約 325,735 件
https://w.atwiki.jp/erumito/pages/122.html
名前 コメント
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1309.html
霊夢38 Megalith 2012/06/19 消費税増税の話で持ち切りの世論では、他の欠乏に目が行くとは○○には思えなかった。 彼はくだらない情報番組を映すTVを消して、ベッドの上にごろんと寝ころんだ。天井のドーム型の蛍光灯は未点灯で、日当たりが悪いためか、部屋は結構に暗い。 網戸からは、子供たちの嬉々とした喚声が部屋の中まで響いた。おそらく、すぐ近くの寺で遊んでいるのだろう。○○は、やんちゃをしていた幼少の砌を思いだし、エアコンをつけないで過ごすのも、中々具合が良いものだと思った。 程なくすると、○○は蝉の声に気が付いた。そこにあることがあまり当然過ぎて、まったく気に入っていなかったのだ。それはあまりに蝉に申し訳ない。少しばかりの人生を削って、鳴いているのである。それに耳を傾けないのは、どうにも趣がない。 そう思い、さて、何をする訳でもなく耳を傾けていると、○○は微睡に落ちた。ベッドの上で眠ってしまったのだ。 そして、目を覚ましたのはポストに何かが落とされた時であった。 彼は重たい体を起き上がらせ、扉の内側にある郵便受けから、落とされたのであろう一枚の手紙を手に取った。ついでに、寝汗でしっとりとした肌がどうにも気持ちわるかったので、彼は小さなタンスから、一枚のタオルを取り出した。 「あつっ……」 汗が伝う首元や蒸れた脇を拭き、濡れたタオルをベッドに投げる。そして、彼は無意識に、背の低いテーブルからエアコンのリモコンを取って、冷房をきかせた。エアコンは音を上げて、動きだし、冷風を吐き出し始めた。 彼は紺色のクッションに腰を下ろして、先ほど取ってきた突然の手紙をテーブルの上にひとまず置く。 それは真っ白な封筒である。中には一枚の紙が入っているようだ。 彼は「ストーカーか?」と疑りながら封筒を開き、紙を取り出す。 三つ折りだ。黒い文字がびっしりと並んでいることが裏からでも分かった。 「…………、」 開く。 そこには綺麗な字で何行にも渡って、文字が並んでいた。 ○○は恐怖心を覚えたが、心してそれを読むことを決めた。 ○○さんへ。 お久しぶりです、○○さん。 あの日みたいに元気にしてますか? もし元気があったのなら、私は嬉しい限りです。 いや、そもそも○○の元気がない姿なんて私には想像できませんから、私はずっと嬉しいのかもしれませんね。 それはそうと、そちらでの生活は上手くいってますか? 私の方は大変ですよ。男手が減ると結構いろんなことがきついです。 まき割とか、お風呂掃除とか、洗濯物とか。とにかくいろんなことがいっぱいになりました。昔に戻ってしまいましたね。 そういえば、○○さんって料理も掃除もなんでもできましたよね。 実は私、嫉妬してたんですよ、○○さんのこと。ずっと一人でやってきた私を軽くあしらうなんて少し許せなかったんです。でも、謝りません。 だって、○○さんが何でもできるのが悪いんであって、私は悪くないんですから。 彼は胸が酷く詰まり、読むことを止めた。 色あせつつあるあの日が浮かび上がるが、それを彼は頭を振って、消した。 夢路に乗るために、自分はあの場所から旅立った、戻ったのだ。どんな結果であろうが殊勝に受け止めなければならないはずである。そうしないと、良心の呵責が彼自身を許さない。 ○○は大きく息を吐いて、読むことを再開する。 そうだ。魔理沙と□□が結婚することになったんですよ。 たった付き合ってから1ヶ月で結婚ですよ? あの奥手な魔理沙が結婚なんて夢にも思いませんでした。 でも、もう私たちは二十歳だし、結婚してもおかしくない歳だから、本当はそんなに驚く必要はないんですけどね。 あと、紫が外来人に負けました。妖怪の賢者って呼ばれてるくせにこてんぱんにされて、泣きべそかいてましたよ。○○さんに見せてあげたかったです。 新聞でも一面を飾っていたので、一緒に渡してあげたかったんですけど、紫が全部回収してしまったので、渡せませんでした。でも、その外来人と紫は今は仲良くやってますよ。 相手は友人としてだと思いますけど。 それと、アリスが子供を産みました。 その前にアリスは△△と結婚して、夫婦になったことを知りませんよね。○○さんがそちらに戻ったのが、三年前ですから、その後すぐに結婚したですよ。魔理沙がわんわん泣いて、すごかったんですよ。 私も泣きそうになりましたけど。 それで、アリスの子供はアリスにそっくりですごく可愛いですよ。最近、私の名前を憶えて、呼んでくれます。お菓子とか買ってあげたくなりますよ。まぁ、お金はありませんけどね。 子供たちの声が消えて、蝉時雨が彼の部屋に降る。 夏の熱気がやけに冷めているように○○には思えた。 それで私の近状です。 私はお見合いをすることになりました。 相手は良家の息子です。性格も見た目も申し分ありませんが、私はあまり嬉しくありません。お見合いを提案した紫が言うには、短命だから早く子供を作って欲しいということです。 私には人権はないのかと訴えたんですが、聞き耳を持ちません。 困った賢者です。やっぱり恋する乙女は盲目なんですね。 とにかくお見合いをすることが決まったんです。 そういえば、こうやって恋愛関係のお話をすることは、◎◎さんの一件以来ですね。 あの時は、結局フラれてしまいましたけど、あの時、○○さんは私のことを抱きしめてくれましたよね。 あの時、すごく嬉しかったんですよ。 味方が居てくれるって思って、とっても嬉しかったんです。 だから、感謝したくてこの手紙を書きました。 手紙は不自然にそこで終わっていた。 いや、終わった訳ではない。残り数行に文字の書いた跡が残っているのだ。 ならば、その数行に書いてあった文字を差出人は消したということである。 ○○は封筒の裏を見る。 そこには何も書いておらず、真っ白であった。 ――――卒爾に彼は立ち上がり、エアコンも窓もそのままにして、部屋を飛び出す。 扉を開くと、彼の視界に嘘みたいな青空が広がった。 「アイツ……」 彼は外付けの階段を駆け下り、アパート前のきつい上り坂になっている道へ出る。見回すが人はいない。 さらに彼は、体力が続く限り、街並みの影が垂れる道々を必死に駆け、そして、彼は長い上り坂の頂上でその足を止めることになった。体力が尽きたのであった。 「…はぁ、はぁ、はぁ」 大きく波打つ胸。無限にしたたるかと思える汗。荒い呼吸。酸素が脳まで回っていないのか、感覚がぼんやりとして、妙に頭が重かった。 彼は息を落ち着かせて、汗でしとどになった額を手の甲で拭き、頭をもたげた。 ……そこには見覚えのある夏の青空があった。 まるで海のような青で、まるで海のように広い。 そして、そこに浮かぶうず高い入道雲は、彼女が夢見た大きな旅客船のようであった。 おそらく、あの船は大きな汽笛と水飛沫をあげながら、こちらに向かってくるだろう。 その時に自分は何ができるのだろうか? 「…………」 彼女のすむ場所には海はない。 彼女は海を知らない。 だが、この空にある海はどこまでも繋がっているのだ。 ……大空の潮風はゆるやかに吹き渡り、木立はそよいだ。 ――――○○さん 突然、彼女の声が聞こえた気がして、彼は振り返った。 味方が居てくれるって思って、とっても嬉しかったんです。 だから、感謝したくてこの手紙を書きました。 だけど、私はダメです。 感謝したら終わってしまう気がしまうんです。 だから、ここに誓います。 博麗霊夢はずっと○○さんが好きです。 この後はあえて書きません。 皆さんが各々想像してみてください。 うpろだ0043 今日は晴れではなかった。 かといって、雨が降っている訳でもない。 分厚い雲に覆われた今日の空模様は、曇りだった。 春が過ぎて初夏に差し掛かろうというこの頃、それは同時に梅雨の季節でもある。 唐突に雨が降ることも珍しくはないし、明日は雨どころか数分後には雨ということもありうる話だ。 だから、この時期はあまり外に出る機会が少ない。 ただ気温が上がるだけならばまだマシだが、さらに湿度が上がることで蒸し暑さというものが生まれる。 いつもの渇いた暑さとは違う、体に纏わりつくかのようなあの暑さは、いつになっても慣れない。 それもあって、更に外に出ることを面倒くさがって出ることがなくなっていく。 自然と、家で一日を過ごすことはそうも珍しくもないのだ。 「暇ね」 「そうだね」 それと全く同じこと、同じ行動をとるのは俺に限った話ではない。 世界に俺一人しかいないのならば話は別だが、そうではないのだ。 同じ場所に住み、暮らしていればお互いに同じになることだってある。 テーブルの向かい側でだらけている巫女も、外に出ようとは思わない。 ………この時期に限らず、という後付けは俺の心の中に留めておこう。 「…………暇ね」 「…………そうだね」 同じ言葉を繰り返す霊夢に、俺も同じ言葉を返す。 だからどうしたというのか、他人の思考を読み取る能力もない俺に何を期待しているのか。 単に返してほしかっただけなのか、それは分からない。 少し色褪せた紙の上に書かれた活字の世界が、今の俺が見えるものだ。 寝転がって本を読んでいる今、霊夢がどんな顔をしているのかはよく見えない。 額面通りの言葉を受け取ったところで、何を考えているのかを知るにはあまりに足りなすぎた。 何もかもが真横になった世界で霊夢を見ようと遮る本を避けると、何かを漁る姿が見える。 ………一体何をしているのだろうかと思いつつ見ていれば、綿毛のついた一つの棒を取り出してこちらに歩み寄ってきた。 「ん」 俺の目の前で正座した次の行動は、自らの膝を叩いてのアピールだった。 数回同じことをした後に霊夢の顔を見れば、こちらをじっと見つめてきている。 霊夢が何を言いたいのか、何をしたいのかは、わざわざ悩んでまで考えることでもなかった。 「…………っと」 じゃあそれに従いますか、ということで立ちあがって霊夢のもとへと向かう。 数歩で届いたその場所にたどり着いて、もう一度寝転がる。 頭を霊夢の太ももへと乗せて、滑らない位置に固定する。 先ほどまで開いていた本は、とうの昔に閉じていた。 「あんたも飽きないわね、そんなに面白いの?」 「少なくとも何もしないよりは、遥かに面白いよ」 「………ふぅん」 返ってきた言葉はそれだけで、霊夢はそれ以上会話を繋げようとしなかった。 これから話しながら作業するわけにもいかないということなのか、あるいは単純に興味がないだけか。 そんなことを気にしてもいいのだが、今だけしか味わえないこの枕を堪能した方が有益だった。 そして、俺が霊夢の膝枕に夢中になっていると、霊夢は俺の耳を触り始めた。 "今からするわよ"というその開始の合図に、俺は少し身構える。 「力入れないで、やりにくいのよ」 「ごめん、どうも他人にやられるのは慣れてなくてね」 この年になって、そんなことを他人任せにやるなんてのは限られた条件をクリアしなくてはならない。 今までは自分でやる多数派だった、しかし最近になってやってもらう少数派に回った。 急激な変化についていけないでいる、というのが実情であり戸惑っている。 "中々慣れないな"と言葉を漏らした時に、"ずっと続けば、いつか慣れるんじゃない?"と霊夢はそう返してきた。 そうならば、いずれ当たり前のようになる日が来るんだろうとは思う。 が、しかしそれがいつになるのかは、全くもって想像もつかないけれど。 「じゃあ始めるわよ、手元が狂っても怒らないでね」 「霊夢なら大丈夫でしょ」 耳の穴の中に、ゆっくりと棒が侵入していく。 普段から何か入れているわけでもないので、内心あまり気分は良くない。 こんな状態でリラックスしろと言われても、逆に緊張するというのが本音ではある。 ただ、何度も繰り返したのが功を奏したのか、霊夢は注文してくることはなかった。 これも慣れがそうさせたのかな、と一人そんなことを思う。 何度も棒の出し入れを繰り返されるうちに、徐々に耳の通りが良くなってきている気がする。 自分では見ることが出来ないので、一体どれだけ積もりに積もった垢があるのかは知らない。 普段あまり手入れをすることもないから、見たらかなり酷いことになっているのだろう。 …………霊夢が一番最初に俺の耳の中を見た第一声は、"こんなので本当に聞こえてるの?"だった。 あれから綺麗にする機会は以前よりも増えているが、それでも霊夢曰く"まだまだ"だとか。 一体、俺の耳の穴はどうなっているのか。 一度見てみたいが、やっぱり見たくないような、そんな曖昧な気分だ。 「………相変わらず凄いわねぇ、どうしたらこうなるのかしら?」 「体質によって変わるみたいだよ、俺は多い方だったってこと」 「実に掃除の甲斐がある耳の穴ね」 「悪いね」 「いいのよ、私が好きでやってることだから」 肩を叩かれて、次は片方の耳だと無言でそう返ってきた。 寝返りを打てばいいだけだが、霊夢がやりにくそうに渋い顔をするからやらない。 わざわざ立ちあがって、逆側に霊夢の太ももへと頭を寝かせた。 「今更なんだけどさ、重くないの?」 「重いわよ」 「………よくやる気になるね」 「言ったでしょ?好きでやってるのよ」 なんでもないことだと、さらりと言ってのける霊夢。 顔は見えないけど、多分いつも通りの顔しているんだろうなと容易に想像がついた。 実に霊夢らしいというか、そういうところは全く変わり映えしないなぁと思う。 でも決して嫌いじゃない、むしろ俺にとっては好ましいことだった。 時に歯に着せない物言いは傷つけることもあるけど、裏表のないストレートな言葉は分かりやすくて有難い。 喜怒哀楽がはっきりしているからこそ、嬉しい時は嬉しいと言ってくれるから。 変に穿った見方をしなくてもいいし、ねじ曲がった解釈も必要ない。 そんなことで神経をすり減らすこともない、本心を出してもいいと思ったから。 …………………だからだろうな、とそう納得する。 「最初は紫に言われてやってみたけど、今は良かったと思ってるわ」 「でも本当は、入れ知恵だって気が付いてたんじゃないの?」 「………いいじゃない、やってみたかったのよ」 「………………そうか、じゃあ仕方ないね」 入れ知恵だとしても、騙されていると分かっていてもやりたいという気持ちを抑えきれなかったようだ。 憧れとか、希望とか夢とか、そういうものを抱いていたのだろうか。 もしそうだとしたならば、断ることなく受け入れたことは正解だったということになる。 後になっての答え合わせにマルを貰えたことには、間違えなくて良かったと振り返る。 そして霊夢に助言した紫さん、ありがとうございました。 今はいない彼女に向かって、心の中でそう呟く。 「……………………」 眼が動くギリギリまで眼球を動かしてみれば、視界の隅で頬を赤くする霊夢がいた。 その反応を見て、本当にやりたかったんだなということを再確認する。 恥じらいもあったんだろうけど、更にそれを上回るくらいだったということ。 そう、それだけのこと。 「………終わったら、人里にでも行ってみる?」 「甘いものでも食べたり、何か買い物でもしたりしてさ」 霊夢に提案を持ちかける。 あんなにも外に出る気が全くしなかったのに、今はもうそんなことはない。 いや逆にどこかに行きたくなった、何かしたくなった。 せずにはいられなくなった、それは唐突に。 同じだ、膝枕をしたくなった霊夢と同じだ。 「………うん」 「もう終わるから、準備して行きましょう」 了解の合図を受け取って、これから向かう場所へと思いを馳せる。 何をしようかなとか、何があるかなとか。 霊夢は笑ってくれるかなって、そんな姿を想像した。 霊夢と居候01(うpろだ0060) 年の瀬。一年か終わる日になっていた。 博麗神社も、珍しく忙しそうにしている。 ただ、忙しくしているのは、今年はただ霊夢だけではなかった。 ざっと音がして、神社の裏手に空からの来客があった。境内に降りなかったのは、屋台の資材が用意してあって危なかったからだった。 「よう、霊夢。珍しいな、こんなに神社が忙しそうなのは」 「魔理沙は暇そうね。手伝ってく?」 「謹んで遠慮しておくぜ」 降りてきた少女――霧雨魔理沙はそう言って、縁側に座っている博麗霊夢の隣に腰掛けた。そして、霊夢が眺めていた方に視線を向ける。 青年が一人、掃除をしていた。里からの手伝いとか、そういうものではない。今現在、博麗神社に居候している外から来た者だった。 神職の付ける装束を着て仕事をしている姿は、それなりに様になっていた。青年も魔理沙が着ていたことには気が付いていたようで、ぺこり、と頭を下げる。 そして、また青年は掃除の続きを始めた。他にも、神社の境内には新年を迎える用意がしてある。 「馴染んでるな、あいつ」 「そうね、便利よ。いろいろやってくれるし」 「正月の用意くらい自分でやれよ」 「さっきまではやってたの。後はやるからって言われたからね」 霊夢はそう言って、手元の茶を飲んだ。そして魔理沙も気がつく。部屋の中にいれば寒くないのに、わざわざ境内の見えるところで霊夢は茶を飲んでいるのだ。 「魔理沙も飲む?」 「ん、もらう。あいつの分はいいのか」 「終わったら入れてくるわ。冷めるもの」 魔理沙は野暮なことを――本人はそう思ったことを突っ込みはしなかった。そっか、とだけ言って、ずずと茶を啜るだけにとどめた。 霊夢は特に何も言わず境内を眺めている。相変わらず何を考えているのかよくわからない。何かミスでもしたときに指摘するつもりなのかも知れない。 しばらくそうしていた後、霊夢が席を立った。魔理沙は問おうとして、青年が掃除用具をまとめて片付けようとしていることに気が付く。 新しい茶を入れにいったのだろう、と推測して、青年が来るのを待つ。 「こん、にちは」 やってきた青年は、そう魔理沙に礼をした。よう、とだけ魔理沙は返した。そのやりとりの間に、霊夢が帰ってくる。 「お、待たせ、した」 青年は訥々とした様子で、霊夢に向かってそう口にした。少し吃るところがあり、口数は多くない。 「お疲れさま。お茶飲む?」 「いただき、ます」 「ちょっと熱いけど」 「さ、むかった、から、大丈夫」 霊夢の手から湯飲みを受け取り、青年も縁側に座った。ふう、と湯飲みの中身に息を吹きかける。 その様子に、ぱちぱちと目を瞬かせているのは魔理沙だった。その様子を不思議に思って、青年は首を傾げる。 どうしたのか、と聞いているのだと察した魔理沙は、ああいや、と少しだけ言葉を濁した後に応じた。 「……お前、結構喋るんだな」 こく、と青年は頷いた。ず、と茶を一口啜って、口を開く。開いた後に、少し躊躇いがちに言葉が出てきた。 彼は別に躊躇っているわけではなく、一音目が出難いのだった。 生まれつきにそういったものがあり、詰まった後でもするっと次の言葉が出てくれれば詰まらないのだが、再度詰まると本当に言葉が出なくなる。 障害、とまではいかないが、そういう体質なのだ、とは一度聞いた。だから、魔理沙もそんなに喋らないものだと思っていたのだ。 「……話し、たくないわけじゃ、なくて。言葉出すの苦手で」 「ああ、うん、わかった。大体わかった。無理するな」 こくりと頷いて、青年は茶をまた啜り、のんびりとした表情でほうと息をついた。 喋らないからと言って怖いと言うこともなく、こうしているとどこにでもいるような人物にしか見えない。 極端に言葉を出したがらない以外は、感情表現も豊かであるし、笑いも悲しみもする。気配りもするしきちんと働きもする。つまりは普通の人間であった。 「別にコミュニケーションとれないわけじゃないもの」 「うん、普通にどうやって意志疎通してるのか不思議だったけど、納得した」 魔理沙は頷いて、ほとんど冷めてしまった湯飲みの中に追加の分を注いだ。 青年がここに来て、まだ三ヶ月ほどであった。雪に道がほとんど閉ざされるまでは、ちょっとした手伝いや森近霖之助のところにも行っていたらしい。 ただそれでも、幻想郷に慣れるにはまだ時間が短すぎる。しばらく神社に住んでいるから、だいぶわかってきてはいるが、ここは少しばかり里とは違う。 まあ、心配してもどうしようもないことだ。否応なしに慣れねばならないものである。魔理沙はそう思って茶を啜る。 それからしばらく他愛もない話をした後、魔理沙は湯飲みを盆の上に置いた。 「じゃ、また後で来るぜ」 「はいはい」 「また、後ほど」 ひらりと手を振って、魔理沙は箒に乗ると空に駆け上がっていった。それを見送るように、青年はしばらくその後を見上げていた。 「どうしたの?」 「あ、いえ」 霊夢の問いに、彼は少しばかり照れたような顔をした。 「いつ、見ても、空を飛ぶのはいいなと」 「……そんなにいいものかしら」 首を傾げる霊夢に、青年はただうんうんと頷いただけだった。 もう少しで日が沈む、という時刻になって、神社に来客があった。社殿前を片付けていた青年が境内の方に出る。 上白沢慧音だった。彼も何度か会ったことがあったから、その姿は覚えていた。慧音は青年に気が付くと、軽く挨拶をしてくる。 「やあ、こんにちは」 「い、らっしゃい、ませ」 「……ああ、話せるのか」 慧音がやや驚いたような声を上げた。青年は少し考えて、そういえば言葉を直に交わすのは初めてだったと思い出す。 だから、軽く頷いて、苦笑気味に告げた。 「一、応。あまり、得意ではないです」 「うん、話せないと思ってたから、本当に指示を受けるだけのところの仕事を探したんだが……」 「いえ、助かります」 青年は大きく礼をした。話すのは苦手で、接客など以ての外だった。人付き合いは好きなのだが、それとこれとは別であった。友人として接するのと、商売として接するのは次元が全く違う。 ふと、友人なども慣れた相手になると、話す前に大体の予測を付けてくれるようになっていたことを思い出していた。不思議なものだが、そういう慣れというのも人間にはあるらしい。 もはやそんな相手も、外の世界には残っていないが。 「とりあえず、春先からの働き口はあったから、そこに優先的に入れるようにはしたよ」 「あ、りがとう、ございます」 訥とした口調で、彼は礼を言った。それに慧音が何か返す前に、奥から霊夢が出てきた。 「あれ、どうしたの、慧音」 「ああ、彼の仕事の話をしに。後でまたこちらにも顔を出すけれど」 霊夢は頷いて、彼の方をちらりと見た。彼はただ頷いた。そういうことだと言っていた。 「一旦また戻るの?」 「うん、年の瀬なのだけど、まだ少し」 「師走とはよく言ったものね」 「違いない。年を越してしまうかもしれないから先に。よいお年を」 「ええ、よいお年を」 「よい、お年を」 青年も最後だけ会話に加わった。テンポのよい会話には入り難い。ただ、聞く専門でいるのも嫌いではなかったから、その性格だけは救いであった。 慧音は軽く手を上げて、夕闇の迫る空へ浮かび上がっていった。青年と霊夢は並んでそれを見送った。 慧音を見送った後、居間に移って青年と霊夢は向かい合って茶を飲んでいた。 もうじき忙しくなるから、その前に一服しているのだった。しばらく無言で茶を飲んでいたが、不意に霊夢が口を開いた。 「春になったら、あんたはどうするの」 「働き、ます」 「そうじゃなくて」 霊夢は首を振った。青年にはいくつか選択肢がある。外の世界に帰ること。幻想郷に留まって里で暮らすこと。そして他にも。 そのうち、外の世界という線は、実は消えていた。 幻想の境を越えてしまったとき――紫に神隠しをされたわけでなく、偶発的な事故によってこちらに零れ落ちたとき、彼は向こうの時間軸と大きくずれてしまっていた。 帰っても、彼を知る者はなく、彼が帰る場所もない。 それを知ったときは流石にショックだったらしく、普段から話さない彼がさらに無口になって沈み込んでしまった。密かに泣いていたのかも知れない。 霊夢は慰めなかった。下手な慰めは逆効果なのを、本能に近い部分で知っていた。 だから淡々と日常の仕事を――幾分か軽めなものを――振った。彼も応じた。ただ働く方が楽なのだった。 結局、否応なしに彼は幻想郷で生きることになった。里には下りられなかった。 秋の終わり頃に起こった不意の大風でいくつか家屋が倒れており、外から来た新参者の住居に割く労力がなかった。 途方に暮れた彼に対し、状況が整うまでという話で霊夢は神社への居候を許した。そもそも最初からこのときに至るまでも居候していたから、別段変な話ではなかった。 春になるまでにはどうにかなるだろう、という里からの話にも、霊夢は「そう」と返しただけだった。そのときに彼の仕事についての斡旋の連絡も受けた。 それらについて彼は何を思ったのかは知れない。彼はそのことについて何も言わなかったし、今も言わない。 もっともその話のときに彼はそこに居らず、戻ってきた彼に霊夢が慧音との話を説明したのだった。そのとき彼は慧音に丁寧に礼をしただけだった。 ただ声が咄嗟に出なかったらしいが、それを見て慧音は彼が話せないものと勘違いしたらしい。それが幸いになったとも言える。 「春になったら、里に下りるのかって話」 「ああ」 彼はため息のような声を出した。少しだけ目を伏せて、だが何も言わなかった。言葉に迷っているのか、言わずにいたいのか、どうにも判然とはしなかった。 霊夢は促さなかった。それはただ彼自身が決めることであって、霊夢が何かを言うべきことではなかった。 それをわかっているのかいないのか、彼はぽつりと呟いた。 「霊夢、さんは」 どう思うのか。その言葉の先を悟った霊夢は、首を横に振った。 「あんたの好きにすればいいわ。私が決めることじゃないもの」 こくりと彼は頷いた。決断は自分ですべきものであった。誰にも出来ないことだった。 彼はなにも言わなかった。だから霊夢も何も言わなかった。無言のまま、しばらく二人は茶を啜っていた。 不意に来客の気配がした。どちらにとって奇貨になっていたのかはわからない。青年が先に視線を逸らして時計を確かめた。 もうそろそろ、屋台なども準備をする時間だ。魔理沙も戻ってきたのかもしれない。 「人、かな」 「どうかしら。人でない奴らも来るからね」 青年は笑って、準備の手伝いをすると言いおいて部屋を出た。霊夢も立ち上がった。 部屋を出て社殿の方に出てみれば、賑やかになってきている境内が見えた。 屋台もちらほらと出始めている。このまま、年明けまで騒ぎ明かすのだろう。 青年も手伝いに入っていた。屋台同士の間の確認や、資材を見て行っている。何か手伝えることはがあれば手伝ってくるのだろう。 それを見ながら、霊夢は息を吐いた。白い息が、少しの間だけ闇を漂って消えていった。 雪は深い。まだ春は遠い。 遠く除夜の鐘が聞こえてきた。命蓮寺の鐘だろうか。 一年が終わる。それはまた次の一年を生きるということ。 覚悟も達観も諦観もなくても、この世界で生きていかねばならない。 それは何ともまた残酷なものであり、幻想郷はそれら全てを受け入れるのだった。 今はただ、それだけだった。 霊夢と居候02(うpろだ0021,旧うpろだ0060続き) 冬の只中。あらゆるものが白く染まる季節だが、それでも生きていかねばならない。 青年は額の汗を拭いながら、雪かきを続けていた。 神社ではない。里での日雇いの仕事だった。今年はとかく雪が多いとかで、こうした日雇いの仕事も度々あるのであった。 神社に何もせず世話になっているのも気が引けるので、こうして日銭の稼ぎに出ていたりはする。 後少しというところで、休憩が告げられた。この分ならば日が落ちる前には神社に帰れそうだった。 休憩所で茶をもらい、それを啜っているといきなり背後から声をかけられた。 「よう」 「あ」 知り合いの姿に、青年は一言二言声を詰まらせた後、曖昧な笑みを浮かべて一礼した。 本当は飛び上がりそうな程驚いたのだが、どうにも鈍い所為でそういう反応になる。 かわりに、吃音の癖のあるためか、言葉は全く出てこなかった。 「ああ、無理はしなくていいぜ。驚かせたか」 「う、ん。大丈、夫。魔理沙、何か」 辛うじてそれだけを口にする。何か用があって話しかけたのか、と聞きたかったが、その後の言葉が出てこなかったのだった。 「別に用って程じゃなかったんだが、見かけたんでな。里にいるのは珍しいな」 「春まで、でも、日雇いくらいは」 「律儀な奴だなあ」 青年は、再び曖昧な表情で応じた。霊夢のところに居候していて、神社のことも手伝ってもいるが、さすがにそればかりというわけにはいかない。 春からは里に仕事を用意してもらっているが、だからといってそれまで無為徒食というわけにもいかないからだった。 魔理沙はそれに気が付いたのかどうか、話の方向を変えた。 「雪かき、危なくないのか」 「組作ってる、し。俺は、雪を運ぶのもやってる、から」 「ああ」 雪を捨てる場所までは当然のことながら距離がある。幾つか組を作ってのことだから作業は早いが、雪を運ぶ頻度もそれに応じて上がるだろう。 「大変だな」 「神社でも、やってるから。運動不足には、ならずにすむ」 今度はきちんと笑って、ずず、と茶を飲み干す。休憩が終わる号令が響いてきた。 「すまん、休憩の邪魔したか」 「いや、大丈夫。気分転換に、なった。後少しだし」 「じゃ、私はこれから神社に行くから、霊夢にそう遅くならないって伝えておく」 「ありがとう」 別にいい、というような仕草と共に、魔理沙は寒空に上っていく。 見送った後、青年は近くにおいてあったスコップを手にした。言ったからには、早めに終わらせたいところだった。 「というわけで、仕事してた」 「そう」 親友の報告に、霊夢は気のない声で応えた。ずず、と何を考えているかわからない顔で茶を啜っている。 魔理沙としても予想外の反応というわけではなかったので、炬燵に手足を突っ込んで温まることにした。 「あいつ働き者だなあ」 「そうね。単に居候してるだけなら追い出してるかも知れないけど」 「霊夢本当にやりそうだからなあ」 魔理沙はそう言いながら、茶が入った湯のみを炬燵から出した両手で包んだ。会話している間に霊夢が入れてくれていた。 その後一つ二つどうでもいい話をしていると、夕日の明かりが障子を叩いた。 「遅いな。割と早く上がるって言ってたんだが」 「雪道だからね。でももうそろそろじゃないかしら」 霊夢は茶のおかわりを自分の湯飲みに入れた。魔理沙も図々しく湯飲みを差し出す。差し出しながら、首を一つ傾げた。 「晩飯はどうするんだ?」 「帰ってから作るけど?」 「ああ、そうじゃなくて」 魔理沙が意外そうに言ったのを見て、霊夢が逆に不思議そうな表情をする。 「何か変? 帰ってからじゃないと冷めるでしょ」 「いやまあ、そうだが」 魔理沙が意外なのは霊夢がそこまでの気遣いをしてやっていることなのだが、直接口には出さない。 丁度そのとき、戸をノックする音がした。青年が帰ってきたのだというのは魔理沙にもすぐわかった。 霊夢は立ち上がると部屋を出ていった。出迎えるのは珍しくない。彼がとにかく喋らないため、実際に顔を合わせないと会話がしにくいのだ。 魔理沙は炬燵で手足を温めながら、部屋が寒くならないように丁寧に閉められた障子を通して聞こえてくる声に耳を傾けた。 「材料? もらったって? じゃあ、鍋にしましょ。あ、魔理沙も来てるから大丈夫」 霊夢の声だけが聞こえてくる。どうやら、今日の報酬には何か食料も含まれていたらしい。二人分の足音が近付いて、途中で止まった。 「ああ、湯に先に入ってきて。こっちは鍋の用意してるから」 「……本当に仲良いよなあ」 呆れたような魔理沙の声は小さくて、当の本人達の耳には届かなかった。 台所で魔理沙が食事の用意をしていると、針妙丸が姿を現した。 「こんばんは」 「よう」 「霊夢に誘われたから出てきたよ」 魔理沙は曖昧に頷いて、針妙丸に出汁の具合を見るように小さな器に分けて渡した。 「あ、おいし。いいんじゃない?」 「それじゃこんなものか」 満足そうに頷く魔理沙を見ながら器を置いて、針妙丸はきょろと周りを見回しながら尋ねる。 「霊夢は? 向こうにもいなかったけど」 「あいつを呼びに行ったよ」 「そっか」 針妙丸は相槌を打って、少しどこか呆れ気味のため息をつく。魔理沙はそれを見逃さなかった。 「どうなんだ、あいつら」 いろいろな意味を込めた言葉を口にしながら、鍋が冷めないように蓋をする。後はこれを運ぶだけで良い。 「仲良いよ。端から見てると焦れったいくらい」 「やっぱりそうか」 鍋の具合を見ながら、魔理沙はうんうんと頷く。 「あいつ、春になったら里で働くって言うが、ここから出て行くのかな」 その問いに、針妙丸はわからないというように首を傾げた。 「さあ、出て行くつもりなのか、そうでないのか」 「何か言ってないのか」 「霊夢は何も言わないし、あの人も何も言わないし」 「そっか」 魔理沙は曖昧に頷いた。特にそれ以上は突っ込まない。 霊夢とは長い付き合いだが、浮いた話は特になかった。だからこそ逆に突いてやるべきなのかもしれないが。 「あら、いいわね、お鍋って」 「うお、いきなり出てくるな」 空間が歪む嫌な音と共に、八雲紫が顔を出した。本来冬眠中のはずの彼女が出てきたことに、魔理沙は訝しむ。 「何だ、冬眠はやめたのか?」 「たまには起きることもありますわ。中休みみたいなものよ」 「そんなものか」 魔理沙は適当に受け流した。どうせきちんと理由を聞こうとしても答えないだろうことはわかっていた。 紫は曖昧な笑みのままその態度を受け入れて、ふと思い出したといった様子で尋ねる。 「霊夢は?」 「ここの居候を呼びに行ってるよ。ああ、でも遅いな」 実際はそれほど時間は経っていない。待っている時間は本人達が思っているよりも長く感じるものだった。 「見てきましょうか?」 「それで野暮になるのも、なあ」 魔理沙は曖昧な返しをした。実際にはその可能性は低いと思っていた。どうにも、もどかしい距離感なのだ。 「では、待つとしましょうか」 くすり、と紫は怪しげな笑みを浮かべて、良いお酒でも持ってきましょうか、と隙間の中に入っていった。 「もう出来るわよ。ご飯」 「あ、あ。ごめん、すぐに」 青年の部屋を訪ねて、霊夢はそう彼に告げた。薄い明かりだが、作業する分に支障はない。 外から月明かりが入ってきているのもある。雪に反射して、ほんのりと明るい。互いの表情を見るのに支障はない程度には明るかった。 「片付け?」 「服を、かたしてただけ、だから」 青年の言葉に嘘はなかった。洗濯するにも、冬は時期を見計らわないといけない。 「次の晴れには一気に洗濯かしら」 「うん、手伝、う」 「よろしくね」 そのときにはまたいろいろと冬の間の作業もしなければならないだろう。 雪かきもそうだが、また買い出しにもいかねばならない。まだ当分はそうした生活が続くはずだ。 冬が過ぎたら、もう少し過ごしやすくなるのだが。そうなったら。 どちらが先にその思いに至っていたのかはわからない。何も言わない。霊夢も彼も。どうするかさえも。 先に口を開いたのは霊夢だった。けれどもその内容は簡単なもので。 「さ、行きましょう」 「は、い」 応えて、青年は霊夢の方に身体を向けた。向けた瞬間、ぐらりとバランスを崩した。 畳の上には何もなかったはずなのに、何かに足を取られたような転び方だった。 そのまま倒れ込み――倒れ込むときに、霊夢を巻き込んでしまう。 「っ……!?」 青年も霊夢もかわせなかった。畳の上にそのまま倒れ込む。 柔らかい感触が手のひらに触れる。 捕まえてしまった腕は細かった。 触れてしまった身体が温かいのは、きっと暖かい部屋で温まっていたから。 視線が近い。いつも静かなその瞳が、僅かに驚いたように見えて―― そう思った瞬間、天地が逆転した。 投げられたのだと気が付いたのは、したたかに背中を壁に打ち付けた後だった。 上下ひっくり返ったままずり落ちる。重力に引かれるままに情けなく畳に転がった。 「……ごめん、つい」 「い、いや、こちらも悪、かっ」 言葉に詰まりながら、慌てて身体を起こして謝罪する。霊夢は何事もなかったかのように立ち上がって、ぱんぱんと手をはたいた。 「お鍋、そろそろ出来てるはずだから」 障子に手をかけて、霊夢はちらりとだけ振り返った。 「先に、行ってるわ」 「は、い」 こくりと頷き、青年は身を正して起きあがった。 起きあがった後、自分の手をしばらく見つめ、そして一つ小さく息を吐いた。 長くもない廊下を歩いている途中、霊夢は立ち止まって呟いた。小さいが、はっきりとした声で。 「紫でしょ、さっきの」 「あら、余計なお世話でした?」 空間の歪む音とともに、紫が隙間から上半身を出してくる。 「余計なお世話とかそう言うのではなくて。何故あの人に」 「あら、ちょっとした悪戯ですわ。妖怪はそうした悪戯をするものでしょう?」 「誤魔化さないで」 「誤魔化してないわ。悪戯を仕掛けたのは、何も彼に対してだけではないもの」 その言葉を聞いて、霊夢は静かに紫を見やった。瞳の光は鋭く射抜くかのようだったが。それに対して紫はあら怖いと言っただけだった。 「何が狙い? もう彼は幻想郷の住人よ。獲物にするには当たらないはずだけど」 「ええ、そうですわね。彼は我々の食事にはなりません。彼自身が危険なことをしない限りは」 「ならばどうして」 霊夢の言葉は静かに詰め寄るかのようだった。感情が含まれていない分、その言葉には凄みがあった。 紫はくすりと笑って、それがまるで稚気の現れだと言わんばかりに核心に触れてみせた。 「触れることも避けていたようだったから、少しお手伝いしたつもりだったのですけど」 「この場で退治されたいようね」 「あら、怖い。でも、嫌ではなかったのでしょう?」 「ゆか――――」 言い掛けた言葉と放たれた札は、虚空を貫いて行ってしまった。 紫が去った空間を睨みつけて、霊夢はそっと自分の身体を抱くように両腕を自分の肩に回した。 一つ大きくため息をついて、そして何事もなかったかのように歩みを進め、居間に戻る。 「おう、霊夢遅かったな。あいつは?」 「すぐ来るわ」 魔理沙の言葉にそう告げて、炬燵の中に足を入れる。炬燵の中は暖かかった。 卓の上にはすでに鍋が用意されている。 「ん。あ、紫がさっき来て酒持ってきて――というか今出してきたんだけどさ」 「そうそ、隙間の中から」 針妙丸が、小さな彼女用の器に酒を入れてもらっている。 霊夢は紫をちらりと見た。紫は涼しげな表情のまま、霊夢にも酒を勧める。 「あら、そんな顔しなくても霊夢の分もありますわ」 霊夢はそうじゃない、と言いたげであったが、特に何も言わずに自分の分のぐい呑みを差し出した。 間もなくして、遅くなりましたと辿々しく告げて青年が入ってきた。 「すまんな、先に食べてた」 「いや、遅れたのは、こっちだから」 言いながら、青年も炬燵の中に足を入れる。ほうと一つほっとしたようなため息をついた。 そうぬくぬくし始めてた青年の前に、霊夢は鍋の中身を適当によそって置いてやる。まだ十分に量はあるにはあったが、そうしたかったのだった。 「あ、りがとう、ございます」 「何だ、甲斐甲斐しいな、霊夢」 「ほっとくとあんたが全部食べるでしょうが」 軽口に軽口で返して、霊夢は自分の分もよそった。いただきます、と手を合わせた彼に、今度は紫から声がかけられる。 「貴方も如何?」 「あ、え、あ、いた、だきます」 酒を勧められて、青年は遠慮がちにぐい呑みを差し出す。とくとくと注がれたそれを手に一つ礼をして、口を付ける。 どうもこの青年は紫が苦手なのか、それとも慣れていないのか、妙に萎縮する。 当人曰く、他の妖怪よりも何だか怖い、くらいの感じ方らしいが。 「それにしても、寝てなくていいの、紫」 「たまに起きもしますわ。また寝ますけれど」 「ずっと寝てればいいのに」 相変わらずの言葉を告げた霊夢に、まあまあと適当な返しをしながら、紫は酒のおかわりを注いでくる。 「誤魔化されないから」 「あら、誤魔化されてくれてもいいのに」 霊夢と紫の応答に、青年は素直に首を傾げていた。こうした会話に、彼が口を挟むことはない。 不思議そうな顔をしていたものの、また鍋を食べ始める。空腹だったのか、すぐに空になってしまったそれを、今度は自分でよそっていた。 「また降り始めたな」 不意に魔理沙が呟いた。こもった空気を入れ換えるために障子を少しばかり開けていたのだった。 いつの間にか、雲が月を隠していた。静かに雪が降り始めている。 「あー、また冷えそうだねえ」 「あったかい、布、追加しようか」 針妙丸に向かって、青年が首を傾げた。 彼女が部屋にしているところも寒くなりすぎないように霊夢が配慮してやってはいるが、それでも寒いことはある。 「あ、それは助かるかなあ」 「うん、霊夢さん」 「いいわよ。押入かどこかに余ってたはずだからそこから持って行って」 じゃあ、後で取り出す、と青年は応じて、手元のぐい呑みをくいと傾けた。 「私の分の布団も頼む。どのみちこれでは足止めだからな」 「最初から泊まるつもりだったでしょう」 霊夢は呆れたように首を振った。まあなと魔理沙は笑う。 青年はその二人を見比べて、何度か口を開閉させた後ただ頷いた。そちらもそうする、という意思表示だった。 「次は春かしらね、私は」 紫は何気なくそう言って、彼のぐい呑みにもう一つ注いだ。青年は一礼してまたそれを口に運ぶ。 「貴方も里で働くのでしょう? ああ、安心して。余程自分から命を捨てようとしない限り大丈夫よ」 「感謝、します」 「礼は必要ないわ。それが決まりですもの。そして、春になったらどうするの?」 紫の問いに、興味深げな視線を向けたのは針妙丸と魔理沙だった。霊夢はちらとも見ずに酒を飲んでいる。 青年は口を開閉させて、けれども言葉がすっと出てこなかったのか、ぺこりと一つ頭を下げた。 「勘弁してほしい、というところかしら」 紫の言葉に、青年は何度も頷いた。仕方ないわね、というようにため息をついて、紫は態度を崩した。 「酔わせたらもう少しいろいろ聞けるかと思ったんだけど」 「そんな理由で酔わせるな」 「まあまあ霊夢、意外に面白いかもしれないぞ。ほら、もっと飲め」 魔理沙に薦められて、青年は困ったように霊夢に助けを求める視線を向けた。 「……後で、布団の用意を自分ですることになっても知らないわよ、魔理沙」 「…………この時期にごろ寝は怖いな」 魔理沙が薦めを緩めて、青年はほっと息を吐く。 「あり、がとう」 「どういたしまして」 霊夢は素っ気なくそう答えて、開いている障子の向こう側の景色に視線を移した。 外はまだ雪が深々と降り続いていた。 何もかもを埋めてしまうかのように、静かに降り続いていた。 うpろだ0045 「ふぁ~ぁ~」 縁側に寝そべりながら外の風景を眺める。 庭に植えられている桜も散り、新緑が芽生える初夏。 昼寝するには持ってこいの気候だ。 「このまま寝ちまおうかなあ……ふぁ」 溢れ出る欠伸を抑える事もせず、全身を弛緩させ、怠惰を貪る。 休日というのはこうでなくちゃな。 「食べた後すぐ寝っ転がると牛になるわよ」 居間の方から声が聞こえる。 首だけ振り向くと、お盆を手にした霊夢が呆れを抑えきれない表情でこちらへと向かって歩いていた。 霊夢と俺は夫婦という関係にある。 数年前、外の世界から幻想郷へ迷い込んだ俺は紆余曲折あって霊夢と結婚する事になった。 結婚後、俺は博麗神社へと住み込み、霊夢と生活を共にしている。 「はいお茶。飲むでしょ?」 急須を傾けてお茶をお椀へと注ぐ。 断りを入れながらも既にお茶を注いでいるのは、朝食後の一服が俺達の生活に組み込まれている為か。 こういった細かい所に、結婚生活の喜びを感じ、思わず頬が緩みそうになる。 「ありがと。頂きます」 「はい」 夫婦二人、肩を並べて縁側でお茶を啜る。 庭の風景を眺め、風が木々を揺らす音を聞きながら、静かな時間が流れる。 時折思いついたように、お互いが話したい事を話し、相手が頷いて。 話が終わるとまた静寂が訪れる。 言葉を交わさずとも満たされた気持ちになれるというのは、数年前の俺からしたら考えられない事だろう。 急須の中身が空になる頃、俺の隣に正座していた霊夢がおもむろに足を崩す。 所謂女の子座りというヤツだ。 霊夢は傍にあるお盆に載せてあった木箱を取り出す。 霊夢がこちらへ向き、自身の膝を両手でぽんぽんと叩く。 「今日もするんでしょ?」 「……おねがいします」 これも、俺達の生活習慣の一つなのだろう。 互いの仕事が休みの日、俺は霊夢に耳掃除をしてもらっている。 いつから始まったかは正確に覚えていないが、切欠は今でも覚えている。 結婚前、博麗神社に遊びにきていた俺は、居間にあった耳かき棒を借りて耳掃除をしていた。 幻想郷に耳かき文化がある事を知らなかった俺は、長い間耳掃除をさぼっていた。 たまたま見つけた耳かき棒を借りて、セルフ耳かきを行っていたが、 長期間放置していた為か、耳垢が外耳にこびり付き、上手く取れずにいた。 そこに霊夢が現れ、耳掃除をしてくれる事になった。 頭を振り回しながら耳かきしている俺を見て不安に思ったようだ。 その後、博麗神社に遊びに行ったら霊夢に耳をかいて貰うという事が恒例となり、 結婚後も続いている、という訳だ。 ちなみに、いつもして貰って悪いという事で、俺が霊夢の耳掃除をしてあげたいと提案したら鼻で笑われた。 急須の乗ったお盆を端へ避け、霊夢の太腿へ寝転がる。 霊夢の身体に対し、頭を垂直に向けて太腿へと乗せている為、逆さではあるが霊夢の顔を真正面から見る事になる。 幻想郷にきたばかりの頃は少女らしい、幼い顔つきをしていた彼女であったが、 今では女性らしい落ち着きを湛えた表情を見せる。 「何ボサッとしてんの? 右耳、向いて?」 「……おう」 見とれていた、なんてとてもではないが口には出せない。向こう一ヶ月はからかわれる事になるのが目に見えている。 思わず勢い良く顔を左側に向けてしまう。恥ずかしがっているのが丸分かりだが、仕方がない。 そんな事を気にした様子もなく、先程取り出した木箱の中から、竹製の耳かき棒、ちり紙を取り出す。 「じゃあ、始めるわよ。まずは外側からね」 ちり紙を使い、耳の外側部分を擦る。 「あんたお風呂の時耳洗ってないでしょ? 垢溜まってるわよ」 しょうがないわねー、と言いながらも、窪みの部分まで丁寧に擦り上げ、綺麗にしてくれる。 普段はだらけている印象が強いが、本気を出した彼女の仕事は誰よりも丁寧で繊細だ。 ただ、その本気が特定の分野のみでしか発揮しない事が何よりも問題である。 まあ、数少ない分野の内に耳掃除が含まれている事はありがたい所ではあるが。 そうこうしている内に外側の掃除が終わった様だ。 残りカスを細い指を使って優しく払ってくれる。 「じゃあ、耳かき棒入れるわよ。痛かったらちゃんと言いなさいよ?」 幻想郷における耳かきは、現代日本のそれと余り変わりはない。 先端は匙の様になっており、反対側には梵天もついている。 匙の部分が耳の穴の入口に触れる。 すーーーっ 表面をなぞる様に棒が走らされる。 入口付近の浅い部分を、円を描くようにかきあげる さりさりっ…すすーー 時折細かい耳垢を巻き込みながら、徐々に奥へ奥へと進入していく。 「どう? 痛くない?」 繊細な作業をしている所為か、声のトーンを落として囁く様に霊夢が尋ねてくる。 耳元を吐息が撫ぜて、こそばゆさに身が震えそうになる。 「……うん。大丈夫」 そんな様子を悟られたくなかったので、平静を装う様に反応してしまう。 「そう。じゃあ続けるね」 耳の穴の中に生える産毛を撫でながら、奥へと進んでいく。 つつーー…かりっ、かりっ 時折、薄く張り付いた耳垢を見つけては、匙を器用に使って剥がしていく。 「おっ、綺麗に取れたわね~」 一旦耳かき棒を取り出し、取れた獲物を掌に載せる。 「見たい?」 「遠慮しとくわ……」 「あっそう。中々良い作品なんだけど」 大人っぽい表情を見せるようになっても、こういう所はまだまだ子供っぽい。 まあ、そこもまた可愛い訳なんだが…… 取り出した耳垢をちり紙の上に乗せ、耳かきを再開する。 「ここ、溜まってるわね。そろそろ本気をだそうかしら」 再び耳の中に進入した匙が、皮膚に触れる かさっ…かりっ…かりかり 霊夢の言葉通り、本格的に耳垢をかき始めた様だ。 匙の動きに合わせ、耳の中から頭全体へと細かな振動が伝わってくる。 「……んっ」 心地の良さに、思わず声を漏らしてしまう。 「今の気持ち良かった?」 俺の反応に気を良くしたのか、霊夢が訊ねてくる。 「……おぅ」 声を漏らしてしまった恥ずかしさと、耳かきの気持ち良さで、つい反応がおろそかになってしまう。 「そう」 満足気な声。横を向いているので顔は見えないが、さぞ良い笑顔をしている事だろう。 かさ…かりっ、ぺりっ… 「んぁあ!?」 一際強い衝撃が脳髄に叩き込まれる。 どうやら大きな塊を一気に引き剥がしたらしい。 一瞬の痛みの後、途方もない快感が耳の中に広がる。 「大丈夫!? 痛かったの?」 霊夢が心配そうに声を掛けてくれる。 「大丈夫。 いきなりだったからびっくりしただけだよ」 強い刺激を脳に直接放り込まれ、声を抑える事ができなかった。 「続けても平気?」 「むしろお願いしたいかな……」 あの気持ち良さをまた体験したいが為、改めて霊夢に耳を差し出す。 ぐっ…ぐぐっ… ある程度耳垢を取り終えた所で、霊夢はかき方を変えてくる。 今度は耳の中をマッサージするように、壁に圧力を掛けながらスライドさせる。 ぐぐっ、かさかり…ぐぐー 耳内に少量残っている粉状の耳垢を、匙を使って器用に払い、また押し付ける様にマッサージを行う。 耳の中には無数のツボがあるという話を聞いた事があるが、あながち嘘ではないかも知れない。 「どう? ここ、気持ち良いでしょ?」 霊夢が耳の奥の壁に匙を押し付ける。 背筋を通って全身に快楽が広がっていく。 「うん……」 耳垢を取る時のような、鋭い刺激を伴う気持ち良さとは違う、 優しさを孕んだ、全身に染み渡るような気持ち良さ。 じわじわと快楽に侵食され、意識が落ちてくる。 眠くなってきた…… 「でしょ? あんた、いつもここ押すと気持ち良さそうに反応するのよね」 どうやら弱点を握られている様だ。 まあ、膝枕されて耳に棒を突っ込まれている時点で、生殺与奪の権利は彼女にあるのだが。 「……? どうしたの? 眠いの?」 「……うん」 彼女が何を言っているのかは理解できるが、自身の反応が鈍くなってきている。 「ちょっと、今日買出し行くんでしょ? お酒、今日の分ないわよ?」 「うん……」 段々自分がどう反応しているのか分からなくなる。彼女が何を言っているのかも聞こえなくなってきた。 「まっ……しょう……わね。あん……わたしが……」 「……くー」 彼女が散々文句を言っている所で、俺は意識を手放した。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「まーた寝ちゃったか」 片方を掃除し終えた所で、もう彼の意識は無かった。 耳かきをしてあげるといつもこうだ。 片耳を終えた頃には、大体寝てしまっている。 「よいしょ……っと」 横に向いたまま眠っている彼の顔を正面に向ける。 安らかな寝顔。子供みたい。 「よしよし」 くしゃり、と頭を撫でてやる。少し癖のある髪が、私の手に絡んで、解けていく。 髪、伸びてきたわね。次の休みに切ってやらないと。 「……んー」 頭を太腿に擦り付けられる。 彼の癖だ。枕の上でやっている所は見た事がないから、どうやら私の膝枕限定の様だ。 普段そのようには見えないが、性根は甘えたがりなんだろうか。 「……かわいいなあ」 ぐうたらで、お酒に目がなくて。 でも、私の事、大事にしてくれて。 そんな彼が、愛おしくて堪らない。 彼の頭を撫ぜながら、寝顔を見る。 結婚前から続けている習慣の一つだが、未だ飽きそうにない。 時間が許すなら、一日中だって見続けても良い。 まあ、その前に私の膝が限界を迎えるだろうけど…… 彼が寝付いてから結構な時間が経った。 私はまだ彼の頭を膝に乗せ、寝顔を見たり、頬を突っついたり、と幸せな時間を過ごしていた。 しかし、ここで一つの問題を思い出す。 「どうしよう。買い物行かないと今日分のお酒がないわ……」 それどころか、明日から食べる物もない。 今日は絶対に買出しに行かないとまずいんだけど…… 「……くかー」 起こせない。 こんな幸せそうな顔して眠っている旦那を、私は起こす事ができなかった。 何より、そんな旦那の顔をまだ見ていたいから、起こそうという気がまったく湧いてこない。 「こりゃあ、買い物は昼過ぎかなー」 今日も私は彼が自然に目を覚ますのを待つ。 「何で起こしてくれなかったのさ」 眠そうな眼を擦りながら、彼が私に問う。 「私も寝ちゃってたのよ。大体、あんたが寝るのが悪いんでしょう?」 「そうなんだけどさ……気持ち良過ぎてつい、なあ……」 段々声が尻すぼみになっていく。 このやり取りも、いつも同じ。 私達の大切な習慣だった。 私達はこれからも、数多くの習慣を積み重ねて、日々を生きていく。 夫婦の関係というものは、こうやって少しずつ形作って行くものなのだろう。 「さあ、急ぐわよ。あんたの好きな銘柄、売り切れるわよ?」 霊夢と居候03(うpろだ0056) 「お世話になりました」 ぺこ、と博麗神社の居間で頭を下げたのは少名針妙丸だった。 聞かされた二人の人間は、目を瞬かせて互いに視線を送る。 「出てくの?」 人間の片方、博麗霊夢が首を傾げる。針妙丸は頷いた。 「今すぐってわけじゃないけど。逆さ城もあのままにしておくわけにはいかないから」 私が管理しないとね、と言いながら、針妙丸は小さな椀の茶を空にした。 「お、かわり、いる?」 訥々とした語りの青年――針妙丸と同じく、この神社に居候している男が、そう急須を手にした。 やや吃音の気はあるものの、それ以外は普通の人間だ。 神社に居候しているがために、幻想郷に変な馴染み方をしてしまっているところはあるが。 「あ、いる。ありがと」 素直に頷いた針妙丸の椀に、新しい茶が注がれる。それを見ながら、ああ、と霊夢が頷いた。 「この前紫と話してたあれこれ?」 「そうそ。そろそろ小槌の魔力も回収できるし、ってね」 また茶を啜りながら、針妙丸はこくりと頷いた。彼女の手元には、打出の小槌がある。 一騒動を起こしたそれも、もう何事かを起こす様子はなさそうであった。 霊夢は何度か頷いて、非常に彼女らしい了解の言葉を告げた。 「まあ、勝手にしなさいな。それでも春まではいるんでしょ?」 「うん、ちょっと雪が緩んできてからの方が有り難いから、それからでいい?」 「いいわよ」 霊夢はこともなげに承諾した。そういう人物だとわかっている。 「じゃ、もう少しだけだけど、よろしくお願いします」 ぺこ、と針妙丸は頭を下げた。 その後、霊夢が茶の追加を入れにいったところで、針妙丸が青年に尋ねた。 「ねえ、貴方はどうするの?」 その問いに、青年は一つ首を傾げる。 「霊夢は今みたいに、『勝手にすればいい』としか言わないと思うけど。春になったらさ」 言わんとするところを察したのか、彼はこくりと頷いた。 「……そ、うとは、言われてる、から」 「うん」 口を開閉しながら言葉を出そうとするのを、針妙丸は急かさずに待った。急かすと逆に言葉が出てこないことを知っているからだった。 「……か、ってに、しようと、思ってる」 「……霊夢も霊夢なら貴方も貴方だね。はっきりさせた方がいいと思うけど」 呆れたような、けれども逃げを許さないような口調で、針妙丸は告げた。 「そ、うだね」 青年は、その厳しい言葉に笑みを浮かべた。ずるいことをしている自覚はあった。 針妙丸はそれを洞察したようだった。大仰にため息をつく。 「自覚があるならさらに性質が悪いね」 「う、ん。ずるい、ってのは、わかってる」 「人間っていうのは、こうもずるいのかな」 「……にん、げん、っていうより、俺が、だと思う、よ」 余計性質が悪い、と針妙丸は首を振った。けれども彼女はきちんと釘は差したし、差された方もそれを理解していた。 その、数日後のことであった。玄関先で声がするのが耳に入って、青年はそちらに足を向けた。 「ああ、いいところに」 「ど、うも」 上白沢慧音が、玄関で霊夢と会話していた。立ち話も、とは思ったが、霊夢が軽く首を横に振った。様子に気が付いた慧音が笑う。 「すぐに戻らねばならないから。今日は少しましだが、明日はまた雪が降りそうだから準備をしておかないと。ここは大丈夫か、霊夢?」 「おかげさまで。しばらく閉じこめられても大丈夫なようにはしてるわよ」 霊夢は苦笑気味に肩を竦めた。慧音からすれば、霊夢という存在は博麗の巫女であると同時に、里から離れて生きている少女でもあるのだろう。 妹紅が過保護だって言うのもわかるわ、と冗談混じりに応じて、霊夢は本題を促した。 「ああ、貴方のことなのだが、里の家の割り当てがそろそろ始まるんだ」 青年は頷いた。春になれば、本格的に彼も里での仕事が始まる。この世界に生きていくしかないと決めた以上、働かねば生きていけない。 幸い、働き口はもう決まっている。何度かもう顔合わせもしていたし、業務内容の確認もしていた。まだ始まるまではわからないが、第一印象は悪くなかった。 「それで、その、貴方の希望も聞いておこうと思って。すぐでなくてもいいが、数日中に連絡をくれると有り難い」 「わ、かり、ました」 やや歯切れの悪い慧音の言葉に、青年はそう応じて頭を下げた。 「うん、ああ、お願いするよ。霊夢、そういうことだから」 「ええ」 霊夢は表情のない声で応じた。慧音は少しばかり気がかりそうな表情をした後、ではまた、と挨拶をして帰って行った。 後には二人だけが残された。僅かな沈黙の後、先に口を開いたのは青年の方だった。 「……霊夢、さん」 「…………いつも言ってるでしょ。それに、わかってたことだし」 好きにすればいい、という言外の言葉を、霊夢は口にしなかった。青年も問い返さなかった。 だが、もうはぐらかす時間は終わりを告げ始めているのだと、それだけは確実だった。 その日の風呂上がり、寝衣代わりの甚平の上に書生羽織を羽織った姿で、青年は家の中を歩いていた。 人を探していた。部屋の中にいるかと思ったが、そこにはいなかった。針妙丸に聞いても知らなかった。 眠そうにしていたのを邪魔したのを謝罪した後、また探している。部屋にいないとなれば、後は。 「……さ、むい、のに」 小さい呟きが、我知らず漏れた。白い息が零れて消える。 ようやく見つけた姿は、凍えそうな程寒い縁側で悠然と湯飲みを傾けていた。 近寄りがたい雰囲気すら持っている少女に、青年は口元を一つ引き締めて近付いた。 「ひ、える、よ」 「少し上せたから」 「なお、さら」 青年は、やはり寝衣の上に半纏だけを着込んで座っている霊夢を見て眉をしかめた。 「お茶をもう一杯だけ。それでいいでしょ」 何を言っても聞かないだろうことを察して、青年は盆を挟んだ反対側に腰を下ろす。 話さねばならないことがあった。それで探していたのだが、見つければこんな寒いところにいたというわけだ。 早く部屋の中に戻って欲しいが、何か思うところがあるのだろうか。 湯飲みは二つ用意されていた。一つは霊夢が使っている。もう一つを勝手に使うことにして、急須から茶を注いだ。茶は少し温くなっていた。 しばらく、ただ茶を啜った。何から話し出せばいいか、青年は考えていた。言いたいことはたくさんあるのに、だからこそ言葉がなかなか出てこなかった。 言葉に詰まることに困ったことは多々あれど、こうした詰まり方は初めてだ、と目を細めて苦笑する。 「春になったら、里に降りるの」 口火を切ったことが霊夢であったことに、青年はわずかに驚いた。だが、表情には出さず、ただ言葉を返す。 「…………霊夢、さんは、俺に、勝手にしろ、っ、て」 「ええ、言ったわ。好きにすればいいとも思ってる」 霊夢はそう言いながら茶を啜った。声から感情は読み取れない。 読み取れないから、結局は自分から言わなければならないのだ。 「かっ、てに、しようと、思ってるけど」 「うん」 「……貴女の、許可、が、ないと、流石に」 「……それは」 霊夢は言い差して首を振った。 「はっきり言いなさい。曖昧な言い方で逃げるのはなしにして」 その言葉は、きつい弾劾のように見えて、事実は異なっていた。 少なくとも、青年はそう受け取った。避け続けていたことを告げなければならないと思った。 ずるい逃げ方をしていたツケが回ってきたのだ。 「……ここにいて、いいですか、霊夢さん」 青年の瞳も声も静かだった。その分、霊夢もまた逃げることは出来なかった。 「……ええ、好きにして」 霊夢の言葉を、青年は誤解しなかった。軽く首肯して、茶をまた啜った。だいぶ熱は取れていた。 こと、と音がした。霊夢が自分の湯飲みを置いた音だった。音は軽かった。 「……私の傍は、きっと面倒よ。妖怪は来るし、あれこれのことはあるし。ここは博麗だしね」 「……それでも」 それでも、と青年は繰り返した。ああ、やはり逃げることは出来ないのだ。 はあ、と一つ大きく息を吐く。白い息が、夜闇に溶けて消えた。 「……貴女に、惚れたから。好きです、霊夢さん」 言葉は突っかからなかった。彼にしては珍しいことだった。霊夢は、小さく息を吐いた。やはり白かった。 沈黙は長くは続かなかった。霊夢がその口唇をそっと開いて言葉を口にした。直接的な言葉ではなかった。 「貴方は」 「は、い」 「……魔理沙のことは呼び捨てで呼ぶのに、私にはそうしないのね」 青年は目を瞬かせた後、ゆったりとした笑みを浮かべた。 「……呼ん、でも、いいなら」 「……貴方が、そうしたいなら。好きにして」 少し目を伏せて応じた霊夢に、青年は頷いた。今回も、やはり青年は霊夢の言わんとすることを誤解しなかった。 手元の湯飲みを飲み干して盆に置く。とっくに空になっていた湯飲みの隣に、音を立てずに置いた。 立ち上がり、軽くなった盆を片手で持ち上げて、青年は霊夢に空いた方の手を差し出す。 「霊、夢。冷える、から。お茶も、なくなった」 「……ええ」 霊夢はその手を取って立ち上がった。手はひんやりと冷えていた。青年は眉を顰めた。 「やっ、ぱり、冷たい」 「……そうね」 「……暖めない、と」 「……うん」 霊夢は頷いた。青年は霊夢が立ち上がったのを見た後に一度手を離し、障子を開けて霊夢を促した。 大人しいままの霊夢が中に入った後、青年も後について入ると、後ろ手に障子を閉めた。障子の中で、影が少しだけ動いた。 外では、雪がまたちらつき始めている。 結局、翌日里に降りることは出来なかった。雪が強くなって外に出られなかったのだった。 そのさらに次の日になって、青年は慧音に神社に残る旨を告げるために里に出てきていた。霊夢も一緒に来ている。 「ああ、そうするのか」 慧音は諒解半分、納得半分のような頷きで返した。青年は申し訳なさそうな顔をして、もう一度詫びた。 「す、みま、せん。折角、いろいろ、してもらった、のに」 「いや大丈夫だよ。それならそれでまた割り当てもあるから」 宥めるように言って、慧音は付いてきている霊夢にも話を振った。 「霊夢もそれでいいんだな?」 「ええ。私の家だし、そこは承知してないとオーケー出さないわよ」 「ならいいんだが」 慧音は曖昧に頷いた。霊夢の態度の素っ気なさと、いつもと変わった様子のない青年から、それでいいのかどうかわからなかったのだ。 恋人同士にも見えない二人が、そうして大丈夫なのだろうかと。 だが、これ以上言葉を重ねるのはよくない気もしたし、野暮になるような気もした。どちらにしろ、確信が持てないままでいる。 「さ、買い出しに行くわよ」 「う、ん。では、先生、これで」 青年は頭を下げると、先にさっさと歩き出してしまった霊夢の後を追いかけ始めた。 「霊夢、速、い」 「貴方が遅いのが悪いの。また雪が降り出す前に帰りましょう?」 慧音は遠くなるそのやりとりを見て、ああ、と優しげに微笑う。 考えているほど心配する必要はないのかもしれない、と思ったのだった。 それが事実である、ということを正確に知るまでには、もう少し時間が必要ではあったが。 幾分か買い出しをし、その荷物を両手に抱えた状態で青年は霊夢に尋ねた。 「……いい、の、か」 「何が?」 「その、っ、と」 言葉を選ぶように、同時に何かが突っかかったように口を開閉しながら、青年は時間をかけて問いを口にした。 「……一緒、に、歩いていると、そういう関係に、見られる、と、思う」 青年が霊夢のところに居候しているのは周知の事実だが、二人で里を歩いたことはない。 しかも、割と近しい距離で歩いている。そういう間柄と他人に邪推させるには十分だった。 青年は、それによる霊夢の評判を気にかけたのだった。青年が素性のよくわからない外来人であることに間違いはない。 だが、霊夢の返答は涼しいものだった。 「貴方は嫌?」 「そうでは、ない、けど」 「ならいいじゃない。別に嘘を吐いているわけでもないわ」 どうせ春になって貴方が降りてこなかったらわかることでしょ、と霊夢はこともなげに告げる。白い息が風に乗って消えていった。 「早いか遅いかだけよ、大したことじゃないわ」 「……ん」 彼は頷いた。そう、自分は霊夢の傍にあると決めたのだから、それでいいのかも知れない。 不意に、霊夢が片手を伸ばした。首を傾げていると、片方の手の荷物を奪われた。 「あ」 「さっさと帰りましょ。陽が落ちるのも早いわ」 重ねられた手に、青年は頷いた。今日の手はどちらも冷えていた。 「はや、く、帰って、炬燵と、火鉢に、火を」 「ええ」 霊夢は微笑んで同意を示した。陽が傾く前の里を、二人でそうして歩いていく。 雪解けはまだ遠い。 けれども、蕾が綻ぶように開き始めた想いは、一足先に春を迎えるのだろう。 この先に、何が待っているのかはまだわからないとしても。 それでも、今はただ、この想いをただ大事に咲かせよう。 35スレ目 322 323 325 322 恋をしていままでどうやって飛んでたかわかんなくなって焦る霊夢さん 323 322 最近幻想郷に迷い込んだ○○のことが気になって仕方がない霊夢さん なぜか飛べないことに気付く 霊夢「な、何で.........!?」 脳内(も、もしかして体重が増えたとか!? いや、このごろお金ないしそれなのに ○○との食事は無理してしっかりおかず作るから自分だけの食事は野草を食べる 始末だからそんなことはないはず! だったら何で!? 自分では飛ぼうと しているのに、体は全く浮かない...はっ!) 霊夢「まさか!!」 数日前 ○○「そういえば、霊夢の能力って飛ぶことだったけ?」 霊夢「...なによ? 地味だって言いたいの? 別にいいのよ能力なんて。 それに、私はそれ以上に強そうな能力もちでも普通に勝てるしね」 ○○「さすがは博麗の巫女だな。でも、少し寂しくもなるなぁ」 霊夢「えっ...ど、どういうこと!?」 ○○「いやさ、霊夢って移動するときはほぼ確実に飛んで移動するだろ?」 霊夢「そうだけど......なんか関係あるの、それ?」 ○○「俺って一般人だから空飛べないし、霊夢の移動は空だろ? そうなるとさ、なんか、霊夢が俺よりずっと遠い所にいちゃうような気がして...」 霊夢「なによそれ? 別にそんな遠くまで行かないし、私だって、歩きの移動もあるわよ」 ○○「......そうだよな、うん。悪い、今のはただの独り言だ。忘れてくれ」 霊夢「はいはい」 そして現在 脳内(ま、まさか○○のあの言葉!? じゃあなんで? 忘れろって言ったかから 忘れたはずなのに...そもそもこのこと覚えてた時点で忘れてないじゃない! じゃあもしかして、○○がああ言ったから、私は○○と歩きたいから...) ......意識しないで、飛ぶことを拒否してるの......!? 再び 脳内(何で何で!? 飛ぶのと○○と歩くのは別でしょ! それが何で飛びたくないに つながるのよ! そ、そりゃ、○○とそんなことはしたいとは思うわよ? でも、何で...ああもう! 何でばっかりじゃない! ううー...どうすれば...?) 1.思い切って○○に相談する 2.他の幻想メンバーに相談する 3.解決できない。現実は非常である 石は投げないでください。 325 322 ぼかぁそっからの覚醒イベントみたいなのとか好きだけどね 恋してうまく能力使えない~時に異変が起こって ボスに苦戦してそのせいで○○が危なくなって そうして初めて自分の恋慕の気持ちを認めてからの 霊夢「『幻想浪漫飛行』博麗霊夢!!」 って名乗り口上からの クッソ強なってて無双する展開 35スレ目 345 (35スレ目の 343に対して) 魔理沙「おおっ、私だ!私が出てるぜ!」 文「あやや、押さないで下さいよ。よく見えない。」 香霖「ふむ、僕も出るのか。熱意が伝わってくるね。」 阿求「私の出番、セーブ係くらいなんでしょうねえ」 朱鷺「出番あるだけいいじゃない」 正体不明「お嬢さん方、くよくよしてても始まりませんぜ。『待てば海路の日和あり』と言うじゃあありやせんか。 なあに、この旦那なら末は太宰か芥川、名文の限りであっしらを活写してくれますぜ。 かあーっ、しみるねえ。」 ルナサ「……あなた誰」 霊夢「……」 魔理沙「霊夢は嬉しくないのか?お前が主人公っぽいぜ。このこのー。」 霊夢「回りくどいのよ。こんなもの作らなくても、私は…」 魔理沙「おおっ?」 霊夢「何でもない。ところで、いつ始まるの、これ。」 魔理沙「ボタン押さないとダメだぜ。」 霊夢「そうなの。ふうん、けっこうおもしろいわね。あ、私。 …え、何、これ。こんな話なの?ふーん…」 魔理沙「お、怒ってるのか?その、あいつも悪気があったわけじゃないと思うぜ…。」 霊夢「いい。」 魔理沙「はあ?」 霊夢「いいじゃない!あいつとイチャイチャできるなんてッ!このゲーム最高! ねえ、ここからどうやって先行くの?」 魔理沙「試作だからそこまでだぜ。続きは作ってもらわないと」 霊夢「作ってもらえばいいのね!」 魔理沙「おーい、帰ってこーい。」 20分後、神社に拉致られてカンヅメにされる○○の姿があったとさ。 35スレ目 386 霊夢「また会えるから、絶対」 霊夢「だから、さよならなんて言わないわ」 霊夢「またね!!」 35スレ目 414 皆の前で堂々とチョコを渡して外堀を埋めにかかる霊夢さん 避難所 57 霊夢「彼、一度寝るとなにやっても起きないわよ」 魔理沙「『なにやっても』ってなにやったのぜ?」 霊夢「…………………」 魔理沙「どうしたの?」 避難所 141 魔理沙「あけましておめでタイガー!!」ガオー 霊夢「はいはいタイガータイガー。タイガーアンドバニー」 霊夢「ねぇ、正月ぐらい自分の家でゆっくりしたら?」 魔理沙「だって……ひとりで寂しい…」 霊夢「かわいい」 魔理沙「霊夢正月予定あるの?」 霊夢「明日○○さんちの実家いくぐらい」 魔理沙「そうなんだじゃあ今日お昼からさ…」 魔理沙「……なんで霊夢が○○の実家に行くの…?」 霊夢「……」 魔理沙「…なんで…?」 避難所 182 ゴォォォ「雪」 早苗「すごい降ってる」 霊夢「こんな降るとは思わなかった。困ったわね」 早苗「泊まってってください」 霊夢「いいの?」 早苗「いいよ」 ピロピロピローンピロピロピローロー『オフロガ・ワキマシタ』 霊夢「!」 早苗「あ、お風呂沸きましたね。一番どうぞ」 霊夢「流石に家の人差し置いて一番はやめとくわ。最後に入らせてもらわね」 諏訪子「うぃ~あがったぞ~」ホカホカ 早苗「霊夢さーんもうみんな入ったんでどうぞ~」 霊夢「はーい」 早苗「あっ上がる時追い焚きだけ消しといてください」 霊夢「はーい」 テレビ「この辺がめっちゃ雪降っててぇマジ寒くてぇ明日はぁ」 早苗「…明日も降るんだ…」 『オイダキヲチュウシシマシタ』ピローン 早苗「…水道凍るかも…」 霊夢「お風呂ありがとう」ホカホカ 早苗「あっごめんなさい使い方わかりました?」 霊夢「あぁうん○○さんちのと一緒だったし」 早苗「そろそろ寝ますか?」 霊夢「うん」 早苗「おやすみなさーい」カチッ 霊夢「おやすみ」 霊夢「…zzz…」 早苗「…」 早苗「………」 霊夢(○○さんちのと一緒だったし) 早苗「……………………………………」 避難所 186 霊夢「ねぇ魔理沙アンタさァ」 魔理沙「うん?」 霊夢「チョコ…作ったことある?」 魔理沙「!!」 魔理沙「あ、あるのぜチョコぐらい…」 霊夢「じゃ、じゃあさ…作り方…教えてくンない?」 魔理沙「いいのぜ」 魔理沙「まず魔法陣を描いてだな」カリカリ 霊夢「魔法陣????」 魔理沙「中央に材料を置いて…」 霊夢「ねぇ魔理沙あの」 魔理沙「チョコデペクトルパトローナームッ!!」ビビビ ボボボンボコッボコボコッゴポォ チョコ「シテ…コロ…シテ…」ピクピク 魔理沙「魔法陣ちょっと間違えちゃったかなタハハw」 霊夢「作るってそういう意味じゃなくてね?」 魔理沙「バレンタインチョコ!?!?」 霊夢「うん」 魔理沙「そんなものを作るってことはまさか…!!」 霊夢「……!」 魔理沙「…私は混ぜる惚れ薬を作ればいいのか…?」 霊夢「いらないわよそんなもん!!」 魔理沙「魔(法少)女に相談するってそういうことじゃん!?」 霊夢「そうなの!?」 アリス「そうわよ」 パチェ「そうわよ」 魔理沙「惚れ薬いらないってことはサ」 霊夢「なによ」 魔理沙「相手はもう霊夢に惚れてるのか?」 霊夢「……………………………そ、ういうことじゃ…なくてぇ…」 魔理沙「だったら入れたほうがイージャン」 霊夢「…そういうのこれからなんだからさぁ…」 避難所 509 咲夜「これ、美鈴が里帰りした時のお土産」 霊夢「ありがと。ちょうどウチも珍しいお菓子あるから食べてきなさいよ」 咲夜「アザーッス」 咲夜「これ、おいしいわね」モグモグ 霊夢「でしょ?でもね、賞味期限短いのにいっぱいあるから…いくつか持って帰ってよ」 咲夜「悪いわね」 咲夜「あっ霊夢も『ディア風呂4』やってるの?」 霊夢「うん」 咲夜「パチュリー様もハマってるんだけどさぁ妹様がゲームしすぎの時怒るに怒れなくてさ」 霊夢「『パチェなんか1日中やってるじゃん』って言うんでしょ」 咲夜「そうそう」ワハハ スマホ『prrrrprrrr』 霊夢「あっ電話ちょっとごめんね」 咲夜「うん」 霊夢「もしもしー?〇〇さん?どうしたの家電からなんて」 咲夜「……」モグモグ 霊夢「えっ…スマホ忘れてないかって?」 咲夜「……」オチャズズズ 霊夢「昨日お土産持ってきた時は持ってたよね?」 咲夜「……、……」グビ 霊夢「ねぇ咲夜、アンタ〇〇さんの番号知ってるよね?ちょっと鳴らしてみてくんない?」 咲夜「えっ??あっ、うん。いいけど…」タプタプ \prrrr/\prrrr/ 咲夜「小さいけど聞こえるわね」 霊夢「ちょっと鳴らしてついてきてくれる?」 咲夜「あっちの部屋から聞こえるかも」 霊夢「寝室か」 咲夜「しんッ」 霊夢「押入れからかすかに聞こえる。ふとん畳む時に、巻き込んでたのかも」スボッモゾモゾ 咲夜「“ふとん”」 霊夢「あったあった」スポッ 咲夜「?……?……??」 霊夢「あっ〇〇さんスマホ、あったよ。うん、いつか取りくる?うん、うん、わかった。うんじゃねー」 咲夜「……」 霊夢「すぐ見つかったわありがと。あ、お茶おかわりいる?」 咲夜「ハイオナシャス…」 咲夜「……」 パチェ「咲夜?」 咲夜「ハイッ」ビクッ パチェ「どうしたの?なんか具合悪い?」 咲夜「い、いえちょっと、ちょっと考え事を…」 パチェ「そう、ならいいけど…それでね、あなたが出かける前に頼めばよかったんだけど魔理沙がスマホを忘れていってね?」 咲夜「!!!!!!!!!!!!!!!!」 パチェ「まぁ家に届けてやる義理もないし預かっといてくれないかしら……ってどうしたの」 咲夜「いえっ別にっあのっなにもっ」 パチェ「……ねぇ、ほんとに大丈夫?疲れてるんじゃない?」 咲夜「だいだい大丈夫デス!!」 咲夜「あ、あの…ところで、その、参考にお聞きしたいのですが…」 パチェ「なに?」 咲夜「ど、どこにあったんです…?…スマホ」 パチェ「……えっ?」 咲夜「いえほら!!魔理沙言いそうじゃないですか!!!『どこにあったんだぜ』とか聞きそうじゃないですか!?」 パチェ「そ、そうかしら」 咲夜「絶対聞きますよ絶対魔理沙はそういうやつです必ず聞きます!!!!!!」グワワッ パチェ「なになになにどうしたのどうしたのこわいこわい」 パチェ「ベッドの上」 咲夜「ベッッッッ!?」 パチェ「ねぇどう思う?いきなりアポ無しで来たかと思えば夜通しゲームしようとかいいだしといてもう眠いから寝るわって他人のベッド占領してるやつ」 咲夜「げーむ」 パチェ「ゲーム」 咲夜「…」 パチェ「……スペルトゥーン3」 咲夜「ですよネェ!!!友達がきた夜はオールゲームですよネェ!!そうですよネェ!!オ゛ォ゛~!!」ホッ パチェ「咲夜!?ねぇ咲夜あなたほんとに大丈夫!?」 咲夜「よかっタァ~…私はてっきり弾幕ごっこかと…あ~でもこれじゃ私がむっつり邪推したみたいで…」フゥー パチェ「どうしたのマジで…」 咲夜「あれっちょっと待って霊夢んちのゲーム機って居間に」 避難所 511 ザァァァ「雨」 コインランドリー『アライモノタスカル』 乾燥機「ゴウンゴウン」 霊夢「…」 乾燥機「ゴウンゴウン」 霊夢「…」 乾燥機「ゴウンゴウン」 霊夢「…」 ウィン「魔理沙」自動ドア 霊夢「あっ」 魔理沙「霊夢ぜ」 霊夢「アンタも乾かしに来たの?」 魔理沙「うん」 霊夢「めっちゃ雨降ってるよね、濡れなかった?」 魔理沙「全部避けたのぜ」 乾燥機「ゴウンゴウン」 魔理沙「なんか毎年雨降る時期あるよな」 霊夢「お洗濯困るからやめてほしいよね」 魔理沙「ねー」 霊夢「ねー」 乾燥機「ピーピロピロピロリー」 霊夢「あっ、ウチの終わったわ」 魔理沙「いーなー」 霊夢「よいしょ」ガポッ 魔理沙「霊夢」 霊夢「なに?」 魔理沙「そのシャツデカくない??」 霊夢「え?そう?普通じゃない?」 魔理沙「そうかな…そうかも…」 霊夢「?…変なの」 魔理沙「霊夢」 霊夢「なに?」 魔理沙「その…パンツ?…男もんじゃない?」 霊夢「え?それがどうかしたの?」 魔理沙「えっ?いや、その…」 霊夢「?」 霊夢「なに勘違いしてるのかわかんないけど○○さんの洗濯物よ」 魔理沙「そ、そうなんだ。てっきり霊夢がそういうの履いてるのかと思ってビビっちゃって」 霊夢「私が履くわけないじゃない」 魔理沙「そうだよなシャツもデカすぎるもんな」 霊夢「シャツはたまに着」 魔理沙「へっ?」 霊夢「━━━━、ウチの、終わったし、そろそろ、帰る、わね、じゃあ、また」 魔理沙「お、おう。またな」 雨「ザァァァ」 魔理沙「…」 乾燥機「ゴウンゴウン」 魔理沙「……」 乾燥機「ゴウンゴウン」 魔理沙「………」 乾燥機「ゴウンゴウン」 魔理沙「…………」 魔理沙(なんで霊夢が○○の洗濯物乾かしてんだぜ…??) 避難所 515 霊夢「ねぇ紫、アンタさ」 紫「なぁに」 霊夢「……やっぱなんでもない」 紫「なんでもないんだ。ふーん」 霊夢「…」 紫「…」 霊夢「アノサァ」 紫「うん」 霊夢「………………男の人と、喧嘩、したこと……ある?」 紫「……あるわよ」 霊夢「ど、どぅだった…?」 紫「こう見えて私、負けたことないわ。全員ワンパンよワンパン」シュッシュッ 霊夢「そういう喧嘩じゃなくて」 紫「そりゃ霊夢に勝てる男なんているわけないものね」 霊夢「どういう意味よ」 紫「それで喧嘩っていうのは、つまり『そういう話』でしょ?」 霊夢「……」 紫「あるわよ。あるわ、喧嘩ぐらい…私がまだ大学生だった時に……」 霊夢「……なんで喧嘩したの…?」 紫「よくある、プレゼントよ。誕生日プレゼント。なんというか、彼が悪かったわけじゃなかったわ。思ってたようなロマンチックなプレゼントをもらえなくて、私が拗ねたのよ。なによエッグスチーマーってマジで、確かにゆで卵好きって言ったけどあれってあの人の手料理に対する褒め言葉であってさぁ」 霊夢「……」 紫「ねぇわかる!?家にあげたのよ!?女の子の一人暮らしの部屋に男の子を呼ぶってね!そりゃあ色々覚悟したうえで…いや別に期待してたとかそういうことじゃないけど…!でもっ……誕生日よ!?わかる!?ムードとか!」 霊夢「う、うん。うん。その……あれだよね……?て、手を繋いだりとか…?」 紫「そうそうそうそう手を繋いだりとかッ…ってコラーッ!純度ーッ!」 霊夢「……それで、どうやって……仲直りしたの?」 紫「聞きたいー?聞きたいー?」 霊夢「……キキタイデス……」 紫「…珍しく彼の方から誘ってくれて。そのデートで…リボン、選んでくれたの」 紫「ほんとはそのことにも思うところはあったわよ…どうせ蓮子のアドバイスだったろうし…でもね…」 紫「私だって仲直りするタイミング探してたもの…許すとか許さないとかじゃないわ、それで喧嘩は“終わり”」 紫の、こういう話し方が……苦手だった。 急に声が柔らかくなった、口元はほのかに笑っているけれど嬉しそうとも楽しそうともいえないような、優しくて、寂しそうな顔。 視線を落とす、紫がつけているリボン。私の視線に気づくと紫はおかしそうにわらった 「これじゃないわよ。さすがにもう、なくしちゃったわ」 これじゃない じゃあどこへ行ったの?どこへなくしたの? じゃあなぜそんなにそのリボンを優しく撫でるの? 記憶に、心に、自分の中にまだ残ってて、隙間に落としたみたいにもう取れなくなってしまう。この隙間の先にあるはずの見えないものにずっと心を囚われていく 母も、そういう人だった。 母が父のことについて語ってくれたことはついぞなかった 父のことをたずねると、決まって『どんな人だと思う?』と問いかけてやっと絞り出したみたいにほんの少しだけ笑うだけだった 私は父について何も、知らない 父と母がどんな出会いをし、どんな逢瀬を重ね、そしてなぜ母や私のそばにいなかったのか、何も知らない 紫「で、“噂のあの人”となんかあったわけ?」 不思議で、不思議でならない 私は“喧嘩”した程度の、この張り裂けそうな胸の痛みに耐えられない。癒すすべを知らない なら、なら 母の痛みはどれほどのものだったのか 紫の痛みはどれほどのものなのか それを抱えて生きていくことを、強さと呼ぶのか、弱さと呼ぶのか 私にはわかるべくもない だから、その痛みを知る者に…教えを請うしかないのだ 私は、ゆっくりと話し始めた 話を続ける自分の声がしだいに弱々しくふるえていくのに戸惑ったが 紫が優しい声で相槌をうつと少しだけ、ほんの少しだけ、一歩とも言えないような情けない前進をすることができたのだ 避難所 635 紅魔館 フラン「咲夜ー」 咲夜「はーい?」 フラン「魔理沙がきたー」 咲夜「えぇ…やだなこんな時間に」 魔理沙「よう」 咲夜「何?」 魔理沙「晩御飯ごちそうになりにきたのぜ」 咲夜「いきなりくるな」 咲夜「いつも思うんだけどさ、アンタさ、アポ取るって概念ないワケ?」 魔理沙「いきなり電話するの失礼だろ」 フラン「電話する前に電話してほしいよね」 魔理沙「友だちのよしみで頼むぜ」 咲夜「私たち友だちだったの?」 魔理沙「(`;ω;´)」 フラン「友だちのよしみっていうならさ霊夢のとこいけばいーじゃん」 魔理沙「そうそうさっき霊夢に会ったんだよ。スーパーでさ、結構買ってて」 咲夜「うん」 魔理沙「晩御飯なんにするのって聞いたら鍋やるっていうからさ、私も誘ってくれるのかなって」 咲夜「なんで誘われる前提なんや」 魔理沙「〇〇んちで鍋だから来るなってさ」 咲夜「━━━━━━━━」 フラン「仲いいね」 魔理沙「仲いいよな」 咲夜「〇〇さんちで鍋?」 魔理沙「うん」 咲夜「霊夢が材料買っていく?」 魔理沙「モツ鍋って言ってたな」 咲夜「二人で鍋?」 魔理沙「二人じめはよくないのぜ」 フラン「よくないよね」 咲夜「ほかになにか言ってなかった?」 魔理沙「え?」 咲夜「なんか言ってなかった?」 魔理沙「な、なんかって?」 咲夜「なんか言ってたでしょ!!」 魔理沙「は、はい」 フラン「急にどうした」 魔理沙「なんだっけ…キムチも買ってたと思う…」 咲夜「キムチは…関係なさそうね…」 魔理沙「霊夢辛いの苦手じゃなかったかって聞いたら〇〇がよく食うって…」 咲夜「…!」 魔理沙「そういえば見たことないリボンしてたかも…」 咲夜「……!!」 魔理沙「心なしかちょっとオシャレしてた気がするぜ…」 咲夜「………!!!」 魔理沙「あ、霊夢に借りてた漫画返そうと思い立ってさ夜にでも返しに行くぜって言ったのぜ。思い出した時にやんないとまた忘れるからな」 フラン「漫画は返すのにパチェの本は返さないのか…」 魔理沙「そしたら『今日は帰らないから来週あたりまた来なさいよ』って」 咲夜「かえらない」 咲夜「かえ」 咲夜「『帰らない』」 魔理沙「泊まるんじゃないかな」 咲夜「『泊まる』」 フラン「仲いいね」 魔理沙「仲いいよな」 咲夜「えっ、待って、じゃあその、今夜あれなの、二人は、弾幕ごっこを、いやでもそうと決まったわけじゃ」 すっかり夏の装いを解いた風が吹くその日、十六夜咲夜は、眠れない夜を過ごすのであった━━━━。 避難所 637 鈴仙「こんにちはー」 フラン「咲夜ー置き薬の人来たよ~」 咲夜「はーい」 鈴仙「頭痛薬全部なくなってるね。補充しとくけど多めにしといたほうがいい?」 咲夜「パチュリー様がよく使うので」 鈴仙「通院するよう言ってネ」 咲夜「出不精でほんとごめんなさい」 フラン「貧弱」 咲夜「はい紅茶」 鈴仙「ありがとぉ~もう最近寒くてさぁ助かるゥ~」 鈴仙「もうあっという間に師走だよぉ早いねぇ」 フラン「もうすぐクリスマスだよ!!」 鈴仙「そうだねクリスマスだねーサンタさんになにお願いしたの?」 フラン「ちいかわの光るやつ!!!これ!!!」スマホスッ 鈴仙「ルームライトかぁかわいいなぁー。私はねーこのちいかわクッションお願いしたんだー」 咲夜「あんた意外とかわいい趣味してるのね」 鈴仙「えーそういう咲夜こそなにお願いしたのー?」 咲夜「ひろがるスカイプリキュアのフィギュアセット…」 鈴仙「うーんかわいい」 鈴仙「ちいかわほんと人気なんだよ?」 咲夜「お嬢様もハマってるのよね」 鈴仙「霊夢さんもサンタさんにちいかわのグッズ頼んだって言ってたし」 咲夜「あのコこういうの欲しがるのね」 鈴仙「ペアのマグって言ってた。ちょっと待って今画像出すから」 咲夜「『ペア』」 咲夜「ペア??」 鈴仙「ん?うん。あー画像出てきたほらこれこれ」 咲夜「マグってマグカップ??マグネットじゃなくて?」 鈴仙「えっなに?」 咲夜「ペアって2つって意味よね???」 鈴仙「ちいかわとハチワレの二種類出てるんだからどっちも欲しいでしょ」 フラン「揃えたいよね」 鈴仙「ねー」 咲夜「そうかな…そうかも…」 フラン「でも仲良しの人と一緒に使えたら嬉しいかもね」 鈴仙「ね」 咲夜「『一緒に使う』」 咲夜「他になにか言ってなかった?」 鈴仙「えっ?そういえばクリスマス◯◯さんとケーキとかチキン食べるって言ってた」 咲夜「クリスマスに男と」 フラン「仲いいね」 鈴仙「仲いいよね」 鈴仙「あとなんか…サンタさんが来る時間のこと気にしてたかも…」 咲夜「サンタさんが来る時間?」 鈴仙「私も詳しくないからさーサンタさんに問い合わせたほうがいいかもってしか言えなくてー」 フラン「寝てる間だから深夜じゃないの?」 鈴仙「ね、だってクリスマスだよ?サンタさんが来るような時間に起きてる人なんていないからわかんないよね」 フラン「ね」 鈴仙「ねー」 咲夜「━━━━」 クリスマスに男を家に呼んでる+サンタの来訪時間を気にする=??? 咲夜「ウワーッ!!アァァァァァ!!」 避難所 801 霊夢さん。 ねぇ霊夢さん。 あのさ霊夢さん。 あなたが私の名前を呼ぶとこを 寝る前に思い出すの 私もそんなふうにあなたの名前を呼べたらなら 一番短い願いと祈りの言葉にする 避難所 932 咲夜「ヨーッス」 霊夢「押忍」 咲夜「これこないだもらったお菓子のお礼」 霊夢「ありがと、お茶でも飲んでく?」 咲夜「カルピス」 咲夜「あら、なにこれ車のパンフレット」 霊夢「うん」 咲夜「あなた車でも買うの?てか免許持ってるの?」 霊夢「違うわよ、◯◯さんが車買い換える予定だから」 咲夜「ふーん」 咲夜「え?なんで◯◯さんが車買い換えるからここにパンフレットがあるの?」 霊夢「なんでって…」 霊夢「『霊夢さんも一応選んでいいよ』って」 咲夜「……なんで人の車選んでいいの…?」 霊夢「……仲いいから?」 咲夜「じゃあ霊夢が車買う時魔理沙に選ばせてもいいの!?」 霊夢「魔理沙とは別に仲良くないしアンタも魔理沙には選ばせないでしょ?」 咲夜「うん」 霊夢「でも私車に詳しくないしさーどういうの選んだらいいとかわからなくてさ」 咲夜「せやね」 霊夢「やっぱいっぱい乗れるように大きい車がいいのかな」 咲夜「いっ」 咲夜「いっぱいってなに」 霊夢「え?」 咲夜「なんか乗る人増える予定があるみたいじゃん!!」 霊夢「そらどっか出かける時いろんな人乗せたりするでしょ…こないだの異変もみんな◯◯さんの車で送ってもらったじゃん」 咲夜「そうだっけ…そうだったかも…」
https://w.atwiki.jp/erumito/pages/49.html
名前 コメント
https://w.atwiki.jp/enemi-saati/pages/3.html
チャット/お絵かき 総合お絵かき チャット
https://w.atwiki.jp/ayane8201/pages/92.html
名前 コメント
https://w.atwiki.jp/warai/pages/15.html
見た瞬間笑いが吹き零れた。うまいよなぁ。やっぱり! -- わかぼん (2007-04-04 11 19 24) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/naznaz/pages/10.html
名前 コメント
https://w.atwiki.jp/naznaz/pages/6.html
名前 コメント
https://w.atwiki.jp/warai/pages/18.html
名前 コメント
https://w.atwiki.jp/warai/pages/20.html
名前 コメント