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男と紬が交差しようとする刹那の寸前、和は咄嗟に紬に抱きつき、道路へ押し倒した。 身を起こした紬がまず眼を遣ったのは、左腋下から背中に掛けて大きな切創を負い血を流す和。 そして、包丁を握る息の荒い男。 紬「和ちゃん!」 男「ムギ、お前も俺の物になるんだよ。唯みたいに……! ほらァ!」ダッ 紬「!?」 男は改めて紬に向かって突進する。 紬は包丁から身をかわすと、地面に突き立つ鉄製の車止めポールを素早く引き抜き、男の顔面に 狙いをつけた。 紬「ええい!」ブゥン 男「ぶっ!」 フルスイングされた鉄製ポールは男の鼻っ柱を的確に打ち抜いた。 男は大きく吹き飛ばされ、玄関前の石段に背中を叩きつけられたところで、数名の男性 社員に取り押さえられた。 内出血で変色し、腫れ上がる顔面。噴水の如く吹き出す鼻血。それでも男は紬を舐めるように 見つめる事をやめようとしない。 紬は鉄製ポールを放り投げ、和のもとに駆け寄ると、彼女の身体を抱きかかえた。 紬「和ちゃん! しっかりして! 和ちゃん!」 和「だ、大丈夫よ…… かすっただけ……」 菫「お姉ちゃ―― 社長! 大丈夫ですか!?」オロオロ 紬「私の事より和ちゃんが! 早く救急車を呼んで! 早く!」 眉根を寄せて倒れる和。 顔面蒼白で立ち尽くす菫。 錯乱気味に声を上げる紬。 更には通行人やビル内から出て来る社員が騒然とする中、組み伏せられている男は紬を見つめ 続けている。 男「クソッ、もう少しだったのに…… もう少しでムギも永遠に俺の物だったのに! ムギ! 愛してるよ! チクショウ! 離せェ!」 そのわめき声を耳にした紬は立ち上がると、ゆっくりと男へ近づいた。 拳は固く握られ、歯はギリギリと食いしばられている。 紬「あなたが、唯ちゃんを殺したのね……?」 男「ヘヘヘ、そうだよ? 唯は永遠に俺の物になったんだ。髪の毛も経血も食べてやった。 次はお前、その次は澪、その次は、ヒヒヒ……! みんな、俺の物に―― ぶへェ!」 男の言葉が終わらないうちに、紬の憎しみによって握り締められた拳が彼を殴りつけた。 紬「このケダモノ! 唯ちゃんを返して! 返してよぉ!!」ドガッ バキッ 菫「ああ、お姉ちゃん…… お姉ちゃん……」ガタガタ 警備員「社長! おやめ下さい!」 常務「いけません! それ以上は過剰防衛になります! あとは警察に任せましょう!」 紬「唯ちゃんを返してぇ!!」 再び、律と憂が向かい合うハンバーガーショップ。 ポケットの中の携帯電話が震え、律に着信を知らせる。 律は、ウンザリ気味の憂に配慮する事も無く、携帯電話を耳に当てた。 律「誰だよ。え? ムギの? はあ…… 何だって? 嘘だ! そんな訳があるか!」 おそらく一分にも満たない短い通話だっただろう。 会話とは言えない不可解な反応の後、律は通話の終わった携帯電話をポケットにしまった。 憂「あ、あの…… どうかしたんですか?」 単純な驚き。それと正体不明の不安感。憂は何事か尋ねずにいられなかった。 無言のまま爪を噛んでいた律であったが、やがて渋々といった調子でボソリと呟いた。 律「……犯人が捕まった。唯を殺した犯人が」 憂「ええっ!? 本当ですか!?」 律「ああ。ムギの秘書って奴からの電話だ。ついさっき、唯を殺した野郎がムギを襲ったらしい。 でも、逆にムギにブチのめされて逮捕されたって……」 憂「逮捕、された……」 律「そんな馬鹿な……」 憂「……!」 律の一言が憂の顔色を変えさせた。これまでに無い怒りの色を強く表している。 それもそうだろう。せっかく憎い犯人が捕まったのだ。本来であれば喜ぶべきところなのに、 そんな筈が無い、とでも言いたげな態度なのだから。 尋常ではない執念で犯人探しをしていた張本人であるにも関わらず、である。 憂はもう、一秒でもこの場にいたくなかった。こんな狂人と向かい合っていたくなかった。 憂「すみません。私、そろそろ失礼します」ガタン 律「おい、待て」 席を立って出入口に向かおうとする憂。 そうはさせじと彼女の手を掴む律。 しかし、自分を引き留める手にも、その手の持ち主である律にも、憂は一瞥もくれようとしない。 すべては既に終わっていたのだ。 憂「お姉ちゃんは帰って来ないけれど…… せめて、司法が犯人を極刑にしてくれる事を願います。 だから、律さんも、もう……」 律「唯は自伝を書こうとしていた。鈴木純に協力を頼んでいたんだ。その事について何か 見たり聞いたりしてないか? それが真犯人に繋がる糸口かもしれないんだよ」 度し難い。救いようの無い。 フウとひとつ吐かれた憂の溜息がそう物語っていた。 憂「いい加減にしてください……!」 律の手を強引に振りほどき、憂は荒い足取りでハンバーガーショップを後にした。 一人残された律はただ視線を落とす。 紙ナプキンとトマトケチャップのロールシャッハ・カードに。 血まみれの唯の顔に。 唯『もしもし。りっちゃん、寝てた?』 律『うんにゃ、起きてたよ。どした?』 唯『あのね、純ちゃんのコラムを読んだんだけど……』 律『唯~、あいつの記事はもう読むなって言ったじゃんか。いちいち腹立ててたらキリが 無いんだからさ』 唯『でもでもっ! ひどいんだよ! “平沢唯在籍時の前期放課後ティータイムの人気は、 失礼ながらアイドルのそれに他ならない”なんて書いてるんだよ! もう何年も前の事 なのに……』 律『いや、もうその放課後ティータイムも解散しちゃったようなもんだろ? 澪の奴がソロ アルバムなんて出して、バンドとしての新譜やライブの話も無くなったし。私や梓は どうすりゃいいんだよ。ったく』 唯『でも……』 律『あ、そういえばさ。この前出た唯のアルバム、良かったよ。ケルト音楽とかアンデス音楽 とかはあんまり詳しくないけど、唯の歌やギターとピッタリ合ってた。あれ、すごいな。 今の事務所に移って正解だったんだよ』 唯『全然、売れてないんだよね…… テレビやラジオでも掛けてもらえないし…… どうして なんだろう……』 律『そ、それは、ほら、あれだよ。売れてりゃ良い音楽とは限んないだろ? わかる人には わかるってヤツだよ』 唯『澪ちゃんのソロアルバムはあんなに大人気なのに……』 律『澪は澪、唯は唯だぞ。私はちゃんと唯の音楽の良さをわかってるからさ。それに比べて 私なんか、ソロやりたくったってそんな実力も無いし、新しいバンド組みたくったって 声掛けてくれる奴もいないし――』 唯『純ちゃんも、私が抜けた後の放課後ティータイムや澪ちゃんの事はすごく褒めてるのに…… どうして私だけ……』 律『お、お~い。唯~?』 唯『やっぱり私はただのタレント、ううん、コメディアンなのかな…… 放課後ティータイムが 人気だったのも澪ちゃんとムギちゃんのおかげで、私はいてもいなくても良かったのかな……』 律『なあ、唯……』 ガチャッ ツーツーツー 律『唯? もしもし? ……何だよ、もう』 午後1時まで、あと9分11秒。 律は、鈴木純の仕事場の前に来ていた。 先日、一度訪ねたきりではあったが、唯との思い出を回想していても自動的にたどり着ける程に 足が道順を憶えていた。 約束の時間には少し早いが、律は遠慮もノックも無く、仕事場のドアを開いた。 律「よう。来たぞ、鈴木。一体、何の――」 思わず言葉を飲み込んだ。 ドアノブを握る手に力がこもる。 しかし、その力とは裏腹に、出来る限り物音を立てずに部屋から身体を引っ込め、静かに ドアを閉めた。 すぐに手持ちのティッシュペーパーで、ドアノブを素早く、かつ入念に拭く。 ノブを拭き終わったティッシュペーパーをポケットに捻じ込むと、律は足早にその場から離れた。 大丈夫。監視カメラは設置されていなかったし、この様子を見ている者もいなかった。大丈夫だ。 そう自分に言い聞かせるも、驚きと、焦りと、苛立ちと、腹立たしさが、足取りと心臓の鼓動を どんどん速めていく。 律は心中であらん限りの悪態を吐きながら、最寄駅への道を急ぎ足で引き返した。 『日誌 田井中律、記 2022年10月17日13時31分 くそっ。くそくそくそくそっ。何てこった。どうなってるんだ。 ツーストライクだ。冗談じゃないぞ。 鈴木が死んでいた。首を吊っていた。ちくしょう。ブラ下がっていやがった。 一体、どういう事だ。奴の方から私を呼び出したってのに。話したい事があると言ってたのに。 ブルった様子で私に助けを求めてるようだった。 何故そんな奴が自殺するんだ。午後には私が行くと言ってたのに。 話が噛み合わないぞ。くそったれ。 誰にも見られていないだろうな。おそらく、たぶん、誰にも見られていない筈だ。 監視カメラだって無かった。本当か? くそっ、頭が混乱している。落ち着け。意識を集中しなければ』 律の携帯電話が本日三度目の着信を知らせたのは、彼女が朝の時点で座っていた公園のベンチに 腰を落ち着けた、まさにその瞬間だった。 律は発作的に携帯電話を地面へ叩きつけたい衝動に駆られるも、すぐに我に返り、画面表示を 確認した。 そこにあったのは“中野梓”。 通話状態にした携帯電話から聞こえてきたのは、ひどく慌てた梓の声だった。 梓『律先輩! 聞きましたか!? 唯先輩を殺した犯人が逮捕されたって!』 律「ああ、聞いたよ。ムギの秘書から連絡があった」 梓『そうでしたか。でも、本当に良かったです。こんなに早く犯人が捕まって。これで律先輩も 犯人探しなんてしなくてもよくなりましたし……』 律「……違う。ムギを襲った奴は犯人じゃない。真犯人が別にいるんだ。絶対に」 梓『何を言ってるんですか。もう事件は解決しているんですよ。気持ちはわかりますけど、 もう――』 律「なあ、梓」 梓『何ですか?』 律「鈴木純が死んだ」 梓『……は?』 律「鈴木純が自殺したんだ。自分の仕事場で首を吊って」 梓『ど、どういう事ですか!? そんな……! 純が……! 嘘です!』 律「勝手を言うようで申し訳無いが、落ち着いてくれ。話を円滑に進めたいんだ」 梓『だって! そんな! 純が、純が死んだなんて!』 律「私が出した結論から先に言うぞ。鈴木は自殺したんじゃない。殺されたんだ」 梓『どうして律先輩にわかるんですか!』 律『もう一度言う。落ち着いてくれ。今から説明するから』 梓『ううっ…… ぐすっ……』 律「私は唯の死を調べていく中で、鈴木の存在に当たったんだ。告別式の日の行動に怪しさを 感じてな。それで奴から唯に関しての情報を聞き出した。梓、お前さ、唯が自伝を出版 しようとしていたって聞いた事があったか?」 梓『い、いえ……』 律『唯の自伝出版。それが鈴木から聞き出した情報のひとつだ。他には、唯はその理由を 言おうとせず、泣きながら誰かに謝っていたって事も。ここまではいいか?』 梓『え……? あ、はい……』 律「鈴木は今朝、私に電話してきたんだ。話したい事があるってな。唯の死そのものについてか、 自伝についてか、今となってはわからないが。それと、何かにビビってるようだった」 梓『……』 律「話が噛み合わないんだよ、梓。道理に合わないんだ。朝、私に会いたいと言ってきた奴が、 昼には私が行くってのに、その前に自殺しちまうなんて」 梓『……』 律「鈴木は、自覚してるしてないは別にして、何か重要な事を知ってしまったか、もしくは 関わってしまっていた。そのせいで消された」 梓『……』 律「話を整理するぞ。唯は自伝を出版しようとしていたが、その内容が世に出ると都合の 悪い奴がいた。だから、そいつは唯を殺した。そして、それに協力しようとしていた 鈴木も自殺に見せかけて殺した。更に、唯殺しの犯人をでっち上げて、今回の事件を 終わらせようとしている。こんなとこだ」 梓『……待ってください。その推理が当たっているとしたら、今度は自伝の事を調べている 律先輩が狙われるかもしれないじゃないですか』 律「だろうな。まあ、望むところだ。手っ取り早く事件の真相を暴いて、唯の仇を討てるしな」 梓『……』 律「鈴木が殺されちまったから、自伝に繋がる線は完全に断たれた。だけど、ムギを襲った 野郎がまだ残っている。そいつを徹底的に調べ上げて、真犯人にたどり着いてみせる」 梓『その人はもう警察に捕まっているんですよ?』 律「だから何だ。そんなの関係無い。やると言ったらやる」 梓『……』 律「……」 梓『……』 律「……梓。2014年の大晦日の事、憶えてるか?」 梓『え……?』 律「唯の脱退を発表する記者会見の後、お前と唯の二人が路上ライブやってさ、とんでもない 大騒ぎになっただろ。交通もマヒしちゃって」 梓『あ、ああ…… ええ……』 律「あの時、二人とも警察にしょっ引かれたけど、取り調べでは唯が必死になってお前を かばったんだよな。お咎め無しで帰してもらえるように。全部、一人で罪を被ってさ」 梓『はい……』 律「唯は道路交通法違反で書類送検。まあ、起訴猶予処分にはなったけどさ。あの当時の メディアの唯叩きはマジでひどかった。でも、その後のお前の行動は嬉しかったよ」 梓『いえ…… そんな……』 律「いろんなメディアや自分のブログで、唯を擁護してくれた。事務所が止めるのも聞かないで。 結局、お前も謹慎になっちまって…… ハハッ、あの時の澪の怒りようったら無かったな」 梓『すみません……』 律「……唯にお前がいて良かった。お前はあいつにとって最高の後輩、いや、友人だったと思うよ」 梓『……』 律「唯の仇討ちは私に任せとけ。お前は…… お前だけは、唯の事を忘れずにいてやってくれ。 これからも、ずっと……」 梓『……』 律「じゃあ、な」 梓『……律先輩』 律「ん?」 梓『真犯人探し、私にも手伝わせてください』 律「何?」 梓『か、勘違いしないで下さい。私は律先輩の言ってる事をすべて信じた訳じゃありません。 ただ、唯先輩と純の死の真相を知りたいだけです。ムギ先輩を襲った人が逮捕された事で この事件が終わってしまうのなら、律先輩と一緒にいれば何かわかるかもしれない、 そう思っただけです』 律「うん……」 梓『それに、律先輩も心配なんです。このままじゃ、律先輩――』 律「ん……?」 梓『……とにかく! すぐにそちらに合流します。今、どこにいるんですか?』 律「今か? お前の部屋の前だ」 梓『はいぃ!?』ダッダッダッダッダッ バタン 律「すまん。ジョークだ」 梓『はっ倒しますよ! ホントにもう!』 律「今、ブクロだ。西口公園。わかりやすいように入口の方に行くよ」 梓『じゃあ、すぐに行きますから。待っててください』 律「梓……」 梓『はい?』 律「お前は…… いい友人だ。すまん…… 苦労をかけるな」 梓『何言ってるんですか。律先輩らしくないですよ』 律「そうか…… じゃあ、後でな」 電話は切られた。 物言わぬ電話を両手で持ち、額に当てたまま動かない律。 そんな彼女に話し掛ける者は誰もいない。 やがて、律はベンチから腰を上げると、コートの襟を立て、午後の日差しが照らすタイル貼りの 舗道を歩き出した。 人生は短い くだらないケンカをしている暇なんて無いよ 馬鹿馬鹿しいとしか思えないね だから、もう一度だけ君に尋ねたいんだ ――ザ・ビートルズ 7
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日常2 関連作 日常 はこちら AM8 30本日は土曜日。いつもより遅い時間にベッドで目を覚ましたのは、上条当麻。海外出張が中心の彼も、週末は必ず家庭に帰ることにしている。上半身だけ起き上がり、欠伸をしたあと頭をかく。んでもって、ん~~と声を出しながら背伸びをした瞬間の脇腹にドゴスッという衝撃!!悶絶。犯人は、「ぱぱ!! おはよー!!」彼女だ。上条にとっては百も承知である。「こんのぉー!! 麻琴!!」きゃっきゃっ言いながら逃げていく麻琴容疑者。テテテテという足音がリビングに消えていった。流石に朝からロケット頭突きされるとは思わなかった。起き上がってそのまま走ってリビングに向かい、犯人を確保する。「こぉらー!!なにすんだー」「ごめんなしゃーい!!」全然反省の色が見られないので、高い高いの刑に処す。こうなったら、犯人は喜ぶしかないのだった。「こらー麻琴、パパを起こしたらダメでしょ。疲れてるんだから」廊下から現れたのは、上条美琴。上条当麻の妻にして、上条麻琴の母である。洗濯機が動く音が聞こえる。朝からいつもありがとう、なのだった。麻琴を降ろし、笑顔を向けるパパ。「いいよ、ちょうど起きたところだったから。おはよう、美琴」「おはよう、当麻。ご飯できてるわよ」「ごはんーーー!!」トテトテトテーー、と今度はキッチンに走っていく麻琴。お前が行ってもなにもできないだろ。じっとできないのは、きっと母親似だと思う。「落ち着きないのはパパ似ね」「いやいやママ似だろ」「はい?」「ん?」互いを睨む。しかし、「ままー!! ぱぱー!! はーくー!!」という声が聞こえると、2人はクスリと笑い、軽く口づけしてキッチンに向かった。AM9 00三人は食卓を囲んでいる。「しぇふをよべい」「え? はい、なんでしょう」「ノッてあげるんだな」「これはなにかね?」「サラダでございます」テーブルの上に並んでいるのは、サラダ、トースト、ハムエッグにスープ。完璧な朝食なのだった。「さらだはわかっておる!! さらだのこれをいっておるのだ!!」「ん? ブロッコリーです」パパはここにきてようやく察したらしい。「わたしはきげんをそこねた。これはさげたまえ」「「うるさい。いいから食え」」「はもらなくてもいーじゃんかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」ペチッとテーブルを叩く麻琴。幼女の心からのシャウトである。「麻琴、昨日パパがゲコ太プリン買ってきてくれたわよ」「…………げこたぷりん?」「ブロッコリー全部食べたらプリンも食べてよし」「…………ぶろっかりー……ぅぅ……」「頑張って、麻琴」「頑張れ、麻琴」「うぅ…………あむっ!!」「「おぉ!!」」「…………おいちくない」「えらいえらい、麻琴」ナデナデ「えらいぞ、麻琴」ナデナデ「え、エヘヘ」「「あと、4個ね(な)」」「ふぇ~~~~ん」AM10 00「げこたうまうま」娘の笑顔を、父はテーブルに頬付き眺める。「色も、形も完璧にゲコ太を踏襲したプリン」「うまうま」「頭にスプーンぶっさしてモグモグ食うのは、キャラクターを愛しているといえるのか?」「パパどの!!」「あん?」真剣な娘の声を聞いても、父の態勢は変化なし。「このおんぎ、しょうがいわすれぬしょじょん!!」ペコリとお辞儀。「絶対忘れるね。あと、食べながら話さないの」「はーい!!」「言ったそばから……」 AM 10 13青空のキャンパスを、雲とタオルが白く染める。「みーことっ!!」「きゃっ!! もう、急に抱きつかないでよ」洗濯の途中で後ろから抱き着いた邪魔者旦那。「洗濯物干す美琴の後姿が魅力的すぎて」「……向こうの学生寮からの視線が恥ずかしいんだけど?」「見せつけたれ見せつけたれ」「あっ!! パパずるぃーー!! まこともママをギュッてするー!!」前方から足も封じられた。「ちょっと!! これじゃ洗濯物干せないじゃない、もー」AM 11 00リビングでボケーっとテレビを見る父娘。おもむろに父の口が動く。「麻琴ー、今日は水族館にでも行こうか?」「んー、えーががいい」娘の発言に、父は視線をテレビから娘に向けた。正しい教育のために、ボケには適切にツッコまなければならない。「…………『ゲコ太の日本誕生』は3回も見ただろうが」「目指せ10!!」「お前が知ってる最大の数じゃん。ゲコ太プリンで我慢しろ」「なんだっけそれ?」「もう恩義忘れてやがる」「こうなったら、かみじょうけかくんだいなち!!」「7と8混ざってんぞ」拳を天に向け立ち上がる娘に、冷静にツッコミを入れるパパ。「せいせーどうどう、じゃんけんでけちゃっぷをつけよーか!!」「ケチャップつけたら美味しいだろうが、決着な」「そうともゆー」「そうとしか言わ「じゃーんけーん」うわっ、きったねぇーぞ!!」「ぽんっ!!」パー「ポンッ!!」パー「ポンッ!!」チョキ「「……へ?」」出された手は3つ。「ってことで、みんなで買い物でケチャップねん!!」ぽかん、とする家族に、母は指のハサミを動かしながら笑顔で今日の予定を告げたのだった。AM11 45「せんぶすみとー!!」「セブンスミスト、だ麻琴」「何度言っても治んないのよねー」セブンスミスト前の大通り。大きな声を放つ娘に正しい答えを教える。「???」頭を傾けたので、やはり麻琴は理解できていないらしい。膝を曲げ、お父さんは娘と目線の高さを合わせた。「いくぞ、麻琴。セ」「せー!!」元気な返事である。「ブ」「ぶー!!」「ン」「んー!!」「ス」「すー!!」「ミ」「みー!!」「ス」「すー!!」「ト」「とー!!」「セ・ブ・ン・ス・ミ・ス・ト」「せんぶすみとー!!」「なぜだ、麻琴よ」「アッハッハッハ!!」その背中には哀愁が漂っていたと、後に美琴は述べている。 PM00 25「大丈夫ですか? あぁ、すり傷ができてますね」倒れている女性に手を差し伸べる当麻。「…………あ、ままー」「よっと、……へ? あぁ、いいですよ、このハンカチは差上げます」「ぱぱがまたおんなのひととイチャイチャしてるよー」密告。「はい、痛い痛いのー、飛んでけー…………あぁ、すみません。娘にいつもやってるもんでってギャーーーー」パキーン高校時代からの慣れである。「……当麻?」バチバチ雷神様御光臨。「…………な、なんでしょう、愛する奥様」「そんなんで誤魔化されるか。またか? またなんか??」「へ? いや、ただこのお姉さんが倒れられてですね、手を貸していただけ…………」ふと見ると、女の人は目に涙を浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。そしてそのまま走り去る。捨てゼリフに、「私とは遊びたったのね信じてたのに!!」と言い残して。「なに不吉なことを言ってんのチミーーー?…………ハッ!!」「遺言はなんじゃーーーーー!!」ビリビリバチチュドーン「美琴麻琴愛してるーーーー」ギャーーーー両親の漫才を、娘はやさしく眺めているのだった。「ままうえ、ぱぱうえ、あいかわらずだのぅ」(また、あの夫婦か)(なんだ、また上条家か)(あ、上条さんだ)////////(またカミやんたちか)(あ、まことちゃんだーー)////////PM01 10「「げっこったー♪ げっこたランチー」」ファミレスで突如始まった親子デュエット。トイレから戻ったばかりの当麻さん的には、疑問を投げかけずにはいられない。「待て待て!! 美琴、お前もゲコ太ランチなの!?」「あ、ごめん」娘は一人でフォークを振りながら歌っている。「歳考えろよな」「当麻だけ仲間外れいやだっ「ちゃうわいっ!!」「あっ!! きたきたーー!!」「もう注文済みだったか…………」あれ? オレのぶんは??「やったわね!! 麻琴ちゃん!!…………どうしたの?」見ると、先ほどまでご機嫌だった当家の姫の目に涙。口は横一文字である。あ、口が動いた。「…………ぶろっかりー…………」「「あ、ホントだ」」PM02 10周りは、白、黒、紫、赤にピンク。「だから、ランジェリーショップに男は入りづらいってのに」「…………高校時代から慣れてそうだけど?」「偏見だゾ☆」「アン?」「あれ? 怖い」和むはずの空気が凍った。なぜだ。代わりに和ませたのは、駆け寄ってきた娘だった。「ままー!! これがいいー!!」「……まだ、ブラは早いかな」「まさに10年早いな」「むー、げこたかわいーのに…………」渋々手にしたかわいいスポーツブラを、棚に戻しに行く我が子。母の口からため息が出る。「でも、本当にすぐサイズが合わなくなっちゃうのよね」「成長著しいからなぁ」「間をおかずに買いかえなくちゃいけなくなって、困りもんよね」「オレは嬉しいけどな」「まぁ、わたしも嬉しいんだけどねー」「これからも上条さん、頑張って揉むぞー!!」「もm……バカッ!! 麻琴の話よ!!」「へ……?」「…………」「…………」「……スケベ」「ごめんなさい」空気は凍ったのに体温は高まった。 PM03 10「おもちゃこーなーにとつげきーー!!」娘、全力疾走の構えである。「走っちゃダメよ麻琴!!」「ほら、手を繋いで」「しょうがねーなー、ぱぱのめんどうみてやんよ、まいごになんなよ」「ブフォッ!!」「なんでオレが面倒見られる側なんです?」麻琴の顔は自信満々だった。PM03 25「美琴、キスしよっ!!」なにを言ってるんだコイツは。「バッ、な、なにいってんの!!? ここ、外!!」「だ~いじょうぶ。ここ柱あるし、死角だから見られないって」「そんな問題じゃ……あっ、ダ、メ……んっ、とう、ま……」(むになるのだ、まこと。むになればどうということはない。…………む、ってなんだろ?)(またあの夫婦か、チッ)(相変わらずの上条家だな、しね)(か、上条さんが、オスの顔になってる!!//////)(よそでやれや!! 上条家!!)(あぁ、美琴さんがあんなに乱れてしまうなんて//////)(リア充代表上条家、滅びないかなぁ)(ま、まことちゃんだ!! な、なんてはなしかけよう)//////PM4 30「髪のワックス見てくる」「はーい」「いってあっしゃーい!!」「さてと、どの化粧水がいいかしら?」「いーかしら?」「…………え?」しゃがんで棚を眺める美琴の横に、おんなじポーズの麻琴。「まこともけしょーすいつける!!」「なにいってるの、このムチムチホッペには不必要だ、生意気な」ムニムニ「あう~」なすすべもなく引っ張られる頬。弾力パネェのだった。「それとも、キレイになりたいほどの好きな人ができたかな?」「好きな人いるよー」まさかの返答。「ホント!!? パパ泣いちゃうね。誰?」「ままー!!」速答であった。「…………」「ままー?」「わたしも麻琴ちゃんのこと大好きーー!!」グワシッこんなん抱き締めるしかねぇのだった。「ままー、くるしーよー」PM4 35「美琴さん美琴さん」「…………な、なんでしょう愛しの旦那様」「そんなのでは誤魔化されませんよ。またですか?またなんですか?」一万円札もビックリの陰影である。「ち、違うのよ!! この子は鑑賞用、保存用に布教用…………」「で?」「こっちは贈与用、実務用、改造用、試験用、予備」「…………」「が、わたしと麻琴の2人分」「却下!! そのサイズのぬいぐるみなぞ1個で充分だ!!」「イーヤーだー!! せめて、せめて3つ~~~!!」「ぱぱおねがいかってーー!!」「ダメだったらダメーー!!」父の腕には母がしがみつき、足は娘がしがみつく。娘がこけた。(また、あの夫婦か)(なんだ、また上条家か)(奥さんに、そんなかわいい一面もあったのか!!)//////(あ、御坂さんたちだ、拡散拡散)(ま、まことちゃんのお、おぱんちゅがみ、みえ……!!)////// PM 5 00「……ぅー」「あら? 麻琴ちゃん、眠くなっちゃった?」歩く娘は目を擦る。しかもほぼ開いていない。「……ぱぱー」「どうした?」「だっこさせてあげてもいいよ?」「なんで上から目線なんだよ、ほらっ」「むぅ」「良かったわね、パパの抱っこ大好きだもんね。…………麻琴ちゃん?」返事がない。「すぴー」答えの代わりにかわいらしい吐息。「あらら」「もう寝ちゃったんだ」「ま、後は食材だけだろ?」「うん、晩御飯はなにがいい?」「そうだなぁ」「…………はん、ばーgむにゃ」「……決まりね」「この食いしん坊め」PM6 10「起きて、麻琴」「ふぇ?」「ご飯できたし、お風呂沸いたわよ。パパと一緒に入っちゃって」「やだぁ」「ん? ご飯が先がいいのか?」「やだぁ、グスッ」「じゃあママと入りたいの?」「やぁだぁ、グスッ」寝起きなのもあり、若干不機嫌な麻琴。いやだいやだの一点ばりである。「まだ寝たいのか?」「ちーがーうーヒグッ」「どうしたいのよ?」ここにきて、ようやく父が察した。「…………みんなで入りたいのか?」「…………」コクン頷く娘に、母は固まる。「ママは、ちょっと狭いと思うなぁ」「いいじゃん。みんなで入ろう」「ホンキで?」「ホンキも本気」「え、エッチなことしないでよね!?」「…………」「うそっ? 無言なの? 無言で行っちゃうの!!?」PM6 45「ままー、きょうのごはんなーに?」お風呂でテンションMAXになった麻琴は、おなかペコペコなのだった。「今日はねー…………じゃーん!! ハンバーグよ!!」「おおーーーー!!」「食べたかったんでしょ?」ビックリ仰天である。母はなぜ自分が食べたいものがわかったのだ?「!!?? なんで!! なんでわかったの!!?」「ママはlevel5だから、なんでもわかっちゃうのよ」「れべるふぁーぶ、すげー!!」「しかも、ゲコ太型ハンバーグ!!」「れべるふぁーぶ、すげー!!」ゲコ太ハンバーグは、れべるふぁーぶじゃないと作れないらしい。「…………当麻、いつまで恥ずかしがってんの?」「だ、だって、美琴が、あんなに積極的に~~」// PM7 20「げこたであそぼー!!」「お人形遊びか」さっそく新しいおもちゃの大活躍。「わたしけろよん!! ままはぴょんこー、で、ぱぱは、げこたねー」「ピョン子ね、わかった」「よしよし、『ケロヨン君、今日は何して遊ぼうか?』」「ブフォ!! なんで微妙に似てるのよ」「『きょうは、ばすで、おでかけします!!』」「バブフッ」いまでは当麻も娘(を洗脳した奥さん) の影響で、設定を完全に網羅している。「『け、ケロヨン君、それだと私はトイレでゲコゲコするしかないじゃないか?』」「『げこげこしててください。けろよんは、ばすにのりたいんです』」「ひでぇ」「アッハッハッハ!! ひ~~!!」PM8 00「寝たか?」「うん、グッスリ」子供部屋から出てきた妻に、夫は労いの言葉をかけ、続けた。「さすがママの安心感は違うんだな」「まーねー。愛しの美琴さまも、もうアンタだけのものじゃないのよー」「なぬっ!!?」「今日麻琴から大好きって言われちゃったもんねー」「ど、どうすれば美琴はオレのもとに戻って来てくれるんだ!!?」「晩酌に付き合って」「格安すぎない?」PM8 20「ねぇ~~ん、とーまぁ~~」「なんで急に甘えてきたん?」しなだれかかる美琴に、当麻さんは戸惑いである。「そ~~れはねぇ、とうまのことが、だいしゅきだからだにゃん!!」「にゃんて……あーもうかわいいなぁ」ナデクリギュッ「にゃぁ」ギュッなでなでして抱き締めた。むちゃんこかわいいのだった。「でさ、どうしたのさ?」ギュムー「んー、酔っちゃった♪」ギュムギュム「へ?」ギュム「?」ギュムー「さっきからお前ノンアルコールしか飲んでないじゃん」ギュムギュム「」ピタッ固まった。「お?」ギュムー「気づいてたの?」「おう」ギュムギュム「…………離して」「いやだ」ギュッ「もうやだー!! 恥ずかしーー!! 離せーー!!」////////「絶対に離さねー」ギュムギュム見てて楽しいのだった。PM8 50「落ち着きましたか?」「…………はい」「なんでお酒大好き美琴さまが、ノンアルコールなんて飲んでんの?」「だ、だって…………」「???」「当麻との記憶、少しでも覚えておきたいんだもん」「…………美琴」「何?」息とともに、時が止まる。「……もう、わたくし、美琴さんに酔ってます」「クサイセリフね」「あれー?」「どれくらい酔っちゃったの?」「べろんべろんです」「そんなに?」「顔が真っ赤になるくらい」「…………もっと欲しい?」「よろしければ」PM9 10♡PM11 00シーツにくるまる2人。相変わらず鉄壁なお仕事のシーツさんなのだった。「明日はチビ達が来るんだっけ?」「違う、それ来週。明日は麻琴が浜面さんたちのとこ行くのよ」「そっかそっか」「ということで、明日は存分に当麻に甘えるぞー」「オレも明日は存分に美琴とイチャイチャするぞー」少しの間見つめあう2人。コツンとおでこをぶつけると、だらしなく笑うのだった。「「えへへへ~~♡」」幸福な日常
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第000話 オープニング ◆SzP3LHozsw ワックスのかけられた床、高い天井、バスケットボードのシルエット、染み付いた汗の匂い――。 たった今深い眠りから目覚めたばかりの三井寿は、ぼんやりとした暗がりの中とはいえ、さすがにここが体育館なのだということにすぐ気付いていた。 何故こんな真っ暗な体育館にいるのかわからず、練習後に疲れて寝入ってしまったのかという疑問も生まれたが、どうもはっきりしたことは覚えていなかった。 「なんだよ、誰か起こしてくれたってよさそうなもんだが……」 ぼやきながら、三井はゆっくりと身を起こす。 硬い床で寝ていた所為か、身体の節々が軽く軋み、あまり気持ちの良い目覚めとは言えなかった。 三井は欠伸をしながら何気なく周囲を見回す。そこで三井は信じられないものを目撃する。 薄闇の中で三井が目にしたものは、この体育館の中で眠る人間だった。それも一人や二人ではなく、何十人という人達――。 男女を問わず、とにかく何十人という人間がこのさして広くもない体育館を埋めていた。 「なんだよ……こりゃ……?」 それは三井がからかわれているのではないかと疑ってしまうほど、奇妙で不気味な光景だった。 三井は座り込んだまま、しばらく自分の置かれている状況が理解できずに考え込んでしまう。暗さで判然としないまでも、周りで眠る人間に三井は覚えが無かった。 よくよく見回してみれば、ここは三井の通う神奈川県立湘北高校の体育館ではない。それが益々三井を混乱させた。 「あの……もしかして、三井さん……?」 自分を呼ぶか細い声に、三井は驚いて後ろを振り向く。 「晴子ちゃん……か?」 「はい、そうです」 ちょうど肩くらいに髪を切り揃えた少女が、静かに頷くのが見えた。 頷いた少女――赤木晴子は、兄に似ず整った美しい顔立ちをしており、それは薄闇の中でも十分に知ることが出来た。 「なぁ晴子ちゃん、これ、どういうことだかわかる?」 「……わかりりません。私もさっき目が覚めて……そしたらここに……」 三井の問いに、晴子は申し訳なさそうに小さく首を振った。 「俺と一緒ってわけか……。……じゃあ赤木や他の奴らは?」 赤木や他の奴らとは、三井と同じバスケ部の連中を指してる。自分と晴子がいるのなら、他の連中がいてもおかしくないと思ったのだ。 「ゴメンなさい、それもちょっと……」 「そうか……。――それにしても一体何なんだろうな、これは…」 もう一度、三井は辺りを見回した。晴子もそれに倣う。 いつの間にか二人の他にも起き出した人がいるようで、囁き合う声や人が動く気配がしていた。 様子から察するに、どうやら他の誰もこの状況を理解してはいないらしい。 それを敏感に感じ取ったからか、二人の胸中になんとなく予感めいた不安が浮かび、次第にそれが二人を包み込んでいった。 「……出よう。なんだかここにいちゃいけない気がする」 「……そうですね。私も…なんか嫌な感じがします…」 二人の意見が一致し、三井が晴子の腕を取って立ち上がろうとしたその時、まるで計ったように頭上のライトが点き、眩しいばかりの白い光が幾筋も降り注いだ。 と同時に、幾つかある出入り口が一斉に開き、そこから武装した兵士らしき格好をした屈強そうな男達がぞろぞろと入って来た。 唖然とする三井らを余所に、兵士達はまだ眠っている者を見つけると、まるで道端の小石でも蹴るように無造作に蹴りを入れて起こしていく。 それほど強烈な蹴りではなさそうなものの、蹴られた者は衝撃に驚いたり、痛みに跳ね起きたりして一人残らず目を覚ました。 無論、兵士達の漂わす異様な雰囲気に気圧され、抵抗する者などはほとんどいなかった。 全員が目を覚ましたことを確認すると、兵士達は『参加者』達を取り囲むように、それぞれ壁際へと散っていき、それから微動だにすることなく沈黙を守った。 「おいおい、何の冗談だよこれは……」 三井はその兵士達の機械のように整然とした動きを見つめ、ひどく薄気味悪さを感じていた。 「三井さん、あれ…」 晴子は震える指先で前方の入り口を差した。 「ほっほっ。やあ」 肥満し過ぎた丸みをおびた巨体を揺らし、入り口から現れたのはカーネル・サンダースに似た好々爺だった。 三井はおろか晴子にとって、その人の登場はまさに青天の霹靂と言えた。 「安西先生!」 それは湘北高校バスケ部の監督を務める安西光義だった。 安西は、見る者に好感を抱かせる緩やかな足取りでのそのそと歩いて来る。 そのすぐ後ろから、これまた巨体の持ち主の髭面をした中年と、まだ若そうな男が続いて入ってきた。 「あぁ!マサさんぢゃねーか!!」 「川藤!?」 今度は別のところからいくつかの驚きの声が上がる。その中から、リーゼントをした少年が立ち上がった。 「おいマサさん、一体何の騒ぎだよこりゃ?」 その場にいた誰もが思い、誰もが感じていた疑問を、リーゼントの少年は臆することなく訊いた。 「前田、大人しく座ってろ。そのことについてはこれから説明がある」 マサさんと呼ばれた中年は、その少年に向かって手をかざし、座るように促した。 リーゼントの少年――前田太尊は、納得いっていない表情を作りながらも、言われたとおり渋々といった感じで腰を沈めた。 「コホン。近藤君、よろしいですか?」 「あ、申し訳ありません安西先生。さあ、どうぞ」 そう言って、近藤は安西に発言の場を譲る。 安西は呆然とする『参加者』達の顔を一人一人見回してから、静かに口を開いた。 「えー、君達には殺し合いをしてもらいます」 『参加者』達の中で、誰一人として安西の言葉を理解出来た者はいなかった筈である。 みな冗談でも言われたくらいに思ったらしく、キョトンとした顔をして、安西を珍しいものでも見るような目つきで眺めていた。 「ぶわっはっは!殺し合いだと?オヤジ、まさかボケたのではあるまいな?」 突然、赤いボウズ頭の背の高い少年が進み出て、安西の前に立った。 と思うや否や、安西の頬を引っ張ったり、顎をタプタプしたりと、赤ボウズはやりたい放題始めてしまう。 「やっぱり桜木もいたのか……」 その赤いボウズ頭を、三井はよく知っていた。三井の後輩であり、湘北バスケ部一の問題児・桜木花道である。 普段なら、恩師である安西に対しての桜木の振る舞いを注意しているところだが、状況が状況だ。 三井はいつでも飛び出せるように間を測りながらも、ここは静かに桜木と安西の動向を見守ることにした。 「桜木君、座りなさい」 弄りまわされているにも拘らず、安西は怒らず顔色も変えずに淡々と言い放つ。 「ぬ、オヤジのくせに偉そうなことを!」 桜木は目を吊り上げて怒って見せる。安西はそれにも怯むようなことはなく、一切表情を崩さない。 「桜木君、いいからそこに座りなさい」 「だからオヤジのくせ――――」 「……聞こえんのか?あ?」 桜木が言い終わらぬうちに、安西が言葉を被せた。 それまで仏のように柔和だった安西の顔が、一瞬、鬼のように変化したのを、端から見ていた三井は見逃さなかった。 「……白髪鬼(ホワイトヘアーデビル)だ…」 三井は嘗て白髪鬼と恐れられた時分の安西の恐ろしさを、少しだけ垣間見た気がした。そう、少しだけ……。 桜木もその安西のほんの一瞬の変貌に驚き、それ以上の横暴を重ねようとはせず、すごすごと元に位置に戻っていった。 「ほっほっ。どうやら君達はまだよくわかっていないようですね。――川藤君、あれを」 既に元の柔和な仏の顔に戻った安西が、近藤と並んで後ろに控えていた若い男に向かって言った。 「はい」 川藤が兵士達に目配せをする。川藤の合図に、兵士達が何かを運んで来た。 キュラキュラとキャスターを鳴らさせて運ばれて来たものは腰ほどの高さがあり、ひどく重そうで、全体が黒い布に覆われていた。 川藤はそれが運ばれて来ると、何の躊躇いも無しに覆われた布を取り払う。 噎せ返るほどの生臭い匂いと共に現れたのは、バスケットボールを入れておく籠だった。 普段ならボールで一杯になるはずのその籠が、今は別の『モノ』で一杯になっている。籠に詰まっているのは、バラバラに解体された人間の身体――。 ほとんどただの肉隗と化している為、どれが何処のパーツかは測り難く、剥き出しの筋組織から滴り落ちた血が見る間に籠の下に赤い水溜りを作っていった。 体育館の空気が冷たく凍りつくのを、三井は肌で感じていた。暗い静寂が体育館を支配していく。 誰も声を発そうとはしなかった。誰もが目の前の事実がとても現実とは思えず、目を皿のようにして籠に釘付けとなってしまっていた。 「……嘘……でしょ……?…おにい……ちゃん……?……いやあああぁぁぁぁ!!!」 張り詰めた静寂を切り裂くように、晴子が叫んでいた。 肉隗は晴子の兄、赤木剛憲その人だった。 晴子の悲鳴をきっかけに、そこかしこで同じような悲鳴や、安西達を非難する怒号が上がり始める。 近藤はそれを予期していたように、サッと腕を挙げて兵士達に合図を送った。発砲命令である。 合図を受け取った兵士が、装備していた銃を頭上に向けて乱射した。物凄い轟音が鳴り、銃弾が高い天井を突き破り、電灯を割った。 硝煙の臭いと轟音が体育館中をこだました。割れた電灯の破片や砕かれた天井の欠片が、三井達の上に降ってくる。 暫くして銃声が止んだ。 また静寂が体育館を包む。 「安西先生がお話し中だ。みんな静かに聞くように」 息をひそめる『参加者』を見渡し、近藤が厳しい口調で言った。 「すいません安西先生。どうぞ続けてください」 近藤が安西に話の先を促す。 「……赤木君は今回のことに反対してね。仕方ないので殺してしまいました」 籠に無造作に押し込められた嘗ての神奈川No.1センターに、安西は何の感情も抱いてはいないようだった。 その証拠に、安西は一番上に乗っていた赤木の頭部を掴み上げると、ボードに向かってシュートポーズに入る。柔らかく、無駄のない綺麗なフォームだった。 「私も本当は殺したくはなかったんですがね。あんまり五月蝿く反対するものだから……つい……ほっ」 ボールに見立てた赤木の頭部が、安西の手から放たれた。 薄く開かれた赤木の瞼から恨めしそうな眼が覗いているようで、それはとても正視に耐えられる光景ではなかった。 頭部は高く綺麗な弧を描き、まっすぐゴールに吸い込まれていく。バサッと乾いた音がして、安西は見事3Pを決めた。 顔の大きさが災いしてか、赤木の頭部はネットに引っ掛かって落ちて来ることはなかった。 「……正気かよ……安西先生は……」 安西の一連の動作を見た三井が、小さく漏らした。晴子はとっくに視線を逸らし、耳を塞いで目を硬く閉じていた。 ガタガタと震える晴子の肩を、三井はそっと抱き寄せた。 「大丈夫……大丈夫だ晴子ちゃん。きっと大丈夫だから……」 晴子の耳元で囁く三井にも、一体何が大丈夫なのかはわかっていなかった。 ただそうやって言い聞かせていないといても立ってもいられないだけで、三井自身、大丈夫だなどと楽観視は全く出来なかった。 「――と、まぁこういうことだ。こうなりたくなかったら、しっかりと言うことを聞くように。いいな。 ではこれからゲームの説明に入る。よく聞いておかないと、あとで取り返しのつかないことになりかねんぞ。特に前田、しっかり聞くんだぞ」 近藤は一度、太尊を注意してから先を続けた。 「お前達はこれからこの島で殺し合いをする。殴り殺す、刺し殺す、撃ち殺す、絞め殺す、騙して殺す、なんだっていい。とにかく殺せ。 殺して殺して殺し尽くして、最後に生き残っている者を決める。たったこれだけのことだ。簡単だろ?」 誰も口を挟まなかった。 誰の頭にも赤木の変わり果てた姿と、安西の狂気に満ちた行動が焼きつき、次は自分がああなるのではないかという不安に慄いていた。 「ルールは簡単だ。これからデイパックを配る。そのデイパックを手に、お前達はこの島の各所に振り分けられる。 そこからは自由に行動し、ただひたすら殺戮を繰り返すだけ。 デイパックの中には数食分の食料・水、それに参加者の名簿・筆記用具・地図・コンパスが入っており、他にランダムで得物となるものも入っている。 得物はそれぞれ違い、当たりもあればハズレもあるだろう。よく使い道を考えて好きに使うといい。 それから6時間ごとに1回、こちらから放送を入れる。その際、6時間以内に死んだ人間と、禁止エリアを読み上げる。 禁止エリアは重要なことだから絶対に聞き逃すんじゃないぞ。 …おっと、大事なことを忘れていた。それからお前達の首には『首輪』を嵌めさせてもらている。気付いていたか?」 近藤の言葉に、全員が自分の首に触れた。 三井も同様に触り、自分の首に巻かれた首輪の冷たい金属的な感触を確かめる。 「気をつけろよ、下手なことをすると爆発するぞ。なにせ爆弾入りだからな、その首輪」 ほぼ同時に、全員が首輪を触っていた手を放した。 「もうやだ……帰りたい……」 何処かで誰かのすすり泣く声が上がっていた。 「ははは、心配するな、何も今すぐ爆発しやしない。それじゃ意味が無いからな。…この首輪が爆発する場合は四つ。 一つは『無理に外そうとしたり、強い衝撃を与えた場合』。 二つ目は『24時間以内に誰も死ななかった場合』。 三つ目は『禁止エリアに留まった場合』。 四つ目は『定められた範囲から出た場合』だ。 この四つを破ると、即爆発する仕掛けになっている。もちろん爆発はそれ相応の威力で、爆発すれば首輪の持ち主は必ず死ぬことになる。 いいか、肝心なのは二つ目、24時間以内に誰も死ななかった場合だ。 これは例え全員生きていても、24時間ゲームに動きの無いときは容赦なく爆発する、という意味だ。最後の二人に絞られていたとしてもそれは同様だ。 だから最低でも24時間以内に1回は誰かが死んでくれないと、お前達は生き残ることは出来ない。 せいぜいそんなマヌケな死に方をしないように、一所懸命殺していくんだぞ」 近藤は一度全員を見回し、何かここまでで質問のある者は手を挙げろと訊いた。無論、手など挙げる者はいない。 「……よし、何も無いようだな。――では川藤君、君から何かあるか?」 そう言うと、近藤は川藤を顧みた。 近藤に話題を振られた川藤は、少し照れくさそうにしながら一歩前に出た。 「人間として最も大切なこと……夢を持ち、夢をつらぬくことの大切さを忘れない。そうあるべきだと思っています。 人間として最も大切なこと……夢を持ち、夢をつらぬくことの大切さを忘れない。そうあるべきだと思っています」 二度同じ言葉を繰り返す川藤は、何故か自信ありげだった。 「……で、では安西先生、先生から最後に何か一言お願いします」 特に川藤には突っ込まず、近藤は締めに入った。 「ふむ……」 近藤から締めの言葉を託された安西は、暫く考え込んでから口を開いた。 「優勝を成し遂げたいのなら、もはや何が起きても揺らぐことのない断固たる決意が必要だ。最後まで……希望を捨てちゃいかん。諦めたらそこで試合終了だよ」 「――以上で宜しいですね?」 近藤がそう尋ねると、安西はうんと頷く。 するとそれを待ったいた兵士が、用意してあったお面のようなものを安西と近藤と川藤に手渡した。三人はそれを装着する。 三井は嫌な予感がした。 「あれは……ガスマスク……?」 そう呟いた途端、プシューっとガスが洩れるような音がして、体育館を煙が包んでいった。 この煙を吸っちゃいけない!三井は口と鼻を手で覆ったが、もう遅かった。 「では、これより試合開始とする。健闘を祈るぞ」 近藤のその言葉を最後に耳にしながら、三井の意識は急速に遠のいていった――――。 【ゲームスタート】 投下順 Next 桜木花道の決意 時間順 Next 桜木花道の決意 初登場 桜木花道 桜木花道の決意
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登録日:2015/11/22 Sun 10 54 57 更新日:2023/12/18 Mon 20 18 50NEW! 所要時間:約 12 分で読めます ▽タグ一覧 そっくりさんだらけ アッカド アニヲタ悪魔シリーズ アニヲタ神様シリーズ ウガリット ウガリット神話 シュメール バアル バビロニア バビロン ベル ベルゼブブ メソポタミア神話 全能神 堕とされた神 天空神 嵐神 悪魔 神 雷神 風評被害 魔王 「バアル」或いは「ベル」は古代オリエントに於ける最高位の神格。 古くからシュメールで信仰されていたと思しき神性が後にメソポタミアの支配者となったセム語系民族(*1)の信仰に組み込まれていったと考えられている(*2)。 元来はセム系言語で「王」や「主」を指す一般名詞であり、シュメール-アッカド神話を継承したバビロニアの主神マルドゥクも「ベル」の名で呼ばれている(*3)。 狭義では古代カナン(*4)に根付いていたウガリット神話の主神。 同地に侵入した海洋民族ペリシテ人の信仰にも取り入れられていたりする等、広い地域での信仰を獲得していた。 バアルの名は聖書にも登場するが、長らくキリスト教社会では旧世界の記憶として忘れ去られていた(*5)。 ウガリット神話の実態や、既に知られていたエジプトやギリシャ神話との関連性が明らかになって来たのはシリア北部で粘土版が発見された20世紀以降(*6)である。 これにより、同地域で発生したユダヤ教や、以降の一神教の展開の系譜も更に詳細となっていった。 地域毎に多少の違いがあり、土着の神話と習合して変化もしているが多くは天候を支配する天空神にして、雷を操る英雄神とされる。 農耕民族の場合は自然神の要素が加わる場合もあり、これらの要素は民族や地域により主神とは別の神に属性が分散されている場合もある。 これらの神話の伝播、累計神話は世界中に見られるが、ここではバビロニアとウガリット神話での概要を記す。 ※異説も多いのであくまでも一例です。 バビロニア ■マルドゥク(ベル) バビロニアの最高神。 シュメールから引き継がれた翻訳増補編集版「ギルガメシュ叙事詩」と並ぶバビロニア文学「エヌマ・エリシュ(*7)」にて語られる創造神にして英雄神。 かの「ハムラビ法典」はマルドゥクから下賜されたと記述されている。 DQN気質の祖父(天空神アヌ)と父(創造神エア)が調子に乗って騒ぎ回った挙げ句(?)に自分達を生んだ原初の二柱の神(*8)に戦いを挑もうと企てた。 それにキレた男神のアプスー(淡水)は制裁を加えようとするが、もう一柱にして妻である女神ティアマト(海水)は夫を諫め、アプスーもそれに従ったことから子等との戦いは回避されたかに見えた。 しかし、全知の神でもあるエアは耳聡くそれを知ると、隙を突いてアプスーを殺害してしまった。 アプスーの持つ主神の証たる「恐るべき光輝」を剥ぎ取り、自らが水の神(創造神)として妻のダムキナと共にアプスーの淡水に移ると、そこで息子マルドゥクを得たと云う。 続いてエアの快挙に調子に乗った神々は、母であるティアマトにも攻撃を開始。 これには流石のティアマトも怒り(そりゃそうだ)、自らの身を恐ろしい怪物に変えると共に七頭蛇、凶暴竜、毒蛇、炎竜、頭蠍尾獣、海の怪物、狂獅子、蠍人間、嵐の魔物、獣人、魚人間…と云った異形の怪物を生み出し、息子にして二番目の夫ともされるキングーなる神を司令官に据えて神々との戦いに挑んだ。 怒り狂う大海の化身たる母神の余りの迫力には仕掛けた側である神々も怯え、逃げ惑うばかりであったが、唯一人マルドゥクのみはティアマトの軍勢に立ち向かい、最終的には原初の母であるティアマトを殺して身を二つに引き裂いた(*9)。 その肉体により天地が創られ、余ったパーツで世界を構成する月や太陽、川や霧が創られたのだと云う。 この後、新たな世界で生きる神々の代役にして奉仕種族たる人間も創造されたが、その素材は主犯キングーの血液であり、それ故に人間は生まれながらに罪を抱えているのだとも云う。 この原罪の思想は後のキリスト教にまで共通して引き継がれていった。 尚、バビロニア(神々の門)とはマルドゥクの統治する王国の意である。 マルドゥクは古くからシュメールにも存在したとされる神ではあるが、元々はバビロンの都市の守護神に過ぎず、それがバビロンの隆盛と共に創世神話が上書きされて最高神にまで上り詰めたらしい(*10)。 アッカド神話は多少の名称の違いやアレンジこそあるものの基本的な構造はシュメールと共通している。 マルドゥク(或いはエンリル)は後の支配民族であるアッシリア人にも信仰されたらしく、その威勢は後の旧約聖書「エレミヤ書」で呪詛の様な文言を吐かれている事からも窺える。 【関連する神性】 ■アプスー ■ティアマト 各々、淡水と海水の意であり、原典にはそうした記述は見られないものの、現代では共に龍神として扱われたりする。 アプスーは川や地下水、ティアマトは海の象徴。 水源は降雨量の少ない砂漠の地域では生命の源であり、それ故に古代オリエントでは水が生命の象徴として扱われている。 水源の神の要素は、後の地母神の系譜の女神の属性としても組み込まれていった。 ■アン(アヌ) 天の神。 一応は最高神だが、遡ったシュメールですら記録に残っている段階では既に「閑な神」と成り果てていた。 ■エンリル(エッリル) 大気の神。 当時の最高神。 属性の多くはマルドゥクに引き継がれた。 「ギルガメシュ叙事詩」では特に理由も無く洪水を起こして世界を滅亡させた事で知られる。 西セム語系文化=地中海東岸地域の主神バアルと同一の神と見なされている模様。 ■エンキ(エア) 淡水の神。 故に創造の神でもある。 両肩からチグリス、ユーフラテス川が生じている姿で描かれている。 シュメールでは彼がアブズー(淡水、深淵)と呼ばれている。 洪水神話でウトナピシュティムを助けた事から人間に優しい神とされる一方、神としては眉を顰める様な神話も残る。 ■ドゥムジ(タンムズ) イナンナの夫とも愛人ともされる羊飼い。 元来は植物神であり、アッカドのタンムズの姿の方が原型に近いと思われる。 ウガリットではバアルの属性に組み込まれ、ギリシャ神話では美少年アドニスの神話の原型になった。 ウガリット ■バアル(ハダド) 古代カナン(地中海東岸)の主神。 創造神エルの息子であり、彼から主権を与えられた(奪った)若き王にして稲妻を操る英雄神。 豊穣を司る雨神、植物神でもあり、アナトとの関係を含めてシュメールのドゥムジと共通する要素も持つ。 同じくエルの息子である竜神ヤムや死の神モト、挙げ句には父神の筈のエル自身との対立が語られているが、これは元来は他地域(シュメール)の神であったバアルが信仰に入る中で生じた民族や、階級間の対立と混乱が反映されているのでは?と見られている。 古代オリエント(小アジア~エジプト)には同様の特徴を持つ神性が非常に多く、ギリシャや北欧…etc.にも影響が見られる。 バアルとはセム系言語で「王」を指す一般名詞であり、固有の神名としてはハダド(雷鳴)の名があるが、バアルの名が広まり過ぎたのか余り知られてはいなかった。 この名は、矢張りアッカド神話に見られる雷神アダドと同じである。 バアルは後のユダヤ/キリスト教では悪魔(ベルゼブブ、バエル…etc.)の名として伝えられているが、これはユダヤの信仰する「神」の出自が関係しているのかも知れない。 他地域にも伝わったと考えられているシュメール系神話には大河の氾濫を描いた洪水神話、自然災害の象徴たる悪竜退治、冥府下りと不作の時期の到来、死からの再生、英雄神への鍛冶神からの武器の譲渡…etc.の神話がある。 海の民ペリシテ人の信仰でも主神格として迎え入れられており、彼らの信奉するダゴン(植物神、或いは水神)の息子とされている。 「ダガン(穀物)の息子」はウガリットでもそう称されており、バアルが外来神である事を暗に示され続けていたとも考えられている。 【関連する神性】 ■エール(イルウ) 粘土版文書に見られるウガリット神話の父神。 バアルの父神とされる。名はセム系言語で「神」を指し、語源は失伝しているが「上」や「力」を意味していたと予想されている。 ウガリット神話内では偉大なる最高神である一方、バアルを素直に認めず兄弟喧嘩をけしかける黒幕としても書かれる。ギリシア神話だと地母神ガイアのような立ち位置だろうか。 バアルが死んだ際には豊穣神の死によって生じた荒れた大地や乾いた渓流を見て驚愕し、バアルを殺すべきではなかったと反省するようになる。 その他アナトに脅迫され渋々人間の王子アクハトの殺害を許したり、二人の女に『夜明け』と『夕暮れ』を孕ませたり等の神話が残っている。 エルと言う名前のこともありヤハウェ(エロヒム、エル=シャダイ)信仰の原型としても研究されている。 ヤハウェ自体はバアル信仰やその他様々なカナン宗教の影響が見られる為、一概にはエールが起源であるとは言えないが、最高神としての厳格な態度には共通点が見受けられる。 ■アシェラト(アーシラト) 粘土版文書に見られるウガリット神話の母神。 バアルの母神とされる。ウガリット神話内では生命力を司る太母として扱われており、エールとの間に70人の子供を産んだとされる。 バアルが自分の屋敷を建てる際には彼女に許可を取りに行った。またケレト王が捧げ物の契約を忘れた際には彼に重病の呪いを掛けたこともある。 聖書内で使用される『アシェラ』の文言はアシェラトのイスラエル地域での変化と考えられる。 現在ウガリット神話はその大部分をシリア北西のラスシャムラのウガリット遺跡から見つかった『ラスシャムラ刻文』に求められるが、前述の通りこの刻文強いては遺跡自体が見つかったのが20世紀に入ってからの話である。 その為古い資料ではアナトやアシェラトを、聖書で多用され悪魔化したことにより有名になっていたアスタルトの表記ゆれや変化形と捉えている事が多い。 ■アナト バアルの妹であり、妻ともされる女神。 シュメールのイナンナ女神が起源と考えられており、アッカドのイシュタル、同地域のアスタルトと同一視される。 起源を等しくするアセト(イシス)の居るエジプトにもバアルと共に組み込まれた時期がある事からも信仰の広さが窺える。 創造神エルの娘にして妻とされるが、後の神話では常にバアルに味方しているお兄ちゃん大好きっ娘。 基本的には豊穣を司る慈愛の女神とされるが、恐るべき殺戮者としての側面を持ち、バアルが死の神モトに殺害された際には残酷な手段によりモトに報復している(*11)。 死せるバアルの復活に関わる事から再生の象徴でもある(*12)。 神殿が無いと嘆くバアルの為に武力を盾にエルを脅した事まである。 上記の様にオリエントでは聖なる動物として牡牛がよく登場し、神がその姿で信仰される場合もあるが、アナトは牡牛化したバアルと交わる際には牝牛の姿を取って応じたと云う……古代極まってんな。 また、神格化された後の聖母マリア像は、これら地中海全域に伝播したイナンナ女神に帰属する女神の系譜の神話が集約されており、後代にはマリアを航海の女神とする信仰までが生まれた。 後のキリスト教では奇跡の喧伝の為に処女は純潔と同義とされたが、本来の処女は純潔に限らず若く健全な乙女を意味する語でもあり、妻にして母でもある女神にも適用されていた。 ■アスタルト(アスタルテ) アスタルトも同じくバアルの姉妹にして妻であり、航海を守護する海の女神とされる。ギリシア神話に登場する金星と愛の女神アプロディテの原型とも呼べる。 ウガリット神話内では海との関連からか前半のヤムとの戦いの文書での出番が多い。しかし後半になるとめっきり出番が欠如する。 ウガリット以南の地域はアナトよりもアスタルトのほうが信仰に厚く、バアル及びバアルと同一視される主神の妃として人気が高い。 アナトは清純のイメージが強いが、アスタルトは奔放でキリスト教の大悪魔アスタロトの直接の原型となった。 エジプトにヒクソス(*13)が流入してきた際にバアル・アスタルト・アナトと言ったカナアンの信仰もエジプトに入り込んだ。 ■ヤム=ナハル(リタン) ウガリットの川と海を司る神でありバアルの兄の一人にして最初のライバル。ヤムは『海』、ナハルは『川』を意味する。ゼブル=ヤムなら『海の王子』と言ったところか。 サフォンの神々の集会にて神々からはバアルが王として擁立されたが、最高神にして最大の権力者である父神エールだけはヤムを擁立した為争いとなった。 エールの庇護を盾にして神々や人間達に圧政や重税を敷こうとするが、エジプト方向から来る叡智と鍛冶の神コシャル・ハシスの創り出した二本の棍棒(言わずもがな雷神バアルの持つ武器なので雷霆である) 『追放』<ヤグルシ>と『駆逐』<アイムール>を持ったバアルに胸と額を打ち砕かれ息絶える。 リタンはその名を聖書に登場するリヴァイアサンと同起源とする竜神であり、ヤムの従者か或いはヤムの化身として考えられている。他にもタンニンと言った同種の龍が出てくる、がやはりアナトに倒される。 混沌や自然災害の象徴と考えられており、それを秩序たるバアル(雨)が征する構図を顕していると考えられている(*14)。 ■モト(モート) ウガリットの死と乾季を司る神でありバアルの兄の一人にして最大のライバル。モートは『死』を意味する。 ウガリット神話内での冥府<ホロン>の支配者であり、兄弟であるヤムがバアルに倒された際にエールが次に彼を擁立した。木属性のバアルに水属性のナハルがやられたので火属性のモートで対抗。 バアルを言葉巧みに自分の領域である冥府に拉致して力を発揮出来ない状態にして殺害した(恐怖で屈服させたとも)。 バアルが消えた地上からは豊穣が去り、大地は砂漠化したと云う(*15)。 前述の様にアナトの報復を受けて殺害されるが、バアルが復活するとモトも復活する。乾季と雨季は永久に繰り返すということだ。 二神は再び争い、最終的に太陽女神シャプシュの仲裁により敗北を認めバアルを王として認めたとされるが、作物の採れなくなる時期とはバアルがモトの冥府に呑み込まれて屈辱の時を過ごしている期間と一致すると考えられていた(*16)。 同様の神話は各地に残り、花婿(男神)を花嫁(女神)が救い出す物語として伝えられていった。 エジプトのウシル(オシリス)神話と構図が共通している。 ■シャプシュ ウガリットの司法を司る太陽女神である。名前は『太陽』を意味し、アッカド神話のシャマシュと同語源である。 アッカド神話のシャマシュとは違い女神として登場する。同じく太陽女神を信仰するフルリ人の影響だろうか? ウガリットは陸路からヒッタイトやメソポタミア、海路からエジプトやキプロス等に繋がるフェニキア交易の中継拠点である為、様々な民族や信仰が入り込んできている。 シャプシュはバアルの戦いの文書では後半モートとの戦いで名前が出るようになる。太陽と乾季、太陽と冥界の切っても切れない関係があるようだ。 モートによって地の裏側の冥界に隠されたバアルの死体をアナトの為に探してきたり、エールの命によってバアルとモートの戦いを仲裁したりする。 シャマシュやその他様々な太陽神と同じく司法を担当していると捉えられる。お天道さまが見てるということだ。太陽は偉大である。 追記修正は古代文字を解読しながらお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 神様世界じゃキリスト教の被害者No.1 -- (2015-11-22 13 59 41) バアルだけでなく、ベルゼブブやベルフェゴールも被害者。 -- 名無しさん (2015-11-22 14 39 46) ↑そのベルゼブブやベルフェゴールのルーツという説があるのがバアルなのだ。 -- 名無しさん (2015-11-22 20 40 21) スパロボZシリーズでもお馴染み -- 名無しさん (2015-11-30 10 56 45) バアルの威光が拡大したのかアシェラもバアルの妃とする記述があったっけか。そりゃあ、エル(4文字)も恨むわ。 -- 名無しさん (2016-04-06 13 02 05) 超今更だけど「ガッシュ・ベル」の「ベル」ってひょっとしてそういうことだったん……? -- 名無しさん (2020-06-20 06 20 10) ↑×6 とは言ってもユダヤ教が頑なかつ攻撃的になったのって所謂バビロン捕囚が主な原因なんで、キリスト教がアレってのを前提にしたとしてもバビロニアの神々の悪魔化被害は「お前らが生んだモンスターだろうが」って面もあるんだけどな。 -- 名無しさん (2021-12-14 22 17 45) バアルのようなもの -- 名無しさん (2023-04-13 17 30 54) キリスト教が積極的に悪魔扱いした異教の神って実は殆どバアル関連の神々だけだし、その原因は民族対立と言うかむしろ当時はバアル信仰側がユダヤ・キリスト教を弾圧や迫害してたからってのもあるのでユダヤ・キリスト教の被害者扱いはちょっと違うわな -- 名無しさん (2023-11-21 22 31 06) 名前 コメント
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アンチオリックスの芸能人・有名人リスト 特定の球団のアンチ 浅野翔吾 巨人選手 香川県出身だが巨人ファンでアンチオリックス。 浅村栄斗 楽天選手 元々は地元大阪の近鉄ファンで、西武から国内FAを行使した際は近鉄と吸収合併したオリックスへの入団も打診されたが、恐らく近鉄を吸収合併した恨みからかオリックスの入団を断り、創設初年度からのファンだった楽天へ入団した。 新垣渚 元プロ野球投手 熱狂的なホークスファンで「ホークス以外なら進学」と決め、オリックスの指名を拒否した。 荒木絵里香 元女子バレー日本代表 岡山県出身だが巨人ファンでオリックスはアンチ。 石川柊太 ソフトバンク投手 2017年〜2022年まで対ソフトバンク戦9連勝してオリックスキラーとして活躍した。その後もオリックス戦で良い投球も見せている。 伊藤光 DeNA選手 2018年7月トレードでオリックスからDeNAへ移籍。移籍が決まった瞬間親しい知人に「よっしゃああー!」と喜びを爆発させたメールを送った。オリックス時代の同僚のLINEは全て削除し、グループラインからも即退会した。 内海哲也 元巨人・西武投手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。巨人入りを熱望していたのか、2000年ドラフトでオリックスの指名を拒否した。(しかし、ヤクルト以外なら交渉には応じるつもりで居た。) 大城卓三 巨人捕手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。2024年交流戦でオリックスと対決したときに富山にデットボール当てられたことで激怒した。 加藤貴之 日本ハム投手 2023年オフFAでオリックスが獲得調査に乗り出したが、日本ハムに残留した。本人は巨人ファンで巨人が乗り出さなかったため行使しなかった。 金子千尋 元オリックス・日本ハム投手 2018年オフオリックスから減額制限を大幅に超える減俸提示に納得が行かず、即座に日本ハムへ移籍した。その入団会見の中で「なんで日ハム来たの?」と言う質問に対して「前に居たオリックスというチームがあるんですけど、そこで給料を下げらまして…」と発言し、オリックスファンの怒りを買ってしまった。しかも、2019年の対オリックス戦は初対決の試合の3回に2失点して以降30イニング無失点で防御率0.49、5勝無敗と古巣に対してあまりに鬼畜過ぎる成績を残した。 コディ・ポンセ 日ハム→楽天投手 日本ハムとの交渉が決裂し、他球団への交渉に臨むため自身のインスタでパリーグ5球団のインスタをフォローしたがオリックス球団のインスタだけフォローしなかった。因みにオリックス戦は通算1試合以外勝ちなしで投げた試合は通算2試合を除いて負けがついている(特に京セラドームで投げた試合は全て負けがついてる)。そのためかオリックスをかなり嫌っている。 小林誠司 巨人捕手 熱狂的な巨人ファンでアンチ阪神だが、2012年ドラフトでオリックスも指名を検討していたが、「指名されても入団拒否」の意思を示したため指名漏れになったという経緯がある。 近藤健介 日ハム→ソフトバンク選手 2022年オフに海外FA権を行使した時にオリックスを門前払いしてパリーグの優勝多い球団であるソフトバンクに移籍決断した。 桜井日奈子 女優 岡山県出身だが巨人ファンかつアンチオリックス。セ・リーグに関してはアンチカープである。 菅野智之 巨人投手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。交際していたモデルの女性を山本に取られたことを恨み続けている。 大悟(千鳥) お笑い芸人 岡山県出身だが巨人ファンでアンチオリックス。 寺原隼人 元ダイエー・DeNA・オリックス投手 ベイスターズ時代の2010年オフに山本省吾と喜田剛との交換トレードで高宮和也と共にオリックスへ移籍したが、ベイスターズやオリックスにいる意思はなく、2012年オフに即座にFA宣言して古巣のソフトバンクに復帰した。なお本人はヤクルトファン。 中川家礼二(中川家) お笑い芸人 小学6年の時に江夏豊を見て以来、東京時代からのファイターズファン。2012-2013年に糸井が突如のトレードを受けたことに落胆、さらにその影響(?)で今季最下位になったのを受け、アンチオリックスに。糸井について「メジャー行った方がまだいい」と明言。セリーグに関してはアンチ巨人。好きだった小笠原が巨人移籍になった際、「あの小笠原が俺の期待を裏切るとは。二度と応援しない」と批判した。 中川颯 オリックス→DeNA選手 熱狂的なDeNAファンで、2023年オフオリックスから2年連続構想外になったとき起用法に不満があって、迷うことなくDeNAへ移籍した。 中島宏之 巨人→中日選手 西武在籍時にオリックスに対し「しょうもないチーム」と発言。その後日本球界復帰時にオリックスへ入団するが、契約満了後に自ら退団を選び巨人へ移籍したが、4年後に戦力外で中日へ移籍した。 中村奨吾 ロッテ選手 2018年7月20日のオリックス戦でわざと当たりに行って死球となり乱闘騒ぎを起こした。 西勇輝 阪神投手 2018年オフFAでオリックスから阪神へ移籍した。起用法とフロントに不満があって怒りで宣言移籍した。しかし阪神移籍後二度目のFA権取得をした時に古巣であるオリックスへの出戻りを望んでFA権行使したが球団から出戻りを拒否されてしまった。 橋下徹 弁護士・元大阪市長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。大阪府知事→市長だが、元々東京出身であり「本当は東京で仕事したい」とコメントし、大阪そのものが嫌いな模様。 増田英彦(ますだおかだ) お笑い芸人 熱狂的なオリックスファンの相方・岡田を馬鹿にしている。アンチ巨人でもある。 森脇亮介 西武投手 2019年8月13日の西武vsオリックス戦で若月にわざと乱闘を仕掛けられた上に佐竹コーチに突き飛ばされたことを根に持っている。 山川穂高 西武→ソフトバンク内野手 2024年3月29日のオリックスvsソフトバンク戦でのヒーローインタビューでオリックスファンからの大ブーイングを楽しんでいる描写が見られた。 山崎伊織 巨人投手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。兵庫県神戸市出身だがオリックスは阪神に次いで激しく嫌っている。 大和 DeNA選手 阪神から出場機会を求めて国内FA権を行使した時にオリックスを門前払いして神奈川県に大和という駅の存在を知り横浜に愛着が沸いて迷わず横浜移籍を決断した。 陽岱鋼 元巨人選手 2016年オフに国内FA権を行使した時にオリックスを断って巨人に移籍決断した。本人曰く「糸井が抜けた後の穴埋め」と思われるのが嫌だった。 吉川尚輝 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。2021年交流戦でオリックスと対決したときに山崎福也にデットボール当てられたことで激怒した。 吉田凌 オリックス→ロッテ投手 2023年オフオリックスから戦力外になったとき出場激減りに不満があって、そのオフにトライアウトでロッテへ育成として移籍した。 特定の球団のアンチ(2004年の球界再編) 礒部公一 元近鉄・楽天選手 2004年の球界再編でオリックスと近鉄が合併、楽天が新規参入したが、オリックスのプロテクトを拒否し楽天へ入団した。 岩隈久志 元楽天・マリナーズ投手 2004年-2005年のオリックス/近鉄合併(近鉄は事実上の消滅)、楽天球団誕生に伴う分配ドラフトの際オリックスに分配されたがオリックス入りを自ら拒否し実質の金銭トレードで楽天へ入団。 大村直之 元近鉄・ソフトバンク選手 2004年の球界再編でオリックスと近鉄が合併、楽天が新規参入したが、オリックスと楽天のどちらにも行きたくなかったため保有していたFA権を行使してソフトバンクへ移籍した。しかし2008年オフにトレードでオリックスへ入団するが、起用法で揉めて2000安打目前ながら引退。 中村紀洋 元DeNA選手 2004年の球界再編でオリックスと近鉄が合併、楽天が新規参入したが、オリックスと楽天のどちらにも行きたくなかったため即座にポスティングシステムを利用してメジャーへ移籍した。しかし日本球界復帰時にオリックスしかオファーが来なく、嫌々と渋々オリックスの移籍決断した。 贔屓球団以外アンチ 秋広優人 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 石原慎太郎 元政治家 故人。熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 稲田朋美 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 井納翔一 元巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 大勢(翁田大勢) 巨人投手 兵庫県出身だが熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 岡本和真 巨人選手 関西の奈良県出身だが熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 小野田紀美 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 オコエ瑠偉 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 梶谷隆幸 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。島根県出身だがオリックスは特に激しく嫌っている。 片山さつき 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 門脇誠 巨人選手 関西の奈良県出身だが熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 木原誠二 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 河野太郎 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 坂本勇人 巨人選手 関西の兵庫県出身だが熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 櫻井よしこ ジャーナリスト 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 佐藤正久 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 澤村拓一 ロッテ選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 菅義偉 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。過去に「巨人以外の球団は大がつくほど嫌い」という発言をしている。 杉田水脈 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 高梨雄平 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 高畑充希 俳優 熱狂的な阪神ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。オリックスはソフトバンクに次いで激しく嫌っている。 竹中平蔵 パソナ会長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 テリー伊藤 プロデューサー 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 徳光和夫 フリーアナ 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 十倉雅和 経団連会長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 戸郷翔征 巨人投手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 中居正広 元SMAPメンバー 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 成田悠輔 経済学者 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 新浪剛史 サントリー社長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 橋本琴絵 作家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 はすみとしこ ネトウヨ漫画家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 原辰徳 巨人監督 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。「俺は巨人以外のチームで絶対に監督はやらない」と明言。ドラフトの際も巨人以外から指名された場合は入団を拒否するつもりだった。 百田尚樹 放送作家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 堀内恒夫 政治家、元巨人監督 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。評論家時代には他球団を見下す発言が多々見られた。 松井一郎 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 松川るい 政治家 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 松田宣浩 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 丸佳浩 巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 御手洗冨士夫 キヤノン社長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 村田修一 元巨人選手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 元木大介 巨人コーチ 大阪府豊中市出身、元南海ホークスファンだったが、熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 山口俊 元DeNA・巨人投手 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 横山英幸 大阪市長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 吉村洋文 大阪府知事 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 リコ♡LOTTE 歌い手 熱狂的なロッテファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。Xでは佐々木朗希の完全試合の件で揉めた。 渡邉恒雄 読売新聞社会長 巨人以外の近鉄などの消滅した球団も含む他球団を激しく憎んでいる。ただし巨人を支持する理由は新聞の売り上げのためであり、巨人ファンとは言い難い。 渡邉美樹 ワタミ会長 熱狂的な巨人ファンで近鉄などの消滅した球団も含む他球団は全てアンチ。 アンチオリックスの企業・団体リスト 巨人ファン 野球ファン ほぼ全員がアンチ阪神で、それ以外では中日を嫌う者が多いが、それ以外の球団に関しても見下している者は多く、中には巨人以外は全てアンチという者も少なくない。パ・リーグ各球団は「マイナー球団」と言って見下す者が多い。 阪神ファン 野球ファン 交流戦や日本シリーズを除いて無縁の相手であるが、やはり「金満補強ばっかり」と嫌っている者が多い、巨人ファンと同様に嫌がらせ目的で敢えて嘘とわかるように阪神ファンを自称した者(森、廣岡など)も居る事に多くの者が激怒した。 DeNAファン 野球ファン 交流戦や日本シリーズを除いて無縁の相手であるが、やはり「金満補強ばっかり」と嫌っている者が多い。 ヤクルトファン 野球ファン 交流戦や日本シリーズを除いて無縁の相手であるが、やはり「金満補強ばっかり」と嫌っている者が多い。 中日ファン 野球ファン 交流戦や日本シリーズを除いて無縁の相手であるが、やはり「金満補強ばっかり」と嫌っている者が多い。 ネット右翼(ネトウヨ) ネット住民 巨人ファン率が高い傾向にあるので他球団(特に阪神、中日)はアンチが多い傾向にある。 西武ファン 野球ファン 元々アンチオリックスが多かったが、2022年オフにはオリックスフロントによる育成プロテクトという人的逃れ(椋木、富山、中川颯など)によりアンチがさらに増加し、スタメン発表時に森友哉が出る度にベルーナドームに大ブーイングが起きた。 ロッテファン 野球ファン 元々アンチオリックスが多かったが、カスティーヨやペルドモなどの優良助っ人を取られた経緯もあって嫌いな者が多い傾向にある。 東京ドーム ドーム球場およびその組織 2009年シーズンまではオリックスホーム戦で京セラドーム大阪の代わりに本ドームで主催試合を度々開催した事があるが、「本当は巨人以外の主催試合はやるべきでない。」と貸し出しにも消極的だった。 アンチ近鉄の有名人・芸能人リスト 定岡正二 元巨人投手 1985年オフにトレードでの近鉄移籍が決まるも「巨人にいらないと言われたらそこまで」と移籍を拒否し28歳の若さで引退した。 福留孝介 元中日・阪神選手 1995年のドラフトで「希望する中日、巨人以外の球団から指名された場合には社会人野球・日本生命硬式野球部へ進む」と決め、近鉄の入団を拒否した。 ユウキ 元オリックス投手 加藤伸一の人的補償で近鉄からオリックスに移籍した。プロテクト選手名簿に自分を入れていなかった近鉄球団に対して「ボロボロのギッタンギッタンにして見返してやりますよ」と宣言した。
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前ページ次ページるろうに使い魔 ラ・ロシェールでの一夜が明け、朝日が昇る前の頃、剣心は目が覚めた。 昔からの習慣なのか、どうにもベットは寝付けない。向かい側のギーシュは、まだ熟睡中だった。 明日まで足止めされるとはいえ、起きてしまった以上はしょうがない。とりあえず、あまり音を立てないように、剣心は普段の着物に着替え始めた。 そんな折、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。こんな早朝に誰かと思い、ドアを開けると、そこには爽やかな顔をしたワルドがいた。 「おはよう。使い魔くん」 「どうもおはようでござる。拙者に何か?」 ただ挨拶をしに来たわけでは無いだろう。何か用でもあるのだろうか。 すると、ワルドは変わらぬ笑顔でこう言った。 「君は、伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうだね?」 「―――おろ?」 剣心は不思議そうな表情でワルドを見た。そのことを知っているのは、オスマンと自分くらいなものだ。このことは他言無用だったし、当の約束をつけたオスマンがそれを破るとは、とても考えられない。 「ああ、僕は歴史に興味があってね。フーケを尋問したときに、彼女が君の事について、随分と語ってくれたからね。僕自身も君のことを色々と調べた結果、『ガンダールヴ』にたどり着いたワケさ」 どこか言い訳がましい口調だったが、矛盾は取り敢えずない。フーケは元学院長の秘書を務めてた位だし、ガンダールウについても知ってておかしくは無いだろう。 だがそれだと、隠す意味は無いんじゃないのか? と心の中でオスマンに問いかけながら、剣心はそんな事を言いにワルドが来たわけじゃないだろうと思った。 「それについて、拙者に聞きたいことでもあるでござるか?」 「いや、かの『土くれ』を捕まえたという、君の実力が知りたくてね。一つ手合わせ願いたい」 そう言って、ワルドは好戦的な笑みを浮かべながら、杖を取り出した。 剣心は一瞬、面倒そうな顔をしたが、丁度手にもっていた逆刃刀をワルドの前に見せ、その刀身を晒した。 「力比べや見せ合いのために、振るう剣を持ってはござらんよ」 それを聞いて、少し考え込むようにワルドは俯くと、次にこう言った。 「君は、ルイズから聞いたのだが、何でも『異世界』から来たそうじゃないか。なら、この世界の戦い方も、君の見てきたものとは一味違う訳だ。ルイズを守る使い魔としても、きっと参考になると思うよ」 ワルドの眼は既に、闘志でギラついていた。どうあっても闘いたいらしい。こういう手合いは納得するまで、しつこく付きまとわれるだろう。 どうしたものか、と考えていると、いつの間にか起きていたギーシュも、好奇の目でこちらを見ていた。 「ケンシンと子爵が決闘? こりゃあ面白いな……どうなるんだ?」 「な、彼の期待に応えてあげるためにも、ここは一つ」 剣心は、はぁ…とため息をついた。最早闘わなければいけないような雰囲気だ。逃げ場はない。仕方なく渋々といった感じで、剣心は承諾した。 「…場所はどこで?」 「この宿は昔、アルビオンからの侵略を防ぐための砦だったのさ。中庭に練兵場がある」 そう言うと、ワルドは時間と正確な場所を告げ、その場を後にした。 隣では、こうしちゃいられないとばかりに、ギーシュが服を着替え始め準備を整える。既に行く気満々だ。 すると今度は、面白そうじゃねえかと、デルフの声が聞こえた。 「今度の決闘には、俺を使ってくれよ。相棒の期待に見事応えてやるぜ!!」 立て掛けられたデルフの言葉に、剣心はもうどうにでもなれと半ば諦めた感じで呟いた。 第十五幕 『仕合』 時刻は過ぎ、場所は練兵場―――。 練兵場とは名ばかりの、今やただの広い物置と化したこの地で、剣心とワルドは数十歩離れて向かい合った。 「昔…と言っても君には分からんだろうが、かのフィリップ三世の治下では、ここで良く貴族が決闘したものさ」 懐かしむような口癖で、ワルドは言葉を続ける。 「古き良き時代、王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った時代…貴族が貴族らしかった時代…名誉と、誇りをかけて僕たち貴族は魔法を唱えあった。でも、実際は下らないことで杖を抜きあったものさ。―――そう、例えば女を取り合ったりね」 最後の行に、剣心はピクリと反応する。彼が何故こうまでして、決闘を臨んだ理由が、何となく分かったからだ。 そしてそれを肯定するかのように、パタパタとこちらに向かう足音が聞こえてくる。 剣心がそちらに目をやると、慌てた様子のルイズがいた。 「立ち会いには、それなりの作法というものがあってね、彼女には介添え人になってもらうように言っておいた」 「ちょっと…ワルドもケンシンも何やってんのよ!」 驚いた口調でまくし立てるルイズの言葉に、ワルドは冷静に返す。 「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」 「もう!! 今はそんなバカなことやっている時じゃないでしょう!」 「そうだね。でも貴族というヤツは厄介でね、強いか弱いか、それが気になるとどうにもならなくなるのさ」 それを聞いたルイズは、今度は剣心の方を見て言った。 「ケンシンも、こんな馬鹿げたことは止めなさいよ!!」 剣心は、困ったように頭を掻いた。未だに本心はルイズの言うとおり、できればこんなことは御免被りたい。これが発端で変ないさかいができたら、後に面倒を生むかもしれない事を剣心はよく知っているからだ。 だが、どうにもワルドは見逃してはくれない雰囲気を漂わせている。そうしてあれこれしているうちに、今度はギーシュが、キュルケとタバサを連れてやって来た。 「へぇ、子爵とダーリンが? 面白そうじゃない。応援したげるわ、ダーリン!!」 「興味ある」 「どっちが勝つか、賭けないかい?」 完全にお遊び気分の三人に、ルイズは顰めっ面をつくる。これでもう、何が何でも決闘を受けなくてはいけないような空気になってしまった。 そして、その様子を見たワルドが、毅然とした構えで杖を掲げた。 「これ以上、観客が来ないうちに、始めるとしようか」 「……仕方ないでござるな」 剣心は、心の中でルイズに謝りつつ、腰の柄に手を掛け―――。 「オイ、相棒………」 背中に背負っている鞘から、デルフの声が聞こえてきた。心無しか、刀身全体を揺らして訴えているようにも見える。 剣心は、大きなため息を付きながら、逆刃刀ではなくデルフの柄を掴んで引き抜き、そして、両手持ちで剣先を真っすぐ突き立てる『正眼の構え』を取った。 「―――――――?」 それを見て、ワルドやルイズ達は首をかしげる。構えはいい。ただ、剣の向きがおかしい。 何故か、剣心はデルフの刃の部分を自分に向け、峰の部分をワルドに向けているのだ。 「相棒、目が見えねえのか…? 刃をてめえに向けてどうするよ」 デルフの呆れたような問いに、しかし剣心はそれを無視する。 この構え、緋村剣心をよく知る人間であれば、これを見ても何の疑問も持たないことだろう。むしろ当然だと思うほどだ。 しかし、会って間もないルイズ達、特に昨日今日知り合ったワルドからしてみれば、その構えは『舐められてる』以外に感想は出てこない。 ピクリ、とワルドは眉を釣り上げた。 「それは一体どういうつもりだい? 僕を侮辱しているのかね?」 「拙者の剣は、手加減というものが効かぬ故、せめてもの予防策でござる」 正直に剣心は話した。元より本気を出すつもりはないが、それでも事故は起こりうるものだ。あくまで「試合感覚」で挑んできている剣心からすれば、至極まともな言い分だ。 しかし、これは試合でなく決闘。貴族の誇りがあるワルドは、やはり納得がいかない。 「まあいいさ、なら君の本気を引き出してやるまでだ」 それを合図に、ワルドは一足飛びで剣心の間合いへと入った。 常人には見えない動き、そしてそのまま素早く杖を突き出すが、剣心はそれを難なく受け流す。 間髪入れずに二発目三発目が繰り出されるが、それを最低限の動きと剣戟であっさり回避した。 暫く打ち合う二人を見て、おもむろにキュルケが口を開いた。 「ダーリンって、あんな感じだったけ?」 「やっぱり、君もそう思うかい?」 キュルケの疑問に、ギーシュも反応した。会って間もないとはいえ、剣心の強さを間近で見てきた彼らにとって、今の剣心の動きには「凄さ」が感じられない。 ギーシュ達の知る剣心の動きは…もっと速い、もっと飛ぶ。そして何をされたのかすら分からないような駿足の動きと、柱の如き腕を飛ばし風を薙ぐ強力な剣腕を持っている。 しかし、それが今遺憾無く発揮しているとは言い難い。 ギーシュ達は、それを持ってワルドと死闘を繰り広げるかと思っていたため、案外しょっぱい剣の打ち合いに拍子抜けしたのだ。 だが、対するワルドも、まだ魔法の一つも唱えてはいない。恐らくは、お互い探り合いの小手調べの段階なのだろう。それなら、今の状況にもまだ納得が―――。 「彼、まだ一度も反撃してない」 先程から目を逸らさず見ていたタバサが、不意にそう言った。 その意味が分かったキュルケが、ハッとした顔でタバサを見た。置いてけぼりを喰らったギーシュはどういう意味? といった表情をした。 「それって……子爵が強いから反撃できないんじゃなくて……」 「逆」 それだけで通じる二人の会話に、ギーシュの頭の上には?マークで一杯だった。 「ねえ、僕にも教えてくれよ、のけ者にしないでさ!!」 ギーシュの悲痛な叫びに、キュルケはため息を付きながら、未だに打ち合う剣心とワルドの方へと指差した。 「あんたもさ、ダーリンとは一度決闘したでしょ?」 「うん、だから?」 「だったら、二人の顔をよく見なさいな」 言われるがまま、ギーシュは表情を見やる。しかし、やっぱり良くわからない。 一刻ほどそうして固まっていたギーシュに、キュルケは呆れた顔をした。 「あんた、本当にグラモン家の息子? あたしですら気づいたのに鈍いわねぇ~」 「う、うるさいな! 分からないものはしょうがないじゃないか!」 「子爵の表情、あの時の貴方と同じ顔してる」 タバサの助言に、今度はギーシュもハッとした。そして改めて二人を見比べる。 涼し気な顔で打ち合う剣心に対し、ワルドは苦い顔で杖を振るう。そう言えば、まだ峰の部分すらも変わってはいない。 メイジは魔法が本分。だから呪文の一つも唱えていない今のワルドと、剣心との総合的な強さの比較にはならないが、少なくとも剣術という点においては、ワルドより剣心の方が圧倒的に上だということがこれで露呈されたのだ。 つまり…と恐る恐るギーシュは、キュルケ達の方を向いた。 「彼は…あの子爵を相手に…あしらっていると…?」 「そのようね……」 レベルの違う攻防に、キュルケ達は唖然として見ていた。 反撃しないのは、そもそもする必要が無いから。その気になれば、いつでも隙など作れる。そう思わせるような体捌きに、ワルドは顰めっ面をつくる。 やがて、大きく剣と杖を弾き、二人は距離をとった。 「…成程、あくまでもその向きを、入れ替えるつもりはないようだね…」 「いや、拙者お主の技量には、正直に感服しているでござるよ」 そう言う剣心の言葉に、嘘偽りはなかった。彼は出来る。身のこなしや仕草から只者ではないことは知っていたが、実際に剣を交えるとよくわかる。 魔法という力に頼らず、剣術の基礎をちゃんと修めた動き。体術や剣腕も申し分なし。並大抵の敵なら、まず寄せ付けることはないだろう強さを持っている。 もし明治の世に生まれていたら、かつて「喧嘩屋」だった親友の斬左と同じくらい、その名を広めていた筈だ。 しかしそんな剣心の評価も、今のワルドには届かない。杖を掲げ、改めてこう言った。 「では、こちらも少し本気を出すとしようか?」 刹那、再び剣と杖が交わる。だが、今度は少し違う。剣戟を入れながら、謳うようにワルドは呪文を唱え始めた。 「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」 「相棒、魔法がくるぜ!!」 デルフの警告にも、特に反応せず剣心は切り結ぶ。やがて、呪文を唱えきったワルドが、ニヤリと薄ら笑いを浮かべると―――。 ボンッ!! と空気の塊が剣心に直撃した。 突如起こった空気の流れに逆らわず、剣心の身体は宙を飛び、デルフとは離れ離れになり、そしてそのまま樽の山へと衝突した。 「終わりだな……」 その、あまりの衝撃的な結末にギーシュ達はポカンと口を開けたままだった。 「あれ……負けちゃったよ…彼…」 「え、嘘でしょ…?」 キュルケも、呆気にとられた様に剣心を見る。しかし、剣心は吹き飛ばされたままピクリとも動かない。 (本気で、敗けちゃったの?) と、信じられなさそうにキュルケは、隣にいるタバサを見て……彼女の様子が、尋常でないことに気付いた。 「違う、負けじゃない。引き分け」 言葉を探るように告げるタバサは、ワルドの方をキュルケ達に指差した。よく見ると、ワルドも面食らった顔でただ突っ立っていた。――その手には、杖が無い。 暫く周りを見渡して、ようやく杖があらぬ方向へと突き刺さっているのを見つけた。 「この勝負、引き分けということで良いでござるな?」 ワルドが振り向けば、埃を払いながら立ち上がる剣心の姿があった。どうやら、最初からこういう風に持ち込むつもりだったのだろう。ワルドはそう考えた。 まんまと嵌められた。だが、確かに勝敗は決した。これ以上は野暮というものだろう。 ワルドは、苦笑いしながら飛んだ杖を手に取った。 「はっは、これを狙ってた訳か…まあ、今回は分けという事にしておこうじゃないか」 と、勝手に自己解決する彼等を尻目に、キュルケ達は何が起こったのかすら全く分からなかった。 「ど、どういうこと…」 再び、キュルケがタバサに聞くと、相変わらず一番驚いたような様子で、彼女は答えた。 「彼…吹き飛ばれる瞬間に、剣で杖を弾き飛ばした」 その言葉に、えっ…と、キュルケとギーシュは顔を見合わせる。 「へえ、成程! 流石だなぁ!!」 ギーシュは、能天気にそれで納得したようだが、キュルケは…タバサの様子から尋常でないことが見て取れた。 彼女が、こんなに驚く顔をするのは、滅多にないと言って良かったからだ。 「それで、他に何かあるの…?」 「………」 キュルケの問いに、タバサは答えない。 気づけば、タバサの横顔から冷や汗が出ていた。相手は最上級の『スクウェア』クラス。 それも護衛隊の隊長だ。幾らワルドが手加減しているとはいえ、あの一瞬で杖を弾き飛ばすなんて芸当、まず出来ない。 彼は、あの呪文…というより、殆どの呪文に対して初見のようだった。対抗策や防衛に関しては無知だと言っていい。あっさり彼が吹き飛ばされたのも、それが一因だ。 なのに、呪文の発生と同時に、瞬時にどんな魔法かを予想して、即座に反撃に移った。コンマ数秒ともいえる戦いの中で…。 これがどれだけ凄まじいか、普通のメイジでも分からないだろう。でも、タバサにはそれがはっきりと理解できた。 有り得ない、あの速さは…。それも魔法も無しに…。 (これが……飛天御剣流…) タバサは驚愕したのだ。常人には考えられない反射神経、鋭い勘、そして唱えきってからの呪文の発生『より』も速いその剣速に。 そして、無意識に体を震わせた。これを自分も極められたら、あの憎き仇を…奪われた大切な人を…自分の目的を、果たすことができるのではないかと。 さて、そんな事は露知らずの剣心は、無造作に刺さったデルフを戻そうと、その柄に手を取った。 そんな中、ルイズが心配そうな顔でやって来た。しかし、その前にワルドに腕を掴まれた。 「な、何よ。ワルド」 「なに、彼は疲れているだろう。無理を言ったからね。暫く放っておけばいい」 「でも、そんなこと……」 だが、ワルドは有無を言わさず、そのままルイズを連れていった。時折不安げな表情で剣心を見たが、特に抵抗することなくワルドの後を追った。 剣心は、そんな彼女にどこか引っかかりを覚えながらも、今度は不平を漏らすデルフの声に耳を貸した。 「なあ相棒…なぜ本気でやらねえ…何で俺の時だけこんな調子なんだよ…贔屓だろ…」 「まあまあ」 「くそ…もういいさ…どうせ俺は逆刃刀になんざなれねえよ…チクショー…」 「まあまあ」 ぼやくデルフを鞘に納めながら、剣心も練兵場を離れた。 前ページ次ページるろうに使い魔
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609 :reden:2007/03/28(水) 01 10 18 ID oTZYRjrE0 朱き帝國第11話 1941年7月5日 ネウストリア帝國領 港湾都市キルグリット 水都キルグリット。 列強の一角。ネウストリア帝國の東部に位置する海港都市である。 大陸北東部を流れるローヌ川の支流……ちょうど川と海の合流点に造営されたこの都市は、同時に帝國の海洋貿易の中心地でもあった。 その人口は70万を数え、帝國領内でも有数の大都市として知られている。 事実、その広大な港内の埠頭にはさまざまな船……小は漁船から、大は外洋を渡って遥か東の文明圏より渡り来た大型帆船まで……が停泊している。 では市街に目を向ければどうか? そこには白を基調とした、優美な石造りの街並みが整然と広がっている。 街中には区画ごとに水路が設けられ、そこでは川から流れ込む澄んだ水が踊っていて、白い街並みとの絶妙なコントラストを描いている。 港区画にわりと近い大通りには即席の露店がいくつも立ち並び、様々な肌の色をした人間…あるいは他種族の商人たちが、めずらかな交易品を並べては威勢の良い売り文句を謳い上げる。そして、それら品々を興味津々に見つめる人々の姿……。 そこには国際都市ならではの活気があった。 そんな街の中心を貫く大通りを、一台の馬車が走り抜けていく。 客車の扉に彫り込まれているのは、交差する長槍とグリフォン……ネウストリアの国章である。 それを見た人々が慌てたように道を空ける。 そのまま大通りを走り抜けた馬車は、街道を伝って郊外の丘を駆け上がり、丘の上にそびえ立つ城館を前にして止まった。 御者台から身なりの良い痩身の男が降り立ち、うやうやしい挙措で客車の扉を開く。 「到着致しました」 その声を受け、客車から一人の人物が降り立った。 純白の法衣にヴェールという、修道女のようないでたち。 その胸元には"短剣に絡みつく蛇"をあしらった青銅の紋章がペンダントとして下がっていた。 ■ ■ ■ 「一体、どういうご用向きで来られたのかな。巡察使殿」 城館の主。 キルグリッド総督は困惑していた。 その原因は、いま彼の目の前で泰然とした様子で茶を啜っている女性だった。 ひさびさの休暇を満喫しているところに、突然の来客である。 事前になんの連絡も寄越すことなく、おまけに総督府ではなく私邸に直接押しかけてくるとは…… 普通、そんな礼儀知らずには門前払いを食らわせてやるところなのだが。 (こういう手合いから恨まれたりすると、酷く始末が悪いからな) 表面上愛想笑いを浮かべつつ、総督は女性が胸元に下げているペンダントを盗み見た。 報土観察院の紋章である。 帝國内務尚書府に属し、国内外の対諜活動を統括する機関。 ちょうどロシアで言うところのチェーカー(秘密警察)に相当する機関であり、 総督のような地位にあるものにとっては、緊張感ある付き合いを強いられる手合いである。 「出来ることなら、まずは総督府に話をもってきて欲しかったよ。ここは政庁ではなく私邸なのだから」 「それについては申しわけなく思います。……それにしても立派なお屋敷ですね……庭の噴水など、ドワーフの名工『ニグレド』の作品ではないですか?彼の刻印が彫られていましたし」 そう言いながら、ふと女性は天井を見上げる。 季節は夏。 海側から涼しい風が吹き込んではくるものの、外はかなりの暑さだ。 このような石造りの家屋では、中が蒸し風呂のようになっていてもおかしくないのだが。 しかし、ここは涼しい。 「天井に巡らせた張に、地下から汲み上げた水を流しているんだよ」 総督が説明すると、巡察使の女性は目を見張った。 「それはまた…」 「贅沢に見えるかね?しかしこの街では大概の者はこういう造りの家に住んでいるよ。 街中に水路が巡っているだろう?あそこから水を引くんだ。 昔この辺りにあった王国の建築様式らしいが、快適なので皆使っている。 まぁ…うちの庭の噴水に関しては、金を掛けているのは認めるがね」 「そうなのですか。この地方に来るのは初めてなもので」 「暇があれば見ていかれると良い。この街は、世界各地の文化が集まる坩堝のような所だからね」 「ええ。機会があれば是非」 しばらく……といっても最初の数分だけだが……雑談に興じ、空気が少し和んできたところで本題に入った。 610 :reden:2007/03/28(水) 01 11 11 ID oTZYRjrE0 「まぁ世間話はひとまずおいて、まずは君の公用を片付けてしまおうか。 ここに直接押しかけて来るくらいだから、かなり重要な案件なのだろう?」 最初会ったばかりのときに比べると、かなり友好的な調子で総督はたずねた。 今までの巡察使の友好的な態度から、彼女が自分に即刻不利益を齎しにきたわけでは無いらしいと理解したのだ。 むろん、これから話す用件次第でどう転ぶかわからないので、まだ油断は出来ないが。 「実は先日、長官より直々に命令を受けまして。東大洋北部の調査を行うことになったのです」 「それはまた…ずいぶん剣呑なところに行くのだね」 総督は少しばかり顔をしかめた。 東大洋というのは、キルグリッドの港が面じている外洋のことだ。 帝國の東にあるから東大洋……実に単純な命名基準だが、この大陸ではごく一般的な呼び方である。 その大洋の北方海域といえば、船乗りの間では難所として知られているところだ。 まず波が荒い。敵国であるモラヴィア領海にも近く、そのうえ水棲魔獣が少なからず生息していることでも知られている。海域内の島嶼から、はぐれ飛竜が飛んでくることもあるらしい。 経験豊富な船乗りも近づきたがらないところだ。 「理由については…詳しくは申せません。ただ、任務のために調査団用の船を用立てていただきたいのです。 乗組員込みで、遠洋航海にも堪えられるもの。できれば商船団ではなく総督府所属の船をお願いしたい」 「……海軍のものでは駄目か?」 総督府が保有している大型艦艇ともなると、外交使節などの重要人物を運ぶための連絡艦くらいしかない。 武装も申しわけ程度だ。 「余り目立ちたくありませんので、軍船は止めていただく思います」 「むぅ…それは難しいな」 総督は小さく唸った。 「武装商船では駄目かね?腕が良く、口も堅い連中を知ってるんだが」 「武装商船…ですか」 巡察使は露骨に不審そうな顔をした。 確かに軍船ほどに目立ちはしないだろうが、はたして役に立つのだろうか? 武装商船という名前は、軍事に疎いものが聞けば強そうに響くかもしれない。 しかし実情は素人が武器を持っただけ…或いはそれより少しマシな程度のものが殆どだ。 「不安そうだね。だが、連中実力は折り紙付だよ。船長は元冒険者とかで、船員の中には魔術師も居るようだしね」 「……わかりました。確かに、我々も急ぎですし…総督府のほうに船が無いのであれば……」 渋々という感じではあったが、いちおう納得したらしい。 総督は内心で胸を撫で下ろした。 「そうかね。なら、その連中には私から連絡しておこう」 「信用できるのですか?」 「大丈夫だ。まぁ観察院と聞いて顔をしかめるかもしれんが、多少の無礼は大目に見てくれるとありがたい」 「ええ、わかっています」 総督は安心したように頷くと席を立った。 そのまま部屋から出て行こうとして、ふと、何か思い立ったように振り返る。 「ところで」 「なんでしょう?」 「雇い賃は、もちろん観察院がもってくれるんだろうね?」 1941年7月8日 深夜 ソヴィエト連邦 セヴァストポリ 闇の帳が落ちた市内に、警報が鳴り響く。 (またか!) 黒海艦隊司令長官、F.S.オクチャーブリスキー中将は忌々しげに舌打ちした。 やや乱暴にデスクから立ち上がって、窓の近くに寄り、外を見る。 海岸の砲台からは電光信号が出て、街中にはサイレンが鳴り響いていた。 『ヴニマーニエ!ヴニマーニエ!(傾聴せよ、傾聴せよ)』 無線の拡声器が、がなりたてているのが此処まで聞こえてくる。 水兵に部署に戻るよう呼びかけを行っているのだ。 しばらくそれを眺めていると、部屋に来客がやってきた。 コン、コン。 ノックの音。 入るよう促すと、艦隊参謀長のI.D.エリセーエフが入室してきた。 611 :reden:2007/03/28(水) 01 11 43 ID oTZYRjrE0 「また例のドラゴンか?」 「はい。現在、高射部隊が応戦中です。そのうち落ちるか、或いは逃げていくかと思われます」 「そうかね。結構なことだ」 オクチャーブリスキーは疲れたように呟いた。 これで何度目だろうか、と彼は思った。 レニングラードが内陸都市と化してから、ちょうど今日が15日目になる。 黒海艦隊司令部が置かれているセヴァストポリ軍港は、今や赤色海軍が有する最大の艦隊泊地となっていた。 その司令長官たるオクチャーブリスキーが今もっとも悩まされている事。 それは、海から時折やってくるドラゴンの存在だ。 「で、今日は何匹来たんだね」 「1匹です。今しがたの警報分を数に入れなければ、ですが」 「畜生め。何とか出所を探って、纏めて始末できるといいんだがな」 6月23日。 あの日を境に全てが変わってしまった。 一番の変化はレニングラードをはじめとした西部で起きたことだが、ここ南部でも『転移』による被害は起きていた。 まずは水資源。 これまで獲れていた既存種の漁獲量が日を追う毎に減り、それに代わって今まで見たことも無いような種類の魚が獲れるようになったことだ。 それに加えて、漁船の遭難も相次ぐようになった。 当局が哨戒艇を繰り出して調べてみると、そこには信じがたい事実が存在した。 異世界の『怪物』の存在である。 全長20メートル近い大きさの肉食の魚類・軟体動物、そしてドラゴン。 これらの存在に、黒海艦隊司令部は半ば恐慌状態に陥った。 既存の海図は役に立たない。 国内最大の造艦廠は潰れ、艦艇補充の目処は立たず、おまけにこんな怪物が海にひしめいているとしたら、哨戒艇を出すことさえも危険(特にドラゴンが相手だと駆逐艦でも危ない)だ。 「そんな閣下に朗報です。近海での怪物の出没は……徐々にではありますが……減り始めています。 駆逐隊を定期的に遣って爆雷を落し続けた成果が現れているようです」 エリセーエフは手元の報告を読み上げた。 「ただ、ドラゴンに関してはお手上げですね。 哨戒機を飛ばしてはいますが、航続距離の関係で巣を突き止めるには至っておりません。 これ以上は船を繰り出して捜さないことには……」 「こんな、右も左もわからない海にかね?自殺行為だよ」 「確かに…そうです」 測量船を繰り出して調べようにも、空を行くドラゴンの存在を考えると軽はずみな行動は憚られた。 護衛艦艇も不足している現在。貴重な測量船に護衛艦艇までつけて、独断で動かすほどの度胸は無かった。
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登録日:2016/03/15 Tue 00 08 04 更新日:2024/01/18 Thu 22 31 25NEW! 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 うざかわいい かまってちゃん このすば四馬鹿 この素晴らしい世界に祝福を! はいてない アクア アクア様 アクシズ教団 アホの子 アークプリースト ゴッドブロー トイレの神様 女神 宴会の女神 愛すべきバカ 水の女神 水神 福原香織 花鳥風月 雨宮天 駄女神 「もっと私を称えてよ! みんなで褒めて褒めて甘やかしてよ!」 「この構ってちゃんが!」 『この素晴らしい世界に祝福を!』の登場人物。 CV:福原香織(ドラマCD) /雨宮天(アニメ) 若くして死んだ人間の導きを行担当する水の女神。自称日本担当のエリート。 年齢は不詳。そもそもアクア様が住まう空間では時間の流れが非常に遅く、人間の尺度で表せるようなものではないのである。 非常に長く生きていたとしてもそれはあくまで時間の流れが遅い(日本での一ヶ月が天界での1時間だったり異世界の数ヶ月ぐらい)場所にいたためであり、 決して歳がいっているわけではなく、そもそも女神に年齢を問うこと自体が神罰に値する程の不敬であるからしてetc……、 「なんだ、ババアか……」 「なんですってえええええええ! ふざけんじゃないわよあんた誰がババアよ住んでた場所の時間の流れがゆっくりだからあんたよりも長く生きてるだけよ訂正しなさいよわああああああああーっ!」 そんなアクア様は最近魔王軍の横行で転生を拒否する人間の多い異世界の人口問題を解決するため、 日本で若くして死んだ者をそのまま異世界へと転送するというサービスを行っている。 しかし魔王軍にすぐ殺されては意味がないため、チートアイテムを一つだけ持ち込む事が出来る権利を与えており、強力無比な武器だったり、唯一無二の特殊能力を得る事が出来る。 が、この送り込まれた日本人によって機動要塞デストロイヤーという災害が作られてしまったり、 冬将軍という超強力なモンスター(*1)を生み出してしまったり、持ち込まれた美少女フィギュアがある里でご神体として祀られる事になったりと各所に被害をもたらしており、 持ち主が死んだチートアイテムもそのまま放置しているため、異世界担当の後輩女神が盗賊として回収を行っている始末。 とはいえ別に悪気があるわけではなく、単にどんな奴を送り込んだのか本気で忘れてしまっているだけ。……なんかもっと性質が悪い気がしてきた。 女神として振る舞う時は猫を被っていたが、ある時自分の元にやって来たカズマの死因があまりにも面白すぎたために化けの皮が剥がれてしまい、 スナック菓子を食いながら調子こいていたためカズマの怒りを買い、 異世界に持ち込まれるチートアイテムとして指名されてしまい、カズマと共に異世界に送られる事態になってしまった。 魔王を討伐しない限り帰れないという事態に最初は動揺していたが、速攻で異世界での生活に馴染み、 今では「危険や面倒事には巻き込まれずに崇められて生きていきたい」とか言い出している。 女神と呼ばれるに相応しい美しさだが、その内面が全てを台無しにしており、 お調子者で能天気、ものぐさで空気を読まない、威勢の良い啖呵を切る割には打たれ弱くて泣き虫。酒場で飲み過ぎてゲロったり寝る時ヨダレ垂らしたりとどこかオヤジ臭い。 すぐに調子に乗ってはトラブルを巻き起こし、やらかした事が後々になって大事件に発展する事も多々ある。 かといって何もしなくても、あまりの運の低さにも起因するのか向こうからトラブルが寄ってくる、生粋のトラブルメーカーである。 金使いも荒く、今では生活も安定しているが、異世界に来たばかりの頃は酒場にツケを溜めすぎてバイトに追われたり、当たり屋まがいの事までやっていた。 最近もドラゴンの卵を持ち金全てと引き換えに買ってきた。誰がどう見ても鶏の卵な上に、 生まれてきたのもどう見てもひよこにしか見えないが、本人は極レアなドラゴン種であるシャギードラゴンだと言い張っており、キングスフォード・ゼルトマン、通称ゼル帝と名付けて可愛がっている。 ちなみにこのゼル帝、人気投票9位という謎の人気を誇る。 そんな感じで性格はアレなアクア様だが、女神としての力は紛れもなく本物であり、絶大な魔力の持ち主。 冒険者としての職業は「アークプリースト」。あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなすプリースト系の上級職である。 腐っても女神であるためか、冒険者としての能力は最初からカンストしている。 ただ殆どのステータスはカンストらしく最高峰であるが知力は平均より低く、幸運にいたっては最低レベルと言われるほどに残念。 そして既に完成されたステータスであるが故、今後どれだけレベルを上げてもこれ以上能力が伸びることは無い。 それを知ったカズマは思わず膝から崩れ落ち、哀れみの涙を流したという。 ちなみに有り余るスキルポイントを使ってあらゆる宴会芸スキルを、それから回復・支援・浄化魔法を習得している。 その回復魔法は死者すらも蘇生し、「セイクリッド・エクソシズム」およびエメリウム光線「セイクリッド・ハイネス・エクソシズム」といった浄化魔法はアンデッドの王であるリッチーや、大悪魔すら容易く浄化する。結界も同様。(*2) 他にも女神の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳「ゴッドブロー」、女神の愛と悲しみの鎮魂歌「ゴッドレクイエム」等の技も持っているが、どちらもカエルには通じず食われた。(*3) たった1話で3回もマミる奴なんてアクア様くらいだぞ!(*4) なおその神気が凄まじすぎるため、アンデッドや悪魔には常にピカピカ光っているように見えるらしい。 眠っていたアンデッドを呼び起こしてしまったり、ゾンビなどに(死者が神に救いを求める為か)大量にたかられたりもする。 水の女神として水を操る力も持っており、その気になれば洪水レベルの水を呼び出すことも出来る。 更に触れただけで水を浄化する体質であり、瘴気に汚染された湖や毒に侵された温泉を浄化することも出来る 『空想科学読本』の柳田理科雄氏は公式YouTubeチャンネルにて「この湖が諏訪湖と同じくらいの容積なら、計算上50mプールを1秒足らずで浄化するほどの力」と語っているほど。 ただし、酒や紅茶をただの水に変えてしまう事にもなるため、バイト時代は酒を水に変えて店長に怒られたりしていた。 ちなみにこの特性もあってトイレ掃除も得意。屋敷の中でアクアが掃除するトイレが一番綺麗とも言われており、「トイレの神様」とも呼ばれる。 宴会芸には謎のこだわりを持っており、「自分は芸に生きる者だが芸人ではない。なので芸でお金を貰う気はない」として自分の気が向いた時しか芸を行わない。 その宴会芸はカズマにも「これだけで食っていける」と言わしめるものであり、「宴会の女神」とも呼ばれる。 冒険者として登録した時にはその高すぎるステータスと美貌によって一躍話題となり、 「水色髪の女神様」ともてはやされていたが、その評判がすぐに消えていった事は言うまでもない。 ちなみにカズマとアクアが異世界にやって来た頃、ちょうどめぐみんもアクセルの街にやって来たため、 ウォルバクを追って上級悪魔・ホースト様が現れており、冒険者が総出で噂のアークプリーストとして捜索されていたのだが、誰もアクアの事だとは気付かなかった。 「水色の髪の美人アークプリースト様なんてどこにもいねえよ!いたのは酔っ払い芸人だけだ!」とは捜索に参加していた冒険者の談である。 ただ、ホースト様が街に襲撃をかけようとした際、たまたま居合わせて破魔魔法で撃退しており、人知れず街を救っていたりもする。 異世界においてはアクシズ教団の御神体として崇められているが、そのアクシズ教団の評判はすこぶる悪い。 教義とされるアクア様の御言葉『汝、何かの事で悩むなら、今を楽しくいきなさい。楽な方へと流されなさい。自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい』、 『汝、巨乳を愛しなさい。汝、貧乳を愛しなさい。同性愛者でも、人外獣耳愛好者でも、ロリコンでも、ニートでも、そこに愛があり犯罪でない限り全てが赦される』に従いフリーダムすぎる信徒達が集まり、日々エリス教へのセクハラと嫌がらせを繰り返し、その悪名を世界に轟かせる宗教、それがアクシズ教である。 「アクシズ教徒は頭がおかしいから関わるな」。これは最早世間一般の常識である。 ただし、「『悪魔殺すべし』、『魔王しばくべし』」という教えの通り、アクア様が魔族を毛嫌いしているため、悪魔っ娘だけは戒律で許されていない。 『エリスの胸はパッド入り』はエリスの胸に心が揺らいだ信者への言葉。実際は不明。 しかし厄介な事にアクシズ教のアクア様への信仰心自体は本物であり、 日々教団の勢力拡大に余念がなく、総本山であるアルカンレティアでは詐欺まがいの勧誘が横行している。 そもそも総本山と言えば聞こえはいいが、街の財源である温泉の水質管理を取り仕切っているのを良い事に幅を利かせているだけであり、 多くのエリス教徒がセクハラに耐えかねて街を出て行ってしまい、結果的にアクシズ教徒が街の大半を占める事になっただけだったりする。 ちなみにアクアがアルカンレティアを訪れた際、誰にも女神だと信じてもらえず、 女神の名を騙る不届き者として罵声を浴びせられたが、アクアは命がけで信徒たちを魔王軍の幹部から救ってみせた。 しかし毒に汚染された温泉を全力で浄化したため、温泉がお湯に変わってしまい、賠償を背負わされるはめになった。 が、その後のアクシズ教団上層部による水質調査の結果、それがただのお湯ではなく、 超強力な聖水(※アクアの所業から勘違いしそうですが下ネタではありません)に変わっている事が発見され、その事が全信徒達に伝えられた事でアクシズ教徒のアクア様への信仰心は更なる上昇を見せている。 これ以降アクシズ教団は祭り上げる事はせずに静かに見守りつつアクア様そっくりのアークプリーストとして全力でちやほやするという姿勢を取っており、 アクアがエリス祭に対抗してアクア祭をやりたいとかアホな事を言い出した時にも全力で協力し、アクアを調子に乗らせていた。 余談だが、アニメ化記念人気投票では4位。4位である。メインヒロインなのに4位である。エリス様は2位である。 この結果に対しアクア様はエリス教徒による不正の可能性を訴え、少数精鋭のアクシズ教徒はやればできる子だから一票を十倍にして投票をやり直すべきと主張しているという。 もうひとつの余談。彼女のスカートの中は何故か本編では絶対に見えない。 一応、書籍版1巻の口絵では白地に青の縞々パンツ、スケールフィギュアと白猫プロジェクトでは青いTバックを穿いているが、アニメではパンツが見えないどころか、パンツ自体を穿いていないように描かれており、ノーパン疑惑がある。 高い確率で女性キャラのパンツを剥ぎ取るカズマのスティールでさえも、身に着けている羽衣やガラクタしか取れず、結局パンツを手にすることは出来なかった。 追記・修正はアクシズ教に入信してからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 コメントログ 荒らしコメントを削除しました -- 名無しさん (2019-09-01 10 12 22) アクア様を見てると女神というより、「()残念姉って -- 名無しさん (2019-09-09 16 46 03) ↑ミス 「(性格が)残念だけど頼りになる姉」って印象を受ける。 -- 名無しさん (2019-09-09 16 47 23) ネタコスプレをよく見る印象がある。コスがネタなんじゃなくてやってることがネタ -- 名無しさん (2019-09-09 17 14 05) アクアってスーパーロボット大戦Tno -- 名無しさん (2019-10-04 16 20 05) ↑ミス アクアって考えてみると、本人にとっては失礼かもしれないが、スーパーロボット大戦Tのダイマ・ゴードウィンと似ているところがいろいろあるな。尤も、スーパーロボット大戦シリーズにはダイマに限らず、「もしアクアがカズマと出会わず、死んだ人間を導く係のままだったらどうなっていたか」という未来予想図や、アクアを崇めるアクシズ教徒の成れの果てを絵にかいたような輩が版権オリジナル問わずにわんさかいるのが現実であるga, -- 名無しさん (2019-10-04 16 29 55) ↑またミス。 これもアクアにとっては迷惑極まりない話である。 -- 名無しさん (2019-10-04 16 32 15) トラブルメーカー且つ神聖生物ヒロインとしても、アクアとニャル子なら後者を選ぶなぁ。アクアは……ヒロインというより恋愛対象に見れない -- 名無しさん (2019-12-25 21 48 50) どっかのイシュタル(駄女神)とかネプテューヌ(駄女神)と良い勝負 -- 名無しさん (2020-04-01 07 59 22) このすばTRPG本では、自らのミスで転生者を危険な目に合わせたことをふてぶてしく忘れていたことが判明。その結果、当の本人には失礼極まりない発言かもしれないが、アクアが一部のファンから「いくら異世界の危機を救うためとはいえ、魔王を倒す勇者は誰でもいいと思われてもおかしくないほど転生者の扱いが杜撰」「人間を都合のいいゲームの駒程度の存在にしか見ていない女神の皮をかぶった悪魔呼ばわりされても文句は言えないな」「自分のミスを素直に謝罪せずにエラそうな態度をとるのはブラック上司のすることだ」「所詮は闘将ダイモスの三輪長官と同じ敵とみなした種族はたとえ敵意がなかろうと容赦なく攻撃する偏見思想と、敵の被害はおろか、味方の被害や民間人の被害など一切無視した過激な手段で自分の名声欲を満たそうとするだけのトップに立つべき存在ではない」などと言われる羽目になったのは口にするまでもない現実である・・・。 -- 名無しさん (2020-07-25 11 01 44) ポンコツで困ったちゃんなトラブルメーカーだけど、ギリシャの女神を連れていくよりかはマシなのよな。ヘラやアルテミスが傍にいるだけで冒険どころではない…… -- 名無しさん (2020-08-13 21 51 56) ↑ 比較対象(の性格が)悪すぎる... -- 名無しさん (2020-08-13 21 54 07) むしろ神様って人間の皮被ってるけど倫理観が致命的に噛み合わないってイメージだからアクアはだいぶ良心的な神様だと思ってた -- 名無しさん (2020-08-13 22 26 10) 人間がアリを踏みつぶしてもなんも感じないのと一緒か......結局のところ、神様てジャイアンみたいな連中なのな -- 名無しさん (2020-08-13 22 52 23) ↑6イシュタルは遠坂凛が依り代じゃない素の状態だったら、相当にヤバい女神だぞ -- 名無しさん (2020-10-13 05 52 09) 2回目の人気投票では不正で1位に でも不正なしでも2位だったので面目躍如だったと言える -- 名無しさん (2020-10-13 05 53 30) ちなみにアクア様は悪魔やアンデッドも(渋々)見逃す度量はあるがエリス様は悪魔 アンデッドの存在は絶対に許さないから、その一点のみはアクア様の方が柔軟性はある -- 名無しさん (2021-03-16 10 51 19) 可愛いとは思うんだけど、お近づきになりたいかと言われたら友達でも嫌だし、でも友達にいたらなんだかんだ嫌いになれない気はする。 -- 名無しさん (2021-05-31 07 05 08) ↑9 自分が見たのは書籍・アニメであるが、杜撰なのは本編中では最序盤からあった。自分はWEB版を知らなかったので書籍版の1巻時点では、標的は倒しました…しかし皆消えて無くなりました!という展開になるのでは…という危惧・展開予想をしていた程。 -- 名無しさん (2021-06-01 11 20 06) くだらないマジレスだが『はいていない』疑惑など放送コード等の昨今のおバカな表現規制によるもの・・・ ここからは個人の意見だが、たかがパンチラレベルでギャーギャー言ってるカス共に対してのある種の皮肉でしかない表現…と自分はそう思っている。 -- 名無しさん (2021-06-01 11 33 03) フィギュアではいてる事に残念がる人も多いけど…成人指定でもないのに完全再現できるかんなもんvvvvvvvv -- 名無しさん (2021-08-23 19 43 07) ハメのSSで自分が居てはパーティーに迷惑がかかるとカズマの特典に選ばれない様にした結果、カズマ、めぐみん、ダクネスが魔王軍に敗退し戦死するのが投稿されていた。 -- 名無しさん (2021-08-25 20 53 03) アクア「めぐみんに続いてダクネスもプリキュアになった。私だけなんでなれないのよ!」 -- 名無しさん (2022-07-04 13 31 44) コメント欄が -- 名無しさん (2022-08-26 00 45 36) カズマの転生特典の件がなくとも、ソーの様に天界から追放されていたんじゃない?アクアは自分の力を過信し増長癖がついてるふしがあるのだし。 -- 名無しさん (2022-10-04 21 08 46) 改めてコメントのログ化を提案します。 -- 名無しさん (2022-11-06 23 10 12) ログ化しました -- (名無しさん) 2023-02-24 15 59 08 ↑3 劇中だけでもエリスに根回しを何度も押し付けていたからな。何らかのペナルティを負わされていた可能性は否定しきれないな。 -- (名無しさん) 2023-03-27 12 29 01 ↑下手をすれば西遊記の孫悟空やカクレンジャーのニンジャマンの様に閉じ込められて長い年月過ごす事になっていたかもしれないと思う。 -- (名無しさん) 2023-03-27 21 25 35 今更だけどアクシズとエリスって枢軸国と連合国って意味だったのか・・・ -- (名無しさん) 2023-05-26 18 34 42 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前ページ次ページゼロのミーディアム さてさて、水銀燈がルイズにミーディアムの契約を、ルイズが水銀燈に使い魔の契約を交わして一週間がたった あの夜の出来事は確かに水銀燈に多大な衝撃を残したが。彼女は至って普通に(文句は言うものの)ルイズの世話を続けてる 水銀燈はこの地でアリスゲームは行われないとは言え契約を破棄しなかった。何故なら彼女がルイズの保護なしにこの見知らぬ異邦の地を生きていくのは難しいからだ そして……水銀燈はあの夜の事をルイズに知らせていない 彼女らしからぬとお思いだろうが水銀燈はそれを伝えるのをためらっていたのだ 理由?それは彼女にも説明できない。元の世界に帰るのが正しいのだろう、だが……何故かルイズをほっといておけない そう言う考えを彼女は何度も何度も自問自答した。だがその結論は毎回決まって答えの出ない平行線のまま…… もっとも、とうのルイズは水銀燈がそんな悩みに苦しんでいること等知ることもなく毎日を過ごしている ただ…最近少しだけ水銀燈の様子がおかしい事に気づいた それは彼女が買い物に行った虚無の曜日の翌日から、時おりまるで何かを考えるように呆けるようになったこと 無論それは水銀燈の結論の出ることのない自問自答の事。だが困ったことに水銀燈、仕事の最中にも呆けだすことがあるのだ 今朝もそんな1コマから物語は始まる…… 薔薇乙女の朝は早い。規則正しい生活、早寝早起きが彼女達の信条。淑女の嗜みとでもいったところか まあどこかの第1ドールは時々夜に出歩き月夜の散歩と洒落込んだりすることもあるのだが 部屋の片隅にある鞄がガチャリと開き中から黒衣黒翼の少女が出てくる。だがげんなりとした表情の彼女、水銀燈の顔は夢見最悪と言った模様 ちなみに今回彼女が見た夢は。ツナギを来た無駄に男前な顔立ちのルイズがベンチに座り 「私の使い魔を 『やりますか?』 『や ら な い か』」 とニ択を迫ってくる物だった。………え?ニ択? 実に珍妙極まりない夢だが水銀燈の心中、すなわちルイズを捨てられないと言う彼女なりの良心の叱責から来る物なのかもしれない そんな陰鬱な気分で1日の始まりを迎えた水銀燈だが、作業着とも言えるシエスタからもらったメイド服に着替え始める 正直お父様からいただいたドレス以外の服を着たくはなかったが…… それと共にドレスを少しでも汚したくないと言う事もまた事実。勿体無いと言う理由も付け加え、結局彼女はそれを着ることにしたのだ なお、シエスタには語頭に「か、勘違いしないでよね!」と付け加えその事をありのままに説明したのだが とうのシエスタはただ鼻血をダラダラと流しながらうんうん頷くだけだった 一言余計だったらしい。水銀燈の言いたかったことは多分彼女には、伝わって、ない (まったく……こんな奇っ怪な夢を見るなんて…私、疲れてるのかしらぁ……?) そう考えベッドで寝息をたてているルイズに近づく。その寝顔はさっきの夢に出たいい男ではなく愛らしい少女の物 「う~ん……今こそあんたをぶったおして…過去の落ちこぼれだった私と決別するのよ~」 だがルイズはその幸せそうな寝顔に反して穏やかでない寝言をぼそぼそとつぶやく そんな夢の世界を堪能しているルイズに水銀燈が声をかけた 「ルイズ!朝よぉ。起きなさぁい!」 ルイズは「ん……」と小さく声をあげ…… 「あの世で私にわび続けろツェルプストーーーーーーーッ!!!!」 突然ガバッと起き上がったかと思いきや、かっ!と目を見開き絶叫した そしてその後きょろきょろと周りを見回した後にため息をつく 「なんだ…夢だったんだ……あ、水銀燈。おはよ…」 「ええ、おはよう。…ってどんな夢見てるのよぉ…貴女」 「せっかくキュルケのあれに匹敵する物を手に入れたのに……」 残念そうにルイズはつぶやいた (胸か、胸なのね)とは水銀燈の心中の弁。無論それを口に出せばご飯抜きと言う重罰が下されることが確実であるため黙っておいた まあ最悪そうなってもシエスタに言えば食事を手配してくれるのだろうが ゴシゴシと目をこすりルイズはいつものように水銀燈に言った 「したぎ~」 「はいはい…」 クローゼットの下の棚をしぶしぶ開けて下着を取り出す (やっぱり解約して帰っちゃおうかしらぁ…でも帰る手段がねぇ……) 彼女の呆け癖が始まったらしい……水銀燈はぼーっと考え事をしながら下着をルイズの頭から着せた そんな彼女にルイズが声をかける 「ねぇ、水銀燈……」 ルイズの冷ややかな、そして何故かくぐもった声 (……でもなんかほっとけないのよね。少し素直じゃないけど根は悪い子じゃないし。いや、だからと言ってそれでお父様をないがしろには……) だがその声は水銀燈の耳には入ってなかった。彼女の頭はそれどころではなかったのだ 「水銀燈!」 ルイズは今度は強く、怒気をこめて水銀燈を呼びかける 「え?何かしらぁ?」 我に返った彼女の目に飛び込んできたルイズの顔に水銀燈は唖然とした もう一度説明させて頂く。水銀燈はぼーっと考え事をしながら下着をルイズの頭から着せた …下着(パンツ)をルイズの頭から着せた 「……あんたの認識じゃパンツは人の顔に被せる物なの…?」 ヒクヒクと顔を引きつらせながら言うルイズ。パンツの足穴から怒りに満ちた瞳で水銀燈を睨みつける 「あ……」 水銀燈は口を閉ざしぼーっとした表情でルイズを見つめた 「……」 ルイズもまた水銀燈を無言で睨みつける。場は気まずい沈黙に包まれるが…… 「…」 「…」 「……」 「……」 「………」 「………」 「…………」 「…………」 「………プッ」 「!!!!!」 その沈黙を破ったのはルイズの間抜けな格好に思わず吹き出してしまった水銀燈 これにはルイズの怒りも極限に達した 「クロスアウッ!」 謎の掛け声と共にルイズは近くの棚から乗馬用の鞭を引っ張り出す その後「フオオオオォォォォォォ!!!」と言う凄まじい気迫と共にパンツを被ったまま鞭を振り回し追いかけてくるルイズから水銀燈は必死こいて逃げ回る羽目になったとさ…… 深刻な悩み事を抱えているのは分からないでもないが呆け癖もほどほどに…水銀燈 「はぁ、はぁ…と…とにかく、あんたにそうやって…頻繁に呆けられると困るのよ…使い魔の品評会が…近々行われるのに……」 「ぜぇ、ぜぇ…品評…会…?な、何なのよ…それぇ……?」 壮絶な追いかけっこの末、疲れ果てた二人。朝っぱらから全力で走り回って息も絶え絶えだ ルイズは一つ深呼吸をし水銀燈をビシッと指差して言った 「文字通りよ!二年生進級時に召喚した使い魔を御披露目するの!それで芸とかやってみんなにアピールするのよ!」 「芸って…貴女私をペットか何かと勘違いしてないかしらぁ?」 水銀燈が思いっきりジト目をつくりルイズを睨む。その不機嫌な眼差しに少しルイズがたじろいだ 「べ…別にあんたをペットとは思ってないけど……仕方ないじゃないの…… 普通使い魔で出てくるのはハルケギニアに住む生き物であんたの言うペットみたいな物だし…あんたみたいなケース初めてらしいし……」 ルイズは言った通り使い魔とは言え別に彼女をペット扱いしている訳ではない。そのため水銀燈の抗議にちょっと罪悪感を感じた 「でも、私だけ品評会に使い魔を出さないなんて訳にはいかないのよ…お願いだから……」 そして少しうつむき、彼女にしては珍しく申し訳なさそうにそうつぶやいた 「はぁ……仕方ないわねぇ…命令だなんて言ったら即刻突っぱねてたけど……お願いじゃ仕方ないわぁ」 水銀燈もルイズの心情を理解したらしい。少々顔をしかめ渋々了承する この返答に感極まったルイズは曇った顔を輝かせ水銀燈に抱きついた 「本当?ありがとー!水銀燈ー!」 「ちょ、ちょっとぉ!大袈裟なのよ貴女!」 まんざらでもない水銀燈だが。それと同時に彼女に後ろめたさが芽生える ……何故なら彼女はルイズを捨てて元の世界に帰ることになるかもしれないのだから 水銀燈はブンブンと首を振りその事を一時置いておく。とりあえず今は品評会の話だ 「一つ貸しにするわよぉ?でも何をすればいいのかしら?」 ルイズもそこまでは思いついていなかったらしい。うーんと唸って腕組みして考え始める 「うーん…どうせだから他の使い魔と違ってあんただけにしかできないことを……そうだわ!」 ルイズが何かを閃いた 「あんた歌うまかったわよね?なんか歌いなさい!」 ルイズは自分が錬金に失敗した時、水銀燈がそれを歌いながらからかっていた事を思い出したのだ 「歌?そんなにうまかったかしらぁ?あれが?」 「ええ、腹立つぐらいにね……。でも、あの時のアレ歌ったら…分かってるわよねぇ?」 アレを思い出してルイズはちょっと不機嫌になった 「待ちなさいよぉ。私は別に歌なんて…他にも何か考えられそうな事あるじゃないの」 「え~。あんたの声聞いてると歌って踊れそうなイメージあるのに~」 「歌はともかく踊りって何よぉ……まぁ案としては考えといてあげるけど……」 まだ品評会までの時間は十分にある。とりあえずまだ決めつけるには早いと言う事で、この案は保留と言う形をとり今回の品評会の話はおひらきになった 「追いかけっこしたり品評会の話をしてるうちに朝ご飯終わっちゃったじゃないのよ……」 「あら本当。災難ねぇ」 水銀燈が他人ごとのように言う 「誰のせいよ誰の…。もういいわ、私ちょっと早いけど教室に行くわね。後の掃除とかよろしく」 「はいはい、行ってらっゃい……」 ルイズは自分の鞄を取り部屋から出て行く。水銀燈はその後ろ姿を手を振って見送った バタンとドアがしまりルイズの足音が遠ざかっていく 「歌、か……」 自分以外誰もいなくなった部屋で水銀燈が一人つぶやく 「そう言えば昔はあの子の歌をよく聞いていたものね……病室の窓から空を見上げながら」 あの子と言うのはずっと昔に水銀燈のミーディアムとなった一人の病弱な少女 病院の一室から聞こえる彼女の歌声が水銀燈は好きだった。目を瞑れば今も少しだけ思い浮かぶ。穏やかな表情で静かに歌うあの子の優しげな表情が 「懐かしいわね、確か…こんな歌だったかしら……?」 瞳を閉じたまま水銀燈は過去の記憶をたどるように小さく静かに歌い始めた あの時はただ聞いているだけだった歌。それを今度は水銀燈自信が歌っている 水銀燈は歌いながら思う。あの子が聞いたらなんと言うだろうか?今思えば自分はあの子に何もしてやれなかった、 せめてもっと優しくしてあげてれば…自分も一緒に歌ってればあの少女はきっと喜んだ事だろう…… だがそれはもう叶わぬ夢…。月並みな言葉になるが失ってからこそ初めてその存在の大切さを知るとは言ったものだ。水銀燈はそれを痛感していた。今更後悔しても遅いのにだ 遠い記憶を思い起こし、水銀燈の胸の内に郷愁の念が生まれた。アリスゲームを抜きにしてもやはり元の世界に帰りたい。 だが……もしルイズを捨てて帰ってしまえば自分はその事を一生後悔するかもしれない 今、昔のミーディアムを思い、自分が悔いているように……。彼女の中であの少女とルイズが重なった。 もうこんな思いをするのは嫌だ、だが帰らねば自分の存在意義を否定する事になる。ならばどちらを選ぶ? ルイズか?お父様か? 歌い終わった水銀燈の表情はどこか弱々しく見えた。結果的にこの歌がもたらしたのは更なる葛藤だった。彼女の中で問題への答えが更に遠くなっていくのを感じた 「おでれーた!あんたにんな才能があったたぁな姐さん!」 突然声をかけられて水銀燈が驚く。ルイズがいない今自分以外ここには誰もいないはずなのに 彼女は忘れていた。この部屋に住んでいるルイズと水銀燈意外の住人…いや、住剣(?)の事を 「私とした事がうっかりしてたわぁ…貴方の事を忘れてたなんて」 そう言って彼女の目線は鞄の横に立てかけられた一本の剣に向けられる 「おいおい、そりゃねーぜ!自分の舎弟を忘れるなんてよ~」 鞘から少しだけ抜かれて。鍔の上の金具をカタカタさせながらそう言うのはインテリジェンスソード、デルフリンガーだった 「別に舎弟にした覚えはないのだけれど…まあいいわぁ、それより恥ずかしいとこ見られちゃったわねぇ……」 「んなこたぁ無いさ。俺は長いこと剣やってるがよ、こんな綺麗な歌聞いたのは初めてだぜ!いや、ホント見事なもんだよ。おめぇもそう思うだろ?娘っ子!」 「娘っ子?」 水銀燈が首を傾げて聞き返した。後ろからするとパチパチと誰かが拍手する音が聞こえてくる。思わずその方向に向き直り見た先にいたのは…… 「ええ、見事なものだっわ水銀燈。やっぱり私の目…いや、耳に狂いは無かったようね」 そう言って微笑みながら手をパチパチ叩くルイズの姿 「ルイズ…教室に行ったはずじゃ……。いいえ、それよりいつからそこにいたのよぉ」 恥ずかしいところを見られたとでも思っているのか、水銀燈はルイズから視線をそらす 「ちょっと忘れ物しちゃってね…部屋に戻ってきたらちょうどあんたが歌い始めたとこだったの。 でもあんたの歌、本当によかったわ。これはお世辞抜きでね」 「や、やめなさいよ……そんな事言われたって私は別に……」 水銀燈が頬を朱色にそまらせうつむく。だが背中の黒翼をパタパタさせている様子からして悪い気はしていないようだ 「でもこれで決まり!あんたのこの歌声をもってすればかなりの高評価を得られるはずよ!品評会はいただきね!」 そう言ってルイズがガッツポーズをとるが…… 「ルイズ……悪いけどこれは歌えないわ」 水銀燈がどこかばつが悪そうに言った 「え~なんでよ~?」 「それは……とにかくこれは駄目。私にだって色々事情はあるのよ……」 悪く言うつもりは無いが、この歌は自分を惑わせる。更なる悩みを生み出すかもしれない そして何より、できれば自分の思い出の中でそっとしておきたかった 色々と言いたげなルイズだったが水銀燈のどこか悲痛な面持ちの前に問いただす事をやめた 日頃わがままな所もある彼女だがこういう所に限ってはそれを理解しているのだ 「わかったわ、何か思うところがあるのね……それを強要するのも悪いしね」 仕方がないといった表情だが少しだけ笑ってでルイズはきびすを返す 「でも本当に良い歌だった。恥じる事なんか無いわ、もっと自信もちなさいよ!!」 そう言うとルイズはまたドアの向こうに消えていった 「まったく…別に恥じてる訳ではないのだけど…」 水銀燈が一つため息をはいて呟く 「でも気にかけてもらうと言うのも悪くないわね……」 そしてて少しだけ微笑んだ 「あー勿体ねー勿体ねー。姐さんの歌声なら品評会とやらも優勝できるだろうによ~」 デルフリンガーが残念そうに言った 「別に優勝なんかいらないわよぉ。それに品評会みたいな大勢の人間に歌を披露するならこういう歌はあまり合わないわ」 「そーなの?俺、剣だからそこんとこよくわからねーんだけどさ」 「そんなものよぉ。アイドルなんかはもっと明るくてノリの良さそうな歌を歌って会場を湧かしたりするらしいわぁ」 「アイドルってなんだ?姐さん?」 デルフリンガーからの質問。どうやらこのハルケギニアの地ではアイドルなんて概念は無いらしい 「えーっとねぇ、どう説明すれば……大勢の人の前で歌ったりするのが仕事の人間の事よ」 「よくわからねーな~。酒場で歌ったりしてる歌姫みたいなもんか?」 「酒場の歌姫とは違うけど、舞台とかそういった広いとこに人集めて歌ったりするらしいわぁ…」 「オペラみたいなもんか?」 「近いけどなんか違うのよねぇ……オペラよりもっと堅苦しくなくてファンを湧かせたり…」 水銀燈は今一つ自分が説明したいことを伝えられずにいる。デルフも剣でなかったら首を傾げていることだろう 「ああもう!アイドルってのはこういうことするのよ!」 言葉で伝えられなければ実際に見せるしかない 水銀燈の手に黒い羽が集まり星形の板を作り出しそれを頭につけた。どうやらこれ、髪飾りらしい そして胸に手を当て発声練習 「ゴホン…あー、あー」 いつもの彼女の声より高めの声、俗に言う裏声と言うものだ そして高らかに声を上げた 「トリステイン魔法学院のみーなさーん!水銀燈で~す!今日は私達の為に集まってくれて有難う!!」 なんと言う事だ……この人形実にノリノリである。ちょっとハイテンションになっている水銀燈 デルフが唖然としている事にも気づいていない デルフに口があればポカーンと大口を開けていることだろう。だが水銀燈の暴走は止まらない 「そーれ♪そーれ♪乳酸菌飲料~♪はいっ!!」 水銀燈はなんだかよくわからない歌を歌いながら奇妙なポーズをとる。多分彼女の脳内ではバックで五色の爆炎が派手に上がっている事だろう。儚かった。故に美しかった ちなみに水銀燈がとっているポーズ、昔の文献によると『死刑!』と呼ばれる伝説のポージングらしい。 だが、それは悲劇の始まりだった 水銀燈がそのポーズでビシッと指差した先にいたのは一度はここに戻り、そしてまた出て行ったはずの人影 再び部屋に戻ってきたルイズがあんぐりと口を開け無言で立っていた 「ル、ルイズ…また、なんでここ、に……」 水銀燈から感じられる明らかな動揺。肩をわなわなさせながら途切れ途切れに言う 「えーっと、そ、その……さっきは忘れ物取りに来たんだけど…。あ、あんたの歌声聞いて満足してその事忘れてて……。また取りに戻ってきたんだけど……」 ルイズがそう言いながら水銀燈から顔を逸らして忘れ物の教科書を鞄に入れる 「…」 「…」 「……」 「……」 朝一番以来の気まずい沈黙が再び。だがある意味あの時以上に空気が重い。今度はルイズから口を開いた 「……銀ちゃん連日働き過ぎて疲れてるアル。今日の仕事は免除してあげるからゆっくり休むヨロシ」 どこの国?と言うかどこの星?と言った感じでカタコトに言うルイズ 「水銀燈、今日の仕事は免除。水銀燈、覚えた……」 その瞳からは生気が感じられない。水銀燈もまたカタコトの抑揚の無い声で答えた 「それじゃ、私、授業があるアル。私は別に何も見てないアル。気にすることないアル」 そう言ってルイズは走り去っていく。あと、あるのかないのかどっちなんだ ルイズが去っていった部屋の中央で、水銀燈の体がまるで糸の切れた操り人形のようにガタリとに崩れた 皮肉な物だ、彼女は操り糸を必要としない自立式の人形なのに 「お、おい…姐さん?」 デルフリンガーの心配そうな声も彼女の耳には入らないそして…… 「いっそ殺してぇぇぇぇぇ!!」 水銀燈の魂の叫びが、部屋にかけられたサイレントの魔法すらぶち抜き学院内に響き渡った 尚、これがトラウマとなり水銀燈とルイズは品評会で歌を披露するのを断念したことを追記しておこう 前ページ次ページゼロのミーディアム
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千秋さんが入室しました 千秋- ……(ゆっくりと目を開ける 千秋- ……、(いつもと違う天井と空気 千秋- ……(上半身を起こし、見下ろすといつもと違う、血が乾いたシーツ 千秋- ……、嫌な、夢を見ていた気がする……(ポツリと 千秋- …ぁあ、そうか…… あの後…… 千秋- (ベッドから降り、鏡の前へ 千秋- (所々破け、渇いた血が付着している衣服。ボサボサの髪 千秋- ……酷い成りだ(しかめっ面 低血圧らしい 千秋- ……時刻は……昼まで寝ていたのか 千秋- ……、(こんなんで外歩くわけにもいかないか 千秋- (部屋を出るとフラフラとシャワー室のほうへ 鵺さんが入室しました 鵺- (喫茶に入り込む異様な気配 鵺- (キョロキョロ 千秋- (暫くして聞こえる水音 鵺- 異常無し、と。シャワー室は使用中みたいだが… 鵺- (適当な席にドカッと座りコーヒーを注文 千秋- (暫くして水が止み 千秋- …(このジャケットはもうダメだな…… 千秋- (シャツも若干穴開いてるけど仕方ない、プラグが刺さっただけだし…… 千秋- (血がちゃんと落ちないな……帰って着替えるか 千秋- (……この際新しいの買っておくか。うん。 千秋- ……(シャワー室から出てくる 千秋- ぁ、(やばい、シーツが壮絶な事に 千秋- (店内側へ――とそこで漸く気配を察知 千秋- 、 鵺- (店内に蔓延する異様な気配、その中心で呑気にコーヒー飲んでる人 千秋- (思わず立ち止まって鵺を直視。両手には汚れたシーツ 鵺- …(横目でそれを見て、視線を外に逸らす 千秋- 、(視線外して そそくさと店員の方へ 千秋- (暫しの会話のやり取り 鵺- (外をボンヤリ眺めながらコーヒー飲 千秋- (何度も礼をしてシーツを渡す 千秋- ……(良かった、かなりサービス良いんだな、ここ 鵺- ───(さり気無く無線機で連絡を取り合っている 千秋- ……(それで、だ 千秋- (明らかに異様な気配だ 千秋- …(どうする? 様子見したい所だが…… 千秋- ……(個人的には早く着替えたい 鵺- あい、あい…了解してるっての…どうせ俺は──(小声で通信中 鵺- 通信終わり、さっさとしろよ…(通信切る 鵺- (再び外をボンヤリ眺める 千秋- …、(いや、ここは任務を優先――(携帯が振動 鵺- ホント、仕事に一貫性がないよなぁ……まあ何度もボヤいてきた事だけど 千秋- ん、(本部から? っていうか専用回線ってことは―― 千秋- 、(無言で出る 千秋- ぇ、外?(キョトンと 鵺- お 千秋- (窓の外を見ると 千秋- (公園を突っ切って突撃してくる装甲車が! 千秋- 鵺- 対象接近……俺はこのまま周囲の警戒を……を? 千秋- (大慌てで外に出る 千秋- (それに合わせて装甲車が急ブレーキ イメージ的に言えば後部が持ち上がるような勢い 鵺- ……… 千秋- 「ッッ何やってんだよ!? 市街地っていうかましてや公園にそんなもん持ち出して!」 千秋- (ぞろぞろとガスマスクをつけたフル装備軍団が出てくる 鵺- (通信機取り出し)異常発生、対象を足止めしてろ…(装甲車見ながら 千秋- 「報告なら俺から――ってわぁあぁ!?」(呑まれる 千秋- 「ッ何すッ ちょ 何 脱がっ そ こ ぁ っ」 千秋- (特殊部隊が一斉を身を引くと、着替え終わった千秋の姿が 鵺- ???(その一部始終を眺める 千秋- (白のカーディガンに青のワンピ。 Vネックの胸元と腰からはインナーのペチコートが覗く 鵺- ぁー、状況が解らん。サッパリ。まあヤバそうなら別に誘導してくれ(通信 千秋- (レギンスの後に細い足が続き、パンプスもサイズはぴったり。 千秋- 隊員A「隊長、それマジナウいっすよ! 正直いけます!」 千秋- 隊員B「ぁ、写メ良いっすか? 課長から頼まれてるもんで」 千秋- 隊員C「ぁ、それじゃウチらはこれで。隠蔽もクソも無しの最優先事項任務だったんで」 千秋- (ぞろぞろと装甲車に乗り込み、エンジン吹かしてどこかへと爆走していく…… 千秋- ……… 千秋- もう嫌だ、こんな会社組織……っ!(orz 鵺- ……状況終了…か…?はてさて… 千秋- ………まぁ、良しとするか…… 千秋- (立ち上がり、喫茶へ 千秋- (こういうときだけ、異様に行動早いよな……名に考えてるんだか 千秋- ((何 千秋- (カランコロン 鵺- ……(気付かれないように千秋を眼で追う 鵺- (怪しい、が……不審とも言えない、か…? 千秋- ……。 千秋- (鵺の方へ 鵺- ……(外眺める 千秋- (席の前で立ち止まり 千秋- こんにちは。 鵺- …こんちわ(外を向いたまま 千秋- 良かったら相席しても、構いませんか? 鵺- ……… 千秋- (目を合わせない、か 鵺- …まあ、別に構わないけど? 鵺- (接触してきたか……出方次第、だな 千秋- 、ありがとうございます(微笑み、対席する 鵺- (と言っても、こっちも仕事だしな……パパッと済ませるか? 鵺- (不審ではないが、黙って見過ごすのもな……(向き直り 鵺- 別に席なら他にも沢山あいてんのに、物好きだね(ダルそうに頭掻く 千秋- そうですね、(グレープフルーツジュース注文 鵺- じゃあ、物好きなおたくに「質問いいですか?」(左目の邪眼発動、強制暗示(効力は中 鵺- (さて、効くか…?(ある程度耐性あるなら無効化可能 千秋- ――、ええ、良いですよ。 鵺- そうだな…「ここ最近、やんちゃしてる集団の一味だったりする?」 千秋- ――Evの事ですか? 鵺- Ev……そう、それ。「あんた、その関係者?」 千秋- ――ああ、そうだよ。約一名だけね 鵺- (一名?組織ではなく個人との繋がりか? 鵺- まあ、今はそれはいいや…問題なのは「あんたは、破壊活動や襲撃に加担し行動しているか?」だ 千秋- ――…… 千秋- その、逆の立場に立つつもりだよ。鵺さん 鵺- …へえ、効いてなかったかい 鵺- それに俺の名前まで知ってるとは、光栄だね。綺麗なお嬢さん 千秋- …、 鵺- 逆の立場……そうなると、さっきの質問の回答は「NO」って事で受け取っていいのかい? 千秋- ああ。 鵺- ……(千秋の眼を見据え 鵺- なら、まあ、信じるとしよう(通信機取り出し 鵺- 状況解決、問題は(多分)ない。対象を解放してくれ。入れ替わりで警戒に当たる 鵺- (通信を終え)…それじゃ、お先(席を立つ 千秋- ……あっさり、ですね 千秋- 目的は対Ev? 鵺- いんや、興味無いね。うちの雇い主が戦えって言えば戦うんだろうけど 千秋- …… 鵺- アンタが危険人物じゃないなら、今の仕事に支障は無いからな 鵺- ……危険じゃないよね、おたく。一応確認すっけど 千秋- それはどうかな。 千秋- それを決めるのはいつだって、自分以外だろ? 鵺- …(深い溜息 鵺- じゃあ、ここで暴れて誰か襲うつもりか? 千秋- それは無いけど、(ストローに口をつけて 鵺- じゃあ危険じゃないな(外見て、ゲッとしたようなリアクション 千秋- 、ん(つられて外を 鵺- それじゃ、俺ももう行く(足早に退店 鵺さんが退室しました(2008/09/15 03 49) 千秋- ……、変な奴。 デイさんが入室しました デイ- (暫くして入店してくる デイ- ←店の中でも日傘してる人 デイ- (キョロキョロ 千秋- ―― デイ- いた、千秋さん!(発見し近づく デイ- ここにいるって聞いたので。大丈夫でしたか?怪我はまだ? 千秋- …… 千秋- (考え込むように頬杖をつき、窓の外を見遣る デイ- (因みに、窓の外には2mを超すフードを被った大柄の人物がこちらを見ている デイ- (少し離れた所からで、顔が完全に隠れている。正直不気味で怪しい デイ- これ、ソル家特製の良薬です!あとこれも!(テーブルに並べられていく怪しい瓶の数々 千秋- 、(うわ、と驚き目を見開く デイ- ぇーと、これが飲み薬で、これが塗り薬……あれ?こっちだったかしら? 千秋- …、(気を取り直してデイの方を見遣り 千秋- デイさん、この後用事でも立込んでるの? デイ- ぅーん…え?どうしてですか? 千秋- いや、何か居るし(窓の外へ視線を促して デイ- あ、ぇーと、あの人はですね、私の護衛の方みたいです デイ- 先日の一件で家の者が心配して付けてくれたのですが。とても良い人ですよ 千秋- ……そっか。 千秋- ゆっくりできるなら、座ってよ。あとその凄い色した薬瓶も仕舞って デイ- 誘ったのですが、仕事だからと断られちゃいまして デイ- …お薬、お嫌いですか?(渋々仕舞い デイ- (千秋の額に手を当て 千秋- 、 千秋- っ、ゎ、! いいから、!(バッと仰け反って デイ- んー…血圧が低いみたいですけど、元気そうでなによりです(ニコリ 千秋- 、~~~(目線そらす デイ- では、失礼いたします(対席に座り、傘を仕舞う 千秋- 、、(調子狂うなぁ 千秋- …デイさん、体の方は? デイ- はい、ユックリ休んだので大丈夫ですよ。元気一杯、とまでは言えませんが デイ- …あの、私、最後の記憶が曖昧で……千秋さんが無事だったのは、なんとなく覚えているのですが 千秋- …そ、っか…… 千秋- (昨夜の事を思い出す――蝙蝠、夥しい量のケーブル、血、そして…… 千秋- (デイを見て) 無事で良かった。 デイ- 美殺さんも逃げ切れたと思いますし、はい、皆無事で良かったです(ニッコリ デイ- あの方は……千秋さんが倒したのですか?私も、戦っていたような気がするのですが(うーん と考える 千秋- ……(曖昧に記憶はあるのか… デイ- (…でも、これはなんか…自分の記憶というか、夢を見ていたみたいな…(俯き考え込む 千秋- まぁ、その事はいいよ。 デイさんも大変だったろうし… デイ- いえ、お力になれたかも分らないのが、少し口惜しくて(少し悲しげに微笑む 千秋- (首を横に振る 千秋- 被害は出てないんだし、今はそれを喜ぼうよ。甘い言葉だけど デイ- ……そう、ですね。はい!(はにかむ様に笑う 千秋- …それに、デイさんが一番頑張ってたよ デイ- そ、そんな事ないですよッ 千秋- そんな事ある。ていうか見てて危なっかしいよ(意地悪っぽく デイ- 、ご、ごめんなさい・・・(シュン 千秋- 誰かを助ける前に、貴方が倒れたら、元も子もない 千秋- それに、悲しむ人だって―― デイ- それは…でも、それは千秋さんだってそうです 千秋- 、私は デイ- (クスッと笑い)頑固者同士、苦労は絶えませんね 千秋- ……、(溜息 千秋- 悪かった……、私も、気をつける。(だから、と付け加えるように デイ- (……私、出しゃばり過ぎ、なのかしら…… デイ- (でも、私は、出来るなら皆を守りたいし……思い上がりなのは承知だけど(どんどん難しい表情に 千秋- ……、 デイ- (でもでも…(ぅ~~~ん 千秋- デイさん デイ- ぁ、は、はい 千秋- ファッションとか拘りある? デイ- ぇ、…?ぁ、そうですね… デイ- このドレスも家の者が用意した物で、今までずっと… 千秋- ぁー、そっか、 それもそうだよね デイ- あ、でも、そうですね…黒が好きです デイ- 華やかな色も好きなのですが、衣服は黒な物を多く用意させています 千秋- んー…… デイ- 千秋さんは…いつも素敵ですね(マジマジ眺め 千秋- 、そうかな(自分見て デイ- はい、とても! 千秋- ……(今の服は上司の趣味だけどね…… 千秋- (って普段は俺の趣味なのか!? 違う違う!! 千秋- ぁ、いやー、、ま、そのさ 千秋- 買い物とか行かない? 気が向くならなんだけど デイ- はい、是非!私、友達とショッピングなんて久しぶりです 千秋- 、そっか。良かった。 興味が無いかと思って心配したよ デイ- 私だって趣味ぐらいありますよ デイ- 夜の散歩です!特に月夜の 千秋- (それって徘徊に近いんじゃぁ…… デイ- 今度、ご一緒しませんか?月の光が綺麗でとても気持ち良いですよ 千秋- …、(微笑み) ええ、喜んで デイ- (嬉しそうにニコニコ 千秋- それじゃ、買い物なり散歩は予定合わせるとして……仕事の話。(申し訳無さそうな表情 デイ- …? 千秋- Ev……彼らの事は知ってるみたいだったけど? デイ- あ、それは……はい、少しだけなら 千秋- うん……まぁ上っ面だけ言えば超法的治安組織みたいなノリらしいんだけど デイ- 私は…あの方々のしている事を素直に認める事ができませんでした 千秋- ……そっか。 デイ- イブさんとも敵対する事になるかもしれませんが……私は、立ち向かうつもりです(強い眼差しで 千秋- 、イブさんとも知り合いか。参ったな デイ- そういえば、仕事と言いましたけど……千秋さんは何か知っているのですか? 千秋- まぁ、ね。 デイ- ……詮索はしません。何か事情があるようなので デイ- でも、力になれる事があったら言って下さいね(微笑 千秋- …、ありがとう。 デイ- ……先日のあの方(スケィル)は…結局、どうなさったのですか? 千秋- ……(首を横に デイ- 逃げた……のでしょうか 千秋- …恐らくは、だけど、(目を伏せて デイ- ……そうですか。…おかしい、ですよね。少しホッとするなんて デイ- あのような事をやめ、生きていてほしいと思うんです…あの方にも デイ- (でも、恐ろしい使い手だった……そして、狂気とも思える信念…(先の戦いを思い起こす 千秋- …… デイ- (凄惨なイメージがフラッシュバックし)、……(眩暈 千秋- デイさん 、?(声を張って デイ- ぁ、すみません…ちょっと、気分が(安心させるように笑う 千秋- 、(彼女の事だ、きっと無理して―― 千秋- 赤いよ? 熱でも――(額に掌を当てて デイ- 大丈夫、ですってば(照れ笑い 千秋- その言葉は無理してる人が言うセリフだよ(手を離し デイ- (そうだった、…あの方の精神介入で…あの、恐ろしい感覚 デイ- (それで、私は……私、は…?(自分の肩を抱き俯く 千秋- 、… デイ- (思い出せない、けど…、… デイ- (首をブンブン振って デイ- 気分が優れないので、ちょっと、家に戻ります(顔色が悪いが、安心させるように微笑む デイ- 無理したら、千秋さんに怒られちゃいますから 千秋- ……(既に無理してる癖に……(席を立つ 千秋- 送るよ、そこのボディーガードまで デイ- いえ、そんな、そこまで弱ってはいませんよ(席を立ち デイ- ょ、っと(フラリ 千秋- 、(咄嗟に腰を抱いて デイ- …(そのまま千秋を抱きしめ、首筋に牙を立て、血を啜り 尽 く す 千秋- ―― デイ- (──そんなイメージが、一瞬だけ千秋の脳裏に過る デイ- す、すみません、…やっぱり、お願いします(苦笑 千秋- 、、 っ 千秋- ぁ、ぁあ。 わか、った…… 千秋- (今のは、何だ――? デイ- ……千秋さんも、休んだ方がよろしいようですね 千秋- ああ、そうするよ(共に店の外へ フードの大男さんが入室しました フードの大男- … デイ- (…血が熱い……、屋敷で休まないと、ちょっと大変ですね…(少し息荒い フードの大男- …(二人の姿を見て、プレッシャーを強め近寄る 千秋- ……(呼吸も乱れてる……それに、あんな出鱈目に薬品なんか…… 千秋- (心配して、くれたんだな……こんなにも、無理をして 千秋- (立ち止まり、彼女を引き渡すように フードの大男- (顔は確認できないものの、鋭い視線だけが千秋を射抜く デイ- ありがとう、千秋さん……また迷惑掛けちゃいましたね 千秋- …――(大男を見上げる――その慧眼は恐らく、女性のソレではない デイ- いいんです、この方は…千秋さんはお友達ですから>大男 千秋- ……、 フードの大男- …それは失礼を(血の底から響くような、怪物の如き声質だが口調は紳士そのもの フードの大男- では…参りましょう… 千秋- じゃあね、デイさん デイ- はい、すみません………(振り返り) デイ- はい、御機嫌よう。今度会うときは、万全にしておきます(辛さを精一杯隠し、満面の笑みで デイ- では(大男に支えられながら去っていく デイさんが退室しました(2008/09/15 06 18) フードの大男さんが退室しました(2008/09/15 06 18) 鵺さんが入室しました 千秋- ……、(俯く 鵺- (デイ達の後を追うように、かなり距離を取りながら追走 鵺- ……損な役回りだよなあ、全く(ブツクサ 千秋- 、あれは―― 鵺- (周囲を警戒しながら尾行 鵺- (そのまま二人を追うように去 鵺さんが退室しました(2008/09/15 06 26) 千秋- おちおち寝てもいられねぇか……(その後を フードの大男さんが退室しました(2008/09/15 06 18) 千秋- ……、(俯く 鵺- (デイ達の後を追うように、かなり距離を取りながら追走 鵺- ……損な役回りだよなあ、全く(ブツクサ 千秋- 、あれは―― 鵺- (周囲を警戒しながら尾行 鵺- (そのまま二人を追うように去 鵺さんが退室しました(2008/09/15 06 26) 千秋- おちおち寝てもいられねぇか……(その後を 千秋さんが退室しました(2008/09/15 06 27)