約 42,612 件
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/67.html
俺達は通学路から少し脇にそれ、閑静な住宅街の小さな公園に移動した。 ソメイヨシノと書かれた看板の場所に桜の木が一本と、 滑り台とブランコがあるだけの小さい子供でも遊びそうにない場所である。 その割には雑草等は綺麗に刈られており、こじんまりとはしているが見栄えは悪くはなくそれなりに利用できる環境は整っている。 だが裏道からしか入れないために公園内どころか人通りすら少ない。 こんな場所よりも近くに喫茶店にでも入って話をしたいところだったが、 電波な話を真剣に議論するところを同じクラスの奴にでも見られたら在らぬ噂が発炎筒のように立ち込めるだろう。 俺がそんな噂を聞いたら黄色い救急車を呼んでやるかもしれないね。 そんなことを考えていると佐々木はブランコに向かい片側に腰を掛け鞄を太股の上に置いた。 周りを見渡したのだがベンチはないし俺も佐々木の隣のブランコに座った。 「こうしてブランコを利用するのは何年振りだろうか。 この年になっても中々座り心地はいいのだが、少し羞恥心というものが邪魔をするのが残念だ」 確かに少し恥ずかしい。これならいっそ腹を括って喫茶店に入って話をしたほうが良かったかもしれない。 「たまにはこんな静かな場所も悪くないと思わないかい?僕たちの生活は喧騒の渦の中にあると言っても過言ではないからね。 特に最近は高校生という新しい肩書きになって間もないんだ、こうやって落ち着くことも必要だと僕は思うんだ」 確かに最近こんな風に過ごす事もなかったな。耳を澄ませると何かの鳥の鳴き声や風の切る音が聞こえる。 僅かに車の音が聞こえるのがこの場所をちょうど喧騒の渦の目にあたる場所のように思わせた。 「僕は橘さんの『その時』を受け入れようと思うんだ」 何の脈略もなくそう言った。今までの長い前振りの帳尻を合わせるかのように。 佐々木がこれほど早く決断しているとは思わなかったから、流石にこの答えは想定外だ。 「あの約束は考える時間が欲しかったからじゃないのか?いや…むしろ断るための口実にしか思えなかったんだが」 我ながらなんとも気の利いていない発言だ。考えるのと発言するのと同時進行は辛い。 佐々木は鞄の上に両手を置いて足元を見つめながら、 「先ほどの話し合いで僕はこう言ったよね、直感や解析は苦手だと。あれは本当にそう感じているんだ。 だから僕は色々な知識を蓄えたり人の経験を考えたりして補っている。 そんな僕があの話を聞いて幾分も経たずにこの様に決断したのは早計としか言い様がないだろう。 だけどね、この決断はキミの発言がきっかけだったのさ」 俺の発言? 「そう。受身は危険だ、ってね。それを聞いた時このまま断ったとしてもまた受身になるんじゃないかと思ったんだ」 おい、あれはそういう意味で言ったんじゃないんだぞ。 「解っているよ。あの時キミが言いたかったのは誘いに乗ることによって相手の思い通りになる、ということを言いたかったんだろう。 実はキミに言われる前から僕も同じ様に考えていた。相手の思惑を回避し、時間稼ぎと不測の事態を穏便に済ませる事だけを考えていたんだ。 その考えはキミの発言によって一層深まった。でも同時にこの考え自体が既に相手の後手に回っていると言える事にも気づいたのさ」 そんな事はない、あの時はあれが最善だったんだ。それに仕掛けたのが向こうな訳だし後手に回るのは必然じゃないか。 これから考えて先手を打ってやればいい話だろ? 「キミはもう既に半分答えを口に出しているんだよ、キョン。まず先手を打つのは無理だ。 理由は先手を打つためには相手のことをある程度理解していることが前提だからね。 橘さんはもう何年も僕を監視していると言っていた。 そんな人に最近知り合ったばかりの僕と今日が初対面のキョンでは太刀打ちが出来ないだろう。 だからキミの言う通り僕達は常に後手に回ざるを得ない。だけど後手に回る事自体が問題じゃないんだ。 先手必勝なんて四字熟語があるけどあれは攻撃を先に仕掛けることで不意を突き、 相手が混乱している間に勝ってしまおうという事だと僕は勝手に解釈している。 将棋だろうとオセロだろうと後手に回ったからといって必ず負ける訳じゃないからね。 寧ろ後手の方が有利な事もあるくらいだ。だけどそれはその事に対して対処法がある場合に限る。 残念ながら僕の知識、というより世間一般常識から先程の事柄に対しての対処法が見つからない。 新しい対処法を考えようにも相手が何をやっているかしっかり理解している事と、 自分に対してどのような影響が出るかという事が解らないと考え付く事は困難だ。 僕はこのようにお手上げなんだがキミはどうだい? 先程の出来事が理解できて自分にどのような影響が出たか説明できるなら教えて欲しいんだ」 自分の頭の中身が貧困な物であることを恨む。何一つ考え付くことがない。 「そう自分を卑下しないでくれたまえ。僕にも全く理解できないんだからキミと同じさ。 常に先手を取られ続けられることが分かっているのにその対処法が見つからないんだ。 ならせめて相手の土俵に上がれば何か分かるかもしれないと思った訳だよ」 佐々木は少し上を見上げオレンジ色の雲を見つめていた。 「キミの言葉でどう足掻いても今の僕達に勝ち目はない事に気づいたんだ。だから僕は咄嗟にあの約束を取り付けた。 ああやって条件を出したからにはこちらから何かをしない限り、『その時』まで僕達には手を出してはこないだろう。 この場でこうやって話が出来るのはキミのおかげなのさ」 違う、俺は何もしちゃいないんだ。 佐々木のあの時の分かったという言葉の意味が他にもあったなんて事気づきもしなかった。 これほど佐々木が深く考えていたのに俺は一体何をしていたんだ? 情けねぇ、感情に任せて突っ走っただけじゃねぇか。 遠くからカラスの鳴く声が俺に無力感を与えてくる。 「…怖くないのか?」 言葉を途切れてしまう事を気まずく感じ咄嗟に質問したとはいえ我ながら知恵の浅い質問をしてしまった。 「ないと言えば嘘になる、無知は恐怖だからね。それにまだ動揺もしているんだ。 過去問すらやらずに何時が試験日か分からない難関大学を受ける受験生のようにね。 だけどキミが一緒に来てくれたおかげでその覚悟が出来た。そのお陰で怖さも大分吹き飛んだね」 そう言うと佐々木は天を仰いだまま鞄を左手に持ちブランコから立ち上がり、 「キミは本来この話に関係ない。これは元々僕の問題だからね。 だからここからは僕一人で話を着けるよ。キミの身の保障が出来かねる。 何、橘さん達だって無茶な条件を話しているんだ。キミに関わらないよう僕が説得するよ。 ただし何かあったらこうやってキミに相談させて欲しいんだ。そうだね…当事者のサポート役といったところだろうか」 いつもの表情だったが何となく元気がないように感じた。 俺がそう感じただけかもしれない。だが俺は佐々木の横顔を見つめたまま何も言えなかった。 何となくこんな自分に自己嫌悪を感じる。 そのまま佐々木は座ったままの俺の前に立ち、鞄で塞がっていない右手を握手を求めるように差し出した。 「そろそろ暗くなってきたね。帰ろうか」 俺の気持ちを気遣うような行動。何となくブルーな気分になっていた俺は条件反射的にその手を握った。 佐々木の手がやけに温かく感じる。そしてそのまま太股の上の鞄を左手で持ちその手を借りて立ち上がった。 だが立ち上がっても何故か佐々木は手を離さない。俺より少し小さくしっとりとした手がしっかりと俺の手を挟んでいる。 その仕草に違和感を感じた俺は佐々木の顔を見て、 「おい、佐々――」 そこで俺の言葉は途切れた。佐々木は待っていたかのようにじっと俺を見ていたからだ。 大きな瞳は黒曜石のように深い輝きを放ってその瞳を見ている俺が逆に覗き込まれ吸い込まれるような感覚に陥った。 その間も手はずっと繋いだままで先程の異質な空間とはまた違った雰囲気を味わっている。 そのまま数分は経っただろうか?本当は数十秒…いや、ほんの数秒かもしれない。そんな錯覚を感じた頃に佐々木が口を開いた。 「今日は付き合ってくれてありがとう、キョン」 そう一言言うと佐々木は眉を下げ目を緩ませながら俺に優しく微笑んでいた。 その夜俺の頭は普段と違い労働時間外にも関わらず活動していた。 今日という一日はなんというかこう色んな意味で密度が凄まじかったためである。 そのため原因はざっと考えても俺の苦手科目の数くらい出てくるのだが一番の理由はあの佐々木とのやりとりだ。 あの後佐々木も俺も無言で歩を進め、佐々木と別れる時に一言別れの挨拶をかわしたくらいだった。 そして俺は家に帰宅し、けたたましく走り回っていた妹に出迎えられ部屋に戻った。 その後は晩飯を食い風呂に入り宿題を済ませた後、ウダウダ過ごし寝る支度をして今に至る。 実はこれらのことをしているときもずっと頭の中はこの事でフル回転していた。 佐々木の言い分は最もだ。元々俺に関係のない話な訳であり、本来なら佐々木が一人で解決する問題だったかもしれない。 そもそも平凡な高校生である俺一人が加わったところで常軌を逸した連中に対抗するのに何の力になるというのだろうか。 きっと佐々木はすぐにその事に気づき、元々関係のない俺には極力火の粉が降りかからないようにしたに違いない。 橘達もどうやら佐々木に協力をしてもらわなければ何もできないような様子だったし素直に協力をすれば危害を加えないだろう。 それに俺も平凡な高校生として佐々木の悩みくらいはサポートできる可能性がある。 こっちのほうがよっぽど現実的だし悪くはないんじゃないだろうか。 だがな…… ――それでいいのか? 確かに今話したことなら比較的安全に事が進むと思う。だがこの考えは幾つかの事柄を無視しているよな。 ひとつめは既に俺が関わっちまってるって事だ。でもとかもしとか元々とかそんなもん関わっちまった以上いくら考えても事実は変わりはねぇんだ。 後もうとっくに火の粉は降りかかってる。流石にあんな火の粉はあまり浴びたくはないが。 それにこういう事について人並以上の知識はあるつもりだ。夕方の体験で少しは経験の耐性もあるだろうしな。 まぁそれでも一般人と比較しても団栗の背比べ程度のものだろうが…ないよりかは幾分かましだろう。 ゲームで一番安い装備しかなくても装備してりゃそれなりに違う。 ふたつめは安全に事が進むのは俺だけだという事だ。 佐々木がこれからどうなるかどうか話を又聞きした奴でもろくなことにならない事が分かるだろう。 顔を見知った奴がそうなるとしているのにお前は話を聞くだけなのか?他に出来る事があるだろうが。 …おい、そこのお前だ。俺は自分に訊いてるんだよ。大事な事だからしっかり耳を傾けておけ。 お前も俺ならこの流れで俺が話しそうな内容くらいもう解ってるだろ? ――俺も当事者になるのが今一番できることじゃないか。 先ほど平凡な高校生である俺が橘達に対抗する力にならないと考えたがそれは悩みを聞くことだって変わりはしない。 悩みって言ったって普通の悩みじゃないのは火を見るより明らかだ。 もし地球が謎の侵略者に狙われててそれと戦わなければならないとか言われたらどんな答えを用意するんだ、俺? 話を聞いても愚痴こぼし程度にしかならず何の解決にもならない。 逆に俺の身に本当になにか及んでないか余計な気苦労までさせるかもしれない。 それどころかもし佐々木が急にいなくなっちまったらどうする? 仮にも顔見知った仲だし事情も知っているであろう俺は何もする事が出来ず、 無力感と後悔に煽られ途方にくれた情けない姿をしているに違いない。 佐々木の事を含め自分までもがそんな姿になる事が予想できてお前はそれでも何もしないつもりなのか? この考えに今の俺の気持ちを加味して考えると取る行動はひとつしかないだろう。結局俺には殆ど選択肢はないってわけだ。 ただ佐々木の気遣いが無駄になっちまうな。 せめて俺だけでもこの問題から遠ざけようとしてくれたろうに。 だがそれはあいつの責任感でやったことであって本心とは違うはずだ。 お前もあの桜舞い散る下り坂で聞いたよな。 「あいつは不安だと言ってたじゃないか。」 これがあいつの今の本心だとこれ以上に分かりやすい言葉はない。 そりゃ自分のことを神だと祀り上げて理解できない力を使い、 何をしようとしているかわからん連中相手に不安にならない奴はオスの三毛猫くらいいないだろう。 そんな時自分の他に同じ立場に立たされた人間がいれば俺みたいな奴でも一人より二人のほうが少しは気が紛れるかもしれん。 付き合いの密度は濃いとは言えないがそれなりに月日はたっている訳だしな。 更に佐々木には勉強や興味深い話等日頃から色々と世話になってるし、 大量に溜まった借りをそろそろこの辺で返しておいてもいいだろう。 もし佐々木がどうしても自分で解決したいならそれはそれでいいじゃないか。 だけどその前に一言くらい俺が何か言ったっていいだろ? まぁ普通に考えると激戦を繰り広げる戦場の最前線に送り込まれる兵士のように思えてしまうだろうが俺ならほんの少し違うはずだ。 ――興味あるんだろ? テレビや雑誌や本でしかなかった空想の世界が目の前に広がっているかもしれないんだ、興味がないといえば嘘になるよな。 今より危ない目に合うんじゃないかって?そんなもんミステリーに危険はつきものと言って強がっておけ。 先程言った兵士の心境の方が遥かにでかいのも否めないだろうが……。ほら、そこは怖いもの見たさってやつさ。 ただできれば当事者ってのはやっぱり勘弁してもらいたいって気持ちも少なからず未練があったりもするが。 こんなもんでいいだろう。そろそろ決めてもらおうか。結局どうするんだ?今すぐ明確に…… 「ごちゃごちゃ煩い。ついていくに決まってんだろ。」 俺は出来た人間とは言えんが助けを求めている知り合いを見捨てる程落ちぶれてる訳じゃない。 何が出来るかわからんがこの気持ちに嘘はない。 我ながら頭がおかしいんじゃないかというくらい自問自答をしたわけだが俺の取る行動はひとつに絞られた訳だ。 そしてその行動をとる覚悟ももう粗方決まっている。 佐々木はこれに対しどういう反応をしどういう風に事態が転ぶかわからんが、 これ以上ごちゃごちゃ考えても決断が今下される訳でもないし時間の無駄だな。 というか考えたくてもここ最近学生の本分である勉強の時でさえまともに使ってなかった俺の頭が悲鳴を上げている。 「さて寝るか」 俺には独り言を言うような癖はないと思うが敢えて言い聞かせるように口に出してみた。 大丈夫だと思うが明日のために寝付けないと困るからな。 佐々木の件を筆頭にお馴染みの通学路、学校の授業に国語の小テストと普通の高校生にしては中々ヘビーなスケジュールだと言えよう。 いや、もう普通の高校生とはいえないかもしれない……って俺の頭よ、もうサービス残業は済んだんだぜ?ほら休んだ休んだ。 かなりの時間を費やした考え事に疲れたのかおおよその決断が下され安心したのか、程よく睡魔が訪れ俺の考えは杞憂に終わった。 その翌朝、俺は珍しく妹やアラームよりも早く目が覚めた。 睡眠時間が普段より短いはずなのに妙に体が軽い。 誰も見てないにも関わらず気合を入れるが如く無駄に跳ね上がるように起き、 足取り軽やかに部屋を出る。 台所で「珍しく自分で目を覚ましたのね。」と母親に一声かけられながら 朝の挨拶をかわし用意してあった飯に手をつけた。 半分ほど食った頃に今日は時間に余裕があることを思い出す。 全く習慣と言うものは恐ろしい。ついいつものペースで食っちまった。 飯を食い終わり身支度を整えようと洗面所に移動しようとした頃、 台所に妹がやってきて物珍しそうに俺を見ていた。 「あれ、キョンくん今日はやーい。どしたの?」 どうしたも何もない。ただなんとなく目が覚めただけだ。 一応それらしい理由に心当たりがないこともないがお前に話したところでよくわからんだろう。 それよりもお前の学校のほうは新しいクラスになってどうなんだ。 「うん、おもしろいよー。あのねーんとねー」 早く目が覚めて時間に余裕があるとはいえ朝から長くなりそうな話は勘弁してくれ。 同じ学生とはいえ小学生よりは忙しいんだ。帰ってからいくらでも聞いてやる。 「ほんとに?じゃあまた夜にいっぱいはなすねー」 妹はスキップのようなリズムを取りながら歩き楽しそうに独り言を言いながらテーブルに着いた。 俺に話す内容を考えているのだろうか。ちょっといくらでもと言ったのはまずかったかもしれん。 話す内容が一通り終わってもまた別の話題がオアシスの水の如く続けてあふれ出てくるのを失念していた。 そんな後悔を尻目に俺は台所を後にする。顔を洗いいつもの様に着替えを済ませ鞄の中身をチェックした。 よし、完璧だ。完全に身支度が整ったところで時計を見る。何時もより20分は早い。 佐々木が来る時間は10分以上後なのだが、いつもは俺が待たせてるしたまには俺が待ってもいいだろう。 というよりなぜか今日は家にいると落ち着かない。さっさと話をしたいというのがあるのだろうか。 そんな期待を叶えるかのように玄関に出ると同時に声を掛けられた。 「おや、今日は随分早いんだね」 そっちこそ随分と早いじゃないか。この時間は流石にお前でも普段いない時間のはずだ。 「桜の花も見納めだからね。夕日だと桜本来の色が分かりづらいんだ。 だけど朝から見るには登校時間もあるし時間的余裕はない。 だから早く出てきたわけさ。もう葉桜になってるのが殆どだけど花はまだ少し付いている。 一面満開に咲き誇る桜は言うまでもなく壮観だ。だけどぽつぽつと疎らに広がった新緑と 淡い紅色の組み合わせだって中々感慨深いと思わないかい」 その感想に答えたいところだが生憎俺は俳人でも何でもない。 芸術とかそのあたりの事にはからっきしなんでな。 「まぁそうだろうね」 佐々木は目を細めながらいつもの笑い方をしていた。 そう、「いつも」の様に。 佐々木の様子はまるで昨日の事が無かったかのように全く変わってない様に見えた。 お馴染みの独特の笑い方といい早く来た理由の言い草といいまさに佐々木そのものだった。 だが全く変わらないその仕草を見た俺はほんの少し違和感を感じた。 この違和感はきっと昨日もあったはずだ。 気づく事が出来なかったのは俺は別の事に囚われていたからだろう。 だからあの時は思い浮かぶ言葉が何も無かった。 佐々木に言葉をかける事が出来なかった訳なのだが、 思い浮かぶ言葉があれば何か言えたのかと聞かれれば答えはノーだ。 あの時の俺には決定的に欠けていた物がある。 それは心構えだ。 岡部の様に精神論を論じるつもりもないし妄信するつもりもない。 ただ人間物事に対してアクションを試みる時何かしろ心構えが必要なのは事実だ。 俺にはそれが無かった。後から用意する事も出来るにも関わらずな。 理由は「別の事に囚われていた」って事なんだが、その内容ってのは俺の身の安全の事だ。 俺は佐々木の事も心配していたがどうやら本能的に自己防衛を優先していた。 自分の事が可愛くない奴なんてそう簡単にいやしない。 まして本能なんだから自然にとっちまう行動でもあるしな。 俺があの時感じた無力感は無意識にこの事を感じ取っていたからだろう。 これは首を突っ込むにはやばすぎる。俺の手には負えない。 なら首を突っ込まない程度に手助けできることを探そう。 俺の理性はそう主張していた。 だがこんなもん覚悟一つで簡単に一歩は踏み出せるもんだ。 人間理性だけで生きれるなら覚悟や精神論なんて言葉は生まれていない。 問題はその覚悟を決めるのが至難の業なんだがそれは腹を括った。 そして掛ける言葉も深夜サービス残業をしたおかげで、俺の考えられる範囲での殊勝な言葉が頭に保存されている。 駄目かどうかなんて考えは今は必要ない。やる事をやるだけだ。 俺はまだ冬の寒気がほんのり残った朝の空気を一息吸い腹の底から吐き出すように言った。 「昨日の事なんだがな」 すると佐々木は想定内といわんばかりの様子と共に、顔をこちらに向け俺を諭すような眼差しを送ってきた。 「昨日の事っていうと橘さん達の件だね。あれなら昨日僕が話したとおりだよ。 キミには迷惑をかけてすまなかった。僕の方は気にしてはいないからね」 前もって答えを用意していたように答えてきた。というか十中八九答えを用意していたに違いない。 だが俺の方だってまだまだ想定内の出来事だ。昨日起こったことの手前、佐々木の気持ちとそれに対しての答えは大体予想できた。 ここで引き下がる訳にはいかない。 「違う。その事も関係なくは無いが佐々木、お前の事だ」 「僕の事?」 疑問系だが表情は変わらない。変化が見られる事を少し期待したがそれでもまだ予想していた反応だ。 本題はここからさ。 「そうだ。お前自身はこれからどうなると考えているんだ? たしかに俺は元々無関係だが今はもう無関係と言えん。 事情を知った以上、顔を知らない仲ではない奴の動向に無関心なほど俺は無神経じゃないからな。 本来関係ない俺が巻き込まれた事を未練たらしくいうつもりはないんだ。 ただその変わりというか……お前の考えをもう少し詳しく聞かせてもらいたい。どうだろう」 佐々木はすぐに答えなかった。 そりゃそうだ、こんな意地の悪い質問の仕方をしたのは初めてだからな。 今まで佐々木に対してこんな条件を突き出して物事を聞き出すような事はしたことがない。 我ながら汚い戦法だとすこし後ろめたさがあるくらいだ。だがこれは俺にとっては駆け引きだ。 と言うか一種の論破とも言える。俺が真っ向から意見を言ったとしても佐々木の気持ちは昨日のままだろう。 あの佐々木と駆け引き…乃至は意見を論破しようとしているんだ。 それを変えると決めた以上どんな事でもやる必要がある。 鳶が鷹になるくらい無理がある話なのに形振り構って入られない。 今は出来る限り佐々木の考えや気持ちを引き出して主導権を握る必要がある。 それから暫くたっても佐々木は答えなかった。 変わりに顔を少し右に向け景色を見るような遠い目をして俺をみている。 まるで俺の心を見ているかのような仕草に少し動揺したが、俺は普段の態度と変わらないように努めた。 その行為に少し慣れ、何時発言するともわからない返事を待ち続ける時間は、 終わりが無いと聞くがまさにこんな感じなんだろうと考えられるくらい余裕が出来はじめた頃合だ。 「明日ありと 思う心のあだ桜 夜半に嵐が 吹かぬものかは」 「……は?」 俺はご馳走であるはずの豆が勢いよく自分目掛けて飛んできた鳩の様な反応をしてしまう。 緊張と慣れの狭間から突然違う場所に引き摺りだされ彷徨う感覚。 そんな状態から状況を飲み込もうとはじめても既に遅い。そのまま佐々木が続け様にこう言った。 「親鸞が9歳の時に作った歌さ。不意の事情でその日の内に行うはずだった髪を剃り僧侶になる儀式が遅れて、 明日に持ち越しになる事になった時に親鸞は歌でこう応えたそうだ。これはね――」 「……ちょっと待ってくれ」 プログラムのトラブルでエラーを吐き、 フリーズしたパソコンのようになった俺の頭がようやく復旧した。 たった一言でこの様になってしまう許容量しかない頭で、 駆け引きだの論破するだの大口を叩いてる様子はマーフィー牧師でも失笑物だろう。 だがそれでも何もやらず諦めるのは俺の考えに反するわけだし止めるわけにはいかない。 それにここで長考すると佐々木は話をどんどん進めてしまうだろう。さっさと考え始めちまわないとな。 なぜそんな歌を詠んだ?その歌の意味は? 他にもあらゆるホワイが頭の中で提示されているがさっぱりわからん。 大体佐々木の言葉の意図も意味も分からないのに、 それに対する答え方を考えようというのが無謀といえるんじゃないだろうか。 他の視点から考えてって、まてよ……そもそもこれは俺の質問に対する答えになってるのか? 佐々木が意味も無く歌を詠んだりするわけはないだろうがまずはこれから聞いてみたほうがよさそうだ。 「その歌は俺の質問の答えなのか?」 「そうさ」 やはりそうらしい。 「答えてもらって悪いんだがさっぱり意味が分からん。説明してくれ」 佐々木は少し頷いたような仕草をして、 「桜の花は古来から春という季節を代表するくらい日本に親しまれてきた植物だ。 薄い桃色の花が咲き乱れる様子は自然の花火と言っても相応しい。 だけど火薬を使った花火よりは長持ちするものの短い間にその姿は消え失せる。 夜中に嵐とまではいかなくとも突風が吹いたり、 大雨が降ったりとありがちな天気でもあっという間にね。 でもそれは人間だって同じ。すごく低い確率だけど、 今日の学校の帰りにも僕が交通事故にあって死んでしまうとは限らない。 誰にも未来なんて予想できないからね。他にもそういう要因を考えればキリが無い。 だから何があっても悔いの残らない様その日のうちに出来る事は明日に回さずその日に実行しよう、とそんな意味なんだ。 儚いものだからいつまでも当たり前の様にあると思ってはいけないってことさ」 授業中に教科書の朗読役に当てられた生徒の様に淡々と話した。 そう思えるのはその言葉は俺にだけ向けられてるのではない気がしたからだ。 佐々木が朝飯前と言わんばかりに話した内容は教科書の朗読やくだらない雑談とはかけ離れたものだった。 「橘さん達を全く信用していないわけじゃないんだ。 様子を見る限り嘘は殆どついてないと思う、突飛過ぎる話なのは別として。 ただ何が起こるか予想がつかないというのは本当に恐ろしいことさ。 それが物理の法則で図りきれず自身に身の危険が降りかかるかもしれないものなら尚更ね。 こんな事は必要最低限の人物構成で十分なのさ」 俺が佐々木と同じ立場ならこの覚悟ができただろうか。 友好的とはいえ半ば強制染みた話し合いの場を作り出せる立場の相手に不安になりながら。 俺は同じ状況でこんなに気丈に振舞えるだろうか。 相談できる奴は自分より冴えない唯の付き添い一人しかいないのに。 俺は何の見返りも期待できない危険な道を一人で進む勇気があるだろうか。 本心から一緒に来て欲しいと言わずに。 俺の前に立っている年端の変わらない顔の整った少女の覚悟はそう思わせる強く思えた。 俺にその強さはないかもしれない。 「お前の気持ちは良く分かった」 佐々木の助けになる事は何一つ出来ないかもしれない。 「分かってもらえたかい」 けれどもこれだけは出来るはずだ。 「俺も一緒に協力させてもらえないか?相談役じゃなく当事者として」 自然にそんな言葉が出ていた。 暫く続く静寂と共に暖かくも冷たくもない風が吹き荒れている。 その中佐々木は見知らぬ人に急に呼び止められたような表情を俺に向けながら、 「……僕の言った事がわかってもらえなかったかな?」 「理解したさ。これから先お前には理屈では説明できん事が付き纏うってことだろ? そしてそれに対するお前の考えと覚悟もな。それを承知の上の答えだ」 不思議と不安や戸惑いなんて感情を全く感じない。 その言葉を聞いた佐々木の表情は驚きと共に若干の失望が見られる。 「僕の配慮はキミに届かなかったわけか。ならはっきり言わせてもらう。 キミが来た所で事態が変わる確率は途轍もなく低い。ないと言い切ってもいいくらいに。 無駄だと分かってるのにこれ以上巻き込みたくないんだ。 それとも彼ら相手に有効な手でも思いついたのかい?」 多分佐々木も半分分かってこんな質問をしたんだろう。 「そんなもんない」 「なら――」 「それでも決めたんだ」 第三者に事情を説明して審議を開けば100人中99人は佐々木に賛同するものになるだろう。 残る1人はって?どこにでも1人はロクでもない奴がいるもんだ。適当に答えたりとかな。 俺もそんな奴と殆ど変わりやしない。 おもちゃを買ってもらえないのにおもちゃ屋で駄々をこねる子供と同じような我侭だ。 ただ一つ違うのは自分のためのおもちゃじゃないってところだな。 佐々木が一つ大きな溜息をつき穏やかで落ち着きのある眼差しを向け、 「聞き訳がない……というにはちょっと言葉のニュアンスが違うみたいだね。 キミとは1年と少しばかりの交流があるがこういう面を見るのは初めてだ。 だから一つ聞かせてもらいたい」 「ああ」 「キミは自分では頭が悪いように言ってるがそんなことはない。 僕やキミの様な一般人が一人増えたとして、 この事態に対してどういう意味を持つのか僕が言うまでも無く理解していたからね。 そればかりではなく自分の身に取り返しのつかない事が起こるかもしれない事も。 それを理解しながらなぜ僕に協力すると言うの?」 ここが正念場だ。だがここは考えるまでも無い。 昨日の夜に考えた内容がそのまま答えに当てはまるはずだ。 さぁ思い出せ。答えは予習万全、オールグリーン。明快だ。 佐々木の覚悟に相応して答える事ができる言葉は恐らくこれしかない。 「それはな、俺が――」 突然中から水が溢れ水圧に負けたかのようにバタンと俺の家の玄関ドアが開いた。 「いってきまーす。キョンくん、佐々木さんおまたせー」 靴の先を地面でケンケンしながら我が妹が乱入してきた。 ……なんだこの安っぽい昼ドラの演出みたいなタイミングは。 前もって出演者に台本を配ってもらわないと困るね。 演劇に全く無縁の奴らにアドリブで演技させるのは少しばかりハードルが高いぜ、神様。 「キョンくんどしたの?」 「なんでもない」 突然の妹の襲来に呆気に取られていたのか俺を見て妹が不思議そうな顔をしている。 さて、どうしたものか。今から言うには余りにも空気が違いすぎて不自然だ。 というか妹が居る状態でこの話はもうできないんじゃないだろうか。 「キョンくんやっぱりへんー。なに困ってるの?お話してー」 困ってるのはお前のせいなんだがな。 第一相談したところで内容の半分も理解できるとは思えない。 「大丈夫――」 ここで俺の言葉は止まった。俺の頭の中でなんとも言い難いものが駆け巡ったからだ。 例えるなら火花、化学反応、いや……もっと分かりやすい言葉がある。 閃きだ。あの漫画とかでピリーンとか演出でありそうなあれだ。 「おい」 俺は妹を見ながら呼びかけた。 「なにー?」 「お前にちょっとした問題を出す。今佐々木と話して聞かせてもらった教えてもらったものなんだ。 これでその人の性格が分かる問題らしい。すぐ終わる簡単な問題だから安心しろ」 「うんー」 俺の妹とは思えない程素直な返事だ。 少し余裕があるとはいえ忙しい朝の時間をいやな顔せず即答で裂けるのは、小学5年生とは思えない程純粋じゃないだろうか。 悪く言えばよく考えず答えた幼稚な行動とも取れるがそこは身内の贔屓目で目を瞑らせてほしい。 「お前に身近な奴、そうだな……学校の奴でいい。お前と付き合いのある奴だ。ある日そいつがすごく悩んでる。 そしてお前は悩んでる内容を偶然知ってしまう。とても一人で解決出来る事じゃない内容だ。ここまではわかるか?」 「わかるー」 本当に分かってるのだろうか。かなり心配だが今はこれだけが頼りだ。 「そいつは一人で解決しようとするが無理なのは目に見えている。 苦しんだそいつの姿を見てお前は心配するがそいつは大丈夫と言い張る。 お前は何か力になってやりたいと考えるがお前が協力しても解決できない。 だが悩み事だから他の人に相談するわけにはいかない。そんな時お前ならどうする?」 伝わったか不安だが大体こんなところだろう。 妹はうーと口を蛸の様に尖らせ顎に人差し指を当てながら考えている。 そして考えがまとまったのか、その仕草をやめ俺の方に向きこう言った。 「いっしょに考えてあげるー」 「お前が協力しても解決できないかもしれないんだぞ?」 「それでも一人より二人の方がいっぱい考えられるもん。それに学校のお友達が困ってるのみすごせないよー」 てへへと無邪気に笑いつつもはっきり言った。状況にもよるがうちの親の育て方は悪くはないようだ。 「そうか」 「うん!これでなにがわかるのー?」 「もうそろそろ学校行く時間だから帰ってから教えてやる」 「えー。今教えてー」 「駄目だ。帰ってきてからな。学校遅れるだろ?」 むーと頬っぺたに空気を詰め込んで不貞腐れる妹。 これで賽の目は振られた。後は結果を待つのみだ。 いつもの十字路で妹と別れ再び佐々木と二人になった。 今日は余裕をもって出たから話しながらでも間に合うだろう。 木につく緑の葉が若干目立つかなという変化くらいしか昨日と変わり映えしない風景。 大して広くもない道に所狭しと車や自転車、通行人が通る。 時間を潰す様に周りを見渡してみたが大したものは何一つなかった。 昨日と同じく静かな時間が流れている。 自分では手応えがあるが高得点を取れているるかと聞かれれば、 元々の成績が良くないため何とも言えない様な心境だ。 やる事はやったしこれで駄目ならもう俺にはどうしようもない。 痺れを切らして隣を見る。佐々木と目が合った。 何食わぬ表情をして少しばかり溜息のような吐息を漏らしている。 「妹さんをダシに使うとは恐れ入るよ」 「ダシに使ったわけじゃない。あいつが話してみてと言ったから話したまでさ。 あいつにも分かるように少し脚色はしてあるけどな。とはいえ勝手にお前の提案にしてすまない。 咄嗟だったから機転が利かなかった」 佐々木が少し自虐的な微笑をしつつ、 「僕は全然気にしていないよ。それに機転もしっかり利いていたさ。方向性は違うけどね」 皮肉のスパイスがたっぷり入った一言を頂いた。 俺だってかなり罪悪感があるんだから当然の一言と言えよう。 「しかしキミも中々食えないね。いいと悪いの両方の意味でね。 その調子で橘さん達にもこれからもよろしく頼むよ」 俺は足を止める。忠犬ハチ公の様に待ち侘びた俺に待望の一言が聞こえた。 「いいのか?」 「仕方ないじゃないか。あそこまで食い下がって来るのに駄目だ言っても、 キミは僕に黙ってアクションを起こすに違いないからね。そうなると結局キミを巻き込むのと同じ事なのさ。 それならいっそ一緒に居た方が監視できるというものだよ」 佐々木は出来の悪い生徒を持つ先生のような口ぶりでそう答えた。 実際出来が悪いし俺の目的は果たされたわけだからそれはそれでいいさ。 予定より大幅に狂い不恰好だがなんとか形になった事を素直に喜んでおこう。 「さて……」 佐々木がふと思い出したかのように呟いた。 「それじゃあさっきの続き、聞かせてもらえる?」 続きって何だ。 「それはな、俺が――の続きさ」 大事な場面の再確認をするべくページを戻すようにもう一度思い返す。 出来の悪い演劇の山場で語られるような歯の浮いた台詞が出てきた。 「言わなくてもさっきのでわかっただろ」 顔を佐々木の方向に向ける。佐々木は微笑んでいた。 悪戯に成功した子供のような独特の笑みを俺に向けて。 「さぁ……よくわからないな。だから聞かせてもらえるかい? 勿論嘘や誤魔化しは駄目だからね」 あの台詞を今この場所で言えってか? そんなこと言っちまった日にゃフロイト先生も爆笑しちまうような状況になる事受けあいだ。 もう事件は解決し誰も刑罰を受ける必要はないのに、 自分が首を絞められに階段を上る死刑囚みたいな真似はしたくない。 だが答える以外の考えが思い浮かばない。どうやら観念するしかなさそうだ、畜生。 佐々木の無言の催促を肌に感じ春うららかな天候の中、 坂道を歩く汗とは違う別の汗を背中にかきつつ俺はこう言った。 「それはな、俺が……こういう不思議な事に対して目が無いからさ」 一瞬時が止まった様に佐々木は呆然としていた。 やがて思い出したかの様にいつもの笑いをしていたのだが少し様子がおかしい。 そしてそれは徐々に音声として明確になった。 「くく……ぷっはっはっは……あっはっはっは」 まさに関をきったような笑いというのはこういうことを言うのだろう。 あの佐々木が周りが怪訝に思うくらいの大きな声で爆笑していた。 一年以上付き合っていたがこんな笑い方を見るのは初めてだ。 どんなジョークやお笑いにもこれほど笑っていた記憶が無い。 その後も暫く笑い続けようやく笑いが収まった頃、 「キミってほんと面白いね」 なんだその全て分かってますという顔は。 言っとくが俺は嘘は言ってないぞ。これも本心だからな。 俺の表情を見て佐々木が少し含み笑いを繕いながら、 「そういう事にしておいてあげるよ。それでも不満なら僕の思ってる事をキミに話そうか?」 「別にいらん。終わった話をいつまでも話題にするのは蛇足だからな」 「それは残念だ」 これで一応決着がついたわけだがどうにも腑に落ちないのは気のせいだろうか。 試合に勝って勝負に負けた感覚が妙に芯に残る。早めに忘れたいもんだぜ。 だが気分が優れない上にこの急勾配を見ると余計気が滅入りそうだ。 隣を見る。俺とは対称的な佐々木の屈託の無い笑顔が忌々しく見えた。 佐々木とキョンの驚愕プロローグ 佐々木とキョンの驚愕第1章-1 佐々木とキョンの驚愕第1章-2 佐々木とキョンの驚愕第1章-3
https://w.atwiki.jp/yokohamafcacademy/pages/412.html
名前 ふりがな ささき ゆうき 英 Sasaki Yuki 生年月日 1990年度 経歴 選手歴 2003年〜2005年 - 横浜FC相模原ジュニアユース + ... 2003 2004 2005 2006年〜2008年 - 横浜FCユース + ... 2006 2007 2008 専門学校サッカー部(*1) 2017年〜2019年 - AOKING(フットサル) 主なタイトル 専門学校 - 全国ベスト8 東京都フットサルリーグ2部得点王 - 2017、2019 東京都フットサルリーグ2部ベスト5 - 2019 外部リンク 佐々木 悠樹(SPORA) 佐々木 悠樹(サッカー歴ドットコム)
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1097.html
キョン「そんなこと言っていいのか佐々木…俺にだって考えがあるんだぜ?」 佐々木「さて、キミに何がでk…」 コチョコチョ… 佐々木「…ちょ!き、キョン!まっt…あはは待ってくrふふふぅあぁぁ」 コチョコチョ… 佐々木「わ、わかったから止めてくr」 コチョコチョ… 佐々木「…止めt」 コチョコチョ… 佐々木「………」グスン ・・・ キョン「…すまん。ここまでやるつもりはなかったんだ」 佐々木「………」 キョン「いや、本当にすまない」 佐々木「…まぁ、キミが気にする事はないよ。僕がお嫁に行くことができなくなったからと言って、所詮キミには関係のないことなんだ」 キョン「…佐々木」 佐々木「それにだ、僕が正直に名乗り出なかったのも悪いんだ」 キョン「なあ佐々木、良かったら俺の嫁にならないか?無理にとは言わないが…」 佐々木「責任を感じてくれているのかい?それとも…」 キョン「愛してる」 佐々木「!」 キョン「だから結婚してほしい。先程のくすぐりだって愛情の裏返しなんだぜ」 佐々木「わかった。これからはキミの伴侶として一つ、宜しく頼むよ」 キョン「いいのか?」 佐々木「もちろん」 キョン「………」 佐々木「………」 チュッ! キョン「ところでだ。冷蔵庫に入っていた俺のプリンなんだが…」 END
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/64.html
プロローグ 「そろそろ通りかかります」 まるで噂話をするかのように声のトーンをおとし、橘がそう呟いた。 「あ、ほらほら。見えてきましたよ」 声のトーンを落としたままそう続けた。何を興奮しているのか先ほどより若干大きくなっている。 しかしまだ見えたといっても一人の女子学生が歩いていると確認できる程度で、こちらの声なんか聞こえる距離ではない。 この距離で聞こえるなら聖徳太子といい勝負ができそうだ。普通に声を出せばいいものを。 「いや、それは一概には言えないんじゃないかな。現在科学で証明されているだけでも人間には20以上もの感覚が存在するんだ。 僕たちがこうしている間にも日々科学は発達しているのだから、将来更に見つかる可能性は十分に残されていると言えるね。 それに一般的な五感だけでも聴覚以外に視覚というものがある。耳で聞こえなくても目で見て勘でなんとなく気づく人だっているってことさ。 僕にだって今のキミの憂鬱そうな気分くらいなら分かるからね」 声を押し殺すような独特な笑い方をしながら佐々木が語りかけてきた。 相変わらず小難しい話をしてくるな。悪いが俺の頭は認めたくはないが谷口より少し上くらいだぞ。 誤解のないように言うが学力なら、ということだ。 「お前とは中学の時から一緒だからな。それなりに付き合いもあったから分かるが」 佐々木とは週に2回ほどとはいえ一年ほど共に塾に行き帰りが一緒だったからな。 だが佐々木と俺の学力は昼寝をする前のうさぎとかめくらいのどうしようもない差があった。 だからてっきり俺たちはそれぞれの学力に合った高校に行くと思ったのだがなぜかこいつはここにいる。 もっと上のレベルを狙えただろうに北高にくるとは物好きなもんだ。 毎日ハイキングをして通学するような場所にあるってのによ。 「北高にも特進クラスがあるからね。とりあえず一年間は様子を見てからそっちにいくかどうか決めるよ。 それにあの通学路は中々健康的でいいじゃないか。運動部に入っていない僕たちにはちょうどいい運動さ。 キミと歩きながら色々話もできるし僕としてはとても有意義な通学路なんだよ」 そのおかげで毎日遅刻寸前で学校に通う羽目になってるんだがな。 それでもなんとか遅刻をしないのは母親に命ぜられ面白半分で起こしにくる我が妹と、 それをわざわざ待ち続ける佐々木のおかげといっても過言ではない。 しかし通学路に対する考え方だけでもつくづく頭の出来が違うと感じるね。 もし神様がいるなら一言くらい文句を言っても罰は当たらないんじゃないか? まぁ宗教に無縁な俺が語っても説得力が微塵もないわけだが。 俺がもし真剣に進学を考えるならそんな暇はないと断言してもいい。 頭のいい人間の考えることはよくわからん。 「それよりキミはそれなりの付き合いと言ったが、僕とキミとの一年間の思い出に関してどう認識してるんだい? 少なくとも僕にはそれ相応にキミとの思い出を育んだつもりだがね」 そう言いつつ少し皮肉交じりに微笑しながら、俺をからかうような目線を送っている。 それ相応の付き合いか。まぁ佐々木とは塾の行き来を1年ほど続けていたとはいえ、 他はクラスでの会話などありふれた内容が多くて特別何かあったわけでもないんだよな、俺が覚えている限りでは。 いつもなら他になにかあったかと思い出そうとするんだが生憎今はそんな場合ではない。 だがお前は紛れもなく中学校時代親しくした友人の一人には違いないさ。 そんなことを考えていると突然、あからさまに不機嫌な声色で会話に混じってきた。 「やっとお出ましか。全く無意味な時間をすごしていたようでならないな」 声だけではなくうんざりとした表情で藤原は言った。あまりの不快感からか唇まで大きく歪んでいる。 ただでさえ普段から無愛想なくせにこうなると更に忌々しい。 というか俺は別にお前について来いと頼んだわけじゃないんだぜ? お前のその顔を見ているとただでさえ気分が悪いのに更に悪化する。 「あんたに言われるまでもなくついていくつもりはさらさらなかったがこれも指令なんでな」 女子生徒の待ち伏せまで指令に入ってるとはご苦労なことだ。 未来でアイドルやら有名人やらになると決まっている女子生徒の情報を確保し金儲けでもするつもりなんだろうか。 もしそうならストーカーとして逮捕されちまえばいい。 「―――退屈」 そう一言ぽつんと九曜が言った。量の多い髪は強い風が吹いても少しもゆれることはない。 初対面のときから慣れたとはいえ、無機質な顔にガラス玉のような黒い瞳は未だに少し不気味だ。 九曜本人から聞いた話によるとここの時間の流れは元々いた場所よりかなり遅いらしい。 そのせいかいつもぼーっとしてたり眠そうに過ごしている。正直何を考えてるのかほとんどわからん。 まさか宇宙人ってのはこんな変なやつばっかりなんじゃないだろうな。こんなのはこいつだけと信じたいもんだ。 「何ぶつぶつ言ってるんですか?だんだん近づいてきてるんですからお静かに」 すこし怒気を含みながら橘が話を戻した。俺だって好きでこんなぶつぶつ言ってるわけじゃねぇよ。 「佐々木さんの…いや、世界を元に戻す第一歩なんですからしっかりしてください」 「俺はまだ一言も協力するとは言ってないぞ」 いつの間にそんな展開になっているんだ? 俺は佐々木の件さえなければこいつらと顔をあわせることすらなかったはずだ。 自分の進む先に待ち伏せされているのを知ってか知らずか女子生徒は足早に俺達の方に向かっていた。 遠くから見る限り普通の女子生徒にしか見えないのだが、橘の説明どおりならとんでもない存在だ。 だがこの頃の俺はまだ橘達の言うことを完全には信じちゃいなかった。 同時に自分の運命が変わり始めていることにも気づくことができなかったわけだが…。 桜の花はとっくに散り早くも夏の陽気を垣間見る5月の終わりの午後、 日が傾き始め俺達を赤く染め始めた頃のことである。俺達はある人物を待ち伏せていた。 その人物とは… 「あれが涼宮ハルヒさん。佐々木さんの力の所有者よ」 ―――多分、というか絶対と言い切ってもいいと思う。 今この説明だけではなぜこうなったのか…なんてのはほとんど分からないんじゃないだろうか。 説明口調は橘や佐々木のほうが得意だし俺としてもこいつらに任せたいのだが俺が語り手である以上俺がやらなくちゃならんようだ。 元々不向きなのは重々承知してるさ、だから多くは望まないで聞いて欲しい。 佐々木とキョンの驚愕プロローグ 佐々木とキョンの驚愕第1章-1 佐々木とキョンの驚愕第1章-2 佐々木とキョンの驚愕第1章-3
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/958.html
「うーむ……」 やはりよく判らない。いや、判らないと言ってもそれをできない訳ではない。 それが何なのか、全く判然としないのだ。俺にはこの操作の意味が理解できん。 「――随分と熱心に教科書と睨めっこをしているね、キョン」 向かいの席に座っている佐々木が、目の前を通り掛かった小動物へと狙いを定めた猫のように笑った。 ――高校二年の十二月、ある日曜日の事だ。 学期末試験も近付いてきているが、そんなものなど物ともせずにハルヒ率いるSOS団は相変わらずの 暴走っぷり。団長サマの学業優秀ぶりは自他共に認めるところで、あいつにとっては成績なんて ものは心配のしの字どころか一角目の点すらも無いと思われるが、それに漏れなく付き合わされる 俺も含めた諸団員――この件については長門は例外か――は気が気じゃない。朝比奈さんなんて 受験本番の直前だぜ。 そんな訳で学業成績に一握の、どころかサハラ砂漠の砂の如くに不安を憶えている俺なのだが、 試験勉強なんて一人でやってもまるっきり捗らず、ハルヒにでも教えを乞おうものなら最初から やめときゃ良かったと後悔するほどの説教付きだろうし、古泉に教えを乞うのはどうにも腹が立ち 気に入らない。長門はとてもじゃないが俺どころか地球人を含めた全有機生命体には理解できない であろうレベルでの解説を聞かせてくれるであろうし、朝比奈さんは先述の通り本人が大変忙しい 身であられるので申し訳無さ過ぎる。 そんな訳で、俺には最早頼れる人間と言えば、中学からの友人であるところの、こいつしか当てが なかったのである―― 「全く、酷い言われようだな。キミがそのような減らず口を利くのならば、僕は直ちにでもここから 去るに吝かではないのだよ、キョン」 詰問口調の佐々木ではあるが、本気じゃないな。目が悪戯っぽく笑っている。 趣味なんじゃないかと思えるくらいに、こいつは昔からこうやって俺をからかうのが好きなよう なのだが、実は俺はその事自体は特に悪い気はしていなかった。 こうやって戯れられる友人が居ると言う事が、今の俺には嬉しい事だと思えているからだ。 「わりィ」 照れ隠しのつもりか、この時俺は無意識に頭を掻いていた。俺もこいつに甘えているな―― 「――いやなに、この微分積分ってのは一体何なのかと思ってな。教科書も授業も抽象的過ぎて、 概念も何をする為のものなのかも、さっぱり判らねえ」 「ふむ? なるほど確かにね。微積分と言うのは元々ニュートン力学において物体の運動を解析 する中で発展を見せた方法だ。ニュートンが木からリンゴが落ちるのを見て引力を発見したと 言う伝説はキミも知ってるだろう?」 まあ、有名な話だからな。風呂に浸かって浮力を発見したアルキメデスが絶叫しながら街中を ストリーキングしたってのと同じくらいに。 「中々上手い事を言うものだ。ストリークと言う英単語には『稲妻』と言う意味もある。その時 のアルキメデスの心境たるや、正に稲妻に打たれた様に天啓を得たと言うところだったろうさ。 ――話を戻そう。多分に語弊はあるが、微分と言うのは件のリンゴの落下運動について研究した 結果の賜物なのさ。だから理論だけを抜き出して、それだけを教えようとか覚えようと言うのは 相当にナンセンスな事だ。中等教育の指導要綱では物理に微積分が持ち込まれる事は無いが、 実に勿体無い話だよ」 ……? ちょっと待て、佐々木。この訳の判らん微積分と言うものがリンゴが木から落ちるのと 一体どんな関係があるって言うんだ? 「そうだね、判りやすいところから説明しようか―― キョン、キミも小学校の頃に『はじき』の法則とか言うのを教わらなかったかな?」 「速さと時間と距離の関係の事だったか? 距離は速さと時間を掛けたものと等しいって言う」 「そう、それだ。実はね、キョン――」 一呼吸の間を持たせる佐々木。何だよ、気になるから勿体振らずに教えてくれ。 「――それが積分と言うものなのさ」 ……は? いやいやいや、意味が判らねえぞ。くっくっと笑われても困るんだが。 「まあ落ち着きたまえよ。上手くできるか判らないが、今から説明してみよう」 そう言って佐々木はノートの新しいページを開き、直交する二本の線を描く。縦線へ「v」、横線へ 「t」と註釈が書き加えられた。交点は「O」とある、原点だな。縦軸が速さで横軸が時間か―― 「なあ、何で速さってvなんだ? tはtimeだろうってのは判るんだが」 「velocityの頭文字と言われているね。『速さ』を意味するラテン語で、同義で英単語にもある。 ――さて、小学校の頃は速さとは一定なものだった。時速3kmとあれば最後まで時速3kmだ。 等速度運動については物理でやっているだろうから説明は要らないだろうが」 言いながら佐々木は『t』の線と平行な線をもう一本書き足す。『 v = 3 』との註釈が加えられた。 「この場合の速さvは時間の影響によらず、常に一定だ。時間tがどんな値を取ろうとも関係ない。 さて質問だが、この図においてvとtとは何を意味している?」 「んー……vが縦辺でtが底辺って事か?」 「御名答」 くつくつと笑いながら、佐々木は今度は『v』の線と平行な線を新たに引き足した。『 t = 3 』とある。 「さて、こうして『 v = 3 』と『 t = 3 』、それにv軸とt軸とで囲まれた正方形ができた訳だが、 これの面積は当然3掛ける3で9だ。この図形の面積の単位、何だと思う?」 「――距離、だな」 縦軸が速さで横軸が時間。ならばこの計算は速さに時間を掛ける事という意味であり、即ちそれは 距離を示すものである。さっき俺が『はじき』の法則の説明として自分で言った事だ。 「その通り。これで等速度運動において距離とは速さと時間とが成す長方形の面積で表せる事が 判った訳だ。そしてこの面積は時間の関数である事もね」 佐々木が『 S1 = vt 』と言う式を書き出す。そう言えば物理でやったな。 「さて、今度は等加速度運動について考えてみようか。或る時刻での速度は加速度aと時間tとを 掛け合わせたものと、初速度v0を足し合わせたものと等しいのだから――」 『 v = v0 + at 』と言う式が書き出される。 「――こういう関係だね。さて、単純に考える為に初速度をゼロ、加速度を1としよう」 佐々木はさっきの図へ、原点を通り斜め45度の右肩上がりの線を書き足した。 その脇へは『 v = t 』と、シンプルな式が書き出される。何の変哲も無い一次関数だ。 「さて、今度の速さは時間の増減によって変動する事になる。 さっきと同じ『 t = 3 』で考えてみようか、この時の距離はどうなるかな?」 「『 S = vt 』なんだから、それへ突っ込んでみれば良いんじゃないのか?」 そうすれば『 S = tt = t^2 』となり……いや、何か違うな。 確か物理で習った公式は初期位置をS0として『 S = S0 + v0t + (1/2)at^2 』とか、そんな感じの 鬱陶しい式だった筈だ。この場合は初期位置も初速度もゼロなんだから『 S = (1/2)t^2 』となら なければおかしい。 「気付いたね。そう、先の考え方を発展させれば、距離とは速さを表す線と時間を表す線とが成す 図形の面積であり、今回のそれは三角形なのだから、最後に2で割ってやらなければいけないのさ。 つまり求めるべき面積は、3*3/2で9/2、4.5となる訳だ」 なるほどな……この1/2ってのは何の事なのかと思ってたが、そういう意味か。 「ところで佐々木、v0がゼロじゃない場合はどうなるんだ? y――じゃないか、v軸の切片があるだろう」 「その場合は台形として求めればいいだけさ。上底をv0、下底をv0+at、高さtとしてね」 言ってる間に『 S2 = S0 + (1/2){v0+(v0+at)}t 』と書き出された。 「ん……なるほど、S0とv0がゼロならさっきの三角形になる訳か」 「なかなか良い所に気付いたね。そう、さっきのはこのS2についての方程式において、原点を通る 場合に限定された特殊解なのさ。或いは三角形とは上底がゼロの特殊な台形と言い換えてもいい だろう。ゆえに等加速度運動において距離を求める式の一般解としては、こちらの台形の面積と して求める方が適していると言えるね。さて――」 佐々木は今書き出したばかりの式をシャーペンで小突きながら、俺に尋ねてきた。 「この式、どこかで見覚えがないかな?」 「……? あっ――」 『 S0 + (1/2)(v0 + v0+at)t 』を展開すれば『 S0 + v0t + (1/2)at^2 』。さっき俺が思い出した 等加速度運動の距離の式と同じだ。加速度がゼロなら『 S0 + v0t 』となり、これは等速度運動の 距離の式とも合致する。 「なるほどな……そういう意味だったのか、あの式は」 「さて、これで『はじき』の法則から始めて、速さと時間と距離との関係を説明する要素が一通り 揃った訳だ。項を並び替えて整理してみようか。とりあえずS0、v0はゼロ、aは1のままで考えよう。 距離は『 S = (1/2)t^2 』、速さは『 v = t 』、加速度は『 a = 1 』と、こうだね」 うむ、それはいいのだが佐々木、俺は確か微分積分の話をしていたと思ったのだが。 「おや、まだ気付いていなかったのかい? 流石はキョンだ、適度に利口で適度に物を知らない。 自賛になってしまうが、昔の僕も全く上手い事を言ったものだ」 「……だからそれ、褒めてないだろう」 「貶しているつもりも無いがね。じゃあお待ちかね、微積分の話だ。とりあえずはそれぞれの操作に ついておさらいと行こうか」 佐々木がノートへシャーペンを走らせる。しかしよく見たら随分と綺麗な指をしているな、こいつ。 「まず微分、正確にはx^nについての導関数だが、 『 f(x) = x^n 』ならば『 f (x) = df(x)/dx = n x^(n-1) 』 次に積分、今から示すのは不定積分だな。 『 f(x) = x^n 』ならば『 F(x) = ∫f(x)dx = {1/(n+1)} x^(n+1) + C 』 重要なのは変数xについて微分したら係数が増えて次数が下がり、逆に積分すれば係数が減って 次数が上がると言う所だね。さて――」 くふ、と佐々木の口から聞き慣れない笑い声が漏れる。可笑しくて堪らないと言った風情だ。 「キョン、一次関数『 f(x) = x 』の、xについての導関数と不定積分をそれぞれ書いてみたまえよ」 おいおい、そんなもん楽勝だろ。意味はよく判らないけどな。 『 f (x) = 1 』で『 F(x) = (1/2)x^2 + C 』だろうが。 「……んん?」 何だこれ、さっき佐々木が書き出した『はじき』のと同じじゃねえか。積分定数Cを削ってxをtにしたら完璧だ。 「おい佐々――」 向かいの席を見れば、佐々木が机に突っ伏して背中を痙攣させている。 「……そんなに笑うなよ」 「これが笑わずに居られるものか。全くキョン、キミと言う奴は面白い」 涙まで流して笑ってるぜ、こいつ。――っておい、ここは図書館だぞ。仮にも女である佐々木に 泣かれてしまっては俺は男として最低な野郎に見えてしまうではないか。周囲からの視線攻撃が 冷た過ぎて、きっと俺はもう凍死寸前だ。 「お、おい、頼むぜ佐々木――」 「くっくっ、いや大いに笑わせてもらったよ。こんなに笑ったのはいつ以来だろう―― しかしこれで何となく感触は掴めただろう? 微分が変化量を求めるものと言う事や、積分が 面積を表していると言う意味も」 大笑いによる涙をハンカチで拭いながら佐々木が言う。 確かにな、身近に感じられる実例があるのと無いのとじゃ大違いだぜ。物理の教師も勿体振らずに 最初からそう教えてくれりゃいいものを。 「解析関係が絡んでくると複雑になるのは否めないからね。ある程度はトレードオフなのだろうが ――微積分やベクトル、正弦波あたりについては高校でも学べるのだから、それを無視するのは 勿体無い事だよ。一方の数学でも、物理の視点を切り捨てているのは残念な事だ。この辺りは もっと統合的な単元としてくれれば、相当に面白いはずなのだがね」 「で、お前はそれを自分で実践してるわけか」 「独学では限界もあるがね。それに――」 佐々木はふっと嘆息を漏らす。 「――独りでやっていると味気ない、と時々思ってしまうものなのさ」 ――この日より『補習:佐々木講座』が毎週日曜に図書館で定例開講されるようになった事を、 一応補足しておこう。ちなみに言うまでも無かろうが、生徒は俺しか居ない。 やれやれ、俺に休みは無いのか? ---
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1111.html
佐々木VS長門 ふとしたきっかけで佐々木を伴って、長門宅での食事に招かれたのだが・・・・・・。 俺は今、長門の部屋のコタツで独り、台所に立つ二人をぼんやりと眺めていた。 「わたしがやる」 無表情な長門の声にはどこか、強い意思が含まれているようだった。 「いえ、私も手伝います。手持ち無沙汰にコタツに入っているだけだと、どうも悪い気がしちゃって」 笑顔で長門に対峙する佐々木の声からは、対女子用の柔らかい女の子口調だったが、何となく硬質な 毅然とした印象を受ける。 「気にしなくていい」 「ううん。そっちこそ気を遣わなくていいのよ?私、こう見えて結構料理得意なんだから。」 一歩も譲らない二人。かれこれ三十分になる。俺の腹の虫も、大概鳴き疲れてきた。 全く、なんなんだろうね。この妙に意固地な二人は。 「ねぇキョン。僕のコックとしての腕前が中々のものなのは、君もよく知っているだろう」 なぜ俺に話を振る 「・・・・・・」 そして長門、なぜ俺を見つめる。心なしか瞳の奥に冷たい光を感じるのだが、気のせいか。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1213.html
「しまった・・・」 やぁ。実は少し近道しようとして路地裏の細い道を無理矢理通ろうとしたら壁と壁の間に胴の部分が挟まってしまったんだ。 幸いここは人通りの少ない路地裏なのでこんな姿を誰に見られるというのは無いけれど、それが良かったのか悪かったのか、正直考えてしまう。 自力では無理だ。10分ほど頑張ってみたのだが、いささか無理があるみたいだ。 滅多に時間に遅れる事はないからいつもはゆっくりと行くのだが、今日は少々勝手が違った。 道に迷った風な女の子がいたので家まで送っていたら塾へ間に合わなくなってしまった。 女の子の方が大事だからいいんだが、こういう時は意地でも間に合おうとしてしまうものだ。 こんな所を不良に襲われたりしないように早く抜け出そう。 そう決心し体を無理矢理通そうとする。・・・がそんなに簡単には抜けない。 どうやら胸部周辺が挟まっているみたいだ。動かすと痛い。 時間帯はまだ昼。ここは明るいが、陰になっているので暑さでどうかなるという事は無いだろう。 「いい天気だなぁ。空が青いし雲が無い」 風も心地よい。本当に今日はいい天気なので思わず独り言を呟いた。 今日の塾は休もう。 私は普段塾を休むなんて事はしないのだが、このスカイブルーの空の下で風に吹かれていると、どうしても彼の事が頭に浮かぶ。今や私のリラックス法の一つだ。 「こんな天気のいい日は君とデートでもしたい気分だね、キョン」 自分で言っておいて切なくなる。 ここで彼が助けに来てくれたら今日は今までの人生でベスト3に入る大切な日になると思う。 試しに呼んでみようかな。 「助けに来てくれ、キョン・・・!」 そろそろ焦る頃だろうか・・・。だが、どうやったら抜け出せる? 「佐々木?」 そう、君が助けに来るしかないみたいだよ、キョン。 「助けに来てやったぞ、佐々木。全くお前みたいな奴がこんな所で何やってんだか」 「嬉しいよ、キョン。助けに来てくれた・・・え?」 「何驚いてんだ?助けに来てやったから、ほら、手を握れ。ゆっくり引っ張るから」 「ほ・・・本当にキョンなのかい?」 「俺は俺だ。あー、もういいからほら、手、掴め」 「あ、あぁ。ありがとう」 キョンの尽力もあってすぐに抜け出すことができた。 「助かったよ、キョン。・・・しかし、どうしてここが分かったんだい?」 「ああ、その事だが」 「私が連れてきたんですよ!」 とキョンの後ろから現れたのは自称超能力者の、 「橘さんが連れてきてくれたのかい?」 「ああ。こいつが突然俺の所へ走ってきて腕を引っつかまれ、無理矢理連れ去られた。途中で話を聞いて、こいつの組織の車で来たんだ」 「んもぉー。佐々木さんが壁の間に挟まっていたのですぐにキョンさんを呼んだんですよ」 「しかし、びっくりしたぜ。佐々木があんな事になってるなんてな」 彼はそう言って意地悪に微笑む。 「まったく、僕もあんな事になるなんて思っていなかったよ。だが、君が助けに来てくれて本当に良かった。ありがとう、キョン。改めて御礼をさせて頂くよ、くっくっ」 「どういたしまして、だな。橘にも言っといてやれ。珍しく役に立ったんだからな」 「ありがとう、橘さん」 と言って、2人に笑いかける。 「さて、どうせ暇だしこれから3人でどこか行くか」 「キョン・・・。僕は是非そうしてもらいたいよ」 「いいですね!行きましょう行きましょう!」 む、橘さんはキョンにくっつきすぎじゃないか?、、という疑問もこの天気、この気分ではどうでもいい。僕も久しぶりにテンションはハイだ。 「ほら、佐々木。行くぞ」、、と言って彼は手を差し伸べてきた。 これも今日みたいな日だからかな。僕は差し伸べられたその手をしっかりと握る。ほどけないように。 今日は一生の思い出になりそうだ。 ありがとう、キョン。 ~後日談~ 「ところで橘さん」 「はい?」 「君の言っていた事から想像すると、君はずっと僕の後を追けていたのかい?」 「いえ、違いますよ。佐々木さんの事は仲間から電話が来て、佐々木さんの閉鎖空間に少し同様が見られたという事で、キョンさんを連れてあなたの元へ向かえと指令が出たんです。 キョンさんの見張りをしていた私はすぐそばで変装していましたから、変装を解いてキョンさんに話しかけたと言うことです」 と言って嬉しそうに笑っている。 「でも、キョンさんって結構面白いんですね。朝、家から出てからずっとキョンさんの後をつけてましたから色々面白い物が見れましたよ~!」 キョン「・・・」 佐々木「橘さん、明日会合でも開こうか」 橘「へ?いいですよ?」 キョン「さ、さあ!最初はどこへ行く?」 佐々木「明日4時いつもの場所ね」 橘「りょーかいですっ!」 Kさん曰く、「あの時の佐々木は恐ろしいなんてもんじゃなかった。橘あの後どうなったんだろうな」 めがっさ続かない
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/637.html
女子A「わたしは高学年まで一緒にお風呂入っていたな」 女子B「高学年まで!?それファザコンじゃないの?」 女子C「ウチじゃ今も弟と入ってるよ」 女子全「え~っ!」 女子C「まだ5歳だし普通じゃない!でも時々遊んじゃうな」 女子B「えっちぃなお姉さんを持って弟さんも大変だ」 委員女「佐々木さんはいつまで一緒に入っていたの?」 佐々木「えっ、なんの話?ごめん、よく聞いてなかったよ」 女子A「男の人と一緒にいつまでお風呂に入っていたかって話よ」 佐々木「う~ん、中三まで一緒に入っていたかな?」 女子C「それはだれ?」 佐々木「クラスメイトの子」 委員女「それは・・・女の友達だよ・・・ね」 佐々木「中性的な印象を持つけれど生物学的には雄に分類される人間だった」 女子全「マジ!?」 佐々木「思いっきり(勉強)した後はさっぱりしたくなるし、夏場に(自転車に乗せて貰ったり)した時は汗を洗い流したくなるしね」 女子A「・・・すごい、進んでいるのね」 佐々木「そうかな?普通の生理的要求だと思うけど」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 高校での佐々木は中々クラスの仲間に馴染めず、小さな1つの悩みになっていた。 そんな時、橘京子と出会うことになる。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/28.html
「犯人はキミだ!」 目の前の名探偵は俺のほうへ人差し指を突き立て、そう力強い口調で言い放った。 「な、なんですと?」 若干、口調がわざとらしいが、まぁ練習だしいいだろう。 なんで、俺がこんな非日常的な2時間サスペンス的会話をしているのか。 その答えは至極単純なものだ。 要は劇の練習をしている、それだけである。 文化祭の劇でサスペンスをやるという、うちのクラスのぶっとんだセンスには辟易するばかりだが、目の前の探偵役の佐々木のはまりっぷりを見れば不思議と納得がいくものだった。 茶色の外套にベレー帽に堅苦しい口調が似合う女子はそうはおるまい。 「キミが犯人だったとは、本当に残念だよ。」 俺もなんで自分が犯人なのか、本当に残念だ。 俺と佐々木の普段の会話が面白い、というだけでこんな配役になってしまった。 もちろん、名探偵にいいように言いくるめられる犯人役として。 名探偵はそう語りかけると、手錠を俺の手にはめた。 なんで、警察でなく探偵が手錠をはめるのか、というつっこみはこの際無視してほしい。 そして、名探偵は自分の腕にもう片側の手錠をかけると、俺の手を引き舞台から退場していく。 「とりあえず台詞あわせはここまでか。」 手に持った脚本を見返す。 脚本はここまでのシーンしかまだ出来ていない。 なんでも、脚本家さんはサスペンスのもっとも大事な、最後のシーンをどうするかを悩んでいるらしい。 まぁ、2時間サスペンスでいうところの最後の20分みればOKという大切なシーンなので気合が入っているのだろう。 別に気合なんか入れてもらわんでもかまわんのだが。 「ふむ。ここまでは滞りなく出来てなによりだ。ずいぶんと腕があがったではないか、キョン。」 おかげさんで。 佐々木の話し方についついつられてしまい、気がつけば役に見事にはまっていた。 「たいしたもんだよ。お前は。」 「そうでもない。僕は普段どおりに振舞っているだけだ。」 佐々木は少し得意そうに笑う。 「後は、取調べのシーンか。」 なんで探偵が取り調べをしているのか、などとは気にしてはいけない。 そういうものなのだ。 「―ねぇ、キョン。」 「ん、何だ?」 「もう本番まで時間が無い。脚本はなくとも取り調べシーンの練習だけはしておかないか。」 まぁ、確かにそれも一理あるな。 「そうだな。せっかくだしやっちまうか。」 机を二つ向かい合わせにして、簡易取調べセットをつくり、俺と佐々木は対面に座った。 雰囲気を出そうということで、人のいない特別教室で練習することとなった。 「ここまで用意したはいいけど、肝心の台詞とかはどうするんだ?」 「そうだね。取調べにふさわしいやり取りをしなくてはならないね。」 佐々木は目を上に向けて考え込むようなしぐさをすると、 「そうだ。プロファイリングなんかはどうかな?」 あー、あの一昔前映画ではやったあれ、な。 「いいんじゃないか。割合それっぽいし。でも、どうやるんだ。」 「なに、僕に任せたまえ。僕が質問するから、キミはそれに答えるだけでいい。」 それってただのQ Aじゃないか? 「取調べだって一種のQ Aさ。」 ごもっとも。 というわけで、取調べQ Aタイムとあいなったわけである。 「さぁ、それでは聞こうか・・・君の生い立ちから今にいたる道程、趣味や好みの女性などなどをね。」 なんでそこまで訊くんだ。 「犯人の生い立ちをしることはプロファイリングをする上で非常に重要なことだし、なにより趣味や異性の好みのようなものは直接犯人の潜在的な欲求につながるから、プロファイリングには必要な要素だ。」 そうなのかね。 「まぁ、いいや。じゃあ、適当に質問してくれ。」 「よし。では、まず君の家族構成を聞こうか。」 なんか本格的に取り調べられている気分だな。 「父と母と、あと妹が一人だ。」 「家族仲はよかったかい。」 「良好だ。」 俺をあだ名で妹が呼ぶことを除けば不満は無い。 「では、キミの趣味は。」 「うーん。」 結構これって難しい質問だよな。 簡単そうでいて意外と答えにくい質問の代表格だ。 「特にこれといって思い当たらんな。」 「そうかい。」 佐々木は喉の奥でくっくっ、と短い笑い声を上げた。 「この質問は答えにくいぜ。」 「わかった。なら質問を変えよう。」 そして佐々木は体勢を直すと 「キミの初恋はいつだれとだね。」 「なっ。」 「あぁ、僕に聞かれて困るようなら黙秘権を行使してくれてかまわない。」 いや、別に困りはしないけどな。 「いとこのねーちゃん。小学生のころかな。」 「その人はどんな感じの人だい。」 「んー、質問を変えてくれ。」 あんま思い出したくないんでな。 「じゃあ、キミの好みのタイプの女性は?」 「んー、それは難しい質問だな。」 あまり、そういうことは考えたことが無い。 「じゃあ、もっと簡単な外見的な好みからいこう。めがねはかけているほうがいいかい?」 「眼鏡なしだな。俺には眼鏡属性ないし。」 「ん?」 「妄言だ。気にするな。」 「そうかい。」 そして佐々木は探偵役で付けていたダテ眼鏡を外した。 「いや、ダテ眼鏡って度が入っていなくても邪魔なものでね。」 そうか。 「えーと、なら、髪はショートとロングどっちが好きだい?」 んー。 「お嬢様お嬢様しているよりも、もっとスポーティーなほうが好みかな。」 たとえばポニーテールとか。 「な、なるほど。じゃあ、どちらかというとショートか。」 そうつぶやくと佐々木は自分の髪を撫でた。 「じゃあ、身長は高い方がいい、低いほうがいい?」 「んー、俺より若干低いくらいが理想かな。」 「そ、そうか。」 取調べしているのにお前は心なしかうれしそうだな。 「服装はどんなのが好きかな。たとえばスカートとパンツスタイルなら。」 「スカート。」 「ミニ、ロング?」 「どっちかっつうとミニ。」 「そ、そうか。ふむ、なるほど…」 何に納得しているんだ。 「彼女には引っ張られたいほうかい。」 んー、性格的に俺が引っ張っていくのは無理があるかな。 「どっちかっつーと、引っ張られたいほうかな。」 「そうか、じゃあ、キミは聞き役のほうがいいわけだね?」 まぁ、そうなるかな。 「え、っとじゃあ、最後の質問なんだが…」 「あぁ。」 「そのー、キミはスレンダーな方か、こう、グラマラスな方かどちらが…」 あぁ、そういうことね。 「んー、そうだな…」 「でも、スポーティーな子が好きということは、必然的にどちらかというと―」 「やっぱ胸があるほうがいいな。そこは男として。」 ビシッ、なんかそんな音が聞こえた気がした。 「そ、そうか。そうなのかー、へぇー」 そうつぶやく佐々木は下のほうを向いている。 「お、おい、佐々木?」 「いや、別に何も気にしていないよ?うん、別に何も?」 口調が責めるようなんですけど。 「それはキョンの好みなんだから、僕には関係ないし。キョンが胸の大きい子が好きだからって僕に関係あるわけじゃないし…」 なんかすごく居心地がわるい。 なんか俺地雷を踏むようなことを言ったのか? 「そりゃ、中学生男子が成熟した大人の女性の魅力にはまるのもわからなくはないのだけれども…」 こうして俺は佐々木の言葉攻めを浴び続け、おもわず私が悪かったですと白状してしまいそうな、取調べの恐怖を体感したのであった。 『佐々木の取調べ』
https://w.atwiki.jp/ivdd/pages/464.html
佐々木希 出演 生年月日 1988/2/8 所属事務所 トップコート ステータス 活動中 画像・動画検索 Google/Yahoo!/Bing/NAVER/Baidu/YouTube 佐々木希「DOLLY」 監督 石田雄介 メーカー リバプール 発売日 2009/4/1 通販 Amazon.co.jp DMM 佐々木希「nozomi」 監督 石田雄介 メーカー リバプール 発売日 2008/9/25 通販 Amazon.co.jp DMM