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いつものように朝比奈さんの炒れたお茶を飲みつつ、古泉とオセロを楽しむ 今じゃアナログなゲームかもしれないが、これはこれで中々おもしろいもので… と言っても、相手は古泉 無駄にボードゲームを持ってくる割りにはほとんど手ごたえはなく…というか弱い まぁ家に帰って勉学に励むわけでもないし、こんな風にまったりとすごすのもいいものだと思うようになってきた というより、涼宮ハルヒの存在で、ゆったりした時間がどれだけ希少に感じられることか… しかし、こういう時間は一瞬にして砕かれる こいつのせいで… バンッ!!! 毎度の事だが、物凄い音とともにドアが開かれる もしドアの近くに居たりなんかしたら、よくて骨折だぞ 「ドアくらいゆっくり開けろよ」 「いつものことでしょ」 さらりと言い放つと、団長の机に飛び乗った 「なんだ、演説でもするのか?」 「ちょっと違うわ。まぁ聞きなさい」 とハルヒは言い、スカートの後ろにさしていた雑誌のような物を取り出した その雑誌はこの前俺達、鶴屋さん他etc…で作成した会誌だった 出来栄えはよく、評判も結構良いとのことだった ハルヒは会誌を広げ、 「今回の会誌は大成功!もういろんなとこから太鼓判押されまくりよ!この調子だったら月一くらいで販売するのも良さそうね」 とまたもやあの不敵な笑みを浮かべた が、俺は即反対する 「そんなもん売ったりしてたら生徒会にまたなんか言われるぞ」 と言うが、 「んじゃ売らなかったらいいの?無料配布なら生徒会の連中も文句いわないでしょ?」 と一向に自分の思考を曲げようとしない よくて有料から無料になったくらい… 作るのは俺達だぞ それに配るたびにいつかのバニー姿みたいなことしたら、それこそ生徒会だけでなくいろんなところから目をつけられる 下手すりゃ謹慎だってありうるぞ 「まぁ作るのはいいだろうが、バニー姿とかで配るのは止めろよ」 と言うと、 「あんた、鋭いわね。なんで私の考え分かるのよ。超能力者?」 いや、少なくとも俺は普通の人間だ というか超能力者なら俺の目の前にいるぞ とか言ってやりたかったが、そんなこと言ってもどうせ信用されないだろ ハルヒにとって古泉は『謎の転校生』だったくらいのもんだ 今となっちゃ転校生なんて全く関係なく、ただの男子生徒 趣味は赤い玉になって空を飛ぶことか? 「とにかく止めとけ。するんならもっとマシな衣装にしとけよ」 と言うと 「団長に指図しないの!…でも、新しいコスチュームもいいかもねぇ…」 と言い、椅子に座り考え始めた 俺はそのまま古泉とオセロを楽しみ、今日の活動は終わった 次の日、いつもと同じ登校だったが、今日は金曜日だ 明日は休みと思うだけで、どれだけ嬉しいものか 午後、いつもの様に部室に行くと、あのハルヒが満面の笑みを浮かべていた そして、俺が入るやいなや 「キョン!あんた小説書くのよ!」 と、やたらでかい声を張り上げた 「あー。パスだパス。お前が全部作っていいぞ」 と親切にも譲ってやると 「あんたは絶対書かないとダメ!今回は私も小説を書くわよ!」 と良い、パソコンで何かをしている 正直、前回の会誌作りは本当に疲れた あんまり良い話でもない吉村の話をほりあげられたんだからな… それに、もう恋愛小説なんて無理だ 「何よ、恋愛小説を書いてなんて頼んでないわよ。今回は…」 と言い、ハルヒは黙った あらかた俺に書かせたいジャンルを決めているようだが… ハルヒは自分の髪をぐしぐしと掻き 「キョン!あんたなんか書きたいジャンルある?」 と聞いてきた いや、別に無理に書かなくても… というか本当に書きたくないんだが… 「それじゃあ駄目でしょ。なんか書きたいジャンル、考えとくのよ」 「じゃあハルヒは決まってるのか?」 と聞くと、口を尖らせて 「決まってないから考えてるのよ!」 俺はふと 「だったらSFでも書けばいいんじゃないか?前回の会誌はSFは無かったし」 「そうねぇ…SFは有希に書いてもらおうと思ってたけど、私も書いてみよっかな」 と言い、カチカチとまたパソコンをいじりだした お前がSFなんて書いたらどんな作品が出来るかも分からん ハルヒの想像力は半端じゃなさそうだからな 俺は朝比奈さんが炒れてくれたお茶をすすり、古泉の用意したオセロを始めた 「あなたの書く恋愛小説は少し楽しみだったのですが…」 と言い、おきまりの笑顔で 残念 のジェスチャーをした 「一応聞いとくが、それは嫌味か?」 「まさか、本当に興味があるんですよ」 全く、こいつの考えは全然分からん… それになんでも笑って誤魔化そうとするな 少なくとも男の俺には効かんぞ そのままオセロをしながら、部室のお茶を浪費していると バンッ!!! と、物凄い音が響いた 俺と朝比奈さんは軽くびくッと振るえ、団長の机の方を見た ハルヒが不敵な笑みを震わせている 「そうよ!私SFを書けばいいのよ!」 と大声をあげ、うん、うんと一人頷いていた 流石に訳の分からない行動にも程があるぞ 「どうしたんだ?そんなに良い案が浮かんだか?」 「浮くもなにも、浮きまくりよ!今私の中の創作意欲がすごいことになってんのよ!」 そうか、そうか 「そう!ホント!これはいいわ!かなり書きやすいわ!早速書かないと…」 「どんな案なんだよ」 と聞くと、 「ほら、私たちって宇宙人とか未来人とか超能力者とか探してるじゃない?」 それはお前だけだろ というかもう宇宙人も未来人も超能力者も揃ってるぞ 「だからね!小説の中だけど私たちを主人公にして、宇宙人や未来人とか超能力者とか…もうなんでもいいわ!とにかく会わせるのよ!」 まぁハルヒの願いらしいからな… 小説の中で収まるんならそれでいいだろ 実際にそこのドアから足が二十本もある緑色のクラゲみたいな生き物なんぞ出てきた日には… SOS団壊滅の危機だな それとも長門が倒してくれるか? 延々と一人創作意欲と欲望をごちゃまぜにして、演説をしているハルヒを放って、俺はオセロの続きを始めた が、古泉が何故かハルヒの方を見つめ、眉間にしわを寄せている こんな顔をする小古泉は珍しい 写真でも撮るか やっと長い演説を終えると 「んじゃ、資料を調達して土日中にでも書いてくるわ!月曜には見せてあげるから楽しみにしててね!」 と言い、ハルヒはカバンを持ちドアまで走って行こうとする すると、 「涼宮さん!」 と古泉が大声を上げた これには朝比奈さんと俺と長門、そしてハルヒも思わずびくッと震えた なんせ古泉が声を張り上げるようなところなんて一度も見たことがなかったからな しかし、古泉も冗談とは思えないほど顔に力が入っている おいおい、お前こんな顔になるのかよ 「な、なに?」 ハルヒは足踏みをしながら古泉の方に向いた 「涼宮さん、やっぱりSFは長門さんに書いてもらった方がいいんじゃないですか?よろしかったら僕でもいいです」 かなり必死に言っている いつものクールに気取った感じは吹き飛び、どう見ても別に人格が入ったように見える 「でも、もういい案浮かんじゃったからね!早くしないと図書館閉まっちゃうし…」 と言いつつ、ドアから飛び出して行った それを追うように、古泉がドアから出て「涼宮さん!」と叫んでいたが、ハルヒはそのまま行ってしまったようだ それから十分ほどして古泉が戻って来た さっきほど動きは荒々しくはないが、表情がどことなく落ち着いていない 「大変です。これは極めてよくない状況…かもしれません」 その言葉を聞くと同時に長門が分厚い本とパタンと閉じた 長門も古泉もただならぬ雰囲気を出している 「どうしたんだ?何かあったのか?」 「何かあったなんてもんじゃありません!」 と思いっきり机を叩いた 俺は今日あまりにもいつもと違いすぎる古泉に驚いた 古泉は俺の表情を読み取ったのか 「す、すいません…つい…」 古泉がこれだけ動揺しているとは… どんな事件なんだ… 「一体何があったんだ?詳しく聞かせてくれないか?」 と聞くと、俺の前に座った 「今から話すことは正しいとは言いきれません…ですが、確実にそうなりつつあるのです。ですから心して聞いてください」 古泉はまずそう言い、話し始めた 「今、涼宮さんのいる近辺で小さな閉鎖空間が大量に発生してきています。しかし、 これは涼宮さんのストレスなどの影響ではありません」 「それじゃあ、ハルヒとは別の人間か?」 「いえ、今発生している閉鎖空間は間違いなく、涼宮さんによるものです。しかし、その中には私たちが入ることはできません」 入れない? 「つまりですね…閉鎖空間は存在するのですが、なんというか…」 そこで古泉は押し黙ってしまった すると突然長門がこちらを向き喋りだした 「その閉鎖空間は今までのものとは全く違うもの」 全く違うもの? 「そう。今の世界とは別の世界を、涼宮ハルヒは創造しようとしている」 よく分からん… それを聞いた瞬間、古泉がハッと気づいたように俺を見た 「その例えが一番簡単ですね」 何がだよ、ちゃんと教えてくれ 「今の長門さんの話を簡単にまとめると、今、涼宮さんは小説のため『宇宙人に会う自分たち』を創造しています これによって閉鎖空間が発生したものと思われます」 つまり、どういうことだ? 「ですから、今僕たちの居る世界とは違う世界…涼宮さんの創造する世界が出来上がりつつあるんです…」 ハルヒの創造した世界? …ちょっと待て…ハルヒはたしか 『小説の中だけど私たちを主人公にして、宇宙人や未来人とか超能力者とか…もうなんでもいいわ!とにかく会わせるのよ!』と言った それが今ハルヒの創っている世界? だとしたらその世界では俺たちが宇宙人や未来人や超能力者…いや、もっと違うものに出会わなければならない事になる つまり、ハルヒの創造によっては俺たちは未知の生物とご対面してしまうかもしれない? ってことか? 「だいたい合ってますね。でもよくないのはその世界が出来てしまってからです」 「なんでだ?創造の世界と行っても他に何か恐ろしいことでもあるのか?」 古泉は俺の発言に呆れたようにため息をついた 「あなたが一番分かっているはずです。まずですね、その涼宮さんの創造した世界が完成してしまうと、現実の世界… つまり僕たちのいる世界に上書きされてしまう可能性があるんです。そうなってしまえば…」 古泉は額に手を当てつつ、言った 「僕たちは未知の生物と強制的に遭遇してしまいます…違いますか?長門さん」 と、いきなり長門に質問を投げ掛けた 「ちがわない」 「ということは…僕たち…涼宮さんが未知の生物に会ってしまえば…自分の力に気づいてしまうかもしれません…」 ハルヒが自分の力に気づく… それはどれだけ危険なことか…俺たちSOS団と呼ばれる団に所属するものなら分かる あの以上なまでの想像力のせいで、ありえない季節に桜が咲き、猫が喋りだし、未来人が目から光線を出してしまう… そんなことが強く願うだけで実現してしまう人間が…自分の力に気づいたら よく進んでも悪く進んでも、今の平凡な日常はいとも簡単に崩れてしまうだろう… 朝比奈さんのいれるお茶を飲みながら、つまらないボードゲームを楽しむことも… 5人で街を探索することも… まだ出来て1年も経っていないSOS団が潰れてしまうかもしれない… それも団長の手によってだ… 俺はまだゆったりと過ごすこの世界で生きていたい 俺は拳を握り締め 「古泉…何か方法はないのか…」 古泉は押し黙っている 「古泉!!」 と声を張り上げると 「わからないんです!今どうすればいいのか!何が世界を救うのか…」 と最後の方は力なく呟いていた… 俺達を見ていた朝比奈さんが心配そうに震えている こんな時は冗談の一つでも言うのがいいのか…いや、俺は今そんなこと言える状態じゃない… でもどうしたら… 「方法はある」 と、突然長門が言った 俺はすぐに 「何か方法があるのか?」 長門は頷く 「何をするんだ?何かしてくれるのか?」 と聞くと首を横に振り 「私たち情報統合思念体は涼宮ハルヒの行動の観測が主である。故に今の涼宮ハルヒの行動を私たちが制止させることは出来ない。」 「それじゃあ…」 「でも、今から言う方法はあなたにしか出来ない。もちろん必ず成功するとも限らない。それでも行動することを推奨する」 俺にしか出来ないこと? 「そう。あなたにしか出来ない」 俺にしか出来ないと言っても… 俺は宇宙人でも未来人でも、ましてや超能力者でも何でもない ただの人間だ 「あなたに特別な能力は備わっていない。だが、あなたは涼宮ハルヒに一番信頼されている存在。 今の彼女の変化もあなたのせいでもある」 俺のせい? 「あなたがSFというジャンルで書くことを彼女に推奨した。それによって涼宮ハルヒは今のように世界を創造している」 訳が分からんぞ 「つまりですね…あなたが『SFでも書けばいいんじゃないか』と言わなければ、現状のようにならなかったのかもしれません」 そうか…でも、なんで俺は攻められてるんだ? 「別に攻めている訳ではありません。事実なんです。あなたがもしあの時…」 「わかった、わかった!それで?俺はどうすればいいんだ?」 多分、俺の顔は不機嫌丸出しだったんだろうな… 遊園地にでも居れば、周りの人が即気分を害すような感じの表情なんだろうな… 「あなたが涼宮ハルヒに創造を止めさせる方法は、彼女に今の世界を必要とさせることが必要」 つまり、どういうことをすればいいんだ? 「涼宮ハルヒはあなたを信頼し、あなたに対し不完全ながら恋愛感情を抱いている。そしてあなたが出来る一番確実な方法が、恋愛の成熟」 と、いう…ことは? 「そうか!そうです!その方法がありましたか!」 と喚き、古泉は拳を震わせている 今日はよく叫ぶな 古泉 「訳が分からん…ちゃんと説明してくれよ」 古泉は笑顔で 「つまりですね!あなたが涼宮さんと結ばれればいいんですよ!恋愛の成熟です。そうです。それで世界が救われるかもしれません」 「えっと…俺とハルヒが付き合うようになればいいってことか?」 「そうです!涼宮さんが前々からあなたに好意的な態度や行動をとっているのはご存知でしょう?」 「…どういうことだ?」 俺の発言を聞いた途端、古泉の笑顔が消え、苦笑いをしている 後ろの長門も、何かいいたげな表情だ そして朝比奈さんを見ると、明らかに呆れ顔になっている…というより少し怒っているようだが… 「ちょっと待ってください…あなた、僕の言った意味が分かりますか?」 いや、何のことを言って… 「キョンくん…もしかしてふざけてるんですか?」 と朝比奈さんが少しすごんでいるような感じで話しかけてきた 「いや、本当に何のことだか…」 朝比奈さんはその言葉を聞いて、そっぽをむいてしまった やや、おおげさなため息が聞こえ 「いいですか?涼宮さんはあなたのことを気にしています。長門さんによれば不完全ながら恋愛感情をあなた抱いている… つまり、あなたの一押しでうまくいくことだってありえるかもしれないんです」 そんなことをいきなり言われてもな… 「でも、なんで付き合わなくちゃいけないんだ?」 またもため息… そんなに俺の発言が気に食わないのか? 「ですから、『この世界が必要だ』と涼宮さんが心から願ってくれればいいんです。あなたという大切な存在が必要だと思えば、 無意識に創造を止めるかもしれません…」 「そう…か?」 「ですが、必ず成功するとは言いきれませんよ。何せ人間関係というものは私達には想定できないものです。ましてやあの涼宮さん。 はっきり言うと悪いんですが、かなり変わった思考ですよね?」 それは…たしかだな… 学校全体でアンケートをとったら確実に『変わった人』との結果が出るだろう 「ですから、何をどう考えているかなんて分からないんです…ですから…」 「その場その場で対処の仕方がない…と?」 「そうです。ですから確実に成功するなんてことは言い切れません。ですが、あなたの気持ち次第で決まることです」 俺の気持ち次第で…か… 世界って本当に安くなったな… 俺の気持ちくらいで世界が救えるなんて… その後俺たちはどうするかを考えた 朝比奈さんに何か出来そうなことを聞いてみたが、過去への干渉はできないらしい。 というか未来の野郎どもは朝比奈さんの要求を全く受け付けないらしい つまり、俺のSF発言を消すことすら出来ない… まぁ出来るのなら、未来の俺が止めに来ていたはずだが… 結局、他に具体的方法がなく、俺とハルヒを結ばせる計画で世界を救うことになった もう、こんなことじゃ驚かなくなってきた自分を褒めてやりたい… だが、重大な問題がある ハルヒが小説を見せると言ったのは月曜 つまり、あと二日のうちに、ハルヒの創造を止めなければ、俺たちの世界が上書きされてしまうことになる 俺はとにかく今日は休んで、明日、明後日をどう過ごすかを考えていた いや、過ごすなんてもんじゃない どうやってハルヒと付き合えばいいのかを考えていた 次の日、見事なまでの晴れ このままいけば、世界が明後日には変わってしまうなどと、どのくらいの人が知っているのだろうか… 俺はまず昨日まとめた行動をとる 単純にデートだ まずは、電話で約束を取り付けないといけない 俺は携帯からハルヒの番号を選択した 3回のコール音の後、ハルヒが出た 「どうしたの?あんたがこんな早くに起きてるなんて珍しいわね」 俺は昨日考えておいた話をそのまま喋る こういうのはあんまり好きじゃないんだが… 「実はだな、妹と親が映画に行く予定だったんだが…熱がでてな」 「どうしたの?もしかしてデートのお誘い?」 すごいなハルヒ お前、本当は超能力者じゃないのか? 「まぁそんなところだ。どうだ一緒に行かないか?」 と言うと、数秒あいてから 「ほ、本当に?それじゃいくわ!何時に何処集合?」 向こう側のハルヒはかなりご機嫌のようだ というかハルヒってこんなに素直だったか? もっとこう…俺に対しては嫌味っぽいというか… これがみんなの言っていた俺に対しての好意なんだろうか… ここまで明確なら、俺でも分かるんだけどなぁ… まだ自覚が無さ過ぎる… 「そうだなぁ…じゃあいつもの駅前に10時くらいでいいか?」 「10時くらいじゃなくて10時よ!遅刻したら死刑じゃ済まないわよ!」 そう言って会話は終わった 俺はため息を吐き出しつつ、受話器を置いた この会話は嘘が多いい… まず、妹は熱なんてでていない 今も雄の三毛猫とじゃれている それに映画のチケットも古泉が用意してくれた しかも現金で2万も渡してくれるとは… 古泉いわく「男性は女性をエスコートして当然ですからね。お金が足りないなんてもってのほかです」 また、足りなくなったらすぐ言って欲しいとのことだった というかお前、この現金の入手経路とかって大丈夫なんだろうな… それにな古泉、もしかしたら俺の私欲で使い切ってしまうかもしれんぞ 今回の作戦は朝比奈さんも長門も古泉も来ないらしい 古泉か長門くらいは見張りに来ると思ってたが… なんでも相手が人間…ハルヒだからな 俺が困ってたって対処なんかできやしない… というか手助けはしない方がいいらしい… あくまで、自然な結びつきがベストだとのことだ つまり、今回は俺の意思を尊重するらしい… 下手をすれば世界は…というか俺のせいで『世界が変わっちゃいました』なんて絶対に嫌だからな そんなことになったら古泉がぐちぐちと文句をたらしてくるだろうし、謎の生物に遭遇して遊ばなくちゃいけなくなる 俺はそんなこと断固拒否だ 拒否出来んのなら是非、誰かに譲ってあげたいね 俺は適当に朝食を済ませ、時計を見た 今丁度9時… ゆっくり着替えて家を出ても十分間に合う時間だ 俺は身支度を済ませ、昨日古泉が用意してくれたチケット2枚を持って家を出ようとした 「キョンくん、もう起きてるの~?」 パジャマ姿の妹が出てきた そうだよ 俺は今から出かけるんだ それもデートだ いつかのみたいに小学生じゃないから まぁデートに行くなんて行ったら、後ろから着けて来そうだからな ここは適当に誤魔化さないとな 「ちょっと買い物だ。欲しい本があるからな」 と言うと 「それじゃあおみやげ買ってきてねぇ~」 とシャミセンで腹話術まがいをやってみせた 俺は適当に「はいはい」と流し、自転車に乗った 駅につくと、我らがSOS団 団長の涼宮ハルヒが仁王立ちでこっちを睨んでいた 俺が自転車を置いて、ゆっくり歩いて行くと 「遅いッ!なんでレディーを待たせんのよ!」 とハルヒが詰め寄ってきた 「いや…まぁこんなに早く来るとは思ってなかったんでな」 と言いつつ、笑って誤魔化したが 「私より遅かったんだから罰金よ!罰金!」 結局罰金かよ… その後、映画の始まる時間まで2時間近くあったため、いつものファミレスに入った もちろん俺のおごりらしい… まぁ金は大丈夫なんだがな ハルヒはパフェとカフェオレを頼み、俺はチーズケーキとコーヒーを頼んだ 「あんた、コーヒーなんか飲めたの?」 いや、コーヒーくらいは飲めるぞ 「そう、まぁ高校生にもなって苦いなんて言ってたら味覚がおかしいわよねぇ」 あー、俺はまだブラックなんぞ苦くて飲めないんだが… デザート類はすぐ運ばれてくる 注文して5分も経っていないのに、ドリンクとデザートが揃った 「うん、まぁまぁじゃないこのパフェ」 ハルヒは感想を述べている 安いパフェではあるが結構なボリュームだ 「結構な量だが、食べきれるのか?」 「大丈夫よ。それよりあんたのちょっと貰うわね」 と言い、俺のチーズケーキをかなりカットして口に運んでいった おいおい、俺まだ食ってないんだぞ というかちょっとじゃないだろ と細かく突っ込もうとしたが、なんとなくそんな気にならなかった なんでだろう…今日のハルヒはいつもよりご機嫌に見える いや、いつも元気はいいんだが… にこにこ顔でチーズケーキを頬張っている なんだか、見ているこっちも微笑ましくなってきた 「何?人の顔見て笑うなんて変な趣味ね」 どうやら顔が少し緩んでいたようだ 「あー。お前の食べっぷりがあまりにいいんでな。少し関心してたところだ」 「そんなとろこに関心しなくていいのよ」 と言い自分のパフェを楽しみだした 結局2時間もだらだらと会話を楽しみ、ファミレスを出た もちろん俺のおごりだ しかしそのくらいじゃ俺の財布はびくともせん 今の財布は豚の如く肥えてるからな 俺たちは今日のメインである映画館にやって来た まだ上映まで15分ほどあるが、丁度いい時間だろ 俺は二人分のチケットを受付に私入場した 適当にポップコーンでも買おうかと思ったが、ハルヒはいらないらしい 俺はハルヒの分と自分のコーラを買い、席についた 位置は丁度真ん中の真ん中 つまり映画を観る位置じゃ首も疲れなく、観れる位置だ 一度だけ一番前で観た自分なら分かる あの2時間たった後の耐え難い肩と首のこりは1500円も払ってまでして食らいたいものではない 「映画なんて久しぶりよ。中学生以来かな?」 なんだ SF映画ばっか観てると思ってたのに 「何言ってんの?映画なんてただの作り物でしょ?なんのリアリティーもない映画なんて観る時間が勿体無いくらいよ」 とスパッと言い放った だったらなんで俺の誘いにのったんだ 「だって…映画の券が勿体無いでしょ?キョンの親だって妹だって、無駄に捨てちゃうくらいなら使ってもらった方が嬉しいに 決まってるじゃない」 まぁそれはもっともだな と言ってもこれは親が買ったわけでも妹が買ったわけでもない 超能力者古泉がどこからか引っ張り出してきたチケットだ ちなみに入手経路は本当に分からん 偽造チケットなんかじゃないだろうな… ブーッという音はもう鳴らず、いきなり映画のCMが始まった もう上映の合図の音が鳴る映画館というのはないのだろうか… 延々続きそうな映画紹介が終わり、本編が始まった 内容はものすごく単純 簡単にまとめると… 強い男がいて、その近くにヒロイン的女性がいる んで、二人がSFチックな紛いごとに巻き込まれて… 女性大ピンチ!男が必死になって救出! 最後は結局ハッピーエンド… まるでこの手の映画を探したら何本出てくるのやら… 内容はまるっきり… というかアクション映画の王道過ぎて、どこまで真似物なのか分からん 最近のCGとかの技術はすごいもんだ…という感想くらいしか思いつかず、頭の中では『B級の上』程度に収まった ハルヒは映画が終わるなり 「あんた…こんな映画…妹が観たいって言ってたの?」 いや、妹は… 「あー。親父が観たいらしくてな。それでついでに妹も…ってことで2枚買ったらしい」 「ふ~ん…でも何かあれね。どっかで観た感じ。もうアクション映画なんて見飽きるからね。 でも最近の技術ってすごいわね。爆発とかかなりリアルだったじゃない」 まぁそれなりの評価らしい 少し安心だ 「でも…評価するなら…『B級の上』くらいじゃない?」 と俺の目の前で人差し指を立てて、言った 全くもってその通り というか俺の考えを読むな 本当に超能力者かお前… 無事映画も終わり、時間は午後2時 丁度腹も空いていたので、どこかによることになった と言っても中々良い場所がない ハルヒも 「もうどこでもいいわ。私お腹空いてきちゃったし」 と言うので、近くのファミレスに入った いつも集まっているファミレスとは違うファミレスだ まぁ大して変わらないのだが、ここは大きなドリンクバーがあって、最初にドリンクを頼めば飲み放題らしい 「飲み放題っていいわね!駅前のファミレスもここと同じことすればもっと売り上げが上がるのに」 いや、そんなことしたらあそこが俺たちの部室に変わってしまう 毎日毎日5人が来て3,4時間も…だらだらと飲み物を消費されたんじゃあ、店側の利益も下がったりだろう ハルヒと俺は和食セットとドリンクを頼んだが 「私と同じの頼まないの。あんたは違うのにしなさい」 と言われ、ドリアセットに変えた 飯くらい好きな物食わせろよ… 俺がドリンクバーに飲み物を取りに行こうとすると 「私お茶でいいわ」 お前俺に行かせる気かよ 「当たり前でしょ。団長だもん」 今は部活中じゃないぞ お前の団長命令は無効化だ と言わず、俺はお茶の入ったカップを2つ持ってきた 「ありがと」 と言ってハルヒはお茶をごくごくと飲む 数分経ってから、和食セットとドリアセットが運ばれてきた ここは注文してからも結構早く運ばれてくるな 案外ここの方が駅前のファミレスよりいいかもしれん ドリンクも飲み放題だし さっそくドリアを食べようとすると 「私もちょっと食べたいわ」 と言い、俺のスプーンを取り上げ、ドリアを一口食べた だから、勝手に食うなって…俺まだ一口も食べてないんだぞ 「熱ッ!」 と言い、はふはふと口を動かしつつ、スプーンを返してきた 「うん、結構おいしいじゃない」 感想を述べ、自分の料理に手をつけ始めた まったく…と言い、俺はドリアを食べ始めた …たしかに熱い…少し冷まさないと火傷するな… 一口だけ食べてスプーンを置くと、ハルヒがこちらを見ている どことなく頬のあたりがほんのりと赤い 「どうした?」 「い、いや…なんでも…それより食べないの?」 少し動揺気味のハルヒ なんだ 俺何かしたのか? 「いや、熱くてな。もう少し冷めてから食べる」 「そ、そう」 ハルヒはそう言うと、顔を下に向け和食セットを食べていった 結局俺とハルヒは食事が終わるまで全く会話がなく、俺が話しかけても 「そう…」「うん…」 程度に、あいづちくらいしかうってくれなかった なんだよこの空気 俺何かしたのか? 食事を済ませ、ファミレスから出る まだ、うつむいてるっぽいハルヒに 「どうした?大丈夫か?」 と話しかけると 「何が?別に何もないわよ。それよりどっかに行きましょ!」 と言い、ズンズンと歩いていく なんだあれは…訳が分からん その後、近くにあったゲームセンターにより、適当に暇を潰した 格闘ゲームやレースゲームでハルヒから挑戦を受けたが、見事に惨敗 こいつ、勉強だけじゃなくなんでも出来るのか… 俺にも何か一つくらい才能とやらを分けてもらいたいね 一通りゲームをすると、ハルヒがUFOキャッチャーがやりたいと言いだした さっそくハルヒがコインを投入し、挑戦してみるが…あっけなく失敗 その後5回も挑戦するものの全て失敗 というか一度も人形をつかめていない どうもさっきからやたら大きい人形を狙っているよだ だが普通に考えてあんな大きい獲物は無理だ だが6回目もハルヒはそれを狙っていた 見るにみかねた俺が「一回やらせてくれ」といいコインを投入 ハルヒが 「そこのおっきいのよ!それよそれ!絶対それよ!」 耳元でがなり声を上げるな 俺はハルヒの指示通りでかい熊の人形を狙う が、これは確実に無理だ アームだってさっきから見てたが弱すぎるだろ が、アームが上に上がってくると、うまく熊の手を絡めとっていた こんだけでかい人形がこうもうまく引っ掛かるとは思っていなかったのでびっくりしていたが見後ににキャッチ しかもそのまま落ちず難なく手に入った 「やるじゃないキョン!さすがね!何か新しい階級を与えないといけないわね!」 と大喜びしながら熊を抱えるハルヒ ああ、是非とも新しい階級が欲しいね もう雑用係はごめんだからな 俺の取った熊に大満足で笑みを浮かべるハルヒ なぜだろう…いつもは見慣れないからか、ハルヒの笑顔を見るとドキッとしてしまう 今日の俺は変だな… やはり昨日の古泉や長門の発言のせいだろう… ハルヒは熊の人形を両手で抱えながら俺の隣を歩いている 時間は5時… もうすることもなくなったし適当に散歩だ 俺たちは何気なくあの通りに来ていた 初めて朝比奈さんが自分の正体を明かしたあの場所だ 俺は近くのベンチに座り、昨日のまとめた考えを浮かべていった デートが終わった後、俺はハルヒに告白をする これだけだった… でも不安だった… 俺はノリで人を好きになんてなる方じゃない むしろ好きになったとしても告白なんてな… そんな度胸は持ち合わせてはいない それに俺の中では、ハルヒへの想いがまだ決まっていなかった だが、ここで俺がハルヒと付き合わなければ… 世界は必ずと言っていい 変わってしまうのだ 平穏な生活が砕かれ、未知の世界へと変貌を遂げてしまう… 俺はそのことを肝に命じ、どう告白をしようかと考えていた すると突然 「何か来たわよ…」 とハルヒが言う 俺が顔を上げると、にたにたと笑う谷口と国木田がこっちに歩いて来ていた やばい、やばい… こんな状況を見られたら…いやそれは別にかまわん… いや…そうじゃなく…あいつらが来たら告白なんて不可能だ…絶対無理だ… 頼むからどっかに消えてくれ…と願ったが、その願いも虚しく二人が目の前まで来た 「キョン…お前コイツと付き合ってたのか…?」 唐突に谷口が言う お前、あからさまに楽しんでるな 内心かなりムッとした まぁ今から告白するところだったんだが だいたいなんでこっちに来るんだよ 「あんたには関係ないでしょ。どっか行ってよ」 いきなりハルヒが谷口に向かって言った 少し怒っているようだが… 「おいおい、涼宮がマジになるってことは…」 谷口は手を口の前に持っていき不敵な笑みを浮かべている お前は中学生か あからさまに俺とハルヒが一緒に居ることを楽しんでいる その笑みは微笑ましいというより、変わったものを見て楽しんでいるような感じだ …お前はそんなにハルヒが嫌いなのか? 俺は思わず 「お前は関係ないだろ」 と言うと 「おやおや、キョンまで怒るのか?…あ、それとも今から告白するところだったか?」 こいつ…なんでこんな時に鋭いんだよ… いっつも馬鹿みたいな考えしか持たんくせに… 「まぁまぁ、そうだったら僕達はお邪魔みたいだし、そろそろ帰ろうよ」 と国木田が谷口を静止させよとする 「キョン、言っとくが涼宮は変わり者だぞ。前も言っただろ?」 谷口がそう言った瞬間、俺の中で何かが弾けた なんでお前が変わり者なんていうんだ? 変わり者? ああ、そうだ ハルヒは確かに変わった女子高生だろう 自己紹介で『宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい』と言うくらいの筋金入りの変人だ そう変わり者…だから? だからどうした? そんな発想があるだけいいじゃないか 少なくとも谷口 お前はそんな夢のある考えを持っているのか? いつもいつもハルヒの行動にケチをつける割りにはお前は何かしているのか? そりゃ周りから見ればただの奇行かもしれん… でもな、お前のようにへらへらしてるだけの女好きにそんなこと言う資格なんてないだろ? それにな、俺はハルヒと一緒にいる今が一番楽しいんだよ! それを何もしていないお前に言われるのは腹が立つんだよ なんで自分のやりたいことをやってる人を馬鹿にするようなことを言うんだ 何もしない人間が何かをしている人に対して愚痴をたれるのはいかなる場合であってもいいはずがない それを本人の前で言うなんてもってのほかだ お前のようなやつがハルヒのことを悪く言うのは許せんぞ 俺がそう考えているうちに、勝手に体が動いていた 今、考えていたことが声にでていたのかは分からない… だが、今俺の目の前には顔をゆがめている谷口の顔があった 俺は今谷口の首元を掴み、目の前に引き寄せている そして右手が拳を作り、今にも殴りかかろうとしていた 「ちょ、キョン落ち着いて」 国木田が静止させようと俺の左腕を掴んでいる 俺は…谷口を殴ろうとしていた? 「ッ……」 谷口が俺の手を振り払うと、国木田に引っ張られ、去って行った その後ろ姿を呆然と眺めていると、 「えっと…その…」 ハルヒが何かを言おうとしている… 「ごめん…帰る!」 と言い、ハルヒがベンチから離れ駆け出した 「おい!ハルヒ!!」 と叫んだが、ハルヒは振り向いてもくれずそのまま去って行った 一人自宅へ帰り、部屋に戻った… あれはよくなかったかもしれない… だがあまり後悔はしていない というか殴ってやるべきだったろうか… 谷口がハルヒを馬鹿にした それが俺の勘に触っただけだ そしてさっきの考えと行動をまとめ…俺は自分の思いに気がついた 『ハルヒのことを好きになりつつある』 いつもいつも周りのことを考えず、半場やけ気味になっても突っ込んでいく 俺も朝比奈さんも長門も古泉も… 全員がハルヒの思いつくがままに動いてきた たまには、本気で嫌になったり、こんなことも楽しいじゃないか、とも思ったり… 俺もハルヒに会って色々と変わったのかもしれない 俺がもし『曜日で髪型変えるのは宇宙人対策か?』とあの日話しかけなかったら… 今頃、谷口と国木田で馬鹿三人組みになっていただろう それに朝比奈さんにも、長門にも、古泉にも会わなかっただろう だから今、俺がSOS団に所属しているのは本望なのかもしれない だらだらと過ごす毎日 ただそれが、4人といるだけの生活が当たり前の様になってから気づいた この非日常的な『当たり前』こそが俺の望んでいた高校生活なんじゃないか? 巨大カマドウマに襲われたり、クラスメイトに殺されそうになったり…未来に飛ばされたり… こんな非日常が楽しい…そんな気持ちがどこかにあったんじゃないか? そして、昨日の長門と古泉の発言で、俺はまた変わってしまった 『涼宮ハルヒはあなたに恋愛感情を芽生えさせている』 『涼宮さんはあなたのことを気にしています』 この二言で十分だった 俺は今日一日、ハルヒの見方が変わった あいつの何気ない笑顔、褒めるとそっけなくする態度 そんな仕草が愛らしく感じれるようになっていた… いや、今気づけばずっとそんな感じだったのだろう… ハルヒが俺に向ける笑顔… 今思い出せば、俺はハルヒの思いに気づいていたのかもしれない… だが、気づいてしまえば日常が変わってしまうかもしれない… そんな思いがどことなくあった気がする… でも、そんな思いでは終わらせない 俺は世界を救うためではなく、自分のためにハルヒに告白をする 勝手かもしれんが、これは譲れんぞ 文句があるんなら出て来い 俺は何がなんでも自分の意思でハルヒに告白するからな 俺は一旦風呂に入り、自分の考えをまとめていった まず、俺はハルヒに連絡を取らなければいけない… 風呂から上がった俺は、すぐさまハルヒに電話を掛けた 何回かコール音がなって『留守番電話サービス』が流れ出した 一度切り、もう一度掛け直す …だが、ハルヒは出てこない… なんでだよ 俺は古泉に電話を掛けた コール音が一度鳴る前に古泉の声が聞こえてきた 「どうしたんですか?何かあったんですか?」 俺は古泉に分かる限りのことを説明した 「そうですか…」 と力なく声が返ってきた 「実は組織の者が涼宮さんを目撃しているんです。少し元気の無さそうな顔で家へと帰って行ったようですが…」 「そうか…」 でも何故俺の電話に出てくれないんだ? 「分かりません…でも、電話に出てくれない以上会うしかないでしょうね」 「会うって…今すぐか?」 俺は窓の外を見る とっくに日は沈んで空を黒い雲が包んでいる 「今日はもう遅いですからね…明日にした方が懸命でしょう…」 俺はその言葉を聞き、ため息をついた 俺は何をしてしまったんだ… ただハルヒのことを思って… 「あなたは今自分の気持ちに気づいているんでしょう?」 ああ、お前らのおかげでな 「だったら簡単な話です。あなたがちゃんと自分なりに想いを伝えればいいだけのことです」 こいつ、そんなことさらっと言うなよ… 「今から涼宮さんの自宅の住所を言います。明日必ず涼宮さんに想いを伝えてください」 お前…いつハルヒの家なんか調べたんだよ 「そんなこと、転校してくる以前から知ってますよ」 「それで、直接会うのか?」 「当たり前でしょう。電話に出てする告白なんて意味を成しません」 そりゃ…電話で言う気はなかったが… 「明日の行動はおまかせします。ですが、間違ってもいつものように嫌味っぽく言ってはいけませんよ」 俺はそんなに嫌味っぽく喋ってるのか? 「いえ…明日くらいは涼宮さんを女性として見てあげてください」 そんなこと言われなくても分かってる 「そうですか…それじゃあ住所を言います」 そう言って古泉はハルヒの家の住所を言っていった 俺は机の近くにあった紙に住所を書いていく ハルヒの家は案外遠くなく、自転車で30分も掛からない場所だった 「私から言うことはもう何もありません。あとはあなた次第ですよ」 俺は「ああ」とだけ答えを返した ベッドに仰向けに倒れ込み、俺は考える もしかしたら俺の告白で今までの日常が全くの別物になってしまうかもしれない… 告白とはこんなに自分を追い詰めてしまうものなのか…と思ったが、あいつに想いを伝えることができればいいんだ 駄目なら駄目 新しい世界を満喫してやろうじゃないか どっちにしたって俺はお前の近くにいてやるぞ 次の日、目が覚めたのは午後3時だった 空は異様なまでに分厚い雲に覆われている 夜中まで色々と考えていたからだろうか…頭が重い… だが、今日は必ずしないといけないことがある 世界のためでもあるが、俺のためでもある 『ハルヒへの告白』 俺は身支度を済ませ、ハルヒの家へと向かった 色々な考えが頭に浮かび上がってくる 告白した後はどうなるんだ… ハルヒはどう答えてくれるんだ… もし駄目だったら… そうこう考えているうちに着いてしまった 2階建ての家 なんとなく俺の家の形に似ているような… 俺は深く深呼吸をし、扉の前へと向かった 大丈夫…落ち着こう、俺 そう言い聞かせ、俺はチャイムを押した 誰か出てくるまでが異常に長い… 早く誰か出てくれ… 俺は掌に汗を握りつつ、ひたすら待った まるで何十分も経ったのかと思うほど長い間 尋常じゃないくらいの心音が体中に響いていく すると、突然扉が開いた 出てきたのはハルヒだった 俺の顔を見て、一瞬驚いていたがすぐ目を逸らし 「何よ。ってかなんで私の家知ってんのよ」 と小声で喋っている 「少し、大事な話があるんだが…いいか?」 と聞いてみる ハルヒは下を向いたまま… 少しくらい目を合わせてくれよ… 本当に大事な話なんだ… ハルヒはそのまま数十秒黙ってから… 「今忙しいから…」 と言い、勢いよく扉を閉めた 「ハルヒッ!!」 大声で呼んだが、もう遅かった… ガチャッという音とともに扉の鍵も閉められた… 悪態をつくしかなかった 自分の自転車を蹴り、自分の不甲斐なさに腹が立った… 俺がハルヒに何かをしてしまったのかは分からない… でもあいつを悩ませるようなことを俺はしてしまった そんな自分にどうしようもなく腹がたち、それすら覚えていないという自分に自己嫌悪の念がのし掛かってきた でも、悩んでいてもしょうがない 俺はハルヒに電話を掛けた だが、何度コールしてみてもハルヒは一向にでようとしない 仕方なく古泉に連絡を入れると 「分かりました。僕からも掛けてみましょう」 と言い、一旦切られた と同時に雨が降り始めた このくそったれが… 思いっきり追い討ちじゃないか っていうか雨なんか降らないでくれ…振られたみたいで…やりきれなくなる… 数分後、古泉から着信がきた 「駄目でした。僕からの連絡に出てもらえません。一応朝比奈さんと長門さんにも頼みましたが、駄目でした」 そんな…俺以外のみんな連絡すら受け付けてくれないのか… 「俺は…何をしたんだろう…」 「それはあなたにしか分からないでしょう…」 古泉はため息をつく… 「今のところ閉鎖空間は消えています。たぶん昨日のあなたが涼宮さんに何らかの影響を与えたのでしょう。 今涼宮さんはSFの小説を書いていませんし、創造も全くしていません」 そうか… 「ですが、このままではいけません…」 「どういうことだ?」 「今、涼宮さんは精神的にかなり不安定な状態で留まっています。このままならまだ大丈夫なのですが、 このままの状態を保つことはできないそうです」 出来ないそうです?って誰が言ってたんだよ 「さっき長門さんに聞きました。長門さんによれば、今涼宮さんは閉鎖空間をすぐにでも作れる状態にまできています。 簡単に言うと、コップにいっぱいの水が入っている状態です」 例えが良く分からんぞ ちゃんと説明してくれ 「ですから、そのコップに入っている水が涼宮さんの…今は何か分かりませんが、 まぁ『憤りや悩みの塊』のようなものだと思ってください。これが今ふちいっぱいまで溜まっています」 だから? 「この中の水が溢れなければ、それでいいんです。ですが、あなたと今度会った時、あなたの行動によっては…その水が溢れ出します。 つまり閉鎖空間が作られることになります」 「でも、閉鎖空間が出来たとしても、お前ら超能力者が処理するんじゃないのか?」 「そうです。ですが、今回は訳が違う。長門さんによると次の閉鎖空間が発生するのは地球全体規模なんです」 地球全体? 「つまり、地球全体に閉鎖空間が出来てしまいます。そして…」 古泉がここまで喋って一旦間をおいた そして 「私たちでも片付けきれない神人が出現する可能性があります。そして対応できなくなった神人が…現実世界に現れるでしょう」 おいおいおい、いくらなんでもそりゃないだろ あんな神人のオンパレードなんかされたら半日で地球は穴だらけだぞ 「どうやったら止めれるんだ?」 「神人の行動は私たちだけでは対応しきれないでしょう…もって一日…いや、二日も経つ前に…」 今俺の近くに神様とやらがいるのなら、これが全て嘘だと言って欲しい 「じゃあ、逆にその水を取り除くことだって可能なんだろ?」 「たしかに出来るかもしれません…ですが、あなたは何故涼宮さんが悩んでいるのかが分かっていないのでしょう?」 そうだ… 俺はハルヒが何故あの日帰ってしまったのが分からなかった… ただ必死に谷口に迫っていって… 「あなたが涼宮さんの『憤りや悩みの塊』の元であるそれを思い出さない限り、難しいかもしれません… とにかく明日は必ず学校へ来てください」 当たり前だ こんな気持ちのまま終わらせるつもりはない 絶対にいつもの日常に戻してやる そして俺の想いを… ハルヒ、お前に伝えてやる 次の日、俺はいつもよりかなり早く学校へ来た 何故か、鍵は開いているのだが教室には俺一人だけ 一人席につく そのまま外を見つめ呆然とする ハルヒが来ないと何もできないからな… しかし、いくら待ってもハルヒは来ない クラス全員の椅子が埋まり、そろそろ担任が来る時間だと言うのにハルヒは来そうにない… 結局ハルヒは来ず、岡部が入ってきた… 一体どうしたんだよ ハルヒ… 俺はふと、自分の机の中にあった紙に気づく 小さくて気づかなかったが、どこかで見たことのある字だった 『今日、午後5時 屋上に』 たったそれだけ… いつも書く字とは違い、少し丁寧な字… あいつの字がノートの切れ端に書かれていた 俺はその紙を見てから何度も今までのことを思い出していた SOS団が出来てから… そして今日までのことを… 気づけば、午後の授業が終わり、皆下校している時間になっていた どれだけの間呆けていたのだろう… 俺はあの切れ端を一度見たあとポケットにしまい、屋上に向かった 屋上の扉を前にして時計を見る ちょうど5時… ふぅっ…と息を吐き、自分に言い聞かせた 『俺はハルヒに想いを告げる』 もちろん自分のためにだ 世界のことなんか俺にはどうでもいい 俺は屋上への扉を開けた 夕焼けをバックに、仁王立ちでこっちを見ていた 「ぎりぎりセーフよ」 と言い、俺の前までやってくる 表情はどことなく寂しげだ 「あんた…怒らないの?」 なんで?俺が怒るんだ? 「だって…私、電話出なかったでしょ?」 「ああ、でも怒るほどのことじゃないだろ?」 「そう…なの?」 とハルヒは少し表情をくずした 「実はね…ずっと悩んでたのよ…あんたの言葉を聞いてから…」 俺の言葉? 「そうよ…正直、びっくりというか…」 そう言ってハルヒは俯いた ちょっと待て? あんたの言葉って…何かいったのか?俺 「何って…谷口に言ってたでしょ?」 「ハルヒ…俺何か言ってたか?」 その言葉を聞いてハルヒは 「あんた自分で言ったことも覚えてないの?私のことを変わり者って言った後、あんたすごい顔で谷口に言ってたじゃない! なんか…その…私のことを…」 ハルヒはかなり本気で怒っているようだが…後半はまた俯いてしまっている 谷口に…言った? あの時の…全部…声に出てたのか? 「ハルヒ…あー…どこらへんまで覚えてるんだ?」 と不安げに聞いてみると 「全部に決まってるじゃない!!あんたがあんなこと言うなんて思ってもみなかったわよ!!」 あんな台詞を全て口に出してたなんて信じられない 俺は熱くなると、そんなに思考が回らなくなる人間だったのだろうか… いや…頭は回ってたんだ… 後悔しつつ、思っていたことを既に言ってしまっていた自分が恥ずかしかった 「でね…私…どうすればいいのかなって…結局答えが見つからないであんたを呼び出しちゃったんだけど…」 ハルヒが今まで見たことのないような表情で俺に言う 「私はね…あんたのことが好きだったのよ」 突然の告白…に俺は驚く 「最初はね、私に空気みたいに一緒についてくれててさ。どんなわがままを言ったときだっていつも一緒に居てくれた。 本当に頼りになるなって…中学校じゃそんなやつは一人もいなかったからね」 「でも、キョンは違った。いっつも文句言いながら私の側に居てくれる。ひどいことをしたって許してくれる。 そんなキョンがあの日…階段から落ちた日…私は本気であんたの心配をしたわ」 「自分でもびっくりするぐらい。何故かキョンを失いたくないって…思ったの…でね、気づいたらキョンのことが好きだったのよ」 あの日俺が階段から落ちた日… 古泉によれば、ハルヒの焦りようは尋常じゃなかったらしい 「でも…キョンはいつも私の行動に文句をつけてたでしょ?だから告白して付き合えるなんて思えなかったの」 それは違う…俺は… 「それに…もし告白したら、今までの日常が壊れちゃうんじゃないかなって…」 …ハルヒは…俺と同じことを悩んでいたのか…? 「キョンが一緒に居てくれるのは嬉しい。でも、今のみんなで街を探索したりする…何気ない活動も楽しくて仕方が無かったの… だから…告白も出来ないくらいなら…そんな気持ちを忘れたいって思うようになったの…」 「でもね、昨日のキョンの一言で私の考えが変わっちゃったの。好きって気持ちを忘れようとしてたのに… あんたのせいで…しかもあんなこと言うなんて思わなかったし…」 「だから勝手に…その、びっくりしちゃって…顔なんか合わせられなかったのよ…」 ハルヒはここまで言い切って、ふぅと息をついた ハルヒがここまで俺のことを想っていてくれた… 驚いていたが、物凄く嬉しかった… それに俺は答えたい…お前の告白に… そして、俺の想いを伝えた 「俺はな、お前のこと好きだとは思ってなかったんだ」 その言葉を聞いてハルヒがこちらを向く お前…もう涙目になってるぞ… 俺は落ち着いて続きを言う 「最初は…変わってるなぁ…としか思わなかったんだ…それにいきなりSOS団だって立てちまうし… あまりにも突然過ぎる行動が多かったんだよ」 さらに不安げな表情になっていくハルヒ 大丈夫だ 安心してくれ 「けどな、俺もお前と同じで非日常的な生活を望んでたんだよ。そしてそれを叶えてくれたのがハルヒ…お前なんだ」 その言葉にキョトンとした顔をこちらに向ける 「お前の行動はいつも突然で、おかしいことばっかりだった。でも、お前と一緒にいるとそれが楽しくて仕方が無かったんだ。 だから俺はいつもSOS団に顔をだしたし、お前がバカなことやってたって味方だったんだ」 そうだ…俺は今の生活が楽しくて仕方が無かった 「でも、俺は自分の気持ちに気づかなかった。いつもお前といることが楽しいと感じているだけだと思ってたんだ… でも違った…俺はいつからかお前の気持ちに気づいていた…気がする…」 「俺はお前の笑った顔にびくついてたんだ…なんでお前の笑顔を見てこんな気持ちになるのか分からない… だから頭の中で必死に言い訳を続けたんだ。『ハルヒが笑っているだけだ』と…俺がお前に恋心とやらを抱いているんじゃないと… そうやって、俺はお前の想いから逃げてたんだ」 「けど、俺はお前の前で無意識にあれだけのことを言ったんだ」 あれだけのこと… 自分で言えば、分かって当然だ 俺はハルヒへの想いを必死になって隠していた 「でも、もう隠すのは嫌なんだ。だから…」 そこまで言って、黙ってしまった… 俺…続き言えよ… ラストだぞ ラスト 『好きだ』って言えばいいんだって… 目の前のハルヒが顔を真っ赤にしている 「えと…その…」 ハルヒも何かを言いたげにしている… あと一言だ あと一言 そして目をつぶり深呼吸をした瞬間あの一言を言った 「俺は… 「私は… その言葉に俺とハルヒは絶句 なんてタイミングなんだよ 俺は狙ってやってないぞ…だいたいそんなに器用なことはできん 二人の言葉が重なるなんて… おいおい…こんなことはドラマの中だけで十分だろ… 俺はハルヒの前で思いっきり深呼吸し 「えっと…ハルヒ聞いてくれ」 唐突に口を開いたが、 「ちょっと待って、私が先よ!私に言わせなさい!」 と、ハルヒに発言の権を取られた ハルヒは俺のネクタイをわしづかみ顔の前まで引き寄せた 顔を真っ赤にした、涙目のハルヒ 思わず『可愛いよ』と言ってやりたいところだが、今はハルヒの一言を聞こうじゃないか さぁ、ハルヒ 思いっきり言ってくれ 「私…あんたのこと好きだから」 言ってしまった… ハルヒはそんな顔をしながら俺の顔を見つめる だが、ネクタイは離してくれない 俺は少し腰をおったままの姿勢で言ってやる 「俺もだ…俺もお前のことが好きだ」 そう言った瞬間、ハルヒは声を上げて泣き出した それも泣き方がすごい… お前、どんな泣き方だよ… ああ…鼻水でちゃってるし… 俺はハルヒを引き寄せて、腕で包み込んだ 俺の胸あたりで、子供がぐずるような声をだしつつハルヒが泣いている 胸元がじんわりと暖かくなっていく そんな姿がとても愛おしく感じられる ああ…なんか最近俺の思考が変になってきたな… おかしいぞ 俺 どのくらい泣いていたのだろう… ハルヒは顔上げて何か言いたげにしている 「どうした?」 と聞くと 「びっくりして…ちょっと…」 照れくさそうに笑うが涙でてるぞ あと鼻水 ティッシュが無いので、制服の袖で鼻を拭いてやる そして、少し落ち着いてから 「あんたがそう言ってくれるなんて…思ってなかったから…」 「でも、そう望んだんじゃないのか?」 ハルヒにはその力がある 願えば、そんなことは簡単に叶ってしまう だから俺はハルヒにちゃんとした答えを出してあげられた… いや、でもこれは俺の想いだ ハルヒが想ったからじゃなくて、俺が勝手にハルヒを好きになっただけ そんだけだ ハルヒはひたすら泣いている なんだが俺が泣かせてしまったようで…たしかに俺が泣かせてしまったんだけど… 俺はハルヒの肩に手を置いた そして、おでこにキスをする ハルヒは…まるでバカを見るような目で俺を見ている あー… やっちゃったよ 俺 これもあれか? ハルヒの想像力ってやつか? っていうかなんでおでこにしたんだよ… 普通口だろ? 「口じゃないの?」 お前、やっぱり超能力者だろ… なんでそうやって俺の考えが読み取れるんだよ… 「普通は口でしょ?」 ハルヒは潤んだ瞳で俺見つつ言った 俺の答えを待っているようだ いきなり指摘される…やはり照れる… 俺がどうしようかと迷っていると 唇に暖かい物が触れた ちょうど人の体温くらいの…たぶん唇だ 確証はないが自身があるぞ というか反則だ…攻撃側は俺だろ? 俺は呆けた顔でハルヒを見た 「仕返しよ。あんたにやられっぱなしじゃ嫌だからね」 と言い、意地悪っぽい笑顔を俺に向け、抱きついてきた 後日談 昨日の告白の後 ハルヒはハルヒじゃなかった 異常な程ハイテンションになるのかと思っていたが… まるで長門のようにおとなしくなってしまい 「あー。嬉しい」 と小声で喋りつつ俺をやたらと叩く その後普通に帰宅しようとしたが、 「キョン。家まで送ってよ」 とのご命令があったので、団長様を家まで送ってやった 自転車に二人乗りをしている途中 「明日からは、私もあんたの家に行くから」 とハルヒが喋りだした 「ん?」 とわざと呆けてやると 「だから!あんたの家まで朝行くから!一緒に登校!」 「はいはい。時間は?」 そんなことでムキにならんでくれ 可愛くないぞ 「そ、そう?」 「嘘だ」 こうやってからかうとすぐムキになる ちょ、痛 お前殴りすぎだ 俺はどさくさに紛れて 「冗談だ、冗談。可愛いぞ」 この一言で我らが団長は顔を真っ赤にして 「バカ…」 の一言 「明日は…7時くらいでいいか?」 「うん…」 やけに素直なハルヒもまた珍しい 俺はそう約束をとりつけ、家へと帰宅した 結局ハルヒは閉鎖空間を生み出さなかったらしい とのメールが古泉から届いていた。 ハルヒに告白してから次の日 俺はいつもより早く目覚めた まぁそれなりの目的があるからな 適当に身支度を済ませ、早々に家を出た 今日はいつもの登校とは違う 家を出るとすぐそこにハルヒがいる 「あんたってホントに女を待たせるのが好きね。その趣味直した方がいいわよ」 告白したって俺への態度はいつもとなんら変わりない というか変わって欲しくないな 「あー。まぁ今後は直すように気をつける」 俺はそう言い、自転車を引っ張り出してきた というか俺にはそんな趣味はないぞ 「だったらさっさと直してよ」 ハルヒは俺に指をさしつつ言った 今日からはハルヒと一緒に登校になる しかし何故か、ハルヒは俺と全く同じ自転車に乗ってきた 「昨日近くに売ってたからね。親に買ってもらったのよ」 って自転車まで一緒にするなよ 「いいじゃない。ペアルック?みたいなもんでしょ」 「だったらキーホルダーとかの方がいいんじゃないか?」 「まぁなんでもいいじゃない」 今日のハルヒはいつものハルヒだ こいつはこの2日間に何があったかなんて知らないんだろうな… 他愛のない会話を女の子と楽しみつつの登校… 男子学生なら一度は夢見る一時だろ 今となっちゃあのハルヒが俺の隣にいるわけだが… 俺はこれはこれで…というかかなり満足している 学校への道がこんなに短く感じたのは、生涯初めてかもしれん… 俺達は自分たちの教室へと入る 少し早く来すぎたらしく、まだ一人もいない 俺とハルヒは教室の端にある席へと座る 「今日から活動再開か?」 という問いに 「もちろんでしょ!」 と満面の笑みを浮かべた やっといつもの日常が戻ってきた でも今日からは少し違うな 俺はハルヒの彼氏になったんだし… 「なぁ、ハルヒ」 「何?」 なぜかハルヒは…俺の問いに嬉しそうに反応する 「俺、ポニーテール萌えだから」 「は?」 と呆けた顔のあと 「それどっかで聞いたことあるわよ」 「そうか?」 「たしか…夢でみた…気がする…」 それは夢じゃない…はずなんだけどな… 「だからさ、髪が伸びたらポニーテールにしろよ」 END
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少女達の放課後 A Jewel Snow (ハルヒVer) ダーク・サイド 繋ぎとめる想い 涼宮ハルヒの演技 涼宮ハルヒと生徒会 HOME…SWEET HOME 神様とサンタクロース Ibelieve... ゆずれない 『大ッキライ』の真意 あたしのものよっ!(微鬱・BadEnd注意) ハルヒが消失 キョウノムラ(微グロ・BadEnd注意) シスターパニック! 酔いどれクリスマス 【涼宮ハルヒの選択】 内なるハルヒの応援 赤い絲 束の間の休息(×ローゼンメイデン) ブレイクスルー倦怠期 涼宮ハルヒの相談 お悩みハルヒ 絡まった糸、繋がっている想い 恋は盲目(捉え方によっては微鬱End注意) 涼宮ハルヒの回想 小春日和 春の宴、幸せな日々 春の息吹 おうちへかえろう あなたのメイドさん Day of February ハルヒと長門の呼称 Drunk Angel ふたり バランス感覚 Swing,Swing,Sing a Song! クラス会 従順なハルヒ~君と僕の間~ B級ドラマ~涼宮ハルヒの別れ~ ハルヒがニート略してハルヒニート 涼宮ハルヒの本心 涼宮ハルヒのDEATH NOTE 思い込みと勘違い 束の間の休息・二日目 束の間の休息・三日目 涼宮ハルヒの追想 涼宮ハルヒの自覚 永遠を誓うまで 涼宮ハルヒの夢現 Love Memory 友達以上。恋人未満 恋人以上……? 涼宮ハルヒの補習 涼宮ハルヒの感染 雨がすべてを 涼宮ハルヒの天気予報 キョンに扇子を貰った日 涼宮ハルヒの幽霊 隠喩と悪夢と……(注意:微グロ) Close Ties(クロース・タイズ) の少し後で セカンド・キス DEAR. 涼宮ハルヒの独白 寝苦しさ 涼宮ハルヒの忘却 涼宮ハルヒの決心 ティアマト(ハルヒ×銀河英雄伝説) 式日アフターグロウ 微睡の試練 涼宮ハルヒの大騒動シリーズ young 神の末路(微グロ注意) 涼宮ハルヒの奇妙な憂鬱 夕日の落ちる場所 涼宮ハルヒの抹消 トラウマ演劇 涼宮ハルヒは夜しか泳げない ハルヒ「釈迦はイイ人だったから!」 (グロ ナンセンス) ハルヒとボカロオリジナル曲の歌詞をあわせてみた 涼宮ハルヒの共学目次 word of thanks 赤色エピローグ 夏の日より 朝比奈さんの妊娠 疑惑のファーストキス 機関の推測(微エロ注意) 涼宮ハルヒの切望―side H― 憂鬱な金曜日 それでもコイツは涼宮ハルヒなんだ
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涼宮ハルヒの台湾 プロローグ 涼宮ハルヒの台湾 一日目 涼宮ハルヒの台湾 二日目 1 涼宮ハルヒの台湾 二日目 2 涼宮ハルヒの台湾 二日目 3 涼宮ハルヒの台湾 三日目
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魔の坂道を根性で登りきり、やっと教室に到着した。 あの朝のハイキングコースはいい加減やめて欲しい。 俺は鞄を自分の机に下ろすと、ちらりと後ろの席を見た。 ハルヒはまだ来ていないようだ。 しばらく待っていたが、ハルヒは一向に姿を見せない。 どうしたんだろうか?まさか欠席か? 「よーし、じゃあホームルーム始めるぞー。」 岡部が教室のドアを開けて入ってきた。 ハルヒは結局今日は欠席か、とか思っていると、 なんと、ハルヒが岡部の後ろから付き添うように教室に入ってきたではないか。 なんだ、ハルヒ。また何かやらかしたのか? ハルヒは若干俯き気味だ。 ごほん、と岡部がわざとらしい咳払いをする。 「えー、今日は皆に聞いてもらいたいことがある。」 岡部はハルヒに顔を向け、小声で「自分で言うか?」と聞いた。 ハルヒはフルフルと首を横に振る。 岡部はハルヒを少し見つめたあと、また前に顔を向けて、 少し間をあけてから言った。 「実は涼宮が転校することになった。」 ・・・・・・・・・は? 教室から驚愕の声が上がる。 俺は声が出ず、口をぽかんと開いたままにしていた。 「お父さんの仕事の関係らしくてな。海外に行く事になったらしい。」 ・・・・・・・・・。 嘘だろ? 俺は席に戻ったハルヒに質問攻めをした。 どうやら岡部が言ってる事は全て本当のことらしい。 海外に行く日は・・・・・・。 今週の土曜日。 なんてこった。もう1週間も無い。 冗談だろ? 最近のハルヒがおかしかった理由を一気に理解した。 鬱だったのは、俺達と別れるのが嫌だったから。 いつも以上に活発だったのは、俺達との最後の時を楽しむため。 突然のオゴリは、最後のハルヒなりの気遣い。 ・・・・・・。 嘘だろう、嘘であって欲しい。という想いが俺の頭の中をめぐる。 今、ここで岡部がプレートを掲げながら「ドッキリでした」と言ってきても、許せてやれる。 嘘と言ってくれ、ハルヒ。 「私だって信じたくないわよ。でも本当のことなの。仕方ないわ・・・。」 毎日のように部室に行き、 毎日のように長門は本を読んでいて、 毎日のように朝比奈さんが茶を入れてくれて、 毎日のように古泉とボードゲームをし、 毎日のようにハルヒが突然持ってきた馬鹿な計画につきあわされ、 毎日のようにSOS団の皆で笑って過ごす。 こんな毎日がずっと続くと思っていた。 わかっていた。 高校卒業と共に、そんな楽しい日々が無くなるのも。 でも、卒業する日が来るまでは、せめて卒業までは、 ずっとそんな日々が続くと確信していた。 しかし、その運命の時は、俺が予想していたよりもはるかに早く訪れたようだ。 ハルヒがいなくなる。 俺の中で何かがガラガラと崩れていく気がした。 団長がいてこそのSOS団だろ? お前がいなくて どうするんだよ。 俺はとぼとぼとした足取りで部室に向かった。 ハルヒを除いた三人は既に揃っていた。 「みんな・・・えらいことになった。」 「・・・・・・聞きました。涼宮さんのことでしょう?」 古泉はいつものようなニヤケ顔ではない。 もっとも、古泉がこの状況でまだニヤケ顔だったら 俺は古泉をぶっ飛ばしていたかもしれない。 朝比奈さんは、メイド服も着ずに、パイプ椅子に座って涙目だ。 長門はいつもの無表情だが、手元にはいつもの本がなく、床の一点をただじっと見つめていた。 「・・・・・・・・・。」 沈黙が流れる。その時だった。 「ヤッホー!!皆元気ー!?」 驚いたね、流石に。見ると、ハルヒの表情は、いつものような笑い顔だ。 「よくお前、笑っていられるな。」 俺がそう言うと、ハルヒは部室の雰囲気に気付いたらしく、 笑い顔を真顔に戻して、教室の時のような表情をつくる。 「皆、もう知ってるんだ・・・。」 ハルヒはすたすたと歩いていき、いつもの席に着いた。 それから30分ほど、俺達は何も話さずにそうしていた。 これほどまでに重い空気が流れたのは、この部室初めてのことであろう。 「ねぇ。」 突然ハルヒが口を開いた。 「このまま、こういう雰囲気で過ごしてもしょうがないじゃない? もうあと僅かしかない時間なんだから、もう少し楽しみましょうよ。」 ・・・・・・わかっている、わかっているが・・・そううまくは切り替えられんな。 「そう言ってても始まらないでしょ!!」 ハルヒは大声を出すと、いきなり机を叩いて立ち上がった。 そして、机に顔を伏せていた朝比奈さんのところまでいくと、朝比奈さんも立ち上がらせる。 「さぁ、みくるちゃん!着替えるわよ!!」 そう言うと、朝比奈さんの制服を脱がせ始めた。やばいっ!! 俺と古泉は急いで部屋から出て、ドアを閉めた。 中からは朝比奈さんの悲鳴とハルヒの変態チックな声が聞こえてくる。 しばらくして、 「ど・・・どうぞ。」 という朝比奈さんの声がしたので開けてみると、 メイド姿の朝比奈さんの横に、バニー姿のハルヒがいた。 「バニーよっ!」 何故お前も着替える。 「なんででもいいでしょー?キョンもコスプレしない?楽しいわよ。」 遠慮しておく。 「遠慮しないの!小泉君!クリスマスのときのキョンのトナカイ衣装出して!」 マジで?あれ?あのトナカイには俺の忘れたいトラウマがあるのだが。 そもそも、今日はクリスマスじゃない。 「はい、ただいま。」 古泉は、俺のトナカイ衣装がかけてあるハンガーを手にとる。 っていうか、古泉も何ハルヒの言う事素直に聞いているんだ。 「さぁ、キョン。さっさと着替えるのよ。」 断る。断じて着ない。 「つべこべ言わずに着替えなさい!!」 そう言うと、ハルヒは俺に飛び掛ってきた。やめろ!!この痴女め!! 「やめろって!わかった!自分で着替える!!自分で着替えるから!!」 俺がそう叫ぶと、やっとハルヒは俺のシャツのボタンにかけていた手を止めた。 朝比奈さんは、両手を顔に当てながら耳を真っ赤にして蹲っている。 「最初からそう言えばいいのよ。じゃ、さっさと着替えなさい。」 その前にだな、ハルヒ。 「何よ?」 俺はドアの方を指さす。するとハルヒは納得したように、 「ああ、そうね。じゃあみくるちゃん、有希、いくわよ。」 ハルヒは蹲ってる朝比奈さんと、パイプ椅子にじっと座っていた長門を連れて、 部屋の外に出て行った。やれやれ。 抵抗がある。それはそうだろう、いきなりこんなトナカイ衣装を着ろ、と言われて 素直に着る奴がいるだろうか。いるとしたら、そいつは変態が含まれている。 「さて、涼宮さんたちを長く待たせるわけにもいかないですから、 早く着替えてしまいましょう。」 うるさいな、古泉。人の気も知らないで。と、振り返ると、 そこにいたのは古泉ではなく、やけにでかいカエルだった。 ・・・・・・誰? 「僕ですよ。面白そうなので、僕も着替えてみました。」 古泉の声を発する化けガエル。よくみると、それは俺達がバイトで得たカエルの衣装だった。 お前も着替える必要ないだろ。お前は変態か? 「キョン、まだー?」 ハルヒがドンドンとドアを叩く。 ・・・何の罰ゲームだ、これは。 俺の姿を見るなり、ハルヒは大爆笑した。 まぁ、こういうリアクション取るとはわかってたがね。 朝比奈さんは、手で口をおさえながら俺の姿を凝視している。 長門はというと、眉ひとつ動かさずに無表情のままだ。 気付くと、化けガエルの視線がこちらに向いていた。 なんだカエル。やるのか?トナカイなめるなよ、この両生類が。 「いやー、やはりあなたのコスプレが一番様になってますね。」 どういう意味だ。とりあえず言っておこう、全然嬉しくない。 ここで俺はあることに気付いた。 「そういや長門だけコスプレしてないな。」 一同が一斉に長門を見る。 「・・・・・・・・・。」 長門の眉が1ミクロン動く。 しばらくそのまま固まったあと、長門はすたすたとハンガーの前に歩いていき、 ひとつのハンガーを手に取って言った。 「これ。」 ナース服だ。 古泉と外で待つこと、数分。 「うわっ、有希、あんたなかなか似合うわね。 キョン、古泉くん、いいわよー!」 ドアを開けると、そこにナース服の長門がいた。 「・・・・・・・・・。」 無愛想なナースさんは、無言のまま突っ立っている。 ・・・俺は今、ひょっとしてすごいものを見ているのではないだろうか。 長門がコスプレするなど、まず普通なら考えられない。 これをデジカメで撮って学校にいる長門ファンに売れば、 かなりの高額で売れること間違いなしだ。 「・・・・・・。」 長門は無言で棚から本をとると、ナース姿のまま、所定の場所について読書を始めた。 無表情、無言で読書をするナース。なんなんだろうね、これは。 「じゃあ、これで全員コスプレ完了ね!」 全員でコスプレしてどうするというのだ。 「楽しいからいいじゃない。」 俺は早く脱ぎたいのだが。 「そんなノリの悪い事言わないの。」 ノリってお前・・・。 「まぁまぁ、たまにはいいじゃないですか。」 うるさい、化けガエル。田んぼでゲコゲコ鳴いてろ。 「キョンくん、似合ってますよ。」 そんな、朝比奈さんまで! 俺のハートは1000ダメージを受けた。 しかし、すっかり元のSOS団の雰囲気に戻ったな。 これも団長、ハルヒがいてこその――・・・ ・・・・・・ああ、そうだった。ハルヒは、もう来週の日曜日にいなくなるんだ。 この楽しい日々も、ハルヒがいてこそ、成立しているんだ。 ハルヒがいなくなったらSOS団は―――・・・ 帰り道、前ではしゃいでいるハルヒに聞こえないように俺は古泉に話しかけた。 「なぁ、古泉。」 「何でしょうか。」 「ハルヒの転校が無しになるってことはないのか?」 「・・・・・・正直申し上げますと、難しいとだと思います。 涼宮さんが激しく願えば可能かとも考えられますが、 今の彼女の精神では、『仕方が無い』とされています。 加えて、今の彼女は段々力が薄れてきている状態にあります。 その条件で彼女が転校しないことになるのは・・・・・・。」 「・・・・・・そうか。」 俺は帰り道、はしゃぎまわるハルヒの顔をじっと見つめていた。 それからは、俺はホームルームが終わると即効で部室に行くようにした。 限りある時間を大切にするためである。 こうなることがわかっていれば、もっと前々から時間を大切にしていたのだが。 人との別れは、突然訪れるものだ。 金曜日。今日が、ハルヒがSOS団での最後の活動。 「ヤッホー、って、何それ。」 ドアを蹴り破って入ってきたハルヒは、 部室の中央に置かれたものを見て口をぽかんと開けた。 見てのとおり、鍋だ。 「何で鍋?」 「お別れ会ですよ。」 古泉は、ニコニコしながら言った。 「お別れ会?ってことは、一種のパーティーね!」 ハルヒは目を輝かせる。 パーティーではないとは思うけどな。 「じゃあ始めましょう!!」 その日、最後の活動は、今までのSOS団の活動の話で盛り上がった。 ハルヒがSOS団を結成したときの話、野球の話、七夕の話、 映画を作ったときの話、俺が入院した時の話、ハルヒの文化祭でのライブの話・・・。 まだまだ話足りなかったが、時は残酷なもので、 それを全て話しきるまでの時間は与えてくれなかった。 ふと気付くと、外ではぽつぽつと静かに雨が降り出していた。 今、俺は空港にいる。朝比奈さんも、古泉も、長門も一緒だ。 もちろんハルヒも。 そして別れの時まで、あと30分。 「いよいよね・・・。」 ハルヒは右手にはキャリーバッグがある。 見ると、朝比奈さんは、もう涙目になっていた。 「ちょ、ちょっとみくるちゃん。いくらなんでもフライングしすぎよ。」 「だ・・・だって・・・。」 しょうがないないわね、みくるちゃんは、とハルヒは朝比奈さんの頭をぐしぐしと掻いた。 ハルヒの両親をみたのも、そういえば今日が初めてだ。 父親は、なんだか優しそうな人で、 母親は、リボンを頭につけた、元気のある人だった。 どちらかというとハルヒは母親似だろう。 「今まであの子の事、ありがとうございました。 大変でしたでしょう?」 ハルヒのお母様が俺に向かって言った。 「いえいえ、そんなこと。」 実際は大変だったけどな。 「さて。ちょっとあんたらここ一列に並びなさい。」 何だ? 「いいから、早く。」 ハルヒに言われるまま、俺等団員は横一列に並んだ。 ハルヒはまず、古泉の両手を掴んで、 「古泉くん。あなたは副団長としてよく働いてくれたわ。 あなた無くして、このSOS団の活動はできなかったと言っても過言ではないわ。 今までありがとう。」 「ありがとうございます。」 古泉はニッコリと笑う。 どうやらハルヒのやってるこれはお別れの挨拶らしい。 次にハルヒは、長門の両手を掴んで、 「有希。あなたはSOS団唯一の無口キャラ、兼万能少女として頑張ってくれたわ。 今までありがとうね。」 「そう。」 長門はおもむろに一冊のハードカバーの本を取り出し、 「読んで。」 それをハルヒに渡した。 「これ、私に?」 ハルヒは戸惑ったような表情でそれを受け取った。 「そう。」 「・・・ありがとう、有希。大事にするわ。」 ハルヒはそれをバッグに入れると、今度は朝比奈さんの手をとった。 朝比奈さんの顔は涙で濡れている。 「みくるちゃん、あなたは部の萌系マスコットキャラとしてよく頑張ったわ。 それと、あなたの入れてくれたお茶は、他の誰が入れるお茶より美味しかったわよ。 もう、あれが飲めないとなると、ちょっと寂しいけど・・・、ありがとうね。」 ハルヒがそういい終わる頃には、朝比奈さんの顔は涙でぐしょぐしょになっていた。 「もう、ちょっとみくるちゃん?・・・しょうがないわね。」 朝比奈さんにつられたのか、ハルヒの目にも少し涙が浮かんできた。 最後にハルヒは俺の前に立って、 「キョン。あんたは・・・まぁ特に働いて無いけど、」 おいおい、ちょっと待て。 「あんたがいてくれて良かったわ。 あんたがいてSOS団だもん。 …今までありがとうね。」 ……ああ。 「それとキョン。」 ハルヒはごそごそとポケットを探り始めた。 なんだ? ハルヒはそれを掴むと、俺の胸に押し付けた。 赤い布?手に取ってみると・・・ 腕章だ。ハルヒがいつもつけていた、 団長 の腕章。 「あんたを、SOS団の団長に任命するわ!喜びなさい!」 …俺が? ………俺が団長? 横を見ると、他の団員も俺を見ていた。 俺がこいつらを引っ張っていくのか・・・? 俺はハルヒがいなくなると同時に、SOS団も無くなると思っていた。 しかし・・・。 SOS団は、まだ続いていくのか。 そうだ、こいつ等はまだここにいる。 今度は、俺がこいつ等を引っ張っていくのか。 ハルヒじゃなくて、今度は俺が。 俺は、腕章をぎゅっと握った。 「あんたたち!」 ハルヒは涙を流しながら笑っていた。 「次回のSOS団不思議探索パトロールをする日を発表します!」 ハルヒは斜め上を人さし指で指す。 「私は五年後に、日本に帰ってくるわ! 五年後の今日と同じ日、いつものあの場所だからね。」 ハルヒの笑っていた顔が、徐々に歪んでいく。 「駅前・・・集合よ。キョンあんた・・・ぐす・・・いつも遅れるんだから・・・ぐす。 早く・・・ぐす・・・。来なさいよね・・・ぐしゅ・・・。 遅れたら・・・ぐす・・・罰金なんだから。」 気付いたら、頬が熱くなっていた。 何事か、と頬を手で触ってみると、熱い液体がついていた。 その液体は俺の眼からつたっているようだった。 ハルヒの父親が、優しい顔でハルヒの肩を叩く。 「じゃあ・・・・・・。」 ハルヒはそう言って踵を返した。 ――コノママイカセテイイノカ?―― ・・・次の瞬間に俺がとった行動は、今思えばとんでもないことだったと思う。 朝比奈さんも、古泉も、長門も、ハルヒの両親も見ていただろう。他の乗客もな。 とんでもない行動だった。しかし、後悔はしていない。 俺は、ハルヒの肩を掴むと、身体を引き寄せ、唇を重ねた。 そのまましばらくして、唇を離し目を開けると、ハルヒは驚いたように目を見開いていた。 いや、ハルヒだけじゃないな。朝比奈さんも、古泉も、長門も、ハルヒの両親もだ。 ハルヒは、そのまま顔を赤くして、口を開いたままになったが、 しばらくすると、顔に笑みを浮かべ 「ぷっ」 と吹き出した。 「何だ。」 「何でもないわよ。ふふ。」 ハルヒは小さく手を振りながら、 「じゃあねっ!」 と言い、飛行機の中に消えた。 いつものような笑顔で。 その後、俺はハルヒを乗せた飛行機が、青い空に消えるまで見送っていた。 「団長・・・か。」 ぽつりと呟いてみる。 「長門。」 俺はハルヒが去っていった青い空を、そのまま見上げながら言った。 「お前は北高に残るのか?ハルヒの元にいくのか?」 「情報統合思念体の判断で、 私が都合よく再び涼宮ハルヒの元に現れるのは、不自然で、不適切な刺激を彼女に与えるとされたから、 涼宮ハルヒの観測は海外にいるインターフェースが行うことになった。 だが、私を消去すると、五年後の涼宮ハルヒに不適切な刺激を与えることになると考えられたため、 私は消去されずに北高に残ることになった。」 「そうか・・・。・・・古泉は?」 「僕は元々ここいらの区間の閉鎖空間の処理の担当です。 異動になる、というのはよっぽどの事がないかぎりありません。」 「そうか・・・。・・・朝比奈さんはどうですか?」 「えっと・・・ぐす・・・今問い合わせてみたんですけど・・・ぐす・・・。 詳しくは禁則事項で言えないんですが・・・ぐす・・・ 私はしばらくこの時間に残らないといけないらしいです・・・ぐす・・・。」 「そうですか・・・。」 俺は青く広がる空を眺めて、もう一度呟いた。 「団長・・・か。」 腕に腕章を着けた俺は、今、全力で自転車をこいでいる。 まったく、こんな日に寝坊してしまうとは・・・。 待ち合わせ場所に到着すると、懐かしい面々がそろっていた。 「遅いですよ。」 「・・・・・・。」 「キョンくん!お久しぶりです!」 相変わらずニヤケ面の古泉、無口無表情の長門、若干背が高くなったであろう朝比奈さん。 そして、奥で笑みを浮かべながら腕組みをしている黄色リボンの女は、間違いなくあいつだ。 「キョン!遅いわ!罰金よ!!」 fin
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キョン「なあハルヒ、お前将来の事とかちゃんと考えてるのか?」 ハルヒ「なによいきなり、あんたらしくない」 キョン「少しは現実的に考えろよ、元気なのはよろしいがそれだけじゃ生きていけんぞ」 ハルヒ「あたしはね、現実的とか普 キョン「そんな事を言ってられるのは中学生までだ」 ハルヒ「そ…それは…そうだ、古泉くんはどうなのよ」 古泉「僕も涼宮さんにはちょっと付き合いきれませんね、非常に残念ですが…」 キョン「ということだ、朝比奈さんも長門もここに来る事はないだろう」 ハルヒ「えっ…ちょっとどういうことなの!?説明しなさい!」 キョン「じゃあな、後は1人で頑張ってくれ」 古泉「それでは失礼します」 ハルヒ「待ちなさい!これは団長命令 バタン! ハルヒ「………なによみんなして…うぐっ…悔しい…」 ハルヒ「キョン大好きっ!うりうり~♪」 キョン「ハルにゃんもかわいい~♪」 古泉・みくる・長門「…」 そして… 古泉「皆さん、同盟を組みましょう、このままでは危険です」 みくる「ああ、いいぜ、だが恨みっこはなしだぜ」 長門「わかった…」 翌日 ハルヒ「みくるちゃ…熱っ!!」 みくる「ひゃ!お茶こぼしちゃいました~☆てれりこてれりこ(爆)」 古泉「あっと!すみません、足が引っかかりました」 ハルヒ「もう…なんなの…」 長門「…」バンッ! ハルヒ「痛…もういい、帰る!」 古泉・みくる・長門(…成功) キョン「あれ?ハルヒはいないのか?」 古泉「さっき帰りましたよ…それよりたまには僕と遊びませんか?」 キョン「そうだな…たまにはオセロでもやるか」 キョン「実は俺も昨日夢見たんだ」 ハルヒ「??どんな夢よ」 キョン「俺が見た夢はな、学校の敷居内にお前と二人で閉じ込められてな・・・最後にキスする夢だよ」 ハルヒ「それ!私も見た!!さっき言ったけど・・・実は悪夢じゃないんだ」 キョン「いや悪夢だろお前とキスする夢なんて、お前もう俺の夢に出てくんなよ気持ち悪いから」 ハルヒ「・・・・・・」 キョン「おいハルヒ、窓から飛び降りてくれ」 ハルヒ「は?何言ってんの?」 みくる「と、飛び降りた方がいいとおもいまぁ~しゅ☆」 長門「涼宮ハルヒは窓から飛び降りる」 古泉「そうですね、僕も賛成します」 ハルヒ「ちょっと…みんなどうしたの?」 一同「涼宮ハルヒは窓から飛び降りる…涼宮ハルヒは窓から飛び降りる…涼宮…」 ハルヒ「ねえ、悪い冗談はやめてよ」 キョン「うるさい、飛べ!飛び降りろ!」 みくる「今すぐ飛び降りてくださ~い!!」 ハルヒ「ほ…本気なの?」 古泉「言っても無駄なようなので僕が突き落とします」 キョン「よし、俺も手伝うぞ」 ハルヒ「ちょ…やめて!本当に落ちちゃう!あ…危ない!ねえ!」 キョン「3、2、1…それっ!」 ハルヒ「あっ……… ドサッ 突然飛び降りた事になっていたハルヒが完治して学校に来ている あのことは忘れたのか久しぶりに部室にやってきた ハルヒ「やっほー!涼宮ハルヒ復活!!」 「…」 ハルヒ「団長が復活したのよ?もっと喜びなさい!」 キョン「ああ喜んでるよ…またおまえを痛めつけられるんだからな…」 キョン「なあみんな、嬉しいよな!?」 みくる「はい、また涼宮さんをいじめられるなんて…すごく嬉しいです!」 ハルヒ「え…?」 古泉「まだわからないんですか?」 古泉はハルヒの腹を殴った ハルヒ「ごはっ…げほ…」 古泉「おっと、声を出されては困りますね、口を塞がなくては」 ハルヒ「ん…んん!」 みくる「怖いんですか~♪それぇ!」 朝比奈さんはハルヒの首を絞めている ここでついにハルヒはあの時のことを思い出してしまったようだ そしてハルヒは失禁したのだ そこで俺達は手を止めた キョン「さてどうする?」 古泉「…そうですね、目を離していた時机に後頭部を強打…という事にしましょう」 キョン「それはいいな、じゃあ早速…」 そしてハルヒが気絶したと職員室に駆け込み、ハルヒは救急車で運ばれていった 翌日ハルヒは学校に来なかった またしばらく入院することになったか不登校なのか… しかし俺達は奴を引きづり出していじめるつもりだ ハルヒ「私ついていくよ~ど キョン「ついてくんな」 ハルヒ「目を見てこr キョン「見たくねーよ」 ハルヒ「私覚悟~しt キョン「キモイからさっさと消えろ」 ハルヒ「… …Gyao」 キョン「キメェwwwwwwww」 ハルヒ「私のプリン食べた?」 キョン「知らん」 ハルヒ「私のこんにゃくゼリー食べた?」 キョン「うざい」 ハルヒ「私のフルーチェ食べ」 キョン「死ね」 ハルヒ「・・・」 キョン「あ、朝比奈さ~んちょっとお茶行きませんか~?そうそう古泉と長門も誘って! ハルヒ?さぁあいつは今日は見てませんねそれはそうと行きましょうよさぁさぁ」 ハルヒ「あぁ・・・くやしい・・・・くやしいのに・・・(ビクンビクン」 岡部「時間がないから自己紹介は名前だけなー」 ハルヒ「涼宮ハルヒ ただの人間にはky」 岡部「はい次ー。」 キョン「なあハルヒ」 ハルヒ「何よ?」 キョン「おまえのポニーテール、やっぱ全然似合ってないな」 ハルヒ「!………ふぇえんっ、キョンなんて嫌い!大っキライ!!」 「おいハルヒ、目のした蚊に食われてるぞ」 「そうなのよ、痒くて痒くて堪んないのよ」 「ちょっと待ってろ、今薬塗ってやるから」 「ほら、目閉じろ・・・」 「へっ、変なことしないでよね/////」 「ほらっ、動くなよ」 「うん・・・・・」 「はい、塗りおわったぞ・・・・」 「ありがとう、キョ・・・・・・・目がっ!!目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「涼宮さんどうしたんですかぁ?。めがっさめがっさなんていっちゃってwキョンくんに薬塗ってもらえるなんて、羨ましいですぅ」 「・・・・・・・何塗ったの?」 「タイガーバーム」 ハルヒ「な……なんなのよぉ……!? なんでみんなそんなこと……わわ私、違うわよぉ……!!」 キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ガチャ みくる「あ、もうみんな来て……な、なにしてるんですか?」 バッ キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「……や……ヤ~リマン、ヤ~リマン」 みくる「……!?」 みくる「なな、なんなんですか……? やややや、ヤリマンってなんですかぁ……?」 キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 みくる「そ、それにさっきはみんな涼宮さんに言ってたじゃないですか……!!」 ハッ!! キョン「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 長門「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 古泉「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ちょちょっと!! なんで私のほうに……!? ちょっとみくるちゃん!!」 みくる「ヤ~リマン、ヤ~リマン」 ハルヒ「ハッ!?」 ハルヒ「キョン!」 キョン「ん?どうしたハルヒ?」 ハルヒ「一度しか言わないからよく聞いてなさいよ。……キョンあたしと付き合いなさい! (やったわ!とうとう言ってやったわ////)」 キョン「はあ?何言ってんだお前は?」 ハルヒ「だ、だからあんたのことが好きだって言ってんのよ! (もうバカキョン!察しなさいよ////)] キョン「そういう意味でなくてだな。どうして俺がお前なんかと付き合わねばいかんのだ」 ハルヒ「え?」 キョン「大体だな俺はもう長門と付き合ってるんだ。お前と付きあえるわけが無いだろ」 ハルヒ「う…嘘」 長門「本当」 ハルヒ「有希!」 長門「彼と私は随分昔から恋人関係気づかなかったのはあなただけ」 ハルヒ「そ、そんな…」 長門「鈍すぎる。憐れ」 ハルヒ「有希!あんた…」 古泉「実は僕たちも付き合ってるんですよ」 ハルヒ「!?」 みくる「あのー涼宮さん本当に気づいてなかったんですか?」 キョン「気づいてたら毎日毎日俺たちを部室に集めるだなんて無粋なこと出来やしませんよ」 みくる「それもそうですね。でも、よかったです」 ハルヒ「な、何がよかったの?」 みくる「だってこれからは涼宮さんに気兼ねなく遊びに行けるじゃないですか」 ハルヒ「え…?」 古泉「そうですね。いや~よかった。まさか涼宮さんそれでも僕たちの邪魔をするだなんて言いませんよね?」 ハルヒ「え?あの、その、もちろんよ…」 長門「よかった。これからはいつでもあなたに甘えられる」 キョン「おいおい、長門。俺はいつだってよかったんだぜ」 古泉「さあ、自由になったことだしダブルデートといきませんか?実は知り合いがオープンしたばかりのレストランのディナー券が4枚あるんですよ」 キョン「お、ナイスだ古泉!長門、いや有希もそれでいいか!」 長門「(コクリ)」 みくる「わぁ~楽しみですぅ~」 古泉「では行きましょうか。あ、涼宮さんはお気になさらずにSOS団の活動に励んでください」 キョン「じゃあなハルヒ。お前もいつまでも馬鹿やってないで恋人でも見つけるんだな」 ハルヒ「待ってキョ バタン! ハルヒ「一体何なんだってのよ、もう………。グスン、また一人になっちゃった…」 長門「あなたには羞恥心が足りない…」 ハルヒ「…」 長門「聞いてるの…」 ハルヒ「申し訳ありません…善処します…」 長門「早朝、この部室でしている自慰行為の声も大き過ぎる」 ハルヒ「…今後注意します…」 長門「何より彼に対する好意が露骨…過剰…目障り…」バキ! ハルヒ「…」 長門「…この状態が続くようなら薬の投与を増やさなければならない…」 ハルヒ「…」 みくる「でもでも長門さん、これ以上増やしちゃうと致死量越えちゃいますよぉ?」 長門「構わない」 ハルヒ「…」 みくる「え~?でもお~このブス死んだら私達とキョン君との接点、無くなっちゃいません?」 長門「問題ない…彼は私の虜…もうこの女は用済み…」 ハルヒ「…」 長門「…ふひっ!ころす…ころス…殺す…死ね!死ね!死ね!」 ハルヒ「なんか甘いもの食べたいわね・・・・・・・・・!!!キョン!!ゼリー買ってきなさい!」 キョン「わかった、行ってくる」 ハルヒ「何よ、妙に聞き分けがいいじゃない」 キョン「・・・・・・」 キョン「ほら、買ってきたぞ」 「朝比奈さんには杏仁豆腐。長門、おまえにはムース。あと古泉、バナナプリンで我慢してくれ」 「あと、ハルヒは一口ゼリーだ」 ハルヒ「なかなか気が利くじゃない、そっれじゃあいっただっきまーす!」 ハルヒ「いっただっきまーす!」 パクッ ムシャムシャムシャ ハルヒ「蜂蜜の味かしら?なかなか美味しいわ」 「これなんて名前なの?」 キョン「カブト虫の餌」 ハルヒ「ねえキョン・・・・・夢のなかでしてくれたこと覚えてる?」 キョン「記憶にございません」 ハルヒ「ほら、ポニーテール好きだって言ってキ、キスしてくれたじゃない///」 キョン「記憶にございません」 ハルヒ「あっ、映画撮ったときさ、みくるちゃんが【キョン】「記憶にございません」 ハルヒ「じゃ、じゃあs【キョン】「記憶にございません」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|^ ヮ^ノリ キョンキョ~ン ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「なんだ…用なら後にしてくれないか」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|#゚Д゚ノリ キョンってば!聞きなさいよ!! ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「………」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l|゚ ー゚ノリ キョン……ねぇ… ヾ ノ ハつ京ハつ くっヽ_っ キョン「…もういい、出て行く」 _ __ _ 〈 r==ミ、くノ i 《リノハ从)〉 从(l| T-Tリ キョン…うぅ… ヾ ノ ハ京ハ くOUUつ 「この中に、宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい。以上」 「…涼宮」 「何よ」 「鏡を見てみろ、宇宙人が映ってるぞ」 ハルヒ「みくるちゃん、お茶!」 みくる「はぁ~い、ただいま」 キョン「おいハルヒ…上級生に頼むならもう少し丁寧な物言いをしたらどうだ。すみません、朝比奈さん」 ハルヒ「あたしは団長だから一番偉いの。学年なんて関係ないわ」 みくる「お待たせしました、どうぞ…キョン君はこっち、涼宮さんはこっちです」 キョン「ありがとうございます。美味しいですよ」 ハルヒ「なにこれ、あたしのは水じゃないの?!」 キョン「えぇ?」 みくる「ふふ、生意気な下級生はカルキ臭い水道水でも飲んでろですぅ」
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涼宮ハルヒ!!(長門有希ちゃんの消失第3話) スタッフ 脚本:待田堂子 絵コンテ:島津裕行 演出:羽多野浩平 作画監督:古澤貴文 作画監督補佐:松本文男、鵜飼一幸、今西亨 原作収録巻 第2巻(p5~P60)Epiloge8 涼宮ハルヒ(P1~3除く) Epiloge9 不法侵入 Epiloge10 ガールズトーク(P61~P64除く) BD/DVD収録巻 第2巻収録予定 概要 サブタイトルの元ネタは「Epiloge8の涼宮ハルヒ」より 原作の第8話から第10話をアニメ化。 ただし、ハルヒから別れたシーンより、漫画から追加シーンとして部室の片付けや、その帰り道の買い物での朝倉と長門のハルヒなどについての会話、廣田神社とみられる神社への和服姿での初詣など追加シーンがある また原作のカラーページに相当する(1-3ページ)分や、Episode10の最後は次回のネタフリなためカットされたのかもしれない。 今回古泉初登場なのは原作通り。 体育教師の森園生は出番が1,2話で原作にある出番をカットされたものの、今回の原作にある出番でようやく登場。森園生役の声優は、涼宮ハルヒちゃんの憂鬱や涼宮ハルヒちゃんの麻雀まで演じていた声優の大前茜が引退したため、小見川千明が継いで担当している。 なお、小見川千明は長門有希ちゃんの消失と共通の音響監督が担当したネギま!での大前茜の役も引き継いでいる。 パロディ等(涼宮ハルヒちゃんの憂鬱や涼宮ハルヒの憂鬱絡みも含む) 部室にXmasの文字(涼宮ハルヒの消失では外から鏡文字、長門有希ちゃんの消失では中からだと鏡文字とで逆) 今回も第2話に引き続き、『涼宮ハルヒの憂鬱第1期シリーズで使われた「おいおい」』のアレンジバージョンが使われている。(憂鬱I、憂鬱II、射手座の日、サムデイインザレイン)さらに第3話では、第1期シリーズで使われた「やれやれおいおい」のアレンジバージョンが使われている。(憂鬱II、退屈、ミステリックサイン、孤島前編) 放送版とBD/DVD版との違い キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 長門有希:茅原実里 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 朝倉涼子:桑谷夏子 朝比奈みくる:後藤邑子 鶴屋さん:松岡由貴 古泉一樹:小野大輔 森園生:小見川千明 女性店員;幸田夢波 野球部キャプテン:金光宣明 野球部員A:西山宏太郎 野球部員B:駒田航 スタッフ 脚本:待田堂子 絵コンテ:島津裕行 演出:羽多野浩平 作画監督:古澤貴文 作画監督補佐:松本文男、鵜飼一幸、今西亨 ゲスト衣装デザイン:今西亨 動画検査:堤章江、Fan Ru Jun 美術設定補佐:上津康義 美術監督補佐:石田喬子 色指定検査:琴吹名人 特殊効果:小森靖彦 スプリクト制作:志村豪 2Dグラフィックス:野崎崇志 CGディレクター:畑山勇太 CGデザイナー:渡辺雄斗 CGプロデューサー:青谷崇司 マネジメントCGプロデューサー:畑秀明 CG制作進行:加藤彩乃 制作デスク:海上千晶 設定制作:松井明穂 制作進行:石田里志 制作協力:A.C.G.T 協力:フォントワークス 原画 安藤正浩 今井恵 小倉恭平 佐藤晴香 横山悦子 Heo Gi Dong Kim Ye Jin 古澤貴文 星山企画Jang Chan Ho Hwang In Beom 第二原画 足利真美恵 齋藤和広 佐伯路子 陣内美帆 田中立子 堤章江 橋本久美 C2C スタジオアド 星山企画Heo Jae Hye 動画 杉田真理 中島順 常州卡佳劫漫有限公司Cao Xiang Hu Dan Huang Bing Zhi Luo Dan Yang Ke Hu He Wang Wang Chao Chen Xia スタジオ九魔 仕上げ 常州卡佳劫漫有限公司Tamaru Masahiko Zhang Li Xin Chen Juan Xu Yan Hon Oh Young Ran スタジオ九魔 背景 ムクオスタジオ井上慎太郎 真喜屋実義 中根崇仁 一瀬あかね 村田裕斗 大門友花里 中村沙和子 SAKO 撮影 T2スタジオ佐藤陽一郎 長谷川大介 渡部達也 ダン シャオ フイ (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 東京MXテレビ:2015年4月17日25時40分-26時10分 BS11:2015年4月18日27時00分-27時30分 AT-X:2015年4月18日22時30分-23時00分 チバテレビ:2015年4月20日24時00分-24時30分 tvk:2015年4月20日24時00分-24時30分 テレ玉:2015年4月20日24時30分-25時00分 サンテレビ:2015年4月20日24時30分-25時00分 TVQ九州放送:2015年4月20日26時35分-27時05分 信越放送:2015年4月21日25時56分-26時26分(特番のため1分押し) 岐阜放送;2015年4月22日24時00分-24時30分 三重テレビ放送:2015年4月23日25時20分-25時50分 dアニメストア:2015年4月23日12時00分-1週間配信 RAKUTEN SHOWTIME:2015年4月24日12時00分-1週間配信 アニメパス:2015年4月30日12時00分-1週間配信 ニコニコ動画:2015年5月7日12時00分-12時30分 BD/DVDチャプター 使用サントラ 0 00~0 23 SE? 0 24~1 53 OP 1 54~1 56 SE 1 57~4 13 『やれやれおいおいアレンジ』 4 14~4 36 SE 4 37~5 54 『?』 5 55~7 16 SE 7 17~9 13 『?』 9 14~9 45 SE 9 46~11 49 『亡き少女の為のパヴァーヌ』(モーリス・ルブラン) 11 50~12 41 SE 12 42~15 15 『?』 15 16~16 21 SE 16 22~18 11 『?』 18 12~19 08 SE 19 09~21 05 『おいおい、アレンジ』 21 06~21 45 SE 21 46~22 34 『?』 22 35~24 04 ED 24 05~24 10 次回予告(SEなし) 一覧 話数 サブタイトル 第1話 大切な人 第2話 もろびとこぞりて 第3話 涼宮ハルヒ!! 第4話 Be my Valentine
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涼宮ハルヒの溜息 基礎データ 著:谷川流 口絵・イラスト・表紙:いとうのいぢ 口絵、本文デザイン:中デザイン事務所 初版発行年月日:平成15年(2003年)10月1日 本編270ページ 表紙絵:朝比奈みくる タイトル色:橙色 初出:書き下ろし 初出順第5話 裏表紙のあらすじ紹介 宇宙人未来人超能力者と一緒に遊ぶのが目的という、正体不明な謎の団体SOS団を率いる涼宮ハルヒの目下の関心後とは文化祭が楽しくないことらしい。行事を楽しくしたい心意気は大いに結構だが、なにも俺たちが映画をとらなくてもいいんじゃないか?ハルヒが何かを言い出すたびに、周りの宇宙人未来人超能力者が苦労するんだけどな――スニーカー大賞<大賞>を受賞したビミョーに非日常系学園ストーリー、圧倒的人気で第2弾登場! 目次 プロローグ・・・Page5 第一章・・・Page14 第二章・・・Page48 第三章・・・Page100 第四章・・・Page154 第五章・・・Page210 エピローグ・・・Page270 あとがき・・・Page276 アニメ テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』より 未アニメ化(ただし、一部は2006年放送第01話『朝比奈ミクルの冒険 Episode00』、2006年放送第12話『ライブアライブ』の一部に組み込まれている。) 2009年改めて放送した『涼宮ハルヒの憂鬱』より 2009年放送第20話『涼宮ハルヒの溜息 I』(第1章P14-第2章P56まで) 2009年放送第21話『涼宮ハルヒの溜息 II』(第2章P56-第3章P110まで) 2009年放送第22話『涼宮ハルヒの溜息 III』(第3章P111-第4章P165まで) 2009年放送第23話『涼宮ハルヒの溜息 IV』(第4章P166-第5章P220まで) 2009年放送第24話『涼宮ハルヒの溜息 V』(第4章P221-第5章P271まで、プロローグP5-P11まで) 漫画 ツガノガク版(雑誌の発表号などの詳しい情報はツガノ版漫画時系列で) コミックス第5巻に収録第23話『涼宮ハルヒの溜息Ⅰ』 第24話『涼宮ハルヒの溜息 II』 コミックス第6巻に収録第25話『涼宮ハルヒの溜息 III』 第26話『涼宮ハルヒの溜息 IV』 第27話『涼宮ハルヒの溜息 V』 登場キャラクター(原作のみ登場) キョン 涼宮ハルヒ 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん シャミセン 谷口 国木田 キョンの妹 あらすじ 後に繋がる伏線 刊行順 ←第1巻『涼宮ハルヒの憂鬱』↑第2巻『涼宮ハルヒの溜息』↑第3巻『涼宮ハルヒの退屈(原作)』→
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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ 挿絵口絵 挿絵 挿絵 登場人物 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第11巻。長編作品。 2007年6月1日に発売が予定されていたが、諸般の都合により発売延期となり、ついには発売未定となる。 しかし、2010年4月30日発売のザ・スニーカー6月号にて一部先行掲載され、年内発売予定が発表されたが、年度内発売に変更、その後、同年12月27日発売の ザ・スニーカー2月号にて、『涼宮ハルヒの驚愕(後)』というタイトルで、2011年5月25日、発売することが決定(初回限定版)、 6月15日には通常版が発売される。 「初回限定版」には『驚愕(前)』とセットで、64ページのオールカラー小冊子がついてくる。 当初は一冊のみの刊行で『涼宮ハルヒの驚愕』のタイトルでの発売予定だった。 表紙 通常カバー…佐々木 タイトル色 通常カバー…青 その他 形式…長編・上中下巻(第9巻『分裂』は上巻、第11巻『驚愕(前)』は中巻にあたる) 目次 第七章…P.5 第八章…P.79 第九章…P.136 最終章…P.149 エピローグ…P.222 あとがき…P.282 裏表紙のあらすじ 団長閣下による難関極まりないSOS団入団試験を突破する一年生がいるとは思わなかったが、俺に押しつけられた「雑用係」という不本意な肩書きを 浄土できる人員を得た幸運を噛みしめるのに、何のはばかりもないはずだ。なのに、ハルヒ同席のあのぎこちない再会以来、佐々木たちが顔を見せていないことが 妙に引っかかるのはどうしてかね。類い稀なる経験に裏打ちされた我が第六感は、何を伝えたいんだ? 圧巻のシリーズ第11巻! 出版社からのあらすじ ハルヒによるSOS団入団試験を突破する一年生がいたとは驚きだが、雑用係を押しつける相手ができたのは喜ばしいことこの上ないね。 なのに、あの出会い以来、佐々木が現れないことが妙にひっかるのはなぜなんだ? 内容 あらすじ 挿絵 口絵 キョン、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹、橘京子、藤原、周防九曜(第七章) キョン、渡橋泰水(第七章) 涼宮ハルヒ、キョン(最終章) 挿絵 「第七章」 P.9…渡橋泰水 P.41…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 「第八章」 P.86…涼宮ハルヒ P.125…藤原、キョン、佐々木 「最終章」 P.169…朝比奈さん(大)、藤原 P.191…涼宮ハルヒ、キョン P.205…涼宮ハルヒ 「エピローグ」 P.260…佐々木、キョン 挿絵 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 朝倉涼子 鶴屋さん 谷口 国木田 佐々木 橘京子 藤原 周防九曜 渡橋泰水 刊行順 <第10巻『涼宮ハルヒの驚愕(前)』
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ハルヒは悩んでいた。 午後の授業が始まってからずっとなのだが、昼前は機嫌が良かったので、 恐らく昼休み中に何かあったんだろうなあ。 最近はいつも昼休みになると首根っこ掴まれて学食で奢らされるのだが、 今日は昼休みになるなり何も言わず、教室を飛び出して行った。 俺も財布の中身を確認しながら安堵したのだけど。 それが授業が始まる直前に教室に戻ってきてかと思うと、 不機嫌そうな面持ちで頬杖をついた。 俺が、どこいってたんだ?と声を掛けると、 「あんたには関係ないでしょ」 と言った。 確かに関係ない。だがお前が不機嫌になるときは俺にとって都合があまり良くないってことを ほんの微塵でもいいからわかっていただけるとうれしいんだけどな。 俺もそれ以上ハルヒに追及をしなかった。ハルヒも話すつもりはなかったんだろうし。 それで、今に至るわけだが、ハルヒがダウナーな気分になっていることなんて、 珍しいことではない。 ただ今日はいつもの不機嫌とは違うということに俺はなんとなく気づいていた。 ……しかし、まあ何で俺がハルヒのご機嫌なんかを伺わんといけないんだ? この代償は高くつくぞ、ハルヒ。 5時限目が終了して、ハルヒはすぐに教室から出て行った。 俺はトイレに向かって歩いていた。すると廊下の反対側に、俺を見つけて微笑する古泉が手を振っている。 「こんにちは。今日もいい天気ですねー」 なんだそのすっとぼけた態度は。 「え?なんのことです?」 「ハルヒの事なんだがな」 「涼宮さんがどうかしましたか?」 こいつの組織がまた変な事をけしかけたというわけではないのか。 俺が疑うような素振りを見せると、古泉は肩を竦めた。 「残念ながら私は何も知りませんよ?」 まあ、嘘をついているようにも見えないし、本当に何も知らないんだろうな。 「まあいい。例の閉鎖空間は最近どうなってる?」 古泉は、驚いたように目を少し見開いたと思うとニヤケ顔を近づけてきた。 「あなたも心配してくれているんですね。どうですか?例のバイトの件考えてくださってもいいんですよ?」 心配してるのは自分の身だ。そんなもんやらん。顔を近づけるな。 「まあ今となっては、ほとんどあなたが無償でバイトをしてくれているようなものですしね」 古泉は指先で前髪をピンと跳ねると続けた。 「あの時以来、閉鎖空間は安定したままです。あなたのおかげですよ」 「今もか?」 「ええ。特に変化はありません」 それに、と古泉は続ける。 「涼宮さんなら昼休みに会いましたが、あなたが心配しているような様子ではありませんでしたよ? いつもどおりの涼宮さんでした」 いつもどおりのハルヒとは何だ? 感情の起伏の激しさじゃ右に出る奴はいないからな。 全くもっていつもどおりの想像がつかん。 「いえ、普通にあいさつをしただけですが、別段不機嫌だとか逆に機嫌が良いとか そういうのはなく本当に普通の涼宮さんです」 「そうか」 古泉が言っていることが本当だとしたら俺のただの思い違いか。 そうであればいいんだがな。 それに……俺はハルヒに振り回されすぎだな。 別に何が起こってもいいじゃないか。 SOS団には長門もいる。ちょっと頼りないが朝比奈さんも。 そして、今目の前にいるこの男も一応な。 俺は今まで何を学んできたんだ。ハルヒのことにしてもだ。 もうちょっと俺が信用してやらなきゃならんのではないか。 「古泉」 「はい?」 「今話したことは忘れてくれ。ハルヒ云々言ったことをな」 古泉は素直にそれを聞き入れた。 「わかりました。悩みごとがあるなら僕でよろしければいつでもお聞きしますよ」 「結構だ」 教室に戻ると、ハルヒはすでに席についていた。 さきほどと変わらない表情で外を見つめている。 俺も今は何も聞かないでおこう。そう思い席についたのだが、 ハルヒはそんな俺の考えを見透かしたかのように言った。 「何よ、その顔。言いたいことがあるなら言いなさいよ」 「言いたいことはさっき言ったぞ」 「あんたには関係ないって言ったじゃない」 「だからこれ以上聞こうなんて思ってない」 ハルヒは一層不機嫌そうな表情を作ると、再び外に目を移した。。 そして、ため息だろうか、小さく「はぁ」と声を漏らした。 なんなんだろうなあこいつは。 6限が終了し、部室に行こうとしたその時、ハルヒが声をあげた。 「キョン、ちょっと私寄るところがあるから先に行ってて」 そう言うとハルヒは教室を後にした。 俺はその言葉に従い、先に部室へと向かった。 部室のドアをノックすると、毎度ながら愛らしい声で、 「はぁぃ」と声が聞こえる。朝比奈さんだ。 ドアを開け、中に入るとすでにハルヒ以外の全員が揃っていた。 俺は軽く挨拶を交わすと、いつもの指定席に腰かけ、 メイド姿の朝比奈さんがお茶を入れるのをボーっと見ながら、 あんな服やこんな服を着てくれないかなあと健全な高校生なら誰でもしてしまうような妄想を 頭の中に描いていた。きっとだらしない顔をしていただろう。 それを見た古泉がクスッと笑うと俺の目の前にオセロを差し出した。 トレイにお茶を乗っけて不器用に歩く朝比奈さんが、長門、古泉、俺の順にお茶を渡してくれた。 朝比奈さんはお茶を渡すと、思い出したかのように俺に言った。 「そういえば、今日涼宮さんが珍しく5限と6限の間に私のところにきたんです」 ハルヒは授業の合間に校舎中渡り歩いているんじゃないんですか。 朝比奈さんは、ゆっくりと首を振った。 「確かに、涼宮さんが廊下を歩いているのは私も何度か見たんですけど、 その、私のところに直接来たのは、初めてここに連れてこられた時以来で」 それで、ハルヒは朝比奈さんのところに何しにきたんです? まさか授業中にバニーになれとかとんでもないこと言ったんじゃないですか。 「ううん。突然、涼宮さんが来たのでちょっと怖かったんですけど、 その、『みくるちゃん、あなた明日家に来なさい』って」 ハルヒが自分の家に朝比奈さんを? ますますわけがわからないなあいつは。 「私悪いことしたのかなと思っちゃって」 いやいや、朝比奈さんが悪いことしたって言うならハルヒは犯罪者ですよ犯罪者。 それも、国際指名手配されてもおかしくないぐらいの大物犯だ 「涼宮さん、どうしちゃったんだろう……」 朝比奈さんが不思議そうな顔をして俺の目を見てくるので、 その愛らしさに思わず手を握りたくなったが、消え入るような声で目を覚ました。 「私も」 窓際の椅子に腰掛けていた長門がこちらを見て口を開いていた。 「涼宮ハルヒに呼ばれた」 「家にか?」 「そう」 また何でだろうな。ふと古泉を見たが不思議そうに首を横に振るだけだ。 呼ばれたのは、長門と朝比奈さんだけか。以前、バレンタインの時には長門の家に行って 3人でチョコケーキを作ったという話はあったが、その時は2人に硬く口止めをしていたし、 それに今は記念日とかそういうものもないからな。男2人を外す理由も特に考えられない。 普通の女の子だったら、恋の悩みを相談したり、男子の悪口を言って盛り上がったりとかするんだろうが、 ハルヒに限ってまさかそんな会話を繰り広げることは断じてないだろう。 「そういえば」 古泉が時計を見て言った。 「涼宮さんがまだいらしてないですね」 「ああ、ハルヒなら寄るところがあるから先に行ってろって言ってたな。そろそろ来るんじゃないか?」 俺が話し終えるとほぼ同時にドアが勢いよく開いた。 「遅れてごっめーん!」 なんだこのテンションの高さは。 そんな俺の顔を見てハルヒは眉をひそめた。 「何よキョン。何か文句ある?」 今更文句なんかねえよ。ここに来てから随分俺も大人になったからなあ。 「何それ。まあいいわ。みんな注目!明後日の日曜日、野球観戦にいくわよ!」 一同は唖然とした。 「みんな忘れたの?今年も町内野球大会に出場するのよ!そのためにプロの試合を見て技を盗むのよ!」 一回プロの試合を見に行ったぐらいでその技を盗めたら、そこら中プロ野球選手だらけだぞ。 「気持ちの問題よ。自分もやればできるんだって思い込むことが大事なのよ」 ハルヒは得意げに演説を始めた。 「自分もプロ野球選手みたいに上手くなりたいって思うことで体も動くようになるの!」 お前がそんな精神論的なことを言い出すとはな。 それに野球はもう飽きたんじゃなかったのか? 「当たり前でしょ?まずは気持ちからよ。何か不思議なことを見つけようと思わなければ いつまでたったって見つからないでしょうが!」 ちょっと待て、話がずれてきてないか。 「とにかく、行くわよ!ちゃんと予定空けときなさい。来なかったら死刑だから!」 一年前から常に死刑と隣合わせに生きてるんだなあ俺らは。いや、俺だけか。 しかし、ハルヒの突然の欝はどこに飛んでいったんだか。 心配した俺が損したみたいじゃないか。ええい、こんな生活から早く脱却したいものだ。 どうやら野球のチケットを親父にもらったらしく、それで去年の野球大会のことも思い出したらしい。 ハルヒの親父さんも余計なことをしてくれるぜ。また俺が4番なんかにされてみろ。 あっという間に世界の危機が到来しちまうぞ。 その後、特にやることなく、だらだらと部活での一時を過ごし、 時計が五時半を指した頃に、ハルヒが椅子から立ち上がった。 「さて、帰るわ。キョン行くわよ」 ハルヒ、俺はお前の下僕じゃないぞ。 まさかそんなセリフをここで吐けるはずもなく、俺は言われるがまま席をたった。 残った三人も帰り支度を始めていたが、ずんずんと先を歩き始めるハルヒを追って俺は部室を後にした。 校門を出て、坂を下っている途中、ハルヒは一言も口を利かなかった。 二人だけになった途端にこれか、俺はハルヒの肩を掴んだ。 「なに?」 「すまないが、もうちょっとゆっくり歩いてもらっていいか? 足首が痛むんだ」 実は今日の体育の途中、俺はサッカーをしていて見事にこけた。 元々サッカー自体そこまで上手くもないが、だからといってボールを踏んでこける程間抜けでもない。 しかし、何がどうなったか、俺はボールの上に乗るような形で反転し、 足首を捻ったのだった。 それをクラスの女子にも見られていたわけで、ハルヒに至ってはこけた俺を指差して大笑いしていた。 「キョンー!あんた本当にドジねー!」 ほっといてくれ。心からそう思った。 結局途中退場し、保健室に向かった。 足首を捻ったといっても歩けないという程のことでもなく、 もし後日に足が痛むようなら病院に行けと言われたぐらいだ。 ハルヒに合わせて坂を下ると若干の痛みが走ったのだ。 「ほんとドジよね。まああの時は笑っちゃったけど……痛い?肩貸してもいいわよ」 珍しく優しいこと言ってくれるじゃないか。 「ま、団員が怪我したらそれを見るのも団長の務めだからね」 このハルヒの照れ隠しにはもう慣れたが、たまには 「キョンのことが……心配だから!」 とか聞いてみたい気もするね。 「何馬鹿なこと言ってんのよ。置いてくわよ!」 つっけんどんにハルヒはそっぽを向いた。 ここ最近は、ハルヒを自転車の後ろにのっけて家の近くまで送ってやるんだが、 いや、送らされてるというほうが正しいか? なんせそこらのカップルのような甘い時間はなく、騎手が鞭を力の限りに叩かんばかりに ハルヒは俺にスピードを要求するので、まるで俺は競走馬さながらなのだ。 しかし、今日はどうにもそれもできそうにない。 「別にいいわよ。そんなんで悪化されたってSOS団の活動を妨げることになるしね。 いいわ、今日は私が家まで送ってあげるから」 正直、驚いた。 ハルヒの口からまさかそんな言葉が出るとは。 俺がどんな顔をしていたか、ぜひ鏡で見てみたいが、ハルヒは俺の顔を見て 「あのねー。あんたのためじゃないんだから。あくまでもSOS団のために……」 「わかってるよ、ハルヒ」 途中で俺が言葉を遮った。 「わ、わかってるならいいのよ!ほら行くわよ」 ハルヒは先程の半分程のスピードで歩き始め、たまに俺がついてきてるか横目で確認しながら坂を下っていった。 俺の家についた時には、完全に日も暮れていた。 結局、いつもとは逆にハルヒが自転車をこぎ、俺はその後ろに乗って帰ってきたのだが、 ハルヒの運転は逆に俺の命を縮めんばかりのもので二度と乗るまいと誓った。 家の前まで来て、ハルヒが意外そうな声を挙げた。 「へー。結構いい家に住んでるのね。意外だわ」 お前は一体俺がどんな家に住んでると思ってたんだ。 「あ、ハルにゃん!」 また余計なタイミングで出てきやがった! 「おー、妹さん。元気?」 「うんー元気だよ! ハルにゃんどうしたの? 遊びにきたの?」 俺は妹が抱えてきたしゃみせんを抱き上げた。 「足を怪我したからな、ハルヒが送ってくれたんだ」 「えーキョン君ずるーい。あたしもハルにゃんと遊びたい!」 妹よ。お前は兄の言葉をちゃんと聞いていたか?遊んでいたんじゃなくて送ってもらっただけだ! 「ハルにゃん寄っていかないの?」 おい、待て勝手に話を進めるな。 「そうね。キョンの部屋でも見せてもらおうかしら。どうせやらしい本とか一杯あるんでしょうけど」 ハルヒは不気味な笑みを浮かべると目を細めた。 「キョン君、エッチな本持ってないんだよー。あたしいつも部屋に入るけど見つからないの」 「甘いわ。キョンのことだからきっとせこい場所に隠しているのよ」 ハルヒは俺にも見せないような満面の笑みを浮かべると、妹に言った。 「ハルにゃんこっちだよー!」 そう言うと妹はハルヒの手を引き、家の中に消えていった。 俺は呆然として、固まっていたが、まずい!部屋の中を荒らされてみろ! 末代までハルヒに脅しをかけられるぞ。 次第に痛みが増す足を引きずりながら俺は玄関に挙がった。 それからハルヒが帰るまでの1時間程の時間が、俺にはどれだけ長く感じたことだろう。 勝手に部屋に上がりこみ、引き出しからタンスまで開けて物色しようとするハルヒを押さえながら 面白がってハルヒを加勢しようとする妹を諌め、俺の疲労度は極限まで来ていた。 ハルヒは俺の部屋からやましい本が出てこないことに対して真剣に悩みだしていた。 「キョン。あんたまさか……そっちの気があるんじゃないでしょうね」 こいつの目は本気だ。 「断じてない」 俺は妹が持ってきたお茶とお菓子をハルヒに差し出した。 「あんたぐらいの年頃の男ならそんな本の一冊や二冊持ってるもんでしょ? 出しなさいよ」 「嫌だ」 「じゃあやっぱり……」 やれやれ。どうすれば信じてもらえるのかね。 このままじゃ万が一そんな本を見せたりして、それをネタに散々言われるか、 それとも良からぬ疑惑を掛けられたままになるか、どちらにしろ俺が損するだけじゃないか! ハルヒはアヒル口をすると、今度はベッド下を覗き込んだ。 「やっぱりないわねえ」 「大体そんなもの見て、お前はどうしようというんだ」 「別に、どんなものを見てるのか興味を持っただけよ」 人様の恥ずかしい物に興味があるという理由だけで、部屋の中を荒らさないで欲しいね。 「それより明日、朝比奈さんと長門がハルヒに呼ばれたって言ってたが、何かあるのか?」 ハルヒは一気にお茶を飲み干すと、まるであらかじめ答えを決めていたかのようにきっぱりと言った。 「特に理由なんてないわ」 理由もないのに呼び出したのか。 「なんだかんだで1年経つけど、ゆきのこともみくるちゃんのこともまだまだ知らない事も多いから」 なんだか本当にまともな部活動の部長のようなことを言い出したぞ。 「団長として知っておかなきゃいけないことだってあるのよ」 ハルヒはやはりどこか変わった気がする。 古泉も口にしていた。 ハルヒは以前のようにただ不思議なことだけを追い求めるだけではなく、 自分の周りの環境もしっかりと構築しようとする面も強くなってきていると。 つまり、それだけ安定してきているということなのだが、どうにも何のきっかけでまた暴走するかわからんからなあ。 ハルヒに限ってだけは安定なんて言葉は簡単に当てはめていい言葉じゃないな。 「あんた明日も足痛かったら病院行きなさいよ?」 わかってるよ。日曜日に死刑になりたくないしな。 ハルヒはお菓子をある程度口にすると、すくっと立ち上がり、 「帰るわ」 と言った。 玄関の外で俺はハルヒに自転車を貸そうとしたが、 「そんなに遠くないからいいわ。それより明後日ちゃんと来なさいよ?」 そう言いのこすと、早足で闇の中に消えていった。 翌朝、切れるような足の激痛によって目を覚ました。 しゃみせんが足首の上に乗っていたのだが、この痛みはただ事ではない。 俺は布団を捲り上げ足首を確認すると、明らかに腫れあがっていた。 まさか折れているわけじゃないよな。 ベッドから這い起きると服を着替え、朝食をさっさと済ませると俺は病院へと向かった。 外科のある病院まで行くのには歩きで二十分程かかる。 自転車に乗って片足でこげばまだ楽かなと思い、自転車を引っ張り出すとよろけながらなんとかこぎ始めた。 こんな時に限って風が強く、俺の体は何度となく煽られ、今にも転びそうになっていた。 走り出して5分程して、細い道の交差点に入ろうとした時、 自分のことで精一杯だった俺は横からの進入者に全く気づいていなかった。 気づいた時にはすでに遅く、なんとか体を捻り正面衝突は避けられたものの、 横から来た人の自転車の先が調度俺の自転車の横から衝突するような感じになり、 俺は横に勢い良く倒れた。 同時に右足首で体を咄嗟に支えてしまったため、激痛が走り、俺は思わず叫び声を挙げた。 「ぐわっ!」 転がったまま右足首を押さえころげていると、衝突した自転車から降りてきた人が声を掛けてきた。 「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」 声からして女性のようだ。 普通ならここで運命の出会い的なものを感じでしまうのかもしれないが、 生憎そんな余裕もなく俺は痛みに耐えながら返事をするのが精一杯だった。 「ば、なんとか……」 「あれ、あなた昨日の?」 俺は顔を上げてその女性の顔を見た。女性ではなく、朝比奈さんのような幼さのある女の子がそこにいた。 昨日のという言葉から、昨日どこかで会ったことがあるはずだと必死で思い出そうとしたが、 痛さと昨日は色々と考えることが多かったためか、全く思い出せなかった。 「えと、どこかで会ったっけ?」 女の子は、ちょっと怒ったように目じりを吊り上げると、 「保健室で、手当てした保健委員の斉藤です。キョン君でしょ?」 保健室……、思い出した! 怪我をして保健室に行ったんだが、その時近くにいた隣のクラスの保健委員の女の子が ついてきてくれたんだった。それがこの斉藤さんだったのだ。 名前は覚えていたのだが、顔を忘れてしまうとはね。 斉藤さんは俺の顔を覗き込むと、足に目を向けた。 「ちょっと見せて!」 そう言うと、自転車をどけ、ものすごい勢いでGパンの裾をまくりあげた。 ちょ、ちょっと! と、止める間もなく捲り上げられたわけだが、斉藤さんの目は大マジである。 まるで獲物を狙う鷹のような目つきだ。 俺はその目に少し違和感を感じた。 前にもどこかで見たような……。 「こんなに腫れてるじゃない……病院はいかなかったの?」 「今向かっている途中だった」 斉藤さんは、すくっと立ち上がると、俺の自転車を脇に寄せると、 自分の自転車にまたがり後ろの荷物載せを指差し言った。 「乗って。下田病院でいいんでしょ?」 「一人で行け……」 と言いかけるより早く腕を掴まれて起こされた。 「いいから早く。そんな足なんだから」 それじゃお言葉に甘えて、と俺は後部に腰掛けると手のやり場に困っていたが、 「腰に回して、落ちないでね」 という言葉に抵抗することなく斉藤さんの腰に手を回した。 自転車をこぎ始めた斉藤さんからは香水だろうか、それともシャンプーの残り香だろうか、甘い匂いが漂ってきた。 なんだろうか、こう妙に落ち着く匂いというか……眠くなりそうな匂いというか……。 なぜかその時、一瞬、ハルヒの顔が頭によぎったが、その甘い香りにかき消されていった。 病院で診察待ちをしている間も、斉藤さんは俺の側から離れなかった。 本人は「保健委員気質だからいいのよ」と笑っていたが、 週末だけあって診察まで二時間程待たされる形になり、 診察が始まってからもレントゲンを撮ったりしていたので結局病院についてから3時間を過ぎていた。 検査の結果は骨には異常はないが、重い捻挫であると診断された。全治2週間だそうだ。 診察室を出ると、斉藤さんが待ってましたと言わんばかりに近づいてきて肩を貸してくれた。 「どうだった?」 「ただの捻挫みたいで」 斉藤さんはほっとした表情を見せると、可愛らしい笑顔を見せた。 「びっくりしたよ。昨日病院行ったと思ってたし」 ここまで痛くなるとは思ってなかったからなあ。俺は椅子に座ると斉藤さんに礼を述べた。 診察料を支払い、再び斉藤さんに肩を借り、外に出る。 どうやって帰るかな、と思案していると斉藤さんが自転車を持ってきて、 「家まで送るわ。自転車も後で届けてあげるから」 とまるでお姉さん口調のように言った。 俺は、家に電話して迎えにきてもらうつもりだと告げようとすると、 「遠慮しなくていいじゃない。こういう時はお互い様だよ。あたしは暇だし、乗りかかった船だからね」 どうも俺はこういう押しに弱いらしい。姉属性に弱かっただろうか。 しかし、可愛らしい顔に似合わず積極的な人だな。 まるで朝比奈さんとハルヒを足して2で割ったような感じだ。 斉藤さんの押しには逆らえず、俺はお世話になることになる。 足に貼ったシップの匂いと、斉藤さんから香る甘い匂いが混じって複雑な香りがする中、 自転車はゆっくりと走っていく。 その時、誰かが自転車の前に飛び出してきた。 「ちょっと止まりなさい!」 この声は……ハルヒ! 鬼のような形相のハルヒが、自転車の前に立ちはだかっている。 良く見るとその後ろのほうには朝比奈さんと長門の姿が見える。 まるで浮気現場に彼女が現れたような気持ちになった。 いや、俺は実際そんなこと体験したことないがな。 恐らくこんな気分になるんじゃないかと思うぞ。 男性諸君、浮気は、やめよう。 冷静に考えてみれば、別に浮気でもなんでもないぞ? 俺、しっかりしろ。 ハルヒは彼女ではないし、こんな鬼のような形相の彼女は欲しくない。 後ろめたい気持ちなんてないが、ハルヒの迫力に圧倒されてまるで俺は蛇に睨まれた蛙だ。 「あんた誰?」 しかし、ハルヒの矛先は俺ではなく、斉藤さんに向かっていた。 違うぞハルヒ、俺はこの人に助けてもらってだなあ。 「あんたは黙ってて」 すまん、斉藤さん。こちらの不注意でぶつかっておいて助けてもらっておきながら、 あなたをとんでもないことに巻き込もうとしている。 なんでこんなタイミングでハルヒに会ってしまうかなあ。 そもそもこいつは今日家に二人を呼んでいるんじゃなかったか? 「あなた、涼宮さんでしょ? 私は隣のクラスの斉藤よ。体育でいつも会ってるじゃない」 意外にも斉藤さんは笑顔だった。 ハルヒはその言葉を聴くと、一層眉間にしわを寄せた。 朝比奈さんは後ろでおろおろしているし、長門は……、あれ、長門がいない。 と思ったら、俺たちの横に来ていた。そして、ジーッと斉藤さんを見ている。 「まあいいわ。斉藤さんだったわね。キョンとどこにいくつもり?」 「どこにいこうと、あなたには関係ないんじゃない?」 まるで斉藤さんはハルヒに喧嘩を売るように挑発的な言葉を続ける。 「関係ないわけないじゃない。キョンはSOS団のメンバーなんだから!」 斉藤さんはくすっと笑うと、 「SOS団って部活でしょ?その部活では部員の私生活にも干渉するものなの?」 ハルヒが珍しく、悔しさを顔に出している。唇を噛み、体を震わせている。 このままでは余計な事態になりかねないと俺は判断し、ハルヒの前に出た。 「ハルヒ、とりあえず話しを聞け」 「聞きたくないわ。キョン、あんたSOS団クビよクビ! あんたみたいなのをSOS団に入れたのが間違いだったわ」 「ちょっと待てよ。事情も聞かずにそれはないだろ? 今だって病院に行ってたんだ」 「ふん。大体、大した怪我でもないのに大げさなのよ。あんたみたいなドジにはお似合いだけどね! とにかくクビよ。そんな女とちゃらちゃら遊んでるのがあんたにはお似合いよ!」 俺はカチンときた。 気づいた時には時すでに遅く、俺の右手はハルヒの頬を張っていた。 「おまえ……それ本気で言ってるのか」 ハルヒは頬を張られたことに驚きの表情を見せ手で頬を覆ったが、 すぐにこちらを睨み返すと、 「本気よ!除名!クビ!二度と顔見せるな!」 そう言うと、ぐっと歯を食いしばりハルヒは走り去った。 その目にはわずかだが涙が見えた。 「す、涼宮さーん!」 朝比奈さんがハルヒの後を追いかけると、長門も俺の顔を見るとスタスタと歩き去っていった。 「なんなのあの子?」 斉藤さんは呆れ顔で言った。 斉藤さん、あなたの言ってることは確かに最もなことですよ。 ただ、俺の中にも複雑な気持ちが湧き上がってきたわけで。 俺は斉藤さんに礼を言うと一人で帰ると伝えた。 斉藤さんは納得のいかない顔をしていたが、俺の表情を見て気の毒そうな顔をすると 「それじゃ、帰るけど無理しないようにね」 と告げ、自転車で去っていった。 俺は深くため息をつくと、家に向かって歩き始めた。 いつもの歩く速度の3分の1くらいの速さでやっとのことで家に到着すると、 妹が玄関まで駆けてきて不思議そうな顔をした。 「あれーハルにゃんは?」 「ハルヒはいないぞ」 「でも、会わなかったの? ハルにゃんわざわざ家まで来てくれたんだよ? キョン君いるかって。病院に連れていくって。それで、もう病院行っちゃったよって言ったら 急いで出ていっちゃったんだから」 「そうか」 俺は右手を見た。 痛めた右足よりも、手の平のほうが痛いな。 妹は手の平を見る俺を不思議そうに見ていたが、インターホンが鳴ると 「はーい」 と元気良く返事をした。 「あ、あたし、朝比奈と申します」 「みくるちゃん? 今開けるよ!」 妹がドアを勢いよく開けると、そこには朝比奈さんが一人で立っていた。 「あ、キョン君。ちょっとお話してもいいですか?」 「はい」 俺は妹を押さえつけると朝比奈さんと玄関の外に出た。 「今日ね、涼宮さんの家に行ったんです。だけど、ずっと落ち着かない様子で。 私が何かあったんですか?って聞いたら、キョンを病院に連れていく!って」 朝比奈さんは前をまっすぐ見ながら続ける。 「それでね、涼宮さん謝ったの。私たちにね? びっくりしちゃいました。 私も長門さんもキョン君の怪我のことは知らなかったけど、 涼宮さんは、せっかく来てもらったのにごめんね。って」 ハルヒらしからぬ素直さですね。 「涼宮さんは私たちに謝ってまであなたのこと心配してた」 「それは俺も事情を話そうとはしましたけど、ハルヒはあんな感じで聞く耳がないですから」 朝比奈さんはちょっとうつむくと、声を小さくした。 「それは……私にもわかるけど。そういうことじゃないの」 どういう意味です?ハルヒの行動を朝比奈さんは正しいと言うんですか? 「違うの……うまくいえないけど、あんなキョン君格好悪いです」 ハルヒの頬を張ったことだろうか。 朝比奈さんに格好悪いと言われるとぐさっときますよ。 「私が涼宮さんなら……。ううん……上手く言えないけど」 刹那、体が動かなくなった。 ただ、ただ、甘い鼻につく匂いを感じるだけで、まるで体が言うことを利かない。 頭がボーっとしてきたかと思うと、俺は自分の意思に反した言葉を発していた。 「もう放っておいてください。俺はもうSOS団の団員ではないですし、ハルヒに謝る気もありません」 朝比奈さんは驚き、足を止めると肩を震わせた。 「キョン君どうしちゃったんですか? 私の知っているキョン君はそんな人じゃないです!」 またも俺の意思とは異なる言葉が口から出てくる。 「そんな人ってどんな人だと思っていたんですか?勝手に俺という人間を決め付けないでください」 朝比奈さんは、一歩二歩と体を引くと、涙を流し走り去っていった。 自分の意思ではない誰かが俺の体を、心を動かしている。 まるで操り人形だ。 まさか、ハルヒか……? あいつならそれも可能だろう。 人間一人の存在を消してしまうことぐらい簡単にできるような奴だ。 ハルヒは俺という人間を別のものに変えようとしているのかもしれない。 俺は、恐怖を覚えているのと同時に、ハルヒがそう望むのならそれでも構わないとも思っていた。 俺のいない世界を望むのなら、いっそのこと全て変えてしまえばいい。 俺はそこで別の人間として生きるさ。そうさ、そしてまたお前を必ず見つけてやる。 覚えてなくたって、いやむしろ俺がお前のことを忘れるはずがない。 なんせ人生で一番の衝撃だったからな。 気がつくと、俺は地面に横になっていた。体に力が入らない。 声もでない。目の前がどんどんと暗くなっていくことだけがわかった。 ハルヒ、俺は……。 気がつくと、俺はベッドの上に寝ていた。ここはどこだ? いやその前に俺は誰だ?名前は?思い出せない。 ここは病院ではなさそうだが、誰の家なんだ? 頭の中は「?」だらけになっていた。 すると、ドアを開いて一人の少女が部屋の中に入ってきた。 見覚えがある。けれども名前を思い出すことができない。 「あら、目が覚めた? 食事持ってきたわ」 俺は色々なことを聞きたかったが、その少女から香る甘い匂いに引き付けられて、 言葉を発することができない。この匂いどこかでかいだ記憶がある。 「あなたの身柄はしばらくの間拘束させてもらうわ。ごめんなさいね」 何を言っているんだこの人は。拘束ってなぜだ。 「一時的に記憶を奪うための薬をあなたに投与してるわ。だから、その間は何も思い出せない。 感覚的なことは、匂いとか味とかは覚えているかもしれないけれど、自分の名前も思い出せないはずよ」 その通りだ。この甘い匂いも、運んできた食事の匂いもどこかでかいだことのある匂いだ。 「手荒なことかもしれないけれど、許してねキョン君」 キョン? それが俺の名前か?随分と変わった名前だな。 キョンと名づけた親の顔が見てみたい気分だぜ。 「俺はここにいつまでいればいいんだ?」 「観察が終わるまで。それが終わる時にはもうこの世界はないかもしれないけれど」 なんの観察だ。一体何を観察したら世界が終わるようなことになるのかぜひお聞きしたい。 「涼宮ハルヒの観察よ。あなたにこの名前を言ってもわからないでしょうけど」 涼宮ハルヒ……。 わからん。そもそも他人の名前がわかるぐらいなら自分の名前を思い出してるわ。 「それじゃ、用があったらその電話で呼び出して」 無機質な部屋には、電話とベッド、そしてタンスが一つおいてある。 あとは小さめのドアが一つ、どうやらトイレのようだが。 しかし、どうして俺は記憶を失くさなきゃいけない状況になっているんだ。 その涼宮ハルヒとかいうやつの観察のためにと言っていたが、 俺はそいつといったいどういう関係なんだ。 いくら頭を捻ったところで思い出せもしないことを俺は延々と考えていた。 それから何日経っただろう。 たまに襲われる嫌な感覚で意識が遠のき、正確な時間を把握できなくなっている。 そもそも記憶を失う前にどこにいて何をしていたのかもわからないんだ。 あれから同じ少女が食事を持ってくるだけで、俺が質問しても何も答えようとはしない。 一体何がどうなっているんだ。考えてもどうにもならないもどかしさだけが残る。 部屋に窓はあるが、人間が出られるような大きな窓ではなく、 朝か夜か判断できるぐらいの大きさの窓である。 実質、もし脱出するとしたら少女がいつも食事を運んでくる入り口になるのだが、 とてもじゃないが、足が痛くて脱出できそうにもない。 しかも、なぜかここからでないほうがいいような気がしている。 それはなぜだかわからないが、そんな気がするのだ。 小さな窓に目をやると夕焼けの光が差し込んでくる。 そろそろ夜になるのだろう。と考えていた矢先に、大きな爆発音のような音が響いて、 建物自体が揺れた。地震とは違う、何かが衝突したような響きである。 しばらくの間、誰かが叫ぶ声が聞こえたりしていた。悲鳴も混じっていたようだ。 そして、入り口の扉が開いた。 「キョン君!」 見たことのないような美少女が入り口に立って叫んだ。 その後ろには顔の良いやたらきざっぽい男と、大人しそうな少女が立っている。 「良かった、どうやら無事のようですね」 美少女は目に涙を浮かべ、俺に抱きついてきた。 ちょっと待ってくれ、あんたらは一体誰なんだ。 そして、一番に俺が誰なのか教えてくれ。 美少女は一歩あとずさると手で顔を覆った。 「キョン……君?」 キザたらしい男は真顔で近づくと俺の顔をのぞきこんできた。 「どうやら記憶操作されているようですね。長門さん」 長門と呼ばれた大人しそうな少女は、ゆっくりと俺に近づくと頭に手を置いた。 「私の知らない方法で記憶操作されている。恐らく、ここより先の時代で作られた新種の薬」 「となると、やはり未来から来た連中の仕業ということになるんでしょうか」 「恐らく。それだけじゃない。この建物自体に大きな時間軸の歪みがある。 時間凍結を応用して時間の進みを早くしていた可能性がある」 「涼宮さんの観察をするため、ですね」 無表情の少女は小さく頷いた。 こいつら一体なんの話をしているんだ? 俺にもわかるように説明しやがれ! 「とにかく、ここを出ましょう」 キザっぽい男が俺を立たせると、肩を貸してくれた。 階段を下りると、そこには数人の大人がいて、何かを言っているのだが、 俺には理解することができない。 車に乗せられると、どこかで見たような気のする病院に連れていかれて、 様々な検査を受けさせられた。 検査の間中、ずっと先程の美少女が泣きそうな目で俺を見ていたが、 知らない人でも抱きしめてしまいたくなるようなそんな庇護的な欲を感じた。 こんな感覚を以前にも味わった気がするのだが。 一通りの検査を終えると、個室の病室に入れられた。 長門と呼ばれていた少女が再び俺の頭に手を置いた。 5分くらいそうしていただろうか。俺はどんな顔をすればいいのかわからなくなっていた。 少女は俺から手を離すと、後ろを振り返った。 「すでに薬は切れている。体内に不純物も見当たらない」 なんだこの少女は、医者なのだろうか。医者にしたって頭に手を置いただけで 体内の物質がどうとか言う神のような人の話なんぞ聞いたことがない。 いや、今の俺が知らないだけかもしれないがな。 「となると、後遺症という可能性ですかね」 キザ男が考えるような仕草を取る。 「違う」 「違う?……まさか!?」 キザ男は絶句している。美少女も同じく手で顔を覆っていた。 長門と呼ばれる少女は俺のほうを見るとゆっくり口を開いた。 「彼は、涼宮ハルヒに消されかけている」 涼宮、涼宮ってそんな大層なやつなのかね。 それに俺を消そうとしているってのは一体どういうことなんだ。 名前も顔も知らないようなやつに殺されるのはごめんだぜ。 涼宮ハルヒ……か。 しばらくして俺は、人目を盗んで逃げるようにして病院を飛び出していた。 どこに行く宛てがあるわけでもないし、ましてや自分の家がどこにあるのかもわからない。 とりあえず足の向くままに俺は歩き出していた。 なるべく賑やかそうな場所にいけば、もしかしたら何かを思い出すかもしれない。 俺は無意識的にそう考えていたので、自然と町に向けて歩を進めていた。 賑やかな繁華街を抜けて、駅の近くまで来た時、正面から誰かが近寄ってきた。 「キョン。ちょっと来なさい」 誰だこの女は。すげえ美少女ってことはわかるが、名前は……やはりわからん。 俺が不審者を見るような目で少女を見ていると、その少女は俺の手首を掴み歩きだした。 「ちょっと待て、お前誰だよ!」 そう言うと、少女は顔を曇らせた。なんだその目は、どこかで見た、何でも見透かしてしまうような目。 俺は、知っている名前を挙げることしかできなかった。 「お前がひょっとして涼宮ハルヒか?」 少女は驚きの表情を見せたが、すぐにまた前を向き、俺を引っ張って歩きだした。 どうやらこいつが涼宮ハルヒのようだ。 とりあえず引かれるがままこの涼宮の後をついていくことにした。 なんせ今の俺にはあらゆる記憶がないし、この涼宮が俺のことを消そうとしていると聞いている。 殺されるのかと思ったが、どうやらそんな雰囲気でもないし、今は言うことを聞いておいたほうがよさそうだ。 道中ずっと黙っていた涼宮が突然言葉を発した。 「あたし、あんたが消えればいいと思ったわ。そりゃそうよ。このあたしをひっぱたいたのよ!許されざる行為だわ 普通なら死刑ね。三回ぐらい死刑よ」 団長? 何の団だ? 俺がお前を無視したって言われても全くわからん。 「でも、あんたが何度もあたしの名前を呼ぶんだもん。仕方ないから許してやろうって気にもなるわ」 呼んだ覚えなんてこれっぽっちもないぞ。 「あたしも大人気ないことしたと思う。今になって考えればね。素直じゃないわ」 「俺は何をしたんだ?」 「何もしてない」 涼宮は見覚えのある学校の前で立ち止まった。 「登って」 涼宮は校門をよじ登ろうとしている。俺もそれにならって登ると、 真っ暗闇の校庭内に足を踏み入れた。 「あたし、後悔したわ。あんたがいなくなればいいと思ったこと」 涼宮は、校庭のほぼ中心で立ち止まった。 「交通事故にあって記憶喪失になったなんて聞いたら誰だって後悔するわよ」 どういうことだかよくわからないが、俺は交通事故で記憶を失くしたのか? 「病院にいこうとしたのよ、そしたらあんたの声が聞こえてきたの。あたしの名前を呼んだわ」 いや、俺は呼んだ記憶がないんだが。 「聞こえたのよ、ご丁寧にどこに向かってるかも言ってくれたわ。だから、あたしは駅前で待ってたの」 つまり、なんだ。俺がお前のことをテレパシーだかなんだかで呼び出しだとそういうことか。 「さあ。私の空耳かもしれないわ。だけど、あんたの声だったしね、1%ぐらい信用してやろうと思ったのよ」 そりゃどうも。 「簡単に私は人を認めたりしないわよ。だけど……認めた人間はそれなりに重要だし、大事にしたくもなるわ」 「何を言ってるんだ?」 涼宮は少し眼を潤ませて唇を噛んだ。 「キョン……思い出しなさい。あたしのことも自分のことも、そしてSOS団のことも……」 突然唇に柔らかいものが触れた。それが涼宮ハルヒの唇だということに気がつくまでそう時間はかからなかった。 なんとなく懐かしい感じがする。 唇から一気に頭に情報が流れ込んでくるような感覚を覚える。 ああ、これが俺の記憶。涼宮ハルヒとの出会いやSOS団との出会い。 そして、俺が何者なのか。 今、はっきりと頭に蘇ってきた。 俺は、目の前にいる涼宮ハルヒを力強く抱きしめて名前を呼んだ。 「ハルヒ」 俺とハルヒ以外の三人が北高につくまでにそこまで時間はかからなかった。 その後全てを思い出した俺が聞いたのは、隣のクラスの斉藤と名乗っていた奴は未来から来た強行派の人間だったこと、 そしてそれに協力している情報統合思念体の存在が後ろにあったことということだ。 俺のあの怪我自体が初めから仕組まれていたことのようで、 斉藤という保健委員は存在せず、俺の記憶が操作されていて本当にいると思い込まされていたそうだ。 ハルヒが不機嫌になっていたとき、調度あの頃から俺は奴らの術中にいたってわけだ。 ハルヒはそれを敏感に感じていたようで、気分が悪くなったのはそれが原因だったと。 「これは何か事件の臭いがするわ。きっと異世界からやってきた人間だったのよ!」 あながちその推理は間違いではないんだがな。 しかし、長門がなぜそれに気がつかなかったかというと、 どうやらそのバックについていた情報統合思念体から妨害を受けていたため、 正確な情報が得られなかったと言うのだ。 そのため監禁されたことを知るのにも時間がかかり、俺は何日もの間閉じ込められていたってわけだ。 しかし、現実世界では一日しか経ってなかったらしい。 つまり、外での細かい観察記録を時間をかけて整理したいが、 もし世界改変がすぐに起きてしまうようなことがあれば、その情報は意味のないものになってしまうというわけだ。 そのため、その情報統合思念体は、建物内と外界との時間流の速さを変えてしまうことで、 外では一日しか経っていないのに、建物の中は1週間経過しているようなカラクリを仕込んだのだ。 長門によると斉藤はすでに消えていたらしい。 それと一部の強行派の未来人を拘束したと、朝比奈さんが言っていた。 やはり、俺を使ってハルヒを観察するのが最も効率的であるという見解は強行派の中で変わってないらしく、 わざとハルヒを煽ってみたりしたのも俺という人間に対してハルヒがどのような感情を持っているのか 確かめるつもりだったんだろう。 正直、危なかったんだよなあ。 もう少し俺の救出が遅れていたら、ハルヒは俺の存在を消していただろう。 俺はテレパシーなんざ使えない普通の人間だが、ハルヒが俺の声が聞こえたって言うなら それは最後の俺の足掻きだったのかもしれないな。 ハルヒのことはどんなことがあっても忘れないと思っていたが、 ハルヒの唇を忘れないに訂正させていただこう。 それぐらいの妥協はいいよな? ハルヒ。 終
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~涼宮ハルヒの恋人~ 「ねぇ、キョン?」 とある秋の一日。 4限目の授業が中盤に差し掛り、俺が睡魔と空腹という二匹の魔物を相手に何とか互角に渡り合っていた最中である。 俺の後ろの席の女子生徒、つまり我らがSOS団団長・涼宮ハルヒが、 いつもの様に俺の背中をシャーペンで突いてきた。 団長様はまたトンデモ計画をお考えになったらしい。 (やれやれ…)といつもの様に思いながら 「なんだ?ハルヒ」 そう言っていつもの様に振り返る。 だがそこから先はいつもとは違った。 俺が身を捩り、ハルヒの方を向いたその刹那、 「ガタッ」という椅子の動く音と共に、ハルヒの顔が急接近してくる。 「なッ――」 俺が驚き声を出そうとしたその時、ハルヒは俺に―― …キスしていた。まうすとぅまうすだ。 そこ、早くも「アマァイ」とか言わないでくれ。 さて…人間が緊急事態に対処するにはどうすればいいんだっけか。 そうだ、まずは落ち着くことが大切だったな。 そしてもちつくには杵と臼と…もち米が必要だな。…いや待て違う。違うぞ俺。 落ち着くには…まずは状況整理だ。 1.ハルヒ俺を突く 2.俺振り返る 順番に箇条書きしてみました。 3.ハルヒ俺にキス なんだコレ?…ハルヒが俺にキス?幻覚だろ? しかし俺は幻覚を見てしまうようなアブナイ物には手を出してない。誓ってだ。 とか考えていると、ハルヒが上目遣いで顔を真っ赤に染めながら 「好き…」とか言ってきやがったな。 ここで俺はやっと事態を認識し、はっとクラスに目を向ける。 教師を含めクラス全員がこっちを向いて口を半開きにしている。 谷口に至っては上も下も全開じゃないか。 「その…付き合って」後ろから声。 俺はまたはっとなり、いつもよりか弱くなった声の主へと顔を向けた。 そこには俯いて真っ赤な顔をしたハルヒの姿がある。 「ハルヒ…?俺をおちょくってんのか…?」 訊ねた途端、目の前の完璧な美少女(性格除)はムッと不機嫌顔になり、 「そんな訳ないでしょ!さぁ、返事を聞かせなさい!10秒以内!」 と言い放った。さっきまでのか弱さが嘘のようだ。 というか告白早々ご機嫌斜めってどうなんだ、ハルヒよ。 「10…9…8…」 カウントが始まった。 しかし、本気でハルヒは俺をそんな風に思ってくれているのか? …俺はどうなんだ? 確かに今となっちゃハルヒの居ない日々は退屈で、考えられないモノなのかも知れない。 でもそれは恋愛感情とは別だろう…だが。 「5…4…3…」 あの日、閉鎖空間での出来事。 あれが何を意味するのかなんて知った事じゃないが、あの時確かに俺の中には妙な感覚があった。 その感覚が日に日に増していくのも感じたが。 それは兎も角、またあんな空間へ連れ込まれちゃたまらない。ここはちゃんとした返事をするべきだな。 「2…1…」 「あぁ、俺も好きだ」 やけにサラリと言えた。 「…本当に?…まぁいいわ、決定ね。つ、付き合いましょう」 誰か俺を世界を救う勇者だと崇めてくれ。今の俺ならりゅ○おうも楽勝で倒せただろう。ゾ○マはちょっとキツイが。 なんたって授業中の急な告白にその場で応えたんだからな…って、授業中? 俺は再びクラスの方を見た。 そこにはさっきよりも美しい表情でこっちを見つめる連中の顔が並んでいた。 しかし女子は…何やら少し視線が冷たい。 …というか、怖いから。絵的に。 そんな連中を見てもハルヒは全くお構いなしで、薄い赤に染まった笑顔をこちらに向けていた。 「やれやれ…」 キーン…コーン…カーン…コーン そうして、何だか半信半疑な状態のまま4限目の授業が幕を閉じた。 (ハルヒは本気なんだろうか…?) 俺は未だに状況を把握し切れないまま、空腹という名の魔物を退ける準備に入る。 だが、これから襲ってくるであろう空腹以上の敵が何なのかを俺が予想するのは簡単だった。 そう。俺はこの昼休み、クラスメートの鮮やかなまでの冷やかしに耐えなければならないのだ。 というか既に絶頂だ。 さて、予想通りだが谷口がニヤニヤしながら弁当を持って俺の席に近づいてくるのが見える。しかしそこは谷口。 「キョン、やるなお前!!見損なったぞ!」 お前にそっとして置いて欲しいなんて事を望んだ俺が間違いだった。 タイミングの悪さ、あからさまな日本語ミス。すべて完璧だ。 こいつは天才かも知れん。勿論分野は不明だ。 「チキンなキョンなら応えられないと思ってたんだけどなぁ」 そう言って国木田までもが笑顔で俺の席に着く。 最近こいつにも毒がある気がするな…。 「やれやれ…」 俺は今日何度目になったか分からないその言葉を呟きながら、机にかけてある鞄から弁当を取り出す。 「キョン…」 …この世に神なんて居ないな。うん。 後ろから俺を呼ぶハルヒの声。いつに無くしおらしい声だった。 今俺とハルヒが話すと会場の冷やかしムードが全盛期を迎えるだろうに。 「どうした?」 振り向くと、頬を赤らめたまま上目遣いなハルヒ。 (いつもこうしてりゃ反則的な可愛さなんだがな…) ちなみに、視界の端で谷口が思いっきりニヤニヤしている。 古泉とはまた別の意味で気持ち悪い。やめろ、やめてくれベストフレンド。 「お…お弁当作ってきてあげたから。の、残さず食べなさいよ!」 ハルヒはそう言って俺の目の前に異常なデカさの弁当箱を突きつけた。 告白直後に手作り弁当。幾らなんでも準備が良すぎだろう。いや、嬉しいが。 団長様の突然のご好意に戸惑ったのか、俺はこんなことを口走っていた。 「ちょ…お前これ量多すぎじゃないか?」 …しまった。言った後後悔した。 スマン古泉。バイトが増えるかもしれん。 何で今日に限って頭の回転が悪いんだ、俺。 それを聞いてハルヒはいつもの不機嫌顔になる。 「な、何よ…!折角あたしがキョンの為にたくさん作ってきてあげたのに…」 横で谷口が「何てことを!」という表情で口(勿論上下だ。もう注意する気にもならん)を空けたまま俺を見ていた。 国木田も「何やってんの…」という目で俺を否定している。 流石に謝るべきかもしれない。 …というか、何故クラスの皆は一方的にハルヒの肩持ちをするんだ。しかも皆心なしか俺を睨んでいる。 俺は何か妙な事やっちまったか…? 「あー…ハルヒ」 「…何よ」 ハルヒはいつもの様に俺を睨んだつもりらしいが、その表情にはどこか寂しさが見え隠れした。 「その…すまなかった」 「………」 ハルヒはまだ俺を睨んでいる。なんとその眼にはうっすら涙が溜まっていた。 あぁ、ハルヒ。お前にはそんな表情は似合わんぞ。ということで… 「弁当、貰っていいか?」と生死を分かつ大勝負に出る。 「……当たり前でしょ…米一粒でも残したら死刑だからね!」 どうやらあのままだと俺は本当に死んでいたらしい。 ハルヒは俺に死刑宣告を放ったあと、そっぽを向いてしまった。 俺がクラスメートの放つ含みの有る視線を全身で受け止めたのは言うまでもない。 ハルヒの弁当を受け取り、「やれやれ…」と、谷口と国木田の方を向く。…居ない。 二人のベストフレンドは非常に爽やかな笑顔で俺の席を遠くで眺めていた。 …なんだ?これはつまりアレか…? できればそういう気遣いはして欲しくないんだが…。 まぁこうなると半ば覚悟してしまっていた俺は、ハルヒの方に向き直る。 「…!…何よ。まだ何か用?」 いや待てハルヒ、それが数分前にできた恋人に言う台詞か? まぁ十分有り得るが。 「よかったら弁当…い、一緒に食わないか?」少し緊張してしまう。 「…ほんと?」 「え?…あぁ」 ハルヒは急に太陽の様に輝く笑顔になった。 なんだ?コイツはこれを言って貰えなくて拗ねてたのか? 「どう?あたしなりに上手くできたとは思うけど」 だろうな。普通に美味い。性格以外完璧なだけはある。口が裂けてもこんな事は言えないが。 「美味いよ。ありがとな」 「…そ」 お、照れてるなw かくいう俺も相当恥ずかしいんだが。 「じゃあこれから毎日作ってきてあげるわ。感謝しなさいよね…」 「あ、あぁ…すまんな」 「いちいち気にしなくていいわよ…馬鹿」 不機嫌な声を装いつつも、その表情は微笑んでいるように見えた。 そんなこんなで、端から見ればまさにカップルな雰囲気のまま昼食を食べ終え、今担任の岡部によるホームルームが始まったところだ。 (そういえば今日は個人懇談で四限だけだったか…) この際昼休みの存在などにツッコむのはマナー違反だ。誰にでもミスはある。居直りだ。 心なしかHR中もクラスの連中がこっちをチラチラと見ている。恥ずかしいったらないな。 しかし冷やかしも幾分大人しくなり、安堵と共に再び眠気との激闘が幕を開ける。 「ねぇ、キョン…?」 えーと………デジャヴ? 確か数分前に聞いた事があるような気がする。 まぁ正体が何なのかは分かっている。 「なんだ…ハルヒ…?」 眠気を押し退けつつ訊ね返す。 「…キスして」 どうやら俺はおかしな夢を見ているらしいな。 一応空模様を確認した――青い。閉鎖空間ではないみたいだな。一安心だ。 「すまん寝ぼけてた。もう一回言ってくれ」 「バカキョン!キスしてって言ったの!今すぐ!」 クラスの動きが止まり、教室は静寂の空間に変わる。 ハルヒが何やら叫びやがったな…内容は…あー… ―――!!! 「な、なな何言ってんだハルふぃ!」 噛み噛みだちくしょう。 「…嫌?」 …急に大人しくなりやがった。台詞だけ見た奴は長門と勘違いするかも知れない。 ハルヒは再び反則技:上目遣いで俺に挑んできたが、流石に恥ずかしすぎる。 ここは男らしく華麗にサラリと受け流す作戦で行こう。 「大概にしろ!…今はHR中だろ」 少しキツかったかもしれない、しかし現状打破にはこれしか無いんだ。スマン古泉。 (お詫び次第では許してあげない事も無いですね) 何か幻聴が聞こえたがこれも勿論無視だ。…というかどういう意味だ。 「…じゃ、放課後ならいいのね!!?」 どうやら俺の作戦は全て裏目に出てしまったらしい。 今やハルヒは調子を取り戻し、恥ずかしいことを平気で大声に出している。 脅すような裏のあるニッコリが俺を捕らえて離さない。 「…まぁとにかく、その話は後だ」 辛うじて返した言葉がこれだ。しっかりしろ俺。 「…先に帰ったら殺すわよ。バカキョン」 あのー涼宮ハルヒさん?脅してまで唇を奪う…もとい奪わせるのはどうなんでしょう? 「お前ら、イチャつくのは構わないが、大声を出すのは感心しないな」 笑い声が起こる。岡部にまで冷やかされてしまった。 明日からの授業を想像しただけで恐ろしいが、今更どうしようもない。やれやれ…。 放課後、俺はハルヒが掃除当番を終えるのを教室の外で待っている。 (今日は無茶苦茶だったな…) 今更だが自分の頬をつねってみる。 痛ぇ。やっぱりアレも夢じゃないんだよな…。 そうこうしている内に、ハルヒが教室から出てきた。 「お待たせ!じゃ部室に行きましょう」 「あぁ…」 「何よ、元気ないわね!…ほ…とに…あた…こと…きなの?」 「え?」 「………何でもないわよ!」 言ってハルヒは俯いてしまった。 何て言ったのか訊き返そうとも思ったが、ハルヒが急に不機嫌になっていたので遠慮した。 『それでは、準備が出来次第『…2人が来る』』 ガチャ… ハルヒらしくない元気の無い扉の開け方。 部室には他のSOS団が全員揃っていた。 「………」 「え…あっ、涼宮さん!遅かったですね」 いつもの三点リーダと癒しのオーラが俺とハルヒを迎えてくれた。 「うん。掃除当番。それよりみくるちゃん何話してたの?」 「ふぇ!?…な、な何でもないですよぉ~」 「そ…」 ハルヒにしては素っ気無い対話。 それにしても朝比奈さんは何をあんなに焦ってらっしゃるんだ。 さっきのアレは密談か何かだろうか。 しかしそんな妄想も一瞬で振り払われた。 古泉が、普段見せないような、冷ややかな笑みを浮かべ、俺を見つめていたのである。 「キョン君。トイレに行きませんか…?」 表情をいつもの柔和な笑みに戻し、古泉が言う。 「あ、あぁ…」 何だってんだ。今日は。 そうして俺は古泉によってトイレに拉致され、面と向かう形になり、古泉が話を切り出した。 「…あなた、涼宮さんに何をされたんです…?」 何を言い出しやがったコイツは。まさか知られてないだろうな…。 「…どういうことだ?」 「彼女のあの落ち込みよう…あなたが関わっているとしか思えないのですがね。何たって恋人な訳ですし」 知ってやがった。 一瞬、俺は銀河系の神秘を垣間見た気がした。 「…ちょっと待て古泉。お前何故それを知ってる?」 「フフフ…風のたy「嘘はいいっての」」 「そうですね。では単刀直入に申しましょう。あなたは今日、涼宮さんと恋人になったにも関わらず、 彼女の好意を素直に受けず、すこし厳しく当たってしまわれたのではないですか?例えば…」 「何言ってんだ古泉…?」 言葉とは裏腹に、一気に焦りと不安が俺を襲った。 ハルヒの不機嫌の原因は俺の行動だったのか。 というか、本当は気づいてたんじゃないか?俺。 「おやおや、あなたは真性の鈍感男ですか?…分かっているはずですね?」 …しかしここまでストレートだとはな。たった三行で。しかも俺も小学生並みの反論しかできんなんて笑い話にもならんな。 というか、一緒に弁当食ったのは不機嫌解消のネタにはならんのか。やれやれ… 「あぁ…そうだな」 「では、あなたのやるべき事ももうお分かりですね」 「あぁ…分かってる」 覚悟を決めた。 「やけに素直になりましたね。一つ僕とも愛を「断る」」 やはりHRの時に聞いた幻聴は幻聴じゃなかったのかもしれないな。 「そうですか…残念です」 本気で残念がるな、気持ち悪い。 「実は、皆さんにはもう作戦を提案してあります。僕自身はバイトで帰る、ということで」 「あぁ、すまんな」 「お礼ならk「断る」」 「そうですか…」 とりあえず嫌な予感がしたから断っといたが、「k」の先がが何なのかは考えたくもないな。 話が決まったところで俺たちはトイレから出て、今も不機嫌モードであろう我らが団長、 涼宮ハルヒの居る部室へと向かった。 作戦について小声で話し合いながら、俺たちは部室に戻った。 それと同時に古泉は何やらハルヒにだけ見えないタイミングで全員にウィンクを送った。 多分これが開始の合図なんだろう。…何故か緊張してきた。 「………」 長門は顔を上げ5mm頷く。果たして今日こいつは喋るのだろうか? 「…喋る」 喋った。 「…何、有希?」 あ、ちなみにこの台詞はハルヒの台詞だ。 最早長門と全く区別が付かんな。 「…何でも無い」 そういうと長門は読んでいた本を閉じる。 「あ、ぇと…涼宮さん!」 相変わらずの慌てっぷり。癒されます。 「何?みくるちゃん」 「今日は私と長門さんで買い物に行くので、その…ここで帰らせて頂いても…」 「…わかったわ」 朝比奈さんも相当な罰を覚悟していたのだろう。 安堵の息を漏らすのを俺は聞き逃さなかった。毎度お疲れ様です。 「じゃ、帰りますね」 「………」 「じゃあね。また明日」 ハルヒの言葉に見送られ、長門と朝比奈さんは部室を後にした。 「さて、涼宮さn「古泉君も帰るなんて言い出すの?」」 ハルヒの強い口調に古泉は少しタジったが、すぐいつもの胡散臭い笑顔を作り、 「はい…何分急なバイトが入りまして」 「…わかったわ。また明日」 「はい。では」 部室を出る時、古泉が俺にアイコンタクトで 『本当にバイトが入らなければ良いですが…』 と言っている気がした。って何で俺は古泉と眼だけで会話してんだ、気持ち悪い。 『愛・コンタクトですね!』 背筋が凍る…勘弁してくれ…。まぁ、今回は借りがあるから水に流してやるか。 さて、問題はこれからだな…。 ハルヒは相変わらず不機嫌オーラを振りまいている。 こいつの機嫌を何とかしないと、古泉に借りができてしまうな。 それどころか世界の危機に発展するかも知れない… いや、それとこれとは違う。 俺はハルヒにそんな力が無かったとして、告白を断っただろうか。 俺は「世界の為」に告白を受け入れたのか? …答えは分かりきっていた。 俺はやっぱり… 部室に戻って10分が経った。 しかし、俺自身の本当の気持ちを理解してしまってからたった数分の間で、 ハルヒはやけに遠い存在になってしまっていた。 ――恐怖。 それそのものだった。 告白は嘘だったんじゃないかと思うくらい、ハルヒの眼は死んでしまっていた。 話しかけても眼を合わせてくれない。やれやれ…甘々の予定だったのにな。 それでもここで退くわけにも行かない。 「――なぁ、ハルヒ…」 「何?」 暗く、温かみの無い返事。 入学当初のハルヒを見ているようで、俺の胸はいたたまれない気持ちでいっぱいになった。 「その、一緒に帰らないか…?」 断られるかも知れない。それならこの場ででもいい。 場所なんてどこでもいいさ。兎に角2人で話をつけなきゃならない。 「………別に。構わないわよ」 奇跡的にもOKを貰えた。言ってみるものだ。 …まだ眼は合わせてくれなかったが。 俺とハルヒは互いに無言のまま、部室を片付けて足早に校門を出た。 気まずい空気だが、一緒に帰る許可を貰ったからか、もう焦りは無かった。 しかし、どう切り出したものかね…。 打ち明ける方法を必死で考えている内に、ハルヒと分かれる分岐点が近づいてきた。 …もう、いい加減にしろ俺。覚悟なんてあの時トイレで決めてたはずじゃ無かったのか? 「ハルヒ…」 「………」 返事が無い。 まぁ帰りに誘っといて一言も喋らないんじゃ、嫌われたってしょうがないよな…。 正直に申し上げて、今俺は泣きそうだ。 ハルヒが俺にとってどれほど大事な存在なのかを痛感した気がする。 「ハルヒ…俺の眼を見てくれ」 「………嫌」 その声は儚く、寂しげな涙声だった。 「頼む。少しだけでいい。お前に言わなきゃいけないことがある」 「うるさい!!」 俺はショックを受けた。目の前で俺を睨んで立つ少女は、殆ど裏声でそう叫んだのだ。 「何が『言いたいことがある』よ!!あたしが色々言ってもろくに反応もしなかったくせに!!」 「その事だ…本当にスマン。ハルヒ」 「うるさいうるさい!!本当はあたしのこと好きでも何でもないんでしょ!!」 「そんな事ない!!」 「嘘ね!!」 「嘘じゃない!!」 いつしか2人の間で叫び声が飛び交っていた。 「嘘に決まってるわ!!毎日毎日アゴで使われて、休みの日も朝から呼び出された挙句奢らされて… ………嫌いになるに…き、決まってるよね…ヒクッ…ぇう…」 「…?…ハルヒ…?」 お前はそんな事――― 「も、もうあたし、ヒクッ…帰るね…」 そう言ってハルヒは俺にまた背を向け、そのまま走り去ろうとした。 「待て、ハルヒ」 そういって俺は、その少女の細くて華奢な腕を掴んだ。 「…は、離してよ…!ぅうっ」 「そうもいかない。勘違いされたまま帰られたら俺が困るんでな」 「………」 「ハルヒ、聞け」 もしお前が居なかったら、俺は退屈な毎日に絶望してただろう。 お前が居るから、毎日が楽しい。 その為なら少しくらいの苦労は耐えられる。 それにな、ハルヒ――― ―――俺には、お前に何されても毎日笑ってられる理由があるんだぜ――― 「お前が、好きだ」 世界の為とか、そんなものはどうでもいい。昼間のとは恐らく違う、心から出た言葉。 ただ、俺は今目の前に居るお前に心底惚れちまったんだ。きっとな。 「………本当に?」 あぁ。 「本当に本当に本当なの?」 あぁ、誓ってだ。 「………キョンの馬鹿!馬鹿ばかバカ!!!」 そう言って俺の胸に顔を埋め、肩を連打しながら大声をあげて泣く少女。 涙を通して人間らしい温かみが伝わってくる。 なんだ、考えてみればハルヒだって普通の女じゃないか…。 「あたしが…ヒクッ…どんだけ寂しい思いしたと…ぇぐっ…思ってるのよ!」 「遅くなって、すまなかったな」 しばらくして、ハルヒは顔を上げた。 まだ涙をボロボロこぼしながら、それでも今までで一番の、輝く様な笑顔でこう言った。 「そうよ!遅刻した罰として、これから先ず――っと、日曜日はあたしに一日服従よ!!」 やれやれ…いよいよ俺に休暇ってもんは許されないのか…。 まぁ、それもそれでいいだろう。 やっぱり恋人になってもこいつには敵わない。 「あと…やっぱ恋人になったんだし…ね?」 ハルヒはそう言って甘えた眼で俺を見た後、猫の様に俺の腕に抱きついてきた。 笑顔のハルヒの頬ずりが、心地良かった。 それと―――SOS団の皆には大きな借りができちまったらしい…土曜日はまた俺の奢りかな。 fin