約 1,001,329 件
https://w.atwiki.jp/ryugugakkou2013/pages/7.html
九条院卓也の龍宮な日々「月とバニラ」(7/4) 九条院卓也の龍宮な日々「月とバニラ」(7/25) 九条院卓也の龍宮な日々「月とバニラ」(8/8) テーマ:仕事、息子、その他。 テーマ:仕事、息子、その他。 テーマ:仕事、息子、その他。 遅い朝。 今日も朝から暑かった。 朝から暑い。 夏の濃い日差しを感じる。洗濯物を取り込んだというだけで、すでにほんのりと汗ばんでいる妻の肌。 洗濯物を取り込んだというだけで、妻は軽く汗をかいていた。 洗濯物を取り込むだけでも妻は汗をかいていた。 ここのところずっと暑い日が続いているが、過ごしづらいほどでもない。 決して、過ごしづらいほどの暑さでもなく、これぐらいでちょうどいい。 だからと言って、決して過ごしづらいほどの暑さでもなく、これぐらいでちょうどいいかも知れない。 これぐらいでちょうどいい。 ほどなくして妻を見送る。。業者から店にアイスを下ろしに行くらしい。重たいクーラーボックスを5つぐらい車に積むわけで、女手ひとつで大丈夫だろうか。 仕事に行く妻を見送る。 仕事に出掛ける妻を見送る。 まずは、業者から店にアイスを下ろしに行くのが日課であるという。 業者から届いた荷物を店に下ろすのが日課であるとかなんとか。 せめて卸売の業者のにいちゃんが力仕事を手伝ってくれたら有難いのだが。 部屋に1人残され、水回りの整理と、布団を取り込むのが私の仕事。 部屋にはオレ1人。水回りの整理と、布団を取り込むのが残された者の仕事だ。 部屋に1人残されたオレは、水回りを整理したり、布団を取り込んだりするという重役を仰せつかっている。 昼食は、ホットケーキにサラダに、冷製のトマトスープ。これなら洗い物も少なくて済む。 昼食は、ホットケーキとサラダと、冷製のトマトスープ。 昼食は、トマトの冷たいスープ、ホットケーキ、サラダ。 レンジで温めたホットケーキの上にバニラのアイスを1玉乗せるのが最近のお気に入りだ。 そして、レンジで温めたホットケーキの上に、妻の仕事の残り物のバニラのアイスを1玉乗せるのが最近のお気に入りだ。 ホットケーキをレンジで温めてからバニラのアイスを1玉乗せるのが最近のオレのお気に入りだ。 バニラアイスは妻の仕事の残り物で、でっかいタッパーに入った状態で我が家の冷凍庫の大半を占拠している。 会社に着いたのは、昼の2時を少し過ぎた頃だった。 昼の2時を少し過ぎた頃に会社に着く。 昼の2時を少し過ぎたあたりに出勤。 正社員となり2年目の夏。 正社員となり2年目の夏。 正社員となって2年目の夏。 30歳を過ぎてなお、私はこの会社でバイトの身分に甘んじていた。壁を1枚隔てた隣のフロアには、伝票整理をしながら居眠りをしていた頃の私をよく知る連中が当時と変わらぬ配置のままで居るのかと思うと、なんとも不思議な感覚がある。 30歳を過ぎても、オレはこの会社でバイトの身分に甘んじていた。壁1枚隣のフロアには、伝票整理をしながら居眠りをしていた頃のオレをよく知る連中が当時とほとんど変わらないデスクの配置のままで居るのかと思えば、じつに不思議な感じがする。 30歳を過ぎてなお、オレはこの会社でバイトの身分に甘んじていた。 甘んじるも何も、伝票を数える途中で居眠りをして、どこまで数えたかわからなくなって結局イチからまた数え直す…などという体たらくがしょっちゅうだった。 壁1枚挟んだ隣のフロアには、その頃のオレをよく知る連中が当時とほとんど変わらないデスクの配置のままで居るのかと思うと、つくづく感慨深いような、不思議な感じがしないでもない。 居眠り小僧が今では、上役出勤だ。 かの居眠り小僧が、今では上役出勤。 居眠り小僧が、今では上役出勤というわけだ。 ある所では時が止まり、ある所では時が進む。そんなようなファンタジー小説を遠い昔に読んだような気がする。誰の何という本だったのか、時間がある時にでも調べてみるとしよう。 ある所では時が止まり、ある所では時が進む。そんなようなファンタジー小説を遠い昔に読んだような気がする。誰の何という本だったのか、時間がある時にでも調べてみるとしよう。 ある所では時が止まり、またある所では時が進む。云々。 なんとなく、そんなようなファンタジー小説を遠い昔に読んだような気がするのだが、誰が書いた何という本だったかまではよく覚えていない。時間がある時に調べてみるとしよう。 1週間の中で、昼過ぎに出社するのが2回。多くて3回。今のところ、誰も何とも言わない。 1週間の中で、昼過ぎに出社するのが2回。多くて3回。今のところ、それを咎める奴など居ない。 1週間の中で、昼過ぎに出社するのが2回か3回。今のところ、それを咎める奴は居ない。 たかだかその程度のロスならば仕事でキッチリと返してやる自信が私にはある。 たかだかその程度のロスならば仕事でもってキッチリと返してやる自信がオレにはあるのだ。 たかだかその程度のロスならば仕事でもってキッチリと返してやる自信がオレにはある。 すなわち、仕事の量よりも、質。 仕事の量よりも、質。なんとも便利な言葉である。 部長とか課長とかの役職とは別に、プロジェクトリーダーというのを何回か連続してやっているわけで、とりあえず、ヒラの分際で部長クラスにモノが言える今のポジションがむしろ気に入っている。 部長とか課長といった役職とは別に、プロジェクトリーダーというのを何回か連続してやっている。 部長だの課長だのという役職とはまた別に、プロジェクトリーダーというのに何回か連続して任命され続けて今に至っている。 とりあえず、ヒラの分際で部長クラスにモノが言える今のポジションが気に入っている。 これがまた有り難い事に、ヒラの分際で部長クラスにモノが言えるのだからじつに占めたものである。 下手に管理職になど就いて、メクラ判を押すだけの仕事に明け暮れるとなると、クリエイターとして丸くなった、などと後ろ指を指されるのがオチである。 これがまた、下手に管理職になど就いて、メクラ判を押す仕事に明け暮れるとなると、穿った連中から、あいつはゲームクリエイターとして丸くなった、などと後ろ指を指されるに決まっている。 むしろ、下手に管理職になど就いて、メクラ判を押すだけの仕事に明け暮れた日には、妙に穿った見方をする連中から、あいつはゲームクリエイターとして丸くなった、などと後ろ指を指されるのがオチだ。 やっぱり、これぐらいがちょうどいい。 やっぱり、オレはこれぐらいがちょうどいい。 やっぱり、オレにはこれぐらいがちょうどいいのである。 だいたいいつも、5時の少し前になると各人のデスクにお局がお菓子を配り歩くのだが、こいつがまた、人をイライラさせる天才である。 いつも、だいたい、5時少し前になれば、銘々ののデスクにお局様がお菓子を配りにやって来る。 いつも、5時少し前になると、我が部署の銘々のデスクにお局様がお菓子を配りにやって来る。 こいつがまた、人をイライラさせるのが天才的に上手い。 このお局様がまたクセモノと言うか、どうやら、人をイライラさせる天賦の才能を持って生まれてしまったらしい。 ある時は、おみくじに見立てたクッキーを皆に1つずつ差し出して、若い社員がたまたま大凶を引いたのを見て大爆笑。その上に、「私もさっき引いたけど吉だったわよ」などと畳み掛けやがった。 ある時は、おみくじに見立てたクッキーを皆に1つずつ差し出し、若い奴がたまたま大凶を引いたのを見て大爆笑。しかも、その直後に、「私もさっき引いたけど吉だったわ」などと畳み掛けてくれた。 こないだなんて、おみくじに見立てたような洒落たクッキーを皆に1つずつ差し出し、たまたま若い社員が大凶を引いたもんだから大爆笑。しかも、その直後に、「私もさっき引いたけど吉だったわよ」などと畳み掛けて若僧の息の音を止めた。 またある時は、他の社員がうまく受け取れなくて床に落としたチョコの1粒を拾い、そのまま缶の中に戻してから、中身をグルングルンとかき混ぜながら薄ら笑いを浮かべていた。 また別の日には、飴玉のように銀紙にくるまったチョコを、でっかい缶ごと持って配り歩いていたのだが、たまたま他の社員がうまく受け取れなくて床に落としたチョコの1粒を拾って、そのまま缶の中に戻してから、中身をグルグルとかき混ぜながら、ニヘラ…と不気味な笑いを浮かべていた。 別の日には、飴玉のような感じで銀紙にくるまったチョコを、大きな缶に入ったまま持って配り歩いていたのだが、別の奴がうまく受け取れなくて床に落としたチョコの1粒を拾ったかと思えば、そのまま缶の中に戻して、中身をグルグルとかき混ぜながら、ニヘラ…と不敵な笑みを浮かべていたのだった。 まぁ、チョコは銀紙にくるまっていたため落としてもたいして問題はないし、潔くその場で配ってしまっても良いのだが、缶の中に戻して混ぜるとなると、いささか悪意を感じるから笑える。 もちろん、チョコは銀紙にくるまっているから落としてもたいして問題はないのだが、缶の中に戻して混ぜるという発想自体、少なからず悪意を感じてしまう。 もちろん、チョコは銀紙にくるまっているため落としても衛生上はたいして問題はないかも知れないが、缶の中に戻して混ぜるという発想自体には少なからず悪意を感じずにはいられない。 そんなこんなで、私にとって、このお局の習性を観察するのが社内での密かな楽しみのひとつになりつつあるわけだ。 と、まぁそんなこんなで、このお局の習性を観察するのがオレの社内での密かな楽しみのひとつになりつつあるわけですな。 と、まぁ、何を隠そう、このお局の習性を観察するのがオレの社内での密かな楽しみのひとつになりつつある。 そうして、今回は何をしでかしたのかと言うと、あろう事か、私の妻の物真似である。 そして、今日のところは何をしでかしたのかと言うと、事もあろうに、オレの妻の物真似である。 そうして、今日は今日でまた何をしでかしたのかと言うと、よりによって、オレの妻の九条院彩夏…の物真似である。 とうとうやりやがったか。 相変わらず、外れがない。 相変わらず、外れがない。 いやいや、まったく。相変わらず外れがない。 クッキーの箱を小脇にかかえ、くじょういんさぁ~ん…などと、妙にクネクネとしたイントネーションで私を呼びつつ、妖艶なつもりで足を組み換えて見せたりで、挙げ句の果てに、口角に舌先を引っ掛けながら不気味に笑っていやがるではないか。 どっかの外国のクッキーの箱を小脇にかかえて、くじょういんさぁ~ん…などと、クネクネとした変なイントネーションでオレを呼んだかと思えば、妖艶なつもりで足を組み換えて見せたり、しまいには、舌の先を口角に引っ掛けながらこれまた不気味に笑っていやがる。 外国だかどこかのクッキーの箱を小脇にかかえつつ、くじょういんさぁ~ん…などと、クネクネとした不気味なイントネーションでオレを呼んだかと思えば、いかにも妖艶なつもりで足を組み換えて見せるなど、体全体を使って、じつに生き生きとパフォーマンスしている。 極めつけは、舌の先を口角に引っ掛けながらニタニタと不気味に笑いやがって。なるほど。確かに、彩夏だ。 まったく、ここまで堂々とやられたらたまったもんじゃない。 向かいの席の若い奴があからさまに笑いを噛み殺そうとして、見た事もないような妙な表情になっている。 向かいの席の若い社員があからさまに笑いを噛み殺そうとして、入社以来誰にも見せた事もないような妙な表情になっているじゃないか。 向かいの席の若い社員と来たら、おそらくオレに気を遣ってか、あからさまに笑いを噛み殺そうとして、痙攣か引き付けでも起こしそうな妙な表情になっているではないか。 もういい。わかったわかった。 もういい。わかったわかった。降参だ。 オイ、お局。 よし、もういい。わかった。お局。お前には、冥土の土産に「月とスッポン」という諺を教えてやろう。 お局。どうやら、お前には、冥土の土産に「月とスッポン」という諺を教えてやるしかないようだな。 お前には、冥土の土産に「月とスッポン」という諺を教えてやるしかないらしいな。 それともうひとつ。九条院は妻の姓で、私は婿養子である。なので、妻が私を「九条院さん」と呼ぶのはあり得ないのだ。 それと、九条院は妻の姓で、オレは婿養子である。だから、妻がオレを「九条院さん」と呼ぶのはあり得ないのだ。 それと、九条院は妻の姓で、オレは婿養子である。 だから、妻がオレを「九条院さん」と呼ぶのはあり得ないのだ。 まぁ、どの道お前には関係ないし、関係なくて構わないのだが。 まぁ、どの道お前には関係ないし、関係なくて構わないのだがねぇ。 まぁ、どの道お前には関係ないし、関係あったらむしろ困るぐらいなのだがねぇ。 いやはや、見てはいけない物を見てしまった。 まったく、見てはいけない物を見てしまった。 いやはや、まったく、見てはいけない物を見てしまった。 今日のところは、思いのほか仕事もはかどった。 とりあえず、今日のところは、思いのほか仕事もはかどった。 そうは言いつつも、肝心の仕事が思いのほかはかどったのは有り難い。 さて、ビールでも買って帰るとするか。 さて、ビールでも買って帰るとしよう。 さてさて、今日のところは、ビールでも買って帰るとしようか。 月がキレイだ。 月がキレイだ。 月がキレイだ。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/dangerousss4/pages/105.html
大発表への反応~柊時計草(風月藤原京)の場合~ その日、二人にして一人の探偵は朝の街並みを歩いていた。 まださほど照らしていない内だと言うのに、日差しを避けるためかひどく重装備である。 服装は白いマスクに、念のために眼帯を付け、帽子も白いパナマ。白いトレンチコートに、白手袋、白、白、白。 ニーソックスは黒い。 まるで病院から脱走してきたかのような風体だが、自分は探偵ではありませんと主張するには十分だった。 とは言え、人通り少ないとは言え、通行人の反応は気になるところだが、時勢も時勢であり咎める者はいなかった。 グルジア(ジョージア)の沿岸部から発見された新種の蟹ウィルス「アンフィサ(花咲)」の伝播を警戒する気の早さか、それとも日本人特有のお互いを庇いあう習性、それが最適に思える解(いいわけ)だろうか。 二人の服装、これは魔人能力「オリカミ」によって編んだ一例であるが、これだけの容積を割いてなおロングヘアーと言える分量を残している。複雑に編み込み、地に着かないように長さを絞った。 髪は人の倍長い。 肌寒さを感じるには過剰染みていたが、自分が人間だと思い込んでしまった人形(ピノッキオ)なら仕方ない。 そう――片割れに知らせず嗤(わら)った。 そんな風にして、探偵としての気配を押し殺した二人は街角に埋没するようにして、まだ無人の公園のベンチに座る。ノートパソコンを開く。 ある筋からの情報、隠す必要はないから言っておくが、「革命暦(カランドリエ)」とか言う胡乱な連中からだが、「時逆順」を持つ者についての情報があるらしく、特にネット配信を開くことにする。 彼女たちに気を許す気は全く無かったが、手間を割く暇を思えばこの程度は許容範囲だった。 放送が始まり、これを見る。 これも探偵としての基礎技能か、始まる放送を見逃すまいと目と花を開く。 結論を先に言えば、朝の公園で声を出さなかったのは奇跡と言うべきだろう。笑った嗤った哂った。 時逆順、貴様はそんなものに成り果てたのかと、笑った。服に、髪に、押し殺し、包んで、わらった。 その狂笑は音を吸収した髪にそのまま染み付いたのではないか? と自分で思わせるほどだった。 議員の提案は一顧だにしていない。 二人は別に日本国に関して悪感情を持っているわけではない。 一時は法の下に禄を食んでいたことを踏まえれば、多少思うことはあるが、おめでたい小娘だと切り捨てる。 「『馬鹿みたいな女が築く世界、その中で私達のような存在が生まれてくることはないだろう。 ……、それを思えば、いやよそうか』」 「ん、時計草? どうしたの、消そうか?」 「『……、いや。議員と言う社会的影響力は侮れない。後ろ暗い事情を抱えた連中を引き寄せるのはまずないだろうが、有象無象の被害者たちを解放してくれるなら、手間が省けていいじゃないか』」 「いや、そうじゃなくて。放送の事、最後まで見てなくて途中上の空だったでしょ?」 「『ああ……、そっちか』」 そっちは、ね。ノーコメントだ。 「それより、この飯田カオルって議員。『そ、何の後ろ盾もないホームレスの娘が初当選ねぇ。怪しいとでも言って欲しいの?』いや、その。『欲しいの?』あ、その。『の?』はい」 「『それは怪しいよね』」 議員の略歴を見るだけで瞭然の事、わざわざ言わなくても。 だから、こんな意味の無いやり取りをしている。いつまで出来るのかはわからないけれど。 「『資金の流れを辿りましょう。交渉材料になるかも』」 常識の範疇で収まる連中への交渉材料はいくつか持っている。 ここまでの「時逆順」を巡る戦いで穏便にお引き取り願ったことも一度や二度ではない。 だが、「腹時計」と成り果てた「時逆順」を見て、一つの確信を得ると共にこれからは常軌を逸した信念や性癖の持ち主とぶつかるであろうと直感する。 四択のアンケートを無視し、ブラウザを消す。 ついでに壁紙も先の議員か、はたまた別のリフレインを想像したのでPCを折り閉じた。 探偵は立ち上がる。来る際と異なるのは片腕をポケットに縫い付けている点だ。 ああ、痛いな。脳に痛覚は無いと言うが、この不快さと屈辱感は二人で共有している。 やる瀬の無い怒りをアルコールで強制的に黙らせると、二人にして一人は歩き出した。 流石に一五歳が二人いるからと言って二倍の計算は、酒屋さんには通らないらしかった。 際限の無い力が何をもたらすと言うのか、そこまで思い悩んでいる者がいれば、会ってみよう。 そうでないなら容赦はしない。 二人が去って、かさりと茂みが動いた。 「っ、だーーーーーーーー! 尾行とかまどろっこしい! ふっくん、とっとと推理パートに移るよ!」 『ショウ子、私としては話がさっぱり読めないんだが……』 「『飯田カオル』と『時逆順』、さっきからブツブツ言ってたあの怪しい探偵も所有者に間違いないよっ! 私の推理(ゴースト)がそう囁いてるっ!」 『君の場合は叫んでいそうだな……、いや探偵同士は魅かれ合うんだったか」 やれやれと、身体があったら肩をすくめていわんとばかりな口振りだった。元気な探偵、山禅時ショウ子に続く、彼女の相棒ふっくんの声だった。 『で、彼女が何なんだい?』 「人工探偵はほっとけない! 三千字の敵はどの流派だろうとぶっ飛ばさないと!」 『また、それか……、君は?』「え?」 「『うわああーあーあーーーーーーあーーーーー!?』」 直後、次元のはざまっぽい裂け目に吸い込まれる二人であった。 まぁ、半転校生にはよくあることである。この場合だと、探偵を呼ぶ声なき声が探偵を引き寄せたと言うことだろう。転校生にはよくあること、半転校生には選べないというだけで。 さて、彼女が推理を開始する前にどこかに行ってしまったので地の文が代わりに申し上げておく。 そもそも事件は始まってないじゃん? 今、捜査パートですしおすし。 ……と、言うわけで探偵達は図らずも邂逅せずに去っていった。 時計の破壊を目論む探偵と、全次元宇宙を破壊する危険性を孕んだ探偵、互いが互いの事を知るのは、止まる時間の果てか、忙しく時間の流れか、それは誰にもわからない。 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/multiple/pages/40.html
ストレイト・クーガー◆o9OK.7WteQ 「ああっ、文化は本当に素晴らしい! 俺は文化が大好きだ!」 読み終えた本を閉じ、男は言った。 両腕を大きく広げ廊下を歩いている姿は、まるでこれから演説を始めるかのよう。 トレードマークの紫色のサングラスは前髪の一部に引っ掛けられていたが、その目は閉じられた瞼に遮られ見る事が出来ない。 「文化―――それは人の営みの中で育まれる素晴らしいもの、俺はその中でも本を推す、映画も良いが一定時間拘束されるという欠点があるからだ、 だが本は違う、本人の努力次第で拘束される時間を短縮出来る、それではじっくりと楽しめないだろうと思うかもしれないが、逆に濃密な時間を過ごせると考える人間もいる、俺がそうだ。 そして文化の中にはただ平和に生活するだけでは成長しないものもある、それは何か? それは“力”だ、人は昔から常に何かと戦ってきた、それは自分を守るため、狩るために襲い掛かってくる動物、理不尽だとも思える自然災害、 そして人間が戦ってきた中で一番の強敵は同じ人間だ、同じ人間同士が戦うことで力の文化は大きく発展してきた、そう、人は本来争う生き物だから」 圧倒的な言葉の奔流。 それを聞く者も止める者もこの場には誰一人存在しない。いや、いたとしても止められはしないだろう。 男は本を片手に持ったまま図書館を出た。貸し出しの許可を得ろと咎める人間もここにはいなかった。 夜の闇の中、男の言葉は途切れること無く加速していく。 「そして俺はその争いの中にいる、これは俺の最も愛するものを高めるために最適な環境、戦いは非文化的と言う奴もいるかもしれないがそんな事はない、 やり方による、それにここには歯ごたえのある奴がわんさかいそうだ、俺は戦闘大好きな馬鹿じゃないがさすがに胸躍った、それが俺の人生を縮める事になったとしてもだ、自分が成長する事を拒絶する人間がいるか? いや、いない!!」 男は目を見開くと手に持っていた本を天高く放り投げ、そのまま流れるように前髪をはじきサングラスをかけた。 「―――しかし俺はこうも考えている、他人に運命を左右されるとは意志を譲ったということだ、意志なきものは文化なし、文化なくして俺はなし、俺なくして俺じゃないのは当たり前、そしてぇっ!!」 この戦いが自然に起こったものだったら、例えそれが命のやり取りだとしても男はそれに参加していたかもしれない。 だが、この戦いは一人の男が一人の少年に復讐するために起こしたもの。それに参加する事は利用される事と同義。 この男は利用される事を良しとしない。 「ラディカル! グッド、スピィィィード!」 重力に負け落下してきた本が男の叫びに呼応するかのように粒子に変わり、同様に地面の一部も鋭利な刃物で抉られたかのような跡を残し光になった。 その虹色の光の粒子が男の両脚に絡みつき、 「脚部限定!」 銀色と紫色を基調とした輝く流線型の装甲を形作った。 かつて横浜を中心に原因不明の隆起現象が発生し、半径30kmにも及ぶ地域が本土と切り離された。その地は『ロストグラウンド』と呼ばれ、日本政府の尽力によりある程度の復興をみせた。 しかし、その支援は全ての人間には行き届かず、復興した市街の住人と崩壊した地区の住人、通称「インナー」と呼ばれる人間達とで分かれ、二層社会を形成してしまう事となった。 これだけならばまだロストグラウンドが日本に復帰する見込みは十分にあった。だが、現実はそう甘くはなく、誰もが予想しないものとなった。 それは、ロストグラウンドで生まれた新生児の中に『アルター能力』という特殊能力を持つ者が現れ始めたからだ。 アルター能力。精神感応性物質変換能力とも呼ばれ、自らの意思により周囲の物質を分子レベルまで分解し、各々の特殊能力形態に合わせ再構成する能力である。 その形態は千差万別で、例外を除けば同じ形状や能力のものは一つとして存在しない。理由としては、アルター能力が能力者自身の性格や願望を具現化したしたものだからだという説が有力だ。 そして、その説が間違いではないと最も思わせられる人物がこの男だった。 「衝撃のファーストブリットぉ!」 超高速で放たれた蹴りが図書館の外壁に大穴をあけた。 その速度、破壊力はすさまじく、常人ならば知覚することすら困難だろう。 「足りない! 足りない足りない足りないぞぉっ! 今の俺には―――」 だが、男はまるで満足していなかった。 蹴りを放ち終わったと同時に疾駆。それは破壊された外壁が巻き上げた砂塵を置いていく程の速度。 「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ、は足りている! だがっ!」 しかし、その速度は、 「―――速さが……足りない! 俺が遅い、俺がスロウリィ……!」 男の満足するものではなかった。 男は文化と、そして何よりも“速さ”を愛していた。 それは彼のアルター能力、『ラディカル・グッドスピード』が、全てのものを速く走らせることが出来る、という力を有している事からもわかる。 だが、今はその速度が制限されている状態にあった。 それは何故か? 考えるまでもない。 「どこかで聞いているんだろう!? ジラーミンさんよぉ!」 ……男は主催者の名前を間違えていた。 命は相手に握られている。首につけられた爆弾がその証で、威力の程は確認済みだ。 もし、これから言う言葉を本当に聞かれていたら、問答無用で首輪を爆発させられる可能性もある。 だが、 「お前は重大で決定的で取り返しのつかないミスを犯した、それは集めた人間の中に俺がいたって事だ、さらにその俺の前で明らかに戦う気の無い人間を殺した、さらにさらに俺から“速さ”まで奪った! 気に入らない! それが復讐のためだってんだから尚更気に入らないっ!! つまり俺はお前に逆らった上で倒すと即決即納即効即急即時即座即答ォーッ!!!」 その程度でこの男は止まらない。 「…………」 少しの間待ってみたものの返答は無く、首輪も爆発しなかった。 しかし男はそれが、やれるものならやってみろ、という無言のメッセージだと勝手に受け取った。 男は自分の発した言葉があまりに早口すぎたため、相手が聞き取れなかったという可能性は微塵も考えていない。 「……ハッハッハッ、ハー!」 「―――さあ、始めるとしますか」 最強と呼ばれたアルター使い、ストレイト・クーガーは宣言した。 【D4/図書館前/深夜】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [状態]:健康 [装備]:HOLY部隊制服、文化的サングラス [道具]:支給品一式 不明支給品(0~2) [思考・状況] 1・ジラーミンに逆らう 2・ジラーミンを倒す ※ジラーミンとは、ギラーミンの事です 時系列順で読む Back ruins Next 一方通行 投下順で読む Back ruins Next 一方通行 GAME START ストレイト・クーガー 一人では解けない 真実のパズルを抱いて。
https://w.atwiki.jp/9tail/pages/127.html
好感度 那爪 一章 姉さん女房 あんまりサボるなと釘をさす 奉公人那爪 繕いを頼む 飛脚阻止 深く追求 二章 滝で那爪と 認める 子供と那爪 可愛らしい 己がために 朱火ならここに 姫の臣-那爪の部屋 ここで 辻斬り事件 那爪を止める 妖魔の人形 那爪、後を頼んだぞ 二人の約束 仲間と共に 三章 見えない糸 分かった 松鯉屋と那爪 断る いざ、朝廷へ 那爪 夕凪 二章 里の異変-夕凪について それでも夕凪 誓いは胸に 受け取る 薬剤師 夕凪 ありがたく 絶え間なき責め苦 いつもか 二人の約束 死者への 狐狸 頼んだぞ 三章 いざ、朝廷へ 夕凪 山小屋の一夜 許す 僧群魔行 駄目だ 父と子 俺は父上 四章 薬剤師 夕凪2 部屋に入る 柳の下 夕凪を励ます 大和撫子 女として 朱火 一章 宗谷山内偵察 「力を合わせて」 衛生的? なるようになるか 調虎離散の計 姫の様子を 二章 馬子にも ねぎらう 己がために 朱火が逃げたとは? 妖魔の人形 朱火、死ぬなよ 身代わり作戦 娘たちを 二人の約束 組頭として 刈羽峠越え 朱火、 三章 夢中 集中する事は いざ、朝廷へ 朱火 国境の逃走者 任せた 四章 つまみぐい くれるのでは 紗代 一章 三津砦奪回作戦 行くべき 調虎離散の計 姫の様子を 二章 紗代の覚悟 嫌ではない 東間の評定 家臣以上の 家中疑心 どうかご自分を 無明の転落 紗代姫を守る 二人の約束 故郷を 当主の覚悟 承諾する 刈羽峠越え 紗代姫、 三章 在りし日の たまには いざ、朝廷へ 姫様 蛍火精 -4 四章 雷光の記憶 私が 茶会 そんなことはありませぬ さくら 一章 松鯉屋のさくら 「案ずるな。・・・」 訪問者 さくらを気遣う さくらの思慕 「落ち着け、」 家臣 一章 三津砦内情視察 快諾 二章 姫の臣 判りました 東間平野の火計 そのようなことはない ポイント 情30 一章 松鯉屋のさくら 「案ずるな。・・・」 訪問者 さくらを気遣う 宗谷山内偵察 「力を合わせて」 聞きたい事を頭の中でまとめた 夕凪について 衛生的? なるようになるか 三津砦内情視察 快諾 飛脚阻止 深く追求 二章 子供と那爪 可愛らしい 巾着切りと那爪 許してやる 姫の臣-那爪の部屋 ここで 里の異変-夕凪について それでも夕凪 辻斬り事件 那爪を止める 妖魔の人形 朱火、死ぬなよ 誓いは胸に 受け取る 紗代の覚悟 嫌ではない 東間の評定 家臣以上の 身代わり作戦 娘たちを 絶え間なき責め苦 いつもか 家中疑心 どうかご自分を 東間平野の火計 そのようなことはない 二人の約束 仲間と共に 狐狸 大丈夫なのか? 三章 夢中 集中する事は いざ、朝廷へ 姫様 山小屋の一夜 許す 僧群魔行 駄目だ 四章 雷光の記憶 私が 氷の造形美 花 大和撫子 女として 茶会 そんなことはありませぬ 忍40 一章 松鯉屋のさくら 「辛いとは思うが・・・」 訪問者 さくらの行動を咎める 姉さん女房 あんまりサボるなと釘をさす 宗谷山内偵察 「俺が囮になる。」 さくらの思慕 「・・・・・・駄目だ」 兵站奪取 俺が斬りこむ 戦闘・鋼の殺意 引き分け 三津砦内情視察 冷静に 飛脚阻止 納得する 三津砦奪回作戦 危険です 調虎離散の計 いや、ここに残ろう 二章 馬子にも 忠告する 巾着切りと那爪 役人に引き渡す 姫の臣 ・・・・・ 里の異変 もう少し情報を 里の異変-夕凪について もし叶わぬなら 辻斬り事件 弦を斬る 妖魔の人形 喜兵太、万一のときは頼む 新たな仲間 国境付近の芦屋方の動きを探る 紗代の覚悟 黙っている 身代わり作戦 任務のために 招かざる客 断る 無明の転落 籠を追う 東間平野の火計 それは、仕方のないこと 二人の約束 故郷を 狐狸 頼んだぞ 当主の覚悟 承諾する 刈羽峠越え 朱火、 三章 見えない糸 納得できん 在りし日の 少々気が いざ、朝廷へ 朱火 山小屋の一夜 叱る 僧群魔行 黙っていろ 国境の逃走者 任せた 黒暗淵 受け入れる 黒暗淵 道眼 四章 雷光の記憶 我等が 柳の下 夕凪を叱り付ける 氷の造形美 月 つまみぐい ほどほどに 業22 一章 宗谷山内偵察 「俺が囮になる。」 聞きたい事を頭の中でまとめた 七人衆について 兵站奪取 俺が斬りこむ 三津砦奪回作戦 行くべき 二章 姫の臣 ・・・・・ 里の異変 乗り込む 里の異変-夕凪について もし叶わぬなら 妖魔の人形 喜兵太、万一のときは頼む 新たな仲間 霞谷付近の情報を集める 誓いは胸に 受け取らない 身代わり作戦 任務のために 二人の約束 死者への 刈羽峠越え 紗代姫、 三章 見えない糸 納得できん 松鯉屋と那爪 仲介する 博打打ちと那爪 博打に参加する 流麗なる上忍 耳に いざ、朝廷へ 夕凪 僧群魔行 黙っていろ 父と子 俺は父上 黒暗淵 受け入れない 黒暗淵 幻左衛門 責33 一章 姉さん女房 婚約のことを言う 宗谷山内偵察 「力を合わせて」 聞きたい事を頭の中でまとめた 冥極党について 衛生的? 後でもう一度釘を 三津砦内情視察 快諾 二章 馬子にも ねぎらう 子供と那爪 微笑ましい 己がために 朱火が逃げたとは? 姫の臣 判りました 姫の臣-那爪の部屋 そうだな 里の異変 もう少し情報を 妖魔の人形 那爪、後を頼んだぞ 新たな仲間 城下を中心に態勢を立て直す 東間の評定 穴井老の立場 薬剤師 夕凪 他の者に 家中疑心 どうかご自分を 無明の転落 紗代姫を守る 東間平野の火計 それは、仕方のないこと 二人の約束 組頭として 狐狸 大丈夫なのか? 当主の覚悟 いさめる 刈羽峠越え 紗代姫、 三章 見えない糸 分かった 夢中 気にするな、 博打打ちと那爪 負け分を払う いざ、朝廷へ 那爪 山小屋の一夜 許す 父と子 父上のどんな 国境の逃走者 大丈夫なのか 四章 薬剤師 夕凪2 この場を去る 柳の下 夕凪を励ます 大和撫子 姉として 茶会 そんなことはありませぬ 合計 情 忍 業 責 1~5 一般兵・足軽 刺客・下忍 追いはぎ・山賊 流れの浪人・浪人 6~10 忠義の忍軍・霞谷衆 くノ一・百舌衆 不気味な僧・虚無僧 刺客組頭・中忍 11~19 工匠・朱丸 東間の忠臣・弥七郎 浅賀の暴君・辰由 燃える商魂・松鯉屋 20~29 気鋭の中忍・朱火 暗殺者・さくら 蟲の支配者・業鬼 東間の大黒柱・半兵衛 30~39 勝気なくノ一・那爪 獣少女・深鷺 暴虐の鉄鬼・破軍 陽忍・喜兵太 40~49 指南役・夕凪 忍び組頭・陣馬 邪眼剣士・道眼 忍び頭領・幻左衛門 50~59 苦悩の剣士・翠蓮 伝説の忍び・影斎 忍びの涯て・凶ッ風 東間国主・紗代 60~66 天の護剣・譲葉 冥獄党首魁・白夜 妖樹の種子・未草 堕ちた英雄・凶主 67~ 結界の管理者・風愛 黄泉の使者・玉梓 混沌の姫・堕龍姫 英雄の資質・焔王鬼
https://w.atwiki.jp/oshitodomero/pages/119.html
スレッド_レス番号 01_775-778 作者 備考 長編,近未来の悩み 「……今、なんと言ったかしら?」 彼女は精一杯の平静を装ってそう問い返した。はりついたような笑みに なっているかもしれないが、確かめる術はない。ただ、綺麗に磨き上げた爪が、 持ち上げているティーカップの縁に触れて、かちかちと震えていた。 そのカップを優しい手つきで女から取り上げて、彼は先程の言葉をゆっくりと 繰り返した。 「もう、ここは貴女がおいでになる場所ではありません、と申し上げました。マダム」 ふんわりと巻いた髪が落ちかかる、剥きだしの肩がはっきりと揺れる。 「わたくしは、あなたと過ごすために来ているのよ、ハル?」 「存じております」 「ここまで来て、お茶だけ飲んで帰れと?」 「イエス、マダム。そして、もうおいでにならないでください」 「それはどういう意味!? あなた、わたくしの言うことが聞けないというの!?」 「その通りです、マダム」 甲高い声で叫んだ彼女に、彼は穏やかな口調を崩さず、しかし断固として頷いた。 彼はいつもそうだ、と女は思う。 彼女がどれほどヒステリックに泣こうとわめこうと、彼は泰然と構えて嫌な顔 ひとつ見せない。女の言葉に耳を傾け、黙って寄り添い、宥め、落ち着かせ、 しかし女に非があれば柔らかに指摘する。その態度があまりに優しくて、女も 最後には納得せざるをえないのだ。 けれど―――今回ばかりは、無理だ。彼がなんと言おうと、絶対に頷くことは できない。 唇がわななく。なんとか息を吸い込んで、吐いた。 「二度は許さないわ。……わたくしを満足させるのがあなたの務めです。果たしなさい」 「マダム」 ハルは女の前に恭しく膝をつく。その瞳は優しいままだ。女の両手に自分の それを重ねる仕草も、敬意と思いやりに溢れて変わらない。けれど、その首は ゆっくりと横にふられた。 「そのご要望にはお応えすることができません。おわかりください」 「どうして―――わたくしを捨てようというの!? まさか」 瞬間脳裏をよぎった想像に、全身の毛が逆立つような気がした。 「まさか……他の女ができたのね!? そうなんでしょう!」 叫ぶ彼女に、彼は目を伏せて小さく首をふる。少し、咎めるような声で彼女を 呼んだ。 「マダム。……私は、そのようにはできていません。ご存知のはずです」 「でも―――だって、ハル!」 「私は……私達は、けして裏切らない恋人です。そういう、商品ですから」 ほのかな笑みと一緒に吐き出された言葉は、むしろ悲しみに彩られているように 聞こえた。 ―――それとも、そう聞こえているだけだろうか。 女はきつく唇を噛んだ。 「……そうよ。あなたはわたくしに買われているの。四の五の言わずに抱きなさい」 「それが、貴女の真の望みなら……そうするのですが」 彼は、そっと彼女の目を見上げた。 「私は貴女の下僕です。貴女のお望みを叶えるためだけに存在しているのです。 観劇でも買い物でも、どんな場所でもお供しますし、歓楽をお求めならいくらでも さしあげましょう」 「なら!」 「……最近、貴女は夜中に暗い顔をなさっておいでです」 困ったように、彼は口を開いた。 「ご存知のように、私に睡眠は必要ありません。寝ているようでも、常に貴女の ことを見ています。あらゆるデータをもって、貴女が心地よいよう動くために」 「……それは」 「それができるのは、私がセクサロイドだから。……感情があるように見えても、 それはそのように組まれた行動パターンに従っているからに他なりません。 貴女が……最近お悩みの通り、私に愛情はないのです」 「―――ハル!」 悲鳴のように言葉を遮った女を、彼はただ見つめる。その眼差しは深い。 ―――深い、ように思える。 「私に感情を読み取れる貴女は、まさしく人間らしい方なのです。愛情に愛情を もって返して欲しいと望むのも、人としてはごく自然なこと。……ですから、 貴女はもうここにいてはいけません。あなたの心に心で応え、愛してくれる人を 見つけなくては」 「……そんな人、いないわ」 「いますよ。必ず」 「いないわ! いたら……そんな人がいるなら、わたくしはここに来たりはしなかった!」 彼は穏やかに笑って、立ち上がった。上体をかがめ、そっと彼女の額に唇で触れる。 「―――大丈夫、あなたは魅力的な女性です」 「ハル」 「貴女が求めているのは心です。それは、私には差し上げることができません。 心を得ようと思えば、傷つくことも、辛いこともあるでしょう。……人とは、難しい ものです。けれど、諦めないでください。貴女は、セクサロイドに過ぎない私を、 人間と錯覚するくらいに優しい方なのですから」 優しく触れる指先も、その体も唇もこんなに温かいのに。 私は人ではない、と彼は言いきる。 そんなこと―――わかっていた。とうの昔に。 ……だから、か。 何かが胸の奥にすとんと落ちた。ぽつりと、つぶやく。 「わたくしは……人間なのね……」 「そうです」 「感情が……あるの。ハル、あなたが本当に……好きだった」 「光栄です」 「でも苦しかった。マスター登録さえされていれば、あなたは誰でもいいんだわ」 「……ええ、その通りです。マダム」 ハルがゆっくりと女の髪を梳く。 「私の役目は終わりました。……貴女は幸せになれる方です。そのことを、どうか 忘れないでください」 深く一礼して、彼は女に背を向ける。その姿が扉の向こうに消えようとした瞬間、 女は大きく声をあげた。 「ハル!」 「はい」 「もしいつか……そんな人ができて……表のお店であなたを呼んだら……あなたは 一緒に、お茶を飲んでくれるかしら……」 彼は、彼女が愛した顔でふわりと微笑む。 「ええ、喜んで。アネッサ」 そのまま、もう二度と振り返らずに、出会ってずっと二人が過ごした部屋を出て行った。 ―――アネッサ。 それは昔、『幸せな子』と意味を込めて、祖父がつけてくれた名前だ。 ハルが―――彼が今まで、一度として呼ばなかった、彼女の。 たくさんの思いが込みあげて、アネッサは一人、気が済むまで泣き通した。 「マスター情報をダンデータフォルダへ移行します。よろしいですか?」 「はいよ。……寂しいか、ハル?」 男の問いかけに、彼は静かに答えた。 「私が寂しいと感じることはありません、オーナー」 「……うん、そうだな。さ、次のお客様が待ってるぞ」 「はい、オーナー」 データ移行承認を出す寸前、彼は、唇だけで小さく、さよなら、と呟いた。 END 戻る スレッド別 / 作者別 / シリーズ別 バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1759.html
【電磁人の韻律詩~8号~ BE A SUPERMAN】 「そっち行ったよ恋路。」 「任せてアスマ!」 路地裏を素早く走り回って逃げ回るエイリアンのような生き物。 そしてソレを追いかける明日真。 彼はエイリアンのような生き物を待ち伏せしていた恋路に合図を出す。 「2500w………照射!」 パチッ! 何かが弾けるような音がした直後にそのエイリアンのような都市伝説の表皮が泡立ち始める。 「ギャアアアアアス!!」 路地裏に轟く断末魔と破裂音。 明日真と恋路は組織の命令で都市伝説「チュパカブラ」を退治していた。 「よし、今日の仕事はこれで終わりだ。たこ焼き一パックを要求する。」 パチン! 「やったねアスマ!戦国●双3買って貰おうよ!」 明日と恋路はハイタッチをする。 「ほう、上手いもんだなあ……。戦い慣れしていないと思っていたんだけどまあ良いか。 良くやったぞおまえら。」 「いやいや、正義の味方ですから。」 「それより黒服さん、戦国無双3の方を……。」 「あと三体、都市伝説を倒したらな。」 「そんにゃあ!?」 明日と恋路の二人は組織の仕事にも割とすぐに適応し始めていた。 元々都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した明日と 元々都市伝説と頻繁に戦っていたらしい恋路は 人間にとって危険な都市伝説を見つけて倒すという仕事に慣れていたからだろう。 二人の能力の性質上対生物に強い為、組織からの任務は必然的にUMA系の都市伝説の退治が多くなっていた。 「じゃあもう俺達帰りますよ?良いですか?」 「ああ、俺は上司に任務の報告をしなくちゃいけないんだ。」 「それじゃあ黒服ちゃんさようならー!」 「おお、じゃあな恋路ちゃん。」 「恋路、もう行くぞ、さっさと乗ってくれよ。」 「ああ、そうだ明日。ちょっとこっちに。」 「なんすか黒服さん。」 急に呼び止められて明日だけが黒服の傍まで手招きされる。 「ちょっと耳貸せ。」 「え、はぁ………。」 「細かいことを言う気は無いが男として気をつけるべき事は気をつけろよ?」 「ちょっ!まっ!清い付き合いですから!!」 慌てて両手を振って否定する明日。 ニヤニヤ笑う黒服。 「ちなみに良ければ(ピー)とか(ピー)とか貸すが………。」 「違いますからあ!」 「そうかそうか、それは残念だ。」 「もう、じゃあ行きますよ?」 「おう、それじゃあ今日はゆっくり休め。 あと………。」 「あと?」 コホン、と咳払いをする黒服。 「組織とバイトの掛け持ちは程々にな。」 明日にだけ聞こえるように呟いた。 「―――――――――――!!」 「まだ俺しか知らないし今は咎める気もないから安心しろ。 程々にしておけってだけだ。」 「あ、あはははは………。じゃあ帰りますね。」 誤魔化すように笑いながら明日は恋路の待つスカーウェイブに向かう。 二人はスカーウェイブに跨って路地裏を抜け出し、家路についた。 二人は家に着くとすることも無かったのでお笑い番組なんかを見ながら晩酌を始めた。 「あー!仕事明けの一杯が堪らないね!」 「そうだな、親父臭いことこの上ないが仕事をしたという実感は確かに有るよ。」 「仕事明けの一杯と言ってもオレンジジュースだから勘違いしないでね!」 「誰に向けて言っているのじゃ。」 「知らないよっ!」 やれやれとため息をつく明日。 恋路はどこか楽しそうな様子である。 「ねえねえアスマ、そういえばそろそろクリスマスだよね。」 「ああ、そうだな。」 こたつの電源を入れて玄関から蜜柑をもってくる。 二人はこたつに入ってぬくぬくし始めた。 「何処行くの?」 「どこか行くのは前提なのな。」 「勿論!プレゼントとかお互い交換なんかしちゃったりしてさ! 私からのプレゼントはなんと!」 「なんと?」 「わ・た・し。」 「それはない。」 「無いか。」 「無いね。」 「残念だよ。」 「残念だろう?」 とてものんびりとした時間だ。 こたつに入ってのんびり談笑なぞ昔の明日には想像できなかっただろう。 ガチャリ 急にリビングのドアが開く。 「ただいまー!元気してたー?」 「「誰!?」」 明日と恋路は素っ頓狂な声を上げる。 リビングのドアを開けて突入してきたのは真っ赤な髪をしたお姉さんだった。 こたつで二人仲良くイチャイチャしていた明日と恋路はポカーンとしている。 「只今、真。」 「もしかして姉ちゃん!?」 「え、アスマにお姉さん!?」 其処にいたのは明日真の姉、明日晶だった。 彼女もまたプロのモトクロスライダーとして世界中を回っていた。 「もしかしてじゃないわよ~、真が女を連れ込むようになっているとは……。」 恋路をちらりと見る晶。 「ど、どうも~、お姉様……。」 苦笑いする恋路。 大変気まずい。 空気が変わる瞬間は一瞬だった。 「弟から離れろ雌狐があああああああああああ!!!!」 「今更帰って来て保護者面かこの人間失格があああああああ!!!」 ドカァン! 突然恋路と晶の拳がぶつかり合う。 明日晶、彼女はボクシングを趣味でやっており高校時代はインターハイでならしていたのだ。 明日真は彼女にしばらく会っていなかったがまた腕を上げた様子である。 しかし対抗する恋路も負けては居ない。 本体が機械なので身体は硬いし、本人は名前を忘れたようだが格闘技経験者らしい。 「私の拳を止めた!?」 「人間の癖に……重い!」 二人は拳を合わせて目と目も合わせる。 「面白いじゃない、雌狐!」 バシンバシン! 晶の得意とするフリッカージャブが炸裂した。 目にもとまらない速さで拳を二回、明日の頬に叩き込む。 「固い!?」 晶の右手に走る違和感。 「都市伝説を……舐めるんじゃねえ!!」 一本背負いのように晶の右腕を持って思いっきり投げつける恋路。 「――――――しまっ!!」 「うわっ、こっちくんなぁぁぁああああああああああ!!!」 ドシィン!! 投げられた晶は真に直撃した。 しかし晶はそんなことも気にせず真を踏み台にして恋路に飛びかかる。 至近距離での殴り合いが始まった。 お互いどう見ても本気、ていうか見えない! 速すぎて動きが見えない!! 「弾けろ!3000Wだ!」 「触れられる前に離れる!」 「能力が効かない!?」 「拳で語り合おうぜええええええええええ!!!」 ドスッ! メキィ! ゴリゴリッ! 「もういやだ、この家………。」 明日真は薄れいく景色の中で頭を抱えていた。 【電磁人の韻律詩~8号~ BE A SUPERMAN fin】 前ページ次ページ連載 - 電子レンジで猫をチン!
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/4232.html
245: earth :2016/12/17(土) 22 39 21 『時空の迷い子達』 《帝国の挑戦》 宇宙怪獣、異世界に現る……その報告を受けた銀河帝国上層部に衝撃が走った。 《どこでもドア》を使ってひそかに集まったブローネ、ライガー、山田は、皇帝府の小会議室に置かれた丸テーブルで頭を突き合わせて悩んだ。 ブローネは渋い顔で口を開く。 「改スーパーエクセリヲン級の戦闘能力は大きく向上している。搭載しているシズラーもだ。しかしあまりに数が違い過ぎる。1億もの宇宙怪獣を前に第12分艦隊をすぐに下げたフォーク提督の判断は正しかった。あれと戦うのはタイラークラスの幸運でもなければ不可能だろう」 ブローネの感覚で言えば改スーパーエクセリヲン級は例えるなら『スパロボでフル改造し、強化パーツ(?)を限界まで積み込んだスーパーエクセリヲン』のようなものだった。 厳密に言えば23世紀技術を含め異世界の技術で底上げを図っているので単純な改造という訳でもないが……。 ブローネの感覚は兎に角、さすがに1個分艦隊でまともに殴り合うことはできないというのは正しかった。 エクセルヲンのように宇宙怪獣の群れの中心でアルゴーを自沈させ、ブラックホールで相手を呑み込む戦術を取らず、真っ向勝負となれば数の暴力によって敗北は必至だった。 ライガーは「威力偵察、使い捨てにできる無人艦で一当て程度すればよかったのでは?」とも当初思ったが「宇宙怪獣の反応(反撃)が不明である以上は様子見に徹するのも策」と思い直した。 「帝国宇宙軍に代わり、《ガンガル世界》、いや第84観測世界の地球軍は最低限の仕事は果たしました。まぁ星系国家でしかなかった地球軍にしてはよくやった……そんなところでしょうな」 銀河帝国によって見捨てられたかの世界の地球に勝ち目などなかった。 それでも僅かながら宇宙怪獣を刺激してくれたおかげで、宇宙怪獣の手の内をある程度知ることができたのはそこそこの成果だった。 尤も儚い抵抗をつづけた宇宙艦隊群が蹴散らされた後、宇宙怪獣の攻撃で地表に生きていた生命は死滅した。 余談となるが、銀河帝国は宇宙怪獣が去った後、調査隊が送り込み、ガンガルの残骸を含めたいくつかの文明の痕跡を回収。後に滅亡した異世界人類の遺物として博物館に展示することになる。 「攻撃力、いやほぼすべての性能を最低でも《原作》並みと想定して問題ないでしょう。場合によっては速やかに上方修正するべきかと」 山田の意見に反対意見はなかった。 続いて彼らは『なぜあの場に宇宙怪獣が現れたのか』に議論を集中するようになる。 「第84観測世界の地球に縮退炉に相当する技術はない。ワープ技術もだ」 ライガーは念のために集めた情報を何度も確認した結果、宇宙怪獣を吸い寄せるような該当する技術はないと断言した。 これを聞いた山田は眉を顰める。 「だとすると、彼らの敵は最初から我々だった可能性があるのでは?」 「しかし、いきなり1億も送り込むかね? 我々は第84観測世界で一度も宇宙怪獣の類と交戦した記録はない。それとも1億もの部隊をいきなり送り込むのがあちらの宇宙怪獣の流儀と? 随分な大盤振る舞いだ」 第12分艦隊が第84観測世界に実際に侵入してそう日は経っていない。 何者かと交戦した記録もなければ、察知された形跡もなかった。仮に一方的に監視されていたとなれば大問題が……。 246: earth :2016/12/17(土) 22 39 56 「む……では、ワールドナビゲーターが示した可能性が?」 「我々以外の第三者があの宙域にいた……その可能性は十分にある。そして彼らが宇宙怪獣と太陽系周辺宙域で戦ったのなら、あの大群が現れたのも納得がいく。あれは増援、或いは本隊だった」 「そこに我々が太陽系内に現れたため、彼らは地球に向かった、と……ですがそれだと地球滅亡後に余所者と宇宙怪獣が 戦っているはず。それなのに何もないとは……」 山田が口を紡ぐのを見たブローネは、おもむろに口を開く。 「太陽系近傍から撤退した、或いは異世界に移動したか」 彼らは自分たちが知らない何者かが、並行世界をウロウロしているのではないか……そんな懸念を覚えた。 「仮に後者なら……友好的な関係を築かなければなりませんな。最低でも、異次元に住む紳士たちとの間に築いた関係を」 1mgも敬意を感じられないライガーの物言いだが、それを咎める者はいない。 「あとフォーク提督が懸念していた宇宙怪獣自身が異世界を移動している可能性は?」 この山田の問いかけに、ブローネは揶揄するように言う。 「宇宙怪獣が独自の能力を得た可能性もあるが、それ以上に異次元の紳士達が何かしら悪巧みをしていた可能性も考慮するべきだろう。連中は侵略を行うための手駒が欲しがっている」 「手駒に宇宙怪獣を選ぶ、と?」 「可能性は皆無ではあるまい。この仮説が正しい場合、連中は宇宙怪獣を使ってこちらの艦隊を壊滅させようとしたこと になる……宣戦布告なしの騙し討ちだな。まぁ証拠はない以上、あまり言っても仕方がないが」 彼らの脳裏には銀河帝国が建造した無数の兵器群(多くが無人兵器)と異次元人が増殖させた無数の宇宙怪獣が激突する最終戦争が浮かぶ。 「いずれにせよ通常戦力の強化と並行して因果律操作装置の完成度をより高めなければなりませんな。それとその装置を 前線で柔軟に運用できるようにする用意も」 ライガーの言葉に山田が異を唱える。 「しかし安全性の面から考えると……」 「だが備える必要はある」 「……ヱルトリウム以上の巨艦を作る、と?」 「機動要塞と言うべきか」 (因果律、時間を操作する兵器を搭載した超巨大機動要塞……主人公が来たら、攻略される側だな。物語だと敵の奇襲で 乗っ取られて偉い人が「馬鹿な?!」とか言う奴だ) 戦闘機によって爆砕された某・死の星や某魔術師に制圧された宇宙要塞を思い浮かべ山田は苦笑するが、いつまでもそうしている訳にもいかない。 「早速検討してみましょう」 かくして銀河帝国は動き出す。 247: earth :2016/12/17(土) 22 42 35 あとがき 三賢者側は更なる軍備増強に乗り出します。 全長70キロの戦艦を超える超巨大機動要塞……物語だとラスボスで出てきそうですね(汗)。 まぁこちらには宇宙怪獣と言う化け物がいるので……。 しかし超巨大機動要塞、全長70キロ、10キロの超巨大戦艦、その周りにヤマト世界の宇宙戦艦の群れ……どんな世界なのだろうか……。 彼らの故郷である地球の住民が目撃したら発狂しそうだ(笑)。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/4911.html
395: 弥次郎@外部 :2017/10/12(木) 00 02 51 食。 それは、従属栄養生物ではおよそ避け得ない行為である。 米。 それは、日本人にとっては避け得ない食料である。 この二つが合わさると、どうなるのか。 それは、日本人にとってフェイタルな要素となるということである。 大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 「国家改造」7 -食い物の恨みは…?- 岩畔豪雄中佐はその箱のようなものを興味深げに眺めていた。 先程から、その箱は不可思議な音を立てている。蜂が飛ぶ時の音をさらに大きくしたような、唸るような、奇妙な音だ。 その箱の中では、何かの光がともっており、中では皿に乗った握り飯がくるくると回り続けている。 そして、何だろうかこの甘く食欲をそそる臭いは。連れてきた副官もちらちらとそれに視線を送っている。 (味噌、いや、醤油か……?) 例えるなら、焦がした醤油のような匂いは徐々に強くなっている。 思わず、喉が鳴った。時刻は昼を過ぎてしばらくたったころ。 相変わらず講義はみっちり時間割に詰められているために、小腹がすいたころだ。そこまですいているわけではないが、何か口に入れたいのが正直なところだ。そんなところにこの臭いだ。口の中に唾がたまって来るというもの。 イカン、と意識を目の前の書類へと戻すが、その書類にもこれまたおいしそうな食品の写真が並んでおり、腹が減って来る。 誰かが、自分と同じく並んでいる陸軍の高級将官やら主計科の人間の誰かが、ごくりとつばを飲み込む音がしたような気がする。 それを咎める人間などいない。ああ、なんと魅力的な写真が並んでいるのだろうか。 書類に載っている写真は、いわゆる軍用糧食だ。 缶詰や瓶詰、場合によっては「真空パック」というものに詰められていて、長く保存し、必要な時に開封して食べることができるらしい。 確かに写真のそれは、軍で支給するものらしいよく言えば質実剛健な、悪く言えば風流も欠片もない器に納められている。 さらに写真以外にも、どのような栄養が含まれているかの図や解説文が載せられていて、はっきり言えば面白みもない書類なのだ。 (だが……) まるで、高級料亭で品書を眺めているような気分だ。 いや、これらの価値はそこらの料亭の料理よりも高い。 含まれている栄養の調和は、兵士にとって理想的であると書かれている。 陸軍も海軍も一つ気にかけている項目がある。ビタミンをはじめとした必須栄養素のバランスである。 なぜか。それは、日企連が先だって「脚気の原因はビタミン不足」と明かしたからだ。 さらに公表されたのが、「史実」において「自分達」が晒した脚気対策への不徹底であった。 言うまでもないが、この時代の脚気というのは国民病とも呼べるものであった。 それこそ、江戸患いという名前で江戸時代から残り続けており、それの根本解決はいまだになされていない。 白米への幻想(ユメ)、憧れ、そして無知。結果、海軍陸軍双方が互いに互いの非を認め、上層部は概ね和解などが完了しつつあるため、あとは軍医や一般兵士の常識を改めるのみとなっている。 現在、兵士たちに提供される食事には「強化米」というビタミンを補う米状の粒を入れた白米が使われている。 また、玄米もおいしく食べられるように様々な調理がなされて提供されていると聞く。 396: 弥次郎@外部 :2017/10/12(木) 00 04 15 (炒飯、とか言ったか) ちらりと書類をめくり、缶詰のバリエーションに含まれているその料理の写真を見る。 玄米というのは、正直なところうまくない飯というイメージが付きまとっている。 だが、調理の方法を変えるだけで解決できると知らされ、玄米の持つ栄養の高さとあわせて俄かに注目を集めている。 既に高級将校をはじめとした臣民達で実際に食べて戦闘証明(コンバットプルーフ)は取ってあり、あとは徐々に普及させるのみだ。これの導入においては、陸海の主計が足並みをそろえて行うことが既に検討され、「最重要事項」として通達されているという。 また、前線に配備する電子調理器というものも今後導入を進めていくとか。 今、目の前にある箱もそれの一種だという。あの箱に入れ、操作を行うだけで温かい飯が食える。 電力は必要になるというが、それについてのインフラ整備が進めば解決はできる。調理時間の短縮と手間のカットは、正直なところ大きな変化になるという予感がある。何しろ、あれだけ小さな装置で料理の多くができるのだ。 軍事革命といえるかもしれない。 そして、気の抜けた、軽い金属音が目の前の箱、電子調理器から発せられた。 書類から目を上げて覗いてみれば、中で灯っていた光は消えており、くるくると回っていた皿は止まっている。 箱から取り出された皿には、魅惑が乗っている。握り飯だ。それも、良い品種の米を炊き、綺麗に握って、それに醤油をたっぷりと縫ってそのまま火鉢であぶって完成させたような、そんなものなのだ。 「うっ……」 出された皿は、これ見よがしに置かれる。 ごくりと、誰かの生唾を飲み込む音がする。 「こちらが資料にもありました冷凍食品になります。保存用の冷蔵庫が必須となりますが、長期保存が可能ですね。と……」 解説を続けようとして、日企連の社員は困ったように笑う。 少しばかり刺激が強すぎたか、と反省するしかない。職にうるさい日本人にこれを見せたのが悪かっただろうか? よりにもよって日企連内の食品系企業が競い合って資料やらサンプル、そして史実世界向けの「新商品」の開発に勤しんだためだ。 日企連も、ゲートの開通による史実世界への進出で、内部市場は静かに沸き上がっている。 比較的後進国とはいえ、一国を丸ごと、文字通りの意味で丸ごと市場とでき、リターンは極上。 無理もないと思いつつ、目の前の皿にのった焼きお握りを配るべく、立ち上がった。 397: 弥次郎@外部 :2017/10/12(木) 00 05 14 以上、wiki転載はご自由に。 リハビリ的に投下です。 岩畔豪雄が出てきたのはなぜか? 彼って、く号兵器(怪力光線 ぶっちゃけるとマイクロ波)の開発を行う登戸研の成立に関わっていたりします。 なので史実側の判断で早くにこういった秘密研究を任せようと出席を命じられております。 ちょっとずつでも史実ネームドを出していければなぁ… では、ゆっくり進めてまいります
https://w.atwiki.jp/merligold/pages/25.html
From めるりP 第1回 / 第2回 / 第3回 / 最終回 最終回 「終わりから始まること」 オフレポはこちらをどうぞ。 「トカチゴールドに参加できなかったので、めるりゴールドをやろうと思います」 だったそれだけのことだった。要するに冗談だった。しかし、物事はどう転ぶかわからないもので、瓢箪から駒、嘘から出た雪歩、違った、真になってしまったのである。全くもう。 それでも蓋を開ければ、大成功と言っていいほど、お客さんにお越しいただき、皆さんから「楽しかったです!」という評判を頂戴することができた。これもひとえにスタッフとお客さん、会場には来れなくとも応援してくれた人たちのおかげです。本当にありがとうございます。 ところで、そうはいっても、個人的に反省しなくては、と思ったことがあるのもこれまた事実ではあり、それをこれからつらつらと挙げていこうかと思う。 1・挨拶はきちんとする 何を当たり前のことを言っているんだお前は、と仰る方もいるだろうが、しかし本当のことなのだから仕方がない。とにもかくにも自分みたいな若造は挨拶がしっかりできていないと話にならない。それに、挨拶して自分の名前を名乗るのは、オフ会やこういったイベントではまず会話のとっかかりになるし、初めてお会いする方には積極的にしていくべきであるので、(僕の場合だと「あーあのwwwめるりさんですかwww」みたいになる)、きちんとする…はずが、当日は緊張したり疲れていたりでそれができなかったのである。なんという不覚! なんという怠惰! ともかく、人と触れ合うのだから、挨拶はしっかりしましょう。 2・場を把握する DJやトークでは、練習がものをいう。とはいうものの、ラジオは喋るわけだし、毎週喋りを鍛えているわけだから(しかも隣には最も信頼できる人がいるわけだから)、それはいいのだが、初体験の人前DJは厳しかった。やっぱり緊張するわけだし、うまくいかないことは山ほど。しかし、続けなければいけないし、いくらセットリスト(という程でもない)を決めているとはいっても、場の雰囲気をしっかりと見定めなければならない。かつてあるハウスのDJユニットが「ラップトップを使うアーティストは画面を見るのに精いっぱいでフロアを見ていない」という皮肉をかましたことがあるが、とにもかくにも場の雰囲気をきちんと把握し、臨機応変に…ってそんなに上手くいくわけもなく。臨機応変な対応を見せたスタッフの皆さんに感謝したい。スベるの超怖い! 3・報告や連絡、相談はきちんとする お前は社会人になりたての新卒か、とどやされそうだが、しかしこれがとても大事なのである。自分ひとりで悩んでいるのは、確かにそれはそれで大切なのかもしれないが、集団でプロジェクトをやる上ではあまり良いことではない。特に自分のようにスタッフの中で周りの方が経験の多い方の場合は、寧ろ積極的に相談して言った方がいい。あと報告や連絡はこまめに。これをやっていれば、周りも進行度合いがわかって安心できるもの。……というか、当たり前ですね、すいません。 しかし、こういったことを反省できるとは、何と素晴らしいことなのだろう。 もしめるりゴールドが無ければ、自分はそのことを体験もできなかったし、「次はこうしよう」と考えることもなかった。しかもそれらを、一仕事やり終えたという充実感と満足感を持って。そういう経験を積ませてくれた場所を提供してくれた皆さんに感謝している。そして、自分はスタッフやお客さんの姿を見て、様々なことを思い、勉強させてもらった。学ぶことのある失敗は多い。だけれども、学べることのある成功というのは、そうはない。この経験は何にも代え難い。いくらそれが当り前のことばかりとはいっても。大事なのはそれを肌に触れて実感することなのだから。 いろんな人を巻き込んで、大きくなっていったこのイベントは、正直「これだけの面子が集まって自分がメイン、おかしくはないだろうか……」「もし失敗したら、満足してもらえなかったら、何といえば良いのか……」と、プレッシャーも感じていた。しかし、来てくれた皆さんが実に良い人だったので、想像以上の成功を収めることができた。 めるりゴールドを計画していた最初の頃、スタッフや知人友人の中から、「めるり本人が楽しむのが大事」という声があった。その言葉通り、自分は楽しんだわけだが、めるりゴールドっていうイベントが、これほどのものを残すとは思わなかったし、それが一番嬉しかった。やってよかったし、自分がこういうものをみんなの心に残せたというのはとてつもなく幸せなことだ。 めるりゴールドは終わった。 漫画やゲームのように、イベントが終わって終了、ではない。現実では、一つの物事が終わっても毎日の生活は続いていく。 相変わらず、自分は学校の単位がどうのこうのといいながら自主休講したり教授にどやされたりする。スタッフは会社に行ったりして、溜まっていた仕事にぐちぐち言ったりする。 でもこのイベントをやったという記憶や、ここから得たものが、緩やかに生活の様々なところや、また同じようなことをやる時に活きてきたりもするのだろう。 終わりから始まることは、結構ある。 願わくばめるりゴールドが、皆さんにとって、満足を与えるだけでなく、そこからどんな些細なことでも何かの糧となるようなものになっていれば幸いである、のだが、これは過ぎた望みだろうか。 そんなわけでめるりゴールドはおしまい。僕は「トカチゴールド2」(あるのかそんなの)に向けて準備するとします。 「めるりゴールド2」はありませんのでそこのところ宜しく。
https://w.atwiki.jp/battleroyale/pages/483.html
160 沈む心 [午後(雨の降り出す前)] どうして。 ♂アコライトの思考はただひとつの言葉で支配されていた。 蟲に襲われたところで記憶が途切れ。 それから目を覚ました彼がはじめに見たものは血に塗れた彼の従者であった。 どうして、どうして貴女が死ななければならないんですか。 貴女は僕の傍にずっといてくれるんじゃなかったんですか。 ジルタスさん。貴女は。あなたは…… 初めて会ったときはひたすら恥ずかしかった。 色事に今まで縁がなかったものだから、彼女にどう接すればいいのかもわからなかったし、目のやり場にも困った。 しかし殺しあわなければいけないという極限の状況で、彼の精神を支えていたのは彼女だった。 ♂ローグに襲われたときに、彼女が身を挺して彼を守ってくれた時から、彼自身もそれを実感するようになっていた。 だからはぐれてしまってからも、彼女との合流を願っていたのだ。 だが、再び♂アコライトが彼女を見たときにはすでに―― お願いです、ジルタスさん。起きてください。 僕がこれまでどれほど貴女に救われてきたか。どれだけ貴女が大切な存在だったか――今頃になって気づいたんです。 だからもう一度、僕をご主人様と呼んで、笑顔を見せてほしいんです。もう恥ずかしがったりなんかしませんから。 震える手で♂アコライトはジルタスの仮面に手をかけた。 仮面を取った彼女の顔は初めて見たが、とても美しいと♂アコライトは思った。 もっとも、その素顔で微笑んでくれる日はもう永遠にこないのだけれども。 しばらく呆然としていた♂アコライトが、♂ハンターと淫徒プリの会話に気がついたのは果たして運命なのだろうか。 彼は今まで二人の存在にすら気づいていなかったというのに。 吸い寄せられるように二人に近づく。気取られないぎりぎりの位置で彼は立ち止まった。 ジルタスの傷が蟲によるものではない。それを聞いた瞬間、彼の体を戦慄が走った。 ならば誰がやったのか。一言も聞き逃すこともしたくない。♂アコライトは神経を耳に集中させた。 ――あの潰れるような傷の付き方は、おそらくモンクの拳によるものでしょう。 淫徒プリのその言葉が、彼の耳を、脳を雷光のように貫いた。 ♂アコライトの思考が沈んでいく。 今までとは真逆に、それ以後の会話がまるで聞こえなくなるまでに――泥に飲まれたかのようにただ深く。 モンクが、モンクの奴が貴女を殺したんですね、ジルタスさん。 あいつら、神罰の代行者なんて言ってるけど口ばっかりだ。だって何も悪くない貴女を殺したんですから。 ああ、貴女を殺した罪深い奴なんか、地獄に落ちてしまえばいいのに。 ジルタスさんを殺しておいてのうのうと生きるそいつが憎い。憎い憎い憎い。 心の中で叫ぶ。自分の黒い感情に気づいたとき、彼の思考が凍りつく。 それが♂アコライトが以前の彼であった最後の瞬間だった。 そうだ……僕がそいつを殺せばいいんですよね。ふふ、こんなことに気づかなかったなんてどうかしてました。 そいつには、ジルタスさんの何十倍もの痛みと苦しみを与えてやります。そして最後は、僕の手で地獄に落とす。 そう、罪人は地獄に落ちて、煉獄の炎に焼かれる苦しみを永遠に味わえばいいんです。 神は復讐をお許しにはならないでしょうが、それでもいい。僕は結局は神の僕ではなく、人間なのですから。 どこかある意味では純粋な♂アコライトの思考。 だがその危険性は、暗い影となって彼の表情に表れる。 彼の瞳に宿る妖しい光を感じ取った淫徒プリは微かな寒気すら覚え、彼を視線で追う。 ♂アコライトはジルタスのもとに戻っただけで何をするわけでもなかったのだが。 慟哭していた先ほどとは一転して、穏やかな表情でジルタスの傍に座る♂アコライトに、淫徒プリは底知れぬ不安を感じていた。 土葬の前に、ホルグレンから少し離れた場所に転がっていたメイスを手に取った彼を、誰も咎めようとはしなかった。 ♀BSはそれに気づくことができるほど冷静ではなかったし、♂スパノビは咎めるようなことはしない。 ♀アルケミストは自分の策略に思考を巡らせていた。 もし気づいたとしても彼女であれば、ただでさえ貧弱なのだから武器くらい持って少しはましになればいい、と思っただろう。 淫徒プリは微かな不安を覚えてはいたのだが、彼は♂アコライトの暗黒面が自分達に牙を剥くことはないだろうと考えていた。 ♂ハンターを追うと決まったときに、♂アコライトは微かな笑みを浮かべた。 ♂ハンターはジルタスを殺害した人間を追いにいったのだろうとは、彼も薄々感じていたからだ。 ジルタスさん、見ていますか? 僕、これから貴女を殺した奴を探しにいくんです。 途中で邪魔をされなければいいのだけれど。まぁ、邪魔をするような奴も死んでしまえばいいと思います。 貴女を殺したやつを見つけたら、目いっぱいの苦しみを与えてやりますね。ふふふ……楽しみだなぁ。 僕にもできますよね? ジルタスさん。――いえ、やってみせます。 僕、頑張りますから。どうか見守っていてくださいね。 少年は闇に堕ちた。皮肉にも彼を守ろうとした男が、彼を狂わせてしまったのだ。 それは♂アコライトのうかがい知れぬ、守りたいと思う心の衝突により生じた悲しい運命。 ジルタスとグラサンモンクの間で起きた誤解――それを知らない♂アコライトの心は、ただ闇に沈む。 <♂ハンター> 現在地:G-6→? 所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢 外見:マジデフォ金髪 備考:極度の不幸体質 D-A二極ハンタ 状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。 <♂アコライト> 現在地:G-6→? 所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品) メイス 外見:公式通り 備考:支援型 状態:ジルタスの死のショックにより狂気を帯びる。♂ハンターを追う。 <淫徒プリ> 現在地:G-6→? 所持品:女装用変身セット一式 青箱1 外見:女性プリーストの姿 美人 備考:策略家。Int Dexの支援型 状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。♂ハンターを追う。 <♀ケミ> 現在地:G-6→? 所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品) 外見:絶世の美女 備考 策略家。製薬ステ。やっぱり悪 状態:軽度の火傷。♂ハンターを追う。 <♀BS> 現在地:G-6→? 所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品) 外見:むちむち。カートはない 備考:ボス、筋肉娘 状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。♂ハンターを追う。 <♂スパノビ> 現在地:G-6→? 所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり 外見:巨漢、超強面だが頭が悪い 状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。♂ハンターを追う。 <残り:29人> 戻る 目次 進む