約 115,884 件
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/217.html
※この物語では未成年の飲酒シーンがあります。よい子は真似しないでください 「こんにちはー♪」 その日も愛しの唯先輩とラブラブ時間を過ごすべく部室にやってきた私。 ですがその日の唯先輩はなにかが違っていました。 「……」 「唯先輩?どうしたんですか突っ伏しちゃって。居眠りですか?」 「…あずやん……?」 「ど、どうしたんですか唯先輩!?顔が真っ赤です!風邪ですか?」 「かじぇ…?えへへ、ちがうよー…ひくっ、わたしは元気百倍らよー♪」 「元気って…」 「それよりー♪」ガバッ 「きゃあ!?」 「あずにゃん遅いよも~!私待ちくた、ひくっ、待ちくらびれちゃった~♪♪」 「唯先輩…お酒臭い!?」 真っ赤な顔、おかしなテンション、酒の臭い…間違いない、唯先輩、酔ってる! ふと机の上を見ると、チューハイらしき缶が。まさか、これを…? 「えへへ~♪さわちゃんがねぇ、ひくっ、会議らから唯ちゃんに預けるって言ってね、ひくっ、らからね、ちょっと味見したの~♪」 「ちょっとって…あ、半分しかないじゃないですか!とにかく顔洗って酔いを…きゃああ!!」ガターン! 「ん~♪あじゅにゃ~ん♪」 「ゆ、唯先輩、何を…」 「えへへ~ん♪あ~ず~にゃ~ん♪」 「に゙ゃ…!ん……」 唯先輩に頭を思い切り抱きしめられ、私の顔は先輩の胸に押し付けられます。 普段なら極上の幸せを噛みしめるところでしょうが、酔っているせいか力が強すぎです。い、息ができません…… 「…ぐ……ぎ、ぎぶ……」 「あ!あずにゃん苦しそう!ひっく…たいへんだぁ…人工呼吸しなきゃぁ…」 「うぇ!?ちょ、ちょ……」 「んちゅ~♪」 「ん…!!」 今度は遠慮なくキスをする唯先輩。人工呼吸というか、これはもうただのディープキスです…… さ、酒臭い……でも唯先輩の唇、柔らかくて気持ちいぃ……って私なに考えてんの!? 「ぷはぁ…ねぇあずにゃーん…私なんかあっつい……」 「はぁ、はぁ…え?ちょ!ダ、ダメですよ脱いじゃ!唯先輩!!」 「はー、すっきりー♪」 私の静止を振り切ってブレザーを脱ぎ捨てた唯先輩は、ブラウスのボタンを全て外してしまいました。 間からかわいらしい下着がちらほら覗くのを下のアングルから見るのは、な、なんというか…… 「い…いくら酔ってるからってまずいです…!もし皆に見られたら……」 「えー…ひっく…大丈夫らよぉ……そうだ♪」 唯先輩はチューハイの缶を掴むと、満面の笑みを浮かべ私に差し出しました。 「はい♪あずにゃんも飲もー♪」 「ダメですよ未成年が飲んじゃ!と、とにかく離れて服を……!」 「ひっく……そっか、あずにゃんはまだ一人じゃ飲めらいのかぁ…大丈夫だよ、私が飲ましてあげるからぁ♪」 「な、ちょ…唯先輩……まさか」 「口移しならあず、ひくっ、あずにゃんも大丈夫れしょ~? く、口移し!?いくらなんでもそれは…と唯先輩を引きはなそうとしましたが時既に遅し。 チューハイを含んだ唯先輩の唇は、んちゅーっと私の唇に… 「んっ……ん…んく…んく…」 あ…やば……チューハイ、おいしい……かも……ゆ、ゆい…せん…だ、ダメ……あたま、ぼんやり……して……き……もち…いい…… 「えへへ、どう~?」 「…れんれんらめれす」 「ほぇ?らに言ってるのあじゅにゃん」 「こんらんじゃらえれす!ゆいしぇんぱいははらかになってくらさい!」ガバッ 「え?はらか?わ…ひゃあぁっ……!!」 私の名前は田井中律。個性派揃いの軽音部を華麗にまとめる美少女部長だ。 今日も澪や梓をからかったり唯と絡んだりムギの入れるお茶を飲んだりがんばるぞ! ガチャ 「おーっす!」 「んんっ、あ、あじゅにゃ…はふぅ…」 「ゆーいしぇんぱい♪」 バタン 律「……」 えーと、待て。落ち着け。まずは気持ちを落ち着けよう。私の名前は?――田井中律。私の誕生日は?――8月21日。 …よし、大丈夫だ。私は平気だ。変な幻覚なんて絶対に見ない。友達と後輩が半裸で絡み合っている光景なんてあるはずがないんだ。 ガチャ 「おーっす!」 「…あ…じゅ…にゃん……」 「あっ…ん、んん……唯…しぇ……気持ち…いいよぅ……」 バタン 「……」 「よ、律!」 「そんなところでどうしたの?」 「澪、ムギ。今日の部活は中止だ。3人でハンバーガーでも食べに行こう。今日は私のおごりだ」 「え、唯と梓は?…ていうかなんで泣いてるんだ…?」 「わ…私だって泣きたい時くらいあるんだよぉぉ!うわあぁぁぁん!」 「わ、わかった!わかったから!わかったから泣くな!」 「…なにか、部室から強烈かつ甘美な雰囲気がするわ……ゴクリ」 ―終幕― さすがムギ -- (名無しさん) 2010-06-30 23 35 35 律の自己紹介吹いたwww -- (ぴー) 2010-07-13 20 42 23 この後どうやって帰ったのだろうか…もしや外でもイチャイチャを…! -- (nWo) 2010-07-29 15 33 41 そのまま寝落ちして~、起きたらあら不思議、裸で絡み合ってるじゃありませんか!!っていう妄想をした。 -- (名無しさん) 2010-08-28 22 01 10 さわちゃんGujjobu! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-21 20 09 53 これはえっちぃ -- (名無しさん) 2020-06-29 00 35 27 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/1948.html
「アイスが美味しいね~、あずにゃん」 今日は唯先輩と私は部活が終わったあと、近所のお店に立ち寄って唯先輩念願のアイスタイム。 でも唯先輩だけじゃない、二人でソフトクリームを舐めあう私にとっても至高の時間。 でも、せっかくのアイスだったのに、唯先輩ったら無理をして食べて…… 「うわ、あずにゃんちょっとお腹を壊しちゃったからトイレに入ってるね~」 そんなに夢中で食べるからです。 残りは私が頂いちゃいますからね、もう。 はあ、唯先輩が出てくるまでちょっと暇になっちゃったな。 ここで最近こっそり携帯でやってるネットサーフィンの時間にしちゃおう。 掲示板とか、動画サイトとか、色々あるけれど… あれ?なんだろうこのスレッド。なになに、あずにゃ……何で私がこんな所で話題に? さてと開いてと…… あずにゃんペロペロ(^ω^) 一瞬固まってしまった。ペ、ペロペロ!?アイスじゃなくて私!? しかも一つや二つじゃなくて何回も繰り返して、沢山の人が。 私、クラスメイトや近所の人からそんな風に見られてるの!? 歩いてたら突然舐められちゃったりするのかな!? 「あずにゃんお待たせ~」 ビックリしたというのもあるけれど、何よりも不安になった私は唯先輩に抱きついた。 「唯せんぱぁ~~いっ!!」 ギュッと力一杯先輩の抱き心地のよい身体に絡みつく。 その瞬間、ほっとして力が抜けていった。 「どうしたのあずにゃ~ん……」 先輩は心配そうにあたしの顔を覗き込んでくれた。 その気持ちに応えるように、甘えるように、あたしは言った。 「なんかネットの掲示板に変な事が書かれてるんです~!」 携帯の画面を唯先輩に見せつつ、私は先輩の胸に泣きついた。 「どれどれ~、あずにゃんぺろぺろ?可愛い掲示板だね~」 可愛くないです!私、そこら中の人からペロペロされちゃうんですよ? 「わぁお!あずにゃん大人気ですか……」 人気なんてどころじゃないです。身の危険を感じます……。 「でもあずにゃんはアイスじゃないから本当にペロペロなんて出来ないはずだよ~」 世の中にはそういう趣向の人もいるんです。 例えば、こうやって顔中を嘗め回したりとか…… 「あずにゃん、可愛いよ……ぺろっ」 「にゃあん!舐めちゃ駄目です……唯先輩」 「この肌の張りを舐めてるだけでなんか落ち着くよ……ぺろっ……ぺろっ」 「にゃ、うにゃあああ///」 はうっ!なんで唯先輩で想像してるの! 落ち着け、私!! 「も~、真っ赤になったあずにゃんも可愛いなあ」 そんなにスリスリしないでくださいっ。 気持ちよすぎて先輩の虜になっちゃいます…… 「あ、あずにゃんさっき気を散らしながら食べてたな~。ほっぺにアイスついてるよ~」 珍しく先輩らしくなった唯先輩。でもほっぺに付いたの位自分で 「あずにゃんアイスいただき~……ぺろっ」 ふにゃあああああああああああああっ!! 本当だ! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-07 16 41 33 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/354.html
軽音部。 それは多分私の中でとっても有意義なものだと思う。 唯先輩。澪先輩。律先輩。むぎ先輩。みんなとってもいい人。 私をいつもかわいがってくれている。 私がここに入った理由は唯先輩だ。 新入生歓迎会のとき、軽音部は私たちのために演奏をしてくれた。そのときのギターが彼女。 彼女のギターはとても天才的だった。有名なギタリストでいえば、Charぐらい。 現在私は、その唯先輩の家、平沢家にいる。 そして唯先輩の部屋にいる。 「今日はギターの練習一緒にがんばろうね」 練習終了後、次のライブに向けて練習することが決まり、私は唯先輩と一緒にギターの練習をすることになった。 半ば強引に。 「次のライブに向けて、みんなで各自練習だあ!!」 事の発端は自称部長、律先輩だった。 「どうしてそんなに律が張り切ってんの?いつもそんなやる気見せないのに」 「だってえ、だってえ、新曲だよ?今日演奏した新曲をさあ、もっとうまく演奏したいと思わない? 今日の練習はむぎ先輩が持ってきた新曲の練習が主だった。 その日は何だかいつものお茶する軽音部とは違い、何だかみんな張り切っていた。 「この曲はね、すごく爽やかな曲なのお。だから、もっと練習すればこの世界観がもっと伝わるかも」 「まあ確かによかったな」 「うん。これで優勝間違いなしだよ!!!」 何を競っているんだか。でも、そんな感じ。みんなの目が輝いていた。 「あずにゃんはどう思う?」 「わ、私は……」 私はというと、そののりにどうもついていけなくて、そのせいか珍しくミスを連発した。 エフェクターの調節が難しい。あとギターソロもみんなにだめ出しされた。 「梓は結構ミスしてたなあ。珍しく」 「確かにあの曲は難しい。エフェクターの調節がな」 「澪ちゃんの歌詞もすごくよかったよ」 そして澪先輩の作詞。たいていむぎみおで曲が出来上がる。 タイトルは「Realize」。結構真面目なタイトルだが、内容は恥ずかしい。 「あ、あんなののどこがいいんだ?ものすっごく鳥肌立つ詞だよ?」 「律はうるさいなあ!!いいじゃないか、私がこんな恥ずかしい詞書いても!!!」 今日の部室はこんな感じ。私はどうもついていけなかった。 「でも練習すればもっとよくなるよ。あずにゃん、今日は一緒にがんばろうね」 そして唯先輩のこの発言。 「えっ?この後ですか?」 「もちろんだよ~。憂のおいしいごはんもあるよ~」 要は泊まりに来いと。確かに明日は土曜日だし、学校はないから別にいいのだが。 「っしゃあ!!各自練習は決定だあ!!!日曜にライブハウスに集合な!!!以上、解散!!!!」 そして強引な決議。 「わ、わかりました。じゃあ、19 00頃、そちらに向かいます」 「了解」 そして現在に至る。 時刻は22 00を過ぎたところ。まだギターの練習をしていない。 「唯先輩」 「なあに?」 「まだギターの練習してないですよ。早くしましょうよ」 私は家に帰りたかった。1人でなら自由に練習が出来る。それが理由。 するなら早くしたい。 しないなら帰りたい。 「んじゃしよっか。待ってね。今から飲み物持ってくる」 そう言うと、「まいこはん」という文字が書かれているパジャマを着た唯先輩はこの部屋から出ていった。 私もパジャマ姿。もちろん入浴は別々。 憂は現在皿洗い中。 いつものんびりしている唯先輩と、しっかり者の憂。この姉妹はこれはこれでいいバランスを保っている。 私はムスタングのむったんが入ったケースを開け、むったんを取り出した。 そして今日の「Realize」の楽譜をかばんから取り出した。 「ああ、何で私、自由が少ないの?他の人は自由を持て余しているのに」 冒頭の歌詞はこれ。 これだけでは「別に普通じゃん?」と思うかもしれないが、 「えっち」 だとか、 「キスがしたい」 などといった歌詞もこの「Realize」にはある。それを歌うのは唯先輩。 今日の練習のときは歌わなかった。 「お待たせ~」 そのとき、唯先輩が麦茶をこの部屋に持ってきた。 「これ結構難しいよね。私だってこの歌詞とギー太の演奏とを一緒になんか出来ないよ~」 そう言いながら唯先輩は私の隣に座り込んだ。 「難しいですよね。特にギター2人のパートは」 「これを考えたむぎちゃんもすごいと思うよ」 麦茶を置いたら早速唯先輩はギターのギー太を取り出した。 「あんまり音出さないようにしましょうね」 「そだね」 そして彼女も机に向かい、かばんの中から楽譜を取り出した。 ちなみに平沢家の両親は現在バリ島に行っているらしい。こういうことはしょっちゅうあるらしい。 子供を置いて何をしているんだか。 ギターソロの次に難しいのはサビ。 何とここで全員のコーラスが入るというのだ。 「この曲はね、実は私を含めた4人が考え抜いて出した曲なんだ。あずにゃんのために」 「わ、私のために?」 「うん」 そしてどうやら私の曲という。私は当日まで全然知らなかったのに、みんな結構張り切っていたから、このことは何となく納得は出来る。 唯先輩は現在私の隣。ご想像の通り、引っ付いている。 「ほら、このサビはね、私が考えたの」 「「奇跡にも似た世界の果て」、ですか?」 「うん」 「じゃあ、この「えっち」とか、「キスがしたい」といったものは…」 「ああそれはむぎちゃん」 この歌詞は4人が分担して考えたという。 これなら何とか説明がつくか。他の3人がこんな歌詞を思いつくはずがないから。 「さすがむぎ先輩ですね…」 「そだね」 むぎ先輩の変態ぶりはもう軽音部の中では周知だった。 女の子同士の絡みを見るとうっとりするらしい。 「むぎちゃんは女の子同士がいいみたいなんだ。しかも、見る側」 「さすがですね……」 「この絡みも、多分彼女がいると鼻血をだばだば垂らすと思うよ」 「そうされると結構困りますね……」 そう言うと、唯先輩は私に引っ付くのをやめ、また練習に戻った。 夜遅いから何もつけない。素のままのギター。 音は全然鳴らない。チューナーをつけての練習。 唯先輩はこの曲の鼻歌を歌いながら演奏していた。 何だかもうこつをつかんだみたいだった。さすが唯先輩だ。こういうところが天才的だ。 一方私の方は楽譜と悪戦苦闘。正直言ってわからない。 「ああだめだあああ。上手に弾けなあい!!」 ついにはその言葉を叫んで練習中断。私の心の叫びがふと出てしまった瞬間だった。 「珍しいね。あずにゃんがそんな言葉発するなんて」 「無理ですよ……。難しすぎます……」 いつになく、私は弱気だった。 この曲は私のためにみんなが作った曲。それなのに当の私は結局弾けずに打ち切り。 はあ、何だか情けないなあ……。 「はあ~あ……。全然うまく弾けない……」 私はそう言うと背中を床にぽんと叩きつけ、天井を仰ぎ見る姿になった。大の字になって。 いつもはそういうことないのだが、今回に限っては本当に無理。今すぐにでも逃げ出したい気持ち。 みんなに日曜日、どんな顔して謝ればいいのか、そんなことまで考えるようにもなっていた。 「唯先輩はいいですよね…」 「ん?」 ついには唯先輩を最初出会ったときのように羨むようになっていた。 「だって、難しい曲をすぐに弾けるようになるじゃないですか……。すごすぎますよ……」 彼女の天才度はずば抜けている。この前、この「Realize」と同じくらい難しい「GO!GO!MANIAC」を演奏したとき、彼女は1日でギターのリフを完璧なまでに仕上げた。 同じ音楽家でいえば、のだめと同じくらいの天才ぶり。 練習はあまりしないのに、いざとなるとめちゃくちゃでも曲になるように仕上げてくる。 私は練習しないと弾けない。というか完璧でないと本番で演奏したくない。 この2人の違いはそこにある。 「そんなことないよ。あずにゃんには敵わないよ」 「本当にそう思ってます?」 「ほんとだって」 この話をしているとき、唯先輩は手を止めなかった。 「私ね、去年の学園祭のとき、あずにゃんに怒られて嬉しかったんだよ」 そして彼女は去年の学園祭のことを話し始めた。 「怒られて嬉しくなるって、どこのMなんですか?」 私は少々恥ずかしくなり、くすっと微笑みながらそう言った。 「だってさ、演奏が成功してもあずにゃんはそれに満足しなかったもん」 「当たり前じゃないですか。あれは本当にめちゃくちゃだったんですから」 「楽しく演奏できたことも嬉しかったんだけど、私はあずにゃんに怒られて嬉しかった」 それにしても唯先輩はどうも先輩らしくない。 威厳がないといえばそれまでだが、後輩に怒られる先輩は先輩として失格だと思う。 「はぁ…」 そして私の溜め息で会話終了。唯先輩はまた鼻歌を歌いながらギターに集中した。 「私トイレ行ってきます」 「ほ~い」 何のためかはわからないが、私は一旦席を外すことにした。トイレという口実を使い。 むくっと起き上がり、部屋のドアを開け、向かった先は憂の部屋。 別に憂の部屋で用を足すつもりではないが。 もう皿洗いは終わったのかな。水の音もしないし。 とんとん。 「はーい」 ドアをノックしても憂の声がしたし。 「梓です」 「どうぞ」 とりあえず憂と話がしたかった。唯先輩には申し訳ないのだが。 憂のパジャマは「おみやさん」だった。 「どうしたの?練習は終わったの?」 「いや途中…」 憂はもうそろそろ寝る感じだった。枕元にカバーつきの小説に、電気を消そうとしていたから。 「だったら練習してきなよ。お姉ちゃん寂しがってると思うよ」 「いや無理…」 「ふぇ…?」 私はそのまま憂のベッドまで足を運び、体をすとーんとそのベッドに叩きつけた。 「疲れた……」 「そんなに大変なの?」 「大変も何も、難易度が高すぎる……」 憂は軽音部=放課後ティータイムのオフィシャルサポーターである。単純にお手伝いさんというような感じ。 「そっかあ。今度の難しいんだあ」 「でも唯先輩は完璧だった……」 私がそう言うと、憂は嬉しそうに微笑んだ。 「お姉ちゃん梓ちゃんが出来ないものでも出来るんだ」 「その曲、私のために作ったんだって……」 「へぇ~。何てタイトル?」 「「Realize」」 彼女のシスコン度は世界一だと思う。私が出来なくても、唯お姉ちゃんが出来れば微笑むという始末だ。 私のことも考えてほしい。 「今度日曜日、ライブハウスで合わせることになったの。でも、私多分弾けない……」 私がこんなにネガティブになるのは初めて。いつもなら「やってやるです!!」というようにがんばるのだが、こればかりは無理だった。 「大丈夫だって。梓ちゃんなら出来るよ」 「出来ない……」 匙を投げた。 真面目な私が弱音を吐く今日この頃。短時間で唯先輩みたいに上手くは弾けない。 「いつもの梓ちゃんなら、私に弱音吐かないでひたむきに練習してるよ」 「そうだけど……」 この「Realize」が私の曲というところがネックだった。だから私が完璧に演奏しないと放課後ティータイムの一体感が崩れてしまう。 みんな私のために必死。誰か1人が失敗すると演奏を中断して励まし合う。 そして一番私を励ましてくれた。しかしもう弾けない。 この曲については憂には何も言わなかった。 「ねえ憂…」 「なあに?」 「何かギターがうまくなる道具……、ない?」 「ない」 そして私のどうしようもないぼけも軽く跳ね返された。 「がんばるしかないと思うよ。私は」 努力が大事。私もそう思うのだが、努力しても報われないことだってある。 それが今。まだ土曜日があるというのに、全然先に進まない。 「……………」 私は何も言わずに起き上がり、憂の部屋から出ることにした。もうそろそろ唯先輩のところに行かないと、彼女が心配する。だから。 「がんばってね。応援してるから」 憂の最後の言葉がこれ。これを発すると、憂は電気を消してゆっくり目を閉じた。 唯先輩の部屋に戻ると、唯先輩はギターの練習を終えていた。 目は充血していた。眠いのかな。 麦茶は残り1/6。もうそんなに飲んだのか。 「あれ、終わったんですか?」 「ううん。中断してた」 そう言うと、彼女はまたギー太を持ち、楽譜を見ながら練習を始めた。 「それにしてもトイレ長かったね」 「べ、別にいいじゃないですか。長くたって」 私はどうしよう。 今から必死になって練習しても完璧までは行かない可能性が高い。 むったんは放置状態のまま。悲しそうに私を見ていた。 「私ね、あずにゃんがトイレに行ってるとき、この曲、本当にライブで出来るのかなって思ってきたんだ」 そして唯先輩も悲しそうに私を見ていた。 そのときは手を止めていた。 そしてギー太も床に置いた。 練習はふりみたい。 「それは、私が失敗ばっかりするからですか?」 「ううん。あずにゃんはがんばってるよ。でもね」 「でも、何ですか?」 楽譜は見たところ濡れていた。お茶でもこぼしたのかな。 「これ、歌いたくない……」 唯先輩はこの歌を歌いたくないと言った。 なぜかはわからない。私を除くみんなが考えて作った曲なのに、どうして歌うことを嫌うのだろうか。 「何で歌いたくないんですか?」 だから私はそれを尋ねた。 「だって、これを歌うと、あずにゃんが遠くに感じてしまうから……」 「……………」 遠くに感じてしまう?それはどういうこと? この歌詞に私を遠ざけるフレーズはなかった気がするが。 「あずにゃん……」 「な、何ですか……?」 何だろう、この空気。 重い。 悲しい空気ってこんなにも重くなるのか。 「……助けて」 「何で……?」 「嫌……」 そう言うと、唯先輩は涙を流した。 「ふえぇぇ……。嫌だよおぉぉ……、嫌だよおおぉぉぉ……」 いつものんびりしている唯先輩とは大違いだった。 こんなにも涙を流して、こんなにも私を想って……。 いや、「想って」は違うか。 それとこれとは全然違うように聞こえるし。 楽譜は彼女の涙で濡れたのだろう。 「何で私があなたを助けなきゃいけないんですか……?」 しかし、現在の私はその唯先輩の姿に退いていた。 かわいそうとしか思えない。何もしてあげられない。 「ふわああぁぁぁぁぁぁ………っ!!!」 この泣き声は部屋、いやこの家中に響き渡っていた。だから、憂の就寝も妨げてしまう。 「唯先輩大声で泣かないでくださいよ…」 「あずにゃあああぁぁぁぁぁ………」 私を遠くに感じる。 もしや、サビ……? サビは彼女が書いたと言っていた。 「奇跡にも似た世界の果て、私はここで何が実現る(できる)? つかみ損ねた夢の粒が、弾け飛んで空に消えていく。 奇跡を望む私の胸、夢を失くしたときに気づく。 その夢を忘れるのならば、楽しまなきゃいけないのかな?」 これがそのサビの一部分。となると、夢=私。彼女は私に近づきたいと思っているのか。 それは多分ギター技術の向上のため。もっと練習して私と肩を並べたいと思っているのだろう。 そしてギターの技術が向上しなければ、あとはライブを楽しむだけ。奇跡は一体何を表わしているのだろう。 「行かないで……」 唯先輩の寂しそうな声が室内に響き渡った。 「どこにも行かないですよ……」 「嫌いにならないで……」 「嫌いにならないですよ……」 「ずっとそばにいて……」 「いますよ……」 その言葉のやり取りに悲愴感を感じた。これから死ぬわけではないのに。 でもそんな感じ。 これは私が動かないといけないのかな。 そう思った私は唯先輩のそばに行き、そっと彼女を抱き寄せた。 心臓の鼓動はすでに高鳴っていた。心拍数も速い。 「私の胸で思う存分泣いてください。先輩らしくないですよ。だから泣き顔を私に見せないでください」 「ふええぇぇぇぇ………」 彼女はまたわんわん泣いた。 私はどきどきしていた。 何だかとっても緊張している。 当然か。人を抱き締めているのだから。 「あずにゃん……?」 「何ですか……?」 「大好き……」 その言葉でまた緊張が膨れ上がった。 「あったかい……」 唯先輩に寂しさはいらない。いつも元気でのんびりしていればそれでいい。 今日はもう練習はいいや。 それどころではないし。この状態では練習できない。 「あずにゃん大好き……」 その言葉はもう寝言みたいだった。 「すー……、すー……」 そして泣き終えたら赤ちゃんみたいにすやすや眠り始めた。 「もう……、唯先輩ったら……」 彼女は先輩。 先輩が後輩をかわいがることは普通。 後輩が先輩を想うことも普通。 思いやることも。 「私の胸で寝られたら困るのに……」 唯先輩の体は華奢だった。今にも崩れてしまいそうな感じ。 私は彼女の背中をぽんぽん叩いた。起こさない程度に。 「でもこういうのも……、ありかな」 しかし、このままでは私が寝れないので、私は彼女を抱っこし、そのままベッドの方へそっと持っていった。 おやすみなさい、唯先輩。 ここで1つ問題が起きた。 私、どこで寝ればいいのだろう。 平沢姉妹は眠ってしまった。 現在覚醒しているのはあずにゃんただ1人。 猫のように何もまとわず寝るのはさすがに寒い。 そして歯も磨いていない。 とりあえず歯は磨かないとまずいと思い、私は洗面所に行き歯を磨くことにした。 そして用を足したあと、再び自分の荷物がある唯先輩の部屋へと戻っていった。 どうしよう。 添い寝? いやいやいや、添い寝なんか出来るわけない。 もしこんな光景を憂に見られたら、人生が終わってしまう。 「お、お姉ちゃんと梓ちゃんが…、こんな関係だったなんて……」 その言葉を発されて終了。こんなことは思いたくもない。 でも、この寒い季節、何か羽織らないと無理。凌げない。 「あずにゃぁぁ……」 そして唯先輩の寝言が聞こえた。 「何ですか…?」 「むにゃむにゃ……」 その顔はさっきみたいに寂しそうだった。 どうしよう。 この寂しそうな唯先輩を抱き締めながら寝るか、それともその顔を見ないで背中合わせで寝るか。 もう添い寝は前提。 これはもう仕方のないこと。憂には土下座で謝ろう。 「失礼しまあす……」 私は彼女の布団の中にゆっくり入り込んだ。 ぬくぬく。 あったかい……。 普通にあったかい……。 彼女の温もりが溢れていた。そんな感じ。 あ、でもその前にギターたち片付けておかないと。私はそう思い布団から出て、ギターと楽譜を片付けた。 そしてまた布団の中へ。 あったかい……。 「あずにゃん……」 布団に入ってから3秒経って唯先輩はそう言った。 「何ですか……?」 私は彼女の顔は見ていない。背中を向けていた。 「むぎゅ……」 しかし、抱きつかれた。 彼女の胸が背中に当たる。 「な、何やってるんですか……?!」 寝ぼけてやっているに違いない。絶対にそうだ。 「大好き……」 今日その言葉を何回聞いたか。 「すー……、すー……」 そしてまたすやすや眠った。 一方私は動けない。 抱きつかれているのもそうだが、緊張で体が硬直していた。 心臓の鼓動が激しく鳴り響いていた。 何でだろう。 私、もしや唯先輩のこと……。 いやいやいや、もしそんなことを考えてしまったら、今までの一体感が崩れてしまう。 亀裂ものだよ。 彼女は先輩。 そして同じ女の子。 同じ女の子がお互いを恋してしまってはいけない。 私が助けてもらいたい……。 唯先輩…。 唯先輩……。 唯先輩………。 助けて………。 私、何かに溺れてしまいそう………。 ここは夢の中なの……? それならそれでいいから……。 「あずにゃん……」 あ、唯先輩……。 「何で泣いてるの……?」 あなたのせいですよ……。 「私のせい……?」 そうです……。 「あずにゃんが悲しむ顔は見たくない……」 それをさせているのは誰ですか……? 「だから、私、行くね……」 どこにですか……? 「あずにゃんの悲しい顔が見えないところまで……」 だめ……!! 「だめなの……?あずにゃん、私がいると寂しくなるんじゃないの……?」 行かないで……!!!! 「でも、みんなが待ってるから行かなきゃ……」 嫌……。 行かないで……。 ずっと私のそばにいて……。 私を1人にしないで……。 「うわああああぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!!」 「ふぇ……?どうしたの……?」 あ、唯先輩……。 どうやら私は自分の叫び声で起きてしまったようだった。 窓の光は私を優しく包んでくれた。 そして私の枕元で私を心配そうに見ている唯先輩も……。 もう朝か……。土曜日か……。 「ひどくうなされてたね。何か悪い夢でも見た?」 昨日の彼女の泣き顔はどこかへ行ってしまったみたいだった。 「行かないで……」 しかし、今度は私が泣いてしまいそう。 「ふぇ……?」 「唯先輩は私のそばにずっといるの……」 私は自分で勝手に泣き出した。 布団をハンカチ代わりにして。 「あずにゃん……?」 これで彼女が行ってしまったらもう終わり。 私は軽音部を辞めなくてはいけなくなる。 演奏不可能という理由で。 「私が助けてもらいたいですよ……!!!ぐすん……、ふえぇ……」 「あずにゃん……」 心がおかしくなってきた。 私は一体どうなってしまうのだろう。 唯先輩に抱き締められるのか、それとも……。 「私もあずにゃんと離れるのは嫌だ……。みんなと離れるのも嫌だ……」 私は彼女の方は見ていなかった。だから次何をするのかはわからない。 「あずにゃん……」 その言葉のあと、唯先輩はもう一度布団の中に入ってきた。 「大好き……」 そして、次の瞬間だった……。 ちゅ。 彼女は私の頬にキスをした。 「キスがしたい、夢の泣き顔にそっと 夢のことをずっと忘れないように」 そして「Realize」のワンフレーズを耳元でささやいた。 ぞくぞくした。当然といえば当然か。耳だもん。 「な、何してるんですか……?!」 「キスしたくなってきた……。あずにゃんを忘れないように……」 「私は夢なんですか……?」 「夢というより……」 その次の言葉は発さなかった。 その代わり私の頬にもう一度キスをした。 もう心を許してもいい……。そう思えた瞬間だった……。何も縛られずに生きていけそうに気がした……。 「あずにゃん……」 「はい……」 「こっち向いて……」 「はい……」 だから、この口同士のキスは容易に出来た……。 憂、ごめんなさい。 私、唯先輩の唇を奪ってしまいました……。 (未完) 続きが気になる -- (名無しさん) 2010-12-11 21 46 17 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/10910.html
~あずさのへや!~ こんな日に限って、両親が帰ってきてる。 昨日いて欲しかったのに、今日は授業中や部活の間も、帰り道でもずっと悶々としてて、期待っていうか何ていうか、すっかりそういうつもりになってたのに。 梓「ううっ……生殺し……」 生活時間がズレてるんだか疲れてるんだか、もう寝ちゃってるんだけど。 トイレに起きるかもしれないし、ヘッドホンで音は誤魔化せても、部屋に入って来られたらアウトだよ。 アンプなしでギターの練習してる時にドアを開けられたことは多々あるから、いきなり入ってこられるのは慣れてるけど……でも、えっちぃDVDの鑑賞中はいくら何でも、ねえ。 梓「今日も本だけにしよっと……」 念の為だよ。 念の為に、内鍵をかけて。 あっち側からでも、コインなんかで簡単に開けられる鍵だけど、念の為。 梓「んっ……」 カバンから、唯先輩の本を取り出す。 今日は、私の理性を押し止める封印は何もない。 表紙をめくって、昨日ちょろっと眺めただけの写真とかを、改めて鑑賞する。 梓「うわぁ……あ、あっ……見えそで見えない……くうっ!」 どきどきする。 昨日よりどきどきしてるっぽいから、ティッシュを鼻に当てながらなのに、ハナチは出ない。 まさか一日で慣れたってことはないと思うけど、うん、出ないなら出ない方が助かるっていうか。 梓「……えええ!? こんなに水着が食い込んでてもいいの!? 形がくっきり浮かんでるのに!」 モデルの人……っていうのかな、ふたりの女性が、いわゆる扇情的なポーズで写ってて。 この水着ワンサイズ小さいんじゃないかな、って突っ込みたくなるんだけども、何だかそれがまた興奮しちゃって。 梓「はうう……水着があるだけで、こんなのが普通に売られてるんだ……ん、んぅ……」 時折呟く自分の声が、酷くえろっちく興奮しちゃっていることに気付く。 どきどきして、身体の芯が熱くって。 膝が勝手にもじもじ動いてすり合ったりして、私の本能がこれ以上は取り返しが付かなくなると教えてくれてる。 ……うん。今日は、ここまでにしておこうっと。 梓「ま、まー? 唯先輩も急いで読みたいわけじゃなさそうだったし? もう二、三日借りても平気だよねっ」 誰に向けるともなく、言い訳を呟く。 このまま読み続けて本気でえろっちぃ気分になって、えろっちぃ行為を始めたらそれこそDVD見てた方がマシじゃないの? って感じだし。 ……あれ。 私、何か興奮のしどころがおかしくない? 梓「いやいやいやいやいや、こういう本は読んだ人に買わせる為に、興奮させるように作ってあるんだから……」 ちょっと違う気がしたけど、私は無理矢理自分を納得させて、唯先輩のえち本を閉じた。 ~よくじつ・ぶしつ!~ ドアを開けると、唯先輩が満面の笑みで待ち構えていた。 唯「今度こそちゃんと読んだよね、あずにゃ~ん?」 梓「いえ……昨日は親が帰ってきてたので、全然読めませんでした」 本当は読みましたけど。 後半、どんどん内容が破廉恥になってくページをめくる手を無理矢理止めて、寝ましたけど。 お陰で朝から悶々としちゃって、かつてない妙な気分ですよ。 唯「そおなの? じゃ、残念だけど返してもらおっかなぁ」 梓「……はい?」 唯「私も楽しみにしてたんだよ。でも、あずにゃんが読みたそうにしてたから貸してあげたんだよ?」 梓「はぁ……そうですよね」 意味もなく無駄な手間をかけてまで、あんなえろっちぃ本を注文するハズがない。 本当は私よりも唯先輩の方が、早く読みたかったんだよね。 梓「ええっと、本、お返しします」 唯「そだね。親御さんがいたら、えっちぃDVD見たり出来ないもんね」 梓「いえ、うちの親は今朝早くに慌てて出かけましたから、また何日かは帰ってこないと思いますけど」 唯「んじゃ、今夜は見られるんだ?」 梓「そ、そうですけど……唯先輩が注文した本なのに、当人より先に読んじゃって、申し訳ない感じですし」 唯「ううん。実はそれ、もう持ってるんだよね、私」 梓「……はい?」 唯「布教用ってやつだよ、あずにゃんにあげる。まだオマケは本当に見てないけど、素敵そうだと思ったから……ね」 ぴっ、と唯先輩が悪戯っぽく舌を出してみせる。 その舌先に、不覚ながら、私は少しばかりの生々しいエロスを感じてしまって。 梓「んっ……く……ふぅ……!?」 唯「あ、あずにゃん!?」 梓「だ、だいじょぶ、でふ……んう、ふぷっ……ふうう」 こんなこともあろうかと、ポケットティシュがコンディション・オレンジで待機中だったのです。 ほら、こうして詰めて、拭いて……平気なんですから。 唯「んふふ。あずにゃん、面白い顔だねぇ」 梓「にゅあっ!?」 唯「嘘うそ。ハナチだもん、止まるまでは誰でも仕方ないよ~」 ううっ、知られちゃった。 借りてた本で私がこんなに興奮するような子だって、唯先輩はもう確信してる。 唯「……ねぇ、あずにゃん」 梓「ふぁい?」 唯「その、もしよかったらなんだけど……一緒に、あの本の真似してみない?」 梓「んぷふっ!?」 別にいきなり鼻から大量出血したわけじゃない。 なのに私は鼻と口元を押さえて、表情を見られないように俯く為に、大袈裟に動いて。 ……唯先輩と、私が? 手足を絡めて、それどころか変なところをこすり合わせるような格好をしたり、おっぱい揉むような真似をしたりするんですか? 梓「は、はうっ、あの、はうはうっ」 唯「嫌だったら無理しないでね? 嫌々やってもつまんないだろうし、意味ないだろうし」 ……意味、ですか。 女の子同士でえろっちぃことするとなれば……いえ、何となく借りた本を読んでる途中で気付いてましたけどね。 梓「唯先輩、わざと貸してくれたんですよね。っていうか無理矢理でしたけど」 唯「嫌なら返してくれればいいんだよ」 そんな、突き放すような言い方をして。 わかってるくせに。 私があの本を読んだっていうことは、つまり、女の子同士でそういう行為に及ぶのに抵抗がないってことじゃないですか。 しかも今の私の反応を見たらわかる通り、えちぃ行為に興味津々どころか、とっても興奮しちゃったってことじゃないですか。 梓「……唯先輩。ぎゅってしてください」 唯「うん」 梓「んっ……んぅ」 いつもは唯先輩の方から飛び付いてくるのに、思い返してみると、今日も昨日も抱き着かれてなかった。 抱き着かれる感触がいつもと同じだから、計算、じゃないと思うけど。 唯「んはぁー♪ あずにゃん、あーずにゃ~んっ♪」 やわくて、あったかくて、がばっと私を包み込むように覆い被さってくる唯先輩。 ん、まぁ、今までも結構気持ちよかったんですけど……今日は、えっちぃ感じで意識しちゃうじゃないですか。 ……まさか、これを狙って焦らしたわけじゃないですよね。 梓「ちょっ、と、えと……座りませんか? 隣でも、お膝の上でも、今日はお好きなようにしていいですから」 唯「うんっ♪」 スプリングが半分逝ってるソファーに唯先輩が座って、私はそのお膝の上に。 くんくん匂いを嗅がれてるけど、今日は私も嗅ぎ返してみたり。 梓「ん、すんすん……くん……」 唯「あり? どしたの、あずにゃん。いつもと何か違うよぉ?」 梓「わっ、わかってるくせに、そーゆー言い方はズルいですよ? くんくん」 唯「えへー」 ……唯先輩って、とってもいい香り。 ぅん、胸元も……首筋も。脇の下なんかの匂いも嗅いじゃう。 唯「やん、あずにゃん……そんなとこ、恥ずかしいよぉ」 梓「んふー……いい匂いですよ。勿論、いい意味で」 唯「いい意味で、ですか」 梓「はい。いつもいつも、唯先輩ばっかりこんな気持ちになってたのかと思うと、悔しくて堪りません」 もっと早く気付いていたら、嫌がるふりをしながらでも、唯先輩の匂いを感じることが出来たのに。 こんな……唯先輩のすぐ傍で息をするだけで、幸せな気持ちになれたのに。 梓「すんすん……んっ、くんくんくん……」 唯「え、えへへへへ。恥ずかしいけど、嬉しい、かな……あずにゃん、いつも嫌そうだったから。抱き着いても文句言われないなんて」 最近は半分以上が演技だってわかってたんじゃないですか? 本当に嫌だったら必死で逃げるし、そもそも近付いたり近付かれたりしないですもん。 私は唯先輩に抱っこされたいからこそ、捕まったら大人しくしてたんですよ? 梓「言えばいいですか。文句」 唯「うーん……言われたくないかな」 唯「だって、もしかしたら本当に嫌で、でも私はあずにゃんからすれば先輩だし、逆らえない的な?」 もしかしたら、ってどういう意味なんですかね。 逆らうも何も私、普段からずけずけと自分の意見を言ってるつもりですがね。 梓「……唯先輩は、そおゆう方がいいんですか? 嫌がる後輩を無理に従わせる感じの……」 唯「ううん。嫌だったら、もう抱き着かないよ。本はあげるけど、興味なかったら捨てちゃっていいし」 悔しいことに興味があるから、昨日突き返せなかったんですけど。 そして、今もこうやって抱き着いてもらってるんですけど。 わかってるんだか、わかってないんだか、ちょっとわからなくなってきましたけど。 梓「ん……」 こお、微妙な角度で唯先輩を見上げてみる。 自分でも頬が真っ赤になってるの感じるし、もし唯先輩にその気があるんだったら、きっと……。 唯「……あずにゃん」 梓「……はい」 唯「ハナチ、止まった?」 梓「はうう」 雰囲気出したつもりだったのに、これじゃ台なしだよ。 唯先輩にその気があったとしても、鼻つっぺなんかしてたら百年の恋も何とかだよ。 梓「ん……は、はい。止まったみたいですっ」 唯「よかった。ずっと出っ放しだったら、私、あずにゃんに何も出来ないもんね」 梓「……はぃ? そ、それは、どおゆう意味なんでしょおか?」 何かするつもりだったんだ、唯先輩。 っていうことは、やぱり今のキスされたいのかどうか微妙ぽい仕草が効いてるんだよね。 ……あ、あれ? 私は……唯先輩と、そおゆう……女の子同士での恋愛関係に、なりたいと思って行動してたの? 唯「ねぇねぇ、あの本なんだけど」 梓「は……はい。まだ最後までは読んでませんが、何ていうか、読むっていうより見るっていうか」 血は止まったみたいだから、んしょ、こ、これで……きっと真っ赤になってる以外は、いつも通りの私の顔。 またいつだらだら垂れてくるかわかんないけど。 唯先輩に抱っこされてると、どうして垂れちゃうくらい興奮するのか自分でもわかんないけど。 唯「まあ、写真集みたいなもんだしね……そんで、あずにゃん。途中までの感想でいいんだけど……どおだったかな?」 梓「どお、というのは?」 唯「例えば、例えばの話だよ? 私とあずにゃんが……水着なしで、あの本の通りに」 梓「ぷふっ」 唯「わああっ!?」 梓「あっ、あう、あうあうはうっ」 いけない、唯先輩の制服に垂らしちゃった。 取らなきゃよかったと思いつつ、クリーニングに出さなきゃいけないとか思いつつ、でも、ティッシュで鼻元を押さえる私を唯先輩が放してくれない。 梓「あのっ! 制服、早く何とかしないと……クリーニングに出さないとっ」 唯「あれれ? まだみんな来てないし、お茶もしてないし……練習もしてないのに。先に帰っちゃってもいいの?」 梓「いいも悪いも、染みになって残ったら大変ですよっ」 唯「……私が出させちゃったんだよね?」 私が勝手に興奮したのを、唯先輩のせいにはしたくないけど。 ……ううん、勝手じゃないのかな。 唯先輩に煽られたのは本当だし。 梓「……はい」 唯「なら気にしなくていいよ。大丈夫、替えもあるし、これはクリーニング屋さんがしっかりきっちり綺麗にしてくれるから」 梓「でも」 唯「素人が変なことしたら、クリーニング屋さんが困っちゃうよ。それより、今は……えいっ」 ぎゅう。 梓「はわっ!?」 唯「あーずにゃーんっ♪」 梓「にゃにゃっ、にゃにをしゅるんでしゅかっ」 唯「ごめんね。今の謝ってるあずにゃんの顔、しょぼーんってしてる顔が、とっても可愛いって思っちゃった!」 ごめんって言ってるくせに、全然謝ってる感じがしない。 もしかしたら、これも、わざとなのかな。 ……一から十まで唯先輩の思い通りに動くのは、ちょっとだけ、面白くないかも。 そう思ったら、気持ちの切り替えも簡単。 梓「唯先輩が何て言おうと、クリーニング代は出させてもらいますね」 唯「あー、あずにゃぁん」 ぴょむ、と唯先輩の膝から飛び降りる。 もっと抱き着いていたそうだったけど、これから部活……の前にティータイムですもんね。 梓「あの本はお言葉に甘えて頂戴します。でも、私はまだまだみたいですから」 唯先輩は、そういう人なんだろう。 私も多分、そういう人なんだと思う。 もらった本を何度も読み返したり、DVDだってしつこく見直したり、そんな自分の姿が簡単に想像出来るしね。 唯「あずにゃん、みんなが来るまであずにゃん分を補給させてよぉ~」 梓「そんなことより制服を何とかするのが先です。さ、脱いでください」 唯「やん、脱げだなんて大胆っ」 梓「さ、脱いでください」 淡々と同じ言葉を繰り返す。 私はまだ、そういう人になりきれていないから。 唯先輩とそういう話をしているだけで興奮しちゃう辺り、とっくに引き返せない場所まで足を踏み入れている気がするけど、まだですよ? 唯「うう……クリーニング屋さんにお任せすればいいと思うんだけどなぁ」 梓「今ならまだ手遅れにはなりませんから。さ、脱いでください」 唯「ありりり? さっき、クリーニングに出さなきゃって」 梓「目立たない程度にしないと帰れないじゃないですか……帰るまでに乾きますよ、唯先輩が率先して練習に励んでくれれば」 唯「……しっかり者だねぇ、あずにゃんは」 梓「染み抜きまでは出来ませんから、クリーニングには出してくださいね」 唯「うん……」 唯先輩、私と離れたから残念そうな顔をしてる……って思っていいのかな。 えい、試しに手を握っちゃえ。 唯「ほわぁ!?」 梓「え、えっと、唯先輩? その、離れたのは、また血が付いたらそれこそ困るからであって……抱き着かれるのは、嫌いじゃないんですからねっ」 唯「……うんっ♪」 あ。 駄目ですよ、唯先輩。 そんな風に嬉しそうに微笑まれたら、抱き着かれるの断れなくなっちゃいますし……今までよりも、もっともっと意識しちゃうじゃないですか。 3
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/891.html
「あ、これって…ふふ♪」 整理していた荷物の中に懐かしい物を見つけ、私は思わず目を細めた。 「唯先輩?どうしたんですか、いきなり思い出し笑いなんかして」 隣で片づけをしていたあずにゃんが少し呆れた顔で私に言う。 「ん、何となくね…あずにゃんと恋人同士になった日の事を思い出しちゃって」 「な、何でいきなりそんな事を思い出すんですか!?」 私の言葉に、あずにゃんが顔を真っ赤にした。 「だってほら…これ」 「あ、それって…」 私の手の中の物を見て、あずにゃんが軽く声を上げる。 「うん、あの時のだよ」 「…私まで思い出しちゃったじゃないですか」 「あずにゃん、顔が真っ赤だよ?」 「もう知りません!私はあっちを片付けて来ますから、唯先輩はここの整理をお願いします!」 「りょうか~い♪」 軽く返事を返しながら手の中の物を見つめた。 「だけど…」 私は少し感慨深く目を閉じる。 「あの時は考えてもなかったなぁ…こんな未来」 「いっちば~ん♪」 私は勢い良く音楽室のドアを開ける。 他の皆は日直やらクラス委員の仕事やらで、今日は少し遅れると言っていた。 「…とは言え、一人じゃ何もする事ないんだよね」 ギターの練習でもしてようかなと思いながら部屋を見渡すと、視線の先に見慣れた綺麗な黒髪が見えた。 「あれ、あずにゃんもう来てたんだ」 私は鞄を置き、愛しい子猫ちゃんの元へと駆け寄る。 「あっずにゃ~ん♪…あれ、寝てる?」 愛しの子猫ちゃんは静かな寝息を立てて眠っていた。 「?」 近寄ってその寝顔を覗き込むと、目尻にうっすらと光る珠が見えた。 「…あずにゃん、泣いてるの?」 私はそっと涙を拭おうとした…が。 「唯先輩…」 寝ているはずのあずにゃんが、小さい声で私の名前を呼ぶ。 「あずにゃん?」 「…」 耳をあてて見ると小さな寝息が聞こえた。やっぱり眠っているようだ。 「夢の中で私とお喋りでもしてるのかな?」 「唯先輩…」 「なぁに、あずにゃん?」 再び呼ばれたその声に思わず反応してしまう。 反応した後で、昔どこかで聞いた迷信みたいなものを思い出した。 「そう言えば、寝言に答えたら駄目だって話を聞いたような…」 そんな事を考えていた矢先、あずにゃんが再び静かに呟く。 「好き、です…」 「!」 その言葉を聞いた瞬間、私の身体は凍りついた様に動かなくなってしまった。 「…ん」 「おはよう、あずにゃん♪」 「唯先輩?…おはようございます」 唯先輩の顔を間近で見た瞬間、まだ夢の中にいるのかと勘違いしそうになった。 「よく眠ってたね」 「あ、すいません…昨夜、寝るのが遅かったせいかついウトウトしちゃって」 「良いんだよ、別に~♪」 やたら機嫌が良さそうに唯先輩が言う。 「どうしたんですか、唯先輩?何か妙に機嫌が良いみたいですけど」 「え~、そうかなぁ?」 「はい、何て言うか若干引きそうなくらい素晴らしい笑顔です」 「あずにゃん、ひどす…」 「…で、何か良い事でもあったんですか?」 唯先輩の抗議を無視して私は更に問う。 「えっと、どうしよう…言っちゃっても良いのかな」 「言うと何かまずい事でもあるんですか?」 「ん~、私は特に…どちらかと言うとあずにゃんが?」 「私がですか…もしかして寝言で何か言ってましたか?」 「…うん」 少し照れた表情で唯先輩が答えた。 「…まぁ、良いです。気になるから教えて下さい」 「本当に良いの?」 「かまいません」 「本当の本当に?」 「しつこいですね、ドンと来いです!」 「あのね、あずにゃんが私の事を…」 「唯先輩の事を?」 「…好きって」 「好き…ですか、なるほど」 私は頷きながら、唯先輩の言葉を頭の中で繰り返す。 「…好き?」 「うん、好きって」 「…」 「…」 一瞬の沈黙、そして…。 「ええええええええええええええええ!?」 「あずにゃ~ん♪むちゅちゅ♪」 「ちょ、ちょっと待ってください!唯先輩…私、本当に?」 「うん、私もびっくりしたけど嬉しかったよ♪」 「え…嬉しかった、ですか?」 「うん♪」 「本当、ですか?」 「勿論だよ~」 「じゃ、じゃあ…私と付き合ってくれますか?」 「え?」 「え?」 あれ…私、何か間違えた? 「付き合うってどう言う意味で?」 「そのままの…意味です」 「恋人…って事かな?」 「…はい」 「…で、でも私とあずにゃんはどっちも女の子なんだよ?」 「そんな事わかってます…私はそれを承知で言ってるんです」 「え、え?」 「駄目…ですか?駄目ですよね?」 「そ、それは…」 「良いんです、唯先輩は悪くありません…同性を好きになった私の方が異常なだけですから!」 そう言って、私は唯先輩に背を向ける。 「あずにゃん、待って!」 唯先輩が呼んでいるが、私は構わず音楽室を飛び出した。 「あずにゃん…」 「…」 私は必死に走り続けた。 一秒でも早く、一歩でも遠く、唯先輩から離れたかった。 「何で…」 解っていたはずなのに。 唯先輩の『好き』は私の『好き』とは違う。 だからこの気持ちは胸に仕舞って置くつもりだった、それなのに…! 「だって、嬉しかったんだもん…」 唯先輩があんなに嬉しそうにしてくれて、私と同じ気持ちなんだって思い込んで。 この恋が成就する事はないって覚悟はしてた。 だけど、まさかこんな形で私の初恋が終わってしまうなんて思ってもみなかった。 「…唯先輩」 辛い。 ついさっきまであんなに好きだった笑顔が、今は思い出すのも苦しいなんて。 「辛いよぉ…」 いつの間にか辿り着いた屋上で、私は空を見上げて泣き続けた。 「…」 私は馬鹿だ。 大好きなあの子を傷つけてしまった。 「あずにゃん、ごめん…ごめんね…」 私はここには居ないあの子に謝り続ける。 こんな謝罪、いくらしたって意味なんてないのに。 「何で…」 何で、私は素直に受け入れてあげられなかったんだろうか。 確かに、女の子同士の恋愛なんて常識からは外れてるのかも知れない。 だけど、そんな物に囚われて私は誰よりも大切な人を傷つけてしまった。 「私も…」 私はここには居ない、愛しいあの子に向かって語りかける。 「私も好きだよ、あずにゃん…」 もっと早く気付いていれば。自分の『好き』が、常識なんて吹っ飛ばすくらい大きなものだったって事に気付いていれば。 「あんな悲しい顔をさせる事なんてなかったのにね…」 私はいつの間にか流し続けていた涙を拭う。 「このまま終わりになんてしない、絶対に」 生まれて初めてかも知れない。こんなに胸が熱くなるほどの『想い』を抱いたのは。 「大好きだよ、あずにゃん」 「…」 何もする気が起きない。 私は暗い部屋で一人、ただ時間が過ぎていくのを待っていた。 待った先に何がある訳でもない。時間が解決してくれるなんてそんな生易しいものじゃない。 「明日が休みだったのがせめてもの救いかな…」 今日が土曜日で本当に良かった。 正直、こんな状態で登校出来るほど私は強くない。 「あんなに好きだったのに…」 今は思い出すだけで苦しくなる愛しいあの人の顔。 唯先輩は何も悪くない。悪いのは異常な好意を持ってしまった私の方なんだから。 「唯先輩、助けてよぉ…苦しいよぉ…辛いよぉ…」 そしてこんな時でも、私が助けを求めて思い出すのはあの人なんだ。 枕に顔を埋めながら嗚咽を漏らす。 もう何も考えられない。私に出来る事と言えば、ただ助けを求め嘆くだけだ。 そんな時。 ジリリリリ 不意に私の携帯電話が鳴り響いた。 「な…んで?」 私は携帯を手に取り言葉を失う。 「何で掛けてくるのよぉ…」 着信の相手は唯先輩だった。 「あずにゃん…」 コールは既に十数回。当然と言えば当然だが、あずにゃんは電話に出てはくれない。 「お願い、あずにゃん」 私は祈りを込めて再び掛けなおす。 そして、更に数コール。 諦めかけた時、私の耳に『ピッ』と言う電子音が鳴り響いた。 「もしもし、あずにゃん?」 「…」 返事は無い。けれど私には直ぐに解った、あずにゃんは助けを求めてる。 「何も言わなくていいから、聞くだけでいいから…ね?」 「…」 「あずにゃん、今日はごめんね?私もいきなりの事で頭の中がごちゃごちゃになってたんだ」 「…謝らないで下さい」 私の大好きなあずにゃんの声。でも、その声は悲哀に満ちた弱々しいものだった。 「ごめ…ううん、ごめんじゃないよね」 「…」 「あずにゃん、私ね…あの後いっぱい考えたんだよ」 「何をですか?」 「あずにゃんの事を、だよ」 「私の事?私の事なんて、今更どうでもいいじゃないですか」 「よくないよ、あずにゃんは私の大切な…」 「大切な、何ですか?後輩ですか?友達ですか? 唯先輩にとって、私はただ可愛いだけの猫と同じなんでしょ!?」 「…違うよ、そうじゃない」 「何が違うんですか?違わないでしょ? あんなにも私にベタベタくっついて来てたのに… 私の事なんて、抱き心地の良いぬいぐるみ程度にしか思ってなかったくせに!」 「好きだよ、あずにゃん」 「!」 「私はあずにゃんの事が大好きだよ」 「な…んで…」 「…」 「何でまた…本気でもないくせにそんな事…!」 「本気だよ、私はあずにゃんをを愛してる」 「…っ!?」 「あずにゃん、聞いて?」 「…」 「あの後、いっぱい考えたんだ… 何でこんなに苦しいのか、何でこんなに悔しいのか」 「…」 「あずにゃん、言ったよね? 自分の方が異常なだけだって…でもそれは違うんだよ」 「何が違うんですか… 女の子同士なのに、私は唯先輩を好きになったんですよ?」 「うん、だってそれは私も同じだから」 「え…?」 「私もあずにゃんの事が好きだから… 可愛いだけの猫じゃない、抱き心地の良いぬいぐるみなんかじゃない」 「…っ」 「もう一度、ちゃんと言うよ?私は貴女を…平沢唯は中野梓を愛しています」 「唯…先輩」 「あずにゃんが自分の事を異常って言うんなら私だって異常だよ」 「違う、唯先輩は…」 「ん…」 「唯先輩は異常なんかじゃない…です」 「うん…あずにゃんもね?」 「はい…」 「あずにゃん、私にもう一度チャンスをくれないかな?」 「チャンス、ですか?」 「もう一度、私に告白して欲しいんだ」 「…」 「駄目かな?」 「駄目、じゃないです…だけど」 「だけど、何?」 「電話越しなんて嫌です…直接会って話したい、唯先輩の顔が見たい」 「うん」 「場所の指定、してもいいですか?」 「外で会うの?良いけど、夜も遅いし危ないよ」 「我侭言ってごめんなさい…だけど、どうしても行きたい場所があるんです」 「わかったよ、あずにゃん」 「ありがとうございます」 「それで、場所は…」 「唯先輩!」 「あずにゃん」 「ごめんなさい、待たせちゃいましたか?」 「ううん、私も今さっき来たところだよ」 「そうですか」 「まぁ、座りんさい」 「あ、はい」 「…」 「…」 お互い気恥ずかしさのせいか、妙な沈黙が流れる。 『あの…』 「あずにゃんから先に言って?」 「唯先輩からどうぞ!」 「…」 「…」 再び流れる沈黙。その沈黙を先に破ったのは唯先輩だった。 「あずにゃん」 「は、はい」 「虫除けバンド、いる?」 「は?」 「ほら、こんな季節だし蚊に刺されると後々厄介だから」 「は、はぁ…確かにそうですね」 電話の時は凛々しい一面を見た気がしたのに 今、目の前に居るのは普段通り何処か抜けた感じの唯先輩だった。 (まぁ、そんな唯先輩も含めて好きになったんだけど…) 「じゃあ、あずにゃん手を出して」 「あ、はい…こうですか」 唯先輩が私の腕に虫除けバンドを付ける。 「あれ、このバンド何か書いてますよ?」 バンドにはサインペンで『Y to A』と書いていた。 「これ、婚約指輪の代わりね♪」 「ちょ…な、何を言って…え?」 「ムードなくてごめんね?だけど、これが私の決意だから」 「決意?」 「私は梓と一生添い遂げる…その誓い」 「一生添い遂げるって…えぇ!?」 この人は何をさらっと凄い事を… しかもドサクサに紛れて私の名前を呼び捨てにしちゃってますよ? 「さぁ、次はあずにゃんの番だよ」 あ、呼び方が戻ってる…ちょっとがっかり。 「私の番って…」 「告白、してくれないの?」 「既に告白よりも凄い事を言われた気がするんですが…」 「それはそれ、これはこれ」 「むぅ…何だか今日の唯先輩、色々とずるいです」 「ふふ、そうかな?」 「余裕があるって言うか、何か大人な感じがします」 「惚れ直しちゃった?」 「…はい、惚れ直しました」 ここまで来たらもう観念するしかない。 「じゃあ、改めて…お願いできるかな」 「はい、唯先輩…」 「なぁに、あずにゃん?」 「貴女が好きです、私と付き合って下さい」 「うん♪私も大好きだよ、あずにゃん♪」 その言葉を期に、私達はどちらからともなく近づいて行く。そして…。 『…』 永遠を約束する、誓いのキスを交わした。 「唯先輩、片付けは終わりましたか?」 「ん~、もうちょっと」 「もう、ちゃんとして下さいよ」 「わかってるよ、梓」 そう言って、私は彼女を後ろから抱きしめる。 「ちょ…そんな不意打ち卑怯ですよ」 「あはは♪ごめんね、あずにゃん♪」 「本当にもう…今日から新しい生活が始まるんですから」 恋人同士になって二年目の春。 「うん、そうだったね」 この春から同じ大学に通う事になった私とあずにゃんは…。 「今日から私達は一緒に暮らすんだもんね♪」 同棲する事になりました♪ おしまい! GJ!動画の方も良かったです! -- (名無しさん) 2010-10-14 01 03 31 よかった -- (名無しさん) 2011-02-18 00 50 06 良かった…ハッピーエンドで良かった! -- (とある学生の百合信者) 2011-03-08 17 11 53 中盤はヒヤヒヤしました。でも最後は超ハッピーエンド -- (あずにゃんラブ) 2012-12-29 02 26 28 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/8016.html
梓「そー言えば純?」 純「ん?どーしたの?」 梓「純ってさ澪先輩好きだよね」 純「うん、好き……って言うか憧れる」 憂「澪さんカッコイイもんね~」 純「そうそう。あのキリっとした目とかかっこいー!よね」 梓「うん、カッコイイよね。ベースも上手いし」 純「そこも憧れるよね~」 憂「純ちゃんお姉ちゃんの事はどう思う?」 純「憂のお姉ちゃんは可愛いかな~」 憂「えへへ~そうだよね~」 梓「ちなみに唯先輩の何処が可愛いって思ったの?」 純「う~ん。あのほんわかしたオーラとかかなぁ?憂は分かるよね?」 憂「分かるよ~」 梓「私も分かるよ!」 憂「ギターも上手いもんね!」 純「ギター弾いてる時の憂のお姉ちゃんはカッコイイかも……」 憂「ありがと~」 梓「あ!じゃあムギ先輩は?」 純「琴吹先輩か~……」 梓「美人だし優しいよね」 憂「そうだよね~」 純「琴吹先輩って少し怖い……かな?」 梓「え!怖いの?」 純「うん……」 憂「紬さんの何処が怖いの?」 純「う~ん。何か怖い体も大きいし……」 憂「確かに背が高いよね~」 梓「背が高いだけで怖いの?」 純「琴吹先輩ってお嬢様なんでしょ?近寄りがたいってのも少しあるかなぁ」 梓「そうかなぁ?意外と親しみ易いけど……」 純「それにほら、何だか外国の人みたいだよね」 憂「金髪だもんね~」 純「うん……琴吹先輩って少し怖い」 梓「いい人なんだけどなぁ~」 純「いい人っとのは分かるよ?でも、私が一年の時だけどびっくりした事があってさ……」 憂「びっくりした事?」 純「学園祭の時にね琴吹先輩が何食わぬ顔で重たそうな機材を運んだりしててさ……」 梓「ムギ先輩力持ちだからね」 純「やっぱり力持ちなんだ。汗もかかずに何往復もしてたよ」 憂「あ、それお姉ちゃんも言ってたよ!ムギちゃんは力持ちなんだよ~って」 純「そうなんだ。しゃらんらしゃらんらって歌いながら運んでたよ」 梓「ムギ先輩よくそれ歌ってるよね」 純「そうなの?私分かんない」 憂「お姉ちゃんは紬さんの事が大好きみたいだよ~」 純「憂のお姉ちゃんは琴吹先輩の事なんて言ってるの?」 憂「可愛いとか!ムギちゃんが紅茶は美味しいんだよ~う~い~って毎日のように言ってるよ」 梓「言ってる姿が目に浮かぶ……」 純「あ、でも体験入部した時の琴吹先輩の紅茶は美味しかったよ」 憂「確かに紬さんの紅茶は美味しいよね~お姉ちゃんも美味しい美味しいって言ってるよ!」 梓「憂、さっきから唯先輩の事ばかりだねー」 純「まぁ憂らしいけどね~」 憂「えへへ~」 純「あ、私そろそろジャズ研行かなきゃ」 梓「私もそろそろ軽音部に……」 憂「二人共バイバイ~」 純「あ、うん。憂は帰るの?」 憂「うん!ご飯の支度しなきゃいけないから」 純「大変だね~」 梓「唯先輩は手伝ったりしてるの?」 憂「してるよ~」 憂「昨日もクラムチャウダーを一緒に作ったんだぁ~」 梓「美味しかった?」 憂「うん!とっても美味しかったよ~」 純「私も食べたいなぁ~今日お母さんに頼んでみよっかなぁ」 梓「私は今日はカレーが食べたいなぁ……」 憂「私の家は今日はカレーだよ!」 梓「いいな~」 純「購買でカレーパン買えばいいんじゃない?」 梓「それだと夜ご飯入らないじゃん」 純「あ、そっかそっか。ところでさ……」 憂「どうしたの?」 純「カレーにつけて食べるパンみたいな奴ってなんだっけ?」 梓「うん、そうだよ」 純「そうなんだーありがとうスッキリした」 憂「梓ちゃん純ちゃんそろそろ部活に行かなくていいの?」 梓「あ!忘れてた!」 純「私もスッカリ忘れてた」 純「はぁ~そう言えば来月からテスト期間かぁ~」 梓「ちゃんと勉強してる?」 純「勿論してるよ。はぁ……めんどくさい」 梓「赤点取らないようににしなきゃね~」 純「そうだね~はぁ……」 梓「ため息ばっかりだね」 純「ため息でもついてないとやってらんないもん」 梓「あ、週末って空いてる?」 純「空いてるよ」 梓「動物園に行かない?」 純「う~ん……行く!」 梓「そっか、じゃあ明日憂にも話してみるよ」 純「ありがと~」 紬「あら?梓ちゃんと……鈴木さん」 梓「あ、ムギ先輩!」 純「こ、こんにちは!」 紬「うふふ。こんにちは」ペコリ 梓「ムギ先輩もまだ部室に行ってなかったんですね」 紬「えぇ!ちょっと唯ちゃんが落とし物したみたいで探してたの~」 梓「何の落とし物ですか?」 紬「手袋を落としたみたいなの~」 梓「手袋……ですか」 紬「憂ちゃんから貰った大事な手袋だからみんなで探してるの~」 梓「私も手伝います!」 純「あ、私も手伝います」 紬「梓ちゃんありがとう。鈴木さんは大丈夫なの?」 純「は、はい。大丈夫です」 紬「本当?とってもありがたいわ~」 純「いえ……」 梓「あ、じゃあ私達は二年の教室側を探しますね!今朝、唯先輩が来てたし」 紬「そうね~私は下駄箱辺りを探してみるわ~」 梓「はい分かりました。じゃあ純行こっか!」 純「うん、わかった」 紬「それじゃよろしくお願いね~」 梓「は~い!」 純「う~ん……見つからないね」 梓「だね~それより純?」 純「なに?」 梓「ムギ先輩と会った時もの凄く緊張してたね~」 純「えーしてないよ」 梓「そう?してたように見えたからもしかしてと思って……」 憂「あ!梓ちゃんと純ちゃん!」 純「あ……憂」 憂「あれ?まだ部活に行ってなかったの?」 梓「うん、唯先輩が手袋落としたみたいでみんなで今探してるんだ」 憂「え!お姉ちゃん手袋落としたの?」 純「そうみたい」 憂「私も手伝うよ!」 梓「大丈夫だよ。私達で探すから」 憂「ううん!お姉ちゃんの為だもん!私も探すよ」 純「三人の方がすぐに見付かるかもしれないしね」 梓「そっか……じゃあ憂も一緒に探そう!」 憂「うん!」 純「う~ん無いね~」 梓「何処行ったんだろう?」 憂「にんにく~にんにく~」 梓「にんにく?」 憂「にんにく~にんにく~」 純「そんな大声で叫ぶ程にんにくが食べたいの?」 憂「ううん違うよ~」 梓「じゃあなんでにんにくって言ってるの?」 憂「にんにく~って言いながら探し物を探すと見付かりやすいんだって!」 純「本当?」 憂「う~ん……ただのジンクスだから本当かどうかは分からないよ」 梓「そうなんだ……」 純「にんにく~にんにく~」 梓「純……?」 純「ほら梓も……にんにく~にんにく~」 憂「にんにく~にんにく~」 梓「も、もう……恥ずかしいよ……」 憂「にんにく~にんにく~」 純「にんにく~にんにく~」 梓「に……にんにく~にんにく~」 純「にんにく~にんにく~……あ、あった!」ヒョイ 憂「本当だ!純ちゃんやったね」 梓「うん!やったね純!」 純「あ、中身も入ってるよ」 憂「……え?」 梓「……中身?」 純「あぁ……ごめん間違えた中に何か入ってる」 憂「もーびっくりしたよ~」 梓「どんな間違いしてるのよ……」 純「あははごめんごめん今取り出すから」ガサコソ 憂「何が入ってるの?」 純「紙が入ってた」 純「あ、何か書いてあるみたいだから読んでみるよ」 憂「うん!」 純「えーと……この手袋が落ちてたら平沢唯に渡して下さい……だってさ」 梓「って言うか唯先輩、紙が入ってた手袋をずっと着けてたんですね」 梓「あ、早く唯先輩に届けましょうよ」 憂「そうだね~私、電話かけるよ!」 梓「うん!」 純「私が見付けたって言ってね!」 憂「勿論だよ~……あ、もしもしお姉ちゃん?」 純「…………」ドキドキ 憂「手袋見付けたよ~……あ、うん!梓ちゃん達から聞いたんだぁ~」 純「…………」ドキドキ 憂「それから!純ちゃんが見付けたんだよ~うん!うん!わかった。伝えておくね~」ピッ 梓「唯先輩何だって?」 憂「職員室の前にいるから届けに来てって。あと純ちゃんありがとうだって!」 純「えへへー……何か照れるね!」 2
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/1888.html
梓「ん…あ…朝…」 梓「ここは…?」 唯「もう…に…zz」 梓「唯先輩」 梓「そっか…ここは唯先輩の部屋で唯先輩のベッド」 梓「そして昨日の夜に…//」 梓「唯先輩と…//」 梓「……」 梓「駄目だ…どうしても思い出しちゃう」 梓「唯先輩…//」 唯「ん…?あずにゃん?」 梓「えっ」 唯「もう…朝?」 梓「あっ、は、はい」 唯「あずにゃん、良く寝れた?」 梓「それなりに…」 唯「良かった~」 唯「じゃあ、私もそろそろ起きるよ」 唯「よいしょっと」 唯「ねぇ?あずにゃん?」 梓「な、なんですか?」 唯「なんでさっきから私の顔を見てくれないの?」 梓「そ、そんな事ないですよ」 唯「そんな事あるよ」 唯「あずにゃん、こっちに顔見せて」 梓「い、いやです…//」 唯「あずにゃん…?」 梓「……」 唯「……」 唯「あずにゃん」 唯「もしかして私と一緒に寝ちゃった事を後悔してる?」 梓「えっ、いやその…」 唯「私は後悔してないよ」 唯「…私、ずっと怖かったんだ」 唯「あずにゃんがOKしてくれた時も喜んでたけど心の中ではずっと怖かった」 唯「あずにゃんが本当に受け入れてくれて分からなかったから」 唯「でもね。あずにゃんが受け入れてくれた時、怖さが一気になくなったんだ」 唯「怖さが消えて嬉しさが出てきた」 唯「それでね。嬉しさが出てきた時に思ったんだ」 唯「あずにゃんと一緒にいたい。あずにゃんを幸せにしたいって」 唯「そう思えた。だから…だから…私は後悔してないよ」 唯「あずにゃんが今、後悔してても必ず後悔を無くさせて見せる」 唯「だからこっちを私の方を向いてあずにゃん」 唯「お願いだから」 梓「……」グスッ 唯「ごめんね。あずにゃんの事を苦しませちゃって」ギュッ 梓「違います!」 梓「私も後悔なんかしていません」 梓「唯先輩を受け入れて唯先輩に受け入れられて凄く良かったです」 梓「ただ自分の感情が許せなかっただけです」 梓「これからちゃんと唯先輩の方を向きますので安心してください」 唯「ありがとう、あずにゃん」 唯「そしておはよう、あずにゃん」 梓「はい、おはようございます唯先輩」 終わり 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/83452/pages/3899.html
部屋! 唯「……やったーーーーーーーーーー!!!!」 唯「あずにゃんに電話しよっと。」 プルルル 梓「もしもし。唯先輩?」 唯「あぁあずにゃん?バイト採用だったよ!」 梓「本当ですか!よかったじゃないですか!(唯先輩。昔の唯先輩みたいだ!)」 唯「うん!あずにゃんのおかげだよ!ありがとう!」 梓「いえいえ、唯先輩がんばってくださいね!」 唯「うん!」 こうして唯はバイトを始め、自分でお金を稼ぐようになり 料理や洗濯等も出来るようになり、引き篭もる事は無くなり、昔のような明るい唯に戻ったのであった。 ある日 店長「おい唯。ちょっと来い。」 唯「は、はい。」 唯はバイト中、店長室に呼ばれた。 唯「な、何ですか? 店長「何ですかじゃねぇ!」バンッ 唯「ひっ!」 店長はテーブルを思いっきり叩いた。 店長「お前がさっき作った料理に、ごみが入っていたそうだ。」 唯「!?」 店長「もしこれを食べてしまっていたらどう責任をとるつもりなんですか!? って怒鳴られたよ。……お前何やってんだよ!」バンッ 唯「すっすみません!!」 店長「もうお前明日から来なくていいよ。帰れ」 唯「そんな・・・」 家! 憂「お姉ちゃんお帰りー」 唯「…」 憂「お姉ちゃん…?」 唯「…うぅ…えぐっ…グスッ」 憂「お姉ちゃん!?」 唯は泣きながら自分の部屋に行った。 数分後 ピンポーン 憂「はーい」ガチャ 梓「あ、憂。唯先輩居る?」 憂「居るけど……お姉ちゃん様子が変なの?」 梓「え?」 コンコン(ドアノックする音) 梓「唯せんぱーい。梓です。何かあったんですかー?」 唯「……」グスッ 梓「(泣いてる…)と、とりあえず開けてくれませんかー?」 唯「…」 ガチャッ 梓「唯先輩!何があったんですか??」 梓「ごみが入ってただけでクビですか!?最悪じゃないですかその店長!」 唯「……」 梓「私が文句言ってきます!」 唯「いいよ……」 梓「でも…せっかくバイトに慣れてきたのに…やっぱ行ってきm」 唯「いいっつってんだろうがあああああああ!!」バンッッ 梓「ひっ!」 唯「何で…何であずにゃんは私のためにそんな事するの? バイト求人雑誌持ってきたり、毎日家に来たり…何でなの?」 梓「そんなの…唯先輩が好きだからに決まってるじゃないですか!!!」 唯「!?」 梓「唯先輩の事が好きだから私は唯先輩のためにバイト求人雑誌持ってきたり 毎日家に来たりしてるんです!私は唯先輩が大好きだからっ……」グスッ 唯「あずにゃん…(あずにゃんが私の事を……) ギュッ 梓「…唯先輩?///」 唯「あずにゃん…ありがとう!私…あずにゃんのためにも…またいいバイト探してやってみるよ!」 梓「…はい!!」 翌日! 梓はまた、バイト求人雑誌を持ってきて唯の家に来た。 梓「唯先輩。これ何てどうですか?」 唯「楽器屋さん・・・?(そういえば最近ギー太触ってないな…」 唯「時給もいいし…良さそうだね!」 梓「じゃあ早速電話しましょう!」 唯「うん!」 ~~~~~~~~~~~ 梓「面接は明後日ですか…頑張ってください!」 唯「うん…!」 明後日! 憂「じゃあ頑張ってねお姉ちゃん!」 梓「頑張ってください唯先輩!」 唯「うん!…あずにゃん」 梓「はい?」 唯「…」チュッ 梓「…え?///」 唯「この前あずにゃん私の事好きって行ってくれたよね。 …私もあずにゃんの事…大大大好きだよ! 梓「唯先輩…」 憂「お姉ちゃん…」 唯「じゃあ行ってくるね!」 梓「…はい!行ってらっしゃい!」 憂「行ってらっしゃい!(お姉ちゃんのファーストキスは私の筈だったのに…)」 唯「今回も採用されるかなー♪あー緊張する。」 運転士「あぶねぇっ!!」 唯「…え?」 ドガッ 唯はいきなり飛び出してきた車にぶつかった。 通行人「おい・・・やべぇぞ。血まみれじゃん」 通行人「誰か救急車・・・!」 澪「おい律…あそこ騒がしくないか?」 律「本当だ。事故でもあったのかな。見てくるか。」 澪「わ、私はいいよ。律一人で行って来い!」 律「怖いのか~?まぁいいやっ!じゃあ見てくるな!すぐ戻ってくる!」 律「唯!大丈夫か!」 澪「・・・え?」 唯…?もしかして事故にあったのは唯…? 澪は律が行ったほうに走っていった。 すると血まみれの唯が倒れていた。 澪「ひっ!!…唯!!」 律「とりあえず救急車を呼ばなきゃ!」 病院! 医者「傷はあまり酷くないので、一週間ほど入院すれば大丈夫でしょう。…ただ…」 律「ただ…?」 澪「何ですか??」 医者「 」 律「そ…そんな!!」 澪「……」グスッ 病室! ガチャッ 憂「お姉ちゃん!!」 律から連絡をもらった憂が病室に来た。 律澪「憂ちゃん…。」 憂「お姉ちゃん!?大丈夫!?」 律「今は寝てるけど傷はあんま酷くないから一週間ほど入院すれば大丈夫なんだってさ。…ただ」 憂「ただなんですか!?」 律「 」 憂「そ…そんな!?」 次の日! 病室! 梓「唯先輩!」 梓は憂に連絡をもらい、唯の病室に行った。 すると病室には、澪・律・紬・憂。そして元気にしている唯が居た。 梓「唯先輩・・・」 5人はビデオカメラで何かの映像を見ていた。 唯「懐かしいねー!ライブ!」 唯達は最後にやった軽音部のライブ映像を見ていた。 澪「だろ!?懐かしいよなー」 紬「りっちゃんのおでこ。光ってるわね。」 律「うっさい!」 憂「うふふ」 唯「あれ・・・このツインテールの子は誰?」 梓「!?」 律「え、えーと…」 澪「この子は…」 紬「分かんないわ…まさか…」 律「心霊映像!」 澪「ひっ!?」バタン 憂「…」 梓「唯先輩!!」 律澪紬憂「梓(ちゃん)!」 唯「あ、ツインテールの子…」 梓「何ですかその呼び方…いつもみたいにあずにゃんって呼んでくださいよ!」 唯「あずにゃん・・・?」 梓「…っ!」ブワッ 梓の目には涙が溢れていた。 律「梓。実はな。」コソコソ 律は梓の耳元で『唯の記憶が少しなくなってしまった』という事を教えた。 梓「…なんでよりによって私を忘れるんですか!? 先輩私の事好きって言ってくれたじゃないですか!キスしてくれたじゃないですか!」 憂「梓ちゃん…」 唯「ごめん・・・そんな事した覚えは無いよ。貴方は誰なの?」 梓「・・・」グスッ 梓「私と一緒にバイト探しをしたりした事…覚えてないんですね。」 唯「(この子…変な子?)ご、ごめんね?」 梓「もういいです!先輩のバーカ!」 唯「なっ!初対面の人に馬鹿とは失礼だよ!」 梓「うぅ…もういいです!」ダッ 梓は病室から飛び出した。 律澪紬憂「梓…」 唯「変な子だったね…」 屋上 梓「………」 梓「唯先輩とお話できない世界なんてつまらないです。」 梓「唯先輩とお話できないくらいなら…私は…」 唯『あずにゃん!』 梓「唯先輩…うわああああああん」ダッ 梓は病院の屋上から飛び降りた。 ドガッッ 通行人「ひっ!!」 通行人「お、屋上から…」 通行人「早く病院にっっ!」 唯『あずにゃん!』 梓(唯先輩……) ~END~ 戻る HappyEnd
https://w.atwiki.jp/25438/pages/4510.html
あずにゃんへ 今度の夏祭り、久しぶりに軽音部の皆で行くって約束でしたが、何でも、 澪ちゃんがどうしてもりっちゃんと二人で行きたいと言ってるらしくて、集合は三人に なりました。二人は今おアツいから、許してあげてね。 昨日唯先輩から送られてきた一通のメール。その最下に書かれていた待ち合わせ場所を 三度反芻して、私は家を出ました。今日がその夏祭り当日。先輩方が卒業して以来、 初めての再会です。夏休みの間はずっとこっちにいてくれるからいつでも会えるとはいえ、 それでも再開初日というのは嬉しいような気恥ずかしいような、不思議な気分です。 夕方六時のチャイムが鳴る頃には、青空に赤い影がぼんやり滲んで、じいじいと耳を つんざくような蝉時雨も、まるで川の流れのように滑らかな音色になる、そんな時期に なりました。 風も僅かながらそよそよと穏やかに流れていて、心地良い暑さが夏の終わりを、 ぼんやりと連想させました。 川を越え信号を渡り歩くことおよそ十分。曲がり角を抜けた所、遠目に先輩たちの姿を 確かめることが出来ました。 「あっ、おーい! あずにゃーん!」そう私が気付くや否や、唯先輩も私に気付いたらしく、 こちらを向いて、手を広げながら駆け寄ってきました。 あぁ、懐かしいなぁ。唯先輩はいつも私と会えば、真っ先に駆け寄って抱き着いてきて いました。しかし、今日の問屋は高めの為替。何故なら唯先輩と私の距離は、遠目と言う ほどに離れているわけで…… 「これだけ離れてて、かわせないわけがないです!」 とはいえ、今身体をズラすにはいささかタイミングが早すぎて、もうちょっと近づかせない ことには、唯先輩が対応できてしまいます。もうちょっと近づいてもらわないと。 もうちょっと、もうちょっと…… 「梓ちゃん、久しぶりね~」 「わっ!?」 突然背後から話しかけられ、思わず後ろを振り向きました。声の通り、そこには ムギ先輩がいました。しかし、一体いつから背後に……? 「もう、ビックリしましたよムギ先輩」 「あらあら、ごめんなさい」 「……あの、どうして少し距離を置くんですか?」 「だってここがベストスポットだもの」 「ベスト……?」 言ってる意味はすぐに分かりました。 「あずにゃん久しぶり~! ずっと会いたかったよ!」 「うにゃあっ!?」 いつの間に距離を埋めた唯先輩が、後ろから思いっ切り抱き着いてきたのですから。 「半年ぶりのあずにゃん分だ~! お肌のモチモチもあったかさも変わんないねえ」 「や、やめてください唯先輩ぃ!」 そうやって言う唯先輩も、やっぱり半年前と何も変わらない。でも半年の月日が流れて いたことは確かなだけに、すっかり免疫の無くなった私の心臓は、途端にばくばくと 早鐘を打ちだしまして…… 「ム、ムギ先輩、助けてくださ」 「半年ぶりの唯梓分……! あぁ、どんどん癒されていくわ!」 「それどころじゃないご様子で……」 結局、これまでの空いた穴を埋めるように、私は唯先輩に思う存分味わされたのでした。 「もう。頬ずりまでしたんですから、人前でくっつくのはダメですよ」 「えぇ~。あずにゃんは手厳しいなぁ……」 唯先輩がそう不服そうに呟くのを、隣でムギ先輩が慰めていました。 ……後ろを歩いているお陰で、離れた後でも足が震えてるのはバレてない、 と思いたいです。 「それにしても、あずにゃんが何も変わってなくて良かったよ~。反応は前より可愛く なってたけど」 「う、うるさいです。……でも、唯先輩もムギ先輩も、お変わりないようで良かったです」 「あ、でもねあずにゃん。ムギちゃんは大学生になってからたくさんバイト始めたんだよ」 「え、そうなんですか!?」 ムギ先輩を見ると、そうなのよ~とこくんと頷き、 「社会勉強をしたくてね。レジ打ちとか古本屋さんの棚整理とか、色々始めたのよ」 「いくつも掛け持ちしてるんですか、スゴいですムギ先輩!」 「褒めてもお茶は出ないわよ~」 スゴいと言われて、ムギ先輩はとても嬉しそうでした。お金に不自由なんてしないのに、 自ら進んで働くなんて、ムギ先輩は人がよく出来ています。 「後ね、澪ちゃんとりっちゃんは別のサークルにも入ったんだよ。二人とも同じ 『しいた』同好会なんだって」 「……角度同好会とは、かなりマニアックな集まりですね」 「ぷぷっ。あずにゃん、知ったかぶっちゃダメだよ~」 ムカッ。確かにダメ元で言いましたけど……。 唯先輩は得意気に続けます。 「あずにゃん、『しいた』っていうのはね、この詩のどんな所がいいかを調べたり、 実際に作って見せ合いっこする所なんだよ」 「……唯先輩、その同好会、『しいた』じゃなくて、『しいか』だったりしません?」 「ほぇ?」 ムギ先輩の方を見ると、うんうんと二度首肯してくれました。 「……ま、この位すぐピンときますよ。先輩とは違って」 「あずにゃんが見下した! しどい… …」 「自業自得じゃないですか」 唯先輩がよよ、と泣き崩れるフリをしました。 「しかし、澪先輩はともかく、律先輩もそこに入ったんですね。意外っていうか……」 そう言うと、二人は示し合わせたかのように顔を見合わせて、ふふふと意味深に 笑いました。 「何かあったんですか?」 「うふふ、そこにも健気なドラマがあるのよ。初めは澪ちゃんが、もっと詩の勉強を したいってそのサークルに入ったのだけど、それを律ちゃんが聞いたら、その日の内に 律ちゃんも入っちゃったの。『澪のポエムが暴走したらマズい』とか『人見知りが 暴走して気まずくなった時の為に』って言ってたけど……」 「りっちゃんも素直じゃないよねぇ。二人のことはちゅーの一件で皆知ってるのに」 ねー、とまたまた示し合わせたように、二人が言いました。 「あの、私だけ話がついていけてないんですけど……」 そう言うと、二人の動きがぎくっと静止しました。 「あ、あれ、あずにゃん、何も知らない?」 「思い当たる節はありませんけど……」 「そ、そういえば、梓ちゃんはあの場にいなかったわね」 「澪ちゃんの寮に遊びに行った時のことだもんね。どうしよ……」 「他の人には絶対言うなって言われてるけど、でも梓ちゃんだし別に……」 何をひそひそ話してるんだろう……? そう思っていると、どこからともなく古典風な笛や太鼓の乾いた音色が聞こえてきました。 きっとお神輿が担がれ始めたのでしょう。 「お祭り、始まったみたいですね 「あ、ほ、ほんとだっ! 早く行こうよっ、ね、ねね!」 「そ、そうね。私も久しぶりだし、ちょっとでも長く見ていたいわ!」 「ささ、早く行こあずにゃん!」 「そこまで急かさなくても……」 結局さっきの話題は何だったんだろう、と少し気になりはしましたが、 程なく気にならなくなりました。 私だってお祭り前の訳ない興奮を覚えないはずはなく、殊に二人の先輩と再会して 懐かしさの渦中にいたのもあって、一刻も早く屋台の群れに入りたい気持ちの方が 勝りました。ひょっとしたら、この中で一番私が、今日というこの日を楽しみにしていた のかもしれません。 夕方のふわふわした暖かさが街へ溶け出したからでしょうか、薄灰色だった雲は 目を射差すような橙色に染まり、その日光と盆提灯、屋台からこぼれた白色蛍光が 混ざり合って、その光景はまるで夢や思い出の一シーンのように、全景がぼんやり滲んだ、 とても幻想的な風景でした。 「あずにゃん、たい焼き食べる?」 「ありがとうございま……って、いつの間にそんなに買ったんですか!?」 気付けば唯先輩は持てるだけの食べ物を買ったという風体で、さながら食べ物の 着ぐるみをまとっているかのようになっていました。 「まま、好きなの選んでよ。たこ焼きたい焼きさいきょう焼き、フライドポテトに スーパーポテトもあるよ」 「豊富ですね……」 最後のは商標的に訴えられたりしないでしょうか? 「じゃあ、たい焼きを一つ」 「あいまいど! お嬢ちゃん可愛いからタダね!」 「誰ですか」 そう言って受け取った一尾のたい焼き。紙ごしでも伝わる温かさは、屋台から貰った 出来上がりも同然の温もりでした。 ……もしかして、私が食べると思って、最後に買ってくれたのかな……? 「はむっ……。いつもより甘い気がします」 「ほんと? 買ってよかったぁ」 食べているのは私なのに、まるで自分事のように喜ぶのを見て、思わず私も笑って しまいました。 たい焼きを食べ終わる頃には、唯先輩の手元にはりんごあめしか残っていませんでした。 食べている最中にムギ先輩にも譲っていたのですが、それにしたって尋常じゃない スピードです。 「あずにゃん、そんなにじーっと見てどうしたの?」 「一瞬で食べ物が消えてたらじーっと見たくもなります」 そう言っても唯先輩は依然、小首を傾げて、自分の口元手元に目線をやっていました。 「あっ、分かった! りんごあめも食べたいんだ。欲しがりさんめ~」 見当違いもいいとこです。 「しょうがないなぁ~。はい」 「……はい?」 「私のアメあげるよあずにゃん。二人で分けっこしよ?」 「なっ…………!?」 とっさに私へ差し出しているアメに目を落としました。形はあまり崩れていませんが、 反対側の輪郭はもうしなっと曲がり、所々が濡れて妖しい光を放っていました。いや、 この濡れてるのって、もしかしなくても……! 「い、いらないです! 唯先輩の分が減っちゃうじゃないですか!」 「気にしないよ~。寧ろ食べきれるか不安だったから、あずにゃんに食べてもらえたら ありがたいなぁ」 拒むどころか、大義名分が出来てしまいました。 ど、どうしよう……。でも唯先輩が困ってるって言うなら、助けてあげるべきだよね……? そう、これはあくまで人助けなんです。あくまで唯先輩を助けるために…… 「あ、ムギちゃん。リンゴあめ食べる?」 「いいの? じゃあお言葉に甘えて~」 「あっ……」 悩んでいる間に、あめはムギ先輩の口に入っていき…… 「はい、あずにゃん」 そうしてムギ先輩を経てから渡されたリンゴあめは、何の躊躇いもなく食べることが 出来ました。感謝の気持ち半分、勿体ないことをされた気持ち半分で、私はムギ先輩を 見つめました。 「たくさん食べたし次は遊ぼうよ!」 「もう、ちょっとは休みましょうよ」 「ダメだよ~。お祭りは無駄なく遊ばないと」 ふんすと鼻を鳴らして、唯先輩はゲームの屋台がある左の小路へと入っていきました。 「もう、唯先輩は相変わらずですね」 「そうねぇ。でも、梓ちゃんがいるから、っていうのもあると思うわ」 「私?」 ムギ先輩は頷きました。 「唯ちゃん、梓ちゃんと会えるのをすごく楽しみにしてたもの。久しぶりにあずにゃんに 会える! って事あるごとに言ってたのよ」 「……どうせ、ひっつく相手がいなくて寂しがってただけですよ」 「うふふ、そうね」 そう言うと、雑踏の前から唯先輩の呼ぶ声が聞こえました。 「あずにゃんムギちゃん、人で溢れちゃってるよー……」 唯先輩が退いてきた先では、隙間も無いほどの人の群れ。ちょうど近くで神輿の掛け声が 聞こえるので、きっとそのせいでごった返してしまっているのでしょう。 「これを抜けるのは大変そうね……」 人混みを一目見て、ムギ先輩はそう呟きました。 「う……」 自然、前に進む足が固まってしまいます。どうしよう。もしはぐれちゃったら、二度と 唯先輩と会えないような……。折角、折角また会えたのに…… あーずーにゃん」 ふわっと、手に温もりが重なったような気がして、見ると唯先輩が、私の右手を すっぽりと包んでいました。 「これならはぐれないかなぁ、って思って……。ダメだったかな」 そう言って唯先輩ははにかむように笑いました。さっきの不安なんて霞にしてしまう ような、優しい、照れくさそうな笑顔。固まった身体が徐々にほぐれていく気がしました。 「……私と会いたがってた、って聞きましたから。特別です」 そう言って、より一層手を握る力を強めました。 「えへへ、ありがとあずにゃん。あずにゃんは優しいね」 「……優しいもんですか」 「優しいよ~っ」 ……どうせ鋭いなら、私の不甲斐ない気持ちも、見抜いてくれたらいいのにな。 「じゃ、行くよ。離れないようにしっかり握っててね」 私はそっと頷いて、それを合図にゆっくりと歩き始めます。もう一つの手で唯先輩の 手を掴もうか少し迷って、その手で後ろ髪の片尾をふいと払いました。 「ふぅ、どうにか抜け出せましたね」 「はぐれなくて良かったぁ……。でもムギちゃん、ごめんね、繋ぐ手の余りがなくって」 「大丈夫よ。私には百合の磁力があるもの。二人とは絶対に離れないわ」 「? 綺麗な磁力だねぇ」 人混みを脱した直後だと言うのに、ムギ先輩の呼吸も表情も、一切崩れていませんでした。 「あっ、ムギ~! 唯と梓も!」 一息ついた所で景色が開けると、偶然にも、眼前に律先輩が現れました。 「なんだ、結局放課後ティータイムは一つに集まる運命なんだな」 「運命だなんてっ……。りっちゃんロマンティック~」 「はは、澪の癖があたしにも移っちゃったみたい……」 律先輩は照れ笑いをして頭をかきました。 「そういえば澪ちゃんは?」 「あぁ、澪なら……」 そこで言葉を切り、後ろの方を指さします。澪先輩は、屋台をじっと睨んだまま、 何かを投げるようなポージングで固まっていました。実際何かを手に持っているようで、 それは…… 「あれ、輪投げですか?」 「そっ。だるま落としの方が簡単だって言ったのに、だるまが落ちんのは演技が悪いって 聞かなくて」 そう言ってる内に、澪先輩がさっと手首をスナップさせました。輪っかは手を離れ、 屋台の陰に隠れその所在は知れぬ所となりましたが、澪先輩の強張った表情が解けたと 思うと次にはがっくりとうなだれて、 「外したな」 「外したね」 「そんなに欲しい物があったのかしら」 「財布と電話を出さないでくださいムギ先輩」 やがて澪先輩が、がっくりとしたままこちらへ来ました。 「律ぅ……輪っかは完全に入ってなくちゃダメだってぇ……」 「あー、私もそれで神のカード貰えなかったなぁ」 帰って来た澪先輩は、律先輩の肩にしがみついてそうぼやきます。一方の律先輩は そんな澪先輩の頭を優しく叩いてあげていて……あれ、あれ。 「あの二人、あんなに距離近かったですっけ……」 「……隠すつもりもないみたいだし、もう言った方がいいよね」 「そうねぇ。あのね梓ちゃん、今二人はアツアツなのよ~」 「アツアツ? まぁあれだけ近かったら暑そうですけど……って、唯先輩! なんでそんな可愛いものを慈しむような目で見るんですか!?」 「いや~あずにゃんは初いのぉ、純粋だのぉ。そのまま大人にならないでおくんなまし~」 「だから何キャラなんですかってば」 「もうすぐ花火だって! 折角だから五人で見ようぜ!」 澪のお礼参りと行くか~! という鶴の一声で始まった屋台巡りも一通り堪能した後、 またまた律先輩の鶴の一声で、花火の見える場所まで移動することになりました。 前列の唯先輩達の会話を手持ちぶさたに聞いていたら、 「ぶつ、ぶつ……」 「み、澪先輩……?」 一緒に後ろを歩いていた澪先輩が心なしか、いや明らかにどんよりした様相で歩いて いました。 「あぁ、梓。いや、皆とこうしてまた集まれたのは嬉しいんだけど、今年こそ律と二人で 夏祭りに行こうって意気込んでたから、ちょっと複雑な気持ちで……」 苦笑いをする澪先輩の気持ちが何となく分かるような気がしました。それと同時に、 とても意外な気がしました。 私の知る澪先輩は、こうやって心にひっかかるような、何となく分かる微妙な気持ちを、 自然な会話の流れで口に出来るような人ではなかったはずです。 「澪先輩は、大学生になってから変わりましたね」 「そ、そうかな?」 「そうですよ」ふとさっきのやり取りを思い出して、「特に律先輩関係は、前よりずっと 積極的じゃないですか。何かあったんですか?」 「!? べ、別に何もない! 何もないぞ!」 慌てて手を振って否定する澪先輩でしたが、何か思い直したように、照れくさそうに 頬をかきました。 「……いや、うん。あった。ほんとは。」 「ですよね! 澪先輩と律先輩、今までの幼馴染って感じよりもっと深い関係になってる ような……」 「わーっ! それ以上はダメだぁ!!」 澪先輩は真っ赤になって私の口を押えました。 「……というより、十年一緒にいた今までが変わらなさすぎたんだよ」 紅潮しきった頬を掌で押えて、澪先輩は続けます。 「でも勢いとはいえ、変えるきっかけが出来た。そのチャンスを逃したくなくてさ、 もう少し自然に近づいてみよう、素直になれるよう頑張ってみようって思って」 最近までは凄く恥ずかしかったけどね。とおずおず付け加えます。 「……皆、新しい環境になって、変わっているんですね」 そう呟いた時、お祭りの人混みに飛び込む前にした近況報告をふと思い出しました。 ムギ先輩も律先輩も、澪先輩も変わっていく。成長。それを喜ぶのは至極当然な感情で あるはずなのに、皆が私の知らない所で変わっていく。それがとても寂しくてしょうがない。 いつか皆、葉桜が紅く染まっていくように、私の知らない先輩達となってしまうので しょうか。あの優しくてほんわかと温かい唯先輩も、もしかしたらきっと……嫌。 そんなの、絶対嫌だ……! 身体が震えそうになっていることに気付いて、私は慌てて考えを薙ぎ払いました。 よそう、こんなのただの気の迷いだ。一人で考えるから変な穴にハマるんだ。 私と澪先輩はよく似ている。変わりたいと思えるきっかけを訊けたら、きっとこんな モヤモヤもすぐ晴れてくれる。 「……澪先輩」そう思うが早いか、言葉のまとまらない内に、私は澪先輩の名前を呼んで いました。 「? どうした?」 「あの、みお、澪先輩は……」 それから先の言葉が舌をつかず、澪先輩は首を傾げて私の言葉を待ちます。 「あの、澪先輩はどうして……!」 何でもいいから何か言ってしまおう。後で補足を入れたらいい、 そう思い声を出しました。が、 「おーい! 着いたよーっ」 そう決心した瞬間、唯先輩が大きな声で私たちに呼びかけました。 「ラッキー! ちょうど橋の端っこになったぞー!」 「りっちゃん、それは寒いよ……」 「わざと言ったんじゃないやい」 そう言う内に、前を歩いていた先輩達の歩みが止まりました。ちょうど、何の妨げも なく花火を一望できる場所です。 「ごめん梓、何か言った?」澪先輩が再び私に尋ねます。 「…………花火なら、二人きりで見られるんじゃないですか?」 「……! そうだなっ。おーい、律~!」 クールなイメージと相反して、うきうきと音の出そうなステップで律先輩の元へ 向かって行きました。 「言わなくてよかった……」折角コンプレックスを払拭しようと頑張ってるのに、私の 気の迷いで足を止まらせては申し訳が立ちません。自分の悩みを人に丸投げなんてしては、 解決なんて夢のまた夢です。 「……チャンス、かぁ」 その一語が、余計な重みを持ってのしかかってくるような気がしました。 もし私に変わるチャンスが訪れても、それを受け入れることが出来るだろうか。 ……ただ一人変わらずにいてくれている唯先輩にも、もしその日が訪れたら、私は 笑って見送らなければならないのだろうか…… 「あーずにゃん」 「わっ」 物憂げに星を見ていたら、空っぽになっていた右隣に、いつの間にか唯先輩がやって きていました。 「良かったぁ。一人で見に行っちゃうのかと思ったよ」 「そんなことしませんよ。花火は誰かと見た方が良いに決まってます」 「そうだよね。私もあずにゃんと見る花火が、一番綺麗に見える気がするよ」 「わ、私は別に唯先輩と、とは言ってないです!」 心を見透かされたような気がして、一瞬ヒヤっとしました。お神輿近くの時といい、 唯先輩はその時の気持ちをズバッと見透かしてくるくせに、それがどんな意味を持って いるかには酷く鈍感なのがズルいです。 いっそそこまでバレてくれたら……なんていうのは贅沢な話だよね。 二人とも無言のまま、花火は刻一刻と迫っていきます。心の中で手持ちぶさたを 言い訳に、唯先輩の横顔を眺めました。 「……唯先輩は変わりませんね」 「えぇ~そうかなぁ。私、大学生になったんだよ?」 「じゃあ何か変わったんですか?」 「えーっと……アイスを三口で食べれるようになった」 「あ、それはちょっとスゴいかも……」 憎まれ口を叩きながら、内心ほっとしている自分がいました。 「……あずにゃん、がっかりした?」 唯先輩が不安げに私の方を覗き見ました。 「……何言ってるんですか。唯先輩はその方が良いです。唯先輩は、大学生になっても、 ずっとそのままの方が良いです」 つとめて明るいイントネーションで呟いたつもりでしたが、自信はありません。 「あずにゃんがそう言ってくれるなら嬉しいよ」 唯先輩はほっとため息をついて笑いました。 「私さ、ちょっと不安だったんだ。ムギちゃんはバイトを始めて、りっちゃんも澪ちゃんも 他にやりたいことを一緒に始めて、私だけ何もかも高校生のままで、それでいいのかな、 って。でも、あずにゃんがそのままで良いって言ってくれるのなら、それだけで安心だよ」 「唯先輩……」 それでも、少ししょんぼりしている唯先輩を見ていたら、いてもたってもいられません でした。 「……きっと唯先輩はまだチャンスが来てないだけです。前に進みたいと思う、 その気持ち一つだけで十分素晴らしいです!」 少なくとも、時間に背中を押されて、ただ転ばないように前へ足を出しているだけの 私なんかより、ずっと、ずっと…… 「……あずにゃん、ありがとっ!」 「ぎゃふっ!?」 ぎゅっとまた抱き締められました。さっきは確かめる余裕が無かったけど、唯先輩から 伝わるのは懐かしい温かさ。とても幸せな、だけど何故か切ない温もりでした。 「もう、離してくださいってばぁ」 「ダメだよあずにゃ~ん。花火が始まるまでだよっ」 そう言うや否や、どこかのスピーカーからざらざらした女の人の声が、後五分で花火が 上がることを告げに来ました。 「あずにゃん、もうすぐ花火が上がるって!」 パッと唯先輩の身体が離れました。 「……始まるまでって言ったのに」 「? 何か言った?」 「な、何も言ってないです!」 ほとんど無意識にそう呟いていました。……参ったなぁ。本当に唯先輩への耐性が 無くなっちゃったみたい。 花火のしらせはやがて群衆のざわめきに変わり、それが最高潮になった瞬間、一つの 大きな花にまとまり、ドンとお腹に響く音と共に空へ打ち上げられました。赤や黄色、 緑や青、めいめいの花が咲いては消え、でも夜空を空白のままにしないよう、次々 連なって昇っていきました。 時には二つの輪が半分以上重なり合い、混じって派手な円模様と、多色混合の 彩り豊かな火花が散り、かと思えば次の瞬間、二輪はどんどん離れて行き、ついには 壁でも出来てしまったかのように、妙な距離が出来てしまいました。 あぁ、もっと近づけたなら鮮やかな景色になるのに。寄せては返す花火の距離が もどかしくて、もっと、もっと右に行けたなら……。と思いながら、くい、くいと身体を 右に傾けていたら、こつん、と右手が何かにぶつかってしまいました。 何が当たったんだろうと右を向いた時、唯先輩と目が合いました。 「あっ、ごめんなさい唯先輩」邪魔をしちゃったな、とすぐ悟りました。 そう言うと、唯先輩はくしゃっと顔を崩して、さりげなく、まるでさっきからそこに あったかのように、自分の左手を、私の右手の中へ滑り込ませていきました。 「これなら邪魔にならないよっ」 無垢な笑顔で私にそう言いました。 私は返事代わりに、うつむくように頷いただけでした。 それでも唯先輩は満足げに笑って、再び夜空に目をやりました。私もつられて顔を 上げると、右腕にとん、と唯先輩の肩がもたれかかってきました。 「あずにゃん」 そう呼びかけられなかったら、私はまた横を向いて、何をしてるんですか!? なんて 身構えたかもしれません。ただ、そんないつも通りを過ごすには、唯先輩の仕草が、私に 語りかける、真剣な響き故に小さくなってしまった声が、それが私にしか聞こえない奇跡 みたいな状況が、あまりに特別過ぎました。 「……どうしましたか、唯先輩」 空を見上げたままそう尋ねました。 「あずにゃん、私、やりたいことを見つけたよ」 ほら、こうして良かった。その一言に思わず強張った横顔は、花火が昇る今ならきっと、 唯先輩に見えていないでしょう。 「私、ここに戻って来て、あずにゃんとこうやって一緒に夏祭りを楽しんで、ちょっと 分かった気がするんだ。変わらなかったのは、やりたいことをもう既に見つけてるから じゃないのかな、って。でもそれを始める引き金が、まだ私に無かっただけなんじゃない のかなって。あずにゃん。私はもっとギターをやりたい! 放課後ティータイムとして だけじゃなくて、もっと、もっと!」 どどどん、と一段大きな音がしました。でも、その花火がどれだけ立派だったのか、 私は知る由もありませんでした。だって…… 「だからあずにゃん! 大学生になったら、私と二人で、一緒にギターをしてください!」 その瞬間、唯先輩は私の手を両手に包んで、まるで告白まがいなことを大真面目に言う のですから…… 「な、なな、何をいきなり言うんですかぁ!?」 突然の途方もない誘いを受け入れられる度量も無く、とうとう我慢できず悪い癖が出て しまいました。でも、 「…………唯、先輩……」 慌てふためいた拍子に揺れた身体も、唯先輩にがっちりと包まれた右手だけは微動だに しませんでした。 「あずにゃん、お願い……」 真剣だけど、どこか甘えんぼで哀れっぽい口ぶりと表情。こんな顔されて、私にどうこう 出来るはずなんてないわけで…… 「……もう、唯先輩は勝手です。私の都合なんて知らんぷりであずにゃんあずにゃん、 って……」 「あぅ……」 唯先輩の両手がびくっと引っ込んだ気がしました。違う、こんなのが私の気持ちじゃない のに……。唯先輩が勝手なら、私だってよっぽどワガママだ。 ……でも、同じワガママなら、背伸びでも屈みでもして唯先輩と目線を合わせること だって出来るはずだ。 私は息を一つ吸って、言いました。 「……半年です」 「ほえ?」 「私の受験が終わって、唯先輩と同じ大学に入って、その時にも唯先輩の気持ちが 変わらないなら、また誘ってください。……私の気持ちは、絶対に変わりませんから」 唯先輩の顔に、パッと笑顔の花が咲きました。 「あずにゃん、ありがと~!」 唯先輩がまた抱き着きました。 「ゆ、唯先輩、こんなに人がいる所でっ……」 「だいじょーぶ、皆花火に夢中で見てないよ」 「……もう」 それもそうだなぁ、って納得してしまった私は、余程重症なのでしょう。 変わること、先に進むこと。それはまだどうしようもなく怖い。大切な物がふいになって しまう位なら、ずっと今のままで居続けていたい。 でも、これでまた四年の間は先輩の背中を追いかけていられる。答えは唯先輩と一緒に 見つけていこう。見た事のない世界をたくさん見せてくれた、この人とならきっと見つけ 出せる。 もしその道程で何かが変わってしまっても、その目の前に変わらず唯先輩がいてくれる のなら、大事な物は、そのままでいてくれる。そうに決まってる。 三度、私は空を見上げました。花火は終盤に差しかかったのか、間髪入れず次々打ち 上がり空に咲き乱れて行きます。色とりどりの、輪郭がぼやけた花が空高く咲き乱れ、 その下では菜種色の炎が控えめな花を咲かせ、水面にたゆたう葉のようにはらはらと 花弁を散らしていくのでした。そこに無粋な余白など、どこにもありはしませんでした。 夏が終われば、何かが変わる。そんな移ろう季節の真ん中は、全てが鮮やかに輝いて いました。 あとがき ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。 楽しんでいただけたら幸いです。 読みづらい文章だったらごめんなさい。これが今のところの、文章力の限界です。 次に投稿する時は、もっと文章力や見せ方を向上させてきます。 再度、ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました! そしてあずにゃん、お誕生日おめでとう! 戻る
https://w.atwiki.jp/25438/pages/4394.html
紬「唯ちゃんがトラックに撥ねられる話らしいの。梓ちゃん知ってる?」 梓「いえ、初耳ですね……」 紬「そう……私も最近知ったんだけど」 梓「……それで、唯先輩はその後異世界で無双するんですかね?」 紬「えっ? い、異世界って?」 梓「こことは違う世界ですよ。大体はファンタジーな世界ですね。トラックに撥ねられた人は死んだら大体異世界に行くんです」 紬「へ、へぇ……でもそういう話じゃなかったはず……」 梓「じゃあ何ですか、その唯トラっていうのはそこからどう話が広がるんですか?」 紬「た、たぶん広がらないんじゃないかな……」 梓「なんと勿体無い……私ならもっと面白く出来るのに。唯先輩の異世界転生。これは流行る。今のうちに書き溜めないと!」ダッ 紬「え、ちょ、梓ちゃん!?」 梓「すいません私今日は早退しますね! シュビッ!」タタタ 紬「シュビッて何」 ~~~~~~~~ 梓「そう、唯先輩のスペックなら異世界でも人気者になれるはず。頭は良くないし運動が出来るわけでもないけど、あの人には人の心を掴む才能がある」 梓「……私だって掴まれた一人だからわかる」 梓「パラメータ的には最弱だけどそれ以外の部分で強者を味方につけていき一目置かれる存在になる……そんな最弱系主人公のパターンでいける、はず」 梓「具体的にはあの笑顔と優しさと、あとは……やっぱり音楽が必要かなぁ、あの人には。演奏している時の唯先輩は本当に楽しそうだし」 梓「そうなるとギター……ギー太にも一緒に異世界転生してもらわないといけなくなるね。まぁ唯先輩はいつも背負ってるから不自然ではない、か」 梓「……さすがにアンプまでは無理かなぁ。転生する時に神様にアンプの能力でも与えてもらえないかな」 梓「……うん、ここは私の作者としての腕次第ということで。どうとでもなるよね、きっと」 梓「それで、こう、異世界で戦争とかしてても歌を歌って戦いを止めたり、その人柄で両方の偉い人から気に入られたりして世界に平和をもたらしていく、みたいな」 梓「音楽という文化を広めて世界を優しさで包んでいくお話、でもいいね。唯先輩の音楽で世界がひとつに! 争いのない平和な世界に!」 梓「うん、いい……さすがは唯先輩です」 梓「えっと、こういう流れにするとして、アンプのこと以外に何か問題点は」 梓「………」 梓「よく考えるとそもそもあの人を一人で右も左もわからない異世界に放つというのが不安なんだけどどうしよう」 梓「普段は私がちゃんと見てないと危なっかしいからなぁ。音楽が絡むと別人なんだけど」 梓「誰かにナビゲートしてもらいたいね・・・私の代わりに、誰かに」 梓「……代わり? いや、いっそ私でもいいのかな? でも転生時点で二人ペアっていうのは王道から外れてるよね……運命のペアっぽくて素敵ではあるけど」 梓「う、運命のペア!?」 梓「……何言ってるんだ私は」 梓「まあ実際、唯先輩を一人で死なせるのは可哀想だし、私が一緒にいてもいいとは思うけど……」 梓「………」 梓「…………」 梓「……可哀想、だよね、やっぱり」 梓「唯先輩が死ぬだなんて、可哀想だし、私も悲しい」 梓「……何をしようとしていたんだろう、私は」 梓「唯先輩と同じ時間を生きる私が唯先輩を死なせるなんて、たとえフィクションの中ででも出来るはずがないのに」 梓「フィクションの、物語の中ではたくさんの人が死んでいるけれど・・・それは否定しないけれど、私が唯先輩を死なせるのは絶対に違う」 梓「……それにそもそも異世界転生するような人は現実で追い詰められているような人達だ。唯先輩は当てはまらない」 梓「どこから見ても最初っから間違っていたわけだ。私はバカだ」 梓「……消そう。これは無かったことにしなくちゃいけない」 梓「ごめんなさい、唯先輩。私が間違ってました。私はあなたにはこの世界で幸せになってほしいです。まだまだずっとあなたを見ていたいです」 梓「……異世界になんて行かないでください。私と同じ世界にいてください」 梓「どうか、ずっと……」 梓「………」 梓「………」 梓「……異世界転生モノ読んで寝よ……」 ~~~~~~~~ 紬「梓ちゃんの言ってた異世界転生モノ、面白い……!」 紬「でも百合が少ない(´・ω・`)」 紬「……こ、こうなったら私が書くしか……?」 ……こうして、紬は異世界転生百合小説作者の道へ一歩踏み出した…… のかはまだ定かではない オチが弱い おわれ 戻る