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峠山 左右太 更新日:2019/12/20 Fri 13 20 33 タグ一覧 創作注意事項 ネタやパロディOK。 各種創作に自由に使ってOK カラーや服装のアレンジ可。 目次 プロフィール 人物像 容貌・服装 各作品での活躍登場作品名 関連人物家族 描いていただいたイラスト プロフィール 本名 峠山左右太(たおやま そうた) 年齢 20代(外見) 誕生日 9月9日 身長 179cm 一人称 俺 二人称 お前、呼び捨て 好きなもの 研究、凹 嫌いなもの 威張っている奴ら 趣味 兵器を造って破壊活動をする。 人物像 容貌・服装 各作品での活躍 登場作品名 関連人物 家族 峠山 凹 描いていただいたイラスト
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音羽 初 貰い物イラスト集 フォロワーの方から貰った音羽 初ちゃんのイラストを紹介しています。描いて下さりありがとうございます! ぐれあさん(@gudamach97)から あどそんさん(@Adoson_Flash)から 蟹乃むらサメさん(@319Tk)から Kの⑨番さん(@k9_1445)から ライジングさん(@RisingsunUltima)から 亀甲鷲さん(@Hexagon_Falcon)から るっちさん(@kakinokileo)から ユキナさん(@o0Z6x5BGZOBry8r)から じごくほうさん(@fire_storm1000F)から 奇桜八重さん(@yae4392)から KMDさん(@KMD20896287)から シヴァ化け猫さん(@shivabakeneko)から 平坂よみさん(@yomotsu0925)から アボりんさん(@aborin_rider_gl)から
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更新日:2019/11/21 Thu 18 04 04 タグ一覧 テスト ↑タグ一覧 には編集画面内にある『タグ』項目の内容が反映されるよ アットウィキなんか見るだけで使ったのなんか初めてじゃけみんなで練習しよな 各種プラグインをコピペして自分のページに使おう! プレビュー画面でどう表示されるかチェックだ!! あいう あ い 文字の上に線を引く 表示される文字(ルビとして表示される文字) 11-1 1-2 +押すと開く折り畳み表示1 あ い う 押すと開く折り畳み表示2 あ ああ その他詳しい事は@wikiの利用ガイドをチェックだ!!
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ここに作品タイトル等を記入 更新日:2022/08/08 Mon 23 18 43NEW! タグ一覧 セブンスカラー 「なんで、火元さんがここに…?」 ニコニコしながらこちらを見る火元。しかし彼女のまとう雰囲気はいつものふわふわとしたものとは違い、何処か気持ちの悪い圧迫感を感じさせるようなものに変わっている。 そして火元がこちらに歩いて近づこうとすると、チャキッ…という音と共に赤羽が刀を彼女に突きつけ、尋ねる。 「……貴方は誰?」 「えー、ひどいなぁ赤羽ちゃん。私は私だよ。」 「……私の“眼”を甘く見ないで。出てきなさい。」 赤羽の右眼、“サダルメリクの瞳”がギョロリと三つの眼を火元に向ける。 それを見た火元の顔から表情が消える。そして、何処からともなく別の女性の笑い声が響く。 「は、はははは。ははははははははは!流石はサダルメリクの瞳。私の術も見破っちゃうか!」 「…やっぱり、誰かいる!」 赤羽がそう言い、気配を探ろうとした瞬間、四方から噴き出した水が龍香達を包み込む。 「な、何!?」 「水!?」 そしてその水は意志があるかのように蠢き、龍香達を覆い球のような形になる。 それがバシャァッと音を立てて崩れると、そこに龍香達の姿は無かった。 それを見た何者かはフフッと笑うと。 「へぇ……君まで裏切るんだ。」 そう言って笑い声だけ残しながらその場から消えた。 「うわっ。」 突然水のカーテンに覆われ、それが途切れたかと思ったらそこは格納庫ではなく、何処かの森の中だった。 「一体何がどうなってんのよ。ラスボスは倒したんじゃないの?」 ぶつくさと雪花が文句を言う。全員が何がどうなっているのか困惑していると。 「貴方達!」 「全員無事だったのね!」 「山形さん?」 「風見!」 山形と風見が走って近づいてくる。 「無事で良かったワ!!心配したんだからネ!」 「あだだだ!ちょっと!こっちは怪我してんだか…ら?」 風見に抱きしめられた雪花が抗議の声を上げて、気づく。 「怪我が…無くなってる?」 「え?あ、ホントだ。」 見れば全員の傷が治癒されていた。全員がマジマジと身体の各部を見ていると。 「……それは俺が治したからだ。」 その声に龍香はドキッとする。その声の主の方に目をやると、そこには青紫色の髪を後ろで一つに束ねた線の細い青年、龍斗がいた。 「龍斗…お兄ちゃん…。」 龍香がそう呟いた瞬間雪花が龍香を庇うように前に出て、龍斗に銃口を向ける。 「……今さら何の用?て言うかよく顔を出せたわね?」 「………。」 「雪花ちゃん。別に私は気にして……」 「龍香がなんて言ってもアンタが龍香にしたこと。私許すつもりはないんだけど。あんたのせいでここにいる全員に迷惑がかかってんのよ?」 龍香がやめさせようとしても、雪花は引き下がらない。龍斗は向けられる銃口を一瞥して、龍香をジッと見つめると、スッと膝をつき──そのまま頭を下げた。 「えっ」 「……すまなかった。」 土下座をする彼を見て、龍香と龍賢は複雑な表情になる。 「龍斗……。」 「……許してくれとは言わない。俺はそれだけのことを君達にした。俺の愚かな行為がどれだけ君達を傷つけたのか……。如何なる報いも受ける。……ただ、せめて君達に謝りたい。本当に……すまなかった…。」 土下座までしてこの場にいる全員に謝罪する龍斗に龍香は歩み寄る。雪花は一瞬止めようとしたが、黒鳥に遮られ、首を振る彼女を見て立ち止まる。 龍賢も彼に歩み寄り、二人は頭を下げる龍斗の肩に手を置く。 「…顔を上げて、お兄ちゃん。」 「……お前のやったことは到底許されることじゃない。お前の行いで家族を、仲間を失った人達だっている。」 「………。」 俯く龍斗の腕を抱えて二人が彼を立たせる。 「だがお前が心からそのことを悔い、反省するなら……俺達は、もう一度家族としてやり直せるハズだ。」 「……」 「もう、騙されたりしないでね。」 龍賢と龍香の言葉に龍斗は肩を震わせる。二人が龍斗を慰めていると、ツカツカと雪花が龍斗に近づき……思いっきり彼の溝打ちに拳を叩き込む。 「ぐぉっ」 「ゆ、雪花ちゃん!?」 結構良いのが入ったらしくうずくまる龍斗。雪花はそんな彼を見下ろしながら。 「……龍香達がそう言うなら、それに免じてこれで手打ちにしてあげる。皆それでいいでしょ?」 雪花の言葉に全員は、頷いて肯定の意を示す。どうやら雪花なりに皆の龍斗にに対する不信感への気遣いらしい。 「言っとくけど次やったらマジで容赦しないから。」 「……肝に命じる…。」 そう吐き捨てる彼女を見ながら龍香に龍斗は。 「……随分と、強い友人を…持ったな…」 「え、あうん……っていうか大丈夫お兄ちゃん?」 「あぁ…。」 《いや、つーかなんでコイツアルレシャの技使えてんだよ。あの時分離したろ。》 トゥバンが何故アルレシャがいないのに変身出来るのか尋ねると龍斗は立ち上がりながら答える。 「…俺はあの時アルレシャとかなり深く融合していた。…その結果、龍賢に分離されたがどうやらある程度の力は俺に残存したらしい。」 《どうりでアイツの気配を感じねー訳だ。》 龍斗の言葉にトゥバンはあー、と納得する。だが、それよりも龍香達は気になる事があった。 「カノープス。さっきやたらと“アイツ”?とかに警戒してたけど誰なの?なんか知っているみたいだけど。」 「と言うか何故あそこに火元さんが?林張さんもいないし。二人は何処へ…?」 《それは…》 カノープスが龍香達に言おうとしたその時だった。 「それは私が答えてあげましょうか。」 またもや先程聞こえてきた女性と同じ声がした。全員がその方に視線を向けると、そこには火元と林張、さらに海原までもがそこにいた。 「火元、林張?」 「それに、海原さんまで、なんで……」 三人とも目に妙な光を輝かせている。そして林張の口が開いたかと思うとそこから女性の声がする。 「私こそが“真にシードゥスを統治する者”よ。つまり、私を倒さないと永遠にこの戦いは終わらない。」 「はっ、その統治するシードゥスがいなくなったんじゃ世話ないけど。」 赤羽が吐き捨てるように言うが、女性はククッと笑い。 「確かに。貴方達のせいでシードゥスはいなくなった。“けどいないなら新しく作れば良いじゃない”。」 次の瞬間、海原達三人が苦しそうに呻く。それを見た龍斗が血相を変えて叫ぶ。 「──待て、それはやめろ!!」 だがその叫びも虚しく突然ドロドロと彼らの肉体が溶けてまるで繭のような形に作り変えられていく。 仲間のあまりに凄惨な変貌に皆顔を青ざめさせ、絶句する。そして繭にピシリと亀裂が入ったかと中から異形の怪物達がその姿を現す。 黒い牛の様な意匠の鎧騎士、甲殻類を思わせる装甲に身を包んだ怪物、頭に天秤をくっつけた道化師を思わせる彼らの姿を見た全員が息を呑む中、トゥバンが叫ぶ。 《龍賢!!来るぞ!》 「!」 その言葉に反応した龍賢は即座にトゥバンと融合した姿に変貌すると襲い掛かってきた牛の怪物……アルデバランの槍を剣で受け止める。 だが横をすり抜け襲いかかってきた怪物に対し、一瞬反応が遅れた龍香達に残る二体…蟹の怪物アクベンスと道化師ゲヌビが襲い掛かってる。 だがその攻撃も横から傷だらけの魚のような怪物に変貌した龍斗がゲヌビを蹴り飛ばし、アクベンスと取っ組み合いになることで防がれる。 「お兄ちゃ……」 「変身しろ龍香!コイツらはもう……お前らの知っている仲間じゃない!」 龍斗の叫びに全員が悔しそうに顔を歪める。彼の言う通り、目の前の怪物達からは本来の彼女達の温かみを、雰囲気も何も感じない。仲間を怪物に変貌させられた怒りのあまり、雪花が叫ぶ。 「出てこいクソ野郎!!火元を、林張達をこんな風にして!コソコソ隠れてるんじゃないわよ!!」 雪花がそう叫ぶとまたもや笑い声が聞こえる。 「ふふふ。せっかちさんね。そんなに言わなくても出て来てあげるわ。」 すると森の闇から滲み出る様に一人の女性が姿を現す。青紫色の長い髪に翡翠色の瞳。身体の線は細く、その顔には柔和な微笑みを浮かべいるが、彼女が纏う雰囲気はあまりにも歪でおどろおどろしかった。 「うふふ。久しぶりね。龍賢、龍斗。」 現れたその女性の姿を見た龍賢は驚いて目を丸くする。 「なっ……何故貴方が生きて…!?」 「知り合いなのか?」 月乃助の問いに冷や汗を浮かべながら龍賢は答える。 「……紫水龍姫(しすい りゅうき)。……龍斗の姉だ。」 「え!?」 まさかの事実に龍香は驚きを隠せない龍香。一方当の彼女は相変わらずクスクスと笑いながら言う。 「まぁ、そうね。貴方は私の顔を知らないわよね。丁度生まれる前に私はいなくなったし。」 龍姫がクスクスと笑っていると一発の銃声が響く。驚いた全員が銃声がした方を見ると、そこには憎悪と怒りで見たこともない鬼のような形相をしている山形の姿があった。 しかし放たれた弾丸はいつの間にか彼女のそばにいたゲヌビが手に持つ錫杖によって弾かれる。 「やぁだ。いきなり撃つなんて、乱暴な人ね。」 おぉ怖い怖いと戯けたように言う彼女に山形は銃を握る手に力を入れる。 「……貴方が龍賢君達の親族だろうと関係ない。私の部下達をよくも…!!」 「んー、良い殺気。貴方もシードゥスになってみる?もしかしたら私に一発入れる事が出来るかもよ?」 だがそんな怒気に当てられても龍姫の態度は揺らぐことはない。 「姉さん、何故だ!?何故こんなことを貴方が!?いや、そもそも何で貴方がシードゥスのボスに…!?」 龍賢は一度アルデバランに蹴りを入れて無理矢理引き剥がすと、龍姫に近づこうとする。 しかしそんな龍賢を龍斗が止める。 「よせ!迂闊に近寄るな!あの人はもう俺達が知っている“姉さん”じゃない!」 「あら酷い。お姉ちゃんにそんなことを言うなんて。お姉ちゃん悲しいわ。悲しくて……」 龍姫の目に十字の光が妖しく灯る。 「“殺したくなっちゃう”。」 次の瞬間何処からともなく飛んできた十字の光の刃が二人に襲いかかる。 龍賢と龍斗はそれに素早く反応すると、それぞれの武器でその攻撃を弾く。 「お兄ちゃ…」 「お前らっ!ボサッと見てないで全員変身しろ!」 龍斗が叫ぶと、全員がハッと我に戻り即座に変身する。 「山形さん。悔しいですが風見さんと一旦引いて下さい…!」 「司令。今、私達に出来ることはないわ。悔しいけどここは一旦下がりましょう。」 「……ッ!…分かったわ。皆、気をつけて。」 黒鳥の提案で山形と風見は一時的にここから離れる。 離れたのを確認すると全員武器を構える。 「なんだか知らないけど…つまりアイツを倒せばこの戦いは今度こそ終わるってことね。」 赤羽がそう呟く。その言葉に全員が殺気立つ中、龍香はカノープスに尋ねる。 「カノープス。アイツ、ってその、お姉さんのこと?」 《……あぁ。思い出した。十二年前、龍那が戦ったのはプロウフと……アイツだ。》 「お母さんが!?」 龍香が視線を龍姫に向けると、龍姫も龍香に視線を向ける。龍香を見た彼女はニコリと笑みを浮かべる。 「……その髪色、髪型。その翡翠の瞳。あの女を思い出すわ……私を14年間もまともに動けない程の致命傷を負わせた、あの忌々しい女に、ね。……アンタの母親さえいなければ私がシードゥス達を全員殺して新世界を創造する燃料にしてたのに。治療に時間をかけさせられて……ホント。殺したくなるわ。」 そう言うと龍姫が右手を翳す。すると彼女の目の前に十字の光の意匠が施された杖が現れ、彼女がその杖を手に取るとその身体を眩い光が包み込む。 「!」 あまりの眩しさに目を背ける龍香達。光が収まると、そこには身体中に十字の瞳をあしらった鎧と扇状の冠を被ったまさに古代の為政者かのような姿をした龍姫の姿があった。ギョロギョロと鎧の瞳が龍香達を観察するように見つめる。 「私こそが最強にしてシードゥスの頂点。さぁ、頭を垂れ、私に跪きなさい。」 龍姫の放つ威圧感は凄まじく、思わず気圧されるがそれでも全員武器を構えて彼女と相対する構えを見せる。 すると彼女はふーん、とつまらなそうなものを見る目をして。 「ま、いいや。素直に従うとは思ってなかったし。ならちょっと痛い目見て貰おうかしら。」 そう言うと龍姫の姿がフッと消える。そして次の瞬間赤羽の目前に彼女が現れる。 「ッ!」 「その“サダルメリクの瞳”。返して貰うわよ。」 振り下ろされた杖の先端から十字状の光の刃が形成され、赤羽に襲いかかる。 だがそれより先に間に割って入った龍斗がその杖を受け止める。 「えっ。」 「気をつけろ!彼女の狙いは君のその“サダルメリクの瞳”だ!それが彼女の手に渡ることは絶対に阻止しなければならない!」 「余計なことをペラペラ言わなくていいの。」 龍姫はそう言うと邪魔な龍斗を排除しようと杖を振るう。しかしそこに龍賢が割って入る。 「あら、貴方まで邪魔するの?」 「…今の貴方は姉じゃない。倒すべき敵だ!」 「言うじゃない。」 「赤羽を全力で守るのよ!」 龍賢と龍斗が龍姫を抑えている間に黒鳥がそう指示を飛ばし、全員が赤羽の所へ行こうとした瞬間、アルデバランが黒鳥に、アクベンスが雪花に、ゲヌビが龍香に襲い掛かってる。 「ぐっ!海原さん!」 「林張!このっ、バカ!」 「火元さん!待って!」 攻撃を回避しながら怪物達に反撃しようとするが、元の姿がチラつき全員が攻撃を躊躇ってしまう。 その躊躇いが隙となり、雪花はアクベンスにナイフを叩き落とされてしまう。 「しまっ」 アクベンスが雪花に鋏を振り下ろし、思わず雪花が目を閉じた瞬間。 「とぉーっ!!」 空中から物凄い勢いで月乃助が飛び蹴りをアクベンスにかます。 突然の不意打ちでアクベンスは体勢を崩しよろめく。その瞬間月乃助は腰から雪花と同じタイプのナイフ型の投擲装甲炸裂弾“シャハル”を取り出し、アクベンスの装甲の隙間に無理矢理捩じ込むように突き刺す。 「伏せろッ!」 そして雪花を抱えるようにして月乃助が地面に伏せる。次の瞬間“シャハル”が炸裂し、アクベンスの身体が弾ける。 血と肉を撒き散らしながらも、まだ動く彼に立ち上がった月乃助が銃を突きつける。 「……すまない。」 そう小声で呟いて、月乃助は引き金を引き絞る。次の瞬間放たれた弾丸がアクベンスの頭部を吹き飛ばす。 命を絶たれ、爆発するアクベンスを見て雪花は唖然としていたがハッと我に帰ると月乃助の掴み掛かる。 「なんで、相手は林張なのに!なんで!?」 だが月乃助は逆に雪花の胸ぐらを掴むといつもの飄々とした態度からは想像出来ない程の剣幕で怒鳴る。 「アレはもう彼ではない!!君も気づいているだろう!?彼はもう死んでいた!それともこれ以上彼を苦しめれば良かったのか!?」 「それは……ッ」 月乃助の言葉に雪花は言葉に詰まる。何も言い返せず黙る彼女に月乃助は。 「残酷かもしれないが、君達がやらないなら私が残る二人を殺す。これ以上彼らの尊厳を貶める訳にはいかない。」 《酷いことを言っているとは重々承知だ。すまないが分かってくれ。》 そう言うと月乃助は武器を構える。だが彼女の言葉も事実だ。 《……龍香。ピーコックの言う通りだ。そこに奴らはいないんだ。…せめてもう楽にしてやってくれ。》 カノープスの言葉に龍香は俯く。そうしている間にもゲヌビが錫杖を振り上げて龍香へと振るう。 その攻撃に、以前の彼女のような優しさも。緩い雰囲気も、彼女の何もかもを感じ取ることは出来なかった。 龍香は涙を流しながら七つの虹彩と共に“ティラノカラー•コンクエスター”になるとゲヌビの攻撃を片腕で受け止める。 そして“タイラント•アックス”を出現させると思い切り振り下ろし、ゲヌビを切り裂く。 「……ごめんなさい。」 鮮血を散らし、怯むゲヌビの隙をつき、首元に刃をあてがうと思い切り振り抜いた。 やるせなさと悲しみで目を瞑る龍香の後ろでゲヌビの身体が倒れ、爆発が巻き起こる。 黒鳥はそれを見て、覚悟を決めたのかアルデバランが突き出す槍を回避すると空中で怪物のような形態になり、翼をしならせて羽ばたく。 そこから放たれた竜巻のような暴風がアルデバランに炸裂し、大きく上空へと彼の身体を巻き上げる。 そして黒鳥は全身に纏った雷を嘴の一点に集中させアルデバランへと向かっていく。 そしてその一撃が彼を捉える寸前、一瞬目の前の怪物に彼の姿が重なる。 (……海原さん。貴方のこと、私。一生忘れません。) 黒鳥の一撃が彼の身体を貫く。彼女の背で起きた爆発が彼女の背に熱を灯す。 何も出来ない悔しさと虚しさとやるせなさに黒鳥の目から涙が溢れる。 三つの爆発を見た龍姫は露骨に不機嫌そうに口を尖らせると。 「あら、もうやられちゃったの?使えないわね。」 そうぼやく。その言葉が龍賢の心に怒りの炎を灯す。龍賢が怒気と共に振るう一撃が彼女の杖とぶつかり、一層けたたましい音が鳴り響く。 「あら?怒っちゃった?」 「……いくら貴方と言えども。これ以上の蛮行は許す訳にはいかない!!」 龍賢が槍を振るい、その怒りの一撃の勢いの衝撃を逃すために、一旦上で受け止めながらも龍姫は後ろへと跳ぶ。だが龍賢の背から隙間を縫うような正確無比な水の矢が飛んでくる。 しかしその矢は龍姫に届くことは無かった。 「征服王の星剣《アデランダード•エストレラ•エスパーダ》」 彼女の前に現れた三つの十字の光を放つ物体が彼女の盾となり、その身を守る。 しかもそれだけではなく、その物体は光の刃を纏いながら龍賢と龍斗へと向かっていく。 「!!」 咄嗟に龍斗が水の壁を作り出し、防ごうとするがその刃は一瞬拮抗した…と思った瞬間その壁を貫き、二人に襲い掛かる。 「うおおおおお!!?」 その攻撃に二人が怯んだ瞬間、切り裂かれた水の壁を突き破り、龍姫が突っ込んでくる。 「させるかっ!」 突き出された杖を龍斗が受け止める。それを見た龍香達が加勢しようとするが、三つの光の刃が縦横無尽に飛び回り、龍香達を足止めする。 「龍斗。まだ私の邪魔をするつもりかしら?」 「あぁ。悪いけどこれが俺なりのケジメだ。」 龍斗がそう言うが、龍姫はフッと鼻で笑うと。 「全く……まだ私に操られて馬鹿やってた方が余程可愛げがあったのに。」 「……何?」 龍姫の言葉に龍賢が反応する。龍姫は龍斗に足払いをかけて地面に転がすとその腹に杖の柄頭を叩きつける。 「うごぉっ!」 「そうね。言ってなかったわね。龍斗は私が操っていたの。何せ貴方への怨みと自責の念で心が揺れていたからね。だからその隙をついてちょちょっと心を弄ったのよ。まぁ正しくは催眠状態にしたって感じかしら。ま、おかげで火元って女と龍斗で“新月”を内部から弄りまわせたからそこだけは褒めてあげる。」 《!…ってことは内通者は…!》 カノープスの言葉にニヤリと龍姫は笑う。 「そう。私のお人形になった龍斗と火元。楽しかったわ。シードゥスはプロウフが操り、私は“新月”を操る。そうやってパワーバランスを操作しながら私達の計画のためにシードゥスを倒させる。お陰で計画成就まであと一歩よ。」 「!!」 龍賢が槍を振るうが龍姫はそれを軽々と受け止める。そして次の瞬間その姿が光となって消える。 光は龍姫が配置した十字の刃の軌道をなぞるように移動すると、いきなりに雪花の前に現れる。 「!」 「まずは弱そうなのから。」 龍姫が杖を振るう。雪花は拾い上げたナイフで受け止めるようとするが、何かに気づいた赤羽が血相を変えて雪花に足払いをして彼女を転ばせる。 「きゃっ!?何を」 雪花が抗議しようとすると、“目に見える杖”より下にあるハズの雪花の髪の毛が一部切り裂かれる。 「なっ」 「流石サダルメリクの瞳。私の技を見抜いたのね?」 「私の“眼”に小細工は通じない!」 そう叫ぶと腰から抜いた小刀を龍姫に向かって突き出す。 しかし龍姫はその差し出された腕を掴むと、捻りあげる。 「ぐぅっ……!!」 「確かに。貴方には私の光の屈折を利用した技は通じない。けどね。貴方と私じゃ戦いにならないのよ?」 「黙れっ!!」 赤羽はそう言うともう片方の拳に握りしめた小型の暗器を繰り出す。しかし龍姫は彼女の腕を引っ張って姿勢を崩すことで攻撃を失敗させると蹴りを叩き込む。 「うあっ!」 「赤羽!!」 「赤羽君は下がっていたまえ!」 《これ以上貴様の好きにはさせない!!》 蹴り飛ばされた赤羽と変わるように月乃助、雪花、黒鳥が三方向から仕掛ける。 「ふん……」 しかし龍姫はまるで最初から全て見えているように、身体を反らせて三方向からの攻撃を回避する。 「んなっ」 「私には全てが視えている!!」 そう言って笑うと杖を振るい黒鳥を打ちのめし、雪花を蹴り飛ばす。そして月乃助に三つの光の刃が襲い掛かる。 「くっ!」 月乃助はそれを空中へと上昇して回避する。 「たぁっ!」 「おっと。」 “タイラント•ブレイド”を龍香は龍姫に向けて振り下ろす。これを龍姫は杖で受け止める。 だがその振り下ろされた一撃は重く、龍姫が立つ地面に蜘蛛の巣状の亀裂が入る。 「……!なんつー、バカヂカラ。」 「フッ!」 さらに龍香は彼女を蹴りつける。それを龍姫は杖で防御するが大きく脚で地面に線を引きながら後退させられる。 さらに龍香は左手に構えた“フォノンシューター”から音波の一撃を発射する。 だがその弾丸は龍姫に届く前に三つの光の刃が連結し、盾となることで防がれる。 「流石プロウフを倒しただけはあるわ。この私とここまで張り合えるとは。」 ニヤリと笑うがその左右から龍斗と龍賢がそれぞれの武器を彼女に突き出す。それをも彼女は軽く避けるが、さらに月乃助と黒鳥、雪花、赤羽の援護射撃が彼女に襲い掛かる。 「チッ」 龍姫は舌打ちすると杖を回転させてその攻撃を弾く。 「休ませるな!数の利を活かせば勝てる!」 龍賢の指示通りに波状攻撃を仕掛ける為、龍香達が龍姫に迫る。 だが龍姫はフゥとため息をつくと。 「はぁ。そうね。そろそろ遊びもここまでにして、“本気”、出しちゃおうかな。」 そう龍姫が言うと彼女の鎧の眼がギョロリと見開き光を帯びる。それを見た龍斗が青ざめ、叫ぶ。 「全員!!眼を閉じろ!!」 《龍香、盾を──》 「は?」 「もう、遅い──征服王ノ威光《アデランダード•エル•マジェスティ》」 次の瞬間龍姫から眩い光が放たれる。 「な、何?この光は?」 あまりの眩しさに思わず龍香達が手で眼を覆おうしたその時だった。 「あ、れ?」 「ど、どういうことだ?」 ガクリと全身から力が抜けて、龍香達は膝をつく。意識はあるのに身体が動かない。力を込めようとしても身体に力が入る感覚がない。 「なんだ、これは?」 「んふふ。どうかしらこの技は。この光を見た者は私の前に首を垂れてひれ伏すのよ?」 勝ち誇ったかのように龍姫が邪悪な笑みを浮かべ、この場にいる全員を見下ろす。 「なんて、インチキ…!」 「ふふ。」 悔しげに呻く雪花を見下しながら龍姫はカァンと柄頭で地面を叩く。 「動けない貴方達をこのまま嬲り殺しても良いけど、私は寛大だから選択肢をあげる。」 《なんだと?》 「私達がある程度操作したとは言え、プロウフ達を倒した実力があることに免じて──私に従うか、死か。選ばせてあげる。」 服従か、死か。究極の二択が突きつけられる。 (んなもん、まっぴらごめんよ!) (けど、全く動けない以上はどうしようも……) (適当に話を合わせて、ここは…) 初めからあってないような選択肢に全員苦渋の顔を浮かべる。従うなどまっぴらごめんだが、このままでは全員がやられてしまう。 龍姫はそんな彼女達の様子を面白そうに見ながら龍賢に目を向ける。 「さ。どうするのかしら龍賢。年長者の貴方に全ての決断を委ねるわ。」 「……あぁ。確かに貴方の実力は分かった。すごい力を持っていることも。……だから、俺は貴方にこう言おう。」 龍賢は龍姫に対して、俯いたまま言う。 「“そんな提案、クソくらえだ。アンタに従うなんて死んでもやだね。”」 「な、に?」 まさかの拒絶に、龍香達どころか龍姫まで面食らう。 「……そもそもこんな提案、呑んだ所で確実に俺達が助かる保証もない。貴方が欲しいのは俺たちの“力”。何でも言うことを聞く人形が欲しいだけだ。そんな奴の言うことを誰が信じる?誰がついていこうなんて考える?」 龍賢の言葉に龍姫のこめかみに青筋が浮かぶ。さらに龍賢は彼女に強く出る。 「そうやって首元にナイフを突きつけなければ他人を従えることが出来ない卑怯者の提案など、呑む道理はない!」 「そう…残念ね。貴方はもうちょっと賢いと思ってたんだけど!!」 龍姫が杖の光の刃を龍賢に向けて振り下ろした瞬間──龍賢の片目が紫色に染まり、“立ち上がって”その一撃を回避すると槍を彼女に向かって突き出す。 「なに!?」 《ちぃっ、外したか!!》 まさか動けるとは思っていなかった龍姫の反応が一瞬遅れ、槍の切先がその頬を掠める。 紫に染まる彼の瞳を見て龍姫は察する。 (ぐっ、コイツ、シードゥスに意識の主導権を渡して私の光の効果を無理矢理上書きした──!!) さらに龍賢に続き、龍斗が腕を振るって水の刃を発射し、赤羽も“椿”を抜くと彼女に向かって投げつける。 その攻撃を三つの光の刃を盾にして防ぎながら彼女は舌打ちをする。 「チッ、アンタ達もか!」 「アンタのそれは読めていた!だから俺は眼に水で特殊なフィルターをかけていたんだ!!」 龍賢と龍斗が彼女を抑えている間に赤羽は腕のアンカーを射出すると雪花と龍香に巻きつけてポイっと放り投げる。 「おわっ!?」 「きゃっ」 「戦えない連中がここにいても邪魔よ。どいてなさい。」 「……面目ない。」 「くっ。辛辣だがごもっとも!!」 《仕方あるまい事実だ。》 ピーコックも動けるようで月乃助と黒鳥を離れた所に運ぶ。そんな動くピーコックを見て、ふとカノープスが尋ねる。 《…待て、なんでお前動けるんだ。》 カノープスがピーコックを見て尋ねる。龍賢はトゥバンに意識を切り替えた。赤羽と龍斗はそれぞれ特殊なフィルターと“サダルメリクの瞳”で無効化した。 だがピーコックは特に何もしていないのに動けている。 《む。確かに。…何故私は動けている?機械だからか?》 「いや、知らないわよ……」 「……機械、人間、光……意識の切り替え…認識……」 頭に疑問符を浮かべるピーコックに雪花がジト目で言う。だが月乃助は何か思いついたのかぶつくさと何かを呟き始める。 《よく分からんが、とにかく今は龍姫を倒すことが先決だ。彼らの援護に私は向かう!》 そう言うとピーコックは翼を翻し、龍姫へと向かっていく。 龍賢達が苛烈に攻め立てるが、龍姫もすぐに持ち直し、三対一にも関わらず互角以上に渡り合う。 「チッ、普通私の光を浴びれば終わりなんだけど……伊達にここまで生き延びちゃいないってことかしら。」 《チッ、オイコイツ強いぞ!》 「くっ、三人でも攻めきれないのか!?」 「フッ!」 小刀を振るう赤羽の一撃を龍姫は屈んでかわし、続く龍斗の攻撃を後ろへと跳んで避ける。 龍斗が追撃しようとするが、どこからともなく飛んできた三つの光刃がそれを阻む。 「亡縛水柱!!」 龍斗が地面に手を触れると、龍姫の周りからしなるように水の柱が現れ、彼女を拘束しようと四方から襲い掛かる。 「面倒な技を。」 龍姫はそう言うと左手を前に翳す。するとピキリ、空気が冷え込む。そして次の瞬間四方から襲い掛かる水柱が一瞬で凍りつく。 「何ッ!?」 《おいおい、この技は……!!》 まさかの反撃に全員が驚く。そんな彼らに龍姫はニヤリと笑みを浮かべて左腕をチラつかせる。 「どう?アンタの母親に左腕をぶった斬られたからプロウフから移植したの。おかげでちょっと不細工になったけど。」 《!プロウフに左腕が無かったのはお前に移植したからだったのか?》 トゥバンの問いに龍姫はフフッと笑う。 「そうよ。痛かったわ。彼はギリギリまで私の存在を隠すつもりだったし、貴方達とシードゥスを戦わせるための動けない理由作りにちょっとね。」 「……全て、貴方のシナリオ通りと言う訳ですか。」 龍賢の言葉に龍姫は首を振り。 「いや?それ以降も大分修正を余儀なくさせられたわ。貴方達とシードゥスを争わせて、死んだシードゥス達からエネルギーを回収するのも、レグルスが暴走して“新月”に致命的なダメージを与えたせいでしばらくシードゥスの活動を抑える羽目になったのも、私の存在に気づきそうになった“女”を消したのも、ね。」 彼女の言葉に龍斗が反応する。 「……女?」 その反応を見た龍姫はポンと頭を叩いて。 「あ、そうか。言ってなかったわね。龍斗。教えてあげる。貴方達のお友達、結衣深春だったかしら?彼女を殺したのは──私よ。」 「なっ。」 突然の告白に龍斗は眼を丸くして驚く。その顔を見た龍姫は堪えきれなくなったのか、ぷっと噴き出し。 「しょーがないじゃない。私の存在に気づきかけたんだから。それに…ふ、くくく。全然見当違いで龍賢に八つ当たりをしている貴方を見るのは、ふふっ、とても愉快だったわ。真犯人が目の前にいたのにね。はははっ!」 「…っ、俺は。そんな……」 「お前がっ……アイツが深春を…!」 龍姫が龍斗を嘲笑する。衝撃の事実に龍斗が俯き、月乃助が龍姫に怒りを向ける。 だが次の瞬間無言で龍賢が龍姫との距離を詰め、槍を叩きつける。だが龍姫はそれを杖で受け止めると、鍔迫り合いに持ち込む。 「あら、怒っちゃった?」 「もう貴方は喋らなくていい……!やはり貴方はあの時死んだ。目の前にいるのは、ただの薄汚い怪物だ!!」 「言ってくれるじゃない!!」 怒りに任せて龍姫に攻撃を仕掛ける龍賢。それを見た龍斗も、顔を叩いて持ち直すと赤羽と共に龍賢の攻撃に加わる。 「…姉さん!何故!?貴方はそんな人じゃ…」 「そんな人?貴方に私の何が分かるの?」 龍姫はフッと笑うと龍斗に言う。 「教えてあげるわ。家族なんて言ったって他人の気持ちは分かるわけないのよ。」 龍姫が指を動かすと光刃が赤羽に襲い掛かる。 「くっ」 赤羽は姿勢を低くしてその攻撃を避ける。だが三方から襲い掛かるこの攻撃に反撃に転じることは出来ず、徐々に二人から離されていく。 「私の両脚が動かなくなった事故を覚えているかしら?」 「あぁ。……あれは忘れるハズもない。…姉さんが階段から落ちて、そのせいで姉さんは脚を……。」 「あれね。後から私も知ったんだけど。私の才能に嫉妬したクラスメイトがしでかしたことよ。」 「なっ。」 龍姫の告白に龍斗は絶句する。 「その子私を尊敬してます、って言ってて可愛いなぁと思ってたんだけど、いざ蓋を開けてみれば、私をずっと妬んでいたのよ。私の才能に。」 龍姫の振るう一撃が龍斗を掠める。よろめいた彼に龍姫は蹴りを入れ、入れ替わるように後ろから武器を振るう龍賢にノールックで杖の柄頭を打ち込む。 「ぐぉっ!?」 「それに、なによりも両脚が動かないせいで自分一人で歩けない、何も出来ないことが惨めで仕方なかった。…以前は何気なく普通に出来ていたが突然出来なくなるのよ?」 次の瞬間、龍姫は眼を見開いて怒りを形相を露わにする。 「分かる…?誰かに頼らなくちゃ何も出来ない!他人に縋らなきゃ私はどこへ行くことも出来ない!それがどれ程屈辱的だったか!?」 「姉さ……!」 龍斗に向けて龍姫が左手を翳すと氷の剣が現れ、それが次々と彼の身体を切り裂いていく。 「ぐおおおおお!!?」 「龍斗。ホントは貴方も内心父と母と同じようにあの時の私を見下してたんでしょう!?一人じゃ何も出来ないからって!私を馬鹿にするように付き纏って!」 「ち、違う。俺はホントに姉さんを心配して……!」 「やめろ!!」 《行くぞ龍賢!!》 龍斗への追撃を止めるべく、龍賢はドラゴン形態へと変貌すると渾身の力で右拳を振り下ろす。 龍姫も咄嗟に防御の構えを取るが、振るわれた拳の勢いは凄まじく、地面にヒビを入れるだけに止まらず彼女を跪かせる。 「は、ははは!なんて言う馬鹿力…!」 「龍斗!眼を覚ませ!彼女はもう……!」 「ほら、見なさい龍斗。自分に都合の悪い物は排斥する。力を持って黙らせる。これが本質よ!誰も私の心の内をついぞ理解することはなかった!救いの手を差し伸べることも!それなら?私は私が救わなくてはならないでしょう?だから!!私はこの力を手にしたのよ!!家族を犠牲にしてもね!」 次の瞬間彼女が手を翳すと地面を突き破り、巨大な光刃が龍賢に襲い掛かる。 「征服王の光葬送《アデランダード•フォルネル》!!」 「!!」 不意の一撃は龍賢の意表を突き、その身体を切り裂いて鱗と鮮血を撒き散らせる。 「ぐっ、おおおっ……!?」 「お兄ちゃん!?」 攻撃を食らった兄を見て龍香が叫ぶ。 「カノープス!!私もその、意識の切り替えは出来ないの!?」 《…無理だ。俺は外付け式で、トゥバンは融合しているから意識の切り替えが出来る!》 「なら、早く私と融合してよ!!同じシードゥスなんだから出来るんでしょ!?」 《…確かに出来はするが……!!》 龍香達が言い合っていると、怯んだ龍賢に追撃を仕掛けようとした龍姫にピーコックが銃弾を雨霰と浴びせかける。 《それ以上はやらせんぞ!!》 「ちぃっ!厄介な鳥ね!」 光刃は赤羽を仕留めるために使用しているため、龍姫は仕方なく杖を回して銃弾を弾く。 そして銃弾が止むと同時に彼女は杖を銃を持つように持ちかえて、先端の柄頭をピーコックに向ける。 「消えなさい。目障りなの。」 次の瞬間が先端が光輝いたかと思ったその瞬間、放たれた光がピーコックの右翼を撃ち抜いた。 《お、おおぉぉ!?》 「ピーコック!?」 右翼を破壊され、よろよろと墜落するピーコックを尻目に龍姫はチラリと赤羽のほうを見ると、シュンッと光となってその場から消える。 彼女が光の軌跡を描きながら、消えた次瞬間光刃の一つから突然彼女がその姿を表す。 「ハハァッ!!」 「またっ!!」 三方向からの同時攻撃に“サダルメリクの瞳”が強く輝く。その瞬間赤羽に向けて放たれた一撃は全て赤羽の身体をすり抜けてしまい、赤羽に届くことは無かった。 「!!コイツ!!」 「はァァァァァァァ!!」 隙だらけになった龍姫に向けて赤羽が小刀を突き出す。攻撃を防ぐ光刃は間に合わず、杖は振り下ろしているので守ることは不可能。 「チッ。」 突き出された小刀に対して龍姫は首を捻って頬を刀が掠めたもののなんとかその一撃をかわす。 突き出された腕を掴もうとする龍姫を見て、赤羽は再び“サダルメリクの瞳”を光らせる。 次の瞬間無数の赤羽が龍姫の周りを囲む。そしてそれぞれが小刀を腰だめに構えて龍姫に向かっていく。 だが、龍姫はそれらをつまらなそうに見つめると。 「…舐められたもんね。他のシードゥス達ならいざ知らず、私にこんな小細工が通用するとでも?」 彼女がそう言うと、全身の十字の目玉がギョロリ!と動いて、再び眩しく輝きを放つ。 「征服王の黄金栄光《アデランダード•エル•ドラド》」 その放たれた光によって赤羽の分身達が次々と姿を消していき、さらには赤羽の透明化状態まで解除されてしまう。 「うあッ!?この、光はッ!?」 「そこにいたのねっ!!」 赤羽の居場所を見破った龍姫の振るう一撃が赤羽の身体を捉え、メキッと何かがひび割れるような嫌な音が赤羽の身体から鈍く響く。 「がっ……はっ……!?」 「ようやく来てくれたわね!!」 そして龍姫は赤羽の右眼……“サダルメリクの瞳”を掴むと、そのまま力任せに無理矢理彼女からその眼を引き抜いた。 「ぎィっ、ぎゃあああああああああああああ!!??」 無理矢理眼を引き抜かれ、鮮血が溢れる右眼を押さえながら赤羽は地面に倒れて悲鳴を上げる。 「赤羽!!」 「ふふっ…ついに手に入れたわ…!あとは…!」 うっとりと血に塗れた“サダルメリクの瞳”を龍姫が見ていると、いつの間にか人型に戻り、距離を詰めていた龍賢が先端に2本の刃を合体させた槍を突き出す。 「!!」 「油断したな!この距離なら避けきれないだろう!!」 《いっけえ!!龍賢!!》 「撃鉄雷龍徹甲弾!!」 突きつけられた日本の刃がジジッと弾けるような音を立てて、スパークさせた瞬間。 ドォン!!という大きな音と共に龍姫に龍賢必殺の一撃が炸裂し、凄まじい破壊力によって生じた衝撃波で空気が震え、爆煙が辺りに立ち込める。 「や、やった!!」 龍賢の必殺の一撃が決まり、全員が沸き立つ。 「………。」 《手応えあり、だ。》 龍賢は一瞬複雑そうな顔するが、槍を下ろす。今の完全な不意を突いた一撃。“サダルメリクの瞳”を右手に持ち、光刃も間に合わない隙を突いた奇襲攻撃。 左手で杖を持っていたが、それで防げる程甘い技じゃない。 倒せてはいなくとも大ダメージは必至──そう龍賢が思っていたその時。 ゾクリ、と。背筋を冷たいものが走るような嫌な感覚が彼を襲う。 「……っ!!」 《ヤバい!龍賢気をつけ──》 トゥバンが龍賢に警戒を促すよりも速く、爆煙を切り裂き十字の光の刃が振るわれる。 ザシュッ!!と音が鳴ったかと思ったその直後に鮮血を撒き散らしながら龍賢の右手首が切断されて宙を舞う。 「ぐあっ!!?」 さらに煙の中から五体満足どころか傷一つない龍姫が彼に向けて光刃が煌めく杖を再び振り下ろす。 右手首を切断された彼にこれを防ぐ武器はない。 「ぐおおお!!」 だが咄嗟に龍賢は腕で柄の部分を受け止めて、その攻撃を止める。だが龍姫はそれを見てニヤリと笑うとさらに龍賢を切断せんと力を込めながら、嘲笑う。 「惜しかったわねぇ〜。正直今のは危なかった……けど残念ね。私にはまだ防御手段があるの。」 そう言う彼女の目の前に十字模様を幾重にも重ねたような光の障壁が現れる。 「征服王の絶対守護防壁《アデランダード•タリスマン》。この技のお陰で助かったわ。どう?手を翳さなくても視線で障壁を発生させるの。凄いでしょう?」 「ぐっ……!おぉっ……!!」 まるでおもちゃでも自慢するかのようにケタケタ笑う龍姫。だが、それがすぐに能面のような冷たい顔になると。 「ま、死ぬ前に私の技の謎が解けたんだから。良かったじゃない。これで心置きなく死ねるわね。」 龍賢にかかる力が強くなる。徐々に力負けし、杖が下がってくる。 「ぐっ…龍……姫……!!」 「消えろっ!!」 次の瞬間杖が完全に振り抜かれ、龍賢の身体を袈裟斬りが如く切り裂き、鮮血が宙を舞う。 「お兄ちゃんッ!?」 龍香の悲痛な叫びが宙に木霊した。 To be continued… 関連作品 (続編や派生作品が有れば、なければ項目ごと削除でもおk)
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キャラ名に書き換え 更新日:2020/02/18 Tue 08 53 48 タグ一覧 創作注意事項 ネタやパロディOKかどうか 各種創作に自由に使ってOK 各種創作に使うなら要相談 各種創作に出さないで! カラーや服装のアレンジ可/不可 ↑該当するものを残して後は削除してください。 目次 概要 プロフィール 人物像 容貌・服装 趣味 女児符号 各作品での活躍登場作品名 関連人物家族 アナザー 関連イラスト Twitterアカウント 概要 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (画像のURL) プロフィール 愛称 本名 年齢 誕生日 身長 体重 一人称 二人称 好きなもの 嫌いなもの 趣味 人物像 容貌・服装 趣味 女児符号 女児符号 加速符号 究極符号 各作品での活躍 登場作品名 関連人物 家族 アナザー 関連イラスト
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ここに作品タイトル等を記入 更新日:2022/01/15 Sat 21 10 32NEW! タグ一覧 セブンスカラー (ぉ、どうしよう!!私!過去に来ちゃってるのー!?) 衝撃の事実に顔を青褪めさせる龍香。あたふたする龍香に鯉昇と龍那は心配そうに話しかける。 「大丈夫か?」 「自分の名前とか分かる?」 二人が質問してくるが、パニくった龍香はあわあわと口をぱくぱくさせるだけだ。って言うか言えるハズがない。自分達は未来から来ました、そして私は多分貴方の娘です。など。しかも大変なことにこう言った言い訳を瞬時に思いつきそうなカノープスがいない。 「えっ、あの、えっとその……」 どう答えていいか返答に困る龍香をジッと見ていた鯉昇が目を細めたかと思うとポンっと優しく肩に手を置く。 「……いや、言わなくてもいいぞ。俺は今、完全に分かった。」 「え。」 何が分かったのか。龍香が混乱する龍香に鯉昇は何故か涙を流しながら言う。 「君は……記憶喪失って奴なんだろう!?」 「へ?」 突然の的外れな言葉に龍香が呆然としていると、龍那が龍香を抱きしめる。 初めて触れる温もりと柔らかさに龍香の心臓が跳ね上がる。 「そうだったのね!可哀想に、さぞ辛かったでしょう!今は私をママ、鯉昇さんをパパと思って甘えていいのよ?」 「え、いやあの…」 龍香が困惑する中、鯉昇はふむ、と顎に指をやる。 「しかし、名前が分からないのは困るな……。」 「名前をつけましょうか。」 龍香そっちのけでトントン拍子に話が進んでいく。 「そうだな……うーん、あ、そうだ。龍香!龍香という名はどうだろう!龍の如く強く、人を惹きつける香で龍香だ!」 「いいわね!とてもいいわ!そうしましょう!」 二人に名付けられた龍香。と言うか自分の名前の由来をここで聞けるとは思わず、自分の名の意味に龍香は少し狐に摘まれたような、不思議な気持ちになる。 「え、あ、あの……」 「……どうした、龍香?」 龍香が声をかけると途端に二人は凄く神妙な面持ちになる。龍那が龍香に心配そうに話し掛ける。 「どこか、痛いの?」 「へ?」 「だって、貴方泣いてるもの。」 「へ……?」 言われて初めて自分が泣いていることに気づく。そのことに気づくとさらにぼろぼろと涙が溢れてくる。 「あ、あれ?おかしいな。涙が……」 泣く龍香を龍那が優しく抱きしめる。優しい香りと柔らかさに包まれる龍香の耳元で、龍那は背中をトントンと叩きながら囁く。 「いいのよ。不安だったでしょう?吐き出しちゃいなさい。」 「う、ぅうぇ。」 龍那の言葉に龍香は堰を切ったように泣き始める。触れることの出来なかった母の温もりに龍香は感情を抑えれなかったのだ。 泣く龍香とそれを抱きしめる龍那を見ていた鯉昇は後ろに振り返って口に指を当てて静かに、のジェスチャーを笑みを浮かべながらする。 そのジェスチャーの先にはいつの間にか目を覚ましており、少し居心地の悪そうな三人の姿があった。 「消えた…!?」 青い光に包まれたかと思ったら四人が姿を消したことに雪花が驚きの声をあげる。 「り、龍香ちゃん!きゅーばんちゃん!?」 愛歩が呼びかけるが、反応が返ってくることはない。 消えた四人がいた場所をイースは睨みつけると。 「時空を越えたか……ライダー。猟犬。ついてこい。追いかけるぞ。女郎蜘蛛、この場は任せる。」 「……」 「はー?私が?」 女郎蜘蛛が不満げに抗議の声を上げるが、イースが開いた玉虫色の次元の扉に、ライダー、猟犬と共にイースは消える。 「な、何がどうなっているの?」 愛歩が目まぐるしく変わる状況に声をだした瞬間。女郎蜘蛛の背中の脚が鋭い突きが愛歩に向けて放たれる。 「おおっと!!」 しかしその脚は愛歩に届く前にのじゃロリ猫に阻まれる。 「のじゃちゃん!」 「そこの金髪!愛歩のことを頼んだぞ!コイツはちと面倒での!」 攻撃を受け止めているのじゃロリ猫にまう片方の脚で横払いを仕掛ける女郎蜘蛛。のじゃロリ猫はそれを蹴っ飛ばして防ぐ。 「だーもう!任せたわよ!何か前もしなかったかしらこんなやり取り!?」 「の、のじゃちゃん!気をつけてね!」 そう言うと雪花が盾になるように愛歩を庇いながら二人は後退する。 それを見届けたのじゃロリ猫はニヤリと笑うとパッと掴んでいた脚を離すと女郎蜘蛛と距離を詰める。 「チッ」 「遅い!!」 懐に入り込まれた女郎蜘蛛が腕を振るって迎撃をしようとするが、のじゃロリ猫の繰り出した拳が女郎蜘蛛の腹に捻り込まれる。 「ぐっ……!?」 「のじゃのじゃのじゃのじゃのじゃのじゃァッ!!」 ちょっと不思議な掛け声と共にさらにラッシュを女郎蜘蛛に叩き込む。 最後の一撃が女郎蜘蛛の顔面にめり込み、思い切り殴り飛ばす。 吹き飛ばされた女郎蜘蛛は廊下の向かいの壁に思い切り叩きつけられる。 「ふぅ、どうじゃ?結構効いたじゃろう?」 ピッと女郎蜘蛛に指を指して挑発するのじゃロリ猫。しかし、女郎蜘蛛は頭を押さえながら立ち上がる。 「おおぉぉォォッ!!ナメた真似してんじゃねぇぞクソ猫ォォッ!」 女郎蜘蛛はそう言うと背中の4本の脚と指から糸を吐き出すとそれを目の前で球状に丸め始める。 「食らうがいいザマス……“蜘蛛玉•糸牡丹”!!」 放たれた球体がのじゃロリ猫に向けて放たれる。それはのじゃロリ猫に当たる、ちょっと前の部分で弾ける。 弾けた糸の破片がのじゃロリ猫を捕らえようと迫る。 「おっと。」 しかしのじゃロリ猫は慌てることなくひょいひょいとそれらをかわしていく。 「そらっ!」 女郎蜘蛛が腕を振るうとその指から放たれた細い糸がのじゃロリ猫に振り下ろされる。それをのじゃロリ猫は横っ飛びに飛んで避ける。するとさっきまで立っていた場所の後ろの壁に細い四つの斬り跡が残り、消火器がカランと音を立てて四つに切り裂かれる。 「チッ。避けてんじゃねぇ!!」 「残念じゃったの。」 続く背中の4本脚が次々とのじゃロリ猫に襲い掛かるが、それを彼女は横に飛んだり跳躍することで回避する。 「おっとと。そんな大振りな攻撃は当たらんよ。」 女郎蜘蛛の繰り出す攻撃を回避しながらのじゃロリ猫は相手を洞察する。 (流石にさっきので懐に入られるのを警戒しておるの。当てるよりこちらに近づかせないのを重点的にしておる。じゃが。それは裏を返せば懐に潜り込めばこちらのものと言う訳じゃ!) のじゃロリ猫が大振りに振られた一撃を避けて地面を蹴って近づこうとした瞬間。ふと、女郎蜘蛛の背中の脚の表面が妙にテカテカしていることに気づく。 「?」 女郎蜘蛛は腕を振るって糸で刻もうとし、のじゃロリ猫がそれを右へと身体を捻ってかわそうとした瞬間。 一瞬。ほんの一瞬のじゃロリ猫の身体がこわばったように動かなくなる。 そしてその一瞬が致命的だった。 「なっ」 「ヒャハァッ!貰ったザマス!!」 女郎蜘蛛の繰り出した脚の一撃がのじゃロリ猫を腹を抉る。思わず吐血しながら吹き飛ぶのじゃロリ猫。 鮮血を流しながら呻く彼女を女郎蜘蛛はせせら嗤う。 「ん〜?どうしたザマスかぁ?」 「ぐっ……」 倒れたのじゃロリ猫がさらに起きあがろうとするが、まるで何かに引っ張られるような力を感じ、満足に立ち上がることもままならなくなる。 「お、おぉお?これは?」 「もしかして、歳ザマスか?そこまで耄碌するなんて、歳だけは取りたくないザマスねぇ?」 女郎蜘蛛はニヤニヤと笑いながら脚の先端をのじゃロリ猫に向ける。何故か身動きが満足に取れない彼女はそれを睨みつけるしかない。 「じゃあな。ロートル。」 のじゃロリ猫にその一撃が降り掛かろうとした瞬間。廊下の奥、のじゃロリ猫の背後から水流のような光が飛んでくる。 「何ぃ!?」 咄嗟に女郎蜘蛛は脚を折りたたんで防御体勢を取るとその一撃を受け止める。しかし流れは凄まじく大きく後退させられる。 「何奴!?」 女郎蜘蛛が叫ぶと廊下からコツコツと足音を鳴らしながら一人の少女が現れる。ダークパープルの髪に一本のピンク色のメッシュが入った赤と青の目を持つオッドアイ。 少女は歩みを止めると妙にキレの良い動きで手を顔に添え、指の隙間から女郎蜘蛛に視線を向けながらポーズを取る。 「何奴……と尋ねられれば答えねばなるまい我が名を!我が名はエルフ!聖眼に選ばれしもの!聖眼のエルフだ!」 「次から次へと……」 女郎蜘蛛が脚をエルフに向け、一触即発の空気が流れた時だった。ガシッとエルフの足首を誰かが掴む。 見ればそこには何故かさらにズタボロになっているのじゃロリ猫の姿が。 「お…お主さっきわざとワシごと攻撃したじゃろ…」 「手元……いや、目元が狂って当ててしまったんだ。ワザとじゃない。決してチャンスとかあわよくば、なんて思ってないぞ。」 「ぜってぇワザとじゃ!なぁ、見たよなそこの蜘蛛も!コイツぜってぇワザと巻き込んだじゃろ!」 「え……いや私に振られても?」 何故か急に話を振られて困惑する女郎蜘蛛。しかしのじゃロリ猫の様子を見ると舌打ちし。 「チッ。……イースの奴も、あの小娘もどっか行ったし……全員!引くザマスよ!」 女郎蜘蛛はそう叫ぶと脚を振るって天井を破壊し、瓦礫の雨を降らせる。土煙と瓦礫に紛れて蜘蛛は姿を消す。 「……逃げたか。」 「厄介な奴じゃったのぉ……」 「貸しイチだな。」 「は?んなもんノーカンに決まっとるじゃろノーカ……あれ?」 エルフに突っかかろうとして、のじゃロリ猫は気づく。先程までとは違って身体が自由に動く。 「どうした?」 突然黙りこくったのじゃロリ猫にエルフが声をかけるが、のじゃロリ猫は思考を巡らせる。 (……ワシの身体が重くなったのは……奴の攻撃……脚の表面の光沢……エルフ……動けるようになったのは…) 思考を巡らせ続け、のじゃロリ猫はついにある一つの仮定を思いつく。 「そうか……そうか分かったのじゃ!アイツが何をしてきたのか!」 「九ー?九どこだー!?お姉ちゃんが来たぞー!」 「いや聞けよ人の話!!」 のじゃロリ猫は女郎蜘蛛の攻撃の正体が分かると同時に多分エルフは自分のことも嫌いなんだな……という事が分かった。 「ヒャァハッ!アハハッ!アハハハハッ!」 「くっ!」 ブレスとエフィは爪と剣で打ち合う。ブレスはエフィに対して両手足と尻尾を使った変幻自在の攻撃で苛烈に攻め立てる。 「楽しいなぁ。やっぱり戦いは!直でやり合わねぇとなぁって!」 ブレスの攻撃がエフィの頬掠める。しかし負けじとエフィはブレスを蹴り飛ばす。 「おおっと。」 蹴り飛ばされたブレスは後退するものの、大したダメージはないようでポンポンと服を払う。 「良いねぇ。ますます殺したくなったぞクソガキがァッ!」 「吠えてなさい。次で決めるわ。」 「次で決める?やってみろや。」 そう言うとブレスはエフィを挑発する。ワザと身体を大の字に広げてどこからでもかかってこいとでも言いたげだ。 「さぁ。攻撃してみなぁ!」 「そう。……後悔しなさい。」 次の瞬間電光石火の如き神速でエフィはブレスとの距離を詰めると、思い切り剣を振り下ろした。 その刃は鮮血と共にブレスの肩口を裂く。しかしブレスは一瞬身体をこわばらせるが、すぐにその刃を素手で掴み物凄い力で握り締める。剣を引っ張り手を切断しようとするが、ピクリとも動かない。 「なっ」 「はッハハ、ハハハハッ!!痛ぇ!痛えなチクショウ。涙が出てきやがる!!けどなぁ。捕まえたぞ。お前はもう終わりだぜ。」 「何を」 そう言いかけると、飛び散ったブレスの血液がかかった箇所が灼かれるような痛みを訴え始める。 「痛っ」 「ハハァッ!」 さらにブレスは仮面の鼻に当たる部分から赤い煙を噴出する。プシュウウウウと撒き散らされた煙は一瞬で辺りを包み込む。 その煙はマズイと直感したエフィは慌てて呼吸を止め、剣を離して後ろへと下がる。 だが、その煙が顔に触れた瞬間涙がドッと溢れ、皮膚が気も狂わんばかりに痒くなる。 「ぐっ!?があっ!?」 思わず顔を押さえて蹲るエフィ。ブレスは刺さった剣を強引に抜き取ると、鮮血を垂れ流しながらポイっと捨てる。 「お前勘がいいなぁ。今のをまともに吸い込んでたら死んでたぜ?」 ブレスは笑いながら両の手の鋭い爪を構える。 「んじゃあ、ここで死んどけ。」 ブレスが振り下ろそうとした瞬間、パァンという破裂音が鳴り響く。その音がした直後どこからともなく飛んできた弾丸がブレスの手を弾く。 「あぁん?」 ブレスは怪訝な声を上げるが、続け様に飛んできた弾丸を尻尾で弾きながら後退する。 見ればそこには白いバトルドレスに身を包んだ金髪の少女と青い髪をポニーテールにした少女…雪花と愛歩の姿があった。 「チッ。援軍かよ。」 「そこの白いの!伏せなさい!」 雪花はそう言うとライフルを構えていないもう一つの手で、腰部武装ラックから投げナイフ状の“シャハル”投擲装甲貫通弾を取り出すとブレスに向けて投擲する。 それをブレスは火炎を放って迎撃する。火炎に包まれたシャハルは爆発し、その爆風が赤い煙を吹き飛ばす。 「これが狙いか!」 ブレスはすぐに雪花の狙いに気づくとその場から飛び上がって後方へと着地する。 するとさっきまでブレスがいた場所をチェーンソーの刃が通り抜ける。 「外した!」 攻撃をスカされた雪花が舌打ちする。ブレスが火を吐いて反撃しようとした瞬間。女郎蜘蛛からの声が聞こえる。 「……ま、この辺にしとくか。」 ブレスはそう言うと地面に火を噴いて土煙と炎を煙幕にその姿をくらませる。 「……引いた?」 「そうっぽいわね。」 そう言うと雪花は変身を解除する。一方の伏せていたエフィも痛みが治まったのか立ち上がると。 「……次は、こうはいかない。」 そう言って何処かへ飛んで行ってしまう。 「あ、ちょっと……」 愛歩が声をかける暇すらなかった。雪花は少し考えて。 「…取り敢えず、一旦ここは退くわよ。ついてきて。」 「う、うん。……あ。ちょっと待って。」 愛歩が誘導する雪花を呼び止める。何?と怪訝な顔をする雪花に愛歩は。 「少し頼みたいことがあるんだけど……」 「か、数が!数が多いですわー!!」 「黙って戦う!」 触手から分裂した大量の魚軍団を相手にラファエルとウリエルは徐々に圧されていく。 強さは大したことないとはいえ、やはり数は暴力とはよく言ったもので、二人は徐々に追い詰められる。 さらに追い討ちをかけるように胸のランプ、カラータイマーが点滅を始める。 「ま、マズイですわ!このままだと変身が…!」 「万事休す……!」 ラファエルとウリエルがどうするか考えあぐねていたその時。 上空から竜巻のような風が吹き荒れ、魚軍団を吹き飛ばす。さらに赤のメッシュが入った長い黒髪のセーラー服の少女が刀を構えるとズバズバと魚軍団を切り捨てていく。 そして最後に上空から投げ込まれた黒い球のようなものが爆発し、残りの魚軍団を吹き飛ばす。 「へっ……?」 「何?」 二人が唖然としていると上空から攻撃を加えた二人……黒翼に鳥の嘴のようなマスクをつけた少女…黒鳥と、機械の鳥を背中につけた亜麻色の髪を三つ編みにした少女、月乃助が先程の刀を持った少女、赤羽の隣に降り立つ。 「これで終わり、か?」 「うーん!あっという間に終わらせた!流石私!」 「……私達もいたんだけど?」 仰々しく手を広げる月乃助を赤羽が睨む。黒鳥はウリエル達に気づくと声をかける。 「君達!大丈夫か?怪我は……」 「まだ終わってない!後ろをみろ!」 ウリエルの叫びに三人はすぐさま反応し、後ろに振り向き……そして、見上げて気づく。 こちらを惰性的に見下ろす巨大な蛸の怪物、落とし子を。 「な、なんだコイツは!」 「うーん、中々に形容し難い造形だな!率直に言うとキモい!」 二人が口々に落とし子に対して辛辣な感想をしていると、ふとあることに気づく。 「……あれ、赤羽?」 黒鳥が全く声を上げず、まるでビデオの一時停止のように動かず落とし子を見上げる赤羽。動かない赤羽に黒鳥が声をかけると、赤羽はボソッと呟く。 「……かわいい」 「「え」」 赤羽の衝撃的な趣味に二人が絶句する。なんてしていると落とし子が腕を上げた瞬間、ピタッと止まる。 そしてクルリと振り返ると全身から霧を噴き出してその姿を消す。 「あ……消えた。」 「何でちょっと残念そうなんだ。」 ちょっと残念そうな赤羽に月乃助がツッコミを入れる。 「引いた……のか?」 三人が消えた落とし子にどうしようか考えていると。 「…だめ。こっちは出ませんわ。」 「…ボクもだ。」 変身を解いた赤羽達と同世代っぽい少女達が何やら話し込んでいる。 「どうしたんですか?」 黒鳥が二人に話しかけると、二人は答える。 「いや、仲間の一人と連絡が取れなくて」 「何?それは大変だ。その方はどちらに?」 「あそこに……」 ラファエルこと坂田ルミが病院を指差すと、その方向から二人の少女が走ってくる。 「あっ、黒鳥だ。おーい!」 「えっ、藍?」 黒鳥が走ってくる雪花と愛歩に反応する。雪花はこちらに合流すると。 「ったく、もう状況は滅茶苦茶よ!変なのは来るし!龍香含めた四人は光に包まれて消えるし!」 「消えた?」 「その、四人の中に赤いのいなかった?」 ウリエルこと美川ホクトが尋ねると雪花と愛歩はうーん、と考えると。 「あ、確か金髪の天使さんみたいなのが。一緒に消えてた気がする。」 「あ、そういやいたわね。」 「ど、どこに消えたんですの!?」 ガクガクとルミが雪花の肩を揺らす。ものすごい力で揺らされる雪花は目を回しながらも答える。 「し、知らないわよ!何か時空がどうのこうの言ってたけど!!」 「やめてあげて。それに、まぁアイツなら何となるです。」 ホクトがそう言うと、ルミは少し何か言いたげだったが、雪花を離す。 「あー、痛ぁ……」 「大丈夫?」 雪花が愛歩に心配されるが、雪花は少し難しそうな顔をして。 「……アイツまた勝手にどっか行っちゃって。心配だわ……。」 「で、でもまぁ龍香ちゃんなら大丈夫だと思うけどな。きゅーばんちゃんもいるし…」 「いや、アイツ一人かどっか行くと大抵碌でもないことになってるじゃない。またなってないか心配だわ……」 雪花の言葉に愛歩と黒鳥が苦笑いを浮かべる。実際碌な事になってなかったからだが。 「……と、とにかく。ここで喋っていてもしょうがないよ。ゆ、雪花ちゃん。とにかくお願いしていい?」 「はいはい。分かったわよ。」 愛歩の提案に雪花が乗る様子を見て黒鳥が不思議そうな顔をする。 「何か頼まれたのか?」 「まぁちょっとね。……あ、そうだ。アンタも手伝ってよ。」 雪花は愛歩に目配せする。その意を汲んだ愛歩が黒鳥達に言う。 「実は……」 「取り敢えず、自己紹介からしましょうか。」 あの後少し恥ずかしいのか頬を紅くして龍那の後ろに隠れている龍香を交えて、目を覚ました三人は事情の説明の前に自己紹介の流れとなる。 「私は慶光院九。きゅーばんでいいよ。」 「私は迫水ススム!ススムって呼んでくれ!」 「し、紫水龍香です……。」 「んで、俺が紫水鯉昇。こっちが妻の。」 「紫水龍那です。」 「……え?龍香ちゃんの家族?」 きゅーばんに尋ねられ、どう答えるべきか悩む龍香。 「い、いやその。」 「そ。家族だ。なー?」 「えぇ。龍賢も急に歳の離れた妹が出来て嬉しいでしょうね。」 「え!?」 まさかの既に家族認定されていたことと、龍賢のことで龍香が驚くと、龍那が箪笥の上の写真を見せてくれる。その写真には鯉昇と龍那に抱っこされて笑顔をこちらに向ける幼い龍賢の姿が。 「うわぁぁ……可愛い…」 「ほら、これがウチの龍賢。可愛いでしょう?今年で二歳になったのよ?今は姉さんの家に行ってていないけど。」 「……あの、良いかしら?」 龍那の話を遮って最後に残った薄い青の髪の少女が話し始める。 「私は、シズク。……貴方達にお願いがあるの。」 シズクはそう言うと龍香達に頭を下げる。 「お願い。私に力を貸して。」 頭を下げるシズク。そんなシズクにススムが切り出す。 「お願いは分かったけど……何でシズクはアイツらに追われてるんだ?」 その問いは他の二人も気になっていた。しかもあの首領らしき時計の怪物と彼女は知り合いのように見えた。 「事情を、説明してくれる?」 きゅーばんちゃんがそう言うと、シズクは少し口籠ると淡々と話し始める。 「……信じられないかもしれないけど、あの怪物イースは世界を作り変えようとしているの。」 「世界を……作り変える?」 龍香が尋ねると、シズクは頷く。 「うん。世界を自分の都合の良いように作り変えるつもりなの。そんなことをしたら元の世界は崩壊。そこの世界にいた人達は皆死んでしまうわ。……そんな恐ろしい事、させるわけにはいかない。」 ぐっと手を握り締めるシズク。その顔、その瞳に嘘はないように思えた。 すると気になったのか、鯉昇が尋ねる。 「うーん、ちょっと突拍子もない話だけど、具体的に力を貸すって何をすれば良いんだ?」 「……二つあるわ。まずはこのペンダントを奴らに渡さないこと。そしてもう一つは……。」 シズクはそう言って外に出ると、ペンダントを少し離れた山に向けて掲げる。 するとペンダントから光が放たれ、その光が山を照らすと空間がひび割れて、完全に砕けると紫色の燐光を放つおどろおどろしい山へと変貌する。 「んなっ」 突然の出来事に全員が愕然とする中、シズクは言う。 「あの祭壇を破壊することよ。」 「い、良いの?私が言うのもなんだけど車を出してもらって。」 鯉昇が運転する車の後部座席からシズクが尋ねると、鯉昇は笑いながら答える。 「んー、いいよいいよ全然。って言うかあんなもの見せられちゃあ信じるしかないし。」 「あ、伏せといてね。普通に定員オーバーでお巡りさんに見られると私達怒られちゃうから。」 助手席の龍那が悪戯っぽく笑って言う。 「……取り敢えず祭壇破壊するって言ったってどうしようか。」 龍香が三人に言う。 「私は今カノープスがいなくて、変身出来ないからあの怪物達と戦えないよ?」 「いざとなったら私に任せて!3分しか戦えないけど!」 「私は時間稼ぎなら出来ると思う。」 「ふ、不安だわ……。」 三人の戦力を聞かされたシズクが青い顔をしていると。 「何のことか分からないが、もし怪物が出たらパパに任せておけ。俺は実は柔道黒帯でな……高校時代はブイブイ言わせててな。な、ママ?」 「そうそう。まぁ私大学から鯉昇さんと知り合ったからホントかどうか分からないけど。」 そう言ってワハハ!!と笑う二人にシズクはさらに不安になる。なんてやっている時だった。 「あれ?」 「どうしたのきゅーばんちゃん。」 きゅーばんちゃんが何かに気づいたようで、窓の外の様子を探り出す。 「いや、なんかバイクの音が聞こえた気がして……。」 「バイク?この辺走り屋なんていたかなママ?」 「いや?聞いたことないわ?」 なんて言ってると確かにきゅーばんちゃんの言う通り、バイクのエンジン音のようなものが聞こえる。しかし聞いている内に、そのエンジン音に妙な異音、悲鳴のようなものが混じっている事に気づく。 「これ、ほんとにバイク?」 左右の窓を開けてきゅーばんちゃんとススムが、鯉昇と龍那がバッグミラーで後方を確認する。そして、その異音を鳴らす正体に四人が気づくと絶句する。 「な、何あれ!?」 ススムが叫ぶ。そこにいたのは首と右腕に当たる部分から焔を噴き出しながら、下半身をバイクのような二輪に変形させ、こちらを追跡する怪物、首なしライダーの姿が。 「げっ、アイツあんな変形が出来たの!?」 前会った時は二足歩行だったのが、まるで神話のケンタウロスのようにバイクとなった下半身でこちらに迫る首なしライダーが焔の右腕を振るうと、五つの焔弾が車へと放たれる。 「ヤバい!」 「皆何かに掴まって!」 鯉昇がハンドルを切る寸前に龍那が叫ぶ。ハンドルを思い切り切られた車は曲がり、放たれた焔弾をかわす。 思い切りハンドルを切られ、かわしたとはいえ爆発の衝撃を受けた車内は物凄く揺れる。 「うわ、うわわっ!!」 皆が悲鳴を上げる中、首なしライダーはさらにスピードを上げ、焔弾を放つ。 「あ、危なっ!」 襲い来る焔弾を鯉昇はドリフトを切りながらかわすが、視界が限られるバッグミラーを見ながら一定以上のスピードを保って運転するのはだいぶキツいようで、スピードが落ちていくのが分かる。距離が近づく分狙いやすくなったのか、焔弾の爆発がドンドンと近くなる。 万事休す。あわやここまでか、と思った瞬間。 「おじさん!右にハンドルを切って!」 きゅーばんちゃんが叫ぶ。言われた通り鯉昇が右にハンドルを切ると、さっきまで車があった場所に焔弾が着弾する。 「私の女児符号で弾道を見極めます!!おじさんはスピードを運転に!」 「じょ、じょじ?なんかよく分からないけど任せたぞ!」 そう言うと鯉昇はアクセルを踏み込み、スピードを上げる。それに気づいたライダーはそうはさせないと焔弾を放ちまくる。 「おじさん右から二発、その後左から三発!」 「おうおうおう!?」 鯉昇は女児符号を使用して攻撃を見極めたきゅーばんの指示通りハンドルを切って攻撃を避けていく。自身の攻撃を避けられたライダーは業を煮やしたのか思い切り飛び上がる。 「あれ!?消えた!?」 ちょっと目を離した隙にバッグミラーからライダーが消えた事に気づいた鯉昇が慌てる。 「上です!上に飛んだんです!!」 きゅーばんちゃんが叫ぶ。彼女は窓から頭を出してライダーを視界に捉える。 そのきゅーばんを滅茶苦茶に揺さぶられて車酔いに耐えながら他三人が支える。 「上!?」 「鯉昇さん!」 龍那が目配せをする。鯉昇は一瞬顔を顰めるが、すぐに何かを決意したようで。 「……しょうがないな。きゅーばんちゃん!」 「な、何ですか!?」 「攻撃が来たらすぐに頭を引っ込めて!」 「え!?あ、はい!」 ライダーが焔の腕を車に向けて伸ばしたのを見たきゅーばんちゃんは叫んで頭を言われた通り引っ込める。 「来ました!」 「OK!!しっかり掴まって!」 そう言うと鯉昇は思い切りブレーキペダルを踏み込み、急ブレーキをかける。 「きゃあああ!?」 「どぉわぁっ!?」 車内がてんやわんやする中、急ブレーキをかけたせいで恐らく進行方向を先読みして放った腕が、そのまま進んでいたら車があったであろう場所に焔の腕が突き刺さる。 避けられたことにライダーは一瞬驚くがすぐに伸ばした腕を縮めて車の前に降り立ち、通せんぼをするように立ちはだかる。 しかし、着地すると同時に目の前に急発進した車が迫る。 「!?」 「うおおおおおおお!さらば俺の新車ァァァァァ!!」 「皆頭を低くして!!」 次の瞬間に鈍い衝突音が響き、フロントガラスがひび割れ、バンパーがひしゃげる。 しかしライダーも勢いよく轢かれたせいでバランスを崩して後方へと流れるように転がっていく。 「も、もう何が何やら……」 「む、無茶苦茶よ貴方の両親……」 龍香とシズクが目を回していると、きゅーばんちゃんがふと顔を真っ青にして口元を押さえるススムが目に入る。 「ちょ、ちょっと。今はやめてね?」 きゅーばんが言うとススムは涙目になりながらコクコクと頷く。 ひび割れて視界が不明瞭になったフロントガラスを龍那が思い切り蹴って叩き割る事で視界が鮮明になる。 「ふぅー!最高よ鯉昇さん!私こう言うシチュエーション一回やってみたかったのよ!」 「あぁ……俺の給料八ヶ月分……」 テンション最高潮となってはしゃぐ龍那と肩を落としながら運転をする鯉昇。 損壊具合から見て修理代は買った時より高くつきそうだ。そのまま車を走らせて、とうとう祭壇と思わしき禍々しいオーラを漂わせる塔の前まで来る。 「……着いたわね。」 車を止めて口元を押さえながら全員が車から出る。 「あ、危なかった……マジで危なかった。」 ススムが大きく深呼吸する。六人が目の前に広がる祭壇……というより奇怪な、子供が後から思いつく限り階段やら柱やらのパーツを適当にくっつけまくった塔の前に並び立つ。 「んで、祭壇をどう破壊するの?」 「アタシのスペシウム光線で破壊するか?」 どう破壊するのかシズクに尋ねると彼女は青いペンダントを手に持ち。 「……これを頂上のコンロールキーみたいなとこにはめ込んで自壊プログラムを作動させるの。操作は任せて。」 シズクがそう言った瞬間。 「そうされては困るな。」 横から声がする。振り向くとそこにはイースの姿があった。 「イース!」 「出た!」 皆が警戒する中、イースはシズクに手を伸ばす。 「最後に言おう。こちらに来てもらうぞ、シズク。」 「……断るわ。私の生きた世界を、無茶苦茶にさせる訳にはいかない。」 シズクがそう言うと、イースは一瞬悲哀に満ちた雰囲気を浮かべたような気がした。しかしすぐにその気配は敵意に変わる。 「そうか。ならば仕方ない。」 イースが実力行使に出ようとした瞬間、五人の前に鯉昇が立つ。 「ママ。その子達を。ここは俺が。」 「鯉昇さん……。」 「お、お父さん?」 心配そうに龍香がそう言うと、鯉昇は少し驚いたような顔をした後嬉しそうに笑い。 「任せておけ。俺を誰だと思っている?」 鯉昇は上着を脱いでネクタイを緩める。 「俺は、龍香のパパだぞ。」 鯉昇はそう言って構える。龍那は全員に目配せをして頷くと、先に行くよう促す。龍香は一瞬口籠るが、鯉昇に言う。 「……!頑張って!」 龍香達はそう言うと塔の中へ入っていく。それを見届けた鯉昇は改めてイースの前に立ちはだかる。 イースは鯉昇を見て鼻を鳴らす。 「貴様如きがこの私に勝てると思っているのか?」 「娘に頑張れ、と言われたお父さんパワーをナメて貰っちゃ困るな。」 鯉昇がそう言うと、イースは。 「……貴様も、子を持つ親と言う訳か。」 「……貴様“も”?」 イースの言葉に違和感を覚えた鯉昇が聞き返すと、イースは言う。 「……ならば邪魔をしないで貰おうか。私が、シズクを、娘を救うための儀式を!!」 To be continued……
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掌編群 可能性の少女 概要 アリアちゃん及び10年後たちに関しての掌編。 控えめな彼女の内心が描かれる。かもしれない。 「私は忘れない」
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「いらっしゃいました~!」 シトロンが、あわただしく厨房に入ってきました。 厨房に入ると同時にこけ、持っていたお盆を落としています。 「え、もうですか?」 クリスマスケーキにクリームを塗りながら、アンコは目を丸くし、時計を見ました。時刻は午前3時を回っています。 「予定より早いのう」 マーマレードがシトロンを助け起こしているのを尻目に、のじゃロリ猫はあくびしながら言っています。 「まあ、早く来てくれる事に越したことはないがのう」 「なに言っとん!」 身体が青色の、人魚のフルーチェがキツく言います。新人だと言うのに、全く物怖じしていません。 「おもてなしの準備がまだ出来てへんやん!」 「え~別に……なくても全然問題なさそうじゃし……」 「ノンノン!それは駄目だよマイキャット」 こちらはアンコのお手伝い、獣人のピネです。 「物事には対価ってのが必要なんだよ。彼のためにボク達がおもてなしするのは当然の事なのサ、そして……」 ピネは薔薇が舞ってそうなキメ顔で続けています。 バタンとドアが開き、ピネの言葉を塞ぎってしまったので、その話が続くことはありませんでしたが。「oh…ボクのセリフが……」 「用意は!」 ドアを開けて勢いよく閉じたのは、このオウマがトキの実質的な経営者、フロートでした。 「はい、食事の方は抜かり無く。ケーキはあと少しで完成です」 「よし、それじゃあアンコはそのままケーキを作って、ピネとマーマレードはアンコの手伝い。残りの人は接客よ。何か芸でもして盛り上げられる人はいないの?」 フロートがジロリと皆の目を見つめていきました。 「あ、プラム達は?」 「劇をしてるわ。題目は眠り姫とてるてる坊主」 フルーチェの質問に、フロートは淀み無く答え、ハッとして手を叩きました。 「そうだわ、人魚姫も出来るじゃない。フルーチェ、手伝いなさい」 「え、ええ~うちが?!」 「oh!それじゃあ王子さま役はボクで決まりだね。」 「王子さまはのじゃロリ猫よ。絶対ね」 「Watts?何で?」 ピネの言葉に、フロートはギっとご馳走に手を伸ばしているのじゃロリ猫を睨んでから答えました。 「ほらこいつ、ほっとくと直ぐにつまみ食いしにくるんだから!ほら!とっとと行く。アンコ、なるべく早くしてね。さあ、行きなさい!」 フロートはそう言い残し、のじゃロリ猫の襟を掴んで引き摺って行き、その後ろを自信無さげなフルーチェと、また躓きそうになっているシトロンが着いていきました。 「確かにのじゃロリ猫は連れてくべきだよな」 マーマレードの呟きに、ピネは大げさに嘆いて見せます。 「おおなんて事だ!ボクのフルーチェが泥棒猫に拐われてしまうなんて!」 マーマレードは吹き出し、ピネはニヤニヤしました。 「あの、お二方、ケーキのデコレーションを続けましょう」 サンタクロースやトナカイやツリーの形に出来た砂糖菓子やクッキーを出しながら、アンコは呼び掛けるのでした。 ご馳走をワゴンで運んでいくと、店内では豪華な舞台がやっていました。 どうやら裏支配人のピオーネと、装飾担当のくゆりが、大盤振る舞いをしたようです。 所々クリスマスのモチーフを施した、素敵な舞台が出来上がって行きます。 劇は丁度クライマックスを迎えていました。 人魚姫のフルーチェが、王子さま役ののじゃロリ猫に愛を告げています。 それを一人の老人が見つめていました。 ここにいるお客は、たった一人、赤い服を身に纏った、白いもふもふとした髭を蓄えた老人……サンタさんです。 アンコ達はサンタさんの前に、次々とご馳走を並べていきました。 サンタは劇の邪魔にならないよう、微笑んで会釈し、そのあとは劇に集中しています。 ご馳走を並べ終えると、ピネとマーマレードに楽しむように告げ、アンコは一度厨房に下がりました。まだやることがあるのです。 アンコはあるものを持って外に出ました。 寒空が容赦なくアンコを襲ってきます。 「ルドルフさん!」 アンコが呼び掛けると、赤鼻を明るく照らしたトナカイを先頭に、6~8匹程のトナカイが空からやって来ました。 そうです。サンタクロースのソリを引く、あのトナカイ達です。 アンコは特注の餌が入った袋を地面にぶちまけます。 トナカイ達は喜んで食べ始めました。 アンコは一匹ずつ耳を掻いたり撫でたりしてから、温かい明かりの灯った店に戻っていきました。 アンコが戻ってくると、丁度劇が終わり、サンタが拍手している所でした。 舞台の上にはフルーチェとのじゃロリ猫、淡雪やジュジィ、マリネッタもいます。 「今年も素晴らしい物を見せてもらったよ。さあ、皆でご馳走を食べようじゃないか!」 サンタの言葉に、皆がニッとしました。 パーティの始まりです。 「ワンダフルパーティ、にゃんだふるパーティ♪」 ご馳走を食べ終え、ケーキも堪能したのじゃロリ猫が歌い始めます。リクが用意したディーゼルですっかりと気持ちよく酔っています。 サンタがさて、と背伸びをしました。片手に持っていたXYZのカクテル(これもリクが用意したものです)を机に置き、白い袋を掴みました。 「プレゼントをあげよう」 皆は歓声をあげます。いくつになっても、サンタさんからの贈り物は嬉しいものです。 サンタはまず、一番始めにメローナとフロートにプレゼントを渡しました。 花をあしらった綺麗なじょうろと、新品の手帳でした。 次にアイベリーと向き合い、ヒーロー物の変身ベルトを手渡しました。 アイベリーはガッツポーズをします。 シトロンとマーマレードには、色違いの湯飲み……夫婦湯呑でした。 プラムはダンスの練習用DVD、ピオーネには素敵な絵本を手渡して行きます。 淡雪は眠気が覚めるガム(365日分)をもらい、ジュジィは悪戯セットをもらいました。 サンタはちょっと考えて、くゆりに甘いお菓子がどっさり入ったバスケットを渡し、ピネにはお菓子作りの本、リクにはその片割れとお揃いになれる、二組のカメラストラップを渡します。 のじゃロリ猫を見たサンタは眉を潜めました。サンタの影が濃くなって膨らみました。 膨らんだ影が野太い声で言います。 「おまえ、ジャガイモになるか?」 のじゃロリ猫はふんと鼻をならします。 「ブラックサンタ、お主こそジャガイモになれ」 サンタは苦笑いし、ブラックサンタを引っ込めました。のじゃロリ猫とサンタは旧友です。と言うか、実のところはのじゃロリ猫の方が年上です。この掛け合いはいつもの冗談でした。 サンタはのじゃロリ猫にいつものを放り投げました。 のじゃロリ猫はそれをキャッチし、胡座をかいて上機嫌で飲み始めました。 大瓶の焼酎です。 サンタはマリネッタとフルーチェに向き直り、また白い袋に手を突っ込みました。 マリネッタには人狼の衝動を抑える脱狼薬、フルーチェにはさざ波の音が聞こえるオルゴールです。 サンタはアンコを見つめ、首をかしげました。 「うーむ君は難しいな……」 サンタはしばらく考え、納得したようなしていないような顔をして頷き、あるものを取り出しました。 それは黒と白の石で飾られたベルトでした。アンコは笑顔でお礼を言います。 ふぉっふぉとサンタは笑い、席から立ち上がりました。 「今年も楽しかったよ。ありがとう」 こちらこそ、と、皆は口々にお礼を言い、メローナが代表して告げました。 「残っている子供達の分の配達も、頑張ってください♪」 「おお、そうだった。まだまだ子供達が待っているんだった。それじゃあ、また来年!メリークリスマス!」 「「「「「メリークリスマス!」」」」」 去り際にまたサンタの影が膨らみ、のじゃロリ猫を脅しています。 「来年こそジャガイモにしてやる!だから風邪引くなよ!」 「わしも来年こそはじゃがバターにして食ってやるわ!だからくたばるなよ」 サンタはのじゃロリ猫の言葉を受け、背筋を伸ばして出ていきました。 やがて店の外から、シャンシャンとルドルフの引くソリについた鈴の音が聞こえてきます。 今日はクリスマス。 アンコは貰った贈り物を見つめ、にっこりと微笑みました。 Merry Christmas!
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『無花果のタルト』 更新日:2020/07/28 Tue 14 02 15 タグ一覧 くぐり抜けた先にあったのは不気味な部屋が広がっていた。 部屋全体が真紫に発光しているし、空間がネジ曲がっているようにぐにゃぐにゃしている。後からついてきただよロリ犬もビックリした様子なので、これは異常事態なのだろう。 「ようこそ、招かれざるお客様」 部屋の奥から少女の声がした。 「私は客じゃないわ。ちょっと聞きたい事があるだけよ」 「へえ、こちらの迷惑も考えずに押し掛けてきたのですか?軽蔑しますね」 部屋の奥から声の主が現れた。白と黒の翼を生やした少女の姿をしている。その翼と脛の下から先が赤い鱗に覆われている事以外は人間と同じだ。 「メローナはどこ?」 「……会わせるとお思いですか?」 「ちょ!待ってほしいんだよ!アンコちゃん。この子は謎を解きたいだけだって!」 だよロリ犬の言葉に、少女は深いため息をついてからこっちに向かってきた。その手には長く赤い爪が生え揃っている。 「その行為が迷惑と言う話なんです、だよロリ犬さん。別に殺したりするつもりはありません。ただお引き取り願うだけです」 愛歩は必死に考えた。 「あなたも人間?」 少女の歩みが止まる。 「ロリポップ姉妹は人間なんだよね?現にメローナはみどりだって名乗ってた。あなたも逢魔時に拐われてそんな姿にされたの?」 少女はひどく不快そうな顔をする。愛歩は何か間違ったことを言ってしまった気がした。 「名乗らせて頂きましょう。私はアナスターシャ・デビルケーキ。この『喫茶オウマがトキ』の厨房を任せられているパティシエです!こんな姿で申し訳ありませんが、生まれた時からこの姿なのですよ」 アナスターシャは更に自慢げに続けた。 「喫茶店の厨房はお店の心臓部ともいわれています。その心臓を任せられていると言うことは、私が優れている証拠なのですよ」 「でも…子供を誘拐して働かせてるんでしょ?そんなの外道だわ」 「外道…?」 愛歩の言葉に、アナスターシャは殺気を見せながらにじりよってくる。 愛歩は直ぐにでも時を止められるように覚悟を決めた。ここで引いては行けない気がする。 「外道じゃないわ!理由があっただけ!」 アナスターシャの殺気に、だよロリ犬が動いた。愛歩を抱えて大きく跳躍し、距離を取る。 「取り消しなさい!今の言葉!」 アナスターシャの直ぐ隣の空間が滲み、瞳の無い黒い蛇のような物体が出てきた。 「うわぁ、本気なんだよ…」 だよロリ犬が小さく呻く。アナスターシャは淡々と説明した。 「プレデター。空間を喰らう加速符号よ。さっきの言葉を取り消さなかったらこいつをけしかけるから」 「あなたに親はいないの?!」 愛歩の口から咄嗟に出た言葉に、虚を突かれたような表情をする少女。 「親なら子供を心配するはずよ!引き離された親の気持ちが分からないの?!」 愛歩の糾弾に黙ってしまったアナスターシャ。だよロリ犬はハラハラしながらそれを見守っていた。 「私に…」 アナスターシャは唸る。 「私に親の話をするなァ!!!」 蛇が飛び掛かってきた。愛歩は直ぐに時を停止させ、だよロリ犬を引っ張って避けた。 「うわ…」 調理台にボコっと穴ができている。空間を喰らうと言うのはこう言うことらしい。 「もうたくさん!」 愛歩の物でもアナスターシャの物でもだよロリ犬の物でもない声が辺りに響いた。 冷たい目をしたメローナがこちらを見ていた。 「これいじょう厨房で暴れたりしないでちょうだい、あと愛歩さん。ここまで来たならしょうがないわ。話してあげるからいらっしゃい。二人はここを掃除しておいて。いいわね?」 心配そうなだよロリ犬と不快そうな顔で睨んでくるアナスターシャの横を通って、愛歩はメローナの後をついていくのだった。 「さあ、どこから話しましょうか」 愛歩は先程の部屋と比べれば至って平凡な部屋に通された。 部屋全体に染み付いているコーヒーの匂いからして、ここが飲食スペースなのだろう。 並べられたソファーに座るメローナはヤクザの親分のような貫禄があった。 「先ず……そうね、オウマがトキが出来たワケから話しましょうか」 メローナのエメラルド色の瞳が輝いた。 「狂ってる!」 メローナの話を聞いた愛歩は思わず椅子から立ち上がってメローナを睨み付けた。 「一人の幸せの為に六人も犠牲にするなんて!」 「犠牲…?果たしてこれは犠牲なのかしら?」 「そうでしょう?!犠牲にされた子はもう親と会えないのよ!家に帰れないのよ!友達とも遊べないし見たいと思ってたテレビも見れないし将来やりたいと思ってた夢も奪われたのよ!!」 愛歩はひとしきり叫ぶと、肩で息をした。 メローナはそれを冷静に……冷酷に聞き遂げてから言った。 「もし早生ちゃんが人間だったら、今のあなたはいないわね」 「!!!!」 その言葉に、愛歩は衝撃を受けた。 「あなたは今幸せ?幸せならそれでいいじゃない。プラムちゃんも幸せなんだから。どうしてそれを壊そうとするの?」 「ッッッッ!!!」 メローナのそれは正論だった。愛歩は何も言い返すことが出来ず、ただただ唇を噛み締めた。 「仮にプラムちゃんが記憶を取り戻したとして、もう人間でなくなったあの子がご両親とやっていけると思うの?今までの行動は、ただのあなたのエゴだわ」 更なる追い討ちに、愛歩の唇から血が滲んできた。 「あれ~メローナお姉ちゃん。昼間なのにお客さん?」 突然響いてきた声に、メローナも愛歩も驚いた。 メローナと同じような構造をした人間ではない物が、銀色のお盆をもってこっちを見ている。 頭のてっぺんから爪先まで全身がピンク色に染まった少女。身体と同色の髪の毛先がクルンとカールしている少女。とろけたような跡の残る目の周り。きっと本当の身体が閉じ込められているんだろう。 「お客さん、初めまして!私、プラム! あなたのお名前は?」 「あ…」 この人だと直ぐに分かった。笑った時の顔がお母さんに似ている。 「えっと…」 「あ、そうだ!無花果のタルトをね、アンコ達と作ったの!まだ習いたてだけど、良かったら」 愛歩は目の前の少女を見つめた。この少女は、大石早生の事を覚えていない……この子にその話をしたらどうだろう?思い出すのではないか?お母さん達と再開したいのではないか? 口を開きかけた瞬間、愛歩の脳裏にお母さんの声が響いた。 ーーー危ない事はしないでねーーー 「ッ!」 愛歩は思わず差し出されたお盆を払い除けた。 無花果のタルトが乗ったお皿が派手な音を立てて落ちて割れ、愛歩の手に生クリームがベットリと付着した。 「こんな歪んだお菓子なんていらない!」 愛歩はそう言って駆け出した。 「ちょ、何?!何なのよ!」 後ろから大石早生だった者の声がするが、愛歩は振り返らずに走った。 「……あ、あれ?」 気が付くと見慣れた天井。そして聞き飽きたエアコンの音。 「……夢?」 薄暗くなっている外を見て、愛歩は呟く。ふと手に違和感を感じ、視線をはずすと… 「あ…」 愛歩の手には生クリームがベットリとついていた。 コンコン…… ノックの音に顔を上げると、ベランダへと繋がる窓に見知った影が見えたのだった。
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