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まだ、彼を突き飛ばした両手が震えている。 あるいは、まだ涙が止まらないせいかもしれなかった。 「……うぇっ……ひっぐ……ぐすっ」 何故彼らは死を選んだのか、チェダーには理解できない。 自分も、確定された死へ向かわなければいけない。ヴォルスの命令のために。 直接、死ねと命令されたわけではない。 ある意味生き延びることもできる命令内容なのは、ヴォルスの温情か。 いや……、とチェダーは何度も頭に浮かんだ希望を振り払う。 もしかしたら。そんな幻想を与えておいて、それを粉々に砕く。 それがヴォルスのやり方だ。 そして、チェダーへの罰だった。 命令の中身は、チェダーがどうがんばっても、いや、死ぬほどがんばって初めて完遂できるものだ。 実質「死ね」と命令されていることに変わりなかった。 「……死にたくない」 それでも、チェダーは泣き続けていた。泣きながら、何度も同じことを呟いた。 だがそれは、彼の今までの所業を考えると行きすぎたわがままとも言えた。 ことの発端となった大元は自分。その発端の原因も自分。 どこまでも自業自得で、逃げ場も言い訳もできない。 チェダーはそれを知ってしまった。 「……ヴィルにぃ……アカメ……」 それでもなお死にたくないと泣きじゃくり、自分から決別してしまったかつての仲間の名前を呼ぶチェダーを、彼女はなんと思うだろう。 「……クイーン…………ぱぱ……っ」 あのひと抱えもあるランタン、ソウルケースは、ヴォルスが持って行ってしまった。 今のチェダーにあるのは、このリダスタ家でヴィダスタが使っていた部屋と、自作の大瓶だけだ。 これに魔封じの図式を書き込むヒントをくれたディプスも、この作業に取り掛かるまでさんざん甘えたキチョウ達も、自分は最後に裏切らなければいけない。 「ワルス…………ハピィ…………にい、ちゃっ…………」 ランタンの代わりに抱えている大瓶には、今はなみなみと液体が詰まっている。こぼれないよう、密封もしてある。 「まま……っ」 今度はもう、誰を呼んでも来てくれない。
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Story 2-5 「神の手の代償」 ストーリー進行のみで手術なし。
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オスマンの話が続いた。 トリステイン魔法学院は国の要所だ。しかし、それにしては教師陣の認識は甘く、生徒達も自覚が足らない。務める衛兵達も昼間から欠伸をしている始末。 こうなった原因は、メイジの一点集中にある。 メイジは国力であると同時に、戦力だ。現代で言えば、軍事基地。戦車や歩兵が大量に闊歩している中心点だ。そのために、戦争でもなければこんな場所に攻撃を仕掛ける馬鹿など1人もいないだろうという、下らない妄想が蔓延しているのだ。 宿直の教員など、当たり前のように部屋で酒を飲んだ挙句、高鼾で寝床についている。 これでは、いざというときに学院の生徒達が危険に晒されることだろう。守られる対象である生徒達も外の世界を知らずに育つためか、血の気ばかりが多く、問題を起こすことが多い。 意識改革の必要性を、オスマンはホル・ホースに向けて説いていた。 「ついこの間も、生徒が決闘騒ぎなどを起こしおった。人死にが出なかっただけ良かったと思いたいところじゃが、いつまた同じ過ちを犯すか分からぬ」 嘆かわしい、と首を振るオスマンを眺め見つつ、、ホル・ホースは退屈そうに小指で耳掃除を始めた。爪に大きな垢が引っかかり、息と共に宙を舞った。 「で、恥を他国の騎士の目に晒して、大人しくさせようって話か?」 ホル・ホースの言葉に、オスマンは一度頷いたかと思うと、すぐに横に振り直した。 「最初はそう思ったんじゃが、それでは根本的な解決にはならんじゃろう。そこで、一つ頼まれてくれんかのう」 「話によるぜ。ヤバイ内容なら、すぐにここを出て行く」 オスマンが笑い声を上げた。 「なあに、君にとっては大した問題ではないじゃろう」 螺旋階段に二人分の足音が鳴り響く。 手を繋いだエルザとフーケだ。 エルザはニコニコと笑みを浮かべ、フーケは手を離したいと必死に願い続けていた。 何度か手を離そうと努力はしたのだ。しかし、さすがは吸血鬼と言うべきか。外見こそ幼いが、女性であるフーケよりもその手の力はいくらか強く、今も振り解くことが出来ないでいた。 そんなフーケに、エルザが視線を向けた。 「お姉ちゃん、わたしと手を繋ぐの、イヤ?」 エルザが首を傾けて、本当の子供のように不安そうな顔でフーケを見つめる。 ああ、イヤだね! と全力で否定したかったが、エルザに掴まれた手の骨が悲鳴を上げている。逆らうのは難しそうだった。 ガックリと肩を落として、泣く泣く首を横に振るフーケに、エルザが楽しそうに笑う。 そんな姿を、学院で教鞭をとる教師の1人、コルベールが見つけた。 頭頂部の寂しい中年男性であるこの細身の男は、明らかにロングビルに気がある様子で話しかけた。そして、短い挨拶を交わした後、エルザに視線を落として一言こう言った。 「お子さんですかな?」 昏倒したコルベールを置いてエルザとフーケが螺旋階段を下りていく。すると、次に学院では比較的若い部類に入る教師、ギトーが姿を現した。 彼もコルベールと同じように短い挨拶を交わして、エルザに視線を落として言った。 「可愛いお子さんですな」 首が変な方向に曲がった男を置いて更に階段を下りると、宿直室からふくよかな体格の女性教員のシュヴルーズが姿を現して、フーケと挨拶を交わす。 そして、やはり言った。 「あら、可愛いお嬢ちゃん。いつ生んだの?」 とりあえず階段に三人ほど転がったところで、フーケは叫んだ。 「あたしはそんなに子持ちに見えるのか!!」 まだ23なのにと嘆くフーケだが、世間一般では5才前後の子供が居てもおかしくない年齢であることは確かなので、エルザは何も言わなかった。 フーケの顔は、どこか気苦労を感じさせるものだ。盗賊家業に身を窶すというのは、それなりに苦労の多い人生を歩んできた証拠だろう。 可愛らしくニコニコと笑う少女と手を繋いで歩いていれば、その関係を親子ではないかと勘繰るのも仕方のないことだ。 でも、納得できるものではない。それに、エルザの笑顔は、吸血鬼である自分を恐れて微妙に身体を震わせているフーケを面白がってのことである。 そんな状況下に置かれているのだから、一回くらい叫んでも怒られはしないだろう。 「頑張れ、お姉ちゃん!」 「誰のせいだ!!」 心の篭っていない言葉をかけて笑うエルザに怒鳴りつけるように言い放って、フーケは肩を落とした。義理の妹が住んでいるであろう緑に囲まれた小さな村を思い起こして、望郷の念に苛まれる。 なんでこんな思いをしなければならないのだろう。金はそれなりにあるのだから、故郷に帰って細々と暮らそうか。 そんな思いに捕らわれ始めて、フーケは視線を窓に向けた。 日が落ちた夜の空は、満天の星空を湛えている。廊下を照らす松明の光が無粋に思えるほど美しく、じっと見つめていれば落ち込んだ気持ちも少し持ち直しそうだった。 お姉ちゃん、もうすぐ帰るからね。 遠い故郷に居る妹に、心の中で形の無い手紙を送る。 ストレスが溜まり過ぎて感傷的になっているフーケだった。 だが、それもすぐに邪魔が入る。 爆音だ。それも、かなり近い。 「な、なに!?なによ!!」 戸惑うエルザに構わず、フーケが窓から身を乗り出して中庭に目を向ける。 遠目にピンク色の髪の少女と赤い髪の少女が見える。片方は笑い、もう片方は何かを見つめて呆然としている。 突然、窓の横から叫び声が聞こえた。 「殺す気か!」 少年の声にフーケが視線を向けると、ロープに縛られた奇妙な格好の人物が目に留まる。 最近噂になっている、ギーシュという生徒と決闘騒ぎを起こした少年だと、フーケはすぐに気が付いた。特徴的な黒い髪と主人であるミス・ヴァリエールとの掛け合いは、忘れたくても忘れられない強い印象がある。 赤い髪の少女が、杖から炎を生み出して、少年を支えているロープにぶつけた。 ロープが焼き切られて、少年の姿が地面に吸い込まれていく。だが、誰かが浮遊の魔法を使ったのか、その身体は地面に激突することなく、ゆっくりと着地した。 赤い髪の少女の笑い声に続いて、ピンク色の髪の少女が蹲って草むしりを始めるのが見える。 「こんな時間に子供が遊んでるの?って、壁がボロボロじゃない」 フーケと同じように窓から身体を乗り出したエルザが、本塔の壁を見て呆れるように呟いた。 壁面に走る大きな亀裂は、もう少し力を加えれば、そのまま崩れてしまいそうなくらいに深く刻まれている。 フーケが口元に笑みを浮かべ、慌てた様子でエルザに詰め寄った。 「杖だ!あたしの杖を返しな!チャンスが来たんだ!あのクソ頑丈な宝物庫の壁が壊れそうなんだよ!!今を逃したら、次は何時になるか分からないじゃないか!」 焦るフーケはエルザの了解も取らず、身体を覆っている布の中に手を突っ込んであちこちを撫で回した。 「ちょっと、勝手に人の身体を……あ、そこは!こら!止めなさいって!杖なんてどこを探してもないわよ!」 「え、ない?ないの!?じゃあ、どこにあるって言うんだい!」 荒い息をつくエルザに更に詰め寄ったフーケが声を荒げて周囲を見回す。当然、杖など転がっては居ない。転がっているのは、階段の辺りにある三人の教師の姿だけだ。 自分の服の中も探し始めたフーケだが、もちろん、そんなところにも杖は無い。 「あなたの杖を持ってるのは、お兄ちゃんよ。欲しいなら、取りに行かなきゃ」 気楽に言うエルザだが、実際にはそんな簡単なことではない。 エルザを部屋に案内する途中で杖を取りに戻るなど、少々不自然と言えなくも無い。それに加えて、なぜホル・ホースがフーケの杖を持っているのかという話も出てきてしまう。 疑われるわけにはいかないフーケが、このタイミングで学院長室に戻るという選択肢は限りなくゼロに近かった。 頭を抱えるフーケにエルザが哀れみの視線を向けたとき、へらへらと軽薄な笑みを浮かべたホル・ホースが螺旋階段を下りてくるのが見えた。 転がっている教師達を見て大袈裟に驚いては、恐る恐るつま先でつつく。ピクリとも動かないのを確認して、ほっと胸を撫で下ろし、フーケとエルザに視線を合わせた。 「よう。まだ部屋に行ってなかったのか?」 呑気に声をかけるホル・ホースに、フーケが飛び掛かった。 「杖を返しな!今すぐ!!」 恐るべき勢いと形相に悲鳴を上げそうになるのを抑えて、ホル・ホースはベルトに挟んだ杖を大人しく差し出した。 あっさり戻ってきた杖を手に握って自分のものであることを確認したフーケは、そのまま二人を置いて何処かへ走って消えていった。 「なんだあ、ありゃ」 「さあ。よく分からないけど、お仕事みたいよ?チャンスが来たとか何とか」 顔を見合わせるホル・ホースとエルザが、揃って首を傾げる。 フーケの様子から考えると、かなり時間に追われている状況のようだった。 その原因の一端が外の状況にあるのだろうかと、エルザが視線を窓に向けると、先程のピンク髪の少女と赤い髪の少女が言い合いをしている現場が見えた。 会話の内容までは聞こえてこないが、ピンク髪の少女は赤髪の少女にからかわれて怒りを露にしているらしい。 「なにか見えるのか?」 ホル・ホースがエルザの視線を追って外の様子を見る。それとほぼ同時に、小さな地震が二人を襲った。 天井から落ちる砂埃が床に転がる教師達の身体に降りかかり、壁が歪な音を立てる。 「何が起きてやがる!」 ホル・ホースが状況を把握しようと叫びながら辺りに視線を走らせたとき、強い衝撃が本塔を揺らした。足が一瞬、床から離れた。 窓の向こうにある巨大な土人形の姿に気づいたのは、エルザだった。 「ちょっと、なによアレ!」 その声にホル・ホースも視線を向けて驚愕に口を大きく開いた。 学院を覆う城壁よりも大きい、ビルのような大きさのゴーレムだ。それが、本塔の壁を殴りつけている。 一撃、二撃と巨大な拳をぶつけるたびに、ホル・ホースとエルザの身体が宙に浮く。床に転がっている教師陣は身を守る術がないために床に何度も頭を打ち付けていた。 「お兄ちゃん、ゴーレムの肩を見て!フーケが居るわ!」 「なにィ!?」 エルザの声にホル・ホースがゴーレムの肩に視線を向けた、 確かに、背格好の良く似た人物が立っている。しかも、特徴的な長い緑色の髪まで見えていた。見る人が見れば、ロングビルとフーケが同一人物だと分かってしまいそうだ。姿を隠す気があるのだろうか。 「どうする?捕まえる?」 衝撃で宙に浮くことに慣れてきたのか、エルザが余裕のある表情でホル・ホースの顔を見上げる。 それを手で待つように制して、ホル・ホースは顎に手を当てた。 学院長の話を思い出し、現状に照らし合わせていく。 規則的に並べられたパズルのピースが、一つずつ嵌まっていく感覚がした。 「よし、付いて来いエルザ。小遣い稼ぎをするぜ!」 ホル・ホースが、ヒヒと楽しげに笑った。 暗い森の中を1頭の馬が走る。 伸びた枝が騎手の身体を打ち、葉が視界を隠すが、それでも目的地を見失うことなく騎手は馬を走らせ続けていた。 大きな箱を抱えながらの馬捌きは少々ぎこちないものとなっているが、馬は背に乗る主の意思に従って森の奥へ奥へと駆け抜ける。 やがて開けた場所に出ると、騎手は手綱を引いて馬の足を止めた。 力加減を誤ったのか、馬が嘶き、前足を高く上げて倒れそうになる。 背中の上でバランスを取って落馬を防ぎ、馬の首筋を撫でて落ち着かせると、騎手は軽い動きで馬の背を下りて箱を地面に下ろした。 背の低い草が絨毯となって箱を優しく抱き止める。箱はそれほど重くないのか、草を完全に押し潰す事はなかった。 懐から取り出した短い木の棒をふるって小声で呪文を唱えると、口を閉ざしていた箱が音を立てて開く。中にはくすんだ茶色の筒が、綿をタップリと詰めた赤い絹の台座に乗せられていた。 ハルケギニアでは見られない不思議な材質の金属で作られたその筒こそ、使用者に強大な力を与えるといわれる、破壊の杖だった。 全身を覆うローブのフードを取ったフーケが、それを手にとって月明かりに照らした。 金属の光沢に見慣れない模様が刻まれている。インクに似ているが、黒くは無い。見たことない染料で文字が書かれているようだった。 見た目よりもずっと軽いが、片手で持つには少し重い。しかし、メイジが扱うための杖だというのなら、片手で使わざるを得ないだろう。 とにかく、物は試しだ。 フーケは破壊の杖を右手に握り、傍にあった枯れ木に向けて“発火”の魔法を使用した。 「……?」 確かめるように、もう一度。呪文と共に破壊の杖を振る。 しかし、何も起きなかった。 「……マジックアイテムの類じゃないのかい」 破壊の杖を傍らに置いて、フーケは自分の杖を取り出した。 短い詠唱によって杖からキラキラと光る粒が破壊の杖に降りかかる。 ディテスト・マジックという、魔法の力を探知する魔法だ。 破壊の杖にかけられた光の粉が、地面に溶け込むように消えていく。なにも反応は得られなかった。 「ということは、別に使い方があるってことだね」 ぐるぐると回しながら破壊の杖の造りを観察し、それっぽい部分を適当に触る。 すると、ポロリと何かが外れた。 それに気づくことなく、フーケは杖を触り続ける。 リアカバーが引き出され、チューブがスライドし、安全装置が外れた。 そこでフーケも気づく。何かがおかしい、と。 「壊れちまった、とかじゃないよねえ」 最初の外見から多少変形している破壊の杖に、首を傾げる。 使い方が分からない場合は説明を誰かに聞かずに自分で弄くってみるタイプの人間であるフーケは、それを使い方が分かる寸前の兆候だと捉えた。 「もうちょっとで、なにかが分かりそうな気が……」 筒の中を覗き込み、筒の上部にあるトリガーに手がかかる。 森の茂みが揺れた。 「誰だ!!」 重い破裂音が響いて、何かが茂みの向こうに飛んでいく。 あまりに早くてそれがなんなのか分からなかったフーケだが、次の瞬間、森の中に起きた惨事に破壊の杖の力が発揮されたことを知った。 爆音。そして、吹き上がる炎。生み出された爆風がフーケの体を打ちつけ、火の粉を全身に浴びせかけた。 一瞬で森が炎に包まれるのを見て、破壊の杖の力をフーケは思い知る。 「す、凄いじゃないかい!なんで動いたか知らないけど、これなら確かに破壊の杖って名前も頷けるねえ」 もう二度と弾を吐き出すことの無いM72LAWという名前のロケットランチャー型魔法の杖を抱いて、フーケはその場で飛び上がるほどに喜んだ。 苦労の甲斐があるというものだ。これなら、間違いなく高値で売れるだろう。ムカつく貴族のガキやセクハラジジイともお別れだ。いや、いっそのこと、コレを武器にして貴族共を脅すのも悪くない。 そんなことを思って破壊の杖を箱に戻そうとしたフーケは、茂みの中から這いずる様に現れた人物を見つけて呆れたように声をかけた。 「アンタ、そんなところでなにやってんだい」 「て、てめえぇえぇ……」 匍匐前進で姿を現したのはホル・ホースだった。顔中に汗がびっしりと浮かび、心なしか青褪めている。片腕に抱かれて目を回しているのはエルザらしい。 強い怒りの秘められた目で睨みつけてくるホル・ホースと徐々に火の勢いが増している森を交互に見て、フーケはなぜそんな目で見られているかという理由に気が付いた。 「ああ、さっき茂みに居たのはアンタだったのかい」 しれっと言い捨てるフーケに、ホル・ホースのこめかみに青筋が浮いた。 「軽く言ってるんじゃねえ!こっちは死ぬかと思ったんだぞ!!」 ロケットランチャーの弾頭が頭上数十センチを通過する恐怖。そして、背中から遅い来る爆風。 フーケの行動があまりにも自然すぎて、スタンドを発動させる暇も無かった。発動させたところでどうにかなる問題でもないのだが。 「おい、エルザ!起きろ!寝たら死ぬぞ!いや、死なねえか……とにかく起きろ!」 体中の力が抜けて頭をぐるぐる回しているエルザの頬を叩いて声をかける。頬を何度か叩かれた後、耳元での呼びかけに何とか意識を取り戻したのか、エルザがまだ頭をふらふらとさせながら呟く。 「耳が、きーんてするぅ。頭が痛いぃ」 「我慢しろ。というか、引っ付くなエロガキ」 ホル・ホースの首に手を回して頬を擦り付けてくるエルザの頭に手刀を落として強制的に目を覚まさせる。エルザが小さく悲鳴を上げた。 涙目で頭を押させる幼女を置いてホル・ホースは立ち上がり、背後に広がる火の海に目を向ける。 さっきまで隠れていた茂みが火に包まれ、焼けて倒れた木に押し潰されるのが見えた。 「ロケットランチャーってやつは、爆風が強すぎて火がつき難いって話をどこかで聞いた気がするんだが、気のせいだったか?」 森の燃焼状態は悪化の一途を辿っている。火の勢いで夜の草原が昼のように明るく見えるほどだ。これでは学院に戻ることもままならないだろう。 「ぽけっとらんち?なんだい、それ」 森が燃えることは特に気にしていないのか、箱の中に破壊の杖をしまったフーケが馬の背中に箱を括りつけながら尋ねる。 「ポケットランチじゃねえ、ロケットランチャーだ。お前達が破壊の杖って呼んでるやつのことだよ。戦車やら建物ごと敵を打ち抜くために作られた、イカれた兵器だな」 「なんだい、知ってるなら早く教えてくれればいいじゃないさ」 そしたら馬鹿みたいに弄くる必要も無かったのに。と呟いて、フーケは馬に跨った。 破壊の杖が本物であることが確かめられた以上、学院の近くに長居する必要も無い。それに、居場所を知らせるかのように炎が上がっているのだ。追撃が来る前にこの場所を離れたい。 逸る気持ちにフーケが馬の手綱に手を伸ばす。 「まあ、教える前に使っちまったからな。いまさら、ってやつだ」 少し熱くなってきたのを感じて、ホル・ホースが服の胸元に指を引っ掛けて自分の帽子 で風を送った。 炎の勢いを見るに、この分では森全体を焼くまで勢いが収まることは無いだろう。空は晴れていて雨が降る様子も無い。消火される可能性も低そうだった。 「それより、フーケの姐さんよ」 手綱を振って馬を走らせようとしたフーケに、ホル・ホースが声をかける。 「ガラクタになったロケットランチャーなんて、売れるのかい?」 「……なんだって?」 聞き流せない発言だ。 必死になって手に入れた破壊の杖が、ガラクタ?何を言っているのか。ガラクタどころか、こうして森を焼いてしまうほどの力を見せてくれたじゃないか。 徐々に頭に血が上っていくのを感じて、フーケは馬に括り付けた箱を開いて中身を取り出した。 チューブをスライドさせて、ホル・ホースに向ける。 正確な使い方はまだわからないが、なんとなく上にある出っ張りを押せば動きそうな気がした。 「コレのどこがガラクタだって言うのさ。あんまり下らないことを言うと、あんたにもこいつの力を味わわせてやるよ」 フーケの言葉にホル・ホースが肩を竦めて笑う。 「無駄だぜ。そいつは単発式で、使い捨てなんだよ。分かるか?使い捨て。一回使ったらもう使えないってことだぜ。OK?」 ホル・ホースの舐めきった態度に、フーケは破壊の杖の上についた変な出っ張りを押し込んでみる。 反応が無い。 使い方が悪かったのかもしれないと弄り始めるフーケを見て、ホル・ホースは帽子を被り直して溜息をついた。 「だから何度も言ってるだろ。もう、使えねえんだよ。いい加減諦めろって」 少し哀れみの篭った声に、フーケが視線を鋭くした。 「う、煩いよ!二度と使えないかどうかなんて、わかんないじゃないか!認めないよ!それを認めたら、セクハラに耐え続けてきたあたしの数ヶ月が否定されるじゃないか!」 じわりと目元に涙を浮かべて必死に破壊の杖を弄り回す妙齢の美女の姿に、なにかがツボに入って、ホル・ホースが噴出して盛大に笑い始めた。頭を抑えていたエルザも哀れみの視線を向けている。 森を焼き尽くさんばかりに燃え盛っていた炎も、情けない姿を晒す土くれのフーケを嘲笑うかのように、少しずつ勢いを弱めていた。 「笑うんじゃないよ!このっ!このっ!!」 「痛てっ!悪かった、悪かったって!笑ったのは謝るからよ!ヒヒ」 「まだ笑ってるじゃないか!!」 鼻を啜りながらガラクタと化した破壊の杖で殴りつけてくるフーケに、ホル・ホースは謝りながらも笑い声を溢す。フーケの目元が真っ赤になって、今にも泣き出しそうな状態になっていた。 そんな二人を呆れてみていたエルザが、ふと、身体に感じる寒気に身体を震わせた。 冷たい氷の結晶が、空に散っている。 いつの間にか森を焼いていた炎が消えていて、焼け焦げた樹木が姿を晒している。 背筋を走る寒気に、エルザが星と月の明かりだけになった夜空を見上げると、そこには今一番見たくない影が星の瞬きを隠すように映っていた。 「お、おお、お兄ちゃん。あれ」 ホル・ホースの袖を引っ張って、空を指差す。 本格的に泣き始めたフーケを慰めようとしていたホル・ホースが顔を空に向けると、なにかが大きく翼を広げているのが見える。 「しゃ、シャルロットの嬢ちゃん……!?」 ゆっくりと翼を広げて飛ぶシルフィードの背中に立ち、こちらを冷たい目で見下ろしているシャルロットの姿が、森にまだ少しだけ残っていた炎に照らされて浮かび上がった。 案の定、まだ怒っていらっしゃられた。 シルフィードが空を旋回して草原の中央に降り立つと、その背中からシャルロットのほかにピンク色の髪の女生徒や赤い髪の女生徒、それに黒髪の少年も姿を現した。 「つ、土くれのフーケ!大人しく宝物庫から奪ったものを渡して、投降しな……さい?」 ピンク色の髪の少女が杖を構えながら震える声で訴えかけてくるが、言葉が尻すぼみになった。同じように杖を構えていた赤い髪の少女も、首を傾げる。 「っていうか、ミス・ロングビルじゃありませんか。先行してフーケと戦われていたのですか?というか、なんで泣いてるのよ」 「俺が知るはず無いだろ」 赤い髪の少女と黒髪の少年が揃って頭上にクエスチョンマークを浮かべている横で、ピンク色の髪の少女が構えた杖を少し横に逸らした。 「えっと、そ、そっちは誰よ。フーケの仲間?あ、でも小さい子供もいるし、通りすがりの平民かしら?なんでミス・ロングビルと一緒にいるの?」 この少女もやはり頭上にクエスチョンマークを浮かべた。 そんな少年少女を置いて、シャルロットが冷や汗をたっぷりと流しているホル・ホースとエルザに歩み寄った。 鼻を啜り、次々と零れる涙を袖で拭っているフーケを横目にチラリと見て、小さく息を吐く。そして、ホル・ホースを冷たく見上げると、杖を振り上げた。 鈍い音が二回、夜空に響いた。 「痛ってえ!地味に痛てえぞ、それ!なんだ!?中に何が入ってやがる!何か硬いものを仕込んでるだろ!」 「もうちょっと手加減しなさいよ!頭の骨が変形したらどうするのよ!!」 ホル・ホースとエルザが目を水っぽくさせて抗議の声を上げる。 それを無視して、シャルロットはもう一度杖を振り上げた。 鈍い音が更に二回、夜空に響く。見ていたピンク髪の少女や黒髪の少年が驚き、赤い髪の少女は生暖かい視線を向けていた。 「OK。嬢ちゃんの怒りは良く理解した」 「うん。そうね。もう叩かれるのは勘弁だわ」 頭頂部を襲う鈍痛に耐えつつ、二人は姿勢を正した。シャルロットを正面にして腰のベルトに挟んであった今日買ってばかりの品を差し出す。 イーヴァルディの勇者だ。幸いにして、ロケットランチャーの爆風で傷つくようなことは無かったらしい。 「今回の件は俺たちが全面的に悪かった。反省してる。だからよ」 「お詫びというか、代わりというか……わたし達の気持ちってことで、受け取ってもらえないかな」 本当に済まなそうな顔で差し出された本を前に、シャルロットはそっと手を伸ばした。 厚い表紙と書かれた文字は寸分の違いもなく、思い出の品と同じイーヴァルディの勇者の本だった。ガリアではもう、どこへ行っても手に入らない、貴重なものだ。 二度と目にすることは無い。そう諦めていたシャルロットは、愛おしそうに表紙を掌で撫でる。子供騙しとも言える勇者の姿絵が笑顔を向けていた。 「許して、くれるか?」 シャルロットの顔を覗きこむようにして言うホル・ホースに、頷いて返す。 「よおーし、コレで逃げ隠れしなくて済むぜ!」 「調子に乗るな」 拳を振り上げて喜びを表現するホル・ホースの頭に節くれ立った杖が振り下ろされた。 先程よりも力が篭められた一撃に、頭を抑えて草原を転がるホル・ホースを、エルザが心配そうに見つめる。 「タバサ。この二人、あなたの知り合い?」 シャルロットの隣に立った赤い髪の少女が、地面を転がっているホル・ホースとエルザを見て尋ねた。 「そう」 小さく言って、声と同じくらい小さく頷いた。 ふっと笑みを浮かべた赤い髪の少女がシャルロットの頭を抱いて、その豊満な胸に包み込む。 「最近あなたが明るくなったのは、この二人のお陰みたいね」 「かもしれない」 赤い髪の少女のなすままにして、シャルロットはもう一度小さく頷いた。 「だーかーら!フーケはどこよ!!」 「俺に聞くなって!先にここに居たロングビルって人とか、そっちの変なオッサンに聞けばいいだろ!!」 「テメエ、今の聞こえたぞコラ!誰がオッサンだ!」 ピンク髪の少女と黒髪の少年の会話を聞き取ったホル・ホースが頭の痛みに耐えながら起き上がり、シルフィードの足元に居る二人にのっしのっしと歩み寄る。 少年の襟首を掴み上げて睨みつけ、帽子の先端をワザと目に当たるように嫌がらせをするホル・ホースにピンク髪の少女が抗議の声を上げていた。 フーケがいつの間にか泣き止み、賑やかになっている周囲に目を向けて鼻を啜る。その横に並んだエルザが、小さく微笑んで話しかけた。 「ま、逃げ場は無いみたいだし。大人しく学院に戻りましょう?都合良く、この子達もあなたがフーケだってことには気付いてないみたいだし」 その言葉に深く溜息をついたフーケは、肩を落として力なく笑った。 「もう、好きにしなよ」 学院に戻ったホル・ホースとエルザは、フーケやシャルロットたちと共に学院長室で事の仔細を報告していた。 事件の発端は、ルイズというピンク髪の少女の使い魔、才人という少年へのプレゼントに関して喧嘩になったことから始まる。 主人であるルイズの買った剣か、才人に粉をかけていたキュルケという赤い髪の少女が買った剣か。どちらを少年の持ち物にするかで賭けを行い、本塔の壁に少年をロープで吊るして、魔法を使用して先にロープを切れるかどうかで勝負をしたのだ。 ルイズは優等生だが、魔法の一点に関しては落ち零れだった。どんな魔法を使っても爆発させる。そのことから、魔法成功率ゼロという意味で、”ゼロのルイズ”とからかわれていた。 その勝負においてもやはり魔法が失敗し、見当違いの場所を爆発させて宝物庫の壁を破損させてしまったという。 後は単純だ。近くに潜んでいた土くれのフーケが奇襲をかけ、宝物庫の壁を巨大ゴーレムで破壊して破壊の杖を盗んでいった。一度は撃退しようとしたルイズたちはゴーレムに足止めされてフーケを見失い、シャルロットの使い魔のシルフィードに乗って周辺を捜索していたら、火事を見つけて駆けつけたということだ。 そして、既に破壊の杖を奪還したホル・ホースたちと合流を果たした。 森の火事はフーケとの戦いの余波で、ロングビルが泣いていたのは、戦いが終わって緊張の糸が切れたからという理由にしてある。 話を聞き終えたオスマンは、大きく頷いてミス・ロングビルを褒めると同時に、フーケに対して勇敢に立ち向かった少女達に賞賛の言葉を送った。 「うむ。良くやってくれた。フーケを取り逃したのは残念じゃが、破壊の杖はこうして学院に戻り、1人の犠牲者も出すことなく事件を終えることが出来た」 ちらり、とオスマンは肩身を狭くしている三人の教師に視線を向けた。 「事情はなんであれ、勇敢に立ち向かう者、臆病に引っ込んでいる者、そもそも騒動に気付かなかった馬鹿者など、様々じゃ。誰が悪いなどとは問わぬ。今回の一件を胸に刻んで今後の糧とし、二度と賊などに遅れを取らぬよう精進してもらいたいと思う」 意図的に馬鹿という言葉を強調したために、教師達が更に小さくなった。 教師陣は今回、これといって落ち度は無いのだが、あれだけの騒動の近くに居ながら何も出来なかったことに変わりはない。暫くの間は、今回の件を話題に出されて心苦しい思いをすることになるだろう。 「ミス・ロングビルにはシュヴァリエの爵位申請を宮廷に出そうかと思ったが、本人に拒否されてしまったからのう。まあ、代わりに、次回のボーナスを弾むこととしよう。もちろん、フーケ撃退の為に尽力してくれた皆にもなにか褒賞を用意したいと思う。そして」 視線がホル・ホースとエルザに向けられた。 「ガリアの騎士殿には、宮廷を介してガリアに謝礼を送り……」 「待った」 オスマンの言葉を止めて、ホル・ホースが前に出た。 いつもの軽薄な笑みを浮かべてオスマンの正面に立ち、指を一本突きつけて言う。 「謝礼なんてもんはいらねえ。代わりに一つ、頼みを聞いてもらえねえか」 ヒヒと笑うホル・ホースに、オスマンは少しだけ不信そうに目を細めた。 「無茶な頼みは聞けんぞい」 「安心しろよ。簡単な頼みだ。なんなら、オレの頼みが実行できるかどうかをこの場に居る全員に判断してもらってもいいぜ。満場一致じゃなけりゃ、礼も頼みも無しでかまわねえよ」 ぐるりと部屋の中を見渡して、部屋の中にいる全員に聞こえるように声を大きくする。 それだけ自信があるくらい、単純明快な頼み事のようだ。 それならば、とオスマンは了承して話を促した。 「言ってみなさい」 「OK。耳の穴を、よぉーくかっぽじって聞きやがれ」 部屋に居る全員の視線を集めて、ホル・ホースは帽子に手をかけて厭らしい笑みを浮かべた。 「オレの頼みは、テメエがセクハラを止めることだ!」 夜の学院長室に雷鳴が鳴り響いた。いや、正確にはオスマンの頭の中にだけだ。 顎を大きく開いて死に掛けの老人のように全身を小刻みに震わせたオスマンを見て、ホル・ホースが腹を抱えて笑い始める。 たしかに、不可能な頼みではないし、満場一致の同意も得られるだろう。事実、生徒達やロングビルだけでなく、さっきまで小さくなっていた教師達も首を縦に振ってオスマンのセクハラの酷さを語り始めている。 歴代の学院長秘書はオスマンのセクハラに耐え切れなくなって辞めているし、生徒達にも被害者が何人も出ている。そろそろこのエロジジイに引導を渡してもいい頃だと、被害者の筆頭であるロングビルが声高に宣言していた。 「や、やめてよー!お願いじゃからー!こんな年寄りを苛めて何が楽しいんじゃー!」 涙と鼻水を垂れ流して懇願するオスマンだが、彼に視線を合わせる人物は部屋の中には居なかった。たった一人を除いては。 「人望ねえな、ジジイ!普段の行いが悪いからだぜ!!ヒ、ヒッヒヒヒ!」 「お、お主、なんという……悪魔じゃ!悪魔がおるー!!始祖ブリミルよ、敬虔なる信者であるこのワシを助けてくだされー!!」 背後にある窓の向こうに手を伸ばすオスマンを見て、ホル・ホースは笑い声を一層大きくした。 そうしている間にも、反対意見が一つも出ない話し合いは続き、やがてオスマンの口から壊れたラジオのような雑音が垂れ流される。泣き言なのか、命乞いなのか。あるいは両方かもしれない。オスマンにとって、セクハラは人生そのものだったのだ。 10分にも満たない話し合いが終わり、学院長室にいる全員の意見を纏めたロングビルが、オスマンに総意を伝えた。 「オールド・オスマン学院長。本日、現時刻をもって、アナタの女性に対するセクハラを禁止させていただきます。というか、今までやっていた間に捕まらなかっただけ、ありがたいと思ってください」 オスマンの頭が机の上に盛大にぶつかり、口から泡が吹き出した。 「ま、当然の結果だな。オレをこき使おうとした罰だ。身をもって思い知りやがれ」 ピクリとも動かなくなったオスマンを楽しげに見て、ホル・ホースは帽子を深く被った。 「で、オスマンのジジイはあんたに何を頼んだのさ?」 騒動の翌朝。学院の前に集まっていたホル・ホースとエルザの元に、フーケが現れた。 メガネをかけたままの優しげなロングビルの容貌をそのままに、口だけ粗暴に話す姿には違和感を感じる。しかし、学院内では他の生徒の目に止まる可能性がある以上、外見を繕うのを止めるわけにもいかないようだ。 朝霧に包まれる学院内は、やっと使用人たちが起き始めた頃。人の気配は少なく、ガリアに送ってくれるはずのシャルロットも姿が見えない。生活習慣を変えたために、夜眠る吸血鬼のエルザは、ホル・ホースの背中でこくりこくりと舟を漕いでいた。 最も嫌っていたセクハラが無くなった事で割のいい秘書業を続けることになったフーケがここに居るのは、早朝にホル・ホースが学院を発つと聞いて、一言別れの挨拶をするつもりだったからだ。 とはいえ、一言のつもりが予定した時間を過ぎても送ってくれるはずの人物が来ないので、今は仕方なく世間話をしていたりするのだが。 下らない笑い話を終えたところで、唐突に投げかけられた質問は、ホル・ホースに苦笑いを浮かべさせるものだった。 フーケにその話をした覚えは無い。だが、昨日のホル・ホースとオスマンの会話などから察したのだろう。何か妙な取引をしている、と。 「んー、簡潔に言えば、あんたを始末しろってことだな」 その言葉に、フーケの頬が引き攣った。 オスマンはロングビルの正体だけでなく、ホル・ホースの前職も良く知っていた。 平民上がりのガリアの騎士は、十分な報酬を払えば、国王すら暗殺対象にする。そういう噂が、裏業界には流れているらしい。 オスマンは多額の報酬を支払う代わりに、ホル・ホースに学院内に潜入している盗賊の暗殺を依頼した。ただし、最低一度は犯行に至らせること。それが条件だ。 学院の人間達に危機感を覚えさせるいい機会だと考えていたのだろう。 しかし、ホル・ホースは断った。面倒臭いにも程があるし、女を手にかけるなんて御免だからだ。 それでも金は欲しい。成功報酬に提示された金額は、2000エキュー。信条を理由に断るのにはあまりにも惜しかった。 そして、交渉したのだ。盗まれたものは取り返す。ただし、盗賊は放置しろ。と。 オスマンは高く笑って了承した。 そして、今回の事件。発端こそ予定外だが、流れはそのものは、ほぼ想定通りだ。 つまるところ、今回の事件は予定調和だったということである。 それを聞いて、フーケのこめかみに青筋が浮かぶ。 「てことは、なにかい。あたしはあんたらの掌で踊ってたってのかい」 フーケが杖の先端をホル・ホースの頬に押し付けてぐりぐりと押し込んだ。 「いや、まさかこんなに早く行動するとは思ってなかったぜ。その辺はオスマンのジジイ も驚いてたはずだ」 「だとしても、あたしが遊ばれてたことに変わりはないじゃないか!」 杖に入れる力を強めて、フーケがちょっと涙目になって怒った。 セクハラに道化。自負していた一流の盗賊としてのプライドがズタズタだ。 情けないにも程がある。 「いや、オレもそう思ったからよ。何か役得がねえと可哀相かなって。だから報酬断ってまで、オスマンのジジイにセクハラ禁止令を出したんだぜ」 「同情するんじゃないよ!って、そこの吸血鬼!可哀相な人を見るような目であたしを見るな!!」 いつの間にか目を覚ましていたエルザが、目を細めてフーケを見つめていた。それに震える声で怒鳴りつけて、フーケはおもむろに蹲る。 ぶちぶちと草むしりを始めた。 「クソッ!クソッ!なんなんだい!あたしは土くれのフーケだよ!貴族共が震え上がる大盗賊じゃなかったのかい!それなのに、それなのに……」 誰に言うでもない独り言の合間に鼻水を啜る音が聞こえてくる。 ホル・ホースは帽子を深く被ってヒヒと笑った。 「だから笑うんじゃないよ!アンタたちに会ってからというもの、碌な事がありゃしないんだから!この疫病神!死ね!死ね!」 「痛てえっ!いや、待て!悪かったよ!っていうか、何だこのやり取り!何回目だ!」 「抵抗するんじゃないよ!大人しく殴られな!」 拾い上げた石を手に殴りかかるフーケとそれを抑えようとするホル・ホース。背中のエルザは再び寝息を立て始め、朝日は少しずつ高く昇っていく。 鳥の鳴き声に混じって上がる悲鳴を聞き届ける者はなく、世界は新しい一日を迎えようとしていた。 学院に人の気配が増え始め、霧が晴れた頃にやってきたシャルロットが見たのは、血塗れの石を手に息を荒げるロングビルと、血溜まりに沈むホル・ホース、そして、流れ出る血をもったいないと舐め取るエルザの姿だった。 ホル・ホースが実際に学院を発ったのは、それから一週間後のことである。
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太陽が少しずつ赤く染まり始めた時間。 窓を完全に閉め切り、ランプの明かりで照らされた部屋のベッドで、ホル・ホースとエルザは一通の手紙を眺め見ていた。 ハルケギニアに明確な住所は存在しない。手紙の送り方は、実際に届け先を知っている人間に任せるか、この世界特有の高い知能を持つ調教された鳥に預けるかだろう。 ホル・ホースたちが見ている手紙は、どうやら前者のようである。 小さな箱に数枚の羊皮紙と金貨の入った袋が添えられている。重さを考えると、鳥にはとても運べそうに無い。 手紙は、遠い故郷に居る妹と養っている子供達に宛てた物らしい。 内容は手紙を受け取った人間への気遣いを感じさせるものだった。何度も相手の状況を知ろうとする言葉が綴られて、文の終わりには相談事があるならいつでも言うようにと書かれている。 「そんなに心配なら、一緒に居ればいいじゃねえか」 まったく理解できない、といった顔でホル・ホースは手紙に文句を言った。 手紙などという面倒くさいものに縁の無いホル・ホースにとって、手紙を出すという行為自体が無意味にしか思えないのだ。 ホル・ホースの上に寝転がったエルザが、手紙から視線を外して苦笑する。 「それが出来ない理由があるんでしょ。察してあげなよ」 そう言って、隣のベッドに視線を移す。 白いシーツの上で、フーケがうんうん唸りながら眠っていた。 あまり夢見は良くないようである。 ここはトリステインはブルドンネ街の一角にある比較的小さな宿の一室だ。 二人部屋は朝食と夕食が付いて一泊1エキュー。高いか安いかは良く分からないが、先日借りたチクトンネ街のボロ宿は20スゥだったから、それなりに高いのかもしれない。 エルザの先住魔法でフーケを眠らせた二人は、フーケの持っていた金を借りて食事を済ませ、放置するのも可哀相だからと宿に運んだのだ。 もちろん、運んでいる間に寄り道をして、目的としていたイーヴァルディの勇者を購入したのは言うまでもない。 路銀は手に入った。しかし、今からでは学院に行くにも夜になってしまう。自分達のような部外者が学院に泊まるわけにも行かないだろうし、夜中の訪問などしたら余計にシャルロットの機嫌を損なう恐れがある。そのため、シャルロットに会うのは明日に繰り越して暇つぶしがてらフーケの私物を漁っていたのだ。 実に迷惑極まりない行動だった。 そして見つけた一通の手紙。 手紙の端に書かれた日付は今日を示していることから、“跳ね兎”亭へフーケが現れた理由は、この手紙を送るためだったようだ。 “跳ね兎”亭のような酒場を利用するのは、なにも傭兵ばかりではない。裏の人間の生活を支えるような雑用を請け負う人間も少なくない。そういった人間に、フーケはこの手紙を預ける予定だったのだろう。 まあ、そのツテもなくなってしまったようだが。 「しかし、こんな大金どうすんのかねえ」 ホル・ホースが手紙を横において、金貨の詰まった袋を手に取る。 中身は既に確認済みだ。エキュー金貨と新金貨が混ざっているが、合計でおよそ150エキューもの金が入っている。 故郷に何人子供が居るかは知らないが、十人前後なら、二ヶ月か三ヶ月は生活できる金額だ。節制を心がければ、半年持つかもしれない。 手紙を出す頻度は手紙の内容をから想像して、月に一度。もしも、手紙を出すたびにこの金額を送っているとしたら、相手は相当な金持ちになっていることだろう。 それ以外にも、フーケの財布の中には、かなりの額が納められていた。 貴族相手の盗みを生業にしているだけあって、その額は1000エキュー近い。まだどこかに隠し持っている可能性もあるが、それは本人に聞かなければ分からないだろう。 「盗みも毎回成功するってわけでもないでしょうに、随分と羽振りがいいわね」 エルザはホル・ホースから袋を受け取り、中を覗き込む。 金色の輝きが目に映った。 コレを稼ぐのに、一体どれだけの労力を割いたのか。フーケが自分の名前が知られていないことを憤るのも無理は無いかもしれない。 そう考えている間に、隣のベッドの動きが変化した。 「う、ううん?」 のそりと体を起こして、寝惚け眼で部屋の中を見回すフーケに、エルザが手を振る。 「こんな時間に言うのもなんだけど。おはよう、お姉ちゃん」 エルザの言葉で目が覚めたのか、フーケがベッドから飛び起きてホル・ホースとエルザを凝視した。 すぐに懐に手を伸ばして杖を探すが、見当たらない。 そんなフーケの様子を見て、エルザが意地の悪い笑みと共にホル・ホースの腰に手を伸ばして目的の物を手にした。 「お姉ちゃんの探し物は、コレ?」 ホル・ホースのベルトに挟まれていた杖を軽く振って、エルザが笑みを深める。 悔しげに歯を食い縛るフーケを見て、ホル・ホースはヒヒと笑った。 「フーケの姐さんよ。逆らわないほうが身のためだぜ。この嬢ちゃん、見た目に反して性格が捻じ曲がってるからな」 「あら、酷い言い草ね。わたしは誰かさんと違って、人の持ち物を漁ったりしないのに」 そう言って、エルザはホル・ホースを真似てヒヒと笑った。 ホル・ホースとエルザの寝るベッドの上に散乱する自分の持ち物を見て、フーケの表情が歪んだ。 有り金を全て奪われ、大切な家族に宛てた手紙まで持っていかれている。杖も無いとなると、逆らうのは不可能に近いだろう。 首を横に振って、憤りを残した息を吐く。 少しの深呼吸の後、フーケは自分の調子を無理矢理取り戻して鼻を鳴らした。 「まさか、嬢ちゃんが吸血鬼だったとはね。ということは、メイジ殺しは嬢ちゃんで、あんたは屍人鬼ってわけかい?」 フーケの視線がホル・ホースに向けられる。 相手の油断を誘うために偽装していたのか。そう言いたいらしい。 エルザが頬を膨らませて否定した。 「違うわよ。メイジ殺しは間違いなくお兄ちゃんだし、屍人鬼も別に居るわ」 ホル・ホースの首に腕を絡ませ、頬を摺り寄せる。幼い顔に、妖艶な色が混ざっていた。 そういう関係か。と勘繰るフーケに、それを察したホル・ホースがエルザの頭を乱暴に撫で付けて苦笑いを浮かべた。 「おいおいおいおい、勘違いするんじゃねえよ。オレ達の関係は、あくまでも仕事上の相棒だぜ。オレはロリコンでも無けりゃペドフィリアでもねえ」 「あら、それは残念ねえ」 ホル・ホースの手の感触を楽しみながらエルザが呟く。小さな手が、ホル・ホースの胸を服越しに抓った。 そんな二人の様子を見て、フーケが疑わしげに目を細める。 「確かに、吸血鬼とのコンビならメイジ相手にだって戦えるだろうさ。でもね、食う側と食われる側が協力関係を築くなんて、そうあっさり信じられると思ってんのかい」 食物連鎖は基本的に一方通行だ。意思疎通が図れたとしても、食う側が食われる側を襲わなくなるということは無い。話し合いで腹は膨らまないのだ。 随分と疑り深い姉ちゃんだ、と呟いて、ホル・ホースは自分の首を指差してエルザに声をかけた。 「吸っていいぞ。……ちょっとだけな」 その言葉にエルザの表情が輝く。 「わーい。いただきまーす」 嬉しそうな声を上げてホル・ホースの首筋に顔を埋め、まだ以前の噛み後が完治していない部分目掛けて歯をつき立てる。 ホル・ホースが痛みに顔を歪めるのも気にせず、エルザは舌の上に流れ込む暖かい血液をゆっくりと味わいながら飲み始めた。 首に回した手を時折組み替え、何かを求めるようにホル・ホースの顎の周りを小さな指先が這い回り、筋肉に覆われた胸板に柔らかい体を摺り寄せて熱い息を洩らす。 幼い少女の姿で扇情的に血を吸うエルザを見て、フーケが顔を赤らめた。 「どうだ、コレでわかったか?オレがもし屍人鬼なら、エルザは血を吸うことはできねえ筈だぜ。死人に血は流れねえからな」 ホル・ホースが確認するように尋ねると、フーケも首を縦に振って両手で顔を覆った。 啄ばむように肌を吸う音が何度も部屋に響く。少し水っぽく、ぴちゃ、ぴちゃ、と舐め取るように舌で唾液に濡れた肌を舐める音も、重ねて耳に届いた。 「って、エルザ!テメエ、なにやってやがる!」 「ふぇ?」 首筋に顔を埋めていたエルザが息を洩らして顔を上げた。 小さな口から伸びた舌でホル・ホースの首を舐めていたらしい。いつの間にか、エルザもホル・ホースも、服が乱れて半裸になっていた。 それに気が付いて慌てて服を直すホル・ホースを見たエルザが、つまらなさそうに舌打ちした。 「ちぇっ」 「なにが、ちぇっ、だ!?ふざけるなコラ!さっきも言ったが、オレはロリコンでもなければペドフィリアでもねえ!!お前の貧相な体に欲情したりはしねえんだよ!」 エルザの頬を両手で抓りあげて抗議するホル・ホースに、手を払ったエルザも抗議の声を返した。 「なによ。いいじゃない、ちょっとくらい。わたしにだって、性的欲求くらいあるんだからね。気に入った男の首筋に四六時中抱きついていて平気でいられるほど、わたしは不感症じゃないもの。当然の行動よ」 その発言に、ホル・ホースは全身から冷たい汗が浮き上がるのを感じた。 中身はどうあれ、外見は幼女だ。いろいろと問題はあるし、ホル・ホースにも少女を愛玩するような趣味はない。 抓られて赤くなった頬を両手で挟んだエルザは、ホル・ホースの上にちょこんと座って恥ずかしそうにに顔を逸らした。 「もう、わたしも我慢の限界だし。そろそろ新しい趣味に目覚めてもらういい機会だと思うの。都合良くベッドの上だし。襲っちゃおっかな、なんて。キャ、言っちゃった!」 告白するかのように身悶えしての発言に、ホル・ホースの顔が真っ青に染まる。 「な、なにが、きゃあ言っちゃった、だ!冗談じゃねえ!普段からそんなアブねえことを考えてやがったのか!バカかテメー!!もう、止めだ!二度とテメエなんて抱き上げねえからな!!」 腕に抱えるのは子供相手と思っての行為だったが、腕の中では幼女ながらにピンク色の妄想に耽っていたらしい。 よくよく考えてみれば、出会った日の夜も、この少女は色香のようなものを身につけていたし、その後も度々身を摺り寄せてきたことを思い出す。その時は外見に釣られて子供の甘えのようなものだと思ったが、その実、欲情していたらしい。 外見に見合わない早熟とも取れる行動だが、中身は30代だということを考えると、なんとなく納得できなくもないところが更に現実味を帯びさせた。 相棒関係、見直そうかな。 真剣な顔つきで考え始めるホル・ホースに、エルザが慌てて両手を振り、自分の言葉を否定した。 「じょ、冗談よ!そんな真剣に考えないで!こんな体でそんなこと、できるわけ無いじゃないの!それに、見た目よりも長く生きてるからって、こんな小さな体にそんな欲求が生まれるわけ無いでしょ?ちょっとした悪戯じゃないの。笑って許して。ね?」 性的欲求というものは、他の原始的な欲求と違い、ある程度身体が出来上がらなければ発生しない。普通に考えれば、吸血鬼という種族の中ではまだ子供も子供なエルザに、そんな感覚が生まれるわけがないのだが。 それでも疑わしげな視線を投げかけるホル・ホースに、エルザはこめかみに流れる冷や汗を感じつつ、可愛らしく笑って許しを請う。 「本当に、冗談だろうな?オレはこんなことが原因で牢に入りたくはねえぜ」 エルザの首が激しく縦に振られた。 まだ信じきれないのか、目に疑惑の念を篭めてエルザの頬に手を伸ばす。 ホル・ホースの指先に、上質の絹のような肌触りと今にも壊れてしまいそうなくらいの柔らかさが伝わった。強くもなく、弱くも無い弾力を感じつつ、桜色の薄い唇を人差し指で刺激するようになぞる。 ぱくり、とエルザが指を銜え、指先に舌を這わせた。 「やっぱりウソじゃねえか!」 エルザの口から指を引き抜いて叫び声を上げる。 「卑怯よ!人が我慢してるのに、誘うようなことするなんて!!」 引き抜かれた指を名残惜しそうに目で追ったエルザも声を上げた。 不信感を強め続けるホル・ホースと必死に食らいつくエルザの掛け合いを傍で見ていたフーケは、あまりの疎外感に深く溜息をついた。 完全に放置されているだけでなく、わけの分からない痴態にまで付き合わされる。これは一体、どんな拷問なのだろうか。 あたし、こんな二人に負けたの? 杖を突きつけた状態だったにも係わらず眠らされたのは、たとえ不意打ちだったとしても敗北以外の何者でもない。 情けなくて涙が出そうだった。 しかし、妙な痴話喧嘩に何時までも付き合ってはいられない。 フーケがワザとらしく大きな咳をすると、噛み付こうと掴み掛かるエルザとそれを阻止しようと手を伸ばしていたホル・ホースが、思い出したかのようにフーケに視線を向けた。 「あたしを、無視しないでもらえるかい」 ドスを利かせた声に、ホル・ホースとエルザがベッドから降りて姿勢を正した。 直立不動である。一応、少しは反省しているらしい。 「とにかく、杖と手紙を返してもらえないかい。あと、金も。半分はくれやるからさ。あたしは早く帰らないといけないんだよ」 手を出して急かすフーケに、ホル・ホースとエルザが顔を見合わせた。 どうしようか、というアイコンタクトだ。 ここで杖を返せばまた暴れられる可能性がある。金も返すいわれは無い。フーケは二人を殺そうとしたのだ。命を助けてやっただけでもありがたいと思ってもらわなければ。 手紙くらいは返してやるつもりだが、他は諦めてもらおうと頷きあう二人だったが、ふとフーケの言葉を思い返した。 「寝床はトリスタニアにあるんだろう?ガキじゃあるまいし、そんなに急ぐことはねえだろうが」 日が暮れ始めているとは言え、まだ外は明るい。盗賊家業のフーケが活動する時間はこれからとも言える。なにか用事でもあるのだろうか。 そう思っての問いかけだったが、フーケは小さく舌打ちして顔を背けるだけで、答える様子はなかった。 聞かれたくない部分だったようだ。 「お姉ちゃん。やっぱりどこかで特別な場所で働いてるの?」 出会い頭に感じた、平民生活には似合わない髪の艶と香水の匂い。それは、エルザもガリアの宮殿に寝泊りするようになってから手に入れたものだ。 同じ女として、ある程度目には付く。 フーケの眉が片方、ピクリと動いた。 これも聞かれたくない部分だったようだ。帰る場所にも関連していると思われる。 「そんなこと聞いて、どうすんだい」 逸らした顔を戻して睨みつけるフーケに、エルザは笑みを浮かべた。 「聞いてるのはこっちよ。それに、あなたに拒否権があると思ってるの?」 声の質こそ子供のものだが、それにしては威圧感が異常だった。 杖もなければ退路も無い。メイジ殺しと吸血鬼の二人を前に、強情を張るのも長続きはしないだろう。 痛い思いをしていないだけ、まだマシかもしれない。メイジ殺しはともかく、吸血鬼にとってはフーケなど、食料に過ぎないのだ。下手に煙に巻こうとすれば、干乾びるまで血を吸われる恐れもある。 諦めたように肩を竦めたフーケは、まだ懐に残っていたメガネをかけた。 「学院だよ。トリステイン魔法学院。そこで学院長の秘書をやってる。学院長がエロジジイでね、それを利用して潜り込んだのさ」 学院長付きの秘書なら、相当な高給取りだろう。大金を持っていても不思議ではない。 エルザが納得している間にも、フーケは言葉を続ける。 「狙いは、宝物庫にある破壊の杖。何ヶ月も前から仕込みをしてるんだけど、なかなか警戒が厳重でね。そろそろ動こうと思ってるんだけど……」 ちらり、とホル・ホースの顔を見て、フーケが言った。 「あんた達、手伝う気はないかい?学院はメイジの宝庫だからね。つるむのは好きじゃないが、人手が欲しいとは思ってたんだ。もちろん、報酬は出すよ」 どうだい。と聞くフーケに、ホル・ホースとエルザはすぐに首を振った。 横に。 「ハッ!冗談じゃねえ。断るぜ。あの学院にはオレ達の天敵が居るからな」 「ええ。これ以上怒りを買ったら、私たち、本当に殺されるかもしれないもの」 二人の脳裏に、青い髪の少女の姿が浮かんだ。 イメージの中のシャルロットは殺気を存分に孕んだ目をして、背後に炎を背負っていた。 一見して、ボスキャラ風。どうやっても勝利のイメージが湧かない構図だ。 あっさり断られて少し呆気に取られたフーケが、やれやれと長い髪を撫で付けて溜息をついた。 仲間に引き込んで返してもらえるものは返してもらおうという作戦だったが、思うようには行かないらしい。 「まあ、それはそれとして。学院に戻るなら、俺たちも一緒に行くぜ」 ホル・ホースが荷物を纏め始め、フーケの財布から金貨を一握りとってポケットに詰め込んだ。 「俺たちはその天敵に会わなきゃならん理由があってな。今からだと夜になりそうだから明日にするつもりだったんだが、ちょうどいい。金は返すから、学院に寝床を用意してくれねえか。そのほうがイロイロと都合がいい」 大して量の多くない荷物はすぐに纏まり、フーケの私物だけがベッドに残った。手紙も小箱も、金の入った袋も、そのまま置かれている。 布を纏ったエルザがホル・ホースに両手を伸ばして抱っこをせがんだ。 顔にホル・ホースの指が伸びて、乾いた音が響いた。 「さっきも言ったが、抱き上げる気はねえぞ。もうちょっと頭の中をガキに戻してから頼むんだな」 「やん、お兄ちゃんのケチ!」 額を指で弾かれたエルザが両手でひりひりと痛む部分を押さえて、頬を膨らませた。 「なんで、あたしがあんた達の為にそんなことをしなきゃならないんだい」 二人のやり取りを邪魔臭そうに見た後、胸の前で腕を組んだフーケが文句を垂れた。 ホル・ホースの手に杖が握られて、そっとフーケの首を指す。 「エルザ、久々の女の血だ。吸っちまえ」 「え、いいの?やったー」 多少演技臭いやり取りだが、口元に長い犬歯が見え隠れするエルザが嬉々として近づいてきたために、フーケは頬を引き攣らせた。 「ちょ、ちょっと待った!分かった、分かったから!!そういう質の悪い冗談は勘弁してちょうだい!」 手を振って必死にエルザを追い払うフーケに、ホル・ホースが笑みを浮かべる。 「OK。商談成立だな」 これのどこが商談さ、と言い返したくなるのを我慢して、フーケは溜息をついた。 フーケの馬車に乗ってホル・ホースとエルザの二人がトリステイン魔法学院に到着した のは、大方の予想通り、日が完全に暮れてからだった。 首都トリスタニアから馬で三時間。あまり近いとも遠いとも言い切れない距離にある学院は、六つの塔によって構成されている。 中心の本塔を囲うように等間隔で配置された五つの少し背の低い塔は、それぞれに魔法の系統の名称が与えられ、生徒達の寮や授業用、客室などの役割をもっている。 五つの塔と本塔を結ぶ廊下は城壁のように高く聳え、中庭を五つに区切っていた。 正門から入った三人は、人気の無い中庭を横切って馬を厩舎に戻し、本塔の階段に足を向けた。フーケが学院長に帰還の報告をすると共に、客室の使用許可を貰うためだ。 ここでのホル・ホースの立場は、町で暴漢に襲われていたフーケを助けた子連れの傭兵という役柄である。路銀の少なさから宿を失っていたため、助けてもらったフーケが恩返しに一晩の寝床を提供する。という筋書きである。 身元が怪しい人間というのは、こうして適当な設定を作らなければ生き辛いものなのだ。 螺旋階段の多い塔の階段を上り、最上階にたった一つだけある扉の前で、フーケが足を止めて振り返った。 「いいかい。ここじゃ、あたしはロングビルって名乗ってるんだ。あんた達も、それなりの態度を取ってボロを出すんじゃないよ」 小声での言葉に、ホル・ホースとエルザが首を縦に振る。 よろしい、と言葉を残して、フーケが髪や衣服の乱れを整えた。 息を整えて扉をノックする。 「開いておるよ」 老人の声が届いた。 失礼します、と声をかけて、フーケが扉を開ける。それに続いて、ホル・ホースとエルザも部屋の中へ足を踏み入れた。 部屋の中は幾つもの本棚や少しのクローゼット、それに机が二つある。 大きく立派な机を前にして椅子に腰掛けている老人が学院長なら、もう一つの机は秘書を務めているフーケの執務机だろう。 老人がフーケを笑顔で出迎え、ホル・ホースとエルザに好奇の視線を向けた。 「帰りが遅かったから心配しておったぞ、ミス・ロングビル。それと、そちらのお二方はどこのどなたかな」 「申し訳ありません、オールド・オスマン。町に出ているときに、暴漢に襲われてしまいまして。こちらの方々に助けていただいたのです」 オスマンの言葉に、フーケが昼間の刺々しい口調が信じられないくらい優しげな声で返した。 ヒヒ、と笑ったホル・ホースが帽子を脱いで小さくお辞儀をする。それに倣ってエルザも頭を少しだけ下げた。 「ホル・ホースさんと、エルザさんです。今夜の宿が無いそうですので、助けていただいたお礼を兼ねて、今晩学院の客室にお泊めしたいと思うのですが」 よろしいですか。と聞く前に、オスマンが目を見開いて手を打った。 「おお、おお!ホル・ホース君か。そうか、君が噂のガリアの騎士じゃな?平民でありながら騎士となったという話は、このトリステインまで届いておるよ。うむ、非常に珍しい話じゃからのう。王宮では所々に噂が囁かれて、ワシの耳にもつい先日届いたのじゃよ」 ジロリ、とフーケの視線がホル・ホースとエルザに突き刺さった。 そんなに有名人だったのね。と言いたそうな目だ。 ホル・ホースにそんな自覚は無いのだが、確かに、平民が貴族の仲間入りを果たすというのは、トリステインと肩を並べるメイジ至上主義のガリアでは目に付く話題だったようである。噂話が隣国に零れ落ちても、不思議は無いだろう。 予想外の事態だが、コレはこれで話が早くなりそうだと、ホル・ホースが口を開いた。 「なら、いちいち細かい説明はしなくても良さそうだな。すまねえが、部屋を一つ貸してもらえるか?なに、一晩だけだ。明日には出て行くからよ」 オスマンは少し考えた様子を見せた後、首を縦に振った。 「よかろう。一晩と言わず、好きなだけ泊まっていくといい。大国ガリアに恩を売るまたとない機会じゃからのう」 「オールド・オスマン。そういうことは、思っていても口にするものではありません」 フーケに窘められたオスマンが愉快そうに笑った。 「とにかく、許可をもらえればそれでいい。ロングビルの姐さん、エルザを部屋に案内してやってくれねえか」 「え?」 ホル・ホースの言葉に、フーケの動きが一瞬停止した。 にっこりと微笑むエルザが手招きをしてるのを見て、頬を冷たい汗が流れる。 吸血鬼と二人きりになれというのか、この男は。と、思わず叫びだしたくなるのを堪えて、愛想笑いで恐る恐る手を差し出す。 「行こう、お姉ちゃん」 子供らしい、少し舌足らずの高い声でフーケの手を取って、エルザが無邪気に笑った。 「え、ええ。そうね。行きましょうか」 オスマンの目がある場所で不審に思われる行動を取るわけにも行かないと、勇気を振り絞ったフーケは、口元に笑みを残したまま部屋を出て行く。エルザが、わざとらしく笑い声を上げた。 帽子を振ってそれを見送ったホル・ホースが、二人の気配がなくなった頃合を見てオスマンに顔を向けた。 帽子を被り直し、腰に手を当てる。 「で、本当の理由のほうを聞こうか」 なんのことじゃ。と惚けた様子で椅子に深く腰を落としたオスマンが首を捻った。 「誤魔化すなよ。もっともらしい理由を先に話して、真意を隠す。交渉の基本だぜ。何か狙いがあるんだろう?でなけりゃ、こんな貴族のガキが沢山いる場所に、他国の人間を泊めたりはしねえだろ」 ハルケギニアのほぼ全ての国でメイジが国の基礎を支えている以上、その子供達を預かる学院の重要性は国の中でもトップクラスの要所となるはずだ。外交関係に詳しくないホル・ホースにだって、他国の人間を入れていい場所といけない場所くらいの判別はつく。 すこし驚いたように目を開いたオスマンは、ゆっくりと首を縦に振った。 「ふむ。なかなかどうして、察しが良いのう。流石、平民でありながら騎士となっただけはある」 ふぉっふぉっふぉ、と笑って髭を撫で付けるオスマンに、ホル・ホースはフーケの執務机から椅子を引っ張り出して乱暴に座り込んだ。 「長話をする気はねえが、事情くらいは話せよ。面倒ごとは御免だがな」 帽子を深く被って背凭れに身体を預ける。人の話を聞く態度ではないが、それを気に留めるオスマンでもない。 机の横に置かれた水タバコに口をつけて、煙を吐く。ホル・ホースが少しだけ羨ましそうにそれを見た。 タバコの煙を見るのは、約一年ぶりだった。 「君を学院に泊めるのは、ガリアに恩を売るというのが本音の五割。後の五割は、今の学院にある問題じゃな」
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「あ・・・はぁ・・・」 やがてぐったりと体を弛緩させて地面に横たわった俺の顔に、ドラゴンが顎を近づける。 そして耳元をペロペロと舐め回しながら、囁くように語りかけてきた。 「楽に死ねるとは思わぬことだ・・・私に傷を負わせた罪は重いぞ」 だがそう言ったドラゴンの傷口に目を向けて見ると、既にあれほど痛々しかった傷がほとんど完治しかけている。 傷の跡はほとんど目立たなくなり、どう見ても少し鱗が剥がれている程度にしか見えなかった。 「な、治りかけてるじゃないかぁ・・・」 思わずそう反論した俺の耳たぶを、ドラゴンが鋭い牙で少しだけ噛み締める。 「何か言ったか?」 そしてククッと顎が閉じられると、やわらかな耳に牙の先が食い込んだ。 「い、いや、なんでもない!うああっ!」 危うくプツリと音を立ててピアス穴が空きかけた瞬間、ドラゴンがゆっくりと耳から口を離す。 「うう・・・」 耳を食い千切られる恐怖から解放され、俺はポロポロと涙を流しながら呻いた。 クチャッ・・・グチュッ・・・ 忘れかけていた快感を再び呼び起こすように、肉襞が蠕動を再開する。 「はぅ・・・ぅ・・・」 比較的穏やかな責めに思わず身をまかせてしまいそうになり、俺は慌てて首を振った。 気をしっかり持たなきゃ・・・このドラゴンは俺が絶望に壊れていくのを楽しんでいるんだ。 力じゃ絶対に敵わないけど・・・せめて気持ちだけは・・・ ゴシュッ 「ぐあっ!」 だが突然強烈な圧搾を味わわされると、俺は歯を食い縛っていたにもかかわらず嬌声を上げさせられてしまった。 「ここへきてやせ我慢か?フフフ・・・そんなことをして一体なんになるというのだ?」 「お、お前の思い通りになんかなりたくないだけだ!」 精一杯の虚勢を張ってそう叫ぶと、ドラゴンはニヤッと不気味な笑みを浮かべた。 「面白い・・・どこまでもつかな・・・?」 グシャッ・・・メチャッ・・・グチュル・・・ 「う・・・ぐ・・・うぅ・・・」 明らかに俺を苦しめることだけを目的にした刺激が、断続的に与えられ続けた。 その度を越えた快感が襲ってくる度に、ビクンと体を跳ねさせてしまう。 必死で顔を歪めながら快感に耐える俺の様子を、ドラゴンが楽しげに見つめていた。 「そろそろ辛かろう?我慢などせずに悲鳴を上げたらどうだ?フフフ・・・」 「だ、誰が・・・」 だが反論しかけた俺の隙をついて、ドラゴンの膣が激しく暴れ狂う。 グチュグチュグチュグチュッメシャッグリッゴキュッグチッ 「うあああああああ~~~~~~~!!」 一瞬にして限界を迎え、3度目の精がペニスの先から迸った。 「フフフフフ・・・いい声で鳴くではないか・・・」 「あ・・・あああ・・・」 やがて身も世もなく悶え狂った俺の様子に満足したのか、ドラゴンは起き上がると俺のペニスを膣から引き抜いていた。 グボッという音とともに、精と愛液の混ざった白い雫が流れ落ちる。 「う、うあああ・・・」 ようやく拘束を解かれて、俺はドラゴンの下からなんとか這い出すとよたよたと拙い足取りで逃走を試みた。 だがヒュッという風斬り音とともに尻尾で足元を払われ、そのまま前のめりに地面の上へと倒れ込んでしまう。 「た、助けて・・・」 そしてまるで虫けらのように地面を這いつくばってその場から離れようとする俺に、ドラゴンが背後からゆっくりとしなだれかかってきた。 「フフフフ・・・どうした・・・そんなに慌ててどこへ行こうというのだ・・・?」 重い体重でベシャッと地面の上へと押しつけられ、首の周りに長い舌を巻きつけられてしまう。 そして、俺はレロレロと首から頬にかけて無造作に舐め回された。 「ひ、ひぃぃぃぃ・・・・・・」 「そろそろ食い殺してやろうか?・・・ん?」 そう言って俺の頭を地面に押しつけたまま、ドラゴンがカシッ、カシッと牙を打ち鳴らす。 その恐ろしい音が聞こえる度、あまりの恐怖に心臓の鼓動が跳ね上がる。 そして、ついに小さく開かれたドラゴンの顎が俺の首を捉えていた。 首の両側に、いくつもの鋭い突起が突き立てられる感覚がある。 後少し顎を閉じられたら・・・そんな想像に身震いする俺の様子を、ドラゴンが愉快そうに眺めていた。 牙の間から生暖かいドラゴンの吐息が吹きつけられ、牙を伝った唾液が滴り落ちてくる。 やがて音もなく、ドラゴンの顎が少しだけ閉じられた。 「ひぃ・・・」 まだ皮膚は切れなかったものの、首筋に牙が食い込む。 「う、うぅぅ・・・」 こいつは、恐怖に耐え切れなくなった俺が最期の悲鳴を上げるのを待っているのだ。 それをしてしまえば、ドラゴンは満足げに笑いながら俺の首を噛み砕くのだろう。 頭ではそうわかっているのに、死を恐れる本能が禁断の悲鳴を喉元まで競り上げてくる。 プツッ また少し、ドラゴンの顎がその幅を狭めてきた。 張力を失った皮膚が裂け、牙の先端が首の筋肉に直に突き刺さる。 そしてその鋭い痛みに、俺の我慢もついに限界を迎えてしまう。 「う、うわあああああああああああああ!!」 全く見えてはいなかったものの、俺はその瞬間ドラゴンが勝ち誇った笑みを浮かべたのを感じていた。 いよいよとどめの一噛みが俺の人生に幕を引こうとしたその時、そばにあった大木の陰から青黒い小さな影が飛び出してきた。 それに驚いて首から口を離したドラゴンの頭を押し退けると、その影・・・小さな青黒い鱗を纏った仔竜が、まるで俺を庇うように俺の首の上へとドサッと覆い被さる。 「何をしている?何故お前が私の邪魔をするのだ?」 「ピィ!ピィ!」 「さっさとそこをどかぬか!いくらお前でもただではおかぬぞ!」 だが仔竜はドラゴンの、恐らくは母親の剣幕に怯えながらも、必死で何かを訴えかけていた。 「この者を助けろというのか・・・?」 食事を邪魔されて怒ったドラゴンが、仔竜の顔を間近でギッと睨みつける。 「ピ・・・ピィィ・・・」 やはり恐ろしいのか仔竜が恐怖にガクガクと震えているのが首越しに伝わってきたが、それでも仔竜は決して俺の上からどこうとはしなかった。 「・・・フン・・・好きがするがいい」 どことなく諦めの混じった野太い声が、静かに辺りの草木を揺らす。 母親のドラゴンはしばらく己の子供が取った奇妙な行動を思案していたものの、やがて俺の上からどくとドスドスという足音を立てながら茂みの中へと消えて行った。 「ピィィ・・・」 脅威が去ったのを確認し、仔竜がちょこんと俺の傍らに身を伏せる。 そして、ドラゴンの牙が食い込んだ俺の首の傷をペロペロと舐め始めた。 「お、お前・・・さっきでかい猪に追われてた奴だな・・・助けてくれたのか・・・」 「ピィ!」 甲高い声で、仔竜が返事を返した・・・ような気がした。 「ああ、ありがとう・・・ありがとう・・・」 ポロポロと、再び目から涙が零れ落ちてくる。 「ピィ?」 そんなグシャグシャに濡れた俺の顔を見ながら、仔竜が首を傾げていた。 だが次の瞬間誰かの気配を感じ取ったのか、仔竜が慌てた様子でトコトコと母親の入っていった茂みの中へと姿を消してしまう。 ガサ・・・ガサガサッ ややあって、猪を引きずったあの相棒が草の間から顔を覗かせていた。 「お、おい、何してるんだ?それにその格好・・・」 「くそ・・・間の悪い時に現れやがって・・・今だけはお前を恨むぞ」 「何でだよ?何かに襲われたのか?」 状況が飲み込めないまま、彼がキョロキョロと辺りを見回す。 「いいや違うよ。助けられたんだ。何かにさ・・・」 「?・・・変な奴だな」 「いいから・・・早く帰ろう。もう腹が減ったよ・・・」 もう少し、この仕事を続けてみようか・・・ 相方に助け起こされた俺は、真っ赤に灼けた夕焼け空を眺めながらふとそんなことに思いを巡らせていた。 完 感想 名前 コメント
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79巻 > 第379話 第379話 「1億パワーの代償!?」 掲載期間:2022年4月11日~2022年4月17日 AAを貼る場合上段のメニュー→「編集」→「このページを編集」。 AAの前に #aa{{ を、AAの後ろに }} をつけてください。 コラを載せる場合上段のメニュー→「編集」→「このページにファイルをアップロード」。 アップロード後に「編集」→「このページを編集」し、 #ref(添付ファイル名) または #ref(ファイルのURL) を記入してください。
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28 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 04 41 53 ID ??? セレーネ「アムロ兄さんとシャアとシローの前スレでのディアス無双の請求書が来てるわよ」 シーブック「なんていう0の数・・・」 マイ「人はミンチになっても戻りますが、街はそうもいかないですからね」 コウ「しかしアムロ兄さんとシャアのツーマンセルは凄かったなぁ」 ドモン「うむ。1+1は3にも4にもなるのだ!!ましてこの世界で五本の指に入るライバル同士の二人のタッグだ!弱い筈がない!! 師匠と放つダブル天驚拳や、シャッフル同盟拳、レインとのラブラブ天驚拳の威力は、俺一人の比ではないのだ!!」 ガロード「ライバルったって相手によるよ」 シロー「確かに、ギニアスと組んでも後ろから撃たれそうだ」 ジュドー(どっちが後ろから撃つんだか・・・) アル「シロー兄さんの場合はノリスさんじゃないの?」 シロー「ノリスさんか!そうだな、一度一緒に戦ってみたいとは思うが」 コウ(俺の場合はガトーか?) カミーユ「シロッコもジェリドもゴメンだね!」 シーブック(ザビーネ?・・・ふだんからキンケドゥの活動で組んでるしなぁ) ギンガナム「我が輩とローラのタッグは最強であーる!!) ガロード(そりゃ機体が機体なだけに) ロラン「ギンガナムさんは僕のライバルだったんですか?」 ジュドー(ナチュラルに折った!?) キラ「僕の引き立て役になるならクルーゼさんでもイザークでも組むよ」 シン「アスランさんが聞いたら泣くぞ、キラ兄」 刹那「グラハム=エーカー。しかし奴はガンダムではない」 ヒイロ「任務であればゼクスと組むことに異論はない。デュオと組むよりは効率がよさそうだ」 シャギア「我々とどうしても組みたいというならば、仕方ないな。ガロード=ラン」 オルバ「僕たちは永遠のライバルだからね」 ガロード「ジャミルとランスローが組んだらお前達でも敵わなかったよな」 ジュドー「マシュマー、グレミー、ハマーン・・・わ、俺ってついてねぇ~~」 ウッソ「カテジナさんかぁ」 ロラン「クロノクルさんが寂しそうにコッチ見てますよ」 アル「バーニィとクリスが組めば無敵だよ!!」 シュウト「爆熱丸とゼロは普段は喧嘩ばかりしてるけど、力を合わせるとスゴイんだ!」 シャア「アムロ、まだタイヤが抜け出せんのか!私のスーツが泥で台無しだ!」 アムロ「こいつ、動くぞ!!」 シャア「MSは目立つからエレカで逃げようなど・・・」 アムロ「言い出したのは貴様だろう!」 シャア「だいたいにして君がディアスであそこまで街を破壊しなければ、こうして逃げることにもならなかったのだ」 アムロ「自分は関係ないとでもいうのか!だいたい貴様の会社を一つ二つも潰せば出せる額だろう」 シャア「無茶をいうなよアムロ!私の会社はヅダのリコールと野良ザコで持たん時が来ているのだ! アルテイシアにお金を借りようとでも言うのか!借りるなら貴様が借りろ!身をカタにしてな」 アムロ「シスコンはいつも過激な事しか言わない!!」 キャプテン「コマンダーサザビー、アムロとシャアの生体反応をキャッチした」 コマンダー「了解した。ドーガボマーの雪辱をしてみせよう」 キャプテン「ゆくぞ!」 コマンダー「うむ」 キャプテン&コマンダー「「燃え上がれ、ソウルドライブ!!!」」 ハロ長官「流石はアムロくんとシャア氏が造ったモビルシチズン、息がピッタリだな」 アムロ「自分の造った者に捕まるなんて・・・」 シャア「これでは道化だよ・・・」 29 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 10 09 38 ID ??? フォルド「ミンチより、ひでぇな…修復に時間掛かりそうだな」 マット「……(唖然としている)」 フェデリコ「さぁて、アムロとシャアは俺達に請求書の金額を払ってくれるかなw」 タクナ「笑い事じゃないと思いますよ…フェデリコさん…」 レイヤー「(頭を抱える)」 フェデリコ「1234568900000...見たくない数字だなww」 30 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 10 53 15 ID ??? アムロはシャアと、シャアはアムロと絡んでる時が一番いきいきしてるなw 31 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 13 16 57 ID ??? 29 被害総額に様々な意味でビックリしたw 32 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 14 52 27 ID ??? 実費負担ということで、MSの修理は兄弟たちが行いますw ガロード「アムロ兄! 今度こそ肉だかんな!肉!」 ジュドー「俺たちはー労働条件のー改善をーよーきゅーするー」 ロラン「あんだけ騒いでで、なんで僕たちより作業が進むんでしょう、あの二人…」 キラ「えっと…慣れ?」 ヒイロ(黙々…) 刹那(黙々…) 33 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 15 30 36 ID ??? 29 シャアならポンと払っちまいそうな気がする…w 34 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 19 02 19 ID ??? 29 ルース「どれどれ…」 マット「…確かに見たくない数字だな」 フォルド「………」 フェデリコ「1234568900000000000000000000000000なげぇなwwwwwww」 ロドニー・カニンガン「会社が潰れるレベルの額だな」 35 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 19 05 38 ID ??? シャア「ジンバブエドルならなんとか」 マリナ「いえ、アザディスタンドルです……」 36 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 19 13 20 ID ??? 35 アザディスタンドルかよw つかアザディスタンもドルですか、姫 38 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 20 10 16 ID ??? シャア「まったく…私の古いMSを売ってようやく半分か…」 アムロ「貴様は名前が売れているからな…」 アル「赤い彗星のザクならマニアが喜ぶよ」 コウ「アムロ兄さんのガンダムも売れるよ…」 きっとこうすれば返済できるよ。 シャアなんてMS大量に持ってるからね? MS―03?、ザクⅡC型、ザクⅡS型、ズゴックS型 リックドム、ゲルググ、ゲルググ(左腕Mタイプ) ジオング、パージオ、リックディアス 百式、サザビー、ナイチンゲール、ガンダム アムロ「貴様…なぜガンダムを持っている?」 39 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 20 19 38 ID ??? セイラ(兄さんのMSが……仕方ないわ、私のお金で買い戻しておきましょう) 40 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 20 21 14 ID ??? セイラさんなんだかんだいって兄者にやさしいねぇ 41 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/12(火) 20 35 06 ID ??? チェーン「アムロのガンダムがオークションに!?入札しないと!!」 ベルトーチカ「誰か知らないけど、倍の額を入札してくるなんて、良い度胸じゃない。私は三倍よ!」 カニンガム「く……結婚の為の積み立て貯金を下ろすしかない!」 クスコ「これで暫くは家無しのただ働きだわ……」 アリョーナ「ぐすっ…ぐす……こんなな金額だせない……」 クェス「(大佐は今お金持ってないし……)ギュネイ、私にお金かしなよ!!」 ユウリ「私のゼータを売っても届かない額に……」 72 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/13(水) 00 53 10 ID ??? コウ「アムロ兄さん、ガンダムが…一杯ある!?」 アムロ「ガンダムは俺の1機だけだぞ」 シャア「だが、私だって私専用のガンダムがある」 マット「さらに我々にも」 ラリー「ガンダムが配備されたことが」 アニッシュ「あるんだよな。これが」 タチバナ「私もガンダムなら乗ったことがある」 アムロ「貴様等のは俺のを盗んだんだろ!落ちろ!!」 シャア「ふ、私のはMCされている。当たらんさ」 その他「ウワァァァァ!?」 アムロ「ちぃっ!こうなったら勝負だシャア」 シャア「私が1番ガンダムをうまく扱える」 アムロ「俺のセリフをとるな!!そこだっ!」 シャア「やらせるか!沈め!」 アムロ「まだだ、まだ終わらんよ!!」 シャア「それは私のセリフだ!もらった!」 アムロ「くっ、もう少し早く反応してくれ」 コウ「2人とも…よく頭と左腕がなくてやれるな…」 アムロ「シャアァァァァ!!」 シャア「アムロォォォォ!!」 セイラ「2人とも…お止めなさい…また借金が…」 後日、4機の偽ガンダムがアムロ&シャア専用機として それぞれが別々のオークションで売られた。 その後街は綺麗に復興し、2人の借金は消えた。 終わり 対決にはこれも欲しいな
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相棒のグラエナが死んだ。老衰だ。 幼い頃に初めて捕まえたポケモンで、ポチエナの頃から大切に育てていた。 20年以上の付き合いだった。 未だに死んだことに対する実感がわかず、使っていた小屋や毛布なども 片づけないまま家の庭に出してしまっている。 そんな状態でも仕事を休むわけにはいかない。 数日間の出張の予定も入っているのだ。 活力が湧かない体を無理やり動かす。 いや、動かしていた方が余計なことを考えなくてすむので、かえってこちらの方がいいのかもしれない。 …数日後 出張から自宅に帰ると、どうもグラエナが使っていた小屋の付近で気配を感じる。 忍び寄ってみると、ピンクの毛皮が見え隠れしている。 タブンネだ。ママンネのお腹に顔をうずめ、3匹のベビンネがミルクを吸っている。 ベビンネはちょうど毛が生えそろい、目も開いてきた時期と言ったところか。 ミッミッ♪ミィミィ♪ミミミミ♪♪ ママンネはそんなベビンネを見て目を細めている。 とても微笑ましい光景だ・・・とは、今の私にはとても思えなかった。 グラエナがかつて使っていた小屋はタブンネの毛と糞で荒れ放題。 おまけにママンネが無理に体を押し込んだせいか、小屋の入り口の一部が壊れている。 (あいつら・・・大切な思い出の小屋を我が物顔で使いやがって・・・) 胸の奥にどす黒い感情が湧いてくるのを感じながら (しかし、私の方もいつまでの小屋と毛布を片付けてなかったからな。 野良タブンネからすると、いい生活拠点に見えてんだろう。) そう思いなおし、小屋の方に近寄る。 (まあ、家主が帰ってきたことに気づけば、自分から去っていくだろう。 勝手に使われたのは腹が立つが、片づけていなかった手前、許してやるか。) ミッ? ママンネがこちらの接近に気づいたようだ。 これでさっさと逃げて行ってくれるだろう・・・ しかし ミィィィィ!!!ミィッ!ミィッ!ミィミィミィミィ! ママンネはベビンネを自分の後ろに隠し、歯をむき出しにしてこちらを威嚇してくる。 ママンネは子育て中のため外敵に敏感になっていたのだろうか? 自身と子供たちが安全に暮らせる場所を脅かす相手には何があろうと退かないつもりらしい。 (コイツ・・・!) その態度が私の琴線に触れた。 (私の思い出の場所を汚した挙句、穏便に済ませてやろうとした心も踏みにじりやがって!) (いいだろう・・・そんな態度を取ったこと、徹底的に公開させてやる。) プツンと私の中で何かが切れる音がした。 「サーナイト、出てこい」 ボールから出てきたサーナイトは何事かと一瞬あたりを見回すが、 タブンネの毛と糞で汚されたかつてのグラエナの小屋、こちらを威嚇しているママンネ、 静かに怒りの感情を込めて立つ私を見て状況を理解したようだ。 「サイコキネシスだ。ただし、殺すなよ。」 命令されるやいなや、カッとサーナイトの目が見開く。 ゴガキッ! ガゲキミッ!! 鈍い音がして、タブンネの四肢があらぬ方向に曲がる。 本当なら嫌な音と感じるはずだが、なぜか今は心地よい。 ミッ?ミギャッ!ミゲグギィィィィ! 向いてはいけない方向に曲がった四肢を見て悲鳴をあげるママンネ。 後ろのベビンネはミィミィとママンネの心配をしている。 「よくやった。後はどうとさいみんじゅつをかけて全員眠らせろ。」 私がこれからやることが分かったのだろうか。 命令を聞いた瞬間サーナイトの口からほんの少しの笑みがこぼれる。 サーナイトはママンネに近づき、いやしのはどうをかける。 ママンネはすさまじい痛みから解放されて油断したのだろうか。 すぐさまかけられたサーナイトの催眠術に、抵抗らしい抵抗を見せず眠りに落ちた。 チィチィ!チィチィチィ! 敵の前で無防備に眠ってしまったママンネを心配するベビンネ達。 しかし、サーナイトの催眠術によってすぐに眠らされてしまった。 … 眠ったママンネとベビンネ達を家の地下倉庫まで移動させる。 物置として使っているのだが、まだスペースに余裕がある。 (さて、どうするかな。なるべく長い時間苦しめなければこちらの気がすまないな。) どうやって気晴らしするか考えつつ、地下倉庫の地面に杭を4本打ち立て、ママンネとベビンネ3匹を括り付ける。 両手両足を拘束具で拘束して・・・よし、これで動けまい。 そして、ママンネの触角を伸ばし、一番大きいベビンネ(長男ネ)に取り付け、テープで固定する。 さらに中くらいのベビンネ(次男ネ)、一番小さいベビンネ(三男ネ)の触角も同様にして長男ネの体に貼り付ける。 催眠術がまだ効いているのか、ママンネとベビンネはまだスヤスヤと眠っている。 (うーん、あれだけ私の心を踏みにじっておきながらのこの安らかな寝顔。 催眠術をかけたのはこちらとはいえ、改めて殺意が湧いてくるなぁ。) ここから殺すだけじゃあ一瞬すぎて面白くない。 何かいい殺し方は・・・。 そうだ!私の頭の中に、一つのアイデアが思い浮かぶ。 そうと決まれば・・・えーと、タブンネの体の構造をネットで調べて・・・と。 準備はできた。後は実行するだけだ。 まずはママンネ、ベビンネ達に冷水をかける。 ミィッ!?ミミミミィィィ!? 驚いて目を覚ますタブンネ一家。 ちらちらとあたりを見回すが、薄暗い地下倉庫の中とあってとても不安そうな表情を浮かべている。 ミィッ!ミィミィミィッ! ママンネがこちらに歯を向き威嚇してくる。 腕と足が折れているのに、随分と元気なことだ。 タブンネは生命力が強いと聞くが、まさかもう治ったのか? まあ治ろうが治るまいがどちらにせよ拘束されて動けないのだが。 チィ・・・チィチィチィ・・・ 一方ベビンネ達はおびえて不安げな鳴き声を出すだけだ。 私は少し長めの針を取り出し、長男ネに近寄る。 チッ?チィィィィ?? 長男ネは針を見て怯えている。ベビンネであっても、鋭利な物体は危険と本能的にわかるのだろう。 くりくりとした目からは大粒の涙が出ており、その顔からは「やめて!」という思いが湧き出ている。 もちろん、やめるつもりはない。 ブスッ ブスッ 私は長男ネの右胸に針を刺した後、引き抜いて素早く左胸にも刺した。 チッ!チィィィィ!?チヒッ!チヒ! 最初こそ痛みに対して大きな声を上げた長男ネだったが、徐々にその声は小さくなっていく。 ヒ ィ ィ ィ ミ・・・ ィ ミ ヒ・・・ コヒュー・・・ コヒュー・・・ 長男ネの声はさらに小さくなっていき、最後には苦しそうな呼吸音が聞こえるだけになった。 私が刺した個所。それはタブンネの左右の肺だ。 生物は肺に穴があくと呼吸しても肺が膨らまず、体に十分な酸素が行き渡らなくなる。 結果として、長時間苦しんだ末に死ぬと聞いたことがある。 ネットで簡単に調べて、ダメ元で試してみたがどうやらうまくいったようだ。 ミギャッ ミギャギャァァァ ミギャミギャミギャァァァッ! ママンネの叫び声が地下室に響き渡る。 ママンネの触角を長男ネに取り付けたのはこのためだ。 タブンネは触角を相手につけて、体調を診断することができる。 今の長男ネの状態では、遠からず確実な死が訪れると気づいてしまったのだろう。 チィィィィィ?チミィィィィィ!? 同様に次男ネと三男ネも長男ネの苦しい気持ちを読み取ってしまい、叫び声をあげる。 まだ体調診断はできないようだが、長男ネの「苦しいよう。誰か助けて。誰か・・・誰か・・・」 という感情を読み取ってしまったのだろう。 手足が自由ならすぐに助けに行ける距離なのに、拘束されて助けに行けない。 自分と血をわけた、大切な家族の命の光が目の前で徐々に消えていく・・・ そう、それは死にも勝る苦しみだろう。 コヒュ・・・ ミガッミガミギグゲギィィィ! チギッ!チギャチギャチギィギャァァァァ! 長男ネの苦しそうな呼吸にあわせ、ママンネ、次男ネ、三男ネの叫びがハーモニーを奏でる。 ああ・・・いい・・・実にいい。 長男ネの青ざめた顔、ママンネの怒りと絶望で赤くなった顔、流れてくる苦しみと絶望を処理しきれず 凄まじい形相で頭を左右にふる次男ネと三男ネ、それぞれの反応が私の心を楽しませてくれる。 「まーだ処置を施してから3分くらいしか経ってないぞー」 「大丈夫!あと30分くらいは生きれるって!」 私の言葉はタブンネには理解できないだろうが、それでもいい。 満面の笑みでタブンネ一家を応援してやる。 コヒ・・・ ミゲッミガミガミガミギィ!ミグェェ! チギャッチギャゥェェチギィィx! 10分が経過した。長男ネの目はすでに光が失われつつある。 幼いと言えども、自分が助からないと理解できたのだろう。 その顔は「もういい・・・早く殺して」と絶望の表情を浮かべている。 ママンネは歯が折れんばかりに歯を食いしばり、必死に手足を動かして拘束具を壊そうとしている。 サーナイトに折られた手足は完全には治っていないだろうから凄まじい痛みだろう。 うむ、母の愛は全く素晴らしい。 まあ、20年来の相棒との思い出を汚された私の怒りはそれ以上だがな。 次男ネと三男ネは、長男ネが生きる望みを失ったのに気づいてしまったのだろう。 ガタガタと震えながら、ただひたすら頭を左右に振る。 無駄だとわかっていても、触角を通して流れてくる絶望の感情をごまかすのはそれしかないのだろう。 コ・・・ ミゲギグェェェ!ミガギギィィィ! チゲガッ!チギィィィィピギャァァァ! 20分が経過した。 長男ネの動きはほとんど見られない。 しかし、それに反比例するかのようにママンネと次男ネ、三男ネの叫びが激しくなっていく。 この対照的な絵柄は、どこか芸術的である。 … ミッ!?ミッ!?ミィィィィィ? チギッ?チギッ?チミィィィピギャァァ!!! 30分が経過した。 長男ネは天に召されたようだ。 紫色に変色した顔は、がっくりとうなだれている。 ママンネと次男ネ、三男ネは長男ネの死を感じ取ったようだ。 叫び声でなく、泣き声と表現するに相応しい声が地下倉庫に響き渡る。 次の瞬間 チギャッミヒャッミヒャッ!チギャヒャヒャァァ! 突然、三男ネが笑い出した。 うーむ、どうやら苦しみ、絶望、そして死の感情をダイレクトに受け取ったことが、 三男ネの心を破壊してしまったらしい。 虚ろな表情で虚空を見つめ、ただひたすら笑い声をあげている。 「ありゃー。計算外だった。 三男ネは火あぶりにするつもりだったんだけどなー。 まあいいか。予定を変更しよう。」 私はそうつぶやくと、次男ネの触角を長男ネの死骸から外してやる。 ミィ? 涙ぐみ上目使いでこちらを見上げる次男ネ。 私が起こした行動に、ほんのわずかだが「助けてくれるのかも?」という希望を見出したらしい。 もちろん、そんなわけがない。 次男ネの触角を、今度は三男ネに貼り付けてやる。 チギッ!?チギィィィィィィィ!? 長男ネの苦しみ、絶望、死の感情を味わった後、今度は三男ネの壊れた心を読まされる次男ネ。 正直、壊れた心を読まされる苦しみはまったく想像できない。 チギミヒッギギャヒヒッ?ミヒギャチギィィィ? しかし、次男ネの苦しそうな、それでいてどこか呂律の回らない叫びを聞くと、 確実に心を蝕まれているということが分かる。 ミッ! そんな次男ネの惨状を見て、目を閉じようとするママンネ。 「だめだよ~、きちんと自分の子供が頑張っているところを目に焼き付けないと!」 無理やりママンネの瞼を上げてやる。 ミヤァァァァッ! ママンネは顎が外れるのではないかと言うほどの大きく口をあけて叫ぶ。 チギミ?ヒギィィ!ミヒャミヒャヒィィィィィィ? 次男ネは必死に頭を左右に振り、自分の心が壊されようとしていることに抵抗している。 しかし、徐々にその頭の振りも弱くなる。 口からはよだれがたれ出し、目も虚ろになる。泣き声にはだんだんと笑い声が混ざる。 ミイヤァァァァァ!ミィィィィィ! 変わりつつある次男ネの様子を見て、ママンネはさらに大きな声を上げる。 チギャハァチギャハ?ミハッ?チハァァハハハハ! 次男ネも限界を迎えたようだ。 地下倉庫には、次男ネと三男ネの狂った笑い声が響き渡る。 ミッミヒッ・・・ おや?どうやらママンネは生きる気力をなくしたようだ。 俯いた顔からは、私に対する怒りや、死んだ自分の子供を悼む心すら見えない。 ただただ、この苦しみに終わりが来るのを待っている顔だ。 私はそんなママンネに対し・・・・ チクッ 栄養材を注射器で打ってやった。 ミッ? 私の方に顔を向けるママンネ。 「これで死ねると思った?残念! ママンネちゃんには、長男ネちゃんの遺体が朽ち果てるところ、 心が壊れた次男ネちゃんと三男ネちゃんが徐々に衰弱していくところを見てもらいます!」 「タブンネという種族は生命力は抜群だからねー。 栄養剤を注射しておけばまだもっと持つだろうな! これから毎日、仕事から帰って来たら栄養満点の注射をしてあげるよ! 一緒に長男ネちゃんの遺体、次男ネちゃんと三男ネちゃんの狂気を観察しようね!」 ミギャアアアアアァァァ! 少なくとも、自分が死ねないということは理解できたのだろう。 ママンネのひと際大きい叫びが響き渡る。 これからの楽しみができた私は、ワクワクしながら地下倉庫を後にした。 おわり
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847 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 21 10 31.10 ID KGM4iFdvO …2日後… ~コンテナの中~ アライさん「…」 御手洗はコンテナへ入れられ、トラックで運ばれていた。 きっと、イタリア南部から移動させられているのであろう。 やがて車の音が止まり、コンテナがガタガタと動いた。 黒スーツの男1「ここが新しい牢屋だ」ガチャッ 御手洗は持ち運ばれ、今までとは別の小屋へ移された。 848 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 21 16 23.30 ID KGM4iFdvO … ~小屋の中~ アライさん「…」 御手洗は、内心不安でいっぱいだった。 自分が打てる手は、尻尾を川に流すだけである。 自分がイタリア南部にいることをアピールできたはいいものの… これで状況が何も変わらなければ、骨折り損のくたびれ儲けである。 MCチヘドロー「…おら、飯や」ガチャッ MCチヘドローが、ドリンクボトルを持って小屋に入ってきた。 MCチヘドロー「…」スッ アライさん「…」ゴクゴク 妊娠しており、交尾が不要になった御手洗。 もう食事以外、何も楽しみはない。 ただひたすら、不安に震えるだけの毎日である。 MCチヘドロー「あひゃひゃ…。ワイがつるんどる、この組織は…イタリアでも最大勢力を誇るマフィアや」 MCチヘドローは、「あひゃひゃ」などと笑ってみせたが… その表情に、全く笑みはなかった。 MCチヘドロー「今お前が監禁されとる場所は、警察すらおいそれと入ってこれない領域や」 MCチヘドロー「あひゃひゃ、なんせ密輸するブツの置き場やからな。警察が踏み込んでこれへんのは御墨付き、実績アリアリや」 アライさん「…」 MCチヘドロー「今、この国での捜査はイタリア警察の管轄になっとる。せやけど、人が一人行方不明になって見つからず終いなんて珍しいことやない」 MCチヘドロー「お前も同じ末路を辿るんや、害獣」 アライさん「…」 既に、御手洗の心は折れそうになっている。 MCチヘドローの言葉は、一つ一つが御手洗の心をえぐり、一つ一つ希望をへし折っていった。 849 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 21 25 15.52 ID KGM4iFdvO 小屋の外で、車の音がする。 MCチヘドロー「あひゃひゃ、ブツを取引しとる連中が帰って来たとこやな」 アライさん「…」 やがて、小屋の扉が開く。 黒スーツの男1「…ッ…」ハァハァ MCチヘドロー「お疲れちゃん。取引はどやった?」 黒スーツの男1「どうもこうもない…!取引どころじゃない…!」ハァハァ MCチヘドロー「なに?」 黒スーツの男1「うちの麻薬チームと武器チームの幹部が…、どっちも行方不明になった!!!」ゼェハァ MCチヘドロー「何やて!!!どういうことや!!ポリ公か!?」 黒スーツの男1「いや…。取引現場では、警官や不審人物が来ないかきっちり見張っていた」 MCチヘドロー「見張ってたって…!じゃあなんで行方不明になるんや!ちゃんと見とったんか!?」 854 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 21 43 06.46 ID KGM4iFdvO 黒スーツの男1「聞く限りだと…、『音もなく、突然消え去った』とか…」 MCチヘドロー「音もなく…!?アホか、何のオカルトや。言い訳にしちゃアホらしすぎるで」 アライさん「…?」 MCチヘドロー「しかし、ワイはおたくらとの付き合い短いけど…。こういう時、保身のための言い訳をするような奴らやないってことは分かるわ」 黒スーツの男1「ああ。しかも幹部だけじゃなく、重要なポストにいる者が、次々と姿を消している…らしい!」 MCチヘドロー「…何が起こっとる?おたくらはイタリア最強のマフィアなんやろ!んなポンポコポンポコ、幹部がいなくなるような脆い組織なんか!?」 黒スーツの男2「そんなワケがあるか!幹部の連中は、行政にすら口出しできるチカラのある連中だぞ!ボディーガードも十分だ!!」 856 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 21 51 54.78 ID KGM4iFdvO 黒スーツの男2「…とにかく、俺たちは俺たちの仕事をやるだけだ。上からの命令に従うまでだ」 MCチヘドロー「その『上』からいなくなっとるんやろ?」 黒スーツの男1「…」 黒スーツの男2「…」 MCチヘドロー「…まあええ。見張りや見張り。こんな小屋ん中におってもしゃーないやろ」スタスタ 黒スーツの男1「あ、ああ…」スタスタ 黒スーツの男2「そうだな…」スタスタ 一同は小屋から出て、見張りについた。 858 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 21 57 19.89 ID KGM4iFdvO …翌日… 黒スーツの男1「…行方不明者が、さらに増えている。ファミリーが捜索しているが、誰一人見つかっていない」 黒スーツの男2「どういうことだ!?し…始末されたのか!?」 MCチヘドロー「…幹部どもが、何の断りもなく、自分から勝手にいなくなるハズがないわな…」 灰スーツの男「おい!聞いたか!」 MCチヘドロー「何や?」 灰スーツの男「…臓器売買ルートを仕切ってるチームのリーダーも…消えた…」 MCチヘドロー「…」 黒スーツの男1「…」 黒スーツの男2「…」 …誰もが思った。 『これがいけない』と。 861 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 07 30.79 ID KGM4iFdvO その時。 縞スーツの男「おい!お前らぁぁ!逃げろォオォオオオオオオォォッ!!全員ここから逃げろォオオオッ!」タタッ …マフィアの一人が、叫びながら走ってきた。 黒スーツの男1「な…!?何だ!?」 MCチヘドロー「逃げるって…?小屋ん中のハエガイジはどうするんや!?」 縞スーツの男「爆弾を持ってきた!これで木っ端微塵にする!扉を開けろ!」スッ 縞スーツの男が持っているのは… 密輸する予定の爆弾であった。 MCチヘドロー「何がどうなっとるか分からんが…ほいっとな!」ガチャッ MCチヘドローは、小屋の扉を開けた。 MCチヘドロー「ほな、後は頼んだで!」タタッ 縞スーツの男「ああ!この中か!」ザッ 縞スーツの男は、小屋の扉から離れた場所に立った。 縞スーツの男「証拠、隠滅!」ブンッ そして、数十億という利益を産み出すというフレンズがいる小屋に向かって、爆弾を投げた。 863 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 10 42.79 ID KGM4iFdvO 爆弾「」ヒューー \フッ/ …突然、空中で爆弾が消えた。 音もなく。 縞スーツの男「な…!?何だ?何が起こった!?」 \フッ/ そして、その瞬間。 縞スーツの男も消えた。 数秒後… 上空で、轟音とともに大爆発が起こった。 866 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 19 12.32 ID KGM4iFdvO … 黒服の男達「「「うおおおおーー!!」」」ドドドドド 大勢のファミリーが、駐車場へ向かっていた。 MCチヘドロー「爆弾が空中で爆発した…?小屋をフッ飛ばすんやないんかい!?」タタッ 黒スーツの男2「何者の仕業だ!?フレンズか!?」タタッ MCチヘドロー「いやいや…今やヨーロッパ全員がフレンズの入国禁止や!日本を出る前に止められるわ!」タタッ 灰スーツの男「らしいな!どうやら事件範囲がイタリアまで広がったことにより、ヨーロッパ全体がフレンズに危険が及ぶ地域と判断された…らしい!」タタッ 黒スーツの男1「とにかく遠くに離れろとのことだ!車に乗るぞ!」タタッ 868 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 21 35.67 ID KGM4iFdvO 「残念、行き止まりだ」 黒服の男達「「!?」ピタッ」 しかし、駐車場の前に… 何者かがいた。 ??「もう、逃げ場はないぞ」 タイリクオオカミ「デスゲームは終わりだ。チヘドロー」 …にっこりと笑みを浮かべたまま立っているブラウンPであった。 MCチヘドロー「…な…!お前…何でここに…!?飛行機には乗れへんはず…や…」 タイリクオオカミ「そうだね」ニッコリ MCチヘドロー「…お前…何を『笑っとる』んや…?」 869 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 26 40.84 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「さて、この先へは進ませない。通せんぼさせてもらうよ」シャキンッ 黒スーツの男1「あ…あいつは…何だ?フレンズに見えるぞ…チヘドロー」 MCチヘドロー「…せやな。アライさんを育てて無害化してから殺す変態や。しかも、めっちゃ強い奴や」 黒スーツの男2「ブラウンP…!知ってるぞ、あいつ…!」ジャキッ 黒スーツの男2は、拳銃を構えた。 黒スーツの男2「死ねぇ!」バァン タイリクオオカミ「…」ニッコリ ブラウンPは、笑みを浮かべると… タイリクオオカミ「だああっ!」ヒュンッ 難なく銃弾をかわし… 870 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 34 43.79 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「今度はこっちの番かな」ヒュンッ 野生解放の輝きに包まれながら、一瞬で黒スーツの男2の目の前に駆け寄った。 黒スーツの男2「ば…化け物が…ッ」 タイリクオオカミ「はッ!」ブンッ 黒スーツの男2の前で、タイリクオオカミは腕を振った。 黒スーツの男2「あ…ぁ…」 黒スーツの男2「ぐぎゃぁがぁああああああっ!!」ブシャアアアボドボドボド すると、黒スーツの男2の胴体がぱっくりと裂け、血と臓物がぶちまけられた。 黒スーツの男1「ひ…ひっ…!」 黒スーツの男2「が…ぅ…ぅがぁあああっ…!」ドサァ タイリクオオカミ「ああ…いい声だ。ふふ…、アライちゃんの断末魔よりも…若い男の断末魔の方が…そそるね…」ウットリ ブラウンPは、手を血で濡らしながら、笑みを浮かべた。 黒スーツの男2「」ビクンビクン…ガクッ 黒スーツの男1「…な…なんなんだ…こいつ…」 黒スーツの男2は、動かなくなった。 …ブラウンPの手で、人間の命が奪われた。 874 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 41 12.42 ID KGM4iFdvO 黒服の男達「「死ねぇ!」」パァンパパァンパパパァン 黒服の男達は、ブラウンPへ拳銃を撃つも… タイリクオオカミ「ふっ!」ズバァ 黒服の男達「「がっはぁぁあっ!」」ブシャアアアボドボドボ… …文字通り瞬殺された。 タイリクオオカミ「ああ…。彼らにも、守るべき家庭があるんだろうね。家で帰りを待っている、愛する子供がいるんだろうね…」 タイリクオオカミ「…ふふ…父親が惨殺されたと知った子供たちは、どんな顔をするのかな?」ウットリ MCチヘドロー「…あひゃひゃ……ブラウンP…。とうとう、人殺しになったか…」 タイリクオオカミ「ええ。お陰さまでね」ペロリ ブラウンPは、爪についた血をぺろりと舐めた。 MCチヘドロー「お前…なんでここにおるんや?」 876 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 44 56.50 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「簡単な話さ。彼女に連れてきて貰ったんだ」スッ ブラウンPが指差した方には… ??「御手洗…。こんな姿になるまで放っておいて、すまなかったのです」フワリ 会長「もう、大丈夫なのです」スタッ アライさん「…か、会長…」 …御手洗を抱き抱え、両足で着地した会長がいた。 MCチヘドロー「…あ、あひゃひゃ。アラ虐重鎮が勢揃いやなぁ」 タイリクオオカミ「素晴らしいスピードだったよ、彼女の飛ぶ速さはね」 880 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 52 16.69 ID KGM4iFdvO MCチヘドロー「…その様子…。『失楽薬』と『脚が動かなくなる薬』を…、シロウちゃんとこで、解いてもらったんか…!」 会長「そういうわけです。我々は旅券も使わず、飛んで密入国したのです」 MCチヘドロー「…組織の幹部どもが、急に音もなく消えたのは…、お前の仕業か、会長」 会長「猛スピードで飛んで、チョイなのです」 MCチヘドロー「…連れ去った奴は、どうしたんや」 タイリクオオカミ「情報を喋った奴は、五体満足ではないけど生きてるよ」 MCチヘドロー「…情報を持っとらんかった奴は?」 タイリクオオカミ「肉片になってもらった」 MCチヘドロー「…愉しかったか?」 タイリクオオカミ「ええ、とっても。アラ虐の百倍良かった」 881 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 22 55 42.84 ID KGM4iFdvO 会長「もうお前に逃げ場はないのです、チヘドロー。捕まって、洗いざらい喋って貰うのです」 MCチヘドロー「ふっ…くく…」 MCチヘドロー「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」ジャキッ チヘドローは、拳銃を取り出し… MCチヘドロー「お断りや」スチャッ 銃口を自分のこめかみに押し当てた。 タイリクオオカミ「…チヘドロー。ひとつだけ、答えてくれ」 MCチヘドロー「ええで?何や」 タイリクオオカミ「お前のほどの多才な男が、なぜマフィアなんかとつるんだんだ」 882 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 01 27.23 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「御手洗をそんな姿にした君を褒めたくはないが…。君は研究者としてフレンズのレベルを発見し」 タイリクオオカミ「その後はすぐに雑誌の編集長や、テレビ局のプロデューサーになった。…ある種では天才的な変わり身の早さだ」 タイリクオオカミ「その気になれば、日本でいくらでも綺麗な仕事につけただろう?こんな血と泥にまみれた仕事なんかしなくても」 MCチヘドロー「…」 タイリクオオカミ「…何か…、そんなに、金が必要だという理由でもあるのか?」 MCチヘドロー「ハ…。天才やって誉められるんは心地ええなぁ」 883 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 03 40.82 ID KGM4iFdvO MCチヘドロー「ワイは初めっから、銭なんてどうでもええんや」チャキッ 会長「…」 MCチヘドロー「ついでに言うと…、アライさん共が生きようが死のうが。それすらどうでもええ」 MCチヘドロー「ワイがただ一つ…唯一欲しかったモンは…」 タイリクオオカミ「…」 885 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 08 48.23 ID KGM4iFdvO MCチヘドロー「『名声』ッ!!それだけやッ!!」 MCチヘドロー「ヒーローになって、皆に尊敬されたいッ!!」 MCチヘドロー「救世主になって、歴史に名を残したいッ!!」 MCチヘドロー「人気者になって、チヤホヤされたいッ!!」 MCチヘドロー「そして…セールスマンになって、人にいつまでも必要とされたいッ!!」 MCチヘドロー「アラ虐なんぞそのための手段にすぎんッ!アライさん達は、ワイが栄光の座に登り詰めるための踏み台にすぎへんのやッ!!!」シュバッ MCチヘドローは、ブラウンPへ銃口を向けた。 タイリクオオカミ「」 MCチヘドロー「文句あるかクソボゲ共がぁァァーーーッ!!」バァン そして、ブラウンPへ発砲した。 887 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 13 59.45 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「っ…」バズゥッ ブラウンPの肩に銃弾が当たった。 MCチヘドロー「てめーら気持ち悪い動物のお人形さん共に!殺されてたまるかッ!!アーヒャヒャヒャッ!」バッ MCチヘドローは、懐から自動小銃を取り出す。 アライさん「っ…させない、のだっ!」シュウウウッ 御手洗は野生解放し、けものプラズムで手足を形成した。 MCチヘドロー「ワイのために死ね!!美少女フィギュア共がァァーーーッ!」ジャキッ 890 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 17 39.66 ID KGM4iFdvO アライさん「たああああああああああああーーーーーーッ!!!」ドッガァアアアアアアッ 野生解放した御手洗は、一気に距離を詰めると、MCチヘドローの股間を蹴りあげた。 MCチヘドロー「ギャォオオオオオオオオオオォオォォオオオォォーーーーーーーーーーッ!!!!」グシャベギボギグチャァアアアアッ …MCチヘドローの下腹部の中で、いろんなものが潰れ、破裂し、粉砕された。 896 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 27 41.32 ID KGM4iFdvO MCチヘドロー「ご…ぶ…げェェッ……!」ドサァ MCチヘドローはその場にうずくまった。 会長「…チヘドロー。お前、そんなにアライさんアライさんって…。そんなにアライさんが好きなのですか?」 MCチヘドロー「…な、ワゲ…あるが……ボゲッ………!」ドクドク チヘドローの尻から血が流れている。 会長「本当に嫌いだったら、さっさと忘れるべきなのです」 会長「だのに、お前はとっくの昔に終わったアラ虐というオワコンへ…いつまでもみっともなくすがり付く気でいる」 会長「お前は自覚しているのです。自分自身が…」 会長「アラ虐以外、何も取り柄がないと」 MCチヘドロー「ッ………!」 会長「アラ虐を失ったら、誰からも見向きされなくなると思っている。だからこそ、マフィアなんぞに魂を売ってまで、アラ虐にしがみついたのです」 MCチヘドロー「…ッ…言う、なやッ…!!」 会長「お前の認識は間違っていないのです。…アラ虐のないお前は、家族の他には…誰にも愛されないのです」 MCチヘドロー「………ぐ……がッ……!」 898 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 33 46.35 ID KGM4iFdvO 会長「そのままじっとしていれば、救急車を呼んでやるのです、チヘドロー」カチャッ 会長は後ろを向き、電話をし始める。 MCチヘドロー「ハァー…ハァー…」ブルブル ズルズル チヘドローは、上半身だけで這って、落とした拳銃の方へ向かう。 骨盤や脊髄の一部が破壊され、もう脚は動かないようだ。 MCチヘドロー「ワイを…見下す奴は…!痛い目見せたるッ…!」ガシィ MCチヘドローは、右手で拳銃を握る。 タイリクオオカミ「その度胸だけは、認めてやる」フミッ MCチヘドロー「ッ…!」 ブラウンPは、チヘドローの右肩を踏みつけた。 899 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 38 21.24 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「よって、その功績を称え…」 タイリクオオカミ「私の靴底のスタンプを贈ってあげようッ!!」グシャアアア MCチヘドロー「アギャァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」グシャベギボギ チヘドローの右肩が踏み潰された。 外出血はないが、間違いなく骨とともに神経も断裂しているだろう。 タイリクオオカミ「左もやってあげようか?」フミッ ブラウンPは、チヘドローの左肩を踏んだ。 タイリクオオカミ「もし、御手洗へ心から懺悔できるというなら、左腕の自由だけは残してあげてもいい」 MCチヘドロー「へ、へっ…!ワイはな…!こういう時、言うことは決めとったんや…!」ブルブル タイリクオオカミ「言ってみなよ」 901 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 43 19.43 ID KGM4iFdvO MCチヘドロー「あ…アヒャヒャ…!ID2番…!」 アライさん「…」ハァハァ MCチヘドロー「よーく覚えとけ。これから起こる事、全て!すべて…!」ハァハァ MCチヘドロー「お前が生きとったせいで、起こることやって事をなぁ!!!」 タイリクオオカミ「…」グイイッ MCチヘドロー「アアアアーーーヒャヒャヒャヒャヒャヒャーーーーッ!!!ち、チヘドロー死せども、アラ虐は死なz…」 タイリクオオカミ「楽に死ねると思うなッ!!!」グシャアアアアッ MCチヘドロー「うぐげぇャァアアアーーーーーーーッ!!!!」メシャボギゴギィィィ MCチヘドロー「」ドサァ …下腹部の損傷に加え、両肩を踏み潰されたチヘドローは… 激痛によって失神した。 905 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 47 25.20 ID KGM4iFdvO タイリクオオカミ「…会長、御手洗を頼む。後で落ち合おう」 会長「…分かったのです。また戻ってくるのです」ガシィ アライさん「…」ヒョイ 会長は、御手洗を背中に乗せると… 会長「御手洗。帰るのです」シュパァアアーーーーッ… アライさん「…」 …猛スピードで、上空へ飛び立っていった。 タイリクオオカミ「…さて…」 ブラウンPは、周囲を見回す。 周囲には、マフィア達の死体が転がっていた。 タイリクオオカミ「…」ピピポパ ブラウンPは、電話をし始める。 907 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 51 09.20 ID KGM4iFdvO ブラウンP「もしもし、警察か?私は、一連のマフィア構成員連続失踪事件の…誘拐犯であり」 ブラウンP「そして、彼らを殺傷した犯人だ」 ブラウンP「今私は、………にいる。まだ生きている怪我人もいるから、救急車をよこしてほしい」 ブラウンP「それから、………へ、拷問したマフィア構成員を監禁している。無傷で生きている者、重症を負っている者、身体機能の一部を失っている者、死亡した者。大勢いる」 ブラウンP「マフィアとて人間だ。至急、救助に向かってくれ」 ブラウンP「…そして、私は…」 909 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/22(金) 23 55 58.75 ID KGM4iFdvO ブラウンP「あなた達警察に投降する。目的である…誘拐されたフレンズ、アライグマID2番の救助が終わったからだ」 ブラウンP「………にいるから、私を逮捕しに来るといい。私は一切の拘束、刑罰を受け入れ、抵抗しない」 ブラウンP「…だが。私はフレンズ。人並みはずれた力を持った存在だ。するつもりはないが…手錠や牢獄を容易に破壊できる」 ブラウンP「もしもあなた達が、私を…。拘束不要なテロリストと思ったならば」 ブラウンP「現場ですぐに、私を射殺するといい」 ブラウンP「私は一切抵抗せず、あなた達の選択を受け入れる」 910 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 01 11.94 ID C/plAi9YO ブラウンP「だが、ひとつだけ言わせもらう」 ブラウンP「私が多くの命を奪ったのは…、彼らが先に、私の友人の命を奪おうとしたからだ」 ブラウンP「そして、あなた達が彼女を助けなかったからだ」 ブラウンP「かつて日本に出現したアライさん達含めて…、フレンズは決して、人間に自分から手は出さないんだ」 ブラウンP「自ら君たちへ危害を加えるビースト…獣ではない。君たちがフレンズを虐げない限り、フレンズは君たちにとって『友達』で有り続ける」 ブラウンP「…それでは、君たちの選択を待つ」プツッ ブラウンPは、電話を切った。 915 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 08 19.21 ID C/plAi9YO … ~上空~ 会長「…」ビュオオオオオオオオオオ アライさん「っ…」 御手洗の手足は既に消えていた。 会長「お前は密入国者ではないのです。お前は、誘拐されてイタリアへ強制連行されたのです」ビュオオオオオオオオオオ 会長「フランスの航空会社は、信用できるのです。必ずお前を日本へ連れ戻してくれるのです」ビュオオオオオオオオオオ アライさん「…会長は…日本に、来ないのか…?」 会長「…あいつを一人には、できないのです」ビュオオオオオオオオオオ アライさん「会長…?」 突如、会長は進路を変えた。 アライさん「のあっ…!」 会長「」ガシィ 会長が空中で何かを掴んだ。 カモメ「キュー!キュー!」ジタバタ …それは海鳥のカモメであった。 918 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 10 08.87 ID C/plAi9YO 会長「流石に腹が減るのです。もぐもぐ、ばりばり…」ムシャムシャ カモメ「グエエエ」ブシャアア 会長は、飛びながらカモメを貪り食った。 会長「もうすぐフランスなのです」ビュオオオオオオオオオオ … 会長は、御手洗を空港へ預け、 スタッフの手を借りて日本行きの便へ乗せると… …再び、イタリアへ戻った。 920 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 15 13.47 ID C/plAi9YO …犯行現場… ブラウンP「…」ギュッ 会長「…」ギュッ ブラウンPと会長は、手を繋いでいる。 ブラウンP「会長。…本当に、いいの?あなたなら逃げられる」 会長「…これで、いいのです」ギュッ ブラウンP「…」 やがて救急車が来て、チヘドロー含む生存者を救出していった。 警官達「…」ザッ ジャキッ 警官達が、銃を構えてブラウンP達の方へ近寄ってくる。 ブラウンP「…会長…」ギュッ 会長「…」ギュッ ブラウンPの手は、震えていた。 ブラウンP「私達が誘拐犯!そして殺人犯だ!」 ブラウンP「君たちの選択を見せろ!」 …警官達へ言い放った。 923 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 20 59.07 ID C/plAi9YO 警官「…連続殺人犯。これが、我々の答えだ」 警官達「…」ジャキィ ブラウンP「…」 会長「…」 ぱぁん、という激しい連続音と共に、警官達の銃撃が始まった。 ブラウンP達へ、連続で銃撃が浴びせられる。 ブラウンP「ぐ、うぅっ!!」ブシャアア 会長「きゃあああっ!」ブシャアア 野生解放どころか、サンドスターによる強化すらしていない肉体。 かつてブラウンPは、サンドスターによる肉体強化によって、アライキング・ボスのバール攻撃を無傷で防いだ。 しかしそれは、サンドスターの防御あってこその強さ。 自ら守りを捨てたブラウンP達の肉体は、銃弾によって容易に貫かれていく。 926 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 24 46.95 ID C/plAi9YO 警官「お前達は、『友人を助けなかったお前達も悪だ』とみなし、連行された先で警官達を皆殺しにするかもしれない」 警官「もしくは司法の場で暴れるかもしれない…」 警官「君たちの決意は理解した。ここで、大人しくなってもらう」 銃弾の雨霰が、無抵抗の二人の少女へ浴びせられる。 ブラウンP「」バスゥッ 会長「タイリク!!」 ブラウンPの額から、血飛沫が舞った。 ブラウンP「」ドサァ ブラウンPは倒れた。 会長の手を握ったまま。 会長「…はかせ…。お元気で、なのです…」ブシャアア 会長「」ドサァ 続けて、会長も地に伏した。 927 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 27 44.83 ID C/plAi9YO 警官達の射撃が止まった。 イタリア警官1「…」スタスタ イタリア警官2「…」スタスタ 警官2人が、地に伏した二人の少女の頭へ、銃を密着させた。 イタリア警官1「…」バァンッ 会長「」ブシャアア イタリア警官2「…」バァン ブラウンP「」ブシャアア …二人のフレンズは、手を繋いだまま… 頭部を破壊され、動かなくなった。 929 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 31 22.44 ID C/plAi9YO そして次は、二人の少女の左胸… 心臓の位置へ、銃口を密着させた。 イタリア警官1「…」バァン 会長「」ブシャアア イタリア警官2「…」バァン ブラウンP「」ブシャアア …二人の心臓の位置から、大量の血が溢れ出す。 イタリア警官1「…連続殺人犯2名の死亡を確認。これより、遺体を搬送する」 会長「」 ブラウンP「」 …二人のフレンズは、そのまま二度と動くことはなく… 搬送されていった。 933 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 37 33.55 ID C/plAi9YO こうして、事件は幕を引いた。 被害者の御手洗は、日本へ搬送された。 彼女はフランスの森へ逃げたのではなく、イタリアへ拉致されたと、正しく報道された。 ID2番亡命事件まとめwikiは、大勢の荒らしによって滅茶苦茶にされた後… …誰もアクセスしなくなった。 主犯のチヘドローは… 手術によって一命をとりとめたようだ。 しかし、睾丸だけでなく… 肛門や膀胱なども破裂。 人工肛門を取り付けることになった。 さらに、腕と脚の神経は回復の見込みが無いらしく、 自力では動けなくなった。 常に誰かの助けがなければ生きていけない体となったのだ。 そして取り調べでは、一連の事件は自分とマフィア達による犯行と主張。 長い禁固刑が下された。 控訴はしなかったようだ。 935 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 42 03.62 ID C/plAi9YO チヘドローとつるんでいたマフィア達は、重要な構成員が大量に死亡したため、 急速に規模を縮小させていった。 …というか、ファミリーは崩壊した。 マフィア達によって自由を奪われ、脅迫され、暴力を受け続けていた被害者たちは… …連続殺人犯の二名のフレンズへ、感謝の意を示し、弔った。 マフィア達が、一体誰に対し、臓器売買やフォアグライ販売をしようとしたのか…。 それは謎に包まれたままであった。 936 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 48 33.66 ID C/plAi9YO そして、会長とブラウンPは… エンバーミング(防腐処理)を施された後、 日本へ搬送された。 連続殺人犯とはいえ、死ねば仏である。 彼女達の葬式は、ひっそりと開かれた。 フレンズ達や、ブラウンPのファン達… 会長と生前繋がりのあった者達が、会場に収まり切らないほど大勢押し寄せた。 生命維持装置付きの車椅子に座った、『教授』と呼ばれるフレンズも。 ほんの少しの時間だけ、会場に姿を現した。 大臣は、人目をはばからずに泣いた。 棺の中の会長へ、何度も呼び掛けた。 「ミミちゃん、ミミちゃん」と。 しかし、骸が答えるはずもなく。 やがて、二人の少女は灰となり、黄泉へ旅立っていた…。 彼女達をその場で射殺したイタリア警察は、同情の声もあったが… それ以上に多くの非難が浴びせられた。 938 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 00 52 23.21 ID C/plAi9YO … ~ジビエ料理店『食獲者』~ 食通の友人「…」 食通の友人「ブラウンP。お前があの時、俺を喫茶店へ連れてきたのは…」 食通の友人「…俺に別れを告げるため、だったんだな…」 食通の友人「…」 食通の友人は、もう二度とお得意様の客にして、仲が良かった友人が店に来ないことを理解し… …静かに涙を溢した。 鬼の目にも涙、といったところであろうか。 939 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 01 01 27.58 ID C/plAi9YO 食通の友人「何が鬼の目にも涙、だよ。来てるんならそう言え」 ああ。いや… 珍しいものが見れたな、と思って。 食通の友人「…結局、ID2番は。亡命したんじゃなかったんだな…」 ああ。 俺含め、世間のやつらは皆、ID2番は社会の厳しさに我慢できず、 森に逃げたもんだと思ってたよ。 しかし実際蓋を開けてみれば、社会の厳しさに我慢どころか… …1ヶ月半にもわたる監禁生活を、正気を失わずに耐え抜いたそうじゃないか。 食通の友人「ひどい対人恐怖症になったらしいけどな」 無理もねえ。 俺だったら自殺してるかもしれねえ。 ID2番は、自殺の機会があったにも関わらず、しなかったらしいがな。 食通の友人「…対したもんだな」 …アライさん…。 奴らもまた、人間と考え方が違うだけで…、 れっきとしたフレンズなんだな。 食通の友人「今更かよ…。俺はそれを調理して、食ったり客に振る舞ってたんだぜ」 …だが。 野良の奴らは、純然たる人類の敵だ。 アラ虐とか関係なく、俺達の戦うべき敵であり… そして、滅ぼすべき災厄だった。 食通の友人「ああ、違いねえな」 …ID2番。 手足を失い、友人を喪い。 気の毒だが… …奴が災厄とならないことを祈ろう。 食通の友人「…」 940 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 01 02 14.94 ID C/plAi9YO つづく 国境の長い地獄を抜けると地獄であった アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引いた・Part1 へ戻る
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永続罠 自分のライフを半分払うことで、以下の効果から1つを選び適用する。 この効果はそれぞれ1ターンに2度までしか使えない。 ●自分のエクストラデッキから融合モンスター1体を 融合召喚扱いとして自分フィールド上に特殊召喚する。 この効果で特殊召喚したモンスターは 次の自分のエンドフェイズ時に破壊される。 ●自分のデッキからカードを1枚ドローする。