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涼宮ハルヒの日記 今日は、日曜日。 どうせみんな暇だろうと思って電話してみたけど古泉君は、 『すみません、今日はどうしても外せないようじがありましてそれではまた明日学校で、では失礼します』 なんというか古泉君らしい丁寧な口調で電話をきった。 で、みくるちゃんは『あっ、涼宮さんどうしたんですか?』と言ったので今日いつもの所にこれるか聞いたら『今日は、…ごめんなさいお買い物に行くから…ごめんなさい今日は行けません・・・』 みくるちゃんらしい言い方で電話をきった。明日学校でバニーの服を着せて門の所に立たせてやる「SOS団をよろしく~」とでも言わせながらあたしも一緒に 有希にかけたら『・・・・・・・・・』無言だし今日いつもの所にこれるか聞いたら『今日は無理』理由を聞いたら『今日は、お買い物』といって無言になった『そう、じゃ明日学校で会いましょ』そういって電話をきった 残るのは 『あっキョン今からいつものとここれる?』 『これるっていったいなにをする気だ?』 『いいからこれるの?これないの?』 『行けるかどうかと言われれば行けるが・・・』 『そ、じゃ2時に集合ね、遅れたら罰金だんねっ!』 『はいはい』 キョンは、予定も無く空いていた、そうと決まればさっそく着替えてしたくしていつもの所にいかなきゃ。 なんたって今日は、今日は、 キョンとデートなんだもん! 会ったらなにから話そう…いっそのこと告白でもしてしまおうか。 いや、SOS団の今後のことや夏休みのことでも話そうか。 なんだろう、話したいことがいっぱいありすぎてわかんないや とりあえず今日は、キョンとデートなんだし時間もある。 いそがないとキョンが先に着いてるかもしれない そう考えながらいつもの『所』に急いだ。 キョンの日記 さて今の状況から説明せにゃならんことに代わりないので説明するが、 えーただいまハルヒとデート中である。 集合場所に着くなり 「今日の予定変更」 「おいまて予定変更っていったいなにをするつもりだ?」 「なにって・・・・デ・・デー・・・」 「言いたいことがあるなら頭の中で整理してからいえ」 「じゃあ一回しか言わないからよく聞きなさいよ」 なぜかハルヒは大きく深呼吸してから三文字の単語を発した。 「だからデ・・・デートしようってぃって・・・」 「最後何言ったかよく聞こえなかったがなんていった?」 「だからデートしようって・・・いってんでしょ!」 一瞬、いやかなりの時間がたったか、今ハルヒはなんて言った?デート?あのハルヒがか? 「恋愛感情なんて一種の精神病の一種なのよあんなもんに時間を費やす理由を教えて欲しいもんだわ」 なーんていっていたハルヒがデート?ホワイ?なぜ? 「何よ・・・もしかして嫌?」 「いーやべつにかまわんが」 「じゃあきまりねっ!」 ハルヒは、100ワットはありそうなとびきりの笑顔を俺にむけ何処にいくかをいつもの溜まり場である北口前の近くにある喫茶店、とわ言っても毎回財布が軽くなっていくのが悲しい。 「遊園地?水族館?それとも…」 「おまえは何処にいきたいんだ?」 「遊園地!」 そうしていそいそ電車に乗りちょうど眠たくなってくる30分間を何とかのりきり隣町、とわ言っても乗り換えを二回もして2、30分ばかし歩いていかにゃならんとーい所にあるでっかい遊園地だ(隣町じゃなくて他県にある遊園地だ、クソなんで市内に造らなかったんだいまいましー) 「ほら、キョン早く早く!」 「待てよっ!」 券を買って中に入るととんでもない数の人がうごめいていた。 「これだけ混んでると進みにくいわね…」 ふと後を見てみると「最後尾」とかかれたプレカードを掲げている人をよく見ると 古泉がそこにいた。 「あっ古泉君じゃない?こーいずーみくーん」 「おや、どうなされたんですか?涼宮さんそれと…」 そのにやけた顔をこっちに向けるな。 「それより古泉君何してんの?」 「バイトですよ」 「バイト?」 胡散臭い事ぬかすな何かある絶対に何かある。 「ふーんじゃバイトがんばってね」 ハルヒが歩きだしたので着いて行こうとしたら 「涼宮さんと何かあったんですか?」 「どうもこうもいきなり呼び出されたかと思ったらこの通りだ」 「デート・・・ですかまぁ涼宮さんらしい誘い方じゃないですか」 「どこがだ」 「つまり涼宮さんはあなたとデートをしたっかたとよめますね、ですがそのままデートの誘いをする訳にもいかないと思ったんでしょうあなたが今日誘われた理由わなんですか?」 「いきなりこれるかどうかを問われたが」 「涼宮さんもあなたに断られるのが怖かったんでしょうだからいけるかどうかだけを聞いてきたそして希望通りの回答が帰ってきた…まあこんなとこでしょう」 「すなおにデートならデートっいえばokしていただろうに俺だって反対ばっかしてるワケじゃないってのによ」 「そこに乙女心が作用したんでしょう」 「こらっーキョン早く行くわよ!」 「それでわどうぞデートの続きをおたのしみください」 「そのまえに一つきいておく、今回は『機関』とやらは関係ないんだな?」 「ええまったくかんけいないですよ」 「じゃバイトせいぜいがんばれじゃな」 「・・・・こちら古泉ターゲットがそちらにいきました」 『了解。引き続きターゲットの動きに注意せよ』 「はい、わかりました、」 「キョン!早くしなさい!観覧車はすぐに混んじゃうだからね!」 「もう混んでるぞ」 「え…もうっキョンご早く来ないから混んじゃったじゃない!」 「古泉と話ていた時間は五分もかかってないぞ」
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「キョンくーん、ハルにゃんが来てるよー」 日曜日の朝っぱらから妹に叩き起こされる。いい天気みたいだな。 いてっ、痛い痛い、わかった。起きるから。いてっ、起きるって。 慌てて準備をして下に降りると、ハルヒはリビングでくつろいでいた。 「あんた、何で寝てんのよ」 「用事がなかったら日曜日なんだから、そりゃ普通寝てるだろ」 「普通は起きてるわ。こんないい天気なのに。あんたが変なのよ」 たとえ俺が変だったとしても、こいつだけには絶対変とか言われたくねぇ。 「で、今日はどうしたんだ。お前が来るなんて聞いてないぞ」 「んー、今日はなんかキョンが用事あるらしくって、暇だから遊びに来たのよ」 今のを聞いて何をわけのわからないことを、と思った人間は間違いなく正常だ。なら俺は何だ?変人か? そうだな、わかりやすく説明すると、この涼宮ハルヒは異世界からやってきた涼宮ハルヒなのだ。 『涼宮ハルヒの交流』 ―エピローグ― もうあれから数ヶ月が過ぎ、俺たちは基本的には落ち着いた日々を過ごしていた。 あの日、異世界から『俺』とこの涼宮ハルヒが、初めてやってきた日、病室はとんでもない混沌状態だった。 俺たちの方のハルヒが病室に帰ってきて、この二人の存在がばれそうになった瞬間、俺は諦めて目を瞑った。 その後、ハルヒの声に目を開けると、二人の姿は消えていて、ハルヒは何も見ていないようだった。 一瞬、今までのことは全部夢なんじゃないかとも思ったが、周りの連中の顔色からそうでないことは明らかだった。 後で古泉に確認したところ、二人はドアが開いた瞬間にふっ、と消えていったそうだ。 そういうわけで、なんとかその日は乗り切ったのだが、なぜかこいつは度々こっちに遊びに来るようになった。 ハルヒにだけは絶対にばれないようにと頼みこんだのだが、こいつはわかっているのかいないのか。 ちなみにこっちのハルヒとこのハルヒの違いは、顔を見ればなんとなくわかるようになった。 俺の部屋にハルヒを連れて行き、尋ねる。 「で、どうしてお前はちょこちょここっちの世界に来るんだ?向こうで遊べよ」 「せっかく来れるんだからその方がおもしろいでしょ、なんとなく」 別にどっちもたいして変わりゃしないだろ。 「それとな、お前らわざわざこっちの世界にデートするために来るのはやめてくれ。 こないだ鶴屋さんに見られてたらしく、やたらとにょろにょろ言われて大変だったんだぜ」 ハルヒはしたり顔になる。 「こっちの世界ならなにやってもあんたたちのせいにできるし、人目を気にしなくてすむのよ。 あ、犯罪行為とかは今のところするつもりないから安心していいわよ」 くそっ、お前らが町でめちゃくちゃするせいで俺らが学校でバカップル扱いされてるっていうのに。 何度かその様子が谷口と国木田にまで目撃されて、かなり冷やかされちまったんだぜ? いや、まぁこっちの俺たちの学校の様子に原因がないとも言えないが。 「で、あんた今日は暇なのよね?ホントに?」 だからさっき用事はないって、……あ! 「やべっ、忘れてた。もう少ししたらハルヒが来る」 「あんた何やってんのよ。あたしが来てなかったらまだあんた寝てるわよ。せいぜいあたしに感謝しなさい」 言ってることが当たっているだけに何も反論できん。 「それにしてもどうしようかな。有希のところにでも行こうかしら。それともみくるちゃんで遊ぼうかな」 みくるちゃんで、ってなんだよ、で、って。 「帰ればいいだろ。向こうのSOS団で遊べよ」 「そんなこと言ったって、こっちの有希とじゃないとできない話とかもあるのよ。 あたしのところの有希とは、お互いまだ秘密が守られてるっていう暗黙の了解があるし。 それをわざわざ自分から崩すなんて無粋なことしたくないし」 いや、お前から粋なんて感じたことはないから安心しろ。 「どっちにしろ早く行かないとまずいんじゃないのか?お前は長門の家までワープで行くのか?」 「そんなことできるわけないでしょ。もちろん徒歩よ」 「だったら早くしないと、もうハルヒが来るぞ」 「そうね、じゃあ有希のところに行くわ。またね」 「ああ、それじゃ……ってやっぱ待て。時間がまずい。行くな。最悪玄関でハルヒと鉢合わせになる」 「じゃあどうすんのよ。……あ!三人で遊ぶってのはどう?楽しそうじゃない?」 「却下だ却下。考える間でもない」 全然楽しそうじゃない。間違いなく俺の負担が数倍になってしまう。 「……とりあえず帰ってくれないか」 「嫌よ。それ結構疲れるのよ。って言ったでしょ」 だから疲れるんならいちいちこっちに来るなよ。 「……わかった。なんとかしてみる」 仕方なく携帯電話に手を伸ばす。 なかなかでないな……。コール音が8回程度のところでやっと声が聞こえる。 『……もしもし、どうかしましたか?』 「都合悪いのか?ならやめとくが」 『結構ですよ。それよりご用件は?』 「ああ、すまんな。今ハルヒがどのあたりにいるかわかるか?」 『先ほど家を出たようですから、……あなたの家まであと3分といったところでしょうか?』 3分?ってもうすぐそこじゃねぇか。 「今向こうのハルヒが俺のところに来ていて困ってるんだ。なんとか長門の家まで運べないか? なんか帰りたくないってわがまま言ってて困ってんだ」 『……それは困りましたね。5分もあればそちらにタクシーを寄越せますけど』「くそっ、無理だ。他に何か――」 ピンポーン。 ああ、間に合わなかった。何が3分だよ。1分もなかったじゃねぇかよ。 「……どうやらもうハルヒが来ちまったようだ。お前3分って言わなかったか?まぁいい。これからどうす――」 『ご武運を』 プツッ。 ってまじかよ。あいつ切りやがった。信じられねぇ。 下で妹が何か言ってるのが微かに聞こえる。 「とりあえずどこかに隠れるか、帰るかどちらかにしてくれ」 「そうね。おもしろそうだからちょっと隠れてみるわ」 おもしろそうとかで行動するのはまじで勘弁してくれ。 「キョンくーん。なんかまたハルにゃん来たみたいだよー。なんでー?」 いや、妹よ。お前は知らなくていいんだ。 「とりあえず待っててもらうように言っててくれ。準備ができたら行くから」 くそっ、どうすりゃいいんだ? 長門に頼むか?しかし、長門はハルヒには力が使えないって言ってたな。 ピンポーン。 「はーい」 誰か来たのか?また妹が相手をしているようだが。 しばらくすると再び妹が部屋に来た。 「みくるちゃんが来たよー。それでね、『10分間涼宮さんを連れだします』って伝えてって言ってたよー」 どういうことだ?でも朝比奈さんナイスだ。助かりました。 このチャンスに、再び携帯電話を手にとる。……今回も長いな。何かやってんのか? 『……もしもし、どうにかなりそうですか?』 なりそうですか?じゃねぇよこのヤロー。 「説明は面倒だ。時間がない。とりあえず家にタクシーを頼む。5分あればなんとかなるんだろ?頼む」 『わかりました。すぐに新川さんを向かわせます』 「サンキュー、よろしくな」 電話を置いてハルヒに話しかける。 「とりあえずなんとかなったぞ。5分で古泉からタクシーが来る」 「あたしもう来たんじゃないの?どうして助かったの?」 「事情はよくわからんが朝比奈さんに助けられたようだ。どうしてわかったんだろうな」 「みくるちゃん?……なるほどね。たぶんあんた後でみくるちゃんに連絡することになるわ」 なんだって?どういう意味だ? 「そのうちわかるわ」 そう言ってニンマリ笑う。 「まぁわかるんならいいさ。それより長門の家に行くんだよな?なら連絡するが?」 「あ、そうね。やっぱいきなり押し掛けるのは人としてどうかと思うしね」 お前は何を言ってるんだ?お前は今何をやってるかわかってないのか?それとも俺ならいいってのか? 「……じゃあ連絡するぞ」 長門の携帯に電話をかける。 『何?』 って早っ!コール音なしかよ。 「あ、いや、今俺のところに異世界のハルヒがいきなり遊びに来たんだが、俺はハルヒと約束があるんだ。 で、この異世界ハルヒがお前と遊びたいみたいなこと言ってるんだが、どうだ?」 『いい』 「迷惑ならそう言えばいいんだぞ。お前もせっかくの休日だろ?いいのか?」 『問題ない』 「……わかった。ありがとよ。じゃあもう少ししたらここを出ると思う。よろしくな」 『だいじょうぶ。……私も楽しみ』 「そっか、ならいい。じゃあまたな」 『また』 ふうっ、と、電話を置いて一息つく。 「だいじょうぶみたいだ。長門も楽しみだってさ」 「そう、それは良かったわ」 「それにしても、お前長門に変なこととか教えるなよ」 「変なことって何よ。あたしは人間として当然のことを有希に教えてあげてるだけよ」 俺はお前に人間として当然のことを教えたい。 ピンポーン。 三たびチャイムが鳴らされる。 今度は妹がすぐにやってくる。 「キョンくんタクシー来たよー。ってあれー、どうしてハルにゃんがいるのー?」 頼むから気にしないでくれ、妹よ。 タクシーで長門の家に向かうハルヒを見送った後玄関先で待っていると、すぐにハルヒと朝比奈さんが現れた。 「あんた、こんなとこで何やってんの?」 「何って、お前を待ってたに決まってるだろ?」 「そ、そう。わざわざ出てこなくても中にいればいいのに」 ちょっと照れてるみたいだ。 「それじゃあ、私は帰りますねぇ」 「あ、朝比奈さん。わざわざありがとうございます」 すると、朝比奈さんは近づいてきて、俺の耳元でささやく。 「私は実は少し未来から来ました。後で私に伝えておいてください」 あっ!なるほど。さっきハルヒが言ってたのはそういうことか。 「今日の午前10時にキョンくんの家に行って、涼宮さんを10分ほど連れだすように伝えてくださいね」 「わかりました。後でやっておきます。今日はありがとうございます。助かりました」 「お願いね」 そういって極上の笑顔を浮かべると、少し手を振り、朝比奈さんは去って行こうとして再び戻ってきた。 「あの……今日はちょっと都合が悪いの。できたら連絡は明日以降にしてもらってもいいですかぁ?」 「はあ、構いませんけど。用事でもあるんですか?」 「えぇっと、この時間の私は今は古いず……あっ!な、なんでもないですぅっ。禁則事項ですっ。それじゃあ」 そう言うと、朝比奈さんは大慌てで走って行った。 何だって?古いず……?古いず、古いず。まさかその後には『み』が来るんじゃないでしょうね? そんなばかな。いくらみくるだからってそこに『み』は来ませんよね? 「あんた、何やってんの?みくるちゃんなんだって?」 「あ、ああ。いや、ちょっと頼まれごとをしただけだ。気にするな」 「……まぁいいわ。中に入りましょ。お茶でも煎れてあげるわ」 「ああ、そうだな。サンキュ」 こんな感じで、ドタバタしながらも異世界との交流はまだ続いている。 『涼宮ハルヒの交流』 ―完― エピローグおまけへ
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涼宮ハルヒの異界Ⅱ さて、俺がハルヒから教えてもらった、この異世界人の名前は蒼葉(あおば)さん、と言うことだった。 俺たちとはまた違う別の世界からやってきた、その世界のとある機関のエージェントということらしい。 もっともこれ以上、詳しい説明は目の前の彼女もハルヒからもしてもらえなかった。 ハルヒは何でも知りたがる小学生に上がったばかりの子供のように詳しく聞いていたが蒼葉さんははぐらかすのみである。 「この厄介事が片付いたらもう会えることは0に限りなく近い確率でほとんどなくなるから知る必要もないわよ」 これが蒼葉さんの答えだった。 なるほど確かに理にかなっている。 異世界に行くにはどうすればいいか。 それはもう空間を越えるしかなくて、また異世界の数も天文学的な数であるから、万が一、他の異世界とやらに行けたとしても、そこが蒼葉さんの住む世界とは限らないのである。 なぜなら異世界に通じる扉というものは存在しない。つまり奇跡に近い偶然を通り抜ける必要がある訳で、それにプラス異世界の数を思えば確かに蒼葉さんの言うとおり、俺たちが再会する可能性は限りなく0に等しいものとなる。 いくらハルヒに確率論が通用しないと言っても天文学的数字の天文学的数字乗をひっくり返すなんて無茶なことはさすがにできないことだろう。 だから彼女のことを詳しく知る必要もないし、また蒼葉さんも俺たちについては何も聞いてこないのである。 「そう言えば、蒼葉さんはどうしてこの世界に?」 ハルヒのパパラッチ並のしつこい尋問を冷静な表情で涼やかにさらりと流し続けていた蒼葉さんに俺は尋ねた。 彼女の視線がこちらを向く。 「私たちの世界を救うために来た」 笑顔の彼女の答えは簡潔だったがその瞳には決意めいた固い意志の光が灯っていた。 「世界を救うため?」 「そうよ。んまあこれは話してもいいわね。今、私たちの世界は存続の危機に立たされたの」 何でまた? 「時空にこの新しい世界が生まれつつあるからよ。それが今回はたまたま私たちの世界と隣接してた。んで.、この世界が誕生すると私たちの世界はその余波で吹っ飛んでしまうってわけね。正直危なかった。もう少し遅れてたらアウトだったわ」 「この世界が生まれる? この世界はまだ誕生してないってこと?」 ハルヒが尋ねる。 「そうよ。この世界にはまだ『壁』があったからね。半径およそ2キロメートル。ちょうどこの建物が経っている敷地全体を覆ってるって感じね。それさえ破壊されない限りはまだ時間は残されてる」 なるほど、あの見えない壁のことか。ハルヒの精神状態不安定から来る閉鎖空間は半径5キロとか古泉は言っていたが、新しい現実世界の誕生は半分以下くらいに縮まるのだろうか。そう言えば前にハルヒがいた時も学校の敷地に沿って見えない壁があったか。 ん? ちょっと待て。あれは誰が壊せるんだ? 「さっきいた、あの青白い巨人が壊せるのよ。あんたたちの世界だとあいつらのことを何て言うか知らないけど、私たちの世界の言葉で言えば『境界を破壊する者』かな?」 ……んなマンガみたいなカタストロフネタがあるもんなんだな……まあこの世界に来ている時点で俺の常識論も通用しないのだろうか。思わず蒼葉さんの言葉に納得してしまったね。 そう言えば、どうして俺たちにあなたの言葉を理解できるんです? まさかあなたが日本語を知っているとは思えないのですが。 「ニホンゴというのが何の言語を指しているのか分かんないけど、まあお互いの言葉が分かることに関して言えば大した理由はないわ。補正ってやつよ。確か何かの娯楽読み物(ペーパーバック)で、別の国の人同士の会話で通じてるの見たことあったし、それと同じなんでしょ」 ……納得できないけど納得するしかないのだろうか? 気がつけば、俺たちは再び校庭に辿り着いた。 「ねね、蒼葉さん! これからどうするの?」 蒼葉さんに嬉々として問いかけるハルヒ。 そう言えば、あの《神人》たちは消し飛ばしたわけだが、それでもこの世界が消えたわけじゃない。 つまり、蒼葉さんの住む世界の危機が過ぎ去ったわけじゃないということと同意語なんだよな。 いや待てよ? あの《神人》たちが消え去ったら、この世界の閉鎖は解かれて通常に戻るんじゃなかったか? マジで古泉か長門が説明しに来てほしいのだが…… 長門……か…… 俺は何気なく校舎を見上げる。思い出すのは去年の5月のこと。あの向こうの世界とこっちの世界でのチャットである。 新校舎の方は半分以上が破壊されているので、ここからでも旧館がよく見える。もちろん、その一角に位置する明かりの灯った文芸部室の窓もだ。 そう言えば電気を付けっ放しで来たな。 「そうね。まずはこの世界の『創造主』を見つけたいところね」 「創造主?」 蒼葉さんとハルヒが話し合いをしている姿を横目に捉えて―― しかし、俺の方も旧館・文芸部室に行く訳には行かなかった。 こんな場所で単独行動をハルヒは勿論、雰囲気から察するに百戦錬磨っぽい蒼葉さんが許してくれるとは思えない。 「そ。人どころか生命体が何一ついなくても、創造主は必ずこの世界にいるはずなのよ。でないと世界ができるわけがない。だから創造主を見つけて、出来れば話し合いで解決したいところね。この世界の誕生は勘弁してください、って」 「なるほど。でも話し合いで解決しないときは――って、考えるまでもないですね」 「を? 分かるの?」 「そりゃまあ力づくしかありませんから」 「まあね。穏便に済ませたいけど、そうもいかないときは――ね。その創造主がどんな姿してるか分かんないけど、どんな姿かたちだろうと躊躇する気はないわ。さすがに創造主がいなくなればこの世界は消失してくれるからね。この世界にまだ息吹は感じないから罪悪感も湧かないし」 蒼葉さんの殺意さえ漂わせた真剣は眼差しは俺の背中に冷たい汗を浮かばせるには充分だった。 い、今……さらっととんでもないことを言ったよな……本気か……? むろん怖くて聞けないが。 「だったらさ!」 ハルヒが勢い込んで蒼葉さんに言い寄り、 「あたしたちも手伝います! 何かの役に立てるかもしれないじゃないですか!」 「……遊びじゃないのよ?」 「もちろん解ってますって! その『創造主』とやらを探すだけです! 見つけたら即座に蒼葉さんを呼びます! 危ないことはしません!」 おいおい。んな好奇心いっぱいの今からどこか楽しいところに遊びに行くような笑顔で提案したって蒼葉さんがげんなりした視線を向けるだけだろが。もっと深刻そうな雰囲気で言えよ! などと心の中でツッコミを入れる俺なのだが。 「……そうね……私も背に腹は変えらんないし……」 って、承諾ですか!? しかもハルヒはご丁寧に『あたしたち』と言ったのである。当然、俺も協力せざる得ない。 しかしまあ、正直なところハルヒを蒼葉さんに付き出すだけでいいのだが…… いかんせん、それが正しいことなのかどうかが分からん。 なんせ、それを蒼葉さんに言うということは、ハルヒに自身の不思議パワーを自覚させることでもあるんだからな。 ましてや蒼葉さんは相当物騒なことを言った。 仮に自分の能力を自覚してもハルヒがこの世界を消す方法を知ることができるとは限らん。もしこの世界の消失方法をハルヒが思い浮かばなかったときは蒼葉さんはまず間違いなく躊躇わない。 異世界のまったく知らん一人の命より、自分の世界すべての命を取ることだろう。もしハルヒが蒼葉さんの命を救った恩人ならともかく、さっきの対《神人》戦のときは俺たちは何の役にも立っていないし、蒼葉さんは、ハルヒ曰く《神人》全てを殲滅させたのち、ハルヒに声をかけられてやっと俺たちに気付いたほどだったらしいからな。 「じゃ、これをそれぞれ持ってくれる?」 蒼葉さんはハルヒと俺にそれぞれ何か小石くらいの大きさのしかし滑らかで厳かな光を放つ宝石のような水晶を手渡してくれた。 「それを肌身離さず持っててね。何か見つければその魔石――石に念波を送って頂戴。それで私は感知できる。すぐそっちにテレポートするから」 きゃっ! すご! そんなアイテムがあるんですか!? ていうか、これ貰ってもいいの!? と、ハルヒが満面の笑みでそんなことを口走るんじゃないかと思ったがどうやらそれは杞憂に終わったらしい。 「分かりました。何か見つけたら必ず蒼葉さんに知らせます」 随分と真面目な声で返している。もっともその表情には好戦的な笑みが浮かんではいたが。 「キョン、あんたもいいわね?」 「あ、ああ」 いきなり俺に振るハルヒに、少しどもって首肯する俺。 そんな俺たちの様子に蒼葉さんはどこか微笑ましいものを見る笑顔を浮かべていた。 む……なんか恥ずいぞ…… しかし即座に蒼葉さんは気を取り直し、 「んじゃあ、あなたたちはそこの建物の中をまずは探してみて。あのボーダーラインがこの建物を中心に半径2キロくらいであるし、核ってものは力場のほぼ中心にあるものなの。おそらくこの建物の近くに創造主がいるはずよ」 「はい! よしキョン! あんたは旧館を探しなさい! あたしはまずこっちの新館を見て回るから。んでこっちに何にもなかった時は、一度中庭で合流! んで今度はあたしが旧館で、キョンが新館をくまなく探す! それの繰り返しよ! いいわね!」 それでいい。 というかハルヒにしては珍しく理にかなった合理的な考え方だ。人によって視点が違う訳だから二つの視点で探せば、同じ場所だろうと一方が見落としたことでももう一方が見つけられるかもしれんからな。しかも二手に分かれて俺はまず旧館なんだ。これは願ったり叶ったりというやつだ。 言うと同時にハルヒは半壊状態の新館へと駆け出した。 つられて俺も旧館へ向かおうとするが―― 「そう言えば、蒼葉さんはどうするんです?」 肩越しに振り返り問う俺に、しかし蒼葉さんは背中を向けたまま校舎の反対側。グランドの方を見つめて、 「私は――こいつらの相手をする――」 ――!! 緊張感あふれる声で答えてくれた蒼葉さんの眼前では、再び、二体の青白く輝く《神人》がせりあがってきたのであった。 ハルヒがこの世界にいる限り、あの《神人》は意地でも世界を誕生させようと破壊工作に勤しむのかもしれん。 だからまた出てきたのだろう。 まあ、蒼葉さんの強さはハルヒの話からすれば古泉が集団でかからないと歯が立たないアレをたった一人で七体一度に消滅させるほどだから心配はいらないだろうが。 それよりも俺はやらなきゃいけないことがある。 向かう先は旧館三階・正式名称・文芸部室にしてSOS団の寄生部屋だ。そこのパソコンに用がある。 ほどなく到着。即座に電源スイッチオン。 ジジジ……と静かな音が流れフェーズアウトした画面に見つけた! 懐かしいこのメッセージ YUKI.N>みえてる? 予想通りだったぜ。長門なら必ず連絡を入れてくれると思っていたよ。ただ古泉が現れたなかったことが少々気になるところなのだが、今はとりあえず置いておこう。 『ああ』 俺はあの時と同じやり取りを始める。 YUKI.N>今回はこっちの世界とそっちの世界の連結が断たれる気配はない。おそらく涼宮ハルヒは二つの世界の誕生と存続を望んだ。 『なんだそりゃ?』 YUKI.N>今日、あなたも感じたはず。涼宮ハルヒの精神状態は最高レベルで維持されていたことを。ゆえに新世界を形成した。 『待て待て待て待て待て。てことは何か? ハルヒは「もう一つこういう楽しい世界がほしい」とか思って、こっちの世界を創り出したってことか?』 YUKI.N>その認識は正しい。そしてそっちの世界が誕生と同時にこっちの世界と連結される。世界が面積ではなく概念量質的に広がることを意味する。これが古泉一樹がそっちの世界に現れない理由。彼――正確には彼の所属する機関が「今回は世界崩壊の危機ではない」と判断しているため、古泉一樹はそっちの世界に行くことへの協力を拒まれている。涼宮ハルヒがこっちの世界から消える意思がない以上、情報統合思念体も気にしていない。むしろ観察対象である涼宮ハルヒの新しい情報奔流能力を見るいい機会ということで注視しているほど。 『この世界を消失させるにはどうすればいい? こっちにはそっちの世界とはまた別の世界から来た人がいる。この世界の誕生で、その世界が滅ぶと教えられた』 YUKI.N>どうにもならない。世界誕生は涼宮ハルヒの意志。涼宮ハルヒが望まない限り、その世界が消失することはない。ゆえに青白い巨人は涼宮ハルヒがそっちにいる限り無限に生まれる。 『それでも何とかしようとするには?』 YUKI.N>涼宮ハルヒをそっちの世界から消失させること。手段は問わない。 ……やっぱり、そういう結論なのか…… 俺はそれ以上、カーソルを進めることなく、がっくりと椅子の背もたれに背中を預けた。 さらにしばらく時間を置いてから、俺は中庭に降りて行った。 そこにはすでにハルヒが腕を組み、仁王立ちで俺を出迎えてくれていた。 「首尾は?」 「何も」 「なら次はあんたが新館。あたしが旧館よ」 言ってハルヒが旧館に向かおうとした矢先、 天地がひっくり返ったかと思うほどの突き上げるような地響きが俺たちを襲ったのであった。 まあ無理もない。ふと横を見てみれば、これまた突然わいてきたとしか思えない《神人》が一体、新館を後ろから破壊し始めたのである。 って、おい! こんなところまで発生してるってことは…… いやな予感を胸に、俺は新館ではなく校庭へと駆け出した! 「ちょっとキョン!」 ハルヒも付いてくる。 そして新館脇を抜け、いきなり青白い光が視界いっぱいに開けたと思った時、俺は信じられない光景を目にすることとなった。 いったいどれだけ長門とやり取りしていたかは分からない。 それほど長い時間でもなかったと思っていたのだが―― 校庭では、打ち倒された《神人》たちが校庭を埋め尽くすほど累々と横たわり、その全てが透明感をさらに薄くさせて消滅しかかっていたのである。 が、そんなものは大したことじゃない。いや、大したことではあるのだがすでに倒された分は本当に大したことじゃない! さらにその向こうにまだ数体いるのである! 「蒼葉さんは!?」 ハルヒの声で俺は周囲を見渡す。しかし彼女の姿はどこにもない! どこだ? まさか押しつぶされたとか言うんじゃないだろうな? 悲観的な想像がわき起こったりもしたのだが、 「キョン! 上よ!」 叫ぶハルヒが両手で俺を無理やり上に向かせる! んな!? そこに蒼葉さんが飛んでいた! 宙に浮いているのだ! 初めて見たが、これが魔法!? マジで使えるのか!? 信じられないのも無理ないってもんだぜ。 確かにハルヒは蒼葉さんが超能力=(表現はされていなかったが)蒼葉さんの言葉を借りるなら『魔法』を行使すると言っていたが今、目の当たりにしてもまだ信じられん! まるで漫画かゲームの世界にいるみたいだ! 「ライツオブグローリー!」 そんな俺の心の葛藤を余所に、蒼葉さんの右手から放たれた眩いばかりの光の――もうレーザー砲と言っていいだろう! とにかく光の巨大な光線が新館と旧館の間に現れた、俺とハルヒが見たあの《神人》を呑みこむ! 立て続けざまに宙に浮いたまま振り返り、 「ダイヤモンドダストスパイラル!」 ロッドを振り降ろし、放たれたのは雪の結晶が竜巻に撒き散らされている、見た目で判断させてもらうが、吹雪以上の凍てつく暴風! 《神人》数体の緩慢な動きがさらに緩慢になっていき――やがて完全に凍りつく。 そこへもう一発! 「ブレイズトルネード!」 もう一度、勢いよく振りかざしたマジックロッドから、今度は業火を渦巻く竜巻が《神人》の氷彫刻を破壊した! 再び、世界に闇と静寂が訪れて、蒼葉さんが着地する。 もうすでに校庭に倒された《神人》の屍は消滅していた。 あまりの奇想天外な出来事に俺は半ば茫然としていて、蒼葉さんの首筋に汗が滴っていることに気づきもできなかったのだが―― !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! どうやら世界の沈黙は一瞬だったらしい…… 再び、校庭の向こう側に《神人》が一体、浮腫み上がってきたのである。 涼宮ハルヒの異界Ⅲ
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涼宮ハルヒの遭遇Ⅳ ――キョンくん…… 誰かの俺を呼ぶ声が聞こえる。 ――起きて…… まだ目覚ましは鳴ってないぞ…… ――お願い……目を覚まして…… って、ちょっと待て! このシチュエーションは―― 俺の意識は一気に覚醒した。 場所は北高校舎の玄関前。ふと視線を向けるとそこには記憶の通り北高制服姿の涼宮ハルヒが俺を見つめていた。 そして記憶と違うのはその涼宮ハルヒがポニーテールであることだ。 つまり、ここにいる涼宮ハルヒは俺の知っている涼宮ハルヒではなく、金曜日にパラレルワールドから迷い込んだ涼宮ハルヒである。 俺は半身だけ起こし、空を見上げた。 その空は灰色の夜に包まれている。 閉鎖空間…… 悟ると同時に俺は再び、ポニーハルヒへと視線を向ける。 もちろん、俺もブレザー姿だ。 「ここ……どこだか分かる……? 確かに部長の部屋で寝させてもらった覚えがあるのに気がついたらこんなところにいたんだけど……」 ポニーハルヒの今にも泣き出しそうな不安げな瞳。 はたして俺は何と答えてやればいいのだろう。 「あと……部長も一緒に……」 なんだと!? 即座に俺はポニーハルヒのいるところからは逆の方を振り向いた。 確かに無表情のままではあったが、俺に何かを言いたげな色彩を込めた瞳の、いつも通りのカーディガンを羽織ったセーラー服姿の長門有希がしゃがんで俺と視線を合わせる形でそこにいた。 「……」 しかし今は沈黙の置物と化している。ただ、困惑はしておらず今、自分が置かれた状況がどういったことではあるかは理解しているようではあった。 という訳で、 「なあハルヒ、ここにいるのは俺たちだけか? 古泉を見なかったか?」 「分からない……あたしは気がついたら部長が傍にいて、キョンくんが横になってたので起してあげただけだから……まだこの場所から動いてないの……」 なるほどな。 「あの……どうして古泉さんのことを……?」 「何でもない。とりあえず――」 呟き俺は立ち上がる。つられて長門もポニーハルヒも。 ……おそらく校舎の外に出るのもどこかと連絡を取るのも無駄だな。なら―― 「二手に分かれよう。ハルヒと長門で向こう側を見てきてくれ。俺はこっち側を見てくる。んで三十分後に文芸部室で落ち合おう」 「分かった」「キョ、キョンくん……?」 長門の肯定とポニーハルヒの戸惑いの声が交錯するが、長門は即座にポニーハルヒの手を取って引きずるように校舎の向こう側へと消えていった。 すまんハルヒ。後からいくらでも文句を聞いてやるから今はちょっと一人にさせてくれ。 と心の中でポニーハルヒに謝罪を終えると同時に、そいつは予想通り現れた。 むろん、長門には気づかれていただろうが、ポニーハルヒには気づかれなかったそいつは茂みの物陰から、あたかも蛍の光のように小さな赤い玉で俺の方へと漂って来る。 そして俺の目の前で赤いヒト型へと姿を変えた。 「やあどうも」 「今回は早かったな。あと昼の休眠くらいじゃ疲れは抜けきらなかったみたいだが……」 「どうやらお見通しのようですね……」 「まあな」 気さくに挨拶してきた赤いヒト型と化した古泉が俺の予想を聞いて苦笑を浮かべていることが一目瞭然で想像できる声で切り出してきた。 「で、何だってまたハルヒは俺と長門とポニーハルヒをこの世界に閉じ込めたんだ? この世界からパラレルワールドに繋がるのか?」 さらに俺は自分の予想を口にした。ややヤケクソ気味ではあったがな。 が、古泉は妙に深刻な声で俺の考察を否定した。 「いいえ。あなたと長門さんをこの世界に閉じ込めたのは僕たちの世界の涼宮さんではありません。ここにおられる向こうの世界の涼宮さんです」 はい? しばしの時間停止があって、俺の生返事と供に古泉が語り出す。 「はて? てっきり僕はあなたも察しているものだと思っていたのですが見込み違いでしょうか?」 「どういうことだ?」 「そのままの意味です。この閉鎖空間は向こうの世界の涼宮さんが創り出したものだということです」 「なんだと!?」 思わず声を荒げる俺。 「いやまあ……僕も昨夜は、《神人》のあまりの暴れっぷりに完全に失念していましたからあなたのことは言えないのですが、今、はっきり認識しました。 間違いありません。あの涼宮さんも閉鎖空間を創り出すことができます。本人ですから当然と言えば当然ですけどね」 俺は古泉の苦笑っぽい説明を聞いてしばし呆然自失した。 あまりの焦りにそんな俺に構うことすらできないのか、俺が聞いているかどうかも分からないまま続けてくる。 「どうやら昨日の《神人》二体の内の一体は我々の知る涼宮さんが生み出したもので間違いないのですが、もう一体はあちらの涼宮さんが発生させたもののようです。 よく思い出してみましたら、どちらも暴走機関車状態だったことは確かなのですが、片方は行き場がなくて右往左往して走りまわっていたような感じがしましたからね。あちらの涼宮さんの心理状態とも一致します」 ということは何だ。ポニーハルヒも世界を改変できる力があるってことになるのか? しかし、ポニーハルヒは朝比奈さんはともかく、古泉のことを知らなかったのは何故だ? お前はハルヒの精神安定剤(トランキライザー)じゃなかったのか? 「それ(トランキライザー)はあなたもなのですが……まあ今は置いておきましょう。 ちなみにあの涼宮さんが僕のことを知らなかったことについては簡単な理屈が成り立ちます。まず、こちらの世界でどうやって僕と朝比奈さんが涼宮さんと行動を供にするようになったかを思い出していただけますとご理解いただけるのではないかと」 何言ってやがる。今は心境に変化があったかもしれんが、元々はお前、長門、朝比奈さんはハルヒを監視するために近づいたんじゃなかったか? あのポニーハルヒがこっちのハルヒと同じようなものなら向こうの世界の長門、古泉、朝比奈さんもポニーハルヒに近づくはずだ」 「その通りです。ですが長門さんと僕たちにはSOS団入団に大きな違いがあったことをお忘れではありませんよね?」 ――!! そうだった……朝比奈さんと古泉はハルヒが連れてきたんだ……けど長門は違う……おそらく偶然ではないだろうが元々、文芸部室にいたんだ…… 「まさか!」 「今、あなたが想像した通りです。おそらく向こうの世界にも僕と朝比奈さんは存在することでしょう。ですが、向こうの涼宮さんの性格を思えば向こうの世界の僕たちが出会う可能性は限りなくゼロです。おそらく、学校内ですれ違うことくらいしか接点はないことでしょう。まさか、あなたも学校内でたまたますれ違った生徒たちの一人一人の顔と名前を覚えてはいないでしょ? 理屈はそれと同じです。おそらく向こうの僕はあの涼宮さんが知らないところで閉鎖空間の粛清に勤しんでいることと思われます」 なんてこった…… 「そしてもう一つ、僕たちにとって、大変好ましくない状況に陥ってしまっていることをお伝えしなければなりません」 「……俺と長門がここにいる理由か……?」 「察しておられましたか。では話が早いですね」 赤いヒト型の古泉がいつもの肩をすくめるポージング。もし表情が見えていたなら苦笑していること間違いなしだ。 「そうです。あなたと長門さんはあの涼宮さんに選ばれたんですよ。こちらの世界からたった二人だけ、あの涼宮さんが一緒に居たいと願ったのがあなたと長門さんです。 おそらくあの涼宮さんは元の世界に戻れないと絶望したのでしょう。元の世界に戻れないということは向こうの世界にいる彼女が誰よりも頼りにし、また一緒に居たいと願うあなたと長門さんにもう二度と会えないと考えたものと思われます。ですから、せめて別人ではありますが本人でもありますあなたと長門さんを連れ込んだのです」 やっぱりか…… だがな、むろん、あのポニーハルヒがそんなことをやるとは思えん。本人も間違いなく否定するだろうぜ。 てことは、おそらく深層心理でそう願ったんだ。 んで、これは相当ヤバいぜ……なんたって去年の五月にハルヒとこの世界から元の世界に帰還した方法が使えないってことと同義語なんだからな。 何故かって? それはポニーハルヒが本当に望んでいるのは俺じゃなくて向こうの世界の俺だからだ。無理にあの時と同じことをやろうものなら逆にポニーハルヒを傷つけるだけだ。ますます自分の殻に閉じ籠ってしまうことになるかもしれんし、今度はこの世界に俺と長門を残して一人別世界を創造するかもしれん。 俺が呻吟している表情が目に入ったのか、古泉が切り出してきた。 「そして危機はあなた方だけではありません。僕たちの世界も、そして、あの涼宮さんがいた元の世界も崩壊の危機に陥っていることを意味します。なぜなら、あなたがあの涼宮さんと供にこの世界に行ってしまえば、残されたこっちの涼宮さんがどうなるかを想像いただければこっちの世界がどうなるかを想像するのは容易いでしょうし、向こうの世界はこの世界の誕生で前に僕たちの世界が直面した危機とまったく同じ理屈が成り立ちます」 はははははは……随分と飛躍した壮大な話だな、おい…… 「む.……どうやら僕も限界のようです……」 確かに古泉の言うとおり、赤いヒト型が徐々に細く小さくなっていく。で、今回はどんな理屈でお前の力が消滅するんだ? 「いえ、僕の力が消滅していくのではありません。単に限界が来ただけです。精神不安定からくる人の内面を表した閉鎖空間と違って、この閉鎖空間は時空に生まれた新しい現実世界ですからね。そこに入り込もうとすれば、通常の閉鎖空間以上の力が必要となる訳でして、そうなれば力の消耗度も格段に違うということです」 なるほどな。 もうすでに古泉は最初に登場した時のような小さな赤玉だけになって漂っていた。 「今回は何も伝言を預かっておりませんが、僕はあなたと長門さんを信じております。何とかこちらの世界への帰還を――では――」 そう言い残して古泉は消滅した。 俺は一度深いため息を吐く。 やれやれ、今度はいったいどうすりゃいいんだ? 心の中で嘆息しつつ、俺は文芸部室へと足を向けた。 言うまでもなく長門とポニーハルヒは先に文芸部室に来ていた。 長門はいつものポジションに腰をかけ、しかしその視線はハードカバーではなく、窓の外を眺めているポニーハルヒを見つめていた。 「キョンくん……」 「どうした?」 「どうなってるの……? 何なの……さっぱり分かんない……ここはどこで……どうしてあたしはこんな場所に来ているの……?」 去年のこっちのハルヒと異口同音でほとんど同じセリフを窓の外に視線を向けたまま、しかし、その声から今にも泣き喚きそうなポニーハルヒの背中が震えているのを見てとれて、俺はなんと言葉をかけてやればいいのか―― 「昨日……気がついたら突然、違う世界に飛ばされたのに……また違う世界に飛ばされて……あたしは……元の世界に戻れないの……?」 「戻れるさ」 俺はあえて言った。 「君が元の世界に戻りたいと心から思えば必ずな」 俺のセリフは気休めでも慰めでもない。この世界から元の世界に戻る方法はたった一つしかなく、それはハルヒが元の世界に戻りたいと思うしかないのである。 現に俺とハルヒはそうやって元の世界に戻ったんだ。それに何の特殊能力を持たない俺でさえ、去年の十二月にいくつかのヒントや何人かの協力があったおかげとは言え、変えられた世界を元に戻すことができたんだ。 その時、俺が願ったのはたった一つだ。世界を元の姿に戻したい、というたった一つの思いで突っ走って結果、元に戻せたんだ。 だったら、ポニーハルヒだって一心に願えば戻れるさ。 ここでポニーハルヒが俺に肩越しに視線を向けた。 その表情にはちょっと無理はしているし瞳に涙を溜めていたが笑みが浮かんでいた。 「ありがと……こっちのキョンくんも優しいね……」 「そうかい」 言って俺は苦笑を浮かべるしかできないけどな。 なぜかって? 仕方ないだろ。何度も言っていることだがポニーハルヒが本当にその胸で泣きたい相手は俺じゃなくて向こうの世界の俺なんだ。 んでポニーハルヒもそれが解っている。だから俺の苦笑の意味も解ってるさ。 そんなどこか今置かれた立場を忘れてしまいそうな場の雰囲気。 しかしやっぱり安穏とした空気が続くほど甘くはないよな。ついでにのんびり打開策を考えさせてくれるゆとりも与えてくれないらしい。 前にハルヒに使った手はご法度で古泉はいない。 にも関わらずだ。 当然予想はしていたさ。前にも同じことがあったからな。 それでもだな。 いきなり外から照射された青白い光が部屋を覆いつくしてしまったらいったいどうすりゃいいんだ? 一番恐れていた事態が俺たちに降りかかってしまった―― どうする? 俺は呻吟しながら駆けていた。もちろんポニーハルヒの手を掴んで。 そのポニーハルヒは思いっきりおろおろしながら俺と青白い巨人を交互に見つめながらそれでも俺に離されないよう、手に力をこめて握り返して付いてくる。 ちなみに長門は俺の前を走っている。 そのまま三人で走ることしばし。 んで、校舎の中庭に出たところで、 「ね、ねえキョンくん!」 声をかけてきたのはポニーハルヒだ。 「あの巨人さ! たぶん悪い人じゃないわ! あたしには解るの! だからそんなに慌てなくても……」 走り疲れてきたのかそれとも俺の握る手が思った以上に痛いからなのか。 まあ両方なんだろうぜ。 「分かってるさ。君がそう言うならそうなんだろうぜ。けどな、仮にあの巨人が俺たちに襲いかからなくても俺たちに気付かないで校舎を破壊する可能性はあるんだ。 だったら安全圏まで行かないとマズイだろ?」 「あ。」 どうやら俺と長門があの巨人から逃げているんじゃなくてあの巨人の破壊範囲外へ避難していることを悟ってくれたらしい。 「疲労?」「うわ」 え? いきなりポニーハルヒの傍から声が聞こえてきたわけだがその声の主はついさっきまで俺たちの前を走っていた長門なものだから俺もびっくりした。 一体いつの間に? てな訳で少し足を止める俺たち。 もちろん悠長な真似はできないので、 「背負う」「はい?」 再びポニーハルヒのおっかなびっくりの声が届くと同時に、彼女の返事を待つことなく長門が無理矢理ポニーハルヒを背負い俺に視線を向けてきた。 その瞳はいつもどおり無色に近いものがあるのだがそれでもはっきりと認識できる。なんたって俺以上に長門の言いたいことが分かっている奴なんて居やしないからな。 んで、その俺が認識するところ、長門は『走れ』と言っている。 むろん即座に従うだけだ。 駆け出すと同時に長門が俺の横に並んだ。 もし長門に変な裏設定がなければ結構グサッとくるものがあるぜ。なんせ俺とタメの小柄な女子高生が人ひとり背負って同じスピードで走っているんだ。 なんか情けない気持ちでいっぱいになるな。 しかし今はそんなことに構ってなんていられない。 俺たちは何の会話も交わさずグランドまで走り続けた。 そして、 「あなたに先に言っておくことがある」 俺と長門とポニーハルヒが校舎の破壊活動に勤しむ青白い巨人を眺めながら、突然、長門が切り出した。 「わたしにあの巨人を抹消することはできない」 ――!! 「なぜならアレは物理的存在ではない。本来、あれほどの大きさであれば自身の重力で身動きできなくなるにも関わらず、あれは重力を感じずに動き回っている。それがあの巨人が物理的存在でない理由。物理的な存在でないものを情報操作することは不可能」 だろうと思っていたよ。ただ改めてはっきり言われると相当ヤバいことを実感させられるな。 「対処はまったく無しか?」 「無いことはない」 長門が肩越しにポニーハルヒへと視線を向ける。つられて俺も。ポニーハルヒは少し戸惑った表情を浮かべるのだが。 しかし長門は何も言わなかった。 何か言いたそうではあったが何も言わなかった。 「あ、あの部長……?」 ポニーハルヒの声にも何も答えない。 ……そうか……そういうことか…… 俺にも悟れた。このあたりは長門の言いたいことが解ってしまう自分をちょっと呪ってしまったが。 そう。 この場合、打開策は二つに一つ。 ポニーハルヒに能力を自覚させて何とかしてもらうか、この世界の創造主であるポニーハルヒを抹消して世界を消滅させるか。 前に俺が元の世界のハルヒに使った手段が使えない以上、その二つしか方法はない。 もっとも後者を選んだ場合は正直言って俺と長門がどうなるか分かったもんじゃないし、前者を選んだとしても問題の解決にはならないだけでなくもしかしたら古泉の危惧が現実になるかもしれん。 ……元の世界のハルヒもそうなんだが、このポニーハルヒの究極の選択もどっちを選んでもあんまり芳しい結果が待っていない気がするのはなぜなんだ? それともこれが涼宮ハルヒの涼宮ハルヒたる所以ってやつか? ならどうする。三つ目の選択肢を見つけるか。 三つ目の選択肢だと? そんなものがあるのか? あるとすればそれは何だ。 言っておくがヒントはどこにもない。長門はここにいるし何もヒントらしいものは持っていない。もし持っているならとっくに俺に言っている。ポニーハルヒには悟られないよう、回りくどくではあったろうけどな。 んで古泉は朝比奈さんから何も聞いていなかった。 いちばん何とかなる気がするご都合主義は俺たちの世界の涼宮ハルヒの世界を都合よく変革する力だが、むろん、そんな展開はありはしない。なんたって今、ハルヒが俺と長門の置かれた状況を知っているはずがないからだ。 くそ…… 数がどんどん増えていく青白い巨人を眺めながら俺は一人、歯ぎしりをしてコブシを握りしめながら佇むしかできなかった。 涼宮ハルヒの遭遇Ⅴ
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涼宮ハルヒの糖影 起 涼宮ハルヒの糖影 承 涼宮ハルヒの糖影 転 涼宮ハルヒの糖影 結
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第二章 七月に入りやはりハルヒは憂鬱になっていた。今回憂鬱な理由は俺にはわかる。 きっと4年前のことを思い出しているに違いない。 4年前に何があったかというと俺は朝比奈さんに4年前に連れて行かれ幼いハルヒに声をかけ話をした、 それだけならまだしも俺は校庭でハルヒの落書きの手伝いをしたのだ、というか俺が全部やった。今考えると映画作りやらホームページ作りやら何も変わってないじゃないか。 そしてハルヒには正体を黙りジョンスミスと名乗った、そして幼かったハルヒに向かって「世界を大いに盛り上げるジョンスミスをよろしく」と叫んだ。 恐らくはこれが原因で世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団、通称SOS団なんて名称にしてしまったんだろう。 大体、世界を大いに盛り上げる~なんてのは誰が最初に考えたのだろうか。 時系列的に言えば俺がハルヒに「世界を大いに盛り上げるジョンスミスをよろしく」と言ったのが原因だがそれを教えてくれたのは朝比奈さん(大)で、 恐らく俺は未来に朝比奈さん(小)にそのことを言ったのだろう、じゃ無ければ朝比奈さん(大)がそれを知っているわけが無いからだ。 そして朝比奈さん(大)が俺に教えて… そうなれば考えた人間を辿って行くと延々ループするので頭が痛くなる。 話がそれた、ハルヒはこの事を思い出して憂鬱になるのだ。 やはり元気を出して欲しいとこだがこればかりはどうしようも無い。 ここは早々に七夕がすぎるのを待つしかない。そんなことを考えていた。 しかし古泉曰くハルヒを暇にしてはいけないので何か考えなければならない。 そしてこの時期に憂鬱を晴らす方法があるとしたら一つしかない。 涼宮ハルヒとジョンスミスを接触させる…簡単なようで全く不可能な話である。 無理だ、あきらめよう。 またなんか考えてやるからそれまで我慢してくれよな、ハルヒ。 ふと何で俺は古泉みたいなことを考えてるのかと思った。 まあいいか楽しいし、今なら孤島での殺人事件の芝居も許せるかもしれない。 などと考えていた。 7月5日のことである。 ハルヒはこう言った。「明日七夕の短冊を書くから何を書くか考えてきてよね!」 俺は何故明日なのだ?七夕は明後日で平日のはずだ。と思ったがあえて口には出さなかった。きっと何か考えがあるのだろう。そう考えることにした、ほかのみんなもそう思ったのか同じ反応を取った。 翌日ハルヒは去年と同じような竹を持ってきた。 「さあみんな!思う存分願い事を書きなさい!!!」そういってハルヒはふっといペンに堂々とした字で何かを書き出した。 なになに?明…日…あ…の…人…に…会えますように? なんだって?これは予想外だ、何てこと書きやがる。 当然何も知らない朝比奈さんは「あの人って誰なんですか?」とハルヒに聞いた、古泉も興味津々である。 ハルヒは遠いところを見るような面持ちでこう答えた。 「私…昔の七夕でね、学校に忍び込んで校庭に宇宙人へのメッセージを書こうとしてね…一人の不思議な男と出会ったのよ。 名前しか知らないんだけどね、会えたのはそれっきり。いろいろ探してみたけど見つからない。私はもう一度会ってみたいの。」 朝比奈さん答える。「会えるといいですね…その人に…。」 朝比奈さんの目が輝いていた。 結局短冊に何を書いたのか、見せたのはハルヒだけであった。 ハルヒは俺の書いた短冊を見せろと襲ってきたが何とか短冊を死守した。 そして俺は書いた短冊を誰にも見られないようにかばんの中に入れて隠した、こんなもの見られたら俺は自殺してしまう。長門や朝比奈さんや古泉も誰にも見せずに持って帰ったようで結局飾ってあるのはハルヒの短冊だけであった。 朝比奈さんや長門がなんと書いたか少し気になるのだが。 そんなこんなで今日の活動は終了し解散した。 自宅に戻った俺は一度投げ出した問題について考えていた、 結局思いついたはというと、、、 ①今の俺だとすぐにばれるので3年後の俺を今に連れてこさせハルヒに会わせる ②長門のインチキマジック ③古泉を変装させジョンスミスと名乗らせる ここまで考えた時点であきらめた、不可能を可能にするのは不可能だ。まあ何とかなるだろう。 俺はいつもより少し早く床に着いた。 第三章
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涼宮ハルヒの中秋 第1章 涼宮ハルヒの中秋 第2章 涼宮ハルヒの中秋 第3章 涼宮ハルヒの中秋 第4章
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涼宮ハルヒの憂鬱IV(2006年放送版第10話、構成第04話・DVD版第05話/2009年放送版・時系列第04話) スタッフ 脚本:石原立也 絵コンテ:石立太一 演出:石立太一 作画監督:西屋太志 原作収録巻 第1巻長編『涼宮ハルヒの憂鬱』より第5章174Pから最後までと第6章の最初からP217まで。計43ページ分をアニメ化。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第2巻』に収録。 解説など 原作では教室に入ってきたときには朝倉がハルヒに話しかけたり、キョンたちの会話に参加しようとは試みないが、アニメでは積極的に関わろうとしているオリジナルシーンが挿入されている(ハルヒには無視されているが)。 この回はハルヒが憂鬱なせいか、OPカットで『超監督涼宮ハルヒ』のクレジットの超が少し小さいフォントになっている。 時系列ではこの回から展開が大きく動く回。放送順では、シリーズ演出曰くこの回以降、作画的に『ホームラン攻勢』が続く』らしい。放送順では、この回と射手座の日でのハルヒにギャップを覚えるかもしれない。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『ファイティンねこマン』。(DVD第05巻に収録) 次回予告 TV版(『涼宮ハルヒの激奏』DVDに収録): ハルヒ:次回!涼宮ハルヒの憂鬱第13話。 キョン:異議あり。次回涼宮ハルヒの憂鬱第11話『射手座の日』。それでは、みなさんお待ちかね!涼宮ハルヒ、レディー! ハルヒ:ゴォー!! DVD版: 有希:次回、『涼宮ハルヒの憂鬱 V』。見て。 放送版とDVD版との違い 四角錐の「団長」の文字が座っているハルヒ側に向いていたのが修正されている。(確認求む) 谷口が、教室に入ってくるシーンで追加カットあり。 みくる(大)の左腕のブレスレットがなかったカットが修正されている。(確認求む) パロディ・小ネタ 愛し合う3年の彼氏と彼女→女子が一方的に男にビンタ 走り去る マジでくたばる5秒前=MK5=マジで恋する5秒前 WAWAWA→後にさまざまな場面でネタに。原作では「忘れ物~♪」としか記されておらず、完全に白石稔のアドリブである(白石本人もインタビューなどで明言している)。後にこのフレーズを元に白石本人が作詞・作曲した楽曲が「らき☆すた」13話のエンディングでワンコーラス使用され、さらに白石稔のアルバムCD「白石みのる・男のララバイ」(ランティス)ではフルコーラス・フルオーケストラにて「俺の忘れ物」のタイトルで収録された。白石稔ブレイクのきっかけとなったアドリブである。 長門や朝倉が喋っている高速言語(呪文はSQL言語が使われている) 次回予告は『機動武道伝Gガンダム』のパロディ。『射手座の日』はフルメタスタッフが数多く参加した通称フルメタ回。キョンとハルヒのこのやりとりは、キョン役の杉田の事務所の先輩であり、フルメタの主役とGガンダムの主役の両方を演じた声優、関智一ネタであると考えられる。 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 2段目 朝倉涼子:桑谷夏子 谷口:白石稔 岡部先生:柳沢栄治 スタッフ 脚本:石原立也 絵コンテ:石立太一 演出:石立太一 作画監督:西屋太志 動画検査:村山健治 美術設定:田村せいき 美術監督補佐:平床美幸 色指定検査:竹田明代 原画 浦田芳憲 高雄統子 小松麻美 山田尚子 安部篤子 伊東優一 瀬崎利恵 西屋太志 石立太一 第二原画 紅林誉子 樫原教子 冨田亜沙子 羽根邦広 動画 清原美枝 木透富子 冨田亜沙子 羽根邦広 仕上げ 津田幸恵 瀬波里梨 小浦千代美 宿谷葉子 背景 鵜ノ口穣二 細川直生 篠原睦雄 袈裟丸絵美 加藤夏美 川内淑子 松浦真治 伊藤豊 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年6月4日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年6月4日25時30分-26時00分 tvk:2006年6月5日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年6月5日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年6月5日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年6月6日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年6月6日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年6月7日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年6月7日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年6月10日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年6月10日26時40分-27時10分 2009年 テレ玉:2009年4月23日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年4月23日25時45分-26時15分 サンテレビ:2009年4月23日26時05分-26時35分(本来は24時40分-25時10分だが野球中継のため1時間25分繰り下げ) 東京MXテレビ:2009年4月24日26時30分-27時00分 tvk:2009年4月24日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年4月25日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年4月26日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年4月27日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年4月28日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年4月28日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年4月28日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年4月28日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年4月28日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年4月28日27時55分-28時25分 Youtube:2009年4月29日22時00分-2009年5月5日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年11月8日25時50分-26時20分 DVDチャプター アバン(0:00~2:45) Aパート開始(2:46~5:05)※題名無しみくるちゃん悩殺写真館(5:06~6:04) 待ち合わせの相手(6:05~8:13) うん、それ無理❤(8:14~9:29) じゃあ、死んで❤(9:30~9:47) Bパート開始(9:48~10:37)※題名無し朝倉VS長門(10:38~12:02) 朝倉敗れる!(12:03~13:42) メガネ、忘れた・・・(13:43~15:39) 出会い、そして別れ(15:40~18:00) 2人のみくる!?(18:01~20:29) みくるの時間(20:30~21:44) SOS団、自主休日!!(21:45~22:50) 使用サントラ 0 00~0 34 SE 0 35~2 18『憂鬱の憂鬱』サントラ02収録 2 19~2 31 SE 2 32~2 43 OPイントロ 2 44~4 09 SE 4 10~5 07『激烈で華麗なる日々』サントラ05収録 5 08~5 28 SE 5 29~5 53『小さくても素敵な幸せ』サントラ08収録 5 54~7 39 SE 7 40~9 34『朝倉涼子の真実』サントラ03収録 9 35~9 48 SE 9 49~13 07『長門VS朝倉』サントラ03収録 13 08~14 15 SE 14 16~14 54『長門の告白』サントラ03収録 14 55~15 42 SE 15 43~16 27『何かがおかしい』サントラ02収録 16 28~18 02 SE 18 03~19 40『非日常への誘い』サントラ08収録 19 41~19 45 SE 19 46~20 32『みくるのこころ』サントラ03収録 20 33~21 55 SE 21 56~22 50『おいおい』サントラ02収録 22 50~23 54 ED 23 55~24 10『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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涼宮ハルヒの憂鬱Ⅰ(2006年放送版第02話、構成第01話・DVD版第02話/2009年放送版・時系列第01話) スタッフ 脚本:石原立也 絵コンテ:石原立也 演出:石原立也 作画監督:池田晶子 原作収録巻 第1巻:長編『涼宮ハルヒの憂鬱』よりプロローグから第2章の66Pまで。61ページ分をアニメ化。 DVD収録巻 『「涼宮ハルヒの憂鬱」第1巻』に収録。 紹介 放送順では第2話、時系列では第1話。ここから全ての話が始まるが、原作に登場し、後になると気付く重要な伏線とアニメで解決する伏線が登場するのもこの話。 OPは冒険でしょでしょ?で、番組全体のスタッフが表示。EDは2006年放送版1話でスタッフクレジットがスクロールでダンスの画面も縮小だったが、この話からフル画面・固定に。 この回は監督演出回、キャラクターデザイン総作画監督が作画監督を担当、原画マンも各話の演出家や作画監督が多く参加しており、相当力を入れていることが伺われる。 この回の作画クオリティは2006年放送版全14話中最高クオリティとも言われている(放送終了当時のログより)。 2006年放送順の提供バックのねこマンは『女学生ねこマン』。(DVD第02巻に収録) 次回予告 TV版(『涼宮ハルヒの憂鬱』第1巻に収録): ハルヒ:次回、涼宮ハルヒの憂鬱第2話! キョン:違う!!次回、涼宮ハルヒの憂鬱第3話『涼宮ハルヒの憂鬱 II』。少しは人の話、聞きなさい!!お楽しみに。 DVD版: 有希:次回、『涼宮ハルヒの憂鬱 II』。見て。 放送版とDVD版との違い 放送では1話の次回予告にあった生徒手帳を眺めるシーンやキョン、谷口、国木田と話すシーン・カットがいくつか追加されている。(東中の校庭落書き事件など) パロディ・小ネタ ハルヒが一つの萌え要素として持ち出したのは、雑誌コンプティークと雑誌コンプエース。(石原監督によるとプロデューサーからの推薦だとか) 中学時代のハルヒをデートに誘って5分で断られたのは本人は違うと言っているが、谷口と見られている。(担当声優の白石稔は新らっきー☆ちゃんねる第12回のクイズコーナーで認めている。)デートに誘った場所のモデルは神戸市のハーバーランドのモザイクガーデンとのこと。 キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 1段目 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 長門有希:茅原実里 朝比奈みくる:後藤邑子 2段目 谷口:白石稔 国木田:松元恵 朝倉涼子:桑谷夏子 岡部先生:柳沢栄治 スタッフ 脚本:石原立也 絵コンテ:石原立也 演出:石原立也 作画監督:池田晶子 動画検査:中野恵美 美術設定:田村せいき 美術監督補佐:平床美幸 色指定検査:石田奈央美 制作マネージャー:富井涼子 原画 北之原孝将 高橋博行 米田光良 浦田芳憲 坂本一也 西屋太志 紫藤晃由 大藤佐恵子 堀口悠紀子 高雄統子 山田尚子 小松麻美 松尾祐輔 動画 中峰ちとせ 黒田久美 栗田智代 大川由美 仕上げ 宮田佳奈 宇野静香 川合靖美 相沢朝子 背景 鵜ノ口穣二 細川直生 篠原睦雄 袈裟丸絵美 加藤夏美 丸川智子 川内淑子 松浦真治 撮影 中上竜太 田中淑子 高尾一也 山本倫 石井和沙 浜田奈津美 梅津哲郎 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2006年(野球中継などは考慮せず) チバテレビ:2006年4月9日24時00分-24時30分 テレ玉:2006年4月9日25時30分-26時00分 tvk:2006年4月10日25時15分-25時45分 KBS京都:2006年4月10日25時30分-26時00分 テレビ北海道:2006年4月10日26時00分-26時30分 サンテレビ:2006年4月11日24時00分-24時30分 TBC東北放送:2006年4月11日26時00分-26時30分 東京MXテレビ:2006年4月12日25時30分-26時00分 テレビ愛知:2006年4月12日26時28分-26時58分 広島ホームテレビ:2006年4月15日26時05分-26時35分 TVQ九州放送:2006年4月15日26時40分-27時10分 2009年 サンテレビ:2009年4月2日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年4月2日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年4月2日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年4月3日26時30分-27時00分 tvk:2009年4月3日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年4月4日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年4月5日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年4月6日25時30分-26時00分 KBS京都:2009年4月7日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年4月7日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年4月7日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年4月7日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年4月7日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年4月14日27時25分-27時55分 (1,2話連続放送) Youtube:2009年4月15日22時00分-2009年4月22日21時59分(1週間限定配信) RKK熊本放送:2009年10月18日25時50分-26時20分 DVDチャプター 使用サントラ 0 00~1 37 『いつもの風景』サントラ02収録 1 37~1 55 SE 1 56~2 30 『激烈で華麗なる日々』サントラ05収録 2 30~4 00 OP 4 01~4 40 『ザ・ミステリアス』サントラ02収録 4 40~4 52 SE 4 53~6 35『何かがおかしい』サントラ02収録 6 36~7 11 SE 7 12~8 43『コミカルハッスル』サントラ06収録 8 44~10 46 SE 10 47~12 03『憂鬱の憂鬱』サントラ02収録 12 04~13 36 SE 13 37~15 20『うんざりだ』サントラ03収録 15 21~15 27 SE 15 28~16 07『ザ・強引』サントラ05収録 16 08~17 16 SE 17 17~18 44『好調好調』サントラ03収録 18 45~19 45 SE 19 46~20 55『悲劇のヒロイン』サントラ03収録 20 56~21 07 SE 21 08~22 18『おいおい』サントラ02収録 22 19~22 52 SE 22 53~23 36『SOS団始動!』サントラ05収録 23 37~24 40 ED 24 41~24 57『冒険でしょでしょ?予告アレンジ』サントラ02収録 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新題06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
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さすがのハルヒもめまぐるしい出来事に疲れを見せていたが 俺にはもう1つだけやる事があった 通りがかったタクシーを呼び止め、鶴屋さんの家に向かった 車の中で初めて知ったのだが、もう夜の11時を回っていた ハルヒがうとうとしかけた頃、タクシーは鶴屋邸の前に止まった 俺は代金を払ってハルヒを車から降ろし、悪代官の象徴のような玄関に立った チャイムを鳴らしてしばらく待つと、着物姿の鶴屋さんが出てくれた 「やっほーハルにゃんにキョンくん、ずいぶん遅かったにょろね」 はい、遅くなってしまいました これ何とか見つけましたのでお返しします 俺はハルヒが握っていたオーパーツを鶴屋さんに返した 「ほーっ、探してくれたんだーありがとうねキョンくんっ!」 いえあの、探してたって言うか偶然見つかったって言うか 「まあいいさっ!無事に見つかったんだし、これで一件落着だねっ」 あの鶴屋さん 「なんだい?」 このオーパーツですが、その・・・本当の持ち主が見つかったって言うか どう説明すりゃいいんだろ 鶴屋さんの理解力に賭けるしかないか 「いいさっ、こんなのうっとこに置いといても何の意味もないしね ちゃんと使い道の分かってる人が使ってくれた方がいいからさっ でもこのまま預かっててもいいのかな?」 はいもちろんです そのうち本当の持ち主が取りに来ると思いますから 「委細承知っ!さっ早く上がりなよ!」 いやもう遅いですから、ハルヒも眠そうだし 「おんやーハルにゃん?何だか世界を救ってきたみたいな顔してるねー いい顔だよっ!キョンくんも」 「え?あ、ああ・・・そうね」 「いいから気にせず泊まっていきなよ!部屋も布団もあるし」 本当にいいんですか? 「もっちろんだよっ、ただし部屋は別々なのさ!まだ高校生だからねっ!」 俺も疲れ果てて朦朧としていたので、考える暇もなく鶴屋さんに部屋に案内された 「キョンくんはこっちでハルにゃんはその隣、すぐに布団敷くから それからお風呂は男女別で後で夜食持ってくるからねっ でもその前にちゃんと家に電話しなさいっ あたしは自分の部屋にいるからさ、何かあったら内線の2番に電話するがいいにょろ」 部屋に通された俺はとりあえず家に電話をかけた 突然の俺の外泊に母は怒り狂い、妹は電話の向こうで誰と一緒なのかを必死で叫んでいる 俺は正直に鶴屋邸に泊まる事を申告した すると突然母の態度が変わり、丁寧な口調に変わった ちゃんと敬語で話しなさいとか鶴屋さんに迷惑かけないようにとか やはり鶴屋さん、さすがと言うか何と言うのか いったいどれほどの悪事を働けばこんな名士になれるのか 電話を切ってから風呂に入り、戻るともう布団が敷かれていた ボロ雑巾のようにぐったりと眠りこもうとすると、部屋の襖が開いた 「ちょっとキョン、こっちに夜食が届いてるわよ」 ハルヒの部屋に呼ばれて入り、おにぎりと漬物の軽食をいただいた 風呂上がりのハルヒは鶴屋家の浴衣に着替えており ほんのりピンクに上気したほっぺたが以外とかわいい 2人とも疲れきっているのでほとんど会話もなく、食い終わった俺はおやすみを言って立ち上がった するといきなり浴衣の帯を引っ張られた ハルヒの馬鹿力に引き倒され、俺は布団に崩れ落ちた 何するんだよハルヒ 「・・・・・・」 布団の上に転がされた俺をハルヒの目がじっと見下ろしている それは、俺が初めて見る優しい目だった 「キョン」 ハルヒ・・・・・・ 「・・・・・・しょに・・・て」 はい? 「いっしょに・・・て」 はぁ? 「もう!バカキョン!」 ハルヒは俺の頭に腕を巻きつけ、ヘッドロックで締め上げてくる これだけ疲れてるのにまだ暴れたいのかこのアホゥは 素早くハルヒを振りほどいて抜け出す 身構えているとハルヒがまた優しい目に変わった 小さい頃の母を思い出すような優しい目を俺は見つめ ハルヒが言いたい事をすぐに理解した ハルヒ・・・ 「キョン・・・」 結局用意された俺の布団は使われずしまいだった 翌朝になって飛び込んできた鶴屋さんはすぐに状況を察知して 「うんうん・・・・それでいい、それでいいのさ。世界平和が一番だよっ」 と悟りを開いた僧侶のようにありもしない顎鬚をなで ニコニコしながら朝食を用意してくれた 白いご飯に豆腐の味噌汁、アジの干物にだし巻き、海苔と梅干という 素晴らしきかな和風の朝食を平らげた俺とハルヒは、鶴屋家差し回しの車でそれぞれの自宅に送ってもらった ハルヒは朝からほとんど口を利かかなった ありがたい事に昨日は金曜日、つまり今日と明日は休みだ 俺はこの2日間は全力で眠ることにした さっそくのように妹が昨夜の俺の行動について詳細な報告を求めてくるが 悪いが妹よ、お前が大人になるまでは倫理上話す事はできない すでに妹と変わらないぐらいに大きく成長したシャミセンを抱かせ、俺は部屋のドアを閉めた 階下では母親が大騒ぎしながら鶴屋家に出すお礼状の書体について頭を悩ませている まだ朝の時間帯だし、体は疲れているのに眠気は訪れない 俺は昨日の事をぼんやりと考えていた あの誘拐未遂事件から始まって、空から降ってきたハルヒを助け あの異世界で古泉と朝比奈さんのすさまじい戦いをこの目で見た 復活した長門の超高速攻撃を目の当たりにし、最後に長門の涙も見た そして鶴屋家でのハルヒとの一夜 目を閉じたハルヒの美しい顔 無防備な姿で俺の全てを受け入れてくれたハルヒ 俺の背中にしがみついて爪を立てたハルヒ くそっ なぜここで長門の涙が浮かんでくるんだ あの時長門は二度、涙を見せた 初めはハルヒに頬を叩かれた時 そして二度目は長門の部屋でだ 長門・・・・・・ お前の涙は この俺に向けたものなのか? 肉体再生にエラーが頻発すると言ったのは、俺がハルヒとこうなってしまったからなのか? だとすると長門・・・ もしかしたらお前はやっぱり 俺の事を? ・・・・・・・・・・・・ 「キョンくーん!ごはんだよー!ごっはん!ごっはん!」 うるさい妹に飛び乗られて目が覚めた まさしく世界で一番悪い目覚めだ もし長門ならどんな起こし方をしてくれるだろうか ハルヒだったら・・・・・・いややめておこう 結局土日をずっと眠ったままで過ごした 飯を食う時とトイレ以外、俺はほとんど布団を離れなかった そして日曜の深夜になり、突然携帯が鳴りだした 「やあどうも古泉です ちょっと今から出られませんか?」 俺は深夜の街を自転車で飛ばしていた 古泉からの電話はそう複雑な用件ではなかった 「いろいろ整理するためにお話ししましょう」 ずっと寝ていたので眠気もほとんどなく、あいつらから話も聞きたかったし、朝比奈さんにも会いたかった そしてもちろん、長門の様子も気になっていた いつもの公園、SOS団御用達の変人の集合場所についた すでに古泉と長門が待っていた 長門の傷はもう回復したのか、いつもの水色のセーラー服がなぜか哀愁を感じる 「どうも、お呼び立ていたしまして」 相変わらずニヒルな古泉のスマイルだが、あの時のすさまじい戦闘を目の当たりにしているだけにやけに頼もしく感じてしまうのはなぜだろう? 「お疲れは取れましたか?」 ああおかげさんでな。ずっと寝てたから目が冴えてきたんでちょうど良かった 「実は僕もなんですよ。涼宮さんに帰れと言われてから、ずっと気にはなっていたのですが さすがにもう起き上がる体力はありませんでした ベッドにひっくり返って、さっきまで眠っていました」 お前もすごい活躍だったな。かなり見直したぞ 「それはどうも。まさかあなたからお褒めの言葉をいただけるとはね、恐縮です」 ふん 長門はもういいのか?傷の具合は 「……」 長門はいつものようにゆるゆると首を持ち上げ、またゆるゆると元の状態に戻った この当たり前の反応がとても嬉しくもあり、そして悲しくもある ん?朝比奈さんは? 「朝比奈さんも無事です。さっき電話で確認しました ただちょっと混乱しておられるようなので、この場はご遠慮いただきました」 そうか、無事なら何も言うことはない 「前半戦でもっとも活躍したのは朝比奈さんですからね 彼女には本当に助けられました」 本当か古泉? 「ええ 序盤は防戦一方でしたからね。朝比奈さんの力がなければ僕一人で防ぎきれたかどうか」 どんな風だったんだ? 「まあ初めからゆっくりおさらいしましょう 今回は初めて、SOS団が分断された状態で始まった出来事でしたから あなたと涼宮さんが2人の時の状況と、残された我々の様子を確認していきたいんですよ」 長門がピクリと体を震わせた 相変わらず理論派だなお前は まあいいか俺も知りたい事がたくさんあるしな それから長いお互いの話をした 俺は鶴屋邸に行ってからの話をし、古泉からは長門のマンションから始まる長い話を聞いた 時折り長門に話が振られ、その都度長門は首だけを動かして有音無音の返答をした 「まさか戦う前から分断工作が始まっていたとは思いませんでしたね あなたが単独行動した時点で気付くべきでした 森さんたちがよく反応してくれたものだと思います」 そうだ 森さんの具合はどうなんだ? 「大丈夫ですよ。少々の打撲と転んだ時の擦り傷、そして着弾のショックで肋骨にヒビが入った程度です。彼女は一応独身女性ですから、お嫁に行けなくなるような最悪の事態は免れたと思います」 お前、自分の上司にそんな言い方してもいいのか? 「まあいいでしょう。今回僕はかなり株を上げましたからね 僕がもたらせた情報は今後の大いに参考になると思います」 そう言って古泉は俺の耳元に口を寄せてきた 「実はあの夜、森さんも鶴屋邸に泊まっていました。ひと晩安静にするために。これは秘密にしておきますが」 うへっ って事は 俺とハルヒの一夜が機関には筒抜けになっているのか? 「機関はこれをいい傾向だと考えています と言うよりも機関の全員がとても喜んでいるのですよ」 古泉はそこでチラリと長門を見た 「一部の人たちを除いて、ね」 それ以上言うな古泉 お前を殺さなくてはいけなくなる 「分かりました」 それはいいから、今回の総括をしてくれ 古泉はおもむろに前髪をさらりとかき上げ 「では最初から行きましょう 事件の発端はあの転校生とオーパーツです オーパーツには不思議な力があるようです 何かのエネルギーを貯め込む機能のようなものです 電気エネルギーとか核エネルギーなどというものではなく 目に見えない何かのエネルギーです」 「生体エネルギー…に近いもの。でも少し異なる」 「生体エネルギーですか?」 「そう。言語では概念を説明できない また統合情報思念体にも説明できない不可思議なもの」 「例えて言うと、怒りとかそんなものですか?」 「可能性はある」 なんて物騒なエネルギーだよそれは ハルヒの所にに来なくて本当に良かったな 「なるほどね とにかくそれが鶴屋山に埋まっていました はたして本当に3百年前のものなのか、それは分かりませんが それにあの新入生が引き寄せられてきたのです」 「あの女子は、新入生ではない」 「新入生ではない?」 「そう。彼女は私たちだけにしか見えない存在」 「私たちと言うと?」 「涼宮ハルヒ以下、SOS団のメンバー、及び佐々木率いるチームSOS」 おい長門、その名前はやめようぜ あいつらにSOSの名前はふさわしくない 「……そう」 「まあとにかく、あの新入生がオーパーツを使って、自分の世界の再生に利用しようとしたようです ところがなぜか彼女はSOS団ではなく、佐々木さんの方に話を持ちかけたようです 向こうでどんな話になったのかは分かりませんが、乗り気になったのは周防さんのようですね」 周防ね あの壊れた小さいダンプカーか 「ええ。考えてみればその時からすでに彼女の暴走は始まっていたのかもしれませんね。自ら進んで戦いのエネルギーを放出しようだなんて。これがSOS団に来ていたら、涼宮さんが絶対に阻止していたことでしょうけど」 古泉、お前本気でそう思うのか? 「当然ですよ。まさかあなたからそんな質問が来るとは思えません あなたは涼宮さんがオーパーツを手にしたら、ここぞとばかりに大激怒エネルギーを異世界中にまき散らすとでもお思いですか?」 …… 「とてもあなたとは思えない発言ですね。悲しい事です 涼宮さんを一番よく知るあなたが、冗談でもそんな事を仰るとはね」 分かった分かった そんなに本気で怒るなよ古泉 訂正いたします 「失礼しました。別に本気で怒るつもりもありません オーパーツが先に向こうの手に渡ってしまったことが大きかったですね それと結果論ですが、あなたが鶴屋邸に行く事もなかったのではないかと」 ああ あれは軽率でした 「橘京子の組織はそこまで予想していたのでしょうね オーパーツが紛失すれば鶴屋さんはまずあなたに連絡をとる 責任感の強いあなたは絶対に鶴屋邸に来る 長門さんが動けない状況であなたも閉じ込めてしまえば、戦わずしてもう負けが決まっているようなものです ここはただひたすら、森さんの機転に感謝すべきです」 確かにそれは言えるな まさか銃まで出てくるとは 「銃はあくまで脅しのつもりだったのでしょう あの住宅街で発砲すればそれこそ大騒ぎです 鶴屋家まで巻き込むことになってしまいますから それは重大な規則違反ですからね」 おい古泉 鶴屋さんは橘京子の組織にも絡んでるのか? 「そこは限りなくグレーゾーンです。我々にもはっきりしたことは分からないのです。ただ、鶴屋さんの様子を見る限りはその可能性は高いですね」 俺はひそかに鶴屋さんとの会話を思い出していた 鶴屋さんは面白ければそれでいいと言っていた どっちの味方をするわけでもなく、ただ面白い事をしている人間に金を出して傍観する、そんなのが楽しいんだよとか言ってたっけ 罪な事をしますね、鶴屋さんも 「結局鶴屋家も巻き込む騒動になってしまったのですけどね 怪我の功名というか、事件の後始末は極めてスムーズでした 鶴屋家からも相当な圧力がかかったのでしょう 暴力団同士の小規模な縄張り争いということで、マスコミにもほとんど漏れていません そうしてあなたが脱出していた頃、長門さんのマンションに佐々木さんたちが乗り込んで来ました 藤原氏の時間操作なのか、周防さんの能力か、世界一セキュリティの高い長門さん宅に無断侵入してくるとはね まだその時点では僕もそう焦ってはいませんでした 長門さんが寝ていても、そしてあなたがいなくても こちらにはまだ涼宮さんがいます 涼宮さんがいる限り、本当のピンチにはならないと確信していましたから ですから涼宮さんがどこかに飛ばされたのには心底驚きましたよ しかも我々も異世界に移動している 眠っている長門さんと、慌てる朝比奈さんをどうしようか、かなり焦りましたね」 まさに分断工作だな 実にややこしい事をしてくれたもんだ 「ええ あなたから話を聞くまでは、どうしてこうも複雑な過程なのかと頭を悩ませました 序盤は全く厳しい戦いでした 朝比奈さんは泣きそうになっているし、長門さんは起きないし 正直僕一人でどこまで防げるのか、全く自信がありませんでした」 「……ひたすら申し訳ない」 「長門さんを責めるつもりはありませんよ 予想しても防げるものではありませんから まさかこれほど複雑な作戦になっているとは 誰も予想できませんでしたからね」 おいちょっと待て古泉 だからと言って何で戦闘になったんだ? ハルヒも言ってただろう? クールなお前が率先して戦い出すなんて 俺にも信じられないぞ 「これは言い訳にまってしまいますが、どうしようもありませんでした 問答無用で周防九曜が攻撃を仕掛けてきたからです 朝比奈さんの裏技がなかったら、朝倉涼子の登場まで持ちこたえられたかどうか」 その朝比奈さんの裏技も解説してくれ 「あの異世界に呼び寄せられてから、僕の能力が発揮できるようになりました つまりあそこも閉鎖空間に近いものがあったのでしょう 朝比奈さんも同様です TPDDの使用制限が解除され、彼女は自由に行動できるようになりました あなたはきっと喜ぶと思いますが、朝比奈さんの活躍は素晴らしいものでした 周防九曜の攻撃が当たる寸前に時間移動を発動して、光線が通過した後にまた元に戻します。それを1秒間に何度も繰り返すのですから、もう奇跡としか思えませんね。藤原氏が漏らしていたのですが、TPDDをあのような戦闘に使用したのはおそらく朝比奈さんが世界で初めてではないかと かくいう僕も何度も時間移動しました 160回目ぐらいまでは数えていたのですが、それからはもう」 お前も余裕があるというのか暇だというのか、ご丁寧なヤツだ 「それを朝比奈さんは長門さんにも自分自身にも発動していたのですから おそらくあの時間だけで千回以上は繰り返していたのではないかと」 俺は朝比奈さんが活躍するシーンを思い浮かべてニヤついていた 「ふぇっ!」とか「わたたっ!」とか叫びながら、必死でこいつらを守っていたのか SOS団専属、いや俺専用の癒しマスコットがそんな活躍をしていたとは 「顔が蒸しすぎた蒸しパンみたいになってますよ」 古泉に言われて慌てて顔を引き締める 何だかこいつもハルヒ流の比喩が使えるようになってきたな 気のせいか、長門の視線までもが冷たく感じるのはなぜだ ん?ちょっと待てよ古泉 朝比奈さんは最後に7億年前に遡ってきたと言わなかったか? 確か4年前より昔には行けないって言ってなかったか? 「僕はそんなものは初めから信用いてはいませんよ 誰が朝比奈みくるの仮説を証明できますか?」 そうか、お前らは一応敵同士でもあるんだな 「別に敵というわけではありませんよ。ただその件に関しては意見を異にしているというだけで 彼女は最初からもっと過去に遡行できたのかもしれませんし、涼宮さんの力が働いたのかもしれません それに出発したのがあの異世界ですから、もしかしたら次元断層を通らずに遡行できたのかもしれません」 ふん、どうとでも都合よく解釈できるってわけか。まさにハルヒさまさまだな 「その件に関しては同行した藤原氏も認めているのですから 間違いなく7億年前に行ったのだと解釈してよろしいんじゃないでしょうか」 まあいいけど、ちゃんと戻って来れたんだからな 「では話を元に戻しましょう その頃あなたは涼宮さんと合流した これが敵の最初の大誤算でしたね」 ああびっくりしたよ全く ハルヒが空から降ってきたんだからな 「あなたを戦闘圏外に拉致し、涼宮さんをあの場から放り出せば向こうは一気に有利になります。まさに森さんに感謝すべきですね」 はいはい くれぐれも森さんや新川さん、多丸兄弟によろしく 「そこでついにジョン・スミス発動ですね」 いや本当はもう少し先延ばしにしたかったんだけどな 佐々木まで出てきたんで仕方がなかった ハルヒにはできないとか脳なしだとか言われて さすがのハルヒが凹んじまったからな 元気を出させるために仕方なくそうした 「すんなり言えたのですか?涼宮さんはすぐに納得したのですか?」 そこはちょっと禁則にしてくれ古泉 いろいろあったからな 突然物が言えなくなったりした 「したんですか?あの時のあれを?」 古泉、頼む 今は言いたくない 「長門さんの前では、でしょう?」 ……禁則だ 「分かりました。それは置いておきましょう 朝倉涼子を呼び出したのは涼宮さんですね?」 それは間違いないと思う 朝倉が自分でそう言ったんだろう? 「ええ、確かに彼女がそう言いました あの時まだ長門さんは封印されていました そして涼宮さんは、朝倉さんとあなたの間にあった事は知らないはずです かくいう僕や朝比奈さんも、朝倉涼子の事はほとんど知りませんからね 涼宮さんはなぜ朝倉さんを呼び出せたのでしょうか?」 おい古泉 お前の誘導尋問にはほとほと飽きた いいからさっさと続けろ 「つまり涼宮さんはあなたの思考を読み取ったのだと思いますよ 手の届かない異世界で、情報統合御思念体すら存在しない世界で 長門さんが動けない状態で周防九曜と互角に戦える存在 あなたの潜在意識のどこかに朝倉涼子の存在を感じたのでしょう 涼宮さんは絶体絶命のピンチの時にあなたを頼っていたのです まさに僕の分析通りでしょう?」」 俺は無意識に古泉の胸ぐらを掴んでいた やめろ古泉 ここでその話をするな 少なくとも、長門の前ではやめろ 「本当にそれでいいのですか?」 古泉が俺の手首を掴んでいた 振りほどこうとしたが無理だった 古泉は盤石の力で、俺を押さえていた 「あなたは少し、自分中心に物事を考え過ぎです それでは悪い状態の時の涼宮さんと同じではないのですか? 全ての人間が、全ての女性が自分を中心に行動しているとでも?」 初めて見る古泉の剣幕に、俺はちょっとひるんでしまった 古泉の目は本気だった ケンカならいつでも受けて立ちますよ そう訴えかける古泉に無謀にも戦いを挑むほど、俺の戦闘経験値は高くはない いや、人生円満が信条だった俺にケンカの経験などあるはずがない 俺が手を放すと、古泉はニヤリと微笑して胸元を整えた 「まあいいでしょう。話を続けます 朝倉涼子の出現で再び戦局が変わりました 実はこの時もかなりのピンチでした 朝比奈さんの裏技を藤原氏が察知してからはね 彼は先を読んで時間移動し、朝比奈さんを混乱させました 藤原氏と周防九曜の間にコミュニケーションがとれていれば、かなりの難敵だったでしょう。つまり、あらかじめ攻撃する相手を決めてから藤原氏が時間移動させる。そして元に戻った直後、朝比奈さんが反応する前に攻撃をかけたら、こっちはお手上げです。守ろうにも相手がいないのですから 僕の能力もあの世界ではかなりパワーアップしていました 周防さんの矢が何本か刺さりましたが、不思議とダメージはありませんでした 朝比奈さんにも何度か命中したように見えたのですが、不思議ですね。彼女が傷ついていたようには思えませんでしかたら」 それはあれだよ古泉くん 朝比奈さんのあの癒しオーラはどんな攻撃も受け付けないって事だ 「ほらまた 長門さんに言いつけますよ」 ぐっ すまん古泉 長門がむっくりと首をもたげ、宙の一点を見つめていた 「朝倉涼子は長門さんを守りながら攻撃もしていました 1年前のあなたの気持が少し分かったような気がしますね 同じTFEI端末でも長門さんとはまるで違っていました やはり彼女は戦う事を楽しんでいるようにも見えましたから 今回の敵でなくて良かったと思いますよ しかし敵もさるものです 周防九曜は第2形態に移行しました それまでは指先から小さな光線を放つだけだったのですが ここに来て髪の毛で槍を作るという攻撃に切り替えてきました その槍が何本も同時に飛んでくるのですから 朝倉涼子の登場で数の上では同等になりましたが、それでも攻勢に転じることはできませんでした 僕は橘京子の相手に精一杯で、朝比奈さんは相変わらず朝比奈さんでした その時あなたは何をしていたのですか?」 ああその頃はたぶん パズルを解いてた 「パズル?」 パズルっていうかクイズだな 算数クイズ そうそう長門さん 俺に問題出す時はこれからは文系問題でお願いしたいのだが おかげで俺はハルヒに説教される始末だったんだぞ 相変わらず宙の一点を見つめていた長門は、UFOキャッチャーのクレーンのようにゆっくりと首を回転させ、ゆっくりと視線を上げた 「……検討する」 「それはもしかして、長門さんが作った鍵だったのですか?」 そうだろ長門? お前が残してくれた抜け道なんだよな 「そう。あなたの知能に合わせてレベルを考慮したつもり」 やれやれ それはどうも痛み入ります ハルヒはすぐに分かって嬉しそうにしてたけどな 俺がなかなか分からないからイライラしてた 何度も頭ペチペチ叩かれて、まだ分からないのかこのバカってな 「こちらが大変な時に、仲むつまじくて結構ですね」 すまん古泉 言い訳のしようがない 「問題を教えてもらえませんか?」 額縁の枠に数字がずらずら書いてあった その数字を読んで、額縁を正しい向きに直すって問題だ 俺は一応あの問題は自力で解けたので、胸を張って古泉に報告した 「それだけですか?」 ああそうだよ古泉くん 「そんな簡単な問題ですか?」 えっ? 「それは小学校低学年レベルでしょう 誰だって3141529の数字を見ればすぐに理解しますよ」 そっそうか? 俺は長門の顔を見た 思いついた時ぐらいしか瞬きをしない長門の目が、俺を蔑んでるような気がした 「………」 まあいいや古泉 話を続けよう 「はいはい 我々は防戦一方でした あなたと涼宮さんが時空の壁を越えてきた事にも気付きませんでした いつあの世界にきたのですか?」 たぶんそれぐらいの時だと思うぞ 俺たちが行った時はもう朝倉がいた お前は赤い光になっていて、朝比奈さんはチカチカ点滅していた 「それは、激しすぎるタイムトラベルのせいでそう見えたのでしょう」 長門はまだ寝ていた 「……」 ハルヒが突入しようとしてバリヤーに体当たりして鼻を思いっきり打った それで手でこじ開けようとしてる時にまた佐々木が現れた 「手で開けたんですか?」 ああハルヒのバカ力だ 封印されてた長門のマンションのバリヤーもハルヒが手でこじ開けた 「実に涼宮さんらしい問題の解決方法ですね」 だけどあっちのバリヤーはそうはいかなかった 佐々木はハルヒに変な霧みたいなのを吹きかけて、ハルヒを無力にさせた 「佐々木さんにそんな能力があったのですか?」 それを俺に聞くな古泉 こっちが聞きたいぐらいなんだからな 「最初に飛び込んできたのはあなた1人でしたね どうやって入ってきたのですか?」 えっと…確か…… 閉じ込められたハルヒがふにゃふにゃ言い出してどうしようもなかったから とりあえず俺が突入した 「全然説明になってませんね。また何かあったのでしょう?」 やれやれ全く 霧みたいなのに包まれて動けなくなったハルヒは、自分の力の無さに悲しんでいた。今まで何も気付かずにごめんとか、助けに行けなくてごめんねとか ぶつぶつ言ってたから俺が突っ込んだ 「もう少し詳しくお願いします」 うるさいな古泉 「僕の詮索好きはとうにご存じのはずです 話せる範囲で構いませんから、お願いします」 ハルヒがそう言って泣き出したんだよ 長門の事も、朝比奈さんの事も、そして古泉、お前たちを助けに行けなくてごめんって、そう言って涙を流していた 「涼宮さんがですか?僕たちのためにそこまで?」 ああそうだよ 鶴屋さんにも森さんにも言われた ハルヒはああ見えてもそんな女なんだ 自分で全ての責任引っかぶってメソメソ泣いてる あんなハルヒは正直見たくなかったね 「そうだったんですか…涼宮さんが…」 古泉はそうつぶやいてそっと目頭を押さえた 塑像のように動かなかった長門すら、前髪を直すふりをして目元に手を当てた 「それであなたは逆上してしまったんですね」 逆上とか言うな古泉 「その先は十分すぎるほど想像できますね めったに見れない涼宮さんの涙を見たあなたは逆上して、佐々木さんに襲いかかった。しかしあっさりとかわされて勢い余ってこちらに突入した」 くっ 言いたくないけどその通りだ 「それだけで通り抜けられるほど弱いバリアーだったとも思えませんけどね 涼宮さんにはできなくてあなたにはできた それももしかすると涼宮さんの力かもしれませんね 自分はできないけど、あなたにならできる。そんな涼宮さんの思いがあなたにバリヤーを通過させた」 ふん 何でも適当に言ってくれ 「後は僕たちも見た世界ですから、飛ばして行きましょう 突入してきたあなたにすぐに周防九曜が反応した 襲いかかる槍にあなたは対処できない」 ああ 悪い事をしちまったぜ まさかあそこで朝倉に助けられるとは思わなかったよ 「朝倉涼子と何か話はしましたか?」 えっと、ごめんねとか、自分の事を悪い思い出にしないでほしいとか言ってた 「あなたはそれを許したのですか?」 許すも許さないも、もう1年も前の話だ それに俺の命を救ってくれたのだから、もうそれでいいだろう 「長門さん?」 「…?」 「朝倉さんとは今も連絡は取れるのですか?」 「……取れていない。あれ以来」 「あれ以来と言うのは1年前からと言うことですか?」 「違う。金曜日の夜以来」 「ほう…これは非常に興味深い」 何が興味深いんだよ古泉 また何かたくらんでるのか? 「いえ、そんな事はありませんよ」 その時突然、ぼんやりした目を宙にさまよわせていた長門が バネ仕掛けのおもちゃのように急に俺に視線を向けた 「……忘れないで」 ああもちろんだとも長門 あいつに助けてもらった恩はずっと忘れない そして・・・お前に助けてもらった事も 「違う。そういう意味ではない」 え? じゃあどういう意味だ長門? 「それは……禁則事項です」 長門が実に珍しく、ボディアクションまでした まさに朝比奈さんの真似をするような動きで、軽く自分の唇に触れ、そして不器用に片目をつぶった 長門?それはいったい? 「いずれ分かる」 古泉がコホンと空咳をした 「さ、さて、話を続けましょうか。そろそろ終盤です 朝倉涼子は消滅しましたが、あなたは無事です オーパーツを持ったあなたに再び周防さんの槍が襲いかかります そして…」 「……」 そこで長門が背筋をピンと伸ばした 胸を張るように、その薄い胸板を突き出している 「……お待たせして申し訳なかった」 「不謹慎ですが、団長がいないので思い切って告白します 長門さんが眠りから覚めた時点で、我々は勝ったと思いましたね。僕らしくない事ですが まだあの時は涼宮さんは登場していませんでしたが、明らかに涼宮さんの力の影響は感じていました。すぐ近くまで来ているのだと確信しました ここからは攻勢だと思ったら、長門さんはバリヤーを強引に突き破って涼宮さんをこちらに引きずり込みました。まさに涼宮さん流です 長門さん?」 「…?」 「眠っていた時の記憶はありますか?」 「ほとんどない」 「少しは?」 「ある」 「目覚めた時に何かを感じましたか?」 「いろいろ」 「それはもしかして、怒りという感情だったのではないですか? 長い時間眠らされていた相手に対する怒りとか?」 「……」 おい古泉 もうやめてやれ 長門の感情を操作しようとするな とにかく目覚めてくれて、助けてくれたんだからそれでいいじゃないか 「もちろんですよ 長門さん、失礼な発言をしてしまいました。お詫びします ただあの強引な涼宮さんの引っ張り方がちょっと不思議だったもので」 「…別にいい」 「これでついにSOS団全員が登場したというわけです それまでは実に厳しい戦いでした モンスターからの先制攻撃でいきなりマホトーンとバシルーラを同時にかけられたようなものですからね」 その例えは実にナイスだぜ古泉 ついでに甘い息と馬車の扉閉めと しかもパーティーに残ったのは盗賊と遊び人だけだ。いやせめて踊り子にしておこうか 「まあいいじゃないですか それにしても最後の涼宮さんの行動には意表を突かれましたね まさか叩かれるとは思いませんでした あなたは涼宮さんが力を自覚して、最初に何をすると思いましたか?」 そうだよそれそれ まさかハルヒが全員を叩くとはな 俺なんか2回もグーで殴られたぞ ハルヒが登場した時、あいつは間違いなく怒りのオーラに満ち溢れていた 俺が今まで見たことないぐらい、怒髪天を衝くってやつだったからな それがいきなり『やめなさい』だったからな 「ええ 僕も一番それを恐れていました その時はもうあなたがジョン・スミスをもう発動していると思っていましたので 開口一番世界を作り直すのではないかと、まさかそこまではしないとも思いましたが あんな結末になるとはね」 ああ あの時は確かに思った さすがは俺たちのSOS団団長だってな 「全くその通りですね 団長の面目躍如です 結局周防九曜と朝倉涼子は除いて、誰1人欠けることなく全員が戻って来れたのですから」 あの新入生もな 「…あの子は帰ってくる」 そうか、そう言ってたな長門 「……」 その時の長門の沈黙の理由は、後で知ることになるのだが それはまた別の話 「長門さん?」 「…?」 「周防九曜の事についてもう少し説明していただけませんか?」 「周防九曜は限りなく異質な存在。我々にも理解できない 天蓋領域がなぜあのようなインターフェイスを送ってきたのかさえ不明 ただし、周防九曜には致命的なエラーがあった」 「エラーですか?」 「そう。周防九曜と天蓋領域の間には永続的な接触手段が存在していない 私や朝倉涼子は常に情報統合思念体と接続している 何らかのアクシデントで仮に接続が断たれた場合のみ 私たちは自分の判断で行動する。でもこれは極めて例外 可及的速やかに情報統合思念体との再コンタクトが要求される でも周防九曜は別 初めに存在条件だけを入力された周防九曜は 全て自分の判断で行動していたものと思われる その間に蓄積された知的経験値やエラーの概要などは天蓋領域には全く伝わっておらず 分析もできなければ修正を施す事もできない 周防九曜はそうして暴走を始めたものと思われる」 すまん長門 覚悟はしていたんだけどやっぱり理解できん 「つまり言いかえるとこういうことですね 現代のGPSと昔の慣性航法の違いのようなものですね?」 おい古泉 お前分かって言ってんのか? 「あなた用に分かりやすく言い換えてるんですよ こういう事です 現在の航空機や船舶その他の交通機関はほとんど全てGPSを使用しています この地球上で自分の位置を知るために衛星からの信号を受信します その位置情報は常に更新されており、誰でも最新の現在位置を知ることができます それが発明されるまではどのような仕組みだったかご存知ですか?」 ああそれは 確か星を見て角度を測って 「それは天測航法ですよ いつの時代の話をしているのですか? それまではジャイロ原理を利用した慣性航法を使用していました 出発前に現在位置を掌握してその情報を入力し、後は移動するたびにジャイロが加速度を検出して現在位置を予想していきます しかしこれはあくまで予想ですから、実際の現在位置とはある程度のずれが出ます 陸上を移動する交通手段とは違って船や航空機ではそれは大きな問題になりました 目的地と実際に到着する場所が数百kmも離れていたなんて、初期の頃にはしょっちゅうあった出来事です つまり周防九曜にインプットされた情報は最初に入力されていたもののみで、長門さんや朝倉さんのように常時アップデートができない環境に置かれていた彼女は、実際のデータと照合してくれる対象がなく、その結果エラーを誘発してしまい、当初の目的の行動にたどり着けなくなってしまったと、こんな感じですか?」 「…かなり近い…補足説明に感謝する」 このあたりで気付くべきだったのかもしれない 俺に対する長門の反応と古泉に対するものが 若干の変化の兆しを見せ始めている事に 「となると天蓋領域もそのままで終わるとは思えませんね長門さん 今回の失敗で学習して、次からはアップデート可能なインターフェイスを用意してくるとか」 「可能性はある」 「対処はできますか?」 「できる。必ずする」 長門 もうちょっと教えてくれ 周防九曜とあの新入生はどうなったんだ? ついでに朝倉涼子も それからあの世界はいったい何だったんだ? 「あの異世界はこちらからは観測不能。実際に存在するものなのかも確認できない 情報統合思念体も困惑している わたしからの誤情報ではないかと懸念している」 だけど朝倉も実際あそこにいたんだし 「あの異世界にいた朝倉涼子と情報統合思念体にいた朝倉涼子は別物 混同はできない」 でも俺を襲った記憶はちゃんと持っていたぞ 「それに関しては涼宮ハルヒの行動を解析するしか方法はない つまり不可能 朝倉涼子がどうなったのかは現在でも不明 この時間平面にも存在していない」 ということはハルヒに呼び出されるまでは存在していたのか? 情報統合思念体の中で? 「そう」 つまり故郷に帰ってたってことだな? 「そう……でもあなたの気分を害すると思ったので報告しなかった」 俺に気を使ってくれたのか 小さな頭がコクリとうなずく 「朝倉涼子は消滅してはいない。私はそう信じる」 またひょっこり情報統合思念体に帰ってくると 「…………」 長門の沈黙はいつもより長く続いた 俺は話題を変えた方がいいと思った じゃ、じゃああの新入生と周防九曜は? 「新入生はまだあの世界にいる。しかし彼女は困惑している 涼宮ハルヒはオーパーツを彼女に渡すべきだった しかし涼宮ハルヒがそれを持って帰ってきてしまったので 彼女は自分の世界を再生する事ができず また自力ではこの世界に来ることができない あの時の涼宮ハルヒの行動は全く意味不明 分かりやすく言うと、ただの新入生いじめ」 長門にしては分かりやすい比喩表現だが ということは向こうで周防と一緒に暮らしている可能性もあるっていう事か? 「その可能性はない。周防九曜は消滅した」 消滅? 「そう。暴走した周防九曜は非常に危険な存在。だから私が殺した」 長門さん、良い子も見てる可能性がありますから あまり暴力的な表現は自粛しましょうね 「私が息の根を止めた」 おい長門 「首をへし折って殺した」 …… 「いかなる高度な生命体でも、たとえ人工生命体であっても、情報の処理器官である脳との伝達器官を遮断されると生命維持機能は停止する。それはわたしも同じ。 周防九曜を生かしたまま、あの場所に放置するわけにはいかなかった だから首をへし折って息の根を止めた あの場所では天蓋領域が情報を回収することもできない よって、周防九曜は完全に消滅した」 俺はその時、長門がとてもダークな存在に見えた 古泉までもが口をパクパクさせている 長門・・・ お前もしかして…やっぱり怒ってたのか? 「……私にも……少しぐらいのプライドはある」 分かったぞ長門 何か言われたんだなあいつに 「………そう」 それは…やっぱり禁則なんだろうな 「その通り」 分かりました 長門が怒ったシーンは今までに何度か見たことはある しかし、普段面倒がって言葉にする事の少ない長門がこれほどまでに口汚く罵るとは、周防九曜はいったい何を言って長門をここまで怒らせたのだろうか いつか長門さんのご機嫌が最高にいい時があれば、後学のためにぜひご教授願いたいものだ かなり長い間話しているうちにもう空がうっすら明るくなっていた やばいなこれは せっかくたっぷり眠ったのにこれじゃまた寝不足だ 少しでも寝ておかないと 話も終わりが見えてきたので俺は立ち上がった じゃあな古泉 「ご苦労様でした 長々とお引き止めして申し訳ないです」 いいってことよ いろいろ聞けてよかった 「こちらこそ。涼宮さんがどれだけ僕たちの事を真剣に考えていて下さっていたのかが分かりましたから。ちょっと涙ぐんでしまいました」 それはよかった 長門・・・いろいろありがとう また命を助けてもらったな 「こちらこそ面倒をかけた」 えっと、その…… 済まなかった 「……さようなら」 長門… 「…わたしは大丈夫」 そうか じゃあまた明日、っていうか今日か また部室でな 俺は古泉と長門に別れを告げ、自転車にまたがった ひんやりした夜の空気が顔の前を流れて過ぎていく 自分の取った行動に後悔なんかはしていないけど 長門の寂しそうな表情をこれ以上見ていられなかった でももう一言だけ、言いたい言葉があった さようならの意味が知りたかった リンク名 その5に続く