約 2,183,980 件
https://w.atwiki.jp/dimensionzero/pages/1299.html
赤銅の大槍の乙女(しゃくどうのおおやりのおとめ) 赤銅の大槍の乙女 ユニット- ワルキューレ 使用コスト:赤1無7 移動コスト:赤2無1 パワー:8000 スマッシュ:2 タイミング クイック [このカードをフリーズする]《ノーマル》 あなたはこのカードと同じラインのスクエアにある対象のユニットを1枚選ぶ。 このカードとそのユニットは、それぞれのパワーと等しい値のダメージをもう一方のユニットに与える。 相手を指名してサシで決闘するユニット。 このパワーを以ってすれば、大抵のユニットを槍玉に挙げることができる。 純粋な力比べになるが、赤のワルキューレによる種族支援があれば多少パンプアップされても押し切れる。 イラストはギルティギアシリーズの石渡 太輔氏が担当されている。 フレーバーテキスト 燃える穂先は乙女のときめき。 収録セット サード・センチュリー エキスパンション 敵陣を貫く疾風(011/100 レア/ゴールドレア) イラストレーター 石渡 太輔 関連リンク 赤のワルキューレ 熱い眼差しの乙女 熱い抱擁の乙女? 赤銅の大剣の乙女 赤銅の大槍の乙女 種族 ワルキューレ(赤) 参考外部リンク
https://w.atwiki.jp/medadictionary/pages/1164.html
ガルキュート メダロット一覧 ⇒ か行 - 5 カモメ型メダロット(SMW) 登場作品 5 ガルキュート 機体説明 関連機体 使用メダロッターメダロット5 機体性能メダロット5 機体説明 防御不能からの特攻サクリファイスを仕掛けるカモメ型メダロット。 モチーフからはわからない凶悪性を秘めているが、ジャングルフィールドで登場するので攻撃する前にやられている不遇な機体。 メダロット4とメダロット5の機体のほとんどはTAGRO氏がデザインしたと言われているが、 もしかしたら同氏の手でカモメ型を4・5と2回デザインした可能性もある。 (ウィンターガルはどちらだろうか) もしそれが本当なら、2体ともまったく性能が違うものとなっているのは面白い。 ▲ページ上部へ▲ 関連機体 SMW型一覧 ウィンターガル 海原へ向かって回復カモメ ガルキュート 海原へ向かって特攻カモメ コチドリ系メダル対応型一覧 スモールチドリー コチドリ ガルキュート カモメ ドーンオブクロウ カラス ホワイトキグナス ハクチョウ フェイザント キジ スキルタッカー タカ ▲ページ上部へ▲ 使用メダロッター メダロット5 おんなせんせい? 機体性能 メダロット5 「ガルキュート」(女) 頭部 ガルヘッド SMW-01CH 装甲 成功 威力 回数 スキル 属性 行動 効果 コンボ 25 39 0 4 20 防御 ぼうがい 防御不能 チョキ 右腕 ガルハンド SMW-02CH 装甲 成功 威力 充填 放熱 スキル 属性 行動 効果 コンボ 10 10 46◎ 22 12 8 防御 ねらいうち サクリファイス グー 左腕 ガルアーム SMW-03CH 装甲 成功 威力 充填 放熱 スキル 属性 行動 効果 コンボ 10 10 63◎ 22 12 8 防御 ねらいうち サクリファイス グー 脚部 ユリガルー SMW-04CH 装甲 推進 機動 防御 近接 遠隔 属性 タイプ 15 68 55 35 7 28 防御 飛行 ▲ページ上部へ▲ メダロット一覧 ⇒ か行 - 5
https://w.atwiki.jp/pndr/pages/26.html
URL、キャラクター欄などは各自編集お願いします。 公式アカウント @pndrTL http //panic.in/pndr/ 【十三人の神々】芽月(ジェルミナル) 【十三人の神々】霧月(ブリュメール) 【十三人の神々】雪月(ニヴォーズ) 【ワルキューレ/研究班】ギア 【ワルキューレ/戦闘班】跋(バツ) 【ユグドラシル/戦闘班】枢(クルル) 【ユグドラシル/護衛班】クオリア 【軍/情報処理班】三宮(ミミヤ) 玉川 @tmgw_ cult.jp/tmgw/pndr/ 【永久機関/雑務班】オルフェウス・フェリンドール 【ユグドラシル/救護班】ドロテーア・ドルチェ 【軍/戦闘班】アドラーストス・フェリンドール 【軍/食堂】まだら 【一般市民】ファウスト・インドール 【NPC/死亡済】ウェルテル・ミューラー 【NPC/GC】ドグマチール 【NPC/永久機関】末那識ライカ 【NPC/軍】ネーレウス・フェリンドール 【NPC/死亡済】ヤプー 香椎くう @Q00_P loose.in/candy_pop/ 【一般市民】キャンディーヌ・キャンディ・ド・キャンベル 【永久機関/GC】雪兎 【ユグドラシル/炊事班】リンドーロ・トッド 【軍/食堂】シュシュ・ハートマン 【一般人】チュチュ 榊P子 @yumyam_p yum-yam.sakura.ne.jp/pandra/index.html 【ユグドラシル/炊事班】レジ 【ワルキューレ/研究班】グローリィヒル・シェリー 【軍/医療班】ダニエル・ノイマン 十五夜美月 @JugoyaMizuki boxofpandrora.kuizu.net/ 【永久機関/雑務班】ノン・ジルオール 【軍/GC】リトリム 青色 @isink7s こじろー @trucco_pndr 硝子 @610alice 梓芭 @siba_reiso 【永久機関/研究班】ルカ 【ワルキューレ/戦闘班】猫(マオ) 【軍/情報処理班】ミザリィア=アイゼンディアス 【一般人】ロードライト=ジルオール ネムリ @nemuri5 【一般人】ルカシュ 【永久機関/雑務班】カチェス 【一般人/GC】オルク 【軍/戦闘班】クライド しぐれ @c9re 【永久機関/雑務班】ルリッツ・ユウェル 【ワルキューレ/戦闘班】塚音はつか 【ユグドラシル/護衛班】ロズ・フライト 【軍/戦闘班】ラム・キッド 染井 @ambrosia_swan ambrosiaandswan.blog.fc2.com/ 【永久機関/研究班】アムリタ 【ユグドラシル/炊事班】真鳥 コヤ @mngt1010 pndrsusk1010.sugo-roku.com/ 【永久機関/雑務班】亥 【ワルキューレ/研究班】ザッハトルテ 【ユグドラシル/戦闘班】李幸福 【軍/戦闘班】フラッツ・アルムホルト カヨ @aruma_0909 【永久機関/GC】アルマ 【ユグドラシル/護衛班】ヴィクター 有井 @Ar_i2 仁田坂 @nitapsaka 【永久機関/研究班】セシル 【軍/戦闘班】マリアンナ=バスカヴィル 【軍/戦闘班】レイナード・ヘリオドール 【一般市民/GC】モニカ 【ユグドラシル/護衛班】壱雪之進 【NPC/一般人】 猫田 @nekoeden 碧 @aoi_wizard ほたに @jcnnw864 ごまめいち @deancfe edengomame.blog.fc2.com/ 【ユグドラシル/救護班】大宮チェルシー 【永久機関/雑務班】森元ピエール 【永久機関/GC】エピック F. もんた @rererenorevy リョーノ @Return_mysanity 03.mbsp.jp/magicrazy0808-14934-n2.php 【ユグドラシル/救護班】ケルベロ ミトコン @lunchbac6 【ユグドラシル/護衛班】ガルキリア 【永久機関/十三人の神々】熱月(チキ) 【NPC/死亡済】05103 シヱlL @CL_plan nanos.jp/planpage/page/1/ 【ユグドラシル/戦闘班】ゼロ 【アルヴァドール王国/医療班】シェイミー・ラヴィナーレ 【一般市民】ルーク・シャンドラー 小鳥遊 @Allow10g 【永久機関/研究班】藍 エヴィ @evui_pndr 雑魚 @zatu_uo 【ワルキューレ/戦闘班】k 【永久機関/研究班】デル アケゾラユウ @esp_pndr esp.iku4.com/ 【ユグドラシル/GC】エスパー 【NPC/死亡済】ディオール・エイディウ 【ワルキューレ/戦闘班】マール・ディンスタック 【ユグドラシル/戦闘班】ナギ のあ @noa0731_ 【永久機関/雑務班】メリ メリ @0130meli 【ワルキューレ/研究班】バジーリア・ボラーロロ もち坂 @mochi_saka_pndr mochisaka.web.fc2.com/ 【永久機関/雑務班】シナリー・アレット 【ワルキューレ/戦闘班】ルナール 【軍/研究班】エリアム 【軍/情報処理班】ゲーネ・ジルオール 【ユグドラシル/GC】胆振伊予 屍碕シギ @shigi00 nanos.jp/dokukai199100/blog/9/ 【永久機関/雑務班】カスタネア・ウィンクラー 【ユグドラシル/護衛班】レレ 【軍/戦闘班】シンビジウム 【NPC/死亡済】キルタンサス 波多野奈津目 @NH_sousaku www45.atpages.jp/firstsuite/ 【ユグドラシル/救護班】フォニ 【永久機関/GC】フェアギス 【ワルキューレ/戦闘班】フフル ゆうな @eve6y9 nanos.jp/z6eve9z/page/6/ 【ユグドラシル/戦闘班】キノ・ジルオール 【軍/戦闘班】クリス トウネ @toune99 xxxskull119.web.fc2.com/index.html 【一般市民】ヴェリア 【一般市民】リコリス 【軍/戦闘班】ガラ 【軍/戦闘班】スプモニー 【永久機関/GC】アルスト 【永久機関/研究班】ブリュト 【一般市民】ディノン 【NPC/軍】TERU 【NPC/軍】TORON 【NPC/軍】エメラルド 【NPC/軍】モヒート 【NPC/軍】ジュイ 【死亡NPC/CG】オシリス 【NPC/GC】ラーノ 苗代綴留 @7ac6tdr ソフィナ @xxrhapsodyxx nanos.jp/tearxxlove/novel/6/ 【永久機関/雑務班】ティトナ=アン=グランツェ 【一般人】X(エクス) わかな@wakana_08 ひかげそうし @marcher_idc idc-marc.jugem.jp/ 【一般市民】マルシェ 綾香しの @RYoKa_SS_KiKaKu pandora.cebalrai.net/ 【永久機関/医療班】メルチェーデ・シーカ 【ワルキューレ/研究班】ゲオルギ・レフスキ 【ユグドラシル/救護班】鈴ノ宮 【軍/研究班】ヨゼフィーネ・メレンゲ 【一般人】山本六華 紫檀 @sitan_p gray-empty01.jugem.jp/ 【永久機関/雑務班】ヒースコート・イエイツ 【ワルキューレ/戦闘班】トロイメライ・ケルル 【ユグドラシル/救護班】花片 【ユグドラシル/GC】チスイ 【軍/戦闘班】ノウェム・リンネ 【軍/戦闘班】ゼノ・リンネ しらたまきなこ @white_mochi losicgirl.jugem.jp/ 【永久機関/研究班】00 【永久機関/研究班】難波 【ワルキューレ/研究班】8/1 ZEN @velphil 【ワルキューレ/戦闘班】ヴェルヴェット 【ユグドラシル/戦闘班】オラクル 【永久機関/医療班】ゲヘナ 【一般人】カイザ 【一般人】桃李 【軍/GC】アリョーシャ 【NPC/軍】カンディード 【NPC/一般人】ユリシーズ 【NPC/ワルキューレ】リリス 【NPC/一般人】ザクセン 【NPC/死亡済】ラインハルト 狐之助 @n_connosuke 【一般人】オセロ・ジルオール 猫羊 @pndrxnh 【一般人】フォルロット そら @xxyume00 アイ @cherry_ai27 みきち @_3kt nanos.jp/pndrmkt/ 【永久機関/雑務班】ルイン・フィリエテット 【永久機関/研究班】ハヴェン・ローウェル 【軍/情報班】ヴォミット・シュリュッセル 小鳥遊 真純 @takanashi_m シバマメ @ku_ma_me2 蒼人 @atat_pndr aotoxpndr.blog.shinobi.jp/ 【ユグドラシル/戦闘班】アロウ・クリミナーレ 【ワルキューレ/戦闘班】シルヴィス・ディリバース 【永久機関/GC】カイム 【軍/研究班】椎束 朔太郎 【永久機関/雑務班】楠宮 オトギ 【一般人】ダディ 【NPC/一般人】棗 【NPC/軍】周 李京 【NPC/一般人】椎束 望満 【NPC/ワルキューレ】玖達 【NPC/死亡済】ハリエット・アイオライト 【NPC/死亡済】ルクウィル・アイリス 久樹 @hisagiex_p mononote.en-grey.com/ 【ユグドラシル/炊事班】アトレー 【一般市民】ディミータ・ペンプティ 囉羅 @rarapo00 びー @bekaro_t_pndr うたういぬ @touchsp もちこ @pndr_mck ドリル @drl_pndr 【ユグドラシル/護衛班】ダニエル・イグナーツ 真純 @takanashi_m ameblo.jp/3xtora/ 落雁トルテ @Torute_Eden http //edencrown.blog.fc2.com/ 白須 @sirasu_maru 【一般市民/GC】シア 捺 @weather_pndr 【永久機関/雑務班】Δ 【永久機関/GC】トレーネ・シュヴァルツ 【ユグドラシル/救護班】カメリア・グランディ 【ユグドラシル/戦闘班】シュガテール・グランジャー 【軍/情報処理班】ファルベ・ヴァイス 八宏 @816hs http //moxchax8.tumblr.com
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/17181.html
ローゲの焔(OCG) 永続罠 (1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在し、自分フィールドに「ワルキューレ」モンスターが存在する限り、 攻撃力2000以下の相手モンスターは攻撃できない。 (2):このカードが相手の効果で破壊された場合に発動できる。 手札・[[デッキ]]からレベル5以上の「ワルキューレ」モンスター1体を特殊召喚する。 リクルート ワルキューレ補助 永続 罠 行動制限 同名カード ローゲの焔(アニメ)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/998.html
「決闘だ」 デルフリンガーを買いに行ってサボった事をコルッパゲに怒られた翌日。 朝の食堂でギーシュが億泰に言ってきた言葉がコレだった。 それを聞いてにわかに周囲は白熱しだし、ルイズとシエスタが頭を抱える。 「よし!散れ!散れ!散れ!散れ!散れ!散れ!」 「残れ!残れ!残れ!残れ!残れ!残れ!残れ!三日だけ!」 「たかだか平民に決闘て……常識的に考えろよギーシュ」 「いやいや、ここは貴族が上!平民が下!を植えつけるべきだろ」 「おとなしくナンパしてろギーシュ」 一方、億泰とデルフリンガーは訳の分からない、という顔をしていた。 「なんでだ?」 「いきなりなんでぇ、貴族の坊主」 一斉に全員がコケた。 「な、なんでもないだろう! 昨日僕を気持ち良くなる位に清々しくボコボコにしておいて! 魔法さえ使えずに負けたのは僕のプライドが許さない、だから正々堂々決闘だ!」 「はぁ……まーいーけどよ」 「よし、ならばヴェストリの広場で待っている!すぐに来るんだ!」 そう言うなりギーシュはさっさと出て行った。 「ワザワザ売られた喧嘩買ってどうすんのよこのバカ! あー、もう!剣は確かに買ってあげたけどね。 しなくていいならしない方選びなさいよ!」 「ほんと、本当です!バカです億泰さん!」 「確かにオレは頭悪いけどよォ~~、『罪』ってのはよぉ~そうなるような事をしてりゃあよぉ~ どっかから廻りまわって『罰』がやって来る物だからなぁ~ オレのした事の結果なら受けてやるのが道理ってもんよ」 そう言うと、唖然とする二人を置いて 決闘の見物へ行こうとする集団について億泰も歩き出す。 その背中に、ルイズは一言だけ声をかけた。 「貴族の決闘は杖を落とした方が負けよ。 完全に倒す必要なんて無いんだから」 「あの……ミス・ヴァリエール?」 「なに?」 「億泰さんって本当にただの平民なんですか?」 「私にもわかんない……」 「そうですか……」 やがて通路を曲がって億泰の姿が消えたころ、二人はそう言葉を交わした。 「さあ諸君!決闘だ!」 いつの間にか集まってきた群集でごった返すヴェストリの広場にギーシュの声が響く。 普段は閑散としたこの広場だが、今は一種の熱気に満ちている。 「決闘っていうか雪辱戦?」 「復讐?」 が、決闘の挨拶で湧き上がる歓声には幾分疑問の声が混じっている。 白熱というには随分と足りないようだ。 だが、ギーシュはそんなのは聞いていない事にした。聞きたくなかった。 「よく来てくれたね……感謝するよ。 今度は魔法を使わせて貰う、もう負けはしないさ。 さあ、君も剣を抜きたまえ」 華麗にスルーする事に成功したギーシュは薔薇の造花を振るい、花びらを一枚地面に落とす。 舞う花びらは地面に落ちると、甲冑を着た女戦士の像へと変わった。 朝日を受けて青銅でできたその体がきらめいている。 「別にオレはこのままでいーぜ? さっさとかかってきなよ」 「いや、相棒!抜けよ!抜いてくれよ!使ってくれよ!」 一方、対峙する億泰は余裕の表情だった。 むしろ武器のデルフリンガーの方が余裕が無いくらいだ。 本来貴族のギーシュが浮かべるべき表情に、ギーシュは何故か一抹の不安を覚える。 「強がりかい? 僕は昨日の負けを清算できればいいんだ。 二つ名『青銅』の名の通り、青銅のゴーレム『ワルキューレ』でお相手しよう」 女戦士のゴーレムが、億泰へと突っ込んでくる。 その右手を振り上げ、まさに鉄槌のごとく腕を振り下ろす……! 「『ザ・ハンド』!」 億泰がその名を呼ぶやいなや、どんな腕よりも恐ろしい右腕がワルキューレを抉りとった。 独特の音が辺りに響き、右腕から胸を通り、反対側まで『削り取られた』ワルキューレが静かに倒れる。 「オメーもマジならよォー、こっちもマジにやらねーと失礼ってモンだよな? だから、マジになるぜェ~~~~!」 億泰の声が、その様子に静まった広場に響く。 それを皮切りに観衆がざわめきはじめる。 「な、なんだあの平民!?何を?」 「まさか、魔法を!」 「いや、杖どころかたった一言しか言ってなかったぞ!?」 「先住魔法か!?」 「いや、でもあの平民から出てる『もや』みたいなのは一体!?」 ギーシュは混乱していた。 当初の予定では一体のワルキューレで適当に翻弄して土下座して謝らせるだけで終わらせるつもりだった。 そんでもってその勢いでモンモランシーとよりを戻すつもりでさえいた。 平民だというのに何の遠慮もなくブン殴ってきた億泰の性格に、少なからず好感も持っていた。 貴族と平民の間の絶対的な差も考えの根底に根ざしていた。 しかし、アレはなんなのだ。 億泰から出ている『もや』のような何か。 人型をとっているらしいが、何故か空気のゆらぎ程度にしか見る事のできない何か。 それが、一発でワルキューレを『切り裂いた』。 そうとしか思えなかった。 「一体何をしたんだ使い魔!? その『もや』みたいな物は何なんだ!」 「そうだぜ相棒!オメー一体何を!?」 億泰は最初から全く変わらないポーズでギーシュへと目を向ける。 デルフリンガーについては後で説明すればいいかな、と思ってあえて無視した。 「ほー、完全じゃあねーみてーだが見えてンのか。 世界が違うからなのかなー、中途半端みてーだけど。 ま!考えると頭痛くなるしやめとくぜ」 「見え……? だ、だからその正体は一体!?」 「『魔法じゃあねえ』。そこまでだ。それ以上親切に教えるバカはいねーよ。 そんなくれーで自分から吹っかけた喧嘩中断するってーのか? ほら、近づいてきなよ」 「わ、ワルキューレ!」 一歩踏み出した億泰に、あわててギーシュが薔薇を振る。 花びらが溢れ、六体のワルキューレが現れた。 そして、地面から更に錬金された武器を手に掴む。 もう余裕とかちょいととかいうのは無しだ。 目の前に居るのはただの平民ではない。 メイジ、それも自分よりも格上を相手にするつもりでも良いのかもしれない。 「やれ、ワルキューレ!」 二体のワルキューレが左右から億泰へと切りかかる。 タイミングも完全に同時、避ける事も受け止めることもできない威力で振り下ろされる剣。 しかし、ほれっという億泰の声と共に片方の頭が消え去り、もう一体が物凄い力で倒される。 倒されたワルキューレの顔には足の形が深々とつけられていて、蹴られたのだと分かった。 「ん~、金属の塊にしちゃー予想外のスピードだけどよォ~~~。 承太郎さんの『スタープラチナ』やクソッタレの『チリ・ペッパー』はおろか…… 俺の『ザ・ハンド』や康一の『act3』よりもおせえよ」 そう言うのと同時に『もや』が倒されたワルキューレの頭を踏み砕く。 「そういやよー、オメーシエスタにまだ謝ってなかったよな? 傷ついたレディが二人とか言ってたけどよォー、 どー見てもあの時一番傷ついてたのはシエスタだよなー! 俺が勝ったらちゃんと謝ってもらうぜェー!」 「っ!」 ギーシュが杖を振り、砕かれたワルキューレの破片を『レビテーション』で持ち上げる。 それを億泰の方へと勢いを付けて放り、更に四体のワルキューレで同時攻撃を仕掛けた! 「真正面から何体来ても無駄だぜェ~! 削り取ってやる!」 「フ、ただ真正面から突っ込むだけだとでも思ったのかい! 『錬金』を食らえ!」 ギーシュの本命はワルキューレによる攻撃ではなく、『破片』の方だった。 ワルキューレが三体破壊された所に、青銅の塊が『錬金』されて砂の塊に変わり億泰の顔へと襲い掛かる! 「う……イデェェエェ!」 思いっきり引っかぶった億泰は目を瞑ったまま『ザ・ハンド』の腕を振り下ろす。 しかし、その腕が最後の敵を削り取ることはできなかった。 ただ、舞う砂を削って空間を作っただけだ。 それを見てギーシュはニヤリと笑みを浮かべる。 「そして!この砂で理解ができた! 君のその力!大体人の姿をしているがどうやら殆ど遠くへは行けないな! 行けるならば最初から僕を攻撃していた! そして、右腕にさえ気をつければ怖くないようだ!」 『ザ・ハンド』の右腕を逃れたワルキューレが億泰へと剣を突き立てようとする。 「空振りした所ならこの剣は避けられまい!勝った! アホの使い魔、完!」 喜びながら電波を受信したギーシュだったが、その喜びは億泰の余裕タップリの声に中断される。 「五十点って所だなァ。 甘いぜオメーは。空振りしたって『空間を削っている』んだぜ! そしてェ、削った空間は閉じ……オメーは最初から全く動いてね~~~」 「何を言って……ハッ!」 その瞬間、ギーシュの腕から杖がすっぽ抜け、億泰の手に収まった。 同時に、ワルキューレの動きが止まり、不自然な姿勢のワルキューレはバランスを崩して横へ倒れる。 「瞬間移動って奴さァ~~~」 その様子を見て観衆は沸いた。 急に広場がざわめきだす。 「へ、平民が杖を奪ったぞ!?」 「って事はギーシュの負けか!」 「俺……ひょっとして要らない子か?」 デルフリンガーの嘆きはそっと広場の騒ぎに掻き消えた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2129.html
ルイズとルークは、爆発によりめちゃくちゃになってしまった教室の片付けを淡々と行なっていた。 まぁ、ルークは小さく何で俺がこんな事しなきゃいけねぇんだ。と、ぐちぐち言っている様だ。 黙々と淡々と教室を片付ける二人だったが、唐突にルイズは作業の手を止めルークの方を睨む。 行き成り睨んでなんだよ? と、眉を顰めるルークだったが…… 「馬鹿にしてるんでしょ? 私が『ゼロ』だから」 は? 何いってんの? と、ルイズの言葉に少々呆れを含む表情を浮かべたルーク。 その表情を見てルイズは、ヒートアップしていく。 「笑いなさいよ! メイジなのに魔法が使えないって!」 そんなルイズに、ルークはズイッと近寄り怒鳴った為に顔が赤くなったルイズの額に思いっきりデコピンを喰らわせた。 鈍く大きい音が、ルイズの額から響き余りの痛さに額を押さえ涙目になるルイズ。 「俺は、この世界の人間じゃないからわからないけどさ。魔法ってのは、失敗したら爆発するもんなのか? 譜術って俺の場所じゃぁ使われてたんだけどさ。まぁ魔法と似たモンだけど……それは失敗したら何も起こらない。 ジェイドなら、色々お前に対して説明とか明確なアドバイスとかするんだろうけどさ」 腕を組み眉を顰めながらに言う。 「出来ないから諦めるのか? 出来ないから出来ないんだ! って決め付けるのか? 違うだろ? 出来ないならなんで出来ないのか? 出来ないなら何が自分で出来るのか? それを探すもんだろ?」 俺はそうだった。と、告げた後。結局は、進もうとするかしないかだ。と、締めくくりルークは再び片付けに戻る。 ルークの言葉に、ポカンッといまだ額を押さえたままのルイズを見て、さっさと手動かせよ! と、声をかけると ルイズは、分ってるわよ! と、ハッとした様に答え同じ様に片付けに戻った。 結局、片付けが終ったのは昼前。二人は、片付けた教室を一度見回した後で食堂へと向かったのだった。 二人が食堂に入るや否や、ルークは食堂の一部分に喧騒が起こっている事に気づきその場所へと歩を進める。 それを見たルイズが、何処へ行くのよ! と、大声を張り上げて尋ねたのだが……ルークは、そのまま歩みを進めた。 喧騒の中心たる人物は、メイジを主張するローブを着た少年とその少年にペコペコと頭を下げているメイド。 そのメイドは、朝方迷惑をかけたシエスタで、どうも飛び交う話を軽く聞けば、どう考えてもメイジの少年に非がある。 気がつけばルークは、シエスタを庇う様に少年の前に出ていた。 突然の事に少年は、少々狼狽したようだったが直ぐにそれがルイズの使い魔である事に気づくと、 手にしていた造花の薔薇を差し向ける。 「なんだい? まさかそのメイドを庇うつもりかい?」 馬鹿にした笑みを浮かべながら少年は、そう告げた後「そこをどきたまえ」と、更に告げるのだが ルークは、腕を組みタンタンタンと軽く足踏みをしながらギーシュを見下ろす様に睨む事で、答えた。 その態度に、少年は態度には出さないものの、内心ではムッと眉を顰めていた。 「おい、お前。話を聞くと、お前がどう考えても悪いだろ? え? 二股君」 「……君は、貴族に対しての口使いと礼儀がなっていないようだね? 流石、平民だ」 「はん。テメェらの言う貴族なんて貴族じゃねぇよ。権力に御座かいてるだけのクソガキだ」 まぁそれは俺も一緒だった訳なんだが。と、思いながらため息を吐くルーク。 その言葉とそのため息に、少年のこめかみに青筋が浮く。どうやら、何か勘違いをした様だが…… どちらにしろ、ルークの言葉を聞いた時点で、軽く青筋が浮いていたので何を勘違いしたのかはどうでもよさそうだ。 「随分、躾のなっていない使い魔じゃないか。ゼロの使い魔なだけある。 いや、平民だからかな? まったく、親の顔が見て聞いてみたいよ。どんな躾をしたんだい。と」 少年の言葉が、終ると同時にブチッと言う短い音がルークから発せられた。 その音にへっ? と、少年が呆けた瞬間……少年の体は、後方にぶっとんだ。 床に何度かバウンドし叩きつけられた少年は、突然の痛みと衝撃に訳が分らなく混乱していた様だった。 それは、この喧騒を見ていた生徒達も同じで、ルークの後ろに居たメイドことシエスタは、ルークの体に視界を遮られていた為 生徒達以上に何が起こったのかとパニックに陥る。 そんな周囲を気にせず、ルークは少年の方へと歩き目の前に立つと、今度は完全に見下ろしながらに言う。 「俺は、世間知らずだし物知らずだからなんと馬鹿にされてもしょうがないって思える。 だけど、お前……今、俺の父上と母上を馬鹿にしたな? レプリカでも俺を一生懸命育ててくれた両親を馬鹿にしたな?」 腕を伸ばし少年の胸倉を掴み持ち上げ殺気の篭った視線を向ける。 「親は、関係ないだろうが!!!」 胸倉を掴んだ手を離した瞬間、掌底を叩きつけ……ズドンッ! と、言う音と共に再び少年が吹き飛ぶ。 ルークが何をしたのかといわれれば、ただ裂破掌を打ち込んだだけである。 裂破掌とは、掌底を叩き込み気を爆発させ敵を吹き飛ばす特技であり、少年を吹き飛ばすには十分。 一体何をしたのかわからない周囲は、どよめきを隠せずに居た。 平民が、魔法も何も使わずに少年を吹き飛ばしたのだ。エア・ハンマーを使ったと言うのなら分るが…… どう見ても平民であるルークが、一体何をやったのかなどと分る者は、誰一人居なかった。 どうにか、床から立ち上がった少年は、憎悪と憤怒の表情を浮かべ造花の薔薇を、力強くルークに差し向ける。 「このギーシュ・ド・グラモン! 君に、決闘を申し込む! 平民の君に、貴族に対しての礼儀を叩き込んでやろうじゃないか!」 この食堂を戦いで汚す訳にはいかない。ヴェストリの広場で待っている! と、大声で告げギーシュは食堂を出てゆく。 食堂を出て行く一歩手前で、立ち止まり相変わらず憎悪と憤怒の表情を浮かべたまま、振り向き。 最後の晩餐でも食べておくんだな! と、告げ今度こそ食堂を後にした。 ソレを見送るルーク。そして、慌てた様にルークに駆け寄るルイズ。 「ルーク! アンタ何勝手な事してるのよ!」 ルイズの物言いに、あ? と、ルークは柄悪くルイズの方を見る。其処には、本当に慌てた姿のルイズ。 「何って?」 「ギーシュとの決闘よ! 平民がメイジに勝てる訳ないじゃない!」 それは、この世界での常識。しかし、ルークの世界の常識ではない。 「お前ら、本当……口を開けば平民、平民だな。なんで貴族や王族が偉いか知ってるか?」 腕を組んでルイズを見下ろしながらに言う。 そんなルークの脳裏には、自分の仲間で幼馴染であった王女ナタリアの姿。 「名前もしらねぇ。見たこともねぇ。民の為に、領土を統治し民の為を考え行動し尊敬される。それが、貴族や王族だ。 権力に御座掻いて、力を振り回すだけのヤツなんて、ただのクソヤロウだ! それに……あのクソガキは、俺の親を馬鹿にしやがった。耐えられるか? もしお前の親が家族が馬鹿にされても!」 その言葉に、ルイズは自分の両親と二人の姉を脳裏に浮かべる。 魔法が使えない自分を見限る事なんてしなかった両親。 何時も自分を苛めるが何処か優しかったエレオノール姉さま。 何時も己以上に自分を心配してくれた優しいちい姉さま。 それが、馬鹿にされる? それは……絶対に許せない。 「許せない。絶対に」 ポツリと呟いた言葉。その言葉に、ルークはだろう? と、言葉にしないが口の端を小さく吊り上げた。 そして、食前の軽い運動だ。と、ルークは、そう言うとルイズにヴェストリの広場って何処だよ? と、尋ねる。 そんなルークを止めるつもりは、もう無いのかルイズは、こっちよ。と、ルークの道案内をする事になった。 まぁ、道案内をしている途中で、昼食食べるのを忘れた。と、肩を落としたのは、ご愛嬌である。 ヴェストリの広場。魔法学院の敷地内において『風』と『火』の塔の間に存在する中庭である。 西側に存在する為、日中でもあまり日が差さず。決闘にはうってつけの場所である。 だが、食堂に居合わせた生徒や噂を耳にした生徒で、広場は溢れかえっていた。 「諸君! 決闘だ!」 先程ルークに受けた裂破掌の怪我など一つも無いギーシュが、造花の薔薇を掲げ高らかに宣言する。 怪我一つないギーシュに、眉を顰めるルークだったが、ルイズの「誰かに治癒かけてもらったんでしょ」の言葉に、なるほどと頷いた。 「ギーシュが決闘するぞ! 相手は、ルイズの平民だ!」 平民、平民うるせぇ! と、ルークは腕を組んで苛立ちを隠さずに眉を顰めた。 ギーシュは、キザったらしい仕草で歓声に答えるかのように愛想を振りまく。 そして、やっと気づいた風にルークを見た。その瞬間、ギーシュの顔にはやはり歪んだ表情が浮かぶ。 ルークとギーシュは、広場の中央に立ちで睨み合う。 「とりあえず、逃げずに来た事を褒めようじゃないか」 造花の薔薇を弄りながら、歌う様に言うギーシュに対し「うるせぇクソガキ」と、短く答えられ少しばかり青筋を浮かべるギーシュ。 「さてと、始めるか」 ギーシュが、そう言ったと同時にルークがギーシュ目掛けて駆ける。 距離にしておよそ十歩。駆けるルークを見て余裕の笑みを浮かべるギーシュは、造花の薔薇を振る…… 前に、ルークの拳が、顔面に直撃し「へなぷっ!?」と、変な声を上げて宙で一度回転して大地と口付けを交わした。 そんなギーシュを見て、汚い物に触れちまったとばかりにギーシュの顔面を殴った手をプラプラと振る。 喧騒が渦巻いていた広場が、シンと静まり返り……一瞬後に罵声が爆発する。 卑怯だ! と言う罵声ばかり。その罵声に、ケッと舌打ちするルーク。 そんな中、ギーシュが覚束無い足取りで立ち上がる。 「さ、流石、平民、だ。卑怯、じゃぁ、ないか」 顔面から広がる激痛を抑えながら、途切れ途切れにそう告げるギーシュを見て、馬鹿かお前? と、言う表情を浮かべるルーク。 そんなルークの表情を見て、ギーシュは顔面を手で押さえながら造花の薔薇を振る。 造花の薔薇から七つの花びらが宙に舞う。宙を舞ったと同時に七つの花びらは、七体の女騎士を模った人形に変化した。 「僕は、メイジ、だ。だから、魔法で、戦う。このワルキューレ、で、君を叩き潰す!!!」 途切れ途切れの声だったが、最後の力強い叫びと共に七体のワルキューレが、一斉にルークに襲い掛かった。 対するルークは、突然現れた七体のギーシュ曰くワルキューレに少々驚いたが、直ぐに身を屈め力強く大地を蹴り飛び上がる。 自分の正面から突撃してきたワルキューレを飛び越え着地間際に、後ろ回し蹴りを丁度頭の部分に撃ち放ち鈍い音を立てて倒れる ワルキューレを尻目に着地したと同時に素早く一体のワルキューレの後ろにつき、掌底を打つと同時に体中をめぐる気を爆発させた。 そのワルキューレは、胴の部分から逆くの字に拉げる。残り五体。と、ルークは、冷静にワルキューレを見据えた。 所変わって学院の学院長室。 ミスタ・コルベールが、学院長のオールド・オスマンに、春の使い魔召喚の儀式成功の報告と ルイズが、召喚した青年ことルークの報告をしていた。曰く、使い魔召喚で何故人間が召喚されてしまったのかと言う点である。 そして、まだ見ていないがルイズと契約したルークに刻まれた使い魔のルーンも、気になること。 そんな、報告を聞いてオールド・オスマンは、詰らなさそうに欠伸を漏らす。 それより、貴族どもからがっぽりと金を分捕る事を考えんかい。と、オスマンはむっつりとした表情を浮かべた。 オスマンとコルベールの二人だけが居る学院長室に、ドアをノックする音が響く。 「誰じゃ?」 扉の向こうから、オスマンの秘書であるミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「私です。オールド・オスマン」 「なんじゃ?」 「ヴェストリの広場にて決闘を行なっている生徒が居るようです。大騒ぎになってます。 止めに入った教師もいましたが……生徒達の妨害にあって、止められないそうです」 ロングビルの報告に、はぁ。と、ため息一つもらすオスマン。 「まったく、暇を持て余す貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れて居るんだね?」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」 「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが…… 息子も輪にかけて女好きじゃ。おおかた女の子の取り合いじゃろう? して、相手は誰じゃ?」 「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の青年らしいです」 コルベールは、驚きの表情を浮かべた後で、オスマンを見る。 なんてこったい。と、ペチッと額に手を当てるオスマン。 「教師達は『眠りの鐘』の使用許可を求めております」 ロングビルのその言葉に、オスマンの目が、鷹の様な鋭い眼光に光る。 「アホか。子ども……この場合、子どもはグラモンのバカ息子じゃが……相手は、平民と聞く。 そんなケンカ止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」 わかりました。の言葉と同時に、ロングビルが去ってゆく足音が聞こえた。 「さて、コールベル君」 「コルベールです」 「……まぁいいじゃろ。それより、君の報告にあったミス・ヴァリエールの使い魔の青年の安否が気になるのぅ」 「はい。ですが……彼は、ただの青年では無いでしょう。少なくとも何かしらの訓練を受けています」 「ほう? それは、君の経験から見てかね?」 「えぇ……」 オスマンの言葉に、苦虫を潰した表情を浮かべながらに頷くコルベール。 よかろう。と、オスマンは杖を振る。壁に掛かった大きな鏡に、ヴェストリの広場の様子が映し出された。 「魔神拳!」 拳から放たれた衝撃は、地を奔りワルキューレの右足を砕く。其処へ素早く走りかけ追撃の崩襲脚を放ちワルキューレの頭を潰す。 残り四体! と、ルークは横から突き出された青銅の槍を素早いバックステップで回避し俗に言うヤクザキックで、 そのワルキューレを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたワルキューレは、ギーシュの真横まで吹き飛び大地に叩きつけられた。 叩きつけられたワルキューレは、錆びた機械の様に異音を発しながらも立ち上がる。 そのワルキューレを居れ、四体のワルキューレは、ギーシュを守る様な弓状の陣形を取り槍を構えていた。 「貴様は」 ワルキューレの後ろから、ギーシュの声が響く。 「貴様は、一体なんなんだ! ただの平民の癖に! 何故、僕のワルキューレが平民如きに!」 倒された三体のワルキューレの成れの果てを見て、ギーシュは叫ぶ。 「平民、平民うるせぇ!!! お前は、お前らはそれしか言えねぇのか! このクズが!!」 ギーシュの叫びに答えるかの様に、大声を張り上げルークは、再び走る。 「ワルキューレェエエエ!!!!」 走り掛けるルークを、迎え撃つ為に四体のワルキューレは、弓状の陣から素早く動き菱形の陣を作り一番前のワルキューレが 槍を、ルーク目掛けて突き出す。しかし、ルークは突き出された槍をしゃがんで潜り抜けワルキューレの懐に潜り込んだと同時に 胸部に掌底を叩き込み裂破掌を炸裂させる。それは、そのワルキューレに大きな穴を作りあげ吹き飛ばす。 もし、ワルキューレの中身ががらんどうではなく、青銅がギッシリと詰っていたならば凹むだけで済んだかもしれない。 そして、吹き飛んだワルキューレと共に前に走りかけようとして、慌ててバックステップするルーク。 何故、慌ててバックステップしたかと言うと……もし、そのまま走りかけていたならば、左右のワルキューレの槍に串刺しに されていただろう。その証拠に、左右のワルキューレが、先程ルークが居た場所を槍で突いていた。 「ワルキューレだけが、僕の戦力だと思うなよ!」 その言葉と同時に、ルークの足元が唐突に陥没する。チッと短く舌打ちをして慌ててその場から後ろに飛ぶ。 なんなんだ?! と、唐突に陥没した場所を見れば、大きいモグラ。ジャイアントモールが、ひょこっと顔を出した。 そのジャイアントモールは、ギーシュの使い魔。名前をヴェルダンデと言う。 ヴェルダンデは、すぴすぴと鼻を鳴らした後再び地面にもぐった。 再び、陥没する足場それを完全に陥没する前に跳び回避するルークだったが、ヌォッ! と、変な声を出して空中で上半身を反らすと言う 何故そんな事をしたのかと言えば、いつの間にか傍に居たワルキューレからの槍攻撃をかわす為である。 油断したならば即串刺し。そして、足場の陥没。 優位だった状態からかなり不利な状態へと陥るルーク。 「ははは! 降参するかい!? 地べたに頭を擦り付けて許しを請うならば、降参を認めてあげようじゃないか!!」 「ふざけんな!!!」 再び走り掛けるルーク。そしてそれと同時に次々に陥没していく足場。 それに構わずルークは、ワルキューレ目掛けて走る。それを見たギーシュは、やけになったのか? と、思うが ルークの目には、やけっぱちになった色の光は無い。寧ろ…… 「下がれ!!! ワルキューレェエエ!!!」 しかし、その指示は、遅かった。大地を蹴り跳び上がったルークは、そのワルキューレを足場として更に跳び上がる。 そして、ギーシュに影が差す。ギリッを歯を噛締めながら見上げれば其処にはルーク。 丁度、拳を振りかぶる様にして落下してくるルーク。このまま行けばギーシュを捉えられたのだろうが…… ルークの行動を察していた、ギーシュはワルキューレを自分の前にすぐさま移動させる。 「るぉおおおおおおお!!」 「ワァアルキュゥウゥウウレェエエエ!!!!」 裂破掌を放つ為の気が収束するルークの右手。 それを迎え撃つのは、何時の間にか作り出された巨大な青銅の盾と槍を構えるワルキューレ。 結果としては、ワルキューレの槍は、ルークを捉えていた。しかし、それはルークの脇腹を抉るに留まる。 ルークは、それに顔を顰めるが咆哮を張り上げワルキューレの脇をくぐりぬけギーシュ目掛けて渾身の裂破掌を炸裂させた。 宙を弧を描く様に舞い大地に叩きつけられるギーシュを見てルークは、ふぅうう。と、息を吐いた後で丁度視線に入った金髪カールの女子に 懐から取り出した、赤色のぷよぷよしたモノ……アップルグミを手渡し。口に放りこんどけ。 と、ギーシュの方を顎でしゃくりあげた後で、広場から立ち去る。 この決闘の結果に、唖然としてた広場だったが、ルークが広場から立ち去った後で歓声やら罵声やらが飛ぶのだった。 「脇腹いてぇ……服が台無しだ。なんか変わりの服……その前にアップルグミ食べておこう」 食堂に続く廊下を歩きながらルークは、そう呟いた。 ちなみに、決闘を見ていたルイズは、ルークが広場から立ち去ってしばらくしてからハッとした様に、ルークの後を追いかけるのだった。 オスマンとコルベールは、『遠見の鏡』から見ていたヴェストリの広場での決闘を一部始終見て。顔を見合わせた。 コルベールは、困惑を隠せない様子でオスマンの名前を呼んだ。 「オールド・オスマン」 「うむ……」 「あの平民、勝ってしまいましたね……」 「そうじゃの」 「ギーシュは、一番レベルの低い『ドット』メイジですが、それが平民に遅れをとるだなんて」 「コルベール君。君はアレを見て彼を『ただの平民』だと思うかね?」 「……思いません。少なくとも彼には戦闘経験があり……かなりの数の戦いをこなしています」 それに、あの地を奔る衝撃波。エア・ハンマーに似て似ない。 それに、あの小さな柄も威力のある爆発。どうやって爆発を生み出したのか? 「ふぅ……コルベール君。彼のルーンも何かしらあるかもしれん。調べて報告頼むぞ?」 「はい」 ルークは『家族思い』の称号を手にいれた。 ルイズは『家族思い』の称号を手にいれた。 コルベールは『デバガメ』の称号を手にいれた。 オスマンは『デバガメ』の称号を手にいれた。
https://w.atwiki.jp/msl-wiki/pages/189.html
シグルーン(木) スターモンリーグ考察 ジュエル考察 似たスキルの組み合わせを持つスターモン ストーリーワルキューレ グランドワルキューレ シグルーン シグルーン(木) シグルーン レアリティ:☆5 アイコン 属性 ステータス レベル50(60) 入手方法 孵化ワルキューレ→グランドワルキューレ→シグルーン バトルタイプ 系 HP () ノーマルスキル エーテルストライク 攻撃力 () アクティブスキル ヴァルハラの呼び声(全体攻撃) 防御力 () スーパースキル なし 回復力 () 亜種スキル ファイティングスピリット(40~45%:限定無し) ブティック 休暇コレクション スキル レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 スキル名(☆3) %.ターン スキル名(☆5) %.ターン スターモンリーグ考察 通常リーグ 特別リーグ(攻撃側:リーダーSP最大、防衛側:隠しSP最大) チャンピオンリーグ 相性のいいスターモン スターモン名(属性) 対策 スターモン名(属性) ジュエル考察 似たスキルの組み合わせを持つスターモン ストーリー ワルキューレ ラテシアには多くのスターモンがいる。だが、その中で王や女王の称号を与えられているものはほんの一握りにすぎない。そのようなスターモンは圧倒的な力を誇り、神格をその身に宿している。本質的に神に近いという者もいる。もちろん、”王”や”女王”は人間が作り出した称号であり、彼らは”ただのスターモン”にすぎないという反論もある。だが、実際に彼らに接すれば、彼らを”ただのスターモン”とは呼べなくなるだろう。 グランドワルキューレ こうした”王”や”女王”の起源は知られていないが、星々の強力なエネルギーの放出と関連があると推測されている。そのような現象が観測されるのはごくまれだが、観測された後には必ず”王”や”女王”が出現している。すべての物事が記録されている場所があり、記録の管理者はあらゆるものの上に立つという話がはるか昔から語り継がれている。ラテシアの女神たちの存在に鑑みて、ばかげた話だと笑い飛ばすのは簡単だが、言い伝えが真実だとしたら、さらに興味深い仮設を組み立てることができる…」 異界のマスターの記録P.63より シグルーン 一般に”王”や”女王”はマスターを選ばず、自身の天命に従おうとする。だが、きわめて特殊な例として、行動を共にするマスターを選ぶことがある。そのような例は非常に珍しいため、ラテシアの正史をすべて紐解いてもごくわずかな記録しか見つからない。もちろん、王や女王から選ばれることが、薔薇色の未来を約束するわけではない。実際にはほとんどのマスターがその重圧に押しつぶされて人生を棒に振り、悲劇的な最期を迎えている。最も有名なのは、グランソンというマスターと”イバラの女王”として知られる木属性のワルキューレの物語だ。いまだに広く語り継がれており、この物語を脚色した劇が毎年のようにドラメムノン祭りで上演されている。
https://w.atwiki.jp/0458250333/pages/84.html
種族:ワルキューレ族 性別:男 所属: 犯罪組織「ガラドグラッセ」 容姿:長髪、ワルキューレ族に本来あるはずの翼が無い 服装:スーツ姿の男性 詳細: 犯罪組織「ガラドグラッセ」のリーダー。本来ワルキューレ族は女性のみの種族であるのだが、稀に翼の無い男性が産まれることがある。ワルキューレ族の男性は争いを呼び込むものとして忌み嫌われ、年端もいかない頃に里を放逐される。フギンは生まれながらの身体能力の高さと暴力で生き、気が付いた時にはダストラッシュに住み着いていた。ダストラッシュの気の合う仲間と共にガラドグラッセを立ち上げ、現在は廃棄関係、人身売買といった商売に手を染め急成長する犯罪組織として注目されている。暴力に塗れた男であるが、その一方でビジネスのセンスは高く、交渉時には物腰柔らかに国家と「ガラドグラッセ」どちらにも利益が出るような提案をする。しかしその奥底では最後は金や利益といったものではなく暴力が物を言うという考えに支配され、商売にトラブルがあった際には徹底的に暴力で相手を叩きのめすことをモットーとしている。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7675.html
前ページ次ページTALES OF ZERO 第三話 ガンダールヴ 後編 ヴェストリの広場で始まった決闘は、才人からクラースに代わって続行された 両者は相手の出方を見るように、間合いをとって構えている 「(まさか、異国のメイジを相手にするなんて…あっちが相手なら楽勝だったのに。)」 口では勇ましい事を言っていたが、ギーシュは内心怯えていた…クラースと戦う事に 異国のメイジなら、自分達の知らない魔法を使ってくるかもしれない そう、エルフ達が使う先住魔法のような、恐ろしい力を… 「(お、怯えるな僕…さっき言ったとおり、見せてやるんだ…僕の力を!!)」 自身を奮い立たせると、ギーシュは杖を振るった 指示を受けたワルキューレが、クラースに向かって動き出す 「(どんなに凄いメイジでも、詠唱が出来なければ…。)」 詠唱をさせない為の攻撃…ワルキューレの腕がクラース目掛けて振り下ろされる だが、クラースはそれを難なく避けた 「せぇい!!」 後ろに回りこむと、持っている本の角でワルキューレの首を狙った ゴキンという音と共に首が折れ、頭部が地面に転がる 「え…ええっ!?」 ギーシュは驚いた…驚いて目の前の光景に自身を疑った 何せ、自分のワルキューレが魔法ではなく、本で壊されたのだから 観客達もまさか、本なんかで…と騒いでいる 「脆いな、これくらいで壊れるとは…これの材質は青銅か?」 なら、仕方ないな…と呟くと、また本を振るってワルキューレを吹き飛ばした 地面に倒れるワルキューレだが、すぐに立ち上がって襲い掛かってくる 「たぁ、やっ、はっ!!」 その後も、クラースは向かってくるワルキューレに攻撃を繰り返す ワルキューレの間接を狙って本を振るい、徐々に壊していく 「す、すげぇ…あのメイジ、本だけで青銅のゴーレムと戦ってる…。」 「つーか、本で戦うのもそうだが、それで青銅を壊すってどうなんだよ。」 「…本は武器じゃない。」 クラースの異様な戦いぶりに、周囲は別の意味で感心するしかなかった ある程度の攻撃を終え、クラースはワルキューレから離れる 散々クラースに本で殴られたワルキューレは、本来の姿の大部分を失っていた 「き、君は本当にメイジなのか、メイジならメイジらしく、魔法を使ったらどうなんだ!!」 杖をクラースに向かって突き出しながら、ギーシュが叫ぶ 自分のワルキューレを凄いとはいえ、本で壊されるのが堪らなかったのだ 「まあ、確かに本ばかりでは決着がいかんからな…では、これを使わせてもらおう。」 クラースはワルキューレに向かって右手を構え、詠唱を始める すると、彼の右手に光の球体が現れた 「……吹き飛べ、バースト!!!」 詠唱が終わり、クラースはワルキューレに向かって呪文…バーストを唱えた これは自分の子孫がいる未来世界で覚えた、クラース自身が使える唯一の攻撃呪文だ 光弾はワルキューレに直撃し、バラバラに破壊する 『おお~~~~~!!!!』 ようやく魔法らしいもの…それも、見た事も無い術に観客に歓声が上がる ギーシュも少しばかり驚いたが、すぐに平静を装った 「や、やっと本気を出したようだね…中々の魔法じゃないか。」 「それはどうも。」 まあ、これは自分の本気にも満たないのだが…面倒なので、クラースはこれだけしか言わなかった 「(あれが異国の魔法か…あれぐらいなら、恐れる事はないな。)」 あれがクラースの限界に違いない…と勝手に思い込むギーシュ 彼は一気に勝負を決めるべく、杖を振るって先端にある造花のバラの花びらを散らした すると、六枚の花びらが、武装した六体のゴーレムへと変貌する 「ほぅ、ゴーレムはこう作っていたのか…本当に興味深いな、此処の魔法は。」 「君相手には手加減はいらないようだからね…此処からは本気でやらせてうよ。」 ギーシュが指示を出すと、ワルキューレは前後二体ずつの三列に並ぶ 後衛は自分の護衛に回し、前衛の三体をクラースに差し向ける 「行け、僕のワルキューレ達…ハルケギニアのメイジの力を思い知らせるんだ!!!」 その言葉と共に、ゆっくりと動いていたワルキューレ達の動きが早まった 持っている武器をクラースに向け、一斉に襲い掛かる 「おっと。」 クラースは三体の間を潜り抜け、攻撃を避ける 即座に一体が追撃を行うが、クラースはこれを回避 続けて二体が襲ってくるが、それもまた紙一重でかわした 「(うむ…これは…。)」 クラースはワルキューレを避けながら考えた…今の自分の体の変化に 「(今日は調子が良いのだろうか…何時もより素早くなった気がする。)」 決闘が始まってからずっと、クラースはこの調子だった ワルキューレ達の動きも遅いように見え、普段よりも早く回避行動がとれた 何故…そう考えているクラースの左手に刻まれたルーンは、淡い光を放っている 「フッ…どうやら、避けるのに精一杯で、魔法が使えないようだね。」 そんなクラースの疑問など知らないギーシュは、余裕の笑みを浮かべている 今自分が優勢だと思っている為、普段の調子に戻ってきた 「クラース~~~、遊んでないでさっさとやっつけなさいよ!!」 後ろから、ルイズが少し痺れを切らしながらクラースに向かって叫んだ 彼が本気を出せば、この程度は楽勝の筈だ 「おっしゃる通りだ…そろそろ私も本気でいかせてもらおうか。」 クラースはこれ以上の回避を止めると、その場に踏みとどまった 構えを取って、詠唱を始めようとするが… 「魔法を使うつもりか…そうはさせないよ!!」 その前に決着を付ける…ギーシュはクラースに向けて杖を振るった ワルキューレ達は一斉に、クラースに向かって攻撃する 「はっ!!!」 が、クラースは大きく振りかぶって本を振るい、ワルキューレ達を攻撃する 本の角を受け、ワルキューレ達はそれぞれ三方に散らばる 「なっ…。」 「邪魔をするのは無粋だな…これから私の本領を見せてやろうと言うのに。」 クラースは持っている本を開き、ある程度ページを捲らせた 「き…君の本領だって!?」 「そうだ…先ほど見せたあれは、私の力のほんの一部分にしか過ぎん。」 ギーシュの問いに答えながら、ページをパラパラと捲っていくクラース そして、何ページ目かを開くと、目をカッと見開く 「見せてやろう、奇跡の体系…召還術!!」 その言葉と同時に、クラースの周囲に魔方陣が出現する 魔方陣から溢れる光がクラースと、周囲を照らした 何だこれ…これは魔法なのか?こんな魔法見た事ないぞ… ギーシュは光り輝く魔方陣と、その中央にいるクラースに見入っていた 「何だ、何だ!?」 「何が始まるんだ!?」 周囲からも戸惑いの声が聞こえる…彼等もこれが何なのかを知らない それを知っている才人とルイズだけが、黙って見守っている 「我が名はクラース・F・レスター…指輪の契約により、この儀式を司りし者なり」 そんな彼等に構わず、クラースは詠唱を開始した 彼の口から発せられる言葉がギーシュに…そして周囲の耳に聞こえてくる 「我が契約に答え、我に秘術を与えよ…我が身に御身と、知恵と、栄えあり」 淡々と、クラースは詠唱を続け…それに呼応するように魔方陣は輝きを強める 見たことも無い光景に放心し続けていたギーシュだが、顔を振るって正気を保つ そうだ、攻撃…攻撃しなければ 「こ、こんなの見せ掛けだ…い、行け、ワルキューレ!!!」 ギーシュは杖を振るい、前衛の3体をクラースに向けてけし掛けた 三体のワルキューレは、クラースに向かって行く… が、その判断は少しばかり遅かった 「出でよ、風を司りし者…三人の乙女達よ…」 武器をクラースに向け、接近してくる三体のワルキューレ達… だが、それに恐れる事無く、クラースは詠唱を続ける そして、ワルキューレ達がすぐ傍まで来た時…彼は目を見開いた 「契約は完了せり…シルフ!!!」 風の精霊の名を叫んだ時…クラースを中心に竜巻が発生する その竜巻に阻まれ、ギーシュのワルキューレは弾かれた 「うわっ…な、何だ!?」 竜巻によって砂煙が舞い、観客達のマントがはためく… 自分が知る風魔法より強い突風に、吹き飛ばされないようにギーシュはクラースを見る しかし、凄まじい竜巻で中にいる筈のクラースの姿は見えない 「な、なんて魔法なんだ…こんな竜巻は初めてだ。」 「これは魔法とは違うな…古より伝わりし秘術…召還術だ!!」 ギーシュの言葉に答えるように、竜巻からクラースの声が聞こえる 召還術…召還術ってなんだ? そんなギーシュの疑問をよそに、再びクラースの声が響く 「そして、私のような者を人はこう呼ぶ…召還術師《サモナー》と!!」 やがて、竜巻が弱まり、中からクラースが現れた…が、現れたのは彼だけではなかった 彼を守るように、それぞれ剣と弓と盾を持った三人の乙女達の姿があった クラースが呼び出した者達…それを見た観客達は、騒然となった あれは何だ、妖精か、そんな馬鹿な事が… 口々に囁かれる言葉…そのどれもが、目の前の光景を信じられないでいる 「これは…僕は幻を見ているのか?」 それと対面している筈のギーシュでさえ、この調子だ それだけ、彼等の見ている光景が想像以上だったのだ 『お呼びですか、マスター?』 昨日出会ったシルフが、最初にクラースに声を掛ける クラース自身も少し驚いた様子で、二人のシルフを見比べる 「驚いたな…他の二人まで、姿が変わっているとは…。」 『そう言えば、この姿でマスターに会うのは初めてだね…僕はシルフ三姉妹次女のユーティス。』 弓を持った勇ましいシルフが、最初に自分の名を告げる 『私は三女のフィアレスです、よろしくお願いします。』 次に、盾を持ったシルフが礼儀正しく、頭を下げながら答える 『そして、私は長女のセフィー…例え姿は違えど、我等三姉妹は貴方の風となります、マスター。』 最後に、剣を持ったシルフが名乗り、彼女達は主であるクラースの指示を待った 「そうか…じゃあ早速で悪いが、あのゴーレム達と戦ってくれないか?」 そう言ってギーシュのゴーレム達を指差し、三姉妹は一斉に其方へ目を向ける 相手が一斉に此方を見たので、ギーシュは「ヒィ」と短い悲鳴を上げる 『……なんだ、あれ只の青銅じゃないか、あれくらいじゃ僕達の敵じゃないよ。』 すぐに相手が青銅のゴーレムと分かったユーティスは、気だるそうに呟く 『ユーティス、相手が誰であれ全力をつくすものですよ。』 『それは…分かってるよ、姉さん。』 姉の言葉に、ユーティスは気を取り直して弓を構えた セフィーも自分の剣を、フィアレスも盾を構えて戦闘体勢を整える 「こっちはこれでよし、と…おい、ギーシュ君、そっちは準備良いのか?」 「えっ、あっ…えっ?」 クラースの声に、未だに呆けているギーシュは、間抜けな声しか出せなかった 「何だ、さっきと違って威勢がないな…こないなら、こっちからいくぞ。」 「えっ…ちょ、まっ…。」 「いけ、シルフ!!」 待って…と言い終える前に、クラースがシルフ達に指示を出した シルフ達はそれぞれの武器を手に、ギーシュに向かって飛んでいく 「わ、わわわ…ワルキューレ!!!」 慌てて杖を振り、三体のワルキューレでシルフ達に応戦する 青銅の乙女達の武器がシルフ達を襲うが、攻撃が当たる前に姿が消える 「き、消えた…ど、何処だ!?」 ギーシュはビクビクしながら、シルフ達を探した 観客もどうなったのかと辺りを見回すが、彼女達の姿は見えない だが、ギーシュ達の目が他所に向いている間に、三姉妹はそれぞれ自分の相手の背後に現れた 「いきます!!」 最初はセフィーが、ワルキューレをその剣で一刀両断にする 「いっけぇ~~!!!」 続いてユーティスが弓を引き、無数の矢がワルキューレを破壊する 「いきますぅ~~~!!!」 最後にフィアレスが持っている盾で体当たりし、ワルキューレを粉々にする ギーシュのゴーレムは何も出来ず、ただやられるだけだった 「えっ、あっ…ええっ!?」 気付いた時には既に遅し…ギーシュの目の前には、ワルキューレ達の無残な姿が散らばっていた 騒然となっていた広場は、シルフ達の戦いによって静寂が支配していた 見た事がないクラースの召還術、その姿が伝説の妖精に似ているシルフ達… それによって、観客達は歓声を上げる事が出来ずにいる 「凄いわ…これがクラースの本気なのね。」 決闘がクラースの優勢に進んでいるのを見て、ルイズはそう呟く その表情には喜びよりも、驚きが多くを占めていた 「ああ…これが英雄の力ってやつなんだろうな…。」 自分が苦戦したワルキューレを、三体相手に圧倒的な差を見せ付けた やっぱり、クラースさんは凄い… 「………。」 だが、才人の心の中は晴れ晴れとはいかず、ある想いが才人の中で犇いている …本当に、このままクラースさんに任せたままで良いのだろうか…と 「さて、ギーシュ君…これでもまだ続けるか?」 無残に散らばったワルキューレ達の残骸をはさんで、クラースが呼びかける シルフ達はクラースの周りに浮かび、何時でも戦えるように待機している 「ば、馬鹿にするなよ…ま、まだ勝負はついちゃいないんだ。」 そう、まだ僕には三体のワルキューレが残っている… どうあっても、ギーシュは自身から降参するつもりはないらしい 「素直じゃないな…やはり、一度そのプライドを叩き壊さないと更生は無理か…。」 仕方ない、此処で一気に畳み掛けるとしよう…クラースが攻撃しようと、手をかざそうとするが 「クラースさん、待って!!」 その直前、突然の才人の声がクラースの耳に届いた 「どうした、才人?」 攻撃の指示を止め、クラースは才人の方へと振り向く 才人自身も、自分の行動に戸惑う素振りを見せたが、意を決して口を開いた 「クラースさん…俺に、やっぱり俺にやらせてください。」 才人の言葉に、ルイズが少し驚いた様子で彼を見つめる 「あんた何言ってんの、さっきあんだけやられたんだから、クラースに任せれば良いじゃない。」 「でも、この決闘騒ぎを始めたのは俺だ…けじめは自分でつけたいんだ。」 「けじめって……。」 才人は視線をルイズからクラースへと向け、真剣な眼差しを送る クラースから見ても、それは生半可なものではない事は解った 「………。」 しばらく目を合わせ…やがてクラースは、隣にいるシルフ達の方を振り向いた 彼女達に向けて手を翳すと、シルフ達はクラースの意思を悟って姿を消した どうしたんだ…そんな声が周囲から聞こえるが、クラースは気にせず才人に歩みよった 「けじめは自分で…本気なのか?」 「はい…でないと俺…俺自身が納得出来ないんです。」 クラースの問いに、才人は答える…その言葉と表情に嘘偽りはなかった そうか…そう呟くと、クラースは持っている道具袋へと手を伸ばした しばらくして、彼は道具袋から何かを取り出す 「なら、これを持ってみろ…これを使えるのなら、後は君に任せる。」 取り出したのは、一本の剣…前にクラースに持たされた、あのロングソードだった 鞘から抜くと、クラースはロングソードを地面に突き刺す 「流石に、生身一つで戦うのは無理だからな…どうだ?」 「………。」 あの時、持つのがやっとだった長剣…かつてクラースの仲間が愛用していた英雄の剣 才人は黙って、左手を剣に向かって伸ばす 「あんた本気でやる気?剣なんか持っても平民が…そもそも、そんな体で勝てるとおもってるの?」 ルイズだけが納得できず、才人の体の事を持ち上げた グミで少しは回復したとはいえ、彼の体は完全には癒えていない そんな体で、剣を持った所で何が出来るか… 「…俺、よく負けん気だけは強いって言われてんだ…だから…」 少しばかり息を吸い…吐くと、剣を握るのと同時に叫んだ 「もう…絶対に負けねぇ!!!」 才人が剣を握った瞬間…彼の左手に刻まれたルーンが輝いた 気がついた時、才人はロングソードを片手に持って一人立っていた 今自分がいるのは、何処とも解らない荒野だった 地平線の先には、沈んでいく太陽が見える 何故…どうして俺は此処にいるのだろうか 確か、俺はギーシュっていけ好かない奴と決闘を始めて… クラースさんに代わってもらって、もう一度あいつと… そんな事を考えている中、ふと才人は顔を上げた 沈みゆく太陽…黄昏の光に包まれるように、誰かが立っている 風にのってたなびくマント… 茶髪の髪にハチマチ… 体には鎧を纏っている… 腰に剣を差している姿は、どう見ても彼が剣士である事を意味していた 才人は何故か、あの人を知っているような気がした 何故…… その時、彼が此方の方を振り向いた…顔は太陽の光のせいで、よく見えない …待っていたよ、才人… 彼が喋ったのか…声が才人の頭の中に響いてきた 貴方は、貴方は一体…そう尋ねようとすると、また声が頭に響いてくる …僕と戦おう、本気でね… 彼はそう言って、才人に向かって持っている剣を構えた 才人も、自然に持っているロングソードを構えた …俺も、俺も貴方と… 「才人…おい、大丈夫か?」 クラースは蹲る才人に向かって声を掛ける 剣を握った途端、才人は地面に膝をついて動かなくなったのだ 何度も呼びかけるが、返事は返って来ない 「ちょっと…どうしたのよ、サイト!!」 ルイズが呼びかけても、体を揺すっても才人から返事は返って来ない まるで、体だけが残った抜け殻のようだ 「どうしたというのだ、一体…。」 あれだけの傷を受けた体で、戦う事も剣を扱う事も出来る筈がない それを解らせる為に、こうして才人の前にロングソードを出したのだが… 「クラース、何とかしなさいよ。あんたがあんな事を言ったからサイトは…」 「それは解っている、解っているが…。」 ルイズにせがまれ、クラースは道具袋から道具を取り出そうと探してみる ミックスグミ、ミラクルグミ、ライフボトル、パナシーアボトル… 何かないかと探していると、突然才人がゆっくりと立ち上がった 「才人…大丈夫なのか!?」 「………。」 クラースが声を掛けるが、相変わらず返事は返って来ない 才人は剣を持ったまま、ゆっくりと前に歩き出した 「ねぇ、ちょっと…あんた本当に大丈夫なの!?」 ルイズが声を掛けても、才人は何も答えない…黙って歩き続けた そして、ギーシュの近くまで歩み寄ると、剣を構えた 「な、なんだい、君…君との戦いはもう終わったんだよ!?」 予想外の事ばかり起こった為か、ギーシュは才人が出てきた事に不安を感じていた まさか、彼まで何かとんでもない事をするつもりじゃ… 「…かった。」 「えっ?」 そんな中、才人が何か言ったようだが、声が小さくてよく聞こえなかった 少しして、才人は顔を上げると、さっきより大きな声で言った 「俺も…貴方と戦いたかった、クレス・アルベイン…。」 クレス・アルベイン…聞いた事のない名前にギーシュとルイズは首を傾げる ただ一人…クラースだけが、その名に反応した 「クレスだって…才人、君は…。」 クラースが尋ねようとするが、才人は剣を大きく振りかぶった そして、鋭い目つきになると、一体のワルキューレを見据えた 「魔神剣!!!」 そう叫んで剣を振るった…と同時に、剣先から衝撃波が発生した 衝撃波は地面を駆け抜け、立っているワルキューレを一体吹き飛ばす ワルキューレはギーシュを横切り、観客達の間を縫って学院の壁に衝突する 「……へっ?」 数秒経って、ようやくワルキューレが吹き飛ばされた事に気づいたギーシュは背後を見る 後ろを見ると、壁に打ち付けられて粉々になったワルキューレの姿があった 「なっ…何だ今のは、剣から何かが出たぞ!?」 「あれ、魔法か…あの平民、メイジだったのか!?」 「でも、何で剣から…。」 周囲からどよめきが走る…が才人はそれを別に気にしてはいなかった 「何よ、あれ…あいつ一体何をしたの!?」 ルイズも目の前の光景に、ただただ驚くしかなかった 只のオマケだと思っていた少年が、あんな事をするなんて… 「あれは…魔神剣か、しかし何故…。」 クラースだけが、才人が使ったあの技を知っていたが、彼が何故使えるのかは解らない 周囲がざわめく中、才人は剣を構えなおすと、今度はギーシュに向かって走り出した 「わっ…わわわっ!?」 ギーシュは向かってくる才人を恐れ、杖を振るった ワルキューレは持っている槍を、才人に向かって突き出す が、正面に向かってくるそれを、才人は体をずらしてよける 「はっ!!」 剣を振り払い、ワルキューレの持っている槍を叩き折る才人 それによって体勢を崩したのを、彼は見逃さない 「飛燕連脚!!」 ワルキューレに向かって飛び掛ると、今度は二段蹴りを繰り出す 一撃目で右腕、二撃目で左腕をもぎ取り、最後に剣を胴体に突き刺した 突き刺した箇所からヒビが入り、ワルキューレは砕け散った 『……………』 観客達は勿論、ギーシュも、ルイズも、クラースさえも唖然となっていた 誰が、このような展開を予想できただろうか? 観客達は思った、あれが平民の…いや、人間に出来る事なのだろうかと 「………。」 だが、才人の快進撃はまだ終わらない…残った一体のワルキューレへと駆け出す 指示を出すのも忘れたギーシュのせいで、ワルキューレは動く事が出来ず… 「アルベイン流奥義!!」 そう叫びながら、才人は風の如く駆け抜け… 「魔神…」 最初に放った衝撃波を、ワルキューレに向かって放つ 放たれた衝撃波によって、青銅のゴーレムは宙を舞い… 「飛燕脚!!!」 続けて、先程使った二段蹴りでワルキューレを蹴り…剣を突き刺した 一連の攻撃を受けたワルキューレは、ギーシュの目の前で粉々に砕ける 「ひ、ヒィィ!!!」 ギーシュは尻餅をつき、情けない声を出してしまった 逃げろ、逃げなければ…… そう思って体を動かそうとした所で、剣が顔先に向けて突きつけられた 「………。」 才人はギーシュに剣を突きつけたまま、無言で睨み付ける あ、う…と何か言いたそうに声を漏らしたギーシュは… 「ま…参った…。」 降参の言葉を出した…それを聞いて、才人は剣を引いた くるりと剣を回すと、高々と剣を頭上で掲げる 『……………。』 決闘は終わった…様々な出来事が起こった中、才人の勝利によって あまりに想像以上の出来事が続いた為、喝采は起こらないと思われたが… 「………す、すげぇ!!!」 静寂が支配する中、観客の一人が正直な感想を告げた それを皮切りに、周囲から喝采が沸き起こる 「凄いぞ、平民!!!」 「あれが異国のメイジとその使い魔の実力ってやつか!!」 「何かわけが解らない事があるけど…とにかく凄い!!」 観客達は決闘の勝者である才人とクラースを、兎に角称えた 「サイト!!」 拍手喝采が起こる中、ルイズが才人に駆け寄った クラースもそれに続き、才人は二人を見る 「サイト、あんた凄いじゃない!!そんな凄い力を隠してたなんて。」 「…えっ?」 ルイズの声に、才人は自分が持っている剣を見つめる …あれ、俺どうしたんだ… 「才人、今の技…何故君がアルベイン剣術を使えたんだ?」 「クラースさん…俺、何を…。」 続いてクラースも問いかけてくるが、才人自身もどう答えて良いのか解らない 剣を握ったと思ったら、変な光景が見えて…そして… 続きを考えようとすると、突然体のバランスを失った 「えっ…あれ?」 反射的に剣を地面に突き刺して杖代わりにするが、体中から力が抜ける 剣から手を放し、そのまま地面に倒れそうになったのを、ぎりぎりでクラースが支えた 「おい、才人…大丈夫か?」 「すいません…何だか凄く疲れた感じが……。」 疲れだけではなく、睡魔までもが襲ってくる 眠たい、眠たいのだが…まだやる事がある… 才人は何とか顔を上げると、ルイズの方を見る 「ルイズ…悪いけど、少し頼まれてくれねぇか?」 「何、どうしたの?」 「あいつに…ギーシュに言伝頼むわ、ちゃんとシエスタに謝れよって…。」 そう、この決闘を始める時、ギーシュに交わさせた約束だ ギーシュはそんなのはありえないと笑っていたが… 「主人に言伝を頼むなんて…まあ良いわ、ギーシュにちゃんと伝えてあげる。」 「ああ…それと…お前の事…馬鹿に…し…て…本島…悪かっ……。」 最後に、途切れ途切れでルイズに謝罪すると、才人はだらりと首を下ろした 「ちょっと、サイト…大丈夫なの?」 「……いや、どうやら眠っただけのようだ。」 クラースの言うとおり、才人は眠っていた…鼾をかきながら 「眠っただけ…ま、全く、最後まで主人を困らせる使い魔ね。」 怒った素振りを見せるルイズ…だが、それとは裏腹に何処か安堵している様子も感じられた 「兎に角、決闘騒動は終わったんだ、才人をベッドに寝かせないとな…よいしょっと。」 クラースは才人を自分の背に背負うと、ゆっくりと歩き出した 行く先には、決闘の光景に呆然としていたシエスタの姿があった 「シエスタ…悪いが、才人を寝かせられる場所まで案内してくれないか?」 「えっ…は、はい、此方に…。」 シエスタはおどおどしながらも、クラースを救護室まで案内する 「………。」 ルイズはクラースと、その背に背負われる才人を見つめる 先住魔法のような術を使うメイジ、凄い剣技を見せたオマケと思っていた少年… 何故か、これから凄い事が始まるんじゃないかと、予感めいた思いを抱いていた 「おい、ルイズ…彼等は一体何者なんだ?」 ギーシュは未だに震える足で、何とか立ち上がってルイズにたずねる それはギーシュだけでなく、周囲の観客達も知りたい事だろう その言葉に、ルイズは少し考えると… 「…決まってるでしょ、遠い国から来た私の使い魔達よ。」 笑みを浮かべながらそう答え、ルイズは二人を追って駆け出した 観客の間を潜り抜ける前に、思い出したようにギーシュの方を振り向く 「あっ、そうだ…あんた、後でメイドに謝っておきなさいよ。」 約束したんでしょ…そう言ってルイズは再び駆けていく その後姿を、ギーシュは呆然としながら見送るしかなかった 『………。』 同じ頃、学院長室… 遠見の鏡で一部始終を見ていたコルベールとオスマンは言葉を失っていた 先程の決闘の光景を、どう表現すれば良いのか考えているようだ 「……オールド・オスマン、彼等が勝ったようです。」 しばらくして、ようやくコルベールが口を開いた うむ、とオスマンは頷く 「あれは…一体何なのでしょう、ミスタ・レスターは妖精らしきものを呼び出しましたし、彼の使い魔である少年は…。」 そこまで言うと、コルベールはうーんと唸った 「あれは異国の人間だからこそ使えるものなのでしょうか…それともガンダールヴの力…。」 「解らんのう、あんなのわしも初めてじゃったし…えー、確かガンダールヴとは…。」 「はい…伝承によると、あらゆる武器を使いこなし、主である始祖ブリミルを守ったそうです。」 「おお、そうじゃったな。」 伝承によると、始祖ブリミルの扱う魔法は強力だが、詠唱がとても長かったそうだ 詠唱を行わなければ魔法は発動しない…そして、詠唱中メイジは無防備状態になる 始祖ブリミルが魔法を使えるよう、守っていたのがガンダールヴだという 「千人もの軍団を一人で屠り、並みのメイジは歯が立たなかったとか…。」 「ふむ…ミスタ・レスターは兎も角、あの少年はその伝承通りのような戦いぶりじゃったな。」 「そうですね…では、ミスタ・レスターのあれは異国の魔法なのでしょうね。」 とりあえず、二人はクラースの召還術を異国の魔法という事で納得する事にした それでも、色々と謎や問題は多くあり… 「オールド・オスマン、この事を王都には……。」 「報告するか、かね…止めておきたいと思うのが、わしの意見じゃな。」 今回の事を王都に報告すれば、彼等の身柄を拘束するのは間違いない それは彼等にとって酷であるし、何より色々と話がややこしくなるだろう 「この件は私が預かる…時が来るまで外部には漏らすでないぞ。」 「そうですか…いやぁ、良かった…。」 オスマンの決定を聞き、何処か安堵した表情で呟いた 「良かった…とはどういう事かね?」 「あ、いえ、その…彼等は異国から来たそうなので、色々と話を聞きたいと…その…。」 それを聞き、成程…とオスマンは納得した、この男は探究心や好奇心が人一番強いのだ 「まあ、程々にするんじゃぞ…それよりミスタ・コルベール、確かミスタ・レスターにガンダールヴの事を話したそうじゃな?」 「あ、はい…ほんの少しだけですが。」 「なら、隠しても仕方ないのう…すまんが、ミスタ・レスターを此処に呼んできてくれんか?わしから彼に説明したい。」 それに、彼の素性についてもう少し聞き出しておいた方が良いだろう 彼等はもう、『ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔』という枠だけで捉える事は出来ない 「解りました…では、失礼します。」 指示を受けたコルベールは一礼すると、学院長室を後にした 残ったのはオールド・オスマンただ一人…ふぅ、と溜め息をつく 「異国のメイジとその使い魔、それにガンダールヴ…ミス・ヴァリエールはとんでもない人物を召還したようじゃのう。」 よっこいせ…と、オスマンは立ち上がると、傍にある本棚へと歩み寄った そこにある自身が所有する書物の中から、古ぼけた一冊の本を取り出す 「異国から来た、特殊な力を持つ者…これもまた関係しているのかのう?」 この本の表紙に刻まれた文字は『黄昏の4戦士』と書かれている 黄昏の4戦士…それは、始祖ブリミルの時代に存在したと言われる伝説の4人の戦士達である 遠い異国の地よりやってきた彼等は、その特殊な力で始祖ブリミルを幾多の苦難から救ったと言われている 彼等に関する資料は少なく、本当に実在していたのか定かではないが… 「流石に考えすぎかな…それにしても…。」 オスマンはパラパラと、古ぼけた本のページを捲っていく そして、挿絵の描かれているある一ページを開いた 「あの少年の構え…まるで、この剣士のようじゃったのう。」 オスマンが見る挿絵…そこには、剣を掲げる勇ましき剣士の姿が描かれていた 前ページ次ページTALES OF ZERO
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3206.html
才人は、自分でも驚く程の憤りを感じていた。 彼は、自身には理解し難い価値観に基づく講釈を続けている金髪の少年、ギーシュの顔を眺める。 熱心に語る様は、成る程同性の才人から見ても美少年という範疇に収まるものだろう。自分と比べれば、どちらがそのカテゴリーに属するかと言えば、ギーシュであると認めざるを得ない。 しかし、才人にとっては、ギーシュもまた自分の主のように、鼻持ちならない傲慢な、不愉快な他人でしかない。 人の話を聞かず自分の我ばかりを押し通す。不満があれば無関係な者にも当り散らす。 それだけなら、まだ才人も我慢はできていた。まだこの世界にやって来て1日しか経っていない自分としては、最大限の譲歩がそれを受け入れるというものだったのだから。 何をどうしても元の世界に帰る事は出来ず、また自分がこの世界では平民と呼ばれる人間である以上、その立場に甘んじて行き続けるしかない。 それに不満がないと言えば嘘になる。しかし、受け入れる努力はすべきだと自分の中の、冷静な部分がそう囁いた。主人であるルイズのように、癇癪を起こすだけなら才人にだって出来る。文句なんて未だに星の数ほど言える自信がある。不本意だが、ルイズを脅して帰れるというのなら、それだってやってやれるのだ。 それでも、それらに意味が無いから受け入れるべきだと考えた。 なのに、何故自分はこうも怒っていて、しなくても良い喧嘩をしているのか。 自分の中の冷静な部分はこの世界に順応しろと囁いているが、生来持ち合わせている気の強さや反骨心、更にこの世界や現在の境遇に対する反発心が、冷静な自分を押え付けたのだろう。 なんだ、と我ながらあまりの単純さに呆れてため息しか出てこない。 要するに、単に我慢の限界が来ただけだ。 「ごちゃごちゃ御託が多すぎるんだよ、てめえ」 少なくとも、自分からギーシュに頭を垂れる事などあり得ない。 貴族の価値観も、彼の家の事も、メイジも貴族も平民も、かつてない程の憤りの中にある才人には、一切の意味を持たない。 「貴族貴族貴族ってどいつもこいつもアホじゃねえのかクソが。 てめえだって、結局はただのガキじゃねえかよ。 自分のした事の始末もつけられないような奴はな、どこの世界でも只のクソ野郎ってんだ」 しかし、怒りに震えているのは、才人だけではない。 「よかろう! かける温情もこれまでだ。 ここまで言って分からないと言うなら、その生意気な口を胴体から切り離して差し上げよう!」 ヴェストリの広場にて対峙していた2人は、その言葉と共に距離を取り、才人は記憶の中から漫画で見た出鱈目なボクシングスタイルの構えを取り、ギーシュはバラの花を模した杖を片手に構える。 開始の合図も無い決闘は、あくまでも余裕の態度を崩さないギーシュに向かって、才人が全速力で駆ける事が始まりの合図となった。 「予め言っておくが」 10メイル程度の距離を駆け抜ける才人に向けて、ギーシュが片手に持った杖を一振りする。 薔薇から1枚の花弁が散ると、何も無かった大地から戦乙女を模した青銅の像が生まれた。 「僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね」 目の前で突如生まれた像に対し、目を丸くして驚いた才人だったがギーシュの言葉に再び戦意が沸いたのか、手槍を持つ戦乙女の銅像の横を素通りし、ギーシュの目の前で大きく振りかぶり、拳を彼の顔面に叩き込むべく、痛いくらいに拳を握りこんだ。 ルールに従うなら、才人は杖を持つギーシュの手を狙うべきだった。杖を奪うだけなら、そこで動きを止めてまで振りかぶる必要もない。そのまま駆け抜けて体当たりをするだけでも良かったのだ。 だが、興奮状態にあった才人はルールの事など頭になく、とにかくこのギーシュという男の事を殴ってやるという事だけが、頭にあった。 「無粋だね君。 乙女の名乗りには耳を傾けて差し上げるのがマナーというものだろう?」 だから、手槍をを構えた戦乙女が、大きく腕を振りかぶっていた才人に向けて体当たりをし彼を5メイル程吹き飛ばすまで、その戦乙女の能力というものに対して、自分が何も考えていない事に気付けなかった。 「さあ起き給え平民くん。 君には僕の、青銅のギーシュの魔法。ゴーレムのワルキューレが全力をもってお相手しよう!!」 ルイズが、アティや他の補習を受けていた生徒達とヴェストリの広場に着くと、そこには生徒達の人山が築かれていた。 貴族同士の決闘はご法度であり、絵物語でしかそれを知らない生徒達にとって、どうやら2人の決闘は良い見世物のようだ。ワルキューレの拳に才人が打たれる度、立ち上がる度に小さなどよめきが辺りに響く。 「ギーシュ!」 ルイズはそんな中、肩を震わせながら2人の間に割って入り、よく通る声でギーシュを怒鳴りつけた。 「おや、ルイズじゃないか。悪いね、少し君の使い魔を借りているよ」 「ふざけないで!」 「おお怖い。だがねルイズ、この決闘は両者同意の元で行われている正当なものだよ」 「禁止されているものに正当なんてないに決まってるでしょう!」 それは貴族の間だけだ、と抗弁するルイズをぴしゃりと跳ね除けると、再び立ち上がった才人を打ち倒すべく、ワルキューレに命令を送る。 「済まないがねルイズ。邪魔をしないでくれたまえ」 強かに打ち付けられた才人は、それでも不適な笑みを浮かべ再び立ち上がる。 「彼も、まだまだ元気なのだしね」 ルイズを跳ね除け、再び突進を始めた才人の姿に生徒達の歓声がひときわ大きくなった。その中に、この決闘を止めようという意思を持つものは居ないようだ。数名の生徒は呆れたようにそれを見詰めていたが、ただそれだけだった。 「ルイズさん」 そんなルイズに、先程からずっと彼女の側に立ち、この決闘を見詰めていたアティが声をかけた。 「ミス・アティ! お願いします。あの2人を止めて下さい!」 「何故、ですか? ギーシュくんもサイトくんも同意の上でしたら問題ないはずです。 勿論命に関わるような事になれば止めますが、2人とも今止められる事を望んでいないのは明白です」 穏やかで優しい印象のアティは、あくまでもその印象を保ったまま、信じられない事を口にした。ルイズも、側にいたキュルケや他の生徒達も、目を丸くしてアティを見詰めている。 「私は、どんなものでも信念に基く行動を最大限尊重します。 確かに今止める簡単ですし、実際に私も止めたいと思っています。けど、今私が教師という目上の立場で横槍を入れれば、確実に禍根が残ってしまいます。 だから、私は2人の意志を尊重します。 尊重した上で、暴走するようなら絶対に止めます。それが最大限の譲歩です」 でも、と反論をしようとするルイズを制して、アティは続ける。 「だから、止めたいと願うなら貴女がやるしかないんです。ルイズさん」 「私が…?」 「ルイズさん、どうしてサイトくんは、こんな決闘をしているか、考えられますか?」 俯いたルイズは、アティの問いに首を横に振って答えた。 「きっと、サイトくんも分かっているんです。自分がどうしても帰れない事も、この国が貴族本位の国である事も。自分が平民である事も全部。 でも」 「でも?」 「譲れない何かに、きっと触れられたんだと思います。 どんな些細な問題でも、そういったものって、きっと誰にでもありますから」 だから、と重ねてアティはルイズに尋ねる。 「貴女は、どうしたいのですか。ルイズさん」 「わ、私は……」 ルイズの頭を、たった1日しか共に過ごしていない、才人に対する思いが駆け巡る。 平民の癖に貴族を敬わない。命令しても文句ばかりで、碌に洗濯もできないような無能で、主人である自分を差し置いて使用人如きと意気投合し、自分の知らない所で使用人と交流を深め、あまつさえ今現在彼は必死になってやめてと叫ぶ自分を無視してまで、ギーシュと戦っている。 やっと、やっと成功させた魔法で手に入れた、自分だけの魔法の成果なのに。 「それでも、私はあんな風に傷付いて欲しいだなんて思わない! あいつは、サイトは私の使い魔です!」 顔を上げたルイズの頭を撫でて、アティはポケットからサモナイト石を取り出し、祈るように胸の前で両手を合わせていたルイズの手に、それを手渡した。 「それなら、きっと貴女には出来る事があるはずです。 誰かを思いやる真摯な願いは、きっとどんな世界にも響きます」 サモナイト石を手にしたルイズの背を押し、今も必死にワルキューレと戦いを続けている才人へ、アティは声を張って教える。 この不器用な少女が、決して彼の事を嫌っている訳ではないのだと。 1人で戦う必要はないのだと。 「サイト君! 距離をとって!」 極度の興奮と緊張、そして疲労の極地にあった才人がアティの言葉に反応したのは、穏やかな印象ばかりのアティから鋭い言葉がかかったからだ。 手槍を突き込んでくるワルキューレから逃れ、一時でもワルキューレの動きを止めようと、足元の石をギーシュに向けて放る。放物線を描いてゆっくりと放られた石には、ギーシュの身体を傷つけるような威力は無い。精々服に汚す程度の事しかできないだろうが、ギーシュはわざわざワルキューレを呼び戻し、その石を手槍で叩き落させた。 才人を追いまわし、執拗に肉薄し続けていたワルキューレが、彼の側を離れる。 「お願い、サイトを助けて……私の願いに、応えて!」 サモナイト石と杖を持った両の手が熱を帯び、ルイズの身体を再び説明し難い感覚が襲う。緊張から視界は狭まり、ルイズの目には、才人から離れ小石を叩き落したワルキューレの姿だけが、やけにはっきりを映って見えた。 お願い! と心の中で強く願うと、両の手の熱はその熱量を光に変える。 その色は、どこまでも白い光だった。 「召喚!」 言葉と共に、手元の光はルイズの掌を抜けて頭上へ延び、さらにその輝きを強め周囲の生徒達がその眩さに目を細めた瞬間。 4本の光り輝く剣がワルキューレの頭上に現れ、瞬く間にワルキューレの身体を貫き、青銅で構成されたその身体を地面に縫い付けた。 「なっ、何だこれは!?」 それに最も驚いたのは、ワルキューレを破壊されたギーシュだ。 突如として現れた剣は、決して周囲の誰かが投げ入れたものではなく、確かにその場で現れたものだ。魔法で作られた氷の刃でも、錬金で作られたものでもない。 彼が、ルイズやキュルケ達のようにアティの補習を受けていたのなら、それがシャイン・セイバーと呼ばれる召喚術であると理解できたかもしれないが、その存在を知らないギーシュは、慌てて杖を振り、隠し玉を登場させる。 落ちた花びら6片が、速やかにワルキューレとなる。 「あらギーシュったら、平民如きに本気になったのね」 態度を一変させたルイズは、堂々とワルキューレと才人の間に立ち言った。 その言葉から、ギーシュは先程の剣を呼び出したのがルイズである事を直感し、怒りの矛先をルイズに向ける。 「さすが、ゼロのルイズには貴族の誇りがないようだね。 貴族の決闘に横槍をいれるなんてね!」 「あらギーシュ、それは貴族の決闘でしょう? 貴方も言ってたじゃない。才人は平民、それもわたしの使い魔。 ねえギーシュ、それなら私、貴方のモグラを今の剣で突付いて遊んで良いのかしら?」 嗜虐的な笑みを浮かべるルイズに、高圧的な態度を取り続けていたギーシュの動きが止まる。 しかし、そんなルイズの顔を見ていない才人は、突然乱入したルイズの肩を引くと、彼女を守るように両手を広げた。 「勝手な事、言ってんじゃねえよ。 これは、俺とあいつのケンカだ。お前には関係ない」 「ルイズよ」 背中に投げかけられた言葉に、才人は目を丸くする。 「は?」 「シャイン・セイバーがまだ残ってるから、好きにすれば良いわ。 でも忘れないでね。私どんな勝負でも負けるのが大っ嫌いなの。だから、私の使い魔にも負けは許さないわ。 頑張って……サイト」 「……おう。お前の使い魔だからな、負ける訳にはいかないだろうがよ、ルイズ!」 言葉と共に、才人は地面に縫い付けられたワルキューレに向かって走り出した。 距離的にはさほどの時間もない場所だが、その間にはギーシュの生み出したワルキューレが6体、内1対はギーシュの側を守っているので計5体が、突如動き出したサイトに反応し、それぞれの武器を手に才人の元に殺到する。 才人は、5体のワルキューレが自分の元に辿り着けないのを確信していた。 初めて心を通わせる事の出来た彼女が、ルイズが勝てと言ったのだ。そして自分は勝つと言ったのだ。 「だから、負ける訳がねえっつんだ!!!」 突き刺さった剣は4本。その内1本、ワルキューレの足を貫いていた両刃の長剣を手にし、振り返りざまに後方から殺到するワルキューレに全力で斬りかかる。 まずは、また距離を取らなくてはいけないと考えていた才人は、その1戟はあくまで牽制のつもりで振ったものだった。 しかし、その一振りは才人に最も近づいていたワルキューレの手槍を捕らえると、まるでバターを裂くように、手槍共々ワルキューレの体を両断していた。 あっさりとワルキューレを倒されたギーシュは目を見開くが、彼に背を向けている才人はそんなギーシュの驚愕を知る事はない。 ルイズの召喚した剣の力か、淡い白い光を放つ剣を持っていると、あれだけ苦戦し続けていた筈のワルキューレを相手にしても、全く負ける気がしなかった。 風のように動く体が、淀みのない動きで剣を操る。 袈裟懸けに斬りつけて、1体。 手首を返し、返す剣で逆袈裟に斬り、2体。 剣から毀れる光を伴う才人の太刀捌きは、見る者を魅了し、対峙する者を威圧する。まるで華麗な舞のような才人の動きに、それまで唯の野次馬だった生徒達は、徐々に才人に向けて歓声を送る。 側面から突き込まれた手槍を避け、横薙ぎに胴体を両断し、3体。 未だにギーシュに背を向けてワルキューレを倒し続ける才人に、ギーシュは声を上げる事無く杖を振り、自身を守る為に側に置いていた、虎の子のワルキューレを突進させ、前後から挟み撃ちにする。 「サイト! 後ろ!!」 ルイズの言葉に反応し、才人は大きく跳躍し目の前のワルキューレの頭上を越えた。振り返ると挟み撃ちには失敗したが、合流したワルキューレ2体が、左右に分かれて才人に向かって同時に槍を構えながら突進する姿が見えた。 才人は、しかし冷静に判断し、まずは左から向かってくるワルキューレに狙いを定め、それまでの最大速度で肉薄した。才人の素早さに反応しきれないワルキューレは、手槍を構えた状態のまま、手足を斬られ、鈍い音を立てて地面に転がった。 最後の1体が、ギーシュを守るべくその元へ向かっているが、その姿は誰の目にも、敗北を恐れ逃走する敗残兵の姿にしか見えなかった。 「これで! ラスト! だああああ!!」 頭頂から股間まで1本の線が走ると、その線に沿ってワルキューレが両断される。ゆっくりと崩れるワルキューレの影から、剣を構える才人の姿を見たギーシュは、腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。 そして、剣の切っ先がギーシュの眼前に迫った時、彼は杖を地面に放り、敗北を宣言した。 「僕の負けだ……」 「……そしたら、ちゃんと、謝れよ。二股してた女の子と、あと、シエスタにも」 「ああ、約束するよ。貴族の誇りにかけても、ね」 どこか晴々した表情でいうギーシュを見ていると、才人もまた、決闘以前に感じていた憤りが綺麗に消失しているのを感じた。体中が痛いのに気分はとても晴れやかで、疲労が無ければギーシュと肩を組んでお互いの健闘を称え合いたいとすら思えた。 しかし、そろそろ限界だ。 がくがくと、もう少しでも立っていたくないと主張する足を踏ん張り、腰を落としたままのギーシュに握手を求めようとしたが、満身創痍な自分と比べて、傷一つ付いてないギーシュの顔を見ると、やはりほんの少し憤りを感じた才人は、伸ばした手を握りゆっくりと、ギーシュに向けて拳を下ろした。 「でもな、やっぱり1発殴らせろ」 力の篭らない拳がギーシュの頬を捉えると、才人は速やかに意識を手放しその場に崩れ落ちた。 彼を助けたルイズの剣は、彼が意識を手放すと同時に、その姿を消していた。