約 1,857,853 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/265.html
総括所見:インドネシア(第3~4回・2014年) 予備的所見(1993年)/第1回(1994年)/第2回(2004年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IDN/CO/3-4(2014年7月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年6月5日に開かれた第1890回および1891回会合(CRC/C/SR.1890 and 1891参照)においてインドネシアの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/IDN/3-4)を検討し、2014年6月13日に開かれた第1901回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、インドネシアの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/IDN/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/IDN/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。これにより、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させることが可能となった。委員会は、締約国のハイレベルな多部門型代表団との間に持たれた建設的対話について評価の意を表する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 社会保障庁に関する2011年法律第24号。 (b) 少年司法制度に関する2012年法律第11号。 (c) 人種差別および民族差別の撤廃に関する2008年法律第28号。 (d) 義務教育に関する2008年政府規則第47号。 (e) 「長期国家開発計画2005」(2005年)に関する2007年法律第17号。 (f) 2006年法律第23号を改正する、人口管理に関する2013年法律第24号。 (g) インドネシア市民権に関する2006年法律第12条。 (h) 国家社会保障制度に関する2004年法律第40号。 (i) 憲法裁判所決定第46/PUU-VIII/2010号による、「婚外」子の法的地位を拡大した婚姻法(法律第1/1974号)第43条(1)の改正(2012年2月17日)。 4.委員会はまた、以下の点について評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准(2012年9月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の批准(2012年9月)。 (c) すべての移住労働者およびその家族構成員の保護に関する国際条約の批准(2012年5月)。 (d) 障害のある人の権利に関する条約の批准(2011年11月)。 (e) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約への加入(2006年2月)。 5.委員会はまた、多数の制度上および政策上の措置がとられたことも歓迎する。 6.委員会は、締約国が、条約第1条、第14条、第17条、第21条、第22条および第29条に関する宣言を2005年に撤回したことも歓迎するものである。 III.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 7.第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(2004年、CRC/C/15/Add.223)をフォローアップするために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十分な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは部分的にしか実施されていないものに対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.223、パラ23、25、44、52および72(a))をあらためて繰り返すものである。 (a) 条約のすべての分野を網羅する目的でデータ収集システムを引き続き改良し、すべてのデータおよび指標が、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保し、これらの統計および情報を広く配布し、かつ、この点に関してとくに国際連合児童基金(ユニセフ)との連携を継続すること。 (b) 条約の普及および関連のすべての専門家を対象とした条約に関する研修についての措置を強化し、かつ当該措置を継続的かつ体系的に実施するとともに、条約をすべての子ども(とくに民族的マイノリティに属する子ども)に対して利用可能としかつ周知するために具体的措置をとること。 (c) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)ならびに条約のとくに第19条、第29条第2項および第37条に照らし、家庭、学校および子どものケアの現場を含むすべての場所で体罰を禁止するために現行法を改正すること。また、子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段としての積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 (d) 養子縁組に関する現行法が条約第2条および第3条に一致することを確保するためにその改正を行ない、子どもの最善の利益の原則にしたがって子どもの養子縁組制度を効果的に監視しかつ監督するために必要な措置をとり、かつ、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約に加入すること。 (e) 紛争の影響を受けた子どもに対し、そのプライバシーも確保しつつ心理社会的支援および援助を提供する包括的システムを、NGOおよび国際機関と連携しながら発展させること。 B.子どもの定義 〔訳者注/本来はパラ19の前に置かれるべき内容だが、原文ママ〕 9.委員会は、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.223、パラ27)にもかかわらず、女子の法定婚姻年齢がいまなお16歳であり、かつ、締約国の法律上、既婚の子どもは成人とみなされることに、懸念とともに留意する。 10.委員会は、締約国が、国内法を改正して女子の婚姻年齢を18歳に引き上げるとともに、さまざまな法律で定められた年齢制限についても、これらの制限が条約の原則および規定に一致し、かつ、いかなる状況においても18歳未満の子どもが成人とみなされることにつながらないようにすることを確保する目的で見直すよう、勧告する。 〔訳者注/以下、一般的実施措置の続き〕 立法 11.委員会は、条約の規定が締約国の国内法に全面的に編入されているわけではないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、公共サービスの提供についてそれぞれが責任を有する新たな州および地区の編成をもたらした地方分権化プロセスに加え、州または地区のレベルで採択されたいくつかの条例が条約の規定および原則に一致していないことを懸念するものである。 12.委員会は、締約国に対し、以下のことのためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。 (a) 条約の規定が国内法に全面的に編入されることを確保すること。 (b) 子どもに関わる地方および州の法令の起草および採択を緊密に監視する特別政府機関を設置する等の手段により、州および地区のすべての法律が条約の規定と一致することを確保すること。 調整 13.委員会は、条約および「子どものための国家行動計画」の調整および実施を担当する女性エンパワーメント・子ども保護省が、あらゆるレベルで条約の実施を適正に調整するために必要な州および地区の政府機構に対する権限を有していないことに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関連するあらゆる活動をあらゆるレベルで調整しかつ評価するための十分な権限を女性エンパワーメント・子ども保護省に与えるよう促す。さらに委員会は、締約国が、条約の監視および実施における国、州および自治体の公的機関の協力を確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告するものである。 資源配分 15.委員会は、締約国の保健支出総額が国内総生産の2.7%に過ぎないこと(2011年)を懸念するとともに、この割合は低いと考える。さらに、年間教育予算が相当に増額されたことは歓迎しながらも、委員会は、当該予算が締約国のすべての子どもに教育を確保するのに十分ではないことを遺憾に思うものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健に対する予算配分を相当に増額し、十分な水準に達せしめること。 (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分さ、有効性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。 独立の監視 17.子どもの保護委員会に苦情を受理する資格があることには留意しながらも、委員会は、同委員会が限られた委任権限しか有しておらず、かつ苦情についての調査を行なう明示的権限を持たないことを遺憾に思う。 18.独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、子どもによる苦情を子どもに配慮したやり方で調査しかつこれに対応し、被害者のプライバシーおよび保護を確保し、かつ事案のモニタリングおよびフォローアップを行なう資格を子どもの保護委員会に与えることによってその権限を強化するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、パリ原則との全面的一致を確保するため、同委員会の独立性(資金、権限および免責特権に関する独立性を含む)を確保するよう勧告するものである。このような趣旨にのっとり、委員会は、締約国が、該当する場合にはとくに国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ユニセフおよび国際連合開発計画(UNDP)の技術的援助を求めるよう勧告する。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 19.締約国のジェンダー主流化プログラムは歓迎しながらも、委員会は、以下の点を含め、国内法にいまなお差別的規定が残っていることおよび事実上の差別が蔓延していることを深く懸念する。 (a) 相続権に関して女子が差別されており、かつ、多数の女子がいまなおさまざまな差別的規制および日常的差別の対象とされていること。 (b) 保健ケアおよび教育へのアクセスについて障害のある子どもに特段の差別が行なわれていること。 (c) 特定の宗教的マイノリティに属する子どもに対する深刻な差別が継続しており、かつ締約国が攻撃を阻止できていないこと。 (d) 教育および保健ケアへのアクセスが不十分であることなど、先住民族コミュニティに属する子どもに対してさまざまな形態の差別が行なわれていること。 20.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の法律上および事実上の差別に精力的に対処し、かつ以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに相続との関連で女子を差別するあらゆる法律を、これ以上遅滞することなく廃止すること。また、達成目標を明確に定めた包括的な戦略を策定し、かつ適切な監視機構を設置すること、ならびに、社会的および文化的変革を促進しかつ平等の推進に資する環境づくりを促進する目的で当該戦略の調整に広範な関係者(女子および社会のあらゆる部門を含む)が関与することを確保することにより、女子に関わる否定的な態度、慣行および深く根づいたステレオタイプを撤廃すること。 (b) 障害のある子どもがすべての公共サービス(とくに保健ケアおよび教育)に平等にアクセスできることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 子どもに対してその宗教に基づいて行なわれる差別を撤廃し、かつ特定の宗教的マイノリティに対するあらゆる形態の暴力に終止符を打つため、あらゆる必要な措置をとること。 (d) 先住民族コミュニティに属する子どもが公共サービスに平等にアクセスできるようにするため、あらゆる必要な措置(とくに関連のインフラを改善すること)をとること。 子どもの最善の利益 21.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.223、パラ33および34)にもかかわらず、子どもの最善の利益の原則が締約国のほとんどの子ども関連法に統合されていないことを遺憾に思う。委員会はまた、養子縁組および監護権に関わる決定が子どもの最善の利益ではなく子どもの宗教に基づいて行なわれることが多く、かつ、イスラム教徒に適用されるシャリーア法にしたがい、離婚手続において子どもの監護権に関わる決定が子どもの年齢に基づいて行なわれること(CRC/C/15/Add.223、パラ45)にも、懸念とともに留意するものである。 22.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、締約国の国内法で明示的に定められ、かつすべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連し、かつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するよう、奨励されるところである。委員会はまた、このような手続および指針を、公立および私立の社会福祉施設、裁判所、行政機関、立法機関ならびに宗教的指導者を含む公衆一般に対して普及することも勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 23.委員会は、十分な補償または代替住居を提供しないまま、子どもを含む家族の強制立退きが行なわれていることを懸念する。さらに委員会は、締約国の法律上、強制立退きはそれがホームレス化につながる場合でさえ行なえることを深く遺憾に思うものである。 24.委員会は、締約国に対し、強制立退きが常に十分な代替住居の提供を条件として最後の手段としてのみ行なわれること、および、いかなる状況下でも立退きがホームレス化につながらないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 子どもの意見の尊重 25.「全国子ども参加フォーラム」「ティーン議会」「インドネシア子ども会議」「子ども評議会」「ヤング・リーダー選挙」および「全国子ども協議」の設置は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) これらのフォーラムが完全にインクルーシブなものとなっているわけではないこと。 (b) これらのフォーラムで表明された子どもの意見が意思決定プロセスにおいて十分に考慮されていないこと。 (c) 意見を聴かれる子どもの権利を定めた法律第23/2002号においてこの権利が「道徳性および品位」にしたがって適用されなければならないとされていることにより、効果的かつ透明な実施が阻害されていること。 26.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) さまざまな子どもフォーラムにおいて、被害を受けやすい状況に置かれた子ども(とくに障害のある子どもおよび宗教的または民族的マイノリティに属する子ども)の参加を確保すること。 (b) これらのフォーラムで子どもが表明した意見を子どもに関わるすべての意思決定プロセスにおいて考慮するための明示的手段を整備すること。 (c) 意見を聴かれまたは自己の意見を表明する子どもの権利に対するいかなる制限も回避するために法改正を行なうこと。 (d) 子どもが意見を表明できる種々のフォーラムに対してあらゆる必要な資源が常に提供されることを確保すること、ならびに、家庭、コミュニティおよび学校において、すべての子どもの、意味のある、かつエンパワーメントに基づく参加を促進するためのプログラムおよび意識啓発活動を実施することによってこの権利を実施するために、あらゆる適切な措置をとること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録、名前および国籍 27.民事行政に関する2014年法律第24号、および、インドネシア人である母とインドネシア国民ではない父との子にインドネシア市民権の取得資格を与えた法改正は歓迎しながらも、委員会は、法律の実施をあらゆるレベルで監督する機構が存在しないことを懸念する。委員会はまた、子どもの宗教をその身分証明証に記載しなければならないことが差別につながる可能性があることにも、懸念とともに留意するものである。さらに、国内法に基づく無償の出生登録は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 新法にもかかわらず地方政府が出生登録料を請求することのないようにするために中欧レベルで行なわれる監督について不確実さがあること。 (b) 両親とも外国人であり、かつ自国の法律を理由として子どもに自己の市民権を継承させられない場合に、子どもが無国籍となるおそれがあること。 28.委員会は、インドネシアで生まれたすべての子どもがその国籍、宗教および出生時の地位にかかわらず登録されかつ出生証明書を発行されること、ならびに、出生登録がすべての場所でかつあらゆる状況下で促進されかつ無償とされることを、締約国が確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、身分証明証における宗教的所属の記載を削除し、かつ、一部の子どもが無国籍のままとなることにつながる可能性のある法律上の欠陥を是正することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、無国籍者の地位に関する1954年の条約および無国籍の削減に関する1961年の条約に加入するよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 29.委員会は、1965年法律第1号に掲げられていない宗教的マイノリティに属する子どもの宗教の自由に対して政府がとっている抑圧的措置、とくに以下のものを深く懸念する。 (a) 1965年法律第1号に掲げられた6つの宗教のいずれかに関して学校で行なわれる宗教授業に出席する義務があること。 (b) 1965年法律第1号に掲げられていない宗教的マイノリティに属する者(その子どもを含む)を訴追する目的で涜神および改宗の働きかけを禁ずる規則が利用されていること、および、「宗教的調和」に関する法案に差別を強化するおそれがあること。 (c) イスラム教徒でない者に対し、シャリーア法にしたがうことがアチェにおいてあからさまに要求されていること、または、締約国が明らかにするように、イスラム教徒でない学生に対し、学校でイスラム教徒の服装をするよう社会的圧力がかけられていること。 30.委員会は、締約国に対し、思想、良心および宗教の自由に対するすべての信仰の子どもの権利を効果的に保障する目的で法律を改正するとともに、宗教またはその他の信条を理由とする不寛容と闘い、社会における宗教的対話を促進し、宗教教育においてあらゆる共同体出身の子どもおよびあらゆる宗教的または非宗教的背景の子どもの間の寛容および理解が促進されることを確保し、かつ、自らが属していない宗教の規則を遵守するよう子どもに要求するあらゆる種類の社会的圧力と闘うために、意識啓発および公衆教育のためのキャンペーンを含むあらゆる必要な措置をとるよう、促す。さらに委員会は、締約国に対し、イスラム教徒でない者がもっぱら世俗法によって規律されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう促すものである。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 性的搾取および性的虐待 31.委員会は、子どもの被害者のための防止措置、回復措置および再統合措置が十分に効果的でないこと、および、これらの子どもが司法へのアクセスに関していくつかの障壁に直面していることを遺憾に思う。さらに委員会は、性的搾取の被害を受ける子どもの人数が増えており、かつ、性的虐待の被害を受けた子どもが被害者ではなく犯罪者として扱われる可能性もあるという報告について深く懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、性的虐待および性的搾取からの子どもの保護および防止のための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもの特別なニーズに対応し、かつこれらの子どもがシェルター、保健サービス、法律サービスおよび心理サービスにアクセスできることを確保するための戦略を策定するとともに、これらのサービスで働く専門家に対して十分な研修を行ない、アクセスしやすく、秘密が守られ、かつ子どもにやさしい通報経路を確保し、かつ、被害を受けた子どもが司法にアクセスするための便宜を図ること。 (b) いずれかの形態の性的搾取の被害を受けたすべての子どもが常に被害者として扱われ、刑事制裁の対象とされないことを確保する目的で法律を改正すること。 有害慣行 33.委員会は、2014年の保健省規則第6号によって女性割礼に関する2010年の規則第1636号を廃止する旨の締約国の決定に留意する。しかしながら委員会は、いわゆる女性割礼の慣行を含む女性性器切除(FGM)が明示的に禁じられていないことに留意するものである。委員会は、女性性器切除(FGM)の被害を受けた女子が多数にのぼることについて重大な懸念を覚える。 34.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態のFGMを全面的に禁止する法律を採択するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) FGMの被害者に対して身体的および心理的回復のためのプログラムを提供するとともに、当該慣行の被害を受けた女子または被害を受けるのではないかと恐れている女子がアクセス可能な通報および苦情申立ての機構を設置すること。 (b) 市民社会ならびにFGMの被害者である女性および女子の全面的参加を得ながら、FGMが女子の身体的および心理的健康に及ぼす有害な影響についての意識啓発キャンペーンおよび教育プログラムを立ち上げるとともに、当該キャンペーンおよびプログラムが制度的にかつ一貫して主流化され、かつ、社会のあらゆる層(女性および男性の双方)、政府職員、家族ならびにすべての宗教的指導者およびコミュニティの指導者が対象とされることを確保すること。 (c) 当該慣行を全面的に犯罪化し、かつ当該慣行が犯罪であることについて施術者が認識することを確保するとともに、当該慣行の放棄を促進するための努力に施術者を関与させ、これに代わる所得および生計手段の源を見出すことについて施術者を援助し、かつ、必要なときは施術者の再訓練を行なうこと。 35.委員会は、締約国で早期婚および強制婚が多数行なわれていることを深く遺憾に思う。 36.委員会は、締約国に対し、早期婚または強制婚の慣行を防止しかつこれと闘うための効果的措置(必要なすべての立法措置、ならびに、早期婚から生じる弊害および危険についての意識啓発キャンペーンおよび広報キャンペーンを含む)を追求するよう促す。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 37.ドメスティックバイオレンスに関する2004年法律第23号および「子どもに対する暴力の防止および根絶に関する国家行動計画(2010~2014年」は歓迎しながらも、委員会は以下のことを深く懸念する。 (a) 拘禁中および裁判のあらゆる段階において子どもに対する暴力事件が多数発生していること。 (b) 女子が頻繁に暴力を受けており、かつ司法へのアクセスを含む保護を得るうえで相当の困難に直面していること。委員会は、これとの関連で、正規の司法制度は利用が妨げられるほどの費用負担のためにしばしばアクセス不能であり、かつ、女性および女子が、女性および女子を差別しかつ意思決定プロセスから排除することの多い代替的紛争解決機構(とくに宗教裁判所)の利用を促されていることに留意するものである。 38.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を想起しつつ、委員会は、締約国に対し、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。 (a) 法律に抵触した子どもに対する暴力を効果的に解消するための十分な監視機構を設置すること。 (b) 女子が、あらゆる形態の暴力から十分に保護され、かつ、正規の司法制度に全面的にアクセスできるようにするための金銭的および法的援助を提供するプログラムによって支援されることを確保すること。 ヘルプライン 39.締約国が国内NGOおよび国際NGOと協力して子どもヘルプラインを設置したことは歓迎しながらも、委員会は、すべての州が網羅されていないこと、ヘルプラインについて公衆一般が知らないことおよび十分な相談員が存在しないことを懸念する。 40.委員会は、すべての州の子どもがヘルプラインのことを知り、かつヘルプラインに24時間アクセスできることおよびこれらの子どもに対して十分なフォローアップが行なわれることを確保するために、締約国が、ヘルプラインのための人的資源、技術的資源および財源を増加させるよう勧告する。さらに委員会は、相談員に対して十分な研修を行なうよう勧告するものである。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1および2)、第20条、第25条および第27条(4)) 家庭環境 41.委員会は、複婚がいまなお認められていることを深く懸念する。この状況は、そのような婚姻関係を持つ女性および女子の尊厳に逆行し、かつ、そのような婚姻から生まれた子どもの福祉に悪影響を与えるものである。 42.委員会は、締約国に対し、女性を差別し、ひいてはその子どもに悪影響を及ぼす法律上のすべての規定(複婚を認める規定など)が廃止されることを確保するよう促す。 家庭環境を奪われた子ども 43.委員会は、貧困削減を目的とするいくつかのプログラムの導入を通じて子どもの養育における家族の役割が強化されていること、および、とくに家族支援システム〔および〕家庭基盤型の代替的養護を促進し、かつ施設養護の基準を定めた「子どもの養護に関する国家基準」が2011年に採択されたことを歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) その子どもの基本的ニーズをいまなお満たせない場合があり、かつ子どもの養育の放棄を余儀なくされている貧困家庭があること。 (b) 家庭基盤型の子どもの措置件数が少なく、かつ施設措置が引き続き広く活用されていること。 (c) 代替的養護施設の運営に関する許可取得要件がきわめて限定的であること。 (d) 「子どもの養護に関する国家基準」で導入された基準をほとんどの施設が遵守しておらず、遵守状況の監視が行なわれておらず、施設内でしばしば暴力事件が発生しており、かつ、施設で生活している子どもがその家族と会えないこと。 (e) 施設で生活している子どもについて細分化されたデータを収集する十分なシステムが存在しないこと。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 生みの家族への支援をさらに強化するとともに、家族に対し、コミュニティを基盤とする子育て援助(訓練を受けたソーシャルワーカーによるものも含む)を提供すること。 (b) 子どもの施設措置を削減する目的で、家族のもとに留まることのできない子どもに対し、可能なときは常に家庭的養護を提供すること。 (c) 代替的養護施設の運営に関する許可取得要件を強化すること。 (d) 子どもの施設措置の定期的再審査を確保するとともに、子どもの不当な取扱いを監視しかつ是正するためのアクセスしやすい経路を設ける等の手段によって施設における養護の質を監視し、かつ、子どもがその家族と会えることを確保すること。 (e) 施設で生活している子どもについて、年齢別、男女別および経済的背景別に細分化されたデータを収集するための中央集権化されたシステムを設置すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3)および第33条) 障害のある子ども 45.「障害に関する国家行動計画(2013~2022年)」は歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもの状況、とくに以下のことについて深刻に懸念する。 (a) 障害のある子ども(とくに女子)が、教育および保健ケアに対する権利を含む権利の行使に際して複合的形態の差別に直面していること。 (b) 社会的スティグマまたは養育にかかる経済的負担を理由として、障害のある多くの子どもが隠されまたは施設に措置されていること。 (c) 障害のある子どものうち通学している者ならびに保健ケア、特別サービスおよびリハビリテーションセンターにアクセスできている者が少数であること。 (d) 障害のある子どもに関する体系的なデータ収集が行なわれていないこと。 46.障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が「障害に関する国家行動計画(2013~2022年)」を実施するためにあらゆる努力を行なうよう勧告するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害を理由とする差別が明示的に禁じられることを確保し、かつ障害のある人の事実上の差別を生じさせているすべての規定が廃止されることを確保するため、法律を改正すること。 (b) 障害のある子どもに対するあらゆる種類の事実上の差別(とくに態度上および環境上の障壁)を解消するための意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを実施し、障害のある子どもの権利および特別なニーズに関する公衆への情報提供および感受性強化を進め、かつ、障害のある子どもが十分な金銭的支援を提供されることならびに社会サービスおよび保健サービスに全面的にアクセスできることを確保すること。 (c) 障害のある子どもが教育に対する自己の権利を全面的に行使できることを確保するとともに、普通学校制度において障害のある子どものインクルージョンを図るためにあらゆる必要な措置をとること。 (d) 政策およびプログラムを障害児のニーズに適合させるため、障害のある子どもに関する具体的なかつ細分化されたデータを収集すること。 健康および保健サービス 47.委員会は、「ヘルシー・ビレッジ」開発政策、コミュニティ保健センターの数の増加、「出産準備および合併症対応体制」プログラム、疾病および栄養不良を削減するための努力ならびに1990年以降の乳児死亡率および5歳未満児死亡率の低下を歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを非常に懸念するものである。 (a) とくに下痢および肺炎を原因とする新生児、乳児および5歳未満児の死亡率がいまなお高く、かつ、発育阻害および低体重に苦しむ5歳未満児が多数にのぼること。 (b) 妊産婦死亡率が依然としてとりわけ高いこと。 (c) 州によって妊産婦死亡率および乳児死亡率に格差があること。 (d) 予防接種等の予防保健問題に関する具体的な公衆衛生規則が定められておらず、かつ予防接種プログラムが満足のいく形で実施されていないこと。 (e) 保健ケア施設のためのインフラおよび支援が不足し続けていること、ならびに、ヘルスワーカーのスキル水準が低くかつ就業が不規則であること。 48.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、委員会は、締約国に対し、保健予算を増加させ、かつすべての州全域でプライマリーヘルスケア・サービスへのアクセスを拡大するよう促す。締約国は、これらのサービスが、都市部および農村部双方の住民にとって、その経済的背景とは独立にアクセス可能でありかつ負担可能であることを確保するとともに、以下の措置をとるよう求められる。 (a) プライマリーヘルスケア・サービスが、産前ケア、安全な分娩のためのケア、緊急産科ケアおよび産後ケアへのアクセスを含めてすべての妊婦に対して、かつ予防可能な疾病その他の疾病、とくに下痢、急性呼吸器感染症および低栄養を削減するための介入に焦点を当てながら子どもに対して提供されることを確保するとともに、乳幼児への栄養の与え方に関する望ましい実践を促進すること。 (b) すべての妊婦および子ども(とくに乳児および5歳未満児)を対象とする予防保健ケアおよび治療サービス(すべての子どもを対象とする予防接種サービス、経口補水療法および急性呼吸器感染症の治療を含む)を強化し、かつこれらのサービスへのアクセスを拡大すること。 (c) 遠隔地および農村部も含め、出産前および出産時に専門家による十分な援助を無償で提供するとともに、妊産婦死亡率の削減のためにあらゆる必要な努力(緊急産科介入を含む)を行なうこと。 (d) さらに多くの保健ケア提供者を募集し、訓練しかつ監視し、保健ケアのインフラを向上させ、かつ、保健ケアサービスに衛生設備および清潔な飲料水へのアクセスが含まれることを確保すること。 思春期の健康 49.リプロダクティブヘルス・プログラムの一環としての「10代のリプロダクティブヘルスおよび青少年にやさしい保健サービスに関する国家行動計画」は歓迎しながらも、委員会は、人口家族開発法および保健法に基づき、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するサービスへのアクセスを認められるのが法律上の婚姻をしている夫婦に限られていて青少年の大多数が排除されていることから、青少年がリプロダクティブヘルスに関するケアおよび教育へのアクセスに際して困難に遭遇していることを懸念する。委員会はまた、人口家族開発法および保健法においてリプロダクティブヘルス・サービスに関する規定が置かれているにもかかわらず、婚姻していない女性および女子にはこれらの保健上の利益を享受する資格がないことも懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) リプロダクティブヘルスに関連する一部のサービスで親または夫の同意が要件とされていること。とくに、婚姻していない思春期の女子が、政府が運営している保健施設から一定のタイプの避妊サービスを受けるために夫の許可を求めなければならないこと。 (b) 婚姻していない思春期の女子(強姦被害者を含む)が、資格があることを知らないためにまたはスティグマを恐れるためにリプロダクティブヘルス・サービスにアクセスできない場合があり、そのために、とくに性感染症、思春期の高い妊娠率、安全性を欠いた中絶の危険、若年での強制婚および学校中退が生じていること。 50.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の子ども(とくに女子)が、親または夫の同意を必要とすることなく、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスならびに避妊についての情報およびサービスに完全かつ無条件にアクセスできることを確保する目的で法律を改正するとともに、その要請が秘密の守られる形で扱われることを確保すること。 (b) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの者に対する差別と闘うことを目的とした政策を策定しかつ実施すること。 HIV/AIDS 51.委員会は、2000年から2009年にかけてHIV/AIDSの有病率が増え続けており、かつ、この全国的流行に効果的に対処するために締約国がとった措置が不十分であることを、深く懸念する。委員会は、全体としてはパプアにおけるHIV/AIDS罹患者数の増加が、かつとくにHIV/AIDSに罹患した女性の人数の増加が子どものHIV感染の増加につながってきたことに、懸念とともに留意するものである。 52.HIV/AIDSと子どもの権利についての一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、HIV/AIDSの蔓延を予防することならびにHIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもにケアおよび支援を提供することを目的とした政策およびプログラムを策定しかつ強化するよう、促す。さらに委員会は、締約国に対し、HIV/AIDSの母子感染予防のためにとられている措置を維持し、カウンセリングの体制を整え、かつ、早期の診断および治療開始を確保する目的でHIV/AIDSに感染した母親およびその乳児のフォローアップ治療を向上させるよう、促すものである。 薬物および有害物質の濫用 53.委員会は、近年、若者による薬物の消費が相当に増加していることに、懸念とともに留意する。 54.委員会は、締約国が、とくに有害物質濫用(タバコおよびアルコールを含む)の回避および防止を目的とした正確かつ客観的な情報を子どもおよび青少年に提供することによって子どもおよび青少年による薬物の使用に対処するためにあらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、アクセスしやすく、かつ若者にやさしい薬物依存治療およびハーム・リダクションのサービスならびにライフスキル教育を発展させるよう、勧告する。 母乳育児 55.委員会は、締約国における母乳育児率が低いことを懸念するとともに、とくに、インドネシアの子どもの42%しか生後6か月間の完全母乳育児の対象とされていないことに留意する。 56.委員会は、締約国が、母乳育児の利点を広報し、かつすべての母親がその乳児に対して生後6か月間の完全母乳育児を行なえるようにするためのプログラムを設ける等の手段により、母乳育児の促進を強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、世界保健機関(WHO)「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択するよう勧告するものである。 生活水準 57.委員会は、貧困根絶および社会扶助に関して締約国がとった措置、とくに地域間格差の削減を目的とした全国コミュニティ・エンパワーメント・プログラム(PNPM)および村落に関する2014年法律第6号を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことについて深く懸念するものである。 (a) 推定で1億3800万人の子どもが国の定めた貧困線以下の生活を送っており、かつ8400万人の子どもが極度の貧困下で生活していること。 (b) 地方分権化のプロセスによって多くの新たな州および地区が形成され、かつ、そのために公共サービス(出生登録、基礎教育および清潔な飲料水等)へのアクセスに関して地域間格差が生じてきたこと。 (c) 貧困に関して都市部・農村部の格差、民族的格差およびジェンダーの格差が存在しており、かつパプアの子どもがとりわけ不利な立場に置かれていること。 (d) 教育に関する社会扶助プログラムが、学校に行っていないために社会保護制度にアクセスできない最貧層の子どもを対象に含められていないこと。 (e) 農村部および先住民族の女性が特段の貧困に直面しており、そのためこのような女性の子どもが十分な成果を享受できていないこと。 58.委員会は、締約国が、ホリスティックな貧困大綱戦略を策定するとともに、子どもの貧困の根本的原因の理解およびこれへの対処ならびに子どもの貧困の解消のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 農村部および遠隔地に特段の注意を払いながら、あらゆる段階で貧困削減のための戦略およびプログラムを確立するとともに、基礎的サービス(とくに十分な栄養、住居、水および衛生設備ならびに教育サービス、社会サービスおよび保健サービス)への公平なアクセスを確保し、かつ、経済的に不利な立場に置かれた家族に物的援助を提供すること。 (b) 教育に関する社会扶助プログラムを、学校に行っていない子どもがアクセスできるようにする目的で修正すること。 (c) 農村部および先住民族女性およびその子どもが貧困に陥らないことを持続可能なやり方で確保する目的で、これらの女性の状況を向上させるための十分な支援プログラムを確立すること。 (d) 危険な状況にある家族および子どもを特定する能力がある、十分な訓練を受けたソーシャルワーカーを十分な人数で確保するための体制を整備するとともに、社会的援助のための諸制度を効果的に運用し、かつその実施のフォローアップを行なうこと。 H.教育、余暇および文化的活動(条約第28~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 59.18歳までを対象とする普遍的教育プログラムは歓迎しながらも、委員会は、とくにジャワにおいて学校に行っていない義務教育学校年齢の子どもの多さ、ならびに、教育へのアクセスを妨げる障壁の存在および教育の質について非常に懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 教育にアクセスできるのが市民に限られており、出生証明書を持っていない子ども、子どもの難民および移住労働者の子どもが排除されていること。 (b) 相当数の子ども、とくに貧困家庭の子どもが、高額な教育費用またはその他の負担(教科書および制服等)のために学校に行かなくなっていること。 (c) 思春期の女子が妊娠した場合に中退することを防止するための措置がとられておらず、妊娠した女子が退学させられ、または妊娠中の教育の継続を思いとどまるように言われており、かつ、婚姻した子どもがしばしば教育の継続を断念していること。 (d) 学校において高い水準で暴力(教職員によるものを含む)が生じており、政府によって要求されている最低限の資格を有していない教員が多く、かつ、教員がしばしば仕事に行っていないこと。 60.前回の勧告(CRC/C/15/Add.223、パラ63)を踏まえ、委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもが質の高い教育にアクセスできることを確保するために速やかな措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) すべての子どもの庇護希望者および難民、移住労働者の子どもならびに出生証明書を有していない子どもに対して教育を利用可能とすること。 (b) 再貧困下および最遠隔地で暮らしている家族にとくに焦点を当てながら教育資金を増額するとともに、学校教育を終了できない原因に効果的に対処するための具体的行動をとること。 (c) 婚姻した青少年、10代の妊婦および思春期の母親が、普通学校における教育の継続について支援および援助を提供され、かつ子育てと教育の修了を両立できることを確保すること。 (d) 教員を増員し、教員に対して十分な研修を提供し、かつ、教員が仕事に行くことを確保すること。 (e) 体罰および学校におけるその他の形態の暴力(いじめを含む)に終止符を打つため、学校別の行動計画の策定および定期的な学校査察を含むあらゆる必要な措置をとること。 乳幼児期の発達 61.委員会は、就学前教育プログラムへの出席に関して経済的格差および都市部・農村部間の格差が存在すること、乳幼児期のケアおよび教育に対する予算配分が不十分であること、制度的基盤が十分でないこと、ならびに、遠隔地で乳幼児期のケアおよび教育を担当する十分な要員が存在しないことを懸念する。 62.委員会は、締約国が、乳幼児期のケアおよび教育が無償とされること、ならびに、諸施設がアクセス可能であり(遠隔地に住んでいる子どもにとってのアクセスを含む)、十分な職員および設備を備えており、かつ、ホリスティックなやり方(全般的な子どもの発達および親の能力の強化との関連を含む)で乳幼児期のケアおよび教育を提供できることを確保するよう、勧告する。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 63.子どもの保護に関する2002年法律第23号第11条において休暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動に対する子どもの権利が定められていることには留意しながらも、委員会は、この権利に十分な注意が向けられておらず、かつその実施のために十分な努力が行なわれていないことを懸念する。 64.休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、子どもの身体的および心理的発達を考慮に入れながら子どものための余暇および文化的活動を計画することに十分な注意を払うとともに、親、教員およびコミュニティの指導者の間でこれらの権利を促進するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関して国際連合教育科学文化機関(UNESCO)およびユニセフの援助を求めるようにも勧告するものである。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 65.委員会は、子どもの庇護希望者および難民の保護が不十分であることについて、とくに保護者のいない子どもが後見を受けないままに放置され、かつ無償の弁護士代理人もつけられていないことを著しく懸念する。さらに委員会は、子どもが、数か月または数年の間、むさ苦しく暴力的な環境のもと、司法審査を受けることなく、入管収容施設に収容されることを深く懸念するものである。委員会はとくに以下のことを懸念する。 (a) 入管職員および看守による重度の陵虐事案を子どもが経験しかつ/または目撃していること。 (b) 過密状態、不十分な衛生設備および不十分かつ質の悪い食事を含め、収容施設の環境が著しく劣悪であること。 (c) 保護者のいない子どもがしばしば親族ではない成人とともに収容されており、かつ家族と連絡をとる可能性を否定されていること。 (d) 教育にアクセスすることができず、かつレクリエーションおよび保健ケアへのアクセスが限られていること。 66.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号に照らし、委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法制を子どもの権利条約その他の国際基準に全面的に一致させるよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの庇護希望者が置かれた状況に十分に対処するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 出入国管理および庇護に関するすべての手続において子どもの最善の利益が常に第一次的に考慮されること、ならびに、保護者のいない子どもの庇護希望者に対して十分な後見および弁護士による無償の代理が提供されることを確保すること。 (b) 子どもの庇護希望者および難民を収容する行政慣行をやめること。 (c) 収容施設の看守および職員を対象とする厳格な行動規則を定めるとともに、これらの施設が独立の監視機関によって定期的に評価の対象とされることを確保すること。 (d) あらゆる状況下で、子どもが親族ではない成人から分離され、かつ、十分な食事、清潔な飲料水および衛生設備ならびに保健ケア、教育およびレクリエーションにアクセスできることを確保すること。 (e) 難民の地位に関する1951年条約および同条約の1967年の議定書に加入すること。 マイノリティまたは先住民族集団に属する子ども 67.委員会は、宗教的マイノリティが直面している困難、とくに以下のことについて深く懸念する。 (a) 宗教的マイノリティに属する者(子どもを含む)への暴力的攻撃からの保護および当該攻撃の捜査が不十分であること。 (b) 被害者への援助が不十分であること。これらの被害者の多くは攻撃の際に家を失い、清潔な飲料水および衛生設備、食料または保健ケアに十分にアクセスできない状態で、数年間に渡って一時的シェルターに滞在することを余儀なくされてきた。 (c) 1965年法律第1号の一覧に掲げられていない宗教的マイノリティに属する子どもが、身分証明書、婚姻証明書または出生証明書のような法的文書の発給およびさまざまな公共サービスへのアクセスをしばしば否定されていること。 68.委員会は、締約国に対し、宗教的マイノリティに属する者へのあらゆる形態の暴力と闘いかつこれを解消し、必要なあらゆる効果的保護および賠償を被害者に提供し、かつ、加害者を裁判にかけるためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、法律を改正して、1965年法律第1号の一覧に掲げられていない宗教的マイノリティに属するすべての子どもが、これまで否定されてきたすべての公共サービスおよび法的文書にアクセスできることを確保するよう促すものである。 69.委員会はさらに、貧困、軍事化および土地の天然資源の採収の対象とされ、かつ教育および保健ケアへのアクセスも劣悪である先住民族コミュニティに属する子ども、とくにパプア人の子どもの状況について懸念する。 70.先住民族の子どもとその条約上の権利についての一般的意見11号(2009年)に照らし、委員会は、締約国に対し、先住民族コミュニティの貧困を解消するためにあらゆる必要な措置をとり、かつこの点に関わる進展を監視するとともに、先住民族コミュニティがあらゆる公共サービスに平等にアクセスできるようにすること、脱軍事化の努力を追求すること、および、先住民族の伝統的領域における天然資源の利用については、先住民族の、十分な情報に基づく事前の同意を確保することを促す。 経済的搾取(児童労働を含む) 71.委員会は、「最悪の形態の児童労働撤廃のための国家行動計画」および「児童労働削減プログラム」を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国で児童労働が広く蔓延しており、蔓延率は都市部よりも農村部のほうが相当に高いことを深く懸念するものである。委員会は以下のことをとくに懸念する。 (a) 多数の子どもが採鉱場、沖合漁業、建設現場および採石場でならびに家事労働者またはセックスワーカーとして働き、危険な条件または最悪の形態の児童労働にさらされていること。 (b) 強制労働に関する規定および16~18歳の子どもの労働を規制する法律が定められていないこと。 (c) 子どもの家事労働者(そのなかにはわずか11歳の子どももいる)が多数存在していること、これらの子どもが学校を早期に中退し、かつ暴力および搾取(身体的、心理的および性的虐待、子どもの人身取引および強制労働を含む)の被害を受けやすい状態に置かれていること、ならびに、これらの子どもが基本的労働権を付与する人的資源法の適用から除外されていること。 (d) 「最悪の形態の児童労働撤廃のための国家行動計画」の実施が、労働は教育プロセスの一環であり、成人としての生活に向けて子どもを準備させるものであり、かつ親に対する奉仕であるという一般的見方、子どもは「家庭の資産」であるという見方、および、地方自治の導入後の調整上の困難によって妨げられていること。 72.委員会は、締約国に対し、働く子どもが国際基準にのっとって働くことを確保するためにあらゆる努力を行なうよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) いかなる子どもも、いかなる危険な条件または最悪の形態の児童労働にもさらされないこと、および、労働への子どもの従事が、真正かつ自由な選択に基づき、国際基準にのっとって、合理的な時間制限に服することを条件として行なわれ、かつその子どもの教育をいかなる形でも阻害しないことを確保すること。 (b) 強制労働を犯罪化し、かつ16~18歳の子どもの労働を規制するために法改正を行ない、最低年齢に関するすべての基準の執行を厳格に追求するとともに、十分な人数の労働査察官を任命し、かつ、これらの査察官に、労働基準の実施をあらゆる段階で、国のあらゆる地域でおよびあらゆる種類のインフォーマル労働について監視するために必要なすべての資源(児童労働に関する専門知識を含む)を提供すること。 (c) 法律を改正することにより、家事労働者が、現行のすべての労働権を享受でき、かつ、これらの労働者が服させられている特定の条件および危険(セクシュアルハラスメント等)との関連で特別な保護(無償の法的援助を含む)を受けられることを確保すること。 (d) 労働法に違反した者の徹底的捜査および断固たる訴追が行なわれ、かつ、十分な有効性および抑制効果を有する制裁が実際に科されることを確保すること。 (e) 労働に関連する子どもの条約上の権利についての情報を国、広域行政圏および地方のレベルで積極的に普及するとともに、その際、関係者および指導者層の積極的参加ならびにメディアの関与を確保すること。 (f) 労働に従事する子どもについての第三者的検証が可能なデータを取得するため、中央集権化されたデータ収集システムを設置すること。これらのデータは、労働種別、年齢、性別、地域、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 (g) 家事労働者の適正な労働に関する国際労働機関(ILO)第189号条約を批准しかつ実施すること。 (h) この点に関してILO・児童労働根絶国際計画の技術的援助を求めること。 路上の状況にある子ども 73.防止および回復に関する締約国のプログラムは歓迎しながらも、委員会は、路上で働きかつ生活している子どもが相当数にのぼっており、かつ、このような子どもが、蔓延しているさまざまなリスク(薬物の使用、性的虐待および経済的搾取を含む)の影響を受けやすい状況に置かれていることを懸念する。委員会はまた、地方条例において、路上の状況にある子どもを被害者としてではなく犯罪者として扱う法的アプローチの唱道が支配的となっていること、および、このような子どもが、とくに麻薬の一斉摘発の際に法執行官による重度の暴力を受けていることも、深く懸念するものである。 74.委員会は、締約国が、路上の状況にある子どもへの対応について子どもの保護を基盤とするアプローチを包括的に適用するためにあらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 根本的原因および規模を正確に把握する目的で、路上の状況にある子どもの状況に関する体系的評価を行なうこと。 (b) 路上の状況にある子どもを犯罪者として扱うすべての法律を改正するとともに、これらの子どもを暴力、とくに法執行にともなう暴力から保護するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) この現象の防止および削減を目的としてその根本的原因に対処する包括的政策を、これらの子どもたち自身の積極的関与を得ながら策定しかつ実施すること。 (d) 非政府組織(NGO)との調整のもと、路上の状況にある子どもに対して必要な保護を提供すること。このような保護には、栄養およびシェルターへのアクセス、家庭環境、十分な保健ケアサービス、通学できるようになることならびにその他の社会サービスへのアクセスが含まれる。 (e) 家族再統合プログラムを、それが子どもの最善の利益にのっとったものであるときは支援すること。 売買、取引および誘拐 75.委員会は、締約国が子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を最近批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国において人身取引が多数発生していること、および、未成年の多数の子どもがセックスワークに従事していることを非常に懸念するものである。人身取引根絶に関する2007年の法律第21号は歓迎しながらも、委員会は、同法が子どもの人身取引に関する包括的定義を定めていないため、子どもの人身取引の多くの事案が法律上はそのようにみなされない危険性があることを懸念する。さらに委員会は、政府によって設置された人身取引対策特別委員会が十分に効果的なものとなっておらず、かつ多くの地区がまだ同特別委員会の活動対象とされていないことに、懸念とともに留意するものである。 76.委員会は、締約国に対し、人身取引対策特別委員会の改善および拡大を図って国のすべての地域を対象とするとともに、子どもの人身取引を効果的に解消するために精力的措置をとるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) あらゆる形態の子どもの人身取引が包括的に定義されかつ犯罪化されることを確保するために法律を改正し、人身取引を防止するために対象の明確な政策およびプログラムを策定し、かつ、子どもの売買、取引および誘拐の加害者を裁判にかけるために十分な法執行措置がとられることを確保すること。 (b) 子どもの人身取引を解消する目的でその根本的原因に関する調査研究を実施し、人身取引の対象とされるおそれおよび(または)子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書上の犯罪の被害を受けるおそれがある子どもを特定し、かつ、被害を受けた子どものために、再統合およびリハビリテーションのための質・量ともに十分なサービスを整備すること。 少年司法の運営 77.委員会は、刑事責任に関する最低年齢を引き上げ、かつ修復的司法の活用を優先するものとした、少年司法制度に関する2012年法律第11号の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、刑事責任に関する最低年齢がいまなお12歳という非常に低い年齢に留まっていることに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、たとえ軽微な犯罪を理由とするものであっても多数の子どもが収監刑を言い渡されており、かつ、これらの子どもがしばしば成人とともに劣悪な環境下で拘禁されていることを懸念する。委員会はまた、法律に抵触した子どものための社会的再統合措置が存在しないことも懸念するものである。 78.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢の、最低でも14歳への引き上げを検討すること。 (b) 少年司法法の実施を担当するすべての専門家が同法について必要な研修を受けることを確保すること。 (c) 法律を効果的に実施できるよう、あらゆる適切な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (d) 自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い期間でのみ用いられること、子どもが成人とともに収容されないこと、および、拘禁環境が国際基準に一致したものとなること(栄養、清潔な水および衛生設備、教育ならびに保健サービスへのアクセスとの関連を含む)を確保すること。 (e) ダイバージョン、調停、カウンセリングまたは地域奉仕活動のような拘禁に代わる措置をさらに促進し、かつ、更生および再統合のための十分なプログラムにアクセスできるようにすること。 J.国際人権文書の批准 79.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書、死刑の廃止を目指す市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書、女性に対するあらゆる差別の撤廃に関する条約の選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、および、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 K.地域機関および国際機関との協力 80.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合(ASEAN)・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 L.フォローアップおよび普及 81.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見に掲げられた勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 82.委員会はさらに、第3回・第4回統合定期報告書、締約国の文書回答および関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 M.次回報告書 83.委員会は、締約国に対し、統合された第5回・第6回定期報告書を2019年10月7日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短くするよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による検討を目的とした報告書の翻訳は保障できない。 84.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)の共通コアドキュメントに関する要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。共通コアドキュメントの語数制限は、総会が決議68/268(パラ16)で定めたとおり、42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2015年10月21日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/97.html
総括所見:モンゴル(第1回・1996年) 第2回(2005年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.48(1996年2月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年1月10日および11日に開かれた第264~266回会合においてモンゴルの第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、モンゴル政府に対し、締約国が第1回報告書を提出したこと、事前質問事項に掲げられた質問に文書で回答したことおよび建設的かつ実りのある対話に携わってくれたことに関して、謝意を表する。委員会は、議論が率直かつ協力的な雰囲気のなかで行なわれ、かつ、その際、締約国代表が、政策およびプログラムの方向性のみならず条約の実施の過程で直面した問題点についても明らかにしたことを、心強く思うものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、政治的および経済的移行期という困難な状況下にあっても、政府が子どもの問題を政治的な優先課題として位置づけてきたことに、満足感とともに留意する。このような政府の姿勢は、「子どもの保護および発達に関する全国サミット」(1995年)のようなハイレベルな会議を開催してきたこと、1995年を「子ども年」および1996年を「教育年」として宣言したこと、ならびに、国家予算の20%を教育に振り向けてきたことに表れている。 4.委員会は、国内法および少年司法の運営に関する領域で子どもの権利条約の規定が全面的に実施されるようにするため、締約国が助言および技術的援助を求めたいとの姿勢を明らかにしたことを歓迎する。 5.委員会は、法改正の領域で政府が行なってきた努力、とくに、新憲法および新教育法の採択、ならびに、現在行なわれている子どもの権利に関する法律の起草作業に留意する。 6.委員会は、また、子どもの問題および子どもの権利に関わる問題に対処するための機構が設置されたこと、とくに、全国子どもセンター(NCC)および全国子ども評議会が設置されたことを歓迎する。 7.委員会は、子どもの権利条約をモンゴル社会で普及させ、かつ、関連する政府の措置をメディア、とくにテレビ番組を通じて公表していくことに関して政府が前向きな姿勢を見せたことを心強く思う。 C.条約の実施を阻害する要因および問題点 8.委員会は、政治的移行、社会的変化および深刻な経済危機の最中にあってモンゴルが直面している困難に留意する。貧困の悪化および失業の増大の結果、多くの子どもの状況が悪化してきた。委員会はまた、締約国の地理的および気候的特殊性が、子どもの日常生活にある程度影響を与えうることにも留意する。 D.主要な懸念事項 9.委員会は、締約国を覆う困難な経済状況が子どもに与える影響について、不安を感ずる。これとの関連で、条約第3条および第4条に照らし、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれている集団の子どもを保護するために適切な措置がとられているかどうかが、とくに懸念されるところである。 10.委員会は、子どもの権利を促進しかつ保護するための政策を実施するにあたって、さまざまな省庁間のおよび中央当局と地方当局との間の効率的な調整を図る機構が必要であることについて、十分な関心が払われていないことを懸念する。 11.委員会は、条約で対象とされているすべての領域において、体系的かつ包括的なデータ収集を行ない、適切な指標を特定し、かつ監視のための機構を確立することに関して十分な関心が払われていないことを懸念する。このことは、とくに、子どもの虐待および不当な取扱いといった最も見えにくい領域について言えるとともに、マイノリティ集団の子ども、ノマドの子ども、ひとり親家庭の子ども、農村部の子ども、施設に措置された子どもおよび障害のある子どもならびに路上で生活しかつ(または)働いている子どもをはじめとする、すべてのグループの子どもにも当てはまる。 12.委員会は、締約国が、条約の一般原則、すなわち第2条(差別の禁止の原則)、第3条(子どもの最善の利益の原則)、第6条(生命、生存および発達への権利)、第12条(子どもの意見の尊重)を、その国内法においてまだ十分に考慮に入れていないことに、懸念を表明する。 13.委員会は、子どもの出生登録を確保するために十分な措置がとられていないこと、および、遠隔地に住む子どもは登録されない場合があり、そのことによって基本的権利を奪われている可能性があることを、懸念する。 14.委員会は、国際養子縁組を規制する法律が存在しないことを不安に思う。 15.委員会は、とくに農村部に住む男子の間で学校中退率が高いこと、および、児童労働が増加しているとの報告があることを不安に思う。委員会は、また、保健、社会サービスおよび教育といった基本的サービスへのアクセスに関して、農村部および遠隔地に住む子どもならびに障害児が困難に直面していることを懸念する。 16.委員会は、家庭における子どもの不当な取扱いを効果的に防止しかつ闘うための適切な措置がまだとられていないこと、および、この問題に関して十分な情報が存在しないことを懸念する。子どもの性的搾取の問題にも特別な注意が必要である。 17.少年司法の運営に関する状況、および、それが条約第37条および40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の基準に合致しているかどうかは、委員会の懸念するところである。 E.提案および勧告 18.委員会は、締約国が、人権および子どもの権利に関わっているさまざまな政府機関の間の調整を中央レベルおよび地方レベルの双方で強化し、かつ、非政府組織とより密接に協力できるようにするために、さらなる措置をとるよう勧告する。 19.委員会は、さらに、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれている集団の子どもに関する情報を含め、条約が対象としているさまざまな領域の子どもに関するすべての必要な情報を収集する作業に着手するよう、勧告する。委員会は、また、条約によって認められた権利の実現に関して達成された進展および直面した問題点を中央レベルおよび地方レベルで評価し、かつ、とくに経済的変化が子どもに与える影響を定期的に監視するため、学際的な監視システムを設置するよう提案するものである。このような監視システムは、締約国が、適切な政策を形成し、かつ、広く行き渡っている社会的格差および伝統的偏見と闘うことを可能にするであろう。委員会はまた、締約国が、オンブズパーソンのような独立した機構の設置を検討するようにも奨励する。 20.委員会は、条約第42条に照らし、おとなにも子どもにも同様に広く条約の規定および原則を知らせかつ条約に関する理解を深めるため、さらなる努力が必要とされているという見解に立つものである。委員会は、条約第12条に照らし、締約国が、子どもの参加権に関する公衆の意識を高めるための体系的な取り組みをさらに発展させるよう奨励したい。 21.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家集団(教員、法執行官、ソーシャルワーカーおよび裁判官を含む)を対象として子どもの権利に関する研修プログラムを定期的に組織するとともに、これらの専門家の養成カリキュラムに人権および子どもの権利を盛りこむよう、勧告する。 22.すべての子どもが人間として認められ、かつ、その権利を全面的に享受できるようにするため、子どもの出生登録は優先事項とされるべきである。委員会は、子どもの出生登録を確保するため、移動登録所の設置を含むさらなる措置をとるよう奨励する。 23.委員会は、また、条約第2条に照らし、締約国が、農村部における男子の学校中退と闘いかつこのような子どもが児童労働に携わるのを防止すること、ならびに、農村部の子どもおよび障害のある子どもによる基本的サービス(保健、教育および社会的養護)へのアクセスを全国的に強化することを目的として、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 24.委員会は、政府が法改正を行なうにあたっては、子どもの権利条約の規定、とくにその一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)を全面的に考慮に入れるよう勧告する。 25.委員会は、国際養子縁組に関して、締約国は、可能なかぎり早く、国際養子縁組を規制するための法律を起草しかつ採択するべきだという見解に立つものである。また、締約国が、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を批准することも奨励される。 26.難民の子どもの保護を促進するため、委員会は、締約国が難民の地位に関する条約(1951年)を批准するよう勧告する。 27.委員会は、モンゴル政府が、条約第4条の全面的実施にとくに関心を払い、かつ、中央レベルおよび地方レベルで資源が公正に配分されるようにするよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に利用して、かつ、子どもの最善の利益に照らして確保されるべきである。 28.委員会は、さらに、条約第19条に照らし、政府が、家庭における子どもの不当な取扱いおよび子どもの性的虐待と闘うために、法的措置含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、この問題の性質および規模を理解するために情報を収集しおよび包括的な調査に着手すること、ならびに、あらゆる形態の児童虐待を防止するための社会プログラムを開始することを提案するものである。 29.少年司法の運営の分野に関して、委員会は、法改正をさらに行ない、かつ、その際、子どもの権利条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の国際基準を考慮に入れるよう勧告する。少年非行の防止、自由を奪われた子どもの権利の保護、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利および法的保護の尊重、ならびに、少年に対応する司法機関の全面的独立および公平性に、特段の関心が払われるべきである。 30.〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法部が行なっている技術的援助プログラムの枠組みに沿って、子どもの権利の領域における法改正および子どもとともに働いている専門職の研修が開始されるべきである。とくに裁判官、法執行官、矯正施設職員およびソーシャルワーカーに向けた、関連の国際基準に関する研修に関して、特段の関心を払うことが求められる。政府に対し、〔国連〕人権センターおよび犯罪防止刑事司法部に対してこのような具体的援助の要請を行なうことを検討することが奨励されるところである。さらに、政府が、国際労働機関、国連難民高等弁務官、国連児童基金および世界保健機構を始めとする他の関連の機関からも技術的援助を求めることを検討することも提案される。委員会はまた、国際社会に対しても、締約国が現在行なっている努力に関して技術的援助および助言を提供するよう奨励するものである。 31.委員会は、締約国が、政府報告書、委員会における同報告書に関する議論の議事要録および報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を、広く普及するよう奨励する。委員会は、こうした文書に対して議会の関心を促し、かつ、そこに掲げられている行動のための提案および勧告をフォローアップするよう提案したい。これとの関連で、委員会は、非政府組織との協力を強化するよう提案する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/78.html
総括所見:フィリピン(第2回・2005年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2009年)OPAC(2008年)/OPSC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.259(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月18日に開かれた第1028回および第1029回会合(CRC/C/SR.1028 and 1029参照) においてフィリピンの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.31)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国が提出した、定められた報告ガイドラインにしたがった第2回定期報告書、および委員会の事前質問事項に対する文書回答を歓迎する。委員会は、締約国との間に持たれた建設的対話を心強く思うとともに、条約の実施に関与する省庁横断型の代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利の状況のより十全な評価が可能となったことを認知するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、近年、子どもの権利の保護および促進を目的としたいくつかの法律が採択されたこと、とくに以下のことに留意する。 (a) とくに女性および子どもの人身取引を根絶するための政策を制定し、人身取引の対象とされた者を保護しおよび支援するための制度的機構を設置し、人身取引を行なった者に対する刑罰を定め、かつ、フィリピンまたは国外における武装活動に従事させるための子どもの徴募、移送または養子縁組も禁じた、人身取引防止法(共和国法第9208号)の採択(2003年)。 (b) 最悪の形態の児童労働の根絶を定め、かつ働く子どもに対してより強力な保護を与える、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法(共和国法第7610号)を改正した共和国法第9231号の採択(2003年)。 (c) フィリピン家族法(大統領令第209号第176条)を改正し、非嫡出子が父の姓を用いることを認めた共和国法第9255号の採択(2004年)。 (d) 女性およびその子どもに対する暴力を定義し、かつ被害者の保護措置およびこのような暴力の加害者に対する刑罰を定めた、女性およびその子どもに対する暴力防止法(共和国法第9262号)の採択(2004年)。 (e) この総括所見全体で言及されている国際的条約および議定書の批准など、条約の実施を促進するためにとられたその他の法律上または行政上の措置。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、7100以上の島々から構成されている締約国が、地理的形態の面で特有の性質を有しており、かつ、同国の農村部および遠隔地(多くの場合、これらの地域は孤立しており、サービス等の対象とすることが非常に困難である)に住んでいる子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで課題に直面していることを認知する。 5.委員会はまた、トロピカル・ストームによる自然災害および2004年末に発生したいくつかの破壊的タイフーンによって同国のいくつかの州のインフラが崩壊し、そのため経済的および社会的困難が増しつつあることも認知する。とくに政治的不確定性および反政府運動によって引き起こされる国内の不安定さは、締約国における全般的な人権の発展に悪影響を及ぼしてきた。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.23)の検討時に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.29)に掲げたさまざまな懸念および勧告について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに刑事責任および性的同意に関する最低年齢、婚外子差別、包括的な少年司法制度の欠如、条約に関する監視制度の欠如ならびに拷問等の禁止については、十分な対応が行なわれていない。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 8.委員会は、比較的先進的な法的枠組みに留意するとともに、子どもの権利の保護および促進を向上させることを目的とした多くの立法上の提案、新法の制定および法改正の採択を心強く思う。しかしながら委員会は、とくに地方レベルで法律が十分に実施されていないことを深く懸念するものである。委員会はまた、国内法が条約のすべての規定および原則に完全に一致しているわけではないことにも留意する。 9.委員会は、締約国が、子どもの権利の保護を向上させる目的で国内法の全面手的かつ効果的実施を確保し、かつ、たとえば刑事責任に関する現行の最低年齢および法律に触れた子どもとの関連で、自国の法律を条約の規定および原則と全面的に調和させるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 国家的行動計画 10.委員会は、「子ども21」として知られる「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」が開始され、かつ、子どもの権利に関する問題ならびに関連の進展および欠点に対応するためにホリスティックなアプローチがとられていることを歓迎する。委員会は、既存の監視機構が、同計画の実施を一貫したやり方で監視しかつ評価するためには不十分であることを懸念するものである。さらに、委員会は、地方レベルで同計画およびその目的についての意識が限定されていることを懸念する。 11.委員会は、締約国が、とくに十分な人的資源、財源および技術的資源を提供することにより、「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」の全面的実施のためにあらゆる必要な措置をとるとともに、同計画の実施に関して、地方レベルでの同計画の実施に特段の注意を払いながら、権利を基盤とする、開かれた、建設的かつ参加型のプロセスを確保するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、同計画の実施に関わる活動の効果的調整ならびにこの実施プロセスの監視および評価を可能ならしめるのに必要な資源を国家子ども福祉評議会に提供することにより、同評議会を全面的に支援するよう勧告するものである。加えて、締約国は、とくに同計画および子どもの権利条約一般の実施における重要な手段となるだけの十分な資源を提供された子どもの保護のための地方評議会の設置を、とくに都市、自治体およびバランガイ(最小地方行政単位)においてできるかぎり促進するよう促される。委員会はまた、締約国が、実施プロセスの過程でとくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることも勧告するものである。 独立の監視 12.委員会は、人権の実施を独立の立場から促進しかつ監視する権限を与えられたフィリピン人権委員会(PCHR)が1997年に設置されたことを歓迎するとともに、他のいくつかの機関に対しても子どもの権利の実施に関する監視の役割が与えられていることに留意する。委員会は子どもの権利に関わるPCHRの活動を認知するものの、その権限および資源が限られていることを懸念するものである。 13.委員会は、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を参照しつつ、締約国に対し、子どもが申し立てた個別の苦情の調査を子どもに配慮したやり方で強化するため、子どもの権利の監視に関わるPCHRの権限を拡大することおよびPCHRに十分な資源を提供することを検討するよう、勧告する。 資源配分 14.委員会は、子どものための社会サービスに対する予算配分が若干増額されたこと、締約国が予算策定に関して20/20イニシアティブを実施するために努力していること、および、たとえば貧困緩和基金を通じて低所得家庭および貧困との闘いに優先順位が与えられていることに留意する。委員会はまた、締約国の債務元利払いが国家予算の30%以上を占めていること、ならびに、子どものための十分な予算配分、および、利用可能な資源を最大限に用いて子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施することに対する予算配分に関わる条約第4条について十分な注意がはらわれていないことにも、深い懸念とともに留意するものである。 15.委員会は、とくに子どもの権利の実現ならびにとりわけ子どもの経済的、社会的及び文化的権利の実施に対する予算配分を増額できるようにするため、締約国が、債務元利払い水準を低減させるための努力を強化するよう勧告する。子どもに関する支出の影響を評価できるようにするため、委員会は、締約国が、予算配分が子どもの権利の実施に与える影響の体系的評価を確立し、かつ、18歳未満の者に支出される年間予算の額および割合を明らかにするよう、勧告するものである。 データ収集 16.委員会は、データ収集改善のためのさまざまな努力を歓迎するものの、条約が対象としている一部の領域(障害のある子ども、移住者の子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、虐待およびネグレクトの対象とされている子ども、少年司法制度における子どもならびにマイノリティに属する子どもおよび先住民族の子どもを含む)で、データが存在せずまたは不十分であることを依然として懸念する。 17.委員会は、条約のすべての領域に関するデータが収集され、かつ、これらのデータが、とくに、18歳未満のすべての者について年齢別、ジェンダー別、都市部および農村部の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団別に細分化されることを確保するため、締約国が、既存のデータ収集機構を強化しかつ条約と一致した指標を開発するとともに、必要なときは追加のデータ収集機構を設置するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための政策およびプログラムを立案する目的でこれらの指標およびデータを活用するよう、奨励するものである。 条約の普及 18.委員会は、条約普及特別委員会が設置されたことに評価の意とともに留意し、かつ、たとえば出版物、放送メディアおよび専門家の研修を通じて条約の原則および規定に関する情報を普及するうえで、締約国が、ユニセフ、その他の国際機関ならびに国内外の非政府組織と連携しながら行なっている努力を心強く思う。にもかかわらず、委員会は、条約が社会のあらゆるレベルで普及されているわけではないことを懸念するものである。加えて、委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が系統だって行なわれておらず、むしろ場当たり的になっていることに留意する。 19.委員会は、締約国が、条約を促進する創造的かつ子どもにやさしい手法を引き続き発展させるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、遠隔地の子どもおよびおとなの間で条約に関する意識を高めるとともに、少なくとも主要な言語で、かつできるだけその他の先住民族およびマイノリティの言語でも条約を利用可能とするよう、奨励するものである。委員会はさらに、裁判官、弁護士、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団の系統だった研修を勧告する。条約の普及に関して、委員会はまた、締約国が、とくに国連人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めることも勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 20.とくに子ども・若者福祉法(大統領令第603号)、家族法および子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定ならびに第3次初等教育プログラムのようないくつかのプログラムの実施を通じて子どもに対する差別を撤廃するために締約国がとった措置にも関わらず、委員会は、多くの子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもが、とりわけ社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して差別に直面していることを懸念する。委員会は、女子が日常生活で直面している事実上の差別(これはジェンダーに基づく複合差別であることが多い)についてとくに懸念を覚えるものである。委員会は最後に、とくに相続の権利および「非嫡出」という差別的分類に関する婚外子の不平等な地位についての懸念をあらためて表明する。 21.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の効果的実施を確保するための努力を強化するとともに、脆弱な立場に置かれたすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別(諸形態の複合差別を含む)を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、勧告する。委員会は、締約国が、女子の平等な地位ならびに女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受に対して特段の注意を払うよう勧告するものである。婚外子に関して、委員会は、締約国に対し、平等な取り扱いに対する婚外子の権利(相続の権利を含む)を保障し、かつこれらの子どもを「非嫡出」と分類する差別的慣行を廃止する目的で、国内法を見直すよう要請する。 22.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 生命に対する権利 23.委員会は、とくに国内武力紛争を理由とする子どもの生命権の侵害に重大な懸念を表明する。軍の兵士による子どもの超法規的殺害が2004年にブラン(ソルソゴン州)で行なわれたとされること、および、近年、ダバオおよびディゴスの両都市でもいわゆる死の部隊による同様の事件が起きたとされていることは、きわめて重大な懸念の理由となるものである。 24.改正刑法(共和国法第3815号)および改正刑法を修正した一部の凶悪犯罪に対する死刑適用法(共和国法第7659号)の規定で、犯罪を行なったときに18歳に達していなかった者に死刑を科すことが明示的に禁じられていることには留意しながらも、委員会は、子ども、すなわち18歳未満の者が確固たる年齢証明のないまま死刑囚とされている事案があることに深い懸念を表明する。 25.委員会はまた、民事登録官へのアクセスが制約されていることを理由として新生児死亡および流産の報告制度に欠陥が生じていることにも、懸念とともに留意する。 26.委員会は、条約第6条その他の条項を参照しながら、締約国に対し、とくに子どもの超法規的殺害を防止することならびに殺害が疑われる事件を徹底的に捜査しかつ加害者を裁判にかけることを目的とする効果的措置をとることにより、生命、生存および発達に対するすべての子どもの権利の保護を強化するためにあらゆる努力を行なうよう促す。 27.委員会はまた、締約国に対し、死刑を言い渡された子どもの処刑を防止し、かつ死刑に代えて条約および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)に一致する制裁を適用するためにあらゆる必要な措置をとることも促す。締約国はまた、18歳未満の者が死刑または成人を対象とする他の刑罰を言い渡されないことを確保する目的で、警察、検察官、弁護人、裁判官およびソーシャルワーカーのような公的権限を行使する者に対し、被告の正確な年齢に関する証拠を法廷に提出すること、またはそれが不可能な場合には被告に灰色の利益を与えることを義務づけるため、即時に立法上その他の措置をとることも求められる。 28.新生児死亡および流産の報告について、委員会は、締約国が、とくに同国の遠隔地において民事登録官へのアクセスを容易にするよう勧告する。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、締約国の国内法令のなかに、たとえば司法上および行政上の手続における子どもの同意および意見を明示的に尊重しているものがあり、かつ、締約国が、とくに全国若者議会(共和国法第8044号)および生徒評議会を通じ、子どもの参加を促進してきたことに留意する。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ひとつには社会における伝統的態度を理由として、参加および自由な意見表明に対する子どもの権利が締約国においていまなお制限されているという見解に立つものである。 30.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校およびその他の施設において子どもの意見の尊重を促進し、かつ、とくに子どもおよび若者の評議会、フォーラム、議会等を通じ、子どもに影響を与えるすべての事柄への子どもの双方向的参加の便宜を図るための努力を強化すること。その際、脆弱な立場に置かれた集団の子どもに特段の注意を払うことが求められる。 (b) 子どもおよびその親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対し、子どもが自己に関わる問題について影響を及ぼす機会を追求しかつ強化するよう奨励することにより、意見を聴かれかつ参加する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを行なうこと。 31.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ〔子どもの味方〕163」の活動に、評価の意とともに留意する。これは、子どもが自己の関心事および意見を表明し、かつ援助および助言を求めるための重要な手段である。しかしながら委員会は、同ヘルプラインにアクセスできるのが首都圏に住んでいる子どもだけであり、かつ、同ヘルプラインを同国の農村部にまで拡大するための基本的資金が存在しないことを懸念するものである。 32.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ163」を全国的にアクセス可能なフリーダイヤルとし、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、締約国が同ヘルプラインの拡大を支援するよう勧告する。ヘルプラインに関する子どもの意識について、委員会は、締約国が、子ども関連のプログラムに同ヘルプラインについての情報を含めるよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 出生登録 33.出生登録率の上昇の見込みおよび締約国がこの点についてとっている措置(プラン・インターナショナルおよび国家統計局が連携して実施している「未登録の子どもプロジェクト」を含む)には留意しながらも、委員会は、子ども、とくに宗教的その他のマイノリティ集団または先住民族に属している子どもおよび同国の遠隔地に住んでいる子どもの時宜を得た出生登録を確保するうえで困難が生じていること、および、出生登録が無償ではなく、かつ締約国全域のすべての親にとって平等にアクセス可能なものとなっていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、出生証明書の偽造についても懸念を覚えるものである。 34.子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することを確保し、かつ100%の出生登録を達成するため、委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地にサービスを提供する移動出生登録班をより効果的に活用すること等も通じて、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を発展させるための努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもが婚外子である親および宗教的その他のマイノリティまたは先住民族に属する親による早期の出生登録へのアクセスを向上させることに、特段の注意を払うよう要請するものである。 35.委員会は、同国における出生登録率の向上を達成するため、締約国が、公衆の態度を変革し、かつ親、産婦人科診療所および病院、助産師ならびに伝統的出産立会人の感受性を強化することを目的とした意識啓発キャンペーンを導入するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、この点に関する国際機関および非政府機関との協力を深めるよう勧告するものである。委員会は、締約国が、とくに社会福祉開発省のような政府機関に関連の規定の実施およびすべての偽造事件の記録を担当させることによって、出生証明書の偽造を防止する効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、出生時からのアイデンティティに対する子どもの権利および家族のなかで成長することに関する広報キャンペーンを、とくに地方レベルで開始することも勧告するものである。 名前、国籍およびアイデンティティ 36.海外で働くフィリピン人が多いことに関して、委員会は、国外で生まれたフィリピン人移住労働者の子どもについて懸念を覚える。これらの子どもは、登録されないことにより、名前、国籍およびアイデンティティならびに基礎的サービスに対する権利を奪われている。 37.委員会は、締約国に対し、親がその在留資格に関わらず国外で生まれた子どもを登録することを奨励し、かつそのための便宜を図るよう勧告する。委員会はまた、締約国が、登録されておらず正規の身分証明書類を有しない子どもが、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスを認められることを確保するようにも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、出生登録の必要性および価値に関する親の意識を高めるよう勧告する。 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰 38.委員会は、フィリピン憲法が拷問を禁じており、かつ子ども・若者福祉法(大統領令第603号)の規定で拷問および不当な取り扱いからの子どもの保護が定められていること、ならびに、すべての病院、診療所、関連施設および開業医に対し、子どもの拷問および不当な取り扱いのすべての事案を書面で報告する義務が課されていることに、留意する。にもかかわらず、委員会は、子ども、とくに拘禁されている子どもの拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いの報告件数が多数にのぼることを深く懸念する。委員会は、法律による拷問の禁止および犯罪化に関する前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、現行法は子どもに対して拷問および不当な取り扱いからの十分な水準の保護を提供していないという見解をとるものである。 39.拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰に関して、委員会は、締約国に対し、家庭ならびに官民のすべての施設における拷問および不当な扱いからの子どもの保護を向上させ、かつ法律により拷問を犯罪とする目的で、国内法を見直すよう促す。委員会は、締約国が、虐待された子どもが法的手続で被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、子どもの拷問および不当な取り扱いのすべての事案を捜査しかつ訴追するよう、勧告するものである。締約国は、被害を受けた子どもに対し、ケア、回復および再統合のための適切なサービスが提供されることを確保するよう求められる。委員会は、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、ケアを提供する者、裁判官および保健従事者を含む)に対し、不当な取り扱いの事案の特定、通報および管理についての研修を行なう努力を継続するよう勧告する。 40.委員会は、締約国に対し、子どもの拷問、非人道的なおよび(または)品位を傷つける取り扱いが公的機関または関連機関に報告された件数、そのような行為の加害者のうち裁判所による刑の言い渡しを受けた者の人数および言い渡された刑の性質に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 体罰 41.種々の関連規定を実施することにより学校、刑務所、施設および諸形態の子どものケア現場における体罰の使用を禁止しようとする締約国の努力には留意しながらも、社会で体罰が蔓延していることは重大な懸念の理由となる。委員会は、体罰に関する規定が子ども・若者福祉法に含まれていないことを懸念するとともに、家庭における体罰が法律で明示的に禁じられていないことを遺憾に思うものである。 42.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)および家庭および学校における子どもへの暴力に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/111参照)に照らし、委員会は、体罰は条約の規定と両立せず、かつ、条約第28条2項でとくに求められている子どもの尊厳の尊重の要件と一致しないことをあらためて指摘する。したがって委員会は、締約国が、家庭、学校および官民の施設、少年司法制度ならびに代替的養護制度におけるあらゆる形態の体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。 43.委員会は、締約国に対し、さまざまな場面(家庭環境を含む)における体罰の性質および規模を評価するための包括的研究を実施するよう、勧告する。さらに、委員会は、締約国が、暴力的形態の「しつけおよび規律」の有害な影響に関する公衆教育キャンペーンを実施することによって親、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうとともに、体罰に代わる手段として、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進するよう、勧告するものである。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 44.子どもの養育および発達に対する親の責任について、委員会は、フィリピンの子どもの多くが、少なくともいずれかの親が海外で働いているために家族の絆が緊密ではない状況下で暮らしていることを懸念する。 45.委員会は、海外就労に関する政策を定めることならびに移住労働者、その家族および窮状にある海外在住フィリピン人の福祉の保護および促進に関する基準を向上させること等に関する法律(共和国法第8042号)の効果的実施を求めるとともに、締約国に対し、海外で就労するフィリピン人が女性も男性も平等に親としての責任を果たせることを(就労先の国々と二国間協定を締結する等の手段も通じて)確保し、かつ家族の再統合および子どもの養育のための安定した家庭環境を促進するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、海外就労フィリピン人およびその子どものための、子どもに配慮した家族カウンセリング・サービスを発展させかつ提供するための努力を引き続き行なうよう勧告するものである。 扶養料の回復 46.親の一方または双方が海外で働いているフィリピン人の子どもが多いこと、海外移住中に国外で出生するフィリピン人の子どもが増えていることおよび父親が確定されない場合があることに留意しながらも、委員会は、締約国が、実際上、扶養料の回復を十分に確保していないことを懸念する。委員会は、国内法(たとえば家族法および子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法)の関連規定の不十分な実施ならびにこの点に関わる裁判所命令の執行について懸念を覚えるものである。加えて、委員会は、扶養命令の相互執行に関する二国間協定が実際には十分に実施されていないこと、および、このような協定が締結されていない場合もあることを懸念する。 47.委員会は、締約国が子どもの扶養料の回復を実際に確保するよう勧告する。国外で働いている親に関して、委員会は、締約国に対し、扶養命令の相互執行に関する二国間協定を締結するとともに、扶養料の回復が行なわれない場合に扶養料の支払いを保障する基金の設置を検討するよう、奨励するものである。 里親養護および養子縁組 48.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准したことを歓迎し、かつ、国際養子縁組法(共和国法第8043号)および国内養子縁組法(共和国法第8552号)の規定に評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護に関する政府法案が数年間議会で未決案件となっていることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの養子縁組許可宣言の手続に時間がかかるため、施設での滞在が長期化する結果になっていることを懸念する。委員会はまた、国際養子縁組が最後の手段として用いられていないことに、懸念とともに留意するものである。 49.委員会は、すべての養子縁組が条約の原則および規定ならびに他の関連の国際基準に全面的にしたがって、かつ子どもの最善の利益にかなうように行なわれること、ならびに、国際養子縁組が最後の手段として用いられることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、里親養護法を優先的課題として採択しかつ実施するよう奨励するものである。委員会は、締約国に対し、養子縁組手続が施設における子どもの長期滞在につながる要因を特定するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、里親および里子に対して十分な審理社会的サービスを提供するよう勧告するものである。 虐待およびネグレクト、不当な取り扱い、暴力 50.委員会は、締約国において児童虐待およびネグレクトの報告件数が増えており、かつ、あらゆる形態の虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱い(性的虐待を含む)の処罰に関して国内法に顕著な欠陥があることを、深く懸念する。加えて、委員会は、宗教上の制度の枠組みのなかで子どもの性的虐待が行なわれているという訴えがあることを深く遺憾に思うものである。 51.委員会は、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の虐待(性的虐待を含む)、ネグレクト、不当な取り扱いおよび暴力を処罰し、かつ子どもに対するこれらの犯罪(近親姦を含む)を明確に定義するため、国内法を見直すよう促す。委員会は、締約国に対し、宗教上の制度の枠組みのなかで行なわれる性的虐待および搾取を防止し、かつこれらの行為から子どもを保護するために効果的措置をとるよう勧告するものである。そのための手段には、このような事案の規模について調査を行なうとともに、このような虐待の加害者が裁判にかけられること、および、このような性的虐待の事案および未成年者の搾取の事案について宗教上の制度の役職者の責任が問われることを確保することが含まれる。 52.委員会は、締約国に対し、加害者を裁判にかけ、かつ暴力および虐待の被害を受けた子どもが十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保する目的で、たとえばビデオに録画された証言を証拠として認めることによって被害を受けた子どもの権利を法的手続において全面的に実践しながら、児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について時宜を得た十分な調査を行なうよう促す。 母親とともに刑務所にいる子ども 53.母親とともに刑務所で暮らしている子どもに関して、委員会は、十分な社会サービスおよび保健サービスに対するこれらの子どものアクセス、ならびに、とくに、劣悪でありかつ国際基準に達していないことが多いその生活条件について懸念を覚える。 54.委員会は、締約国が、条約第27条にしたがって、刑務所における生活条件および保健サービスが子どもの乳幼児期の発達にとって十分であることを確保するとともに、子どもが拘禁される母親とともに滞在するようになる前および滞在している期間中に、子どもの最善の利益の原則(条約第3条)が権限のある専門家によって注意深くかつ独立の立場から考慮されることを確保するよう、勧告する。委員会は、収監中の母よあから分離された子どもの代替的養護が、子どもの身体的および精神的ニーズが適切な形で満たされることを確保しながら、定期的に見直されるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、代替的養護において、子どもが収監されたままの母親との個人的関係および直接の接触を維持できることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点についてとくにユニセフその他の国連機関の援助を求めるよう奨励するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 55.とくに「コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム」を実施することによって、障害のある子どもに対する差別を撤廃し、かつ障害のある子どもが平等な機会に基づいて社会に統合することを促進するために締約国が行なっている努力を歓迎しつつ、委員会は、障害のある子どもが事実上の差別に直面していることおよびこのような子どもの役割が社会で不可視化されていることを懸念する。委員会は、障害に関する国内法、たとえば障害者大憲章(共和国法第7277号、1992年制定)および子ども・若者福祉法の関連規定がとくに地方レベルで十分に実施されていないことに、懸念とともに留意するものである。委員会は、障害のある子どもの多くが貧困下で暮らしており、かつ社会サービスおよび保健サービスならびに教育への障害児のアクセスが限られていることを懸念する。さらに、フィリピン社会に深く根づいている、障害のある子どもに対する誤った考え方および広範な偏見は、懸念の理由となるものである。 56.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らし、委員会は、締約国が以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害に関する国内法および全国的な「コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム」を実施し、かつ、あらゆる関連の政策立案および国家的計画策定に障害の側面を含めることにより、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、かつ、障害のある子どもが生活のあらゆる領域に完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (b) 国内の最遠隔地に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分な統計データを収集し、かつ、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際にこれらの細分化されたデータを活用すること。 (c) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (d) 障害のある子どもが、十分な社会サービスおよび保健サービスならびに物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにすること。 (e) 公的情報キャンペーンを開始しかつ支援することによって障害のある子どもに対する否定的態度、誤った考え方および広範な偏見を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する意識啓発のための努力を強化すること。 (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分な研修を受けることを確保すること。 (g) 国家障害者福祉評議会の職務および活動、ならびに、フィリピン障害者団体全国連合および障害問題の分野で活動している非政府組織との協力を強化すること。 (h) とくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的協力を求めること。 57.さらに、委員会は、締約国に対し、大統領布告第240号(2003年)で宣言された「フィリピン障害者の10年(2003~2012年)」の文脈において障害のある子どもの権利および地位に特段の注意を払うよう、奨励する。 健康および保健サービス 58.委員会は、健康および保健サービスの分野において、とくに予防接種との関連で締約国が達成した進展(ポリオの撲滅および新生児破傷風の根絶など)を心強く思うとともに、「保健部門改革アジェンダ」に評価の意とともに留意する。農村部では出産10件のうち8件が専門家による保健上の便益を受けることなく行なわれており、かつ乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率が相対的に高いことに留意しつつ、委員会は、とくに同国の農村部において産前産後の保健ケアが不十分であることに、深い懸念を表明する。母乳育児の普及率が低いこと、子どもの間で栄養不良が生じていること(学齢期の子どもの微量栄養素不足問題も含む)、および、同国の遠隔地において良質な保健サービスへの子どものアクセスが全般的に限られていることは、重大な懸念の理由となるものである。委員会は最後に、他の国々との間で現在交渉中である自由貿易協定によって負担可能な医薬品へのアクセスに悪影響が生じるおそれがあることに、懸念を表明する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「保健部門改革アジェンダ」を全面的に実施するために必要な立法上、行政上および予算上の措置をとるとともに、改革プロセスが、子どもの最善の利益および子どもの権利の全面的享受を第一次的に考慮することによって進められることを確保すること。 (b) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施するため、保健部門に適切な資源が配分されることを確保するとともに、子どもの健康状態を向上させるための包括的政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。 (c) 同国の農村部に特段の注意を払いながら、産前産後の良質な保健サービスおよび保健上の便益へのアクセスを保障するための措置(助産師および伝統的出産立会人を対象とする研修プログラムも含む)を実施すること。 (d) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率を低下させるためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 予防接種プログラムを効果的に実施することにより、できるかぎり多くの子どもおよび母親に予防接種を行なうために現在行われている努力を強化すること。 (f) 生後6か月間は母乳のみを与え、その後はこれを修正して適切な乳児食を与えることを奨励するとともに、健康的な摂食習慣の教育および促進を通じて子どもの栄養状態を改善するための措置をとること。 (g) とくに貧困層のおよびもっとも脆弱な立場に置かれた子どもおよびその親を対象として負担可能な医薬品へのアクセスを確保するため、自由貿易協定の交渉において、第4回世界貿易機関閣僚会議(ドーハ)が採択した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定と公衆衛生に関する宣言」で再確認されたあらゆる柔軟条項および締約国が利用可能な諸機構を活用すること。 (h) この問題に関して、とくにWHO、ユニセフおよび国連人口基金(UNFPA)と引き続き協力し、かつその技術的援助を引き続き求めること。 環境衛生 60.委員会は、締約国がとった立法上その他の措置にも関わらず、大気および水の汚染ならびに環境悪化のような環境問題が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることを懸念する。安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関して、委員会は、地域格差があることを懸念するものである。さらに、子どもの間でも親の間でも衛生的習慣に関する知識が貧弱であることは、懸念を覚える理由となる。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 環境に配慮した固形廃棄物処理法(共和国法第9003号)および大気浄化法(共和国法第8749号)を含む環境関連の国内法の実施を強化することにより、汚染および環境悪化を低減させるための努力を引き続き強化すること。 (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。 (c) とくに同国の遠隔地において安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させ、かつ衛生に関する子どもおよびその親の意識を高めるための効果的措置をとること。 思春期の健康 62.委員会は、「リプロダクティブヘルス・プログラム」、および、人口委員会およびUNFPAとの連携による思春期の健康に関する合同プロジェクトの実施等も通じ、思春期の健康を促進するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、青少年の間でアルコール、タバコおよび薬物の濫用が広がっていること、若年妊娠が発生していること、ならびに、これとの関連で、リプロダクティブヘルスに関する相談および(たとえば避妊法に関する)正確かつ客観的な情報への青少年のアクセスが限られていることを懸念する。アルコールの購入および消費に関する最低年齢を定めた法律が存在しないことは、懸念の理由となるものである。委員会はまた、青少年の自殺を防止する措置がとられていないことに関する締約国の懸念も共有する。 63.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「リプロダクティブヘルス・プログラム」のような、思春期の健康に関する国家的な政策及び計画を実施するとともに、思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を考慮することにより、思春期の健康のあらゆる分野を網羅した新たな政策および計画を策定すること。 (b) 10代の妊娠および関連する中絶を予防する目的で、リプロダクティブヘルスに関する相談へのアクセスを確保し、かつ、正確かつ客観的な情報およびサービスをすべての青少年に提供すること。 (c) セクシュアリティ、HIV/AIDS、性感染症および家族計画に関する公式・非公式の教育を強化すること。 (d) アルコールの購入および消費に関する最低年齢を法律で定めること。 (e) アルコール、薬物およびタバコの使用の有害な影響に関する情報を青少年に提供すること。 (f) 青少年に適合した十分な精神保健サービスを設置すること。 (g) とくにWHO、国連エイズ合同計画およびUNFPAの技術的協力を求めること。 HIV/AIDS 64.委員会は、同国におけるHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、AIDS予防統制法(共和国法第8504号、1998年採択)の実施および全国AIDS予防統制プログラム(1998年)の設置等も通じ、HIV/AIDSの感染予防および削減に対処するために行なわれているさまざまな努力を歓迎する。〔しかしながら、〕委員会は、セックスワーカーが多いことのような、HIV感染の可能性を高めるリスク要因が存在することを懸念するものである。AIDS予防統制法が、学校におけるHIV/AIDSについての完全な情報へのアクセスを保障していることには留意しながらも、委員会は、フィリピンの青少年の間でHIV/AIDSに関する意識水準が不十分であることに懸念を表明する。 65.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、引き続き以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの症状を予防しかつ治療するため、AIDS予防統制法を実施するための努力を強化すること。 (b) たとえばいかなる形態の差別的行為も禁ずるフィリピンAIDS予防統制法を実施することによって、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもに対する差別を防止するとともに、これらの子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (c) 学校で、HIV/AIDSに関する正確かつ包括的な情報(コンドームの利用も含む)を青少年に提供すること。 (d) 子どもが必要とするときは、親の同意を得ることなく、子どもに配慮し、かつ秘密が守られるHIV/AIDS相談にアクセスできることを確保すること。 (e) とくに国連合同エイズ計画の技術的援助を求めること。 生活水準 66.委員会は、国の貧困線以下の世帯で暮らしている子どもが多いこと、および、異なる地域間の富の格差が大きいことに、懸念とともに留意する。委員会は、貧困下で暮らしている子どもが、社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスを含む人権の享受に関して困難に直面していることを深く懸念するものである。委員会はまた、締約国の劣悪な住宅状況、および、たとえばインフラが十分に整っていない都市のスラムおよび不法居住区に住んでいる家族についても懸念を覚える。 67.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、とくに貧困削減戦略の実施およびコミュニティ開発(子どもの参加を含む)を通じ、貧困下で暮らしている農村部および都市部の人々の生活水準を向上させるために緊急の努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた子どもおよびその家族に物的援助および支援を提供する努力を強化するよう要請する。さらに、締約国は、貧困下で暮らしている子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに十分な住居へのアクセスを提供されることを確保するべきである。 6.教育、余暇および文化的活動 教育 68.委員会は、小学校および中等学校に関する新学校カリキュラム、ならびに、ユニセフとの連携による乳幼児期カリキュラム、「万人のための教育行動計画」および「子どもにやさしい学校制度」を実施する等の手段により、教育の水準および目的を向上させるために締約国が行なっている努力に留意する。これらの積極的措置がとられたにも関わらず、委員会は、いまなお子どもに小学校教育を提供することのできないバランガイが残っており、かつ、小学校教育に平等にアクセスできていない、脆弱な立場に置かれたいくつかの集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、子どもの労働者、武力紛争下にある子ども、先住民族の子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)が存在することに、依然として重大な懸念を覚えるものである。委員会は、通学にかかる費用負担(食費、移動費、制服代および学用品費など)が貧困家庭の多くの子どもにとって金銭的障害となっており、このような子どもにとって教育への平等なアクセスが否定されていることを、懸念する。初等教育を就労しない子どもの割合が高いことは、中等教育における中退率が高いこととともに、深刻な懸念の理由となるものである。委員会はまた、就学前学校での早期教育を享受する子どもの人数が少ないことにも留意する。 69.委員会は、とくにリンガ・フランカ・プロジェクト等も通じ、先住民族、マイノリティおよび地方の言語を促進しようとする締約国の努力を心強く思う。委員会は、教室の席、教科書およびその他の学用品の数が不十分であることも含め、とくに遠隔地のバランガイにおいて就学のための便益が貧弱であることを懸念するものである。委員会は、中等教育就学率が低く、かつ遠隔地のバランガイに住んでいる子どもは中等教育へのアクセスが非常に制限されている旨の懸念を、あらためて繰り返す。委員会は、締約国が、子ども参加を奨励する課題および教授法にかける時間を増やすことによって教育の質を向上させるために熱心な努力を行なってきたことに、評価の意とともに留意するものである。委員会はまた、教員の着任前研修および現職者研修の拡大および改善も歓迎する。委員会はまた、教育の質を日常的に監視しかつ評価しようとする試みが行なわれていることも認識するものである。 70.条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。 (a) 低所得家庭の子どもがあらゆる段階の教育に平等にアクセスできることを確保するため、このような子どものための予算配分、政府補助金および援助プログラムを増加させること。 (b) すべての者を対象とする無償の完全初等教育を確保するため、あらゆる必要な措置を緊急にとるとともに、最遠隔地にあるバランガイにおける就学機会および脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族の子ども、子どもの労働者、武力紛争下にある子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)の教育上のニーズに対し、教育に対するこれらの子どもの権利を充足する目的で特段の注意を払うこと。 (c) 初等中等学校における中退率を迅速に下降させるための効果的措置をとること。 (d) すべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにする(そのための費用は貧困家庭にも負担可能なものとすることが求められる)とともに、就学前学校および早期の学習機会に関する親の意識を高めること。 (e) 学校および教室を新設し、教科書その他の学用品を開発し、教員の養成および研修を増進させ、ならびに、学習の前提条件が異なる子どもに適合した革新的かつ双方向的な学習手法を採用することにより、教育制度の基盤を発展させおよび改良すること。 (f) とくにリンガ・フランカ・プロジェクトを通じ、先住民族の子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもが、それぞれの異なる文化様式を尊重し、かつ教育において地方の先住民族言語およびマイノリティ言語を用いる良質な教育に、平等にアクセスできるようにすること。 (g) 初等中等教育を修了していない子どもを対象とするものも含め、非公式な学習および職業訓練のための便益をより多く提供するための努力を引き続き行なうこと。 (h) 中退者数を減少させ、かつ中等教育を修了する子どもの人数を増やすための努力を引き続き行なうこと。 (i) 労働市場で必要とされることおよび市民的責任に関して子どもが学校で体系的に準備を整えられるようにする職業訓練校を設立すること。 (j) 子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムの主流に位置づけること。 (k) 教育部門の改善のため、とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織と協力すること。 (l) 教員の着任前研修および現職者研修を引き続き拡大すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 71.子どものためのスポーツおよび文化的活動を発展させかつ組織しようとする締約国の努力にも関わらず、委員会は、子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であり、かつ、この点に関してバランガイ間に格差があることに、懸念とともに留意する。委員会は、休息および余暇に対する権利を享受する権利も、遊び、スポーツ、レクリエーション活動および文化的活動を行なう権利を享受する権利も平等に有していない子どもの集団(初等教育に参加していない子ども、子どもの労働者およびストリートチルドレンなど)がいくつか存在することを、懸念するものである。 72.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を保護するため、あらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、遊びのための創造的な便益を子どもに提供することにより、遊びを行なう子どもの権利を促進する努力を強化するよう勧告するものである。委員会は、この権利の実施に対して十分な人的資源および財源が配分され、かつ、教育制度の外にある子ども、子どもの労働者およびストリートチルドレンのような脆弱な立場に置かれた集団の子どもに特段の注意が払われるよう、要請する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 73.子どもの難民の処遇およびその権利の実施がフィリピン人の子どもに一般的に適用される法律に照らして考えられてきたとはいえ、委員会は、子どもの庇護希望者および難民の具体的ニーズに対応した国内法が存在しないことを懸念する。委員会は、たとえば、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定のうち緊急事態下にある子どもに関する規定が武力紛争の状況下にある子どもに限定されていることに留意するものである。 74.委員会は、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民のニーズに対応し、かつ、保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民に関する特別手続を定めた、特別な法律および行政規則を導入するよう勧告する。これとの関係で、委員会は、締約国が引き続きUNHCRと協力するよう勧告するものである。 武力紛争下の子ども 75.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を締約国が2003年8月に批准し、かつ、国軍への入隊に関する最低年齢を18歳と定めたこと(ただし訓練目的の場合を除く)を歓迎する。委員会はまた、武力紛争に関与した子どもの救助、回復および再統合を促進する「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム枠組み」(2001年、大統領令第56号)が採択されたことに、評価の意とともに留意するものである。締約国がとったこれらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ときには11歳という幼さの子どもが新人民軍、モロ・イスラム解放戦線およびアブ・サヤフ・グループのような武装反政府運動によって徴募され、戦闘員、諜報要員、警備兵、調理担当または衛生兵として働かされていることに、深い懸念を表明する。 76.委員会は、締約国が身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのサービスを提供できるのは拘束された子ども兵に対してのみであり、武力紛争に関与しまたはその影響を受けている子どもの大多数に対してはまったく手が差し伸べられていないことを懸念する。さらに委員会は、国内武力紛争の悪影響のため、子どもが避難を余儀なくされる状況が続いており、かつ、これらの子どもが、社会サービスおよび保健サービス、教育ならびにとくに発達に対して限られた形でしかアクセスできていないことを懸念するものである。加えて、委員会は、敵対行為に関与していない子ども、とくにミンダナオ地域に住んでいるイスラム教徒の子どもに対して国内武力紛争が与えている影響について懸念を覚える。 77.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもについて、条約に掲げられたすべての権利をいかなるときも尊重しおよび確保することを約束したことを想起する。条約第38条、第39条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国に対し、武力紛争における子どもの徴募および武力紛争への子どもの関与を即時停止するよう促す目的で武装反政府勢力との和平の努力を継続するとともに、武力紛争に関与させられたすべての子どもの保護を確保するよう、促すものである。委員会は、締約国に対し、武力紛争に関与した子どもおよび武力紛争によって傷を負った子どもに対し、国内的および国際的非政府組織ならびにユニセフのような国連機関と協力しながら、その身体的および心理的回復ならびに社会への社会的再統合のための十分な援助およびカウンセリングを提供するよう、勧告する。委員会は、締約国が、女子の子ども兵に対し、リハビリテーションおよび再統合のための、ジェンダーに固有の十分なサービスを提供するよう勧告するものである。 78.委員会はまた、締約国が、武力紛争下の子どもの取り扱いに関するフィリピン国軍向け指針の実施に特段の注意を払うとともに、拘束された子どもが定められた期限内に軍事拘禁から釈放されること、および、子どもが十分な治療を提供されかつ自己の権利について告知されることを確保するようにも勧告する。避難民の子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもに関して、委員会は、締約国に対し、十分な社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達を含む基礎的サービスにこれらの子どもがアクセスできることを確保するために効果的措置をとるよう、促すものである。最後に、委員会は、締約国が、武装交戦の影響を受けている地域に住んでいるすべての子どもがいかなる差別もなく平等に人権を享受できることを確保するよう、勧告する。 経済的搾取 79.委員会は、〔ILOの〕最低年齢条約(1973年、第138号)が1998年6月に、および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)が2000年11月に批准されたことを歓迎する。委員会は、たとえば全国児童労働対策プログラムの実施、労働法実施雑則、地方レベルの児童労働プログラム実施委員会の設置ならびに国際労働機関およびその児童労働撤廃国際計画との実りのある協力を通じ、児童労働と闘うために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的努力にも関わらず、委員会は、締約国における子どもの労働者の人数が多いこと(働く子どもが370万人)を深く懸念する。委員会は、児童労働に関する文化的態度および慣行ならびに労働法の執行の弱さに懸念を覚えるものである。 80.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内法ならびに全国児童労働対策プログラムおよびその下位プログラム(たとえばタバコ産業における児童労働撤廃プロジェクト)を効果的に実施するとともに、この問題の解決に関する議論に子どもの労働者が参加することを確保すること。 (b) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するために労働監察制度を改善するとともに、とくに、当該制度に対し、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限を付与すること。 (c) 元子ども労働者に対し、回復および教育のための適切な機会を提供すること。 (d) 国際労働機関/児童労働撤廃国際計画に対し、引き続き技術的援助を求めること。 薬物および有害物質の濫用 81.とくに2002年包括的危険薬物法(共和国法第9165号)の実施を通じて麻薬取引ならびに薬物および有害物質の濫用と闘おうとする締約国の努力、ならびに、子どもを対象とする治療および社会的再統合のためのサービスの増加には留意しながらも、委員会は、フィリピンで麻薬売買が大規模に行なわれており、かつそれが子どもおよび青少年に悪影響を与えていることを深く懸念する。委員会は、薬物および有害物質の濫用(ストリートチルドレンの間で行なわれている接着剤およびシンナーの吸引を含む)が多数発生していることに関する締約国の懸念を共有するものである。さらに、委員会は、薬物回復再統合センターにおける治療を自発的に求めた子どもがしばしば治療費の支払いを求められることにより、資力の限られている子どもにとって克服不能な障害が生じ、かつ治療および再統合へのアクセスが否定されていることを懸念する。 82.委員会は、締約国が、以下の目的のために行なっている努力を引き続き強化するよう勧告する。 (a) たとえば2002年包括的危険薬物法を効果的に実施することによって、子どもおよび青少年の間で行なわれている薬物および有害物質の濫用と闘うとともに、法の適正手続を確保すること。 (b) 子どもおよび青少年に対し、公立学校プログラムおよびメディア・キャンペーンを通じて薬物および有害物質(の使用に関する正確かつ客観的な情報を提供するとともに、正しくない有害な情報および有害なモデルから子どもを保護すること。 (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもを対象とする、薬物濫用の治療および社会的再統合のための無償かつ容易にアクセス可能なサービスを発展させること。 (d) ストリートチルドレンに適合した、特定の薬物濫用(接着剤およびシンナーの吸引を含む)からの回復および社会的再統合のためのプログラムおよびセンターを設けるとともに、この点に関して非政府組織と協力すること。 (e) 既存の薬物回復再統合センターに十分な予算を配分すること。 (f) とくに国連薬物犯罪事務所およびWHOの技術的援助を求めること。 ストリートチルドレン 83.委員会は、路上で生活している子どもが多く、かつ、このような子どもがさまざまな形態の暴力および虐待(性的虐待および搾取、経済的搾取および有害物質濫用を含む)の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることに対する重大な懸念を、あらためて表明する。委員会は、このような状況に対処し、かつ路上で生活している子どもを保護するための体系的かつ包括的戦略が存在しないことに留意するものである。委員会は、ストリートチルドレンの不法な逮捕および拘禁は条約の規定および原則の重大な侵害であることを強調する。締約国ならびにストリートチルドレンとともにおよびストリートチルドレンのために活動している多くの非政府組織(たとえばチャイルドホープ・アジア・フィリピン)が行なっている努力にも関わらず、委員会は、十分な栄養、衣服、住居、社会サービスおよび保健サービスならびに教育サービスへのストリートチルドレンのアクセスが制限されていることを懸念するものである。さらに委員会は、ストリートチルドレンが直面している健康上のリスク(毒性・有害廃棄物ならびに大気汚染のような環境衛生上のリスクを含む)について懸念を覚える。 84.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を縮小させかつ防止する目的で、ストリートチルドレンの多さに対処するための包括的戦略を、ストリートチルドレン、非政府組織および関連の専門家の積極的参加を得ながら策定すること。 (b) 路上で生活している子どもが不法に逮捕されかつ拘禁されないことを確保し、このような子どもを警察による蛮行から保護し、かつ、必要なときはこのような子どもに対して十分な法律サービスへのアクセスを保障すること。 (c) このような子どもの全面的発達を支え、かつこのような子どもに十分な保護および援助を提供する目的で、ストリートチルドレンが、訓練を受けた、路上で活動する教育者およびカウンセラーを通じて支援の対象とされ、かつ、十分な栄養、衣服およびシェルターならびに社会サービスおよび保健サービスならびに教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。 (d) ストリートチルドレンに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および社会的再統合のための十分なサービスを提供するとともに、実現可能なときは家族との再統合を促進すること。 (e) とくに、環境衛生上のリスクに関するストリートチルドレンの意識を高め、かつこのようなリスクから身を守るための適切な行動について指導することを通じ、路上で生活している子どもが直面する環境衛生上のリスクを削減しかつ防止すること。 (f) ストリートチルドレンの自尊感情を高めるため、このような子どもたちの自己組織化の努力を支援すること。 (g) ストリートチルドレンとともにおよびストリートチルドレンのために活動している非政府組織と連携し、かつこのような組織を支援すること。 性的搾取、児童ポルノおよび人身取引 85.委員会は、児童買春が増えていることおよび児童ポルノの事案が報告されていることを含む、締約国における子どもの性的搾取について重大な懸念を表明する。委員会は、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定が主として児童買春に関連したものであり、他の形態の性的搾取の被害者を十分に保護していないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、性的同意に関する最低年齢が締約国の国内法で十分明確に定められておらず、かつ、改正刑法(共和国法第3815号)が、被害者が12歳に達していないときはもっとも重い刑を科しているのに対し、12歳以上の未成年者に対する性犯罪についてはより軽い刑罰を科していることに、懸念とともに留意する。 86.委員会は、新たな人身取引防止法の採択(2003年)、ならびに、人身取引の防止および被害者の保護の分野で締約国がとったその他の措置(不法な募集防止調整評議会の設置、「労働組合・働く子どもの権利擁護者」イニシアティブ、および、とくに女性および子どもの人身取引を抑止するための執行委員会の設置など)を歓迎する。しかしながら委員会は、国内のおよび国境を越えた人身取引の対象とされるフィリピンの子どもについて重大な懸念を覚えるものである。委員会は、固定化された貧困、一時的な海外移住、セックス・ツーリズムの増加および締約国における法執行の弱さのような、人身取引活動を助長する既存のリスク要因について懸念を表明する。 87.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 性的搾取の被害を受けたすべての子どもに平等な保護を提供する目的で、とくに子どもに対する性犯罪のすべての加害者に対する平等な制裁を法律に含めることにより、性的搾取(ポルノグラフィーのために子どもを使用することも含む)からの子どもの保護に関する国内法を見直すこと。 (b) 国内法において、性的同意に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準でおよび明確に定義された形で定めること。 (c) 子どもの商業的性的搾取および人身取引の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (d) 第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 (e) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点について観光省および観光サービス業者と引き続き連携すること。 (f) 子どもに関わる人身取引、性的搾取およびポルノグラフィーを防止する目的で、子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを開始するとともに、人身取引被害者とともにおよび人身取引被害者のために働く職員の感受性を高めること。 88.フィリピンにおける、国内のおよび国境を越えた子どもの人身取引に関して、委員会は、関連の法律の効果的執行を確保し、かつ責任があると認められた者に対して制裁を科すことによってあらゆる形態の人身取引と闘うために適当な措置をとることに関する、自由権規約委員会が第79会期(2003年)に採択した勧告(CCPR/CO/79/PHL、パラ13)を支持する。 少年司法の運営 89.委員会は、締約国において犯罪水準が高く、かつ18歳未満の者の拘禁が多数行なわれていること、法律に触れた子どもの権利侵害が根強く行なわれていること、拘禁されている18歳未満の者に対して拷問、性的虐待を含む虐待およびその他の形態の品位を傷つける取り扱いが行なわれているとされること、ならびに、フィリピンの少年司法制度の運営に全般的欠陥があることを深刻に憂慮する。委員会は、少年司法を規律する十分な法律が存在せず、かつ提案中の「包括的な少年司法制度および非行防止プログラム法」案が1999年以来議会の審議待ちになっていることに、深い懸念とともに留意するものである。2000年2月に発布された省令により地区裁判所が家庭裁判所として指定されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに配慮し、かつ十分な訓練を受けた〔専門家による〕少年裁判所が存在しないことを懸念する。 90.さらに、委員会は、刑事責任に関する最低年齢(9歳)が非常に低いことを懸念する。子ども・若者福祉法ならびに若年犯罪者の逮捕、捜査、訴追および更生に関する細則(大統領令第603号)のうち青年拘禁ホームに関する規定について、委員会は、これらの規定の実施が不十分であり、かつ18歳未満の者が拘禁場所で成人とともに収容されていることを懸念するものである。子ども(たとえばストリートチルドレン)が長期にわたって不法に拘禁され、かつ、適当な法律上の扶助および援助ならびに十分な社会サービスおよび保健サービスに対して限られた形でしかまたはまったくアクセスできないことは、重大な懸念の理由となる。加えて、委員会は、法外な額の保釈金が求められるために子どもおよびその親にとって克服不能な金銭的障害が生じていること、刑の執行猶予が制限されていること、および、拘禁環境(いわゆる秘密房も含む)が劣悪であることを懸念するものである。 91.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する法律および実務が、条約の規定、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(国連総会決議45/112)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(国連総会決議45/113)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針(1997年7月21日の国連経済社会決議1997/30添付文書)のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致することを確保するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 提案中の「包括的な少年司法制度および非行防止プログラム法」案を緊急に採択するとともに、刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられること、ならびに、18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。 (c) 十分な人数の、適切な訓練を受けた専門職員が配置された少年裁判所を設置すること。 (d) 18歳未満の者が法律扶助および独立のかつ効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (e) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、自由の剥奪に代わる措置を実施すること。 (f) 子どもの回復および社会的再統合の分野に関して専門家の研修を行なうこと。 (g) とくに国連人権高等弁務官事務所、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。 マイノリティおよび先住民族に属する子ども 92.先住民族権利法(共和国法第8371号)の規定ならびにマイノリティおよび先住民族に属する子どものためのプログラムおよびプロジェクト(先住民族文化コミュニティに属する子どものための代替的教育制度、保育開発プログラムおよびリンガ・フランカ・プロジェクトなど)には留意しながらも、委員会は、 マイノリティおよび先住民族の間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることを懸念する。委員会は、先住民族コミュニティで行なわれている、親の取決めによる早期婚についての締約国の懸念を共有するものである。加えて、委員会は、イスラム教徒に対してより著しい差別が行なわれていることに、懸念とともに留意する。 93.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、先住民族の子どもおよびマイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、先住民族権利法(共和国法第8371号)を実施するための努力を強化するとともに、先住民族およびマイノリティの子どもに対して文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、マイノリティおよび先住民族の子どもの人権の享受に関して存在する格差および障壁を特定し、かつそのような格差および障壁に対応するための法律、政策およびプログラムを発展させる目的で、締約国が、これらの子どもに関するデータ収集機構を強化するよう勧告する。 94.自己の言語を用いる子どもの権利に関して、委員会は、締約国に対し、先住民族およびマイノリティの子どもの言語上のニーズに対応するための努力を引き続き行なうよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、先住民族およびマイノリティのコミュニティならびにそれぞれの指導者と緊密に連携しながら、早期婚のような、先住民族およびマイノリティの子どもの健康および福祉にとって有害な伝統的慣行を廃止するための効果的措置を追求するよう、勧告するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 95.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2002年5月に批准されたこと、および、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年8月に批准されたことを歓迎する。 96.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 97.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 98.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 99.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月19日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。/前編~後編を統合(2010年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/243.html
総括所見:カナダ(第3~4回・2012年) 第1回(1995年)/第2回(2003年)OPAC(2008年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/CAN/CO/3-4(2012年12月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年9月26日および27日に開かれた第1742回および第1743回会合(CRC/C/SR.1742 and 1743参照)においてカナダの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CAN/3-4)を検討し、2012年10月5日に開かれた第1754回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の状況に関する理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CAN/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/XCAN/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/CAN/CO/1、2006年)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/CO/OPSC/CAN/CO/1、2012年)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことを遺憾に思うものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。 (a) 市民権法改正法(2009年4月17日施行)。 (b) 人身取引をとくに対象とする起訴罪名を創設する、2005年の刑法(人身取引)改正法案C-49号(2005年11月25日)。 5.委員会はまた、障害のある人の権利に関する条約が批准されたこと(2010年3月)も歓迎する。 6.委員会は、以下の制度上および政策上の措置に、積極的対応として留意する。 (a) 人身取引と闘うための国家行動計画(2012年6月)。 (b) ホームレス問題協業戦略(HPS、2007年4月)。 (c) 子どものための国家行動計画「子どもにふさわしいカナダ」(2004年4月発表)。 (d) インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年5月発表)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.締約国の第1回報告書に関する委員会の2003年の総括所見(CRC/C/15/Add.215、2003年)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見の勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(とくに留保、立法、調整、データ収集、独立の監視、差別の禁止、体罰、家庭環境、養子縁組、経済的搾取および少年司法の運営に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 9.条約第37条(c)に付した留保の撤回に向けて締約国が行なっている努力は肯定的に認知しながらも、委員会は、条約第37条(c)に付した留保の速やかな撤回を求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ7、2003年)をあらためて強く繰り返す。 立法 10.条約の実施に関わる多数の立法措置は歓迎しながらも、委員会は、国内法において条約のすべての適用範囲を包括的に網羅する法律が存在しないことを、依然として懸念する。この文脈において、委員会はさらに、締約国の連邦制および二元的法体系にかんがみ、このような総括的国内法が存在しないことによって締約国全域における子どもの権利の実施に断片化および不一致が生じているために、同様の状況にある子どもが、どの州または準州に在住しているかによって、自己の権利の充足に関する格差を受けていることに留意するものである。 11.委員会は、締約国が、条約およびその選択議定書の規定を全面的に編入した包括的な法的枠組みを締約国の全領域(州および準州を含む)で定めることを可能にする、憲法上の適切な経路を見出すとともに、その一貫した適用のための明確な指針を提示するよう、勧告する。 包括的な政策および戦略 12.委員会は、子どものための国家行動計画「子どもにふさわしいカナダ」が2004年に採択されたことに留意するものの、当該計画が、委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.215、パラ13、2003年)で勧告されたように、一般的な目的以上の明確な責任分担、明確な優先順位、到達目標および予定、資源配分ならびに体系的監視について定めていないこと、および、当該計画について、その影響を評価しかつ次の措置の指針とするための評価が実施されていないことを、懸念する。 13.委員会は、締約国が、連邦、州および準州の各段階の政府を対象とする包括的な実施の枠組みを提示し、条約の全般的実現に関する優先順位、到達目標およびそれぞれの責任について適宜定め、かつ、州および準州がこれにしたがって独自の具体的な計画および戦略を採択できるようにする、国家的な戦略を採択するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、この包括的な戦略ならびに関連する州および準州の計画の実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告するものである。この文脈において、委員会は、締約国に対し、すべての州および準州による進展報告書の提出および審査を可能とする、調整のとれた監視機構を設置するよう奨励する。委員会はまた、子どもおよび市民社会との協議も勧告するものである。 調整 14.いずれもあらゆる段階の政府から代表が出席している教育担当大臣協議会および学校保健合同コンソーシアムならびにその他の部門別調整機関の活動には積極的対応として留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する省庁間作業部会(2007年)の任務とされている、条約の実施の全般的調整が実際には有効に行なわれていないことを依然として懸念する。さらに委員会は、締約国が連邦制をとっていることから生じる課題に留意するとともに、全般的調整が行なわれていないため、締約国の州および準州全体を通じて条約の実施に関する相当の格差が生じていることを懸念するものである。 15.委員会は、諸部門全体を通じてならびにすべての州および準州の間で子どもの権利に関する行動を効果的に調整するための能力および権限ならびに人的資源、技術的資源および財源を備えた、条約実施のための調整機関および国家的戦略(前掲13で勧告)を確立するべきである旨の、締約国に対する勧告をあらためて強く繰り返す。さらに委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する省庁間作業部会をしかるべく強化することを検討し、もって条約の全般的実施における調整、一貫性および公平性を確保するよう奨励するものである。委員会はまた、すべてのマイノリティ集団を含む市民社会および子どもに対し、調整機関の一翼を担うよう慫慂することも勧告する。 資源配分 16.締約国が世界でもっとも豊かな経済国のひとつであり、かつ相当量の資源を子ども関連のプログラムに投資していることを心に留めつつ、委員会は、締約国が、国および州/準州段階の予算の策定および配分に関して子どもに特化したアプローチを用いていないことから、子どもに対する投資の効果および予算的観点からの条約の全般的適用状況を明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが実務上不可能となっていることに、留意する。さらに委員会は、締約国報告書に種々のプログラムおよびその全般的予算に関する情報が掲げられている一方で、このような投資の効果に関する情報が欠如していることにも留意するものである。 17.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が、国、州および準州の段階で子どものニーズを十分に考慮し、関連の部門および機関において子どもに明確な配分を行ない、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、条約の実施に充てられる資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構を設置するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえばアボリジナル、アフリカ系カナダ人その他のマイノリティの子どもおよび障害のある子ども)を対象とした戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保するよう、勧告する。 国際協力 18.委員会は、カナダ国際開発援助〔国際開発庁〕(CIDA)のプログラムを通じて実施されている国際協力を歓迎するとともに、とくに、締約国の援助の約30%が保健、教育および人口〔分野〕に向けられていることを評価する。しかしながら委員会は、2010-2011年度のODA〔政府開発援助〕がGNI〔国民総所得〕の0.33%であり、かつ今後も減少すると予測されていることから、ODAの割合が、OECD/DAC〔経済協力開発機構/開発援助委員会〕の平均よりもさらに低くなり、かつモントレー・コンセンサスで勧告された割合も下回るであろうことに、懸念とともに留意するものである。 19.委員会は、締約国に対し、援助プログラムにおいて子どもに焦点を当てるとともに、援助に関して勧告されている目標(対GNI比0.7%)を達成するため資金拠出水準を高めるよう、奨励する。 データ収集 20.委員会は、条約の全分野を網羅した全国的かつ包括的なデータ収集システムの確立に向けた進展が限られていることに、懸念とともに留意する。委員会は、データ収集のための複雑な諸システムにおいて、州および準州によって異なる定義、概念、アプローチおよび体制が活用されていることから、条約の実施を強化するための進展の評価が困難になっていることに留意するものである。とくに委員会は、締約国報告書に、代替的養護施設に措置されている14~18歳の子どもの人数に関するデータが記載されていないことに留意する。 21.委員会は、全国的かつ包括的なデータ収集システムを設置するとともに、子どもの権利の実現に関して達成された進展を一貫したやり方で評価し、かつ条約の実施の強化を目的とした政策およびプログラムの立案の一助とするための基礎として、収集されたデータを分析するように求めた、締約国に対する勧告をあらためて繰り返す。すべての子どもの状況の分析を容易にするため、データは年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。より具体的に、委員会は、さまざまなレベルにおける政策決定およびプログラムの参考とするため、特別な脆弱状況に置かれた子どもに関する適切なデータを収集しかつ分析するよう、勧告する。 独立の監視 22.カナダのほとんどの州に子どもオンブズマンが設置されていることには留意しながらも、委員会は、連邦レベルで独立の子どもオンブズマンが設置されていないことについての懸念(CRC/C/15/Add.215、パラ14、2003年)をあらためて表明する。さらに委員会は、これらの機関の権限が限定されていること、および、すべての子どもが苦情申立て手続について承知しているわけではない可能性があることを懸念するものである。カナダ人権委員会が連邦レベルで活動しており、かつ苦情を受理する権限を有していることには留意しながらも、委員会は、同委員会が受け付けるのは差別を理由とする苦情のみであり、したがって、条約に基づくすべての権利の侵害について意味のある救済措置を求める可能性がすべての子どもに保障されているわけではないことを、遺憾に思う。 23.委員会は、すべての子どもの権利の包括的かつ体系的な監視を連邦レベルで確保する目的で、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがって連邦子どもオンブズマンを設置するために必要な措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、それぞれの州および準州ですでに設置されている子どもオンブズマンについて子どもの意識啓発を図るよう、奨励するものである。委員会はまた、一般的意見2号(2002年)に対して注意を喚起しつつ、締約国に対し、独立性および有効性を確保するために必要な人的資源、財源および技術的資源がこの国家的機構〔連邦子どもオンブズマン〕に対して提供されることを確保するようにも求める。 普及および意識啓発 24.委員会は、とくに非政府組織の努力を支援することによって条約に関する意識および理解を促進するために締約国が行なっている努力を評価する。にもかかわらず、委員会は、子ども、子どもとともに働く専門家、親および一般公衆の間で条約に関する意識および知識が限られたままであることを懸念するものである。委員会は、条約に関する情報を組織的に普及し、かつ学校制度に子どもの権利教育を統合するための努力がほとんど行なわれていないことを、とりわけ懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、条約を組織的に普及しかつ促進するためにいっそう積極的な措置をとり、公衆一般、子どもとともにまたは子どものために働く専門家および子どもの意識啓発を図るよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、とりわけインターネットおよびウェブへのアクセスを無料で提供する事業者が締約国で広範に利用できる状況を生かした子どもの権利に関するカリキュラム・リソースの開発および活用、ならびに、子どもの権利に関する知識およびその行使を学校におけるカリキュラム、方針および実践に統合する教育上の取組みを拡大するよう、促すものである。 研修 26.出入国管理官および政府の弁護士等の専門家を対象として実施されている、条約に関する若干の研修についての情報にも関わらず、委員会は、子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家を対象とした、子どもの権利および条約に関する体系的研修が行なわれていないことを懸念する。とくに委員会は、法執行官、検察官、裁判官および弁護士等の少年司法関係者が条約に関する知識を欠いており、かつ条約についての研修を受けていないことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国に対し、すべての専門家(政府職員、司法機関、ならびに、保健サービスおよび社会サービスにおいて子どもとともに働く専門家を含む)を対象として子どもの権利に関する研修を実施するための統合的戦略を策定するよう、促す。委員会は、締約国に対し、このような研修プログラムの開発に際して、立法および公共政策、プログラム策定、アドボカシーならびに意思決定プロセスおよび説明責任の確保における条約の活用についての研修に焦点を当てるよう、促すものである。 子どもの権利と企業セクター 28.委員会は、カナダで登記している多国籍企業であってその活動がカナダ領域外の先住民族の権利に悪影響を及ぼしている企業、とくにガス会社、石油会社および鉱業会社に関する措置を締約国がとっていない旨の、人種差別撤廃委員会が表明した懸念(CERD/C/CAN/CO/19-20、パラ14)に賛同する。委員会は、締約国に、国外で行なわれた人権侵害および環境侵害について締約国出身のすべての企業および法人の責任を問うための規制枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。 29.委員会は、締約国が、とくに子どもの権利との関連で、かつ2008年6月18日の人権理事会決議8/7(パラ4(d))および2011年6月16日の同決議14/7(パラ6(f))に照らし、企業セクターが人権、労働、環境その他の問題に関わる国際的および国内的基準を遵守することを確保するための規則を確立しかつ実施するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下のことを確保するよう勧告するものである。 (a) とくにカナダ領域外で操業するガス会社、鉱業会社および石油会社を対象とした、その活動が人権に影響を及ぼしまたは環境その他の問題に関する基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための、明確な規制枠組みが確立されること。 (b) 国内外の企業による、環境および健康ならびに人権に関する国際的および国内的基準の実施が監視され、かつ、違反が行なわれた場合に、子どもに対する影響にとくに焦点を当てながら、適切な制裁および救済措置が実施されること。 (c) 環境上および健康上の汚染ならびに自社の活動が人権に及ぼす影響に対応するための企業の計画について評価および企業との協議が行なわれ、かつ当該計画が公衆に開示されること。 (d) その際、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国連・ビジネスと人権枠組みを考慮すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 30.委員会は、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護から利益を得られているわけではないこと(とくに、一部の州および準州において成人として裁判の対象とされる可能性がある子ども、および、一部の州および準州において性的搾取から適切に保護されていない16~18歳の子ども)を懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、子どもの定義に関する国内のすべての規定が条約第1条と全面的に一致することを確保する(とくに、18歳未満のすべての子どもが成人として裁判の対象とされえないようにし、かつ、性的搾取の被害を受けた18歳未満のすべての子どもが適切な保護を受けることを確保する)よう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 32.「ストップ人種主義」全国ビデオ・コンテストなど、差別に対応し、かつ異文化間の理解を促進しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、民族、ジェンダー、社会経済的背景、国民的出身その他の事由に基づく差別が引き続き蔓延していることを懸念する。とくに委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもが刑事司法制度および家庭外養護において相当過剰に対象とされていること。 (b) 脆弱な状況に置かれた子ども(マイノリティの子ども、移民および障害のある子どもを含む)が、基礎的サービスへのアクセスに関する深刻かつ広範な差別に直面していること。 (c) とくに、脆弱な状況に置かれた女子が不相応なほどの影響を受けていることに照らし、周縁化されたコミュニティおよび不利な立場に置かれたコミュニティの状況の改善を目的としたプログラム(貧困または暴力事件と闘うためのプログラム等)の策定および実施においてジェンダーの視点が欠けていること。 (d) アボリジナルの子どもを対象とした児童福祉サービスに対し、アボリジナルではない子どもに対する場合よりも少ない財源しか提供されていないという会計検査院長の知見を受けて、なんらの措置もとられていないこと。 (e) 社会的移転制度その他の社会手当/税控除によって直接間接に経済的差別が生じていること(州および準州に対し、国家子ども手当制度に基づく子ども手当の支給額を、福祉措置を受けている親が受給する社会援助の額から控除することが認められていることなど)。 33.委員会は、締約国が、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての情報を、次回の定期報告書に記載するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもが刑事司法制度および家庭外養護において過剰に対象とされている状況に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 脆弱な状況に直面しているすべての子ども(民族的マイノリティ、障害のある子ども、移民その他の子どもを含む)によるサービスへのアクセスに関する格差に対応すること。 (c) いかなるプログラムまたは景気刺激策(とくに暴力との闘い、貧困およびその他の脆弱性の是正に関するプログラム)の策定および実施においてもジェンダーの視点が編入されることを確保すること。 (d) アボリジナルの子どもが政府によるすべてのサービスに全面的にアクセスでき、かつ差別なく諸資源を受領できることを法律上も実践上も確保するため、即時的措置をとること。 (e) 女性、子ども、高齢者、障害のある人々、アボリジナル、アフリカ系カナダ人およびその他のマイノリティの構成員に特段の注意を払いながら、社会的移転制度その他の社会手当/税控除制度の支給額削減が社会福祉に依拠している人々の生活水準に及ぼす直接間接の影響について詳細な評価を実施すること。 子どもの最善の利益 34.委員会は、子どもの最善の利益の原則が広く知られておらず、〔かつ、〕あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、この原則が適切に統合されておらず、かつ一貫して適用されていないことを懸念する。とくに委員会は、庇護希望者、難民および(または)入管収容に関わる状況において、子どもの最善の利益が適切に適用されていないことを懸念するものである。 35.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励されるところである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。 子どもの意見の尊重 36.委員会は、すべての子どもが監護事件において意見を聴かれる権利を有する旨判示した、締約国のユーコン準州最高裁判所の決定(2010年)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、法律、政策および環境に関わる問題ならびに子どもに影響を与える行政プロセスへの、意味がありかつエンパワーメントに基づく子ども参加を促進するための機構が不十分であることを懸念するものである。 37.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、条約第12条にしたがい、意見を聴かれる子どもの権利の実施を引き続き確保するよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、家庭、コミュニティおよび学校において、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するとともに、望ましい実践を発展させかつ共有するよう勧告するものである。具体的に、委員会は、子どもに関わるすべての公的意思決定手続(監護事件、児童福祉に関する決定、刑事司法、出入国管理および環境〔に関わるもの〕を含む)について子どもの意見を要件のひとつとするよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる権利が侵害された場合に子どもが苦情を申し立てられ、かつ不服申立て続きにアクセスできることを確保することも、促すものである。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 38.締約国において出生登録がほぼ完全に行なわれていることには肯定的に留意しながらも、委員会は、とくに親が婚姻していない場合に、政府機関が出生証明書の原本から父の氏名を不法に削除したために、一部の子どもがそのアイデンティティを剥奪されてきたことを深刻に懸念する。 39.委員会は、締約国が、出生登録が不法に修正されまたは親の氏名が削除されてきた州および準州において法律および実務を見直すよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、当該出生証明書に記載されていた氏名が回復されることを確保するとともに、これを達成するために必要であれば法改正を行なうよう、促すものである。 国籍および市民権 40.2009年4月の市民権法改正の積極的側面は歓迎しながらも、委員会は、改正法の一部規定で、カナダ人を親として国外で出生した子どものカナダ市民権の取得について相当の制限が課されていることを懸念する。委員会は、このような制約が、事情によっては無国籍につながる可能性があることを懸念するものである。さらに委員会は、政府職員または軍の要員を親として国外で出生した子どもはカナダ市民権の取得に関するかかる制限を免除されていることを懸念する。 41.委員会は、締約国が、カナダ人を親として国外で出生した子どものカナダ市民権取得に関する制限を廃止する目的で、市民権法改正法の規定のうち条約と一致しないものを見直すよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、無国籍者の地位に関する1954年の条約の批准を検討することも促すものである。 アイデンティティの保全 42.委員会は、著しく過剰に児童福祉制度の対象とされている脆弱な状況に置かれた子ども(アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもを含む)が、しばしば、その家族およびコミュニティとのつながり、ならびに、自己の文化および遺産に関する教育が行なわれていないためにその文化とのつながりを喪失していることを懸念する。委員会はまた、連邦法上、アボリジナルの男性はアボリジナルとしての地位を2世代に承継させる法的な資格を有しているのに対し、アボリジナルの女性はアボリジナルとしての地位をその孫に承継させる権利を有していないことも、懸念するものである。 43.委員会は、締約国に対し、すべての子どものアイデンティティの保全が全面的に尊重されることを確保するとともに、児童福祉制度の対象とされているアボリジナルの子どもが自己のアイデンティティを保全できることを確保するために効果的な措置をとるよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、マイノリティおよび先住民族に属する子どもの権利(名前、文化および言語等)に根拠を与え、かつ、児童福祉制度の対象とされている多数の子どもが自己の文化的背景についての教育を受けることおよびそのアイデンティティを失わないことを確保するための、立法上および行政上の措置をとるよう促すものである。委員会はまた、女性および男性がアボリジナルとしての地位を孫に承継させる平等な法的権利を有することを確保するため、締約国が法律を改正することも勧告する。 E.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)、第34条および第39条) 体罰 44.委員会は、刑法第43条に基づき、締約国において体罰が法律で容認されていることに重大な懸念を覚える。さらに委員会は、カナダ子ども・若者・法律財団対カナダ事件における最高裁判所の決定(2004年)が、体罰が正当化されるのは「矯正を目的とする軽度の力の行使であって一時的かつ軽微な性質のもの」の場合のみであると判示しながら同法を支持したことに、遺憾の意とともに留意するものである。さらに委員会は、体罰の合法化が他の形態の暴力につながる可能性があることを懸念する。 45.委員会は、子どものしつけにおける「合理的な力」の使用を認めている現行規定を削除するために刑法第43条を廃止するとともに、家庭、学校および子どもが措置される可能性のある他の施設における、あらゆる年齢層の子どもに対するあらゆる形態の暴力を、いかに軽いものであっても明示的に禁止するよう、促す。加えて委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りつつ、かつ子どもたちの関与を得ながら、親、公衆、子どもおよび専門家を対象とした、代替的形態のしつけおよび規律に関する意識啓発を強化しおよび拡大し、ならびに子どもの権利の尊重を促進すること。 (b) 子どもとともに働くすべての専門家(裁判官、法執行官、保健専門家、社会福祉および児童福祉の専門家ならびに教育専門家を含む)を対象として、子どもに対する暴力のあらゆる事案の速やかな発見、対応および通報のための研修が行なわれることを確保すること。 虐待およびネグレクト 46.「家族間暴力防止プログラム」のような取り組みには留意しながらも、委員会は、「カナダ児童虐待・ネグレクト通報事件研究2008」で明らかにされたように、子どもに対する暴力および不当な取扱いが高い水準で行なわれていることを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) すべての子どもに対する暴力を防止するための国家的な包括的戦略が策定されていないこと。 (b) 脆弱な状況に置かれた女性および女子(アボリジナル、アフリカ系カナダ人および障害のある女性および女子を含む)がとくに影響を受けていること。 (c) 家族間暴力の事案への介入(禁止命令を含む)の件数が少ないこと。 (d) 被害を受けた子どもおよび加害者のためのカウンセリングが行なわれておらず、かつ、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもの再統合のためのプログラムが不十分であること。 47.委員会は、締約国が委員会の一般的意見13号(2001年)を考慮するよう勧告するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) すべての子どもに対するすべての形態の暴力を防止するための国家的戦略を策定しかつ実施するとともに、この戦略に対して必要な資源を配分し、かつ監視機構の設置を確保すること。 (b) アボリジナルの女性および女子に対して暴力が高い水準で行なわれていることを助長する要因が十分に理解され、かつ国および州/準州の計画で対応されることを確保すること。 (c) 暴力の被害を受けたすべての子どもに対し、是正および保護のための即時的手段(保護命令または禁止命令を含む)が提供されることを確保すること。 (d) ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもに対し、家族再統合と同時に効果的なフォローアップ支援を確保するための機構を設けること。 性的搾取および虐待 48.委員会は、インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略が2004年に発表されたこと、および、締約国がこのプログラムの実施に相当量の資源を配分していることに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、締約国が、インターネット上の子どもの性的搾取と闘うための法執行機関の調整に対し、相当の政治的意思を示してきたことに肯定的に留意するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国がこれまで、児童買春および子どもの制定虐待のような他の形態の性的搾取に対応するための十分な措置をとってこなかったことを懸念する。委員会はまた、子どもの性的搾取の防止に注意が向けられていないこと、ならびに、子どもの性的搾取に関する捜査および訴追の件数が少なく、かつ有罪判決を言い渡された者に対する刑が不十分であることも、懸念するものである。とくに委員会は、児童買春の被害を受けたアボリジナルの女子が行方不明になりまたは殺害された事件があること、および、これらの事件について十全な調査が行なわれず、かつ加害者が処罰されないままになっていることに、重大な懸念を覚える。 49.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 現行の政府の戦略およびプログラムを拡大し、すべての形態の性的搾取をその対象とすること。 (b) 児童買春事件に関する法執行機関の捜査実務を調整しかつ強化するための行動計画を策定するとともに、女子が行方不明となっているすべての事件について捜査が行なわれ、かつ法律の及ぶ最大限の範囲で訴追されることを精力的に確保すること。 (c) 刑罰が犯罪にふさわしいものとなることを確保するため、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の犯罪について有罪判決を言い渡された者に対して量刑の要件を科すこと。 (d) 性的搾取〔および〕虐待について有罪判決を受けた者を対象とするプログラム(更生プログラム、および、元加害者を追跡する連邦レベルの監視制度を含む)を確立すること。 有害慣行 50.委員会は、とくに移民コミュニティおよび一部の宗教的コミュニティ(ブリティッシュコロンビア州バウンティフルの複婚コミュニティなど)において、強制的な児童婚からの保護が不十分であることを懸念する。 51.委員会は、締約国が、法定年齢に満たない段階での強制婚からすべての子どもを保護し、かつ法律による複婚の禁止を執行するために、立法措置、ならびに、捜査および法執行を重点的に向上させることを含む、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 52.子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を想起し、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対処するための国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力が有するジェンダーの側面に特段の注意を払うこと。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および関連の国連機関と協力すること。 F.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 53.委員会は、とくに立法上および制度上の改革を通じて家族の支援を向上させようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、不利な立場に置かれた一部のコミュニティの家族、とくに貧困を理由として危機的状況に置かれている家族が、子どもの養育責任を果たすにあたって十分な援助を得られていないことを懸念する。とくに委員会は、妊娠した女子および10代の母親のうち学校を中退する者の数が多く、そのためその子どもがいっそう貧しい状況に置かれることを懸念するものである。 54.委員会は、締約国が、地方レベルでの時宜を得た対応(子育てカウンセリングが必要な親に対するサービス、および、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ住民の場合には親としての役割を果たせるようにするための文化的に適切なサービスを含む)をとることにより、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を提供するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、妊娠した女子および10代の母親に教育の機会を提供することにより、これらの女子が教育を修了できるようにするよう奨励するものである。 家庭環境を奪われた子ども 55.委員会は、代替的養護の対象とされている子どもが多いこと、および、ネグレクトもしくは金銭的困難または障害の場合の最初の手段として子どもが家族から頻繁に分離されていることを、深く懸念する。委員会はまた、締約国の代替的養護制度の不十分さおよびそこで行なわれている人権侵害についても深刻に懸念するものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 措置の理由について貧弱な調査しか行なわれず、かつこのような理由が十分に定義されていないことを理由とする、子どもの不適切な措置。 (b) 健康、教育、ウェルビーイングおよび発達の面で、養護を受けている若者にとっての成果が一般住民層の場合よりも芳しくないこと。 (c) 養護を受けている子どもの虐待およびネグレクト。 (d) 18歳に達して養護を離れる子どもに対して提供される、準備のための支援が不十分であること。 (e) 養育担当者のスクリーニング、研修、支援およびアセスメントが不十分であること。 (f) アボリジナルおよびアフリカけカナダ人の子どもがしばしばコミュニティ外に措置されていること。 56.委員会は、締約国に対し、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助および支援サービス(親向けの教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラムを通じてのものも含む)を提供することによって子どもがその家庭環境から分離されることを回避し、かつ施設で生活する子どもの人数を減らす目的で、即時的な防止措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう求めるものである。 (a) 施設養護を受けている子ども1人ひとりの措置の必要性について、常に、権限のある学際的な専門家チームによって審査が行なわれること、ならびに、最初の措置決定は最短の期間について行なわれ、かつ当該決定が民事裁判所による司法審査の対象とされることおよびその後も条約にしたがって再審査されることを確保すること。 (b) 保育ワーカーおよび家庭外養護の養育担当者の選抜、研修および支援に関する基準を策定するとともに、これらの養育者の定期的評価を確保すること。 (c) 養護を受けている子どもに対し、保健ケアおよび教育への平等なアクセスを確保すること。 (d) ネグレクトおよび虐待の事案を通報し、かつ加害者に対して相応の制裁を与えるための、アクセスしやすく、効果的な、かつ子どもにやさしい機構を設置すること。 (e) 移行の計画に早い段階から関与できるようにし、かつ離脱後にも援助を利用できるようにすることにより、若者に対し、養護を離れる前に十分な準備の機会および支援を提供すること。 (f) 代替的養護を必要とするマイノリティ・コミュニティの子どものための適当な解決策(たとえば親族養育等)を見出すため、すべてのマイノリティのコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化すること。 養子縁組 57.委員会は、子どもには双方の生物学的親の身元を知る権利があると判示した、オンタリオ対マーチランド(Ontario v. Marchland)事件における最近の裁判所の決定に、積極的なものとして留意する。しかしながら委員会は、養子縁組に関する国内の法律、政策および実務がそれぞれの州および準州によって定められており、かつ法域間で相当に異なっていること、ならびに、その結果、カナダが国レベルの養子縁組法、養護を受けている子どもまたは養子縁組に関する国家的基準および国家的データベースを有しておらず、また養子縁組の結果に関する既知の調査もほとんどないことを、懸念するものである。委員会はまた、養子縁組情報開示法について、前回の総括所見(CRC/C/25/Add.215、パラ31)で勧告されたとおり、出生に関する情報を養子が入手できることを確保するための改正が行なわれていないことも懸念する。委員会はまた、国際養子縁組に関する情報が締約国〔報告書〕で提供されなかったことも遺憾に思うものである。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の遵守を確保するための法律を、必要なときは連邦、州および準州のレベルにおけるものも含めて採択すること。 (b) 養子の生年月日および出生場所ならびにその実親に関する情報が保全されることを確保するため、遅滞なく法改正を行なうこと。 (c) 次回の定期報告書において、国内養子縁組および国際養子縁組に関する詳細な情報および細分化されたデータを提供すること。 G.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 59.委員会は、障害のある人の権利に関する条約の批准(2010年)を歓迎する。締約国内の障害児のインクルージョンについて進展があったことは認めながらも、委員会は、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 締約国によってPALS(参加・活動制限調査)が最後に実施されたのが2006年であり、その後、これに代わるものとして障害のある子どもに関するデータを収集するための他のいかなる努力も、いまのところ行なわれていないこと。その結果、障害のある子どもにとってのインクルージョンおよび平等なアクセスに関する政策の基礎とすべき、2006年以降の総合的なまたは細分化されたデータが存在しなくなっている。 (b) インクルーシブ教育へのアクセスに関して締約国の諸州・準州間で大きな格差があり、いくつかの州および準州では教育がほとんど分離学校で行なわれていること。 (c) 障害のある子どもの養育負担が世帯収入および親の就労にしばしば悪影響を与えていること、ならびに、一部の子どもが必要な支援およびサービスにアクセスできていないこと。 (d) 障害のある子どもは障害のない子どもに比べて暴力および搾取の被害を2倍以上受けやすいこと、ならびに、人口全体の殺人率は全般的に低下しているにもかかわらず、障害のある人々に対する殺人および子殺しの割合は上昇しているように思われること。 60.委員会は、締約国が障害のある人の権利に関する条約の規定を実施するよう勧告するとともに、委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、締約国に対して以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国ならびにそのすべての州および準州が障害のある子ども全員を対象とするインクルーシブな政策および機会均等を確立することを可能とする、障害のある子どもに関する総合的なかつ細分化されたデータの収集システムを、可能なかぎり早期に確立すること。 (b) 障害のあるすべての子どもがすべての州および準州でインクルーシブ教育にアクセスでき、かつ、障害のある子どものみを対象とする分離学校への出席を強要されないことを確保すること。 (c) 金銭的制約がサービスへのアクセスの妨げとならず、かつ世帯収入および親の就労が悪影響を受けないことを確保するため、障害のある子どもおよびその家族に対してあらゆる必要な支援およびサービスが提供されることを確保すること。 (d) 障害のある子どもをあらゆる形態の暴力から保護するため、あらゆる必要な措置をとること。 母乳育児 61.カナダ産前栄養プログラム(CPNP)のようなプログラムは歓迎しながらも、委員会はなお、締約国において(とくに不利な状況に置かれた女性の間で)母乳育児率が低いこと、および、これに対応した、締約国のすべての母親の間で母乳育児を奨励することを援助するプログラムが設けられていないことを、懸念する。委員会はまた、締約国が、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採用したにもかかわらず、同国際基準の諸条項を自国の規制枠組みに統合していないこと、および、その結果、人工乳企業による同基準および関連の世界保健機関決議の違反が常態となっているにもかかわらず処罰の対象になっていないことも、遺憾に思うものである。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「乳幼児の栄養に関する世界戦略」で勧告されているとおり、乳児の出生後6か月間の完全母乳育児および2年以上の継続的母乳育児を促進し、かつすべての母親がこれに成功できるようにするためのプログラムを確立すること。 (b) 母乳育児の促進を強化し、かつ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を執行するとともに、違反を調査しかつ制裁を科すための適切な措置をとること。 健康 63.委員会は、締約国内において、良質な保健ケアに無償でかつ広範にアクセスできることに、積極的側面として留意する。しかしながら委員会は、締約国で子どもの肥満の発生率が高いことに懸念とともに留意し、かつ、ファストフードその他の健康的でない食品の製造および販売促進が(とくに子どもを対象とするものに関して)規制されていないことを懸念するものである。 64.委員会は、締約国が、とくに子どもの間で健康的なライフスタイル(運動を含む)を促進し、かつファストフードおよび健康的でない食品の製造および広告(とくに子どもを対象とするもの)の規制管理の強化を確保することにより、子どもの肥満の発生に取り組むよう勧告する。 精神保健 65.委員会は、締約国が、5年の期間にわたって「アボリジナル青年自殺防止国家戦略」を実施するために相当の資源を提供したことに、評価の意とともに留意する。このようなプログラムにもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国全体で、とくにアボリジナル・コミュニティに属する若者の間で、若者の自殺率が引き続き高いこと。 (b) 行動上の問題を有していると診断される子どもの割合がますます高くなっていること、および、根本的原因を明示的に検討し、または親および子どもに対して投薬に代わる支援および治療法を提供することなく、子どもに薬が過剰に投与されていること。この文脈において、開業医向けの教育資源および資金拠出制度が「応急的解決策」に偏っていることは委員会にとって懸念の対象である。 (c) 保健従事者から提供される十分な情報に基づいた子どもおよび親のインフォームド・コンセントが侵害されていること。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 早期発見にとくに注意を払いながら、子どもの自殺を防止するための介入の質を強化しおよび拡大し、ならびに、全学校における、秘密が守られる心理サービスおよびカウンセリング・サービス(家庭におけるソーシャルワーク支援を含む)へのアクセスを拡大すること。 (b) 子どもに対する精神刺激薬の過剰な使用についての専門家による監視システムを確立するとともに、行動上および心理上の介入へのアクセスを向上させつつ、根本的原因を理解し、かつ診断の正確性を改善するための措置をとること。 (c) 子どもに対する向精神薬の使用に関連した保健従事者によるインフォームド・コンセント実践の監視および監査を目的とする監視機構を、各州および準州の保健省下に設置することを検討すること。 生活水準 67.締約国の大多数の子どもの基礎的ニーズが満たされていることは評価しながらも、委員会は、所得の不平等が広く存在しかつ拡大していること、および、2000年までに子どもの貧困に終止符を打つという議会の決意にもかかわらず、子どもの貧困に包括的に取り組むための国家的戦略が策定されていないことを、懸念する。委員会は、子どもを対象とする、税制上の優遇措置および社会的移転の配分が不公平であることをとりわけ懸念するものである。さらに委員会は、アボリジナルの子ども、アフリカ系カナダ人の子どもおよびその他のマイノリティの子どもに対する福祉サービスの提供が、質およびアクセス可能性の点で他の子どもに提供されるサービスと同等ではなく、かつこのような子どものニーズを満たすのに十分ではないことを懸念する。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) より幅広い国家貧困削減戦略の一環として子どもの貧困を解消するための、国家的な、調整のとれた戦略を策定しかつ実施すること。当該計画には、子どもの貧困削減に関する年次数値目標も含まれるべきである。 (b) 税制上の優遇措置および社会的移転の影響を評価し、かつ、もっとも被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子どもが優先されることを確保すること。 (c) アボリジナル、アフリカ系カナダ人その他のマイノリティの子どもに提供される、福祉サービスを含む資金その他の支援(福祉サービスを含む)〔訳者注/重複は原文ママ〕が、質およびアクセス可能性の点で締約国の他の子どもに提供されるサービスと同等であり、かつこれらの子どものニーズを満たすのに十分であることを確保すること。 H.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 69.脆弱な状況に置かれた子どもの教育上の成果を向上させるために締約国が行なっているさまざまな取り組みは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 子どもを対象とする基礎的な公的学校サービスの一環として必要とされる教材および活動について、義務教育段階で利用料を払う必要があること。 (b) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもの中退率が高いこと。 (c) 学校において、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもに対し、停退学および警察への付託のような懲戒措置が不適切にかつ過剰に用いられていること、ならびに、これらの集団が適応指導学校(alternative school)に過剰に措置されていること。 (d) 主としてマイノリティの子どもおよび障害のある子どもを対象とする分離学校が多数設置されており、これが差別につながっていること。 (e) 学校でいじめが広範に発生していること。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育で利用料を払う必要がないようにするための措置をとること。 (b) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人のコミュニティとのパートナーシップに基づき、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもの中退率が高い問題に取り組むための国家的戦略を策定すること。 (c) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもを対象とした懲戒措置としての停退学および警察への付託を防止しかつ回避すること、ならびに、これらの子どもが適応指導学校に転籍されることを防止すること(同時に、問題に対応するために必要なスキルおよび知識が専門家に対して提供されることを確保すること)を目的とした措置をとること。 (d) 分離および差別を防止するため、マイノリティの子どもおよび障害のある子どもが教育環境に統合されることを確保すること。 (e) あらゆる形態のいじめおよびいやがらせと闘うための措置(教員および学校で働くすべての職員ならびに生徒が学校およびケアのための施設において多様性を受け入れる能力を向上させること等)ならびに子ども、親および専門家の紛争解決スキルを向上させるための措置を増進させること。 乳幼児期のケアおよび教育 71.委員会は、締約国が相当の資源を有しているにもかかわらず、乳幼児期の発達の向上ならびに負担可能かつアクセス可能な乳幼児期のケアおよびサービスに資金が拠出されていないことを懸念する。委員会はまた、保育費用が高いこと、子どもが利用可能な空きがないこと、〔ならびに、〕すべての保育職員を対象とする統一的な研修要件および良質なケアの基準が設けられていないことも、懸念するものである。委員会は、4歳未満の子どもを対象とする乳幼児期のケアおよび教育が引き続き不十分であることに留意する。さらに委員会は、締約国における乳幼児期のケアおよび教育の大部分が民間の利益追求機関によって提供されており、その結果、ほとんどの家族にとってそのサービスが手の届かないものとなっていることを懸念するものである。 72.委員会の一般的意見7号(2005年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、以下の措置をとること等により、乳幼児期のケアおよび教育の質および範囲をさらに向上させるよう勧告する。 (a) このようなケアが、子どもの全般的発達および親の能力の強化を包摂するホリスティックなやり方で提供されることを確保する目的で、0~3歳の子どもに対するこのようなケアの提供に優先的に取り組むこと。 (b) 国営施設か民間施設のいずれによるものであるかに関わらず、無償のまたは手が届く範囲の乳幼児期ケアの提供を考慮することにより、乳幼児期のケアおよび教育の、すべての子どもにとっての利用可能性を高めること。 (c) 保育職員の研修およびその労働条件の向上に関する最低要件を確立すること。 (d) 乳幼児期により脆弱な状況に置かれている子どもに焦点を当てながら、乳幼児期の政策およびプログラム(子どものためのすべての給付および移転を含む)に対して現在行なわれている支出についての公正な影響分析を明らかにするための研究を実施すること。 I.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 73.委員会は、経済移民に関する締約国の進歩的政策を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、最近、非正規移民であることを理由する16~18歳の子どもの収容を認める「カナダ移民制度保護法」という名称の法律が成立したこと(2012年6月)に重大な懸念を覚えるものである。さらに委員会は、締約国が、前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ47、2003年)にもかかわらず、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもについての国家的政策を採択していないことを遺憾に思うとともに、出入国管理および難民保護法が、保護者のいる子どもおよび保護者のいない子どもを区別しておらず、かつ子どもの最善の利益を考慮していないことを懸念する。委員会はまた、子どもの庇護希望者の収容が、子どもの最善の利益を考慮することなく頻繁に行なわれていることも深く懸念するものである。さらに、保護者のいない子どもについては代理人が任命されることは認知しながらも、委員会は、子どもに対して後見人が常に提供されるわけではないことに、懸念とともに留意する。加えて、委員会は、ロマおよびその他の移民の子どもがしばしば、不安定な地位のまま、長期間(数年に及ぶことさえある)、退去強制に関する決定待ちの状態に置かれることを懸念するものである。 74.委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準に全面的に一致させるよう促すとともに、前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ47、2003年)をあらためて繰り返す。締約国は、その際、〔出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い〕に関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮するよう促されるところである。加えて、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 庇護希望者、難民および(または)非正規移民である子どもを収容する政策を再検討するとともに、収容が、子どもの最善の利益にしたがって例外的な事情がある場合にのみ行なわれ、かつ司法審査の対象とされることを確保すること。 (b) 法律および手続において、すべての出入国管理手続および庇護手続で子どもの最善の利益が第一次的考慮事項として活用されること、ならびに、最善の利益の判断が、このような手続を十分に適用してきた専門家によって一貫して行なわれることを確保すること。 (c) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見人制度を速やかに設置すること。 (d) 子どもが決定を長期間待たなくてもよいようにするため、子どもの庇護希望者の事案の処理が迅速に進められることを確保すること。 (e) 国連難民高等弁務官「国際的保護に関するガイドライン第8号:1951年条約第1条A(2)および第1条Fに基づく子どもの庇護申請」の実施を検討すること。委員会は、この勧告を実施する際、締約国が、庇護希望者、難民および(または)入管被収容者である子どものための政策および手続において子どもの最善の利益の原則が正当な優越性を与えられること、ならびに、出入国管理機関が子どもの最善の利益の原則および手続についての研修を受けることを確保する必要があることを、強調する。 武力紛争下の子ども 75.対話の際に代表団から口頭で提供された回答には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書の実施に関する、第8条第2項にしたがったフォローアップの情報がなかったことに深刻な遺憾の意を覚える。委員会は、志願兵の採用手続において最年長者を優先させ、かつ志願入隊年齢の引き上げを検討するよう求めた前回の総括所見の勧告(CRC/OPAC/CAN/C0/1、パラ9、2006年)にもかかわらず、締約国がこの旨の措置を検討してこなかったことに、深い懸念を表明するものである。委員会は、加えて、新兵募集プログラムが実際にはアボリジナルの若者を積極的対象としている可能性があり、かつ高校の敷地内で実施されていることに懸念を表明する。 76.委員会は、前回の勧告(CRC/OPAC/CAN/C0/1)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、子どもの権利委員会に対する次回の定期報告書に、武力紛争への子どもの関与に関する選択条約〔条約の選択議定書〕の実施およびフォローアップ〔に関する情報〕を記載するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、志願入隊年齢を18歳に引き上げることを検討し、かつ、それまでの間は志願兵の採用手続において最年長者を優先させるよう、勧告するものである。委員会はさらに、アボリジナルの子どもまたは脆弱な状況にある他のいかなる子どもも新兵募集の積極的対象とされるべきではないこと、および、締約国が高校の敷地におけるこれらのプログラムの実施を再考すべきことを勧告する。 77.委員会は、最近になってウマル・カドル(Omar Kadr)が締約国の保護下に戻されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、ウマル・カドルが、元子ども兵として、条約に基づく諸権利および適切な処遇を与えられてきていないことを懸念するものである。とくに委員会は、ウマル・カドルが、グアンタナモで抑留されていた際の不当な取扱いを含む重大な人権侵害を経験し(このことはカナダ最高裁判所も認めている)、かつ、このような侵害に対する適切な補償および救済を与えられていないことを懸念する。 78.委員会は、締約国に対し、軍隊または武装集団に関係した子どもに関するパリ原則および指針にしたがったリハビリテーション・プログラムを速やかにウマル・カドルに対して提供するとともに、ウマル・カドルに対し、カナダ最高裁判所によって同人が経験したと判示された人権侵害に関する十分な救済が提供されることを確保するよう、促す。 経済的搾取(児童労働を含む) 79.委員会は、児童労働および子どもの搾取について締約国報告書で情報が提供されなかったことを遺憾に思い、かつ、児童労働に関するデータがすべての州および準州で体系的に収集されているわけではないことに懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国に、州および準州における最低就労年齢を定めた連邦法がないことも懸念するものである。委員会はまた、一部の州および準州で、16歳〔以上〕の子どもが特定の態様の危険な労働に就くことが認められていることにも懸念を表明する。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育〔修了〕年齢と一致する16歳を全国的な最低就労年齢として定めること。 (b) 18歳未満の子どもが危険なかつ安全性を欠いた労働環境から十分に保護されることを確保するため、州および準州の法律を調和させること。 (c) 子どもの権利の保護に関する公的説明責任を履行するひとつの形態として、危険な児童労働および労働条件の発生件数に関する、年齢、性別、地理的所在および社会経済的背景の別に細分化された体系的なデータ収集のための統一的機構を設置するための措置をとること。 (d) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)の批准を検討すること。 売買、人身取引および誘拐 81.委員会は、子どもの人身取引について有罪判決を受けた者に対して必要的に最低限の刑を言い渡すよう要求する法案C-268号が成立したこと(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、人身取引の被害を受けた子どもを特定したうえで保護する法執行機関の能力が弱いこと、および、この点に関する捜査および訴追の件数が少ないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの人身取引のほとんどが複雑な事件であるため、法執行官および検察官が捜査のための明確な指針を有しておらず、かつ最善の告発のしかたについて必ずしも承知していないことも懸念する。 82.委員会は、締約国に対し、人身取引の被害を受けたすべての子どもを保護し、かつ現行法の執行を向上させる目的で、法執行官および検察官を対象として体系的かつ十分な研修を行なうよう促す。委員会は、このような研修に、こどもの人身取引を犯罪化した刑法の適用箇所に関する意識啓発、捜査手続に関する最善の実務のあり方、および、被害を受けた子どもを保護する方法についての具体的指示が含まれるべきことを勧告するものである。 ヘルプライン 83.委員会は、子どもを対象とするフリーダイヤルのヘルプラインが存在することに積極的側面として留意する。このヘルプラインは、抑うつ、性的搾取および学校におけるいじめの事案について心理社会的支援を求める、締約国の相当数の子どもによって利用されているように思われる。しかしながら委員会は、締約国が、このようなヘルプラインが効果的に機能するようにするために限られた資源しか提供していないことを懸念するものである。 84.委員会は、締約国に対し、当該ヘルプラインを維持し、かつ当該ヘルプラインが締約国全域で24時間のサービスを提供することを確保するため、このヘルプラインに対して財政的および技術的支援を提供するよう促す。 少年司法の運営 85.委員会は、法案C-10号(2012年の安全な街路および地域法)が成人矯正施設への子どもの収監を禁じていることに、積極的側面として留意する。にもかかわらず、委員会は、おおむね条約に一致している2003年青年刑事司法法が法案C-10号の採択によって実質的に改正されたこと、および、後者が子どもに対して過度に懲罰的であって十分に修復的な性質のものではないことを深く懸念するものである。委員会はまた、法案C-110号が条約の規定にしたがうことを確保するための子どもの権利評価が実施されず、またはそのための機構が設置されなかったことも遺憾に思う。とくに、委員会は以下の懸念を表明するものである。 (a) 締約国が、刑事責任に関する最低年齢を引き上げるための措置(CRC/C/15/Add.215、パラ57、2003年)を何らとらなかったこと。 (b) 18歳未満の子どもが諸事情または罪名の重大性との関連で成人として審理されていること。 (c) 拘禁の利用が増えていることによって、プライバシーの保護が縮減し、かつ、ダイバージョンのような司法手続によらない措置の利用の減少につながっていること。 (d) 逮捕段階の子どもおよび拘禁されている子どもに対し、法執行官および拘禁センター職員によって過度な有形力の行使(テーザー銃の使用を含む)が行なわれていること。 (e) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者が過剰に拘禁されており、たとえば、アボリジナルの若者は高校を卒業するよりも刑事司法制度に関わりを持つようになる可能性が高いことを示す統計もあること。 (f) 10代の女子が男女混合の青年刑務所に措置され、かつ監視を担当する看守の性別も問われないため、女子が性的いやがらせおよび性的暴行の発生にさらされるおそれが高まっていること。 86.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約(法案C-10号(2012年の安全な街路および地域法)を含む〔原文ママ〕)、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。 (b) 18歳未満のいかなる者も、諸事情またはその罪名の重大性に関わらず、成人として審理されないことを確保すること。 (c) 司法手続によらない措置(ダイバージョン等)の利用を増やすことによって拘禁に代わる手段を発展させるとともに、少年司法制度の対象となっている子どものプライバシーの保護を確保すること。 (d) 逮捕された子どもおよび拘禁されている子どもに対する拘束および有形力の行使についての、すべての法執行官および拘禁施設職員が使用すべき指針を策定すること(テーザー銃の使用の廃止を含む)。 (e) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者が組織的かつ過剰に刑事司法制度の対象とされていることについて詳細な研究を実施するとともに、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者の有罪率および収監率に関する格差の解消に向けた効果的な行動計画(すべての法曹、刑務所で働く専門家および法執行に従事する専門家を対象とした条約に関する研修のような活動を含む)を策定すること。 (f) 性暴力および性的搾取のおそれからの女子の保護を向上させるため、女子が男子とは別に収容されること、および、女子の監視は女性看守が行なうことを確保すること。 J.国際人権文書の批准 87.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)および家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)を批准するよう促すものである。 K.地域機関および国際機関との協力 88.委員会は、締約国が、締約国および他の米州機構(OAS)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けてOASと協力するよう勧告する。 L.フォローアップおよび普及 89.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および準州の当局の長に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 90.委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国による第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 M.次回報告書 91.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年7月11日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 92.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月3日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/129.html
総括所見:ベラルーシ(第1回・1994年) 第2回(2002年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2011年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.17(1994年2月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1994年1月25日および26日に開かれた第124回~第126回会合(CRC/C/SR.124-126) においてベラルーシの第1回報告書(CRC/C/3/Add.14) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1994年1月28日に開かれた第130回会合において。 A.序 2.委員会は、ベラルーシ政府による条約の批准を歓迎する。委員会は、締約国との対話に携わる機会が持てたこと、および、条約に基づいて提出された第1回報告書に記載されたもの以上の情報を提供しようと締約国が努力したことを評価するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、ベラルーシがすべての主要な国際人権文書の締約国であることを認める。また、締約国が、子どもが直面する問題に対応する努力のなかで「子どもの権利法」を最近採択し、かつその他の他の立法上および行政上の措置をとったことも留意されるところである。このことは、条約にもとづく義務を締約国が重視していることを示している。 4.委員会はまた、締約国が、子どもの権利を実施するための適切な機構を発展させるうえで助言および技術的援助を求めることに前向きな姿勢を見せていることにも留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、条約の規定を実施するうえで締約国が深刻な障害に直面していることを認識する。委員会は、重大な政治的変化が法体系および社会一般に影響を与えてきたことに留意するものである。委員会はさらに、移行期の経済に関わる問題、および、貧困の拡大および失業の増加の結果による子どもの状況の悪化に留意する。委員会はまた、チェルノブイリ原発事故が環境および子どもも含む住民の健康に与えた悪影響に対抗するうえで、締約国が大きな困難を経験していることも認識するものである。 D.主要な懸念事項 6.委員会は、国内法、措置およびプログラムが、とくに権利の主体としての子ども観、家族教育および親の平等責任のような問題に関して、条約の規定および原則と全面的に両立しているかどうかについて懸念を表明する。さらに、委員会は、義務教育の修了年齢(15歳)と最低労働年齢(16歳)との間に乖離が存在するように思えることを懸念するものである。 7.委員会は、社会でもっとも不利な立場に置かれているグループの子どもが特定され、かつ、このような子どもが条約にもとづいて保障されている権利の後退を防止するための充分なセーフティ・ネットが存在することを確保するためのプログラムがそのような子どもを対象として行なわれているかどうかを懸念する。非都市部の子どもの状況も一般的な懸念の対象である。 8.委員会は、子どもの施設措置の慣行が、正反対の政策が採用されたにも関わらず続いていること、および、国際養子縁組の数が、まだ比較的少ないとはいえ増加していることを懸念する。 9.委員会は、とくにチェルノブイリ原発事故以降の子どもの健康状態、地方分権化された予防保健よりも治療保健のほうが優先されているように思えること、母乳育児の普及率が低いこと、および、中絶が多数行なわれていることに懸念を表明する。 10.特別な保護措置を必要とする子どもに関しては、少年司法の運営に関わる状況が委員会の一般的な懸念の対象である。委員会はまた、労働を通じての搾取から子どもを保護するための充分な措置がとられていないこと、子どもの性的搾取の問題が現れてきていること、および薬物濫用の問題について懸念を表明する。 E.提案および勧告 11.委員会は、締約国が、子どもの権利の実施および監視を調整する常設機関を設置する可能性を検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国が子どものための国内行動計画を優先事項として作成するよう勧告するものである。委員会は、条約の規定および原則、とくに第2条、第3条、第4条、第6条および第12条がこの計画に全面的に統合されることを望む。 12.委員会はまた、子どもの権利を保護しかつ促進する活動に非政府組織が現在よりも相当に強力に関与するよう望むものである。 13.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)および国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の加盟国となるよう、希望を表明する。同様に、委員会は、家族婚姻法を早期に制定すること、および、締約国における家族の崩壊という深刻な問題に対応するために適切な措置をとる必要性が同法で考慮にいれられるべきことを勧告するものである。 14.委員会は、プライマリーヘルスケアの活動がいっそう重視されるよう望む。この活動には、家族教育、家族計画、性教育および母乳育児の利点といった問題を対象とする教育プログラムの発展も含まれることになろう。同様に、委員会は、子どもも含む公衆一般のあいだでこのような問題に関する意識を発展させるため、コミュニティ・ヘルスケアワーカーの研修を訓練する。加えて、委員会は、情緒障害の子どもおよび外的心傷を負った子どものためにリハビリテーションおよび再統合のプログラムを発展させるよう勧告するものである。 15.委員会は、締約国が、子どものための社会保障を提供するためにとった措置が充分かどうか評価するよう勧告する。委員会はまた、プログラムを行なうさいには非都市部の子どもおよび都市部の子ども双方のニーズに注意深く対応したものにすること、および、もっとも不利な立場に置かれたグループの子どものために充分な社会的セーフティ・ネットを整備することを提案するものである。 16.労働を通じた子どもの搾取の危険が相当に存在していることにかんがみ、とくに最近国内法が改訂されたことに照らして、委員会は、この問題に緊急に対応し、かつ条約およびとくに子どもの最善の利益に関する第3条に沿って必要な措置をとるよう提案する。 17.委員会は、締約国が、子どもの権利条約に関する公衆一般の意識を発展させる努力において、締約国の報告書、議事要録および委員会の総括所見を入手可能とするよう勧告する。 18.委員会は、国際社会に対し、とくに、国内法および措置を子どもの権利条約と調和させ、子どもの権利に関する調整機関を発展させ、かつ、子どもの権利のためのプログラムの対象設定、政策の主要な方向性および資源の動員についての判断を行なうための締約国の努力に関して、技術的援助および助言を提供するよう奨励する。ユニセフ、WHO、〔国際連合〕人権センターその他の関心ある機関の技術的援助を求めることが提案されるところである。委員会はまた、チェルノブイリ原発事故の結果に対処するための措置に対する国際的支援も奨励する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/266.html
総括所見:スウェーデン(第5回・2015年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SWE/CO/5(2015年3月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2015年1月13日および14日に開かれた第1936回および第1938回会合(CRC/C/SR.1936 and 1938参照)においてスウェーデンの第5回定期報告書(CRC/C/SWE/5)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下に掲げる総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、スウェーデンの第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/SWE/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。 (a) スウェーデン社会サービス法および青年ケア(特別規定)法に対して加えられた立法上の修正(2013年1月)[1]。 (b) 子どもに対する性犯罪に関する法律の改正(2013年7月)[2]。 (c) 社会のより多くの層を含めるための法改正によって強化された、差別禁止法における年齢差別からの保護。 (d) 2011年7月の教育法。 [1] CRC/C/SWE/Q/5/Add.1、パラ108参照。 [2] 前掲パラ112参照。 4.委員会はまた、締約国による以下の条約の批准にも、評価の意とともに留意する。 (a) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2013年6月)。 (b) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約第34号(2012年9月)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器ならびにその部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書(2011年6月)。 (d) 人身取引と闘うための行動に関する欧州評議会条約(2010年5月)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 反ジプシー主義対抗委員会の創設(2014年3月)。 (b) 子どもの人身取引、搾取および性的虐待に反対する国家行動計画(2014~2015年)(2014年2月)。 (c) 性的指向、ジェンダーアイデンティティまたはジェンダーの表現にかかわらず平等な権利および機会を促進するための長期戦略(2013年12月)。 (d) PRIO精神的健康障害行動計画(2012年5月)。 (e) ロマ包摂戦略(2012~2032年)。 (f) 開発協力における民主主義および人権に関する方針(2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国が、締約国の第4回定期報告書の検討(2009年)時に行なわれた前回の勧告(CRC/C/SWE/CO/4)のうち実施されていないものまたは不十分にしか実施されていないもの、ならびに、とくに締約国における条約およびその選択議定書の法的地位(前掲パラ10参照)、子どもの庇護希望者および難民(CRC/C/SWE/CO/4、パラ61)ならびに児童ポルノを含む性的搾取(前掲パラ67参照)に関する勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 7.委員会は、条約が引き続きスウェーデン法として正式に承認されていないことに関する委員会の前回の懸念に対応するために締約国が行なった努力、および、とくに、法律その他の規則の適用において条約がどのように遵守されているかを分析するための調査が2013年3月に開始された旨の文書回答において提供された情報に、留意する。 8.委員会は、締約国に対し、2013年3月に開始された調査を速やかに進めることとともに、国内法を条約と全面的に一致させるためにあらゆる必要な措置をとること、および、国内法の規定が条約に抵触する際には条約が常に優先されるべきことを、促す。 資源配分 9.委員会は、国家予算に条約実施のための具体的世再配分額が含まれていないことに、懸念とともに留意する。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 委員会に対する次回の定期報告書において、条約の実施に関連する国家予算についての具体的情報を金額および割合で提供すること。 (b) 予算全体における子どものための資源の配分および使用を追跡するシステムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利基盤アプローチを採用すること。 (c) あらゆる部門における投資または予算削減との関連で「子どもの最善の利益」がどのように考慮されているかについての影響評価を実施するとともに、当該投資または予算削減が女子および男子の双方に与えている影響を測定すること。 調整 11.委員会は、市町村、県および広域行政圏における条約の実施に関して格差が残っており、子どものための支援およびサービスへのアクセスの不公平につながっていることを懸念する。 12.委員会は、締約国が、広域行政圏および地方のレベルであらゆる権利への平等なアクセスを確保する明確な権限および権威をもったハイレベルな機構を設置するとともに、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう勧告する。 独立の監視 13.委員会は、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なっている多くの活動への評価をあらためて表明する(CRC/C/SWE/CO/4、パラ14参照)ものの、同事務所が子どもからのまたは子どもに代わって行なわれる個別の苦情を受理できないという懸念もあらためて繰り返す。 14.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、オンブズマンに対し、子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応すること、被害者のプライバシーおよび保護を保全することならびに被害者のためのモニタリング、フォローアップおよび確認活動を行なうことの権限および適切な資源を与えるため、あらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国がオンブズマンの独立性を強化することも勧告するものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 15.委員会は、包括的な差別禁止法、性的指向、ジェンダーアイデンティティまたはジェンダーの表現にかかわらず平等な権利および機会を促進するための長期戦略および反ジプシー主義対抗委員会を含め、さまざまな形態の差別に対応するうえで締約国が行なっている努力について締約国を称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 一部の集団の子ども、とくに不利な立場におかれた家庭および周縁化された家庭の子どもならびに移住者家庭の子ども(アフリカ人の子どもおよびアフリカ系スウェーデン人の子どもを含む)が引き続き差別に直面していること。 (b) 「人種」の語が新たな差別禁止法および統治法典から削除されたこと、および、人種差別撤廃委員会から以前指摘されたように(CERD/C/SWE/CO/19-21、パラ6および13)、人種的憎悪を助長しかつ煽動する団体を違法であると宣言しかつ禁止する明示的な法規定が存在しないこと。 (c) ロマの子どもが他の児童生徒から差別される事案があること。 (d) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダー(LGBT)の子どもがいじめ、脅迫および暴力を経験する事案があること。 16.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の差別と効果的に闘うための努力をいっそう進め、かつそのための措置を強化するとともに、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) とくに民族と関連した差別の禁止を執行するために法律を改正し、かつ、人種的憎悪を助長しかつ煽動する団体を違法であると宣言すること。 (b) 差別防止活動にとくに焦点を当てるとともに、必要なときは、被害を受けやすい状況にある子ども(周縁化された家庭および不利な立場に置かれた家庭の子ども、移住者としての背景を有する子ども、ロマの子どもおよびLGBTの子どもを含む)を保護するために積極的差別是正措置をとること。 (c) あらゆる形態の差別を解消するための意識啓発プログラム(青少年を含む子どもをとくに対象としたキャンペーンを含む)を実施すること。 子どもの最善の利益 17.自己の最善の利益を考慮される子どもの権利が一部の法律で取り上げられていることに評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに子どもが関わる庇護手続において、この権利が不十分にしか重視されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 子どもに関わるすべての措置について子どもの権利影響評価が義務化されていないこと。 (b) 最善の利益判定に関する関連の専門家の研修が不十分であること。 18.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の原則の意味および実務的適用に関する意識を高め、かつ条約第3条が立法および行政措置に適正に反映されることを確保するための措置を強化するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/SWE/CO/4、パラ28)をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 子どもおよびその権利の享受に影響を及ぼす政策、立法、規則、予算、国際協力その他の行政決定のいかなる提案についても、その影響を判断するために義務的な子どもの権利影響評価を行なうこと。 (b) 移民委員会および社会福祉機関のスタッフを対象として定期的研修を行なう等の手段により、子どもの最善の利益の原則が、とくに子どもが関わる庇護案件におけるあらゆる決定の基盤および指針とされることを確保するとともに、最善の利益判定に関する研修を強化すること。 子どもの意見の尊重 19.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を実施するために社会サービス法および教育法に基づいてとられた措置には積極的措置として留意しながらも、とくに監護、居所および面会交流ならびに社会サービス調査との関連でまたは庇護手続において、この権利が実際には不十分にしか実施されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、外国人法(第1章第11条)上、子どもが意見を聴かれるのはそれが不適切でない場合に限られていることも懸念するものである。 20.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化し、かつ、ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を確立する等の手段により、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、外国人法第1章第11条を修正し、不適切性の例外を廃止し、かつ、自己の影響を与える決定が行なわれる際に子どもが常に意見を聴かれることを確保するため、速やかに法的措置をとることも求めるものである。 生命、生存および発達に対する権利 21.委員会は、障害者権利委員会から以前指摘されたように(CRPD/C/SWE/CO/1、パラ29参照)、締約国において、障害のある人(子どもを含む)の自殺率がますます高まっていることを懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、障害のある子どもの自殺の原因を防止し、特定しかつこれに対処するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 適切な情報へのアクセス 23.「デジタルツーリスト」ツアー会議または毎年の「インターネット安全性強化デー」など、情報通信技術(ICT)の利用について子どもおよびその親に情報提供を行なうために締約国がとった措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、ICTの利用に関連するリスクについて、学校の児童生徒および親を対象として不十分な訓練しか行なわれていないことを懸念する。 24.デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議の勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものプライバシーを保護するための規則を策定する努力を強化するとともに、ICTの安全な利用(とくに、子どもが小児性虐待者、自己の福祉に有害な情報および資料への接触ならびにネットいじめから身を守るための方法)について、子ども、教員および家族を対象とした十分な訓練を行なうこと。 (b) ネットいじめが他の子どもに及ぼしうる深刻な影響について、子どもの間で意識啓発を行なうこと。 (c) ICT関連の子どもの権利侵害を監視しかつ訴追する機構を強化すること。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 25.委員会は、法律に抵触した子どもを留置刑務所および警察の留置房で独房拘禁の対象とする実務が行なわれており、かつ後者に拘禁される子どもが多数にのぼっていること、および、精神保健ケアの現場で障害のある子どもに強制的かつ非任意的な取扱いが行なわれていること(とくに、革の紐またはベルトによる最長2時間の拘束が利用されていることおよび隔離措置がとられていること)を、深刻に懸念する。 26.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) すべての子どもを独房拘禁から直ちに解放するとともに、あらゆる状況下で独房拘禁の利用を禁止するために法律を改正すること。 (b) 精神保健ケアの現場および他のいかなる施設においても革の紐またはベルトおよび隔離措置の利用を法的に禁止すること。 (c) あらゆるケア施設の子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできること、そのような施設の環境が定期的かつ効果的に監視されること、および、拘禁された子どもに対する残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いの報告が速やかにかつ公平に調査されることを確保すること。 (d) 医療スタッフおよび非医療スタッフを対象として、非暴力的かつ非強制的なケア方法についての研修を行なうこと。 (e) 警察の留置房に拘禁されている子どもについての警察の報告機構を統一すること。 虐待およびネグレクト 27.委員会は、家族間暴力と闘う全国調整官が2012年に任命されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに6歳までの子どもの児童虐待が相当に増加していることを懸念するとともに、そのような虐待の通報の数件しか訴追に至っていないことに失望するものである。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) とくに締約国の多くの場所で一連のケア制度が明確なものになっていないことを理由として、虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもが、リハビリテーションサービスおよび精神保健ケアにアクセスする際に困難を経験していること。 (b) 学校および施設の職員が虐待およびネグレクトの初期の徴候を認識する適正な訓練を受けておらず、このような状況によってごくわずかな事案しか社会サービスに通報されない事態が生じていること。 28.委員会は、締約国が、一貫したかつ調整のとれた子ども保護システムを創設し、かつ、子どもの虐待および子どもに対する暴力の事案の通報を奨励する目的で子どもの関与を得ながら意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化するとともに、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うための包括的戦略を策定し、かつ以下の措置をとるために、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 暴力および虐待の根本的原因に対処するための長期的プログラムを実施するため、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (b) 学校および施設の職員を対象として、子どもの不当な取扱いの徴候を発見しかつ認識する方法についての定期的かつ継続的な研修を行なうこと。 (c) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得ることならびにこれらの者に研修および支援を行なうこと等の手段により、家族間暴力、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対応することを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 (d) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事件の全国的データベースを設置し、かつ、このような暴力の規模、原因および性質についての包括的評価を行なうこと。 (e) 暴力および虐待を受けた子どもが十分な身体的および心理的ケアに十分な形でアクセスできることを確保すること。 性的搾取および虐待 29.委員会は、性的搾取および虐待に対して締約国が措置をとってきたこと、ならびに、とくに、子どもに対する重大な性的虐待の犯罪の範囲が拡大され、刑罰が強化され、かつ子どもの性的搾取に関する時効が延長されたことを評価する。しかしながら委員会は、締約国において児童買春および児童ポルノが根強く存在しており、かつ、子どもの性的搾取に関するデータ(性的目的で人身取引により締約国に連れてこられた子どもおよび締約国内で取引された子どもまたはスウェーデン国民により国外で性的虐待もしくは搾取を受けた子どもに関するデータを含む)が存在しないことを懸念するものである。 30.委員会は、締約国が、性的搾取および虐待を解消するための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 年齢別、男女別、民族的出身別、国民的出身別、地理的所在別および社会経済的地位別に細分化されたデータを体系的に収集するための機構を設置すること。 (b) 子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択されてきた成果文書にしたがい、防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策の発展を強化すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 31.委員会は、いじめと闘うために締約国がとっている措置は評価しながらも、いじめに関する学校行動計画がニーズ調査に基づいていることは稀であるとされること、他の児童生徒による何らかの形態のいやがらせ(ネットいじめを含む)を受ける児童生徒の人数が増えていること、および、ソーシャルメディアの国内対応窓口がネット上のいじめおよびいやがらせとの闘いに十分に関与していないことに、懸念とともに留意する。 32.委員会は、締約国が、あらゆる形態のいじめおよびいやがらせ(ネットいじめおよび携帯電話によるいじめを含む)と闘うための努力を強化し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ソーシャルメディアの国内対応窓口の関与を強化し、学校における多様性を受け入れる教員および学校で働くすべての専門家ならびに生徒の能力ならびに生徒の紛争解決スキルを向上させ、かつ、いじめの解消を目的とする取り組みに子どもの関与を得ること。 (b) すべての学校が、いじめおよびいやがらせに関連した経験に関する生徒、職員および親の定期的調査を実施し、かつ、いじめと闘うための行動計画をこれらの調査に基づいて策定することを確保すること。 ヘルプライン 33.委員会は、締約国の自治体の多くが資格のあるソーシャルワーカーをスタッフとする24時間のヘルプラインを開設していることに評価の意とともに留意しながらも、日中しかヘルプラインサービスを提供できていない自治体が相当数にのぼることに留意する。 34.委員会は、締約国に対し、全国的に24時間のサービスを提供する目的でヘルプラインへの人的資源、技術的資源および財源の配分を増やすよう奨励する。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20~21条、第25条および第27条(第4項)) 家庭環境を奪われた子ども 35.委員会は、子どもと収監された親との接触を促進するために締約国がとったさまざまな措置(一部の刑務所における面会用居住施設の設置を含む)を評価する。しかしながら委員会は、「近接性の原則」が義務的なものではなく考慮される種々の要素のひとつにすぎないことを懸念するものである。このことは、親と面会するために子どもが長距離を移動し、また家族によっては経済的制約のためにそのような移動を行なえないということを意味しうる。委員会はまた、一部の刑務所において、長距離を移動しなければならないことが面会期間を延長する正当な事由として自動的に認められていないことも懸念するものである。 36.委員会は、締約国が、親が刑務所にいる子どもが親との個人的関係および直接の接触を維持できるようにするためにあらゆる必要な措置をとるとともに、近接性の原則を制度的に適用するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、刑務所における子どもにやさしい面会施設を引き続き増やすことも奨励するものである。 37.委員会は、アフリカ系の人々に関する専門家作業グループが締約国への訪問後に以前指摘したように、アフリカ系スウェーデン人およびアフリカ人の家族生活への恣意的干渉の事例が報告されていることならびに社会福祉機関による子どもの分離が行なわれていることを懸念する。 38.委員会は、締約国が、家族からの子どもの分離に関する実務を全面的に規制するとともに、分離が、常に徹底した調査の対象とされ、子どもの最善の利益にしたがって行なわれ、かつ最後の手段として用いられることを確保するよう勧告する。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条) 障害のある子ども 39.一部の障害者を対象とする補助金およびサービスに関する法律第1993:387号の新たな規定で、障害のある子どもは自己に影響を与えるいかなる行動についても自己の意見を提示する機会を有すると定められていることは歓迎しながらも、委員会は、障害者権利委員会が強調したように(CRPD/C/SWE/CO/1、パラ19)、障害のある子どもが自己に関わる問題について制度的に意見を聴かれておらず、かつ自己の意見を表明する機会を有していないことを懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 障害のある子どもに対する犯罪について個別の統計が作成されていないこと、および、障害のある子どもが障害のない他の子どもよりも高い割合で暴力に晒されていること。 (b) インクルーシブ教育にアクセスできている子どもの人数は非常に多いものの、教育法において、学校は、障害のある子どもを受け入れることに「相当の組織的または財政的困難」をともなうときは、自治体が同等の代替的選択肢を提示できることを条件として、障害のある児童生徒の入学を認めないことができるとされていること。 (c) 教育法で、、障害のある子どもは「最低限の知識要件」を達成しなければならないと定められていること。 (d) 親を対象としておよび障害のある子どもと働く職員を対象として、これらの子どもの特別なニーズに関する十分な情報提供および訓練が行なわれていないこと。 40.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自己に関わるあらゆる事柄について協議の対象とされる障害児の権利について現在設けられている保障措置が効果的に実施されることを確保すること。 (b) 犯罪の被害を受けた障害児に関するデータを収集し、かつ次回の報告書でその知見に関する情報を委員会に提供すること、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究ならびにデータおよび統計の収集を行なうこと、ならびに、親を対象としたおよび子どもとともに働く職員を対象とした感受性強化および訓練ならびに一般公衆の意識啓発のための戦略および取り組みを強化すること。 (c) すべての子どもが差別なく学校にアクセスできることを確保するとともに、この目的のため、障害のある子どもの受入れについて一定の要素を条件としている教育法の規定を廃止し、かつ、いかなる学校も完全にインクルーシブな教育を阻害する組織的または財政的困難に直面しないことを確保するために十分な人的、技術的および財政的支援を行なうこと。 (d) 障害のあるすべての子どもがその個別の能力を踏まえて可能なかぎり最高の教育水準に達する機会およびあらゆる必要な支援を与えられることを確保するため、速やかに法的措置をとり、かつあらゆる必要な資源を配分すること。 (e) 障害のある子どもの特別なニーズを認識しかつこれに対応する方法についての、親および教員を対象とした意識啓発プログラムおよび教育プログラムを発展させること。 健康および保健サービス 41.子どもの庇護希望者を対象として公平な保健ケアが提供されていることは歓迎しながらも、委員会は、経済的背景が異なる子どもの身体的および精神的健康に相当の格差が存在し続けていることを懸念する。 42.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、不利な立場に置かれた集団および周縁化された集団の子どもの健康状態を向上させるための努力を強化し、かつ、健康に対するこれらの子どもの権利を差別なく保障するために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう、勧告する。 精神保健 43.委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) いわゆる学習障害または行動障害、とくに注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断される子どもの人数が相当に増加していること。 (b) 副作用を適正に考慮することなくアンフェタミンおよびアンフェタミン様精神刺激薬(ほとんどはメチルフェニデートの形態をとる)が処方される事案が増加しており、かつ、そのような薬を服用することによる依存症が生じていること。 44.委員会は、締約国に対し、ADHDおよびその他の行動上の特異性の診断ならびに診断された子どもを対象とする薬物治療の使用について独立した専門家による監視を行なうシステムを設置するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの精神保健上の問題の判定において使用されている診断手法について独立の調査研究を行なうこと。 (b) 子ども、その親および教員を対象とする適切なかつ科学的基盤を有する心理カウンセリングおよび専門的支援が、ADHDおよびその他の行動上の特異性に対応する際の薬物の処方よりも優先されることを確保すること。 45.委員会は、精神保健障害および心理社会的障害の発生率が若者の間で高い一方で、学校保健サービスに対し、これらの障害に時宜を得た適切なやり方で対応するための十分な資源が与えられていないこと、ならびに、学校心理学者および心理社会的支援システムにアクセスするために長期間待機しなければならないことを懸念する。 46.委員会は、障害者権利委員会から以前指摘されたように(CRPD/C/SWE/CO/1、パラ18参照)、締約国が、子どもが適切な心理社会上および精神保健上の支援ならびに精神医学的保健ケアに時宜を得たやり方でアクセスしかつ当該支援およびケアを受けられることを確保するため、学校保健サービスに対して利用可能とされる資源を増やすよう勧告する。 生活水準 47.委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 相対的に多数の子どもが貧困下で生活していること。 (b) 移住の状況下にある子どもが締約国の住民である子どもよりもいっそう経済的困難に服している一方、庇護希望者を対象とする日額手当の額が依然として低く、かつ1994年から変わらないままであること。 (c) 一般の子ども手当とは異なり、庇護希望者の家族を対象とする子ども手当は第3子以降減額されること。 (d) 2013年に、とくに家賃滞納の結果として、数百人の子どもが強制立退きの影響を受けたとされていること。 48.委員会は、締約国が、以下のことを目的とする戦略および措置を強化する目的で、人的資源、技術的資源および財源の配分を増やし、かつ貧困の根本的原因を検討するよう勧告する。 (a) 困窮している家族、とくにひとり親家族および困難な社会経済的その他の状況にある家族を支援するためのプログラムを強化しかつ増やすこと。 (b) 庇護希望者を対象とする日額手当を増額するとともに、2子以上の家族を対象として手当が減額されないことを確保するために速やかに法的措置をとること。 (c) 家族が移転または立退きを強制されないこと、および、十分な住居に対する子どもの権利が常に尊重されることを確保すること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 子どもの庇護希望者および難民 49.委員会は、子どもの庇護希望者がノンルフールマンの原則に違反して出身国に送り返される事案が報告されていることを懸念する。委員会はまた、以下のことにも懸念とともに留意するものである。 (a) 保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもが性的搾取および(または)性的虐待をとくに受けやすい状態に置かれていること、ならびに、保護者のいない子どもの失踪事案が毎年多数発生しており、かつその多くについて不十分な調査しか行なわれていないこと。 (b) 強制労働、児童婚、人身取引、女性性器切除または子ども兵士としての徴募の危険性など、子どもに固有の形態の迫害が、外国人法で庇護を得るための事由として明示的に挙げられていないこと。 (c) ネグレクトおよび(または)家族間暴力を理由として家庭外養護に措置された子どもが、外国人法にしたがい、親とともに退去強制の対象とされる可能性があること。 (d) 保護者のいない子どもの後見人に関する法律第3条で、子どもの後見人が「可能なかぎり早期に」任命されると規定されていて期限の定めがないことから、場合によっては後見人の任命まで子どもが数週間待たなければならないこともあること。 (e) 後見人が常に適正な訓練を受けているわけではなく、かつ、子どもと面会するときに常に通訳者をともなっているわけではないこと。 (f) 庇護申請の決定までに子どもが長期間待機しなければならない事案が報告されていること。 (g) 報告によれば、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもの多くに冬服、個人衛生用品または学校用品が支給されていないこと。 50.委員会は、締約国に対し、子どもが出身国に送還されることになっている場合にノンルフールマンの原則が常に尊重されることを確保するための措置を速やかにとるよう促す。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 保護者のいない子どもが失踪したあらゆる事案を調査するとともに、これらの子どもの保護を強化するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 外国人法の改正により、庇護を得るための事由として、強制労働、児童婚、人身取引、女性性器切除または子ども兵士としての徴募の被害を受ける危険性など子どもに固有の形態の迫害を明示的に含めること。 (c) いかなる子どもも、親または保護者による養育中に暴力および(または)虐待の被害を受けたという理由で分離された当の親または保護者とともに退去強制の対象とされないことを確保するとともに、そのような子どもに関わるいかなる決定についても最善の利益判定を実施すること。 (d) 保護者のいない子ども1人ひとりについて、十分な訓練を受け、かつ定期的かつ継続的な研修を受けている後見人が直ちに任命されること、子どもが自己の後見人と定期的に面会すること、および、言語上の問題があるときは子どもと後見人間の効果的コミュニケーションを可能とするために通訳者が任命されることを、法律で要件とすること。 (e) 庇護申請の処理を早めるとともに、庇護希望者であるすべての子どもに対し、基礎的必需品(とくに十分な衣服および個人衛生用品)ならびにあらゆる必要な学校用品が全面的に支給されることを確保すること。 移住の状況にある子ども 51.委員会は、「通過滞在」であるとみなされる子どもが教育へのアクセスに関して困難に直面していること、および、移住者としての背景を有する子どものほうが学校脱落率が高いことに、懸念とともに留意する。 52.委員会は、締約国が、「通過滞在」であるとみなされる子どもが教育への全面的アクセスを認められることを確保するために法律を改正し、そのような子どもの脱落率を効果的に減少させるためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、学校から脱落した子どもに学校への再アクセスの機会を提供するよう、勧告する。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ 53.委員会は、ジェノサイド、人道に対する犯罪および戦争犯罪についての刑事責任に関する法律(2014年7月)が採択され、15歳未満の子どもの徴募および武力紛争における使用が戦争犯罪とされたことを歓迎する。しかしながら委員会は、志願制防衛組織の全体防衛青年活動に参加する18歳未満の志願隊員が火器の訓練を行なうことを依然として懸念するものである。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されている国またはその可能性がある国にいかなる武器も輸出されないことを確保するために設けられている保障措置が不十分であること。 (b) 子どもの難民、庇護希望者および移住者であって国外で徴募されまたは敵対行為において使用された者に関する体系的なデータ収集を行なうための機構が設置されていないこと。 54.委員会は、締約国が、選択議定書の精神を全面的に尊重しかつあらゆる状況において子どもに全面的保護を提供する目的で、志願制防衛組織が行なう火器訓練に参加する志願隊員の最低年齢を16歳から18歳に引き上げるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/SWE/CO/1、パラ15)をあらためて繰り返す。委員会は、締約国が、18歳未満の者に火器訓練および軍隊式訓練を行なうすべての志願制防衛組織に対し、選択議定書および他の関連の国際基準に関する十分な情報提供および研修を行なうよう、あらためて勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地国である場合の武器(小火器および軽火器を含む)の輸出を完全に禁止すること。 (b) 自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移住者であって国外で徴募されまたは敵対行為において使用された者に関する体系的なデータ収集を行なうこと。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ 55.委員会は、子どもの人身取引、搾取および性的虐待に反対する国家行動計画(2014~2015年)ならびにストックホルム国境管理警察が策定した共通行動計画は歓迎しながらも、以下の懸念をあらためて繰り返す(CRC/C/OPSC/SWE/CO/1参照)。 (a) 締約国の法律で、選択議定書第1条、第2条および第3条に定められたすべての犯罪が具体的に定義されかつ禁じられているわけではないこと、および、選択議定書に含まれているすべての犯罪が締約国の刑法で対象とされているわけではないこと。 (b) 締約国の判例および法律が、15歳以上の子どもの被害者に対し、一貫して十分な保護を提供しているわけではないこと。 (c) 選択議定書が対象とする犯罪に関わるリスク要因の特定およびこれへの対処ならびにこのような違反の事案(外国人被害者が関わるものを含む)を通報しかつ処理する方法および機関についての知識が、子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で低いままであること。 (d) 選択議定書第2条(c)に関する締約国の宣言において、同条の「あらゆる表現」(any representation)という文言は児童ポルノの「視覚的表現」に関連するものとしてのみ解釈すると述べられていることにより、あらゆる形態の児童ポルノに対応するための選択議定書の全面的実施が阻害されること。 56.委員会は、締約国に対し、刑法を選択議定書の規定を全面的に一致させるためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。このような措置には以下のものが含まれる。 (a) 前回勧告されたように、選択議定書第1条、第2条および第3条に掲げられたすべての犯罪ならびにあらゆる形態の児童ポルノを犯罪化するとともに、性的搾取を犯罪の重大性にふさわしい制裁で処罰できるようにすること。 (b) 子どもの虐待の被害者全員(15歳以上の被害者を含む)に対して十分な法的保護を提供すること。 (c) 未成年者の性的行為の購入および性的目的での子どもの搾取は「子どもに対するそれほど重大ではない性犯罪」という評価を再検討するとともに、このような犯罪が領域外で行なわれた場合の犯罪人引渡しに関する双方可罰性要件を削除すること。 (d) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象として、選択議定書に関する体系的研修を実施すること。 (e) 選択議定書第2条(c)に関する宣言を撤回すること。 少年司法の運営 57.委員会は、法律に抵触した子どもの権利を保障するために行なわれている努力は認識しながらも、以下のことを懸念する。 (a) 拷問禁止委員会から以前指摘されたように(CAT/C/SWE/CO/6-7、パラ7)、自由を奪われた子どもが、自己の権利についておよび自己に課された制限の理由について常に告知されているわけではなく、かつ、自由の剥奪が開始された時点からすべての基本的な法的保障(弁護士にアクセスする権利、独立の医師による検診を受ける権利および親族または自ら選択した者に通知する権利など)を与えられているわけでもないこと。 (b) スウェーデン子どもオンブズマンの2013年版年次報告書で提起されたように、拘禁に代わる措置を見出すための十分な努力が行なわれないまま子どもが引き続き審判前拘禁の対象とされていること、および、審判前拘禁の対象とされている子どもの取扱いについて一般的かつ正式な定型的手順が定められていないこと。 (c) 審判前拘禁を含む自由の剥奪の期間が法律で帰省されていないこと。 (d) 教育へのアクセスに関して留置刑務所間で格差があること。 58.少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を引き続き条約および他の国際基準と全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 拘禁された子どもが、拘禁の理由および自己の権利(とくに弁護士に直ちにアクセスする権利、可能であれば自ら選んだ独立の医師による検診を受ける権利、ならびに、親族および適当なときは領事機関に通知する権利)について、その子どもが理解できる方法で直ちに説明されることを確保するとともに、法的助言者のいない状態で行なわれたいかなる陳述も法的手続において使用できないことも確保すること。 (b) 勾留および拘禁に代わる措置を促進するとともに、勾留および審判前拘禁を含む拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、当該拘禁が、その中止を視野に入れて裁判官によって定期的に再審査されることを確保すること。 (c) あらゆる場面における自由の剥奪の期間の上限をすべての関連法に編入すること。 (d) 拘禁されたすべての子どもが、教育に対する平等な制定法上の権利を有することを確保すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 59.委員会は、親密な関係における暴力その他の形態の虐待を目的した子どもが犯罪被害者としての地位を有していながらも、法的手続においては被害当事者としての地位を認められておらず、そのため自分自身の被害者弁護人を提供されず、後見人の許可なくして警察による聴取の対象となることができず、かつ賠償を受けるうえで困難に直面していることを懸念する。さらに委員会は、被害を受けた子どもが関与する多くの法的手続が長期化していることに、懸念とともに留意するものである。 60.委員会は、締約国が、刑事司法制度が子どもの被害者および証人を取り扱う際に子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを要求するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの被害者および証人に対し、法的手続全体を通じて、弁護士による代理、情報および損害賠償へのアクセスとあわせて適切な支援サービスを提供するとともに、法的手続上の被害当事者としての地位を認められる権利を子どもに与えること。 (b) 子どもの被害者が関与する手続の長期化を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 H.通報手続に関する選択議定書の批准 61.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに進める目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 I.国際人権文書の批准 62.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに進める目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約ならびに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 J.地域機関との協力 63.委員会は、欧州評議会および欧州連合との間で締約国が行なっている協力を評価するとともに、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利の実施に関して引き続き欧州評議会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 64.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 65.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2021年3月1日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 66.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての統一ガイドライン(2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された共通コアドキュメントおよび条約別文書に関するガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)および総会決議68/268(パラ16)を含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、42,400語を超えない範囲で最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2016年1月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/225.html
総括所見:ナミビア(第2~3回・2012年) 第1回(1994年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/NAM/CO/2-3(2012年10月16日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年9月20日に開かれた第1732回および第1733回会合(CRC/C/SR.1732 and 1733参照)においてナミビアの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/NAM/2-3)を検討し、2012年10月5日に開かれた第1754回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/NAM/2-3)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/NAM/Q/2-3/Add.1)の提出により、締約国における子どもの状況に関する理解の向上が可能になったことを歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話について、評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会はまた、以下の立法措置がとられたことも歓迎する。 (a) 2008年11月に施行された子どもの地位法(2006年の法律第6号)。 (b) 労働法(2007年の法律第11号)。 (c) 刑事訴訟法改正法(2003年12月の法律第24号)。 (d) 扶養料法(2003年7月の法律第9号)。 (e) ドメスティックバイオレンス対策法(2003年6月の法律第4号)。 (f) 教育法(2011年12月の法律第16号)。 (g) 強姦対策法(2000年4月の法律第8号)。 4.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年)。 (b) 子ども売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2007年)。 (d) 障害のある人の権利に関する条約の選択議定書(2007年)。 (e) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2000年)。 (f) 国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約、および、同条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2002年)。 (g) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2000年)。 5.委員会はまた、以下の政策措置も歓迎する。 (a) 子どものための国家的課題(2012~2016年)(2012年6月)。 (b) 万人のための教育国家行動計画(2005~2015年)。 (c) 子どもに関する重要な規定(乳幼児期の発達の重視を含む)を掲げた第4次国家開発計画(2012年7月)。 (d) 児童労働撤廃国家行動計画(2008年1月)。 (e) ナミビアの孤児および脆弱な立場に置かれた子どものための教育部門政策(2008年)。 (f) 教育訓練部門向上プログラム(2006年2月)。 (g) 孤児および脆弱な立場に置かれた子どものための国家行動計画(2006~2010年)(2007年10月)。 (h) 教育部門を対象とする国家HIV/AIDS政策(2003年1月)。 6.委員会は、締約国が国連特別手続受任者に対して行なった招待に肯定的に留意する。 III.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、締約国が気候変動の影響をもっとも受けやすい国のひとつであり、かつ、洪水、暴風雨および旱魃のような自然災害の影響が高まることにより、疾病構造の変化、農業生産高の減少および食糧不安が生じていることに、留意する。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 8.委員会は、締約国が子どもの権利の状況を客観的に評価し、かつ1994年に採択された第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.14)を実施するために努力してきたことは歓迎しながらも、そこに掲げられた委員会の勧告の一部が実施されていないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国に対し、前回の総括所見の勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(とくに法改正、女子および障害のある子どもに対する差別、児童労働の多さならびに少年司法の運営に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう、促す。 立法 10.独立前から存在する法律を見直すための取り組みは歓迎しながらも、委員会は、締約国が、条約で求められているように子どもに関わる重要な国内法を採択しかつ実施していないことを遺憾に思う。とくに委員会は、議論が10年以上前に始まったにも関わらず、子どもの権利に関する2つの注目すべき法律(子どものケアおよび保護法案および子ども司法法案)がまだ採択されていないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、複数の法体系が存在していることに留意しつつ、委員会は、慣習法および慣習的慣行、とくに最低婚姻年齢、離婚および相続に関するものが条約の原則および規定に一致していないことを懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する保留中の法律、とくに子どものケアおよび保護法案および子ども司法法案の改定および採択を速やかに進めるよう促す。委員会はまた、締約国が、すべての提案されている法律および現行法に条約の原則および規定を編入するとともに、当面、抵触がある場合には憲法上の規定および制定法が慣習法に優越すること、ならびに、子どもおよび女性が正式な司法制度に全面的にアクセスできることを確保するための措置をとることも、勧告するものである。 包括的な政策および戦略 12.委員会は、締約国が、子どもの権利を保護しかつ促進する義務を履行する方向に締約国のすべての部門を導く5年間の枠組み(2012~2016年)である、子どものための国家的課題を2012年6月に発表したことに、評価の意とともに留意する。 13.委員会は、締約国が、子どものための国家的課題の実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を配分するとともに、同計画の実施に関して達成された進展を追跡する、監視および評価のための効果的な機構を設置するよう勧告する。 調整 14.委員会は、子どもの権利の保護および促進に関する調整の主務機関として男女平等・子ども福祉省が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国から提供された、同省が十分な職員および資源を有していない旨の情報に懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、政府のさまざまな部局および省が、諸地域および選挙区全体を通じて戦略的政策に関する異なる調整枠組みを定めていることから、子どもの権利の実施における権限および役割の重複が生じ、意思決定および政策の実施に悪影響を与えていることを懸念する。 15.委員会は、締約国に対し、男女平等・子ども福祉省が高い地位および権限(さまざまな部門を横断して子どもの権利のための行動を効果的に調整し、かつ子どものための国家的課題(2012~2016年)の実施を効果的に監視するための十分な人的資源、技術的資源および財源を含む)を有することを確保することにより、調整機関としての同省の役割を強化するよう、促す。さらに委員会は、締約国が、調整プロセスを合理化する目的で国、広域行政圏および地方の調整機構のあり方を見直すとともに、さまざまな部門間の重複を少なくするよう、勧告するものである。 資源配分 16.締約国が、国家予算における相当の資源を社会部門、とくに教育に配分してきたことには留意しながらも、委員会は、このような水準の支出が、子どもの権利の多くの分野(教育部門を含む)における成果の向上に必ずしもつながってきたわけではないことを懸念する。委員会はまた、締約国が、異なる部門を横断して子どものための資源の配分および使用を追跡する、予算策定に対する子どもの権利アプローチをまだ実行していないことにも、懸念とともに留意するものである。 17.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) さまざまな部門全体で資源の公平は配分を確保し、かつすべての子どものために肯定的成果を確保する目的で、子どもに関する公的支出を監視すること。 (b) 主要省庁全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、いずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のために、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が十分に反映されることを確保しながら、この追跡システムを活用することも促すものである。 (c) 公的な対話および参加、とくに子どもたちとの対話および参加を通じて透明なかつ参加型の予算策定を確保するとともに、地方当局の適正な説明責任を確保すること。 (d) とくに、周縁化された状況に置かれた子ども、貧困下で暮らしている子ども、農村部の子ども、または社会的な積極的差別是正措置(女子に対する差別を解消し、出生登録プログラムを強化し、保健ケアに無償でかつ容易にアクセスできるようにするための措置など)を必要とする可能性がある脆弱な状況に置かれた子どもに関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ危機の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (e) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 18.全国世帯所得支出調査(2009/10年度)に初めて子どもの貧困アセスメントが含まれたことは歓迎しながらも、委員会は、18歳未満のすべての子どもに関するデータを細分化しかつ分析するための包括的なデータ収集システムが設けられていないことを、懸念する。委員会はまた、子どもに対する暴力(体罰および障害のある子どもに対する暴力を含む)の事案に関する、性別、年齢、社会的背景、地理的所在および就学の有無ごとに細分化された情報が存在しないことも遺憾に思うものである。 19.委員会は、締約国に対し、パートナーの支援を受けながら包括的なデータ収集システムを設置するとともに、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価するための基盤として、子どもに関して収集されたデータを分析するよう奨励する。収集されたデータは、すべての子ども、とくに特別な保護を必要とする子どもの集団(女子、障害のある子どもおよび貧困下で暮らしている子どもなど)の状況に関する分析を容易にするため、年齢、性別、民族、地理的所在および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。委員会はまた、締約国が、すべての学校、代替的養護施設および国家機構に対し、子どもに対する暴力のすべての事例を報告するよう求める等の手段により、子どもに対する暴力(とくに性暴力および体罰)の事案に関する体系的データを収集することも勧告するものである。 独立の監視 20.委員会は、オンブズマン事務所内に、すべての子どもがアクセスできる子どもの権利部局が設けられていないことを懸念する。委員会はまた、オンブズマン事務所に対して限られたスタッフおよび資源しか提供されておらず、かつスタッフが子どもの権利に関するいかなる具体的研修も受けていないために、この機構に対する子どもの苦情が少数であることに表れているとおり、人権侵害を監視しかつこれに対応する同事務所の能力が深刻に制限されていることも懸念するものである。 21.一般的意見2号(2002年)に対して注意を喚起しつつ、委員会は、締約国に対し、子どもの権利侵害を監視し、かつ子どもの苦情に子どもに配慮したやり方で対応することに責任を負う子どもの権利部局を、オンブズマン事務所内に設置するよう求める。委員会はまた、締約国に対し、その独立性および有効性を確保するために必要な人的資源、技術的資源および財源がこの機構に対して提供されることを確保することも、促すものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および国連人権高等弁務官事務所の技術的援助を求めるよう、奨励する。 普及および意識啓発 22.委員会は、「ナミビア子どもの日」、「アフリカ子どもの日」および条約の子ども向け版(英語)の刊行等を通じ、子どもの権利に関する意識を高めるために締約国が行なっている取り組みには肯定的に留意するものの、条約および委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.14)が地方言語に翻訳されず、かつ広く普及されていないことを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国が子どもの権利に関する意識啓発プログラムを継続しかつ強化するよう勧告するとともに、締約国に対し、条約および総括所見を地方言語に翻訳し、かつ意識啓発プログラムに編入するよう奨励する。 研修 24.委員会は、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(政府職員、法執行官、保健専門家およびソーシャルワーカーを含む)が子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を受けているわけではないことを、懸念する。 25.委員会は、締約国が、子どもとともにまたは子どものために働く専門家(とくに教員、学校管理者、法執行官、オンブズマン事務所、女性・子ども保護部局および男女平等・子ども福祉省の職員、ジャーナリストならびに市民社会組織)が子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を受けることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する体系的かつ長期的な研修のための利用可能な十分な人的資源、技術的資源および財源を確保する自国の義務を想起するよう、求めるものである。 子どもの権利と企業セクター 26.委員会は、締約国が、国際原子力機関の加盟国として、ウラン関連活動の安全性を保障する国際的義務を遵守してきた旨の締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、同国における多国籍企業および国内企業、とくに鉱山業者およびウラン生産業者が、土地、大気および水のような天然資源、ならびに、放射性物質による高度の毒性および汚染の影響を受ける人間、家族およびコミュニティを保護することを目的とした人権、環境その他の問題に関する国際的基準(とくに子どもおよび女性の権利に関わるもの)が遵守されることを確保する明確な規制枠組みがないまま操業していることを、懸念するものである。加えて委員会は、認可前の環境影響評価および法律の遵守の監視に関する重要な保障措置を定めた環境管理法も施行されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、ウラン採掘の環境上および健康上の影響に関わる問題について議論されておらず、関係者への伝達または公衆への開示も行なわれていないことにも、懸念とともに留意するものである。 27.委員会は、締約国が、2008年6月18日の人権理事会決議8/7(パラ4(d))および2011年6月16日の人権理事会決議17/4(パラ6(f))に照らし、企業部門が国内外の人権基準、労働基準、環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関するもの)を遵守することを確保するための規則を制定しかつ実施するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国で操業する鉱山業者およびウラン生産業者の活動が、とくに子どもおよび女性の権利との関連で人権に影響を与えまたは環境基準その他の基準を脅かさないことを確保するため、これらの業者を対象とする明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 企業(とくにウラン採掘業者)が環境および健康に関する国内外の基準を効果的に実施すること、および、実施が監視され、かつ違反があった場合には適切な制裁が科されかつ救済が提供されること、ならびに、適切な国際的認可が求められることを確保すること。 (c) 企業に対し、環境、健康および人権に関わる自社の事業活動の影響ならびにこのような影響に対応するための計画について、アセスメント、協議ならびに公衆に対する全面的な公的開示を行なうよう求めること。 (d) これらの勧告の実施に際し、人権理事会決議が2008年に全会一致で受託した国連「保護・尊重・救済」枠組みを指針とすること。 B.子どもの定義(条約第1条) 28.委員会は、国内法における子どもの定義が多種多様であり、かつ矛盾している旨の前回の懸念(CRC/C/15/Add.14、パラ6)をあらためて表明する。とくに委員会は、締約国の憲法で「子ども」が16歳未満のすべての者と定義されており、条約第1条と両立していないことを懸念するものである。委員会は、最低婚姻年齢を18歳と定めた既婚者平等法が慣習婚には適用されないことに、重大な懸念を覚える。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 子どもに関する全般的定義を条約の規定と一致させる目的で憲法およびあらゆる現行法を見直しかつ改正するとともに、あらゆる現行法において、18歳未満のすべての子どもに対して全面的保護が与えられ、かつ子どもの発達しつつある能力および高まりつつある自律が尊重されることを確保すること。 (b) 最低婚姻年齢に関する既婚者平等法の規定が慣習婚に適用されることを確保すること。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 30.委員会は、多数の政策およびプログラム(孤児および脆弱な立場に置かれた子どものための教育部門政策ならびに教育部門を対象とする国家HIV/AIDS政策など)の策定等を通じ、差別に対応するために締約国が行なっている努力に留意する。これらの努力にも関わらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 先住民族コミュニティ(とくにオバヒンバ人およびサン人)の子ども、障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、路上の状況にある子どもならびに子どもの難民および移民に対して差別が広く行なわれていることから生じている人権侵害。 (b) 女子を差別し、かつその人権を深刻に制限する家父長制的態度ならびに深く根づいた規範および慣習を含む、女性および女子に対する広範な周縁化および差別。さらに委員会は、女性および女子を差別する慣習法および慣習的慣行(婚姻および相続に関連するものを含む)について懸念を覚えるものである。 31.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに女子、先住民族の子ども、障害のある子どもおよび脆弱な状況に置かれたその他の集団の子どもを対象として、貧困を削減し、教育、保健および発達における差別を防止しかつこれと闘うための措置(関連の政策および戦略計画の時宜を得た実施も含む)を強化すること。 (b) 慣習法に基づいて、とくに婚姻および相続権の分野で女性および女子が直面している差別と闘うために、あらゆる必要な措置(農村部におけるこれらの法律の適用を防止するための努力を通じてた取り組みを含む)をとること。委員会は、締約国に対し、このような努力において、女子、女性、伝統的指導者および市民社会組織がプロセス全体を通じて協議の対象とされることを確保するよう、求める。 (c) 女性および女子に対する法律上の差別を終わらせるため、あらゆる関連の民事法を見直すこと。とくに締約国は、婚姻、土地所有権および相続権に関するものを含むすべての差別的規定を撤廃する目的で、既婚者平等法(1996年)を見直すべきである。 (d) 女子および女性を差別し、または女子差別を生みだしもしくは固定化する効果を有する慣習法の適用を防止するためにとられた措置について、次回の報告書に詳細な情報を記載すること。 子どもの最善の利益 32.委員会は、憲法ならびに提案されている子どものケアおよび保護法案および子ども司法法案において、子どもの最善の利益の原則が明示的に保護されていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、この原則が立法機関によって十分に適用されておらず、したがって子どもに関わるほとんどの法律、政策およびプログラムに掲げられていないことを懸念するものである。委員会はさらに、伝統的および宗教的指導者ならびに政府職員を含む一般公衆の間で、子どもの最善の利益の原則に関する意識が欠けていることを懸念する。 33.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を、伝統的および宗教的指導者を含む公衆ならびに民間の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう、奨励されるところである。 生命、生存および発達に対する権利 34.委員会は、10代の妊娠の多発、子どもの強姦ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するケアおよび情報へのアクセスの不十分さをしばしば原因として行なわれている、締約国における新生児の遺棄(「赤ちゃん投棄」および嬰児殺について重大な懸念を表明する。 35.委員会は、締約国に対し、10代の妊娠の根本的原因に対応し、妊娠中の青少年に対する支援を強化し、かつこれらの青少年に対してセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのための十分なサービスを提供することを含むあらゆる必要な措置をとることにより、生命、生存および発達に対する権利をすべての子どもに対して確保する、自国の義務を想起するよう求める。 出生登録(訳者注/「市民的権利および自由」の節が欠落しているのは原文ママ) 36.委員会は、全国的な移動登録キャンペーン(2009年および2010年)等を通じ、すべての子どもが出生時に登録されることを確保することに関して締約国が達成した進展を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 5歳未満児の3分の2しか出生証明書を有しておらず、かつ、出生登録が(とくにカプリビ州およびカバンゴ州の)農村部においておよび貧困下で暮らしている子どもの間でとりわけ低調であること。 (b) 出生登録に関する法的枠組みが制約的であること(これには、身分登録書類を持たない親にとって子どもの出生登録の深刻な障壁となっている、身分登録書類の提示要件も含まれる)。 (c) ナミビアで生まれた外国籍の子どもに対して担当職員が出生証明書を発行したがらないため、難民が子どもの出生登録について重大な課題に直面していること。さらに、難民および庇護希望者は隔離されたオシレ難民居留地に住むよう求める法的命令により、これらの者が子どもの出生を登録するための移動の自由が制限されている。 (d) 締約国の国籍法が、ナミビアで発見されたものの両親が知れない子どもに対する国籍の付与の問題について沈黙していること。 37.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促す。 (a) 出生、婚姻および死亡登録法(1963年)の改正等を通じ、即時的かつ普遍的出生登録を確保するための努力を強化するとともに、当面、すべての子どもの出生を登録し、かつすべての子どもに対していかなる差別もなく無償の出生証明書を与えるための即時的な特別措置をとること。 (b) 出生登録の重要性に関する公衆意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) 保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民を特定するための効果的手続を確立するとともに、これらの子どもの出生を登録するための特別措置を直ちにとること。 (d) 難民の地位に関する1951年条約第26条に対する留保を撤回し、かつ難民および庇護希望者に対して移動の自由を認めること。 (e) 無国籍者の地位に関する1954年条約および無国籍の削減に関する1961年条約に加入すること。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)および第39条) 体罰 38.委員会は、教育法(2001年の法律第16号)が学校における体罰を禁じており、かつ、1991年の最高裁判所判決が学校における体罰および犯罪に対する刑としての体罰を違法と判示したことに留意する。しかしながら委員会は、締約国から提供された以下の情報について重大な懸念を覚えるものである。 (a) 学校を含むあらゆる場面で、体罰の慣行が依然として広く行なわれていること。 (b) ドメスティックバイオレンス対策法(2003年の法律第4号)のような一部の新法、および、学校における体罰を禁ずる法律が、実際には全面的に執行されていないこと。 (c) 家庭、行刑制度および代替的養護の現場における体罰を明示的に禁ずる法律が存在しないこと。加えて委員会は、子どもの「合理的懲戒」が、体罰の犯罪に対するコモンロー上の抗弁とされていることを憂慮する。 39.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く求める。 (a) 民事法および慣習法に基づく、かつ家庭、学校および代替的養護の現場を含むあらゆる場面における体罰を禁止する目的で、子どものケアおよび保護法案を優先的課題として成立させること。 (b) 体罰を禁止する法律が効果的に実施され、かつ、体罰の責任者に対して法的手続が組織的に開始されることを確保すること。 (c) 体罰を認めるすべての規定を直ちに廃止すること。 (d) この慣行に対する一般的態度を変革する目的で、体罰の有害な影響(身体的および心理的影響の双方)に関する持続的な公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのプログラムを、子どもたち、家族、コミュニティおよび宗教的指導者の関与を得ながら導入するとともに、体罰に代わる手段として、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律を促進すること。 (e) 学校のすべての教員および職員が、子どもの権利および体罰の有害な影響(身体的および心理的影響の双方)に関する義務的研修を修了することを確保するとともに、積極的な行動支援および代替的形態の規律を奨励すること。 性的搾取および虐待 40.締約国が、子どもの保護を強化するためにすべての州に女性・子ども保護部局を設置したことには留意しながらも、委員会は、女性および子どもに対する虐待および暴力(学校および家庭における強姦および性的虐待を含む)が広く蔓延していることに危惧を覚える。とくに委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚えるものである。 (a) 締約国において、家族構成員、養育者、教員および地域の指導者による子どもの強姦が多数発生していること。 (b) 子どもに対する性暴力犯罪の訴追率が低く、かつ法廷外での解決が広く行なわれているため、加害者が処罰されない状況が生じていること。これとの関連で、委員会は、強姦対策法(2000年の法律第8号)の改正が遅れていることに懸念とともに留意するものである。 (c) 国内法に基づいて被害者に認められている、裁判、シェルター、医療サービス、カウンセリングおよび賠償へのアクセスが限られていること。 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 性的虐待および搾取に関連する法律が効果的に執行されること、ならびに、このような犯罪の加害者が裁判にかけられ、かつ犯罪に相応する制裁によって処罰されることを確保すること。 (b) 性的暴力および虐待の被害を受けたならびにその証人であるすべての子どもを十分に保護する目的で、強姦対策法(2000年の法律第8号)を遅滞なく改正すること。 (c) すべての州の女性・子ども保護部局の能力を強化するとともに、苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的なかつ子どもにやさしい手続および機構を緊急に設置すること。 (d) 学校における性的暴力および虐待の通報を奨励するため、子ども、とくに女子の意識啓発を図ること。 (e) 性的搾取および暴力の被害を受けた子どものシェルターのニーズ、健康上および法律上のニーズならびに心理的ニーズに対応するための国家的戦略を策定すること。 有害慣行 42.委員会は、締約国において性的イニシエーションの慣行および早期婚が引き続き蔓延していることについて、重大な懸念を覚える。加えて委員会は、締約国が、制裁の導入等も通じ、このような有害慣行を体系的に記録しかつ抑制するためのいかなる措置もとっていないことを懸念するものである。 43.委員会は、締約国に対し、性的イニシエーションの慣行を奨励しまたはこれに関与した個人(伝統的指導者を含む)に対して十分な刑事上および民事上の制裁が科されることを確保するよう、求める。加えて、締約国は、とくに農村部において性的イニシエーションの儀式および早期婚の慣行を抑制するため、家族、コミュニティの指導者および社会一般(子どもたち自身を含む)の関与を得ながら、感受性強化プログラムを実施するべきである。 あらゆる形態の暴力を受けない子どもの自由 44.子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299、2006年)を想起しながら、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、一般的意見13号(CRC/C/GC/13、2011年)を考慮し、かつとくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対する暴力に対処するための国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力のジェンダーに関わる側面に特段の注意を払うこと。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国連機関と協力すること。 生活水準 45.子どもの保護および家族支援のための包括的制度の整備を目的とした国家的開発枠組み「ビジョン2030」および第4次国家開発計画(2012/13年度~2016/17年度)には留意しながらも、委員会は、締約国の子どもの34.4%が貧困線以下の生活を送っていること、貧困下の子どもの栄養不良率、死亡率および有病率が高いこと、ならびに、ナミビア国民の67%が改善された衛生設備にアクセスできていないことを、懸念する。この文脈において、委員会は、子どもを養育し、かつホリスティックな発達に対する子どもの権利を確保することに関して家族を支援するための基礎的サービスが締約国で整備されていないことに、懸念を表明するものである。 46.委員会は、締約国に対し、とくに、コミュニティのレベルで実施される家族支援サービスおよび不利な立場に置かれた家族に対する社会的保護(貧困にとくに陥りやすい家族を重点対象とするプログラムを含む)を通じて、子どもの貧困および脆弱性に対処するためにあらゆる必要な措置をとるよう求める。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 47.委員会は、締約国が障害者補助金、里親養護補助金および児童扶養補助金を提供していることに評価の意とともに留意し、かつ、第4次国家開発計画(2012/13年度~2016/17年度)において、すべての子どもを対象とするための補助金制度の段階的拡大、および、子どもの世話をできるように家族のエンパワーメントを図るための追加的措置が提唱されていることにも留意する。しかしながら委員会は、ソーシャルワーカーおよびコミュニティ子どもワーカーが不足しているため、これらの措置が、それを必要としているすべての家族および子どもをまだ網羅できていないことを懸念するものである。加えて、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 18歳未満のナミビアの子どもの28%が孤児でありかつ(または)「脆弱な立場」に置かれており、34%が親の一方とともに暮らしておらず、かつ両親とともに生活している子どもは26%にすぎないこと。 (b) 家族における親の責任が不平等であり、かつシングルマザーが筆頭者である世帯が多いこと。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 補助金制度の拡大を速やかに進めるとともに、家族(貧困下で暮らしている家族およびシングルマザーが筆頭者である家族など)による補助金へのアクセスを高めることを目的とした制度の監視および見直しに関する、市民社会組織との協議を強化すること。 (b) ソーシャルワーカーおよびコミュニティ子どもワーカーをさらに増員するための追加的措置をとること。 (c) たとえば、ジェンダー役割および子育てに関わる慣行およびステレオタイプの変革を狙った、親としての指導およびスキルならびに親の共同責任に関する研修を含む支援を親に対して提供することにより、親の教育および意識を発展させること。 (d) 子どもの養育責任の遂行に際して親および法定保護者に適切な援助および支援サービスを提供することにより、家庭環境から子どもが分離されることを回避するための即時的措置をとること。 養子縁組 49.委員会は、国内外の養子縁組が、認可を受けていない民間の経路を通じて非公式に、かつ締約国によるいかなる監督も受けずに行なわれていることを深く懸念する。委員会はまた、国際養子縁組に関する国内法が定められていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会は、国内外の養子縁組を監視するための法的枠組みおよび特定の機関が存在しないなか、子どもが搾取および子どもの人身取引にさらされていることを懸念する。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内外の養子縁組に関する包括的な法律を緊急に採択し、かつ当該法律が条約その他の国際基準に全面的に一致することを確保すること。それまでの間、締約国は、子どもの搾取および取引を含む人権侵害的慣行を防止するため、非公式な養子縁組を中止させるための即時的措置をとるべきである。 (b) 国内の養子縁組を監視し、かつこれに関するデータを収集する責任(養子縁組後の監視を含む)を特定の機関に委任するとともに、子どもの最善の利益の原則が常に考慮されることを確保すること。 (c) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を速やかに進めること。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害のある子どもに対する差別についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.14、パラ7および15)、および、締約国が障害に対する社会福祉アプローチをとり続けていることに関する懸念をあらためて表明する。委員会は、締約国が、障害のある子どものための補助金を支給していることに留意するものの、障害のある子どもの10%しか障害補助金を受給していないことに、懸念とともに留意するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。 (a) 障害のある子ども、とくに女子および農村部に住んでいる子どもが、複合的形態の差別、および、権利の全面的享受を深刻に妨げる障壁(教育、保健ケアその他の社会サービスへのアクセスが限定されていることを含む)に直面し続けていること。 (b) さまざまな体制および政策、とくに国家障害評議会および国家障害政策(1997年)の確立が、障害のある子どものための、調整および協調のとれた十分な行動につながっていないこと。国家障害評議会に対して国家障害政策の実施の監視が委ねられていることには留意しながらも、委員会は、同評議会の監視活動に関する情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。 52.一般的意見9号(CRC/C/GC/9 and Corr.1、2006年)を想起しつつ、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるよう促すとともに、具体的には以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに関するすべての法律(提案されている子どものケアおよび保護法案を含む)に、障害を理由とする差別をとくに禁止する規定が含まれることを確保するとともに、障害のある子どもに関する、省庁全体を通じた、ホリスティックなかつ調整のとれたプログラムを発展させること。 (b) 障害のある子どもが教育に対する権利を行使できることを確保するとともに、特別の訓練を受けた教員を配置すること、障害のある子どものための便益を増加させることおよび学校をよりアクセシスブルなものとすること等の手段により、障害のある子どもを普通教育制度に可能なかぎり最大限に包摂するための対応をとること。 (c) 障害のある子どもの権利が侵害された場合に効果的救済措置を提供するとともに、障害のあるすべての子ども(女子を含む)ならびにその親および(または)養育者がこれらの救済措置に容易にアクセスできることを確保すること。 (d) 保健・社会サービス機構が2008年に行なった政策上および行政上の広範な勧告(障害のある人のための保健ケアサービスを向上させる目的で全国的保健ケア制度を変更することも含む)を迅速に実施すること。加えて、締約国は、とくに地方レベルで必要な専門的資源(すなわち障害の専門家)および財源が利用可能となることを確保し、かつ、コミュニティを基盤とする保健サービスプログラム(親、養育者および親支援グループを対象とするものを含む)を促進しかつ拡大するための努力を強化するべきである。 (e) 障害のある子どもに対する事実上の差別を防止しかつ解消する目的で、公衆一般および特定の専門家集団を対象とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを実施すること。 健康および保健サービス 53.委員会は、保健に関する国家戦略計画(2009~2013年)に肯定的に留意する。しかしながら委員会は、妊産婦死亡率および子どもの栄養不良率が高いこと、衛生設備および清潔な水へのアクセスが限られていること、保健施設が劣悪な水準にあること、ならびに、農村部および遠隔地に住んでいる子どもの間に保健格差があることを懸念するものである。委員会はまた、保健部門における人的資源の欠落および保健予算の効率的配分についても懸念を覚える。 54.委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた子ども(とくに貧困下で生活している子どもおよび農村部で暮らしている子ども)にとくに注意を払いながら、すべての子どもが同一の質の保健サービスに対する同一のアクセスを享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、社会経済的不利益、および、保健に関わる既存の欠陥のその他の根本的原因に対処するよう、促すものである。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの栄養不良率の高さに緊急に対処するための努力を強化するとともに、基礎的な子どもの健康および栄養、個人衛生および環境衛生ならびにリプロダクティブヘルスについて親に情報を提供するためのキャンペーンを含む教育プログラムを発展させること。 (b) この点に関して、とくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の財政的および技術的援助を求めること。 (c) 保健インフラを向上させ、かつ、下位レベルおよび地区レベルの保健ケア施設における緊急の産科ケアおよび新生児ケアならびに専門技能を有する出産介助者の利用可能性およびアクセス可能性を高めることにより、とくに農村部において、妊産婦ケアサービスへのアクセスを向上させること。加えて、妊娠した青少年がセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのための保健ケアに容易にアクセスできることを確保するため、特別措置をとること。 (d) 安全な飲料水および衛生に対する人権に関する特別報告者の勧告(A/HRC/21/42/Add.3)、とくに、オンブズマンの権限を拡大して経済的、社会的および文化的権利(水および衛生に対する権利を含む)の促進および保護を含めるべきである旨の勧告(前掲パラ68(b))を実施すること。 精神保健 55.委員会は、締約国における子どもの自殺の水準の高さを危惧する。委員会は、若者の自殺率が近年増加しているという保健・社会サービス省のアセスメントに、重大な懸念とともに留意するものである。委員会はまた、精神保健上の問題に関するデータがないこと、訓練を受けた精神保健実務家の利用可能性が学校および農村部において不十分であること、ならびに、子どもとともに働く専門家の間で、精神保健上の懸念を特定しかつこれに対処することの重要性に関する意識が限られていることも、懸念する。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ナミビア精神保健政策を緊急に見直すとともに、WHOが勧告しているように包括的かつ全国的な児童精神保健政策を採択し、かつ、精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校〔および〕コミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、外来および入院による子どもにやさしい児童精神保健サービスが当該政策の不可欠な特徴となることを確保すること。 (b) 学校およびコミュニティで利用可能な心理カウンセリングサービスおよびソーシャルワーカーを増やす等の手段により、子どもおよび若者の自殺の防止を目的とした努力を強化するために緊急の行動をとるとともに、子どもとともに働くすべての専門家が、早期の自殺傾向および精神保健上の問題を特定しかつこれに対処するための十分な訓練を受けることを確保すること。 (c) 子ども(学習障害のある子どもを含む)の精神保健に関する政策およびプログラムの策定および実施に際し、WHOその他の国内外の機関の技術的援助を求めること。 思春期の健康 57.思春期の健康を向上させるために締約国が実施されているさまざまな政策および取り組みは歓迎しながらも、委員会は、強姦によるものを含む10代の妊娠件数が多いこと、性感染症の発生率が高いこと、ならびに、青少年の間で薬物およびアルコールの濫用が行なわれていることを、著しく懸念する。とくに委員会は以下のことについて懸念を覚えるものである。 (a) 締約国の懲罰な中絶法、ならびに、さまざまな社会的および法的課題(妊娠した女子が現行法の枠内の中絶サービスにアクセスする際に相当の遅延が見られることを含む)。これとの関連で、委員会は、このような制限的な中絶法が、青少年による乳児の遺棄または不法かつ危険な条件下での妊娠中絶につながっており、その生命および健康を危険にさらしていることに、懸念とともに留意する。これは、生命、差別からの自由および健康に対する青少年の権利の侵害である。 (b) リプロダクティブヘルスのための教育およびサービス(避妊手段および緊急ケアを含む)への10代によるアクセスが不十分であること。委員会はさらに、親の同意の有無に関わらず、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのためのケアに対する子どもの権利を確保するためにとられた措置についての情報が締約国報告書に記載されていないことを、遺憾に思う。 58.一般的意見4号(CRC/GC/2003/4、2003年)を参照しつつ、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年が危険な闇中絶に頼ることを防止し、かつ望まない妊娠、妊産婦死亡および乳児の遺棄を減少させるため、中絶に関する法律を見直しかつ改正すること。 (b) セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのためのサービス(避妊手段、施設における出産サービスおよび分娩時の保健ケアを含む)のアクセス可能性および利用可能性を、とくに農村部において確保するための努力を強化しかつ拡大するとともに、防止のための行動を通じて10代の妊娠率の高さに対処するための政策およびプログラムの実施を速やかに進め、かつ、秘密が守られるカウンセリングおよび支援に、妊娠した青少年が容易にアクセスできることを確保すること。 (c) とくに健康教育を学校カリキュラムの一部とすることによってリプロダクティブヘルス教育(青少年を対象とした性教育を含む)を強化するとともに、HIV/AIDSその他の性感染症を予防しかつ10代の妊娠を減少させる目的で、リプロダクティブヘルスケアのためのサービスに関する知識およびその利用可能性を向上させること。 (d) 10代の妊娠、有害物質の濫用およびHIV/AIDS感染その他の性感染症を防止するために立案された政策およびサービスの実施を監視するとともに、このような政策およびサービスに関する情報が、女子を含む青少年、家族、学校管理官、政府職員および保健ケア提供事業者に対して広く普及されることを確保すること。 (e) アルコールを濫用しかつ(または)タバコおよび薬物を使用したすべての子どもが、有害物質濫用からのリハビリテーションのための効果的サービスにアクセスできること(治療、カウンセリング、回復および再統合へのアクセスを含む)を確保すること。 HIV/AIDS 59.委員会は、HIVの感染率を削減し、HIVの母子感染予防策の高い実施率を達成し、かう抗レトロウィルス治療を提供することに関する締約国の進展を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚えるものである。 (a) 子ども、とくに思春期の女子の間でHIV感染率が高いこと。 (b) 政府の政策により、16歳未満の子どもが任意のHIV/AIDSカウンセリングおよび検査にアクセスするためには親または保護者の同意が必要とされており、情報および保健ケアに対する子どもの権利が深刻に制約されていること。 (c) HIV/AIDSの予防および治療の分野における資金が減少しており、その結果、HIV/AIDSに感染したまたはその影響を受けている子どものためのサービスおよびケアが削減されるおそれがあること。 60.一般的意見3号(CRC/GC/2003/4、2003年)に照らし、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子ども(16歳未満の女子を含む)が、親の同意の有無に関わらず、医学的助言および援助に無償でかつ秘密を守られながらアクセスできることを確保するための立法上の措置をとること。 (b) HIV/AIDS感染を予防するための政策およびプログラム(教育施設およびホステルにおけるコンドームのアクセス可能性および利用可能性を保障する、教育部門を対象とする国家HIV/AIDS政策を含む)が効果的に実施されることを確保すること。 (c) HIV/AIDSに感染したまたはその影響を受けている子どもに対してケアおよび支援を提供するための新たな政策およびプログラム(このような子どもをケアする家族およびコミュニティの能力を強化するためのプログラムを含む)を強化しかつ執行すること。 (d) 資源の配分および支出の有効性を高め、かつ国内パートナーから追加的拠出先を募る一助とする目的で、ユニセフその他の国際機関の技術的援助を求めること。 母乳育児 61.委員会は、子どもが生後4~5か月になるまで完全母乳育児を続ける母親は全体の5.7%に過ぎず、かつ子どもが生後6~8か月になるまで母乳育児を続ける母親は全体の1%に過ぎないという、締約国から提供された情報について深い懸念を覚える。委員会はまた、母乳育児を促進し、保護しかつ奨励するために締約国がとった措置(母乳育児のための教育および支援に対する資金の配分を含む)についての情報がないことも懸念するものである。加えて委員会は、締約国が、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を効果的に執行するための国内法および国内政策を定めていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、締約国の法律で3か月の出産休暇しか与えられていないため、とくに母親による乳児の母乳育児が妨げられていることにも、懸念とともに留意するものである。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 安定した雇用および給与ならびに社会保障に対する働く母親の権利を確保しつつ、出産休暇を延長することにより、生後6か月までの完全母乳育児の促進を強化すること。 (b) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の遵守を監視するための全国的な監視制度を設置すること。 (c) 母乳育児、産後1時間以内に母乳育児を開始することの意義、および、可能なかぎり人工乳または母乳代替品を与えないことの重要性に関して保健専門家(産科病棟で働く専門家を含む)およびコミュニティに対する研修を行なうとともに、これらの専門家およびコミュニティが、新たに母親となった女性に対して適切な支援を提供することを確保すること。 (d) すべての妊産婦センターで母乳育児が早期に開始されることを促進するための全国的プログラムを開始するとともに、母乳育児の重要性および人工栄養法のリスクに関する資料に、とくに新たに母親となった女性がアクセスできるようにし、かつこれらの女性の間でこれらの点に関する意識啓発を図ることにより、完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 63.委員会は、締約国が教育部門に相当の資源を配分してきたことを歓迎する。委員会はまた、インクルーシブ教育のための教育訓練部門向上プログラムも歓迎するものである。しかしながら、委員会は以下のことついて懸念を覚える。 (a) 教育へのアクセスに関して都市部と農村部間で格差があること、十分な訓練を受けた教育職員の数が不十分であること、ならびに、学校インフラが劣悪であり、かつ学校教材および教科書への子どものアクセスが限られていること。 (b) 初等中等学校において在学継続率が低く、かつ中退率が高いこと。 (c) 学校開発基金への寄付を含む私的負担、および、それが教育に対する子ども、とくに一定の集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、妊娠した青少年、障害のある子ども、移民、難民および先住民族である子どもなど)に与える影響。 (d) 10代の妊娠を理由とする女子の中退が広く生じており、かつ学習者の妊娠の防止およびこれへの対応に関する政策が実施されていないこと。 64.一般的意見1号を考慮にいれ、委員会は、締約国が、ナミビアのすべての子どもが良質な教育にアクセスできることを確保するためのプログラムおよび政策を引き続き強化するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 就学および通学に関する地域的格差を根絶する目的で、十分な訓練を受けた教員を増員し、学校インフラを向上させ、かつ学校教材および教科書への子どものアクセスを高めること。 (b) 学校出席・在学継続プログラムを向上させるための支援を強化し、かつ中退した生徒に対して職業訓練を提供すること。 (c) すべての子どもがなんらの妨げもなく平等に教育にアクセスできることを確保するため、学校制度におけるあらゆる態様の隠れた費用または追加的費用を解消すること(学校開発基金制度の即時廃止を含む)。 (d) 脆弱な立場に置かれた子どものニーズを考慮しながら特別教育プログラムを実施するとともに、妊娠した女子が教育に全面的かつ容易にアクセスできることを確保するため、学習者の妊娠の防止およびこれへの対応のための政策の効果的実施を確保すること。 乳幼児期の発達 65.委員会は、乳幼児期の統合的発達(ECD)に関する締約国の政策、ならびに、社会の最貧層に焦点を当て、かつECDワーカーの養成および研修を支援する、政府が運営する無償のECDセンターを整備していくことについて、子どものための国家的課題(2012~2016年)および第4次国家開発計画(2012~2017年9で明らかにされた決意を歓迎する。しかしながら委員会は、就学前の子どもに関するデータがないこと、ならびに、複合的ECDプログラムの実施および評価を効果的に調整する教育省および男女平等・児童福祉省の能力について、懸念を覚えるものである。 66.委員会は、締約国が、就学前のすべての子どもに関する調査を実施するとともに、十分な人的資源、財源および技術的資源ならびに監視および評価のための効果的な機構を通じてECD政策の実施を加速させること、もっとも不利な状況に置かれた子ども(女子ならびに農村部および遠隔地の子どもを含む)を優先的に対象とすること、ならびに、必要なときはコミュニティを基盤とする効率的アプローチを活用することを、勧告する。 H.その他の特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 経済的搾取(児童労働を含む) 67.委員会は、とくにインフォーマル部門および農村部で児童労働が蔓延していることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.14、パラ10)をあらためて表明する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 労働法における最低就労年齢(14歳)と教育終了年齢(16歳)が一致していないこと。 (b) 家事労働部門および農業部門で子どもの搾取および虐待(身体的虐待、教育の否定および長時間労働を含む)が行なわれているという報告があること。 (c) 危険な労働への子どもの関与を含む最悪の形態の児童労働が蔓延していること。 68.委員会は、締約国が、児童労働の問題に関する政策および立法が条約および関連のILO条約の規定に一致することを確保するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.14、パラ21)をあらためて繰り返す。加えて委員会は、締約国に対し、最悪の形態の児童労働をとくに重視しながら、児童労働に対応するためにあらゆる利用可能な手段を尽くすよう促すものである。委員会は、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 労働法を改正して、最低就労年齢を教育終了年齢の水準まで、かつ危険な労働における最低就労年齢を18歳に、引き上げること。 (b) 児童労働(農業部門におけるものを含む)が疑われる事案の査察および調査を増やすとともに、児童労働に関する規定の遵守を向上させるために賠償および刑事的制裁について定めること。 (c) 労災事件について現在利用可能なものよりも良質な統計を収集しかつ公表する目的で、農業労働者および子どもの家事労働者の使用者に対し、労働に関連したすべての負傷および重度疾患を、労働・社会福祉省の労働コミッショナー事務所に報告するよう要求すること。 (d) とくに農業地帯において、一般公衆を対象とした、児童労働および法規定の執行に関する意識啓発プログラムを行なうこと。 (e) 家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)を批准すること。 (f) この点に関して国際労働機関・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めること。 (g) とくに、就労している子どもが教育にアクセスできるようにすることの遵守を向上させるための民事上および刑事上の処罰を確保することにより、労働法を厳格に執行すること。 路上の状況にある子ども 69.委員会は、路上の状況にある子どもに関する意識を高め、かつこのような子どもを学校に再統合するために締約国が行なった全国的キャンペーンを歓迎する。しかしながら委員会は、路上の状況にある子どもが日常的に搾取、虐待、差別およびスティグマならびに警察による逮捕および拘禁を受けているという報告について懸念を覚えるものである。加えて委員会は、締約国において路上の状況にある子どもの施設措置が行なわれていることを懸念する。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、路上の状況にある子どもを保護し、かつその人数を削減するための包括的戦略(貧困、家族間暴力、移住および教育へのアクセスの欠如といった根本的原因の特定を含む)を策定すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、路上の状況にある女子が有している、性的虐待、搾取および早期妊娠に対する特有の脆弱性に対して特段の注意を払うよう、求める。 (b) 子どもの最善の利益を考慮しながら、施設措置に代わる効果的選択肢を提示し、かつ、実現可能かつ適切なときは路上の状況にある子どもが家族と再統合することを促進する取り組みを発展させること。この文脈において、委員会は、締約国が、これらの子どもの長期的な教育上および発達上のニーズを(可能なときは心理的支援等も通じて)支援するプログラムを発展させるよう、勧告する。 (c) 路上の状況にある子どもが、公衆および法執行官による差別、虐待およびいやがらせを受けず、かつ恣意的な逮捕および不法な拘禁の対象とされないことを確保すること。 (d) 路上の状況にある子どもに対する、警察および警察留置施設または政府の拘禁施設の職員による不当な取扱いおよび虐待についての苦情を迅速に調査するとともに、懲戒措置を開始すること。 売買、取引および誘拐 71.委員会は、子どもが、農業、道路建設、物品販売および商業的セックスワークにおける雇用を目的として締約国内で取引されていること、ならびに、他国の子どもが、家畜の世話および保育のために人身取引によって締約国に連れてこられていることを、深く懸念する。委員会はまた、人身取引に関する具体的法律が制定されておらず、かつ人身取引の訴追が行なわれていないことにも、懸念とともに留意するものである。 72.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)および子どもの権利条約第35条に一致する、人身取引に関する法律を緊急に採択すること。 (b) 国境管理をいっそう厳格にすること等の手段により、国内外の人身取引と闘うための努力を強化すること。 (c) 子どもの売買、取引および誘拐の加害者に対して自己の犯罪についての責任をとらせるための十分な措置がとられることを確保すること。 少年司法の運営 73.委員会は、刑事訴訟法改正法(2003年の法律第24号)、および、子どもにやさしい裁判所に関する同法の規定を歓迎する。しかしながら委員会は、例外的なほど長期の遅延にも関わらず、子ども司法法案が採択されていないことを懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢(締約国では7歳)が容認できないほど低いこと。 (b) 子ども裁判所がすべての州で稼働しているわけではないこと。 (c) 法律に抵触した子どもの状況に関する情報が、締約国報告書および公有可能な場に存在しないこと。 (d) 男女双方の子どもを対象とする特別拘禁施設が存在せず、子どもが成人とともに収監されており、かつ拘禁(収監を含む)の環境が劣悪であること。 (e) 裁判官が、刑事訴訟法改正法(2003年の法律第24号)を一貫して執行していないという報告があること。 74.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10、2007年)を含む他の関連の基準と全面的に一致させるべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.14、パラ20)をあらためて繰り返す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 保留されている子どものケアおよび保護法案および子ども司法法案を緊急に改訂しかつ採択すること。 (b) 刑事責任年齢を修正して国際的に容認可能な水準と一致させるとともに、このような規定で、より低い年齢の適用が例外的に認められることのないようにすること。 (c) 刑事訴訟法改正法における少年司法関連のすべての規定(子ども裁判所に関する規定を含む)が効果的に執行されることを確保すること。 (d) 締約国のすべての州に子ども裁判所を設置すること。 (e) 少年司法制度で働くすべての専門家を対象として、条約、他の関連の国際基準および委員会の一般的意見10号に関する研修を行なうこと。 (f) とくに、子どもの年齢およびニーズにふさわしい環境を備えた子ども向けの特別刑務所を設置し、かつ国内のすべての拘禁センターで社会サービスの提供を確保することによって、自由を奪われた子どもの権利を保護し、かつその拘禁および収監の環境を向上させるとともに、当面、国内全域のすべての刑務所および未決勾留センターにおいて子どもが成人から分離されることを保障すること。 (g) 拘禁されている子どもの人数およびその法的状況、このような子どもの拘禁環境、ならびに、法的援助を提供された子どもの事案に関する情報を収集し、かつ当該情報を公に利用可能とすること。 犯罪の被害者および証人である子ども 75.委員会は、犯罪の被害者および証人である子どもの保護について非政府組織および専門家とともに進められているパイロットプロジェクトに肯定的に留意する。しかしながら委員会は、性的虐待の被害者および証人である子どもを法的手続中に保護する機構が存在せず、子どもがさらなるトラウマおよび不安にさらされていること、ならびに、子どもの証人保護プログラムがすべての州で運用されているわけではないことを、懸念するものである。 76.委員会は、被害者および証人である子どもならびにそのプライバシー権の保護を向上させ、かつ子どもの証人保護プログラムがすべての州で効果的に執行されることを確保する目的で、締約国が、犯罪の被害者および証人である子どものための保護プログラムの、同国のすべての州における発展および実施を加速させるよう、勧告する。 I.国際人権文書の批准 77.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ加盟国となっていない条約、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 78.委員会は、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく報告義務(いずれについても2004年5月16日の報告書提出期限が過ぎている)を履行するよう、促す。 J.地域機関および国際機関との協力 79.委員会は、締約国が、締約国および他のアフリカ連合(AU)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、AU・子どもの権利および福祉に関するアフリカ専門家委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 80.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 81.委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国による第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 82.委員会は、締約国に対し、次回の第4回~第6回統合定期報告書を2017年10月29日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 83.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年12月13日)。
https://w.atwiki.jp/kodomoteate/pages/13.html
※掲載希望の記事がある場合はこちらからご連絡ください※ 毎日新聞 地方版(群馬)朝刊 2010年5月22日 / 全国市長会:子ども手当、全額を国の負担など決議--関東支部総会 第99回全国市長会関東支部総会が21日、高崎市のホテルで開かれ、子ども手当と予防接種に関する緊急決議を行った。 子ども手当については、事務費や人件費を含め全額を国が負担し、未納の保育料などに充てることができるよう柔軟な制度設計の検討を求めている。 □魚拓 毎日新聞 2010年5月21日 / 民主党:消費増税明記か見送りか…参院選公約、原案固まる 子ども手当の支給額については現行の月1万3000円から「上積みする」との表現にとどめ、同党が衆院選で掲げた11年度以降の満額支給(月2万6000円)の明記は避けた。 □魚拓 MSN産経ニュース 2010.5.21 22 43 / 子ども手当の地方負担「自治財政権を害する」専門家が報告 子ども手当の法制上の問題点と神奈川県の対応策を検討してきた県の検討会議(座長・兼子仁都立大名誉教授)は21日、財源の地方負担を「憲法上保障された自治財政権を害する」とする報告書を松沢成文知事に提出した。 報告を受け、松沢知事は「専門的解釈を一つの武器に、国と地方の協議の場などで地方負担を阻止する戦いに入っていかねばならない」と述べた。県としての対応を来週、正式決定する。 □魚拓 毎日新聞 2010年5月21日 東京朝刊 / ああ政治:子ども手当「約束違う」 関西のかあさん座談会 6月から支給が始まる「子ども手当」。今年度は中学生までの子ども1人当たり月額1万3000円の支給ですが、どうやって使うのがいいか、迷っている親御さんも多いのでは? 一方、来年度から満額の2万6000円にするのかどうか、財源の問題もあって、政府与党は迷走中です。30~50代の関西在住のお母さん3人に集まってもらい、手当について感じることを本音で話し合ってもらいました。 司会 子ども手当は少子化対策でもあります。手当がもう1人産む動機付けになると思いますか? 島さん うちは主人が「もういらない」って言ってます。夫婦とも自営業で先行きが見通せない。私はもう1人ほしいですが、手当が問題を解決するとは言えないですね。 小柳さん うちは子どもが4人いるけど、お金がないならないで、子どもに何でもしてやろうとは思いません。 島さん 「子育てが大変」っていう空気がまん延してる。もっと楽しい部分をクローズアップするのも大切かもしれませんね。 □魚拓 子ども手当満額支給、民主参院選公約に明記へ(YOMIURI ONLINE) 民主党の参院選公約を検討している「党マニフェスト企画委員会」の三つの研究会が27日、国会内でそれぞれ総会を開き、中間取りまとめを行った。 子ども手当支給など、昨年の衆院選の政権公約(マニフェスト)で掲げた公約をほぼそのまま踏襲する一方、「公務員庁」の設置など新規政策も打ち出した。5月末の取りまとめに向け、財源をどう手当てするかが焦点となりそうだ。 □魚拓は取得出来ません 朝日新聞 4月27日付 天声人語(asahi.com) 火の車の財政から、子ども手当が絞り出される。社会全体で子育てを応援する考えに異存はない。だが、日本に住む外国人の、海外にいる子にまで出すのは気前が良すぎないか▼兵庫県尼崎市に住む韓国人の男性が「妻の母国、タイの修道院と孤児院にいる554人と養子縁組している」と、年間で約8600万円の手当を申請した。批判派が警告していた「乱用」も、ここまでくるとすがすがしい。当然、市役所の窓口は拒んだ ▼離れていても、世話やしつけをし、仕送りしていれば支給されるという。このあいまいさは、これからも混乱のもとだ。世は聖人ばかりではなく、子どもを金づると見る親もいよう。使い道を善意に頼る現金支給より、保育所づくりなど地道な支援を急いでほしい □魚拓 子ども手当:韓国人男性が554人分申請 孤児と養子縁組(毎日jp) 兵庫県尼崎市に住む50歳代とみられる韓国人男性が、養子縁組したという554人分の子ども手当約8600万円(年間)の申請をするため、同市の窓口を訪れていたことが分かった。市から照会を受けた厚生労働省は「支給対象にならない」と判断し、市は受け付けなかった。インターネット上では大量の子ども手当を申請した例が書き込まれているが、いずれも架空とみられ、同省が数百人単位の一斉申請を確認したのは初めて。【鈴木直】 □魚拓 現金給付の見直し検討=子ども手当-古川国家戦略室長(時事通信) 古川元久内閣府副大臣(国家戦略室長)は11日、NHKの番組に出演し、2011年度からの子ども手当の満額(1人当たり月額2万6000円)支給に関連し、「現物給付の方がいいという声も踏まえて議論したい」と述べ、一部を学校給食費や保育所サービスなどの形で給付することを検討する方針を示した。古川副大臣は夏の参院選に向けたマニフェスト(政権公約)策定作業に関し、「現実の財源問題の中で柔軟に考えていくことは(政府と民主党の)マニフェスト企画委員会などでもほぼ一致した認識だ」と指摘。昨年の衆院選で掲げた公約の実施方法や時期について、見直しを進める意向を示した。 □魚拓 民主 子ども手当支給額で議論 (NHKニュース) 民主党は、夏の参議院選挙の政権公約について検討を進めていますが、子ども手当を来年度から満額の月2万6000円支給するとしていることに、党内や、連立を組む社民党内から異論が出ており、支給額を見直すかどうかをめぐって、今後、議論が本格化する見通しです。 □魚拓 子ども手当申請書類 京都市12日に送付(読売新聞) 中学校卒業までの子供1人あたり月額1万3000円が支給される「子ども手当」が創設されたのを受け、京都市は12日、申請書類などを送付する。 同市では、子ども約18万5000人が受給対象となる見込みで、申請者が指定した金融機関の口座に6月に第1回の4、5月分が振り込まれる。 これまで所得制限などで児童手当を受けていなかった世帯は、送られてくる請求書に必要事項を記入し、預金通帳の写しなどを添付して返信する。 児童手当をこれまで受けていた世帯では、今春、中学1年生になった人以下の対象者は新たな手続きが不要だが、中学2年生、3年生は申請が必要。 □※魚拓はブロックされているので取得不可 子供が死亡した家に「子ども手当」の申請書を誤送 港区 (MSN産経ニュース) 東京都港区は9日、すでに死亡している子供計18人の「子ども手当」の受給奨励通知と申請書を誤送したと発表した。誤送されたのは16世帯。コンピューターを使って支給対象となる子供を抽出する際、死亡している子供を除外するプログラムがなかったためだという。区は関係者に謝罪するとともに、「誤りをチェックする仕組みを構築する」としている。 □魚拓 滞納保育料など徴収模索 県内最多、13万6千人に支給 「子ども手当」で市 (千葉日報) 児童手当に代わり4月から新たに支給される「子ども手当」。県内最多約13万6千人の対象者を抱える千葉市も申請書などの発送準備に追われているが、一方で、手当支給を機に保育料や学校給食費の滞納分を少しでも徴収できないか模索する動きも。市のホームページには『(手当の)豊かな使い方のために』と法の趣旨に理解を求める異例のメッセージが掲載され、財政難の苦心ぶりがうかがえる。 □魚拓 子ども手当、厚労省HPに「一問一答」(読売新聞) 厚生労働省は6日、子ども手当に関する「一問一答」を同省ホームページに掲載した。国会審議でも取り上げられた「母国で50人の孤児と養子縁組を行った外国人」については、「支給されない」と明記した。同省は3月31日、実務を担当する自治体あてに支給要件などを通知した。この中で在日外国人への支給要件は、〈1〉少なくとも年2回以上、子どもと面会している〈2〉生活費などの送金がおおむね4か月に1度は継続的に行われている――ことなどとした。しかし、その後も、海外に子どもがいる在日外国人に「子ども手当」を支給するかどうかの問い合わせが相次いだため、具体的事例を挙げて説明することにした。 □魚拓 子ども手当:初回支給日、6月11日--札幌市 /北海道(毎日jp) 札幌市は2日、子ども手当の実施内容について発表した。対象児童・生徒は20万8000人(13万9000世帯)で、初回支給日は6月11日。4月末までに該当者に通知書が届く。市子育て支援課によると、手当は中学校以下の子どもを養育する人が対象で、所得制限はない。子ども一人に1万3000円が支給される。従来の児童手当より5万8000人(3万9000世帯)増える。今年度の支給月は、6、10、2月で、2~4カ月分がまとめて支払われる。支給総額は270億円(市負担分は29億円)。支給を受けずに寄付する方法もある。 □魚拓 【子ども手当】「年2回面会」「4カ月ごと仕送りチェック」 外国人向け不正防止(産経ニュース) 保護者らが子ども手当の支給を受けるには、子供の居住地に関係なく、子供を保護監督し、生計が同一であることが条件。母国に子供を残す外国人が支給要件を満たすか確認する方法として▽少なくとも年2回以上子供と面会しているかパスポートで確認▽子供に対する生活費などの仕送りが概ね4カ月ごとに行われていることを銀行の送金通知などで確認▽来日前に子供と同居していたかを居住証明書などで確認-などとしている。 □魚拓 子ども手当など財源面から検証へ 政権公約会議が初会合(47NEWSよんななニュース) 政府、民主党は31日、夏の参院選マニフェスト(政権公約)を策定する「政権公約会議」の初会合を党本部で開き、子ども手当の満額支給など昨年の衆院選マニフェストで2011年度以降に実施するとした公約の実現性を財源面から検証する方針を決めた。 □魚拓 子ども手当に雇用保険… 4月、生活はこう変わる(中日新聞) 4月から暮らしに深くかかわる制度のスタートや変更が相次ぐ。 高校の実質無償化や子ども手当といった民主党のマニフェスト(政権公約)の柱が実施に移され、雇用保険の加入要件を緩和。 子育て世代や、非正規労働者への支援を拡充する。 一方、診療報酬や国民年金保険料の引き上げなど負担が増える分野もある。 □魚拓 政権公約の実施時期手直しに言及 高島筆頭副幹事長(47NEWSよんななニュース) マニフェストをめぐっては、岡田克也外相が27日の会合で「(公約に)書いたことをすべてやろうとすれば相当無理がくる」と指摘。野田佳彦、峰崎直樹両財務副大臣が財源不足を理由に、2011年度からの子ども手当満額支給は困難との認識を示すなど、税収の落ち込みで見直しは避けられないとの見方が広がっている □魚拓 お金ください! 「子ども手当て」に外国人殺到で大混乱(zakuzaku) 在日外国人も含む15歳以下の子どもの保護者に、子ども1人あたり毎月1万3000円を支給する「子ども手当て」が26日、国会で成立した。そんななか、外国人を多く抱える自治体の窓口にはすでに連日のように外国人が訪れ、「子どもがいればお金がもらえると聞いた」などと職員を困らせているという。自治体の中には、法の改善を求める要望書を国に出すところも現れている。 東京都荒川区は人口約20万人のうち、1万5000人が外国人居住者(2009年3月1日現在)。人口の実に約7%を占める。同区役所は最近、子ども手当ての受給を問い合わせる外国人への対応に苦慮しているという。 □魚拓 子ども手当地方負担 県内首長が猛反発/神奈川(カナロコ) 子ども手当の財源に地方負担が政府内で検討されていることに対し、県内首長から猛烈な反発が起きている。県市長会(会長・服部信明茅ケ崎市長)と県町村会(会長・間宮恒行大井町長)は14日、国や民主党に対して全額国庫負担を求める緊急要望を提出。松沢成文知事も地方負担に対し、「強行すればボイコットする」と国に宣言しており、県市長会、県町村会もこれに共闘して反対。地方負担が生じた場合、「支給事務の拒否も辞さない」と、強い姿勢を示している。 □魚拓 子ども手当満額支給せず? 仙谷氏「給食費など充当も」(asahi.com) 仙谷由人国家戦略相は28日、2011年度から子ども手当を満額支給する代わりに、学校給食費への補助や自治体による保育施設の整備などに充てられないか検討する考えを記者団に示した。「給食費をそこから充当することもあり得る。市町村が保育などに使えるものにすることも考えられる」と語った。鳩山政権は11年度から子ども1人あたり月額2万6千円を支給する方針だが、財源のめどは立っていない。 仙谷氏はまた、子ども手当についての民主党マニフェストの表現を参院選に向けて修正する意向も示し、「支払い方などについて検討するというような書き方になる可能性はある」と述べた。 □魚拓 初試算でわかった“子ども手当て”の衝撃!「得する家庭」「破綻する家庭」はここが違う(ダイヤモンドオンライン) 民主党・鳩山政権が政策の目玉に掲げる「子ども手当」。中学3年までのすべての子供に月額2万6000円(来年度は1万3000円)を支給するというありがたい内容だが、財源の確保や所得制限の有無など、いまだよく見えてこない政策の中身を、不安視する声も少なくない。果たして子ども手当は子育て世帯の救世主となるのか? はたまた増税の布石となるのか? (取材・文/庄司里紗) 結果次第で見直し?6月までに子ども手当試算(読売オンライン) 菅財務相は「マニフェスト(政権公約)通りに実行すればどのぐらいの費用がかかるか、逆にそれが難しいとなった時に、例えばどのぐらいであれば税との関係がどうなるかなどを想定して試算する」と語った。 民主党は10年度は月1万3000円を支給する子ども手当について、11年度からは月2万6000円に引き上げると公約している。満額支給には約2兆5000億円の新たな財源が必要になることから、試算の結果によっては見直し論議につながる可能性がある。 □魚拓 国家戦略室:ヒアリング記録「一切保有せず」 子ども手当(毎日新聞) 政府の国家戦略室は21日までに、昨年末の予算編成作業で「子ども手当」について厚生労働省からヒアリングした際の記録など行政文書を「一切保有していない」と、情報公開請求した毎日新聞に回答した。政府の「予算編成のあり方に関する検討会」は、戦略室を事務局にして「編成過程・執行の透明化」を提言しているが、ヒアリング記録などの基礎資料がなければ検証は難しい。「透明化」は掛け声だけの感が否めず、情報公開に取り組む姿勢が問われそうだ。 □魚拓 「外国人」問題も浮上=11年度以降「満額」?-子ども手当(時事ドットコム) 一方、法案によると、子ども手当の支給対象は、子どもを「監護」し、「生計を同じくする父または母」が基本。これに従えば、例えば、在日外国人の父親でも日本に1年以上滞在見込みであれば、母親とともに母国に残してきた子どものために手当を受給できる。逆に、日本人の両親がともに海外在住で、子どもが日本国内で単身生活している場合には手当を受給できないという。長妻昭厚生労働相がこうした見解を同委で示すと、野党の自民党議員から「外国人がもらえて、日本人がもらえないのはおかしい」といった反発の声が相次いだ。 □魚拓 子ども手当は見直しを OECDの政策提言(共同通信) 経済協力開発機構(OECD)は18日、日本の経済政策に関する提言を発表した。鳩山政権が導入を目指している子ども手当について「目的と対象を再検討すべきだ」とし、大幅な見直しが必要だとの見解を明らかにした。所得格差是正のための税制改革も求めた。 □魚拓 社説2 外国にいる子に手当は不要(3/17)(日経ネット) 子ども手当に必要な財源は10年度で2兆3千億円、11年度からは防衛費を上回る5兆3千億円に達する。有り余る財源があるならいざしらず、財政は火の車で10年度に44兆円もの新規国債発行が必要だ。 10年度についてさえ、子ども手当は国の費用だけではまかなえなかった。そのため児童手当の仕組みを残し、自治体と企業に必要なお金の一部を負担させる。さらに満額を配る11年度以降、財源をどう用意するかという問題が残る。支給の条件をいいかげんにするようでは国民の理解は得られない。 □魚拓 子ども手当 修正案合意…与党3党と公明(読売新聞) 子ども手当法案は、支給対象を日本人に限定しておらず、外国人でも日本に居住していれば母国などに住む子どもの手当を受け取ることができる。この点について、鳩山首相は10日の衆院厚生労働委員会で、2010年度は予定通り外国人にも支給する考えを示す一方、「国民に『こういう人まで(手当をもらえるのか)』という思いがあるかもしれないので、11年度についてはぜひ検討したい」と述べ、将来的な見直しに言及した。 □魚拓 驚愕!子ども手当、出稼ぎ外国人が母国に50人子供いても支給 鳩山政権の看板政策「子ども手当」法案が波紋を広げている。日本国内に住所のある外国人が母国に残している子供にも支給されるが、日本人の子供でも両親が仕事関係等で海外に住む場合は支給されないというのだ。税金投入のバラマキ政策とはいえ、あまりの不公平感に不満が噴出。鳩山由紀夫首相の友愛は「世界は家族、血税も世界に」という壮大な精神なのか。 □魚拓 「子ども手当法案」、自民党とみんなの党を除く各党が賛成し衆議院通過(FNNニュース) 民主党は、政権発足半年の16日、目玉政策の採決に先立ち、政権交代の象徴・福田議員を送り込んだ。福田議員は「子ども手当支給に関する法案に賛成の立場より討論します。考えても見てください。子どもは生まれる家庭を選べません。家計の急変が起こる可能性も大きく、それは子どもたちのセイキョーに影響...、生活に影響を与えます」と、やや緊張気味ながら、子ども手当の必要性を訴えた。 □魚拓 子ども手当法案 月内成立へ(アサヒ・コムきっず) 教育や子育てにかかわる民主党の政策の大きな柱である子ども手当法案と高校無償化法案が衆議院本会議で可決されました。与党3党(民主、社民、国民新)と公明党、共産党が賛成。参議院での審議を経て、年度内に成立する見込みです。 □魚拓 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/267.html
総括所見:スイス(第2~4回・2015年) 第1回(2002年)OPAC(2006年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/CHE/CO/2-4(2015年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2015年1月21日および22日に開かれた第1959回および第1961回会合(CRC/C/SR.1959 and 1961参照)においてスイスの第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/CHE/2-4)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/CHE/2-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/CHE/Q/2.4/Add.1)の提出を歓迎する。ただし委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、とくに以下の条約について批准または加入が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。 子供の売買、児童買春および児童ポルノに関する子供の権利条約の選択議定書(2006年9月) 障害のある人の権利に関する条約(2014年4月) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2009年9月) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2008年9月) 1952年の母性保護条約(改正)の改正に関する国際労働機関第183号条約(2000年)(2014年6月) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2014年3月) 4.委員会は、とくに以下の立法措置が施行されたことを歓迎する。 民法改正(2014年7月1日(親の権威)および2013年1月1日(成人保護法、人事法および子ども法)) 庇護法改正(2014年7月1日) 刑法改正(2014年7月1日) 里子の措置に関するオルドナンス(2013年1月1日) 連邦子ども・若者振興法(2013年1月1日) スイス刑事訴訟法(2011年1月1日) 少年刑事訴訟法(2011年1月1日) 改正連邦外国人法(2011年1月1日) 国際的な子の奪取と子どもおよび成人の保護に関する諸ハーグ条約に関する連邦法(2009年7月1日) 改正連邦被害者支援法(2009年1月1日) 子どもおよび若者のための保護措置ならびに子どもの権利の強化に関するオルドナンス(2010年8月1日) 少年刑法(2007年1月1日) 改正連邦職業専門教育訓練法(2004年1月1日) 連邦障害者差別解消法(2004年1月1日) 5.委員会はまた、とくに以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 武力紛争において軍隊または武装集団と関係している子どもを保護するための連邦外務省行動計画(2014~2016年) 人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年) HIVおよびその他の性感染症に関する国家計画(2011~2017年) 包括的スイス反貧困戦略(2010年採択)ならびに貧困防止および貧困との闘いに関する国家計画(2014~2018年、2013年採択) スイス人権専門センター(2010年設置) スイス子ども・若者政策戦略(2008年採択) 連邦障害者平等局(2004年設置) III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 留保 6.締約国が条約第5条、第7条および第40条(b)(v)(vi)に付した留保を撤回したことは歓迎しながらも、委員会は、締約国が、第10条第1項、第37条(c)および第40条第2項(b)(ii)~(iii)に付した留保をいまなお維持していることを遺憾に思う。 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ7)をあらためて繰り返すとともに、1993年6月25日にウィーンの世界人権会議で採択されたウィーン宣言および行動計画に照らして、締約国に対し、条約に付した留保でいまなお残っているものの撤回を検討するよう促す。 立法 8.条約と国内法とのさらなる一致を確保するために連邦およびカントンのレベルで子どもに関連するさまざまな立法措置がとられたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの努力が条約のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。 9.委員会は、締約国が、連邦法およびカントン法を条約と包括的に調和させるための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、締約国が2008年に「スイス子ども・若者政策戦略」を発表し、それが連邦子ども・若者振興法の採択(2011年)につながったこと、および、締約国が最近、子ども・若者政策の状況に関する報告書をまとめたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、同戦略が条約のすべての分野を網羅しているわけではないことを依然として懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約の原則および規定の全般的実現のための国家的政策および戦略を、子どもおよび市民社会と協議しながら策定しかつ実施し、もってカントンの計画および戦略の枠組みを示すよう勧告する。委員会はまた、締約国が、その包括的な政策および戦略ならびにカントンのレベルにおける関連の計画または戦略の実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分することも勧告するものである。 調整 12.委員会は、締約国の連邦制度によって生じる課題に留意するとともに、全般的な調整が行なわれていないことにより、締約国の諸カントン全体を通じて条約の実施に相当の格差が生じていることを懸念する。 13.委員会は、締約国が、自国の領域全体で平等な保護水準が達成されるようにする目的で、諸部門全体でならびに連邦、カントンおよびコミューンの各レベルで子どものための行動を効果的に調整する全面的な能力および権限ならびに人的資源、技術的資源および財源を与えられた、条約ならびに包括的な政策および戦略を実施するための調整機関を設置するよう勧告する。委員会はまた、市民社会および子どもに対して当該調整機関の一翼を担うよう呼びかけることも勧告するものである。 資源配分 14.締約国が世界でもっとも経済的に豊かな国のひとつであり、かつ相当多くの資源を子ども関連プログラムに投資していることを念頭に置きつつ、委員会は、締約国が、連邦予算およびカントン予算における予算の計画および配分について子どもに特化したアプローチを活用していないことから、子どもに対する投資の効果および条約の全般的適用状況を予算の観点から明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが事実上できなくなっていることに留意する。 15.委員会は、締約国が、連邦およびカントンのレベルにおける子どものニーズを十分に考慮に入れ、かつ、関連の部門および機関に対する子ども向けの明確な配分額、具体的指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、条約の実施に配分される資源の分配の有効性、十分性および公平性が効果的に監視および評価されることを確保するよう勧告するものである。 データ収集 16.さまざまなデータ収集システムが存在することには留意しながらも、委員会は、締約国に包括的なデータ収集システムが存在せず、かつ、条約の十分な分野、とくに被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもの集団に関する分野に関して信頼できる細分化されたデータが入手できないことを、遺憾に思う。 17.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ18)にしたがい、委員会は、締約国が、自国のデータ収集システムを迅速に改善するよう強く勧告する。データは、条約のすべての分野を対象とするべきであり、かつ、すべての子ども、とりわけ被害を受けやすい状況に置かれた子どもの状況の分析を容易にするため、とくに年齢、性別、障害、地理的所在、民族的および国民的出身ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。さらに委員会は、当該データおよび指標が、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきことを勧告する。 独立の監視 18.スイス人権専門センターが設置されたことには留意しながらも、委員会は、あらゆるレベルで条約の実施を監視する、子どもの権利侵害の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた中央独立機関が引き続き存在していないことを依然として懸念する。 19.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/15/Add.182、パラ16)にしたがい、委員会は、締約国に対し、人権一般を監視するための独立の機構および子どもの権利を監視するための具体的機構(子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応すること、被害者のプライバシーおよび保護を確保することならびに被害者のためのモニタリングおよびフォローアップ活動を行なうことのできるもの)を迅速に設置するための措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、パリ原則との全面的一致を確保すべく、そのような監視機構の独立性(財政、権限および免責特権に関するものを含む)を確保するよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 20.ロマンシュ語への条約の翻訳および「財団21:持続可能な開発のための教育」の設置など、情報の普及および研修の実施のために締約国が行なっているさまざまな努力には留意しながらも、委員会は、子ども、親および公衆一般の間で条約があまり周知されていないことを懸念する。委員会はまた、子どもとともにまたは子どものために働く専門家を対象とした子どもの権利に関する研修活動が体系的でも包括的でもないことも懸念するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもにやさしい方法による条約についての意識啓発にメディアがいっそう関与するよう奨励すること、公衆向けの積極的広報活動への子どもの積極的関与を促進することおよび親をとくに対象とした措置を確保すること等の手段により、意識啓発プログラムを引き続き強化すること。 (b) 裁判官、弁護士、法執行官、公務員、教員、保健要員(心理学者を含む)およびソーシャルワーカーなど、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象とした、子どもの権利に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 子どもの権利と企業セクター 22.委員会は、多国籍企業の活動を規制するためにとられた措置および構想されている措置(スイス・ラギー戦略の策定を含む)について締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、任意の自主規制に頼るばかりであり、締約国の管轄または管理の下で行動する企業の、締約国の領域の外で展開される活動において子どもの権利を尊重する義務を明示的に定めた規制の枠組みを用意していないことを懸念するものである。 23.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) スイス・ラギー戦略を速やかに採択すること等を通じ、締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に悪影響を及ぼしまたは環境基準、労働基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立するとともに、その効果的実施を確保すること。 (b) 締約国の領域で操業しまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社が、子どもの権利および人権一般のいかなる侵害についても法的に責任を問われることを確保すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.締約国がとった差別禁止措置、とくに移住者の統合の促進を目的とした措置は歓迎しながらも、委員会は、周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子ども(子どもの移住者、難民および庇護希望者、障害のある子どもならびに在留資格のない子どもを含む)に対する差別が引き続き蔓延していることを依然として懸念する。さらに委員会は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの人々に対するヘイトスピーチの発生およびそれがこれらの集団に属する子どもに及ぼす影響、ならびに、これらの人々が人種差別に関する刑法第261条bisの保護を享受していない事実について、懸念を覚えるものである。 25.委員会は、締約国が、周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子ども(とくに子どもの移住者、難民および庇護希望者、障害のある子どもならびに在留資格のない子ども)に対する差別を解消するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、寛容および相互尊重の文化を醸成するための努力を強化するとともに、性的指向およびジェンダーアイデンティティを理由とする差別を禁止する包括的な法律を採択し、かつ刑法第261条bisにこれらの自由を含めることも、勧告するものである。 子どもの最善の利益 26.子どもの「ウェルビーイング」が締約国の法体系における指導原理のひとつであることには留意しながらも、委員会は、子どもの「ウェルビーイング」という語はその意味および適用において条約に掲げられた子どもの最善の利益とは異なるという見解に立つ。したがって委員会は、子どもの最善の利益(l'interet superieur de l'enfant)が連邦およびカントンのすべての関連法に明示的に編入されておらず、かつ、子どもに関連するすべての行政手続および司法手続または政策プログラムにおいて体系的に適用されているわけでもないことを懸念するものである。 27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての委員会の一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを締約国が確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するよう、奨励されるところである。このような手続および指針は、裁判所に対して、かつ行政機関、立法機関、公立および私立の社会福祉施設ならびに公衆一般に対して、普及されるべきである。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、家事手続、保護事件、少年司法その他の分野で子どもの意見の尊重を確保し、かつ、自治体レベルの政治的計画策定および意思決定手続に子どもの関与を得るために締約国が行なっている継続的努力に留意する。しかしながら委員会は、実際には子どもに影響を与えるすべての事柄について子どもの意見の尊重が制度的に確保されかつ実施されているわけではないこと、および、実施についてカントン間の格差が存在することを懸念するものである。委員会はまた、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象としたこの点に関する研修が不十分であることも懸念する。 29.意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、委員会は、締約国が、条約第12条にしたがってこの権利を強化するための措置をとるよう勧告する。この目的のため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 意見を聴かれる子どもの権利が、子どもに影響を与えるすべての司法手続および行政手続において適用され、かつその意見が正当に重視されることを確保するための努力を強化すること。 (b) 周縁化された状況および不利な立場に置かれた状況にある子どもに特段の注意を払いながら、子どもが、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつ、学校その他の教育施設および家庭ならびに政治的計画策定および意思決定手続においてこれらの意見を正当に重視される権利を有することを確保するための努力を強化すること。 (c) 司法、福祉その他の部門において子どもに対応する専門家が、子どもの意味のある参加を確保する方法についての適切な研修を体系的に受けることを確保すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 出生登録/名前および国籍 30.すべての子どもが登録されることを確保するために締約国がとったさまざまな法律上および政策上の措置は歓迎しながらも、委員会は、外国籍の子どもの登録に遅延があるという報告について懸念を覚える。さらに委員会は、締約国で出生した子どもであって国籍が付与されなければ無国籍となる者がスイス国籍を取得する権利を保障されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、子どもの親の法的地位および(または)出身にかかわらず、すべての子どもが可能なかぎり早期に出生登録を利用できることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、自国の領域で出生したすべての子どもについて、国籍が付与されなければ無国籍となる場合にその親の法的地位にかかわらずスイス国籍を取得することを確保するとともに、無国籍の削減に関する1961年の条約、国籍に関する1997年の欧州条約および国家承継に関連する無国籍の回避に関する2009年の欧州評議会条約を批准するよう、勧告する。 親を知り、かつ親によって養育される権利 32.委員会は、養子縁組に関するスイス民法第268条(c)および連邦生殖補助医療法第27条によれば、子どもに対してその生物学的親の身元について告知を行なえるのは当該子どもが「正当な利益」を有している場合に限られていることに留意する。委員会は、「正当な利益」の概念が子どもの最善の利益と常に一致するかどうか、依然として懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、養子または生殖補助医療によって生まれた子どもが自己の出自を知る権利の尊重を可能なかぎり確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はとくに、締約国が、自己の生物学的出自に関する情報を求める子どもの権利の前提条件としての正当な利益への言及の削除を検討するよう勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 34.委員会は、締約国において、匿名による子どもの遺棄を認める赤ちゃんボックスが規制されておらず、かつその数が増えていること(これはとくに条約第6~9条および第19条の違反である)を深く懸念する。 35.委員会は、締約国に対し、赤ちゃんボックスの使用を禁止し、すでに存在する代替手段を強化しかつ促進し、かつ、最後の手段として病院における秘密出産の可能性を導入することを検討するよう、促す。 適切な情報へのアクセス 36.委員会は、デジタルメディアおよび情報通信技術(ICT)が子どもの安全に及ぼすリスクに対応するために締約国が行なっている努力(若者のエンパワーメントおよび電子メディア関連のリスクからの若者の保護を目的とする5か年プログラムを含む)に留意する。しかしながら委員会は、これらのリスクからの子どもの保護にいまなお空白があることを懸念するものである。 37.委員会は、締約国が、「若者と暴力:家庭、学校、社会空間およびメディアにおける効果的防止」に関する連邦審議会報告書で勧告されている措置をフォローアップするとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもがデジタルメディアおよびICTにアクセスでき、かつオンライン環境において条約およびその選択議定書の全面的保護を享受することを確保するため、人権を基盤とする法律および政策を採択しかつ実施すること。 (b) ICTその他の関連産業との協力を引き続き奨励するとともに、任意の、自主規制に基づく、専門家としての倫理的な行動指針および行動基準ならびにその他の取り組み(オンラインの安全を促進する、子どもがアクセスできる技術的解決策など)の発展を促進すること。 (c) デジタルメディアおよびICTの利用に関わる機会およびリスクについての公衆一般ならびにとくに親および子どもの感受性を強化するための意識啓発、広報および教育プログラムを引き続き強化すること。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 38.暴行からの子どもの保護を強化する刑法および民法の改正があったことには留意しながらも、委員会は、体罰が、社会によって一般的に受け入れられている水準を超えない場合にはいまなお身体的暴力とみなされず、かつあらゆる場面で明示的に禁止されているわけではないことを遺憾に思う。 39.委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、あらゆる場面におけるあらゆる体罰の実行を明示的に禁止し、かつ、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進するための努力を強化するよう、促す。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 40.委員会は、子どもに対する暴力に対応するために締約国が進めているさまざまな取り組み(子どもおよび若者のための保護措置ならびに子どもの権利の強化に関するオルドナンスの採択、ならびに、成人保護法、人事法および子ども法に関連する民法改正を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、不当な取扱い、虐待およびネグレクト、性暴力ならびに家族間暴力に関する包括的なデータおよび研究が存在せず、国家的な子ども保護戦略が策定されておらず、かつ、カントンで実施されているさまざまなプログラム間の調整が存在しないことを依然として懸念するものである。 41.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する暴力のあらゆる事案(不当な取扱い、子ども虐待およびネグレクトならびに家族間暴力を含む)に関する全国的データベースを設置すること。 (b) 子どもに対する暴力の蔓延度および性質を評価するための研究をさらに実施するとともに、子どもの不当な取扱い、虐待およびネグレクトならびに子どもに対する家族間暴力の事案を防止しかつこれに介入するための包括的戦略(被害者の回復および社会的再統合のためのサービスの提供を含む)を策定すること。 (c) 子どもに対する暴力に対処するために現在設けられている制度の活動を評価するとともに、その結果およびとられた措置について次回の定期報告書で報告すること。 (d) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための全国的調整を強化すること。 (e) 子どもに対する暴力のジェンダーの側面に特段の注意を払い、かつこれに対処すること。 有害慣行 42.性器切除を禁止する新たな刑法規定が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、以下のことを深く懸念する。 (a) 性器切除の影響または脅威を受けている女子が締約国に相当数住んでいること。 (b) インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく本人の同意を得ることなく、医学的に不必要な外科的その他の処置(これにはしばしば不可逆的な結果がともない、かつ深刻な身体的および心理的苦痛が引き起こされる可能性もある)が行なわれており、かつ、このような事案について救済および賠償が行なわれていないこと。 43.委員会は、有害慣行に関する合同勧告/一般的意見(女性差別撤廃委員会31号および子どもの権利員会18号)に対して締約国の注意を喚起するともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女性性器切除の問題に対応するための防止措置および保護措置(関連の専門家の研修、意識啓発プログラムおよびこれらの行為の加害者の訴追を含む)を継続しかつ強化すること。 (b) インターセックスに関する倫理的問題について国家生体医療倫理諮問委員会が行なった勧告にしたがって、いかなる者も乳幼児期に不必要な医療処置または外科的処置の対象とされないことを確保し、当該の子どもに身体的不可侵性、自律性および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項) 家庭環境 44.連邦家庭外保育財政援助法の採択など、親としての義務の履行に関して親を支援するために締約国がとった措置は歓迎しながらも、委員会は、さまざまな形態の家族支援(保育サービスを含む)が不十分な形でしか利用できないことを依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、領域全体で子どものための質の高いケアが十分に利用できることを確保する等の手段により、家族を支援するための措置を強化するよう勧告する。 46.委員会は、締約国の法律において代理母が禁止されており、かつ国外における代理母出産の手配を抑制することが目指されていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、養子縁組の可能性を評価するための1年間の期間中の子どもの法的地位が不安定であることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 評価手続を迅速化するとともに、子どもが、締約国への到着時から正式な養子縁組までの待機期間中に無国籍とならないことまたは差別されないことを確保すること。 (b) 養子縁組に関する決定において子どもの最善の利益が思考の考慮事項とされることを確保すること。 家庭環境を奪われた子ども 48.里子の措置に関するオルドナンスの改正は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 里親養護または施設養護に措置された子どもの状況に関する信頼できるデータおよび情報が存在しないこと。 (b) 子どもの措置の選択、期間および再審査に関する基準ならびに種々の形態の代替的養護の質(里親家族の支援、研修および監視ならびに養護基準の実施を含む)について、カントン間で大きな格差が存在すること。 (c) カントンによっては里親家族の数が不十分であること。 (d) 3歳未満の子どもについては施設養護しか利用可能とされていないこと。 (e) 里親家族または施設に措置された子どもが家庭に復帰する際、生物学上の親に対する支援が限られていること。 49.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる代替的養護環境にある子どもについての情報および細分化されたデータを収集しかつ体系的に分析するための機構を設置すること。 (b) 生物学上の家族と接触する子どもの権利を引き続き尊重しつつ、必要であれば他のカントンの里親家族に子どもを措置することを可能とするため、カントン間の協力を確保すること。 (c) 子どもが代替的養護に措置されるべきか否か判断するための、子どもの最善の利益に基づいた十分な保障措置および明確な基準が自国の領域全体で適用されることを確保すること。 (d) 代替的養護施設および関連の子ども保護サービスに十分な人的資源、技術的資源および財源が配分され、かつ、里親家族に対して子育てについての体系的な研修および支援が実施されることを確保する等の手段により、締約国全域で代替的養護環境における質の高い基準を定め、かつ効果的に執行すること。 (e) 里親養護および施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを確保するとともに、子どもの不当な取扱いについての通報、監視および救済のためのアクセスしやすい回路を設ける等の手段により、措置先における養護の質を監視すること。 (f) 里親家族の奨励および募集を強化すること。 (g) 幼い子ども(とくに3歳未満の子ども)の代替的養護が家族を基盤とする環境で行なわれることを確保すること。 (h) 代替的養護環境に措置された子どもが家庭に復帰する際の親に対する支援を強化すること。 養子縁組 50.養子縁組法の改正は歓迎しながらも、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の締約国ではない出身国が関与する国際養子縁組が相当数にのぼること、および、これらの国からの養子縁組に関するデータがないことを懸念する。委員会はまた、ハーグ条約の締約国ではない国出身の子どもに関わる養子縁組手続(養親となろうとする者の評価および養子縁組についての決定を含む)において子どもの最善の利益の至高性が常に確保されているわけではないことも、懸念するものである。委員会はさらに、養子縁組手続が終結するまでの1年間、スイス人の両親によって国外から養子とされた子どもの法的地位が不確実であることを懸念する。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内養子縁組および国際養子縁組に関する統計データ(年齢、性別および国民的出身ごとに細分化されたもの)および関連の情報を体系的かつ継続的に収集すること。 (b) 国際養子縁組において子どもの最善の利益の至高性が厳格に遵守されること、および、たとえ相手国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の締約国ではない場合であっても同条約に定められたすべての保障が満たされることを確保すること。 (c) 評価手続を迅速化するとともに、国外から養子とされる子どもが、締約国への到着時から正式な養子縁組までの待機期間中に無国籍とならないことまたは差別されないことを確保すること。 親が収監されている子ども 52.収監された母親とその子どもが一緒に収容される棟がチューリッヒ州に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、親が収監されている子どもの人数および状況に関するデータ、または、子どもと収監されている親との継続的関係が十分に支援されているか否かについての情報がないことを懸念する。 53.親が収監されている子どもの権利に関する一般的討議(2011年)の際の委員会の勧告を参照しつつ、委員会は、締約国が、条約第9条にしたがい、定期的な面会ならびに十分なサービスおよび適切な支援の提供等を通じて子どもと親が個人的関係を保てることを確保する目的で、締約国において親が刑務所にいる子どもの状況に関するデータ収集および研究を行なうとともに、行なわれるすべての決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきことを、勧告する。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 54.委員会は、連邦障害者差別解消法が施行されたことおよび特別学校分野におけるカントン間協力協定が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子ども(自閉症スペクトラム障害のある子どもを含む)についての包括的データが存在しないこと。 (b) すべての州において、普通教育へのこれらの子どものインクルージョンが不十分であり、かつ、インクルーシブ教育制度が実際に十分機能することを確保するために配分される人的資源および財源が不十分であること。 (c) 障害のある子どもにとって乳幼児期の十分な教育およびケアならびにインクルーシブな職業訓練の機会が存在しないこと。 (d) とくにジュネーブ州において、自閉症スペクトラム障害のある子どもについて、その社会生活の多くの側面で差別および分離が行なわれていること。これには、乳幼児期における自閉症スペクトラムの発見が不十分であること、集中的早期発達プログラムが存在しないこと、とくに普通学校でこれらの子どもに専門的支援を提供する有資格の専門家が存在しないために普通教育にアクセスできないこと、および、自閉症スペクトラム障害のある子どもに対応する専門家の訓練が不十分であることが含まれる。 (e) とくにジュネーブ州において、自閉症スペクトラム障害のある子どもが、不当な取扱いに相当する「パッキング」法(子どもを濡れた冷たいシーツでくるむもの)のような不適切な取扱いの対象にされているという報告があること。 (f) 障害のある子どもが精神病棟に措置されることを防止し、かつ、これらの子どもが親の面会を受ける権利を恣意的に奪われないことを確保するための措置に関する情報がないこと。 55.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対する人権基盤アプローチをとるとともに、具体的には以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のあるすべての子どもの状況について、とくに年齢、性別、障害の態様、民族的および国民的出身、地理的所在ならびに社会経済的背景ごとに細分化されたデータの収集および分析を行なうこと。 (b) 必要な資源を配分すること、専門家の十分な訓練を行なうこと、および、いまなお分離アプローチをとっているカントンに明確な指針を示すこと等の手段により、全国規模のインクルーシブ教育を差別なく確保するための努力を強化すること。 (c) 統合ではなくインクルージョンを促進すること。 (d) 障害のある子どもが、すべてのカントンで乳幼児期の教育およびケア、早期発達プログラムならびにインクルーシブな職業訓練の機会にアクセスできることを確保すること。 (e) すべてのカントンにおいて自閉症スペクトラム障害のある子どもの特有のニーズに対応するとともに、これらの子どもが社会生活のすべての分野(レクリエーション活動および文化的活動を含む)に全面的に統合されることを確保し、これらの子どものニーズに合わせたインクルーシブ教育が特別な学校教育および保育よりも優先されることを確保し、早期発見のための機構を設置し、専門家を対象として十分な研修を実施し、かつ、これらの子どもが、科学的知識に基づいた早期発達プログラムから利益を得られることを確保すること。 (f) 子どもの「パッキング」を法律で禁止するとともに、自閉症スペクトラム障害のある子どもが尊厳および敬意をもって扱われ、かつ効果的な保護から利益を得られることを確保するために必要な措置をとること。 (g) 障害のある子どもが精神病棟に措置されることを防止し、かつ、これらの子どもが親の面会を受ける権利を恣意的に奪われないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 健康および保健サービス 56.低所得または中所得の家庭について子どもの健康保険料が少なくとも50%減額されたことは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 小児ケアの集中化が進んでいること、および、小児科医の人数が、増えているとはいえ、十分ではないこと。 (b) 太り過ぎの子どもおよび子どもの肥満の問題が増大しており、かつ、脂肪分、糖分および塩分の多い食品のテレビ広告が過度に流されていること。 57.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが領域全体で質の高い小児科病棟治療および家庭小児科医にアクセスできることを確保すること。 (b) 太り過ぎの子どもおよび肥満に対応するための措置を強化し、青少年の間で健康的なライフスタイル(運動を含む)を促進し、かつ、脂肪分、糖分および塩分の多い食品との関連で子どもに対する食品広告の圧力を低減させるために必要な措置をとること。 母乳育児 58.委員会は、締約国の赤ちゃんの大多数が生後数か月間は母乳で育てられていること、および、授乳休憩時の報酬に関する新たな規定が採択されたことに、積極的措置として留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 生後6か月までの赤ちゃんの完全母乳育児率が低いこと。 (b) 完全母乳育児に関する保健専門家を対象とした研修が不十分であること。 (c) 締約国の病院の55%しか赤ちゃんにやさしい病院ではないこと。 (d) 乳幼児への栄養補給または母乳育児に関する国家的戦略が定められていないこと。 (e) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の規定にうち国内法で全面的に実施されているものがわずかに過ぎず、かつ、母乳代替品の販売促進がもっぱら自主的行動規範に基づいて行なわれていること。 (f) 母乳育児に関する国の勧告が世界保健機関(WHO)による関連の勧告を反映していないこと。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 母乳育児の重要性および人工栄養のリスクに関する資料にアクセスできるようにすることおよび意識啓発を行なうことにより、完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化すること。 (b) 完全母乳育児の重要性に関する保健専門家を対象とした研修を再検討し、かつ強化すること。 (c) 赤ちゃんにやさしいと認証された病院の数をさらに増やすこと。 (d) 乳幼児への栄養補給慣行に関する包括的な国家的戦略を策定すること。 (e) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が厳格に執行されることを確保すること。 (f) 母乳育児に関する国の勧告がWHOによる勧告に一致することを確保すること。 (g) 出産休暇を少なくとも6か月まで延長することを検討すること。 精神保健 60.委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)または注意欠陥障害(ADD)という診断が過度に行なわれており、かつ、それにともなって、子どもへの精神刺激薬(とくにメチルフェニデート)の処方が、これらの薬の有害な作用に関する証拠が増えているにもかかわらず増加していること、および、親が精神刺激薬による子どもの治療を受け入れない場合には子どもを退学させるという脅かしが行なわれている旨の報告があることを、懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ADHDおよびADDの診断および治療に対する非薬物療法アプローチについての調査研究を実施すること。 (b) 関連の保健機関が、教室における注意欠如の根本的原因について判断し、かつ子どもの精神保健問題の診断を改善することを確保すること。 (c) 家族への支援(心理カウンセリングおよび情緒面での支援にアクセスできるようにすることを含む)を強化するとともに、子ども、親ならびに教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家に対し、ADHDおよびADDに関する十分な情報が提供されることを確保すること。 (d) 精神刺激薬による治療を受け入れるべきであるといういかなる圧力も子どもおよび親に対してかけられないようにするために必要な措置をとること。 自殺 62.委員会は、青少年の自殺が多いことを依然として懸念する。 63.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、自殺の防止に関する国家的行動計画(そこでは子どもおよび青少年の特有のニーズが考慮されるべきである)の採択を速やかに進め、かつその効果的実施を確保するよう勧告する。 生活水準 64.連邦家族手当法が2009年に施行されたことおよび貧困に対応するためのその他の措置(包括的スイス反貧困戦略ならびに貧困防止および貧困との闘いに関する国家計画(2014~2018年)を含む)がとられていることは歓迎しながらも、委員会は、家族を対象とする補足給付(社会扶助を含む)が一部のカントンで低額のままであることを懸念する。 65.委員会は、すべての子ども(親が難民、庇護希望者および移住者である子どもを含む)が自国の領域全体で十分な生活水準を享受できるようにする目的で、締約国が、家族手当給付制度をさらに強化するよう勧告する。 G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 人権教育 66.委員会は、学校における子どもを対象とした人権教育がすべてのカントンで制度的に実施されているわけではないことを懸念する。 67.委員会は、締約国が、諸言語地域を対象とする統一学校カリキュラムに、条約および人権一般に関する義務的単位が含まれることを確保するよう勧告する。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 庇護希望者および難民である子どもならびに在留資格のない子ども 68.保護者のいない子どもによる庇護申請の優先的取扱いを求めた庇護法改正が2014年に施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、保護者のいない子どもを対象とする庇護手続において当該子どもの最善の利益が常に指針とされているわけではないこと、および、条約第10条に付された留保との関係で、仮入国許可を与えられた者の家族再統合に対する権利があまりにも制限されていることを懸念する。さらに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもの庇護希望者および難民を対象とする受入れ環境、統合支援および福祉についてカントン観に相当の格差が存在し、たとえば子どもが掩蔽壕または核兵器防護施設に収容されていること。 (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者のための「被信託人」が、子どものケアまたは子どもの権利に関する問題についての経験を要求されていないこと。 (c) 子どもの庇護希望者が中等教育へのアクセスについて困難に直面していること、および、これらの子どもが職業訓練を受けることの認可について調和のとれた実務が行なわれていないこと。 (d) 空港でも行なわれる迅速庇護手続が子どもにも適用できるとされていること。 (e) 法的な在留資格のない(サンパピエ)子どもが締約国に相当数暮らしており、かつこのような子どもがとくに保健ケア、教育(とりわけ中等教育)および職業訓練へのアクセスについて多くの困難に直面していること、および、これらの問題に対応する方法についての戦略が定められていないこと。 69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 庇護手続において、子どもの特別なニーズおよび要求が全面的に尊重され、かつ当該子どもの最善の利益が常に指針とされることを確保すること。 (b) とくに仮入国許可を与えられた者について家族再統合制度を再検討すること。 (c) 庇護希望者および難民、とくに子どもを対象とする受入れ環境、統合支援および福祉についての最低基準を領域全体で適用するとともに、子どもの庇護希望者および難民を受け入れかつケアするすべての施設が子どもにやさしいものであり、かつ適用される国際連合の基準に一致することを確保すること。 (d) 「被信託人」が、保護者のいない子どもの庇護希望者を支援するための適正な訓練を受けていることを確保すること。 (e) 子どもの庇護希望者が教育および職業訓練に効果的にかつ差別されることなくアクセスできることを確保すること。 (f) 保護者のいない子どもの庇護希望者を迅速庇護手続の適用対象から除外するとともに、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が常に尊重されることを確保するための保障措置を確立すること。 (g) 在留資格のない子どもの社会的排除およびこれらの子どもに対する差別を防止するための政策およびプログラムを発展させるとともに、教育、保健ケアおよび福祉サービスへのアクセスを実際に確保する等の手段により、これらの子どもがその権利を全面的に享受できるようにすること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の所見および勧告のフォローアップ 70.軍刑法の改正によって戦争犯罪の訴追に関する限定的普遍主義が確立されたことおよび「武力紛争において軍隊または武装集団と関係している子どもを保護するための連邦外務省行動計画(2014~2016年)」が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、国以外の武装集団による子どもの徴募が明示的に犯罪化されておらず、かつ、国外で武力紛争に関与させられた可能性がある子どもの庇護希望者、難民および移住者についての統計データが存在しないことを、依然として懸念する。 71.委員会は、締約国が、国以外の武装集団による子どもの徴募を明示的に犯罪化し、かつ、この点に関わるデータ収集システムを改善するよう勧告する。 少年司法の運営 72.委員会は、新たな少年刑法(2007年)および少年刑事訴訟法(2011年)が施行されたことにより、とくに、刑事責任に関する最低年齢が7歳から10歳に引き上げられ、かつ審判前拘禁および週間の際に子どもを成人から分離する旨の定めが置かれたことに留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢がいまなお国際的に受け入れられている水準よりも低いままであること。 (b) 子どもを対象とする無償の法的援助が常に確保されているわけではないこと。 (c) 少年刑法および少年刑事手続を専門とする被告人弁護士がいまなお数人しか存在しないこと。 (d) 子どもが拘禁施設においていまなお成人から分離されていないこと。 73.少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられている水準まで引き上げること。 (b) 子どもが無償の法的援助その他の適切な援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 少年司法の運営に関与するすべての者(被告人弁護士を含む)が適切な研修を受けることを確保すること。 (d) 子どもが成人と一緒に拘禁されないことを確保するため、十分な拘禁施設を設置するプロセスを加速すること。 I.通報手続に関する選択議定書の批准 74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 J.国際人権文書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 K.地域機関との協力 76.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 77.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2~4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 78.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年9月25日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。総会が決議68/268のパラ16で定めた共通コアドキュメントの語数制限は42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2016年1月24日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/144.html
総括所見:ロシア(第3回・2005年) 第1回(1993年)/第2回(1999年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/RUS/CO/3(2005年11月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月28日に開かれた第1076回および第1077回会合(CRC/C/SR.1076 and 1077参照)において、ロシア連邦の第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.5)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.110)のフォローアップに関する情報を含む締約国の第3回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/RUS/3)に対する締約国の文書回答により、ロシア連邦の子どもの状況についての理解を深めることができたことも歓迎するとともに、締約国の代表団との有益かつ建設的な対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、立法面における以下の進展を歓迎する。 (a) とくに有害な労働条件からの未成年者の保護を強化した新労働法が2001年12月に採択されたこと。 (b) 罪を犯した子どもの審判の手続におけるいっそう人間的なアプローチについて定めた刑事訴訟法改正が2002年7月に行なわれたことにより、子どもの権利に焦点が当てられ、かつこれらの権利が尊重される旨の保障が整備されるとともに、刑事司法制度の対象となる未成年者の人数および自由剥奪刑を言い渡される未成年者の人数の減少につながったこと。 (c) 拷問の定義を定めた、「ロシア連邦刑法の修正および改正の導入について」の連邦法が2003年12月に採択されたこと。 (d) 締約国の刑法に、最近、人身取引を禁ずる規範が導入されたこと。 (e) 刑法が(連邦法第162号により)改正され、ポルノの製造で子どもを使用することに関する責任の度合いを引き上げられたこと。この法律により、売買春関連の活動で未成年者を搾取することに対する刑罰も引き上げられ、かつ同意年齢も14歳から16歳に引き上げられた。 4.委員会は、人権に関する教育も含む「公民」の科目が学校カリキュラムに導入されたことを歓迎する。 5.委員会は、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が2003年12月に批准されたことを歓迎する。 6.委員会はまた、子どもの権利条約を実施するための多数の具体的措置および対象の明確なプログラムも歓迎する。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.5)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.110参照)の一部、とくに条約に関する情報の普及、差別の禁止、拷問ならびに体罰、不当な取扱い、ネグレクトおよび虐待からの保護、子どもの措置の再審査、障害のある子ども、子どもと武力紛争および子どもの回復、ストリートチルドレン、性的搾取および虐待ならびに少年司法の運営に関するものへの対応が不十分であることを、遺憾に思う。 8.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。 立法および実施 9.締約国における条約の実施の向上を確保する目的で法律の採択および改正が行なわれてきたことには留意しながらも、委員会は、連邦法第122号が締約国の子どもの権利の享受に及ぼしうる悪影響について懸念を覚える。委員会は、社会サービスおよび社会手当の利用可能性およびこれらへのアクセスに関する全国的最低基準を設けようとする締約国の努力を歓迎しつつ、これらの基準の効果的実施に関する具体的情報がないことを依然として懸念するものである。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) さまざまなレベルにおける種々の役割および能力を評価しながら、地方分権化プロセスの結果およびそれが社会サービスの提供に及ぼす影響についての包括的分析を行なうこと。 (b) 子どもの権利の享受および保護に関する格差を防止するため、連邦法第122号で予定されている地方分権化の流れのなかで、子どもの権利の享受に関する最低基準が全面的にかつ効果的に実施されることを確保すること。 調整 11.子どもの権利条約の実施の調整に関する政府省庁間委員会の創設を通じ、政府が子どもの権利に関わる調整機構を向上させてきたことには留意しながらも、委員会は、この機関が2004年3月に廃止されたこと、および、連邦法第122号に基づく最近の地方分権化にともなって必要な調整手段がとられていないことに、懸念とともに留意する。 12. 委員会は、中央および地方の公的機関間の十分な協力ならびに子ども、若者、親および非政府組織との協力を確保するため、締約国が、子どもおよび若者のための努力の一貫性および調整を向上させるための努力を引き続き強化するよう勧告する。委員会はまた、この目的のため、子どもの権利条約の実施のための調整機関を再設置することも勧告するものである。このような機関に対しては、連邦レベルと地域レベルとの間で効果的調整を確保できるようにするための権限ならびに必要な人的資源および財源を提供することが求められる。 独立した監視体制 13.委員会は、連邦人権委員会が設置されたこと、および、38〔ママ〕の地域圏中18の地域圏で子どもの権利オンブズマン地域事務所が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、連邦子どもの権利オンブズマン事務所がまだ設置されていないことに、懸念とともに留意するものである。 14.委員会は、締約国が、すべての地域圏に子どもの権利オンブズマン地域事務所を設置する努力を引き続き行なうとともに、これらの事務所に対し、その職務を効果的に遂行できる十分な資金および人員が提供されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、連邦子どもの権利オンブズマン事務所の設置をさらに検討することも勧告するものである。これとの関連で、締約国は、独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)を考慮することが求められる。 国家的行動計画/調整 15.委員会は、2000年以降、締約国が全般的な国家的行動計画を定めていないことに、懸念とともに留意する。とはいえ、委員会は、さまざまな部門別行動計画に条約の実施のための国家的諸原則を含めるよう求めた、「ロシア連邦における子どもの状況の改善のための基本的指令」と題する国家戦略が定められた旨の情報を歓迎するものである。しかしながら委員会は、さまざまな部門別行動計画との関係における、同戦略の統合的かつ調整のとれた実施について懸念を覚える。 16.委員会は、締約国が、新しい国家戦略および関連の行動計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」が考慮されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに不当な格差を防止する目的で、連邦レベルおよび地域レベルで当該国家戦略および関連の行動計画の実施が包括的かつ効果的に調整されることを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、当該国家戦略の時宜を得たかつ効果的な実施のために十分な人的資源および財源が配分されることを確保するとともに、子どもおよび若者、親、NGOならびに関心および関連のある他の機関の積極的参加を促進しかつそのための便宜を図るよう、勧告する。委員会はまた、当該戦略の監視および評価のための指標および基準を開発することも勧告するものである。 データ収集 17.データ収集の分野で締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しおよび評価しならびに子どもに関わって実施された政策の効果を評価する目的で、条約が対象とするすべての分野についての細分化された量的および質的データを、すべての集団の子どもとの関連で体系的かつ包括的に収集することを可能とする十分なデータ収集機構が存在しないことを、依然として懸念する。 18.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とくに脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、法律に触れた子ども、難民および人身取引の対象とされた子ども)を重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを網羅する、性別、年齢ならびに農村部および都市部の別によって細分化されたデータを収集するための包括的な常設機構を国家的統計システム内に設置する努力を強化するよう、勧告する。締約国はまた、条約の実施における進展を効果的に監視しおよび評価しならびに子どもに影響を与える政策の効果を評価するための指標も開発するべきである。 子どものための資源 19.委員会は、連邦法第122号の導入により、子どもが利用可能なサービスの範囲が締約国の地域圏間で相当に異なるようになる可能性があることを、懸念する。委員会はまた、地域レベルでは子ども関連のプログラムおよび政策に不十分な資源しか配分されないであろうことも懸念するものである。委員会はまた、とくに保健・教育部門および養子縁組手続において広範に行なわれている汚職が、権利の全面的享受の面で子どもに影響を及ぼしていることも懸念する。 20.委員会は、子どものための社会サービスその他のサービスの利用可能性およびこれらのサービスへのアクセスに関する不当な格差を防止する目的で、締約国が、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払い、かつ、国の全域で均衡のとれた資源配分を確保するよう、勧告する。締約国はまた、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および、必要な場合には国際協力の枠組の中で」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分も優先させるべきである。締約国は、真剣に対応し、かつこれを防止するためのあらゆる必要な措置をとることを求められる。 研修/条約の普及 21.委員会は、この分野で締約国がとった措置にもかかわらず子どもおよび若者の間で条約に関する意識が依然として低く、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。 22.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなによっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを(たとえばラジオおよびテレビを活用しながら)確保するための努力を強化する目的で、包括的な政策を定めるよう勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに法執行官、教員、保健従事者、心理学者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員の十分かつ体系的な研修を強化することも、勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 23.委員会は、さまざまな宗教的および民族的マイノリティに属する子どもに対して差別が行なわれているという報告について懸念を覚える。委員会はまた、マイノリティに属する子どもおよびとくにロマの子どもが、とくに保健サービスおよび教育サービスとの関連で、その権利の全面的享受を制約される可能性が高いことも懸念するものである。委員会はまた、在留許可を有しない子どもおよび家族が直面している差別についても懸念を覚える。 24.委員会は、締約国が、宗教的および民族的マイノリティに属する子ども、ロマの子どもならびに在留許可を有していない親の子どものようなもっとも脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、とくに全国的および地域的な意識啓発キャンペーンならびにあらゆる差別事件への効果的な介入を通じてあらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 25.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 26.締約国における法律およびプログラムの大多数で子どもの最善の利益の原則に言及されていることには留意しながらも、委員会は、実際には、十分な財源および研修コースの欠如ならびに社会の態度を理由としてこの原則が制限されていることを懸念する。 27.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が理解され、かつ、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて適切に統合されかつ実施されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。 生命に対する権利 28.委員会は、締約国における嬰児殺の発生(その件数は減少していない)に関する前回の懸念をあらためて表明する。 29.委員会は、締約国に対し、締約国における嬰児殺の原因に関する研究を行ない、かつあらゆる必要な防止措置をとるよう促す。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎しつつも、条約第12条が、家庭、学校その他の施設において十分に適用されておらず、かつ、司法上および行政上の決定ならびに法律、政策およびプログラムの策定および実施において実際には全面的に考慮されているわけではないことを、依然として懸念する。 31.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するためにさらなる努力が行なわれるべきであることを勧告する。これとの関連で、脆弱な立場に置かれた集団およびマイノリティ集団の構成員である子どもを含むすべての子どもの、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般における参加権がとくに重視されるべきである。この権利を、子どもに関わるすべての法律、司法上および行政上の決定、政策ならびにプログラムに編入することも求められる。締約国はまた、子どもおよび若者とともに働くおとなが子どもに敬意を示し、かつ、子どもが自己の意見を効果的に表明できるようにすることおよびその意見が考慮されるようにすることを確保するための研修を受けることも、確保するべきである。締約国はまた、子どものニーズに関する電話を受けるため、24時間利用可能な、3ケタの番号のフリーダイヤル電話サービスを提供することも求められる。 3.市民的権利および自由 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 32.委員会は、18歳未満の者が、多くの場合には警察による留置中にまたは法的手続の審判前段階で拷問および残虐な取扱いの対象にされ続けているという訴えがあることを懸念する。弁護人および(または)医療サービスならびに家族へのアクセスも、警察により留置されている若者に対しては制限されているように思われる。委員会はまた、これらの虐待について苦情を申し立てるための手続についても、当該手続が子どもに対する配慮を欠いている可能性があること、子どもが親/法定代理人の同意なく苦情を申し立てることが認められていないこと、および、その有効性が証明されていないことに関して懸念を覚えるものである。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに警察隊の研修を通じて、拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の行為を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもおよび若者に対して拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の行為を行なった者を捜査し、訴追しかつ処罰するための措置をとること。 (c) 被害者の回復および社会的再統合のためのプログラムを設けること。 (d) 子どもが苦情を申し立てるための機構を強化するとともに、親/法定代理人の許可を要件とすることなく子どもが苦情を申し立てられるようにすること。 34.委員会はまた、締約国の寄宿学校その他の教育施設において拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰が用いられていることも懸念する。 35.委員会は、締約国に対し、教育者および施設で働くその他の専門家が、子どもを拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰の行為の対象とすることの禁止について十分に知らされることを確保するよう、促す。 体罰 36.委員会は、家庭および代替的養護の現場で体罰が禁じられていないことを懸念する。委員会はまた、締約国において子どもの体罰が依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭および体罰が公式には禁じられている場所(学校等)でいまなお実践されていることも懸念するものである。 37.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭および代替的養護の現場におけるあらゆる形態の体罰を法律で明示的に禁止すること。 (b) 法律の効果的実施により、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の実践を防止しかつこれと闘うこと。 (c) 体罰に反対する意識啓発キャンペーンおよび公衆教育キャンペーンを実施するとともに、非暴力的な、参加型の形態のしつけおよび規律を促進すること。 4.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 38.委員会は、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていること、および、脱施設化に関する国家政策を実施する努力がうまくいっていないことを懸念する。委員会はまた、家庭的な代替的養護体制を促進するために十分な努力が行われていないことも懸念するものである。 39.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって援助および支援サービス(親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラムを通じてのものを含む)を提供することにより、家庭環境から子どもが分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすことを目的として、包括的戦略を採択しかつ即時的な予防措置をとること。 (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的な複数の公的機関によるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査が再審査の対象とされることを確保すること。 (c) 子どもがいっそう全面的に発達することおよび子どもがあらゆる形態の虐待から保護されることを可能とするような環境づくりのための措置をとること。子どもが施設に措置されている間の家族との接触も、これが子どもの最善の利益に反しないときは、さらに奨励されるべきである。 (d) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって、伝統的な里親養護制度および家庭を基盤とするその他の代替的養護を発展させるための努力を強化するとともに、後見機関および管財機関の能力構築を目的とした措置を強化すること。 (e) 子どもが代替的養護プログラムの評価に参加すること、および、子どもが苦情を申し立てることを可能にする苦情申立て機構が創設されることを確保すること。 養子縁組 40.委員会は、自己の本来の身元を知る養子の権利が締約国で保護されていないことに、懸念とともに留意する。 41.委員会は、締約国に対し、自己の本来の身元を知る養子の権利を保護するとともに、この目的のための適切な法的手続(推奨される年齢および専門家による支援措置を含む)を定めるよう、奨励する。 42.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)に2000年に署名したことに留意する。委員会は同様に、養子縁組のために必要とされる書類、不当な支払い、および、養親になろうとする者に対して養子としようとする子どもの選択を認めていることとの関連で、連邦当局が外国の養子縁組斡旋機関を十分に統制できていないことに留意するものである。委員会は、2003年には国際養子縁組件数が初めて国内養子縁組件数を上回ったことに、懸念とともに留意する。 43.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を批准するよう勧告する。それまでの間、委員会は、締約国が、養親の適格性および養子縁組後のフォローアップを確保するため受け入れ国の当局と協定を締結するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、外国の養子縁組斡旋機関の認証および統制のためのシステムを確立するとともに、国内養子縁組を促進するための措置を発展させかつ実施することも勧告する。 措置の定期的再審査 44.委員会は、施設および里親家庭への子どもの措置の定期的再審査が不十分であることを懸念する。委員会はまた、子どもの施設において独立の査察機構がまだ整備されていないことも懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、里親家庭または施設に措置された子どもの状況が十分に監督されることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、市民社会との調整を図りながら、子どもの施設を独立のかつ公的な立場で査察するための機構も発展させるべきである。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 46.委員会は、施設において多数の子どもが教育担当者による虐待を受けているという報告があることを懸念する。委員会はまた、家庭および施設で暴力にさらされた被虐待児が必ずしも十分なケアおよび援助を受けていないこと、および、この分野における防止(および予防介入)ならびに意識啓発との関連で十分な取り組みが行なわれていないことも、懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、以下の措置をとる等の手段により、家庭および施設で暴力にさらされた子どもに十分な援助を提供するための努力を引き続き強化するよう、勧告する。 (a) 施設における暴力の規模を評価するための研究を行ない、かつこれらの行為の責任者を処罰するための措置をとること。 (b) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 身体的および情緒的虐待の事案に関する通報の手続および子どもからの苦情申立てを効果的に調査するための手続を確立すること。 (d) 予防介入のための法的枠組みを強化すること。 (e) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (f) 不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育キャンペーンおよび防止プログラム(積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する家族発達プログラムを含む)を実施すること。 48.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 49.委員会は、障害のある子どもは矯正目的の「補助学校」および「強制学級」に送致されるのが通例であるため、これらの子どもを主流の教育制度に包摂するために行なわれている努力が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、寄宿学校における障害のある子どもの割合が人口比に照らして相当に過剰であることも懸念するものである。 50.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに対する差別の問題に対応すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもがサービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (c) 障害のある子どもの寄宿学校への措置について、このような措置はそれが子どもの最善の利益にかなう場合に限定することを目的として見直しを行なうこと。 (d) 「矯正学校」および「補助学校」の慣行を廃止すること、必要な支援を提供すること、および、教員が普通学校における障害のある子どもの教育に関する研修を受けることを確保すること等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。 基礎保健および福祉 51.委員会は、子どもの健康向上のために行なわれた多数のプログラムおよび措置に関する情報に留意するものの、締約国における健康水準について依然として懸念を覚える。しかしながら委員会は、結核の発生率が減少しているにも関わらず、結核の罹患件数が多いままであることを依然として懸念するものである。委員会はまた、ヨード欠乏症の発生件数が多いこと、および、締約国における母乳育児の実施率が低いことも依然として懸念する。 52.委員会はまた、改革された制度のもとで設けられたサービスおよびプログラムが、とくにプライマリーヘルスケアの発展との関連で条約第24条と全面的に一致していないことも懸念する。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a) プライマリーヘルスケアにおける予防介入を増進させること。 (b) 保健に対する公共支出を増加させること。 (c) 食塩の完全ヨウ素添加に関する法律を制定し、かつその実施を確保すること。 (d) 結核を理由とする有病率を削減するための努力を継続すること。 (e) 全国母乳育児委員会の創設、医療専門家の研修および母乳育児実践の向上を検討すること。 思春期の健康 54.アルコールおよびタバコの消費水準が高い問題に対応するための措置および新法については認知しながらも、委員会は、青少年によるタバコおよびアルコールの消費水準が高いことを懸念するとともに、締約国における望ましい健康習慣の促進が不十分であり、栄養、喫煙、アルコール、身体的健康および個人衛生にほとんど焦点が当てられていないことに留意する。 55.委員会はまた、とくにリプロダクティブヘルスとの関連で、思春期の健康に関する情報が不十分であることも懸念する。委員会はまた、避妊手段の費用が万人に負担可能なものとなっていないために締約国におけるその使用が制限されており、かつ、十代の妊娠および妊娠中絶が多数発生していることも、懸念するものである。 56.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育の提供ならびに学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)の導入等も通じて、思春期の健康を促進する努力を強化するよう、勧告する。青少年の喫煙およびアルコール消費を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告するものである。 57.委員会は、締約国における青少年の自殺率が高いこと、および、青少年の自殺を防止するために相応の努力がまったく行なわれていないことに対する懸念をあらためて表明する。 58.委員会は、締約国に対し、保健サービスの資源を強化しかつ精神保健サービスを向上させるとともに、自殺防止のためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。 HIV/AIDS 59.委員会は、締約国でHIV/AIDSが流行していること、および、若者のハイリスク行動(すなわち注射器による麻薬の使用および危険な性的行動)のより今後HIV/AIDS感染者の人数がさらに増える可能性があることを、深刻に懸念する。委員会はまた、予防措置にほとんど関心が向けられていないことも懸念するものである。 60.委員会はまた、締約国でHIVの母子感染が増加していることも懸念する。委員会はまた、HIVに感染した母親の子どもが子ども自身のHIV感染の有無に関わらず根強く差別されていること、ならびに、このような子どもが母親によってしばしば遺棄されおよび長期にわたって入院させられていることにも、懸念を表明するものである。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針を考慮に入れながら、HIV/AIDSの拡散を防止するための努力を強化すること。 (b) 母子感染の予防措置を強化すること。 (c) 母親がHIVに感染している新生児に対する抗レトロウィルス治療およびHIV陽性の母親の産後モニタリングを保障すること。 (d) 差別の禁止の原則を全面的に尊重する十分な医学的、心理的および物的支援を提供することにより、HIVに感染した子どもまたはAIDSによる親の死亡を理由として孤児となった子どもに特段の注意を払うこと。 (e) 締約国で行なわれている、HIV陽性の母親の子どもを病棟または特別孤児院に隔離する慣行およびHIV陽性の子どもが普通孤児院、医療ケアおよび教育上の便益へのアクセスを拒否される慣行についての研究を行なうこと。 (f) HIV陽性の母親に対し、このような母親による新生児の遺棄を防止し、かつこのような母親が子どもを養育できるようにするための十分な支援を提供すること。 (g) HIV/AIDSに感染した子どもおよび(または)HIV/AIDSの影響を受けている子どもに対する差別およびスティグマを削減する目的で、青少年(とくに脆弱な立場に置かれた青少年)および一般住民の間でHIV/AIDSに関する意識を高めるためのキャンペーンおよびプログラムを開始すること。 (h) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびユニセフの技術的援助を求めること。 6.社会保障ならびに保育サービス・施設/生活水準 十分な生活水準 62.委員会は、低所得世帯で暮らす子どもが多数にのぼること、および、文書回答で提供された情報によれば子どものいる市民向けの予算配分額が相当に減少していることに、懸念とともに留意する。委員会は、劣悪な生活条件のため、家庭、学校、友人との活動および文化的活動における子どもの権利の享受が深刻に制限されていることを懸念するものである。 63.委員会は、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障する目的で、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた家庭に支援および物的援助を提供するためにあらゆる必要な措置(もっとも脆弱な立場に置かれた集団の家族に関わる、対象を明確にしたプログラムを含む)をとるよう、勧告する。 7.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 64.学校を中退する子どもの人数を減らすための措置など、心強い思いを抱かせる若干の進展が最近見られたにも関わらず、委員会は、無償の初等教育が法律で保障されているにも関わらず初等学校について種々の費用負担が求められ続けていることを、依然として懸念する。委員会はまた、連邦法第122号がもはや就学前の子どもに対する金銭的および物的支援を保障していないこと、および、同法により農村部で働く教員を対象とした若干の奨励策が中止されたことも、懸念するものである。委員会は、成人の非識字者数が減少したことおよび女性の非識字者の割合が低下したことについて締約国を称賛するものの、青少年の非識字者が多いことおよび青少年の非識字者に女子が占める割合が上昇していることを懸念する。委員会はまた、職業訓練制度に透明性が欠けていることも懸念するものである。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもが初等中等教育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとること。 (b) 教科書、改修および安全対策のようなすべての直接費および間接費を考慮に入れながら、初等教育が無償であることを確保するためにあらゆる適当な措置をとること。 (c) マイノリティ言語を使用する人々の教育の促進に特段の注意を向けながら、教育における人種的格差を是正するための努力を強化すること。 (d) (着任前および現職時の)教員研修に向けた努力を強化するとともに、(とくに連邦法第122号に照らして)教員の給与および労働条件の問題に対応すること。 (e) 職業訓練制度を拡大し、かつそのあり方を改善すること。 (f) とくに非公式な教育機会を提供することにより、若者の非識字を解消するための措置を全面的に実施すること。 8.特別な保護措置 子どもの難民および国内避難民 66.モスクワ地域圏で子どもの難民および庇護希望者に対して教育へのアクセスが提供されていることは歓迎しながらも、委員会は、他の地域圏でこのようなアクセスが提供されていないことを懸念する。委員会はまた、保護者のいない未成年者が、後見人がいないことを理由として国の難民認定手続にアクセスできないことも懸念するものである。委員会はまた、難民および庇護希望者のもとに生まれた子どもに対する出生証明書の発行において登録が条件とされていることが多いことを懸念する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの難民、庇護希望者および国内避難民がロシア連邦のすべての地域で教育へのアクセスを享受することを確保するため、必要な立法上および行政上の措置をとること。 (b) 具体的かつ明確な手続を設けることにより、保護者のいない未成年者および養育者から分離された未成年者が国の難民認定手続およびその後の援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 保護者のいないまたは養育者から分離された子どもに法定後見人を任命することについて明確な行政上の責任を負う、国の特定の機関を指定すること。 (d) ロシア連邦に在留する難民および庇護希望者のもとに生まれた子どもがその出生を自動的に登録されかつ出生証明書を発行される旨を定めた特定の行政規則または行政命令を導入するとともに、チェチェンのすべての国内避難民に対し、イングーシで生まれた子どもについての出生証明書が発行されることを確保するために必要な措置をとること。 紛争の影響を受けている子ども 68.委員会は、チェチェンおよび北カフカースに住んでいる子ども(およびとくに国内避難民である子ども)が、とくに教育および健康に対する権利との関連で、紛争の影響をいまなおきわめて深く受けていることを依然として懸念する。委員会はまた、反乱集団との関係を疑われた若者の、治安部隊員による逮捕および失踪が報告されていることも懸念するものである。委員会は、過度に傷害を与えまたは無差別の効果を有することがあると認められる通常兵器の禁止または塩湯制限に関する条約の改正議定書IIを締約国が最近批准したにも関わらず、地雷敷設地帯の特定および標示または地雷除去の努力が限られていることを懸念する。 69.委員会は、締約国が、子どもの権利条約第38条1項にしたがい、とくに健康および教育に対する権利との関連で、チェチェンおよび北カフカースにおける紛争の影響から子どもを保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、治安部隊による子どもの身体の安全の侵害がなくなることを確保するための措置をとることも促すものである。委員会はさらに、締約国が、地雷除去の努力をさらに進めるとともに、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を批准するよう、勧告する。 70.委員会はまた、「軍部隊の隊員として未成年のロシア連邦市民を入隊させかつ当該隊員に必要な手当を支給することについて」の規則で、14~16歳の男子の志願採用および軍部隊への配属が認められていることも懸念する。 71.委員会は、締約国に対し、普通教育を修了していない子どもが軍部隊に採用されることを防止する目的で、「軍部隊の隊員として未成年のロシア連邦市民を入隊させかつ当該隊員に必要な手当を支給することについて」の規則が子どもの権利条約を全面的に一致するための見直しを行なうよう、促す。 児童労働 72.委員会は、子どもに対する特別な保護を拡大する目的で、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の子どもが、路上、家庭その他の場所において搾取的な状況下でまたは定期的通学を妨げられるほどに働いているという報告があることにも留意するものである。 73.委員会は、条約第32条、ならびに、締約国が批准した、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約および第182号条約にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ILOの最低年齢勧告(1973年、第146号)および最悪の形態の児童労働勧告(1999年、第190号)を正当に考慮しながら、条約第32条ならびにILO第138号条約および第182号条約の実施を確保するための措置をとること。 (b) 児童労働(規制対象とされていない労働を含む)の規模を監視するための統制機構を確立し、防止を増進させる目的でその原因に対応し、ならびに、子どもが合法的に雇用されているときは、その労働が搾取的なものではなくおよび国際基準にしたがっていることを確保するための努力を強化すること。 (c) この点に関してILO児童労働撤廃撤廃国際計画の協力を求めること。 ストリートチルドレン 74.委員会は、ストリートチルドレンの人数が増えており、かつこれらの子どもがあらゆる形態の虐待および搾取の被害を受けやすいこと、ならびに、これらの子どもが公共の保健サービスおよび教育サービスにアクセスできていないことに、懸念を表明する。このような状況に対応し、かつこれらの子どもを保護するための体系的かつ包括的戦略が存在しないことも、委員会にとって懸念の対象である。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態の虐待および搾取を防止しかつこれと闘うための包括的な戦略および政策を立案しかつ実施する目的で、路上で暮らしかつ働く子どもの人数、構成および特徴に関する包括的な全国的調査を行なうこと。 (b) 子ども自身の意見を考慮に入れながら、ストリートチルドレンが親その他の親族と再統合することを促進しかつその便宜を図り、または代替的養護を提供すること。締約国は、これらのサービスを提供するための十分な資源が地方政府に与えられることを確保するべきである。 (c) ストリートチルドレンの全面的発達を支援するため、これらの子どもに十分な栄養およびシェルターならびに保健ケアおよび教育機会が提供されることを確保するとともに、これらの子どもに十分な保護および援助を提供すること。 (d) 路上で暮らしている子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。 (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 薬物濫用 76.委員会は、子どもの薬物濫用を防止しかつこれと闘うためにさまざまな措置がとられたことで薬物依存が減少していることを歓迎しつつ、締約国において薬物を消費する子どもの人数がいまなお多いことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもが薬物取引に関与していることも懸念するものである。 77.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を子どもに提供するとともに、子どもが薬物取引に関与することを防止するための措置をとること。 (b) 薬物を使用した子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われ、かつ適切な援助およびカウンセリングを提供されることを確保すること。 (c) この現象の原因および影響を注意深く分析するための研究を行ない、かつ、その研究の成果を活用して薬物の使用を防止するための努力を強化すること。 (d) 薬物濫用の被害を受けた子どもの回復および再統合のためのサービスを発展させること。 性的搾取および性的虐待 78.委員会は、締約国で性的に搾取されている子どもおよび若者の人数が多いことを懸念する。委員会は、締約国で10代の売買春が深刻な問題となっていることを懸念するものである。委員会はまた、14~18歳の子どもが売春およびポルノへの関与から法的に保護されていないことも懸念する。 79.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的搾取および虐待を防止しかつこれと闘うための措置を強化すること。 (b) 性的搾取および性的虐待の事案の報告が(被害者の権利を正当に考慮しながら)捜査されること、ならびに、加害者が適切に訴追されおよび処罰されることを確保すること。 (c) 子どもの証言が適切な方法で記録されること、および、聴取を行なう者が必要な専門の資格を有することを確保すること。 (d) 14~18歳の子どもが売春およびポルノへの関与から法的に保護されることを確保するための措置をとること。 (e) 性的搾取、人身取引およびポルノにおける子どもの使用に対処するための戦略を策定する目的で、子どもの虐待の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 売買、取引および誘拐 80.人身取引を禁ずる規範が最近になって刑法に導入されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの規定を効果的に実施するための十分な取り組みが行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、人身取引被害者のための保護措置が十分に整備されていないこと、および、人身取引を行なう者と国の職員の共謀行為の報告が全面的に捜査されかつ制裁の対象とされていないことにも、懸念を表明するものである。 81.委員会は、締約国に対し、人身取引に関する新たな規定の全面的実施における効果的な機関間の調整を確保するための努力を強化するよう、奨励する。締約国は、人身取引の被害者が保護され、かつその地位および権利がさらに詳しく定義されることを確保するべきである。委員会はまた、締約国に対し、そのプログラム活動において防止活動にいっそう焦点を当てるとともに、人身取引を行なう者と国の職員の共謀行為の報告を捜査するよう、奨励する。 82.委員会は、締約国が、まだ批准はしていないものの、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名したことに留意する。 83.委員会は、締約国に対し、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書および人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約を批准するよう、奨励する。 少年司法の運営 84.委員会は、締約国が、いくつかの立法上の試みにも関わらず、罪を犯した少年が司法制度のもとで別に対応されるようにするための特別な連邦手続および連邦裁判所をまだ確立していないことを懸念する。 85.委員会はまた、以下のことを懸念するものである。 (a) 防止活動に関するまたは現行の措置の妥当性に関する調査研究および評価を行なうための機構が不十分であること。 (b) 法律に触れた子どもにスティグマが付与されること。 (c) 法律に触れた子どものための、拘禁に代わる措置および諸形態の再統合〔のための措置〕が存在しないこと。 (d) 自由を奪われた18歳未満の者を対象とする適切な場所が存在せず、これらの者がしばしば成人とともに拘禁されていること。 (e) 自由を奪われた18歳未満の者の拘禁の物的環境が劣悪であること。 (f) 拘禁された18歳未満の者による教育へのアクセスが不十分であること。 (g) 法律に触れたものの自由剥奪刑を言い渡されず、かつ十分な治療措置および教育措置の利益を得ていない未成年者の状況を監視するための措置が不十分であること。 86.委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の討議(1995年)にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む、少年司法の分野における他の関連の国連基準が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、以下の措置を優先的にとるよう奨励するものである。 (a) 刑事責任年齢に達しない子どもが犯罪者として扱われないことを確保すること。 (b) 18歳未満の者が普通司法制度ではなく特別の少年司法制度によって審理されることを可能にするため、少年司法制度改革の作業を迅速に進めること。 (c) 自由の剥奪が最後の手段として用いられることを確保する目的で、法律に触れた18歳未満の者を対象とする効果的な代替的量刑制度(地域奉仕活動または修復的司法など)を発展させること。 (d) すべての子どもが適切な法的援助および弁護人に対する権利を有することを保障すること。 (e) 未決拘禁に関する刑事訴訟法の規定を適用すること。 (f) とくに刑の執行猶予および条件付釈放を活用することにより、自由の剥奪を適切なかぎり短期間とするために必要な措置をとること。 (g) 18歳未満の者が拘禁時に成人から分離されることを確保すること。 (h) 18歳未満の者が、少年司法制度の対象とされている間もその家族との定期的接触を保つことを確保すること。 (i) 裁判官および法執行官を対象として継続的研修を行なうこと。 (j) 拘禁されている18歳未満の者が教育および再統合プログラムを利用できることを確保すること。 (k) 少年拘禁センターにおける生活環境に関する基準および監視機構(独立機関による訪問も含む)を確立しかつ実施すること。 (l) 刑の言い渡しを受けたすべての子どもに対し、必要なときはカウンセリングその他の社会的援助措置へのアクセスを提供すること。 (m) 関連の国連機関、とくにUNDP〔国連開発計画〕、UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕およびユニセフの援助を求めること。 9.条約の選択議定書 87.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に締約国が署名し、かつその批准を予定していることを歓迎するとともに、締約国が子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書への署名を検討していることに留意する。委員会は、締約国に対し、この点に関わる計画を遂行しおよび完了させ、ならびに条約の2つの選択議定書を批准するよう、促すものである。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 88.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、連邦議会ならびに適用可能なときは州または地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 90. 委員会は、締約国に対し、次回の定期報告書を、第5回定期報告書について条約で定められた提出期限、すなわち2012年9月14日までに提出するよう慫慂する。この報告書は第4回および第5回定期報告書を統合したものであるべきである。しかしながら、委員会が毎年多数の報告書を受領しており、かつ、その結果として締約国報告書の提出日から委員会による検討までに相当の遅延が生じていることから、委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合報告書を提出期限の18か月前、すなわち2011年3月14日に提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年1月12日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。