約 24,181 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/167.html
総括所見:シンガポール(第2~3回・2011年) 第1回(2003年)OPAC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SGP/CO/2-3(2011年5月2日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月20日に開かれた第1590回および第1591回会合(CRC/C/SR.1590 and 1591参照)においてシンガポールの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/SGP/2-3)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第2回・第3回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/SGP/Q/2-3)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国の状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、ハイレベルなかつ多部門から構成された代表団との前向きな対話も評価するものである。 II.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、2003年に締約国の第1回報告書を検討して以来の、多くの前向きな発展を歓迎する。これには、以下のもののような、立法上その他の措置の採択も含まれる。 (a) シンガポールおよび他国における子どもの性的搾取を犯罪化した、2007年10月の刑法改正。 (b) 子どもがシンガポール籍の母を通じて市民権を取得することを可能にした、憲法第122条の改正(2004年4月)。 (c) 中央青少年指導庁(CYGO)および公的後見人庁の設置(2010年)。 (d) 国家家族評議会(NFC)の設置(2008年5月)。 (e) 地域裁判所(2006年6月)および子ども養護裁判所(2008年5月)の設置。 (f) 専門の裁判手続であるCHILD(子どもの最善の利益/対審構造緩和)の導入(2008年7月)。 (g) 就業が認められるための最低年齢に関するILO条約(第138号)の批准(2005年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 4.締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.220、2003年)を実施しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、そこに掲げられた多くの勧告について十分なフォローアップが行なわれていないことに懸念を表明する。 5.委員会は、締約国に対し、締約国の第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの(独立の監視、子どもの定義、差別の禁止、子どもの意見の尊重、親の責任、障害のある子どもおよび少年司法等の問題に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。これとの関連で、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年、CRC/GC/2003/5)に対して締約国の注意を喚起するものである。 宣言および留保 6.委員会は、前回の総括所見における勧告(CRC/C/15/Add.220、パラ7)にも関わらず、締約国が、条約第12条、第13条、第14条、第15条、第16条、第17条、第19条および第37条に関する多数の宣言ならびに第7条、第9条、第10条、第22条、第28条および第32条に対する留保をいまなお維持していることを、深く遺憾に思う。委員会は、条約のこれほど多くの条項(子どもの意見の尊重の原則も含む)に関する宣言および留保が継続していることについて重大な懸念を表明するものである。これらの宣言および留保は、条約に基づく締約国の義務の全面的および効果的実施を妨げる障壁となるからである。 7.1993年世界人権会議のウィーン宣言および行動計画に照らし、かつ締約国によってすでに相当の措置がとられていることに鑑み、委員会は、締約国に対し、条約に関する宣言および留保をこれ以上の遅滞なく撤回するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。 立法 8.委員会は、子どもの生活条件および発達の向上に貢献する、子どもの権利の分野におけるいくつかの法律(刑法および子ども・若者法を含む))の改正が行なわれたことを歓迎する。しかしながら委員会は、最近の立法上の進展にも関わらず、条約が国内法に全面的には編入されておらず、かつ締約国において直接適用可能とされていないことに、懸念とともに留意するものである。 9.委員会は、締約国に対し、条約のすべての原則および規定が国内法体系に全面的に編入されることを確保するよう、促す。 調整 10.委員会は、締約国による条約の実施の調整および監視において子どもの権利条約に関する省庁間委員会(IMC-CRC)が果たしている積極的役割に留意する。しかしながら委員会は、省庁間委員会の所掌事項に、子どものためのすべての政策およびプログラムの調整がいまなお含まれていないことを懸念するものである。 11.委員会は、締約国が、条約に関する省庁間委員会の所掌事項、職務および能力を拡大して子どものためのすべての政策およびプログラムの調整を含めるよう、勧告する。委員会はまた、省庁間委員会が条約の実施の監視および評価について定期的に報告を行なうこと、および、その報告書が社会のあらゆるレベル(子どもを含む)で広く普及されるべきことも、勧告するものである。 国家的行動計画 12.委員会は、子どもに関わるさまざまな部門別戦略が策定されてきたことについて、積極的な対応として留意する。しかしながら委員会は、これらの戦略にともない、実施のための具体的な行動計画が策定されることはほとんどないことを懸念するものである。委員会は、締約国が条約実施のための包括的な国家的行動計画(NPA)を策定していないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、締約国が、子どもおよび家族に関するさまざまな戦略を、条約の全面的実施を確保することを目的とした子どものための包括的な国家的行動計画に基づいて調和させるよう、勧告する。国家的行動計画は、権利を基盤とし、かつ条約のすべての原則および規定を網羅したものであるべきである。NPAは、国レベルの開発計画、戦略および予算と連携し、かつ、すべての子どもによるすべての権利の享受に関わる進展を効果的に測定するための、具体的な、期限の定められたかつ測定可能な目標を掲げることが求められる。 独立の監視 14.子どもが権限のある部門別機関に苦情を申し立てられることには留意しながらも、委員会は、締約国が、条約上の子どもの権利の充足を恒常的に監視すること、ならびに、子どもの権利の侵害に関する苦情を受理しおよび独立の立場から調査することを目的とした独立機構を設置していないことを、依然として懸念する。 15.委員会は、前回の総括所見に掲げられた勧告(パラ13)をあらためて繰り返し、締約国に対し、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を全面的に考慮に入れながら、パリ原則(総会決議48/134)にしたがった独立機構を設置するよう、促す。このような機関に対しては、条約が対象とするすべての分野について、子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる苦情を受理しかつ調査する明確な権限が与えられるべきである。このような機関に対しては、すべての子どもがアクセスでき、かつ、職務を十分に果たすために必要な人的資源、財源および技術的資源を提供されることが求められる。 データ収集 16.委員会は、締約国の報告書および事前質問事項に対する回答で提供された詳細な統計データに留意する。しかしながら委員会は、とくに子どもに対する暴力、人身取引の被害を受けた子どもおよび子どもの性的搾取に関するデータが不十分であることを懸念するものである。 17.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起し、委員会は、条約が対象とするすべての分野、とりわけ暴力、人身取引および子どもの性的搾取について、とくに年齢(18歳未満の者)、性別、民族的および社会経済的背景ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団別に細分化されたデータが収集されることを確保する目的で、締約国が、子どもに関する国レベルの中央データベースを設置し、かつ条約に一致した指標を開発することによってデータ収集機構を強化するよう、勧告する。 普及および意識啓発 18.委員会は、条約に関する子どもおよび公衆一般の意識を高めるために締約国が行なっているさまざまな取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもおよび公衆一般を対象とする教育および意識啓発には継続的に注意を向けることが必要であると考えるものである。したがって委員会は、締約国に対し、子ども、その親およびより幅広い公衆に対して条約(子どもを対象としてとくに立案した適切な資料を含む)を引き続き普及するよう、奨励する。 研修 19.子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として条約の原則および規定に関する研修を行なおうとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する専門家集団の研修活動が依然として不十分であることを懸念する。 20.委員会は、社会福祉の現場ならびに法律上および行政上の手続において条約の原則および規定が広く適用されることを確保する目的で、締約国が、専門家に対して研修を行なう努力を強化するよう勧告する。 市民社会との協力 21.ボランティア福祉団体を含む市民社会との協働に対する「たくさんの支援の手」アプローチには留意しながらも、委員会は、役割について明瞭さが欠けていること、および、政策決定レベルまたは報告プロセスにおける市民社会との協力が限られていることを、懸念する。 22.委員会は、締約国が、条約の実施のあらゆる段階(政策立案も含む)および今後の定期報告書の作成において、いっそう制度的なかつ調整のとれたやり方で非政府組織(NGO)の関与を得るよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」に関する一般的討議(2002年)の勧告を考慮し、かつ、サービスを提供している民間団体の監督を、当該サービスが権利を基盤としたものであることを確保する目的で改善することも、勧告するものである。 国際協力 23.条約第4条に関して、委員会は、国際協力の取り組み、とくに国連平和維持活動ならびに二国間および多国間の人道上の行動に対して締約国が行なっている貢献に留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国の経済が相対的に安定しているにも関わらず、国際的に合意された目標、とくに子どもを特別に重視したミレニアム開発目標に向けられた政府開発援助(ODA)についての情報が存在しないことに、留意するものである。 24.委員会は、締約国に対し、ODAに関する情報を透明化するとともに、対国内総生産比0.7%というODAについての国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めおよび二国間協力において子どもの権利の実現が優先課題となることを確保することも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、締約国の提携国に関して委員会が採択した総括所見および勧告に特段の注意を払うよう、促す。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の勧告を考慮するよう、慫慂するものである。 子どもの権利と企業セクター 25.委員会は、締約国が、その管轄下にある国内企業および多国籍企業を対象とし、かつ、人権理事会が2008年に採択した国連・ビジネスと人権枠組みにしたがった、子どもの権利に関わる企業の社会的責任(CSR)指標を採択していないことを懸念する。国連・ビジネスと人権枠組みは、人権を保護する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際の、効果的救済措置に対する被害者のアクセスという3つの原則から構成されるものである。 26.委員会は、締約国が、シンガポール企業(シンガポールに本社を置く多国籍企業も含む)が子どもの権利について報告するための枠組みを定めるよう勧告する。その際、委員会は、締約国が条約の関連規定を適用するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、とくに国連・ビジネスと人権枠組みをとりわけ子どもの権利との関連で民間企業および公共企業体の活動に適用することについての世界中の経験を、正当に考慮するよう奨励する。 B.子どもの定義(条約第1条) 27.委員会は、イスラム法運用法(AMLA)の改正により、イスラム教徒の女子の最低婚姻年齢が16歳から18歳に引き上げられたことを歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見における勧告(パラ22)にも関わらず、子ども・若者法(2010年の法律第15号による改正法)がいまなお16~18歳の子どもを対象としていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、国内法における子どもの定義を条約にしたがって調和させるためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が子ども・若者法の適用を拡大し、18歳未満のすべての者を対象とするよう勧告するものである。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.委員会は、差別の禁止の原則が市民に限定されており、条約第2条で定められているように、親の地位に関わりなく締約国の管轄内にあるすべての子どもに対して適用されていない旨の、前回の総括所見(パラ24)で指摘した懸念をあらためて表明する。さらに委員会は、女子、障害のある子どもおよび定住者以外の者に対する差別がいまなお根強く残っている旨の報告について懸念を覚えるものである。 30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の管轄内にあるすべての子ども、とくに女子、障害のある子どもおよび外国系の子どもに対し、条約に定められた権利をいかなる種類の差別もなく尊重しかつ確保するため、法律を改正すること。 (b) あらゆる形態の差別(被害を受けやすい状況に置かれたあらゆる集団の子どもに対する複合的形態の差別を含む)に対応し、かつ差別的な社会的態度と闘う包括的な戦略を採択しかつ実施すること。 (c) 広範な関係者との調整を図り、かつ社会のあらゆる部門の関与を得ながら、社会的および文化的変革、ならびに、子どもの平等の支えとなる、誰もがその可能性を発揮できる環境づくりを促進するような努力を行なうこと。 (d) 事実上の差別の効果的監視を可能とするため、ジェンダー、人種、民族的出身または社会的背景および障害の別に細分化されたデータを収集すること。 (e) そのような努力を監視し、かつ設定目標の達成に向けた進展を定期的に評価するとともに、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載すること。 子どもの最善の利益 31.委員会は、子ども・若者法(2010年の法律第15号による改正法)に指導的原則としての子どもの最善の利益が含まれていること、ならびに、子どもの最善の利益の原則を促進するための各種プログラム、とくにCHILD(子どもの最善の利益/対審構造緩和)およびIMPACTプログラムが設けられていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに関わる法律のほとんど、ならびに、司法上および行政上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいて子どもの最善の利益の原則への言及が見られないことを、懸念するものである。 32.委員会は、子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがって第一次的に考慮され、かつ、自国の法律、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼす政策、プログラムおよびサービスに全面的に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 33.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、施設、司法制度および社会一般において自己に影響を与える広範な問題についての子どもの意見表明が制限され、かつしばしば妨げられていることを依然として懸念する。委員会はまた、自己に影響を与える司法上および行政上の手続において子どもに意見を表明するよう制度的に促す正式な手続が設けられていないことも、遺憾に思うものである。 34.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭その他の場面において意見を聴かれる子どもの権利を積極的に促進するとともに、あらゆる文脈(学校その他の子ども施設、裁判所および行政機関ならびに政策立案プロセスにおけるものも含む)において、自己に影響を与えるすべての事柄について子どもが意見を表明できるようにする正式な手続を設けること。 (b) 子ども・若者法を含む法律を改正し、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明する子どもの権利を含めること。 (c) 条約第12条に関する宣言の撤回を検討すること。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 名前および国籍 35.子どもが母からの継承によって市民権を取得することを可能にした2004年4月の憲法改正は歓迎しながらも、委員会は、この改正法が適用されるのは2004年5月15日移行に生まれた子どものみであることに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国にいまなお多数の無国籍児が存在すること、および、特定の状況において、子どもが憲法第129条2項(a)に基づき市民権を剥奪される可能性があることを、懸念するものである。 36.委員会は、締約国に対し、子どもが市民権を剥奪されることを防止する目的で国籍法を改正するとともに、シンガポール国籍の母の子であって2004年前に生まれた子ども全員に市民権を付与することを検討するよう、勧告する。 表現、結社および平和的集会の自由 37.子どもがいくつかの場で意見を表明するよう奨励されていることには留意しながらも、委員会は、これらの場がきわめて限られており、かつ、表現の自由(公に苦情を申し立てる権利および情報を受ける権利を含む)ならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを、懸念する。委員会は、表現ならびに平和的集会および結社の自由に対する権利が憲法で保障されているにも関わらず、これらの権利が実際には厳しく制約されており、かつ、自己の意見を公に表明する自由が引き続き制限されていることを、懸念するものである。 38.委員会は、締約国が、表現、結社および平和的集会に対する子どもの権利が全面的にかつ実際に実施されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、条約第12条、第13条および第15条に関する宣言を、撤廃の方向で見直すことも奨励するものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 39.体罰の使用の制限および抑制を図る教育プログラムおよび指針には留意しながらも、委員会は、笞打ちを含む体罰がいまなお家庭、学校および施設における合法的な形態のしつけおよび規律と見なされていることについての深い懸念を、あらためて表明する。 40.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰(笞打ちを含む)を、これ以上のいかなる遅滞もなく、法律で明確に禁止すること。 (b) 体罰に代わる手段としての積極的かつ非暴力的な形態の規律について、引き続き、教員ならびに施設および少年拘禁所で働く職員を対象とした体系的研修を行うこと。 (c) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響についての、親、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を引き続き進めるとともに、体罰の代わる手段としての、積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育ておよびしつけを促進すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに、子どもに対する暴力に関する事務総長独立専門家〔ママ〕が強調した、期限の定められた以下の優先課題を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長独立専門家〔ママ〕と協力するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 42.委員会は、家族に対して親教育および金銭的援助を提供するために締約国が努力していること、および、高度のニーズを有する家族への支援を向上させる目的で機能不全家族に関する省庁間委員会が設置されたこと(2007年)に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、このような家族が、子どもの養育責任に見合った十分な支援を受けていない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、保育所保育扶助(CFAC)制度の資格要件が厳格であるため、低所得家庭およびひとり親家庭が負担可能な保育にアクセスできないことも懸念する。 43.委員会は、子どもの養育責任を担う親および法定保護者の能力を高める目的で、締約国が、カウンセリング、親教育および安定した家庭環境を支えることにつながるその他の意識啓発プログラム等も通じ、親および法定保護者に対する支援およびサービスを強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、保育所保育扶助(CFAC)制度の資格要件(母親の就労要件を含む)を見直し、かつ、低所得家庭およびひとり親家庭が負担可能な保育にアクセスできることを保障することも、勧告するものである。 44.委員会は、外国人人材雇用法の適用により、一部の子どもが親から分離される結果が生じていることを懸念する。これは、「Sパス」および「雇用パス」カテゴリー以下の労働許可しか得ていない移住労働者は、労働許可証管理官の事前の承認がなければシンガポールの市民または永住者と婚姻することが許されておらず、かつ、妊娠を理由として就労許可が取り消され、その結果、退去強制が行なわれる場合もあることを踏まえての懸念である。 45.委員会は、締約国に対し、親からの子どもの分離を回避する目的で出入国管理に関わる法律および政策(とくに出入国管理法および外国人人材雇用法)を見直すとともに、条約第9条および第10条に付した留保の撤回をあらためて検討するよう、促す。 家庭環境を奪われた子ども 46.委員会は、親が子ども養護裁判所に対して正式な苦情を申し立てることができ、かつ8~16歳の子どもが施設(ときには非行少年と同じ施設)に措置される可能性がある「親の手に負えない子ども」制度の、締約国による扱いについて深い懸念を表明する。委員会は、この制度が子どもにスティグマを付与し、かつ、可能性を発揮させるのではなく懲罰的な措置としてとらえられる可能性があることを遺憾に思うものである。委員会はまた、「親の手に負えない子ども」制度が、子どもまたは若者の親または保護者に対し、子どもまたは若者の養育および福祉について主たる責任を負うよう奨励する2010年の子ども・若者(改正)法案に一致しないことにも留意する。 47.委員会は、締約国が、2009年の総会決議64/142に掲げられた子どもの代替的養護に関する指針を考慮し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの施設措置が最後の手段として、かつ適切な司法的監督のもとでのみ用いられることを確保する目的で、「親の手に負えない子ども」に関する政策を再検討すること。 (b) 子どもおよび家族の問題の根本的原因、現行制度の有効性およびそれが子どもに与える影響についての、ジェンダーに配慮した研究を行なうこと。 (c) 子どもおよび家族に対し、カウンセリング、子育てスキル訓練、必要な場合には適切な治療、および他のあらゆる保護措置を最優先で提供すること。 (d) 配慮に満ちた安全な環境で成長する子どもの情緒的ニーズに関する、親、専門家および公衆を対象とした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を行なうこと。 養子縁組 48.委員会は、子どもの養子縁組法に、国際基準にしたがった子どもの権利の保護措置の多くが欠けていることを懸念する。委員会はまた、十分な保護の保障(司法機関による許可および中欧監督機関を含む)なくして養子縁組が行なわれている事案があること、および、養子縁組目的で子どもの売買が行なわれているという報告があることも、懸念するものである。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子とされたすべての子どもの登録情報を保管すること。 (b) 養子縁組手続の対象とされた子どもの権利の保護を確保するための中央機関を設置すること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を遅滞なく批准すること。 虐待およびネグレクト 50.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトの問題に対処するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに対して行なわれる虐待を発見し、記録しかつ分析するための包括的制度が設けられていないことを懸念するものである。委員会は、子どもとともにまたは子どものために働く専門家に対し、子どもの虐待の通報義務が課されていないことを遺憾に思う。 51.委員会は、締約国が、防止措置をとり、虐待およびネグレクトの悪影響に関する公衆教育プログラムを実施し、かつ虐待の被害を受けた子どもに対して保護および回復のための十分なサービスを提供することにより、児童虐待の問題に対応するための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもとともに働く専門家を対象とした、子どもの虐待およびネグレクトが疑われる事案について通報を行ないかつ適切な行動をとる義務的要件を設けるとともに、この点に関する研修が行なわれることを確保することも奨励するものである。 F.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 52.障害のある子どものための「特別教育」学校に対して公的機関が資金および訓練を提供していることには留意しながらも、委員会は、「特別教育」学校がボランティア福祉団体によって運営されており、かつ公的機関の管轄下にないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもがいまなお教育制度に全面的には統合されておらず、かつ、障害のある子どもおよびそのニーズに関する量的および質的データがいまだに存在しないことを、依然として深く懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法(2003年)の適用を拡大し、障害のあるすべての子どもを対象に含めること。 (b) 特別なニーズを有する子どもに対し、インクルーシブ教育を提供すること。 (c) 障害のある子どもおよびその具体的ニーズに関する量的および質的データを収集しかつ分析するとともに、このような子どもを対象とする適切なプログラムおよび政策の策定のためにこれらのデータを活用すること。 (d) 教員、ソーシャルワーカー、(準)医療従事者および関連の職員のような、障害のある子どもとともに働く専門職員を対象として、子どもの権利の視点からの研修を行なうこと。 (e) 障害のある子どもが、早期介入サービスおよび普通学校への統合に時宜を得た形でアクセスできることを確保するため、さらに多くの資源を配分すること。 (f) 障害のある子どもがいる家族への支援を強化すること。 (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書の批准を検討すること。 (h) 障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 思春期の健康 54.委員会は、保健指標が非常に優れた水準のまま維持されており、かつ締約国において質の高い保健ケア・サービスが広く利用可能とされていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、思春期保健サービスが不十分であること、性感染症に罹患する青少年の人数が増えていること、および、青少年の自殺が多数発生していることを懸念するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康的なライフスタイルを促進するためのプログラムを強化すること。 (b) リプロダクティブヘルスを含む思春期の健康についての包括的政策を採択すること。 (c) 性感染症、とくに感染経路および有害な影響に関して青少年を教育すること。 (d) 青少年の自殺リスク要因に関する調査研究を行ない、かつ防止措置を実施すること。 (e) 子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮すること。 母乳育児 56.母乳育児を奨励するために締約国が行なった努力(母性保護関連法の改善を含む)には留意しながらも、委員会は、完全母乳育児の実践率が低いことについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、赤ちゃんにやさしい病院として認証された病院がゼロであること、シンガポール乳児用食品販売倫理委会(SIFECS)の国内基準に国際基準に一致しない要素が一部含まれていること、および、母性保護関連法で授乳休憩が保障されていないことも、懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、子どもを生後6か月まで母乳のみで育てることの重要性に関する意識啓発の努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、主要な産科病院が「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブ(BFHI)に基づく基準を満たしかつ認証を受けることを確保すること、SIFECSの国内基準を見直し、強化しおよび執行しならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択しおよび実施すること、母性保護関連法に授乳休憩を含めること、ならびに、職場における母性保護に関するILO第183号条約(2000年)の批准を検討することも、求めるものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 58.委員会は、締約国の学校制度によって達成されている、学業面における高度な優秀性を認識しかつ称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 前回の総括所見の勧告(パラ43)にも関わらず、締約国の管轄内にあるすべての子ども(とくに市民でない者)が義務教育法の対象とされ、かつ無償の初等学校にアクセスできているわけではないこと。 (b) 教育制度の高度に競争主義的な性質によって過度なストレスが生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害される可能性があること。 (c) マイノリティ、とくにマレー系の生徒が教育指標面で立ち遅れていること。 (d) 学校カリキュラムに人権教育を含めるために十分な努力が行なわれてこなかったこと。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国の管轄内にあるすべての子ども(市民でない者も含む)を対象に含めるとともに、この目的のため、条約第28条に付した留保を見直すこと。 (b) すべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の高度な競争主義を軽減するために学校制度を見直すとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力をさらに強化すること。 (d) たとえば、すでに存在する遅れを取り戻すための特別かつ一時的な積極的差別是正措置プログラムを通じ、学業面での発達についてマイノリティ(とくにマレー系)の生徒を支援するための努力を強化しかつ加速すること。 (e) 教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、あらゆる教育段階の公式カリキュラムに人権教育を含めるための努力を強化し、かつ子どもの教育における人権の促進について教員の研修を行なうこと。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 60.委員会は、締約国が難民の処遇に関するいかなる条約にも加盟していないことを懸念する。委員会はまた、難民の処遇を規律する法律が締約国にまったく存在しないこと、および、個別事案ごとの処遇は恣意的取扱いにつながる可能性があることも懸念するものである。 61.委員会は、締約国に対し、国際基準にしたがって子どもの庇護希望者および難民(とくに保護者のいない子ども)の保護のための法的枠組みを策定するとともに、難民の地位に関する1951年条約およびその1967年議定書、無国籍者の地位に関する1954年条約ならびに無国籍の削減に関する1961年条約の批准を検討するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)を考慮するようにも勧告するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 62.締約国が2004年に雇用法を改正して最低就労年齢を12歳から13歳に引き上げたことには留意しながらも、委員会は、最低就労年齢が義務的就学〔修了〕年齢よりも低いことを懸念する。委員会はまた、児童労働〔者〕の労働条件および生活条件の監視に関する情報が締約国報告書にまったく記載されていないことにも留意するものである。 63.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもの経済的搾取を防止するための努力を強化するとともに、とくに、最低就労年齢を引き上げて義務教育法で定められた義務的就学〔修了〕年齢(15歳)と調和させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、児童労働〔者〕の労働条件および生活条件を調査しかつ監視するとともに、次回の報告書にその情報を記載することも勧告するものである。 性的搾取および虐待 64.委員会は、締約国の管轄下にある者が行なう商業的性的搾取からの子どもの保護を増進させた刑法改正(第224条)を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点について重大な懸念を表明するものである。 (a) 関連の国内法において、最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約第3条(b)に掲げられた一連の禁止規定(とくにポルノの製造またはポルノ的な演技のために子どもを使用し、斡旋しまたは提供することの禁止)が全面的に網羅されていないこと。 (b) 子どもの性的搾取および虐待(子どもセックスツーリズムを含む)と闘うために締約国がとった行動が限られていること、および、そのような虐待の加害者が処罰されないままでいること。 (c) 締約国から提供された統計情報が示しているように、そのような事案が過少報告されている可能性があること。 (d) 性的搾取の被害を受けた子どもがしばしば売春犯と見なされ、かつそのように扱われていること。 (e) 締約国の管轄下にある者が行なった子どもの性的搾取について域外裁判権があるにも関わらず、締約国が、国民または永住者に対し、子どもセックスツーリズムを理由とする捜査、訴追または有罪判決の言い渡しをほとんど行なっていないこと。 65.委員会は、締約国に対し、条約第34条に基づく義務を履行するとともに、性的虐待および搾取の通報に対する組織的対応を優先課題として発展させるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の目的のために効果的措置をとるよう促すものである。 (a) 最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約第3条(b)に法律を一致させること。 (b) 子どもに対する性犯罪の加害者がしかるべく裁判にかけられ、かつ適切な刑罰による制裁を受けることを確保する目的で、性的搾取および虐待の行為を犯罪化した法律を実施するための努力を強化すること。 (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものために、子どもがリハビリテーション、回復および社会的再統合のためのサービスを提供されるシェルターを設置すること。 (d) 被害者の人数および推移を確認するためのデータを収集する目的で、効果的かつ体系的な監視機構を設置すること。 (e) 観光における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範を策定するとともに、観光業界およびメディアのいっそう積極的な関与を推進すること。 売買、取引および誘拐 66.委員会は、国内法で子どもの売買、取引および誘拐が犯罪化されていることを歓迎するとともに、人身取引および買春の被害者のための便益およびプログラム、とくにホットライン、カウンセリング、翻訳および入所サービスの提供に関して締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、法的枠組みおよび行なわれている努力にも関わらず、締約国が人身取引の対象とされた子どもの目的地国となっており、かつ、それでも締約国報告書に記載された関連のデータでは著しく少ない事件数しか報告されていないことを、懸念するものである。さらに委員会は、締約国が、通報された人身取引事件のすべてを捜査し、または適切な刑罰によって加害者を処罰しているわけではないこと、および、一部の事案では、人身取引の被害を受けた子どもが出入国管理法違反を理由に犯罪者として扱われ、かつ逮捕されていることを、懸念する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが関係するすべての人身取引事件、とくに商業的性的搾取を目的とする人身取引事件が迅速かつ徹底的に捜査されること、ならびに、加害者が訴追されおよび適切な刑罰によって処罰されることを確保すること。 (b) 人身取引の被害者である子どもが犯罪者として扱われることを防止するため、あらゆる必要な立法上の措置をとること。その際、とくに、このような子どもが拘禁されないこと、リハビリテーションのための適切なケアを提供されること、家族と再結合できるようにされること、および、人身取引加害者に対する司法手続に主体的に参加するのに十分な期間、締約国の領域への在留を許可されることを確保すること。 (c) 締約国における子どもの売買、取引および誘拐の性質および規模に関する研究を、市民社会の関与を得ながら実施すること。 (d) 締約国の領域内で人身取引がどの程度問題になっているか、および、子どもの人身取引が被害者にどのような有害な影響を与えるかについて公衆の意識啓発を図ること。 (e) 子どもの人身取引を防止する目的で、出身国、通過国および目的地国との、二国間および多国間の協定および協力プログラムを強化しかつ拡大すること。 (f) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。 (g) とくにILO/IPEC、国際移住機関および非政府組織との協力を強化すること。 少年司法の運営 68.締約国に独立した少年司法制度が存在することには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、前回の総括所見(パラ45)にも関わらず以下の問題があることを深く懸念する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢が依然としてきわめて低い(7歳)こと。 (b) 罪を犯した少年に対する規律措置として、体罰および独居拘禁がいまなお用いられていること。 (c) 7~16歳の男子が、刑法その他の法律上の多くの犯罪について笞打ちその他の形態の刑罰の対象とされていること。 (d) 18歳に満たないときに行なった犯罪について有罪判決を受けた者に対し、終身刑が言い渡される可能性があること。 (e) 16~18歳の子どもが子ども・若者法(CYPA)に基づく保護の適用対象外とされており、少年裁判所における告発の対象とされない場合があるとともに、その氏名が成人犯罪者の登録簿に記載されること。また、知的障害がある16~18歳の子どもが引き続き成人裁判所における審理の対象とされていること。 69.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準まで緊急に引き上げること。 (b) 法律を改正し、罪を犯した少年を対象とするすべての拘禁施設で、体罰および独居拘禁の使用を禁止すること。 (c) 刑の言い渡しおよび拘禁において子どもの最善の利益が考慮されること、ならびに、自由の剥奪が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で適用され、および、撤回の方向で定期的に再審査されることを確保すること。 (d) 18歳未満の子どもの終身刑を廃止するとともに、当面、現在終身刑を言い渡されている子どもが、その釈放、再統合、および、社会で建設的な役割を果たすための能力の獲得のための教育、処遇およびケアを受けることを確保すること。 (e) 子ども・若者法に定められた特別な保護を16~18歳の子どもにも拡大するとともに、刑事司法制度において、知的障害のある若年犯罪者に対して適切な考慮が行なわれることを確保すること。 (f) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、必要に応じて少年司法の分野における技術的な助言および援助を求めること。 犯罪の被害者および証人である子ども 70.委員会は、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮に入れながら、十分な法律上の規定、手続および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび犯罪の証人であるすべての子ども(虐待、ドメスティックバイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人など)が司法に効果的にアクセスでき、かつ条約に定められている保護を提供されることを確保するよう、勧告する。 マイノリティまたは先住民族の集団に属する子ども 71.委員会は、民族的、宗教的または言語的マイノリティに属する子どもおよび先住民族の子どもの、自己の文化を享受しかつ自己の宗教および言語を実践する権利の執行に向けて締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、マレー人を含む一部の民族的マイノリティ集団を周縁化させているいくつかの政策に関する、現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連の不寛容に関する特別報告者の懸念を共有するものである。 72.委員会は、締約国が、人種間の調和を確保し、かつ同時にマイノリティの子どもが平等な機会を有することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、民族的マイノリティ集団、とくにマレー人が、自己の文化を享受し、かつあらゆる生活領域で自己の宗教および言語を実践する権利を保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとることも勧告するものである。 地域機関および国際機関との協力 73.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約の実施を目的として、ASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。 I.国際人権文書の批准 74.委員会は、子どもの権利に関連し、かつとくに子どもの権利の充足を増進させる国連の中核的人権文書のうち締約国がまだ加盟していないものを批准するため、締約国が緊急の措置をとるよう勧告する。これらの文書とは、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約およびその選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、女性に対する差別の撤廃に関する条約の選択議定書である。 75.委員会は、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく報告義務を履行するよう求める。 J.フォローアップおよび普及 フォローアップ 76.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 77.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、子どもおよびメディアが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 78.委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合定期報告書を2017年11月3日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国に対し、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 79.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/186.html
総括所見:タイ(OPAC・2012年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)/第3回・第4回(2012年)OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/THA/CO/1(2012年2月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年1月25日に開かれた第1683回会合(CRC/C/SR.1683参照)においてタイの第1回報告書(CRC/C/OPAC/THA/1)を検討し、2012年2月3日に開かれた第1698回会合(CRC/C/SR.1698参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/THA/Q/Add.1)の提出を歓迎するとともに、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、開かれた、率直かつ建設的な対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/THA/CO/3-4)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、軍役法(1954年)および国防省規則(2000年)に基づき、現役および非現役の軍隊要員の登録年齢が18歳と定められていることに、評価の意とともに留意する。 III.実施に関する一般的措置 立法 5.委員会は、とくに18歳未満の子どもを軍隊に徴募することの犯罪化との関連で、選択議定書の規定が国内法に全面的には編入されていないことを懸念する。 6.選択議定書第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定を国内法に全面的に編入し、かつ18歳未満の子どもを軍隊に徴募することを明示的に犯罪化するための措置をとるよう、促す。 調整 7.委員会は、国家子ども・若者発達促進委員会が選択議定書の実施を調整するための機構である旨の締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、条約に基づく総括所見(CRC/C/THA/CO/3-4)を参照しつつ、子どもの権利に関する政策およびその実際の実施が社会開発・人間安全保障省内の諸機関その他の機関に割り当てられており、かつ、条約および選択議定書に基づく、国および国以外のあらゆる関連の主体の活動の調整を担当する全般的な調整機構が存在しないことを、懸念するものである。 8.委員会は、条約に基づく総括所見を参照しつつ、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会(社会開発・人間安全保障省内のものを含む)の間でよりよい調整が行なわれることを確保するとともに、条約およびその選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の実施の監視および評価に関して、部門別省庁を横断し、かつ中央政府から地方政府のレベルに至るまで指導力を発揮しかつ有効な一般的監督を行なうことのできる単一の部局を指定するよう、勧告する。 普及および意識啓発 9.委員会は、選択議定書がタイ語に翻訳され、かつ政府機関および非政府機関を含むさまざまな機関に対して普及されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間で体系的かつ包括的な普及および意識啓発活動が行なわれていないことを懸念するものである。 10.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、広報および教育のための体系的プログラムを発展させることにより、選択議定書の原則および規定が一般公衆、子どもならびに関連の中央当局および地方当局の間で広く普及されることを確保するよう、勧告する。 データ 11.委員会は、選択議定書で対象とされている多くの分野についてのデータおよび統計、とくに軍事学校に就学した18歳未満の者、ならびに、広く行なわれている武装暴力に関与したまたはその可能性がある子どもの難民および庇護希望者の人数が存在しないことを、遺憾に思う。 12.委員会は、条約に基づく総括所見を参照しつつ、締約国が、条約および選択議定書の実施に関連するすべての分野についての包括的なデータ収集システムを設置するとともに、広く行なわれている武装暴力の影響を受けている子どもおよびこれに関与している子どもの保護に関わる包括的な政策およびプログラムを立案する際の基礎として、収集された情報および統計を活用するよう、勧告する。委員会は、締約国が、この点に関して国連児童基金(ユニセフ)の援助を求めるよう勧告するものである。 IV.防止 志願入隊 13.18歳未満の者が村落防衛訓練に参加することを禁じた省規則第2号(仏歴2554年)(2011年4月)は歓迎しながらも、委員会は、南部国境県の村落自警団(チョー・ロー・ボー、Chor Ror Bor)が行なう一連の活動に子どもが非公式な形でつながりを持ち、正規の構成員と同一または同様の任務を遂行しているという報告があることを懸念する。委員会はさらに、適用される規則が明確ではなく、かつ規則について主要な官公吏が認識していないこと、現行の政策および手続が実施されていないこと、ならびに、効果的な監督および説明責任の履行が行なわれていないことから、子どもがチョー・ロー・ボーと公式かつ非公式につながりを持ちやすくなる状況が生じてきたことを、懸念するものである。 14.委員会は、締約国に対し、子どもがチョー・ロー・ボーに非公式に関与することを防止しかつ禁止するために必要な措置をとるよう、促す。委員会はさらに、締約国が、主要な官公吏を対象とした、村落自警団への子どもの公式および非公式な関与に関する監視および説明責任の履行のための効果的な機構を設置するとともに、そのような徴募を禁じた法律に関する主要な官公吏の意識を高めるよう、勧告するものである。 軍学校 15.委員会は、出席のための最低年齢が16歳以上である学部段階において、カリキュラムに兵器の取扱い、陸海空の兵站、軍事規律および国際法のような軍事科目が含まれていることを懸念する。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 軍学校による選択議定書の規定の遵守を確保する目的で、自国の管轄下にあるすべての軍学校の包括的再審査を行なうこと。 (b) 軍学校に入学するすべての生徒について、性別、年齢、社会経済的背景および地理的所在ごとに細分化されたデータを収集する、中央集権化され、かつ定期的監視の対象とされる包括的な登録システムを設置すること。 (c) 軍学校が選択議定書の規定を遵守することを確保するため、教育省、国防省および子ども保護委員会による当該学校の定期的合同監視を行なうことを検討すること。 (d) 軍学校において、18歳未満の子どもに火器の使用訓練を行なわせることが明確に禁じられることを確保すること。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 17.委員会は、1956年刑法および子ども保護法(2003年)を含む締約国の法律において、軍隊、村落自警団または国以外の武装集団による18歳未満の者の徴募および(または)使用が明示的に犯罪とされていないことを、懸念する。 18.軍隊または武装集団による子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国が、軍隊、村落自警団または国以外の武装集団への子どもの徴募および関与を法律で明示的に犯罪とするよう、勧告する。 裁判権 19.委員会は、締約国の法律において、子どもの不法な徴募および敵対行為における子どもの使用の犯罪についての普遍的裁判権が設定されていないことを懸念する。委員会は、選択議定書上の犯罪についての裁判権を行使するためには双方可罰性が必要であること、および、犯罪人引渡しの条件として締約国と要請国間に条約が締結されていなければならないことを、遺憾に思うものである。 20.委員会は、締約国が、選択議定書で禁じられている行為(子どもを軍隊または武装集団に徴収しもしくは入隊させることまたは子どもを使用して敵対行為に積極的に参加させることを含む)に関する、当該犯罪がタイ国民または締約国と他の密接なつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の裁判権について、刑法または他の法律において明示的に定めるよう勧告する。委員会はまた、締約国が国際刑事裁判所ローマ規程を批准することも勧告するものである。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 21.委員会は、タイの公式なおよび非公式なキャンプで生活している、元子ども兵士を含む子どもの庇護希望者および難民(いわゆる「国外避難民」)が保護されておらず、かつ、難民/庇護希望者のなかから元子ども兵士を特定するための機構も存在しないことを、懸念する。委員会はまた、特定および保護のための十分な措置がとられていないため、ミャンマーに強制送還される人々のなかにミャンマーを脱出した子ども兵士も含まれている可能性があり、このような子どもがミャンマーで再度の徴募および(または)脱走罪を理由とする拘禁に直面するおそれがあることも、懸念するものである。委員会はとくに、キャンプの子どもが、ミャンマーからやってきてタイ国境内で活動する、国以外の武装集団による徴募および再徴募の危険にさらされていることを懸念する。 22.選択議定書第7条に基づく締約国の義務に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の管轄下にある子どもの庇護希望者および難民全員に関する、全国的なデータ収集・登録システムを設けること。 (b) 国外で武力紛争に関与したまたはその可能性がある子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)を特定するための機構を設置するとともに、当該特定を担当する要員が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取技法について訓練されることを確保すること。 (c) 武力紛争に関与したまたはその可能性がある子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な支援を提供すること。 (d) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた可能性がある子どもまたはそのような被害を受けるおそれがある子どもの、出身国へのいかなる強制送還も直ちにとりやめること。 (e) ミャンマーからやってきてタイ国境内のキャンプで活動する、国以外の武装集団による子どもの徴募および再徴募を防止すること。 (f) この点に関して国連難民高等弁務官(UNHCR)およびユニセフの技術的援助を求めること。 非常事態立法に基づく子どもの逮捕および拘禁 23.委員会は、南部国境県において子どもが戒厳令および非常事態令に基づく逮捕および拘禁の対象とされている旨の報告があることを懸念する。委員会はとくに、これらの治安維持関係法上、子どもの行政拘禁が禁じられておらず、かつ30日まで継続することができるとされており、その際、子どもが不当な取扱いおよび隔離拘禁または成人の被拘禁者と同じ房での拘禁の対象とされていることを、懸念するものである。 24.委員会は、締約国に対し、18歳未満の子どもに対する刑事上または行政上の手続を禁じ、かつ軍事拘禁センターへの子どもの拘禁を禁止する目的で、治安維持関係法を見直すよう求める。委員会は、18歳未満のすべての子どもが、あらゆる状況下で少年司法制度による扱いの対象とされるべきことを勧告するものである。 VIII.国際的な援助および協力 国際協力 25.委員会は、締約国が、赤十字国際委員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施におけるユニセフその他の国連機関との協力の増進を模索するよう、勧告する。 VIII.フォローアップおよび普及 26.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁および地方当局ならびにそれぞれ中央および県に設置されている子ども保護委員会および同小委員会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 27.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 28.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月10日)。
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/4775.html
沈黙の兵器 「沈黙の兵器」を言葉で検索 ■ クチコミ検索 #bf ■ ブログ2 #blogsearch2 ■ ニュース1 ロシアの軍用VIP機が北朝鮮に到着、兵器取引への懸念強まる - ブルームバーグ 【銃後の画家たち①】沈黙 ある美術教師の不運 焼失した栄光の画歴 - 西日本新聞 太陽フレアより怖い電磁パルス攻撃。米イージス艦を沈黙させた?新兵器とは=浜田和幸 - MONEY VOICE 注目映画紹介:「名探偵コナン 沈黙の15分」 新兵器が大活躍 手に汗握るアクション作 - MANTANWEB ■ ニュース2 ロシアの軍用VIP機が北朝鮮に到着、兵器取引への懸念強まる - ブルームバーグ 【銃後の画家たち①】沈黙 ある美術教師の不運 焼失した栄光の画歴 - 西日本新聞 太陽フレアより怖い電磁パルス攻撃。米イージス艦を沈黙させた?新兵器とは=浜田和幸 - MONEY VOICE 注目映画紹介:「名探偵コナン 沈黙の15分」 新兵器が大活躍 手に汗握るアクション作 - MANTANWEB ■ テクノラティ検索 #technorati .
https://w.atwiki.jp/dunpoo/pages/1035.html
NYダウ反落、915ドル安 米国の感染者急増を嫌気 【日経 2020/03/28】 【NQNニューヨーク=戸部実華】27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日ぶりに反落した。前日比915ドル39セント(4.1%)安の2万1636ドル78セントで終えた。米国の新型コロナウイルスの感染者数が26日に中国を上回って世界最多となるなど、感染拡大が続いた。世界的に外出制限の動きが広がり、人や物の移動の停滞長期化による景気不安から売りが膨らんだ。 米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、27日現在の世界の感染者数は58万人を超えた。米国の感染者数は10万人近くと連日で急増した。世界経済の下押し圧力が強まるとの懸念が売りにつながり、ダウ平均の下げ幅は1000ドルを超える場面もあった。 米国の大型経済対策の早期実現への期待でダウ平均は26日までの3日間で2割超上昇していたため、週末を控えて短期的な利益を確定する売りも出た。米下院は27日午後、2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策法案を可決した。ただ市場は可決を織り込み済みで相場の反応は限られた。 ダウ平均は週間では2462ドル(12.8%)上昇した。上昇率は米メディアによると1938年以来の大きさだった。 航空機のボーイングの下げが目立った。ムニューシン米財務長官は27日、大型経済対策法案は「航空業界の救済ではない」と強調した。同時にボーイングについて「連邦政府の支援プログラムを活用する意向は示していない」と述べたと伝わった。経済対策の期待で連日買われてきただけに、救済を巡る不透明感を意識した売りが優勢になった。 石油のシェブロンやエクソンモービルも大幅安だった。米原油先物相場が続落し、業績悪化への懸念が強まった。景気不安や米長期金利の低下で利ざや悪化懸念から銀行株のJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスも売られた。 ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数も反落し、前日比295.16ポイント(3.8%)安の7502.38で終えた。スマートフォンのアップルやソフトウエアのマイクロソフト、検索サイトのアルファベットなど主力株が大幅安となった。 URL https //www.nikkei.com/article/DGXMZO57370450Y0A320C2000000/
https://w.atwiki.jp/ogu_jpn/pages/33.html
訪問販売においてリピーターが少ない性別について話す場合、男性と女性の二つの主要な性別カテゴリーに焦点を当てることが一般的です。性別に基づく一般的な傾向を考える際には、社会的、文化的な要因や購買行動の違いが影響を与える可能性があります。ただし、性別による購買行動の違いは非常に複雑であり、また個人差も大きいため、以下の点は一般的な傾向としてのみ捉えてください。 ### 男性における訪問販売のリピーターが少ない可能性がある理由: 1. **技術関連商品への関心**:男性は技術関連の商品に興味を持ちやすいが、訪問販売ではこれらの商品はあまり扱われていないことが多い。 2. **独断での購入決定の少なさ**:家庭における共同の購入決定が多く、男性単独での高額な購入が少ない。 3. **伝統的な購買行動**:男性は伝統的な購買チャネル(店舗購入やオンラインショッピング)を好む傾向がある。 4. **プライバシーへの関心**:自宅への訪問販売に対するプライバシーの懸念が強い。 5. **情報収集の傾向**:購入前に広範な情報収集を行い、訪問販売では情報が限られているため不満を感じることがある。 ### 女性における訪問販売のリピーターが少ない可能性がある理由: 1. **詳細な比較検討の傾向**:多くの選択肢の中から慎重に比較検討を行い、訪問販売では選択肢が限られることが不満につながる。 2. **安全性への懸念**:特に女性は、自宅に訪問する販売員に対する安全性の懸念を持つことがある。 3. **感情的な購買よりも合理的な購買を好む**:感情的なアプローチよりも実用性や価格を重視する傾向がある。 4. **オンラインショッピングへの傾向**:特に若い女性は、オンラインショッピングの利便性を好むことが多い。 5. **家族や友人との相談**:購入前に家族や友人と相談することが多く、訪問販売では即決が難しい。 これらの点は、性別による一般的な購買行動の傾向を表していますが、個々の消費者の選好や行動は大きく異なる可能性があります。訪問販売の成功には、性別に関係なく、顧客のニーズや好みを理解し、信頼関係を築くことが重要です。また、市場の特性や文化的背景を
https://w.atwiki.jp/kubo-zemi/pages/1840.html
トップページ 新聞論評 新聞論評 2010 新聞論評 20101012 this Page {2010年10月11日 締 切 新聞論評 学籍番号 200914056 氏名 平岡輝長 1.新聞情報 見出し 海外企業買収が急増 新聞名 日本経済新聞 朝刊 発行日 2010年10月8日 紙面 7面 2.要約 日本企業による海外企業買収が急増しているのは2010年度上期で前年度同期比で54%増加した。特に内需型企業のM&Aが増えており、デフレや少子化など国内市場の縮小が懸念されているようだ。 (87文字) 3.論評 製造業の国外への工場進出など国内企業の関心が海外に向いているように思われる。今回目立ったのはNTTや飲料大手のアサヒビール、キリンホールディングスだ。要因として挙げられるのはデフレや少子化など国内市場の縮小への懸念と昨今の円高である。 輸出企業の収益の圧迫要因となる円高は海外企業の買収のメリットとなっており、国内の不振を補うため、また海外進出の足掛かりとするための海外企業買収がこれからもっと増えていくことが予想される。(230字) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/93.html
国連・子どもの権利委員会の第3回総括所見/最終見解等に対する日本政府のコメント 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が2010年7月13日付で受領したものとして第54会期のページに掲載したもの(掲載日不明)。外務省サイト「児童の権利条約(児童の権利に関する条約)」には未掲載(2011年10月3日現在)。平野裕二仮訳。 1.手続面 (1)日本政府の報告書に関する委員会の最終見解については、その公表に先立つ6月11日午後に先行未編集版が事務局から日本政府代表部に送付されてきた後、代表部は最終見解における誤解ないし事実誤認に関する若干のコメントを事務局に伝達した。同日、委員会の最終見解が、日本政府のコメントの一部を反映する形で、インターネット上で公表された。しかしながら、日本政府は、6月11日版にはなかったいくつかの新たなパラグラフ(CRC/C/JPN/CO/3のパラ23、28、73、75等)をともなう異なる版が、事実関係の誤りを検討する機会を締約国に与えないまま公表されたことを遺憾に思う。日本政府はまた、新たなパラグラフは技術的改訂の域を超えており、また一部のメディアは新たに挿入されたパラグラフの一部しか報道しなかったことに対しても委員会の注意を促したい。 (2)さらに、不正確な法律名、用語および日付など、未編集版に含まれていた事実関係の誤りに関する日本政府の指摘が公表された版に一部反映されていないこと(CRC/C/JPN/CO/3のパラ18、CRC/C/OPAC/JPN/CO/1のパラ6、7および13ならびにCRC/C/OPSC/JPN/CO/1のパラ20および21)を鑑みると、日本政府は遺憾ながら最終見解の信頼性についても疑義を呈さざるを得ない。 2.内容面 最終見解で指摘されたいくつかの側面に関して、日本政府は、児童の権利条約の実施に関わる措置および見解について以下のコメントを委員会に伝達する。 (1)児童の権利条約に関する報告書についての最終見解 パラ33 男女共同参画の推進に言及した教育基本法第5条の削除に関する委員会の懸念について、日本政府は以下の見解を表明する。 教育上、男女の共学は認められなければならないと定める旧教育基本法第5条の目的は、制定以降の60年間、日本において広く理解・実践されてきた。しかし、社会における男女共同参画は十全に実現されていないことから、男女双方が、互いにその人権を尊重し、責任を分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、相互の尊重および男女の協働によりより豊かな社会を築いていくために必要な能力および才能を、教育を通じて発達させていくことが重要である。これに基づき、「男女の平等」は、日本で教育を行うために求められる不可欠の目標のひとつとして、改正教育基本法第2条でとくに定められている。委員会の懸念は誤解に基づくものである。 パラ72および73 「各種学校」として認可されている外国人学校のほとんどは、実際には自治体による補助を受けている。さらに、これらの学校の卒業生が日本の大学入学試験を受験する資格がない場合がある旨の委員会の懸念については、中等学校を修了した者または同等の学力を有する者は、国籍に関わらず、誰でも大学入学試験の受験資格を有する。外国人学校の卒業生に関しては、以下の基準を満たす者は誰でも大学入学試験の受験資格を有するところである。 1)母国によって高等学校相当の課程を有する旨認定されている日本の外国人学校を卒業した者。 2)国際的な評価団体の認定を受けた外国人学校の12年の課程を修了した者。 3)大学が行う個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者に相当する以上の学力を有していると認められた者。 したがって、委員会の懸念は誤解に基づくものである。 パラ74および75(新規追加) 小中高校で使用される教科書に適用される教科書検定制度において、政府は歴史または歴史的事件に関する一定の見方を決定する立場にはない。民間企業が制作・編集する教科書の欠陥(明らかな誤りや著しく均衡を書いた記述など)を、審査時における客観的な学問的知見その他の適切な資料に照らして指摘するのは、政府関係者ではない研究者等から構成される教科書用図書検定調査審議会である。審査は、とくに他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを目的とする教育基本法と、近隣のアジア諸国との間の国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされているべきである旨の指針を掲げる、〔文部科学〕省の教科用図書検定指針である。したがって、日本の歴史教科書が、歴史的事件に関して日本の解釈のみを反映しているため、他国の児童との相互理解を強化していないという委員会の懸念は当を得ていない。 日本政府は、歴史教育の適正な実施を通じ、日本と世界に関する理解を深め、近隣諸国を含む他国との相互理解および相互信頼を強化しようと努めているところである。 パラ77 「犯罪行為の疑いがない場合でも庇護申請児童を収容する慣行が広く行われていること」に対する委員会の懸念については、犯罪的活動に数えられる退去強制事由もなく庇護申請児童が収容されることは考えにくい。また、「慣行が広く行われている」という点については、これらの児童の収容はやむを得ない場合に限られている。したがって、委員会の懸念は事実誤認に基づくものである。 パラ83 パラ83の「起訴前勾留」(pretrial detention)は、パラ84ないし85(g)にいう「起訴前勾留」とは明らかに異なる概念であるので、「観護措置」(protective detention)に訂正されるべきである。 パラ89 第3回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。 (2)武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約の選択議定書に関する報告書についての最終見解 パラ9 委員会は、締約国に対し、条約に基づく次回の定期報告において、自衛隊生徒として採用された者の社会経済的背景に関する情報を提供するよう求めている。しかし、防衛省は2009年4月に自衛隊生徒の採用を廃止しており、要請された情報を提供することはできない。 パラ19 第1回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。 (3)児童の売買,児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利条約の選択議定書に関する報告書についての最終見解 パラ45 第1回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。 (以上) 更新履歴:ページ作成(2011年10月4日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/212.html
総括所見:ベトナム(第3~4回・2012年) 第1回(1993年)/第2回(2003年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/VNM/CO/3-4(2012年8月22日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年5月31日に開かれた第1702回および第1703回会合(CRC/C/SR.1702 and 1703参照)においてベトナムの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/VNM/3-4)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の定期報告書(CRC/C/VNM/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/VNM/Q/3-4/Add.1)の提出により、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、建設的なかつ開かれた対話について、評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法上の措置がとられたことを積極的対応として歓迎する。 (a) 人身取引禁止法(2011年)。 (b) 障害者法(2010年)。 (c) 養子縁組法(2010年)。 (d) 保健ケア保険法(2008年)。 (e) 国籍法(2008年)。 (f) 教育法(38/2005/QH11)(2005年)およびその改正(44/2009/QH12)(2009年)。 (g) 子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)。 4.委員会は、締約国が2011年に国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准したことを歓迎する。 5.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書第5条1~4項について締約国が批准時に付した留保が撤回されたことを歓迎する。 6.委員会はまた、子ども関連のさまざまな国家的目標プログラム、制度上および政策上の措置、ならびに、とくに以下の計画が導入されたことも歓迎する。 (a) ベトナムの子どものための国家行動計画(2011~2020年)。 (b) 貧困削減計画(2011~2020年)。 (c) 社会経済開発計画(2011~2015年)および社会経済開発戦略(2011~2020年)。 (d) 子どもの保護に関する国家プログラム(2011~2015年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の前回の報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.200、2003年)、ならびに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/VNM/CO/1)に基づく第1回報告書についての委員会の総括所見(2006年)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の多くの懸念および勧告について対応が不十分であることを遺憾に思うものである。 8.委員会は、締約国に対し、未実施のまたは実施が不十分な勧告(立法、調整、資源の配分、独立の監視、条約に関する広範かつ体系的な研修、差別の禁止、子どもの最善の利益、アイデンティティに対する権利、教育および保健ならびに少年司法に関するものを含む)に対応するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップするよう、促す。 立法 9.委員会は、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)の採択、および、国内法を条約と調和させるために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、とくに子どもの定義および少年司法との関連ですべての法律が条約に一致しているわけではないこと、および、法改正の進展ペースが遅いことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、子どもの権利に関連するすべての法律の一貫性が不十分であること、および、このような法律の実施のために配分される資源が不十分であることも、懸念する。 10.委員会は、締約国が、国内法を条約に全面的に一致させるために法改正を継続するよう、勧告する。とくに立法および法改正プロセスの加速化との関連で、子どもの定義および少年司法に対して特段の注意が向けられるべきである。委員会はまた、締約国が、条約の実施を支えるため、法律の調整および一貫性を強化することも勧告する。「法体系発展戦略」の効果的実施が進められるべきであり、かつ、子ども関連の法律(とくに子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)および2013年に予定されている同法の改正ならびに同法を実施するための諸政令)の効果的執行のために、十分な資源が配分されるべきである。 調整 11.子どもの問題に関する調整が2007年に労働・傷病兵・社会問題省に移管されたことには留意しながらも、委員会は、国から省、県および町村の行政段階への権限移譲が、従前の調整機関の地方委員会がすべて解散したことに照らし、とくに地方段階において、条約の実施における一貫性のなさを助長してきたことを懸念する。この文脈において、委員会は、町村段階における調整機構が十分でないこと、および、町村段階で子どもの問題を担当する十分な人的資源が存在しないことを、依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、国、省、県および町村段階間の調整を強化することにより、すべての省における条約の一貫した適用を確保するための効果的機構を発展させるよう、勧告する。その際、締約国は、労働・傷病兵・社会問題省内の子ども保護・栄養局が強化され、かつ、同局に対し、国、省、県および町村段階で包括的な、一貫したかつ整合性のある子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、促されるところである。 国家的行動計画 13.2011~2020年の期間を対象とする子どものための国家行動計画がまもなく採択される予定であることには留意しながらも、委員会は、子どもに影響を与える既存のさまざまな国家的政策およびプログラムの間で適正な一貫性および調整が確保されていないため、一部の政策の効果が弱まり、かつ一部の部門で権限の重複が生じていることを、懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どものための国家行動計画をいかなる遅滞もなく採択し、かつその実施のために十分な資金を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、条約の全体としての実施を支える計画、プログラムおよび政策の一貫性および調整を強化するようにも促すところである。その際、締約国は、子どもの権利を引き続きすべての政策および国家的プログラムの主流に位置づけるための取り組みを進め、かつ効果的実施のための十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、奨励される。委員会は、締約国が、子どもに関連する政策、計画およびプログラムをさらに洗練させる目的で、これらの政策およびプログラムを引き続き監視しかつ評価して進展および成果を追跡するよう、勧告するものである。 独立の監視 15.委員会は、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)で概観したような、子どもの権利の促進および保護のための独立した監視機関が存在しないことに関する前回の懸念(CRC/C/15/Add.200、パラ12)を、あらためて強く表明する。 16.委員会は、締約国が、子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがい、その独立性および有効性を保障するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供された、独立の監視機関を設置するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの権利を含む人権の包括的かつ体系的監視を確保する目的で、パリ原則に一致した、十分な財源および職員を有する独立の人権機関を速やかに設置するよう、奨励するところである。 資源配分 17.教育および保健に対する予算支出が近年増えていることに留意し、かつ、急速な社会経済的発展の過程で締約国が直面している課題は認識しながらも、委員会は、子どものために配分される資源が乏しいこと、および、とくに乳幼児期、子どもの保護、教育および保健の分野で子どもに関する配分額および支出額に格差があることを、依然として懸念する。これにより、とくに遠隔地に住む子ども、障害のある子どもならびに民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子どもに影響が生じている。委員会はまた、締約国の子どものための使途指定付の資源に関する具体的情報がないことも懸念するものである。審査対象期間中に汚職と闘うために行なわれた努力(汚職対策法(2005年)の採択およびその後の汚職対策運営委員会事務所の設置を含む)は承知しながらも、委員会は、汚職が高水準で発生しており、そのため子どもの権利の実施のために利用可能な資金が減少していることを、なお懸念する。 18.委員会は、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)の成果である委員会の勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施のために配分される財源の水準を見直し、かつ必要なときは当該水準を高めるとともに、そのための予算配分を優先させること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもの保護を含む社会的保護のための政策およびプログラムにいっそうの資源を配分するとともに、その際、社会的および経済的に不利な立場に置かれたおよび周縁化された子ども(とくに遠隔地に住む子ども、障害のある子どもならびに民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子ども)に対して特段の注意を払うよう、促す。 (b) 予算全体を通じて子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているかに関する追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、 国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用する能力を発展させること。 (c) 可能であればとくに子どもたちの関与を得ながら、公の対話を通じた、透明なかつ参加型の予算策定手続を確保すること。 データ収集 19.委員会は、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)の改正で予定される、子どもに関するデータ収集についての新たな規則を導入しようとする締約国の意図にも関わらず、条約のすべての分野を対象とする中央データ収集システムが存在しないことを、依然として懸念する。委員会はまた、子どもの権利の享受に関する利用可能なデータ、とくに社会部門、子どもの保護、路上の状況にある子ども、搾取の状況下にある子どもおよび農村部の子どもに関する細分化された統計が限られていることにも、懸念を表明するものである。 20.委員会は、締約国に対し、子どもが有するすべての権利の実施を監視する目的で、子どもに関するデータ収集についての規則策定の計画を追求するよう奨励する。委員会は、関連のすべての省庁を通じて共有される標準化された子どもの権利指標を備えた中央データ収集システムを採用するべきである旨の、締約国に対する勧告をあらためて繰り返すものである。収集されたデータは、進展を評価し、かつ条約実施のための政策およびプログラムを策定するための根拠として分析することが求められる。締約国は、その際、締約国のすべての子どもの状況に関する分析を容易にする目的で、収集されたデータが年齢、ジェンダー、居住場所、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されることを確保するよう、勧告されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもに対する暴力、子どもの虐待および搾取(性的および経済的搾取を含む)、路上の状況にある子どもならびに遠隔地および農村部の子どもといった、配慮を要する分野における統計の収集に焦点を当てるよう、促す。 普及および意識啓発 21.委員会は、子ども、公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間で、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについての知識が限られていることに、懸念を表明する。委員会は、対話の際に締約国から提供された、条約が8つの民族的マイノリティ言語に翻訳された旨の情報に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が、それ以外のマイノリティの文字言語には翻訳されておらず、かつマイノリティ集団の間で十分に普及されていないために、民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子どもが有する、自己の基本的権利および基本的自由を知る権利が不相応に阻害されていることを、依然として懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、さまざまな教育段階のすべてのカリキュラムに子どもの権利の問題を編入するためにいっそうの努力を行なうとともに、子ども、家族ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間で行なう意識啓発プログラム(条約に関するキャンペーンを含む)を強化するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、人権教育のための世界プログラムの枠組みで勧告されているとおり、人権教育に関する国家的行動計画の策定を検討するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国に対し、子どもを含むマイノリティ住民に対し、条約が当該マイノリティ自身の言語で適切な形で配布されることを確保するとともに、実際の普及を確保するための効果的措置をとることも、促す。 研修 23.子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とする若干の研修についての情報にも関わらず、委員会は、このような研修が依然として散発的であり、かつ子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家を対象として体系的に実施されているわけではないことを、遺憾に思う。 24.委員会は、子どもともにおよび子どものために働くすべての専門家(とくに法執行官、検察官、裁判官、弁護士、教員、保健従事者およびあらゆる形態の代替的養護の現場で働く要員)を対象とした、子どもの権利に関する体系的、義務的かつ継続的な研修を確保するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 市民社会との協力 25.委員会は、ベトナム子どもの権利保護協会の設置(2008年)等を通じて、締約国における市民社会環境の醸成に関して達成された進展を歓迎するとともに、結社法案に留意する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの権利の充足状況を監視する目的で市民社会が活動できる余地が限られていることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもの権利の充足に関して、市民社会と政府期間との間で効果的な調整および協力が行なわれていないことを懸念する。 26.委員会は、市民的権利および自由との関連も含め、条約の規定の実施において市民社会がパートナとして果たす重要な役割を強調する。締約国は、条約の実施の全段階を通じて、市民社会、とくに権利基盤型の非政府組織(NGO)ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の市民社会部門との協力を、引き続きいっそう組織的に強化するよう奨励されるところである。委員会は、締約国に対し、結社法案を施行するための努力を加速させるよう、促す。 B.子どもの定義(条約第1条) 27.締約国が、条約にしたがって「子ども」の年齢を引き上げる目的で子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)を改正しようとしていることには留意しながらも、委員会は、締約国においては、現行の同法にしたがい、16歳未満の者しか子どもとみなされていないことを懸念する。 28.委員会は、締約国に対し、子どもの年齢に関する定義を条約に定められた定義にしたがって18歳まで引き上げる目的で、国内法およびとくに子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)を改正する努力を加速させるよう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.委員会は、脆弱な立場に置かれたさまざまな集団の子どもに対する差別を解消するため、審査対象期間中に締約国が行なった努力を承知する。これには、民族的マイノリティに属する子ども、障害のある子どもおよび移民の子どもに対する教育および保健サービスの提供を向上させるための、特別措置の採択も含まれる。しかしながら委員会は、法律および慣行において子どもが引き続き差別されており、かつ、脆弱な状況に置かれた締約国の子どもに対する直接間接の差別が根強く残っていることを、深刻に懸念するものである。とくに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 障害のある子どもに対するスティグマおよび差別的な社会的認識が継続しており、そのためこのような子どもがあらゆる場面で周縁化されていること。 (b) キン人に属する子どもと民族的マイノリティ集団に属する子どもとの間で、健康、教育および社会的保護のためのサービス提供に関する格差が根強く残っていること。これとあいまって、民族的マイノリティに対する社会の否定的見方も存続している。 (c) 移民の子どもが、登録されておらず、かつ基礎的な公共サービスにアクセスできないことの結果として、周縁化されていること。 (d) 女子に対する社会的差別が行なわれている結果、女子の学校中退およびとくに山岳地帯における女子の早期婚が生じており、かつ、このような差別が、女子の胎児を中絶する慣行の結果でもあること。 30.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもが、いかなる理由による差別も受けることなく、条約上の平等な権利を効果的に享受できることを確保するとともに、この目的のために以下の措置をとるよう、促す。 (a) 障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別、とくに教育制度および保健制度ならびに必須サービスの提供に関する差別の効果的解消を確保するため、速やかにあらゆる必要な措置をとること。締約国はとくに、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ23(a))で表明されたとおり、障害を理由とする子どもへの差別が法律で明示的に禁じられることを確保するために国内法を改正すること、あらゆる場面において障害のある子どもの積極的イメージを促進するための措置をとること、および、意識啓発を図り、かつ障害のある子どもに関連づけられたスティグマと闘うためのキャンペーンを開始することを、勧告される。 (b) ダーバン宣言および行動計画のあらゆる関連規定を全面的に考慮しながら、民族的マイノリティがその顕著な特質によって処罰されないことを確保する、民族的な差別および不寛容の防止に関する包括的かつホリスティックな戦略を採択し、かつ効果的に実施すること。その際、民族的マイノリティおよび先住民族集団に属する子どもにとくに焦点を当てながら、すべての集団の子どもが社会サービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (c) 反差別のためのすべての政策およびプログラムに移民の視点を含めるとともに、移民の子どもにとってのサービスへのアクセスを向上させるために既存のサービスのあり方を変更すること。 (d) 女子の学校中退、とくに山岳地帯における女子の早期婚および女子の胎児を中絶する慣行に焦点を当てながら、女子に対するあらゆる形態の差別を解消するためのキャンペーンを含む公的意識啓発プログラムを開始するとともに、反差別のためのすべての政策およびプログラムにおいてジェンダーが主流に位置づけられることを確保すること。 (e) これらの政策およびプログラムの進展および成果を緊密に追跡する、監視および評価のための特別システムを設置するとともに、達成された進展について、次回の定期報告書で委員会に情報を提供すること。 子どもの最善の利益 31.委員会は、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)に子どもの最善の利益の原則が導入されたことを歓迎するとともに、さまざまな法案(2004年法の改正案を含む)にこの原則が全面的に編入されていることに留意する。しかしながら委員会は、この原則がまだ子どもに影響を与えるすべての法律に含まれておらず、この原則に関する知識が依然として不十分であり、かつ、司法上および行政上の決定においてこの原則が十分に適用されていないことを懸念するものである。 32.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則を重視するすべての法案の採択を完了させるための努力を強化するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が子どもに影響を与えるすべての法律に統合されること、および、当該原則が広く知られ、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいてこの原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告するものである。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励される。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。 生命、生存および発達に対する権利 33.委員会は、多くは予防可能である怪我、ならびに、とくに溺水、交通事故および家庭内事故に関連した怪我が子どもの重要な死亡原因のひとつであることに、懸念とともに留意する。 34.委員会は、締約国が、子どもの怪我の予防に関する国家プログラム(2011~2015年)の効果的実施等も通じ、子どもを怪我、とくに溺水、交通事故および家庭内事故から保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国の政策およびプログラムにおける優先課題および目標に、引き続き事故の防止を含めるよう勧告するものである。委員会はこのほか、締約国に対し、子どもの溺水を防止する目的で学校カリキュラムに水泳の授業を導入しようとする意図を追求するとともに、子ども、親および公衆一般の交通安全意識を高めるための公的キャンペーンを強化するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 35.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を司法上および行政上の手続においても認めたさまざまな立法上の措置(子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)および民事訴訟法(2004年)を含む)が審査対象期間全体を通じてとられてきたこと、および、省および国レベルで子どもが意見表明を行なうための場が設けられていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) この原則の重要性に関する十分な意識が欠けていること、および、意見を聴かれる子どもの権利が裁判審理を含むすべての場面で組織的に適用されているわけではないこと。 (b) 国、地域または地方の段階において、子どもに影響を与える法律および政策が策定される過程で子どもとの組織的教義が行なわれておらず、かつ、子どもに関わる今後の行動計画の策定への子ども参加に関する、より具体的な指針が策定されていないこと。 36.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 意味のある子ども参加を制度的なものとする目的で、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を考慮されかつ参加する子どもの権利に関する、十分な資金を与えられた意識啓発プログラム(とくに親、教員、政府の行政職員、司法関係者および社会一般を対象とするキャンペーンを含む)を実施すること。 (b) 子どもにやさしい活動方法を通じて子ども評議会を強化し、かつ子どもの意見が十分に重視されることを確保する等の手段により、子どもに関連する法律および政策の策定に、子どものいっそうの関与を得るための措置をとること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 37.委員会は、締約国がとった多数の立法上および行政上の措置により、近年、出生登録率が相当に上昇したことを承知する。このような措置には、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)で出生登録に対する権利を法的に承認したこと、および、2007年の段階で出生登録手数料を廃止したことが含まれる。しかしながら委員会は、出生登録率における地理的および民族的格差が根強く残っており、2つの最貧地方(西北部および中部高原)で依然として登録率が最低であることに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、親、とくに遠隔地の親が、出生登録の要件および重要性を常に理解しているわけではないことを懸念する。 38.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ32)を想起しながら、締約国が、農村部および山間部で暮らす子どもに特段の注意を払いながら、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続しかつ強化するとともに、社会的および民族的背景ならびに親の在留資格に関わらず出生時に登録されるすべての子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンを行なうよう、勧告する。 アイデンティティの保全 39.委員会は、民族的集団および先住民族集団の子どもが、他とは異なるアイデンティティを保全しかつ行使するにあたって限られた可能性しか享受できないことを懸念する。 40.条約第8条に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どものアイデンティティの保全が全面的に尊重されることを確保するとともに、民族的マイノリティ集団をマジョリティであるキン人に同化させようとするすべての努力を解消するための効果的措置をとるよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団および先住民族集団に属する子どもの権利(名前、文化および言語など)を説明する立法上および行政上の措置をとるよう、促すものである。 結社、表現および情報へのアクセスの自由 41.委員会は、対話の際に締約国から提供された、子どもには締約国において結社を結成できる正式な可能性がある旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、実際には子どもの結社の自由が厳しく制限されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもの表現の自由が著しく制限されていること、および、子どもが締約国において情報への限られたアクセスしか享受できていないことに、懸念を表明する。この文脈において、委員会は、すべての情報源――およびとくにメディア――が政府の統制の対象とされており、多様性の余地がないことを懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、子どもにとって必要な、真正なかつ現実の結社の自由を確立する目的で、とくに結社法の採択を速やかに進めることによって法改正を行なうよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの表現の自由に対するすべての制限を廃止するための効果的な措置をとるとともに、子どもが多元的な意見に触れられることを保障する目的で、あらゆる形態の、国内外の多様な情報源から得られた情報および資料にアクセスする子どもの権利を確保するよう、促すものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 43.委員会は、締約国が、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約への加入を検討していることに留意する。しかしながら委員会は、多くの子どもが、薬物拘禁センターにおける行政拘禁の際、不当な取扱いまたは拷問(独居拘禁罰を科されることによるものも含む)を受けてきており、かつ現在も受けているという報告があることに、深い懸念を表明する。 44.条約第37条(a)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 薬物依存問題との関係で行政拘禁の対象とされている子どもに対する、あらゆる形態の拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を防止し、禁止し、かつ子どもをこのような取扱いから保護するために、あらゆる必要な措置をとること。 (b) このようなセンターにいる子どものために、容易にアクセスでき、かつ苦情について決定を行なう正式な権限を有する苦情申立て機構を導入すること。 (c) 子どもの拷問または不当な取扱いが行なわれたとされるすべての事案について迅速な、独立のかつ効果的な調査が行なわれることを確保するとともに、適切な場合には実行犯を訴追すること。 (d) 被害者に対してケア、回復、補償およびリハビリテーションのための措置を提供すること。 (e) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約を批准するとともに、その選択議定書の批准を検討すること。 体罰 45.委員会は、家庭における体罰が蔓延していること、および、しつけの手段として平手で叩くことをいまなお適切と考えている親が多いことを、懸念する。対話の際に締約国が行なった、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)の改正に体罰の禁止を含める予定である旨の宣言には留意しながらも、委員会は、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ34(e)にも関わらず、締約国が、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁止する法律をまだ成立させていないことを、依然として懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)を考慮にいれながら、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰が明示的に禁止されることを確保する目的で、子どもの保護、ケアおよび教育に関する法律(2004年)について構想されている改正を含む国内法改革を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの保護に関する国家プログラム(2011~2015年)の効果的実施等も通じ、体罰が子どものウェルビーイングに及ぼす有害な影響、および、子どもの権利にしたがった、体罰に代わる積極的なしつけおよび規律のための手段に関する、親および一般公衆の意識啓発を図るよう勧告するものである。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境を奪われた子ども 47.委員会は、路上の状況にある子ども、孤児、遺棄された子どもまたは自宅からの立ち退きを余儀なくされた子どもであるかに関わらず、家庭環境を奪われた子どもに関する信頼できる情報が存在しないことを懸念する。これには、このような状況にある子どもの特定、このような子どもの人数を限定するための防止措置、および、このような子どもの状況を改善し、かつ家族と再統合させるための努力に関する情報も含まれる。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境を奪われたすべての子どもに関する包括的調査を行ない、かつこのような子ども全員の全国的な登録簿を創設すること。 (b) 子どもの保護に関する国家計画(2011~2015年)の対象に、家庭環境を奪われた子どもも含めること。 (c) 家庭環境を奪われた子どもの発生を防止しかつ減少させる目的で根本的原因への対処を行なう包括的政策を、当事者である子どもの積極的関与を得ながら策定しかつ実施すること。 (d) このような状況にある子どもを対象とする、子どもが容易にアクセスできる十分なサービスを備えたアウトリーチプログラムを創設すること。 (e) それが子どもの最善の利益にかなう場合には家族再統合プログラムを、またはコミュニティを基盤とする代替的養護およびサービスを、支援すること。 代替的養護 49.委員会は、家庭環境を奪われた子どもの養護の脱施設化に向けた進展(具体的な社会援助政策の策定を含む)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子ども(とくに障害のある子ども、HIVに感染している子ども、両親または親の一方が死亡した子どもならびに遺棄された子どもおよび望まない妊娠により生まれた子ども)の施設措置が広く行なわれていることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国における子どもの施設措置の規模に関するデータが信頼できないことを懸念する。入所施設における養護についての国家的最低基準が策定されたことは承知しながらも、委員会は、ほとんどの入所型養護施設において条約の原則が遵守されていないこと、入所施設における子どもの身体的虐待および性的搾取が報告されていること、ならびに、家庭環境を奪われた子どもが施設に長期間措置されていることを、非常に懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益および子どもの意見を可能なかぎり考慮しながら、子どもの脱施設化(子どもを家族と再統合させることも含む)のための、明確な時間枠および予算を備えた戦略を策定すること。 (b) 子どもを対象とするすべての入所施設が、十分な資金ならびに人的資源および技術的資源を備え、登録され、かつ代替的養護施設として活動する公的認可を受けることを確保するとともに、これらの施設による、養護についての国家的最低基準の厳格な遵守を確保すること。 (c) 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)を考慮にいれながら、代替的養護への措置のプロセス全体を通じて子どもの権利が尊重されることを確保するための明確な指針を策定し、かつ、養護の質の体系的かつ定期的な審査および関連の専門家の定期的研修(子どもの権利に関するものを含む)を確保すること。 (d) 施設に措置される子どもの人数を減少させる目的で、コミュニティを基盤とする代替的養護の政策およびプログラムを発展させること。 (e) 代替的養護の現場における児童虐待についての苦情の受理、調査および訴追のための機構を設置するとともに、虐待の被害者が苦情申立て手続、カウンセリング、医療ケアおよび他の適当な回復援助にアクセスできることを確保すること。 養子縁組 51.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の主要な原則にしたがった養子縁組法が2010年に承認されたこと、および、2003年の決定第337/2003/QB-BTP号に基づいて国際養子縁組局(DIAが設置されたことを歓迎する。委員会はさらに、国際養子縁組は国内における他のあらゆる選択肢が尽くされた後の最後の手段とみなされている旨の締約国の発言、および、対話の際に締約国から提供された、2011年には子どもの養子縁組件数が減少した旨の情報に、留意するものである。 52.このような発展を継続させるため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組法の実施を強化し、かつその効果的執行のために十分な資源を配分するとともに、DIAが国際養子縁組を効果的に監視できるようにその権限を強化し、かつDIAに対して十分な人的資源および技術的資源を提供すること。 (b) 子どもの権利条約第21条(d)にしたがって、すべての民間養子縁組斡旋機関の効果的かつ組織的な監視を確保し、民間養子縁組斡旋機関の数をいまよりもさらに限定するための選択肢を考慮し、かつ、養子縁組プロセスがいかなる当事者の金銭的利得ともならないことを確保すること。 (c) 養子縁組の対象とされなければ家庭環境を有さないことになる子どものために、引き続き国内養子縁組を促進すること。 子どもに対する暴力(子どもの虐待およびネグレクトを含む) 53.国内法が、子どもに対する暴力についてのさまざまな規定を擁し、かつ児童虐待を禁じていることには留意しながらも、委員会は、条約第19条で定められた定義にしたがったあらゆる形態の子どもの虐待およびネグレクトが国内法の対象とされていないことを、依然として懸念する。委員会は、子どもおよびとくに女子に対する暴力および虐待が広がっていること、家族間暴力(子どもの身体的および性的虐待ならびにネグレクトを含む)を防止しかつこれと闘うための適切な措置、機構および資源が存在しないこと、子どもにやさしい通報手続が設けられていないこと、被虐待児のためのサービスへのアクセスが限られていること、ならびに、これらの点に関するデータが存在しないことに、懸念を表明するものである。 54.委員会は、締約国が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)を考慮にいれながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第19条にしたがってあらゆる形態の子どもの虐待を対象とするために国内法を改正するとともに、改正された法律を、とくに法執行官、司法関係者および子どもともにまたは子どものために働く専門家の間で普及すること。 (b) 子どもの虐待およびネグレクトに関する苦情を、子どもに配慮したやり方で受理し、監視しかつ調査するための全国的システムを強化すること。 (c) 南アジア地域協議(イスラマバード、2005年5月19~20日)の成果および勧告を考慮し、かつジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (d) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (e) あらゆる形態の暴力から子どもを保護するために必要な政策、プログラム、監視制度および監督制度を設置する政府の義務が行政上の措置に反映されることを確保すること。 (f) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所、世界保健機関、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所、国連薬物犯罪事務所およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)および第33条) 障害のある子ども 55.委員会は、障害のある人の権利に関する条約を批准しようとする締約国の意図に留意する。しかしながら委員会は、教育に対する権利との関連で障害のある子どもが置かれている、危惧すべきほど不利な立場(障害のある子どもの52%は学校にまったくアクセスできておらず、かつ圧倒的多数が初等学校を修了していない)について、非常に懸念を覚えるものである。委員会はさらに、学習または発達が遅れている子どもの教育について訓練を受けた教員がおらず、かつ十分な教育設備および教材が存在しないこと、および、専門教員の学校配置について地域格差があることに、懸念とともに留意する。委員会はこのほか、障害のある子どもの権利行使を妨げている障壁が、このような子どもの社会的インクルージョンを阻害する社会の社会的および経済的構造から生ずる問題としてではなく、その子どもの障害の結果としてとらえられており、その結果、障害のある子どもの高い施設措置率にもつながっていることを、懸念するものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに法的保護を提供するため、障害のある人の権利に関する条約の批准を速やかに行なうこと。 (b) 障害のある子どもとの関連で権利基盤アプローチを発展させるために現行の政策およびプログラムを見直すとともに、障害のある子どもによる学校へのアクセスをさらに促進する目的で、インクルーシブ教育および授業料無償政策を効果的に実施すること。 (c) 障害のある子どもが質の高いインクルーシブ教育へのアクセスを享受できるよう、農村部に住む障害児にとくに焦点を当てながら、インクルーシブ教育についてのスキルを有する十分な人数の教員を全校に配置すること。 (d) 広範に存在するスティグマおよび差別に対抗するため、公衆の意識啓発を図り、かつ、意識啓発および社会変革のためのこれらの介入に障害のある子どもを包摂すること。加えて、障害のある子どもを施設に措置する傾向を弱め、かつコミュニティを基盤として子どもをケアする解決策を追求すること。 (e) これとの関連で、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 健康および保健サービス 57.委員会は、締約国の保健指標が改善されたこと、とくに、妊産婦死亡率ならびに5歳未満児死亡率および乳児死亡率が減少し、かつ締約国における平均余命が情報したことを評価する。しかしながら委員会は、以下のように子どもの生存および発達に関わる一部の重要分野で進展が見られないことを、依然として非常に懸念するものである。 (a) 5歳未満児の発育阻害率および栄養不良率が、農村部においておよび民族的マイノリティの子どもの間ではるかに高くなっていること。 (b) 農村部においておよび民族的マイノリティ集団の間で新生児の死亡がより頻発しており、その原因として質の高いサービスおよび診療所の欠如が挙げられていること。 (c) 完全母乳育児率が依然としてきわめて低く(19%)、地域格差があり、かつ乳幼児に対する栄養の与え方についての親の意識が欠けていること。 (d) 予防接種率に民族的および地理的格差があること。 58.委員会は、締約国が、すべての地域のすべての子どもを対象とする保健ケアサービスについての共通基準を促進する目的で即時的措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 急性および慢性の低栄養に関わる地域格差を縮小させる目的で、乳幼児に対する前向きな栄養の与え方に関わる栄養上の戦略、政策および法律を策定すること。 (b) 県保健センターおよび町村保健所が利用可能な資源を増やすとともに、これらの施設が、とくに妊産婦保健ケアならびに新生児、乳幼児および就学前児童のケアとの関連で十分な人的および物的資源を有することを確保すること。 (c) 関連の政府職員を対象とするキャンペーン、情報提供および研修、妊産婦病棟で働く職員の研修ならびに親の教育を含む意識啓発措置を通じて、生後6か月間の完全母乳育児の慣行を向上させるための即時的措置をとること。また、とくに栄養製品および母乳代替品の販売促進に関する政令第21号の改訂を通じ、母乳代替品の販売促進に関わる現行の販売促進規制の監視を強化するとともに、同政令の違反者、とくに母親に対して人工乳の宣伝および無料試供品の提供を行なった者に対して措置がとられることを確保すること。 (d) 民族および地理的所在に特段の注意を払いながら、乳児および就学前児童の予防接種率を高めるための措置(意識啓発キャンペーンおよびサービス提供の拡大を含む)をとること。 思春期の健康 59.委員会は、思春期の健康に関する情報がないこと、および、10代の中絶が広く行なわれているという報告があることに、懸念を表明する。委員会はさらに、青少年による、避妊手段ならびにリプロダクティブヘルスに関するサービス、援助およびカウンセリングへのアクセスが限られていることを懸念するものである。 60.委員会は、締約国に対し、思春期の健康に関するデータを収集し、かつ次回の定期報告書で委員会に報告するよう、促す。子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、意識啓発を図り、かつ青少年がセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わるサービスにアクセスできるようにすること、10代の妊娠および中絶の件数の増加に対応すること、ならびに、避妊手段ならびにリプロダクティブヘルスに関する良質なサービス、援助およびカウンセリングへのアクセスを促進することを、勧告するものである。 HIV/AIDS 61.委員会は、HIV/AIDS予防との関連で見られた進展に評価の意とともに留意するものの、HIV/AIDS関連の法律の執行が弱いこと、および、HIV/AIDSに感染した子どもがスティグマを付与され、より施設に措置されやすく、かついっそう学校から中退する傾向にあることを、依然として懸念する。委員会はこのほか、締約国におけるHIV感染の規模についての情報が信頼できないことにより、政策および予防機構の断片化が生じていることを懸念するものである。 62.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、HIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37付属文書)を考慮するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの影響を受けている子どもが学校を中退せず、かつインクルーシブ教育を享受できることを確保することも目的としながら、法執行官、教員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とする研修を実施する等の手段により、HIV/AIDS関連の法律の効果的執行を確保するためにあらゆる措置をとること。 (b) HIV/AIDSに感染した子どもへのスティグマと闘うキャンペーンも含む意識啓発プログラムを開始するとともに、とくにコミュニティを基盤とする子どものケアおよび援助のためのサービスを設置することにより、HIV/AIDSの影響を受けている子どものいる家族が、子どもを施設に行かせずに家庭環境のもとに留めておけるような環境を醸成すること。 (c) 条約の4つの一般原則である差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)をとくに重視しながら、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合するとともに、HIV/AIDSの影響を受けている子どものための国家行動計画(~2010年)を、2020年までの「ビジョン」とあわせて効果的に実施すること。 (d) 信頼できるデータを生成する目的で、保健関連の細分化されたデータの質および規模を、その収集および活用の両面で向上させること。 薬物および有害物質の濫用 63.薬物依存の子どもを対象としたコミュニティを基盤とする治療の導入計画について、対話の際に締約国から提供された情報には留意しながらも、委員会は、以下のことを非常に懸念する。 (a) 薬物依存の子どもが行政拘禁制度の対象とされていること。 (b) 薬物拘禁センターで子どもの不当な取扱いが行なわれているという報告があり、かつ査察が行なわれていないこと。 (c) これらのセンターに拘禁されている子どもが成人から分離されていないこと。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物依存の子どもを対象とした行政拘禁制度の改革計画を追求するとともに、コミュニティを基盤とする治療に焦点を当てながら、このような状況にある子どもの自由の剥奪に代わる措置を発展させること。その際、締約国は、子どものリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムが提供されることを確保するべきである。 (b) 薬物拘禁センターを監視するための効果的制度(定期的査察を含む)を確立するとともに、これらのセンターにおける子どもの虐待のあらゆる事件を、加害者を裁判にかけ、かつ被害を受けた子どもに救済を提供する目的で効果的に調査すること。 (c) 子どもの被拘禁者がすべての拘禁現場で成人から分離されることを確保し、かつ子ども用の拘禁房が利用可能であることを保障すること。 生活水準 65.貧困削減のために締約国が相当の努力を行なっており、世帯貧困率が毎年2%下降するという成果を生み出していることに留意し、かつ、締約国が2010年に最貧国グループから低中所得国グループへと移ったことに留意しながらも、委員会は、締約国において多数の子どもがいまなお貧困下で暮らしており、かつ子どもの貧困が一部の民族的マイノリティおよび移民集団に不相応に集中していることを、深く懸念する。加えて、現在進められている、清潔な水および農村衛生に関する国家的重点目標プログラムには留意しながらも、委員会は、とくに農村部においておよび民族的マイノリティ住民の間で安全な飲料水の供給に関する深刻な欠落が存在すること、ならびに、家庭および学校における衛生設備が不十分であり、子どもの健康および子どもを在学させておく能力に影響が生じていることに、懸念を表明するものである。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもがいる低所得家庭を対象とした社会扶助現金移転プログラム(政令第67号/政令第13号)を強化しかつ維持するとともに、このような支援が、民族的マイノリティ系のすべての貧困家庭および準貧困家庭、インフォーマル労働者の家族ならびに移民家族に対しても適用されることを確保すること。 (b) 国家貧困削減プログラムの効果的実施も通じて、周縁化された集団ならびにとくに民族的マイノリティおよび移民集団の貧困と闘うための努力を、子どものニーズおよび権利に関わる問題にとくに焦点を当てながら、強化すること。これとの関連で、締約国は、すべての者(とくに子どもを含む)の機会均等を促進するための措置、ならびに、とくに雇用、教育および子ども向けのサービスに焦点を当てた保健ケアに関連して、民族的マイノリティ集団および先住民族コミュニティの経済的な成長および発展を刺激するための措置をとるべきである。 (c) 対象である受益者が、その権利および利益に関わる決定についての十分な協議および参加を通じて積極的に関与することを確保すること。 (d) 委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ42)にしたがい、安全な飲料水および衛生設備に関わる、十分な資金的裏づけのある政策およびプログラム(清潔な水および農村衛生に関する国家的重点目標プログラムを含む)を、とくに農村部において策定しかつ実施するとともに、学校の子どもが衛生設備に公平にアクセスできることを確保すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 67.委員会は、教育開発戦略計画(2001~2010年)および万人のための教育国家行動計画(2003~2015年)の採択を歓迎する。委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ48)、とくに予算配分額を増加させ、初等中等学校就学率を高め、かつ周縁化された集団に対する金銭的な教育インセンティブを発展させるべきである旨の勧告を実施しようとする努力を評価し、かつ、民族的マイノリティに属する子どもを対象として二言語教育を提供するために締約国がユニセフと共同で行なっている努力を評価しながらも、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 乳幼児期の発達を目的とする国営の施設およびプログラムが不足していること。 (b) 無償の初等教育に関する憲法上の規定にも関わらず、実際には教育関連の費用が課されており、最貧層ならびに主として民族的マイノリティの子どもおよび移民の子どもに影響が生じていること。 (c) 民族的マイノリティの子どもとキン人の子どもとの間に、学校へのアクセスに関する著しい格差が引き続き存在していること。 (d) 主としてアクセスの欠如、貧困に関わる理由および言語上の障壁を理由として、初等中等学校段階における、とくに民族的マイノリティの子どもの中退率が引き続き高いこと。 (e) 民族的マイノリティおよび先住民族集団を対象とした、母語を基盤とする教育へのアクセスが限られていること。民族的マイノリティおよび先住民族の教員の人数が不十分であり、かつ、これらの教員を対象とした、二言語教育に関する適切な研修が行なわれていないこと、および、民族的マイノリティまたは先住民族集団に属する子どものための教科書の質が低いことにより、このような集団に属する子どもの、自己の独自の言語を十分に学習しかつ保全する権利が阻害されていること。 (f) 民族的マイノリティ向けの寄宿学校に在学している子どもの状況の監視に関する情報がないこと。 (g) 教育の質が低く、かつ、教育手法が不適切であって子どもの参加を可能にしていないこと、および、教員の能力が低いこと、ならびに、人権教育(とくに子どもの権利)が学校カリキュラムに含まれているかどうかについての情報がないこと。 68.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮し、かつ以下の措置をとるよう、勧告する。 (a) 5歳未満児のすべてのニーズを網羅するホリスティックなアプローチを用いながら、十分な資金的裏づけのある乳幼児期発達プログラムを開発すること。また、5歳未満児を対象とする幼稚園教育完全普及プログラム(2010~2015年)を速やかに採択しかつ実施すること。 (b) 教育がすべての者にとって事実上無償とされることを確保するとともに、民族的マイノリティ集団の子どもおよび移民の子どもを含む、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとくに注意を払うこと。その際、とくに、すべての間接的費用を撤廃し、かつ、経済的に不利な立場に置かれた家庭の子どもを対象とする教育支援機構を導入すること。 (c) 委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ48(a))にしたがい、すべての集団の子どもに対して教育への平等なアクセスを確保する目的で、とくに女子についておよび農村部において学校へのアクセスを高めるためにあらゆる適切な措置をとるとともに、すべての子どもを対象として良質な教育に対する権利を確保すること。 (d) 学校中退率に関する民族的および地理的格差を縮小する目的で、民族的マイノリティに属する子どもおよび農村部に住んでいる子どもを対象として、第2の機会教育プログラムのような効果的な積極的差別是正措置をとること。 (e) 民族的マイノリティの子どもがより幅広い社会に完全参加できるようにするため、マイノリティ言語を初期学校段階における教授手段と定め、かつこれらの子どもが両方の言語に熟達することを目的とした民族的マイノリティ集団向けの二言語教育を支える、十分な資源の裏づけがある政策を開始すること。民族的マイノリティ言語の話者である教員に対する研修および指導の提供を強化すること。また、教科書の内容の執筆に参加するよう地元教員に要請することにより、民族的マイノリティに属する子どものための良質な学校教科書を発行することに対し、十分な資金を提供すること。 (f) 民族的マイノリティ向けの寄宿学校を監視するための効果的システム(定期的査察を含む)を確立するとともに、すべての児童虐待事案について調査を行なうこと。 (g) 教員に対して合理的給与を支払うことにより、教員が良質な授業を行なえるようにすること。教育専門家の関与を得て、カリキュラムおよび教授手法の徹底的改革が行なわれるべきである。学校カリキュラムに、子どもの権利を含む人権が含まれることを確保することが求められる。 (h) ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 経済的搾取(とくに児童労働) 69.委員会は、締約国で、とくにインフォーマル部門における児童労働が依然として広がっていること、最低労働年齢が相対的に低いままである(軽易労働について12歳)であること、労働監察の立ち入り調査が限定されていること、および、薬物拘禁センターに収容されている子どもが労働を義務づけられており、したがって強制労働をさせられていることを、非常に懸念する。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 容認できない条件下における児童労働(低年齢児の労働および危険な条件下での労働を含む)を撤廃するために即時的かつ効果的な措置をとること。 (b) 子どもを労働力人口へと押しやる根深い社会経済的要因に対応するための効果的措置、とくに児童労働を回避する目的で学校出席率を高めかつ学校中退率を低減させるための効果的措置を実施すること。 (c) とくに通達21/1999/TT-BLDTBXHを改正し、かつ子どもは13歳以上でなければ「軽易労働」で雇用されることはできないと定めることにより、国内法令を就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)と調和させるために必要な措置をとるとともに、子どもを保護し、かつ子どもの強制労働を使用した者が訴追されることを確保するために労働法の執行を強化し、かつ、賠償および制裁を行なうこと。 (d) 労働監察において労働環境のすべての側面(薬物拘禁センターにおける子どもの強制労働の使用およびインフォーマル部門における児童労働を含む)が包括的に監視されることを確保するため、労働監察を向上させること。 (e) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号(1999年)にしたがい、薬物拘禁センターにおける子どもの強制労働の慣行を防止しかつ終了させる目的で、政令第135号(2004年)の法的改正によるものも含む効果的措置をとること。 (f) この点に関してILO・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めること。 性的搾取および人身取引 71.委員会は、子どもの商業的性的搾取および人身取引と闘うためにとられた、さまざまな立法上および行政上の措置を歓迎する。しかしながら委員会は、児童買春が増えていること、買春目的のものを含む(ただしこれに限られない)子どもの人身取引件数が増加していること、および、主として貧困関連の理由で商業的性的活動に従事する子どもの人数が増えていることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、性的搾取を受けた子どもが警察によって犯罪者扱いをされる可能性が高いこと、子どもにやさしい特別通報手続が設けられていないこと、および、刑法の一部の規定(児童買春に関わる第254~256条を含む)が16歳未満の子どもにしか言及していないことを、懸念する。 72.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。 (a) 売買春対策行動計画(2011~2015年)および人身取引対策行動計画(2011~2015年)を十分に実施する等の手段により、児童買春および子どもの人身取引と闘うための努力を強化すること。 (b) 脆弱な立場に置かれた集団の子ども(ストリートチルドレンおよび貧困家庭または準貧困家庭の子どもを含む)に焦点を当てながら、子どもの性的搾取および虐待を防止するための戦略を策定しかつ実施すること。 (c) 子どものセックスワーカーが犯罪者としてではなく被害者として扱われることを確保するため、行政法および刑法を改正しかつ普及すること。子どもにやさしい通報手続を発展させるとともに、被害を受けた子どもがこれらの手続について知り、かつこれにアクセスできることを確保すること。また、性的搾取および人身取引の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムならびに秘密が守られるカウンセリングサービスを発展させること。 (d) 委員会の前回の勧告(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1、パラ11(a))にしたがい、選択議定書第3条に列挙されているすべての行為を、これが18歳未満のすべての者に対して行なわれたときには明示的に犯罪とする目的で、国内法を子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に調和させること。 (e) 国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准を検討すること。 少年司法の運営 73.少年司法の一部分野における進展にも関わらず、委員会は、委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.200、パラ54)への全面的対応が締約国によって行なわれていないことを遺憾に思うとともに、とくに以下のことについて懸念を表明する。 (a) 包括的な少年司法制度が存在しないこと(少年裁判所が設置されていないことを含む)、および、現行措置が16歳未満の子どもしか対象としていないこと。 (b) 若年犯罪者の人数が増えており、かつ若年犯罪者に対応する締約国の制度が懲罰的なものであること。 (c) 子どもの拘禁に代わる選択肢が限られており、かつ更生および再統合のためのプログラムが存在しないこと。 74.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) とくに18歳未満のすべての子どもが少年司法制度の対象とされるようにすることにより、刑法、刑事訴訟法および行政違反行為〔取扱い〕令が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するため、これらの法令の改正を速やかに進めること。 (b) 専門の少年裁判所、および、子どもを対象とする専門の警察保護部局を設置すること。 (c) ダイバージョンおよび自由の剥奪に代わるその他の措置に焦点が当てられることを確保するため、少年司法制度に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、更生および再統合のためのプログラムが提供されることを確保すること。 マイノリティ集団に属する子ども 75.委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団に属する子どもとマジョリティ人口に属する子どもとの間に存在する、条約が対象とするすべての分野における権利の享受の格差を縮小するためにあらゆる効果的措置をとるとともに、前掲の諸パラグラフで勧告されているとおり、生活水準、保健および教育に特段の注意を払うよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、マイノリティ問題に関する国連独立専門家の報告書(A/HRC/16/45/Add.2)および人権と極度の貧困の問題に関する国連独立専門家の報告書(A/HRC/17/34/Add.1)に掲げられた勧告、とくにマイノリティ関連の勧告を遵守するための努力を強化するとともに、この点に関して達成された進展について、委員会に対する次回の定期報告書で報告するよう、促すものである。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく勧告(2006年)のフォローアップ 76.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の批准時に締約国が行なった、「18歳未満の者は、国の独立、主権、統一および領土保全を保護するための緊急の必要がある場合を除き、軍事的戦闘に直接関与しない」旨の宣言が維持されていることを、依然として懸念する。委員会はさらに、締約国がまだ国際刑事裁判所ローマ規程を批准していないことに、懸念を表明するものである。 77.委員会は、締約国が前掲宣言を撤回するよう勧告するとともに、締約国に対し、18歳未満の者が「敵対行為に直接参加」するべきではないと定めた、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書第1条を想起するよう求める。委員会はまた、締約国がローマ規程の批准を検討することも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、選択議定書に基づく勧告(CRC/C/OPAC/VNM/CO/1)の実施およびフォローアップに関する情報を、委員会に対する次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく勧告(2006年)のフォローアップ 78.委員会は、委員会が行なった勧告(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1)のフォローアップに関する情報がないことを懸念する。 79.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施に関するフォローアップおよび情報を、委員会に対する次回の定期報告書に記載するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、選択議定書に基づく前回の勧告(CRC/C/OPSC/VNM/CO/1)、とくに刑法が選択議定書上の犯罪、域外裁判権および犯罪人引渡しについて十分に網羅することの確保に関わる勧告が遵守されることを確保するよう、勧告するところである。 I.国際人権文書の批准 80.委員会は、締約国が、まだ加盟国となっていない国連の中核的人権条約およびその選択議定書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約、難民の地位に関する1951年条約および同1967年議定書、無国籍者の地位に関する1954年条約ならびに無国籍の削減に関する1961年条約を批准するよう、勧告する。加えて締約国は、家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)を批准するよう勧告されるところである。 J.地域機関および国際機関との協力 81.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、ASEAN政府間人権委員会およびASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 82.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国民議会、関連省庁、最高裁判所ならびに広域行政機関および地方行政機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 83. 委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 84.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年9月1日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 85.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年11月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/312.html
総括所見:イラク(第2~4回・2015年) 第1回(1998年)OPAC(2015年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IRQ/CO/2-4(2015年3月3日)/第68会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月21日に開かれた第1958回および第1960会合(CRC/C/SR.1958 and 1960参照)においてイラクの第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/IRQ/2-4)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの権利に関する理解の向上を可能にしてくれた、締約国の第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/IRQ/2-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/IRQ/Q/2.4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書の批准を歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2008年6月)。 (b) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2008年6月)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2013年3月)。 (d) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2011年7月)。 (e) 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(2010年11月)。 (f) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の、国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(2010年4月)。 (g) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年2月)。 (h) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関(ILO)第182条約(1999年)(2001年7月)。 (i) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する1980年10月25日のハーグ条約(2013年)。 4.委員会はまた、以下の憲法上および立法上の措置がとられたことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 家族、母性および子ども時代の保護のための規定を含む2005年イラク憲法。 (b) イラク・クルディスタン地域における家族間暴力の防止に関する法律(法律第8号)(2011年)。 (c) 人身取引対策法(法律第28号)(2012年)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 国家開発計画(2013~2017年)。 (b) リプロダクティブヘルスおよび母子保健のための国家戦略(2013~2017年)。 (c) クルディスタン地域における質の高い教育へのアクセス促進戦略(2013~2018年)。 (d) イラクにおける非識字根絶のための国家戦略(2011~2015年)。 (e) 国家教育・高等教育戦略(2011~2020年)。 (f) 国家腐敗対策戦略(2010~2014年)。 (g) 貧困削減戦略(2010~2014年)。 (h) 委員会はまた、締約国が2010年2月に行なった、国際連合の諸特別手続に対する招請も歓迎する。 III.条約の実施を妨げる要因および困難 6.委員会は、締約国で継続中の武力紛争、政治的不安定状況および武装集団の存在、宗派的および民族的分断の強化ならびに宗教的過激主義の勃興がもたらすとりわけ深刻な影響に留意する。これは子どもの権利の深刻な侵害につながっており、かつ条約に掲げられた権利の実施にとっての重大な障壁であって、とくにいわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)に所属する犯罪集団が行なうテロ行為によって悪化している。委員会は、締約国に対し、国際人権法上の義務は継続していること、および、条約上の権利は常にすべての子どもに適用されることを想起するよう求めるものである。委員会はまた、締約国に対し、住民の保護について第一次的責任を負っているのは締約国であり、したがって、民間人に対する過度なおよび致死的な実力の使用を停止し、かつ子どもに対するさらなる暴力(殺害および傷害を含む)を防止するために即時的措置をとるべきであることも想起するよう求める。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国に対し、1998年に行なわれた委員会の勧告(CRC/C/15/Add.94)のうち実施されていないものまたは十分に実施されていないものに対応するためにあらゆる必要な措置をとるよう促すとともに、とくに、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 第14条第1項に付した留保を撤回の方向で見直す可能性について検討すること(パラ6)。 (b) 子ども福祉庁の予算配分額ならびに条約を実施するためのその権限および権威を増大させることにより、同庁を強化すること(パラ9)。 (c) 国および地域のレベルの双方で、子どもの権利に関与しているさまざまな政府機関間の調整を強化するとともに、子どもの権利の分野で活動している非政府組織(NGO)とのより緊密な協力を確保するためさらなる努力を行なうこと(パラ10)。 (d) 条約が対象とするすべての領域を編入することを目的として、データ収集システムを見直すこと。このようなシステムは、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、働いている子ども、少年司法の運営の対象となった子ども、女子、ひとり親家庭の子どもおよび婚外子、遺棄されかつ(または)施設措置された子どもならびに障害のある子どもを含む、被害を受けやすい状況に置かれた子どもをとくに重視しつつ、あらゆる子どもをその対象とするべきである(パラ12)。 (e) とくに条約第2条、第3条および第4条を考慮にいれて、子どもの経済的、社会的および文化的権利の保護を確保するための予算配分を優先するとともに、これとの関連で、都市部と農村部との間および諸県間の格差を解消するよう努めること(パラ13)。 立法 8.委員会は、双方向的対話の際に代表団から提供された、ジャファリ人事法案は廃案とされた旨の情報、および、同法案がふたたび上程されることはない旨の表明を歓迎する。 9.委員会はまた、多くの子ども関連法案、とくに子ども保護法案、クルディスタン自治地域で提案されている子ども保護法案、子ども議会法案および子ども福祉庁法案がまだ議論および検討の過程にあることにも、評価の意とともに留意する。 10.委員会は、締約国に対し、条約の規定との全面的両立性を確保しながらこれらの法案/法律の採択手続を速やかに進めるよう促す。 独立の監視 11.2008年法律第53号によりイラク人権高等委員会が設置され、かつ2010年の法律第4号によりクルディスタン地域独立人権委員会が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの機関が独立性を欠いており、かつその資源が限られていることを懸念する。委員会はまた、子どもの権利を監視するための具体的機構を設置する計画がまだ実現されていないことも懸念するものである。 12.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らして、締約国に対し、条約の実施を監視すること、および、自己の権利の侵害に関する子どもの苦情を子どもに配慮した迅速なやり方で受理し、調査しかつこれに対応し、かつ当該侵害に対する救済を提供することを目的とする独立機関を、イラク人権高等委員会内にまたは独立の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)として、速やかに設置するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、高等委員会およびこのような子どもの権利監視機関がパリ原則を遵守すること、および、いかなる独立の監視機構も、適正な資源を与えられ、かつ領域全体に配置されることを確保するようにも促すものである。 腐敗 13.委員会は、国家腐敗対策戦略(2010~2014年)は歓迎しながらも、締約国で腐敗が著しく蔓延しており、かつ説明責任を確保するための機構が設けられていないこと、および、その結果として子どもの権利に有害な影響が生じていることを懸念する。 14.腐敗の防止に関する国際連合条約にのっとり、委員会は、締約国に対し、腐敗を防止しかつ根絶することならびに腐敗行為を理由として国および地方の官吏を訴追することを目的として、確固たる措置をとるよう促す。 市民社会との協力 15.委員会は、市民社会組織および人権擁護者(子どもの権利に活動をとくに行なっている組織および個人ならびに暴力から避難する女性・女子を援助している組織および個人を含む)が、恒常的ないやがらせ、恣意的監視および令状なしの捜索の対象とされていること、ならびに、その多くが違法にかつ秘密裡に活動することを余儀なくされていることを懸念する。 16.委員会は、締約国に対し、人権擁護者が民主的社会の諸原則に一致する方法で安全に活動を遂行できることを確保するための措置を速やかにとるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、人権擁護者または市民社会組織の構成員に対する脅迫およびいやがらせとして報告されている事案が速やかにかつ独立の立場から調査されること、および、これらの人権侵害について責任を負う者がその責任を問われることを確保するようにも促すものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 17.委員会は、女子が、ジェンダーを理由とする根強いかつ極度の差別を人生のもっともはやい段階から子ども時代全体を通じて経験しており、かつ、このような差別により、家族間暴力、心理的および性的な搾取および虐待、早期婚、強制婚および一時的婚姻(ムタア)、ならびに、教育にほとんどアクセスできない状況にさらされていることを懸念する。 18.委員会は、締約国に対し、女子を差別するすべての法律(遺産の処理〔に関するもの〕を含む)をこれ以上遅滞することなく廃止するとともに、明確に定義された達成目標および適切な監視機構をともなう包括的な戦略を策定することにより、女子に対する否定的な態度、慣行および深く根づいたステレオタイプを解消するよう、促す。 19.委員会は、締約国に存在するさまざまな集団の子どもに対する根強い差別について懸念を覚える。このような子どもには、民族的および(または)宗教的マイノリティ集団に属する子ども(とくに身分証明書類および社会サービスへのアクセスに関して)、婚外子、複合的な権利侵害を受けている障害のある子ども、ならびに、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの子ども、これらの集団の者に養育されている子どもおよび社会の規範と一致しない振舞いをする子どもが含まれる。 20.委員会は、締約国が、あらゆる事由に基づく差別からの全面的保護を確保し、被害を受けやすい状況に置かれているすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別に対処する包括的な戦略の採択および実施を進め、かつ、差別的な社会の態度と闘うよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 民族的および宗教的マイノリティの子どもが社会に全面的に統合されることを確保するために積極的措置をとること。 (b) 障害のある子どもが社会に全面的に包摂され、かつすべての公共サービスに平等にアクセスできることを、法律によりかつ実際に確保すること。 (c) 性的指向およびジェンダーアイデンティティの平等およびこれらの事由に基づく差別の禁止に関する公衆の意識啓発を図ることにより、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの集団に属する子どもまたはこれらの集団の者に養育されている子どもならびに社会の規範と一致しない振舞いをする子どもがいかなる形態の差別も受けないことを確保すること。 子どもの最善の利益 21.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利を締約国が十分に法律に統合しておらず、かつ、公的職員を対象としてこの問題に関する研修が実施されていないことに、懸念とともに留意する。 22.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利がすべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて一貫して適用されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 23.委員会は、いわゆるISILが子どもをあえて標的として残忍なやり方で殺害していること、および、とくに以下のことを嫌悪しかつ非難する。 (a) いわゆるISILによって、宗教的および民族的マイノリティに属する子どもが組織的に殺害されていること(男子の一斉処刑事件が複数起きていること、ならびに、子どもの頭部切断、はりつけおよび生き埋めの報告があることを含む)。 (b) 現在行なわれている戦闘(イラク治安部隊による空爆、砲撃および軍事作戦によるものを含む)ならびに地雷および爆発性戦争残存物によって、きわめて多数の子どもが殺害されまたは重傷を負っていること。 (c) いわゆるISILによって多数の子どもが誘拐されており、その多くが、親の殺害を目撃したことにより深刻なトラウマを負い、かつ身体的および性的暴行を受けていること。 24.委員会は、締約国に対し、子どもおよびその家族の安全および保護を確保するためにあらゆる必要な行動をとること、ならびに、子どもおよび家族が紛争の影響を受けている地域を離れ、かつ基礎的な人道援助にアクセスできるようにすることを強く促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 紛争関連の人権侵害および虐待(とくに戦争犯罪または人道に対する犯罪に相当するもの)の実行犯を裁判にかけること。 (b) いわゆるISILおよび他の武装集団に対して武力作戦を実行する際、区別の原則および均衡性の原則を尊重するとともに、民間人(とくに子ども)に敵対行為の影響が及ばないようにするためにあらゆる実行可能な警戒措置をとること。 (c) 子どもの保護のためおよび国際連合・監視および報告に関する国別タスクフォースとの情報共有のための正式な機構を確立すること。 (d) 国際刑事裁判所ローマ規程に加入するとともに、現在行なわれている紛争の始期からの同裁判所の裁判権の行使を受け入れる旨、第12条第3項に基づいて宣言することを考慮すること。 (e) いわゆるISILによって誘拐された子どもに対して適切な援助(全面的な社会的再統合ならびに全面的な身体的および心理的回復のための援助を含む)が提供されることを確保するための機構を確立すること。 (f) 送還、リハビリテーションおよび紛争後の再建において、子ども(とくに女子)の特別なニーズを考慮に入れること。 25.委員会は、女性および女子が引き続きいわゆる「名誉」の名のもとに殺害されもしくは負傷させられており、または社会的圧力を受けて自殺を図る事態になっている一方で、締約国が、いわゆる「名誉ある動機」を殺人のような犯罪に関する情状酌量の要素に位置づけている刑法(法律第111号(1969年)第409条も第128条、第130条および第131条もいまなお廃止していないことを、深く懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) ジェンダーを理由とする差別的態度が社会のなかに根強く残っていることから、包囲された街の住民が、政府に対し、いわゆるISILによって女子および女性が収容され、強姦されかつ金銭と引き換えに性奴隷の状態に置かれている刑務所を爆撃するよう要請する事態が生じていること。 (b) 過激主義的武装集団および民兵が、いわゆる「名誉」の名のもとに、女性および女子を恣意的に断罪しかつ殺害していること。 (c) いわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪の被害を受ける危険がある女子が保護にアクセスできないこと。 26.委員会は、締約国に対し、いわゆる「名誉」の名のもとに行なわれるジェンダーを理由とする犯罪に対して絶対的不寛容の方針を適用し、かつ、すべての事件について迅速かつ効果的な捜査が行なわれることを確保するよう促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 刑法(法律第111号(1969年)第409条、第128条、第130条および第131条、ならびに、いわゆる「名誉ある動機」を情状酌量の要素とすることを認めるものとして利用されまたは解釈される可能性がある他のいかなる法的規定も遅滞なく廃止するとともに、いかなる事情があってもいわゆる「名誉」の抗弁を援用できないこと、および、いわゆる「名誉」の名のもとに行なわれたジェンダーを理由とする暴力および犯罪(超法規的殺害を含む)の加害者に対し、その犯罪の重大性に相応する制裁が科されることを確保すること。 (b) いわゆる「名誉」の名におけるすべての女性嫌悪的態度を解消するため、市民社会および女性団体と連携しながら、一般公衆、メディア、宗教的指導者およびコミュニティの指導者を対象とする意識啓発のための努力を行なうこと。 (c) いわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪の被害者となるおそれまたは社会もしくは家族の圧力のために自殺を図る危険性のある女性および女子を対象として、シェルターおよび保護制度を含む効果的保護を確保すること。 27.委員会は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルもしくはトランスジェンダーである子どもまたはそうであると疑われている子どもおよび社会の規範と一致しない振舞いをする子どもが、国の機関ではない民兵による迫害、拷問および殺害の対象とされており、かつこれに対する処罰が行われていない事案があることを深く懸念する。委員会はまた、警察および裁判所が、暴力の被害者の性的指向またはジェンダーアイデンティティを情状酌量の要因と考えることが常態化しているため、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーである子どもが攻撃された事件の多くが、さらなる被害および差別に対する恐れのために通報されないままとなっていることも懸念するものである。 28.委員会は、締約国が、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルもしくはトランスジェンダーである子どもおよび社会の規範と一致しないいかなる種類の振舞いをする子どももあらゆる形態の攻撃から保護し、攻撃の加害者に全面的に責任をとらせ、かつ、被害者の性的アイデンティティまたはジェンダーアイデンティティがいかなる状況下でも酌量のための情状として認容されないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、子ども議会法案がまだ採択されていないことを懸念する。委員会はまた、自己に関連する事柄についての子どもの意見表明を明示的に可能にするいかなる法的規定も存在しないこと、および、子どもに関する決定(婚姻に関する決定を含む)が、ほとんどの場合、子どもに押しつけられていることも懸念するものである。 30.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、意見を聴かれる子どもの権利を積極的に促進するとともに、ソーシャルワーカーおよび裁判所が子どもの意見の尊重の原則を遵守するようにするための法律の採択ならびにシステムおよび(または)手続の確立を図ることにより、家庭、学校およびコミュニティのなかで、かつ子どもをケアする施設ならびに行政上および司法上の手続において、この原則を編入し、促進しかつ実施するよう勧告する。 C.市民的権利および自由(第7~8条および第13~17条) 出生登録/名前および国籍/アイデンティティ 31.女性がその子どもに自己の国籍を承継させることを可能にした法律第26号(2006年)の採択は歓迎しながらも、委員会は、締約国の領域外で出生した子どもが母の国籍を取得するのは父が知れない場合または無国籍である場合のみであること、および、その場合の国籍の取得は内務大臣の裁量に服するとされていることを懸念する。母が国籍を承継させることは、婚姻がしかるべき形で登録されている場合にのみ可能である。そのため、婚外子または外国籍の者とイラク国籍の母との婚姻、戦闘員との強制婚もしくは非公式な婚姻のもとで生まれた子どもが無国籍となる事態が生じている。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 締約国の民事登録制度が1957年の国勢調査をもとにしているため、住民のさまざまな層(とくにドム人コミュニティ)が国籍証明書および多くの権利を剥奪される状況が生じていること。 (b) 1959年の人事法でイスラム教徒の女性と非イスラム教徒の男性との婚姻が禁じられている結果、通婚カップルの子どもが身分証明書類を受領できないおそれがあること。 (c) 1970年の法律第105号でバハイ教の信仰が禁じられている結果、バハイ教との子どもが登録されていないこと。 (d) フェイリ・クルド人住民の復帰プロセスが速やかに進行していないため、フェイリ・クルド人の子どもがしばしば無国籍となっていること。 (e) 12~40歳の「処女」が旅券の発給を受けるためには親または法定代理人の同意を得なければならないという要件が設けられていること。 32.委員会は、締約国に対し、子どもがいかなる制限もなく母の国籍を取得できることを確保する目的で法律第26号(2006年)第4条を改正するとともに、以下の措置をとるよう求める。 (a) 締約国に住んでいるすべての者を含む現在の国勢調査結果をもとに現行民事登録制度を刷新するための速やかな措置をとるとともに、排除されているすべての者(とくにドム人コミュニティの構成員)に対して暫定的な国籍証明書を提供すること。 (b) 登録されていない婚姻のもとで生まれた子どもに対して身分証明書類が発給されることを確保するとともに、カップルの信仰にかかわらず、すべての自発的婚姻が登録されるようにするために法改正を行なうこと。 (c) フェイリ・クルド人住民の復帰プロセスをいっそう速やかに進め、かつフェイリ・クルド人の子どもに身分証明書類を発給すること。 (d) 女子に対し、保護者の許可なく旅券の発給を受ける権利を認めること。 (e) 無国籍者の地位に関する1954年の条約および無国籍の削減に関する1961年の条約を批准すること。 33.委員会はさらに、教育および医療ケアのような基礎的サービスにアクセスする子どもの権利を登録の有無にかかわらず保障するよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 34.委員会は、宗教的帰属が身分証明書類に記載されていることを懸念する。このような状況は、宗教的マイノリティに属する子どもが直面する差別を悪化させるものである。さらに委員会は、人種差別撤廃委員会と軌を一にし(CERD/C/IRQ/CO/15-21、パラ13)、民族的・宗教的マイノリティ集団の子どもの親がイスラム教に改宗した場合、子どもが元の宗教に復帰することは禁じられている旨の、市民社会から受け取った情報について懸念を覚える。 35.委員会は、締約国が、すべての子どもについて宗教の自由に対する権利を全面的に尊重し、身分証明書類における宗教的帰属の記載を削除し、かつ、すべての子どもが宗教の変更前に正当に相談されることを確保するよう、勧告する。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 36.委員会は、警察が子どもに対して行なう拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰の行為が報告されていることを懸念する。 37.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰についてのあらゆる訴えを迅速なかつ独立したやり方で調査するとともに、加害者が処罰されないことを回避するため、このような行為に対して司法手続を通じた適切な対応がとられること、および、拷問の使用を通じて得られた証拠が認容されないことを確保すること。 (b) 自由を奪われた子どもがアクセスできる苦情申立て機構を設置するとともに、罪を犯した少年とともに働く要員がその役割および責任に関する適切な研修および告知を受けることを確保すること。 (c) 拷問および不当な取扱いの被害を受けた子どもに対して身体的および心理的回復の手段を提供し、その社会的再統合を確保し、かつこれらの子どもに対する補償を行なうこと。 体罰 38.委員会は、締約国で子どもが恒常的に体罰の対象とされていること、学校および代替的養護の現場において体罰が依然として合法とされていること、ならびに、拘禁施設および刑事施設では体罰が禁じられている一方で、法律に抵触した子どもを収容する他の施設(鑑別センター、思春期前の子どものための更生学校、青少年更生センターおよび少年更生センターを含む)では明示的に禁じられていないことを懸念する。委員会はまた、体罰が家庭において依然として合法とされていること、および、刑法(法律第111号(1969年)第41条によれば、夫が殴打によって妻を懲戒する法律上の権利を有していることにも、懸念とともに留意するものである。 39.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、あらゆる場面における体罰を明示的に禁止するとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 体罰を禁止する法律が効果的に実施されること、ならびに、子どもの不当な取扱いについて責任を負う者に対する法的手続が速やかに開始されることおよび組織的に実施されることを確保すること。 (b) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響(身体的および心理的影響の双方)に関する持続的な公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのプログラムを、子ども、家族、コミュニティおよび宗教的指導者の関与を得ながら導入するとともに、積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育ておよび規律を促進すること。 虐待およびネグレクト 40.委員会は、イラク・クルディスタン地域における家族間暴力の防止に関する法律(法律第8号)(2011年)は歓迎しながらも、女性および子どもを対象とする家族間暴力からの法的保護が不十分であること、ならびに、家族の恥になるという恐れ、家族またはコミュニティからの報復の危険性ならびに警察および治安部隊からのいやがらせおよび人権侵害のために暴力の通報が相当に過少となっていることを、深刻に懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、家族間暴力に効果的に対処するための断固たる措置をとるとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) イラク・クルディスタン地域における家族間暴力の防止に関する法律第8号の実施を確保するとともに、締約国の他の地域についても同様の法律を採択すること。 (b) 暴力に関する苦情申立てを抑制する文化的タブーを解消するとともに、暴力および虐待はいかなる文脈においても受け入れられないことについて一般公衆を啓発するための包括的戦略を採択すること。 (c) この問題に関する教材を開発し、教員に対してしかるべき研修を実施し、かつ、暴力および虐待が受け入れられないことについて子どもが幼少期から訓練されることを確保すること。 (d) 子どもおよび女性があらゆる形態の虐待およびネグレクトならびに警察による暴力およびいやがらせについて苦情を申し立てることのできる独立の機構を設置すること。 性的搾取および性的虐待 42.委員会は、子ども(とくに女子)の性的搾取および性的虐待が広く蔓延していることを懸念する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 刑法(法律第111号(1969年)第427条で、強姦の加害者が虐待した女子と婚姻する場合に免責が認められていること。 (b) 被害を受けた子どもの全面的な心理的および心理的回復のための支援が行なわれていないこと。 (c) 性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもがスティグマを付与されていること。 43.委員会は、締約国に対し、以下のことを目的として迅速な法的措置をとるよう促す。 (a) 刑法(法律第111号(1969年)第427条を廃止すること。 (b) 子どもの性的搾取および性的虐待のあらゆる事件が徹底的に捜査されることならびに加害者が訴追されかつ処罰されることを確保すること。 (c) 子どもの性的虐待および性的搾取の事件が義務的に通報されることを確保するための機構、手続および指針を確立すること。 (d) 防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策の発展を確保すること。 (e) 被害を受けた子どもが直面するスティグマおよび差別と闘うこと。 性奴隷制 44.委員会は、いわゆるISILの出現以降、子ども、とくにISILによって捕らえられたマイノリティ集団に属する子どもの性的奴隷化が継続していることを嫌悪する。委員会は、ISILが、自ら設けた「市場」において、誘拐されてきた子どもおよび女性を値札を付けたのちに売っていること、および、ISILの仮設刑務所(モスル郊外の元バドゥーシュ刑務所など)に収容されている子どもの性的奴隷化が行なわれていることに、このうえない懸念とともに留意するものである。 45.委員会は、締約国に対し、いわゆるISILの支配下に置かれている子どもを救出し、かつ加害者を裁判にかけるためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、奴隷状態または誘拐から解放されまたは救出された子どもに援助を提供することも促すものである。 有害慣行 46.委員会は、女性性器切除が2011年の法律第8号で犯罪とされているにもかかわらず、締約国、とくにクルディスタン自治地域においてこの慣行が蔓延しており、かつ、この慣行と闘うためにとられた措置が不十分であることを深く懸念する。 47.委員会は、有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号を参照しつつ、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 通報の義務化等の手段によって、女性性器切除を犯罪とした規定を厳格に執行するとともに、女性性器切除を施術するすべての者が法律にしたがって訴追されかつ処罰されることを確保すること。 (b) 世帯、地方当局、宗教的指導者、医療従事者ならびに裁判官および検察官を対象とした、女性性器切除の慣行を助長する根底的な社会的規範、価値体系および態度を解消するための感受性強化プログラムを発展させること。 48.委員会は、女子の早期婚、一時的(ムタア)婚姻および強制婚が広く蔓延しており、かつ報告によれば2003年以降増加していることを深く懸念する。人事法(法律第188号)第9条で強制婚が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、同条が適用されるのは婚姻がまだ「床入りにより完了」していない場合のみであることを懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 女子が父方のいとことの婚姻を強制されるアルネーワ(Al Nehwa)婚の慣行が行なわれていること。 (b) 被害者が申立てを行なわなければ裁判所が強制婚についての審理を行なわず、かつ、申立て後、被害者がいかなる保護も享受できない場合があること。 (c) 法律第188号(1959年)において女子および男子について定められた最低婚姻年齢(18歳)に法的例外が設けられており、女子の婚姻は15歳で認められていること、および、少年福祉法(法律第76号、1983年)第8条で、裁判官が、一定の事情があるときは15歳の女子の婚姻を許可できるとされていること。 (d) クルディスタンにおける最低婚姻年齢が16歳であり、かつ後見人の許可があるときはさらに低い年齢での婚姻も可能であること。 49.委員会は、有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号(2014年)に照らして、締約国に対し、早期婚および強制婚の慣行を終わらせるために積極的措置をとるとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女子および男子ともに最低婚姻年齢を18歳と定めた規定が執行されること、16歳未満の子どもはいかなる状況下でも婚姻できないこと、および、16歳の段階で婚姻の許可を得られる事由が法律で厳格に定義され、かつ、子どもの全面的な、自由なかつ十分な情報に基づく同意を踏まえた、権限のある裁判所の許可に服することを確保すること。 (b) 世帯、地方当局、宗教的指導者裁判官および検察官を対象とした、早期婚および強制婚が女子の身体的および精神的健康およびウェルビーイングに及ぼす有害な影響に関する意識啓発キャンペーンおよび感受性強化プログラムを確立すること。 (c) 申立てを行なった強制婚被害者のための保護制度を確立すること。 (d) 一時的(ムタア)婚姻の被害者のための保護措置を創設すること。 E.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項) 家庭環境 50.委員会は、女性および女子の尊厳に反しており、かつその子どもに悪影響を与える複婚および一方的離縁が締約国で依然として合法とされていることを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 女性および女子の務めおよび役割(とくに家庭におけるもの)についての否定的なジェンダーステレオタイプが根強く残っていること、および、夫を喪った女性および離婚した女性が苛酷な差別(公的書類の取得および政府による援助へのアクセスに関する差別を含む)に直面しており、その子どもにも影響が生じていること。 (b) 母親は子どもの「身体的」監護者であって法的監護者ではないと考えられており、かつ、女性に監護権が与えられるのは、まれな例外を除き、子どもが10歳に達するまでにすぎないこと。 51.委員会は、締約国に対し、女性に対する差別であり、したがってその子どもに悪影響を及ぼすすべての規定(複婚および一方的離縁を認めるものなど)が遅滞なく廃止されることを確保するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう求めるものである。 (a) 条約第18条第1項にしたがい、母親および父親がその子どもに関する法的責任を平等に共有することを確保すること。 (b) 単身の女性(夫を喪った女性および離婚した女性を含む)に対するあらゆる形態の差別を解消するとともに、このような女性およびその子どもの保護を強化すること。委員会はさらに、締約国に対し、女性世帯主に十分な金銭的支援を提供し、かつ女性世帯主が保健ケアおよび社会保障にアクセスできることを確保するよう促す。 家庭環境を奪われた子ども 52.委員会は、避難民化した際に子どもが両親から強制的に分離され、または子どもを殺すという脅迫を受けて親がいわゆるISILのもとに子どもを残していくことを余儀なくされた事案が相当数にのぼることを著しく懸念する。委員会はまた、長年にわたる紛争の間に多数の子どもが家族を失ったこと、ならびに、これらの子どもに保護および代替的養護(とくに里親養育)を提供するための措置および戦略が存在しないことも懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、緊急の課題として以下の措置をとるよう勧告する。 (a) いわゆるISILによって捕らえられている子どもを解放し、家族と再会させ、かつこれらの子どもに対してあらゆる必要な身体的および心理的保健ケアを提供するためにすべての必要な措置をとること。 (b) 代替的養護プログラム(とくに里親養育)を強化するとともに、代替的養護施設および関連の子ども保護機関の養護を受けている子どものリハビリテーションおよび社会的再統合を最大限可能なかぎり促進する目的で、これらの施設および機関に十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 54.委員会は、刑法(法律第111号(1969年)第377条において婚姻外の性交渉が犯罪化されていることの影響について懸念を覚える。このために、そのような交渉の結果として生まれた赤ん坊が遺棄されまたは殺害されるおそれが生じるためである。委員会はまた、締約国でシングルマザーが社会的拒絶およびスティグマの対象とされていること、ならびに、このような社会的拒絶によってその子どもに深刻な影響が生じていることも、深く懸念するものである。 55.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 刑法第377条を廃止し、かつ婚外子の遺棄または殺害を防止すること。 (b) 非婚の母に対し、子どもを養育できるようにするために必要な支援を提供すること。 (c) 10代で妊娠した女子、思春期の母親およびその子どもの権利を保護するための政策を策定しかつ実施すること。 (d) 婚外妊娠に付与されるスティグマと闘い、かつこれを解消すること。 (e) 男子および男性の意識啓発に特段の注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性行動を促進すること。 母親とともに収監されている子ども 56.委員会は、多くの子どもが母親とともに刑務所で生活しているものの、女性を対象とするほとんどの刑務所には保育施設がないこと、ならびに、衛生看護および一般看護が不十分であるためにさまざまな疾病がこれらの子どもに影響を及ぼしていることを懸念する。委員会はまた、子どもが母親の処刑後も数週間刑務所に滞在する事例があることも懸念するものである。 57.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 可能なときは常に、妊婦および乳幼児のいる母親の施設収容に代わる措置を追求すること。 (b) 母親とともに収監されている子どものために十分な生活条件を確保すること。 (c) 子どもの最善の利益が、その親に関わる刑事手続において考慮されること、および、自ら養育している子どもがいる母親に対して死刑が執行されないことを確保すること。 F.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 58.委員会は、障害のある子どもの状況が現在行なわれている紛争によってとりわけ悪化させられていること、ならびに、障害のある子どもに対する社会的差別およびスティグマが存続していることを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 校舎が障害のある子どもにとって十分にアクセシブルなものになっていないこと、適切な学習教材が存在しないこと、特別な資格を有する教員が不足していること、および、障害のある子どものための十分な乳幼児期発達サービスが存在しないこと。 (b) 社会サービスおよび金銭的支援への、障害のある子どもによるアクセスが不十分であること。 59.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、紛争の際に負傷した子どもにとくに焦点を当てながら障害に対する人権基盤アプローチをとるよう促すとともに、具体的には以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 実効的なインクルーシブ教育を確保し、かつ、その実施のためにあらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (b) 障害のある子どもへの差別の解消に関する意識啓発プログラムを実施するとともに、そのような差別を禁じた法律の遵守を確保するための執行機構を強化すること。 (c) 障害のある子どもがあらゆる社会サービスに平等にアクセスできることを確保し、かつ、障害のある子どもを養育している家族に金銭的援助を提供すること。 健康および保健サービス 60.委員会は、2006年以降、予防接種の普及範囲および施設における分娩が相当に増加したことに評価の意とともに留意するものの、農村部ならびに中部および南部地域において、5歳未満児死亡率が高いことならびに慢性的栄養不良および(とくに未成年の母親に関わる)妊産婦死亡が広く蔓延していることを遺憾に思う。これには、子どもの国内避難民の間で感染症および非感染性疾患の出現が増加していること(小児麻痺および麻疹の発症リスクが高いことを含む)ならびに栄養不良率が高いことが含まれる。委員会はまた、武力紛争が保健ケアの利用可能性および質に破壊的影響を与えている一方で、締約国が保健ケア制度に充てている連邦予算の割合が低いことも懸念するものである。 61.委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、保健予算を増加させるためにあらゆる必要な措置をとり、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 緊急産科ケアにアクセスできるようにし、かつ、訓練を受けた者による自宅分娩ケアへのアクセスおよび訓練を受けた保健ケア提供者のいる母子保健クリニックへのアクセスを確保することにより、妊産婦の死亡を減少させること。避難民コミュニティ、農村部ならびに中部および南部地域にとくに焦点を当てることが必要とされる。 (b) 予防可能な疾病その他の疾病(とくに下痢性疾患、急性呼吸器感染症および栄養不良)を減少させるための介入策に対し、あらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (c) 病院の設備を十分なものとするためにあらゆる必要な措置をとるとともに、国際連合児童基金(ユニセフ)および世界保健機関(WHO)の援助を求めること。 62.委員会は、多くの地域が毒性水準の高い鉛汚染、水銀汚染および劣化ウラン汚染の影響を受けており、そのため高い乳児死亡率ならびに子どものガン罹患率の上昇および先天性欠損症の増加が生じていることに、懸念とともに留意する。 63.委員会は、締約国が、あらゆるタイプの戦争残存物を除去し、かつさまざまなタイプの戦争残存物に関する情報を子どもおよび一般公衆の間で普及するためにあらゆる努力を行なうとともに、保護措置をとるよう勧告する。さらに、負傷したまたいは病気になった子どもに対して、あらゆる必要な保健ケアが提供されるべきである。 精神保健 64.委員会は、相当数の子どもがさまざまな程度の心的外傷後ストレス障害に苦しんでいる懸念する。 65.委員会は、締約国が、心的外傷後ストレス障害および継続中の紛争関連のストレスに苦しむ子どもを支援するためのプログラムの立ち上げおよび専門家の養成を進めるとともに、この点に関してユニセフおよびWHOの援助を求めることを検討するよう勧告する。 思春期の健康 66.委員会は、思春期の子どもがリプロダクティブヘルスサービス(避妊手段および安全な中絶サービスへのアクセスを含む)にアクセスできていないことに、懸念とともに留意する。 67.思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 10代で妊娠した女子の最善の利益が保障されることを確保するために中絶に関する法律を見直すとともに、中絶に関する決定において、妊娠した子どもの意見が常に聴かれ、かつ正当に考慮されることを確保すること。 (b) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 薬物および有害物質の濫用 68.委員会は、思春期の子どもの間で薬物濫用が増加していること、および、思春期の薬物使用者のニーズに対応する薬物予防サービスが利用可能とされていないことを懸念する。 69.委員会は、締約国が、公的な学校プログラムおよびメディアキャンペーンを通じ、子どもおよび青少年に対して有害物質の濫用(タバコおよびアルコール〔の使用〕を含むが、とくにハードドラッグ〔の使用〕ならびに接着剤および溶剤の吸引)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供するとともに、子どもを有害な誤情報およびモデルから保護するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく、かつ匿名で利用できる薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させることも勧告するものである。 生活水準 70.委員会は、貧困下で生活する市民の人数の削減および非識字率の半減をめざす、締約国の貧困削減戦略(2010~2014年)を歓迎する。しかしながら委員会は、貧困に苦しむ子どもおよび社会サービスにアクセスできない子どもが多く、かつ相当の地理的格差が存在することを懸念するものである。さらに、委員会は以下のことを深く遺憾に思う。 (a) 締約国全域でホームレスの子どもが多数存在していること。 (b) 締約国の多くの地域で、住居、安全な飲料水、十分な衛生設備またはゴミ収集サービスにアクセスできないこと。 (c) いわゆるISILによってマイノリティ集団の家族の住居、店舗その他の財産が没収されているために、多くの家族が完全な生計維持手段を奪われていること。 71.委員会は、締約国が、貧困削減戦略に子どもの権利を含めるよう勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう求めるものである。 (a) もっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団に特段の注意を払いながら、ホームレスの子どものニーズに対応するための包括的戦略を策定するとともに、貧困削減戦略の優先的受益者にこれらの子どもを含めること。 (b) 飲料水および環境衛生設備の提供、ならびに、食料へのアクセスならびに食料の入手可能性および負担可能性の保障に優先的に取り組むとともに、これらの問題に対処するための援助を、とくにユニセフおよびWHOに対して求めることを検討すること。 (c) いわゆるISILによって財産を奪われた家族に支援を提供し、かつその生存手段を確保すること。 G.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 72.委員会は、国家教育・高等教育戦略(2011~2020年)を歓迎する。しかしながら委員会は、学校が攻撃されてきたことおよび学齢の子どもが通学時に誘拐されてきたことの影響で、中等学校に就学すべき年齢の子どものうち現在学校に通っているのは半数にすぎないこと、ならびに、子どもの国内避難民および難民のうち学校にアクセスできていない者がきわめて多いことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 爆撃および破壊の対象とされ、または避難民コミュニティに占拠されてきた校舎が荒廃したままの状態であること。 (b) 教材が質量ともに不十分であり、かつ学校で清潔な飲料水および十分な衛生設備にアクセスできないこと。 (c) 教員が著しく不安定な状況に置かれており、その多くが暗殺もしくは誘拐の対象とされ、避難のために国を離れ、またはいわゆるISILの脅威のもとに働くことを余儀なくされてきたこと。 (d) 女子による学校へのアクセスが否定的な家父長制的慣習および規範によって阻害されていることから、非識字である女子が相当数にのぼっていること。 (e) 教育に対する予算配分が不十分であること。 73.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、ノンフォーマル教育プログラム等も通じ、かつ紛争の影響を受けた地域における校舎および学校設備の再建ならびに水、衛生設備および電気の供給の確保を優先させる等の手段により、武力紛争の影響を受けた子どもを教育制度に再統合するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 実現可能なときは、国内避難民を、その安全を確保しつつ学校以外の建物に異動させること。 (b) 通学中の子どもならびに教育設備および教職員を保護するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 仮設学校を設置し、かつ市民がこれらの学校で臨時職員として働けるようにする教員養成プログラムを設けることを検討すること。 (d) 貧困下で暮らしている家族への金銭的支援を増加させるとともに、子ども(とくに女子)を通学させることの重要性に関する意識を親の間で浸透させるためのキャンペーンを実施すること。 (e) パートナーに対して教育のための人道資金の増額を求めるとともに、図書ならびに十分な質を有する適切な教育用資料および学習教材を学校に十分に備えつけること。 H.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの国内避難民および難民 74.委員会は、難民および国内避難民となった家族および子ども(とくに、いかなる人道援助からも切り離されたままである家族および子どもならびに山間部で飢餓に苦しんでいる家族および子ども)の不安定な状況および劣悪な生活環境について深刻な懸念を覚える。委員会は、子どもが非国家的武装集団によって徴募されていること、ならびに、国内避難民および難民となった家族が、しばしば安全な飲料水および衛生設備、汚水処理設備、保健サービス、暖房、毛布または冬用の衣料にアクセスできないまま、過密な居留地において、絶えることのない脅威のもとで生活していることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 移住避難省が避難民家族を対象として実施している定住補助金の支給、ならびに、治療および予防サービスの提供の利益を享受できている子どもの国内避難民が少数しかおらず、かつ、身分証明書類(子どもの国内避難民のほとんどはこれを所持していない)を提示しなければ配給食糧、教育、政府の手当および金銭的援助にアクセスできないこと。 (b) 女子の難民および国内避難民が、家族間暴力、強制婚、一時的(ムタア)婚および強制婚ならびに「性的搾取」にとりわけさらされていること。 (c) 子どもの難民および国内避難民のほとんどが教育にアクセスできておらず、一方で児童労働が増加していること。 (d) NGOに対し、避難民へのシェルターの提供が認められていないこと。 75.委員会は、締約国に対し、子どもの国内避難民および難民の権利およびウェルビーイングを保障するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 国内避難民のために配分される資源を相当に増加させるとともに、子どもが清潔な水、十分な衛生設備(女子および女性のための尊厳保持用品を含む)、食料ならびにシェルター(暖房システム、毛布および冬服へのアクセスを含む)ならびに保健ケアおよび予防接種に十分にアクセスできることを確保するため、子どもを明確な対象として位置づけたプログラムを実施すること。 (b) 優先的課題として、国内避難民である子どもおよび家族を国の社会扶助制度に統合するとともに、とくに、とりわけ食料および教育へのアクセスに関わって身分証明書類の有無にかかわりなくサービスにアクセスできるようにするための登録手続を簡略化することにより、すべての公的サービスおよびプログラムがこれらの子どもおよび家族にとってアクセス可能でありかつ利用可能であることを確保すること。 (c) 子どもの国内避難民のために仮設就学設備を設け、かつ、これらの子どもを可能なかぎり早期に普通学校に再統合すること。 (d) NGOの活動に対する不必要な制限(とくにシェルターの提供にかんするもの)を直ちに解除し、国内避難民に対するNGOのアクセスを簡略化するためにあらゆる実行可能な措置をとり、かつ、パートナーに対し、空中投下による人道援助を増加させるよう求めること。 (e) 難民キャンプの治安を強化し、子どもを徴募、暴力および性的搾取から保護するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、女子および女性がサービスに直接アクセスできることを確保することによってその保護を増進させること。 (f) アクセスしやすい苦情申立て機構を確立し、人権侵害事案を全面的に捜査し、かつ加害者を訴追すること。 (g) 難民の地位に関する1951年の条約に加入すること。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 76.委員会は、マイノリティ集団(とくにトルクメン人、シャバク人、キリスト教徒、ヤズィーディー教徒、サービア-マンダ教徒、カカイ教徒、フェイリ・クルド人、アラブ人シーア派、アッシリア人、バハイ教徒、アラウィット派)に属する子どもおよび家族の憂慮すべき状況に対し、このうえない懸念を表明する。これらの子どもおよび家族は、いわゆるISILによって組織的に殺害され、拷問を受け、強姦され、イスラム教への改宗を強要され、かつ人道援助から切断されているが、これは、ISILの構成員による、これらのマイノリティコミュニティを抑圧し、永久に浄化しもしくは追放し、または場合によっては破壊しようとする試みであるとされる。 77.委員会は、締約国に対し、即時的措置をとってマイノリティ集団に属する子どもにあらゆる必要な保護を提供するとともに、法的な適正手続に関する国際基準を尊重しながら、これらの子どもを迫害する者が訴追されかつ処罰されることを確保するよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、可能なときは常に、マイノリティコミュニティが元の土地および住居に全面的に復帰できるようにすることに対して決意を示し、かつ、財産を失った者に補償を行なうよう促すものである。 78.委員会は、マイノリティ集団に属する子どもが締約国でその他の形態の差別にも直面してきていること、および、マイノリティ集団に対する攻撃が、主として国の法執行当局が加害者の責任を問うことについて消極的であること、官憲が信頼されていないことおよび報復への恐れが存在することを理由としてしばしば処罰されないまま実行されていることに、懸念を表明する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) マイノリティ集団に属する子どもが、サービス(とくに身分証明書類、保健ケア、教育、安全な飲料水、電気および十分な住居)へのアクセスを妨げる立法上および実際上の障壁に直面し続けていること。 (b) 黒人コミュニティおよびロマの村々の子どもが初等教育施設を有しておらず、かつ、トルクメン人学校が教育省の援助を受けていないこと。 (c) 子どもに対し、母語で教育を受けることが憲法によって保障されているにもかかわらず、マイノリティ集団の子どもについてはこの権利がしばしば尊重されていないこと。委員会はさらに、マイノリティの歴史または文化がカリキュラムでほとんど取り上げられていないこと、および、マイノリティ集団に属する子どもが教員によって疎外される事案が生じていることを遺憾に思う。 (d) マイノリティへのヘイトスピーチが恒常的に発生しており、かつヘイトスピーチからの法的保護が存在しないこと、ならびに、マイノリティ集団の子どもが日常的な社会的疎外および差別(ベールをかぶっていないことを理由とするマイノリティ集団の女子へのいやがらせを含む)に苦しんでいること。 79.委員会は、締約国が、マイノリティ集団の子どもの平等な取扱いを確保し、かつこれらの子どもに対するいかなる形態の差別も全面的に禁止するために法改正を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) マイノリティ集団が攻撃から全面的に保護されること、および、官憲がマイノリティに対する犯罪を幇助したすべての事件が徹底的な捜査および訴追の対象とされることを確保すること。 (b) さまざまな民族の子どもの行政上、政治上、文化上および教育上の権利を保障した憲法第125条の実施法を制定するとともに、この憲法上の保障に矛盾するすべての法律を廃止すること。 (c) すべての子どもがその母語で教育を受けられることを確保するための監視制度を設けること。 (d) マイノリティに属する子どもに関連する差別およびステレオタイプと闘うための意識啓発キャンペーンを確立し、かつ、異なる文化、信仰および生活スタイルに対する敬意および寛容を促進すること。 経済的搾取(児童労働を含む) 80.委員会は、ILO第182号条約に一致する形で、締約国において最悪の形態の児童労働が禁じられていることに留意する。しかしながら委員会は、この禁止規定の実施が弱くかつ不十分であることを遺憾に思うとともに、報告によれば、3~16歳の相当数の子どもが児童労働に従事しており、その多くが危険な条件下で、かつ暴力および性的虐待の被害を受けやすい状態で働いているとされることを深く懸念するものである。委員会はまた、以下のことも遺憾に思う。 (a) 配偶者、父親、母親、兄または姉が経営しまたは監督する家内企業で雇用されている15歳以上の子どもには労働法の規定が適用されないこと。 (b) 雇用および職業におけるあらゆる形態のセクシュアルハラスメントからの全面的かつ十分な保護が存在しないこと。 81.委員会は、締約国に対し、子どもの労働(インフォーマル経済および家内事業におけるものを含む)が年齢、労働時間、労働条件、教育および健康に関する交際基準に全面的に一致する形で行なわれることを確保し、かつ、あらゆる形態の性的、身体的および心理的いやがらせから子どもが全面的に保護されることを確保するための法律を制定するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに児童労働撤廃国際計画およびILOの援助を求めながら、非識字であり、かつ(または)児童労働に従事してきた子どもを普通教育に再統合するためのプログラムを設けること。 (b) 労働監察(インフォーマル部門におけるものを含む)を確立することによって労働法の実施を強化するとともに、児童労働に関する法律に違反したいかなる者も責任を問われることを確保すること。 (c) 貧困根絶の努力を強化することにより、経済的搾取の根本的原因に対処すること。 路上の状況にある子ども 82.委員会は、多数の子ども(多くの子どもの国内避難民を含む)が路上で生活しかつ(または)働いており、そこでさまざまな形態の犯罪(性暴力および性的虐待を含む)、薬物および犯罪集団による利用にさらされていることを非常に懸念する。 83.委員会は、締約国が、路上の状況にある子どもを支援し、かつ十分な栄養、衣服、住居および教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)にアクセスできることを確保するための国家的戦略を策定するよう勧告する。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 路上の状況にある子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を目的とするプログラムを促進しかつ実施するとともに、可能なときは常に家族との再統合のための便宜を図ること。 (b) 路上の状況にある子どもが薬物依存治療にアクセスできることを確保するとともに、路上の状況にある子どもを性的搾取および性的虐待から保護することにとくに焦点を当てること。 (c) 路上の状況にある子どもとともに活動しているNGOおよびこれらの子どもたち自身と連携するとともに、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 売買、取引および誘拐 84.委員会は、国内避難および宗派的暴力が人身取引の相当の増加にもつながっており、多くの子どもが、とくに性的搾取および家事奴隷としての使用を目的として(ただし強制労働または強制的役務、奴隷化または同様の慣行および隷属化を目的としても)、国内においても、イラン・イスラム共和国、ヨルダン、クウェート、レバノン、サウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦およびイエメンにおいても、人身取引の対象とされていることを深く懸念する。委員会はまた、孤児院の子どもが職員による強制売春目的の人身取引の対象とされているという報告についても特段の懸念を覚えるものである。 85.委員会は、締約国に対し、性的その他の搾取を目的とする子どもの人身売買と闘うとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 加害者が組織的に訴追されかつ処罰されること、および、人身取引の被害者である子どもがけっして犯罪者として扱われないことを確保すること。 (b) 被害を受けた子どもの身体的および精神的回復ならびに社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを実施すること。 (c) 子どもおよび家族が国内および国外双方の人身取引の危険性について理解し、かつ保護措置について理解するようにするための意識啓発活動を実施するとともに、被害者および証人に対して人身取引事件の通報を奨励すること。 (d) 子どもの売買および取引の根本的原因に対処する目的で、国際協力を継続しかつ強化すること。 少年司法の運営 86.拘禁に代わる措置について定めた締約国の少年福祉法(1983年法律第76号)は評価しながらも、委員会は、これらの選択肢が実際には非常にまれにしか用いられていないことを遺憾に思う。委員会はまた、拘禁(とくに長期間の未決拘禁)の対象とされる子どもの数が増えていること、および、これらの子どもがとりわけ劣悪な環境に置かれていること(過密な状態にあること、身体的および性的虐待にさらされることならびに医療サービスへのアクセスが不十分であることを含む)も著しく懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。 (a) 少年福祉法では子どもに対する終身刑および死刑が認められていないにもかかわらず、死刑を言い渡された女子が、18歳に達するまでカッラーダ少年拘禁施設に収容され、その後、死刑囚監房に移送されるという報告があること。 (b) 刑事責任年齢が9歳と低く定められており、かつ少年法案における引き上げも11歳までに留まっていること。 (c) 出生登録が行なわれていないことおよび子どもの年齢の決定に困難があることにより、犯行時18歳であった者に対して死刑が言い渡される場合があること。 (d) 拘禁後、子どもが社会に再統合することを支援するための十分な更生プログラムまたは更生施設が存在しないこと。 87.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) すべての子どもを死刑囚監房から直ちに解放するとともに、18歳未満の者が行なった犯罪について死刑または終身刑を科すことを明示的に禁止した規定が、この点に関する明確な訓令を発することにより効果的に実施されることを確保すること。 (b) 死刑囚監房に収容されておりまたは終身刑に服しているすべての受刑者の記録を速やかに再審査し、かつ、処罰対象である犯罪を行なったときに当該受刑者が18歳未満であった場合にはその死刑または終身刑が無効とされることを確保するとともに、犯罪時の子どもの年齢を確定できないときは18歳未満であったと推定すること。 (c) 子どもの拘禁の合法性について決定するため、子どもの事件が逮捕後24時間以内に裁判所に提出されることを確保すること。 (d) ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (e) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (f) 少年の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための施設およびプログラムを発展させること。 I.通報手続に関する選択議定書の批准 88.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 J.国際人権文書の批准 89.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、締約国がまだ当事国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、ならびに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約、女性に対するあらゆる差別の撤廃に関する条約、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約および障害のある人の権利に関する条約の諸選択議定書を批准するよう勧告する。 K.地域機関および国際機関との協力 90.委員会は、国際協力の枠組みのなかでさまざまなプログラムおよびプロジェクト(国際連合の諸機関および諸計画との技術的援助および協力を含む)が実施されていることに留意する。 91.委員会は、締約国が、条約、その両選択議定書および他の人権文書の実施のための独自の資源および制度的体制を強化するよう同時に努めつつ、国際協力を維持しかつ増加させるための措置を引き続きとるよう、勧告する。 V.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 92.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第2~4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 93.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年7月14日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 94.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。総会が決議68/268のパラ16で定めた共通コアドキュメントの語数制限は42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2017年5月18日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/302.html
総括所見:モルディブ(第4~5回・2016年) 第1回(1998年)/第2回・第3回OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MDV/CO/4-5(2016年3月14日)/第71会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年1月19日に開かれた第2077回および第2079回会合(CRC/C/SR.2077 and 2079参照) においてモルディブの第4回・第5回統合定期報告書(CRC/C/MDV/4-5)を検討し、2016年1月29日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況に関する理解の向上を可能にしくれた、締約国の第4回・第5回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/MDV/Q/4-5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(2010年4月)。 (b) 国際労働機関の強制労働条約(1930年、第29号)、強制労働廃止条約(1957年、第105号)、最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2013年1月)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2011年9月)。 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a) セクシュアルハラスメントおよび性的虐待防止法(2014年)。 (b) 性犯罪法(2014年)。 (c) 人身取引防止法(2013年)。 (d) 家族間暴力法(2012年)。 (e) 就学前教育施設法(2012年)。 (f) 障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)。 (g) 子どもの性的虐待の加害者に関する特別措置法(2009年)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 教育施設に通っている子どもを対象とした子ども保護政策の採択(2015年)。 (b) 「ひとりの子どもも取り残さない政策」の採択(2014年)。 (c) マレ(1か所)および諸環礁(4か所)におけるセーフホームの開設(2014年)。 (d) インクルーシブ教育政策の採択(2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 6. 委員会は、締約国が、2007年の総括所見(CRC/C/MDV/CO/3)で行なわれた勧告のうちまったくまたは十分に実施されていないもの、とくに留保(パラ10)、立法(パラ12)、包括的な政策および戦略(パラ15)、調整(パラ17)資源配分(パラ22)ならびに全国的データ収集システム(パラ23)に関するものに対応するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。 留保 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ10参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、条約第14条第1項および第21条に付した留保の撤回を検討するよう奨励する。 立法 8.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ12参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、条約との全面的一致(親の共有責任、家族からの子どもの分離、子どもの保護の調整および国外居住者の子どもの権利に関連する分野における一致を含む)を確保しながら、子ども法案を採択するための即時的措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 9.関連の政策(たとえばインクルーシブ教育および教育施設に通っている子どもの保護に関するもの)が最近採択されたことには留意しながらも、委員会は、締約国がまだ子どもに関する包括的政策を策定していないことを懸念する。 10.委員会は、締約国に対し、条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野を包含した、子どもに関する包括的政策を作成するとともに、当該政策に基づき、その適用のための諸要素を備え、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた戦略を策定するよう奨励する。当該戦略においては、子どもの権利に関わる国の諸機関の任務を明らかにし、かつ、監視および評価のための明確な枠組みを定めるべきである。 調整 11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ17参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、さまざまな部門を横断して、国および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を備えた適切な機関を、高い省庁間レベルに設置するよう促す。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運営のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 資源配分 12.社会部門における資源配分の増加は歓迎しながらも、委員会は、条約上の義務の実施のために配分される具体的な予算科目が設定されていないこと、ならびに、これらの義務を実施するための資源の配分を評価するための監視評価機構が設置されていないことを懸念する。 13.「子どもの権利のための資源配分:国の責任」に関する一般的討議(2007年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの予算上のニーズの包括的評価を実施し、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分し、かつ、とくに、子どもの権利に関連する指標に基づいて格差に対処すること。 (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。 データ収集 14.モルディブ子どもの保護データベースが2010年に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約の効果的実施のための政策、プログラムをおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用できる細分化されたデータの収集を可能とする目的としたデータベースの運用に対し、十分な予算資源が配分されていないことを懸念する。 15.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、データ収集システムを速やかに向上させるよう促す。このようなデータは、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれている子ども)の状況に関わる分析を促進する目的で、条約の全分野を網羅し、かつ、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。さらに、委員会は以下のことを勧告する。 (a) データおよび指標が関連省庁間で共有され、かつ、条約の効果的実施のための政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきこと。 (b) 締約国が、統計的情報の定義、収集および普及の際、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators a guide to measurement and implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れること。 (c) 締約国が、子どもの保護データベースの部門横断的共有および全面的運用に向けて予算資源を配分するとともに、国際連合児童基金(ユニセフ)および他の適切な機関との技術的協力を強化すること。 独立の監視 16.委員会は、子どもの権利侵害の苦情を受理し、監視しかつ調査する目的で、マレに子ども・家族保護サービスが、かつ19の環礁に家族・子どもサービスセンターが、設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、これらのセンターの人員および資金が不足していることを懸念するものである。委員会はさらに、15歳の女子の事案についてモルディブ人権委員会が調査報告書(2014年4月)を発表し、かつ人権理事会の普遍的定期審査手続に報告書が提出された(2014年)のち、モルディブ最高裁判所が、人権委員会が最高裁判所の権限を批判したことに対して職権による手続を開始したことを懸念する。委員会はまた、〔拷問等禁止条約の選択議定書に基づく〕国内防止機関としても行動する人権委員会の2016年予算が相当に削減されたことにより、その機能およびとくに少年拘禁施設を監視する能力に悪影響が生じていることも懸念するものである。 17.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、モルディブ人権委員会が国際連合機関と協力したことに対するすべての報復行為を直ちに停止するとともに、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)との全面的一致を確保するため、この監視機構の独立性(資金、任務および免責との関連を含む)を確保するよう促す。後者の点について、委員会は、締約国が、とくに国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ユニセフおよび国際連合開発計画の技術的協力を求めるよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 18.委員会は、締約国が、子どもの権利の問題に関するいくつかのテレビ番組およびラジオ番組等を通じて条約についての意識を高めるために行なっている努力、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く者を対象として研修セッションを実施するために行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 条約の公式な翻訳が作成されておらず、かつ締約国報告書を普及するために十分な努力が行なわれてこなかったこと。 (b) 条約についての知識が限られていることもあって、一般公衆の一部およびとくに子どもたちの間に、イスラム教と子どもの権利は「両立しない」という誤解が存在すること。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約を地方言語に公式に翻訳したものおよびそれを子どもにやさしく書き直したものを作成するともに、それらの翻訳ならびに締約国報告書および委員会の総括所見を広く普及すること。 (b) 条約の規定および原則に関する、対象を明確にした定期的な研修を専門家向けに実施するための努力、および、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約についての情報を体系的に普及するための努力を強化すること。 (c) 高等教育段階までの学校カリキュラムに条約についての教育を統合するとともに、ラジオおよびテレビでならびにインターネットを通じて条約の内容を恒常的に放送すること。 (d) イスラム教と子どもの権利が両立しないという点に関する公衆の誤解に対処するため、ユニセフおよび市民社会と協力しながら、対象を明確にした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を発展させること。 子どもの権利と企業セクター 20.委員会は、観光が締約国の経済の主たる柱となっており、かつ、ビーチ、サファリボートおよびゲストハウスという観光的環境において児童買春が行なわれていると報告されている一方で、締約国が、観光活動から生じる可能性のある子どもの権利侵害(とくに児童セックスツーリズム)から子どもを保護するための措置をまだとっていないことを懸念する。 21.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国の領域で操業しておりまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社(とくに観光産業関連企業)の法的責任を確保するための立法上(民事法、刑事法および行政法上)の枠組みを検討しかつ採択すること。 (b) 観光産業および公衆一般とともに児童セックスツーリズムに関する意識啓発キャンペーンを実施し、かつ、旅行代理店および他の観光産業関係者の間で観光名誉憲章および世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。 (c) 国境を越える性犯罪者の特定ができるように国際的情報交換協定を執行する等の手段により、児童セックスツーリズムの防止および撤廃のための多国間、地域間および二国間の取決めを通じて、児童セックスツーリズムに反対する取り組みへの国際的レベルでの協力を強化すること。 市民社会との協力 22.委員会は、人権擁護の活動をしている一部の非政府組織(NGO)が国の関係者による脅迫を受けているという報告があることを懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、人権擁護者は、その活動が子どもを含むすべての者の人権を促進するためにきわめて重要であるがゆえに特別な保護を受けるのにふさわしい存在であることを想起するよう求めるとともに、したがって締約国が、ジャーナリスト、人権擁護者およびあらゆるNGOが脅迫およびいやがらせを受けることなく表現および意見の自由に対する権利を行使できるようにするための即時的措置をとるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、対話の際に表明されたように、NGO,人権擁護者および市民社会活動家に対する脅迫およびいやがらせの通報が迅速にかつ独立の立場から調査され、かつそのような人権侵害を行なった者の責任が問われることを確保するようにも促すものである。委員会はさらに、締約国が、子どもに関連する法律、政策およびプログラムの策定、実施、監視および評価に際し、子どもの権利の分野で活動するすべてのNGOの関与を組織的に得るように勧告する。 B.子どもの定義(第1条) 24.委員会は、子どもの権利の保護に関する法律(法律第9/91号)第28条で、子どもが同法に定められたいかなる権利も享受できない3つの例外(婚姻契約を行なった子ども、親になった子どもおよび雇用されている子ども)が規定されていることを懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護に関する法律第28条を廃止するとともに、国内法において、18歳未満のすべての者に対し、いかなる例外もなく全面的かつ平等な保護が与えられることを確保すること。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 26.委員会は以下のことを懸念する。 (a) すべての市民の平等について定めた憲法第20条と、市民はイスラム教徒でなければならないとし、かつイスラム教徒でない者は市民権を取得することができないと定める第9条(b)との間に乖離があること。 (b) 女子に対する差別が法律上も実際上も続けられていること(家族法上、女子は父方の保護者の意思に服するものとされていること、および、相続権が否定されていることを含む)。 (c) 一部の政治家および宗教的指導者が、女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別を助長すると考えられる発言を行なってきたという報告があること。 (d) 婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子どもに対する差別が続けられていること(実の父親と法的関係を確立する権利および実の父親の姓を名乗る権利が否定されていること、ならびに、相続権が否定されていることを含む)。 (e) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが、社会でスティグマを付与されかつ周縁化されていること。 27.委員会は、締約国に対し、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どもに対するいかなる差別も撤廃するための法改正を行なうことも促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、政治家および宗教的指導者が女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別および暴力を助長する発言を行なったすべての事案について、捜査および処罰を行なうよう促す。委員会は、締約国に対し、立法上、政策上および教育上の措置(感受性強化および意識啓発を含む)を活用して、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どものスティグマに終止符を打つよう奨励するものである。 子どもの最善の利益 28.委員会は、子どもの最善の利益について、条約に一致しない慣習的および宗教的解釈が締約国で支配的となっており、そのため子どもの権利の深刻な侵害につながっていることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待を通報しないことが、子どものいわゆる「名誉」を守ることであり、したがって子どもの最善の利益にかなっていると考えられていることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 29.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、法律において、条約第3条と一致する形で子どもの最善の利益の原則を明示的に定義しかつ掲げるよう勧告する。これとの関連で、締約国は、公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励されるところである。締約国は、子どもの性的虐待の加害者を処罰しないことが子どもの最善の利益にかなっているという考え方につながる宗教的および慣習的解釈に異議を申し立てる意識啓発キャンペーンを実施するよう求められる。 生命、生存および発達に対する権利 30.委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚える。 (a) 少年裁判所が、3つの異なる事件(2013年の1件および2015年の2件)において5人の子どもに死刑を言い渡したこと。 (b) 報告によれば、死刑に直面している子どものほとんどはキサス(同害復讐法)に基づいて刑を言い渡されており、かつ、2015年11月30日の高等法院判決により、被害者の相続人全員がシャリーア法上のキサスに基づく刑罰が科されることを望んでおり、かつ有罪判決を受けた殺害犯に対して死刑を執行することを要求する場合には、大統領はもはや、故意の殺人罪について死刑を終身刑に減刑できないとされていること。 (c) 故殺の捜査および刑の執行に関する規則(2014年)により、7歳という低年齢の子どもに対し、故意の殺人罪について死刑を言い渡すことが認められていること。 (d) 現在、死刑法案として展開されようとしている死刑の実施に関する規則(2014年)により、死刑を言い渡された未成年者に対し、当該未成年者が18歳になれば死刑を執行することが認められていること。 (e) 死刑事件および鞭打ち事件についての自動的上訴を定めた2015年11月の通達が、全体としては肯定的なものである一方で、当該通達の利益を享受できる者の間で十分に普及されておらず、かつ、最高裁判所への上訴期間も60日から30日へと短縮していること。 31.委員会は、締約国に対し、以下の措置を最優先でとるよう促す。 (a) 18歳未満の者の死刑について定めた国内法のすべての規定を廃止すること。 (b) 18歳未満の者または犯罪実行時に18歳未満であった者に対して死刑が執行されないこと(フドゥード法上の犯罪およびキサス法に基づく事件についての刑を含む)を確保し、そのようなすべての死刑についてそれに代わる適切な制裁を科すとともに、殺人被害者遺族に働きかけてキサス法に基づく事件について宥恕を奨励すること。 子どもの意見の尊重 32.委員会は、社会福祉機関、裁判所および行政機関によって子どもの意見が聴かれることがめったになく、かつ、16歳未満の子どもまたは第二次性徴期を迎えていない子どもには裁判所における陳述が認められないことを懸念する。 33.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ45参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、地方レベルでも、かつ裁判所における陳述との関連でも、意見を聴かれる子どもの権利が、その子どもの権利に影響を与える可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる措置において、その年齢および成熟度にしたがって尊重されることを確保するよう促す。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 思想、良心および宗教の自由 34.委員会は、イスラム教徒でない者および無信仰の者に対する宗教的不寛容についての報告があること、ならびに、宗教的寛容を奨励する成人および子どもに対して暴力を行なった者が一般的に処罰されていないことを深刻に懸念する。委員会はまた、締約国で宗教的過激主義が勢力を増しており、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利に深刻な影響が生じているという報告があることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進する等の手段により、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ48〔49〕参照)を、あらためて繰り返す。締約国は、宗教の名のもとに暴力を行なった者が責任を問われることを確保するべきである。 結社および平和的集会の自由 36.最近、18の学校で人権クラブが設立されたことは歓迎しながらも、委員会は、結社法(1/2003)で、すべての子どもが団体の結成を禁じられていることを懸念する。 37.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ51参照)をあらためて繰り返すとともに、対話の際に表明されたように、締約国が、子どもが団体を結成できるようにするために結社法を改正し、子どもたちに団体の結成を奨励し、かつ、子どもに影響を与える政策および決定の立案に子どもたちが関与するための機会をつくりだすよう勧告する。 適切な情報へのアクセス 38.締約国の14~18歳の子どものほとんどがインターネットにアクセスできており、かつ、締約国が最近、子どもおよびその親を対象としてネットいじめおよびインターネット上の安全に関する意識啓発活動を開始したことには留意しながらも、委員会は、子どもが年齢にふさわしくない情報およびポルノグラフィーならびにネットいじめにさらされないことを確保するうえで、これらの措置が不十分であることを懸念する。 39.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ53-54参照)をあらためて繰り返し、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスをさらに向上させるとともに、子どもならびに親および教員を対象とした、インターネット上の安全に関する(かつ、とくにポルノグラフィーおよびネットいじめの問題について扱う)啓発プログラムを強化するよう勧告する。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 40.憲法第54条で拷問が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年、第4条および第5条)に基づき、第二次性徴期に達した子どもが、フドゥード法上の特定の犯罪を行なったことを理由として鞭打ちにより処罰される可能性があることを懸念する。委員会は、未成年者が引き続き鞭打ちの刑を執行されておりまたは鞭打ち刑を言い渡されていること、および、この刑罰の適用においてジェンダーの偏りがあること(大多数の事件で、婚姻外の性交を理由として有罪を言い渡された女性および女子しか鞭打ちの刑を言い渡されていない)を、深刻に懸念するものである。委員会はさらに、罪を犯した子どもに対し、同意に基づく同性間の関係を理由として終身刑、追放刑または鞭打ちの刑を言い渡すことも合法とされていることを懸念する。 41.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ56参照)をあらためて繰り返すとともに、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)を参照しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の拷問(体罰を含む)の対象にもされないこと、ならびに、しつけおよび規律維持の措置としての体罰が家庭、代替的養護環境、司法機関、学校および職場環境において法律で禁止されることを確保するために必要なあらゆる措置をとること。 (b) 未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年)を改正して鞭打ち刑を禁止すること。 (c) 18歳未満の者の終身刑を明示的に禁止すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 42.2012年に家族間暴力法が採択されたことおよび同法の規定に関する意識啓発のための活動が実施されていることは歓迎しながらも、委員会は、同法が、子どもの体罰を禁止していると解釈されていないことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもに対する暴力、虐待およびネグレクトが広く行なわれていること。 (b) 家族間暴力の事案の通報水準が低く、かつ、法執行官が、このような暴力はイスラム教において正当化されると考えて、行動をとることおよび家族間暴力の加害者を逮捕することをしばしば躊躇すること。 (c) 2012年法で必置とされているシェルターがまだ設置されていないこと、ならびに、家族・保護サービスセンターおよびセーフハウスが資金不足の状況にあり、かつ利用可能となっていないこと。 (d) とくにマレにおいてギャング関連の暴力がエスカレートしつつある一方で、ギャング関連の暴力および死亡ならびにギャング関連の活動への関与から子どもを保護するためにとられた措置が限られていること。 (e) 子どもたちが、2012年2月7日〔政権交代をめぐる軍事政変〕後に行なわれた抗議の際に暴力にさらされてきたこと。 (f) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが脅迫および公然たる脅しに直面していること。 43.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族間暴力法に基づき、体罰が曖昧さを残す余地なく禁じられることを確保すること。 (b) 必置とされているシェルターを設置し、保護サービスセンターおよびセーフハウスに十分な資金を提供し、家庭内で女子に対して行なわれる暴力について法執行官の十分な能力構築を図り、かつ意識啓発のための努力を通じて通報を増加させる等の手段により、2012年家族間暴力法の執行および実施を確保すること。 (c) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置するとともに、このような暴力の程度、原因および性質についての包括的評価を実施すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表からも2013年5月の訪問時に勧告されたように、子どもの保護に関わる問題を担当するすべての主要な部局および機関が一堂に会し、定期的に会合して、ジェンダー関連の暴力にも焦点を当てながら子どもに対する暴力および子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略(具体的な予算をともなう介入策を定めたもの)を立案するための、ハイレベルな討議の場を制度化すること。 (e) 統一された、調整のとれた、かつ包括的な子どもの保護制度を創設すること。 (f) 政治的抗議の際に子どもに対して暴力が振るわれることおよび子どもが暴力にさらされることを防止するために必要なあらゆる措置をとること。 (g) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに対する脅迫および脅しを防止すること。 性的搾取および性的虐待 44.委員会は、子どもの性的虐待への対応に関する特別措置法が2009年に制定されたこと、その後、有罪判決を受けた性犯罪者の登録簿を法律・ジェンダー省がネット上で公表したこと(2015年11月)、および、子どもの性的虐待の通報が増えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 法律で「性的虐待」の定義が定められていないこと、および、2009年法第14条で、既婚女子に対して夫が行なった性犯罪の事件については免訴が認められていること。 (b) 性的同意に関して法律で定められている最低年齢が低すぎる(13歳)こと。 (c) 子どもの性的虐待(とくに女子に対する虐待)が依然として広く行なわれており、かつその大部分が通報されていないこと、有罪判決率が著しく低いこと、および、加害者がしばしば早期に釈放されてコミュニティに戻っていること。 (d) 2009年法の効果的実施のために必要な二次立法(証拠法案など)の成案がまだ得られていないこと。 (e) 裁判官が、女性、女子およびセクシュアリティについて差別的な見方をしており、子どもの性的虐待の被害者に対して配慮のない態度を示しており、かつ、場合により、自らも過去に性犯罪で有罪判決を受けていた者もいると報告されていること。 (f) 婚外妊娠が、虐待の結果として妊娠した女子の場合も含め、性犯罪法により犯罪とされていること。 (g) 性的虐待を受けた子どもが密通の罪で鞭打ち刑を言い渡される事案が多数生じていること。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的同意に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 条約に一致する形で性的虐待を定義すること、および、いかなる形態のものであれ性的搾取を受けたすべての子どもが被害者として扱われ、刑事的制裁の対象とされないようにすることを目的として、法律を改正すること。 (c) すべての形態の性的虐待(婚姻内強姦を含む)が犯罪化され、かつ犯罪の重大性に相応した刑罰によって処罰されることを確保する目的で2009年法第14条を廃止するとともに、証拠法案を完成させかつ制定すること。 (d) 子どもの性的虐待および性的搾取のすべての事案の通報義務を確保するための機構、手続および指針を確立すること。 (e) 女子の性的虐待に関する裁判官の感受性の強化を図ることなども通じ、性的搾取および性的虐待の加害者が効果的に訴追され、かつ相応の制裁を科されることを確保すること。 (f) 性的搾取および性的虐待(近親姦を含む)の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施し、かつ、このような人権侵害についての、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ実効的な通報経路を確保すること。 (g) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策(十分なシェルターの提供を含む)の発展を強化すること。 有害慣行 46.委員会は、最低婚姻年齢は18歳であるものの、家族法第4条(b)に基づき、マレの家庭裁判所が、子どもが第二次性徴期に達しており、心身ともに健全であり、かつ生計維持の能力を有していることを条件として、より低い年齢での婚姻を許可できることを懸念する。締約国が、法定年齢に満たない段階での婚姻の影響に関する広報ポスターを配布し、かつ児童婚および女性性器切除の有害な影響に関するその他の意識啓発活動を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、締約国で児童婚が増えていると報告されていることを懸念するものである。委員会はさらに、女性性器切除からの保護が法律で明示的に定められていないこと、および、一部の宗教的指導者(フィクフ〔法学〕アカデミーの副学長を含む)が、女性性器切除を「イスラム教の好ましい慣行」として擁護しているとされることを懸念する。 47.有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号(2014年)に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国で行なわれている子どもに対する有害慣行に終止符を打つための積極的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 家族法第4条(a)で18歳と定められている最低婚姻年齢が遵守されることを確保すること。 (b) 女性性器切除を有害慣行として明示的に禁止する法律を制定するとともに、その有害な影響に関する意識啓発を図ることおよびこの慣行を促進する宗教的指導者の責任を問うこと等を通じてこれと闘うための措置をとること。 (c) 早期婚が女子の身体的および精神的健康ならびにウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを、世帯、地方当局、宗教的指導者、裁判官および検察官を対象として発展させること。 ヘルプライン 48.委員会は、被害者またはその家族が人権侵害事案を通報するために活用できる、法律・ジェンダー省が運用するヘルプライン(フリーダイヤルおよび24時間運用)が2009年に開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、このヘルプラインについて多数の苦情(その存在が知られていないこと、アクセスのための接続が脆弱であること、通話に対応するための訓練を受けた職員がいないことおよびフォローアップが行なわれないことに関する苦情を含む)が出されており、いずれもこのヘルプラインへの公衆の信頼を失わせる結果になっていることを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、子どもヘルプラインを運営するための標準業務手続を作成し、通話に対応する職員に対して十分な研修を実施し、かつ、人権侵害が疑われる事案を通報するためのヘルプラインの活用を積極的に奨励するよう勧告する。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20~21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境 50.委員会は、対話の際に強調されたように、締約国の離婚率が非常に高く、かつ上昇し続けていることを依然として懸念する。委員会はまた、働く母親が多数存在するにもかかわらず、締約国に保育施設がひとつしかないことも懸念するものである。委員会はさらに、子育て意識啓発プログラムおよびカップル相談サービスがないことを懸念する。 51.委員会は、高い離婚率の背景にある理由についての研究を締約国が実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、保育施設を整備するための努力、ならびに、とくに親としての指導および親の共同責任に関する親向けの支援(研修を含む)を提供することを通じて、家族教育および家族についての意識啓発を発展させるための努力を増進させるよう、奨励する。 家庭環境を奪われた子ども 52.委員会は、代替的養護施設で子どもに対して虐待、差別および暴力が行なわれていること、ならびに、2010年以降、子どもに入所養護を提供しまたは被害を受けた子どもに対して必要な治療およびサービスを提供することを任務とせず、そのために設置されたわけでもない施設である「特別なニーズを有する人々のためのホーム」に措置される子どもが着実に増えていることを、深刻に懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 現在のところ、代替的養護における子どもの措置、養護および再統合についても、代替的養護施設の職員の採用および行為の監督についても包括的な法的枠組みが定められておらず、かつ指針も策定されていないこと。 (b) 養護を離脱する子どもまたは青少年のための計画、政策または手続が存在しないこと。 (c) 伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させることについて、締約国が十分な考慮を行なっていないこと。 53.委員会は、締約国に対し、「特別なニーズを有する人々のためのホーム」から直ちに子どもを退所させ、同施設への子どもの措置をやめ、かつ、代替的養護施設内で子どもに対して行なわれたすべての虐待、差別および暴力事件を調査するよう促す。委員会はさらに、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ60参照)をあらためて繰り返しながら、締約国が、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日)を考慮に入れながら、子どもホームの最低基準に関する規則、国の監護に関する規則および里親養育に関する規則を速やかに採択するとともに、これらの規則を実際に実施するため、職員を対象として関連の研修を実施するよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、養護を離脱する子どもおよび青少年のためのプログラムを緊急に策定するとともに、伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させる可能性を、これ以上遅滞することなく模索することも勧告する。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23~24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 54.障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)およびインクルーシブ教育政策(2012年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同法が全面的に実施されているわけではないことを懸念する。委員会はまた、障害のある子どもに対してスティグマが付与されていること、障害のある子どもについての細分化されたデータがないこと、および、これらの子どもが保健サービスにアクセスできていないことも依然として懸念するものである。 55. 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとり、細分化された統計データに基づきながら障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を定め、かつ、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある人の保護および金銭援助法の全面的実施のために十分な資源を配分すること。 (b) 障害のあるすべての子どもが障害者登録簿に記載されることを確保するとともに、当該登録を妨げる、現在存在するいかなる金銭的その他の障壁も取り除くこと。 (c) インクルーシブ教育政策を実施し、かつ、インクルーシブ教育が特別施設および特別学級への子どもの措置よりも優先されることを確保するための努力を強化すること。 (d) 障害のある子どもが保健ケア(早期発見および早期介入のためのプログラムを含む)にアクセスできることを確保するための努力を強化すること。 (e) 政府職員、公衆および家族を対象として、障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘い、かつこのような子どもの肯定的イメージを促進するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 思春期の健康 56.委員会は、思春期の子どもにやさしい保健サービスを提供するための基準が最近策定され、かつ、この問題について、政策立案関係者および宗教的指導者を対象とした感受性強化のための会合が開かれてきたことに留意する。委員会はまた、教育省が、学校において、青少年の子どもを対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的なライフスキル教育パッケージを実施していること、および、意識のさらなる促進を図るために放送媒体が活用されていることにも留意するものである。委員会はさらに、妊娠した非婚の女子に対し、家族保護部によって支援および医療ケアが提供されていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 中絶が、配偶者の同意を要件としており、かつ特定の場合(重症型サラセミア、重症型鎌状赤血球症または多発性先天奇形の場合、母体の生命を救いまたはその身体的健康を保全する目的がある場合、近親者による強姦で妊娠した場合、および、身体的および精神的に妊娠および分娩に適さない子どもが強姦により妊娠した場合)にしか認められないこと。 (b) リプロダクティブヘルスのための保健ケアサービスにすべての者がアクセスできるわけではなく、かつ、婚姻外妊娠が社会的非難の対象であることおよび犯罪とされていることを理由として非婚の女子が種々の困難に直面しているために、不法で安全性を欠いた中絶がますます行なわれるようになっており、思春期の母親の生命および健康に対するリスクが高まっていること。 (c) 2006年に実施された全国規模の研究によれば、締約国の子どもおよび青少年の66%が精神保健関連の問題を抱えており、かつ、2009年の調査によれば、締約国の生徒の22.2%が調査前の12か月間に自殺未遂の計画を立てていたにもかかわらず、これまでのところ、子どもおよび青少年を対象とする専門の精神保健サービスが締約国で確立されていないこと。 57.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (b) あらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、配偶者の同意規定を削除する等の手段により、子どもが安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で、法律の見直しを行なうこと。また、中絶に関する決定において、妊娠した女子の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保すること。 (c) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。 (d) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。 (e) 子どもおよび青少年を対象として、精神保健のための専門的便益およびサービスを提供すること。 (f) 思春期の子どもの性的行動および精神保健についての微妙な問題に関して、宗教的指導者との内部的対話を促進すること。 薬物および有害物質の濫用 58.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 近年、思春期の子どもの間で薬物の消費が増加しており、一方で薬物を最初に使用した平均年齢が下がりつつあること。 (b) 現在のところ、薬物濫用の被害者である子どもをとくに対象としたサービスが締約国に存在しないこと、および、利用可能なサービスは需要を満たすのに不十分であって依然として有効なものになっていないこと。 (c) 子どもが薬物濫用について専門家による援助を得るためには親または保護者の同意が必要であるが、多くの親はスティグマを恐れて家庭で問題を解決しようとしていること。 (d) 離脱症候群を持って生まれる子どもの人数が増えていること。 59.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用(タバコおよびアルコールの濫用を含む)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処する努力を強化するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。有害物質濫用の被害者のための専門的リハビリテーションサービスの一環としての新生児部、リプロダクティブヘルスサービス部および家族保護部に対し、特段の注意が払われるべきである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 60.委員会は、2014年に法律第9/91号(子どもの権利保護法)が改正され、モルディブに住むすべての子ども(外国籍の子どもを含む)に対して無償教育を受ける権利が認められたことを歓迎する。委員会は、教育法案において第10学年(15歳)までの義務教育が導入されることになる旨の情報に留意するものの、同法案の可決が遅れていることを依然として懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 締約国が、乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を定めていないこと。 (b) 障害法(2010年)の規定にもかかわらず、障害のある子どもが、とくに環礁において実質的に中等教育にまったくアクセスできていないこと、および、普通学校へのインクルージョンの対象とされた子どもが教室内で深刻な差別に直面していること。 (c) 多くの女子が学校に行かなくなっていると報告されていること。 61.委員会は、締約国に対し、教育法案を、これ以上遅滞することなく、かつ条約と一致する形で採択するよう促す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を採択すること。 (b) 障害のある子どもを含むすべての子どもが、他の子どもと同様に教育に対する権利を享受できることを確保すること。 (c) 適切な政策および措置を立案しかつ実施する目的で、女子が学校に行かなくなる理由についての研究を実施すること。 教育の目的 62.対話の際に提供された、授業用資料の見直しが現在進められている旨の情報には留意しながらも、委員会は、第4学年以上を対象とする授業用資料のなかに、性差別的および排外主義的資料ならびに理解、平和および寛容を促進しないその他の要素が含まれているという報告があることを深刻に懸念する。 63.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、軽蔑的な内容ならびに性別および宗教的信条に基づく差別および暴力を呼びかける内容を含んだすべての資料を直ちに撤回するとともに、それに代えて、すべての人民間ならびに民族的、国民的および宗教的集団間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神を反映し、かつ人権およびすべての文明の尊重の発展を促進する教育資料および教育プログラムを導入するよう、促す。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 64.芸術および音楽は必修教育カリキュラムの一部に位置づけられており、したがって学校にはこれらの科目を中止する選択権はない旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、あらゆる形態の芸術的表現は「ハラム」〔禁止行為〕であるから禁止されているという宗教的宣伝の結果、芸術、音楽および演劇の授業が一部の学校で中止されたという報告があることを深刻に懸念する。 65.委員会は、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、中止された芸術、音楽および演劇の授業をすべて再開しかつ保護すること、および、子どもが余暇を享受し、かつ文化的伝統について学習するために設けられている手段を拡大することを促す。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)ならびに第38条、第39条および第40条) 経済的搾取(児童労働を含む) 66.委員会は、2008年雇用法において最低就労年齢が16歳とされていることに留意するものの、家族企業で働く子どもについては同法が適用されず、このような子どものための立法上の保障措置が存在しないことを懸念する。委員会はまた、同法において、健康、教育、安全または品行に有害な影響を及ぼす可能性があるいかなる業務においても18歳未満の子どもの雇用が禁じられていることに留意するものの、禁止対象である危険な活動がそれ以上に具体的に定められていないことを懸念するものである。委員会はさらに、同法を執行するために労働関係庁および労働監察制度が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、同庁の人員および資源が不足しており、監察が不十分であり、かつ、児童労働を認識しかつこれに対応することについての具体的訓練が監察官を対象として実施されていないために、執行が十分に行なわれていないことを懸念するものである。 67.委員会は、締約国が、家族企業で働く子どもの保護のための立法上の保障措置をとり、子どもに対して禁止される搾取的業務および危険な業務の包括的リストを採択し、労働監察官を対象として、児童労働を認識しかつこれに対応することについての必修の研修を実施し、かつ、労働監察を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してILO・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めることも勧告するものである。 少年司法の運営 68.委員会は、新たに採択された2014年9月の刑法に基づき、子どもの未成熟性は15歳未満の子どもについては正当な抗弁とみなされる(ただしフドゥード法上の犯罪については例外とされる)こと、および、刑法上の犯罪について有罪と認定された15~17歳の子どもに対する刑の執行は、その子どもが18歳に達するまで延期されるとされていることに留意する。委員会は、刑事責任年齢が低い(10歳)ままであることを深刻に懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 締約国の裁判官が、刑事責任の存在を認定するにあたり、法定最低年齢ではなく身体的第二次性徴期への到達を基準として用いる傾向にあること。 (b) 鞭打ちが、犯罪に対する刑罰として依然として合法とされていること。 (c) 拘禁された子どもおよび青少年が、成人拘禁施設において、別ではあるものの近接した房に収容されていること。 (d) 法律に抵触した子ども、未決拘禁中の子どもおよび収監された子どもが教育に対する権利を否定されていること。 (e) 少年裁判所がマレ以外に設置されておらず、すべての事件がマレに移送されなければならないこと。 69.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 18歳未満の子どもに対し、フドゥード法上の犯罪についての刑罰を適用しないこと。 (b) 刑事責任年齢を国際的に受け入れられる水準にまで引き上げること。 (c) 少年司法法を、その規定が条約の規定および原則ならびに少年司法の運営(刑事手続における子どもの審理を含む)に関する他の国際的基準を全面的に遵守したものとなることを確保しながら、これ以上遅滞することなく採択すること。 (d) 犯罪に対する刑罰としての鞭打ちを廃止すること。 (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (f) 拘禁が避けられない場合、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が、少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めるよう勧告する。 (g) 十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた少年裁判所専用の施設および手続を締約国全域で速やかに確立し、子どもに関する専門の裁判官を指定し、かつ、このような専門の裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 70.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPSC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会は、貧困および農村出身の背景を有する多くの子どもが児童買売春ならびに児童ポルノの製造および配布に従事しているという報告があることをとりわけ懸念するものである。 71.委員会は、締約国に対し、買売春およびポルノのために子どもを使用することを(たとえ加害者と被害者がシャリーア法に基づく婚姻関係にあっても)犯罪化し、たとえ威迫が行なわなれなくとも子どもの性的人身取引を犯罪化し、かつ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもがシャリーア法に基づく告発(ジナ〔婚外性行為等〕の罪による告発を含む)に直面させられないことを確保する等の手段により、刑法を選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるよう促す。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 72.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPAC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。複数の夫婦および家族全員が締約国からイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配領域に渡航したとされている旨の情報に照らし、委員会は、締約国が、急進主義化および狂信的犯罪集団への勧誘を防止するための措置をとっていないことを懸念するものである。 73.委員会は、締約国に対し、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることに関わる選択議定書の規定の違反を犯罪化するとともに、いっそうの過激主義化、急進主義化および「ジハード」集団への勧誘の問題の高まりに対処するための戦略を策定するよう、促す。 J.通報手続に関する選択議定書の批准 74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書および障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、ならびに、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書を批准するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 76.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第4回・第5回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 77.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2021年9月12日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 78.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月24日)。