約 483,684 件
https://w.atwiki.jp/bakagura_academia/pages/41.html
エグザイル/オルクスのオーヴァード。 未来の世界で時を司る力の存在原因と名乗るもの。 七尾真衣の体に宿り、現在の学園に来る。 目的は自らの存在を無かった事にする事。その為に時田圭磁を殺す事。 七尾真衣と共に直接時田を殺害に来るが 返り討ちに会い消滅。 一人称は「僕」。 人型のオーラのような姿をとる。
https://w.atwiki.jp/new2souennokanntai/pages/862.html
トップページ イベント攻略 [部分編集] 報酬 勝利回数 1 10 20 30 40 50 60 Normal インゴット x5 ★6高性能化素材選択券 x2 Hard インゴット x10 ★6高性能化素材選択券 x2 ★5 13号対空電探-改 x1 VeryHard【壱】 インゴット x15 資材20%ブースト 10分 x2 ★6 訓練教官 x1 改装設計図 x100 VeryHard【弐】 インゴット x20 雷撃術・初級 x600 重油半補給物資 x1 雷撃術・中級 x300 ★5 烈風 x1 VeryHard【参】 インゴット x25 重油全補給物資 x2 資材20%ブースト 20分 x1 ★6 訓練教官 x3 改装設計図 x300 雷撃術・上級 x40 VeryHard【肆】 インゴット x30 ★6 パーツ改造キット x2 生産バーナー x5 ★6 訓練教官 x4 ★6 パーツ改造キット x3 戦技強化上級選択券 x1 砲撃EX錬成計画書 x1 EXTREME ★6 ドーントレス x1 [部分編集] VeryHard【参】の編成 敵戦力:26563 陣形:単縦陣 重油消費:25 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 戦艦、空母、空母、軽巡、軽巡、駆逐 敵旗艦技 : 無敵の耐久力4(HP +20%) 敵戦艦戦技 : 技能 : 敵空母戦技 : 報復ノ爆撃、、 技能 : 爆撃機 60機 x2、90機 敵軽巡戦技 : 白銀の悪戯、掃討爆雷投射 技能 : 敵駆逐戦技 : 技能 : 未分類技能 : 装甲上昇5、速力上昇3、戦技発動上昇3、砲撃回避率強化4 VeryHard【肆】の編成 敵戦力:60860 陣形:梯形陣 重油消費:30 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 空母、空母、空母、空母、空母、軽巡 敵旗艦技 : 艦隊戦の達人4(火力 +20%) 敵空母戦技 : 夢幻の龍神、冲天の布陣、制空の戦略、忌避の迎接 x2、蒼天舞龍、一切を阻む楯、牙砕ノ龍爆、怒髪翔天の轟爆 x2~、天を満たす重爆、鉄檻からの飛翔、猛禽の爪撃、邀爆撃演舞 技能 : 爆撃機 200機 x5 敵軽巡戦技 : 龍の共鳴、 技能 : 未分類技能 : 火力上昇5、対潜上昇5、戦技発動上昇5 EXTREMEの編成 敵戦力: 陣形:梯形陣 重油消費:35 時間・天候:昼・晴 敵構成 : 空母、空母、空母、空母、空母、軽巡 敵旗艦技 : 艦隊戦の達人4(火力 +20%) 敵空母戦技 : 夢幻の龍神、冲天の布陣、制空の戦略、忌避の迎接 x3、媒鳥ナル誘鶴、隼翼の円舞、蒼天舞龍、一切を阻む楯、牙砕ノ龍爆、怒髪翔天の轟爆 x2~、天を満たす重爆、鉄檻からの飛翔、猛禽の爪撃、邀爆撃演舞、シスター・サラ 技能 : 爆撃機 200機 x5 敵軽巡戦技 : 龍の共鳴、 技能 : 未分類技能 : 火力上昇5、対潜上昇5、戦技発動上昇5 ↓コメント等 名前 閲覧数 今日: - 昨日: - 合計: -
https://w.atwiki.jp/setukai15/pages/36.html
暗闇のプロフィール 編集してお使いください(この文章は削除してもかまいません。)
https://w.atwiki.jp/sdora/pages/1804.html
属性 闇属性 最大Lv 99 初期HP - 最大HP - レアリティ ★6 タイプ 古獣 初期攻撃力 - 最大攻撃力 - 初期防御力 - 最大防御力 - 初期スピード - 最大スピード - +HP上限 - 最大HP上限 - +攻撃力上限 - 最大攻撃力上限 - +防御力上限 - 最大防御力上限 - +スピード上限 - 最大スピード上限 - リーダースキル スキル名 スキル効果 フォーススキル1 スキル名 スキル効果 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ディレイターン - 効果持続ターン - フォーススキル2 スキル名 スキル効果 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 進化前 [闇の誘手]レギオタズマ ディレイターン - 効果持続ターン - 通常進化 [怨念の渦]レギオタズマ 特殊能力 - 入手方法 ? 備考 http //crw.lionsfilm.co.jp/news/detail.php?id=499 k=2 資料 *公式の最大ステータス。 コメント 名前
https://w.atwiki.jp/storyteller/pages/351.html
ゼノサーガ エピソードI 力への意志 ・要約版(ゼノサーガシリーズ全体の要約):要約スレpart3-23,112,114~118 ・詳細版:part12-594~610, 14-32~41 23 :ゲーム好き名無しさん:2008/12/26(金) 19 41 05 ID j1iAV0OwO ゼノサーガシリーズ 人々の拒絶し合う精神や、ウ・ドゥと呼ばれる高次元の波動とかの影響で 宇宙は一般人の知らないところで徐々に崩壊しており そのうち滅亡を迎えるのがほぼ確実になっていた。 有史以前から生きてる超人ヴィルヘルムは、宇宙の滅亡は不可避だと結論し アンドロイドKOS-MOSを造って古代に居た「マリア」という能力者を復活再現しようとする マリアの能力を利用すれば滅びかけた宇宙を原初までリセットすることができるのだ。 リセットしても記憶を失った人類は同じ歴史を辿ってまた滅亡に向かうのだが 滅びそうになるたびに再びリセットする「永劫回帰」という無限ループにすることで 未来が無いかわりに宇宙を延命できるのだという。 あるいは既にこの宇宙も、 何回も、ひょっとすると何千回以上もループした後の宇宙なのかも知れなかった。 冒険の中でKOS-MOSは覚醒を果たすが、今までのループとわずかに違い、 単なるマリアのよりしろでもプログラムに縛られた機械でもなく、 自分の意思を持ったKOS-MOSという一存在として成長する。 KOS-MOSはヴィルヘルムの意図に反し、閉じたループではなく、 仲間達と共に未来に進み崩壊を避ける道を模索することを選ぶ。 KOS-MOSが離反したことで暴走した強制リセット装置(ラスボス)を叩いて止めて 崩壊の中心を宇宙の僻地に隔離封印する事で滅亡までの時間を引き延ばすことに。 ワープ封印には成功するがKOS-MOSは大破し、いつか仲間と再開することを信じて ワープ先で長い長いスリープモードに…。 生還した仲間達はそれぞれのやり方で崩壊を阻止するために行動を開始。 幾人かはKOS-MOSのワープ先の星… かつて「地球」と呼ばれた星を探す果てしない航海に旅立つのだった。 …KOS-MOS関係とラストバトル周り「だけ」でこれだよ 各キャラ各勢力各設定とかちゃんと説明したらどうなるんだ… 112 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 17 15 47 ID j2QXEqlJ0 23のゼノサーガを書いた者なんだが、これ一応、事の真相ではあるんだけど これが明らかになるのがEP3の終盤なんで「あらすじ」っていうのとは違う気がしてきた。 EP1の前半だけ見てからこれを読むと 「この展開からどうやってこんなのに繋がるんだ・・・」って気分になるかもしれないと思った。 一応ゲーム展開のあらすじという方向でも纏めてみたんだが、要ります? できるかぎり要約した割にかなり長くなってしまったんだけど 114 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 55 07 ID j2QXEqlJ0 んじゃ行きます ゼノサーガ パイドパイパー (携帯アプリ) 人類が、とある災厄に見舞われて地球を脱出して数千年(本編の約百年前) 情報送信だけでなく物質の転送や仮想空間の構築、超光速航法も可能にした超空間ネット 「ウーヌス・ムンドゥス・ネットワーク(略称U.M.N.)」の恩恵を受け人類は暮らしていた。 だがアブラクサスという惑星で、U.M.N.仮想空間内で人が連続して殺される怪事件が発生。 星団連邦警察の対テロ隊長ジャンは「ヴォイジャー」を名乗るテロリストの犯行と見て調査を進める。 ついにヴォイジャーの正体を突き止めるがそれはジャンの身近な人物だった。 ヴォイジャーは様々な超常現象を起こす無限エネルギー物体「ゾハル」を使うために ゾハルにアクセスできる因子を持った人間の脳内情報を集めていたのだ。 目論見それ自体は失敗するが、ヴィルヘルムに資質を見出され 物理的に死なない不滅の存在テスタメントの一体に変貌するヴォイジャー。 逃げ場も勝ち目も失い家族も殺されたジャンに、ヴォイジャーは自分の仲間になるか、 それとも戦って死んで今までの被害者のように精神をコレクションされるか、という選択を迫る。 だがジャンは第3の選択として、自棄でも逃避でもなく、 自分の意思と人間としての尊厳を守るために自らの命を絶つのだった。 しかし後に、優秀な能力を持つジャンの遺体は サイボーグ体「ジグラット8(通称ジギー)」として意に沿わぬ形で目覚める・・・ 本編に続く。 本編中でのジギーは、大切なものを守れぬまま死も許されず存在し続ける苦痛に、意識をも機械化することを望むが 新たな仲間達との触れ合いにより人としての意思の在り様を再び見つけ出す。 そして犠牲を払いながらもついにヴォイジャーとの決着をつけ、 今度こそ大切なものを守り続けて生きていく事を誓うのだった。 115 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 56 13 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ EP1 ヴィルヘルムがCEOを務める大企業ヴェクター、化粧品から戦艦まで扱う世界規模の一大コングロマリット・・・ そこに所属する若き女技術者シオンは、今は亡き恋人の天才科学者ケビンの研究を引き継ぎ、 人類を襲う謎の敵「グノーシス」に対抗するアンドロイドKOS-MOSを開発していた。 しかし乗っていた宇宙船が襲われ、グノーシスに接触され死にかけるシオン。 だが起動命令も出していないのに何故かひとりでに目覚めたKOS-MOSによって助けられる。 船を脱出したシオン達は、成り行きで(・・・に見えるが実は運命に仕組まれて) モモというレアリエン(労働用人造人間、アンドロイドと違いナマの生物で、明確な感情がある)達と出会い、 そのモモの脳内に封印された、ゾハルや超技術について記された「Y資料」というデータを狙う宗教結社オルムス (の一部であるU-TIC機関)や狂気の不死人アルベドとの戦いに巻き込まれていく。 感情を見せず、時に残酷な振る舞いをしたり、稀に仕様書には無い奇跡のような謎の力を発揮するKOS-MOS。 それらの行動や、KOS-MOSデータ内面世界に不可思議な領域があるのを垣間見て、KOS-MOSへの不安を抱くシオン。 だがKOS-MOSに幾度と無く助けられたこと、創り手としての愛情、亡きケビンとの絆を確認したい、との思いなどから、 シオンはKOS-MOSのことをもっと知りたい、共に生きたいという思いを強くするのだった。 116 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 57 00 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ EP2 グノーシスを打破するため、U-TIC機関にゾハルを渡さず確保するためにも、モモ内部のY資料を解析しようとする。 だがアルベドによって仕掛けられた論理トラップによってY資料は流出してしまう。 ゾハルが封印された惑星ミルチアへのルートが明らかになり、各陣営は一斉に動き、 ミルチア宙域では熾烈な戦闘が展開されるが、 最終的にゾハルはオルムスの教皇セルギウスの手に落ちる。 神の遺物と呼ばれる超技術で造られた、破壊兵器プロトオメガをゾハルの力で起動させ、 圧倒的な力を振るうセルギウス。だがセルギウスには高邁な理想は無く、矮小な我欲しかなかった。 その意思の小ささに、ヴィルヘルムはテスタメント達を遣わしセルギウスを処分する。 そこを横からかっさらうようにアルベドがゾハルを手に入れる。 シオン達の仲間の一人、ルベド(通称Jr.)はかつて、 特殊能力を持った兵器という役割で遺伝子操作されアルベドと共に産まれた。 兵器として死ぬことから逃れようとしたJr.は結果的に兄弟達を見捨てることになってしまったことを悔やみ続け、 アルベドとJr.は互いに愛憎入り混じる複雑な感情を抱いていた。 Jr.はゾハルの力で変容したアルベドの元に単身乗り込み、因縁の戦いに終止符を打つ。 実はアルベドの望みはJr.の手で死ぬことだった。今際の際に和解する二人。 だがゾハルは何処かへと消えた。ヴィルヘルムが笑みを漏らす・・・ 117 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 58 01 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ ミッシングイヤー 今までとは違うパターンのグノーシス被害が出始める。 本来なら群れても統率はされていないはずのグノーシスが秩序だった動きを見せ、 都市部に被害が集中し、そして短時間急襲した後にはすぐ消えてしまうのだ。 グノーシス・テロと呼ばれる一連の現象の裏にはグリモアという数千年前に死んだはずの男の存在があった。 グリモアはまだ人類がロスト・エルサレム(地球)に居た頃に人間を使ってゾハルを操る実験をしていた研究者であり、 その実験で娘を消滅させてしまっていた。 実験で使われたゾハル制御プログラム「レメゲトン」を復元すれば娘を復活させられると信じたグリモアは、 精神データとなってヴェクターの最重要データ区画に潜み、数千年の時を経て行動を開始したのだ。 レメゲトンが発する波動「ネピリムの歌声」に引き寄せられるグノーシス達を誘導し、 断片化してU.M.N.内に四散してしまったレメゲトンを集めていたグリモア。 だが世界をグノーシスの危機に陥れかねないその暴挙はシオン達によって止められる。 しかしシオンは自分の所属するヴェクターの上層部がグリモアを援助していたこと、 この事件の一因となった14年前の非道な人体実験に自分の父が関っていたこと等を知ってしまい、 やがて不信と苦悩からヴェクターを退社して独自の調査を始める事になる。 118 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 58 49 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ EP3 自覚はなかったが、シオンは無意識の内にゾハルにアクセスする強い能力を持っていた。 テスタメント達は過去の惨劇を目の前で再現する精神攻撃を仕掛け、無理矢理シオンの能力を引き出す。 シオンの悲鳴に誘われ、ゾハルが姿を現す。 グノーシス、オルムス、Jr.達の親のユーリエフ・・・ゾハルを求める各勢力が集結し終末的な争いを繰り広げる。 戦いの中で一人ひとり過去を清算し、因縁に決着をつける仲間達。 だがそれらは全てヴィルヘルムの手の上の出来事だった。 ゾハルの稼動で加速度的に被害を増すグノーシス現象。 グノーシスの正体はゾハルの波動を受け、恐怖から他者や世界を拒絶した生命の成れの果てだという。 拒絶し合う意識はグノーシスとなって人類を殺すだけではなく、やがて宇宙の構造そのものを散逸・崩壊させる。 そうなる前に全てを始まりに戻す「永劫回帰」に必要な因子を、ヴィルヘルムは漁夫の利で集めていた。 シオンの能力は「マリアの巫女」と呼ばれた女性の再来であり、マリアの力を引き出す触媒だった。 シオンがKOS-MOSの開発を引き継いだのは、KOS-MOSをマリアとして目覚めさせるために全て仕組まれたことだったのだ。 目の前で両親や親友が惨殺される光景を再び見せられたり、能力の副作用で死ぬと宣告されたり 宇宙の崩壊の一因は自分にあると突きつけられたり、死んだはずの元恋人ケビンがテスタメントになって敵側に居たり、と 精神的にボロボロになったシオンは誘導されるがままKOS-MOSを目覚めさせ、ヴィルヘルムやケビンに操られかける。 果たして宇宙はどうなるのか。人々の魂すら失われる完全な崩壊を迎えるのか、 それとも同じ歴史・同じ日々を延々と繰り返す世界になるのか・・・ あとは 23に続く 594 名無しさん@お腹いっぱい。 sage05/02/2802 46 14ID cMIoi3AX すいません、いっぺんにのせてくれるとありがたい。 と意見がありましたが、凶悪的なほど長文になる恐れになってきまして、 分けて載せていくことにします。ご期待に沿えず申し訳ございません。 できるだけ短くしよう、短くしようと頑張っているのですが、 ゼノサーガは物語の伏線が多すぎて、最初を詳しくしないとさっぱり意味がわからないのです。 ですので、最初は詳しく、後半は簡潔に行こうと思います。 ゼノサーガ特有の意味がわからない用語は出来るだけ省き、わかりやすい用語に差し替えました。 何度も出てくる難しい用語はそのままにしてあります。長文になることをご了承ください。 595 Xenosaga Episode1 sage 05/02/28 02 47 35 ID cMIoi3AX Xenosaga Episode 1 ~Der Wille Zur Macht~ 時にAD20××年。 ケニア北部、トゥカルナ湖で古代遺跡の発掘が行われていた。 発掘員隊長、マスダは、現代の全ての事象の根源であるゾハルを発掘した。 ゾハルは光を放ち、その光は雲を貫き、空へと向かっていった。 全てはここから始まる。 596 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 48 57 ID cMIoi3AX 1 ~4000年後~ ゾハルの発掘のあと、大規模な人の消失事件が発生した。 生き残った人々は移民船に乗り、宇宙へ旅に出た。 移民先を見出す数百年かかり、最初の移民惑星を「セカンド・イェルサレム」と名付けた。 だがしかし、人はそこで戦争を繰り広げ、過ちを犯し続け、いくつかの主星を失い続けた。 現在の主星はフィフス・イェルサレム。この星に、ようやくひとつの国家的統合を達成する。 星団連邦政府所属、巡洋艦ヴォークリンデ。館内のKOS-MOS研究室では、研究員たちが慌しく働いていた。 KOS-MOS(以下、コスモスと呼ぶ)・・対グノーシスヒト型掃討兵器である彼女・・・。 その彼女を開発している部署の主任であるシオン=ウヅキは起動実験を始めた。 シオンは技術開発者としてのプライドと、主任としての立場。 そして、コスモスが兵器として使われることへ悲しさを持っていた。 「これより起動実験を開始します。インターコネクション、始めてください」 シオンは起動実験をするための装置に座った。 その起動実験とは、仮想空間にシオンを送りこみ、そこでコスモスのデータを取るというものだった。 「ゲージパーテイションを解放します。解放まであと60秒。59,58,57・・・。」 「各モニタリング正常。」 「パーテイション解放。コスモス、素体形態に入ります。」 597 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 50 24 ID cMIoi3AX シオンが仮想世界に入った。ただ少々視界が悪い。 「アレン君、視覚の接続状態が悪いみたいなんだけど・・・。」 「あぁ、すいません。ちょっと待ってください。今、補正します。どうです?主任。」 コスモス開発局副主任であるアレンが答えた。 アレンはシオンに淡い恋心を抱いていて、毎回のこの実験ではソワソワしている。 なぜかというと、この実験中に事故がおこると、シオンが仮想世界から帰ってこれなくなってしまうからだ。 世界が一瞬光に包まれ、コスモスが仮想世界に降り立った。 「おはよう、コスモス。調子はどう?」 「おはようございます、シオン。すべて非常に順調です。」 機械的な、無感情な返事が響く。 「せっかく起きてもらって悪いんだけど、今回も起動実験なの。一連のチェックを終了したら、 あなたにはまた眠ってもらうことになるわ。」 「そうですか」 「悲しいとか・・・感じる?」 その機械的な対応に少し寂しさを感じたのか、シオンは親しみを込めて話しかけた。 「私の寛恕言うプログラムは、創造主である人間が使いやすいように作られています。 今回の場合は、あなた・・・。すなわち、ヴェクター第一開発局、コスモス開発計画担当主幹技師、シオン=ウヅキとの 関係を円滑に保つために、「悲しい」という感情を表現する必要がある。と私のプログラムが判断した場合に限り、 そのように振舞います。ですが、現在、その必要はない。と判断します。」 「ははは・・・そうよね、それは私が一番知っていることなのよね。」 複雑な表情を浮かべた。 「ご理解いただけて幸いです。」 コスモスの機械的な言葉が仮想空間に響く。 シオンは、再度複雑な表情を浮かべた。 598 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 52 42 ID cMIoi3AX 今回の実験は、仮想世界におかれた仮想の敵を倒し、コスモスの戦闘データを取るというものだった。 「ねぇ、アレン君。今回は手順400を初めてみないかしら?」 「よ、400って、主任、先月のことを忘れたわけではないでしょう? あと10秒対応が遅れてたらそこから戻ってこれないような状態じゃなかったですか。」 シオンのことを心配するアレンは、声を荒げた。 「大丈夫、いざとなったら自力で脱出するから、それに、あなただって試したいでしょう? この実験のために、徹夜でいろいろ取り組んでたじゃない。」 「それはそうですが・・。」 「じゃ、決まり。始めて。」 シオンに興奮の色が隠せない。これから起こることに何かを期待しているかのように。 「知りませんよ?万が一の時にはこっちで強制的に切りますからね。」 「了解、了解。」 「あと、メニューにないことするのなしですよ?」 「わかってるってば。」 「んったく、気軽にいってくれちゃて。そのたびに寿命をちじめられるこっちの身にもなってほしいよ」 アレンは頭をかきむしりながら、シオンに聞こえないように、ぼやいた。 「副主任、ウヅキ主任のことになると、特に気を使われますからね。もう余命幾ばくもないんじゃないですか?」 研究員がアレンをからかった。皆、アレンの恋心に気づいているようだ。 「う、うるさい、余計なこといってないで、用意できてるのか?少しでも異常があったら、即刻強制終了するからな。」 手順400が始まった。状況は順調で、研究員たちも安堵の表情をうかべた。 「特に変わったことは見わたりません。状況、安定しています。こりゃあ行けますよ。先月の汚名、返上だ」 「だといいがな・・。」 不安げに、アレンがつぶやいた。 「コスモス、クリアポイントに到着。ターゲットモンスター、G型へ変換。表示、始めます。」 コスモスの前に、巨大なモンスターが現れた。コスモスが戦闘態勢に入る。 599 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 54 30 ID cMIoi3AX そのとき、プログラムに異常が発生した。コスモスの戦闘能力が過剰に上昇し、暴走しかけているのだ。 だが、シオンはそのような状況をものともしなかった。 「アレン君、これからターゲットとの戦闘態勢に入ります。データ取りよろしく。」 「そんな!?主任、こんな不安定な状況で戦闘なんて危険すぎます!」 アレンは声を荒げた。 「大丈夫、まだいけるわ。ヒルベルトを試します。」 「しゅ、主任、メニューに無い行為はしないって・・・!!」 シオンはその言葉を無視するかのように、コスモスに話しかけた。 「コスモス、ヒルベルト発動。」 「了解しました。ヒルベルトエフェクト発動します。」 プログラムが暴走し、シオンの脳が危険な状態になってきた。 アレンはプログラムを強制停止させ、シオンを引き戻そうとした。 だがしかし、シオンがそれを拒絶し、プログラムが作動しなかった。 「限界です!崩壊まであと10秒・・・。」 「クソったれ!」 アレンは悲痛ともとれる叫び声をあげた。 「主任・・・。・・・そうだ・・・。」 仮想空間にいるシオン。 彼女の前に、光が集まってきた。その光はやがて少女のような人影へと変わっていった。 少女はゆっくりと顔をあげ、シオンと視線を交わした。 そのとき、仮想空間へダイブしたアレンがシオンの手を掴み、仮想世界から引き戻した。 仮想空間は光に包まれていく・・・。 600 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 56 17 ID cMIoi3AX 「主任はっ!?」 目覚めたアレンは、シオンの元へ急いで駆けつけた。 「えぇ、ありがとう、少し、粘り過ぎちゃった・・かな?」 あの仮想空間で見た少女は何だったのか。シオンは夢見心地だった。 ・・・あの少女とは・・どこかで・・。 「??何かあったんですか?」 「ううん・・・何でもないの。さぁ、急いでデータ解析を始めましょう。そろそろ上から催促がくる頃だわ。」 「本艦は3分後にゲートアウトします。非常時に備えてください。」 突然、艦内アナウンスが鳴り響いた。 601 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 58 04 ID cMIoi3AX 2 「全艦、ゲートアウト完了。」 「次のゲートジャンプができるまで7時間36分。それまでジャンプは不可能になります。」 「次で最後か・・・。」 艦長と思える人物が虚空を目上げた。目に落ち着きが無い。 「はい。次のゲートジャンプとなります。あと少しの辛抱です。」 艦長の横に立っている男が言った。 見た目は普通のマジメそうな30後半の男だ。その鋭い眼光を除いて。 「大丈夫ですよ。ここまでくれば接触率低いですし。それに小惑星も多いですから、”ヤツラ”から 身を隠すには都合が良いものです。」 「ふん、気楽なものだな。小惑星なぞ、気休め程度にしかならんぞ。」 男は、声を沈めオペレーターを睨んだ。 「厳しいな、アンドリュー中佐。何かあったのか?」 「いえ・・・別に・・・。」 アンドリューという名の男は下にうつむきいた。 「例の物体を回収してから緊張の連続でしたからね。中佐のお気持ち、わかります。」 その”例の物体”に疑問点を持っていたのか、一人のオペレーターが質問した。 「艦長、差し支えない範囲で結構なので教えていただけないでしょうか? 当初の作戦の目的は、惑星消滅事件の調和および調査隊の護衛であったはずです。 それが、”あの物体”を回収してから様相がいっぺんしたように感じられます。 いったいなんなのですか?あれは。」 「さて、調査隊からは何の報告は受け取らんよ。ただ、先日伝えた”ヤツら”もあの物体を狙っているらしい。 という情報だけはえている。もちろん非公式だがね。」 艦長は、私もよくわかっていない。という表情をしている。 「回収のさい、何名かの犠牲者が出たという噂がありますが。」 「それが事実だとしても、われわれに知る権利がない。もともと調査隊も我々とは別の命令系統で動いているし、 我々に与えられた命令書にも『当該宙域にて何らかの”回収物”が存在した場合、全ての事象よりもその確保を最優先す』 と書かれているだけだ。」 「全ての事象・・・といいますと?」 「我々の命よりも。というわけだ。」 アンドリューが言い捨てた。 「そう脅すな。まぁ、星団連邦政府にしても今回の任務はそれだけ重要な作戦ということだろう。 気を引き締めて頼むぞ。」 艦長が微笑みながら皆に言った。 「そうですね。本艦には”有事の際の切り札”も配備されていることですし。」 「おぉ、そうだ。切り札のことなんだが、すまんが中尉、ウヅキ主任に報告データが整い次第、 ブリッジに来るように伝えてくれ。それと、これまでのデータも提出するように・・と。」 「了解しました。」 602 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 00 04 ID cMIoi3AX 3 コスモス研究室に電話がかかってきた。 「・・・・了解しました。30分後にそちらに出頭します。」 「早速きましたね。出頭命令」 「でしょ?私の勘って、結構当たるんだから。」 シオンが得意気に答える。 「では、これは提出するデータです。」 「ありがとう。これだけでいいわ。」 最近入ったばかりの新人研究員がシオンに声をかけた。 「主任・・あの・・・よろしいですか?」 「なに?」 「軍はコスモスの実働データを求めています。いいのですか?いつまでもシミュレートデータだけで。」 「うーん、、それ言われると痛いんだけどね、、。でも、出来ることならコスモスには いつまでも素敵な夢を見ていてほしいんだ。」 シオンは困ったような表情をしている。目も下にうつむいている。 「シミュレートではあれほど無茶をされるのに、なぜ実働となるとあれほど慎重になるのですか? 自分はコスモスが稼動している姿が見たいのです。現状で十分いけるはずです。」 シオンの困った表情を見て、アレンが口を挟んだ。 シオンは、2年前の事故があってから、実働には慎重になっているのだ。 アレンはそのことを知っているし、何より、彼女の困った顔を見たくなかった。 「現状でわざわざお姫様を起こさす必要はないよ。はいこれ、コスモスの装備要項。 連中を納得させる一助にはなるでしょ? 「サンキュー。気が利くね。」 アレンの助け舟にありがたく思ったのか、シオンはアレンに微笑んだ。 「じゃ、いってきまーす。」 笑顔で研究室を出て行くシオン、それを見るアレンの顔は、どこから見てもほころんでいる。 「世話女房ぶりも板についてきたんじゃないですか?副主任。」 同僚のトガシがにやつきながら研究所の後片付けをしている。 「な、何にやついてるんだよ、トガシ。」 顔を赤らめながら、アレンはシオンのデスクの片付けを始めた。 そこには肝心のデータフォルダが忘れられておいてあった。 「はぁ、、またか・・しかたないな・・。」 だが、アレンは少し喜んだ。二人きりになる口実が出来たからだ。 その感情が顔に出たのか、トガシがからかう。 「よかったですね。二人きりになれる口実ができて。ついでに食事でも誘って見ちゃどうです? こっちは僕らでやっときますから。」 「行くとき行かなきゃ、ダメですよ、副主任。」 「そ、そんなつもりじゃないって言ってるだろう!じ、じゃ、ちょっと渡してくるよ。」 舌をかみながら、アレンは言った。 「がんばってー。」 同僚たち一同の声が聞こえる。アレンはその声を聞きながら研究室を出た。 彼は奥手だ。シオンのことは愛しているはずなのに、言うことができない。 そんな彼はぼやく。 「僕だって・・行けるもんなら、行きたいさ・・。」と。 603 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 01 52 ID cMIoi3AX 4 シオンはブリッジへの道を歩いていた。その途中にある格納庫。そこにはゾハルがあった。 彼女は格納庫を通りながら、考えていた。やはり、みんな稼動してるコスモスを見たいのか。 2年前の、彼もそういっていた・・・。 2年前のコスモス開発局 シオンは残って残業をしていた。あしたまでにまとめておくデータがあったからだ。 パソコンに向かう彼女の後ろに、男性の姿があった。 「まだ残っていたのかい?無理して体壊しちゃ、何にもならないぞ?」 微笑みながらシオンに話しかけた。手には手包みをぶらさげている。 「あ、お疲れ様です。明日までにどうしてもまとめておくデータがあったものですから。 ゲビン先輩こそ、こんな時間までどうなされたんですか?」 「はい、差し入れ。」 ケビンは彼女の横に手包みを置いた。そして、コスモスの眠っている特殊な装置のほうへ歩いていった。 シオンもその後に続く。何も警戒しないということは、彼女は彼に心を許しているということだろう。 ケビンはその装置を見ながら、つぶやいた。 「実は、ある悩み事があってね、寝付けないんだ。」 「悩み事?」 「明日、いよいよ彼女は目覚める。その姿を見るのはとても楽しみなんだけど。目覚めた彼女になんと声をかけたらいいのか それで悩んでいたんだ。おかしいだろう?」 「おはよう・・・でいいんじゃないですか?」 シオンは微笑んだ。そしてコスモスの眠っている装置を触った。 「おはようかい?」 「朝起きたら、やっぱりおはよう、ですよ。」 「そうか・・・これでぐっする眠れそうだよ。ありがとう。」 ケビンは彼女の肩に手を乗せ、微笑んだ。 ・・・・そうだよね。みんなも早く見たいよね・・・。 シオンは彼との会話を思い出ながら、ゾハルを見上げた。 その瞬間、鈴のような音が鳴り響くと同時に、シオン以外の周りすべてが動きを止めた。 静寂・・・その静寂の中に、再び鈴の音のような金属音が響く。 その音が鳴り響いている源に、彼女は仮想空間で見た少女を見つけ出した。 少女はシオンに何かを伝えようとしているようだが、彼女にはその言葉は届かない。 少女は話し終えると、ゾハルの中に吸い込まれていく。シオンはその後を追い、ゾハルに触れた。 するとゾハルの表面に、水面のように波紋が広がった。 シオンは気がついたら、ゾハルの前に倒れこんでいた。 シオンは手を眺める。ゾハルに触れたことは、幻だったのだろうか・・。 604 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 03 24 ID cMIoi3AX 5 さっきのことは何だったのだろうか?彼女は考え込んでいた。 後ろから声が聞こえる。聞いたような声だ。誰だろう。彼女は振り向いた。 「アレン君!?」 「アレン君、じゃないですよ主任。肝心のデータ忘れていったでしょ? 危ないですよ、ぼーっとしながら歩いてると。」 「うん、ごめんね、ちょっと考え事してたから。」 そのとき、再び鈴の音がした。彼女はあたりを見渡す。だが、少女の姿はない。 「どうかしましたか?主任。」 「ん?うん・・気のせいよね。きっと。」 シオンは気に留めず格納庫を後にした。 しかし、彼女の後ろには二人を見つめる少女の姿があった。 アレンに先ほどのコスモスの件について感謝を言っていると、彼女に突然呼び出しがなった。 レアリエンの調整の呼び出しだ。 レアリエン・・合成人間といわれる彼らは、人間が過酷な環境を克服し、人間のリスクを削減するために 人によって作られた亜人間。彼らは使い捨て可能な労働力として社会に浸透し、 人間によって消費されていた。すなわち、奴隷である。 奴隷としての立場は14年前のミルチア戦争まで続き、その後社会的な権利を有する存在となった。 だが、レアリエンは工業製品であるというのには変わりが無い。彼らは生産されるのである。消費されるために。 そのレアリエンも調整(ケア)される必要がある。自身の自意識が芽生えたり、精神が不安定になることがある。 それをケアするのが、シオンは好きだった。なぜかというと、不安定なままのレアリエンは、廃棄されるからだ。 605 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 05 15 ID cMIoi3AX 6 シオンはレアリエン調整室へと向かった。 「どうも、シオンです。」 「あぁ、どうもウヅキさん、すみません、いつもいつも。」 人のよさそうで、髪をオールバックにしたカスパーゼが話しかけてきた。 目には疲れの色が浮かんでいる。人員不足だろう。 「いいんですよ、カスパーゼ大尉。みんな(レアリエン)にはいつも元気でいてほしいから・・。」 カスパーゼはシオンに今回のトラブルを話した。シオンは着々とトラブルを解決していく。 「一応調整しておきましたけど、また何かありましたらヴェクター本社までご連絡ください。 そちらで本格的なケアをされたほうが良いと思いますから」 「わかりました。ありがとうございます。 しかし、すごいですね。コスモスの開発だけでなく、レアリエンたちのメンタルケアまでこなすとは・・・。」 「そんな、全部上司の受け売りです。それに、私は最初、この部署が志望だったんです。 実は、今の仕事が終わったらこっちに転属願いを出そうかと思っているんですよ。」 シオンは眠っているレアリエンを見つめた。その表情は、眠っている我が子を見る表情に似ている。 「第一開発局は、エリート中のエリートが配属されるところでしょう?それなのに転属願いなのですか?」 「ええ、家族からもよく言われるんですよ。何かの書類ミスに違いない。ってよく言われますし。 私もそう思います。それに、、彼らのこと、もっと知りたいんですよ。」 「そんな連中のことを知る必要もなかろう!?」 声の方向に振り返ると、眼光の鋭い金髪の男がいた。 背が高く、物腰が明らかに軍人と思わせる。彼の顔右頬の皮膚は、色が変わり、硬くなっている。やけどのように・・。 「バージル中尉!?」 カスパーゼが、この突然の来訪客に驚いたようだ。声の調子からも、あまり好ましい客ではないらしい。 「匂いだ・・この匂い。なぁ、あんたも感じないか、この匂い。吐き気を催す匂いだ・・。」 バージルはまるで汚い物を見るかのように、あたりを見回した。 シオンは絶句している。言葉も出ない。 606 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 06 21 ID cMIoi3AX バージルは毎回来ては、何かとレアリエンを罵っているのだろう。 カスパーゼは、声を荒げ、バージルに食って掛かった。 「いい加減にしないか!少佐から事前に指示はあったろう?今回の作戦はA.G.W.Sと 新型レアリエンとの相互支援も目的としているんじゃなかったのか?それをお前は・・・。」 「相互支援だ!?はん!ヤツら相手に、実戦で使える保障なんてない、 ”戦闘用レアリエン”との相互支援なんざ、俺は願い下げだぜ!」 「お言葉ですけど・・・彼ら戦闘用レアリエンは優秀な兵士・・・。」 正気を取り戻したシオンも、バージルへ反論した。 「彼らぁ?たかが備品を人間扱いかい。」 シオンの抗議も、バージルは聞く耳をもたない。 「あ、それ問題発言ですよ。彼らは私たちと同様、知性も感情も備わっているし、 それにレアリエンの基本的人権は4763年に制定されたミルチア懸賞で謳われているはずです。」 「お為ごかしか。反吐が出るぜ。表面上いくら人道主義とっても、お前たちヴェクターの人間にとっちゃ 備品は備品だろうに。否、”商品”か」 バージルは小バカにするようにシオンを見つめた。 「私たちは彼らを備品扱いも、商品扱いもしてません!」 「ならなぜ、”戦闘用レアリエン”なんて、分類ワケがされているんだ? それこそ商品扱いしてる証だろう?何をいったところで所詮は戦の道具。それに知っているぜ。 お前たちヴェクターの人間たちは、”商品管理用の緊急制御コード”があるってな。」 シオンは絶句した。確かに・・ある・・。だが、それは・・・。 そのとき、レアリエンの一人が立ち上がり、バージルを見つめた。 「な、何だよ?」 バージルも突然のレアリエンの行動に驚いたのか、たじろいだ。 「中尉のおっしゃるとおり、確かに我々は”商品”として製造され、そのための教育を施されました。 ですが、私は今のこの”仕事に”誇りを持っています。 それは誰にも強制されない”私自信の意志”なのです」 607 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 09 20 ID cMIoi3AX 以下、余談 すいません、余談です、読み飛ばしていただいても結構です。 このゲームの副題が、力への意思。知ってる人は知ってると思いますが、これはニーチェの本です。 ドイツの哲学者である、フリードリヒ・ニーチェ。 彼は自分自身でたっている人間こそがもっとも美しく、すばらしい人間と考え、 キリスト教を弱者の宗教と言い、「神は死んだ。」という、有名な言葉も残っています。 たぶんこのゲームの作者はレアリエンという人ではない生物をポイントとして、ニーチェ哲学を語ってみたかったのではないでしょうか。 このレアリエンのセリフでもある”私自身の意思”という言葉。人間は弱い存在で、その弱い存在を認めた上で、 自分は過去にも、未来にも存在してはいない。現在にも自分と同じ人は一人もいないし、これからもいない。 「何か。」を成すためにこの世に連れてこられたと、考えた・・はずです。 だからニーチェは、自分の意思で、その目標への苦難の旅へと向かっている人の、なんて美しいことか!とも言っています。 これが俺自身へのニーチェの全体的な感想です。といっても、ニーチェの著者では、私は若き人々への言葉、力への意思しか読んでませんし、 まったくのど素人の解釈ですから、鵜呑みにすると困ります。たぶん解釈も間違ってる気もしますし・・・。 余談が長引きました。本編の続きを書きます。失礼しました。 608 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 14 52 ID cMIoi3AX 「ふん、自由意志ってわけか・・。まあいい、今のうちに享受しておけ。 そのうちわかるときがくるさ。この俺のようにな・・・。」 そう言い捨て、バージルは調整室を出て行った。 「すみませんでした、ウヅキさん。昔はあんな奴じゃなかったのですが、あることがきっかけで・・・ね。」 カスパーゼは申し訳なさそうな顔をして、頭を下げた。 「いえ・・彼とは、お知り合い・・何ですか?」 「あいつとは士官学校の同期でね。腐れ縁ってやつです。・・・ミルチアです。」 「そうですか、それで・・・。あ、いけない。ブリッジに出頭しなければならないのです。 それでは失礼します。レアリエンたちはまた後で見ますから。」 「いや、どうもありがとうございます。すいません、嫌な思いを・・。」 そう言い、再びカスパーゼは頭を下げた。 7 「すいません、遅れてしまって。」 「10分の遅刻ですね。通りで開発も遅れるわけだ。」 アンドリューが、シオンをにらみながら言った。そして、それからアンドリューのシオンに対しての説教が始まった。 コスモスの稼動データがないこと、ここが軍艦であるということに自覚がないシオンに苛立ったのであろう。 途中で、アンドリューに呼び出しがあった。顔が緊張した表情に変わり、そそくさと退室していった。 「ご期待にそえなくて申し訳ありません。」 シオンは艦長に謝った。 「なに、謝ることはないよ。今日は自室に戻って休みなさい。」 609 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 17 49 ID cMIoi3AX 8 アンドリューは、焦っていた。まさか、いきなり呼び出しがあるとは思ってもいなかったからだ。 急ぎ足で通信室に行き、通信をつなげた。画面に、顔が映った。司令の顔だ。 右目の上から下にかけての切り傷、冷たい目。 「失態だな・・・。アンドリュー。回収には細心の注意を払えと前もって忠告してあった筈だ。」 「はい、”機関員”に犠牲者が出たことは弁解の余地がありません。ですが、我々も・・・。」 アンドリューは苦い顔をした。機関員に犠牲者が出たのは明らかな失態で、弁解の余地がないからだ。 このことを攻められると思い、下をうつむいた。 「些末な事象など、どうでもよい。問題なのはゾハルに人が接触し、人が”消えた”ということ。 そしてその後、”通常空間に晒した状態”で移送していることだ。そして・・・。 貴様の艦隊にヤツラが接触する推定予測時間は5時間と22分後だ。」 「まさか!?やつらが!?」 驚きを通り越して絶句した。奴らがきたとしたら、このような艦隊では耐えられるわけがないのだからだ。 「だから失態といった。1時間前に増設艦隊を差し向けた。それまでの間、なんとしても保たせろ。」 「ま、間に合うのですか?」 「保たせろ。といっている。幸いにして、貴様の艦には”例の兵器”が搭載されているだろう。」 「お、お言葉ですが、あれはまだ実働試験にさえ写ってないのです!危険すぎます!」 「あれの力は、”貴様が一番良く知っている”だろう?多少不安定でもかまわん。急がせろ。」 「で、ですが・・・。」 「以上だ。」 通信が切れる。 「お待ちください、司令!マーグリス司令!」 610 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 19 20 ID cMIoi3AX 9 自室に戻り、休んだシオンは夢を見た。 遺跡のような場所にたつシオン。あたりには霧が立ち込めている。 鈴の音が静寂を破る。音のした方を見ると、そこにはあの少女の姿が・・・。 二人は視線を交わすが、少女はふと別の方向に目を向ける。 少女の視線の先には、少年のような人影があった。 「う、、うん・・・。」 夢にうなされるシオン。そのシオンの枕元に立つ少女。 そして少女は何かに気づいたかのように、船の外に目を向ける。 32 名無しさん@お腹いっぱい。 sage2005/03/24(木)01 24 31ID 9P5lIrk+ ゼノサーガep1、行きます。 文章構成上、ストーリー展開が前後したり、 結構話に絡んでるのに文中に出てこないキャラ(アレン、キルシュバ等)が いたりしますが、ご容赦下さい。 33 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 25 18 ID 9P5lIrk+ 星団連邦に所属する惑星アリアドネが、突如として謎の消失を遂げた。 その調査に赴いた巡洋艦ヴォークリンデは、本来の目的である調査もそこそこに、 当該宙域に浮遊していた謎の物体ゾハルエミュレーターを収容し、帰還することになった。 その収容作業中、ゾハルに触れた作業員が消滅すると言う事故が起こっていた。 この巡洋艦ヴォークリンデには、14年前より突如として現れ人類の脅威となった、 グノーシスと言う怪物群に対抗する為のヒト型アンドロイド、コスモスが配備されていた。 しかしながらそのコスモスは、未だ実働試験すら行われておらず、 仮想空間(エンセフェロン)におけるテストをしている段階であった。 ヴェクターインダストリー1局所属のシオン・ウヅキは、そのコスモスの開発主任だ。 彼女は、コスモスに対して、母親や姉のような感情を持っていたが、一方で恐れてもいた。 数年前の実験中、コスモスが暴走し、同僚や愛する人を殺されてしまったからだ。 そのせいか、シオンは実働試験に対して二の足を踏んでいる状態だった。 対グノーシスの切り札として配備されたコスモスが、起き上がる事すら出来ない。 調査に同行した軍関係者からは、その事を毎日のように責められていた。 この日も、試験を終えたシオンは、ブリッヂから呼び出しを受け、開発室を出た。 ブリッヂへ向かう途上、ゾハル格納庫を通った彼女は、そこで少女の幻影を見た。 少女は、何か言いたげな、哀しみを裡に秘めた表情でシオンを見つめていた。 シオンが歩み寄ると少女の幻影は消え、そこには金色に光るゾハルがあるだけだった。 不思議な感覚に囚われながらも、彼女はレアリエン調整室へ向かった。 レアリエン。それは、様々な用途に応じて造られた人造人間のことだ。 シオンは、このレアリエンとの交流を好み、エリート中のエリートが集まる1局から、 レアリエンを扱う3局に転属願いを出しているほどだった。 彼女がレアリエンの調整を手伝っていると、バージルと言う中尉が現れた。 彼はレアリエンを極度に嫌っており、この時も居丈高に見下し、罵った。 現在、レアリエンには人権が認められていると反論するシオンだったが、 それを商品としている事を指摘されると、彼女は言葉を詰まらせた。 「お為ごかしは反吐が出る」そう吐き捨て、中尉は立ち去った。 いい加減寄り道が過ぎたので、かなり遅刻してブリッヂに着いたシオン。 アンドリュー中佐は、それも含めて毎度の如くネチネチと小言を繰り返すが、 緊急呼び出しの通信が入ったため途中で切り上げ、ブリッジを出て行った。 運良く開放されたシオンは、艦長に労われ、自室で休む事にした。 アンドリュー中佐は、画面の向こうのマーグリスに叱責されていた。 U-TIC機関。ゾハル研究の為に創設された政府直属の機関であったが、14年前の ミルチア紛争を機に、反政府武装集団の色を強め、各方面に工作員を潜入させていた。 マーグリスはそのU-TIC機関の司令であり、アンドリューは工作員の一人だった。 惑星アリアドネの消失も、この組織がゾハルの起動実験をその地で行った結果であり、 調査隊が事件の調査もそこそこに帰還したのも、連邦軍に潜入していたアンドリュー達 の目的が、ゾハルの回収であったからなのだ。 ゾハル。それは、局所事象変異を引き起こし、グノーシスを呼び寄せる。 その危険性から、それを確保して封印しようとする者と、兵力として利用しようとする 者との間で激しい争奪戦が繰り広げられていた。 この非常に危険な物体の取り扱いには、細心にも細心を重ねた注意が必要だった。 しかし、アンドリューたちはその扱いを間違った。 ヴォークリンデには、すでにグノーシスが迫ろうとしていたのだ。 コスモスを使え。その命令に狼狽する中佐を無視し、マーグリスは通信を切った。 34 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 26 16 ID 9P5lIrk+ ブリッヂに警報が鳴り響いた。艦隊前方にグノーシスが出現したのだ。 母船タイプのグノーシスから射出された怪物たちが、次々と艦内に侵入してくる。 対グノーシス用兵器エイグスが出撃するが、通常兵器の効果は無く、撃破されてゆく。 グノーシスに掴まれた人間は白化し、砕け散った。 有効な対抗手段も無いまま、ついにヴォークリンデのブリッヂが沈黙した。 アンドリュー中佐は、宇宙服を着込み、ゾハル格納庫へ向かっていた。 格納庫ごとパージし、ワープさせる。無謀な作戦だったが、中佐にとっては、 コスモスを起動させるよりも遥かにマシな作戦だった。 なぜならば、中佐も、コスモスの暴走事故に立ち会っており、その恐ろしさを 身をもって知っていたからだ。 そもそも、実験中のコスモスを起動させたのも、彼らだった。 コスモスの強奪を目論み、内通者から起動用ギアを受け取ってラボを襲撃した彼らは、 しかしコスモスの暴走により惨殺され、唯一アンドリューだけが生き残った。 今、中佐は死を覚悟しながら、格納庫に向かっていた。 その中佐の覚悟も、無駄となりそうだった。コスモスが自律モードで起動を始めたのだ。 開発室のメンバーが恐怖で凍りつく中、ゆっくりと身を起したコスモスは、シオンを 保護するために動き出した。 その頃シオンは、グノーシスに追われた所をエイグスに乗ったバージルに助けられていた。 しかし彼の攻撃は効果が無く、逆に反撃を受け仲間を失ってしまった。 なにか手段が無いものかと考えた彼は、シオンの携帯端末を奪い、レアリエンを 自爆させる緊急制御コードを起動させた。 爆風が晴れると、彼は歯噛みした。仕留め切れなかったのだ。 反撃を受け、倒れこむバージル。そして、グノーシスはシオンに襲い掛かった。 足元から白化してゆくシオン。彼女が死を覚悟した時、閃光がグノーシスを貫いた。 コスモスの攻撃だった。グノーシスを実数空間に固着するヒルベルトエフェクトを展開 した彼女は、その圧倒的な戦闘能力でグノーシスを掃討した。 ゾハルの格納庫では、アンドリュー中佐が必死で乱れたシステムと格闘していた。 そこへ、脱出艇に乗るためにシオンたちが駆け込んできた。 グノーシスは途切れなく襲い掛かり、抗戦を続けるシオンたち。その中で、 コスモスがバージルごと敵を撃った。バージル、「フェブ…」とうわ言を言いながら即死。 シオンは、コスモスの非道な行動に怒りを露わにしたが、コスモスのプログラムでは、 ヴェクター関係者の保護>敵勢力の殲滅>>>>>それ以外の人間の保護であったため、 コスモスはそのプログラム通り、確実な方法を選択しただけなのだ。 「私は人間ではありません。ただの兵器です」 その言葉にショックを受けるシオンは、鬱然として脱出艇に乗り込んだ。 シオンたちと中佐の乗った脱出艇を見送ったコスモスは、もう一つの目的である ゾハルの確保の為、周辺に群がるグノーシスを除去しようとした。 しかし、いかにも多勢に無勢であり、結局はゾハルを持ち去られてしまう。 彼女はゾハルが収容されたグノーシス母船にマーキングを施し、その事を本社に報告、 次の司令を受け、第二ミルチアへ向かう事とした。 ヴェクターCEOのヴィルヘルムは、赤の外套者からその報告を受けていた。 「全ての事象は、この 秩序の羅針盤 の示すとおりに動く……」 そう、彼はつぶやき、デスクの上の構造物に目をやった。 35 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 27 52 ID 9P5lIrk+ クーカイ・ファウンデーション所属の不定期貨客船エルザが、ヴォークリンデの 遭難現場に向かっていた。だが、目的は救助ではない。艦の残骸を回収し、 それを売って船長の借金返済の足しにするためだ。 そんなエルザに、コスモスが襲い掛かった。キャノピーにパンチでヒビを入れられ、 第二ミルチアまで乗せてけと脅迫された船長はしぶしぶ承諾した。 ブリッヂにコスモスが入ってくると、脱出艇で漂流していたシオンから通信が入った。 エルザに収容しろと言うシオン。そのまま漂流していれば助けが来ると言うコスモス。 二人が押し問答していると、エルザの乗組員ケイオスが仲裁に入った。 彼は船長の信頼も篤く、その彼の取り成しでシオンたちもエルザに収容され、 第二ミルチアへ向かう事になった。 収容された後、ブリッヂへと挨拶に訪れたシオンたち。そこへ、グノーシスが現れた。 アンドリューが掴まれ、白化して行く。慌てふためくシオンたち。だが、ケイオスが グノーシスに手をかざすと、グノーシスは霧のように消えてしまった。 これが、ケイオスが船長に信頼されている理由だった。 騒ぎが落ち着いた頃、そのケイオスが、ヴォークリンデでの戦闘で不具合が出たため エルザの設備で調整をしていたコスモスに近づいていった。 機能を停止して眠っているコスモスに、彼はそっと呟いた。 「やっと会えたね……本当の君はどこに眠っているんだい……?」 プロジェクト・ゾハル。ゾハルの研究を進める事により、全ての事象を論理的に解明し、 また、人類の悲願であるロスト・エルサレム(地球)への帰還を目的とした研究である。 そのプロジェクトを推進する接触小委員会の会議が、連邦主星フィフス・エルサレムの 衛星軌道上のコロニーで開かれていた。 オリジナル・ゾハルが眠る、閉ざされた旧ミルチアへの道。その道を開くための鍵となる Y資料がU-TIC機関に奪われた。 U-TIC機関の責任者であり、彼以外にゾハルを解明する事は不可能とさえ言われた 天才ヨアキム・ミズラヒ。彼が遺したY資料なくしてもまた、ゾハルの研究は進まない。 その奪還の為、U-TIC機関の拠点への潜入を命令されたのは、ジグラット8と言う 型式番号のついたサイボーグだった。彼が見せられたのは一人の少女の写真。 百式観測用レアリエン。ヨアキムの最後の発明であり、対グノーシス用の索敵能力と ヒルベルトエフェクト展開能力を付与されたレアリエンだ。 百式は、彼と、その元妻であり現接触小委員会委員であるユリ・ミズラヒの亡児サクラを モデルとして創られ、そのプロトタイプであるモモには、Y資料が封印されていた。 成功の報酬として、ジグラット8は、自らの生体脳を人工部品に換装する事を望んだ。 彼は生前、ある男に妻子を殺され、それを苦に自殺を遂げていた。 サイボーグとして蘇ってからも、その記憶が彼を苦しめ続けていたのだ。 小惑星プレロマ。古代宗教の聖堂だったこの場所に、U-TIC機関は拠点を構えていた。 そこへ潜入し、モモを見つけ出したジグラット8は、モモに「ジギー」などと愛称を つけられたり、マーグリスと一戦交えたりしながら脱出。作戦を成功させた。 追っ手を撒いた後、モモは早速フィフス・エルサレムへ船を向けようとした。 だがユリの指令では移送先は第二ミルチアとなっていた。その事をジギーから告げられ ると、モモは寂しそうな顔をした。彼女は「ママ」に会うのを楽しみにしていたのだ。 その頃エルザではシオン特製のカレーが振舞われ、皆、ひと時の休息を取っていた。 そんな中、アンドリュー中佐は、未だ機能を停止したままのコスモスに見入っていた。 彼女に銃を向けるが、恐怖で手が震え撃つ事ができなかった。 36 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 28 44 ID 9P5lIrk+ シオンは、本社への連絡の中で、局長に対して声を張り上げた。 第二ミルチア到着後、コスモスを2局に引き渡すと言われたのだ。 シオンは、コスモスが何の命令も無く独自に稼動しており、実戦配備は時期尚早と説明、 コスモスの監察を続ける事を局長に認めさせた。 エルザが第二ミルチアへ向けてハイパースペース内を航行していた時、同じくジギー達も その中にいた。しかも、U-TICの無人兵器に張り付かれている状態だった。 ジギー達からエルザに向けて救難信号が発せられた。 初めは日和見を決め込んでいた船長だったが、エルザが被害を受けるや一変、 ジギーたちを援護して敵勢力を掃討、彼らを船内に収容した。 落ち着いた所で話を聞くと、ジギー達も第二ミルチアに行くというので相乗りする事に。 だが、先の戦闘でダメージを受けた船を修復する為、まず手近なコロニーに向かった。 その途上、アンドリューはプレロマに通信を入れていた。百式を確保したと。 だが、マーグリスは帰還命令を伝えただけで、早々に通信を切った。 そのマーグリスの下に、謎の男アルベドが現れた。彼はモモを連れ戻すと言い残し、 狂ったような笑い声を上げながら立ち去った。 「……モモ…か……。可愛いペシェめ……」 マーグリスの副官ペレグリーは、アルベドに任せることの危惧を口にしたが、 利用価値はあると、マーグリスは言う。目的は違うが、必要な物は同じなのだと。 惑星アリアドネのあった座標に、クーカイ・ファウンデーションの武装艦デュランダルが 停泊している。この宙域の調査をするためだ。 クーカイ・ファウンデーション。14年前のミルチア紛争の事後処理の為に設立された、 財団法人である。紛争後の武力衝突に対抗するために備えた武装は、連邦艦隊にも 匹敵するとまで言われているが、現在は副業として始めた事業展開を中心としている。 しかしながら、ゾハル・エミュレーターの回収もその役割としている為、ゾハルの影響と 思われるアリアドネ消失事件の調査に赴いたのだった。 ファウンデーション理事ガイナン・クーカイの養子であり、副理事でもあるJr.は、 現場を見て唖然とした。そこに惑星があったと言うあらゆる痕跡がなくなっていたのだ。 さらに調査を進めるため、次に彼らは、ヴォークリンデの遭難現場に向かった。 そこでようやく、ゾハルの残滓を発見する事が出来た彼らだったが、現場に潜伏していた U-TICの戦艦から攻撃を受けてしまう。 反撃に転じ、戦艦内部を制圧。U-TICの情報を得るために艦のマザーフレームに アクセスしたJr.だったが、敵残存勢力に阻まれ、結局徒労に終わった。 一方その頃、シオンたちを乗せたエルザは、ドックコロニーに入渠していた。 修理が終わるまで、船外へ出て休息を取る一行。しかし、このドックコロニーは、 ミルチア紛争の頃から軍関係者への反感が根強く残っている場所だった。 住民の話から、地元の青年達にアンドリュー中佐が連れて行かれたと知り、後を追った シオン達は、人間業とは思えぬほど無残に惨殺されている青年達を発見した。 一方の中佐は既にエルザに戻り、傷の手当てを受けていた。 結局、事件はうやむやのまま、エルザはコロニーを離れた。 この一件以来、中佐に変調が表われ始めた。人知れず体を苦痛に悶えさせ、その度に 薬剤を注射して抑える。彼の脳裏に、エルザでグノーシスに襲われた時の記憶が フラッシュバックする。彼の発作は時間を追うごとに悪化しているようだった。 シオンは夢を見ていた。ヴォークリンデで見た幻影の少女が、彼女に語りかける。 「彼の最後の気持ちを理解できるのは貴方だけ。それが彼の安らぎ……」 37 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 29 41 ID 9P5lIrk+ 不可解な夢から目覚めたシオンは、突然の振動に襲われた。 エルザが、ハイパースペース外から干渉を受け、引き寄せられていたのだ。 通常空間に引きずりだされたエルザは、周囲を莫大な数のグノーシスに囲まれていた。 さらに引き寄せられたエルザは、巨大なグノーシスに飲み込まれていった。 この異変は、デュランダルも察知していた。艦内に保管されている11機のゾハル・ エミュレーターが共鳴を始めたのだ。デュランダルは、波動の発生元へと急行した。 気がつくと、シオン達は生身でグノーシス内部に放り出されていた。 はぐれてしまったエルザと中佐を探すために移動を始めた彼女達は、その途上、明らかに 人工的な看板や、自動車の残骸を発見した。 シオン達とはぐれ、一人さまよっていた中佐は、それらに見覚えがあった。 そこは、彼らがゾハルの実験をしたアリアドネの市街そのままだった。 悪夢を見ているような気持ちで彼はさまよい続けた。 グノーシスの中心部まで到達したシオン達は、そこでゾハルと、前後不覚になった中佐を 発見した。中佐は、ゾハルを背にするとグノーシスと化した。 「同じだ……あの時と……」ジギーが呟いた。 襲い掛かる中佐を、やむを得ず撃退したシオン達。 中佐が断末魔の叫びを上げる中、シオンは彼の心に触れていた。 戦争の道具としてこの世に生を受けた彼は、戦後の社会に適応できなかった。 社会に受け入れられない孤独から、彼は凶悪犯罪を重ね、その度に人格矯正処置を受けた。 そして最後には収容所の職員と連邦軍三個小隊を一人で壊滅させてしまった。 そこでマーグリスに拾われた彼は、マーグリスの信頼を受け心酔し、忠実な部下となった。 今、彼は虚無の浜辺に佇み、安らいだ顔をしていた。 「ここは良い…、怒りも悲しみも、喜びも未来も…俺以外のものは何も存在しない……。 その俺自身もやがて消える…。……シオン、遠からずお前もここに来る……きっと……」 そう言って、彼は消えていった。 アンドリュー中佐を殺してしまった事にショックを受けるシオン。 だが、感傷に浸る間もなく、その場所が崩壊を始めた。 逃げ出したシオン達は、エルザに救出され、その場を離脱した。 グノーシスの包囲網を抜けようと全力で航行するエルザ。それを、駆けつけた デュランダルが援護する。しかし、そのデュランダルも包囲されつつあった。 その時、コスモスがたった一人で船外へ出ようとしていた。 無謀だと止めようとするシオン。だが、コスモスはそれを聞き入れなかった。 「シオン、痛みは……私を満たしてくれますか……?」 今まさに迫らんとしているグノーシス群の前に立ちはだかったコスモス。 腹部から拡散ビームを発射し、一瞬のうちにグノーシスを吸収してしまった。 自分の知らない兵装が搭載されている事に呆然とするシオン。 「ケヴィン先輩……これが貴方の望んだ、本当のコスモスの姿なんですか……?」 彼女の戸惑いをよそに、エルザとゾハル・エミュレーターはデュランダルに収容された。 そして、エルザの補修の為、一行はクーカイ・ファウンデーションに帰港する事になった。 ワープするデュランダル。その後姿を、シメオンに乗ったアルベドが見ていた。 38 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 30 23 ID 9P5lIrk+ デュランダル内の隔離格納庫。そこに、シオン達は案内された。そこには、ゾハル・ エミュレーターが保管されていた。さらには、グノーシス変容体となり生命活動を 停止した人達も。グノーシスに接触された人間は、ほぼ例外なく変容体となる。 シオンはヴォークリンデでの出来事とアンドリューの最期を思い出し、背筋を凍らせた。 一方モモは、そのグノーシスをこの世界に呼び寄せた元凶が、当時U-TICに所属し、 ゾハル研究の途上で暴走したヨアキム・ミズラヒである事を知り、ショックを受けた。 彼女にとってヨアキムは、自分の誕生を心待ちにしてくれていた優しい「パパ」であり、 世間一般が評価する「狂人」とは程遠いものだったからだ。 暗く俯くモモ。しかしシオンは、ヨアキムの全てが否定される訳ではないとモモを慰めた。 ファウンデーションに入港するデュランダル。Jr.と良く似た理事がシオン達を迎える。 彼、ガイナンは、シオンに奇妙な感覚を覚え、執務室に戻った後、Jr.にそう告げた。 プロジェクト・ゾハル。その最重要機密であるコスモスの開発に携わるシオンが、 何らかの特殊な素質を持っているのではないか。ガイナンはそう考えたのだ。 プレロマ。マーグリスが、セラーズと言う男と通信している。 U.M.N.。その非局所性を利用して、全宇宙を時間的空間的束縛に囚われず結ぶ ネットワークシステム。その特性により、現在のワープ航法が可能となっている。 オリジナル・ゾハルの眠る旧ミルチアは、14年前の紛争時にU.M.Nの転移コードが 消失しており、Y資料にはそのコードが記録されている。 「いずれにせよ 総帥 をお待たせする訳にはいかん。プラン401を発動する」 マーグリスは、強攻策をとる決断をした。 その事は、アルベドにも伝えられた。 「場合によっては、ネピリムの歌声……使うやも知れん」 その言葉に、アルベドは笑い声で答えた。 デュランダル。先ほどイヤな話を聞かせたお詫びにと、Jr.がモモにペンダントを贈る。 二人の間に、気恥ずかしい空気が漂ったその時、衝撃が彼らを襲った。 ファウンデーションが、連邦艦隊に包囲されていたのだ。 連邦政府議会では、先のヴォークリンデ遭難が、デュランダルの攻撃によるものだとして、 ファウンデーションの強制捜査、及び既得権益の剥奪が議論されていた。 政府内に入り込んだU-TICの工作であった。証拠として、デュランダルがヴォーク リンデを攻撃する映像が映されたが、それは、U-TIC戦艦と戦った時の映像を たくみに合成したものであった。 デュランダル内に入り込んできた連邦兵士に拘束されるシオン達。だが、その兵士達は、 ファウンデーションと繋がりのある政府関係者が送り込んだ者達だった。 彼らの手引きを受け、シオン達は、嫌疑を晴らすために行動を始めた。 ヴォークリンデでの戦闘を記録しているコスモスのメモリーを回収し、反論の材料とする。 そのために彼女達は、コスモスのメモリー内にエンセフェロンダイブした。 39 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 31 06 ID 9P5lIrk+ 気がつくと、Jr.は銃弾の飛び交う戦場に立っていた。彼は、そこがどこか知っていた。 14年前のミルチア。彼と同じ顔をした少年達が、銃を乱射し虐殺を行っている。 彼は、悪夢を見ている気分になりながら、そばにいたモモに話し始めた。 Jr.やガイナン、アルベドは、U.R.T.V.と呼ばれる生体兵器だった。 彼らは、U.M.N.のオペレーションシステムであり、局所事象変異の源である ウ・ドゥに対する反存在として生み出された。 14年前、彼らは暴走したウ・ドゥを抑える作戦に就いていたが、U.R.T.V.達の 精神リンクの中心であったJr.は、ウ・ドゥに恐怖し、リンクを拒絶してしまった。 結果、Jr.とガイナンを除いた者たちはウ・ドゥに汚染され、暴走を始めたのだ。 この時の事を、彼は今でもトラウマとして心の裡に持っていたのだ。 気がつくと、シオンは14年前のミルチアの公園に居た。幼いシオンが、父に連れられて 行く。彼女が、父と過ごした最後の日の記憶だった。 重篤神経症治療施設。そこにシオンの母は入院していた。そして、そこで悲劇が起こった。 しかし、それはシオンとって心の奥にしまい込んだ、思い出したくない記憶だった。 気がつくと、シオン達は古びた教会に居た。祭壇の前に立つレアリエンを見て、シオンは、 再びトラウマを思い出した。フェブロニア。彼女が無残に食い殺される様を、シオンは 目の前で見ていた。 フェブロニアに促され、奥へ進んだシオン達は、幻影の少女ネピリムと出会った。 虚数世界と現実世界の狭間に住み、現実世界には僅かな時間しか干渉できない彼女達は、 その僅かな時間を使い、シオン達を導き、この仮想空間で会える時を待っていたのだ。 シオン達は、未来のビジョンを見せられた。くびきを離れ、暴走するウ・ドゥ。そして、 それに対抗する、本来の姿となったコスモス。二者の激突は銀河をも消滅させる。 しかし、未来は変えられる、シオン達に変えてほしい。ネピリムはそう言う。 グノーシスに触れられながら、グノーシス化しないシオンにはその力がある。 だが、心に弱さを持つ彼女達に、過去のトラウマを乗り越える強さを持って貰いたかった。 ネピリムが、シオンとJr.に過去を追体験させたのは、その為だったのだ。 別れ際、フェブロニアがもう一つ、彼女達に願いを託した。 フェブロニアの二人の妹、セシリーとキャス。ゾハル制御の媒体として、旧ミルチアで 今も呪縛に囚われている彼女達を開放して欲しい。フェブロニアはそう訴えた。 「ミルチアへ行けば全て分かるわ……」 ネピリムが最後にそう言って、彼女達は消えた。 エンセフェロン最奥部でコスモスの記録を回収したシオン達は、現実世界へ戻って行った。 その中で、ネピリムがケイオスに語りかけた。 「本当にこれで良かったの……? もう後戻りはできないのよ……?」 「分かってる……でも、 彼女 にはシオンが必要なんだ……」 シオン達の持ち帰った記録は議会で審議にかけられ、デュランダルの嫌疑は晴れた。 その事をマーグリスはアルベドに伝えた。ネピリムの歌声を使う時が来た、と。 40 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 31 56 ID 9P5lIrk+ ファウンデーションが艦隊と共に第二ミルチア上空まで達したとき、ケイオスが、 狼狽えて叫んだ。歌声が聞こえたのだ。その歌声は、グノーシスを引き寄せ、聞く者を 狂わせる。14年前のミルチア紛争でも、この歌声が人々を狂気へと駆り立てた。 歌声は、ヴェクターCEOのヴィルヘルムの元にも届いていた。 「……始まったね……」彼はそう呟いた。 そして、ファウンデーションがグノーシスに包囲され、市街地が襲撃を受けた。 迎撃態勢を取った連邦艦隊も、アルベドのシメオンによって壊滅させられていく。 混乱を極める市街地に飛び出し、住民の避難と敵の掃討にシオン達が奔走する中、 モモがアルベドに連れ去られ、その居城であるネピリムの歌声に囚われた。 ネピリムの歌声。元はヨアキムの研究施設であり、14年前はミルチアにあった物だ。 シオンも、当時母親の病室から見たことがあった。 それが、アルベドの手によってこの宙域まで持ち込まれていた。 モモの助けを求める声を感じ取ったJr.は、すぐさまシオン達と共に歌声へ向かった。 哄笑をもって彼らを出迎えるアルベド。14年の時を経て自らの分身と対峙したとき、 Jr.は冷静ではいられなかった。 激昂するJr.を挑発しながら、アルベドはモモの意識を侵食して行った。 最後のプロテクトに到達した時、彼にヨアキムのイメージが流れ込んできた。 「もう私には、これから起こる事を止められない。だからせめて、お前に託そう……。 時は交差する……。いずれお前は、彼女達と出会う……その時の為に……」 それは、モモが誕生する直前、ヨアキムが彼女に語ったメッセージだった。 Jr.の放った衝撃波と、Y資料のプロテクトがアルベドを弾き飛ばした。 アルベドはさも愉快そうに笑った。彼がプロテクトに触れた時、そこにコスモスと シオンのイメージがあった。ヨアキムが最後に残したY資料のプロテクトに、彼女達が 現れる意味。それを知って彼は笑っていたのだ。 アルベドの笑い声に激昂し、ポテンシャルを開放して挑みかかるJr.。彼の本質を 知っているケイオスが、顔色を無して止めようとする程のエネルギーが弾けようとした時、 突然の乱入者が二人の間に割って入った。 青の外套者。この時は正体を隠していたが、彼はヴォークリンデでコスモスに殺された 筈のバージル中尉だった。 彼は、アルベドにその役割を指摘して退去させると、後を追おうとするJr.を攻撃した。 その物理法則を無視した力に、なす術もなく膝を付くJr.達。 「無駄だな。貴様らと俺とは、この世界に存在する法則が違う。そうだろ、 大将 ?」 ケイオスに向かってそう言い残し、彼は消えた。 歌声の機能が完全に停止している事を確認し、シオン達はデュランダルへ戻った。 歌声を破壊するため、デュランダルの主砲が向けられたとき、異変が起こった。 残存していたグノーシスが、歌声に集まっていく。その中心には、アルベドのシメオン。 「なんだか遊び足りなくてな……戻ってきたぜ」 シメオンから莫大なエネルギーが発せられ、歌声の下に遥かに大きな建造物が出現した。 天の車。元々は宇宙の真理の解明の為に作り出された施設だったが、ヨアキムによって モモを生み出すためのプラントとして使われていた。この施設と歌声、そしてゾハルが 一体となった時、ミルチア紛争以上の悲劇が起こる。そのため、この施設は旧ミルチアが 封じられている二重ブラックホールへと廃棄されたはずだった。 アルベドは、先にY資料に接触した時、この天の車の存在と使い方を知ったのだ。 その天の車が青い光を放ち、グノーシスを吸収し始めた。それは、以前コスモスが 腹部から発射したビームと同質のものだった。 グノーシスをエネルギーとした天の車は、主砲の発射準備に入った。目標は第二ミルチア。 それを阻止するため、シオン達はエルザと共に天の車へと向かった。 41 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 33 11 ID 9P5lIrk+ 「遅ぉい! 待ちくたびれたぞ」 天の車の動力炉で、アルベドは彼女達を出迎えた。 なぜこんな事を。Jr.のその問いに、アルベドは憎憎しげに答えた。 14年前の作戦の時、Jr.が心を閉ざした事で、歌声の浸食に身を任せるしかなかった U.R.T.V。消えていった仲間達の為にも、貴様を断罪してやる。そう言いながら、 彼はこうも言った。 「だが、俺は感謝してるんだ。おかげで俺だけは新たなる世界への道を見つけられた」 コスモスとシオンに目をやり、彼は笑い声を上げた。 「ついさっき、それを確信した。これはそれを確かめる為の余興さ。精々楽しんでくれ」 アルベドが姿を消した直後、動力炉と直結した巨大なグノーシスが姿を現した。 死力を尽くして動力炉とグノーシスを破壊したシオン達。 爆発が始まり、彼女達が脱出を始めたその時、天の車がミルチアに向けて降下を始めた。 地上への被害を最小限に食い止める。その為に、天の車を最小ブロックにまで分解する 方法を探し出した彼女達だったが、システムを起動してから脱出までの猶予が、わずか 1分しかない事が分かった。 これでは脱出できない。一同に絶望感が漂ったとき、コスモスが残ると言い出した。 コスモスの能力ならば1分で脱出できる。そう信じて、シオン達はその場を彼女に任せた。 天の車が崩壊を始めた。ギリギリまで内部で待ち続けるエルザ。しかし、崩壊はエルザの 直上まで及び、苦渋の決断をするJr.。エルザは離岸した。 ハッチ上で待っていたシオンは取り乱し、戻るように懇願した。 その時彼女にネピリムの声が届き、走るコスモスのイメージが流れ込んできた。 左舷前方400メートル。シオンがエルザを誘導した先に、コスモスが飛び出してきた。 コスモスを収容し、最高速で離脱を図るエルザ。そのままミルチアの大気圏へ突入する。 しかし、先の脱出でダメージを受けていたエルザは姿勢制御にトラブルが発生。 大気との摩擦で船が炎に包まれた。このままでは、エルザは消し炭になってしまう。 そんな状況の中、ケイオスは一人、悩んでいた。 「あなたは、どうするの……?」ネピリムの声が、彼の脳裏に響いた。 その時、コスモスが彼の前を通り過ぎた。 「 君 が……? 待って!」慌てて止めようとするケイオス。しかし、 「あなたの痛みを、私に下さい」そう言って、コスモスはハッチに向かった。 コスモスが、エルザを守るように船首に立った。彼女の瞳が青く輝いた時、ケイオスの 腕が光を放ち、ネピリムが空を仰ぎ、アベルが振り返り、秩序の羅針盤が共鳴した。 そしてエルザの船体を6枚の光り輝く翼が包み込み、船は大気圏を突破した。 「いい見物だった。あとは、ペシェとU.M.Nがリンクすれば……」 そう言って、狂った笑い声を上げながら、アルベドは去った。 その情報は、ヴィルヘルムにも伝えられた。外套者は、彼を自由にする事を危惧した。 「アベルの方舟へと至る扉を開けるのは、彼だけだからね。しばらくは……」 「ウ・ドゥと再びリンクする可能性が残りますが」 「彼にそこまでの力はないよ。あとは鍵の役割だけ……。まぁ、局所事象変異ぐらいは 覚悟しないといけないけど、その為に 君達 がいるわけだし……ね。……でも、彼を このまま端役にしておくのは惜しい……。彼の意思は素晴らしい輝きを持っている……」 ミルチアの海に、日が沈もうとしている。その夕日を傷ついた船体に浴びながら飛行する エルザのブリッヂで待つシオン。彼女の下に、コスモスが戻ってきた。 「任務完了しました、シオン」 「…………お帰りなさい」 Xenosaga Episode1 END
https://w.atwiki.jp/otmgstory/pages/104.html
クラキミ 先生ルート
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/36670.html
登録日:2017/04/16(日) 21 50 00 更新日:2024/04/21 Sun 22 55 46 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 MtG Yawgmoth's Will ウルザズ・サーガ ソーサリー チート マロー最大の過ち ヨーグモスの意志 制限カード 禁止カード 黒 《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》は、マジック:ザ・ギャザリングの黒のカード。 ウルザズ・サーガに収録された。レアリティはレア。 Yawgmoth's Will / ヨーグモスの意志 (2)(黒) ソーサリー ターン終了時まで、あなたは、あなたの墓地にあるカードをプレイしてもよい。 このターン、カードがいずれかの領域からあなたの墓地に置かれる場合、代わりにそのカードを追放する。 この時点で何らかのトレーディングカードゲームをプレイしたことのある諸氏なら気づくだろう。 文句なしのぶっこわれカードである。 何がヤバいのか どのTCGにも墓地という概念は存在する。 最近ではリアニメイトやサルベージを主力とするデッキも多く見られるようになり、第二の手札とかいわれることも増えてきたが、墓地は基本的には役目を終えたカードが眠る場所である。 また大体どのカードゲームであっても使い捨てのカードは存在し、それらのカードを再利用する場合大抵多くの制約がかかるのが普通である。加えてコストが軽い場合干渉できるカードの種類なり枚数なりは少なくなってしまう。 その前提を踏まえてこのカードの効果を見てみると コストは軽め すべてのカードを再利用できる デメリットは軽い 何だこれ。 まず3マナというコスト。 黒には《暗黒の儀式/Dark Ritual》という1マナで3マナ一気に加速出来る素敵カードが存在する。 これで加速した後に打てば実質1マナの元手でこのカードを唱えられる。 それでなくとも3ターン土地を起き続ければ使用可能。その頃には墓地もいい感じに肥えているだろう。 また黒のシングルシンボル(色マナを1つしか必要としない)ため、デッキ内の黒マナソースが薄くても使用可能であるという点もメリット。 そしてデメリットの軽さ。 一応デメリットとして「このターン、墓地にカードが送られる場合、代わりにそのカードを追放する」という効果がある。 つまり「これを使った後のカードは一度使うと再利用できませんよ」という意味なのだが、大事なのは "このカードを唱えるまでその制約はない" ということ。 つまりこのカードを唱えるまでは好きなだけカードを使用した上で墓地=このカードで再利用可能な領域にカードが置けるということである。 例えばさっきの暗黒の儀式と組み合わせると、 黒1マナで《暗黒の儀式/Dark Ritual》→《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》→黒1マナでもう1回儀式 あれ?たった2枚+2マナの消費で1マナ増えた上に墓地のカードを好きなだけ使えるぞ? そして墓地にさえあればこのカードで再利用できるカードには一切の制約がない。 あの《Black Lotus》であっても再利用できる。 WotCの扱い ここまでいかにぶっ壊れであるかと書いてきたものの、まともなデザインならこの世に完全無欠のカードが存在しないように、このカードにも欠点がある。 このカードの強さは周りのカードの強さに比例する。 いくらこのカードが強くても周りに再利用に値するカードが少なければこのカードの強さもそれまでということである。 その為スタンダード環境では禁止カードに指定されなかった。 それでも当時のスタンダードには上記《暗黒の儀式/Dark Ritual》に加えて生贄に捧げると好きなマナ1点が出せる0マナアーティファクト《水蓮の花びら/Lotus Petal》が存在したのでフリースペルのようなことができていた。 黒系デッキの後半の息切れ防止という真っ当な使い方から、マジック史上最も美しいコンボとも言われる「ピットサイクル」でトドメ用の《魂の饗宴/Soul Feast》の水増しに使われたりはしたが上記の通り禁止は免れた。 が、エクステンデッド以下の環境では一変。 軽いどころかコストがあってないような強力なカードが多数存在するため、このカードを1回唱えるだけで10枚以上のアドバンテージを簡単に稼げる強力呪文になる。 特にヴィンテージでは先程の《Black Lotus》を初めとしたパワー9がすべて使えるため、それらをまとめて再利用できるこのカードは「パワー9を超える強さを持ったカード」になりうる。 そんなわけで登場から1年後の1999年10月からType1(現在のヴィンテージ)で制限カード、エクステンデッドとType1.5で禁止カードに指定され現在も解除されていない。 その後Type1.5から移行したレガシーでも当然禁止。 ちなみにこれは当然スカージ登場前(=ストーム登場前)の平和だった時代の話である。ウルザ・ブロック自体がそもそも平和じゃないというのは無しで 亜種・リメイク Regrowth / 新たな芽吹き (1)(緑) ソーサリー あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。 由緒正しきリミテッド・エディションからのカード。ある意味このカードの先輩。 2マナで好きなカードを1枚サルベージする。ちなみにこれで当時のType1の制限カード。 《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》はこれに1マナ増やしただけで全カードを再利用できる。 いくらなんでもやりすぎである。 Yawgmoth's Agenda / ヨーグモスの行動計画 (3)(黒)(黒) エンチャント あなたは、各ターンに呪文を1つしか唱えられない。 あなたは、あなたの墓地にあるカードをプレイしてもよい。 いずれの領域からでも、あなたの墓地にカードが置かれる場合、代わりにそれを追放する。 直接のリメイクその1。 唱えられる呪文を1つに限定し、コストを2マナ増やしたことでだいぶマシになった。 その性質上コンボデッキでは使えないが元々唱える呪文の数が少ないコントロールデッキなどではこれでも十分強い。 Praetor's Counsel / 法務官の相談 (5)(緑)(緑)(緑) ソーサリー あなたの墓地にあるすべてのカードをあなたの手札に戻す。法務官の相談を追放する。ゲームの残りの間、あなたの手札の上限は無くなる。 亜種その1。 《新たな芽吹き/Regrowth》に合わせてか効果が大規模サルベージになり、マナコストが約3倍になった。サルベージになったのでこのカードを唱えて以降もこのカード以外のカードは追放されない。 異常なまでの軽さが魅力だったので大幅なコスト上昇は痛いがそれでも墓地のカードの全再利用は強力。 ついでに以降手札上限もなくなるのでドローも気兼ねなく使える。 Past in Flames / 炎の中の過去 (3)(赤) ソーサリー あなたの墓地にある各インスタント・カードと各ソーサリー・カードは、ターン終了時までフラッシュバックを得る。そのフラッシュバック・コストはそれのマナ・コストに等しい。 フラッシュバック(4)(赤)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。 亜種その2。 マナコストが1増え、対象がインスタントとソーサリーに限定された。 嬉しいことに一時的なマナ加速は赤に移動しているため、このカードとのシナジーも抜群。 インスタントとソーサリーだけとはいえ大規模な再利用ができる呪文は貴重なので各種ストームデッキに採用されている。 そしてこのカード自身にもフラッシュバックがあるのが一番のミソ。 《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》との相性はバッチリで、手札を全て捨てるデメリットが気にならなくなるため、まるで《Black Lotus》の様に使うことが出来る。 Magus of the Will / 意志の大魔術師 (2)(黒) クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard) (2)(黒),(T),意志の大魔術師を追放する:ターン終了時まで、あなたはあなたの墓地からカードをプレイしてもよい。このターン、いずれかの領域からカードがあなたの墓地に置かれるなら、代わりにそのカードを追放する。 3/3 リメイクその2。クリーチャー化した。 ご丁寧に召喚コストは本家そのまま。新たについた起動コストも本家のマナコストと同じである。 本家と比べると妨害されやすく、工夫しないと即座に効果が使えず、コストも実質倍だが非常に強力な効果はそのまま。 登場後早速《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》などと組み合わせてレガシーで活躍している。 Underworld Breach / 死の国からの脱出 (1)(赤) エンチャント あなたの墓地にあり土地でない各カードはそれぞれ脱出を持つ。脱出コストは、そのカードのマナ・コストに「あなたの墓地から他のカード3枚を追放する。」を追加したものに等しい。(あなたはあなたの墓地から、カードをそれの脱出コストで唱えてもよい。) 終了ステップの開始時に、死の国からの脱出を生け贄に捧げる。 亜種その3。登場したテーロス次元のテーマに合わせてエンチャントになったが、終了ステップ開始時に生贄に捧げるので基本的に使い切り。 本家と異なり土地はプレイできず、カードをプレイするたびに墓地のカード(=カードの選択肢)が消えていく点は劣るが、本家より軽い。 更に本家と異なり脱出での追放コスト以外にカードは追放されないので墓地のカードさえあればいくらでもカードが再利用できる。このカード自体も再利用可能。 この為スポイラー公開当初から《ライオンの瞳のダイアモンド/Lion's Eye Diamond》を何度も再利用して高速マナ加速するストームデッキが誕生したりと早速コンボデッキに搭載され、レガシーで即刻収監されてしまった。 再利用カードを追放しない点によりコンボにおいては《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》より強い、というのが現状のプレイヤーの認識となっている。 Tibalt, Cosmic Impostor / 星界の騙し屋、ティボルト (5)(黒)(赤) 伝説のプレインズウォーカー — ティボルト(Tibalt) 星界の騙し屋、ティボルトが戦場に出るに際し、あなたは「あなたは星界の騙し屋、ティボルトによって追放されたカードをプレイしてもよく、それらの呪文を唱えるために任意のマナを望む色のマナであるかのように支払ってもよい。」を持つ紋章を得る。 [+2]:各プレイヤーのライブラリーの一番上のカードをそれぞれ追放する。 [-3]:アーティファクト1つかクリーチャー1体を対象とする。それを追放する。 [-8]:すべての墓地からすべてのカードを追放する。(赤)(赤)(赤)を加える。 初期忠誠度5 ETB能力との兼ね合いにより、奥義がすべての墓地対象・効果永続・墓地対策無効・色拘束無視・対戦相手の墓地一掃のヨーグモスの意思の強化版となっているプレインズウォーカー。 とはいえ7マナの重量級プレインズウォーカーの奥義なのでさすがに序盤から使うのは無理だが、 《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》《ティボルトの計略/Tibalt's Trickery》などでマナコストや色を無視して出すデッキも存在する。 Gaea's Will / ガイアの意志 (緑) ソーサリー 待機4 ― (緑) ターン終了時まで、あなたはあなたの墓地から、土地をプレイしても呪文を唱えてもよい。 このターン、カードがいずこかからあなたの墓地に置かれるなら、代わりにそのカードを追放する。 恒例行事となった待機つきリメイク。色が緑に変わっており、書きぶりが若干変わっているがやってることは何も変わっていない。 本家は唱えれば相手は死ぬみたいなそういうカードだったので、既に待機で見えている場合即刻打ち消されるか唱える前に自分が死ぬかどちらかなので例に漏れず待機で使うのはちょっと厳しい。 やはりマナ・コストのない呪文の常套手段である踏み倒しで無理矢理唱える形で運用することになるか。 余談 マロー曰く「最大の過ち」。単純にマローが作ったカードの中で一番のぶっ壊れだから、という意味ではない。上記の通りこのカードが発売される4年半も前に《新たな芽吹き》がType1で制限カードに指定されているのだ。つまり当時「墓地のカードを軽いマナコストで再利用できるカードは強い」ということを認識していた(はず)なのだ。にもかかわらずこのカードは作られてしまった。このカードが狂ったオーバーパワーなカードであることは予想できたにもかかわらず。「このカードはまずいということを認識しているべきだったのに作られてしまったということ」こそが「最大の過ち」である。 このカードの効果が解決した場合、このカード自体も追放される。つまりこのカード自体の再利用は難しめ。《意志の大魔術師/Magus of the Will》もこれに準じて発動条件が自身追放になっている。 これだけ強力なカードだが、スタンダード環境であっても1枚打てば十分な場合が多かったこと、使えるフォーマットが現在では少ないため、シングル価格は安め。といっても再録禁止カードなので徐々に値上がりしているのだが… 印刷されたテキストと現在では置換効果で墓地に送られたカードが追放されるようになっている(一度も墓地に送られない)のだが、一時期追放が誘発型能力であるというエラッタが出ていたことがある。当時のルールでは問題なかったのだが、第6版でスタックルールが導入されたことで、例えば《暗黒の儀式》を唱える→追放される能力が誘発するのでそれにスタックで墓地に落ちた暗黒の儀式を唱える→以下繰り返し、という無限ループが発生してしまう事態となった。黒2マナ出せればたった2枚で無限マナである。あまりに簡単に1ターンキルが発生してしまうため元のテキストに修正された。 追記・修正はこのカードを唱えてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 0マナカードとか暗黒の儀式を失念して、「どうせ1ターンの間墓地のカード全部プレイできたってマナ足りないから使えて数枚程度だろw」とか思ってたんだろうなあ・・・ -- 名無しさん (2017-04-16 22 35 02) コンボデッキとしては最悪のカードだが黒デッキとしては超いいカードなんだよな -- 名無しさん (2017-04-16 23 39 45) ちなみに一時期インスタントだったら再利用した呪文を追放される前にもう一度唱えられた時期があった。登場時問題なかったちょっとしたエラッタがルール改訂でえらいことになりすぐに再エラッタされたそうな -- 名無しさん (2017-04-17 01 13 21) 3マナも消費してるのに何が強いのかわからなかった -- 名無しさん (2017-04-17 04 27 13) ダリチューを失念してたなんて事があるかねー?スタン落ちするまでほぼ全ての黒のお供だった訳だし確信的にデザインされてる方がしっくり来るかな -- 名無しさん (2017-04-17 09 20 25) なんか更新被っちゃったんで手直ししつつ更新しました -- 名無しさん (2017-04-17 10 53 31) デュエマ版ヨーグモスの遺志のゴエモンキーも大概だと思うの -- 名無しさん (2017-04-17 22 11 03) マローが確かにやっちまったNO1に上げてたけど修繕も大概だよな -- 名無しさん (2017-04-18 09 33 14) 修繕は「追加のマナを支払う」がイラッときただけだから。こっちはとうの昔に危険とわかってるメカニズムを超強化して出しちゃったって言う意味でアウト -- 名無しさん (2017-04-18 13 40 38) ↑2 いやたぶん、最悪の失敗は両方入ってるウルザブロックそのものかと…。 -- 名無しさん (2017-04-22 10 45 20) かの処刑人マキュラすらドン引きする狂気の効果 -- 名無しさん (2018-02-19 12 14 39) こいつの憎いところはかっこよすぎるところだよなぁ。ラスボスの名前を冠していて名前負けしない強力な効果なんだけど、神の怒りとかウルザの激怒ほど直接ヒネる能力じゃない。 -- 名無しさん (2018-02-19 12 44 17) 違反コメントを削除しました -- 名無しさん (2020-03-07 08 06 22) 「シングル価格は非常に安い」って書いてあるけど最近は再録禁止カード高騰のあおりを受けてそれなりにお値段する -- 名無しさん (2020-05-06 13 26 22) 今となっては死の国の方が強い気がする。 -- 名無しさん (2022-12-21 04 20 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/1614.html
(投稿者:怨是) Apr.15/1945 ……戦いは、もう私の中では当然のものとなって、日常の一つと化している。 無感動に、無関心に敵を屠り、どれくらい斃したのだろうかと、今ので何匹目になるだろうかと頭の中で計算する。 そんな私にとって、ザハーラは云わば試練の場だった。 今まで培ってきた戦闘技術を試す。どれだけ強くなれたか、それだけ冷静になれるか。 しかし、この試練は殆ど不合格と云っても良いものだった。 ザハーラで初めてスポーンと呼ばれる変異型Gと戦った時には流石に焦りを覚え、手元を狂わせてしまった。 その時派遣されてきていた友軍のMAID達の援護が無かったら、私は今頃、重傷を負っていたかもしれない。 むしろそのほうが良かった。重傷を負っていたなら、己の慢心をその身を以って実感できていただろうから。 ザハーラという激戦区で戦ってきたMAIDは考え方が大きく変わるのだと、前線で補給を取っていた時に兵士達が話していた。 では私は、何か一つでも自分を変える事ができたのだろうか。 答えは否だ。何も変わってはいない。 帰国して直ぐに読んだ新聞には私を賞賛する言葉がつらつらと書き連ねられていたが、あれを変えられるだけの強さが、まだ私には無い。 華々しい報道なんて要らない。私はただ平穏に、他のMAID達と肩を並べて戦って、笑い合いたいだけだ。 どうすればあれを変えられる? 私はあの新聞をどうすればいい? 新聞社を直接襲うという事も考えたが、仮にも国民的英雄などという肩書きを背負っている以上、そんな乱暴を働けば多くの人が困惑するだろう。 軽はずみな行動でみんなに迷惑を掛けたくない。 かといってこれを陛下に相談すればきっと陛下は悲しまれると思い、私は陛下にもこれを伝えずに今まで黙ってきている。 友人達にも、こればかりはどうすれば良いか解らないから相談していない。 あの新聞を変えられるだけの何か特別な“力”を手に入れたら、私は他のMAIDを傷つけずに済む筈なのに。 1945年4月16日、13時過ぎ。 ジークフリートは自室にて、赤い表紙に銀と黒の箔押しの日記帳を眺めていた。 一度はペンを握ったが、結局は昨日の分の日記を読むだけに留めた。想像以上にザハーラ遠征での疲れがひどく、思うように筆が進まないためだ。それに、今のこの精神状態で書き連ねれば自己弁護ばかりになってしまうかもしれないという懸念があった。 己の過失が原因であの新聞をのさばらせたのなら、己の力だけで解決するというのが筋の通し方というものではなかろうか。……という事をうっかり誰かに、特にメディシスやスィルトネートに口にしようものならきっとまた「少しは頼れ」などと咎められるのだろう。ただ、その言葉も理論的には理解できるが、感情がそれを許さないのだ。 こうまで自責的な性格を持つに至ったのには理由がある筈だが、ジークにその要因を探るだけの勇気は無い。 他人に対し責任を求める事がどれ程に恐ろしいか。一度、誰かを責める事を知ってしまえば、その先の生涯も誰かに責任を押し付ける事に慣れてしまい、自らの責任感を放棄し続けてしまうに違いないのだと、胸に鎮座するコアが囁いている。このような複雑にねじれた思考も、結局は己の怠慢が招いたものではないか。 ジークは、ザハーラの戦場で兵士から貰った金属製のウィスキーボトルを手に取る。涙を流さぬようになって久しいが、今度はこのボトルに映っているように、苦渋に顔を歪ませたような、ひどく険しい表情になる事が多くなった。こんな形相では他者を恐怖させるばかりだ。 「何も変えられていないのか、結局……」 ボトルを一気にあおり、空になったそのボトルを壁に叩き付けた。わなわなと震える袖で、口から垂れたウィスキーを拭った。 ――もしかするとこの口からこぼれたウィスキーこそが、私の涙の代わりだろうか。だとすれば随分と荒んでしまったものだ。一年前は社交の席でワインを口にする事も躊躇われたというのに。 壁を凝視しながら物思いに耽っていると、ノックと共に一人のMAIDが「失礼します」と、遠慮がちにドアを開けて覗き込んできた。 「……何の御用でしょうか」 視線をそちらに遣るや否や、MAIDの両肩がビクリと跳ね上がった。ジークはまたも自分が“あの顔”をしているという実感に、心中で驚嘆した。 MAIDはジークの足元に転がったボトルに目を遣って、「いえ、大きな音がしたので、何事かと……」と愛想笑いを浮かべた。 「心配は要りません……ご迷惑をお掛けしました」 ジークは急いで顔を逸らし、MAIDの緊張を和らげようと努めるが、 「ひっ、いえ、こちらこそ、出過ぎた真似をお詫びせねばなりません! 嗚呼、どうか、どうかお許しください、私はただ――……」 逆に彼女はこの様子を見て『自分の言動がジークフリートの気に障った』と思ったらしい。しきりに何か謝罪の言葉を羅列している。こういう時、どういった表情をすれば良いかは解っている。笑えば良い。が、固く結んだこの口元は、はたしてどのように綻ばせていたのだろうか。 「私は、大丈夫。気にしていません」 結局は無表情のまま、MAIDを慰める。が、この顔もまた、目の前の彼女にとっては畏怖すべきものに見えてしまっているのだろう。 「寛大な御心、何とお答えすべきか……!」 「いつも通り、この部屋に入ってくる前にしようとしていた別の事を、やればいいと思います」 「は、では、ジークフリート様のお部屋の前の廊下を綺麗にしようとしていたところでしたので、これにて失礼いたします! ジークハイル、ハイル・エントリヒ!」 そう云って、MAIDは敬礼した後にそそくさと立ち去ってしまった。 こんな事ばかりだ。誰もがこちらの機嫌を伺い、こちらの顔を見る度に慌てふためき、ご機嫌取りに躍起になる。誰もが、ジークを『畏怖の対象』と認識している。個々人の意識レベルならまだ良かった。絶望すべきは、一部の構成員達がそのご機嫌取りを他者に強制しているという状況だ。不機嫌には相違ないが、それも自分のせいであって、誰かに嫌な仕打ちを受けたわけではない。 「……」 鏡の前に立ち、両手で口元をどうにか上へと上げようと試みるも、手を離した途端に口はいつもの形へと戻り、眉間の皺が再び深々と刻まれるだけだった。 考えてみれば、それは当然の事だ。心の底で笑えていた時間は、概算で一年分にも満たない。「忘れた」などと云う以前に、殆ど知らないも同然だったのだ。酒の勢いを借りたところで、既に土台から破綻しているのだから、無理なものは無理だ。 「この顔のせいで、私は……」 陰鬱な眼差しで鏡を見据え、拳で叩き割る。飛び散ったガラスの破片が手の甲に刺さるが、知った事か。どうせこの鏡は自分以外の誰も見ず、この部屋も誰かが足を踏み入れる事など無いのだ。もう二度と、鏡など見てやるものか。 そんな事よりもっと大切な問題が目の前に立ち塞がっているのだから、今はそれだけを考えていれば良い筈なのだ。後は、いかにしてその解決方法を他者――特にスィルトネートとメディシスに悟られぬよう考え付き、実行するか。それに掛かっている。アルコールが神経を掻き乱している間だからこそ、何か面白い奇策が思い付くかもしれない。 同時刻、メディシスは先日の公約どおりスィルトネートを買い物に連れて行き、その帰路についていた。 メディシスは疲弊しきった表情を浮かべ、片やスィルトネートは時折所在なさげな眼差しでこちらを伺う。 「見通しが甘かった。あの店員め……結局三着も買わされた。わたくしの分は別に要らないのに」 「完全にジークの誕生日プレゼントを買うという前提で接客されましたね。折半で買ったから、そこまで痛い出費じゃなかったけど」 「というかあの店員、何故ジークのスリーサイズをご存知なのか」 メディシスとしては、ふと浮かんだ素朴な疑問を口にしただけだったが、比較的ウブな部類のスィルトネートにはそれをいかがわしい何かだと感じたらしい。彼女は赤面しながら、もじもじとした仕草で両手の人差し指を付けたり離したりしていた。 「ほら、その……下着のお店ですし」 「何を今更恥らってる。どんだけ免疫無いんだ全く。そもそもですね、既に買ってあるとでも云っておけばあんな接客はされなかったでしょうが」 件の店員の接客態度も、「出来れば買って頂けると」などといった生易しいものではなく、「もちろん買いますよね」という言外の強制を伴っていた。流石にジークとお揃いの下着を買わされる事だけはやんわりと拒否した――表面上は「ジークとお揃いだなんてわたくし達のような卑しいMAIDにはおこがましい行為ですわ」と、この上ない笑顔で繕ったものの、メディの本心はもちろん違う――が、あの店員があれで納得するとは思えない。買うのが当然という考えが帝都全域にまかり通っているのだ。 スィルトはその酷い接客の憂き目に遭ってもなお、ばつの悪いといった風の曖昧な笑みで遠くを見ている。 「だって正直に云わないと悪いかなって思って……あはは」 「ああいうのは適当にあしらっておくのが定石ですわ」 「無理ですよ、どんな店員でも、私にとっては大切な国民です。彼女達だって生活がかかっているわけですし」 「ふーん。殊勝な心がけ、恐れ入りますわ」 どこまでが心にも無い言葉なのか当ててやろうか、この馬鹿騎士め。 「ひょっとして私のことバカにしてるでしょ」 「考え過ぎではありませんこと? わたくしは別に――」 と云いかけたところで、自転車のブレーキ音と同時に、中年男性のものと思われる野太い罵声がメディシス達の背を冷やした。 「オイこら! お前ェら、そこをどけ!」 「あら、ごめんあそばせ」 驚いて振り向くと、口ひげと赤いハットの目立つ、そこそこ横幅の広い中年男性がこちらを睨んでおり、その隣には二十代後半と思しき男性が無表情なまま遠くを見ていた。若い男の無表情の理由をメディは知る由も無いが、赤ハットの中年のほうはひどく機嫌を損ねているようで、自転車の上からこちらを指差して怒鳴り散らす。 「MAIDだからって調子こきやがって。俺達ゃ急いでんだ。横に並んで歩かれると邪魔で邪魔で仕方ねぇ!」 「ですけど、縦に並んでおしゃべりというのも何だかおかしな光景ではありません?」 「知らねぇよ! ちったぁ後ろから来る人の事を考えやがれ! ここは道が狭いんだからよ、下手こいてテメーのそのバカでけぇ髪の毛に引っ掛けたら大惨事だろうがよ!」 女の命とも云える髪をそんな粗末な自転車に引っ掛けられるのは、確かに大事故だ。だが、ベルを鳴らすなりしてくれれば避けようはあるのだから、そこまで怒鳴らなくても良いではないか。……などとメディが顔をしかめていると、先程まで遠くを見ていた若い男のほうがようやく口を開く。 「ミスター、その辺にしてやってくれ。ところで君達はMAIDだな?」 おもむろに質問され、メディはスィルトと顔を見合わせる。少し間を置いてから、スィルトが応じた。 「え、えぇ、そうです」 「そうか! なら、この写真の女を知らないか? クロッセル連合空軍に所属していた、マーヴという名前の空戦MAIDなんだが」 突如として若い男の表情が生気を帯び、懐から写真を取り出してスィルトとメディに交互に見せる。この男が虚ろな態度をとっていたのは、マーヴとやらについて考え事をしていたせいだろう。しかし、残念ながら隣に立つスィルトは知らないようで、しきりに首をかしげている。 「うーん……ごめんなさい。会った事はないです」 青年はその言葉を聞いて、ひどく落胆した。 さて、ここからがマルチタレントの本領発揮だ。前座の不備を本命が補う。これぞメディシス流。メディシスは労(ねぎら)いの意味を込めてスィルトの肩を軽く叩き、口を挟む。 「新聞に載っていたMAIDですわね。確か、タイフーン計画の? 一時期よく耳にしましたわ」 メディシスはこのマーヴやタイフーン計画について、戦果の横取りや記事盗用問題などの噂を、フロレンツ領事館へ訪れた客から山ほど聞いている。メディは彼女についてあまり良い話を聞かなかったが、それでもこの男は多少なりともタイフーン計画について知っている事が嬉しいようで、目を輝かせて食いついてきた。 「その通り。私は彼女が消息を絶った責任を取らされ、計画から外されて以来こんな職業に身をやつしている。ずっと探しているのだが、彼女は中々見つからなくてね」 端正な容姿の割にいまいち器量に欠けているように見えるこの男は、どうやら大層な御身分であったらしい。それを抜け抜けと他人に語って良いかどうかはさておく。男が語り終えると、赤ハットの中年が彼の肩を掴んだ。 「“こんな職業”で悪かったな、ジラルドよぅ」 「言葉のあやだ。許してくれ」 「だいたい別れた女をいつまでも探してんじゃねぇよ、未練ったらしい。そら、早く行くぞ!」 赤ハットの中年は己の自転車のペダルを何度か蹴り、ジラルドと呼ばれたこの青年を急かす。対するジラルドは、中年に敢然と立ち向かった。彼の自信に満ち溢れた態度が、メディシスの神経を少しだけ逆撫でする。 「彼女は恋人ではない。そんなものよりも高次の存在であり、あらゆる英知の結晶、そして最強の空戦MAIDなのだ。故に私は何としてでも彼女を見つけねばならない……これは私の使命である」 「あのなぁジラルド、時間が無いっつってんだよ! あと五分でこいつを届けにゃならねぇの! お前、元軍人だろうが! 仕事に遅刻したらどういうお小言を頂戴するかぐらい解ってんだろ? おい!」 「私の人生は、私の為にあるのだ」 「あぁそうかい! なんだったらテメーのために今すぐにでも首にしてやろうか! そのタイフーン計画とやらの時みてぇによ! そうすりゃ責任を取るのは俺一人、テメーは晴れて自由の身って寸法さ。今までの分の給料は全部パーだがな! 退職金なんて親切なもんは砂金一粒も出してやらん! いいのかそれで?」 「それは、その、困る……」 自らの首がかかった途端、ジラルドの表情が曇る。大方、この男は計画から外されて当ても無く彷徨っていた所を、この赤ハットの中年に拾われたのだろう。どんな職業なのかは想像が付かないが、ろくなものではないという事は誰の目にも明らかだ。 隣で呆気に取られるスィルトに、メディは目配せした。 「これ以上関わらないほうがいいかしら」 「……かも」 二人のMAIDは間近の角を曲がり、別ルートからの帰宅を試みる。この近辺は区画整理が進んでいるので、左に曲がっても右に曲がっても、然るべき場所でもう一度曲がればすぐにでも大通りに出られる。振り返ると、ジラルドが赤ハットに腕を掴まれたまま必死にこちらを求めて手を振り、追いすがるような声で懇願していた。 「待ってくれ君達! おい、もしもし! ……ああ、ミスター、余計な事をしなければ聞き出せたかもしれないのに」 「さっきの反応からして面識が無いって事くらい解んだろ、こン馬鹿たれ! ほら、さっさと行くぞ!」 「ああ解ったよミスター。それと、君達! ジークフリートによろしく!」 ……。 メディシスは少し足が疲れてきたので、スィルトネートと共に手近な広場のベンチに座る。傍らのスィルトネートは、懐中時計を握りながら溜め息をついていた。メディは、先程の二人組みとのやりとりを回想する。 とある情報筋によれば、空戦MAIDのマーヴは黒旗へと寝返ったらしい。だからなのか、あのジラルドという男は帝国のMAIDである自分達に写真を見せて訊いて来たのだろう。交戦していたらある程度の情報は得られると踏んだ、という事か。ただ彼の“こんな職業”という発言から推測するに、情報を仕入れたとしても会いに行くのは十中八九無理だろう。 それよりも気になるのは、あの恰幅の良い男といい、どういう職業なのか。ジラルドは最後に何故、ジークフリートによろしくなどと云ったのか。誕生日プレゼントの配達中だったのか。考えてみれば、彼らも営舎へ向かっていたように見えた。 「……何だったのかしらね、あれ」 「恰幅の良いほうの御仁は、随分と派手なお洋服でしたけど」 「まぁ、忘れましょ。あまり関わるとロクな事が無さそうだ」 それにしても、同僚の下着を一着だけ購入するという、たかだか買い物程度にこれほどの神経を使うとは。メディシスは改めて、この帝都が嫌いになった。いっそ財力を以って改革を推し進め、帝都を取巻く面倒な思想の尽くをとっとと切り捨ててはしまえないだろうか。
https://w.atwiki.jp/storytellermirror/pages/956.html
ゼノサーガ エピソードI 力への意志 ・要約版(ゼノサーガシリーズ全体の要約):要約スレpart3-23,112,114~118 ・詳細版:part12-594~610, 14-32~41 23 :ゲーム好き名無しさん:2008/12/26(金) 19 41 05 ID j1iAV0OwO ゼノサーガシリーズ 人々の拒絶し合う精神や、ウ・ドゥと呼ばれる高次元の波動とかの影響で 宇宙は一般人の知らないところで徐々に崩壊しており そのうち滅亡を迎えるのがほぼ確実になっていた。 有史以前から生きてる超人ヴィルヘルムは、宇宙の滅亡は不可避だと結論し アンドロイドKOS-MOSを造って古代に居た「マリア」という能力者を復活再現しようとする マリアの能力を利用すれば滅びかけた宇宙を原初までリセットすることができるのだ。 リセットしても記憶を失った人類は同じ歴史を辿ってまた滅亡に向かうのだが 滅びそうになるたびに再びリセットする「永劫回帰」という無限ループにすることで 未来が無いかわりに宇宙を延命できるのだという。 あるいは既にこの宇宙も、 何回も、ひょっとすると何千回以上もループした後の宇宙なのかも知れなかった。 冒険の中でKOS-MOSは覚醒を果たすが、今までのループとわずかに違い、 単なるマリアのよりしろでもプログラムに縛られた機械でもなく、 自分の意思を持ったKOS-MOSという一存在として成長する。 KOS-MOSはヴィルヘルムの意図に反し、閉じたループではなく、 仲間達と共に未来に進み崩壊を避ける道を模索することを選ぶ。 KOS-MOSが離反したことで暴走した強制リセット装置(ラスボス)を叩いて止めて 崩壊の中心を宇宙の僻地に隔離封印する事で滅亡までの時間を引き延ばすことに。 ワープ封印には成功するがKOS-MOSは大破し、いつか仲間と再開することを信じて ワープ先で長い長いスリープモードに…。 生還した仲間達はそれぞれのやり方で崩壊を阻止するために行動を開始。 幾人かはKOS-MOSのワープ先の星… かつて「地球」と呼ばれた星を探す果てしない航海に旅立つのだった。 …KOS-MOS関係とラストバトル周り「だけ」でこれだよ 各キャラ各勢力各設定とかちゃんと説明したらどうなるんだ… 112 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 17 15 47 ID j2QXEqlJ0 23のゼノサーガを書いた者なんだが、これ一応、事の真相ではあるんだけど これが明らかになるのがEP3の終盤なんで「あらすじ」っていうのとは違う気がしてきた。 EP1の前半だけ見てからこれを読むと 「この展開からどうやってこんなのに繋がるんだ・・・」って気分になるかもしれないと思った。 一応ゲーム展開のあらすじという方向でも纏めてみたんだが、要ります? できるかぎり要約した割にかなり長くなってしまったんだけど 114 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 55 07 ID j2QXEqlJ0 んじゃ行きます ゼノサーガ パイドパイパー (携帯アプリ) 人類が、とある災厄に見舞われて地球を脱出して数千年(本編の約百年前) 情報送信だけでなく物質の転送や仮想空間の構築、超光速航法も可能にした超空間ネット 「ウーヌス・ムンドゥス・ネットワーク(略称U.M.N.)」の恩恵を受け人類は暮らしていた。 だがアブラクサスという惑星で、U.M.N.仮想空間内で人が連続して殺される怪事件が発生。 星団連邦警察の対テロ隊長ジャンは「ヴォイジャー」を名乗るテロリストの犯行と見て調査を進める。 ついにヴォイジャーの正体を突き止めるがそれはジャンの身近な人物だった。 ヴォイジャーは様々な超常現象を起こす無限エネルギー物体「ゾハル」を使うために ゾハルにアクセスできる因子を持った人間の脳内情報を集めていたのだ。 目論見それ自体は失敗するが、ヴィルヘルムに資質を見出され 物理的に死なない不滅の存在テスタメントの一体に変貌するヴォイジャー。 逃げ場も勝ち目も失い家族も殺されたジャンに、ヴォイジャーは自分の仲間になるか、 それとも戦って死んで今までの被害者のように精神をコレクションされるか、という選択を迫る。 だがジャンは第3の選択として、自棄でも逃避でもなく、 自分の意思と人間としての尊厳を守るために自らの命を絶つのだった。 しかし後に、優秀な能力を持つジャンの遺体は サイボーグ体「ジグラット8(通称ジギー)」として意に沿わぬ形で目覚める・・・ 本編に続く。 本編中でのジギーは、大切なものを守れぬまま死も許されず存在し続ける苦痛に、意識をも機械化することを望むが 新たな仲間達との触れ合いにより人としての意思の在り様を再び見つけ出す。 そして犠牲を払いながらもついにヴォイジャーとの決着をつけ、 今度こそ大切なものを守り続けて生きていく事を誓うのだった。 115 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 56 13 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ EP1 ヴィルヘルムがCEOを務める大企業ヴェクター、化粧品から戦艦まで扱う世界規模の一大コングロマリット・・・ そこに所属する若き女技術者シオンは、今は亡き恋人の天才科学者ケビンの研究を引き継ぎ、 人類を襲う謎の敵「グノーシス」に対抗するアンドロイドKOS-MOSを開発していた。 しかし乗っていた宇宙船が襲われ、グノーシスに接触され死にかけるシオン。 だが起動命令も出していないのに何故かひとりでに目覚めたKOS-MOSによって助けられる。 船を脱出したシオン達は、成り行きで(・・・に見えるが実は運命に仕組まれて) モモというレアリエン(労働用人造人間、アンドロイドと違いナマの生物で、明確な感情がある)達と出会い、 そのモモの脳内に封印された、ゾハルや超技術について記された「Y資料」というデータを狙う宗教結社オルムス (の一部であるU-TIC機関)や狂気の不死人アルベドとの戦いに巻き込まれていく。 感情を見せず、時に残酷な振る舞いをしたり、稀に仕様書には無い奇跡のような謎の力を発揮するKOS-MOS。 それらの行動や、KOS-MOSデータ内面世界に不可思議な領域があるのを垣間見て、KOS-MOSへの不安を抱くシオン。 だがKOS-MOSに幾度と無く助けられたこと、創り手としての愛情、亡きケビンとの絆を確認したい、との思いなどから、 シオンはKOS-MOSのことをもっと知りたい、共に生きたいという思いを強くするのだった。 116 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 57 00 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ EP2 グノーシスを打破するため、U-TIC機関にゾハルを渡さず確保するためにも、モモ内部のY資料を解析しようとする。 だがアルベドによって仕掛けられた論理トラップによってY資料は流出してしまう。 ゾハルが封印された惑星ミルチアへのルートが明らかになり、各陣営は一斉に動き、 ミルチア宙域では熾烈な戦闘が展開されるが、 最終的にゾハルはオルムスの教皇セルギウスの手に落ちる。 神の遺物と呼ばれる超技術で造られた、破壊兵器プロトオメガをゾハルの力で起動させ、 圧倒的な力を振るうセルギウス。だがセルギウスには高邁な理想は無く、矮小な我欲しかなかった。 その意思の小ささに、ヴィルヘルムはテスタメント達を遣わしセルギウスを処分する。 そこを横からかっさらうようにアルベドがゾハルを手に入れる。 シオン達の仲間の一人、ルベド(通称Jr.)はかつて、 特殊能力を持った兵器という役割で遺伝子操作されアルベドと共に産まれた。 兵器として死ぬことから逃れようとしたJr.は結果的に兄弟達を見捨てることになってしまったことを悔やみ続け、 アルベドとJr.は互いに愛憎入り混じる複雑な感情を抱いていた。 Jr.はゾハルの力で変容したアルベドの元に単身乗り込み、因縁の戦いに終止符を打つ。 実はアルベドの望みはJr.の手で死ぬことだった。今際の際に和解する二人。 だがゾハルは何処かへと消えた。ヴィルヘルムが笑みを漏らす・・・ 117 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 58 01 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ ミッシングイヤー 今までとは違うパターンのグノーシス被害が出始める。 本来なら群れても統率はされていないはずのグノーシスが秩序だった動きを見せ、 都市部に被害が集中し、そして短時間急襲した後にはすぐ消えてしまうのだ。 グノーシス・テロと呼ばれる一連の現象の裏にはグリモアという数千年前に死んだはずの男の存在があった。 グリモアはまだ人類がロスト・エルサレム(地球)に居た頃に人間を使ってゾハルを操る実験をしていた研究者であり、 その実験で娘を消滅させてしまっていた。 実験で使われたゾハル制御プログラム「レメゲトン」を復元すれば娘を復活させられると信じたグリモアは、 精神データとなってヴェクターの最重要データ区画に潜み、数千年の時を経て行動を開始したのだ。 レメゲトンが発する波動「ネピリムの歌声」に引き寄せられるグノーシス達を誘導し、 断片化してU.M.N.内に四散してしまったレメゲトンを集めていたグリモア。 だが世界をグノーシスの危機に陥れかねないその暴挙はシオン達によって止められる。 しかしシオンは自分の所属するヴェクターの上層部がグリモアを援助していたこと、 この事件の一因となった14年前の非道な人体実験に自分の父が関っていたこと等を知ってしまい、 やがて不信と苦悩からヴェクターを退社して独自の調査を始める事になる。 118 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21 58 49 ID j2QXEqlJ0 ゼノサーガ EP3 自覚はなかったが、シオンは無意識の内にゾハルにアクセスする強い能力を持っていた。 テスタメント達は過去の惨劇を目の前で再現する精神攻撃を仕掛け、無理矢理シオンの能力を引き出す。 シオンの悲鳴に誘われ、ゾハルが姿を現す。 グノーシス、オルムス、Jr.達の親のユーリエフ・・・ゾハルを求める各勢力が集結し終末的な争いを繰り広げる。 戦いの中で一人ひとり過去を清算し、因縁に決着をつける仲間達。 だがそれらは全てヴィルヘルムの手の上の出来事だった。 ゾハルの稼動で加速度的に被害を増すグノーシス現象。 グノーシスの正体はゾハルの波動を受け、恐怖から他者や世界を拒絶した生命の成れの果てだという。 拒絶し合う意識はグノーシスとなって人類を殺すだけではなく、やがて宇宙の構造そのものを散逸・崩壊させる。 そうなる前に全てを始まりに戻す「永劫回帰」に必要な因子を、ヴィルヘルムは漁夫の利で集めていた。 シオンの能力は「マリアの巫女」と呼ばれた女性の再来であり、マリアの力を引き出す触媒だった。 シオンがKOS-MOSの開発を引き継いだのは、KOS-MOSをマリアとして目覚めさせるために全て仕組まれたことだったのだ。 目の前で両親や親友が惨殺される光景を再び見せられたり、能力の副作用で死ぬと宣告されたり 宇宙の崩壊の一因は自分にあると突きつけられたり、死んだはずの元恋人ケビンがテスタメントになって敵側に居たり、と 精神的にボロボロになったシオンは誘導されるがままKOS-MOSを目覚めさせ、ヴィルヘルムやケビンに操られかける。 果たして宇宙はどうなるのか。人々の魂すら失われる完全な崩壊を迎えるのか、 それとも同じ歴史・同じ日々を延々と繰り返す世界になるのか・・・ あとは 23に続く 594 名無しさん@お腹いっぱい。 sage05/02/2802 46 14ID cMIoi3AX すいません、いっぺんにのせてくれるとありがたい。 と意見がありましたが、凶悪的なほど長文になる恐れになってきまして、 分けて載せていくことにします。ご期待に沿えず申し訳ございません。 できるだけ短くしよう、短くしようと頑張っているのですが、 ゼノサーガは物語の伏線が多すぎて、最初を詳しくしないとさっぱり意味がわからないのです。 ですので、最初は詳しく、後半は簡潔に行こうと思います。 ゼノサーガ特有の意味がわからない用語は出来るだけ省き、わかりやすい用語に差し替えました。 何度も出てくる難しい用語はそのままにしてあります。長文になることをご了承ください。 595 Xenosaga Episode1 sage 05/02/28 02 47 35 ID cMIoi3AX Xenosaga Episode 1 ~Der Wille Zur Macht~ 時にAD20××年。 ケニア北部、トゥカルナ湖で古代遺跡の発掘が行われていた。 発掘員隊長、マスダは、現代の全ての事象の根源であるゾハルを発掘した。 ゾハルは光を放ち、その光は雲を貫き、空へと向かっていった。 全てはここから始まる。 596 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 48 57 ID cMIoi3AX 1 ~4000年後~ ゾハルの発掘のあと、大規模な人の消失事件が発生した。 生き残った人々は移民船に乗り、宇宙へ旅に出た。 移民先を見出す数百年かかり、最初の移民惑星を「セカンド・イェルサレム」と名付けた。 だがしかし、人はそこで戦争を繰り広げ、過ちを犯し続け、いくつかの主星を失い続けた。 現在の主星はフィフス・イェルサレム。この星に、ようやくひとつの国家的統合を達成する。 星団連邦政府所属、巡洋艦ヴォークリンデ。館内のKOS-MOS研究室では、研究員たちが慌しく働いていた。 KOS-MOS(以下、コスモスと呼ぶ)・・対グノーシスヒト型掃討兵器である彼女・・・。 その彼女を開発している部署の主任であるシオン=ウヅキは起動実験を始めた。 シオンは技術開発者としてのプライドと、主任としての立場。 そして、コスモスが兵器として使われることへ悲しさを持っていた。 「これより起動実験を開始します。インターコネクション、始めてください」 シオンは起動実験をするための装置に座った。 その起動実験とは、仮想空間にシオンを送りこみ、そこでコスモスのデータを取るというものだった。 「ゲージパーテイションを解放します。解放まであと60秒。59,58,57・・・。」 「各モニタリング正常。」 「パーテイション解放。コスモス、素体形態に入ります。」 597 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 50 24 ID cMIoi3AX シオンが仮想世界に入った。ただ少々視界が悪い。 「アレン君、視覚の接続状態が悪いみたいなんだけど・・・。」 「あぁ、すいません。ちょっと待ってください。今、補正します。どうです?主任。」 コスモス開発局副主任であるアレンが答えた。 アレンはシオンに淡い恋心を抱いていて、毎回のこの実験ではソワソワしている。 なぜかというと、この実験中に事故がおこると、シオンが仮想世界から帰ってこれなくなってしまうからだ。 世界が一瞬光に包まれ、コスモスが仮想世界に降り立った。 「おはよう、コスモス。調子はどう?」 「おはようございます、シオン。すべて非常に順調です。」 機械的な、無感情な返事が響く。 「せっかく起きてもらって悪いんだけど、今回も起動実験なの。一連のチェックを終了したら、 あなたにはまた眠ってもらうことになるわ。」 「そうですか」 「悲しいとか・・・感じる?」 その機械的な対応に少し寂しさを感じたのか、シオンは親しみを込めて話しかけた。 「私の寛恕言うプログラムは、創造主である人間が使いやすいように作られています。 今回の場合は、あなた・・・。すなわち、ヴェクター第一開発局、コスモス開発計画担当主幹技師、シオン=ウヅキとの 関係を円滑に保つために、「悲しい」という感情を表現する必要がある。と私のプログラムが判断した場合に限り、 そのように振舞います。ですが、現在、その必要はない。と判断します。」 「ははは・・・そうよね、それは私が一番知っていることなのよね。」 複雑な表情を浮かべた。 「ご理解いただけて幸いです。」 コスモスの機械的な言葉が仮想空間に響く。 シオンは、再度複雑な表情を浮かべた。 598 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 52 42 ID cMIoi3AX 今回の実験は、仮想世界におかれた仮想の敵を倒し、コスモスの戦闘データを取るというものだった。 「ねぇ、アレン君。今回は手順400を初めてみないかしら?」 「よ、400って、主任、先月のことを忘れたわけではないでしょう? あと10秒対応が遅れてたらそこから戻ってこれないような状態じゃなかったですか。」 シオンのことを心配するアレンは、声を荒げた。 「大丈夫、いざとなったら自力で脱出するから、それに、あなただって試したいでしょう? この実験のために、徹夜でいろいろ取り組んでたじゃない。」 「それはそうですが・・。」 「じゃ、決まり。始めて。」 シオンに興奮の色が隠せない。これから起こることに何かを期待しているかのように。 「知りませんよ?万が一の時にはこっちで強制的に切りますからね。」 「了解、了解。」 「あと、メニューにないことするのなしですよ?」 「わかってるってば。」 「んったく、気軽にいってくれちゃて。そのたびに寿命をちじめられるこっちの身にもなってほしいよ」 アレンは頭をかきむしりながら、シオンに聞こえないように、ぼやいた。 「副主任、ウヅキ主任のことになると、特に気を使われますからね。もう余命幾ばくもないんじゃないですか?」 研究員がアレンをからかった。皆、アレンの恋心に気づいているようだ。 「う、うるさい、余計なこといってないで、用意できてるのか?少しでも異常があったら、即刻強制終了するからな。」 手順400が始まった。状況は順調で、研究員たちも安堵の表情をうかべた。 「特に変わったことは見わたりません。状況、安定しています。こりゃあ行けますよ。先月の汚名、返上だ」 「だといいがな・・。」 不安げに、アレンがつぶやいた。 「コスモス、クリアポイントに到着。ターゲットモンスター、G型へ変換。表示、始めます。」 コスモスの前に、巨大なモンスターが現れた。コスモスが戦闘態勢に入る。 599 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 54 30 ID cMIoi3AX そのとき、プログラムに異常が発生した。コスモスの戦闘能力が過剰に上昇し、暴走しかけているのだ。 だが、シオンはそのような状況をものともしなかった。 「アレン君、これからターゲットとの戦闘態勢に入ります。データ取りよろしく。」 「そんな!?主任、こんな不安定な状況で戦闘なんて危険すぎます!」 アレンは声を荒げた。 「大丈夫、まだいけるわ。ヒルベルトを試します。」 「しゅ、主任、メニューに無い行為はしないって・・・!!」 シオンはその言葉を無視するかのように、コスモスに話しかけた。 「コスモス、ヒルベルト発動。」 「了解しました。ヒルベルトエフェクト発動します。」 プログラムが暴走し、シオンの脳が危険な状態になってきた。 アレンはプログラムを強制停止させ、シオンを引き戻そうとした。 だがしかし、シオンがそれを拒絶し、プログラムが作動しなかった。 「限界です!崩壊まであと10秒・・・。」 「クソったれ!」 アレンは悲痛ともとれる叫び声をあげた。 「主任・・・。・・・そうだ・・・。」 仮想空間にいるシオン。 彼女の前に、光が集まってきた。その光はやがて少女のような人影へと変わっていった。 少女はゆっくりと顔をあげ、シオンと視線を交わした。 そのとき、仮想空間へダイブしたアレンがシオンの手を掴み、仮想世界から引き戻した。 仮想空間は光に包まれていく・・・。 600 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 56 17 ID cMIoi3AX 「主任はっ!?」 目覚めたアレンは、シオンの元へ急いで駆けつけた。 「えぇ、ありがとう、少し、粘り過ぎちゃった・・かな?」 あの仮想空間で見た少女は何だったのか。シオンは夢見心地だった。 ・・・あの少女とは・・どこかで・・。 「??何かあったんですか?」 「ううん・・・何でもないの。さぁ、急いでデータ解析を始めましょう。そろそろ上から催促がくる頃だわ。」 「本艦は3分後にゲートアウトします。非常時に備えてください。」 突然、艦内アナウンスが鳴り響いた。 601 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02 58 04 ID cMIoi3AX 2 「全艦、ゲートアウト完了。」 「次のゲートジャンプができるまで7時間36分。それまでジャンプは不可能になります。」 「次で最後か・・・。」 艦長と思える人物が虚空を目上げた。目に落ち着きが無い。 「はい。次のゲートジャンプとなります。あと少しの辛抱です。」 艦長の横に立っている男が言った。 見た目は普通のマジメそうな30後半の男だ。その鋭い眼光を除いて。 「大丈夫ですよ。ここまでくれば接触率低いですし。それに小惑星も多いですから、”ヤツラ”から 身を隠すには都合が良いものです。」 「ふん、気楽なものだな。小惑星なぞ、気休め程度にしかならんぞ。」 男は、声を沈めオペレーターを睨んだ。 「厳しいな、アンドリュー中佐。何かあったのか?」 「いえ・・・別に・・・。」 アンドリューという名の男は下にうつむきいた。 「例の物体を回収してから緊張の連続でしたからね。中佐のお気持ち、わかります。」 その”例の物体”に疑問点を持っていたのか、一人のオペレーターが質問した。 「艦長、差し支えない範囲で結構なので教えていただけないでしょうか? 当初の作戦の目的は、惑星消滅事件の調和および調査隊の護衛であったはずです。 それが、”あの物体”を回収してから様相がいっぺんしたように感じられます。 いったいなんなのですか?あれは。」 「さて、調査隊からは何の報告は受け取らんよ。ただ、先日伝えた”ヤツら”もあの物体を狙っているらしい。 という情報だけはえている。もちろん非公式だがね。」 艦長は、私もよくわかっていない。という表情をしている。 「回収のさい、何名かの犠牲者が出たという噂がありますが。」 「それが事実だとしても、われわれに知る権利がない。もともと調査隊も我々とは別の命令系統で動いているし、 我々に与えられた命令書にも『当該宙域にて何らかの”回収物”が存在した場合、全ての事象よりもその確保を最優先す』 と書かれているだけだ。」 「全ての事象・・・といいますと?」 「我々の命よりも。というわけだ。」 アンドリューが言い捨てた。 「そう脅すな。まぁ、星団連邦政府にしても今回の任務はそれだけ重要な作戦ということだろう。 気を引き締めて頼むぞ。」 艦長が微笑みながら皆に言った。 「そうですね。本艦には”有事の際の切り札”も配備されていることですし。」 「おぉ、そうだ。切り札のことなんだが、すまんが中尉、ウヅキ主任に報告データが整い次第、 ブリッジに来るように伝えてくれ。それと、これまでのデータも提出するように・・と。」 「了解しました。」 602 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 00 04 ID cMIoi3AX 3 コスモス研究室に電話がかかってきた。 「・・・・了解しました。30分後にそちらに出頭します。」 「早速きましたね。出頭命令」 「でしょ?私の勘って、結構当たるんだから。」 シオンが得意気に答える。 「では、これは提出するデータです。」 「ありがとう。これだけでいいわ。」 最近入ったばかりの新人研究員がシオンに声をかけた。 「主任・・あの・・・よろしいですか?」 「なに?」 「軍はコスモスの実働データを求めています。いいのですか?いつまでもシミュレートデータだけで。」 「うーん、、それ言われると痛いんだけどね、、。でも、出来ることならコスモスには いつまでも素敵な夢を見ていてほしいんだ。」 シオンは困ったような表情をしている。目も下にうつむいている。 「シミュレートではあれほど無茶をされるのに、なぜ実働となるとあれほど慎重になるのですか? 自分はコスモスが稼動している姿が見たいのです。現状で十分いけるはずです。」 シオンの困った表情を見て、アレンが口を挟んだ。 シオンは、2年前の事故があってから、実働には慎重になっているのだ。 アレンはそのことを知っているし、何より、彼女の困った顔を見たくなかった。 「現状でわざわざお姫様を起こさす必要はないよ。はいこれ、コスモスの装備要項。 連中を納得させる一助にはなるでしょ? 「サンキュー。気が利くね。」 アレンの助け舟にありがたく思ったのか、シオンはアレンに微笑んだ。 「じゃ、いってきまーす。」 笑顔で研究室を出て行くシオン、それを見るアレンの顔は、どこから見てもほころんでいる。 「世話女房ぶりも板についてきたんじゃないですか?副主任。」 同僚のトガシがにやつきながら研究所の後片付けをしている。 「な、何にやついてるんだよ、トガシ。」 顔を赤らめながら、アレンはシオンのデスクの片付けを始めた。 そこには肝心のデータフォルダが忘れられておいてあった。 「はぁ、、またか・・しかたないな・・。」 だが、アレンは少し喜んだ。二人きりになる口実が出来たからだ。 その感情が顔に出たのか、トガシがからかう。 「よかったですね。二人きりになれる口実ができて。ついでに食事でも誘って見ちゃどうです? こっちは僕らでやっときますから。」 「行くとき行かなきゃ、ダメですよ、副主任。」 「そ、そんなつもりじゃないって言ってるだろう!じ、じゃ、ちょっと渡してくるよ。」 舌をかみながら、アレンは言った。 「がんばってー。」 同僚たち一同の声が聞こえる。アレンはその声を聞きながら研究室を出た。 彼は奥手だ。シオンのことは愛しているはずなのに、言うことができない。 そんな彼はぼやく。 「僕だって・・行けるもんなら、行きたいさ・・。」と。 603 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 01 52 ID cMIoi3AX 4 シオンはブリッジへの道を歩いていた。その途中にある格納庫。そこにはゾハルがあった。 彼女は格納庫を通りながら、考えていた。やはり、みんな稼動してるコスモスを見たいのか。 2年前の、彼もそういっていた・・・。 2年前のコスモス開発局 シオンは残って残業をしていた。あしたまでにまとめておくデータがあったからだ。 パソコンに向かう彼女の後ろに、男性の姿があった。 「まだ残っていたのかい?無理して体壊しちゃ、何にもならないぞ?」 微笑みながらシオンに話しかけた。手には手包みをぶらさげている。 「あ、お疲れ様です。明日までにどうしてもまとめておくデータがあったものですから。 ゲビン先輩こそ、こんな時間までどうなされたんですか?」 「はい、差し入れ。」 ケビンは彼女の横に手包みを置いた。そして、コスモスの眠っている特殊な装置のほうへ歩いていった。 シオンもその後に続く。何も警戒しないということは、彼女は彼に心を許しているということだろう。 ケビンはその装置を見ながら、つぶやいた。 「実は、ある悩み事があってね、寝付けないんだ。」 「悩み事?」 「明日、いよいよ彼女は目覚める。その姿を見るのはとても楽しみなんだけど。目覚めた彼女になんと声をかけたらいいのか それで悩んでいたんだ。おかしいだろう?」 「おはよう・・・でいいんじゃないですか?」 シオンは微笑んだ。そしてコスモスの眠っている装置を触った。 「おはようかい?」 「朝起きたら、やっぱりおはよう、ですよ。」 「そうか・・・これでぐっする眠れそうだよ。ありがとう。」 ケビンは彼女の肩に手を乗せ、微笑んだ。 ・・・・そうだよね。みんなも早く見たいよね・・・。 シオンは彼との会話を思い出ながら、ゾハルを見上げた。 その瞬間、鈴のような音が鳴り響くと同時に、シオン以外の周りすべてが動きを止めた。 静寂・・・その静寂の中に、再び鈴の音のような金属音が響く。 その音が鳴り響いている源に、彼女は仮想空間で見た少女を見つけ出した。 少女はシオンに何かを伝えようとしているようだが、彼女にはその言葉は届かない。 少女は話し終えると、ゾハルの中に吸い込まれていく。シオンはその後を追い、ゾハルに触れた。 するとゾハルの表面に、水面のように波紋が広がった。 シオンは気がついたら、ゾハルの前に倒れこんでいた。 シオンは手を眺める。ゾハルに触れたことは、幻だったのだろうか・・。 604 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 03 24 ID cMIoi3AX 5 さっきのことは何だったのだろうか?彼女は考え込んでいた。 後ろから声が聞こえる。聞いたような声だ。誰だろう。彼女は振り向いた。 「アレン君!?」 「アレン君、じゃないですよ主任。肝心のデータ忘れていったでしょ? 危ないですよ、ぼーっとしながら歩いてると。」 「うん、ごめんね、ちょっと考え事してたから。」 そのとき、再び鈴の音がした。彼女はあたりを見渡す。だが、少女の姿はない。 「どうかしましたか?主任。」 「ん?うん・・気のせいよね。きっと。」 シオンは気に留めず格納庫を後にした。 しかし、彼女の後ろには二人を見つめる少女の姿があった。 アレンに先ほどのコスモスの件について感謝を言っていると、彼女に突然呼び出しがなった。 レアリエンの調整の呼び出しだ。 レアリエン・・合成人間といわれる彼らは、人間が過酷な環境を克服し、人間のリスクを削減するために 人によって作られた亜人間。彼らは使い捨て可能な労働力として社会に浸透し、 人間によって消費されていた。すなわち、奴隷である。 奴隷としての立場は14年前のミルチア戦争まで続き、その後社会的な権利を有する存在となった。 だが、レアリエンは工業製品であるというのには変わりが無い。彼らは生産されるのである。消費されるために。 そのレアリエンも調整(ケア)される必要がある。自身の自意識が芽生えたり、精神が不安定になることがある。 それをケアするのが、シオンは好きだった。なぜかというと、不安定なままのレアリエンは、廃棄されるからだ。 605 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 05 15 ID cMIoi3AX 6 シオンはレアリエン調整室へと向かった。 「どうも、シオンです。」 「あぁ、どうもウヅキさん、すみません、いつもいつも。」 人のよさそうで、髪をオールバックにしたカスパーゼが話しかけてきた。 目には疲れの色が浮かんでいる。人員不足だろう。 「いいんですよ、カスパーゼ大尉。みんな(レアリエン)にはいつも元気でいてほしいから・・。」 カスパーゼはシオンに今回のトラブルを話した。シオンは着々とトラブルを解決していく。 「一応調整しておきましたけど、また何かありましたらヴェクター本社までご連絡ください。 そちらで本格的なケアをされたほうが良いと思いますから」 「わかりました。ありがとうございます。 しかし、すごいですね。コスモスの開発だけでなく、レアリエンたちのメンタルケアまでこなすとは・・・。」 「そんな、全部上司の受け売りです。それに、私は最初、この部署が志望だったんです。 実は、今の仕事が終わったらこっちに転属願いを出そうかと思っているんですよ。」 シオンは眠っているレアリエンを見つめた。その表情は、眠っている我が子を見る表情に似ている。 「第一開発局は、エリート中のエリートが配属されるところでしょう?それなのに転属願いなのですか?」 「ええ、家族からもよく言われるんですよ。何かの書類ミスに違いない。ってよく言われますし。 私もそう思います。それに、、彼らのこと、もっと知りたいんですよ。」 「そんな連中のことを知る必要もなかろう!?」 声の方向に振り返ると、眼光の鋭い金髪の男がいた。 背が高く、物腰が明らかに軍人と思わせる。彼の顔右頬の皮膚は、色が変わり、硬くなっている。やけどのように・・。 「バージル中尉!?」 カスパーゼが、この突然の来訪客に驚いたようだ。声の調子からも、あまり好ましい客ではないらしい。 「匂いだ・・この匂い。なぁ、あんたも感じないか、この匂い。吐き気を催す匂いだ・・。」 バージルはまるで汚い物を見るかのように、あたりを見回した。 シオンは絶句している。言葉も出ない。 606 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 06 21 ID cMIoi3AX バージルは毎回来ては、何かとレアリエンを罵っているのだろう。 カスパーゼは、声を荒げ、バージルに食って掛かった。 「いい加減にしないか!少佐から事前に指示はあったろう?今回の作戦はA.G.W.Sと 新型レアリエンとの相互支援も目的としているんじゃなかったのか?それをお前は・・・。」 「相互支援だ!?はん!ヤツら相手に、実戦で使える保障なんてない、 ”戦闘用レアリエン”との相互支援なんざ、俺は願い下げだぜ!」 「お言葉ですけど・・・彼ら戦闘用レアリエンは優秀な兵士・・・。」 正気を取り戻したシオンも、バージルへ反論した。 「彼らぁ?たかが備品を人間扱いかい。」 シオンの抗議も、バージルは聞く耳をもたない。 「あ、それ問題発言ですよ。彼らは私たちと同様、知性も感情も備わっているし、 それにレアリエンの基本的人権は4763年に制定されたミルチア懸賞で謳われているはずです。」 「お為ごかしか。反吐が出るぜ。表面上いくら人道主義とっても、お前たちヴェクターの人間にとっちゃ 備品は備品だろうに。否、”商品”か」 バージルは小バカにするようにシオンを見つめた。 「私たちは彼らを備品扱いも、商品扱いもしてません!」 「ならなぜ、”戦闘用レアリエン”なんて、分類ワケがされているんだ? それこそ商品扱いしてる証だろう?何をいったところで所詮は戦の道具。それに知っているぜ。 お前たちヴェクターの人間たちは、”商品管理用の緊急制御コード”があるってな。」 シオンは絶句した。確かに・・ある・・。だが、それは・・・。 そのとき、レアリエンの一人が立ち上がり、バージルを見つめた。 「な、何だよ?」 バージルも突然のレアリエンの行動に驚いたのか、たじろいだ。 「中尉のおっしゃるとおり、確かに我々は”商品”として製造され、そのための教育を施されました。 ですが、私は今のこの”仕事に”誇りを持っています。 それは誰にも強制されない”私自信の意志”なのです」 607 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 09 20 ID cMIoi3AX 以下、余談 すいません、余談です、読み飛ばしていただいても結構です。 このゲームの副題が、力への意思。知ってる人は知ってると思いますが、これはニーチェの本です。 ドイツの哲学者である、フリードリヒ・ニーチェ。 彼は自分自身でたっている人間こそがもっとも美しく、すばらしい人間と考え、 キリスト教を弱者の宗教と言い、「神は死んだ。」という、有名な言葉も残っています。 たぶんこのゲームの作者はレアリエンという人ではない生物をポイントとして、ニーチェ哲学を語ってみたかったのではないでしょうか。 このレアリエンのセリフでもある”私自身の意思”という言葉。人間は弱い存在で、その弱い存在を認めた上で、 自分は過去にも、未来にも存在してはいない。現在にも自分と同じ人は一人もいないし、これからもいない。 「何か。」を成すためにこの世に連れてこられたと、考えた・・はずです。 だからニーチェは、自分の意思で、その目標への苦難の旅へと向かっている人の、なんて美しいことか!とも言っています。 これが俺自身へのニーチェの全体的な感想です。といっても、ニーチェの著者では、私は若き人々への言葉、力への意思しか読んでませんし、 まったくのど素人の解釈ですから、鵜呑みにすると困ります。たぶん解釈も間違ってる気もしますし・・・。 余談が長引きました。本編の続きを書きます。失礼しました。 608 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 14 52 ID cMIoi3AX 「ふん、自由意志ってわけか・・。まあいい、今のうちに享受しておけ。 そのうちわかるときがくるさ。この俺のようにな・・・。」 そう言い捨て、バージルは調整室を出て行った。 「すみませんでした、ウヅキさん。昔はあんな奴じゃなかったのですが、あることがきっかけで・・・ね。」 カスパーゼは申し訳なさそうな顔をして、頭を下げた。 「いえ・・彼とは、お知り合い・・何ですか?」 「あいつとは士官学校の同期でね。腐れ縁ってやつです。・・・ミルチアです。」 「そうですか、それで・・・。あ、いけない。ブリッジに出頭しなければならないのです。 それでは失礼します。レアリエンたちはまた後で見ますから。」 「いや、どうもありがとうございます。すいません、嫌な思いを・・。」 そう言い、再びカスパーゼは頭を下げた。 7 「すいません、遅れてしまって。」 「10分の遅刻ですね。通りで開発も遅れるわけだ。」 アンドリューが、シオンをにらみながら言った。そして、それからアンドリューのシオンに対しての説教が始まった。 コスモスの稼動データがないこと、ここが軍艦であるということに自覚がないシオンに苛立ったのであろう。 途中で、アンドリューに呼び出しがあった。顔が緊張した表情に変わり、そそくさと退室していった。 「ご期待にそえなくて申し訳ありません。」 シオンは艦長に謝った。 「なに、謝ることはないよ。今日は自室に戻って休みなさい。」 609 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 17 49 ID cMIoi3AX 8 アンドリューは、焦っていた。まさか、いきなり呼び出しがあるとは思ってもいなかったからだ。 急ぎ足で通信室に行き、通信をつなげた。画面に、顔が映った。司令の顔だ。 右目の上から下にかけての切り傷、冷たい目。 「失態だな・・・。アンドリュー。回収には細心の注意を払えと前もって忠告してあった筈だ。」 「はい、”機関員”に犠牲者が出たことは弁解の余地がありません。ですが、我々も・・・。」 アンドリューは苦い顔をした。機関員に犠牲者が出たのは明らかな失態で、弁解の余地がないからだ。 このことを攻められると思い、下をうつむいた。 「些末な事象など、どうでもよい。問題なのはゾハルに人が接触し、人が”消えた”ということ。 そしてその後、”通常空間に晒した状態”で移送していることだ。そして・・・。 貴様の艦隊にヤツラが接触する推定予測時間は5時間と22分後だ。」 「まさか!?やつらが!?」 驚きを通り越して絶句した。奴らがきたとしたら、このような艦隊では耐えられるわけがないのだからだ。 「だから失態といった。1時間前に増設艦隊を差し向けた。それまでの間、なんとしても保たせろ。」 「ま、間に合うのですか?」 「保たせろ。といっている。幸いにして、貴様の艦には”例の兵器”が搭載されているだろう。」 「お、お言葉ですが、あれはまだ実働試験にさえ写ってないのです!危険すぎます!」 「あれの力は、”貴様が一番良く知っている”だろう?多少不安定でもかまわん。急がせろ。」 「で、ですが・・・。」 「以上だ。」 通信が切れる。 「お待ちください、司令!マーグリス司令!」 610 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03 19 20 ID cMIoi3AX 9 自室に戻り、休んだシオンは夢を見た。 遺跡のような場所にたつシオン。あたりには霧が立ち込めている。 鈴の音が静寂を破る。音のした方を見ると、そこにはあの少女の姿が・・・。 二人は視線を交わすが、少女はふと別の方向に目を向ける。 少女の視線の先には、少年のような人影があった。 「う、、うん・・・。」 夢にうなされるシオン。そのシオンの枕元に立つ少女。 そして少女は何かに気づいたかのように、船の外に目を向ける。 32 名無しさん@お腹いっぱい。 sage2005/03/24(木)01 24 31ID 9P5lIrk+ ゼノサーガep1、行きます。 文章構成上、ストーリー展開が前後したり、 結構話に絡んでるのに文中に出てこないキャラ(アレン、キルシュバ等)が いたりしますが、ご容赦下さい。 33 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 25 18 ID 9P5lIrk+ 星団連邦に所属する惑星アリアドネが、突如として謎の消失を遂げた。 その調査に赴いた巡洋艦ヴォークリンデは、本来の目的である調査もそこそこに、 当該宙域に浮遊していた謎の物体ゾハルエミュレーターを収容し、帰還することになった。 その収容作業中、ゾハルに触れた作業員が消滅すると言う事故が起こっていた。 この巡洋艦ヴォークリンデには、14年前より突如として現れ人類の脅威となった、 グノーシスと言う怪物群に対抗する為のヒト型アンドロイド、コスモスが配備されていた。 しかしながらそのコスモスは、未だ実働試験すら行われておらず、 仮想空間(エンセフェロン)におけるテストをしている段階であった。 ヴェクターインダストリー1局所属のシオン・ウヅキは、そのコスモスの開発主任だ。 彼女は、コスモスに対して、母親や姉のような感情を持っていたが、一方で恐れてもいた。 数年前の実験中、コスモスが暴走し、同僚や愛する人を殺されてしまったからだ。 そのせいか、シオンは実働試験に対して二の足を踏んでいる状態だった。 対グノーシスの切り札として配備されたコスモスが、起き上がる事すら出来ない。 調査に同行した軍関係者からは、その事を毎日のように責められていた。 この日も、試験を終えたシオンは、ブリッヂから呼び出しを受け、開発室を出た。 ブリッヂへ向かう途上、ゾハル格納庫を通った彼女は、そこで少女の幻影を見た。 少女は、何か言いたげな、哀しみを裡に秘めた表情でシオンを見つめていた。 シオンが歩み寄ると少女の幻影は消え、そこには金色に光るゾハルがあるだけだった。 不思議な感覚に囚われながらも、彼女はレアリエン調整室へ向かった。 レアリエン。それは、様々な用途に応じて造られた人造人間のことだ。 シオンは、このレアリエンとの交流を好み、エリート中のエリートが集まる1局から、 レアリエンを扱う3局に転属願いを出しているほどだった。 彼女がレアリエンの調整を手伝っていると、バージルと言う中尉が現れた。 彼はレアリエンを極度に嫌っており、この時も居丈高に見下し、罵った。 現在、レアリエンには人権が認められていると反論するシオンだったが、 それを商品としている事を指摘されると、彼女は言葉を詰まらせた。 「お為ごかしは反吐が出る」そう吐き捨て、中尉は立ち去った。 いい加減寄り道が過ぎたので、かなり遅刻してブリッヂに着いたシオン。 アンドリュー中佐は、それも含めて毎度の如くネチネチと小言を繰り返すが、 緊急呼び出しの通信が入ったため途中で切り上げ、ブリッジを出て行った。 運良く開放されたシオンは、艦長に労われ、自室で休む事にした。 アンドリュー中佐は、画面の向こうのマーグリスに叱責されていた。 U-TIC機関。ゾハル研究の為に創設された政府直属の機関であったが、14年前の ミルチア紛争を機に、反政府武装集団の色を強め、各方面に工作員を潜入させていた。 マーグリスはそのU-TIC機関の司令であり、アンドリューは工作員の一人だった。 惑星アリアドネの消失も、この組織がゾハルの起動実験をその地で行った結果であり、 調査隊が事件の調査もそこそこに帰還したのも、連邦軍に潜入していたアンドリュー達 の目的が、ゾハルの回収であったからなのだ。 ゾハル。それは、局所事象変異を引き起こし、グノーシスを呼び寄せる。 その危険性から、それを確保して封印しようとする者と、兵力として利用しようとする 者との間で激しい争奪戦が繰り広げられていた。 この非常に危険な物体の取り扱いには、細心にも細心を重ねた注意が必要だった。 しかし、アンドリューたちはその扱いを間違った。 ヴォークリンデには、すでにグノーシスが迫ろうとしていたのだ。 コスモスを使え。その命令に狼狽する中佐を無視し、マーグリスは通信を切った。 34 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 26 16 ID 9P5lIrk+ ブリッヂに警報が鳴り響いた。艦隊前方にグノーシスが出現したのだ。 母船タイプのグノーシスから射出された怪物たちが、次々と艦内に侵入してくる。 対グノーシス用兵器エイグスが出撃するが、通常兵器の効果は無く、撃破されてゆく。 グノーシスに掴まれた人間は白化し、砕け散った。 有効な対抗手段も無いまま、ついにヴォークリンデのブリッヂが沈黙した。 アンドリュー中佐は、宇宙服を着込み、ゾハル格納庫へ向かっていた。 格納庫ごとパージし、ワープさせる。無謀な作戦だったが、中佐にとっては、 コスモスを起動させるよりも遥かにマシな作戦だった。 なぜならば、中佐も、コスモスの暴走事故に立ち会っており、その恐ろしさを 身をもって知っていたからだ。 そもそも、実験中のコスモスを起動させたのも、彼らだった。 コスモスの強奪を目論み、内通者から起動用ギアを受け取ってラボを襲撃した彼らは、 しかしコスモスの暴走により惨殺され、唯一アンドリューだけが生き残った。 今、中佐は死を覚悟しながら、格納庫に向かっていた。 その中佐の覚悟も、無駄となりそうだった。コスモスが自律モードで起動を始めたのだ。 開発室のメンバーが恐怖で凍りつく中、ゆっくりと身を起したコスモスは、シオンを 保護するために動き出した。 その頃シオンは、グノーシスに追われた所をエイグスに乗ったバージルに助けられていた。 しかし彼の攻撃は効果が無く、逆に反撃を受け仲間を失ってしまった。 なにか手段が無いものかと考えた彼は、シオンの携帯端末を奪い、レアリエンを 自爆させる緊急制御コードを起動させた。 爆風が晴れると、彼は歯噛みした。仕留め切れなかったのだ。 反撃を受け、倒れこむバージル。そして、グノーシスはシオンに襲い掛かった。 足元から白化してゆくシオン。彼女が死を覚悟した時、閃光がグノーシスを貫いた。 コスモスの攻撃だった。グノーシスを実数空間に固着するヒルベルトエフェクトを展開 した彼女は、その圧倒的な戦闘能力でグノーシスを掃討した。 ゾハルの格納庫では、アンドリュー中佐が必死で乱れたシステムと格闘していた。 そこへ、脱出艇に乗るためにシオンたちが駆け込んできた。 グノーシスは途切れなく襲い掛かり、抗戦を続けるシオンたち。その中で、 コスモスがバージルごと敵を撃った。バージル、「フェブ…」とうわ言を言いながら即死。 シオンは、コスモスの非道な行動に怒りを露わにしたが、コスモスのプログラムでは、 ヴェクター関係者の保護>敵勢力の殲滅>>>>>それ以外の人間の保護であったため、 コスモスはそのプログラム通り、確実な方法を選択しただけなのだ。 「私は人間ではありません。ただの兵器です」 その言葉にショックを受けるシオンは、鬱然として脱出艇に乗り込んだ。 シオンたちと中佐の乗った脱出艇を見送ったコスモスは、もう一つの目的である ゾハルの確保の為、周辺に群がるグノーシスを除去しようとした。 しかし、いかにも多勢に無勢であり、結局はゾハルを持ち去られてしまう。 彼女はゾハルが収容されたグノーシス母船にマーキングを施し、その事を本社に報告、 次の司令を受け、第二ミルチアへ向かう事とした。 ヴェクターCEOのヴィルヘルムは、赤の外套者からその報告を受けていた。 「全ての事象は、この 秩序の羅針盤 の示すとおりに動く……」 そう、彼はつぶやき、デスクの上の構造物に目をやった。 35 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 27 52 ID 9P5lIrk+ クーカイ・ファウンデーション所属の不定期貨客船エルザが、ヴォークリンデの 遭難現場に向かっていた。だが、目的は救助ではない。艦の残骸を回収し、 それを売って船長の借金返済の足しにするためだ。 そんなエルザに、コスモスが襲い掛かった。キャノピーにパンチでヒビを入れられ、 第二ミルチアまで乗せてけと脅迫された船長はしぶしぶ承諾した。 ブリッヂにコスモスが入ってくると、脱出艇で漂流していたシオンから通信が入った。 エルザに収容しろと言うシオン。そのまま漂流していれば助けが来ると言うコスモス。 二人が押し問答していると、エルザの乗組員ケイオスが仲裁に入った。 彼は船長の信頼も篤く、その彼の取り成しでシオンたちもエルザに収容され、 第二ミルチアへ向かう事になった。 収容された後、ブリッヂへと挨拶に訪れたシオンたち。そこへ、グノーシスが現れた。 アンドリューが掴まれ、白化して行く。慌てふためくシオンたち。だが、ケイオスが グノーシスに手をかざすと、グノーシスは霧のように消えてしまった。 これが、ケイオスが船長に信頼されている理由だった。 騒ぎが落ち着いた頃、そのケイオスが、ヴォークリンデでの戦闘で不具合が出たため エルザの設備で調整をしていたコスモスに近づいていった。 機能を停止して眠っているコスモスに、彼はそっと呟いた。 「やっと会えたね……本当の君はどこに眠っているんだい……?」 プロジェクト・ゾハル。ゾハルの研究を進める事により、全ての事象を論理的に解明し、 また、人類の悲願であるロスト・エルサレム(地球)への帰還を目的とした研究である。 そのプロジェクトを推進する接触小委員会の会議が、連邦主星フィフス・エルサレムの 衛星軌道上のコロニーで開かれていた。 オリジナル・ゾハルが眠る、閉ざされた旧ミルチアへの道。その道を開くための鍵となる Y資料がU-TIC機関に奪われた。 U-TIC機関の責任者であり、彼以外にゾハルを解明する事は不可能とさえ言われた 天才ヨアキム・ミズラヒ。彼が遺したY資料なくしてもまた、ゾハルの研究は進まない。 その奪還の為、U-TIC機関の拠点への潜入を命令されたのは、ジグラット8と言う 型式番号のついたサイボーグだった。彼が見せられたのは一人の少女の写真。 百式観測用レアリエン。ヨアキムの最後の発明であり、対グノーシス用の索敵能力と ヒルベルトエフェクト展開能力を付与されたレアリエンだ。 百式は、彼と、その元妻であり現接触小委員会委員であるユリ・ミズラヒの亡児サクラを モデルとして創られ、そのプロトタイプであるモモには、Y資料が封印されていた。 成功の報酬として、ジグラット8は、自らの生体脳を人工部品に換装する事を望んだ。 彼は生前、ある男に妻子を殺され、それを苦に自殺を遂げていた。 サイボーグとして蘇ってからも、その記憶が彼を苦しめ続けていたのだ。 小惑星プレロマ。古代宗教の聖堂だったこの場所に、U-TIC機関は拠点を構えていた。 そこへ潜入し、モモを見つけ出したジグラット8は、モモに「ジギー」などと愛称を つけられたり、マーグリスと一戦交えたりしながら脱出。作戦を成功させた。 追っ手を撒いた後、モモは早速フィフス・エルサレムへ船を向けようとした。 だがユリの指令では移送先は第二ミルチアとなっていた。その事をジギーから告げられ ると、モモは寂しそうな顔をした。彼女は「ママ」に会うのを楽しみにしていたのだ。 その頃エルザではシオン特製のカレーが振舞われ、皆、ひと時の休息を取っていた。 そんな中、アンドリュー中佐は、未だ機能を停止したままのコスモスに見入っていた。 彼女に銃を向けるが、恐怖で手が震え撃つ事ができなかった。 36 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 28 44 ID 9P5lIrk+ シオンは、本社への連絡の中で、局長に対して声を張り上げた。 第二ミルチア到着後、コスモスを2局に引き渡すと言われたのだ。 シオンは、コスモスが何の命令も無く独自に稼動しており、実戦配備は時期尚早と説明、 コスモスの監察を続ける事を局長に認めさせた。 エルザが第二ミルチアへ向けてハイパースペース内を航行していた時、同じくジギー達も その中にいた。しかも、U-TICの無人兵器に張り付かれている状態だった。 ジギー達からエルザに向けて救難信号が発せられた。 初めは日和見を決め込んでいた船長だったが、エルザが被害を受けるや一変、 ジギーたちを援護して敵勢力を掃討、彼らを船内に収容した。 落ち着いた所で話を聞くと、ジギー達も第二ミルチアに行くというので相乗りする事に。 だが、先の戦闘でダメージを受けた船を修復する為、まず手近なコロニーに向かった。 その途上、アンドリューはプレロマに通信を入れていた。百式を確保したと。 だが、マーグリスは帰還命令を伝えただけで、早々に通信を切った。 そのマーグリスの下に、謎の男アルベドが現れた。彼はモモを連れ戻すと言い残し、 狂ったような笑い声を上げながら立ち去った。 「……モモ…か……。可愛いペシェめ……」 マーグリスの副官ペレグリーは、アルベドに任せることの危惧を口にしたが、 利用価値はあると、マーグリスは言う。目的は違うが、必要な物は同じなのだと。 惑星アリアドネのあった座標に、クーカイ・ファウンデーションの武装艦デュランダルが 停泊している。この宙域の調査をするためだ。 クーカイ・ファウンデーション。14年前のミルチア紛争の事後処理の為に設立された、 財団法人である。紛争後の武力衝突に対抗するために備えた武装は、連邦艦隊にも 匹敵するとまで言われているが、現在は副業として始めた事業展開を中心としている。 しかしながら、ゾハル・エミュレーターの回収もその役割としている為、ゾハルの影響と 思われるアリアドネ消失事件の調査に赴いたのだった。 ファウンデーション理事ガイナン・クーカイの養子であり、副理事でもあるJr.は、 現場を見て唖然とした。そこに惑星があったと言うあらゆる痕跡がなくなっていたのだ。 さらに調査を進めるため、次に彼らは、ヴォークリンデの遭難現場に向かった。 そこでようやく、ゾハルの残滓を発見する事が出来た彼らだったが、現場に潜伏していた U-TICの戦艦から攻撃を受けてしまう。 反撃に転じ、戦艦内部を制圧。U-TICの情報を得るために艦のマザーフレームに アクセスしたJr.だったが、敵残存勢力に阻まれ、結局徒労に終わった。 一方その頃、シオンたちを乗せたエルザは、ドックコロニーに入渠していた。 修理が終わるまで、船外へ出て休息を取る一行。しかし、このドックコロニーは、 ミルチア紛争の頃から軍関係者への反感が根強く残っている場所だった。 住民の話から、地元の青年達にアンドリュー中佐が連れて行かれたと知り、後を追った シオン達は、人間業とは思えぬほど無残に惨殺されている青年達を発見した。 一方の中佐は既にエルザに戻り、傷の手当てを受けていた。 結局、事件はうやむやのまま、エルザはコロニーを離れた。 この一件以来、中佐に変調が表われ始めた。人知れず体を苦痛に悶えさせ、その度に 薬剤を注射して抑える。彼の脳裏に、エルザでグノーシスに襲われた時の記憶が フラッシュバックする。彼の発作は時間を追うごとに悪化しているようだった。 シオンは夢を見ていた。ヴォークリンデで見た幻影の少女が、彼女に語りかける。 「彼の最後の気持ちを理解できるのは貴方だけ。それが彼の安らぎ……」 37 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 29 41 ID 9P5lIrk+ 不可解な夢から目覚めたシオンは、突然の振動に襲われた。 エルザが、ハイパースペース外から干渉を受け、引き寄せられていたのだ。 通常空間に引きずりだされたエルザは、周囲を莫大な数のグノーシスに囲まれていた。 さらに引き寄せられたエルザは、巨大なグノーシスに飲み込まれていった。 この異変は、デュランダルも察知していた。艦内に保管されている11機のゾハル・ エミュレーターが共鳴を始めたのだ。デュランダルは、波動の発生元へと急行した。 気がつくと、シオン達は生身でグノーシス内部に放り出されていた。 はぐれてしまったエルザと中佐を探すために移動を始めた彼女達は、その途上、明らかに 人工的な看板や、自動車の残骸を発見した。 シオン達とはぐれ、一人さまよっていた中佐は、それらに見覚えがあった。 そこは、彼らがゾハルの実験をしたアリアドネの市街そのままだった。 悪夢を見ているような気持ちで彼はさまよい続けた。 グノーシスの中心部まで到達したシオン達は、そこでゾハルと、前後不覚になった中佐を 発見した。中佐は、ゾハルを背にするとグノーシスと化した。 「同じだ……あの時と……」ジギーが呟いた。 襲い掛かる中佐を、やむを得ず撃退したシオン達。 中佐が断末魔の叫びを上げる中、シオンは彼の心に触れていた。 戦争の道具としてこの世に生を受けた彼は、戦後の社会に適応できなかった。 社会に受け入れられない孤独から、彼は凶悪犯罪を重ね、その度に人格矯正処置を受けた。 そして最後には収容所の職員と連邦軍三個小隊を一人で壊滅させてしまった。 そこでマーグリスに拾われた彼は、マーグリスの信頼を受け心酔し、忠実な部下となった。 今、彼は虚無の浜辺に佇み、安らいだ顔をしていた。 「ここは良い…、怒りも悲しみも、喜びも未来も…俺以外のものは何も存在しない……。 その俺自身もやがて消える…。……シオン、遠からずお前もここに来る……きっと……」 そう言って、彼は消えていった。 アンドリュー中佐を殺してしまった事にショックを受けるシオン。 だが、感傷に浸る間もなく、その場所が崩壊を始めた。 逃げ出したシオン達は、エルザに救出され、その場を離脱した。 グノーシスの包囲網を抜けようと全力で航行するエルザ。それを、駆けつけた デュランダルが援護する。しかし、そのデュランダルも包囲されつつあった。 その時、コスモスがたった一人で船外へ出ようとしていた。 無謀だと止めようとするシオン。だが、コスモスはそれを聞き入れなかった。 「シオン、痛みは……私を満たしてくれますか……?」 今まさに迫らんとしているグノーシス群の前に立ちはだかったコスモス。 腹部から拡散ビームを発射し、一瞬のうちにグノーシスを吸収してしまった。 自分の知らない兵装が搭載されている事に呆然とするシオン。 「ケヴィン先輩……これが貴方の望んだ、本当のコスモスの姿なんですか……?」 彼女の戸惑いをよそに、エルザとゾハル・エミュレーターはデュランダルに収容された。 そして、エルザの補修の為、一行はクーカイ・ファウンデーションに帰港する事になった。 ワープするデュランダル。その後姿を、シメオンに乗ったアルベドが見ていた。 38 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 30 23 ID 9P5lIrk+ デュランダル内の隔離格納庫。そこに、シオン達は案内された。そこには、ゾハル・ エミュレーターが保管されていた。さらには、グノーシス変容体となり生命活動を 停止した人達も。グノーシスに接触された人間は、ほぼ例外なく変容体となる。 シオンはヴォークリンデでの出来事とアンドリューの最期を思い出し、背筋を凍らせた。 一方モモは、そのグノーシスをこの世界に呼び寄せた元凶が、当時U-TICに所属し、 ゾハル研究の途上で暴走したヨアキム・ミズラヒである事を知り、ショックを受けた。 彼女にとってヨアキムは、自分の誕生を心待ちにしてくれていた優しい「パパ」であり、 世間一般が評価する「狂人」とは程遠いものだったからだ。 暗く俯くモモ。しかしシオンは、ヨアキムの全てが否定される訳ではないとモモを慰めた。 ファウンデーションに入港するデュランダル。Jr.と良く似た理事がシオン達を迎える。 彼、ガイナンは、シオンに奇妙な感覚を覚え、執務室に戻った後、Jr.にそう告げた。 プロジェクト・ゾハル。その最重要機密であるコスモスの開発に携わるシオンが、 何らかの特殊な素質を持っているのではないか。ガイナンはそう考えたのだ。 プレロマ。マーグリスが、セラーズと言う男と通信している。 U.M.N.。その非局所性を利用して、全宇宙を時間的空間的束縛に囚われず結ぶ ネットワークシステム。その特性により、現在のワープ航法が可能となっている。 オリジナル・ゾハルの眠る旧ミルチアは、14年前の紛争時にU.M.Nの転移コードが 消失しており、Y資料にはそのコードが記録されている。 「いずれにせよ 総帥 をお待たせする訳にはいかん。プラン401を発動する」 マーグリスは、強攻策をとる決断をした。 その事は、アルベドにも伝えられた。 「場合によっては、ネピリムの歌声……使うやも知れん」 その言葉に、アルベドは笑い声で答えた。 デュランダル。先ほどイヤな話を聞かせたお詫びにと、Jr.がモモにペンダントを贈る。 二人の間に、気恥ずかしい空気が漂ったその時、衝撃が彼らを襲った。 ファウンデーションが、連邦艦隊に包囲されていたのだ。 連邦政府議会では、先のヴォークリンデ遭難が、デュランダルの攻撃によるものだとして、 ファウンデーションの強制捜査、及び既得権益の剥奪が議論されていた。 政府内に入り込んだU-TICの工作であった。証拠として、デュランダルがヴォーク リンデを攻撃する映像が映されたが、それは、U-TIC戦艦と戦った時の映像を たくみに合成したものであった。 デュランダル内に入り込んできた連邦兵士に拘束されるシオン達。だが、その兵士達は、 ファウンデーションと繋がりのある政府関係者が送り込んだ者達だった。 彼らの手引きを受け、シオン達は、嫌疑を晴らすために行動を始めた。 ヴォークリンデでの戦闘を記録しているコスモスのメモリーを回収し、反論の材料とする。 そのために彼女達は、コスモスのメモリー内にエンセフェロンダイブした。 39 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 31 06 ID 9P5lIrk+ 気がつくと、Jr.は銃弾の飛び交う戦場に立っていた。彼は、そこがどこか知っていた。 14年前のミルチア。彼と同じ顔をした少年達が、銃を乱射し虐殺を行っている。 彼は、悪夢を見ている気分になりながら、そばにいたモモに話し始めた。 Jr.やガイナン、アルベドは、U.R.T.V.と呼ばれる生体兵器だった。 彼らは、U.M.N.のオペレーションシステムであり、局所事象変異の源である ウ・ドゥに対する反存在として生み出された。 14年前、彼らは暴走したウ・ドゥを抑える作戦に就いていたが、U.R.T.V.達の 精神リンクの中心であったJr.は、ウ・ドゥに恐怖し、リンクを拒絶してしまった。 結果、Jr.とガイナンを除いた者たちはウ・ドゥに汚染され、暴走を始めたのだ。 この時の事を、彼は今でもトラウマとして心の裡に持っていたのだ。 気がつくと、シオンは14年前のミルチアの公園に居た。幼いシオンが、父に連れられて 行く。彼女が、父と過ごした最後の日の記憶だった。 重篤神経症治療施設。そこにシオンの母は入院していた。そして、そこで悲劇が起こった。 しかし、それはシオンとって心の奥にしまい込んだ、思い出したくない記憶だった。 気がつくと、シオン達は古びた教会に居た。祭壇の前に立つレアリエンを見て、シオンは、 再びトラウマを思い出した。フェブロニア。彼女が無残に食い殺される様を、シオンは 目の前で見ていた。 フェブロニアに促され、奥へ進んだシオン達は、幻影の少女ネピリムと出会った。 虚数世界と現実世界の狭間に住み、現実世界には僅かな時間しか干渉できない彼女達は、 その僅かな時間を使い、シオン達を導き、この仮想空間で会える時を待っていたのだ。 シオン達は、未来のビジョンを見せられた。くびきを離れ、暴走するウ・ドゥ。そして、 それに対抗する、本来の姿となったコスモス。二者の激突は銀河をも消滅させる。 しかし、未来は変えられる、シオン達に変えてほしい。ネピリムはそう言う。 グノーシスに触れられながら、グノーシス化しないシオンにはその力がある。 だが、心に弱さを持つ彼女達に、過去のトラウマを乗り越える強さを持って貰いたかった。 ネピリムが、シオンとJr.に過去を追体験させたのは、その為だったのだ。 別れ際、フェブロニアがもう一つ、彼女達に願いを託した。 フェブロニアの二人の妹、セシリーとキャス。ゾハル制御の媒体として、旧ミルチアで 今も呪縛に囚われている彼女達を開放して欲しい。フェブロニアはそう訴えた。 「ミルチアへ行けば全て分かるわ……」 ネピリムが最後にそう言って、彼女達は消えた。 エンセフェロン最奥部でコスモスの記録を回収したシオン達は、現実世界へ戻って行った。 その中で、ネピリムがケイオスに語りかけた。 「本当にこれで良かったの……? もう後戻りはできないのよ……?」 「分かってる……でも、 彼女 にはシオンが必要なんだ……」 シオン達の持ち帰った記録は議会で審議にかけられ、デュランダルの嫌疑は晴れた。 その事をマーグリスはアルベドに伝えた。ネピリムの歌声を使う時が来た、と。 40 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 31 56 ID 9P5lIrk+ ファウンデーションが艦隊と共に第二ミルチア上空まで達したとき、ケイオスが、 狼狽えて叫んだ。歌声が聞こえたのだ。その歌声は、グノーシスを引き寄せ、聞く者を 狂わせる。14年前のミルチア紛争でも、この歌声が人々を狂気へと駆り立てた。 歌声は、ヴェクターCEOのヴィルヘルムの元にも届いていた。 「……始まったね……」彼はそう呟いた。 そして、ファウンデーションがグノーシスに包囲され、市街地が襲撃を受けた。 迎撃態勢を取った連邦艦隊も、アルベドのシメオンによって壊滅させられていく。 混乱を極める市街地に飛び出し、住民の避難と敵の掃討にシオン達が奔走する中、 モモがアルベドに連れ去られ、その居城であるネピリムの歌声に囚われた。 ネピリムの歌声。元はヨアキムの研究施設であり、14年前はミルチアにあった物だ。 シオンも、当時母親の病室から見たことがあった。 それが、アルベドの手によってこの宙域まで持ち込まれていた。 モモの助けを求める声を感じ取ったJr.は、すぐさまシオン達と共に歌声へ向かった。 哄笑をもって彼らを出迎えるアルベド。14年の時を経て自らの分身と対峙したとき、 Jr.は冷静ではいられなかった。 激昂するJr.を挑発しながら、アルベドはモモの意識を侵食して行った。 最後のプロテクトに到達した時、彼にヨアキムのイメージが流れ込んできた。 「もう私には、これから起こる事を止められない。だからせめて、お前に託そう……。 時は交差する……。いずれお前は、彼女達と出会う……その時の為に……」 それは、モモが誕生する直前、ヨアキムが彼女に語ったメッセージだった。 Jr.の放った衝撃波と、Y資料のプロテクトがアルベドを弾き飛ばした。 アルベドはさも愉快そうに笑った。彼がプロテクトに触れた時、そこにコスモスと シオンのイメージがあった。ヨアキムが最後に残したY資料のプロテクトに、彼女達が 現れる意味。それを知って彼は笑っていたのだ。 アルベドの笑い声に激昂し、ポテンシャルを開放して挑みかかるJr.。彼の本質を 知っているケイオスが、顔色を無して止めようとする程のエネルギーが弾けようとした時、 突然の乱入者が二人の間に割って入った。 青の外套者。この時は正体を隠していたが、彼はヴォークリンデでコスモスに殺された 筈のバージル中尉だった。 彼は、アルベドにその役割を指摘して退去させると、後を追おうとするJr.を攻撃した。 その物理法則を無視した力に、なす術もなく膝を付くJr.達。 「無駄だな。貴様らと俺とは、この世界に存在する法則が違う。そうだろ、 大将 ?」 ケイオスに向かってそう言い残し、彼は消えた。 歌声の機能が完全に停止している事を確認し、シオン達はデュランダルへ戻った。 歌声を破壊するため、デュランダルの主砲が向けられたとき、異変が起こった。 残存していたグノーシスが、歌声に集まっていく。その中心には、アルベドのシメオン。 「なんだか遊び足りなくてな……戻ってきたぜ」 シメオンから莫大なエネルギーが発せられ、歌声の下に遥かに大きな建造物が出現した。 天の車。元々は宇宙の真理の解明の為に作り出された施設だったが、ヨアキムによって モモを生み出すためのプラントとして使われていた。この施設と歌声、そしてゾハルが 一体となった時、ミルチア紛争以上の悲劇が起こる。そのため、この施設は旧ミルチアが 封じられている二重ブラックホールへと廃棄されたはずだった。 アルベドは、先にY資料に接触した時、この天の車の存在と使い方を知ったのだ。 その天の車が青い光を放ち、グノーシスを吸収し始めた。それは、以前コスモスが 腹部から発射したビームと同質のものだった。 グノーシスをエネルギーとした天の車は、主砲の発射準備に入った。目標は第二ミルチア。 それを阻止するため、シオン達はエルザと共に天の車へと向かった。 41 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01 33 11 ID 9P5lIrk+ 「遅ぉい! 待ちくたびれたぞ」 天の車の動力炉で、アルベドは彼女達を出迎えた。 なぜこんな事を。Jr.のその問いに、アルベドは憎憎しげに答えた。 14年前の作戦の時、Jr.が心を閉ざした事で、歌声の浸食に身を任せるしかなかった U.R.T.V。消えていった仲間達の為にも、貴様を断罪してやる。そう言いながら、 彼はこうも言った。 「だが、俺は感謝してるんだ。おかげで俺だけは新たなる世界への道を見つけられた」 コスモスとシオンに目をやり、彼は笑い声を上げた。 「ついさっき、それを確信した。これはそれを確かめる為の余興さ。精々楽しんでくれ」 アルベドが姿を消した直後、動力炉と直結した巨大なグノーシスが姿を現した。 死力を尽くして動力炉とグノーシスを破壊したシオン達。 爆発が始まり、彼女達が脱出を始めたその時、天の車がミルチアに向けて降下を始めた。 地上への被害を最小限に食い止める。その為に、天の車を最小ブロックにまで分解する 方法を探し出した彼女達だったが、システムを起動してから脱出までの猶予が、わずか 1分しかない事が分かった。 これでは脱出できない。一同に絶望感が漂ったとき、コスモスが残ると言い出した。 コスモスの能力ならば1分で脱出できる。そう信じて、シオン達はその場を彼女に任せた。 天の車が崩壊を始めた。ギリギリまで内部で待ち続けるエルザ。しかし、崩壊はエルザの 直上まで及び、苦渋の決断をするJr.。エルザは離岸した。 ハッチ上で待っていたシオンは取り乱し、戻るように懇願した。 その時彼女にネピリムの声が届き、走るコスモスのイメージが流れ込んできた。 左舷前方400メートル。シオンがエルザを誘導した先に、コスモスが飛び出してきた。 コスモスを収容し、最高速で離脱を図るエルザ。そのままミルチアの大気圏へ突入する。 しかし、先の脱出でダメージを受けていたエルザは姿勢制御にトラブルが発生。 大気との摩擦で船が炎に包まれた。このままでは、エルザは消し炭になってしまう。 そんな状況の中、ケイオスは一人、悩んでいた。 「あなたは、どうするの……?」ネピリムの声が、彼の脳裏に響いた。 その時、コスモスが彼の前を通り過ぎた。 「 君 が……? 待って!」慌てて止めようとするケイオス。しかし、 「あなたの痛みを、私に下さい」そう言って、コスモスはハッチに向かった。 コスモスが、エルザを守るように船首に立った。彼女の瞳が青く輝いた時、ケイオスの 腕が光を放ち、ネピリムが空を仰ぎ、アベルが振り返り、秩序の羅針盤が共鳴した。 そしてエルザの船体を6枚の光り輝く翼が包み込み、船は大気圏を突破した。 「いい見物だった。あとは、ペシェとU.M.Nがリンクすれば……」 そう言って、狂った笑い声を上げながら、アルベドは去った。 その情報は、ヴィルヘルムにも伝えられた。外套者は、彼を自由にする事を危惧した。 「アベルの方舟へと至る扉を開けるのは、彼だけだからね。しばらくは……」 「ウ・ドゥと再びリンクする可能性が残りますが」 「彼にそこまでの力はないよ。あとは鍵の役割だけ……。まぁ、局所事象変異ぐらいは 覚悟しないといけないけど、その為に 君達 がいるわけだし……ね。……でも、彼を このまま端役にしておくのは惜しい……。彼の意思は素晴らしい輝きを持っている……」 ミルチアの海に、日が沈もうとしている。その夕日を傷ついた船体に浴びながら飛行する エルザのブリッヂで待つシオン。彼女の下に、コスモスが戻ってきた。 「任務完了しました、シオン」 「…………お帰りなさい」 Xenosaga Episode1 END
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/299.html
翼をもがれた鳥 第11話――暗闇の中で―― 四つ葉町の森の丘陵、その上空に突如赤い閃光が迸る。 光は一瞬で収まり、そこから四つの人影が投げ出される。 数メートルの高度からの落下。加速も伴っており、衝突に近い形で地面に叩きつけられる。 「イタタ……ここはどこ? っていうか、なんであたし変身解けてるんだろう?」 「アタシもブッキーもよ。何が起こったというの?」 「多分、アカルンが何かしたんだと思う」 「……あの遠くに見えるのは、館ね」 占い館の地下で繰り広げられた、勝ち目の無い戦い。 危うく爆発に巻き込まれるところだった。絶体絶命の窮地を救った赤い光。 それは、イースをエスポワールシャワーから守った光と同質の力のように見えた。 祈里は懐を探る。しかし、入れていたはずのアカルンの姿は無かった。 転移と同時にプリキュアの変身は解除され、イースだけが戦闘形態のまま残された。 イースは現状よりも館の様子が気になるのか、険しい表情で見つめる。 ほどなく館は、それが蜃気楼であったかのように消失した。 「消えちゃったね、せつな。壊れてなくなったの?」 「……違うわ、あれは隠蔽モードを起動させたのよ。ゲージと館の破壊は失敗よ」 「まあ、みんな無事なんだし、ひとまず結果オーライよね」 「良かったね。でも、アカルンはどこに行ったのかな?」 「オーライですって! もう同じ手段で潜入はできないのよ!」 美希と祈里の安堵の声に、イースが喰ってかかる。激しい憤りと悔しさをあらわにする。 ムッとする美希と、びっくりして目を丸くする祈里。 すかさずラブが割って入る。イースもすぐに謝った。 二人に当たるのは筋違いだと気が付く。失敗したのは自分なのだから。 「とにかく今日は帰ろう。全員が無事だったことだけは、喜んでいいと思うんだ」 「そうね、帰りましょう」 「うん、本当に良かった」 「――そうね」 「待って! どこに行くの、せつな。一緒に帰ろう」 「帰る? 私が……どこに?」 「おかあさんが言ってたの。せつなが元気になったら家に連れて来たらいいって」 背を向けて立ち去ろうとしていたイースが振り返る。 一瞬驚いた表情をして、やがて静かに首を振った。繋がれたラブの手をそっと振りほどく。 「私はあなたたちと一緒には行けないわ。この手で、壊してきた街なのよ」 「だから――それは!」 「任務で潜入することならできる。でも、今さら好意にすがるなんて……許されるわけないわ」 「ラブが、どんな思いであなたを助けようとしたのかわかってるの?」 「行くところ、ないんでしょ? せつなさん……」 「わかってる……。よく、わかってるわ。でも、私は――幸せになってはいけないの」 イースはラブたちに向き合ったまま後ずさり、背中から落ちるように崖から飛び降りた。 高さは二十メートル以上、生身で追いかけられる地形ではない。 そのまま森の中に落ちて、姿も見失った。 ラブの、絶叫だけを残して―― 『翼をもがれた鳥――暗闇の中で――』 懸命に探したにもかかわらず、せつなの行方はわからなかった。 イースの姿のままだったから、怪我をしていないのは確かだった。それだけが救いだった。 ラブが家に帰ったのは、夜遅くになってからだった。 今日一日、色々なことがありすぎた。心の余裕がなくて、連絡を怠ったのが失敗だった。 家の中はちょっとした騒ぎだった。 仕事を終えて病院に向かったあゆみが見たものは、空っぽの病室と―― ゴミ箱の中に、散り散りに破り捨てられた手紙。 やっとの苦労で繋ぎ合わせて、更に驚愕する。それは――遺書にも似た内容だった。 すぐに警察に捜索願いを出す。仕事を早退してきた圭太郎と懸命に心当たりを回る。 絶望的な想いで一旦家に帰って来た。その直後のラブの帰宅だった。 「何があったのかは、どうしても話せないんだな?」 「ごめんなさい……。あたしは間違ったことはしていない。それしか言えないの」 「わかった。信じよう」 「おとうさんっ!」 真っ青な顔であゆみは圭太郎に詰め寄る。しかし、結局あゆみもラブに強く問い正すことはできなかった。 手紙に書かれた真剣な想い。命すら賭ける覚悟。それを――知っていたから。 「それで、せつなちゃんはどうしたの?」 「いなくなっちゃったの。どこに行ったのかわからないの。だから、探さないと!」 「もう遅い、僕が行ってこよう。ラブは食事を取って休みなさい」 「ごはん……。せつなも食べてないのに食べられないよ! 行かなきゃ!」 「わたしが一緒に行くわ。おとうさんだけじゃ、せつなちゃんの顔がわからないし」 ラブに無理やり食事を取らせてから、もう一度三人で探しに出ることにした。 その捜索は深夜まで続いたが、結局見つけることはできなかった。 日の沈んだ、暗い森の中を少女は歩く。 その手には何も持たず。 その瞳には何も宿さず。 その足取りは、目的地すら持たず。 その心に、深い悲しみと後悔を宿して。 やがて、森を抜ける。 視界一杯に広がる美しい草原。 木々に覆われ、一筋の光も差さなかった夜空。 今は満天の星々の輝きと、緩やかな月の光に照らされて。 足元には一面のクローバーの花が咲き乱れる。 暗く深い森にも出口はあって、その先には優しい風景が広がっている。 ほんの少しだけ救われた気がして、その日はそこで一夜を明かすことにした。 一輪の花を摘み取った。 クローバー。シロツメクサの白い花。花言葉は―― “幸せ” 私が奪ってきたもの。 私が望んできたもの。 私には届かないもの。 私には、求める資格のないもの。 ありもしないペンダントを求めて胸に手をあてる。 クローバーの草のベッドに倒れこむ。瞳に熱いものが浮かび、星空が歪む。 せつなは両手で顔を隠すようにして眠りに付いた。 眩しい朝の日差しを浴びて、せつなは目を覚ました。 夢を――見た。 ラビリンスにいた頃の夢だった。 同じ服装の人々。感情を宿さず、自らの意思を持たず。ただ、与えられた役目を黙々とこなす。 まるで、ラビリンスという国家を形作る部品であるかのように。 その中に自分も居る。いや――かつて、居た。 次々に新しい部品が作られ、役に立たなくなった部品は廃棄される。 寿命と、人口の管理の名の下に。 それは嫌だった。それは寂しかった。それは悲しかった。 だから――特別な部品になろうとした。 優秀な道具としてでいいから――愛されたかった。 そんな願いも、望みも失われてしまった。いや、自らの手で断ち切った。 今の私は、壊れた部品。 どこにも適合することのない、壊れた部品。 「ねえ、せつな。せつなの幸せは何?」 どこからか、声が聞こえたような気がした。 「今からでも、きっとやりなおせるよ!」 声のする方に足を進める。その先に一筋の光が見えた。 それは煌くアクセサリー。四葉をモチーフにしたペンダント。 ラブからもらった幸せの素に、自らの手でチェーンを付けたもの。 そっと持ち上げる。手のひらに乗せる。 触れたとたんに、粉々に砕けて、風に飛ばされて散っていく。 わかっていた。夢の中なのに、こうなることはわかっていた。 一欠片も残らなかった。やっぱり――私の手には何も残らなかった。 「行ってみよう……」 昨日の朝に病室を出て、丸一日何も食べていないことになる。 お腹は空いていたが、以前のように体が痛むわけではない。 (このくらい、どうということはない) ポケットを探る。お金は持っていなかった。 入っているのは、一組のトランプだけ。 わかっている。何も無いのはわかっている。 でも、昨日とは違う。一つだけ違う。 今の私には、目的地があるのだから。 せつなは、しっかりとした足取りで歩き出した。 四ツ葉町を発って半日ほど過ぎた。遠くに目指す建物が見えてくる。 そこは壊れたドーム。自分が壊したドームだった。 初めて正体を明かし、ラブと向かい合った場所だった。 大切にしていた幸せの素を、自らの手で砕いた場所だった。 建物はバリケードで覆われ、立ち入り禁止の看板が高々と掲げられていた。 瓦礫撤去の工事が巨大な重機で進められる。 まだ、それは入り口の方だけ。中は手を付けられていないようだった。 せつなは、作業員やガードマンの目に付かないように侵入を開始した。 バリケードを飛び越えて、姿勢を低くしたまま駆け抜ける。 ドームの観客席に出る。惨状と呼ぶに相応しい徹底的な破壊の爪痕。 どれくらいの人々が、コンサートを楽しみにしていたのだろう。 誰と一緒に来て、どんな夢を描いていたんだろう。 ラブも、楽しみにしていた。 していたのに……私の看病を優先して、病室でテレビを見ていた。 そんなラブの夢を砕いたんだ……。コンサート会場ごと――私が!! せつなは唇を噛みながら走り出した。 目的の場所は――もう、すぐそこだったから! 「この辺りだったはず……」 椅子の下、通路の隅、目を凝らして必死に探す。 風に飛ばされてしまったのか、チェーンすら見つけることができない。 何をやっているのだろうと思う。 仮に見つかったところで、元の形に直るわけじゃないのに。 壊れてしまったものが、元の姿に戻るはずなんてないのに。 戻ったところで、それで私の罪が許されるわけではないのに。 それでも、見つけたかった。何か、名残でもいいから手にしたかった。 何も――無いのは寂しかった。 そして、視界の先に緑色に煌く欠片を捉える。 「あった……。あった、あったんだ……」 そっと、手のひらに乗せてみる。 割れた破片の一つ。かろうじてハートの形をとどめていた。 今度は、砕けて消えることはなかった。それを両手で大切に握りしめた。 まるで――懺悔するように。 何かに――祈りでも捧げるように。 せつなが再び四ツ葉町に帰って来た頃には、もう夜もふけていた。 都合がいいと思った。まだ、見ておきたいものがあったから。 これで二日が過ぎた。髪も、服装も、自信が無かった。 もう、昼間に街を歩けば人目に付くかもしれない。 記憶を辿り、一つ一つ廻っていく。 自分が壊した街並みを。破壊の痕跡を。 ジュースの水流で壊した喫茶店。結婚式場にテレビ局。いくつかのダンス会場。 中には完全に修理されていたものもあった。 壊れたままでも、営業を開始していた店もあった。 修理の目処がつかないまま、放置されている建物もあった。 ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン 心が痛い。胸が苦しい。喚き声をあげて、逃げ出したいような気持ちに駆られる。 それでも、ちゃんと見ておきたかった。それが、今の自分にできるたった一つのことだったから。 そして、足がクローバータウンストリートの大通りに伸びる。 そこの一角に、赤と白の看板が並ぶ。(通行禁止)(危険・立ち入り禁止)横に迂回路が設けられる。 ラブが、とても大切にしている場所だった。 ラブと、初めて街で出会った場所だった。 ラブと、最後に戦った場所だった。 強力な炎によって溶かされたアスファルト。怪力でなぎ払われたお店の数々。 半壊のまま放置されているお店。下手くそな応急処置で、なんとか営業を再開しようとしているお店。 閉店と売却の張り紙が張られているお店もあった。 大きな建物ではないだけに、決して豊かな人たちのお店ではないだけに、よけいに悲しかった。 せつなの瞳に、とめどなく涙が溢れては流れ落ちる。 そして、座り込んで号泣した。 少し離れたところにある、公園のブランコに腰をかける。 時刻はそろそろ日付が変わる頃。怪しむような人通りもなかった。 そこも、ラブに案内してもらったところ。ラブが小さい頃に遊んだ場所。 蒸し暑い夜だった。ベトついた汗で、下着がへばりついて気持ち悪かった。 少しでも風が欲しくなって、ブランコを動かす。その時、ゾワッとせつなの背筋に悪寒が走る。 せつなの戦士としての本能が、迫る危険を察知したのだった。 「童心にでも帰ってるのかい? もっとも、僕達にそんな経験なんてあるはずもないが」 「サウラー……。決着を付けに来たというわけ?」 「そういう指令は確かに出ている。寿命の尽きた君が歩き回るのは好ましくないが……」 「はっきり言ったらどうなの?」 「もうわかったはずだ。この世界に君の居場所は無い」 サウラーは、ゆっくりせつなとの距離を縮めながら話しかける。 意思の力だけで、寿命管理の支配を解き放った。これは脅威であると同時に、評価の対象でもあると。 拘束を受け入れ、自らの意思でラビリンスに戻るならば、寿命も延ばしてもらえるかもしれないと。 「断ると言ったら?」 「ここで僕と戦うことになるね。今の君の体の状態で、勝ち目があると思うかい?」 サウラーが更に詰め寄る。同じだけせつなは下がる。頭の中では必死に計算を働かせていた。 ここで捕まれば、また占い館に入ることができるだろう。しかし、前回とは状況が違う。 当然、警戒されているだろう。拘束されて、変身もできないだろう。 本国に送られれば、洗脳されて、ラブの敵に仕立て上げられるかもしれない。 メリット無しと判断して、戦う決意を固める。その時だった。更に二つの気配が近づいてきた。 「せつなちゃん!」 「君がせつなちゃんか? そこの男! その子から離れるんだ!!」 「あなたたちは?」 「ラブの父親と母親よ。話は後で、早く逃げなさい!」 姿を見れば、相手がラビリンスの幹部であることはわかるはずだった。 それなのに、駆けつけてきた男の人はサウラーにしがみつく。 ラブの母親を名乗った女の人は、せつなをかばうように前に出て立ち塞がった。 敵うはずなんて――ないのに。 「ダメよっ! 早く逃げて! 人間に太刀打ちできる相手じゃないわ!」 「あなたこそ逃げなさい! 時間だけでも稼ぐから、早くっ!」 「とても不愉快だよ。命令でなければ誰がこんな仕事するものか」 「ぐあっ!」 サウラーは軽々と男の手を引き剥がす。そして、ゴミでも捨てるかのように無造作に投げた。 男の人はそのまま気を失う。そして次の障害物である、女の人に歩み寄る。 「おとうさんっ!」 「どきたまえ、無力の者をいたぶる趣味はない」 「誰が――どくものですか!」 「ならば、悪く思わないでほしい」 「きゃあ!」 サウラーは女の人の肩に手を添えて、軽く横に払った。彼にしてみれば限界まで加減したつもりだった。 しかし、それだけで地面に叩きつけられて気を失う。 「しっかり……しっかりしてください!」 自分が庇われている。その状況が理解できなかった。それで反応が遅れてしまった。 なぜ? 何のためにこの人たちはこんなことをしているの? 生まれて初めて、ラブ以外の人から向けられた純粋な好意。優しさ。思いやり。愛情だった。 女の人の額から、一筋の血が流れ落ちる。 ――ゾクリ。 せつなの背筋から、脳に向かって何かが駆け上る。 それは悲しさ。それは悔しさ。それは怒り。 それらが一つに結びつき、全身を焦がす激しい感情となる。 それは――憎悪。 よくも――よくも! よくも――よくも――よくも! よくも――よくも――よくも――よくも! 倒れた二人の男女の姿が、砕け散った幸せの素と重なる。 せつなの中で、破壊された街並みと重なって映る。 これが、幸せを奪うということ。 これが、私が今までやってきたこと。 これが、彼らがこの先も続けていくこと。 許せない!――絶対に――許さない!! 私には、何もないなんて嘘だ! 私には、戦うための力がある! “スイッチ・オーバー” 立ち上がり、手を合わせて――開く! 全身に電流が駆け巡る。体内の細胞が、戦うための配列に切り替わる。 黒髪は白銀の輝きを宿し、夜空に浮かぶ月のような純白の衣に覆われる。 運命を自らの意思で切り開いた証。イースが手にした新しき力。大空を翔ける自由なる翼。 その力が、今、弱き者を守るために揮われる。 赤い瞳が憎悪に燃える。それはサウラーに対する怒りだけではない。 過去の自分に対して! 助けてあげられなかった。今の、自分に対して! そして、幸せを奪う理不尽な暴力。管理国家ラビリンスの、存在そのものに対して!! 「疲れた体に、冷静さを失った頭か。やめたまえ、そんな状態で僕に、グボッ!」 「その不愉快な口を、永遠に黙らせてあげるわ!」 飛翔を思わせるような、超高速の踏み込みから放った拳がサウラーの腹部に突き刺さる。 間髪入れずに放つ回し蹴りが頭部を襲う。サウラーはかろうじてガードして後退する。 しかし、その背後にはイースが廻り込んでいた。 上下左右から、拳が、膝が、蹴りが、逃げ場など与えないと言わんばかりに牙をむく。 「バカ……な。この前よりも強くなっているだと!」 「心が生み出す力。あなたたちには決して理解できない力よ!」 イースが更に追撃を加えようとする。そして、サウラーがナケワメーケを呼び出そうとしていた時だった。 ラブがせつなの名を呼びながら駆け寄ってきた。その手にはリンクルンが握られている。 「ここは引いた方が良さそうだね。この借りは必ず返させてもらうよ」 「クッ、待て!」 イースは一瞬サウラーを追いかけようとして、踏みとどまった。 今は、傷付いた二人の介抱が先だと思ったからだ。 簡単にラブに事情を話す。ラブもまた、イースに経緯を伝えた。 ラブは時間が遅いため留守番していたが、連絡が途絶えたので見に来たらしい。 イースは変身を解除して、あゆみの介抱に当たる。 ラブは圭太郎を看た。すぐに目を覚まし、特に怪我はないようだった。 あゆみは頭に小さな傷を負っていた。濡らしたハンカチを額にかけたら気が付いた。 「おばさま、大丈夫ですか? 傷は痛みますか?」 「せつなちゃん! 怪我はない?」 「怪我をしてるのはおばさまです。でも、ありがとう」 「そう。良かった」 「僕は無事だ。もちろんラブもね」 「もう、おかあさん。心配したんだから!」 せつなは丁寧に圭太郎とあゆみにお礼を言ってから、背を向けて去ろうとする。 その手がしっかりとつかまれる。それも予想していたことだった。 払おうと振り返り――そのまま抱き寄せられた。 その手はラブではなく、あゆみだった。 「おばさま?」 「家にいらっしゃい、せつなちゃん」 「そうだ。行くところがないなら家に来るといい」 「せつな……お願い!」 理性が拒絶を命令する。 自分にはそんな資格はない。断るべきだと。 でも、温かかった。 抗えないほどに、心地良かった。 突き放すなんてできないほどに、嬉しかった。 「私は、幸せになっては、いけないような気がするんです」 「そんな子いないのよ。ひとつひとつ、やり直していけばいいの」 あゆみは、さらにせつなを抱きしめる腕に力を入れる。 決して離さない。そう主張しているかのように。 せつなの髪に顔をうずめるように、頭を寄せてくる。 汚れているはずなのに、そんなこと気にする風もなく、強く――強く―― 「はい」 せつなは、たった一言だけ、そう答えた。 そして、あゆみの腕の中で泣き崩れた。 その日から――桃園家に新しい家族が加わった。 第12話 翼をもがれた鳥――帰るべき場所――へ続く