約 2,183,983 件
https://w.atwiki.jp/kenkyotsukaima/pages/19.html
謙虚な使い魔 所変わってここは魔法学院本塔の最上階に位置する学院長室 コルベールは連日ルイズが召喚した使い魔の左手に現れたルーンの事が気になって学院図書館で調べてものをしていた。 そこで発見したものを学院長のオールド・オスマンへ報告するために、 コルベールは先ほどまで調べていた書物『始祖ブリミルの使い魔たち』を手に、泡を飛ばしながらオスマン氏に説明していた。 「ふむ、それでその今年新しく召喚された使い魔のルーンが始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』のものであると、というわけじゃね?」 そういってオスマンは白いヒゲと髪を揺らして、コルベールに渡されたブロントの手に現れたルーン文字の写し書きをじっと見つめていた。 「そうです!あの青年の左手に刻まれたルーンは伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれれていたモノとまったく同じであります!」 「で、君の結論は?」 「あの青年は、『ガンダールヴ』です!」 オスマンはコルベールによって持ち込まれた『始祖ブリミルの使い魔たち』の1ページのルーン文字と写し書きのルーン文字を見比べていた。 「ふむ……確かにルーンが同じじゃ、ルーンが同じと言うことは、ただの平民だったその青年は、『ガンダールヴ』にでもなったと言うのかね?それだけで、そう決め付けるのは早計かもしれん」 「いえ……『ただの平民だった』、は少し正確ではありません。」 少しばつは悪そうにするコルベール。 「どういうことじゃ?」 「この事が学院中に知られるのは学院としても何かと問題になると思いまして隠してましたが・・・・・・」 「なんじゃ、もったいぶらずに言いたまえミスタ・コルベール」 辺りを見回し警戒し、コルベールは小さな声でオスマン氏に説明した。 「実はエルフなんです、彼」 「なんと!?『ガンダールヴ』のルーンの上に実はエルフじゃと?」 「ええ、確か大昔にあった『ガンダールヴ』の再来騒ぎではその者がエルフだったとかとも伝え聞いています」 「ふむ、500年程前のことじゃな。ただの偶然が重なりあっただけ、と言うわけでもなさそうじゃの。どうしたものかな」 オスマン氏は手で自分のヒゲをいじりながら考え込んだ。 その時ドアがノックされた 「誰じゃ?」 扉の向こうから女性の声が聞こえてきた 「私です、秘書のロングビルです。」 「なんじゃ?」 ロングビルと名乗った理知的で顔立ち凛々しい女性は『失礼します』といって学院長室に入室した。 「ヴェストリの広場で、決闘を始めた生徒がいるようです。大騒ぎになり始めています。止めに入った教師がいましたが、生徒達に邪魔されて止められないようです」 「まったく、暇をもてあました貴族ほど性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰がそんな事を始めておるのかね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ、おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」 「……それがメイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の青年のようです」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師達は、決闘騒ぎで怪我人が出るのを防ぐために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」 オスマン氏はしばらく考え、何か名案を思いついたのか目を鷹の様に光らせた 「アホか。退屈な学院生活で生徒達も刺激が欲しいんじゃろう、そんな事で一々秘宝を使ってどうするんじゃ。念のために医務室を用意しておくだけでいいわい」 「わかりました。では担当のメイジに伝えておきます」 そう言って部屋をでたミス・ロングビルの足音が遠ざかると、コルベールはつばを飲み込んで、オスマン氏を促した。 「オールド・オスマン」 「うむ、二つの要素が揃っただけではまだ偶然と言えるが、これで三つ目があるか確認できるの」 オスマン氏は壁にかかった大きな鏡に杖を振り、そこにヴェストリ広場の様子を映し出した。 ヴェストリ広場は日々の平穏とした学院生活で退屈していて刺激を求めて決闘の噂を聞きつけた生徒達で溢れていた。 その人ごみで出来た輪の中心にギーシュは薔薇の造花を同じく輪の中にいたブロントに向けた。 「もうきたか、思ったより早かったな。平民の癖に逃げずに来た事だけは少し認めてやろう。もっとも貴族の名を愚弄した事は許すつもりは無いがね」 そうギーシュが高らかと言うと周りも合わせて声を上げた。 「その生意気な平民の鼻へし折ってやれギーシュ!」 「腕の一本や二本折って自分のいる立場わからせてやれ!」 「いっそ殺して"ゼロ"のルイズが再召喚で魔法使えるかどうか見てやろうぜ!」 ブロントに向けられた様々な嘲笑の中に"ゼロ"と持て囃す言葉が幾つか入ってることを輪の外から聞いていたルイズは唇を噛み締めていた。 一方ブロントは自分の空の右手の感触を確認していた。 ブロントは多少の徒手空拳の格闘技術も鍛えた事があったがかつてヴァナ・ディールで共に冒険したことがある、 己の肉体を鋼とし戦う仲間のモンクの格闘技術と比べれば半分程度の格闘技術であった。 更に両腕と足を素早く繰り出すのが本領である格闘では、重量のある板金鎧や腕の動きを制限する盾は最良の装備とは言えなかった。 だが、ブロントがもっとも得意とする剣どころか他の武器も持ち合わせていないのであれば、現時点のブロントは消去法で自分の拳を武器として選ばざるえなかった。 もっとも、ギーシュの様なひ弱そうな気障男相手に遅れを取るつもりもブロントには無かった。 「それでは始めるか、使い魔君。剣の一本も持たずその飾りの盾だけでメイジを相手にしている事を後悔していてももう遅いがね!」 ギーシュは手に持った薔薇を振りかざすとそこから一枚の花びらが宙に舞い、それが広場の地に付いた瞬間―― 甲冑を着た女戦士の形をした人形になった。 「おいィ?タイマンだと言っていたがそれくらいも出来ない卑怯者はマジでかなぐり捨てンぞ?」 「言い忘れたな、僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。そして僕はメイジだ。だから魔法で戦う。従って僕の魔法によって作り出された青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 ブロントは盾を前の掲げ、拳を握って右手を腰にためた時、同時にギーシュのワルキューレがブロントに向かって突進した。 ワルキューレが右の拳を振りかぶると同時にブロントは左の盾でワルキューレの拳を受け止めると金属同士がぶつかる大きな音が広場に響いた。 ぶつかった衝撃で仰け反り下がるワルキューレをブロントは目で追った。 (なんだ練習相手にもならないか) 先ほどの衝突でそう感じたブロントは半人前の拳でもこのワルキューレに通用すると判断し、カカッっとワルキューレとの距離を詰める様にして駆けた。 ギーシュが薔薇を薙ぎ払うとワルキューレは再度拳を振り上げた。 その拳が突き出る前にブロントはワルキューレの動きを止める牽制として左手の盾でワルキューレを強打した。 盾を振り抜くほんの一瞬、ブロントは盾を持った手の篭手から光が漏れ出すのを見た。 「ああ!?僕のワルキューレが!?」 ギーシュはワルキューレに再度殴らせかけた時、ブロントが神速とも言える速さで盾を振りぬいていた。 そして金属が破裂する音と共にワルキューレの上半身が丸ごとバラバラに砕け、吹っ飛んだ。 飛び散った青銅の欠片が傍観していた生徒達に降りかかった 「破片が飛んで危ないだろ!ちゃんと真面目に生成しろ!」 「ギーシュ!そんな平民に手加減なんてしてやらなくてもいいぞ!付け上がるだけだ!」 事に気が付いていない観衆は不甲斐ない姿を現したギーシュをからかった。楽観視している周りと違いギーシュはかなり青ざめていた。 下半身だけ武器を持たせなかったとは言え、ギーシュのワルキューレは『青銅』の名の通り、それなりな頑強さを与えられ作られていた。 ラインクラス以上のメイジの魔法ならいざ知らず、平民程度相手にそう無様にワルキューレは破壊されないのである。 (そうか!あの綺麗に飾られた盾はマジック・アイテムか!だから武器も持っていないのか!ならば盾を封じれば……) ギーシュは冷たく微笑み再度薔薇を振るうと今度は一度にそれぞれ武器をもった六体のワルキューレを生成した。 「まずは、誉めよう。ここまでメイジに楯突く平民がいることに、素直に感謝しよう。だから僕も本気で行かせて貰う!」 すると前二体のワルキューレがブロントに向かい同時に突進した。 「そういうお前はかかってこないのかよ―」 ブロントの言葉を無視するように、続けざま一体のワルキューレが槍を持って距離を取りながら、ブロントの盾を誘うように左側をなぎ払った。 ブロントがそれに反応して盾で薙ぎを受け止めるのを確認したと同時にもう一体がメイスでブロントの右側から襲い掛かった。 ガシィン! 振りかぶられたメイスがブロントの肩に添える所で止まり、ワルキューレの頭部にはブロントの右手が突き刺さっていた。 「―見ろ、見事なカウンターで返した」 そう言うと同時にメイスを持った一体のワルキューレは200サント程浮き上がり、人の形をした只の青銅となって地面にぐしゃと音を立てて衝突した。 ギーシュは言葉も無く呆然としていたが、同時にブロントも内心驚いていた。 盾を振るった時からブロントの体は羽の様に軽く感じ、それに拳を握るその右手は幾戦と格闘をし続けた者の技術が染み付いた様に感じ取られた。 体が自然とワルキューレの攻撃に合わせカウンターを放っていた。そしてヴァナ・ディールで見てきたモンクの仲間の技を自分自身が繰り出す様を容易にイメージできた。 「普段ではナイトだが今ではモンクタイプ。俺普段で100とか普通に吹き飛ばすし」 周りの生徒達や騒ぎに駆けつけてきた平民の使用人達が騒ぎ出した 「おい!あの平民、素手でギーシュのゴーレムをぶっ壊したぞ!?」 「さっきの一体目はギーシュが手加減していたんじゃなかったのか?」 「凄いぞ!アイツ貴族の魔法と対等に渡り歩いている!」 そこへブロントが一喝入れた。 「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り」 その迫力に観衆が一瞬にして黙った。 その間我を取り戻したギーシュは必死が鬼になって叫んだ。 「ワルキューレ!」 薔薇を振るうとギーシュを守る陣形を取り待機していた内一体を残して、三体を前に加わて合わせて四体のワルキューレでブロントに攻撃を加えた。 一斉に迫り来るワルキューレに対しブロントは守りを固め、一切のスキを作らなかった。盾で攻撃をいなし、右手で剣撃を払った。そして避けきれぬ攻撃は鎧の強固な部分で受けとめ耐えた。 形振りを構わなくなったギーシュはブロントに手を出させてはいけないとワルキューレに一定の距離を保ちつつブロントを囲みワルキューレに攻撃を続けさせた。 「平民の癖によくも貴族に対し歯向かったな!こうしてしまえば手も出せないだろう!」 「見苦しいし何も進展性がないのでおれは怒りが溜まってきてる」 「ふん、攻撃受けながらそんな減らず口がまだ叩けるとは、この狂犬はまだ教育が足りないと見て僕も用心してこのまま続けさせてもらうよ!」 長得物を持ったワルキューレをブロントの前面に配置して、ブロントの両手を抑える様に攻撃をしながら、 剣やメイスを持ったワルキューレでブロントの背後から牽制していた。 ようやく人ごみを掻き分けてこれたルイズは震え泣きそうな声になってブロントに叫んだ。 「ブロントもういいわアンタはもう良くやったから!私の名前なんてもういいから大怪我する前に早く謝って!これ以上絶望的な戦いは続けないで!」 「それほどでもない」 ブロントは一瞬ルイズに向かい微笑みかけて鎧をカチャと軽く鳴らしてまたワルキューレの攻撃を受け続けた。 「そうは粋がっても防御に専念するしかないな!凄い一撃は持っているみたいだが攻撃でそれを押さえ込んでしまえばなんて事は無い!さて、一体いつまで持つかな?ハハハ!」 ギーシュが高らかと笑った。そしてその言葉に答えるかの様にブロントは言った 「攻撃を最大の防御と言う言葉はあまりに有名」 その瞬間、ブロントは体勢を低く取り、右手を引き込み、体を捻らせた。そしてブロントの頭の中ではモンクの技の一つの姿が鮮明に映し出された。 「スピんアタッコォ!」 叫ぶと同時にブロントは捻ったゴムがとき離れた如く、 胴を回転させながら握り締めた拳で地面を抉り、右手でアッパーカットを突き上げて『スピンアタック』を繰り出した。 すると、ブロントを中心に土砂と共に四体のワルキューレが同時に空に舞い上がり、そのままワルキューレ達はバラバラと降り落ち、地に突き刺さった。 自分のゴーレムがただの鉄くずとなって崩れるのを見て、ギーシュは声にならないうめきをあげた。 そしてブロントがゆっくりとガチャ、ガチャ、と鎧を鳴らして歩み寄った。 「お前メガトンパンチでボコるわ・・」 「ひっ!」 咄嗟にギーシュは最後の一体のワルキューレの影に隠れた。 「ヘイ気障野郎!いつまでママのスカートに隠れるんだい?」 ブロントがそう挑発するとガコン!という音と共に最後のワルキューレもブロントの盾の強打によって遠くに吹き飛ばされた。 ギーシュは腰が抜けペタンと地面に座り込んだ。 「わ、わかった。ま、まいった…」 「地位と権力にしがみついた結果がこれ一足早く言うべきだったな?お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」 ブロントはギーシュの襟首を左手で持ち上げて無理やり立たせた。 「俺は今からシエスタを脅した分、ルイズを"ゼロ"と呼んだ分、そして俺個人的な分で合計三発入れるんだが」 そういって右手をギリリッと握り締めてみせた。 「そ、そんな!」 「仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ」 『おい、ギーシュが負けたぞ!』とか、『あの平民、やるじゃないか…っておい誰か止めろ!』とか、 『俺に言うな!あの使い魔の相手はしたくない!』とか、見物していた連中から悲鳴の様な歓声が届いた。 その先何が起きたかはギーシュは良く覚えてはおらず、気が付いた時にはそのまま数日間学院の医務室で栄養食を食べるハメになっていた。 ただギーシュの心にしっかり刻まれたのはブロントの恐ろしさと『ホトゥケ』と言うとても顔面が頑丈な存在がこの世にいるらしいとの事だった。 一方、オスマン氏とコルベールは『遠見の鏡』で決闘騒動の一部始終を見終えると、顔を見合わせた。 コルベールは震えながらオスマン氏の名前を呼んだ。 「オールド・オスマン」 「うむ」 「あのエルフ、魔法も使わず勝ってしまいましたが…」 「うむ」 「ギーシュは一番レベルの低い『ドット』メイジですが、魔法も使わない相手に後れをとるとは思えません。そしてあの動き!素手で魔法のゴーレムを蹴散らすなんて見た事もない!まさに『ガンダールヴ』が現代に蘇ったんです!」 「ミスタ・コルベール。『ガンダールヴ』はただの使い魔ではない」 「そのとおりです。始祖ブリミルの用いた『ガンダールヴ』。主人の呪文詠唱の時間を守るために特化した存在だと伝え聞きます。そして500年前の『再来』時はエルフの姿をしていたと言われる以外にその姿形に関する記述ありません」 「そうじゃ。始祖ブリミルは、呪文を唱える時間が長かった……その強力な呪文ゆえに。知ってのとおり、詠唱時間中のメイジは無力じゃ。そんな無力な間、己の体を守るために始祖ブリミルが用いた使い魔が『ガンダールヴ』じゃ。その強さは……」 「千人もの軍隊を相手に一人で主人を守りきる程の力を持ち、あまつさえ並のメイジではまったく歯が立たなかったとか!」 「で、ミスタ・コルベール」 「はい」 「そのエルフはなぜ先ほど先住魔法の一つも使わなかったんじゃろうか」 「はい、召喚した際に平民として振舞った方が学院で生活する上で面倒事が避けられると思い、そうする様に私が言って置いたからだと思います」 「そんな制約を自らにかけてもあれほど強いエルフなんて化け物を、現代の『ガンダールヴ』にしたのは。誰なんじゃね?」 「ミス・ヴァリエールですが……」 「彼女は、優秀なメイジなのかね?」 「いえ、努力家ではありますが、実際にメイジとしては無能というか……」 「さて、その二つの要素が一緒なのは実に不自然じゃ」 「ですね」 「無能なメイジが召喚した使い魔が『武器』も『魔法』も無くメイジ相手に戦い抜いてみせたとてもとても強力なエルフの『ガンダールヴ』。まったく、謎じゃ。理由が見えん」 「どうしましょうか……王室に報告するのも些か問題が多すぎると思いますが」 「そうじゃの、王室のボンクラどもに『ガンダールヴ』とその主人を渡すわけにはいくまい。そんなことすればいい戦道具を手に入れた、とまたぞろ戦でも引き起こすじゃろうて。それでなくともエルフを輩出したとして学院が異端審問を受ける事になるか、アカデミーの連中に珍しいエルフの実験材料として主人共々連れて行かれるじゃろう。」 「ははあ。学院長の深謀には恐れ入ります。」 「この件は私が預かる。使い魔がエルフであると言う事はくれぐれも他言は無用じゃ。」 「は、はい!かしこまりました」 オスマン氏は杖を握ると窓際へと向かった。遠い歴史の彼方へ、思いを馳せる。 「始祖ブリミルの伝説の使い魔『ガンダールヴ』か……。いったい、どのような姿をしておったのだろうなあ」 コルベールは夢見るように呟いた。 「始祖ブリミルが用いた『ガンダールヴ』は、あらゆる『武器』を使いこなし、敵と対峙したとありますから……」 「ふむ」 「とりあえず腕と手は八本ほどはあったんじゃないでしょうか?」 「なんじゃ?その無数の手で伝説の剣を集めていたとでも言うのかね?」 「いえ……なんでもありません……」 コルベールはばつが悪そうに頬を掻いた。 第5話 「落とし主は誰だinトリステイン」 / 各話一覧 / 第7話 「グルメな人々」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5765.html
前ページ次ページゼロと波動 「行け!ワルキューレ!!」 ギーシュが薔薇の造花を振るとともに、ワルキューレがリュウに飛び掛る。 青銅製の右の拳がリュウを襲う。 「ふんっ!」 襲い掛かるワルキューレの右の肘の辺りを左手で内側に払いのける。 力の方向を変えられたワルキューレの拳は虚しく空を切り、その勢いで身体も内側に半回転する。 リュウが左足を半歩前にずらし、重心を前に移すだけでワルキューレはリュウに対して完全に横を向いた状態になってしまった。 リュウはすかさず右の拳でワルキューレの腹を、弧を描くように打ち据える。 ボゴンッ!! 尋常でない大きな音と共にワルキューレの腹にめり込む拳。 目にも留まらぬ速さで拳を引き抜くと、続けざまに左の拳を、同じく弧を描くようにワルキューレの背中に打ち込む。 ドゴンッ!! 再び大音響と共に背中にめり込む拳。 左手も引き抜くと、右手でワルキューレを押して距離を作りながら右の爪先を軸にして踵を前に出す。 「ふんっ!!」 左足が大きな円を描きながらワルキューレの首を背後から捉える。 ギチャッ!! 激しい音と共にワルキューレがもんどりうって倒れる。 一連の動作が終わるまでに一呼吸の間さえなかった。 目で追うことすらままならない雷光の攻撃。 先ほどまで口々に騒いでいた野次馬たちは一瞬で静まり返り、倒れたゴーレムに視線を落とす。 倒れて動かなくなったゴーレムを見てみると腹と背中が大きくへこんでいるし、首から上もおかしな方向に曲がっている。 「嘘だろ・・・いくら青銅が硬くはないとはいえ、金属には違いないんだ・・・殴っただけでこんなになるものなのか?」 野次馬の誰かが呟いた。 中が空洞のゴーレムとはいえ、装甲自体もそれなりに厚さはある。 人間が殴ったところで、へこむはずがないのだ。 静寂の中、リュウが告げる。 「もう一度言う。本気でかかってきたほうがいい」 リュウは拳を握り締めた。 「何よ、メチャクチャ強いじゃない・・・」 拍子抜けしたように杖をしまうキュルケ。 リュウが本格的に危なくなったら援護しようと思い、親友のタバサを無理やり引き連れて身構えていたのだが、どうやら徒労だったようだ。 「全然本気だしてない・・・」 タバサが呟く。 先ほどまでは本から一切目を離さなかったタバサだが、リュウが身構えてからはずっとリュウを凝視している。 「あなたが本以外に興味を示すなんて珍しいわね」 ルイズよりも更に小柄な青い髪に青い瞳の少女――タバサは決闘が始まってからじっとリュウを観察していた。 「あの人・・・強い・・・」 「くっ!」 あっさりと倒されたワルキューレを見て、慌てて次のワルキューレを練成するための呪文を唱える。 「ならば、これでどうだっ!」 今度のワルキューレは2体。それも、それぞれ手に青銅製の長剣を携えている。 「続けっ!ワルキューレ!!」 号令と共に同時に襲いかかる。 自分の頭めがけて長剣を振り下ろしてくるワルキューレの懐に一瞬で潜り込むと、振り下ろされる剣を持つ腕を掴むリュウ。 太い腕が更に膨れ上がり、血管が浮かびあがる。 同時にミチミチッという鈍い音と共に指が青銅に食い込んでいく。 ワルキューレは腕を振りほどこうともがくがリュウの腕は微動だにしない。 リュウは身を沈めると、腕を掴んだまま自分の肘をワルキューレの脇の下にあてがい、背中に担いでもう一方のワルキューレに向けて投げつけた。 ガチィンッ!! 青銅同士がぶつかる激しい音と共に、2体のワルキューレは互いを潰しあう形になり、またもや動かなくなってしまった。 リュウは静かに構え直すと、再びギーシュを見据える。 ギーシュを射抜くその瞳には、激しく、熱く、眩しいほどに強い光が浮かんでいた。 「そんな・・・馬鹿な・・・」 がっくりうなだれるギーシュ。 力なく降ろされる杖。 目の前で起こったことが信じられなかった。 青銅製のゴーレム3体を苦戦すらせずに、それも素手であっさり破壊するという信じられない光景にギーシュは取り乱しそうになる。 が、なんとか正気を保ち必死で思考を巡らした。 相手は魔法も使えない、ただの平民じゃないか・・・ その平民相手に何で貴族の僕が苦戦しなければならないんだ。 ・・・いや、違う。 貴族とか平民とか、そんなことは関係ないな。 間違いない、彼は強い。 それも、信じられない程に、強い。 多分、自分が何体ワルキューレを練成しようとも、正面からでは彼には勝てない。 しかも、今の僕の実力で練成できるワルキューレは後4体だけ。 4体だけで勝てるか? いや、勝てるワケがない。 ならば降参するか? ・・・いや、諦めるな。 僕は軍人の家系、グラモン家の人間なんだ・・・ 負ける訳にはいかない。 勝たなければならない。 それは相手が平民だからではない。 僕がグラモン家の人間だから・・・いや、それすら違うな・・・ 一人の男として、あの尋常ではなく強い男に出来得る限りの力をぶつけてみたい。 そして、勝ちたい。 いや、勝ってみせる・・・!! この4体であの化け物のような男をなんとかするんだ。 なんとかしなければならない。 ならば考えるんだ。 きっと策はある。 ・・・考えろ・・・考えるんだ僕・・・ ギーシュの顔つきが変わった。 瞳にはこれまでとは違う、強い意志の光が浮かぶ。 それは今までのような相手を小馬鹿にした、見下ろすような目ではなく、 自分よりも遥かに巨大なものに挑む者の目。 挑戦者の目だった。 一度は力なく降ろした杖を再び構え直すと、油断なくリュウを睨みすえる。 ・・・良い面構えじゃないか・・・ リュウは穏やかな気持ちでギーシュの変化を見つめていた。 甘やかされて育った、傲慢で我侭な子供だった顔はそこにはもうない。 一人の戦士の顔が、そこにあった。 そういえばオロの爺さんが言ってたが・・・ 俺には、相手に知らず知らずのうちに100%以上の力を引き出させる力があるんだっけな・・・ リュウは決めた。 「手加減はせんぞ」 真紅のハチマキを締め直すと宣言する。 本物の戦士相手に手加減するなど、侮辱以外の何物でもない。 一方ギーシュはそんなリュウの一挙手一投足を細かに観察し、必死に考えていた。 なんでもいい、とにかく、少しでも情報を得て、戦果に繋げてやる。 そして、認められたい。 この途轍もなく大きくて強い男に、認めてもらいたい・・・ 「この俺を、倒してみろ」 新たに構え直すと、リュウの雰囲気がこれまでと明らかに変わった。 全身から目に見えない圧力――プレッシャー――のようなものが溢れ出し、ギーシュを圧倒する。 ともすれば押し潰され、気を失いそうになる。 ギーシュはその途方もないプレッシャーに必死で耐え、リュウを中心にじりじりと円を描くように回る。 リュウを中心に半円ほど回ったあと、突如ギーシュがリュウに向かって走り出した。 どんどんリュウに近づく。 リュウから発せられるただならぬ圧力と、それにも関わらずリュウに向かって走っていくギーシュに 周りの野次馬たちから「やめるんだ!」とか「殺されるぞ!」と静止の声が飛ぶ。 だがギーシュは止まらない。 もうあの男の射程圏内かも知れない。 今あの男が青銅すら軽く粉砕する拳を振れば、僕の身体には簡単に風穴が開くだろう。 顔を殴られたらあまりいい死に顔ではなくなるな・・・ いや、それ以前に首から上が消し飛ぶかな。 まるで他人事のようなことを考えながらリュウに向かってただひたすら走る。 まだ止まらない。 もう少し・・・もう少しなんだ・・・ ギーシュは必死に走る。 そして、走りながら呪文を唱えるとリュウの目の前でついに薔薇の造花を振った。 「ワルキューレよ!!」 ・・・・・・ だが、リュウの目の前には何も現れない。 ギーシュの杖が、ただリュウを指すだけ。 「そんな・・・走りながらで呪文を間違えたのか!?」 愕然とするギーシュ。 「闘いの最中に慌てるのは良くないな・・・」 リュウが拳を固め、ギーシュに狙いを定める。 そのとき、リュウの背後から青銅の剣が振り下ろされた。 ワルキューレは練成できていたのだ。 ただし、リュウの真後ろに。 ギーシュは自分の作戦が成功したと悟った。 リュウの視界の中にいたのではワルキューレに勝ち目はない。 だが、後ろからならば流石にかわせまい。 後ろから不意に切りかかるなど多少卑怯な気がしないでもないが、今の自分にこれ以上の策は思いつかない。 ただ、その為にはリュウに近づかなければならなかった。 錬金は自分の目の前でしかできないのだ。 そのために、まず自分の足元に花びらを1枚落としてからリュウの反対側まで移動した。 そしてリュウに近づく。 リュウの後ろにワルキューレを練成できるギリギリの距離まで走った。 桁外れた殺傷能力を誇る上にただならぬ圧力を撒き散らすリュウに近づくのは正直生きた心地がしなかったが、 勝てる可能性があるのはこの方法だけに思えた。 もし失敗して死んでしまったとしても、まあ仕方ないか。 ぐらいにまで覚悟はできていた。 だが、その覚悟は功を奏し、今、リュウ目掛けて剣が振り下ろされている。 しかし、リュウはまるで最初から解っていたかのように身体をずらして剣を避けると後ろに向かって蹴りを放った。 ――ギーシュが造花を振るとき、俺の目の前ではなく、俺の背後を見ていた。 先ほどの3体は常にギーシュの視線の先に出現していた。 つまり、次に出現するのは自分の後ろ。―― そしてギーシュの瞳に歓喜の色が浮かぶ。 今、まさに銅像は自分を襲っているはずだ。 そこに右の足刀を叩き込む。 ガボンッ!! 大音響と共に右足がワルキューレの胴体を貫く。 が、ワルキューレは自分の胴体が貫かれたまま自分の両腕両脚を使ってリュウにしがみつく。 「今だ!!行け!!ワルキューレたち!!」 ギーシュは叫ぶと再び杖を振った。 杖に残っていた3枚の花びらが、リュウの目の前でワルキューレとなり出現する。 しがみつかれて咄嗟に身動きの取れないリュウに襲い掛かる3体のワルキューレ。 2段構えの策だった。 最悪、後ろからの攻撃を避けられてもその1体でなんとかリュウの動きを封じることさえできれば、残り3体のワルキューレで一斉攻撃ができる。 そしてリュウは都合よくワルキューレを足でぶち抜いてくれたのだ。 ここまで密着してくれれば、いくら人間離れした力とはいえ、ほんの少しの間ぐらいなら動きを封じることも不可能ではない。 「勝った!!あの男に勝ったぞ!!」 ワルキューレたちの剣が今まさにリュウに届かんとした刹那・・・ ―――― 滅 ―――― 突如、リュウの身体からこれまでとは比較にならないほどのプレッシャーが噴き出した。 それはあまりにも明確な殺気。 遍く全てを死に至らしめる負の波動。 自分が目指す”真の格闘家”への道の上で、最大の壁であった ”拳を極めし者”がその身に纏っていた”殺意の波動”と呼ばれるもの。 その入り口程度までならなんとか飼いならせるようになった、悪鬼羅刹のごとき力。 あまりにも濃厚な禍々しい殺気にリュウの周りが一瞬暗くなったような錯覚を覚える。 自由に身動きできなかったはずのリュウが、しがみついているワルキューレを何事もなかったかのように自分の身体から剥ぎ取る。 紙のように簡単に破り裂かれる青銅製のゴーレム。 そして、迫りくる3体のワルキューレに向けて刹那の間に放たれる無数の拳。 ――― 一瞬千撃 ――― 何十とも何百とも知れない無数の拳を受けた3体のワルキューレは最早人形の形すらしていなかった。 そして最後の一発がギーシュの目の前、鼻先1サントで止められる。 と、同時に辺りを支配していた暴風雨の如き殺気も霧散する。 「おおおおおっっ!!」 静まり返っていたギャラリーたちから大歓声が起こる。 「平民が勝ちやがった!!」 「ギーシュ!情けないぞ!」 「じゃあお前ならあの平民に勝てるのか?」 「勝てるに決まってるだろ!相手は平民だぞ!」 「そうかな?僕には勝てる気がしないなぁ」 平民に負けたギーシュを非難するものもいれば、 多少理性のあるものはギーシュでなくともあの平民に勝つのは至難の技だと知り、ギーシュを庇う者もいる。 キュルケやタバサも後者だった。 もっとも、ギーシュを庇うようなことは言わないし、思いもしないが。 「タバサ・・・今の最後の見た?」 「見た」 「貴女ならあれが何か解る?」 「・・・解らない」 ふるふると首を振るタバサ。 幼くして数多の死線を乗り越えてきたタバサにも、今しがた何が起こったのか理解できなかった。 ただ、尋常ではない殺気が突然あの男から膨れ上がった。 あの殺気は常軌を逸したものである。 解ったのはそれだけ。 「気になる・・・」 誰ともなく呟いたタバサはしばしリュウを見つめたあと、再び本に視線を落とした。 再び本を読みふけりだしたタバサを見て、これ以上何を聞いても無駄だと思ったキュルケは肩をすくめるのだった。 本当に一瞬の出来事だった。 ギーシュには何がおこったのか全く解らない。 ただ自分の作戦はまったく通用しなかったのだということは理解できた。 「ま・・・参った・・・降参だ・・・」 花びらを全て失った杖を手放し、がっくりと項垂れるギーシュ。 真剣だった。 生まれて初めて、心の底から勝ちたいと願い、その為ならどんな犠牲を払っても、 たとえ死んでも構わないとまで思った。 だけど・・・ 「ここまで次元が違うと、もう悔しくもないね・・・」 顔を上げると、笑顔で努めて明るい口調で語った。だが顔は蒼いし、目には涙が滲んでいる。 「いや、そんなことはない。いい勝負だった ”殺意の波動”を使わなければ危なかったかもしれないしな。あれはいい作戦だった。」 優しく声をかけるリュウ。 ”かも”ね・・・ 苦笑いしながらそれを聞き、同時に疑問も浮かぶ。 「サツイノハドウ??」 まだ蒼い顔をしたまま首をかしげるギーシュ。 「ああ、最後に使ったやつのことだ。俺の取って置きの技みたいなもんだ。 使うつもりはなかったんだがな、そうも言っていられなかった」 「そうか・・・僕は君・・・いや、貴方にほんの少しぐらいは本気を出させることができたんだね・・・」 リュウの言葉が自分を思いやってのものだとは判っていたが、それでも多少は救われる。 きっと、本当は”サツイノハドウ”など使わなくとも勝てたのだろう。 死ぬことすら覚悟して戦ってみて実感した。 この男の強さは常軌を逸している。 自分がドットメイジだからとか、そういう問題ではない。 なんというか、人間の範疇を超えているとしか表現のしようがないのだ。 それほどまでの強さを持ちながら、それでもわざわざ”サツイノハドウ”とやらを使ってくれたのだ。 リュウの心遣いが嬉しかった。 「今はまだ俺の方が強いかもしれないが、君は若いし、それに戦う男の顔をしている。そのうち追いつくさ」 リュウは笑顔で右手を差し出し、付け加えた。 「少しずつ強くなっていく、それがいいんだ」 ギーシュも右手を出そうとして・・・汗でドロドロの自分の右手に気づくと、自分のド派手なシャツが汚れることも気にせずゴシゴシと拭いてからリュウの右手を握った。 そして、全てを包み込むようなリュウの右手に、ギーシュは一生かかっても 強さ共々、この男の大きさには追いつけないと思うのだった。 「ちょっと!!どういうこと!?」 ルイズが半べそで叫びながらリュウに駆け寄る。 「何がだ?」 「ドットとはいえ、ギーシュはメイジなのよ?それなのにあんなにアッサリ勝っちゃうなんて、アンタ何者なの!?」 先ほどまではちょっと変わったただの平民だと思っていた。 だからギーシュに殺されると思い、本気で心配したのだ。 いざとなったら無理矢理にでも間に入って決闘を阻止するつもりだった。 それが蓋を開けてみればどうだ、あの強さは・・・戦う様などまるで鬼神ではないか。 「ただの格闘家さ」 涼しい顔で答えるリュウ。 「答えになってないわよ!!」 「ええと・・・ちょっといいかな」 ギーシュが遠慮がちに二人の間に割って入る。 「何よ!?まだなんか文句あるわけ!?」 「文句だなんて滅相もない、キミのことをゼロと罵ったことを謝ろうと思ってね・・・」 「え?」 「それに、君の使い魔をみすぼらしい物乞いだなどと蔑んでしまった。心底、自分を恥ずかしいと思うよ。本当にすまなかった。この通りだ」 「え?え?」 深々と頭を下げるギーシュに困惑するルイズ。 いつまでも頭を下げているギーシュ。 それにどう声をかけていいのかわからないでいるルイズだったが、リュウに背中を優しく押されて慌てて口を開く。 「べ・・・別にいいわよ。そんなこと。今度からは気をつけてよね!」 「そうかい、ありがとう。早々だけどこれで失礼するよ。あと3人に謝らないといけないからね」 恥ずかしそうに告げるとギーシュはその場を後にした 滅多に見れない一大イベントも終わり、野次馬たちも徐々に去っていく。 貴族の前に出ることなど出来るはずもなく、それまで後ろの方でハラハラしながら見ていたシエスタはようやくリュウのそばに辿り着くと、そのまま抱きついた。 「リュウさん!すごい!!すごい!リュウさん!!」 満面の笑顔でリュウの胸板に顔を擦り付けるシエスタ。 彼女の大きな胸も否応なしにリュウに押し付けられる。 どうしていいかわからず、苦笑いを浮かべるリュウ。 「なっ!?」 ルイズの額に青筋が浮かぶ。 「ちょぉぉぉっっっとぉぉぉっ!何してんのよっっ!」 リュウからシエスタを引き剥がそうとするがびくともしない。 「だって!リュウさんが無事で嬉しいんですもんっ!」 怪力メイドパワー全開のシエスタを引き剥がすには、ルイズはあまりに非力過ぎた。 さっきも思ったけど、何?使用人って皆こんなに力が強いものなの!? 毎日肉体労働やってるのは伊達じゃないってわけね・・・ そもそもコイツ、わたしがさっきから引き剥がそうとしてることに気づいてるのかしら? ・・・行動で解らないなら言って解らすまで。 「アンタ!!貴族に逆らう気っ!?」 貴族という言葉を聞いて「はっ」とするシエスタ。 慌ててリュウから離れる。 「も・・・申し訳ありません!!その・・・あまりに嬉しくてつい・・・」 ひたすら頭を下げるシエスタ。 「まあ、リュウを心配してくれてたみたいだから、今回は見逃してあげるわ。でも、次はないから覚えときなさい」 ゼェゼェと肩で息をしながら告げる。 シエスタは「ありがとうございます!」と嬉しそうに言うと、深くお辞儀をしてからパタパタと走り去っていった。 あ・・・今あのメイド、スキップした・・・ ルイズはなんとも複雑な気持ちでメイドを見送るのだった。 騒動も一段落し、授業を受けるため、教室に向かうリュウとルイズ。 「あのメイドとはどういう関係なの!?やけに仲良さそうじゃない!っていうか、いつ知り合ったのよ!」 「ああ、洗濯する場所を教えてもらったり、飯を都合つけてくれたりな。 彼女にはいろいろと世話になりっぱなしだ。何か、彼女の力になれればいいんだけどな」 飯の都合・・・思い出した! 決闘騒ぎで完全に頭から離れていたが、自分はリュウを怒らせたのだった。 謝らなければ・・・でも本人も怒ってないみたいだし、何もなかったように振舞っても・・・ いや、それはダメだ。 これはケジメなんだ、ちゃんと謝らないと。 「ちょ・・・ちょっと、リュウ?」 「なんだ?」 爽やかな笑顔を向けるリュウ。 うう・・・謝りづらい・・・ 元々人に頭を下げるなど殆どしたことのないルイズにとって、謝るという作業はなかなかに難しいものだった。 「あ・・・あのね!ご・・・ご・・・ごごごごめごめごめゴメ」 ダメだ・・・たった一言ゴメンナサイと言うだけなのに、言葉が出ない。 「ん?」 ルイズの発する謎の呪文にいぶかしむリュウ。 「ご・・・ゴメス!!」 「誰だよ・・・」 何言ってるんだわたし!?リュウが気味悪がってるじゃない! 「じゃなくて!ご・・・ごご・・・合格よ」 「ん?」 「わわわわたしの使い魔として、ごごご合格って言ってるの。ご主人様を守るには、十分ってことよ!」 だあああああっ!違う!言いたいのはそんなことじゃない!! 心の中でブンブンブンと頭を振る。 「そうか。それは何よりだ」 リュウは優しい。メイジをものともしないほど強いのに怒るでもなく、わたしを受け入れてくれる。 わたしもそれに応えなければ・・・ ルイズは意を決した。 「・・・それと・・・めん・・・さい・・・」 消え入りそうなルイズの声。 「ん?」 聞き返すリュウ。 「ごめんなさい・・・次からは、食事のとき、ちゃんと私の隣に席を用意するから・・・」 下を向いて弱々しく謝るルイズ。 「そうか」 リュウは笑顔でルイズの頭に手をおき、桃色の髪をクシャクシャと撫で回した。 先ほどの恐ろしいまでの破壊力を秘めた手と同じとはとても思えない、大きくて暖かな手だった。 前ページ次ページゼロと波動
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3915.html
前ページ次ページゼロの騎士 なにが起こった? トリステイン魔法学校二年ギーシュ・ド・グラモンは焦っていた ギーシュは二股がばれ メイドに罵声をあびせ そのメイドを庇った男と決闘をすることになった 娯楽に飢えていた貴族の子弟達にとって恰好のイベントとなり、集まった人だかりの前で高らかに決闘を宣言 ところが相手は杖を使わないという 男がメイジではなかったことにギーシュは安堵した 決闘開始と共に一体の青銅でできたゴーレムを作り出す それに対し男が困惑の反応をみせる 自分の魔法に男が怯んだと思い余裕を見せていたギーシュだったが、次の瞬間ゴーレムが目の前で弾け飛んだ 男が地面に向かい拳を打ち付けていた ……………………… 久しぶりの戦闘だ イヴァリースではチョコボの森にいたのだが、チョコボは懐いていたし、森には他の魔物がいなかったためなかなか戦う機会がなかった だが一度体に叩き込んだ技はそうそう忘れるものではない …まぁ多少さびついているかもしれないが それにこちらの魔法を見てみたいという気もあった なにしろ未体験な事が多すぎる 情報はいくらあっても困ることはないのだ 広場につくと既に人だかりができていた 決闘を挑んできた彼は<青銅>のギーシュ・ド・グラモンというらしい ながながと口上をたれた後決闘は開始された こちらが出方を伺っていると、ギーシュはなにかつぶやきながら手に持つ薔薇の造花をふり、落ちた花弁が地についた瞬間、おそらく青銅で出来ているであろう女騎士の象が現れた 見たことのない技だ 未知の技法に警戒しつつ、小手調べにこちらから手を出してみた 「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、地裂斬!」 青銅の象<ワルキューレ>はたった一撃で動かなくなってしまった あっけにとられているギーシュ 神界の戦乙女の名を冠する割に、たいしたことはなかった それがラムザの感想だった だが敵を侮り油断するほどラムザは愚かではない そうでなければ先の獅子戦争を生き残ることなんてできなかった しかしあの耐久性じゃ…牛鬼一体倒せないな… ギーシュが再び薔薇をふると、今度は7体のワルキューレが現れた 「すこしばかり…君を見くびっていたよ。だが、これで終わりだ!」 ギーシュはそう叫ぶと、ワルキューレに陣形をとらせた 二体を自分の守りとし、あとの五体が近寄ってくる 守りの内一体が剣、一体が槍 残りの五体は内二体が剣、一体が槍、残り二体がハルバードだ ラムザは数を見て即座に呪文を唱える 「たゆたう光よ、見えざる鎧となりて、小さき命を守れ... プロテス!」 ラムザの体がほのかな光に包まれる それを見たギーシュは即座にワルキューレを走らせた 槍とハルバードをもつワルキューレが少し間を開けて取り囲み、剣をもつ二体が接近してくる ラムザはワルキューレの射程圏に入る前に剣の一体に拳を放つ 「渦巻く怒りが熱くする! これが咆哮の臨界! 波動撃!」 拳の波動を受けたワルキューレは身をひしゃげさせたままつっこんでくる それを軽くいなし瞬時に十数発の拳を打ち込んだ、ワルキューレは轟音をたて吹き飛ぶ 「な、なんなんだよぉ!」 焦るギーシュは続く四体を突撃させる 「ひるがえりて来たれ、幾重にも その身を刻め... ヘイスト!」 ラムザの周りに先程とは違う光が現れた それが消えると、その場にいたはずのものが……いない ………………… 「消えた? またあの移動術?」 先程まで見ていたはずのラムザがいない 食堂で騒ぎを起こし、そのまま広場で決闘をするというラムザとギーシュをみていたキュルケだったが、突然の事にあっけにとられていた 「違う、今度のは…」 「…! 速い!」 さき程まで本に向かい興味を示さなかったタバサも、未知の事象に目を奪われていた 得体の知れない…魔法? しかしギーシュのワルキューレをほふっているのは魔法ではない、しかも武器を使っているわけではない、ただの拳だ その拳でもう一体の剣をもつワルキューレを地に伏せさせた 三体のワルキューレによる刺突をよけたラムザは、的確に、比較的弱い関節部を狙いまた一体行動不能にした 残りのワルキューレはあと四体 ………………… 「なんと…」 ラムザとギーシュの戦いを見ていたのは、広場にいた生徒達だけではなかった 教師からの報告を受けたオスマンと、そこに居合わせたコルベールも、遠隔地を覗く魔法 遠見の鏡でそれを見ていたのだ 「ガンダールヴとは…あらゆる武器を使いこなすのではなかったかね?」 「私が聞いたのはその通りです、オールドオスマン」 「しかし、彼は武器を使っていないようだのう」 「そうですね…いや、オールドオスマン、ラムザ君が剣に手をかけましたよ!」 …………………… なんだ? ラムザは自分が倒したワルキューレの持っていた剣に手をかけた その瞬間左手のルーンがほのかに光ったかと思うと、体が軽くなるのを感じた 突然の事に驚くラムザに、ワルキューレがハルバードを振り下ろす ラムザは一旦考えるのをやめ、最小限の動きでその一閃を避けワルキューレにきりかかる 同じ青銅同士がぶつかりあったのだ 普通ならどちらも使い物にならなくなるだろう しかし、ラムザの予想を裏切られた ワルキューレは真っ二つに引き裂かれたにもかかわらず、ラムザの持つ剣はその状態を変える事はなかった その事にも驚かされたが今は後回しにし、ラムザは返すひとふりでもう一体のワルキューレも地に沈めた ワルキューレ、残り二体 ………………… ルイズは開いた口を閉じることができなかった 確かに自分の召喚した人間は強い なんとなくだがそう感じていた しかし、これほどまでとは… 確かにギーシュはドットクラスのメイジだ メイジのランクで言えば最下級になる とはいえ、メイジに対して素手で太刀打ちできるかと聞かれれば、答えはNOだ しかし目の前で起きていることは現実だ メイジを素手で圧倒している 最初は途中で止めに入る気だったルイズだが、もうそんな気はおきなかった ただ見ていることしかできなかったのだ ラムザは残りの二体のワルキューレも斬り伏せる …もうギーシュを守るものは何もなかった 「これで終わりかな…?」 ラムザによる降伏勧告がなされる 「うあぁぁああああああ!」 追いつめられたギーシュが薔薇をふり再びワルキューレを呼び出す その瞬間その薔薇をラムザが切り落とす 「この薔薇から魔力を放出していたのか、それがないと魔法は使えないみたいだね」 杖が切り落とされた瞬間、錬成されかけていたワルキューレは中途半端な状態で止まってしまった 「こ、降参だ……」 膝をつくギーシュ 「僕の負けだよ…」 「じゃあ勝者として僕から要求させてもらってもいいかな?」 「あぁ…敗者である僕に断れる理由はないよ」 「まず最初に…シエスタに対して謝ってもらおう、そして平民に対してあまり差別的な行動をしないよう気をつけてほしい 二つ目に君の二人の彼女に対する謝罪と誠意ある行動 二股だなんて紳士のすることじゃない 三つ目に、君はルイズをバカにしてるようだね?それをやめてもらおう、あと僕は使い魔じゃない、ルイズを守る騎士だ」 「わ、わかった。あのメイド君にも二人にもルイズにも謝ろう」 「最後に…」 「ま、まだあるのかい!?」 「いや、これは僕からのお願いだ」 「お願い?」 ラムザの言葉にギーシュは顔を曇らせた 「僕と友達にならないか? これは僕からのお願いだから僕のことが気にくわないなら断ってくれてもいい」 「友達?」 「あぁ、どうだろう?」 ギーシュは戸惑っていた まさかそんなことを言われるとはおもっていなかったからだ だが、ギーシュはラムザに対して一種の憧れのような感情を抱いていた それは決闘に負けた悔しさや惨めさに隠されギーシュ自身気付いていなかったものだが、ラムザの誇りだかさ、騎士としての強さ、男としての器量に確かに惹かれていたのだ 数秒の間をおいてギーシュが話し出す 「まさか決闘の相手にそんやことを言われるとはね…。いいだろう、今日から僕達は友達さ、むしろこっちこら頼みたいくらいだ!」 そう言ったギーシュに対してラムザが手を伸ばし、立つ手助けをした そして二人は握手をして言葉を交わす 「ありがとう、改めて紹介させてもらおう、僕はグラモン家の三男、ギーシュ・ド・グラモンだ」 「僕はラムザ、ラムザ・ベオルブだ。僕も三男なんだよ、奇遇だね」 それまで電撃的な速さで進む戦いに静まり返っていた観衆がざわめきだした そこに予鈴のチャイムの音が聞こえた為一部の生徒達が授業に向かい、残った観衆も熱をもちながらもしぶしぶといった感じでそれぞれの場所に散っていった そんな中でラムザはたくさんの声をかけられた 中には平民がドットを倒したくらいで粋がるなだとか非難めいたものもあったが、大半はラムザの戦いぶりを讃えるものだった いくら貴族といっても、若い彼らの心をうつだけの力がラムザにはあった そこにシエスタが走ってきた 「ラ、ラムザさん。だ、大丈夫ですか!? お怪我とかありませんか? あぁミスタグラモン私のせいで申し訳ありません!」 顔に涙を浮かべながら救急箱をもってきていた どうやらラムザが決闘に負けて怪我をしたと思っていたようだが、怪我のないラムザとギーシュの様子に混乱しているようだ そこにルイズが歩いてきた 「薬箱は必要ないのよ、えーっと…」 「あぁ、シエスタですミスヴァリエール」 「あぁメイド君、先ほどはすまなかったね、紳士としてあるまじき態度だった、グラモン家のものとして女性にあのような態度をとった事は恥ずべき事だ、許してほしいミスシエスタ」 「いえ、あの、え、えええ!? 顔を上げてくださいミスタグラモン!」 頭を下げるギーシュを慌てて止めるシエスタ 「許すだなんてとんでもない! わ、私がですか!?」 「あぁそうさシエスタ君、それにルイズ、君にも謝ろう、すまない」 「な、なによ、あんた私になにかしたっていうの? 」 「君の使い…いや、君の騎士に迷惑をかけたからね」 「別に問題ないわ、むしろ私の言うことを聞かないラムザの方が問題だわ!」 「すまない、今後気をつけよう」 ルイズの言葉に苦笑するラムザ 「そろそろ行かないと授業に遅刻するわ! もう行くわね。ラムザ、行きましょう」 そう言ってルイズは歩いていく ギーシュも授業に向かうようだ シエスタから後で伺うという旨を聞き、ルイズの後を追うラムザ 「授業は僕も出ないといけないのかい?僕は調べ物がしたいんだけど…図書室でもあればそこにいきたい」 「図書室は貴族専用だからあなたが入れるよう先生にお願いしておくわ、今はとりあえず授業に一緒にでてちょうだい」 「そうか…わかったよ」 ルイズの言葉を聞いたラムザはそう返事すると、ルイズについて教室にむかった ………………… 「むぅ…」 学長室でオスマンがうなる 「あれは剣と本人を強化したんでしょうか?」 「いやぁ…あれは剣自体にはなにもなかったのじゃろう、剣の扱いに長けた物は一刀の下に全てを両断すると聞く。あれは彼の技術…もしくはガンダールヴに付加される技術なのかのう」 かなりの年を重ね見た目は老人であるが、やはり学長になるだけの人物だ 見ているところは見ている 「しかし決闘相手に対して友達になろうとは…のう、面白い奴だのう、コルベール君」 「いや、本当に。あれにはルーンによる干渉が影響しているのでしょうか?」 「いや、きっと彼の本来の気質じゃろう。そうじゃコルベール君、君授業はいいのかね?」 「おお! 忘れていました! でわオールドオスマン、また後で来ます!」 そう言うとコルベールは早足で部屋を出て行った 「ガンダールヴか…」 学長室の中、一人になったオスマンの声が静寂の中に消えていった 第四話end 前ページ次ページゼロの騎士
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/356.html
―――『夢』を見た。 とても変な夢だった。 夢の中で暗闇を歩いていると光が見えた。そして弟に会った。『億泰』だ…… この弟はちゃんとやっているのだろうか、そう思い聞いてみる。 「どこへ行くんだ 億泰」 「兄貴について行くよ」 億泰は即答した。 嬉しいがそれじゃダメだ。おれはもう側にいてやれないんだ。 「おまえが決めろ」 突き放す。こいつが一人で歩けるように。 「億泰…行き先を決めるのは おまえだ」 億泰は考えている。どうせ次は困った顔をしてこう言うだろう 『オレはバカだから分からねえよぉ~。兄貴が決めてくれよぉ~』だ。 だがそれではコイツは成長できない。 「杜王町に行く」 ―――違った。 億泰はもう成長していた。一人で歩いていた。 「それでいい」 聞こえているかは分からない。 だが、言いたかった。成長を認めてやりたかった。 さあ、おれも立ち上がらなくては 目が覚めると同時に背中から地面にぶつかる。 どうやら気絶していたのは殴られてから倒れるまでのほんの一瞬らしい。 殴られた腹が痛む。だが立ち上がれない程ではない。 立ち上がる。 「へぇ?まだ戦う気かい?」 ギーシュが小バカにしたような言い方で挑発してくる。が気にしないで精神を集中する。 思い込んでいた。自分は死んだのだと。だから何もできないと。そんな状態じゃ何もできない。 必要なのは『できて当然』と思う精神力。それが無かった。 形兆には知る由も無いが、本体が死んでもスタンドだけ動くということはある。 生死があやふやなことは理由にならない。 『人は成長してこそ生きる価値あり』いつも億泰に言ったことだ。 億泰は『成長』を見せた。それなのに自分は成長どころか弱くなっていた。 それで言いわけが無い。だからコイツで自分の成長を証明する。 ―――「バッド・カンパニー!」 形兆の能力『バッド・カンパニー』はミニチュア軍隊を操るスタンドだ。 生み出した歩兵隊を形兆の位置を頂点としたV字に配置する。他はまだ出さない。 「な!?何だねソレは!?」 ギーシュにはスタンドが見えているらしい。(理由は分からないが) 左足を軽く下げ、左手をポケットに突っ込む、 そして上半身を少し後ろに傾けながら、右ひじを曲げた右手で相手を指差す。 「お前のワルキューレの頭を吹き飛ばすモノだ…」 「射撃開始!」 歩兵達が前にいるワルキューレの頭に集中射撃をする。 ワルキューレの頭は『予告』通り吹き飛ぶ。頭を失ったまま倒れるワルキューレ。 「何!?クソっ!まだだ!」 そういって後ろから気配が近づいてくる。最初に蹴飛ばした一体目のワルキューレだろう。 「爆撃ッ!」 爆発と共に一体目のワルキューレも頭を失う。 撃ったのは成長した証。「ハリアー2」のロケットランチャーだ。 「な、何ぃ~~~!」 ギーシュは慌てている。だが、すぐに落ち着き、杖を振った。 ワルキューレの頭が修復される。それなら銃で狙うのは間接部。 ギーシュは次々と新たなワルキューレを作り出していく。 ギーシュは本来なら全部で七体だせるのだが、修復も行ったために作れたのは全部で六体。 形兆も残りの部隊を出していく。アパッチ、戦車、歩兵隊そしてハリアー2。 距離は四メイルほど。決着は、近い。 「ワルキューレたちよ」 「全体ィィィィィィィ」 「行けェ―――ッ!」 「突撃ィ―――ッ!」 攻撃力も、リーチも、ワルキューレではバッド・カンパニーに及ばない。 防御力なら分があっただろうが、それも殴り合いにならないのなら意味が無い。 結果。バッド・カンパニーに傷一つ負わせることなくワルキューレは敗れた。 ミサイルや砲撃を受けたものは体を吹き飛ばされていたり、 歩兵隊の攻撃を受けたものは間接部分を壊され動けなくなっている。 「そ、そんな、バカな」 ギーシュは固まっている。 形兆はバッドカンパニーごと歩き出す。 そして目の前まで近づくとバッド・カンパニーでギーシュの顔を狙う。 殺される。本能でそれを感じ取るギーシュ。 「キ、君の勝ちだ。だ、だから、や、やめてくれ…」 ギーシュの懇願。 「さっきそう言われたらお前は止めたか?」 「そ、それは…その」 「…いいだろう」 意外な一言。 「え?」 そういったのはギーシュだけではない。ギャラリーまでもが同じ気持ちだった。 そのまま形兆は振り返り歩き出す。 五メイルほど歩いたところで後ろにルイズがやってきた。 「形兆?その…何をしたの?いや、それより……(何で殺さなかった?)」 ルイズも形兆がギーシュを殺すつもりだったと思っていたらしい。 形兆は振り向くことなく答える。 「『何も殺すこたあねー』さっきはそー思っただけだ」 少しだったが成長した億泰に会えた。なら親父のことはアイツにまかせて良いだろう。 元の世界に帰るのを諦めたわけではないが、急ぐ必要も無くなった。 この世界での生活を少し楽しむのも良いだろう。 そう思った形兆は自分の人生が始まるのを実感していた。 ゼロの奇妙な使い魔 Part29 完 ギーシュ―舎弟になった。 ルイズ―大体原作通り。 シエスタ―同上 モンモン―自分の部屋へ行き二時間ねむった…目をさましてからしばらくしてギーシュの事を思い出し…泣いた。
https://w.atwiki.jp/planetquestjp/pages/27.html
連邦イントロ 連邦ストーリー01 - 「送信者:リー社長代理人 連邦のワルキューレのサン・ア」 連邦ストーリー02 - 「送信者:リー社長代理人 連邦のワルキューレのサン・ア」 連邦ストーリー03 - 「送信者:リー社長代理人 連邦のワルキューレのサン・ア」 連邦ストーリー04 - 「送信者:VasTech社 COO ビクター・ハックスレー」 連邦ストーリー05 - 「送信者:VasTech社COOビクターのアシスタント アナ」 連邦ストーリー06 - 「送信者:リー大統領府第二事務官カルバン・チェイス」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/937.html
烈火! 気高く咲け薔薇の戦士よ その① たった一人、タルブの村の草原に降り立った若きメイジは、三十メイルの巨大ゴーレムを前に臆する事なく気高き眼差しと薔薇の杖を向けた。 「久し振りだな……土くれのフーケ!」 見覚えのある金髪の美少年を前にフーケは眉をひそめ、そして相手が何者であるかを思い出すと同時にニンマリと笑った。 「あら、あなたは確か……そう……ラ・ロシェールでヴァリエール達と一緒にいたわね。 役立たずの木偶ゴーレムを作って、女の子の影に隠れて、こそこそと錬金した坊やね。 お友達はどうしたの? あなただけ? クスクス……まさか『独りぼっち』なの?」 「ああ、そうだ。キュルケとタバサはジョータローの救援に向かった……。 だからッ! フーケ! お前の相手は『僕一人』という訳さ。 そして今日こそ決着をつけてやる! 貴様には……二度と負けないッ!!」 ギーシュの言葉を聞いてフーケは再び眉をひそめる。 妙だ、ギーシュの言葉はおかしい。 「負けないもなにも、悔しいけどラ・ロシェールの戦いは坊や達が勝ったでしょう?」 「ああ、そうだ。だがあれはキュルケとタバサの勝利! 僕はただ手助けをしたにすぎない……僕がいなくても彼女達は勝っただろうね……。 覚えていないのかフーケ? 破壊の杖を盗んだ時、ルイズと一緒にいたこの僕を」 言われフーケは記憶を探る。あのラ・ヴァリエールの小娘と一緒にいた少年を。 「……ああ、そういえば、いたわね。ちみっこい雑魚が。 え? あれ、あなただったの? フフッ、ククッ、アーッハッハッハッハァッ! 確か……『薔薇の棘は女の子を守るためにある』とか言ってたわね。 でも薔薇なんてのは花壇で丁寧に手入れされて咲くなまっちょろい花よ。 この土くれのフーケと一人で戦う……? 面白い侮辱の仕方よ……坊やッ……」 双眸が釣り上がり、瞳に殺意という漆黒の闇が渦巻き出す。 唇は獲物を前にした獣のように、しかし艶かしく濡れ、戦う前から解りきっている勝利という美酒を堪能するかのように弧を描く。 それに対しギーシュは友を守るため村を守るため国を守るため、燃える使命感が鼓動を高鳴らせ、気高き誇りが背筋を真っ直ぐに固定し、かつて土くれに敗北した恐怖に打ち克ち勇気の光に瞳を輝かせていた。 「我が名はギーシュ・ド・グラモン! 誉れ高きグラモン元帥の血を受け継ぐ者! 二つ名は青銅……青銅のギーシュ! これより土くれのフーケを倒す男の名だ!」 「たかだか魔法学院の生徒の分際でよくそこまで吼えたわね。 いいわ……勇気ある男気へのご褒美として地面をのた打ち回る苦痛を、そして愚かにも雑魚の分際で私に勝負を挑むという侮辱への罰として――」 ゴーレムが拳を振り上げる。戦いの幕は切って落とされた。 「死という永劫の孤独を与えて上げるわ!」 「うおおっ! 来い、フーケ!」 円を描いて上から振り下ろされるゴーレムの拳を、ギーシュは思いっきり横に転がる事で回避する。 地面が揺れるほどの轟音の後、拳が巻き上げた土が雨のように降りかかった。 太陽の光を浴びて金色に輝く髪が、白く端正な肌が土で汚れる。 「クッ……やはりパワーでは勝てない、悔しいがクイーンは精神力の無駄遣いでしかない」 「いつかのように青銅のゴーレムを出してみたらどうなの? ひとつ残らず踏み潰して上げるわ……虫けらのようにね!」 「いいやッ、踏み潰せないね。なぜなら僕はお前をそこから叩き落すからだ。 ゴーレムの上という安全地帯から……叩き落してやるぞ、フーケッ!」 ギーシュが薔薇を振ると、彼の周囲に薔薇の花びらが現れ渦を巻いた。 真紅の螺旋はギーシュを防護するように包み、天高く舞い上がる。 「クスクス……所詮、一人じゃ何もできないようね。結局お友達の作戦頼り? そんな奇策が二度も通用する……と、本気で思っているのかしら?」 上空から薔薇の花びらが嵐のように降り注いだ。 髪の毛や服を赤く彩られたフーケは、自分のゴーレムを見回す。 ゴーレムもまた頭や肩を赤く飾られていた。フンッと鼻で笑う。 「今だッ! 錬金ッ!!」 「小賢しいッ」 ゴーレムは即座に上半身を跳ね上げた。 その勢いでゴーレムに降りかかっていた花びらがすべて跳ね除けられてしまう。 ゴーレムの肩に足をめり込ませて身体を固定していたフーケは、自身まで吹っ飛ばされるなどという失態を犯す事なく、自分についていた花びらも見事に散らせた。 「フッ……アハハハハッ! これで解ったでしょう? 私を……叩き落すとか言ってたわね、お坊ちゃん」 絶対の自信と確信を持ってフーケは高笑いをし、無様な虫けらを見下した。 「私は上! あなたは下よ!」 「お前が下だ! 土くれのフーケッ!」 裂ぱくの気合がフーケの身を叩く。 ギーシュの双眸は戦士のように力強く、フーケを射抜くようにとらえている。 声に普段の軽薄さは微塵も無く、運命を切り開くほどの覇気を持っていた。 盗賊としてメイジとして優れたフーケの直感が警鐘を鳴らす。 馬鹿な! なぜ、土くれのフーケともあろうものが、こんな小僧を相手に危機感を抱かねばならないのか!? 「ゴーレム! その生意気な小僧を叩き潰せ!」 「ワルキューレ! その傲慢な盗賊を叩き落せ!」 影を感じた。最初の違和感はそれだった。 自分と太陽の間に、自分の上に、何か、何かがいる。 そう直感したフーケは空を見上げた。 青空の中、小さな紅い雲が浮かんでいた。その中に何かがいた。 ガンダールヴの操る竜の羽衣か? ワルドの駆る風竜か? タバサの乗るシルフィードか? 否。それは人と同じ形をしていた。 では人か。 否。それは人ではなかった。 答えはもう解っているはずだ。下にいるメイジが答えを口にしている。 だが! なぜ! それが! このタイミングで! そこにいる!? 「花びらを空中に舞わせたのはゴーレムにかけるためじゃあない……。 空中でワルキューレを作り、お前目掛けて落下させるためだ!」 本来ワルキューレは花びらを土に触れさせ、土を素材に作り出す。 だが今回はそのすべてを花びらで補った。 故に『土』に含まれる様々な成分を得られなかったこのワルキューレは、通常のワルキューレに比べ青銅の質も密度も非情に劣悪の、出来損ないだ。 しかも素材が足りない分無理して作ったため、精神力の消耗も甚大である。 ワルキューレ四~五体分くらいの力を使ってしまったかもしれない。 だがその劣化ワルキューレこそがこの戦況を引っくり返す可能性を持っている! 「くっ……弾き飛ばせ!」 「もう遅い! フーケ、覚悟!」 上空から一直線にフーケ目掛けて落下してきたワルキューレは、スピアを突き出してフーケの胸を狙う。 魔法で対処する時間は無い。フーケは身体を捻って避けるしかなかった。 だが間に合わない。 スピアは回避できたが、ワルキューレの体当たりをまともに受けてしまう。 「ギャウッ!」 ワルキューレの体重を一身に受け、フーケは地面へと落下した。 ――このままでは押し潰される! 三十メイルの高さ、ワルキューレの体重、何とかしなくては。 ゴーレムを使う訳にはいかない。大きい分、大雑把な動きしかできないため、ワルキューレをどうにかしようとしたら密着している自分までどうにかされる。 「くっ、ぬぅ……ああっ!」 ワルキューレはスピアを握っている。だからこちらは自由に動ける。 フーケはワルキューレのスピアを足で蹴り、肩を手で掴んで身体を持ち上げる。 そうする事でワルキューレの身体の下から逃れたフーケは、咄嗟にレビテーションをかけたがすでに地面目前だったため、浮遊が間に合わず、しかし落下の勢いを半減させて地面に叩きつけられる。 「ガハッ!」 フーケの悲鳴に重なって、すぐ側で金属が砕ける音がした。 フーケを叩き落した劣化ワルキューレが地面に激突して砕け散ったのだ。 「くっ……や、やってくれる」 ギリギリと歯を食い縛りながら、フーケは杖を振ってゴーレムを操った。 早く自分を回収させなくては。ゴーレムの手がフーケに伸びる。 「気づかないのかフーケ! お前のゴーレムはすでに! 僕の『結界』の中にいるという事に!」 「……えっ?」 フーケは見た。ゴーレムの足元が、赤い。 その赤は線を描くようにギーシュの足元へと伸びていた。 「これが……僕を勝利へ導く『花道』ってやつさ」 ギーシュが杖を振る。 「錬金! そして地を這う油を『着火』するッ!!」 紅い薔薇の花道がドロリとした油に姿を変える。 直後、再び紅い花を咲かせる。 炎という紅い花を。 炎はゴーレムの足元まで一気に伸び、燃え盛る。 だがその程度の炎で倒れるほど土くれのゴーレムはやわではなかった。 だから――。 「さらに『錬金』する! ワルキューレを作るためだけに薔薇を舞わせた訳じゃない!」 フーケは空を見上げた。ワルキューレが背にしていた紅い雲がまだ浮かんでいる。 それは雲ではなく――滞空する薔薇の花びら! 魔法を錬金の方に使ったため、もう花びらは操れない。重力に引かれて落下するだけだ。 だが、それでいい。 花びらすべてが油となると、雨のようにゴーレムに降り注いだ。 土で作られているゴーレムの全身に油が染み込み、引火する。 足元から下半身へ、上半身へ、腕の先まで、全身を焼き尽くされるゴーレム。 「何て……事……」 自分の生み出したゴーレムが成すすべも無く崩れ落ちていく様を、フーケは呆然と見つめていた。 そしてそのフーケの背後に足音が近づいてくる。 慌てて立ち上がると同時に振り返り杖をかざす。 フーケの杖を向けられた先には、ギーシュの薔薇の杖があった。 その距離ほんの数サント。 「これで……対等だ、土くれのフーケ……!」 「こ、殺す……殺してやるわ。青銅の……ギーシュ……!」 交錯する。怒りに燃えるフーケの瞳と、闘志に燃えるギーシュの瞳が。 ゴーレムを焼き尽くした炎は草原にも火が移り、まるで逃がさぬというようにフーケの背後に広がっていた。
https://w.atwiki.jp/armypixiv/pages/53.html
エルシア帝国 かつての国名は神聖エルシア帝国。前大戦では極興帝国側についていたが、敗戦ののち勃発した社会主義革命により国土は荒廃。革命政府の追放により再び帝政が敷かれる。 現在のエルシア帝国はアストリア、フランドル、ハルガリア、ザクロフェンシュタットの四地方から構成されており、国民のうちの約6割がアストリア系かフランドル系である。 戦後に結ばれた敗戦国条約が原因で軍はその国民総数に反して非常に小規模だが、その分空軍などは規模に反する潤沢な資金を使って少数精鋭政策を図っており、陸軍も要塞の強化や装備の新型化に勤めている。(海軍は対照的に数で勝負の姿勢であり、乗務員の総員いっぱいの艦艇を保有している) また帝政復興のあらましから共和同盟とも非常に仲が良く、技術供与やエルシア製兵器の安価での供与を行っている。現在連合内の親共和派最右翼国家。またベイル皇国との仲もかなり良好。 反対に同じ連合加盟国である強行派最右翼のSEU(エルシア読みでゼー・エー・ウー)との仲は険悪であり、お互いがお互いを牽制し合う状態である。帝国とも戦後の社会主義革命期の混乱が原因で仲は悪い。 現在では高い技術力が養った重工業技術と医療技術、恵まれた自然環境による農業、そして共和同盟との深い交流の末に手に入れた安価な石油ラインによってGDPは連合でもかなりの部類に入り、国民の識字率も高い。 国家指導者 キャラクター名 性別 年齢 許可 備考 シャルロット=V=アルバンシュタイン 女 72 ALL 現エルシア皇帝 ルドルフ=V=A=ドールン 男 76 ALL ドールン公爵、現皇帝の兄 海軍 首都ベルヘイム近辺のレマーゲン軍港、アストリア北部のノイシュロスハーフェン軍港、フランドル南部のバストーニャ軍港、国土南西のオスティア諸島のオスティア泊地を基地として、通常3~4つの実動艦隊に分かれている。 伝統的に水上艦主体の部隊であり、戦艦主体の海上部隊であることや空母の合計トン数が非常に少ないことも特徴である。 人員 キャラクター名 性別 年齢 階級 所属 許可 備考 ルドルフ=V=A=ドールン 男 76 元帥 --- ALL ドールン公爵、現皇帝の兄 リンデン=C=ロワーヌ 男 56 中将 第一艦隊 ALL 第一艦隊司令 ジェフリー=バウマン 男 44 大佐 第一艦隊 ALL 戦艦「シャルロット」艦長・戦死 レア=ブランシュ 女 16 大尉 第一艦隊 ALL 同艦特別管制官(管制人格) フェリシア=バートン 女 23 中尉 第一艦隊 ALL 同艦戦闘艦橋勤務・戦死 フランツ=マクシミリアン 男 42 大佐 第二艦隊 ALL 戦艦「ウルリケ」艦長 アンナ=フォッシュ 女 28 中佐 第二艦隊 ALL 戦艦「ウルリケ」副長 ヴォルフガング=バルトロメウス 男 40 大佐 第一艦隊 ALL 空母「ノイシュバンシュタイン」艦長 ロリーナ=オリヴィエ 男 34 中佐 海軍艦隊司令部 ALL パトリック=ジョンストン 男 36 少佐 ワルキューレ隊 ALL ワルキューレ隊隊長兼パイロット ラトウィッジ=C=ハリファックス 男 26 中尉 ワルキューレ隊 ALL ワルキューレ隊パイロット アリス=スターリング 女 23 少尉 ワルキューレ隊 ALL ワルキューレ隊ナビ カロリーヌ=ライサンダー 女 22 少尉 ワルキューレ隊 ALL ワルキューレ隊パイロット 保有艦艇 等級名 概要 保有数(情報は最新) 備考 グローサー=クルフュルスト級 戦艦 0 前大戦時からの艦・全艦戦没 クローンプリンセッサン=ウルリケ 戦艦 1 アルバンシュタイン級 戦艦 2 クローンプリンツ=フリードリヒ級 空母 2 シェンブルン級 空母 5 戦時増産艦 エイヴォン級 ミサイル巡洋艦 2 ヴェルデンブルグ級 ミサイル巡洋艦 2 ノイシュロスハーフェン ミサイル巡洋艦 1 原子力艦。ヴェルデンブルグとは準同型艦 アルコナ級 ミサイル巡洋艦 6 エレット級 ミサイル巡洋艦 10 防空巡洋艦。ベイル皇国にも同型艦二隻。 Z-174級 汎用駆逐艦 18 前期型と後期型に分かれる F-196級 フリゲイト 38 ケルン級 強襲揚陸艦 4 ランズベルグ級空母のからの改造艦 XXIV級 攻撃潜水艦 18 XXV級 戦術潜水艦 14 保有航空機 機体名 概要 備考 BF アルバトロス 艦上戦闘機 EAGE デュランダル 艦上攻撃機 F-14L ケストレル 艦上戦闘機 ワルキューレ隊の使用機 空軍 事実上エルシア防衛の最前線に立つ軍であり、その規模に見合わない予算を駆使して新鋭機の配備に全力を尽くしている。制空戦闘機と迎撃戦闘機を使い分けているのも特徴。 人員 キャラクター名 性別 年齢 階級 所属 許可 備考 サミュエル=タウンゼント 男 41 大佐 航空総隊 ALL ホーリーコッド基地指令 保有航空機 機体名 概要 備考 BF アルバトロス 制空戦闘機 EAGE MiG-29 迎撃戦闘機 EAGE デュランダル 攻撃機
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6764.html
前ページ次ページ滅殺の使い魔 「僕の二つ名は『青銅』。 青銅のギーシュだ。 従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 豪鬼に向かって、ゴーレムが突進してくる。 豪鬼は一歩も動かない。 が、ゴーレムの行く手を阻むように、右手を前に出した。 ゴーレムが間合いに入り、豪鬼が突き出した手を払おうと腕を振る。 その瞬間。 ――豪鬼が、消えた―― 「なっ……! ど、どこだ!何処に行ったっ!」 ギーシュが辺りを必死で見回す。 周りの野次馬達も同じように何処だ何処だと視線を動かした。 一人の生徒が気付く。 「う、上に」 時既に遅し。 豪鬼がゴーレムの頭上から手刀を構えて落下していく。 混乱状態のギーシュは、不覚にもワルキューレを棒立ちにさせている。 無論、突然の出来事に反応は出来ず。 「ふんっ!」 豪鬼の手刀がワルキューレに命中し、その青銅の体を容易く両断する。 『天魔朱裂刀』……相手の攻撃をすんでの所で見切り、頭上から手刀を叩きつける技である。 大抵の者はその一瞬の出来事に全く反応できず、成す術なく当たってしまう。 ワルキューレ『で、あった物』は、力なく左右に倒れた。 「う、うわあぁぁぁぁぁ!」 半狂乱のギーシュが、滅茶苦茶に薔薇を振る。 新たなワルキューレが六体、ギーシュの周りに現れる。 豪鬼はゆっくりと構えなおすと、目を見開き、口を開いた。 「我は、拳を極めし者。 ……うぬらの無力さ、その体で知れい!」 一方、森では。 「潰れろ!」 一人のメイジを掴んだ『白髪の男』は、それを大木に叩きつけ、大木ごとメイジを屠る。 その足元には、既にもう一人のメイジの亡骸が横たわっていた。 「さて……あとは君一人だ。 『トライアングル』君?」 『白髪の男』は、ゆっくりと振り返る。 少女は既に遠くへ避難し、震えながら傍観していた。 残ったメイジは、がくがくと震えながら、手に持った杖を『白髪の男』向ける。 「どうした? 早くしたまえ」 「ひ、ひぃ!」 メイジの放った炎の玉は、一直線に『白髪の男』に向かう。 「ハッハッハ!」 ――『白髪の男』の前に、緑の光が現れた―― 場所は戻り、ヴェストリの広場。 「な、なんなの、あいつ……」 『平民とギーシュが決闘をする』。 それを聞いたルイズは、他の生徒と同じように広場に来ていた。 豪鬼の命を救うために……。 だが、それも要らぬ心配だったらしい。 ルイズの目には、青銅のゴーレムが豪鬼に真っ二つにされると言う衝撃の光景が飛び込んできていた。 また、広場の別の場所では、キュルケと、小さな幼い印象を受ける生徒が、二人の決闘を見つめていた。 「な、何だったの? 今の……。 ねえ、タバサ」 キュルケが引きつった笑みを浮かべ、隣の少女、タバサに話しかける。 「……わからない」 一言でその問いに返答するタバサ。 その言葉には感情が感じられないが、しかしその目は、驚きと興味で見開いていた。 そんな中、急に広場の生徒達人ごみの一部が割れた。 中から現れたのは、オスマン、ロングビル、コルベールの三人だった。 ロングビルが、オスマンに対し説明を始める。 「片方がギーシュ・ド・グラモン。そしてもう片方は、ミス・ヴァリエールの使い魔です」 それを聞くと、コルベールとオスマンは顔を見合わせた。 コルベールは驚いた表情をしている。 「オールド・オスマン……!」 「うむ……」 「オールド・オスマン」 「なんじゃ? ミス……」 ロングビルは、普段からは考えられないほどに真面目になっているオスマン達に威圧される。 「い、いえ、『眠りの鐘』の使用許可を求めているようでして……」 「要らん。 こんな子供の喧嘩に秘宝など」 オスマンはそれを一蹴するが、その目は警戒心をありありと表していた。 広場の中心で、豪鬼とそれを囲うように位置したワルキューレ達が睨み合う。 豪鬼は一向に構えから動かず、ワルキューレ達を警戒するそぶりも見せない。 対するギーシュも、先ほどのワルキューレにおいて、カウンターを受けたため、迂闊には動けない。 広場内を静寂が包む―― 「行け! ワルキューレ!」 静寂を破ったのは、ギーシュだった。 ワルキューレに指令を出し、それを受けたワルキューレ達は、一斉に豪鬼に向かって走り出す。 しかし、それが豪鬼に達することは無かった。 「滅殺……」 「なっ! と、止まれ!」 豪鬼の変化に、ギーシュが咄嗟にワルキューレを制止させる。 「……」 そう豪鬼が呟く。 小声のそれは、しかし大きな威圧感を持ち、ギーシュの判断を鈍らせた。 豪鬼はそれを尻目に、手を『天』に向かって突き上げる。 「我が拳、 とくと味わえ」 「……くそ! 行け! ワルキューレ!」 そして再びワルキューレ達が動いた瞬間、豪鬼が突然、突き上げていた右手を振り下ろし、地面を殴ったのである。 「あ、じ、地震!?」 ただそれだけのことで、地面が揺れる。 豪鬼の足元の地面から光が溢れる。 それはさながら火山の噴火のように。 やがて地震が収まり、広場の生徒が豪鬼達に視線をを向ける。 そこには既にワルキューレの姿は無く、ぐちゃぐちゃにひしゃげた鉄の塊が、豪鬼の足元に転がっていただけだった。 「あ……あ……」 腰を抜かし、ズルズルと後ろに下がっていくギーシュ。 豪鬼は、そんなギーシュに一瞬で近付き、そして、手を振り上げた。 「ひぃっ!」 ギーシュが必死で後ずさる。 それを、周囲の人間は助けようとしない――否、周りの者達も同じくその場を動けないのだ。 しかし勇敢にもその威圧に耐え者がいた。 コルベールだ。 コルベールは、あたふたとギーシュに駆け寄る。 そして、豪鬼にその杖を向ける。 「み、ミスタ・グラモン! 大丈夫かね!?」 「あ、あ……?」 「済まない、ミスタ・グラモン……。 こんなことなら、私が止めれば良かったのだ……!」 そんなコルベールを見たオスマンは、あえて声を掛けなかった。 「帰るぞ、ミス・ロングビル」 「え、あ、はい」 オスマンが身を翻す。 それに少し遅れて、ロングビルも歩き出す。 コルベールの大声が聞こえる。 オスマンは呆れたようにため息をつき、呟いた。 「阿呆が」 次の瞬間、オスマンの後ろで大きな騒ぎが起こった。 「へ、平民が消えたぞぉっ!」 「ど、どこだ!? また上か!?」 「い、いや、上じゃない! 地面か!?」 そう、豪鬼は、既にその場を去っていたのだ。殺気だけを残して。 ロングビルはオスマンに追いつくと、一つ、疑問を口にした。 「オールド・オスマン。 あれならば、『眠りの鐘』を使用するべきだったのでは?」 オスマンは立ち止まり、いつものように髭を撫でながら言った。 「いや、それは無いじゃろ。 実際、どちらも怪我という怪我はしておらんしな」 「……は、はあ」 それに……、と小声でオスマンが呟く。 「……あの男に、そんなものが通用するとは思えんな……」 「は?」 「いや、なんでもない」 オスマンは悟られないように小さく、本当に小さくため息を付くと、これからの苦労に、気が重くなる思いで、ある人物に思いを馳せる。 「『あの方』ならば、どうするのかのう……」 今日の「滅殺!」必殺技講座 天魔朱裂刀 俗に言う『当身技』。 コマンドを入力し、構えに入る。 その一瞬に相手が打撃技をしてきた場合、即座に反撃すると言う技である。 その性質上、多少の読みが必要になるため、使い所は制限されるか。 コマンド「(上段の場合)下、下+パンチボタン三つ同時押し。(下段の場合)下、下+キックボタン三つ同時押し」 金剛國裂斬 ギーシュのワルキューレを一撃で葬った技。 実際の威力はこんなものではなく、エアーズロックを一撃で叩き割り、地盤を破って地獄へと行けたりしてしまうハチャメチャ技。 作者はアレク使いなので詳細は分からないが、かなりの威力を発揮する様子。 ゲーム中では、暗転後、地面を思い切り殴り、その衝撃波で攻撃をするという業になっている。 コマンド「下、下、下+パンチボタン三つ同時押し」 「地盤を叩き割って……で、どうしたの?」 「死合った」 「あ、そ。 もう慣れてきたわ」 今日の「死ネィッ!」必殺技講座 ゴッドプレス 突進しながら相手を片手で掴み、さらに加速しながら最後には画面端に叩きつけるという技。 ちなみにこの技、ルガールの象徴的なものとなっている。 コマンド「逆半回転+パンチボタン」 「オリコンでこの技を連続で放つのは男のロマンと言うやつだよ、テファ」 「すごいです! ダメージは勿論大きいんですよね!」 「……君の純粋さが辛い……」 前ページ次ページ滅殺の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2551.html
前ページ次ページゼロと聖石 二人の決闘が終わったあと、私は町を散策していた。 ヴァルゴを見てもいつもの様に静かな光を湛えるだけ。 アルテマは何も言わない。 空は、雲が飛んでいるだけだった。 そして、夜。 さすがに昨晩ははしゃぎ過ぎたので今晩は静かに過ごす。 反省を生かし、ガチンコ! 雑学コラム対決をやっている時に事件は起きた。 いきなり地震が起きたのだ。 いや、地震というよりはゴーレムが動くような――― 入り口から外を確認しようとした瞬間、シエスタが入り口に向かってテーブルを投げつけて入り口をふさぐ。 先ほどまで食事をしていたテーブルは黒壇製の頑丈かつ非常に重たいものだ。 それを投げつけるなんてなんという腕力、シエスタ恐るべし。 次の瞬間、テーブルに何かを叩きつける音が響く。 メイジと傭兵の混成部隊、狙いはアンリエッタ様から預かった密書と見る。 とりあえず皆と合流し、シエスタが同じタイプのテーブルを横倒しで設置。 ここでの作戦はタバサ、キュルケ、ギーシュが囮、私はワルド一緒に港へ、シエスタが正面突破をかけて港へ。 方針が決まった瞬間、キュルケが化粧を始め、シエスタが軽くステップを踏む。 「じゃあ、後でまた、シエスタ」 「ルイズ様もお気をつけて」 シエスタが入り口のテーブルを切り割って敵陣に突入。 それを見届けた後、私達は裏口へと走っていった。 シエスタが外に出て気が付いたのは、ゴーレムの作成者がフーケだということだ。 作りもそっくりだが、何よりゴーレムの肩にフーケを見てしまった。 それでも足を止めずに、進路を阻む傭兵を切り伏せながら進む。 その間に宿を攻撃し続けるゴーレム。 何とかしなくては。 有る程度安全圏に離れた瞬間、ゴーレムに狙いを定め、 「氷天の砕け落ち、嵐と共に葬り去る滅びの呼び声を聞け! 咬撃氷狼破!」 地面からの刃でゴーレムの右足を破壊しておく。 直後に崩れ落ちていくゴーレム、ルイズ様の金の針効果だろう。 それを見届けて更に加速、一気に港を目指した。 テーブルの影からフレイムボールを撃って相手を牽制。 ギーシュがワルキューレで押し入ってこようとする傭兵を抑え、タバサがエアハンマーでなぎ倒す。 その間にもゴーレムが店を攻撃し、そのたびに壁に亀裂が走る。 「こういうゴーレム相手には、ルイズがくれた金の針で―――」 取り出した瞬間に、再度衝撃が襲う。 その衝撃で金の針を落とし、前列で戦っているワルキューレの足元へ。 そして、傭兵の攻撃で一歩後退したところで思い切り踏みしめ、暗黒回帰発動。 「なにもしていないのに僕のワルキューレが!?」 さすがにこればっかりは悪いと思った。 強度的にまだまだ持ちそうなワルキューレを一体無駄にしたのだから。 「ごめん、ゴーレム殺しのマジックアイテムが間違って発動しちゃった!」 土と土と火のトライアングルスペルで、地面から襲い掛かる炎を出しつつギーシュに謝る。 「そのアイテムはどうやって使うんだ!? それ次第では形勢を逆転できるかもしれない!」 乱戦の最中にどんな策を思いついたのかは知らないが、乗ってみるのも一興。 この針を刺せばいいと教えるとその針をひったくって床に突き立てる。 「ヴェルダンテ、なんとかゴーレムの体勢を崩すからチャンスをうかがってそいつを刺してくれ!」 その言葉に反応してジャイアントモールが床板を破り登場。 金の針を抱えて床下へ消えていった。 「いつの間に使い魔をつれてきたのよ?」 「最初からだ。言い出す暇が無くてね、伏せ札として利用してみた」 「体勢を崩すのは困難」 「そ、そこはほら、団結すれば何とか…」 タバサの冷静な判断が作戦に駄目出しをする。 それでも意見には賛成なのか氷の塊をゴーレムの足にぶつけて体勢を崩そうと狙う。 しかし、質量差で効果は無きに等しい。 さっきと同じスペルで援護しつつ、体勢を崩す方法を考える。 単体で崩すのは困難、質量体をぶつければ崩せるかもしれない。 ギーシュのワルキューレなら条件を満たしているが、勢いが足りない。 そこで名案を思いつく。 これならうまくいくかもしれない。 思いついた方法をタバサとギーシュに伝える。 ワルキューレを一体作ってもらい、足を片側だけ折って傾斜のつけたテーブルにそのワルキューレを寝転ばせる。 タイミングは、ゴーレムが壁の一部を壊した瞬間。 直後、壁の一部が崩れてゴーレムの姿が見える。 「タバサ、ワルキューレ射出!!」 その言葉にタバサがエアハンマーでワルキューレを足から叩いて発射。 青銅の質量体がゴーレムの頭部付近に命中、その瞬間にゴーレムがよろける。 しかし、倒れるまで至らない。 駄目か、と思った瞬間、ゴーレムの右足が地面から出た巨大な刃に貫かれて崩壊。 シエスタが援護してくれたのだ。 更にギーシュのヴェルダンテが金の針を刺した。 暗黒回帰によって崩れるゴーレム。 それをチャンスにつなげるために、ギーシュにワルキューレを量産させ、タバサがエアハンマーで撃ちだす。 猛スピードで飛来するワルキューレに傭兵団が後退した瞬間、地面が燃え上がった。 ワルキューレ内部に油を錬金し、地面に当たって砕けた時に流れ出すようにしておいた。 燃え上がる炎に混乱している最中、タバサが氷を何個も撃ち込む。 水蒸気が発生し、視界をさえぎったところで全員が女神の杵亭を脱出した。 ワルド様が所々に出てくる傭兵の待ち伏せを切り倒しながら進む。 私は今出来ることをするために、詩を歌っている。 「その心は闇を払う銀の剣、絶望と悲しみの海から生まれでて―――」 良く分からない異国の歌だが、精神が昂る。 走りながら歌うのは辛いが、これも早く港に着くための手段。 おかげで本来なら十分かかるような道を五分で踏破した。 そこで歌うのをやめ、息を整える。 「それも君の魔法なのかい、ルイズ?」 首を振って、私はただ歌っただけよと付け加える。 ちょっとだけ特別で、全くといって効果の無い歌を。 港の桟橋に着くと、シエスタが待っていた。 正面突破だけあってさすがに速い。 ワルド様が船を早く出すように交渉し、出港。 こうして、何とか無事にアルビオンに向かって出発したのだった。 ところでキュルケたちは無事に脱出できたのだろうか? 気になるが気にしても仕方が無いと割り切って月を見上げた。 前ページ次ページゼロと聖石
https://w.atwiki.jp/keroro00innovator/pages/5798.html
Absolute LIVE!!!!! Absolute LIVE!!!!! アーティスト ワルキューレ 発売日 2023年5月17日 レーベル フライングドッグ デイリー最高順位 1位(2023年5月17日) 週間最高順位 1位(2023年5月23日) 月間最高順位 3位(2023年5月) 初動売上 19500 累計売上 24609 週間1位 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 Disc1 LIVE from “Walküre Attack!” 1 恋! ハレイション THE WAR~without Freyja~ マクロスΔ 2 一度だけの恋なら 3 ジリティック♡BEGINNER 4 不確定性☆COSMIC MOVEMENT 5 僕らの戦場 6 NEO STREAM 7 AXIA~ダイスキでダイキライ~ 8 GIRAFFE BLUES 9 Walküre Attack! 10 ルンがピカッと光ったら 11 いけないボーダーライン 12 恋! ハレイション THE WAR Disc2 LIVE from “Walküre Trap!” 1 Absolute 5 マクロスΔ 2 絶対零度θノヴァティック 3 おにゃの子☆girl 4 LOVE! THUNDER GLOW 5 Silent Hacker 6 破滅の純情 7 Hear The Universe 8 涙目爆発音 9 ワルキューレのバースデイソング 10 God Bless You 11 風は予告なく吹く 12 愛・おぼえていますか Disc3「LIVE from “Walküre Reborn!” 1 唇の凍傷 マクロスΔ 2 未来はオンナのためにある 3 無限大DRIVE 4 キキワケナイ! 5 マダマニア 6 キズナ→スパイラル 7 愛してる 8 つらみ現在進行形 9 ワルキューレはあきらめない 10 ALIVE~祈りの唄~ 11 宇宙のかけら 12 ルンに花咲く恋もある Disc4「LIVE from Others 1 ようこそ! ワルキューレ・ワールドヘ マクロスΔ 2 涙目爆発音~with Claire~ 3 星間飛行~Freyja meets Ranka~ 4 不確定性☆COSMIC MOVEMENT~Walküre meets Ranka~ 5 ダイアモンド クレバス~Mikumo meets Sheryl~ 6 僕らの戦場~Walküre meets Sheryl~ 7 GIRAFFE BLUES~Kaname Solo Requiem~ 8 Glow in the dark 9 Diva in Abyss 10 綺麗な花には毒がある 11 ワルキューレがとまらない 12 ワルキューレは裏切らない 13 チェンジ!!!!! 14 Dancing in the Moonlight ランキング 週 月日 順位 変動 週/月間枚数 累計枚数 1 5/23 1 新 19500 19500 2 5/30 9 ↓ 2319 21819 3 6/6 8 1869 23688 2023年5月 3 新 23688 23688 4 6/13 11 ↓ 561 24249 5 6/20 ↓ 221 24470 6 6/27 139 24609