約 1,857,843 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/284.html
総括所見:ニュージーランド(第5回・2016年) 第1回(1997年)/第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/NZL/CO/5(2016年10月21日)/第73会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年9月16日に開かれた第2138回および第2139回会合(CRC/C/SR.2138 and 2139参照)においてニュージーランドの第5回定期報告書(CRC/C/NZL/5)を検討し、2016年9月30日に開かれた第2160回会合において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/NZL/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、前回の審査以降、締約国がさまざまな分野で達成した進展を歓迎する。これには、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准(2011年)、ならびに、被害を受けやすい立場に置かれた子ども法(2014年)ならびに子どもの権利に関連するその他の制度上および政策上の措置の採択が含まれる。委員会はまた、子どもの死亡率の削減に関する相当の進展も歓迎するものである。 III.主要な懸念領域および勧告 4.委員会は、締約国に対し、条約上のすべての権利の不可分性および相互依存性を想起するよう求めるとともに、この総括所見に掲げられたすべての勧告が重要であることを強調する。委員会は、緊急の措置をとることが必要とされる以下の勧告に対して締約国の注意を喚起したい――すなわち、暴力、虐待およびネグレクト(パラ23)、家庭環境を奪われた子ども(パラ28)、生活水準(パラ36)、マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども(パラ42)、児童労働(パラ44)ならびに少年司法(パラ45)である。 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 留保 5.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ9)をあらためて繰り返し、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 一般的留保ならびに第32条第2項および第37条(c)に付した留保を撤回すること。 (b) 条約の適用をトケラウの領域にも拡張することを検討すること。 立法 6.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ11)をあらためて繰り返し、締約国に対し、子どもに関連する国内法を条約と一致させるよう促す。委員会は、締約国が、条約のすべての規定と合致した包括的な子ども法の採択を検討するとともに、子ども、若者およびその家族法(1989年)について最近行なわれた改正および計画されている改正を含め、いかなる新法も条約の規定および原則と一致することを確保するよう、勧告するものである。 包括的な政策および戦略 7.前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ15)を想起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約およびその最初の2つの選択議定書を実施するための包括的な政策および戦略を採択すること。この政策および戦略は、子どもの権利の促進および保護に関与している官民のセクターと協力し、子どもたちと協議し、かつ子どもの権利アプローチを基盤としながら策定されるべきである。このような政策は、締約国のすべての子どもおよび条約で対象とされているすべての分野を包含し、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられ、明確かつ十分な予算配分および時間枠を含み、かつ、フォローアップおよび監視のための機構を編入したものであることが求められる。 (b) 提案されている「被害を受けやすい立場に置かれた子ども省」について別の名称を検討するとともに、法律および政策において、スティグマにつながる可能性がある子どもの分類を行なわないようにすること。 (c) 「子ども影響評価:最善の実務のための指針」を完成させかつ実施するとともに、その使用を、公的資源の配分の際も含めて義務的とすること。 調整 8.条約の実施に関する調整機構として社会部門関連次官級委員会が設置されたこと、および、同委員会が子どもの権利条約モニタリンググループと連携していることには留意しながらも、委員会は、締約国が、同委員会に対し、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源、ならびに、さまざまな部門を横断して、国、地方および地域のレベルで条約の実施に関連する活動を調整するための十分な権限が与えられることを確保するよう、勧告する。 資源配分 9.子どもの権利実現のための公共予算(第4条)に関する一般的意見19号(2016年)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ17)を想起しながら、委員会は、締約国に対して以下の措置をとるよう促す。 (a) すべての子ども関連支出を網羅した追跡システムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを採用すること。締約国はまた、いずれかの部門への投資がどのように子どもの最善の利益にかなうかについての影響評価を、当該投資が女子および男子に及ぼす異なる影響が測定されることを確保しながら実施するためにも、この追跡システムを活用することが求められる。 (b) 子どもたちとの対話を含む公的対話を通じて、かつ公的機関に説明責任を適正に履行させるための、透明なかつ参加型の予算編成を確保すること。 データ収集 10.実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の全分野に関する包括的なデータ収集機構および情報システムを発展させること。データは、すべての子ども、ならびに、とくにマオリおよび太平洋諸島民の子ども、養護の対象とされている子ども、障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、子どもの難民、庇護希望者および移住者ならびに被害を受けやすいその他の状況に置かれた子どもの状況に関する分析を容易にするため、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身、国籍および社会経済的背景別に細分化されるべきである。 (b) データおよび指標が関連省庁の間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保すること。 (c) 統計的情報の定義、収集および普及を行なうに際し、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human Rights Indicators A Guide to Measurement and Implementation)[1] に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れること。 [1] www.ohchr.org/Documents/Publications/Human_rights_indicators_en.pdf より入手可能。 独立の監視 11.独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもコミッショナーに対し、条約、その2つの選択議定書、および、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書にしたがって与えられている子ども関連の国内防止機関としての任務の適用を前進させかつ監視すること、ならびに、子どもからの苦情を受理し、調査しかつこれに対応することのための十分な人的資源、技術的資源および財源が与えられることを確保すること。 (b) 予算の提供における独立性も含め、子どもコミッショナー事務所の独立性のさらなる強化を検討すること。 普及、意識啓発および研修 12.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ19および21)を想起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親を含む一般公衆、養育者、教員、ユースワーカーおよび子どもとともに働くその他の専門家ならびに子どもたち自身によって条約の規定が広く知られることを確保するため、子どもコミッショナー事務所に対する意識啓発専用の資金拠出を増額する等の手段により、現状では限定的な意識啓発プログラム、キャンペーンおよび普及活動を強化すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(すべての法執行官、教員、保健従事者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員ならびに国家部門および地方政府の職員を含む)を対象とした、このような専門家の条約上の責任に関する体系的研修をさらに強化すること。 子どもの権利と企業セクター 13.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ23)を想起し、かつ企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 企業セクターが、とくに子どもの権利との関連で、国際的および国内的な人権基準、労働基準、環境基準その他の基準を遵守することを確保するための規制策を策定しかつ実施すること。 (b) 民間企業による子ども関連の必須サービスが条約の規定に一致する形で提供されることを確保すること。 (c) 環太平洋連携〔TPP〕貿易投資条約が〔子どもの権利〕条約の規定に合致したものになり、かつ、その批准が、子どもの最善の利益が正当に考慮されることを確保するため、市民社会および子どもたちとの協議によって進められることを確保すること。 (d) とくにビジネスと人権に関する指導原則にのっとり、締約国の管轄に服するニュージーランド企業その他の企業が国内外で行なう活動についての、子どもの権利に関するデュー・ディリジェンス(相当の注意)も含む企業の社会的責任指標を採択すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 14.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を女子および男子の双方について18歳と定め、かつ、子ども、若者およびその家族法(1989年)の適用範囲を拡大して18歳未満のすべての者を対象とすること等の手段により、子どもの定義に関する国内法の矛盾に対応するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 15.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ25)を想起し、締約国が、以下のものを含む措置をとることにより、あらゆる理由に基づく差別からの全面的保護を確保するよう勧告する。 (a) マオリおよび太平洋諸島民の子どもならびにその家族による教育、保健サービスおよび最低生活水準へのアクセスの格差に対応するため、緊急の措置をとること。 (b) 公衆の否定的態度と闘うための措置およびその他の差別防止活動を強化するとともに、必要であれば、被害を受けやすい状況に置かれた子ども(マオリおよび太平洋諸島民の子ども、民族的マイノリティに属する子ども、子どもの難民、移住者である子ども、障害のある子ども、レズビアン、バイセクシュアル、ゲイ、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもならびにこれらの集団の者とともに住んでいる子どもなど)のための積極的差別是正措置をとること。 (c) 子どもに対する差別の事案が、懲戒措置、行政上の制裁または必要であれば刑事的制裁等によって効果的に対応されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 子どもの最善の利益 16.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、家族紛争解決法(2013年)を改正して、この義務を遵守しなければならないとする明示的規定を含めるよう勧告する。委員会はまた、この権利が、とくに、家族法、社会保障法、養護の対象とされている子ども(とくにマオリの子ども)および親の量刑との関連でならびに難民認定手続において、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定に適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化することも、勧告するものである。締約国は、あらゆる関連の専門家に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励される。 生命、生存および発達に対する権利 17.委員会は、締約国が、マオリの子どもにとくに注意を払いながら、事故以外の原因による受傷から子どもを保護することおよび若者の自殺の根本的原因を防止し、特定しかつこれに対応することのために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 18.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ27)を想起し、かつ意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)に照らして、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自己に影響を与えるすべての事案で意見を聴かれる子どもの権利を確保するため、家族紛争解決法(2013年)を含む法律を改正すること。 (b) 国家的政策の策定に関する公的協議(子どもに影響を与える問題に関する子どもたちとの協議を含む)を、高い水準のインク―ジョンおよび参加を前提としながら標準化するため、このような協議のためのツールキットを開発すること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) アイデンティティに対する権利 19.言語プログラムおよびテレビ番組等も通じてマオリのアイデンティティを保全するために締約国が行なっている努力は評価しながらも、委員会は、これらの努力が依然として不十分であることを懸念し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教育におけるマオリの言語、文化および歴史の促進および醸成を図り、かつマオリ語教室への編入率を高めるための努力を強化すること。 (b) 非マオリの親によって養子とされたマオリの子どもが自己の文化的アイデンティティに関する情報にアクセスできることを確保すること。 (c) 子どもに影響を与える法律および政策を策定するすべての政府機関が、マオリの文化的アイデンティティの集団的側面、および、マオリの子どものアイデンティティにとっての拡大家族(ファナウ)の重要性を考慮に入れることを確保すること。 プライバシーに対する権利 20.委員会は、「被害を受けやすい状況に置かれた子どものための公的サービス改善に向けた承認情報共有協定」が2015年に採択されたこと、および、締約国が子ども保護制度において予測リスクモデリングを活用しようとしていることに留意するとともに、締約国が、以下のものを含む手段をとることにより、プライバシーに対する子どもの権利を全面的に保護するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよびその家族に関する個人情報の収集、保存および共有を可能とするいかなる法律にも、子どもの最善の利益を考慮しなければならない旨の明示的要件が含まれることを確保すること。 (b) 予測リスクモデリングのあり方を定める「プライバシー・人権・倫理」枠組みが、このような実務から生じる可能性がある差別的効果を考慮に入れたものとされ、公表され、かつあらゆる関連の法律で参照されることを確保すること。 (c) 民族を理由として行なわれる可能性がある差別的実務の解消に特段の注意を払いながら、法執行および情報収集を目的として行なわれる監視の実施についての子どもの権利影響評価を実施すること。 適切な情報へのアクセス 21.学校におけるインターネットへのアクセスを向上させるために締約国が行なっている努力ならびに子どものオンラインセーフティに関する法律およびリソースの発展(有害なデジタル通信法(2015年)および学校向けの「ネットセーフキット」を含む)を歓迎しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) インターネットおよび情報へのアクセスを農村部に住んでいる子どもに対しても拡大すること。 (b) 放送基準局のテレビ放送コードおよび広告基準局の子ども向け広告コードで「子ども」に含まれていない14~17歳の子どもが、そのウェルビーイングにとって有害な情報および資料から十分に保護されることを確保すること。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 暴力、虐待およびネグレクト 22.子どもの虐待およびネグレクトに対処するために締約国が行なっている多様な努力は歓迎しながらも、委員会は以下のことを依然として深刻に懸念する。 (a) 国の養護を受けている子どもの拷問または残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いに相当しうる暴力(抑制措置、および閉鎖型養護の形態をとった自由の剥奪の使用を含む)が発生していること。 (b) 国の養護において虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもが、救済措置を求めるうえで困難に直面していること(苦情申立て機構について子どもの間で十分に知られていないこと、および、虐待事件を通報した子どもの被害者に提供される支援が不十分であることを含む)。 (c) とくにマオリおよび太平洋諸島民の子どもならびに障害のある子どもの間で身体的および心理的虐待ならびにネグレクトが引き続き蔓延していること、ならびに、あらゆる場面のあらゆる子どもを包含する、虐待およびネグレクトに対する包括的戦略が定められていないこと。 (d) あらゆる場面(家庭、学校および施設養護を含む)における子どもの虐待に関する包括的データが利用できない状態が続いていること。 (e) 子どもの虐待およびネグレクとの闘いにおいて、「被害を受けやすい状況に置かれた子ども計画」、「暴力介入プログラム」および「全国子ども保護警報システム」を評価するためにとられた措置が不十分であること。 (f) 子どもチームなどの現場のサービス提供機関が利用可能な資源が不十分であること。 23.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)に照らし、かつ前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ35)を想起しながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 国の養護を受けている子どもに対する暴力の使用および虐待(抑制措置および拘禁の形態をとるものを含む)を根絶するための措置を速やかにとるとともに、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家および職員が、必要な研修および監督を受け、かつ必要な背景照会の対象とされることを確保すること。 (b) 国の養護を受けている子どもに対する暴力および虐待の事案を速やかに捜査し、被疑者を訴追し、かつ加害者に対して適正な制裁を科すとともに、被害を受けた子どもが、子どもにやさしい通報のための経路、身体的および心理的リハビリテーションならびに保健サービス(精神保健サービスを含む)にアクセスできることを確保すること。 (c) マオリおよび太平洋諸島民の子どもならびに障害のある子どもに特段の注意を払いながら、あらゆる場面のあらゆる子どもを包含した、虐待およびネグレクトと闘うための包括的戦略を策定すること。 (d) 家庭、学校および施設養護において生じた子どもに対する暴力のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置し、かつ、そのような暴力の規模、原因および性質に関する包括的評価を実施すること。 (e) 「被害を受けやすい状況に置かれた子ども計画」、「暴力介入プログラム」および「全国子ども保護警報システム」ならびに子どもの虐待およびネグレクトに対するその他の政策およびプログラムの有効性について、定期的なモニタリングおよび分析を実施すること。 (f) 子どもチームおよびその他の現場サービス機関に対し、通報された子どもの虐待事案に対して十分な対応をとるための、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (g) マオリおよび太平洋諸島民の子どもならびに障害のある子どもに特段の注意を払い、かつ子どもたちの関与を得ながら、子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための意識啓発プログラムおよび教育プログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。 性的搾取および性的虐待 24.児童性犯罪者登録簿の発展は歓迎しながらも、委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ52)を想起し、持続可能な開発目標のターゲット5.2(人身取引および性的その他の形態の搾取を含む、公私の領域におけるすべての女性および女子へのあらゆる形態の暴力の解消)に対して注意を喚起し、かつ締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 民族、ジェンダーおよび障害に特段の注意を払いながら、子どもの性的虐待と闘うための努力を強化し、かつ、子どもの性的虐待の事案の義務的通報を確保するための機構、手続および指針を確立すること。 (b) 適切な制度的対応を発展させるため、あらゆる場面(家庭、学校および養護のための施設を含む)における子どもの性的虐待の事案についての包括的なデータシステムを確立すること。 (c) 近親姦を含む性的虐待を防止するための意識啓発キャンペーンを実施し、そのような虐待の被害者に対するスティグマと闘い、かつ、そのような侵害を通報するための、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしくかつ効果的な回路を確保すること。 有害慣行 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 早期婚が子ども(とくに女子)の身体的および精神的健康およびウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての、世帯、地方当局、宗教的指導者ならびに裁判官および検察官を対象とした意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを発展させること。 (b) インターセックスの子どもに関する、子どもの権利を基盤とする保健ケア対応要綱(保健チームがしたがうべき手続および手順を定めたもの)を策定しかつ実施し、何人も乳児期または児童期に不必要な医学的治療または手術の対象とされないことを確保し、身体的不可侵性、自律および自己決定に対する子どもの権利を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。 (c) 十分な情報に基づく同意を得ずに行なわれたインターセックスの子どもの手術その他の医学的治療の事件を速やかに調査するとともに、そのような治療の被害者に救済措置(十分な補償を含む)を提供するための法的規定を採択すること。 (d) 生物学的および身体的なさまざまな性的多様性ならびにインターセックスの子どもに対する不必要な手術その他の医学的介入がもたらす影響について、医療専門家および心理専門家を教育すること。 (e) インターセックスである16~18歳の子どもも、自己のインターセックス状態に関連する手術および医学的治療に無償でアクセスできるようにすること。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境 26.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ32)を想起し、締約国が、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたり、地方レベルにおける時宜を得た対応によって適切な援助(子育てに際してカウンセリングを必要とする親向けのサービス、アルコールまたは薬物に関連する問題の治療のためのサービス、および、マオリおよび太平洋諸島民については、親としての役割を果たせるようにするための文化的に適切なサービスを含む)を行なうための努力を強化するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 27.委員会は、子どもコミッショナーの報告書「養護白書」2015年版および2016年版、子ども・若者・家族の現代化専門家委員会の報告書、ならびに、両者の勧告に対応していくことについての締約国の決意を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを深刻に懸念するものである。 (a) 子どもの最善の利益および自己に直接影響する決定についての子どもの意見が考慮されていないこと、ならびに、子ども中心アプローチが明確でないために子ども(とくにマオリの子どもおよび障害のある子ども)に対する実務に整合性が欠けていることを含めて、締約国の養護制度に欠陥があること。 (b) 最近行なわれている努力にもかかわらず、国の養護制度における文化的対応能力が依然として不十分であり、そのため国の養護を受けている子どもの半数以上をしめるマオリの家族および子どもに不均衡な影響が生じていること。 (c) 養護措置に配分される資源が不十分であること(ケース監督および養護職員の研修が不十分であることを含む)、養護者についても同様であること(そのために養護者の募集が阻害されている)、および、恒久的養護者が特別後見人としての地位を得る際に厳しい条件を課されていること(これは、子どものウェルビーイングに悪影響を与え、かつ子どもの最善の利益に逆行する可能性がある)。 (d) 養護を受けている最中および養護から離脱した後の子どもの状況(教育、健康およびウェルビーイングに関する状況を含む)に関するデータが不十分であること。 (e) 締約国が、説明責任を確保するための適切な枠組みを定めないまま、一部の養護サービスを民間のサービス提供者に外部委託しようとしていること。 28.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 養護制度を改革する際、すべての事案で子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることおよび自己に影響を与えるすべての事柄について子どもの意見が聴かれることを確保し、養護制度全体を通じて子ども中心アプローチの共通理解を確保し、かつ、マオリの子どもおよび障害のある子どもに特段の注意を払いながら、改革の実施およびそれが子どもの状況に及ぼす影響を恒常的に監視すること。 (b) 国の養護を受けているマオリの子どもが過剰に多い問題に対処する目的で、「養護白書」と題する子どもコミッショナーの2015年の報告書 [2] の勧告を実施する等の手段により、養護・保護制度の文化的対応能力ならびにマオリのコミュニティ、ファナウ(拡大家族)、ハプ(準部族集団)およびイウィ(部族集団)への関与を向上させるための努力を強化すること。 (c) 養護サービス、とくに養護措置、養護の監督および養護者に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、後見に関する決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。 (d) 養護・保護制度の改善に対して科学的証拠に基づくアプローチを採用するため、養護を受けている最中および養護から離脱した後の子どもの状況(教育、健康およびウェルビーイングに関する状況を含む)に関するデータ収集を向上させること。 (e) 民間の養護サービス提供者へのいかなる外部委託も、条約の規定の遵守について緊密に監視の対象とされることを確保すること。 (f) 新たな運用モデルへの移行中およびその後に子どもの権利が全面的に尊重されるよう、社会開発省子ども・若者・家族局の改革が、十分な人的資源、技術的資源、財源および組織的資源によって裏づけられることを確保すること。 [2] www.occ.org.nz/assets/Publications/OCC-State-of-Care-2016.pdf より入手可能。 養子縁組 29.委員会は、養子縁組法(1955年)および成人養子縁組情報法(1985年)は年齢、性別、婚姻に関わる地位および障害を理由とする差別を行なっていると宣言した、2016年3月のニュージーランド人権審査審判所決定を歓迎する。前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ34)を想起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 2003年から保留となっている養子縁組法制の再検討を、条約との整合性を図る目的で速やかに進めること。 (b) すべての養子縁組事案で子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保すること。 (c) 養子縁組手続において、子どもの発達しつつある能力にしたがって子どもの意見が聴かれ、かつ子どもの同意が要件とされることを実際に確保すること。 (d) 自己の生物学的親、自己の文化およびアイデンティティに関する情報にアクセスする子どもの権利を確保すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 30.子ども障害手当、総合的集中個別支援および家族ファナウ手話ファシリテーターサービスをはじめとして締約国がとった措置は歓迎しながらも、障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利の充足について包括的な、子どもの権利に基づく、かつ参加型のアプローチをとるとともに、障害行動計画においてこれらの子どものニーズが考慮されることを確保すること。 (b) 障害のあるマオリの子ども、貧困下で暮らしている障害のある子どもおよび複合的障害のある子どもに特段の注意を払いながら、保健、教育、ケアおよび保護のためのサービスへのアクセスに関する障害のある子どもの周縁化および差別と闘うための努力を強化するとともに、障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘い、かつこれらの子どもの肯定的イメージを促進する目的で、政府職員、公衆および家族を対象とした意識啓発キャンペーンを実施すること。 (c) インクルーシブ教育を発展させるための包括的措置を確立するとともに、インクルーシブ教育が分けられた施設および学級への子どもの措置よりも優先されること、ならびに、受給資格のあるサービスについて障害のある子どものいる家族が知っていることを確保すること。 (d) 学校におけるいじめの発生を防止するために、いじめ防止プログラムを実施すること。 (e) 知的障害(義務的ケアおよびリハビリテーション)法(2003年)に基づいて義務的入所ケアの対象とされた障害児の権利侵害について地区査察官が行なう調査の評価を実施すること。 (f) 十分な情報に基づく自由な事前同意を得ずに行なわれる障害児の不妊手術を禁止する法律を採択するとともに、重度障害のある子どものために、自己に影響を与える決定の際に独立の立場からの権利擁護が行なわれることを確保すること。 (g) 適切な政策およびプログラムを整備するために必要な、障害のある子どもに関する包括的なかつ細分化されたデータを、恒常的かつ体系的に収集するシステムを確立すること。 健康および保健サービス 31.前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ38)を想起するとともに、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、かつ持続可能な開発目標のターゲット3.2(新生児および5歳未満児の予防可能な死亡に終止符を打つこと)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) マオリおよび太平洋諸島民の子どもに特段の注意を払いながら、年齢にふさわしい精神保健サービスを含む保健サービスへのアクセスをすべての子どもに対して確保するため、速やかに必要な措置をとること。 (b) とくにマオリ、太平洋諸島民および貧困下で暮らしている子どもを対象として、住宅環境を向上させる等の手段により、予防可能な疾病および感染症の蔓延を少なくするための即時的措置をとること。 (c) 子どもが副流煙に晒されないようにするため、成人を対象とした、あらゆる適切な法律上および教育上の措置をとること。 思春期の健康 32.思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ42)を想起し、締約国が、学校で青少年に対して適切なリプロダクティブヘルスサービス(リプロダクティブヘルス教育を含む)を提供し、かつ青少年を対象として健康的なライフスタイルを促進するための努力を強化するよう、勧告する。 母乳育児 33.委員会は、締約国が、完全母乳育児の利点に関するマオリ住民(とくに母親)の意識を高めることにとくに焦点を当てながら、生後6か月まで母乳のみで育てられる乳児の人数を増やすよう勧告する。 気候変動が子どもの権利に及ぼす影響 34.委員会は、とくにマオリおよび太平洋諸島民の子どもならびに低所得環境で生活している子どもについて、気候変動が子どもの健康に有害な影響を及ぼしていることを懸念する。委員会は、持続可能な開発目標のターゲット13.5(気候変動関連の効果的な計画・管理能力を高めるための機構の促進)への注意を喚起するとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 気候変動による影響を受ける可能性がもっとも高い集団の子ども(マオリおよび太平洋諸島民の子どもならびに低所得環境で生活している子どもを含む)に特段の注意を払いながら、気候変動および災害リスク管理の問題に対応する政策またはプログラムの策定において、子どもの特別な脆弱性およびニーズならびに子どもの意見が考慮されることを確保すること。 (b) 気候変動関連の立法および政策の参考とするため、子どもに特段の注意を払いながら、健康影響評価を恒常的に実施すること。 生活水準 35.子どもの貧困解決に関する専門家諮問委員会の任命等を通じ、締約国における子どもの貧困の広がりに対して公的な議論および関心が向けられていることは歓迎しながらも、委員会は、子どもの貧困が依然として広く蔓延していること、および、十分な生活水準および十分な住居へのアクセスについての子どもの権利に対して剥奪状況が及ぼす効果によって健康、生存および発達ならびに教育への悪影響が生じていることを、深く懸念する。委員会は、これらの権利の享受に関してマオリおよび太平洋諸島民の子どもが引き続き格差に直面していることをとりわけ懸念するものである。委員会はさらに、制裁をともなう最近の福祉・給付改革が、給付に頼っている世帯で生活している子どもに及ぼす影響について懸念を覚える。 36.委員会は、持続可能な開発目標のターゲット1.3(すべての者を対象とした、全国的に適切な社会保護制度および社会保護措置の実施)およびターゲット11.1(すべての者を対象とした、十分、安全かつ負担可能な住居へのアクセスの確保)への注意を喚起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 貧困の国家的定義を確立することも含め、子ども、とくにマオリおよび太平洋諸島民の子どもの貧困への対応に関する制度的アプローチを導入すること。 (b) 子どもの貧困に直接的かつ包括的に対処するために必要な資源の配分を相当程度増やすとともに、積極的な社会的措置を必要としている可能性がある、不利な立場、被害を受けやすい状況および貧困状況に置かれている子どものための予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても十分に確保され、かつ保護されることを確保すること。 (c) 社会的保護のための機構を強化するとともに、すべての子どもに安全かつ十分な住居を提供するための努力を強化すること。 (d) 貧困削減戦略に掲げられた子どもの権利充足のための戦略および措置を強化する目的で、子どもの貧困の問題に関する焦点化された協議を、家族、子どもたちおよび子どもの権利に関わる市民社会組織との間で持つことを検討すること。 H.教育、余暇および文化的活動(第28条~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 37.持続可能な開発目標のターゲット4.a(子ども、障害およびジェンダーに配慮した教育施設の建設および改善、ならびに、すべての者を対象とした安全な、非暴力的な、インクルーシブなかつ効果的な学習環境の提供)に留意し、かつ前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ46)を想起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 継続されている教育法(1989年)の見直しが、条約の規定および原則を遵守する形で、かつ子どもたちとの協議を踏まえて進められることを確保すること。 (b) 教育に配分される予算が、経済危機またはその他の財政的要因がある場合にも質量ともに十分であり、かつ保護されることを確保すること。 (c) 条約および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)にのっとった、代替的教育に関する十分な規範的枠組みを策定しかつ実施するとともに、代替的教育の計画および施設(新たに設置されたパートナーシップスクールを含む)の質の評価を定期的に実施すること。 (d) 子どもに対して十分な社会的および心理社会的支援を提供する等の手段により、障害のある子どもならびにマオリおよび太平洋諸島民の子どもが過剰に懲戒手続の対象とされている状況に終止符を打つための措置をとるとともに、懲戒措置としての退学または停学は最後の手段としてのみ用いること。 乳幼児期の発達 38.持続可能な開発目標のターゲット4.2(すべての女子および男子が良質な乳幼児期の発達、ケアおよび就学前教育にアクセスできることの確保)に留意し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 低層の社会経済的背景を有する子どもならびにマオリおよび太平洋諸島民の子どもが乳幼児期のケアおよび教育に効果的にアクセスできることを確保するために必要な措置をとること。 (b) 少なくとも低層の社会経済的背景を有する子どもについては無償であること、および、ケアを担当する職員が十分な研修を受けていること(マオリおよび太平洋諸島民の文化に関する研修を含む)を確保しながら、乳幼児期のケアおよび教育の提供および質に対してさらなる投資を行なうこと。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 39.締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、休息、遊びおよび余暇に対するすべての子どものアクセスを向上させ、かつ、遊びおよび野外活動(学校外ケア・レクリエーション補助モデルに基づくものを含む)へのアクセス面で存在している不平等に対処するための努力を強化するよう勧告する。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 40.委員会は、締約国が、家族再統合に対する子どもの権利の尊重を確保し、永住許可証の発給において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるようにし、かつ難民認定手続において子どもの意見および最善の利益が考慮されることを確保する目的で、2013年出入国管理(多数の集団の到着)法を改正するよう勧告する。委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ46)を想起し、締約国が、障害のある子どもに特段の注意を払いながら、子どもの庇護希望者および難民の統合ならびにこれらの子どもによるサービスへのアクセスを促進するための努力を強化するよう勧告するものである。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 41.ファナウ・オラ〔家族の健康〕など文化的に適切なプログラムを実施するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、マオリおよび太平洋諸島民の子どもが締約国において直面している構造的および制度的不利益について、依然として深刻な懸念を覚える。 42.先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、マオリおよび太平洋諸島民の子どもが権利を全面的に享受できるようにするための包括的なかつ部門横断型の戦略を、これらの子どもたちおよびそのコミュニティと緊密に協力しながら策定するよう促す。 経済的搾取(児童労働を含む) 43.委員会は、労働健康安全法が2015年に採択されたことには留意するものの、以下のことを深刻に懸念する。 (a) 就業が認められるための最低年齢が引き続き定められていないこと。 (b) 働いている子どもが業務災害の被害を受けやすく、かつ労働者の保護がより弱い不定期契約を結ばされやすいことを認めた子どもに特化した規定が労働健康安全法に存在しないこと。 (c) 危険物質の取扱いに関する規制第54号で提案されている新たな保護から15歳以上の子どもが除外されていること。 (d) 新たな「就労開始時賃金」イニシアティブ等においても、16歳未満の労働者に対する最低賃金保障がいまなお存在しないこと。 (e) 働いている子どもまたは働きたいと考えている子どもの間で、自己の権利に関する意識が不十分であること。 44.委員会は、前回の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ50)を想起し、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国際基準にのっとって就業が認められるための最低年齢を定めること。 (b) 働いている子どもが業務災害の被害を受けやすいことを認識しかつこれに対処すること、および、いかなる態様の契約(不定期契約を含む)のもとでもこれらの子どもの権利が尊重されることを確保する目的で、労働健康安全法を改正すること。 (c) 働いている18歳未満のすべての子どもが危険な労働から保護されることを確保するため、規則第54号案を再検討すること。 (d) 新たな「就労開始時賃金」イニシアティブ等において、16歳未満で働いている子どもについての最低賃金保障を確立すること。 (e) 子どもおよびその親を対象とした、働く子どもの権利についての意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を実施すること。 (f) 国際労働機関の最低就労年齢条約(1973年、第138号)の批准を検討すること。 少年司法の運営 45.締約国が少年司法の分野で進展を達成していないことを遺憾に思い、従前の勧告(CRC/C/NZL/CO/3-4、パラ56およびCRC/C/15/Add.216、パラ50)を想起し、かつ少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らして、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 委員会の一般的意見10号ならびにとくにそのパラ32および33にしたがって刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。 (b) 刑事上の成年を18歳に引き上げること。 (c) 条約第37条(c)に付した留保を速やかに撤回し、かつ、自由を奪われたいかなる子どもも、男女を問わず、すべての拘禁場所において成人から分離されることを確保すること。 (d) 警察の留置場における子どもの拘禁を少なくし、拘禁環境を改善し、かつ、拘禁の使用を最後の手段およびもっとも短い期間に限定することを目的として、「警察によって拘禁された若者に関する合同テーマ別検証」で行なわれた勧告を実施するための努力を強化すること。 (e) 警察の文化的対応能力を向上させることおよび人種的偏見の訴えについて調査を行なうこと等の手段により、マオリおよび太平洋諸島民の子どもおよび若者が過剰に少年司法制度の対象とされている状況に対処するための努力を強化すること。 カンタベリー地震で被災した子ども 46.委員会は、締約国が、カンタベリーの子どもに対する精神保健サービスおよびカウンセリングサービス(学校で提供されるものを含む)に十分な資金が配分されることを確保するとともに、災害後の回復および復興の取り組みにおいて子どもの権利(意見を聴かれる権利および自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利を含む)を考慮するための指針を策定するよう、勧告する。 武力紛争における子どもについての選択議定書に関する委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 47.委員会は、締約国が委員会の勧告(CRC/C/OPAC/CO/2003/NZL/1)の実施に関する十分な情報を提供しなかったことを遺憾に思い、締約国に対し、この点に関する包括的かつ詳細な情報を次回の報告書で提供するよう促す。さらに委員会は、締約国が、国以外の武装集団による18歳未満の者の徴募および敵対行為における使用を明示的に禁止しかつ犯罪化するとともに、選択議定書上のすべての犯罪について域外裁判権を設定しかつ行使するよう、勧告するものである。 J.通報手続に関する選択議定書の批准 48.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 49.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約の批准を検討するよう勧告する。 L.地域機関との協力 50. 委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 51.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 52.委員会は、締約国に対し、第6回定期報告書を2021年5月5日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 53.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月3日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/264.html
国連・子どもの権利委員会 個人通報 決定一覧 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書および国連・子どもの権利委員会の手続規則:平野裕二訳(注)2011年12月19日の国連総会決議66/138により無投票採択。 出典(国連人権高等弁務官事務所)最近の決定:Recent jurisprudence 審議中の事案一覧:Table of pending cases(PDF) 決定済みの事案:被申立国(結果):決定番号(決定年) (注)★は本案審査が行なわれた事案。 スペイン(不受理):CRC/C/69/D/1/2014(2015年)保護者のいない未成年であると主張する申立人が、医学的検査により成人と判断されたために国による保護を否定されたのは条約違反であると主張した事例。関連の決定が選択議定書の発効前に行なわれたものであるため、委員会には時間的管轄権がないとして不受理。 スペイン(不受理):CRC/C/73/D/2/2015(2015年)明らかに根拠を欠き、委員会には事項的管轄権がないとして不受理。 コスタリカ(不受理):CRC/C/74/D/5/2016(2016年)明らかに根拠を欠くとして不受理。出生登録関連の事案。 スペイン(審理の打ち切り)CRC/C/75/D/9/2017(2017年)子どもの最善の利益関連の事案。 デンマーク★(条約違反を認定):CRC/C/77/D/3/2016(2018年)FGM(女性性器切除)のおそれがあるプントランド(ソマリア)に女児を送還する旨の決定は条約3条・19条に違反すると認定した事案。 ベルギー★(条約違反を認定) CRC/C/79/DR/12/2017(2018年)遺棄された後、ベルギー人・モロッコ人のカップルに「カファラ」(養子縁組に類似したイスラム教の制度)を通じて引き取られたモロッコ国籍の子どもが人道的査証の発給を受けられなかった事案。 スペイン★(条約違反を認定):CRC/C/79/D/11/2017(2018年)保護者がおらず、身分証明書類も有していない子ども(と主張する者)を年齢鑑別検査によって成人と認定し、退去強制のために成人向けの入管収容施設に拘禁したことが争われた事案。 パラグアイ★(条約違反を認定):CRC/C/83/D/30/2017(2020年)アルゼンチンに住む父親との面会交流について定めた司法決定の執行を確保するための実効的措置をとらなかったことが条約3条・9条・10条に違反すると認定された事案。(概要) ドイツ(不受理):CRC/C/83/D/60/2018(2020年)地方選挙当時16歳であった申立人が、年齢を理由として同選挙における投票が認められなかったのは条約2条・3条・12条等に違反すると主張した事案。申立人が州憲法裁判所への申立てを行なっていなかったことから、国内救済措置が尽くされていないと判断された。(概要) デンマーク(審理打ち切り):CRC/C/83/D/52/2018(2020年)シリア出身の母親を第1次庇護国であるギリシアに送還するのは条約違反であるとして、デンマークですでに在留資格を認められていた6人の子どもたちが申立てを行なった事案。デンマークが母親の在留を認める決定を行なったことにより問題が解決されたため、申立人らの同意を得て審理が打ち切られた。(概要) デンマーク★(条約違反を認定):CRC/C/85/D/31/2017(2019年)中国への子どもの送還について、中国戸籍に登録されない可能性があることなどを理由に条約第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命・生存・発達に対する権利)および第8条(身元関連事項・アイデンティティの保全に対する権利)が認定された事案。(概要) スイス★(条約違反を認定):CRC/C/85/D/56/2018(2020年)第3次ダブリン規則を適用してアゼルバイジャン国籍の子どもをイタリアに送還するとした当局の決定が条約第3条(子どもの最善の利益)および第12条(子どもの意見の尊重)に違反すると認定された事例。(概要) フィンランド★(条約違反を認定):CRC/C/86/D/51/2018(2021年)ロシア出身のレズビアン・カップルの子どもの在留を認めなかったことについてフィンランド移民局の対応に瑕疵があったとして、条約第3条(子どもの最善の利益)、第19条(虐待等からの保護)および第22条(難民の子ども)の違反を認定した事案。(概要) スペイン★(条約違反を認定):CRC/C/87/D/115/2020(2021年)モロッコ国籍の子どもに対して小学校への入学を速やかに認めなかったことについて、条約第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第28条(教育に対する権利)などの違反を認定した事案。(概要) スイス★条約違反を認定:CRC/C/88/D/95/2019(2021年)シリアから避難してきた母子を経由国であるブルガリアに送還する旨のスイス当局の決定について、第3条1項(子どもの最善の利益)と第12条(子どもの意見の尊重)の違反に加え、第6条2項(生存・発達に対する権利)、第7条(国籍に対する権利)、第16条(私生活・家族の保護)、第22条(難民の子どもの権利)、第27条(十分な生活水準に対する権利)、第28条(教育に対する権利)、第37条(拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い等から保護される権利)および第39条(被害を受けた子どもの心身の回復・社会復帰)の違反を認定した事案。(概要) アルゼンチン(CRC/C/88/D/104/2019)・ブラジル(CRC/C/88/D/105/2019)・フランス(CRC/C/88/D/106/2019)・ドイツ(CRC/C/88/D/107/2019)・トルコ(CRC/C/88/D/108/2019)(受理不能;2021年)十分な気候変動対策がとられないために権利が脅かされているとして12か国の子ども16人が行なった申立てについて、国内救済措置が尽くされていないとして受理不能とされた事案。(概要/委員会による子どもたちへの説明) フランス★条約違反を認定:CRC/C/89/D/77/2019;CRC/C/89/D/79/2019;CRC/C/89/D/109/2019(2022年)シリアのキャンプに収容されているフランス国籍の子どもを帰還させるための措置をとらなかったことについて、第3条(子どもの最善の利益)、第6条1項(生命に対する権利)、第37条(a)(拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い等から保護される権利)の違反を認定した事案。(概要) チリ★条約違反を認定:CRC/C/90/D/121/2020(2022年)子どもが母親によって奪取されたと父親が申し立てた事案で、子どもの最善の利益評価を実施せずに最高裁が子どもの返還を命じたことが第3条1項(子どもの最善の利益)違反にあたると認定された事案。(概要) ジョージア★条約違反を認定:CRC/C/90/D/84/2019(2022年)公立幼稚園で行なわれたとされる体罰に関して迅速かつ実効的な調査を行なわなかったことを理由に条約第19条(虐待その他の暴力からの保護)違反が認定された事案。(概要) フィンランド★条約違反を認定:CRC/C/91/D/100/2019(2022年)シリアのキャンプに収容されているフィンランド国籍の子どもを帰還させるための措置をとっていないことについて、第6条1項(生命に対する権利)および第37条(a)(拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い等から保護される権利)の違反を認定した事案。(概要) スイス(審理打ち切り):CRC/C/92/D/126/2020(2023年)シリアから避難してきたクルド人の子ども4人(10~14歳、いずれもシリア国籍)およびその母親を最初の庇護国であるブルガリアに送還するという決定について、政府が決定を撤回して母子の難民認定を行なったことから、審理が打ち切られた事案。(概要) ペルー★条約違反を認定:CRC/C/93/D/136/2021(2023年)強制性交・近親姦の被害者である13歳の少女が中絶サービスにアクセスすることを否定され、自己堕胎罪で訴追されたことについて、条約の多くの規定の違反が認定された事案(事案の概要)。 チェコ★条約違反を認定:CRC/C/93/D/139/2021(2023年)不登校状態にあった子どもの健康・教育に対する権利の確保を名目として行なわれた施設措置について、第3条1項(子どもの最善の利益)、第9条1~3項(親子の分離禁止原則)、第12条(子どもの意見の尊重)および第37条(b)(自由を不法にまたは恣意的に奪われない子どもの権利)違反が認定された事案。(事案の概要) デンマーク★条約違反を認定:CRC/C/94/D/145/2021(2023年)在留許可を付与されている3人の子どもから父親を引き離して国籍国(ナイジェリア)に送還する旨の決定について、条約第3条(子どもの最善の利益)および第9条(親子の分離禁止原則)に違反すると認定された事案。(事案の概要) ページ作成(2015年9月26日)。/~/決定済みの事案にCRC/C/92/D/126/2020(スイス、審理打ち切り)を追加(2023年2月6日)。/決定済みの事案にCRC/C/93/D/136/2021(ペルー)を追加(6月19日)。/決定済みの事案にCRC/C/93/D/139/2021(チェコ)を追加(7月10日)。/決定済みの事案にCRC/C/94/D/145/2021(デンマーク)を追加(2024年2月22日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/222.html
総括所見:スペイン(第3~4回・2010年) 第1回(1994年)/第2回(2002年)OPAC(2007年)/OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/ESP/CO/3-4(2010年11月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年9月15日に開かれた第1548回および第1550回会合においてスペインの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/ESP/3-4)を検討し、2010年10月1日に開かれた第1583回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の状況に関する理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/ESP/3-4)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、部門横断型の代表団の出席、および、代表団との間に持たれた率直なかつ開かれた対話について評価の意を表明するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2007年10月17日に採択された、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/ESP/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/ESP/CO/1)についての締約国の第1回報告書に関する総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 4.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する両選択議定書の実施についての最新情報が締約国報告書に記載されていなかったことを遺憾に思う。委員会は、締約国に対し、各選択議定書の第12条2項および第8条2項にしたがい、包括的な第1回報告書の提出後は、締約国は、条約第44条にしたがって委員会に提出する報告書に、各議定書の実施に関するさらなる情報があればそれを記載するものとされていることを想起するよう、求めるものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、条約の実施に関連した前向きな進展に、評価の意とともに留意する。これには、とくに以下の計画および法律の採択が含まれる。 (a) 子どもと青少年のための第1次国家戦略計画(2006~2009年)。 (b) 子どもと青少年の商業的性的搾取に反対する第2次国家行動計画(2006~2009年)。 (c) 市民権と統合に関する戦略計画(2007~2010年)。 (d) 児童ポルノ犯罪の範囲を拡大し、かつインターネット上のセクシュアルハラスメント犯罪の定義を定めた、刑法を改正する6月22日の組織法第5/2010号。 (e) 女性性器切除(FGM)犯罪の定義を定めた、公の安全、ドメスティックバイオレンスおよび外国人の社会的統合についての具体的措置に関する9月29日の組織法第11/2003号、および、FGMの域外訴追について定めた組織法第3/2005号。 6.委員会は、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2007年12月)、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2009年4月)ならびに性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2010年8月)の批准を歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.185)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎するものの、そこに掲げられた勧告の一部について十分な対応が行なわれていないことに留意する。委員会は、これらの懸念表明および勧告がこの文書でもあらためて行なわれていることに留意するものである。 8.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ十分に実施されていないもの(とくに、調整、データ収集、差別、移民の子ども、保護者のいない外国籍の子どもおよび自由を奪われた子どもに関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。この文脈において、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2004年〔ママ〕)に対して締約国の注意を喚起するものである。 立法 9.法律を条約の原則および規定と調和させようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、自治州で適用される法令が異なっており、かつ重要な分野(危険な状況に置かれた、ネグレクトされているもしくは里親養護を受けている子どもの保護または保護者のいない外国籍の子どもの取扱いなど)で必ずしも条約と一致していないことに、留意する。 10.委員会は、締約国が、すべての自治州の法律および行政規則が条約および2つの選択議定書の原則および規定に全面的に一致することを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 調整 11.委員会は、子どもの権利の促進および保護のためにさまざまな自治州がとった措置および行動を歓迎する。委員会は、社会問題部門会議(Conferencia Sectorial de Asuntos Sociales)、自治州間子ども担当局長委員会および子どものための監視機関など、中央政府と自治州間の協力および連携のための現行機構について締約国から提供された情報には留意しつつも、子どもの権利に関する国レベルの調整機構が存在しないことを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、前回勧告したとおり、子どもの〔権利の〕促進および保護のための政策の実施における効果的かつ十分な調整システムを中央行政機構においても自治州間でも増進させるための努力を継続するよう、勧告する。 子どものための国家的行動計画 13.委員会は、子どもと青少年のための国家戦略計画に代表される進展を認識するとともに、諸機関および社会団体が幅広く参加したその作成プロセスを高く評価する。しかしながら委員会は、2008年に実施された部分的評価により、いくつかの構造上および手法上の弱点(計画されている措置を実施するための追加的かつ具体的な経済的資源が存在しないこと、ならびに、目標および措置との関連で具体的な到達目標および期限が定められていないことを含む)が明らかになったことに留意するものである。 14.委員会は、今後の子どもと青少年のための国家戦略計画に、計画の効果的実施を増進させるために必要な資源(人的資源および物的資源の双方)が含まれるべきことを勧告する。これには、目標および措置をより戦略的に選択すること、到達目標、期限および効果指標を定めること、ならびに、計画の作成、監視および評価に子どもおよび市民社会が参加するためのプロセスを改善することも含まれる。 資源配分 15.委員会は、2008年までの段階で社会部門活動(子どもおよび青少年の権利に対応する政策およびプログラムを含む)への予算配分が増額傾向にあることを歓迎する。しかしながら委員会は、国家予算における子どものための具体的配分額を明らかにするうえでの困難が引き続き存在することに留意するものである。委員会は、締約国に深い影響を及ぼしている現在の危機(失業率が約20%に達し、かつ子どもの25%が貧困下にありまたは貧困の危険にさらされている)に対応するために締約国が作成した諸計画および予算において、子どもに特化した項目が設けられていないことに、懸念を表明する。さらに委員会は、自治州が子どものために配分している予算額についての情報が存在しないことを引き続き懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)後に採択された委員会の勧告(CRC/C/46/3参照)を考慮しながら、以下の措置をとるよう促す。 (a) 予算全体を通じて子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているかを追跡するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国および自治州の予算の策定に際して子どもの権利アプローチを活用すること。委員会は、子どもに関する支出の効果および影響を評価する目的で、国、自治州および地方のレベルにおける子ども関連の支出額およびその割合を明らかにする、子ども予算の開発を勧告するものである。 (b) 子どもに関する優先的予算科目が、全体的な予算的優先順位における資源水準の変化から保護されること、および、より具体的には、必要とする子どものための社会的な積極的差別是正措置に言及した予算科目が、たとえ危機の時期にあっても保護されることを、確保すること。 データ収集 17.調査研究、データの分析および収集の分野で子どものための監視機関が果たしている重要な役割は認識しながらも、委員会は、データ収集に対する断片的アプローチ(データ収集が条約で対象とされているすべての分野を網羅しておらず、かつ国および広域行政圏のレベルで不均一に行なわれている)について懸念を覚える。 18.前回の勧告(CRC/C/15/Add. 185)にしたがい、委員会は、締約国に対し、ロマの子ども、移民の子ども、保護者のいない外国籍の子どもならびに経済的および社会的に不利な立場に置かれた世帯の子どもをとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関するデータ(とくに年齢、性別および民族的背景ごとに細分化されたもの)を体系的に収集しかつ分析する機構を強化するよう、勧告する。 普及および意識啓発 19.委員会は、子どもの権利に関する公衆の教育および公衆への情報提供のためにスペインで行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。委員会は、初等中等教育のカリキュラム(「市民性教育」の科目)に人権関連の内容を含めた、教育に関する5月3日の組織法第2/2006号を通じて達成された進展を歓迎するものである。 20.委員会は、締約国が、条約のすべての規定がおとなによっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを確保するための努力を継続するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、公衆一般、子ども、家族および子どもとともに働く専門家(裁判官、弁護士、法執行官、教員、保健従事者およびソーシャルワーカーを含む)を対象とした、条約の原則および規定に関する体系的な教育プログラムを実施するよう、奨励するものである。 国際協力 21.委員会は、国際協力に貢献しようとする締約国の力強い努力を歓迎する。委員会は、スペイン協力基本計画(2009~2012年)に、複数部門にまたがる優先事項として子どもが含まれていることに、評価の意とともに留意するものである。委員会はまた、人権高等弁務官事務所に対する締約国の拠出額が増えていることにも評価の意を表明する。 22.委員会は、締約国に対し、国際協力の水準を維持し、かつ可能であれば高めるよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、二国間協力に際して、両選択議定書、当該国に関する総括所見および当該国について委員会が行なった勧告に特段の注意を払うよう、奨励するものである。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議を受けて行なわれた勧告(2007年)を考慮するよう、慫慂する。 2.子どもの定義(条約第1条) 23.委員会は、締約国における婚姻適齢が18歳であることに留意する。しかしながら委員会は、裁判官が、例外的事情がある場合に14歳という低年齢での婚姻を認可できることに対する懸念を、あらためて表明するものである。 24.委員会は、締約国が、裁判官の許可がある場合の例外的な最低婚姻年齢を16歳に引き上げる目的で法律を見直すとともに、その適用は例外的事案に限られることを明示的に定めるよう、勧告する。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、領域内における差別、とくにロマ系の子ども、移住労働者の子ども、保護者のいない外国籍の子どもおよび障害のある子どもに関わる差別と闘うために締約国が行なっている努力を歓迎する。委員会は、移民生徒による義務的教育へのアクセスを保障することおよび教育制度への統合を促進することを目的とした、市民権と統合に関する戦略計画(2007~2010年)の承認を歓迎するものである。しかしながら委員会は、非正規な状況にある外国人の子どもが教育サービスおよび保健サービスにおいて遭遇している障壁について、依然として懸念を覚える。 26.委員会は、締約国が、現行法の枠組みにも関わらず差別に直面し続けている前掲集団に属する子どもの状況を引き続き監視するとともに、このような監視の結果に基づき、あらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、子どもの最善の利益の原則が法律に含まれており、かつ子どもに影響を与える決定において裁判官が当該原則を活用していることを歓迎する。しかしながら委員会は、何が子どもの最善の利益であるかを判断するための統一手続が設けられておらず、かつ、この原則の理解および適用に関して、とくに保護者のいない外国籍の子ども、送還および養子縁組に関わる事案との関連で、各自治州における実務の違いが根強く残っていることを、依然として懸念するものである。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益の原則が、法規定に関わる中央政府および自治政府のすべての行動および決定、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定において指針とされることを確保するため、あらゆる適当な措置をとること。 (b) 何が「最善の利益」であるかについての政府自身の理解および指針性を高める目的で、政府の行動および決定が子どもの最善の利益に及ぼした影響について評価を実施するとともに、意思決定に携わるすべての者(とくに裁判官、公務員、立法機関を含む)を対象とする研修を行なうこと。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利その他の子どもの参加権がスペイン法で認められていることを歓迎する。しかしながら委員会は、一定の状況下で、とくに子どもに影響を与える司法上および行政上の手続において、子どもが法定後見人から独立して出廷する権利を承認してもらうために上級裁判所に訴える必要がいまなおあることを、懸念するものである。 30.委員会は、締約国が、条約第12条を全面的に実施するための努力を継続しかつ強化するとともに、行政上および司法上の手続(子どもの監護権に関する審判を含む)、出入国管理事案および社会一般においていかなる年齢の子どもの意見も正当に尊重されることを促進するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの参加を促進し、この権利の効果的行使の便宜を図り、かつ、家庭、学校またはその他の現場、コミュニティ、国の政策立案、ならびに、計画、プログラムおよび政策の実施および評価において、子どもに関わるすべての事柄についてその意見が正当に重視されることを確保するようにも、勧告するものである。委員会は、締約国が、2009年に採択された、意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(CRC/C/CG/12)を考慮するよう勧告する。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 適切な情報へのアクセス 31.委員会は、子どもの身体的、精神的または道徳的発達を損なうおそれがある内容についての制限を掲げた、視聴覚通信に関する一般法の採択(2010年3月)を歓迎する。委員会はまた、官民のテレビ放送事業者が、少年視聴者の保護の増進に関するいくつかの基準について定めた、テレビの放送内容と子どもに関する自主規制規範(Codigo de Autorregulacion sobre los Contenidos Televisions e Infancia)に調印したこと(2005年3月)にも、評価の意とともに留意するものである。このようなさまざまな努力にも関わらず、委員会は、公共および民間のテレビ局が、子どもにふさわしい十分な番組を子どもの「高視聴時間帯」に提供せず、むしろ、子どもの発達にとって好ましくない場合がある内容を放送していることを懸念する。 32.委員会は、子どもが新たな技術に容易にアクセスできることには肯定的および否定的な影響の両方があること、ならびに、子どもおよびその養育者が虐待防止のための手段をまったく利用できない場合、子どもがとくに脆弱な状況に置かれる可能性があることを、認める。 33.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものデジタルリテラシーに貢献する良質なメディアの存在を促進するため、引き続き努力を行なうこと。 (b) 公共テレビ局が主導しかつリーダーシップを発揮しながら、経済的利益ではなく子どもの発達を優先させる、子どもの高視聴時間帯における責任ある番組編成(子ども向け番組の制作、内容および立案に子どもたちの参加を得ることも含む)が進められることを確保すること。 (c) インターネット部門で操業する企業に対し、十分な行動規範を採択するよう奨励すること。 (d) 子どもおよびおとなを対象とした、インターネット上の安全なブラウジングに関する研修を奨励すること。 体罰 34.委員会は、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add. 185)にしたがって体罰に関する民法第154条が改正されたことにより、親はその子を合理的にかつ適度に矯正することができると定めた規定が削除され、かつ、親の権威は、子の人格にしたがい、かつ「子の身体的および心理的不可侵性を尊重しながら」、常に子どもの利益のために行使されなければならないと定める規定が導入されたことを、大いに歓迎する。委員会はさらに、積極的かつ非暴力的なしつけを促進するために「しつけは叩くことじゃない」(Corregir no es pegar)のような啓発キャンペーンを通じて行なわれている努力を歓迎するものの、とくに家庭における体罰が社会的に受け入れられ続けているという懸念をあらためて表明するものである。 35.委員会は、積極的かつ非暴力的な形態のしつけが、子どもの人間の尊厳と一致する方法で、条約(とくに第28条2項)にしたがい、かつ体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)を正当に考慮しながら用いられることを確保するため、締約国が、意識啓発キャンペーンおよび親教育プログラムを通じて行なっている努力を継続するよう勧告する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 36.委員会は、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告をフォローアップするために締約国がとった措置に、評価の意とともに留意する。委員会は、子どもに対する暴力と闘うための目標および措置に言及している、子どもと青少年のための第1次国家戦略計画(2006~2009年)を歓迎するものである。 37.委員会は、締約国が、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が、防止の優先、非暴力的価値の促進および意識啓発、回復および社会的再統合のためのサービスの提供、ならびに、子ども参加の確保に関する勧告に特段の注意を払うよう、勧告するものである。 38.委員会はさらに、異なる自治州における子どもの権利の回復および最低注意水準を保障する、ジェンダーおよびドメスティックバイオレンスに関する法律と同様の、子どもに対する暴力に関する統合法を承認するよう勧告する。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 39.家族のための広範な社会サービスは歓迎しながらも、委員会は、子どもの養育責任を遂行するにあたって適当な援助をいまなお得られていない家族が多いこと(とくに貧困、十分な住居の欠如または別居を理由として危機的状況にある家族)を懸念する。委員会は、現在の経済的危機の影響を受けていて社会的な積極的差別是正措置を必要としている家族(とくに外国出身の家族)およびひとり親家族の子どもの状況について、特段の懸念を覚えるものである。 40.委員会は、締約国が、親および法定保護者(とくにとくに貧困、十分な住居の欠如または別居を理由として危機的状況にある家族)が子どもの養育責任を遂行するにあたって適当な援助を与えるための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての子どものニーズが満たされることを確保するとともに、いかなる集団の子どもも貧困線以下の生活を送ることがないようにするためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、親および子ども一般を支援するための家族給付および子ども手当の制度を強化するとともに、ひとり親家族、多子家族および(または)失業中の親に対して追加的支援を提供するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 41.委員会は、子どもと青少年のための国家戦略計画において、施設養護よりも家族養護が優先されていることを歓迎する。委員会は、資金は行政が支出しているものの運営は民間が行なっている特別センターに措置された、行為障害を有する子どもの状況について懸念を表明するものである。これらの特別センターでは、高度に制限的なものから、社会化のためのより開放的な取り組みまで、子どもを対象とする多種多様な介入プログラムが行なわれている。委員会はまた、子どもをこれらのセンターに付託するための基準および手続が不十分であることも懸念するものである。委員会はさらに、これらの特別センターが自由剥奪の一形態となる可能性があることを懸念する。 42.委員会は、締約国が、行動障害を有する子どもおよび(または)社会的に危険な状況に置かれた子どもに対して与えられるケアの範囲および基準を定めるための規範および標準要綱、ならびに、これらの民間センターへの付託に関する基準を策定するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利が全面的に保障されることを確保するよう促すものである。とくに、委員会は以下のことを勧告する。 (a) これらのセンターへの子どもの付託は、最後の手段として例外的に行なわれるべきであること。 (b) センターへの子どもの措置は、意見を聴かれる子どもの権利を尊重した後に裁判所による許可を受けなければ行なってはならないこと。 (c) センターにおける措置の環境を監視し、かつセンターに措置された子どもによる苦情を受理しかつ処理するための独立機関が設置されるべきであること。 (d) 定期的評価が実施され、かつ収容期間は可能なもっとも短い期間に厳格に制限されるべきであること。 (e) 行動障害を有する子どもをこれらのセンターに付託するのではなく、心理社会的支援プログラム(放課後のレクリエーション、ボランティア活動、メンタリング・プログラム、親・教員向けの研修およびコミュニケーションの改善を含む)、ならびに、家族会議、コミュニティ会議および認知行動療法治療が提供されるべきであること。また、親が困難に対処し、かつ子どもを自宅で養育することを援助するための支援プログラムおよびレスパイト・プログラムが提供されるべきであること。 43.委員会は、締約国が、2009年11月の総会で採択された子どもの代替的養護に関する国連指針を考慮しながら、養護の質を向上させるための努力を強化するよう勧告する。委員会はさらに、条約第25条で求められているとおり、施設への措置が定期的に再審査されるべきことを勧告するものである。 養子縁組 44.委員会は、子どもの権利および利益が遵守されることを確保するための明確な規則を定めることによって国際養子縁組手続に関する保障を強化した、国際養子縁組に関する12月28日の法律第54/2007号を歓迎する。しかしながら委員会は、ハーグ養子縁組条約の適用上の中央当局が23機関存在し、かつ、公的認可を受けた民間養子縁組斡旋機関および国際養子縁組団体(Entidades Colaboradores de Adopcion Internacional (ECAIS))が存在することにより、統制、評価およびフォローアップが複雑化していること、ならびに、その有効性は国の支援、研修、監督および統制次第であることを、懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、国際養子縁組手続のさまざまな段階(子どもの出身国におけるものも含む)で子どもの権利の尊重を保障するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。そのための第一歩は、国際養子縁組が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准国以外とは行なわれないことを確保することである。委員会はまた、「外国人未成年者一時受け入れプログラム」(Programas de acogida temporal a menores extranjeros)のような社会プログラム、ならびに、国際養子縁組送り出し国の家庭、家族およびコミュニティへの支援を目的とした国際協力プログラムを、国際養子縁組手続とは明確に区別することも勧告する。締約国の法律で違法な養子縁組が処罰の対象とされていることには留意しながらも、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第3条に掲げられた犯罪がスペイン刑法で全面的に網羅されるべきことを勧告するものである。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 46.委員会は、障害のある人のために締約国がとった措置、とくに第1次国家アクセシビリティ計画(2004~2012年)に評価の意を表明するとともに、障害のある人の機会均等、差別の禁止およびユニバーサルなアクセシビリティに関する12月2日の組織法第51/2003号、ならびに、個人の自律の促進および依存状態である人のケアに関する12月14日の法律第39/2006号を歓迎する。委員会は、子どもと青少年のための国家戦略計画の目的のひとつが障害のある子どもへの注意の促進であることに、評価の意とともに留意するものである。委員会は、障害のある子どもが経験する暴力の水準に関する情報が不足していることに留意する。 47.委員会は、締約国に対し、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮にいれながら、障害のある子どもの権利を促進かつ保護する努力を継続しかつ強化するよう奨励するとともに、障害のある子どもに対する暴力についての研究を行なうよう勧告する。 健康および保健サービス 48.委員会は、子どもの健康を確保しかつ保障するために締約国がとった措置を歓迎するとともに、医療制度に児童青少年精神科が設置されたことに評価の意を表明する。しかしながら委員会は、情緒障害および心理社会的障害が広く蔓延していることに関わる問題への対応が十分でないことを懸念するものである。委員会はまた、ADHDと診断された子どもに対する精神刺激薬の処方が短期間に増加していることを示す情報があることにも、懸念を表明する。 49.委員会は、締約国が、国家的な児童精神保健政策を策定するよう勧告する。これには、精神的健康および情緒的ウェルビーイングの促進、ならびに、一般的に見られる精神保健上の問題の学校における予防、プライマリーヘルスケアにおける治療、ならびに、外来および入院によるサービスを必要とする子どもに対応する専任の児童精神保健専門家チームの整備が含まれるべきである。委員会はさらに、精神保健および精神障害の社会的決定因子にとくに焦点を当てた、児童精神医学分野における調査研究を奨励する。委員会は、締約国が、子どもに対する薬の過剰処方の現象について慎重な検討を行なうとともに、ADHDその他の行動障害と診断された子どもならびにその親および教員に対し、広範な心理上および教育上の措置および治療を提供するための取り組みを進めるよう、勧告するものである。 思春期の健康 50.委員会は、青少年の間で有害物質の使用が行なわれており、かつ締約国で子どもおよび青少年の肥満が増えていることを懸念する。 51.委員会は、締約国が、条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮にいれながら、青少年による有害物質の使用と闘い、子どもの肥満に対応し、かつ子どもおよび青少年の健康を注視するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、有害物質の使用を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 生活水準 52.委員会は、子どもと青少年のための国家戦略計画およびスペインにおける社会的包摂のための数次の行動計画(2006~2008年および2008~2011年)を通じ、子どもの貧困の問題に対応するために行なわれている努力に留意する。しかしながら委員会は、4人に1人近くの子どもが貧困リスク基準所得以下の世界で暮らしていること、子どもの貧困が限られた形でしか重視されていないこと、ならびに、さまざまな環境における子どもの貧困と闘うための政策および戦略の調整が不十分であることから、子どもの全面的発達が危機にさらされていることを懸念するものである。 53.委員会は、とくに子どもの貧困の問題に対応するための公共政策を立案するとともに、具体的かつ測定可能な目標、明確な指標、期限ならびに十分な経済的および財政的支援をともない、かつ子どもの排除に対抗するための優先的行動を明らかにする一貫した枠組みを確立する、子どもの貧困と闘うための国家的計画を作成するよう、勧告する。当該計画は、地方、国および広域行政圏のレベル、ならびに、子どもについて具体的に責任を負うさまざまな分野(とくに経済、保健ケア、住宅、社会政策および教育)における行動の効果的調整について定めるとともに、女子および男子の必要な参加を含むものでなければならない。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 54.委員会は、初等中等教育のカリキュラム(「市民性教育」の科目)に人権関連の内容を含めた、教育に関する5月3日の組織法第2/2006号の採択を歓迎する。委員会はさらに、締約国から提供された、2010~2011年度には教育制度が過去最高の就学率を達成する見込みである旨の情報に評価の意とともに留意し、かつ、教員が増員されたこと、ならびに、教育水準(とくに教育面で不利な立場に置かれている生徒および外国人生徒の教育水準)を向上させるための強化、指導および支援の計画が策定されたことを、歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、時機尚早な学校中退の率が引き続ききわめて高いことに関する締約国の懸念を共有する。委員会はまた、学校における子どもおよび青少年の参加が低調であることも懸念するとともに、生徒参加がいまなお十分に発展しておらず、かつ中等教育から開始される学校評議会に限定されていることに留意するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 時機尚早な学校中退の率を減少させるための努力を強化するとともに、子どもが学校教育を修了することを確保するために必要な措置(学校教育の未修了の背景にある理由に具体的行動を通じて対処することも含む)をとること。 (b) 修了証書を取得せずに学校を離れた子どもを対象とする職業教育および職業訓練を拡大することにより、このような子どもが就労機会を高めるための能力およびスキルを獲得できるようにすること。 (c) 不利な立場に置かれた集団、周縁化された集団および学校までの距離が遠い集団の子どものために〔教育に対する権利の〕全面的享受を確保する、真にインクルーシブな教育に対するすべての子どもの権利を確保すること。 (d) 学校環境に参加する子どもの権利を初等学校段階から確保すること。 56.委員会は、学校における共生の促進および向上のための行動計画ならびに共生および学校安全向上のための基本計画等を通じて行なわれている、学校における暴力と闘うための努力を歓迎するとともに、締約国に対し、学校におけるいじめと闘うための努力を継続し、かつ、これらの有害な行動を減少させかつ解消するための努力への子どもたちの参加を促すよう、奨励する。 8.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第37条(b)~(d)ならびに第38~40条) 子どもの庇護希望者/難民ならびに保護者のいない外国籍の子ども 57.委員会は、国際的保護を必要とする子どもの特別な状況、および、これらの子どもに対して異なる取扱いを保障する必要性についての規定を掲げた、庇護および補完的保護に関する新たな法律(10月30日の法律第12/2009号)が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、当該新法が、EU国民でない者および無国籍の子どもによる国際的保護の申請および享受についてのみ定めており、したがって締約国において庇護を求める権利の対象からEU市民を除外していることに留意するものである。 58.委員会は、国籍に関わらずすべての子どもに対して十分な保護が与えられることを確保する目的で、締約国が、国際基準にしたがい、新庇護法の適用範囲を拡大するよう勧告する。 59.委員会は、保護者のいない子どもの登録部局が警察庁に創設されたこと(12月30日の国王令第2393/2004号参照)を含む締約国がとった措置、および、保護者のいない子どもに関して子どものための監視機関が策定した標準要綱に留意する。保護者のいない子どもの送還がここ数年減少していることには留意しながらも、委員会は、以下のような報告があることを引き続き懸念するものである。 (a) 保護者のいない子どもの年齢鑑別のために、州によって異なる可能性があり、かつ、子どもの身体的および心理的発育に影響する可能性がある栄養習慣のような問題を必ずしも考慮に入れない手法が用いられていること。 (b) 出身国への強制的なまたは非自発的な送還の際、保護者のいない子どもに対する不当な取扱いが警察によって行なわれており、かつ、子どもが必要な保障(弁護士へのアクセス、通訳サービス、子どもの最善の利益の考慮および意見を聴かれる子どもの権利の遵守など)を受けられないまま送還される場合があること。 (c) 保護者のいない子ども(とくにモロッコ国籍の子ども)が、出身国の社会サービス機関ではなく国境管理当局に引き渡されており、出身国の治安部隊および国境管理当局による虐待および拘禁の被害を受ける可能性があること。 (d) 社会福祉局による申請の遅れを理由として、当局が、保護者のいない子どもに対して法律で権利が認められている合法的な一時滞在資格を与えていないこと。 (e) カナリア諸島(とくにテネリフェ島のラ・エスペランサ)およびスペイン飛地領(とくにセウタ)の緊急収容センターにおける収容環境が水準以下であり、かつネグレクトが行なわれていること。 60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保護者のいない外国籍の子どもの追放における不正規な手続を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 収容されている子どもからの苦情を受理しかつこれに対応する効果的機構を備えた、子どもにやさしい子ども用受け入れセンターを設置するとともに、子どもの不当な取扱いが報告された事案を効果的に調査すること。 (c) 子どもがその養育に積極的な家族構成員または適切な社会サービス機関のもとに送還されることを確保するため、出身国(とくにモロッコ)政府との調整を図ること。 (d) 年齢鑑別手法に関する統一要綱を策定するとともに、年齢鑑別が、子どもの身体的不可侵性が侵害されるいかなるおそれも回避しながら、安全な、科学的な、子どもであることおよびジェンダーに配慮した、かつ公正なやり方で実施されることを確保すること。 (e) 保護者のいない子どもの特定後、子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利を念頭に置きながら、その子どもの個別の事情の分析が行なわれることを保障すること。 (f) 保護者のいない外国籍の子どもに対し、スペイン法および国際法上の権利(庇護を申請する権利も含む)についての情報を提供すること。 (g) 中央、広域行政圏および地方の行政機関間および治安部隊との間で、管轄地に関わる十分な調整を確保すること。 (h) カナリア諸島およびスペイン飛地領における緊急収容センターの環境の質の状況に対応すること。 (i) 保護者のいない子どもに対応する要員(保護を必要とする子どもに最初に接触する者となる可能性がある庇護担当官、国境警察官および公務員を含む)を対象として、庇護に関わる問題および子どもの特有のニーズに関する研修(保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの状況、人身取引に関わる問題ならびにトラウマを負った子どもの治療に関するものを含む)を実施すること。 (j) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮すること。 性的搾取および虐待 61.委員会は、商業的性的搾取および虐待と闘うために締約国が行なっている努力、とくに子どもと青少年の商業的性的搾取に反対する第2次国家行動計画(2006~2009年)を歓迎する。委員会はさらに、司法機関の活動を支え、かつスペインの登録システムと欧州連合との間の連絡を容易にする、事前警戒措置、嘱託手続および非拘束的判決の登録簿が始動したことを歓迎するものである。しかしながら委員会は、性的搾取および虐待(その一部はインターネットの利用の急速な増加と関連している)の被害者数の増加に関して締約国から影響された情報について懸念を覚える。委員会はまた、子どもの性的虐待および搾取の事件に関する中央登録システムが設けられていないことから、性的虐待に関するデータの調整について課題が生じていることに、懸念とともに留意するものである。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的搾取および虐待の規模に関するデータ収集の努力を強化するとともに、これらの現象への十分な対応策を作成し、かつこれらの現象と闘うために必要不可欠な手段として、国家行動計画にしたがって子どもの性的搾取に関する詳細な研究を行なうこと。 (b) 子どもの性的虐待および搾取の事件に関する中央登録システムを設置すること。 (c) ストックホルム(1996年)、横浜(2001年)およびリオデジャネイロ(2008年)で開催された子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメント、ならびに、この問題に関するその他の国際会議の成果文書にしたがい、防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための適切なプログラムおよび政策を引き続き実施すること。 (d) 手続の際に被害者およびその家族の十分な保護を保障し、かつトラウマ的経験を悪化させないよう努めることにより、司法手続の際の子どもの再被害を回避すること。 少年司法の運営 63.委員会は、少年司法制度に配分される人的資源および財源が増加したこと(子ども裁判所の数が増えたことを含む)を歓迎する。委員会はまた、少年司法制度に従事している専門家を対象として子どもの問題に関する研修を実施するために締約国が行なっている努力にも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、立法上の発展が、重大な犯罪を行なった子どもに対する厳罰化につながっていることを懸念する。 64.委員会は、締約国が法律を見直し、たとえ重大な犯罪についてであっても、子どもに対する厳格な刑を最低限に抑えるよう勧告する。委員会は、締約国が、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条(b)、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう、勧告するものである。とくに委員会は、締約国に対し、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10、2007年)を考慮にいれ、かつ以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもが刑事司法制度と関わりを持つことにつながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化するとともに、スティグマを回避するためにあらゆる可能な措置をとること。 (b) 罪を犯した少年の自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保するとともに、自由の剥奪に代わる措置(調停、保護観察、カウンセリングおよび地域奉仕活動など)の活用を奨励し、かつこの点に関して家族およびコミュニティの役割を強化すること。 (c) 社会サービス機関および教育サービス機関との緊密な調整を図りながら、自由の剥奪の結果、子どもの再統合を目的とした個別のフォローアップ計画が作成されることを保障すること。 (d) 刑事司法制度に従事するすべての専門家を対象とする、関連の国際基準に関する研修プログラムを向上させること。 (e) 性的攻撃を行なった少年犯罪者に関わる専門的介入を増加させること。 9.国際人権条約の批准 65.委員会は、締約国が、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 66.委員会は、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 67.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回〔ママ〕定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 68.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2015年10月1日までに提出するよう慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 69.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月26日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/217.html
総括所見:イタリア(第3~4回・2011年) 第1回(1995年)/第2回(2003年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/ITA/CO/3-4(2011年10月31日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年9月20日に開かれた第1642回および第1643回会合(CRC/C/SR.1642 and 1643参照)においてイタリアの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/ITA/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解を向上させてくれた、締約国の定期報告書(CRC/C/ITA/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/ITA/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた、建設的なかつ開かれた対話について評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを前向きな対応として歓迎する。 (a) 収監されている母とその未成年の子との関係の保護に関する法律第62/2011号(2011年4月)。 (b) 子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンの設置に関する法律第112/2011号(2011年7月)。 (c) 子どもの性的搾取および児童ポルノ(インターネットを通じてのものを含む)との闘いに関する法律第38/2006号。 (d) 親の別居および子どもの分担監護に関する規定についての法律第54/2006号(2006年2月)。 (e) 義務教育期間を10年以上とし、かつ最低労働年齢を15歳から16歳に引き上げた法律第296/2006号(2006年12月)。 (f) 女性性器切除の慣行の防止および禁止に関わる規定についての法律第7/2006号(2006年1月)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの加入も歓迎する。 (a) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2010年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2009年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年)。 (d) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2007年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 国家子ども・青少年監視機関の権限の更新(直近の更新は2010年)。 (b) 発達年齢にある者の権利および発達を保護するための国家行動介入計画(2010~2011年)。 (c) 乳幼児期の社会-教育サービスに関する全国的制度の発展のための特別介入計画(2007~2009年)。 (d) 人権保護についての政策および戦略指針に関する閣僚委員会の設置(2007年4月13日付首相令)。 (e) 政府による人身取引対策活動調整委員会(2007年)、人身取引、暴力および深刻な搾取の被害者支援に関する省庁間委員会(2007年)および人身取引監視機関(2007年)の設置。 (f) 貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画(2006~2008年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の前回の報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.198、2003年)ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/ITA/CO/1、2006年)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1 and Corr.1、2006年)に基づく第1回報告書についての総括所見を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の懸念および勧告の多くについて対応がとられておらず、または不十分な対応しかとられていないことを、遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、未実施の勧告または十分に実施されていない勧告(調整、資源配分、条約に関する組織的研修、差別の禁止、子どもの最善の利益、アイデンティティに対する権利、養子縁組、少年司法ならびに子どもの難民および庇護希望者に関するものを含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告について十分なフォローアップを行なうために必要なあらゆる措置をとるよう、促す。 調整 8.委員会は、統治の中央レベルから州その他の下位レベルへの権限移譲により、地方レベルにおける条約の不公平な実施が助長されていることを懸念する。この文脈において、国家子ども・青少年監視機関を含む種々の調整機構が存在し、かつ、これらの機構が、子どもの権利の実施に関連する多くの主体の政策およびプログラムを効果的に調整する適切な権限を有していない可能性があることは、委員会の懸念するところである。委員会はさらに、国・州会議に、子どもの権利に関連する政策の計画および実施を調整する作業部会が設置されていないことを懸念する。 9.条約の実施の調整を確保すること、ならびに、州政府に対し、この点に関するリーダーシップを示しおよび必要な支援を提供することの責任は中央政府にあることを想起し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連するすべての省庁および諸機関間ならびにすべての段階で子どもの権利に関する政策およびプログラムの実施を調整するため、国家子ども・青少年監視機関の役割を見直し、かつ明確化すること。その際、締約国は、同国家監視機関が強化され、かつ、国、州および自治体のレベルで包括的な、一貫したかつ相互に齟齬のない子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供されることを確保するよう、促される。 (b) 国および州のレベル間の調整を強化することにより、あらゆる州で条約の一貫した適用を確保するための効果的機構を発展させるとともに、「社会サービスの提供に関する必須水準」(Livelli Essenziali delle Prestazioni Sociali、LIVEAS)のような全国的基準を採択すること。 国家的行動計画 10.発達年齢にある者の権利および発達を保護するための国家行動介入計画(2010~2011年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、同計画がまだ実施されていないこと、予算がまったく配分されていないこと、および、州レベルで同行動計画のための資金を配分するプロセスによりその実施がさらに遅れる可能性があることを、懸念する。さらに委員会は、同行動計画が監視および評価のための具体的システムを欠いていることを懸念するものである。 11.委員会は、締約国が、国レベルで同行動計画を実施するための資金を遅滞なく配分するとともに、州に対し、州レベルでの活動のために必要な資金を配分するよう、可能なかぎり最大限に奨励するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が同行動計画を改訂し、監視および評価のための具体的システムを含めることも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、現在の(および今後の)行動計画にこの総括所見のフォローアップが統合されることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 12.委員会は、子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンが法律によって設置されたこと(2011年7月)に満足して留意する。いくつかの州で子どもオンブズパーソンが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの制度が権限、構成、体制、資源および任命の面で相当に異なっており、かつ、個別の苦情を受理しかつ検討する権限をすべての州オンブズパーソンが有しているわけではないことを、懸念するものである。委員会は、独立の国内人権機関の設置に相当の時間がかかっていることを遺憾に思う。 13.委員会は、締約国が、子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンの新たな事務所が速やかに設置され、かつ、同事務所に対し、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがってその独立性および有効性を保障するための十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての州で子どもの権利が統一的かつ有効に保護されかつ促進されることを確保する(子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンによる、既存の州子どもオンブズパーソンに対する援助およびこれらのオンブズパーソンの調整を含む)よう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもの権利を含む人権の包括的かつ体系的な監視を確保する目的で、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがった独立の国内人権機構を設置しかつ運用するプロセスを迅速に進めるよう、促す。 資源配分 14.委員会は、締約国および諸州全体のあらゆる部門別予算を子どもに特化した形で分析することに関する従前の勧告(CRC/C/15/add.198、パラ9)の実施について、締約国報告書に情報が記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、教育予算が最近削減されたこと、社会サービスおよび教育サービスの発展のための特別計画(2010年)に対して資金が提供されていないこと、ならびに、家族政策、国家社会政策基金および国家子ども・青少年基金のための資金が削減されたことを、特に懸念するものである。委員会はまた、乳幼児期、教育および保健の分野におけるものも含め、子どものための配分および子どもに関する支出に州間格差があることにも懸念を表明する。委員会はさらに、汚職に関する締約国の国際的順位が最近になって下降したこと、および、これが子どもの権利に与える可能性がある影響について懸念するものである。イタリアが直面している現在の財政状況に照らし、委員会は、子どものためのサービスの保護および維持が行なわれなくなる可能性があることを懸念する。 15.委員会は、国および州のレベルにおける子どものための資源配分について包括的分析を行なうように求めた前回の勧告(CRC/C/15/add.198、パラ9)をあらためて繰り返す。このような分析の知見に基づき、締約国は、乳幼児期、社会サービス、教育、および、移住者その他の外国人コミュニティの子どものための統合プログラムに焦点を当てながら、20州全体を通じて子どものための公平な予算配分が行なわれることを確保するべきである。委員会は、締約国が、汚職の問題に効果的に対応するとともに、現在の財政状況のもとで行なわれる支出削減から子どものためのすべてのサービスが保護されることを確保するよう、勧告する。 データ収集 16.委員会は、子どもおよびその家族のケアおよび保護に関する全国的情報システムが創設され、2012年に完成する予定であることに留意する。にもかかわらず、委員会は、子どもの権利の享受に関する利用可能なデータ、とくに暴力の被害を受けた子ども、家庭環境を奪われた子ども(里親養護を受けている子どもを含む)、経済的搾取の被害を受けた子ども、障害のある子ども、養子縁組された子どもならびに子どもの難民および庇護希望者に関する統計が限られていることを、依然として懸念するものである。委員会は、州のデータ収集機構の能力および有効性に関して相当の格差があることに懸念を表明する。 17.委員会は、締約国に対し、子どもおよびその家族のケアおよび保護に関する全国的情報システムが全面的に稼働すること、ならびに、当該システムに対し、子どもの権利を促進しかつ保護する締約国の能力を強化する目的で国全域の関連情報を効果的に収集するために必要な人的資源、技術的資源および財源が与えられることを確保するよう、促す。とくに委員会は、締約国が、州間の格差を効果的に測定しかつこれに対応する目的で、すべての州を通じて全面的に一貫したアプローチを確保するよう勧告するものである。 研修 18.法執行官および憲兵隊を対象として若干の研修が行なわれているという情報にもかかわらず、委員会は、締約国が、子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家(法執行官、憲兵隊、検察官、裁判官、弁護士、子どもの法廷後見人(curatori)、公務員、ソーシャルワーカーおよび保健専門家、地方政府職員、教員ならびに保健従事者を含む)を対象とした、子どもの権利および条約に関する体系的研修についての従前の勧告(CRC/C/15/Add.198、パラ19(d)〔(b)〕および31〔32(c)〕)をまだ実施していないことを遺憾に思う。 19.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家(とくに法執行官、憲兵隊、裁判官および刑務所吏員)を対象とした、子どもの権利に関する体系的、義務的かつ継続的研修を確保するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 子どもの権利と企業セクター 20.委員会は、憲法が、憲法に掲げられた原則を尊重する企業の一般的義務を定めていることを歓迎するとともに、自主的な企業の取り組みに基づき、企業の社会的責任が促進され、規制されかつ実施されていることに留意する。委員会はまた、企業の社会的責任についてのさらなる法律(一定の基準を満たした会社を対象とする免税措置も含む)が元老院および代議院で議論されている(それぞれ法律第386号および法律第59号)ことにも留意するものである。にもかかわらず、委員会は、このような法律において子どもの権利が十分に考慮されていないことを懸念する。加えて委員会は、欧州諸国(イタリアを含む)が輸入している綿の収穫において子どもの強制労働が利用されており、これらの国々はこれによって輸出国における児童労働の搾取を促進している可能性があるという訴えがあることを懸念するものである。委員会は、この問題について国際労働機関(ILO)による調査が行なわれており、かつ、欧州議会が、とくに欧州理事会および欧州委員会に対し、綿産業部門における一般特恵関税制度の一時停止(ILOによる調査報告が可能になるまで)をともなう調査委員会の設置を求める決議案について討議していることに、留意する。 21.国および国以外の主体による子どもの権利の保護および尊重を確保する第一次的責任は国にあることから、委員会は、人権に関する企業の責任についての基準を定める目的で元老院および代議院が検討している法律に、子どもの権利に関わる問題を、子どもの権利条約にとくに言及しながら具体的に含めるよう勧告する。さらに、これらの法律において、子どもの権利および人権の侵害が行なわれた場合(イタリアに本社を置く会社およびその国外提携事業者の活動に関する事案も含む)を司法機関に付託することのできる監督機関について定めておくことが重要である。加えて委員会は、締約国が、欧州の諸貿易協定において子どもの権利が尊重されることを確保するためにその影響力を活用しながら、児童労働に由来する綿(欧州またはその他の場所で生産されたもの)が欧州市場に持ちこまれないことを確保する、欧州連合における自国の責任を果たすよう勧告する。加えて、締約国は、イタリアに本社を置く企業が国外のサプライチェーンまたは提携事業者を通じて児童労働の使用を助長しないことを確保するための効果的監視について、現在提案されている法律に基づく明確な枠組みを定めることもできるはずである。 国際協力 22.委員会は、締約国が、2006年に国民総所得(GNI)の約0.20%を国際援助に振り向け、かつ対国民総生産(GNP)比0.7%という国際合意目標を2015年までに達成するという決意を表明していることに留意する。しかしながら委員会は、国連児童基金(ユニセフ)への拠出金を含む政府開発援助の水準が、2006年に最高に達したのち一貫して下降しており、2010年には国際合意目標額の半分に達しなかったことに、懸念とともに留意するものである。 23.多くの国が直面している財政的制約に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、対GNP比0.7%という国際合意目標を2015年までに達成する目的で、政府開発援助の減額を是正し、かつ成長路線を回復するために力を尽くすよう、奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、開発途上国と締結する国際協力協定において子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するとともに、子どもの権利について扱っている国際機関(とくにユニセフ)への支援を強化するために力を尽くすよう、奨励するものである。委員会は、その際、締約国が、当該援助供与国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案する。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.委員会は、脆弱な状況に置かれた締約国の子どもを差別する政策、法律および慣行について深刻な懸念を覚える。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) とくに健康、教育、十分な生活水準および社会保障に対する権利の充足との関連における、ロマ、シンティおよびカミナンティの子ども(以下「ロマの子ども」)に対する差別。 (b) 委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.198、パラ21(b))に違反して、人種的または民族的優越を唱道する宣伝についての刑を短縮した刑法改正。 (c) 嫡出子(準正によるか出生時からかは問わない)と婚外子との間に依然として残っている取扱いの格差。これとの関連で、委員会は、締約国が欧州評議会・婚外子の法的地位に関する欧州条約を批准していないことを遺憾に思う。委員会は、この点に関して提案されている法律について対話の際に提供された情報に留意し、かつこれを歓迎するものである。 25.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもがいかなる理由による差別も受けることなく条約上の平等な権利を享受できることを確保するとともに、この目的のために以下の措置をとるよう、促す。 (a) 人種差別撤廃委員会の勧告(CERD/C/ITA/CO/15、パラ20)にしたがい、ロマ系の子どもに対するいかなる形態の差別(とくに教育制度および必須サービスの提供における差別)も効果的に解消されることを確保するため、あらゆる必要な措置を速やかにとること。 (b) ダーバン宣言および行動計画のあらゆる関連規定を全面的に考慮にいれ、かつ子どもの権利条約第2条をとくに重視しながら、人種主義、人種差別、外国人排斥および不寛容の防止に関する包括的な国家的行動計画を有効な形で採択すること。 (c) とくに子どもに対する人種主義的および排外主義的行為に関するデータの体系的収集の面で、国家人種差別対策局の権限を強化すること。 (d) 刑法第61条に、加重事由として憎悪に基づく動機を編入すること。 (e) 婚内子と婚外子との間に残っているいかなる差別も解消するため、適切な立法上の措置をとること。 (f) 婚外子の法的地位に関する欧州条約の批准を速やかに進めること。 子どもの意見の尊重 26.委員会は、憲法裁判所が、条約第12条は国内法体系において直接適用可能である旨を宣言したこと、および、子どもが手続当事者とみなされる可能性があることを歓迎する。委員会はさらに、親の別居、離婚および監護関係の事件における子どもの意見聴取について定めた法律第54/2006号、養子縁組手続および親の権利の判断における子ども担当弁護士の任命義務について定めた法的規定、ならびに、保護者のいない子どもに意見を聴かれる権利があることを認めた立法令第25号(2008年1月28日付)に、肯定的に留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) 民事上、刑事上および行政上のすべての手続において意見を聴かれる子どもの明示的権利が認められていないこと。 (b) 養子縁組事件における子どもの弁護人/特別後見人(curatori speciali)の任命に関する、法律第149/2001号の実施のための指針が存在しないこと。 (c) 国、州または地方のレベルで子どもに影響を与える法律および政策の策定過程で子どもたちとの組織的協議が行なわれておらず、かつ、子どもに関わる今後の行動計画の策定への子ども参加に関する、より具体的な指針が存在しないこと。 27.条約第12条、および、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに影響を与える事柄に関してすべての裁判所、行政機関、施設、学校、保育施設および家庭に適用される、意見を聴かれる子どもの権利について定めた包括的な法規定を導入すること。また、子どもの意見を直接聴けるようにするための措置をとるとともに、その際、そのような参加が、効果的にかつ操作または威嚇を受けることなく行なわれ、かつ、適切なときは関連機関の専門的意見によって裏づけられることを確保するための、十分な保障措置および機構を整備すること。 (b) 養子縁組事件における子どもの弁護人/特別後見人(curatori speciali)の任命についての指針を作成すること。 (c) 州レベルのまたは全国的な支援体制を設置することにより、子どもに関連する法律および政策の策定に子どもたちが含まれることを確保するための措置(子ども評議会の強化を含む)をとること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 登録および国籍 28.委員会は、外国系の子どもの登録される権利に関する法律上および実務上の制限について懸念を覚える。とくに委員会は、公の安全に関する法律第94/2009号により、イタリア国民でない者が全員、身分事項の記録を取得するために在留許可証の提示を義務づけられていることを懸念するものである。委員会はさらに、事実上の無国籍者である子どもの状況(数百名のロマの子どもが無国籍であるという報告も含む)について懸念を覚える。 29.委員会は、普遍的定期審査の際に行なわれた、イタリア市民権に関する法律第91/1992号はイタリアに住むすべての子どもの権利を保全するようなやり方で実施するべきである旨の勧告第40号(A/HRC/14/4/Add.1, p.5)を締約国が受託したことを想起しながら、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) イタリアで出生しかつ暮らしているすべての子どもの出生登録の義務を法律で確保し、かつ実務上促進すること。 (b) 社会的および民族的背景ならびに親の在留資格に関わらず出生時に登録されるすべての子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (c) 市民権が取得できなければ無国籍となる可能性がある子どもを対象として、市民権へのアクセスを促進すること。 思想、良心および宗教の自由 30.委員会は、就学前学校、初等学校および中等学校において宗教の授業を受けまたは受けないことを選択する子どもの自由が、妥当な代替的授業が存在しないこと、および、カトリックの信仰に基づく授業に出席しないことを決めた生徒に必要な履修辞退届の入手方法および配布に関する情報が提供されていないことにより、実際には阻害される可能性があることを懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、宗教の授業が真に選択制となることを実際上確保するための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう求める。 (a) 宗教の授業が選択制であることを、公立学校に通う生徒のすべての親が全面的に承知することを確保するとともに、もっとも一般的な外国語で情報を利用可能とすること。 (b) カトリックの信仰に基づく授業に代わる選択肢の模範的実践を研究し、特定しかつ記録するとともに、このような調査研究の知見に基づき、関連の代替的授業を全国カリキュラムで利用可能とすることを検討すること。 適切な情報へのアクセス 32.印刷メディアおよび放送メディアについてさまざまな自主規制規則が設けられており、かつメディアと未成年者委員会が設置されたことには肯定的に留意しながらも、委員会は、条約第17条に基づく子どもの権利の享受に資する、包括的な法律上および教育上の枠組みが設けられていないことを懸念する。委員会は、女性および若い女子が性的対象として描写されることについてイタリアのメディアおよび広告が果たしている役割に関する、女性差別撤廃委員会の懸念を共有する。このような描写は、子どもの発達および同世代への関係に悪影響を及ぼすからである。委員会は、とくに以下のことを懸念する。 (a) 「インターネットと子ども規則」の遵守が任意であり、かつ、同規則の実施を監視するために設置された委員会が、2007年の委任期間終了以降、復活させられていないこと。 (b) 子どもたちの間で、プライバシー権をいっそう保護され、かつインターネットの利用に関する情報を子どもにやさしい言葉づかいおよび形式で提供される必要が明らかにあること。 (c) 学習および志望に関する女子の選択に影響を及ぼす可能性があるジェンダー上のステレオタイプ、ならびに、女性および若い女子が性的対象として描写されることについてイタリアのメディアおよび広告が果たしている役割。 (d) メディアにおける、移住者およびマイノリティの否定的描き方。このような描き方は、これらの者の社会的統合およびこれらのコミュニティの子どもの権利の効果的享受に影響を及ぼしている。 (e) 食品、薬、おもちゃその他の物を有害となるおそれがあるやり方で消費することにつながっている広告内容。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会的および文化的に有益な資料の普及の奨励等も目的としながら、条約第17条の規定および目的を全面的に編入した、子どもとメディアに関する規則の策定を促進しかつ支援すること。 (b) 「インターネットと子ども規則」を監視する委員会を復活させるとともに、同規則に違反に対して効果的な行政上および法律上の制裁が科されることを確保すること。 (c) 人種主義および不寛容と闘う力のある、責任感と積極性を備えたメディアを確保するための措置をとるとともに、その効果的実施を確保する監視システムを設けること。 体罰 34.委員会は、家庭における体罰が蔓延していること、とくにしつけの手段として平手で叩くことをいまなお適切と考えている親が多いことを、懸念する。委員会はまた、体罰の禁止に関する最高裁判決にも関わらず、あらゆる場面(家庭を含む)におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁ずる法律(CRC/C/15/Add.41、パラ20)をまだ成立させていないことも、懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)を考慮にいれながら、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰が明示的に禁止されることを確保する目的で、国内法改革を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、体罰が子どものウェルビーイングに及ぼす有害な影響、および、子どもの権利にしたがった、体罰に代わる積極的なしつけおよび規律のための手段に関する、親および一般公衆の意識啓発を図るよう勧告するものである。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 36.第1次国家家族計画の採択に関わる進展、および、子どもの養育責任に関して親および法定保護者を支援するためのさまざまな措置(それぞれ大家族および低所得家族を対象とする課税控除および子ども手当を含む)は歓迎しながらも、委員会は、これらの措置が第一義的には金銭的なものであり、子どもの発達上のニーズならびに子どもの養育およびしつけを行なう最適な方法について学習することにより子育て能力を高める親のニーズに対応していないことを、懸念する。委員会は、公的保育の機会が限られていることおよび私的保育の費用が高いことを、とりわけ懸念するものである。 37.委員会は、締約国が、大家族および低所得家族への支援に際してホリスティックなアプローチ(所得支援を含む)がとられ、かつ親教育を通じた子育てのあり方に焦点が当てられることを確保するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が、欧州連合の「欧州2020戦略」および欧州委員会の2011年の報告書「乳幼児期の教育およびケア:明日の世界のために、私たちの子ども全員に最善のスタートを」にしたがい、乳幼児期の教育およびケアのためのプログラムのアクセス、負担可能性および質を高め、かつ学校外活動についても同様の対応をとるよう、勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 38.委員会は、法律第149/2001号にしたがい、家庭環境を奪われた子どものための養護の脱施設化が進展していることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、家族型の代替的なコミュニティまたは施設で提供されるサービスおよび養護の最低基準が設けられていないこと、ならびに、このようなコミュニティの独立の監視および登録に関する法律の実施が弱いことを、懸念するものである。委員会は、提供されるサービスの質の評価が行なわれていないこと、および、子どもの受け入れのために受領した公的資金についての会計責任が問われていないことを、とりわけ懸念する。さらに委員会は、里親養護の利用に関して州間の格差があること、ならびに、里親養護に関する共通の指針および法律が採択されかつ遵守されていないことを、懸念するものである。 39.外国籍の子どもがイタリアで暮らしている家族と再結合する権利に関して、委員会は、手続に時間がかかること、および、欧州連合理事会指令2003/86/ECを国内法化する法律において締約国で暮らしている核家族が除外されていることを、懸念する。 40.委員会は、締約国が、法律第149/2001号の効果的かつ平等な実施を、その権限の及ぶ範囲ですべての州において確保するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境を奪われた子どものためのすべての代替的養護施設(家族型コミュニティのような「入所型施設」も含む)を対象として、サービスおよび養護に関する全国的に合意された最低基準を採択すること。 (b) 家庭環境を奪われたすべての子どもの措置について関連の機関による独立の監視が行なわれることを確保するとともに、そのような子どもの受け入れのために公的資金を受領する者に会計責任を果たさせる機構を設置すること。 (c) 家庭環境を奪われたすべての子どもに関する包括的調査を実施し、かつこのような子どもの全国的な登録制度を創設すること。 (d) 家族の再統合に対する権利、および、この権利を有するすべての外国人(イタリアで形成された家族を含む)へのその適用について明示的に定める目的で、移民統一法典を改正すること。 (e) 里親家庭の適正な選抜、研修および監督を確保するとともに、これらの家庭に対して十分な金銭的支援および地位を与えること。 (f) 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)を考慮すること。 養子縁組 41.委員会は、国内養子縁組および国際養子縁組において子どもの意見および見解に耳を傾ける必要があることについての義務的規定を歓迎する。しかしながら委員会は、2003年以来の「開放型養子縁組」の慣行に留意しつつ、このような養子縁組についての確固たるかつ一貫した法的根拠がないこと、および、里親家庭への無期限の措置が行なわれるおそれがあることに、懸念を表明するものである。さらに委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の非加盟国との国際養子縁組が、二国間協定が締結されていないにも関わらず続けられていることについて、あらためて懸念を表明する。国際養子縁組委員会がとった措置には留意しながらも、委員会は、民間養子縁組斡旋機関が多数存在すること、監視制度が不十分であること、および、養子縁組の過程で一部当事者が金銭的利得を得ているという報告があることを、依然として懸念するものである。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組を規律する法律(法律第184/1983号および第149/2001号を含む)および手続に、子どもの最善の利益が最高の考慮事項である旨の原則を導入すること。 (b) 1993年ハーグ条約をまだ批准していないすべての送り出し国と二国間協定を締結すること。 (c) ハーグ条約および子どもの権利条約第21条(d)にしたがって、すべての民間養子縁組斡旋機関の効果的かつ組織的な監視を確保し、民間養子縁組斡旋機関の数を管理しまたは限定するための選択肢を考慮し、かつ、養子縁組プロセスがいかなる当事者の金銭的利得ともならないことを確保すること。 (d) これまでに養子とされた子どものウェルビーイングならびに縁組の崩壊の原因および結果に関する組織的フォローアップを確保すること。 子どもに対する暴力(子どもの虐待およびネグレクトを含む) 43.委員会は、あらゆる形態の身体的および精神的暴力からの子どもの保護ならびにこのような暴力の防止を目的とする全国共通の制度および枠組み、ならびに、これに対応した監視および調整のための実施機関が存在しないことを、深刻に懸念する。これとの関連で、委員会は、14~17歳の子ども(ほとんどはイタリア北部および中部の子ども)の過半数が子どもの不当な取扱いを経験しまたは目的したことがあるというある調査の結果に、深刻な懸念とともに留意するものである。とくに、データ収集(ピエモンテ州およびベネト州)ならびに防止(エミリアロマーニャ州)に関わる一部州での肯定的経験には心強い思いを感じながらも、委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力についての、包括的かつ全国的なデータ収集システムおよび登録制度が存在しないこと。 (b) 子どもに対する暴力についての指針の存在および実施、ならびに、暴力の防止、取扱いおよび根絶に関して、州間に格差があること。 (c) 困難な状況に置かれた母親によって子どもが遺棄されていること。 44.委員会は、前回の懸念および総括所見(CRC/C/15/Add.198、パラ37および38)をあらためて繰り返すとともに、一般的意見13号を想起しながら、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、スロベニア・リュブリャナ)の成果および勧告を考慮し、かつジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いを防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いの明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムならびに子どもに対する暴力および不当な取扱いに関する調査研究事項を強化すること。 E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)および第33条) 障害のある子ども 45.委員会は、締約国の報告書で、障害のある子どもに関する情報が限られていることを遺憾に思う。障害のある子どもを学校制度に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、障害がいまなお「ハンディキャップ」として概念化されており、障害のある子どもの社会的インクルージョンを確保する目的をもったアプローチがとられていないこと、および、学校への専門教員の配置に関して州間格差があることを、懸念するものである。委員会はさらに、障害のある子どもの特別なケアを乳幼児期に確保することに関して不十分さおよび遅れが見られること、ならびに、障害のある0~6歳の年齢層の子どもに関する統計データが整備されていないことを、懸念する。 46.委員会は、締約国が、障害のある子どもとの関連で権利基盤アプローチを確保するために現行の政策およびプログラムを見直すとともに、関連の政府職員およびコミュニティ一般がこの点に関する感受性を高めることを確保するための広報および研修の取り組みを検討するよう、勧告する。委員会はまた、障害のあるすべての子どもが質の高いインクルーシブ教育へのアクセスを享受できるよう、締約国が、十分な人数の専門教員を全校に配置することも勧告するものである。さらに委員会は、このような特別なニーズにしたがって政策およびプログラムを適合させるため、障害のある子ども(0~6歳の年齢層を含む)に関する具体的なかつ細分化されたデータを収集するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、これとの関連で障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮するよう、奨励するものである。 健康および保健サービス 47.委員会は、保健ケアに関する権限が州レベルに委譲されたことにともなって保健ケアの必須水準(Livelli Essenziali di Assistenza、LEA)が定められていないことにより、締約国の南部諸州と北部諸州との間で保健ケアシステムの質および効率性に格差が生じ、到達可能な最高水準の健康に対する子どもの権利に影響が及んでいることに、懸念とともに留意する。子供の肥満率が高くかつ上昇していること、ならびに、アレルギー性疾患および(または)呼吸器系疾患に罹患した子どもが相当数にのぼることも、委員会にとって懸念の対象である。委員会はさらに、イタリア人である母親に比べ、外国人である母親の間で死産率および周産期死亡率が高く、かつ救急部または救急病院での治療が必要となる可能性が高いことを懸念する。これは、ひとつには、在留資格を有しない外国人が犯罪者として扱われるために、在留資格を有しない外国人である母親が、妊娠前および妊娠中に、必要な産科学的治療および検査を受けないことによるものである。 48.委員会は、締約国が、すべての州のすべての子どもを対象として共通の水準の保健ケアサービスを促進するために即時的措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 健康に対する子どもの権利との関連で国家保健計画(2006~2008年)の実施状況を分析し、かつ、これに基づき、子どものために十分な保健ケア支出を配分すること。 (b) 保健ケアの必須水準(LEA)を遅滞なく定めること。 (c) 子どもの権利に一致するやり方で、すべての保健専門家の養成および研修のためのプログラムを改善すること。 (d) 運動、健康的な食事習慣およびライフスタイルの重要性を強調しながら、学校および家庭を対象とするアドボカシーおよび意識啓発のプログラムを行なう(国家予防計画(2010~2012年)の効果的実施を含む)とともに、初等中等学校のカリキュラムにおける体育の時限数を増やし、かつその質を向上させること。 (e) とくに外国人コミュニティがアクセスしている保健ケア施設を対象として、外国系の子どもを含むすべての子どもの、保健ケアに対する権利についての広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを発展させかつ実施すること。 母乳育児 49.委員会は、生後6か月間の完全母乳育児率が低く、かつ、乳児に対して生後4か月から離乳食を与える慣行があることを懸念する。委員会はさらに、乳幼児および青少年向けの食品の販売促進が規制されておらず、かつ母乳代替品の販売促進の監視が不十分であることを懸念するものである。 50.委員会は、関連の政府職員(とくに産科部で働く職員)および親を対象としたキャンペーン、広報および研修を含む意識啓発措置を通じ、生後6か月間の完全母乳育児の慣行を向上させるための行動をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども向けの食品に関する現行の販売促進規則および母乳代替品(哺乳瓶およびその乳首部分を含む)の販売促進に関する規則の監視を強化するとともに、これらの規則についての恒常的監視が行なわれ、かつ違反者に対して対応がとられることを確保するよう、勧告するものである。 精神保健 51.委員会は、子ども(とくに青少年)の精神保健状況を評価しかつ監視する、国レベルの包括的な戦略またはシステムが存在しないことを懸念する。委員会は、これとの関連で、国家精神保健指針(2008年)がまだ実施されていないことを遺憾に思うものである。委員会はさらに、資源が不十分であることから、地方保健当局および児童青少年神経精神医学サービスが、子どもの精神保健上の問題に社会心理学的な立場から対応するための学際的チームを設置できていないことを懸念する。子どもが使用している精神活性剤のなかに自殺念慮を増大させる副作用を有するものがあることも、委員会にとって懸念の対象である。委員会はまた、子どもの自殺につながる可能性がある抑うつが蔓延していることも懸念する。 52.委員会は、思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、締約国が、精神保健に関する利用可能かつ良質なサービスおよびプログラムを強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家精神保健指針を遅滞なく実施しかつ監視すること。 (b) 青少年の精神保健にはっきりと焦点を当てた、国レベルの包括的な精神保健政策を策定するとともに、公的な資金および資源を十分に配分し、かつ監視システムを発展させかつ実施することにより、その効果的実施を確保すること。 (c) 妥当なかぎりで親、家族および学校が関与する、子どもの精神保健ケアの統合的システムを確立することにより、子どもの心理的および心理社会的健康不良および障害の治療に対する学際的アプローチを実施すること。 薬物および有害物質の濫用 53.委員会は、締約国の青少年の間で不法な薬物(とくにアンフェタミン)の使用が増加していることを深く懸念する。委員会は、このような薬物がしばしば、学校の成績を上げることおよび抑うつと闘うことを目的として使用されていることに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、子どもによるアルコールの消費および喫煙の水準が高いこと、ならびに、直接の宣伝またはマスメディア一般を通じて広告が悪影響をもたらしていることを、懸念する。 54.委員会は、一般的意見4号を参照しつつ、締約国が、情報伝達のためのプログラムおよびキャンペーン、青少年に対するライフスキル教育の提供ならびに教員、ソーシャルワーカーその他の関連の職員の研修を通じ、子どもによる不法な薬物の使用を解消するための関連の措置をとるよう勧告する。これには、アルコールおよびタバコの使用を防止するために青少年の間で健康的なライフスタイルを促進することに関するプログラム、および、子どもを対象とするこのような製品の広告の規制を執行することが含まれなければならない。委員会は、締約国に対し、委員会に提出する次回の定期報告書で、このような努力に関する情報および子どもによる不法な薬物の使用に関するデータを提示するよう奨励する。 親が収監されている子ども 55.収監されている母とその未成年の子との関係の保護に関する法律第62/2011号が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、収監された親の一方または双方から分離される子どもの多さ、母親とともに刑務所で生活している赤ん坊の状況、および、母親が自宅監禁の要件を満たさない場合に子どもが母親から分離されるおそれがあることについて、懸念を覚える。 56.委員会は、条約第9条にしたがって個人的関係、十分なサービスおよび適切な支援を確保する目的で、締約国が、親が収監されている子どもの家庭環境に対する権利についての状況に関する研究を行なうよう、勧告する。 生活水準 57.委員会は、締約国において貧困下で暮らしている子どもが多いこと、および、子どもの貧困がイタリア南部に不相応に集中していることを、深く懸念する。委員会はまた、とくに子どもの貧困が女性の失業と密接に関係していることにかんがみ、締約国の女性就労率が欧州連合で2番目に低い(50%未満)ことにも、懸念とともに留意するものである。低所得家庭を対象として2008~2009年に実施された最近の政策介入(家族ボーナスおよび社会消費カード)を評価しながらも、委員会は、このようなプログラムによる不平等および貧困の削減がわずかなものに留まったことを懸念する。委員会は、締約国のプログラムが所得面の措置に焦点を当てており、貧困削減を左右する社会的、文化的、地理的その他の構造的要因については限られた形でしか考慮していないように思えることに、懸念とともに留意するものである。 58.委員会は、締約国に対し、(とくに子どもの)貧困および不平等に対処しかつこれを根絶するための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困削減を左右する社会的、文化的および地理的要因を考慮した学際的アプローチを用いながら、子どもの貧困に持続可能なやり方で効果的に対応する目的で、現行の政策およびプログラムの体系的改革を検討すること。 (b) 現行プログラムが貧困緩和にもたらした成果を評価するとともに、今後の政策および計画に関連の指標および監視のための枠組みが掲げられることを確保すること。 (c) 保育の供給を増加させる等の手段により、労働市場への女性の参加を高め、かつ双方の親を対象とする柔軟な労働配置を促進すること。 (d) 子どもがいる低所得家庭向けの所得支援を増強しかつ維持するとともに、このような支援が外国系の家族にも拡大して提供されることを確保すること。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 59.前回の勧告(CRC/C/15/Add.198、パラ43)を実施しようとする努力は認めながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) とくに南部においておよび社会経済的困難を有する家族の子どもの間で、依然として高校中退率が高いこと。 (b) 校舎および学校施設の状態が劣悪であり、時として安全不備を理由とする事故死につながっていること。 (c) 学校で暴力およびいじめが蔓延しており、これに対して主として心理社会的および教育的措置ではなく懲戒措置による対応がとられていること、および、被害者による苦情申立て率が低いこと。 (d) 諸州間で同質性が欠けており、かつ職業訓練へのアクセスを延期する法律の成立が遅れていること。 (e) 外国人の子どもおよびマイノリティに属する子どもを学校制度に全面的に統合できていないこと。 (f) 子どもが、教育制度における自己に関連する意思決定プロセスに参加しておらず、かつこのような意思決定プロセスとの関連でなんら意味のある協議の対象とされていないこと。 60.加えて委員会は、州が保障するよう求められている、教育および職業訓練におけるサービスの必須水準について定めた立法令第226号(2006年)が停止されており、かつ、教育支援措置に関する標準化された全国的枠組みがなんら設けられていないことを、懸念する。委員会は、この10年間で私立学校向けの資金が倍増した一方で、2009年の学校改革以降、教育部門に対する公の資金が相当に削減されたこと(教員数の相当の削減を含む)に、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、教育資金の供給源(欧州連合および国内の諸財団を含む)が多様化していることにも留意する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 教育部門におけるこれ以上の予算削減を行なわないとともに、学校に対し、すべての子どもに良質な教育を提供するための十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保すること。 (b) 経済的に不利な立場に置かれた家族の子どもを対象とする教育支援の機構を導入すること。 (c) 学校における暴力およびいじめに対し、対応を懲戒措置および懲罰的措置に限るのではなく、カウンセリング、校則および「生徒規則」に関する意識啓発、対話の場ならびに子どもがそのような事件を報告する機会へのアクセスのような社会-教育的措置を通じて、効果的に対処すること。 (d) 学校との関連における職場の安全についての立法令第81/2008号を法律として成立させること。 (e) 職業訓練へのアクセスに関する法律を成立させるための措置をとること。 (f) 学校における外国人およびマイノリティの子どもの統合を向上させるためのプログラムを発展させること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 移民の状況にある子ども 62.委員会は、締約国が特有の地理的場所に位置しており、かつこれにともなう固有の制約を有していることを認めるとともに、締約国が最近、出身国における戦争、政治的混乱および貧困から避難してきた数千人の難民が予期しない形でかつ前例のない規模で到着する事態に立ち向かうため、緊急の状況下において、かついかなる種類の援助もなく採択しかつ実施しなければならなかった努力および措置を、評価する。しかしながら委員会は、子どもが難民、保護者のいない未成年者または移民のいずれであるかに関わらず、これらの子どもが条約上有する権利にかんがみ、このような状況が子どもにとって有害であることを依然として懸念するものである。 子どもの庇護希望者および難民 63.委員会は、締約国の移民法に基づき、18歳未満の者および妊娠している女性の追放または送還が禁じられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、公の秩序および国の安全を理由として外国出身の子どもを同国から追放できること、および、締約国が、2009年の移民遮断政策(「押し戻し」政策)を実施する際、保護者のいない子どもを含む子どもを、子ども一人ひとりの個別の事情を審査しまたは子ども一人ひとりに対して庇護申請の可能性を与えることなく送還していることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、押し戻された移民のなかには国際的保護を必要とする者として特定された者もおり、これは締約国が負うノンルフールマンの義務の違反であることを、深く懸念する。締約国が、移民を強制的に送還する際、庇護申請の可能性を認めないまま子どもを家族とともに収容していることは、委員会にとってさらなる深刻な懸念の対象である。 64.立法令第25/2008号には留意しながらも、委員会は、締約国が政治的庇護に関する枠組み法を定めていないことを懸念する。委員会は、子どもを対象とする受け入れセンターの定員および利用可能性が限られていること、これらのセンターが過密であることならびにその環境がきわめて劣悪であることから、18歳未満の者を対象としていない受け入れセンターに子どもが措置される状況が生じていることを懸念するものである。委員会は、2011年の春から夏にかけてランペドゥーサその他の場所に到着した移民(子どもを含む)の受け入れ環境および生活環境が水準以下である旨の報告に、特段の懸念とともに留意する。 65.以上のことに照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公海上にいるか領域内にいるかに関わらず自国の管轄下にあってイタリアへの入国を希望する子ども一人ひとりが、自己の事情を個別に審査され、かつ、庇護手続ならびに他の関連の国内的および国際的保護手続への速やかなアクセスを認められる権利を有することを確保すること。 (b) 国内法を見直し、かつ、子どもに回復不可能な害が生ずる現実の可能性があると信じるに足る実質的根拠があるときは、たとえ公の秩序および国の安全を理由とする場合であっても18歳未満の者の追放が禁じられることを確保すること。 (c) 保護のニーズを有するすべての子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)に関する効果的なデータ収集および情報保管のためのシステムを遅滞なく整備すること。 (d) 前掲勧告の実施に際し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を参照すること。 保護者のいない子ども 66.委員会は、保護者のいない子どもに関して締約国でホリスティックなかつ共通のアプローチがとられていないこと(保護者のいない子どもに関する包括的な指針および法的枠組みが存在しないことも含む)を懸念する。委員会は、保護者のいない子どもの後見人の任命およびこのような子どもに対する在留許可の発布について設けられている法的な保護および手続が、締約国の諸州間で一様に適用されていないことを懸念するものである。委員会は、イタリアで一時的に受け入れられた未成年者の状況を向上させるために外国人未成年者委員会が行なっている努力には留意するものの、委員会の権限が庇護を申請しない子どもに限られていることに留意する。保護者のいない未成年者の年齢判定のために医学的アプローチが用いられることが増えており、疑わしきは申請者の利益に解するべきであるという原則の適用が実際には危うくされていることも、懸念の対象である。 67.委員会は、締約国が、一般的意見6号に掲げられた原則を参照しながら、保護者のいない子どもの援助および保護を確保する包括的法律を導入するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が、保護者のいない子どもの状況を監督し、そのニーズを特定しかつ現行制度の課題に対応し、かつ、保護者のいない子どもに関する実務指針(受け入れ、特定、ニーズ評価および保護戦略に関するものも含む)を策定するための、特定のかつ常設の国家機関を設置するよう、勧告するものである。委員会は、締約国が、保護者のいない子どもの年齢判定のために、学際的であり、かつ疑わしきは申請者の利益に解するべきであるという原則を全面的に擁護する統一手続を採択するよう、勧告する。 移民家族の子ども 68.委員会は、在留許可を有しない家族が社会サービスに対する権利をまったく認められていないことに留意しつつ、非正規移民の子どもによる保健ケア、教育その他の社会サービスへのアクセスに関して制限が設けられていることに、深い懸念を表明する。委員会は、これとの関連で、在留資格を有さずにイタリアに入国することおよび滞在することを犯罪化し、締約国に合法的に在留していない子どもおよび家族の経済的および社会的権利の享受に深刻な悪影響を及ぼしている、公の安全に関する法律第94/2009号が公布されたことをとりわけ懸念するものである。委員会はさらに、締約国における移民家族の子どもの人数が相当に増えていることに留意しつつ、「移民の社会的包摂基金」への資金拠出が2008年と2009年に削減されたことを遺憾に思う。委員会はまた、締約国に合法的に在留していない家族の子どもが鑑別追放センターに収容される可能性があり、かつ、このようなセンターに子どもが入れられることについて国内法による規制が行なわれていないことにも、深刻な懸念とともに留意するものである。 69.委員会は、締約国に対し、条約に定められた権利は締約国の市民である子どもに限定されるべきではなく、出入国管理上の地位に関わらすすべての子どもに適用されなければならないことを想起するよう求めるとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2010年7月の憲法裁判所判決にしたがい、移民の子どもに対して教育、保健その他の社会サービスに対する平等の権利を確保する目的で、移民法を見直すこと。 (b) 外国人の在留許可に関する決定の際、子どもの最善の利益が常に最高の考慮事項とされることを、法律上も実務上も確保すること。 武力紛争における子ども 70.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書第1条~第4条にしたがって、(a) 軍隊および武装集団による15歳未満の者の徴募および敵対行為における使用を国内法で明示的に禁止し(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1、パラ12)、かつ、(b) 国内法で「直接参加」を定義するべきである(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1、パラ11)旨の前回の委員会の勧告を、締約国がまだ実施していないことを懸念する。 71.条約第29条にあわせた修正は評価しながらも、委員会は、締約国で運営されている4つの軍事学校のカリキュラムに、人権、条約および選択議定書に関する授業が具体的に含まれていないことを遺憾に思う。委員会はさらに、子どもが武力紛争に関与している国への小型武器および軽兵器の販売の禁止および犯罪化を国内法に導入するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1、パラ17〔18〕)が、締約国によって実施されていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび社会的再統合に関する情報が締約国報告書に記載されていないことも、遺憾に思う。 72.委員会は、これまでの勧告を想起しつつ、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を実施するための努力を強化し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 最低年齢を18歳と定めた国内法との一致を図るため、入隊に関する最低年齢についての、選択議定書に基づく宣言を修正すること。 (b) 刑法改正により、軍隊および武装集団による18歳未満の者の徴募および敵対行為における使用を明示的に禁止しかつ犯罪化すること。 (c) 子どもが武力紛争に関与している国への小型武器および軽兵器の販売を国内法で禁止しかつ犯罪化すること。 (d) 国内法上の難民認定事由のひとつに、子どもの徴募および武力紛争における使用を含めること。 (e) クラスター弾に関する条約を批准すること。 性的搾取 73.委員会は、ペドフィリアおよび児童ポルノとの闘いのための監視機関、インターネット上の児童ポルノと闘うための全国センターおよび売買春・関連犯罪監視機関の創設を歓迎するとともに、子どもに対して行なわれた性的加害行為を加重事由のひとつとした法律第11/2009号の採択に肯定的に留意する。しかしながら委員会は、これらの機関の活動を調整し、かつその資金を拠出するための資源および計画が存在しないことを懸念するものである。これとの関連で、かつ締約国の主要都市で路上売買春が増えていることに留意しつつ、児童買春に関するデータおよびその撤廃に焦点を当てた活動が限られていることは、委員会にとって相当の懸念の対象である。さらに、性的搾取、児童ポルノおよび児童買春を禁止する国内法が強化されたこと(法律第38/2006号)には肯定的に留意しながらも、委員会は、この法律で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書で求められているように児童ポルノの定義がいまなお定められていないことを、遺憾に思う。 74.委員会は、選択議定書の実施のための資金が2000年以降半減させられていること、および、焦点が主として人身取引に当てられていることを懸念する。委員会はさらに、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもの性的な虐待および搾取の防止を目的としたプログラムの数が限られており、かつ、児童ポルノおよび児童買春の被害者特定において困難が生じていることを、懸念するものである。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) とくに刑法に児童ポルノの定義を導入することにより、国内法を子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に調和させること。 (b) ロマの子どもを含む脆弱な立場に置かれた集団の子どもに焦点を当てながら、性的な搾取および虐待の防止のための戦略を策定しかつ実施すること。 (c) 児童ポルノ資料専門分析部に対して専門的研修およびいっそうの資源を提供する等の手段により、被害者を特定しかつ保護すること。 (d) ペドフィリアおよび児童ポルノとの闘いのための監視機関の効果的職務遂行を確保する(その構成員を任命することも含む)とともに、この犯罪を監視するためのデータベースの運用を開始すること。 (e) 児童買春および児童虐待が監視されることを確保する目的で、売買春・関連犯罪監視機関を復活させ、またはその権限および活動を既存のいずれかの機関に委任すること。 少年司法の運営 76.委員会は、締約国の少年司法制度において代替的措置および再統合が重視されていることに、肯定的に留意する。にもかかわらず、委員会は、少年司法制度による対応のさらなる多様化を目的とした少年刑務所制度法案がまだ採択されておらず、かつ資金削減によって現行制度が脅かされていることを、懸念するものである。これとの関連で、委員会は、拘禁が過度に使用されているという報告があること、子どもの審判前拘禁が長期に及んでいること、ならびに、少年矯正施設(IPM)で自由を奪われている子どもが教育および訓練に十分アクセスできていないことを、懸念する。 77.委員会は、外国人の子どもが、在留資格書類を所持していないというだけの理由で少年矯正施設および受け入れセンターに措置されているという報告があることに、深い懸念を表明する。司法機関による処理の対象とされた外国人およびロマの子どもの人数が報告対象期間中に増えたことは、これらの子どもが法律によって定められたダイバージョンその他の代替的措置から利益を享受することが、イタリア人の子どもに比べてはるかに少ないことと同様に、さらなる懸念の対象である。 78.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 少年刑務所制度法案を不当に遅延することなく採択すること。 (b) 恣意的拘禁に関する作業部会から勧告されたとおり(A/HRC/10/21/Add.5、パラ116および122)、ダイバージョン、および自由の剥奪に代わるその他の措置に引き続き焦点が当てられることを確保するため、少年司法制度に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (c) 少年司法制度において外国人およびロマの子どもが過剰に対象とされている問題の徹底的分析を行なうこと。 (d) 子どもが自由を奪われている場所への定期的訪問を行なう独立の監視機構を設置すること。 マイノリティ集団に属する子ども 79.委員会は、乳児死亡率がより高く、慢性疾患および感染症の発生率がより高く、かつ予防接種率が低いことに表れているとおりロマの子どもの健康状態がよくないこと、ならびに、保健ケアその他の社会サービスへのアクセスが限られているのはある程度自業自得であるとみなされていることを、深刻に懸念する。委員会はさらに、初等学校およびとくに中等学校に就学するロマの子どもの人数がきわめて限られていることを懸念するものである。ロマ・コミュニティの経済的状況および社会的排除が憂慮すべき事態にあることに留意しつつ、委員会は、締約国が、ロマが置かれている状況に対し、主として、参加を基盤とする協調のとれた社会的包摂措置ではなく治安維持措置(2006年の治安維持協約、2008年の非常事態令)を通じて対応しようとしていることを、危惧する。これとの関連で、委員会は、非常事態令に基づいてとられた措置によってロマの生活条件がさらに悪化し、「一時居住コンテナ」の建設を通じて事実上の隔離が激化していることを、深く懸念するものである。委員会は、環境がきわめて劣悪なロマの「不法」キャンプでこの1年間に6名の子どもが死亡したこと、ならびに、立退き強制、強制送還、および、保護を目的としてロマの子どもを親から分離させようとする政府の取り組みが行なわれていることに、このうえない懸念とともに留意するものである。委員会はまた、とくにロマの子どもの間で物乞いが増えていること、および、子どもの物乞いと組織犯罪との間に関係があることに、懸念を表明する。委員会はさらに、イタリアのロマの間で早期婚が蔓延しているという報告があること、および、これに対応するための措置について締約国から提供された情報が限定的であることを、懸念するものである。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 遊動民コミュニティの定住地に関わる非常事態および2008年5月30日付の布告を停止すること。 (b) ロマの子どもがとくに保健および教育との関連で置かれている脆弱な状況を正当に考慮し、かつ当事者であるコミュニティの参加を得ながら、イタリア社会へのロマの真正な社会的統合のための国家的行動計画を策定しかつ採択すること。 (c) ロマの子どもの社会経済的状況の持続可能な向上を確保するため、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (d) 早期婚のような有害な慣行に対応するための措置をとること。 (e) ロマの文化に関する理解を増進し、かつロマの子どもに対する差別的かつ固定的な見方を防止するため、政府職員を対象とする関連の指針を策定しかつ研修を実施すること。 (f) 地域言語またはマイノリティ言語に関する欧州憲章を批准すること。 H.国際人権文書の批准 81.委員会は、締約国が、まだ加盟国となっていない中核的国連人権条約およびその選択議定書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、および、無国籍の削減に関する1961年条約を批准するよう、勧告する。 I.地域機関および国際機関との協力 82.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施のため、欧州評議会と協力するよう勧告する。 J.フォローアップおよび普及 83.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 84. 委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにその実施および監視についての議論および意識を喚起する目的で、締約国による第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 次回報告書 85.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年4月4日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 86.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/135.html
総括所見:ウクライナ(第1回・1995年) 第2回(2002年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2007年)/OPAC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.42(1995年11月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年11月2日および3日に開かれた第239回、第240回、第241回および第242回会合(CRC/C/SR.239-242)においてウクライナの第1回報告書(CRC/C/8/Add.10/Rev.1)を検討し、下記の所見を採択した(注)。 (注)1995年11月17日に開かれた第259回会合において。 A.序 2.委員会は、ウクライナ政府に対し、第1回報告書の提出および開かれたかつ実りのある対話に関して謝意を表する。委員会は、議論が率直かつ協力的な雰囲気で行なわれ、その中で、締約国の代表が、政策および事業の方向性のみならず、条約の実施の過程で直面した問題点についても明らかにしたことに、心強さを感ずるものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、現在の政治的移行期における子どもの状況に政府が関心を払っていることに留意する。 4.委員会は、子どもの問題および子どもの権利に関する問題に対処するための機構、とくに、「保健、母親および児童福祉に関する議会委員会」およびその下部機関ならびに地域支部、および、「女性、母親および子どもの問題に関する大統領委員会」の設置を歓迎する。 5.委員会は、子どもの権利の促進および保護を狙って法改正の分野で政府が行なっている重要な法改正の取組み、とくに、子どもの権利の導入を目的とした憲法改正、および、家族法ならびに刑法のような法律の改正の取組みに、評価の意とともに留意する。 6.委員会は、また、締約国で子どもの権利を効果的に実施することを狙った多くの国家的事業を政府が採択したこと、および、「保健、母親および児童福祉に関する議会委員会」の提唱によって子どもを支援する任意基金が設置されたことも歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、現在の政治的移行期にあって、かつ、社会的変化および深刻な経済危機にあってウクライナが直面している問題点に留意する。委員会は、また、移行期にある経済に関わる諸問題、および、貧困の増大および失業の増加にともなって多くの子どもの状況が悪化していることにも留意する。委員会は、締約国がチェルノブイリ原発事故の悪影響、とくに環境に対する悪影響および子どもを始めとする民衆の身体的および心理的健康に取り組むに当たって、大きな困難を経験していることを認識する。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、国内法、措置および事業が条約の規定および原則と全面的に両立するかどうかという点に関して、懸念を表明する。このことは、とくに、婚姻年齢が男女によって異なるという点も含めた差別の禁止の原則(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、および、自己に関わるすべての決定において意見を表明する子どもの権利(第12条)の諸原則に関していえるものである。委員会は、また、義務教育の修了年齢(15歳)および最低労働年齢(16歳)との間に立法上の格差があることにも留意する。 9.委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分が不充分であることを懸念する。 10.委員会は、調整および監視のための効果的な機構が必要であることに対して充分な関心が払われていないことを懸念する。このような機構は、条約が対象とするあらゆる領域、ならびに、ひとり親家族の子ども、離婚した父母の子ども、遺棄された子どもおよび施設に措置された子どもを含むあらゆる集団の子どもに関するデータおよび指標を体系的かつ包括的に集積することのできるものであるべきである。このような機構は、政府が懸念される領域を特定することを可能にし、かつ、それに取り組む戦略を決定する一助となるであろう。 11.委員会は、子ども、とくに新生児の遺棄率が高いこと、および、弱い立場に置かれている家族を援助するための包括的な戦略が存在しないことを心配する。このような状況は、不法な国際養子縁組または他の形態の子どもの人身売買につながる可能性がある。この流れで、委員会は、また、子どもの人身売買を禁止する法律がまったく存在しないこと、および、アイデンティティを保全する子どもの権利が法律によって保障されていないことも懸念する。 12.委員会は、子どもの健康状況、とくに、チェルノブイリ原発事故以後の子どもの健康状況、幼児死亡率が高いこと、予防保健よりも事後の治療の方が優先されているように思えること、母乳育児の普及率が低いこと、中絶の数が多いことならびに家族計画に関する保健、教育およびサービスが不充分であること、および、都市部と非都市部の間で保健システムに格差があることに、懸念を表明する。 13.委員会は、ソーシャルワークを導入したプログラムがウクライナに存在しないことを懸念する。とくに、委員会は、障害児の施設措置、処遇および保護に関する状況について懸念を表明するものである。施設措置に代わる選択肢は充分に考慮に入れられていない。障害児を家で育てている親に対する支援サービスも不充分である。 14.委員会は、学校または子どもが措置される可能性のある施設における子どもの不当な取扱いを効果的に防止し、かつ、それと闘うための適切な措置がとられていないことに遺憾の意を表明する。委員会は、また、家庭内における児童虐待および子どもへの暴力が大規模に存在すること、および、現行の法律およびサービスではこの点で充分な保護が与えられていないことに、深い懸念を抱くものである。子どもの性的搾取の問題も特段の関心を必要とする。 15.委員会は、子どもの権利条約に関して、全国的な広報および普及の戦略が存在しないことを懸念する。 16.少年司法の運営の分野における現在の状況は、委員会の懸念するところである。 E.提案および勧告 17.委員会は、ウクライナ政府に対し、法的枠組みの見直しを続行し、そのことによって、条約を全面的に反映し、ウクライナの管轄下にあるすべての子どもに関して子どもの権利が実現されるようにし、かつ、子どもの権利条約の規定および原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存ならびに発達への権利(第6条)、自己に関わるすべての決定において意見を表明する子どもの権利(第12条)の諸原則との全面的両立を確保するよう奨励する。委員会は、義務教育年齢および最低雇用年齢に関する法律を修正すること、および、婚姻年齢を男女とも同じにすることを提案する。 18.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策を発展させ、かつ、締約国における子どもの権利条約の実施状況を効果的に評価できるようにすることを目的として、全国および地方のいずれのレベルでも、子どもの権利に関わるさまざまな政府機関間の調整を強化するよう勧告する。 19.委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもに関するものを始めとして、条約が対象としているさまざまな領域について、子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を集めるよう勧告する。 20.委員会は、ウクライナ政府に対し、条約第4条を全面的に実施することに特段の関心を払うよう、かつ、中央、地域および地方のレベルで資源の公正な配分が行なわれるようにするよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、市場経済への移行期にあたって、入手可能な資源を最大限に用いることにより、かつ、子どもの最善の利益を踏まえて確保されるべきである。 21.委員会は、条約の規定および原則が大人によっても子どもによっても同様に広く知られ、かつ、理解されるようにするためには、条約を踏まえて、系統的かつ継続的な措置が必要であるとの見解をとるものである。ウクライナのマイノリティによって話されているすべての言語で子どもの権利条約が入手できるようにするべきであり、かつ、子どもとともに働いているすべての専門職集団(裁判官、教師、ソーシャルワーカー、法執行官など)に対して具体的な研修が行なわれるべきである。国連人権教育の10年を踏まえ、条約を学校のカリキュラムに導入することにも関心が払われるべきである。委員会は、締約国に対し、子どものためのオンブズマン、またはそれに類する苦情申立ておよび監視のための恒久的かつ独立の機構を設置することをさらに検討するよう奨励する。子どもの権利の促進に子ども自身が参加することは、とくに地域レベルではきわめて重要である。 22.条約第2条を踏まえ、マイノリティ集団に属している子ども、農村部で暮らしている子ども、ロマの子どもおよびHIV/エイズに感染している子どもに対する差別的な態度または偏見の悪化を防止するための措置がとられるべきである。 23.委員会は、とくに農村部において、プライマリーヘルスケア活動にもっと力点が置かれることを希望するものである。この活動には、家族教育、家族計画、性教育および母乳育児の利点などの問題を対象とした教育的プログラムの発展などが含まれることになろう。 24.委員会は、チェルノブイリ原発事故の悪影響に対処するための措置、とくに社会分野、健康分野および環境分野の措置に対する国際的な支援を奨励する。 25.委員会は、家族の重要な役割および両親の平等の責任に関する意識を発展させるために、さらなる取組みが必要であると考えるものである。子どもの養育責任を果たすにあたって両親を援助するシステムを強化するため、さらなる措置がとられるべきである。 26.子どもの遺棄および中絶の発生率が高いことを踏まえ、委員会は、締約国が、脆弱な立場に置かれている家族がその子どもを支える援助をするための戦略および政策を採択するよう勧告する。現行の社会保障制度および家族計画事業が充分かどうか、評価が行なわれるべきである。委員会は、また、地域の強化および人的資源の動員を目的として、ソーシャルワーカーの研修を行なうよう勧告する。 27.委員会は、締約国に対し、たとえば指導ならびに相談、里親託置および教育ならびに職業訓練プログラムを通じて、施設措置に代わる可能な選択肢を構想しかつ利用できるようにする方向で、施設の子どもの状況に取り組むよう奨励する。委員会は、また、施設に措置されている子どもの権利の実現を効果的に監視する機構の設置も勧告する。 28.子どもの人身売買に関して、委員会は、政府に対し、この不法な活動を明確に禁止し、かつ、アイデンティティを保持する子どもの権利が全面的に保障されるようにするよう奨励する。委員会は、また、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討するよう勧告するものである。 29.委員会はさらに、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰の明確な防止および禁止、および、家庭内の体罰の禁止が国内法に反映させるよう提案する。委員会はまた、過程の内外を問わず、虐待および残虐な扱いの苦情申立てを監視する手続および機構を発展させるようにも提案するものである。条約第39条を踏まえ、いかなる形態であれ放任、虐待、搾取、拷問または不当な取扱いの犠牲となった子どもの身体的ならびに心理的回復および社会的再統合が、子どもの健康、自尊心および尊厳を促進するような環境下で行なわれるようにするために、特別プログラムを創設することが求められる。 30.委員会は、締約国が、少年の矯正労働収容所の管轄を、内務省から、子どもの権利の促進および保護を確保するために最もふさわしいと考えられる機関に移す可能性を検討するよう勧告する。 31.少年司法の運営の分野では、委員会は、現在行なわれている法改正において子どもの権利条約、とくにその第37条、第39条ならびに第40条を全面的に考慮に入れること、および、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則など、この分野の他の関連国際国際基準を改正の指針とすることを勧告する。少年非行の防止、自由を奪われた子どもの権利の保護、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利ならびに法的保護の尊重、および、少年裁判官の全面的独立および公正に関して、特段の関心が払われるべきである。少年司法制度に関わるすべての専門職、とくに裁判官、法執行官、矯正施設職員およびソーシャルワーカーを対象に、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。 32.委員会は、締約国に対し、締約国報告、委員会における同報告の議論の議事要録、および、報告の検討の結果委員会が採択した総括所見を、広く普及するよう奨励する。委員会は、また、これらの文書に議会の注意を促し、かつ、そこに掲げられた行動のための提案および勧告をフォローアップするよう提案したい。これとの関連で、委員会は、非政府組織との協力を追求するよう提案する。 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/332.html
総括所見:韓国(第5~6回・2019年) 第1回(1996年)/第2回(2003年)/第3回・第4回OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/KOR/CO/5-6(2019年10月24日) 委員会が第82会期(2019年9月9~27日)において採択。 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページを参照。 平野によるコメント(有料記事):韓国に対する国連・子どもの権利委員会の勧告(2019年9月)――日本での条約実施にも参考になる指摘が多数 I.序 1.委員会は、2019年9月18日および19日に開かれた第2416回および第2417回会合(CRC/C/SR.2416 and 2417参照)において大韓民国の第5回・第6回統合定期報告書(CRC/C/KOR/5-6)を検討し、2019年9月27日に開かれた第2430回会合においてこの総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国の第5回・第6回統合定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成された締約国の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のことを歓迎する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准(2015年)。 (b) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約への加入(2012年)。 4.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。 (a) 児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法、公教育正常化促進および先行教育規制に関する特別法および学校外青少年支援に関する法律の採択(2014年)。 (b) 国レベルの子どもの権利センターの設置。 (c) 子ども影響評価制度。 (d) オンラインの出生登録システム。 (e) 7歳未満の子どもを対象とする児童手当の導入。 III.主要な懸念領域および勧告 5.委員会は、条約に掲げられたすべての権利の不可分性および相互依存性を締約国が想起するよう求めるとともに、この総括所見に掲げられたすべての勧告の重要性を強調する。委員会は、緊急の措置がとられなければならない以下の分野に関わる勧告に対し、締約国の注意を喚起したい。その分野とは、差別の禁止(パラ17)、生命、生存および発達に対する権利(パラ20)、子どもに対する暴力(体罰を含む、パラ27)、性的搾取および性的虐待(パラ29)、教育および教育の目的(パラ42)ならびに子ども司法の運営(パラ47)である。 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 留保 6.委員会は、条約第21条(a)に関する締約国の留保の撤回を歓迎するとともに、第40条(2)(b)(v)に関する留保の撤回を速やかに進めるよう奨励する。 立法 7.中絶の禁止を違憲と宣言し、かつ政府に対して中絶に関する法律を2020年までに見直すよう求めた2019年4月11日の憲法裁判所判決を歓迎しながらも、委員会は、締約国に対し、この法律が子どもの最善の利益の原則に合致したものとなることを確保するよう促す。委員会はまた、締約国が、条約に関する裁判官、検察官および弁護士の知識、ならびに、裁判手続で条約を援用しかつ直接適用するこれらの法曹の能力を強化するよう、勧告するものである。 包括的な政策および戦略 8.子ども政策および青年政策に関する基本計画ならびに国家人権政策基本計画が採択されたことには留意しながらも、委員会は、締約国が、子どもに関する政策および戦略において条約のすべての分野が包含されることを確保し、かつ、その実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう勧告する。 調整 9.委員会は、締約国が、児童政策調整委員会に十分な人的資源および財源を配分し、常設事務局を設置し、かつ子どもの権利に関する調整機関としての同委員会の地位を高めることによって、同委員会の権限をさらに強化するよう勧告する。委員会は、調整に関する前回の勧告(CRC/C/KOR/CO/3-4、パラ13)を想起するとともに、部分的および全面的重複を回避するため、子どもの権利を扱うすべての公的機関の職務が明確に定められるべきであることをあらためて指摘するものである。 資源配分 10.教育、乳幼児期および児童福祉事業の分野で予算が増額され、かつ子ども・若者参加型の予算編成実践が導入されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の子ども関連予算が国内総生産(GDP)に比例して増額されていないことを遺憾に思う。子どもの権利実現のための公共予算編成についての一般的意見19号(2016年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 子どもを対象とするすべての政策、計画、プログラムおよび立法措置の実施のための十分な財源、人的資源および技術的資源をすべての行政レベルで配分するとともに、そのような資源の利用を監視するための制度を実施すること。 (b) 子どものための予算配分および社会支出全般をGDPに比例する形で増額し、かつ自治体間の格差を縮小させること。 (c) 不利な状況にある子どものための予算配分を導入すること。 (d) 既存の子ども・若者会議および子ども・若者参加委員会などを通じ、予算編成への子ども参加を増進させること。 (e) 子どもの権利実現を支える部門における財およびサービスの利用可能性、アクセス可能性および質を確保するため、腐敗、とくに贈収賄、情実および不正な支払いと闘い、かつ公共調達手続における説明責任を増進させるための努力を強化すること。 データ収集 11.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起しながら、委員会は、締約国が、条約のすべての分野に関する、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的・国民的出身ならびに社会経済的背景および移住者としての背景別に細分化されたデータを収集する、中央集権化されたシステムを設置するよう促す。 独立の監視 12.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)を想起し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 独立性の保障などを目的として、児童権利委員会の法的地位を確立すること。 (b) 苦情を受理しかつ調査する児童権利委員会の権限を強化すること。 (c) 公的機関の間における韓国国家人権委員会の地位を高めること。 (d) 政策提言の実施を調整しかつ監視する国家人権委員会の能力を増進させること。 (e) 国家人権委員会に対して十分な資源を提供すること。 普及、意識啓発および研修 13.委員会は、人権教育が学校カリキュラムに含まれていることを歓迎する。条約に関する認識の水準がとくに子どもたちの間で依然として低いことに留意しつつ、委員会は、締約国が、子どもの権利教育および人権教育の実施に関する法的根拠を確立し、かつそのための十分な資源を配分することなどの手段によってこのような教育が全国で行なわれることを確保するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として義務的研修を実施するよう、勧告する。 国際協力 14.締約国が今後10年にわたって政府開発援助(ODA)を増加させる計画である旨の、対話の際に提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、持続可能な開発目標のターゲット17.2に留意し、締約国に対し、国内総所得の0.7パーセントをODAに振り向けるという国際的に合意された目標を達成し、かつそのような援助において条約およびその選択議定書が遵守されることを確保することとともに、国際開発援助に関する政策およびプログラムの立案、実施、監視および評価において、子どもの権利を優先させ、かつ、締約国およびその開発パートナーに宛てられた委員会の総括所見を統合することを奨励する。 子どもの権利とビジネスセクター 15.委員会は、国内外で操業する大韓民国企業による事業活動の結果として子どもの権利侵害が生じている旨の報告について、懸念を覚える。企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、ビジネスと人権に関する指導原則および子どもの権利と企業セクターに関する前回の勧告(CRC/C/KOR/CO/3-4、パラ27)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、国内外で操業する締約国の企業を対象とする、子どもの保護のための枠組みを確立するよう促す。このような枠組みには、子どもの権利侵害の報告およびこれへの対処を目的とする、子どもの権利影響評価の実施のための機構ならびに監視および評価のための機構が含まれるべきであり、かつ、すべての関係者が子どもの権利の充足および保護について責任を有していることがそこで明確にされるべきである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 16.不利な状況に置かれた子どもを支援するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、2007年以来、反差別法案の採択が妨げられてきていることを依然として懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 村落部の子ども、経済的に不利な立場に置かれている子ども、障害のある子ども、移住者である子ども、多文化の子どもおよび朝鮮民主主義人民共和国出身の難民である子どもが、出生登録ならびに保育施設、教育、保健ケア、福祉、余暇および国による保護へのアクセスに関して差別を経験していること。 (b) 学校で成績差別が広く行なわれていること。 (c) ひとり親家族が偏見および差別に直面していること。 (d) 性的指向に基づく差別の事案が絶え間なく発生していること。この状況は、締約国も、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである若者についての政策は不十分であると述べて認めている(CRC/C/KOR/5-6、パラ36)。 17.持続可能な開発目標のターゲット10.3(差別的な法律、政策および慣行の撤廃ならびにこの点に関する適切な立法、政策および行動の促進などを通じた機会均等の確保および成果の不平等の縮小)に留意しながら、委員会は、締約国に対し、反差別法を速やかに採択するとともに、そのような法律によって出身、性的指向およびジェンダーアイデンティティに基づく差別が禁じられることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 包括的な反差別法および反差別戦略を策定するとともに、脆弱な状況および不利な状況に置かれている子どもへの差別を解消しかつ防止するための公的キャンペーンを実施すること。 (b) 自国の領域内にいるすべての子どもが、出生時に登録され、かつ保育施設、教育、保健ケア、福祉、余暇および国による支援にアクセスすることが平等に可能であることを確保すること。 (c) 学校における成績差別を防止しかつ解消すること。 (d) すべての家族の平等な取扱い(養育費へのアクセスに関するものを含む)を確保するとともに、法律および実務をしかるべき形で見直すこと。 子どもの最善の利益 18.委員会は、子ども影響評価制度の設置を歓迎する。自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)を想起しつつ、委員会は、関連するすべての手続、決定、政策およびプログラムにおいて子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として統合し、一貫して解釈しかつ適用するべきである旨の、前回の勧告を想起するものである。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置も奨励する。 (a) 広範な子どもたちの参加を得ながら、子ども影響評価制度の適用を拡大すること。 (b) すべての分野で子どもの最善の利益についての判断を行ない、かつ当該原則を第一次的考慮事項として正当に重視するための手続および基準を策定すること。 生命、生存および発達に対する権利 19.自殺防止のための国家行動計画が確立されていることには留意しながらも、委員会は、とくに家庭問題、抑うつ、学業面のプレッシャーおよびいじめを理由として子どもの自殺率が高く、子どもの死亡原因の筆頭のひとつとなっていることを深刻に懸念する。委員会は、自殺およびその根本的原因に対処するための体系的アプローチおよび専用の予算が存在しないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 加湿器殺菌剤が引き起こす健康被害について十分に知られていないこと。 (b) 学校および保育現場における細塵およびアスベストのモニタリングが不十分であること。 (c) 加湿器殺菌剤が原因となって多数の健康被害事案が生じており、かつ被害者に対する救済および賠償が不十分であること。 20.委員会は、締約国に対し、前回勧告されたとおり、子ども、家族および公衆一般を対象とする包括的政策、心理的、教育的および社会的措置ならびに療法を通じて子どもの自殺を効果的に防止しかつその根本的原因に対処するための努力を強化するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 加湿器殺菌剤によって引き起こされた可能性のある健康被害事案を調査すること。 (b) すべての保育現場および教育現場で、室内空気の質および有害物質への曝露のモニタリングを続けること。 (c) 加湿器殺菌剤の被害を受けた子どもに十分な救済および賠償を提供するために引き続き努力し、かつ化学物質の管理および有害物質事件の防止のための努力を強化すること。 子どもの意見の尊重 21.委員会は、家事審判法案(2017年)で、意見を聴かれる権利が13歳未満の子どもにも適用されるとされていることに留意する。しかしながら委員会は、子どもの参加が依然として選択的であり、一部の問題に限定されておりかつ学業成績次第であること、および、子どもの意見が考慮されることは稀であることを、遺憾に思うものである。意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)を想起し、委員会は、締約国に対し、以下のものを含む措置をとることにより、家庭、学校、裁判所および関連するすべての行政手続その他の手続において子どもの意見が正当に考慮されることを確保するよう促す。 (a) 学校のすべての子どもが成績にかかわらず意見表明の機会を有することを確保すること。 (b) 前回勧告されたように(CRC/C/KOR/3-4、パラ35(a))、児童福祉法で、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する子どもの権利が規定されることを確保すること。 (c) 家事審判法案を速やかに成立させるなどの手段により、自己に関わるすべての問題について意見を表明する子どもの権利についてのいかなる年齢制限も廃止すること。 C.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録 22.委員会は、オンラインの出生登録・届出制度が設置されたことを歓迎する。持続可能な開発目標のターゲット16.9(出生登録を含む、すべての人々への法的身分の提供)に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 出生登録(オンラインで行なわれるものを含む)が普遍的に行なわれ、かつ、親の法的地位または出身にかかわらずすべての子どもにとって利用可能であることを確保すること。 (b) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、シングルファーザーが子どもを登録するための手続を簡略化すること。 (c) 未登録の出生を特定するため、モニタリングの機構を設置することを含む必要なあらゆる措置をとること。 (d) 出生登録の重要性に関する意識啓発キャンペーンを実施すること。 アイデンティティに対する権利 23.委員会は、締約国に対し、宗教団体によって運営され、匿名による子どもの遺棄を可能としている「赤ちゃんボックス」の取り組みを禁止するとともに、病院における秘密出産の可能性を最後の手段として導入することを検討するよう、促す。 表現、結社および平和的集会の自由 24.委員会は、すべての子どもが、学業成績にかかわりなく、かつ報復を恐れることなく、表現の自由に対する権利を全面的に行使できるようにするため、締約国が法律および校則を改正するべきであることをあらためて指摘する。委員会はまた、子ども参加を促進すること、および、投票および政党への加入に関する最低年齢(現在は19歳)の引き下げを検討することも勧告するものである。 プライバシーに対する権利 25.委員会は、学校が生徒の私的情報(成績および懲戒措置に関するものを含む)を開示し、本人の事前の同意を得ることなく所持品検査を行ない、かつ服装規則を課しているとされることに留意する。委員会は、締約国が、条約第16条にしたがい、学校において法律上も実際上も子どものプライバシー(スマートフォンに関連するものを含む)および個人情報の保護を確保するとともに、十分な情報に基づく子どもの同意を得るための子どもにやさしい手続を策定しかつ適用するよう、勧告するものである。 D.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰を含む暴力 26.児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法が採択されたことならびに児童虐待防止予算、地域児童保護機関、シェルターおよび心理療法士が増加したことは歓迎しながらも、委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) オンラインの暴力および学校における暴力によるものを含む子どもの虐待が広く蔓延していること。 (b) 家庭において、再犯を防止する効果的措置がとられないまま子どもの虐待が繰り返される事件が多数発生していること。 (c) 一部の場面で体罰がいまなお合法とされていること。 (d) 子どもの虐待の報告が過少であること。 (e) 子どもの虐待についての信頼できるデータが不足していること。 (f) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および虐待に対処するための包括的な政策および戦略が存在しないこと。 (g) 地域児童保護機関、シェルター、カウンセラー、心理学者および子どもの虐待を専門とする弁護士が不足していること。 (h) 移住者である子どもおよび障害のある子どもであって虐待の被害を受けた者を対象とする専門的支援(シェルターを含む)が不足していること。 27.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)ならびに持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもに対する虐待、搾取、取引ならびにあらゆる形態の暴力および拷問の解消)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもに対するすべての暴力・虐待事案に関する全国的データベースを設置するとともに、これらの事案の規模、原因および性質に関する包括的評価を行なうこと。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および虐待(オンラインの暴力を含む)の防止、これとの闘いおよびその監視のための包括的な戦略および行動計画を策定すること。 (c) あらゆる場面および締約国のあらゆる地域で、法律上も実際上も、「間接体罰」および「懲戒的体罰」を含む体罰を明示的に禁止すること。 (d) あらゆる形態の暴力および虐待に関する意識啓発・教育プログラムを強化し、学校における非暴力的なコミュニケーションおよび紛争調停ならびに積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てを促進し、かつ、暴力および虐待の通報を奨励すること。 (e) 関連の専門家を対象として、ジェンダーの視点を考慮しながら暴力および子どもの虐待の事案を特定しかつ十分な対応をとるための研修を実施するとともに、通報ガイドラインを確立すること。 (f) 暴力および子どもの虐待の事案について調査および適切な対処が行なわれることを確保すること。 (g) 虐待の防止、虐待の被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策の策定を確保すること。そのための手段には、地域児童保護機関およびシェルター、カウンセラー、臨床心理学者ならびに子どもの虐待事案に対応する弁護士の数をさらに増やすこと、被害を受けた子どもに無償の弁護士代理人をつけること、ならびに、移住者である子どもおよび障害のある子どもがシェルターにアクセスできるようにすることが含まれる。 (h) 上述の勧告の実施および地域格差の縮小のため、十分な人的資源、財源および技術的資源を配分すること。 性的搾取および性的虐待 28.委員会は、子どもに対する性犯罪の範囲を拡大しかつこのような犯罪に対する処罰を強化する法改正、性暴力の防止および根絶を目的とする政策措置ならびに累犯の減少を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として深刻に懸念するものである。 (a) 性暴力および性的虐待が依然として蔓延しており、かつ、オンラインの児童買春およびグルーミング(勧誘)ならびに教員によるセクシュアルハラスメントが急増していること。 (b) 13歳以上の子どもは同意能力があると推定され、性的搾取および性的虐待から保護されていないこと。 (c) 自発的に買売春に関与したと見なされる子ども(「対象児童」)が犯罪者として扱われ、法的援助および支援サービスを否定され、かつ拘禁に似た「保護処分」の対象とされていて、これらの子どもによる性的搾取の通報が抑制されていること。 (d) 子どもの性的搾取および性的虐待で有罪とされた成人犯罪者に対し、保護観察を含む寛大な量刑が用いられていること。 29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの性的搾取および性的虐待(オンラインの買春およびグルーミングを含む)ならびに教員によるセクシュアルハラスメントのあらゆる事件を防止しかつこれに対応するために必要なあらゆる措置をとること。 (b) オンラインのグルーミングを定義しかつ犯罪化すること。 (c) 性的活動を行なうことへの同意に関する最低年齢を引き上げること。 (d) 買売春および性的虐待に関与したすべての子ども、すなわち18歳未満のすべての者(「対象児童」)が犯罪者であなく被害者として扱われることを確保すること。そのための手段には、これらの子どもを法律で「被害者」と呼ぶこと、「保護処分」を廃止すること、当事者の子どもに支援サービスおよび法的援助を提供すること、ならびに、これらの子どもによる司法(賠償および補償を含む)へのアクセスを確保することが含まれる。 (e) 意識啓発(学校におけるものを含む)を強化するとともに、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしくかつ効果的な経路を通じた性的搾取および性的虐待の通報を奨励すること。 (f) 性犯罪を行なった者(教員を含む)が強要の証拠の有無にかかわらず訴追され、かつ適正な制裁の対象とされることを確保するとともに、性犯罪に対する刑罰を国際的水準に合致させること。 有害慣行 30.委員会は、親の同意があれば移住者コミュニティ内での児童婚が許可される可能性があり、かつ、移住者および外国人である女子が関与する婚姻の事例が複数報告されていることを懸念する。委員会は、締約国に対し、児童婚を例外なく禁止するとともに、この慣行を防止しかつ根絶するためにあらゆる措置(出身国と協力することおよび移住者・難民が民事登録手続にアクセスできるようにすることを含む)をとるよう促すものである。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条ならびに第27条(4)) 家庭環境 31.委員会は、無償保育、働く親を対象とする柔軟な勤務体制、父親の育児休業およびひとり親家族への支援が拡大されたこと、ならびに、養育費の履行確保および支援に関する法律が採択されたことを歓迎する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 保育サービスの定員および適切な弾力化の余地をさらに増やすとともに、乳幼児保育法の改正などにより、すべての子どもが、国籍にかかわらず、保育施設および金銭的支援に平等にアクセスできることを確保すること。 (b) 父親の育児休業へのアクセスおよびその利用をさらに促進すること。 (c) 「面会交流センター」の増設および代替的解決策の提供などにより、離婚家族の子どもの面会交流権を確保すること。 (d) 養育費へのアクセスおよび養育費の履行確保を促進しかつ確保するとともに、不履行に対する制裁によって子どもの最善の利益が損なわれないことも確保すること。 (e) ひとり親家族へのスティグマおよび差別の防止および根絶のために必要なあらゆる措置をとるとともに、児童手当の受給要件をしかるべき形で改定すること。 家庭環境を奪われた子ども 32.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 可能な場合には常に、すべての子どもを対象として家庭を基盤とする養護を支援しかつ促進するとともに、家族のもとに留まることのできない子どものための里親養育の拡大および質の強化を目的として十分な人的資源、財源および技術的資源を配分し、かつ、具体的な行動計画を通じて段階的に施設措置を終了させること。 (b) 家庭内の児童虐待の根本的原因に対処し、子どもが家出をする理由にも対処し、これらの現象の防止および根絶のために焦点化された非懲罰的な措置をとり、かつ、家出をした子どもの保護を強化すること。 (c) 代替的養護への子どもの措置をどのような場合に行なうかおよび措置先をどうするかについて判断するための、子どものニーズ、最善の利益および意見に基づいた、かつその年齢および成熟度を正当に考慮した十分な保障措置および基準を確保するとともに、代替的養護の質の定期的審査および苦情申立て手続へのアクセスを確保し、かつ、再統合のための支援および養護下にある子どもが成年に達する際の支援を強化すること。 (d) 後見手続を合理化し、かつ後見人の保護能力を強化すること。 養子縁組 33.裁判所による許可等を通じて養子縁組を規制するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきであることをあらためて指摘する。 (a) すべての年齢の子どもを対象とする養子縁組手続において子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされること、および、養子縁組のために子どもを解放することに関してシングルマザーの自由な同意が義務づけられることを確保すること。 (b) シングルマザーに対する偏見と闘い、かつ養子縁組に関する肯定的イメージを促進するための大規模な公的キャンペーンを実施すること。 (c) 手続における不要な遅延を回避し、かつ、養子縁組機関が透明なやり方で活動することおよびその活動が適正に規制されることを確保するために必要な措置をとること。 (d) 養子縁組が解消された事案を含め、養子縁組後のモニタリングおよびサービスを強化すること。 (e) 養子に対し、実親に関する情報への適切なアクセスを求めかつ認められる権利が告知されることを確保すること。 (f) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討し、かつ国際養子縁組法案を起草すること。 不法な移送および不返還 34.委員会は、締約国が、親責任および子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約ならびに子およびその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約の採択を検討するよう、勧告する。 親が収監されている子ども 35.委員会は、締約国が、親が収監されている子どもおよびこれらの子どもの面会交流権を保護するための政策を採択するよう勧告する。親とともに刑事施設に収容されている子どもはその権利(教育および健康に対する権利を含む)を保障されるべきであり、かつそのニーズを全面的に充足されるべきである。 F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 36.委員会は、障害者政策総合計画の採択ならびに教育専門家の増員、研修の増加および障害のある子どものニーズの充足のために配分される予算の増額を歓迎する。障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 障害について権利を基盤とするアプローチをとり、かつ障害のあるすべての子どものインクルージョンを確保する目的で、法律および政策を見直すこと。 (b) 障害のあるすべての子ども(障害のある子どもの庇護希望者および移住者を含む)に対し、早期発見介入プログラム(リハビリテーション治療、適切な福祉支援および医療支援を含む)が全国的に提供されることを確保すること。 (c) 学校インフラ、スポーツおよび余暇のための場所、通学のための移動ならびに訓練において合理的配慮が行なわれることを確保し、かつ個別支援を提供するための専門の教員および援助者を配置するなどの手段により、障害のあるすべての子どもを対象としてインクルーシブ教育を提供すること。 (d) 障害のある子どもに関する肯定的イメージを促進し、かつスティグマおよび偏見と闘うための意識啓発キャンペーンを行なうこと。 健康および保健ケアサービス 37.委員会は、資格外滞在の子どもに対しても予防接種が行なわれるようになったことを歓迎する。到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)および持続可能な開発目標のターゲット3.8(すべての人々を対象とする財政リスクからの保護、質の高い必須保健サービスへのアクセスならびに安全、効果的、良質かつ負担可能な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを含むユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成)を想起しながら、委員会は、保健予算の増額および地方病院の強化を求めた前回の勧告を想起し、かつ締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とりわけ、経済的に脆弱な状況に置かれている集団の子どもおよび移住者である子どもを対象として、国民健康保険へのすべての人によるアクセスを確保すること。 (b) 移住者である子どもを対象として予防接種のアクセス可能性を高めること。 (c) 保育所および学校で保健ケアの援助(糖尿病および肥満の子どもを対象とするものを含む)を強化すること。 精神保健 38.子どもの自殺に対抗するためにとられた措置には留意しながらも、委員会は、持続可能な開発目標のターゲット3.4(精神的健康およびウェルビーイングの促進)を想起するとともに、締約国が、自殺およびその根本的原因の防止に焦点を当てるなどの手段により、子どもの精神的ウェルビーイングを向上させるための努力を継続的に強化するべきであることをあらためて指摘する。 思春期の健康 39.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)および思春期における子どもの権利の実施についての一般的意見20号(2016年)、ならびに、持続可能な開発目標のターゲット2.2(あらゆる形態の栄養不良の解消)、同目標のターゲット3.5(麻薬の濫用およびアルコールの有害な摂取を含む有害物質濫用の防止および治療の強化)および同目標のターゲット5.6(セクシュアル/リプロダクティブヘルスおよびリプロダクティブライツへのすべての人によるアクセスの確保)を想起しながら、委員会は、肥満、喫煙および飲酒の防止(アルコールの広告に対する規制の厳格化、禁煙空間の数の増加、スポーツおよび運動の促進ならびに有害物質濫用防止に関するライフスキル教育に子どもが参加することの奨励によるものを含む)に関する前回の勧告を想起する。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) リスクの高い状況に置かれている集団をとくに対象とし、かつ、支援および回復のための具体的サービスを提供する「危機青少年社会安全網」の能力構築を図ることにより、スマートフォンの問題のある使用および過剰な使用への対応を強化すること。 (b) 学校におけるセクシュアリティ教育、妊娠中および出産時の支援サービスならびに産後ケアを強化し、子育て支援を確保し、かつ子育ての平等な分担を促進することにより、思春期の子どもの妊娠に効果的に対処すること。 生活水準 40.7歳未満の子どもを対象とする児童手当の導入は歓迎しながらも、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国籍にかかわらずすべての子どもが児童手当にアクセスできることを確保すること。 (b) すべての子どもの生活水準の向上を目的として貧困下にある子どもを支援するための総合計画の参考とし、このような計画を採択しかつ実施するため、貧困下にある子どもの状況に関する研究を実施し、かつ関連の統計を収集すること。 (c) 子どもの居住貧困および子どものアルバイトの広がりを評価し、かつ効果的な対処を図ること。 G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 教育および教育の目的 41.委員会は、先行学習(すなわち、就学準備のため就学前段階で私教育を受けること)の慣行の根絶を目的とする公教育正常化促進および先行教育規制に関する特別法の採択、脆弱な状況に置かれている集団の子どもに対して割り当てられる入学定員の拡大、「自由学期制」の導入および学校外青少年に対する支援の提供を歓迎する。しかしながら委員会は、睡眠の剥奪および高水準のストレスをともない、締約国の子どもの自殺の筆頭原因となっている過度な学業上の負担について、依然として深く懸念する。委員会はまた、子どもたちから実質的に子ども時代を奪っている高度に競争的な教育環境に加え、以下のことについても深刻に懸念するものである。 (a) 親の所得によって左右され、かつ就学前から始まる私教育への依存が高まり続けていること。 (b) 脆弱な状況および不利な立場に置かれている集団の子どもについて、教育へのアクセスが限られており、学校への統合水準が低く、かつ学校中退率が他の子どもよりも高いこと。 (c) 大韓民国の子どもに対しては義務教育に対する権利が保障されている一方、難民、移住者および資格外滞在者である子どもは校長の裁量で入学が認められない場合があり、かつ、資格外滞在者である子どもにとって学校サービスへのアクセスが限られていること。 (d) 障害のある子どもについて特別学校が優勢であり、障害のある子どものための教育機会および配慮が不足しており、かつ、障害のある子どもが強いスティグマに直面していること。 (e) 学校外青少年および代案学校に通っている子どもへの支援が不十分であること。 (f) 村落部と都市部との間に教育格差があること。 (g) 思春期の子どもの妊娠およびHIV感染拡大という状況のなか、セクシュアリティに関する十分なかつ年齢にふさわしい教育が行なわれていないこと。 (h) 進路相談サービスが不十分であって子どもの意見を考慮しておらず、そのため子どもが学校を中退しやすい傾向が強められていること。 (i) 学校でいじめおよび差別(学業成績に関連するものを含む)が蔓延していること。 (j) 子どもの余暇、遊びおよび運動のための時間および無償のかつ安全な施設が深刻に不足しているため、優れた成績を維持するべきであるという社会的圧力とあいまって、気晴らしのためのスマートフォンの過剰な使用が助長されていること。 42.持続可能な開発目標のターゲット4.5(教育におけるジェンダー格差の解消、ならびに、脆弱な状況にある人々(障害のある人、先住民族および脆弱な状況に置かれている子どもを含む)を対象とする、すべての段階の教育および職業訓練への平等なアクセスの確保)を想起しつつ、委員会は、締約国に対し、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)にのっとって、かつ、国のカリキュラムの多様化、大学入試制度の再検討および進路相談の強化などによって競争を緩和することを目的として、公教育制度を改革するよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 私教育への依存度を低め、公立・私立の学校による公教育正常化促進および先行教育規制に関する特別法の遵守状況を監視し、かつ不遵守の場合に制裁を科すこと。 (b) 子どもの出身、居住地、社会経済的背景および移住者としての地位ならびに移住者としての登録の有無にかかわらず、すべての子どもを対象として義務教育を確保するために教育基本法を見直すこと、腐敗および悪用を防止するため、社会統合選考制度に基づく定員割当ての監視を強化すること、および、脆弱な状況および不利な立場に置かれている子ども(社会的・経済的に脆弱な状況に置かれている子ども、村落部の子ども、学校外青少年、障害のある子ども、移住者である子ども、資格外滞在者である子ども、多文化の子どもおよび朝鮮民主主義人民共和国出身の難民である子どもを含む)の一般学校へのアクセスおよび統合を促進しかつ確保するため、これらの子どもに対する教育支援を強化しかつ促進すること。 (c) 障害のある子どもに対してインクルーシブ教育および合理的配慮が提供されることを確保し、かつこのような子どもの肯定的イメージを促進すること。 (d) 子どもが学校を中退することの根本的原因を特定して効果的対応をとるための努力を強化し、かつこの現象の規模を評価すること、すべての子どもが一般学校で支援されかつ一般学校に留まることを確保するために包括的で調整のとれた措置をとること、ならびに、代案学級および代案学校についての意識啓発を図り、かつ、すべての代案学校が認証されかつその卒業証書が承認されることを確保すること。 (e) 地域格差を低減させるため、教職員の養成および研修を強化し(そのような養成および研修の利用可能性を高めることを含む)、学校インフラを改善し、かつ、このことをとくに目的とする予算を増額するなどの措置をとること。 (f) 思春期の子どもの妊娠およびHIVにとくに注意を払い、かつ性的指向およびジェンダーアイデンティティを十分に網羅しながら、年齢にふさわしい性教育を促進するとともに、学校性教育に関する国の基準から差別的文言およびジェンダーに関するステレオタイプに基づいた文言を取り除くこと。 (g) 学校外青少年にとくに注意を払いながら進路相談および自由学期制の強化および多様化を図るとともに、子どもの意見が進路選択の基礎となることを確保すること。 (h) 学校における差別(成績に基づく差別)を防止しかつこれと闘うこと、差別の訴えについて効果的に調査しかつ対応すること、ならびに、ストレス軽減および情緒的安定に関する訓練を提供すること。 (i) ネットいじめを含むいじめと闘うための措置を強化するとともに、そのような措置に防止、早期発見のしくみ、子どもおよび専門家のエンパワーメント、標準介入手続ならびに事案関連データの収集に関する調和化されたガイドラインが包含されることを確保すること。 (j) 子どもの発達にとって鍵となる要素としての休息、余暇および遊びについての見方および態度を変えるために意識啓発プログラムおよび公的キャンペーンを実施するとともに、すべての子どもが、スポーツを含む休息および余暇にアクセスでき、かつ、安全で、インクルーシブな、禁煙の、年齢にふさわしくかつアクセス(公共交通機関によるアクセスを含む)しやすい遊びおよびレクリエーション活動に従事する十分な時間および便益を有することを確保すること。 H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 庇護希望者、難民および移住者である子ども 43.委員会は、2012年に難民法が採択されたことを歓迎する。国際移住の文脈にある子どもの人権についての合同一般的意見――すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する委員会の一般的意見3号および4号(2017年)/子どもの権利委員会の一般的意見22号および23号(2017年)を参照し、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 出入国管理法の改正等によって子どもの入管収容を禁止し、身柄拘束に代わる解決策を確保し、かつ、庇護および家族再統合に関する事柄において子どもの最善の利益が常に第一次的に考慮されるようにすること。 (b) 難民である子どもおよび無国籍の子どもを対象とする地位認定手続を策定し、長期在留移住者である子どもの地位を調整し、かつ、庇護希望者、難民および移住者である子ども(資格外滞在者である子どもを含む)の権利に関する研修を強化すること。 (c) 庇護希望者、難民および移住者であるすべての子ども(保護・養育者のいない子どもおよび障害のある子どもを含む)が、出生登録、保育、教育および関連のサービス、精神的・身体的保健ケアサービス、健康保険、金銭的支援および住宅支援、余暇ならびに虐待の場合の保護・支援サービスに、大韓民国国民である子どもとの平等を基礎としてアクセスできることを確保するため、立法上および実際上のあらゆる障壁を取り除くこと。 (d) 保護・養育者のいない子どもを保護する必要性にとくに注意を払いながら、条約にしたがった、移住者である子どもの権利に関する法律を採択しかつ実施すること。 (e) 庇護希望者および難民(とくに子ども)に対するヘイトスピーチに対抗するためのキャンペーンを発展させること。 (f) 移住者である子ども(資格外滞在者である子どもを含む)に関するデータ収集を強化すること。 (g) 難民、庇護希望者および移住者である子どもをとくに対象とする予算を配分すること。 経済的搾取(児童労働を含む) 44.委員会は、働く子どもの労働条件および企業の監督を改善するためにとられた政策措置を歓迎する。働く子どもの一貫した多さ、これらの子どもの労働権の侵害およびこれらの子どもに向けられる暴言を考慮し、かつ、持続可能な開発目標のターゲット8.7(強制労働を根絶し、現代的奴隷制および人身取引に終止符を打ち、最悪な形態の児童労働の禁止および撲滅を確保し、かつ2025年までにあらゆる形態の児童労働を解消するための即時的かつ効果的な措置の実施)に留意し、委員会は、締約国が、説明責任の履行および社会復帰のための機構を設置することにより、新たな措置の有効性に関する査察および報告を強化するべきであることをあらためて指摘する。 売買、取引および誘拐 45.国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准は歓迎しながらも、委員会は、締約国が依然として、性的搾取を目的とする子どもの取引(とくにオンラインでの募集を通じて行なわれるもの)の送り出し国、通過国および目的地国であるとされていることに留意する。持続可能な開発目標のターゲット8.7をふたたび想起し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 人身取引の定義を国際法に合致させるため、強制、対価および国境を越えた被害者の移動の要件を取り除くこと。 (b) 警察官、出入国管理官、労働関係職員および社会福祉関係職員の研修等の手段により、被害を受けた子ども(とりわけ、脆弱な状況に置かれている集団の子ども)の特定および付託を改善するとともに、被害者特定ガイドラインを実施すること。 (c) 子どもの売買、誘拐および取引をともなう事案が効果的に捜査されること、および、加害者が訴追され、かつ犯罪の重大性に応じた刑罰を言い渡されることを確保するとともに、人身取引対策に関する事柄を調整する機関ならびに人身取引事件の捜査および責任者の訴追を担当するチームを設置すること。 (d) 売買または取引の対象とされた子どもが犯罪者として扱われまたは刑事上の制裁および退去強制の対象とされず、かつ、閉鎖施設にけっして収容されないことを確保すること。 (e) 人身取引の被害を受けた子ども(男児、外国籍の子どもおよび障害のある子どもを含む)に対するシェルターおよび統合的サービスの提供を強化すること。 子ども司法の運営 46.委員会は、少年院で過ごした期間を確定した刑期に算入できるようにした少年法改正を歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 法律に抵触した子どもの事件を処理しかつ扱う制度が2種類並行して存在すること。 (b) 刑事責任年齢を13歳に引き下げる提案が行なわれていること、および、少年法に基づいて10歳の子どもの拘禁も可能であること。 (c) 少年法第4条(1)(3)で、実際に犯罪が行なわれていない場合の「虞犯少年」の拘禁について規定されていること。 (d) 公正な裁判に対する子どもの権利の侵害が報告されていること。これには、捜査段階から保護者の関与を得ていないこと、強制された自白が用いられていること、証拠および抗告にアクセスできないこと、無罪推定および自己防御権が侵害されていること、裁判が公開されること、ならびに、法的援助に対する権利に条件が付されていることが含まれる。 (e) 子どもの拘禁率が成人に比べて高いこと。 (f) 拘禁環境が不適切であること。これには、過密であること、医療援助、教育、訓練、余暇および食事がとくに女子にとって不十分であること、通信、情願および屋外運動が制限されていること、マイノリティの背景を有する子どもについて合理的配慮が行なわれていないこと、ならびに、拘禁されているレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもが差別されていることが含まれる。 (g) 子どもが成人とともに拘禁されている事例があること。 (h) 子どもの被拘禁者に対して不必要かつ義務的なDNA検査およびHIV検査が実施されていること、HIVに感染している子どもの被拘禁者が隔離されていること、子どもの被拘禁者に対して義務的な身体検査および散髪が行なわれていること、ならびに、衛生設備の撮影が継続的に行なわれていること。 (i) 独房監禁、家族面会の制限および遠距離懲戒移送のような裁量的懲戒措置が過剰に使用されていること。 (j) 手錠、縄その他の道具が用いられていること、および、使用が法律で禁止されているにもかかわらず電気ショックが利用されていること。 (k) 身柄拘束をともなわない再犯防止措置が存在しないこと。 47.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 法律に抵触した子どもが関わるすべての事件を対象とする、十分な資源を有する専門の子ども司法裁判所制度を設置するとともに、子どもを担当する専門裁判官および法律に抵触した子どもとともに働く専門家が、子どもの権利に関する適切な教育および継続的研修を受けることを確保すること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢を14歳のまま維持するとともに、当該年齢に達しない子どもが犯罪者として扱われず、かつけっして拘禁されないことを確保すること。 (c) 条約第40条にしたがって公正な裁判のための保障が尊重されることを確保するとともに、子どもが関わる事件の審判から一般人が排除されることおよび子どもの法定保護者がそもそもの始まりから手続に参加することも確保し、違反報告のための秘密が守られる経路を提供しかつ促進し、かつ、子どもが関わる事件を報道するメディア媒体向けのガイドラインを策定すること。 (d) 法律に抵触したすべての子どもに対し、捜査段階から有資格者による法的援助が提供されることを法律上も実務上も確保するとともに、法律扶助制度を確立すること。 (e) 「虞犯少年」について定めた少年法第4条(1)(3)を廃止すること。 (f) ダイバージョンプログラムの法的根拠を確立し、かつ身柄拘束をともなわない刑を促進すること。 (g) 少年法で明確な拘禁事由を定め、拘禁は最後の手段としてかつもっとも短い期間で用いることとし、拘禁が取消しの方向で定期的に再審査されることを確保し、「保護処分」期間および「少年分類審査院委託」期間が確定した刑期に算入されることを確保し、かつ、拘禁命令に対して抗告する権利および違法な拘禁について賠償を受ける権利を確立しかつ確保すること。 (h) 男女平等の個人的空間、食事へのアクセス、教育、身体的・精神的保健ケアサービス、運動、余暇、家族との連絡および苦情申立て機構などとの関連で拘禁環境(一時的拘禁の場合を含む)が国際基準を遵守したものとなること、自由を奪われた子どもが居住地に近い施設に収容されること、および、拘禁施設(児童福祉施設を含む)が継続的監視の対象とされることを確保すること。 (i) 子どもが成人とともに拘禁されるいかなる可能性も解消するため、法律を改正し、かつあらゆる効果的措置をとること。 (j) 懲戒措置としての監禁および移送の利用を廃止し、これに代えて修復的措置を促進すること。 (k) 子どもに関わる有形力および保護具の使用を規制するとともに、その使用が、特定の状況に限定された、必要かつ比例的なものであることを確保すること。 (l) 拘禁されている子どものプライバシーが尊重されることを確保すること、子どもの被拘禁者のDNAの収集およびHIV検査を禁止し、かつその記録が存在する場合には抹消すること、HIV関連の情報を秘密が守られるやり方で扱うこと、HIVに感染している子どもの被拘禁者の隔離を終わらせること、ならびに、義務的な身体検査および散髪ならびに衛生設備における継続的撮影を禁止すること。 (m) 身柄拘束をともなわない再犯防止措置を強化すること。 (n) 法律に抵触したすべての子どもが、その国籍、障害の有無、性的指向またはジェンダーアイデンティティにかかわらず、平等にかつ差別なく取り扱われることを確保するとともに、適切な場合には常に合理的配慮を提供すること。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施についての委員会の前回の総括所見のフォローアップ 48.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書に関する2008年の総括所見(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)の実施についての情報が不十分であることを遺憾に思う。したがって委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、以下のことを勧告するものである。 (a) 選択議定書に掲げられたすべての行為および活動(旅行および観光における子どもの売買および性的搾取を含む)が国内刑法で全面的に対象とされるべきこと。 (b) 選択議定書違反を理由とする犯罪人引渡しの場合の双方可罰性要件および最低重大性要件は廃止されるべきこと。選択議定書は犯罪人引渡しの法的根拠と見なされるべきである。 (c) 子どもに対する性犯罪で有罪判決を受けた者に対する、旅券法に基づく国際渡航制限は系統的に適用されるべきであること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の実施についての委員会の前回の総括所見のフォローアップ 49.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書に関する2008年の総括所見(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1)の実施についての情報が不十分であることを遺憾に思う。したがって委員会は、前回の勧告を想起するとともに、とくに締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 18歳未満の子どもを軍隊または非国家武装集団に徴募することおよび敵対行為に関与させることを犯罪化すること。 (b) 紛争地域出身の庇護希望者である子どもを早期に特定するための機構を設置し、これらの子どもに関する細分化されたデータを収集し、かつ、これらの子どもに提供される身体的および心理的支援を強化すること。 (c) 選択議定書に関する意識を促進しかつ高めるとともに、軍学校のカリキュラムに選択議定書の規定が含まれることを確保すること。 I.通報手続に関する選択議定書の批准 50.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。 J.国際人権文書の批准 51.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約の批准を検討するよう勧告する。 K.地域機関との協力 52.委員会は、締約国が、とくに東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 VI.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 53.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回・第6回統合定期報告書およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 54.委員会は、締約国に対し、第7回定期報告書を2024年12月19日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 55.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2021年1月17日)。/パラ41第1文を修正したほか、用語をいくつか修正(1月18日)。/誤字を修正(4月3日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/309.html
総括所見:イスラエル(第2~4回・2013年) 第1回(2002年)OPAC(2010年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/ISR/CO/2-4(2013年7月4日)/第63会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2013年6月3日に開かれた第1796回および第1797回会合(CRC/C/SR.1796 and 1797参照)においてイスラエルの第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/ISR/2-4)を検討し、2013年6月14日に開かれた第1815回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第2回~第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/ISR/Q/2-4/Add.1)の提出を歓迎するとともに、部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話について評価の意を表明する。 3.しかしながら委員会は、東エルサレムを含むパレスチナ被占領地域(以下OPT)およびシリア領ゴラン高原被占領地域に住んでいる子どもについての情報およびデータの提供ならびにこれらの子どもについて委員会が書面で行なった質問への回答を締約国が一貫して拒否しているために、報告プロセスの十分性および条約実施についての同国の説明責任に大きな影響が出ていると考える。委員会は、締約国に対し、OPTにおける「壁」の建設の法的帰結に関する国際司法裁判所の勧告的意見(I.C.J report 2004, para.163 (3) A.)にしたがうとともに、イスラエルおよびOPT(ヨルダン川西岸およびガザ地区を含む)ならびにシリア領ゴラン高原被占領地域において条約の全面的適用を確保する自国の義務を遵守するよう、促すものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 犯罪を行なったとして申し立てられかつ(または)有罪判決を受けた子どもについて処罰よりも更生を優先させるものとし、かつ裁判所の命令なくして14歳未満の子どもの拘禁を禁ずるとした、青年(審判、処罰および処遇態様)法(法律第5731-1971号)の第14次改正(2009年7月)。 (b) 性暴力の被害を受けた子どもがクライシスセンターで即時の援助を受ける権利を確立した、性暴力軽罪被害者援助法(法律第5769-2008号)。 (c) 母性休暇を12週から14週に延長した、2006年および2007年の雇用法(法律第5714-1954号)改正。 (d) 立法が子どもの権利に及ぼす影響に関する情報の登録法(2002年、法律第5762号)。 (e) 障害のある子どもは普通教育施設に措置することを優先させるものとし、かつこの目的のための予算の増額について定めた、特別教育法(法律第5758-1998号)の2002年改正。 (f) 義務教育(身体的暴力の報告規則)規則(第5770-2009号)。 5.委員会は、障害のある人の権利に関する条約の批准(2012年9月)に、肯定的対応として留意する。 6.委員会はさらに、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 自治体レベルの政策、プログラムおよび予算に子どもの権利を統合することを目指す「子どもにやさしいまち」イニシアティブ(CFCI)。 (b) いずれも教育制度の変革および改善を目的とするオフェク・ハダーシュ(新たな水平線)改革(2008年)およびオズ・ベトゥムーラ(変革の勇気)改革。 (c) アラブ系住民の言語スキルを向上させるための、就学前教育施設、小学校および高校におけるアラビア語教育プログラム。 (d) トラフテンベルグ委員会によって勧告されたように、社会経済的階層間の格差の縮減を目的として少人数による課外教育および社会教育を行なう放課後センター(就学前教育施設および小学校に通う3~9歳の年齢層を対象とするもの)を創設する「ツィーラ」プログラム。 III.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、締約国が有する国家安全保障上の懸念を考慮する。しかしながら委員会は、パレスチナ地域およびシリア・ゴラン高原の長年にわたる違法な占領、西岸における違法入植の拡大の継続および「壁」の建設、ならびに、パレスチナ人の土地の没収ならびに住居および生計手段の破壊が、パレスチナ人の子どもおよびその家族の権利の深刻かつ継続的な侵害であり、屈辱と暴力の循環を煽るものであり、かつ地域のすべての子どもにとっての平和なかつ安定した未来を危険にさらしていることを強調するものである。委員会は、締約国に対し、OPTおよびシリア・ゴラン高原の占領を終了させること、国際連合事務総長が述べたように(A/67/375、パラ47)将来のパレスチナ国家の実現性に対する実存的脅威となっている違法に設けられたすべての入植地から撤退すること、および、シリア領ゴラン高原被占領地域への住民の移送を中止することを促す。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 8.委員会は、条約および子どもと武力紛争に関する選択議定書に基づく締約国のそれぞれの第1回報告書に関する総括所見に掲げられた、OPTに住んでいる子どもに関連する委員会の勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ27(a)、37および62(2002年)ならびにCRC/C/OPAC/ISR/CO/1、パラ11、17、35および38(2010年))のフォローアップに関する情報を、締約国が一貫して提供してこなかったことを遺憾に思う。委員会はまた、条約に基づく締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(2002年)の多くについて対応が行なわれていないことも遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国に対し、条約および子どもと武力紛争に関する選択議定書に基づく締約国のそれぞれの第1回報告書に関する総括所見に掲げられた、OPTに住んでいる子どもに関連する委員会の勧告を、何よりも優先されるべき課題として実施するよう促す。委員会はまた、締約国が、これらの勧告のうち実施されていないものまたは十分に実施されていないものに対応するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するとともに、とくに、締約国に対して以下の措置をとるよう求めた以下の勧告をあらためて繰り返すものである。 (a) 国および地方の行政段階においてならびにこれらの段階間で部門を横断した調整および協力を進めるための中央機関を設置すること(パラ13(a))。この点については、子ども、法律および立法の実施の分野における基本的原則の調査のためのイスラエル・ロトレビー委員会からも2003年に勧告されているとおりである。 (b) 条約が対象とするすべての分野について、もっとも不利な状況に置かれている子どもを含む18歳未満のすべての者に関するデータを収集するとともに、進展を評価し、かつ条約実施のための政策を立案する目的でこのデータを活用すること(パラ15(a)および(b))。 (c) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で、すべての公用語により、条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字でありまたは正規の教育を受けていない、被害を受けやすい状況に置かれた集団を積極的に対象とするための取り組みも含む)を強化しかつ拡大すること(パラ23(a))。 (d) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方行政職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教職員ならびに保健従事者など)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること(パラ23(b))。 10.前回の勧告(パラ13(b))に照らし、委員会はまた、締約国に対し、子どもに関する包括的政策を作成するとともに、当該政策に基づき、その適用のために必要な要素を備え、かつ十分な人的資源、財源および技術的資源を提供される戦略を策定することも奨励する。 条約の法的地位 11.委員会は、条約の原則および規定を国内法体系に漸進的に編入していくことに関する、双方向的対話の際に代表団から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、このプロセスがまだ完了していないことから、締約国における子どもの権利の裁判適用可能性に影響が生じる事態がもたられされていることを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、すべての子どもの権利が裁判で適用できることを確保するため、条約に掲げられた権利ならびに原則および規定を国内法体系に統合していくプロセスをいっそう速やかに進めるよう勧告する。 資源配分 13.委員会は、条約の実施のために配分されている資源について、予算上の決定が子どもに与えている影響について、および、子ども(もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもを含む)にきわめて重要な社会サービスを提供するための具体的な予算配分額について締約国から提供された情報が不十分であることを、遺憾に思う。委員会はまた、アラブ人居住地域における子どもひとりあたりの平均支出額がユダヤ人居住地域における当該支出よりも3分の1以上少ないと推定されていること、および、締約国が、アラブ人の子どもとユダヤ人との間で根強く見られる保健指標関連の格差を説明するにあたり、2つの保健制度に提供される資源の不平等な水準を考慮していないことも、懸念するものである。 14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 予算全体を通じて子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているかを追跡するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることおよびいずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価を可能とすることによって、国家予算の策定に際して子どもの権利アプローチを活用すること。 (b) 公的な対話、とくに子どもたちとの対話および地方当局の適正な説明責任を確保するための対話を通じて、透明なかつ参加型の予算策定を確保すること。 (c) 予算配分(とくに保健部門に対する予算配分を含む)において、アラブ系イスラエル人の家族およびその子どもに対する差別がこれ以上行なわれないことを確保するとともに、不利な立場または被害を受けやすい状況に置かれた子ども(とくにベドウィン人、パレスチナ人およびアラブ人の子どもならびに移住労働者および庇護希望者の子ども)に関する戦略的予算科目を定めること。 独立の監視 15.会計検査オンブズマンが果たしている役割は認知しながらも、委員会は、ロトレビー委員会およびペレツ委員会から勧告されたように、条約に基づく進展を恒常的に監視しかつ評価する任務を委ねられた独立の機構を設置するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ17)以降、締約国によって限られた進展しか達成されていないことに懸念を表明する。 16.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがって、国および地方のレベルにおける条約の実施の進展の監視および評価、ならびに、子どもからの苦情に対する、子どもに配慮した迅速なやり方による対応を目的とした子どもオンブズパーソンを設置するためのプロセスを速やかに進めるよう勧告する。 市民社会との協力 17.委員会は、締約国報告書の作成への市民社会の関与について限られた情報しか提供されなかったこと、および、締約国が報告書において認めているように、子どものための政策および法律を立案する際に非政府組織の体系的関与がなされていないことを、遺憾に思う。委員会はまた、パレスチナの非政府組織およびOPTで活動している国際人権団体がますます国家安全保障に対する脅威とみなされるようになっており、かつ、とくにいやがらせ、逮捕および就労許可の拒否の対象とされていることにも懸念を表明するものである。委員会はさらに、OPTで人道機関のために働く外国人に対して就労許可が認められないこと、および、国際連合の事実調査団に協力する非政府組織への外国資金の統制が厳しくなっていることを懸念する。 18.委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関連する政策、計画およびプログラムの立案、実施、監視および評価に際してコミュニティおよび市民社会(非政府組織および子ども団体を含む)の体系的関与を得るよう促す。委員会はまた、締約国に対し、市民社会との信頼関係および協力の雰囲気を醸成するための具体的措置をとるとともに、すべての子どもの権利を差別なく保護しかつ促進するための戦略を立案しかつ実施する目的で、市民社会の関係者(OPTにおける子どもの権利の状況を監視している関係者を含む)との継続的対話に従事することも促すものである。委員会はさらに、締約国が、非政府組織が子どもの権利の監視および促進のための資源を要請し、受け取りかつ活用できることを確保するよう勧告する。 B.子どもの定義(条約第1条) 19.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく委員会の勧告(CRC/C/OPAC/ISR/CO/1、パラ9)にのっとり、2011年9月に採択された軍令第1676号によって、軍事法廷における成年が16歳から18歳に引き上げられたことに留意する。しかしながら委員会は、これまでのところ、同軍令が実際には全面的に適用されているわけではないことを懸念するものである。 20.委員会は、締約国に対し、OPTに住んでいる子どもが18歳に達するまで子どもとみなされ、かつ条約(とくに少年司法の運営に関連する規定)に基づく全面的保護を効果的に享受できることを確保するよう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 21.差別に関して裁判所が言い渡してきた諸決定には留意しながらも、委員会は、差別の禁止が締約国の基本法で明示的に保障されていない旨の懸念(CRC/C/15/Add.195、パラ26)をあらためて表明する。委員会はまた、とくに人種差別撤廃委員会から指摘されたように(CERD/C/ISR/CO/14-16、パラ11、15、16、18および27、2012年)報告期間中に多数の差別的法律が採択されたこと、ならびに、これらの法律が、主としてパレスチナ人の子どもに対し、その生活のあらゆる側面において、かつ、アラブ系イスラエル人、ベドウィン人およびエチオピア人の子どもならびに移住労働者および庇護希望者の子どもに対しても影響を及ぼしていることにも、懸念を表明するものである。委員会は、異なる交通機関の設置および道路整備が行なわれていることならびに2つの異なる法体系および制度が実施されていることが事実上の隔離に相当するものであり、かつ、自己の権利の享受に関するイスラエル人の子どもとパレスチナ人の子どもとの間の不平等につながっていることを深く懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、差別の禁止および平等原則を基本法に含めるとともに、ユダヤ人ではない子どもに対して差別を行なってる法律が遅滞なく廃止されることを確保する目的で、法律および政策の包括的見直しを実施するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、すでに人種差別撤廃委員会から指摘されたように(CERD/C/ISR/CO/14-16、パラ24)、OPTのパレスチナ人住民に深刻かつ不均衡な影響を及ぼしている政策または実務を禁止しかつ根絶すること、ならびに、OPTに住んでいるすべての子どもが差別なく条約に基づく権利を享受できるようにすることを目的とした即時的措置をとることも促すものである。 子どもの最善の利益 23.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利の尊重を確保するために報告対象期間中にとられた多数の措置、とくに、新法に関する子どもの権利影響評価について定めた「立法が子どもの権利に及ぼす影響に関する情報の登録法」(2002年)を歓迎する。委員会はまた、子どもの最善の利益を考慮することなく父親に子どもの監護権を与えたシャリーア裁判所およびラビ裁判所の決定を取り消した、2006年および2008年の最高裁判所判決も歓迎するものである。しかしながら委員会は、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて適切に統合されかつ一貫して適用されているわけではないこと、ならびに、とくに父性検査について行なわれた裁判所の決定に反映されているように、この権利が一部の裁判所による誤った解釈の対象になりうることを懸念する。委員会はまた、パレスチナ人の子どもの最善の利益が締約国によって軽視され続けていることも懸念するものである。 24.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に対する注意を喚起するとともに、締約国が、この権利があらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、すべての分野で子どもの最善の利益に関する判断指針を示すための手続および基準を定めるとともに、当該手続および基準を、伝統的および宗教的指導者を含む公衆ならびに民間の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう、奨励されるところである。委員会はまた、締約国に対し、OPTに住んでいる子どもについての政策の全面的影響評価を実施するとともに、OPTにおける軍政および侵入防止法(2002年)においてこれらの子どもの最善の利益が全面的に考慮されることを確保することも促す。 生命、生存および発達に対する権利 25.武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく2010年の総括所見(CRC/C/OPAC/ISR/CO/1、パラ10)を参照しつつ、委員会は、双方の紛争当事者の子どもが引き続き殺害されかつ負傷しており、かつ、被害者のなかにOPTに住んでいる子どもが不均衡なほど多数含まれていることについて、もっとも深い懸念をあらためて表明する。委員会は、報告対象期間中に、締約国の軍事作戦の結果としてパレスチナ人の子どもが数百人殺害され、かつ数千人が負傷したこと(このような状況は、締約国が、均衡性の原則および区別の原則を軽視し、子どもが相当する存在する人口密集地帯に対して空軍および海軍による攻撃を実施したガザにおいてとくに顕著である)に、深刻な懸念を表明するものである。委員会は、以下のことを深く懸念する。 (a) パレスチナ人の子どもが、住居の再建に関して家族を支えるために建設資材を集めていた際、ガザとの境界近辺で締約国軍により銃撃されてきたこと(報告対象期間中、このような事件が30件起きたと報告されている)。 (b) 西岸の入植者による攻撃の対象とされるOPTの子どもの人数が増えていること(2008年以降4人が殺害されており、かつ、報告対象期間中に数百人が負傷している)。委員会は、これらの事件のほとんどにおいて、イスラエル軍が暴力の防止および子どもの保護のための介入を行なわないのみならず暴力を行なう側を支援していることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、ほとんどの事件で、加害者が裁判にかけられず、その犯罪について全面的な免責を得ていることに、懸念とともに留意するものである。 (c) 「壁」の建設および2007年以降のガザ封鎖(赤十字国際員会は、このような封鎖について、連帯罰を科すものであってイスラエルが国際人道法に基づいて有する義務に明確に違反していると判断している)、OPTに住んでいる子どもの生命、生存および発達に対する権利に破壊的な影響が生じていること。 26.委員会は、締約国が、人道法(戦時における文民の保護に関する1949年のジュネーブ条約を含む)に掲げられた均衡性および区別の基本的原則を遵守するために速やかな措置をとり、子どもを殺害しかつ負傷させるすべての行為に終止符を打ち、このようなすべての犯罪について即時的および実効的捜査を行ない、実行犯を裁判にかけ、かつ、これらの人権侵害の被害を受けた子どもが十分な補償、回復および社会的再統合のための縁jを受けられるようにするためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の勧告(CRC/OPAC/ISR/CO/1、パラ11(a)ならびにCRC/C/ 15/Add.195、パラ32(c)および(d))をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 人権高等弁務官から勧告されたように(A/HRC/19/20, para.52)、過度な実力行使のさらなる発生を防止するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、とくに、治安部隊および軍隊による実弾の使用に関するすべての規則を見直すこと。 (b) 入植者によるあらゆる形態の暴力を明確かつ公に非難し、かつ、このような行為がこれ以上容認されることはないという明確なメッセージを発信すること。締約国は、公の秩序を確保し、さらなる暴力を防止し、かつ、入植者が子どもに対して行なったあらゆる暴力行為およびそのような暴力の共犯行為に関する捜査および責任追及を確保するための即時的措置をとるべきである。 (c) とくに人種差別撤廃委員会から勧告されたように(CERD/C/ISR/CO/14-16, para.26)、かつ、「文民である住民に飢餓または苦痛を引き起こす目的」による焦土戦術の実施を禁じたイスラエル戦争法マニュアルにのっとって、住居、教育、健康、水および衛生に対する子どもの権利の尊重を確保する目的で、パレスチナ被占領地域における「壁」の建設を中止し、かつガザの封鎖を全面的に解除するとともに、パレスチナ人家族が住居および民生設備を再建するために必要なあらゆる建設資材の搬入を緊急に認めること。 子どもの意見の尊重 27.委員会は、家事手続に関与することとなった子どもの参加を得てハイファおよびエルサレムの家庭裁判所で2007年に開始された実験的プログラムを2014年までにすべての裁判所に拡大するためにとられた措置、および、医学的治療および処置についての意思決定に子どもを包摂するハダサ大学病院の実践に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 裁判所が、改宗または精神病院への入院に関わる手続において、意見の聴取が子どもにとって害になると思われる場合には子どもの意見の聴取を義務づけられていないこと、および、養子縁組手続において意見を聴かれる子どもの権利を保障しないことが、子どもが養子にされることを認識していない場合には認められていること。委員会はさらに、子どもの移住者および庇護希望者が、自己に関する手続においてほとんど意見を聴かれていないことを懸念する。 (b) 意思決定プロセスへの子どもたちの参加が、締約国で注目が高まっている一方でいまなお広く実践されていないこと、および、子どもたちの意見が、とくに公共政策に関する決定において、十分に求められておらずまたは考慮されていないこと。 28.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、この権利が、子どもに影響を与えるすべての関連の司法手続および行政手続に制限なく適用されること、および、養子縁組に関する決定においては、子どもの意見を考慮することなく子どもの「最善の利益」について判断することはできないことを想起するよう求める。委員会は、締約国が、改宗、精神病院への入院または養子縁組の事件において意見を聴かれる子どもの権利に課している制限を再検討するとともに、子どもの移住者および庇護希望者が自己に関する手続において意見を聴かれる権利を効果的に確保するための措置をとるよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、意見を聴かれる子どもの権利が実際に効果的に実施されるようにするための明確な機構および指針を定めるとともに、政策立案機関によって子どもの意見が考慮され、かつ、子どもに対してその提案についての十分な反応が与えられることを確保することも勧告する。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録/国籍 29.委員会は、住民登録法第6条で、イスラエルで生じたすべての出生を内務省に通知する登録官の義務が定められていることには留意しながらも、以下のことについて懸念を表明する。 (a) イスラエル人である親とOPT出身の親との間に生まれた子どもへのイスラエル市民権の付与が禁じられていること、締約国の決定により、2000年以降、パレスチナ人の子どもの居住許可申請の処理が停止されていること、ならびに、東エルサレムに住んでいる者の居住許可および身分証明が恣意的に取り消されていることにより、登録されていないパレスチナ人の子ども数千人が保健サービス、教育およびあらゆる種類の社会給付へのアクセスから排除されており、かつ、数千人の子どもが親とともに住めなくさせられていること。 (b) 締約国で出生した移住者の子どもに対し、正式な出生証明書ではなく、父親の名前が記載されていない手書きの公式通知書がしばしば発給されていること。委員会はまた、入院費用を負担できない移住者家族が出生通知書の発給を拒否される場合があるという報告、および、出生通知書に父親の名前を記載するために法外なDNA検査費用を支払わなければならなかった移住者家族がいるという報告についても懸念を覚える。委員会はさらに、正式な出生証明書を取得するために自発的帰還宣言書への署名を強制された家族がいるという報告についても懸念を覚えるものである。 30.委員会は、締約国に対し、出生後直ちに登録されるパレスチナ人の子どもの権利の否定(条約第7条第1項の違反)ならびに国籍を取得する権利および親によって養育される権利の否定につながっているすべての法的規定を廃止するための即時的措置をとるよう促す。この目的のため、締約国は、住民登録をパレスチナ自治政府に移管するよう促されるところである。委員会はまた、締約国に対し、イスラエル人の子どもについて行なわれているのと同様に、移住者の子ども全員に対し、両親の名前を記載した無償の出生証明書を発給することも促す。出生証明書の発給において「自発的」帰還宣言への署名が条件とされることは、けっしてあるべきではない。 アイデンティティに対する権利 31.委員会は、子どもに対してその子どもが養子であることを隠すことを認めている子どもの養子縁組法の規定について懸念を覚える。委員会はまた、ハイファ家庭・地方裁判所が、2008年の決定理由において、父性検査を認めることは子どもがユダヤ法にしたがって「私生児」のレッテルを貼られることになる可能性があるために子どもの最善の利益にそぐわないと判断したことも懸念するものである。 32.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が、養子または親の双方から認知されていない婚外子について、自己の親の身元を知る子どもの権利の尊重を可能なかぎり確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、宗教法が条約に一致したものとなること、および、宗教法において婚外子に対する軽蔑的な言葉が掲げられないことを確保することも促すものである。 33.委員会は、締約国が、代理母出産の取決めに関する規制において、生殖補助医療(とくに代理母が関与するもの)によって出生した子どもの権利および利益に十分な注意を払っていないことを懸念する。 34.委員会は、生殖補助医療(とくに代理母が関与するもの)の規制にあたり、締約国が、自己の最善の利益を第一次的に考慮され、かつ自己の出自に関する情報にアクセスする子どもの権利の尊重を確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、代理母および親となる予定の者に対する適切なカウンセリングおよび支援の提供を検討することも勧告するものである。 E.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 35.委員会は、軍および警察による逮捕、起訴および拘禁の対象とされたパレスチナ人の子どもの拷問および不当な取扱いが行なわれており、かつ、この点に関して条約機関、特別手続の任務受託者および国際連合機関が繰り返し表明してきた懸念にもかかわらず、締約国がこのような慣行を終わらせられていないという報告があることについて、もっとも深い懸念を表明する。委員会は、OPTに住んでいる子どもが以下のような取り扱いを受け続けていることに、もっとも深い懸念とともに留意するものである。 (a) 日常的に、家族に対して大声で指示をする兵士によって真夜中に逮捕され、かつ、親に別れも言えないまま、手錠および目隠しをされてどこかわからない場所に連行されていること(子どもの連行先を知っている親はほとんどいない)。 (b) 組織的に、身体的暴力および言葉による暴力、屈辱的取扱い、苦痛をともなう拘束措置ならびに頭部および顔を袋で覆う措置の対象とされ、自分自身または家族構成員に対する殺害、身体的暴力および性暴力の脅迫を受け、かつ、トイレの利用、食事および水を制限されていること。これらの犯罪は、自白を得る目的で逮捕時からならびに移送および尋問の最中に行なわれているが、複数のイスラエル兵が証言したように恣意的に行なわれることも、未決拘禁中に行なわれることもある。 (c) 時として数か月間、独房に監禁されていること。 36.委員会は、締約国に対し、OPTに住んでいる子どもの拷問および不当な取扱い(これらは子どもの権利条約第37条(a)の深刻な違反であるのみならず、ジュネーブ第4条約第32条の重大な違反でもある)を防止しかつ根絶する、回避することのできない自国の責任を想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう強く促すものである。 (a) すべての子どもを直ちに独房監禁から解放すること。 (b) パレスチナ人の子どもの拷問および不当な取扱いが疑われるすべての事件に関する第三者調査を遅滞なく開始すること。これには、指揮系統のあらゆる段階で、これらの慣行を命令し、容認しまたはその便宜を図った者が裁判にかけられ、かつその犯罪の重大性に相応する刑により処罰されることを確保することが含まれるべきである。 (c) OPTに住んでいる子どもを対象として、逮捕およびその後の拘禁時に受けた取扱いに関して苦情(審判中に申し立てられるものを含む)を申し立てるための安全なかつ子どもにやさしい機構が用意されることを確保するため、即時的措置をとること。 (d) 関連の司法当局が、自白の取得方法について疑義を抱かせる事情が存在するときは、たとえ正式な苦情が申し立てられていなくとも、拷問または他の形態の不当な取扱いに相当する行為の捜査および訴追に関して相当な注意を払うことを確保すること。 (e) OPTに住んでいる子どもであって拷問および不当な取扱いの被害を受けたすべての子どもに対して、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助を確保すること。 体罰 37.委員会は、締約国であらゆる場面における体罰が全面的に禁止されていること、および、義務教育(身体的暴力の報告規則)規則(第5770-2009号)において、教育施設の長に対し、教育者と生徒との間で生じたいかなる身体的暴力についても書面で報告することが義務づけられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、身体的および情緒的な不当な取扱いを経験したと報告する生徒の割合が高いこと、および、拘禁中の子どもに対して体罰が引き続き行なわれていることを懸念するものである。 38.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が、公衆および専門家を対象とする意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)の実施等も通じ、体罰およびその心理的影響を解消するための効果的措置をとるよう勧告する。締約国はまた、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てならびにしつけおよび規律も促進するとともに、子どもにやさしい苦情申立て機構を設置するべきである。 虐待およびネグレクト 39.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトを行なう親に対して軽い制裁を宣言した裁判所の諸決定に対する国の上訴(たとえば Cr.A (Be er-Sheva) 7161/02 The State of Israel v. Z.Y. (12.2.2003))に、肯定的対応として留意する。委員会はまた、子どもが不当な取扱いを受けている証拠を福祉局が入手していたにもかかわらず、子どもを自宅から分離して虐待およびネグレクトから保護する措置をとらなかったことについてテルアビブ市を非難した、エルサレム治安判事裁判所の2007年の決定(C.C. 3970/98 Yitzhak Goldstein v. The State of Israel (14.01.2007))も歓迎するものである。しかしながら委員会は、責任のある子育てを促進するための支援およびサービスが不十分であること、ならびに、危険な状況に置かれている子どもの受け入れ先が不足しているために一部の子どもが拘禁施設に収容されていること(2012年5月には、10代の女子153人が受け入れ待ちで拘禁施設に収容されていたと報告されている)に、懸念を表明するものである。 40.委員会は、締約国が、虐待およびネグレクトから子どもを保護し、かつ積極的な子育てを促進するための努力を強化するとともに、心理社会的援助および適切なケアを享受できるべきである、危険な状況に置かれている子どもが利用可能な保護シェルターを増設するためにあらゆる適切な措置をとるよう、勧告する。締約国は、優先的課題として、危険な状況に置かれている子どもであって現在拘禁施設に収容されているすべての子どもを収容から解放し、かつリハビリテーションおよびケアのための適切な施設に措置するべきである。 有害慣行 41.委員会は、一部の伝統的な男性割礼の慣行によって短期的および長期的合併症が生じているという報告があることに懸念を表明する。 42.委員会は、締約国が、男性割礼の短期的および長期的合併症に関する研究を実施するよう勧告する。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 43.委員会は、パレスチナ人およびイスラエル人の子どもが、とくにロケット攻撃、空爆および砲撃による爆発の際、暴力の雰囲気のなかで生活していることを深く懸念する。委員会はまた、親が殴打されまたは屈辱的取扱いを受ける様子および自宅が破壊される様子を目撃するパレスチナ人の子どもに対する心理的暴力、ならびに、このような暴力がこれらの子どもに及ぼす長期的影響についても重大な懸念を覚えるものである。 44.子どもに対する暴力に関する国際連合研究の勧告(2006年、A/61/299)を想起しながら、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の解消に優先的に取り組み、かつ、紛争の結果として生じる暴力を低減させるよりもむしろ悪化させている政策の採用および実施を行なわないよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつとくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための包括的な国家的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対処するための国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力の人種主義的側面およびジェンダーに関わる側面に特段の注意を払い、かつこれに対処すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国際連合機関と協力すること。 F.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 45.委員会は、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって援助および支援のサービスを提供するために締約国がとった措置(所得最低水準に達していない家族に対する所得支援手当の給付、および、障害のある子どもの親に対して子どものケアのための追加的休暇の取得権を認めた病休日給与法の2007年改正を含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、庇護希望者、難民および移住労働者の子どもの状況(これらの子どもは、親が家の外で働いている間、社会サービス機関によるいかなる支援も受けることなく、多数の子どもを預かるベビーシッターに預けられ、またはアパートもしくは路上でひとりのまま放置されている)について懸念を覚えるものである。 46.委員会は、締約国に対し、子どものための民間の放課後プログラムの費用を負担することができず、働いている間は子どもをひとりにしておくしか選択肢がないすべての親に対して社会的支援が提供されることを確保するため、具体的措置をとるよう促す。庇護希望者、難民および移住労働者の子どもなど、とくに被害を受けやすい状況に置かれた子どもに対し、特別な注意が払われるべきである。 家庭環境を奪われた子ども 47.コミュニティを基盤とする入所環境および子どもの地元に設けられたグループホームなど、新たな入所型養護モデルの発展を加速させるために締約国が行なっている積極的努力には留意しながらも、委員会は、入所施設に措置される子どもに比べ、里親養育に委託される子どもの割合がごく少ないことを依然として懸念する。委員会はまた、人権高等弁務官から報告されているように(A/HRC/8/17, para.50)、イスラエル国防軍が、2008年、書面によるいかなる命令も適切な代替施設の計画もないままヘブロンにある子どものための施設2か所を閉鎖して、3192人の子どもを立ち退かせ、かつあらゆる衣料品、食料、文房具その他の物品を没収したことにも懸念を表明するものである。 48.委員会は、締約国が里親養育制度をさらに強化するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ41)をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国に対し、ヘブロンの児童施設の閉鎖における責任の調査を実施するとともに、立ち退かされたすべての子どもが適切な環境で保護およびケアを受けられるようにするために人的資源、財源および技術的資源が提供されることを確保するようにも促すものである。 49.委員会は、数千人のパレスチナ人の子どもが両親またはきょうだいのいる家庭環境で生活しかつ成長する権利を奪われており、かつ、数千人が、2005年および2007年に改正された市民権およびイスラエル入国法に基づく家族再統合の厳格な制限のために別離の恐怖のもとで生活していることに、懸念を表明する。委員会は、締約国の決定により、2000年以降、パレスチナ人の子どもの居住許可申請の処理が停止されており、かつ、東エルサレムに住んでいるパレスチナ人の居住許可が取り消されていることを、とりわけ懸念するものである。委員会は、親の一方を失った子どもでさえも、西岸において生存している親と再統合できなくさせられていることに、深い懸念とともに留意する。 50.委員会は、締約国に対し、家族と離れ離れになっているすべてのパレスチナ人の子どもが両親およびきょうだいと遅滞なく再統合されること、および、さらなる別離のおそれが生じないようにするため、すべての家族構成員が適正に登録されることを確保するために即時的措置をとるよう、促す。締約国は、これまでに自由権規約委員会(CCPR/C/ISR/CO/3、パラ15、2010年)、女性差別撤廃委員会(CEDAW/C/ISR/CO/5、パラ25、2011年)および人種差別撤廃委員会(CERD/C/ISR/CO/14-16、パラ18)から勧告されたように、市民権およびイスラエル入国法、および、条約第9条および第10条に違反し、かつ家族再統合を妨げるすべての政策を廃止するべきである。 G.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害のある人の権利に関する条約が批准され、かつ障害のある子どもに関連する多数の法律(とくに特別教育法(法律第5758-1998号)の改正、および、中等教育施設における学習障害のある生徒の権利法(法律第5768-2008号))が採択されたこと、ならびに、障害のある子どもが普通学校に統合された際、補完的指導ならびに特別な心理学的サービスおよび医療サービスを受けられるようにするための措置がとられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子どもの圧倒的多数が特別学校または普通学校内の特別学級に出席していること。 (b) 子どもを普通学校または特別学校のどちらに措置するかが、親の選択次第であり、子どもが自己の意見を表明し、かつ自己の最善の利益の評価および判断を受けられる手続によって決められるものになっていないこと。 (c) 普通学校における障害のある子どものインクルージョンのために配分される資源、とくに障害のある子どもを支援するために配置されるフルタイムの援助者の人数が不十分であること。 52.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を想起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親の選択モデルを再検討して、障害のある子どもの最善の利益を評価しかつ判断するための、厳格な手続的保障を備えた正式な手続を確立するとともに、意見を聴かれかつ考慮される障害のある子どもの権利がこの手続において全面的に尊重されることを確保すること。 (b) インクルーシブ教育の提供範囲を、その利益を享受できるすべての子どもに拡大する盲的で障害のある子どもに関する包括的な国家的戦略を策定すること。もっとも不利な状況に置かれている子ども、とくに自閉症の子どもに対して特段の注意が払われるべきである。 (c) ドーナー委員会から勧告された、いわゆる「ニーズに応じた資金拠出」制度を実施することにより、障害のある子どもに対して効果的にインクルーシブ教育を行なうための十分な人的資源、財源および技術的資源が学校に提供されることを確保すること。 健康および保健サービス 53.委員会は、締約国で、子どもを対象とする質の高い保健サービス制度が発展していることを歓迎する。しかしながら委員会は、これらのサービスへのアクセスに関して不平等が存在し、主としてベドウィン人およびアラブ人の子どもならびにエチオピア系イスラエル人コミュニティに属する子どもに影響が生じていることを遺憾に思うものである。対話の際に締約国から提供された情報にもかかわらず、委員会は、2002年に委員会が留意した、OPTにおける子どもの健康および子どものための保健サービスの状況の悪化が報告対象期間中に相当に進展していることに、深い懸念を表明する。このような悪化は、ガザの病院および診療所に対する攻撃(これらの施設の半数以上がキャストレッド作戦の際に深刻な被害を受けた)、ならびに、子どもおよび妊婦をOPT外の医療施設に移送する許可の否定および遅れ(これにより、報告対象期間中に多くの子どもおよび妊婦の死亡が生じている)によるものである。委員会はまた、以下のことを著しく懸念する。 (a) ネゲブ砂漠のいわゆる「未登録」村落に住んでおり、基礎的保健サービスを剥奪されているベドウィン人の子どもの死亡率が高いこと。 (b) ガザ地区の子どもが、高度な水質汚染に日常的にさらされていることから、血液疾患および衛生関連疾病(水様性下痢および腸チフスなど)に罹患していること(ガザにおける子どもの死亡の12%が水の質の劣悪さによるものとされる)。 54.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どもが差別なくこの権利を享受できることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、OPTに住んでいるすべての子どもおよび妊婦に対し、緊急医療ケアを含む保健サービスへの安全なかつ無条件のアクセスを保障し、かつ、十分な医薬品および訓練を受けた人材が利用できることを確保するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ45)もあらためて繰り返すものである。この勧告はネゲブ砂漠に住んでいるベドウィン人の子どもについても適用される。委員会は、締約国に対し、病院および医療施設への攻撃を中止するとともに、医療インフラの再建のために必要なすべての資材のガザへの搬入を緊急に認め、かつ、OPT外で医療ケアを必要とするすべての子どもおよび妊婦の時宜を得た移送を遅滞なく確保するよう、促すものである。委員会はまた、締約国に対し、安全な飲料水および十分な衛生サービスの復旧のために即時的措置をとり、かつ、復旧が完了するまで、これらのサービスを提供する人道機関のアクセスが妨げられないことを確保することも促す。 思春期の健康 55.委員会は、締約国の青少年、とくに女子の自殺率および自殺未遂率が高いことを懸念する。 56.思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)を参照しながら、委員会は、締約国が、若者の自殺およびその原因についてジェンダーの視点を含む詳細な研究を実施するとともに、この情報を活用して、子ども指導センター、ソーシャルワーカー、教員、ヘルスワーカーおよび他の関連の専門家と協力しながら若者の自殺に関する国家的な行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。締約国はまた、心理カウンセリングサービスの利用可能性を高めることも検討するとともに、思春期の子どもに対し、訓練を受けたソーシャルワーカーの支援を学校において提供するべきである。 生活水準 57.委員会は、子どもの貧困がこの数年増加していること、および、3人に1人が貧困下でまたは貧困すれすれの状態で生活していることを懸念する。委員会はまた、社会サービスが民営化されていることおよび無償サービスへのアクセスが限定されていることにより、困窮状態にある子どもおよびその家族が直面する困難が高まっていることも懸念するものである。 58.委員会は、締約国に対し、貧困下で生活している子どもおよびその家族が十分な金銭的支援および無償のかつアクセス可能なサービスを差別なく受けられることを確保するよう、促す。 59.前回の総括所見(CRC/C/15/Add.195、パラ50および51)に照らし、委員会は、パレスチナ人の子どもの貧困が増加しており、かつ、締約国によるパレスチナ地域の占領の結果として十分な生活水準に対するこれらの子どもの権利が深刻に侵害されていること、ならびに、イスラエル人入植地の拡大、コミュニティを分断するための「壁」の建設およびガザの封鎖を加速させるための措置がとられていることを、依然として深く懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) とくに西岸および東エルサレムにおける土地の接収、パレスチナ人の住居の大規模な取り壊し、数世代にわたって占有していた住居からのパレスチナ人家族およびベドウィン人家族の追放ならびに差別的な建築規制により、引き続き、パレスチナ人家族およびその子どもが数百人単位で移動を強いられ、ホームレス化し、または立退き強制および取り壊しを常に恐れなければならない状態が生じていること。 (b) 天然資源へのアクセスの禁止、水の使用の制限および給水機構(ベドウィン人の遊牧生活様式および農業様式を維持するために不可欠な、貯水池を基盤とする伝統的な水利機構を含む)の破壊を理由として、パレスチナ人の子どもおよびその家族ならびにネゲブ砂漠のベドウィン人の子どもが危機的な水不足に直面していること。委員会はさらに、東エルサレムで下水処理施設を設けること、および、いわゆる「未登録村落」に住んでいるベドウィン人の家族およびその子どもが安全な飲料水にアクセスできるようにすることに、たとえ最高裁がこれらの村落への配管が行なわれるべきであると判示した場合(民事上告審9535/06、Abdullah Abu Musa ed, et al. v. The Water Commissioner and the Israel Land Administration事件、2011年6月5日言い渡し)であっても、締約国の当局が反対していることを懸念する。 (c) OPTの子どもがますます慢性的栄養不良に苦しむようになっていること。このような状況は、ガザ地区の封鎖およびガザで人道援助を行なっている諸機関に課される制約、農地および海へのアクセスに関する厳しい制限の維持、ならびに、パレスチナ人の生計維持のために必要な手段(イスラエル人入植者および国家当局によって損傷されまたは根元から抜かれた、オリーブの樹を中心とするパレスチナ人所有の樹木を含む)の破壊および没収によって著しく悪化している。 60.十分な生活水準に対するパレスチナ人およびベドウィン人の家族の権利との関連で国際連合事務総長、人権高等弁務官およびさまざまな条約機関が締約国に対して行なってきた多数の勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、パレスチナ人およびベドウィン人の家族からこれ以上その土地を奪い、かつ安全な飲料水、衛生設備および食料へのアクセスを認めないいかなる行動もとらないこと、ならびに、人道機関が、迫害または他の逆襲を恐れることなく、困窮している家族および子どもに妨害なくアクセスできるようにすることを、無条件で誓約するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 西岸のうち締約国の全面的管理下にある地域(東エルサレムを含む)に関する計画立案および地区制の体制が、適用される国際法上の基準に一致するようになるまで、取り壊しおよび立退きを停止するともに、西岸のパレスチナ人が公正な、実効的なかつ参加型の計画立案制度にアクセスできることを確保すること。 (b) 没収された土地をベドウィン人およびパレスチナ人の家族およびその子どもに返還すること。 (c) 社会権規約委員会からすでに勧告されているように(E/C.12/ISR/CO/3、パラ29、2011年)、OPTに住んでいる子どもが十分かつ安全な飲料水および十分な衛生設備を利用できることを確保するために即時的措置をとること。 (d) 土地、海および生計手段へのパレスチナ人によるアクセスに関して課されている制限を見直すこと。締約国はまた、パレスチナ人の生計手段を破壊した入植者が処罰されない状況に終止符を打つとともに、さらなる暴力および破壊を防止するための積極的措置をとるべきである。 H.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 61.委員会は、義務教育の範囲を広げ、かつ無償の義務教育を15~17歳の子どもまで拡大した、義務教育法の改正(2007年)を歓迎する。委員会はまた、ベドウィン人の子どもの教育における乖離を縮小するための5か年計画(2011~2016年)、および、エイラート市でまとめられた合意(移住してきた庇護希望者の子どもは、これまでのように別の教育枠組みのもとに置かれるのではなく、最終的に普通公立学校に統合されるとするもの)にも、肯定的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 親からの授業料の徴収が広く行なわれており、義務教育法に掲げられた無償教育に対する権利が脅かされていること。 (b) ベドウィン人の子ども(これらの子どもは、利用可能ないかなる学校もないまま、または安全な通学路および学校への移動手段も提供されないまま放置されていることが多い)およびエチオピア人コミュニティに属する子ども(これらの子どもは、適正なスクリーニングおよび特別なニーズの特定も行なわれないまま、不均衡なほど高い割合で特別教育に措置されている)に対する深刻な差別が存在すること。 (c) 人種差別撤廃委員会の所見(CERD/C/ISR/CO/14-16、パラ11)で指摘されているように、ユダヤ人とアラブ人の子どもが引き続き分離された学校制度のもとで教育されていること、および、アラブ人の子どものための教育制度への投資額のほうが低いために、深刻な教室不足、水準以下の教育条件および授業の質、低い学業成績ならびに多数の学校中退が生じていること。 62.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 義務教育法を効果的に執行するために必要な措置をとるとともに、子どもの教育のための授業料およびその他の非公式な拠出金の支払いを親に要請する慣行を打ち切ることにより、教育が無償のままとなることを確保すること。 (b) 教育に対するベドウィン人の子どもの権利を確保するために積極的な措置をとり、かつ、特別学校に不必要の措置されたエチオピア人の子どもの措置解除を直ちに行なうこと。 (c) 学校におけるアラブ人とユダヤ人の子どもの分離に終止符を打ち、かつ、あらゆるコミュニティ出身の子どもたちの間の寛容および理解に基づく教育制度を構築すること。 (d) 真にインクルーシブであり、違いを大切にし、かつ、違いにかかわらずすべての人間の尊厳および平等を尊重する社会を建設する目的で、個人の違いもしくは困難、民族的もしくは文化的背景または社会経済的地位にかかわらずすべての子どもを対象とした、インクルーシブな教育制度を確立すること。 63.委員会は、以下のことも懸念する。 (a) 締約国の「防衛の柱」作戦の際に300か所の教育施設に被害が出たこと、および、2009年以降、西岸において軍隊による32回の攻撃が報告されていること。パレスチナ人の学校は締約国の軍隊または入植者により攻撃されたものであり、かつ、軍の前哨地点または拘禁所として使用されることもあった。さらに、とくに国際連合総会が指摘するように(A/67/375, para.23)、子どもたちは、通学路において、締約国の軍隊および治安部隊ならびに入植者によるいやがらせ、脅迫および暴力の対象とされ続けている。 (b) 双方向的対話の際に締約国代表団が強調した新たな教室の建設にもかかわらず、OPT全域で学校が深刻に不足しており(会計検査オンブズマンによる2009年の報告によれば、東エルサレムでは1000の教室が足りない状態にある)、かつ学校インフラが破損した状態にあるために、パレスチナ人の子どもが教育を奪われ、または不適切かつ過密な環境のもと、テントもしくは移動住宅で行なわれる授業に出席しなければならなくなっていること。委員会はさらに、締約国が引き続き新たな教室の建設許可を与えず、かつ学校の取り壊しを命令しているために、パレスチナ人およびベドウィン人の子どもが教育に対する権利をさらに奪われていることを懸念する。 (c) ガザの封鎖により、2010年にはUNRWA〔国連パレスチナ難民救済事業機関〕が4万人の学齢児童の就学ニーズを満たせなかったこと。加えて、壁、封鎖、検問所および許可制度によって移動の自由に制限が課されているため、一部のパレスチナ人の子どもが引き続き通学できなくなっている。 64.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 入植者および治安部隊の責任が問われることを確保することにより、OPTの子どもをいやがらせ、脅迫および暴力から保護すること。 (b) OPTにおける学校への攻撃ならびに前哨地点および拘禁所としての学校の使用を停止するとともに、OPTおよびネゲブ砂漠における学校の破壊の一時停止を直ちに宣言すること。 (c) ガザで学校を再建できるようにする目的で二重用途品目リストから骨材、鉄棒およびセメントを外し、仮設学校の建設を促進するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、東エルサレムにおける学校不足に対処するための投資計画を優先的課題として作成すること。 (d) パレスチナ人の子どもの通学を妨げている、均衡性を欠いたあらゆる移動の自由の制限を撤廃すること。 教育の目的 65.委員会は、締約国が紛争状態にあることおよび教育制度が過度に軍事化されていることに鑑み、締約国において平和教育が著しく限定的である旨の懸念(CRC/C/OPAC/ISR/CO/1、パラ26)をあらためて表明する。締約国代表団から提供された情報にもかかわらず、委員会はまた、東エルサレムのすべての私立学校および公立学校に2011年に配布された学校教科書から、パレスチナの歴史、遺産、旗および都市に関する相当の情報が削除されていることも懸念するものである。 66.委員会は、イスラエルおよびパレスチナ双方の学校制度に平和教育を体系的に包摂するべきである旨の勧告(CRC/C/OPAC/ISR/CO/1、パラ27)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、イスラエルおよびパレスチナ双方の子どもたちを集めて、平和教育を推進するための合同の取り組みを行なうことをふたたび奨励する。委員会はまた、教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)への注意も喚起し、かつ、締約国に対し、パレスチナ人の子どもが自己の文化的アイデンティティ、言語および諸価値について教育されることを確保する自国の義務を想起するよう求めるとともに、このような義務を理由として、締約国に対し、パレスチナの教科書およびカリキュラムの使用の禁止を取り消すよう促すものである。 乳幼児期の発達 67.委員会は、義務教育法が3歳以上のすべての子どもに適用されるにもかかわらず、乳幼児期教育に編入されるアラブ人の子どもの人数が引き続き不均衡なほど少ないことに、懸念を表明する。委員会はまた、締約国が、乳幼児期施設の認可および監督のために必要な法的枠組みをいまだに採択していないことも懸念するものである。 68.委員会は、締約国が、乳幼児期の教育および発達に関する包括的な国家的政策を採択し、かつ、すべての子どもが質の高い乳幼児期のケアおよび教育の機会に差別なくアクセスできることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、乳幼児期のケアおよび教育に適用される法的な規制の枠組みを採択するとともに、すべての施設が義務的登録を受け、かつ定められた基準に基づく監督の対象とされることを確保することも勧告するものである。 I.その他の特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民ならびに移住労働者の子ども 69.委員会は、2011年、ニツァーナで保護者のいない子どものための「ユースビレッジ」が創設されたことを歓迎する。委員会はまた、法的地位を得ていない子どもの状況に対し、最近、会計検査オンブズマンおよびクネセト(議会)の子どもの権利委員会が注意を向けていることにも、肯定的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、締約国において庇護希望者および移住労働者の子どもならびに保護者のいない子どもがますます周縁化されていること(これらの子どもは公的福祉機関によるいかなる支援も受けられないままでいることが多い)を懸念する。委員会はさらに、これらの子どもが保育所、教育および保健センターへのアクセスをしばしば否定されているため、親が家の外で働いている間ひとりのままであり、またはさまざまな形態の搾取にさらされていることを懸念するものである。委員会はまた、以下のことについて懸念を表明する。 (a) 2012年1月に制定された侵入防止法により、締約国に不法に移住してきた子ども(搾取、拷問および人身取引の被害を受けた子どもを含む)の長期拘禁が認められていること。 (b) 2011年8月以降、移住労働者の子ども(締約国で出生した子どもを含む)の、著しくストレス度の高い条件下で行なわれる逮捕(夜間に実施されるものなど)が増えていること。これらの子どもおよびその母親はその後、ベングリオン国際空港にあるヤハロム拘禁施設で家族にとって適切ではない狭い房に収容され、父親または他のいかなる家族構成員にも連絡できず、かつ保健サービス、ソーシャルワーカーまたは法律相談にもアクセスできないまま、退去強制を待つことになる。 (c) サハロニム拘禁センターにおける子どもの拘禁環境について、護民官が、2011年8月の報告書のなかで、苛酷かつ過密であると判定していること。2011年にはマタン拘禁施設(ハレラ)およびギボン拘禁施設で19人の男子が自殺を図っており、また女子は成人とともに収容されている。虐待、拷問または人身取引の被害を受けた子どもに対し、適切な心理社会的ケアおよび支援は提供されていない。 (d) 2012年、スーダン人の子ども(親による暴力および重度のネグレクトを理由として保護的ケア機関に委託されていた子どもを含む)が、親が苛酷な環境下で逮捕および収監の対象とされたのに続いて逮捕され、苛酷な環境下で収監され、かつ退去を強制されたために、これらの子どもに深刻な情緒面の被害が生じたこと。 70.委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)に対して注意を喚起するとともに、締約国に対し、国際的移住に関与しているまたはその影響を直接受けているすべての子どもに、年齢、性別、民族的または国民的出身および経済的地位または在留資格にかかわらず、自発的移住および非自発的移住のどちらの状況においても、保護者の同伴の有無、移動中であるかもしくは何らかの形で定住しているかの別、在留資格を有しているか否かまたはその他のいかなる状況に置かれているかにかかわらず、その権利を享受する資格があることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 子どもの庇護希望者および移住労働者の子どもを保護しかつ十分に支援する目的で、公立学校、寄宿学校、幼稚園、保育所および保健サービスへのアクセスをこれらの子ども全員に保障するとともに、責任を有する政府機関間の調整を確保すること。 (b) イスラエルの庇護手続を規制するための国家的な法的枠組み(ノンルフールマンの原則を含む)の策定および制定に優先的課題として取り組むとともに、子どもの長期拘禁を認めている侵入防止法の規定を廃止すること。 (c) いかなる形態のネグレクト、搾取、虐待、拷問または他のいずれかの形態の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の被害を受けた子どもについてもその身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するために、あらゆる適切な措置をとること。 (d) 出入国管理上の地位に基づく子どもの拘禁を、即時的効果をともなう形で停止すること。 (e) 子どもに影響を与える移住手続のすべての決定段階で、かつ子どもの保護の専門家、司法機関および子ども自身の関与を得ながら、子どもの最善の利益に関する個別の鑑別および評価を実施すること。また、子どもまたはその親の拘禁、送還または退去強制につながるいかなる手続においても、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきである。 (f) 無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討するとともに、国籍法制および現行の諸手続を、無国籍の防止および削減に関する国際基準との一致を図る目的で見直すこと。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書のフォローアップ 71.委員会は、パレスチナ人の子どもが人間の盾および密告者として使用され続けていること(2010年1月から2013年3月までの期間だけでこのような事例が14件報告されている)、ならびに、締約国が、この点について委員会が2010年に勧告したように(CRC/OPAC/ISR/CO/1、パラ25)、Adalah et al. v. Commander of the Central Region et al.事件における最高裁判所判決(HCJ 3799/02、2005年6月23日付判決)を遵守していないことに、深い懸念を表明する。委員会は、以下のことに深い懸念をもって留意するものである。 (a) テロ対策における人権および基本的自由の促進および保護に関する特別報告者が指摘しているように(A/HRC/6/17/Add.4, para.48)、締約国の兵士がパレスチナ人の子どもを利用して、危険な可能性がある建物に自分たちよりも先に入らせ、かつ軍用車両への投石をやめさせる目的でこれらの車両の前に立たせていること。 (b) 子どもを人間の盾および密告者として使用した者のほぼ全員が処罰されないままであること、および、9歳の子どもに対して銃を突きつけ、爆発物が入っている疑いのあったカバンを強制的に捜索したことを理由として有罪判決を受けた兵士らに対し、執行猶予付きの3か月の刑および降格処分しか科されなかったこと。 72.委員会は、締約国に対し、Adalah et al. v. Commander of the Central Region et al.事件における最高裁判所判決に直ちにしたがい、人間の盾および密告者としての子どもの使用を禁止するための積極的措置をとるとともに、人間の盾および密告者としての子どもの使用の禁止を実効的に執行し、かつ、加害者が裁判にかけられかつ犯罪の重大性に相応する制裁によって処罰されることを確保するよう、促す。 少年司法の運営 73.委員会は、法律に抵触したイスラエル人の子どものための広範な保障および保護措置を擁する同国の少年司法制度に相当の改善が見られたことについて、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、締約国が、パレスチナ人の子どもの逮捕および拘禁ならびに拘禁環境について委員会が2002年および2010年に行なった勧告を完全に無視しており、かつ、依然として軍令の対象とされたままであるOPTに住んでいる子どもに対し、これらのあらゆる保障および保護措置を否定し続けていることを懸念するものである。委員会は、報告対象期間中に推定7000人のパレスチナ人の子ども(12~17歳、ただし9歳という幼さの子どもが含まれているときもある)が締約国の軍隊によって逮捕され、尋問されかつ拘禁されており(平均1日あたり2人の子ども)、かつ、国際連合事務総長が指摘するように(A/67/372, para 28)、2011年9月以降この人数が73%増加していることに、重大な懸念を覚える。委員会は、以下のことに深い懸念を表明するものである。 (a) 逮捕されたパレスチナ人の子ども(複数のイスラエル兵が証言したように、このような逮捕はしばしば恣意的に行なわれている)のほとんどは投石について罪を問われており、これは20年の収監刑を言い渡される可能性のある犯罪であること。 (b) 現在、236人の子どもが治安上の理由によるとされる拘禁の対象とされており、そのうち数十人は12~15歳であること。 (c) 逮捕されたパレスチナ人の子どもを、裁判官の前に引致するまで4日間(2012年8月までは8日間)拘禁することができ、かつ、これらの子どもに対し、親の立会いを受ける権利(親が自分の子どもの拘禁場所を知らないことさえしばしばある)および弁護士にアクセスする権利を含む権利の告知がほとんど行なわれていないこと。 (d) 締約国の軍隊および警察によって逮捕されたパレスチナ人の子どもが、品位を傷つける取扱い(およびしばしば拷問行為)を組織的に受けており、自らが理解できないヘブライ語で尋問され、かつ、ヘブライ語の自白調書に署名しなければ釈放されていないこと。 (e) 子どもが、刑務所の制服を着用し、かつ足鎖および手錠をかけられたまま軍事法廷に連行され、かつ、そこで強迫されて行なった自白が主たる証拠として使用されていること。子どもがここで初めて会う弁護士は、子どもに適用される軍令のアラビア語訳にアクセスできない。 (f) 成人に適用される量刑関連の規定が16~17歳の子どもにも適用されること。 (g) 拘禁されているパレスチナ人の子どもの多く(2009年以降215人)が、戦時における文民の保護に関するジュネーヴ第4条約第76条に違反する形で、OPT外への移送およびイスラエル国内での拘禁および服役の対象とされていること。これらの子どもの多くは、換気が不十分で自然光も入らない劣悪な環境下で、過密な収容房に成人とともに拘禁されている。食料の質の悪さおよび量の不十分さ、刑務所吏員による苛酷な取扱いおよびいかなる形態の教育も受けられないことが、これらの子どもの苦境に拍車をかけている。 74.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する基準がすべての子どもに差別なく適用されること、および、裁判が、公正な裁判に関する最低基準にしたがって迅速かつ公正なやり方で行なわれることを保障するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、パレスチナ人の子どもを対象として制度化されている拘禁ならびに拷問および不当な取扱いの使用のシステムを、司法手続のあらゆる段階で解体することも促すものである。この違法なシステムに関与してきた者を全員裁判にかけ、かつ、有罪と認められたときには処罰することが求められる。委員会はまた、締約国に対し、委員会が2002年および2010年に行ない、かつすべての人権機構、国際連合事務総長および人権高等弁務官から一貫して繰り返されている勧告を遵守するとともに、とくに以下の措置をとることも促すものである。 (a) 投石を理由としてパレスチナ人の子どもに20年の収監刑を言い渡すことを認めているすべての法律について見直しおよび改正を進め、かつ、このような理由で収監されているすべての子どもを拘禁から解放すること。 (b) 拘禁された子どもが、逮捕から24時間以内に、逮捕および拘禁の合法性に関する独立の司法審査に実効的にアクセスでき、かつ、逮捕直後から十分な、無償のかつ独立した法的援助を提供されること、および、親または近親者に連絡できることを確保すること。 (c) 治安に関わる犯罪を行なったとして罪を問われている子どもの拘禁が、最後の手段として、その年齢および脆弱性に応じた十分な環境下で、かつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保すること。刑事責任年齢に達しているか否かについて疑いがあるときは、子どもは当該年齢未満であると推定されなければならない。 (d) ヘブライ語で書かれ、かつパレスチナ人の子どもが署名しまたは承認したすべての自白調書が裁判所によって証拠として認容されないこと、および、今後、子どもの自白のみを根拠とする決定が行なわれないことを確保すること。 (e) 拘禁されているすべてのパレスチナ人の子どもが成人から分離され、かつ、OPT内に設けられた施設において、適切な環境下でかつ教育へのアクセスを保障されながら収容されることを確保すること。これらの子どもの拘禁について、定期的かつ公正な再審査が実施されるべきである。 (f) 拘禁されている子どもが独立した苦情申立て機構にアクセスできること、および、不法に拘禁され、かつ拷問および不当な取扱いを受けたすべての子どもが救済および十分な補償(リハビリテーション、賠償、満足および再発防止の保障を含む)を得られることを確保すること。 J.国際人権文書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていないすべての中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の第3選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、女性差別撤廃条約、拷問禁止条約および障害のある人の権利に関する条約の諸選択議定書を批准するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 76.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、クネセト(議会)、関連省庁、国防軍および治安部隊、最高裁判所ならびに地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 77.委員会はさらに、条約およびその選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第2回~第4回統合定期報告書および締約国による文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 78.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年11月2日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。2012年12月20日の総会決議67/167にしたがい、ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された調和化報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年4月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/185.html
総括所見:タイ(第3~4回・2012年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/THA/CO/3-4 and CRC/C/THA/CO/3-4/Corr.1(2012年2月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年1月24日および25日に開かれた第1682回および第1683回会合(CRC/C/SR.1682 and 1683)においてタイの第3回・第4回定期報告書(CRC/C/KOR/3-4)を検討し、2012年2月3日に開かれた第1697回会合(CRC/C/SR.1697参照)において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、これらの文書が率直なものであったことにより、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを称賛する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、開かれた、率直な、かつ実りのある対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、報告対象期間中に見られた多くの積極的進展を歓迎する。これには、以下のもののような、条約を実施するためにとられた立法上の措置の採択も含まれる。 (a) 子どもの養子縁組法(第3号((2010年)。 (b) 少年家庭裁判所およびその手続法(2010年)。 (c) 人身取引禁止法(2008年)。 (d) 住民登録法(2008年)。 (e) ドメスティックバイオレンス被害者保護法(2007年)。 (f) 障害者の生活の質促進法(2007年)。 (g) 国家的な子どもおよび若者の発達促進法(2007年)。 5.委員会は、以下の人権文書について批准または加入が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年2月27日)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年1月11日)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2008年7月29日)。 (d) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2007年10月2日)。 6.委員会はまた、以下のものを含む、子どもの権利およびウェルビーイングを促進する政策およびプログラムの採択も歓迎しかつ称賛する。 (a) 「子どもおよび女性の国内的・国際的人身取引の防止、抑止およびこれとの闘いに関する国家的計画および政策(2012~2016年)」。 (b) 「子どもおよび青少年のための国家的課題」(2008年)。 (c) 「国家子ども・若者育成計画(2007~2016年)」。 II.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/THA/CO/2)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた多くの勧告について十分なフォローアップが行なわれていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(データ収集、差別の禁止、国籍、プライバシーの保護、家庭における体罰、代替的養護、母親とともに刑務所にいる子ども、思春期の健康、子どもの難民および庇護希望者、移住労働者の子ども、児童労働ならびに少年司法のような問題に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップすることも促すものである。 留保 9.委員会は、締約国が、条約第7条に関する留保を2010年12月に撤回したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が第22条に関する留保を撤回していないことを遺憾に思うものである。 10.委員会は、締約国が、条約第22条に関する留保を撤回するとともに、国内のすべての子どもの庇護希望者および難民の権利を保護し、かつこれらの子どもを援助するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 立法 11.委員会は、条約の原則および規定との国内法の調和化に貢献する、子どもの権利の分野におけるいくつかの法律(この文書のパラ4で挙げたもの)が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、現行法が憲法および条約と一致するようにさらにその改正を図る目的で、国家子ども・若者委員会のもとに小委員会が設置されたことも歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、実際の執行および実施が弱くかつ不十分であることを深く懸念する。委員会はとくに、2003年の子ども保護法がそれ以降見直されておらず、かつ、実施も、中央から地方のレベルに至るさまざまな機関の役割および責任についての指針も欠いていることを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、現行法が条約の原則および規定と一致するようにその見直しを継続するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、あらゆるレベルで国内法が全面的かつ効果的に実施されることを確保するための適切な措置をとるとともに、子どもの権利の保護を向上させる目的で2003年の子ども保護法を見直し、かつその実施に関する明確な指針を定めるよう、促すものである。 調整 13.委員会は、社会開発・人間安全保障省(MSDHS)が条約の実施の調整およびフォローアップを担当する主務機関であることに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利に関する政策およびその実際の実施が、MSDHS内の諸機関および種々の法律に基づいて設置された多数の委員会に割り当てられていることから、政策レベルにおける断片化、および、中央から地方のレベルに至る過程における実施上の障害が生じていることを、遺憾に思うものである。委員会はさらに、プログラムおよびプロジェクトの策定ならびにその監視および評価のための制度の指針となる、子どもの権利に関する包括的政策が定められていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会(社会開発・人間安全保障省内のものを含む)の間でよりよい調整が行なわれることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの権利に関する活動の実施の監視および評価について、部門別省庁を横断し、かつ中央政府から地方政府のレベルに至るまで指導力を発揮しかつ有効な一般的監督を行なうことのできる単一の部局を指定するよう、勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、プログラムおよびプロジェクトの策定の指針を提供し、かつそれらの監視および評価のための制度を確立する目的で、子どもの権利に関する包括的政策を策定するよう、勧告する。 国家的行動計画 15.「国家子ども・若者育成計画(2012~2016年)」および「子どもおよび青少年のための国家的課題」(2008年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、これまでの「子どもの発達のための国家政策および戦略計画(2007~2016年)」の中間評価に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、新規計画が子どもおよび25歳までの若者の両方を対象としており、条約に掲げられた子どもの権利を実現するための十分なかつ焦点の明確な枠組みを提供していないことも、懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、「子どもの発達のための国家政策および戦略計画(2007~2016年)」のレビューおよび評価の結果を提供するとともに、新規計画に、条約に掲げられた子どものすべての権利の実現について十分な内容が盛りこまれることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、この行動計画において、18歳未満の子どもに具体的に焦点が当てられ、かつ部門別の諸行動計画および第11次経済社会開発計画との調整が図られるべきことも勧告するものである。 独立の監視 17.国家人権委員会が活動しており、かつ子どもおよび一般公衆によるアクセスが可能である旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、子どものためのアクセス方法および子どもが苦情申立てを行なう機会が限られていること、ならびに、十分な人数の専門家および訓練を受けた職員を擁する子どものための特別部局が存在しないことを、懸念する。委員会はまた、同委員会に地域事務所がないことも懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、同委員会に関する公衆(とくに子ども)の意識啓発を向上させ、かつ同委員会の活動に関する知識を高めるための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、アクセスしやすい子どものための特別部局を設置するとともに、秘密を適切に保持しながら苦情を受理し、かつ子どもの権利の侵害によりよい形で対応できるようにするために必要な人的資源、技術的資源および財源を当該部局に提供するよう、促すものである。委員会は、同委員会の活動を領域全体で強化するため、締約国が地域事務所を設置するよう勧告する。 資源配分 19.委員会は、さまざまな費目によるMSDHSへの予算配分額および基礎教育への予算配分額(2010/2011年度)に関する締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、あらゆる範囲の子どもの権利を実施するために他の部門および分野に配分されている予算額についてのさらなる詳細が欠けていることを、遺憾に思うものである。委員会は、MSDHSに配分される国家予算の割合が低い(0.5%)状態が数年間変わっておらず、子どもの権利に関する調整機関がその職務を効果的に遂行できるようにするための対応がとられていないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、今後の予算策定において、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議に基づく委員会の勧告を考慮するとともに、具体的に以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第4条にしたがい、利用可能な資源を可能なかぎり最大限に用いながら、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに社会部門に配分される予算を増額すること。 (b) 国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用する能力、および、あらゆる関連の部門および地方レベルのあらゆる機関が予算全体を通じて子どものための資源をどのように配分しかつ使用しているかを追跡し、監視しかつ評価するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとするための能力の構築を図ること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門または地方レベルにおける投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (c) 予算上のニーズに関する包括的アセスメントを実施し、かつ、諸指標(ジェンダー、障害、保健、教育、生活水準および子どもの権利に関わる地理的所在など)における不平等および格差に漸進的に対応する分野への明確な配分額を確立すること。 (d) 一般的な戦略的予算科目、ならびに、一時的な社会的措置(積極的差別是正措置を含む)を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子どもを対象とした部門別および地方政府別の配分額を定めるとともに、これらの予算科目および配分額が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 汚職 21.汚職と闘うために締約国が行なっている努力には積極的対応として留意しながらも、委員会は、とくに自治体および地方政府の職員ならびに法執行官の間で汚職が依然として蔓延しており、そのため子どもの権利を実施するための政府の政策およびプログラムの有効性を増進させうる資源が流用されていることを示す報告について懸念を覚える。 22.委員会は、締約国に対し、強力な反汚職政策を策定しかつ実施すること、反汚職キャンペーンを行なうこと、ならびに、汚職事件を効果的に摘発し、捜査しかつ訴追する制度的能力を強化すること等の手段により、あらゆるレベルおよび部門において汚職と闘うための努力を強化するよう、促す。 データ収集 23.委員会は、国家情報センターおよび国家統計局が設置され、子どもの権利の一部分野におけるデータおよび障害のある子どもに関するデータベースが維持されていることに留意する。しかしながら委員会は、条約に基づいた子どものための法律、政策、計画およびプログラムの事前評価、分析および事後評価を可能とする、条約のすべての分野を網羅した効果的なデータ収集システムが存在しないことを懸念するものである。 24.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展に関するデータの分析および評価、ならびに、条約を実施するための政策およびプログラムを立案するための基盤の提供に関する能力構築を図り、かつそのような能力を備えた包括的なデータ収集システムを設置するよう、促す。データは、すべての子どもの年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 普及および意識啓発 25.委員会は、子どもおよびその家族を含む公衆一般の意識啓発を継続的に図るための、子どもの権利に関するキャンペーンを含む体系的かつ持続的な公衆教育プログラムが存在しないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に関する公衆(子どもを含む)の意識を強化する目的で、キャンペーンを含む適切な広報プログラムおよび伝達プログラムを実施するために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、さまざまな社会経済的および社会文化的コミュニティの子ども向けにとくに適合された適当な資料等も通じて親、より広範な公衆および子どもに対して、かつ、条約の原則および規定が立法上および司法上の手続において適用されることを確保する目的で立法者および裁判官に対して、条約を普及するための努力を強化するよう奨励するものである。これとの関連で、委員会はさらに、締約国に対し、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(UNHCR)および国際議員連盟の技術的援助を求めるよう、奨励する。 研修 27.締約国が、法執行官、地方政府および司法機関を対象とした、人権およびとくに子どもの権利に関する数度の研修を組織していることには留意しながらも、委員会は、このような研修が体系的なものではなく、かつ正規の専門家養成プログラムの中核カリキュラムに含まれていないことを、依然として懸念する。 28.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団(とくに裁判官、弁護士、警察および軍隊の要員、国、県および地方のレベルにおける保健、教育および福祉ならびにあらゆる形態の代替的養護の関係者)が、子どもの権利に関して十分かつ体系的な研修を受けるよう勧告する。 子どもの権利と企業セクター 29.委員会は、経済界および産業界が社会福祉(子どもの保健ケアおよび教育を含む)に対して資源面および便益面で貢献している旨の締約国の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、経済界ならびに急成長している重工業、製造業、繊維業および輸出農業が子どもに与えている影響について十全な評価が行なわれていないことを懸念するものである。委員会はとくに、観光業が同国の経済で大きな位置を占めている一方で、観光客の活動および観光客向けの便益から生ずる児童セックスツーリズム、児童買春、児童ポルノおよび児童ポルノで生じているもののような権利侵害から子どもを保護するための包括的措置がまだとられていないことを、懸念する。委員会はまた、子どものウェルビーイングを阻害する可能性がある、健康および栄養、経済的および性的搾取、汚染ならびに環境悪化の問題に対して効果的対応が行なわれることを確保する目的で、タイで事業を展開する企業および国外で活動するタイの企業の活動を規制するための、法的な制度的枠組みが設けられていないことも遺憾に思うものである。 30.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年の人権理事会決議8/7および新たな作業部会に対してこの問題のフォローアップを要請した2011年6月11日の同決議14/7(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) タイに本社を置く企業に対して、国内外におけるその活動から生じる人権への悪影響を防止しかつ緩和するための措置をとるよう、とくに観光業界に注意を払いながら求める立法上の枠組み(行動規範を含む)を定めること。 (b) 子どもの権利に関わる指標および変数を報告に含めることを促進し、かつ事業および産業が子どもの権利に及ぼす影響についての具体的アセスメントを提供すること。 (c) 自国の企業が領域内においても国外で事業を行なう際にも子どもの権利を尊重し、かつ、権利侵害の際に賠償を含む適切な救済措置が追求されることを確保するための措置をとること。 (d) 自由貿易協定の交渉および締結に先立ち、子どもの権利を含む人権についての評価が実施され、かつ人権侵害を防止するための措置がとられることを確保すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 31.婚姻に関する法定最低年齢が男女とも17歳であることは歓迎しながらも、委員会は、子どもが性的に虐待され、かつその後に加害者と婚姻する可能性がある場合にはこの年齢制限を13歳まで引き下げることができ、そのため加害者は当該犯罪に関するいかなる刑事訴追も回避する結果になることに、懸念を表明する。 32.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を18歳に引き上げることを検討するとともに、あらゆる状況下で、とくに子どもが性的に虐待された事案において当該年齢を維持するよう、勧告する。委員会は、締約国が、子どもに対する性的虐待の加害者をいかなる例外もなく訴追しかつ処罰するよう、勧告するものである。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、教育および保健へのアクセスに関する格差を一定程度解消するためにとられた措置、および、不利な立場に置かれた東北部および南部の子どもに関してとられた特別措置に留意する。にもかかわらず、委員会は、とくに女子、障害のある子ども、先住民族コミュニティ、宗教的または民族的マイノリティのコミュニティの子ども、難民および庇護希望者の子ども、移住労働者の子ども、路上の状況にある子ども、農村部に住んでいる子どもならびに貧困下で暮らしている子どもとの関連で、子どもに対する直接間接の差別を根絶するための努力が不十分であることに懸念を表明するものである。委員会は、とくに東北部および南部における、子どものための社会サービス、保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関わる地域格差について、依然として深い懸念を覚える。 34.委員会は、前回の勧告(CRC/C/THA/CO/2、パラ25-26)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の目的のためにいっそう効果的な措置をとるよう促す。 (a) 差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、自国の管轄内にあるすべての子どもが、差別の禁止を基礎として、条約に掲げられたすべての権利を享受することを確保すること。 (b) 社会サービスを優先させ、かつこれに対して十分な資源を配分するとともに、パラ33に挙げたもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもたちを対象とした、保健および教育その他のサービスに対する平等な機会の提供をいっそう迅速に進めること。 (c) あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) 事実上の差別の効果的監視を可能とし、かつ是正措置のための基礎とすることを目的として、適切な形で細分化されたデータを収集すること。 子どもの最善の利益 35.子どもに影響を与えるさまざまな法律に子どもの最善の利益の原則が編入されている旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、司法上および行政上の手続および決定ならびに代替的養護の措置および管理に関わる決定においてこの原則が全面的には適用されていないことを、懸念する。 36.委員会は、条約第3条1項にしたがい、すべての法規定、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定、政策ならびにプログラム、プロジェクトおよびサービスにおいて子どもの最善の利益の原則が全面的に適用されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 37.委員会は、子どもおよび乳児の死亡率を出生1000件あたり34(1990年)から14(2010年)に削減するうえで締約国が達成した相当の成果を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの主要な死因として報告されている事故およびケガ(溺死および交通事故を含む)について懸念を覚えるものである。 38.委員会は、締約国が、とくに子どものケアに関する政策を強化し、かつ家庭、養育者間、学校および一般公衆の間で子どもの安全確保措置に関する意識啓発を図ることにより、ケガおよび事故を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 39.国、地方および地区のレベルで子ども・若者評議会が設けられている旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、伝統的な態度があることも理由として、すべての子どもが、家庭、コミュニティならびに行政上および司法上の手続で行なわれる自己に影響を与える決定に関して自由に自己の意見を表明しかつ参加する機会を得ているわけではないことを、懸念する。委員会はまた、子ども・若者評議会が、活動を組織するための資源および人員に関する支援を得ていないことも懸念するものである。 40.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校およびコミュニティで行なわれる自己に影響を与える決定に、18歳に至るまでのすべての子どもが積極的に参加しかつ関与することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどの程度考慮されており、かつそれが政策立案、裁判所の決定およびプログラム実施にどの程度提供を与えているかについて定期的検討を行なうことも、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、子ども・若者評議会に対する支援を総経するための措置をとるよう勧告する。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 名前および国籍/アイデンティティの保全 41.委員会は、1972年に国籍を無効にされた者(その子どもも含む)のための救済措置および特定のカテゴリーに属する者(里親養護を受けている子どもおよび養子となった子どもならびに1992年以前にタイで出生した不法移民の子どもを含む)の帰化について定めた2008年国籍法を歓迎する。近隣諸国と二国間協定を締結するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、子ども(とくに先住民族集団およびマイノリティ集団の子どもならびに移住労働者、難民および保護希望者)を含む相当数の者が現にまたは潜在的に無国籍のままであることを、依然として懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、無国籍となるおそれがあるすべての子ども(パラ41で挙げた、不利な立場に置かれた集団に属する子どもを含む)がタイ国籍へのアクセスを提供されることを確保するため、法律をさらに見直しかつ制定するよう促す。委員会は、締約国が、無国籍者の地位に関する1954年の条約および1967年の同議定書〔ママ〕ならびに無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討するよう、勧告するものである。 出生登録 43.委員会は、期限後の登録および多数の規則(高地民族集団および遺棄された乳児への登録証の発行に関するものを含む)について定めた2008年住民登録法を歓迎する。しかしながら委員会は、相当数の子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、先住民族集団および移民の子どもが未登録のままであることを懸念するものである。委員会はまた、締約国が期限後の子どもの登録に対する罰金を維持していることも、たとえ低額とはいえ、依然として懸念する。 44.委員会は、締約国が、自国の領域で生まれたすべての子ども、とくに親の経済的地位、民族および出入国管理上の地位を理由として登録されていない子どもの出生登録を確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、公衆教育プログラム(締約国の領域ですでに生まれたものの未登録のままである子どもについて出生登録を行なうためのキャンペーンを含む)を実施するとともに、期限後の登録に対するいかなる金銭的処罰も廃止し、かつ時宜を得た新生児の登録を確保するための代替的措置をとることも、勧告するものである。 プライバシーの保護 45.メディアにおける子どもの権利についての意識を高めるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、メディアが報道において子どものプライバシー権を全面的に尊重しているわけではないこと、および、とくに子どもの虐待および搾取ならびに少年司法制度に関わる配慮の必要な事案において、メディアが提供する関連情報(姓、住所および写真など)を通じて子どもの素性がしばしば確認可能とされることを、懸念する。 46.委員会は、締約国が、子どものプライバシー権がとくにマスメディアにおいて常に尊重されることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる形態のメディアにおける報道から子どもの素性を保護するための法律を制定し、かつ、遵守を確保するための効果的な監視機構を設置するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、マスメディアに従事する専門家の子どもの権利に関する感受性を引き続き強化するとともに、子ども向け番組に関する決定およびその制作への子どもの関与を促進することも、勧告する。 子どもに対する暴力(体罰を含む) 47.委員会は、家庭における体罰が依然として合法であることを懸念する。さらに、民商法第1567条では、子どもに対して親としての権威を有する者はしつけのために「合理的な」処罰を行なう権利を有すると述べられている。 48.委員会は、前回の懸念および総括所見(CRC/C/THA/CO/2、パラ40および41)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力と闘うための措置を採択するに際し、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)および体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する一般的意見8号(2006年)を考慮するよう、奨励する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 家庭および代替的養護の現場における子どもの体罰(しつけのためのものを含む)を法律で明示的に禁止すること。 (b) 態度を変革し、かつ体罰に代わる積極的かつ非暴力的な形態の子育ておよびしつけを促進する目的で、体罰の有害な影響に関する公衆教育および意識啓発ならびに社会的動員のための持続的プログラムを、子ども、家族およびコミュニティの関与を得ながら導入すること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むとともに、子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)の勧告の効果的実施を確保すること。 (d) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いを防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を、ジェンダーにとくに注意を払いながら、各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 49.委員会は、国内移住の増加にともなって家族の結びつきが弱まり、かつ多くの子どもが祖父母とともに農村部に残されていて、祖父母が十分な支援またはサービスを受けることもなくこのような子どもの主たる養育者となっていることに、懸念とともに留意する。 50.委員会は、締約国に対し、親の責任に関する法改正のための努力を引き続き行なうとともに、家族の解体の防止および家族の強化のための措置を発展させるよう、促す。委員会は、締約国が、親および養育者の支援のために設けられている便益を再検討するとともに、条約第18条および第27条にしたがい、そのような便益を強化するために適当な措置をとるよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、関連のハーグ条約、とくに親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する第34号条約の批准を検討するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 51.委員会は、締約国が年間3000世帯の里親家庭を支援するための予算を配分しており、かつ「家庭を基盤とする一時的養護に関する国家戦略」を起草中である旨の締約国の情報に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭環境を奪われた子どもについて施設養護への過剰な依存(29施設に7000名の子どもが在籍)が報告されており、かつこのような施設の監視および監督が行なわれていないことを、懸念するものである。委員会はさらに、施設および里親養護制度(親族養護を含む)を規律する規則が定められていないこと、および、代替的養護の環境に置かれた子どものためのパーマネンシー・プランニングが行なわれていないことを、懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活条件、養護計画および提供されているサービスも含む)を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 既存の施設および里親養護制度についての明確な基準(条約第9条にしたがって意思決定プロセスに子どもおよびその親の関与を得るための規則を含む)を定めるとともに、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、「家庭を基盤とする一時的養護に関する国家戦略」を、子どもの最善の利益を確保しながら完成させかつその運用を開始するよう、奨励する。 (c) 子どもの権利の保護を確保する目的で、すべての代替的養護施設およびプログラムが十分に監視されること(独立した苦情申立て機構および非政府組織による監視を含む)を確保するとともに、子どもがこれらの苦情申立て機構に容易にアクセスできるようにすること。 (d) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族に復帰できるようにし、かつ施設への子どもの措置を最後の手段として用いるようにするため、あらゆる必要な措置を追求すること。 (e) 子どもの広範な施設措置を防止する目的で家族を強化しかつ維持するための積極的措置をとること。 委員会は、締約国が子どもの代替的養護に関する指針(2009年11月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮するよう、勧告するものである。 養子縁組 53.委員会は、2010年子どもの養子縁組法を歓迎するとともに、締約国が国際養子縁組よりも国内養子縁組を優先させ、かつ国際養子縁組に関する規則を定めたことに、積極的対応として留意する。脆弱な状況に置かれた子ども(とくに障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、路上の状況にある子どもおよび無国籍の子ども)が締約国に多数存在し、かつ人身取引の発生件数も多いことに鑑み、委員会は、締約国が養子縁組手続の効果的監視システムを確保するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 54.委員会は、締約国が2011年に開始した、子どもに対する暴力の状況に関する大規模な研究を歓迎する。しかしながら委員会は、都市部への親の移住またはAIDS関連の死亡を理由として相当数の子どもがネグレクトの状態にあることを、依然として懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、移住のために別離した家族が再統合するための条件づくりを目的とした必要な措置(親が子どもを都市部に同伴できるようにすることも含む)をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、両親を失った子どもに対して特段の注意を払うとともに、このような子どもが時宜を得た形で里親家庭を得られることを確保することも、勧告するものである。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 56.委員会は、「障害者の生活の質の発展に関する国家計画(2007~2011年)」および障害者教育法(2008年)の採択によって障害のある人の生活の質を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。委員会はまた、障害のある子どもを対象としたインクルーシブ教育を行なう学校の数が増えていることも歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、就学していない障害児が多数存在すること、および、青少年政策において障害児が特別な対象集団として位置づけられていないことを、深刻に懸念する。委員会はまた、就学前段階以上の教育を受ける障害児の割合が限られていることも懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、教育へのアクセスの観点から障害児の状況を再検討するとともに、特別施設への子どもの措置よりもインクルーシブ教育の発展を実効的に優先させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮しながら、青少年政策において障害のある子どもを適切な形で対象とすることも勧告するものである。 保健ケアおよび保健サービス 58.委員会は、子どもを含むタイ国民全員に対してほとんどの疾病についての無償の治療を確保する「保健ケア完全保障計画」の実施および全般的な子どもの栄養状態の向上に関して締約国が達成した成果を歓迎する。しかしながら委員会は、家族の経済的状態、母親の教育歴、言語的背景および地理的所在によって子どもの栄養状態に重大な格差があることを、依然として深刻に懸念するものである。委員会はまた、若干の改善にも関わらず、ヨウ素欠乏症が依然として広く存在することも懸念する。 59.委員会は、締約国に対し、家族の経済的状態、母親の教育歴、言語的背景(タイ語またはそれ以外)および地理的所在(都市部、農村部または遠隔地)に関わらず、すべての子どもの栄養状態を向上させるための措置をいっそう速やかに進めるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、不利な立場に置かれた社会的集団の子どもの低栄養の原因および規模についての分析を行なうよう、奨励するものである。加えて委員会は、締約国が、とくにヨウ素欠乏症を統制すること(そのための手段として、とくにヨウ素添加塩の完全普及(USI)を達成するための法律および政策を導入することが求められる)を通じて子どもの栄養状態を向上させ、かつ、法律の遵守およびヨウ素添加塩の普遍的消費を確保するよう、勧告する。 母乳育児 60.委員会は、生後6か月の時点における母乳育児率が著しく低い(5%)一方で、早期の母乳育児開始率も50%と低いことを懸念する。委員会はさらに、自主的措置がとられているとはいえ、母乳代替品の攻撃的な販売促進および宣伝が法的に規制されていないことを懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、母乳育児の重要性および人工栄養のリスクについて公衆(とくに母親)の意識啓発および教育を図ることにより、早期の母乳育児開始および生後6か月間の継続的完全母乳育児を促進するための努力を強化しかつ拡大するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」にしたがって母乳代替品の販売促進活動に関する法的規制を採択し、かつ実効的な遵守および効果的な監視を確保するよう、促すものである。加えて委員会は、締約国に対し、すべての妊産婦施設を、母乳育児を支援する赤ちゃんにやさしい病院に転換し、かつ、妊産婦のための活動に従事する保健ケア専門家が母乳育児に関する研修を受けることを確保するための措置をとるよう、促す。 思春期の健康 62.委員会は、抗レトロウィルス薬の使用により、HIV/AIDSで死亡する人の数が減少していることを歓迎する。ただし、とくに脆弱な状況にある移民、難民および庇護希望者のようなタイ国民以外の住民には、抗レトロウィルス薬の使用が十分に広がっていない。委員会はとくに、HIV/AIDSの感染を予防する主要な方法のすべてを知らない女性が多く、かつ、HIV/AIDSとともに生きているまたはその影響を受けている人々(両親を失った子どもを含む)に対するスティグマおよび差別が継続していることを、とくに懸念する。さらに委員会は、10代の妊娠の問題が増加しており、それが違法な妊娠中絶件数の増加にもつながっていることを、深刻に懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSその他の性感染症についてさまざまなコミュニティの子ども、青少年およびその家族を教育するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 必要不可欠な保健サービスおよび社会サービスをもっとも周縁化された子どもおよび家族に対して拡大するとともに、いかなる形態のスティグマおよび差別とも精力的に闘うこと。 (c) 早期の妊娠および妊娠中絶の悪影響に関する意識啓発の努力を強化すること。 (d) ライフスキル教育を含む青少年向けリプロダクティブヘルス・プログラムを強化すること。 (e) 妊娠した女子を対象とする包括的な保健サービス、秘密が守られるカウンセリングおよび支援を確保するとともに、リプロダクティブヘルス法案の採択を迅速に進めること。 薬物および有害物質の濫用 64.委員会は、20歳未満の者に対するアルコール飲料の販売を禁じた2008年アルコール飲料統制法を歓迎する。しかしながら委員会は、とられた措置にも関わらず、アルコールおよび薬物を濫用する子どもが依然として相当数にのぼることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 65.委員会は、締約国に対し、とくに青少年を対象としたタバコ、アルコールおよび薬物の悪影響に関する意識啓発キャンペーンを含む、あらゆる適当な措置をとるよう促す。これには、予防介入に関するピア・エデュケーションおよびライフスキル訓練が含まれるべきである。委員会はまた、締約国が、薬物およびアルコールに依存している子どもおよび青少年に対し、治療およびリハビリテーションのためのプログラムを引き続き提供することも勧告する。 生活水準 66.委員会は、報告されているところでは都市部の家族の10%がスラムに住んでいること、および、所得の不平等が増大しており、かつ、栄養、衣服、住居、水および衛生のような基礎的サービスへのアクセスに関して問題を有する家族の割合が高いことを、懸念する。委員会はまた、地域ごとの所得水準、とくに北部および東北部ならびに南部における所得水準の格差の大きさが依然として問題になっていることについての前回の懸念も、あらためて表明するものである。 67.委員会は、締約国が、とくに北部、東北部および南部における効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分するべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに、十分な栄養、衣服、住居、水および衛生ならびに社会サービス、保健サービスおよび教育への公平なアクセスを確保しながら、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を策定しかつ監視するための能力増進の努力を強化すること。 (b) 不利な立場に置かれた住民の生活水準を向上させるための、暫定的な特別措置および積極的差別是正措置(貧困の影響を不相応に受けている子どもおよび家族を支援するための、使途をとくに指定した資金および具体的援助の提供を含む)をとること。 (c) 格差を是正し、かつ人生において良好なスタートを切る平等な機会を一人ひとりの子どもに与えるために、普遍的な子ども手当制度の導入の実現可能性を研究しかつ検討すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 68.委員会は、すでに教育に関するMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成したこと、万人のための無償義務教育(15年間)プログラムを採択したこと、および、乳幼児期の発達を増進させるための政策および措置を開始したことについて、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを遺憾に思うものである。 (a) 就学前教育を受けている3~5歳の子ども(とくにタイ語以外の言語を用いる世帯または貧困世帯の子ども)の人数が少なく、かつ重大な地域格差が根強く残っている(たとえば、北部では乳幼児の78%が就学前教育施設に通っているのに対し、南部では58%となっている)こと。 (b) 初等学校相当年齢(6~11歳)の子ども60万人以上が学校に通っていないこと(2010年)。 (c) すべての段階で継続的在学率および進学率が低い状態が続いており、相当数の子どもが中等教育を受けていない(純就学率(NER)は72.2%に留まる)こと。 (d) とくに南部国境県において、より多くの男子が中等学校を中退していること。 (e) 学校制度における、低学年からの民族言語およびマイノリティ言語の使用が著しく不十分であること。 (f) とくに、とりわけ遠隔地および危険地帯で教員、教育用資料および便益が不足していることを理由として、教育の全般的質が依然として貧弱であること。 (g) 2009年の生徒の学習到達度調査(PISA)で明らかにされたように教育成果が小さく(タイの15歳の子どものうち読解力および科学について合格点をとったのはわずか43%であり、数学では53%に過ぎなかった)、かつ都市部と農村部との間に相当の格差があること。 69.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)および乳幼児期における子どもの権利の実施に関する同7号(2005年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 出生時から就学年齢に至るまでのすべての子どもが、その全面的発達を確保することを目的とした必須の保健サービス、栄養サービス、教育サービスおよび保護サービスの効果的支援をともなうホリスティックな乳幼児育成(ECD)にアクセスできることを確保するため、効果的な政策およびその他の措置を採択すること。 (b) ECDを担当する地方政府によって適用される、良質なかつ国際的に受け入れられるECDの基準を策定すること。 (c) タイ語以外の言語を用いる世帯および貧困世帯の子ども、とくに北東部および南部の子どもが乳幼児育成プログラムに通うことを奨励し、かつそのためのインセンティブを設けること。 (d) 現在学校に行っていない多数の初等学校相当年齢の子ども(6~11歳)に教育機会を提供するため、緊急の措置をとること。 (e) 教育制度における中退の多さおよび継続的在学率の低さの原因および規模に関する包括的研究を実施するとともに、ジェンダーに関わる諸側面、格差および防止措置にとくに注意を払いながら、この問題を解決するための、明確な期限を定めた行動計画を策定すること。 (f) 子ども、とくに南部国境県の男子に対し、中等学校で教育を続けるよう奨励すること。 (g) 条約第30条にしたがい、とくにタイ語以外の言語を話す子どもを対象とした、早期からの効果的な二言語教育を確保するため、国家言語教育政策(2010年)を実施すること。 (h) 教育の質を大幅に改善し、かつあらゆる段階における教育成果を向上させるための明確かつ具体的な措置をとること。そのための手段としては、教育および学習のための資料および便益の提供、教員の養成および研修ならびに監督の増進、資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティ集団および先住専属集団の出身者)の採用増、教育省における能力構築の増進、ならびに、子どもの学習のモニタリングシステムの改善が挙げられる。 (i) ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 70.若干の福祉サービスの提供に関する締約国の情報には留意しながらも、委員会は、一時的難民(いわゆる「国外避難民」)がいるキャンプの環境が不十分であると報告されていること、および、キャンプ外および都市部にいる難民および庇護希望者は不法と見なされ、かつ不法入国および(または)不法滞在を理由として逮捕、拘禁および(または)退去強制の対象とされていることを、懸念する。さらに委員会は、締約国の代表団が述べたように、締約国が2009年以降新たに到着した庇護希望者の登録を行なっていないことを懸念するものである。 71.委員会は、締約国に対し、一時的難民に対して十分な基礎的必需品を提供することによって一時的難民のためのキャンプの環境を向上させるため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、新たに到着した庇護希望者が有している可能性があるニーズを記録する目的で、これらの庇護希望者の登録を復活させることも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民をその地位にしたがって取り扱い、拘禁またはその生命が危険にさらされる可能性がある国への退去強制の対象としないよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の技術的援助を求めるよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同選択議定書を批准するとともに、難民の保護のための国家的な法律上および制度上の枠組みを確立することも、勧告する。 移住の状況にある子ども 72.委員会は、移民が合法的に就労し、かつ社会福祉にアクセスすること(保健および教育へのアクセスを含む)を可能にした労働保護法改正(2008年)を歓迎する。しかしながら委員会は、多くの移住労働者が非正規な状況に置かれており、かつ、その子どもが、送還が安全であるかどうかに関するいかなるリスク評価も行なわれることなく逮捕および退去強制に直面させられていることを、懸念するものである。加えて、移住労働者の子どもは劣悪な環境で暮らしていることが多く、危険な条件下で長時間労働をさせられている子どもも多い。 73.委員会は、締約国が、移民およびその子どもを出身国に送還することが安全であるかどうかについてのリスク評価研究を実施するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、さまざまな移住の状況にある子どもを搾取および危険な労働条件から保護するために必要な立法上および政策上の措置をとるよう、勧告するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 74.委員会は、15歳以上の子どもの雇用条件、最低賃金および安全な労働環境の保護について定めた家内労働者保護法(2011年採択)、および、「最悪の形態の児童労働を根絶するための国家政策および計画(2009~2014年)」に留意する。しかしながら委員会は、15歳未満の子ども(とくに外国人の子どもおよび路上の状況にある子ども)がもっぱら従事している農業、観光業、物乞いおよび家事労働で働くインフォーマルな労働者に対し、締約国の法律が保護を提供していないことを依然として懸念するものである。 75.委員会は、締約国が、農業、観光業、物乞いおよび家事労働のようなインフォーマル部門における子どもの就労について研究し、かつ次回の定期報告書でこの点に関する情報を提供するとともに、これらの部門で働く子どもを監視しかつ発見する目的で労働監察制度を強化するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、外国人の子どもおよび路上の状況にある子どものような脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとくに注意を払いながら、子どもがインフォーマル部門に従事することを禁止するための法改正を行なうよう、促すものである。委員会は、締約国が、家事労働者のためのディーセント・ワークに関する条約ILO第189号条約(2011年)の批准を検討するよう勧告する。 性的搾取および虐待 76.委員会は、被害者の年齢を理由とする強姦罪についての刑罰を定めた2007年の刑法改正(第19号および20号)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国において、男女を問わず子どもの性的搾取および虐待が広く行なわれていることを深刻に懸念するものである。委員会はさらに、とくに家庭において、被害を受ける子どもが加害者から保護されていないことを懸念する。この懸念は、性的虐待に関する刑事事件で捜査および手続に時間がかかることによっていっそう強まるところである。委員会はまた、近隣諸国から性的搾取目的でタイに連れてこられる外国人の子どもの人身取引が増えており、同国における大規模な児童セックスツーリズム産業を助長している一方で、タイの子どもが性的目的の人身取引によりしばしば外国へ連れ出されていることも、懸念する。さらに委員会は、子ども、とくに貧困家庭、資格外滞在移民および民族的マイノリティの子どもが国内で人身取引の対象とされていることに、懸念を表明するものである。 77.一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 公衆の意識を高め、かつ早期発見および防止のための機構を強化する努力を引き続き行なうとともに、性的搾取および虐待(家庭の内外におけるものを含む)の被害を受けたすべての子どもの全面的保護を確保すること。 (b) 子どもの性的虐待に関する刑事事件の捜査および手続の期間を短縮するために必要な措置をとり、かつ、被害を受ける子どもが加害者から適切に保護されることを確保すること。 (c) タイ人の子どもおよび締約国にいる外国人の子どもの双方を関与させる形で行なわれている、あらゆる場面における男女の子どもの性的搾取および虐待の根本的原因、性質および規模に関する包括的調査を実施するとともに、この点に関して行なわれた申立て、捜査および訴追の件数に関するデータを提供すること。 (d) 委員会は、その際、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の勧告(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)、および、とくに女性および子どもの人身取引に関する特別報告者が締約国の訪問(2011年8月)後に行なった勧告を実施するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、それぞれストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された1996年、2001年および2008年の「子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議」で採択された成果文書を考慮することも、勧告するものである。 ヘルプライン 78.委員会は、社会サービス局および国家子ども評議会が、子どもを援助するための2つのヘルプラインを運営していることに留意する。委員会は、締約国が、効率性を高めるため、これらのヘルプラインを単一の全国的ヘルプラインに統合することを検討するよう、勧告する。当該ヘルプラインは、国全体を網羅し、24時間アクセスでき、覚えやすい3~4ケタの番号を有し、かつ、十分な財源および技術的資源、ならびに、子どもに対応し、かつ適切な行動のために通話を分析する訓練を受けた要員を備えたものであるべきである。委員会はさらに、締約国が、この点に関してとくにユニセフおよびチャイルド・ヘルプライン・インターナショナルの技術的援助を求めるよう、勧告する。 少年司法の運営 79.委員会は、全国に少年裁判所および家庭裁判所を設置し、かつ修復的司法を可能とする少年家庭裁判所およびその手続法(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、7歳から10歳に引き上げられた刑事責任に関する年齢がいまなお国際的に受け入れられる水準よりも下のままであることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、裁判官および司法関係者を対象とした子どもの権利に関する研修が十分でない可能性があること、および、場合によって子どもが成人とともに拘禁される可能性があることも、懸念する。 80.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)ようなこの分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるべきであることをあらためて指摘するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げ、いかなる状況下でも12歳未満には定めないこと。 (b) 自由を奪われるすべての子どもが最後の手段としてかつ可能なかぎり短い期間でのみ拘禁され、かつ、その拘禁が法律を遵守して行なわれることを確保すること。 (c) 普遍的定期審査に基づく作業部会が勧告したとおり子どもが成人とは別に拘禁されること、そのような子どもに対して安全な、子どもに配慮した環境が与えられること、および、そのような子どもが家族との定期的接触を維持することを確保すること。 (d) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (e) 条約および選択議定書の原則および規定に関する、裁判官および司法関係者の研修を強化すること。 (f) 法律に抵触した子どものための社会的再統合プログラムを発展させること。 (g) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(国連薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的助言および援助を求めること。 犯罪の被害者および証人である子ども 81.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、国および国以外の主体によって行なわれたものも含む犯罪の被害を受けた子どもおよび(または)そのような犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 82.委員会は、先住民族、部族民およびマイノリティのコミュニティに属する子どもが、その特徴的な生活習慣および言語のためにしばしばスティグマおよび差別の両方の対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、先住民族およびマイノリティの間で貧困が広がっていること、および、同国の山岳民族に関する人口動態データが存在しないことを懸念するものである。 83.委員会は、締約国が、以下の目的のために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) マイノリティおよび先住民族の文化に関するタイ国民の意識を高め、かつその生活習慣およびライフスタイルに関する寛容を醸成すること。 (b) マイノリティおよび先住民族のコミュニティに対していっそうの経済的機会を提供し、かつ基礎的社会サービスに対するこれらのコミュニティのアクセスを確保すること。 (c) 山岳民族に関する細分化されたデータを体系的に収集すること。 (d) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を考慮すること。 タイ南部国境県の子ども 84.委員会は、締約国が南部国境県の子どもおよび若者の保護および発達に関する行動計画を起草中であることに留意するとともに、中等教育および高等教育のための奨学金等を通じた教育支援のためにとられた措置を歓迎する。しかしながら委員会は、現在進行中の武装暴力を背景として以下のような問題が生じていることを懸念するものである。 (a) 子どもが、国以外の武装集団による、および、ときとしてタイ治安部隊による、爆破、不法な殺害その他の暴力的攻撃の被害を受けていること。 (b) 国以外の武装集団が政府立学校および教員を攻撃目標とし、かつ学校近辺に政府軍および準軍事部隊が駐留することにより、教育へのアクセスが途絶されていること。 (c) 親の一方または朗報を失った子ども、暴力により負傷した子ども、事件を直接に目撃した子どもまたはとくにメディアで事件についての情報を得た子ども、ならびに、事件により生活に影響を受けている子どもおよび家族を含む多数の子どもが、心理的または間接的な影響を受けていること。 85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南部国境県の状況が子どもに直接間接の悪影響を及ぼさないことを確保するための即時的措置をとること。委員会は、その際、締約国が、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく委員会の勧告(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)を遅滞なく実施するよう、勧告する。 (b) 学校が、国の軍隊および準軍事部隊によってその運営を妨げられず、かつ国以外の武装集団による攻撃から保護されることを確保すること。 (c) 武装暴力の影響を受けている子どもに対し、優先的課題として心理社会的支援およびサービスを提供すること。 (d) 「南部国境県の子どもおよび若者の保護および発達に関する行動計画」を速やかに採択すること。 I.国際人権文書の批准 86.委員会は、締約国に対し、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう促す。委員会はまた、締約国が、まだ加盟国となっていない国連の中核的人権文書を批准することも勧告するものである。これらの文書とは、とくに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の第1および第2選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約などである。 J.地域機関および国際機関との協力 87.委員会は、締約国が、とくにASEAN〔東南アジア諸国連合〕女性および子どもの権利の促進・保護委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 88.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 90.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年10月25日までに提出するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2012年4月10日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/kodomoteate/pages/39.html
◇怪奇現象◇子ども手当関連の記事がニュースサイトからことごとく消えている件 児童手当の仕組みにのっかったというが、所得制限をなくした件 -- (名無しさん) 2010-03-19 10 38 09 単純に財源が無いのにやろうとするところが疑問 -- (名無しさん) 2010-03-22 14 01 58 日本人の子どもに手当が支給されないケースがあること -- (名無しさん) 2010-03-22 17 25 53 外国在住外国籍の子どもに手当が支給されること -- (名無しさん) 2010-03-22 17 27 32 今年度の施設の子どもへの支給が「安心子ども基金」であること、また来年度は「検討事項」であること -- (名無しさん) 2010-03-22 17 29 18 2010年度の実施を踏まえての2011年度の「検討事項」が多すぎる点(2010年度の制度不備はしょがない???) -- (名無しさん) 2010-03-22 17 32 19 悪用される可能性は考えなかったのでしょうか? -- (さいたま) 2010-03-22 18 03 50 「現金」支給であること -- (名無しさん) 2010-03-22 18 19 27 中学卒業までの支給じゃないのに、中学卒業までと謳ってるという点は? -- (名無しさん) 2010-04-01 18 15 22 失望政権 -- (名無しさん) 2010-04-02 23 09 54 2chにも貼ったけど -- (名無しさん) 2010-04-02 23 12 28 ここで募金募って、そのお金で新聞折り込み広告なんかどうかな? -- (↑途中で誤送信) 2010-04-02 23 13 13 子供手当に5.6兆円つぎ込み、事業仕分けで必要な予算を削る。この欺瞞は許せない。貨幣価値の違う外国にいる人の子供にも同額というのも解せない。 -- (名無しさん) 2010-04-03 19 39 32 去年の選挙時のマニュフェストには一切この事項が触れられてない あまりにもひどい詐欺行為 -- (名無しさん) 2010-04-03 22 51 52 国で借金してまで外国人を育てる理由はあるのでしょうか、小学生でもおかしいとわかる 確信犯的な法案とうした民主党はうわさどうりの -- (名無しさん) 2010-04-04 14 08 11 幼保小中学校完全無料にすればいいのに。 -- (名無しさん) 2010-04-05 09 06 20 日本は東南アジアやアフリカよりもずっと予防接種制度が遅れていて、日本に生まれたために犠牲になっている子どもが毎年おおぜいます。保育園や予防接種制度を充実させてからの手当てでしょう。 -- (こども) 2010-04-05 15 50 24 ODAやNPO法人などの海外「支援」という考え方は理解できる。でもあまりにも不透明すぎる「私援」は理解できない。 -- (名無しさん) 2010-04-05 23 43 12 子供手当て、高校無償化よりも福祉で働いてる人たちのケアのほうが優先だろ。彼らの労働こそ国益になるというのに。 -- (カサネカンザシ) 2010-04-07 00 30 14 赤字国債発行してまで子供手当て出すのは断固反対です!このままでは国は破綻目前だと思います。 -- (神戸市民) 2010-04-24 22 28 35 日本人で、日本に住んでる孤児には支給されないってホント? -- (はてな) 2010-04-25 23 18 10 このお金で子供育てながらでも安心して働ける環境作ってほしい。養護施設とか。雇用も上がるし、労働力 -- (はてな) 2010-04-25 23 19 47 日本でも虐待がある中こどものために使わない親がでてくるのでは? 使い道を親に決めさせるのではなく直接学費や施設運営にして子どもにとって安心して過ごせるお金の使い方をしてほしい。 -- (那覇市 比嘉) 2010-04-27 10 26 37 バラマキでは児童を虐待している親にまで子供手当が支給されてしまう。私たちの血税がもしかしたら親のパチンコ代に変わる可能性大です!使い道が不透明なバラマキには大反対!子ども手当より、将来若者達が安心して家庭を持つ気になれるようにまずは雇用の確保を優先すべきです! -- (あっち) 2010-05-09 17 24 56 子ども手当をもらう子どもが将来借金として税金で返していかなければならないような制度には反対です -- (のりひと) 2010-05-10 21 48 17 保育費が月5万かかるので保育費を無料にしてくれたほうが助かる -- (子持ち) 2010-05-16 09 42 37 今の政治家は変えよう変えようとか言いながら規則ゃ周りに流されて誰一人、「志」を持った人間は居ません。政治家も自分の生活が大事。だからお金に関しては自分達の好きな様に動かしたいんでしょう。国民の常識的な考えと政治家の考え方の違いって感じですかね… -- (名無しさん) 2010-05-17 08 37 26 主人が海外勤務で我が子達は支給対象外。将来の日本を担っていく子どもなのに。納得いきません。また、支給金の使途が不確実。公教育の充実につかわれるべき。とにかく日本をどうにかしてほしいから民主党に期待した。マミニファストが絶対だなんて思っていない。国民を馬鹿にするな。 -- (怒り) 2010-05-19 11 44 23 ↑ 興奮してました。 訂正)マニフェスト -- (怒り) 2010-05-19 11 53 04 なんで日本の血税を外国人にまで支給するのか理解に苦しむ。しかも所得制限一切なし。どこの国の政治家なんだよ。こんなふざけたもの大反対。 -- (うま) 2010-06-01 23 44 19 ひっそりと条文の中に「中学修了=15歳」だとか「高校修了=18歳」だとか書かれている。人の人生を勝手に決めるな!病気や怪我で寝込んでも同じ年齢で卒業しないと許さないって言うのか? 民主党の人権感覚なんてこんなもの。 -- (まだあるぞ) 2010-06-15 09 52 45 「在日特権を許さない市民の会」はこの問題にぜひがんばって取り組んで欲しい。 -- (774) 2010-06-17 09 35 35 左巻き内閣がやりそうなこったい!日本人の血税を海外にばらまいて、日本を破綻させる勢力の仕業だな、大体扶養控除廃止の時点で増税確定だし、もうこのルーピー内閣は確信犯だからみんな気をつけろよ。 -- (ななし) 2010-09-17 16 15 11 ばらまき政策は反対!子供が安心して勉強出来る様に義務教育を全て無償化にすれば良い!だから現金支給は断固反対 -- (名無し) 2010-10-23 00 33 17 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/105.html
総括所見:ドイツ(第2回・2004年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2014年)OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.226(2004年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年1月16日に開かれた第926回および第927回会合(CRC/C/SR.926 and 927参照)においてドイツの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.7)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがった締約国の第2回報告書が提出されたことを歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/DEU/2)に対する文書回答の提出にも留意するものである。委員会は、条約に実施に直接携わっているハイレベルな代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利の実施に関する理解を向上させることができたことに謝意を表する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の法律の採択等を歓迎する。 (a) 外国籍の子どもがよりよい形で統合されることを可能にする、1999年7月15日に採択された国籍および市民権法。 (b) 監護権および面接交渉権に関する婚内子と婚外子関の差別を抑止する、1997年12月16日(1998年7月1日施行)の家族法改正(Reform zum Kindschaftsrecht)。 (c) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准(2001年)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の批准(2002年)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、ドイツの再統一およびそれにともなう結果が、締約国全域における条約の実施に引き続き影響を与えていることに留意する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国が、委員会のさまざまな勧告を実施しないと報告書のいくつかの箇所で述べていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.5)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.43)の一部、とくにパラ21~26および29~35に掲げられたもの(独立の監視機構の設置など)への対応が不十分であることを遺憾に思うものである。これらの懸念および勧告はこの文書にもあらためて掲げられている。 6.委員会は、締約国に対し、まだ実施されていない前回の勧告およびこの総括所見で表明された懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保/宣言 7.委員会は、とくに最近の立法により、締約国が批准時に行なった留保および宣言は不必要になった旨の情報(CRC/C/83/Add.7のパラ84および844ならびに文書回答の46~47ページ)を認知する。しかしながら委員会は、これらの留保および宣言の撤回を受託することについて過半数の州が前向きでないことを、依然として懸念するものである。 8.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/43、パラ22)にしたがい、委員会は、締約国が、同国が行なった留保および解釈宣言を次回の定期報告書の提出までに撤回する手続を迅速に進め、かつ、とくに当該撤回の必要性について州を納得させるための努力を強化するよう、勧告する。 立法 9.委員会は、第1回報告書の検討以降、子どもの権利に関わる多数の法律が採択されたことを認識しつつも、条約が、第1回報告書の時点で予期されていたとおり基本法に編入されていないことを、依然として懸念する。 10.前回の勧告(パラ21)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 基本法への条約の編入をあらためて検討すること。 (b) 適切な機構を通じ、国および州のすべての法律が条約に全面的に一致することを確保すること。 (c) 予算配分等も通じ、これらの勧告の効果的実施のために十分な対応が行なわれることを確保すること。 調整 11.委員会は、家族問題・高齢市民・女性・青少年省が条約の実施の調整を担当しており、かつ、州の間に、各州最高青少年当局協議会および各州青少年大臣会議のような調整機関が存在することに留意する。しかしながら、条約の実施が多くの省を横断する課題であることを考慮し、委員会は、国ならびに州および地方のレベルで締約国における条約の実施を調整する中央機構が存在しないために、包括的なかつ首尾一貫した子どもの権利政策を実現することが困難になっていることを、依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、連邦レベル、連邦レベルおよび州レベルの間ならびに州の間で条約の実施を調整するための、十分なかつ常設の国家的機構を確立するよう、勧告する。 国家的行動計画 13.委員会は、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」にしたがった国家的行動計画の起草作業が現在進められていることに満足感とともに留意しつつも、この国家的行動計画で条約のすべての分野が対象とされない可能性があることを依然として懸念する。 14.委員会は、締約国が、国家的行動計画の採択を迅速に進めるよう勧告する。当該計画は、条約のすべての分野を網羅し、包括的かつ分野横断型であり、かつ調整および監視のための機構について定めたものであるべきである。委員会はさらに、この行動計画の採択および実施が、開かれた、協議を基調とする、かつ参加型のプロセスで進められるべきことを勧告する。 独立の監視体制 15.委員会は、子どもの権利も対象とするさまざまな人権機関、ならびに、州レベルの子どもコミッショナー、ドイツ連邦議会子ども委員会、および、子ども・若者の状況に関する定期的報告を担当する独立委員会(Kinder-und Jugendbericht)が存在することに留意する。しかしながら委員会は、州および連邦のレベルで子どもの個別の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、条約の包括的監視のための独立した中央機関が存在しないことを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、総会決議48/134付属文書)にしたがって、かつ子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮しながら、国および地方のレベルにおける条約の実施の進展を監視しかつ評価するための独立した国内人権機関を設置することを検討するよう、奨励する。加えて、委員会は、当該機関に十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されること、ならびに、子どもに配慮したやり方で子どもの権利侵害の苦情を受理し、調査しかつ効果的に対応する権限がその任務に含まれることを勧告するものである。 データ収集 17.委員会は、締約国報告書の付属文書で提供された豊富な統計データに評価の意とともに留意するものの、条約が対象としている一部分野についてデータが不十分であることを依然として懸念する。 18.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢ならびに都市部および農村部の別に細分化されたデータ収集システムおよび指標を発展させるよう、勧告する。当該システムは、外国人の子どものようにとくに脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視しつつ、18歳未満のすべての子どもを対象とするべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約の効果的実施のための政策およびプログラムを立案するにあたってこれらの指標およびデータを活用するよう奨励する。 研修および普及 19.委員会は、条約の規定および原則を普及するために締約国が行なっているさまざまな活動に留意するものの、最近の研究によれば、ほとんどの子どもおよびおとな(とくに脆弱な集団に属する者)が条約に掲げられた権利について認識していないことを、依然としてとりわけ懸念する。したがって委員会は、締約国が、条約に関する普及、意識啓発および研修のための十分な活動を、体系的かつ対象を明確にするやり方で行なっていないことを懸念するものである。 20.前回の勧告(パラ26、27および36)ならびに条約第42条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 庇護希望者、難民および民族的マイノリティのような脆弱な立場に置かれた集団に確実に情報を届けるための取り組みも含め、子どもおよび親の間、市民社会の間ならびに政府のあらゆる部門およびレベルにおける、条約およびその実施に関する情報の普及を相当に拡大すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、施設で働く職員、教員および保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 国際協力 21.委員会は、「貧困削減行動計画2015」の承認、および国際協力・援助の分野で行なわれている他の多くの活動に留意するものの、締約国が国内総所得の0.27%しか政府開発援助に充てていないこと、および、2006年に予定されている0.33%への増加が遅々としていることを、依然として懸念する。 22.前回の勧告(パラ25)に照らし、委員会は、締約国に対し、国内総生産の0.7%を海外開発援助に配分するという国際連合の目標を可能なかぎり早期に実施するよう奨励するとともに、〔1995年社会開発サミットで確認された〕コペンハーゲン20/20イニシアティブの目標を達成するための基礎的社会サービスに関する委員会の懸念を強調する。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 23.基本法(第3条)で差別が禁じられていることは認知しながらも、委員会は、外国人の子どもが事実上差別されており、かつ人種的憎悪および外国人排斥の事件が子どもの発達に悪影響を及ぼしていることを懸念する。委員会はまた、実務および提供されるサービスならびに子どもによる権利の享受に関する諸州間の格差の一部が差別に相当する可能性があることも、懸念するものである。 24.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外国人の子どもまたはマイノリティに属する子どもに対する事実上の差別を防止しかつ撤廃するための行政上および司法上の措置を強化することも、勧告するものである。 25.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 26.委員会は、子どもの最善の利益の原則(第3条)を考慮するために発展させられてきたさまざまな取り組みに留意するものの、この一般原則が、締約国の政策およびプログラムの実施においても、行政上および司法上の原則においても全面的に適用されかつ正当に統合されているわけではないことを、依然として懸念する。 27.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、すべての立法および予算ならびに子どもに影響を与える司法上および行政上の決定ならびにプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、自己の意見を表明する子どもの権利を認めたさまざまな法規定により、条約第12条の実施に関して達成された進展に留意するものの、同条に掲げられた一般原則が、締約国全域の政策およびプログラムの実施において、実際上、全面的に適用されかつ正当に統合されているわけではないことを依然として懸念する。 29.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するため、さらなる努力が行なわれるべきことを勧告する。これとの関係で、脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般に参加するすべての子どもの権利がとりわけ重視されるべきである。この一般原則は、子どもに関わるすべての政策およびプログラムにも反映することが求められる。この原則の実施に関する公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきである。 3.市民的権利および自由 宗教の自由 30.委員会は、2003年9月24日の憲法裁判所決定(2 BvR 1436/02, Case Ludin)に留意するものの、現在いくつかの州で議論されている、教職員が公立学校でヘッドスカーフを着用することの禁止を目的とした法律について懸念する。このことは、宗教の自由に対する権利についての子どもの理解、および、条約第29条の教育の目的において促進されている寛容の態度の発達に寄与しないためである。 31委員会は、締約国が、とりわけ特定の宗教的集団を選び出して異なる取り扱い方をするような措置を避けることにより、とくに宗教、良心および思想の自由の分野において理解および寛容の文化を発達させることを目的として、子ども、親その他の者を対象とした教育上その他の措置をとるよう、勧告する。 情報へのアクセス 32.有害な印刷媒体および電子通信媒体から子どもを保護するための締約国の努力(たとえば青少年保護法およびメディアにおける未成年者の保護に関する州間協定(2003年))は歓迎しながらも、委員会は、法的文書の増加によって法的状況が複雑化しているおそれがあること、および、連邦レベルと州のレベルの間における責任分担が明確でないことを、依然として懸念する。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 有害な情報からの子どもの保護に関して新たに採択された規則の全面的実施を確保するとともに、この点に関わる法的状況をいっそう透明なものとする方策を見出すこと。 (b) 子どもにとって有害となる可能性がある情報から子どもを保護するさらなる手段(親に対する助言の提供によるものも含む)を検討すること。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 34.委員会は、連邦児童手当法の第3次改正法(2001年1月1日施行)の採択によって双方の親が親休暇をとる可能性が向上したこと、および、親権に関する法律の改正によって、両親が離婚し、別居しておりまたは婚姻していない場合についても親権(Sorgerecht)を共有できるようになったことに評価の意とともに留意するものの、司法制度において後者の法律を全面的に実施する準備がまだ整っていないことを、依然として懸念する。 35.委員会は、締約国が、とくに判事を対象とする十分な研修を通じ、親権法に関する新たな立法の全面的実施のために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。 国際養子縁組 36.委員会は、締約国が2001年に国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を批准したことを歓迎し、かつその実施のためにとられた措置に留意するものの、締約国報告書(パラ476)で述べられているように、これらの養子縁組事案で不正が行なわれている可能性があることを依然として懸念する。 37.委員会は、締約国が、とくに国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を全面的に実施し、かつ、ドイツ人の養子とされた子の出身国のうちまだ当該条約に加入していない国による当該条約の批准を促進することにより、国際養子縁組の事案で行なわれる可能性がある不正に対処するため、引き続きあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 子どもの国外への不法移送および不返還 38.委員会は、ドイツが国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の締約国であることに満足感とともに留意するものの、親のいずれかによる子どもの奪取の問題が増大しつつあることを依然として懸念する。 39.委員会は、締約国が、ドイツに奪取されてきたすべての子ども(1980年ハーグ条約の締約国ではない国から奪取された子どもも含む)に対して当該条約を全面的かつ効果的に適用するとともに、まだ当該条約に加盟していない国に対して批准または加入を奨励し、かつ、必要なときは、国際的な子の奪取に十分に対応するための二国間協定を締結するよう、勧告する。委員会はさらに、国外への子どもの不法移送の事案の解決のため、外交ルートおよび領事ルートを通じて最大限の援助を提供することを勧告するものである。 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い 40.委員会は、子どもの養育における暴力を禁じた法律(家庭における体罰も禁止)が2000年に導入され、かつドメスティック・バイオレンスと闘うための他のさまざまな法的文書(たとえば子どもの権利のいっそうの改善のための2002年法)が導入されたことを歓迎するものの、新法の影響に関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを依然として懸念する。委員会はさらに、締約国においてさまざまな形態の暴力(とくに性的虐待および問題として増大しつつある学校における暴力)が引き続き存在していることを懸念するものである。 41.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの慣行の規模、範囲および性質を評価するため、暴力、とくに性的虐待および学校における暴力に関する包括的研究を行なうこと。 (b) 児童虐待を防止しかつこれと闘うため、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) 現行体制の活動を評価し、かつこれらの事案に関与する専門家の研修を行なうこと。 5.基礎保健および福祉 42.委員会は、子どもの間で薬物、アルコールおよびタバコの濫用が広がっていること、胎児性アルコール症候群を持って生まれる新生児が多いこと、および、親のいずれかが薬物依存者である子どもの人数が300万人と推定されていることに、懸念を表明する。 43.委員会は、締約国が、とくに集中的な教育キャンペーンを行なうことおよび十分なリハビリテーション・サービスを設けることによって子どもおよび親の薬物およびアルコールの濫用と闘うため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 思春期の健康 44.委員会は、精神疾患を有する子どもが精神医療施設の成人病棟で治療されていること、および、精神医学に関わる倫理的問題が十分に考慮されていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもおよび青少年の自殺件数が非常に多いことを深く懸念するものである。 45.委員会は、精神医療施設において子どもが成人から分離されることを確保し、かつ精神医学倫理に関する国際基準をより十全に考慮するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、思春期保健サービス、とくにカウンセリング・サービスおよび自殺予防プログラムを強化するよう、勧告するものである。 有害な伝統的慣行 46.委員会は、女性性器切除の慣行の禁止が刑法で取り上げられていることに留意するものの、締約国においてサハラ以南のアフリカ諸国出身の女子に対して女性性器切除が行なわれているという報告について懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ドイツ在住の女子に対して締約国でまたは国外で行なわれる女性性器切除の規模および性質に関する研究を行なうこと。 (b) 研究の結果を考慮しながら、この慣行を防止するための広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを組織すること。 (c) この活動に、この分野で活動している非政府組織の関与を得ること。 (d) とくに、女性性器切除が行なわれている出身国であってこの慣行の撤廃のための積極的プログラムを有する国への財政的および技術的援助を拡大することにより、国際協力プログラムにおける女性性器切除の撤廃に優先的に取り組むこと。 保育サービスおよび保育施設 48.委員会は、とくに国の西部において十分な保育施設が存在しないこと(CRC/C/83/Add.7、パラ584、585および630参照)およびこれらの施設に関する全国的基準が存在しないことについての締約国の懸念を共有する。 49.条約第18条3項および第25条にしたがい、かつ経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の勧告(E/C.12/1/Add.68、パラ44)に照らし、委員会は、締約国が、働く親のニーズを満たす目的でいっそう多くの保育サービスを設け、かつ、すべての子どもが良質な保育を利用できることを確保する目的で全国的な基準を定めるための措置をとるよう勧告する。 十分な生活水準に対する権利 50.委員会は、資金移転から貧困家庭のための適切なインフラの構築の重視へと政策が転換されたことに留意する。委員会はまた、貧困に関する初の国家的報告書(2001年)も歓迎するとともに、ここ数年の児童手当の増額、および、子どものいる家族を援助するための措置を整備する所得税改革に留意するものの、第11次青少年白書で明らかにされているとおり、貧困が蔓延しており、そのことによって主として大家族、ひとり親家族および外国出身の家族に対する影響ならびに締約国の東部出身の家族に対する不相応な影響が生じていることを、依然として懸念する。 51.委員会は、前回の勧告(パラ31)にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに国の東部と西部間の格差を解消する目的で子どもの貧困の解消を迅速に進めるため、「利用可能な資源を最大限に用いて」あらゆる必要な措置をとること。 (b) 十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するため、経済的に不利な立場に置かれている家族、とくにひとり親家族および外国出身の家族に対し、引き続き物的援助および支援を提供すること。 (c) 社会政策の転換を適切な形で評価すること。 6.教育、余暇および文化的活動 52.委員会は、教育の地方分権化により、条約第28条および第29条の実施の面で若干の格差が生じる可能性があることに留意する。加えて、委員会は、学習障害のある子どもの教育のための十分なサービスが存在しないことを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第28条および第29条が州全域で全面的に実施されることを確保するため、とくに教育計画および研究振興に関する連邦政府・州間委員会(BLK)を通じてあらゆる必要な措置をとること。 (b) 前掲パラ23および24を参照し、かつ第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権教育をさらに発展させること。 (c) 学習障害のある子どものためのサービスをさらに発展させること。 (d) すべての学校に公民教育プログラムを導入すること。 7.特別な保護措置 子どもの難民 54.条約第22条に関して締約国が行なった宣言についての懸念に加え、委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) 16~18歳の子どもの難民が、青少年福祉法に掲げられた権利の利益を享受していないこと。 (b) ロマの子どもおよび民族的マイノリティに属するその他の子どもが、その家族の避難元である国に強制送還される可能性があること。 (c) 子どもが兵士として徴募されることが、庇護手続において子どもに特有の迫害として認められていないこと。 (d) 難民の地位に関する条約(1951年)で定義された難民家族の家族再統合に関する国内的要件および手続が複雑であり、かつ長すぎること。 (e) ベルリン州における庇護希望者の子どものなかに、親が提供した書類が不完全であることを理由として出生証明書に対する権利を否定される者がいたこと。 55.条約第7条、第22条その他の規定に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年福祉法の規定を、18歳未満のすべての子どもの難民に対して全面的に適用すること。 (b) 締約国で庇護を希望するロマの子どもおよび民族的マイノリティに属するその他の子どもについての法律および政策を見直すこと。 (c) 子どもが兵士として徴募されることを、庇護手続において子どもに特有の迫害として認めることを検討すること。 (d) とくに1951年難民条約で対象とされている難民家族について、難民の家族再統合に関する要件および手続を緩和すること。 (e) 締約国の領域で生まれた難民および庇護希望者の子ども全員に出生証明書が発行されることを確保すること。 性的搾取および人身取引 56.委員会は、「性暴力および性的搾取から子どもと青少年を保護するための連邦政府行動計画」(2003年1月)が採択されたことを歓迎するものの、成人が子どもに対して行なう犯罪によってさまざまに異なる年齢が刑法で維持されていることを、依然として懸念する。 57.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連のすべての法律で定められている性的搾取および人身取引からの保護を、18歳未満のすべての男子および女子に拡大すること。 (b) 子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領(1996年)ならびにグローバル・コミットメント(2001年)にしたがって、自国の行動計画を効果的に実施することにより、子どもの性的搾取および人身取引と闘うための努力を続行すること。 ストリートチルドレン 58.この点に関して行なわれている努力には留意しながらも、委員会は、締約国でストリートチルドレンの人数が増加していること、および、そのなかで外国人の子どもが占める割合が高いことに、懸念を表明する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに外国人の子どもの保護を重視しながら、その根本的原因に対処することによってこの現象を防止しかつこれと闘うための努力を続行すること。 (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支える目的で、これらの子どもに対して十分な食料、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。 (c) これらの子どもに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復およびリハビリテーションのためのサービスならびに家族と和解するためのサービスが提供されることを確保すること。 少年司法の運営 60.第40条2項(b)(ii)および(v)に対する留保に加え、委員会は、拘禁措置の対象とされる子どもの人数が増えており、かつ外国出身の子どもが不相応な影響を受けていること、および、拘禁または勾留の対象とされた子どもが25歳までの者とともに措置されていることを懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の国連基準にしたがった少年司法制度を実施するため、あらゆる適当な措置をとること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられること、適正手続の保障が全面的に尊重されること、および18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。 (c) 前掲国際基準で述べられているとおり少年司法手続に代わる選択肢を発展させること。 8.条約の選択議定書 62.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に関連して締約国が〔軍隊への徴募等に関する最低年齢は例外なく18歳に定めるべきであるという〕「ストレート18」の立場を支持していること、および、締約国が条約第38条に関して宣言を行なったことを認知する。これとの関連で、委員会は、締約国で批准のためのプロセスが開始されたことに留意するとともに、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する条約の両選択議定書を批准しかつ実施するよう、奨励するものである。 9.文書の普及 63.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。委員会は、締約国がこの点に関して国際協力を要請するよう勧告する。 10.報告書の定期的提出 64.最後に、委員会が採択し、かつ第29会期(CRC/C/114)および第32会期(CRC/C/124)に関する報告書に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国が、次回の定期報告書を2009年4月4日〔まで〕に提出するよう勧告する。この報告書は、第3回および第4回定期報告書を統合したものであるべきである。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月20日)。