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【作品名】魔法少女リリカルなのはA s OP 【曲名】ETERNAL BLAZE 【歌手】水樹奈々 田村ゆかり 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□ 【作品名】魔法少女リリカルなのはA s ED 【曲名】Spiritual Garden 【歌手】田村ゆかり 【ジャンル】J-Pop 【価格】¥150 □■iTMS■□ 【作品名】魔法少女リリカルなのはA s (第12話)挿入歌 【曲名】BRAVE PHOENIX 【歌手】水樹奈々 田村ゆかり 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□
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タイトル基本データ 作品番号 NS、NA、N1、N2、NR、NV(※PRカードのみ) ※「ViVid Strike!」(作品番号:VS)とは別タイトル扱い。 エクスパンション セット名 セット番号 エキスパンション形式 セット枚数 備考 魔法少女リリカルなのはStrikerS W03 BP/TD 100+TD限定2 魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 1st WE06 EB 27 エクストラパックとして販売 魔法少女リリカルなのはA s W12- BP/TD 100+TD限定5 魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE GEARS OF DESTINY- W12-G 特殊 27 商品特典構築済みデッキ 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A s W25 BP 80 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st & 2nd A s W32 BP 118(新規18+再録100) SE09のすべてのカード+W25のカード73種を再録 魔法少女リリカルなのは Reflection? W58 BP 100 特徴 特徴《魔法》?を中心としたタイトル。『思い出』を参照するカードが比較的多い。 ブースターの発売回数の多さから広いカードプールを持っており、早出し、相打ち、サーチ、回収など各色に優秀なカードが一通り揃っている。 また追加ブースターによって度々強力なLv3が追加されており、性能も耐久に優れた一心同体 はやて&リインフォースのほか、“スターライトブレイカー”なのはや“プラズマザンバーブレイカー”フェイトなどバーンやショットといった強力な詰め能力を持つもの、早出しのできる雷の帰還 フェイトや怒りの眼差し ヴィータなど幅広い選択肢が存在する。 多くのキャラが特徴《魔法》?を持っておりそのサポートカードが多い一方で、ネーム「なのは」「フェイト」や第二特徴の《クローン》?や《使い魔》?を参照するサポートカードも非常に多く、優秀なカードを組み合わせようとすると名称や特徴の縛りに悩まされることになる。 以上の点から構築が大きく分かれやすく、以下に挙げたデッキタイプのうち複数を組み合わせたデッキが多い。 チェンジ方式は、N1「CXフェイズ/チェンジ先とのコスト差+①/手札1と自身を控え室に置く」、AS「CXフェイズ/チェンジ先とのコスト差+①/手札1を控え室に置き、自身を思い出にする」 主なデッキタイプ 【なのはデッキ】(赤) サポートカードが多数存在する名称「なのは」を中心としたデッキ。 キーカード まっすぐな心 なのは・これからのこと フェイト・意地っ張りアリサ 「なのは」?にアンコールを付加する後列向けキャラ。「なのは」?自体のカードプールが広いため、序盤から終盤まで通してお世話になる優良後列キャラである。 【フェイトビート】(黄) 名称「フェイト」や特徴《クローン》?のサポートカードを活かしたデッキタイプ。 キーカード 水着のフェイト ネオスタン内で数少ない手札を増やせる『集中』持ち。 参照する特徴が《クローン》?と《使い魔》?なので、各種「フェイト」「アルフ」を中心にデッキを組むことになるだろう。 使い魔アルフ 「フェイト」?指定パンプと自ターンの全体パンプ効果を持つ後列向けキャラ。「フェイト」?自体に高パワーキャラが多く、他のパンプカードと合わせることにより全レベル帯で高パワーを維持できる。 【一心同体】(青) 一心同体 はやて&リインフォースの早出しを中心としたデッキ。 キーカード 一心同体 はやて&リインフォース 守りに優れた早出し可能なLv3キャラ。豊富なサーチ・回収カードのお陰で登場させるのは比較的容易。 春に生まれし風 リインフォースⅡ 起動効果による《魔法》・「はやて」のサーチを持つ+500応援。 サーチ対象が広いことから、このデッキに限らず様々なデッキで採用できる優秀な後列向けキャラ。 コメント欄 一心同体デッキ的にはSLBなのはかラグナロクはやてか、悩むな -- (名無しさん) 2014-10-19 12 15 25 スターライトブレイカーなのはのページがスターライトブレイカーフェイトになってるけどいいの? -- (名無しさん) 2014-10-20 20 04 11 今回も11バニラはやてちゃんないのか… -- (名無しさん) 2014-10-20 23 04 01 まだBOXPRで1チャンあるんじゃないか -- (名無しさん) 2014-10-20 23 22 41 LV3はやては強いんだけど捨てるためのはやてとリインに強いカードがほとんど無いんだよな… -- (名無しさん) 2014-10-21 00 34 24 2-1-10000のリィンフォースと手札で余ったリィンⅡくらい? -- (名無しさん) 2014-10-21 14 35 28 一心同体使うなら、余ったまどろみリインも。本格的なはやて軸なら強く支えるものも一応 -- (名無しさん) 2014-10-21 18 14 13 月刊ブシロードに絵柄出てたんだな、全力全開…良絵柄、一心同体…顔ドアップ、もう一人の…全裸 -- (名無しさん) 2014-10-22 06 56 31 緑に縁がない -- (名無しさん) 2014-10-22 07 53 22 なのはvividで緑は強くなるから・・・(震え声) -- (名無しさん) 2014-10-22 17 09 53 1BOXに新RとCRは各1枚、新Cは各2枚ずつ確定で入ってるみたいですね -- (名無しさん) 2014-10-23 18 48 18 1boxにRR新規って二枚だけなのかなまだ1boxしか買ってないからわからないけどさ -- (名無しさん) 2014-10-23 19 39 26 7box空けたけれどその枚数であってるよ -- (名無しさん) 2014-10-23 22 40 40 新規RR1枚しかない時があるよ。あと新規Rと再録Rは別だから1パックにRが2枚とかある -- (名無しさん) 2014-10-24 00 50 10 …な、成程だから箱剥いた時のR枚数がおかしいのか -- (名無しさん) 2014-10-27 15 49 46 現環境に合わせていろいろと編集してみました。アニメ4期の追加来るといいですね。。 -- (名無しさん) 2015-05-12 19 07 13 使い魔アルフ欲しいんだけどもう手に入らんのかな…… -- (名無しさん) 2015-06-20 20 58 44 パックでは厳しいですがカードショップなら有ると思います。 -- (名無しさん) 2015-06-22 23 44 27 劇場版Reflectionが参戦決定!2018年発売予定だそうです -- (名無しさん) 2017-07-30 19 09 19 少しずつカードが紹介され始めて来てますね -- (名無しさん) 2018-04-14 22 46 33 名前 コメント すべてのコメントを見る
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魔法少女リリカルなのはとは、アニメである。 みなーんさん一押し。面白いよ。 詳しいことは公式サイトみるべき。http //www.nanoha.com/ で、詳細。 ウィキペディアを見よう。 http //ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E6%B3%95%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA なんてなげやりな。と思いますよね。 ここはNETA☆wikiです。 以下、ネタ。 現在放映中の魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1stだが、3回見ればフィルムが貰えるというひどい商法をとっている。 通称フィルム商法。恐ろしい。 しかしフィルムの在庫が切れるという事態になっている。怖い。 俺も無論GETしたぜ。ねえプレシアさん? 2回見ればポートレート。まあリピートポイントカードが必要なので注意。 第2弾の特典も始まっている。なのはとフェイトのポスター。 これがなんとA3サイズ。持ち帰りが大変すぎますよ。 途方にくれて上野駅でポスターを掲げながら持って帰った人もいるとか。 『――友達になりたいんだ。』 が1期の代表的セリフ。 『悪魔で・・・いいよ。』 が2期の代表的セリフ。 『少し・・・頭冷やそうか。』 が3期の代表的セリフ。 おわかりだろうか。全部なのはのセリフである。 期が進むごとに・・・おっと誰か来たようだ。『ディバインバスター!』 代表的セリフは書いてる人の個人の意見です。異論は認めん。 『スターライトブレイカー』 が1期の代表的魔法。 『スターライトブレイカー』 が2期の代表的魔法。 『スターライトブレイカー』 が3期の代表的魔法。 おわかりだろうか。全部なのはの魔法である。 期が進むごとに強くなってる。怖い怖い。 ちなみに収束砲は結構せk・・・おっと誰か来たようだ。『スターライトブレイカー!』 代表的魔法は書いてる人個人の意見です。異論は認めん。 『高町なのは』 が1期の主人公 『高町なのは』 が2期の主人公 『高町なのは』 が3期の主人公。 おかわりだろうか。全部高町なのはである。 期が進んでも何も進展が無い。怖いアニメだ。 3期はスバルが主人公になる予定だったのに。 だが4期でとうと主人公の座を娘に譲った。 ちなみに、なn・・・おっと誰か来たようだ。『少し・・・頭冷やそうか。』 主人公は多分事実です。異論は認めん。 まとめると、結局なのはさんの独占アニメなの。 皆見てね。 なのはは俺の嫁だから手を出さないように。つまりヴィヴィオはむs(ry←いつ結婚したんだw ヴィヴィオ(Vivio)とは → ヴィヴィオ(Wikipedia)を参照。 おっと、分野が違う? いや、気のせいじゃないかな。
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ステキな朝を二人のママと―― ヴィヴィオ【朝のジョギングは日課です】 ヴィヴィオ「ゴールッ!」「ママ、ただいま!」 なのは「おかえりー(ハートマーク)」 ヴィヴィオ【今週はフェイトママもお休みで毎日楽しいし 高町ヴィヴィオ今日も絶好調です!】 魔法少女リリカルなのはViVid Memory;08☆「ブランニューステージ」 新しい物語――私たちから始まります リリカル マジカル がんばります ヴィヴィオ「じゃあ、フェイトママ」 なのは「いってきます」 フェイト「いってらっしゃい」 なのは「そういえばヴィヴィオ、新しいお友達、アインハルトちゃんだっけ?ママにも紹介してよ」 ヴィヴィオ「んー、お友達っていうか先輩だからねー」「もっとお話ししたいんだけど、なかなか難しくて」 ヴィヴィオ【そう 出会ったのは少し年上の女の子】 ヴィヴィオ「あ…!」「アインアハルトさん!」 アインハルト「はい」 ヴィヴィオ「ごきげんよう、アインハルトさん!」 アインハルト「ごきげんよう、ヴィヴィオさん」 ヴィヴィオ【中等科の1年生アインハルト・ストラトスさん アインハルトさんは凄く強い格闘技者で 真正古流ベルカの格闘武術覇王流(カイザーアーツ)の後継者 それからベルカ諸王時代の王様 覇王イングヴァルト陛下の正当な子孫 私もこないだ試合をさせてもらったけどまだまだ全然かなわなくって できれば今よりもっと仲良くなって 一緒に練習したりお話したりしたいけど… アインハルト「――ヴィヴィオさんあなたの校舎はあちらでは」 ヴィヴィオ「あ、そ、そうでしたっ!」 アインハルト「それでは」 ヴィヴィオ「あ」「ありがとうございます、アインハルトさん」 ヴィヴィオ【なかなかうまくいかなかったり】 アインハルト「――遅刻しないように」「気を付けてくださいね」 ヴィヴィオ「はいっ!」「気をつけますッ!!」 ヴィヴィオ【なにげない一言が嬉しかったり そんな一喜一憂の日々だけど 今はもうなくなってしまった旧ベルカの出身同士 『強くなりたい』格闘技者同士 触れあえる時はきっとあるから】 リオ「……て言うかー」「今日も試験だよ―!大変だよ―!」 ヴィヴィオ「そうなんだよね~~!!」 ヴィヴィオ【初等かも中等科もただいま一学期前期試験の真っ最中です】 リオ「でも試験が終われば、土日とあわせて4日間の試験休み!」 コロナ「うん!楽しい旅行が待ってるよー」 ヴィヴィオ「宿泊先も遊び場ももう準備万端だって!」 リオ・コロナ「おおー!」 ヴィヴィオ【今回のお休みはママ達の引率でみんな一緒に異世界旅行!】 リオ「よーし、じゃあ楽しい試験休みを笑顔で迎える為にッ!」 コロナ「目指せ100点満点!」 「お―――――っ!」 同時刻 高町家 フェイト「エリオ、キャロ、そっちはどう?」 エリオ[はい、さっき無事に引き継ぎが終わりました] キャロ「予定通り、週末からお休みです!」 フェイト「そう、よかった!」 なのは[じゃあ、予定通りにみんなで行ける] [春の大自然旅行ツアー&(アーンド)ルーテシアも一緒にみんなでオフトレーニング!] 同時刻 ナカジマ家 ウェンディ「みんなで旅行、あたしも行きたいッス~~!」「ノーヴェとスバルだけってずるいッス~~!」 ノーヴェ「あー、うるせーな」「あたしらだって別に遊びで行くわけじゃねー。スバルはオフトレだし、あたしはチビ達の引率だ」 ディエチ「とかいって。通販で水着とか川遊びセットを買ってるのをおねーちゃんが知らないとでも?」 チンク「なんだ、そうなのか」 ノーヴェ「!!!」「おまえ、ヒトのものを勝手にッ!」 ディエチ「いや発送データに中身書いてあるし」「まあ、いいじゃないノーヴェはバイトも救助隊の研修も頑張ってるんだし」 チンク「まったくだ」 ノーヴェ「だから遊びじゃねーって」 ウェンディ「いいな~いいなぁ~ッス~」 チンク「そういえば、あの子……アインアハルトも一緒か?」 ノーヴェ「そのつもり、これから誘うんだけどね」 アインハルト「合宿…ですか?」「すまみません。私は練習がありますので」 ノーヴェ[だからその練習のために行くんだって]「あたしや姉貴もいるし、ヴィヴィオも来る。練習相手には事欠かねー」 [しかも魔道師ランクAAからオーバーSのトレーニングも見られる] アインハルト「はい…」 ノーヴェ「ついでに歴史に詳しくておまえの祖国のレアな伝記本とか持ってるお嬢もいる。まあたったの4日だ、 だまされたと思ってきてみろ」 「つまんなかったら、走り込むなり一人で練習するなりしてていいんだし」 アインハルト「あの……」 ノーヴェ[いいから来い!絶対いい経験になる!]「あとで詳しいことメールすっから、とりあえず今日の試験がんばれな」 アインハルト[…はい……] ディエチ「ノーヴェのああいう強引さってつくづくスバルと姉妹だよねえ」 チンク「ああ…そうだな」 ウェンディ「うう、あたしも行きたかったっス~」「バイトが~~」 で、そんなこんなで試験期間も無事に終了 なのは「試験終了お疲れさま」 フェイト「みんなどうだった?」 リオ「花丸評価いただきました!」 ヴィヴィオ「三人そろって」 コロナ「優等生ですッ!」 成績表(注:手に持ってる大きめの長方形のカードに印刷されてます) リオ S(3/235) 90・85・88・98・91 ヴィヴィオ A(22/235) 97・100・100・92・90 コロナ B(87/235) 100・100・100・100・100 なのは「わー。みんなすごいすごーいっ」 フェイト「これならもう堂々とおでかけできるね!」 リオ「あははー」 なのは「じゃあ。リオちゃんとコロナちゃんはいったんおうちに戻って準備しないとね」 リオ・コロナ「はいっ」 レイジングハート「Good job」 ヴィヴィオ「ありがとレイジングハート」 フェイト「おうちの方にもご挨拶したいから車出すね」 ヴィヴィオ「あ、じゃあ準備すませてわたしも行く!」 なのは「あー、ヴィヴィオは待ってて、お客様が来るから」 ヴィヴィオ「おきゃくさま?」 レイジングハート「It seems to have come.(いらっしゃったようです)」 アインハルト「こんにちは」 ヴィヴィオ「アインハルトさん!?…とノーヴェ!」 アインハルト「異世界での訓練合宿とのことでノーヴェさんにお誘い頂きました」「同行させて頂いても宜しいでしょうか?」 ヴィヴィオ「はいッッ!」「もー全力で大歓迎ですッ!」 フェイト「ほらヴィヴィオ上がってもらって」 ヴィヴィオ「あ、うん」「アインハルトさんどーぞ!」 アインハルト「お邪魔します」 フェイト「あの子が同行するって教えなかったの正解だね、ノーヴェ」 ノーヴェ「はい、予想以上に」 リオ・コロナ「こんにちはー」 ヴィヴィオ「はい」 なのは「はじめまして…アインハルトちゃん」「ヴィヴィオの母です。娘がいつもお世話になっています」 アインハルト「いえ…あの、こちらこそ」 なのは「格闘技強いんだよね?凄いねぇ」 アインハルト「は…はい……」 ヴィヴィオ「ちょ、ママ!アインハルトさん物静かな方だから!」 なのは「えー?」 フェイト「さて…ここから出発するメンバーはみんなそろったし。途中で2人の家によってそのまま出かけちゃおうか」 「はぁ―――い!」 コロナ「あ、ヴィヴィオ着替え着替え!」 ヴィヴィオ「あーそうだ!クリス手伝ってッ!」 リオ「賑やかになりそうですねー」 ノーヴェ「ああ」 リオ「そういえばスバルさんたちは別行動なんですか?」 ノーヴェ「スバルは次元港で待ち合わせ。ちょうど仕事終えてるころじゃねーかな」 湾岸警備隊 宿舎 同 特別救助隊オフィス スバル「それでは司令!」「スバルナカジマ防災士長」「本日只今より4日間の訓練休暇に入ります!」 ヴォルツ「おう頑張ってこいや。今回の訓練は例の執務官殿も一緒だったか」 スバル「はい、ランスター執務官と一緒にいろいろ鍛えなおしてきます」 本局 次元航行部第3オフィス ティアナ「オフトレとはいえ、本格的な戦闘訓練はちょっと久しぶりよね」 「気合い入れなきゃ!ヴィヴィオやアインハルト達にダメなところは見せられないし!」 クロスミラージュ「Yes master」 ティアナ「でもその前にこのデータ整理を終わらせなきゃ」 クロスミラージュ「Let s work hard(がんばりましょう)」 無人世界カルナージ アルピーノ家 メガーヌ「じゃ、それで人数確定ね」 なのは[はい!][お世話になりますアルピーノさん] メガーヌ「いいえ~♪じゃ待ってるわね~」 ルーテシア「ふふ」「うふふ」「ねえガリュー、私自分の才能がちょっと怖いかも」「なんといっても今回のおもてなしは過去最高!」 「レイヤー建造物で組んだ訓練場は陸戦魔導師の練習に!」 「わたしとガリューの手作りアスレチックフィールドはみんなのフィジカルトレーニングに!」 「我が家の横に建築した宿泊ロッジも内外ともにパワーアップ!設計わたし!」 「掘ったら出てきた天然温泉も癒しの空間にノリノリで改造ッ!!」 「完璧!」「もと六課のみなさんもヴィヴィオ達も!」「我が家にど―――んとおいでませ――!!」 メガーヌ「ルーテシア~スープの味見手伝ってー」 ルーテシア「はーい、ママ」 ヴィヴィオ『みんなで一緒のトレーニング&旅行ツアー』『クリスとの遠出も初めてだし』『アインハルトさんがいっしょだし』 「アインハルトさん。4日間よろしくお願いしますね」 アインハルト「はい。軽い手合わせの機会などあればお願いできればと」 ヴィヴィオ「はい!!!こちらこそ、ぜひッッ!」 ヴィヴィオ【これから4日間素敵なイベントが はじまります!】 新展開は鮮烈に☆
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されど魔に魅入られし人は絶えず。 彼らは魔を崇め魔の力を得んと欲し、大いなる塔を建立す。 その塔、魔の物の国と人の国とを結び 魔に魅入られし者は魔に昇らんと塔を登れり。 そはまさに悪業なり―――。 「魔の物の国―――」 指先の一文をなぞり、ユーノはそれを言葉にして呟いた。 古ぼけた紙に綴られた奇怪な紋様を文字として解読出来るようになるまで、今日を含めて数年の月日をかけている。それでも、まだこの本の全貌を読み終えたワケではない。 <魔剣文書>と名づけられたこの古文書は、用いられた文字もそうだが内容も不気味な謎に満ちていた。 「魔の物……<悪魔>」 口にするのならば容易く出てくる。あらゆる種類の人間が共通して想像する悪しき存在。全ての闇に付けられた、名前と形。一つの概念。 そんなものが、もし本当に現実に存在するとしたらどうだろう? この本は、そんな『在り得ない存在』について書かれたものだった。 (神話の類なら、何処にでも存在する。その世界、地方、歴史……あらゆる時間と場所に人は幻想を書き綴ってきた。神や天使、悪魔は珍しい存在じゃない。ただ一つ、それが『幻想の中に在る』という前提に限って……) 最近、ユーノはこの本を前にして考え込む事が多くなっていた。 最初は純粋な好奇心や知的探究心から始めた文字の解読だったが、内容を読み進めるうちに奇妙な疑念が湧いてくるようになった。それは日常生活の中で紛れてしまう程度のものなのに、ふと気が付けばそれに思い至ってしまう。 この世には、人が認識していない魔の世界があるのではないか―――? 妄想にも似た疑念が頭から離れない。 もちろん、その原因がこの悪魔について複雑かつ難解に書かれた本の影響にある事は否定出来ないだろう。 バカバカしい、と笑い飛せばいい。学者が本の内容に取り込まれるなど、まさに笑い話だ。 こういった闇を幻想で形作った神話の類はあらゆる世界に存在する。それこそ、このミッドチルダにも形や名前を変え、似通った内容が図書館に収まっているものだ。 子供はベッドの下やクローゼットの中に、大人は宗教や伝説の中に、それらの存在が潜んでいることを幻視する。 ―――しかし、そうして考えているうちに奇妙な共通点にいつも行き着いてしまうのだ。 (何処にでも存在する幻想……つまりそれは、どんな世界であっても人の傍らに必ず存在する影みたいなものじゃないか?) 誰もがその存在を幻想と信じ、この世に存在しないと確信し……しかし、誰もがその概念を忘れない。 人は、誰であっても<悪魔>という存在を認識し、あらゆる負の現象にその揶揄を当て嵌める。 当たり前のこと過ぎて、誰も気付かない。まるで人の根幹に刻まれた不変の存在。 その事実を、この本が改めて指摘しているような気がしてならないのだ。 (この本は悪魔と、その悪魔の住む世界、そしてその世界を繋ぐ方法について書かれている―――。 珍しい内容じゃない。世紀末を綴った破滅思想の宗教家なら誰でも書きたがる内容だ。でも、この本は、これ一冊だけの存在だった。多くの人に知ら示す為に書かれたものじゃない……) 考えれば考えるほど思考が泥沼に沈んでいくような錯覚を覚える。まるで無限を見ている気分だと、ユーノは眩暈を感じた。 ひとたび本から目を離し、日常の業務へ没頭すれば消え失せる悩みなのに。しかし、今はそうして自分が疑問を忘れてしまう事さえ『おかしい』と感じてしまう。 本来なら気付くべき真実に、自分が無意識に目を逸らそうとしているのではないか? だから、誰も書き残さなかった? ―――本当の<悪魔>について。 『そんなもの本当は存在しない』という前提を無意識に植えつける事を除いて、ただ真実のみを書き記す事を拒否した―――。 「次元世界ではない……<世界の裏側> 魔の物が棲む世界、そんなものが……?」 知らず、ユーノは手を伸ばしていた。何も無い目の前の空間に向けて。 中継ポートや次元航行でも到達し得ない、次元空間とも違う、完全なる<異世界> 絶対に辿り着けないのに、しかしもし目の前の空間をトランプのように裏返すことが出来たら、その瞬間もう目の前に広がっているような錯覚に捉われる影の世界―――。 それが在るような気がしてならない。バカバカしい、と『信じない』心が、実は『信じたくない』という心であると思えてしまう程に、強く。 疑心暗鬼に没頭していたユーノは、ふと聞き慣れた通信機のアラームを捉えて我に返った。 虚空を彷徨っていた手で通信を繋ぐ。馴染みの仕事仲間が画面に映った。 『司書長、お休みのところ申し訳ありません。上から、緊急の資料検索の依頼が―――』 「ああ、わかった。すぐ行くよ」 今やもう慣れきった休日出勤の要請を受け、椅子から立ち上がる。パタン、と本を閉じた。 ―――すると、それだけで頭の中に渦巻いていた疑念があっさりと消え去った。 貴重な休日の時間を割いてまで、自分は一体何を妄想していたのか……バカバカしい、という気持ちすら湧き上がってくる。 ユーノはもう本を一瞥もせず、手早く着替えを済ませると、自分を擦り減らす過酷な職場へと向かっていった。 自室の扉が閉じ、部屋は闇で満たされる。 静寂の漂う中、その暗闇は再び彼が戻るのを待ち続けるのだ。 真実が自らのすぐ傍に横たえられていることに気付く、その瞬間まで―――。 かつて 天は容易く裏返り、大地は幾度も大きく裂けた。 天地は生まれながらに不安定で その境目から幾度も<混乱>を産んだ―――。 魔法少女リリカルなのはStylish 第四話『Strike out』 0075年4月。ミッドチルダ臨海第八空港近隣、廃棄都市街にて。 視界状況は良好。透けるような青空の下、ティアナは廃ビルの屋上から周囲を見回した。 放棄された都市には朽ちかけたビルの死骸が点々と横たわっている。 事前に生体反応が皆無であることは調べられている筈だが、見慣れたその風景の影に居住権を失った人々が隠れ住んでいるような気がして、ティアナは根拠のない疑念を頭から振り払った。 ダンテの事務所もこんな場所にある。次元世界の場末。何度も訪れたことのある地だ。最近疎遠になったが、それでもあの場所で得た経験はこの身に刻み込まれている。 言いようのない実感が心に湧き上がってきた。 自分は、ついにここまで来たのだ。 <魔導師試験>―――夢に向けて、ティアナは今ひとつの段階を踏み出そうとしていた。 「ふんっ!」 傍らで気合いの入った声が響き、拳が空を切る鋭い音が聞こえた。パートナーの状態も良好らしい。 「―――スバル。あんまり暴れてると、試験中にそのオンボロローラーも逝っちゃうわよ」 「もうっ、ティア。あんまり嫌なこと言わないで。ちゃんと油も注してきた!」 コンディションを確かめるスバルを横目に、ティアナも自分のデバイスの調子を確認する。 弾丸を模した口紅サイズの魔力カートリッジを挿し込むと、二匹の鉄の獣が戦闘態勢に入った。二挺のアンカーガンを馴染ませるように両手で玩ぶ。 ガンホルダーにそれを仕舞おうとして、ふと視線を感じた。 顔を上げればデバイスを扱う自分の様子を見つめるスバルの姿がある。その眼は何かを期待するように輝いていた。 相も変わらず子供っぽいパートナーに苦笑する。まあいい、今回は特別サービスだ。これで気合いが入るなら芸の一つくらい安い。 ティアナはトリガーガードに指を掛けると、そこを支点に両手のアンカーガンを勢い良く回転させた。 華麗に弧を描く銃身。その回転を維持したまま両手を交差させるなどのパフォーマンスを魅せると、流れるような動きで腰の後ろのホルダーに滑り込ませた。 「おっ、おおお~! スゴイぃ~っ!」 キラキラした瞳でスバルが歓声を上げた。 「ティア、もう一回ッ! 今のもう一回やって! アレ初めて見る!!」 「だぁ~っ、あんたに見せるとこれだから嫌なのよ! もうっ、後よ、後! もうすぐ試験始まるでしょっ!」 子供のように縋りついて強請るスバルを引き剥がしながらティアナは虚空を指差す。 そして、丁度計ったようなタイミングでそこにホログラムの通信モニターが出現し、魔導師試験の試験官が映し出された。 『おはようございます! さて、魔導師試験受験者二名。そろってますか~?』 老練な試験官を想像していたティアナはモニターから飛び出してきた元気の良い声とその幼い少女の容姿に些か面食らった。 魔導師資質が年齢の積み重ねと比例しない以上、若い士官も多い管理局だが、それでも試験官の少女の子供っぽい口調と声色には違和感を覚えざる得ない。 しかし、そんな疑念を顔には出さず、ティアナは姿勢を正した。上官には変わりないのだ。慌ててスバルがそれに続く。 『確認しますね。時空管理局陸士386部隊に所属のスバル=ナカジマ二等陸士と―――』 「はいっ!」 『ティアナ=ランスター二等陸士!』 「はい」 それぞれ諸所の確認に力強く頷く。 所有する魔導師ランク<陸戦Cランク>から<陸戦Bランク>への昇格試験。実戦要素が介入する、エースへの登竜門というべき試験だ。 <リインフォースⅡ>と名乗る風変わりな試験官の元、ティアナとスバルの挑戦が始まろうとしていた。 所変わり、その上空で滞空するヘリの中にて―――。 「……」 「はやて、ドア全開だと危ないよ? モニターでも見られるんだから……はやて?」 「……フェイトちゃん、あのツインテールの拳銃使い……かなりのもんやで」 「え? そ、そうかな……経歴を見る限り確かに優秀だけど……」 「今の見たやろ? あの銃捌き、メチャかっこええ! あのクルクル回すやつ!」 「えっ、そこなの!?」 「アレ、昔やってみたけど、モデルガン足に落として悶えることしかできんかったわ。難しいんやで? いいなぁ~、もう一回生で見せてくれんかなぁ~」 「は、はやて……?」 「魔導師であんなスタイルを持つ子がおるとは、意外や……。何より装備がわかっとる! 二挺拳銃なんて、マークかあの娘は!?」 「マークって誰?」 「香港ノワールや! もしくは戦闘能力を120%向上出来る技術でも習得しとるんか」 「はやて、昨日はどんな映画見たのか知らないけど、今は試験に集中してね……」 「ジョン=ウーは神監督やでぇ」 「話聞いてよ……」 『―――という事で、何か質問は?』 「ありません」 「あ、ありませんっ」 簡潔な試験内容の説明を終え、二人の顔を見回すリインフォースⅡにティアナは頷き、慌ててスバルがそれに続く。 『それでは、スタートまであと少し。ゴール地点で会いましょう―――ですよ?』 最後に愛らしいウィンクを残して、風変わりな試験官を映したモニターは消失した。 それと入れ替わるように、スタートの秒読みを示す三つのマーカーが表示される。 「―――分担して行く? コンビで行く?」 普段どおりの落ち着いた様子でティアナが呟き、緊張気味だったスバルはそれを聞き取った。 一つ目のマーカーが消失する。 「コンビ!」 「そう言うと思った」 こと連携において、腐れ縁だけでは済まされない錬度を築いてきたお互いを信頼するように笑みを浮かべ合う。 二つ目のマーカーが消失した。 「なら、こんな試験にまでアレ使うのは恥ずかしいけど、まあ時間制限もあるし……」 「うんっ、アレだね!」 「―――よし、行くわよ!!」 「おう!」 そして、三つ目の赤いマーカーが消失した瞬間、試験開始と同時に二人は息を揃えて行動を開始した。 踏み出す一歩、試験の開始、そして何より二人の新たなステージへの挑戦を示すように、モニターには『Start』の文字が淡く浮かんでいた。 「おっ、始まった始まった」 「お手並み拝見……と、アレ?」 「へえ……おもろい方法取ったなぁ」 「これは合理的だけど、なかなかトリッキーだね」 「確かに、こういう方法を禁止してはおらんけど、さて……?」 「ティア、太った?」 「頭ぶち抜くわよ? いいから、あんたは移動と回避に集中する!」 目の前にあるスバルの後頭部を銃底で小突きながら、ティアナはコース上に設置された障害用オートスフィアに集中する。 ティアナはスタートとほぼ同時に、ローラーブーツで走り出したスバルの背中に飛び乗っていた。 今、ティアナはスバルにおぶられた状態である。生身の足よりも機動力に優れるローラーブーツの優位を二人で利用する為の手段だった。 ティアナを背負うことでスバルは両手を塞がれる形になるが、そこはティアナが攻撃に、スバルが移動に専念することで互いを補っている。 まさに二身一体。しかし、互いの呼吸を合わせる高い錬度を必要とする難度の高い手段である。手数が減るのも痛い。何より、おんぶ状態のこれはちょっぴり格好が悪くて恥ずかしいのだ。 そんなリスクを文字通り背負いながらも、スバルの余りある魔力をローラーブーツに叩き込んだ加速は十分なメリットとなる機動力を生み出した。 あっという間に最初のポイントとなる廃ビルの目前にまで到達する。 「スバル、まずはビル内から叩くわよ!」 「了解!」 アンカーガンの下部からワイヤーが射出され、その先端は狙い違わずビルの一角に接着し、接点から小さな魔方陣の輝きが放たれた。 ワイヤーは物理的な物だが先端には魔法を使っており、バインド系統のこの魔法ならば二人分の体重も十分に耐えられる。 ワイヤーを巻き取り始めるモーター音と共に、引っ張り上げる力でティアナの体とそれを掴むスバルの体が宙を舞った。 振り子の要領で弧を描く軌道。そのまま遠心力に乗り、スバルのローラーブーツがビルの窓を蹴り破って、二人は閑散とした廃ビルの中へと躍り込んだ。 内部に配置された球状のオートスフィアの群れは、突然の襲撃者達にも機械的に対応する。簡易シールドを展開し、非殺傷設定の魔力弾を放ち始めた。 何の細工もない低威力の魔力弾ではあるが、何せ数が数なのだから、一発でも当たり足を止められた瞬間に集中砲火を浴びてあっさりと意識は飛んでしまうだろう。 その弾雨の中を、しかしスバルは臆す事無く疾走した。 着地と同時にローラーが火花を散らしながら回転し、二人分の体重を乗せて床を滑る。 鍛え抜かれた足腰で相棒を背負ったまま姿勢制御をこなし、スバルは迫る弾幕をすり抜けていった。 そして、その背中ではティアナが目まぐるしく変わる視界の中で標的を正確に捉えている。 「―――Let s Rock!」 兄貴分がよく口にする台詞が無意識に突いて出た。 楽しむ余裕などないのに口の端は自然に持ち上がって、獰猛な笑みを形作る。この際景気付けだ、派手に行こう。どんな時も不敵笑う、それがアイツのスタイル―――。 次の瞬間、文字通り派手な閃光を伴ってティアナが両手に携えた二匹の獣がでたらめに吼えまくった。 装填したカートリッジの魔力を一瞬で使い尽くすような速射。左右それぞれ別の標的を狙った射撃は、一見メチャクチャに見えて、しかし一発も外す事無くスフィアを撃墜する。 低出力のシールドなど、紙の防御。高密度に集束されたティアナの魔力弾は容易く撃ち抜く。 攻防は一瞬で決着がついた。 廃ビルに飛び込み、でたらめな軌道を描きながら弾幕を回避し、一瞬も停滞することなく反対側の窓をぶち抜いて外へと抜ける。 その後に残されたものは、一体も残さず撃墜された標的の残骸のみだった。 薄暗い空間から再び青空の下へと視界が開放される。 ビルの上層部から地面への短い距離を落下する中、向かいに建つ別のビルの内部に並ぶ更なる標的をティアナの眼は捉えていた。 数秒間の時間の流れで動き続ける刹那の状況。その中で、ティアナは撃つべき的と避けるべき的を瞬時に把握する。 思考を置き去りにして、積み重ねてきた経験と磨き続けた感性が魔法を行使した。 「<クロス・ファイア・シュート>……」 既に撃ちつくしたアンカーガンの代わりに、ティアナの周囲で三つの魔力スフィアが形成される。魔力量は平凡ながら、恐るべき集束率で圧縮されたそれは、迸るほどの放電現象を起こしていた。 頭の中のイメージは、視界に映るターゲットマーカーとそれに向かって跳んでいくスティンガーミサイル。 ティアナは炸薬に火をつける。 「Fire!!」 三発の誘導魔力弾が解き放たれた。 獰猛な力を押さえ込まれていた弾丸は歓喜に震えるように大気を切り裂く音を立ててビルの中へと吸い込まれていく。その着弾を確認する暇もなく、短い自由落下を終えて二人は道路に着地した。 「次、数多いわよ! 分担する!」 「オッケー! ……って、熱いよティア!? カートリッジ、首筋に落とさないでっ!」 「おっと失礼」 異常な速射によって酷使され、熱を持った銃身から吐き出されるカートリッジを頭に被って涙目になるスバルをサラリと受け流す。 新しい弾丸を込めながら、ティアナは先に待つ更なる障害を見据えた。 二人は止まらない。 背後の廃ビルの中で、連続して起こる誘導弾の閃光とターゲットの破壊音を聞きながら、振り向かずにティアナとスバルはゴールへの道筋を走り抜けて行った。 「……フェイトちゃん、タイムは?」 「五分切ってないよ」 「これは、とんでもないな~。『いいコンビ』っていうレベルやないよ、攻防一体、高シンクロや」 「スバルって娘は運動神経が抜きん出てるね。人を一人担いであの運動性は並じゃないよ。スタミナもまだまだ余裕があるみたい」 「二つ目のターゲットポイントは……うん、全滅しとるね。ダミーターゲットにも当てとらん」 「ティアナって娘は射撃魔法に関しては、もうAランクの範疇じゃないかな? 誘導弾の操作性もそうだけど、魔力の集束率がすごい。それにあの速射―――魔力弾の形成速度は、ちょっと異常なほどだね」 「天性のもんかな? せやけど……何よりあの娘、変則的な銃型のデバイスに随分馴染んどるな。まるで本物の拳銃を扱ったことがあるみたいや」 「え、でも確か彼女はミッドチルダ出身の純粋な血統だよ? 質量兵器に触れる機会なんて……」 「そうなんやけどねぇ……おっ、第三ポイントも下を制圧したみたいやね」 「次が難関だね」 次の標的が待つポイントは、多重構造になったハイウェイだった。 下部の標的を正面突破によって撃破した二人は、すぐさま上部―――三段構造の中間で待ち受ける次のターゲットに取り掛かる。 崩落した天井の穴からティアナはワイヤーを撃ち出した。 オートスフィアが一斉にその位置へ照準を合わせる。ワイヤーを巻き戻し、ティアナが上昇して姿を現した瞬間、全てが終わる状況だった。 低いモーター音と共に下部から上がってくる何かが気配。 穴から飛び出す影を捉えた瞬間、魔力弾が一気に殺到した。 そして―――魔力弾に弾かれて、巻き上げられたアンカーガンだけが虚しく宙で跳ね回る。 もしオートスフィア達に顔があったなら、その表情は驚愕に歪められていただろう。完全に裏をかかれる形になったターゲットの群れを、背後からスバルのリボルバーシュートが襲った。 「でりゃあああああっ!!」 数体のオートスフィアを一掃したスバルが、雄叫びを上げて道路を走り抜ける。離れた位置から気付かれぬよう上の階に上がり、ティアナが囮となっているうちに強襲する作戦だった。 慌てたように回頭する隙に更に2体、スバルの拳と蹴りが標的を薙ぎ払った。 しかし、奇襲の効果もそれで終わる。元々数において圧倒的に有利であるスフィアの群れはまだ過半数を残しながら、照準をスバルに向けて改めていた。 未だ十分な脅威である火力の差に、スバルは自ら飛び込む形になる。それでも一瞬の躊躇なく突撃を続行し―――。 「ティア!」 ワイヤーの巻き取られる音と共に、もう一挺のアンカーガンを使って、今度こそティアナが穴から飛び出してきた。 ティアナの位置からすれば、再び背後を取った完全な奇襲の体勢。囮に使ったアンカーガンを掴み取ると、ぶら下がったままの不安定な状態で片っ端から無防備な標的を撃ち落していく。 二度の奇襲に加え、挟み撃ちの状況。生身の人間ならば混乱に陥るところを、無機質なスフィアは愚直なまでに冷静に対処し始めた。 二方に分かれて、ティアナとスバルを迎撃する単純な行動。手数を減らした弾幕の隙間をスバルは軽いフットワークで潜り抜け、近接戦闘能力が皆無なスフィアを次々と撃墜する。 ティアナもアンカーガンを両手に確保すると、<エアハイク>で作り出した足場を蹴ってターゲットの群れに飛び掛った。 空中で体を回転させながら、視界に掠める程度にしか映らない標的を的確に撃ち抜いていく。得意の速射が文字通り薙ぎ払うように目標を間断なく爆発させた。 ティアナの足が地面に着き、スバルが体を捻って制動を掛ける。 互いの背中がドンッとぶつかり合い、二人の猛攻は終了した。 「―――ッイェイ! ナイスだよティア! 一発で決まったね!」 一人歓声を上げてはしゃぐスバルとは対照的に、ティアナは淡々と後回しにしていた非攻撃型のターゲットを叩き壊していく。 「時間、どれぐらい残ってる?」 「全然余裕だよ。それにしても、やっぱりティアってスゴイなぁ。一発のミスショットもなかったもんね!」 「気を緩めるんじゃないわよ? さっさと片付けて次に行くんだから」 「分かってる分かってる」 自分でも過去最高と思えるファインプレーに浮き足立つスバルを眺め、呆れたようなため息を吐くと、ティアナはアンカーガンのカートリッジを装填した。 「スバル」 「うん、なに?」 返事をしながら振り返ったスバルの眼前に、心底何気なく銃口が突きつけられる。 「避けて」 「へ?」 一瞬状況を理解できずに間の抜けた声を出した途端、ワンクッション置いてティアナは引き金を引いた。 これ見よがしに見せつけた指の動きを見て取り、ほとんど反射的にスバルが顔を逸らすと、一瞬遅れて顔面のあった場所を発射された魔力弾が掠めて飛んでいった。 背後で魔力弾が何かを破壊する音が響いたが、心臓を含めた全身の筋肉が硬直したスバルには聞こえなかった。 「……あっ、危ないよティアァァーッ!? 当たるかと思ったじゃない!」 「油断するなって言ったでしょ」 パートナーの頭を撃ち抜こうとした悪魔は抗議の声もサラリと受け流して、スバルの背後を指差す。 死角に配置されていた為か、撃ち漏らしていた攻撃型のオートスフィアが、今まさにティアナに撃ち落されて残骸となり、煙を上げているところだった。 「……だったらせめて声で言ってよぉ」 「間に合わなかったわよ。攻撃を許してたら、あんたを庇って足を挫きそうな予感がしたし」 「なんか、具体的な予感だね……」 兎にも角にも、二人は三番目のポイントを無傷で通過し、ついに最後の難関が待ち受けることとなった。 試験の事前に標的の種類や配置、数は知らされている。ゴール地点へ向かうコース上には、これまでとは違う大型のオートスフィアが一体配置されているはずだ。 さすがにその詳細なデータまでは教えられていないが、最後の関門である以上、攻撃・防御能力共にこれまでのスフィアの比ではないだろう。何より、受験者の半分がこの関門で脱落していることは歴代の試験記録でも有名だった。 「さて、問題はここからなんだけど……」 ハイウェイ最上部の道路を見上げながら、ティアナとスバルはその場で思案した。 「正面突破は……やっぱ無理かな?」 「これまでの流れからして、最後の大型オートスフィアはやっぱり射撃能力の強化型でしょ。定石どおりなら高所に配置して、狙い撃ってくるわね。かわしながら進める自信ある?」 「どれだけ射撃が正確なのは分からないから、なんとも……」 「博打に出るほど大胆には行けないわね。 でも、とりあえずアタッカーはあんたに決定。シールドも強化されてることを考えると、やっぱり一撃の威力があるスバルよ」 「じゃあ、ティアはさっきみたいに囮?」 「あんたより運動能力劣るのに、囮が務まるかしら……」 「あっ、それじゃあさ! ティアが前から練習してた幻術系の魔法で上手くやれないかな?」 名案だとばかりに表情を明るくしたスバルとは対照的に、ティアナは珍しく気まずげに視線を虚空へ逸らした。 「……ダメかな?」 「っていうか、あたし……その、まだその魔法を習得してない、のよ……」 ティアナは後悔と後ろめたさから、スバルは言うべきフォローの言葉を見つけられず、重い沈黙があたりに漂った。 その重量に押しつぶされるように、ティアナがここへきて初めて頭を抱え、深刻な表情で蹲る。 「失敗したわ……あの派手好きに影響されすぎた。もっと単純な火力以外の面で鍛えるべきだったのに……いや、言い訳ね。フフフ……」 「し、しっかりしてティア! 使えないものは仕方ないんだからさ、今ある材料で何とかしてみようよっ!」 切り替えの早い長所を持つスバルが口にした建設的な意見に支えられ、何とかティアナは立ち上がった。 「そうね……。となると、単純な援護射撃か、距離によってはあたしが狙撃してみるって手もあるけど」 「それなんだけどさ、ティアって射撃の貫通力と正確性がスゴイって教官に言われてたよね? だから―――」 ティアナが補助系魔法の習得を怠った一方で鍛えられた要素。 その一面を理解するスバルは、戦法面で珍しくティアナに意見を出した。 「……あ、動き出したみたいだよ」 「作戦タイム終了か。ふーん、やっぱり格闘型の娘がアタッカーみたいやね」 「このまま行けば狙い撃ち。もう一人が援護射撃かな?」 「どうやろ? そんな単純な力押しを使いそうな大人しいコンビやないと思うけどなぁ」 「はやて、楽しそうだね」 ハイウェイを高速で走り抜けるスバル。 障害物がない直線の為、加速は出しやすいが、同時に周囲からの狙撃を妨げる物もない。狙い撃ちには絶好の空間だった。 そして、予感するまでもなく、当然のように廃ビル群の一角から魔力弾の閃光が瞬き、スバルに向けて誘導弾が飛来した。 初撃の為狙いが甘かったか。間一髪軌道を逸らしたスバルの横に魔力弾が炸裂する。 「く……っ!」 爆発こそないが、破裂した魔力の余波はスバルの肌を叩き、その威力が十分なものであることを実感させる。 まともに食らえば一撃でお終いだ。まともに食らわなくても致命的。 そんな威力が、弾道と誘導性に補正を掛けた次の一撃によって自分自身に襲い掛かる―――その恐怖を押さえ込み、スバルは疾走を続ける。 そして、ついに二発目の魔力弾が発射された。 空中で弧を描き、スバルを追尾してその正面に回り込む。 飛来する魔力弾が激突する、その寸前―――! 「させるか!」 横合いから飛来した別の魔力弾が貫き、その一撃を相殺した。 高所に陣取ったティアナの狙撃によるものだった。 スバルの位置と標的の位置を把握しながらの典型的な援護射撃だったが、その対象が『飛来する敵の魔力弾』であるという点が異常だ。 スバルを狙って次々と撃ち出されるスフィアの弾丸を、まるでクレー射撃の的を撃つように、一発の撃ち漏らしもなくティアナは射抜いていく。しかも、その魔力弾は貫通力と弾速を高める為に誘導性を付加していない。純粋な直線射撃なのだ。 見るは容易く、為すには動体視力を超えた鋭い感性が要求される。 ティアナ自身、ここまで精密で即時判断を要求される射撃を行った経験はない。 しかし、心は緊張と不安以外の感情で高揚し、構えた銃身には震え一つ起こさず。 「……怯みもしないわね、あのバカ」 ティアナの眼下では、彼女の援護を信じ切った走りを見せるパートナーの姿があった。 「これじゃあ……外せるわけないっての!」 そしてまた一発。大型オートスフィアから放たれた魔力弾をティアナは正確無比に撃墜した。 死の道筋とも言える距離を走り抜けたスバルは、ついに標的の配置された廃ビルを射程に捉える。 射撃系魔法はほとんど使えないスバルだったが、自らの拳の範囲に標的を捉える為の手段は持っていた。 「<ウイング・ロード>―――ッ!!」 スバルの持つオリジナル魔法が発動する。 青白い帯状の魔方陣が構成され、天に掛かる道となって目標のビルまで一直線に伸びていった。飛べぬ者が空に挑む為に作り出した道―――まさしく<翼の道>だ。 もう一本のハイウェイとなったウイング・ロードの上をスバルは滑走する。 終着は、近い。 「こいつで看板よ、持ってけ!」 残された魔力で三つの魔力誘導弾を形成し、ティアナは最後の援護射撃を開始した。 「Fire!!」 クロス・ファイア・シュートが発射され、スバルの後を追うように飛んでいく。 自分を追い越す三発の魔力弾を見送りながら、スバルはリボルバーナックルのカートリッジをロードした。 全ての状況が同時に動き出す時間の流れの中、コマ送りで景色は進む。 先行する一発目の魔力弾が障害となるビルの壁をぶち抜き、進路を確保する。後続する二つの魔力弾がビルの中に滑り込んで迎撃の為に放ったスフィアの射撃をスバルに届かせる前に相殺した。 空白の時間が出来る。 標的が無防備な姿を晒す刹那の間が。 「一撃必倒! ディバイン……っ!」 ビルの中に飛び込み、シンプルな球体にデザインされた大型オートスフィアの姿を捉えると、スバルは魔力を眼前に集中させ、最大の一撃を準備した。 拳を引き絞る。 打ち出す為に。そして、あの日見た憧れにこの一撃を届かせる為に。 万感の想いと意思を込め、スバルは魔法を解き放った。 「バスタァァァァーーーーッ!!!」 放たれた聖なる砲撃が、スフィアの持つ強固なシールドを貫き、その機体を完全に破壊した。 スバルの無事を知らせるように形を保ち続けるウイング・ロードの上を辿って、ティアナは黒煙の立ち込めるビルの中へと足を踏み入れた。 「スバル、やったの?」 貫通したディバイン・バスターが開けた壁の穴から煙が逃れて視界が晴れる中、スバルは残骸となったオートスフィアを背に親指を立てて見せたのだった。 さすがのティアナも安堵の笑みが浮かぶ。 「やったわね」 「うん、ティアナの援護のおかげ!」 「あんたの度胸の成果よ」 この時ばかりはティアナも憎まれ口を叩くこともなく、二人は束の間の時間笑い合った。 時間は十二分に残され、ひと時の休息を彼女達に許す。 ―――しかし、最悪のタイミングで不運は訪れた。 唐突に、二人のささやかな笑い声をかき消して小さな炸裂音が響き渡った。 それが魔力弾の発射音だとティアナが気付く前に、スバルの体が震え、まるで足を一本失くしてしまったかのようにバランスを崩して地面に倒れ込んだ。 見れば、撃破した大型オートスフィアの砲台部分が火花を散らして小刻みに動いている。 完全に破壊出来ていなかったのか、射撃管制部分だけが生きていて誤作動を起こしたのか? それを調べる前に、ティアナの速射が今度こそ完全にスフィアを沈黙させていた。 「スバルッ!!」 動揺を露わに駆け寄るティアナの姿がひどく貴重に見えて、スバルは場違いな感想を抱く。 顔だけは何とか笑みを形作ることが出来た。 「へへ、油断しちゃった。ゴメン……」 「あたしも完全に気を抜いてたわ。足をやられたの?」 「足首に当たったみたい。ちょっと痺れて、立てそうにないや」 立てないのは事実だろうが、あの大型オートスフィアの魔力弾が『ちょっと痺れる』程度の威力でないことはティアナにも容易に理解出来た。 非殺傷設定の魔力弾の為外傷はないが、痛みと足首の機能を完全に停止させるほどの麻痺がスバルの右足を襲っている。実戦ならば、片足を失ったに等しい。 スバルはもう動けない―――。 ティアナは冷静にそう判断する一方で、それがどういう展開を生むか察して、焦りを覚えた。 「痺れが取れたら合流するから、ティアは先に行ってて」 何でもない風を装いながら提案するスバルを見つめ、ティアナは葛藤した。 これがどうしようもなく拙い嘘であることは分かりきっている。少なくとも、この試験中にスバルの足の麻痺が取れることはない。そこまで甘くはないだろう。 そして、動けないスバルはもはや完全な足手まといでしかないのだ。 スバル自身、それを理解している。このままでは、二人ともが試験に落ちてしまう、と。 そして、彼女は愚かにも信じているのだ。ティアナがこの嘘に騙され、一人でゴールへ向かってくれると。自分の代わりに魔導師試験に合格し、次のステップへ進んでくれると―――。 ティアナは唇を噛み締めた。 自分は、ここで止まってはいられない。次の試験は半年も先だ。今のチャンスを棒に振るなど出来ない。しかし。でも。 「ティア……」 合理的な判断と感情がせめぎ合う中、パートナーの曇りのない笑顔が視界に飛び込んできた。 「―――頑張って。ティアなら一人でもやれるよ」 『―――がんばれよ。お前ならやれるさ』 スバルの声と、いつか聞いた彼の声が重なり、その瞬間ティアナの中にあった全ての苦悩が吹っ飛んだ。 ゴールへ向かう―――ティアナは決断した。 制限時間を示すホログラムには猶予はあまり残されていなかった。 試験のゴール地点では、リインフォースⅡが未だに姿を見せない二名の受験者を待ち構えている。 実質的な最終関門である大型オートスフィアの撃破を確認してからかなり時間が経過しているのに、二人は現れない。 何かトラブルか―――そう懸念し始めた時、道路の先に人影を捉えた。 「あっ、来たですね! ……なるほど、そうだったですか」 『二人』の姿を視認して、リインフォースⅡは頷いた。 動けないスバルを、ティアナが背負って走っていた。 「ティア、もう時間がないよ! 今からでも遅くないから、わたしは降ろして……!」 「うっさい! 話っ、かけないで……こっちも、余裕ないんだからっ」 言い返すティアナの声は息切れ混じりの掠れたものだ。視線は前に向けたまま。要するに眼球を動かす筋力すら惜しい。 スバルを背負ってゴールまでの道を走破することは予想以上に困難だった。 ティアナには自分の足しかなく、それもスバルのように鍛え抜かれた健脚とはいかない。何より魔力を消耗し尽くした今、残されたものはなけなしの体力しかなかった。それももう底を尽きかけている。 朦朧とした意識で思い出すのは、訓練校時代の地獄マラソンだ。原始的な訓練だとバカにしていたが、あの時もっと苦労していたら今がもう少し楽だったかもしれない。アレには罰則と教官の趣味以外に意味があったのだ。 空気以外に胃の中のものまで吐きそうになりながら、しかし決してスバルを離すことなくティアナはゴールに向けて進み続けた。 ゴールライン前に配置された最後のターゲットを見つけ、脳裏を絶望が掠める。 「くそっ……もう、豆鉄砲撃つ気力もないわよ……! スバル、あんたがやって……!」 「わ、わかった!」 射撃魔法の苦手なスバルが緊張しながらも、リボルバーナックルを構える。 スバルの射撃能力は言うまでもない。加えて、出力を押さえなければ、発生する反動はティアナに更なる負担を与える。 「落ち着いて……よく狙って……!」 息も絶え絶えになりながらも助言を飛ばすティアナに報いる為、スバルはかつてない集中力を発揮した。 「シュート!」 極限まで絞った魔力弾が発射され、吸い込まれるように最後のターゲットを破壊して抜けた。 「はいっ! ターゲット、オールクリアです!」 リインフォースⅡの歓声は、二人には届かない。 スバルは自分のベストショットを誇る間もなく、僅かな反動でもたたらを踏んだティアナを案じる気持ちと罪悪感に支配された。 あとはゴールするだけだ。 しかし、もう本当に時間がない。おまけに体力もない。 「ティア、ターゲットは全部落としたよ! 早くわたしを降ろして! まだ間に合う!!」 「まだ言ってんの!? あたしは、もう決めたのよ……! そうよ、間に合うわ……二人で、ゴールする……!」 「どうして、そこまで……っ」 ティアナはもう自分が何を言ってるのかも、スバルが何を言ってるのかも分からなくなっていた。 ただ、背中の重みを手放す事と、立ち止まる事だけを本能が拒否し続けている。 「逆なら……あんたは、あたしを見捨てた……っ?」 「……う、ううん」 「なら、それが答えでしょ……!」 背中のスバルがどんな顔をしているのかは分からない。ただ、首筋に落ちる水滴の意味は分かっていた。 「さあ、さっきから人の気力萎えさせることばかり言ってないで……なんか、やる気起きるような声援……よこしなさいよっ!」 眼前にゴールが迫る。近い。もう近い。しかし、時間ももうない。 「―――っ、ティア! 頑張って! 一緒にBランクになろう!!」 動かないと思った右足が、背中から聞こえる声援でもう一度動いた。続くように左足も。 今度こそ正真正銘最後の力を振り絞って、ラストスパートを掛ける。 獣の唸るような声が、食い縛った歯の隙間から漏れる自分の声だと遅れて気付いた。もう呼吸すら忘れている。 ゴール地点のリインフォースⅡが顔を引き攣らせるような形相でティアナは駆け、視界に捉えたモニターのカウントが今まさにゼロを示そうとして、そして―――。 ゴールラインを切るアラームが鳴り響いたのを聞いて、ティアナはそのまま倒れこんだ。 うつ伏せに倒れたはずだが、気がつくと青空が視界いっぱいに広がっていた。 呼吸は荒く、全身思い出したように汗が噴き出している。何より、ひどい脱力感があった。 なんかもーどーでもいー。そんな感じ。 試験の合否よりも、まずは休みたい。休んでもいいはずだ。だって、自分は頑張ったのだから。 全てを差し置いて、奇妙な満足感がティアナの胸の内にあった。 何かを諦めた時に残る後味の悪さとは正反対の、清々しい爽快な気分を感じていた。 (とりあえず、寝よう……) 道路に寝転がっていることも、周囲の人間も、視界の隅に見えるスバルと何だか偉い人そうな女性魔導師のやりとりも―――全て投げ出して、ティアナはゆっくりと瞼を閉じた。 『―――お疲れ様。なかなかガッツがあるね』 最後に閉じる視界に映ったあの偉い人の優しい笑顔と声が、心地良い眠りへと誘ってくれた。 「……さて、なのはちゃん的に二人はどうやろ? 合格かな?」 「フフッ、どうだろね?」 to be continued…> <ティアナの現時点でのステータス> アクションスタイル:ガンスリンガー 習得スキル <トゥーサムタイム>…二方向へ同時に射撃を行う。目視ではない為、射撃の正確性は左右共に高い。 <ラピッドショット>…スキルというよりも特性。並の魔導師よりも魔力弾の集束率と連射速度を向上させている。本来は連射によって攻撃力を上げるスキル。 <エアハイク>…瞬間的な足場を作り、空中での機動を可能にする。 <???>…習得済みながら、未だに明かされていない。 上記のように、ティアナは攻撃性の高いスキルを選んで鍛えた為、<フェイクシルエット>などの補助系魔法は未修得である。現在練習中。 前へ 目次へ 次へ
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『問題の貨物車両、速度70を維持!』 『ガジェット反応!? 空から……!』 『航空型、現地観測体を捕捉! 進路は目標、リニアレールです!』 司令部からの情報が矢継ぎ早に伝えられる。 サーチャーが捉えた情報は、想定通り敵の増援を知らせるものだった。 数も多い。フェイトとなのは、空戦能力を持つ隊長陣がそれらの対処に割かれる形となってしまった。 「じゃ、ちょっと出てくるけど……」 輸送ヘリの後部ハッチが開き、広がる遠い地上と激しい風がカーゴに渦巻く中、なのははまるでちょっと散歩に出て行くようなリラックスした口調でルーキー達に言った。 初の実戦に緊張を隠せないスバルやエリオ、キャロを意識した笑みを浮かべたが、その傍らで普段通りの視線を向けるティアナの様子に苦笑へと変わる。 何かを確認するように小さく頷き、その意図を受け止めるようにティアナもまた頷くと、なのはの最後の不安は消え去った。 「皆も頑張って。ズバッっとやっつけちゃおう?」 「「はい!」」 頼もしい四つの返事が一つになった。 なのははキャロを一瞥する。 「―――エリオは、キャロのフォローお願いね。無理だと感じたら、すぐに二人で後方へ退いて」 「あ、はい」 「大丈夫です!」 気遣うようななのはとエリオの視線を振り切るように、キャロの少々気負った声が響いた。 戦意が漲っているのはいいことだが、気持ちが先行すると引き際を誤る。なのははそれを実感で熟知していた。 「うん、緊張で落ち込んでるよりはいい返事だよ。でも、現場での指示は厳守。リーダーの判断には絶対に従ってね」 「……はい、分かりました」 「ティアナ、現場でのリーダーは任せるよ。エリオは判断に迷ったら、ティアナの指示を仰いで」 「はい!」 「了解」 なのははこれまでの訓練から、ティアナの冷静な状況判断能力を買っていた。他の三人もそれに全く異論はない。 重大な責任を与えられたティアナはやはり普段通りの淡々とした口調で、しかし期待に応えるように強い意志を宿した言葉をなのはに返した。 最後になのはは四人の顔を一度だけ見回し、緊張と覇気に満ちた表情にこれ以上掛ける言葉は必要ないと悟ると、満足げな笑みを浮かべて降下口へ足を掛けた。 「―――高町隊長」 「うん?」 任務中の呼び名にも相変わらず壁を感じるティアナの声に、なのはは肩越しに振り返る。 「幸運を」 「ありがとう。皆にも」 航空部隊での礼節的な言葉だったが、そこに込められたティアナの偽りのない想いを感じ取り、なのはは喜びと奇妙なこそばゆさを感じながら敬礼を返した。 そして、高町なのはは大空へと飛び出す。 耳音で唸る風の音に、地面から解き放たれた三次元の自由と不安を全身で感じながら、自らの相棒に告げた。 「<レイジングハート>! セット、アップ―――!!」 光が瞬く。 四人の雛鳥が未だ憧れて見上げるだけの領域へ、エースは飛翔した。 魔法少女リリカルなのはStylish 第九話『Rodeo Train』 「任務は二つ」 緊急出動の為、現場へ向かう航路の最中でリインはティアナ達に任務概要を説明していく。 普段はマスコットよろしく愛らしい雰囲気を醸し出すリインも、今は仕事の顔だった。 「ガジェットを逃走させずに全機破壊する事。そして、レリックを安全に確保する事。 ですから、<スターズ分隊>と<ライトニング分隊> 二人ずつのコンビでガジェットを破壊しながら、車両前後から中央に向かうです」 表示されたモニターの図解によれば、レリックは車両の丁度真ん中に位置する七両目に保管されているとのことだった。 複雑な地形や場所での戦闘ではないが、車両の外部も内部も合わせて限定空間となっている為、万が一の場合でも敵からの退避は難しい。 戦力同士の純粋な正面対決と言えた。 「わたしも現場に降りて、管制を担当するです。ただし、戦闘指示に関してはティアナに一任するですよ。何か質問は?」 現状把握と実戦での緊張を抑えるのに一杯一杯な三人と比べて随分冷静なティアナが早速口を開いた。 「リニアレールの停止は可能ですか?」 「遠隔操作では何度もやってみましたが受け付けません。完全にコントロールを奪われてます」 「なら、直接操作した場合は?」 「可能性はあります。わたしが担当しましょう、コントロールの中枢は左右の末端車両です」 「了解。では、リイン曹長はスターズ分隊への同行をお願いします。降下と同時に、まずは車両の制御奪取を」 「了解です!」 そして、矢継ぎ早に交わされる会話に、なんとかついていった残りの三人へティアナが視線を移す。 「というわけで、あたしとスバルのスターズ分隊はまずコントロールの奪還に回るわ。エリオとキャロのライトニング分隊はそのままレリック奪還とガジェット殲滅に集中して」 「了解っ!」 「了解!」 「了解しました!」 それぞれの特色を持つ返答が響く。実戦という何もかもが初めての状況で、そのやりとりだけは淀みなく行われた。 それは訓練で何度も繰り返した流れだからだ。 そうだ、全ては訓練通り。恐れることはない。ここには未知のものばかりではなく、築き上げたチームワークや頼れる仲間達が、いつものように存在するのだから。 四人の心に、共通して繋がる何かが蘇る。 そしてそれは、驚くほど緊張や不安を心から消し去ってくれた。 『隊長さん達が空を抑えてくれているおかげで、安全無事に降下ポイントに到着だ―――準備はいいか!?』 パイロットのヴァイスが作戦発動の秒読みを告げる。 まず最初に降下するティアナとスバルがカーゴハッチに身を乗り出した。 「……やっぱり、ティアはそっちのデバイスを使うの?」 自らの首に掛けられた待機モードのマッハキャリバーとは違い、普段通りのアンカーガンを両手に携えたティアナを見てスバルは不満そうな表情を浮かべる。 見慣れた銃身の下部には、バリアジャケットを構成する為の急ごしらえのオプションがレーザーサイトのように取り付けられていた。 「ぶっつけ本番って好きじゃないのよね」 「折角の新型なのに……使ってみたいと思わない?」 「好みより実効制圧力の方が重要だわ。別に信用してないわけじゃないけど、こっちなら安定性は確かだしね」 窮地での大胆さは兄貴分譲りだが、平常時での判断には地の性格が大きく出ていた。元々ティアナは理詰めの人間なのだ。 本音としてはティアナの新デバイス自体に興味のあるスバルが渋々納得する中、ティアナは使い慣れたアンカーガンを一瞥して小さく呟く。 「それに、ずっとコイツと一緒に戦ってきたんだしね。あっさりと乗り換えなんて出来ないわよ……」 理屈以外の想いが篭ったその言葉は、風にかき消されて誰にも届かなかった。 もちろん、聞こえたら困る。 淡白な態度とは裏腹な想い入れの強さを知られたら、またスバルがからかったり喜んだりするに決まっているのだ。 ティアナは思考を戦闘モードに切り替え、スバルに視線を向け直した。 「ところで、あんたこそソレ持ってく気なの? 使わないって言ってるでしょ」 「うーん、でもひょっとしたら使うかもしれないじゃない?」 スバルはクロスミラージュの収納された防護ケースを背負っていた。 ベルトでしっかりと固定され、重さも大きさも行動の邪魔になるほどではないが、既にアンカーガンがある以上使う可能性はほとんどない。 「それに初の実戦なんだしさ。こっちの方が性能がいいのは確かなんだし、頑張ってくれたシャリオさんにも悪いし」 「……好きにすれば?」 「うん! 必要になったら言ってね」 スバルの言い分に、ティアナは素っ気無く返した。 感情論や好みだけでなく、それなりに理屈の通った弁が立つからこの娘はやり辛い。内心で苦笑が浮かぶ。 そして、わずかな緊張感以外普段通りの二人のやりとりが続く中、ヘリはついに走るリニアレールの先端へ降下するのに最適の位置へと到達した。 互いに意識せず同時に、ティアナとスバルは会話を中止して眼下を睨み据える。 自分達の、初めての戦場が見えた。 「スターズ3、スバル=ナカジマ!」 「スターズ4、ティアナ=ランスター!」 一瞬だけ、二人の視線が交差する。そして。 「「行きます!」」 言葉と意思が同調し、スターズ分隊は大空へと飛び出した。 空中で二人分のバリアジャケットが展開される発光が瞬く中、ヘリは更に反対側の先端車両へと移動していく。 エリオとキャロ。 戦場へ降り立つにはあまりに小さな体が、風の唸るハッチの前へと乗り出された。 「……あの、ルシエさん」 眼下の戦場を眺め、エリオは傍らの少女が緊張しているであろう様子を伺った。自分と同じように。 それは不安を共に支え合いたいという弱気と、同時に少し無理をしすぎな感のある少女を支えたいという気持ちもあった。 しかし、エリオは反応を示さずに眼下を見下ろし続けるキャロの横顔に愕然とすることとなる。 「一緒に降り……」 「ライトニング4、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ」 囁くような言葉がエリオの気遣いを断ち切った。 恐れを何処かへ置き忘れてしまったような顔で、キャロが無造作に自らの体を宙に投げ出す。 「―――行きます」 そう言って空中へと消えていく少女の横顔に一瞬だけ見えたものを、エリオは現実なのか錯覚なのかしばらく悩む事になる。 エリオは飛び出したキャロの手を咄嗟に掴みそうになった。 降下の為の行動の筈なのに、キャロのそれがまるで屋上から身を投げ出す自殺者に等しい雰囲気を纏っていたからだった。 飛び出す一瞬、キャロは―――小さく笑ってはいなかったか? そのまま落ちて死ねば何かから解放される、と。戯れに夢想するような一瞬の表情を。 「……っ、ライトニング3! エリオ=モンディアル、行きます!!」 エリオは自分でも分からない焦燥に押されて、すぐさま降下に続いた。 ほんの少し先を落ちてくキャロの背中を見るのが不安で仕方ない。 彼女は、ひょっとしてこのまま着地の準備もせずに落ち続けるつもりなのではないか? という疑念すら湧いていた。 その不安を否定するように、エリオの横を小さな影が掠めて行く。 主の唐突な行動に、一瞬遅れて続いたフリードだった。 幼い竜は一瞬だけエリオと視線を絡ませると、翼をたたんで落下速度を上げてキャロの傍らに追いついた。 一瞬だけの視線の交差。 その中で、エリオは自分の中の不安を嘲笑われたような気がした。 ―――お前に心配されるまでもなく、そんなことを自分がさせるはずないだろう? と。 それを錯覚だと思う前に、並んだフリードを一瞥してからキャロが行動を起こした。 「<ケリュケイオン>、セットアップ」 空中でバリアジャケットが構成される光が瞬き、キャロの身を包み込む。 これで自分の根拠のない不安はなくなった。そう安堵すると同時に、エリオは僅かな悔しさを感じる。 一連の流れが、自分とキャロ、フリードとキャロとの関係の差を表しているような気がした。 モヤモヤとした気持ちを抱えながら、自らもバリアジャケットを纏う。 キャロが車両の屋根に降り立ち、遅れてエリオが足を着いた。 「―――さあ、行きましょう?」 肩越しに振り返ったキャロの表情は、既に戦いを前にした引き締まったものへと変わっている。 飛び出した時の一瞬が、本当に錯覚だったように感じる顔だ。 「う、うん」 エリオは戸惑いながらも頷いた。 どちらが彼女の本当の顔なのだろうか? だが、いずれにせよ彼女は自分に本当の表情を見せてはくれない―――その確信が、エリオには酷く悔しかった。 そのリニアレールは物資運搬用の車両の為、内部は広く、人を乗せる余分な設備がない。 内部には複数のガジェットが警戒態勢で待ち構えていた。 それらに広域をスキャンするレーダーは搭載されていないが、車両に取り付く者があればすぐに迎え撃つようプログラムされている。 四人のストライカーが車両に降り立てば、ガジェットは迅速に行動を開始するだろう。 その警戒態勢の最中へ―――。 「どっせいぃぃっ!!」 車両への着地の過程を省き、屋根をぶち抜いてスバルが突っ込んだ。 唸りを上げるリボルバーナックルで車両を貫き、新生バリアジャケットに身を包んだスバルがその内部へと降り立つ。 ほとんど奇襲に近い敵の潜入に、無機質なCPUの判断にも僅かなタイムラグが生まれる。それは人で言うところの<動揺>に等しかった。 その僅かな間隙を、スバルの背後へ同時に降り立ったティアナが見逃す筈はない。 「ティア!」 「見えてるわよ!」 既にカートリッジをロードし、オレンジ色の電光を纏った両腕がスバルの肩から砲台のようにヌッと突き出される。 「真ん中だけ残す!」 「了解っ!!」 僅かなやりとりで十二分な意思の疎通を行い、二人は同時に攻撃を開始した。 雷鳴のような銃声が響き渡り、アンカーガンから吐き出された高密度の魔力弾がそれぞれの照準の先のガジェットへと殺到する。 弾丸はAMFを貫いて機体の奥深くに潜り込み、内部を破壊し尽くした。 二体のガジェットが爆発を起こす中、ローラーブーツに代わる機動デバイス<マッハキャリバー>の加速に乗ってスバルが突進する。 「うぉりゃああああっ!!」 ローラーブーツを上回る初速で、一瞬にしてインファイトの間合いまで攻め込むと、リボルバーナックルの一撃が抵抗する暇もなくガジェットの機能を奪い去った。 潜り込んだ右腕をそのままに、内部の部品やコードを鷲掴みにして機体を固定し、ガジェット一体をぶら下げたままスバルは車両内を滑走する。 最後に残った一体が放つ熱線を、掴んだガジェットを盾にして防ぎ、急接近しながらナックルに魔力を集中させた。 「リボルバー……ッ!」 マッハキャリバーが主の意思のまま、スバルを疾風へと変える。 至近距離まで接近して、掬い上げるように右腕を叩き付けると、二体のガジェットが密着したその状態で魔法を解き放った。 「シュート!!」 アッパーの軌道で放たれた衝撃波が二体のガジェットを貫き、更に屋根まで吹き飛ばして車両に大穴を空けた。 スバルとティアナが乗り込んだ二両目の敵勢力は、これで全滅したことになる。 しかし、狭い空間で放たれた高威力の魔法は、敵を破壊するだけに留まらなかった。 「うわわっ!?」 「バカ、スバル!」 爆風に加え、予想以上の加速に乗っていて十分な制動の掛けられなかったスバルの体は、そのまま吹き飛ばした屋根から外へと投げ出された。 高速で走るリニアレールの外、空高く舞い上がる。 不安定な姿勢で移動する足場に再び着地出来るか、保証はない。 ティアナが舌打ちし、スバルが顔から血の気を引かせる中、誰よりも早く正確にソイツは動いた。 《Wing Road》 マッハキャリバーがオートで発動させたウイングロードが落下の軌道上に生成され、その上で自らローラーを回転させ、重心をコントロールする。 慌ててバランスを取ったスバル自身の行動もあり、九死に一生を得る形となった。 『スバル、無事!?』 「なんとか……! マッハキャリバーが助けてくれたおかげだよ」 《Is it safe?》 「うん、もう平気!」 スバルの安否を確認したティアナが安堵と脱力のため息を吐く。 正直、肝を冷やした。 性能が良いことは必ずしも利になることばかりではない。感覚と実際のズレは時にミスを呼ぶ。これだからぶっつけ本番は苦手なのだ。 ―――とはいえ、自己判断で持ち主を助けるAIの高性能さに感心と興味を抱いたのも事実だった。 「新型、ね……」 アンカーガンに新しいカートリッジを装填しながら、何とはなしに呟く。 訓練の成果か、ガジェットのAMFに対してカートリッジ一つ分の魔力で一体を破壊できる割合にはなった。現状の戦力としては十分だろう。 しかし、先ほどのマッハキャリバーの活躍を見て、どうしても考えてしまう。 自分にも用意された新型デバイス。あれを使えば、戦力は更に増すのではないのか、と。 意地張らずに新しいの使えばよかったかな? いやいや、これは意地なんかじゃないぞ。カタログスペックと実績、プロならどっちを選ぶか言うまでもないだろう。 ティアナは迷いを吹っ切るように、自分に言い聞かせた。 「……でも、コイツ喋らないしなぁ」 冷静を装いながらも、つい本音が出るティアナだった。 思い入れが強いからこそ擬人的な要素を求めてしまう。実際のところ、スバルのマッハキャリバーを羨ましく思う原因もそれが主だったりする。 落胆を滲ませる子供染みた自分の台詞に遅れて気付き、ティアナは僅かに頬を染めた。 「ああっ、もうダメダメ! 任務中に考える事かっての―――スバル!」 『何?』 「そのまま三両目の制圧に向かって! こっちは先頭車両を押さえる! 敵が多かったら、無理せず合流するのよ?」 『オッケー!』 思考を戦闘モードに切り替え、スバルに指示を出すと、ティアナは馴染んだデバイスを両手に構えて前の車両へと移動を開始した。 「スターズ1、ライトニング1、制空権獲得!」 「ガジェットⅡ型、散開開始!」 「追撃サポートに入ります!」 二つの戦場をモニターする司令室も、戦闘さながらの慌しさで情報が飛び交っていた。 「―――ごめんな、お待たせ!」 そこへ、聖王教会の足で慌てて舞い戻ったはやてが駆け込んでくる。 指揮官不在の間代理指揮を執っていたグリフィスの顔から、ようやく僅かに緊張の色が抜けた瞬間だった。 「八神部隊長!」 御大将の登場に、待っていたとばかりにグリフィスが名前を呼ぶ。 「……」 しかし、返って来たのはシカトだった。 「ここまでは、比較的順調です!」 「……」 「……あの、部隊長?」 「……」 「えーと……」 まるで一時停止のように笑顔のまま、指揮官席を挟んでグリフィスと対峙するはやて。 何かを求めているような雰囲気は分かるのだが、それが何なのかグリフィスには分からない。 突然の事態にグリフィスは混乱し、高速で思考を巡らせ―――。 「おかえりなさい、ボス!!」 「待たせたな、皆」 オペレーターのシャリオの言葉を聞き、はやては唐突に動き出した。 呆然とするグリフィスを尻目に、指揮官の顔となったはやては腰を降ろして、モニターを鋭く見据える。 「状況はどうや?」 「ここまでは比較的順調です、ボス」 いや、それ自分言ったし。 頷いて返すはやての様子を見て、グリフィスは悲しくなった。でも涙は堪えた。 「ボス! ライトニング3、4が八両目に突入します」 「このまま何事もなければええんやけど……」 完全にプロの顔つきになったはやての傍らで、グリフィスが勇気を振り絞って声を掛ける。 「あのぉ…………ボス?」 「なんや?」 今度はあっさりと返事が返ってきた。 「エンカウント! 新型です!!」 今後何かとワリを喰う真面目な補佐官の苦悩を置き去りに、オペレーターの告げた報告が司令室に緊張を走らせた。 「フリード! <ブラスト・フレア>!」 『キュクルゥゥッ!!』 フリードの放った火球が崩壊した車両の天井の穴から内部へ飛び込んでいく。 しかしそれは、ガジェットの持つベルト状のアームに容易く弾き返されてしまった。 そのアームの出力一つ取っても、既存のガジェットとはパワーが桁違いの新型。 完全な球状の機体はこれまでの物より肥大化し、その分あらゆる性能が向上されている。 「うぉりゃぁああああっ!!」 ストラーダの穂先に魔力を集中したエリオの一撃も、AMFではなく純粋な装甲の強度によって遮られた。 幼いエリオの筋力の低さを差し引いても、防御力は通常のガジェットと比べ物にならない。 更に、ガジェットはAMFを発動させた。 奇妙な違和感が波打つように二人のいる空間を走り抜けた後、接近戦を仕掛けていたエリオのストラーダはおろか、車両の上にいるキャロの魔方陣すら解除されてしまう。 「こんな遠くまで……っ!」 身体的な戦闘力を持たない自分が魔法を失っては、戦力は激減する。 その事にキャロは戦慄し、遅れてエリオもまた同じ状態であることを思い出した。彼はその状態で敵の傍にいるのだ。 車両の穴の傍へ駆け寄り、中を覗き込んだキャロが見たものは、予想通り最悪の展開だった。 魔力光を失い、単なる頑丈な槍と成り果てたストラーダを盾に、エリオが必死で敵の攻撃を防いでいる。 魔力によって筋力を活性化させる肉体強化までは解除されていないようだが、それでもガジェットの大型アームのパワーの方が上回っていた。 「ダメです、下がってください!」 「だ、大丈夫! 任せて……っ!!」 キャロの制止の声を、エリオは聞かなかった。 自分の後ろに、守るべき少女がいることを理解していたのもある。 だがそれ以上に、少年には意地があった。 降下の時、手を伸ばそうとした自分を追い抜いて、いつもそう在るように少女の傍へ寄り添った一匹の竜に対して感じていた敗北感があった。 背後のキャロの自分を案ずる声が聞こえる。 それは彼女の優しさだ。自分も同じ戦場にいるというのに、他人を案ずる痛いほどの優しさだ。 ―――悔しいとは思わないか? あの娘は、今の情けない自分を見て不安を感じているんだぞ! 「うぉおおおっ!!」 感情の高ぶりはエリオに瞬発的な力を与えた。 二つの力の拮抗は一瞬だけ破られ、エリオがガジェットのアームを押し返す。 その刹那の空白の間に、ガジェットは攻撃をレーザーに切り替え、エリオもまた瞬時に危機を察知して跳んだ。 通常の物とは違う、長い連続照射時間を持った熱線が文字通り一本の線のように放たれる。 それは車両の壁や屋根を容易く焼き切ったが、しかし僅かに勝るエリオのスピードには着いて行けず、彼の居た場所を虚しく薙ぐだけだった。 敵の巨体を飛び越え、背後の死角へと着地する。 両足に魔力を集結し、筋肉が引き千切れる程の力を込めてバネのように全身を前に突き出す。 「刺されぇええええええーーーっ!!」 全身の力を推進剤に使ったストラーダの先端は、その瞬間確かに弾丸となった。 AMF下において、まさに奇跡とも言えるタイミングで全ての運動エネルギーが一点で合致し、新型ガジェットの強固な装甲に突き刺さった。 「やったっ!」 思わずエリオが歓声を上げる。 しかし、それは完全な驕りでしかなかった。 「まだです!」 「え……っ?」 傍で見ていたキャロだけが冷静だった。 ストラーダの穂先は確かに装甲を打ち破っていたが、ただ『それだけ』でしかなかったのだ。 その機能中枢に全くダメージが及んでいないガジェットは、細いアームケーブルを素早く動かし、動きの止まったエリオを捕らえる。 そもそも、エリオが『背後』だと捉えていた部分が本当に死角であったかすら疑わしい。 思い込みによる判断ミス。攻撃の手応えを見誤り、それが油断を招いた。 初の実戦における経験の不足が、最悪の結果を招いてしまったのだ。 「しまった……うぁっ!!」 ケーブルに締め上げられたエリオを痛ぶるように、ゆっくりと巨大なアームベルトが近づく。 「いけない!」 キャロが身を乗り出す。 魔法の使えない小娘が立ち向かったところでどうしようもないのは承知の上だ。 しかし、自分は違う。 キャロは自らの呪われた特性を、嫌というほど理解していた。 <召喚>のスキルとて、転移魔法の系統に連なる魔法には違いない。AMF下で無力化される対象だ。 ―――だが、あの<悪魔>の力は違う。 呼び出し、使役する過程は同じであっても、そこに働く力は全く異質なもの。 奴らにとって、自分は<門>に過ぎない。 <悪魔>には時も場所も関係なく、奴らはいつでもすぐ傍に潜んでいる。 それを現界させる為の少しの切欠。目の前の空間をトランプのように裏返す、本当に身近なのに決して不可侵な領域への干渉があればいいのだ。 他の人には出来ない。 でも自分には出来る。 だから、今こそそれをやるのだ。 その結果、この呪わしい力を彼に見られても。仲間に見られても。そして―――恐れられても。 「戦うんだ……」 キャロは自らの心に湧く様々な感情を全て黒で塗り潰し、車両内へ繋がる穴の淵に足を掛けた。 さあ―――戦って、死ね。 「戦うんだ!」 エリオを救うべく、勢いよく飛び込んだ。 ―――傍らの、フリードが。 「えっ!?」 突然の行動に呆気に取られるキャロを尻目に、竜は弾丸のように飛翔してガジェットへと襲い掛かった。 『キュァアアアッ!!』 幼さの残る甲高い鳴き声は、しかしまるで野獣のそれである。 正しく<雄叫び>を上げて飛来したフリードは、エリオを縛るアームケーブルに喰らい付いて噛み千切った。 「フ、フリード……っ」 体の痛みを堪え、自由になったエリオは幼い竜を見上げる。 普段の愛らしさを一切消し去った野生の眼光が、鋭く見下ろしていた。 そこには本能があった。戦う為の獰猛な高ぶりが。 そして、意志があった。自らの主の為、微笑む顔を見る為に戦う決意が。 「助けて、くれたの?」 『キュクルー』 エリオの問いに返された声色は普段通りのものだったが、込められている感情が剣呑なものであることは分かった。 フリードは、ただ主が悲しむのが我慢ならなかっただけだ。 その為に、この未熟でちっぽけな人間を助ける必要があるのなら―――そうしよう。彼女の痛みを和らげる為に。 それはエリオの錯覚でしかなかったのかもしれないが、もう一度見せ付けられたフリードとの差に感じた悔しさだけは本物だった。 自らへの無力感に、エリオは拳を握り締めた。 『キュァ』 自己嫌悪もいいが、足を引っ張るなよ? まるでそう言わんばかりに素っ気無く敵の方へ視線を戻したフリードを一瞥し、エリオもまた戦闘態勢を取り戻す。 数本のアームケーブルを失ったガジェットは、未だダメージらしいダメージも受けずに稼動を続けているのだ。 「フリード……」 その一方で、キャロは友といえる竜のとった行動に目を奪われていた。 フリードが取った行動は、キャロの決意を否定するものだ。 従うべき主の意思を蔑ろにして、その身を戦火に投げ出す決意をした自分を遮ったのだ。 それに対して裏切られた、などという気持ちはない。純粋な驚きと、同時に奇妙な喜びを感じる。 「……そうか」 <彼>の行動で気付かされたのだった。 決意などと言っても、結局自分は諦めていたに過ぎない。呪われた力ごと命を投げ捨てて、その結果敵を倒せればいいのだと。 その<諦め>を、フリードは否定したのだ。 「そうだよね……」 キャロ・ル・ルシエの傍らには常にフリードリヒがいることを、彼は声高に叫んだのだ。 「わたしは……一人じゃないっ」 そうだ、何を忘れていたんだ。 前に進む道しかないはずだ。その道を少しも進まないうちに、もう立ち止まることを考えてどうするんだ。 戦って、戦って、戦って―――だけど、一人で進む道じゃない。 そう言ってくれた人が、仲間が、いるじゃないか! 「フリード! エリオ君!!」 そして叫んだキャロの瞳には、全ての感情が蘇っていた。 「ルシエさん……?」 初めて自分の名前を呼ばれたような気がして、エリオは半ば呆然とキャロを見上げた。 喜びよりも驚きの方が大きい。 その隙を突いて繰り刺されるガジェットの攻撃を、慌てて避ける。 「考えがあります、こっちへ!」 『キュクルー!』 「えっ!? あ、はい……っ!」 出撃前にキャロに対して感じていた不安を吹き飛ばすような力強さに、呆気に取られそうになったエリオを尻目にフリードが主の下へ素早く戻る。 我に返ったエリオも慌ててそれに続いた。 再び足場を車両の上へと移す。 しかし、ガジェットにも移動能力が無いわけではない。すぐに追撃が来るだろう。 「ルシエさん、考えって?」 「エリオ君……」 キャロは、もう一度噛み締めるようにエリオの名を口にした。 「わたしを、信じてくれる?」 エリオの質問に答えはせず、ただ一つだけ何かを確かめるような問い。 答えなど決まっていた。 決して心を許してくれないと思っていた彼女が、自分から踏み込んでくれた―――その名前を呼ぶ声を聞いた時から。 「―――もちろんだよ、キャロ」 返事に迷いはなかった。 その言葉にキャロはほんの少しだけ嬉しそうに笑って、傍らのフリードが頷く代わりに鼻を鳴らす。 穴からガジェットのアームベルトが這い出してくるのを一瞥して、キャロはエリオに向かい手を差し出した。 その手を、迷いなく掴む。 「いくよ、フリード!」 そして二人は、小さな竜だけを伴って列車から崖下へと飛び出した。 「ライトニング4、ライトニング3と共に飛び降りました!」 司令室にオペレーターの声が悲鳴のように響いた。 山岳の絶壁に敷かれたレールを走る列車から飛び出す二人と一匹の様子がモニターされている。 「あの二人、あんな高硬度でのリカバリーなんて……っ!」 「いや、あれでええ」 突然の窮地に陥った展開を、むしろ逆に肯定したのははやてだった。 その顔に、先ほどまでの冗談交じり笑みは浮かんでいない。冷たさすら感じる不敵な微笑が代わりにあった。 『発生源から離れれば、AMFも弱くなるからね。使えるよ、フルパフォーマンスの魔法が!』 戦闘の片手間に司令室からの報告で新人達の状況も把握していたなのはが、はやての自信の根拠を補足する。 それはフェイトも同じだったが、三人に共通するのはいずれもキャロに対して感嘆と驚きを抱いていることだった。 「キャロ自身がそれを理解して飛んだんなら、相当な判断力と度胸やね」 『あの子は、元から強い子だったよ……』 フェイトの言葉が独白のように響く。 痛みを伴う力を与えられた故に、キャロは絶望しながらもそれに抗う意思の強さを身につけていた。 その心の力を全く間違った方向へ捻じ曲げいていたのが、彼女の心に巣食う<諦め>の感情だったのだ。 だが、今はどういうわけかそれが無い。 死ぬ為ではなく、生きる為にキャロは飛んだ。 『選んだんだね、信じる事を―――』 仲間を。 そして自分を。 呟くフェイトの顔は、満足そうに小さく笑っていた。 本当は、ずっと思っていた―――『守りたい』と。 「蒼穹を奔る白き閃光―――」 自分を救ってくれた人に、誰よりも憧れる気持ちがあった。 その人の持つ意思を、誰よりも尊ぶ気持ちがあった。 「我が翼となり、天を翔けよ―――」 だが、それは無理だ、と。 これまで積み上げてきた悲劇と罪。近づく者を傷つけた後悔と向けられた負の視線が、その望みを否定してきた。 神を呪ったこの<悪魔>の力で、恐れ疎んじられるこの手で、一体何を守れると? 何もかも傷つけるだけの闇の力に対して、自分の心すら守れず、いつしか諦めだけが募り……。 「来よ、我が竜フリードリヒ―――」 そして、今目が覚めた。 戦いたい。諦めたくない。戦って死ぬのなら、人としての気高さを持ったまま戦いたい。 まだ自分を信じてくれる友の為に。 まだ自分に笑いかけてくれる人達を守る為に。 自分の力で、戦いたい。 「<竜魂召喚>!!」 だから応えて、友よ―――! 小さな主の意思に応え、両腕のデバイスと竜は光と共に吼えた。 桃色の魔力光を放つ巨大なスフィアがキャロとエリオ、そしてフリードを包み込む。 膨大な魔力の奔流に指向性を持たせる魔方陣が眼下に展開され、その中で幼い竜の肉体が真の力を宿したそれへと変化する。 小さな肉体に封じ込められていた気高い竜の魂は、相応しい肉体を手にして、その大きな翼を力強く広げた。 『ギュアアアアアアッ!!』 真の咆哮が<白銀の竜>の産声となって響き渡る。 まるで新たに卵から生まれ変わるように、スフィアを内側から打ち破って、強靭な巨躯を手にした白竜<フリードリヒ>が空中に出現した。 『召喚成功!』 『フリードの意識レベル<ブルー> 完全制御状態です!』 司令室にも歓声が広がる。 しかし、キャロはその言葉を一つだけ否定した。 これは制御なんかじゃない。切欠をくれたのも、この力を望んだのも、フリードが最初だった。 この力はフリード自身が望んだもの。 そしてこの成果は、フリードが支えてくれたおかげなのだ。 「……ありがとう、わたしの友達」 力強い咆哮が、キャロの呟きに応える。 「そして、征こう! 今度はわたしがアナタに応えてみせる!!」 フリードの背に乗り、その手綱を握る手の力強さが全ての答えだった。 新しい翼をぎこちなく、しかし大胆に使い、フリードの巨体が再び戦場へ舞い戻るべく上昇を開始する。 その背に、キャロに抱きかかえられる形で乗ることを許されたエリオが一連の流れの中で呆然としていた。 目の前で展開された神秘の光景に圧倒されたのに加えて、今彼の眼を奪っているのはすぐ傍で見上げられるキャロの凛々しい顔だった。 何かを信じ、戦うことを決めた者の表情が、幼いキャロに大人びた美しさを与えている。 エリオはその美しさに見惚れていた。 「……エリオ君、大丈夫? 怪我でもしてるの?」 心此処に在らずのエリオを心配したキャロが見下ろしてくる。 エリオは慌てて首を振った。 「ち、違うよ! 全然平気! いやぁ、フリードの背は快適だなぁ!」 『ギュアキュア』 「……フリードが不機嫌そうだけど」 「……うん、分かってるよ。多分『調子に乗るな』って言ってるんだと思う」 言葉の壁を越えて意思疎通が出来るようになってしまったエリオは、フリードの意思を全く正確に表現していた。 少年と竜。一人と一匹の間で衝突する敵対の感情に気付かないキャロだけが不思議そうに首を傾げている。 「あっちは、もう大丈夫みたいね」 「うん」 車両のガジェットを全滅させ、コントロールの奪取をリインに任せたティアナとスバルが屋根の上からキャロ達の様子を見守っている。 視線を移せば、同じく列車の屋根に這い上がってくる新型ガジェットの姿があった。 上昇するフリードがそのままガジェットへ向かうのを確認して、二人はレリックの方を確保するべく移動を開始した。 「フリード、<ブラスト・レイ>!」 真の姿を手にしたフリードの口元に、覚醒前とは比較にならない程の魔力が集結し、膨大な熱量を伴って光り輝いた。 「ファイア!!」 それが炎の帯となって解き放たれる。 荒れ狂う業火はまさに怒涛の如く、大型のガジェットを丸々飲み込んだ。 しかし、全体を覆い尽くすほどの炎の波が過ぎた後には、AMFの範囲を絞ってその一撃を耐え忍んだガジェットの姿が残っていた。 僅かに飛び散る火花からダメージを確認は出来るが、それでも高出力のフィールドと、炎を受け流す曲線フォルムの機体も影響して致命傷には成り得ない。 「砲撃じゃ抜き辛いよ! ここは、ボクとストラーダが……」 『ギュアアアアアアアアッ!!』 AMFの範囲が狭まったことで戦闘力を取り戻したエリオが身を乗り出そうとして、それをフリードの咆哮が押し留めた。 それはキャロにとっても予想外だったらしく、鼓膜を通じて頭蓋骨を震わせるような雄叫びに二人は竦み上がる。 フリードの咆哮から感じた激情。それはただハッキリと―――怒り。 幼い竜は激怒していた。 敵の存在に。それを打ち倒せないと断ずる少年に。そして何より、力届かぬ自分自身に。 フリードは、キャロの未来を決定付けたあの運命の日から復讐を誓っていた。 現れた業火を纏う<悪魔>を前にして、全く歯牙にも掛けられなかった弱い自分。 脆弱な生物でしかなかった、ちっぽけな自分。 そして何より、強大な<悪魔>を前にして恐怖していた自分―――! あの時吼えたのは、主を守る為の行為だったか? ―――違う。 ただ自分は無茶苦茶に泣き喚いてただけ。 ヴォルテールという、竜としての高みにいる存在を殺して見せた化け物を前に、闘争心も忠誠心も消え失せて闇雲に叫び散らしていたのだ。 そして、目の前の<悪魔>に牙一つ突き立てられず、主であり友である少女に呪いが掛けられるのを見ているだけだった自分。 その愚かで卑小だった自分を殺す為に、フリードは絶対の復讐を誓ったのだ。 そして今。 真の姿と力を取り戻してなお今、力及ばぬ状況に成り下がっている。 フリードはそれが許せなかった。 言葉が話せるのならば喚き散らしていた。 ―――ふざけるな。何の為に月日を重ねたのだ? 自らの力に傷つけられる主を傍らで見続けながら、心に積み重ねてきた無念を晴らす瞬間が、この程度だというのか!? ふざけるなっ! 『グゥァアアアアアアアアアア――――ッ!!』 フリードは自身への怒りで吼えた。 一匹の獣としての雄叫び。眼下の森林にまで響き渡ったそれを聞いた動物達が、本能的に逃げ去ったのを誰も知らない。 彼らは察したのだ。 今、この地上で最強の生物が怒ったのだということを。 そして、その怒りを向けられた対象に心から同情した。 「フリード……!」 「もう一度、やる気か!?」 今度はキャロの命令ではなく、自らの意思でフリードが魔力を集束し始めた。 放出する魔力量は全く変わらない。むしろキャロの使役に逆らった無理な力は、先ほどのそれより僅かに減少すらしている。 しかし、その集束率だけは桁違いにまで上がっていた。 眼前で球状に練り上げられていく炎の魔力。だが大きさは半分にまで圧縮されている。 内側で荒れ狂う業火を現すように熱の塊が脈動した。 目指すのは、かつて高みであったヴォルテールすら超える炎。あの火炎の悪魔さえ焼き尽くせる業火だ。 「それ以上抑えたら暴発する! フリード、放って!」 キャロが悲鳴に近い声で叫ぶ。 そしてフリードの望むままに暴走寸前にまで圧縮された炎の魔力は、ついに再び解き放たれた。 ガジェットに向かって同じように放射される火炎。 しかし、その様相はもはや完全に別物となっている。 空中への僅かな拡散すらなく束ねられた熱量は、もはや炎というよりも巨大な熱線と化してレーザーのように空気を焦がした。 一本の赤い線がガジェットの装甲を舐めるように走り抜け、AMFどころか装甲すらも容易く貫通して機体を真っ二つに『切断』する。 真赤に灼熱する切断面だけを残して、二つに分けられたガジェットはついに沈黙したのだった。 「やったぁ!」 耳元で聞こえたキャロの歓声は、普段の静けさを忘れるような、純粋で年相応な喜びを表現していた。 視線の先にある完全に機能を停止したガジェットと、すぐ傍にある少女の笑み。それらがこの竜が成した結果だと悟って、エリオは苦笑するしかなかった。 「今回は負けだよ、ボクの……」 何が勝ち負けなのか、それはエリオとフリードの種族を越えた男同士の間でしか分からない意思の疎通だった。 スバルとティアナのチームからレリックを確保したという報告も入り、二度目の安堵を二人は感じる。 ここに、四人のルーキー達の初の任務が終結したのだった。 「車両内及び上空のガジェット反応、全て消滅!」 「スターズF、レリックを無事確保!」 緊張感に満ちていた司令室に次々と朗報が飛び交った。オペレーターの声も知らず安堵が滲んでいる。 サーチャーが車両内に転がるガジェットの残骸と、レリックの入った防護ケースを抱えるスバル達の姿を映していた。 なのはとフェイトが敵影の無くなった上空で合流している様子も見える。 敵は全滅した。戦いは終わったのだ。 「機動六課の初陣……何とか無事成し遂げたようですね。ボス」 「今が、<選択>の時や―――」 「いや、無理に難しい返事しなくていいですから」 口元で手を組んだお気に入りの姿勢で低く呟くはやてを、早くも対応に慣れ始めたグリフィスが冷ややかにツッコんだ。 冗談交じりのやりとりを許せる空気になったことが、何よりも任務の成功を表している。 演技染みた表情を解き、緩んだ笑みを浮かべながらはやてが見上げると、似たような表情のグリフィスが頷いて返した。 「列車が止まったらスターズの三人とリインはヘリで回収してもらって、そのまま中央までレリックの護送をお願いしようかな」 「ライトニングはどうします?」 「現場待機。現地の職員に事後処理の引継ぎをしてもらおうか」 「ですが、ライトニング3と4は車両に戻っています。竜召喚で予想以上に力を使い果たしたようですね」 「あらら。まあ、気張ったからしゃあないか。ほんなら同じくヘリで回収して―――」 的確に指示を出し続けていたはやては、モニターに映る違和感を察知して口を噤んだ。 新たな敵影を見つけたワケではない。 モニターに映るのは、未だ走り続けるリニアレールだけだ。 そう、コントロールを取り戻したはずの車両が、まだ走っている―――。 「……リイン曹長の様子は? 何で報告がないんや」 その問いに答えようとする誰よりも早く、突如鳴り響いたレッドアラートが緊急事態を知らせた。 「どうした、敵の増援か!?」 動揺を露わにしながらも、一番早く行動したのはグリフィスだった。 アラートと同時に乱れ始めたモニターの異常を見据えながら、状況の確認を急ぐ。 「しゃ、車両内及び上空に<何か>が出現しました! ガジェットではありません!」 「<何か>だと!? 報告は明確に行え!」 「特定できません! 記録にない魔力波です! まるで次元震のよう……っ!」 「馬鹿な! 作戦領域一帯が吹っ飛ぶとでも言うのか!?」 「感知される魔力量はそこまでのものではありません! ですが、複数出現しています!」 「サーチャーに異常! 現場、モニターできません!」 嵐のように入り乱れる報告は更なる混乱を呼ぶだけで、どれも要領を得るものでなかった。 任務達成の安堵感に満ちていた司令室が、一瞬で混沌の坩堝と化す。 「―――シャマルを呼べ。サーチャーを経由して観測魔法で状況をモニターするんや」 その混乱の中で、はやての落ち着き払った命令だけが何故かハッキリと全員の耳に届いた。 「通信の復帰は後回しでええ。私が念話を繋げてみる」 慌てて行動を開始するオペレーターの様子を一瞥し、更に指示を重ねていく。 はやてへの尊敬の念だけでなんとか平静を保っているグリフィスが、その猶予の間に素早く思考を整理した。 「……かなり長距離ですが、可能ですか?」 「新人は無理やけど、なのは隊長かフェイト隊長には波長を合わせ慣れてる。なんとか繋がるやろ。 それより、私の呼びかけにもリインが応えん。車両の状況を少しでも把握するんや。謎の敵以外にも何か問題が起こってる」 「了解。情報収集を急がせます」 落ち着きを取り戻したグリフィスの返答に頷き、はやては目を閉じて精神集中へと没頭した。 今この場ではやて以上に魔法技術に優れた魔導師はいない。 瞑想に近い意識の奥への潜行を経て、はやてはなのはと念話を繋げることに成功する。 これだけ長距離の念話は初めてだ。指揮官としての訓練の一貫として、念話の技術を鍛えていたのが幸いした。 『―――<なのは> 聞こえるか?』 『念話? よく通じたね』 振動するように聞き取りにくい声だが、はやてとなのはは互いの言葉をしっかりと捉えていた。 はやてがなのはを呼び捨てにすることが何を意味するのか、理解もしていた。 切迫した状況でありながらそれを打開する意思とその為の仲間への信頼を抱く時、はやてはいつも自分をただの友ではなく戦友として扱う。 なのはは念話越しでは見えない笑みを浮かべた。 『モニター出来ん。簡潔に状況を報告して。敵か?』 『たぶんね、友好的には見えないよ』 どうやら突如出現した謎の存在と対峙しているらしいなのはが答える。 『どんな<敵>や?』 多くの疑問を控えて、はやては単純にそれだけを尋ねる。 彼女の脳裏には、この事態に当て嵌まる事例が一つだけ思い浮かんでいた。 何もかも分からない状況だからこそ当て嵌まる―――今、管理局でも問題視されている謎の襲撃事件のことだ。 そして、それを裏付けるような返事が返ってくる。 『―――死神、かな?』 冗談染みた言葉を告げるなのはの声は、同時に薄ら寒くなるような真実味を帯びていた。 手袋の内側で、疼くような痛みと共にじんわりと熱い何かが滲んでくるのをフェイトは感じた。 3年前に刻まれた傷が、今また涙のように血を流している。 握り締めた右手の中の鈍痛を表情には出さず、静寂の広がる周囲の空を見回す。 この空を支配していたガジェットを一掃し、無粋な物のなくなった広々とした空間に浮かんでいるのはフェイト自身と相棒のなのはだけのハズだ。 「―――なのは、来るよ」 何が来るのか、どうなるのか、それは分からない。 だが分からなくとも、それが危険であることだけは理解出来た。フェイトはそう断じていた。 全ては異形の刻んだ右手の傷が教えている。 そして、ソレは来た。 《HAHAHAHAHAHAHA……》 不意に吹き抜けた冷たい風が、二人の魔導師の持つ歴戦の勘を身震いするほどに撫で付けた。 《HAHAHAHAHAHAHA……!》 初めは風の音かと思ったが、一瞬の悪寒が過ぎた後にそれは不気味なほどハッキリと聞こえた。 笑い声だった。 人影はもちろん鳥の姿すらない高度に、男とも女ともつかない奇怪な笑い声が響いていた。 一つであった声はいつの間にか二つに、そして三つに。互いが反響し合うようにどんどん増えていく。 「……死神、かな?」 はやてと念話が繋がったらしいなのはが、冗談交じりに笑って呟くのを、背中越しにフェイトは聞いた。 しかし、その額には冷たい汗が滲み出ている。 ―――いつの間にか背中合わせになったフェイトとなのはを囲むように出現したのは、冗談でもなくまさに<死神>としか形容できない者達だった。 薄気味悪い仮面と枯れ木のような腕。風の吹くまま揺れるボロ布のようなローブから伸びる下半身は無い。まるで幽鬼そのものだ。 黒い布が風に巻かれて漂っているようにしか見えない姿のせいか、ソイツらは警戒する二人の視界の隅から不意打つように突然現れた。 筋肉など削げ落ちた両腕に持つ巨大な鎌だけが異様なまでに人目を惹く。 実に分かりやすく闇の存在であることを体現し、<死神>の群れは狂ったに笑いながら空に浮かんでいた。 「話は通じそうにないね」 「敵だよ」 ホラー映画のワンシーンが現実となっている光景に戦慄するなのはに対して、フェイトはただ端的に断言した。 二人に共通して既視感を感じていた。 なのはは心の奥から滲み出る恐怖と、それを何時か―――炎の中で感じたことがあるような感覚を。 フェイトは右手の傷が蘇らせる記憶の中で、一人の少女の人生を狂わせた忌むべき化け物と同じ存在に対する明確な敵意を。 それぞれが感じ、そして確信した。 こいつらは紛れも無く<敵>だ。 『スターズ1、ライトニング1と共にアンノウンとの交戦に入ります』 もはや戦いは避けられないことを、恐怖とそれを凌駕する敵意から確信したなのはが報告する。 『交戦は避けられん事態か?』 『フェイトちゃんが珍しくやる気なの』 バルディッシュを構え、珍しい怒りの形相を静かに浮かべているフェイトを一瞥してなのはははやてに告げた。 加えて、周囲を漂う<死神>の数は20を超えている。すでに包囲網と化していた。 『それに、どちらにしろ逃がしてくれそうにはないよ』 『未だに列車内の状況は分からんけど、事態について少し把握出来た。知らせる事が二つある』 『まず、良い知らせから聞きたいな』 『あいにくやけど悪い知らせだけや』 答えるはやての言葉は、性質の悪いジョークのように聞こえた。 念話越しにも肩を竦める仕草が見て取れる。 『列車が止まらん。むしろ加速しとる―――』 そして、告げられた情報はまったくもって性質が悪いとしか言いようが無いものだった。 少しずつ間合いを詰めて来る<死神>の動きとは別の要因で、なのはの表情が歪む。 『既に速度は通常運行の倍まで上がった。終着の施設までの所要時間も半分に短縮、このままのスピードで突っ込めば車両は建物を破壊して月まで飛んでく』 『車両内の皆は大丈夫なの?』 『それが二つ目の悪い知らせや。 そっちに何が出たのか分からんけど、似たような反応が車両内にも複数出現した。ライン繋がっとるはずのリインからも応答が無い』 『分かった、こっちから念話してみる』 湧き上がった焦燥感を押さえ込み、なのはは周囲への警戒を怠らずに部下達の身も案じた。 未だ周囲に響く<死神>の哄笑。 狂ったように繰り返される壊れたラジオのノイズのようなそれを聞いていると、こっちの頭までおかしくなりそうになる。 目の前の存在が秘めた力よりも、その異常性と先ほどから消えない人として根源的な恐怖感がなのはを不安にさせた。 ティアナやスバル達を信頼はしている。 しかし、こんな奴らが彼女達の目の前にも現れていると思うと、焦りは消えない。 『―――任務続行、やで』 すぐさま念話を繋げようとするなのはを、はやての厳しい声が遮った。 一瞬だけ動揺で思考が止まり、息を呑む。 「……うん、分かってる」 元からそのつもりだった。 高町なのはは四人の教導官である以前に管理局員なのだ。そして、四人自身も。 皆が覚悟を持ってここにいる。 しかし、頭で理解していても釘を刺された瞬間に心と体が震えたことは隠せない。 それきり切られたはやてとの念話の後、一呼吸だけ間を置いてなのははリーダーのティアナへ念話を繋げた。 周囲を漂う無数の<死神>の群れは、獲物を逃がすまいと包囲の輪を縮めている。 少しずつ。 しかし、確実に。 「な、何が起こったの……!?」 突然の事態に、スバルは動揺していた。 レリックを無事確保して全身の緊張が抜ける中、車両の外へ出ようと屋根に空いた穴に手を伸ばした時、それを遮られたのだ。 唐突に発生した赤い障壁―――結界にも似た魔力壁が車両の中と外を完全に隔てている。 物理的なものではないが、肉眼でも確認出来るほどはっきりとした壁だ。 その表面は生物のように蠢いて、不気味な生気すら感じられる。 「スバルさん、どうしたんですか!?」 壁越しにもエリオの声はしっかりと通じている。 スバルが思わずその壁に向かって手を伸ばそうとして―――ティアナに強い力で引っ張り戻された。 「ソレに近づくな! エリオ、下がりなさい!!」 警告を発した声はスバル達には分からない危機感に満ちていた。 その声に反応するより早く、外ではキャロがエリオを壁の近くから引き離す。 二人が離れるのと同時だった。 結界から壁と同じ血のように赤い腕が亡霊のように生え出たかと思うと、つい先ほどまでスバルやエリオのいた位置の空気を掴み取って消えていった。 眼前で起こった一瞬の光景に、二人は中と外で同じように目を見開き、硬直している。 あのまま近づいていたら、どうなっていたか。 あの腕に捕らえられた後の展開をそれぞれが想像して青褪めた。 「何、この壁……?」 その壁自体が生き物のように錯覚する異常性に、スバルはようやく恐怖を感じ始めた。 何かがおかしい。何がおかしいのかは分からないが、漠然と本能が告げている。 この列車は、たった今<異界>となった。 「結界……分断されたか」 「ティア……」 「エリオ、キャロ! 見ての通りよ、その壁には近づかないようにしなさい」 「ティア、何かおかしいよ!」 「黙って。高町隊長からの念話よ」 得体の知れない不安に怯えるスバルとは対照的に、ティアナの様子は普段と全く変わりなかった。 そんな相棒の突き放すような冷めた態度に、スバルは別の不安とそれ以上の頼もしさを感じて、少しだけ落ち着く。 この異常の中で平静であることが『逆に異常である』ということには気付かず。 「―――はい、車両内の移動に問題はありません。……了解、現場に向かいます」 ただレリックを守るように抱えて待つしかないスバルを尻目に、ティアナは念話越しに情報を交わして指示を受け取っていた。 念話を切ったティアナが、ようやく視線をスバルに戻す。 「緊急事態よ。車両のコントロールがまだ戻ってない、このままだと終着の施設へ全速力で突っ込む」 「まだガジェットが残ってたの?」 「謎の襲撃よ。隊長達を襲ってるアンノウンがこの車両にも出現した可能性があるわ」 予想だにしない謎の敵の存在を知り、スバルの不安はいよいよ大きくなった。 しかし事態は、そして相棒のティアナは、そんな彼女の動揺が落ち着く猶予を与えてはくれなかった。 「先端車両に戻って、リイン曹長の安否を確認。その後、車両停止を目的として行動する。行くわよ!」 「あ、待って!」 「エリオ、キャロはその場で待機! 出来るなら回収してもらいなさい!」 指示もそこそこにティアナは踵を返して車両内を走り出していた。慌ててスバルが続く。 「キャロ達、置いてきてよかったの!?」 「二人は消耗しすぎたわ。キャロの状態もこれ以上は危険だと私が判断した」 「じゃなくて! あの結界を誰が張ったのかも分からないし……!」 「今はこれ以上気に掛けてられないわ。それにレリックを抱えてるこっちが危険なんだから、油断しないでおきなさい」 振り返らず、走りながらティアナが事務的に答えた。 謎の敵が現れる可能性があるということで、道中で襲撃を覚悟していたが、二人の走り抜ける通路にあるのは戦闘の跡とガジェットの残骸だけだった。 激しくなる列車の振動が、文字通り加速する異常事態を静かに告げている。 車両と車両を飛ぶように走り渡り、先端車両の入り口まで障害無く駆けつけると、ティアナは殴りつけるようにドアの開閉装置を押した。 意外にも、ドアは抵抗無く開く。 レリックのせいで片腕が塞がっているスバルを脇に控えさせて、操作機器の集中する内部を覗き込んだ。 「―――ッ、曹長!?」 ティアナはその光景に息を呑んだ。 コントロールパネルの前で浮遊しているリインを、奇怪な蟲が襲っている。 「な、何アレ!?」 驚愕するスバルの疑問に、さすがのティアナも答えることは出来なかった。 <蟲>と表現するのが最も近いのかもしれないが、実際にあんな種類の昆虫が存在するとは思えない。 六本の脚を広げれば人間の上半身を丸ごと覆ってしまいそうな蟲としては異常な大きさと、甲殻ではない皮膚のような肉感のある外面を持っている。 ソイツがどういう存在なのかは分からない。 しかし、生理的な嫌悪感を感じさせる外見で、リインを飲み込まんばかりに覆い被さる姿は無条件で敵と認識できるものだった。 「やっぱり、<お前ら>か……っ!」 スバルよりも遥かに早く動揺から抜け出したティアナがアンカーガンを向ける。 照準の先に見える標的を睨み据え、しかし舌打ちして襲撃を断念した。 リインと蟲との距離が近すぎる。 目も口も無い体で、一体どういう襲い方をしようというのかは分からないが、六本の脚で小さなリインを丸ごと包み込もうと密着している状態だ。 リイン自身はそれを魔力障壁で必死に押し返している。 小さな上司に襲い掛かる汚らわしい敵を、ティアナは嫌悪感以外の感情で憎悪した。 ティアナだけが理解している。この蟲は<悪魔>の一種だ。 そして、ただそれだけの事実がティアナにとって重要だった。 この私の目の前で、<悪魔>が蠢き、自分に近しい者を襲っている―――その事実だけで、もう全てが許せない。 「この蟲野郎ッ!」 訓練でも実戦でも、常に冷静冷徹であり続けたティアナが、明らかな憎しみを込めて敵に攻撃を行った。 不気味な外見を恐れもせず、その場に駆け寄ってデバイスの台尻で殴り払う。 肉の潰れる嫌な感触と共に、蟲はリインから引き剥がされた。 しかし。 「まだだよ、ティア! くっついてる!!」 叫ぶスバルの声は、もうほとんど悲鳴だった。 殴り飛ばしたと思った蟲は、素早く脚を絡めてアンカーガンに取り付いていた。 「この……っ!」 腕から全身へ走り抜ける嫌悪感と危機感と共に、ティアナは慌ててデバイスを投げ捨てた。 意外にもあっさりと蟲は手から離れ、デバイスに絡みついたまま床を転がる。 最悪腕を切り落とす悲壮な覚悟すらしていたティアナは思わず安堵した。 そして、すぐに後悔した。 起き上がった蟲がティアナに向かって『魔力弾』を撃ってきたのだ。 「クソッ!」 状況を理解するより早く体が動き、力無く倒れるリインを抱えて転がるように避ける。 這うような姿勢でもう一度敵を見据えれば、やはり信じがたい姿が眼に映った。 ティアナに向かって魔力弾を撃ったのは蟲が持つ能力ではない。つい先ほどまでは無かった無機質な銃身が蟲の体から突き出して照準を定めている。 その銃身は見覚えがあった。 いや、間違いなくそれはアンカーガンの銃身そのものだった。 蟲は、アンカーガンと半ば融合するような奇怪な姿へと変貌して、更にそのデバイスの能力で魔力弾を放っているのだ。 「まさか、カートリッジの魔力を!?」 さすがに驚愕を隠せないティアナの動揺を突いて、再び魔力が集束する。 しかし、それが放たれるより早く。 「このぉぉおおっ!!」 半ば恐慌状態のスバルが反射的に放ったリボルバーシュートが横合いから蟲を殴りつけた。 吹き飛んだ蟲は今度こそ空中でバラバラになり、肉片が床にばら撒かれる前に消滅して、同時に破壊されたアンカーガンの破片だけが散らばる。 幻のように消えた敵の姿に目を剥きながら、スバルは荒い呼吸を繰り返した。 「……ティ、ティア」 「スバル、後ろ!!」 敵を倒した安堵感よりもその得体の知れなさに恐怖を感じていたスバルは、ティアナの突然の叱責に一瞬反応できない。 次の瞬間、倒した蟲とは別の一匹が背後から襲い掛かった。 「う、うわぁああああっ!!?」 背中にへばり付いた蟲の感触に、スバルはパニックに陥る。 「ベルトを外すのよ!」 錯乱して事態が悪化する前に、今度はティアナがスバルを救った。 スバルに残った理性が行動に移すより早く、ティアナが自ら言葉の通りに動く。 胸元の留め具を素早く外して、スバルの体を引き寄せながら、背負っていたケースごと蟲を蹴り飛ばした。 距離を離し、蟲がこちらよりもケースの方に興味を持ったらしいことを確認すると、二人してようやく一息つく。 「……ごめん、ティア」 リインの時と同じように、ケースに取り付いてその中身を探ろうとする蟲の動きを見ながら、スバルが気まずげに呟いた。 あの蟲の生態が理解出来た以上、これから何をしようとするのかも予想出来る。 「まさか、デバイスを乗っ取るなんてね。多分リイン曹長も取り込もうとしてたんでしょう」 腕の中で気絶したリインを一瞥して、ティアナは舌打ちした。 あの蟲にとって予想外だったのは、物言わぬデバイスとは違い、管制人格たるリインが抵抗出来た事だろう。 おそらく車両のコントロールをガジェットに代わって奪ったのもあの蟲と同種のものだ。どうやら無機物に寄生する能力があるらしい。 何処に潜んでいるのかは分からないが、おそらく複数。それらを駆逐して車両を止めるのは骨が折れそうだ。 そうしてティアナが既に作戦の修正を行っている間、スバルは悲痛な表情でついにケースを抉じ開けられる様を見ていた。 「わたしのせいで、ティアのデバイスが……」 「バカ、あんたと引き換えにするような物じゃないわよ」 自分を責めるスバルに、ティアナは普段通り素っ気無く言った。 本当に、別段気にはしていないのだ。製作者のシャリオには悪いが執着するような物ではない。 それよりも乗っ取られた後が厄介だ。新型の性能が、どう裏目に出るか分からない。 「スバル、今のうちにデバイスごとあの蟲を……」 『破壊して』―――その台詞は、突然遮られた。 他ならぬ<クロスミラージュ>自身の意思によって。 《Error!》 拒絶するように発せられた電子音声の後で、デバイス自体が発生させた障壁によって蟲が弾き飛ばされた。 それは、明らかに抵抗だった。 ティアナとスバル、そしておそらく蟲自身も驚愕する中、<クロスミラージュ>の意思が語りかける。 《Get me―――》 ただ一人、自分が認めた持ち主に向かって。 《My master!!》 「―――スバル! お願いっ!!」 その無機質な声はティアナの心と体を突き動かした。 リインをスバルに預け、自らはクロスミラージュの元へと向かう。しかし、再び動き出した蟲が全く同じ行動を取っていた。 ティアナの瞬発力の方が明らかに上回っているが、距離的にはあちらの方が断然近い。 咄嗟に、残っていたアンカーガンを蟲の進路上に投げつけた。 狙い撃つことも不可能ではなかったが、何故か手放してしまった。自分の行動を頭では理解できないが、心は既に知っている。 その瞬間、ティアナは選んだのだ。自分を呼ぶ新しい相棒を。 「<クロスミラージュ>……!」 より容易く寄生出来るデバイスの方へ意識を移した蟲を尻目に、ティアナは真っ直ぐにクロスミラージュへと手を伸ばす。 アンカーガンに蟲が取り憑くのと、ティアナがクロスミラージュを掴むのは同時だった。 「セット・アップ!!」 発せられたキーワードにより、デバイスが起動する。 握り締めたグリップから生命の脈動が伝わり、銃身から息吹が聞こえた。 閃光を伴ってティアナのバリアジャケットが新たに再構成される。性能や細部のデザインは新型のそれへ。 真の意味でティアナのデバイス<クロスミラージュ>が誕生する瞬間だ。 その光景を打ち壊すべく、アンカーガンを完全に乗っ取った蟲が魔力弾を発射した。 装填されていたカートリッジの魔力を集中した一撃は先ほどの比ではない。 弾丸は一直線にティアナへと襲い掛かり―――。 「Eat this(こいつを喰らえ)」 クロスミラージュの銃口から放たれた魔力弾がそれを貫いて、そのまま蟲の肉体を粉々に吹き飛ばした。 《―――BINGO》 加熱した銃身からまるで紫煙のように煙を吐き出して、クロスミラージュが言い捨てた。 咄嗟に撃った魔力弾の、予想以上の威力に軽く驚き、ティアナは改めて新しいデバイスを見つめる。 魔法の発動速度に集束率、その負担の軽減まで、全てが既存のデバイスを凌駕していた。 「……なるほど、言うだけあってサポートは完璧ね」 《Yes. Was it unnecessary?(はい。不要でしたか?)》 「いいえ、ゴキゲンだわ」 《Thank you》 小気味良い返事を聞きいて満足げに笑った後、ティアナはもう一度視線を消滅した敵の跡へ向けた。 そこに残されたのは、バラバラになったデバイスの残骸だけだ。 感傷に浸るほど状況に猶予は無く、自分で感受性の強い方だと思ってはいないが、それでも胸に去来するものはあった。 あのデバイスで今日まで戦い続けてきた。 敵を倒し、挫折感も達成感も経験して、そして大切なこともあれを通じて教えられたのだ。 「…………さよなら、相棒」 囁くように別れを告げる。 未だ続く任務の最中で、その僅かな時間だけは許された。 「―――OK、それじゃあ<相棒> 早速だけど働いてもらうわよ? 弾が真っ直ぐに飛ばなかったら、溶かしてトイレの金具にするわ」 《All right, my master》 わずかな感傷の後に、普段通りのティアナ=ランスターが戻ってくる。 開いた眼には<悪魔>すら恐れぬ戦意が漲り、口元には兄貴分譲りの不敵な笑み。 どんな状況でも笑い飛ばす、それがクールなスタイル。 両手にクロスミラージュを携え、仁王立ちするティアナの背後でスバルの息を呑む音が聞こえた。 再び<敵>が現れる。 あの蟲が、今度は群れを成して車両の天井や壁から滲み出るように現れ始めたのだ。 この世の法則を無視したそれは、まるで悪夢のような光景だった。 しかしその中でただ一つ、失われない光がある。 「イカれたパーティーの始まりってわけね」 闇への恐怖を人間としての怒りで圧倒した少女は、悪夢を前にして怯みはしなかった。 両手の中で銃身が華麗に踊り、ピタリと止まった瞬間に胸の前で腕を交差させる。 今から撮影に臨むトップモデルのように、一分の隙もない、完璧に決まったポーズ。 醜悪な蟲の湧き出る地獄のような光景の中で、その陰鬱さを全て吹き飛ばす破壊的な美しさをハンターとなった少女は放っていた。 《―――Let s Rock!》 そして、新たな銃火と共に、ティアナは<悪魔>との戦闘を開始した。 to be continued…> <ダンテの悪魔解説コーナー> ・インフェスタント(DMC2に登場) 力だけが全てを支配する悪魔の世界において、何も強い奴だけが生き残れるわけじゃない。その代表格がこの寄生生物だ。 文字通り、こいつは生物や悪魔はもちろん、機械みたいな無機物とも融合して自在に操る能力を持ってる。 特に自我を持たず、時代の進化によって強力になりつつある近代兵器なんかは、こいつらにとって格好の寄生対象になるわけだ。 戦車に戦闘機にデバイス、どれも乗っ取られれば凶悪な化け物へ変わる代物ばかりだ。 加えて、ただ宿主を使い潰すだけじゃなく、複数で取り憑ついてその性能や耐久力を底上げしちまうってあたりが厄介極まりないぜ。 他人の威を借りる寄生生物だけあって、それ単体ではノロマな虫けらに過ぎないからな。調子付く前に手早く害虫駆除といこうぜ。 前へ 目次へ 次へ
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最近、考え込むことが多くなった。 ――あたしは、何を目指しているのだろう? こんな風に考える切欠は何時だったか。 訓練校に入った時? そこを卒業した時? それとも、Bランク魔導師の試験に合格した時? 違う。 <機動六課>に入隊した時だ。 そこから、自分の人生は大きく動き始めた。 一歩一歩の小さな歩みが、途端に大きく足を跳ね上げ、追い風に乗って走り始めた。 遠く仰いでいた『何が』見え始める。 だからだろうか? 自分の行き着く先を、とりとめもなく考える時間が増えた。 決まっている。決まっている筈だ。 漠然とした目的で、凡人の自分がここまで辿り着けるはずがない。 苦しみに膝を着き、悔しさで地を這った時、自分を支えたのは不変の誓いだった。 受け継いだこの<弾丸>で、兄の目指した正義を貫き通す。 その為の手段は明白で、目指すべき頂もハッキリと見えていた。 しかし、実際にその道を走って気付く――。 自分の行く道には、どうしようもなく多くのものが転がっているという事実に。 それは障害であり、足を引っ張るものであり、煩わしいものであり――また同時に、支え、導き、癒してくれるものでもあった。 それらに触れながら、時には抱えながら、少しずつ自分の荷物を増やしながら走っていく。 重くなどない。むしろ――。 「――ィアナさん。あの、ティアナさん?」 「え?」 我に返ったティアナの視界にキャロの心配そうな顔が映った。 物思いに耽っていたらしい自分の信じられない気の抜きようを戒めると、それを表には出さず周囲を見回す。 木々が並ぶ見慣れた訓練場の風景が目に入り、ティアナは自分の状態を冷静に理解した。 「ごめん、ボーっとしてたわ」 「ティアがボーっとするなんて、相当のことじゃない? やっぱり疲れが溜まってるんだよ」 自分と同じ分量の自主練習をこなしながらも、こちらはますますエンジンが掛かっているような高揚した様子の傍らでスバルがパートナーを案ずる。 「違うわよ、フォーメーションを考えてたの。アンタが物を考えないからあたしが脳みそ酷使することになるんでしょうが」 「ひどっ! まるでアホの子みたいに言わないでよ!」 「違うの?」 「何、その心底不思議そうな顔!」 「もしもし、入ってますか? ナカジマさん、お留守ですか?」 「痛っ! 痛い、やめてたたかないでノックしないでっ!」 叩くとコンコンいい音を立てる頭の中身を割りと本気で心配しながら、ティアナはスバルの追及をかわせたことに安堵していた。 無理をしているのは自覚済みだ。 他人の心配事となると勘の良いこの相棒には、あまり踏み込んで欲しくなかった。 彼女の好意が煩わしいなどとは思わない。 ただ、他人事の薄い言葉だと思えるほど、自分はスバルに心を許していないわけではないのだ。 その時ふと、ティアナはつい先ほどまで考えていたことを思い出した。 道を進む上で巡り合った、他人との数奇な出会い。 スバルと、そしてエリオやキャロ。高町教導官を始めとした、多くの先達たち……。 「ティ、ティアナさん……よろしかったら、その……これ」 弱弱しく差し出されたドリンクのボトルを一瞥し、ティアナはそれを持つ少女の小さな手を辿った。 ロクに相手の顔も見れないほどの緊張で真っ赤に染まり、それでも拒絶される恐れと純粋な好意でドリンクを渡そうとする健気な姿がある。 ティアナは時折見る、キャロのそういった人と関わろうとするささやかな勇気を微笑ましく思い、笑顔でボトルを受け取った。 「ありがとう。喉渇いてたのよ――ゲブォハッ!?」 スバルに言わせれば『デレ』であるらしい貴重な笑顔でボトルを煽り、次の瞬間ティアナは奇怪な声と共に口と鼻の穴からドリンクを逆流させた。 史上最悪の毒を含んでもこうはならないという凄惨な姿でのた打ち回り、スバルとエリオは硬直し、それを成した張本人のキャロは自らのへの恐怖で小さな悲鳴を上げた。 「ティアァァァーーー!? どうしたの、何が起こったの!?」 「……何コレッ!?」 鼻から奇妙な液体を垂れ流したティアナは鬼気迫る形相でキャロに食って掛かった。 その異様な迫力に哀れな少女は危ういところで失禁するところであった。 「ス、スポーツドリンクですぅ……オリジナルブレンドの」 「セメントでもブレンドしたっての!?」 「よく分からないですぅぅっ! シャーリーさんに教わったまま混ぜて……っ」 あのマッドメガネめ、スケボーのように隊舎内を引き回してやる! 罪の無い無垢な少女から確信犯へと怒りの矛先を転換させたティアナは強く誓った。 「あの……ごめんなさい。ティアナさん、疲れてるみたいだから、栄養が付く物をってわたしが頼んで……」 必死に言い繕うキャロの表情には涙と、自分の為したことへの深い後悔が滲み出ていた。 頭を抱えたくなるような理不尽な気持ちがティアナの心に湧き上がる。 何処か他人から一歩退いていようとする少女の歩み寄りを、自分は拒絶してしまったのだ。そこにやむを得ぬ事情があるにせよ。 ああ、畜生。やってらんない。そんな悪態を吐きながら、体は勝手に動く。 キャロの抱えるボトルを奪い取ると、その凶悪な中身を一気に喉の奥へ流し込んだ。 「ティア、死ぬ気!?」 「無茶ですよ!」 「ああっ、ダメです……っ!」 周囲が口々に止める中、ティアナは不屈の精神でその粘液を飲み干した。 「……キャロ」 「は、はい!」 「クソ不味いわ」 呻くように吐き捨てると、ティアナは空になったボトルをキャロに渡した。 「次は、普通のドリンクを頼むわね」 「……はいっ!」 そっぽを向いて投げ捨てられたティアナの言葉の意味を理解し、キャロは満面の笑顔で頷いた。 様子を見守っていたスバルとエリオの顔にも自然を笑みが湧いてくる。 それから、気分の悪さとは裏腹に体調は異常なほど回復したのは決してあの呪いのドリンクの効能などではなく偶然だと思いたい。 気が付けば暖かなものに囲まれていた。 同じ志を胸に宿す仲間達。 目指すべき指針となって、行く先の空を飛ぶ英雄。 この背を預ける唯一の相棒。 そして――。 『―――がんばれよ。お前ならやれるさ』 この出会いの数々はある種の幸運であると、認められる。 多くの大切なものに自分は恵まれているのだ。 ――だが、そうした優しい日々の中でも決して忘れられない過去があった。 兄は死んだ。 両脚と左腕を失い、酷く綺麗な死に顔が現実感を与えてはくれなかった。 残された右腕にはデバイスが握り締められていたらしい。最後までトリガーを引き続けて。 決して無くならない現実がある。 兄が命を賭して放った弾丸は届かず、撃たれるべき者が今まだこの世界でのうのうと生き続けているという現実が。 過去と未来。 どちらを優先させるべきか。 答えなど出ない。きっと誰にも。 ただ考えるのだ。 この満ち足りていく日々の先で、夢を叶え、頼れる仲間と共に自らの信じる正義を成し、いずれ兄の仇を正当な裁きの下で打ち倒す――そんな理想の傍らで、否定に首を振る自分がいる。 それも一つの選択なのかもしれない。 でも、ダメだ。 どうしても出来ない。 穏やかで優しい日々の中、まるでぬるま湯に浸かる自分を戒めるように脳裏を過ぎる兄の死を、ゆるやかに忘却していく事など。 それは愚かしいのかもしれない。過去に捕らわれているのかもしれない。 だけど。 ただ一つ。報われるものが欲しい。 『無能』『役立たず』と罵られ、その死を悼まれることも無く死んでいった兄の魂に捧げられる何かが欲しい。 その為ならば、仲間よりも、幸福よりも――これから続く優しい日々よりも。 ただ一発の<弾丸>が欲しい。 全てを貫く魔の弾丸が欲しい。 どちらの道が正しいかなど分からない。 ただ、どちらが幸福かは明白だ。 それでも尚、考え続ける。 そして今、一つの答えが出ようとしている――。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十六話『Shooting Star』 実出動僅か2回の新人魔導師と前線に立ち続け多くの新人を導いてきたベテラン魔導師。 Bランクにされて間もない飛行魔法未修得の陸戦魔導師とリミッター付きとはいえ実質S+ランクの空戦魔導師。 その二人が戦えばどうなるか? 予測など容易い。決着は火を見るより明らかであった。 少なくとも、その戦いを見守るほぼ全ての者達が予見していた。 ――しかし。では、この緊迫感は一体何だ? 誰もが固唾を呑んでいた。 空気が張り詰め、ピリピリと乾燥している。 戦闘の意志を明確にしたなのはとティアナの対峙に、全ての物事が息を潜めている。 緊張の糸は緩まず、切れもせず、ただギリギリのところでピンと張り詰めていた。 それは、この二人の拮抗を意味するのではないか。 『結果は見えている。しかし――』 誰もが予想し、しかし心の片隅でそれを疑う気持ちを抑えることが出来なかった。 「――いくよ、ティアナ!」 静かな対峙をなのはの宣告が崩した。 油断を戒めるような緊張感がなのはに全力で戦うことを忠告していた。そして、だからこそ確実な手段を取る。 先制攻撃として<ディバイン・シューター>の魔法を瞬時に展開した。まずは様子見だ。 <ウィングロード>の限定的な足場で、飛行能力を持たないティアナには誘導性を持ったこの攻撃さえも脅威となる。 油断ではない。が、上手くすれば一瞬でカタが付く。なのははそう思っていた。 なのはの周囲に桃色の光弾が幾つも形成される。 そして――次の瞬間<銃声>と共にそれら全てが弾け飛んだ。 「な……っ?」 なのはの驚愕は、状況を見る者全ての心を代弁していた。 形成とほぼ同時に他の魔力との衝突で相殺されたスフィア。桃色の残滓が空しく周囲を散っている。 なのはは、それを成したティアナの姿を凝視した。 突きつけられた二つの銃口から薄い白煙を上げ、不敵な笑みを浮かべる彼女の姿を。 「撃ち落とされたの!?」 《Positive.》 レイジングハートが無機質に肯定した。 ほぼ全ての射撃魔法に言えることだが、発射には『魔力を集束しスフィアを形成して放つ』という過程が存在する。誘導という術式を付加するならば尚更だ。 ティアナはその一瞬のタイムラグを突いたのだった。どんなに強大な力でも発生の瞬間は小さな点である。 「訓練で嫌と言うほど味わいましたから。高町教導官の誘導弾は、一度放たれれば飛べない私にとって脅威です」 しかし、その一瞬を見極め、正確に行動出来るかと問われればやはり疑わざるを得ない。 「だから、撃たせない」 目の前の現象が、ティアナの言葉のまま簡単な話でないことはなのはにも理解出来た。 可能にした要素は幾つか在る。 ティアナの魔力弾は魔導師の中に在って異質だ。どんな射撃魔法よりも弾が速い。 誘導性を一切捨て、過剰圧縮による反発作用を加えた実弾並の弾速を誇るティアナの魔力弾だからこそ、相手の行動に反応してから撃ってもなお先手を取れたのだ。 だが、数も出現位置もランダムな標的にそれを全て命中させたのはティアナ自身の磨き上げた腕前に他ならない。 それは魔導師ならば――どんな射撃魔法にも命中率に多少なりとも弾道操作による補正を入れている、なのはですら及ばない射撃能力だった。 その力に戦慄し、同時になのははそんなティアナを想う。 何故、その自分の力を誇ってくれないのか。 「溜めのある魔法は命取りだと忠告しておきます!」 駄目押しのように告げ、ティアナは魔力弾を発射した。 実弾に匹敵する弾速を人間の動体視力で捉えられるはずもない。魔力反応、銃口の向きによる弾道予測、反射神経、全てを使ってなのははそれを回避した。 防御ではなく回避。咄嗟の判断だったが意味はあった。あのまま場に留まって射撃の応酬をしていれば、近くにいたスバルを巻き込んでいただろう。 今のティアナは他人を配慮する余裕や甘さなど持ち合わせていない。あの<悪魔>を撃った時のように。 なのはは<ウィングロード>の足場から飛び出し、そのまま飛行してティアナの死角に回り込みながら狙い撃つ。 チャージ時間を短縮した<ショートバスター> さすがにそれを止める猶予は無かった。 しかし、ある程度威力を犠牲にしてなお脅威的なその砲撃を、ティアナは半身を反らした紙一重の動きで避けた。 髪を掠めて肌のすぐ傍を圧倒的な魔力の奔流が走り抜けていく。その瞬間に瞬き一つせず、表情はただ不敵に笑うだけ。 「――狙いが甘いですよ、教導官」 カウンターのようにティアナの魔力弾が放たれた。 威力も魔力量も遥かに劣る、しかしただひたすら硬く速い弾丸が、飛行するなのはの機動予測地点へ正確に飛来した。 成す術も無く肩に命中し、走り抜ける痛みと衝撃になのはは小さく呻いた。 なのはのバリアジャケットは長時間の展開を目的とした軽量の<アグレッサーモード>を取っているが、それでも魔力に底上げされた基本防御力は一般魔導師のそれを上回る。 その防御が砕かれていた。 直撃を受けた肩の部分が破れている。一見すると布のようだが、付加された特性を考えればそれは鎧を撃ち砕いたに等しい。 訓練の時とは違う。手加減も配慮も無い。 明確な意思と決意の下の戦いで、鉄壁の防御を誇る高町なのはが受けた久方ぶりのダメージであった。 「命中率を誘導性に頼りすぎです」 「……やるね」 ある種の快挙ですらあるその結果を誇りもせず、ティアナは油断無く銃口を突きつけたまま皮肉げに言った。 それが挑発であることは分かっている。しかし、なのはは悔しげに笑わずにはいられない。 油断しないと言いながら、心の何処かでタカを括っていたのだ。自分は有利だ、と。 そんな自分を嘲笑う。 そして認めた。 もはや目の前の少女は、完全に<敵>である、と。 自らも工夫し、力と技を駆使して打ち倒さなければならない相手なのだ、と。 そうでなければ、何を言ったって自分の言葉は彼女の決意を1ミリも動かせやしない。 「教導官の強さは認めますが、アナタの認識だけで何もかも測れると思わないことです。だからアナタのこれまでの訓練は……」 「ティアナ、今回はよく喋るね」 更に挑発を続けるティアナに対して、なのははむしろ嬉しそうでもあった。 「普段も、それくらい気安く話しかけてくれてよかったのに」 「……黙れ」 感情が露わになる前に冷徹な仮面を被り直し、ティアナは無慈悲な射撃を開始した。 《Accel Fin》 急加速。 初弾を回避した瞬間、移動先を読んだ第二射が正確無比に飛来する。 なのはは咄嗟にラウンドシールドを展開してこれを防ぐ。 更に数発の弾丸が障壁を叩いたが、さすがにその防御を貫くことは出来なかった。 やはり高町なのはの防御力は鉄壁。本気で守りに回れば、ティアナの攻撃力では突破出来ない。 その事実にティアナは舌打ちし、同時にすぐさま思考を切り替えて両腕に魔力を集束し始めた。 自分の射撃は一度なのはの障壁を抜いている。要は状況とタイミングだ。必ず一撃を通せる瞬間がある。それを捉える。 戦意を衰えず、むしろ集中力を高めるティアナの前でなのはがシールドを解除した。 もちろん撃たない。これは隙ではない。必ず何らかの意図がある。 その予想に従うように、なのはがレイジングハートをティアナに突き付けた。 「今度はこっちからいくよ」 当たるか。 直線射撃なら回避、誘導弾なら迎撃。いずれの行動にも瞬時に移れるようティアナは身構える。 そんな万全の態勢を前にして、今度はなのはが不敵に笑う番だった。 「――フェイントだけどね!」 《Accel Shooter》 目を見開くティアナの視界で三条の閃光が空を走った。 「何っ!?」 タイムラグ無しに<ディバイン・シューター>より更にチャージ時間を必要とする<アクセル・シューター>を放ったという事実。 集中して見ていたが、狙うべき魔力スフィアの形成は確認されなかった。 驚くティアナを尻目に、なのはの『背後』から鳳仙花の種のように飛び散った三つの魔力弾が空中で軌道を変更し、標的目掛けて一斉に襲い掛かった。 手遅れだと思いながらもティアナは答えを知る。 なのははシールドで防御した際、障壁の輝きで視認を妨害しながら、更に自らの背後で魔力を練り上げていたのだ。攻撃の前動作を隠し、同時に射線を体で遮れるように。 今更もう遅い。恐るべき誘導性を持つ魔法は放たれてしまった。 回避が不可能ならば、スバルのような機動性も持たない自分が逃げ切ることもやはり不可能。 クロスミラージュが自らの判断でシールドを展開し、そうと意図せず両腕に集束していた魔力を防御力の後押しとする。 「うわぁっ!」 シールドが魔力弾を受け止める。 しかし、カートリッジの魔力増加無しにしてもその威力は凄まじかった。 一発目がシールドごとティアナの体を揺るがし、二発目が盾に亀裂を入れ、三発目がついに砕く。 互いに相殺し合う形であったが、反動でティアナの体は<ウィングロード>から弾き出された。 咄嗟にアンカーを撃ち出し、頭上に走る別の足場まで移動する。 その間、致命的な隙でありながら、なのはは追撃を行わなかった。 それは、ティアナが最初の攻撃でスフィアを撃ち抜いた後、一瞬無防備になったなのはをそのまま撃たなかった理由と全く同じである。 「――視野を広く持つように、って教えたよね?」 睨み付けるティアナの感情的な視線を戒めるように、なのはは言った。 「一歩退いて、相手を観察することも重要だよ。魔力の動きにも気をつけて。ティアナは五感を鍛えてる分、その辺の感性が鈍いよ」 「う、うるさいっ!」 仮面が剥がれ落ち、苛立ちとそれに隠れた羞恥がティアナの顔に浮き彫りになる。 意外と激情家なんだな。やっぱりヴィータちゃんと気が合いそう。 クールな少女の新しい発見に、場違いな感心と納得を抱きながら、それを心の片隅へ追いやって、なのはは更なる戦闘の為に行動を開始した。 「お話――聞かせてっ!」 「驚いたな……。ティアナ、なのはとしっかり渡り合ってるよ」 ビルの屋上でキャロ達と共に上空の様子を見上げていたフェイトは思わず呟いていた。 思う事は多い。 二人の戦闘までの経緯はしっかり聞き及んでいた。ティアナの言い分も分かるが、なのはの普段の苦労を知る側としてはその意思を汲んで欲しいというのが本音だ。 だが今は、そんなどちらが正しいとか味方するとかいう話は置き、ただ純粋に感心せざる得ない。 ティアナの意志は、なのはの意志に決して劣らない。 彼女にはそれほどまでに強い決意があるのだった。 それ故にぶつかり合わねばならないという現実が、どうしようもなくやるせないものではあるのだが。 「……フェイトさんは、どっちが勝つと思いますか?」 フェイトの漏らした呟きを聞いたエリオが躊躇いがちに尋ねた。 「それは、どっちに勝って欲しいって聞きたいんじゃないかな?」 「……そうかも、しれません」 「エリオはどう?」 「ボクは……ティアナさんを、応援したいです」 意外にも、エリオはフェイトの眼を真っ直ぐに見返して明確な答えを告げた。 保護者であり恩師であるフェイトに対して、何処か一歩退くような遠慮を見せるエリオには珍しい我を貫く姿勢だった。 「勝てば、ティアナさんはきっと孤独になります。スバルさんに言ったことは本心じゃないって信じてますけど、でも望んだ結果だとは思います。 でも……それでもティアナさんが自分の目標の為にそれを本当に望むなら、ボクはそれを叶えて欲しい。 その上で、例えティアナさんが独りを望んでも、ボクが勝手について行くだけですから。あの人が、未熟なボク達を信じて、導いてくれたように」 「そっか……」 そのことにショックなど受けない。むしろ嬉しく思う。 エリオにも、そうして貫くべき意志と守るべき大切なものが見つかったのだ。 自分にとってなのはと過ごした10年がそうであるように、エリオにとってティアナや他の仲間と乗り越えた苦楽こそ、月日の長さを超えた大切な経験なのだろう。 人との付き合い方はそれぞれ違う。 確かに、自分やなのははティアナのことをエリオ達に比べて知らない。 だからこそ、二つの意志は相反するのだ。 「わたしは……」 ただ黙って、悲痛な表情で戦闘を見上げていたキャロが、震える声で呟いた。 「どっちにも勝って欲しくない。ううん、勝ち負けなんてどうでもいい。 なのはさんとティアナさんが無事なら……戦うのをすぐに止めてくれたら、それでいい……」 「キャロ……」 「だって! おかしいですよ、こんなの……だって二人ともいい人です。優しい人です。敵じゃないんですっ!」 キャロは涙を流し、誰にもぶつけられない訴えを嗚咽と共に吐き出していた。 親しい人達が戦い合うこと――キャロにとって、それ自体が既に<痛み>であった。 「どうしてですか、フェイトさん? 戦うって、悪い人を倒す為や、大切なものを守る為にすることでしょ? ティアナさんは悪い人じゃないし、なのはさんは何かを壊そうとしてるわけじゃないっ。じゃあ、戦わなくていいじゃないですか!」 「違うよ、キャロ。これは……」 「嫌だよ、エリオ君……こんなのやだ……」 縋り付くキャロを、エリオはただ弱弱しく支えることしか出来なかった。 フェイトもただ痛ましげに見つめ、告げる言葉が無い。 幼いながらも呪われた人生を経験してきた。その上で差し出された手に救われ、再び人を信じ、仲間の暖かさに癒された。その無垢な少女にとって、これがこの戦いへの答えだった。 キャロの言葉はあまりに純粋で、単純だ。 だが、真理でもある。 フェイトとエリオは目が覚める思いだった。 ああ、そうだ。どんな事情があれ――親しい人達が傷つけ合うのは嫌だ。胸が痛む。 なのはが、そしてティアナもきっとそうであると。 二人は改めてこの戦いの厳しさと悲しさを知った。 「そうだね、キャロ。痛いことだよ、戦うって……」 フェイトはキャロの頬を伝う涙を優しく拭った。かつて、初めて彼女と会った時そうしたように。 だが今流れるこれは悲しみの涙だ。 「嬉しい時にも流れるけど、やっぱり苦しい時や悲しい時に涙は出るんだ。私もそれを見たくない。でも……」 キャロの顔をそっと自分に向け、視線を合わせて囁くように告げる。 「それが<人間>だから――。 どうしても分かり合えなくて、気持ちはすれ違って……それでも感情をぶつけ合いながら歩み寄っていくのが、人間だけが出来る戦い方だから」 「人間だけが、出来る……」 「涙を流せるってことは、心があるってことだよ。 これは、その心の戦い。どっちが悪いとか良いとかを決めるんじゃない。多分正しい答えなんて無い、それ以外を決める戦いなんだ」 後はもう何も言わず、フェイトはただ黙って空を見上げた。 止めること無く、横槍を入れることも無く、ただ見届けなければならない。この戦いの決着を。 なのはとティアナ。 かつて、自分となのはが戦った時のように、この決着でこれまでの何かが変わる。 それがより良い未来への分岐なのか、最悪の道への一歩なのか。それは分からない。 10年前、自分が戦った時。向けられたなのはの想いを否定した。完全な拒絶と敵意を持って戦い合った。 あの日のことは、多分一生引き摺る負い目だ。それは似たような境遇で戦ったヴィータも同じだろう。 だが、あの戦いは必要だった。 あの時に、自分は岐路を得て、選び、そして今此処にこうして立っている。 だから後悔は無い。あの時の決着と出た答えに。それだけはハッキリと言える。 「なのは……」 フェイトは心苦しさと同時に、不謹慎ながら喜びも感じずにはいれらなかった。 今のなのはは、あの頃のなのはだ。そのものだ。 管理局としての正義ではなく、次元世界を統べる秩序でもなく――ただ一人の人間としての想いを信じて戦っている。 迷い、悩み、それでも自分なりに考えて、傷付きながらも信じ続けて前進する。まるでヒーロー。 子供の頃から、その眩しい姿にずっと憧れていた。 組織は多くの人々を助けられるかもしれない。 でも、たった一人の為に全身全霊を賭けて救おうとする君が好き。 「つらい戦いだね。でも……頑張って」 やっぱり君には――自分の信じるままに飛ぶ、自由な空が良く似合う。 「クソ……ッ!」 放った魔力弾が再び障壁に弾かれるのを見て、ティアナは悪態を吐いた。 これが本来の実力の差なのか。 あっという間に戦況は一方へ傾いた。 なのはは強力なシールドを前方に展開し、先ほどと同じ方法で背後から誘導弾を連装ミサイルのように撃ちまくっている。 ただそれだけ。魔法の運用一つで、戦闘は一方的な展開となりつつあった。 ティアナの魔力弾はシールドを貫けず、弾速を驚異的な誘導性で補ったなのはの魔力弾は目標を執拗に追い詰める。 硬い盾と高い火力があれば、つまりはそれだけで戦闘は決する。 理不尽を嘆かずにはいられない理論ではあったが、ある種の真理でもあった。だから高町なのはは強いのだ。 それに、まさにこれこそがティアナの求める純粋なパワーでもある。 それを手に入れる為に、負けるわけにはいかない。 「クロスミラージュ、少し無理をさせるわよ」 《No problem.Let s Rock,Baby?(お気になさらず。派手にいきましょう)》 無機質な電子音声のクセに随分と小気味のよい言葉が返ってくる。 思いの他頼りがいのある返答に、思わずティアナは苦笑した。 「OK! 火星までぶっ飛ばしましょ――カートリッジ!!」 《Load cartridge.》 消耗した魔力を一時的にカートリッジで補う。 再び放たれた数発の魔力弾が見えた。 自動追尾の誘導性は単純な回避運動では振り切り辛い。無理な軌道変更を何度も繰り返してようやく成功させたと思えば、次が来る。 何度かの攻防でティアナはそれを理解していた。 効率はともかく、反撃に転じれるだけの効果的な方法が必要だ。 魔力を消耗し、弱点が露見する危険性もあるが、これしかない。 ティアナは一つの魔法を選択した。 「フェイク・シルエット――<デコイ>!」 ギリギリまで魔力弾を引き付け、回避に移る瞬間に幻術魔法を発動させる。 ついさっきまっで居た場所に、残像のように残された幻影のティアナへ向かって誘導弾が殺到した。 視認と自動追尾さえ誤らせる幻術を使った、戦闘機のような文字通りの囮(デコイ)だった。 一瞬の回避には効果的である。しかし、結局はその程度の効果だ。 本来の<フェイク・シルエット>は幻影を動かしたり、複数行使することで戦術的な効果すらも見込める魔法である。 ティアナにとって、この魔法は未だ習得出来ぬ不完全な魔法だった。 今のでそれを、なのはに見抜かれたかもしれない。 リスクは大きかった。だからこそ、見返りは最大限に活かす。 「うぉおおおおおおっ!!」 獣のように駆け、吼えながらティアナは空中のなのはを狙い撃った。 シールドに弾かれるのも構わず、とにかく攻撃の手を休めずに移動しながら、防御のカバーが無い側面へと回り込む。 なのはは冷静に観察し、察知していた。 その動きがフェイクであることを。 本命は、撃っていない左手に集束し続けている魔力だ。二段重ねの<チャージショット>の貫通力はシールドすらも射抜く可能性がある。 固定砲台と化していたなのはは、ようやく移動を開始した。 しかし、ティアナの命中精度と魔力弾の弾速は全速飛行であっても逃れ切れるものではない。 「捉えた!」 確信と共に、ティアナは左手に宿した魔力の暴走を解き放った。 雷鳴のような雄叫びを上げて、凶悪な銃火が炸裂する。スパークを撒き散らしながら、弾丸が展開された障壁に殺到した。 「<バリアバースト>!」 狙い済ましていたなのはは、まさにその瞬間仕掛けを発動させた。 バリア表面の魔力を集束して爆発させる。 子供の頃から技術向上し、バリア付近の対象を弾き飛ばす攻性防御魔法へ昇華した代物だったが、なのはは今、あえて対象を無差別に設定して実行した。 魔力弾の激突と同時に発動し、障壁を貫かれる前に、爆発により自分自身を弾き飛ばして距離を取る。 無茶苦茶だが、その思い切りの良さが回避を成功させた。 吹き飛びながらも空中で姿勢を安定させ、近くにあった<ヴィングロード>の足場に着地する。 そして、すぐさま<ショートバスター>による反撃を放った。 砲撃の隙間をティアナは駆け抜ける。 そう、ティアナは攻撃が失敗しても走り続けている。 なのはは彼女の走る足場の先を目で追い、その<ヴィングロード>が自分の元まで一本の道で繋がっていると知ると、内心で戦慄した。 まさか、計算通りか? 回避し、ここに着地することまで狙ってのことか――! 肯定するように、接近するティアナの両手には銃剣型のダガーモードになったクロスミラージュがあった。 なのはは感嘆せざるを得ない。なるほど、大したものだ。 「でも、終わりだよ。ティアナ!」 なのはは余裕を持ってシールドを展開し、背中に魔力スフィアを形成した。 ティアナには一瞬でも高機動を行う手段が無い。確かに、接近戦には絶好の位置に追い込んだが、タイミングが速すぎたのか、ただの駆け足では全くスピードが足りなかった。 間合いに到達する前に、迎撃は十分間に合う。 シールドは接近戦の持ち込み方次第でどうにかなるかもしれないが、そもそも誘導弾が放たれれば近づくことすら不可能だ。 僅かに間合いに届かぬ位置でなのはは魔法を完成させ、全てを終結させるべく解き放った。 数条の閃光がティアナに殺到する。 「――Slow down babe?」 眼前に迫る決定的な攻撃に対して、ティアナは不敵に笑い返して見せた。 「そいつは、早とちりってヤツよ!」 右手を突き出す。 カートリッジ、ロード。薬室に弾丸を込めるが如く。 《Gun Stinger》 銃声代わりの厳かな電子音声。魔力を集中させた銃剣の切っ先を前に突き出し、ティアナ自身の炸薬が点火された。 脚部に圧縮して溜めていた魔力を爆発させた反動で、無謀な突進は凶悪なまでの加速を得る。 次の瞬間、ティアナの体は前方へ弾け飛んだ。 「でぇやぁああああああーーーっ!!」 自らを弾丸と化した突撃。残像を残すほどの加速で<ウィングロード>を滑走し、飛来する魔力弾の隙間を一直線にすり抜けて、先端の刃がついになのはのシールドを捉えた。 激突のインパクトが周囲の空気を震わせ、更に続く力の拮抗が火花を散らす。 矛と盾がせめぎ合い、魔力で構成されながらも金属的な悲鳴を上げ続けた。 「すごいね、ティアナ! いつの間に、こんな魔法覚えたのっ!?」 絶対的な魔力差を埋めるティアナの突進力に顔を歪めながら、それでもなのはは感嘆を抱かずにはいられなかった。 戦いが始まって以来、ティアナはあらゆる予想を覆し続けている。 「魔法じゃありません! それに、あまり誇れる力じゃない……!」 渾身の力で魔力刃を障壁の内側へと押し込みながら、ティアナは自身の限界を悟られぬよう、歯を剥いて笑った。 冷や汗が滲む。この技は、あまり長い間パワーを放出し続けるものじゃない。あくまで一瞬の爆発力を得る為のものだ。 拮抗は長くは続かないだろう。 「これは……<悪魔>の力です!!」 無茶を承知で、空いている左手のクロスミラージュにカートリッジのロードを命じた。 激しい魔力放出を行う中、強引な方法で供給された魔力が痛みを伴って全身を駆け巡る。 マグマが血管を通り抜けるような錯覚を味わいながら、その勢いを全て右腕に注ぎ込んだ。銃口から伸びる魔力の刃が輝きを増す。 凶悪なその光は、ついにシールドを打ち破った。 しかし、それだけだ。 刃が障壁を貫通し、銃口が抜けて銃身の半分も食い込んだところで、ついに力尽きた。 ダガーの刃はなのはの胸元で僅かに届かず止まっている。もはやこれ以上の後押しは無理だ。 その結果にティアナは――笑った。 そして間髪入れずに吼える。 「クロスミラァァァージュッ!!」 《Point Blank》 撃発。 シールドを突破した銃口から、このほぼ零距離でダガーに蓄えていた魔力を利用した<チャージショット>がぶち込まれた。 力を溜めた銃身を槍のように突き刺し、そのまま発砲するまさに狂気の連撃(クレイジーコンボ) 実銃の放つマズルフラッシュに等しい魔力光の炸裂が指向性を持って前方に噴出し、直撃を受けたなのはは声も無く後方へと吹き飛んだ。 バリアジャケットのリボンの部分がバラバラに弾け飛び、確実なダメージを引き摺って、なのははたたらを踏みながら後退を止める。 ティアナ、もはや狩りに集中する獣のように、一片の油断も躊躇も無くただトドメを刺すべく追撃した。 「ぁ……っ、あっ、あ゛あっ、あああああああああああっ!!」 躍動する体から荒い呼吸音と共に漏れるこの恐ろしい声は何なのか。ティアナ自身さえ一瞬気付かなかった。 この一撃がティアナにとっても全身全霊を賭けた勝負であったことは間違いない。 賭けには勝った。だが多くのものを支払った。 一瞬の爆発力に全てをつぎ込み、これを逃せば元々平凡な魔力量しか持たない自分に持久戦は出来ない。 接近戦で全てを決める。 「墜ちてもらいます!!」 「……っ、そうも、いかないよ!」 焦点の合わないなのはの視線が、僅かに戸惑いを見せた後、素早く接近するティアナを捉えた。 ダガーの刃が十字に交差する。ハサミと同じ構えを取ったティアナはなのはの首を刈り取るように腕を突き出した。 交差の一点にレイジングハートを差し出し、なのはは辛うじてそれを受け止める。 《Stop fighting! It is your obligation,Cross Mirage.(戦闘中止しなさい。クロスミラージュ、アナタの責務です)》 デバイス同士が接触した瞬間、レイジングハートとクロスミラージュも意思を交わしていた。 過剰な戦闘継続と、相手の危険な精神状態を考慮したレイジングハートが冷静な命令を下す中、クロスミラージュは変わらぬ電子音声で答える。 《Sorry,My senior.My answer is……Fuck you!(申し訳ありません。私の答えはこうです……糞喰らえ!)》 予想外の、機械的な発声にそぐわない痛烈な返答だった。 レイジングハートに顔があったなら、きっと面食らっていたに違いない。クロスミラージュに手があったのなら、きっと中指を立てていただろうから。 主の意思も、デバイスの意思さえも相反し合った。 二人は激突を続ける。 体格的にも二人の筋力は大差無い。力比べを無駄と切り捨てたティアナは、素早く刃を引いて攻め方を変えた。 拳銃にナイフの生えたような通常の短剣とは使い勝手の違うそれを、驚くほど滑らかに振り回して、小さく、細かく斬りつけて来る。 射撃戦主体とは到底思えぬ巧みさであった。 なのはは冷や汗を浮かべながら、迫り来る剣閃をかろうじてデバイスで捌き続けた。 ティアナの攻撃が技術に裏づけされたものなら、なのはの防御は経験によって支えられている。 決して理の通った動きでは無く、無駄もあり、しかし長年戦い続けてきた経験の中にあるヴィータやシグナムを含む接近戦のエキスパートとの記憶が、迫る刃に対応するのだ。 全身を緊張させ、それでいてくつろいだ動きは、シビアな判断の連続である近接戦闘において理想的な態勢である。 「ビックリだな、ティアナってばどんどん隠し玉出すんだもん!」 「アナタに対して有効だから付け焼刃で振り回してるだけです! でも、今は私の出せる力は全て出して証明すると決めましたから!」 「なるほど! じゃあ、この勝負はわたしの負けかもねっ!」 ガギンッ、と鉄のぶつかり合う音を立て、再びデバイスは噛み合い、一瞬の拮抗が出来上がった。 互いの武器を境に、二人の視線が交差する。 「――ティアナを甘く見てたのは認めるよ。 でも、だったら尚更どうして? こんなに強いのに、ティアナはまだ力が欲しいの?」 「欲しいですね。例え悪魔に魂を売ってでも……<悪魔>を殺す為に!」 「そんな矛盾を持ってる時点で、間違ってるって気付かないの? そんな考えは、ティアナを不幸にする! 孤独にしちゃうんだよ!!」 「独りで戦う、誰も助けてくれなんて言ってない! どうしてアナタは私を止めるんですか!? 私はただの部下です! 別にアナタの10年来の友人でも、家族でもない! お節介程度の気持ちで、私の生き方まで干渉されたら、いい迷惑なんですよ!!」 もはやほとんど罵声のようなティアナの訴えが、なのはの心を揺るがした。 「わたしは……」 心が痛い。だが、こんな痛みなど自分勝手な感傷だ。 そうだ、結局どこまでいってもティアナにとって自分の言動は余計なお節介に他ならない。 それでも――ここで引き下がれない理由は何だ? 目の前の少女を、このまま独りで行かせたくないと思う、自分を突き動かすこの衝動は一体何なのか? 自分の心を表現出来る言葉を必死で探すなのはの頭とは別に、その胸に宿る熱い何かが一気に込み上げて、口から突き出した。 「――ティアナが、好きだから」 「え?」 一瞬、激しい力と意思の衝突が何処かに消え失せた。 呆けたようなティアナの顔と、無意識に出た自分の言葉を認めて、なのはは今や完全に納得した。 そうだ。これだ。 「初めて会った時、相棒を見捨てずに背負って走り続けるティアナの必死な顔を、カッコいいと思ったから」 つらつらと、これまでの迷いが嘘のように想いが言葉となって流れ出た。 「初めての訓練の時、ティアナの撃った弾に宿った魂の強さに、憧れたから」 教導官としての責務。 上司としての責務。 そんなもの、どうだっていい。 「初めてわたしの訓練に意見してくれた時、自分だけの決意を持つ真っ直ぐな眼を見て、もっと知りたいと思ったから」 高町なのはという一人の人間として付き合いたいと、思ったのだ。 「だから、ティアナ――今のアナタの姿がわたしには我慢出来ないの」 それは正しいのか、悪いのか。 そんな考えはもはや空の彼方へ捨て去って。なのはは今、一人の少女として、断固として言い切るのだった。 「そんな、身勝手な……っ」 「ゴメンね。フェイトちゃんやヴィータちゃんの時もそうだったけど、わたしって結構わがままなの」 絶句するティアナの前で、なのははあどけない笑みを浮かべて言った。 「そう言えば、わたしが勝った時の条件って言ってなかったね。 ティアナが勝ったら、うんと強くなるように訓練メニューを変更する。 わたしが勝ったら――今度こそ<なのはさん>って呼んでもらうよ。親しみを込めてね!」 名案だとばかりに、得意げに言うなのはの顔はどう見ても管理局所属の一等空尉の顔ではなく、年相応の人懐っこい少女の笑顔であった。 思わず釣られて浮かべそうになった苦笑を噛み殺して、ティアナは鋭く睨みつける。 「だったら、まずは勝ってからにしてもらいましょうか!」 クロスミラージュの銃身とレイジングハートの持ち手が交差していた一点に向けて、膝を蹴り上げる。 全く想定していなかった方向からの衝撃に、力の拮抗は崩れ、二つのデバイスは弾けるように離れ合った。 両手は宙を舞い、互いに無防備な懐を晒した二人だったが、その一瞬を想定していたティアナだけが一手早く動いた。 下腹に向けてダガーの刃を突き入れる。擬似的にとはいえ人を刺す行為に一瞬の躊躇もない。 バリアジャケット越しに感じる手応え。ティアナは何故か取り返しのつかないことをしてしまったような絶望を感じながら、必勝の瞬間にほくそ笑む。 なのはの腕が、ティアナの腕を掴んだ。 「ジャケットパージ!!」 そう叫んだなのはの言葉の意味が一瞬理解出来ない。 だが、何か答えを出す前にティアナの体は突然の衝撃に後方へ弾き飛ばされた。 上着の部分を構成する魔力を瞬間的に解放することで周囲に衝撃波を放ったこの<ジャケットパージ>は、かつて親友のフェイトが使用していたものだった。 全く予想していなかった反撃に吹き飛ばされるティアナ。揺れる視界で、なのはの射撃体勢を捉える。 必死にクロスミラージュの銃口を突き付けた。 「く……っ!」 「レイジングハート!」 互いのデバイスの先端に灯る魔力の光。交差する視線。狙いは完璧。 放たれる、今。 「シュートォ!!」 「Fire!!」 二色の魔力光がすれ違い、互いの標的を同時に直撃した。 奇しくも、二人とってこの戦いの中で初めてクリーンヒットを相手に与えていた。 「ティア! なのはさん!?」 意識を刈り取るほどの互いの一撃に吹き飛ばされ、<ウィングロード>の足場から落ちていく二人を見て、それまで呆然としているだけだったスバルが我に返る。 深くなど考えない。二人を救う為、魔力を振り絞って更に<ウィングロード>を形成し、伸ばす。 二人の間を中心に一本の青い道が伸び、落下する二人の体を受け止めた。 スバルが安堵のため息を吐く中、二人は倒れ伏したまま動かない。 モニターには倒れたままのなのはとティアナが映っている。 息を呑むようなその場の静寂が、ヴィータの元にまで伝わってきていた。 「……信じられねえ。リミッター付きとはいえ、相手はあのなのはだぞ」 「先に言うなよ。正直、俺も信じられないってのが本音さ」 この時ばかりはダンテも茶化す事無く、神妙な様子でヴィータの言葉に同意していた。 ティアナと最後に会って約三年。 確かに彼女は魔導師として鍛える為の施設に入り、その為の日々を過ごしてきた。 だが、その日々を経たとしてもわずか三年という時間であそこまで人は変わるものなのか? 機動六課に入って以来の付き合いでしかないヴィータにとっては、この変貌はより衝撃的であった。 「努力だとか詰め込みの自主錬だとかでどうにかなるレベルじゃねえぞ。 特に、最後のあの銃剣使った突撃。瞬間高速移動とか肉体強化とか、完全にスバルやエリオみたいな近接戦型魔導師のスキルじゃねーか」 感嘆というよりも畏怖するような響きで呟き、ヴィータは傍らのダンテを睨み上げた。 「……おまけに、どっかで見た技だったな」 初めて共闘した夜、目の前の男が使った技をヴィータは鮮明に覚えていた。 突進と刺突を合わせた一撃。だが、威力や効果はそんな単純なものではなかった。まさに絶大だ。 爆発的な初動は、自分やシグナムでさえ反応することが難しいだろう。あれは一種の技だった。ダンテは自然体で近接戦型魔導師のスキルを備えている。 ティアナの使った技はまさにそれをベースに発展したものと言ってよかった。 「確かに、アイツには何度か見せたことがあるがね。だが、分かるだろ? 見よう見真似で出来るもんじゃない。おまけにアイツには向いてないんだ」 「……そりゃそうだよな。確かにアイツの体つきは格闘向けじゃねえ。けど、だったらますます解せねえだろうが」 言いくるめられ、渋々頷きながらもヴィータは合点のいかない表情を見せた。 「近接技の類は単純な魔法の習得で出来るもんじゃねえ。 機動力強化や筋力強化にしても、基になる部分の適応、その為の肉体改造――どれも一朝一夕で出来るもんじゃねぇんだ。 こりゃ、努力とか才能の問題ですらねーぞ。時間的に無理! ティアナの野郎、まさかヤベー薬でもやってんじゃねえだろな?」 ヴィータはさして考えもせず冗談染みた呟きを漏らしたが、ダンテの表情が僅かに揺れたのを彼女は気付かなかった。 そうしているうちに、モニターで変化が起こる。状況が動き出したのだ。 ヴィータは再びモニターに釘付けになり、戦いの結末に意識を集中させた。 その傍ら。ダンテはモニターから眼を離し、肉眼では見えない遠くの訓練場での戦いを見据える。 「……あのじゃじゃ馬、まさかここまで踏み込んでたとはな」 笑い飛ばしてみようとして失敗し、苦々しいものがダンテの口元に浮かんでいた。 「深入りするなよ、ティア。お前は<人間>なんだ――」 ダンテの言葉は風に溶け、遠いティアナの下へ流れていく。 状況を鮮明に映すモニターの中、ついに二人の戦いは終着へ向かおうとしていた。「くっ……ぁあ……っ」 力を振り絞り、なのはは両手を着いて上半身を持ち上げた。 腹のど真ん中にはティアナの魔力弾の直撃を受けた跡がしっかりと刻み込まれている。まったく、あの態勢で恐ろしい命中率だ。 「久しぶり、かな……こんなにキツイの」 苦笑しながら力の入らない両足を無理矢理立たせる。 ダメージは予想以上だった。 近接状態から逃れる為とはいえ、<ジャケットパージ>は発動と同時に無防備な状態を晒す危険な方法である。 上着部分を失ったことで大幅に防御力の落ちたバリアジャケットは、ティアナの魔力弾の貫通力を緩和し切れなかった。 模擬戦でここまで必死になったのは、本気のシグナムとの一戦以来だ。 「ティアナは……」 なのはは自分の立つ<ウィングロード>が一直線に伸びる先を見つめた。 ティアナは倒れたままだ。意識は戻っているらしく、両脚を震わせ、両腕を動かしながらもがいているが、立ち上がれていない。 ダメージはティアナの方が深刻だった。 砲撃魔導師とも呼ばれるなのはの<ショートバスター>の直撃は、それほどまでに脅威なのだ。 ティアナは言うことを聞かない自分の体に絶望した。 「あたしが――負けるの?」 悔しさと共に、弱音とも取れる言葉が漏れる。 それを見下ろすなのはは、手を差し伸べることもなく、ただ強く言い捨てた。 「どうしたの? それで終わりなの?」 言葉とは裏腹に、嘲りなど欠片も無く、叱責するような厳しさでなのはは告げる。 「立ちなさい! ティアナ、アナタの力はそんなものじゃないはずだよ?」 「うる、さい……っ!」 なのはの言葉にティアナの頭が一瞬で煮えくり返った。 湧き上がってきた怒りを両脚に注ぎ込み、力として立ち上がる。ここで這い続けることは、何よりも許せない屈辱だ。 「アンタなんかに、あたしの何が分かるってのよぉぉ!!」 折れた牙を剥きながら立ち上がった。 ティアナの仮面、もはや跡形も無く崩れ落ち、無残なまでの感情が剥き出しになっている。 怒り、妬み、焦り、悔い、憎しみ――ハッキリとした視線。だが、なのははそこから眼を背けない。 「分からない。でも、わたしはアナタを止めなきゃならない。例え、アナタを傷つけることになっても」 幾度目かの対峙。 しかし、二人は言葉も交わさずに確信し合った。 次が、最後だ。 「……クロスミラージュ」 「……レイジングハート」 下向きに構えられたお互いのデバイスが、お互いの主の意のままにカートリッジをロードした。 供給される一発分の魔力。 そう、次の一発で決める。 奇妙な沈黙が落ちた。 嵐の前の静けさが最も表現として合っている。更に適する状況を表すならば『銃を構える寸前で止まった決闘の瞬間』が最も正しい。 自分が最後まで信じる射撃魔法を武器に、二人は同じ盤上で賭けに出ることを同意していた。 張り詰めた空気が、限界に達する。 ティアナとなのはが、自らのデバイスを相手に向けて振り上げた。 一挙動、なのはが遅い。 疲れ果てて尚、ティアナの抜き撃ちは神速であった。クロスミラージュのガンサイトがなのはの眉間を捉え、ティアナは躊躇無く弾丸を解き放つ。 放たれた魔力弾は、その音速に達する速さで一直線に走り――なのはの手の中に吸い込まれた。 「あ――」 目を見開き、驚愕に支配されたティアナに許された発声はそれだけだった。 待ち構えていたかのように、発射と同時に動いたなのはの空手が飛来する魔力弾を防護フィールドで包み込み、受け止めていた。 虚しく四散する魔力の残滓が舞う中、瞬き一つしないなのはの眼光がティアナを捉えている。 右手のレイジングハートが、ティアナより一瞬遅れてその穂先を標的に向けた。 「シュート」 囁き、念じる。 轟音と共に砲撃が放たれ、なのはの最速砲撃である<ショートバスター>が為す術も無いティアナを貫いた。 魔力の奔流が過ぎた後、左半身のバリアジャケットを消失させ、ティアナが力なく膝を着いた。 もはや、戦いを続けられはしない。 戦闘は終了したのだ。なのはの勝利によって。 「ティアナ……」 僅かにふらつく足取りを叱咤して、なのはは今にも倒れそうなティアナの下へ歩み寄った。 ギリギリの勝負だった。元より、正面から撃ち合いなどして自分に勝機があるなど思っていない。 なのはがティアナの射撃を防げたのは、勘と、運と、何よりもその判断力によるものだった。 散々自身の魔力弾を撃ち込みながらもそれに耐えてきた自分のバリアジャケットをティアナは警戒していたはずだ。 狙うならば、一番ダイレクトにダメージを送り込める頭部を狙って意識を狩りに来る――そう踏んで、ティアナの射撃を誘導した。 後は自身の持ち得る感覚やセンサー全てを頭に集中して待ち構え、そしてなのはは賭けに勝ったのだ。 「わたしの、勝ちだよ」 ティアナの目の前で、なのははそう宣言した。 それを聞き、持ち上げた顔の中。ティアナはまだ笑みを浮かべていた。 「まだ決着なんて……ついてませんよ、教導官。私の意志は折れていない」 「何言ってるの、ティアナはもう戦えない!」 「なら、待ちます。このまま何もしないなら、少しずつ呼吸を整えて、体力を回復させて、動けるようになったらもう一回襲い掛かります」 「そんなこと……っ!」 「そんな面倒な真似をさせたくなかったら、しっかり決着を付けてください。高町教導官」 ティアナの言葉に、なのは息を呑んだ。 ドドメを刺せ――ティアナはそう言っている。 「……降参して、ティアナ」 「言いません。もうダメです、その段階は過ぎました。私はもう決めましたから」 「ティアナ、意地を張らずに……っ!」 「その気遣いは、一体何の為のものなんですか!?」 倒れる寸前とは思えないティアナの一喝が響いた。 彼女の瞳にだけは、いまだに激しい炎が燃え続けている。 「高町教導官! アナタは卑怯だ、そうやっていつも深く踏み込む決断を避ける! 優しさだと思ってるそれは、壁なんです! 私はアナタの笑顔には惑わされない! 私の本気に対して、本気で応えようという気がないなら最初から関わらないで下さい! 今は優しさなんて必要ないんですよ!!」 息も荒く、それでもティアナは血を吐き出すように言葉を投げつけた。 その全てがなのはの心を抉る。 ティアナを含めて、これまで多くの訓練生に教えてきた全てに自信が無くなっていく。 間違っていたとは思えない。でも――確かにわたしは、壁を作っていたのではないか。 「……さっき言ったことは嘘ですか?」 今度は静かに、ティアナが尋ねた。 「本当なら撃って下さい。 私は本気だから止まりません。本気なら止めて下さい。撃って下さい。この戦いの答えを決めて下さい――<なのはさん>」 なのははカッと眼を見開いた。 心が痛み続ける。苦悩が巡り続ける。だが今、迷いだけは抱いてはならない。 何かを堪えるように引き締めた口元。弱弱しくも立ち上がったティアナを睨み据え、レイジングハートを構えた。 「――全力全開でいくよ、ティアナ」 「望むところです」 コッキング音と共に二発のカートリッジがロードされる。 十二分な溜めによって、最大級の魔力が強大なスフィアを形成、凶悪な光を胎動させた。 その圧倒的な存在を前に、射線上のティアナはむしろ穏やかな表情すら浮かべていた。 今、この戦いから始まった全てが終わる。 「<ディバインバスター・エクステンション>!」 なのはの叫び、あまりに悲痛に響き。 「シュゥゥゥーーートォォッ!!」 渾身の力と想いを込めて、なのはは泣き叫ぶように絶叫した。 高密度で圧縮された魔力が一瞬でティアナの体とその意識を飲み込む。 多重構造物を貫通するほどの対物集束砲は光の帯を空の彼方まで届かせ、その凶悪な輝き知ら示した後、ゆっくりと消えていった。 斜線上にあったただ一人の対象物であるティアナは、バリアジャケットを跡形も無くに吹き飛ばされ、訓練着の状態に戻っていた。 意識などあの光に全て焼き尽くされ、そのまま崩れ落ちる。 もはや、立ち上がることはない。目を覚ますのに丸一日は必要だろう。 今度こそ、戦いは終わった。 勝者となったなのはは、倒れたティアナを呆然と見下ろしていたが、やがて踵を返してフラフラと歩き始めた。 「模擬戦はこれまで。二人とも、撃墜されて……」 誰に告げているのか分からない呟きは、そのうちすすり泣くような声に変わっていく。 数歩進んだところで力なく膝を着き、両手で顔を覆った。 様子を見ていたフェイトが飛び出し、いつの間にかバインドの解かれていたスバルが弾けるように駆け出した。 その戦闘を傍観していた者全てが、慌てて行動を始める。このあまりに痛ましい結末に。 もう、見ていられない。 ティアナ対なのは、決着――。 to be continued…> <悪魔狩人の武器博物館> 《剣》リベリオン ダンテの愛用する剣。父から譲り受けたもの。 長身のダンテ自身に匹敵する程の長さと肉厚の刀身を持つ巨大な剣。悪魔の頭蓋骨を連想させる装飾が特徴。材質不明。 頑強で切れ味もあるが、それ自体は単なる剣に過ぎない。 その真の特性は、ダンテの力を唯一完全に発揮出来る媒介であるという点である。 並の得物ならば伝播させるだけで崩れ落ちる真紅の魔力を刀身に宿し、更に強力な攻撃として具現化させることが可能。 ダンテの魔力を帯び続けていたせいか、彼の意思一つで手元に戻ってくる特性も兼ね備えている。 また、武器としてだけではなく、ダンテの<真の力>を発揮する為の鍵としても在るらしいのだが――? 髑髏の装飾は、ダンテの状態に応じて形状が変化するらしい。 前へ 目次へ 次へ
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オリヴィエ「クラウス、今まで本当にありがとう」「だけど私は行きます」 クラウス「待ってくださいオリヴィエ!勝負はまだ……!」 オリヴィエ「あなたはどうか良き王として国民とともに生きてください」「この大地がもう戦で枯れぬよう」 「青空と綺麗な花をいつでも見られるような、そんな国を――」 クラウス「待ってください!まだです!!ゆりかごには僕が――!」「オリヴィエ!!僕は――!!」 アインハルト『いつもの夢』『一番悲しい覇王(わたし)の記憶』 区民公園 AM6 08 ノーヴェ「アインハルトのことちゃんと説明しなくて悪かったな」 ヴィヴィオ「ううん」「ノーヴェにも何か考えがあったんでしょ?」 ノーヴェ「あいつさ、お前と同じなんだよ」「旧ベルカ王家の王族――「覇王イングヴァルト」の純血統」 ヴィヴィオ「―――そうなんだ」 ノーヴェ「あいつもいろいろ迷ってんだ。自分の血統とか王としての記憶とか」 「でもな、救ってやってくれとかそーゆーんでもねーんだよ。まして聖王や覇王がどうこうじゃなくて」 ヴィヴィオ「わかるよ、大丈夫」「でも、自分の生まれとか、何百年も前の過去の事とか、どんな気持ちで過ごしてきたのとか」 「伝えあうのって難しいから思い切りぶつかってみるだけ」「仲良くなれたら教会の庭にも案内したいし」 ノーヴェ「ああ、あそこか…いいかもな」「悪いな、お前には迷惑かけてばっかりで」 ヴィヴィオ「迷惑なんかじゃないよ!友達として信頼してくれてるもの」 「指導者(コーチ)として教え子(わたし)に期待してくれるのも、どっちもすごく嬉しいもん」 「だから頑張る!」 まっすぐな瞳で―― Memory;07☆「はじめまして」 アラル港湾埠頭 13 20 廃棄倉庫区画 試合時間 10分前 アインアハルト「お待たせしました」「アインハルト・ストラトス参りました」 ヴィヴィオ「来ていただいてありがとうございます、アインハルトさん」 ノーヴェ「ここな、救助隊の訓練でも使わせてもらってる場所なんだ」 「廃倉庫だし、許可も取ってあるから安心して全力出していいぞ」 ヴィヴィオ「うん、最初から全力で行きます」「セイクリッド・ハート、セットアップ!」 アインハルト「――武装形態」 ノーヴェ「今回も魔法はナシの格闘オンリー5分間1本勝負」 リオ「アインハルトさんもおとなモード!?」 ノーヴェ「それじゃあ試合――開始ッ!!」 アインハルト『きれいな構え……油断も甘さもない』「いい師匠や仲間に囲まれて、この子はきっと格闘技を楽しんでいる」 『私はきっと何もかもが違うし、覇王(わたし)の拳(いたみ)を向けていい相手じゃない』 ヴィヴィオ『すごい威圧感』『いったいどれくらい、どんなふうに鍛えてきたんだろう。勝てるなんて思わない』 『だけどだからこそ一撃ずつで伝えなきゃ』『「このあいだはごめんなさい」と――』 『私の全力。私の格闘戦技(ストライクアーツ)!』 アインハルト『この子は――』 ヴィヴィオ「~~~ッッ!!」 「やった!?」 ヴィヴィオ「はぁぁあっ!」 アインハルト『この子はどうして』 ヴィヴィオ「~~ッ!!」 アインハルト『こんなに一生懸命に――?』『師匠が組んだ試合だから?』『友達が見てるから?』 ヴィヴィオ『大好きで大切で』『守りたい人がいる』『小さなわたしに強さと勇気を教えてくれた』 『世界中の誰より幸せにしてくれた』『強くなるって約束した』「あああっ!!」『強くなるんだ』『どこまでだって!!』 煽り【覇王断空拳】 ノーヴェ「―― 一本!」「そこまで!」 オットー・ディード「陛下!」 リオ・コロナ「ヴィヴィオ!!」 ノーヴェ「ヴィヴィオ、大丈夫か?」 ディード「怪我はないようです…大丈夫」 ディエチ「アインハルトが気をつけてくれたんだよね、防護(フィールド)を抜かないように」 ウェンディ「ありがとっス、アインハルト」 リオ・コロナ「ありがとうございます」 アインハルト「ああ、いえ…」「……!?」 ティアナ「あらら」 アインハルト「あ、すみません……あれ!?」 ティアナ「ああ、いいのよ、大丈夫」 ノーヴェ「ラストに一発カウンターがかすってたろ、時間差で効いてきたか」 アインハルト「だ、大丈夫……大丈夫、です」 スバル「よっと!」 ノーヴェ「いいからじっとしてろよ」 ティアナ「そのまま、ね」 アインハルト「……はい」 ノーヴェ「断空拳はさっきのが本式か?」 アインハルト「足先から練り上げた力を拳足から打ち出す技法そのものが「断空」です」 「私はまだ拳での直打と打ち下ろしでしか撃てません」 ノーヴェ「なるほどな」「――でヴィヴィオはどうだった?」 アインハルト「彼女には謝らないといけません」「先週は失礼な事を言ってしまいました。――訂正しますと」 ノーヴェ「そうしてやってくれ、きっと喜ぶ」 アインハルト『彼女は私が会いたかった聖王女じゃない』『だけど私はこの子とまた戦えたらと思ってる』 「はじめまして……ヴィヴィオさん」「アインハルト・ストラトスです」 新暦79年春 ノーヴェ「それ、起きてるときに言ってやれよ」 アインハルト「……恥ずかしいので嫌です」「どこかゆっくり休める場所に運んであげましょう。私が背負います」 リオ・コロナ」はい!」 高町ヴィヴィオとアインハルト・ストラトスはこうして出逢った これが彼女たちの鮮烈(ヴィヴィッド)な物語の始まりの始まり 魔法少女リリカルなのはViVid始ります――
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主要キャラクター ヴィヴィオ 高町なのは フェイト・テスタロッサ ユーノ・スクライア 時空管理局 クロノ・ハラオウン リンディ・ハラオウン レジアス・ゲイズ 機動六課 ギンガ・ナカジマ スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター 八神家 八神はやて ヴィータ ザフィーラ シグナム シャマル リインフォース その他キャラクター 月村すずか プレシア・テスタロッサ ナンバーズ ジェイル・スカリエッティ チンク ウーノ セッテ Vivid アインハルト・ストラトス オリヴィエ・ゼーゲブレヒト ヴィクトーリア・ダールグリュン ViVid Strike! フーカ・レヴェントン リンネ・ベルリネッタ マテリアルズ 星光の殲滅者/シュテル・ザ・デストラクター 雷刃の襲撃者/レヴィ・ザ・スラッシャー 闇統べる王/ロード・ディアーチェ 砕け得ぬ闇/ユーリ・エーベルヴァイン 魔法少女リリカルなのはシリーズ ViVid ViVid Strike!