のための手当であって子どもに影響を及ぼしうるものの受給資格に関して差別がないことを確保すること。 (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および難民に対する後見人の任命を検討すること。 (d) 特定の地域に定住した子どもが18歳に達した際に当該地域を離れることを強制されないようにするため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) 庇護申請に対応する手続を迅速化するための努力、および、子どもを不適切な一時居住先に措置するのではなく子ども養護法制上の「援助を必要とする子ども」として居住先を手配するための努力を行なうこと。 (f) 出入国管理制度および庇護制度で対応されている保護者のいない未成年者その他の子どものための、法定代理その他の形態の独立の権利擁護の利用可能性および実効性に関する検討を行なうこと。 (g) 現在進められている出入国管理制度および庇護制度の改革において、これらの制度を条約の原則および規定と一致させるため、子どもの特有の状況に遺漏なく対応すること。 アイリッシュおよびロマのトラベラー 51.委員会は、アイリッシュおよびロマのトラベラーに属する子どもが差別されていることを懸念する。このような差別は、とくに、その他の子どもと比較した場合のこれらの子どもの死亡率の高さ、教育におけるこのような子どもの隔離、その住環境およびこのような子どもに対する社会の態度に表れているところである。委員会はまた、政策とサービス提供との間に乖離があることも懸念する。 52.前回の勧告(前掲、パラ40)にしたがい、委員会は、締約国が、これらの集団に属する子どもが権利を享受することを妨げる要因に効果的に対応するための包括的かつ建設的な行動計画を、これらの集団およびその子どもが関与する協議型および参加型のプロセスによって立案するよう勧告する。 武力紛争における子ども 53.委員会は、軍の年間新規入隊者のおよそ3分の1が18歳未満であること、陸海空軍が若者を標的としていること、および、入隊者は最低4年間軍務に就かなければならない(非常に若年の入隊者については6年間に延長される)ことを、深く懸念する。委員会はまた、若年の入隊者がいじめの被害を受けているという訴えが広く存在すること、および、18歳未満の子どもが国外で敵対行為に直接参加していることも懸念するものである。委員会はまた、北アイルランド紛争が子どもに及ぼす悪影響(北アイルランドで施行されている非常事態立法その他の法律の活用によるものも含む)について依然として懸念する。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准するとともに、その趣旨および目的を念頭に置きながら、締約国が選択議定書への署名時に行なった宣言で挙げられている状況において18歳未満の者を配置しないようにするためあらゆる必要な措置をとること。 (b) 16歳に達しているが18歳には満たない者を徴募するときは、条約第38条3項に照らして最年長の者を優先させるよう努めるとともに、18歳以上の者を徴募する努力を強化しかつ増進させること。 (c) 前回の勧告(前掲、パラ34)に照らし、北アイルランドで現在運用されている非常事態立法その他の法律が条約の原則および規定と一致することを確保するため、少年司法の運営制度との関連も含めてこれらの法律の見直しを行なうこと。 経済的搾取(児童労働も含む) 55.委員会は、全国最低賃金が就業の最低年齢に達した若年労働者に適用されないこと、および、したがってこれらの若年労働者が経済的に搾取されるおそれがありうることを懸念する。委員会は、最低賃金に関する政策に、若者の学業および技能向上を奨励することを目的とした締約国のプログラムが反映されていることに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、このような政策が働かなければならない子どもに対する差別となる可能性があることを懸念する。 56.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則に照らし、若年労働者の最低賃金に関する政策を再検討するよう勧告する。 性的搾取および人身取引 57.委員会は、子どもを商業的性的搾取から保護するための国家計画(2001年)、および、子どもの性的搾取と闘うために締約国とフィリピン政府との間で調印された了解覚書(1997年)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、性的搾取その他の搾取を目的とする人身取引がいまなお問題となっていること、および、性的搾取を受けた子どもがいまなお法律で犯罪者とされることを、懸念するものである。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童買春の規模、原因および背景に関する研究を行なうこと。 (b) 性的搾取を受けた子どもが犯罪者とされないよう、法律を見直すこと。 (c) 子どもの商業的性的搾取に反対する会議(1996年および2001年)で採択された「宣言および行動綱領」ならびに「グローバル・コミットメント」にしたがった政策およびプログラムを引き続き実施すること。 (d) この分野の政策およびプログラムに対し、十分な資源(人的資源および財源の両方)が配分されることを確保すること。 少年司法の運営 59.委員会は、罪を犯した少年を対象として修復的司法およびコミュニティを基盤とするその他の建設的処分を導入するための取り組みを締約国が行なっていること、17歳の者がほぼ完全に少年司法制度の対象とされていること、および、罪を犯した子どもの行動に対応するための学際的チームが創設されたことを歓迎するものの、法律に触れた子どもの状況が第1回報告書の検討以降悪化していることに、重大な懸念とともに留意する。委員会は、子どもが刑事司法制度の対象とされる年齢が低いこと(スコットランドでは刑事責任年齢がいまなお8歳と定められており、締約国のそれ以外の地域では10歳と定められている)、および、責任無能力推定原則が廃止されたことをとりわけ懸念する。委員会は、スコットランドの子ども聴聞制度に異なるアプローチが反映されていること、および、16~18歳の若者を子ども聴聞制度の対象とすることに関する議論が行なわれていることを歓迎するものである。委員会は、締約国の第1回報告書以降、12~14歳の子どもが自由を奪われるようになったことをとりわけ懸念する。より一般的には、委員会は、拘禁命令および拘束命令を発令する裁判所の権限が最近になって強化された結果、より多くの子どもが、より低年齢で、より軽微な犯罪について、かつより長い刑期で拘禁されるようになっていることを深く懸念する。委員会は、したがって、自由の剥奪が、条約第37条(b)に違反して、最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられていないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもが拘禁下で不十分な環境を経験していること、および、子どもが(15~17歳を対象とする)若年犯罪者施設で十分な保護または援助を受けていないことも、著しく懸念する。この点について委員会は、子どもに対する職員配置の比率が非常に低いこと、暴力、いじめ、自傷行為および自殺が高水準で発生していること、更生のための機会が不十分であること、懲戒措置としてのまたは保護のための独居拘禁が不適切な環境下でかつ長期間にわたって用いられていること、ならびに、収監されている女子および一部の男子がいまなお成人から分離されていないことに、留意するものである。 60.加えて、委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 1998年犯罪および秩序違反法により、イングランドおよびウェールズで、条約の原則および規定に違反する可能性のある措置が導入されたこと。 (b) 一定の状況において子どもが成人裁判所で審理されうること。 (c) 拘禁されている子どもが、独立の権利擁護サービス、ならびに教育、十分な保健ケア等の基礎的サービスに常にアクセスできるわけではないこと。 (d) 刑事司法制度に関わることになった子どものプライバシーが常に保護されるわけではなく、かつ重大犯罪の場合はその氏名がしばしば公表されること。 (e) 17歳未満の若者が再拘留に関して成人と見なされること。 61.前回の勧告(前掲、パラ36および36)にしたがい、委員会は、締約国が、条約の規定および原則、とくに第3条、第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準を立法政策および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立するよう、勧告する。 62.とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を相当に引き上げること。 (b) 1998年犯罪および秩序違反法によって導入された新たな命令を再検討し、かつそれを条約の原則および規定と両立するようにすること。 (c) 犯罪の状況または重大性にかかわらず、いかなる子どもも成人として審理されないことを確保すること。 (d) 条約第40条2項(b)(vii)にしたがい、法律に触れたすべての子どものプライバシーが全面的に保護されることを確保すること。 (e) 子どもの拘禁が最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられること、および、子どもが拘禁時に成人から分離されることを確保するとともに、自由の剥奪に代わる措置の活用を奨励すること。 (f) 自由を奪われたすべての子どもが、独立の権利擁護サービス、および、独立の、子どもに配慮した、かつアクセスしやすい苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (g) 拘禁の環境を見直し、かつ、自由を奪われたすべての子どもが、教育、健康および子どもの保護に対して他の子どもと同一の法律上の権利を有することを確保するため、緊急にあらゆる必要な措置をとること。 (h) 18歳未満のすべての子どもに対して特別な保護を与える目的で、再拘留についての17歳の若者の地位を見直すこと。 (i) 扱われる事件数を相当に増やせるようにし、かつ16~18歳の若年犯罪者を子ども聴聞制度の対象にできるようにするため、スコットランドの子ども聴聞制度に適切な資源を配分すること。 8.選択議定書 63.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准していないことに留意する。 64.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書、ならびに、前掲勧告のとおり、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書を批准するよう奨励する。 9.文書の普及 65.委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見の刊行を検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOおよび子どもグループを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 10.報告書の定期的提出 66.委員会は、締約国に対し、条約で定められた第4回定期報告書の提出期限、すなわち2009年1月15日までに次回定期報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は、第3回および第4回定期報告書を統合したものであるべきである。しかしながら、委員会は毎年多数の報告書を受領しており、その結果、締約国報告書の提出日から委員会による検討が行なわれるまで相当の遅延が生じていることから、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合報告書を、その提出期限の18か月前である2007年7月15日までに提出するよう慫慂するものである。 67.最後に、委員会は、締約国の次回定期報告書に、大ブリテンおよび北アイルランド連合王国のすべての海外属領および王室属領からの情報が記載されることを期待する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月26日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/183.html
総括所見:アイスランド(第3~4回・2011年) 第1回(1996年)/第2回(2003年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/ISL/CO/3-4(2012年1月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年9月23日に開かれた第1648回および第1649回会合(CRC/C/SR.1648 and 1649参照)においてアイスランドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/ISL/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第3回・第4回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/ICE/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎するとともに、報告書および事前質問事項に対する回答の双方が率直かつ自己批判的なものであったことを称賛する。このような性質は、締約国における子どもの状況についての理解を向上させることを可能とするものである。委員会は、締約国の部門横断型代表団との間に持たれた、非常に建設的なかつ開かれた対話に対し、評価の意を表明する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法上の措置がとられたことを歓迎し、かつ前向きな対応としてこれらに留意する。 (a) 子ども保護法(法律第80/2002号)の改正(2011年)。 (b) 新メディア法(法律第38/2011号)。 (c) 初等学校法(法律第91/2008号)の改正(2011年)。 (d) 教育・職業カウンセラー法(法律第35/2009号)。 (e) 就学前教育施設法(法律第90/2008号)、初等学校法(法律第91/2008号、2008年)およびその改正(2011年)ならびに中等学校法(法律第87/2008号)。 (f) 就学前教育施設、初等学校および中等学校における教員および学校管理者の教育および採用に関する法律(法律第87/2008号)。 (g) 性的同意に関する最低年齢を14歳から15歳に引き上げた刑法改正(2007年)。 (h) 青年法(法律第70/2007号)。 (i) 慢性疾患児または重度障害児の親に対する給付についての法律(法律第22/2006号)、および、法律第158/2007号による同法の改正。 (j) 子ども法(法律第76/2003号)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの加入も歓迎する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2010年6月)。 (b) サイバー犯罪に関する欧州評議会条約(2007年1月)。 5.委員会はまた、以下の制度的および政策的措置も歓迎する。 (a) 子どもおよび若者の状況を向上させるための行動計画(2007~2011年)。 (b) 子どもの家庭外措置の質に関する基準(2008~2011年)。 (c) アイスランドにおける子どもの保護のための行動計画(2008~2010年)。 (d) 移民政策に関する行動計画(2008年)。 (e) 18歳未満の子どもについて保健ケアおよび病院の費用を免除する保健社会保障省規則(2008年)。 (f) 保健政策行動計画(2008年以降)。 III.条約の実施を妨げる要因および困難 6.委員会は、2008年の銀行制度破綻以降、締約国が深刻な金融危機のさなかにあり、そのために公共投資および雇用の水準を維持する能力に深刻な影響が生じ、ひいては子どもおよびその家族、とくに低所得家庭に影響が生じていることに留意する。しかしながら委員会は、締約国が、とくに特別な保護措置との関連で子どもの権利を保護するための財政努力を行なっており、かつ、財政的および経済的状況が着実に改善され続けていることから、教育および保健を含む社会投資の予算削減を是正する意思を有していることに、評価の意とともに留意するものである。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書に関する委員会の総括所見を実施するために締約国が行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、総括所見の一部について十分な対応がとられていないことに留意するものである。 8.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(第37条に関する宣言の維持、データ収集システムの欠如、移民の子どもの中退率の高さおよび双方可罰性要件の存在〔に関するもの〕を含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告について十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 9.委員会は、条約第9条に関する留保〔ママ〕が2009年2月に撤回されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が第37条に関する留保〔ママ〕を撤回していないことを遺憾に思うものである。 10.委員会は、締約国が、条約第37条(c)にしたがって拘禁された子どもと成人との分離を法律で保障し、かつ第37条に関する留保〔ママ〕を撤回するべきである旨の、前回の総括所見で行なった勧告(CRC/C/15/Add.203、パラ5)をあらためて繰り返す。 立法 11.委員会は、条約の実施に関連する憲法上、法律上および規範上の枠組みを強化する目的で締約国がとっている立法措置を評価する。委員会は、第37条に関する留保〔ママ〕が撤回され次第、締約国が、条約およびその選択議定書を国内法に編入するために必要な措置をとるよう、勧告するものである。 調整 12.委員会は、子どもおよび青少年に関する政策の計画ならびに委員会の勧告の検討についての活動を2007年から2011年にかけて行なった諮問委員会の設置に留意する。しかしながら委員会は、条約の実施について部門横断型の調整を行なう権限を与えられた常設機関がいまなお存在しないことを、遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国が、あらゆるレベルにおけるあらゆる関連の機関間で子どもの権利政策の実施を調整する有効な常設機構を設置するための措置をとるよう、勧告する。この機構に対しては、国、広域行政圏および自治体のレベルで包括的な、一貫した、相互に齟齬のない子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されるべきである。 国家的行動計画 14.委員会は、パラ12で言及した諮問委員会の設置について定めた、子どもおよび若者の状況を向上させるための行動計画(2007~2011年)に留意する。委員会はまた、今後の期間を対象とする新たな行動計画を策定する決定が行なわれたことにも留意するものの、当該計画がまだ採択されていないことを遺憾に思うものである。 15.委員会は、締約国に対し、2007~2011年の計画の評価を基礎とし、条約に掲げられたすべての規定を網羅する、子どもに関する新たな国家的行動計画を可能なかぎり早期に採択するよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、当該計画の全面的実施のための具体的予算配分および十分なフォローアップ機構の設置を行なうとともに、当該計画について、達成された進展の評価および存在しうる欠陥の特定を恒常的に行なう、フォローアップおよび評価のための機構が設けられることを確保することも、勧告するものである。 独立の監視 16.子どもオンブズマンに提供される資源が2007年に増やされたことは歓迎しながらも、委員会は、オンブズマンには個別の苦情を受理する資格がない旨の締約国の情報に留意する。委員会はまた、さまざまな政府機関のもとに複雑な苦情申立て機構体系が設置されていることも懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、子どもオンブズパーソン〔ママ〕に対して個別の苦情を処理する権限を与えることを検討するとともに、この機構がすべての子ども、とりわけ脆弱な状況に置かれた子どもにとって有効かつアクセス可能なものであることを確保し、かつ、このような苦情申立て手続に関する公衆、とくに子どもの意識啓発を図るよう、勧告する。子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に対する注意を喚起しつつ、委員会はまた、締約国に対し、この苦情申立て機構に対してその独立性および有効性を確保するために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するようにも求めるものである。 資源配分 18.委員会は、締約国が2008年以降直面している困難な財政状況および経済状況を認識するとともに、脆弱な状況に置かれた子どもおよび家族を保護するためのサービスに直接の影響が及ばないようにするために行なわれている努力を評価する。しかしながら委員会は、教育部門および保健部門に対する予算が著しく削減されたこと、および、努力が行なわれているにも関わらず、低所得基準値以下の家族および子ども(とくにひとり親家族)の割合が上昇していることに、懸念を表明するものである。 19.委員会は、2010年以降経験されている経済的および財政的回復にともない、締約国が、教育部門および保健部門に対する予算の削減を反転させるとともに、(とくに単身の世帯主を対象とした)雇用創出、社会保障および特別な保護に対する投資を持続的に増加させるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どものための予算配分を監視しかつ評価する目的で、子どもの権利の視点に立った予算追跡を導入するとともに、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)の際の委員会の勧告を考慮するよう、勧告するものである。 データ収集 20.委員会は、子どもに関わるさまざまな分野について締約国から提供されたデータに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、データ収集システムにおいて条約のすべての分野が網羅されておらず、かつ、このようなデータの処理および評価のための十分な機構が存在しないことを、遺憾に思うものである。 21.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価するための基盤として、データを収集し、処理しかつ分析するための包括的なシステムを発展させるよう、奨励する。すべての子どもの状況に関する分析を容易にするため、データは年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 普及、意識啓発および研修 22.委員会は、2008年以来、締約国が毎年「子どもの日」を祝っていることに評価の意とともに留意する。委員会はまた、政府子ども保護庁が条約に関するホームページを開設したこと、ならびに、子ども保護委員会の関係者および処遇施設職員を対象として、子どもの保護および子どもの権利に関するセミナー、広報会合、フォーラムおよび会議が行なわれていることも、歓迎するものである。しかしながら委員会は、子どもの権利が学校カリキュラムに含まれているかどうか、かつ、そのような研修およびセミナーの対象に法執行官、保健専門家、教員、ヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーがとくに含まれているかどうか、または当該集団を対象として条約および委員会による検討に関する情報を普及する目的で他に何らかの措置がとられているかどうかに関する情報がないことを、遺憾に思う。 23.委員会は、締約国が学校カリキュラムに子どもの権利を含めるよう、勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに法執行官、教員、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカーおよびあらゆる形態の代替的養護の関係者を対象とした、十分かつ体系的な研修を強化することも勧告するものである。 国際協力 24.委員会は、国際協力に貢献するために締約国が行なっている力強い取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、同国の困難な経済情勢にともなって国際援助への拠出額が削減されたことに留意するものである。 25.委員会は、締約国に対し、現在の危機にも関わらず国際協力の水準を維持し、かつ可能であれば高めるよう奨励する。委員会は、締約国に対し、2015年までに対GNP比0.7%という同国の目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励するものである。委員会は、締約国が、その際、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案する。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 子どもの最善の利益 26.委員会は、福祉サービスおよび公的サービスに対する子どものニーズのアセスメントにあたって子どもの最善の利益の概念が一般的に考慮されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、一部の個別事案において、とくに子どもに対する親のアクセスを確保することとの関連で、最善の利益原則が十全に考慮されていない可能性があることを懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、子どもに対する親のアクセスについてのすべての事案で、子どもの最善の利益が常に優先されることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告するものである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、子ども法で、自己の見解を形成しかつ表明する子どもの権利が保障されている旨の締約国の説明に留意する。委員会はまた、自治体当局が、青年法に基づき、青年問題について当局に助言を与える青年評議会を設置できることも評価するものである。にもかかわらず、委員会は、このような評議会を設置しなければならないという法律上の要件も、このような評議会の運営を規律するいかなる手続および規則も定められておらず、これについては自治体の裁量に委ねられていることを、依然として懸念する。委員会はまた、すべての子どもが意見表明の平等な機会を有しているわけではない可能性があることも懸念するものである。 29.意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国に対し、青年評議会の運営、役割および権限を規律する規則を採択するとともに、裁判所、学校、関連の行政手続および子どもに関わるその他の手続ならびに家庭において、障害のある子ども、移民の子どもまたは他の脆弱な状況にある子どもを含む子どもの意見が正当に考慮されることを確保するよう、勧告する。 C.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 30.委員会は、子育てカウンセリングおよび親の対応の訓練も含む4か年行動計画が2007年に採択されたことに留意するとともに、子どもの養育に関して親を支援するための措置を歓迎する。しかしながら委員会は、貧困下にある家族(単身者が世帯主である家族を含む)のための社会給付が不十分であり、かつ、そのためこのような家族の子どもの発達に悪影響が生じていることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、家事紛争事件において、親を対象とした調停サービスのための資金が不十分であることも懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、家族支援措置を継続し、かつ関係の専門家を対象とした研修を行なうよう、奨励する。委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた家族に十分な援助を提供し、かつ紛争中の親を対象とした調停サービスのための資金を増加させる目的で、社会給付プログラムを改定するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、扶養義務についての決定の承認および執行に関する条約、扶養義務の準拠法に関する条約、および、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約を批准するよう、勧告する。 親のケアを受けていない子ども 32.委員会は、子どもの家庭外措置の質に関する基準を定め、かつ定期的な監督を行なうことにより、サービスおよび措置に関する契約を監視し、かつホームおよび施設が専門職に課された要件を履行することを確保するために政府子ども保護庁が行なっている努力を歓迎する。委員会はまた、法律第26/2007号により、子どものための施設および処遇ホームの活動を検討する委員会が設置されたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、代替的養護の環境を離れた後に子どもを社会に統合させるためにとられた措置についての情報がないことを遺憾に思う。 33.委員会は、締約国が、代替的養護の環境を離れた後の子どもの統合および成功率に関する研究を実施するよう、勧告する。当該研究には、このような子どもの全面的統合を確保するためにとられるべき措置についての勧告も含まれるべきである。 D.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 34.委員会は、慢性疾患児または重度障害児の親に対して給付を行なう法律第22/2006号およびその改正(2007年)、ならびに、障害のある子どもを普通学校に統合しようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どもによるサービスへのアクセスが公的割当によって制限される可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、障害種別、年齢およびジェンダーごとに細分化された、障害のある子どもに関するデータが存在しないことも遺憾に思う。 35.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもを生活のあらゆる分野で包摂するための措置を継続しかつ強化すること。 (b) 障害のある子どもに対し、必要なあらゆる支援およびサービスが不当に遅延することなく提供され、かつ、金銭的制約によってサービスへのアクセスが妨げられないことを確保すること。 (c) 障害のある人について収集されるデータが、障害の性質、年齢およびジェンダーごとにも細分化されることを確保すること。 (d) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を遅滞なく批准すること。 健康および保健サービスへのアクセス 36.委員会は、18歳未満の子どもについて保健ケアおよび病院の費用を免除する、保健社会保障省による2008年の規則を歓迎する。委員会はまた、精神保健、栄養および運動を強調する保健政策行動計画(2008年以降)も歓迎するものである。さらに委員会は、子どもおよび若者の肥満が減少していることを評価するものの、これがいまなお問題として残っていることを懸念する。委員会はまた、締約国における移民の増加により、移民の子どもが、とくに教育的資料および保健サービスに関する一般的情報へのアクセス(言語上の問題があるため)との関係で、児童保健ケア・サービスから取り残される可能性があることも懸念するものである。 37.委員会は、締約国が、健康的な栄養についておよび肥満が子どもの健康および発達に及ぼす悪影響について、引き続き公衆を教育するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、移民の子どもを自国の保健制度に統合し、かつ移民の子どもに対して(可能であればその母語で)保健情報を提供するために必要な措置をとるようにも、促すものである。 精神保健 38.委員会は、注意欠陥・多動性障害の診断または関連の診断を受ける子どもが締約国で増加しており、そのため精神刺激薬の処方が増えていることを懸念する。委員会はまた、精神保健に関わる診断および治療の待機期間が長いことも懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) このような問題を有する子どもの診断の正確度を高めるとともに、治療診断センターの能力を向上させる等の手段によって、子どものための精神保健サービスを強化し、かつ必要な検査および治療へのアクセスを保障すること。 (b) 一時治療として投薬を受ける子どもの人数の増加についてアセスメントを行なうことも含め、注意欠陥・多動性障害と診断された子どもに対する精神刺激薬の処方を監視すること。 (c) 心理的、教育的および社会的措置を含む他の種類の治療にいっそうの注意を払うとともに、親および教員に対する支援を強化すること。 (d) 子どもによる精神刺激薬の濫用の可能性を監視する目的で、物質および年齢にしたがって細分化されたデータの収集および分析を行なうことを検討すること。 母乳育児 40.出生時からおよび最初の数日間は母乳のみを与えられる子どもの割合が高いことには留意しながらも、委員会は、この割合が生後4か月の時点では50%に、かつ生後6か月の時点では12%まで減少することを懸念する。 41.委員会は、締約国が、公衆の意識啓発を図り、かつ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の執行および監視を行なうことにより、生後6か月間の完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化するよう、勧告する。 思春期の健康 42.委員会は、18歳未満の女子の妊娠および妊娠中絶の件数が相対的に多いことを懸念する。これは、リプロダクティブヘルスの知識、避妊手段へのアクセスおよびリプロダクティブヘルスに関するカウンセリング・サービスへのアクセスが全般的に欠けているためである可能性がある。 43.委員会は、締約国が、リプロダクティブヘルスについてならびに若年妊娠および妊娠中絶の悪影響について青少年の意識啓発を図るとともに、避妊手段およびリプロダクティブヘルスに関するカウンセリング・サービス(心理カウンセリングを含む)にアクセスできるようにするよう、勧告する。 薬物および有害物質の濫用 44.統計の示すところにより、若者による一部種別の薬物およびアルコールの使用が減少していることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、アルコールの使用が依然として問題となっていることを遺憾に思う。 45.委員会は、麻薬およびアルコールの不法な使用から子どもを保護し、かつ、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どものためにとくに立案されたリハビリテーション、再統合および回復のためのプログラムを提供するため、締約国が引き続きあらゆる適当な措置(行政上、社会上および教育上の措置を含む)をとるよう、勧告する。 E.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 46.委員会は、教育における子どもの最善の利益の強化および学校における子どもの福祉の促進を目的として締約国が採択した多数の法律を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 最近の予算削減により、特別なニーズを有する子ども(障害のある子どもを含む)に対する注意が減退する可能性があること。 (b) 子どもがしばしば、学校当局によって満足のいく明確な措置がとられることなく、深刻なかつ長期のいじめの対象とされていること。 (c) 後期中等学校からの移民の子どもの中退が依然として問題となっていること。 47.委員会は、教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 特別なニーズを有する子ども(障害のある子どもを含む)とともに活動する教員の研修を含め、特別なニーズを有する子どものニーズを満たすために必要な措置をとること。 (b) 不行跡に対する校則を改善し、かつ、教員、学校で働く全職員および生徒の、多様性を受け入れかつ紛争解決スキルを向上させる能力を向上させることにより、あらゆる形態のいじめおよびいやがらせと闘うためにとられている措置を増進させること。 (c) 後期中等学校からの移民の子どもの中退問題に対応するための措置を強化すること。 F.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第30条、第32~36条) 武力紛争の影響を受けている子ども 48.委員会は、刑法第114条において、外国の軍務のために締約国内で人を徴募したいかなる者も刑事責任(2年の収監)を問われるとされていることに留意する。しかしながら委員会は、いっそう厳しい刑罰を科されるべき子どもの徴募について、刑法で明示的に取り上げられていないことを遺憾に思うものである。 49.委員会は、軍隊のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。 (a) 18歳未満の子どもを外国の軍隊/武装集団に徴募すること、および、このような子どもが敵対行為に直接参加することを、法律で明示的に禁止すること。 (b) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律で明示的に禁止すること。 (c) これらの犯罪について、当該犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を設定すること。 経済的搾取(児童労働を含む) 50.委員会は、締約国における義務教育が16歳まで続く(ただしこれよりも早く修了する場合もある)一方で、最低就労年齢が15歳のままであることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国の一部の子どもが若くして(報告されているところによれば13~14歳で)働き始めていることも懸念するものである。当該労働は、性質としては軽易なものであったとしても、子どもを長時間労働、高い労災率およびいやがらせに直面させ、かつ、年齢に相応する以上の責任を子どもにしばしば負わせるような劣悪な条件および不適切な就労体制のもとで行なわれる可能性がある。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育終了年齢と最低就労年齢を調和させる目的で法律を改正すること。 (b) 状況を監視し、かつ若すぎる年齢で働く子どもを発見するとともに、これらの子どもが中等教育を修了するようにするための動機づけを図ること。 (c) 劣悪な労働条件および不適切な就労体制(長時間労働、年齢に相応する以上の責任を負わされること、労災およびいやがらせを含む)から子どもが保護されることを保障するための措置をとること。 性的搾取および虐待 52.委員会は、刑法の性犯罪に関する章の改正が2007年に採択され、性的同意に関する最低年齢が14歳から15歳に引き上げられたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、当該改正が15~18歳の子どもを十分に保護しておらず、この年齢層の子どもがいまなお性的搾取にさらされる可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、子どもの性的虐待に関する通報がほとんど訴追につながっておらず、かつ有罪判決件数はさらに少ないことも懸念する。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 15歳以上の子どもを性的搾取および虐待から保護するために必要な措置をとること。 (b) 子どもに関わる性的虐待および搾取のあらゆる事件で、効果的かつ迅速な捜査、訴追および有罪判決を確保すること。 (c) 防止、被害を受けた子どもの回復および再統合のためのプログラムおよび政策が、1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された成果文書にしたがったものとなることを確保すること。 売買および取引 54.委員会は、とくに子どもが関与させられた売春の利用を刑事処罰の対象とする刑法改正の導入、および、人身取引対策国家行動計画の採択(2009年)により、締約国が行なっている相当の努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、国外で重罪以下の犯罪を行なった者をアイスランドで処罰できるのは当該行為が犯行地国の法律で処罰対象とされているのみであるとする、一般刑法第5条の「双方可罰性」原則についての懸念(CRC/C/OPSC/ISL/CO/1)をあらためて表明するものである。委員会は、この要件により、子どもが関与させられた売買、売買春およびポルノ関連犯罪の訴追の可能性が制限され、したがってこれらの犯罪からの子どもの保護が制限されていることを懸念する。 55.委員会は、締約国が、国外で行なわれた犯罪をアイスランドで訴追するための双方可罰性要件を廃止するために法改正を行なうべきである旨の、前回の勧告をあらためて繰り返す。 少年司法 56.委員会は、18歳未満の者の収監に関して警察保護観察局と政府子ども保護庁との間で締結された協定が、締約国が留保を付している条約第37条(c)に掲げられた、成人からの分離の法的保障には至らないことに留意する。 57.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準、ならびに、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)に全面的に一致させるよう、勧告する。 とくに委員会は、締約国に対し、第37条についての留保を撤回し、かつ、子どもと成人を別々に収容するための実際的かつ合理的な解決策を見出すよう、促すものである。 犯罪の被害者および証人である子ども 58.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じて、国および国以外の主体によって行なわれたものも含む犯罪の被害を受けた子どもおよび(または)そのような犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されること、および、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針を全面的に考慮することを確保するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、裁判所が子どもの証言を得るために「チルドレンズ・ハウス」を活用することを奨励するよう、勧告するものである。 G.国際文書の批准 59.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問等禁止条約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する条約〔ママ〕の選択議定書を批准するよう、勧告する。 H.地域機関および国際機関との協力 60.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施のため、欧州評議会と協力するよう勧告する。 I.フォローアップおよび普及 61. 委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所および適用可能なときは地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 62.委員会はさらに、条約および選択議定書、その実施ならびに監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 63.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回定期報告書を2018年5月26日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 64. 委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月2日)。