約 16,372 件
https://w.atwiki.jp/hyakukami/pages/2506.html
依頼主 ナビィ 出現条件 2013/6/14 16 40以降 クリア条件 2013/6/17 14 00 までに 以下のアイテムを持ってくる饅頭:50 成功報酬 万能薬(HP回復)自分のHPが100%回復し、仲間のHPも50%回復する。薬草を特別に調合した秘薬。 依頼時 ダッキ様が、今度はたくさんのお饅頭を用意しろって言ってるんです~…ナビィひとりじゃ集めきれないので手伝ってください~! クリア時 お饅頭集めてくださってありがとうございます!これでダッキ様に怒られなくてすみます!…ここだけの話、怒ったダッキ様はとっても怖いんですよぅ~!
https://w.atwiki.jp/catchandchange/pages/1413.html
一見アイテムに見えますが実は魔物です。「くさったまんじゅう」 属性・闇 種族・不定形 説明 放置されたままの饅頭が腐り魔物の魂が宿った饅頭。すさまじい悪臭を放ち、通りかかった生き物にカビの胞子をかけカビだらけにしてしまう。飛び回るハエに糖分を集めてもらっている。 -- プリム君 (2011-11-23 17 42 45) うはwww饅頭wwwwカービィまんじゅう大事件を思い出しますねww 飛び回っているハエにも役割があるんですね!通りかかった生き物をカビだらけにしてしまうとは恐ろしい… -- (^ω^) (2011-11-30 18 17 54) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1459.html
波乗りまりさ(平穏編) さて、目の前にありますは中から外を見ることが出来ない水槽。 半分ほど水で満たされている中に、島みたいに出っ張っている場所が唯一の足場だ。 ゆっくり一匹分しかないスペースなので満足に動くことが出来ず、水を恐怖するゆっくりが被るストレスはどれほどだろうか。 しかし普通のゆっくりでは動き回ることが出来ないし、面白くない。 捕食種では飛べてしまうし、泳ぐことが出来る種も面白くない。 そこで、どうにか面白いものは無いだろうかと森を散策している時に見つけたのだ。 帽子を船の代わりにして川を渡っているゆっくりまりさの姿を。 衝撃だったと同時に、コレは使えると虐待お兄さんの灰色の脳細胞が語りかけた。 早速適当なゆっくりまりさを冷却スプレーで眠らせて捕獲し、家に戻る。 とりあえず帽子を外して中を覗くと、棒切れが入っているのを発見。 お兄さん渾身のガッツポーズ! …が、そんなことをしているうちに目覚めて騒がれると面倒なのですぐさま帽子を戻す。 「よし、それじゃあ本番と行こうか」 小声で気合を入れると、水槽に取り付けた蓋を外してまりさを足場に置く。 ゆぅゆぅと眠っている姿は握り潰したくなるが、そこは我慢。 ゆっくりと蓋を閉めて、中の観察を始めることにした。 「…ゅ…………て……ね…」 ただ寝ているのを眺めていてもつまらないので本を読んでいると、小さく声が聞こえた。 どうやら目を覚ましたようだ。改めて観察を始める。 この水槽は音で外の様子に気づかれないために防音素材で周りを囲ってあり、少々聞き取りづらいのは仕方が無い。 ゆっくりまりさは狭くて思うように動けないので、身を捩りながら周囲を確かめているようだ。 当然周りには仲間など居るはずもなく、あたり一面水で満ちているだけ。 飛び跳ねようとしても、すぐ天井にぶつかりさらに喚き散らしている。 そんなことをしていれば足(?)を踏み外すのは当たり前だろう。 足場からずり落ちそうになるのを必死に踏ん張り、何とか踏みとどまった。 このまま眺めていてもいいのだが、今回はそれがメインではない。 そして用意したのは、ちびゆっくりの焼き饅頭。別に親子と言うわけではない。 ゆっくりだと分からないように削って焼いてあるので、ただの饅頭にしか見えないだろう。 軽く引っ張れば落ちるように括り付けたその饅頭を蓋の一部を開いて中に吊るす。 焼き饅頭の匂いで平静を取り戻したまりさは、自分の横に饅頭が浮いているのを発見した。 食べようと舌を伸ばしてみるが届かない。 饅頭と水面を交互に見ながら絶望している。 「ゆ……り……ちに……ね!」 ゆっくりこっちにきてね、だろうか。 饅頭に話しかけるなどと無駄な行為をすること10分。 それまで絶望で染まった顔をしていたまりさだが、何かに閃いたようだ。 「…れ…ゆ……り…けるよ!」 まりさは帽子を器用に外し、帽子を水に浮かべた。 お、遂に来たかな。 水に落ちないように、帽子に水が入らないように慎重に帽子に乗り込んでいる。 ここで水槽を揺らして落としたい衝動に駆られるが、そこは鋼の虐待ハート。 拳を握り締めながら耐えているとどうやら乗り込めたようだ。 口に咥えた棒切れを動かして饅頭に近づく。 まりさには目の前にある饅頭しか映っていない。 それを確認した俺は、水槽の横に取り付けられている取っ手を回し始めた。 ゆっくりと回すとそれに連動して足場がゆっくりと水の中へ沈み込む。 これで水槽の中にあった唯一の足場も消えた。 そしてまりさは後ろで起こっていることに気づくこともなく饅頭にかぶりついていた。 「…ーし…むー…ゃ…し……せー♪」 その幸せとやらも、後ろに気づいた瞬間に終わるだろうがね…! 「ゆ…く…もど……! ゆゆゆゆ!!!」 食べ終えたまりさが地面に戻ろうと向きを変えると、あったはずの足場が無い。 「じ…ん…ん……ー!? ……くり…く…てな…で……きて…!!!」 足場のあった場所まで戻ったまりさは、ぐるぐると周りに足場がないか探すが見つかるわけも無い。 「か……て…いで…て……よー!! …っぐ…やず…ぜて゛ー!!!」 よほど大声で喚いているのか外からでもそれなりに何を言っているのかがわかる。 暫くの間泣き叫んでいたが、それも段々と聞こえなくなった。 覗き込んでみると、どうやら疲れて眠ったようだ。 眠っている間に落ちないのだろうか…。 疑問は尽きないが、今回はここまでにしておこう。 三日三晩寝ずに作成した自信作が、こうして上手く稼動したので気が抜けてしまった。 一旦睡眠をとることにして、新たな実験をしてみようと思う。 目覚めたときに水槽が餡子で染まっていないことを願いつつ、俺は布団に潜り込んだ。 続く? あとがき。 何度かネタ振りをしてみたものの、誰も書いてくれそうに無いので自分で書いてしまった。 今回は平穏(準備)編。 続きは未定。 物足りない場合は適当に派生させて欲しい。 未定だけど予定しているのは、にんっしんっ編、家族編、津波編の名前だけ。 この馬鹿が書いたもの →ゆっくりのある生活? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/wiki6_piro/pages/7301.html
土産菓子 都道府県 市町村 名称 製造者 歴史 賞味期限 北海道 帯広市 マルセイバターサンド 六花亭 1977年~ 10~11日 三方六 柳月 1965年~ 15日 札幌市 白い恋人… 石屋製菓… 1976年~ 120日 生チョコレート ロイズ 1995年~ 冷蔵1ヶ月 ポテトチップチョコレート ロイズ 2002年~ 1ヶ月 旭川市 き花 壺屋総本店 1982年~ 55日 中標津町 標津羊羹… 標津羊羹本舗 1927年 洞爺湖温泉 わかさいも 大正時代~ 八雲町 バター飴 1931年~ 苫小牧市 よいとまけ 1953年~ じゃがポックル カルビー(千歳工場) 2002年 秋田県 秋田市 金萬 金萬 1940年頃? 7日 さなづら 1957年~ もろこし… 江戸時代 仙北市 なると餅 えびす餅 岩手県 一関市 亀の子せんべい 大船渡市 かもめの玉子 さいとう製菓 1952年~ 山形県 最上地方 くじら餅 江戸時代 宮城県 仙台市 萩の月 菓匠三全 1979年~ 14日 白松がモナカ 白松がモナカ本舗 1932年~ 福島県 郡山市 エキソンパイ 三万石 1960年~ 6日 ままどおる 三万石 1967年~ 8日 薄皮饅頭 柏屋 江戸時代 家伝ゆべし… かんのや 江戸時代 茨城県 水戸市 吉原殿中 江戸時代 水戸の梅 明治時代 のし梅 群馬県 安中市 磯部煎餅… 1877年頃 埼玉県 行田市 十万石まんじゅう 十万石ふくさや 1952年~ 5~6日 熊谷市 五家宝 江戸時代 千葉県 小湊 鯛せんべい 数社 大正時代~ 銚子市 ぬれせんべい 1963年 東京都 浅草 雷おこし 江戸時代~ 東京ばな奈 グレープストーン 1991年 神奈川県 鎌倉市 鳩サブレー 豊島屋 明治時代 山梨県 桔梗信玄餅 桔梗屋 1968年~ 身延町 身延饅頭 栄昇堂、甘養亭、松屋など 静岡県 伊東市 ホールイン 梅家 浜松市 うなぎパイ… 春華堂 1961年~ 長野県 上田市 みすず飴 飯島商店 明治時代 岐阜県 栗きんとん 明治時代 愛知県 ういろう 石川県 金沢市 柴舟 江戸時代 加賀八幡起上もなか うら田… 福井県 羽二重餅 1847年~ 京都府 八つ橋 生八つ橋 阿闍梨餅… 満月 大正時代 大阪府 粟おこし 江戸時代 岩おこし 江戸時代 三重県 伊勢市 赤福餅 赤福 1911年~ 夏期2日冬期3日 和歌山県 新宮市 鈴焼 香梅堂 5日 兵庫県 有馬温泉 炭酸せんべい 明治時代 那智勝浦町 那智黒 1877年~ 10ヶ月 広島県 もみじ饅頭 明治時代 愛媛県 松山市 タルト 江戸時代 坊っちゃん団子 明治時代 大洲市 志ぐれ 江戸時代 香川県 琴平町 灸まん… 坂出市 名物かまど 徳島県 鳴門市 鳴門饅頭 鳴門堂 福岡県 福岡市 二◯加煎餅… 東雲堂 1906年~ 鶴乃子… 石村萬盛堂 明治時代 福岡市 博多通りもん 名月堂 1993年~ 長崎県 長崎市 長崎カステラ 明治時代~ 一口香 1844年~ 大分県 大分市 ざびえる ざびえる本舗 1962年 竹田市 荒城の月 江戸時代~ 鹿児島県 鹿児島市 かるかん…饅頭 江戸時代~ げたんは 春駒 江戸時代 西郷せんべい 3ヶ月 霧島市 赤松 沖縄県 読谷村 紅いもタルト… お菓子のポルシェ 1986年~ 30日 関連項目 き花 よいとまけ わかさいも エキソンパイ マルセイバターサンド 博多通りもん 昇陽堂 桔梗屋 管理用 萩の月 鯛せんべい タグ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/602.html
波乗りまりさ(平穏編) さて、目の前にありますは中から外を見ることが出来ない水槽。 半分ほど水で満たされている中に、島みたいに出っ張っている場所が唯一の足場だ。 ゆっくり一匹分しかないスペースなので満足に動くことが出来ず、水を恐怖するゆっくりが被るストレスはどれほどだろうか。 しかし普通のゆっくりでは動き回ることが出来ないし、面白くない。 捕食種では飛べてしまうし、泳ぐことが出来る種も面白くない。 そこで、どうにか面白いものは無いだろうかと森を散策している時に見つけたのだ。 帽子を船の代わりにして川を渡っているゆっくりまりさの姿を。 衝撃だったと同時に、コレは使えると虐待お兄さんの灰色の脳細胞が語りかけた。 早速適当なゆっくりまりさを冷却スプレーで眠らせて捕獲し、家に戻る。 とりあえず帽子を外して中を覗くと、棒切れが入っているのを発見。 お兄さん渾身のガッツポーズ! …が、そんなことをしているうちに目覚めて騒がれると面倒なのですぐさま帽子を戻す。 「よし、それじゃあ本番と行こうか」 小声で気合を入れると、水槽に取り付けた蓋を外してまりさを足場に置く。 ゆぅゆぅと眠っている姿は握り潰したくなるが、そこは我慢。 ゆっくりと蓋を閉めて、中の観察を始めることにした。 「…ゅ…………て……ね…」 ただ寝ているのを眺めていてもつまらないので本を読んでいると、小さく声が聞こえた。 どうやら目を覚ましたようだ。改めて観察を始める。 この水槽は音で外の様子に気づかれないために防音素材で周りを囲ってあり、少々聞き取りづらいのは仕方が無い。 ゆっくりまりさは狭くて思うように動けないので、身を捩りながら周囲を確かめているようだ。 当然周りには仲間など居るはずもなく、あたり一面水で満ちているだけ。 飛び跳ねようとしても、すぐ天井にぶつかりさらに喚き散らしている。 そんなことをしていれば足(?)を踏み外すのは当たり前だろう。 足場からずり落ちそうになるのを必死に踏ん張り、何とか踏みとどまった。 このまま眺めていてもいいのだが、今回はそれがメインではない。 そして用意したのは、ちびゆっくりの焼き饅頭。別に親子と言うわけではない。 ゆっくりだと分からないように削って焼いてあるので、ただの饅頭にしか見えないだろう。 軽く引っ張れば落ちるように括り付けたその饅頭を蓋の一部を開いて中に吊るす。 焼き饅頭の匂いで平静を取り戻したまりさは、自分の横に饅頭が浮いているのを発見した。 食べようと舌を伸ばしてみるが届かない。 饅頭と水面を交互に見ながら絶望している。 「ゆ……り……ちに……ね!」 ゆっくりこっちにきてね、だろうか。 饅頭に話しかけるなどと無駄な行為をすること10分。 それまで絶望で染まった顔をしていたまりさだが、何かに閃いたようだ。 「…れ…ゆ……り…けるよ!」 まりさは帽子を器用に外し、帽子を水に浮かべた。 お、遂に来たかな。 水に落ちないように、帽子に水が入らないように慎重に帽子に乗り込んでいる。 ここで水槽を揺らして落としたい衝動に駆られるが、そこは鋼の虐待ハート。 拳を握り締めながら耐えているとどうやら乗り込めたようだ。 口に咥えた棒切れを動かして饅頭に近づく。 まりさには目の前にある饅頭しか映っていない。 それを確認した俺は、水槽の横に取り付けられている取っ手を回し始めた。 ゆっくりと回すとそれに連動して足場がゆっくりと水の中へ沈み込む。 これで水槽の中にあった唯一の足場も消えた。 そしてまりさは後ろで起こっていることに気づくこともなく饅頭にかぶりついていた。 「…ーし…むー…ゃ…し……せー♪」 その幸せとやらも、後ろに気づいた瞬間に終わるだろうがね…! 「ゆ…く…もど……! ゆゆゆゆ!!!」 食べ終えたまりさが地面に戻ろうと向きを変えると、あったはずの足場が無い。 「じ…ん…ん……ー!? ……くり…く…てな…で……きて…!!!」 足場のあった場所まで戻ったまりさは、ぐるぐると周りに足場がないか探すが見つかるわけも無い。 「か……て…いで…て……よー!! …っぐ…やず…ぜて゛ー!!!」 よほど大声で喚いているのか外からでもそれなりに何を言っているのかがわかる。 暫くの間泣き叫んでいたが、それも段々と聞こえなくなった。 覗き込んでみると、どうやら疲れて眠ったようだ。 眠っている間に落ちないのだろうか…。 疑問は尽きないが、今回はここまでにしておこう。 三日三晩寝ずに作成した自信作が、こうして上手く稼動したので気が抜けてしまった。 一旦睡眠をとることにして、新たな実験をしてみようと思う。 目覚めたときに水槽が餡子で染まっていないことを願いつつ、俺は布団に潜り込んだ。 続く あとがき。 何度かネタ振りをしてみたものの、誰も書いてくれそうに無いので自分で書いてしまった。 今回は平穏(準備)編。 続きは未定。 物足りない場合は適当に派生させて欲しい。 未定だけど予定しているのは、にんっしんっ編、家族編、津波編の名前だけ。 この馬鹿が書いたもの →ゆっくりのある生活 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/9228.html
このページはこちらに移転しました 当たりと外れ 作詞/ものぐさ大臣 何も食べ物がない あと少しの命 空腹も限界で 喋る事もできなくて 誰か食べ物をくれ この命のために 空腹も限界で 歩く事もできなくて 誰かに願いが伝わったのか 目の前に 食べかけの饅頭が… 食べていいのだろうか 食べていけないのなら このまま死んでいくしか無いけれど 食べていいのだろうか 食べていけないなら 食べて悔いを残すより そのまま死んだ方がまだましだ 何も食べ物がない あと少しの命 空腹も限界で 喋る事もできなくて 誰か食べ物をくれ この命のために 空腹も限界で 歩く事もできなくて 饅頭を食べて 怒られて 人生の 最後の最後に 迷惑を かけてしまうなら 食べないで 死んだ方がましさ 誰かに願いが伝わったのか 目の前に 食べかけの饅頭が…
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1569.html
・希少種愛でメイン、イジメもあるよ! ・通常種虐待・ゲス制裁も嗜む程度に ・色々な方のネタを無断拝借してしまいました、ごめんなさい ・『ふたば系ゆっくりいじめ 344 ゆっくりで漬け物』の後日談です 一応、前作を読んでいなくても話は通じるようにしたつもりです ・30秒でわかる!俺設定ゆっくりえーき語講座 【よいぞ】 基本、めーりんにおける「じゃお/じゃおおん」みたいなモン 「よいぞ!よいぞ!」 (うっめっ!これめっちゃうっめ!) 「よいぞ~?よいぞぉ!」 (何ら~?わらしの酒が飲めらいって言うのかぁ?ほれぇ!もっろ飲めぇ!) 【しろ】 肯定、無罪 【くろ】 否定、有罪 【しけい】 死刑、ヌッ殺す 【ぜんこーよ】 ~しなさい、~してください、プリーズ 「ぜんこーよ!」 (私にあまあまさんをくれること。それがあなたが積める善行よ。) 「ぜんこー…よ?」 (あなたの赤ちゃん…欲しいなぁ…?) 以上です。他の言葉は喋れません。 ================== コッチ コッチ コッチ コッチ……… 古い時計の音が響く。 (ふう…) 心の中で何度目かになる溜息を吐き、モゾモゾと炬燵の中に一段深く身を沈める。 炬燵を挟んだ向かいには、冴えない顔をした若者 …と呼ぶにはチト苦しくなってきた歳の男が一人。 ワシの倅じゃ。 「………」 「………」 久々の倅の里帰りじゃったが、互いに何も喋らず、沈黙だけがその場を支配する。 その原因は… 「よいぞ……」 今、おずおずと小さく声をあげた饅頭にあった。 ================== 遡ること、五時間ほど前 ガラガラガラ 「ただいまー。」 「おうおう、よう帰ったのぉ。外は寒かったじゃろ。」 田舎暮らしがイヤだと言って家を飛び出した倅の二年ぶりの帰郷。 こん親不孝もんが!と怒鳴りつけたい所でもあるが、 喜ぶ気持ちが勝ってしまうのが馬鹿親の性かのう。 まあ、それも無理もない事じゃ。 なにしろ、今日は、待ちに待った… 「…?一人で来おったのか?」 おお寒い寒いと言いながら、コートも脱がず、 両手に大荷物を下げたまま炬燵へと飛び込んだ倅に、 そんな疑問の声を投げかける。 「え?」 荷物の内の一つ…なんじゃ、アレは…ペットを運ぶ…ケージ…とか言うヤツかの…? …を炬燵の上に乗せ、ゴソゴソといじくりながら、倅が聞き返す。 「い、いや、今日連れてくると言うとったじゃろ…?その…"彼女"を…」 そうじゃ。 何ヶ月か前に電話をした時に、結婚したい女性がいる、 暮れに帰る時に一緒に連れてくると言うとった。 それじゃったから、首を長~~くしてこの日が来るのを楽しみに待っておったんじゃ。 いやあ…いい歳こいて、浮いた話の一つも聞かせんから、 正直、孫の顔を拝むのはもう無理かと諦めかけておったんじゃがのう… 長生きはするもんじゃ… で、どこじゃ?どこにおるんじゃ?その"彼女"は? ひょっとして、後から来るとかなんとかかの…? ま、まさか、もう愛想を尽かされて… 「え…やだなぁ、お袋。ちゃんと連れてきてるじゃないか?ボケるにはまだ早いだろ?」 ああ、まだボケとらんわい。 ボケとるのはお前の方じゃ。どこに彼女がおると言うんじゃ。 と、口にしようとしたワシの目の前で倅がケージの蓋を開けると、 そこから丸い物体が這いだしてきた。 紅白リボンや金の延べ棒?やらがゴチャゴチャついた冠のような帽子を被り、 緑色の髪をした生首状の物体。 見た事の無い種類じゃが、その下ぶくれた顔は、他に見紛いようもない。 ワシら農家にとってはお馴染みの顔。 山の幸にして、畑の害獣、 "ゆっくり" じゃ。 「ゴホン…紹介するよ。俺の彼女…いや、妻の"えーき様"だよ。」 えっ 「よ、よいぞ!」 どこか緊張したような面もちで奇妙な鳴き声を上げてから、 生首饅頭が前のめりになり、顔を炬燵板の上にベタリとへばりつかせる。 「えーき様、ウチのお袋です。」 「よ、よいぞ!よいぞ!」 再び奇妙な鳴き声をあげて炬燵板に顔を押しつける。 「な、何と言うた…?」 「ん?ああ、『ふつつか者ですが、よろしくお願い致します。』だって。」 疑問の声を上げたワシに、倅が何か答える。 ツッコミ所は色々とあるが、ワシが聞きたいのはそんな事じゃあない。 その前にお前が何と言ったか、聞いたんじゃ。 いやあ、最近耳が遠くなったのかのう…どうにも聞き違えたようじゃあ… のう…そんな馬鹿な話がのう…ゆっくりがのう…ゆっくりとのう… 「それと…」 何からどう話したら良いかわからず、口をパクパクさせているワシを無視して、 倅がゆっくりのZUN帽をヒョイと持ち上げる。 その下の緑の髪の上には、琵琶の実ぐらいの小さな饅頭が一つ。 それを摘んで、ワシの目の前に置く。 「こっちが俺達の娘の"えいき"だよ。」 えっ 大饅頭とサイズ以外は瓜二つのちび饅頭が、 小首を傾げながら小さな目でじいっとワシを見上げてくる。 「よいぞ?」 「ホラ、えいき、お婆ちゃんにご挨拶は?」 「…よいじょっ!!」 大饅頭と倅に促され、ちび饅頭がにこやかな笑顔を浮かべて声を張り上げる。 そして、部屋の中の風景がグラリと揺れ、目の前が徐々に暗くなっていった。 「…?!お袋…!?おい!お袋…!!」 「よいぞ?!よいぞ?!」 「よいじょぉぉ…?!」 「…………ぉっ!………っ!!」 「………!」 「…」 ================== コッチ コッチ コッチ コッチ …… ボーン ボーン ボーン ……… 時計の音で目を醒ますと、いつも見慣れた薄汚れた天井が目に入った。 ふう…夢じゃったか…どうりで無茶苦茶な話じゃったわい… 「!お袋!気がついたか!?体は、体は大丈夫か?!俺の声、聞こえるか?!」 「よいぞ!?よいぞ!?よいぞっ!?」 ふう…やっぱり現実じゃったか…どうりで夢にしては随分とリアルだったわい… 「耳元で騒ぐな、騒々しい。ワシはピンピンしておるわい。」 体を起こしながら答える。 「そ、そうかい…?良かった…急に倒れるから…」 「よいぞぉ…!」 布団の横で倅達が安堵したような笑みを浮かべる。 枕元ではちび饅頭が寝とる。目元が濡れたような跡があるの… 「ふん」 事の元凶共に一瞥をくれてから、布団から立ち上がり炬燵へと向かう。 「お、おい…!まだ寝てろよ。先生も今日一日は安静にしてろって…」 「なんじゃ、お前、あのヤブ医者まで呼んだのかい!大げさな!」 「大げさって…!当たり前じゃないか!前にも倒れたんだろ!」 「くろっ!くろっ!」 「え…あ、ああ…そ、そうですね… ごめん、お袋…怒鳴ったりして… その…先生が…何かストレスによる物じゃないかって…何か…あったのかい…?」 あった、あった。 お前らだーーーっ!と叫び出したい気持ちを抑えて、炬燵に潜り込むと、倅達を睨む。 「お前達、そこに座れ。話がある。」 ================== 倅から聞き出した話を纏めると大体こんな事のようじゃ。 ・出会いはペットショップで突然に ・倅の方が一目惚れして、お持ち帰り ・今では俺達相思相愛でラブラブで毎日がバラ…以下、ウザかったので略 ・倅のウザい話を聞いてるフリをしながら、 ゆーぽっどたっちでネットに繋いで調べたところ、 このゆっくりは「ゆっくりえーき」と呼ばれる希少種らしい 市場相場は…ゼロがひい、ふう、みい、よお、いつ…たくさん…… な、なんじゃとおおお?! ・ずっと同棲生活を送っていたが、先週子供が生まれたので籍を入れる事にした ・HENTAIお兄さんじゃねーか また目の前がグラグラと揺れだしとるが、気力でなんとかコッチに踏みとどまる。 デキの良い子ではなかったが、健康で真っ直ぐに育ってくれたと思っておったにのう… 一体どこでネジ曲がったのやら… こんな事なら、街に出ると言った時にブン殴ってでも止めておくべきじゃったか… まあ、なんにせよ、親であるワシが言うべき事は一つじゃ。 「ワシは、そんなのがお前の嫁だなんて認めんぞ。」 「え…?!」 「よ、よいぞ…?!」 ワシの言葉を聞いた途端、 倅とゆっくりがそりゃ青天の霹靂だわーとでも言いたげに、驚きの表情を浮かべる。 いやいやいやいや、驚きなのはこっちの方じゃよなぁ?! どうして認めて貰えると思っとったのか、 その自信に根拠があるなら是非聞いてみたいわい。 「な、なんでだよ!?えーき様のどこが不満だって言うんだよ…!」 「…なんでも何も…そやつは人間じゃなくて、ゆっくりじゃろが!」 「…………はぁぁ?」 倅ぇ。今、ワシの事、鼻で笑ったのかのう。 「ハハハ、何言ってるんだよ、お袋。 えーき様をゆっくりなんかと一緒にしないでくれよ。 ホラ~、よく見てみろよ。このえーき様の可愛らしさを! 間抜け顔饅頭とは、似ても似つかないだろ?」 「よ、よいぞぉ……!」 饅頭が頬を赤らめながら、ぽいんぽいんと倅に体当たりをする。 「照れなくてもいいですよ、えーき様。だって本当に可愛いんですから! …可愛い…本当に…可愛いですよ…んー…えーき様ぁ…」 キモい。饅頭を抱え上げてチュッチュ、チュッチュしてる自分の倅がキモい。 「やめんかい!」 怒鳴って炬燵板をドンと叩くと、ようやく倅達がちゅぽんと音を立てて離れる。 が、糸を引きながら、互いに見つめ合ったままなので、 ドンドンと更に炬燵板を叩いて、ようやくこちらに向き直らせた。 よし。KOOLになれ、ワシ。 自分の倅を信じるんじゃ。 倅を信じる…!ワシの倅は饅頭に欲情するようなHENTAIじゃない…! その前提で考えれば、途端に新しい可能性が立ち上がってきよる。 そうじゃよ!きっと何かワケがあって、こんな事をしとるに違いない! ホント、頼むから、そうであってくれ! 「お前、まさか…実はその饅頭には物凄いチート能力があって、 その能力を利用して巨万の富を得ようと…」 と倅の耳元でボソボソと囁く。 そうじゃそうじゃ、希少種とか言っておったしの。 ミソの足りない純朴ゆっくりを騙して利用しようという魂胆か。 倅ぇ…お主もワルよのう…! 「へ?チート能力…?いや、別にそんな物は…あ、アレだ。 "俺を魅了してやまない程度の能力"…なんちゃって!なんちゃって!ゆふふ!」 「よいぞぉ…!よいぞよいぞっ!」 「え?『魅了されてるのは私の方よ。』ですってぇ? なーに言ってるんですかぁ、えーき様。俺の方がずっとずっとえーき様のこと…」 「よいぞぉぉ…!」 ドンッ!! (・_・) 「「………」」 (・_・) よし、次。 「…あ。あれかのう…?思い込みの力で胴付きになって、やがては人間に変わるとか…」 「は…?お袋……何言ってんの? 漫画じゃあるまいし、そんな不可思議現象起きるわけないだろ?」 おお、倅よ倅、どうしてワシを可愛そうな人を見る目で見るのかのう。 嫁入りする時に持ってきた手鏡はどこにしまっておったか… 「……ゆっくりと人間の中身が入れ替わってて、実は中の人は美人女子高生のとしあ…」 「中のとしあきなどいない。」 「悪い魔法使いの呪いでー、ゆっくりにされててー、接吻をするとー…」 バン! 今度は倅が炬燵板を叩く。 「いい加減にしてくれ!なんなんだ!?さっきから!?訳のわからん事ばかり!!」 炬燵から立ち上がり、僅かに怒気の籠もった声を張り上げて続ける。 「えーき様の何が不満なんだ!? ちょっと首から下が無いってだけで、えーき様は最高の女性だ! 俺はえーき様を愛してるし、えーき様だって俺を愛してくれてる! 可愛い子供…お袋の孫だって産まれたんだぞ!他に何が足りないって言うんだっ!?」 オマエの脳ミソじゃろおおおおお? という言葉はググッと飲み込む。 「そもそも、ゆっくりが人間との間に子供を産むなんて聞いた事もないわい! 大方、お前の目を盗んで、その辺のゆっくり相手に作った子供じゃあないのかい!」 「!!…く…くろ…くろぉ……」 おお、おお、饅頭がいっちょ前に涙なんぞ流しおって。 「お袋…!言っていい冗談と悪い冗談があるぞ…!!」 倅が拳を握りしめながら、ワシを睨みつけてくる。 「ふん、冗談なもんか!だって、そうじゃろが。 そっちのちび饅頭、母親には似とるが、お前にはちーとも似とらんわい。」 「えーき様似、大いに結構だろうが!将来美人間違いなし! ゆくゆくは、大スターか、美人すぎる最高裁判長か、産油国の王族に嫁入りだよ! まあ、誰にも嫁にはやらないけどなぁ!」 「よいぞ?よいぞ?」 「え?笑った時の口元はアナタに似ていて素敵よ?ゆふふ…そうですかぁ?」 「よいぞ、よいぞぉ!」 「えーき…今夜は俺の悔悟の棒がえーきの中で十王裁判だよ… 俺の十王様を全員満足させるまで寝かさないからね…」 「く、くろぉ…」 「ん?『ダメよ、お義母様がいるのに…』だって?大丈夫、年寄りは寝るの早いから…」 バリン、ボリッ、ボリッ… 炬燵の上に置いてあった煎餅を囓る。 あー、腹立たしい。 言われてみると、確かに口元とか倅に似てなくもない所がますます腹立たしいわい。 爺さんや、アンタの倅はとんだHENTAI息子じゃったよ。 「とにかく!ワシは、そんなのがお前の嫁だなんて認めんぞ!」 ================== 「………」 「………」 「よいぞ……」 とまあ、そんなこんなで今に至るという訳じゃ。 「…えーき様が悪いんじゃないですよ。悪いのは、話のわからないお袋の方だ。」 しょんぼりした顔で話しかけた饅頭を倅が慰める。 さっきから、饅頭を嫁と認める認めないで、 同じようなやり取りばかり何度も繰り返しじゃ。 根本的に価値観がズレておる、というか、倅のネジが外れておるから、 話し合いにも何にもなりやせん。 ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン 時計の鐘が鳴った。 「…ふん…取りあえず、この話は、また明日じゃ。飯の支度をせんとならんわい。」 ぶつぶつと呟いて立ち上がる。 本当ならば、倅ともども、全員家から追ん出したい所じゃが、 もう帰りの電車も無い時間じゃ、この寒空の下に放り出して凍死でもされたら、 村中のもんから白い目で見られてしまうわ。 「よ…よいぞ!よいぞ!」 ゆっくりがボンボン飛び跳ねながら、ワシに向かって何やら喚く。 「…ああん?」 「『私もお手伝いします、お義母様』だって。」 …よいぞよいぞ、しか言っておらんじゃろ。 倅が言うには、表情や声の抑揚の違いで言っている事が判別できるらしいが、 ワシは、倅の頭の中に悪い菌が湧いているんじゃないかと睨んどる。 「いらんお世話じゃ。 大体、そんな体で何ができると言うんじゃ。包丁一つ握れやせんじゃろが。 それで、人間様と夫婦(めおと)になろう等と、おこがましいにも程があるわい。 …それと、ワシはオマエなんぞに"お義母様"などと呼ばれる覚えはないからの。」 「…よいぞぉ……」 うなだれているゆっくりの頭を撫でながら、 倅がこちらを睨んで来るが、気にせず夕食の準備へと向かう。 ガンッ!! 腹立ちまぎれに、台所に置いてあった木箱を蹴りつける。 ゆひいぃぃっ!? ゆやあぁぁ! にんげんしゃん、きょわいよおぉ! にんげんしゃん?! ゆ、ゆっくいちてにぇ? ゆっくち…! ゆっくちぃ…! だ、だいじょうぶだよ! れいむのおちびちゃんたち! おちびちゃんたちは、おかあさんが いのちにかえても まもるがらねぇ…! 木箱の中で五月蠅く叫んでいるのは、ヤツと同じ、ゆっくり共じゃ。 久しぶりに帰ってくる倅と未来の"嫁"のために、 ご馳走でも振る舞おうと、猟師の源爺に頼んで採ってきてもらったんじゃが、 まさか、コレを同じゆっくりに振る舞うハメになるとはのう… 野菜を洗い、ザクザクと切り始める。 適当な大きさに切り終えたら、湯を張った鍋で暫くゆがく。 「…手伝うよ。」 いつの間にか台所に来ていた倅が声をかけてくる。 黙ってゆっくりが入った木箱を指さすと、 倅も黙ったままたらいに水を張り、ゆっくりを入れてタワシで洗い始めた。 グツグツグツ… 「お袋……」 「………」 ゆびゃあぁぁ! ぢくぢくずるぅ! いだいぃ!! れいむの たまのおはだがぁ!! 湯の沸き立つ音だけが響く静寂を破るように、倅が口を開く。 「確かに…えーき様は人間じゃないよ。 普通の夫婦と何もかも同じに…と行かないのは、百も承知だ。」 「………」 あびゅ! あびゅびゅう! れいみゅのおかおが とけちぇるぅぅ! ゆんやぁぁ! 野菜に軽く火が通った所で、火から降ろす。 「お袋に心配かけるのも…済まないと思っているよ。 でも、もう俺には、えーき様以外の女性は考えられない。 例えお袋に認められなくても、俺はえーき様と夫婦として暮らす。 もう子供じゃないんだ。誰を好きになるかまで、お袋の指図は受けない。」 「………」 やめてあげちぇね! まりちゃの いもうちょが、いやがっちぇ ボチャッ ゆびゅっ! あぶっ! あっぶっ!? お、おぼれりゅうぅぅぅ! 倅には何も答えず、野菜を大皿に盛り、囲炉裏端へと運ぶ。 おにいさん! れいむをはなしてね! いまならゆるしてあげるよ! ぷく…ゆぎっ あ゛っ! あ゛っ! やべでええ! れいぶの びはだを はがざないでえぇ! いぢゃいよおお!? ゆびっ! ゆびいぃ!! 倅が親ゆっくりの皮を剥ぎ、中身の餡子を囲炉裏にかけた鉄鍋の中に入れる。 あづいいいいい!! あづ…ゆぎぐ?! ゆげっ! ゆげっ! ゆげげげ!! ワシの姑の姑の代から伝わる秘伝の自家製ミソだれを鍋に入れ、 熱で柔らかくなった餡子と混ぜ合わせる 完全に餡子が煮立つ前に、少し弾力のある中枢餡と呼ばれる部分を探り当て、 目印として、そこに爪楊枝を一本突き立て、その箇所に時々差し水をする。 中枢餡が沸騰すると死んでしまうため、温度が上がりすぎないようにするためじゃ。 こうして、死なせないようにする事によって、 煮れば煮るほどに、苦痛によって餡子の旨味が深まって行くんじゃ。 ゆっくりの歯がドロリと溶けてきたら頃合い。 このミソ餡鍋に、野菜や活き子ゆっくり・赤子ゆっくりをサッとくぐらせ、 たっぷりのミソ餡を絡めて食べる。 この地方に古くから伝わる郷土料理、冬のご馳走"ゆっくりフォンデュ"じゃ。 「ほれ、そろそろ子ゆっくりを準備せんか。」 「ああ。」 倅がザルから黒帽子の子ゆっくりを一つ取り出し、 ザルに蓋をするようにまな板を置き、そこに子ゆっくりを乗せる。 のーびのーびと良く育った上物のゆっくりじゃの。旨そうで腹がQNQN鳴るわい。 やめるんだじぇ…!? はなしゅんだじぇ…!? まりしゃ ゆ゛ぎぴいいぃぃっ?! まな板の上で、もるんもるんと暴れる子ゆっくりの背中に串を通し、 身動きを取れなくしてから、包丁を構える。 「よ、よいぞ!」 「え…?」 「よいぞ!よいぞ?」 「…わかりました。じゃあ…」 そう答えて、饅頭の口に包丁の柄を咥えさせる。 ふん…何のつもりじゃ… 「足の方から…これくらいの厚さずつで輪切りに…串が当たったら包丁を止めて…」 倅が子ゆっくりの上まで包丁の刃を導き、 指先で切り方を示してやると、饅頭がコクコクと頷く。 や、やめちぇね?! やめちぇね?! かわいいまりしゃに、いたいこちょ… トン …ゆっ…ゆっ…ゆぎいぃぃぃ! まりしゃのあんよしゃんがあああぁ!?!? 一度頭を後ろに反らし、戻る勢いを利用して包丁をまな板に振り下ろし、 子ゆっくりの底部を輪切りにする。 じゃ・が! 「なーんじゃ、その切り方はぁ。なっとらんのう。 切り口が潰れて、餡子がダダ漏れじゃあ。 ゆっくりフォンデュに使う子ゆっくりは、活きが命じゃろが。 バラけんように滑らかに切り、鍋の中でゆっくりが苦しむ内に、 バラバラと身がほぐれた所を食うのが旨いんじゃ。 そんな切り方では、鍋に入れる前に死んでしまうわ。 ほんに、使えん饅頭じゃのう。」 「よいぞ…」 「あんなの気にしなくていいですよ、えーき様。さ、続けて。」 トン トン トン … ぎぴいぃぃ…! いぎいぃぃ…! だぢゅげ…でぇぇ…おきゃあ…しゃあん…… お…ぢび…ぢゃ…グツグツ…たずげ…るがらね… グツグツ…おがあざんが…グツグツ…だずげる…がらねえ… 「そうそう、いい感じですよ。」 「よ、よいぞ…!」 ふん、いい感じなものか。全然ダメじゃあ。 子ゆっくりは虫の息じゃあないか。 ま、最後の方は最初よりはちーとはマシじゃったが。 「さ、もう一匹お願いしますよ…ん?」 (にんげんさんを やっつけたんだじぇ!!) 「おっ、指噛んだ。コイツは活きがいいなぁ、ハハハ。 これぐらい活きが良ければ、雑に切ってもピンピンしてますからね。 気楽にやって大丈夫ですよ。今串打ちますからねえ。」 ブスッ !? !? 「さあ、えーき様。落ち着いてゆっくりやれば大丈夫ですよ。」 「よいぞ!」 饅頭が、もう一匹の子ゆっくりに包丁を入れて行く。 トン トン トン … いちゃいんだじぇぇ~~!! ゆっぐぢでぎないんだじぇ~!! ゆぎいいいい! ゆひいいい゛い゛い゛!! おぢびぢゃ…グツグツ…だずげる…グツグツ…よ… グツグツ…いば…グツグツ…だずげるよ… 「よーし!今度は上手く行きましたね!」 「よいぞ…!」 ふん、上手いもんか。 おおまけにまけて、ぎりっぎりっ、合格点がせいぜいじゃ。 鍋に野菜と赤子ゆっくりを放り、 掬い網に乗せた子ゆっくりの輪切りと一緒に、鍋の中を泳がせる。 あびいぃぃ!? あぢゅ…ぴぎいぃ!! いだいいぃぃ! まりしゃのからだいだいいぃ!! どうなってりゅんだじぇぇぇ?! あぢゅいよぉ! いぢゃいよぉぉ! ゆぴいぃぃぃ!? あぢゅ!! あぢゅいぃぃ!! だじゅげちぇ、みゃみゃあ!! あちゅいぃぃ! れいみゅあちゅいよぉぉ! ゆっくちじぇきにゃいぃ! おきゃあしゃぁん! ぢょこにいりゅのお?! れいみゅをたちゅあちゅいいぃぃl! でいぶ…グツグツ…おぢびぢゃ…グツグツ…あがぢゃ…グツグツ… グツグツ…ゆっぐり…グツグツ…じでね… 火の通った具を椀に盛り、倅がふーふーと息を吹きかけて冷ます。 「ほ~ら、えいき。ゆっくりフォンデュだぞ~。美味しいぞ~」 ゆびぃぃぃ…! ゆ…ゆ… みゃ…みゃ…ぁ… 赤子ゆっくりの体を箸で細かく千切り、アイス用のスプーンに乗せてちび饅頭に食わせる。 もむ、もむ、もむ…ごくっ 「よいじょおっ!よいじょおっ!」 「おお?旨いかぁ?」 倅が破顔する。 アホか。饅頭相手に。 「はい、えーき様も。」 大饅頭の分は小皿に取り分ける。 「よいぞぉぉっ!?よいぞ!よ、よいぞ?」 一口食べた後、ワシの方を向いて、笑いながら何かを言っておる。 「…何がよいと仰ってくださってるんじゃあ?」 「……『とっても美味しいですわ。特にこのミソ餡のコクのある甘みが最高ですね。 後で作り方を教えていただけませんか。』」 「はん。そんなもん教えても時間の無駄じゃあ。 饅頭に料理が作れる訳がないじゃろがぁ。」 ガタッ 「…!!」 「よ、よいぞ!?よいぞ!?」 目を血走らせながら、ワシを睨み付けて立ち上がろうとした倅を、 饅頭が服の裾を咥えて引き留める。 「………」「………」「………」 ゆ゛…グツグツ…でい…グツグツ…おぢび…グツグツ…どご…グツグツ…いっだの… おがあざ…グツグツ…ど…グツグツ…ゆっぐ…グツグツ…じようね゛…グツグツ… 倅はワシを睨み付けたまま、何も言わない。 ワシはその視線を無視したまま、何も言わない。 饅頭は、おろおろと倅とワシを交互に見ながら、何も言えない。 グツグツと鍋が煮立つ音だけが流れる。 「くりょ…くりょぉ…じぇんこー……」 ただ一匹、ちび饅頭だけが声を上げ、その目にじんわりと涙が滲み始める。 「じぇんこーよぉぉ…!じぇんこーよぉぉぉぉ…!!」 そして、大声を上げて泣き始めた。 ================== 「………」 いつもの時間に目が覚める。 結局、昨夜は、倅が泣き出したちび饅頭をあやして泣きやませた後、 食事もそこそこに、饅頭親子を連れて部屋に籠もり、 その後は一言も言葉を交わさんかった。 髪を結い、寝間着を着替え、布団を畳み、爺さんの遺影に手を合わせる。 「爺さんや…どうしてこんな事になっちまったかねぇ…ほんに、あの親不孝者が…」 尋ねても写真の中でバカ笑いしている爺さんは、 『こまけぇこたぁいいんだよ!!』 と言っているようにしか見えん。 いっつもそんな調子じゃったからのう、アンタは。 遺影に使う写真もこんなバカ笑いしている写真しかなかったし… あの子のアレは、アンタのバカを継いじまったからかねぇ… まあ、そんなバカじゃったから、ワシなんぞを嫁に貰ったんじゃろうがな… …さて、今日は大晦日じゃ。 倅が来る前に大掃除は粗方終わらせておいたし、 朝の内に床の拭き掃除を終わらせて、後は正月の料理の準備かの… 平穏な日常を取り戻すべく、 今日の予定を思い起こしながら襖を開けると、 何故かこれから掃除する筈の廊下の床がピカピカになっておる。 首を傾げた時に、視界の端に饅頭の姿が目に入った。 朝っぱらから、幸先が悪いのう… 「…!…!」 頭に三角巾を巻いた饅頭が、口に何かの木の板を咥えておる。 その板で雑巾を押さえて、一心不乱に廊下の床を拭いているとこじゃった。 雑巾がけのつもりか。 雑巾でゴシゴシと板間を磨き、少し這って移動しては、また雑巾をかける。 見ているコッチが気の遠くなりそうな作業ペースじゃわい。 ワシに背中を向けてフリフリと体を揺すりながら、廊下の端を拭いていた饅頭が こちらを振り向き、ワシの姿に気が付く。 「!よ、よいぞっ!」 一声鳴いて、ベトリと顔を床に押しつける。 なんじゃろかのう…コレは。お辞儀のつもりか。 黙って立ち去ろうとした所に倅が現れた。 「えーき様、替えの雑巾を持ってきま……おはよう。」 途中から露骨に声をトーンダウンさせ、憮然とした表情で、ワシに挨拶を寄越す。 「ああ、おはよう。…何をしとるんじゃ。」 「見りゃわかるだろ。掃除だよ。えーき様ができる事だけでも手伝いたいって…」 「はん…掃除のう…」 吐き捨てるように言った後、廊下の隅につつ…と指を這わせる。 埃がこびりついた指先を饅頭に見せながら、後の言葉を続ける。 「ま、真似事だけなら、饅頭にもできるかの。」 倅が睨み付けてくるが、もう慣れっ娘じゃ。 「よいぞっ!よいぞっ!」 饅頭が倅の手から新しい雑巾をひったくり、 廊下の隅を拭き始めたのを尻目にその場を立ち去った。 ================== 「よいぞーっ!?よいぞーーっ!!!」 昼も過ぎ、台所で正月の料理の仕度をしていると、玄関の方から饅頭の声がした。 いや、声というよりは悲鳴に近く、切羽詰まった物を感じさせる。 倅がバタバタと走って行く音が聞こえる。 ワシが料理用の野菜を取りに畑に行こうとした所、饅頭が自分が行くと言いだしおった。 倅がやらせろと煩いし、ワシも饅頭の顔を見ないで済むので、任せてみた。 勿論、一番遠い畑までな!ひゃっひゃっひゃっ! まあ、しかし、あの調子じゃ、何かあったようじゃ。 まったくお使い一つ満足にできんのかのう。 「えーき様!一体どうし…えいき!?えいき!!しっかりしろ!!えいきぃ!!」 倅の叫びが聞こえたかと思うと、すぐに血相を変えて台所に飛び込んでくる。 その手には、ちび饅頭が乗せられている。 見ると、ちび饅頭の右の頬がゴッソリと欠けておった。 「よ……じょ……」 「待ってろ!えいき!お父さんが助けるからな!!もう少しの辛抱だぞ!!」 ちび饅頭に呼びかけながら、 茶碗に小麦粉と水を入れ、箸でガシャガシャと掻き混ぜて水溶き小麦粉を作り、 欠けた頬に塗って行く。 …バカじゃのう。ちょっとした傷ならともかく、そこまで欠けてたら、 そんなもんで塞がりゃせんわい。 ま、ワシには関係ないがの。 「……じょ……」 「えいきっ!!えいきっ!!しっかり…!しっかりしろ…!! クソッ!傷が塞がらない!?なんでっ!?」 「よいぞっ?!よいぞっ?!」 そうしている間にも、ちび饅頭の顔が青ざめて行く。 ええい…イラつくのう。 たかが饅頭如きに大の男がオロオロしおってからに。 「えいきーっ!目を開けてくれぇっ!!えいきぃぃーっ!?」 「父親のくせにうろたえるな!馬鹿もんがぁ!!」 あまりにイラつくので、気が付いたら思わず怒鳴っておった。 「まずは体力を回復させるのが先じゃ! 死んじまったら、幾ら傷だけ塞いでも無駄じゃろが!貸さんか!アホウが!!」 ちび饅頭を奪い取る。 ゆっくりの体力回復には甘いジュースがいいと言うが、生憎と買い置きが無い。 砂糖水…いや、それよりもアレじゃ。 台所の棚の上で冷ましていた鍋をひっ掴む。正月用に煮ておいた黒豆じゃ。 煮汁をお玉で掬い、ちび饅頭に振りかけ、口にも含ませる。 「よい…じょ…」 少し生気が戻ったようじゃの。 傷が痛むのか、苦しそうな表情を見せてはいるが、これで暫くは保つじゃろう。 お次は傷を塞がにゃならんが… 「おい、饅頭。皮を寄越せ。」 「よいぞ?!」 ワシに包丁を向けられた親饅頭が目を丸くし、 倅が警戒するかのような目をこちらに向ける。 「…!!ぜんこーよっ!ぜんこーよっ!」 だが、親饅頭の方はすぐにワシのやろうとしている事を察し、頬をこちらに向けてくる。 その頬に刃を当て、饅頭皮の表面を薄く削ぎ落とす。 「!!」 親饅頭が一瞬顔をしかめるが、呻き声一つ上げはせん。 ゆっくりにしては、なかなか肝が座っておるわい。 ちび饅頭の欠けた頬にその皮をあてがうと、 倅が水溶き小麦粉の入った茶碗を差し出してくる。 親饅頭の皮に水溶き小麦粉を塗り、ちび饅頭の右頬に貼り付ける。 ………ふむ…ちび饅頭の表情が穏やかになってきたかの。 「…これでまず大丈夫じゃろ。 貼り付けた皮が乾いたら、昨夜の鍋の残りの餡子を食わせて中身を補充しとけ。」 「あ…ああ、…ありがとう。 ……ありがとう……ありがとう…お袋ぉっ…!ありがとうっ…!うっ…!」 「よいぞっ!!よいぞっ!!よいぞぉっ…!!」 「ふん」 倅と親饅頭が頭を下げる。 男のくせに饅頭一つに涙なんぞ流しおって、みっともないヤツじゃ… ================== 家から一番離れた、山の近くの畑を見渡す。 ちび饅頭の容体が落ちついてから、親饅頭に何があったのか問い質した。 例によって、よいぞよいぞのオンパレードで 頭が痛くなりそうじゃったが、倅の翻訳によると、 畑で野菜を収穫している時に、ゆっくりの集団に襲われたらしい。 「ゆっ…だずげで…れいぶ…じにだくない…じにだぐ…ないよぉ…ゆぎゅべっ?!」 何かに噛み千切られた底部から盛大に餡子を漏らしていた赤リボンを踏み潰す。 これ以外にもゆっくりの死体や、ほぼ死体同然の物が、五個転がっている。 あの饅頭が一匹でやったのか。ゆっくりにしては、なかなかやりおる。 隙を突かれてちび饅頭をやられるあたりの抜け具合は、ゆっくりクオリティじゃがな。 見ると、山の方角に向かって餡子の跡が転々と続いている。 何匹かは取り逃がしたようじゃ。…厄介じゃのう。 「ゆっくりが集団で人間の畑を…?」 一緒についてきた倅が、疑問の声を投げかける。 「そうじゃ。山に餌が少なくなったりするとな。 お前が赤ん坊の頃なんぞは、それはゆ害がひどくてな… 村中総出で駆除したから、お前が物心つく頃には落ち着いとったが、最近は時折な…」 「なんでまた…ここ最近は天候も問題なかっただろ?山の餌だって十分…」 「…数が増えすぎたんじゃろな。 お前ら若いモンが村を出て、ゆっくりを採るモンが減ったからじゃろ。」 「………」 しかし、イヤな予感がするのう。 いつもは一家で畑を荒しに来るバカ共じゃが、転がってるのは成体ばかりの集団じゃ。 組織的な襲撃じゃとすると… 「…戻るぞ。」 「あ、ああ。」 ================== 「ふう…」 料理の仕込みも一通り終わり、茶を入れて一息つくことにする。 ゆびっ 縁側に出て、鳥避け網で囲って吊してある干し赤子ゆっくりを一つむしり取る。 干してから日が浅いので一番の食べ頃ではないが、まあ、構わん。 「来るかの…」 やべちぇ… れいみゅ いちゃいのやあぁ… あぎっ… いちゃ… 甘みの凝縮された餡子を囓りながら、ゆ害対策について、考えを巡らせる。 「よいじょ……」 横合いからの声に、思考が中断される。 見ると、ちび饅頭が柱の陰に隠れるようにして、こちらを覗き見ていた。 「…なんじゃ。」 ワシが声をかけると、一瞬ビクッとして柱の陰に隠れてしまったが、 そのまま待っていると、ズリズリと這いだしてきおった。 「よ、よいじょ!よいじょ!」 言いながら、ペコペコと頭を床に打ち付けている。 …?なんじゃ、さっきの礼のつもりか…? ゆぎっ ちび饅頭を無視して、干し赤子を囓り、クチャクチャと甘味を噛みしめる。 ふと目をやると、ちび饅頭が口を開いてこちらを見ておる。 更に無視して、干し赤子を囓り続けるが、ちび饅頭の視線が気になる。 「…なんじゃ…食いたいのか?」 「じぇんこーよ…」 遠慮がちに答えたちび饅頭に、もう一つ干し赤子をむしり取って床に放り投げる。 あんなにガン見されたら、ワシが食いづらいからの。やれやれじゃわい。 ゆわわぁぁ! たべ、たべないじぇぇ! まいちゃは たべものじゃないんだじぇぇ! たじゅげでなんだじぇぇ! おかあしゃあん! ゆぎぃぃっ?! 干し赤子に齧り付き、むしゃむしゃと口を動かす、ちび饅頭。 途端にぱああっ、と満面に笑顔を浮かべ、ち、ち、ち、ちあわちぇ~! 「よいじょ!よいじょ!」 とは言わないんじゃったな、コイツらは。 嬉しそうに、ぴょんぴょんと跳ねながら、その笑顔をワシの方にも向けてきよる。 「よいじょぉ…!」 三分の一ほど囓られた干し赤子を残して、ちび饅頭がゲップを漏らした。 「ん?なんじゃ、もういらんのか?食い物を粗末にしおってからに…」 考えてみれば、自分の体とさほど大きさの変わらん干し赤子じゃからの、 全部食える訳もないか。 流石に床に置いたモノを食えんので、干し赤子は庭先に放り投げる。 ちゅんちゅん ちゅんちゅん やめちぇぇぇ!! いちゃっ!いちゃっ! とりしゃん、つつかないでなんだじぇぇ! ゆぎっ!! ゆぴぃぃっ!! まいちゃのかばいいおべべがぁぁ!! 雀たちの鳴き声を聞きながら茶を啜っていると、足に奇妙な感触を受けた。 「よいじょ!よいじょ!」 何事かと見ると、ちび饅頭がワシの足に頬を擦りつけておる。 ええい、こそばゆいわい、やめんかい。 たかが干し赤子一個で手なずけられおって、やっすい饅頭じゃ。 まるで、倅の子供の時分を見ているようじゃ。 なんだか腹立たしいので、無視して茶を啜る。 「よいじょぉ…」 おばあちゃん… 突然、ちび饅頭の声が、そんな言葉に聞こえたような気がして、ハッとする。 …アホらしい。そんなわけがあるか。 ワシも歳を取って耳がおかしくなったのかのう… 心の中でブツブツ言いながら、ちび饅頭を見下ろすと、 いつの間にか寝息を立てておった。 ちび饅頭の頭にそっと指の腹を乗せ、撫でる。 「よいじょ…よいじょぉ……」 …"おばあちゃん"、のう… ================== ギシッ、ギシッ 歩くたびに、月明かりを照らし返す廊下の板の間が音を立てる。 スッ 倅達が使っている部屋の襖を少しだけ開いて、中の様子を伺う。 いきなり開いて、HENTAI交接の現場とご対面したら目も当てられん。 「うーん…えーき様ぁ…大丈夫ですよぉ…お袋…もう寝てるから… ねっ…ちょっとだけ…先っぽだけでも…むにゃ…」 「よ、よいぞぉ…ぜんこーよぉ…よ、よい…よいぞ…よいぞぉぉ…」 布団の中ではバカ二匹が夢の中と。 倅を叩き起こそうと部屋に踏み入るが、倅の布団の上に乗ったちび饅頭が目に入る。 「よいじょぉ……」 …ふん、まあワシ一人で十分じゃろ。 バカみたいに幸せそうな寝顔で寝言を呟くちび饅頭を眺めながら、 ひっそりとそう呟き、部屋を出る。 「今夜は満月か…」 長年愛用してきた鍬を背負い、月を眺めながら、夜道を歩く。 ほどなく、昼間の畑が見えてくる。 やはりのう… 「うっめ! これ、めっちゃうっめっ!」 「がーつ、がーつ! しあわせー!!」 「さすがぱちゅりーね! にんげんさんが ねているすきに"やしゅう"をかけるなんて、 とっても とかいはな さくせんだわ!」 「むきゅきゅ! それほどでもあるわ! むきゅ! むきゅきゅ!」 おるわおるわ。 赤リボンに、黒帽子、時々、とかいはにもやし。四十匹程かの。 我慢の効かないゆっくり共。 一度追い返したくらいでは、すぐに戻ってくるとは踏んどった。 そして、組織的に行動する知恵のある連中なら、 二度目は警戒して人間が寝静まる夜中を狙う… そこまでの読みは良かったが、少しばかり来るのが遅かったようじゃ。 「むーしゃ、むーしゃ! ゆゆっ?! にんげんさんだよ!?」 「「「にんげんさんはゆっくりでぎないいぃぃ!?」」」 「にげるんだぜえぇ?!」 「まっでー! れいむをおいでがないでよおぉ?!」 「えれえれえれえれ…むきゅぅ…」 「みんな、待ってね!あれは、おばあさんだよ! おばあさんはあんまり強くないから、みんなでかかれば、やっつけられるよ!」 「ゆゆ? そうなの!?」 「ゆっふっふ! れいむたちの おやさいさんをひとりじめする、 わるいにんげんさんは、みんなで せいっさいっ! しようね!」 「人間さん?可愛そうだけど、みんなのごはんのために─」 「「「「「ゆっくりしんでね!」」」」 ワシの姿を見て、一瞬、怯えて逃げ出そうとしたゆっくり共だが、 年寄り一人ならば、勝てると踏んだようじゃ。 一斉にこちらに向かって飛び跳ねてくる。 ふん 畑を荒らす害饅獣共が。 老いさらばえたとは言え、農家の嫁じゃ! 日々の農作業で鍛えたこの体!舐めるんじゃあないわい! ガシャ 月に掲げるようにして、両手で握った鍬を頭上に振り上げる。 何十年となく繰り返してきた構え。土を耕す構え・荒ぶる農家のポーズじゃ。 「ヒャッハァー−ーッ!!制裁じゃあ!!」 ================== 「ごめんなざいいぃ!? れいぶはやめようっていっだんでずうぅぅ!!」 「ほいっ」 「やべぶっ!!」 せいっさいっがどうのと言っておった赤リボンに鍬を振り下ろし、 顔面をザックリ削ぎ落とす。 残りは…にの、しの、ろの…十二か。 「いくのぜ! まりさ! まりさ!」 「おうなのぜ! まりさ!」 「まりさにまかせるんだぜ! まりさ!」 「「「ゆゆうぅぅ!! じぇっと・ゆとり ブスッ 「「「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…」」」 一列縦隊で飛び込んできた黒帽子三匹を鍬の柄の側で一突きして一網打尽にする。 「ゆ゛っ…どおじで…ばでぃざを…ふみだいに…ずる…のお…?」 鍬を振って、訳のわからん断末魔を呟いている黒帽子を払い落とした時に、光が見えた。 「どすすぱぁぁぁーーーくっ!!!」 「?!」 間一髪、廻し受けで凌ぎ、攻撃後の隙を逃さずに、ゆっくりとの距離を詰める。 「まりざのすぱーくがああぁ! おっどどぎがあぁぁ! どおじでぎがないのおぉぉ?! ゆがあっ?!?!」 反撃も忘れてゆんゆん泣き喚いているゆっくりの眉間に鍬を突き立てる。 おや、随分皮の丈夫なゆっくりじゃの? もっとも、爺さんと一緒に開墾したこの辺りの畑は、土が固い上に石も多かったしのう… アレに較べたら、ゆっくりの饅頭皮なんぞ、可愛いもんじゃあ。 ふふ…あの頃は、日が沈むまで、二人とも汗だくになって土を耕しておったのう。 大変じゃったが、不思議と楽しかったわい… ほーれ、えんやこらさっとぉ… 「やべでえぇ!? い゛だい゛っ! い゛だい゛い゛っ!!! ゆ゛ぎい゛っ?! …ゆ゛っ…ゆ゛っ…」 ん? 昔の思い出に浸りながら掘り進んどったら、いつの間にか中枢餡まで抉ったようじゃの。 仲間が次々にやられるのを見て恐慌を来したか、 残るゆっくり達が泣きながら、背を向けて山の方に跳ねて行く。 そうは問屋が卸さんわい。 ここで逃がしたら正月もおちおち寝ておれんからの。 揃ってここで、鳥の餌になるがええ! 最後尾のゆっくりに追いつき、鍬を振り上げたその時じゃった。 グギィィ おおう……破滅の音が鳴り響きおったわい… 不覚じゃのう…こんなときに腰をやっちまうとはのぉ… 「ゆ?」 潰そうとしていたゆっくりがこちらを振り返り、ワシが固まっている事に気づく。 「ゆ~?」 不思議そうに、こっちを見上げながら、ずりずりと後ろに回り込む。 ちょ…タンマ…ゆっくりタンマしとくれね! 「ゆっ! すきありだよ!」 ドンッ 「ぐがっ?!」 こ、腰…!腰に…! よりによって痛めた腰に体当たりをくらった。 激痛のせいで踏ん張りが効かず、畑の真ん中に倒れ伏す。 ぬおお…!痛くて声もまともに出せん…! まずいのう…!これはまずいのう…! 「ゆ? ばばぁの うごきが とまってるわ!」 「ゆふーん! れいむの ひっさつのいちげきで たおしたんだよ!」 「ゆっ! いまのうちなんだぜ! とどめをさすんだぜ!」 「むきゅ! 油断しちゃだめよ! 周りを囲むのよ!」 ゆっくりもやしの指示で、逃げようとしていた他のゆっくり共もこちらに戻ってきて、 じわじわとワシの周りの包囲網を狭めてくる。 何匹かは、尖った枝を口に咥えておるな。アレで刺されたら、流石に痛そうじゃ。 一匹の黒帽子がすぐ近くまで来て、咥えた枝をワシの目に向けて突き出す。 なるほどのう。まずは目を潰すつもりか。 ゆっくりの分際で賢しい知恵を身につけおって。 手を伸ばせば叩き潰してやれる距離じゃが、痛みで体の自由が効きやせん。 倅に助けを求めようにも、ここからじゃ遠すぎて家までは声が届かんし、 そもそもバカ息子は、一度寝たら、滅多な事では起きんしの。 ま、どのみち、今から助けを求めた所で、間に合いそうにもない。 …ここまでかのう。 爺さんよ…予定よりちぃとばかし早く、そっちに行くことになりそうじゃわい。 「ゆっくりしねっ!!」 飛びかかってくるゆっくりの動きを、近づいてくる枝の先端を、 まるでスローモーションの映像でも見ているかのように、はっきりとこの目が捉える。 ああ…こんな事になるんじゃったら… ボスンッ!! 「ゆぎぃっ!?」 枕がぶつかり合うような音とゆっくりの悲鳴を残して、 ワシに飛びかかってきたゆっくりが視界から消えていた。 「ゆぎゃああぁ! いだいっ! いだいんだぜっ! やべっ、やべでぇぇ!!」 悲鳴を追って視線を横に移すと、そこに先程の黒帽子のゆっくり。 その上にのしかかり、黒帽子の底部に噛みついているのは、 もう一匹のゆっくり…よいぞ饅頭じゃった。 「あがっ…!? だず…! だずげ ブチブチィッ! ゆびぃぃぃぃっ!!」 饅頭がワシを襲ったゆっくりの底部をゴッソリと噛み千切り、 たっぷりと餡子のついた饅頭皮をベッと地面に吐き捨てる。 そして、ゆ゛っゆ゛っゆ゛っと痙攣するゆっくりに、 いや、周りにいる全てのゆっくりに聞かせるかのように、一声 「しけええええええっいいいいぃっっっ!!!!」 憤怒の形相を浮かべ、満月に向かって吠えた。 凍てつく大気がビリビリと震え、 気圧されたゆっくり達が、我知らず、ずりずりと後ずさる。 ほう。気迫だけなら、ゆっくりと言うより、野生のケダモノじゃな。 それとも、地獄の閻魔様かの。 ペットショップで買ってきたなんて言うとったから、 箱入りゆっくりだとばかり思っておったが、そんな顔もできるんじゃあないか。 ま、妻たるもの、母たるもの、それぐらいの気迫がなけりゃ勤まらんがの。 「だずげでぇ…いだいぃ…ゆぶりゅりゅっ?!」 足を噛み千切られて泣いていた黒帽子の上で饅頭が跳ね、 傷口からゴソッと餡子が飛び出す。 「ま、まり …?!…!?…!!!」 次の瞬間には、叫び声を上げようとした、とかいはの口が噛み切られ、 声の替わりにクリームが漏れ出す。 「ゆ、ゆううぅ~!?」 そこに、口に木の枝を咥えて突進してくる赤リボン。 ベシン! その枝がはたき落とされる。 いつの間にやら、よいぞ饅頭が木の板を咥えており、それではたき落としたのじゃった。 「ゆ…ゆ…ゆるしてね…? れいむを…ゆっくり…ゆるしてね…?」 「しけい」 木の板が赤リボンの眉間を貫き、先端が後頭部から飛び出した。 その後は、一方的な殺戮が続いた。 普通のゆっくりに較べ、運動能力的に優れた種という事もあったかもしれん。 じゃが、それ以前に、気迫においてゆっくり共は完全に呑まれていた。 「む…むきゅ…こんな筈は…こんな…」 クリームを垂れ流しながら、もやしが這っている。 他のゆっくりは、全てよいぞ饅頭が屠った。 当の饅頭はと見ると、息を乱してはおるようじゃが、少しかすり傷を負っている程度。 こちらを振り返った饅頭と目が合う。 「お前…どうしてここに…」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ……制裁じゃあ… 「…?よいぞぉ…?」 男の腕に抱きしめられていたゆっくりえーきが、不意に目を覚まし、 身を捩って男の腕から抜け出すと、キョロキョロと暗い部屋の中を見回す。 「むにゃ…えーき様ぁ…おしっこですかぁ…? えーき様のなら…俺ぇ…飲めますから…ここで…むにゃ…」 「く、くろぉ…!くろっ!」 「あた…んほぉぉ…あたらしいぷれいでずねぇ…ゆぴぃー…ゆぴぴ…」 ゆっくりえーきが顔を真っ赤にしながら、 帽子の中から取りだした"かいごのぼう"で男をペチンと叩き、男はいびきを掻き始める。 そして、ゆっくりえーきは、体を使って障子を押し開け、部屋を出て行く。 「よいぞ?よいぞ?」 しきりに周囲を見回しながら、 月明かりの中、家の周りをぽいんぽいんと飛び跳ねる、ゆっくりえーき。 やがて、元野生の捕食種の聴覚と嗅覚が、 冷たい風に乗って流れてくる悲鳴と甘い香りを捉えた。 風上へと向かったゆっくりえーきが見た物は、 月明かりに浮かぶ、一人の人間と、多数のゆっくりのシルエット。 即座に状況を把握し、その場で踵を返す。 確実に事態を打開できる、"援軍"を連れてくるために。 その時、背後で、昨日から何度も聞いていた声が聞こえた。 ぐがっ?! 地べたに倒れ伏している人間。じわじわと迫るゆっくり。 一も二もなく、ゆっくりえーきは飛び出した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○o。「………よいぞ!よいぞ、よいぞ!よいぞ~!よいぞっ!!」 「スマン。何言うとるのかさっぱりわからんわい。」 まあ、ええか、どうでも。終わったことじゃ。 残るは、瀕死状態でずりずり這いながら逃げ出しているもやし一匹。 あの分じゃ、山まで辿り着け… 「な…なんじゃと…?」 「よい…ぞ?!」 ワシと饅頭が同時に声を上げた。 視線の先、逃げるもやしの更に先に浮かぶシルエットは、 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆゆゆゆゆゆゆ… 無数のゆっくり達。 「"ていさつたい"は、なにをやってるのよ! ありすの とかいはな おちびちゃんが、まちくたびれてるわ!」 「きっと、れいむの おやさいさんを ひとりじめしてるんだよ! ゆるせないよ!」 「おきゃーしゃん、はやくおやさいさん、たべちゃーい!」 「もうすぐだよ! おちびちゃんたち! いっぱいむしゃむしゃしようね!」 「「「ゆわーい!!」」」 馬鹿な…まだあんなにおったというのか…!? 「ゆっ?! にんげんさん?!」 「どおおおして、にんげんさがいるのお?! よるなら にんげんさんは すーやすーやの はずでしょお!?」 「むきゅう…」 「ぱちゅりー?! どうじだのお!!」 「みんな…だいじょうぶよ…あの人間さんは…ぱちゅの攻撃で…もう動けないわ… 残るは…変なゆっくりだけよ…! ぱちゅ達の仇…とってちょうだい…」 成体だけで百近くはおるか… 子ゆっくりや赤子ゆっくりに至っては、その何倍か…数える気にもなれん… 山の群れ総出で、お食事タイムと洒落込みおったか。 五体満足の人間ならば屁でもないが、 饅頭一匹と身動きの取れない役立たず一匹じゃどうにもならんのう… 「おい、饅頭!とっとと逃げんかい!お前一人じゃ勝ち目なんてありゃせんぞ!」 「くろっ!!くろぉっ!!」 『お義母様を置いて逃げるなんてできません』 じゃと…? はぁ…そんな声が聞こえるとは、 いよいよ倅の病原菌が、ワシの脳まで移ってきたようじゃ…まったく… 「お義母様なんて呼ばれる筋合いは無いと、何回言わせりゃわかるんじゃ! 目障りだからとっとと失せんかっ!姑の言うことは聞くもんじゃ!」 「くろぉぉっ!!」 我ながら矛盾している事を怒鳴り散らすが、 饅頭は迫ってくるゆっくりの群れを見据えたまま、逃げ出そうとはしない。 この、頑固モンが! それにしても、ゆっくり共のこの数…どれだけの子を為した事やら… しかも、どいつもこいつも、死ぬほどに飢えとるようにも見えん。 餌が無くなり、やむなく畑を襲ったとばかり思っておったが、 それより先に野菜の味を覚えたか… 際限なく、子を増やし続け、美食を貪る。 足るを知らんのう。 愛するつがいがおって、子供の一匹、二匹もおれば、十分幸せじゃろうに、 …………それ以上、何を求める事があるというんじゃ? 不意に饅頭がこちらを振り向く。 「よい…ぞ…」 ?…『ごめんなさい』 口にしたのは、その言葉だけじゃった。 助けられなくて、ごめんなさい お義母様の言う事に従わなくて、ごめんなさい 幾らでも解釈のしようはあった。 じゃが、不思議と、ワシには饅頭の言いたい事がわかったような気がした。 『ゆっくりで、ごめんなさい』 "私が人間だったなら、お義母様もあの人も、苦しまないで済んだのに" 『ゆっくりで、ごめんなさい』 ───、オラのとこさ嫁に来てくれんか? な、なにバカ言うとる。オ、オラなんぞ、器量もよくねし、家事もまともにできね… 気立てだって…男勝りの乱暴もんだ。か、からかってんなら、たいがいにしろ…! …それに…オラの家は…村八分だ…オラなんかと一緒になったら…おめえまで… こまけぇこたぁいいんだよ!! んな… 毎日、おめえの顔が見れて… そだな、可愛い子供の一人もできれば、オラァそれだけで幸せだ。 それ以上はなーんも、いらね! 違う…違うんじゃ… ゆっくりだとか…ゆっくりじゃないとか…そんな事は… わかっておった…ワシにもわかっておった… どうしたら…あの子が幸せになれるか…あの子がいつも笑っていられるか… それなのに…ワシは…、ワシは…ただ…あの子が…ワシの元から… 「ほんとに へんなゆっくりだね!」 「むきゅぅ! 人間さんに味方する、裏切りゆっくりはせいっさいっよ!」 「ゆへへ! じゃあ、あのゆっくりは、まりささまのすっきりーどれいにするんだぜ!」 「みんなの かたきを とるわよ!」 ポタ… ポタッ ポタッ 「……かった…寂しかったんじゃあ………許しとくれぇ……」 地面に広がる染みを見つめながら、心の奥底で淀んでいたモノを吐き出す。 大バカ者じゃあ…ワシは…、今さら…そんな事を… ぽふ 髪に何かが触れるのを感じ、目を上げる。 饅頭が木の板で、ワシの頭を叩いておった。 いや…そっと添えるように、ワシの頭に乗せておった。 そして、お地蔵さんのように穏やかな笑みを浮かべ、一言だけ、言った。 「しろ!」 ぽよん、ぽよん、ぽよん… クルリと踵を返し、ワシに背中を向けた饅頭が、 ゆっくりの群れに向かって一直線に跳ねて行く… 爺さんや…!助けとくれ…助けとくれえぇ…この老いぼれはどうなってもええ… じゃから…! えーき様ぁー… お袋ぉー… その時、倅の声が聞こえた気がした。 幻聴かとも思ったが、跳ねていた饅頭も足を止め、 家がある方向を向いてびょんびょんと高く飛び、力の限りに 「よいぞーっ!!よいぞーーーっ!!!」 倅を呼ぶ。 「ハァ…ハァ…えーき様っ!お袋っ!一体、何が…?あのゆっくりは…?」 「よいじょっ?!よいじょっ?!」 全速力で駆けてきた倅が、間近まで迫ったゆっくりの群れを見ながら尋ねる。 倅のどてらのポケットからは、えいきが飛び出し、 ワシの周りで泣きながら飛び跳ねておる。 「こんバカ息子がぁっ!! お前の"嫁"が体張って戦っとる時に、亭主のお前がいつまで寝とるかあっ!」 「え?え?」 「いいから…さっさと害獣駆除…せんかい。」 新たな人間の登場に、攻めあぐねて動きを止めたゆっくりの群れに視線を送りながら、 ようやくそれだけ告げる。 ホッとした途端、ガックリと体から力が抜けよる。もう叫ぶ気力もないわい。 まったくもって、歳は取りたくないもんじゃ。 「い、いや待てよ、お袋。 ゆっくりだって自然の一部なんだ。行きすぎた伐採は生態系をだな…」 そんなもんは勝手に生えてくるわい。 「よいぞっ!よいぞっ!ぜんこーよっ!!」 「…え?こいつらは? 昼間、えーき様とえいきを襲った奴らの仲間で?ふんふん その上、お義母様まで殺そうとしてたのよ?ほうほう だから、遠慮なくやっちゃえ?ふむふむ………………………………ひゃっはー…」 「ぎゃくっさつっっだあああああああああっっっ!!!!」 「ちけーーーーいっ!!!」 倅が落ちていた鍬を拾い、雄叫びを上げながらゆっくりの群れに突っ込む。 「ってめぇぇぇらぁぁ!!食材の分際で俺の家族に何してやがんだぁぁ!!」 「ゆぎゃあぁぁっ!?」「びゅげえぇぇ!」「ゆひ…ゆぎいいぃぃ…!」 「ゆぎぃぃ…! ばりざのあんよさんがぁぁ!? や、やべっ…ゆびゅう!」 「まりしゃの…あんよしゃん…? ゆっくちちにゃいで…くっちゅくんだじぇ…」 鍬を振るってゆっくりの体を削ぎ、踏み込みついでにゆっくりを踏み潰す。 ゆっくり共も体当たりをしてくるが、足腰のしっかりした人間相手では何の効果も無い。 着地した所で全力の蹴りを食らい、悲鳴を上げ、餡子を四散させながらお空を飛ぶ。 「ゆっくりきしゅうさくせんだよ! そろーり!そろーり!」 「そろーり!そろーり!」「「しょろーり!しょろーり!」」 一家と思わしき数匹のゆっくりが倅の背後の死角に回り込む。 アホ饅頭共に気づいてない事もなかろうが、倅はそちらに目を向けすらしない。 それもその筈 「しけいっ!しけいぃっ!!」 ズボ グリュン 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! いぢゃいいいいい!! いぢゃいいいいいい!! ばでぃざのおべべがああ!! どぼじでごんなごどずるのぉぉ」 嫁饅頭が倅の背後の成体ゆっくりの目に木の板を突き刺し、そのまま捻りを加える。 「ばでぃざぁぁ!? ゆ、ゆひいっ?! ズボッ でいぶのまぶまぶざんがぁぁ!!」 木の板を引き抜き、今度は、恐慌状態に陥ったもう一匹の成体の口の下あたりを貫く。 「ちゅ、ちゅぶうっ!? ちゅぶれりゅぅぅぅぅ…! びゅげえぇぇっ!」 「こ…こっちくるにゃああ!!」 そして、残る子ゆっくりや赤ゆっくりに飛びかかり、 ボインボインとジャンプして押し潰し、餡子を吐かせる。 嫁饅頭に背中を預けた倅は、悠々と眼前のゆっくりに鍬を振るう。 良いチームワークじゃ。 爺さんと一緒にゆっくりを駆除してた頃を思い出すわい… ぷにょん、ぷにょん ん~? ふと見ると、倅達の攻撃をくぐり抜けて…というよりスルーされて来た赤ゆっくりが、 動けないと思ってか、ワシの体に体当たりを繰り返しとる。 「ゆっくちちてない ばばぁは、ときゃいはな ありしゅが やっつけりゅわ!」 「いたいでちょ? れいみゅたちの おやさいしゃんを、ひとりじめしゅるから、 しぇいさいしゃれるんだよ? りきゃいできりゅ?」 ぷくぷく わさわさ びきぃ 可愛くないのぉ。可愛くないのぉ。 ワシの孫とは大違いじゃのぉ。 おお?そろそろ腕ぐらいは動かせそうじゃな。 どーれ、ワシもヒャハるとするかの。 「ちけいっ!!」 「ゆぴいいぃぃっ?!」 と思った矢先、飛び出してきたえいきが、ちび赤リボンのモミアゲを噛み千切った。 「れいみゅの ちゃーむぽいんちょの もみあげしゃんがぁ…! ゆぎいぃっ?!」 「れいみゅー!? ちっかりー!!」 続けてもう一方のモミアゲも噛み千切った後、帽子から小さな木の板を取り出し、 口に咥えると、ちびとかいはをブスブスと刺し始める。 「くりょ!くりょ!ちけーい!」 「ゆびぃ! いちゃい! ゆぴぃ! みゃみゃあ! ゆええん! もう ぷすぷすしゃんは やめちぇぇ! ときゃいはじゃ にゃいわぁ!」 「…ゆ゛っ…れー…みゅの…もみあげしゃん…もう…わさわさ…できにゃいぃ…」 「ほっほっ、ババを守ってくれとるのか?」 「よいじょ!よいじょ!」 めんこいのぉ。めんこいのぉ。 ゴーーーン 「ゆぎゃあああぁ! あづいよぉぉ!」 「までぃざの すでぎな おぼうじがあああぁ! もどじでえぇ!? おぼうじ、もどにもどじでえぇ!!」 「えれえれえれえれ…」 「ばちゅりぃぃー?! えれえれしだら ゆっぐりでぎなぐなっぢゃうんだぜぇ?!」 「「「えれえれえれえれえれえれ…」」」 「「「「「おあちゅりぃぃぃ!!」」」」」 おや、除夜の鐘が始まったか。 良い音色じゃのう。煩悩が祓われて行くようじゃわい。 ありがたや、ありがたや…ほっほっほ… ゴーーーン 「ゆああぁぁぁぁぁん! きょわいよ! やめちぇね! おろしちぇね! おろしちぇね!!」 ドスッ 「ゆぎっ!?」 キュウ~→ 「まりちゃのあにゃるしゃんがぁぁぁぁぁぁ! やべぢぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆあぁっぁあっ…ぁ…あっ…あっぁ…あっ…」 「もっ……ちょ……ゆ……くち……」 「やぢゃやぢゃ! ぢにちゃくにゃいよぉぉ! ゆっ!? も…う…れい…みゅ…ぷくぷく…しちゃく…にゃいの…に…ゆ゛っ!?」 ボンッ! 「やめちぇぇぇ! もうのめにゃいよぉぉぉ~! おぼれちゃうよぉぉぉ!」 「おみずしゃんゆっくちしちぇぇぇぇぇ~!」 「ご~きゅ!ご~きゅ! しにちゃくないよぉぉ~!」 ほっ…ほ…? ゴーーーン 「ゆっぐりでぎないごはんざんは…じねぇぇぇ!!」 「ゆああああ! とどかないよぉ! とどかないよぉ!」 「ごはんさん! いじわるしないでこっちきてね!」 「あ…でぃ…ず…もう…だめ…れい…ぶ…までぃ…ざど…いきて…ね…」 「あでぃずぅぅぅ!!!」 「お…おにーさん………おにーさん…」ずり…ずり… 「…おにーさん」 「まりさをかってね!」 ゴシャ 「ゆ゛お゛え゛え゛え゛え゛っ!ゆ゛え゛ー どぼじでお゛に゛ーざんが、お゛にーざんのかっこになっでるの゛おお…?!」 「そのおかおででいぶをいじめないでえ゛えええええ!!!」 ドゴォッ…! ……?? ゴーーーン 「ゆッ れいぶ だじゅッ だじゅげでッ」「ま まりさぁ れいむおよげないよぉ」 ザッバァアン!! 「まりさぁぁぁあ!」 ………?????? ================== 「「「ゆ゛…ゆ゛…ゆ゛…」」」 畑一面に餡子とクリームと饅頭皮が広がる。 まともに動けるゆっくりは、もうウチの連中だけじゃ。 後半、何かよくわからんもんを召還しておった気がしなくもないが、 兎にも角にも、害饅獣駆除は完了じゃわい。 「お袋…腰やったのか?大丈夫か?」 「なーに、これくらい…あだだだ!」 「ホラ、無理すんなよ…もういい歳なんだから…」 「うるさいわい!年寄り扱いするな!」 倅がやれやれという風に、肩をすくめる。 「…それにしても、よく気が付いたの。 お前のことじゃから、このまま朝まで寝こけとると思ったわい。」 「いや、それがさぁ、気持ち良く寝てたら、大きな音で目が覚めて… 何かと思ったら仏間で仏壇が向かいの壁まで吹っ飛んでブッ倒れてるんだよ。 でもって、えーき様もお袋も何処にもいないだろ? こりゃ、俺が寝ている間に地震でも来て、みんな逃げたのかと思って、 えいきを連れて外の様子を見に来た結果がこれだよ。」 …爺さんよ…夢枕に立つとか…他にやりようがあるじゃろおおお? 誰が掃除すると思うておるよ。 『こまけぇこたぁいいんだよ!!』 うるさいわい……ありがとよ 「よいぞ?よいぞ?」 「よいじょ?」 頭にえいきを乗せた嫁饅頭も、こっちにやってくる。 「怪我なんかしとらん。少し休めば動けるようになるわい。」 「よいぞ!」 「よいじょ!よいじょ!」 ふん 「お前に心配される筋合いなぞないわ。この役立たずが。 役立たずは役立たずらしく、初めから倅を叩き起こして連れてくれば、 肝を冷やす事もなかったと言うに… ほんっに、役立たずじゃあ。」 「よいぞぉ…」「よい…じょぉ…」 「お袋…」 嫁饅頭親子がしょげかえり、倅も苦い顔を浮かべる。 「のう?」 「ん?」 「正月はこっちにおるのか?」 「…ああ。仕事始めまではいる…つもりだったけど…」 「そうかい……おい!饅頭!」 「よいぞ?!」 「役立たずが…せめて半人前の嫁ぐらいにはなれるよう、 明日からビシビシしごいてやるわ。覚悟せい。」 「………」 嫁饅頭がポカンと大口を開けてこちらをみつめ、 それから、 「よいぞ!!ぜんこーよっ!!」 そう答えて、不敵な笑いを浮かべおった。 『望むところです!お義母様!』ってところかのう…小娘が生意気言いおってからに。 ワシが嫁いで来た時の事を思い出すわい。 あの時の姑もこんな気分じゃったのかの… 息子が苦笑を浮かべ、えいきの顔にも笑顔が浮かぶ。 …爺さんや、やはりもう暫くはそっちへは行けんようじゃよ。 やらにゃならん事ができてしもうた。 ワシはもう少しコッチで楽しんでから行くことにするわい! 「ひゃっひゃっひゃっ! ヒャッハー!嫁いびりじゃあ!!!」 「よいぞぉっ!!!」 「よいぢょ!よいぢょ!」 おわり あとがき ・お母さんの方言っぽい口調はいい加減です こまけぇこたぁ~も江戸っ子風の言葉だし、おかしいかとは思いましたが こまけぇこたぁいいんだよ!! 違和感感じる方、ごめんなさい ・十王裁判の意味を履き違えてるのはゆっくりりかいしてます ・書いてる途中で思った事 あれ?これ『(義理)親子・仲直り』じゃないですか? てことはコンペ出られるんですか!やったー! ↓ 続き物はコンペに出せないじゃないですか!やだー! コンペ用のネタさんはゆっくりしないで早く降りてきてね! これまでに書いたもの * ふたば系ゆっくりいじめ 229 たくすぃー * ふたば系ゆっくりいじめ 344 ゆっくりで漬け物 * ふたば系ゆっくりいじめ 404 ただ一つの
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/998.html
えーき様とお義母様 51KB ギャグ 希少種愛で 通常種てめーらはダメだ ・希少種愛でメイン、イジメもあるよ! ・通常種虐待・ゲス制裁も嗜む程度に ・色々な方のネタを無断拝借してしまいました、ごめんなさい ・『ふたば系ゆっくりいじめ 344 ゆっくりで漬け物』の後日談です 一応、前作を読んでいなくても話は通じるようにしたつもりです ・30秒でわかる!俺設定ゆっくりえーき語講座 【よいぞ】 基本、めーりんにおける「じゃお/じゃおおん」みたいなモン 「よいぞ!よいぞ!」 (うっめっ!これめっちゃうっめ!) 「よいぞ~?よいぞぉ!」 (何ら~?わらしの酒が飲めらいって言うのかぁ?ほれぇ!もっろ飲めぇ!) 【しろ】 肯定、無罪 【くろ】 否定、有罪 【しけい】 死刑、ヌッ殺す 【ぜんこーよ】 ~しなさい、~してください、プリーズ 「ぜんこーよ!」 (私にあまあまさんをくれること。それがあなたが積める善行よ。) 「ぜんこー…よ?」 (あなたの赤ちゃん…欲しいなぁ…?) 以上です。他の言葉は喋れません。 ================== コッチ コッチ コッチ コッチ……… 古い時計の音が響く。 (ふう…) 心の中で何度目かになる溜息を吐き、モゾモゾと炬燵の中に一段深く身を沈める。 炬燵を挟んだ向かいには、冴えない顔をした若者 …と呼ぶにはチト苦しくなってきた歳の男が一人。 ワシの倅じゃ。 「………」 「………」 久々の倅の里帰りじゃったが、互いに何も喋らず、沈黙だけがその場を支配する。 その原因は… 「よいぞ……」 今、おずおずと小さく声をあげた饅頭にあった。 ================== 遡ること、五時間ほど前 ガラガラガラ 「ただいまー。」 「おうおう、よう帰ったのぉ。外は寒かったじゃろ。」 田舎暮らしがイヤだと言って家を飛び出した倅の二年ぶりの帰郷。 こん親不孝もんが!と怒鳴りつけたい所でもあるが、 喜ぶ気持ちが勝ってしまうのが馬鹿親の性かのう。 まあ、それも無理もない事じゃ。 なにしろ、今日は、待ちに待った… 「…?一人で来おったのか?」 おお寒い寒いと言いながら、コートも脱がず、 両手に大荷物を下げたまま炬燵へと飛び込んだ倅に、 そんな疑問の声を投げかける。 「え?」 荷物の内の一つ…なんじゃ、アレは…ペットを運ぶ…ケージ…とか言うヤツかの…? …を炬燵の上に乗せ、ゴソゴソといじくりながら、倅が聞き返す。 「い、いや、今日連れてくると言うとったじゃろ…?その…"彼女"を…」 そうじゃ。 何ヶ月か前に電話をした時に、結婚したい女性がいる、 暮れに帰る時に一緒に連れてくると言うとった。 それじゃったから、首を長~~くしてこの日が来るのを楽しみに待っておったんじゃ。 いやあ…いい歳こいて、浮いた話の一つも聞かせんから、 正直、孫の顔を拝むのはもう無理かと諦めかけておったんじゃがのう… 長生きはするもんじゃ… で、どこじゃ?どこにおるんじゃ?その"彼女"は? ひょっとして、後から来るとかなんとかかの…? ま、まさか、もう愛想を尽かされて… 「え…やだなぁ、お袋。ちゃんと連れてきてるじゃないか?ボケるにはまだ早いだろ?」 ああ、まだボケとらんわい。 ボケとるのはお前の方じゃ。どこに彼女がおると言うんじゃ。 と、口にしようとしたワシの目の前で倅がケージの蓋を開けると、 そこから丸い物体が這いだしてきた。 紅白リボンや金の延べ棒?やらがゴチャゴチャついた冠のような帽子を被り、 緑色の髪をした生首状の物体。 見た事の無い種類じゃが、その下ぶくれた顔は、他に見紛いようもない。 ワシら農家にとってはお馴染みの顔。 山の幸にして、畑の害獣、 "ゆっくり" じゃ。 「ゴホン…紹介するよ。俺の彼女…いや、妻の"えーき様"だよ。」 えっ 「よ、よいぞ!」 どこか緊張したような面もちで奇妙な鳴き声を上げてから、 生首饅頭が前のめりになり、顔を炬燵板の上にベタリとへばりつかせる。 「えーき様、ウチのお袋です。」 「よ、よいぞ!よいぞ!」 再び奇妙な鳴き声をあげて炬燵板に顔を押しつける。 「な、何と言うた…?」 「ん?ああ、『ふつつか者ですが、よろしくお願い致します。』だって。」 疑問の声を上げたワシに、倅が何か答える。 ツッコミ所は色々とあるが、ワシが聞きたいのはそんな事じゃあない。 その前にお前が何と言ったか、聞いたんじゃ。 いやあ、最近耳が遠くなったのかのう…どうにも聞き違えたようじゃあ… のう…そんな馬鹿な話がのう…ゆっくりがのう…ゆっくりとのう… 「それと…」 何からどう話したら良いかわからず、口をパクパクさせているワシを無視して、 倅がゆっくりのZUN帽をヒョイと持ち上げる。 その下の緑の髪の上には、琵琶の実ぐらいの小さな饅頭が一つ。 それを摘んで、ワシの目の前に置く。 「こっちが俺達の娘の"えいき"だよ。」 えっ 大饅頭とサイズ以外は瓜二つのちび饅頭が、 小首を傾げながら小さな目でじいっとワシを見上げてくる。 「よいぞ?」 「ホラ、えいき、お婆ちゃんにご挨拶は?」 「…よいじょっ!!」 大饅頭と倅に促され、ちび饅頭がにこやかな笑顔を浮かべて声を張り上げる。 そして、部屋の中の風景がグラリと揺れ、目の前が徐々に暗くなっていった。 「…?!お袋…!?おい!お袋…!!」 「よいぞ?!よいぞ?!」 「よいじょぉぉ…?!」 「…………ぉっ!………っ!!」 「………!」 「…」 ================== コッチ コッチ コッチ コッチ …… ボーン ボーン ボーン ……… 時計の音で目を醒ますと、いつも見慣れた薄汚れた天井が目に入った。 ふう…夢じゃったか…どうりで無茶苦茶な話じゃったわい… 「!お袋!気がついたか!?体は、体は大丈夫か?!俺の声、聞こえるか?!」 「よいぞ!?よいぞ!?よいぞっ!?」 ふう…やっぱり現実じゃったか…どうりで夢にしては随分とリアルだったわい… 「耳元で騒ぐな、騒々しい。ワシはピンピンしておるわい。」 体を起こしながら答える。 「そ、そうかい…?良かった…急に倒れるから…」 「よいぞぉ…!」 布団の横で倅達が安堵したような笑みを浮かべる。 枕元ではちび饅頭が寝とる。目元が濡れたような跡があるの… 「ふん」 事の元凶共に一瞥をくれてから、布団から立ち上がり炬燵へと向かう。 「お、おい…!まだ寝てろよ。先生も今日一日は安静にしてろって…」 「なんじゃ、お前、あのヤブ医者まで呼んだのかい!大げさな!」 「大げさって…!当たり前じゃないか!前にも倒れたんだろ!」 「くろっ!くろっ!」 「え…あ、ああ…そ、そうですね… ごめん、お袋…怒鳴ったりして… その…先生が…何かストレスによる物じゃないかって…何か…あったのかい…?」 あった、あった。 お前らだーーーっ!と叫び出したい気持ちを抑えて、炬燵に潜り込むと、倅達を睨む。 「お前達、そこに座れ。話がある。」 ================== 倅から聞き出した話を纏めると大体こんな事のようじゃ。 ・出会いはペットショップで突然に ・倅の方が一目惚れして、お持ち帰り ・今では俺達相思相愛でラブラブで毎日がバラ…以下、ウザかったので略 ・倅のウザい話を聞いてるフリをしながら、 ゆーぽっどたっちでネットに繋いで調べたところ、 このゆっくりは「ゆっくりえーき」と呼ばれる希少種らしい 市場相場は…ゼロがひい、ふう、みい、よお、いつ…たくさん…… な、なんじゃとおおお?! ・ずっと同棲生活を送っていたが、先週子供が生まれたので籍を入れる事にした ・HENTAIお兄さんじゃねーか また目の前がグラグラと揺れだしとるが、気力でなんとかコッチに踏みとどまる。 デキの良い子ではなかったが、健康で真っ直ぐに育ってくれたと思っておったにのう… 一体どこでネジ曲がったのやら… こんな事なら、街に出ると言った時にブン殴ってでも止めておくべきじゃったか… まあ、なんにせよ、親であるワシが言うべき事は一つじゃ。 「ワシは、そんなのがお前の嫁だなんて認めんぞ。」 「え…?!」 「よ、よいぞ…?!」 ワシの言葉を聞いた途端、 倅とゆっくりがそりゃ青天の霹靂だわーとでも言いたげに、驚きの表情を浮かべる。 いやいやいやいや、驚きなのはこっちの方じゃよなぁ?! どうして認めて貰えると思っとったのか、 その自信に根拠があるなら是非聞いてみたいわい。 「な、なんでだよ!?えーき様のどこが不満だって言うんだよ…!」 「…なんでも何も…そやつは人間じゃなくて、ゆっくりじゃろが!」 「…………はぁぁ?」 倅ぇ。今、ワシの事、鼻で笑ったのかのう。 「ハハハ、何言ってるんだよ、お袋。 えーき様をゆっくりなんかと一緒にしないでくれよ。 ホラ~、よく見てみろよ。このえーき様の可愛らしさを! 間抜け顔饅頭とは、似ても似つかないだろ?」 「よ、よいぞぉ……!」 饅頭が頬を赤らめながら、ぽいんぽいんと倅に体当たりをする。 「照れなくてもいいですよ、えーき様。だって本当に可愛いんですから! …可愛い…本当に…可愛いですよ…んー…えーき様ぁ…」 キモい。饅頭を抱え上げてチュッチュ、チュッチュしてる自分の倅がキモい。 「やめんかい!」 怒鳴って炬燵板をドンと叩くと、ようやく倅達がちゅぽんと音を立てて離れる。 が、糸を引きながら、互いに見つめ合ったままなので、 ドンドンと更に炬燵板を叩いて、ようやくこちらに向き直らせた。 よし。KOOLになれ、ワシ。 自分の倅を信じるんじゃ。 倅を信じる…!ワシの倅は饅頭に欲情するようなHENTAIじゃない…! その前提で考えれば、途端に新しい可能性が立ち上がってきよる。 そうじゃよ!きっと何かワケがあって、こんな事をしとるに違いない! ホント、頼むから、そうであってくれ! 「お前、まさか…実はその饅頭には物凄いチート能力があって、 その能力を利用して巨万の富を得ようと…」 と倅の耳元でボソボソと囁く。 そうじゃそうじゃ、希少種とか言っておったしの。 ミソの足りない純朴ゆっくりを騙して利用しようという魂胆か。 倅ぇ…お主もワルよのう…! 「へ?チート能力…?いや、別にそんな物は…あ、アレだ。 "俺を魅了してやまない程度の能力"…なんちゃって!なんちゃって!ゆふふ!」 「よいぞぉ…!よいぞよいぞっ!」 「え?『魅了されてるのは私の方よ。』ですってぇ? なーに言ってるんですかぁ、えーき様。俺の方がずっとずっとえーき様のこと…」 「よいぞぉぉ…!」 ドンッ!! (・_・) 「「………」」 (・_・) よし、次。 「…あ。あれかのう…?思い込みの力で胴付きになって、やがては人間に変わるとか…」 「は…?お袋……何言ってんの? 漫画じゃあるまいし、そんな不可思議現象起きるわけないだろ?」 おお、倅よ倅、どうしてワシを可愛そうな人を見る目で見るのかのう。 嫁入りする時に持ってきた手鏡はどこにしまっておったか… 「……ゆっくりと人間の中身が入れ替わってて、実は中の人は美人女子高生のとしあ…」 「中のとしあきなどいない。」 「悪い魔法使いの呪いでー、ゆっくりにされててー、接吻をするとー…」 バン! 今度は倅が炬燵板を叩く。 「いい加減にしてくれ!なんなんだ!?さっきから!?訳のわからん事ばかり!!」 炬燵から立ち上がり、僅かに怒気の籠もった声を張り上げて続ける。 「えーき様の何が不満なんだ!? ちょっと首から下が無いってだけで、えーき様は最高の女性だ! 俺はえーき様を愛してるし、えーき様だって俺を愛してくれてる! 可愛い子供…お袋の孫だって産まれたんだぞ!他に何が足りないって言うんだっ!?」 オマエの脳ミソじゃろおおおおお? という言葉はググッと飲み込む。 「そもそも、ゆっくりが人間との間に子供を産むなんて聞いた事もないわい! 大方、お前の目を盗んで、その辺のゆっくり相手に作った子供じゃあないのかい!」 「!!…く…くろ…くろぉ……」 おお、おお、饅頭がいっちょ前に涙なんぞ流しおって。 「お袋…!言っていい冗談と悪い冗談があるぞ…!!」 倅が拳を握りしめながら、ワシを睨みつけてくる。 「ふん、冗談なもんか!だって、そうじゃろが。 そっちのちび饅頭、母親には似とるが、お前にはちーとも似とらんわい。」 「えーき様似、大いに結構だろうが!将来美人間違いなし! ゆくゆくは、大スターか、美人すぎる最高裁判長か、産油国の王族に嫁入りだよ! まあ、誰にも嫁にはやらないけどなぁ!」 「よいぞ?よいぞ?」 「え?笑った時の口元はアナタに似ていて素敵よ?ゆふふ…そうですかぁ?」 「よいぞ、よいぞぉ!」 「えーき…今夜は俺の悔悟の棒がえーきの中で十王裁判だよ… 俺の十王様を全員満足させるまで寝かさないからね…」 「く、くろぉ…」 「ん?『ダメよ、お義母様がいるのに…』だって?大丈夫、年寄りは寝るの早いから…」 バリン、ボリッ、ボリッ… 炬燵の上に置いてあった煎餅を囓る。 あー、腹立たしい。 言われてみると、確かに口元とか倅に似てなくもない所がますます腹立たしいわい。 爺さんや、アンタの倅はとんだHENTAI息子じゃったよ。 「とにかく!ワシは、そんなのがお前の嫁だなんて認めんぞ!」 ================== 「………」 「………」 「よいぞ……」 とまあ、そんなこんなで今に至るという訳じゃ。 「…えーき様が悪いんじゃないですよ。悪いのは、話のわからないお袋の方だ。」 しょんぼりした顔で話しかけた饅頭を倅が慰める。 さっきから、饅頭を嫁と認める認めないで、 同じようなやり取りばかり何度も繰り返しじゃ。 根本的に価値観がズレておる、というか、倅のネジが外れておるから、 話し合いにも何にもなりやせん。 ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン 時計の鐘が鳴った。 「…ふん…取りあえず、この話は、また明日じゃ。飯の支度をせんとならんわい。」 ぶつぶつと呟いて立ち上がる。 本当ならば、倅ともども、全員家から追ん出したい所じゃが、 もう帰りの電車も無い時間じゃ、この寒空の下に放り出して凍死でもされたら、 村中のもんから白い目で見られてしまうわ。 「よ…よいぞ!よいぞ!」 ゆっくりがボンボン飛び跳ねながら、ワシに向かって何やら喚く。 「…ああん?」 「『私もお手伝いします、お義母様』だって。」 …よいぞよいぞ、しか言っておらんじゃろ。 倅が言うには、表情や声の抑揚の違いで言っている事が判別できるらしいが、 ワシは、倅の頭の中に悪い菌が湧いているんじゃないかと睨んどる。 「いらんお世話じゃ。 大体、そんな体で何ができると言うんじゃ。包丁一つ握れやせんじゃろが。 それで、人間様と夫婦(めおと)になろう等と、おこがましいにも程があるわい。 …それと、ワシはオマエなんぞに"お義母様"などと呼ばれる覚えはないからの。」 「…よいぞぉ……」 うなだれているゆっくりの頭を撫でながら、 倅がこちらを睨んで来るが、気にせず夕食の準備へと向かう。 ガンッ!! 腹立ちまぎれに、台所に置いてあった木箱を蹴りつける。 ゆひいぃぃっ!? ゆやあぁぁ! にんげんしゃん、きょわいよおぉ! にんげんしゃん?! ゆ、ゆっくいちてにぇ? ゆっくち…! ゆっくちぃ…! だ、だいじょうぶだよ! れいむのおちびちゃんたち! おちびちゃんたちは、おかあさんが いのちにかえても まもるがらねぇ…! 木箱の中で五月蠅く叫んでいるのは、ヤツと同じ、ゆっくり共じゃ。 久しぶりに帰ってくる倅と未来の"嫁"のために、 ご馳走でも振る舞おうと、猟師の源爺に頼んで採ってきてもらったんじゃが、 まさか、コレを同じゆっくりに振る舞うハメになるとはのう… 野菜を洗い、ザクザクと切り始める。 適当な大きさに切り終えたら、湯を張った鍋で暫くゆがく。 「…手伝うよ。」 いつの間にか台所に来ていた倅が声をかけてくる。 黙ってゆっくりが入った木箱を指さすと、 倅も黙ったままたらいに水を張り、ゆっくりを入れてタワシで洗い始めた。 グツグツグツ… 「お袋……」 「………」 ゆびゃあぁぁ! ぢくぢくずるぅ! いだいぃ!! れいむの たまのおはだがぁ!! 湯の沸き立つ音だけが響く静寂を破るように、倅が口を開く。 「確かに…えーき様は人間じゃないよ。 普通の夫婦と何もかも同じに…と行かないのは、百も承知だ。」 「………」 あびゅ! あびゅびゅう! れいみゅのおかおが とけちぇるぅぅ! ゆんやぁぁ! 野菜に軽く火が通った所で、火から降ろす。 「お袋に心配かけるのも…済まないと思っているよ。 でも、もう俺には、えーき様以外の女性は考えられない。 例えお袋に認められなくても、俺はえーき様と夫婦として暮らす。 もう子供じゃないんだ。誰を好きになるかまで、お袋の指図は受けない。」 「………」 やめてあげちぇね! まりちゃの いもうちょが、いやがっちぇ ボチャッ ゆびゅっ! あぶっ! あっぶっ!? お、おぼれりゅうぅぅぅ! 倅には何も答えず、野菜を大皿に盛り、囲炉裏端へと運ぶ。 おにいさん! れいむをはなしてね! いまならゆるしてあげるよ! ぷく…ゆぎっ あ゛っ! あ゛っ! やべでええ! れいぶの びはだを はがざないでえぇ! いぢゃいよおお!? ゆびっ! ゆびいぃ!! 倅が親ゆっくりの皮を剥ぎ、中身の餡子を囲炉裏にかけた鉄鍋の中に入れる。 あづいいいいい!! あづ…ゆぎぐ?! ゆげっ! ゆげっ! ゆげげげ!! ワシの姑の姑の代から伝わる秘伝の自家製ミソだれを鍋に入れ、 熱で柔らかくなった餡子と混ぜ合わせる 完全に餡子が煮立つ前に、少し弾力のある中枢餡と呼ばれる部分を探り当て、 目印として、そこに爪楊枝を一本突き立て、その箇所に時々差し水をする。 中枢餡が沸騰すると死んでしまうため、温度が上がりすぎないようにするためじゃ。 こうして、死なせないようにする事によって、 煮れば煮るほどに、苦痛によって餡子の旨味が深まって行くんじゃ。 ゆっくりの歯がドロリと溶けてきたら頃合い。 このミソ餡鍋に、野菜や活き子ゆっくり・赤子ゆっくりをサッとくぐらせ、 たっぷりのミソ餡を絡めて食べる。 この地方に古くから伝わる郷土料理、冬のご馳走"ゆっくりフォンデュ"じゃ。 「ほれ、そろそろ子ゆっくりを準備せんか。」 「ああ。」 倅がザルから黒帽子の子ゆっくりを一つ取り出し、 ザルに蓋をするようにまな板を置き、そこに子ゆっくりを乗せる。 のーびのーびと良く育った上物のゆっくりじゃの。旨そうで腹がQNQN鳴るわい。 やめるんだじぇ…!? はなしゅんだじぇ…!? まりしゃ ゆ゛ぎぴいいぃぃっ?! まな板の上で、もるんもるんと暴れる子ゆっくりの背中に串を通し、 身動きを取れなくしてから、包丁を構える。 「よ、よいぞ!」 「え…?」 「よいぞ!よいぞ?」 「…わかりました。じゃあ…」 そう答えて、饅頭の口に包丁の柄を咥えさせる。 ふん…何のつもりじゃ… 「足の方から…これくらいの厚さずつで輪切りに…串が当たったら包丁を止めて…」 倅が子ゆっくりの上まで包丁の刃を導き、 指先で切り方を示してやると、饅頭がコクコクと頷く。 や、やめちぇね?! やめちぇね?! かわいいまりしゃに、いたいこちょ… トン …ゆっ…ゆっ…ゆぎいぃぃぃ! まりしゃのあんよしゃんがあああぁ!?!? 一度頭を後ろに反らし、戻る勢いを利用して包丁をまな板に振り下ろし、 子ゆっくりの底部を輪切りにする。 じゃ・が! 「なーんじゃ、その切り方はぁ。なっとらんのう。 切り口が潰れて、餡子がダダ漏れじゃあ。 ゆっくりフォンデュに使う子ゆっくりは、活きが命じゃろが。 バラけんように滑らかに切り、鍋の中でゆっくりが苦しむ内に、 バラバラと身がほぐれた所を食うのが旨いんじゃ。 そんな切り方では、鍋に入れる前に死んでしまうわ。 ほんに、使えん饅頭じゃのう。」 「よいぞ…」 「あんなの気にしなくていいですよ、えーき様。さ、続けて。」 トン トン トン … ぎぴいぃぃ…! いぎいぃぃ…! だぢゅげ…でぇぇ…おきゃあ…しゃあん…… お…ぢび…ぢゃ…グツグツ…たずげ…るがらね… グツグツ…おがあざんが…グツグツ…だずげる…がらねえ… 「そうそう、いい感じですよ。」 「よ、よいぞ…!」 ふん、いい感じなものか。全然ダメじゃあ。 子ゆっくりは虫の息じゃあないか。 ま、最後の方は最初よりはちーとはマシじゃったが。 「さ、もう一匹お願いしますよ…ん?」 (にんげんさんを やっつけたんだじぇ!!) 「おっ、指噛んだ。コイツは活きがいいなぁ、ハハハ。 これぐらい活きが良ければ、雑に切ってもピンピンしてますからね。 気楽にやって大丈夫ですよ。今串打ちますからねえ。」 ブスッ !? !? 「さあ、えーき様。落ち着いてゆっくりやれば大丈夫ですよ。」 「よいぞ!」 饅頭が、もう一匹の子ゆっくりに包丁を入れて行く。 トン トン トン … いちゃいんだじぇぇ~~!! ゆっぐぢでぎないんだじぇ~!! ゆぎいいいい! ゆひいいい゛い゛い゛!! おぢびぢゃ…グツグツ…だずげる…グツグツ…よ… グツグツ…いば…グツグツ…だずげるよ… 「よーし!今度は上手く行きましたね!」 「よいぞ…!」 ふん、上手いもんか。 おおまけにまけて、ぎりっぎりっ、合格点がせいぜいじゃ。 鍋に野菜と赤子ゆっくりを放り、 掬い網に乗せた子ゆっくりの輪切りと一緒に、鍋の中を泳がせる。 あびいぃぃ!? あぢゅ…ぴぎいぃ!! いだいいぃぃ! まりしゃのからだいだいいぃ!! どうなってりゅんだじぇぇぇ?! あぢゅいよぉ! いぢゃいよぉぉ! ゆぴいぃぃぃ!? あぢゅ!! あぢゅいぃぃ!! だじゅげちぇ、みゃみゃあ!! あちゅいぃぃ! れいみゅあちゅいよぉぉ! ゆっくちじぇきにゃいぃ! おきゃあしゃぁん! ぢょこにいりゅのお?! れいみゅをたちゅあちゅいいぃぃl! でいぶ…グツグツ…おぢびぢゃ…グツグツ…あがぢゃ…グツグツ… グツグツ…ゆっぐり…グツグツ…じでね… 火の通った具を椀に盛り、倅がふーふーと息を吹きかけて冷ます。 「ほ~ら、えいき。ゆっくりフォンデュだぞ~。美味しいぞ~」 ゆびぃぃぃ…! ゆ…ゆ… みゃ…みゃ…ぁ… 赤子ゆっくりの体を箸で細かく千切り、アイス用のスプーンに乗せてちび饅頭に食わせる。 もむ、もむ、もむ…ごくっ 「よいじょおっ!よいじょおっ!」 「おお?旨いかぁ?」 倅が破顔する。 アホか。饅頭相手に。 「はい、えーき様も。」 大饅頭の分は小皿に取り分ける。 「よいぞぉぉっ!?よいぞ!よ、よいぞ?」 一口食べた後、ワシの方を向いて、笑いながら何かを言っておる。 「…何がよいと仰ってくださってるんじゃあ?」 「……『とっても美味しいですわ。特にこのミソ餡のコクのある甘みが最高ですね。 後で作り方を教えていただけませんか。』」 「はん。そんなもん教えても時間の無駄じゃあ。 饅頭に料理が作れる訳がないじゃろがぁ。」 ガタッ 「…!!」 「よ、よいぞ!?よいぞ!?」 目を血走らせながら、ワシを睨み付けて立ち上がろうとした倅を、 饅頭が服の裾を咥えて引き留める。 「………」「………」「………」 ゆ゛…グツグツ…でい…グツグツ…おぢび…グツグツ…どご…グツグツ…いっだの… おがあざ…グツグツ…ど…グツグツ…ゆっぐ…グツグツ…じようね゛…グツグツ… 倅はワシを睨み付けたまま、何も言わない。 ワシはその視線を無視したまま、何も言わない。 饅頭は、おろおろと倅とワシを交互に見ながら、何も言えない。 グツグツと鍋が煮立つ音だけが流れる。 「くりょ…くりょぉ…じぇんこー……」 ただ一匹、ちび饅頭だけが声を上げ、その目にじんわりと涙が滲み始める。 「じぇんこーよぉぉ…!じぇんこーよぉぉぉぉ…!!」 そして、大声を上げて泣き始めた。 ================== 「………」 いつもの時間に目が覚める。 結局、昨夜は、倅が泣き出したちび饅頭をあやして泣きやませた後、 食事もそこそこに、饅頭親子を連れて部屋に籠もり、 その後は一言も言葉を交わさんかった。 髪を結い、寝間着を着替え、布団を畳み、爺さんの遺影に手を合わせる。 「爺さんや…どうしてこんな事になっちまったかねぇ…ほんに、あの親不孝者が…」 尋ねても写真の中でバカ笑いしている爺さんは、 『こまけぇこたぁいいんだよ!!』 と言っているようにしか見えん。 いっつもそんな調子じゃったからのう、アンタは。 遺影に使う写真もこんなバカ笑いしている写真しかなかったし… あの子のアレは、アンタのバカを継いじまったからかねぇ… まあ、そんなバカじゃったから、ワシなんぞを嫁に貰ったんじゃろうがな… …さて、今日は大晦日じゃ。 倅が来る前に大掃除は粗方終わらせておいたし、 朝の内に床の拭き掃除を終わらせて、後は正月の料理の準備かの… 平穏な日常を取り戻すべく、 今日の予定を思い起こしながら襖を開けると、 何故かこれから掃除する筈の廊下の床がピカピカになっておる。 首を傾げた時に、視界の端に饅頭の姿が目に入った。 朝っぱらから、幸先が悪いのう… 「…!…!」 頭に三角巾を巻いた饅頭が、口に何かの木の板を咥えておる。 その板で雑巾を押さえて、一心不乱に廊下の床を拭いているとこじゃった。 雑巾がけのつもりか。 雑巾でゴシゴシと板間を磨き、少し這って移動しては、また雑巾をかける。 見ているコッチが気の遠くなりそうな作業ペースじゃわい。 ワシに背中を向けてフリフリと体を揺すりながら、廊下の端を拭いていた饅頭が こちらを振り向き、ワシの姿に気が付く。 「!よ、よいぞっ!」 一声鳴いて、ベトリと顔を床に押しつける。 なんじゃろかのう…コレは。お辞儀のつもりか。 黙って立ち去ろうとした所に倅が現れた。 「えーき様、替えの雑巾を持ってきま……おはよう。」 途中から露骨に声をトーンダウンさせ、憮然とした表情で、ワシに挨拶を寄越す。 「ああ、おはよう。…何をしとるんじゃ。」 「見りゃわかるだろ。掃除だよ。えーき様ができる事だけでも手伝いたいって…」 「はん…掃除のう…」 吐き捨てるように言った後、廊下の隅につつ…と指を這わせる。 埃がこびりついた指先を饅頭に見せながら、後の言葉を続ける。 「ま、真似事だけなら、饅頭にもできるかの。」 倅が睨み付けてくるが、もう慣れっ娘じゃ。 「よいぞっ!よいぞっ!」 饅頭が倅の手から新しい雑巾をひったくり、 廊下の隅を拭き始めたのを尻目にその場を立ち去った。 ================== 「よいぞーっ!?よいぞーーっ!!!」 昼も過ぎ、台所で正月の料理の仕度をしていると、玄関の方から饅頭の声がした。 いや、声というよりは悲鳴に近く、切羽詰まった物を感じさせる。 倅がバタバタと走って行く音が聞こえる。 ワシが料理用の野菜を取りに畑に行こうとした所、饅頭が自分が行くと言いだしおった。 倅がやらせろと煩いし、ワシも饅頭の顔を見ないで済むので、任せてみた。 勿論、一番遠い畑までな!ひゃっひゃっひゃっ! まあ、しかし、あの調子じゃ、何かあったようじゃ。 まったくお使い一つ満足にできんのかのう。 「えーき様!一体どうし…えいき!?えいき!!しっかりしろ!!えいきぃ!!」 倅の叫びが聞こえたかと思うと、すぐに血相を変えて台所に飛び込んでくる。 その手には、ちび饅頭が乗せられている。 見ると、ちび饅頭の右の頬がゴッソリと欠けておった。 「よ……じょ……」 「待ってろ!えいき!お父さんが助けるからな!!もう少しの辛抱だぞ!!」 ちび饅頭に呼びかけながら、 茶碗に小麦粉と水を入れ、箸でガシャガシャと掻き混ぜて水溶き小麦粉を作り、 欠けた頬に塗って行く。 …バカじゃのう。ちょっとした傷ならともかく、そこまで欠けてたら、 そんなもんで塞がりゃせんわい。 ま、ワシには関係ないがの。 「……じょ……」 「えいきっ!!えいきっ!!しっかり…!しっかりしろ…!! クソッ!傷が塞がらない!?なんでっ!?」 「よいぞっ?!よいぞっ?!」 そうしている間にも、ちび饅頭の顔が青ざめて行く。 ええい…イラつくのう。 たかが饅頭如きに大の男がオロオロしおってからに。 「えいきーっ!目を開けてくれぇっ!!えいきぃぃーっ!?」 「父親のくせにうろたえるな!馬鹿もんがぁ!!」 あまりにイラつくので、気が付いたら思わず怒鳴っておった。 「まずは体力を回復させるのが先じゃ! 死んじまったら、幾ら傷だけ塞いでも無駄じゃろが!貸さんか!アホウが!!」 ちび饅頭を奪い取る。 ゆっくりの体力回復には甘いジュースがいいと言うが、生憎と買い置きが無い。 砂糖水…いや、それよりもアレじゃ。 台所の棚の上で冷ましていた鍋をひっ掴む。正月用に煮ておいた黒豆じゃ。 煮汁をお玉で掬い、ちび饅頭に振りかけ、口にも含ませる。 「よい…じょ…」 少し生気が戻ったようじゃの。 傷が痛むのか、苦しそうな表情を見せてはいるが、これで暫くは保つじゃろう。 お次は傷を塞がにゃならんが… 「おい、饅頭。皮を寄越せ。」 「よいぞ?!」 ワシに包丁を向けられた親饅頭が目を丸くし、 倅が警戒するかのような目をこちらに向ける。 「…!!ぜんこーよっ!ぜんこーよっ!」 だが、親饅頭の方はすぐにワシのやろうとしている事を察し、頬をこちらに向けてくる。 その頬に刃を当て、饅頭皮の表面を薄く削ぎ落とす。 「!!」 親饅頭が一瞬顔をしかめるが、呻き声一つ上げはせん。 ゆっくりにしては、なかなか肝が座っておるわい。 ちび饅頭の欠けた頬にその皮をあてがうと、 倅が水溶き小麦粉の入った茶碗を差し出してくる。 親饅頭の皮に水溶き小麦粉を塗り、ちび饅頭の右頬に貼り付ける。 ………ふむ…ちび饅頭の表情が穏やかになってきたかの。 「…これでまず大丈夫じゃろ。 貼り付けた皮が乾いたら、昨夜の鍋の残りの餡子を食わせて中身を補充しとけ。」 「あ…ああ、…ありがとう。 ……ありがとう……ありがとう…お袋ぉっ…!ありがとうっ…!うっ…!」 「よいぞっ!!よいぞっ!!よいぞぉっ…!!」 「ふん」 倅と親饅頭が頭を下げる。 男のくせに饅頭一つに涙なんぞ流しおって、みっともないヤツじゃ… ================== 家から一番離れた、山の近くの畑を見渡す。 ちび饅頭の容体が落ちついてから、親饅頭に何があったのか問い質した。 例によって、よいぞよいぞのオンパレードで 頭が痛くなりそうじゃったが、倅の翻訳によると、 畑で野菜を収穫している時に、ゆっくりの集団に襲われたらしい。 「ゆっ…だずげで…れいぶ…じにだくない…じにだぐ…ないよぉ…ゆぎゅべっ?!」 何かに噛み千切られた底部から盛大に餡子を漏らしていた赤リボンを踏み潰す。 これ以外にもゆっくりの死体や、ほぼ死体同然の物が、五個転がっている。 あの饅頭が一匹でやったのか。ゆっくりにしては、なかなかやりおる。 隙を突かれてちび饅頭をやられるあたりの抜け具合は、ゆっくりクオリティじゃがな。 見ると、山の方角に向かって餡子の跡が転々と続いている。 何匹かは取り逃がしたようじゃ。…厄介じゃのう。 「ゆっくりが集団で人間の畑を…?」 一緒についてきた倅が、疑問の声を投げかける。 「そうじゃ。山に餌が少なくなったりするとな。 お前が赤ん坊の頃なんぞは、それはゆ害がひどくてな… 村中総出で駆除したから、お前が物心つく頃には落ち着いとったが、最近は時折な…」 「なんでまた…ここ最近は天候も問題なかっただろ?山の餌だって十分…」 「…数が増えすぎたんじゃろな。 お前ら若いモンが村を出て、ゆっくりを採るモンが減ったからじゃろ。」 「………」 しかし、イヤな予感がするのう。 いつもは一家で畑を荒しに来るバカ共じゃが、転がってるのは成体ばかりの集団じゃ。 組織的な襲撃じゃとすると… 「…戻るぞ。」 「あ、ああ。」 ================== 「ふう…」 料理の仕込みも一通り終わり、茶を入れて一息つくことにする。 ゆびっ 縁側に出て、鳥避け網で囲って吊してある干し赤子ゆっくりを一つむしり取る。 干してから日が浅いので一番の食べ頃ではないが、まあ、構わん。 「来るかの…」 やべちぇ… れいみゅ いちゃいのやあぁ… あぎっ… いちゃ… 甘みの凝縮された餡子を囓りながら、ゆ害対策について、考えを巡らせる。 「よいじょ……」 横合いからの声に、思考が中断される。 見ると、ちび饅頭が柱の陰に隠れるようにして、こちらを覗き見ていた。 「…なんじゃ。」 ワシが声をかけると、一瞬ビクッとして柱の陰に隠れてしまったが、 そのまま待っていると、ズリズリと這いだしてきおった。 「よ、よいじょ!よいじょ!」 言いながら、ペコペコと頭を床に打ち付けている。 …?なんじゃ、さっきの礼のつもりか…? ゆぎっ ちび饅頭を無視して、干し赤子を囓り、クチャクチャと甘味を噛みしめる。 ふと目をやると、ちび饅頭が口を開いてこちらを見ておる。 更に無視して、干し赤子を囓り続けるが、ちび饅頭の視線が気になる。 「…なんじゃ…食いたいのか?」 「じぇんこーよ…」 遠慮がちに答えたちび饅頭に、もう一つ干し赤子をむしり取って床に放り投げる。 あんなにガン見されたら、ワシが食いづらいからの。やれやれじゃわい。 ゆわわぁぁ! たべ、たべないじぇぇ! まいちゃは たべものじゃないんだじぇぇ! たじゅげでなんだじぇぇ! おかあしゃあん! ゆぎぃぃっ?! 干し赤子に齧り付き、むしゃむしゃと口を動かす、ちび饅頭。 途端にぱああっ、と満面に笑顔を浮かべ、ち、ち、ち、ちあわちぇ~! 「よいじょ!よいじょ!」 とは言わないんじゃったな、コイツらは。 嬉しそうに、ぴょんぴょんと跳ねながら、その笑顔をワシの方にも向けてきよる。 「よいじょぉ…!」 三分の一ほど囓られた干し赤子を残して、ちび饅頭がゲップを漏らした。 「ん?なんじゃ、もういらんのか?食い物を粗末にしおってからに…」 考えてみれば、自分の体とさほど大きさの変わらん干し赤子じゃからの、 全部食える訳もないか。 流石に床に置いたモノを食えんので、干し赤子は庭先に放り投げる。 ちゅんちゅん ちゅんちゅん やめちぇぇぇ!! いちゃっ!いちゃっ! とりしゃん、つつかないでなんだじぇぇ! ゆぎっ!! ゆぴぃぃっ!! まいちゃのかばいいおべべがぁぁ!! 雀たちの鳴き声を聞きながら茶を啜っていると、足に奇妙な感触を受けた。 「よいじょ!よいじょ!」 何事かと見ると、ちび饅頭がワシの足に頬を擦りつけておる。 ええい、こそばゆいわい、やめんかい。 たかが干し赤子一個で手なずけられおって、やっすい饅頭じゃ。 まるで、倅の子供の時分を見ているようじゃ。 なんだか腹立たしいので、無視して茶を啜る。 「よいじょぉ…」 おばあちゃん… 突然、ちび饅頭の声が、そんな言葉に聞こえたような気がして、ハッとする。 …アホらしい。そんなわけがあるか。 ワシも歳を取って耳がおかしくなったのかのう… 心の中でブツブツ言いながら、ちび饅頭を見下ろすと、 いつの間にか寝息を立てておった。 ちび饅頭の頭にそっと指の腹を乗せ、撫でる。 「よいじょ…よいじょぉ……」 …"おばあちゃん"、のう… ================== ギシッ、ギシッ 歩くたびに、月明かりを照らし返す廊下の板の間が音を立てる。 スッ 倅達が使っている部屋の襖を少しだけ開いて、中の様子を伺う。 いきなり開いて、HENTAI交接の現場とご対面したら目も当てられん。 「うーん…えーき様ぁ…大丈夫ですよぉ…お袋…もう寝てるから… ねっ…ちょっとだけ…先っぽだけでも…むにゃ…」 「よ、よいぞぉ…ぜんこーよぉ…よ、よい…よいぞ…よいぞぉぉ…」 布団の中ではバカ二匹が夢の中と。 倅を叩き起こそうと部屋に踏み入るが、倅の布団の上に乗ったちび饅頭が目に入る。 「よいじょぉ……」 …ふん、まあワシ一人で十分じゃろ。 バカみたいに幸せそうな寝顔で寝言を呟くちび饅頭を眺めながら、 ひっそりとそう呟き、部屋を出る。 「今夜は満月か…」 長年愛用してきた鍬を背負い、月を眺めながら、夜道を歩く。 ほどなく、昼間の畑が見えてくる。 やはりのう… 「うっめ! これ、めっちゃうっめっ!」 「がーつ、がーつ! しあわせー!!」 「さすがぱちゅりーね! にんげんさんが ねているすきに"やしゅう"をかけるなんて、 とっても とかいはな さくせんだわ!」 「むきゅきゅ! それほどでもあるわ! むきゅ! むきゅきゅ!」 おるわおるわ。 赤リボンに、黒帽子、時々、とかいはにもやし。四十匹程かの。 我慢の効かないゆっくり共。 一度追い返したくらいでは、すぐに戻ってくるとは踏んどった。 そして、組織的に行動する知恵のある連中なら、 二度目は警戒して人間が寝静まる夜中を狙う… そこまでの読みは良かったが、少しばかり来るのが遅かったようじゃ。 「むーしゃ、むーしゃ! ゆゆっ?! にんげんさんだよ!?」 「「「にんげんさんはゆっくりでぎないいぃぃ!?」」」 「にげるんだぜえぇ?!」 「まっでー! れいむをおいでがないでよおぉ?!」 「えれえれえれえれ…むきゅぅ…」 「みんな、待ってね!あれは、おばあさんだよ! おばあさんはあんまり強くないから、みんなでかかれば、やっつけられるよ!」 「ゆゆ? そうなの!?」 「ゆっふっふ! れいむたちの おやさいさんをひとりじめする、 わるいにんげんさんは、みんなで せいっさいっ! しようね!」 「人間さん?可愛そうだけど、みんなのごはんのために─」 「「「「「ゆっくりしんでね!」」」」 ワシの姿を見て、一瞬、怯えて逃げ出そうとしたゆっくり共だが、 年寄り一人ならば、勝てると踏んだようじゃ。 一斉にこちらに向かって飛び跳ねてくる。 ふん 畑を荒らす害饅獣共が。 老いさらばえたとは言え、農家の嫁じゃ! 日々の農作業で鍛えたこの体!舐めるんじゃあないわい! ガシャ 月に掲げるようにして、両手で握った鍬を頭上に振り上げる。 何十年となく繰り返してきた構え。土を耕す構え・荒ぶる農家のポーズじゃ。 「ヒャッハァー−ーッ!!制裁じゃあ!!」 ================== 「ごめんなざいいぃ!? れいぶはやめようっていっだんでずうぅぅ!!」 「ほいっ」 「やべぶっ!!」 せいっさいっがどうのと言っておった赤リボンに鍬を振り下ろし、 顔面をザックリ削ぎ落とす。 残りは…にの、しの、ろの…十二か。 「いくのぜ! まりさ! まりさ!」 「おうなのぜ! まりさ!」 「まりさにまかせるんだぜ! まりさ!」 「「「ゆゆうぅぅ!! じぇっと・ゆとり ブスッ 「「「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…」」」 一列縦隊で飛び込んできた黒帽子三匹を鍬の柄の側で一突きして一網打尽にする。 「ゆ゛っ…どおじで…ばでぃざを…ふみだいに…ずる…のお…?」 鍬を振って、訳のわからん断末魔を呟いている黒帽子を払い落とした時に、光が見えた。 「どすすぱぁぁぁーーーくっ!!!」 「?!」 間一髪、廻し受けで凌ぎ、攻撃後の隙を逃さずに、ゆっくりとの距離を詰める。 「まりざのすぱーくがああぁ! おっどどぎがあぁぁ! どおじでぎがないのおぉぉ?! ゆがあっ?!?!」 反撃も忘れてゆんゆん泣き喚いているゆっくりの眉間に鍬を突き立てる。 おや、随分皮の丈夫なゆっくりじゃの? もっとも、爺さんと一緒に開墾したこの辺りの畑は、土が固い上に石も多かったしのう… アレに較べたら、ゆっくりの饅頭皮なんぞ、可愛いもんじゃあ。 ふふ…あの頃は、日が沈むまで、二人とも汗だくになって土を耕しておったのう。 大変じゃったが、不思議と楽しかったわい… ほーれ、えんやこらさっとぉ… 「やべでえぇ!? い゛だい゛っ! い゛だい゛い゛っ!!! ゆ゛ぎい゛っ?! …ゆ゛っ…ゆ゛っ…」 ん? 昔の思い出に浸りながら掘り進んどったら、いつの間にか中枢餡まで抉ったようじゃの。 仲間が次々にやられるのを見て恐慌を来したか、 残るゆっくり達が泣きながら、背を向けて山の方に跳ねて行く。 そうは問屋が卸さんわい。 ここで逃がしたら正月もおちおち寝ておれんからの。 揃ってここで、鳥の餌になるがええ! 最後尾のゆっくりに追いつき、鍬を振り上げたその時じゃった。 グギィィ おおう……破滅の音が鳴り響きおったわい… 不覚じゃのう…こんなときに腰をやっちまうとはのぉ… 「ゆ?」 潰そうとしていたゆっくりがこちらを振り返り、ワシが固まっている事に気づく。 「ゆ~?」 不思議そうに、こっちを見上げながら、ずりずりと後ろに回り込む。 ちょ…タンマ…ゆっくりタンマしとくれね! 「ゆっ! すきありだよ!」 ドンッ 「ぐがっ?!」 こ、腰…!腰に…! よりによって痛めた腰に体当たりをくらった。 激痛のせいで踏ん張りが効かず、畑の真ん中に倒れ伏す。 ぬおお…!痛くて声もまともに出せん…! まずいのう…!これはまずいのう…! 「ゆ? ばばぁの うごきが とまってるわ!」 「ゆふーん! れいむの ひっさつのいちげきで たおしたんだよ!」 「ゆっ! いまのうちなんだぜ! とどめをさすんだぜ!」 「むきゅ! 油断しちゃだめよ! 周りを囲むのよ!」 ゆっくりもやしの指示で、逃げようとしていた他のゆっくり共もこちらに戻ってきて、 じわじわとワシの周りの包囲網を狭めてくる。 何匹かは、尖った枝を口に咥えておるな。アレで刺されたら、流石に痛そうじゃ。 一匹の黒帽子がすぐ近くまで来て、咥えた枝をワシの目に向けて突き出す。 なるほどのう。まずは目を潰すつもりか。 ゆっくりの分際で賢しい知恵を身につけおって。 手を伸ばせば叩き潰してやれる距離じゃが、痛みで体の自由が効きやせん。 倅に助けを求めようにも、ここからじゃ遠すぎて家までは声が届かんし、 そもそもバカ息子は、一度寝たら、滅多な事では起きんしの。 ま、どのみち、今から助けを求めた所で、間に合いそうにもない。 …ここまでかのう。 爺さんよ…予定よりちぃとばかし早く、そっちに行くことになりそうじゃわい。 「ゆっくりしねっ!!」 飛びかかってくるゆっくりの動きを、近づいてくる枝の先端を、 まるでスローモーションの映像でも見ているかのように、はっきりとこの目が捉える。 ああ…こんな事になるんじゃったら… ボスンッ!! 「ゆぎぃっ!?」 枕がぶつかり合うような音とゆっくりの悲鳴を残して、 ワシに飛びかかってきたゆっくりが視界から消えていた。 「ゆぎゃああぁ! いだいっ! いだいんだぜっ! やべっ、やべでぇぇ!!」 悲鳴を追って視線を横に移すと、そこに先程の黒帽子のゆっくり。 その上にのしかかり、黒帽子の底部に噛みついているのは、 もう一匹のゆっくり…よいぞ饅頭じゃった。 「あがっ…!? だず…! だずげ ブチブチィッ! ゆびぃぃぃぃっ!!」 饅頭がワシを襲ったゆっくりの底部をゴッソリと噛み千切り、 たっぷりと餡子のついた饅頭皮をベッと地面に吐き捨てる。 そして、ゆ゛っゆ゛っゆ゛っと痙攣するゆっくりに、 いや、周りにいる全てのゆっくりに聞かせるかのように、一声 「しけええええええっいいいいぃっっっ!!!!」 憤怒の形相を浮かべ、満月に向かって吠えた。 凍てつく大気がビリビリと震え、 気圧されたゆっくり達が、我知らず、ずりずりと後ずさる。 ほう。気迫だけなら、ゆっくりと言うより、野生のケダモノじゃな。 それとも、地獄の閻魔様かの。 ペットショップで買ってきたなんて言うとったから、 箱入りゆっくりだとばかり思っておったが、そんな顔もできるんじゃあないか。 ま、妻たるもの、母たるもの、それぐらいの気迫がなけりゃ勤まらんがの。 「だずげでぇ…いだいぃ…ゆぶりゅりゅっ?!」 足を噛み千切られて泣いていた黒帽子の上で饅頭が跳ね、 傷口からゴソッと餡子が飛び出す。 「ま、まり …?!…!?…!!!」 次の瞬間には、叫び声を上げようとした、とかいはの口が噛み切られ、 声の替わりにクリームが漏れ出す。 「ゆ、ゆううぅ~!?」 そこに、口に木の枝を咥えて突進してくる赤リボン。 ベシン! その枝がはたき落とされる。 いつの間にやら、よいぞ饅頭が木の板を咥えており、それではたき落としたのじゃった。 「ゆ…ゆ…ゆるしてね…? れいむを…ゆっくり…ゆるしてね…?」 「しけい」 木の板が赤リボンの眉間を貫き、先端が後頭部から飛び出した。 その後は、一方的な殺戮が続いた。 普通のゆっくりに較べ、運動能力的に優れた種という事もあったかもしれん。 じゃが、それ以前に、気迫においてゆっくり共は完全に呑まれていた。 「む…むきゅ…こんな筈は…こんな…」 クリームを垂れ流しながら、もやしが這っている。 他のゆっくりは、全てよいぞ饅頭が屠った。 当の饅頭はと見ると、息を乱してはおるようじゃが、少しかすり傷を負っている程度。 こちらを振り返った饅頭と目が合う。 「お前…どうしてここに…」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ……制裁じゃあ… 「…?よいぞぉ…?」 男の腕に抱きしめられていたゆっくりえーきが、不意に目を覚まし、 身を捩って男の腕から抜け出すと、キョロキョロと暗い部屋の中を見回す。 「むにゃ…えーき様ぁ…おしっこですかぁ…? えーき様のなら…俺ぇ…飲めますから…ここで…むにゃ…」 「く、くろぉ…!くろっ!」 「あた…んほぉぉ…あたらしいぷれいでずねぇ…ゆぴぃー…ゆぴぴ…」 ゆっくりえーきが顔を真っ赤にしながら、 帽子の中から取りだした"かいごのぼう"で男をペチンと叩き、男はいびきを掻き始める。 そして、ゆっくりえーきは、体を使って障子を押し開け、部屋を出て行く。 「よいぞ?よいぞ?」 しきりに周囲を見回しながら、 月明かりの中、家の周りをぽいんぽいんと飛び跳ねる、ゆっくりえーき。 やがて、元野生の捕食種の聴覚と嗅覚が、 冷たい風に乗って流れてくる悲鳴と甘い香りを捉えた。 風上へと向かったゆっくりえーきが見た物は、 月明かりに浮かぶ、一人の人間と、多数のゆっくりのシルエット。 即座に状況を把握し、その場で踵を返す。 確実に事態を打開できる、"援軍"を連れてくるために。 その時、背後で、昨日から何度も聞いていた声が聞こえた。 ぐがっ?! 地べたに倒れ伏している人間。じわじわと迫るゆっくり。 一も二もなく、ゆっくりえーきは飛び出した。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○o。「………よいぞ!よいぞ、よいぞ!よいぞ~!よいぞっ!!」 「スマン。何言うとるのかさっぱりわからんわい。」 まあ、ええか、どうでも。終わったことじゃ。 残るは、瀕死状態でずりずり這いながら逃げ出しているもやし一匹。 あの分じゃ、山まで辿り着け… 「な…なんじゃと…?」 「よい…ぞ?!」 ワシと饅頭が同時に声を上げた。 視線の先、逃げるもやしの更に先に浮かぶシルエットは、 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆゆゆゆゆゆゆ… 無数のゆっくり達。 「"ていさつたい"は、なにをやってるのよ! ありすの とかいはな おちびちゃんが、まちくたびれてるわ!」 「きっと、れいむの おやさいさんを ひとりじめしてるんだよ! ゆるせないよ!」 「おきゃーしゃん、はやくおやさいさん、たべちゃーい!」 「もうすぐだよ! おちびちゃんたち! いっぱいむしゃむしゃしようね!」 「「「ゆわーい!!」」」 馬鹿な…まだあんなにおったというのか…!? 「ゆっ?! にんげんさん?!」 「どおおおして、にんげんさがいるのお?! よるなら にんげんさんは すーやすーやの はずでしょお!?」 「むきゅう…」 「ぱちゅりー?! どうじだのお!!」 「みんな…だいじょうぶよ…あの人間さんは…ぱちゅの攻撃で…もう動けないわ… 残るは…変なゆっくりだけよ…! ぱちゅ達の仇…とってちょうだい…」 成体だけで百近くはおるか… 子ゆっくりや赤子ゆっくりに至っては、その何倍か…数える気にもなれん… 山の群れ総出で、お食事タイムと洒落込みおったか。 五体満足の人間ならば屁でもないが、 饅頭一匹と身動きの取れない役立たず一匹じゃどうにもならんのう… 「おい、饅頭!とっとと逃げんかい!お前一人じゃ勝ち目なんてありゃせんぞ!」 「くろっ!!くろぉっ!!」 『お義母様を置いて逃げるなんてできません』 じゃと…? はぁ…そんな声が聞こえるとは、 いよいよ倅の病原菌が、ワシの脳まで移ってきたようじゃ…まったく… 「お義母様なんて呼ばれる筋合いは無いと、何回言わせりゃわかるんじゃ! 目障りだからとっとと失せんかっ!姑の言うことは聞くもんじゃ!」 「くろぉぉっ!!」 我ながら矛盾している事を怒鳴り散らすが、 饅頭は迫ってくるゆっくりの群れを見据えたまま、逃げ出そうとはしない。 この、頑固モンが! それにしても、ゆっくり共のこの数…どれだけの子を為した事やら… しかも、どいつもこいつも、死ぬほどに飢えとるようにも見えん。 餌が無くなり、やむなく畑を襲ったとばかり思っておったが、 それより先に野菜の味を覚えたか… 際限なく、子を増やし続け、美食を貪る。 足るを知らんのう。 愛するつがいがおって、子供の一匹、二匹もおれば、十分幸せじゃろうに、 …………それ以上、何を求める事があるというんじゃ? 不意に饅頭がこちらを振り向く。 「よい…ぞ…」 ?…『ごめんなさい』 口にしたのは、その言葉だけじゃった。 助けられなくて、ごめんなさい お義母様の言う事に従わなくて、ごめんなさい 幾らでも解釈のしようはあった。 じゃが、不思議と、ワシには饅頭の言いたい事がわかったような気がした。 『ゆっくりで、ごめんなさい』 "私が人間だったなら、お義母様もあの人も、苦しまないで済んだのに" 『ゆっくりで、ごめんなさい』 ───、オラのとこさ嫁に来てくれんか? な、なにバカ言うとる。オ、オラなんぞ、器量もよくねし、家事もまともにできね… 気立てだって…男勝りの乱暴もんだ。か、からかってんなら、たいがいにしろ…! …それに…オラの家は…村八分だ…オラなんかと一緒になったら…おめえまで… こまけぇこたぁいいんだよ!! んな… 毎日、おめえの顔が見れて… そだな、可愛い子供の一人もできれば、オラァそれだけで幸せだ。 それ以上はなーんも、いらね! 違う…違うんじゃ… ゆっくりだとか…ゆっくりじゃないとか…そんな事は… わかっておった…ワシにもわかっておった… どうしたら…あの子が幸せになれるか…あの子がいつも笑っていられるか… それなのに…ワシは…、ワシは…ただ…あの子が…ワシの元から… 「ほんとに へんなゆっくりだね!」 「むきゅぅ! 人間さんに味方する、裏切りゆっくりはせいっさいっよ!」 「ゆへへ! じゃあ、あのゆっくりは、まりささまのすっきりーどれいにするんだぜ!」 「みんなの かたきを とるわよ!」 ポタ… ポタッ ポタッ 「……かった…寂しかったんじゃあ………許しとくれぇ……」 地面に広がる染みを見つめながら、心の奥底で淀んでいたモノを吐き出す。 大バカ者じゃあ…ワシは…、今さら…そんな事を… ぽふ 髪に何かが触れるのを感じ、目を上げる。 饅頭が木の板で、ワシの頭を叩いておった。 いや…そっと添えるように、ワシの頭に乗せておった。 そして、お地蔵さんのように穏やかな笑みを浮かべ、一言だけ、言った。 「しろ!」 ぽよん、ぽよん、ぽよん… クルリと踵を返し、ワシに背中を向けた饅頭が、 ゆっくりの群れに向かって一直線に跳ねて行く… 爺さんや…!助けとくれ…助けとくれえぇ…この老いぼれはどうなってもええ… じゃから…! えーき様ぁー… お袋ぉー… その時、倅の声が聞こえた気がした。 幻聴かとも思ったが、跳ねていた饅頭も足を止め、 家がある方向を向いてびょんびょんと高く飛び、力の限りに 「よいぞーっ!!よいぞーーーっ!!!」 倅を呼ぶ。 「ハァ…ハァ…えーき様っ!お袋っ!一体、何が…?あのゆっくりは…?」 「よいじょっ?!よいじょっ?!」 全速力で駆けてきた倅が、間近まで迫ったゆっくりの群れを見ながら尋ねる。 倅のどてらのポケットからは、えいきが飛び出し、 ワシの周りで泣きながら飛び跳ねておる。 「こんバカ息子がぁっ!! お前の"嫁"が体張って戦っとる時に、亭主のお前がいつまで寝とるかあっ!」 「え?え?」 「いいから…さっさと害獣駆除…せんかい。」 新たな人間の登場に、攻めあぐねて動きを止めたゆっくりの群れに視線を送りながら、 ようやくそれだけ告げる。 ホッとした途端、ガックリと体から力が抜けよる。もう叫ぶ気力もないわい。 まったくもって、歳は取りたくないもんじゃ。 「い、いや待てよ、お袋。 ゆっくりだって自然の一部なんだ。行きすぎた伐採は生態系をだな…」 そんなもんは勝手に生えてくるわい。 「よいぞっ!よいぞっ!ぜんこーよっ!!」 「…え?こいつらは? 昼間、えーき様とえいきを襲った奴らの仲間で?ふんふん その上、お義母様まで殺そうとしてたのよ?ほうほう だから、遠慮なくやっちゃえ?ふむふむ………………………………ひゃっはー…」 「ぎゃくっさつっっだあああああああああっっっ!!!!」 「ちけーーーーいっ!!!」 倅が落ちていた鍬を拾い、雄叫びを上げながらゆっくりの群れに突っ込む。 「ってめぇぇぇらぁぁ!!食材の分際で俺の家族に何してやがんだぁぁ!!」 「ゆぎゃあぁぁっ!?」「びゅげえぇぇ!」「ゆひ…ゆぎいいぃぃ…!」 「ゆぎぃぃ…! ばりざのあんよさんがぁぁ!? や、やべっ…ゆびゅう!」 「まりしゃの…あんよしゃん…? ゆっくちちにゃいで…くっちゅくんだじぇ…」 鍬を振るってゆっくりの体を削ぎ、踏み込みついでにゆっくりを踏み潰す。 ゆっくり共も体当たりをしてくるが、足腰のしっかりした人間相手では何の効果も無い。 着地した所で全力の蹴りを食らい、悲鳴を上げ、餡子を四散させながらお空を飛ぶ。 「ゆっくりきしゅうさくせんだよ! そろーり!そろーり!」 「そろーり!そろーり!」「「しょろーり!しょろーり!」」 一家と思わしき数匹のゆっくりが倅の背後の死角に回り込む。 アホ饅頭共に気づいてない事もなかろうが、倅はそちらに目を向けすらしない。 それもその筈 「しけいっ!しけいぃっ!!」 ズボ グリュン 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! いぢゃいいいいい!! いぢゃいいいいいい!! ばでぃざのおべべがああ!! どぼじでごんなごどずるのぉぉ」 嫁饅頭が倅の背後の成体ゆっくりの目に木の板を突き刺し、そのまま捻りを加える。 「ばでぃざぁぁ!? ゆ、ゆひいっ?! ズボッ でいぶのまぶまぶざんがぁぁ!!」 木の板を引き抜き、今度は、恐慌状態に陥ったもう一匹の成体の口の下あたりを貫く。 「ちゅ、ちゅぶうっ!? ちゅぶれりゅぅぅぅぅ…! びゅげえぇぇっ!」 「こ…こっちくるにゃああ!!」 そして、残る子ゆっくりや赤ゆっくりに飛びかかり、 ボインボインとジャンプして押し潰し、餡子を吐かせる。 嫁饅頭に背中を預けた倅は、悠々と眼前のゆっくりに鍬を振るう。 良いチームワークじゃ。 爺さんと一緒にゆっくりを駆除してた頃を思い出すわい… ぷにょん、ぷにょん ん~? ふと見ると、倅達の攻撃をくぐり抜けて…というよりスルーされて来た赤ゆっくりが、 動けないと思ってか、ワシの体に体当たりを繰り返しとる。 「ゆっくちちてない ばばぁは、ときゃいはな ありしゅが やっつけりゅわ!」 「いたいでちょ? れいみゅたちの おやさいしゃんを、ひとりじめしゅるから、 しぇいさいしゃれるんだよ? りきゃいできりゅ?」 ぷくぷく わさわさ びきぃ 可愛くないのぉ。可愛くないのぉ。 ワシの孫とは大違いじゃのぉ。 おお?そろそろ腕ぐらいは動かせそうじゃな。 どーれ、ワシもヒャハるとするかの。 「ちけいっ!!」 「ゆぴいいぃぃっ?!」 と思った矢先、飛び出してきたえいきが、ちび赤リボンのモミアゲを噛み千切った。 「れいみゅの ちゃーむぽいんちょの もみあげしゃんがぁ…! ゆぎいぃっ?!」 「れいみゅー!? ちっかりー!!」 続けてもう一方のモミアゲも噛み千切った後、帽子から小さな木の板を取り出し、 口に咥えると、ちびとかいはをブスブスと刺し始める。 「くりょ!くりょ!ちけーい!」 「ゆびぃ! いちゃい! ゆぴぃ! みゃみゃあ! ゆええん! もう ぷすぷすしゃんは やめちぇぇ! ときゃいはじゃ にゃいわぁ!」 「…ゆ゛っ…れー…みゅの…もみあげしゃん…もう…わさわさ…できにゃいぃ…」 「ほっほっ、ババを守ってくれとるのか?」 「よいじょ!よいじょ!」 めんこいのぉ。めんこいのぉ。 ゴーーーン 「ゆぎゃあああぁ! あづいよぉぉ!」 「までぃざの すでぎな おぼうじがあああぁ! もどじでえぇ!? おぼうじ、もどにもどじでえぇ!!」 「えれえれえれえれ…」 「ばちゅりぃぃー?! えれえれしだら ゆっぐりでぎなぐなっぢゃうんだぜぇ?!」 「「「えれえれえれえれえれえれ…」」」 「「「「「おあちゅりぃぃぃ!!」」」」」 おや、除夜の鐘が始まったか。 良い音色じゃのう。煩悩が祓われて行くようじゃわい。 ありがたや、ありがたや…ほっほっほ… ゴーーーン 「ゆああぁぁぁぁぁん! きょわいよ! やめちぇね! おろしちぇね! おろしちぇね!!」 ドスッ 「ゆぎっ!?」 キュウ~→ 「まりちゃのあにゃるしゃんがぁぁぁぁぁぁ! やべぢぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆあぁっぁあっ…ぁ…あっ…あっぁ…あっ…」 「もっ……ちょ……ゆ……くち……」 「やぢゃやぢゃ! ぢにちゃくにゃいよぉぉ! ゆっ!? も…う…れい…みゅ…ぷくぷく…しちゃく…にゃいの…に…ゆ゛っ!?」 ボンッ! 「やめちぇぇぇ! もうのめにゃいよぉぉぉ~! おぼれちゃうよぉぉぉ!」 「おみずしゃんゆっくちしちぇぇぇぇぇ~!」 「ご~きゅ!ご~きゅ! しにちゃくないよぉぉ~!」 ほっ…ほ…? ゴーーーン 「ゆっぐりでぎないごはんざんは…じねぇぇぇ!!」 「ゆああああ! とどかないよぉ! とどかないよぉ!」 「ごはんさん! いじわるしないでこっちきてね!」 「あ…でぃ…ず…もう…だめ…れい…ぶ…までぃ…ざど…いきて…ね…」 「あでぃずぅぅぅ!!!」 「お…おにーさん………おにーさん…」ずり…ずり… 「…おにーさん」 「まりさをかってね!」 ゴシャ 「ゆ゛お゛え゛え゛え゛え゛っ!ゆ゛え゛ー どぼじでお゛に゛ーざんが、お゛にーざんのかっこになっでるの゛おお…?!」 「そのおかおででいぶをいじめないでえ゛えええええ!!!」 ドゴォッ…! ……?? ゴーーーン 「ゆッ れいぶ だじゅッ だじゅげでッ」「ま まりさぁ れいむおよげないよぉ」 ザッバァアン!! 「まりさぁぁぁあ!」 ………?????? ================== 「「「ゆ゛…ゆ゛…ゆ゛…」」」 畑一面に餡子とクリームと饅頭皮が広がる。 まともに動けるゆっくりは、もうウチの連中だけじゃ。 後半、何かよくわからんもんを召還しておった気がしなくもないが、 兎にも角にも、害饅獣駆除は完了じゃわい。 「お袋…腰やったのか?大丈夫か?」 「なーに、これくらい…あだだだ!」 「ホラ、無理すんなよ…もういい歳なんだから…」 「うるさいわい!年寄り扱いするな!」 倅がやれやれという風に、肩をすくめる。 「…それにしても、よく気が付いたの。 お前のことじゃから、このまま朝まで寝こけとると思ったわい。」 「いや、それがさぁ、気持ち良く寝てたら、大きな音で目が覚めて… 何かと思ったら仏間で仏壇が向かいの壁まで吹っ飛んでブッ倒れてるんだよ。 でもって、えーき様もお袋も何処にもいないだろ? こりゃ、俺が寝ている間に地震でも来て、みんな逃げたのかと思って、 えいきを連れて外の様子を見に来た結果がこれだよ。」 …爺さんよ…夢枕に立つとか…他にやりようがあるじゃろおおお? 誰が掃除すると思うておるよ。 『こまけぇこたぁいいんだよ!!』 うるさいわい……ありがとよ 「よいぞ?よいぞ?」 「よいじょ?」 頭にえいきを乗せた嫁饅頭も、こっちにやってくる。 「怪我なんかしとらん。少し休めば動けるようになるわい。」 「よいぞ!」 「よいじょ!よいじょ!」 ふん 「お前に心配される筋合いなぞないわ。この役立たずが。 役立たずは役立たずらしく、初めから倅を叩き起こして連れてくれば、 肝を冷やす事もなかったと言うに… ほんっに、役立たずじゃあ。」 「よいぞぉ…」「よい…じょぉ…」 「お袋…」 嫁饅頭親子がしょげかえり、倅も苦い顔を浮かべる。 「のう?」 「ん?」 「正月はこっちにおるのか?」 「…ああ。仕事始めまではいる…つもりだったけど…」 「そうかい……おい!饅頭!」 「よいぞ?!」 「役立たずが…せめて半人前の嫁ぐらいにはなれるよう、 明日からビシビシしごいてやるわ。覚悟せい。」 「………」 嫁饅頭がポカンと大口を開けてこちらをみつめ、 それから、 「よいぞ!!ぜんこーよっ!!」 そう答えて、不敵な笑いを浮かべおった。 『望むところです!お義母様!』ってところかのう…小娘が生意気言いおってからに。 ワシが嫁いで来た時の事を思い出すわい。 あの時の姑もこんな気分じゃったのかの… 息子が苦笑を浮かべ、えいきの顔にも笑顔が浮かぶ。 …爺さんや、やはりもう暫くはそっちへは行けんようじゃよ。 やらにゃならん事ができてしもうた。 ワシはもう少しコッチで楽しんでから行くことにするわい! 「ひゃっひゃっひゃっ! ヒャッハー!嫁いびりじゃあ!!!」 「よいぞぉっ!!!」 「よいぢょ!よいぢょ!」 おわり あとがき ・お母さんの方言っぽい口調はいい加減です こまけぇこたぁ~も江戸っ子風の言葉だし、おかしいかとは思いましたが こまけぇこたぁいいんだよ!! 違和感感じる方、ごめんなさい ・十王裁判の意味を履き違えてるのはゆっくりりかいしてます ・書いてる途中で思った事 あれ?これ『(義理)親子・仲直り』じゃないですか? てことはコンペ出られるんですか!やったー! ↓ 続き物はコンペに出せないじゃないですか!やだー! コンペ用のネタさんはゆっくりしないで早く降りてきてね! これまでに書いたもの ふたば系ゆっくりいじめ 229 たくすぃー ふたば系ゆっくりいじめ 344 ゆっくりで漬け物 ふたば系ゆっくりいじめ 404 ただ一つの トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 「どうしてお兄さんがお兄さんの格好しているのぉ!?」→同一人物が一人二役する漫画だったな~ ・・・・・・って作品違うでしょ!(ノリツッコミ -- 2018-01-02 16 21 08 ゆ虐とか関係なしに泣いていた私がいた。 -- 2016-08-07 07 10 06 この息子…獣姦したのか いや饅姦か? -- 2014-05-08 14 42 07 よいぞよいぞー! -- 2014-01-26 19 18 09 しろっしろっくろっよいぞっよいぞっしろっぜんこーよ!しろっ! -- 2013-06-18 16 19 06 ばあさん張り切りすぎwwww でも、いい話でした。 -- 2012-07-14 16 10 09 いい(≧∇≦)b -- 2012-06-11 00 01 19 なん・・だと・・ -- 2012-05-27 23 13 46 ゆっくりとだっていいじゃない!こまけぇこたぁいいんだよ!! 世界には無機物と結婚した人だっているんだからさ… そんな俺も今では立派なHENTAIお兄さんwww -- 2011-10-14 10 35 07 犬猫や人形と結婚 何か問題でも? -- 2011-06-30 19 01 01 初めて希少種を好きになりましたwww ところどころで見かけるネタが絶妙すぎゆwww -- 2010-11-11 02 07 18 やだ、面白い…イイハナシダナー! お婆さんが尋常じゃなければ、お爺さんの助けっぷりも素敵だった。 とても面白かったです! -- 2010-10-11 22 04 41 後半、何かよくわからんもんを召還しておった気がしなくもないが、 混ぜすぎ危険w原作者さんに許可通しときなよ。 -- 2010-10-07 00 01 36 いろんな作者のネタが混じってるw -- 2010-09-09 17 57 19 活き活きしたお母さんが魅力的。 -- 2010-08-28 01 16 01 このえーき様が胴つきになったらお義母様も正式な嫁として認めてくれるかな? -- 2010-08-09 11 32 55 生まれて(?)くるのは所詮饅頭、犬猫や人形と結婚するのと同じ -- 2010-07-30 18 52 02 えーき様話でこんなに感動したのはじめて。感動、ヒャッハー、戦闘のすべてみれてとてもゆっくりできました。 -- 2010-07-22 23 44 27 いい話だなぁ…。この家族が、末永く幸せでありますよーに。 -- 2010-06-16 07 45 24
https://w.atwiki.jp/hyakukami/pages/2400.html
◆◆◆イベント正式名称より「兄貴の心」引用、ページ名変更しました◆◆◆ -- (名無しさん) 2013-05-23 16 23 48 バルドル トリュフ140 -- (名無しさん) 2013-06-03 11 14 58 バルドル アンズダケ138 アンズダケの盛り合わせ210(ともに1.2倍) -- (名無しさん) 2013-06-03 13 58 59 ダッキ:普通の肉10 饅頭54 -- (名無しさん) 2013-06-13 23 15 24 ダッキ:甘酒25 ナツメヤシ50 マリダ90 饅頭盛り合わせ108 -- (名無しさん) 2013-06-13 23 20 18 ヴァハ 干し肉48(1.2倍) 干し肉盛り合わせ96(1.2倍) 蜂蜜酒80(通常値) -- (名無しさん) 2013-07-01 11 16 35 更新できるメンバーいないの? -- (名無しさん) 2013-07-07 19 07 48 ▲▲▲ページ下部にバルドル以降の神追加、コメント分更新しました▲▲▲ -- (名無しさん) 2013-07-11 05 31 18 ホルス シシケバブ 96(1.2) ナツメグ36(1.2) -- (名無しさん) 2013-07-14 18 07 12 コキビ 饅頭 54(1.2) -- (名無しさん) 2013-07-16 13 56 54 コキビ フカヒレ 180(通常値) -- (名無しさん) 2013-07-16 14 02 45 未来トト:特大シシケバブ200(1,0倍)シシケバブ96(1.2倍)キングコブラの丸焼き40(1.0倍)コブラの丸焼き20(1.0倍) -- (名無しさん) 2013-07-18 22 32 29 ホルス 干し肉40 干し肉盛り合わせ80 ライチ55 トウモロコシ60 (1.0倍) -- (名無しさん) 2013-07-18 22 45 40 未来トト ナツメグ盛り合わせ60(1.0) ナツメグ36(1.2) -- (名無しさん) 2013-07-19 01 14 08 未来トト ライチ55 肉まん105 ピーナッツ盛合170 赤ワイン220(どれも通常値) -- (名無しさん) 2013-07-19 12 55 52 ホルス 林檎130 チーズ40 チーズ盛り80(どれも通常値) -- (名無しさん) 2013-07-29 12 56 33 黄龍 饅頭54、饅頭盛合108(1.2) -- (名無しさん) 2013-08-01 17 40 45 黄龍 饅頭54 饅頭盛108 御神酒50 肉まん105 肉まん盛165 フカヒレ180 -- (名無しさん) 2013-08-01 22 40 45 ハウメアはトロピカルジュースは大好物で200→300です。修正願います。 -- (名無しさん) 2013-08-16 14 50 54 クシナダヒメ:甘酒30(1.2)、お神酒60(1.2)、伊勢エビ100(1,0) -- (A×A) 2013-08-31 21 53 43 クシナダヒメ:タンドリーチキン120 -- (名無しさん) 2013-09-05 14 54 47 俵むすび盛り100 -- (クシナダヒメ) 2013-09-07 14 54 05 クシナダヒメ 俵むすび盛り100 -- (名無しさん) 2013-09-07 14 55 17 ディオニュソス:赤ワイン220(1.0)、高級赤ワイン510(1.0)、マリネ72(1.2) -- (A×A) 2013-09-10 22 41 04 ディオニュソス:オリーブの木:30(1.0) -- (A×A) 2013-09-10 22 52 57 カナロア:チーズ盛80、チーズ40、お神酒50 -- (名無しさん) 2013-09-17 01 51 44 エンキドゥ:ネクタル3000 -- (名無しさん) 2013-09-23 19 16 38 ホルス:ネクタル3000 -- (名無しさん) 2013-10-17 14 50 18 ヴァハ 栗:40 栗盛り合わせ:70 ピタパン:200 想い出のチョコクッキー:80 お化けカボチャのシュークリーム:200 バルフィ:200 フォアグラのソテー:200 ドリームキャンディー:200 マスグーフ:200 -- (名無しさん) 2014-02-27 11 28 38 ▲▲▲移転にあわせデータ取得しました▲▲▲ -- (名無しさん) 2014-07-21 18 11 55
https://w.atwiki.jp/wiki6_piro/pages/7320.html
東京で買える地方のもの 静岡県 春華堂 うなぎパイ:小田急新宿店 京都府 満月 阿闍梨餅:伊勢丹新宿店 香川県 かねすえ 大分県 ざびえる本舗 ざびえる:新宿タカシマヤ 鹿児島県 明石屋 かるかん饅頭:新宿タカシマヤ、かごしま遊楽館 かるかん:新宿タカシマヤ 南海堂 げたんは:成城石井ラクーア店 新宿タカシマヤ 地下1階 銘菓百選 ざびえる本舗 ざびえる 明石屋 かるかん饅頭 静岡県東京観光案内所(東京交通会館地下1階) 春華堂 うなぎパイ(12枚入)、うなぎパイ・ナッツミニ(10枚入)、うなぎパイ・VSOP(5枚入) かごしま遊楽館 明石屋 かるかん饅頭、かるかん 本家文旦堂 西郷せんべい 九面屋 赤松(箱入)、塩豆かるかん 寿屋 春駒(バラ) 坂元醸造 黒酢 関連項目 管理用 タグ