約 24,181 件
https://w.atwiki.jp/kou3/pages/19.html
隣接区域の保安 対象2酸化炭素消火設備 対象構造防護区画の隣接区画にて下記への開口部の付設に対し制約壁 柱 床 天井 隣接区域における制約・例外制約消火剤の放出に際し安全な場所への排出措置 音響警報装置の付設 表示灯の設置・点灯 隣接区域からの避難路出入口に設置 消火剤の放出に際し表示灯が点灯 例外対象消火剤の放出に際し下記への適合に因り対処が不要 防護区画の放出に際し開口部からの流出への対処 保安上の危険性に対する懸念の対象外となる状況 具体例隣接区域における外気循環 直接の外気開放 外気流の循環 防護区画に対し隣接区画の体積が3[倍]以上 漏洩2酸化炭素の滞留への懸念対象外 総合点検 試験用冷媒窒素 空気 試験用冷媒の充填容器消火剤の貯蔵容器に対し同容量の容器に充填 所要量消火所要量の10[%]相当量に因り試験 容器数は5本以下に因り構成
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/73.html
総括所見:中国(OPSC・2005年、マカオ特別行政区を含む) 第1回(1996年)/第2回(2005年)/第3回・第4回(2013年)OPAC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/CHN/CO/1(2005年11月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月19日および20日に開かれた第1062回~第1065回会合(CRC/C/SR.1062-1065参照)において、2005年5月11日に提出された中国(マカオ特別行政区を含む)の第1回報告書(CRC/C/OPSA/CHN/1 and Part II)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、本土およびマカオ特別行政区(SAR)における選択議定書の実施状況を取り上げた締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会は、代表団との間に持たれた率直かつ開かれた対話を評価するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、第1回報告書を、〔条約に関する〕第2回定期報告書とあわせて検討できるように時宜を得た形で提出するために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の適用が香港SARに拡大されていないことを遺憾に思うものである。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 選択議定書の実施の調整および評価 4.委員会は、中国本土において人身取引および性的搾取と闘うために締約国がますます努力を行なっていること、および、代表団から提供された情報によれば、とくに被害者とその家族の再統合に関して本土と諸SARの間の調整がますます行なわれるようになっていることを、歓迎する。にもかかわらず、委員会は、本土における問題への対応は主として公安部によって行なわれていて他の省庁とは限られた調整しか図られていないこと、および、人身取引の社会経済的側面に十分な注意が払われていないことを懸念するものである。 5.委員会は、締約国が、関連省庁、影響を受けている子どもおよび若者ならびに非政府組織(とくに人身取引および性的搾取の社会経済的側面に対処できる組織)を含む中央調整機関を中国本土で設置することを検討するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、被害者に対する援助ならびに犯罪の防止および訴追に関する活動を本土と諸SARの間でさらに調整するよう促すものである。 国家的行動計画 6.締約国が、2004年10月、メコン圏における人身取引対策に関する了解覚書に調印したことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、本土またはマカオSARのいずれについても、人身取引および性的搾取と闘うための適用可能な行動計画が存在しないことを懸念する。 7.委員会は、締約国が、ストックホルム〔宣言〕および行動綱領、横浜グローバル・コミットメントおよび選択議定書の規定に基づき、本土およびマカオSARにそれぞれ適用される行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。 データ収集 8.委員会は、中国本土およびマカオSARのいずれについても、締約国報告書に、性的搾取および国境を越えた人身取引に関する限られたデータしか記載されていないことを遺憾に思う。委員会はさらに、データに表れているのはほぼ例外なく、誘拐された女性および子どもではなく救出された女性および子どもの人数であること、および、データでしばしば異なる期間が扱われていることを懸念するものである。このことは、子ども売買、児童買春および児童ポルノに関する状況の正確な評価および監視を阻害することにつながる。 9.委員会は、締約国が、SAR、本土、本土の省および地域ならびに適用可能な場合には近隣諸国の別に分類された、人身取引、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害者に関する細分化されたデータ(影響を受けている男女の子どもの人数に関するデータも含む)を収集する努力を強化するよう勧告する。 2.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止 現行刑事法令 10.本土において子どもの取引および売買が1997年刑法により犯罪化されていることには留意しながらも、委員会は、同刑法で、選択議定書第3条1項に掲げられたあらゆる目的によるおよびあらゆる形態の子どもの売買が対象とされていないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が1997年刑法を改正し、養子縁組目的の売買および取引にとくに注意を払いながら、選択議定書第3条1項に列挙されたあらゆる目的による子どもの取引および売買を禁止するよう勧告する。 3.刑事手続 犯罪人引渡し 12.委員会は、国外で行なわれたとされる犯罪に関わる犯罪人引渡しについても国内訴追についても双方可罰性が要件とされているため、選択議定書第1条、第2条および第3条に掲げられた犯罪の訴追が妨げられることを懸念する。 13.委員会は、締約国が、国外で行なわれた犯罪に関わる犯罪人引渡しおよび(または)本土における訴追についての双方可罰性要件を廃止する目的で法改正を行なうよう勧告する。 4.被害を受けた子どもの権利の保護 被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 14.委員会は、再統合および回復に関わって被害を受けた子どもを援助するための本土におけるサービスについて提供された情報が限られていることを懸念する。委員会はまた、マカオSARにおいて、人身取引および性的搾取の被害を受けた子どものためにとくに立案された援助プログラムが存在しないことも懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、人身取引および性的搾取の被害を受けた子どもに対してその回復および再統合を援助するために本土およびマカオSARで提供されるサービスを拡大するとともに、当該サービスがこのような被害者のニーズに対応することをとくに目的として立案されることを確保するよう、勧告する。 5.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止 選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置 16.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関わる犯罪を処罰するために中国本土でとられた措置には留意しながらも、委員会は、これらの犯罪の防止に対して十分な注意が払われていないことを懸念する。委員会はまた、領域内における遊技活動の拡大にともなって防止の努力も強化されつつあるという、マカオSAR代表から提供された情報にも留意するものである。 17.委員会は、締約国が、とくに社会経済的原因に対応するための措置、公衆意識啓発キャンペーン、ならびに、人身取引および性的搾取の防止およびそのリスクの削減に関する親および子ども向けの教育を通じて子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止することに、いっそうの注意を払うよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、マカオSARにおける防止関連の努力をさらに増進させ、かつ、次回定期報告書でこれらの努力に関する追加情報を提供するよう促すものである。 6.国際的な援助および協力 18.委員会は、締約国とベトナム等の近隣諸国との間でいっそうの地域的協力が行なわれていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、性的搾取および買春が目的であると思われる、国境を越えた女子の人身取引(締約国からのおよび締約国への取引の双方)が増えているという報告に懸念を覚えるものである。 19.委員会は、本土において締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国際機関または地域機関および近隣諸国と連携しながら、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよびセックス・ツーリズムを目的とする、国境を越えた人身取引の規模および性質についてのさらなる調査研究を実施すること。 (b) 子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよびセックス・ツーリズムをともなう行為の防止、摘発および捜査ならびに責任者の訴追および処罰を目的としたさらなる二国間、地域間および多国間協定を通じ、国際協力を拡大すること。 7.フォローアップおよび普及 フォローアップ 20.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を本土の国務院および全国人民代表大会ならびにマカオSARの行政会議および立法会の構成員ならびに適用可能なときは省および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 21.委員会は、条約〔ママ〕、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 8.次回報告書 22.選択議定書第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって2009年3月31日が提出期限とされている、条約に基づく次回(第3回・第4回統合)定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月13日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/194.html
総括所見:カナダ(第2回・2003年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2006年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.215(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月17日に開かれた第894回および第895回会合(CRC/C/SR.894 and 895参照)においてカナダの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.6)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合(CRC/C/SR.918参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書、および、締約国における子どもの状況について最新情報を提供してくれた、事前質問事項(CRC/C/Q/CAN/2)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。しかしながら、連邦および州の報告書に基づいた総合的報告書が提出されていれば、委員会にとって、条約の実施についての比較による分析とともに、条約を実施するためにカナダがとった貴重な措置の、いっそう調整のとれた、かつ包括的な把握が可能になったであろう。委員会は、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が行なっている多数の取り組みを心強く思うとともに、これらの取り組みをさらに組織立ったものとし、かつその効果的実施を確保することにつながるであろう、子どものための国家行動計画の完成を待望する。とくに委員会は、以下の行動およびプログラムに留意したい。 「全カナダ子どもアジェンダ」。 全国子ども手当。 子ども・若者担当国務長官の設置。 社会政策改訂に関する連邦・州・準州閣僚評議会。 「社会的団結枠組み協定」・ C-27号刑法改正法案の制定。 カナダ通信教育網。 「力の結集:カナダ先住民族行動計画」 開発途上国による自国の子どもの権利の充足を援助するためにカナダ国際開発庁(CIDA)が果たしている建設的役割、および、カナダは2010年までに国際援助を倍増させる旨の代表団主席による宣言。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.3)の検討後に委員会が行なった勧告(CRC/C/15/Add.3、1995年6月20日付)の一部が実施されたことには留意しながらも、残りの勧告、とくに、留保の撤回に言及したパラ18、データ収集に関わるパラ20、一般原則が国内法に反映されることの確保に関わるパラ23、第22条の実施に関わるパラ24、体罰を許容する刑法の見直しを提案したパラ25に掲げられた勧告への対応が行なわれていないまたは不十分であることを、遺憾に思う。委員会は、これらの懸念がこの文書でもあらためて表明されていることに留意するものである。 5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の勧告を効果的にフォローアップするためにあらゆる努力を行なうよう、勧告する。 留保および宣言 6.委員会は、条約第37条(c)に対する留保の撤回に向けて政府が行なっている努力には留意しつつも、手続にやや時間がかかっていることを遺憾に思うとともに、締約国には第21条に対する留保を撤回する意思はない旨の代表団による発言をなおいっそう遺憾に思う。委員会は、第21条および第37条(c)に関して締約国が維持している留保についての懸念をあらためて表明するものである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約に対して付した留保を再検討し、かつその撤回を速やかに進めるよう促す。委員会は、条約第21条に対する留保を撤回する目的で、先住民族との対話を継続するよう慫慂するものである。 立法および実施 8.委員会は、条約の相当部分の適用が州および準州の権限であることに留意するとともに、このため、場合によって、州および準州段階における違いを理由として条約の最低基準がすべての子どもに適用されない状況が生じるおそれがあることを懸念する。 9.委員会は、連邦政府に対し、州および準州が自らの条約上の義務を理解すること、および、条約上の権利が、立法および政策その他の適当な措置を通じ、すべての州および準州で実施されなければならないことを確保するよう、促す。 調整・監視 10.多部門型の取り組みである「全カナダ子どもアジェンダ」が1997年に開始されたこと、および、子ども・若者担当国務長官の役職が創設されたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、人権に関する常設官公吏委員会および子ども・若者担当国務長官のいずれに対しても条約の実施の調整および監視が具体的に委任されているわけではないことを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、締約国に対し、前回勧告したとおり(CRC/C/15/Add.37、パラ20)、条約の実施において格差または差別が生ずるいかなる可能性も低減させかつ払拭する目的で、子ども〔の権利〕を促進しかつ保護するための政策の実施における、とくに連邦、州および準州の当局間の効果的な調整および監視を強化するよう、奨励する。 国家的行動計画 12.委員会は、「力の結集:カナダ先住民族行動計画」の導入(1998年1月)に留意するとともに、子どもの権利条約および子どもに関する国連総会特別会期の最終成果文書(「子どもにふさわしい世界」)にしたがって国家的行動計画が作成されていることを心強く思う。委員会はまた、カナダが、この点に関する行動は条約にしたがってとられなければならないと確信していることも心強く思うものである。 13.委員会は、締約国に対し、すべての子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団(先住民族、移住者および難民の子どもを含む)を対象とする、首尾一貫した、包括的なかつ権利基盤型の国家的行動計画が採択されることを確保するよう、奨励する。当該計画では、市民社会と協力しながら、連邦、州、準州および地方のレベルにおける責任分担、明確な優先順位、予定、および、条約にしたがった必要な資源の予備的配分についても定められるべきである。委員会はまた、政府に対し、国家行動計画の実施に関する組織的監視機構を指定するようにも促す。 独立の監視 14.委員会は、カナダの8つの州に子どもオンブズマンが設置されていることに留意するものの、すべての子どもオンブズマンが、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、1993年12月20日の総会決議48/134付属文書)にしたがった完全に独立した国内人権機関として任務を行なうための十分な権限を与えられているわけではないことを、懸念する。さらに委員会は、このような機関が連邦レベルで設置されていないことを遺憾に思うものである。 15.委員会は、締約国が、子どもの権利担当のオンブズマン事務所を連邦レベルで設置するとともに、その効果的運用のための適当な資金を確保するよう、勧告する。委員会は、このような事務所をまだ設置していない州、および、脆弱な立場に置かれた子どもが高い割合で住んでいる3つの準州においても、このような事務所が設置されるべきことを勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、パリ原則および国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号を全面的に考慮するよう、勧告する。 資源配分 16.委員会は、多くの取り組みおよびプログラム(とくに、子どもの貧困を削減しかつ防止することによって、危険な状態で暮らしているカナダの子どもの福祉を向上させることを目的とした全国子ども手当(NCB)制度)への資源配分を通じて政府が行なっている子どもの権利の充足に対する貢献に関して報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、一部の州におけるNCBの実施のあり方について社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.31、パラ22)および自由権規約委員会(CCPR/C/79/Add.105、パラ18・20)が表明した懸念を、あらためて繰り返すものである。 17.委員会は、締約国に対し、全国子ども手当制度によって一部集団の子どもに生じる可能性があるいかなる否定的または差別的効果も払拭する目的で、当該制度の効果ならびに州および準州における当該制度の実施に関する定期的評価を活用しながら制度の見直しを行なうよう、慫慂する。 18.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに周縁化されたおよび経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの権利の問題に関する優先順位を毎年明確に述べるとともに、子どもに関する支出の効果およびその有効な活用について評価できるようにする目的で、連邦、州および準州のレベルで子ども(とくに周縁化された集団)に費やされている予算の額および割合を明らかにするよう、奨励するものである。委員会は、締約国に対し、子どもが将来の経済的変動の影響を不相応に受けないようにするための措置を引き続きとり、かつ、条約の普及に関する活動を行なっている非政府組織への支援を継続するよう、奨励する。 データ収集 19.委員会は、報告書の付属文書および事前質問事項に対する文書回答の付属文書で提供された豊富な統計データの価値を認めるとともに、締約国が先住民族に関する統計研究所を設置しようとしていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とするすべての分野について情報が十分に整備され、細分化されおよび十分に総合化されているわけではなく、ならびに、子どもに関連するデータ収集に18歳未満のすべての者が体系的に包摂されているわけではないという見解に立つものである。委員会は、情報収集に関する前回の懸念および勧告(CRC/C/15/Add.37、パラ20)を想起しつつ、これに対する対応が十分ではないことを主張したい。 20.委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(すなわち先住民族の子ども、障害のある子ども、虐待およびネグレクトを受けた子ども、ストリートチルドレン、司法制度の対象とされている子ども、子どもの難民および庇護希望者)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野および18歳未満のすべての子どもに関する、体系的に細分化されたデータを収集しかつ分析するための機構を強化しかつ中央集権化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、開発された指標および収集されたデータを、立法、政策および資源配分プログラムの立案および評価ならびに条約の実施および監視のために有効に活用するよう、促すものである。 2.一般原則 差別の禁止 21.委員会は、文化的多様性を促進しかつ保護するための措置および差別に関わる具体的な立法上の措置に関連した積極的進展に留意する。後者には、多文化主義法(とくに寄宿学校制度との関連において)、雇用平等法、および、加重事由として人種差別を導入した刑法改正が含まれる(人種差別撤廃委員会(CERD)の2002年版年次報告書(A/57/18)、パラ315-343も参照)。しかしながら委員会は、CERDの懸念を、とくに、子ども(インディアン法に関するものなど)、先住民族ならびにアフリカ系およびアジア系の人々に対する拘禁中の暴力およびこれらの人々の拘禁中の死亡、メディアで見られる差別および偏見表現のパターン、ならびに、在留資格を有しない移住者の子どもの学校制度からの排除との関連で共有するとともに、一部集団の子どもに対する差別が根強く残っていること(前掲パラ332、333、335および337も参照)を依然として懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、差別の禁止に対する権利(条約第2条)を子どもに関わるすべての関連の法律に全面的に統合するための立法上の努力を引き続き強化するとともに、この権利が、政治上、司法上および行政上のすべての決定、ならびに、すべての子ども(とくに、障害のある子どもおよび先住民族の子どものような、マイノリティ集団その他の脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども)に影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて効果的に適用されるべきことを、勧告する。委員会はさらに、締約国が、社会の否定的な態度および慣行を防止しかつこれと闘うため、引き続き、包括的な公衆教育キャンペーンを実施しかつ必要なあらゆる積極的措置をとるよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、条約の一般原則を考慮しながら、文化的多様性を促進するための努力に関するさらなる情報を次回の報告書で提供するよう、要請する。 23.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画についてカナダが表明した留保に留意しつつも、ダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報が、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載されるべきことを勧告する。 子どもの最善の利益 24.委員会は、締約国が、子どもに関わるあらゆる立法、プログラムおよび政策の発展において子どもの最善の利益の原則がきわめて重要であると考えていることを高く評価するとともに、この点に関わる進展を認識する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきであるという原則が、一部の子ども(とくに、離婚、監護および退去強制の状況に直面している子ども)および先住民族の子どもに影響を与える一部の立法、裁判所の決定および政策においていまなお十分に定義されかつ反映されていないことを、依然として懸念に思うものである。さらに委員会は、この点に関する調査研究および専門家の研修が不十分であることを懸念する。 25.委員会は、第3条に掲げられた「子どもの最善の利益」の原則が、さまざまな状況にある子ども個人および子どもの集団(たとえば先住民族の子ども)との関連で適切に分析されおよび客観的に実施され、ならびに、子どもに関わる立法のあらゆる再検討、裁判所における法的手続ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスに統合されるべきことを、勧告する。委員会は、締約国に対し、調査研究、および、子どもに対応する専門家のための教育プログラムが強化されること、ならびに、条約第3条が全面的に理解されることおよびこの原則が効果的に実施されることを確保するよう、奨励するものである。 3.市民的権利および自由 アイデンティティに対する権利 26.委員会は、カナダ市民によって国外で養子とされた子どもの市民権の取得を容易にする新カナダ市民権法が採択されたことを心強く思う。委員会は同様に、先住民族の子どもおよび家族に対し、そのコミュニティ内で文化的に配慮されたサービスを提供する、「ファーストネーションズ子ども家族サービス」が設立されたことを心強く思うものである。 27.委員会は、締約国が、無国籍の子どもの状況を解決するため、条約第7条にしたがってさらなる措置(出生登録を確保するための措置および市民権の申請を容易にするための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、無国籍者の地位に関する条約(1954年)を批准することも提案するものである。 4.家庭環境および代替的養護 不法な移送および不返還 28.委員会は、カナダが国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の加盟国であることに満足感とともに留意し、かつ、親による子どもの誘拐の問題が拡大しつつあるという締約国の懸念に留意する。 29.委員会は、締約国が、カナダに誘拐されてきたすべての子どもに当該ハーグ条約を適用し、当該ハーグ条約の未加盟国に対してこれを批准しまたはこれに加入するよう奨励し、かつ、必要なときは、国際的な子どもの誘拐に十分に対処するための二国間協定を締結するよう、勧告する。委員会はさらに、不法な移送および不返還の事件を当事者の子どもの最善の利益にかなう形で解決するため、外交ルートおよび領事ルートを通じて最大限の援助が提供されるべきことを勧告するものである。 養子縁組 30.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をカナダ内外で促進することについて締約国が優先順位を与えていることを、心強く思う。しかしながら委員会は、養子縁組が州および準州の管轄事項である一方、法律上その他の適当な措置による当該ハーグ条約の批准のフォローアップがすべての州で行なわれているわけではないことに、留意するものである。委員会はまた、一部の州で、可能なかぎり自己の実親を知る養子の権利(第7条)が認められていないことも懸念する。 31.委員会は、養子の生年月日および出生場所ならびにその実親に関する情報が保全され、かつ当該養子がこれを入手できることを確保するため、締約国が法改正を検討するよう勧告する。さらに委員会は、連邦政府が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の全面的実施を自国の領域全体で確保するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 32.委員会は、子どもの体罰に代わる手段に関する調査研究を促進し、虐待の発生件数に関する研究を支援し、健康的な子育てを促進し、かつ児童虐待およびその影響に関する理解を向上させることによって体罰を抑制するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、あらゆる形態の体罰を明示的に禁止する法律を制定しておらず、かつ、体罰を許容する刑法第43条を削除するための行動をなんらとっていないことを、深く懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、子どものしつけにあたって「合理的な有形力」を使用することを認めた現行の規定を削除するための法律を採択するとともに、家庭、学校および子どもが措置される可能性のあるその他の施設における子どもに対するあらゆる形態の暴力を、たとえ軽いものであっても明示的に禁止するよう、勧告する。 5.基礎保健および福祉 健康および保健サービス 34.委員会は、とくに予算を増額し、かつ先住民族保健プログラムに焦点を当てることによってカナダ国民のための保健ケアを強化することに対する、政府のコミットメントを心強く思う。しかしながら委員会は、締約国も認めているように、相対的に高い健康水準がすべてのカナダ国民によって平等に共有されているわけではないことを懸念するものである。委員会は、とくに農村部および北部のコミュニティにおけるならびに先住民族コミュニティにとってのサービスの普遍性およびアクセス可能性に関して、州および準州による均等な法令遵守が懸念の対象となっていることに留意する。委員会は、先住民族の子どもの間で乳幼児突然死症候群および胎児性アルコール症候群の発生率が不相応に高いことを、とりわけ懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら、すべての子どもが同一の質の保健サービスを平等に享受することを確保するための措置をとるよう、勧告する。 思春期の健康 36.委員会は、締約国における乳児死亡率が平均して減少していることを心強く思うものの、先住民族の死亡率が高く、かつこの集団に属する若者の自殺率および有害物質濫用率が高いことを深く懸念する。 37.委員会は、締約国が、若者の自殺の原因として考えられる要因およびもっとも危険な状況にあると思われる若者の特徴に関する研究に引き続き優先的に取り組むとともに、この悲劇的現象の発生の削減につながる可能性がある、たとえば精神保健、教育および雇用の分野における支援、防止および介入のための追加的プログラムを整備するための措置を、実際的に可能なかぎり早期にとるよう、提案する。 社会保障ならびに保育サービスおよび保育施設 38.委員会は、親休暇の拡大、税控除の増額、子ども手当および先住民族のための特別プログラムを通じ、家族に対して援助を提供するために政府がとっている措置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、保育費用が高いこと、入所枠が不足していることおよび全国的基準が定められていないことに関する報告について懸念を覚えるものである。 39.委員会は、締約国に対し、保育の提供状況およびそれが子どもに対して与えている影響に関する違いを明らかにするために州および準州のレベルで比較分析を行なうとともに、すべての子どもがその経済的状況または居住地に関わらず良質な保育を利用できるようにすることに対する、調整のとれたアプローチを創案するよう、奨励する。 生活水準 40.委員会は、データの出典が限られているため、カナダ住宅貸付協会がホームレス問題を調査研究の優先課題に位置づけたことを知り、心強く思う。しかしながら委員会は、カナダの10大都市の市長がホームレス問題を国家的惨事であると宣言し、かつ政府に対してホームレス状態および貧困の削減のための国家的戦略を実施するよう促したことに留意した、社会権規約委員会の懸念(E/C.12/1/Add.31、パラ24・46)を共有するものである。 41.委員会は、子どもの貧困が問題として浮上してきていることに関する前回の懸念をあらためて表明するとともに、経済的および構造的変動ならびに女性の間で深刻化する貧困(これはとくにシングルマザーその他の脆弱な立場に置かれた集団に影響を与えている)、ならびに、その結果として子どもに生じる可能性がある影響についての、女性差別撤廃委員会(CEDAW)の懸念を共有する。 42.委員会は、とくに子どものホームレス状態が広がっていることの原因、および、ホームレス問題と児童虐待、児童買春、児童ポルノおよび子どもの人身取引との間に存在するいずれかの関係を明らかにするため、さらなる調査研究が行なわれるべきことを勧告する。委員会は、締約国に対し、この現象の発生を削減しかつ防止するための措置をとりながら、ホームレスの子どもに提供する支援サービスをさらに強化するよう奨励するものである。 43.委員会は、締約国が、貧困下で暮らす子どもの増加の原因となっている要因に引き続き対応するとともに、CEDAWが提案したようにシングルマザーの状況(A/52/38/Rev.1、パラ336)および脆弱な立場に置かれたその他の集団の状況に正当な注意を払いながら、すべての家族が十分な資源および便益を有することを確保するためのプログラムおよび政策を発展させるよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 44.委員会は、締約国における模範的な識字率および基礎教育の水準の高さを高く評価するとともに、カナダ国内および国際社会の双方において良質な教育を促進するために行なわれている多数の取り組みを歓迎する。委員会は、居留地に住む先住民族の教育水準を高めるための取り組みを、とくに心強く思うものである。委員会はさらに、低所得の生徒が中等教育以降の教育を受けようとする際の金銭的障壁への対応に関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/1/Add.31、パラ49)に対応するためにとられた措置に留意する。にもかかわらず、委員会は、在留資格のない移住者の子どもが一部州で学校から排除されているという訴えについての人種差別委員会の懸念(A/57/18、パラ337)をあらためて繰り返すものである。さらに委員会は、教育支出の削減、教員ひとりあたりの生徒数の増加、教育委員会の数の減少、先住民族の子どもの中退率の高さ、および、両方の公用語による指導が「生徒数に関する基準が満たされた場合」にのみ利用可能とされていることについて、懸念を覚える。 45.委員会は、締約国が、条約第29条1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目標を達成するため、とくに以下の措置をとることによって、締約国全域で教育の質をさらに向上させるよう勧告する。 (a) 農村部の子ども、先住民の子どもおよび難民または庇護希望者ならびに不利な立場に置かれたその他の集団の子どもおよび特別な注意を必要とする子どもにとくに注意を払いながら、子ども1人ひとりの文化的アイデンティティに配慮した無償のかつ良質な初等教育(子ども自身の言語によるものも含む)が、すべての子どもにとって利用可能でありかつアクセス可能であることを確保すること。 (b) 適用可能なときはさまざまな指導言語による人権教育(子どもの権利に関する教育を含む)が学校カリキュラムに編入されること、および、教員が必要な研修を受けることを確保すること。 (c) 国連教育科学文化機関の教育差別禁止条約(1960年)を批准すること。 (d) 学校におけるいかなる形態の体罰の使用も禁止するために適当な立法上の措置をとるとともに、規律の維持のための措置に関する議論への子ども参加を奨励すること。 7.特別な保護措置 子どもの難民 46.委員会は、新出入国管理および難民保護法(2002年)に子どもの最善の利益の原則が編入されたこと、および、国連難民高等弁務官事務所および非政府組織と協力しながら出入国管理手続における子どもの懸念に対応するための努力が行なわれていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、前回表明された懸念の一部について十分な対応が行なわれておらず、とくに家族再統合、退去強制および自由の剥奪の事案において、援助をもっとも必要としている人々が優先されていないことに留意するものである。委員会は、以下のことをとくに懸念する。 (a) 保護者のいない子どもの庇護希望者に関する国家的政策が定められていないこと。 (b) このような子どもについて法定後見人を任命するための統一手続が設けられていないこと。 (c) 「養育者から分離された子ども」の定義が定められておらず、かつ子どもの庇護希望者に関する信頼できるデータが存在しないこと。 (d) 脆弱な立場に置かれた子どもの公的福祉機関への付託について、十分な研修が行なわれておらず、かつ連邦当局が一貫したアプローチをとっていないこと。 47.条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ子ども(庇護を希望しているか否かは問わない)との関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養育者から分離されてカナダで庇護を希望している子どもについての国家的政策を採択しかつ実施すること。 (b) 後見の性質および範囲を明確に定めたうえで、後見人の任命手続を実施すること。 (c) 保護者のいない未成年者の収容は行なわないことを方針とし、かつこのような収容は「最後の手段」としての措置である旨の立法者意思を明確にするとともに、条約第37条にしたがい、収容の合法性を速やかに争う権利を確保すること。 (d) 養育者から分離された子どもであって国際的保護を必要としない者の出身国への送還について取り扱う、よりよい政策および実務指針を策定すること。 (e) 子どもの難民および庇護希望者が教育および保健のような基礎的サービスにアクセスできること、および、庇護希望者の家族のための手当の受給資格について、子どもに影響を与える可能性がある差別が行なわれないことを確保すること。 (f) 家族再統合への対応が迅速な方法で進められることを確保すること。 武力紛争の影響を受けた子どもの保護 48.委員会は、カナダが、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に関して批准時に宣言を行ない、軍隊への志願入隊を16歳から認めていることに留意する。 49.委員会は、締約国が、条約第38条3項に照らし、志願兵の採用手続において最年長者を優先させるためにとられた措置、ならびに、採用を18歳以上の者に限定するための努力(および法律をしかるべき形で見直すための努力)に関する情報を、来年提出予定の当該選択議定書に関する報告書において提供するよう、勧告する。 経済的搾取 50.委員会は、カナダが、子どもの経済的搾取に終止符を打つことに向けて国際的レベルで行なわれている活動に対して資源を投入してきたことを、おおいに評価する。しかしながら委員会は、カナダにおける状況についての情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約をカナダが批准していないことを懸念するとともに、13歳未満の子どもが経済活動に従事していることを懸念する。 51.委員会は、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約を批准し、かつその効果的実施のために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、必要なときはカナダにおける子どもの搾取的就労を防止するための効果的措置をとる目的で、子どもがどの程度働いているのかを十全に評価するための全国的調査研究を実施するよう、奨励するものである。 性的搾取および人身取引 52.委員会は、性的搾取に関する意識の促進およびその削減に向けた活動(1997年の刑法改正(法案C-27号)および2002年の法案C-15A号の導入により、性的搾取の被害者である子どもに対してサービスを求めた者の逮捕および訴追を容易にし、かつカナダ国民が国外で行なったあらゆる子どもの性的搾取行為についてカナダで訴追を行なえるようにしたことも含む)においてカナダが国内外で果たしている役割を、心強く思う。しかしながら委員会は、ストリートチルドレンおよびとくに先住民族の子どもが被害を受けやすい状況に置かれており、人口比に照らして不相応に多く、生存のための手段として最終的に性産業に行き着いているという懸念があることに留意するものである。委員会はまた、人身取引によってカナダに連れてこられる外国人の子どもおよび女性が増えていることも懸念する。 53.委員会は、締約国が、非政府組織および出身国との協力を増進させる等の手段も用いながら、文化的に適切なかつ調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護および援助(防止措置、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)をさらに増強するよう、勧告する。 ストリートチルドレン 54.委員会は、一定数の子どもが路上で生活しているのに、締約国報告書にストリートチルドレンに関する情報がないことを遺憾に思う。委員会の懸念は、子どもがカナダのホームレス人口の相当部分を占めていること、先住民族の子どもがこの集団においてきわめて過剰に代表されていること、および、この現象の原因には貧困、虐待的な家庭状況およびネグレクトを行なう親が含まれていることを示す、主要都市中心部から得られた統計によって際立つところである。 55.委員会は、締約国が、子どもがホームレスとなる現象の範囲および原因を評価するための研究を行なうとともに、これらの子どもの最善の利益にかなう形でかつこれらの子どもの参加を得ながらこの現象を防止しかつ削減する目的で、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら、これらの子どものニーズに対応するための包括的戦略を確立することを検討するよう、勧告する。 少年司法 56.委員会は、2003年4月に新法が制定されたことを心強く思う。委員会は、犯罪防止のための取り組みおよび司法手続に代わる手段を歓迎するものである。しかしながら委員会は、成人を対象とする刑が14歳という若年の子どもにも拡大して用いられていること、拘禁されている青少年の人数が先進工業諸国でも最高の部類に入ること、罪を犯した少年と成人を拘禁施設にいっしょに収容することが依然として適法であること、公衆が少年の記録にアクセスすることが認められていること、および、罪を犯した青少年の素性が公表されうることを、懸念する。加えて、青少年犯罪に関する公衆の認識は不正確であり、かつメディアによるステレオタイプに基づいていると言われている。 57.委員会は、締約国が、条約の規定および原則、とくに第3条、第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準を立法、政策および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 18歳未満のいかなる者も、諸事情またはその罪名の重大性に関わらず、成人として裁判の対象とされないことを確保すること。 (b) すべての裁判事件において、当事者である子どもの意見が十分に聴取されかつ尊重されることを確保すること。 (c) 条約第40条2項(b)(vii)にしたがい、法律に抵触したすべての子どものプライバシーが全面的に保護されることを確保すること。 (d) 拘禁されている子どもの人数を相当に削減するために必要な措置(たとえば拘禁に代わる社会内処遇措置および条件付釈放)をとるとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なかぎり短い期間でのみ用いられること、および、拘禁の際、子どもが常に成人から分離されることを確保すること。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 58.委員会は、とくに寄宿舎学校制度において先住民族に対して行なわれた歴史的不正に対するカナダとしての深い遺憾の意を表明した、連邦政府による和解声明を歓迎する。委員会はまた、カナダ全域の先住民族の生活向上に対し、第1回報告書の検討以降開始された、連邦予算で定められた多数の取り組みによって、政府が優先順位を与えていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、先住民族の子どもが、先住民族ではない他の子どもよりもはるかに高い頻度および深刻さで、多くの問題(いくつかの分野における差別を含む)を経験し続けていることを懸念する。 59.委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもと先住民族ではない子どもとの間に存在する人生の機会の格差に対応するための努力を継続するよう、促す。これとの関連で、委員会はとくに、自由権規約委員会(CCPR/C/79/Add.105、パラ8)、人種差別撤廃委員会(A/57/18、パラ330)および社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.31)のような国連人権条約機関が行なってきた、とくに土地および資源配分に関する所見表明および勧告をあらためて繰り返すものである。委員会は同様に、王立先住民族委員会の勧告に留意するとともに、締約国に対し、適切なフォローアップを確保するよう奨励する。 8.選択議定書の批准 60.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への署名を歓迎する。委員会は、締約国に対し、後者の早期批准を検討するよう促すものである。 9.文書の普及 61.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の行政および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 10.次回報告書 62. 委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、国連・子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的報告書の提出に関して困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回定期報告書の提出期限である2009年1月11日までに第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。 更新履歴:ページ作成(2012年4月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/229.html
総括所見:アイルランド(第2回・2006年) 第1回(1998年)/第3回・第4回(2016年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IRL/CO/2(2006年9月29日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年9月20日に開かれた第1182回および第1184回会合(CRC/C/SR1182 and 1184参照) においてアイルランドの第2回定期報告書(CRC/C/IRL/2)を検討し、2006年9月29日に開かれた第1199回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の包括的な報告書の提出、および、アイルランドにおける子どもの状況についてさらなる情報を提供してくれた、事前質問事項に対する詳細な回答(CRC/C/IRL/Q/2 and Add.1)を歓迎する。委員会はさらに、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた実りのある開かれた対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によるフォローアップ活動および達成された進展 3.委員会は、以下のような新法および政策措置が採択されたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 地位平等法および教育(福祉)法(2000年)。 (b) 人権委員会法(2000年および2001年)。 (c) 子ども法(2001年)。 (d) 子どもオンブズマン法(2002年)。 (e) 特別なニーズを有する者のための教育法(2004年)。 (f) 「われらが子どもたち――その生活」と題する国家子ども戦略(2000年)、「位置について、用意、さあ遊ぼう」(Ready, Steady, Play)と題する国家遊び政策(2004年)、および、2001年に検証が実施された国家貧困対策戦略。 4.委員会は、以下のものを含む、子どもの権利の保護に関連する国際条約が批准されたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年11月)。 (b) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(2000年12月)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年4月)。 5.委員会は、条約の実施に関する第1回報告書の検討後、委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.85)をフォローアップするためにとられたさまざまな措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 国家子ども局(NCO)および国家子ども諮問評議会が設置されたこと(2001年)。 (b) 子どもオンブズマンが任命されたこと(2004年)。 (c) 子ども大臣官房が設置されたこと(2005年)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会の前回の総括所見をフォローアップしかつ実施するためにとられたさまざまな措置は歓迎しながらも、委員会は、表明された懸念および行なわれた勧告の一部(とくに権利の保有者としての子どもの地位、および、政策および実務における子どもの権利基盤アプローチの採用に関するもの)について、まだ十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうちまだ十全な対応が行なわれていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法および実施 8.委員会は、法的枠組みをさらに発展させるためにとられた措置は歓迎するものの、とくに1997年および2001年の子ども法における具体的規定の制定のペースが遅いことから法的枠組みの効果的実施が阻害されていることを、依然として懸念する。委員会は、前回の総括所見で委員会が勧告したように条約が国内法に編入されていないことに、遺憾の意を表明するものである。 9.委員会は、締約国に対し、関連の子ども法で未制定のままとなっている子どもの権利の保護のための規定を制定するため、優先的課題としてあらゆる必要な措置(資源の配分を含む)をとるよう促す。委員会は、締約国に対し、条約を国内法に編入するためにさらなる措置をとるよう奨励するものである。 国家的行動計画 10.委員会は、子どもたちの生活向上およびその権利の保護の増進のための主要な文書として、2000年に国家子ども戦略が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、同戦略に掲げられた行動および目標の指針となる総括的原則、ならびに、その策定に際して行なわれた裾野の広い協力および公的協議(非政府組織(NGO)および学界とのものを含む)にも、評価の意とともに留意するものである。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 権利基盤アプローチがすべての活動に適用されることを確保するため、同戦略の達成状況を評価すること。 (b) 同戦略の目標および活動の実施に関する具体的期限を定めること。 (c) 同戦略の実施のために具体的予算配分を行なうこと。 12.委員会は、締約国が、同行動計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ、子どもに関する国連総会特別会期(2002年5月)で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」が考慮されることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国家子ども戦略の実施および監視を参加型のかつホリスティックな方法で進めるとともに、これらの活動の状況および効果に関する情報を次回の報告書で提出するよう、勧告するものである。 独立の監視 13.委員会は、アイルランド人権委員会および子どもオンブズマン(人権一般の促進および保護ならびにとくに子どもの権利および福祉に対応する同オンブズマンの事務所を含む)が設置されたことを歓迎する。子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情を調査する権限が具体的に含まれていることは歓迎しながらも、委員会は、いくつかの制限が課されていることにより、刑務所および警察署に収容された子どもに関わる調査において子どもオンブズマンの権限が妨げられる可能性があることを、懸念するものである。 14.委員会は、子どもの権利侵害を生じさせるおそれがある間隙の可能性を解消する目的で、締約国が、子どもオンブズマンとともに、オンブズマン事務所の調査権限の範囲を制限する特定の規定を再検討し、かつその改正を提案するよう勧告する。 15.オンブズマン事務所が独立して職務を遂行できることを確保するため、委員会は、締約国が、ウラクタス(国民議会)および財務省を通じてオンブズマン事務所に直接財源を提供する方法および手段を追求するよう、勧告する。委員会はまた、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に対しても、締約国の注意を喚起するものである。 データ収集 16.委員会は、とくに国家子ども戦略の枠内におけるNCOの調査研究機能を通じて達成された、統計データの収集における進展に留意するとともに、アイルランドの子どもたちの生活を探求する「全国子ども縦断研究」が委託されたことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、文書回答において締約国から提供された情報および新たな国家データ戦略への言及(CRC/C/IRL/Q/2/Add.1)にも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、年齢、性別、民族ならびに農村部および都市部の別によって細分化された、子どもに関する体系的かつ包括的なデータが存在しないことを依然として懸念する。このようなデータは、アイルランドでとくに脆弱な立場に置かれた子ども(虐待、ネグレクトまたは不当な取扱いの被害者、ストリートチルドレン、障害のある子どもおよび施設養護を受けている子どもを含む)の状況の分析を可能としてくれるはずである。 17.委員会は、締約国が、細分化されたデータの体系的かつ包括的な収集を条約に一致する形で発展させるためのさらなる措置を、中央統計局ならびに他の政府省庁および政府機関の役割の強化等も通じてとるよう勧告する。このようなデータは、子どものための政策およびプログラムの創設、実施および監視のために活用されるべきである。 普及、研修および意識啓発 18.委員会は、締約国が、前回の勧告に応じ、関連の公的機関および公衆一般の間で条約を普及しかつ周知するためのさらなる措置をとったことに、評価の意とともに留意する。とくに委員会は、条約が国家子ども戦略とあわせて普及されていること、ならびに、NCOおよび子どもオンブズマン事務所がそれぞれのウェブページ等を通じて意識啓発活動を行なっていることを歓迎するものである。 19.委員会は、締約国に対し、子どもにやさしい資料も含んだ定期的なかつ全国規模の意識啓発キャンペーン、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに学校、保健サービスおよび社会サービスで働く専門家ならびに法曹および法執行官)を対象とする重点対象型のキャンペーンおよび必要な研修等を通じ、条約の規定がおとなおよび子どもの双方によって広く知られかつ理解されることを確保するための努力をさらに強化するよう、奨励する。 3.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) (訳注)番号の振り間違いは原文ママ。 差別の禁止 20.委員会は、人種主義と闘う国家行動計画の策定(2005年)、および、とくに同計画の5つの目的(保護、包摂、供給、承認および参加)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国のすべての子どもが差別の禁止の原則を平等に享受しているわけではないおそれがあり、かつ、異なる民族性を有する子どもおよびマイノリティに属する子どもがいっそう高い水準の人種主義、偏見、固定観念および外国人嫌悪に直面していることを、懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、人種主義と闘う国家行動計画が全面的に実施され、かつ、子どもたちの間の、とくに初等中等教育における人種主義、偏見、固定観念および外国人嫌悪に対応するための措置に具体的注意が向けられることを確保するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 22.委員会は、子どもの最善の利益の尊重を確保するための措置が一部の分野でとられたことに留意するものの、この原則への対応がいまなお不十分であることを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益の一般原則がいかなる区別もなく第一義的に考慮され、かつ子どもに関連するすべての法律に全面的に統合されることを確保すること。 (b) この原則が、政治上、司法上および行政上のすべての決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいても適用されることを確保すること。 子どもの意見の尊重 24.委員会は、子ども議会および若者議会等も通じて子どもの意見の尊重を促進するためにとられた措置、および、中等学校における実効的な生徒評議会の設置に関して見られた進展に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、訴訟後見人に関する具体的規定が定められていないこと、ならびに、これらの措置が体系的かつ包括的なやり方でとられていないこと、および、地方レベルの公的機関および主題別の公的機関への対応が行なわれていないことを、懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマンが受理する苦情の多くが子どもの意見が尊重されていないことに関わるものであることにも、留意する。 25.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが、とくに家庭、学校その他の教育施設、保健部門およびコミュニティにおいて、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明し、かつその意見を正当に重視される権利を有することを、憲法上の規定等も通じて確保するための努力を強化すること。 (b) 子どもに対し、自己に影響を与えるいかなる司法上および行政上の手続においても意見を聴かれる機会が与えられ、かつその意見が子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に重視されることを確保すること。これには、とくに子どもが親から分離される事案において、1991年子どもケア法で定められた独立代理人(訴訟後見人)が利用されることの確保も含む。 (c) 意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された勧告を考慮すること。 4.市民的権利および自由(第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) プライバシーの保護 26.子ども裁判所で訴追される子どものプライバシーが保護されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、上級裁判所で訴追される子どもに対して同一の保護が与えられていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国が、プライバシーの保護を子どもが関係するすべての法的手続に拡大するために必要な措置をとるよう、勧告する。 4.家庭環境および代替的養護(第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) (訳注)番号の重複は原文ママ。 親の責任 28.委員会は、家族支援制度の分野における多くの発展、とくに家族支援庁の設置、6歳未満の子どもがいる家庭への四半期給付の導入および有給産前産後休暇の段階的延長を歓迎する。しかしながら委員会は、これらの制度において裾野が広い子ども中心のアプローチがとられておらず、かつ、支援プログラムについての責任および支援サービスの提供責任が異なる政府機関に割り当てられていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 異なる政府省庁のもとで提供されている支援サービスについて、これらのサービスの質および到達度を評価し、ならびに存在する可能性がある欠点を特定しおよびこれに対応するための徹底的検証を行なうこと。 (b) 危険な状況にある家族および子どもに提供されるソーシャルワークサービスを拡大し、週7日・24時間体制のサービスとすること。 家族再統合 30.委員会は、1996年難民法で、家族再統合に関する十分な法的枠組みが定められていることに留意する。しかしながら、条約第10条にしたがって行なわれる家族再統合は、移民を含む他の状況にも適用されるものである。委員会は、再統合を求める家族構成員が手続上の情報にアクセスできないこと、および、意思決定過程で子どもの最善の利益の原則が考慮されていないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族に関する理解の発展によりよく対応する目的で、1996年難民法における家族の定義の見直しを検討すること。 (b) 難民法で定められた状況以外の家族再統合に関する法的枠組みの確立を検討すること。 (c) いかなる法律上または行政上の手続においても、子どもが関わる決定を行なう際には子どもの最善の利益の原則が常に第一義的に考慮されることを確保すること。 親のケアを受けていない子どものための代替的養護 32.委員会は、里親養護、ならびに、親のケアを受けていない子どものために法定機関および非法定機関によって運営されている入所センターの査察を行なう社会サービス査察官が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、社会サービス査察官が、まだ法律上の根拠に基づいて設置されておらず、委任された職務を遂行するために必要な資源を欠いており、かつ親のケアを受けていないすべての子どもを保護するわけではないことを、懸念するものである。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会サービス査察官がその職務を遂行するための法律上の根拠を創設し、かつ、その権限を、必要とされている養護に関わらず、親のケアを受けていないすべての子どもに拡大するための措置を検討すること。 (b) 養護センターを退所する若者のフォローアップおよびアフターケアを確保し、かつそのための対応を行なうための努力を強化すること。 養子縁組 34.委員会は、現行法が、とくに国際養子縁組における保護との関連で国際基準に全面的に一致しているわけではなく、かつ子どもの最善の利益を考慮していないことを、依然として懸念する。委員会はまた、現行法を見直すためにとられている措置に時間がかかっていることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、法改正を実行しかつ実施するための努力を速やかに進めるとともに、関連するすべての法律が国際基準に一致することおよび子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保するよう、勧告する。 暴力、虐待およびネグレクト 36.児童虐待およびネグレクトの問題に対応するために締約国が行なっている努力(児童虐待通報ガイドラインの策定、通報されたすべての児童虐待事案の詳細な調査および子どもの性的虐待に関する全国規模の意識啓発キャンペーンの開始を含む)は歓迎しながらも、委員会は、児童虐待の防止のための包括的な国家的戦略または措置が整備されていないこと、および、支援サービスへのアクセスに時間がかかることを、依然として懸念する。 37.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「子ども最優先:全国ガイドライン」を引き続き見直すとともに、法的根拠に基づいて当該ガイドラインを確立することを検討すること。 (b) 通報された虐待およびネグレクトのすべての事案について十分な調査および訴追が行なわれること、ならびに、虐待およびネグレクトの被害者が身体的回復および社会的再統合についてのカウンセリングおよび援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 虐待、ネグレクトおよびドメスティックバイオレンスに対する十分な対応を発展させること、地域的、全国的および国際地域的調整を促進することならびに感受性強化、意識啓発および教育のための活動を実施することを含む、包括的な児童虐待防止戦略を策定すること。 (d) 子どもとともに働くすべての被用者およびボランティアについて採用前の評価が実施されること、ならびに、就業期間中、これらの者に対して十分な支援および研修が提供されることを確保すること。 38.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究を背景として、委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告する。加えて委員会は、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に対して締約国の注意を喚起し、かつ、同報告書に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励したい。 体罰 39.家庭内の体罰の禁止について見直しが進められており、かつ親教育プログラムが開発されてきたことには留意しながらも、委員会は、家庭内の体罰がいまなお法律で禁じられていないことを深く懸念する。 40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.85、パラ39)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁止すること。 (b) 体罰が受け入れられないことについて、親および一般公衆の感受性強化および教育を進めること。 (c) 体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進すること。 (d) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を考慮すること。 5.基礎保健および福祉(第6条、第18条3項、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 41.2005年障害法および国家障害戦略(2004年)のような立法上および政策上の進展は歓迎しながらも、委員会は、法的枠組みにおいて、障害のある子どもの具体的ニーズならびに必要な保健サービスおよび教育上の便益への障害児によるアクセスについて不十分な対応しかとられていないこと、ならびに、子ども法の規定の多くがまだ全面的に制定されていないことを、依然として懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの具体的ニーズに対応する、インクルーシブなかつ権利基盤型の法的枠組みを採用するとともに、現行法の規定のうち障害のある子どもに関連するすべての規定を実施すること。 (b) 予防およびインクルージョン、障害のある子どもを対象とする利用可能な支援およびサービス、ならびに、障害のある子どもに対する社会の否定的な態度との闘いに焦点を当てた意識啓発キャンペーンを、子どもたちの関与を得ながら行なうこと。 43.委員会はまた、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議(1997年10月6日)の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れながら、障害のある子どもに関連する現行の政策および慣行を見直すことも促す。 健康および保健サービス 44.委員会は、国家子ども戦略の目標第3号およびプライマリーケア戦略の策定を含む、締約国が多くの政策文書で表明している決意を歓迎する。しかしながら委員会は、この点に関する包括的な法的枠組みが存在しないこと、および、条約第24条に規定された保健ケアサービス(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもを対象とするもの)の質およびこれらのサービスへのアクセスを保障する法定指針が策定されていないことを、依然として懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの健康上のニーズに対応する総括的な法律を採択すること。 (b) 対象を明確にした資源を提供し、かつ保健ケアサービスの質に関する法定指針を確立することにより、保健ケアサービスの利用可能性および質が国内全域で維持されることを確保すること。 (c) 子どものための既存の保健ケアサービスに対して配分される資源が、全部門、すなわち公共部門、コミュニティ部門およびボランティア部門の利益となる、戦略的なかつ調整のとれたやり方で活用されることを確保すること。 (d) 子どもの難民および庇護希望者のニーズに対して、かつ現行の「トラベラーの健康に関する国家戦略」を実施することによりトラベラー・コミュニティに属する子どものニーズに対して、特段の注意を払うこと。 46.2001年精神保健法を歓迎し、かつ、締約国が、子どもおよびその家族の精神保健に関連する十分なプログラムおよびサービスがないことを認識していることには留意しながらも、委員会は、精神保健上の困難を有する子どもが、スティグマに対する恐れから既存のプログラムおよびサービスにいまだにアクセスできておらず、かつ、18歳未満の一部の子どもが精神医学施設で成人として取り扱われていることを、懸念する。 47.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.85、パラ20および38)をあらためて繰り返すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健省担当国務大臣が2003年に任命した精神保健政策専門家グループの知見を全面的に活用し、かつその勧告を実施すること。 (b) スティグマを防止するための意識啓発キャンペーンおよび感受性強化キャンペーンを行なうとともに、早期介入プログラムに焦点が当てられることを確保すること。 (c) 精神保健上の困難を有する子どもが18歳未満の子どもをとくに対象とするサービスから利益を得られることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。 思春期の健康 48.子どもによるアルコールの消費に対処するための多くの政策措置(国家アルコール政策、アルコール問題戦略特別委員会、および、子ども・若者に関する議会委員会がこの問題に対して払っている注意を含む)には留意しながらも、委員会は、青少年によるアルコールの消費水準が高いことを依然として懸念する。 49.委員会は、締約国が、とくに包括的戦略(これには、意識啓発活動、〔ならびに、〕子どもによるアルコールの消費および子どもを対象とする広告の禁止が含まれるべきである)を策定しかつ実施することにより、子どもによるアルコールの消費に対処するための努力を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、思春期の健康に関する委員会の一般的意見4号(2003年)に対しても締約国の注意を喚起するものである。 50.アルコール問題戦略特別委員会の創設は歓迎しながらも、委員会は、男子および思春期の男性の自殺率が上昇しているという報告について懸念を覚える。委員会はまた、法定年齢に満たない段階での有害物質の濫用と自殺率との間に関連があると思われることも懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、新たな10か年計画「自殺防止に関する国家行動戦略」、および、アルコール問題戦略特別委員会の第2次報告書の勧告を実施するよう促す。 52.社会的・人格的保健教育が中等学校のカリキュラムに編入されていることには留意しながらも、委員会は、リプロダクティブヘルスに関する必要な情報に対し、青少年が十分にアクセスできていないことを懸念する。当該教育は選択科目であり、親は子どもに当該教育を受けさせないことが可能である。委員会はまた、過去10年間に性感染症が目立って増加したことが報告されており、かつ若い女子の感染リスクがとりわけ高いことも、懸念する。 53.委員会は、締約国が、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する、とくに青少年を対象とする情報およびサービスへのアクセスを増進させるための努力を強化するとともに、これらの情報およびサービスを学校カリキュラムに限定するのではなく、広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンに加えて青少年の日常的な生活環境でもアクセスできるようにすることを、勧告する。 有害な伝統的慣行 54.委員会は、一部の移民コミュニティがアイルランドで女性性器切除(FGM)を行ない続けていることに、懸念とともに留意する。委員会は、FGMが条約違反であることを強く強調するものである。 55.委員会は、締約国に対し、たとえば法律でFGMを禁止すること(域外裁判権の設定を可能とすることも含む)、および、FGMの著しく有害な影響についてすべての層の住民の感受性強化を図る、対象の明確なプログラムを実施することを通じて、FGMの慣行を終わらせるための努力を引き続き行なうよう促す。委員会は、締約国が、FGMの慣行を防止するために、地方レベルのあらゆる関連のパートナー(教員、助産婦、伝統的保健従事者、宗教的指導者および共同体の指導者を含む)の関与および動員を図るよう、勧告するものである。委員会はまた、1995年1月21日に行なわれた、女子に関する一般的討議の際に採択された勧告(CRC/C/38参照)に対しても、締約国の注意を喚起する。 生活水準 56.委員会は、順調な経済的発展が全般的な貧困水準の削減に寄与してきたことを認識する。しかしながら委員会は、とくに脆弱な状況に置かれた多くの子どもが、所得が全国的な所得中央値よりも相当に低いままの世帯で暮らしていることを、依然として懸念するものである。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困が削減され、かつ、経済的苦境が発達に及ぼす悪影響から子どもが保護されることを確保する目的で、国家貧困対策戦略を効果的に実施し、かつ経済的苦境下で暮らしている家族への支援を強化すること。 (b) 最高水準の貧困を経験している家族を援助するための追加的かつ重点対象型手当として、現行の普遍的子ども手当給付への補足手当を導入すること。 (c) 現行の政策および戦略を全面的に実施するとともに、とくに脆弱な立場に置かれた子どもがいる家族を対象とするサービス(保育、保健ケアおよび住宅を含む)およびその補助のための予算配分を増額すること。 (d) 低所得家庭を対象とする負担可能な社会住宅への投資を増額すること。 6.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 58.委員会は、教育に対する権利についての法律上および政策上の枠組みを発展させかつ強化するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、公立初等学校における教育および教材の「事実上」の費用が親の負担とされている例があること、子どもの意見および具体的ニーズが常に十分に考慮されているわけではないこと、ならびに、トラベラー・コミュニティに属する子どもおよび障害のある子どもの間でとりわけ高い中退率が見られることを、懸念するものである。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、子どもの具体的ニーズに関する適切な専門的評価を実施し、特別なニーズを有する子どもに対して技術的および資料的支援を提供し、学校の子どもが自己のウェルビーイングに関わるすべての事柄について意見を聴かれる権利を有することを確保し、かつ、すべての子どもに平等を基礎として教育を提供する目的で全般的な学級規模を縮小するための努力を継続することにより、子どもの特別なニーズが考慮される教育環境を創設するための措置を引き続きとること。 (b) 校舎、レクリエーションのための設備および便益ならびに学校の衛生環境の改善および向上に対しても予算配分が向けられることを確保すること。 (c) いじめの現象と闘うために必要が措置がとられること、および、いじめの影響について敏感なかつ子どもに配慮したやり方による対応がとられることを確保すること。 (d) 作成された「トラベラー教育戦略」を刊行しかつ普及するとともに、トラベラーの問題および異文化間アプローチに関する教員の感受性を高めるため、教員を対象とした研修活動を実施すること。 60.委員会は、締約国の第1回・第2回定期報告書に関する総括所見(CERD/C/IRL/CO/2)で人種差別撤廃委員会が提起した、非宗派学校または多宗派学校が初等教育施設総数の1%に満たない旨の懸念をあらためて表明する。 61.委員会は、締約国に対し、非宗派学校または多宗派学校の設置を促進し、かつ学校への受入れにおける差別を解消するために現行法の枠組みを改正するよう奨励した人種差別撤廃委員会の勧告(CERD/C/IRL/CO/2、パラ18)を全面的に考慮するよう、奨励する。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 62.多数の政府省庁、地方当局および保健委員会を対象とするいくつかの活動および責任を掲げ、かつ子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動を享受する機会を増進する「国家遊び政策」のような取組みは歓迎しながらも、委員会は、レクリエーション施設の創設が政治的および財政的にほとんど重視されておらず、かつ、住宅に対する需要の高まりによって遊び場および公共空間の発展がさらに阻害される可能性があることを、懸念する。 63.委員会は、締約国が、子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動を享受するための施設の創設をいっそう重視するよう勧告する。 7.特別な保護措置(第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条b~d、第32~36条) 子どもの難民および庇護希望者 64.2006年出入国管理・在留・保護法案を通じた、庇護希望手続に関する最近の視点には留意しながらも、委員会は、保護者のいない子どもまたは親から分離された子どもが、とくにサービスおよび独立の代理人へのアクセスとの関連で、庇護手続の際にいまなお十分な指導、支援および保護を受けられていない可能性があることを懸念する。 65.委員会は、締約国が、政策、手続および実務を国際法上の義務および他の文書(国連難民高等弁務官およびセーブ・ザ・チルドレンが作成した「望ましい実務に関する声明」を含む)に掲げられた原則と一致させるために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもが公的機関または親のどちらの養護下にあるかに関わらず、支援サービスに関する同一の基準および当該サービスへの同一のアクセスが適用されることを確保するよう、奨励するものである。委員会はまた、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対しても、締約国の注意を喚起する。 少年司法の運営 66.委員会は、2001年子ども法で刑事責任年齢が7歳から12歳に引き上げられ、かつ反証がないかぎり当該最低年齢は14歳と推定されることになったことを歓迎するものの、同法のこの部分が施行されなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、子ども法のこの部分が、重大な犯罪についての刑事責任年齢を10歳に引き下げた2006年刑事司法法に移管されたことに、深い失望を覚えるものである。 67.委員会は、締約国が、2001年子ども法で定められた刑事責任年齢に関する規定を復活させるよう勧告する。 68.委員会は、法務・平等・法改正省のもとにアイルランド青年司法局が設置されたことは歓迎するものの、これが法的根拠に基づいて設置されたわけではないことを遺憾に思う。委員会はまた、2006年刑事司法法に定められた反社会的行動命令が、とくに命令違反が犯罪とみなされることから、「危険な状況に置かれた」子どもを刑事司法制度にさらに接近させる効果を有するであろうことも、懸念するものである。さらに委員会は、命令の種類および内容に関する裁判官の裁量が広く認められていることから、非難対象の行動に比例しない措置につながる可能性があることを懸念する。 69.委員会は、以下のことを勧告する。 (a) 締約国が、アイルランド青年司法局の法的根拠を定めるとともに、当該司法局が、条約に基づいた、子ども志向および権利基盤型の青年司法政策を起草し実施することに高い優先順位を与えるべきこと。 (b) 反社会的行動命令が、緊密な監視の対象とされ、かつ、防止措置(ダイバージョン制度および家族会議を含む)が尽くされた後の最後の手段としてのみ利用されるべきこと。 70.委員会は、2002年に施行された2001年子ども法で法律により定められた警察ダイバージョン・プログラムの設置に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、2006年法によって、当該プログラムの適用が「反社会的行動」を行なった10歳以上の子どもにまで拡大されたことを懸念するものである。委員会はさらに、当該プログラムへの受入れが、将来の刑事手続において刑の言い渡しとみなされうることを懸念する。 71.委員会は、「反社会的行動」を行なった子どもを警察ダイバージョン・プログラムの対象にできないようにし、かつ、当該プログラムの受入れが将来の刑事手続において刑の言い渡しとみなされることはけっしてできないようにすべきことを、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、自由の剥奪が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するため、一連の代替的措置を優先課題として実施するよう促すものである。 72.拘禁される18歳未満のすべての子どもは別個の拘禁施設――いわゆる「子ども拘禁院」――に収容されるよう定めるという締約国の意図には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、16歳および17歳の子どもが、18~21歳の男性を対象とする閉鎖型の中度警戒拘禁センターである聖パトリック施設に拘禁されており、教育のための便益もなんら提供されていないことを深く懸念する。加えて委員会は、子どもオンブズマンが、当該施設から提出される苦情の調査および警察署の査察から除外されていることを懸念するものである。 73.委員会は、締約国が、拘禁を最後の手段として用いるためにあらゆる努力を行なうよう勧告する。拘禁が避けられないと考えられる場合、委員会は、締約国が、18歳未満の子どもに対して別個の拘禁施設を用意するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもが現に収容されているすべての拘禁場所を子どもオンブズマンの調査権限および査察権限の対象に含めるため、あらゆる努力を行なうよう奨励する。 性的搾取および性的虐待 74.性犯罪者からの公衆の包括的保護について定めた2001年性犯罪者法には留意しながらも、委員会は、買春の被害を受けた子どもおよび児童ポルノに関する情報がないことを懸念する。 75.委員会は、締約国が、焦点の明確な措置を策定する目的で児童買春、児童ポルノならびにその他の形態の子どもの性的搾取および性的虐待に関する情報収集および調査研究を実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、この点に関する詳細な情報を次回の報告書で提供するよう要請する。 売買および取引 76.子どもの人身取引・児童ポルノ法(1998年)および人身取引・性犯罪法案(2006年)には留意しながらも、委員会は、誘拐および売買または取引(目的または形態の如何を問わない)の被害を受けた子どもの状況に関する具体的情報がないことを遺憾に思う。 77.条約第34条および第35条に照らし、委員会は、とくに、人身取引と闘うための包括的戦略の採択および実施、ならびに、人身取引被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置(シェルター、カウンセリングおよび医療ケアの提供を含む)の整備に関する女子差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/IRL/CO/4-5)をあらためて繰り返す。委員会は、締約国に対し、人身取引に関するさらなる情報およびデータ(とくに子どもに関するもの)を次回の報告書で提供するよう要請するものである。 マイノリティに属する子ども 78.委員会は、締約国報告書(とくに差別の禁止および児童福祉に関する第3章)および事前質問事項に対する文書回答(とくにトラベラー問題に関するハイレベル部会報告書に関するもの)で提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、トラベラー・コミュニティに属する子どもの権利の享受を増進させること、ならびに、とくに教育、住居および保健サービスへのこれらの子どもによるアクセスを促進することを目的とする、十分な承認、対応および積極的措置がまだ図られていないことを、依然として懸念するものである。 79.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人種差別撤廃委員会から求められたとおり(CERC/C/IRL/CO/2、パラ20)、トラベラー・コミュニティを民族的集団として承認することに向けていっそう具体的に行動すること。 (b) 子どものウェルビーイングの向上を目的とした政策および戦略ならびに具体的措置のさらなる基礎とするため、保健、住居および教育の分野において、トラベラー・コミュニティに属する子どもにとくに焦点を当てながら、調査研究または包括的ニーズ評価を実施しまたは既存の調査研究および評価を活用すること。 (c) トラベラー・コミュニティ特別委員会の勧告を実施すること。 (d) とくに教育、保健サービスおよび居住施設の享受ならびにこれらへのアクセスとの関連でトラベラー・コミュニティに属する子どもの権利の享受を増進させるためにとられた措置に関する詳細な情報を、次回の報告書で提供すること。 80.委員会は、子どもおよび若者の間でアイルランドの言語および文化を促進するための努力、ならびに、ロマの子どもの周縁化および社会的排除を防止するために行なわれている努力についての具体的情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。 81.委員会は、締約国に対し、次回の報告書でさらに詳しい情報を提供するよう要請する。 8.子どもの権利条約の選択議定書 82.委員会は、締約国が表明したとおり、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書についての第1回報告書(提出期限・2004年12月)を受領することを待望する。 83.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への署名(2000年)を歓迎するとともに、締約国の意思にしたがってこの選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 84.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連省庁、ウラクタス(国民議会)および関連の地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 85.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 86.委員会は、締約国に対し、2009年4月27日(すなわち第4回報告書の提出期限)までに第3回・第4回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年受領する報告書が多数にのぼることを理由とする、例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2013年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/285.html
総括所見:アイルランド(第3~4回・2016年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IRL/CO/3-4(2016年3月1日)/第71会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年1月14日に開かれた第2064回および第2066回会合(CRC/C/SR.2064 and 2066参照) においてアイルランドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/IRL/3-4)を検討し、2016年1月29日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/IRL/Q/34/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下の文書の批准を歓迎する。 (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2014年)。 (b) 国際労働機関(ILO)の家事労働者条約(2011年、第189号)(2014年)。 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a) 子どもを憲法上の権利の保有者として明示的に認めた、第31次憲法改正(子ども)法(2012年、署名による法制化は2015年)。〔訳者注/第42a条を指す。日本語訳はこちらを参照〕 (b) 子どもの保護のための措置を向上させた、子ども最優先法(2015年)。 (c) 多様な家族の子どもの状況に対応するために家族法を包括的に改革した、子どもおよび家族関係法(2015年)。 (d) 成人刑事施設での子どもの拘禁を認めた現行法令集の規定をすべて廃止し、かつ関連の措置について定めた、子ども(改正)法(2015年)。 (e) 16歳以降に本人が選択したジェンダーが国によってあらゆる目的について全面的に承認される旨を定めた、ジェンダー承認法(2015年)。 (f) 教員の身元調査に関する制定法上の手続における教員評議会の役割について明確な制定法上の根拠を定めた、教員評議会(改正)法(2015年)。 (g) アイルランド人権平等委員会を設置し、かつ人権および平等に関わる公的機関の積極的義務を導入した、アイルランド人権平等委員会法(2014年)。 (h) 特定の例外的事情がある場合を除いて出生記録への父の名の登録を義務化し、かつ姓について合意が成立しない場合の出生登録の機構について定めた、民事登録(改正)法(2014年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) アイルランド人権平等委員会が設置されたこと(2014年)。 (b) 子ども・家族機関が設置されたこと(2014年)。 (c) 「よりよい成果、よりよい未来:子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」が採択されたこと。 6.委員会は、人権擁護者の状況に関する特別報告者の訪問(2013年)および人権と極度の貧困の問題に関する独立専門家の訪問(2011年)を歓迎する。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国が、前回の勧告(2016年、CRC/C/IRL/CO/2)のうち十分に実施されていないもの、とくに立法および実施、独立の監視、障害のある子ども、健康および保健ケアサービス、思春期の健康、生活水準、子どもの難民および庇護希望者、少年司法の運営ならびにマイノリティに属する子どもに関するものに対応するために、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 条約の法的地位 8.委員会は、前回の勧告(CRC/C/IRL/CO/2、パラ9)にもかかわらず、条約が国内法に全面的に編入されていないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国に対し、優先的課題として、条約を国内法に全面的に編入するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 10.委員会は、国内法と条約との調和を向上させるために締約国が行なってきた最近の努力に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、子ども最優先法と子どもおよび家族関係法(2015年)がまだ全面的に施行されていないことを懸念するものである。さらに委員会は、関連の行政手続および意思決定過程において条約の規定を尊重する公的機関の制定法上の義務を定めた法律が存在しないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼす法律が条約とどの程度一致しているかについての詳細な評価を実施するとともに、行政手続および意思決定過程等において条約が尊重されることを確保するための具体的な法律および(または)改正法を実施するよう勧告する。その際、締約国は、前述の2つの法律および子どもの権利の保護のための関連法におけるその他の未施行の規定を速やかに施行するために、十分な資源が配分されることを確保するべきである。 包括的な政策および戦略 12.委員会は、締約国の「子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」(「よりよい成果、よりよい未来」)を歓迎する。委員会はまた、同枠組みは枠組み助言評議会を通じて市民社会との共同事業として実施されていく旨、締約国が明らかにしたことも歓迎するものである。委員会は、締約国に対し、「よりよい成果、よりよい未来」枠組みを実施するための行動計画に、条約に基づいてまとめられた指標および目標を含めるよう奨励する。その際、締約国は、条約で対象とされているすべての分野が含まれること、および、同枠組みの実施が十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられることを確保するべきである。 調整 13.委員会は、締約国が、条約の実施を調整するために子ども・若者問題局を設置したことを歓迎する。しかしながら委員会は、特定の問題、とくに分野横断的な問題についてどの政府機関が主たる責任を負うのかが十分に明確でない状態が続いていることを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、内閣の正式な構成員としての子ども・若者大臣の職位を維持するとともに、特定の問題についてどの機関が責任を負うのかが明確になることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、子ども・若者問題局に対し、さまざまな部門を横断して、国、広域行政圏および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源も与えるべきである。 資源配分 15.委員会は、締約国が国際通貨基金および欧州連合の金融救済プログラムからの離脱に成功したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、とくに条約の実施を目的とした予算の配分を行なっていないことを懸念するものである。委員会はまた、2009年の景気沈滞以降、多数の政府部局および国の機関(子どもオンブズマン事務所および保健局を含む)の予算が削減されてきたことも懸念する。委員会はさらに、子ども手当および障害児支援給付を含む社会福祉給付が、生活費の上昇を十分に反映する均衡的なやり方で引き上げられていないことを懸念するものである。委員会はまた、トラベラーおよびロマの子どものための予算配分の減額が発表されたことも懸念する。 16.「子どもの権利のための資源配分:国の責任」に関する2007年の一般的討議に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているか、すべての行政段階において予算全体を通じて追跡するためのシステムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。 (b) 子どもの予算上のニーズについて包括的評価を実施し、かつ社会部門に配分される予算を増額するとともに、子どもの権利に関わる指標の適用を通じて格差に対応すること。 (c) 子どもの権利の保護および促進のために配分される資源が十分であることを確保するとともに、これとの関連で、子どもの権利の実現に関わるプロジェクトの定期的評価を含めること。 (d) トラベラーおよびロマの子ども、ならびに、積極的是正のための社会的措置を必要とする可能性がある障害児に関する具体的な予算科目を定めるとともに、当該予算科目が経済危機の時期にあっても保護されることを確保すること。 (e) 財政上および予算上の決定が条約上の義務と合致することを確保する目的で、統合社会的影響評価の枠組みに子どもの権利影響評価を含めること。 データ収集 17.委員会は、トラベラーおよびロマの子ども(その社会経済的状況を含む)に関する細分化されたデータがないことを懸念する。 18.実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、データ収集システムは条約のすべての分野を対象とするべきであり、かつ、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれている子ども)の状況についての分析を容易にするため細分化されるべきであることを、締約国に対してあらためて繰り返す。その際、締約国は、そのようなデータが、トラベラーおよびロマの子どもの状況のモニタリングがはっきりと可能になるように細分化されることを確保するべきである。さらに委員会は、これらのデータおよび指標が、関係省庁の間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のために用いられるべきことを勧告する。締約国はまた、統計的情報の定義、収集および普及の際、「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators a guide to measurement and implementation)と題する国際連合人権高等弁務官事務所の報告書に掲げられた概念上および手法上の枠組みも考慮に入れるべきである。 独立の監視 19.委員会は、対話の際に締約国から行なわれた、子どもオンブズマン事務所の資金体制に関する説明(議会が直接の支出を行なうことは憲法上不可能であること)に留意する。しかしながら委員会は、子ども・若者問題局を通じた現在の資金拠出体制により、同事務所の独立性および自律性が制限されていることを依然として懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマン法(2002年)にしたがい、同事務所は、公的機関の行動について、当該行動が庇護、出入国管理、帰化および市民権に関する法律の運用に関わるものであるときは調査を禁じられていることも懸念する。 20.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、パリ原則との全面的一致を確保する目的で、子どもオンブズマン事務所の独立性(資金および権限との関連を含む)を確保sるよう勧告する。その際、締約国は、同事務所に対し、子ども・若者問題局を通じてではなく直接財源を提供する方法および手段をさらに検討するべきである。さらに委員会は、締約国が、難民、庇護希望者および(または)非正規移住者の状況に置かれた子どもからの苦情申立てについて子どもオンブズマン事務所が調査することを禁じた、子どもオンブズマン法(2002年)の規定の改正を検討するよう勧告する。 普及、意識啓発および研修 21.委員会は、初等学校および中等学校双方のカリキュラムに子どもの権利および人権が含まれていること、ならびに、子ども・若者問題局のウェブサイトを通じて、締約国が委員会に提出した定期報告書および委員会の総括所見が普及されていることに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、公的機関の間で認識が欠けており、これらの機関が必ずしも子どもの最善の利益の原則を適用しておらず、または子供の意見が適切に考慮されることを確保していないことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、人権機構に関する認識および子どもの権利に関する理解が一般公衆の間で依然として低水準であることも懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、条約を、被害を受けやすい状況に置かれた子どもをとくに対象として、子どもにやさしい補助手段およびデジタルメディア等も通じ、かつソーシャルメディアを含むマスメディアの支援を得ること等の手段により、可能なかぎり広く促進するよう奨励する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として十分かつ体系的な研修および(または)意識啓発を実施するための努力を強化することも勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 23.委員会は、ビジネスと人権に関する国家行動計画(2016~2019年)についての締約国の作業大綱を歓迎する。しかしながら委員会は、当該文書において、子どもの権利に対する確固たる決意が何ら表明されておらず、かつ、企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)も十分に考慮されていないことを懸念するものである。 24.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、企業セクターが国際的および国内的な人権基準、労働基準、環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を遵守することを、公共調達の場合も含めて確保するための規則を定めかつ実施するよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国で操業する産業および企業を対象とした、その活動が子どもの権利に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準を脅かさないことを確保するための規制枠組みを強化すること。 (b) 企業による国際的および国内的な環境基準および健康基準の実施を監視するための独立機構を設置し、違反があった場合には適切な制裁を科すとともに救済措置を提供し、かつ、適切な国際的認証が追求されることを確保すること。 (c) 企業に対し、自己の企業活動により生ずる環境面、健康関連および人権面の影響ならびにこのような影響に対処するための計画についてのアセスメント、協議ならびにその全面的な公的開示を行なうよう、要求すること。 (d) 以上の勧告を実施する際、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国際連合「保護・尊重・救済」枠組みを指針とすること。 B.子どもの定義(第1条) 25.委員会は、婚姻最低年齢(18歳)についての例外規定を廃止するための家族法(1995年)改正が進行中である旨の、対話の際に締約国が行なった発言に留意する。しかしながら委員会は、当該改正が行なわれるまでの間、18歳未満の子どもがなお婚姻できることを懸念するものである。 26.委員会は、締約国が、18歳未満の婚姻を認めるすべての例外規定を廃止するため、家族法(1995年)の改正を速やかに進めるよう勧告する。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 27.委員会は、トラベラーおよびロマの子どもならびにその家族に対する構造的差別(公人が公に行なった差別的発言が処罰されないとされていることを含む)について懸念を覚える。委員会は、人種主義対策国家行動計画(2005~2008年)で開始された機構および資金の流れの維持に関する締約国の説明には留意するものの、適切な最新の国家行動計画が策定されていないことを依然として懸念するものである。委員会はまた、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに対する差別についても懸念を覚える。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) トラベラーおよびロマの子どもに対する、ならびに、子どもの性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別、スティグマおよび社会的排除と闘うための努力を強化すること。 (b) 人種主義対策国家行動計画(2005~2008年)の後継計画として、適切に高い位置づけを与えられた包括的な計画を策定すること。 子どもの最善の利益 29.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、関連のあらゆる法律ならびに行政手続および意思決定過程における積極的義務としていまなお全面的に実施されているわけではないことを懸念する。 30.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を締約国が強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、権限を有するすべての関係者にに対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励されるところである。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、「意思決定への子ども・若者の参加に関する国家戦略」を歓迎する。委員会はまた、締約国が、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の規定を有していることにも留意するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 当該法規定が効果的に実施されているわけではないこと。 (b) 子どもおよび家族関係法(2015年)に基づき、家族法手続において子どもの意見を聴くための専門家の費用は親が負担しなければならないこと。 (c) 教育法において、個別事案で意見を聴かれる子どもの権利が定められていないこと。 (d) 締約国が、投票年齢を18歳から16歳に引き下げることに関する国民投票を実施する旨、「子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」において表明しているにもかかわらず、当該国民投票がまだ実施されてないこと。 32.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を定める等の手段により、関連の法的手続、とくに家族法手続で意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 (b) 子どもの養育に関するすべての手続で子どもの意見が聴かれることを保障するため、家族法手続において子どもの意見を聴くための専門家の費用の負担に関連する規定が子どもおよび家族関係法(2015年)に設けられることを確保すること。 (c) 個別事案で意見を聴かれる子どもの権利を確保するための教育法改正を確保すること。 (d) 従前の決意表明にしたがい、投票年齢の16歳への引き下げに関する国民投票を実施する計画の実行を検討すること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) アイデンティティに対する権利 33.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 生殖補助医療(とくに代理母が関与するもの)によって生まれた子どもの権利および利益に対して十分な注意が払われていないこと。 (b) カトリックの司祭を父とする子どもが父親の身元に関する情報にアクセスできることを確保するための措置がとられていないこと。 (c) 民事登録(改正)法(2014年)で、婚外子に与えられるべき姓について十分に明確に定められていないこと。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 生殖補助医療(とくに代理母が関与するもの)を通じて生まれた子どもが、自己の最善の利益を第一次的に考慮されることおよび自己の出自についての情報にアクセスできることを確保すること。締約国は、その際、代理母および親となる予定の者に対する適切なカウンセリングおよび支援の提供を検討するべきである。 (b) カトリックの司祭を父とする子どもが、父を知り、かつ適切なときは父によって養育される自己の権利を自ら擁護することを援助するための措置を確保するとともに、このような子どもが必要な心理的治療を受けられることを確保すること。 (c) 婚外子が自己の姓に関して法的安定性を有することを確保するための措置(考えられる法改正を含む)を実施するとともに、これらの措置が、このような子どもが直面しうるスティグマまたは差別を最小限に抑える目的でとられることを確保すること。 思想、良心および宗教の自由 35.委員会は、子どもに対し、宗教の授業を実効的に免除され、かつ当該授業に代わる適切な授業を受ける権利が確保されていないことを懸念する。 36.委員会は、締約国が、少数宗派としての背景または非宗派的背景を有する子どものニーズにしたがって、子どもに対し、宗教の授業を免除され、かつ当該授業に代わる適切な授業を受ける、アクセスしやすい選択肢を確保するよう勧告する。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 虐待およびネグレクト 37.委員会は、子どもの保護に関するガイドライン「子ども最優先:子どもの保護および福祉のための国家指針」が2011年にあらためて発行されたことを歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 当該ガイドラインにしたがって行なわれた子どもの保護に関連する付託への対応を担当する子ども・家族機関に対し、当該ガイドラインの遵守を確保するための十分な権限または資源が与えられていないこと。 (b) 実際上、業務時間外のソーシャルワーク緊急サービスが不十分であり、かつ、虐待の影響を受けている子どものためのアクセスしやすいカウンセリングサービスが十分に存在しないこと。 (c) ドメスティックバイオレンスの被害者のための避難施設が十分に存在しないこと。 38.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)に照らし、かつ持続可能な開発目標16のターゲット2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう促す。 (a) 子ども・家族機関が、子どもの保護に関連する付託への対応および危険な状況にある子どものニーズへの対応を時宜を得たやり方で行なえるようにするため、同機関への十分な人的資源、技術的資源および財源の配分を確保するとともに、暴力および虐待の根本的原因に対処するための長期的プログラムを実施すること。 (b) ドメスティックバイオレンスの影響を受けている者およびその子どものために、24時間対応できる十分な避難施設を確保するとともに、これらの被害者に対して救済措置およびリハビリテーションを提供すること。 (c) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得て、かつこれらの人々の研修を支援する等の手段により、ドメスティックバイオレンス、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対処していくための、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 有害慣行 39.委員会は、締約国がジェンダー承認法(2015年)を採択したことに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく同意を与えられるようになる前に医学的に不必要な手術その他の治療(これは不可逆的な影響をともなうことが多く、かつ深刻な身体的および心理的苦痛を引き起こしうるものである)が行なわれる事案があり、かつ、このような事案において救済および補償が行なわれていないことを、依然として懸念するものである。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 何人も乳児期または児童期に不必要な手術または治療の対象とされないことを確保し、当事者である子どもに身体的不可侵性、自律および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。 (b) 十分な情報に基づく同意を得ないままインターセックスの子どもに対して行なわれた手術その他の医学的治療の事案を調査するとともに、そのような治療の被害者に対して救済措置(十分な補償を含む)を提供するための法的規定を採択すること。 (c) さまざまな性的多様性ならびに関連の生物学的および身体的多様性について、またインターセックスの子どもに対する不必要な手術その他の医学的介入がもたらす影響について、医療専門家および心理専門家を教育すること。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20条、第21条、第25条および第27条(4)) 家族法手続 41.委員会は、家族法事件を担当する裁判官を対象として子どもに関わる事件に対応するための体系的研究が実施されていないこと、および、このような事件の処理に長期の遅れが生じていて当事者である子どもに有害な影響を与えていることを懸念する。 42.委員会は、締約国が、子どもが関わる家族法事件に関する裁判官の研修を奨励し、かつそのための十分な資源を提供するとともに、これらの事件が裁判所制度において優先的に扱われることを確保するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 43.委員会は、子ども・家族機関法の採択を歓迎する。これは、子どもが家庭環境を奪われることにつながりうる手続において締約国が子どもの最善の利益を確保するための基盤を向上させるものである。しかしながら委員会は、代替的養護に措置された子どもについて以下のような状況が存在することを依然として懸念する。 (a) 個別のニーズ評価および養護計画のための措置ならびに記録の保管が不十分であること。 (b) 特別なニーズを有する子どものための代替的養護サービスが不十分であることから、このような子どもが締約国外の代替的養護施設に収容されなければならない状況が生じていること。 (c) 特別養護区画における単独隔離措置が不適切に利用されていること。 (d) 子どもの保護、精神保健および障害を担当する締約国の諸機関の間で調整が十分に行なわれていないために、このような状況に置かれた子どもに対して提供される養護が断片化されたまたは不十分なものになっていること。 (e) 養護を離脱する子ども(とくにホームレス経験のある子ども)に提供される養護終了後のサービスおよび支援が不十分であること。 44.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が、施設に入所した子どものリハビリテーションおよび社会的再統合を最大限可能な範囲で促進する目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護機関に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 代替的養護を受けている子どもに関する個別のニーズ評価、養護計画および記録の保管の効果的実施を確保すること。 (b) 特別養護サービスの発展に優先的に取り組むことにより、このような子どものニーズに対する対応がとられること、これが締約国の領域全体で行なわれること、および、単独隔離措置が不適切な形で利用されないことを確保すること。 (c) 代替的養護を受けている子どものうち障害または精神保健上のニーズを有する子どもについて、そのニーズへの対応が統合的かつ包括的なやり方でとられることを確保するための措置を実施すること。この目的のため、締約国は、締約国の子ども・家族機関と保健サービス局の関連部署との間で実効的な機関間協力を確保するための適切な調整機構を設置するべきである。 (d) リービングケアの前に、若者が移行計画の立案に早い段階から関与するようにし、かつ養護の離脱後に援助を利用できるようにすることにより、若者に十分な準備の機会および支援を提供すること。 (e) 子ども養護法(1991年)においてホームレス経験のある子どものニーズが十分に対応されることを確保するため、必要に応じて法改正を行なうこと。 養子縁組 45.委員会は、締約国の養子縁組法制の統合および現代化を図った養子縁組法(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、養子とされた子どもが自己の出自に関する情報および家族追跡のためのサービスにアクセスできることを確保する包括的な法的枠組みがないことを、依然として懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、国際基準にしたがい、情報開示、家族追跡および縁組後の支援に関する規定を養子縁組法(2010年)に編入することを検討するよう勧告する。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 47.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 普通教育への障害のある子どものインクルージョンおよび障害のある子どもの自律の奨励に関する包括的戦略が定められていないこと、ならびに、特別な教育上のニーズを有する者の教育法(2004年)がまだ全面的に施行されかつ実施されていないこと。 (b) 障害のある子どものケアを、入院または施設措置ではなく、可能または適切な場合には自宅環境で行なうことを容易にするための措置が不十分であること。 (c) 障害のある子どもが乳幼児期教育サービスに十分にアクセスできていないこと。 (d) 特別なニーズを有するすべての子ども(視覚障害および聴覚障害がある子どもを含む)を対象として、点字および手話のような合理的配慮が行なわれているわけではないこと。また、国家試験との関係で、締約国の国家試験委員会が障害のある子どもに合理的配慮を行なうための明確かつ客観的な枠組みが存在しないこと。 48.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、かつ、障害のある子どものインクルージョンに関する包括的戦略を定めること。 (b) 自宅環境における障害児のケアを容易にするための十分な措置を確保すること。その際、締約国は、領域全体を通じてそのような措置に関する一貫性および十分な基準を確保する目的で、国家的な政策および枠組みの採択を検討するべきである。 (c) 障害のある子どもに対して特別ニーズ教育支援および乳幼児期教育を提供する目的で、十分な人数の専任教員および専門家を養成しかつ雇用すること。 (d) 障害のある子どもを対象として、その教育上のニーズへの合理的配慮(国家試験に関連するものを含む)が行なわれることを確保するための、明確かつ客観的な枠組みを確立すること。 健康および保健ケアサービス 49.委員会は、ひとり親家庭の子ども、貧困下の子どもならびにトラベラーおよびロマの子どもの健康状態が全国平均よりも相当に悪いことを深く懸念する。委員会は、トラベラーおよびロマの子どものうち、締約国において負担不可能な費用を請求されずに医療ケアにアクセスするために必要な医療カードを有している子どもの割合が低いことを、とりわけ懸念するものである。 50.委員会は、締約国に対し、とくにひとり親家庭の子ども、貧困下の子どもならびにトラベラーおよびロマの子どもが保健ケアサービスへのアクセスから排除される根本的原因となっている社会経済的不利益に対処するよう、促す。委員会はまた、締約国が、このような子どもが保健ケアサービスに他の子どもと同様にアクセスでき、かつ他の子どもと同一のサービスの質を享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置(トラベラーおよびロマの子どもに医療カードを発行するためのプログラムを含む)を実施することも勧告するものである。 母乳育児 51.委員会は、「ヘルシーアイルランド枠組み」のもとでとられている母乳育児促進措置に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 生後6か月までの赤ちゃんの完全母乳育児率が、とくにトラベラーの女性の間で低いこと。 (b) 完全母乳育児に関する保健専門家を対象とした研修が不十分であること。 (c) 締約国に存在する赤ちゃんにやさしい病院の数が不十分であること。 (d) 乳幼児への栄養補給または母乳育児に関する国家的戦略が定められていないこと。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 母乳育児の重要性および人工栄養のリスクに関する資料にアクセスできるようにすることおよび意識啓発を行なうことにより、完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化すること。とくに、トラベラーのコミュニティを対象とする措置が含まれるべきである。 (b) 完全母乳育児の重要性に関する保健専門家を対象とした研修を再検討し、かつ強化すること。 (c) 赤ちゃんにやさしいと認証された病院の数をさらに増やすこと。 (d) 乳幼児への栄養補給慣行に関する国家的戦略を策定しかつ実施するとともに、その際、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を、その執行のための十分な措置とあわせて実施することを検討すること。 精神保健 53.委員会は、「入院中の子ども・青少年のための精神保健サービス」が最近強化されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 医学的治療、とくに精神保健ケアサービスに対する子どもの同意および拒否についての包括的法律が定められていないこと。 (b) 子どものための精神保健ケア施設が十分に利用可能とされていないため、子どもが成人精神病棟に入院させられていること。また、精神保健支援にアクセスするまでの待機者リストが長く、かつ、精神保健上のニーズ(とくに摂食障害)を有する子どもおよび青少年のための時間外サービスが不十分であること。 (c) 精神保健上の困難を有する子どものための、子どもに焦点を当てた権利擁護および情報提供のサービスが存在しないこと。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 医学的治療に対する子どもの同意および拒否について明確かつ包括的に定めた法律を制定するとともに、当該法律が、条約の趣旨にのっとり、かつ子どもの発達しつつある能力の明確な承認を含むものであることを確保すること。 (b) 子どもおよび青少年のための精神保健ケアサービスの対応能力および質を向上させるための措置を実施すること。その際、締約国は、院内治療のための精神保健ケアサービス、時間外施設および摂食障害治療施設の対応能力の強化に優先的に取り組むべきである。 (c) とくに子どもを対象とし、かつ、しかるべき形でアクセスしやすくかつ子どもにやさしい、精神保健に関わる権利擁護および情報提供のサービスの設置を検討すること。 自殺 55.委員会は、締約国が最近、自殺防止戦略を採択したことに留意する。しかしながら委員会は、思春期の子どもの自殺件数が多いことを依然として懸念するものである。 56.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、自殺の防止に関する措置(そこでは子どもおよび青少年の特有のニーズが考慮されるべきである)をさらに強化し、かつ、その効果的実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保するよう勧告する。 思春期の健康 57.委員会は、妊娠期生命保護法(2013年)が、母親の生命に「真のかつ相当な危険」がある場合にしか中絶を認めておらず、かつ、妊娠が強姦もしくは近親姦の結果である場合または重度の胎児障害がある場合でさえ中絶を犯罪としていることを懸念する。さらに委員会は、「真のかつ相当な危険」という文言により、医師が客観的な医療実務にしたがってサービスを提供できなくなってることを懸念するものである。委員会はまた、思春期の子どもが、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育および緊急避妊法に深刻なほどアクセスできないことも懸念する。 58.思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、子どもが安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で法律の見直しを行なうこと。また、中絶に関する決定において、妊娠した女子の意見が常に聴かれ、かつ尊重されることを確保すること。 (b) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。 (c) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (d) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。 生活水準 59.委員会は、一貫して貧困下で生活している子どもの人数が相当に増加していること(このような貧困が、トラベラー、ロマおよび難民としての背景を有する子どもならびにひとり親世帯で暮らしている子どもに不均衡な影響を及ぼしていると報告されていることを含む)を深く懸念する。 60.委員会は、締約国に対し、被害を受けやすい状況に置かれた子ども、とくにトラベラー、ロマおよび難民である子どもならびにひとり親世帯で暮らしている子どもの貧困を削減するための努力をさらに強化するよう、促す。委員会はまた、締約国が、2020年に向けた貧困削減達成目標の改訂において、一貫して貧困下で生活している子どもの人数の増加が考慮に入れられ、かつ、当該目標が定められた期限内に達成されるようにするための詳細な行動計画が整備されることを確保することも、勧告するものである。 61.委員会は、ホームレスであることの影響を受けている家族が、社会住宅へのアクセスに関して相当の遅延に直面しており、かつ、不適切な、一時的なまたは緊急の宿泊施設で長期間生活していることが多い旨の報告があることを深く懸念する。 62.委員会は、締約国に対し、より多くの社会住宅および緊急住宅支援が利用できるようにするための措置を実施するよう促す。その際、締約国は、これらの措置を通じて提供される住宅および支援が、当事者である子どものニーズにふさわしいものであり、かつ十分な保障措置、再審査および評価の対象とされることを確保するべきである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 63.委員会は、締約国で子どもが多様な態様の学校を利用できる必要性への対応を試みるために「民間セクターにおける多元主義と宗派教育フォーラム」(訳者注/「初等教育部門における宗派教育と多元主義フォーラム」の誤り〕が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、非宗派学校の数がきわめて少ないことを依然として懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 学校が、子どもの宗教を理由としておよび(または)子どもの親が学校の元生徒であるか否かを理由として差別的な受け入れ方針を実践し続けていること。 (b) 苦情申立ての取扱いについて教育部門で設けられている体制が不十分であること。 (c) 修学認定試験が子どもに圧力をかけていること。 (d) すべての生徒が楽しむことのできる、学校における身体的活動が不十分であること。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 非宗派学校または多宗派学校の利用可能性を相当に高め、かつ、学校への受け入れにおける差別を解消するための現行法の枠組み(平等地位法を含む)を改正するための具体的措置を速やかにとること。 (b) 学校の生徒のための効果的な苦情申立て機構を設置すること。 (c) 子どもに生ずるストレスを軽減する目的で、修学認定試験の改革を検討すること。 (d) すべての生徒が楽しむことのできる、身体的余暇活動のカリキュラムを開発すること。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの難民および庇護希望者 65.委員会は、庇護希望者または難民の状況に置かれた子どもの大多数が、子どもに関連する国の基準の対象とされていない民間運営施設に受け入れられており、かつ、これらの施設の査察および評価の大多数が、十分に独立していない内部査察担当者によって実施されているという報告があることを懸念する。委員会は、難民および庇護希望者への直接支給政策に関連する苦情に対応するための不服申立て担当官が1名任命されている旨の、対話の際に提供された情報に留意するものである。しかしながら委員会は、これによって独立の監督が確保されているわけではないこと、および、これが子どもに対して十分に周知されておらずまたは子どもにとって十分にアクセスしやすいものとなっていない可能性があることを、依然として懸念する。このことに照らし、委員会は、以下の点に関する報告があることを懸念するものである。 (a) 多数の施設が、乳幼児のいる家族のための十分な設備を備えていないこと。 (b) 庇護希望者および難民の受け入れ施設で、子どもの保護のための十分なサービスが提供されておらず、子どもに教育への十分なアクセスが保障されておらず、または全般的に適切な衣服および食料(そのような施設に受け入れられている少数宗派の子どものための文化的に適切な食料を含む)への十分なアクセスが保障されていないこと。 (c) 庇護希望者に支給される子ども手当の額が、締約国における生活費の上昇およびインフレに追いついていないこと。 66.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)に照らし、委員会は、締約国が、庇護および難民に関する政策、手続および実務を、国際法上の義務および他の文書(国連難民高等弁務官が作成した「望ましい実務に関する声明」を含む)に掲げられた原則と一致させるために必要な措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民の状況に置かれた子どもに対し、支援サービスに関して、アイルランド国籍の子どもと同一の基準およびアクセスが保障されることを確保するための措置を強化するよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、すべての難民受け入れ施設の独立した立場からの査察を確保するよう促す。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民の受け入れ施設について以下のことを確保するための措置をとるよう勧告するものである。 (a) これらの施設が、乳幼児および家族にとって適切な設備(レクリエーション区画を含む)を備えること。 (b) これらの施設が、子どもの保護のための十分なサービス、子どものための十分な教育ならびに子どものための十分な衣服および食料(十分な品質の、かつ少数宗派の子どもにとって文化的に適切な食料を含む)を有すること。これらの施設はまた、食事に関する配慮が必要な子どものニーズにも対応するとともに、可能なかぎり、入所者が自分たち自身の食料を保管しかつ調理することも認めるべきである。 (c) 子ども手当が締約国における生活費に対応することを確保するため、庇護希望者に支給される子ども手当を均衡的に増額すること。 移住の状況にある子ども 67.委員会は、締約国が国際保護法(2015年)を採択したことに留意する。しかしながら委員会は、同法がまだ施行されていないことから、締約国にいる子どもの移住者のニーズへの全面的に対応に関する枠組みが依然として不十分であることを懸念するものである。委員会は、その結果、非正規な移住状況にある者に移住者としての地位を付与する、明確なかつアクセスしやすい手続が設けられていないことを懸念する。委員会はまた、移住者としての地位が非正規な状況にあって養護の対象とされている子どもが独立の立場からの法的助言を受けられることを確保するための措置が不十分であることから、このような子どもが自己の移住者としての地位を時宜を得た形で確認できない事態がしばしば生じていることも懸念するものである。 68.すべての子どもが条約に基づく自己の権利の全面的保護および実施に対する権利を有していることを強調しながら、委員会は、締約国に対し、条約に掲げられた権利が、移住者としての子どもまたはその親の地位にかかわらず、締約国の管轄下にあるすべての子どもに対して保障されることを確保し、かつ、これらの権利のあらゆる侵害に対応するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 締約国にいる子どもの移住者のニーズに対応するため、国際人権基準にしたがった包括的な法的枠組みを速やかに採択すること。 (b) 当該法的枠組みに、非正規な移住状況にある子どもおよびその家族に移住者としての地位を付与するための、明確なかつアクセスしやすい正式な手続が含まれることを確保すること。 (c) 非正規な移住状況にある子どもに対し、独立の立場からの法的助言および自己の移住者としての地位に関する時宜を得た説明が提供されることを確保するための措置をとること。 マイノリティ集団に属する子ども 69.委員会は、トラベラーおよびロマの子どもに対する構造的差別(教育、保健および十分な生活水準へのアクセスに関するものを含む)について深い懸念を覚える。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 締約国がトラベラーおよびロマをマイノリティ集団として認めていないことから、とくに、十分なデータが存在せず、かつ、その結果として、対象が明確な支援プログラムおよび支援措置のための基盤が脆弱な状態が生じていること。 (b) 移動住宅または仮設住宅にいるトラベラー世帯の相当数が、給水および衛生のための十分な施設または安全かつ適切な遊び場にまったくアクセスできていないこと。 (c) トラベラーの子どもおよびその家族の住宅のための資金供給が劇的に減額されたこと。 (d) 住宅(雑則)法(2002年)にしたがって移動生活が犯罪化されており、かつ、これとあいまって一時定住サイトの供給が不十分であることから、強制立退きおよび文化的慣行としての移動生活の抑圧が生じていること。 (e) 締約国の「国家トラベラー/ロマ統合戦略」の実施に関して人権が基盤とされておらず、かつ、同戦略のための目的、達成目標、指標、時間枠および資金供給機構が設けられていないこと。また、同戦略のさらなる策定および実施に関するトラベラーおよびロマのコミュニティとの協議が不十分であること。 (f) 定住条件のために子ども手当給付の受給資格が妨げられていること。 70.委員会は、締約国に対し、とくに教育、保健ケアおよび十分な生活水準へのアクセスとの関連で、トラベラーおよびロマの子どもに対する構造的差別に対応するための具体的かつ包括的な措置を実施するよう促す。このことに照らし、委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) トラベラーおよびロマを締約国の民族集団として法的に認めることを検討すること。また、その際、対象が明確な支援プログラムおよび支援措置の提供を促進するため、これらのコミュニティに関する細分化されたデータ収集を行なうこと。 (b) トラベラーおよびロマの世帯が滞留するサイトに、給水および衛生のための十分な施設ならびに子どものための安全かつ適切なレクリエーション設備が備えられることを確保すること。 (c) トラベラーおよびロマの子どもおよびその家族のニーズに対応する住宅施設に配分される資金を増額するとともに、そのような資金が効果的かつ時宜を得たやり方で使用されることを確保する機構および手続を用意すること。 (d) 移動生活の文化的慣行が犯罪とされないことを確保するために関連の法律を廃止しまたは改正する等の手段により、このような文化的慣行に対する権利を尊重すること。その際、締約国はまた、強制立退きに対する十分な保障措置、ならびに、このような強制立退きの被害者のための時宜を得た救済および相応の賠償へのアクセスも確保するべきである。 (e) 「国家トラベラー/ロマ統合戦略」のさらなる策定および実施にトラベラーおよびロマのコミュニティが効果的に参加することを確保するため、これらのコミュニティとの透明な、アクセスしやすくかつ意味のある協議を、これらの協議が当該戦略において人権が明確に基盤とされることのきっかけとなることを確保しながらさらに実施するとともに、これを基盤として、目的、達成目標、指標、時間枠および資金供給機構のあり方を定めること。 (f) 子ども手当給付を、定住条件の充足を要件としない普遍的給付とすること。 少年司法の運営 71.委員会は、刑事司法法(2006年)にしたがい、刑事責任年齢が重大な犯罪については10歳に引き下げられた旨の前回の懸念(CRC/C/IRL/CO/2、パラ66)をあらためて繰り返す。委員会はまた、成人刑事施設に拘禁されている17歳の男子がいまなお存在するという報告についても懸念を覚えるものである。 72.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約その他の関連基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 2001年子ども法で定められているとおり、刑事責任年齢を14歳とした規定を復活させること。 (b) 拘禁が避けられない場合、当該拘禁が可能なもっとも短い期間で行なわれること、これらの子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準に合致すること(教育および保健ケアサービスへのアクセスとの関連を含む)を確保すること。 (c) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、国際連合児童基金、国際連合人権高等弁務官事務所および非政府組織を含む)が開発した技術的援助ツールを活用するとともに、必要に応じ、当該パネルの構成機関に対して少年司法分野における技術的援助を求めること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 73.委員会は、締約国が軍隊への志願入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げたことを歓迎する。委員会はまた、国際刑事裁判所法(2006年)によって、国際刑事裁判所規程ならびに国際刑事裁判所の特権および免除に関する協定が国内法に編入されたことにも、肯定的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、締約国が、以下の点に関して、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書について委員会が前回行なった勧告を考慮していないことを遺憾に思う。 (a) 選択議定書に関する広報、普及および研修活動が軍隊および軍事研修に限定されていることに関する勧告(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ7)。 (b) 選択議定書の実施に関する独立の監視機構を設置するべきこと、および、子どもオンブズマン事務所が、依然として、子どもの権利侵害の訴えが国の安全保障または軍事活動に関連しまたは影響するものである場合にはこれを調査できないとされていることに関する勧告(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ8)。 (c) 18歳未満の子どもの徴募および敵対行為における使用(国以外の武装集団によるものを含む)を明示的に犯罪化する国内法の制定に関する勧告(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ15)。 74.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団(保健従事者、ソーシャルワーカー、教員、公務員、検察官、裁判官、ならびに、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および難民のためにならびにこれらの子どもとともに働く公的機関など)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修のためのプログラムを発展させること。さらに委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じて、公衆一般ならびにとくに子どもおよびその親に対し、選択議定書の規定を広く知らせるよう勧告する(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ7)。 (b) 18歳未満の子どもとの関連で国防軍がとった行動について十分な説明責任が課されることを確保する目的で、子どもオンブズマン法(2002年)第11条1項(b)の改正および(または)他の適切な監督機構の設置を検討すること(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ9)。 (c) 選択議定書の精神を全面的に尊重し、かつあらゆる状況下で子どもを全面的に保護する目的で、国の内外にかかわらず18歳未満の者を敵対行為に直接関与させることを明示的に犯罪化する法律を制定すること(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ15)。 75.委員会は、締約国に入国する子どものうち武力紛争にさらされた可能性のある子どもの早期特定および支援のための措置が不十分であることを懸念する。 76.締約国は、締約国に入国する子どものうち武力紛争にさらされた可能性のある子どもの早期特定および支援のための措置を強化するべきである。当該制度には、心理社会的援助、リハビリテーション、社会的再統合、および、このような子どもが直面するトラウマに対応するための他の関連の措置を含めることが求められる。 J.国際人権文書の批准 77.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 K.地域機関との協力 78.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における〔子どもの権利〕条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。 V.実施および報告 〔訳者注/IVが抜けているのは原文ママ〕 A.フォローアップおよび普及 79.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第3回・第4回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 80.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2021年10月27日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 81.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月11日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/248.html
総括所見:バチカン(OPSC・2014年) 第1回(1995年)/第2回(2014年)OPAC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/VAT/CO/1(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1853回(CRC/C/SR.1853参照)において法王聖座(Holy See)の第1回報告書(CRC/C/OPSC/VAT/1)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、法王聖座による第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/VAT/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書が6年遅れで提出されたこと、および、法王聖座が、その法的権威のもとで活動する個人および機関による選択議定書の実施に関連した質問に回答しなかったことを、遺憾に思うものである。委員会は、法王聖座の多部門型代表団との対話を歓迎する。 3.司教および宗教施設の主要な高位者がローマ法王の代理人または代表として行動するわけではないことは十分に承知しながらも、委員会は、カトリック修道会に所属する者が、カノン法典第331条および第590条にしたがい、法王に対する忠誠に拘束されていることに留意する。したがって委員会は、法王聖座に対し、選択議定書を批准するにあたり、法王聖座は、選択議定書を、バチカン市国の領域内のみならず、カトリック教会の最高権機関として、その至高の権威のもとにある個人および施設を通じて世界中で実施することを誓約したことを想起するよう、求めるものである。 4.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、子どもの権利条約に基づいて法王聖座が提出した第2回定期報告書についての総括所見(CRC/C/VAT/CO/2)および武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/OPAC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で法王聖座がとった、以下のものを含む措置を歓迎する。 (a) 刑事事案におけるバチカン市国司法当局の管轄権に関するローマ法王の自発教令(2013年7月11日)。 (b) 「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第8号。 (c) 刑法および刑事訴訟法の改正を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第9号。 (d) 子どものための安全な環境プログラムの発展に関する新たな取り組みを提案し、かつ世界中の虐待被害者のパストラルケアのための努力を向上させることを目的として、未成年者保護司牧委員会を創設したこと(2013年12月5日)。 (e) バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局をバチカン市国政庁内に設置したこと(2013年8月10日)。 6.委員会はまた、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の批准(2012年1月25日)にも評価の意図ともに留意する。 III.データ 7.委員会は、委員会が要請した、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事案であって報告対象期間中に法王聖座が扱ったものおよび教理省が2001年以降扱ってきたものについてのデータが法王聖座から提供されなかったことを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、選択議定書で対象とされている犯罪に関連したすべての事案を記録し、付託しかつフォローアップすることならびに選択議定書の実施における進展を分析しかつ評価することを目的とした包括的なデータ収集システムを設置していないことも、懸念するものである。 8.委員会は、法王聖座が、選択議定書が対象とするすべての分野でデータの収集および分析ならびに事件の影響の監視および評価を行なうための、包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきであり、かつ、これらの事件について行なわれたフォローアップに関する情報も含まれるべきである。そのようなデータ収集システムが設置され、かつ犯罪実行地国との情報共有のために効果的に活用されるようになるまでの間、委員会は、法王聖座に対し、法王聖座および教理省が2001年以降収集してきた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件に関するすべての情報が、適切なフォローアップを目的として、権限のある国内司法機関に全面的にかつ直ちに開示されることを確保するよう促す。 IV.一般的実施措置 子どもの権利条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 9.委員会は、法王聖座が、聖職者が関与した児童ポルノ事件に対応するにあたり、自己の意見を表明しかつ正当に重視される子どもの権利を確保せず、かつ、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利よりも教会の信用の維持を優先させてきたことを懸念する。委員会は、そのような対応をとった法王聖座が、選択議定書上の犯罪の防止および被害を受けた子どもの犯罪通報能力を阻害し、したがって加害者の不処罰および被害を受けた子どものさらなるトラウマを助長してきたことを懸念するものである。 10.委員会は、法王聖座が選択議定書第8条第1項(b)および(c)ならびに第3項に基づく義務を想起するよう求めるとともに、法王聖座が、売買、買春およびポルノの被害者である子どもの意見表明権および自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利が保護されかつ尊重されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 立法 11.選択議定書上の犯罪を処罰するバチカン市国法第8号および第9号の採択は歓迎しながらも、委員会は、これらの法律の適用がバチカン市国の領域に限定されており、かつ、法王聖座の至高の権威のもとで活動するすべての個人および機関にこれらの法律が適用されるわけではないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書に違反するカノン法の規定(とくにこれらの犯罪を法的に犯罪として定義することに関わるもの)およびこれらの犯罪に対応するための手続をいまなお改正せずに適用し続けていることも懸念するものである。 12.委員会は、法王聖座に対し、カノン法を含むすべての規範および規則を選択議定書に一致させ、かつ、バチカン市国ならびに法王聖座の至高の権威のもとで活動する個人および機関に対して同一の法律が適用されることを確保するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、選択議定書と矛盾するすべてのカノン法の規定、とくに1962年の「勧誘の罪」(Crimen Sollicitationis)および2011年の「秘跡の神聖性の保護」(Sacramentorum Sanctitatis Tutela)を遅滞なく改正することも促すものである。 調整および評価 13.委員会は、法王聖座が、選択議定書を実施するための活動の監視および評価について指導力を発揮し、かつ効果的な全般的監督を行なう調整期間を設けていないことを懸念する。 14.委員会は、法王聖座が、選択議定書の実施のための活動を監視しかつ評価する能力を備えた調整期間を創設するよう勧告する。 普及および意識啓発 15.カトリックの専門機関により子どもの権利および選択議定書に関する資料が刊行されかつ教育者に配布されていることは歓迎しながらも、委員会は、選択議定書に関する子ども、その家族および公衆一般の意識を高め、かつ、とくに子どもに対して身の守り方および犯罪の通報の方法を知らせるための同様の措置が法王聖座によってとられていないことを懸念する。 16.委員会は、法王聖座が、その道徳的権威を全面的に活用し、子ども、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に選択議定書を広く知らせることに対して包括的なアプローチをとるとともに、そのために、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたち自身と緊密に協力しながら、選択議定書で取り上げられているあらゆる問題についての意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を発展させるよう、勧告する。法王聖座はまた、選択議定書を地元の言語に翻訳し、かつ子どもにやさしい形式で普及することを含めて、世界中で法王聖座の権威のもとに活動している個人および機関(カトリック学校を含む)がこの点に関して積極的な役割を果たすことも確保するべきである。 研修 17.委員会は、子どもが虐待および搾取の危険にさらされる状況を発見しかつそれに対応するための訓練をカトリック学校の教員に対して行なうためにケニアで開発された「カトリック司牧意識啓発プログラム」など、国レベルでカトリック機関が開発したプログラムに、積極的に留意する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとで活動するすべての個人および機関を対象とした同様のプログラムの開発および普及を行なっておらず、かつ、聖職者によって行なわれた未成年者の性的虐待事件に対応するための指針を策定するにあたって司教協議会を援助する目的で、もっぱら2011年の回勅を参照するよう求め続けていることを、懸念するものである。当該回勅は、子どもを保護し、かつ、これらの犯罪に対処する方法についての適切な指針を個人および機関に対して示すうえで有効性を欠くことが明らかになっている。 18.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪の防止、発見および適切な取扱いについての適切な指針および研修資料を、その権威のもとで活動するすべての個人および機関に提供するよう促す。法王聖座は、カトリック系の学校および施設の教職員がそのような研修を受けることを確保するとともに、そのような研修を実施するために必要な資源を使途指定方式により用意するべきである。 資源配分 19.委員会は、法王聖座が、選択議定書上の犯罪を防止し、子どもを保護し、かつ、その権威のもとにある個人が行なった犯罪の被害を受けた子どもに対してその身体的および心理的回復ならびに社会的統合のための支援を提供することを目的としたプログラムの開発および実施に、何らの資源配分も行なっていないことを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、国際的に選択議定書を促進することを目的とした活動のための具体的資源配分を行なっていないことも懸念するものである。 20.委員会は、法王聖座が、選択議定書が対象とする犯罪の防止ならびに被害を受けた子どもの保護およびリハビリテーションを目的としたプログラムの開発および実施に十分な人的資源、技術的資源および財源を配分することに対して、高い優先順位を付与するよう勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条(第1項~2項)) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 21.委員会は、被害を受けやすい状況に置かれた子どもを支援するためにカトリック系の修道会および団体が世界中で発展させてきたさまざまな取り組み、および、選択議定書上の犯罪を助長する諸要因に対処するために法王聖座が世界中で道徳的指導力を発揮してきたことを示す複数の証拠を歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとにある個人に対しては同様のアプローチをとっておらず、かつ、司祭および修道女が選択議定書で対象とされている犯罪を行なうことを防止するために時宜を得た、かつ適切な措置をとってきていないことを懸念するものである。委員会は、児童ポルノを制作し、所持しかつ配布していながら、そのことを承知のうえで子どもと接触する立場に置かれていた司祭の事案について、とりわけ懸念する。 22.委員会は、法王聖座に対し、児童ポルノおよび選択議定書上のその他の犯罪への関与が疑われているすべての司祭が直ちに聖職から解任されることを確保するとともに、子どもが選択議定書上の犯罪の被害者となることを効果的に防止するための規則、指針および機構を遅滞なく採択するよう、促す。委員会は、法王聖座に対し、2013年12月に創設された未成年者保護司牧委員会が、法王聖座の権威のもとにある個人が関与した児童ポルノ事件について法王聖座が適用する方針および実践の包括的評価を実施することを確保するとともに、当該評価の結果が公にされ、かつすべての者、とくに被害者がこれにアクセスできることを確保するよう、促すものである。 子どもの売買および養子縁組 23.委員会は、スペインの産科病棟で数千人の赤ん坊が母親から引き離され、かつ、医師、司祭および修道女のネットワークによって、親としてより適切だとみなされた子どものいないカップルに売られていたことが2011年に発覚したことに、深い懸念を表明する。委員会はまた、マグダレン洗濯所に収容されていた女子および女性から赤ん坊が組織的に引き離されていたアイルランドのように、他国でも同様の慣行が行なわれていたことを懸念するものである。 24.委員会は、法王聖座に対し、その権威のもとに活動する個人および機関であって、母親から赤ん坊を取り上げ、かつ報酬または他の何らかの見返りと引き換えに子どものいないカップル、個人または機関に譲渡する行為を組織し、これに参加しまたはこれを援助した個人および機関が責任を問われることを確保するよう、促す。委員会は、法王聖座に対し、被害者が自己の生物学的血縁関係についての情報にアクセスできることを容易にする目的で、これらの犯罪に関与した機関および個人が収集したすべての情報が全面的に開示されることを確保するよう、促すものである。 25.委員会は、カトリック系の多くの機関および団体が国際養子縁組に関与しているにもかかわらず、法王聖座が、カトリック系の期間が不法な養子縁組に従事しないことを確保するために必要な措置をとっていないことを懸念する。 26.選択議定書第5条に照らし、委員会は、法王聖座に対し、その権威のもとにあり、かつ子どもの養子縁組に関与しているすべての個人および機関が適用可能な国際法文書にしたがって行動することを確保するための適切な法律上および行政上の措置を、優先的課題としてとるよう促す。委員会は、法王聖座が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を検討するよう勧告するものである。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2項および3項)、第5条、第6条および第7条) 現行刑事法令 27.「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げたバチカン市国法第8号ならびに刑法および刑事訴訟法の改正を掲げたバチカン市国法第9号が2013年7月に採択されたことは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 法第8号および第9号がバチカン市国にしか適用されず、法王聖座の権威のもとにある個人および機関が行なった犯罪(これらの犯罪は引き続きカノン法の規定に服する)については取り上げていないこと。 (b) 聖職者によって行なわれた未成年者の性的虐待事件に対応するための指針を策定するにあたって司教協議会を援助することを目的とする2011年の回勅が、選択議定書上の犯罪への対応について国内刑事手続よりもカノン法上の手続を優先させていること。 28.委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法王聖座の権威のもとに活動するすべての個人および機関に対しても、法第8号および第9号の適用範囲を拡大すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の疑いがあるすべての案件を、たとえ国内法でそのような犯罪の通報が義務とされていない場合でも、直ちに国内法執行機関に付託するための明確な規則を採択すること。 訴追および不処罰 29.委員会は、児童ポルノに関連する行為を行なった聖職者の圧倒的多数ならびにそのような犯罪を隠蔽した者が不処罰の利益を享受していることを深く懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 被害者に沈黙の義務を課すことによって加害者が司法による裁きを免れることを可能にし、児童ポルノ関連の事件を国内法執行機関に通報することを妨げ、かつ行なわれた犯罪の重大性にふさわしくない処罰を言い渡してきたカノン法の規定および手続が、いまなお有効でありかつ適用されていること。 (b) 法王聖座が、多くの機会に、法執行機関との協力、ならびに、検察官および国内調査委員会によって要請された情報の開示を拒否してきたこと。 (c) 法王聖座が、いくつかの国(とくにイタリア)と、一部領域におけるバチカン官吏(選択議定書上の犯罪について罪を問われている司祭および聖職者を含む)の免訴を保障する条約を締結していること。 30.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪を行なった者の不処罰を奨励する環境を生み出してきたすべてのカノン法の規定を遅滞なく廃止するよう促す。法王聖座はまた、内部指針を改正し、国内法執行機関との透明かつ効果的な協力も確保するべきである。委員会はさらに、法王聖座に対し、各国と締結した条約のうち、子どもの性的虐待の加害者が処罰されないことを助長する部分を無効にするよう促す。 犯罪人引渡し 31.委員会は、法王聖座が、起訴を目的とする犯罪人引渡しを求めることはない一方、ラテラノ条約第22条にしたがい、双方可罰性原則に基づいてイタリア当局に犯罪人の引渡しを行なっていることに留意する。委員会は、法王聖座が、2014年1月、児童ポルノの容疑を含む犯罪容疑について取り調べるためある大司教をバチカンからポーランドに引き渡すよう求めたポーランドの検察官の請求を拒否したことを、とりわけ懸念するものである。 32.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書第3条第1項上のすべての犯罪が引渡しの対象の犯罪とされ、かつ、犯罪人引渡しおよび(または)国外で行なわれた犯罪の訴追に関する双方可罰性要件が廃止されることを確保するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、必要なときは選択議定書第5条にしたがって選択議定書を犯罪人引渡しのための法的根拠として用い、かつ、国外で子どもの性的虐待について告発されているいかなる聖職者についても引渡しを続けることも促すものである。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条および第9条(第3項および4項)) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 33.委員会は、選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもがカトリックの聖職者から受けた犯罪を通報する際に直面する多くの障壁にもかかわらず、法王聖座が、子どもが苦情を申立てるための子どもにやさしい機構を設置することについて、選択議定書第8条第1項に基づく法的要件として必要ではないといまなお考えていることを懸念する。委員会はまた、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 選択議定書上の犯罪に対してこれまで適用され、かつ引き続き適用されているカノン法に、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益の保護に関するいかなる規定も掲げられていないこと。 (b) いくつかの国内委員会が留意しているように、多くの事案で、被害を受けた子どもおよびその家族がカトリック教会当局による再被害を受けてきたこと。 34.選択議定書第9条第3項に照らし、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、被害を受けた子どもを刑事司法制度を扱うにあたって子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう、促す。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 議定書上のすべての犯罪に関わる苦情申立て、救済および是正のための子どもにやさしい機構および手続を、これ以上遅延することなく設置すること。 (b) 法王聖座の権威のもとで活動するすべての個人および機関を対象とした子どもの保護に関する指針を策定するとともに、当該指針に関する研修が実施されることを確保すること。 (c) 国内法執行機関との協力のための機構を設置する等の手段により、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの早期発見のための機構および手続を設置すること。 (d) 被害を受けた子どもが、選択議定書上の犯罪を告発した際に教会当局による被害をこれ以上受けないことを確保すること。 被害者の回復および再統合 35.法王聖座が、選択議定書の諸締約国に対し、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもに援助を提供することを示唆しようと努めていること、および、性的搾取の被害を受けた子どもに対してカトリック教会が援助を提供していることには留意しながらも、委員会は、聖職者が行なった犯罪の被害を受けた子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合との関連で援助を提供するための適切な措置が法王聖座によってとられていないことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) カトリックの聖職者が行なった児童ポルノ犯罪事件に対応するために用いられてきたカノン法に、被害者の回復および再統合についてのいかなる規定も掲げられていないこと。 (b) 委員会に対する文書回答で明らかにされているように、法王聖座が、子どもの援助に関して諸締約国と直接協力していないこと。 (c) 選択議定書上の人権侵害の被害を受けた子どもに対する金銭的補償の条件として、被害者およびその家族に秘密保持および沈黙が課されてきたこと。 36.委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためにあらゆる適切な措置をとり、かつ、これらの措置が子どもの自尊心および尊厳を醸成する環境のなかでとられることを確保するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、その権威のもとに活動する個人および機関が行なった犯罪の被害者に、被害者に対して秘密保持の義務を課すことなく補償を行なう義務を履行することも促すものである。この目的のため、法王聖座は、聖職者が行なった選択議定書上の犯罪の被害者のための補償制度を確立するよう求められる。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、地域間および二国間の取り決め 37.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、法王聖座に対し、法執行機関との調整を図り、かつ、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させることにより、近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力を強化するよう奨励する。この文脈において、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書上の犯罪を、各国と締結しているいかなる免責協定からも除外するよう促すものである。委員会はまた、法王聖座に対し、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討することも促す。 IX.フォローアップおよび普及 38.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、議会、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 39.委員会は、選択議定書ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 40.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、法王聖座に対し、選択議定書およびこの総括所見に掲げられた勧告の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/306.html
総括所見:ベルギー(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2006年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.178(2002年6月13日)/第30会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年5月23日に開かれた第782回および第783回会合(CRC/C/SR.782-783参照)においてベルギーの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.2)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2002年6月7日に開かれた第804回会合において。 A.序 2.委員会は、報告書が報告ガイドラインにしたがっていることに評価の意とともに留意する。委員会は、報告書が時宜を得て提出され、また包括的かつ自己批判的な性格のものであったことおよび事前質問事項(CRC/C/Q/BELG/2)に対する文書回答も同様であったことに留意するとともに、付属文書で提供された追加情報を歓迎する。委員会の従前の勧告のフォローアップについて報告書に記載されていた議論は、とりわけ評価されるところである。委員会はまた、ハイレベルな代表団の出席が、開かれた対話およびベルギーにおける条約の実施に関する理解の向上に寄与したことにも、評価の意とともに留意する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 子どもの保護に関する憲法第22条bisが採択されたこと。 締約国が、子どもの保護、児童労働、後見および家族調停に関する諸新法を採択したこと。 人身取引および子どもの性的搾取と闘うために多数の取り組みが行なわれていること。とくに、ユーロポール条約に基づく共同行動が導入されたこと、子どもの性的搾取について研究する国家専門家委員会が設置されたこと、行方不明の子どもおよび搾取された子どもに関する欧州センター「チャイルドフォーカス」が設置されたこと、1995年に性的搾取と闘うための法律が3本採択されたこと、ならびに、刑法改正が行なわれたこと。 武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書が批准されたこと。 最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約が批准されたこと。 C.主要な懸念事項および勧告 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.4)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.38)の一部、とくにパラ8、9、11および13~16に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されているところである。 5.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうちまだ実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 1.実施に関する一般的措置 留保および宣言 6.委員会は、締約国が、前回の総括所見にしたがい、条約第2条に関して行なった宣言および第40条第2項(v)に付した留保〔訳者注/解釈宣言。以下同〕を再検討したことを評価する。にもかかわらず、委員会は、締約国に当該宣言および留保の撤回の意思がないことを懸念するものである。第2条に関して、委員会は、条約に定められた差別の禁止の一般原則によって、恣意的であって客観的に正当化できない事由(国籍を含む)による異なる取扱いが禁じられていることに留意しつつ、第2条に関する宣言によって、ベルギーにいる子どもであってベルギー国民ではない者による条約に掲げられた権利の享受が制限される可能性があることを懸念する。委員会は、条約における差別の禁止の保障は「(締約国の)管轄内にある子ども1人ひとり」に適用されることを強調するものである。第40条に付された留保に関して、委員会は、陪審裁判所(第1審および最終審を兼ねる裁判所)によって言い渡された判決および措置について破棄院に上告できるのは法律上の論点がある場合に厳格に限定されていることから、被告人が自己の主張に関して上級裁判所による全面的審理を受けられなくなることを懸念する。このことは、陪審裁判所がもっとも深刻な事件を扱い、かつ相対的に重い刑を言い渡していることから、なおさら重要である。 7.委員会は、締約国に対し、自国の宣言および留保を、ウィーン世界人権会議(1993年)の宣言および行動計画にしたがって撤回する方向で見直すよう奨励する。 立法 8.委員会は、子どもの権利に関連する諸法案(養子縁組、保護者のいない未成年者の後見、裁判所へのアクセスおよび適正手続の保障に関するものを含む)について締約国から提供された情報を歓迎する。 9.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの法案を厳密に再検討するとともに、これらの法案および子どもに関連する他の法律ならびに行政規則が権利を基盤としており、かつ条約を含む国際人権基準に一致していることを確保すること。 (b) これらの法律の効果的実施のための十分な対応(予算の配分を含む)がとられることを確保すること。 (c) これらの法案の迅速な公布を確保すること。 調整 10.委員会は、第1回報告書の検討以降、「子どもの権利の保護に関する省庁間会議」が設置され、かつ、国家子どもの権利委員会の創設について合意がなされたことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利に関する総合的ビジョンおよびそれを国家的行動計画の形で具体化したものが存在しないこと、異なる行政管轄区を異なる法律が規律しているため、締約国全体で子どもの権利の享受における差別が生じる可能性があること、および、ベルギーにおける条約の実施を調整する中央機構が存在しないため、子どもの権利政策の包括性および一貫性を達成しにくくなっていることを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家子どもの権利委員会を設置するため、前述の合意の正式な承認および全面的実施を速やかに進めるとともに、同委員会に対して十分な人的役務および財政的役務を提供すること。 (b) 可視性が高く、容易に特定可能であり、かつ十分な任務および十分な資源を与えられた常設機関を、条約の実施の調整機関に指定すること。 (c) もっとも被害を受けやすい集団に属する子ども(たとえば貧困世帯、庇護希望者)に特段の注意を払いながら、開かれた、建設的なかつ参加型のプロセスを通じて、条約の実施のための包括的な国家的行動計画を作成しかつ実施すること。 (d) 予算および政策の立案において、子ども影響評価の活用を継続しかつ拡大すること。 監視機構 12.委員会は、第1回報告書の検討以降、フラマン語共同体で子どもの権利コミッショナーが設置されたことに留意する。委員会は、フランス語共同体の子どもの権利総監の活動および機会均等・人種主義反対センターの活動を認知するものである。しかしながら委員会は、ドイツ語共同体においても連邦レベルでも、条約の実施を監視するための、かつ子どもの苦情を受理しかつこれに対応する権限を有する独立の機構が存在しないことを懸念する。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施における進展の監視および評価を目的として、パリ原則(総会決議48/134)にしたがい、ドイツ語共同体および連邦レベルで独立の人権機関を設置すること。これらの機関は、子どもにとってアクセスしやすいものであるとともに、子どもの権利の侵害に関する苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査し、かつこれに効果的に対応する権限を与えられるべきである。 (b) すべての人権機関がそれぞれの立法機関に対して正式な諮問機関としての機能を果たし、かつこれらの人権機関同士が相互に正式な関係を確立することを確保すること。 データ収集 14.委員会は、事前質問事項〔への回答〕とともに付属資料として提供された統計を歓迎し、庇護申請を処理している部局でデータ収集を向上させるための措置が進行中であることに留意し、かつ、少年司法に関する全国研究フォーラム内に統計に関する作業部会が設けられる旨の情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会はなお、前回の総括所見を参照しながら、条約で対象とされている分野についてのデータを収集しかつ分析する全国的機構が設置されていないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、条約で対象とされているすべての分野について、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団(たとえば国民でない者、障害のある子ども、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、法律に抵触した子ども等)を含む18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータが収集される全国的システムを確立するとともに、これらのデータを、進展の評価のためおよび条約実施を目的とする政策の立案のために活用するよう勧告する。 研修/条約の普及 16.委員会は、締約国が、第1回報告書、同報告書についての討議が行なわれた会合の議事要録および委員会の総括所見をまとめた資料を利用可能とした旨の情報を歓迎する。委員会はまた、障害のある子どものための特別出版物に関する情報も歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国が、条約に関する十分な普及、意識啓発および研修のための活動を、組織的なかつ対象を明確にしたやり方で実施していないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約に関する情報を普及するためのプログラム、および、子どもたちおよびその親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の統治機関の間におけるその実施(新規移住者など、被害を受けやすい状況に置かれた集団に情報を届けるための取り組みを含む)を強化しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 18.委員会は、2000年3月の政令によって機会均等・人種主義反対センターの任務が拡大され、ジェンダー、性的指向出生、民事上の地位、健康障害、年齢および障害を理由とするものを含むあらゆる形態の差別が含まれるようになったことを歓迎する。委員会は、マイノリティに対する人種主義的事件が発生していることとともに、貧しい子ども、ベルギー国籍を有さない子ども(保護者のいない未成年者を含む)および障害のある子どもが、経済的および社会的権利(とくに保健および教育)の享受に際して格差を経験していることを懸念するものである。 19.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 否定的な社会的態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンなどのあらゆる適切な措置をとるとともに、人種差別撤廃委員会の勧告(2002年3月)を実施すること。 (b) 自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に定められたすべての権利を差別なく享受できることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 引き続き、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団に属する子どもに優先的に対応し、かつ資源および社会サービスをこれらの子どもにとくに振り向けること。 (d) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもに関する一般的討議において採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に顧慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および実務(法律案を含む)を見直すこと。 20.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条第1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 21.委員会は、締約国の支援を得て、子どもが自分たちの意見を知らしめることのできる機構がいくつか設置された旨の情報を歓迎する。これには、会議、子どもの権利に関する講座、学校およびコミュニティにおける評議会ならびに「あなたはどう思う?」プロジェクトが含まれる。しかしながら委員会は、子どもが、自分たちに影響を与える政策についてどのように意見を述べられるのかについても、意見を求められた後にそれがどのように考慮されるのかについても十分に情報を提供されておらず、かつ、初等中等学校の児童生徒による学校運営への参加(校則および規律管理等の分野におけるものを含む)に対して十分な注意が向けられていないことを懸念するものである。子どもに影響を与える裁判手続または行政手続に関して、委員会は、裁判法第931条に基づき、意見を聴かれる権利がもっぱら裁量的なものであり、かつ子どもに対して十分に保障されていないことを懸念する。委員会は、この点に関する法案についての情報を歓迎するものである。 22.委員会は、締約国が、第12条にしたがい、子どもが社会(学校を含む)に意味のある形で参加することを促進しかつその便宜を図るためにさらなる措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、裁判所における手続および行政手続について定めた法律で、自己の意見を形成する力のある子どもが意見表明権を有することおよびその意見が正当に重視されることを確保するよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 23.委員会は、未成年者刑事保護法(2000年11月28日)、刑法改正、および、子どもの道徳的、身体的および性的不可侵性の保護に関する憲法第22条bisの採択など、子どもの虐待(性的虐待を含む)の分野で進められてきた多数の取り組みに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、体罰が法律で明示的に禁じられていないことを依然として懸念するものである。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および施設における子どもの体罰を禁止するための立法措置をとること。 (b) 引き続き、体罰の悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施し、かつ積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) 苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的な手続および機構を確立するとともに、必要に応じて介入を行なうこと。 (d) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事件について訴追を行なうこと。 (e) 被害者のケア、回復および再統合のための対応をとること。 (f) 虐待された子どもに秘密を守りながら対応するセンターを全面的に支援することを通じて通報制度を強化するとともに、教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の特定、通報および管理に関する研修を実施すること。 人権教育 25.委員会は、条約第29条に掲げられた教育の目的(人権、寛容、両性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの平等の尊重の発展を含む)が、締約国全域のカリキュラムの一部であると明示されていないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れ、子どもの権利を含む人権を、とくに人権、寛容、両性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの平等の尊重の発展との関連で、すべての初等中等学校のカリキュラムに含めるよう勧告する。 4.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 27.委員会は、保護者のいない未成年者の滞在申請を取り扱うために、外国人局内にこれらの未成年者のための特別部署が創設されたことを歓迎する。委員会はまた、その他の多数の活動(とくに、保護者のいない未成年者を対象とする特別受け入れセンターの設置、ならびに、保護者のいない未成年者に関する規定も掲げた、後見制度の創設、教育へのアクセスおよび行方不明者に関する法案に関する活動)にも留意するものである。しかし、政府も認めるように、保護者のいない未成年者(庇護を希望しているか否かは問わない)に関する具体的規則はまだ定められていない。 28.条約の原則および規定(とくに第2条、第3条および第22条)にしたがい、かつ保護者のいない18歳未満の未成年者との関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および(または)性的搾取の被害を受けた未成年者に特段の注意を払いながら、保護者のいない未成年者を対象とする特別受け入れセンターを設置する努力を速やかに進めること。 (b) これらのセンターでの滞在が可能なもっとも短い期間に留められ、かつ、受け入れセンターでの滞在中および滞在終了後に教育および保健へのアクセスが保障されることを確保すること。 (c) 保護者のいない未成年者に対し、庇護手続の開始時から、かつその後も必要があるかぎり後見人が任命されることを確保するため、後見制度の創設に関する法案を可能なかぎり早期に承認するとともに、同制度が全面的に独立したものとなり、当該未成年者の最善の利益にかなうと後見人が考えるいかなる対応もとれるようにすること。 (d) 保護者のいない未成年者が、自己の権利について告知され、かつ庇護手続において代理人弁護士にアクセスできることを確保すること。 (e) 外国人局および他の関連の公的機関、警察、審判所、受け入れセンターならびにNGOを含むあらゆる関係者の協力および情報交換を向上させること。 (f) 家族再統合が実施されるときは、それが子どもの最善の利益にかなう形で行なわれることを確保すること。 (g) 保護者のいない未成年者であって送還された者のフォローアップを拡大しかつ向上させること。 性的搾取および人身取引 29.委員会は、子どもの性的搾取および人身取引と闘うために締約国がとった多数の措置への満足感をあらためて表明する。にもかかわらず、委員会は、性的その他の搾取を目的とする人身取引がいまなお問題となっていることを懸念するものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家専門家委員会の勧告を全面的に実施すること。 (b) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがった政策およびプログラムを引き続き実施すること。 (c) 売春の仕事をしている外国人の女子および女性との意思疎通および接触を改善するため、女性警察官を引き続き採用すること。 (d) この分野の政策およびプログラムに対して十分な資源(人的資源および財源)が配分されることを確保すること。 (e) 出身国における意識啓発キャンペーンを引き続き行なうこと。 (f) 出身国および通過国との協力を拡大すること。 (g) 国際移住機関と引き続き協力すること。 少年司法の運営 31.委員会は、第1回報告書の検討以降に受け取った、死刑が1996年に廃止された旨の情報、最高15日の未決拘禁を定めていた1965年青年保護法第53条が廃止された旨の情報、および、全国少年司法研究フォーラム(統計に関する作業部会を含む)が設置された旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、非行少年の一時拘禁およびエーフェルベルグ〔一時拘禁〕センターの創設に関する2002年3月1日の暫定法(2002年10月31日失効)により、1965年法第53条に代わって、より制限的ではないにしても同様の制度が導入されたことを懸念するものである。さらに委員会は、1965年法第38条に基づき、18歳未満の者が成人として審理される場合があることを依然として懸念する。全体として、委員会は、条約で唱道されている、少年犯罪の問題への対応に関するホリスティックなアプローチが、防止、手続および制裁との関連も含め、締約国によって十分に考慮されてこなかったことを懸念するものである。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)、ならびに、北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関するウィーン指針などのこの分野における他の関連の国際基準を法律および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立すること。 (b) 18歳未満の者が成人として審理されないことを確保すること。 (c) 2002年3月の法律および2002年10月に行なわれるその見直しに関して、条約第37条にしたがい、自由の剥奪が最後の手段として、可能なもっとも短い期間でのみ用いられること、適正手続の保障が全面的に尊重されること、および、18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。 5.選択議定書 33.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう奨励する。 6.報告書の普及 34.最後に委員会は、条約第44条第6項に照らし、締約国が提出した第2回報告書を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、委員会が提起した事前質問事項に対する文書回答、関連の討議の要録、および、報告書の検討後に委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布することが求められる。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/bigface/pages/505.html
#blognavi 証拠が出ているのに認めないって、ある意味すげぇーって思いまして。 この騒動で解雇された力士とのいざこざがあったかどうかは知りませんが、科学が進歩したこのご時勢。 動かぬ証拠が突きつけられてもあの態度って…。 ある種、現在の科学に対して挑戦状を叩きつけているようにしか思えません。 昨年から何かと騒動を起こして記者会見する人は皆、最初は『知らない』って言うけど、最後は『御免なさい』。 今の世の中、悪い事をしたら、隠せるだけ隠して、駄目なら謝る。 そういう風潮になってきているんで、これからの子供たちに顔向け出来ないなぁって。 学力低下を懸念されているが、それ以上に懸念すべき事が今の日本にはある、そう思いますね。 カテゴリ [なし] - trackback- 2008年09月09日 08 00 50 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/103.html
総括所見:モンゴル(OPSC・2010年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/MNG/CO/1(2010年3月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月12日および13日に開かれた第1458回および第1460回会合(CRC/C/SR.1458およびCRC/C/SR.1460参照)においてモンゴルの第1回報告書(CRC/C/OPSC/MNG/1)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/OPSC/MNG/Q/1 and Add.1)に応じて提供された回答の提出を歓迎する。委員会はまた、代表団との間に持たれた率直かつ建設的な対話についても評価の意を表明するものである。しかしながら委員会は、締約国の報告書が、選択議定書に基づく報告に関する改訂ガイドラインにしたがっていなかったこと、および、代表団に司法省の職員が含まれていなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回・第4回統合定期報告書の検討後、2010年1月29日に採択された総括所見(CRC/C/MNG/CO/3-4)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、報告書の作成に際し、市民社会組織および子どもたちを含む関係者が協議の対象とされたことに、評価の意とともに留意する。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書に加入しまたはこれを批准したことも称賛する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2006年)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2001年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2008年)。 II.データ データ収集 6.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する統計データおよび調査研究が限られていることに、懸念とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、議定書が対象とする問題に関して調査研究が実施されること、ならびに、データがとくに年齢、性別、社会経済的背景および地理的集団およびマイノリティ集団ごとに細分化されること、および、データが体系的に収集されかつ分析されることを確保するよう、勧告する。このようなデータは政策の実施状況を測定するために必要不可欠な手段だからである。締約国は、この点に関して、国連児童基金(ユニセフ)を含む国連の機関および計画の援助を求めるべきである。 III.実施に関する一般的措置 立法 8.委員会は、選択議定書に掲げられた規定の一部がすでにモンゴル法に編入されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、精確な定義が定められていないこと、および、選択議定書上のすべての犯罪が編入されているわけではないことに、懸念を表明するものである。 9.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定に国内法を調和させるプロセスを継続しかつ完了させるよう勧告する。 国家的行動計画 10.性的搾取を目的とする子どもおよび女性の人身売買からの保護に関する国家計画(2005年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、同計画において選択議定書のすべての規定の違反が網羅されているわけではないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、性的搾取を目的とする子どもおよび女性の人身売買からの保護に関する国家計画を効果的に実施するとともに、十分な人的資源および財源の裏づけを得ながら選択議定書の規定のあらゆる違反に対処する目的で、同計画の拡大を検討するよう勧告する。 調整および評価 12.委員会は、性的搾取を目的とする子どもおよび女性の人身売買からの保護に関する国家計画の実施を国家評議会が担当していることに留意する。しかしながら委員会は、同評議会の実績について体系的評価が行なわれていないことを懸念するものである。 13.委員会は、国家評議会がその任務を効果的に遂行し、かつ同評議会に十分な人的資源および財源が提供されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 普及および研修 14.委員会は、研修プログラム、人身取引に関するおよび性的搾取からの子どもの保護に関する本および広報資料の刊行等を通じ、選択議定書の促進に関して締約国が非政府組織(NGO)と連携しながら行なっている努力を評価する。しかしながら委員会は、そのような努力を締約国全域で強化しかつ体系化する必要があることに留意するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる関連の専門家集団を対象として、選択議定書の規定に関する体系的な教育および訓練を継続しかつ強化すること。 (b) とりわけ学校カリキュラムおよび子ども向けにとくに立案された適切な資料を活用することにより、住民、とくに子どもおよび親の間で選択議定書の規定を普及するための措置を強化すること。 (c) 選択議定書第9条2項に照らし、かつ市民社会と協力しながら、あらゆる適当な手段による情報伝達、教育および研修を通じ、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の防止措置および有害な影響に関する意識を公衆一般、とくに子どもたちの間で促進すること。そのための手段として、とりわけ、そのような情報伝達、教育および研修のためのプログラムへの、コミュニティならびにとくに両性の子どもおよび被害を受けた子どもの参加を奨励すること。 資源配分 16.委員会は、選択議定書の実施のための予算配分額に関して提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、配分された予算が十分ではなく、かつ選択議定書のすべての分野が網羅されていないことを、依然として懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、条約第4条に関する2007年の一般的討議を受けた委員会の勧告を正当に考慮しながら、選択議定書のすべての分野を網羅する目的で国および地方のレベルにおける予算配分額を増加させるよう勧告する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 防止、被害者の保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合ならびに選択議定書が対象とする犯罪の訴追を目的とする、とくに地方レベルにおける計画およびプロジェクトの策定および実施のため、必要な人的資源および財源を提供すること。 (b) 人権アプローチを採用するとともに、委員会の総括所見(CRC/C/MNG/CO/3-4、パラ18)に示された予算策定手法を導入すること。 独立機関 18.委員会は、国家人権委員会が国内のすべての子どもにとってアクセス可能または利用可能となっていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもが自ら苦情を申し立てられないことを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、すべての子どもが自己の権利(選択議定書で対象とされているものを含む)のいずれかの侵害について主張を行なう目的で国家人権委員会に容易にアクセスできることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国家人権委員会が子ども自身による苦情を受理する権限および能力を有することを確保するよう、勧告するものである。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止 20.委員会は、貧困および子どもの性的虐待の増加が締約国における商業的性的搾取の増加に関して重要な役割を果たしている旨の情報について、深い懸念を覚える。 21.委員会は、売買、買春、ポルノグラフィーおよびセックス・ツーリズムに対する子どもの脆弱性を助長する根本的原因(貧困、低開発および文化的態度など)に対処することを目的としたプロジェクトに対し、締約国が引き続き十分な注意(人的資源および財源の配分を含む)を払うよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この分野における、とくに近隣諸国との国際協力を強化する努力を増強させることも勧告するものである。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項 現行刑事法令 22.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの禁止が、選択議定書第2条および第3条にしたがって締約国の国内法に明示的に掲げられていないことを懸念する。とくに委員会は、選択議定書にしたがった児童買春の明確な定義が存在しないことにより、多くの事案について十分な対応が妨げられていることを懸念するものである。 23.委員会は、国内法体系と選択議定書との間の不一致および乖離を明らかにするため法的研究を行なうとともに、ユニセフその他の関連の国際機関の援助を求めるよう、勧告する。委員会はさらに、選択議定書第2条および第3条にしたがってあらゆる目的および形態の子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春を全面的に対象とする目的で国内法の規定を改正するため、締約国があらゆる措置をとるよう勧告するものである。 裁判権 24.委員会は、選択議定書第4条にしたがって締約国が裁判権を行使できることは歓迎しながらも、選択議定書が対象とするすべての犯罪に対処するために用いられている手続についての詳細な情報がないことを、依然として懸念する。 25.委員会は、締約国が、国内法において選択議定書第4条に全面的に一致する形で域外裁判権が定められることを確保するため、必要な立法上の措置をとるよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 26.委員会は、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが、選択議定書第8条で定められているとおり常に被害者と見なされかつそのように扱われているわけではない可能性があることを、懸念する。委員会はまた、女性および女子の人身取引および搾取の発生件数が増加していることならびに訴追率が低いことについて2008年11月に女性差別撤廃委員会が提起した懸念(CEDAW/C/MNG/CO/7、パラ27および28)と見解を一にするものである。委員会はさらに、被害を受けた子どもが社会的再統合ならびに身体的および心理社会的回復のための措置をほとんど利用できないことに、懸念とともに留意する。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書第8条にしたがい、被害を受けた子どもが刑事司法手続のすべての段階で現行法による保護の対象とされること、および、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。これとの関連で、締約国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(国連経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである。 (b) 被害を受けた子どもの法的代理を向上させる目的で十分な人的資源および財源が配分されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者である子どもがそのこと自体を理由として犯罪者にも処罰の対象にもされないこと、および、このような子どもがスティグマを付与されかつ社会的に周縁化されることのないようあらゆる可能な措置がとられることを確保すること。 (d) 選択議定書第9条3項にしたがい、被害を受けた男女双方の子どもが十分なサービス(全面的な社会的再統合ならびに全面的な身体的および心理的回復のためのサービスを含む)を利用できることを確保すること。 28.委員会はさらに、法制度および社会制度の障壁を特定し、かつ研究の成果を効果的かつ包括的な政策の策定および実施のために活用する目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもが通過するプロセス(被害者が司法制度の対象となった時点から警察段階を経てリハビリテーションの段階に至るまで)についての研究を実施するよう、勧告する。 29.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもを援助するためのさまざまなチャイルドラインへのアクセスを引き続き確保するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、子どもがヘルプラインについて知り、かつこれにアクセスできること確保するとともに、ヘルプラインと、子どもに焦点を当てて活動しているNGOおよび警察ならびにヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を促進するよう、勧告するものである。 被害者の回復および再統合 30.委員会は、もっとも脆弱な立場に置かれた子ども(選択議定書上の犯罪の被害者も含む)に対してケア、支援および保護を提供するうえで市民社会組織が行なっている称賛すべき活動についての情報を歓迎する。しかしながら委員会は、被害を受けた子どもの権利およびニーズにいっそう包括的なかつ調整のとれたやり方で対応できる、体系的なかつ調整のとれた機構が州およびコミュニティのレベルに存在しないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書第8条4項にしたがい、選択議定書で禁じられた犯罪の被害者とともに働く者を対象とした適切な研修、とくに法律面および心理面の研修を確保するための措置をとること。 (b) 選択議定書第9条4項にしたがい、選択議定書に掲げられた犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的責任を有する者に対する損害賠償を差別なく求めるための十分な法的手続にアクセスできることを確保すること。 VII.国際的な援助および協力 多国間、地域的および二国間協定 32.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムに対する子どもの脆弱性を助長する根本的原因(貧困および低開発など)に対処する目的で、国連の専門機関および計画ならびに市民社会組織との協力を継続し、かつ二国間協定を通じての協力も引き続き行なうよう、奨励する。 法執行 33.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止しかつこれと闘う目的で、他の国々との地域的および国際的な司法共助、捜査共助および被害者中心の協力の活動を行なうとともに、条約に基づく次回の定期報告書でより詳細な情報を提供するよう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 34.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、最高人民会議および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 35.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、メディアおよび専門家グループならびに子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 36、第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/185.html
総括所見:タイ(第3~4回・2012年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/THA/CO/3-4 and CRC/C/THA/CO/3-4/Corr.1(2012年2月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年1月24日および25日に開かれた第1682回および第1683回会合(CRC/C/SR.1682 and 1683)においてタイの第3回・第4回定期報告書(CRC/C/KOR/3-4)を検討し、2012年2月3日に開かれた第1697回会合(CRC/C/SR.1697参照)において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、これらの文書が率直なものであったことにより、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを称賛する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、開かれた、率直な、かつ実りのある対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、報告対象期間中に見られた多くの積極的進展を歓迎する。これには、以下のもののような、条約を実施するためにとられた立法上の措置の採択も含まれる。 (a) 子どもの養子縁組法(第3号((2010年)。 (b) 少年家庭裁判所およびその手続法(2010年)。 (c) 人身取引禁止法(2008年)。 (d) 住民登録法(2008年)。 (e) ドメスティックバイオレンス被害者保護法(2007年)。 (f) 障害者の生活の質促進法(2007年)。 (g) 国家的な子どもおよび若者の発達促進法(2007年)。 5.委員会は、以下の人権文書について批准または加入が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年2月27日)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年1月11日)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2008年7月29日)。 (d) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2007年10月2日)。 6.委員会はまた、以下のものを含む、子どもの権利およびウェルビーイングを促進する政策およびプログラムの採択も歓迎しかつ称賛する。 (a) 「子どもおよび女性の国内的・国際的人身取引の防止、抑止およびこれとの闘いに関する国家的計画および政策(2012~2016年)」。 (b) 「子どもおよび青少年のための国家的課題」(2008年)。 (c) 「国家子ども・若者育成計画(2007~2016年)」。 II.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/THA/CO/2)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた多くの勧告について十分なフォローアップが行なわれていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(データ収集、差別の禁止、国籍、プライバシーの保護、家庭における体罰、代替的養護、母親とともに刑務所にいる子ども、思春期の健康、子どもの難民および庇護希望者、移住労働者の子ども、児童労働ならびに少年司法のような問題に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップすることも促すものである。 留保 9.委員会は、締約国が、条約第7条に関する留保を2010年12月に撤回したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が第22条に関する留保を撤回していないことを遺憾に思うものである。 10.委員会は、締約国が、条約第22条に関する留保を撤回するとともに、国内のすべての子どもの庇護希望者および難民の権利を保護し、かつこれらの子どもを援助するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 立法 11.委員会は、条約の原則および規定との国内法の調和化に貢献する、子どもの権利の分野におけるいくつかの法律(この文書のパラ4で挙げたもの)が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、現行法が憲法および条約と一致するようにさらにその改正を図る目的で、国家子ども・若者委員会のもとに小委員会が設置されたことも歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、実際の執行および実施が弱くかつ不十分であることを深く懸念する。委員会はとくに、2003年の子ども保護法がそれ以降見直されておらず、かつ、実施も、中央から地方のレベルに至るさまざまな機関の役割および責任についての指針も欠いていることを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、現行法が条約の原則および規定と一致するようにその見直しを継続するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、あらゆるレベルで国内法が全面的かつ効果的に実施されることを確保するための適切な措置をとるとともに、子どもの権利の保護を向上させる目的で2003年の子ども保護法を見直し、かつその実施に関する明確な指針を定めるよう、促すものである。 調整 13.委員会は、社会開発・人間安全保障省(MSDHS)が条約の実施の調整およびフォローアップを担当する主務機関であることに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利に関する政策およびその実際の実施が、MSDHS内の諸機関および種々の法律に基づいて設置された多数の委員会に割り当てられていることから、政策レベルにおける断片化、および、中央から地方のレベルに至る過程における実施上の障害が生じていることを、遺憾に思うものである。委員会はさらに、プログラムおよびプロジェクトの策定ならびにその監視および評価のための制度の指針となる、子どもの権利に関する包括的政策が定められていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会(社会開発・人間安全保障省内のものを含む)の間でよりよい調整が行なわれることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの権利に関する活動の実施の監視および評価について、部門別省庁を横断し、かつ中央政府から地方政府のレベルに至るまで指導力を発揮しかつ有効な一般的監督を行なうことのできる単一の部局を指定するよう、勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、プログラムおよびプロジェクトの策定の指針を提供し、かつそれらの監視および評価のための制度を確立する目的で、子どもの権利に関する包括的政策を策定するよう、勧告する。 国家的行動計画 15.「国家子ども・若者育成計画(2012~2016年)」および「子どもおよび青少年のための国家的課題」(2008年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、これまでの「子どもの発達のための国家政策および戦略計画(2007~2016年)」の中間評価に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、新規計画が子どもおよび25歳までの若者の両方を対象としており、条約に掲げられた子どもの権利を実現するための十分なかつ焦点の明確な枠組みを提供していないことも、懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、「子どもの発達のための国家政策および戦略計画(2007~2016年)」のレビューおよび評価の結果を提供するとともに、新規計画に、条約に掲げられた子どものすべての権利の実現について十分な内容が盛りこまれることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、この行動計画において、18歳未満の子どもに具体的に焦点が当てられ、かつ部門別の諸行動計画および第11次経済社会開発計画との調整が図られるべきことも勧告するものである。 独立の監視 17.国家人権委員会が活動しており、かつ子どもおよび一般公衆によるアクセスが可能である旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、子どものためのアクセス方法および子どもが苦情申立てを行なう機会が限られていること、ならびに、十分な人数の専門家および訓練を受けた職員を擁する子どものための特別部局が存在しないことを、懸念する。委員会はまた、同委員会に地域事務所がないことも懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、同委員会に関する公衆(とくに子ども)の意識啓発を向上させ、かつ同委員会の活動に関する知識を高めるための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、アクセスしやすい子どものための特別部局を設置するとともに、秘密を適切に保持しながら苦情を受理し、かつ子どもの権利の侵害によりよい形で対応できるようにするために必要な人的資源、技術的資源および財源を当該部局に提供するよう、促すものである。委員会は、同委員会の活動を領域全体で強化するため、締約国が地域事務所を設置するよう勧告する。 資源配分 19.委員会は、さまざまな費目によるMSDHSへの予算配分額および基礎教育への予算配分額(2010/2011年度)に関する締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、あらゆる範囲の子どもの権利を実施するために他の部門および分野に配分されている予算額についてのさらなる詳細が欠けていることを、遺憾に思うものである。委員会は、MSDHSに配分される国家予算の割合が低い(0.5%)状態が数年間変わっておらず、子どもの権利に関する調整機関がその職務を効果的に遂行できるようにするための対応がとられていないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、今後の予算策定において、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議に基づく委員会の勧告を考慮するとともに、具体的に以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第4条にしたがい、利用可能な資源を可能なかぎり最大限に用いながら、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに社会部門に配分される予算を増額すること。 (b) 国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用する能力、および、あらゆる関連の部門および地方レベルのあらゆる機関が予算全体を通じて子どものための資源をどのように配分しかつ使用しているかを追跡し、監視しかつ評価するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとするための能力の構築を図ること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門または地方レベルにおける投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (c) 予算上のニーズに関する包括的アセスメントを実施し、かつ、諸指標(ジェンダー、障害、保健、教育、生活水準および子どもの権利に関わる地理的所在など)における不平等および格差に漸進的に対応する分野への明確な配分額を確立すること。 (d) 一般的な戦略的予算科目、ならびに、一時的な社会的措置(積極的差別是正措置を含む)を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子どもを対象とした部門別および地方政府別の配分額を定めるとともに、これらの予算科目および配分額が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 汚職 21.汚職と闘うために締約国が行なっている努力には積極的対応として留意しながらも、委員会は、とくに自治体および地方政府の職員ならびに法執行官の間で汚職が依然として蔓延しており、そのため子どもの権利を実施するための政府の政策およびプログラムの有効性を増進させうる資源が流用されていることを示す報告について懸念を覚える。 22.委員会は、締約国に対し、強力な反汚職政策を策定しかつ実施すること、反汚職キャンペーンを行なうこと、ならびに、汚職事件を効果的に摘発し、捜査しかつ訴追する制度的能力を強化すること等の手段により、あらゆるレベルおよび部門において汚職と闘うための努力を強化するよう、促す。 データ収集 23.委員会は、国家情報センターおよび国家統計局が設置され、子どもの権利の一部分野におけるデータおよび障害のある子どもに関するデータベースが維持されていることに留意する。しかしながら委員会は、条約に基づいた子どものための法律、政策、計画およびプログラムの事前評価、分析および事後評価を可能とする、条約のすべての分野を網羅した効果的なデータ収集システムが存在しないことを懸念するものである。 24.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展に関するデータの分析および評価、ならびに、条約を実施するための政策およびプログラムを立案するための基盤の提供に関する能力構築を図り、かつそのような能力を備えた包括的なデータ収集システムを設置するよう、促す。データは、すべての子どもの年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 普及および意識啓発 25.委員会は、子どもおよびその家族を含む公衆一般の意識啓発を継続的に図るための、子どもの権利に関するキャンペーンを含む体系的かつ持続的な公衆教育プログラムが存在しないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に関する公衆(子どもを含む)の意識を強化する目的で、キャンペーンを含む適切な広報プログラムおよび伝達プログラムを実施するために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、さまざまな社会経済的および社会文化的コミュニティの子ども向けにとくに適合された適当な資料等も通じて親、より広範な公衆および子どもに対して、かつ、条約の原則および規定が立法上および司法上の手続において適用されることを確保する目的で立法者および裁判官に対して、条約を普及するための努力を強化するよう奨励するものである。これとの関連で、委員会はさらに、締約国に対し、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(UNHCR)および国際議員連盟の技術的援助を求めるよう、奨励する。 研修 27.締約国が、法執行官、地方政府および司法機関を対象とした、人権およびとくに子どもの権利に関する数度の研修を組織していることには留意しながらも、委員会は、このような研修が体系的なものではなく、かつ正規の専門家養成プログラムの中核カリキュラムに含まれていないことを、依然として懸念する。 28.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団(とくに裁判官、弁護士、警察および軍隊の要員、国、県および地方のレベルにおける保健、教育および福祉ならびにあらゆる形態の代替的養護の関係者)が、子どもの権利に関して十分かつ体系的な研修を受けるよう勧告する。 子どもの権利と企業セクター 29.委員会は、経済界および産業界が社会福祉(子どもの保健ケアおよび教育を含む)に対して資源面および便益面で貢献している旨の締約国の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、経済界ならびに急成長している重工業、製造業、繊維業および輸出農業が子どもに与えている影響について十全な評価が行なわれていないことを懸念するものである。委員会はとくに、観光業が同国の経済で大きな位置を占めている一方で、観光客の活動および観光客向けの便益から生ずる児童セックスツーリズム、児童買春、児童ポルノおよび児童ポルノで生じているもののような権利侵害から子どもを保護するための包括的措置がまだとられていないことを、懸念する。委員会はまた、子どものウェルビーイングを阻害する可能性がある、健康および栄養、経済的および性的搾取、汚染ならびに環境悪化の問題に対して効果的対応が行なわれることを確保する目的で、タイで事業を展開する企業および国外で活動するタイの企業の活動を規制するための、法的な制度的枠組みが設けられていないことも遺憾に思うものである。 30.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年の人権理事会決議8/7および新たな作業部会に対してこの問題のフォローアップを要請した2011年6月11日の同決議14/7(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) タイに本社を置く企業に対して、国内外におけるその活動から生じる人権への悪影響を防止しかつ緩和するための措置をとるよう、とくに観光業界に注意を払いながら求める立法上の枠組み(行動規範を含む)を定めること。 (b) 子どもの権利に関わる指標および変数を報告に含めることを促進し、かつ事業および産業が子どもの権利に及ぼす影響についての具体的アセスメントを提供すること。 (c) 自国の企業が領域内においても国外で事業を行なう際にも子どもの権利を尊重し、かつ、権利侵害の際に賠償を含む適切な救済措置が追求されることを確保するための措置をとること。 (d) 自由貿易協定の交渉および締結に先立ち、子どもの権利を含む人権についての評価が実施され、かつ人権侵害を防止するための措置がとられることを確保すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 31.婚姻に関する法定最低年齢が男女とも17歳であることは歓迎しながらも、委員会は、子どもが性的に虐待され、かつその後に加害者と婚姻する可能性がある場合にはこの年齢制限を13歳まで引き下げることができ、そのため加害者は当該犯罪に関するいかなる刑事訴追も回避する結果になることに、懸念を表明する。 32.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を18歳に引き上げることを検討するとともに、あらゆる状況下で、とくに子どもが性的に虐待された事案において当該年齢を維持するよう、勧告する。委員会は、締約国が、子どもに対する性的虐待の加害者をいかなる例外もなく訴追しかつ処罰するよう、勧告するものである。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、教育および保健へのアクセスに関する格差を一定程度解消するためにとられた措置、および、不利な立場に置かれた東北部および南部の子どもに関してとられた特別措置に留意する。にもかかわらず、委員会は、とくに女子、障害のある子ども、先住民族コミュニティ、宗教的または民族的マイノリティのコミュニティの子ども、難民および庇護希望者の子ども、移住労働者の子ども、路上の状況にある子ども、農村部に住んでいる子どもならびに貧困下で暮らしている子どもとの関連で、子どもに対する直接間接の差別を根絶するための努力が不十分であることに懸念を表明するものである。委員会は、とくに東北部および南部における、子どものための社会サービス、保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関わる地域格差について、依然として深い懸念を覚える。 34.委員会は、前回の勧告(CRC/C/THA/CO/2、パラ25-26)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の目的のためにいっそう効果的な措置をとるよう促す。 (a) 差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、自国の管轄内にあるすべての子どもが、差別の禁止を基礎として、条約に掲げられたすべての権利を享受することを確保すること。 (b) 社会サービスを優先させ、かつこれに対して十分な資源を配分するとともに、パラ33に挙げたもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもたちを対象とした、保健および教育その他のサービスに対する平等な機会の提供をいっそう迅速に進めること。 (c) あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) 事実上の差別の効果的監視を可能とし、かつ是正措置のための基礎とすることを目的として、適切な形で細分化されたデータを収集すること。 子どもの最善の利益 35.子どもに影響を与えるさまざまな法律に子どもの最善の利益の原則が編入されている旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、司法上および行政上の手続および決定ならびに代替的養護の措置および管理に関わる決定においてこの原則が全面的には適用されていないことを、懸念する。 36.委員会は、条約第3条1項にしたがい、すべての法規定、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定、政策ならびにプログラム、プロジェクトおよびサービスにおいて子どもの最善の利益の原則が全面的に適用されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 37.委員会は、子どもおよび乳児の死亡率を出生1000件あたり34(1990年)から14(2010年)に削減するうえで締約国が達成した相当の成果を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの主要な死因として報告されている事故およびケガ(溺死および交通事故を含む)について懸念を覚えるものである。 38.委員会は、締約国が、とくに子どものケアに関する政策を強化し、かつ家庭、養育者間、学校および一般公衆の間で子どもの安全確保措置に関する意識啓発を図ることにより、ケガおよび事故を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 39.国、地方および地区のレベルで子ども・若者評議会が設けられている旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、伝統的な態度があることも理由として、すべての子どもが、家庭、コミュニティならびに行政上および司法上の手続で行なわれる自己に影響を与える決定に関して自由に自己の意見を表明しかつ参加する機会を得ているわけではないことを、懸念する。委員会はまた、子ども・若者評議会が、活動を組織するための資源および人員に関する支援を得ていないことも懸念するものである。 40.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校およびコミュニティで行なわれる自己に影響を与える決定に、18歳に至るまでのすべての子どもが積極的に参加しかつ関与することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどの程度考慮されており、かつそれが政策立案、裁判所の決定およびプログラム実施にどの程度提供を与えているかについて定期的検討を行なうことも、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、子ども・若者評議会に対する支援を総経するための措置をとるよう勧告する。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 名前および国籍/アイデンティティの保全 41.委員会は、1972年に国籍を無効にされた者(その子どもも含む)のための救済措置および特定のカテゴリーに属する者(里親養護を受けている子どもおよび養子となった子どもならびに1992年以前にタイで出生した不法移民の子どもを含む)の帰化について定めた2008年国籍法を歓迎する。近隣諸国と二国間協定を締結するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、子ども(とくに先住民族集団およびマイノリティ集団の子どもならびに移住労働者、難民および保護希望者)を含む相当数の者が現にまたは潜在的に無国籍のままであることを、依然として懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、無国籍となるおそれがあるすべての子ども(パラ41で挙げた、不利な立場に置かれた集団に属する子どもを含む)がタイ国籍へのアクセスを提供されることを確保するため、法律をさらに見直しかつ制定するよう促す。委員会は、締約国が、無国籍者の地位に関する1954年の条約および1967年の同議定書〔ママ〕ならびに無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討するよう、勧告するものである。 出生登録 43.委員会は、期限後の登録および多数の規則(高地民族集団および遺棄された乳児への登録証の発行に関するものを含む)について定めた2008年住民登録法を歓迎する。しかしながら委員会は、相当数の子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、先住民族集団および移民の子どもが未登録のままであることを懸念するものである。委員会はまた、締約国が期限後の子どもの登録に対する罰金を維持していることも、たとえ低額とはいえ、依然として懸念する。 44.委員会は、締約国が、自国の領域で生まれたすべての子ども、とくに親の経済的地位、民族および出入国管理上の地位を理由として登録されていない子どもの出生登録を確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、公衆教育プログラム(締約国の領域ですでに生まれたものの未登録のままである子どもについて出生登録を行なうためのキャンペーンを含む)を実施するとともに、期限後の登録に対するいかなる金銭的処罰も廃止し、かつ時宜を得た新生児の登録を確保するための代替的措置をとることも、勧告するものである。 プライバシーの保護 45.メディアにおける子どもの権利についての意識を高めるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、メディアが報道において子どものプライバシー権を全面的に尊重しているわけではないこと、および、とくに子どもの虐待および搾取ならびに少年司法制度に関わる配慮の必要な事案において、メディアが提供する関連情報(姓、住所および写真など)を通じて子どもの素性がしばしば確認可能とされることを、懸念する。 46.委員会は、締約国が、子どものプライバシー権がとくにマスメディアにおいて常に尊重されることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる形態のメディアにおける報道から子どもの素性を保護するための法律を制定し、かつ、遵守を確保するための効果的な監視機構を設置するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、マスメディアに従事する専門家の子どもの権利に関する感受性を引き続き強化するとともに、子ども向け番組に関する決定およびその制作への子どもの関与を促進することも、勧告する。 子どもに対する暴力(体罰を含む) 47.委員会は、家庭における体罰が依然として合法であることを懸念する。さらに、民商法第1567条では、子どもに対して親としての権威を有する者はしつけのために「合理的な」処罰を行なう権利を有すると述べられている。 48.委員会は、前回の懸念および総括所見(CRC/C/THA/CO/2、パラ40および41)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力と闘うための措置を採択するに際し、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)および体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する一般的意見8号(2006年)を考慮するよう、奨励する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 家庭および代替的養護の現場における子どもの体罰(しつけのためのものを含む)を法律で明示的に禁止すること。 (b) 態度を変革し、かつ体罰に代わる積極的かつ非暴力的な形態の子育ておよびしつけを促進する目的で、体罰の有害な影響に関する公衆教育および意識啓発ならびに社会的動員のための持続的プログラムを、子ども、家族およびコミュニティの関与を得ながら導入すること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むとともに、子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)の勧告の効果的実施を確保すること。 (d) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いを防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を、ジェンダーにとくに注意を払いながら、各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 49.委員会は、国内移住の増加にともなって家族の結びつきが弱まり、かつ多くの子どもが祖父母とともに農村部に残されていて、祖父母が十分な支援またはサービスを受けることもなくこのような子どもの主たる養育者となっていることに、懸念とともに留意する。 50.委員会は、締約国に対し、親の責任に関する法改正のための努力を引き続き行なうとともに、家族の解体の防止および家族の強化のための措置を発展させるよう、促す。委員会は、締約国が、親および養育者の支援のために設けられている便益を再検討するとともに、条約第18条および第27条にしたがい、そのような便益を強化するために適当な措置をとるよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、関連のハーグ条約、とくに親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する第34号条約の批准を検討するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 51.委員会は、締約国が年間3000世帯の里親家庭を支援するための予算を配分しており、かつ「家庭を基盤とする一時的養護に関する国家戦略」を起草中である旨の締約国の情報に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭環境を奪われた子どもについて施設養護への過剰な依存(29施設に7000名の子どもが在籍)が報告されており、かつこのような施設の監視および監督が行なわれていないことを、懸念するものである。委員会はさらに、施設および里親養護制度(親族養護を含む)を規律する規則が定められていないこと、および、代替的養護の環境に置かれた子どものためのパーマネンシー・プランニングが行なわれていないことを、懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活条件、養護計画および提供されているサービスも含む)を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 既存の施設および里親養護制度についての明確な基準(条約第9条にしたがって意思決定プロセスに子どもおよびその親の関与を得るための規則を含む)を定めるとともに、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、「家庭を基盤とする一時的養護に関する国家戦略」を、子どもの最善の利益を確保しながら完成させかつその運用を開始するよう、奨励する。 (c) 子どもの権利の保護を確保する目的で、すべての代替的養護施設およびプログラムが十分に監視されること(独立した苦情申立て機構および非政府組織による監視を含む)を確保するとともに、子どもがこれらの苦情申立て機構に容易にアクセスできるようにすること。 (d) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族に復帰できるようにし、かつ施設への子どもの措置を最後の手段として用いるようにするため、あらゆる必要な措置を追求すること。 (e) 子どもの広範な施設措置を防止する目的で家族を強化しかつ維持するための積極的措置をとること。 委員会は、締約国が子どもの代替的養護に関する指針(2009年11月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮するよう、勧告するものである。 養子縁組 53.委員会は、2010年子どもの養子縁組法を歓迎するとともに、締約国が国際養子縁組よりも国内養子縁組を優先させ、かつ国際養子縁組に関する規則を定めたことに、積極的対応として留意する。脆弱な状況に置かれた子ども(とくに障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、路上の状況にある子どもおよび無国籍の子ども)が締約国に多数存在し、かつ人身取引の発生件数も多いことに鑑み、委員会は、締約国が養子縁組手続の効果的監視システムを確保するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 54.委員会は、締約国が2011年に開始した、子どもに対する暴力の状況に関する大規模な研究を歓迎する。しかしながら委員会は、都市部への親の移住またはAIDS関連の死亡を理由として相当数の子どもがネグレクトの状態にあることを、依然として懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、移住のために別離した家族が再統合するための条件づくりを目的とした必要な措置(親が子どもを都市部に同伴できるようにすることも含む)をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、両親を失った子どもに対して特段の注意を払うとともに、このような子どもが時宜を得た形で里親家庭を得られることを確保することも、勧告するものである。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 56.委員会は、「障害者の生活の質の発展に関する国家計画(2007~2011年)」および障害者教育法(2008年)の採択によって障害のある人の生活の質を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。委員会はまた、障害のある子どもを対象としたインクルーシブ教育を行なう学校の数が増えていることも歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、就学していない障害児が多数存在すること、および、青少年政策において障害児が特別な対象集団として位置づけられていないことを、深刻に懸念する。委員会はまた、就学前段階以上の教育を受ける障害児の割合が限られていることも懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、教育へのアクセスの観点から障害児の状況を再検討するとともに、特別施設への子どもの措置よりもインクルーシブ教育の発展を実効的に優先させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮しながら、青少年政策において障害のある子どもを適切な形で対象とすることも勧告するものである。 保健ケアおよび保健サービス 58.委員会は、子どもを含むタイ国民全員に対してほとんどの疾病についての無償の治療を確保する「保健ケア完全保障計画」の実施および全般的な子どもの栄養状態の向上に関して締約国が達成した成果を歓迎する。しかしながら委員会は、家族の経済的状態、母親の教育歴、言語的背景および地理的所在によって子どもの栄養状態に重大な格差があることを、依然として深刻に懸念するものである。委員会はまた、若干の改善にも関わらず、ヨウ素欠乏症が依然として広く存在することも懸念する。 59.委員会は、締約国に対し、家族の経済的状態、母親の教育歴、言語的背景(タイ語またはそれ以外)および地理的所在(都市部、農村部または遠隔地)に関わらず、すべての子どもの栄養状態を向上させるための措置をいっそう速やかに進めるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、不利な立場に置かれた社会的集団の子どもの低栄養の原因および規模についての分析を行なうよう、奨励するものである。加えて委員会は、締約国が、とくにヨウ素欠乏症を統制すること(そのための手段として、とくにヨウ素添加塩の完全普及(USI)を達成するための法律および政策を導入することが求められる)を通じて子どもの栄養状態を向上させ、かつ、法律の遵守およびヨウ素添加塩の普遍的消費を確保するよう、勧告する。 母乳育児 60.委員会は、生後6か月の時点における母乳育児率が著しく低い(5%)一方で、早期の母乳育児開始率も50%と低いことを懸念する。委員会はさらに、自主的措置がとられているとはいえ、母乳代替品の攻撃的な販売促進および宣伝が法的に規制されていないことを懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、母乳育児の重要性および人工栄養のリスクについて公衆(とくに母親)の意識啓発および教育を図ることにより、早期の母乳育児開始および生後6か月間の継続的完全母乳育児を促進するための努力を強化しかつ拡大するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」にしたがって母乳代替品の販売促進活動に関する法的規制を採択し、かつ実効的な遵守および効果的な監視を確保するよう、促すものである。加えて委員会は、締約国に対し、すべての妊産婦施設を、母乳育児を支援する赤ちゃんにやさしい病院に転換し、かつ、妊産婦のための活動に従事する保健ケア専門家が母乳育児に関する研修を受けることを確保するための措置をとるよう、促す。 思春期の健康 62.委員会は、抗レトロウィルス薬の使用により、HIV/AIDSで死亡する人の数が減少していることを歓迎する。ただし、とくに脆弱な状況にある移民、難民および庇護希望者のようなタイ国民以外の住民には、抗レトロウィルス薬の使用が十分に広がっていない。委員会はとくに、HIV/AIDSの感染を予防する主要な方法のすべてを知らない女性が多く、かつ、HIV/AIDSとともに生きているまたはその影響を受けている人々(両親を失った子どもを含む)に対するスティグマおよび差別が継続していることを、とくに懸念する。さらに委員会は、10代の妊娠の問題が増加しており、それが違法な妊娠中絶件数の増加にもつながっていることを、深刻に懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSその他の性感染症についてさまざまなコミュニティの子ども、青少年およびその家族を教育するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 必要不可欠な保健サービスおよび社会サービスをもっとも周縁化された子どもおよび家族に対して拡大するとともに、いかなる形態のスティグマおよび差別とも精力的に闘うこと。 (c) 早期の妊娠および妊娠中絶の悪影響に関する意識啓発の努力を強化すること。 (d) ライフスキル教育を含む青少年向けリプロダクティブヘルス・プログラムを強化すること。 (e) 妊娠した女子を対象とする包括的な保健サービス、秘密が守られるカウンセリングおよび支援を確保するとともに、リプロダクティブヘルス法案の採択を迅速に進めること。 薬物および有害物質の濫用 64.委員会は、20歳未満の者に対するアルコール飲料の販売を禁じた2008年アルコール飲料統制法を歓迎する。しかしながら委員会は、とられた措置にも関わらず、アルコールおよび薬物を濫用する子どもが依然として相当数にのぼることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 65.委員会は、締約国に対し、とくに青少年を対象としたタバコ、アルコールおよび薬物の悪影響に関する意識啓発キャンペーンを含む、あらゆる適当な措置をとるよう促す。これには、予防介入に関するピア・エデュケーションおよびライフスキル訓練が含まれるべきである。委員会はまた、締約国が、薬物およびアルコールに依存している子どもおよび青少年に対し、治療およびリハビリテーションのためのプログラムを引き続き提供することも勧告する。 生活水準 66.委員会は、報告されているところでは都市部の家族の10%がスラムに住んでいること、および、所得の不平等が増大しており、かつ、栄養、衣服、住居、水および衛生のような基礎的サービスへのアクセスに関して問題を有する家族の割合が高いことを、懸念する。委員会はまた、地域ごとの所得水準、とくに北部および東北部ならびに南部における所得水準の格差の大きさが依然として問題になっていることについての前回の懸念も、あらためて表明するものである。 67.委員会は、締約国が、とくに北部、東北部および南部における効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分するべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに、十分な栄養、衣服、住居、水および衛生ならびに社会サービス、保健サービスおよび教育への公平なアクセスを確保しながら、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を策定しかつ監視するための能力増進の努力を強化すること。 (b) 不利な立場に置かれた住民の生活水準を向上させるための、暫定的な特別措置および積極的差別是正措置(貧困の影響を不相応に受けている子どもおよび家族を支援するための、使途をとくに指定した資金および具体的援助の提供を含む)をとること。 (c) 格差を是正し、かつ人生において良好なスタートを切る平等な機会を一人ひとりの子どもに与えるために、普遍的な子ども手当制度の導入の実現可能性を研究しかつ検討すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 68.委員会は、すでに教育に関するMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成したこと、万人のための無償義務教育(15年間)プログラムを採択したこと、および、乳幼児期の発達を増進させるための政策および措置を開始したことについて、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを遺憾に思うものである。 (a) 就学前教育を受けている3~5歳の子ども(とくにタイ語以外の言語を用いる世帯または貧困世帯の子ども)の人数が少なく、かつ重大な地域格差が根強く残っている(たとえば、北部では乳幼児の78%が就学前教育施設に通っているのに対し、南部では58%となっている)こと。 (b) 初等学校相当年齢(6~11歳)の子ども60万人以上が学校に通っていないこと(2010年)。 (c) すべての段階で継続的在学率および進学率が低い状態が続いており、相当数の子どもが中等教育を受けていない(純就学率(NER)は72.2%に留まる)こと。 (d) とくに南部国境県において、より多くの男子が中等学校を中退していること。 (e) 学校制度における、低学年からの民族言語およびマイノリティ言語の使用が著しく不十分であること。 (f) とくに、とりわけ遠隔地および危険地帯で教員、教育用資料および便益が不足していることを理由として、教育の全般的質が依然として貧弱であること。 (g) 2009年の生徒の学習到達度調査(PISA)で明らかにされたように教育成果が小さく(タイの15歳の子どものうち読解力および科学について合格点をとったのはわずか43%であり、数学では53%に過ぎなかった)、かつ都市部と農村部との間に相当の格差があること。 69.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)および乳幼児期における子どもの権利の実施に関する同7号(2005年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 出生時から就学年齢に至るまでのすべての子どもが、その全面的発達を確保することを目的とした必須の保健サービス、栄養サービス、教育サービスおよび保護サービスの効果的支援をともなうホリスティックな乳幼児育成(ECD)にアクセスできることを確保するため、効果的な政策およびその他の措置を採択すること。 (b) ECDを担当する地方政府によって適用される、良質なかつ国際的に受け入れられるECDの基準を策定すること。 (c) タイ語以外の言語を用いる世帯および貧困世帯の子ども、とくに北東部および南部の子どもが乳幼児育成プログラムに通うことを奨励し、かつそのためのインセンティブを設けること。 (d) 現在学校に行っていない多数の初等学校相当年齢の子ども(6~11歳)に教育機会を提供するため、緊急の措置をとること。 (e) 教育制度における中退の多さおよび継続的在学率の低さの原因および規模に関する包括的研究を実施するとともに、ジェンダーに関わる諸側面、格差および防止措置にとくに注意を払いながら、この問題を解決するための、明確な期限を定めた行動計画を策定すること。 (f) 子ども、とくに南部国境県の男子に対し、中等学校で教育を続けるよう奨励すること。 (g) 条約第30条にしたがい、とくにタイ語以外の言語を話す子どもを対象とした、早期からの効果的な二言語教育を確保するため、国家言語教育政策(2010年)を実施すること。 (h) 教育の質を大幅に改善し、かつあらゆる段階における教育成果を向上させるための明確かつ具体的な措置をとること。そのための手段としては、教育および学習のための資料および便益の提供、教員の養成および研修ならびに監督の増進、資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティ集団および先住専属集団の出身者)の採用増、教育省における能力構築の増進、ならびに、子どもの学習のモニタリングシステムの改善が挙げられる。 (i) ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 70.若干の福祉サービスの提供に関する締約国の情報には留意しながらも、委員会は、一時的難民(いわゆる「国外避難民」)がいるキャンプの環境が不十分であると報告されていること、および、キャンプ外および都市部にいる難民および庇護希望者は不法と見なされ、かつ不法入国および(または)不法滞在を理由として逮捕、拘禁および(または)退去強制の対象とされていることを、懸念する。さらに委員会は、締約国の代表団が述べたように、締約国が2009年以降新たに到着した庇護希望者の登録を行なっていないことを懸念するものである。 71.委員会は、締約国に対し、一時的難民に対して十分な基礎的必需品を提供することによって一時的難民のためのキャンプの環境を向上させるため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、新たに到着した庇護希望者が有している可能性があるニーズを記録する目的で、これらの庇護希望者の登録を復活させることも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民をその地位にしたがって取り扱い、拘禁またはその生命が危険にさらされる可能性がある国への退去強制の対象としないよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の技術的援助を求めるよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同選択議定書を批准するとともに、難民の保護のための国家的な法律上および制度上の枠組みを確立することも、勧告する。 移住の状況にある子ども 72.委員会は、移民が合法的に就労し、かつ社会福祉にアクセスすること(保健および教育へのアクセスを含む)を可能にした労働保護法改正(2008年)を歓迎する。しかしながら委員会は、多くの移住労働者が非正規な状況に置かれており、かつ、その子どもが、送還が安全であるかどうかに関するいかなるリスク評価も行なわれることなく逮捕および退去強制に直面させられていることを、懸念するものである。加えて、移住労働者の子どもは劣悪な環境で暮らしていることが多く、危険な条件下で長時間労働をさせられている子どもも多い。 73.委員会は、締約国が、移民およびその子どもを出身国に送還することが安全であるかどうかについてのリスク評価研究を実施するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、さまざまな移住の状況にある子どもを搾取および危険な労働条件から保護するために必要な立法上および政策上の措置をとるよう、勧告するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 74.委員会は、15歳以上の子どもの雇用条件、最低賃金および安全な労働環境の保護について定めた家内労働者保護法(2011年採択)、および、「最悪の形態の児童労働を根絶するための国家政策および計画(2009~2014年)」に留意する。しかしながら委員会は、15歳未満の子ども(とくに外国人の子どもおよび路上の状況にある子ども)がもっぱら従事している農業、観光業、物乞いおよび家事労働で働くインフォーマルな労働者に対し、締約国の法律が保護を提供していないことを依然として懸念するものである。 75.委員会は、締約国が、農業、観光業、物乞いおよび家事労働のようなインフォーマル部門における子どもの就労について研究し、かつ次回の定期報告書でこの点に関する情報を提供するとともに、これらの部門で働く子どもを監視しかつ発見する目的で労働監察制度を強化するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、外国人の子どもおよび路上の状況にある子どものような脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとくに注意を払いながら、子どもがインフォーマル部門に従事することを禁止するための法改正を行なうよう、促すものである。委員会は、締約国が、家事労働者のためのディーセント・ワークに関する条約ILO第189号条約(2011年)の批准を検討するよう勧告する。 性的搾取および虐待 76.委員会は、被害者の年齢を理由とする強姦罪についての刑罰を定めた2007年の刑法改正(第19号および20号)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国において、男女を問わず子どもの性的搾取および虐待が広く行なわれていることを深刻に懸念するものである。委員会はさらに、とくに家庭において、被害を受ける子どもが加害者から保護されていないことを懸念する。この懸念は、性的虐待に関する刑事事件で捜査および手続に時間がかかることによっていっそう強まるところである。委員会はまた、近隣諸国から性的搾取目的でタイに連れてこられる外国人の子どもの人身取引が増えており、同国における大規模な児童セックスツーリズム産業を助長している一方で、タイの子どもが性的目的の人身取引によりしばしば外国へ連れ出されていることも、懸念する。さらに委員会は、子ども、とくに貧困家庭、資格外滞在移民および民族的マイノリティの子どもが国内で人身取引の対象とされていることに、懸念を表明するものである。 77.一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 公衆の意識を高め、かつ早期発見および防止のための機構を強化する努力を引き続き行なうとともに、性的搾取および虐待(家庭の内外におけるものを含む)の被害を受けたすべての子どもの全面的保護を確保すること。 (b) 子どもの性的虐待に関する刑事事件の捜査および手続の期間を短縮するために必要な措置をとり、かつ、被害を受ける子どもが加害者から適切に保護されることを確保すること。 (c) タイ人の子どもおよび締約国にいる外国人の子どもの双方を関与させる形で行なわれている、あらゆる場面における男女の子どもの性的搾取および虐待の根本的原因、性質および規模に関する包括的調査を実施するとともに、この点に関して行なわれた申立て、捜査および訴追の件数に関するデータを提供すること。 (d) 委員会は、その際、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の勧告(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)、および、とくに女性および子どもの人身取引に関する特別報告者が締約国の訪問(2011年8月)後に行なった勧告を実施するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、それぞれストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された1996年、2001年および2008年の「子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議」で採択された成果文書を考慮することも、勧告するものである。 ヘルプライン 78.委員会は、社会サービス局および国家子ども評議会が、子どもを援助するための2つのヘルプラインを運営していることに留意する。委員会は、締約国が、効率性を高めるため、これらのヘルプラインを単一の全国的ヘルプラインに統合することを検討するよう、勧告する。当該ヘルプラインは、国全体を網羅し、24時間アクセスでき、覚えやすい3~4ケタの番号を有し、かつ、十分な財源および技術的資源、ならびに、子どもに対応し、かつ適切な行動のために通話を分析する訓練を受けた要員を備えたものであるべきである。委員会はさらに、締約国が、この点に関してとくにユニセフおよびチャイルド・ヘルプライン・インターナショナルの技術的援助を求めるよう、勧告する。 少年司法の運営 79.委員会は、全国に少年裁判所および家庭裁判所を設置し、かつ修復的司法を可能とする少年家庭裁判所およびその手続法(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、7歳から10歳に引き上げられた刑事責任に関する年齢がいまなお国際的に受け入れられる水準よりも下のままであることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、裁判官および司法関係者を対象とした子どもの権利に関する研修が十分でない可能性があること、および、場合によって子どもが成人とともに拘禁される可能性があることも、懸念する。 80.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)ようなこの分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるべきであることをあらためて指摘するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げ、いかなる状況下でも12歳未満には定めないこと。 (b) 自由を奪われるすべての子どもが最後の手段としてかつ可能なかぎり短い期間でのみ拘禁され、かつ、その拘禁が法律を遵守して行なわれることを確保すること。 (c) 普遍的定期審査に基づく作業部会が勧告したとおり子どもが成人とは別に拘禁されること、そのような子どもに対して安全な、子どもに配慮した環境が与えられること、および、そのような子どもが家族との定期的接触を維持することを確保すること。 (d) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (e) 条約および選択議定書の原則および規定に関する、裁判官および司法関係者の研修を強化すること。 (f) 法律に抵触した子どものための社会的再統合プログラムを発展させること。 (g) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(国連薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的助言および援助を求めること。 犯罪の被害者および証人である子ども 81.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、国および国以外の主体によって行なわれたものも含む犯罪の被害を受けた子どもおよび(または)そのような犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 82.委員会は、先住民族、部族民およびマイノリティのコミュニティに属する子どもが、その特徴的な生活習慣および言語のためにしばしばスティグマおよび差別の両方の対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、先住民族およびマイノリティの間で貧困が広がっていること、および、同国の山岳民族に関する人口動態データが存在しないことを懸念するものである。 83.委員会は、締約国が、以下の目的のために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) マイノリティおよび先住民族の文化に関するタイ国民の意識を高め、かつその生活習慣およびライフスタイルに関する寛容を醸成すること。 (b) マイノリティおよび先住民族のコミュニティに対していっそうの経済的機会を提供し、かつ基礎的社会サービスに対するこれらのコミュニティのアクセスを確保すること。 (c) 山岳民族に関する細分化されたデータを体系的に収集すること。 (d) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を考慮すること。 タイ南部国境県の子ども 84.委員会は、締約国が南部国境県の子どもおよび若者の保護および発達に関する行動計画を起草中であることに留意するとともに、中等教育および高等教育のための奨学金等を通じた教育支援のためにとられた措置を歓迎する。しかしながら委員会は、現在進行中の武装暴力を背景として以下のような問題が生じていることを懸念するものである。 (a) 子どもが、国以外の武装集団による、および、ときとしてタイ治安部隊による、爆破、不法な殺害その他の暴力的攻撃の被害を受けていること。 (b) 国以外の武装集団が政府立学校および教員を攻撃目標とし、かつ学校近辺に政府軍および準軍事部隊が駐留することにより、教育へのアクセスが途絶されていること。 (c) 親の一方または朗報を失った子ども、暴力により負傷した子ども、事件を直接に目撃した子どもまたはとくにメディアで事件についての情報を得た子ども、ならびに、事件により生活に影響を受けている子どもおよび家族を含む多数の子どもが、心理的または間接的な影響を受けていること。 85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南部国境県の状況が子どもに直接間接の悪影響を及ぼさないことを確保するための即時的措置をとること。委員会は、その際、締約国が、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく委員会の勧告(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)を遅滞なく実施するよう、勧告する。 (b) 学校が、国の軍隊および準軍事部隊によってその運営を妨げられず、かつ国以外の武装集団による攻撃から保護されることを確保すること。 (c) 武装暴力の影響を受けている子どもに対し、優先的課題として心理社会的支援およびサービスを提供すること。 (d) 「南部国境県の子どもおよび若者の保護および発達に関する行動計画」を速やかに採択すること。 I.国際人権文書の批准 86.委員会は、締約国に対し、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう促す。委員会はまた、締約国が、まだ加盟国となっていない国連の中核的人権文書を批准することも勧告するものである。これらの文書とは、とくに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の第1および第2選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約などである。 J.地域機関および国際機関との協力 87.委員会は、締約国が、とくにASEAN〔東南アジア諸国連合〕女性および子どもの権利の促進・保護委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 88.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 90.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年10月25日までに提出するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2012年4月10日)。/前編・後編を統合(10月20日)。