約 1,001,257 件
https://w.atwiki.jp/jfsdf/pages/1254.html
第257話 動き始める切り札 1485年(1945年)11月11日 午前8時 ヒーレリ領ヴィアセロスコ 「畜生が……いつ見ても腹が立つぜ!!」 防衛線の塹壕内で、腹立たしげに放たれた声が響く。 ヴェセンドネ・クトインル大尉は、その声を咎める事無く、自らも上空に伸びる多数の飛行機雲を見つめていた。 「この陣地にとびっきり高い高度まで打ち上げられる高射砲があれば、ありったけの弾をお見舞いしてやるのによ!」 「おいおい、ウィリンチヤ。無い物ねだりしてもどうしようもないぞ?」 「んなこた分かってるよ。でもよ、こんな光景を見たら無い物ねだりの1つや2つでもしたくなるぜ……俺とお前も、生まれはランフックだ。 気持ちは分からんでも無いだろう?」 「言われずとも……だがな、ここで恨み節を叩くよりも、頼り無い部下達をどう鼓舞して行くかどうか……それを考えた方がいいと、俺は思うぞ。」 クトインル大尉は、後ろからぼそぼそと聞こえる会話に聞き耳を立てていたが、彼はこれ以上、部下達に無駄話をさせる積りはなかった。 「キシリヌィ中尉の言う通りだ。」 不意に口を開いたクトインル大尉は、くるりと後ろに振り返った。 彼の後ろには、休憩がてらに水を飲んでいたヴルコ・ヴェパンズナ中尉とウィクリン・キリリヌィ中尉が居た。 どちらも、20代半ばの青年士官だ。 「そろそろ、小休止が終わる。あと5分で隊に戻らなければ、部下に上官が遅刻した!と言われてしまうぞ?」 「ですね……それじゃあ、部下に示しがつかねぇや。」 「それでは、自分達は陣地に戻ります。おい、今日の課業が終わったら、久しぶりに一杯やらんか?」 「おう、考えとくよ。」 ヴェパンズナ中尉とキシリヌィ中尉は、互いに軽い口調で言い合ってから休憩所から離れて行った。 クトインル大尉は2人の部下が立ち去るのを見た後、再び上空に顔を向ける。 「……絶対防衛線の上空を、悠々と飛び去って行く敵機……か。もはや慣れたもんだが、“絶対防衛線”という名のついた陣地から見る光景としては、 これほど滑稽な物は無いだろうな。」 クトインル大尉は自嘲気味に呟く。 彼が目にしているのは、5000グレル以上の高度を、白煙を引きながら通過して行く、スーパーフォートレスの大群である。 数からして100機は下らない米重爆撃機の編隊は、爽やかな冬の青空に恨みがあるかのように、濃い飛行機雲で真っ白に覆わんとしている。 クトインル大尉がこの陣地に来て早3ヶ月……幾度も見慣れた光景だ。 「天候が崩れる前、ランフックとオシラヌク、クゼリニティの3都市に、マスタングに護衛されたスーパーフォートレスが表れ、爆撃予告の紙を 大量に落として行ったと聞く。あの爆撃機編隊は北東方向に向けて飛んでいる……連中の狙いは、ランフックか、あるいは、まだ無傷のクゼリニティの いずれか、か。」 (恐らく、工業地帯が廃墟と化したランフックではなく、クゼリニティに向かっているのかも知れんな) クトインル大尉は、最後の部分は心中でぼやきながら、ぐっと奥歯を噛みしめる。 彼は、第367歩兵師団第382歩兵連隊第2大隊の1中隊長として、部下の率いる4個小隊、計120名と共にこの陣地に配置されている。 この陣地に配属されるまでは、レスタン戦線や南大陸戦線といった、地獄の戦場を渡り歩いてきた。 名実共にに歴戦の士官であるクトインルの指揮中隊は、小隊指揮官や分隊指揮官全てが対米戦を経験して来た者ばかりであり、部隊の錬度も高く、 大隊の中では最も期待される中隊として注目を集めている。 クトインルは、自分と同様に、過去の戦闘で苦闘を味わった部下達を指揮できる事を素直に喜んだが、この防衛線に配置されてからは、気の滅入る事しか 起こらなかった。 そして、その気の滅入る出来事は、今もなお続いている。 その1つが、上空にたなびく無数の飛行機雲である。 連合軍の中でも最大勢力を誇るアメリカ軍は、レスタン領に航空基地を構えたあと、自慢の爆撃機を帝国本土中部にまで差し向けるようになった。 米軍の戦略爆撃機は、晴れ間が続く時は、3日に1度……場合によっては2日に1度の割合で西部絶対防衛線上空を飛び越し、帝国本土に戦略爆撃を浴びせ続けていた。 その中でも最大規模の爆撃は、8月30日のランフック大空襲である。 この時、防衛線上空は長時間に渡って、重爆撃機の爆音が鳴り続け、守備隊の将兵達は今までに経験した事の無い大編隊の通過に何かしらの不安を感じていた。 『ランフックに敵の大空襲、工場施設群壊滅せり。民間人の損害甚大なり』 という悲鳴じみた報告が伝えられたのは、それから間もなくの事であった。 このランフック大空襲で、シホールアンル側は死傷者26万人、罹災者数83万人という凄まじい損害を出しており、クトインルの中隊でも、ランフック出身の 将兵の中には、妻や家族、知人を失った者が居る。 その後も、ランフックには米軍の戦略爆撃機が2度飛来しているが、いずれもが昼間爆撃であり、かつ、事前に通告された事もあり、死傷者数は2度合わせて 500人足らずで済んだ物の、この2度の空襲で、最初の大空襲で辛うじて生きていた工場は全て潰されており、ランフックは、工場都市としての価値を完全に失った。 アメリカ軍は、9月以降も帝国中部地方への戦略爆撃を続け、これまでにガルビラスト、ジャンシヴル、ポエストリブ、クァーラルド、ギルガメルと、 中部地方から、ヒーレリ国境沿いにある主要工場都市、魔法石、金鉱山、軍事施設やワイバーン養成施設等の重要施設のある地域は、片っ端からB-29の 爆撃を食らっている。 特に10月に入ってからは、米戦略航空軍の活動はより活発化し、10月19日のポエストリブ市空襲では、現地側の手違いで避難指示が遅れてしまった結果、 ランフック市と同様の無差別爆撃が行われてしまった。 ポエストリブ市は、人口50万を誇る主要都市であったが、10月19日に来襲した290機のB-29は、都市近郊にある魔法石、金鉱山と精製工場を 狙って高高度絨毯爆撃を敢行した。 結果は悲惨な物であった。 B-29が投下した爆弾の大半は、爆撃直前になって避難命令を発せられ、住民の大半が逃げ惑う市街地北に落下し、甚大な損害をもたらした。 この無差別爆撃で、シホールアンル側は死傷者48920名、罹災者18万人を出し、金鉱山と魔法石鉱山は壊滅。 市街地の半分が全焼、並びに全半壊した。 この空襲の後、クトインルの所属している第2大隊の別の第4中隊長が、精神に変調を来して後送された。 この事件は、大隊のみならず、師団の将兵を大いに驚かせたが、クトインルが後に同僚の大隊幕僚から聞いた話では、第4中隊長はポエストリブの空襲で 夫と家族を亡くしていたと言う。 クトインルが見た限りでは、第4中隊長はどこか繊細さを感じさせる事はあれど、大抵は部下にも同僚にも、明るく接しており、同時に、クトインルと 共に数々の激戦を戦い抜いた歴戦の野戦指揮官でもあった。 だが、誰から見ても羨ましがられる存在であった第4中隊長は、敵の戦略爆撃によって精神を壊されてしまったのである。 (……丈夫そうに見えたあいつが、まさか、あんな事になるとは………) クトインルは、朗らかな笑顔を浮かべながら、気軽に話しかけてきた元同僚の顔を思い出しながら、戦略爆撃の無情さを痛感していた。 「絶対防衛線……か。そもそも、絶対という言葉は、何事が起ころうとも、必ず、その通りに成せる、と言う意味である筈なんだがなぁ……」 彼は、次第に消えつつある飛行機雲の束を見つめ続ける。 「これじゃ、“絶対”という名は取っ払った方が良いな。」 クトインルは自嘲気味に言いながら、持っていたカップを空いた箱の上に置いた。 中隊指揮所に入った彼は、備え付けの椅子に座り、机の上に置いてあった書類に目を通して行く。 どこか抜けた表情で紙を見つめるクトインルに、中隊本部付の魔道士が、片手に紙を携えて歩み寄って来た。 「中隊長。大隊長より通信です。あと……そろそろ時間ですね。」 中隊本部付魔道士であるシヴェリィ・メヒロンヘ少尉が時計を見ながら話しかける。 透き通る様な白い肌に、肩まで伸ばした紫色の髪はなかなかに綺麗であり、中隊内では何かと人気の女魔道士である。 今年で19歳になる彼女は、出征前は首都にある家のパン屋で手伝いをしていたという。 16歳で陸軍魔道士学校に入り、18歳で卒業した彼女は、昨年のジャスオ領攻防戦で初陣を飾り、今年1月のレスタン攻防戦と、先のヒーレリ攻防戦にも 参加している。 任官以来、ずっと最前線に居た彼女は、今では実戦を経験した猛者として、中隊内では欠くべからず存在となっていた。 メヒロンヘ少尉が顔を向けた先に、クトインルも視線を送る。 時刻は午後8時10分を指している。 今日の様な晴れた日だと、この時間帯は必ずと言って良いほど、“定期便”が陣地上空に飛来していた。 「だな。対空部隊の連中は、そろそろ準備を済ませている頃か。」 クトインルがそう答えた時、唐突に空襲警報のサイレンが鳴り響いた。 クトインルは、メヒロンヘ少尉と顔を見合わせ、内心でやっぱりな、と呟いた。 「ようし!いつも通り、空襲に備えるぞ!魔道士、各小隊に伝達!定期便来たる、備えよ!」 「了解!各小隊に伝達いたします!」 メヒロンヘ少尉は命令を受け取ると、すぐに自分の席に戻り、各小隊に魔法通信を発し始めた。 それから2分後、メヒロンヘ少尉から“定期便”に関する情報が伝えられた。 「中隊長!前進観測班から通信が入りました!敵、戦爆連合編隊150機、第57軍団戦区に向かう!」 「こっちに来たか……」 クトインルは顔をしかめる。 彼の所属する第367歩兵師団は、第65軍所属の第57軍団指揮下にある。 第65軍は、第57軍団と第58軍団の計5個師団で編成されており、第57軍団は防衛線のやや北側に近い位置に配置されている。 連合軍は、防衛線に配置されている第65軍や、第42軍、第5石甲軍に対して、連日空襲を加えており、多い時には1日1000機もの敵編隊が、 数派に渡って襲って来る事もある。 シホールアンル側は、防衛線の塹壕陣地を強化したり、後方から対空部隊を増強する等して対応に当たっている。 今の所、連日の敵の猛爆にもかかわらず、被害は想定内で収まっている。 ここ数日は、悪天候で敵の爆撃が無かった事もあり、防衛線の各隊は補充を済ませて、万全の態勢で配置に付いていた。 空襲警報発令から15分後……前線に敵の戦爆連合編隊が現れた。 「来ました……敵機です!」 指揮所に設けられている、流動石で作られた防御陣地内で、覗き穴から上空を見張っていた兵士が声を上ずらせながら伝える。 その時、迎撃に飛び上がった40騎のワイバーンが前線を飛び去って行くのが見えた。 大きな翼を上下に動かしながら、猛速で飛び去って行くワイバーンの姿は実に頼もしい限りだが、前線の兵士達はそれに感動する事も無く、 ただひたすら、敵機が来るのを待ち構えていた。 「……始まったか。」 別の覗き穴から空を見つめていたクトインルがそう呟く。 迎撃に向かったワイバーンが、護衛の敵戦闘機と交戦を開始した。 上空から聞こえる音は、来襲しつつある敵機の物ばかりだ。 その音に、機銃の発射音とワイバーンが放つ光弾の発射音が混じり始めた。 ワイバーン群は、戦闘機の迎撃を突破して、後続の双発機群に襲い掛かろうとしているが、上手い具合に展開した敵戦闘機に阻まれ、 なかなか双発機群に近付けない。 不意に、敵機が火を吹いて墜落し始めた。 それまで、互いに1機も落ちぬまま激闘を続けていたが、この日はシホールアンル側が、最初の撃墜スコアを挙げたようだ。 続いて、2機目の敵機が機体から濃い白煙を引き始める。 ワイバーンの光弾を食らったのだろう。 敵戦闘機のシルエットは、翼が折れ曲がった胴体の長い物ばかりだ。 形からして、米海軍、または、米海兵隊所属のF4Uコルセアであろう。 「あるいは……」 クトインルは、米軍以外にもコルセアを有している国がある事を思い出す。 「……いや、連中が使っているからとはいえ、腕がアメリカ軍よりも劣る訳ではない。むしろ、アメリカ人以上にしつこい分、性質が悪いな。」 彼は舌打ち交じりに呟いた。 「敵編隊の一部がワイバーンの迎撃を振り切りました!我が大隊の陣地に向かって来ます!!」 見張りの兵が金切り声で報告を伝える。 先週の爆撃で元居た見張り員が戦死したため、新たに補充で送られて来た兵士だ。 中隊の陣地に設置されている対空砲と魔道銃が一斉に射撃を開始した。 迎撃を突破した敵機は20機前後。全てが単発機であり、その翼は全て折れ曲がって行った。 (クソ!“いつもの方法”で来るか!) クトインルは忌々しげにそう思いながら、対空部隊が1機でも多くの敵機を撃ち落とす事を願った。 陣地に向かいつつある敵機は、全てコルセアである。 敵は、制空戦用と地上攻撃用のコルセアを用意していたようだ。 (コルセアに限らず、単発機が先に向かって来たとなると……対空部隊が先にやられるな) クトインルは、今まで自分が経験してきた敵の攻撃パターンを思い出しながら、接近するコルセアを見つめ続ける。 コルセアの周囲に複数の光弾が注がれ、機体の横や上に高射砲弾が炸裂する。 しかし、低空を猛速で飛行するコルセアは、何ら有効弾を浴びる事も無く、あっという間に陣地へ迫って来た。 コルセアが機首の大馬力エンジンを鳴らしながら中隊の指揮壕の真上を通り過ぎようとする。 その時、コルセアが両翼から機銃を発し、次いでにロケット弾を撃ち放つのが見えた。 クトインルは、コルセアの胴体に描かれていた国籍マークを見るなり、眉をひそめた。 後方で爆裂音が響いた。 「ああっ!対空銃座が吹き飛びやがったぞ!」 不意に、誰かが悲鳴じみた声をあげた。 コルセアの攻撃で、連装式魔道銃を撃ち放っていた魔道銃座が、操作要員諸共爆砕されたのだ。 連装魔道銃座を操作するには、射手1名と魔法石を交換する給弾兵1名、予備の射手と観測主の計4名、または6名程が必要になる。 コルセアの攻撃は、その操作要員達全てを戦死させた事であろう。 (例え、あの攻撃で戦死しなくても、生存者は瀕死の重傷を負って、死よりも辛い試練を味わう事になる。そうなるよりは、一息に殺された方が楽だろうな) クトインルは銃座の将兵達の苦闘に心を痛めると同時に、銃座の配備なにらなくて良かったと言う矛盾した……人間としてはある意味、当然とも言える 思いを感じていた。 侵入したコルセアは、真っ先に銃座や対空砲を潰していた。 コルセアに積んでいた5インチロケット弾は、高速で銃座や砲座に突き刺さり、操作していた兵を微塵に吹き飛ばし、あるいは破片で切り刻んだ。 ある砲座がロケット弾攻撃を受け、高射砲と兵が諸共ミンチにされた直後、積まれていた砲弾に誘爆して大きな爆炎が噴き上がった。 轟音と共に黒煙が噴き上がり、それが見る者の恐怖を煽り立てた。 別の銃座はコルセアの放った12.7ミリ機銃弾をしこたま食らってしまう。 必死の形相で魔道銃を撃っていた兵士が、高速弾の直撃で体の頭部や四肢を吹き飛ばされ、逃げようとしていた兵が腹や胸に大穴を開けられ、傷口から鮮血を 噴き出しながら倒れ込む。 銃座は12.7ミリ弾の集中射撃を受けてたちどころに穴だらけになり、一瞬にして使い物にならなくなった。 苦戦する対空部隊だったが、攻撃を受ける側も一方的にやられている訳では無く、魔道銃の反撃で1機のコルセアが撃墜され、猛速で地面に突っ込む。 その直後、機体がばらばらに吹き飛び、頑丈なエンジンブロックや、現芸を留めていた胴体後部や尾翼等が勢い良く転がり回り、燃料タンクから 漏れ出たガソリンが引火して、火焔が広がった。 この他にも、3機のコルセアが機体に命中弾を受け、白煙を引きながらよろよろと引き上げて行った。 だが、残ったコルセアは執拗に魔道銃座や砲座に機銃掃射とロケット弾攻撃を加える。 コルセアの中には、ロケット弾の他に爆弾を積んだ機もあり、それらの機体は塹壕陣地や、固い要塞陣地めがけて爆弾を投下した。 爆弾が地面に落下して爆裂する度に、強い振動がクトインルの居る指揮所を揺さぶる。 1発の爆弾は指揮所より30メートルほど手前に落下し、爆発の直後に大量の土砂が、壕の天蓋に降り注いだ。 コルセアの攻撃は10分程で終わったが、その直後に、別の敵が防御陣地に迫りつつあった。 「正面より新たな敵!突っ込んで来ます!!」 見張りに言われるまでも無く、クトインルは爆風を受けても無事に残っていた観測穴からその敵を見据えた。 「コルセアの次はインベーダーか。本当、いつも通りだな!」 クトインルは憎らしげに言い放った。 防御陣地めがけて、40機前後のインベーダーが向かいつつあった。 高度は500グレル(1000メートル)程だが、敵編隊は高度を落としつつある。 敵編隊は10機前後の編隊を3つ形成しており、そのうちの1つが、クトインルの居る中隊を目指していた。 「来るぞ!衝撃に備えろ!!」 クトインルはそう叫んだ後、両耳を塞いでから地面にうずくまった。 彼に習うようにして、指揮所の将兵全員が同様の恰好を取る。 暖降下して来たインベーダーが、高度250グレルで爆弾を投下した。 この時、A-26の胴体に積まれていた爆弾は250ポンド爆弾が4発であった。 1機あたり4発……12機計48発の爆弾が中隊の塹壕陣地めがけてばら撒かれ、そう間を置かぬ内に着弾した。 指揮所内に次々と爆弾が炸裂する轟音と震動が響き渡り、体にびりびりと伝わって行く。 特に爆発音は凄まじく、両手で塞いでいる筈の耳の鼓膜が破れたかと思わんばかりだ。 出入り口に爆弾の爆発で噴き上げられた土砂が音立てて降り注ぎ、指揮所内には濃い土煙が充満した。 轟音が鳴りを潜め、耳元の金切り音が収まった後、クトインルは閉じていた目を開き、いつの間にか止めていた呼吸を再開させる。 その瞬間、指揮所内に充満していた土煙と、鼻をつく火薬の匂いを感じ、思わずむせてしまった。 「だ、大丈夫ですか?」 真向かいに居る人影が声を掛けて来る。その声の人物も、あまりの息苦しさに激しく咳込む。 「あ、ああ。俺は大丈夫だ。それよりも、早くこの空気をなんとかしないと。」 クトインルは、机に置かれていた紙を2、3枚手に取り、室内に充満する土煙を外に向けて仰ぎ出す。 内部に居た兵達も同じように、持っていたハンカチや、素手で土煙を外に追い出して行く。 程無くして、指揮所内から土煙を追い出すと、クトインルは指揮下の小隊に被害状況を確かめさせた。 「中隊長……さっきのコルセア見ましたか?」 不意に、先程の見張り員がクトインルに話しかけてきた。 「ああ。見たぞ。あれがどうかしたか?」 「あのコルセア……ミスリアルの国籍マークを付けていましたよ!ミスリアルの長耳共も飛空挺を操っているらしいと聞いた事はありましたが…… まさか、本当に使っていたとは。」 「そう言えば、貴様はこの戦線に来たばかりで、あまり知らなかったな。」 クトインルは、この兵士が北から来た補充兵である事を思い出しながら説明していく。 「連合軍の中で中核を成すアメリカ人共は、陸戦兵器だけではなく、空戦兵器までもを、同盟国に供与している。今の“ミスリアル軍コルセア戦闘隊” がその証拠さ。そのお陰で、森の住人達は晴れて、大空をも支配下に収める事が出来た、と言う訳だ。」 兵士があっけに取られた表情で、クトインルの顔をまじまじと見つめた。 それに、クトインルは心中で落胆しつつも説明を続ける。 「俺も、最初は貴様と同じような思いだったが、今では、エルフの連中がアメリカ製の戦闘機を使って暴れ回る事には何も感じなくなったよ。」 「アメリカ製の軍用機を使いまくっているのは、ミスリアル軍だけじゃない。カレアント軍なんかも大量に運用しているよ。」 こっそりと話を聞いていたメヒロンヘ少尉も話に加わって来た。 「あんたがここに来る1週間前にあった空襲は、カレアント軍主体の航空部隊だったな。」 「連中、最近はエアラコブラだけじゃなく、サンダーボルト(P-47)やミッチェル(B-25)まで投入して来てる。カレアントの連中は、 アメリカさん相手によっぽど、良い商売をしているようだな。」 「一昔前まではウチらと同じ、ワイバーン中心の編成だったのに、今ではすっかりアメリカ軍機ばかりです。連中の変わり身の早さは、我々も 見習いたいぐらいですね。あ、というか、そうさせるアメリカの物量を見習う、と言った方が良いかもしれないですね。」 「あ……アメリカって……」 2人の上官の発する言葉の前に、補充の見張り員は思考が追い付かなくなり、頭から湯気を立て始めた。 「おっと、魔法通信が………中隊長、各小隊から被害報告が入りました。」 「ほう、早いな。」 クトインルは、報告が早い事にやや感心しつつ、メヒロンヘ少尉に報告を伝えるように促した。 「まず、第1小隊ですが、死者、負傷者共に無し。第2小隊、負傷者2名、いずれも軽傷で後送の必要無し。第3小隊、負傷者5名、うち、2名重傷、 後送の要あり。第4小隊、戦死者1、負傷者6、うち、3名重傷、後送の要あり、以上です。」 「第4小隊の被害がやや大きいのが気になるが……中隊の戦力はさほど低下していないな。大体に付いていた対空中隊の損害はどうなっている?」 「報告はまだ上がっては居ませんが……インベーダーの編隊が接近する頃には、全くと言って良いほど応戦がありませんでした。恐らくは……」 「全滅……か。」 クトインルはにべもなく答えた。 それを見た補充兵は驚いてしまった。 「ちゅ、中隊長殿……味方が全滅したのに、何も感じないのですか?」 「何も感じないだと。」 クトインルは補充兵に顔を向ける。彼としては軽い口調で言ったつもりだったが、補充兵は何故か縮み上がってしまっていた。 「い、いえ!失礼しました!!」 「?……何を急に畏まっとるんだ。」 「中隊長、中隊長……何気に怖い顔をしていますよ。」 メヒロンヘからそう指摘された彼は、いつの間にか、その新兵を睨みつけている事に(彼は別にそのつもりはなかった)気が付いた。 「いやぁ、すまんね。別に貴様を怒った訳では無いんだが。」 クトインルは笑顔を作り、新兵にそう言った。 「先程の貴様の問いに対する答えだが……別に、何も感じとらん訳ではないぞ。内心では辛いと思っている。だがな……俺達は余りにも多くの死を見過ぎて、 こんな事には慣れてしまったんだ。貴様が、俺を冷酷呼ばわりした事は仕方ない事だ。」 「い、いえ。自分は決して、そのような事は!」 「いや、構わんよ。むしろ……戦争と言う物は、冷酷に……感情を冷たくし、そして、あまり深く考えん方が良い。特に、俺達の様な最前線に立つ人間はな。 そうしなければ敵を撃ち殺す事は出来ないよ。」 「は、はぁ……」 「だから、これだけは覚えておいてくれ。俺は別に、味方の死を痛くないとは思っていない。むしろ、痛いと表現できなくなった、とな。」 「まっ、あんたもいずれは同じ様になるわよ。新兵さん?」 メヒロンヘが上目遣いになりながら新兵にそう語りかけた。 その直後、再び空襲警報のサイレンが響き渡った。 「おっと、早速第2波が来たぞ。」 「え、ええ!?もう別の敵が来たんですか!?」 新兵は、空襲の間の短さに仰天していた。 「……新米。ここは最前線だ。連合軍の連中が第2波、第3波と空襲部隊を送り出すのはいつもの事さ。」 「こんな事でいちいち驚いてちゃ、身が持たないよぉ?」 クトインルとメヒロンヘは、共にしたり顔で言い放った。 第2波は、米軍のB-24爆撃機とP-47戦闘機、計280機の戦爆連合編隊であり、これらは第58軍団の陣地を爆撃し、同地を守っていた 第255歩兵師団に少なからぬ打撃を与えていた。 1485年(1945年)11月13日 午後8時 レンベルリカ連邦共和国ジヴェスコルク 「それで、俺は高度300まで降下してから爆弾を落とした訳さ。その後、引き起こしをかけて機体を安定させたけど……やっぱ、スカイレイダーは ヘルダイバーよりも上等な飛行機だな。」 ジヴェスコルク軍港の外にあるバーで、友人と共にビールを飲んでいたカズヒロ・シマブクロ少尉(今年5月に昇進)は、愛機の素直な性能を自慢気に話す。 「俺も、ベアキャットに乗ってからはお前と同じように感じたよ。ヘルキャットも操縦し易い飛行機だったけど、ベアキャットはそれ以上さ。なにしろ、 垂直面の格闘性能だけじゃなく、水平面の旋回性能も段違いだ。」 「空手の試合で、いつも相手を翻弄させているお前にはぴったりじゃないか?ベアキャットは。」 「だな。いつか、グラマン社の技術者にドーナツでも送ってやろうかね。」 ケンショウ・ミヤザト少尉(今年5月に昇進)も微笑を浮かべながら、軽い冗談を言い放った。 「姉さん。ビールもう一杯。」 カズヒロは、空になったグラス指で小突きつつ、カウンターのスタッフに注文を取った。 「はいよ!」 髪をポニーテール状に結った女性スタッフは、張りの良い一声を発しながらビールの入ったグラスを置いた。 「ありがとう。そういえば、ベネイシアの姉さんは最近、よくここで働いてるけど、本業はどうした?」 ベネイシアと呼ばれたカウンターの女性スタッフは、カズヒロの問いに苦笑しながら答えた。 「いやぁ、ここ最近は害獣があまり出なくなってね。ハンター業だけじゃ収入が少ないから、こうしてしがないアルバイトをしてるの。毎度毎度、 下手な接客でゴメンね。」 「いやいや、そんな事無いさぁ。美人さんの注いでくれるビールは何杯飲んでも美味いよ。」 カズヒロのキザな言葉に、ベネイシアは満面の笑みを浮かべる。 「あら。流石はアメリカ海軍のパイロットさん。紳士ですねぇ。」 「姉さん。こいつの心は真っ黒だから、あまり信用しない方が良いよ。」 そこにケンショウがおどけた口ぶりで注意を促した。 「おぃ!いらん事言うな!」 カズヒロが鋭いツッコミを入れるが、ケンショウは気に留める事も無く、澄まし顔のままビールを飲んだ。 「失礼だが、隣に座ってもいいか?」 不意に、カズヒロは後ろから声を掛けられた。 「いいよいいよ。好きに座ったらいいさ。」 カズヒロは投げやりな口調で答えながら、後ろを振り返った。 そこには、大尉の階級章を付けた男と、中尉の階級章を付けた黒人士官が居た。 ウィングマークを付けている事から、カズヒロと同じく、母艦航空隊のパイロットだろう。 「し、失礼しました!!」 カズヒロは慌てて立ち上がり、2人の上官に敬礼する。 ケンショウも、何事かとばかりにゆっくり振り向いた後、ハッとなって席を立った。 「ハハハ。別に畏まらなくてもいいぜ。まっ、楽にしな。」 大尉はカズヒロのぞんざいな対応を何ら咎める事無く、2人に席に座るように促した。 カズヒロは、2人の上官が席に座るのを確認してから、自らも腰を下ろした。 「ヘイ!ビールを2つ頼む!」 「わかりましたぁ。ちょっと待ってて下さいね。」 カウンターのベネイシアが朗らかに答えてから、グラスにビールを注ぐ。 「はい。どうぞ~。」 程無くして、ビールが運ばれて来た。 それを受け取った大尉と中尉は、一口含む前にカズヒロ達に顔を向けた。 「どうだ?ここは同じ、母艦航空隊の仲間として一緒に乾杯しないか?」 「は……はい!それでは……」 カズヒロとケンショウは、おずおずとしながらも、片手にグラスを持った。 「乾杯!」 大尉が音頭を取り、4人はグラスを合わせた。 ビールを少しばかり飲んだ優男風(変装すれば女に見えそうだ)の大尉がカズヒロとケンショウに向けて口を開いた。 「ここで会ったのも縁だ。互いに自己紹介と行こうじゃないか。」 「はい。それでは、自分から……」 カズヒロはグラスを置き、自己紹介を始めた。 「自分はカズヒロ・シマブクロ少尉と申します。所属は空母イントレピッドのVB-12であります。」 「ケンショウ・ミヤザト少尉と申します。所属は同じく、イントレピッド。VF-12であります。」 「イントレピッドか。と言う事は、君達はTG38.3の所属になるのか。」 「はい。」 中尉の言葉に、カズヒロが答える。 TG38.3は、エセックス級空母3隻を主力に構成された空母機動部隊であり、イントレピッドは、その3隻のうちの1隻である。 「俺はリンゲ・レイノルズ大尉だ。空母エンタープライズの戦闘機隊中隊長をやっている。で、こいつはおれの相棒、フォレスト・ガラハー少尉だ。 俺の指揮下で戦闘機小隊を率いている。」 「エンタープライズ……あのビッグEのパイロットでありますか!?」 カズヒロは、驚きの余り声をあげてしまった。 「おう、そのビッグEのパイロットだぜ。大いに驚きな!」 ガラハーが威張りながら言って来るが、リンゲが彼の肩を叩いて注意する。 「コラ!大仰に威張ってんじゃねえ!」 「いや、冗談ですよ、冗談。」 ガラハーはわざとらしく答えてから、ビールを口に含んだ。 「うちの中尉さんが威張り散らして申し訳ないね。さて……この第3艦隊に配属されているとなると、お2人さんも実戦を経験して来たようだが…… いつから空母に乗っている?」 「43年の6月からです。初陣は9月のマルヒナス運河攻撃です。」 ケンショウが答える。 「それ以降は、地上支援に従事していましたが、昨年のレビリンイクル沖海戦と、今年1月のレーミア沖海戦には参加しています。」 「レビリンイクルとレーミアの海戦に参加しているとは……歴戦のパイロットだな。」 ケンショウの言葉に、リンゲはやはりかと思った。 最初、2人を見たリンゲは、その落ち着いた物腰や顔つきからして、それなりの経験を積んだベテランであると確信していた。 43年から空母に乗り、特に犠牲の多かったレビリンイクル沖海戦やレーミア沖海戦といった大海空戦を戦い抜いた腕は素直に評価出来ると、 リンゲとガラハーは思っていた。 「シマブクロ少尉は艦爆乗りとして、ミヤザト少尉は戦闘機乗りとして2年近く戦い抜いてきた事になりますね。」 「その間……2人も色々と体験してきただろう。楽しい事も、辛い事も……」 リンゲの発する言葉に、2人は一様に頷く。 「大尉のおっしゃる通りです。自分なんかは、戦友の相次ぐ戦死に、一時は心が折れかけましたが……周りの人達が支えてくれたお陰で、何とか前線に 踏みとどまる事が出来ました。」 カズヒロがしみじみとした表情でリンゲに言う。 「みんなも似たような事は経験している。どんなに腕が良くても、天才と呼ばれようとも、それは避けては通れん道だ。」 リンゲも感傷に耽りながら、ビールを飲んで行く。 「……そう言えば、気になった事があるんですが。」 ケンショウはここぞとばかりに話題を変えた。 「自分達はずっと、ここで訓練を行っておりますが……我々はいつ、どこに向けて出撃するんでしょうか?」 リンゲは、内心ではまたかと思いつつも、おどけた表情で肩を竦めた。 「さあね。俺もわからんよ。」 「やはり、ですか………」 カズヒロは、不満顔でビールを飲む。 「太平洋戦線の第5艦隊は、近々シェルフィクル攻撃を行うらしいと言われています。それなのに、第3艦隊が後方で訓練ばっかり、というのは おかしいと思いませんか?」 ケンショウも、第3艦隊司令部のやり方を快く思っていないのか、苛立ちを含んだ口調で言い放つ。 「そもそも、自分達は充分に経験を積み、新型機の慣熟も既に終わっています。確かに、訓練は必要だとは思いますが……このまま待機が続くのも考え物ですよ。」 「そうです!太平洋戦線では、1隻でも多くの正規空母が必要だと言うのに……」 リンゲは、血気に逸る2人の少尉を見つめながら、クスリと笑った。 「……な、何かまずい事でも言ってしまいましたか?」 「ん?ああ、別にそうじゃないぞ、シマブクロ少尉。」 リンゲの反応に戸惑うカズヒロに対して、リンゲは片手を振りながら否定した。 「実を言うとね、うちの部下達も君と似たような事を何度も言うんだよ。出撃はまだですか?次はどこを攻撃するんですか?とね。俺も、出撃がいつで、 艦隊がどこに行くかは全く分からんから、余計な事を考えずに目の前の事に集中しろ!と、どやしつけるんだがね。」 「しかし、そろそろ上もハッキリしてくれんと困りますね。抑え役になるこっちの事も考えて欲しい物です。」 ガラハーが苦笑しながらリンゲに言って来る。 「その通りだな。まっ、いずれはここから動く時が来る。それだけは、ほぼ確実だろう。」 リンゲは、自分に言い聞かせるようにそう断言した。 「え~。それだと、ちょっと困るわねぇ。」 ふと、会話を聞いていたベネイシアが、やや困り顔で言って来た。 「うん?どうしてだい?」 「だって……せっかくの金ヅルが居なくなってしまうんですもの。」 「おいおいおい、そのストレート過ぎる表現はどうかと思うぞ?」 リンゲが、やや体を引かせながらベネイシアに言う。 「ああ、ごめんなさいね。つい、本音が。」 「本音かよ。」 カズヒロとケンショウが苦笑しながら突っ込んだ。 「あと……夜のお相手が減ってしまうのも、問題かなぁ。」 ベネイシアはそう言いながら、自らのボディラインを見せ付けるかのような扇情的なポーズを取る。 「おあいにく様、合衆国海軍は、夫さんのいるレディーはあまり好まないんでね。夜のお供は、いつもお付き合いしている彼で我慢してやってくれ。 でないと、本命さんの彼が泣いちまうぜ?」 リンゲの何気無い一言に、ベネイシアは顔を膨らませた。 「何よ!ケチ!!」 その一言に、4人は失笑を浮かべた。 平穏な一日はあっという間に過ぎ去り、4人はほろ酔い気分で母艦に戻って行った。 第3艦隊を覆い始めていたゆるい空気は、翌日、一変する事になるが、この時は、誰もが明日の予定を難無くこなす事ばかりに思いを馳せていた。 11月14日 午前9時 ジヴェスコルク沖北西20マイル地点 この日の早朝に出港した第38任務部隊第3任務群は、一路、進出予定点であるオレンジ点まで、18ノットの速力で航行を続けていた。 TG38.3旗艦である空母イントレピッドの艦橋では、群司令であるクリフトン・スプレイグ少将が司令官席に座ったまま、通信参謀から今しがた 入ったばかりの通信文を受け取り、それに目を通していた。 「………確かに、艦隊司令部から送られて来たのだな?」 「はい。」 通信参謀は即答しながら頷いた。 「宜しい。では、命令通りに動くとしよう。」 スプレイグ少将は、心中で遂に来たかと呟きつつ、口から命令を発した。 「各艦に伝達。針路変更!艦隊各艦は、針路360度に変針せよ!」 「針路変更、新針路360度。アイアイサー。」 命令は即座に全艦に伝わった。 TG38.3を構成する全艦は、統制の取れた動きで一斉に針路を変えて行く。 輪形陣の中央に位置するエセックス、イントレピッド、ボクサーが左に大きく転舵し、それに習うかのように、外周を固める巡洋戦艦アラスカ、 コンステレーション以下の護衛艦が艦の向きを変えて行く。 程無くして、針路の変更を終えた、大小35隻の艦艇は、18ノットの速度を保ったまま北へ向かって行った。 「宛 第38任務部隊第3任務群指揮官 発 第3艦隊司令部 TG38.3は、全艦をもってダッチハーバーへ急行せよ。尚、TG38.1, TG38.2は、明後日以内に出港する見込みなり」
https://w.atwiki.jp/storyteller/pages/1275.html
Innocent Noise part44-167~180 167 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 13 08 ID G2h6yef1P 酷く間が空きましたがサイコシリーズの続きを 以降の話は今の携帯が対応してませんので誰かお願いします…… ※Sinまでのあらすじ把握推奨。 ◆登場人物 三島遥 警部補。未来を視る力を持つ 相田衛 史学士。遥の幼なじみ 羽生光治 警部。遥の同期で上司 鳥越潤一 警視正。遥の上司。衛の父 高科満 東進大研究員。日枝図書館の被害者 井出昇平 警備員。高科の発見者 三田村 警備員。同上 深町信也 東進大院生。閲覧室利用者 笹本聖子 陽明大院生。同上 水沼新一 GSバイト。日比谷公園の自殺者 立木君江 食堂給仕。水沼の自殺の目撃者。 遠藤恵子 水沼の恋人。 御神楽要 氷室神社神主。遺体発見者。 牧原圭吾 朝霞医大学生。 峰村 朝霞医大生。牧原の友人。 羽崎静 ルポライター。関西弁。 内藤凛 朝霞医大OB。 宇都木桂 弁護士。 三笠 MMORPG管理者。 南雲麗香 朝霞高校2年。 168 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 15 33 ID G2h6yef1P ◆Day1 5/18 16 00―東京拘置所 羽生に釘を刺されながら遥が扉を潜るとその向こうには衛が居た。 機嫌の悪い遥を前に衛は自分が日枝図書館で起きた殺人事件の容疑者だと淡々と答えた。 日中には検察行き―そうなれば有罪は確定も同然という状況に遥は声を荒げるが、衛はあと27時間もあると余裕だ。 衛は遥が現場に足を運んだ上で衛を頼って着たと察し、捜査状況を話すよう促した。 ―4時間前 12 00―日枝図書館 遥は捜査から外されているにも関わらず現場にいた。死因は本で殴られた事による脳挫傷。 警備員2名が前日19 30の巡回時に発見。凶器は拭き取られ被害者以外の指紋はない。 閲覧室への出入はIDカードにより記録されており、カード無しでは入室出来ない。 容疑者は隣の閲覧室を利用していた衛。動機は今の所無し。 現場は建物の6Fでカーテンのある窓は開かない。卓上には凶器の哲学書が広げられていた。 検死による死亡推定時刻は18 00~19 00。被害者は女癖が悪く評判も良くない。 カードの履歴によると18 15に途中退館し18 45に再入館した形跡があった。 第一発見者の井出はもう暑い初夏の時分に几帳面に手袋をしていた。 18 30の一度目の巡回で消えていた灯りが点いていた為、不審に思い、机に臥せている被害者を発見した。 もう一人の発見者である三田村は、眠れず煽ったという前日の酒が残っていた。 巡回は二人組で扉の窓から確認するという。時刻は井出に呼ばれ、被害者を発見した時に確認した為間違いない。 衛の居た部屋は現場の隣室、その隣が深町、廊下を挟んで現場の反対が笹本。 部屋の作りはどれも同じ正方形。覗き窓からは机周辺がはっきり見えた。 衛の部屋の卓上には魔女狩りや拷問に関する本が広げられていた。 深町は14 00~18 02にレポート作成の為利用。被害者が同窓とは知らなかった。 笹本は15 30~17 30に学位論文作成の為利用。被害者と面識があった。 現場に戻った遥はそこだけ机がずれている事に気づく。捜査に行き詰まった遥は未来視を使用―トイレで館長と話す遥。 トイレのゴミ箱から糸屑の付いたガムテープを発見する。鏡は四隅をガムテープで止められていた。 三田村によると一昨日からこの状態だという。 169 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 18 55 ID G2h6yef1P 16 25―東京拘置所 話を聞いた衛は安易に未来視を使った事を咎めるが、遥から得た情報から真相を導く。 犯行は衝動的、発見が早かった事から死亡推定時刻に間違いはない。 それを18 30~19 00だと答える遥に衛は警備の証言による犯行時間だと正す。 部屋が正方形であることから、鏡を用い机をずらしカーテンを壁に貼れば被害者を隠す事が出来る。 被害者の出入りの記録はカードを拝借する事で可能。導ける真犯人は―井出。 三田村はアリバイを危うくする「井手に呼ばれた」という発言をした事から犯人ではない。 そして被害者の物以外出なかった指紋。拭き取られたのではなく指紋を残さない―手袋をしていた証拠。 物証が無いと詰め寄る遥に衛はトイレで見つけたガムテープに指紋のある可能を提示、もし無くてもカマをかけられる。 結局独りで解決してしまった事に悪態をつく遥に、衛は未来視の謎を口にする―何故そんな光景が見えたのか。 衛を遮るように現れた羽生。面会時間の超過を咎められるかと身構えた遥に羽生は井手がトイレで首を吊ったと告げる。 遺書に残された自白。2人の関係を茶化す羽生に衛は自殺の理由を問うがノイローゼだろうと返された。 「心が蝕まれる」と言う文面を気にする衛。その言葉に感じた遥の嫌な予感は翌朝現実となって現れた。 日比谷公園で見つかった自殺体―これが連続自殺事件の始まりに過ぎない事を、遥はまだ知らない。 ***** 黒いワゴン車と入れ替わりに入ってきた白い車。紫のスーツの女性は誘導通り車を停め―何かをひっかけたような音。 人を待つ彼女は電話口で宇津木と名乗る―電話の相手はその待ち人。所在を問うたその瞬間、車は爆発炎上した。 悲鳴と悪臭に包まれて炎上したその車の事は、翌朝千代田区の女弁護士の死亡事故として小さく紙面に載っただけだった。 ◆Day2 5/19 10 00-日比谷公園 検察への昨日の捜査説明に手間取った遥に羽生が悪態をつく。面倒を押し付けたのが見え見えで遥は噛みついた。 被害者の水沼は大きな銀杏にロープをかけて首を吊っていた。所持品はロープ・ハサミ・財布で中身は免許と2064円。 ハサミに指紋は無く、ロープの切断面と一致した。死亡推定時刻は今朝8時で目撃証言と一致している。 死因は頸部骨折ではなく窒息死で、死ぬまでに数分を要する。立木はその瞬間を2階への階段の踊場から目撃した。 170 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 22 00 ID G2h6yef1P 遺書は恵子という女性に宛てた物で彼女を殺してしまいそうで怖いという内容――昨日の井出の遺書との妙な符合。 水沼に井出との接点は無く、恵子という人物も捜査線上には浮かんでいない。 羽生は首を吊るには一苦労なこの巨木には、首かけ銀杏という曰く付きの字があると言った。 人ごみの中に視線を感じた遥。視線の主らしき白銀のバイクスーツの女性は逃げるように立ち去った。 茂みから携帯を発見する。被害者のものだろうか? 自殺が濃厚だが遺書の文面が気にかかる。羽生にそう報告すると、先日青森まで勝手に飛んだ事(Sin参照)を咎められながらも、 井出の動機の裏付けと絡めてなら、と許可が出た。下心を疑う遥に羽生はどうせ遥は再捜査で減給だと毒づいた。 13 23―日枝図書館 入口で駐車場側から飛び出して着た男とぶつかった遥。男は考え事をしていたと詫び、遥の擦り傷にハンカチを巻く。 久々に女性扱いされ、遥は自分の男運の無さを改めて嘆く―研究室で嚔をする衛。 落ちていた銀貨のペンダント―先程の男が落とした物だろうか? 井出が死んでいた個室には、くっきりと足形が残っていた。気付けなかったことを悔やむ遥。 館長によると遺体発見は全ての捜査員が引き上げた15 45の直後―16 00前。潰してしまうべきだったと言う館長。 問い詰める遥に館長はこの棟が以前戦犯の収容所だったと言う。故に尽きない怪談の類と建物の妙な造り。 偶然と笑う遥は井出の交友を問うが、館長は三田村に聞けと言った。 三田村を訪ね駐車場にやってきた遥。最近の井出に変わった様子は無いが、ボーっとしている事が増えたという。 交友関係は知らないがよく携帯をいじっていたらしい。井出は臆病で動機は心当たりも無いという。 壁際に供えられた花束に気付く遥。三田村によると一年程前にここで車の事故があったと井手に聞いたという。 嫌な予感に躊躇いつつも未来視を使う遥―逃げるバイクスーツの女が呟く「南と見せて北に逃げる」と言う言葉。 捜査を切り上げた遥は、問題に頻繁に巻き込まれる衛のクビを心配し大学へと足を向けた。 171 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 24 34 ID G2h6yef1P 17 14―立帝大学 乱暴に開かれた扉に苦情を述べる衛。文句しか言わない衛に遥は心配してやったのにとキレる。 心配される覚えのない衛。遥が関わった時点で教授は諦めたらしい。寧ろ遥のクビを心配する。 返す言葉の無い遥は怒りに任せて帰ろうとするが、呼び止めた衛は謝罪ではなく捜査の進捗を問うた。 普段乗り気ではない衛のその態度に遥は疑問を持つが、気になる事があるという衛に協力を条件に情報を開示する事に。 ついでに足の傷を見せつけるが心配するどころか女性扱いされて舞い上がった事まで言い当てられて遥はむっとした。 改めて2通の遺書を提示する遥。衛もその奇妙な符合を気にする。 今の所互いに接点がない事、自殺に疑う余地は無い事―筆跡の一致、カードの履歴、館長のアリバイ、目撃者。 妙に事件を気にする衛。気にかけていたのは青森で夜斗―否、ディッシュが口にした「他人の体」「同調」と言う言葉。 考え込む衛を遥は心配する。隠し事を疑う遥を軽くいなし、衛は話始める。 遺書は死者の残した最後のシグナル。綴られている筈の想い。 衛はドッペルゲンガーについて語る。もう一人の自分に殺されるという伝承―水沼の遺書との符合。時にそれは二重人格を示す。 フィクションじゃあるまいし、と言う遥に衛は海外での症例や当人が強く思い込んでしまうケースを提示。 遥の力自体がよっぽどフィクションだという衛に返す言葉は無かった。 情報も少なく自殺に流行りがある事から衛は現状の推察は早計と判断。 遥に二人に共通して消息の掴めない日が無いか調べて欲しいと依頼しようとした瞬間、遥の携帯に着信が入る。 氷室神社で見つかった首吊り遺体。事件の関連を思い浮かべた遥を衛は咎めた。 ここ1ヶ月の彼らの行動の調査を依頼する衛に別れを告げ遥は現場へと向かった。 19 47―氷室神社 夜の境内は不気味な雰囲気が漂っていた。発見したのは神主で時刻は18 30。身元は今の所不明。 所持していた携帯は壊れていたが所有者を照会中。死亡推定時刻は18 00~18 30。死因は又も頸部骨折ではなく窒息。 鑑識によると勢いを着けず踏み切った場合に見られる傾向で、躊躇いがある場合に多いという。 井手の検死も行ったという鑑識官によると、彼の死因もまた窒息だったという。重なる死因。 172 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 30 16 ID G2h6yef1P 争った痕跡や外傷が無く、薬物の類も検出されていないことから自殺と見られるが、遺書等は見つかっていない。 神主の御神楽によると、飼い犬の太郎丸が吠えた為木刀を手に飛び出した所、鳥居に下がった被害者を発見したという。 遺体は中肉中背二十代前半の男性。紅白の縄が傍らに置かれていた。本殿の物らしく、衝動的な自殺を思わせた。 所持品の煙草は軽めの量販品で残り数本、ライターは安物でオイルがきれかけている。 副道の奥の社には供物が地面に直接供えられていた。鳥居の横柱には擦ったような跡があるが踏み台が見当たらない。 警官は被害者が蹴飛ばしたのではないかと言い、事実離れた副道の脇から供物を供える高杯が見つかった。 鑑識結果と踏み台のズレは気になるが、今の所死因以外の関連は無い。考え込む遥の目に今朝の女性が目に入る。 目が合った瞬間野次馬の中から飛び出した女性をとっさに遥は追う。車に遮られた瞬間、遥は未来視の光景を思い出す。 似たような通りで見失うよりは先回り!遥は北西の開けた十字路で女性を待った。 (ヒントを見ていない場合見失う) 現れた女性は遥に気付かず捲かれた事をバカにする。姿を見せ詰め寄ると観念して羽崎静、ルポライターだと名乗った。 愛車の赤いバイクを人質に取られたような形になり渋々話し始める静。頼まれてある事故について調べているらしい。 逃げた理由を問うと、どうやら羽生から次邪魔したら逮捕だと脅されたらしい。遥は名乗りそのするつもりは無いと告げた。 静が調べている事故について訪ね、水沼と先程の被害者の関係を話し始めた時、遥の携帯が鳴る。 被害者の身元が判明し急いで戻る遥。連絡先として静から名刺を受け取った。静は連絡は午後にしてくれと言った。 21 32―氷室神社 被害者は近くに住む牧原という学生と判明。警官に頼まれ遥は遺族への説明に向かう。 扉を開けた遥は目を疑う―スプラッタ映画のように緋に染まった玄関で―頭を割られた二つの遺体が血溜りに浮かんでいた… ◆Day3 5/20 10 02―捜査本部 鳥越に促され、遥は昨夜の経緯を説明する。被害者は牧原の両親で死因は撲殺。 鳥越は犯人が牧原の可能性を示唆し、それまでの遺書の内容に触れる。遥の行動力を皮肉混じりに評価しつつ報告の遅れに釘を刺した。 山積みの調書に溜め息をつきつつ、遥は捜査資料に手を伸ばす。 173 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 33 46 ID G2h6yef1P 井手は借金の為2年前に離婚しており、図書館勤務は1年前から。所持品は財布と1059円、遺書と携帯のみ。 通話記録は会社のみでメールの履歴は無い。 水沼の死亡時刻は07 55~08 05。同棲相手は判明。勤務1年半で他に人付き合いは無い。 拾った携帯を提出し忘れていた遥は、水沼の物と判明してから混ぜておく事に決めた。 牧原は両親と同居で一浪。携帯の大量の通信履歴が添えられており、手配した鳥越からの皮肉が飛んだ。 鳥越に羽生が担当の筈の井手の事件調書が請求されていることを突っ込まれ、遥は逃げるように現場に向かう。 11 18―牧原宅 惨状と化した現場に警官は感情を露わにする。両親の死因は後頭部殴打による脳挫傷。 凶器は階段から見つかった金属バットで、牧原の指紋だけが残っていた―やはり犯人は……? 白線が象るは廊下に俯せに倒れた父親、助けを求めるように階段に倒れた母親。潰れた時計の示す犯行時刻は17 55。 動機を求め遥は2Fへ。遺書の類は無かったようだ。最新ゲームと漫画が溢れた部屋は医大生らしさの欠片も無い。 PCの電源は入っていたがロックされていて確認出来ない。手がかりを求め昼休みになった大学へ向かう。 12 30―朝霞医大 牧原の知人を探す遥は昨朝の男を見付ける。ハンカチの礼を述べ、拾ったペンダントを差し出す。 それはとても大切な物だったらしく、礼にと遥を構内の喫茶店へと誘った。 (拾っていなければ再会しない) 男は内藤凛と名乗り、女性のような名前だと自嘲した。遥も自己紹介するが可愛い名と誉められ赤面する。 内藤はここのOBで必要な資料を取りに来たと言う。医者ではなくペースメーカーの製造をしているそうだ。 後輩かと問う内藤に遥は調べ物にきただけだと否定した。見つめられ戸惑う遥。遥はペンダントの持ち主に似ているらしい。 内藤にとって姉のような―そしてもう鬼籍に入ってしまった女性。湿っぽい話をした事を詫びる内藤。 礼を口実に話がしたかっただけなのかもと言われ戸惑う遥。アラームに助けられて逃げるようにその場を去る。 内藤の言葉に動揺する自分を一喝し、捜査を再開する。 牧原の知人である峰村にたどり着くが、特に変わった様子は無く、昨日も夕方までゲームをしていたと言う。 時刻は18時前―犯行の直前。携帯のMMORPGを一緒にやっていた牧原がキャラを放置して急に落ちたらしい。 174 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 36 17 ID G2h6yef1P キャラは端末に戻さなければ消えてしまう、牧原はLeomaと名付けたキャラを大切に育てていたらしい。 14 25―牧原宅 牧原のPCにダメ元でパスを入力―LEOMA―ロックが解除された。いかがわしいゲームに紛れ日記らしきものを見付ける。 「5/18―ニュースであの人の殺人の末の自殺を知る。人を殺めた人間はまた…だとすれば…いや、アレは事故だ。 昨日手に入れたこれを見せる時に、レイカとシンにも話をしてみよう。何だか頭がボーっとする。明日はさぼろう」 日付からすると記事は井出の事件について。2人には面識があったのか? 静が水沼と牧原が関わった事故について口にしていた事を思い出し、彼女に連絡を取ることにした。 電話口の緊張感の無いやり取りに脱力しつつ、静がいるという赤坂駅で落ち合うことに。 (名刺と爆発事故の知識がなければ接触不能) 静は構内の喫茶店で待っていた。遅れた事を詫びる遥に空になった大量のパフェを示した。 関西人はちゃっかりしていると呆れる遥に、静は厳密に関西生まれではなく言葉も仕草も混じっていると言った。 急かすように話を促す。静が調べているのは昨年5/21に日枝図書館で起きた爆発事故。 事故を起こしたのは宇都木という弁護士で人に会う為に外出していたらしい。当時、原因は車の不良とされていた。 オイル漏れにエンジンを吹かした為爆発、メーカーも酷く叩かれた。遥は事件と2人の関係を問う。 水沼は参考人として喚ばれていた。直前まで車を止めていた彼に何か不審物がないか確認したらしい。 牧原は目撃者としてインタビューを受け、また事故の写真を新聞社に売りつけていた。 そして現場に勤務していた井出。出来過ぎた符合。静が掴んでいるのはここまでらしい。 女の苦労を愚痴りつつ、真相を掴んだら連絡する事を条件に、静から情報提供の約束を取り付ける。 静がここで何をしていたか聞くと、宇都木が担当していた事件を調べていたと言う。痴漢の弁護だったらしい。 静に別れを告げ、衛に頼まれた彼らの行動履歴を確認に向かう。 図書館長によると井出に欠勤等はなく、寧ろシフトを詰めていたようだ。三田村曰く井出はPCは殆ど使えなかったらしい。 峰村によると牧村は単位の為にここ最近は殆ど休まず出席していたようだ。 捜査本部に戻ると水沼の恋人が着ていた。恵子はノイローゼの原因に心当たりは無いと言う。 175 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 38 34 ID G2h6yef1P 当日は頭がボーっとすると言っていたようだが、遅くまで携帯でゲームをしていたせいではないかと言った。 水沼も行動が掴めない日は無かったようだ。嫌な予感がすると言う鳥越に単独行動について釘を刺される。 羽生と嫌みの応酬を交わし、遥は衛の所に報告に向かう。 18 12―立帝大学 珍しく主のいない研究室。遥はこっそりPCを覗き見る。故人の母kirika―NG。好んで飲むmocha―NG。…もしかして? haruk…戻った衛の一喝で入力は遮られる。笑って誤魔化す遥に衛は呆れた表情を浮かべた。 牧原も含め所在が掴めない事は無かったと言う遥。考え込む衛に先日の館の件かと問う。 驚く衛に付き合いの長さを口にし、奇妙な事件だが他人に意識を転送するだなんて現実離れしてるという遥。 衛は言う―現実を非現実が浸食している。考え過ぎる衛を咎めると、その脳天気さが羨ましいと皮肉が返った。 改めて事件を整理する。問題点は共通する死因と動機の無さ。 (静と接触している場合のみ)そして一年前の事件―その概要を覚えていた衛に呆れる遥。 牧原の日記に井出との面識を疑える事に触れると衛は彼らの相互連絡の形跡を確認する。 そんな物は無いと口にした遥にさらに念を押す。そういえば―遥はゲーム内のチャットに思い当たった。 水沼の携帯を取り出す遥に証拠品の持ち出しを咎めるが、始末書ものでもこれ以上減給しようが無いとお首にもかけない。 データフォルダにXXXXXXというファイルを見つけるが画面には何も出ない。遥は徐に耳を近づけた。 虚ろな目で立ち尽くす遥に声をかける衛―刹那、本の山に投げ飛ばされる。 音に思い当たった衛に正気を失った遥が咆哮と共に襲いかかる。間一髪かわすも攻撃は止まない。 本の山を振り払い衛を掴み上げ何度も本棚へとぶち当てる。反動を利用して衛は遥を抱き締め、呼びかけた。 衛の名を呼ぶと崩れ落ちるように倒れ込んだ。 ◆Day4―5/21 蝉の声。夏の残照。震える身は汗でぐっしょりと濡れている。気だるい四肢に吹く風が夏だというのに酷く肌寒い。 記憶を辿る。確か夏休みの宿題で衛と蝉を取りにきていた。そして折れた枝ごと池に落ちて―― ―懐かしい夢をみた。目覚めた遥は衛のベッドに寝ていることに気付く。見回すと衛は椅子の上で力尽きていた。 また無理をして―頬に伸ばした手が掴まれ押し倒される。見当違いの抗議をする遥を見て、衛は遥を解放した。 176 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 42 00 ID G2h6yef1P 10 21―立帝大学 純粋な雑音―脳にあり感情を司る松果体に超短波をあてる事で獣と化す。衛を傷付けた記憶のない遥。 三人の自殺の理由―もう一人の自分。死因が一致したのは極度の興奮の為筋肉が緊張していて頸椎が折れなかったから。 一連の自殺は巧妙に仕組まれた遠隔殺人だった。体調を問う衛に大したこと無いと返す遙。 被害者と同じ状態なのだと声を荒げる衛に、だとしたら治せるのは犯人だけだと反論する。 諦めた衛は監督役に同行を申し出る。素直に心配出来ない衛に呆れる遥。 衛が調べておいたゲームの開発元へと向かった 12 08―某ゲーム会社 管理者の三笠に話を聞く。VF2は4人でパーティーを組む対戦型MMORPG。トラップ等を仕掛け相手チームを全滅させる。 三笠はチートアプリに頭を悩ませていた。データを自由に書き換えられる物で最近出回りだしたらしい。 衛がその名前を訪ねると、一番出回っているのはクロス6というX6つの物だという―遥が起動させたものと同じ。 牧原のキャラクターについて調べる。ショウ・シン・レイカというキャラと組んでいた事が解る。 登録された電話番号からショウ=井出、シン=水沼と判明。レイカを保護するため電話をかけた。 繋がらない電話。焦る遥に衛はレイカの名前と住所を割り出すよう指示。そんな暇はないと叫ぶ遥に衛は諫める。 手がかり無しにどうやって探す?彼らに他の接点は無いのか? ○静と接触出来ていない だが、そんなものには思い当たらない。やむなく電話会社に確認を取る遥。 13 39―某ゲーム会社 漸く届いた4人目の情報―南雲麗香。遥は急ぎ彼女の住所へ車を走らせる。しかし、その道中に齎された報。 麗香は図書館で犯人と思われる男と車内で爆死。被害者の繋がりを訴えたが、犯人無き今謎の殆どが闇の中。 迷宮入りする事件。全ては遅すぎた。 5/29―16 24―立帝大学 悔やむ遥と慰める衛。謎の多い事件、惜しむらくは手がかりが少なすぎたこと。 だが、それは次に生かせばいい。 その事より、と衛は遥の体調を心配した。 ―Unfinished 177 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 47 02 ID GSxaOY9iO ○静とコンタクトを取っている 被害者のもう一つの接点―一年前の事件の関係者。電話に出た静にレイカの番号を告げ関係者と照合してもらう。 流石に番号だけでは難しいという静にレイカという名を告げる。南雲麗香―痴漢事件の被害者との名前の一致。 静に住所と顔写真をメールしてもらう。可能性は強いが彼女がレイカである確証はない。 嫌な予感。電話会社に照会していてはきっと間に合わない、衛の制止を振り切って遥は未来視を使った。 ○未来視を3回以上使用 未来視が見せたのは意外な人物だった。遥はそのまま意識を失い… 三日後。漸く意識を取り戻した時には、既に事件は終わりを迎えていた。 麗香は図書館で焼死体で見つかり、一連の事件は証拠不十分で自殺で処理された。 衛の忠告を無視した事を悔やみながら、遥は今日も捜査に奔走する。もう一人の自分に怯えながら… ―BAD END(Unfinished2) ○未来視の使用が2回以下 最後の場所―日枝図書館の駐車場。衛に念の為彼女の家をあたるよう指示し、遥はその場所へと駆け出す。 あの様子なら暫くは大丈夫、そう判断した衛は三笠に一年前のログを確認するよう求めた。 16 20―日枝図書館 閉ざされた門、掲示板を確認すると今日は改修の為閉館のようだ。フライングかと疑う遥の耳に女性の悲鳴が届いた。 急いで声のした駐車場へ向かう。人違いだと騒ぐ麗香。 ○内藤と再会していない 構えた銃口の先には先日図書館でぶつかった男がいた。遥の素性に驚く男。麗香は助けを求めて喚く。 首筋にあてがわれたナイフ。男は彼らが桂を殺したと言った。桂―静の話していた事故で死んだ弁護士。 男はそれが事故ではなく仕組まれた殺人だと言う。喚く麗香を車に押し込むと給油口の蓋を開けた。 それで彼女は救われない。遥の説得は男に届かない。火を付けたライターが給油口に投げ込まれ―遥の悲痛な叫び。 上がる爆炎。炎の袂で男は天を仰ぐように燃えていた。駆けつけた衛は動機を突き止めていたが、既に遅い。 彼をつなぎ止める何かがあればあるいは―だがそれも詮無き事。no pain no gain―この痛みを無駄にするなと衛は言った。 ―BAD END 178 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 49 30 ID GSxaOY9iO ○内藤と再会している 遥の銃口の先にいたのは―内藤。遥の素性に絶句する内藤。構えたナイフは麗香の首筋に添えられれていた。 説得する遥。内藤は彼女達が桂を殺したという。宇都木桂―一年前の事故の被害者。 あれは事故じゃないと内藤はいう。騒ぐ麗香に手をかけようとした時、かけつけた衛がそれが殺人教唆であったと告げた。 何故ここにいるのかと問う遥に、未来視など使わなくても現場には辿り着けると答える。特に怨恨による事件は。 制止する内藤に衛は自分は刑事ではないし止める気も無いと告げる。あの事故は彼女達には只のゲームに過ぎなかった。 衛はログに残っていた犯行計画を語り出す。 一年前―日枝図書館 水沼は車止めに細い杭を打ち込むと、乗ってきた黒いワゴンを走らせた。入れ替わりに入ってきたのは桂の車。 井出がそれを奥の駐車場に誘導する。彼女が人を待つ間に水沼の仕掛けで漏れ出したオイルが広がった。 嘘であってほしい。そう願う彼女の元に着信が入る。彼女が電話に出た瞬間、崖上から吸いかけの煙草が投げられた。 炎上する車。叫ぶ人々。牧原は呟く―話が違う―中には誰も居ない筈だ― 個々の作業が殺人に直結しない、罪の意識を持たない計画。だが内藤はそれを知ってしまった。 酔った勢いで牧原が話した武勇伝―罪にならない人の殺し方。彼らに罪の意識を教える為にあのアプリを作った。 自分は関係ないと叫ぶ麗香に衛は痴漢が作られた冤罪であったこと、桂がそれに気付いたのではと問う。 証拠が無いと言う麗香に彼女がかけた電話のログがあると言う。麗香はあれは公衆からかけたのだと宣言し― 口を滑らせた麗香は桂が既に館内に居ると勘違いしただけだと主張した。ナイフを振り上げる内藤。 尚も制止する遥に問いかける。彼らの非道を聞いてなぜ?これ以上罪を重ねてほしくない、そう遥は答えた。 遥には理不尽に大切な者を奪われた者の痛みは分からない、そう主張する内藤に無関係な高科や牧原の両親の命を奪った事実を突きつける。 復讐は内藤のエゴ、彼女はそんなもの望んでいない。そんな内藤の姿なんて― そして遥には解る、同じように理不尽に父親を失ったその痛みが。復讐になんて逃げないで、そう遥は訴えた。 その姿が桂と重なる。泣き崩れた内藤の絶叫が、泣き出しそうな初夏の空に響いた。 179 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 02 53 50 ID GSxaOY9iO *epilogue* 遥は単独行動を羽生に咎められていた―それは全部もってかれたやっかみも多分に含まれていたが― 矛先は御し切れなかった衛にも向かうが、20年来の付き合いで既に匙を投げたと言い、それは上司の役目だと投げ返す。 好き放題の男性陣に遥は拳を震わせた。 連行される内藤に遥は声をかける。桂が一番望んでいたのは内藤の幸せだ、と。 内藤は礼を述べると、預かって欲しいと彼女の形見を差し出した。遥がそれを拾ったのはきっと偶然じゃない。 きっと彼女が内藤を止める為にそうしたのだと、だから戻ってくるまで持っていてほしい。 告白ともとれる台詞に戸惑う遥と咳払いを挟む衛。内藤は慌てて償う事への誓いだと訂正する。 遥は衛のせいにしようとするが、赤い頬を指摘され、暑さを口実に顔を洗ってくると逃げ出した。 遥が居なくなった所で改めて衛は内藤に確認する―あのアプリについて。 遥が開いてしまった件については、初回にしか作用が無い事、強いショックはあるが後遺症は無いことを確認。 元データは友人に貰ったFDでその死を期に処分した為残っていない。友人の名は―鴻神夜斗。 戻った遥は険しい表情に気付くが只のヤキモチと勘違いする。 羽生に連行される内藤。口汚く罵る麗香に呆れる遥。衛は自主を勧めるがあの場で話を合わせただけだと歯牙にもかけない。 遥は憤るが衛に鳥越が動いていない以上今はまだ手出しできる段階ではないと制止される。 内藤はもういいと言った。麗香が悔いる事が無い限りきっと裁かれる。 笑い飛ばす麗香に苦い想いを噛み締める遥。しかし事件は終わらなかった。 遥は悔やむ。彼がこれを預けた事、残した言葉の真意に気付けなかった事。 3日後―5/24 10 15―赤坂駅 遥は自殺による人身事故の捜査を行っていた。被害者はまだ女子高生。 所持品はMDに化粧ポーチに避妊具…教材の無い中身に呆れつつ鞄の底からパスケースを発見する。被害者は― 14 30―立帝大学 してやられた、それが衛の感想だった。 彼が獄中で自殺した報は直ぐに入った。看守が見つけた時点で首を吊っており自殺に間違いはない。 救えなかった、変えらなかった運命。彼が預けた物も償いたいといった言葉も嘘だったのか。 それは分からないが、遥に会えた事で既に救われていたのではと衛は話す。 既に汚れていた自分は無理でも、せめてペンダントだけは彼女の元に。 180 :InnocentNoise:2009/02/22(日) 03 01 19 ID GSxaOY9iO 死海文書の一節 ガブリエルの角笛が吹き鳴らされる時、罪深き盲目の羊達は行く当ても知らず、ただその音に従って絶望に堕ち… 捕らわれるべき者は捕らわれて行き、剣で殺される者は剣で殺される。 殺し殺される事はかくも業の深い行為なのだと、人は皆罪深き盲目の羊なのだと、衛は言った。 ならば、遥の手もまた血にまみれている―金島と鴻神の血で。どう償えばいい? 訪ねる遥にそれは自分の罪でもあると衛は答える。独りで背負わないで。 遥は少しの間衛の胸を借りた。 泣き出しそうな空の下、誰も居ない駐車場を見下ろす女。 頼まれたヤマが終わった―夜斗に向け静は独り呟いた。 ―To be contineud…… ***** 以上です 連投引っかかったので途中からID変わりましたがご容赦 でも続き書けないんで(ry 死海文書はキャリアによってはもう少し長いようなので以下に引用 ガブリエルの角笛が吹き鳴らされる時、罪深き盲目の羊達は行く当ても知らず、ただその音に従って絶望に墜ちるだろう。 耳ある者は聞け。 捕らわれるべき者は捕らわれて行き、剣で殺される者は剣で殺される。 彼女がした通りに彼女に仕返しせよ。 彼女の仕業に応じその倍を返せ。 彼女が注いだ杯にその倍の血を注げ。
https://w.atwiki.jp/gspink/pages/137.html
11 気まずい夕食を終え風呂に入った後、糸鋸はひとり布団に入って春美の言葉を思い出していた。 いつもはこのままグダグダとTVをつけたりビールを飲んだりするのだが、 何となくそんな気にもなれず、春美が風呂に入っている間、 横になってただボンヤリと考えている。 (嘘や隠し事が分かる…) では、春美のついた嘘とは何だったのだろう? あの時、糸鋸は尋ねかけて止めた。 問いかけようとしたその瞬間、春美の心がますます頑なになっていくのをこの目で見てしまったからだ。 …半透明の鎖には、実体こそ無いもののご丁寧に頑丈そうな錠前まで付けられていた。 皮肉にもこの勾玉が一番最初に力を発揮したのは、作り主に対してだったわけだ。 成歩堂と真宵の「証言」についてだろうか? 確かに彼らが述べたとする言葉の中には、要領を得ない点が多い… ふたりが他にもまだ伝えたことがあったのか、全く別の内容だったのか、 糸鋸には見当も付きはしない。 むしろ春美が降霊を行ったこと自体が嘘だったのではないかとさえ思えてくる。 (…けれど) 糸鋸はかぶりを振ってその疑念を打ち消そうとした。 春美にそんな嘘を付く必要が、一体どこにあるというのか? あるいは嘘と言っても、その事とは全く別の些細なものかもしれないではないか。 (過敏になっているッス…) なまじ嘘が分かるというのも、あまり愉快なものではない。 なるほど、確かに真宵の勾玉は大したものだと糸鋸は改めて実感していた。 これから先どんなに技術や医学が発達して例え「嘘発見機」なるものが創られたとしても、 この不思議な力には到底およびはすまい。 これほどまでハッキリと、文字通り「目に見える」形で嘘を見抜いてしまうとは想像もしなかった。 だが、同時にこの勾玉がオカルトの産物とはいえやはり人間の道具に過ぎないのだということも、 糸鋸はしょっぱなから思い知らされる事になった。 (そこに嘘が『有る』のか『無い』のかが分かっても…自分にはどうする事もできないッス) その話のどこに嘘があるのか、なぜ嘘をつく必要があるのか、当然ながらそこまで教えてくれるものではない。 春美には申し訳ないと思いつつ、成歩堂や御剣ならともかく、 肉体派の自分にはどうにも上手く使いこなせる自信は無かった。 むしろ、日常生活では余計な摩擦を生むだけのものにも感じる。 実際、今がそうだった。 (必要なとき以外は、手にするものではないッスね。 …これは、ルール違反ッス) ごく一部の断片とはいえ人の心を読み取ってしまうその力に、 多少なりとも恐れを感じずにはいられなかった。 人間、事実を追及するよりも心地よい嘘に騙されている時の方が、いくぶん幸せなのかもしれない。 普段、哲学や人生論など面倒くさいことはあまり考えるたちではないのだが、 糸鋸もこの時ばかりは深刻にならざるを得ないのだった。 ドライヤーの音が聞こえる。春美が風呂からあがって髪を乾かしているのだろう。 糸鋸は、もう一度さっきの事を問い正してみるか否か悩んだが、 悩んでいるうちにパジャマ姿の春美が戻ってきた。 「もう寝てしまうんですの?」 入浴の熱気にまだ頬をポッポと赤くしたままそんな風に言う少女の表情は、 いつもと何ら変わらないように見える。 「…あ、あぁ。今日は、少し疲れてるッス。 春美ちゃんはTV観てていいッスよ」 (言いたくないものを無理に聞くことは無いか…) 彼はそう考えなおし、春美の意思に任せることに決めた。 色々と疑問は残るものの、 この娘があの事件の捜査に不利益になるような嘘を付くとは考えにくい。 何か他のことで思い悩んでいるかも知れなかった。 (…それはそれで、保護者としては相談して欲しいものだけど) と思わなくもなかったが、何せよ無理に顔を突っ込むのはでしゃばりというものだ。 「私も今日はもう寝ます。…電気消しますね?」 春美はそう言うと、少し背伸びして部屋の明かりのヒモに手を伸ばした。 … …… ……… 糸鋸は、しかし眠れなかった。 何かが気になるのだ。 重大なものを見落としているような感覚が心の内に芽生えている。 それは勘にすぎないのだが、 とてもとても頭の回るタイプとは言いがたい自分がどうにか刑事をやってこられたのは、 この直感に頼るところが度々あったからというのも事実だった。 (……) 糸鋸はもう考えるのを止めて眠ってしまおうと、むりやり目をつむった。 (…ん?) 何か暖かいものが背中に触れた。 「な、なんスか?」 その感触の正体を知って、糸鋸は思わず声を上げる。 いつの間にか春美が布団の中に入ってきて、自分の背中にすがりついているのだった。 子供とは言え、寝巻き越しに感じられる女の肌の柔らかさには何ら変わりが無いのだと、 糸鋸は初めて知った。 「…嫌わないで」 「えっ!?」 春美の押し殺すような声に、糸鋸は一瞬何のことだか分からない。 「勾玉の力で見えたのでしょう? わたくし、けいじさんに言ってないことがあるの」 (ああ、そのことか…) 糸鋸はようやく冷静になって、続く春美の言葉を聞いていた。 「だって、仕方ないんです。 私どうしたらいいのか分からなくって… それがもし本当だったらどうしようって…」 春美はますます強い力をしがみつく両の腕に込めながら、だんだん涙声になっていく。 「もしかしたら私、本当に何もかも失くしてしまうのかもしれない… でも、ひとりは嫌!嫌なんです、もう…」 糸鋸には少女の言う言葉の意味は今ひとつ掴み取れなかったが、 彼の知らないところで彼女は彼女にとって恐ろしく重大な決断を迫られていることだけは明白だった。 「この事はいつか…いずれきっとお話します。 だから、今は。 今だけは、どうかこのままそっとしておいて下さい。 このまま私のお父さんでいてください……………………どうか」 そう言って自分の背中ですすり泣く春美の声に、糸鋸まで胸が張り裂けそうだった。 布団の中に入ったまま、ゆっくりと春美の方に向き直る。 「けいじさん」 目を潤ませたまま、少女は糸鋸の顔を見上げていた。 暗くて細かい表情は分からなかったが、いつも優しい眼差しだけは見て取れる。 「…けいじさんっ!」 春美は思わず糸鋸のふところにその身の全てを預けて来た。 こうまで全く無防備に飛び込んでくる少女を咎めることなど、糸鋸にできはしない。 ただその肩を抱き、腕枕をしてやりながらそっと囁いた。 「大丈夫ッス」 と。 「メシの時にも言ったけど…ハルミちゃんは何も心配することはねッス。 ハルミちゃんが自分を信じてくれるように、自分もハルミちゃんを信じるッス… だから、泣かないで」 頬を撫でる手のひらは不器用だったが、この上なく温かい。春美は再び涙が溢れてきた。 糸鋸もまた指先に触れる春美の頬の柔らかさに、 キスのひとつでもしてやりたい衝動に駆られながら、 「おやすみ、ハルミちゃん…」 と言った。 「お休みなさい…」 男の腕の中で、春美も呟くように言った。 この温かさに抱かれたまま眠りにつくことに、何のためらいも無いようだった。 (お父サンだって、男なんスよ) 糸鋸は、やがて静かな寝息を立て始める春美の顔を眺めながらひとり思った。 (この先) …そう。この先、綾里キミ子が刑期を終え出所した後は、春美は彼女の元へ帰さなければならない。 そして、いつしか父親代わりだった自分のことなどキレイに忘れて、 他の良い男と一緒になるのだろう。 (大丈夫、ハルミちゃんなら上手くやれるッス) そんな悟りきった思いを馳せながらも、 糸鋸はどこかやり切れない寂しさのような感覚も同時に覚えていた。
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/1109.html
(投稿者 Cet) 「リゥチン」 「はいお嬢さま、いかがなさいました?」 少女が少年に話しかける。 黄色人の少年はエントリヒ語で書かれた子供用おもちゃのパンフレットを手に、絨毯の上に座り込んでいた。広い部屋で、子供専用の応接間といった風情だ。 「あのね、ラシェルのことなんだけど」 黒檀のように黒い髪をおさげにした少女は言った。名はアリサ、アリサ・ケーニヒ。 「はい」 「あの子ね、君に会いたい喋りたいってきかないの、いいでしょ?」 「全然拒否する理由がありません」 少年はにこっと笑った、ちょっと少女はときめいたが頭をぶんぶん振る。 「おーけ、じゃあまた今度ね、あと君のお母さんまた体調崩してたみたいだけど」 「はい、また医務室に行っておきます。多分大丈夫とは思いますけど」 「うん、じゃね」 はい、少年が答えると部屋はまた静かになった。 再び少年は絨毯に座り込んでパンフレットを熟読し始める、その隣には積み木が散らばっている。 「こ、こんにちは」 次の日も同じようにして過ごしていた少年の目の前に現れたのは、琥珀色の髪をしたアリサより小柄でゴシック(白地なし)な少女。先日アリサの語っていた。 「お嬢さま、こんにちは。お出しできるものは何一つありませんが」 「いいいです」 少年は首を傾げる。い、いいです。だろうと結論付けて、隣に座ってはどうかと勧めた。あたふたと少女はぎこちなく座り込む、スカートが空気を吸い込んで膨らんだ。 「積み木だけですが、お嬢さまのお父さまが買ってくださった最高級品だそうですので、どうぞ触れてみて下さい」 「あ、うん」 そうして少女は邪気のない瞳で積み木へと手を伸ばす。 不意に少女の髪の匂いが少年の鼻をかすめた。その柔らかな香に、少年は何となく少女を大切にしてあげたい、というような気持ちになった。少女が少年のことを視界の端に放って積み木に熱中し始めたのは幾らか不満でもあった。だけど少女がちらちら遣る視線には気付かない。 「お嬢さま、お上手です」 「あ、ありがと。ヤンシャオもする?」 少年は再び首を傾げる。何だか自分の名前じゃない何かが聞こえたような気がしたので。 「あの、もう一度僕の名前、呼んでくれます?」 「え」 少女は顔を赤らめる、何だか少しずれている。 「や、ヤンシャオ」 何ですそれ。少年は思っても口に出さなかった。 という訳でその日から少年の名前はヤンシャオになった。アリサも笑いながらヤンシャオと呼んだ、少年の母も、まあそうだったかしらヤンシャオ、とベッドの上から呟くので、少年は早い内から諦観を習得する羽目になった。 というのも少年の傍にラシェルが付きっ切りでいるようになり、また間違った名で自分を呼び続けるからで、それを遠目から観察していた他の給仕やらが確信犯的に言い合ったり素のまま勘違いしたりなどで広まってしまったのだった。 少年は溜息を吐くようになった。どうしたものかな、と隣で新しく買って貰ったおままごとセットで遊んでいる少女を見るにつけ何やらやるせない気持ちになる。だからその年頃の男の子に比べて幾らか大人びた、何か面倒なことを熟考するような表情をするようになる。それでいて少女の視線にはほとんど気付かなかった。 「お嬢さま、お上手ですね」 そう言う度、少女はえへへ、と微笑んで、顔を赤らめ、幾分か緊張した様子で再び手慰みを始めるのである。 そんなある日のことだ、ヤンシャオもどう? とラシェルがおままごとを勧めてきたのがそもそもの始まりだった。 「はあ、一体どうすればいいのでしょうか」 「えーとね、私がお母さんで、貴方がお父さん」 「とすると子供がいたりするんでしょうか」 少女は固まった。顔を真っ赤にして。 「い、いるんじゃないかなッ」 えらく大声で叫ぶのだった。応接間の扉が薄く開いていて、そこからくすくすと笑い声が漏れることもあったが、少年はさして気にしなかった。 「シャオって呼ぶ」 「いいですよ、じゃあ私はお嬢さまって呼びますから」 「な、何で」 戸惑ったように言うラシェルに、柳青(以下ヤンシャオ)は暫し熟考して。 「お嬢さまは、お嬢さまですから」 「うう」 何となく不満そうにするラシェルの気持ちを、ヤンシャオは察することができなかった。往々にして女性の気持ちを察することのできない男子は死して当然である。他の給仕達の談である。 その内、少女が本物の包丁を取り出してくるようになると、ヤンシャオは一層良い父親になることを決意する。曰く。 「良い夫の鉄則、その一。お嫁さんと子供が世界一大事。その二。いつでも優しい。補足、お嫁さんの作った料理をいつも誉めてくれたりする。その三。仕事熱心で職場関係が良好」云々。 少女の言いつけ通りにすること数十回、少年の演技というものも段々と板についてくるようになる。例えばこんな具合に。 「ただいま、お嬢さま。今日の晩御飯は一体何かな?」 「お帰りなさいシャオ、今日の晩御飯は」 晩御飯は、と少女は口ごもった。それもそのはず、少女には料理のレパートリーというものが一切存在していないのだ。それを見咎めると少年は愛想良く笑って。 「ん、じゃあ先にお風呂にしようか。子供達はもう寝てる?」 「あ、ハイ。すやすやと、まるで天使のようでしたよ」 「なるほど天使か、違いない。でもお嬢さまだって十分に女神さまだよ」 すると少女は顔を真っ赤にして、涙を流すのであった。 しかし少年も変なところで煮え切らないのであった。お嬢さまはないだろう。給仕たちの談である。 ある日のことである。少年は包丁で刺された。 何のことはない演技の一環である。おままごとでは時々突飛も無い行動を演じなければいけないらしい。少年の小さな体から溢れる血はひどく鮮やかで、また少年の肌の色はさっと青白くなった。 その傍で少女は泣いていた。うわーん、ヤンシャオが死んじゃうーっ。冗談みたいな響きが頭の中で反響する。お母さま助けて。 どたばたと隠れていた給仕たちが走り出す。 給仕達の間では当然のように情報統制が敷かれた。 その内ヤンシャオの母親は亡くなってしまうことになるが、別に息子が虐げられるようなことに起因するのではない、単に病弱だったのだ。情報統制は徹底されていた。 しかしそれによって彼が母親の庇護から抜け出てしまった。アリサが嫁入りしたのもまずかった。ラシェルの父親は十分にそれを憂慮しており、愛される辛さを男として分かっていた。要するに半分くらい分かっていなかった。 少年は故郷に返されることとなった。でもやっぱり死に掛けたりした。 結局放逐されたのは、世暦1935年の三月上旬のことであった。 「た、だ、い、まっ」 薄暗い屋内に明るい声が響き渡る、その家にいた数少ない人間(別の階にいた者を含む)はいっせいに玄関の方を見やる。リゥチンが帰ってきた、叫び声がこだますることで、その住宅に住まっていた有象無象は事実を知るところとなった。 「ただいま、マーおばさんは?」 少年の言葉に、少なくとも少年より大人びて見える少女は口ごもって。 「今は、李さんのところに用事で出てる。リゥ呼ぼうか?」 「ああ、もう来てる」 住居の奥からもう一人少年が現れる。 「ただいまリゥ」 「ああお帰り、何かえらく元気になったな、いいことでもあったか?」 「うんっ」 少年は輝く笑顔で答えた、そうかそうか、弟である柳留(リゥリゥ)は応える。 どうしてなのか、とは聞かなかった。母のことを話題に出すのも余り意味のないことだし、それに言いたければ自分で言うだろう、リゥリゥはそう思った。 少年はその後も休みなく奉公に出向かなければいけない事情に置かれていたが、しかしそうはしなかった。何かと体調の不備を訴えるようになったのだ。 それも徐々に許容されていった。それ以前からリゥリゥが奉公に出ていたことで経済状況は幾らか安定していたし、ヤンシャオの精神状態が明らかに違っていたからだ。 ある日彼は長方形の格子窓がある灯りの無い部屋にいた、足の長く背もたれのない四脚椅子の上で何やらひもを括っていた。 独り言を言う。 「まあ僕にとって正直この世に何の未練も無いわけで、そしたら僕がここに留まっている理由もなければついでに言えば留まっていることはむしろ害悪にしかならない訳だから、ああじゃあ僕にとって現実の世界に居ることは全く意味のないことですぐさま旅立つことが唯一絶対に必要なんだ、そうだよねラシェル」 少年はそう言い終ると、後はひたすらに穏やかな目をして、丁寧に首を輪に通した。 再見!
https://w.atwiki.jp/anchorlegendscenario/pages/310.html
ひとこと 最近は補足として内容を追加し、GMのシステム面をほんわかとサポートできていたら良いなと思っています。 作成シナリオ一覧 回 シナリオ シナリオ 65 【シノビガミ】おいでよ幻獣ランド byえめる 64 【DX3rd】廃工場の怪物 byえめる 62 【サタスペ】ウルトラ警備隊24時 byえめる 61 【COC】コトリバコ byえめる 60 【サタスペ】彼らの名はシーランド byえめる 56 【BBT】織姫と彦星 byえめる 54 【COC】女王の卵 byえめる 53 【シノビガミ】スパッツだから恥ずかしくないもん byえめる 51 【シノビガミ】絶対領域それは見えそうで見えないチラリズムの完成形 byえめる E2 【DX3rd】パチモン大行進 byえめる 48 【COC】俺たち伝説ナイン byえめる 47 【COC】ハウス オブ ザ デッド byえめる 46 【COC】リミットブレイク byえめる 45 【ARA2E】決戦ブラックスミスコンテスト byえめる 44 【ARA2E】スイスぺ 川谷真探険隊 byえめる 43 【ARA2E】ハムレットの悲劇 byえめる 42 【ARA2E】妖精村の聖なる夜 byえめる 39 【ARA2E】バートルの小さな幻想 byえめる 38 【DX3rd】俺が、俺たちが! byえめる 36 【ARA2E】クインテッセンスを求めて byえめる 35 【CoC】サイレントヒル byえめる 34 【COC】謎の集団ポンキッキーズ byえめる 33 【DX3rd】誰が為にシンバルが鳴る byえめる 32 【ARA2E】伝説の宝剣? byえめる 【COC】冒涜的な伝承者 byえめる 31 【COC】希望と絶望 byえめる 30 【DX3rd】女神VS女神 byえめる 29 【DX3rd】久遠の落日 byえめる 27 【サタスペ】昨日までの君にさようなら byえめる 26 【DX3rd】今日は風が騒がしいな byえめる 25 【キルビジ】黄金の魂を持つ男 byえめる 24 【DX3rd】さらば相棒 byえめる 23 【DX3rd】紫色の世界 byえめる 21 【サタスペ】二人の孫娘 byえめる 20 【指定なし】百人一首 byえめる 19 【COC比叡山炎上】もっともっとたべたい byえめる 18 【サタスペ】幸運VS幸運 byえめる 17 【サタスペ】無修正の国技SUMOU byえめる 15 【サタスペ】フルコンボだドン byえめる 13 【CoC】死者の町 byえめる 12 【CoC】猿夢 byえめる 11 【サタスペ】グッドナイト大阪 byエメル 10 【CoC】元旦の卵 byえめる 9 【サタスペ】居祖乃家の呼び声 byえめる
https://w.atwiki.jp/naomura/pages/17.html
基本設定 設定の検証です。同一設定と思われる部分は赤字になっています。 画像の入った検証(キャラクターデザイン等)はキャラの項でまとめています。 失楽園 少女革命ウテナ 学校 ・私立ユートピア学園 ・超エリート校 ・全寮制 ・中高一貫教育 ・男尊女卑 ・隔離された人工島に建っている ・私立鳳学園 ・有名な名門校 ・全寮制 ・小中高一貫教育 ・小高い丘の上に建ち、海に面している 決闘 ・呼び名は「エグザクラン」 ・企画者は理事長 ・全ての男子生徒が所有物である女子生徒を賭けて闘う ・男尊女卑主義に則り女性の決闘者は存在しない(主人公のみ例外) ・決闘に関わる女子は主人公の下級生にあたる中等部の生徒も対象である ・参戦するには特定のアイテム(手袋)が必要 ・女の子が武器提供 ・武器は胸から出てくる ・武器は決闘が終わると光になって散る ・出てくる武器の種類は提供者によって異なる・武器に傷がつくと提供者もダメージを受ける ・勝者は敗者の女の子の所有者となる ・女の子を所有するための「誓約(イーリス)」 ・誓約した所有者以外は女の子に手出しできない ・女の子は何をされても所有者には逆らえない ・所有者は誓約した女の子に何をしても許される ・バーチャルリアリティである ・呼び名は「決闘(デュエル)」 ・企画者は理事長代行(実質の理事長) ・選ばれた者達が「世界を革命する力」のために闘う ・企画者曰く「女の子は剣を持って戦うものじゃない」(女性の決闘者は複数存在する) ・決闘には主人公の下級生にあたる小等部の生徒も参加する ・参戦するには特定のアイテム(指環)が必要 ・薔薇の花嫁が武器提供(挑戦者の提供者は性別問わず) ・武器は胸から出てくる・武器は決闘が終わると光になって散る ・出てくる武器の形は提供者によって異なる(物語後半の設定)・武器に傷がつくと提供者もダメージを受ける(最終回のみの描写) ・勝者は薔薇の花嫁とエンゲージする ・エンゲージした者以外は薔薇の花嫁に手出しできない ・薔薇の花嫁は何をされてもエンゲージした者には逆らわない ・だからといって節度なく好き放題してはいけない ・プラネタリウムの写す幻である(終盤で明かされる設定) 決闘がもたらすもの ・呼び方は「アップル」 ・「魔王の力の源」 ・手に入れる事がヒロインを解放する唯一の方法である・学園(の経営者)を変える力・女の子は永遠に自由と幸せを約束される ・呼び方は「世界を革命する力」 ・「魔王ルシファー(決闘主催者)の力の一部」 ・手に入れる事がヒロインを解放する唯一の方法である・お姫様はずっと幸せに暮らせる(悪役の甘言) 主人公 ・一人称が「僕」 ・高等部の一年生 ・男性のポジションである騎士に憧れている ・転入生なのでエグザクランの存在を知らない ・制服は他の女子とは異なる短パン*2である ・手袋は送られてきた制服に入っていた ・決闘のためのアイテムだと知らずに所持している ・武器を引き抜く時に叫ぶ「ユートピアはここに!」 ・決闘で劣勢になると特別な現象が起き逆転する (額に浮かぶ印と魔方陣) ・額の傷は幼い頃できた騎士に繋がる思い出 ・右利きだが剣は左手持ち ・一人称が「僕」・中等部の二年生 ・男性のポジションである王子様に憧れている ・転入生なので薔薇の花嫁の存在を知らない*1 ・制服は他の女子とは異なるスパッツ*2である ・指輪は幼い頃に王子から貰った思い出のもの ・決闘のためのアイテムだと知らずに所持している ・武器を引き抜く時に「世界を革命する力を!」と叫ぶ(他のキャラクターも口にするが一回きり) ・決闘で劣勢になると特別な現象が起き逆転する (浮かぶ指輪の紋章と舞い降りるディオスの姿)・右利きだが剣は左手持ち ヒロイン ・学園の女子全員が対象である ・仕える相手を様付けで呼ぶ ・主従に関係なく、主人公を自分にとって特別な存在として認識している ・姫宮アンシー一人が対象である ・仕える相手を様付けで呼ぶ・主従に関係なく、主人公を自分にとって特別な存在として認識している コハル ・決闘でやり取りされる事、勝者の思うがままになる事に対して異議を唱えない・自らを物とし、人格を認めない ・自らを花とし、人格を認めない・決闘でやり取りされる事、勝者の思うがままになる事に対して異議を唱えない ツキ ・黒幕の身内(所有物)であり、正体をしっているので主人公に近づかないよう忠告する ・黒幕の身内(妹)であり、正体を知っているので主人公に近づかないよう忠告する トモコ ・自分の身を案じて主人公から離れて虐げられる生活に戻ろうとする ・主人公を裏切った自分を図々しいと蔑む ・主人公の言葉を信じることによって守られる ・自分を助けるために傷つく主人公を見て決闘を降りることを勧め、虐げられる生活に戻ろうとする・主人公を裏切った自分をずるいと蔑む・主人公の言葉を信じることによって守られる イクサ ・主人公に手を貸すが、黒幕を真の主としている ・主人公に手を貸すが、黒幕を真の主としている 親友 生徒会役員(決闘者) ・黒幕の指名で選ばれた存在・一般生徒とは異なり腕章をつけている ・全部で6人 ・黒幕の指名で選ばれた存在・一般生徒とは異なる制服を着ている ・全部で6人 最初の決闘者 ・ヒロインを所有物呼ばわりする・ヒロイン(コハル)に暴力を振るう一方で、執着心を抱き取り返したがっている ・主人公とは初戦とリターンマッチの 二連続で戦う・主人公をイレギュラー性から「バグ女」呼ばわりする ・ヒロインを所有物呼ばわりする・ヒロインに暴力を振るう一方で、愛情を抱き取り戻したがっている ・主人公とは初戦とリターンマッチの 二連続で戦う ・主人公をイレギュラー性から「男女」呼ばわりする 生徒会長 ・騎士を求める主人公を利用し、味方のフリをした後に敵になる ・相談役とは別の姿を持った同一人物である ・男と関係を持つことを強要されている ・王子様を求める主人公を利用し、味方のフリをした後に敵になる ・養父から性的虐待を受けていた(劇場版) 主人公の相談役 ・学園の外が見渡せる庭にいる ・学生だがゼミで自習しているので普段は校舎内にいない ・が、主人公が危機の時にはどこからともなく現れる ・そのため騎士*のようだと主人公に慕われるが 正体は決闘者を次々と送り出している黒幕である ・学園の外が見渡せる塔の屋上にいる ・理事長代行なので普段は校舎内にいない ・が、女性が危機の時にはどこからともなく現れる ・そのため王子様のようだと主人公に慕われるが 正体は決闘者を次々と送り出している黒幕である 決闘の管理者 エンジェルを名乗る ・相談役とは別の姿を持った同一人物である ・魔王へ堕ちた天使ルシファー(宵の明星)から取られた暁生の名を名乗る 決闘反対派 (相談役と同じキャラですが項目を分けました。下に補足があります) ・中等部2年で高校までの習得課程を終えている ・決闘のシステムに反対し、参加しないつもりで居る ・男性としては長めの髪型・名前に「浅黄」 ・中等部1年で大学のカリキュラムを受けている ・決闘のシステムに反対し、参加しないつもりで居る・男性としては長めの髪型・シンボルカラーは青 生徒会役員その1 ・幼い顔立ち ・笑顔のまま冷たい言葉を吐く ・幼い顔立ち ・笑顔のまま冷たい言葉を吐く 生徒会役員その2 ・女性的な雰囲気の男性 ・同性である生徒会長に思いを寄せる ・男性的な雰囲気の女性 ・同性である幼馴染に思いを寄せる ・生徒会長に思いを寄せる(漫画版) *1 ウテナの設定では、エンゲージした者に従う「薔薇の花嫁」の名称自体は 生徒会メンバーのみが知るものであるが、 言いなりになるヒロインの存在は一般生徒にも認められている *2 ウテナ10話に生徒会長の「レディの危機を救うのはナイトの務めだ」と言うセリフがある 設定が混在していると思われるキャラについて 名前ごとに色分けしてみました 浅黄谷カリン=エル 色分け 桐生冬芽 鳳暁生 薫幹 主人公が「王子様(騎士)」と好意を持つ裏では純粋な主人公を嘲笑する決闘の管理者の次に権力を持ち決闘者=生徒会メンバーを仕切る年上の相談役として主人公に信頼される黒幕と同一人物 ↑エルの設定--------------------------↓カリンの設定大学生レベルの学力を持つ秀才 ヒロインへの暴力を咎める(いじめの現場に居合わせる)(振り上げられた腕を握って止める)庭と楽曲名がキーワード決闘への不参加を表明
https://w.atwiki.jp/kyoronosuke/pages/376.html
走る必要なんか無いのに、私は走ります。 ううん、もしかしたら今そこに行く事自体が意味なんて無いのかも知れない。 でも……。 「いや、泉が宿題写しに来てるけど?」 何故かそれを聞いたら居ても立ってもいられなくって。 私は電話を切ってすぐに家を飛び出した。 だって、今男君は私以外の女の子と一緒にいる。 私はドジだから……、足手まといだから。 いつか男君はは私に飽きられちゃうかも、邪魔だと思ってしまうかも。 そう思うと、怖くなった。 私は、ゆきちゃんみたいに可愛くないし、お姉ちゃんみたいにしっかりしているわけでも無い。 こなちゃんみたいに男君の好きなゲームとかアニメのお話も……出来ない。 でも、それでも。私は誰より男君が好きで、誰にも渡したくなくって。 こういうのを独占欲っていうのかな。 男君は優しくて、男君の手は大きくて、男君は暖かい。 私はそんな素敵な男君に惹かれていく。 自分でも分かる。 だから、怖い。 男君が私から離れて行っちゃうのが。 絶対に、それだけは……嫌だ。 ◇◇◇ 「いいか!絶対コイツを倒してもSELECTボタンは押すなよ!絶対だぞ!」 「分かってるってー(=ω=.)ポポイ」 ボスとの一触即発の会話イベントの終盤にインターフォンが鳴る。 時計を見ると四時十五分。 「は?」 泉がコントローラーを持ったまま窓から玄関を見る。 「あっ!∑(=ω=.)!」 「誰だ?郵便か?」 泉はこっちを見て不適に笑う。 「つかさが来てるよ(=ω=.)ニマニマ」 俺はそれを聞いてすぐに一階に滑るような速さで下りた。 ◇◇ 「つかさ!?」 玄関を出ると、可愛らしいワンピースのつかさがいつもみたく可愛らしい笑顔を浮かべて待ち受けていた。 「えへへ」 「めちゃくちゃ早かったな、もうちょい掛かると思ってたんだけど」 「うん、急いで来ちゃった」 つかさの額に汗が光っていた。走ってきたのか? 「ごめんね、迷惑だったかな?」 つかさ、上目遣いは反則だろ? 「何言ってんだよ、つかさならいつでも大歓迎だぜ?」 そう言ってつかさを家に上げてやる。 俺の後をちょこちょこ付いて来てるのを考えると、息子が少し硬くなった。 「ねえ、男君」 つかさが階段を上がる直前に俺の袖を摘む。 「ん?」 「・・・・・、こなちゃん」 「どうした?」 「こなちゃん、まだいるの?」 「え?ああ、上でゲームしてるぜ」 俺がそう言うと、つかさの摘んでいた手が今度は俺の手を掴んだ。 「つかさ?」 「ううん、ゴメン」 つかさはすぐに笑顔を浮かべて、手を離した。 「なんでも無いよ」 「そか。先に二回に上がっててくれ、お茶淹れてくっから」 「うん・・・・・」 ◇◇◇ 愛の戦士、こなた・イズミ。参上!! ポポイを颯爽と葬った私は当然の様にSELECTボタンを押した。 やっぱダークラピの方が強いかな。 階段を上がってくる音がする。 可愛らしい軽やかな足音。 ドアが開く。 「うぃーす、つかさ(=ω=.)ノ」 「・・・・・」 ありゃ? 「あれー?つかさ?(=ω=.)ドッタノ?」 いつものノリじゃない? っというか、つかさは無表情のまま私を睨みつけている。 こんなつかさは始めてだ。なんというか、怖い。 少し経って、つかさが口を開いた。 「・・・・・こなちゃん、宿題は?」 「へ?(=ω=.)what?」 「宿題は?終わったの?」 咎めるような口調。 どうしたんだろう? 「いや、終わったよ(=ω=.)ホラ」 私は机の上に置いていたノートに視線をやる。 「そっか、良かったね」 男がまずい事でも言ってしまったのか? 今日のつかさはなんか怖い。 私が何か言おうとして口を開こうとした直前、「おはラッキー☆」 スク○ェアオタクがやって来た。 ◇◇◇ お茶を持って上がると、俺の部屋は静まり返っていた。 よし、ここは俺の空気ブレイカーで! 「おはラッキー☆」 部屋にいた二人の視線が一気に俺に集中する。 「・・・・・」 「・・・・・(=ω=.)」 なんだこの空気は? いや、俺はこの雰囲気を知っている!知っているぞッッ!!まるで期待してなかった奴がドッチボールで最後まで偶然生き残って、女子が応援し始めた途端当たってしまったあの感じの!!そうだ、あの時の雰囲気だッッ!! それでも、俺のmy angelつかさはまたあの可愛らしい笑顔を浮かべてくれた。 泉は……なぜか俺を見つめているだけ。 「おい、なんか言えよ。スベったみたいじゃねぇか」 「・・・・・、男(=ω=.)」 「わー、サイダー!」 泉が何か言おうとした瞬間、つかさが割って入った。 俺はお盆を机の上に置いて座る。そしてすぐ横につかさが座る。 「・・・・・あの、つかささん?」 「ん?」 近い、もんすごく近い。肘と肘が触れ合うくらい近い。 「見せ付けるねー(=ω=.)ムフフ」 「フヒヒ、サーセンwwwwww」 泉はそう言うと立ち上がる。 「そろそろ帰る(=ω=.)」 「おう、お疲れさん」 つかさは何も言わずに泉を見つめている。 泉はノートを片付けて、さっさと出て行く。 「さいならー(=ω=.)ノシ」 泉が出て行った直後、つかさが腕を絡ましてくる。 「男君」 頬を俺の二の腕に寄せ、つかさは俺に凭れ掛かる。 「つかさ?」 「男君・・・・・」 つかさはギュッと絡ませた腕に力を込めて、俺の顔を見上げる。 「どうした?」 「・・・・・明後日、一緒に出掛けようよ」 思わず俺を仰ぐ瞳に吸い込まれそうになる。 「えっと、いいけど・・・・・、どこ行くんだ?」 「海がいいな。あ、男君が嫌だったら別のとこでもいいよ?」 海・・・だと・・? 待てよ、待ってくれよ。 夏+海美×少女=sneg? 「つかささん、それマジすっか?」 「う、うん」 照れたような、困ったような、そんな表情を浮かべるつかさ。 俺は少し考えるフリをしながらつかさを焦らして表情の変化を俺の答えを待っているつかさの表情を楽しんでいた。 ◇◇◇ 私は携帯の履歴から柊かがみの欄を開き、電話をかける。 お決まりの呼び出し音。少しそれを聞いたから、かがみんの「もしもし柊ですけど」と別に言わなくてもいい応答が来た。 「かがみん、今日つかさとなんかあった?(=ω=.)?」 「いきなりだな、あんた」とちょっと呆れたような声。 「いやー、ちょいと気になったんでね(=ω=.)フヒヒ」 少しばかり冗談ぽく言う。 「ってか、そこにつかさいるの?」 「んや、いないよ(=ω=.)」 スピーカーの向こうでかがみんが悩んでいるような、考えているような声が聞こえる。 「どったの(=ω=.)センセイ?」 「こなた、どこでつかさ見たの?」 「うぇ?男の家に居るよ?聞いてるんじゃないの(=ω=.)?」 「また、男か」 かがみんの溜息。 「なんかあったの(=ω=.)?」 「いや、なんでも」 なにか在るんだろう、かがみんの声の調子で分かる。 「ねぇ、かがみん(=ω=.)」 「うん?」 「男とつかさの事でしょ(=ω=.)」 「・・・・・、うん」 かがみんは少し躊躇ってから答えた。 「最近、つかさがさ、暇があったら男に電話を、ね」 なるほど。 私はかがみんから話を聞いている間、つかさのあの奇妙な雰囲気を思い出していた。 ◇◇◇ 男君と一緒に歩く。 それだけの事なのに、私の胸はドキドキしている。 左を向けば男君が私に笑いかけてくれる。 私はそれが嬉しくて、勝手に笑顔になってしまう。 私は繋いでいる男君の右手を少し強く握ってみた。 肩が触れ合うぐらい近づく。 時間が止まってしまえばいいのに。 私は心の底からそう思った。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/49282.html
登録日:2021/09/12 Sun 16 24 12 更新日:2024/08/30 Fri 19 49 05NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 どんぐり インプラント キツネ キルミーベイベー クルミ ゴミ ゴミ捨て場 バグ ババーン リアニメイト リス 保存 土 地雷 埋める 埋め立て 埋立地 埋葬 墓地 桜の木の下には死体が埋まっている 灰 生き埋め 砂 砂むし 貯食 雪 埋める(う-める・うず-める)とは、 穴や隙間を塞ぐ ものを土などの中に置き、表面全体を覆う ことである。 なぜ埋めるのか 地面や壁に穴や隙間が開いていて、危険だったり見栄えがよくなかったりする状態を解消するために塞ぐ、つまり「埋める」ことがされる。 ちなみにロマサガ2でタームの襲撃をしのぐときの選択肢は「塞ぐ」であり、「埋める」ではない。 ただし「塞ぐ」を実行すると地面の穴がなくなるので、土を持ってきて穴を埋める作業もしていると思われる。 ものを露出しないように置く営為やその目的については以下に述べる。 食品などを保存する リスやキツネなどの動物は、食べ物を土に埋めて保存し、あとで食べること(貯食)が知られている。 寒い地方では、雪が積もると野菜などを雪に埋めて保存できる。 いずれも、食べ物が散逸したり腐敗したりするのを防ぐためである。 食品でないものを埋める例としては、タイムカプセルや火鉢の炭(*1)などがある。 植物を育てる 果実や種子を土の中に埋めて発芽を促す。 ただ実際のところ、農業や園芸の文脈では「埋める」という表現を使うことはあまりない。 「埋める」という表現を使っている例としては、ポケモンシリーズできのみをふかふかの土に安置したときのメッセージなどがある。 また、上述したリスなどの貯食行動で埋められた果実や種子はすべてが消費されるわけではなく、食べ残しからの発芽が森林の更新に重要な役割を果たしているらしい。 死者を葬る 死んだ人の葬儀のやり方はいろいろあるが、遺体は土葬ならそのまま、火葬なら焼いて残された骨を地面に埋めることになる。 これに由来する慣用句として、英語で「死んでいる」という意味の"be six feet under"がある(*2)。 ごみを処分する 日本では自治体におけるごみの最終処分として埋め立てを行っている。 詳細はゴミ捨て場の項目を参照。 田舎だと、生ごみや草木を燃やした灰をそのまんま地面に埋めてしまうこともあるとかないとか。 ものを隠す 人目につかないようにものを地面の下などに埋めて隠す。 創作作品では埋まっているもの、それも誰かが埋めて隠したものといえば宝物が定番であり、多くのゲームで有用なアイテムを発掘できるイベントや技能などがある。 現実では死体遺棄や産業廃棄物の不法投棄や未撤去の地雷のような夢のない話が多い。徳川埋蔵金の捜索も最近やらなくなったし 「桜の木の下には死体が埋まっている」という都市伝説も、樹木葬ではなくこっちの意味合いであろう。 封じる 遮蔽されている状態を作り出すこと自体が目的であるパターン。 創作作品では強大な存在の封印が地下深くに埋められていることがよくある。 そしてお約束で封印が解かれ主人公は撃破や再封印に奔走する 現実では、遺跡の調査を行った後で保全のために埋め戻す例がある。 部品の組み込みや移植 機械の内部に部品を組み込むことや、医療用の人工物(*3)を体内に移植することを「埋め込む」と表現することがある。 いずれも組み込まれたり移植されたりしたものが外部に露出していないことを含意する表現である。 ここから派生して、コンピュータープログラムにすぐには露見しない不具合を作り込むことを「バグを埋め込む」と言ったりする。 制裁や報復 「見たら本当に絶対感動するよ!もし感動しなかったら木の下に埋めて貰っても構わないよ」 創作作品のギャグシーンでは、くだらない言動を取ったキャラクターが埋められることがある。 上記のセリフは漫画『キルミーベイベー』にて折部やすながソーニャに向かって言ったものであり、感動させることはできたようなのだが結局やすなは埋められた。 ネット上では展開を端折って即堕ち2コマ風に加工されたコラ画像が出回っている。\ババーン/ 現実の場合はたいてい「生き埋めにして殺す」という意味合いである。 主な使い手は白起や項羽など。 遊びやレクリエーション 海水浴場でよくやる遊びとして、砂浜に寝そべった人に砂をかけて埋めるものがある。 埋められる人と砂をかける人の最低2人がいないと成立しないのでぼっちには荷が重い また、鹿児島県の指宿には砂に埋まってあたたまる砂むし温泉がある。 こっちはスタッフの人が砂をかけてくれるはずなのでぼっちでも安心 比喩表現など 当てはめる、割り当てる 情報やデータがない場所に記入や入力をすること、担当者がいない作業に人員を割り振ることなどの比喩表現として使われる。 「空欄を埋める」「認識のギャップを埋める」「欠員を埋める」などの言い回しがある。 某掲示板でスレッドのレス上限まで書き込みを行う「スレを埋める」もここからの派生であろう。 うずもれる、もたれかかる 大きくて柔らかいものなどに身体を預ける行為の比喩表現として使われる。 「埋める」よりは「埋まる」のほうがよく使われる。 「ソファーに埋まる」「クッションに埋まる」など。 すぐ利用できない場所に移動させる TCGで使われることがある言い回し。 場に出ているカードを山札に戻してシャッフルさせる、山札の上から何枚目かに置くなどの効果により再使用できるまで時間がかかる状態にする。 シールドなど、各作品特有の領域に移動させる場合もこう呼ばれる場合がある。 いずれにせよプレイヤーが移動されたカードにすぐアクセスできないようにすることがキモなので、手札へのバウンスや山札の一番上へのバウンスは当てはまらない。 なおTCGにおいて「墓地」と称されるような領域は公開領域であり、墓地からカードを場に出す手段も各種取り揃えられているため現実の墓地よりもずっと開放的である。 MtGの《生き埋め/Buried Alive》や《納墓/Entomb》など墓地にカードを送り込む専用のカードも存在するが、カードの字面とは裏腹に「埋まっている」イメージは薄い。 追記・修正は、埋まってからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] デュエマのマナに埋めるがないやん! -- 名無しさん (2021-09-12 17 01 56) デュエマだと盾送り(自分のを仕込む、相手のを送る)の方のイメージ。 -- 名無しさん (2021-09-12 17 33 25) アニオタwikiなのに普通の辞典みたいな項目に出くわしてびっくりしたわ(笑) -- 名無しさん (2021-09-12 17 49 53) アニヲタWikiのことだから、名字が「埋」・名前が「める」のアニメキャラかな?と思った -- 名無しさん (2021-09-12 18 51 32) びっくりおじさんが現れた!どうする? -- 名無しさん (2021-09-12 18 58 45) ネットスラング的な「埋める」(終了したスレを最後まで使い切る)も入れてほしいな -- 名無しさん (2021-09-12 19 01 23) バグで地形の中に入っていく事例は「埋まる」派と「沈む」派がいる気がする -- 名無しさん (2021-09-12 19 11 37) オレ様は誰かをびっくりさせることが大好きな…、びっくりおじさんじゃーっ!! 「びっくりおじさんが現れた! どうする!?」 -- びっくりおじさん (2021-09-12 19 38 43) 桃鉄とかでもテクニックの一つとしてある手札を埋めるなんかもあるね -- 名無しさん (2021-09-12 19 46 10) Q.なぜ埋めるのか A.また穴を掘るため(拷問) -- 名無しさん (2021-09-12 20 35 28) 定期的に人が埋まるWWEとかいう狂気の団体 -- 名無しさん (2021-09-12 22 09 10) シールドは送るで埋めるのはマナ、まあ地域によっては「盾に埋める」という方言もあるが -- DMP (2021-09-12 23 46 15) 穴掘って埋まってますぅ~ -- 名無しさん (2021-09-12 23 50 23) 入部しない奴はダートに埋めるぞ -- チームスピカ (2021-09-13 00 28 57) ゲームの図鑑埋めとか追加したらいいんじゃないかな -- 名無しさん (2021-09-13 02 03 17) もし感動しなかったら木の下に埋めて貰っても構わないよ -- \ババーン/ (2021-09-13 13 53 54) ↑連レスだけどもう記事に書いてあるんかいwww -- 名無しさん (2021-09-13 13 54 35) 白起「捕虜は色々と面倒なのでとりあえず埋めればヨシ‼︎」 -- 名無しさん (2021-09-23 17 46 03) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/truexxxx/pages/22.html
心、わたしの胸のどこに ◆GO82qGZUNE 恋をした。 誰よりも幸せな恋をした。 けれど私は灰かぶり姫なんかじゃなくて─── ハッピーエンドは失われた。 ▼ ▼ ▼ 人の悪意には慣れている。 生まれが生まれだ。嫉妬や羨望の的にされるのなんて日常茶飯事だし、謂れなき誹謗中傷を受けた数だって数えきれない。 人との別離には慣れている。 というよりも、最初から何も感じない。この世に良い人なんて誰もいなくて、誰もが打算だけで動いていて、だったらそんな他人なんかに感情を動かすほうがどうかしているのだ。 少なくとも、ほんの少し前までの自分はそう考えていた。 だから、本当なら、あんなものを見せられてもどうってことはないのだ。 氷に閉ざされていた私の心は、そんなものでは動かなかった。 そのはずなのに。 「藤原さん……」 ふとした瞬間にリフレインする。その情景が脳裏にこびり付いて離れない。 乾いた空疎な爆発音、いっそ冗談めいて噴き出る鮮血、くるくると回る首。 綺麗に整えられた桃色の髪はざんばらに飛び散って、もう生前の可愛らしさなんてどこにもなく。 ───信じない。 ぽとりと落ちた首が転がる。光を失った虚ろな目が、こちらを見る。 ───それでも信じない。 この子に驚かされるのは、いつものことだから。 きっと今回だってそうだ。自分が声をかけたら藤原さんは何でもないことのように起き上がって、「なーに本気にしてるんですかー」なんて間の抜けた顔で笑うに決まっている。それで私が安心して少し泣きそうになると、「あれあれ泣いてるんですかー?」なんてからかうに決まっている。 人の姿をした家畜……プライドがなく他人を貶めるしか能のない地球の癌。ああ、考えるだにおぞましい。 だなんて私が怒り、石上くんが困り、会長が静かに嗜める。そして皆で笑うのだ。これまでずっと繰り返されてきた日常が、明日からもきっと続く。 そうなんでしょう? これもきっと、あなたの悪戯なんでしょう? TG部で色々遊んでいるあなたのことだもの、私の知らない最新鋭のゲームだとか、VRだとか、とにかくそういうものを用意してドッキリでも仕掛けているのでしょう? ねえ、藤原さん。 藤原さん─── ◆ 泣き叫ぶ少女の声が、夜の森に響いた。 エリアC-7、街の外れにある小さな森の中。木漏れ日となって降り注ぐ月の光に照らされて、四宮かぐやは常の気高さとはかけ離れた姿を見せていた。 すすり泣くような声とは違う。声を殺して泣くのとも違う。子供がするようにあらん限りの声を張り上げた絶叫。世の悪意に立ち向かえる強さを持たない幼児のような泣き叫ぶ声は、森の闇に溶け消えて、残響となって木々の葉を揺らすのみ。 殺し合いを宣言された場で無防備に大声を出す危険性を理解できないほど、四宮かぐやは愚かではない。 しかし、これは賢明とは愚かしいとかそういう問題ではないのだ。 今でも気を抜けば脳裏に浮かぶ。一面に鮮血が飛び散り、そこで起こった惨劇を生々しく想起させる。泣き別れの首と胴体、あらぬ方向に投げ出される手足。吹き飛んだ頭部はおかしな形に陥没し、下顎の無くなった光のない目がこちらをじっと睨めつけている。 それでも理解できない。 何故、藤原千花が死ななければならなかったのか。 そう、藤原千花は死んだ。それは変えようのない事実だ。 遠隔で網膜に投射するVR映像? あるいは都合の良い夢を見せる催眠療法の発展系? あり得ない、そんなものが現実に存在するものか。仮にそんな技術があったとして、それを一学生に過ぎない千花が用意できるか? できたとして、それで見せるのが彼女らしくもない血生臭い悪趣味なスプラッタであるのか? ひぅ、と捩じれた息を呑みこむ。過呼吸気味に酷使された肺が悲鳴を上げ、生理現象としての咳がこみ上げて激しく咽込む。 信じられなかった。藤原千花が殺されたことも、自分や生徒会の面々が殺し合いなんてものに巻き込まれたことも。 そして─── 「私、なんで、こんな……」 藤原千花の死に、四宮かぐやがこれほどまでの悲しみを抱いてしまっていることも。 「あなたは、勝手なんですよ……いつも騒動事を巻き起こして、いつも私のことをからかって、私を怒らせてばかりで、素直に礼も言わせてくれなかった……本当はいつもあなたに感謝してた。あなたのことを頼りに思っていた……私の傍にいてくれてありがとうって、これからもずっと一緒にいてねって……いつかそれを伝えようって、会長ほどじゃないですけど、そう思っていたんですよ……?」 言葉が途切れる。 思考が霞む。 血濡れた情景しか映さなかった脳髄が、唐突に過去の情景を描いていく。 生徒会の記憶、そこで過ごした日々。くだらなく低レベルで、四宮の人間としてこんなことでいいんだろうかと自問自答することもあったけど、でも確かに楽しかった日常の記憶。 笑顔。 藤原千花は、四宮かぐやの記憶の中で、ずっと笑顔を浮かべていた。 それを見て、かぐやもまた、ずっと笑顔でいられた。 そのことを自覚して、かぐやは泣き濡れた顔のまま笑い、 「……ああ、そっか」 何もない虚空を掻き抱き、自らの腕に顔を埋めて。 「私は、あなたを、親友だと思っていたんですね」 響き渡る慟哭の声。 見守る者はなく、見咎める者もなく、その声はただ夜半の風を揺らすばかりで、ただ虚空へと消えていくのみだった。 ◆ 結局のところ、かぐやにできることとは、一体何なのだろうか。 少し考えて、答えは出なくて、もう考えること自体に嫌気がさしてしまう。 考えてみよう。今からかぐやたちは凄まじい豪運を発揮して、なんと誰も死ぬことなく殺し合いから脱出することができました。 自分も、会長も、あと石上くんも、特に大きな怪我もなくPTSDとかの後遺症とかもなく、なんか平穏に、嘘のように、元の日常に帰ることができました。 めでたしめでたし───なんてことになるわけがない。 だって、藤原千花は死んでいるのだ。 もうどうしようもなく、救いようがないほどに、死んでいるのだ。 どうやったって元の日常は戻ってこない。 5人揃ったあの生徒会は、二度と元には戻らない。 完全無欠のハッピーエンドは既に失われている。今からどう足掻こうとも、かぐやたちは不可逆のマイナスを常に背負っていかなければならない。 ならば優勝を目指すべきか? 優勝して、元の日常を返してくださいと、そう願えばいいのか? ───本当に? 会長を、白銀御行を一度殺害した上で、そう言えと言うのか。 ……結局のところ、答えなんか出るはずもなかった。 闘えばいいのか、逃げればいいのか、それとも仁愛とか正義とかを掲げて仲良しこよしで群れたらいいのか。どれが正解なのか分からない。 けれど、それでも湧き上がってくる感情はある。 「会長……」 会いたいです、今すぐに。 情けない姿を見られても構わない。本当はそんなところあなたに見せたくはないのだけど、でもこんな時くらいはいいでしょう、だなんて。 ねえ、会長。 こんな汚い私とは違うあなたなら。 私の見る景色を変えてくれたあなたなら。 きっと強く立ち上がってくれてるだなんて、強く正しく私たちを導いてくれるだなんて。 そんなことを期待している私は、やっぱりあの頃と変わらない、打算と利己しかない氷のままなんでしょうか。 ねえ、会長。 私は卑しい、人間、ですか? 四宮かぐやは、白く輝く月を見上げ、歩みを進める。 静寂が支配する世界にあって、ただ見上げる。そうすることしかできない。今だけは顔を上げておきたかった。 俯けば─── きっと、涙が落ちてしまうから。 【C-7・森/1日目・深夜】 【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~】 [状態]:憔悴、混乱、悲しみ [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考・状況] 基本方針:決めかねている。 1:会長たちと合流したい。 [備考] 具体的な参戦時期は後続に任せます Next 共闘 Previous 最初に生まれてくるということ 前話 お名前 次話 Debut 四宮かぐや 素直じゃない私を 目次へ戻る
https://w.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/259.html
遠く、祭囃子が聞こえた。 とっぷりと夜が打ち寄せている。渡航してきた船の灯りがぼんやりと視界の中で漂っているぐらいで、一面に、響く潮騒と、暗闇が、まるで、波に乗せて小さなこの島に夜を運んで来ているかのような錯覚を誘う。赤星は、星月夜の微かな光だけを頼りに桟橋近くを小走りに、あちこち海岸沿いの軒先をのぞき回っていた。 あった。 ひょいと段差を飛び越えて確認する。それから人気がないだけの桟橋の上でへたくそな介抱を続けている奈津子を促して、英吏を近くの海の家のベンチに寝そべらせる。海の家、というのも便宜的な呼び方で、港に近いから、観光客が見込めるのでそういう風に運営しているというだけで、今日は祭りだから、軒先だけ残して店主も屋台を開きにいったのか、それとも祭りぐらいは客になりにいったのか、ともあれ、無人のそこを、赤星は拝借することにした。 真白く気高い毛並みをした、狐型雷電のクイーンが、じっと主人の傍らに付き従い、しかし己は運ぶのも、介抱するのも、今は手出しをしないでいる。動かないのは、見慣れない相手が近くにいて、少しでも不審な動きを見せれば喉笛を食い破るつもりだからだろう。そのつぶらな瞳は動物兵器としての無感動な光を湛えている。 「……」 一所懸命に奈津子は、隣にいる赤星のことも無視して英吏の体の見当違いなところをさすったり、手で頭を持って呼吸しやすいように支えたりしていた。素人目に見ても、へたくそにもほどがある介抱の仕方だった。 が、常人の数百倍の筋力を持たされ、天使とも呼ばれる第六世代よりもさえさらに異なる構造をその身に潜めた存在が、相手を壊さないよう、自分の身になって考えた挙句、選んだのがそういう稚拙な方法の数々だとして、誰がそれを咎めることが出来たろうか。 奈津子の、やや細長い印象を受ける顔が、一所懸命に英吏を見つめて介抱を続けていた。 赤星は黙って二人を見守っていた。 船灯りの方角からは、いくらかの話し声が聞こえてきている。おそらく一緒に来た仲間達がうまいことやってくれているだろう。信頼して、じっと英吏の目が覚めるのを待つことにした。 祭囃子の調子は変わらずだった。まだ、まだ、終わりそうにない。 あたりから立てる物音は、奈津子の起こす、肌擦れ、衣擦れだけ。 絶えることのない、しかし一定というには心地よい揺らぎを孕んだ波音が、その小さな物音をそっとさらっていく。 見上げた風は、やわらかかった。 /*/ 意識が覚醒すると同時に、瞬間的に英吏は跳ね起きた。 時間の経過は。負傷の有無は。空間把握、音や空気の匂いの変化からして先ほどまでいた場所と明らかに離れた場所にいる。薄暗がりだ、だが身体感覚に異常はない、体内時計にも狂いはない。戦闘に支障はない。携行していた武器は。ある。斎藤とクイーンはいるな。あの得体の知れない連中は。 主の機敏な反応に、クイーンも唸りを上げて戦闘準備態勢を取り戻す。 「気付かれましたか?」 その機敏さとは対照的なゆるやかさで、隣にあった誰かの気配が、少し、遠のいた。警戒をさせないような間合いの取り方とは裏腹に、振り返る英吏の前で相手の姿がかき消える。 「英吏さん」 「分かっている。攻撃準備を」 英吏はひとたびトリガーを引き絞ればフルオートで鉛玉を叩き込む機関拳銃を構え、奈津子は何も持ってはいないが、とりあえず緊張した面持ちでいつもよりひどく真面目に口元を引き結んでその隣に立った。一番機動力のあるクイーンは、二人の斜め後ろで警戒をしている。 鋭いまなざしで戦闘隊形を取る二人と一匹をよそに、相手は再び英吏の隣に現れた。声同様、外見も記憶と一致、先ほどの赤星という浴衣姿の男だ。 「とにかくここでの戦闘行動は慎んでもらえませんか?」 声は、変わらず、そっと、こいねがうような声だった。瞳は、そっと、こいねがうような、まなざしだった。穏やかな悲しみに満ちている。 赤星は、同じ内容をもう一度繰り返した。 「悲しむ人達がいます。戦闘は回避してもらえませんか?」 「嫌だといったら?」 間髪のない返答に、彼は少し間を取った。言葉を選ぶ様子は伺えたが、そこに意図は見られなかった。どうすれば自分の言葉が相手に伝わるか、それだけを考えている、そういう人間の顔だった。 「直接止める手立てはこちらにはありません。最初に火足さんが言ったはずです。私たちは武装してもいない。」 「……」 沈黙するのは、今度は英吏の方だった。自分の姿が一度消えたことなど、どうでもいいかのように一顧だにしない相手の態度に、もう一言だけ、待つ。 「ただ貴方達に会いたかった。それだけです。」 英吏は笑った。 相手の素性も、ここがどこかもよくはわからんが、動機に嘘はなかろう。心に嘘がなければ許してやるのが、芝村というものだろう。相手の、赤星の言葉を聞き、それを思い出したから、英吏は笑った。この男に免じて、今日のところは他のものも等しく許そう。あの、亜細亜とかいう怪しい子供のことも。 「まあいい。お前達のいった方法、試してみるか。」 戯言ばかりで結局あれこれとわからんことは残ったが、一つ、思い出せただけで充分だ。それに、これが成功すればさほど脅威に考える必要もなくなるわけだしな…。 「ここにはいたくない」 英吏は消えた。クイーンをつれて。 「あ、ちょ、まってくだ! ここにいたくない!」 それを見て、慌てて奈津子も後に続く。 後に残るのは、静かな潮騒だけになった。 「すいません、英吏さん…ありがとう。」 赤星はうつむいた。何かを祈るような、姿だった。 「こんな事になるつもりではなかったのです。いつかもっと良い形でお会いしましょう。英吏さん、奈津子さん、クイーン。」 /*/ 遠く、祭囃子が聞こえた。 今はもう、誰も顧みる事のない潮騒に、欠けた月が傾きながら昇っていく。じんわりと汗を誘う暑気が、小笠原の夜を賑わわした。 風が、雲を押し流す――― /*/ ~小笠原の夜~ 了 /*/ 暗闇に薄い黄金の光が帯を描いてのびていく。なだらかで、それは大きく上下していたが、光には二つの核があった。 まなざしが、飛ぶように運ばれている。そのまなざしは吸い込むようにあたりの環境情報を取り込み分析、瞬く間にも、脳内に叩き込まれた地形データとの相違点、それがここまで取得してきたデータと比較して許容される範囲内で収まっているかどうかを判断している。 黄金色にも似た明るい茶色の瞳。 「…異常、なし。戻るぞ、斎藤」 「は、はい!」 それは芝村の裏切り者と後に呼ばれることになる芝村英吏と、斎藤奈津子、そして彼ら山岳騎兵の友、動物兵器・雷電、クイーンオブハートの一行であった。 激動の戦乱を潜り抜け、ようやく警戒レベルを引き下げることが出来るようになった、広島の近隣山中を僅か二人と一匹での斥候に出ていること自体が、状況の好転具合を物語っている。 逞しく太い英吏の胴回りに、腕を回す形でしがみついていた奈津子は、斥候とは名ばかり、常人の数百倍の筋力を有する軍の秘密兵器である。彼女が本気を出せば、今、乗っているクイーンよりも早く「飛ぶ」ことすら可能だ。 濃密に繁る緑と、大地と木々の深い焦げ茶色が、野を駆け巡っていた彼らの目には、溶けたようにも、また、止まったようにも見えている。原初の人類とは遠く能力をかけ離れてデザインされた存在の、すさまじさであった。 クイーンが速度を緩めた。 英吏も違和感を覚える。前にも感じたことがある。これは…… 「!」 夜の広島に、いくばくかの光。 遠い呼び声。そこにある、少女の思いを、果たして誰が最初に気付いただろう。 気がつけば、そこは海の香りがする世界――― 「英吏さん……?」 「またここか」 用心深くクイーンの背から降りながら、英吏は奈津子の手を握った。尻尾までしびれる勢いの奈津子。 「にゃ、にゃぁ!」 「……離れるなよ。夏祭りだろうから」 「は、はいっ!」 彼らはまだ、これから来る出会いと再会を知る由もなかった――――……… /*/ -The undersigned:Joker as a Clown:城 華一郎