約 660,449 件
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/900.html
前へ 入学式が終わる。 今日の行事はこれだけなんだ。 あとは帰るだけ。 学内を熊井ちゃんとのんびり歩いてゆく。 それにしても改めて思う。 こんな美人さんを隣りにしてキャンパスを歩くことになるなんて。 よもや僕ごときにそんな日がやってくるとは思ってもいなかった。分不相応に幸せなこと、なのかな。 でも、その美人さんというのは熊井ちゃんなんだ。 この学ランにマント姿で入学式に臨むような人。一緒に歩いていても感じるのは、ただ緊張感のみ・・・ だいたいですね、2人で連れ立って歩くといっても、そこは恋人同士で寄り添って歩くとか、そういうことでは無い訳で。 そう、だって僕と彼女は決して「同格」という訳では無いのだ。僕の立場は、この大きな熊さんの子分ry だから、僕の立ち位置というのは正確には、彼女の隣りではなくて、彼女の半歩後ろを静々とry 「本当に広いキャンパスだねー」 「うん。これだけの施設を揃えてるキャンパスだからね。山の中だから校外に何も無い分、学内で何でもまかなえるようにしてあるんでしょ」 「明日までには、何がどこにあるのか学内の隅々まで調べておいて」 はいはい。 そのあたりはちゃんと把握しておかないと、熊井ちゃんの要望にもすぐに対応できないからな。 自分のためでもあるんだから、ちゃんと調べておきますよ、完璧にね。 「分かった。今日中に把握しておくよ」 「よし」 僕の返答に、熊井ちゃんが満足そうに頷く。 僕もすっかり自分の役回りを分かるようになったから、彼女の言うことに対しての理解も早くなった。 桜広場まで戻ってくると、熊井ちゃんが僕に言った。 「ちょっと桜を見ていこうか」 「うん」 熊井ちゃんでも、この桜を見てなにか感じるところがあったのかな。 満開の桜の中をゆっくりと歩いていく。 現れた熊井ちゃんの姿に、桜の木の下にシートを敷いて花見の宴会をしている人達の手が止まる。 そして一斉にこちらに顔を向けてきた。 初日にして、彼女の行くところ早くもこの反応なんだな。 そして僕の耳には、そんな人たちのいろいろな声が入ってきた。 (この子じゃね? あの噂になってる新入生) (あぁ、この子だ。この身長に学ラン、間違いない) (おいおい、この子かよ。すげーかわいいじゃん!) (ホントにデカイな。でも、デカいのにカワイイ) (デカカワイイw) なーんか、ひそひそとした声がどこからともなく聞こえてくる。 そうか、熊井ちゃんの知名度は初登校からのほんの数時間で、もうそんなに高まっているのか。 ただ、その後に続く声も僕は決して聞き逃さなかった。 熊井ちゃんのことを語る声とは打って変わって、どこか見下したようなところを感じるそれらの声。 (でも、この美人の子が何でこんなのと2人なんだ?) (この男、分不相応にも程があるw) (ここまで不釣合いな男女も珍しいだろw) だから、こんなのゆうな! なんだ、僕に対するその失笑は。 ふん、別にいいけどさ。その通りだと自分でも思うし。 そんな僕の心の平穏が乱れそうになったとき、熊井ちゃんの声で我に返ることができた。 「そういえば梨沙子の誕生パーティーの件だけど、ちゃんと進められてる?」 「え? うん、大丈夫。サプライズゲストの雅さんにもちゃんと来てもらう段取りはついてるから。 桃子さんの企画通り、そこでBuono!のシークレットライブをやるためにミニステージのあるお店も探し出して、もう押さえてあるし」 「よし! 楽しみだねー」 本当に楽しみなんだ。 梨沙子ちゃんのお祝いが出来るうえに、しかもなんとBuono!の皆さんが来てくれるんだ。 つまり、愛理ちゃんにも会えるんだよ。ムフフフ。 そのことを考え一気に高まった僕とは対照的に、落ち着いた声で熊井ちゃんが続ける。 「梨沙子はね、桜満開の頃に生まれたんだって」 こぼれそうなほどの満開の桜を見上げながら、しみじみとした表情の熊井ちゃん。 そんな彼女が急にこんなことを言い出した。 「そうだ! 梨沙子にもこの見事な桜を見せてやろう! 今から梨沙子を呼んでさ、お花見をするよ!!」 ナイス思いつきです! 熊井さん!! それはとてもいい考え。素晴らしすぎる。何と言っても、りーちゃんとお花見ですよ! この桜の下で梨沙子ちゃんとおしゃべり出来るのかー。考えるだけで表情が緩んでくる。 「いいね!! 素晴らしい考えだよ、熊井ちゃん!!」 さっそく熊井ちゃんが梨沙子ちゃんに電話をかける。 だが残念なことに、梨沙子ちゃんがその電話に出ることはなかったんだorz 「もーっ!! 梨沙子のやつ何やってんのかな。せっかくうちが電話したのに出ないなんてさー!」 僕としても非常に残念です。 あぁ。今から梨沙子ちゃんと会えると期待が大きかったぶん、失望も大きい・・・・ 自分の思いつきが実現せず、プンプンしている熊井ちゃん。 こんなことでご機嫌を損なわれては大変だ。 慌ててフォローする。 「梨沙子ちゃんも忙しいんだろうし、彼女の都合ってものがあるんだから、まぁしょうがないよ」 「せっかくこれだけの桜なんだからさー、お花見したかったよねー」 「お花見はしようよ!今から。せっかくだからさ!」 「えー!? うちら2人でお花見?」 思わず思いつきで口にしてしまったが、言ったあとでちょっと気恥ずかしくなった。 「い、いいじゃん、別に」 僕のした提案に、ちょっと思案顔になっていた熊井ちゃん。 そうかと思うと急に明るい表情になって大きな声を上げた。 「そうだ!!」 何かをひらめいたようだ。 彼女のピコーンには今までも幾度となく振り回されてきた。 だから、反射的に嫌な予感に襲われて身構えたのだが、その直後に彼女が言ったことは、いい意味でそれを裏切るセリフだった。 「それならさ、なかさきちゃんを呼ぼう!!」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/nagoyabandsession/pages/120.html
※新規リクエストは一旦停止しております。ご了承くださいませ※ 日時: 2018年06月17日(日) 13:00-18-00(6時間) 参加人数によっては 開催時間、会場が変動する場合がございます。 緊急連絡先: nagoyabandsession@gmail.com 会場: ■会場: スタジオアサヒドーカメラ4階ホール http //www.asahidocamera.com/studio/ ■打ち上げ: 風来坊 若宮店 金額:単品注文総額の人数割り(予想金額:3500-4000円) ワンドリンクのみの参加も可能です。 ギャラリー参加の方の入店も可能です。 スタジオ滞在中に主宰に申し出てください。 未成年の飲酒、喫煙は固くお断りいたします。 また、18歳未満の参加につきましては保護者の許可を得た後、 県の指定する外出禁止時間前に帰宅できるように退出して頂きます。 段取り説明(初参加の方は全員必ずお読みください): http //www24.atwiki.jp/nagoyabandsession/pages/86.html ■おおまかな説明■ 楽器を持ち寄って、大きなリハーサルスタジオで 演奏して遊ぶオフ会です。 ライブ、コンテストのような資格や細かい手続きは不要です。 事前にバンドを組んでの演奏ではなく 課題曲ごとに演奏者を交代します。 参加表明を頂いた方には 連絡用掲示板へとご案内いたします。 初参加の方は簡単なご挨拶をして頂けましたら そのまま打ち合わせにご参加下さい。 幹事、常連参加者さんがフォローいたします。 掲示板のやり取り、メールによる連絡が不便な方には 幹事とのLINEによる個別連絡を致しますので その旨をお伝え下さい。 ■演目について■ ジャンルは一切不問です。 バンド形式、複数の楽器で演奏できる形態の曲でありましたら 曲調、年代などは問いません。 ■募集パート■ ボーカル:男性2名 女性4名(10名募集) ギター:6名(15名募集) ベース:4名(10名募集) ドラム:6名(10名募集) キーボード:1名(10名募集) その他:種類、人数、無制限に募集中 人数制限につきましては未定ですが 参加人数が35人を越えた所からルールを変更していきますので 参加保留を申し出た方が本参加を表明される前に人数締め切りとなった場合 ギャラリーでの参加、又は参加お断りとなる可能性がございます。 演奏の他にギャラリー希望者を呼んで頂く事は歓迎いたしますが スタジオ利用人数の確認の為にも、大雑把でも結構ですので お連れする人数の数は随時ご連絡くださいませ。 ■見学者も受付中■ 参加費は無料です。 演奏参加として参加表明なさった方も 都合により演奏ができなくなった場合は 見学者へのチェンジをお申し付けください。 ■参加資格■ 中学生未満は保護者同伴にての参加ができる方 18歳未満は保護者の同意を得てから参加ができる方 連絡用掲示板、幹事からのお知らせを長期に渡り放置せず 積極的に連絡、打ち合わせに応じられる方 自分だけではなくご一緒される方とお互いフォローし合えるように 心がけて頂ける方 自分とは違う趣味、価値観、離れている年齢層の方へ 不快な発言などをせず、最低限の尊重ができる方 演奏技術については上限、下限は一切ございません。 ■注意事項■ 一部の方による、事前連絡もない当日欠席により 他の参加者さんを不快にさせる事態が 残念ながら起こる場合がございます。 参加表明後、もしも参加をキャンセルされる場合は いかなる理由でも結構ですので 必ず幹事、又は紹介者様にご連絡するか、連絡用掲示板にて その旨をお伝え下さい。 その場合は、責任の追及は致しません。 特に、演奏での参加をお考えの方は以下のページを必ずお読み下さい。 新規参加者の皆様への重要なお願い ■課題曲について■ 曲ごとのパート募集は行っておりませんが どの曲にでもエントリー可能です。 開催時間の都合上、ある程度のプレイヤー参加をお迎えした後は ギャラリー参加のみとなります。 01:孤独のグルメ・テーマ曲/Stay Alone https //www.youtube.com/watch?v=HLukUyiSI2w 02 馬渡松子/微笑の爆弾 https //www.youtube.com/watch?v=KRebcnWzAVI 03:相対性理論/ケルベロス https //www.youtube.com/watch?v=hLMJXH8TMJg 04:UPLIFT SPICE/カノジョ https //www.youtube.com/watch?v=av8jt4M3CuI 04B:9Goats Black Out/Tanatos - Who's The Mad https //www.youtube.com/watch?v=bptyVWwN-L8 05C:椎名林檎/丸の内サディスティック https //www.youtube.com/watch?v=Sy_08-HcR3Y 06:ELLEGARDEN/Supernova https //www.youtube.com/watch?v=coSI-Xzg--o 07A:有機生命体:クレーター(食事のお礼) https //www.youtube.com/watch?v=FEonIPZQIGA 07B:有機生命体:マリリンの後に女王なし(フラッパーズのテーマ) https //www.youtube.com/watch?v=oQ68PPpcDxU 08:FEEL SO BAD/バリバリ最強No.1 https //www.youtube.com/watch?v=W3r_wFIGjHU 09:PAMELAH/SPIRIT https //www.youtube.com/watch?v=MbfCNNbz6bg 10:ゆず/栄光の架橋 https //www.youtube.com/watch?v=zEiBNdgHPjw 11:Marcus Miller/Power https //www.youtube.com/watch?v=y1UQ9obooYg 12:Ozzy Osbourne/Crazy Train https //www.youtube.com/watch?v=L2VZjE6JdHg 13 スピッツ/楓 https //www.youtube.com/watch?v=YapsFDcGe_s 14 川村かおり/夏の朝にキャッチボールを https //www.youtube.com/watch?v=mjTS5HL_SCo 15:尾崎豊/15の夜 https //www.youtube.com/watch?v=Yu88zx_--wE 16:きのこ帝国/ラストデイ https //www.youtube.com/watch?v=UjYI_SOzNmE 参加方法についてはこちら 戻る
https://w.atwiki.jp/nagoyabandsession/pages/107.html
※プレイヤー参加者はキーボード奏者以外締め切りました。 見学による参加は受け付けております。 日時: 2014年12月20日(日) 12:00-18-00(6時間) ※人数。内容によっては変動します 緊急連絡先: nagoyabandsession@gmail.com 幹事、準備の為にスタジオレンタル時間30分前からスタジオ入り 会場: スタジオアサヒドー 4階大ホール http //www.asahidocamera.com/studio/ 参加人数によっては3階小スタジオも併用レンタルします。 段取り説明(初参加の方は全員必ずお読みください): http //www24.atwiki.jp/nagoyabandsession/pages/86.html 打ち上げ:風来坊 若宮店 ■おおまかな説明■ 楽器を持ち寄って、大きなリハーサルスタジオで 演奏して遊ぶオフ会です。 ライブ、コンテストのような資格や細かい手続きは不要です。 事前にバンドを組んでの演奏ではなく 課題曲ごとに演奏者を交代します。 参加表明を頂いた方には 連絡用掲示板へとご案内いたします。 初参加の方は簡単なご挨拶をして頂けましたら そのまま打ち合わせにご参加下さい。 幹事、常連参加者さんがフォローいたします。 掲示板のやり取り、メールによる連絡が不便な方には 幹事とのLINEによる個別連絡を致しますので その旨をお伝え下さい。 ■見学者も受付中■ 募集にて漏れたパートの方は 見学での参加となります。 参加費は無料です。 演奏参加として参加表明なさった方も 都合により演奏ができなくなった場合は 見学者へのチェンジをお申し付けください。 ■参加資格■ 中学生未満は保護者同伴にての参加ができる方 18歳未満は保護者の同意を得てから参加ができる方 連絡用掲示板、幹事からのお知らせを長期に渡り放置せず 積極的に連絡、打ち合わせに応じられる方 自分だけではなくご一緒される方とお互いフォローし合えるように 心がけて頂ける方 自分とは違う趣味、価値観、離れている年齢層の方へ 不快な発言などをせず、最低限の尊重ができる方 演奏技術については上限、下限は一切ございません。 ■演目について■ ジャンルは不問です。 ロック、ポップス、アニソン、ボーカロイド、インスト等 ご自由にご提案下さい。 それぞれの希望曲をお互いに手伝って、 演奏して遊びましょう。 新規希望曲提案は、 他の参加者さんが提案された曲を お手伝いして頂ける方のみ可能です。 また、ギター参加者さんに関しましては バッキングのみのお手伝いである場合は 提案できる優先度が下がりますので ご注意ください。 お手伝いができない方に関しましては リードギター、キーボードで参加される方の レパートリー曲、または 当セッションで過去に演奏した曲から 幹事が独断と偏見で選びました曲から エントリーして頂く事となります。 演目リストの公開は、12月からとなります。 コピーが難しい曲を希望曲に挙げられたり 他の方の希望曲のパート埋めを手伝わない方の 希望曲のパートが埋まらない場合の フォローは致しませんので 必要最低限のパートが揃わない曲は 当日の演目には入りません。 ご注意ください。 一度に複数曲を提案する事は可能です。 ■注意事項■ 一部の方による、事前連絡もない当日欠席により 他の参加者さんを不快にさせる事態が 残念ながら起こる場合がございます。 参加表明後、もしも参加をキャンセルされる場合は いかなる理由でも結構ですので 必ず幹事、又は紹介者様にご連絡するか、連絡用掲示板にて その旨をお伝え下さい。 その場合は、責任の追及は致しません。 特に、演奏での参加をお考えの方は以下のページを必ずお読み下さい。 新規参加者の皆様への重要なお願い ■現在の希望曲・課題曲 12月20日フリーセッション 参加者 ボーカル:男性2人 女性8人 締め切りました。 ギャラリーにてご参加下さい。 ギター:8人 締め切りました。 ギャラリーにてご参加下さい。 ベース:5人 締め切りました。 ギャラリーにてご参加下さい。 ドラム:6人(締め切りました) キーボード:5人(1名募集) 他 数名が演奏、見学で検討中 希望曲/課題曲 01:Kick Start My Heart / Mötley Crüe https //www.youtube.com/watch?v=9q5pl0Nf1Uk 02:陰陽座/甲賀忍法帖 https //www.youtube.com/watch?v=a2_47svqKpc 03 岸田教団 THE明星ロケッツ/GATE〜それは暁のように〜 http //youtube.com/watch?v=qVEVRTUAy0M キーボード募集 04:May'n&中島愛/ライオン https //www.youtube.com/watch?v=q5Ezn_008MQ 08-10:MMDとバンド体験コーナー いーあーるふぁんくらぶ https //www.youtube.com/watch?v=j0BFDaR5FZc キーボード募集 11 T-square/Omens of Love https //www.youtube.com/watch?v=3mp2ibhs830 ウィンドシンセ募集 12奥井雅美/Good-bye my crisis http //www.youtube.com/watch?v=TWB643L7qso キーボード募集 13:茅野愛衣/オラシオン https //youtube.com/watch?v=nfIyveBfDTQ 14:Led Zeppelin/Stairway to heaven https //www.youtube.com/watch?v=qHFxncb1gRY 15:片霧烈火/get the regret over https //www.youtube.com/watch?v=JSppF1Neo6g 16:椎名林檎 /本能 https //www.youtube.com/watch?v=ECxBHhMc7oI 17:VAMPS/LOVE ADDICT https //www.youtube.com/watch?v=O4DmBpFatmI 18:水樹奈々×T.M.Revolution/革命デュアリズム https //www.youtube.com/watch?v=CkGqMm_d5ME 19:supercell/ 告白 https //www.youtube.com/watch?v=CND356JHZYU https //www.youtube.com/watch?v=-V7vpEhfZqc https //www.youtube.com/watch?v=hTMg8n4fU7M 20:Tommy heavenly6/Hey My Friend https //www.youtube.com/watch?v=ZqLHn14xung 参加方法についてはこちら 戻る
https://w.atwiki.jp/isekaikouryu/pages/658.html
昔、延の都にほど近い東洲という所に孔と赤という有名な狸人と狐人の二人組みの噺家がいたという。 二人はそれぞれ芸風が違い、孔は古典の噺、赤は流行の噺で人を笑わせるのが得意であり、いつも互いの芸風を貶しながら争って自分の名を挙げることに邁進していた。 いつも二人で所有している猿人少年の下僕を連れて西へ東へ、ある時は寂れた村で、またある時は豪華絢爛な城の中で、いろいろな地を巡り歩き二人は噺で人を笑わせ自分達の力量を比べていたのだ。 さて、争って力量を上げていた二人だが中々勝負がつかず、次で百戦目といった節目になるので何か特別な人間を笑わせて長きに渡る争いに終止符を打とうと考えた。 そこで方々へ聞いて回って、南方の村に戦で捕まった象人の下僕がいることを流れの商人からやっと聴きだした。 南蛮の象人は鉄面皮で有名な種族であり、死ぬ時にしか笑わないと言われているほどで、これを笑わせることが出来れば宮廷に召抱えられることも夢ではないだろう。 記念すべき百回目の勝負にこれほどうってつけのモノはないと二人と下僕はすぐさま村へ行き、勝負の段取りを取り付けた。 そして勝負の当日、床に座らされ厳重に金輪と鎖、鉛の重りなどでがんじがらめにされて不機嫌そうな象人の前で二人は渾身の噺を始める。 孔は古典でも大衆に人気のある緑狸公没落の滑稽な噺を、打って変わって赤は最近都で人気があるおどけた顔や仕草を交えた新しい噺をそれぞれ披露した。 二人の噺対決の見物に来ていた村人たちは腹を抱えて笑い転げていたが、鋼で作られたようないかつい顔の象人の下僕だけは全く表情が動いたように見えなかった。 なので、二人は象人にどちらの噺が面白かったか判定させることにした。 「おい、象人。貴様が聞いて面白かった噺はどちらだ?」 「オレに判定をさせる気か?ならば報酬を戴くぞ?」 「よかろう。なんなりと言うがいい。 象人一人の願いくらい叶えられる程度に蓄えはある」 二人は各地の興行で一国の城主もかくやとあらんいう蓄財があったので南蛮の田舎者への報酬ごときという気分で答えを返した。 その答えに象人はその長い鼻を高く掲げてから下ろし承諾の意を示した。 「それで、貴様はどちらの噺が面白かったのだ?」 二人が象人に聞くと、象人は簡単に鎖や金輪を引き千切りながら立ち上がり、二人の頭にその大きな手を乗せた。 そして「あっ」というまもなく二人を押しつぶしてしまった。 唖然とする村人と猿人の下僕の前で孔だったものへ言った。 「お前の噺は古臭い上に他人を小馬鹿にするだけの噺だ。死ぬほどつまらん」 次に赤だったものへ言った。 「お前の噺はそもそも笑わせるものでなく嗤われるだけのものだ。死ぬほどつまらん」 そして最後に言った。 「…よって、命をもって判定の報酬となす」 象人に圧倒されて固まる村人達を尻目に下僕だった猿人の少年が震えながら口を開いた。 「小姐は僕も報酬にするの?」 「…どうしてオレが女だと思ったのだ?」 訝しげに聞く象人に猿人の少年は答えた。 「だって小姐は紅餅から紅をつけてるじゃないか!」 その言葉に象人が下を見ると、確かに潰れた二人は紅餅のような有様であり、次に両手を見るとまさに紅をすくった様に赤く濡れている。 最後に象人は両手に付いた紅を自分の口と頬に塗り、近くの水桶を覗き込めばまさに紅を引いた女性の様相であった。 象人はそれを見て深く頷くと、長い鼻を猿人の少年の頭へ置いて撫で付け、その紅い唇を動かした。 「然り」 そう一言いって、象人は大延の全土に届くほどの大きな笑い声を上げて事切れた… その後、猿人の少年グアンは諸国を回って噺の修行をし、ついには笑神と呼ばれて大延の長き歴史の中に名前を残すこととなるが、それはまた別のお話である。 しかし、彼が晩年に自分が少年時代に言った事が事実であったことを死の淵で知り、天に響くほどの笑い声を上げて事切れた事については書いておかねばならない。 すなわち、あの象人は今でも南蛮中に名を轟かせる大延の将軍10人を素手で叩き潰した猛女、シェンピェンツァーそのヒトであったということだ… 蛇足 大延国のSSは初めて書きました。 劇中の様に死ぬほどでは無いにしても皆様にとって少しでも面白ければ幸いです。 話としては短いけれど種族独特の所作や背景が盛り込まれていてその密度に驚いた。 諺や古典のような説得力のある内容に思わずうんうんと頷いてしまった面白かった -- (とっしー) 2012-06-08 17 46 03 無意識の所作から女性だと判明した誰もが男と思っていた象人とか上手い!この話だけ読むと南蛮とは和解できそうにも思っちゃったんだけどどうなんだろうね -- (名無しさん) 2012-06-08 20 17 56 南蛮ってのは延の支配を受け入れない種族や国家などの総称だろうし、和解できる存在もいるだろうね -- (名無しさん) 2012-06-09 00 53 38 噺家二人がバラエティの風刺にも思えてドキっとした -- (名無しさん) 2012-06-09 08 06 28 南蛮では常に命のやりとりがあってガチンコ精神が根付いているのかも? 相手を笑わせるのも命がけの勝負と捉えていたりとか -- (名無しさん) 2013-03-15 23 05 45 おぉーい!?といきなりの攻撃に驚いたけど女象人の言う事ももっともかなとも思えてしまった。 死生観の違いは確かにありそう -- (名無しさん) 2013-07-03 01 03 48 文化の違い感覚の違いというよりも物事に対しての姿勢の差を想像しました。南蛮はそれほどまでに日々が命をかけたものなのかなと -- (名無しさん) 2014-08-10 17 31 51 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/keikenchi2/pages/972.html
「ミッミッミッ、これであの長屋の跡地は我々のもの。 全ては勘定奉行タブンネ守様のおかげでございますミィ」 「なあにミィミィ屋、持ちつ持たれつだミィ。 あの跡地にはオボンの木を植えて大儲けするミィ。 チラーミィやイーブイごときがいくら泣こうが知ったことではないミィ」 「ミッミッミッ……しかしちと気になる話がありますミィ。 そのチラーミィやイーブイ達が人間の殺し屋を雇ったとか。 なんでも『タブンネ人』とか申す連中だそうですミィ」 「なあに、恐れることはないミィ。のう、タブ十郎」 「左様でございますミィ。人間だろうがポケモンだろうが、 長屋を焼き払ったのと同様、拙者の火炎放射で丸焼きですミィ」 「頼もしいぞ、ミッミッミッ♪」「ミッミッミッ♪」 その同時刻。打ち捨てられた廃寺に集う数人の人影があった。 「的は勘定奉行タブンネ守、ミィミィ屋タブ右衛門、そして用心棒のタブ十郎。 この仕事、受けていただけますね」 『何でも屋』がそっと小判を置く。話を聞いていた男達がおもむろに腰を上げた。 『簪屋』『三味線屋』『八丁堀』は、それぞれ小判を手に取ると、 めいめい闇の中に姿を消してゆく。 彼らこそ、法で裁けぬタブンネを裁く裏稼業『タブンネ人』であった。 そして夜も更けた頃。 使用人も寝静まった中、ミィミィ屋はそろばんを弾き、金勘定に勤しんでいた。 「ミッミッミッ♪笑いが止まらんミィ」 ほくそ笑むミィミィ屋は、後ろの畳の一枚が音もなく持ち上がった事に気づかない。 その下から顔を出したのは『簪屋』であった。 勢いよく畳をはじき飛ばし、床下から黒装束に身を包んだ『簪屋』が躍り出た。 「ミッ!?」驚くミィミィ屋の顔を、二度三度と蹴り飛ばす。 なす術もなく畳に転がるミィミィ屋は泣き声を上げた。 「ちょ、ちょっと待ってミィ!リハーサルと段取りが違うミィ!」 それにも構わず、『簪屋』はさらに蹴りを入れた。 転がってうつ伏せになったミィミィ屋に馬乗りになり、ふところから金色の簪を取り出す。 その簪はキラリと輝いた次の瞬間、ミィミィ屋の盆の窪に突き立てられていた。 「ミギュ!!」即死したミィミィ屋の首が、がくりと垂れる。 『簪屋』は簪を引き抜くと、音もなく再び床下に姿を消した。 それとは入れ違いに、廊下をドスドスと乱暴に歩く音が近付いてきた。タブ十郎である。 「どうしたミィ!何かあったかミィ!?……ミッ!」 障子を開けて、ミィミィ屋の死体を発見したタブ十郎は驚きの声を上げる。 それと同時に、廊下の曲がり角の暗がりから人影が姿を現わした。『三味線屋』だ。 その気配にタブ十郎も気づいたが、『三味線屋』の方が一瞬早かった。 『三味線屋』の手から、闇を裂いてかすかな光が飛び、タブ十郎の首に巻きついた。 「ミギュッ!?」 光の正体は三味線の糸であった。『三味線屋』は手元の糸を天井の梁に投げた。 そして落ちてきた糸を掴み、廊下を走り抜ける。 「ミガアアア!!」それとすれ違いにタブ十郎は引きずられていき、 天井の梁を支点として宙吊りにされた。 『三味線屋』が力強く糸を手繰り寄せるごとに、タブ十郎の足は床から遠のいてゆく。 「く、苦しいミィ!か、カメラ止めてミィ!ほんとに、ほんとに締まってるミィ!!」 足をバタつかせ、苦悶の表情でタブ十郎はもがき苦しんだ。 しかし『三味線屋』は最後にぐっと糸に力を込めた。そして糸を指で弾く。 「ミ!…グ……」足がだらんとなって、タブ十郎は絶命する。 『三味線屋』が糸を切ると、その死体はどさりと落下して、床に転がった。 顧みる事なく、『三味線屋』も闇の中に消えてゆく。 その頃、勘定奉行タブンネ守は寝床に入ろうとして、行燈の火を消した。 すると月明かりで、障子に人影が浮かび上がった。 タブンネ守は顔色を変え、刀を手に取って「誰だミィ!?」と誰何する。 障子の向こうの男は低い声で答えた。 「タブンネ守様、ミィミィ屋タブ右衛門様からの火急の使いで参りました。」 「何、ミィミィ屋?して、何と言っているミィ?」 安堵したタブンネ守は刀を置いて障子を開けた。 そこには八丁堀の羽織をつけた、町方役人らしき男が平伏していた。 「はい、お言付けでございます…………先に地獄で待っていると」 「何ィ!…ミギャア!!」 驚くタブンネ守の腹には、『八丁堀』の刀が深々と突き刺されていた。 「ミガガガァ!!痛い痛いミィ!これ本物の刀だミィィィ!!」 ※ ※ ※ ※ ※ 視聴率40%を超える人気時代劇「必殺タブンネ人」。 番組の一番のポイントは、仕置のシーンが実演ということである。 タブンネを「テレビに出てスターになれる」と言葉巧みにスカウトし、 最低限の演技だけ仕込んで、本当に仕置するのである。 自分が本当に殺されると悟った時の慌てっぷりや絶望ぶりは、 ドッキリカメラの様相も呈している為、 時代劇とバラエティの新たな進化形として、大人気を博しているのだ。 ちなみにタブンネに普通の演技などは全く期待していないので、 前半のドラマ部分に登場するタブンネは全てCGと吹き替えである。 ※ ※ ※ ※ ※ 「だ、騙したミィ!スターになれるなんて…嘘だったミィ!」 激痛と悔しさでタブンネ守は泣き叫ぶが、『八丁堀』は冷たく言った。 「文句なら地獄の閻魔様に言いな!」 そして刀を引き抜くと、よろめくタブンネ守に袈裟切りを浴びせた。 「ミギャアアア!!」 血しぶきを上げ、タブンネ守はばったり倒れて息絶える。 『八丁堀』は刀を一振りして血を払い飛ばし、静かに障子を閉めた…… ※ ※ ※ ※ ※ 「はーい、カット!お疲れ様でした!」 照明が点き、スタッフの拍手が起こる。『八丁堀』の役者は素に戻った笑顔を見せた。 「本日の撮影終了でーす。引き続き打ち上げを行いますので、移動お願いします」 役者やスタッフが引き上げる中、タブンネ達の死体が厨房に運ばれていった。 これから恒例の、タブンネ焼き肉打ち上げパーティが行われるのだ。 人気番組のチームワークを保つ秘訣の一つでもあった。 (終わり)
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2287.html
For the Answer (×アーマードコアFA) plan1-1 「…カラードのリンクス。マクシミリアン・テルミドールだ。 君がこれを聞いているのであれば、私は既に死亡している。おそらくは、アルテリア・クラニアムに倒れたのだろう メルツェルも、ビックボックスから生きては戻れまい。…ORCAは、君ひとりになったということだ。 頼む、私に代わり、クラニアムを制圧してくれ。 クラニアムが停止すれば、クレイドルは最後の支えを失い、すべての人は大地に還る。 衛星軌道掃射砲は、クレイドルを支えたエネルギーを得てアサルト・セルを清算し、宇宙への道を切り拓くだろう。 ……全てを君に託す…… 人類と、共に戦ったORCAの戦士達の為に……」 これは、万が一の時の為に、彼宛てに用意したビデオレターだ。無論、これを送ることになるつもりは毛頭なかった。 だが、現実はそうではなかった。私は敗れた。私の乗機「アンサング」の機能停止と同時に彼に送信されただろう。 …おかしい。そうであるならばなぜ私に意識があるのか?私は死ぬことになるはずだが…。 「あ、目ぇ覚ましたん?」 そこで、私の意識は覚醒した。 「…ここは…君は何者だ?」 私はつい思ったことをそのまま口にしてしまった。口にしてから改めてあたりを見回してみる。…医務室…か? どうやら私はベッドに横たわっていたようだ。あたりは小奇麗に掃除されていて大型の機材も確認できる。 眼前には、幾人かの姿がある。 「ここは時空管理局古代遺失物管理部、通称機動六課の医務室や。んで、うちはそこの隊長・八神ハヤテや。よろしくな?」 「時空…管理局…機動六課…」 目の前の少女が何を言っているのか、皆目理解することはできなかった。だが、今こうして生きている以上、取り乱すわけにはいかない。 ORCAの旅団長として、相応の態度で臨まなくては… 「すまないが、君が何を言っているのか私には理解できない。詳しく話を聞かせてはもらえないだろうか?」 「まぁ、そうやろうなー。見たところあなたはこの世界の人やないみたいやしね。さて、まずはどこから話したらええものやろなぁ…」 …あいた口が塞がらないとはまさにこのことか。時空世界、管理局、魔法、デバイス、etc…ここは、私が闘ってきた世界とは全く異にする別世界だというのだ。 そして更に私を驚嘆させたのは、目の前の3人の少女の出身世界だった。 第97管理外世界・地球。だが、しかし、それは私の知る地球とは似ても似つかない、決して平穏とは言えないまでも。安定と繁栄を享受する姿。 「あの、よかったら貴方の住んでいた世界の呼称を教えていただけませんが?そこから貴方が元々いた世界が特定できるかもしれませんし…」 いままでハヤテという少女の後ろに控えていた長い金髪の少女が訪ねてきた。ハヤテの紹介によると彼女はフェイトという名前のようだ。 私は、素直に答えるべきか、幾分か悩んだが、ここでそれを伏せることに意味はあるまいと考え、答えることにした。 「私の出身世界は…「地球」、そうよばれている世界だ」 私の知る地球の姿を話したときの彼女らの表情は。なんとも形容しがたい、不安・恐怖・怒りといったものが混ざったとでも言うべきものであった・ コジマ技術・ネクスト・国家解体戦争・リンクス戦争・アームズフォート・コジマ汚染… まぁ、当然か。誰しも自分の住んでいる世界が人の住めない世界に変わろうと・壊死へとむかおうとしている姿を想像すれば、程度の差はあれ何かしらの想いを もつものだろう。尤も、彼女たちの地球とは、おそらくは別物なのであろうが。 その後、殺風景な医務室でいつまでも話をするのもどうかということで、場所を移して続きを話す運びとなった。どうやら隊長・八神ハヤテの執務室のようだ。 どうやら私は時空漂流者という扱いになり、しばらくはここで保護下に置かれる段取りのようだった。現状では私の住んでいた地球を特定することは極めて困難、 ということだ。…元の世界に送り返されたところで、困るのだがな… For the Answer plan1-2 執務室では初めに、追加で幾人かの人物を紹介された。副隊長・シグナム、フォワード・スバル・ナカジマ、メカニック・シャリオ・フィニーノ…面倒なので、以下は省略させてもらおう。 「実はですね。あなたに見て頂きたいものがあるんです」 シャーリーと呼ばれるメカニックの女性が私の前に差し出したものは、ピラピッドのミニチュアを半分削り取ってその空間に無数の支柱を突き刺したような形状のオブジェ。 回りくどい言い方はよそう。一言で言ってしまえば、私の古巣・レイレナード社の本社施設をそのまま縮小したものだった。 どうやらこれが私がこの世界に出現したときに所持していたデバイスらしい。私はデバイスなど所持した覚えはないと言ったが兎にも角にも見てくれとのことだった。 「これが管理AIを搭載したデバイスであることは分かっているんです。ですが問題は中身でして… デバイスの詳細なデータを確認しようと解析してみたのですが、 このAIがとんでもなく強力なプロテクトをかけていて、全く手が出せない状態なんです。」 「そんなものを私に見せられたところでどうしろと「当然だ。かつてレイレナード本社の全システムを統括していた私の能力をなめてもらっては困るな」」 「え?…いま、初めて喋りましたよね?私たちがあんなに呼びかけても一切応答しなかったのに…」 「まぁ、最初の挨拶くらいはこれの持ち主の立ち会いのもとでしたいものだからな」 彼女たちは面食らったかのように驚いていたが、本当に驚いたのはむしろ私のほうだった。 なぜこいつがこんなオブジェの中にいるのか?こいつはビッグボックスへ単身赴いて破壊されたはずの… 「なぜ、おまえがそんなものに納まっているんだ、メルツェル?」 「やぁ、またおまえの下に戻ることができてうれしいよ、テルミドール」 plan1 終 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/85.html
「大丈夫か、ひとりで?」 「大丈夫よ。子供じゃないんだから」 「子供じゃないから、心配してるんだがな」 「エロ親父」 「昔からことわざにもあるだろ?『お父さんの親心は、おじさんの下心』って。根はいっしょなんだ」 「はいはい。もう行くわよ」 「定期連絡を忘れるな。母さんが泣くぞ」 思うところがあって、あたしは一人で旅に出ることにした。 感傷的な理由も考えられなくはないけれど、要は、日に日に心の中で大きく重くなる、あいつの存在にケリをつけたいというのが本当のところだった。 珍しく、あいつからハガキが届いた。それも写真付きのやつ。 よくない予感はしたわ。でも、これはあたし宛よね。あたしが読まないわけにいかないじゃない。 文面はものぐさそのものだった。 「結婚しました」 まったく「ものぐさ」とシンプルはまったく違う別物だ、とあれほど言ったのに分かってない。なおってない。 そして花嫁を抱き上げるあいつの写真。ご丁寧に周りには紙吹雪まで舞っていた。 はっきり言って油断してた。やられたと思った。 あれから何年も経つのだ。別に不思議なことじゃない。 ハガキの写真が、ご丁寧にも、ひどいピンぼけだったのが、不幸中の幸いだった。 おかげで、花嫁が誰か、知ってる人か知らない人か、すごい美人がとんでもないブスかだって、よくわからなかった。 ずっと見ていると、ピンぼけ具合はどんどんひどくなっていった。文字まで読めないほどになった。 ハガキは濡れたみたいに、手の中でくにゃっと曲がった。 泣いている女の声がした。 あたしの声だった。 「あたし、結婚するから」 大嘘だった。そんなの、こんな顔して言ったって、信じる奴なんているわけがない。 「そうか」 嘘だと分からないのか、嘘だとわかっているときですらあたしの気持ちを尊重しようとしているのか、あいつはそう言った。そう言ったきり何も言わなかった。 旅の相棒にバイク(ちっちゃなスーパー・カブ、なぜかポストマン仕様)を選んだのは、正解だった。自分でハンドルを握れば余計な事を考えずに済むし、むしゃくしゃの残りカスは、風が吹き払ってくれる。 そのかわり一日走ればホコリまみれだけどね。 女の一人旅は面倒が多い。自殺されたらたまらない、なんていう事情があるんだろうか。宿は数日前に予約をいれてから泊まることにした。行くあてのない旅なのに、段取りに追い回される感じ。 することがないから、あたしはとにかく移動した。そんなことをしても、何も変わらないのだけれど、とにかくじっとしているよりはマシな気がしたのだ。 泥のようになって眠れば、夢など見ないはずだった。 ところがどういうわけだか、いつかみた灰色の空間の中に、あの頃通った高校が、毎日繰り返し登場した。 あたしはもう、あの学校に通う生徒じゃなかったし、まして高校生なんて気が遠くなるほど昔の感じがした。 しかも、あたしの夢なのに、夢の中の出来事ですら、ままならない。 灰色の夢の中では、あたしは相変わらず女子高生で、そして傍らにはあいつがいた。 「なんで、あんたが、いんのよ?」 「さあな。お前の夢だったら、お前が呼んだんじゃないのか」 「あんたの夢かもしれないわね。少なくとも、あたしはあんたを呼んだ覚えはないし、あんたにも分かってるだろうけど、いまあたしが世界で一番会いたくない人間があんたよ」 「そうだろうな」 「あたしが馬鹿だったわ。どうしようもないガキだった。今も変わんないけどね」 黙って聞いてろ、という顔をしたせいか、あいつは何にも言わず、相槌さえつかなかった。 「あんた程度の男、いつでも落とせる自信があった。ううん、そんなことしなくても、あんたはいてくれるだろうと思ってたし、他の男みたいな扱いをしたくなかった。でも、だったら、どうしたらいいの? 楽しかったわ。でも、怖かった。この楽しい時間が終わることは確実なんだから。時間を止めたいと何度も思った。私はあそこでしくじったんじゃないか、って何度も思いだした。ちょうどこの場所よ。なんで、キスなんかで満足したんだろう? あたしはあんたとずっと一緒にいたいと願ったのに。その願いがかなうところだったのに!」 「ハルヒ、おれと一緒にいるだけでよかったのか?」 「そうね。不正確だわ。あんたと一緒に帰りたかった。あんたと手をつなぎたかった。あんたとたわいもないことをたくさん話したかった。あんたと夜遊びして一緒に叱られたかった。あんたとキスしたかった。あんたと……」 音の無い世界に、あたしの声だけが、むなしくいつまでも響いた。いつまでも。 「なあ、ハルヒ。お前の、めちゃくちゃ長い願い事リストを、一言で表せる言葉があるんだが」 「うるさーい。あんたは黙ってなさい。それは、あたしのセリフでしょ!」 そうよ、そんなことは分かってる。分かってるわ。 でも、あんなにいっしょにいた頃、時折あいつが何か待っているような顔をして見せていた頃、それでも言わなかった言葉を、どうしてこんな夢の中で吐き出せるだろう? あたしはバカだ。 「キョン、幸せになんなさい! 相手の娘も幸せにすんのよ!」 「ハルヒ」 「ありがと、キョン。夢の中でも会えてうれしかったわ。じゃあ、あたし、行くね」 「ハルヒ、行く宛、あるのか?」 「あてが見つかるまで走るわ。あたし、失恋したのよ。そう簡単に行き着いてたまるもんですか!」 誰かがイグニッション・キーを回し、スターターが回る音で目が覚めた。 バイクで来ている連中が何人かいた。そのうちの一人だろう。 まだ外は暗い。午前5時。お早い出発だ。よほど遠くへ行くのだろうか。 手と目が濡れていた。そういえばガソリンの残りも少なかった。宿を出て、坂を降りればスタンドはある。顔を洗って、きっと味がしないだろう朝ご飯を食べたら出発しよう。 日が落ちるまでどこまで行けるか、試すくらいに走らせれば、今日こそきっと、別の夢が見れるに違いない。 一人旅に必要な事 その後へつづく
https://w.atwiki.jp/misiranukaii/pages/149.html
やぁこんにちわ、昇格おめでとう 私は代表取締役補佐のMと言う者だ 本名?そんな物はずっと昔に捨ててしまったよ 先代社長に似ている?とりあえず説明をさせて貰おうか、これは一定以上の立場に居る者にされる説明だ この説明を聞きたくないのなら辞表を書いてくれ この説明を聞いたのなら辞表を書く事は遺書を書く事と同義になる、それでも聞きたい? ふむ、聞きたいようだね、まぁ我が社でここまで成り上がった者だ トンデモな話には慣れている、と言う訳だね? だがこれは君が聞いてきた、或はこれから聞くであろう話の中で最もトンデモな話だ まぁ覚悟が有るのなら話そうか、私は嘗てマイク・リーとマイク・リーJrをやっていた者だ 証拠?無いよ、この情報は外に漏れるのは非常に不味い、証拠なんて最初から何一つ残していないよ 最初から話そうか私こと元軍人のM、そして優秀な科学者のK そしてマッドサイエンティストのTの三人で異常な物品の管理をする組織 君も名前だけは知っているだろう旧MKTを結成したのだ、MKTとは私達三人の頭文字から取った物だよ 何故結成したのか、ただ単純に世界の人々を脅威から救いたかったんだ 旧MKTは様々な危険から世界を守り功績を挙げ各国から認知され、運営も上手くいっていた しかし悲劇が起こるKがあるMKTによって老化が急速に進む様になってしまったんだ 酷い有様だったさ、同情したよ、Tもショックだったらしく問題児のマッドサイエンティストだった彼は 『自分達が人類を守らなければならない』と自覚し真人間になった 当然Kは酷く恐怖していたよ、高潔な人物で尊敬できる年長者の女性だったが、Kが自身の為に勝手にMKTを使い始めた 普通なら咎められるべき行為だった、しかし私はそれを看過してしまった 私は彼女が今までどれだけ世界の為に尽くして来たか痛いほど知っている、だけど世界は彼女に何もしなかった、いや出来なかった 唯一彼女を救う可能性が有るとすればMKTを使うしかなかった MKTの個人的使用はTにはばれなかった、彼は前線に出て指揮を執るようになっていたから私やKと会う事も少なくなった 結論から言うと彼女はMKTを使って自身を若返らせる事に成功した とある外部組織にMKTを渡す見返りに若返りの効果が有るMKTを入手し使用したらしい そこからなのかKがMKTを販売する会社を思いついた、彼女は様々な学問のエキスパートで経済学なんかも習得していた 彼女は会社設立のビジョンを見せ私とTに相談した、Tは激怒したよ 『自分達の私利私欲の為にMKTを利用するとは何事だ!!世界を守るのが我々の務めではないか!!』とね 私は顔も知らない世界の誰かを守るよりもKを、仲間を守りたい、彼等は誰よりも努力して頑張って来たじゃないか その彼等に報いたい、彼等に幸せな人生を送ってほしい そういう思いから私はKの会社立ち上げに乗ったよ Tとは完全に決別する事になった、彼がKを殺そうとしたから銃で腕をぶち抜いてやった 私はアイツも仲間の一人だと思っていたから殺さなかった、いや殺せなかった 結局アイツは逃げ出して旧MKT残党を率いて幾つかMKTを持ち出して逃げ出した 現在、世界で最も有名なテロリストとして世間を賑わせている 世界各国に私達の会社の売り込みを始めた私とKだが 思ったように上手くいかなかった、売り物が売り物だから上手い具合に理解を得られなかったんだと私は思う しかし日本の飯國政親が日本の為になると我々を誘致した そして当時の財界のフィクサーである・・・E氏としておくか E氏と出会う事が出来た、飯國氏とE氏の協力で起業にこぎつけた我々は社名を決める事にした 旧MKTがそのまま私とKとTの頭文字だったから私とK、飯國氏とE氏の頭文字のアルファベットのアナグラムから 社名をマイクと決めた、マイク・リー云々はカバーストーリーだ、因みにマイク・リーは私の変装だ 太平洋戦争中は当初は製品テストの良い機会だとKは思っていたようだったが 実際には大した事は出来なかった、飯國氏がMKTの実戦投入を行う作戦を立案した 作戦自体は上手くいったがTに勘付かれた、飯國氏は襲撃されその怪我が元で死亡 その後政府とのパイプ役が不在で飯國氏のご子息がその任に就くまで我々は政府と上手くコンタクトが取れなかった まぁ下手に動かなかったから太平洋戦争終結後にGHQはマイクの存在を認知出来ず何とか解体を免れた、偽装工作も多少はしたがね この後は我が社は発展の一途を辿る、唯辻褄合わせの為にマイク・リーが何年も生きていたら可笑しいと言う事で 私は若返ってマイク・リーJrとして二代目を襲名した事にした どうやって若返ったか?それはもう少し君が偉くなってからだ トップの役を私が長い事演じて来たが、思っていたより結構疲れるんだ Kに交代したかったが彼女の外見は見ての通りティーンエイジャー アメリカでは学生企業家も珍しくないが日本では一般的ではない 彼女が歳を取ればいいのだが前述の急速な老化を体験してからやたら老化を忌避し始めた気持ちは分からなくもないが・・・ しかし近年、萌え文化が発達した日本で今の日本の萌え文化が浸透した社会ならば 美少女社長も世間的にアリな感じになるだろうと 私はKにトップ役を交代してもらった、キンバリー・リーって居るだろ?あれがKだ 実年齢百歳は軽く超えているんだ、私と同じくね さて、君は我が社の真実を知ってしまった もう君はここから逃げられない、定年まできっちり働いて貰おう 辞める時は葬式の段取りを済ませておきたまえ、経費で落ちるからな 最後に改めて昇格おめでとう、さて堅苦しい話は終わりにして君の昇格祝いに呑みに行くか!! 我が社の系列のキャバレーに予約をしておいた、え?キャバレーは古い?実年齢三桁だぞ流行云々言ってくれるなよ
https://w.atwiki.jp/deluche/pages/34.html
LittleHero's 作者:レクスさん 最新の感想 1話 「セイギノミカタ」の続編にあたるSRC学園シナリオ。 イントロダクションの紹介、どこかで見たと思ったらもしかして私が書いた感想かしらん。 上倉くんの人柄や万屋という会社を興したリーゼアリアさん(かわいい)の事情にも触れられているけれど、 ふたりの関係については前作にくわしいので、プレイ済みだと得した気分になれます。 痴漢(ロリコン)に絡まれた中学生を助けた縁から万屋の仕事がはじまる第1話。 朝っぱらからロリコンが出没する街。なんて危険な場所だろうかSRC島。 戦闘になると、上倉くんの友人(というかリーゼさんファン)の尚文が強い! それもあって全滅させた方が手っ取り早そうだったので敵を蹴散らしたのはよかったのだけど、 探し人のヌコさんが容赦ない強さ! 危なく詰むところだった。 1話目にしては厳しいなあ、と思ったらこれ修正前のバージョンでした。 ヌコさんを無事に前世(?)の姿に戻す万屋に、このシナリオの方向性が現れているのかも。 短編とシリーズものではまた雰囲気も違ってくると思うので、 その辺りも含めて楽しみにさせてもらいます。 (2012/02/26) 2話 仁村さんがきた! だもんがでた! 全力けなげな柊妹ちゃんとかコイバナ大好きリーゼさんとか恥じらい仁村さんとか、 このシナリオは私をどうしたいの!?(もげろ) 私個人の錯乱はともかく、仁村さんの恋を応援する真摯な態度、 告白まで段取りをする手際もあざやかで、意外と(失礼)優秀な組織だったのですね。 これは酷い騎士メッセージ(しかもバリエーションが並じゃない)や、 池野さんすっぱ抜けイベントといった細かい作りこみなど遊び心がニクい。 作者さんが楽しんでるのが感じられて素敵です。 (2012/03/21) 3話 風邪をひいた尚文くんを見舞う上倉くんとリーゼさん。 お、お前、もしかしてそうじゃないかと思ってはいたけど、すごくいい友人だな尚文少年。 今回は大小いくつかの「変化」が見られた回でした。 仁村さんの紹介で念願の経理担当、岸田さんが入社したこと。 彼女の加入で、ブレイクエースもまともな会社っぽくなりました(酷い)。 この世界線の仁村さんは彼(予定)氏と交際順調らしいこと。運命は残酷である。 そして1話目に登場したモブキャラが、大きな変化を遂げて再登場したこと。 しかもそれが今回の騒動の犯人であるいうオイシイ展開。 このおっさんがやたらと強くて、結構キビシイ戦いになりました。おのれ変態。 でもヴィーラさん、馬鹿でかいなんてはしたなくはないかしら。 (2012/03/28) 4話 自分の不甲斐なさと過去を悔やむ上倉くんにかけられた言葉「ヒーローはひとりだけじゃない」がブレイクエースが目指すヒーロー像を象徴しているように思えて印象的でした。 訓練の相手は仁村さんに……と思ったものの、柊妹にも会えるかもという下心から黛部長に師事。 カウンター属性という華やかかつ強力な技能を入手。これは今後に活きそうだ。 戦闘はボスのシールドを破壊してから攻めようとしたら詰んでしまったのだけど、やり直したらすんなり倒せた。 侵属性や直撃を使って一気に攻める方が早道だったか。 今回でストーリーはいち段落。当然のようにヒロインポジションを確保する柊妹抜け目ない。 (2012/05/12) 5話 祝・尚文くんブレイクエース入社。高校生社員って割と珍しい肩書き。 上倉くんとリーゼ社長が、別々の理由から同じ事件に関わる経緯は見ていて微笑ましかったです。 戦闘は天使 VS 天使(?)の対決。尚文のマップ攻撃がうなった。悪いがみんなの出番はないぜ。 ランク3あれば天使さんとふたりで分身を一掃できたのではないか。 そんなわけで、せっかく参加してくれた同級生ズが活躍できず。許して黛部長。 魔力、異世界、異種族など、シナリオ独自の要素がぼちぼち増えてきたので、もう少しキャラクターたちにリアクションを取らせてもいいかなと思った。説明ではなく、反応があっさりめだったので。 (2012/05/26) プチリメイク1~5話 草食系セイギノミカタ主人公と仲間たちの活躍を描くSRC学園シナリオの改訂版。 主な変更点はシナリオの細かな台詞変更、戦闘・データ面の調整、用語辞典の追加とのこと。用語辞典は人物・用語の設定のほか、各話のあらすじ、BGMの参照もできるお得仕様。 旧版の最新話まで公開されたので、今回は再プレイを通じて思ったことを書いてみたいと思います。 ストーリーは毎回、主人公が所属する会社「万屋ブレイクエース」に持ち込まれる依頼を解決していくスタイル。 すぐに変更が分かったのは会話パートの場所表示追加、第1話アンさん関連のやりとりくらいで、あまり別物のように手をくわえられたわけではないようです。第1話のおっさんはこっそりなかったことにしてしまってもよかったかなあとか思ったのですが。3話でがっつり本筋に絡んでくるから存在ごと消滅は無理にしても。 また、あらためて見ると第5話はゲストキャラクターの描写が設定の説明に偏りすぎてしまった感が。この辺の取捨選択はむずかしいと思うのですが、依頼人の関係、天使や天界の説明ははずせないにしても、天狗の山の所在について推測するやりとりは話の流れ的にそれほど突っ込まなくても大丈夫だったと思うのです。 さあLittleHero'sといえばライトな雰囲気と裏腹に難易度高めの戦闘パート。初回プレイ時には毎回泣き言ばかりだった私ですが、第1話後半戦の開始前に体力が回復するように変更されたのをはじめ、各話バランス調整がされたおかげか、結構スムーズにクリアできました。 SRC標準のものとは違うシナリオ独自のSPが用意されているのも特徴で、各ユニットの性能に合わせて設定されたSPを使用することでかなり個性的な運用ができるのが面白いです。 それでもザコ敵相手に貴重なSPを消費して遊んでいられるほどには余裕はないのでした。 作者さんのブログでは次回以降についても触れられていますのでいつかまたブレイクエースの面々に会えますよう、と他人さまになにか言える立場にない私でした。 (2018/07/08) 上へ
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/230.html
キマルヴァミディウム ドゥーマー太古の物語 第4部 マロバー・サル 著 いくつもの戦いをへて、戦争の勝利が見えてきた。チャイマーはマジカや剣術においては秀でていたが、ジナッゴの手による洗練された防具を装備したドゥーマーの装甲兵が相手では、勝てる見込みはきわめて薄かった。“ランド”の平和維持を第一に考えた武将スソヴィンは、「野獣」カレンイシル・バリフと休戦協定を結んだ。スソヴィンは「紛争地域」を獲得し、その代償としてバリフに強力なゴーレムを授けた。北方の蛮族の襲撃からチャイマーの土地を守ってくれるだろう、と。 この贈り物にバリフは満足し、野営地に持ち帰った。ゴーレムを目にすると、仲間の戦士たちはあ然とした。金色に輝くその姿は、誇りに満ちたドゥーマーの騎士そのものだった。その強さを試そうと、彼らはゴーレムを闘技場の真ん中に立たせて稲妻の魔法で打ち抜いた。ゴーレムは目にもとまらぬ早業でほとんどの雷撃をよけてみせた。腰をくねらせることで、バランスを崩さずに攻撃の矛先をかわすことができた。さらに火の玉が弧を描いて飛んでくると、膝を折ってコマのように回転しながら巧みに攻撃をかわした。何度かよけられないこともあったが、もっとも頑丈にできている胸や腹部で攻撃を受け止めていた。 俊敏さと力強さを併せ持ったその創造物に、戦士たちは歓声をあげた。ゴーレムを守備の要に据えておけば、スカイリムの蛮族が村を襲ってきても返り討ちにしてやれそうだった。彼らはゴーレムを、「チャイマーの希望」を意味する「キマルヴァミディウム」と名づけた。 バリフは一族の全家長を連れて、ゴーレムを私室へと持ち込んだ。そこで彼らはキマルヴァミディウムの力、スピード、回復力を徹底的に試した。その設計に穴は見つからなかった。 「丸裸の蛮族め、襲撃にきてこいつを目にしたらどんな顔をするかのう」家長のひとりが高らかに笑った。 「われらではなく、ドゥーマーに似ているのが口惜しいがな」カレンイシル・バリフはゴーレムをとっくりとながめた。 「そもそも、休戦協定など受け入れるべきではなかったのだ」と、強硬派の家長が言った。「武将スソヴィンに冷や汗をかかせるにはもう遅すぎるかのう?」 「遅すぎるということはない」と、バリフは言った。「が、やつの装甲兵たちは手ごわいぞ」 「私の情報では──」と、バリフの諜報参謀が言った。「スソヴィンの兵は夜明けとともに目覚める。その一時間前に襲撃すれば、やつらは赤子も同然だ。まだ水浴びも終えてないだろうから、鎧を装備しているはずがない」 「鎧職人のジナッゴをひっ捕らえて、鍛工術の秘訣を吐かせることもできよう」と、バリフは言った。「善は急げだ。明朝、夜明けの一時間前に襲撃するぞ」 段取りは整った。チャイマーの兵は夜のうちに進軍し、ドゥーマーの野営地になだれ込んだ。キマルヴァミディウムを中心とする第一陣を攻撃に送り込んだが、肝心のゴーレムは調子がおかしくなってチャイマーの兵を襲いだした。それに加えて、ドゥーマーは防具一式を装備し、睡眠も充分にとっており、万全の戦闘態勢にあった。奇襲は失敗し、「野獣」カレンイシル・バリフをはじめとするチャイマーの上官はほとんど捕虜となった。 チャイマーたちは何も訊かないことで誇りを守ろうとした。と、スソヴィンはある仲間から“天啓”を与えられて、奇襲攻撃のことを知ったのだと説明した。 「わが陣にスパイがいたというのか」バリフは皮肉っぽく笑った。 捕虜のそばで立ちすくんでいたキマルヴァミディウムが、頭を取り外した。鋼鉄の体からジネッゴの顔がのぞいた。そう、鎧職人の。 「八歳のドゥーマーはゴーレムを作れる」と、ジネッゴは言った。「だが、ゴーレムになりきれるのは真に偉大なる戦士と鎧職人だけだ」 出版社注: この話は本作品集の中でも、ドゥーマーの伝承を本源とする数少ない物語のひとつである。エルフ語による旧版とは表現法がかなり異なるが、大筋は変わらない。「キマルヴァミディウム」とはおそらく、ドゥーマー語の“ヌチャマサンダムズ”のことではなかろうか。この言葉はドワーフの鎧や「アニムンクリ」の設計図にも散見されるが、その意味は不明である。もっとも、「チャイマーの希望」でないことだけは確かだ。 重装鎧を使ったのは、おそらくドゥーマーが最初である。この話で特筆すべきは、重装鎧を身につけた男が大勢のチャイマーを欺くことができたという事実と、チャイマーの戦士の反応である。この話がはじめて語られた時代には全身を覆う鎧はまだ珍しく新しかったが、その一方で、ゴーレムや大隊長のようなドワーフ製の創造物は広く知られていた。 学術的にはたいへん貴重なことに、マロバー・サルはオリジナル版の数箇所を手を加えずに残している。その一例が、エルフ語版に見られる原文の一節、「八歳のドゥーマーはゴーレムを作れるが、八人のドゥーマーはひとつになれる」である。 この伝承に関して、私のような研究者が興味深いと感じることのひとつが、「召命」という言葉である。この伝承にかぎらず、ドゥーマーの種族には言葉を介さないマジカ的な交信能力が備わっていたと伝えられている。ある記録によると、サイジック教団もそうした神秘の知識があったという。いずれにしても、「召命」なる魔力について具体的に述べた文書は残されていない。 シロディールの歴史家であるボーグシルス・マリエーは、この「召命」こそがドゥーマーの失踪の謎を解く決め手になるとはじめて提唱した人物である。彼の仮説によると、第一紀668年、各所に暮らしていたドゥーマーが、有力な哲学者兼妖術師(ある資料では「カガーナク」と呼ばれている)のひとりに呼び集められ、大いなる旅へと出発したのだという。それは崇高なる叡智を求める旅であるため、ドゥーマーたちはあらゆる都市や土地を投げうってまで、ひとつの民族として、未知なる山嶺を究めようとしたのだと。 小説・物語 茶3