約 24,200 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/130.html
総括所見:ベラルーシ(第2回・2002年) 第1回(1994年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2011年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.180(2002年6月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年5月27日に開かれた第786回および第787回会合(CRC/C/SR.786 and 787参照)においてベラルーシの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.15)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2002年6月7日に開かれた第804回会合において。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第2回報告書が提出されたこと、および、事前質問事項(CRC/C/Q/BEL/2)に対する文書回答が迅速に提出されたことを歓迎する。委員会は、ベラルーシにおける条約の実施に直接関与しているメンバーが締約国の代表団にひとりしかいなかったことは遺憾に思いつつ、建設的な対話、および、対話の際に行なわれた提案に対する前向きな反応に留意するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、締約国が、国内法を条約の規定とさらに調和させるために多数の法律を採択したこと(新民法および1999年に採択された新婚姻家族法ならびに子どもの権利法の2000年改正を含む)に留意する。 4.国際条約法が1998年に採択されたことにより、条約のような国際条約の規範が現行法の一部となり、したがって裁判所で直接援用できるようになったことは、委員会の歓迎するところである。 5.委員会は、前回の勧告(1994年2月7日付のCRC/C/15/Add.17、パラ11)に照らし、国家子どもの権利委員会が1996年に設置されたことに留意する。 6.委員会は、前回の勧告(前掲パラ11)にしたがい、子どもの権利の保護に関する国家的計画(1995~2000年)が1995年4月19日付大統領令第150号により採択され、かつ、2001年5月24日付大統領令第281号で承認された大統領プログラム「ベラルーシの子どもたち」(2001~2005年)によりフォローアップされていることを、認識する。 7.委員会は、1999~2004年の期間を対象とする国家人権教育計画が1999年3月に採択されたことを歓迎する。 8.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を締約国が採択したことを歓迎する。委員会はさらに、ベラルーシが、前回の勧告(前掲パラ13)どおり、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に署名したことに留意するものである。 C.条約の実施における進展を阻害する要因および困難 9.委員会は、経済的移行を理由として悪化し、かつ家族、とくに子どもの多い家族および農村部で生活している家族に影響を与えている貧困がいまなお締約国における条約の全面的実施を阻害していることを、認知する。さらに委員会は、チェルノブイリ原発事故の悪影響が根強く残っており、住民一般に、ならびにとくに子どもの健康および発達に影響を及ぼしていることに留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 前回の勧告 10.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.6〔ママ〕)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(1994年10月24日付CRC/C/15/Add.28〔ママ〕)の一部、とくにパラ11、12、14および15に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されているところである。 11.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 12.子どもの権利に関してとられたさまざまな立法措置には留意しながらも、委員会は、国内法と条約の規定および原則との全面的両立性に関する懸念(CRC/C/15/Add.17、パラ6)をあらためて表明する。委員会はまた、立法に条約の包括的な権利基盤アプローチが十分に反映されていないことも懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の原則および規定との全面的一致を確保するため、権利を基盤とする視点からの現行法の包括的見直しを引き続き行なうこと。 (b) これとの関連で、とくにユニセフの援助を求めることを検討すること。 調整 14.1996年に国家子どもの権利委員会を設置することによって調整を向上させようとした締約国の努力は認めながらも、委員会は、同国家委員会が基本的には諮問機関であることに懸念とともに留意する。委員会はさらに、大統領プログラム「ベラルーシの子どもたち」(2001~2005年)の実施プロセスが監視されかつ見直されていることに留意するものである。 15.委員会は、締約国が、中央および地方の公的機関間で活動を効果的に調整し、かつNGOおよび市民社会のその他の部門と協力する等の手段により、国および地方のレベルで子どもの権利の実施および監視を調整する常設機関が設置されることを確保するべきである旨の勧告(前掲パラ11)をあらためて繰り返す。 独立の監視 16.独立した監視機関の設置に関して現在行なわれている議論には留意しつつも、委員会は、条約の実施における進展の恒常的監視および評価を任務とし、ならびに子どもによる苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた、国レベルの全般的機構が存在しないことに懸念を表明する。 17.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関するパリ原則(総会決議48/134)にしたがい、国内人権機関の一部としてまたは子どもオンブズマンのような別個の機関として、独立した効果的機構を設置するよう奨励する。当該機構は、十分な人的資源および財源を提供され、かつ子どもが容易にアクセスできるものであるべきであり、ならびに以下のことを任務とするべきである。 (a) 条約の実施を監視すること。 (b) 子どもに配慮した迅速なやり方で子どもからの苦情に対応すること。 (c) 条約に基づく子どもの権利の侵害に対して救済を提供すること。 これとの関連で、委員会はさらに、締約国が、とくにユニセフおよびOHCHR〔人権高等弁務官事務所〕の技術的援助を求めることを検討するよう勧告する。 子どものための資源 18.住民の生活水準の低下を防止しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どものための予算配分が、子どもの権利の促進および保護に関する国および地方の優先的課題に対応し、ならびに子どもに提供されるサービスに関して農村部と都市部との間に存在する格差を克服しおよび是正するためにはいまなお不十分であることに、懸念を表明する。 19.条約第4条に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 包括的な貧困削減戦略等も通じ、家族、とくに子どもが多い家族、農村部に住んでいる家族およびひとり親家族の生活水準の低下を防止するための努力を引き続き行なうこと。 (b) 子ども、とくに社会でもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実施のために、利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で資金が配分されることを確保する目的で、子どもの権利に関わる問題についての優先的課題を明確に特定すること。 (c) 子どもに関する支出の影響および効果を評価する目的で、国および地方のレベルで子どもに支出されている予算の額および割合を明らかにすること。 データ収集 20.委員会は、条約が対象とするすべての分野に関するデータが細分化されていないことに懸念を表明する。委員会はさらに、子どもに関するデータが、子どもの権利の分野における進展を評価する目的で、かつ同分野における政策立案の基礎として、十分なやり方で活用されていないことに留意するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた集団(経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、農村部で暮らしている子ども、施設の子ども、障害のある子どもおよびチェルノブイリ原発事故の結果の影響を受けている子どもを含む)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関する細分化されたデータを体系的に収集しかつ分析する機構を強化すること。 (b) 条約の実施および監視を目的とする政策およびプログラムの立案および評価のために、これらの指標およびデータを効果的に活用すること。 (c) この点に関してユニセフの技術的協力を求めること。 市民社会との協力 22.委員会は、最近になっていくつかの非政府組織が設立されたにも関わらず、とくに市民的権利および自由の分野における条約の全面的実施に市民社会の関与を得るために行なわれた努力が不十分であることに、懸念を表明する。委員会はさらに、非政府組織が困難な登録手続を経なければならないこと、および、とくに外国からの資金拠出が制限されており、そのため非政府組織の有効性および独立性が制約される可能性があることに、深い懸念とともに留意するものである。 23.委員会は、市民的権利および自由に関するものも含む条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとる旨の勧告(前掲パラ12)をあらためて繰り返すものである。 (a) 条約の実施のあらゆる段階を通じ、とくに市民的権利および自由との関連で、子どもとともにおよび子どものために活動する非政府組織(とくに権利を基盤とする組織)および市民社会のその他の部門のいっそう制度的な関与を得ることを検討すること。 (b) 自由権規約委員会の勧告(CCPR/C/79/Add.86、パラ19)にしたがい、非政府組織の登録および活動を促進する目的で法令および行政実務を遅滞なく見直すこと。 研修/条約の普及 24.前回の勧告(前掲パラ17)にしたがい、条約の普及ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修のための努力が行なわれてきたことは認めながらも、委員会は、これらの措置を強化する必要があると考える。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに地方レベルでおよびメディアを通じて条約を促進するための、いっそう創造的な手法(絵本およびポスターのような視聴覚補助手段の活用も含む)を発展させること。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員および学校管理者など)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続しかつ強化すること。 (c) とくに、1998年国際条約法の効力および裁判所で条約を直接援用する可能性について、司法機関を対象とする十分な研修を行なうこと。 (d) 非政府組織および市民社会のその他の部門の関与を得る目的で、とくにユニセフ、ユネスコおよびOHCHRの技術的援助を求めること。 2.一般原則 一般原則 26.委員会は、差別の禁止、子どもの最善の利益(第3条)、子どもの生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)の原則が、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、ならびに、子どもに関連する国および地方双方のレベルの政策およびプログラムに全面的には反映されていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告(前掲パラ11)をあらためて繰り返す。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関わるあらゆる関連の法律に適切な形で統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のすべての決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいてこれらの原則を適用すること。 (c) あらゆるレベルの計画および政策立案、ならびに、社会保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関によるあらゆる行動においてこれらの原則を適用すること。 差別の禁止 28.委員会は、差別の禁止の原則が、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、農村部で暮らしている子ども、施設の子ども、障害のある子ども、ロマの子どもおよびチェルノブイリの影響を受けている子どもを対象として、とくに十分な保健ケアおよび教育のための便益へのこれらの子どもによるアクセスとの関連で全面的には実施されていないことを、懸念する。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 差別にさらされている子ども、とくに脆弱な立場に置かれた前掲の集団に属する子どもの状況を監視すること。 (b) このような監視の結果に基づき、あらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定すること。 30.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 31.子どもの意見を聴くことを認めた規定には留意しながらも、委員会は、裁判官または他の意思決定機関がこの点に関して有している裁量権が強すぎることを懸念する。 32.第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 意見を表明するのに十分な成熟度を備えたすべての子どもが、その子どもに影響を与えるすべての司法手続および行政手続で意見を聴かれることを確保すること。 (b) 親、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに公衆一般を対象として、子どもが意見を聴かれ、かつその意見を真剣に考慮される権利を有していることについて周知するためのキャンペーンを実施すること。 3.市民的権利および自由 33.委員会は、第13条、第15条および第17条の実施が制限されていることに、懸念とともに留意する。 34.委員会は、締約国が、条約第13条、第15条および第17条で認められた表現の自由、結社および平和的集会の自由ならびに適切な情報へのアクセスに対する権利の全面的実施を、すべての子どもに対して保障するよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 35.委員会は、離婚率が高いことならびにひとり親家庭の数および親によるネグレクトの事案の数が増えていることを含め、ベラルーシで家族の解体現象が広がりつつあることに、深い懸念とともに留意する。子どものいる家庭手当法(2002年4月1日)など、締約国が家族の強化のために若干の措置をとっていることには留意しながらも、委員会は、貧困削減戦略の実施を含む家族志向政策を扱っている公的機関間で調整が行なわれていないこと、防止措置が皆無に近いこと、および、職業ソーシャルワーカーが機能不全家族に対応するための十分な訓練を受けていないことに、懸念を表明するものである。 36.条約第18条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族の解体を防止しかつ家族の発展を強化するための措置を引き続き策定すること。 (b) 親教育、カウンセリングおよびコミュニティを基盤とするプログラム等を通じ、子どもの養育責任に関する助力を家族に提供するための社会的援助および支援を向上させること。 (c) ソーシャルワーカーを十分に訓練すること。 (d) とくにユニセフの国際援助を求めること。 家庭環境を奪われた子ども 37.婚姻家族法に掲げられた公式な脱施設化優先政策には留意しながらも、委員会は、里親養護その他の形態の家族を基盤とする代替的養護が十分に発展しかつ利用可能とされていないため、家庭環境を奪われて施設に措置される子ども(障害のある子どもを含む)の人数が多いことに、重大な懸念を表明する。加えて委員会は、施設が、資源がないことを理由として、非常に質の低い居住環境およびケアしか子どもに提供しておらず、かつ、子どもが自己の措置に関する懸念および苦情を伝達する効果的機構を有していないことに、懸念とともに留意するものである。 38.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの遺棄を防止しかつ削減するため、戦略の策定および意識啓発活動の発展を含む効果的措置をとること。 (b) 里親養護、家庭的里親ホームその他の家族を基盤とする代替的養護を増やしかつ強化するための効果的措置をとること。 (c) 子どもの施設措置は最後の手段としてのみ行なうこと。 (d) 施設の環境を改善するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) ソーシャルワーカーを含む施設職員に対して支援を提供しかつ研修を行なうこと。 (f) 養護を受けている子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応し、養護の質を監視し、ならびに条約第25条に照らして措置の定期的再審査を確立するための効果的機構を設置すること。 (g) 施設養護を離れた子どもに対し、フォローアップおよび再統合のための十分な支援およびサービスを提供すること。 虐待およびネグレクト 39.委員会は、家庭、学校その他の施設における子どもの不当な取り扱いおよび虐待に関する情報および意識が不十分であることに、懸念を表明する。 40.条約第19条および委員会の前回の勧告(前掲パラ40)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの慣行の規模、範囲および性質を評価する目的で、ドメスティックバイオレンス、子どもに対する暴力、不当な取り扱いおよび虐待(性的虐待を含む)についての研究を行なうとともに、子どもに対する身体的および精神的暴力ならびにネグレクトの発生件数を記録するために創設された統計システムを実施すること。 (b) 子どもの不当な取り扱いおよび虐待を防止しおよびこれと闘い、ならびに態度の変革に寄与するための十分な措置および政策(公的キャンペーンを含む)を採択し、かつ効果的に実施すること。 (c) 被害を受けた子どもの保護(プライバシーに対する権利の保護を含む)を向上させる目的で、ドメスティックバイオレンスならびに子どもの不当な取り扱いおよび虐待(家庭における性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査手続および司法手続において効果的に調査すること。 (d) 家庭、学校その他の施設におけるあらゆる形態の体罰を禁止し、かつ体罰の有害な影響に関する意識を高めるための措置を発展させるとともに、子どもの尊厳と一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれるべき、家庭における代替的形態のしつけを促進すること。 (e) 条約第39条にしたがい、子どもに対し、法的手続における支援サービス、ならびに、強姦、虐待、ネグレクト、不当な取り扱いおよび暴力の被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための支援サービスを提供するための措置をとること。 (f) 「家庭および学校における子どもへの暴力」(CRC/C/111参照)ならびに「子どもに対する国家の暴力」(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告を考慮すること。 (g) これとの関連で、とくにユニセフおよびWHOの国際協力および技術的援助を求めること。 5.基礎保健および福祉 健康および保健サービス 41.妊産婦および子どものケアのためのサービスならびに子どもの健康を向上させるためのさまざまなプログラムを再編しようとする努力には留意しながらも、委員会は、子どもの有病率が上昇していること(新生児のHIV感染数の増加を含む)、結核がほぼ流行病と言えるほど広がっていること、ならびに、とくに低所得世帯および子どもが3人以上いる家庭の子どもの間でヨウ素欠乏症および栄養上の問題が多数発生していることを、懸念する。委員会はさらに、交通事故率および自動車事故率が高く、かつ自殺率の高さも子どもに影響を与えていることに留意するものである。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 妊産婦死亡率、周産期死亡率および乳児死亡率をさらに減少させるため、効果的な周産期ケアの促進に関するWHO戦略を引き続き実施すること。 (b) すべての子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもが、無償のかつ良質な基礎的保健ケアにアクセスできることを確保すること。 (c) 乳幼児期の発達に対する統合的かつ多層的アプローチを確保するため、健康および栄養に焦点を当てた国レベルの政策を策定すること。 (d) 母子感染の予防に焦点を当てながら、新生児のHIV感染数の増加に対応すること。 (e) 子どもの怪我を予防する目的で、子どもを事故および怪我から保護するための十分な法律を策定し、国レベルの政策的優先事項および目標に怪我の予防を含め、かつ受傷事故管理プログラムを開発すること。 (f) 子どもの自殺の規模および原因を評価するために包括的かつ学際的な研究を行なうとともに、この現象を防止しかつこれと闘うための十分な政策およびプログラムを発展させること。 (g) とくにWHOおよびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。 思春期の健康 43.委員会は、薬物、アルコールおよびタバコに依存する子どもおよび青少年の人数が増えていること、10代の妊娠中絶が多いことならびに若者の間でHIV/AIDSの件数が増加していることに、懸念とともに留意する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 全国規模の包括的プログラムである「青少年を対象とする医療活動および回復力強化活動」(1999~2003年)およびHIV予防国家戦略計画(2001~2003年)を効果的方法で実施するとともに、思春期の健康(精神保健を含む)に関する政策を促進するための努力を増強すること。リプロダクティブヘルスおよび有害物質濫用に対して特段の注意が向けられるべきであり、かつ学校における健康教育プログラムがさらに強化されるべきである。 (b) 思春期の健康上の問題(性感染症およびHIV/AIDSの悪影響を含む)の規模および性質を評価するために包括的かつ学際的な研究を行なうとともに、十分な政策およびプログラムを引き続き発展させること。 (c) 健康教育訓練プログラムの有効性をとくにリプロダクティブヘルスとの関連で評価し、かつ、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意を得ずにアクセスすることのできる、若者に配慮した、秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるため、さらなる措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)をとること。 (d) とくにUNFPA〔国連人口基金〕、ユニセフ、WHOおよびUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕の技術的協力を求めること。 環境保健 45.委員会は、子どもの間でさまざまな疾病(がん、免疫不全および貧血症を含む)の件数が増加していることを含め、チェルノブイリ原発事故の悪影響が根強く残っていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、チェルノブイリ原発事故被災者への援助が完全に人道的なものに留まっており、長期的政策に焦点を当てたものとなっていないことに留意するものである。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) チェルノブイリ原発事故の影響を受けている子どもに提供される専門的保健ケアを、その心理社会的側面も含めて引き続き向上させること。 (b) 放射能汚染関連疾患の早期発見および予防のための努力を強化すること。 (c) 被災者援助に対する長期的開発アプローチにいっそう焦点を当てること。 障害のある子ども 47.障害のある子どもを統合するための努力には留意しながらも、委員会は、障害のある子どもの人数が増えており、かつこのような子どもを施設に措置する慣行が行なわれていることに懸念を表明する。委員会はさらに、障害児がいる家庭に対する支援が不十分であることに、懸念とともに留意するものである。 48.条約第23条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの障害の原因およびその予防方法を明らかにするための研究を行なうこと。 (b) 障害のある子どもの状況を評価し、かつそのニーズに効果的に対応する目的で、このような子どもの状況が監視されることを確保するための措置をとること。 (c) 障害のある子どもの状況および権利に関する意識を高めるための公的意識啓発キャンペーンを実施すること。 (d) 障害のあるすべての子ども、とくに農村部で生活している子どものためのプログラムおよび便益に対して必要な資源を配分するとともに、このような子どもが家族とともに自宅で生活できるようにするための、コミュニティを基盤とするプログラムを強化すること。 (e) 障害のある子どもの親を、カウンセリングおよび必要なときは金銭的支援によって支援すること。 (f) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/86)および「障害のある子どもの権利」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に照らし、教員に対して特別研修を行ない、かつ学校をいっそうアクセスしやすいものとする等の手段もとりながら、障害児の普通教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励すること。 6.教育、余暇および文化的活動 教育 49.学校カリキュラムに人権教育を含めるために締約国が行なった努力は認めながらも、委員会は、ベラルーシ語による教育の利用可能性が、乳幼児教育から中等教育に至るまでますます制限されつつあることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、中等教育で学ぶ子どもの人数が減少していること、および、とくに中等制度における教育水準に大きなばらつきがあり、低所得地域および農村部にとって不利益が生じていることに、留意するものである。 50.条約第28条および第29条に照らし、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) ベラルーシ語による教育が利用でき、かつ、ロマの子どもおよび他のマイノリティに属する子どもが良質な教育にアクセスできることを確保すること。 (b) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号にしたがって第29条1項に挙げられた目標を達成するため、全国で教育の質を向上させること。 7.特別な保護措置 人身取引、性的その他の形態の搾取 51.委員会は、ベラルーシが、性的その他の形態の搾取を目的とする子ども(とくに女子)の人身取引の送り出し国および通過国であるという情報に懸念を覚える。委員会は、この現象、ならびに、人身取引に関連していることが多い性的搾取、薬物濫用および薬物取引への子どもの関与ならびに経済的搾取のような問題についての情報および知識が欠けていることに留意するものである。 52.条約第32~36条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および人身取引関連の問題(性的搾取、薬物濫用および薬物取引への子どもの関与ならびに経済的搾取など)の範囲および原因を評価する目的でこれらの問題に関する研究を行なうとともに、これらの問題を防止するための効果的な監視措置その他の措置を策定しかつ実施すること。 (b) 社会統合プログラムを発展させること等の手段により、子どもの人身取引、性的搾取、薬物の濫用および取引ならびに経済的搾取と闘い、かつこれらを根絶すること。 (c) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、子どもの性的搾取および商業的搾取に反対する国家的行動計画を策定しかつ採択すること。 少年司法の運営 53.委員会は、少年司法の運営に関わる状況についての重大な懸念(前掲パラ10)をあらためて表明する。新しい刑法および刑事訴訟法に基づき、少年事件は特別な訓練を受けた裁判官によって検討されうること、および、少年司法を担当する別個の部門を設置するかどうかについての議論が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、包括的な制度がまだ確立されていないこと、検察官および弁護士が少年事件を扱う訓練を受けていないこと、ならびに、拘禁が最後の手段として用いられておらず、かつ拘禁に代わる措置が稀にしか適用されていないことに、懸念を表明するものである。さらに、少年拘禁センターの環境が非常に劣悪であり、更生の可能性がほとんど提供されていないことが留意されるところである。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の特別制度を速やかに確立するとともに、その完全な独立性ならびに十分な人的資源および財源を確保すること。 (b) 少年司法制度を、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)のようなこの分野における他の関連の国際基準と可能なかぎり早期に全面的に一致させる目的で、少年司法制度に関わる法律および実務を引き続き見直すこと。 (c) 18歳未満のすべての者が少年司法の運営の分野における特別な保護措置の利益を享受することを確保すること。 (d) 未決拘禁を含む拘禁は、最後の手段としてのみ、可能なかぎり短くかつ法律で定められた期間を超えない範囲で用いるとともに、子どもが常に成人から分離されることを確保すること。 (e) 可能なときは常に、未決拘禁その他の形態の自由の剥奪に代わる措置を活用すること。 (f) 非行、犯罪および薬物依存のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。 (g) とくに、少年の処遇のあらゆる側面を対象とした効果的な苦情申立て手続へのアクセスを保障することを目的として、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則を法律および実務に編入すること。 (h) 第39条に照らし、少年司法制度に関わることになった子どもの回復および社会的再統合を促進するための適当な措置をとること。 (i) 「少年司法に関する技術的助言および援助についての国連調整パネル」を通じ、とくにOHCHR、国連国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフに対して援助を求めること。 8.報告書の普及 55.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.報告書の定期的提出 56.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的報告書の提出に関して困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、第4回報告書の提出期限である2007年10月30日までに提出するよう慫慂するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。
https://w.atwiki.jp/jp-summons/pages/1059.html
アガルタ法国の国家元首で、法王の称号を持つ当代の学院連合総長。 白く長い髭が特徴の理性的な人物。 神聖ミリシアル帝国主導の対グラ・バルカス帝国世界連合構築のためにアガルタ法国に海軍の参戦を求められた際の会議に登場。 グラ・バルカス帝国の強さに懸念を覚えていたが、世界中の大国が参加する連合に参加しなかった場合、多くの国がアガルタ法国を弱小国と見做す恐れがあるため、消極的に参戦を支持している。 結果、懸念通りに派遣した70隻の魔法船団は甚大な被害を被ってしまう。 関連項目 人物|アガルタ法国|エサイアス|オロフ ※既存の[[コメント]]に返信する場合、返信したいコメントの左側にチェックを入れて下さい。 過去のコメント 名前 ここを編集 〔最終更新日:2019年06月01日〕
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/156.html
総括所見:ニュージーランド(第1回・1997年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)/第5回(2016年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.71 (1997年1月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年1月20日および21日に開かれた第363回会合~第365回会合(CRC/C/SR.363-365) においてニュージーランドの第1回報告書(CRC/C/28/Add.3) を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、委員会のガイドラインにしたがって詳細な報告書を作成したこと、および、ニュージーランド政府が事前質問票(CRC/C/Q/NZ.1) に対する文書回答を提出したことについて、締約国に評価の意を表する。委員会は、報告書の検討の過程およびその後に代表団が提供した補足情報および締約国の代表団との建設的対話に、満足感とともに留意するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、従来の家族間暴力関連法に基づいて利用可能だったもの以上に家族間暴力の犠牲者の保護を強化した1995年家族間保護法が採択されたこと、および、とくに家族間保護制度に基づく保護が子どもに拡大されたことを歓迎する。 4.委員会は、子どもに関わる法律および政策の提案が子どもに与える影響を監視しかつ評価することがますます強調されるようになっていることに、興味深く留意する。とりわけ、委員会は、内閣に提出される新たな政策提案について具体的な監視および評価の手続が導入されたことを歓迎するものである。 5.委員会は、障害のある子どもの発達を促進し、かつその能力を最大限に高めることを目的とした、障害児を援助するために利用可能な支援サービスが幅広く存在することを歓迎する。 6.委員会は、1993年人権法の年齢差別規定が16歳以上の青年も対象とする形で適用されていること、および、人権委員会が子どもからの苦情を受け付けられることを歓迎する。 7.委員会は、条約第12条の重要な側面を実現するための手段として「青年議会」を開催するという締約国の取組みを歓迎する。 C.主要な懸念事項 8.委員会は、締約国が条約に対して付した留保が幅広い性質のものであり、そのことが条約の趣旨および目的との両立性に関して疑問を生ぜしめるものであることを、懸念する。さらに、委員会は、現在は主権国家ではなくかつ重要な側面において依然として自治領ではないトケラウ領に関して、締約国が条約の適用を拡張していないことを遺憾に思うものである。 9.委員会は、条約が対象とするすべての領域を網羅し、かつ条約の原則および規定を盛りこんだ総合的政策または行動計画が存在しないために、子どもの権利に対する締約国のアプローチがやや断片的になっているように思えることを、遺憾に思う。 10.委員会は、とくに重罪に関して子どもの責任を問いうる最低年齢および最低雇用年齢に関わって、関連の国内法が条約に基づく子どもの定義と一致していないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、政府による各種の支援の受給資格に関して、さまざまな政府機関によって運用される立法のもとで幅広い年齢制限──必ずしも一貫していないように思える──が存在するように思えることに、懸念とともに留意するものである。 11.子どもおよびその家族に対する支援サービスの一部の供給が相当程度非政府組織に委譲されていることを興味深く受けとめながらも、委員会は、政府の支援を受けるそのようなサービスの質に関する最終的な責任は締約国──中央レベルであれ地方レベルであれ──に属するものであり、かつ、委譲されたプログラムは慎重な監視および評価を必要とすると考えるものである。これとの関連で、委員会はまた、そのような非政府組織への公的資金供与は彼らの独立性に関して疑問を生ぜしめることにも留意する。 12.委員会は、条約が対象とする領域を所掌するさまざまな政府部局の間ならびに中央および地方の公的機関との間の効果的な調整を確保するためにとられた措置が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、このことが、政府の行動を調整する中央の窓口が存在しない結果をもたらすのみならず、政府の行動が矛盾することにつながるのではないかと懸念するものである。 13.委員会は、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの状況に関する、子どもからの苦情の登録に関わるものも含めた細分化された統計的データおよびその他の情報を収集するための措置が不十分であることを懸念する。子どもの地位に関する質的および量的情報が存在しないことは、条約の実施の評価を困難にするものである。 14.条約第4条の実施に関して、委員会は、1980年代中盤からニュージーランドで進められた大規模な経済改革の過程が子どもおよびその家族への支援サービスのために利用可能な財源に影響を与えてきたこと、および、締約国の資源を最大限に用いることにより子どもがその経済的、社会的および文化的権利を享受できるようにするためにあらゆる必要な措置がとられていないことを、懸念する。 15.委員会は、ひとり親家庭の数が増えていることを遺憾に思い、かつ、この傾向により影響を受ける子どものニーズに取り組むための一貫した戦略を締約国が有していないことを懸念する。 16.委員会は、犯罪法第59条により、家庭において子どもに有形力を用いることが、それがその状況下で合理的なものであるかぎり認められていることに、懸念を表明する。さらに、委員会は、性的虐待を含む、家庭における不当な取扱いおよび虐待の問題、ならびにそのような不当な取扱いまたは虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の問題に取り組むためにとられた措置が不十分であることに留意するものである。 17.委員会は、ニュージーランドにおいて青年の自殺率が高いことに深刻な懸念を表明する。 18.委員会は、福祉に関するほとんどの統計においてマオリ人口が非マオリ人口よりも相当に遅れていることに、懸念とともに留意する。このような統計は、この人口集団、とくにマオリの子どもの権利の享受を保護しかつ促進するためにとられた措置が不十分であることを反映するものである。 19.委員会は、児童労働、基本的な最低雇用年齢またはさまざまなタイプの仕事および労働条件に応じた一連の最低年齢の問題に取り組むための包括的な政策を締約国が有していないことに、遺憾の意とともに留意する。 20.委員会は、子どもを含む難民および庇護希望者に政府が提供している支援サービスが、UNHCRとの協定に基づき難民として受け入れられているか、または個人的な庇護申請の結果として締約国に滞在しているかにより異なるように思えることに、重大な関心を表明する。 D.提案および勧告 21.1993年6月に世界人権会議が採択し、かつ子どもの権利条約への留保を撤回するよう各国に促したウィーン宣言および行動計画の精神にしたがい、委員会は、締約国に対し、条約に対する留保を撤回するための措置をとるよう奨励したい。さらに、委員会は、ニュージーランドに対し、トケラウ領に関して条約の適用を拡張するよう奨励するものである。 22.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を盛りこみ、かつ、政府によって供給されまたは資金提供されている支援サービスに携わるすべての者に対して指導を提供しうるような、子どもの権利に関わる包括的な政策声明を作成しかつ採択するよう提案する。 23.委員会は、政府が、既存の立法を条約の原則および規定に一致させる過程を追求するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、きわめて深刻な犯罪の責任を問いうる最低年齢および最低雇用年齢を、優先課題として見直すよう提案するものである。 24.あらゆる政府の政策、行政上の運用および立法の見直しが、それらが1993年人権法と一致しているかどうかを決定するために進められていることに心強い思いを感じながらも、委員会は、これとは別にまたはこれを補足する形で、子どもに影響を与える政府の政策、行政上の運用および立法のあらゆる側面を、条約の原則および規定を考慮に入れながら見直すよう提案する。さらに、委員会は、子どもコミッショナー事務所を強化すること、および、同事務所の独立性を強化しかつ同事務所が議会に直接責任を負うようにするための措置をさらに考慮することを、提案するものである。 25.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域およびあらゆる子どもの集団、とくに最も不利な立場に置かれている集団を扱うことを目的として、細分化された適切な指標の特定に優先的な注意を払いながら、苦情の登録の分野におけるものも含めてデータ収集システムをさらに見直すよう勧告する。 26.委員会は、条約第4条の実施に関して、予算配分に当たっては締約国の利用可能な資源を最大限に用いるべきことおよび子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現を優先すべきこと、ならびに、最も不利な立場に置かれた集団に属する子どもに特段の注意を払うことを、勧告する。委員会はまた、ここ数年進められてきた経済改革の過程が、支援サービスのために利用可能な政府の財源への影響という観点から子どもおよびその家族にどのような影響を与えたかについて、かつ、失業および雇用条件の変化が子ども、青年およびその家族に対してどのような影響を与えたかについて、締約国が研究を行なうようにも勧告する。そのような研究の結論は、将来の行動に関する包括的な戦略を発展させるに当たって有益な出発点となりうるものである。 27.委員会は、ひとり親家庭が増加しているという傾向に照らしてひとり親家庭の顕著なニーズについて研究を行ない、かつ、このような子どもおよびその親に対して今後悪影響が出ることを避けるために、すでにとられている措置を補完するような措置をとるよう提案する。 28.委員会は、締約国が、青年の自殺の原因として可能性がある要因および最も危険だと思われる青年の特質についての研究を引き続き優先し、かつ、この悲劇的現象を減少させうる追加的な支援プログラムおよび介入プログラムを、精神保健、教育、雇用またはその他の分野のいずれの分野であれ導入するための措置を、現実的に可能なかぎり早期にとるよう提案する。これとの関連で、締約国は、やはりこの問題に取り組んできた経験を有しているかもしれない他国の政府および専門家に協力を呼びかけてもよいかもしれない。 29.委員会は、締約国が、あらゆる形態の身体的または精神的暴力、傷害または虐待を効果的に禁ずるために、家庭における子どもの体罰に関わる立法を見直すよう勧告する。委員会はさらに、条約第39条に照らし、そのような不当な取扱いおよび虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するために適切な機構を設置するよう勧告するものである。 30.マオリ人口に関わる保健、教育および福祉の領域で政府が行なってきた努力には留意しながらも、委員会は、当局に対し、マオリの子どもとマオリ以外の子どもとの間に残っている格差を埋めるためのプログラムおよび活動を継続しかつ強化するよう奨励する。 31.委員会は、児童労働に関する政策および法律を見直し、かつ、締約国が、最低雇用年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するよう勧告する。 32.委員会は、UNHCRが組織したスキームの枠外でニュージーランドにやって来た庇護希望者も含めて、難民であるあらゆる子どもが初期滞在援助および政府が供給するまたは資金援助する支援サービスの利益を受けられるようにするよう勧告する。 33.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国によって提出された第1回報告書および文書回答を、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のある非政府組織を含む一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起することを目的として、広く普及されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/207.html
総括所見:オーストラリア(OPAC・2012年) 第1回(1997年)/第2回・第3回(2005年)/第4回(2012年)OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/AUS/CO/1(2012年7月11日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年6月5日に開かれた第1709回会合(CRC/C/SR.1709参照)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/OPAC/AUS/1)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/THA/Q/Add.1)の提出を歓迎するとともに、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた前向きな対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/AUS/CO/4)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書が改訂報告ガイドラインにしたがっていなかったことを遺憾に思うものである。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、18歳未満のオーストラリア国防軍(ADF)隊員に適用される、2005年および2008年の国防軍訓令(通則)PERS 33-4の法改正を、積極的対応として歓迎する。 III.実施に関する一般的措置 法的地位 5.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を国内法に編入するための十分な措置をとっていないことを懸念する。 6.選択議定書第6条にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定を国内法に全面的に編入する目的で、国内法の見直しを行なうよう促す。 調整 7.委員会は、軍への徴募の実務および研修プログラムについてはオーストラリア国防軍(ADF)が責任を負う旨の、締約国から受領した情報に留意する。しかしながら委員会は、同国全域(州および準州の段階を含む)における選択議定書の包括的かつ効果的な実施を調整する任務を委ねられた機関が設けられていないことを、懸念するものである。 8.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施について全般的責任を負う政府機関を指定するとともに、選択議定書の実施に関わって省庁その他の政府機関間で効果的調整が行なわれるようにするための制度的機構を設置するよう、促す。 研修 9.委員会は、軍の構成員および子どもに対応する関連の専門家集団を対象とする研修プログラムで選択議定書の規定が取り上げられていないことを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国に対し、軍のすべての構成員(とくに国際的作戦に従事する者)および子どもに対応するその他の要員(とくに、子どもの庇護希望者および難民のためにおよびこのような子どもとともに働く公的機関の職員、警察官、弁護士、裁判官、軍事裁判所裁判官、医療専門家、ソーシャルワーカーおよびジャーナリスト)を対象として、選択議定書に関する研修を実施するよう奨励する。 データ 11.軍学校プログラムに参加している子どもの人数について提供された統計に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、これらの子どもについて性別、年齢別、農村部/都市部の出身別および民族別に細分化されたデータを収集していないことを遺憾に思うものである。加えて、委員会は、子どもの難民および庇護希望者のうち、子どもが徴募されまたは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されている可能性のある国出身の者に関するデータおよび統計が存在しないことを懸念する。 12.委員会は、締約国が、ADFおよび軍学校プログラムに入隊している志願隊員についての性別および民族別に細分化されたデータが公的に利用可能とされることを確保するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって、徴募されまたは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用された可能性のある者についてのデータを体系的に収集するよう、勧告するものである。 IV.防止 直接の参加 13.委員会は、国防軍訓令(2008年)が、18歳未満の子どもについて、作戦遂行に悪影響を与えない限度においてのみ敵対行為に参加させてはならないと定めていることを、深く懸念する。委員会は、この規定の適用により、18歳未満の子どもが敵対行為に直接参加することにつながる可能性があることに、懸念とともに留意するものである。 14.委員会は、選択議定書第1条にしたがって18歳未満の軍隊構成員が敵対行為に直接参加しないことを確保するため、締約国が国内法および軍の手続を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、締約国が関連の国内法で「直接参加」および「敵対行為」の概念の定義を定めるよう、勧告するものである。 15.委員会は、締約国が、国防軍訓令(2008年)で注意義務方針を採用したことに留意する。しかしながら委員会は、この政策の実施に関する情報がないことを遺憾に思うものである。 16.委員会は、締約国が、注意義務方針の実施および有効性に関する詳細な情報を次回の定期報告書に記載するよう、勧告する。 志願入隊 17.委員会は、ADFへの志願入隊年齢が17歳であることに留意する。 18.全般的により高い法的基準を通じて子どもの保護を促進しかつ強化する目的で、委員会は、締約国に対し、ADFへの志願入隊に関する最低年齢を見直し、かつ18歳に引き上げるよう奨励する。 軍学校制度 19.オーストラリア国防軍学校の隊員がADFの構成員ではないことは認識しながらも、委員会は、軍学校制度のもと、子どもが若年段階から軍隊的訓練活動(演習、儀式的行進および火器の使用を含む)を受けさせられることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、ADFが「就労体験プログラム」を通じて学校を対象とする隊員募集を積極的に行なっていることにより、とくに周縁化された人口層出身の若者および言語的背景が異なる若者に対し、十分な情報に基づく完全な同意なしに、志願するよう不当な圧力がかけられる可能性があることを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 軍学校プログラムにおける活動が、とくに軍隊的活動との関連で年齢にふさわしいものであることを確保する目的で軍学校制度の運営を見直すとともに、このような活動が子どもに及ぼす精神的および身体的影響を正当に考慮しながら、このような活動に関する年齢要件についての明確な指針を定めること。 (b) 軍学校部隊に編入された子どもの権利および福祉を保護するため、軍学校制度が効果的にかつ独立の立場から監視されることを確保するとともに、子ども、親その他の集団が、隊員募集手続について十分な情報を提供され、かつ懸念または苦情を提出できることを確保すること。 (c) 選択議定書の精神にしたがい、18歳未満のすべての子どもについて火器その他の爆発物の操作および使用を禁止すること。 (d) 言語的背景が異なる若者および(または)周縁化された人口層出身の若者が過度に隊員募集の対象とされないことを確保するとともに、十分な情報に基づく同意のための措置を整えること。 (e) 軍学校部隊の活動が、条約第29条および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)で認められている教育の目的にどのように適合するかについての情報を〔次回の定期報告書に〕記載すること。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 21.委員会は、国内法において、18歳未満のすべての子どもについて武装集団または準軍事集団による徴募が犯罪とされていることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、国内法において、軍隊への徴募については15歳未満の子どもの場合しか犯罪とされていないことに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、そこで禁じられている行為が犯罪となるのは武力紛争の文脈で徴募が行なわれた場合に限られ、平時にはこれが適用されないことを懸念する。 22.委員会は、民間軍事保安企業の使用およびこれらの企業による子どもの使用について締約国から送付された追加的情報を評価する。 23.選択議定書上の犯罪の防止をさらに強化する目的で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑法を改正し、軍隊および武装集団による18歳未満の子どもの徴募および使用を明示的に禁止しかつ犯罪とすること。 (b) 刑法の規定を強化し、軍隊および武装集団による子どもの不法な徴募の罪名が平時および戦時のいずれにおいても適用されることを確保すること。 (c) 子どもに影響を与えるすべての法律を包括的に再検討するとともに、国内法および国内政策(2008年の国防軍訓令を含む)を選択議定書の原則および規定と全面的に調和させるためにあらゆる必要な措置をとること。 (d) 民間軍事保安企業の監督および責任について国内法による規制が行なわれることを確保するとともに、締約国がとった措置についての情報を次回の定期報告書で提供すること。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 24.未成年者の拘禁は最後の手段としてのみ行なわれるべきである旨を定めた締約国の移民改革法改正には積極的措置として留意しながらも、委員会は、子どもの庇護希望者および難民(徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある者を含む)が当たり前のように入国管理センターに収容される状況が続いており、かつ、しばしば収容が長期にわたりかつ司法審査の対象ともされていないことに、依然として重大な懸念を覚える。委員会はまた、締約国にいる子どもの庇護希望者および難民についての公式な統計およびデータが存在せず、かつ選択議定書上の犯罪の被害者を特定するための手続も設けられていないことを、深刻に懸念するものである。 25.選択議定書第7条に基づく義務に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の管轄下にある子どもの庇護希望者および難民全員に関する、全国的なデータ収集・登録システムを設けること。 (b) 国外で武力紛争に関与したまたはその可能性がある子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)を特定するための機構を設置するとともに、当該特定を担当する要員が子どもの権利、子どもの保護および子どもにやさしい事情聴取技法について訓練されることを確保すること。 (c) 武力紛争に関与したまたはその可能性がある子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助を提供すること。 VII.国際的な援助および協力 26.委員会は、アジア太平洋地域およびアフリカで武力紛争の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのプロジェクトに対する締約国の貢献を歓迎する。さらに委員会は、武力紛争の悪影響を受けた子どもを対象とする、子どもの保護の分野における国連児童基金(ユニセフ)の活動への財政支援を評価するものである。 武器輸出 27.委員会は、オーストラリアが、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(または)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国に対して小型武器および軽兵器を含む武器を積極的に輸出していることに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国が、このような国への武器の販売を制限するいかなる具体的法律も定めていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(または)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への武器(小型武器および軽兵器を含む)の販売をとくに禁止する法律を導入するよう、勧告する。 29.委員会は、締約国が、刑法改正(クラスター弾の禁止)法案を2010年11月に上院に提出したことに留意する。クラスター弾に関する条約の批准および実施について締約国が行なっている努力は評価しながらも、委員会は、提案されている法案において、クラスター弾に関する条約で禁じられている活動へのオーストラリア軍の援助が容認されており、かつ、軍事同盟国がオーストラリア領域でクラスター弾を貯蔵しかつ委譲することが明示的に認められていることを、懸念するものである。さらに委員会は、同法案において、クラスター弾の開発または製造への直接間接の投資が明示的に禁じられていないことを懸念する。 30.委員会は、締約国に対し、クラスター弾に関する条約で禁じられている活動にオーストラリア軍が(合同軍事作戦中においても)従事しないことを確保するため、提案されている法案を修正するよう強く促す。委員会はさらに、提案されている法律を改正してクラスター弾の開発または製造への投資を禁止するよう勧告するものである。 VIII.フォローアップおよび普及 31.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を締約国におけるあらゆる関連の主体(国家元首、国防省、オーストラリア国防軍、連邦議会、オーストラリア国防軍学校、移民・市民権省および保健・高齢化省を含む)に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 32.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 33.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/174.html
総括所見:フィンランド(第2回・2000年) 第1回(1993年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.132(2000年10月16日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年9月19日に開かれた第643回および第644回会合(CRC/C/SR.643 and 644参照)において、1998年11月18日に提出されたフィンランドの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年10月6日に開かれた第669回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたこと、追加情報が提供されたこと、および、事前質問事項(CRC/C/Q/FIN/2)に対する文書回答が締約国によって提出されたことを、歓迎する。委員会は、対話の際に追加情報を提供するため代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全般的進展について締約国を称賛するとともに、包括的な社会保障制度ならびに子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、とりわけ無料の保健ケア、無償教育、長期の母性休暇、母と父の両方を対象とする親休暇および広範な保育制度に対する満足感をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ3参照)。委員会はまた、1990年代前半の景気後退が子どもに及ぼす影響を低減するために締約国が努力を行なったこと、および、子どもの福祉を左右する基盤が維持されてきたことも歓迎するものである。 4.委員会は、新たな法律が最近採択され、かつ、国内法を条約の原則および規定に一致させるための改正が行なわれたことを歓迎する。委員会はとくに、委員会の前回の勧告で勧告されたように(CRC/C/15/Add.53、パラ29参照)、政府が提案した法律によって未成年者からの性的サービスの購入および児童ポルノ資料の所持が犯罪化され、かつセックスツーリズムに関わる刑法改正によってフィンランド市民が国外で行なった性的虐待関連の犯罪が犯罪化されたこと、家族再統合の促進を目的として1999年外国人法が改正されたこと、ならびに、社会への移民の統合を促進し、かつ庇護希望者の受け入れ手続を定める法律が採択されたことに、留意するものである。委員会はまた、社会保健省が、子どもの商業的性的搾取を防止するための国家的プログラムを作成したことも歓迎する。 5.委員会は、国内における子どもの権利の実施の監督を任務とする、子ども問題担当の副議会オンブズマンが1998年に設置されたことを歓迎する。 6.委員会は、政府が1997年に寛容の促進および人種主義との闘いに関する政策指針を発表したことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、社会福祉サービスおよび保健ケア・サービスのあり方に関する政府の全国プログラム(1998~2001年)において民族的マイノリティの健康および福祉の促進のための活動が行なわれたこと、移民の子どもが教育に平等にアクセスできること、および、移民自身の言語による教育を促進するための措置がとられてきたことにも、留意するものである。 7.委員会は、児童福祉の全国的平準化制度により、自治体の経済状況に関わらず、必要に応じた適切なサービスへの子どものアクセスが向上していることを歓迎する。委員会はまた、フィンランド地方自治体協会が、2000年1月、自治体における子どもの権利条約の実施を促進する目的で子ども政策プログラムを採択したことにも、評価の意とともに留意するものである。加えて委員会は、とくに子どもおよび若者に影響を与えている精神的問題を考慮に入れた、社会福祉および保健に関する行動計画に、満足感とともに留意する。 8.委員会は、フィンランドが、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を最初に批准した国のひとつであり、かつILO・児童労働撤廃国際計画(IPEC)に対する主要なドナー国のひとつであることについて、同国を称賛する。 9.委員会は、国連本部で開催されたミレニアム・サミット条約イベントの際、フィンランドが子どもの権利条約の2つの選択議定書に署名したこと(2000年9月7日)を歓迎するとともに、締約国が2001年春に両選択議定書を批准するための措置をとろうとしていることに留意する。 C.さらなる進展を妨げる要因および困難 10.地方当局および広域行政圏当局に対する責任の委譲は地域コミュニティの関与を増進させる可能性があるものの、そのことにより同時に、条約の解釈、その適用および予算配分に関して地方および広域行政圏ごとの差異が存在することにより、条約の原則および規定の全面的かつ平等な実施が阻害されているように思われる。 D.主要な懸念事項 1.実施に関する一般的措置 調整 11.委員会は、政府内に子どもに関する中央担当部局が設けられておらず、かつ、子どもに関わるビジョンのある政策を調整し、かつ条約の実施を監視するための機構が中央および地方のいずれのレベルでも存在しないことを、依然として懸念する(CRC/C/15/Add.53、パラ11参照)。 12.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現のためのいっそう調整のとれた政策および行動を確立する目的で、政府内に子どもに関する中央担当部局を設け、かつさまざまな省庁間および中央・地方当局間の調整機構を設置するためにさらなる措置をとることを検討するよう、奨励する。 地方レベルにおける実施 13.委員会は、締約国において意思決定、行政およびサービス提供の地方分権化が大規模に進められていることにより、中央レベルから自治体に対して相当の権限が委譲されていることに留意する。しかしながら、すべての自治体が、社会でもっとも脆弱な集団、とくに貧困家庭、ひとり親家庭ならびに障害児、難民およびマイノリティの子どもに対して同一水準の社会政策および社会サービスを提供しているわけではない。 14.委員会は、締約国が、自治体当局による条約のあらゆる側面の実施に関する評価を行なうこと、および、自治体レベルで条約が効果的に実施されることを確保するためにあらゆる努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はまた、すべての自治体の子どもが基礎的社会サービスから等しく利益を受けられることを確保するための、統合的な監視制度または監視機構を設置するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.53、パラ23参照)も、あらためて繰り返すものである。 予算配分 15.委員会は、低所得家庭または障害のある子どもがいる家庭に対して地方当局が提供している福祉サービスの規模および水準が、自治体当局が利用可能な財源、これらの当局が定めた優先順位、および、ニーズを評価しかつ援助を供与するために用いられているシステムに相当の違いがあることもあって、全国のさまざまな自治体で不平等なものとなっていることを懸念する。これらの格差は、子ども、とくに障害のある子どもが、国内のどこに居住するかによって、福祉援助に不平等な形でしかアクセスできずまたは異なる水準の福祉援助が提供されるという、いずれかの効果を有するものである。 16.委員会は、締約国に対し、たとえば、条約の規定の実施に関する、かつ第2条にしたがった国レベルの最低基準および最低資源配分額を定めることにより、すべての子どもがその居住地に関わらず同一水準のサービスに平等にアクセスできることを保障する方法を検討するよう、促す。 データ収集 17.フィンランドの子ども統計に関する1998年の報告書、および、フィンランド社会を子どもの視点から革新的やり方で検討した子どもの生活条件に関する2000年の特別報告書など、統計の編纂に関する新たな取り組みは認知しながらも、委員会は、条約がとくに地方レベルでどの程度実施されているかを評価するためには、子どもの問題に関するデータおよび指標の恒常的かつ大規模な収集および分析をさらに発展させる必要があることに、留意する。 18.委員会は、締約国が、条約に一致した包括的なデータ収集システムを引き続き発展させるよう、勧告する。このシステムは、とくに脆弱な立場に置かれている子ども(虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、障害のある子ども、低所得家庭の子ども、法律に抵触した子どもならびに移民およびマイノリティの子どもを含む)をとりわけ重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅したものであるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約の効果的実施および監視のための政策およびプログラムの立案に際して指標およびデータを活用するよう、奨励する。 オンブズパーソン 19.子どもの権利を実施するための副議会オンブズマンが任命されたとはいえ、委員会は、国レベルのオンブズパーソンの設置に関する議論が継続していること、および、副議会オンブズマンの経験に基づいて締約国がこの点に関する最終的決定を行なうものとされていることに留意する。 20.委員会は、締約国に対し、他の北欧諸国の積極的な経験を考慮に入れながら国レベルの独立した子どもオンブズパーソンの設置を真剣に検討するとともに、財政上の考慮のみで決定が左右されないようにすることを慫慂する。 条約の原則および規定の普及 21.条約に関する情報の普及に関して締約国が行なっている努力(条約本文をサーミ語で刊行したことも含む)には留意しながらも、委員会は、条約の原則および規定が社会のあらゆるレベルで普及されているわけではないことに、懸念を表明する。加えて委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が体系的ではないことに留意するものである。 22.委員会は、締約国が、絵本およびポスターのような視覚資料等も通じて条約を促進するためのいっそう創造的な手法を発展させるとともに、条約を学校カリキュラムに編入するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約をロマの言語その他のマイノリティ言語に翻訳することおよび主要な移民集団の言語で条約を入手可能にすることを検討するよう、奨励するものである。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、とくに自治体委員会の委員および公的機関に焦点を当てながら、体系的な研修および(または)感受性強化措置をとることも勧告する。 2.一般原則 一般原則 23.委員会は、締約国が、社会福祉サービス利用者の地位および権利に関する法律のような最近の法改正において、子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利の原則を含めるための努力を行なったことに留意する。 24.委員会は、締約国に対し、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、発達に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)を自国の法律および政策によりよい形で反映させるため、引き続きあらゆる必要な措置をとるよう慫慂する。 子どもの最善の利益 25.子どもの最善の利益の原則を尊重するために締約国が相当の努力を行なっていることは認知しながらも、委員会は、とくに自治体当局がこの原則を必ずしも全面的に考慮していないこと、および、さらに、保護者のいない子どもの庇護希望者および難民の最善の利益が必ずしも第一次的に考慮されていないことを、懸念する。 26.条約第3条に照らし、委員会は、締約国が、上述の状況において最善の利益の原則の意味を余すところなく考慮すること、および、子どもに影響を与えるすべての決定においてこの原則が第一次的に考慮されることを確保するためにさらなる努力が行なわれるべきことを、勧告する。 発達に対する権利 27.条約第6条に関して、委員会は、発達に対する権利を締約国がどのように実施しているかについて締約国報告書で明示的言及がないことに留意する。 28.委員会は、締約国に対し、身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達に対するひとりひとりの子どもの権利というの視点から、自国の行動計画、戦略、政策およびプログラムを再検討するよう奨励する。 意見を聴かれる子どもの権利 29.委員会は、とくに子どもの監護をめぐる事案および裁判所に持ちこまれた面会交流紛争において、子ども、とくに12歳未満の子どもの意見が必ずしも全面的に考慮されていないことに、懸念を表明する。。 30.委員会は、締約国が、司法手続の影響を受ける12歳未満の子どもが十分に成熟していると見なされるときは常に意見を聴かれ、かつ、このような意見聴取が子どもにやさしい環境で行なわれることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどの程度考慮されているか、および、子どもの意見が政策立案および裁判所の決定、プログラムの実施ならびに子どもたち自身にどのような影響を与えているかについての定期的検討を行なうことも、勧告するところである。 3.市民的権利および自由 子ども参加 31.後期中等段階における生徒参加については認知しながらも、委員会は、とくに初等段階および前期中等段階の教育における子どもの参加に十分な注意が払われていないことを懸念する。 32.あらゆる段階の教育における子どもの参加権に関して政府が行なっている活動に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、とくに自分たちに関わる教育活動への子どもの参加を増進させるための効果的措置をとるよう奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 親からの分離 33.委員会は、失業率が高く、かつ子ども関連の手当に悪影響を与える予算措置がとられていることにより、子どもがいる家庭の純所得が相当に減少していることについて、深刻な懸念を表明する。 34.委員会は、締約国の経済が近年向上していることを考慮に入れ、締約国が、とくに里親養護または施設への子どもの措置を回避する目的で、子どもがいる家庭に対していっそうの資金を配分し、かつこれらの家庭に対して適切な支援を提供するための効果的な措置を発展させるよう、強く勧告する。 35.委員会は、家庭外に措置される子どもが近年増加していることに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が、明らかに子どもの最善の利益にかなう場合に限り、かつ可能なもっとも短い期間で子どもが家庭外に措置されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 家族再統合 37.移民の統合および庇護希望者の受け入れに関する法律(1999年)により、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れのあり方について若干の改革が導入されたことには留意しながらも、委員会は、家族再統合の手続にいまなおきわめて長い時間がかかること、および、このことが当事者の子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを、懸念する。 38.委員会は、締約国に対し、庇護申請の処理および子どもの定住の手続が遅延する理由を、その短縮を図る目的で検討するよう奨励する。 虐待およびネグレクト 39.締約国が家庭における子どものあらゆる体罰を禁じた世界で2番目の国である(1983年の子どもの監護およびアクセス権法)とはいえ、委員会は、子どもの対する暴力(家庭における性的虐待を含む)の件数について懸念を覚える。委員会はまた、この現象に関する情報がないことも遺憾に思うものである。 40.委員会は、締約国が、家庭における子どもへの暴力の発生を防止するとともに、これが不可能であった場合には、その発生を適時に発見し、早い段階で介入し、かつ、子どもとともに活動する特別訓練を受けた人員を備えた、防止、治療およびリハビリテーションのための子どもにやさしいプログラムおよびサービスを発展させることを目的とした追加的措置をとることを検討するよう、勧告する。 5.基礎保健および福祉 慢性疾患児 41.委員会は、慢性疾患児がいる家族が人材面でも財政面でも必ずしも十分な支援を受けられていないことに、懸念とともに留意する。 42.障害のある子どもの権利を確保するために締約国が行なっている努力を認めつつ、委員会は、締約国が、慢性疾患児がいるすべての家族に対して平等な支援および援助(専門スタッフの助力も含む)を提供するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 入院している子ども 43.委員会は、経費削減措置のために多数の小児病棟がすでに閉鎖されまたは閉鎖のおそれに直面していること、および、子どもが成人病棟で(成人と同室の場合さえある)ケアを受けていることを、懸念する。 44.委員会は、このような状況を監視するよう求めた広域行政圏当局への最近の要請に留意しつつ、締約国が、入院している子どもに対し、ヨーロッパ入院児連盟(EACH)の入院児憲章にしたがった適切なケアを確保するための効果的措置をとるよう、勧告する。 精神保健サービス 45.精神医学サービス、とくに小児および若者向けの精神医学に対して政府としての支援を提供するために追加的資金が配分されていることは認知しながらも、委員会は、精神病の子どもが成人と同じ施設に措置されていることについての懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ16参照)。さらに委員会は、心理学者および精神科医の人数が不十分であることから、精神保健サービスおよび子どものための専門家による対応を受けるまでの待機期間が長く、かつこれらのサービスおよび専門家へのアクセスが遅延していることについて、締約国とともに懸念を表明するものである。 46.委員会は、締約国に対し、子どもが精神保健サービスにいっそう適時にアクセスできるようにし、かつ精神病の子どもが成人と同じ施設に措置されるのを防止する目的で、とくにフィンランドの北部および東部ならびに資源が他の自治体よりも少ない小規模自治体において小児精神科医および小児心理学者の不足に対応するよう、奨励する。 保育サービスおよび保育施設 47.委員会は、自治体が母子福祉クリニックのサービスを提供していることに評価の意とともに留意するものの、これらのクリニックのあり方およびこれらのクリニックに対する資源の提供に関して自治体間で違いがあることを懸念する。 48.委員会は、締約国が、母子クリニックによって提供されるサービスからすべての子どもが同程度の利益を得られることを確保するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育に対する権利 49.委員会は、一部自治体で経済的要因による教員の解雇が行なわれており、これが授業に対しておよび教育の質に対して悪影響を及ぼす可能性があることに対し、締約国とともに懸念を表明する。 50.委員会は、締約国が、国の諸地域間ならびに種々の学校および教育施設間における平等を確保するため、改正された学校関連法制を実施するよう勧告する。 7.特別な保護措置 保護者のいない子ども、子どもである庇護希望者難民 51.委員会は、保護者のいない未成年者が庇護申請を行なった場合に成人と同じ方法による事情聴取の対象とされることを懸念する。さらに、保護者がいない未成年の庇護申請者のための代理人制度が設置されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、保護者のいない未成年の庇護申請者の代理人に対して十分な資源および研修を確保するために十分な努力が行なわれていないことに、懸念を表明するものである。また、子どもの難民を対象とした、その子どもの言語による教育が利用可能とされているのは、十分な資源を提供できる自治体のみであるようにも思われる。 52.委員会は、締約国が、子どもの難民の受け入れを対象とする職員の研修(とくに子どもの事情聴取技法に関するもの)および保護者のいない未成年の庇護申請者の代理人の研修のために十分な資源を確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民が、その立場および居住地に関わらず同一水準のサービス(とくに教育)に平等にアクセスを認められるようにするための措置を検討することも、奨励するものである。 53.委員会は、戦争の影響を受けている地域の出身であり、かつトラウマ性の経験の被害を受けた可能性のある子どもの庇護希望者および難民が多いことに、懸念とともに留意する。 54.委員会は、締約国が、締約国への到着と同時に特別な支援を必要とする子どもを特定するためにあらゆる努力が行なわれることを確保するとともに、このような子どもおよびその親に対して十分な心理的援助を提供することを検討するよう、勧告する。 有害物質濫用 55.委員会は、締約国の青少年の間で薬物(とくに強度の薬物)の使用ならびにアルコールおよびタバコの濫用が増えているという報告に、懸念を覚える。さらに委員会は、現在の児童福祉サービス制度ではサービスのニーズの増加に対応できないことに留意するものである。 56.委員会は、薬物政策に関する原則決定(1999年)に評価の意をもって留意するとともに、締約国に対し、前向きな文化的変革のためのエンパワーメントを図り、かつ意識啓発および防止のための措置(学校における薬物教育を含む)を継続するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、子どもにとくに適合した治療療法およびリハビリテーション・サービスを行なうため、児童福祉サービス制度にいっそうの資源配分を行なうよう、勧告するものである。 性的搾取 57.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.53、パラ19および29参照)にしたがい、性的搾取からの子どもの保護を向上させるために締約国が実施した法律の見直しその他の措置は評価しながらも、委員会は、フィンランド人の子どもセックスツーリストが売春を行なう子どもを求めて近隣の旧ソ連諸国に旅行する現象に、深い懸念とともに留意する。 58.委員会は、締約国に対し、このような現象と闘うための十分な措置をとるとともに、フィンランド市民が国外で行なった子どもの性的虐待および搾取の事件を捜査しかつ訴追するための国際協力を継続するよう、促す。 マイノリティまたは先住民族集団に属する子ども 59.委員会は、ロマの子どもの学校中退率が高いことに関する懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ18参照)。 60.委員会は、特別教育を発展させかつ社会的排除を防止するために締約国がとった措置(学校の授業におけるロマ語の地位の強化、ロマ語による教育資料の開発および教員養成など)に留意し、これらの措置の実施を勧告する。委員会は、締約国に対し、この分野における努力を継続するとともに、委員会に対する次回の定期報告書で、これらの措置がロマの子どもに与えた影響についての情報を提供するよう、要請するものである。 締約国報告書の普及 61.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、第2回定期報告書、委員会が提起した事前質問事項および締約国が提出した文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した報告書についての総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/rebelinc/pages/41.html
難易度 ★★★★★★★★★★ 概要 8番目に開放されるマップで3番目に開放されるスペシャルマップ 主な懸念 仕事 学校 電気通信 発狂するほど非常に難しいマップ。 本部はさまざまなおすすめな場所があるが今回はここ 反乱軍は非常に強く、仕事が懸念になりやすく、遠隔が多く安定化が遅い。 遠隔地が多くアクセスが遅い。 その上マップのいたるとこでケシ畑が生成される。 ケシ畑は時間が経つとゲージがたまっていき、(遠隔地だと10倍かかる) ケシ畑を破壊しないと支援レベルが下がったり、汚職が広がり、評価が下がったり、反乱軍が強化される。 麻薬対策を出資して兵士にケシ畑を破壊しよう。 ただし、区域に敵対者が増える。 攻略 反乱軍の湧く位置によってはほぼ負け確なので即座にリスタートをおすすめする。 ケシ畑を破壊するときは麻薬対策と雇用支援プログラムとセットで出資しよう。 ?マークがあったら大体ケシ畑なので細かく見ておこう。 反乱軍と戦ったり、ケシ畑を破壊するため兵士数を増やしておくこと 反乱軍の数によっては負けることがあるので2部隊で反乱軍を撃退しよう。 仕事の懸念がすごいので早めに出資しておこう。 未改革の道路が多く兵士を動かすのに時間がかかるため注意。 南東の都市部はとても安定化が早い。(本部におすすめ) 特殊戦略 麻薬対策 おすすめ度★★★★★ 兵士達がケシ畑を破壊ことができる。 ただし、区域に敵対者が増える。 雇用支援プログラム おすすめ度★★★★★ 兵士達がケシ畑を破壊しても敵対者が増えなくなる。 畑ごとに費用がかかる。 時間が経つにつれてコストが多くなる。 アヘンの取り締まり おすすめ度★☆☆☆☆ アヘンの生産量が一時的に減少。 評価を1獲得。 汚職が増えるためいらない。 強化された監視 おすすめ度★☆☆☆☆ 一度に複数の区域をスキャンできるようになる 汚職が増えるためかなり微妙。 動画
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/294.html
総括所見:ポーランド(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2015年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.194(2002年10月30日)/第31会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年10月1日に開かれた第827回および第828回会合(CRC/C/SR.827 and 828参照)において、1999年12月2日に提出されたポーランドの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.12)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況に関する理解をいっそう明確にしてくれた、締約国の第2回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/POL/2)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国から派遣された部門横断型の代表団に評価の意とともに留意するとともに、率直な対話、ならびに、議論の際に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の原則の多くを具体化した新憲法を1997年に採択したことを歓迎する。 4.委員会は、締約国が、ポーランド全域における子どもの権利の監視に責任を負う子どもオンブズマン事務所を2000年に設置したこと、ならびに、子どもの権利および条約の実施に関連する政府の政策の評価において議会監査庁が役割を果たしていることを歓迎する。 5.委員会は、条約をさらに実施するためにとられたさまざまな立法措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 地域家庭援助センターの設置について定めた、社会福祉法を改正する1998年7月24日の法律。 (b) 地域家庭援助センターを基礎とする社会福祉の枠組みのなかで家族の保護および子どものケアに関する一貫した制度を創設した、社会福祉法および年金法を改正する2000年1月7日の法律。 6.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准したことを歓迎する。 7.委員会はまた、締約国が、家族問題全権事務所に代わる機関として、家族問題・男女平等政府全権事務所を創設したこと(2001年)にも留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 8.委員会は、自由市場経済への移行の結果、締約国が引き続き経済的困難および高い失業率に直面していることを認知する。これによって地域格差および貧困の増大が生じており、そのため、被害を受けやすい状況に置かれた、子どものいる家族の福祉および生活水準に悪影響が生じてきた。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 留保および宣言 9.委員会は、締約国が条約第7条および第38条に付した留保ならびに第12~17条および第24条に関して行なった宣言の撤回を検討するプロセスが2001年に再開された旨の、代表団によって提供された情報を歓迎する。 10.ウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国が条約に付した留保および条約について行なった宣言をいずれも撤回するプロセスを継続しかつ完了させるよう奨励する。 立法 11.1997年に新憲法が採択されたことおよびその後国内法の改正が行なわれたことには留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、いまなおすべての国内法において条約の規定および原則が全面的に遵守されているわけではないことを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国に対し、国内法が、とくに少年司法、保護者のいない庇護希望者および子どもの性的搾取の分野で条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 調整 13.委員会は、子どもおよび若者に関する政策の調整は国家教育スポーツ大臣が担当する旨の閣僚評議会議長の決定、および、締約国が国家的行動計画を策定中である旨の代表団の情報に留意する。それでも委員会は、さまざまな省庁によっておよび諸行政段階において運営されている活動およびプログラムが調整を欠いていることを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、国家教育スポーツ省に対し、政策調整に関する責任を効果的に履行するための十分な財源、人的資源および物的資源が提供されること、ならびに、子どもとともにおよび子どものために活動する諸省庁間およびあらゆる行政段階間で協議および調整を図るための適切な機構が設置されることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 15.委員会は、前述のとおり、子どもオンブズマン事務所の設置および議会監査庁が果たしている役割を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どもオンブズマン事務所のための資源が十分でないことを懸念するものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに関する問題を評価する内部監視機関としての議会監査庁の役割を強化するとともに、国および地方双方における条約の実施の監視および自己評価のための包括的制度を確立すること。 (b) 子どもオンブズマンに対し、その責任を履行できるようにするための十分な資源を提供すること。 (c) 国および地方双方のレベルで子どもの権利および子ども政策を監視するにあたり、非政府組織よび市民社会組織と連携すること。 資源配分 17.委員会は、中央予算における子どものための配分額が、2000年から2001年にかけて減少しており、かつ、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応すること、ならびに、子どもに提供されるサービスに関して農村部と都市部との間に存在している格差を克服しかつ是正することのためには不十分であることに、懸念とともに留意する。 18.困難な経済状況は認識しながらも、委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いて」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先的に位置づけることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。締約国が行政改革およびサービス提供の地方分権化のために行なっている努力に留意しつつ、委員会は、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いながら、子どもの経済的、社会的および文化的権利を平等に実施する農村部および都市部の地方政府の能力強化を図るよう、勧告するものである。 データ収集 19.委員会は、事前質問事項(CRC/C/Q/POL/2)に対する文書回答に掲載された追加の統計データ、および、省庁間のデータの交換を改善し、かつその比較および分析を促進する目的で「E-ポーランド」というプログラムが開始される旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、ジェンダー別にとくに細分化されたデータがごくわずかであること、および、条約が対象とするすべての分野についてデータおよび指標が利用可能であるわけではないことを、依然として懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 現行のデータ収集・指標システムが、ジェンダー別に、かつ適切なときはマイノリティおよび民族的集団別ならびに都市部および農村部の別に、細分化されることを確保すること。現行のデータ収集システムは、条約が対象とするすべての分野(少年司法制度、および、性的搾取または性的虐待の被害を受けた子どもに提供される援助のあらゆる側面を含む)が含まれるようにするため、関連の省庁および公的機関の援助を得て拡大されるべきである。当該システムにおいては、とくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども(虐待、ネグレクトまたは不当な取扱いの被害を受けた子ども、障害のある子ども、民族的集団に属する子ども、子どもの難民および庇護希望者、法律に抵触した子ども、働いている子ども、路上で生活している子ども、商業的性的搾取および人身取引に関与させられている子ども、ならびに、農村部および経済的に窮乏している地域の子どもを含む)を具体的に重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅することが求められる。 (b) 条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のためにこれらのデータおよび指標を活用すること。 市民社会との協力 21.活気のある市民社会の存在にもかかわらず、委員会は、条約を実施するために政府が行なっている努力に非政府組織が全面的に関与しているわけではないことを懸念する。 22.委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、国および地方のレベルで、条約の実施のあらゆる段階(政策立案を含む)を通じて、より体系的なかつ調整のとれたやり方で非政府組織の関与を得るよう勧告する。 普及 23.条約の原則および規定に関する意識を促進するための締約国の取り組みおよび子どもオンブズマンの多くの活動には留意しながらも、委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団ならびに子ども、親および公衆一般が、条約およびそこに体現された権利基盤アプローチについていまなお十分に認識していないことを懸念する。 24.委員会は、締約国が意識啓発のための努力を強化するよう勧告するとともに、締約国に対し、とくに議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、保健従事者(心理学者を含む)、ソーシャルワーカーおよび宗教的指導者ならびに子どもおよびその親を対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施するよう奨励する。 2.子どもの定義 25.委員会は、刑事責任に関する明確な最低年齢が定められておらず、かつ、場合によって10歳という低年齢の子どもも刑として教育的措置を言い渡される可能性があることを懸念する。 26.委員会は、少年が関わる事件における手続についての法律(1982年)で少年が13~17歳の者とされていることから、締約国が、すべての事件で刑事責任に関する最低年齢を13歳と定め、当該年齢に満たない子どもに対しては矯正措置または教育的措置のいずれも刑として言い渡すことはできないようにすることを勧告する。 3.一般原則 差別の禁止 27.委員会は、被害を受けやすい状況に置かれた一部の集団の子ども(ロマその他の民族的マイノリティの子ども、施設で暮らしている子ども、障害のある子ども、貧困家庭の子どもおよびHIV/AIDSに感染している子どもを含む)との関連で差別の禁止の原則が十分に実施されていないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、これらの子どもが十分な保健サービス、教育サービスその他の社会サービスに限られた形でしかアクセスできていないこと、および、人種的動機に基づく暴力が行なわれており、かつ警察が被害者を保護していないという報告があることを懸念するものである。 28.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を増進させるとともに、あらゆる理由に基づく、かつ被害を受けやすい状況に置かれたあらゆる集団に対する差別を解消するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、勧告する。 29.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条第1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、行政上および司法上の手続において子どもの意見を考慮するよう求めるために締約国が行なっている努力に留意するものの、実際には、とくに保護者のいない子どもの難民申請者、罪を犯した少年および施設に措置された子どもが関わる手続ならびに監護権をめぐる審判において、この原則が常に実施されているわけではないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、裁判所およびすべての行政機関による子どもの意見の尊重ならびに自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を促進しかつその便宜を図るため、立法を含む効果的措置をとること。 (b) とくに親、教員、政府行政官、司法機関、ローマカトリック教会およびその他の宗教的集団ならびに社会一般に対し、自己の意見を考慮され、かつ自己に影響を与える事柄に参加する子どもの権利についての教育的情報を提供すること。 4.市民的権利および自由 良心および宗教の自由 32.委員会は、公立学校で宗教の授業に代えて倫理の授業に子どもを出席させる親の選択権を保障する規則があるにもかかわらず、実際には、そのような選択を可能にする倫理の授業をほとんどの学校が実施していないこと、および、生徒は親の同意を得なければ倫理の授業に出席できないことを懸念する。 33.委員会は、締約国が、すべての公立学校で、子どもが、子どもの発達しつつある能力に一致するやり方で提供される親の指示を得て、宗教の授業または倫理の授業のどちらに出席するかを自由に選択することが認められることを確保するよう、勧告する。 不当な取扱いおよび暴力 34.委員会は、家族間暴力に対処するための「ブルーカード」プログラムが開始されたことには留意するものの、子どもの虐待ならびに家庭および学校における暴力が締約国で依然として問題となっており、かつ、子どもの虐待およびネグレクトについての苦情を受理しかつこれに対応する全国的制度が存在しないことを懸念する。委員会はまた、虐待の被害者およびその家族に対する回復および再統合の支援が限られていることも懸念するものである。さらに委員会は、家庭、学校および刑務所等のその他の施設においてならびに代替的養護の文脈で、体罰が広く実践されていることを懸念する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに配慮したやり方で苦情の受理、監視および調査を行ない、かつ必要な場合には事件を訴追するための全国的制度を設置するとともに、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象としてこの点に関する研修を実施すること。 (b) 家族間暴力の被害者および加害者の双方に(介入または処罰に留まるのではなく)適宜支援および援助を提供し、かつ、暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできるようにすることを目的とした包括的かつ全国的な対応制度を、とくに地方行政が家庭危機センターを設置するための十分な資源を有していないコミュニティで、設置すること。 (c) 問題の規模を適正に評価する目的で、虐待の加害者および被害者に関するデータ(ジェンダー別および年齢別に細分化されたもの)を収集するための機構を確立し、かつ、虐待に対応するための政策およびプログラムを立案すること。 (d) 家庭、学校および他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すること。 (e) 子どもの不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育プログラムを実施するとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律維持を促進すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 36.委員会は、締約国の多数の子どもが施設で生活しており、かつ、その相当の割合が本来の孤児ではなく「社会的」孤児であることを懸念する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの施設措置の定期的再審査が子どもの意見および最善の利益を考慮しながら行なわれることを確保するとともに、可能なときは常に、適切なカウンセリングおよび支援を提供しながら子どもをその家族に再統合させること、または施設措置以外の形態の養護を得られるようにすることを目指すこと。 (b) 里親家族にいっそうの金銭的支援を提供し、かつ里親家族のカウンセリングおよび支援のための機構を増やすことにより、里親養育制度を拡大すること。 (c) 子ども自身が置かれている環境での介入および子どもに対する援助をソーシャルワーカーがよりよいやり方でできるようにするため、ソーシャルワーカーの能力およびスキルを向上させること。 (d) 閉鎖が予定されている施設に現在入所している子どもが十分な情報を提供され、かつ自己の将来の措置に関する決定に参加できること、および、これらの子どもが社会的保護に対する権利を引き続き保障されることを確保するための手続を確立すること。 6.基礎保健および福祉 38.子どもの健康指標が良好であり、かつ継続的に改善されていることには心強い思いを感じながらも、委員会は、にもかかわらず、健康的ではない行動およびライフスタイルが増えていること、ならびに、母乳育児を続ける母親の割合が低いことを懸念する。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに子どもおよび若者の間で健康的なライフスタイルを促進することにより、健康促進・健康教育プログラムの有効性を高めること。 (b) 母親に対し、生後6か月間は乳児を母乳だけで育てることおよび母乳育児を2年間継続することを奨励し、かつその利点に関する教育を行なうための措置をとること。 障害のある子ども 40.委員会は、障害のある子どもが全員、統合された学校および教育プログラムに出席する機会を有しているわけではないこと、ならびに、場合によって、自宅に近い場所で適切なプログラムが設けられていないために、障害のある子どもが施設に措置され、または定期的に通学しないこともあることを懸念する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設で生活する障害のある子どもの人数を減らし、かつ、これらの子どもを普通教育・職業訓練プログラムならびに社会活動、文化活動および余暇活動に統合するための、期限付きの計画を策定すること。 (b) 障害のある子どもにとってアクセシブルかつ適切であり、かつ社会への完全参加の確保につながる統合教育の便益がこれらの子どもに対して提供されることを確保するため、ポヴィヤト(郡)に対して十分な財源、人的資源および組織的資源を提供すること。 思春期の健康 42.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 10代の妊娠率が相対的に高く、かつ、リプロダクティブヘルスに関する教育またはサービスに思春期の子どもが限られた形でしかアクセスできていないこと。 (b) 思春期の子どもの喫煙が過度に蔓延していること。 (c) アルコール、薬物および違法物質の濫用が10代の間で増えていること。 43.委員会は、締約国が、思春期の子どもをとくに対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関するかつ喫煙ならびに薬物およびアルコールの危険性に関する健康教育・意識啓発プログラムを、学校、地域クラブ、家族センターおよび子どもとともに活動しているその他の施設に導入するよう勧告する。 7.教育 44.委員会は、貧困家庭の子どもに対して教科書を給付し、かつすべての学校にコンピューターを備え付ける新たな取り組みには留意しながらも、都市部と農村部との間で、とくに幼稚園ならびに課外のプログラムおよび活動との関連で、教育へのアクセス、学校の物的条件および教室の差をめぐる格差が広がりつつあることを依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより、農村部の子どもが、労働市場に参入しまたは能力に応じて大学レベルの教育に進むためのスキルを与えてくれる良質な教育の機会を平等に持てることを確保するよう、勧告する。 (a) 農村部ですべての子どもを対象とする十分かつ適切な幼稚園施設が設けられることを確保しながら、とくに子どもと同世代の友人間の交流を涵養するプログラムおよび乳幼児期の教育の利点に関する親教育プログラムを通じて、子どもの認知的、社会的および情緒的発達を促進するための革新的手段を追求するとともに、条約第29条第1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目的に教育制度を適合させ、かつ、子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムに導入すること。 (b) 農村部および貧困コミュニティに対し、都市部の学校と同一の質の教育および同一水準の課外プログラムを提供できるようにするための追加資金が提供されることを確保すること。 (c) 貧困家庭の子どもまたは農村部の子どもが、大学進学準備のために普通中等学校に通学できるようにするための奨学金その他の形態の金銭的支援にアクセスできることを確保すること。 8.特別な保護措置 子どもの難民および保護者のいない未成年の庇護希望者 46.委員会は、難民事案の処理をいっそう速やかに進めるために締約国が行なっている努力に留意するものの、保護者のいない未成年者による申請の処理が、難民申請を行なうそのような未成年者の法的代理人(このような代理人は行政上の事項についてのみ責任を負い、子どもの最善の利益にのっとって行動する義務を負わない)を選任する煩雑な手続によって滞っていることを懸念する。さらに委員会は、難民申請の処理が終了するのを待っている子どもが、緊急収容棟に収容される場合には教育の機会を与えられず、かつ場合によって罪を犯した少年とともに収容されていることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 難民認定処理に関する現行法を改正して、保護者のいないすべての未成年者に対し、当該未成年者について責任を負い、その意見を考慮しながら当該未成年者の最善の利益にのっとって行動することを義務づけられる法的後見人が直ちに選任されることを確保すること。 (b) 一時的に緊急収容棟に措置された子どもが罪を犯した少年とともに収容されないこと、および、当該収容がもっとも短い可能な期間でのみ行なわれ、かつ法律により定められた上限である3か月を超えないことを確保すること。 (c) 緊急収容棟もしくは難民受け入れセンターにおいてまたはその他の形態のケアを受けながら難民申請の処理の終了を待っているすべての子どもが、教育に全面的にアクセスできることを確保すること。 性的搾取および人身取引 48.人身取引の防止および被害者の送還のための地域的プログラムへの協力の取り組みを締約国が強化していることには留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、ポーランドが依然として、性的搾取目的で人身取引の対象とされる子どもの送り出し国、目的地国および通過国になっていることを懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国際労働機関(ILO)の最悪の形態の児童労働条約(第182号)、および、 国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准する旨の意向に沿った対応を進めるとともに、それぞれストックホルム(1996年)および横浜(日本、2001年)において開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり、子どもの商業的性的搾取に関する国家的行動計画を策定すること。 (b) 買売春およびポルノ的資料の制作に従事させられた18歳未満のすべての者が、犯罪者として扱われず、かつ全面的保護を享受できることを確保すること。 (c) 法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象として、苦情申立てを子どもに配慮したやり方で受理し、監視し、捜査しかつ訴追する方法についての研修を実施すること。 (d) 人身取引および強制買売春の被害を受けたすべての者が、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 少年司法 50.委員会は、未決勾留措置として、または少年矯正施設における行為への懲罰として、緊急棟に著しく長い期間収容される少年が多いことを懸念する。加えて、委員会は、すべての少年拘禁施設が、家族との接触を維持する子どもの権利を保障し、または十分な生活水準を提供しているわけではないことを懸念するものである。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年開催)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 緊急棟への収容が認められる期間の上限を3か月と定めた規則を執行すること。 (c) 自由の剥奪を最後の手段としてのみ用いるとともに、自由を奪われた子どもの権利(拘禁環境に関わるものを含む)を保護すること。 マイノリティ集団に属する子ども 52.委員会は、ロマの状況の改善を目的とした試行事業が一部の件で行なわれているにもかかわらず、ロマがいまなお広範な差別に苦しんでおり、場合によっては教育、保健および社会福祉に対するロマの子どもの権利が阻害されていることを懸念する。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会一般で、ならびに、とくに保健サービス、教育サービスその他の社会サービスを提供する公的機関および専門家の間に存在するロマへの否定的態度に対処することを目的としたキャンペーンを、あらゆるレベルおよびあらゆる県で開始すること。 (b) すべてのロマの子どもを普通教育に統合することおよび特別学級へのロマの子どもの隔離を禁止することを目的とし、かつ、ロマの子どもがコミュニティにおける第一就学言語を学ぶための就学前プログラムを含む計画を策定しかつ実施すること。 (c) ポーランド社会でロマについての理解、寛容および尊重を促進するため、すべての学校を対象とした、ロマの歴史および文化を含むカリキュラム資料を開発すること。 9.子どもの権利条約の選択議定書および条約第43条第2項の改正 54.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書をまだ批准していないことに留意する。 55.委員会は、締約国が子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 56.最後に、条約第44条第6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 57.委員会は、締約国の報告の遅延を認識しつつ、条約第44条に定められた規則を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調したい。これを担当する委員会は、子どもの権利の実施における進展を定期的に審査する機会を持てるべきである。これとの関連では、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことがきわめて重要になる。締約国が条約に基づく義務をふたたび全面的に遵守するようになることを援助するため、委員会は、例外的措置として、締約国に対し、第4回定期報告書を、当該報告書について条約が定める提出期限、すなわち2008年7月7日の前に提出するよう慫慂するものである。この報告書は、第3回および第4回報告書を統合したものとされる。 更新履歴:ページ作成(2017年2月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/15.html
子どもの権利員会:総括所見:日本(子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書) 第1回(1998年)/第2回(2004年)/第3回(2010年)/第4-5回(2019年)OPAC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/JPN/CO/1 配布:一般 2010年6月11日 原文:英語(PDFファイル) 【日本語仮訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議】】(注:リンクは訳者による補足である。また、原文では勧告部分が太字になっているが、ここではパラグラフ番号のみを太字とした。) 子どもの権利委員会 第54会期 2010年5月25日~6月11日 子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書第12条第1項に基づいて締約国が提出した報告書の検討 総括所見:日本 1.委員会は、2010年5月28日に開かれた第1513回会合(CRC/C/SR.1513参照)において日本の第1回報告書(CRC/C/OPSC/JPN/1)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPSC/JPN/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、部門を横断した代表団との建設的対話に謝意を表する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年6月11日に採択された、条約に基づく締約国の第3回定期報告書についての総括所見(CRC/C/ JPN/CO/3)および武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、以下の点に評価の意とともに留意する。 (a)インターネット上の出会い系サイトを通じた子どもの性的搾取と闘うため、2003年6月に出会い系サイト規制法が制定されたこと。 (b)人身取引被害者が退去強制の対象とされないことを確保するため、2005年6月に出入国管理及び難民認定法が改正されたこと。 (c)「人身取引対策行動計画2009」が策定されたこと。 (d)国連児童基金が推進する「旅行および観光における性的搾取から子どもを保護するための行動規範」(2005年)に旅行・観光業界の代表が署名したこと。 II.データ データ収集 5.選択議定書違反を構成する行為に関連した検挙件数についての締約国の情報は認知しながらも、委員会は、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーの発生状況を被害児の人数の観点から明らかにしたデータ(年齢、性別、民族的集団および所在ごとに細分化されたもの)が存在しないこと、および、選択議定書が対象としている特定の分野に関する調査研究が行なわれていないことを懸念する。 6.委員会は、締約国が、議定書が対象とする犯罪に関する調査研究を実施し、かつこれらの犯罪を登録する中央データベースを設けるとともに、このようなデータが体系的に収集され、かつとくに被害者の年齢、性別、民族的集団および所在ごとに細分化されることを確保するよう勧告する。このようなデータは政策の実施状況を測定するために必要不可欠な手段だからである。また、罪種別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集されるべきである。 III.実施に関する一般的措置 立法 7.委員会は、この分野における現行法の多さにも関わらず、国内法と選択議定書の規定との調和が限定されたままであり、かつ子どもの売買が具体的罪名に含まれていないことを懸念する。 8.委員会は、締約国が、国内法を選択議定書と調和させるプロセスを引き続き進め、かつ完了させるよう勧告する。 9.委員会は、締約国に対し、議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施するためには、立法において子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)に関わる義務が充足されていなければならないことを想起するよう求める。 国家的行動計画 10.2001年に「児童の商業的性的搾取に対する国内行動計画」が採択されたことおよび「人身取引対策行動計画」(2009年)が存在することには留意しながらも、委員会は、2つの行動計画の関係、その効果、および、これらの行動計画において選択議定書のすべての分野が対象とされているか否かに関する情報が存在しないことに留意する。 11.(a)委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (i)選択議定書のあらゆる規定を考慮しながら、これらの行動計画の実施の調和を図り、かつすべての子どもの包括的保護を確保する目的で、これらの行動計画を見直し、かつ必要な場合には改訂すること。 (ii)子どもおよび市民社会を含む関係当事者と協議しながらこれらの行動計画を実施すること。 (iii)これらの行動計画を広く普及し、かつその実施状況を監視すること。 (b)これとの関連で、締約国は、それぞれ1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された第1回、第2回および第3回子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された、宣言および行動アジェンダならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れるよう促される。 調整および評価 12.委員会は、選択議定書の実施および関連の活動の調整を担当する機構が存在しないことに懸念を表明する。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の効果的実施および国と地方の公的機関間の調整の強化を確保するための十分な財源および人的資源を備えた調整機関を設置するよう勧告する。 普及および研修 14.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発活動が不十分であることに、懸念とともに留意する。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)選択議定書の規定が、とくに学校カリキュラムおよびキャンペーンを含む長期的な意識啓発プログラムを通じ、とくに子ども、その家族およびコミュニティを対象として広く普及されることを確保すること。 (b)議定書第9条第2項にしたがい、議定書に掲げられた犯罪の有害な影響および被害者が利用可能な救済手段についての意識を、研修および教育キャンペーンを通じ、子どもを含む公衆の間で促進すること。 (c)選択議定書に関連する諸問題についての意識啓発活動および研修活動を支援するため、市民社会組織およびメディアとの協力を発展させること。 16.委員会は、法執行機関および矯正機関を除き、選択議定書に関する専門家の研修が不十分であることを懸念する。 17.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもとともに活動するあらゆる専門家集団を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的なかつジェンダーに配慮した教育および研修を強化するよう勧告する。 資源配分 18.委員会は、締約国報告書に、とくに犯罪捜査、法的援助ならびに被害者のための身体的および心理的回復措置との関係で、選択議定書を実施するための資源の配分に関する情報が記載されていないことを懸念する。 19.委員会は、締約国に対し、調整、防止、促進、保護、ケア、捜査および選択議定書が対象とする行為の抑止のため、関連の公的機関および市民社会組織に対する十分な予算配分を確保するよう奨励する。そのための手段には、議定書の規定に関わるプログラムの実施、とくに犯罪捜査、法的援助ならびに被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に使途を指定した上で人的資源および財源を配分することも含まれる。 独立の監視 20.委員会は、国レベルで選択議定書の実施を監視する独立機構が存在しないことに懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、5つの自治体で子どもオンブズパーソンが任命されているという締約国の情報に留意するものである。しかしながら委員会は、これらのオンブズパーソンの権限および職務、その独立性および効果的活動を確保するために利用可能な財源その他の資源、ならびに、2002年の人権擁護法案に基づいて設置予定の人権委員会との関係のあり方の構想に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)早期に人権擁護法案を通過させ、かつ国内機関の地位に関するパリ原則(国連総会決議48/134)にしたがった国家人権委員会を設置できるようにするとともに、同委員会に対し、条約の実施を監視し、苦情を受け付けてそのフォローアップを行ない、かつ子どもの権利の組織的侵害を調査する権限を与えること。 (b)次回の報告書において、子どもオンブズパーソンに与えられた権限、職務および資源についての情報を提供すること。 (c)独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮すること。 22.5つの自治体で子どもオンブズパーソンが任命されているという締約国の情報に評価の意とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書の実施を監視する国の機構が存在しないこと、および、それ以外の自治体ではオンブズパーソンが活動していないことを懸念する。 23.委員会は、締約国が、選択議定書の実施を監視するための国レベルの機構が国内機関の地位に関するパリ原則(国連総会決議48/134)にしたがって設置されること、および、現在オンブズパーソン事務所が活動していない自治体においてオンブズパーソンが任命されることを確保するよう勧告する。 市民社会 24.委員会は、選択議定書の実施に関わるあらゆる分野で、締約国による市民社会との協力および連携の水準が低いことを遺憾に思う。 25.委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするあらゆる事柄について市民社会との連携を強化するよう奨励する。そのための手段には、選択議定書違反の被害を受けた子どもに十分なサービスを提供しようとしている非政府組織を支援すること、および、政策およびサービスの発展および監視における非政府組織の役割を促進することなどが含まれる。 IV.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーの防止(第9条第1項および第2項) 選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置 26.委員会は、子どもポルノグラフィーおよび子ども買春と闘うために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、これらの犯罪が蔓延していることに鑑み、防止措置が依然として不十分であることを懸念するものである。さらに委員会は、選択議定書に掲げられた犯罪をともなう組織犯罪と闘うためにとられた措置についての詳しい情報が存在しないことに留意する。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a)近隣諸国との連携および2国間協定等も通じ、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーを防止するための努力を強化すること。 (b)これらの犯罪を、とくに国境を越えて遂行することを容易にしている技術的進歩を考慮に入れながら、組織犯罪と闘うための行動計画の採択を検討すること。 (c)国連・国際組織犯罪防止条約(2000年)の批准を検討すること。 28.子どもポルノグラフィーの所持が必然的に子どもの性的搾取の帰結であることに鑑み、委員会は、児童買春・児童ポルノ禁止法第7条第2項において児童ポルノを「特定少数の者に提供する目的で」所持することが犯罪化されているとはいえ、子どもポルノグラフィーの所持が依然として合法であることに懸念を表明する。 29.委員会は、締約国に対し、選択議定書第3条第1項(c)にしたがって子どもポルノグラフィーの所持を犯罪に含めるために法律を改正するよう、強く促す。 V.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーならびに関連する事項の禁止(第3条、第4条第2項および第3項、第5条、第6条および第7条) 現行刑事法令 30.委員会は、選択議定書に掲げられた犯罪が、選択議定書第2条および第3条にしたがって締約国の刑事法で全面的に網羅されていないこと、および、とくに子どもの売買の定義が定められていないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条と全面的に一致するようにするとともに、刑法が実際に執行されること、および、不処罰を防止するために加害者を裁判にかけることを確保するよう勧告する。とくに、締約国は以下の行為を犯罪化するべきである。 (a)性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植もしくは強制労働に子どもを従事させることを目的として、いかなる手段によるかは問わず、子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ること、または、養子縁組に関する適用可能な国際法文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すことによる、子どもの売買。 (b)子ども買春の目的で子どもを提供し、入手し、周旋しまたは供給すること。 (c)子どもポルノグラフィーを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売しまたは所持すること。 (d)これらのいずれかの行為の未遂および共謀またはこれらのいずれかの行為への参加。 (e)これらのいずれかの行為を広告する資料の製造および配布。 32.委員会は、出会い系サイト規制法の目的は子ども買春を容易にする出会い系サイトの利用を根絶するところにあるとはいえ、他のタイプのウェブサイトが法律で同様の規制対象とされていないことを懸念する。 33.委員会は、締約国が、あらゆるインターネット・サイトを通じた子ども買春の勧誘を禁止する目的で、出会い系サイト規制法を改正するよう勧告する。 34.委員会は、選択議定書に掲げられた犯罪のさまざまな要素に対応するための措置を歓迎しながらも、子ども買春の被害者が犯罪者として扱われる可能性があることを懸念する。 35.委員会は、締約国が、法律を適切な形で改正することにより、選択議定書違反の被害者であるすべての子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保するよう勧告する。 公訴時効 36.委員会は、刑事訴訟法において、選択議定書が対象とする犯罪の一部が短い時効期間の対象とされていることに、懸念とともに留意する。これらの犯罪の性質および被害者が申告をためらうことに鑑み、委員会は、刑事訴訟法で定められた時効期間のために不処罰が生じる可能性があることを懸念する。 37.委員会は、締約国に対し、選択議定書に基づき犯罪を構成する行為についてすべての加害者が責任を問われることを確保する目的で、この〔時効に関わる〕規定の削除を検討し、またはこれに代えて時効期間の延長を検討するよう促す。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 刑事司法制度上の保護措置 38.委員会は、事情聴取のための別室が用意されていることおよび聴聞を非公開で行なえることを含め、刑事司法手続において子どもの被害者および証人の権利および利益を保護するためにとられている措置を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書に基づく犯罪の被害者であって刑事手続で証人となる者が、刑事手続および司法手続全体を通じて十分な支援および援助を受けているわけではないことを懸念する。委員会はとくに、子どもが証言を要求される回数を制限するための公式な取り決めが不十分であること、および、口頭での証言に代えて録画による証言を使用することが刑事手続において認められていないことに、懸念を表明する。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)繰り返し証言するよう求められることによって子どもがさらなるトラウマを受けることがないようにするため、この分野の専門家と協議しながら、証人となる被害者の子どもに支援および援助を提供するための手続を緊急に見直すとともに、その目的のため、当該手続において口頭での証言ではなく録画による証言を活用することを検討すること。 (b)選択議定書第8条第1項および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針」(国連経済社会理事会決議2005/20)にしたがい、18歳未満のすべての子どもを対象として、被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための措置を、刑事訴訟法改正等も通じて強化すること。 (c)裁判官、検察官、警察官、および子どもの証人とともに活動するその他の専門家が、刑事手続および司法手続のあらゆる段階における、子どもにやさしい、被害者および証人とのやりとりに関する研修を受けることを確保すること。 回復および再統合 40.委員会は、カウンセリング・サービスの提供など締約国がこの点に関してとってきた措置にも関わらず、選択議定書に基づく犯罪の被害者を対象とした身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置が依然として不十分であることを懸念する。 41.委員会は、選択議定書第9条第3項にしたがい、とくに被害を受けた子どもに分野横断型の援助を提供することにより、かつ、適切な場合には被害者の出身国との連携および2国間協定を通じて身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置を強化するため、締約国が、使途指定による資源配分が行なわれることを確保するよう勧告する。 VII.国際的援助および協力 国際協力 42.委員会は、選択議定書で禁じられた性的その他の形態の搾取から子どもを保護することを目的とした多国間および2国間の活動およびプログラムに対し、締約国が財政的支援(バリ・プロセスへの支援および国際移住機関への財政援助を含む)を行なってきたことを称賛する。しかしながら委員会は、捜査ならびに刑事手続および犯罪人引渡手続との関係で締約国と他の関係諸国との間で結ばれている法的共助(手続のために必要な証拠の入手に関する援助を含む)についての取り決めが十分ではないことを懸念する。 43.委員会は、締約国が、選択議定書の規定に反して搾取された子どもの権利に、とくに防止措置ならびに被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することによって対応する活動への財政的支援を継続するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、法的共助に関して定められている条約その他の取り決めにしたがい、締約国と他の国々との調整を強化するようにも勧告する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 44.委員会は、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、国会議員その他の関連の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 45.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する意識を喚起する目的で、報告書および締約国が提出した文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、公衆、市民社会組織、メディア、若者グループおよび専門家グループが広く入手できるようにすることを勧告する。さらに委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、選択議定書を子どもたちに周知させるよう勧告する。 日本政府のコメント 第1回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答は、委員会への提出後直ちに、英語および日本語により、インターネットを通じて公衆に提供された。したがって、日本政府はすでに必要な措置をとっている。 IX.次回報告書 46.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約に基づく第4回・第5回統合報告書(提出期限は2016年5月21日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2010年6月17日)。/パラ45に日本政府のコメントを追加(2011年10月4日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/101.html
総括所見:モンゴル(第3~4回・2010年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MNG/CO/3-4(2010年3月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※先行未編集版のまま配布 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月12日および13日に開かれた第1456回、第1458回および第1460回会合(CRC/C/SR.1456、CRC/C/SR.1458およびCRC/C/SR.1460参照)においてモンゴルの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/MNG/3-4)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/MNG/Q/3-4 and CRC/C/MNG/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、締約国の子どもの状況に関する理解の向上を可能にしてくれた、締約国のハイレベルな代表団との建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年1月29日に採択された、子どもの権利条約の2つの選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/MNG/CO/1およびCRC/C/OPAC/MNG/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の法律の制定を含め、条約の実施を目的として多くの立法上その他の措置がとられたことを歓迎する。 (a) ヨウ素添加塩によるヨウ素欠乏症予防法(2003年)。 (b) HIV/AIDS予防法(2004年)。 (c) 母乳代替品法(2005年)。 (d) 障害のある市民法(2005年)。 (e) 子どもおよび家族に対する金銭援助法(2006年)。 5.委員会はまた、以下の法律の改正にも留意するものである。 (a) 社会福祉法(2005年)。 (b) 教育法(2006年)。 (c) 刑事訴訟法(2007年)。 6.委員会は、締約国が障害のある人の権利に関する条約に加入し(2009年)、かつ経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書に署名したこと(2009年)に、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32、2005年)の検討後に行なわれたいくつかの懸念表明および勧告について対応が行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、他の懸念および勧告については不十分なまたは部分的な対応しか行なわれていないことを遺憾に思うものである。 8. 委員会は、締約国に対し、とくに立法、データ収集、差別の禁止、体罰、養子縁組、虐待、ネグレクト、不当な取扱いおよび暴力、生活水準ならびにストリートチルドレンの状況との関連で、これまでの総括所見の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告の十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 9.国内法と条約との調整を図るために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、一部の法規定が条約の原則および規定と全面的に一致しておらず、かつ法律の実施が遅いことを依然として懸念する。 10.委員会は、締約国が引き続き法律を条約の原則および規定と調和させ、かつ国内法の実施を強化するべきであるという勧告を、あらためて繰り返す。委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する包括的法律を策定しかつ実施するよう奨励するものである。 調整 11.委員会は、子どもの問題に対応する3つの機関の存在に表れている、子どもの権利に対処しようとする政治的意思に留意する。しかしながら委員会は、あらゆるレベルで、かつとくに地方レベルでこれらの機関間の調整が不十分であることを懸念するとともに、子どもの権利を実施するための機構を明確にする必要性をあらためて指摘するものである。委員会はさらに、国家子ども評議会がその予定表にしたがって定期的会合および運営活動を行なってきていないことに留意するものである。 12.委員会は、締約国が以下のことに努めるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 政策立案および子どもの権利の積極的実施を担当する国の機関および地方の国家機関の体制を見直すこと。 (b) 調整機関としての国家子ども局の権限を強化するとともに、同局に対し、活動を遂行するための十分な財源および人的資源を提供すること。 国家的行動計画 13.2002~2010年の期間を対象とする「子どもの保護および発達のための国家行動計画」には留意しながらも、委員会は、その実施、監視および評価のための機構に関する情報、ならびに、2007年〔ママ〕以降、子どもの権利に関する後継行動計画が存在するのか否かに関する情報が存在しないことを遺憾に思う。さらに、委員会は、子どもの権利を実施かつ促進するための包括的な国家的行動計画が存在しないことを遺憾に思うものである。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2002~2010年の期間を対象とする国家行動計画を評価しかつ監視すること。 (b) 市民社会を含むすべての関連のパートナーと協議しかつ協力しながら、2010年以降の期間を対象とする新たな国家行動計画を策定し、採択しかつ実施すること。当該計画には、人的資源および財源を十分に配分するとともに、その実施において達成された進展を定期的に評価し、かつ存在しうる欠陥を明らかにするフォローアップおよび評価のための機構を組みこむものとする。 独立の監視 15.委員会は、国家人権委員会(NHRC)が行なっている活動、および、3名の委員のうち1名が子どもの問題に対応する権限を与えられていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、子ども自身が苦情を申し立てられないことに、懸念とともに留意するものである。 16.委員会は、締約国に対し、NHRCが、アクセスしやすくかつ子どもにやさしい苦情申立て機構を通じて子ども自身からの苦情を受理する権限および能力ならびに権利侵害に対する救済措置を求める能力および権威を有することを確保するため、 子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、必要な措置をとるよう奨励する。 資源配分 17.委員会は、社会予算、とくに国家予算の20%に達する教育予算を増額するために締約国が行なっている努力を認識する。にもかかわらず、委員会は、経済危機およびインフレならびに汚職が子どもの権利に対する持続可能な投資に悪影響を及ぼしてきたこと、ならびに、子どもの基本的権利の享受のための資源が後退しかつ存在しなくなるおそれが根強く残っていることを、懸念するものである。委員会は、広大な領域を有する国における地域間ならびに農村部および都市部間の格差、ならびに、著しく不利な立場に置かれた家族および子どもによる既存の支援プログラムへのアクセスの困難に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、子ども現金手当プログラムを中止するという政府の決定を遺憾に思うものである。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 採鉱活動から得られた資源を管理する人間開発基金に基づくものも含む子どものための資源を増加させること。 (b) 国家予算の一環としての子ども予算(教育、保健、暴力の防止、レクリエーション)を、内外のいかなる経済的衝撃または自然災害からも保護すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、必要に応じて国際協力も求めながら、子ども時代への効果的投資額をはっきりと明らかにする国家予算指標追跡システムを活用するよう、奨励する。 (c) 以下の手法を導入すること。子どもの人間開発に対する真の効果を保障するための、成果ベースの予算策定。 農村部および都市部間の不均衡ならびに地域間格差を縮小し、かつ、具体的目標(特定地域における飲料水の供給、および教育インフラの構築など)を達成することを目的とした、戦略的予算策定。 (d) 子ども予算の動向の透明かつ定期的な測定値を明らかにすることを志向した、利用者にやさしい指標システムを構築すること。 (e) 子どものための資源を侵食する汚職行為を防止しかつ調査するため、最近設置された国家汚職対策局を強化すること。 (f) ドナー活動を支える見返り資金を提供するとともに、可能なかぎり海外援助への依存を少なくすること。 データ収集 19.委員会は、政府機関のウェブポータルサイトを通じた国家情報センターの設置および現在進められている諸事業のような、子どもに関する統計データの収集のために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下の点について懸念を表明するものである。 (a) 国家統計局とその他の政府機関との間で、子どもに関連する統計の収集、分析および報告に関する調整が行なわれていないこと。 (b) 困難な状況で生活している子どもに関する全国的データの蓄積および分析が不十分であること、ならびに、子ども保護システムが地方分権化されておりかつ未発達であることを理由として、子どもの保護に関する全国的統計が入手できないこと。 (c) 信頼できる統計データの収集、処理および取得に関する困難が根強く残っていること。 20.委員会は、締約国に対し、国家統計局が、具体的には調整との関連でその任務を遂行するのに十分な人的資源、技術的資源および財源を有することを確保するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、18歳未満のすべての子どもに関するデータを収集し、既存のデータおよび新たなデータを分析し、かつ、公共政策および積極的差別是正プログラムの策定のために実証的証拠を活用するよう、勧告するものである。 普及、研修および意識啓発 21.委員会は、専門家の研修、公衆意識啓発キャンペーンならびにモンゴル語およびカザフ語で入手可能な条約についての資料を通じ、子どもの権利に関する情報の普及を向上させるために締約国が行なった努力を認知する。にもかかわらず、委員会は、とくに農村部および遠隔地において、関連の専門家集団、コミュニティ、親および子どもたち自身の間で条約に関する意識が不十分であることに、懸念とともに留意するものである。 22.委員会は、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(法執行官、議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員およびメディアを含む)を対象とする、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および感受性強化措置を通じて、とくに子ども、親および子どもとともに働く専門家の間で条約を普及しかつその原則および規定についての公衆の意識を高めるための努力を増強しかつ強化するよう、勧告する。その際、住民の言語上のニーズを考慮に入れるものとする。 市民社会との協力 23.委員会は、締約国報告書作成のための協議のプロセスに非政府組織(NGO)および子ども代表が参加したことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、政策の立案および監視ならびに条約を実施するための戦略の策定へのNGOの参加が限定的であることに留意するものである。 24.委員会は、条約の規定の実施において市民社会が果たす重要な役割を強調するとともに、締約国が、子どもの権利の促進および実施ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成における、NGOおよび子ども団体を含む市民社会との協力および調整(政策の策定および協力事業への市民社会の参加を含む)を強化するよう勧告する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、脆弱な立場に置かれた子どもを差別から保護するための措置が原則としてはとられてきたことに留意する。しかしながら委員会は、ジェンダーに基づく差別が男子および女子の双方に影響を与えていること、および、実際には、子どもが、とくに子どもの民族集団、障害、生活水準もしくは子どもの家族の生活集団を理由としてまたは子どもの居住地によって不平等な取扱い(alag uzdeg)を経験していることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、西部地域の住民ならびにカザフ系マイノリティその他のマイノリティの間に存在する不平等についても懸念を覚える。 26.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を監視しかつ確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、社会のすべての部門における子どもへの差別の事案に対して効果的対応がなされることを確保するよう促すとともに、このような具体的情報が、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する情報とともに、次回の定期報告書で提供されることを要請する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、子どもの最善の利益を第一次的に考慮する現行国内法が豊かに存在することに留意する。にもかかわらず、委員会は、実際には規定が十分に執行されていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の一般原則がすべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に編入されることを確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 生命、生存および発達に対する権利 29.委員会は、すべての子どもに対して安全な、安心できる、かつ暴力のない環境を確保するための機構を洗練させる目的でとられた締約国の措置、および子どもを保護する法律の存在を評価する。にもかかわらず、委員会は、子どもがますます事故(交通事故および馬その他の家畜に乗っているときの事故を含む)の被害を受けており、かつ、2005年の副首相令の実施および執行が不十分であることをひとつの理由として、子どもの騎手の負傷および死亡が引き続き起きていることを、遺憾に思うものである。 30.条約第6条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国のすべての子どもの生命に対する権利の保護を強化するため、あらゆる努力を行なうこと。 (b) 事故防止に関する意識を高め、かつ事故防止に関する公衆情報キャンペーンを行なうための努力を強化しかつ継続すること。 (c) 現行の国家怪我予防計画の医療志向を補完する、より幅広い対策を策定すること。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、締約国が子どもの意見の尊重の原則を関連法制に編入したことに留意しながらも、実際には、現行規定の執行が不十分なことを理由として、この原則が実施されていないことを遺憾に思う。さらに、委員会は、子どもの参加に関する国家政策案(2005年)がまだ議会承認を得ていないことを遺憾に思うものである。 32.委員会は、締約国の第2回報告書に関わる前回の勧告(2005,CRC/C/15/Add.264、パラ26)を想起しつつ、締約国が、子どもの意見の尊重の原則をさらに促進し、推進しかつ実施するとともに、家庭、学校、コミュニティレベル、施設ならびに司法上および行政上の手続における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を促進するよう、勧告する。委員会はまた、議会が子どもの参加に関する国家政策案を承認し、かつ条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮することも勧告するものである。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 出生登録 33.委員会は、2006年以降、締約国で出生証明書が無償で発行されていることに留意する。しかしながら委員会は、出生登録率が高いにも関わらず、とくに国内移住、出生登録所の遠さ、および、出生登録の重要性に関する牧民家族の意識の欠如を理由として、出生の10%近くが登録されていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国が、遠隔地および牧民家族の子どもにとくに焦点を当てながら、すべての子どもを登録するための努力(期限後の登録を無償で行なえる機会の提供も含む)を継続しかつ強化するよう、勧告する。 適切な情報へのアクセス 35.子どもによる情報技術へのアクセスが改善された旨の情報、および国民的マイノリティを対象とする公共テレビ・ラジオ番組に対する締約国の支援は歓迎しながらも、委員会は、一部の番組について、子どもの発達上および教育上のニーズを満たし、かつ内容および情報が年齢相応のものであることを確保するための改定が必要であることに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子ども、とくに遠隔地および農村部に住んでいる子どもに対し、その年齢およびニーズに一致する適切な情報への公平なアクセスを全面的に保障するための努力を強化すること。 (b) 子どもが適切な情報にアクセスできることを全面的に保障しつつ、子どもを有害な情報から保護するための適切な指針を策定すること。委員会はさらに、締約国が、「子どもとメディア」に関する一般的討議から生まれた委員会の勧告(1996年、CRC/C/57、パラ242-257)を考慮するよう、勧告する。 体罰 37.委員会は、しつけおよび規律のための措置の関係で行なわれる子どもの体罰に対処するために行なわれた努力には留意するものの、子どもが生活するあらゆる場面において体罰が広範に観測されているという懸念をあらためて表明する。 38.委員会は、締約国に対し、あらゆる場面(家庭および代替的養護制度を含む)における、しつけおよび規律の手段としてのあらゆる形態の子どもの体罰を防止しかつ終わらせるための法律を導入しかつ執行するよう、促す。さらに、委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革し、かつ、代替的形態のしつけおよび規律が、子どもの人間の尊厳と一致する方法でおよび条約(特に第28条2項)にしたがって、ならびに体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/GC/2006/8)を考慮しながら行なわれることを確保する目的で、子どもの関与を得ながら公衆教育、意識啓発および社会的動員のためのキャンペーンを実施するよう、勧告するものである。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 39.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する暴力に関する東アジア・太平洋地域協議(バンコク、2005年6月14~16日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連の独立専門家報告書に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 以下の勧告に特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力を撤廃するための関わる同研究の勧告の実施を優先させること。子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 子どもに対する暴力のジェンダーに関わる側面に対応すること。 (c) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的、精神的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (d) 次回の定期報告書において、子どもに対する暴力に関する研究の勧告を締約国がどのように実施したかに関する情報を提供すること。 (e) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)に対し、前掲の目的のための技術的援助を求めること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 40.委員会は、基礎的な社会サービスを提供し、子育てスキルに関する自習教材を開発し、かつ子どもの養育に関する専門家による援助を親に提供するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、家族法改正に関する決定が2006年以来まったく行なわれていないことに懸念を表明するとともに、シングルマザーが世帯主である家族が増加していること、および、親のケアを受けていない子どもの新たな集団(親の出稼ぎにより取り残された子どもおよび一時的に家族の世帯主となっている子どもを含む)が形成されていることに留意するものである。 41.委員会は、困窮している親および家族に対して可能なかぎり必要な支援を提供すること(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ34)ならびに非暴力的な、積極的なしつけおよび規律の手法を促進するプログラムおよび教育プログラムを発展させること(パラ30)を求めた締約国への勧告を、あらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) ホロー(小地区)およびソム(郡)のレベルに家族支援センターを設置するとともに、これらのセンターに十分な専門的資源(子どもの権利に対応する訓練を受けたソーシャルワーカーを含む)を提供すること。 (b) 家族法改正を採択すること。 (c) 受益者が養育手当にアクセスできることを確保すること。 (d) 子どもの権利に関する専門のソーシャルワークサービスを導入し、子どもおよびその家族のためのこれらのサービスが効果的に実施されるようにするための法的環境および体制を向上させ、かつ、実績モニタリングのための手続を設けること。 家庭環境を奪われた子ども 42.委員会は、家族から分離された子どものための代替的養護サービスを導入し、子どもを養護する施設および職員を対象とした養護および質に関する最低基準を整備し、かつ、親族養護および里親養護プログラムを優先するためにとられた措置を認知する。しかしながら委員会は、養護施設の体系的な監督および管理が行なわれていないこと、子どもが養護施設に送致される際に措置の再審査またはケースマネジメント・サービスが行なわれていないこと、および、施設措置に代わる手段を提供しうる体系的かつ全国的な児童福祉体制が整えられていないことを、懸念するものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供し、かつ意識啓発キャンペーンを実施する等の手段によって入所型養護センターへの子どもの措置を防止することに焦点を当てたプログラムおよび政策を発展させること。 (b) 入所型養護センターの子どもが家族と再統合できるようにするため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 基準規範を定めるとともに、とくに必要な人的資源および財源の供給を確保することにより、条約第25条にしたがい、施設に措置された子どもについて定期的再審査を行なう包括的機構を設置すること。 (d) 2009年11月20日に採択された国連総会決議A/RES/64/142に掲げられた、子どもの代替的養護に関する国連指針〔PDF〕を考慮すること。 養子縁組 44.国内および国際の養子縁組を規制するためのさまざまな立法措置には留意しながらも、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の実施担当機関に関する情報がないこと、養子を受け入れようとする家族のための支援サービスが存在しないこと、養子縁組を審査し、監視しかつフォローアップする機構が存在しないこと、里親養護および養子縁組に関する統計がないこと、ならびに、国内養子縁組の手続全体を通じた子どもの意見〔の尊重〕に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はさらに、国際養子縁組の手続が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に全面的に一致していないことを懸念するものである。 45.委員会は、委員会の前回の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ36)を繰り返しつつ、締約国に対し、里親養護および養子縁組(スクリーニングを含む)を規律する包括的な国家的政策および指針ならびにこの点に関する中央監視機構を確立するよう促す。委員会はまた、締約国が、国内および国際の養子縁組を規律する手続が子どもの最善の利益にしたがって、かつ条約第21条および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の原則および規定に全面的に一致される形で進められることを確保するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、関連の制度的基盤を確立するとともに、とくに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の実施に対応する権限および能力を備えた国家機関を設置するよう、提案する。 虐待およびネグレクト 46.子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うために行なわれてきた活動は認知しながらも、委員会は、子どもの虐待およびネグレクトが根強く生じており、とくに女子に影響を与えていること、および、子どもの保護のための包括的戦略が存在しないことを懸念する。さらに、委員会は、強姦および近親姦を禁じた現行法の規定が十分に執行されていないこと、男子に対する犯罪への制裁および女子に対する犯罪への制裁が平等でないこと、ならびに、強姦を含む性的虐待の被害を受けた子どもがしばしば十分な保護および(または)回復のための援助を受けておらず、犯罪の加害者として扱われる可能性さえあることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、家庭における性的虐待が国内刑法に基づいて訴追されまたは処罰される割合が低いことを遺憾に思う。 47.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭におけるあらゆる形態の子どもの虐待および暴力を禁止し、かつ強姦および近親姦の禁止規定を執行すること。 (b) 子どもの虐待の原因を明らかにしかつこれに対処し、危害を防止し、かつ子どもに対する暴力および有形力の行使ならびに子どもに関わるネグレクトに対応する目的で全国レベルの基礎研究を実施するとともに、その知見に基づき、虐待の被害を受けた子どもの保護および回復のための全国的システムを発展させること。 (c) 家庭および施設における暴力、性的虐待およびネグレクトの事案数ならびに規模を監視するための機構を強化し、かつ、これらの機関間の調整を向上させること。 (d) 子どもの虐待に関する通報機構を確立すること。 (e) 子どもとともに働く専門家が、子どもに影響を及ぼす家族間暴力が疑われる事案を通報しかつ適切な行動をとる自己の義務について研修を受けることを確保すること。 (f) とくに子どもの虐待およびネグレクトを防止する目的で、意識啓発キャンペーンを強化し、かつ情報、親に対する指導およびカウンセリングを提供すること。 (g) 虐待およびネグレクトの被害を受けた男女の子どもが十分な支援を受け、かつ回復、カウンセリングその他の形態のリハビリテーションのためのサービスに平等にアクセスできることを確保すること(子どもおよびその家族に対して無償の心理カウンセリングを行なうセンターをすべてのアイマグ(県)に設置することも含む)。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 48.締約国が行なった努力は認知しながらも、委員会は、障害のある子どもが直面している多数の問題について依然として懸念を覚える。とくに、委員会は、障害者の法的定義が広すぎること、および、法律上の規定の矛盾が障害者に悪影響を与えていることを懸念するものである。さらに、委員会は、インフラが適切に整備されていないことならびに教育、社会福祉および保健サービスに障害児がアクセスできないことによる障害児の社会的排除について、著しい懸念を覚える。委員会は、全般的に、障害のある子どもが「尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で、十分かつ人間に値する生活」を享受するうえで直面している困難に留意するものである。 49.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を引き続き強化し、かつ、とくに以下の目的のために条約第23条および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮するよう、勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する正確なかつ細分化されたデータを国および地方のレベルで収集するとともに、障害のある子どもに関するデータベースを設置すること。 (b) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を策定すること。 (c) 障害のある子どもが教育(職業訓練を含む)に対する権利を可能なかぎり最大限に行使することを確保すること。 (d) とくに地方レベルで必要な専門的資源(たとえば障害に関する専門家)および財源を利用可能とし、ならびにコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親支援グループ、および専門家の研修を含む)を促進しおよび拡大するため、いっそうの努力を行なうこと。 (e) 家族支援およびコミュニティの関与にとくに焦点を当てながら、障害のある乳児および未就学児を対象とした早期発見・早期介入サービスを発展させること。 (f) 障害のある子どもに対する積極的かつ差別のない理解および見方を奨励するため、子ども、親、家族、養育者およびコミュニティの間で公衆の意識啓発のための取り組みを行なうこと。 健康および保健サービス 50.保健分野で締約国がとったさまざまな措置を歓迎し、かつ乳幼児死亡率の低下に留意しながらも、委員会は、微量栄養素の欠乏および慢性的栄養不良を反映して、とくに5歳未満の男子の間で発育阻害およびくる病が根強く生じていることを懸念する。委員会はさらに、保健予算の減少傾向について懸念を覚えるとともに、予算のほとんどがインフラおよび身体的健康のために配分されており、情緒的健康および社会的支援(薬物およびアルコールを使用する子どもを対象とするものも含む)が軽視されていることに留意するものである。 51.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) プライマリーケア・サービスにとくに注意を払い、もっとも脆弱な立場に置かれた家族のニーズに対応し、かつ、子どもの健康の社会的決定要因に十分に対応するための現代的公衆衛生アプローチを適用しながら、すべての子どもに最高水準の健康が提供されることを確保する保健ケア制度を引き続き発展させること。 (b) 母子の保健ケアおよび発達を担当する政府機関の、国および地方のレベルにおける設置を検討すること。 (c) 条約第24条(c)に照らし、安全な飲料水へのアクセスおよび衛生的な慣行を向上させるための措置を強化すること。 (d) 母性保護に関するILO第183号条約(2000年)を批准すること。 52.さらに、委員会は、締約国が、高い栄養不良率に緊急に対応するとともに、子どもの基礎的な健康および栄養、母乳育児ならびにビタミンAおよび亜鉛による強化または補完の利点、個人衛生および環境衛生ならびにリプロダクティブヘルスについての情報を親および養育者に対して提供するための、コミュニティを基盤とするプログラム、意識啓発キャンペーンおよび微量栄養素キャンペーンを発展させるよう、勧告する。 思春期の健康 53.委員会は、アイマグ(県)の中心部およびウランバートルの諸地区において青少年にやさしい保健サービスのモデルを発展させようとする努力に留意し、かつ、全国AIDS委員会が再設置されたことに評価の意図ともに留意する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関する情報(思春期の健康問題に関する細分化されたデータ、リプロダクティブヘルス問題についての情報および既存の思春期保健サービスに関する情報を含む)が不十分であることを遺憾に思うものである。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康問題の性質および規模を理解する目的で、青少年の全面的参加を得ながら包括的研究を行なうとともに、思春期の健康に関する政策およびプログラムを立案する基盤としてこれを活用すること。 (b) 条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を正当に考慮しながら、すべての青少年を対象とするリプロダクティブヘルス・サービス(学校における性教育およびリプロダクティブヘルス教育ならびに若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよび保健ケアのサービスを含む)を促進し、かつこれへのアクセスを確保すること。 精神保健 55.委員会は、子どもの精神保健問題に対応するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、抑うつ、ストレス、タバコおよび薬物への依存ならびに行動障害の影響を受けやすくなっている子どもがとくに都市部の子どもの間で増えており、かつ、これらの公衆衛生上の問題に積極的に対処する効果的な予防介入策がとられていないことに、強い懸念を表明するものである。委員会は、締約国における子ども、とくに女子の自殺について非常に懸念を覚える。 56.委員会は、締約国が、WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、重度の精神保健上の問題を有する子どもおよび青少年を対象とした外来および入院による精神保健サービスを含む)を備えた包括的かつ全国的な子どもの精神保健政策を、影響を受けている子どもにスティグマを付与することのないような形で策定するよう勧告する。委員会はまた、初等学校および寄宿学校に初めて出席する子どもが、その認知t系、社会的および情緒的発達上のニーズを支えるための援助を利用できるようにすることも勧告するものである。 生活水準 57.委員会は、同国において広範な貧困が根強く残っていることに懸念とともに留意し、かつ、生活水準に関する地域格差が大きいことに懸念を表明する。委員会は、都市部と農村部の環境に大きな不平等があることをもっとも懸念するものである。さらに、委員会は、所得関連の指標ならびに食料、住居、教育、安全な水、十分な衛生設備および安全な衛生慣行へのアクセスによって数値的に明らかにされているように、多くの子どもの全般的生活水準がきわめて低いことを懸念する。委員会はまた、都市スラム地域で生活している子どもの状況、および、ゲルで瀝青炭を燃やして暖をとることによる健康上の影響にも、懸念とともに留意するものである。 58.委員会は、締約国が、食料を入手しやすくし、かつ水および衛生設備ならびに個人衛生、住居および教育の質を向上させることに特段の注意を向けながら、子どもの生活水準を向上させるための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地域的格差を縮小するための措置をとり、かつゲルの暖房のための代替的措置の発見に努めるよう、勧告するものである。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 59.委員会は、無償義務教育を提供し、かつ寮費を負担するために締約国が行なった投資を歓迎する。委員会はまた、学校を「子どもにやさしい」ものにするために行なわれた努力にも留意するものである。さらに、委員会は、子どものためのサービスの提供においてソーシャルワーカーが重要な役割を果たしていること、および、教育現場で働くソーシャルワーカーの職務記述書に子どもの保護の役割が含まれていることにも留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭における男子の役割についての文化的態度によって中退率がいっそう高められていることを理由として、教育を受ける男子の割合が深刻に少ないことに、懸念を表明するものである。委員会は、教育施設において体罰または心理的圧力が根強く用いられていることに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、遠隔地にあり人口密度が低い農村部に住む牧民家族の子ども、首都に移住した家族の子どもおよびインフォーマルな採鉱活動に従事しているコミュニティの子どもを含む子どもによる教育サービスへのアクセスが、とくに就学前段階で限られていることを懸念するものである。委員会はまた、学校、幼稚園の学級および物理的便益(備品、トイレおよび警備設備など)が不足していることにも、懸念とともに留意する。牧民コミュニティのニーズに寮が応えていることには留意しながらも、委員会は、子どもによる家族との接触が必ずしも保障されていないことを懸念するものである。 60.条約第28条その他の関連規定に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教育におけるジェンダー格差および地域格差に対応するとともに、学校を中退した子どもまたは学業と仕事(家庭における無給の仕事を含む)のバランスをとらなければならない子どもを対象とする、認証を受けた非公式教育プログラムを発展させることを検討すること。 (b) 可能なときは常に子どもの文化および子どもが家族との接触を維持する必要性を考慮に入れながら、牧民コミュニティの子どもの教育および生活のための便益(寮および寄宿学校を含む)の利用可能性および質を引き続き向上させること。 (c) 子どもにやさしい学校の基準が策定され、かつ学校および教員の実績評価で活用されることを確保すること。 (d) 移動学校およびインターネットへのアクセスの普及のような革新的手段を通じて教育を提供するための努力を引き続き行なうこと。 (e) ソーシャルワーカーに対し、コミュニティを基盤とするサービスを拡大する目的で子どもおよび家族に注意を向けられるようにすべく、その新たな責任を遂行するための十分な研修、資源および支援を配分するとともに、予防、回復およびカウンセリングに子どもとの活動を含めること。 (f) 子どもとともに働く専門家、親、子どもおよび一般公衆の間で子どもの権利に関する理解を強化するとともに、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を奨励し、子どもとともに働く専門家(とくに教員)の子どもに対する積極的態度を醸成し、かつ情緒的暴力に反対する意識を高めるような教育手法を促進すること。 (g) 学校カリキュラムに人権教育(条約その他の子どもに関わる関連の人権文書を含む)を編入するとともに、国連の全加盟国が2005年7月14日に採択した「人権教育のための世界プログラム」第1段階行動計画(総会決議59/113B)を実施するための措置をとること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 61.委員会は、子どもがスポーツ、芸術その他のレクリエーション活動に従事できる場所が存在しないこと、ならびに、子どもおよび青少年が会議および集まりを持ち、かつ余暇時間の活動に参加できる場所が乏しいことに、懸念とともに留意する。 62.委員会は、締約国に対し、子どもにやさしい場所を設置するともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 地域コミュニティ、学校、子ども施設その他の地域資源とともに、コミュニティの遊び場およびユースセンターを設置すること。 (b) 家族がともに自由時間を過ごせる場所の数を増やすこと。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 63.委員会は、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入しようとする締約国の意思には留意するものの、そのためにとられた措置が遅々としていることを懸念する。委員会は、移住者、難民および庇護希望者の子どもに関してまったく情報が入手できないことを遺憾に思うものである。 64.委員会は、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)を批准するよう求めた締約国への勧告(CRC/C/15/Add.264、2005年、パラ57)をあらためて繰り返す。さらに、委員会は、締約国が、条約第22条その他の関連規定を考慮し、締約国にいる子どもの庇護希望者および難民に対して全面的な保護およびケアならびに保健サービス、社会サービスおよび教育へのアクセスを確保するためあらゆる実行可能な措置をとるよう、勧告するものである。さらに、委員会は、子どもの庇護希望者および難民に関する細分化されたデータを入手し、かつ包括的政策の指針とするためのデータベースの設置を勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准することも勧告するものである。 児童労働を含む経済的搾取 65.委員会は、法律の一部の規定、とくに義務教育および就労の最低年齢に関する国内法が相互に矛盾しているという、前回の総括所見の懸念(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ9)をあらためて表明する。委員会はさらに、児童労働、とくに危険な労働に従事する子どもの割合が上昇していることを示す報告について懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、学校を中退してとくに採鉱コミュニティ、サーカスおよび農業で働く子どもが多いこと、ならびに、このような子どもが、社会サービスに限られた形でしかアクセスできておらず、かつ最悪の形態の児童労働、金の処理に用いられる化学物質による中毒および業務上または慣習的その他の災害にさらされていることに、懸念とともに留意する。 66.委員会は、締約国が、とくに以下の手段によって児童労働の悪影響を監視しかつこれに対応するため、緊急の措置をとるよう勧告する。 (a) 最悪の形態の児童労働と闘うこと。 (b) 条約および関連のILO条約を指針として、相互に矛盾する法律の調和を確保するために必要な改正を行なうこと。 (c) 児童労働の悪影響に関する意識を高めるためのキャンペーンを立案しかつ実施すること。 (d) 低年齢の働く子どもに対して非公式教育の授業を、かつより年長の子どもに対して技能訓練を提供すること。 (e) ILOおよびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。 路上の状況にある子ども 67.委員会は、子どもが路上で生活することを防止するために締約国が行なった努力には留意しながらも、都市部および郊外の居住区ならびに新たに形成されたスラムでストリートチルドレンの人数が増えていることを、依然として非常に懸念する。委員会はさらに、子どもが路上で生活するようになる原因についての情報が入手できないことおよび信頼できる統計データがないことを懸念するものである。委員会は、子どもを路上から追い払うために警察が行なっている迫害についての情報を遺憾に思う。 68.委員会は、締約国に対し、子どもを路上に駆り立てる根本的原因を理解し、かつこれらの原因に対応するための状況分析を実施するとともに、脆弱性および保護を必要とする子どもの迅速評価を行ない、かつストリートチルドレンのニーズに対応する既存のプログラムおよびプロジェクトのマッピングを実施するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 路上の状況にある子どもの意見を聴かれる権利を保障し、かつ路上の状況にある子どもの権利(警察による収容に代わる措置、子どものリハビリテーションおよび再統合を含む)を充足する、権利を基盤とする包括的な政策を立案すること。 (b) 路上の状況にある子どもについての意識啓発を図ること。 (c) ストリートチルドレンに対応するすべての専門家(警察官、ソーシャルワーカー、メディアの構成員および社会一般の構成員を含む)の能力構築を図ること。 (d) 子どもの権利および子どもの保護について警察に研修を行なうこと。 性的搾取および虐待 69.委員会は、子どもの性的搾取を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定するために中央および地方の政府機関が実施した措置(子どもを危険な状況に置く根本的原因および要因に関する調査研究および記録を含む)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、性的搾取の被害者の多く(とくに女子)が犯罪者として扱われており、かつ十分な保護サービスを提供されていないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、加害者の捜査および訴追が行なわれていないことを懸念する。 70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子ども、とくに女子の性的搾取の防止措置を強化すること。 (b) 被害者を保護し、回復および社会的再統合のための十分なサービスおよびプログラムを提供し、かつ、被害者が犯罪者として扱われないことを確保すること。 (c) 家庭における性暴力の被害者に関する意識啓発を強化するとともに、秘密保持を尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ調査する方法についての、法執行官、ソーシャルワーカー、裁判官および検察官を対象とする能力構築研修を強化すること。 (d) データ収集および諸機関間の情報共有を向上させること。 (e) 回復のための援助を優先的に行ない、かつ、教育および訓練ならびに心理的援助およびカウンセリングが被害者に提供されることを確保すること。 (f) 性的搾取および虐待の事件が通報された場合に捜査が迅速に実施され、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 売買、取引および誘拐 71.子どもの人身取引と闘うために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、性的その他の搾取(採鉱労働など)を目的とする人身取引が締約国でいまなお問題となっていることを懸念する。委員会はさらに、人身取引の規模に関する信頼できる情報が存在しないことを懸念するとともに、人身取引の防止ならびに被害者の保護および援助のために現在実施されている措置およびプログラムの多くが、国家財源による支援をほとんどまたはまったく受けることなく、NGOおよび国際機関によって行なわれていることを遺憾に思うものである。 72.委員会は、前回の総括所見の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ65)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 国際的および国内的な取引および売買からの子どもの保護を確保するため、あらゆる措置をとること。 (b) 売買および取引の根本的原因(ジェンダーに基づく差別および貧困を含む)に対応するための努力を強化すること。 (c) 売買および取引の被害を受けた子どもに対し、その回復および社会的再統合のための包括的な社会的および心理的援助を提供する目的で、この分野の政策およびプログラムに対して十分な資源(人的資源および財源)を配分すること。 (d) 子どもの売買および取引に関するデータを収集しかつ細分化するためのシステムを確立すること。 (e) 関連のパートナーと連携しながら、防止および意識啓発のための活動を行なうこと。 ヘルプライン 73.委員会は、現在、多くのNGOが並行して子どものためのヘルプライン事業を行なっていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、国際的基準にしたがった、全国的に利用可能な、フリーダイヤルの、十分に機能するチャイルド・ヘルプラインが締約国で利用可能となっていないことに、懸念とともに留意するものである。 74.委員会は、締約国が、ヘルプラインを確保し、かつとくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国のすべてのソム(県の下の行政区画〔郡〕)およびバグ(ソムの下の行政区画〔村〕)で毎日24時間アクセス可能な、24時間開設されている〔重複はママ〕3ケタのフリーダイヤル番号を割り当てること。 (b) 意識啓発活動、研修および能力構築のために十分な資金を配分すること。 (c) 子どもを援助するためのヘルプライン・サービスが十分に機能するための資源を確保すること。 少年司法の運営 75.委員会は、法的に認められる子どもの未決勾留期間の制限、初犯者に対して義務的に科される最低刑の軽減ならびに「少年委員会」および「ゲル・フレー・センター」に対する支援等により、子どもの権利の保護を確保する法的枠組みを向上させるために締約国が行なった努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 子どもが未決勾留センターで不十分な環境に直面していること。とくに、勾留中の自白の強要および警察による暴力の苦情が増えていること、ならびに、警察の勾留場で子どもがしばしば成人から分離されていないこと。 (b) 締約国の多くの地域で専門の少年裁判所および訓練を受けた少年裁判官が存在しないこと。 (c) 締約国が犯罪を行なった者の制裁に焦点を当てた懲罰的アプローチをとっており、拘禁された子どもに対して再統合の機会または援助もいかなる教育も提供されていないこと。 76.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)と全面的に一致させるべきであるという前回の勧告(2005年、CRC/C/15/Add.264、パラ68)を、あらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 未決勾留中の子どもの権利を保護するとともに、子どもが勾留中に自白の強要および警察による暴力にさらされず、かつ警察の勾留場で成人から分離されることを確保すること。 (b) 締約国のすべての地域で専門の少年裁判所を設置し、かつ訓練を受けた少年裁判官を任命すること。 (c) 少年司法制度に関与するすべての専門家が、子どもにやさしい関連の国際基準に関する研修を受けることを確保すること。 (d) 自由を奪われた子どもの権利を保護するとともに、子どもの拘禁環境を監視し、かつ、少年司法制度の対象とされている間、子どもが家族との定期的接触を維持することを確保すること。 (e) 少年犯罪問題への対応について条約で唱道されているホリスティックなアプローチをとる(たとえば根底にある社会的要因に対処すること)とともに、可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕活動または刑の執行停止のような、拘禁に代わる措置を活用すること。 (f) 子どもに対し、手続の早い段階で法的援助その他の援助を提供すること。 (g) 子どもに対して基礎的サービスが提供されることを確保すること。 (h) 子どもによる苦情を受け付けかつ処理するための、独立した、子どもにやさしく、かつアクセスしやすいシステムを設置するとともに、法執行官および看守が行なった人権侵害の事案を捜査し、訴追しかつ処罰すること。 (i) 少年司法に関する国連機関横断パネルに対し、少年司法および警察の研修の分野におけるさらなる技術的援助を要請すること。 (j) 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いと闘うために適当な措置をとるとともに、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(1984年)の批准を検討すること。 犯罪の証人および被害者の保護 77.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 8.国際人権文書の批准 78.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書(とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書)を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 79.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を最高人民会議(議会)、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 80.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 81.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2014年10月20日までに提出するよう慫慂する。この次回報告書は120ページを超えるべきではなく(CRC/C/118(2002年)参照)、かつ子どもの権利条約の2つの選択議定書の実施に関する情報も記載されるべきである。 82.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関間会合で承認された「国際人権条約に基づく報告に関する調和化指針(共通コアドキュメントおよび条約別の文書に関する指針を含む)」(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/283.html
総括所見:ニュージーランド(OPSC・2016年) 第1回(1997年)/第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)/第5回(2016年)OPAC(2003年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/NZL/CO/1(2016年10月25日)/第73会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2016年9月16日に開かれた第2140回会合(CRC/C/SR.2140参照)においてニュージーランドの第1回報告書(CRC/C/OPSC/NZL/1)を検討し、2016年9月30日に開かれた第2160回会合(CRC/C/SR.2160参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/NZL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門から構成された締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第5回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/NZL/CO/5、2016年9月30日採択)および武力紛争への子どもの関与に関する締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPAC/CO/2003/NZL、2003年10月3日採択)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった、以下の法律の採択を含むさまざまな措置を歓迎する。 (a) 国内人身取引および勧誘の諸側面の犯罪化を目的とした2015年の犯罪改正法、ならびに、性的搾取、身体部位の摘出および強制労働での使役のための子どもの取引の犯罪化を目的とした2005年の同改正法。 (b) 子どもの労働力全体で一貫した安全確認を行なうために何をするべきかを明確に定めた、被害を受けやすい立場に置かれた子ども法(2014年)。 (c) 被害者の権利改正法、保護観察改正法および量刑改正法(いずれも2014年)ならびに子ども、若者およびその家族改正法(2016年)。 (d) 1955年養子縁組法に第27条(A)~(D)を挿入し、かつ、子どもの養子縁組に関する同意を不適切なやり方で引き出すことを犯罪とした、養子縁組改正法(2011年)。 5.委員会はさらに、「子ども行動計画」が2012年に採択されたことを歓迎する。これは、『被害を受けやすい状況に置かれた子ども白書』に対応し、かつ、保健部門、教育部門および社会サービス部門の専門家を一堂に会させて、被害を受けやすい状況に置かれた子どもを特定し、支援しかつ保護するための単一の対応計画を策定する「子どもチーム」を地方に設置するものである。 III.データ データ収集 6.委員会は、「被害を受けやすい状況に置かれた子どものための公的サービス改善に向けた承認情報共有協定」および「被害を受けやすい状況に置かれた子ども情報システム」の確立を通じ、虐待またはネグレクトを受けるおそれがある子どもの特定を向上させるためにデータ収集を改善しようとして締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされている分野(とくに子どもの売買および児童買春)に関する細分化されたデータを収集する包括的システムが存在しないため、選択議定書上のこれらの犯罪の監視および評価を行なう締約国の能力が限定されていることに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、適正な捜査が行なわれた事件数、および、訴追され、かつ犯罪の重大性に相応する制裁を科された加害者の人数に関する情報がないことを懸念する。 7.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野(子どもの売買および児童買春を含む)についてデータ収集、分析、監視および影響評価を行なう包括的な、調整のとれた、かつ効果的な機構を発展させかつ実施するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。データは、選択議定書上の犯罪の被害を受けるおそれがある子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地域ならびに社会経済的地位別に細分化されるべきである。犯罪の性質によって細分化された、訴追件数および制裁件数についてのデータ収集も求められる。 IV.一般的実施措置 立法 8.委員会は、性的搾取、身体部位の摘出および強制労働での使役のための子どもの取引を禁じる犯罪改正法(2005年)、映画、ビデオおよび出版物等級審査改正法(2005年)および買売春改正法(2003年)の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、国内法が、選択議定書で対象とされているすべての犯罪を全面的に編入しているわけではなく、かつ、とくに定義および用語法との関連で第2条および第3条との調和が図られていないことを懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、国内法を選択議定書に調和させるための努力を継続するよう促す。とくに委員会は、締約国が、選択議定書第2条および第3条に基づく義務にしたがい、子どもの売買、児童買春および児童ポルノのあらゆる事案(これらのいずれかの行為の未遂および共犯を含む)を定義しかつ禁止するよう勧告するものである。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、「子ども行動計画」、「人身取引防止のための国家行動計画」および「子どもの商業的性的搾取に対する国家行動計画」の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされているすべての問題を包摂した、子どもに関する包括的な政策および行動計画が依然として採択されていないことを懸念するものである。 11.条約に基づく総括所見(CRC/C/NZL/CO/5、パラ7)を参照しながら、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての問題に対応する包括的政策およびそれに対応する国家的行動計画を採択するとともに、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう勧告する。その際、締約国は、1996年、2001年および2008年にそれぞれストックホルム、横浜(日本)およびリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に注意を払うべきである。 委員会はまた、締約国に対し、このような政策および戦略の定期的評価が実施されることも確保するよう奨励する。 調整および評価 12.委員会は、条約およびその選択議定書の実施に関する調整機構として社会部門関連次官級委員会が設置されたこと、および、同委員会が子どもの権利条約モニタリンググループと連携していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、同委員会の人的資源、技術的資源および財源、ならびに、選択議定書の実施に関連するすべての活動を調整する同委員会の権限に関する情報が不十分であることを懸念するものである。 13.条約に基づく総括所見(CRC/C/NZL/CO/5、パラ8)を参照しながら、委員会は、締約国が、社会部門関連次官級委員会に対し、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源、ならびに、さまざまな部門を横断して、かつ国、地方および地域のレベルで条約およびその選択議定書の実施に関連する活動を調整するための十分な権限が与えられることを確保するよう、勧告する。 監視 14.委員会は、国家人権委員会が、選択議定書に関連する人権侵害(とくに子どもの性的搾取)に対応する明示的権限を有していないこと、および、子どもコミッショナーが意識啓発および促進を行なうべきとされているのは条約だけであって選択議定書は対象とされていないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、子どもコミッショナーに対して選択議定書の実施を促進しかつ監視する明示的な任務が与えられ、かつそのための十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう勧告する。締約国はまた、国家人権委員会が、選択議定書で対象とされている犯罪について子どもから申し立てられた苦情を受理し、調査しかつこれに対処できることも確保するべきである。 普及および意識啓発 16.委員会は、人身取引ならびに子どもの性的虐待および性暴力に関する知識および意識を高めるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/NZL/Q/5/Add.1、パラ12)のなかで認めているように、選択議定書に関する意識を高めるためのプログラムを実施しておらず、そのために一般公衆、子ども、その家族およびコミュニティならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家集団の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連の政府機関、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に協力しながら、選択議定書で対象とされているすべての問題およびそのような慣行への対策として国内法で定められている保護措置に関する意識啓発プログラムを発展させること。 (b) 選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家集団に対して体系的に周知すること。 研修 18.委員会は、現場スタッフ、難民、保護、保健および安全に関わる問題の担当官ならびに労働査察官を対象として、人身取引被害者の発見および調査実務に関して実施されている、また被害を受けた子どもとともに働く司法職員を対象として実施されているさまざまな研修プログラムに、肯定的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家(とくに裁判官、検察官、法執行官、教育専門家および保健専門家ならびにソーシャルワーカー)を対象として十な研修を実施する努力が体系的ではなく、かつ、選択議定書で対象とされているすべての分野が含まれているわけではないことを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、研修活動を拡大しかつ強化するとともに、このような活動が体系的かつ学際的であること、選択議定書で対象とされているすべての分野を含んでいることならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(とくにあらゆるレベルの裁判官、検察官、ソーシャルワーカー、法執行官および出入国管理官)を対象として実施されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、議定書に関して実施されるすべての研修プログラムに関して、その効果および妥当性を増進させる目的で体系的評価が行なわれることを確保するようにも勧告するものである。 資源配分 20.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のためにとくに配分される予算についての十分な情報を提供していないことを懸念する。 21.委員会は、締約国が、国、地方および地域のレベルにおける選択議定書の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源を配分するよう勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条(1)および(2)) 議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 22.委員会は、「子ども行動計画」において、被害を受けやすい状況に置かれた子どもに影響を与える諸要因の累積効果が取り上げられていることに、評価の意とともに留意する。委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となるおそれがある、被害を受けやすい状況に置かれた集団の子ども(とくに、ドメスティックバイオレンスの被害者である子ども、適切な監督を受けない状態でインターネットを利用している子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに非正規な移民状況にある子ども)の特定およびモニタリングに焦点を当てた、教育および意識啓発のための措置およびプログラムを歓迎するものである。しかしながら委員会は、選択議定書上の特定の犯罪に関する防止措置が依然として不十分であることを遺憾に思う。さらに委員会は、選択議定書上の犯罪の根底にある根本的原因(貧困など)への対応が十分でないことを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) リスクのある状況に置かれた子どもを特定し、かつ問題の規模を評価する目的で、子どもの性的搾取(とくに児童買春および児童ポルノ)の性質および根本的原因に関する調査研究を実施すること。 (b) 対象を明確化した防止措置(とくにインターネット上の搾取に対するもの)を実施するとともに、選択議定書で対象とされているすべての分野における意識啓発キャンペーンの実施に関して国際的な政府間機関および非政府組織と協力すること。 (c) 選択議定書で定義されているあらゆる形態の搾取の防止のために適切な形で財源を配分することなども通じて、社会的および経済的開発プログラムならびに貧困削減戦略の実施にさらに注意を向けること。 児童セックスツーリズム 24.委員会は、子どもの搾取に焦点を当てた東南アジア法執行能力構築プロジェクトにニュージーランド警察が関与していること、および、締約国の国民または外国人在留者が他国で犯した児童セックスツーリズム事件の通知のための機構が設置されたことなど、児童セックスツーリズムを防止するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、効果的な規制の枠組みが存在せず、かつ、国外における児童セックスツーリズムの防止およびこれとの闘いを効果的に進めるためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。 25.委員会は、締約国に対し、児童セックスツーリズムの有害な影響に関する観光業界へのアドボカシーキャンペーンを実施し、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの企業に対し、「旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範」への署名を奨励するよう、勧告する。 特定の手段を対象とするプログラム 26.委員会は、選択議定書で対象とされている多くの分野について、インターネット上の安全に焦点を当てながら児童生徒の意識啓発および防止授業を行なうためにニュージーランド警察と事故補償公社が開発したさまざまなプログラムに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、これらのプログラムが、子どもの性的搾取の防止を盛りこんだものにはなっておらず、かつ、しばしば地方レベルで行なわれていてすべての学校で実施されていないことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、ニュージーランドのすべての学校およびすべての地方を網羅することを目的として、子どもの性的搾取に関する意識啓発およびその防止のためのキャンペーンを実施するよう勧告する。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2)および(3)ならびに第5条~7条) 現行刑事法令 28.犯罪改正法(2015年)において国内人身取引および搾取目的の人身取引が犯罪化されたことには留意しながらも、委員会は、国内法で、選択議定書で対象とされている子どもの売買の文脈で行なわれるすべての行為が明示的に定義されかつ犯罪化されているわけではないことを懸念する。 29.委員会は、締約国が、選択議定書第2条および第3条にしたがい、子どもの売買の文脈で行なわれるすべての犯罪を明示的に定義しかつ犯罪化するよう勧告する。 30.委員会は、権力の濫用もしくは脆弱な立場の悪用または他人を支配下に置く者の同意を得る目的で行なう金銭もしくは利益の授受の手段を用いて行なわれる人身取引への誘導が、いまなお、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)で要求されているとおりに犯罪化されていないことを懸念する。委員会はまた、犯罪改正法(2015年)で、一または複数の威迫行為または欺罔行為が行なわれたことの要件が子どもの人身取引の状況においても例外とされておらず、これらの行為の存在が量刑の決定における加重要因のひとつとして定められているにすぎないことも懸念するものである。 31.委員会は、権力の濫用もしくは脆弱な立場の悪用または他人を支配下に置く者の同意を得る目的で行なう金銭もしくは利益の授受の手段を用いて人身取引に誘導する行為を犯罪化し、かつ、たとえ威迫、欺罔またはその他の権力の濫用が手段として用いられない場合でも子どもの人身取引は犯罪とする目的で犯罪改正法(2015年)を改正する等の手段により、締約国が、パレルモ議定書の遵守を確保するための努力を引き続き行なうよう勧告する。 32.買売春改正法(2003年)で18歳未満の者を買売春のために用いることが禁止されていることには留意しながらも、委員会は、選択議定書第2条(b)にのっとった児童買春の定義が定められていないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書第3条第1項(b)に掲げられた行為の一部が買売春改正法(2003年)に適正に反映されておらず、かつ、児童買春の未遂または共犯が明示的に犯罪化されていないことも懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、買売春改正法(2003年)を見直して選択議定書第2条および第3条と全面的に一致させるとともに、選択議定書第3条第2項にのっとり、児童買春の未遂または共犯を明示的に犯罪化するよう勧告する。 34.委員会は、映画、ビデオおよび出版物等級審査改正法(2005年)が、域外裁判権との関係においてしか児童ポルノを定義していないことを懸念する。さらに、児童ポルノの製造、売買または所持の重罰化を目的とした不快な出版物およびわいせつ法案が作成されていることには留意しながらも、委員会は、児童ポルノに関わる行為の未遂または共犯が明示的に犯罪化されていないことを懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、映画、ビデオおよび出版物等級審査改正法(2005年)を見直すことにより、児童ポルノの定義の適用範囲を同法全体に適用し、かつ、選択議定書第3条第2項にのっとって児童ポルノに関わる行為の未遂または共犯を明示的に犯罪化するよう勧告する。 36.委員会は、勧誘の諸側面を犯罪化した犯罪改正法(2015年)で、ポルノ的文書にさらされることから保護されるのが16歳未満の子どもだけであることを懸念する。 37.委員会は、締約国が、犯罪改正法(2015年)によって、ポルノ的文書にさらされることから18歳未満のすべての子どもが全面的に保護されることを確保するよう勧告する。 法人の責任 38.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連した作為または不作為についての法人(企業を含む)の責任を限定された形でしか問えないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、性犯罪であるかその他の犯罪であるかを問わず、法律上の文言または犯罪の性質により、企業に対して主犯としての責任を負わせることができない場合がありうることを懸念するものである。 39.委員会は、選択議定書第3条第4項に一致する形で、選択議定書に関連するすべての犯罪について企業を含むすべての法人の責任を問えることを確保するため、締約国が法律を改正するよう勧告する。 域外裁判権 40.委員会は、締約国が、被害者がニュージーランド国民である場合には犯罪法第7A条に基づく域外裁判権を有しないことを懸念する。 41.委員会は、締約国が、国内法において、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について、そのような犯罪が締約国の市民に対して行なわれた場合であっても域外裁判権を設定しかつ行使できることを確保するために、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 犯罪人引渡し 42.委員会は、犯罪人引渡しについて、双方可罰性要件が満たされており、かつ被請求国および請求国の双方で刑罰が12月以上の収監とされている犯罪であることが条件とされていることに留意する。 43.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪についての犯罪人引渡しの制限(とくに双方可罰性要件および国内法上の最低刑罰要件)を廃止するとともに、犯罪人引渡し条約が締結されていない場合の犯罪人引渡しの法的根拠として選択議定書を用いることを検討するよう、勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条(3)および(4)) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 44.委員会は、子ども、若者およびその家族法(1989年)の2016年改正において、危害、不当な取扱いもしくは虐待を受けておりもしくは深刻な剥奪状況にある子どもおよび若者またはその可能性がある子どもおよび若者のケアおよび保護についての規定が置かれるようになったことに留意する。しかしながら委員会は、刑事手続における被害者の権利および役割の増進ならびに犯罪被害者に対する政府機関の対応の改善を目的とした被害者の権利改正法(2014年)において、選択議定書第8条で要求されている、被害を受けた子どもの特別な保護が定められていないことを懸念するものである。委員会はまた、犯罪が地方裁判所または高等裁判所で処理される場合に、犯罪の被害を受けた子どものための被害者アドバイザーが、裁判所に対して控訴が提起された後にしか任命されないことも懸念する。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被害を受けた子どもの脆弱性を認識し、かつ、その被害者および(または)証人としての特別なニーズに対応する手続を用意すること。 (b) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの早期発見および特定のための機構および手続を確立すること。 (c) 被害を受けた子どもが、申立てを行なった日から被害者支援サービスを利用できることを確保するため、被害者の権利改正法(2014年)を見直すこと。 刑事司法制度における保護措置 46.委員会は、証拠法(2006年)および「子ども保護対応要綱」の採択、若年証人を対象とする法廷教育の提供、ならびに、子どもの被害者および(または)証人とともに働く者を対象とした司法省による指針の作成をはじめ、刑事手続全体を通じて子どもの被害者および(または)証人の法的保護および秘密保持を保障するために締約国がとった措置に、肯定的対応として留意する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 検察官が、いまなお、子どもの被害者の証言方法について裁判所に指示を求めることを要求されていること。 (b) 子どもの被害者および(または)証人とともに働く者が現行の法律および手続を遵守することを確保するための、監視および説明責任の確保を目的とした適切な機構が設けられていないこと。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子どもに対して選択議定書で要求されている保護が提供されることを、十分な法律上の規定および規則を通じて確保すること。 (b) 子どもの被害者および(または)証人が、閉鎖回路テレビまたは事情聴取中の証言のビデオ録画などの代替的方法を通じて証言でき、かつ、反証がなければ証言を真実とみなすという法律上の推定に基づいて証言を行なう際に支援者にアクセスできるようにするため、証拠改正法案を速やかに成立させること。 (c) 法的手続を進める際の子どもの安全確保および専門的支援の提供の要件が適正に満たされることを保障するため、「子ども保護対応要綱」の効果的実施を確保すること。 (d) 裁判官、検察官、警察、ソーシャルワーカー、医療スタッフならびに子どもの被害者および証人とともに働くその他の専門家が、刑事手続および司法手続のすべての段階における子どもにやさしい接し方に関する研修を受けることを確保すること。締約国は、この点に関して、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである。 (e) 子どもの被害者および(または)証人が、刑事手続における自己の権利および役割ならびに当該手続の時期および進捗について告知されることを確保すること。 (f) 子どもの被害者および(または)証人が、とくに自己の利益に影響がある場合に、刑事司法手続の際に自己の懸念、意見およびニーズを表明できること、ならびに、これらの子どもに対して適切な支援および援助がしかるべく与えられることを確保すること。 (g) 刑事司法手続全体を通じて子どもの身元およびプライバシー権が保護されることを確保すること。 (h) 子どもの被害者および(または)証人とともに働く者が現行の立法上および手続的措置を遵守することを確保するための、監視および説明責任の確保を目的とした適切な機構を設置すること。 被害者の回復および再統合 48.委員会は、犯罪およびトラウマの影響を受けている子ども(性的搾取の被害者を含む)が、締約国の領域全体で、24時間提供されている無償の被害者支援サービスの援助にアクセスできることに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、ニュージーランド事故補償公社が、性的虐待または性暴力の結果として精神的外傷を受けた可能性のある子どもおよび若者に対する支援、カウンセリングおよびその他の処遇、ならびに、一定の条件が満たされる場合の医療ケア、リハビリテーションサービスおよび金銭給付の資金を拠出していることに、留意するものである。しかしながら委員会は以下のことを懸念する。 (a) 選択議定書上のすべての犯罪の被害者の回復および再統合のための措置が依然として不十分であること。 (b) 性的搾取の被害を受けた子どもが、事故補償公社のサービス(これは通常、性的虐待または性暴力の被害者のための選択肢として広報されるのみである)の受給資格について知らされていないこと。 (c) 事故補償公社が救済の付与の可否について決定できるよう、被害を受けた子どもが、同公社の登録カウンセラーを最高で4回訪問しなければならないこと。 (d) 被害を受けた子どもが加害者または事故補償公社に対して補償を求めるための十分な手続が設けられていないこと。 49.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害者に対する適切な援助(被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のための援助を含む)を確保するための措置をさらに強化するよう促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに短期的、中期的および長期的支援を提供するためのプログラムを発展させかつ実施するとともに、十分な人的資源、技術的資源および財源の配分を確保すること。 (b) 被害を受けたすべての子ども(性的搾取の被害者を含む)に対し、事故補償公社のサービスにアクセスする権利についての適正な告知が行なわれることを確保すること。 (c) 事故補償公社の登録カウンセラーへの義務的訪問の回数を減らし、または身体検査の要件をなくす等の手段により、同公社に対してリハビリテーションの援助を求める子どもが負うトラウマを最小限に抑えるためにあらゆる必要な措置をとること。 (d) 選択議定書第9条第4項にしたがい、被害を受けたすべての子ども(締約国の国民または在留者でない子どもを含む)が、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを保障するとともに、被害者が加害者から賠償を得られない場合のために被害者補償基金の設置を検討すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 50.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪について防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 51.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見に掲げられた勧告を関連政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 52.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 53.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月3日)。