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マクロスなのは 第26話『メディカル・プライム』←この前の話 『マクロスなのは』第27話「大防空戦」 1502時 クラナガン上空2000メートル そこではアルト率いるサジタリウス小隊がCAP任務に従事していた。 既にクラナガン上空で任務を開始してから2時間を超えている。 普段ならあと2時間足らずでこの任務を終え、引き継ぎに交代する。しかし今日は航空隊のオーバーホールのため、あと4時間は缶詰の予定だった。 こうなると普段禁止されている私語が多くなる。天城はその軽い性格からか、いつもおしゃべりが過ぎる。しかしこの日、真面目なさくらまでもその岩戸が軽石になってしまっていた。 『─────それでさ、基地のパン屋のお姉さん、ほら、あの・・・』 『・・・ああ、いつも基地にパンを持って来てくださっている事務員のお姉さんですね。』 『そう、それ!でさ、昨日パン屋さん午前中休みだったろ?』 『そう言えばそうですね・・・・・・何かあったんでしょうか?』 『うん、それがさ、そのお姉さんが朝の7時ぐらいにミシェル中隊長の部屋から出ていくのを見たやつがいるんだよ!』 『え!?ということは朝帰りぃ!?』 (・・・・・・おいおいミシェル、もう噂になってるぞ・・・・・・) アルトは昨日、彼の部屋に入ろうとしてドアにハンカチが挟んであったことを思い出し、「やっぱりそういうことだったのか」と、全く変わらない戦友であり友人である男に頭を抱えた。 『その公算は大だな。・・・・・・ああ、俺も一度でいいから、女を抱いてみてぇ~!』 『・・・・・・天城さん、私の前でそんなこといっていいんですか?私も一応女なんですけど』 『あっごめん!さくらちゃんだとあんまりにも気兼ねなく話せちゃうからつい・・・』 『もう知りません!』 『あぁ、さくらちゃぁ~ん!』 この会話を聞いたアルトは「ざまぁみろ」と思ったそうだが、定かではない。 『もう・・・・・・あ、ところでアルト隊長、』 突然の天城の転進に「な、なんだ?」と生返事を返す。 『噂で聞いた話なんですが、アルト隊長が〝ランカちゃん〟と付き合ってるってのは本当なんですか?』 その予想外だった問いにアルトは制御を誤り、機体は機位を崩して5メートルほど落下させる。VF-25がピーキーな機動性能を誇るゆえに可能とした機動だが、今は彼の動揺を証明する役目しか果たしてくれなかった。 増速によって編隊まで高度を持ち直す。 「い、いきなりなにを─────」 『あっ、それ私も聞きました!本当なんですか、アルト隊長?』 さくらは左を飛んでいるため、左耳から聞こえる無線に、アルトは嫌気がさす。 「おいおい、さくらまで・・・・・・お前らバルキリー隊の隊長を色恋で話題にすると、突然撃墜されるってジンクスを知ら─────」 2人を説き伏せようと説明していると、天城の〝叫び〟がそれを遮った。 (え!? マジ?) 右後方のバックミラーに天城の機体が飛んでいるのを確認する。 流れる動作でレーダーを警戒するが、敵機なし。 変わったことと言えば、少し離れたところにヘリが飛んでいるだけだ。 (ん、待てよ・・・・・・ヘリだと?) アルトはヘリに視線で照準すると、モニターでズームをかける。 すると予想は的中。ヘリは六課のヘリだった。 そのヘリの窓にはどういうわけか、出張中なはずのランカの姿がある。 そして間の悪いことに、こちらを見つけたのか手を振っており、彼女の唇を読めば自分の名を呼んでいることはバレバレであろう。 「うぉぉぉ!アルト隊長!ランカちゃんのサインを3枚お願いします!うちの家族がランカちゃんの大ファンなんです!」 どうやら天城は完全に恋人認定してしまったようだ。 アルトは溜め息をつくと、ヘリに繋ぐのは嫌なため、上空のAWACS(空中警戒管制システム)『ホークアイ』に回線を繋いだ。 無論なぜこんなところを六課のヘリが飛んでいるのか聞くためだ。すると、 15分ほど前にクラナガン外辺部で休暇中だったライトニング分隊の2人がマンホールから出てきた5~6歳ほどの少女を発見したこと。 その少女はガジェットが狙っているロストロギア「レリック」を1個引きずっており、大変衰弱していること。 六課のヘリが保護のため急行しているが、なのは達はデバイスの調整のため出撃できず、準備の出来ていたランカが代わりに緊急時に備えて乗せられていたこと。 などの情報が提供された。 「レリック絡みか。わかった。サンキュー、ホークアイ」 『いやなに、君たちの会話の方が楽しかったよ』 「なぬ!?」 『私にも5枚、サインをよろしく頼むよ。うちの甥っ子もえらくご執心でね。交信終了』 アルトは無線に 「ちょっと待てぇぇぇーい!!」 と怒鳴るが時すでに遅し、回線は切られていた。 『・・・・・・アルト隊長』 「・・・・・・なんだ?」 『認知しましょう』 「いや、だ・か・ら、俺とランカは別にそんな関係じゃないんだぁ!」 アルトの叫びが澄んだ青空に響き渡った。 (*) その後ガウォーク形態で3機はヘリの護衛に入った。 来るかわからない航空型の警戒より、周囲に敵がいる公算の高い場所へ赴く、ヘリの警護が優先されたのだ。 その間にアルトはランカに対し念話を試みる。 『(おーい、ランカ?)』 『(あ、アルトくん久しぶりぃ~)』 『(・・・大丈夫なのか?)』 『(うん。向こうの人達にはすっごいよくしてもらったし、戦争だって終わったんだもん!)』 念話は言葉を介した意志疎通とは少し違う。これには言葉以外に言語では表現不能な概念・思考すら載せる事ができるのだ。 こう表現すると「そんな役立つものがあるのに、なぜまだ不完全な言葉など使っている?」という話になるが、実は念話は慣れていない相手だと稀に、相手に与えるのには好ましくない思考を載せてしまう事があるのだ。 つまりごく稀に本音が丸見えになるという事だ。 本音と建前の人間の世界、話す時に稀にでも相手の本音が見えたら決して成立しないだろう。 だから念話で話すにはそれ相応の勇気が要り、よっぽどの親友や仕事でない限り用いられなかった。 しかしランカから流れ込んだ思考には本当に嬉しいという思いだけが伝わってくる。 自分自身彼女に対する本音がわからない分、どう伝わっているか不安が残るが、彼女の無事が確認できただけでもよかった。 それから1分も経たない内にヘリは現場に到着。少女のヘリへの搬送が開始された。 しかし───── 「こちら機動六課、ロングアーチ。地下にガジェット反応多数!搬送を急いでください!」 ロングアーチの警告とともにガジェットが地上に出てきた。 幸い付近は既に交通規制で人はいない。ガジェットは用さえなければ家の中まで入ってこないので民間人は大丈夫だ。しかし道路でアイドリングするヘリに敵が迫る。 シャマルとランカが、担架(たんか)に乗せた少女を急ぎヘリに搬送しているが、まだ遠くとても間に合わない。 休日返上で集まっていたフォワードの4人も搬送する2人を守るので精一杯で、ヘリまで手が回らないようだ。 「ヘリを死守する!行くぞ!」 『了解!』 アルトの命令に呼応してガウォークからバトロイドに流れるように可変すると、3機でヘリを囲み、地下からワラワラと出てきて全方位から迫るガジェットに相対した。 『やっとなまった体が動かせるぜ』 天城のVFー1Bが凝りをほぐすように腕と肩をぐるぐる回した。そんな天城にさくらが釘を刺す。 『天城さん、抜かれないでくださいよ』 『へいへい』 市街地なので発砲は厳禁。しかしヘリを1機、1分ほど守るだけなら、彼らにはそれで十分だった。 「サジタリウス小隊、交戦!」 アルトは宣言と共に先頭にいたⅠ型をぶっ潰した。 (*) 一度途切れた意識が五感と共に帰ってくる。 頭の中が霧がかかったかのようにぼやけているが、1つだけわかる事がある。ここは戦場だ。 何かと何かがぶつかり、轟音と共にどちらかが、もしくは両方が壊れてしまう。 大人達は自分を縛りつけ、自らに眠る〝ちから〟を使ってヒトや物を壊すことをいつも強要した。 ぼやけた視界に映る、必死の形相をして自分を運ぶ金髪と緑の髪したお姉ちゃん達も、自分に戦いを強要するのだろうか? 彼女は自らの運命を呪うと、意識と共に記憶を閉じた。 (*) 『ヘリの離陸を確認!』 VFー25の外部マイクがティアナの声を拾う。 アルトが見たときにはヘリは(バトロイド形態の)目線の位置まで来ていた。ヘリはそのまま急速に上昇していき、安全高度まで行くと病院へと直行した。 「よし、長居は無用だ!さくら、先に飛べねぇ3人を連れて上に上がれ」 『了解!』 さくらは頭部対空レーザー砲で牽制しつつ後退。バトロイドからガウォークに可変すると、さっきまでヘリが駐機していた位置に移動する。 現在サジタリウス小隊とフォワード4人組は、ヘリのいた位置を中心に円陣を組んで全周位から迫るガジェットに対抗している。そのためヘリが居なくなろうと、その場所が一番安全だった。 『皆さん、聞いた通りです。早く手に乗ってください!』 さくらがVF-11Gの手(マニピュレーター)を地面に広げ、外部スピーカーで呼び掛ける。 しかし円陣の内郭を構成するティアナやキャロはともかく、自分達と共に外郭で戦うエリオはおいそれと戦線から後退することは出来なかった。アルトはハイマニューバ誘導弾による援護を準備しようとした矢先、その宣言が聞こえた。 「クロスファイアー・・・シュート!!」 一斉に放たれたオレンジ色の誘導弾は、数を優先したためかガジェットのシールドを抜くことはできなかった。しかしその進攻を遅らせ、エリオが後退する時間とアルト達が穴を埋める時間をひねり出した。 「いいぞティアナ。ナイス判断!」 アルトの掛け声にティアナは 『どうも!』 と応じると、後退してきたエリオ共々ガウォークの手のひらに収まった。 『じゃあしっかり掴まっていてくださいね!』 さくらは警告すると、時を置かずエンジンを吹かして離床。急速に高度を稼いでいった。 「おっし、天城にスバル、次は俺達だ」 『了解!』 上空から再び放たれたティアナの誘導弾に援護されながら、アルトと天城はガウォークで、スバルはウィングロードを展開して上空に退避した。 こうして目標を失ったガジェット達は撤退して・・・・・・いや、新たな目標を見つけたらしい。戦闘機動レベルのスピードで次々マンホールに入っていく。理由はすぐに知れた。 『こちらロングアーチ。今までジャミングにより探知できなかったレリック反応を地下から2つ確認!回収に向かってください!』 「・・・・・・っておい、ロングアーチ!あの大軍の中に4人を突入させる気か!?」 なに1つ反論せずバカ正直にも 『了解』 と応答しそうな4人の代わりに異議を訴える。 軍隊では捨て駒にされるなど日常茶飯事だ。 例えばフロンティア船団でも中期の対バジュラ戦に投入された新・統合軍がその典型例だ。 バジュラの進化によって彼らの保有する武装が何1つ効かなくなった状況で、出撃を命令され無駄に命を散らしていった。 軍隊とはそういうところだ。だから生き残るために常に最善の努力を必要とする。反論など大した努力は必要ない。それで作戦の穴が見つかり、手直しされて生存率が上がるなら、それに越したことはないのだ。 しかし六課は〝軍隊〟ではあっても無策のバカではなかった。 『そのことなんですが、おそらく問題ありません。現在ガジェットの優先命令はレリックの確保と思われ、積極的な攻撃はないと推測されます。また、事態を聞きつけた第108陸士部隊の陸戦Aランク魔導士が1人、5分で支援に駆けつけてくれるそうです』 「・・・・・・なるほど」 とアルトは呟くと、やる気満々という目をした4人に視線を投げる。 「・・・だそうだ。お前らの力を存分に発揮してこい!」 『『了解!』』 4人は敬礼すると地面に降ろされ、マンホールへと突入していった。 「・・・・・・全く、お人好し揃いだな。管理局は」 アルトの呟きにさくらが割り込む。 『それを隊長が言います?』 「・・・・・・そうだな」 俺もいつの間にかお人好しになってしまったらしい。 しかし敵はそんな感慨を抱く平和な一時(ひととき)すら許さなかった。 『こちら『ホークアイ』、クラナガン近海の相模湾に敵の大編隊が多数出現!機種はおそらく改修前のガジェットⅡ型とゴーストだ。目標はヘリでなくクラナガンの模様。サジタリウス小隊は即座に迎撃行動に移れ!』 嫌な現実が耳に入った。しかし過去を振り返るにはもう遅い。今はやれることをやるしかないのだから。 「サジタリウスリーダー了解!これより迎撃行動に入ります!」 ファイターに可変したVFー25を始めとする3機は最加速。目標空域海上に急いだ。 (*) 『『ホークアイ』よりサジタリウス小隊。いま増援を要請した。5分で六課のスターズ1とライトニング1が。その20分後に緊急出動するバルキリー隊が合流する。それまで何とか持ちこたえてくれ』 「了解」 VFー25率いるサジタリウス小隊は中距離ミサイルの射程に入ると、中HMM(中距離ハイマニューバミサイル)を一斉に放つ。 今度のミサイルは今までの2系統の誘導方式のシステムに改良を加えたもので、通常の回避手段にもある程度対応できるようになっていた。とは言え、今まで敵が回避手段を講じたことがないため、効率面から誘導システムがセンサーを全面的に信用するようセットしていた。今回はそれを通常の設定に戻しただけだったりしたが。 サジタリウス小隊の保有する全中HMM、都合20近い光跡を残してマッハ5で飛翔するそれは、30秒程度で着弾した。しかし全てではなかった。 「なんだと?」 半数以上が目標を見失ったかのように迷走していた。 しかしフレアに代表されるような妨害装置の使用は見られない。強いて言えば当たったのに当たらなかったというか───── 『こちら『ホークアイ』。命中しなかった理由が判明した!敵は幻影魔法を展開している!現在術者を走査中だ。十分注意して迎撃せよ。実機はおそらくレーダーに映っている半数以下だ!』 どうやらガジェットを使役する者達が本格的に動き始めたらしい。アルトは猛る血を抑えると、僚機に指示を出す。 「各機、陣形〝トライアングラー〟!行くぞ!」 『『了解!』』 さくらはバトロイドに可変すると三浦半島の海岸線に着陸し、アンカーでしっかり片膝撃ち姿勢を取る機体を固定。己の長大なライフルを敵の迫る南へと向けた。 続いて天城がガウォークに可変すると、さくらの直掩に入った。 この陣形は『アルトが突入して敵をかき乱し、さくらが援護狙撃を行い、天城が撃ち漏らしを排除する』という時間稼ぎと敵の一地域の釘付けに主眼を置いた陣形だった。 ちなみにこのネーミングセンスだが・・・アルトの前隊長によるものが大きいと予想される。 ともかくアルトは、天城のマイクロハイマニューバミサイル。さくらの狙撃、そして自身のハイマニューバ誘導弾と共に敵に突入していった。 (*) サジタリウス小隊が交戦に入ってから5分後の横浜上空。 そこでは今、2人のワルキューレが天を駆けていた。 「スターズ1よりホークアイ、現状は?」 『こちら『ホークアイ』。先行したサジタリウス小隊が敵大編隊を迎撃中。現在おかげで戦闘空域は相模(さがみ)湾上空に限定されている。船もないので安心して撃墜して構わない。また、幻影はロングアーチの協力で実機との区別がつきつつある。これはデバイスに直接IFFとして送信する。また、混戦なため誤射に注意せよ』 「了解」 なのはは答えると、『Sound only』と表示された通信ディスプレイを閉じた。 そして今や10キロメートルを切った戦闘空域を睥睨する。 そこでは真っ青なキャンバスをバックに、自分達魔導士には無縁な白い飛行機雲が、幾筋も複雑な螺旋模様を描いている。 「綺麗・・・・・・」 思わず素の感想が口に出る。 しかしその作品を作っているのがアルトのVF-25と、ガジェット・ゴースト連合であることを思い出し、あわてて頭を振ってその考えを吹き飛ばした。 「フェイトちゃん、行くよ!」 頷く10年来の親友。 「スターズ1、」 「ライトニング1、」 「「交戦(エンゲージ)!」」 2人は文字通り光の矢となって、空域に突入した。 (*) ガーッ、ガーッ、ガーッ───── 鳴りやまないミサイルアラート。多目的ディスプレイは真紅の警告色に染め上げられている。 VF-25は魔力のアフターバーナーを焚きながら上昇を続ける。 アフターバーナーを焚いたVF-25は、推進剤である魔力が機体の推進ノズルや大気との摩擦で発熱するため、赤外線カメラを通して見れば太陽のように光輝いて見えることだろう。 周囲を飛翔する全ての敵ミサイルが、そんなVF-25に打撃を与えんと、回避運動すらせずに追いすがる。 それを確認したアルトはスラストレバーを下げ、フレアを撒くと足を60度機体下方に展開する。 こうすることによって推進モーメントが突然変わったバルキリーはクルリと前転、機首を下に向ける。 そして再び足を戻して下降するVF-25を尻目に、高熱源体となったフレアにミサイルが引き付けられ、そのすべてが誘爆した。 「ふぅ・・・」 アルトは前方を塞ぐ実機のガジェット達を徹甲弾を装填したガンポッドで次々葬っていく。 しかし敵は全天を覆っていた。 彼は顔をしかめて敵を俯瞰していると〝衝突コース!〟という警告がディスプレイに表示された。 しかしレーダーに映る敵機はIFFには反応なし。 つまり目視できるしレーダー反射もあるが、六課のスーパーコンピューターが『あれは幻影だ』と、結論を出したという事だ。 正直幻影だろうと実機だろうと撃墜か回避したいが、おそらく敵の罠だ。 確かに発砲してあれが実機でないと証明するのは簡単だ。 しかし敵が作戦を変更してしまうので、こちらが『あれが実機でない』ことに勘づいたことを知らせる訳にはいかない。また、機動を操作されるわけにはいかないため、回避もできない。となればそのまま突入するしかなかった。 迫る敵機。もし実機なら正面衝突で大破は免れない。 (南無三!) アルトは一瞬で全ての神仏に祈る。 次の瞬間には敵機はVF-25を通り抜けていた。 後方を振り返ると、やはり罠があったようだ。ガジェット数十機がホバリングして袋を形成している。回避していればあの袋に飛び込んで集中砲火という結末だったらしい。 (最近は罠を作るぐらいの頭ができたんだな・・・) アルトが感心する内もガジェットは半ばホバリングしているためさくらの狙撃が面白いほどよく当たる。 しかしゴーストが対応を開始した。 彼らは三次元推力偏向ノズルで機首を無理やりこちらに向けると向かってきた。 いつの間にか囲まれている。 このままでは包囲、殲滅される!と危惧したアルトは遂に奥の手を出した。 「メサイア、〝トルネード〟パック装備!」 「roger.」 VF-25の胴体全体を一瞬青白い光が包み、背面に2門の大口径ビーム砲を、そして両翼には旋回式追加ブースターと装甲を装備した。 機動重視の装備として開発されたこれは、FAST(スーパー)パックを数倍する機動性能を発揮する。バジュラとの抗争では開発未了であったが、これさえあれば被害は4割は減らせたと言われている悲願の追加装備だ。 さくらの速射狙撃が包囲するゴーストの一角に穴を開ける。 アルトはスラストレバーを一杯まで押し上げると、その穴から一気に突破、包囲から脱出を図る。 しかし援護にも限界がある。上方より数機のゴーストと火線。 アルトは両翼に装備されたブースターを左右逆に旋回して急激に90度ロール機動をおこなうと、間髪いれずに主機、旋回ブースター、スラスター・・・すべての機構を駆使して上昇をかける。その瞬間的なG(重力加速度)は『ISC』、『イナーシャ・ストアコンバータ』、デバイス由来の重力制御装置の限界を越え、アルトの体に生のGを掛ける。しかしいままで反吐が出るような訓練に鍛えられた彼にはどうということはない。 機体はゴーストでも真似できないような角ばった急旋回を行って敵の火線を回避すると、ガウォークで急制動。擦れ違おうとしたゴースト数機に背面のビーム砲を照準すると立て続けに見舞った。 魔力出力にしてSランククラスの砲撃を受けたそれらは、瞬時に己の体を空中分解させて海の藻屑へと帰した。 『こちらサジタリウス2(さくら)。弾が切れました。これより魔力砲撃に切り替えます』 遂に持ってきた砲弾を撃ち尽くしたらしい。魔力砲撃ではこの空域全体に作用したAMFにより威力が格段に低下するが、致し方ない。 アルトとてガンポッドに残る残弾など雀の涙だ。 熱核反応エンジンは戦闘機に無限の航続能力を与えたが、積める弾薬量が決まっている以上、まともな戦闘可能時間は旧式の戦闘機と変わらないのだ。 (荷電粒子ビーム機銃さえ使えれば・・・・・・) 現在も封印(シール)状態でVF-25の両翼に装備されているこのビーム機銃は、最初からバジュラには効かなかったが、AMFが作用しないためゴーストやガジェットなら苦もなく落とせるはずだった。 だが局員となった今、そんな物を使えば暖かい寝床から一転、鉄格子の部屋で寝ることになる。 アルトは無駄なことを考えるのをやめると、戦術に集中する。 トルネードパックで機動力の上がったVF-25に対し、ゴーストとガジェットはその機動性と数で対抗してくる。 更にゴーストの撃ち出す実体弾は、バルキリーの転換装甲のキャパシティをすごい勢いで消耗させていく。 (というかこれはマジ物の対(アンチ)ESA(エネルギー・スイッチ・アーマー。エネルギー転換装甲)弾じゃないのか・・・・・・?) 通常の実体弾はこれほどの消耗を強いるものではないはずだった。 とにかく、客観的に見てこれ以上の進攻阻止は無理だった。 しかしすでに1キロ程先に三浦半島の海岸線があった。 (現行戦力でこれ以上の足止めは無理だ。しかし半島上空を戦場にするわけには・・・・・・) そこに見える民家が、彼に後退を躊躇わせた。 その時、待ちに待ったものが来た。ディスプレイに表示される〝空域マップを貫く太く赤い線〟と〝退避要請〟という文字。 敵は大量に後ろに引きつけている。ここで撃てば最も多くの敵を巻き込めるだろうが、時空管理局、特に彼女がそれをするはずがない。かといって一度意図を図られてしまってはその効果は急速に薄まる。 ならば自分にできることは何が何でも急いでこの位置から退避するしかなかった。 アルトは操縦桿を倒すと左ロール、続いて主観的な上昇をかける(つまり左旋回)。もちろんその間スラストレバーは限界まで前へと押し上げられている。 機体が転換装甲の使用を前提とした設計限界である25Gの荷重によって悲痛な悲鳴をあげる。VF-25のF型(高機動型)としてスペシャルチューンされた『新星/P W/RR ステージ II 熱核バースト反応タービン FF-3001A改』が己の力を示すように、そして左右エンジンでハーモニーを奏でるかのようにその雷のような轟音によって圧縮した空気と魔力を後方へと吐き出す。両翼のブースターも主翼の空力だけでは成し得ない無理な上ベクトルの力を捻り出す。 アルトもまた、転換装甲維持のため機載のISCが止まった事により、襲いくる津波のような力に必死に抗う。 そして赤い線の示す射軸線をVF-25が越えると同時に、海岸線から桜色をした魔力砲撃が伸び、射軸上にいたゴーストとガジェットに突き刺さる。それは幻影含めて50機近くを瞬時に撃墜した。 『アルトくん、大丈夫!?』 天使の声が聞こえる。 「ああ、なのは。助かった」 しかし安心したアルトの機動は少しだが単調になっていた。 ゴーストはその機を逃さず肉薄してきた。 そのゴーストから横になぎ払うように機銃弾が放たれ、VF-25に迫る。 (緊急回避は・・・・・・間に合わない!) アルトはトルネードパックの装甲パージによる囮回避に備える。しかし機銃掃射はバルキリーまで来ない内に止まった。 不思議に思ったアルトはゴーストを仰ぎ見る。 そこには金色の矢に貫かれ、海に力なく落ちていくゴーストの姿があった。 外部マイクが女性の声を拾う。 『・・・・・・もう、私の事も忘れないで欲しいな』 彼女は大鎌形態のそのデバイスを、その華奢な肩に担ぐと大見得を切った。 同時に周囲に展開する他のガジェット、ゴーストにもランサーの雨が襲い、その多くを撃墜、爆炎が花を添えた。 「フェイト!」 外部スピーカーを通して放たれたアルトの声に、彼女はニッコリ微笑みを返した。 (*) 六課の合流後、すぐに役割に応じて部隊を再編する。 高機動型であるアルトとフェイトの2人は、引き続き敵を掻き乱す前衛部隊。 2人に構わず進む編隊には、さくらとなのはの火力部隊が当たり、天城は機動部隊として2人の直掩と撃ち漏らしの掃討を続行。 この後の戦いは比較的スムーズに進んだ。 そして10分後、更なる援軍が到着した。 『こちら機動六課フロンティア2。これより、支援します!』 聞こえた声はランカのものだった。レーダーを見るとヴァイスのヘリが戻って来ていた。 どうやら保護した少女を、この近くの聖王教会中央病院に置いて、とんぼ返りしたようだった。 『みんな!抱きしめて!銀河の、果てまでぇ!』 フォールド波に載ったランカの常套句が、半径10キロに渡って響き渡った。 続いて流れてくる歌声。 アルトはそれを聞いて、先ほどの念話以上の安心感を抱いた。 彼女の歌声は、いつかのような迷いある歌声ではない。 誰に向けてのものかはわからない────きっと、生きとし生きるもの全てにだろう────が、晴れ晴れとした澄み渡った空のように、暖かい歌声が沁み渡っていった。 (*) ランカの参入は戦闘の趨勢を激変させた。 魔導兵器であるガジェットⅡ型はレーザー攻撃を封じられボロボロ落とされる。 ゴーストには魔導技術がほとんど導入されていないらしく相変わらず元気だったが、ガジェットが脅威でなくなった分、楽になった。 しかし、ランカの超AMF範囲内にありながら、幻影魔法が解除されることはなかった・・・・・・ To be continue・・・・・・ ―――――――――― 次回予告 ランカ「ずっとそばにいたかった。でも、もうあなたまで届かない・・・・・・」 マクロスなのは第27話「撃墜」 追悼の歌、銀河に響け! ―――――――――― シレンヤ氏
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なのは「それじゃ悟飯君、3日間この2人に舞空術の指導を頼んだわよ」 悟飯「わかりました、管理局のみなさんにはフリーザ軍や人造人間の戦いでお世話になりましたしね、お力になれることでしたら喜んで」 なのは「こちらこそありがとう、悟飯君、それじゃ私はミッドチルダに帰るわね、スバル、ティアしっかりやるのよ、悟天君とビーデルちゃんも頑張ってね」 スバル・ティア「はい!」 悟飯「はい、フェイトさんやはやてさんによろしく」 悟天「わかったよ、なのはお姉ちゃん」 ビーデル「ありがとうございます、なのはさん」 3日後・・・ なのは「舞空術を習得できなかったですって?」 スバル「はい、私達は気のコントロールはあまり慣れてなくてもう少し修行が必要だと悟飯さんが・・・」 ティア「でもコツは掴んでいると悟飯さんは言いました。なのはさん、あと数日ミッドチルダで舞空術の修行をさせて下さい」 なのは「そんなの当然でしょ!私は地球で3日間で舞空術を習得しろと言ったのよ! あなたたちは飛行魔法の素質が無いからかわりに舞空術を習得させようとしたのに・・・期待を裏切るなんて・・・ あなたたち罰として今月の給料全額カット!そして舞空術ができるまで毎日トイレ掃除よ!悔しかったら明日からの訓練で早く舞空術を習得することね!」 スバル「そんな~~~!」 ティア「明日から地獄だわ~~~!」 おわり 単発総合目次へ DB系目次へ TOPページへ
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既に士郎を除く他のボディーガード達はテロリストの襲撃によって殉職。 もはや残るのは士郎一人のみ。しかし士郎は「小太刀二刀御神流」正当継承者。 最後の一人になってもなお獅子奮迅の活躍でテロリスト達を返り討ちにしていく。 そこで突如現れるテロリストのボス。どんな組織でも頭が潰されれば崩壊する。 士郎がテロリストのボスに狙いを絞るのは当然の事だった。 だがその直後、ボスの指先から放たれた光線に貫かれた。 士郎は何が起こったのか分からなかった。そして彼は知らなかった。 これが彼の知り得ない技…魔術による物だと言う事を。 そしてその存在を完全に消し去られる直前に士郎は脳裏に見た。 19歳に成長した娘、なのながこのテロリストのボスと相対して仇を取る光景を… それは単なる願望…死の間際に見た幻だったのかもしれない。 しかしそれを見た時士郎の顔に笑みが浮かび、笑いながら死んでいった。 単発総合目次へ DB系目次へ TOPページへ
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ヤムチャ「ちくしょう!俺はやらねえぞ!見物だけだからなっ!」 ティア「バカな人たちだわ、勝てる可能性なんてあるかわからないのに」 ブルマ「ちょっと、あんたは一緒にいかないわけ?」 ティア「あたりまえです」 ブルマ「あんたそれでも女なの?地球も仲間も大ピンチの時なのよ!」 ティア「私、飛べないんです」 ブルマ「あ・・・そ、そう」 ティア「(私だって本当は人造人間と戦いたいわよっ! でも原作者の都築さんが私には飛行魔法の素質を与えなかったわ! 私もZ戦士のみなさんと同じ鳥山キャラなら舞空術で空が飛べてよかったのに!)」 単発総合目次へ DB系目次へ TOPページへ
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銀河を駆ける歌声 UNIT U-013 緑 発生 赤/緑 3-6-2 M エース(2) 戦闘配備 強襲 高速戦闘 装填(1) 《[3・5]》武装変更〔マクロス・クォーター〕 (戦闘フェイズ):《(1)》このカードは、ステップ終了時まで敵軍ユニットの効果の対象にならない。 特徴 艦艇 LLサイズ [6][2][6] 出典 「マクロスF」 2008 多くの特殊効果に加え、ユニット限定の回避能力を備えた、SMS旗艦の強襲形態。 マクロスクルセイド現環境下では回避対象となるユニットが少なく真価を発揮する事は少ないが、クルセイドシリーズ統合で見れば非常に強力なユニット。 エース値が厄介になれば武装変更で戦艦形態に戻ってしまえば良い等、使い勝手は良い。 今後、厄介な対ユニットテキストを持つユニットが増えれば活躍の機会が増えると思われる。
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クロス 聖書外典ダニエル書附録に登場するペルシア人の王。 ダニエルはこの王の側近として登場する。
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《クロス》 1.(cross)英語で「交差する」の意。「十字架」のことも意味する。 Mr.Childrenのブレイクのきっかけとなった名曲「CROSS ROAD」(ミスチルの4thシングル、1994年リリース)は「交差点」「十字路」を意味する。 ちなみにスペルが違うクロス(cloth)は布切れのこと。 かつてジャンプの名作バトル漫画「聖闘士星矢」に出てくる、聖闘士(セイント)達が纏うバトルスーツ「聖衣(クロス)」はここからきている…はず。 2.AC17ネット対戦で解禁されたオジャマのひとつ。 中央の赤のみ位置が変わらないが、それぞれ左右対称に白と黄、青と緑のポップ君が位置を入れ替えながら降ってくる。 図示すると「XX|XX」の形でポップ君が降ってくるわけである。 微妙にポップ君の配置が変化するため、「廉価版EXICITE」と言われることもある。実際にそんな感じである。 しかし何より恐ろしいのはこれがレベル2オジャマであるという事実に他ならない。エキサイトほど激しく移動するわけではない(というか、移動先にはっきりとした法則性が存在する)ので慣れればある程度は適正HSでも対応可能だが、当然ながら同時押し譜面では無理押しが発生する可能性もあり非常に強烈。明らかにレベル2の枠を逸脱しており、ある意味では「熱帯オジャマのレベル詐欺」と言えなくもない。 そのせいかAC18ではレベル3に格上げされた。 なお発動中はポップ君が爆走と同じくサングラスをかけたポップ君になるためか、超チャレでは爆走系オジャマと同時にノルマ選択できない。 初出のAC17ではどう見てもEXCITE系オジャマの類型なのだが、上記のようにチャレンジで爆走系と併用出来ない為、プレイヤー側が勝手に爆走系としてしまい「爆走の盾」で防げると勘違いをする人を続出さた。 ついでにいえばレベル2のオジャマなのでLV.3封印の指輪でも防げないので、バラスピ同様アイテムによる回避が不可能なオジャマの一つである。 しかしAC18では「爆走の盾」で防げる上、Lv3に格上げされたためLV.3封印の指輪での対処が可能になった。 なお対処法はエキサイトのそれで流用可能。HSを一段階下げるだけでもかなり効果的。 また、最終的に落ちてくるラインのポップ君の色になっているため、色を良く見て押せば同時押しの少ない低~中難易度程度なら意外と何とかなったりもする(無理押しを気合いでさばかなければならない場合もあるが…)。
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作品概要 登場キャラクター・有栖 零児 ・小牟 ・沙夜 ・毒牛頭 ・毒馬頭 その他 シリーズ一覧 作品概要 西暦20XX年。 10年前の事件で封鎖都市指定を受けていた渋谷で、大規模な次元の「ゆらぎ」が発生。 魔界、神界、幻想界、魍魎界、物質界の5つの世界の境界線が崩壊し、それぞれの世界の邪悪なる者たちが次元を超えた陰謀を画策しだした。 この超次元的危機に立ち向かえるのは、それぞれの世界のヒーローたちだけ。 「ナムコ」と「カプコン」のゲームキャラクターたちだけなのだ! ナムコとカプコンの代表的キャラ達が揃い踏みでどんちゃん騒ぎのお祭りゲーム。通称「ナムカプ」。 ジャンルとしてはシミュレーション・RPGだが、戦闘シーンはアニメ演出でなくアクションで実際に操作するのがゲーム的な特徴。 PXZの前身とも言える作品で、同じスタッフが開発を手がけている。 PXZと比べると、登場作品はアーケードやFC・SFC・PS時代の少し古めの作品がメイン。 出演に当たって、当時キャラクター性が薄かったレトロキャラ達にもキャラ付けが行われており、 そのキャラクター性はPXZのワルキューレやアーサーにも引き継がれているようだ。 ナムカプ自体の参戦作品一覧はナムカプwikiの方を参照。 COUNTDOWN PLAYでの会話内容を見る限り、ナムカプで共演済みのキャラクターはお互いの面識を引き継いでいるようだ。 登場キャラクター ・有栖 零児 アリス・レイジ。ゆらぎの街のアリス。 ナムコクロスカプコンの主人公。真面目な性格で生粋のツッコミ役である。 超常現象に対応する特務機関「森羅」のエージェント。刀、銃、陰陽術を組み合わせた戦闘術、「護業抜刀法」の使い手。 頭部の半分が白髪になっている事と大きな斬り傷がその下の額にあるのが特徴。ちなみにこれは10年前、「森羅」と敵対する組織「逢魔」のあるエージェントにより受けたもの。 冷静かつ寡黙で、濃いネタを連発するナムコクロスカプコンの(というか小牟の)最後の良心。 ついでにゲスト参戦のはずだが、登場人物の殆どがボケでツッコミが致命的に足りない無限のフロンティアシリーズの最後の良心でもある。 ちなみに登場する毎に武器の修得度が向上しており、初登場のナムコクロスカプコンでは、四種の武器を単独で振るう程度であったが、無限のフロンティアシリーズへの参戦時に刀の同時使用「二刀」銃の同時使用「二丁」二種複合使用の「二門」を会得していた。 そして、今回の参戦にあたり五行で唯一使用していなかった水行の力を持つ刀「霜鱗」を持つようになった。 ちなみに愛用の武器「護業」の内訳は、上記の霜鱗に加え、トリガー付き日本刀「火燐(かりん)」、脇差「地禮(ちらい)」、ショットガン「柊樹(ハリウッド)」、リボルバー拳銃「金(ゴールド)」。なお銃弾には対オカルト特務機関らしく、対霊体処理なるものが施されている。 cv:井上和彦 ・小牟 シャオムゥ。765(ナムコ)歳のらぶりー仙狐。 実は1000歳で成人(というか天狐と呼ばれるようになる)とされる種族のため、仙狐としてはまだまだ若者らしい。 戦闘では仕込み錫杖「水憐(すいれん)」、二丁拳銃「銀(シルバー)」と「白金(プラチナ)」、占術、符術、そしてプロレス技などを活用する。 零児の教育係を務めていた事も有ったが、現在は対等の相棒同士。そして恋仲(……かどうかは微妙なところ?)。 一人称は「わし」。アニメ・ゲーム・インターネットなどのオタク趣味全般を嗜んでおり、兎にも角にもネタ台詞を連発しまくる。 765年の狐生で培ったその範囲は、ネット上でメジャーなものから、こよなく愛するプロレスネタ、一体誰が分かるんだよそのネタと言いたくなるマニアックなものまで多岐にわたり、恐らくその全てを把握している者は(本人とシナリオライターの森住氏くらいしか)いないのではないかと思われる。 「スーパーロボット大戦OGシリーズ」のとある人物と外見や人物性が酷似しているのは最早公式で認められたネタである(パクリやパロディではなく、どちらもシナリオライターの森住が生み出したキャラ)。 ナムコクロスカプコン以降にも「無限のフロンティアシリーズ」や「勇現会社ブレイブカンパニー」にゲスト出演しており、そのたびに胸が大きくなっている。PXZでもやはり大きくなっている。仙狐め、いまだ成長期か……!? ファンからの愛称はゲーム中でも良く使われる「駄狐」。たまに「腐狐」とも。意味はお察し。 cv:南央美 ・沙夜 サヤ。森羅と対立関係にある組織、逢魔のエージェント妖狐。 零児・小牟とは因縁浅からぬ仲であり、過去幾度も激突している。 (零児の頭部の傷は彼女に刻まれた物であり、小牟は当時零児の父のパートナーだった) 武器は火刀「焔(ほむら)」水刀「氷(こおり)」雷刀「楔(くさび)」を纏めた刀一式「后尭(ごぎょう)」。 その他ハンドガン『涅(くろつち)』、猛毒を生み出す手刀『鎬(しのぎ)』や、数々の妖術を操る強敵。 ナムコクロスカプコンで戦死したはずだったが、「無限のフロンティアシリーズ」にて突如復活した。 ちなみになんで復活したのかは本当に全く一切説明されておらず、零児達も気にしなくなってしまった 今作でも配下である毒牛頭・毒馬頭を引き連れ、暗躍する。 cv:折笠愛 ・毒牛頭 ドクゴズ。 cv:西嶋陽一 ・毒馬頭 ドクメズ。 cv:奈良徹 揃って沙夜の配下。 初出であるナムコクロスカプコンでは中ボス扱いで喋ることもなかったが、無限のフロンティア2作品への客演を経て声が付き、キャラも立っていった連中。 諸事情で主に牛の方がキャラが立っている。 その他 登場するキャラクターたちを魅力たっぷりに描けているとしてファンが多いゲームではあるのだが、それと同時に「テンポが非常に悪いゲーム」として悪名も高い。これは本作が単純なターン性のSRPGと異なってアクション性の強い戦闘システムである都合で、敵味方双方の戦闘演出をスキップできないというシステム上の欠点が主な要因。これに加え、今作と違い「ヒット数が特定の数を超える」と攻撃回数が増える為、ヒット数の多い技を2発当てる→一度落とす……、を繰り返すだけで本来の攻撃回数の1.5倍もの回数攻撃出来た為、自ターンも結構な時間がかかるシステムとなっていた。ナムカプのテンポの悪さはスタッフも理解しているらしく、ファミ通でのPXZのスタッフインタビューでは「今回はテンポ感を重視してます!」としつこいほどに繰り返されていた。なお、PXZでは敵ターンの攻撃は、名前ありの特殊キャラクター以外ならばマップ上で一瞬で処理される。 零児は「不思議の国のアリス」がモチーフとなっている。この童話モチーフという流れは無限のフロンティアシリーズや本作オリジナルの登場人物にも適用されている。 シリーズ一覧 NAMCO x CAPCOM (2005 PS2) キャラ出演作品無限のフロンティア スーパーロボット大戦OGサーガ (2008 DS) 無限のフロンティアEXCEED スーパーロボット大戦OGサーガ (2010 DS) 勇現会社ブレイブカンパニー (2011 3DS)
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(アマンクロス) +目次 概要 性格 趣味・特技 特徴 声優 関連リンク Ⓒ株式会社ボッケモンプロ、Ⓒ薩摩剣士隼人プロジェクト Ⓒ株式会社ボッケモンプロ、Ⓒ薩摩剣士隼人プロジェクト 概要 [部分編集] 第一部三話から登場。 黒酢のボッケモン。 第一部完結編では、大ンダモ支丹の暗黒波動弾を硬い胴体や腕で弾き飛ばしたほか、身近な人々と共に、つんつんとコンコンへ声援を送った。 第二部では三人衆としてヤッセンボーと立ち会い、腕や脛、頭など固い体でヤッセンボーの幻魔月光刀を受け止めた。 ひっとべ!では、突如現れたアマンむすめに困惑しながらも、一緒に黒酢を人々に勧め、クロスポーズで多くの人々と腕を交差させた。 ** 登場 性格 [部分編集] クロス一族に伝わる友情と健康の証で「クロスするがクロス!」と言いつつ互いの腕を交差させるクロスポーズを好む。 お正月スペシャルボッケモンたちが集まった宴会の席では、クロスポーズの相手を求め続けていた。 ** 好きなもの・嫌いなもの 趣味・特技 [部分編集] 人々の心と体の健康を願っており、普段は福山町のかめ壷畑で黒酢を人々に振舞っている。 繁華街でアマンむすめと一緒に黒酢を振舞うこともある。 特徴 [部分編集] 一人称は「私」。 「~でス~」という語尾が口癖。 琥珀色の体は昔ながらの自然製法で熟成された薩摩玄米黒酢でできており、黒酢を作る壷であるアマン壷というかめ壷に包まれている。 体は、かめ壷のため固い。 番外編(パート1)では黒酢工場を経営している姿が描かれ、工場の経営状況について悩み資金が必要なあまり、つんつんが見つけた融資の紙を見ておもわず、うそ電話詐欺に引っかかりそうになっていた。 声優 [部分編集] 竹原 哲郎(たけはら てつろう) 関連リンク [部分編集] アマンクロス 鹿児島ご当地キャラマップ アマンクロス 登場人物 ** 出典参照リンク
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マクロスなのは 第25話『先遣隊』←この前の話 『マクロスなのは』第26話「メディカル・プライム」 八神はやては部隊長室で、今後の六課の運用について思索をめぐらせていた。 脳内会議の議題に上がっているのはカリムの預言の事だ。 設立から半年。六課はその任務を忠実に果たし、今に至る。現状に不満はない。しかし不安要素はあった。それは『〝事〟が、六課の存続する内に起こるのか』という問題だ。 六課はテスト部隊扱いのため、あと半年足らずで解体される。1年という期間は何もテキトーに決めた期間ではない。聖王教会と本局の対策本部が議論の末導き出したギリギリのラインだ。 今より短い場合の問題は言わずもがなだが、逆に長いとそれはそれで問題がある。今でこそガジェットの出現から出動数が多く、各部隊からの信頼も厚い六課だが、当時は必要性の認識が薄かったため本局でさえ設立には渋ったのだ。それは予算の問題のみならず、当時対立関係にあった地上部隊が黙っていない。という意見もあったからだ。しかしこの問題は『地上部隊のトップであるレジアス中将が賛同した』というイレギュラーな、しかし嬉しい出来事から片づいている。 だがもう1つ問題が上げられていた。それは六課への過剰な戦力集中だ。地上部隊20万人の内、4万人は事務・補給・支援局員である。 そして残る16万人を数える空戦魔導士部隊や陸士部隊である純戦闘局員の内10人ほどしかいないSランク魔導士を八神はやて、高町なのは、ヴィータ、シグナムと4人も六課に出向させている。 このランクの持ち主は『北海道方面隊など6つある地方方面部隊、5個師団(2万7千人)に1人いるかいないか』という希少な戦力であり、本局ですら少ないSランク魔導士のこれほどの集中投入は極めて思い切った人事だった。 そのため『気持ちは分かるが、そう長くは留めて置けない』というのが周囲の本音だった。 仮に1年後に同じような部隊を本局主導で再編する場合を考えても、地上部隊を頼れない分、生み出されるであろう戦力の低下は憂慮すべき問題であった。 そこで『何か妙案がないだろうか?』と思考をめぐらせていたはやてだったが、その思索は打ちきられることになった。 空中に画面が浮かび、電話の呼び出し音が締め切った室内の空気を震わす。画面の開いた場所は左隣の人形が使うような小さなデスクだ。本来なら補佐官であるリインが受けるはずだが、今ここにいないことは承知済み。右の掌を空中にかざして軽く右に滑らせると、その動作を読み取った部屋が汎用ホロディスプレイを出現させる。この部屋だと電灯のスイッチなどの操作を行うものだが、こんな時のために電話もその機能に加えている。おかげで次のコールが鳴る前に通話ボタン触れることができた。 「はい。機動六課の八神二佐です」 サウンドオンリーの回線だったが、 直接外部から電話がかかることはなく、地上部隊のオペレーターを経由したルートが普通だ。しかし聞こえてきた声はオペレーターの声ではなく、レジアスのものだった。 『はやて君か。いきなりで悪いが1330時頃にこちらに来てほしい』 「え? ほんとにいきなりやなぁ・・・・・・もちろん何か買ってくれるんよね?」 はやての冗談にレジアスは電話の向こうで豪快に笑う。 『なるほどな。グレアムのヤツがそうやって「部下がいじめてくる」と嬉しそうに嘆いていた意味がようやくわかったよ』 レジアスのセリフに、はやては「バレてたか」と苦笑いする。 グレアムは以前本局の提督を勤めていた人物で、当時足が悪く両親のいなかったはやての、いわゆるあしながおじさんであった。 またはやて自身、『闇の書事件』の責任を取って自主退職するまでのほんの1年だけ彼の元に嘱託魔導士として配属されており、当時同事件で主犯者扱いされていたはやてが管理局に慣れるよう手を尽くしてくれていた。 彼女を学費面での援助によってミッドチルダ防衛アカデミーに入学させてくれたのも、管理局で風当たりの悪かった当時の身の振り方を教えてくれたのも彼だった。 閑話休題。 『・・・・・・まぁ、実際買ったのだがな。きっと君も驚くだろう』 「え、いったいなんなのや?」 『ああ、─────だ』 レジアスが口にしたその名は、確かにはやてが驚くに十分値するものだった。その後はやては2つ返事で了解し、身支度のために席を後にした。 (*) 同日 1200時 訓練場 午前中に行われた抜き打ちの模擬戦になんとか勝利した六課の新人4人は、一時の休憩に身を任せ、地面に座り込んでいた。そこへなのはにヴィータ、そしてフェイトを加えた教官陣がやってきた。 「はい。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様。・・・・・・でね、実は何気に今日の模擬戦がデバイスリミッター1段階クリアの見極めテストだったんだけど・・・・・・どうでした?」 一同の視線が集まるなか、後ろのフェイトとヴィータに振る。 「合格」 「まぁ、そうだな」 2人とも好意的な判断。そしてなのはは───── 「私も、みんないい線行ってると思うし、じゃあこれにて1段目のリミッター解除を認めます」 その知らせを耳にした4人は〝やったぁ!〟とうれしさのあまり座り込んでいた地面から跳ね上がる。 「お、元気そうじゃないか。それじゃこのまま昼飯抜きで訓練すっか」 ヴィータのセリフに4人の子ヒツジは青ざめ、一様に首を横に振った。 彼ら新人にとって唯一の平安といっても過言ではない食事の時間は絶対不可侵の聖域であり、守らねばならぬ最終防衛ラインだった。 「も~、ヴィータちゃんったら」 なのはに言われヴィータは 「冗談だよ」 と、猫を前にしたハムスターのような目をした4人に言ってやる。 しかし彼女の目が〝本気(マジ)〟だったことを書き添えておこう。 落ち着きを取り戻した4人にフェイトが指示を続ける。 「隊舎に戻ったらまず、シャーリーにデバイスを預けてね。昼食が終わる頃にはデバイスも準備出来てると思うから、受け取って各自しっかりマニュアルを読み下しておくこと」 それにヴィータの補足が付く。 「〝明日〟からはセカンドモードを基本にして訓練すっからな」 しかしその補足を聞いた4人は、自分達が間違っていると思ったのか空を仰ぐ。真上に輝く真夏の太陽は、まだ時刻が正午であることを知らせていた。 「〝明日〟ですか?」 「そうだよ。みんなのデバイスの1段目リミッター解除を機会に、私とヴィータ教官のデバイスも全面整備(フルチェック)とアップデートをすることになったの。だから今日の午後の訓練はお休み。町にでも行って、遊んでくるといいよ」 なのはのセリフに、4人は先ほどを数倍する大声で、喜びの雄叫びを上げた。 (*) 同時刻 フロンティア航空基地 第7格納庫 「あと30分で出撃だ。しっかり頼むぞ」 愛機であるVF-25を引っ掻き回している整備員達に檄を飛ばす。 彼らはそれぞれの仕事をこなしながらも 「「ウースッ」」 と、まるで体育会系のような返事を返す。そして点検項目を並べたチェックボードを効率よく埋めて、整備のために開けたパネルやスポイラーを定位置に戻していった。 そんな中、こちらへと1人の整備員がやってきた。しかし他の整備員と違ってそのツナギはあまり機械油に汚れていないように見える。どうやら新人らしい。 「どうした?」 「はい、アルト一尉。恐縮ですが、モード2のバトロイドのモーション・マネージメント比は今までの1.50倍で良いでしょうか?先ほど戦闘のデータを見る機会があったのですが、自分の見立てではあと0.04増やした方が動かしやすいように思います」 幾分か緊張した様子の新人に言われて初めて思い出す。そう言えば確かに前回戦闘の最中、そのような違和感を覚えたような気がする。もっともSMSへの先行配備の段階から乗っているVF-25という機体なので多少の誤差など十分カバーできるが、修正するに越したことはなかった。 「よく気付いたな。そうしてくれ」 答えを聞いた新人は満面の笑みを作って 「はい!」 という返事とともに敬礼し、再びバルキリーに繋がれたコントロールパネルに返り咲いた。そこで航空隊設立当初からVF-25のアビオニクスを任せている担当者が 「やっぱり言ってよかったじゃねぇーか」 と、入力する新人の肩をたたく。 「俺達でもコイツのことは完全には把握してないんだ。だからこれからも新人とか専門外とか関係なしにどんどん聞いてくれよ!」 「はい!・・・・・・じゃ先輩、さっそくひとついいですか?」 「おう、なんだ?」 「明日地元から彼女が来てくれるんです!それでクラナガンでデートしたいと思うんですが、どこかいいスポット無いですか?」 「え・・・・・・彼女とデート?あ・・・・・・いや、俺はそういうのよくわからなくて・・・・・・その・・・・・・だな」 こういう事象に対しては知識がないのか大いに困っているようだ。そこへ彼の同期がデートと言う単語を聞きつけたのか機体越しに呼びかけてきた。 「どうしたんだよシュミット?お前俺たちと違ってモテるだろ?意地悪しないでデートスポットの一つや二つ教えてやれよ!」 「そういうわけじゃねぇんだよ加藤!」 「じゃあなんだよ?」 「だって・・・・・・なぁ?」 困ったように言うシュミットに安全ヘルメットを外してポニーテールの長髪を垂らした新人が 「ふふふ」 と蠱惑的に微笑んだ。 (*) その後彼女は 「キマシタワー!」 と叫びながらやってきた女性局員や、 「なになに?諸橋(その新人)に〝彼女〟がいるって!?」 とVF-25の整備を終えて集まった整備員集団に囲まれていた。しかしその顔触れはアビオニクス担当者であるシュミット、そして新人を含めて全員自分と同年代ぐらいだった。別に特殊な趣向を持った人間がそう、というわけではない。この航空隊に所属する整備員はほとんど同年代なのだ。 これはこのミッドチルダでOT・OTMという新技術に、最も早く順応したのが彼らのような若者であることの証左であった。 もっとも教養としての現代の技術はともかく、OTMはゼロスタートであったおかげで3カ月前まで整備の質はあまり良くなかった。それが第25未確認世界でも最新鋭機であったVF-25なら尚更だ。 しかし最近ではアビオニクスを整備するシュミットのような人材が育ってきてくれたおかげでなんとか乗り手である自分や、たまに技研から出張してくる田所所長などに頼らなくても良いぐらいの水準に到達していた。 しばらく馴れ初め話を語る諸橋とデートスポットの位置について真剣に話し始めた彼らの様子を遠巻きに眺めていたが、整備が終わった彼らとは違い、自分の仕事は目前に差し迫っている。名残惜しいが列機を見回ることにした。 まずはVF-25の対面で整備が急がれている天城のVF-1B『ワルキューレ』だ。 純ミッドチルダ製であるこの機体は、製作委任企業であるミッドチルダのメーカー『三菱ボーイング社』の技術者が、わざわざ整備方法を懇切丁寧に講義していた。そのため比較的整備水準は初期の頃から高かったようだ。 現在パイロットである天城はコックピットに収まり、ラダー等の最終点検に余念がなかった。 まるで魚のヒレのように〝ヒョコ、ヒョコ〟と垂直尾翼や主翼に付けられている動翼であるエルロンが稼動する。 「あ、隊長」 こちらに気づいた天城は立ち上がると、タラップ(はしご)も使わずコックピットから飛び降りる。 コックピットから床まで3メートルほどあり、生身なら体が拒否するところだが、その身に纏ったEXギアが金属の接触音とともに彼の着地をアシストした。 「今日のCAP任務が8時間ってのは本当っすか?」 「そうだ。今日はだましだまし使ってきた機体の総点検らしいからな。六課にいて一番稼働率が少なかった俺たちで時間調整するんだと」 「・・・・・・ああ、そうですか」 気落ちした表情に続いて小声で 「俺は六課でも出撃率100%だったのに・・・・・・」 という天城の嘆きにも似た呟きが聞こえたが、どうしようもないので 「まぁ、頑張れ」 と肩を叩いてその場を離れた。 次にVF-1Bの隣りに駐機するさくらのVF-11G『サンダーホーク』に視線を移す。 こちらは元の世界でも整備性が高い機体なので、性能に比べて整備が容易になっている。そのためかこちらにはもう整備員の姿はなく、さくら自身が最終点検を行っていた。 サーボモーターなどを使い、電子制御で機体の操縦制御を行う形式であるデジタル・フライバイ・ワイヤの両翼の動翼に、順番に軽く体重を乗せて動かない事を確認する。 そして次に『NO STEP(乗るな)』という表示に注意しながら上に昇ると、整備用パネルが開いていたり、スパナなど整備員の忘れ物がないか確認していく。 よほど集中しているのかアルトが見ていることには気づいていないようだった。しばらくその手際眺めていると、後ろから声をかけられた。 相手はVF-25を整備していた整備員だ。どうやらようやく全ての点検・整備が終わったらしい。 アルトはもう一度点検を続けるさくらを流し見ると、自らの愛機の元へ歩き出した。 (*) 1330時 機動六課 正門 そこにはヴァイスのものだという、このご時世には珍しい内燃機関の一種である、ロータリーエンジン式のバイクに跨がって六課を後にしようとしているティアナ達と、見送るなのはがいた。 「気をつけて行ってきてね」 「は~い、いってきま~す!」 なのはの見送りに後部座席に座るスバルが返事を返すと、ティアナは右手に握るアクセルをひねった。 石油ではなく水素を燃料とするそれは電気自動車や燃料電池車の擬似エンジン音だけでは再現できない振動やエンジン音を轟かせて出発する。そして狼の遠吠えのようなエキゾーストノートを振り撒きながら海岸に続く連絡橋を爆走していった。 なのはは背後の扉が開く気配に振り返る。するとそこには地上部隊の礼服に袖を通したはやての姿があった。 「あれ? はやてちゃんもお出かけ?」 「そうや。ちょっとレジアス中将に呼ばれてな。ウチがおらん間、六課をよろしく」 「は!お任せください!八神部隊長」 わざと仰々(ぎょうぎょう)しく敬礼するなのはに、 「似合えへんなぁ」 とはやてが吹き出すと、なのはもつられて笑った。 その後はやてはヴァイスのヘリに乗って北の空に消えていった。 (*) その後ライトニングの2人を見送ったフェイトと合流したなのはは、 「(フェイトの)車の鍵を貸してくれ」 というシグナムに出くわしていた。 「シグナムも外出ですか?」 フェイトがポケットから鍵を取り出し、シグナムの手に置きながら聞く。 「ああ。主はやての前任地だった第108陸士部隊のナカジマ三佐が、こちらの合同捜査の要請を受けてくれてな。その打ち合わせだ」 「あ、捜査周りの事なら私も行った方が─────」 しかしフェイトの申し出は 「準備はこちらの仕事だ」 とやんわり断られた。 「お前は指揮官で、私はお前の副官なんだぞ」 そう言われてはフェイトに反論の余地はない。 「うん・・・・・・ありがとうございます─────でいいんでしょうか?」 「ふ、好きにしろ」 そう言ってシグナムは駐車場の方へ歩いていった。 なのははそんな2人を見て、『知らない人が見たらどっちが上官なのかわかるのかな?』と思ったという。 (*) その後デスクワークをしなければならないというフェイトと別れ、なのはは六課隊舎内にあるデバイス用の整備施設に到着した。 「あ、なのはさん」 画面に向かっていたシャーリーが振り返って迎え、その隣にいたヴィータも 「遅かったじゃねーか」 といつかのように婉曲語法で自分を迎えた。 「ごめん、ごめん。それでどう?上手く行ってる?」 なのはは言いながらシャーリーの取り組んでいる画面を後ろから覗き見る。 自らのデバイス『レイジングハート(・エクセリオン)』は昼飯前からシャーリーに預けられており、アップデートは開始されているはずだった。 「はい、あと2時間ぐらいでアップデートは終わる予定です」 プログラムを構築したシャーリーの見立てにミスはない。ディスプレイに表示された終了予定時間は1時間以下だったが、こういう終了時間は信用できないのが世の常。それを証明するように次の瞬間には3時間になったり30分となった。 ヴィータの方も似たり寄ったりで、プログラムのアップデート率をみる限り、自分の1時間後ぐらいに終わるだろう。 しかしなのはは画面を眺めるうちにあることに気づいた。 自分とヴィータだけでなく、まだもう1つデバイスのアップデート作業が進行しており、もう間もなく終わりそうなことに。 検査兼整備用の容器に入った待機状態のそのデバイスは〝ブレスレット型〟だった。 「ねぇシャーリー、あのデバ─────」 デバイスは誰の?とは問えなかった。その前に持ち主がドアの向こうから現れたからだ。 「あ、なのはさん、お久しぶりです!」 地上部隊の茶色い制服に身を包み、ニコリと嬉しそうに挨拶する緑の髪した少女、ランカ・リーがそこにいた。 (*) ランカは本局の要請で無期限の長期出張に出ていた。 行き先は〝戦場〟だ。 第6管理外世界と呼ばれる次元世界で行われていた戦争は、人対人の戦争ではなく、対異星人との戦争だった。 本来管理局は非魔法文明である管理外の世界には干渉しないのが基本方針だったが、その世界の住人は管理局のもう1つの任務に抵触した。 それは〝次元宇宙の秩序の維持〟だ。 彼らは70年程前に次元航行を独自に成功させ、巡回中だった時空管理局と遭遇したのだ。 運の良いことに極めて友好的で技術も優秀な人種であったことから、1年経たないうちに管理局の理念に賛同した彼らと同盟を結ぶに至った。 以後管理局は次元航行船の建造の約8割をその世界に依存しており、管理局の重要な拠点だった。 しかし2ヶ月前、その世界で戦争が勃発した。 その異星人は我々人間と同じく〝炭素〟ベースの知性体(以下「オリオン」)であったが、彼らは突然太陽系に入ると先制攻撃を仕掛けてきたのだ。 当然管理局に友好的だったその惑星(以下「ブリリアント」)の住人は必死に応戦する。 管理局との規定により魔導兵器縛りだったが兵器の技術レベルではなんとか拮抗。戦力は圧倒的に劣っていた。しかしブリリアント側にはある〝技術〟があった。 次元航行技術だ。 この技術は実は超空間航法『フォールド』と全く同じ技術で、第25未確認世界(マクロス世界)とオリオンの住人達は知らなかったが、空間移動より次元移動に使う方が簡単だった。 この技術によってオリオン側の先制攻撃と戦力のメリットを塗り潰し、比較的戦いを有利にすすめた。 しかし所詮防衛戦でしかなく、オリオン側の恒星系の位置がわからないため、戦いは長期化の様相を呈していた。 だが捕虜などからオリオンの情報がわかるにつれて、戦争の必要がないことがブリリアント側にはわかってきた。 彼らの戦争目的は侵略ではなく〝自己防衛〟だという。 何でも彼らの住む惑星オリオンからたった数百光年という近距離にあったため、 「ベリリアン星の住人が攻めてくる!」 という集団妄想に駆られたらしい。 それというのもブリリアント側が全く気にしていなかった、それどころか最近までまったく観測すらしていなかったものが原因であった。それは次元航行に突入する際に発生してしまう短く超微弱なフォールド波だ。 これを次元航行発明から70年間完全に垂れ流しつつけ、これを受信したオリオンが盛大に勘違いした。 彼らにはまだフォールド技術は理論段階で、空間跳躍以外の使用法を全く思いつかなかった。そのため管理局に造船を任されてどんどん新鋭艦を次元宇宙に進宙させていったブリリアントの行為は、オリオン側にとって奇怪に映った。船を造ってどんどんフォールドするのはわかる。宇宙開発というものだとわかるからだ。しかし恒星外にフォールドアウトするでもなく、ただため込んでいるようにしか見えないその行為は、オリオンの住人にとって艦隊戦力の備蓄と思われてしまったのだ。 そう勘違いしてしまったオリオンは半世紀の月日をかけてフォールド航法を理論から実用に昇華させて、のべ一万隻もの宇宙艦隊を整備。そして今、万全の準備をして先制攻撃に臨んだようだった。 しかし実のところ彼らのことはまったく知らなかったし、『協調と平和』を旨とするブリリアントは知ったところで侵略するような野心もない。 そこで和平交渉のためにまず戦闘を止めようと考えたブリリアントは、次元宇宙で〝超時空シンデレラ〟とも〝戦争ブレイカー〟とも呼ばれるランカ・リーの貸出しを要請したのだ。 管理局としても戦争による新鋭次元航行船建造の大幅な停滞は困るし、70年来の大切な盟友を助けたいという思いがあった。 こうして1ヶ月前、六課に対し最優先でランカの出張を要請したのだ。 六課やアルトは危険地帯へのランカの出張に渋ったが、ランカの強い思いから根負けしていた。 こうして第6管理外世界に出張したランカは、本局の次元航行船10隻からなる特務艦隊と航宙艦約100隻から成るブリリアント旗艦艦隊に守られながら局地戦をほぼ全て歌で〝制〟して行ったという。 確かなのはが最後に見た関連ニュースは「全オリオン艦隊の内、50%がブリリアント側に着いた」というものだった。 そのランカがここにいるということは───── 「戦争は終わったの!?」 ランカは頷くと続ける。 「みんないい人達なんだよ。ただ誤解があっただけなんだ」 そう笑顔で語る少女は、とても恒星間戦争を止めた人物には思えぬほど無邪気であった。 (*) 1424時 クラナガン地下 そこは戦前は半径10キロメートルに渡って巨大な地下都市があり、戦時中は避難民が入った巨大な地下シェルターだった。 一時は全区画にわたって放棄されていたが、今では歴代のミッドチルダ政府の尽力によって大規模な地下街が再建されている。 しかしその全てに手が届いたわけではない。一部の老朽化や破壊の激しい区画は完全に放棄され、そうでなくともただのトンネルとして利用されていた。 そこを1台の大型トラックが下って(クラナガンから出る方向)いた。 そのトラックのコンテナには『クロネコムサシの特急便』のロゴとイメージキャラクターがペイントされ、暗いトンネル内をヘッドライトを頼りに走って行く。 運転手はミッドチルダ国際空港近くの輸送業者の新人で、この道は彼の先輩から教わったものだ。 地上のクラナガンに繋がる道はどこも渋滞であり、拙速を旨とする彼ら輸送業者はこの廃棄区画を開拓したのだった。 しかし残念ながら路面状態はよくない。 その運転手はトラックの優秀なサスペンションでも吸収できなかった予想以上の縦揺れに驚く。 「いかんな・・・積み荷が揺れちまうじゃねぇか」 彼はシフトレバーについたつまみを操作すると、ヘッドライトをハイビームにする。 すると少しは視認範囲が広かった。しかし───── (しっかし、いつ来ても廃棄区画は気味悪りぃな・・・・・・) 右も左も後ろにも他の車は見えない。それが彼に昨日見た映画を思い出させた。 それはベルカ(位置は第97管理外世界でアメリカ合衆国)の〝ハリーウッド〟で撮影された映画で、タイトルは「エイリアン」だ。 ストーリーは時空管理局の次元航行船が、新らたに発見された世界の調査のために調査隊を派遣する所から始まる。 そこには現代の技術レベルを持った町があったが、人の姿がない。調査が進むにつれてこの惑星の住人が、ある惑星外生命体の餌食になっていたことがわかった。 しかしその時には遅かった。 魔法の使用を妨害するフィールドを展開する敵に対し、調査隊には腕利きの武装隊が随伴していたが、また1人、ま1人と漆黒のエイリアンの餌食になっていく。 また、次元航行技術があったらしいこの世界は、厳重に隔離されていたが次元空間へのゲートが開きっぱなしだった。 このままではエイリアン達がこちらの世界に来てしまう。 何とか現地の質量兵器を駆使して次元航行船に逃げ延びたオーバーSランクの女性執務官リプリーと、1人の調査隊所属の科学者の2人は、艦船搭載型の大量破壊魔導兵器であるアルカンシェルによるエイリアンの殲滅を進言。そのエイリアンの危険性は認められ、それは決行される。 大気圏内で炸裂したアルカンシェルは汚染された町をクレーターに変え、船は次元空間に戻った。 しかしリプリー達が乗ってきた小型挺には小さな繭が─────! という身の毛もよだつ結末だ。 さて、問題のシーンは物語の終盤。先の生き残った2人と、3人の武装隊員が現地調達した軽トラで、小型挺への脱出を試みた時だった。 その名も無き(劇中ではあったと思うがいちいち覚えていない)武装隊員はこのようなだれもいない地下の道を走っていた。 しかし賢しいエイリアン達は天井に潜んでいた! ノコノコやってきた軽トラに飛び乗った〝奴ら〟は2人の武装隊員の断末魔の悲鳴とともに運転席を制圧。危険を感じ取ったリプリー達3人は荷台から飛び降りた─────というシーンだった。 (・・・・・あれ、俺って名も無き犠牲者その1じゃね─────) 彼の背筋に冷たいものが走る。 「ま、まさかな。そうだよ、杉田先輩だって10年以上この道を使ってたんだし、前にも先輩と1回通ったじゃないか」 わざと声を出して自らを勇気づける。 そして彼はラジオを点けると局を選ぶ。すると特徴的なBGMと共にCMが聞こえてきた。 『─────毎日アクセルを踏み、毎日ブレーキを踏み、毎日荷物を積み降ろす。・・・あなたのためのフルモデルチェンジ。新型〝ERUF(エルフ)〟登場─────!』 彼はそれを聞きながらそのBGMを歌い出す。 「いぃつ~までも、いぃつぅ~までも~、走れ走れ!ふふふ~のトラックぅ~」 それを歌うと何故か恐怖も飛んでいった。 (やっぱこの曲はいいねぇ~。でも─────) 彼はこのトラックのフロントにあるシンボルマークを思って少し申し訳なく思った。 そこには『ISUDU』ではなく、『NITINO』のマークがあったりする。 (どっちが悪いってわけでもないんだが・・・・・・) 彼はそう思いながらも歌い続けた。 「ど~こぅ~までも、どこぅまでも~、走れ走れ! ISUDUのトラック─────」 (*) 5分後 『そろそろクラナガン外辺部かな』と思った彼は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム。全地球無線測定システム)で位置を確認する。その時、一瞬サイドミラーが光を捉えた。 「?」 再び確認するがなにもない。 (勘弁してくれよ・・・・・・映画のせいで敏感になってるんだな・・・・・・) 彼はそう結論を出すと運転に意識を集中する。しかし今度はコンテナの方から無理に引き裂かれているのか、それを構成する金属が悲鳴のような悲鳴を上げる。 「ちょ・・・・・・マジで・・・・・・」 積み荷は食料品や医療品などで勝手に動くものは積んでいないはずだ。 (ということは・・・・・・!) 彼の頭に映画のシーンがフラッシュバック!あの武装隊員の断末魔の悲鳴が頭に響く。 (落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け─────!!) 彼はもはやパニック寸前だ。しかし無慈悲にもその時は訪れた。 一瞬静かになり、彼が振り返えろうと決意した瞬間───── 耳をつんざく轟音と眩いまでの黄色い閃光が閃光手榴弾のように彼の視界を奪った。 すでに冷静さを欠いていた彼は驚きのあまりハンドル操作を誤り、トラックを横転させてしまった。 (*) 横転事故より15分後、トラックに搭載されていた緊急救難信号を受信した救急隊が現場に急行していた。 「・・・・・・おい、あれか?」 救急車を運転する救急隊員が助手席に座ってGPSを操作する同僚に聞く。 「ああ、そうらしい。しかし、こんな薄気味悪い場所で事故らんでも・・・・・・」 「こんな場所だからだろ。・・・・・・運転席に付けるぞ」 救急車は横転したトラックの本体─────牽引車近くに横づけする。 「大丈夫ですか!?」 ドアを開けて助手席の同僚がトラックに呼びかけるが返事はない。車を離れているのだろうか? 後ろではもう1人の同僚が救急車の後部ハッチを開けて、懐中電灯でトラックを照らす。 どういう訳かコンテナだけがひどく損傷していたが、運転席付近は無傷だ。シートベルトさえしていれば助かりそうだが───── いた! エアバックで気絶しているらしい。トラックの左側を下に横転しているため、宙吊りになったまま項垂れている。 外に出た同僚2人はデバイスで超音波を発生させてフロントガラスを1秒足らずで割ると、センサーで彼の状態を調べる。 「・・・・・・大丈夫だ。バイタル安定、骨も折れてない」 2人は運転手を事故車両から引き離していく。 その間に運転席に残っていた彼は、どうも妙な事故なため、無線で1番近い治安隊に事故調査隊の派遣の旨を伝えた。 (*) 20分後 「通報を受け派遣されました第108陸士部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です」 『地上部隊 第108陸士部隊』と書かれたメガ・クルーザーのHMV(ハイ・モビリティ・ヴィークル。高機動車)に乗ってきたのは3人で、内2人は白衣を着、もう1人は挨拶をした地上部隊の茶色い制服を着た1人の女性隊員だった。整備されていないこの地下空間は世間では犯罪者の温床にもなっていると言われていることから、治安隊の代わりに陸士部隊の調査隊として派遣されたとのことだった。 「この事故はただの横転事故と聞きましたが・・・・・・」 「はい。それが事故状況がどうも奇妙でして、それほど大きな衝撃でもないはずなのにコンテナだけが吹き飛んでいて・・・・・・」 確かに救急車のヘッドライトに照らされたコンテナは、原型を止めないほどにひどく損傷していた。 「運転手の方(かた)は?」 ギンガの質問に救急隊員は困った顔をする。 「・・・・・・それが運転手も混乱していまして・・・・・・お会いになりますか?」 「できるならお願いします」 ギンガは同乗者の2人に現場検証を頼むと、運転手が手当てを受けているという救急車に入った。 「本当なんだよ!あの〝エイリアン〟が出たんだ!!」 そう手当てしながら困った顔をする救急隊員に喚く運転手に、ギンガは〝ギョッ〟とする。 (そうかぁ、あの映画を見た人かぁ・・・・・・) 彼女は彼に、一気に親近感を覚えた。 彼女も実は1年ほど前にその映画を劇場でみていた。人には言えないが、その後1ヶ月ぐらい1人で真っ暗な部屋に入る時には、デバイスをその腕に待機させねば安心できなかった。 「すみません、そのエイリアンのお話をお聞かせ下さい。私はそのために管理局から派遣されました」 「なんだって!・・・・・・それじゃあの映画は!?」 思わせぶりに頷いてやると運転手の口はようやく軽くなり、やっと事故の状況が判明した。 (*) 「コンテナが勝手に爆発ねぇ・・・・・・」 救急車から出たギンガが腕組みして考える。 地面に散らばる積み荷は食料品などで爆発するような物はないし、クロネコムサシの本社から預かったそのトラックの輸送物リストもほとんどが医療品や食料品と書いてある。 しかし本当にエイリアンが来たなどということはあるまい。 鑑みるにこれはテロで郵便爆弾の誤爆という可能性があるが、どこかの政府系機関に届ける予定の荷物は───── 「・・・・・・あれ?」 ギンガの目がリストの一項目で止まる。 (これがベルカのボストンで?) 内容物は、輸入品としては珍しくないとうもろこし。しかしベルカの比較的北にあるボストンでは寒すぎて生産していない。 ビニールハウスという手もあるが、最近赤道付近の地価は安く、補助金も出るためそんなところで作るメリットはない。 それどころかボストンでは10年前からあるベンチャー企業の進出が進んでおり、農業をやるような場所はもう残っていないはずだった。 (確かその企業がやっているのは医療用のクローン技術─────) そこまで考えた時、一緒に来た調査隊員の自分を呼ぶ声が耳に入った。 「はーい。今行きます!」 ギンガはリストを小脇に添えると声の主の元へ走る。 「どう─────」 どうしました?と問うまでもなかった。 彼は顔を上げると〝それ〟をライトで照して見せる。 そこには他の積み荷と違って無粋な金属の塊『ガジェットⅠ型』の大破した姿があった。 「他にもこんな物が」 少し離れていたもう1人が、床に転がっているそれを指先でトントンと叩いて見せる。 「それは・・・・・・生体ポット!?」 ギンガは目を疑うことしかできなかった。 (*) 『君はいったい何をやっているのかね!?管理局に感づかれたらどうする!』 画面の中で怒鳴る背広を着た中年男にスカリエッティは涼しい顔をして答える。 「〝あれ〟が本物かどうか試しただけですよ。それに、管理局など恐るるに足らない」 その軽い態度に更に熱が入ったのかまた怒鳴ろうとした中年男だが、画面の奥の人物に制される。 『しかし社長!』 中年男は社長と呼ぶ30代ぐらいの若い人物に異議を唱えようとするが、彼の鋭い視線だけで黙らされてしまった。 社長は中年男が席に座るのを確認すると、今度は彼自ら詰問し始めた。 『スカリエッティ君、我々はもうかれこれ7年間君の研究のために優秀な魔導士達の遺伝子データを提供してきた。だが我々が君に嘘をついた事があるか?』 「いいえ。おかげさまで研究は順調に進んでますよ」 『なら今後、このような事は無いようにしてくれたまえ。・・・・・・それと〝あの子〟の確保は後回しでも構わないが、一緒に送った3つのレリックの内〝12番〟は必ず回収したまえ。あれがなければこの計画は失敗だ』 「仰せのままに」 スカリエッティの同意に社長は通信リンクを切った。 画面に『LAN』という通信会社の社名が浮かぶ。この回線はミッドチルダから太平洋を横断し、ベルカの大地まで繋がった長大な有線回線だ。 現在ミッドチルダ電信電話株式会社(M T T)に市場で敗れたこの会社はもうなく、海底ケーブルは表向き放棄されている。しかし海底ケーブルというローテクさ故に注目されず、盗聴も困難なため、水面下で動く者達の機密回線にはもってこいだった。 「またスポンサーを怒らせたの?」 いつものように気配なく彼女はスカリエッティの背後に現れた。 「まぁね。しかし必要なことさ。それに、彼らには〝あれ〟の重要さがわかっていない」 スカリエッティは肩を大仰に竦めると首を振った。 「そう・・・・・・。まぁ、私はあなたの副業には干渉しないけど、せいぜい頑張ってね」 グレイスは微笑むと退室していった。 「・・・・・・ウーノ」 スカリエッティの呼びかけに、彼の背後に通信ディスプレイが立ち上がり、彼の秘書を映し出す。 「はい」 「あれは本物だったか?」 「確定はできませんが、恐らく本物でしょう。」 スカリエッティはその答えに陶酔したように 「すばらしい・・・・・・」 とコメントすると、〝それ〟の追跡を依頼した。 (*) 『ベルカ自治領 マサチューセッ〝チュ〟州 ボストン』 その地域は最近発展してきた医療科学系企業『メディカル・プライム』が席巻していた。 この企業はミッドチルダでは禁止されている「クローン技術」を用いて、要請を受けた本人のクローンの臓器を作っている。無論これは移植のためだ。 この『クローン臓器移植法』は、移植時の拒絶反応が全くないことから定評があった。 しかし従来の全身のクローン体から、移植のため一部を取り出すという行為はクローン体を殺す事を意味し、倫理上の問題があった。 そこでこのベンチャー企業は必要な臓器を必要なだけ、ある程度〝瞬時に〟クローン化する技術を開発し、これを武器に発展してきていた。 社名の「メディカル・プライム」も「最上級の医療を!」という熱い思いを込めて付けられたもので、お金さえあれば〝パーツ〟の交換で脳を含めた若返りすら可能だった。 現在、その企業内では深夜に関わらず、上級幹部達が緊急会議の名目で集っていた。 ある幹部が通信終了と同時に口を開く。 「全く、あの男の腹の内は読めん」 それに対し、スカリエッティに怒鳴っていた中年男が彼に怒鳴る。 「なにを言っている!やつなど野心丸見えじゃないか!だから犯罪者と手を組むことには反対だったのだ!」 「・・・しかしあいつにしかこの計画は遂行できないだろうな」 5,6人の幹部達が思い思いに意見をぶつける。今までこの議論が何度重ねられたことか。しかしやっぱり最後の結論は決まっている。 「諸君、すでに賽(さい)は投げられたのだ。この計画にスカリエッティを巻き込んだことを議論しても仕方がない。それに管理局には非常用の鈴が着いている。〝不本意だが〟もしもの時は彼女に揉み消してもらおう。我々はスカリエッティを監視しつつ、ベルカの誇りである〝あの船〟の浮上を待てばよいのだ。あの船さえあれば、ミッドの言いなりになってしまったこの国の国民達も、目が覚めるはずだ!」 社長の熱を含んだスピーチに幹部は静かに聞き入る。そして社長は立ち上がると、会議室に飾られた今は無きベルカ国の国旗に向き直り、掛け声を上げる。 「偉大なるベルカに、栄光あれ!」 「「栄光あれ!!」」 幹部達も立ち上がり、彼に続いた。 ―――――――――― 次回予告 地下より現れた謎の少女 同時に始まったガジェット・ゴースト連合の一大攻勢 彼らは無事クラナガンを守りきることができるのか? 次回、マクロスなのは第27話「大防空戦」 「サジタリウス小隊、交戦!」 ―――――――――― シレンヤ氏 次