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レミリア9 13スレ目 276 うpろだ965 「お嬢様、今日の御昼食です」 「そう」 最近、紅魔館における食事事情がかなり改善されたきた。 というのは、外から来たある人間が調理主任に就いたからである。 最初は、その男のことを他の人間と同じように単なる食糧程度にしか思っていなかった。 それが変わったのは、私が気まぐれに彼に外の料理を作らせたときだ。 元々、料理人だったという彼の料理には、非の打ちどころがなかった。 味や見た目は文句なかったし、何より私の高貴であるべしという矜持を満たしてくれた。 そう、文句はない。たまに運ばれるこういうものを除いては……。 「今日は何の料理かしら?」 「○○曰く、外の世界にあるものだと……」 私は、咲夜の運んだきた料理へ目をやった。 金細工の施されたランチプレート。館のように真っ赤で、山型に盛られたチキンライス。 ハンバーグ、ポテト、ナポリタン、デザートにはプリンまで付いていた。 そして何より、目を引くのがライスの頂上に立てられた小さな旗。 その料理を、私は外の世界の本で目にした気がした。 「……咲夜、この料理の名前は?」 「私には存じかねます」 この料理の名前は……確か……。 そう、あれだ! ……。 あの男、無自覚でやってるのか? 「咲夜、○○を今すぐここに連れて来なさい」 「かしこまりました」 「で、これはどういうことかしら?」 「どういうこと、と申されますと?」 白い調理服に身をつつんだ○○が私の前に立つ。 「だから、この料「あ、○○だー」」 私の言葉を遮る形で、フランが部屋に入ってきた。 「○○、さっきのごはんおいしかったよ。それに、この旗もかっこいいし!」 「お褒めに預かり、光栄です」 私そっちのけで、会話を進める二人。 「ああ、もう! とにかく、次からはもっとちゃんとしたのを作りなさい!」 私はカッとなり、立てられた小さな旗を○○に投げつけた。 次の日 私は、咲夜の運んだきた料理へ目をやった。 金細工の施されたランチプレート。山型に盛られたチャーハン。ハ(ry 「これはどういうことかしら?」 「日本国旗はお気に召さなかったようなので、アメリカ国旗に……」 「そういうこと言ってんじゃないわよ!」 私は○○を思い切り殴り付けた。 その日から、調理主任が長期休暇を取ることになったのは言うまでもない。 これが後に起こる、第一次紅魔館食糧危機の始まりとなる、お子様ランチ事件の全貌である。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1020 「○○、何してるの?」 珍しく○○の部屋に遊びに来ていたレミリアが、○○が耳に細い棒のようなものを入れているのを不思議そうに見ていた。 「ああ、これですか? 耳かきですよ。里で見付けたんです」 「耳かき?」 「耳掃除するとき使うんです。耳は垢がたまりやすいですから」 懐紙に耳垢をまとめて捨てながら、○○は首を傾げる。 「レミリアさんのもしましょうか?」 「え?」 「人にやってもらうと綺麗に掃除できるんですよ。それに、興味あるんでしょう?」 ベッドに座って、○○は膝をポンポンと叩いた。 「そ、そんなことはないけど……そこまで言うならさせてあげるわ」 羽だけを楽しそうにはためかせながら、レミリアが膝に頭を乗せる。落ち着く体勢になるのを待って、○○が手を伸ばした。 「では失礼して」 「……ひゃうっ!?」 声に驚いて、○○は耳に触れた手を離す。 「びっくりした……」 「それは僕のセリフですよ……続けて大丈夫ですか?」 どうもくすぐったいようだ。下手に動かれると危ない気がする。 「だ、大丈夫よ。続けなさい」 「わかりました……でも、危ないから動かないでくださいね。手元が狂うと怪我しますし」 「大丈夫よ、すぐに治るのはわかってるでしょう?」 「それは身をもって。でもそういう問題じゃないです。レミリアさんを傷付けるのが嫌なんですから」 「……わかったわ」 少しの空白の後、レミリアはそう頷いた。そういうことをさらりと言うなとか何とか聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかったのであえて訊かない。 とはいえ、耳に触れるとビクリと震えるため、危なくて仕方がない。 「耳かき、中に入れられないですよ」 「し、仕方がないじゃない」 「うーん、では失礼します」 ○○は片手でレミリアの肩を押さえ付けた。これなら安定する。 「さ、これなら大丈夫でしょう。続けますよー」 「……何だか楽しそうね」 さてどうしたものか。 ようやく耳掃除をしながら、○○は困惑した表情を浮かべていた。 無事に始められたまでは良かったのだが―― 「ん……ひゃ……」 くすぐったいのが我慢できないのか、レミリアが微かに震えながら、小さく声をあげているのだった。 身をよじるのは何とか身体を押さえて止めてはいるが、何だかこのままではいろいろな意味でまずい気がする。 「痛くないですか?」 「それは、大丈夫……ん」 他愛も無い会話でもしていないと、何だか自分がやましいことでもしているかのような錯覚に陥ってしまう。 いや、会話していてもどうかという話なのだが。 「あ」 少し陰になって見えないので、身体を押さえていた手を離して耳に触れる。 「ん……っ!」 「ちょっとじっとしていてくださいねー」 びく、と身体が震えるのが大きくなったが、大人しくじっとしている。丁度いいので、このまま掃除してしまおう。 誰かの耳掃除というのはそう経験はなかったが、なかなか面白いものなのだ。 「いっ……」 「すみません、ちょっと我慢しててください」 「う、ん……んん」 「はい、取れましたー」 懐紙に取って、ふむ、と○○は呟く。そろそろこちらはいいかもしれない。 「ん……終わり?」 「こちら側は終わりです。次は反対側をしましょうか」 「ま、まだやるの?」 少し息が荒いまま紅い顔を向けたレミリアに、○○は笑顔を向ける。 「片方だけだと気持ち悪いでしょう?」 「……まあ、そうだけど」 「だから、はい、反対側」 「…………楽しんでるわね?」 「いえいえそんなことは」 まったく誤魔化す気の無い返答に、レミリアは微かに涙目になった目で上目遣いに睨みながら、一言だけ言った。 「後で覚えてなさいよ……」 逆側の耳に触れるときにも身体をびくと震わせたが、諦めたのか慣れたのか、時折震えながらもレミリアは○○の成すがままになっている。 (……とか言うとものすごく変なことしてるみたいだけど) そう心に思いながら、掃除を始める。 「ん……ん」 「痛かったら痛いって言ってくださいね」 「……うん」 こちらに顔を向けているが表情は見えない。それでも何となく可愛らしくて、○○は顔を綻ばせた。 「……何、ん、笑ってるのよ」 「いや、可愛いなと思いまして」 「……そういうこと、さらりと言わない」 さらに紅くなったのだろう顔を○○に擦り寄るように伏せて、レミリアは○○の服を握った。 「こっちはくすぐったいんだから、早く終らせなさい」 「はいはい」 大人しいうちに、○○は手早く掃除を続けていく。時折漏れる声を少しばかり楽しみながら。 「んー、何だかすっきりした気がするわ」 「でしょう? 気持ちいいものですよ、耳掃除って」 「ちょっとくすぐったかったけどね」 くすくすと笑いながら、だが機嫌は悪くないようで、○○は安堵する。 「またしてあげましょうか?」 「そうね、また気が向いたら」 膝の上で横になったまま、レミリアは○○を見上げた。 「どうしてあんなに楽しそうだったの?」 「いやだって可愛かったですし。それに」 「ひゃ!?」 「耳が敏感だなんて知りませんでしたしね。新たな発見です」 レミリアの耳を、つっ、と指でなぞって、○○は楽しそうに笑う。 「……っ……」 びくっとなった後、レミリアは○○を睨み上げ、そして、えいとばかりに手を跳ね除けて起き上がった。 「貴方が横になりなさい」 「はい?」 「私が耳掃除するから、貴方が横になるの」 「でも、僕さっきまでやってましたが……」 「いいから! やられっぱなしは気に喰わないの。さっさと横になりなさい」 言われるままされるがままに、○○はレミリアの膝の上に頭を乗せる。さっきとは逆の体勢だ。 「……レミリアさん、やったことは?」 「ないわよ。でも今されたばかりだからわかるわ」 「……では、お願いします」 一抹の不安を抱えながら、○○はレミリアが気が済むまで大人しくしていることにした。 後日、図書館にて。修行の休憩中の会話。 「……それで、どうだったの?」 「は? 何がですか?」 「耳掃除。レミィにしてもらってたって聞いたけど。レミィが誰かに何かするなんて珍しいから」 「……あのときほど、自分が吸血鬼になってよかったと思ったことはありませんでしたね……まあ、悪くなかったというかむしろ良くはあったんですが」 「……そう。仲が良さそうで何よりね」 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1030 「ふぃ~、生き返るぜ~」 守矢神社の方々が運営している温泉に入りながら俺はそう独り言をいう。 文々。新聞にも載っていたがここの一番の目玉である日替わり露天風呂。 天然温泉であるにもかかわらず日毎に産出地を変えている。しかもその管理は諏訪子様がしているらしい。 諏訪子様が神であることを改めて感じさせられる。ちなみに今日は群馬の老神温泉らしい。 ちゃぽん ふむ、誰か入ってきたらしい。かなりの湯気でぼんやりとした人影しか見えないが邪魔になるといけない。 俺は真ん中でぷかぷかと浮かぶのをやめると端の方に移動した。 ゆっくりと進んでくるぼーっと見ているとそこに一陣の風が吹き―― 一糸纏わぬレミリアがそこにいた。 「れれれれっ、れみりゃっ!?」 「なによ、その言い方。私はそんな変な名前じゃないわよ」 ざぶざぶと水面を掻き分けてこっちに近づいてくる。 「ちょっ!? なんでこっち近づいてくるのっ!? こんなに広いんだから他の場所に行った方がいいかと!」 「こんだけ広いのに○○しかいないから側にいくのよ」 「さいですか。でも吸血鬼が温泉入って大丈夫なの?」 「流水じゃないから別になんのは問題ないわ」 「あとちゃんとタオルで隠してください。胸とかあそことか」 「あら、私は○○に見られても別にかまわないわ」 そのまま俺の横にちょこんとレミリアは腰掛けてしまった。 うう、目のやり場に困る。澄ました横顔、なだらかな胸丘や、まだ産毛も「そこまでよ!」おおぅパッチェさんが。自重せねば。 「ふふっ、カチカチね」 「どこみてるんですかぁっ!? それに絶対キャラ間違ってると思います!!」 「私は○○の態度を見ていったのだけれど? ○○はいったいどこだと思っていたのかしら?」 「うう、いいように弄ばれている気が……」 と、俺はある物を持ってきていたことを思い出した。 「レミリア、ちょっと待っててくれ」 そう言い残して俺は風呂の縁に置いてあった桶を持ちレミリアの所に戻った。 「早苗に少しだけならってことで許可してもらったんだ。一緒にどうだい?」 「へぇ、桃のリキュールね。それじゃお言葉に甘えようかしら」 「あ、でもグラスが一つしかないや」 「それでもかまわないわ」 「それじゃお先にどうぞ」 「ええ、いただくわ」 氷でキンキンに冷やしたリキュールをグラスにトクトクと注ぎ、レミリアはそれをとても上品に飲み干した。 「ふぅ、すごく濃厚な桃の味なのに後味はスッキリ。あなたにしては中々の物を見つけたわね」 「お褒めいただき、光栄でございます。お嬢様」 「ふふっ、やめて。○○にそんな口調で喋られるとなんだかこそばゆいわ」 「うわっ、ひどいな」 「じゃ、今度は私が注いであげる」 「ああ、ありがとう。――っとと。それじゃいただきます」 「――うん。たしかにおいしい」 交互に酒を注ぎながら二人きりの酒宴を楽しみながらふと空を見上げると綺麗な紅い月が真上に見えた。 「どうしたのよ? 急に上を見上げて」 「いや、今日は月が綺麗だなってさ。そしてうまい酒にとっておきの美少女がいる。これ以上の贅沢はないかなって思っていただけ」 「○○どうしたのよ。今日は変なことばっかり言って。もしかして酔っ払ってる?」 「かもね」 横に視線を向けるとくすくすと笑うレミリアがいた。 普段のどこか嘲笑が混じった笑みとは違い、外見に相応しい少女のように笑うレミリアはとても魅力的に映った。 「なに? じっと私の顔を見つめて? なにかついてる?」 「いや。レミリアってそうやって笑うとすごくかわいいなって見とれてた」 「なっ!? ばっ、は、恥ずかしいセリフ禁止っ!!」 「あいたっ」 ゆでだこみたいに顔を真っ赤にしたレミリアに頭をはたかれた。 そしてそっぽを向いて何かぶつぶつ言い出した。 「まったくこいつは……(ぶつぶつ)わたしの気持ちも知らないで……(ぶつぶつ)」 断片的に何か聞こえてくるが、聞かないのが紳士であろう。 他に視線を移しているとまた誰かがやってきたらしい。カラカラと戸を開ける音がした。 「お嬢様、そろそろお上がりになられた方が……なぜ○○がここにいるのかしら?」 うひゃあ……今この状況で一番会いたくないお方がいらっしゃいました。 めちゃくちゃドス黒いオーラが漂ってきます。 「いいのよ咲夜。○○が先に入っていたんだから。それじゃ私は先に上がるわね」 「ちょっと、お嬢様。お体くらい隠してください」 どこも隠そうとしないレミリアにバスタオルを巻く咲夜さん。この手際のよさはさすがメイド長。 などと下らないことを考えているとレミリアがこっちを見ていた。 「今日は楽しかったわ。今度はフランも連れてくるからそのときは3人一緒に入りましょ。約束ね」 「あ、ああ……」 そう言ってレミリアは微笑んだ。その姿はまるで月光に照らされた花のように美しかった。 レミリアが出て行った後も暫く惚けたまま動けなくなっていた。 「まずい……当てられた……」 うーん、これものぼせた部類に入るんだろうか? あの笑顔が焼きついて今夜は眠れそうにないや…… ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ1061 「○○、今日も後でするわよ」 「いいですけど、随分楽しそうですねえ」 「楽しいもの。慣れてきたしね」 「それは僥幸。もう血を見るのは勘弁ですからね?」 「し、仕方ないじゃない、初めてしたんだから」 「……会話だけだと、かなり妖しいこと言ってるわよ、二人とも」 呆れた声で、パチュリーが話に加わった。午後の紅茶の時間、紅魔館のティールームのいつもの光景である。 「ん? パチェにも耳掃除してあげようか?」 「遠慮しておくわ。危険には近付かない主義だもの」 「むー、そんなことないわよ。ねえ、○○?」 「向上の後は見られる、とだけは」 「それはどういうことよ?」 問いには答えず、○○は紅茶をすすった。 「○○さんの部屋からたまに悲鳴が聞こえてたとか聞いたけど」 「最近はわりと大丈夫ですよ。鼓膜の被害もなくなりましたし」 「そこまで酷くはないわよ」 「最初は今までに体験したことのない恐怖を味わいましたけどね?」 楽しそうにからかう○○を、レミリアが軽く睨んだ。 「随分と意地悪を言うのね」 「いえいえそんなことは」 「じゃれあうのもいいけど、私達がいるのも忘れないようにね?」 レミリアがいつの間にやら○○の膝の上に座を移しているのを見て、パチュリーがさらに呆れながら咲夜と頷きを交わした。 「妖精メイド達の噂になっていましたよ。何やら声が聞こえてきていたと。そのメイド達は当然嗜めましたが」 「あら、別に後ろ暗いことをしてるわけじゃないわよ?」 くすくすとレミリアは笑う。 「妖精メイド達にも勧めたらどうかしら」 「今以上に仕事をしなくなりますよ?」 「んー、確かに楽しいものねえ」 「そんなに頻繁にやるものでもないはずなんですけどね」 どこか呆れたような微苦笑で○○が相槌を入れた。 「レミィが楽しんでいるんだからいいんじゃないかしら。 それに、レミィがそんなに楽しそうにしてることにも興味はあるわ」 「あ、やっぱりパチェもやる?」 「レミィにされるのは怖いから、するなら○○さんにしてもらおうかしら」 「それは駄目。○○がしていいのは私だけだもの」 「はいはい」 呆れたような微笑みでパチュリーは親友の言葉に頷いた。 「……レミリアさんは、この前咲夜さんにもしてもらってませんでした?」 「私はいいの」 「じゃあ咲夜に」 「かしこまりました」 「むー、私は駄目なわけ?」 「○○さんに太鼓判押されるようになってからにして頂戴」 そんなこんなで、紅魔館はひそやかな耳掃除ブームになっていたのだった。 そして事の発端達は―― 「○○ー」 「はいはい」 呼ばれて、○○はベッドに腰掛けているレミリアの膝に頭を乗せた。 本来なら喜ぶべき状況であるはずなのだが、どうも反射的に身構えてしまう。身構えたところでガード不可だが。 「そんなに警戒しなくてもいいじゃない」 「いや、反射で」 「大丈夫よ、今日は怪我させないから」 羽がパタパタと動いていて、機嫌がいいのがよくわかる。 「それでは、お願いします」 ○○は観念することにした。というか、それ以外そもそも選択肢は残されていなかったが。 ――が、意外に上達していたらしい。 「あー、上手になりましたね」 「気持ちいい?」 「そうですねー。気持ちいいです」 痒いところに手が届く、というのか、それとも以前に慣れてしまっていたからそう思うのか。 ともかく、怪我もなく順調である。それが当然の姿であるとも思うが。 「私も、こういうのが気持ちいいってわかったから」 「はい」 「○○も気持ちいいといいな、くらいは思ってるんだから」 「ありがとうございます」 素直に礼を言って、とりあえず身を任せることにする。うん、思わずうとうとしてしまいそうなほど気持ちが良い。 「……寝ると危ないわよ?」 「ん、ああ、すみません」 「それで怪我しても私の所為じゃないからね」 「はい、ごめんなさい」 そう会話しながら両耳の掃除を終え、○○は起き上がって照れくさそうに笑った。 「いや、すみません、気持ちよくてつい」 「それは嬉しいけど」 言いながら、レミリアは勝手に○○の膝の上に横になった。 「ふふ、でもようやく一矢報いた気分だわ」 「報いる、って、耳掃除は勝負じゃないですよ」 「でも……ん、だって、私ばかりだったもの」 耳に触れられるとくすぐったさそうにしながら、レミリアはくすくす微笑う。 「いつも○○には痛い思いさせてたみたいだし……ん」 「そんなに気にしなくても良いのに」 「それは嫌なの」 甘えたような拗ねた言葉が可愛らしい。口に出すと怒られるので声にはしないが。 「んー……でも、○○にやってもらうのが気持ち良いわね」 「そうですか?」 「ええ、咲夜にもしてもらったのも気持ち良かったけれど、やっぱり○○が良いわ」 「光栄です。はい、反対側」 何と応じたものかと悩みながら、とりあえずそう返す。 「ん……でも、慣れない、わね」 「どうしました?」 「くすぐったいのよ、まだ。そろそろ慣れるかなって思ってる、のに。○○に触られるのが、くすぐったくて」 確かに耳に触れると、まだびくりとしたり、目をぎゅっと閉じたりしている。 「むしろ、何だか、ん、どんどんくすぐったくなってきてる、気も、するのよね」 「……あまり喋ってると危ないですよ」 その発言はいろいろヤバいと思いながら、常識的なことだけを口にする。 「あら、どうして?」 「わかってて言ってませんか?」 悪戯っぽい声を出してきたので、一時中断して耳をなぞって仕返しをすることにした。 「……んっ、だから、くすぐったいってば」 「変なこと言うからです」 「……随分意地悪になったわね」 「レミリアさんの扱いは慣れてきたつもりですが」 「…………貴方こそ、わかってて言ってるでしょう?」 「いえいえそんなことは」 しれっと白々しい声を出してみたが、一瞬だけかなり強く頬を引っ張られ、相当痛い思いをすることになった。 「ところで、どうして僕は誰かにしちゃ駄目なんですか?」 「当たり前じゃないの、○○がしていいのは私だけ、○○にしていいのも、ね」 ○○の膝の上に座って、半ば振り返りながらレミリアは言う。 「○○は私のものだから。例えパチェや咲夜でも駄目」 「……それは、もしかして、妬いてくれてたりします?」 「煩い」 ぷい、と顔を背けてしまうが、少し耳が紅くなっている様子が見えた。思わず、頬が緩む。 「何、にやにやしてるのよ」 「いや、可愛いなあって」 「だから煩い」 レミリアは怒ったように言って、○○の方に向き直った。 「あまり減らず口を叩くなら……」 「……っ」 急に口唇を塞がれて、○○は驚く。口唇が離れる頃には、レミリアは○○の上で楽しげな笑みを浮かべていた。 「塞ぐわよ、こうやって」 「……もう、やってるじゃないですか」 「私が主だ、っていうこと忘れてるみたいだから。しっかり教えないと、ね」 何だか理不尽な気がするが、それでも○○は両手を挙げた。そもそも最愛の人に勝てるわけが無い。 「好きにしてください」 「よろしい」 「ですが、後ろ暗いことはしないんじゃなかったんですか?」 「あら、何も後ろ暗いことなんかないわよ」 恋人同士なんだから、と言って、レミリアはもう一度○○に口付けた。 ───────────────────────────────────────────────────────────
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レミリア2 2スレ目 134 173 覚えのない森の中に仰向けで寝ていた。 (確か家で寝てて…あ、そっか。俺、夢を見ているのか) ためしにそこにあった木に頭をぶつけてみた。 ごんっ! …痛いだけだった。 「……やっぱ漫画じゃあるまいしこんな方法で夢から覚めるわけないか」 しかし、どうやったら夢から覚めるのかすらわからないので、困ってしまった。 「とりあえず人を探すか…」 幸い、すぐに広い街道を見つけることができたのでそこに沿って歩くことにした。 しばらく街道を歩いていると、メイド服を着た女性と悪魔の翼を生やした少女を見かけた。 (…明らかに話しかけたらやばいよな、あれ…) しかし、その二人はすでに自分のことを見ていたため、仕方なく話しかけることにした。 「すいません、お聞きしたいことが…」 「咲夜、今日の食事はあれでいいわ」 「ええ、かしこまりました、お嬢様」 あれ?どうして俺のこと指さして…って俺かっ!? 「ちょっ、いきなり何をっ!?」 「ごめんなさいね、おとなしくしていればすぐ終わるから」 笑顔でそういうと、いきなりナイフを投げつけてきた。…ぎりぎりで回避できたが。 「あら?見た目以上にすばやいのね?」 「こ、こわ……」 「次はそううまくいかないわよっ!」 次々とナイフを投げてくる…が、なぜかうまくかわすことができた。 「あれ?どうして俺こんな回避できるんだ?」 「くっ…いい加減諦めてお嬢様の食事になりなさいっ」 さらにナイフの量が増え、軌道まで変えてきている。 …が、俺の頭の中に回避のパターンが作られ先ほどより楽に避けることができている。 「おお、俺すげぇっ!!」 「何自分を褒めているのよっ!…こうなったら…!」 『時を操る能力』…?頭の中に情報が流れてきた。 「時を止めるって、それ反則…っ!」 「うるさいわ、私の名誉のためにも…!」 「というかすでに目的が変わっているっ!?」 だが、このときすでに頭に回避パターン…というよりチェックメイトのパターンが作られていた。 時を止めて回り込むこのメイドに対し、先を読んで落ちていたナイフを拾い喉元に突きつけた。 「う、うそ……」 「すげぇ…俺…!」 「……」 後ろの方で観戦していたお嬢様が興味深そうに俺を見つめ、 「へぇ、珍しいね、急に能力に目覚める人間なんて。」 『運命を操る能力』…俺の頭の中にそうインプットされたこの少女。…いや、悪魔といったほうがいいのか。 その少女が俺に向かってそう言葉を発した。 「能力に目覚めるって…?」 俺が疑問を投げかけると少し放心していたメイドが、 「お、お嬢様…それで、こいつの能力は…!」 「いやまて、俺の質問が先だろっ!」 「なに、またナイフで追いかけられたいのっ!?」 はいはい、二人とも落ち着いて、と少女が笑顔でたしなめる。 「まず能力とは…そうね、一人の人間や妖怪が持つ他人にはできないこと、と言えばいいかしら。例えば、この咲夜は時を操る能力。そして私は…」 「運命を操る能力…ですね?」 「えっ!?」 「ふふ、よくわかったわね。まあ貴方の能力ならすぐにわかるでしょうけど」 笑顔でそう答え、そのまま続けた。 「貴方の能力は…他人の行動、能力を読み取る能力かしらね。ほら、さっき先読みされていたでしょ、咲夜」 「な、なるほど…だから私は負けた、と」 (…まあ、正直あのままいってたら運動能力の方がもたなかっただろうけど…というかこっちの少女には勝てる気がしない…) そう思っていると、悪魔の少女は俺に近づいて、 「私はレミリア・スカーレット…吸血鬼よ。レミリアって呼んでもらってかまわないわ。ほら、咲夜。貴女も自己紹介」 そういうとしぶしぶと俺の前に向き直り、 「私は十六夜咲夜。この先の紅魔館…レミリアお嬢様の館なんだけど…そこでメイド長をしているわ」 「俺は○○。…それで、ちょっと聞きたいことが…」 「ええ、わかっているわ。…あなたはこの世界の人間じゃない。で、途方に暮れてさまよっていたら私たちに出会った…そうでしょう?」 「えっ!?」 (この女の子…一体…?) 俺が驚いていると、隣から咲夜が、 「外の世界から来た…霊夢の結界が弱くなったのでしょうか?」 「霊夢?」 「博麗霊夢。この世界の結界を張っているやつよ。…正直、あまりそう思わないのだけど」 咲夜がため息をつきながらそう答えた。…おそらく苦手なのだろう。するとレミリアは、 「いや、多分紫のせいね。…おそらくこうなることがわかっていたわね、あのスキマ妖怪」 「また懲らしめにいく必要がありそうね……」 「紫?」 「八雲紫。境目を操る妖怪とでもいっておけばいいのかしらね。…あまり近づかないことをお勧めするわ」 はぁとため息をつきながら二人はそう答えた。レミリアですらため息をつくほどかなり迷惑な妖怪なのだろう。 「あの、それで…」 「私の館に住ませて欲しい、でしょ?いいわよ、あなた、結構面白そうだし♪」 「お、お嬢様っ!?」 「ほんとかっ!いや、マジで助かる!」 心の中でガッツポーズをしながら、レミリアに感謝をした。 「さて、二人とも。そろそろ帰りましょ?夜も明けるわ。」 「はぁ、わかりましたよ、お嬢様…」 半ば呆れながら…しかし、笑顔を見せながら咲夜は俺についてくるように促した。 「あ、そういえば、二人とも歳はどのくらいなんだ?」 紅魔館に行く途中、俺が不意にそうたずねると 「歳?…ああ、生きている年のことね。500よ」 「500ね…って500っ!?」 「失礼ね…何その驚き方。年齢なんて関係あるのは人間だけ。妖怪や吸血鬼は年齢で判断することなんか不可能よ?」 「いやまあ、それはそうだけど…あ、咲夜は人間だよな?」 「ええ、そうよ。私は…大体18くらいかしらね」 「お、同じくらいじゃないか。俺もそのくらいなんだよな♪…にしては胸ちいs」 ばちーんっ!!ととても響き渡る音でビンタを喰らった。 「いって!冗談だろ…って、いやまてまてまて、とりあえずナイフしまえ。いやマジでしまってください、お願いします」 殺気が尋常じゃなかったので土下座して謝ることにした。 「今度この話題だしたら本当に殺すわよ?」 …今度から気をつけよう…目、赤くなってるし… 紅魔館、と呼ばれているらしい。…なんともまあわかりやすい名前で。 「あ、お嬢様、咲夜さん」 「あら、レミィ、咲夜。戻ったのね」 ずいぶん雰囲気の違う二人の女性が声をかけてきた。 一人は頭に人民帽をかぶっている。…中国人だろうか? 能力は…『気を使うほどの能力』らしい。 もう一人は魔女みたいな…パジャマ…かな? 能力は…『火水木金土を扱うほどの能力』…うわ、全属性だし。 「あら、美鈴。今日は侵入者いなかったわよね?」 咲夜が笑顔でそう尋ねると少し罰の悪そうな顔をして、 「え、えーっと…え、ええ、もちろ……」 「今日もまた黒白に本を持ってかれたわ」 「減給。コッペパン一つ減らすわね」 「えぇぇ!?そ、そんな殺生なっ!?」 「大丈夫よ、コッペパンが一つくらい減っても死にはしないから」 「うぅぅぅ……今月もうストックないんですよ~っ!」 …目の前でおかしな給料の話がされているがあえてスルーしておこう。 「この中国っぽいのは中国。一応覚えておきなさい」 「なるほど…すごいわかりやすいなm「中国じゃありませんっ!」……」 ものすごい大声で中国?が叫んだ。…しかもかなり顔が必死だ。 「私の名前は紅美鈴。中国でも本みりんでもくれないみすずでもないですから気をつけてくださいね♪」 「あ、ああ…わかった。ホンメイリン…でいいんだよな?」 圧倒されてつい普通に答えてしまった。…というか、この状態で冗談を言うほど俺は人間できていなかったらしい。 「そうです!…ああ、私感激です…」 いや、目の前で恍惚な表情されると非常に困るんだけど… というか、そんなに間違えられるのか、この人…? 「まったく、いきなり圧倒させるなんて、客人に対して失礼よ?」 レミリアがそう制すと、礼儀正しく向き返って、 「あ、ええと…失礼しました。貴方のお名前を聞いてもよろしいですか?」 さっきとは別人のように動きが滑らかだ。…さすがは『気を使うほどの能力』なだけはある。 「俺は○○。…まあ、よろしくお願いするよ」 「○○さんですね…ええ、よろしくお願いしますね♪」 この人はいい人そうだ。今度コッペパンを手に入れたらこの人に恵むことにしよう。 そしてもう一人の女性、こっちに興味がないのか、すでに本を読んでいる。 「………」 …あの、すごい話しかけにくいのですが… 「す、すいません…あの、お名前は…?」 「パチュリー・ノーリッジ。日陰の魔女よ…珍しい、魔女は?」 「は、はい…魔女って本とかでしか見たことなかったので…」 「そう。…私も、レミィに食事以外でつれてこられる男って初めてみたわよ?」 「…へ、へぇ…そうですか」 生きている心地がしないのはなぜでしょう…と、パチュリーさんが俺をじろじろ見て、 「それに…結構男前じゃない。レミィもなかなか隅におけないわね」 「しかもなかなか面白い男なのよ?…ふふ、私が可愛がってあげるんだから♪」 ……あなたたちがそういうと冗談に聞こえませんからマジで…。 「あ、それなら魔理沙は今いるのかしら?」 「いえ、ちょっと前に帰られましたよ~」 「次はもっと高性能なネズミ捕りを置いておかなきゃ…」 「あらそう…どうせだから○○を紹介したかったんだけど」 「まあいいわ。それじゃあ、咲夜。この人を客室に案内して?私は…そろそろ寝るわ」 レミリアは少しうつらうつらとしている。…どうみても500歳の吸血鬼とは思えないしぐさだ。 というかかなり可愛い…俺ロリっ気はなかったと思ったんだが…。 「ええ、お任せください、お嬢様。…さぁ、行くわ……って、何お嬢様に見とれているのよ?」 「え、あ、いや、しぐさが可愛いなあ~って…」 「ぇ?」 あ、ヤバイ。つい本音を言ってしまった。 「…はいはい、お嬢様が可愛いのはわかったから部屋に行きましょう」 「わかった、おいっ!耳引っ張るな!!って、いた、いたたたたたたたた!!!!?」 咲夜は俺の耳をかなりの勢いで引っ張りながらレミリアから離れていった。 「わあ~…咲夜さん気合入ってますね~」 「…私はレミィを応援するわ」 二人に気づかず、レミリアは嬉しそうにくすくす笑いながら二人の様子を見ていた。 「これから楽しくなりそうね♪」 それからしばらくの間、俺は紅魔館で時を過ごした。 ある時は減給された美鈴さんにコッペパンの差し入れをいれ、涙を流して喜ばれ(結局咲夜に見つかり、没収となってしまった時の美鈴さんの顔を俺は忘れない) ある時はヴワル図書館で自分の世界に帰る方法を探したり(結局見つからなかったが)、パチュリーさんに簡単な魔法の使い方を教えてもらったり、 ある時は咲夜に稽古をつけてもらったり、幻想郷を案内してもらったり(意外と広いんだよな、この世界…) ある時はレミリアに妹であるフランドールの世話を頼まれ、死に掛けたり(まあ、フランドールとも仲良くなったからよしとしたが…) とまあ、結構楽しい日々を送った。…生命の危機は多数あったが。 ある日、博麗神社にて宴会があると聞いたので俺もついていくことにした。 そこまではよかったのだが… 「あの、二人ともいい加減に腕を離してもらえませんか…?」 「いやだ。だって、○○の腕ってなかなか触り心地がいいし♪」←レミィ 「お嬢様だけ腕をつかんでいるのはなんとなく腹立ちますし」←咲夜 …両手に華、とは普通このことを言うのだがこういう事態に慣れていない俺はかなり緊張している。 「帰ってから思う存分触ってもらってかまわないので…」 こういう反論にも、 「私に触ってもらうのが嫌なの?」←レミィ 「私、そんなに魅力ないのかしら…?」←咲夜 とW上目遣いで返されるのでどうしようもないのである。 「誰かに見られたら誤解されますよ…」 「何を誤解するのかしら?」(にやにやしながら)←レミィ 「見られても仲のいい兄妹+従者に見られますよ」(笑顔で)←咲夜 と、見られる気満々である。するとそこに、 「これはこれは…あ、そのままストップしてくださいね~」 「ちょっと待て!!とりあえずそこのエセ新聞記者天狗、カメラさげ…」 「えへへ、どんどん撮っていいよ♪」(腕をさらにぎゅっとする)←レミィ 「私、離れましょうか?」(笑顔で脅迫)←咲夜 「離れたら俺は明日からロリコンって呼ばれるから離れるな…というかそこー、写真撮るなーー!!」 こうしてどたばたしている間に宴会場についたのだが… 「へぇ…あのレミリア&咲夜に腕組まれてる男なんて初めて見たわ…」←弾幕少女 「おお、これぞまさに両手に華だな?そこの兄ちゃん」←普通の魔法使い 「幽々子様…なんか、あの人疲れてません?」←半霊 「それくらいに幸せなのよ、きっと♪」←ゆゆさま 「…ふふ、やっぱり私の見込みは外れてなかったわね♪」←ゆあきん 「これから始まる恋のトライアングルリレイションは~♪」←みすちー&騒霊三姉妹 「そこ、変な歌歌わないっ!っていうか英語わかってるのっ!?」←影薄い人形使い 「うわ~…お似合いですね~♪」←ちゅうご…もとい美鈴 「ふふふ…そうね…端からこっそり覗き込むといい眺めね」←パチェ萌え 「宴会まだ始まらないわけ?」←⑨、鬼 「今はこの珍しいスリーショットをカメラにベストアングルで収めるのが先ですっ!」←新聞記者天狗 「どう?お似合いの三人でしょう♪」←レミィ 「お嬢様がそういうのなら、そうなのでしょう♪」←咲夜 「 ち ょ っ と 待 っ た !俺に釈明の余地は…」 「「「「「「「「ない」」」」」」」」 「あ、さいですか…」 ここまできたら諦めるしかない。そう覚悟を決めて席に座った。 そして宴会は始まった。 最初はみんな俺たちのことをからかいに来ていたが、そのうち酒が入ってくると俺たちのことなんかお構いなしに騒ぎ始めた。 …人間(+妖怪)って、酔うとここまで人格変わるものなんですね、お父さん…。 ちなみに、俺は隣の咲夜とレミリアが気になってあまり酒を飲めなかった。 レミリアは酒に強いらしく、けろっとしていた。咲夜はというと…猫みたいに丸くなっていた。 そのうち、宴会も終わりに差し掛かるところで、レミリアに呼び出された。…咲夜はすでに潰れていたため、その場に寝かせておいた。 「どう?幻想郷流の宴会は」 「自分の世界の宴会なんか目じゃないくらいみんな変わるな。特に悪い意味で…」 「ふふ、でも楽しいよね♪」 「まあ、それは…そうだな」 自然と微笑が湧き上がった。確かに、途中からは俺も結構楽しんでたし。 「…ねぇ、今でも自分の世界に帰りたいって思ってる?」 「え?」 表情はちょっと悪戯交じりの顔で、しかし、声に不安の色が混じっているのがわかってしまった。 こういうときには嫌だよな、俺の能力。 「いや、正直もうどうでもよくなってきた。…たとえ自分の世界に帰る方法が見つかっても、ここの世界が魅力的だから俺はここにいたい。…まあ、レミリアの館くらいしか泊まる場所ないけどさ」 自分の精一杯の優しい笑顔でそう答えた。 「うん、私の館でよかったらいつまでも使っていいよ♪…それでさ、あなた、吸血鬼になる気…ない?」 「え?…そ、それはどういう…」 不意に、唇にやわらかいものが当たった。…それがレミリアにキスされたと気づくのに数秒かかったが。 「え、あ、う、はあ!?」 「こういう意味よ?…私の婿になりなさい♪」 「いや、だけどな、レミリアっ」 顔を真っ赤にして必死に言葉を作ろうとするが、頭の中が真っ白で何も考えられない。…あるのはさっきの唇の感触だけだ。 「始めは…本当に単純な興味本位だったのよ。でもね、あなたと一緒にいると…こう胸がぎゅって締め付けられる感じになって…パチェに相談したらそれが恋よって…」 ちょっと赤面しながら想いをぶつけてくるレミリア。ちくしょうかなり可愛いぞコノヤロウ!って、だから最近にやにやしながらパチュリーさんが俺を見ていたのかっ! 「で、でも不意打ちは卑怯だぞ!」 「ならもう一回したい?」 「ぜひお願いします」 即答。…そして再び合わさる唇。レモン味とは行かなかったが、甘くとろけるような味には違いなかった。 「…ねぇ…それで、吸血鬼になる気…」 「…こんな弱い俺でよかったらぜひお願いするよ。…よろしくな、…レミィ」 再び影が重なった。…後ろでカメラの音がしたが気にしないことにした。 宴会が終わり、咲夜を抱きかかえて紅魔館まで戻ってきた。宴会にはあと二人くらいいた気がするが気にしないことにした。 とりあえず、咲夜を部屋に送って寝かし、レミィの部屋まで一緒に歩くことにした。 「あそこで断られたら、強引に吸血鬼にして従えようと思ってた」 「断らなくってよかった、俺…」 まあ、元から断る気なんかなかったけど。 「相手の気持ちがわからないって、すごい不安だよ?…咲夜とか、中国とか、パチェの気持ちはわかっても、あなたの気持ちは全然わからなかったの」 「まあ、異性の気持ちはわかりにくいからな」 俺の能力も相手の気持ちまでわかるものじゃないからな。 「でも、あなたの気持ちもわかって今とっても幸せなの♪…あ、部屋着いたわね」 「俺もレミィと想いが通じて幸せだぞ♪…じゃあ、またあしt「それじゃ、一緒に寝るわよ♪」 ……… 「…あの今なんと?」 「一緒に寝ようって言ったの。…嫌?」 上目遣いは反則だと何度言ったらっ!! 「いや、だからその…」 「……じ~…」 「わかった、一緒に寝よう…」 「わーい♪」 判定、レミィの上目遣いの一発KO勝ち。俺よわいな…。 「…じゃあ、早速♪」 「だーっ!わかったからいきなり抱きつくなー!!」 …まあ、こんな調子で朝までじゃれあってたとさ。…結局やましいことは何もなかったのが男として悲しいところだ。 次の日、ものすごい殺気で目覚めた俺がいた。…目覚ましより効果的だな、この殺気。 どうやら昨日の告白の現場をあの天狗に撮られて、早速新聞に載っていたらしい。 で、それを見たメイド長が俺の部屋に行って聞こうと思ったらもぬけの殻で、俺はレミィの部屋にいたと。 …あの天狗、次に会ったら羽の一枚ももぎ取ってやろうと思った。 とりあえず、レミィと一緒の布団で寝てたことの釈明は理解を得られた。…情けねえ、俺…。 「…まあ、お嬢様の気持ちはわかってたしね…おめでとう。お嬢様を泣かしたら殺人ドール+ザ・ワールドのダブルスペルを放つわよ?」 笑顔でそう言ってくれる咲夜。本当にお嬢様想いのメイドだ。…でももう少し俺にも優しくしてくれ、頼むから…。 咲夜が入り口にみんないるから早くきなさいよ、と言って部屋を後にした。 ……俺のあだ名がロリコンになりませんように… 「○○~……すー…すー…」 「…ほんと可愛いなぁ、レミィ……」 すいません、もうどうみてもロリコンです。 レミィがあまりにも可愛いのでほっぺたをつついてやった。 「んん…っ…くすぐったい~……」 …これ、起きてるんじゃないか? 「まあ、いいか。これからもよろしくな、レミィ」 その可愛いほっぺたにキスをして部屋を後にした。 さあ、今日は腹をくくろうか…! 「○○……えへへ、どこまでもずっと一緒だよ♪」 ~~~~後日談~~~~ 結局、ロリコンのあだ名は生涯消えることなく続いたとか。 まあ、本人はまんざらでなかったみたいだしいいんじゃないか? 愛の前に人は何にでもなれるからとりあえず石投げとけって幻想郷のみんな(特にメイド長)が言ってた。 __________________________________________________________________________________________________ はい、どうみても初心者の文です。ありがとうございました。 というわけで、ちょっとハーレム気分+れみりゃ入ってるよこれみたいな感じの自分×レミィでした。 前半の部分役に立ってねぇ……(汗) 今度はもうちょっと文を推敲してからかこうと思います。 …また東方キャラが夢に出てきたらの話ですがw ではでは… ─────────────────────────────────────────────────────────── 2スレ目 219-220 141-142の続き 夜中の三時。 お嬢様の部屋へ行くのは仕事であったり日課であったり楽しい交友であったり。 (血が)お嬢様のお気に入りの俺は今日も変わらず慰み者。 「…とか考えるとそこはかとなく卑猥な響きがあるなあ」 そんな訳でただひたすらに廊下を歩く。 今日は咲夜さんの案内は無い。珍しい事もあるもんだ。いつも俺とお嬢様を二人きりにさせるのを嫌うのに。 仕事が忙しいのだろうか。まあきっとそうだろう。切にそう願う。 図書館から爆音が響いているのは関係ない。 ノーレッジ女史に召喚魔法のなんたるかについて熱く語って聞かせた事なんて関係ない。 女史の創る魔方陣を嬉々として手伝ったことなんて関係ない。 魔方陣からバ○ムートが出てきたことなんか関係……ごめんなさい本当に召喚るとは思わなかったんです。 て言うかすげえなスク○ェア!!おじさん感動したよ。そして勇者って本当に偉大。 つらつらと考え事をしながら歩くうちに、お嬢様の部屋のドアが見えた。 ふう、正直疲れたな。 咲夜さんが同伴しないおかげで、捻じ曲げられたままの空間を歩くはめになったのだ。 自業自得って言わないで。今だって罪悪感で圧し潰されそうなの。ホントだよ? 「はあ、こりゃ本格的に空の飛び方とか覚えた方が良いかな」 特別外に帰りたいとも思わないし。 旅をしてたら居心地の良い場所を見つけて住み着く。そんな感じ。 異郷の地で大切な人、大切な物ができる事だってあるのだ。 …っと、散々時間かかったんだから、お嬢様も待ってるよな。こんな所で油売ってないで、早く入らないと。 ドアに近づき、ノックする。 「お嬢様、お待ちかねのおやつが到着しましたよー」 「えっ!? ○○!? す、少し待ちなさい!」 おや、珍しい。お嬢様が慌てているでござる。ここは拙者、ぜひとも蛮勇を奮うべきでござろうか。 ① はい、わかりましたー ② お嬢様! 御身体に何か!? とドアを開け放つ ③ 行くぞ英雄王、武器の貯蔵は十分か? よし、行くぜ!! ②でファイナルアンサー!! 「ってんなわけあるかぁ!!自ら死亡フラグ立ててどうすんじゃい!!」 全力でストップをかけた理性に従い①を選択。ありがとう理性。君は永遠の心友だ。ときどき無視するけど許してね? と言うか③訳解らん。いや、分かるけど。 そうこうしている内に向こうは準備が出来た様で。 「○○、入って良いわ」 「はい、それでは遠慮無く失礼します」 「…なんだかとても失礼をする様に聞こえるわね、それ」 部屋に入ってお嬢様と向き合う。うむ、いつもながらに可愛らしい。 「どうしたんですか? さっき」 「え、ええ。ちょっと本を読んでたの。パチェに借りた」 「春本ですか?」 お嬢様の羽が流線型に引きつる。あれは戦闘態勢だ。デンジャーデンジャー。デンジャーと電子ジャーってちょっと似てる。 平謝りすると、羽の位置が戻った。お嬢様の機嫌は羽を見れば大体分かるのだ。いいなアレ。俺も欲しい。 「あら?咲夜は居ないのかしら?」 「あー、はい。なんと言うかその…忙しいようで」 「…そう」 お嬢様がほっとしたような顔をする。 なんだろ。今日のお嬢様はどこかおかしい。顔もどことなく赤いし。 ベッドに座ってるお嬢様の隣へ行き、額をこつんと当てて熱を計る。…冷たい。流石吸血鬼。 額は冷たいままなのだが、お嬢様の顔が一瞬で真っ赤になる。 「なっ、なななな……」 「いや、風邪か何かかと思って」 何を、と聞こうとした所に答えを返されたからか、お嬢様は目を白黒させた後、一拍置いて溜息をつく。 「吸血鬼が風邪なんてひくわけないじゃない」 「あ、やっぱりそうなんですか。でも、大丈夫ですか?今日はどこか様子がおかしいですよ」 「大丈夫よ。それより、早く血を貰っても良いかしら?もう朝の五時よ」 確かにそれはこっちの不手際だ。来るのが遅れたせいでおやつの時間を大幅にオーバーしてしまった。 お嬢様の口元に指を差し出す。 一週間ほど前からは首ではなくここから血を吸うのがスタンダードになった。 だが、お嬢様は首を振る。可愛らしい顔が何故か耳まで赤い。 「流石にずっと同じ場所からだと飽きるわ。今日は別の所から吸わせなさい」 吸血鬼と言えば首から吸うのが常道だと思ってたけど。飽きたりする物なのだろうか。 まあ本人がそう言うのだからそうなのだろう。 「はあ、まあ良いですけど。お嬢様はどこが所望ですか?」 と、お嬢様の方を振り向く。 あれ?恥ずかしそうに真っ赤に染まったお嬢様の顔が、やけに近―――――― 「ん―――――――――」 唇に触れたやわらかい感触に、思考が停止する。 そしてお嬢様によって歯先まで引き出された舌に、小さな、ほんの小さな痛み。 「ん、ん―――――――ちゅ、ちゅるっ」 そして口の中に広がる、甘い、甘いお嬢様の味。 成る程、もしかしたら俺の血を美味しいと言うお嬢様も同じような感覚なのかもしれない。 ほんの数秒間そうした後、お嬢様は口を放した。 かつて無いほどに顔を真っ赤にして、ばつが悪そうにそっぽを向いている。 外見は幼いが、今のお嬢様はとてつもなく艶っぽい。 「…美味しかったわ。それじゃ、私はもう寝るわね」 空気に耐え切れなくなったのか、足早にベッドへと歩いていく。 「ああ、お嬢様」 「…な、何かしら?」 少し振り向いたお嬢様の表情には、ほんのわずかな不安が見て取れる。 ここでフォローしなければ漢が廃ると言おうものだ。 「俺も美味しかったですよ」 お嬢様は数秒固まった後、突然ドラキュラクレイドルをぶちかまして遙か彼方へ吶喊していった。 まああの方向だったら外に飛び出すことは無いだろう。 舌を確かめてみると出血は微々たるものだった。これではほとんど血を吸えはしなかっただろう。 俺は口の中の余韻に浸りながら、お嬢様の部屋を後にした。 後日 「そういやパチュリーさん、お嬢様に何の本を貸してたんですか?」 「ある意味春本よ」 懺悔室 牧師「カミニユルシヲコイナサーイ」 「本当は今度こそプロポーズやろうと思ったんです萃香で。 萃香可愛いよ萃香ごめんなさいこっち書いちゃいました。 あと前よりさらに春度が高くなってごめんなさい 指チュパやったらこれしかないと思った反省はあまり」 牧師「カミハアナタヲユルシマセーンジゴクヘオチロボケガ!!」 「!?」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 249 「お嬢様、客人を連れてきました」 「入りなさい」 「失礼します」 ─咲夜さんの言った”お嬢様”は…幼かった。 「お嬢様、こちらが外の世界の住人の○○です」 ─多分小学生か、それの少し上程度の年齢だろう。 「ご苦労様。下がっていいわよ」 ─だがその姿とは裏腹に。 「はい」 ─いや、むしろそんな容姿だからこそ。 「紅魔館へようこそ。私はレミリア・スカーレット」 ─僕は、溢れんばかりのカリスマと、その似合わぬ言葉遣いに慄いた。 「は…はじめまして。○○です」 ───はずだったんだけど…。 ※ ※ 「そしたらね、なんて言ったと思う? 中国ったら『名前で呼んで下さいよーーー!!』って。 もう凄いったらありゃしなかったわよ。鼓膜が破れるくらい大きな声で叫んで… なんであんなに必死になるのかしらねえ。あ、必死っていえばこの館の前の湖に住んでる…」 僕がここへ来た経緯を話してから、彼女はずっと喋っている。 自分が吸血鬼であること。500年ほど生きていること。小食であること。そして、最近体験したこと。 「…ねえ○○、聞いてる?」 「う、うん。聞いているよ」 「そう、よかった。聞いてなかったら…吸うわよ」 「ははは…」 先ほどのプレッシャーは何処へ行ったのか。夢だったのではないか、と考えてしまうくらいだ。 「ねえレミリア。その湖はここから見える?」 「ええ、こっちへいらっしゃい」 ※ ※ 「へえ、すごいもんだ…」 スイートルームから夜景を見るのはこんな感じ…いいや、こっちの方が上かな? 「湖に月が…今夜は満月か」 「あら、満月?」 「うん、とても綺麗だよ。レミリアも見てみなよ」 「まん、げ…つ…?」 「…レミリア?」 「……………」 「レミリア? レミリア!?」 「りゃー」 …え゙? 「みー、りゃー」 レミリア、レミリアァァァァァァァァ!! どどど、どうなってるんだこれは!? 待て、まず落ち着くんだ…まずは状況を把握するんだ…。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ─満月を見たら、幼女がもっと幼女になった─ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …ごめんレミリア、僕にはこれが限界みたいだ( A`) 「…そうだッ!」 僕にはどうすることもできない。 それでも咲夜さんなら…咲夜さんならきっと何とかしてくれる…。 扉を開けて、僕は叫んだ。 ※ ※ 「咲夜さ~ん咲夜さ~ん、咲夜さーん、Cleaning stop! お嬢様が幼女なんです! レミリアお嬢様が幼女なんです!! 咲夜さ~ん咲夜さ~ん、Cleaning stop! Room cleaning stooooo「刺すぞコラ」 「ヒィッ!」 い…いったい……何が起こったのだ… 背後に回られたのか……う…動けない…… 一瞬にして背後に回られた…!? なぜ!? なぜ足音もなく…服のすれる音もなく気配もなく「僕の背後」に回って 喉元にナイフを突きつけることができたのか? なぜ…? 少しの気配もなく…背後に回ってナイフを突きつけるという一連の行動の時間差もなく…時間差…時間 ┣゙ ┣゙ ┣゙ ┣゙ ┣゙ ┣゙ わ…………わかった………ぞ… な…なんてことだ……… それしか考えられない………… 「時間」だ……… 咲夜さん…は…「時」を止められるのだ……… 「それで、なんなのよ。変なこと叫んでおいて何も無かったら本当に刺すわよ」 「そうだ! 大変なんだ!! レミリアが…」 「ゥゥお嬢様がァァァァ!? 貴ッ様ァァ! お嬢様にナニをしたァァァ!?」 「ちょ、咲夜さん、痛いから!!」 「吐ケェェ! 吐カナケレバ殺ス!!」 「吐くから! 吐くから落ち着いて!!!」 ※ ※ 「お嬢様が…幼女に!?」 「さっきそう言ったじゃないですか…ところでそのナイフはなんです?」 「やっぱ殺すわ」 「本当なんですよ! 見てみればわかりますから!!」 「第一お嬢様があれ以上幼くなったらたいへべれけぇ!?」 「りゃー」 「おおおおおおお嬢様!?」 「みー、りゃー」 「○○! ここここれはどういうこと!?」 「僕が聞きたいですよ! …って、何処へ行くんですか?」 「自室にテイクアウトよ!(自室にテイクアウトよ!)」 「心の声も同じにしないで下さいよ!!」 「りゃー、りゃー」 「嗚呼お嬢様なんて可愛らしい…」 「咲夜さん、鼻血…」 鼻血が滝のように流れるのは漫画の話。 そんなふうに考えていた時期が僕にもありました。 だが咲夜さんは、僕ができない(と思っていた)事を平然とやってのけるッ! そこにシビレるッ! アコガレるぅッ! 「りゃー」 ぺったん。ふにふに。 「おふッ!!?」 ぺったんこ。まるで少年のような触り心地!! 「お嬢様っ! そこはくぁwせdrftgyふじこ」 「みー…」 「お嬢様、何故お手を止めるのです!?」 「りゃー(ぷいっ)」 「おぉぉぉ嬢様ぁぁぁぁ~~~!?」 あー、飽きられた…のかな? 「ん…?」 「みー、りゃー(トコトコ)」 「どうしたんだレミリア?」 「りゃー♪(ぴょんっ)」 「おわっと!」 「みー、りゃー♪(すりすり)」 んー…懐かれたってことで良いのかな? ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ いや、良くないような気がする…。 「○゙・○゙・ゥ~~~!!」 ほ、ほらね? 「ひ、ひぇぇ」 ○○(つまり僕):ナイフが刺さって痛かった。パチュリーさんの治癒魔法のおかげで、今はなんともない。 レミリア:幼女化したけど、朝には元に戻った。記憶は無いらしい。 咲夜さん:僕を見る目つきが変わった。目が合うとすごく睨まれる。 パチュリーさん:呆れていた。まあ、理由はわかるけど。 美鈴さん:何故かコッペパンが二回りほど小さくなったそうだ。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/あとがき_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_ /_/_/_/_/_/_/ 収拾がつかないまま終了しちゃいました。すいませんすいまs(ry 小悪魔と紅魔館メイドも出そうかと思ってたんですが…思ってただけです。 ああ、それとマジカル☆さくやちゃn(殺人ドール 告白? なんですそれ? 美味しいものですか? _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 449 たまには違う路線で… ○○「う…くそっ…」 レミリア「ほらどうした?さっきまでの勢いはどこに行ったのかしら?」 ○○「くっ…うおおおおおおおおっ!」 懇親の力を込め剣を振るうが…それは届かない。 代わりに鋭利な刃物を思わせる爪が俺の首筋へ当てられる ○○「うぐっ…」 レミリア「はぁ…全然ダメね…やる気はあるのかしら?」 ○○「ははは…はぁ…」 そう、今俺はレミリアお嬢様直々に武術の稽古をつけてもらっている。 わざわざ直々に教えてくれるその理由…まぁ、お嬢様の気まぐれってヤツだそうだ。 レミリア「まったく…貴方は見込みがあると思ったんだけどねぇ…」 ○○「過大評価じゃないんですか?」 レミリア「私が言うのよ、間違いないわ。貴方の運命は私の護衛として活躍することなのよ」 ○○「そりゃまた明るい未来ですね…」 レミリア「それも白黒や亡霊の姫なんて簡単に退けられるような…私が運命を見違えるなんて無いのに…」 ○○「いやいや…俺は白黒や亡霊の姫なんて以ての外ですよ…湖の氷精にやっと勝てるかな?ってレベルなんですから…」 レミリア「…貴方は自分を過小評価しすぎてない?」 ○○「ご冗談を…」 レミリア「…まぁいいわ。さ、再開しましょう」 ○○「押忍!」 まぁ、最近はお嬢様に攻め込まれることは無くなってきた。 …未だに一撃も入れられないが… しかし…一撃入れてしまったらメイド長の報復が…ガクブル ~回想~ 咲夜「いい?もしお嬢様を傷つけたら…一万本じゃ済まないから」 ○○「は、はぁ…」 ~回想~ …やりずらいなぁ… レミリア「ほらっ!何をボーっとしてるのかしら?」 ○○「っと!すいません…」 レミリア「ほらほらほら!脇が甘いわよ!(連続斬撃)」 ○○「ぬっ、くっ、はっ、うわっ!(剣を弾き飛ばされる)」 レミリア「…貴方ねぇ…全然進歩してないじゃないの…(爪を首筋に当て)」 ○○「す、すみません…」 レミリア「…一回血を流してみたほうがいいかしら…(少し首を切る)」 ○○「うっ…勘弁してくださいよ…」 レミリア「まぁ…冗談よ…ぺろっ(血が出ている部分を舐める)」 ○○「ひあっ!お、お嬢様…お戯れは程々にお願いします…」 レミリア「…貴方の血は美味しいわね…」 ○○「…きょ、恐縮です…」 レミリア「まだ晩餐の時間には早いけど…(迫る)」 ○○「お、お嬢様…?ま、まさか…(後ずさり)」 レミリア「ふふふ…少し、飲ませてもらうわ…(○○の首に手を廻して)」 ○○「マジすか…(滝汗)」 レミリア「大マジ♪かぷっ(首筋に噛み付き)」 ○○「ッ!!」 レミリア「ごきゅっ、ごきゅっ、ちゅるるるるっ」 ○○「はぁ…あぁ…うぅ…(意識朦朧)」 レミリア「ふぅ…なかなか美味しい血だったわ…○○?」 ○○「きゅ~…(気絶)」 レミリア「…貧血かしら…」 ============================================================== うう… か、体が重い… 特に首筋の辺りが… でも…なんだかひんやりしてて…気持ちいい… …ひんやり? ○○「(目を覚まし)…あれ?俺はいったい…なんでベッドで寝てるんだ?」 レミリア「むぅーっ…○○五月蝿いわよ。寝てるんだから静かに…zzz」 ○○「あらら…申し訳ございませんお嬢様…って、ん?何でお嬢様がここで寝てるんだ?ってかここって…お嬢様の寝室じゃあ…」 レミリア「zzz」 ○○「状況把握しよう…ここはお嬢様の寝室、お嬢様はベッドで寝ている。で、何故か俺も同じベッドで寝ている…これの意味することは…」 レミリア「うーん…」 ○○「…俺とお嬢様が…添い寝したってことに…(赤面)」 レミリア「…さっきから五月蝿いわね…貴方も一緒に寝なさい(布団に引きずり込む)」 ○○「えっ?ちょっ…お嬢様…(引きずり込まれ)あぅ~…」 咲夜「お嬢様、就寝されたのですか?…○○?」 ○○「メ、メイド長?」 咲夜「お嬢様と一緒に寝るなんて…(ギリピキィ)何を考えてるかは知らないけど…白玉楼に行く準備は出来たかしら?(ナイフ構え)」 ○○「い、いえ…いやちょっと…勘弁してくださいって!」 レミリア「○○は私が連れ込んだのよ。咲夜は口出ししないで頂戴」 咲夜「お、お嬢様?し、しかし…」 レミリア「いい?貴女は私の従者。逆らうことは…」 咲夜「・・・わかりました」 …命は助かったようだが… レミリア「むー…(抱きつき)」 ○○「理性のほうが飛びそうだな…」 レミリア「○○…温かい…ん~…(すりすり)」 ○○「…この状態で寝ろって方が難しい…お嬢様ぁ…勘弁してくださいよぉ…」 レミリア「ん~…だめよ…○○…」 ○○「はぅ~…」 結局○○はレミリアに抱きつかれた状態で昼間を過ごすことになった… ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これはひょっとして後書きなのか!?(ぇ ども、"音速駄作製造機"の107です。 今回は…レミリアと添い寝できたらいいなぁ…という授業中の妄想(爆)からこの話が生まれました。 …だって世界史の授業は…正直つまらない…(ぇ なんだか文章が変になってる部分もありますが、ご愛嬌だと思って「ははは、こやつめ!」見たいな感じで流してください(ぉぃ …世界史のノートの裏表紙… えー…I先生、授業中に妄想なんぞして本当にすみませんでした… …ここまで… ─────────────────────────────────────────────────────────── 3スレ目 111 寒くて寒くて仕方が無いって昨日今日なのに、僕の部屋の窓をぶちやぶって レミリアお嬢様が入ってきた。 でも吸血鬼が部屋に入ってくる作法は、どの映画を見てもそう言うものだったな と記憶しているので、北風がめちゃくちゃ寒く吹き込んで来ても、僕は怒らない。 そして、逆らっても無駄なのでぼーっとしていると、案の定血を吸われた。 でも彼女は小食なので、全部吸われない事が解っているから、僕は余裕だ。 小さくて柔らかいクチビルと、首筋にピリッと奔る痛み、そして愛らしい 鼻からこぼれる短い吐息、その全てを逆に愉しんでしまうくらいだ。 事実、お乳を飲む赤子のように、一生懸命に血を吸うレミリア様はとても 愛らしいのである。 しばらくして、献血注射一本分くらいの血を吸ってしまうと、案の定彼女は 満足して顔を上げてしまった。 「なかなか美味しい血だったわ、お持ち帰り決定ね」 身に余る光栄です。 僕は、この迷信深い日本にB型として生まれた事を始めて感謝した。 「では、ご用意させて頂きます」 メイドさんが突然現れて、そう言った。 紅魔館への引越しの準備でも手伝ってくれるのかな? 彼女は手に、大きなポリ製のタンクとナイフを持っていた。 ───────────────────────────────────────────────────────
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レミリア軍 レミリア家臣団については、レミリア家臣団についてクリック・タップ。サハラン砂漠の戦士達は、砂漠の盗賊から産まれた蛮族。サハラン砂漠は、今日も熱く太陽は、照りつけている。 民兵(剣士) 民兵(弓兵) 軽装歩兵(剣士) 軽装歩兵(弓兵) 重装歩兵(剣士) 重装歩兵(弓兵) サハラン剣士 サハラン弓兵 ダークヴァンガード (ダークヴァンガードは、サハラン剣士もしくは、サハラン弓兵から クラスチェンジできる。勇者なので剣もしくは、弓もあつかえる。)
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レミリア8 11スレ目 351 それは、いきなりやってきた。 何ともなしに紅魔館の廊下を歩いていると。 「さくや~」 奥の方から、ふわんふわんな声が聞こえてきた。 いや、もうほんとふわんふわん。 「さくや~、さくや~」 声はどんどん大きくなる。どうやら俺の方へと来ているようだ。 誰が来ているのかは分かっている。 いつもはその溢れんばかりのカリスマを持ってしてこの紅く塗りたくった館の主を務める。永遠に幼き紅い月――レミリア・スカーレット。 この館のメイド長を務める十六夜咲夜さんとは互いに全幅の信頼を寄せている。 何より、彼女は吸血鬼である。紅い満月の時だと凄く調子が良いらしい。 その時に一度遭遇してしたことがあり、その時は生きている心地がしなかったのをよく覚えている。 それほど凄い。 しかし、今回のレミリアは一味違う。いや、だいぶ違う。っていうかほぼ別人。 いつものカリスマはどこへやら、その外見年齢相応の女の子へと変化してしまっている。 凶悪な程の幼さと可愛さを持つ吸血鬼――れみりゃ・すかーれっと。 同じ存在ではあるが、まるで別人のようなので、なぜかこう呼ばれているらしい。 ちなみに、レミリアがこのれみりゃになってしまう事を「れみりゃ化」と言うらしい。 何故かは、分からない。 メイドさんたちはれみりゃに会っただけで、可愛さのあまり鼻血を噴出して気絶。 咲夜さんに至っては鼻血を垂らしながら世話をしている事もあるらしい。 この紅魔館は、その鼻血によって紅くなっていった――そういう一説もあるらしく、相当な出血量である事が窺える。 「――あ、○○」 「ん?」 いつの間にか、れみりゃが俺の目の前にいた。 俺を見上げ、頭に?を出しながら首を傾げている。 彼女の後ろを見ると、メイドが全員が倒れていた。 「ねぇねぇ、さくや、しらない?」 「咲夜さん? 呼べばすぐに来るんじゃないかな?」 「よんでもきてくれないの。でもね、さくや、きっとどこかにいるの」 話してみると、普通の女の子だ。いつもの威厳が感じられない。 母を探している女の子みたいだ。向こうではよく見る光景だったけど、まさかここでも見れるとは。 咲夜さんは母親か。じゃあ父親は誰だって話になるが、今はそんな事どうだっていい。 と、服の裾を引っ張られた。れみりゃの方に倒れそうになるのを、慌てて堪える。 なんだよ、と言いかけてれみりゃの方を見ると、穢れの無い純真無垢な瞳が俺を捉えた。 「○○。いっしょにさくやさがして?」 「…………」 「○○?」 反応が無いのを怪訝に思ったのか、首を傾げられた。 れみりゃに限らず、いつもの出来事。 レミリアの時だって、咲夜さんがいない時に一緒に探して欲しい、と頼まれる時がある。半強制的にだけど。 だから、変わらないのだ。いつもとは。余裕があるときは冗談めかして断ったりするものだが。 だけど、これはやばい。断れない。 っていうか、何だ、メイドさんたちがこっち見てるのよ。鼻から血垂らしながら見てるのよ。 "断ったら殺す"ってオーラが滅茶苦茶出ている。冗談すら言える空気じゃない。 「……い、いいよ。一緒に、咲夜さんを探そうか」 「!! うんっ!」 俺が頷いた瞬間、その顔に満面の笑みが宿る。 そんなに嬉しかったのか。いつもの事なのに。 いこ、と言いながら手を握ってきた。 それだけで断らなくて良かったと思えた。 言っておくが、俺はロリコンじゃない。 「ねぇ、○○」 「ん、何?」 「さくやってね、すごいの」 「へぇ、どんな風に?」 あぁ、またこの話か。もう何度目だろう。このパターン。 ほんと、大好きだな。 で、話題の我らがメイド長、咲夜さんはどこにいるんだろう。探し回っても見当たらない。 真っ先に部屋のドア叩いたけど、返事無かったんだよな。 「○○、つかれた」 「……ん、じゃあどっかで休むか?」 「…………」 れみりゃは何も言わずに、俺の方をじーっと見つめてきた。 その瞳には、なんの感情も篭もっていない。ただ、見つめてくるだけだ。 それがかえって怖い。 なんか、失言してしまったんじゃないかと思ってしまう。 いや、今の言葉に間違いなんて、何一つ無いはずだ。 女の子が疲れたから、休むことを提案する。 実にベストアンサーではないか。もっと自信を持っていこう。 自分に自信を取り戻した所で、れみりゃの密着。 俺の足にくっついてきたかと思うと。 「……おんぶ」 「……へ?」 「おんぶして、○○」 上には上があった。俺の回答は間違ってはいない。しかし、正解でもなかった。 しかし、果たしてこのベストアンサーを自分から言ったらどうなるか。 どう考えても変態認定である。 「○○、おんぶ……」 だからと言って、言わないままでいたら、トップには立てない。 つまり、変態という不名誉な称号をもらう覚悟でこれを言うか、それとも言わずにトップの座を誰かに明け渡すか。 「○○……ぅー」 しかし、ここで逆転の発想。ここからは俺のやり方ではあるが、ベストアンサーの一つランクを下げた言葉を相手にかける。 相手はそれを良いな、と思いつつも、ここまで言ってくれる人ならきっと私がやって欲しい事言っても大丈夫! と思わせる。 完璧だ。ある意味紳士ではないか。 っていうか、何か主旨間違ってないか。まぁいいか。 「ぅー!」 れみりゃが目の前にいると思ったら突進してきた。 軽さの為か、後ろに倒れることも無く、だっこの形となってその状態は維持される。 目の前で、悪魔の羽がぱたぱたとせわしなく動いている。 これは怒っているのかもしれない。 「ごめんごめん、おんぶだっけ」 「もうこのままでいい」 どうやら俺が思考している間に、れみりゃはご機嫌ななめに。 何とか挽回しなきゃ、な。 とりあえず、頭でも撫でておく。 「ん……」 れみりゃがさらに擦り寄ってくる。 効果覿面なのかもしれない。 しばらく、そうしながら咲夜さんを探していると、れみりゃが突然口を開いた。 「○○……」 「ん?」 「だいすき」 「……ありがとう」 れみりゃの突然の告白に戸惑うことなく、不思議と穏やかな気持ちで言えた。 きっと、れみりゃの持つ別のカリスマなのだろう、と勝手に納得する事にする。 未だに見つからない咲夜さんを探していると、今度はその理由を話し始めた。 「○○、ちゃんとかまってくれるし、やさしいもん……」 「……ここの人たちの方が優しいよ」 「そんなことないもん、○○のほうがやさしいもん」 ムキになって俺を褒めてくれるれみりゃ。 かまってくれるの意味は、他の人たちは忙しくて相手をしてやれないだけなのだろう。 俺はここに居候気味で何もしていない。正直、迷惑以外の何者でも無いと思っている。 だからこそ、れみりゃの純粋なその言葉に涙が出そうになる。 「あはは、多分あれだよ。俺はみんなより弱いから、その分優しくできるのかもね」 「○○はよわいの?」 「よわいよ。れみりゃなんかよりもずっと」 この間、チルノと遭遇して数秒で意識吹っ飛んだしな。彼女は十分強いよ、俺の中では。 あれを軽々と打ち返せる人たちはおかしい。もう、なんていうかみんな最強だよ、俺の中では。 「じゃあ、れみりゃがまもってあげる」 「え?」 「れみりゃが○○のことまもってあげる」 「そっかそっか。……ありがとう」 お礼のつもりで、頭を撫でてあげる。 小さいことかもしれないけど、それが俺に出来る精一杯のお礼だった。 もうどのくらい歩いたか分からない。俺の足もそろそろ限界に近づいたとき、救世主の声が聞こえた。 『お嬢様~! どこですか、お嬢様~?』 「あ、さくやのこえ」 「やっとか……」 れみりゃが気付いたので、降ろしてあげる。 声から察するに、向こうも探し歩いていたのかもしれない。入れ違いの可能性が凄く高い。 れみりゃが咲夜さんの所へと行こうとしているのを止めて、ふと思いついた妙案をれみりゃに端的に教える。 あまり意味はないので、深く突っ込まれたらどうしようもないが、そこは流石れみりゃ。快く首を縦に振ってくれた。 「いいか、れみりゃ。俺が合図したら行くんだぞ」 「うんっ!」 咲夜さんの声が少しずつ大きくなる。目を閉じて、声の大きさから距離をある程度計算する。 よし、良いだろう。 「れみりゃ、いいよ。でも、次の合図で走るんだ」 「うんっ!」 第一段階が展開。 陰に隠れているれみりゃを咲夜さんの目に止まる様にする。 「さくや~」 「お嬢様っ!? あぁ、どこに行っていらっしゃ――」 れみりゃを見つけて、咲夜さんが走り寄る足音が聞こえる。 時間を止める事はしないらしい。これならいける! 「今だ! れみりゃGO!」 「さくや、だいすき~!」 ヒュン、という音と共にその位置かられみりゃが消えたのを確認して、陰からチラりと顔を出す。 咲夜さんの上半身にしがみ付いたれみりゃを確認。これで最後だ。 チュッ れみりゃが咲夜さんの頬に口付ける。 「――――」 一瞬の間の後、メイド長は本物の幸せを手にしたような顔で、鼻から豪雨となるほど血を噴出し、天へと召された。 だから、言ったじゃないか。特に意味はないって。 敢えて言うなら、この紅魔館をもっと紅に染めたかったこと、かな。 「○○」 数日後、レミリアが俺の部屋に来た。 横にはもちろん、咲夜さんがいる。 「――レミリアか。珍しいな、俺の部屋に来るなんて」 「えぇ、暇だから、貴方と一緒にお茶でも飲みたかったのよ」 「それは……光栄な事だな」 ベッドに寝転がっていた俺は、慌てて起き上がりながらも、口では冷静を装う。 やはり、その姿は滑稽だったのか、レミリアにはクスクスと笑われてしまった。 「やっぱり面白い。来て正解だったわ」 「それは……光栄な事だ……な?」 たまに、レミリアから褒められているのか貶されているのか分からない言葉が出てくる。 きっと褒められているのだろうと、前向きに考えるようにしてはいるが、どうしても首を傾げざるを得ない。 そんな中、お茶会の用意は既に完了されていた。 流石はメイド長。仕事の早さで言ったら、誰も勝てる者はいない。 そして、俺たちに一度頭を下げると、部屋から出て行った。 「……二人だけでお茶会か。寂しいな」 「静かな方が、良いじゃない。そっちの方がお茶の香りも楽しめるというものよ」 「確かに、そうかもしれない。でもさ、だったらいつものように一人で――」 「いつも一人じゃさすがに飽きるのよ。だから、今回は貴方の所へ来てあげたのよ」 「……そいつはどうも」 「それじゃ、始めましょう。まずは乾杯から」 「いや、それは違うだろ」 こうして小さな小さなお茶会は開かれた。 始まる寸前のあの時、俺の返しに笑ったレミリア。 その時の表情に、吸血鬼のような残酷さは無く。 年相応の少女の笑みだった。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 11スレ目 100 用があって昼間にしか紅魔館に来ない人間○○ ○○を気に入ってるお嬢様はいつも「就寝時間」を過ぎても起きていようとする で、ある日テーブルで話をしている時に眠気が限界に来て、机にほっぺをつけて寝てしまう 普段の威厳を保とうとする雰囲気など無かったかのように幸せそうな寝顔をしている そんな姿に○○は思わず微笑んでしまう …それからしばらくして○○は出来るだけ夕方に紅魔館に行くようになりましたとさ ─────────────────────────────────────────────────────────── 11スレ目 310 フ「えへへ、○○あったかーい・・・・・」 ○「まったく、フランは甘えん坊だなぁ・・・・」 フ「別にいいでしょ? こうしてると気持ちいいんだもん」 ○「いや、一応俺ってば君の姉の恋人なんだがねぇ・・・・・」 フ「未来のお兄ちゃんに甘えてるだけなんだから、気にしない気にしない♪」 レ「気にしなさい、というよりも今すぐ○○から離れなさいフラン!」 フ「あ、お姉様」 ○「ようレミリア、お邪魔してるぞ」 レ「○○はよく来てくれたわね、フランはどっか行きなさい」 フ「えー、やだ」 レ「・・・・・・」 ○「まあまあ、そんな妹を邪険にすることもないだろ」 レ「あなたもなに無抵抗にされるがままになってるのよ!!」 ○「だって脆弱な人間さまは強大な吸血鬼さまに勝てるわけないだろー?」 フ「そうだよねー♪」 レ「ああもう、○○は私のモノなの!フランはさっさと離れなさい!!」 フ「お姉様ってば、未来のお兄ちゃんに甘えるくらいいいでしょー?」 ○「未来の『お兄ちゃん』、なんて素晴らしい響きだ・・・・・」 レ「○○に甘えていいのは私だけなのよ! ○○も何に感動してるのよ!!」 フ「むう、いいもんお姉様のいぢわる、お姉様のいない時に甘えるからいいもん(ボソッ」 レ「ハァ、ハァ・・・・やっと行ったわね・・・・?」 ○「随分お疲れのようだなレミリア、ちゃんと寝てるのか?」 レ「・・・・・・誰のせいだと思ってるのよ?」 ○「(無視)ああ、レミリアは今日も可愛いなぁ・・・・」 レ「そ、そんなんじゃ誤魔化されないんだからね!!(////)」 ○「レミリア・・・・・・・」 レ「あ・・・・○○・・・・・」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 11スレ目 396 負けたら何でも言う事聞く賭けに負けたレミリア様。 欲望丸出しで○○が「一日専属メイドになれ」と命令し しぶしぶ従いメイド服を着用するレミリア様てのを最近バイト中に妄想してばかりで困る ────────────────────────────────────────────────────────── 11スレ目 426 ○「今日はクリスマスイブか」 レ「明日はクリスマスね」 ○「年に一度とは言え、サンタの大仕事だな」 レ「フランにちゃんとプレゼント置いていってくれるかしらね」 ○「おや、レミリアはいらないのか?」 レ「な……っ! い、いるわけないでしょ!? 私だってもう子供じゃないのよ」 ○「フランが貰えるんだったら、レミリアが貰ってもいいんじゃないか?」 レ「いいわけないでしょう? 何度も言わせないで、私はもう子供じゃないの」 ○「はいはい、そう言う事にしておくよ」 レ「……そういう○○はどうなの? 何か、欲しい物はないの?」 ○「ん……俺は特に無いな。今でも充分だしな」 レ「今……?」 ○「レミリアといるだけで幸せなのに、これ以上何を望めと?」 レ「! ……ぅー、○○のバカ」 ○「で、もう一度聞くけど、何か欲しいものは?」 レ「……血が欲しい」 ○「血っておま……物騒だな」 レ「し、仕方ないでしょう!? 他に思いつかなかったんだから……」 ○「は、はは……貰えるといいな、B型の血」 レ「……ぅー」 咲「で、私のところに来たわけね?」 ○「お願いします。あの二人のサンタになってやってください」 咲「安心なさい、貴方に言われなくてもやるわ」 レミリアは「(○○の)血が欲しい」と言った訳だが、どうやら伝わらなかったようだ ─────────────────────────────────────────────────────────── 11スレ目 493 「ね、ねぇ○○?聖夜って……吸血鬼には関係ないものよね?」 「え?……まぁ関係ないと言えば関係ないですが」 「……そうよね」 ……う~んそのまま答えただけなのに何故かレミリア様は気を落としてしまったぞ。 聖夜か……たしか幻想郷にもクリスマスあるんだよな。 ……ん?クリスマス?クリスマス……ってまさかな。 「あの……レミリア様?」 「ん?な、何かしら?」 「間違っていたら申し訳ないのですが……聖夜は恋人同士で過ごす日ですよね?もしかしてそれが関係し」 「してないしてないしてない!」 僕の言葉を遮って顔を赤くしながら首を振るレミリア様。 可愛いですけど、それじゃバレバレですよ? でも嬉しいな……そこまで考えてくれてたなんて。 「レミリア様……」 「ふぁ!?……○○?」 いきなり僕が後ろから抱き締めるとレミリア様が驚いたような声を出して縮こまった。 ふふ、怯えるレミリア様も可愛い。 「……吸血鬼が聖夜を祝ったって良いじゃないですか。そんなことに縛られるなんてレミリア様らしくないですよ?」 「…………」 僕の言葉をしっかり噛み締めるように聞いているレミリア様。 でも僕は間違ったことを言ってるつもりはない。 「僕も吸血鬼ですけど……祝いましょう?一緒に」 「……えぇ○○」 僕に体を預け、首を上げて見つめるレミリア様。 その顔はとても可愛くて……僕はそっとその額に口付けをした……。 結局紅魔館で聖夜を祝うのをどこで嗅ぎ付けたのか、魔理沙が現れ。 そのまま次々と皆さん現れると、紅魔館で宴会の流れになった。 始めにレミリア様が望んだものではなかったかもしれないけど……これはこれで良い聖夜だったと僕は思う。 ただレミリア様に一言だけ……。 レミリア様……メリークリスマス。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 12スレ目 504 うpろだ840 妖怪たちがうごめく闇夜の時間。 私はいつものように気ままな散歩に出かけた。 風が頬をなで、景色は次々と移ろってゆく。 その途中で、平原に何かが立っているのが見えた。 普段ならそんなものは気にも留めないだろう。 だが、そのときの私はなぜかそれに興味を抱いた。 後になって思えば、私はそいつから不思議な運命を感じ取っていたのだろうと思う。 「こんばんわ、今日もいい夜ね」 そんな言葉を投げかけ、そいつの前に降り立つ。 それは、見た感じ4~5歳であろう人間の子供だった。 彼の服は幻想郷のものとは大きく違い、彼が外から来た人間であるのは明白であった。 今までにも外から来た人間には何度か会ったことがあった。 ただ、そいつらは大抵、私の翼を見て恐れおののき、逃げるか襲いかかってくるかのどちらかだった。 しかし、その子供はそのどちらでもなかった。 私の向けた視線を真っ向から受け止めていた。 その目には何の光も宿っておらず、顔からはあらゆる表情が消えていた。 いや、まるでそんなものは元から持ち合わせていなかったかのようだ。 おもしろい人間だ。 よくよく見れば、彼の服はところどころほつれており、体には見える部分だけでもかなりのあざがあった。 この少年はどれほどの闇を味わったのだろうか。 私は口の端がつりあがるのを抑えることができなかった。 「坊や、私と一緒に来ない?」 自然とそんな言葉を口にしていた。 彼は無表情でうなずいた。 と、不意に意識が反転する。 「レミリア姉さん、こんなところで寝てたら体に毒だぞ」 目の前に無愛想な顔が現れる。 その顔は先ほどの少年と似ていて、けれど全く違う顔だった。 ああ、さっきのは夢か。 ようやく、思考が澄み渡ってきた。 「○○、咲夜はどこかしら?」 「咲夜姉さんは香霖堂へ出かけてる」 「そう」 彼の顔を見つめてみる。 顔立ちはそこそこ、最も無愛想な表情が全てを台無しにしている感はあるが。 さらに彼の瞳をのぞいてみる。 その目には、はっきりと光がやどっており、彼は今確かにここにいるのだと私の頭へ訴えかける。 「どうしたんだ、姉さん?」 「何でもないわ」 そっけなく言い、明後日の方へ向く。 時間はこうも人を変えるものなのか。 私は心の内でつい一人ごちる。 かつては何の色も見せなかった瞳が、今ではまるで虹のように色鮮やかだ。 これもここで色々な人々に囲まれて育ったせいか。 そういえば昔、誰が彼を最初に笑わせられるか、なんて賭けをしていた気がする。 誰が勝ったかは覚えていないが。 いや、変わったのは私もか。 かつての私は彼がどれほど歪に成長するかを楽しみにしていたのだから……。 しかし、私の予想は外れた。 彼は誰よりも真っ直ぐに、誰よりも馬鹿正直に育った。 そしていつしか、私の大切な弟になり、この紅魔館の一員となった。 本当に変わるものだ。 今では私はこの状況に幸せすら感じているのだから。 「○○、一つ聞いてもいいかしら?」 彼の方に向き直る。 「何だ?」 答える彼は相変わらずの無愛想。 しかし、私は知っている。 彼は私の自慢の弟で、誰よりも優しいことを。 「あなたは今、幸せかしら?」 彼の瞳をまっすぐ見つめる。 「ああ、幸せだ」 その顔はさっきと変わらなかったが、どこか朱がさしたように見える。 「俺はこの館もここに住む人たちもみんな大好きだからな」 続けて彼は語る。 「美鈴姉さんはよく昼寝して、咲夜姉さんに怒られてるけど誰よりも仕事に誇りを持ってる。 小悪魔姉さんはドジでおっちょこちょいだけど、いざってときはすっごく頼りになる。 パチュリー姉さんはいっつも引きこもってるけど、色んな話を聞かせてくれる。 咲夜姉さんは一見厳しい人に思えるけど、それは全部俺を思ってのこと。 フラン姉さんは怖く見られてるけど、実はとっても優しい。 他にもここに住んでる人たちには、皆それぞれいいところがあるって知ってる」 一旦、息を吸う。 「そして何よりレミリア姉さんは俺に居場所と家族をくれた」 彼もまた私の瞳をまっすぐ見つめる。 その顔はうっすらとだが、微笑んでいるように見えた。 「俺は色んな人たちのおかげでここにいる。だから俺は幸せだって言える」 そう言う彼の姿はどこか誇らしげだった。 「そう。それは良かったわ」 私もつい微笑みながら答える。 かつて彼と初めて会ったとき、私はこの運命を感じ取っていたのだろう。 彼が私の大切な家族となることを。 そして、私がこの満ち足りた感情を手に入れることを。 今なら言える。 私はこの世の誰よりも幸せだってことを。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 11スレ目 990 『レミリア、今日は俺の淹れた紅茶を飲まないか』 「貴方が淹れたの?珍しい」 『稀少品もちゃんと入ってるぞ。世界に2つとない代物だ』 「それは気になるわね。何を入れたのかしら?」 『お前へのありったけの愛、だよ』 「ぶーーっ!!?」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 12スレ目 966 うpろだ921 「咲夜、居る?」 「お嬢様? どうなさいました、厨房などに来て」 「少し、ね」 どうも歯切れの悪い返答に、咲夜は首を傾げる。 「○○はいないでしょうね?」 「いませんよ。ああ、明日はバレンタインでしたね。チョコを作られるのですね?」 「声が大きいわよ」 「大丈夫です、○○さんなら図書館で読書か蔵書整理していますから」 主の微かな動揺を微笑ましく思いながら、咲夜はそう切り返した。 ○○。紅魔館の客分にして、レミリアの眷族。 元は外から落ちてきた只人の青年に過ぎなかった。 博麗神社にしばし世話になっていたこの青年を、あろうことかレミリアが気に入ってしまったのだ。 何に惹かれたのかは言語化し難いところのものだろう。 敢えて言うならば、レミリアが吸血鬼と知りながらも、どこか飄々としたというか暢気というか、そういった態度が崩れなかったから、かもしれない。 一方青年の方でもレミリアに惹かれたのか、少しずつ紅魔館に来る回数が多くなり――いつしか、公然の仲となっていた。 いつだったか、いろいろと事件があった後にレミリアの眷族になると宣言。 それからしばらくは騒動になったが、とりあえず丸く収まって、今に至る。 少し普通とは違う、中途半端――はっきり言って弱い吸血鬼ではあるが。 ちなみに○○自体は背が高いくらいで、外見については特に取り立てて言うこともなく。 (まあ、人は中身ってことかしら。妙にのんびりしてるけれど) と、咲夜はそんなことを思ってみる。いい加減失礼なのだが、本人が別に構わないという様子なのでついつい好き勝手に言ってしまう。 (それにしても、お嬢様にこんな表情させるなんてね) 罪作りな人、と胸中で微笑する。咲夜とて、○○を気に入ってないわけではないのだ。 そうでもなければ、大事なお嬢様の相手として認めるわけがない。 「咲夜?」 「いえ、少し考え事を。では作りましょうか」 簡単にトリュフでいいですね? と問うと、レミリアは意外なほど素直に頷いた。 「……○○が菓子作りが巧いのが腹立つのよね」 作りながら、レミリアはぽつりと呟いた。 「妖精メイド達にもたまに作ってやってるでしょう?」 「嫉妬ですか?」 「まさか、何でそんなことしなきゃいけないのよ」 声と反対に、表情が咲夜の言葉を肯定している。 「それでも、一番よく出来たものはお嬢様に持って行ってますよ」 「そうなの?」 「ええ。嬉しそうですね」 「そんなことないわ」 気配と表情の両方を隠せていないまま、レミリアは再び口調だけで否定した。 「あら、レミィ、珍しいわね」 「パチェこそ……って、魔理沙も一緒なのね」 「私はおまけか?」 「おまけでしょう」 あっさり会話を切って、パチュリーはレミリアの手元をのぞきこむ。 「ああ、バレンタインね」 「いいでしょ、別に」 「ほー、○○にやるのか」 「うるさい」 絡んでくる魔法使い二人をあしらう間にも、トリュフは順調に出来上がっていく。 「後は冷やしておいたらいいですわ。お疲れ様です」 「ん、ありがとう、咲夜。料理って大変なのね」 「でも、出来上がると達成感もあるでしょう?」 「……そうかもね」 「私はたまに失敗するが」 「会話を台無しにするな」 どこまでも傍若無人な魔理沙に突っ込むが、当の本人はどこ吹く風。 「ところでレミリア、知ってるか?」 「知らないわよ、魔理沙の与汰話なんて」 「そんなこと言ってていいのか? バレンタインチョコの渡し方なんだが……」 数分後、○○に一両日は厨房に近付かないよう厳命するよう咲夜に告げたレミリアは自室に戻って行った。 「……さっきの嘘でしょう?」 「ああもちろんだ」 「あっさり認めるわね貴女も」 もう伝えて来たらしい咲夜が呆れた声を上げる。 「まさか本当には……しそうか?」 「するわね」 「しますね」 「なら教えてやれよ」 自分のことを遠い棚の上に放り投げて魔理沙が呆れた。 バレンタイン当日。○○は自室で借りてきた本をパラパラめくっていた。 「厨房に入室禁止、か。僕何かやったかなあ」 料理が趣味の青年は何すると言うこともなく、だらだらと時間を過ごしていた。厨房は主に彼のテリトリーなのだ。 「無闇と掃除とかやってると、妖精メイド達が怖がるしなあ」 中途半端とは言え吸血鬼。まあ前から出入りしてたので大分慣れてはくれてるようだが。 そして立場が客分というのもまた微妙。本来彼は、館内の仕事をする必要性がないのである。 それは逆に、レミリアにとって彼の順位が高いことを意味してもいるのだが。 「○○、いる?」 「いますよー」 ベッドにだらしなく寝転がっていた○○は、ひょいと起き上がって扉を開けた。 そこには最愛の主の姿。思わず、頬が緩む。昨日あまり構ってもらえなかっただけになおさら。 「どうしました?」 「今日は何の日か知っているでしょう?」 少し考えて、ああ、と頷く。 「バレンタインでしたか。何も作ってなくてごめんなさい」 「……なんで○○が私に作るのよ」 「女性から男性というのはこの国独特の形ですよ。お菓子というのも。でもどうせだから作ってたんですよね」 「……誰か女性に?」 一瞬不機嫌になったレミリアに、○○は首を傾げる。 「うーん……みんなでチョコケーキパーティとかやってましたからねえ」 「……それってバレンタインなの?」 「それにかこつけて騒いでたって感じでしょうか」 のんびりと微笑う姿に、レミリアは一つ息をつく。とりあえず、誰か特定の女性に、ということでなくてほっとしているようだった。 「って、今はそうじゃなくて。貴方と話してるとどうも話がずれていくわね……」 「すみません」 謝ってきたが、この青年はどこまで理解しているのだろうかと、そういう表情をレミリアは浮かべていた。 ふと、○○はレミリアの持っている箱に興味を移す。それに、レミリアも気がついたようだった。 「ああ、これ? 貴方に、よ」 「僕に?」 「Happy Valentine、とでも言うのかしらね」 そして、彼の部屋にするりと入ってくる。ふと見ると、後ろに咲夜が控えていた。 「すみません、二人とも立たせっ放しで」 「いいのいいの。咲夜」 「はい」 ○○とレミリアが椅子に座る間に、紅茶を二人分淹れて、咲夜は部屋を出て行く。出て行った瞬間は見えなかった。 「開けていいですか」 「いいわよ」 頷いて開けて、中の綺麗なトリュフに少し感動を覚えてみる。美味しそうだ。しかも手作りみたいで。 「レミリアさんが?」 「ええ、そうよ。感謝なさい」 「はい、ありがとうございます」 嬉しくなって微笑むと、レミリアの白い頬が少し紅くなった。ふいと顔を逸らした後、あ、と呟く。 「待って」 「え?」 食べようとした○○の手からチョコを奪い取る。 「レミリアさん?」 「ええと、確か……」 レミリアは小さく呟くと、○○の側まで来て膝の上に乗り、トリュフを自分の口に咥える。 そして、目を閉じて彼の方を見上げてきた。 (え、と。これは) 何をしろ、と言われているのかはわかる。よくわかる。でも咄嗟に反応できない。というか出来るか。 す、とレミリアの眼が開く。早くしろ、と視線が言っている。言っている、が。 (それは、反則……) 恥ずかしいのか、顔を紅くしていて、かつ眼を潤ませている。自分の膝の上で。無意識にやっているとしたら、本当に恐ろしい。 「で、では、いただきます」 理性が持たなくなる前に、○○はレミリアのチョコを頂くことにした。その口唇と一緒に。 「ん……あ……」 「……御馳走様です。ん、美味しいですよ」 口唇まで存分に味わって、○○はそう評した。そして、ん、と気が付く。 「何か入れました?」 「ああ、私の血を少し」 「なるほど、それは余計に美味しいはずですね」 「……真正面から言われると恥ずかしいわね」 顔を紅くして眼を逸らすレミリアは可愛くて、思わず微笑んでしまう。 「まだ、もらっていいですか?」 「ええ、いくらでも」 再び咥えたレミリアを、抱き寄せるようにしてチョコを頂く。 今年のチョコは、かなり甘いものになりそうだ。 「ところで、どうしてこんなことを?」 「え? 魔理沙がこうして渡すものだって言ってたけど」 「…………信じたんですね。可愛かったし、美味しかったから僕としては大満足なんですけれど」 「……? …………!」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 12スレ目 968 うpろだ923 「咲夜、○○は部屋にいる?」 「いけませんよ」 紅魔館当主である私の問いに、 忠実なメイド長からはかみ合わない答が返ってきた。 「何を言っているのかしら」 「また○○の血をお吸いになるのでしょう? 近頃多すぎますよお嬢様」 外から流れてきたのを気まぐれで拾った○○は、 冴えない男だと言われながらもその実好意的に、 紅魔館の住民として受け入れられている。 が、そんなことはどうでもいい。 ふと気が向いて吸ってみた○○の血は 私にとって非常に美味だった。 「……偏った食生活はお身体に障りますわ。 ○○の血を吸うのでしたら、今日のおやつは抜きですからね」 そう言って、咲夜は部屋を出て行った。 ―やめろと言われてやめられる味ではない。 だが、時には臣下の顔を立ててやることも、 カリスマを保つためには必要だ。 ……決して、おやつ抜きが嫌なわけではない。 「そうだわ」 チョコレートを食べ過ぎると、鼻血が出ると聞いたことがある。 折りしも今日はバレンタインデーだ。 『○○、チョコレートをやろう』 『ありがとうございます、レミリア様。 ……すみません、鼻血が』 『情けないわね。 仕方ない。その血、私に捧げなさい』 ……完璧だ。 吸血するのではなく、「やむをえず」○○の血を口にする。 咲夜にも文句は言わせない。 「○○、入るわよ」 ドアを開け、中に入る。 簡素な部屋だ。 ちょうど○○は部屋にいて、ベッドに腰掛けて本を読んでいた。 「あ、レミリア様。どうなさいました?」 「日頃私と紅魔館のためによく働いているお前を 労ってやろうと思ってね。これをあげるわ」 パチェの実験室でこっそり作ってきた 巨大なハート型のチョコを取り出す。 「これは……バレンタインの?」 ○○は、予想以上に喜んでいるようだった。 「ありがとうございます……大事に少しずつ食べます」 私は慌てた。少しずつ食べられては意味がない。 「今食べなさい」 「え?……全部、ですか?」 「そうよ。私の言うことが聞けないというの?」 「いえ、そのようなことは」 ○○は端からチョコレートを食べ始めた。 ハート型の1/4ほどがなくなった。 ○○は、まだ一向に鼻血を出す気配がない。 「……まだか」 「……急いで食べた方がよろしいですか?」 「そういう意味ではない!」 ついに私は痺れを切らした。 「ええい、まだ鼻血を出さないのか!」 ○○はぽかんと口を開けていたが、 やがて食べかけのチョコをベッドの脇にあったテーブルの上に置いた。 居住まいを正し、口の端のチョコを拭うと 落ち着き払っていった。 「レミリア様。それは迷信です」 「……何?」 「ですから、チョコレートと鼻血に因果関係はありません。 全くの俗説です」 頬が赤く染まる。……これでは、私はただの⑨ではないか。 「……○○。お前今、私を見下げていただろう」 「いいえ!決してそんな」 「うるさい!!」 乱暴に、○○をベッドに押し倒す。 「○○。私は、私を恐れる人間の血しか飲まないわ。 自らを恐れる人間の儚い命を吸うことで、 私達吸血鬼は永遠に君臨する夜の王でいられるのよ」 ○○が私を愚か者として侮る。 私を恐れなくなる。 そうなれば、私は○○の血を飲むわけにはいかなくなる。 「だから、○○」 至上の美味を失うことになるという、それ以上に。 「例え私が、全てを失ったとしても」 もはや血を吸う相手たりえなくなった○○との 繋がりがなくなってしまうことを考えると、 何故だかひどく怖くなった。 だから、 「―お前は、お前だけは、ずっと私を恐れ続けろ」 私は、いつもより力を込めて○○の首筋に牙を立てた。 勢いよく○○の血を吸い取ったが、 例によって、あまりたくさんは飲めない。 だが、紅く、熱く、甘いそれは私の焦燥を確実に癒していった。 「……レミリア、様」 ○○の腕が、背中に回される。 急に血を失ったせいか、弱々しい力の腕を 私はなぜか振り払う気になれなかった。 「ご心配には、及びません。 初めてお会いしたときからずっと、 この命が尽きたとしても」 かすかに、○○は微笑んだ。 「私はレミリア様を畏れ、敬い ……心から、お慕い申し上げます」 私はベッドから降り、○○に背を向けた。 「……そうか」 せいぜい威厳を保ったつもりだったが、 安堵と喜びは隠せなかったと思う。 「さて。私は部屋に戻るわ」 当初の目的は一応達成できたし、 俗説でなかったとしてもこれ以上チョコを 無理に食べさせる理由はない。 「残りはせいぜい大事に食べなさい。 ああ、来月には三倍返しを忘れないようにね」 からかい半分で言ったのだが、 ○○は面白いくらい困惑した表情を見せた。 「三倍、ですか… …私には差し上げられるようなものもありませんし、 普段の三倍血を吸っていただくぐらいしか……」 その答えに、私は思わず笑ってしまった。 「○○……そんなに血を吸ったら、 私は貴方を眷属に加えなければならなくなるわよ?」 「!!……す、すみません。 出過ぎたことを」 顔を真っ赤にしてうろたえる○○。 だが私は、それも悪くないと思い始めていた。 「そうね。私への畏敬の念を抱いたまま、 一方で私の伴侶として恥ずかしくないところまで 力をつけねばならないのだもの。 たったの一ヶ月でなんて、思い上がりも甚だしいわ」 「……レミリア様、それは」 「あまり私を待たせないように、精進することね」 ドアを開け、部屋を出る。 「……はい!」 後ろで○○が、力いっぱい返事をするのが聞こえた。 「さてお嬢様。何かおっしゃることはございますか?」 「……咲夜」 ドアの外には咲夜が立っていた。 当初の予定では押し切れるはずだったが、 結局普段どおりに血を吸ってしまったので 何も言い返せない。 「お約束どおり、お嬢様の分のおやつは パチュリー様と妹様にお分けしますね」 「ちょ、咲夜待ちなさい!」 歩いていく咲夜を追いかける。 「……ご心配なさらずとも、 ○○だけと言わず、私も最後まで お嬢様の側にお仕えいたしますわ」 咲夜は立ち止まると、そんなことを言ってきた。 「……ずいぶんしっかりと部屋の中の話を 聞いていたものね、咲夜?」 嬉しいことを言ってくれるが、 全く油断のならないメイドだ。 「差し当たり、○○を鍛えなければなりませんね」 「ええ、よろしく頼むわ。 ……それにしても本当にしっかり聞いてるわね」 今なら何となくわかるが、 ○○の血が美味だったのは、 私への恐れだけでなく、思慕の気持ちが 流れていたからなのだと思う。 私が○○の血を吸いたくなったのも、 どこかで彼に惹かれていたからなのだろう。 同族同士の愛情表現として互いの血を吸い合う分には、 吸血鬼の威厳は問題にならない。 いつになるかわからないが、○○には 早く美味しい人間から 美味しい旦那様に昇格してもらいたいものだ。 ───────────────────────────────────────────────────────────
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レミリア・スカーレット 職業:前魔王の娘、やる夫の母 説明 DIOの娘。やる夫の母。永遠のロリ。かりちゅま。 運命を操ることができるらしい。 承太郎に一目惚れして、DIOとの戦いで瀕死となった彼の看病をする。 承太郎と駆け落ちして専業主婦(という名のNEET)となる。 親バカ兼孫バカ。家出したやる夫の運命を『常に都合が良い方向にむかう』ようにしておいた 現在は極楽浄土と言う名の蛇園で孫に囲まれ絶賛カリスマ低下中 なお、やる夫と嫁のハッスルに当てられ、自分も承太郎とハッスル。やる夫の年の離れた妹であるフランドールを出産した
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DATA二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二 モチーフ:ゼノン(デビルマン) 分類:ヴィラン/悪魔/魔王 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA ニニニニニニニニニニニニニ .ヘ .′ _ ___ノ ヽ |ニニニニニニニニニニニニニニニニニ ニニニニニニニニニニニニニニ i \ | /{_)ノ (_几、 j |ニニニニニニニニニニニニニニニニニ ニニニニニニニニニニニニニ | ゝ/ j \ Lヽ く |ニニニニニニニニニニニニニニニニニ ニニニニニニニニニニニニニニ八 Y/`¨´ \ iヽ \ ヽソ. |ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ| . ヽ 〉i |! \ ト、<二 \ | |ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ∧  ̄ `|.! \ !__ __\ 及及! | ト |ニニニニニニニニニニニニニニニニニ ニニニニニニニニニニニニニニ ∧ |.! イ笈笈 `¨´ | } |! /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ ∧ 从 |! \¨´ 、 , ノ/ / ! /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ\. } | | ト ヽ  ̄ .ィ /{/ リ. /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ \ |从 |/人/个ー 个ヘ__,_ /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ ニニニニニニニニニニニニニニニ,-─-、 \, ──'´ [ 乂 ] / 人ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ ̄ ̄\ニニニニニニニニニイ/___|. /二ソ_ | § | 厂Y \ニニニニニニニニニニニニ/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |ニニニ/ ̄ ̄ ̄| ノ!Y/ i_ソ_ | § | 厂Y' \ ̄ ̄ ̄ \ニニニ| | ニ/. Y甘Y| | L i_ソ_ | § | 厂Y' \ \ニ | / `||ゝ.`` _ト、. i_ソ_ | § | 厂Y / \ 儿  ̄厂 ノ} i_ソ_| § |_厂Y /}. /  ̄ L ヘ/∨ { { || } ̄} /└、 、く_| 'く| ∨Y {_ { || } _} | !/凵 ヽ ! ヽ| { { || } } j ゝヽ  ̄ ` ーマ>t―厂 }__ 八 └>  ̄¨¨`ヽ_]. ヽ ______) } | 匚 、_\ \ // \ \/ ̄ ヽノー ン ` / ` 、 _/ _ノ \ 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA 「我が名はレミリア! 宵の暗黒を支配せし、誇り高き魔族の王である!」 9年前に発生した、ヨーツベン・シティの壊滅事件……その犯人がレミリアである。 彼女はデビルマンと同じ、魔界を治める悪魔の1人。 かつてデビルマンと共謀し、共に人間界侵略を目論んだのが彼女であり、 現在のデビルマンにとっては、倒すべき宿敵に当たる人物である。 ヨーツベン市地下の紅魔城に陣取り、666匹の悪魔を統制して、闇の奥から人間界を狙っている。 デビルマンと同じ「魔王」の称号を持つだけはあり、 幼い風貌でありながら、その知恵と力は、人間を遥かに凌駕していると言われている。 初出:やる夫JLA総合雑談スレ(2-494-584) AA出典:レミリア・スカーレット(東方Project) 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA
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加入条件 解説 能力スキル ステータス コメント 加入条件 紅魔館後半でレミリアを倒す 解説 種族:超越 吸血鬼にして紅魔館の主。陽光が苦手なため日傘無しでは外出できないが、このゲームでは普通に山登りも出来る。 物理技が大半を占めているがエナジードレインだけ魔法。敵のHPを吸収できるので、しぶとく戦い続ける事が出来る。 闇属性なのでエースパワー系の敵にも有効。レミリアには貫通技が多いため物理攻撃ながら敵マスターに攻撃可能。 しかしレミリアが仲間になる頃の敵は堅いので大して決定打にならないのが難点か。 能力 スキル 名称 系統 消費MP 範囲 属性 説明 習得条件 通常攻撃 物理 0 単体 突 レッグスルー 物理 2 単体 突 ダメージと共にスタンを与える ポールスィング 物理 6 一列 突 ダークハンド 物理 4 単体 闇 インペリアルチャージ 物理 10 貫通 突 エナジードレイン 魔法 5 単体 闇 HPを吸収する 乱れ突き 物理 8 単体 突 攻撃回数 1~5 クロスアキュート 物理 8 一列 突 ダメージと共にスタンを与える ジャイアントスロー 物理 14 貫通 突 命中率が高い ソリッドデビジョン 物理 4 単体 突 防御力を無視した攻撃 Lv52 ファイナルレター 物理 18 単体 突 ダメージと共に即死を与える ステータス Lv HP MP 攻撃 防御 魔法攻撃 魔法防御 速度 回避 1 5 10 15 20 30 40 50 382 113 174 0 144 40 62 20 60 471 130 203 0 168 40 62 20 70 564 145 230 0 191 40 62 20 80 661 160 256 0 213 40 62 20 90 99 870 184 300 0 250 40 62 20 コメント Lv80 661-160-256-0-213-40-62-20 -- 名無しさん (2013-01-04 14 51 15) Lv99 HP870 MP184 攻撃300 魔攻250 速度62 防御0 魔防40 回避20 -- 名無しさん (2013-01-04 22 45 06) 名前 コメント
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■レミリア5 ○「・・・なにやってんのレミリア」 レ「・・・咲夜に言ってよ、私が誰かと会うたびにああしてるんだから」 ○「そ、そうかじゃあどこ行こうか」 レ「久しぶりに○○の家に行きたいわね」 ○「それならタイミングよくいい紅茶の葉っぱが手に入ったんだ」 レ「あら、それは楽しみね」 ○「んじゃ行こうか」 レ「・・・・・・」 ○「・・・・・・」 咲「・・・・・・」 ○「なんで咲夜さんまで付いて来てるの?」 咲「貴方がお嬢様に(バキューン!!)や(ズキューン!?)なことをしないように見張る為よ」 レ「恋人同士なんだからいいでしょうが!」 咲「そ、そんなお嬢様は私の愛がいらないというのですか!?」 レ「変愛はいらないし少なくとも今はいらないわね」 咲「ガーン!?」orz ○(いま口でガーンって言ったぞこの人) レ「さ、ほっといて行きましょう○○」 ○「ほ、ほっといていいのか!?」 レ「い い の よ」 9スレ目 171 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○ーちょっと手伝ってくれない?」 「何ですかレミリア様・・・地下室?」 大理石かなんかの重い扉を片手で軽くあげてみせる 床をめくって現れたのは地下室への階段 「ワインセラーよ、ちょっと急にお金が必要なのよ、それで」 「ワインを売ろう、というわけですな」 地下にには結構な・・・カビくせぇorz 「このメモに書いてある名前、年号、の奴を探して頂戴、見つけても触るんじゃないわよ」 「かしこまりました」 暗い、臭い、湿っぽい気がする ~青年捜索中~ 「これで全部ね、お疲れ様」 「しかし・・・売ったらそんなにお金になるんですか?」 「2~3億ぐらいには」 しんだ、一般市民には縁のない桁でですね、あはははは 「そしてこれは・・・あなたのワインよ」 年代が書いてる・・・俺が生まれた年のワインだ 「今日は特別、私と同じ席で」 「あ、ありがとうございます」 「それじゃあ早速飲みましょうか」 つれてこられたのはレミリア様の部屋 初めて入ったが・・・まぁなんと豪華な事 「其処に座りなさい」 椅子は二つ、待っていたかのようでちょっと驚く グラスに注がれる真紅の液体、ゆらゆらと、ゆれる それを口にしたとたん、周りがゆれる、ゆれる 「ぐ・・・あ」 血を飲んだ様な気がして、体が過剰に反応してしまった 「ちょっと大丈夫!?」 「だ、大丈夫です」 そういえば血飲んでないなぁ、生きちゃ居るから問題ないんだろうけど 「・・・○○、ちょっとコッチに来なさい」 「は、はい・・・?」 レミリア様の隣へ、正確に言うと行こうとした、だ ワイングラスが割れた、幸い中身は入っていなかったので 「レ、レミリア様!?大丈夫で「怪我したわ、指の先を切ってしまったようね、うっかりだわ」 「レミリア様?」 ガラス片で怪我するなど、おかしい そして傷が治らないなんておかしい レミリア様は血の滴る人差し指を、俺に 「舐めなさい」 「へ?」 「さっさと舐めなさい、怪我したら舐めて治すのが鉄則でしょ」 わけワカメな事を、しかししょうがないし逆らいようもないのでとりあえず おそるおそる、指を、くちにふくんだ 「・・・ありがたく思いなさい、私の血液を飲めるなんて、これであなたも半人前ぐらいにはなれるでしょう」 「レ、レミリア様・・・」 「自分じゃ平気だと思ってるかもしれないけど、もうだいぶ血を飲んでいないでしょう?貴方に死なれちゃ困るわ」 「あ、ありがたいお言葉ですが・・・俺みたいなのなら居ても居なくても・・・」 普通ビンタだと思う、俺の場合グーでアッパーだった 「バカッ!彼方が、彼方じゃ無いと・・・私はいやなんだから」 「レミリア様・・・それは・・・どういう風に受け取れば宜しいのでしょうか?」 「知らないわよ!自分で考えなさい!」 そっぽ向かれてしまった、後ろからでも真っ赤なのが解るけども 後ろから抱きしめてしまいたい所だが・・・命は惜しいしなぁ・・・う~ん 「レミリア様・・・失礼します」 後ろから、そーっと抱きしめてみた 特に反撃等は無いので安全と確認 「レミリア様・・・」 「今は・・・今はレミリアでいいわ」 甘い甘い、午後の一時 特に何かするでもなく、ただずっと、ずっと抱きしめていた、それだけでも、十分 後日レミリア様(レミリアって呼んだら怒られた)になんで血を飲ませてくれたのか問うたら 「だって、私の未来の旦那様がいつまでも出来損ないじゃ困るでしょ?」 だってさ、こりゃあ・・・死なないといいなぁ俺 9スレ目 299 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○?」 「? 何でしょうか、御嬢」 「ほら、外」 「外……? あぁ、良い満月ですね」 「でしょう? 貴方がやってきた時の夜を思い出すわ」 「あの時も満月でしたか? 記憶にございませんが」 「そうだったのよ。私はよぉく覚えてるけどね」 「それは失礼。御嬢との出会いの記憶を忘れるとは、仕える者としては三流以下ですな」 「本当にね」 からかう様にレミリアは笑う。 「○○、外に出るわよ」 「どちらに?」 「庭で紅茶でも。用意しといてちょうだい」 「畏まりました」 「どうぞ」 「ありがと、○○。……咲夜のとはまた別な味ね」 「それは褒めていらっしゃるのか貶していらっしゃるのかどちらですか」 「褒めてるのよ。不味いとは言ってないでしょ」 「成程。失礼致しました」 「ねぇ、○○。貴方もどう?」 「御付き合い致しましょうか?」 「私はどう? って聞いてるの。質問を質問で返さないで」 「貴方は私の主でしょう。貴方の決定に私は全て従いますよ?」 「だから私は紅茶を飲みたいのか飲みたくないのか答えなさいと命令してるの」 「これは一本。では、折角ですし頂きます」 「血は?」 「結構です」 「私の愛は?」 「要りませ、……。御嬢?」 「愛が入れば紅茶も美味しくなるんじゃない?」 「いや、それはどうか存じませんが、愛とは」 「あぁ、言おうと思って忘れてたけど眷属になる気は無い?」 「あ、あの、御嬢?」 「更に言うの忘れてたけど、拒否権は無いわ」 「お、御じょ」 かぷ その日、一人の人間は吸血鬼になりました 館の住人に振り回されながらも執事は続けているそうです 9スレ目 372 ─────────────────────────────────────────────────────────── >レミリアの半分のデレって誰に向けられてるんだ? では、未公開レミリアデレ分をどうぞ ()内はレミリアの内心です 「遅いわね○○。 よほど死にたいのかしら」(なによ、ずっと待ってたのに○○のバカッ) 「は、も、申し訳ございません!!」 レミリア様は、その細い指で俺の胸元から首筋までつつぅ…と撫で上げた いつでも俺の首を刈り取れるその体勢に、俺の本能が警鐘を鳴らす 「それで、どんな愉快な言い訳を聞かせてくれるのかしら?」(あぁん! その表情ゾクゾクしちゃうぅぅ!) 「それが、その……先ほどパチュリー様と交戦なされたため、負傷が癒えるまで入るべきではないと咲夜様が…」 「見くびられたものだな。あの程度の傷なんともないわ」(治る前に○○に手当てさせたかったのにぃ! 咲夜のバカァ!) あぁ、恐ろしい。レミリア様がお怒りになっておられる。 俺は、ただひたすらに地面にキスするほど頭を垂れ、許しを請いた。 「まぁいい。顔を上げろ。お前のような下衆に礼儀が解るなどと思ってないわ」(かわいいっ!でも顔が見えないっ!上げさせちゃえ) 「はっ!慈悲深き御言葉、ありがとうございます」 「では、着換えを持て」(○○に選んでもらうパジャマ~♪) 最初の難関だ。 レミリア様のお気に召さないものを選んだら最後、俺の命はそこで終わりだ。 迷った末、純白のネグリジェを選びレミリア様の御覧頂く。 「ふん、変わり映えしないな。 まぁいい。 着換えさせなさい」(○○は白系が好みなのねぇ。 さて、着換えさせてね♪) 決して不快感を与えぬように、そして飽きるような時間を与えることがないように素早く 指から血が滲むほど練習した手順を踏み、お着換えいただく。 「あぁ、今日は肌着も替えなさい」(そういえば、パチュリーに焦がされたのよね。お気に入りだったのに。クスン) 「は、肌着も…でございますか?」 「何を躊躇う? 奴隷ごときに肌を見せることを躊躇う王がいるものですか 早くしなさい」(やぁん!恥かしがる○○かわいすぎっ!) 決して失礼がないように、これも手早く済ませなければならない。 ミスをする恐怖で吐き気を感じながら、素早く行なう。 「ふん、手際が悪いな」(うぅっ!手がプルプル震えてる……かわいぃぃ) 次は、いつも通りレミリア様を寝所にお運びする。 俗に言うお姫様抱っこ、という奴なのだが羽がある分コツがいる。 横には持てないので、ローゼンメイデンの真紅のような抱き方をしなければならない。 「今日は、どんな戯言を寝物語にしてくれるのかな?」(○○のお話~♪) 「き、今日はデビルマンレディーというお話をさせて頂こうと思います」 「安直な題名だな」(どきどきわくわく) ~~~ 「そこで!彼女はカッターを敵に向けて―…!」 「そ、それで!それでどうなるの??」(「はっ!安直な展開だな」<と、言っているつもり) 「レディーは神の使いに向け、カッターを放つのです! そして吸い込まれるようにその羽根を絶ち、戦いに勝利するのでありました!!」 「やっと、レディーが勝利したのねっ……!!」(「つまらん話だ。 眠気を誘う」<と、言ってるつもり) あぁ、今日も何とかご満足頂けた。 明日も、というこぁとの約束は果たせそうだ。 「ところで○○、最近小悪魔と親しくしているそうね?」(これからよ……) 「は、そ、その、それは……」 「実は最近あなたに飽きてきてね。 代わりを小悪魔にしようと思っているのよ」(う・そ・よ) 「そ、それだけは……私はどうなってもいいから彼女だけは…っ!!」 「王に指図する気か? まぁそれを望まぬなら、私に飽きられないようにしなさい」(あなたは小悪魔を通して、心から私だけの奴隷になるの。 小悪魔はあなたを縛り続ける鎖よ。なんて素敵な関係なのっ!) あぁ、こぁのために、俺はこの恐ろしい悪魔相手に生き続けなければいけないらしい。 「では、○○の忠義を試そうかな? 私に接吻してみなさい…小悪魔の前で、小悪魔にするように。 面白い余興でしょう?」(虐めるついでにキスしてもらえるなんて、最高の思いつきよね?!) 「―――……はい。仰せのままに」 俺はもう、この支配から抜け出せない。 9スレ目 999 10スレ目 46 ─────────────────────────────────────────────────────────── 深夜 紅魔館 レミリア自室 今日も彼がやって来る。 私に血を提供するために。 「失礼します」 来たわね。 ずいぶんと遅かったじゃない? 咲夜に呼ばせるまで来ないなんて。 吸血の時間だというのを忘れていたのかしら? 「申し訳ございません、主」 まあいいわ。 思えば今日が初めてね、あなたが時間内に来なかったのは。 …別に攻めているわけではないわ。 あなたにしては珍しいと思っただけよ。 「……………」 あの時からもう数ヶ月、か。 あなたも酔狂な人間ね。 望んで私に仕えたいなんて。 ただの、なんの変哲も無い人間が…呆れるわ。 「しかし、こんな私でも仕えることをあなた様は許してくださった。私にとってはそれが全てでございます」 本当に嬉しそうに言うわね。 笑顔まで浮かべて、まったく…あなたは本当に理解できないわね。 「そうですか。しかし、例え私が最期を迎えてなお主に理解されずとも、私はあなた様に仕えることができるだけで十分です」 …仕える、か。 それよりも、早く血を吸いたいのだけど。 「承知いたしました」 もう少し屈みなさい。 そう、そのくらい。 「っ……!」 んっ、ふ、ちゅぷ、ちゅう。 ぷはっ。 ふう、美味しかったわ。 でも…もしあなたが私のことをもっと恐れるようになったら、どれ程この血の旨味が増すのかしらね。 「残念ですが主、それは無いと思われます。 私はあなた様を畏れることはできても、あなた様を恐れることはできません。 私が主に吸血されるときに感じる恐怖自体は紛れも無く人間、もとい生き物としての本能です」 っ…!果たしてそうかしら? 「がっ!ある…じ…。一体…何を(怒っている?)」 あなたが本当に私自身を恐れることが無いか、ためさせてもらうのよ。 あなたはどこまで耐えられるかしら? 人間がその言葉を口にしたからには覚悟を決めなさい。 「ぐっ(痛い。さっきの吸血とは違う、乱暴な吸血だな)」 ん、んく、んく、ふ、う、ん、んぅ―――― 「あ…ぐ…(まずい、血の減りが早く感じる。意識も…朦朧として…きた)」 (おかしい、血の味が変わらない。まさか、本当に恐れていない?) (そんなはずは無い。人間なら、生きるものならば、私を…) 「(主…そんな…に、一生…懸命、俺の血を…吸われて)可愛…い」 んっ!!? ぷはっ! か、か、可愛いっ!? 何を馬鹿なことを!! 「え…?お気に…障りましたか…?」 気に障るも何も、自分が危うい状況で何をいいだすのよ! 本当にもう、あなたという人は! 「失礼しました。お気になさらずに吸血を…続けてください」 …あなたは自分の死が怖くないの? 望んで吸血されたいなんて。 「怖くないといえば嘘になります。しかし、主のお役に立てるのならば私は例え血袋や捨て駒でも構いません」 「少なくとも、それほどの覚悟で私はあなた様に仕えております」 …………。 (彼ならこういうと思っていた…) (彼が初めてここに来てから、私はずっと…) (何故、いつも私を狂わせるの?) (何故、いつも私の思い通りにならないの?) (私はこんなただの人間に…何を期待しているの?) 「?吸血なさらないのですか?」 興が削がれた。 もういいわ。 それより、二つ聞きたいことがあるの。 「はい、何でしょうか?」 あなたはどうして、私を疑わないの? 何故、私を恐れないの? 「ええと…。一つ目は単純に、私が仕えるべきお方だと認めたからです。自分が一度信じ続けると決めた者を疑いたくはありません」 「二つ目は、……もしかしたらまたお気に障るかもしれませんが、主従と言う関係以外で、あなた様が大切な存在であるからです」 っ!! それって、つまり……。 「それ以上は言えません。私と主はあくまで主従の関係。それだけは裏切れません。…やはり、さっきの言葉は取り消します」 待ちなさい。 …その言葉を今更取り消すのは許さないわ。 命令よ、さっきの言葉を取り消すのはやめなさい。 「しかし――――」 聞けないのかしら? 「…承知しました」 いい? もう一つあなたに命じるわ、一人の男としてその先の言葉を言いなさい。 敬語も使っては駄目。 これは命令よ。 「………。はい」 「俺はレミリア・スカーレット。君を愛している。当然、一人の女性として。これでよろしいでしょうか」 最後の確認の一言は要らなかったけれど、まあいいわ。 それで、何故私なのかしら? 「理屈ではありません、初めてあなた様に会い、あなた様に仕えることを望み、あなた様を見ていくうちに、少しずつこうなっていっただけです」 そう…。 「……」 ……。 …その…他に何か言うことは無いの? 「え?ええと…」 ……………。 「……………」 …ふふ 「…っふ」 気恥ずかしいだけで、やっぱり何も変わらないわね。 「そうですね」 でも、悪くないわ。 「同感です」 さて、適当に何か一つ、話をしてくれないかしら。 そうね…あの話の続きを聞きたいわ。 「承知いたしました、我が愛しき主」 と、まあそんな感じよ。 まったく、他の者に言っては駄目よ? とりあえず、あれから少し彼も積極……いや、何でもないわよ。 本当に、悪くないと思うわ。 こういう感情。 とりあえず、いつ彼を解雇しようかしら。 え?何故? いつまでも従者のままだと、彼が遠慮するでしょう? 11スレ目 136 ─────────────────────────────────────────────────────────── 紅魔館、時間は夕食時である。 「今日は私が皆さんの夕食を作りたいと思います」 目の前には美鈴さんと咲夜さん、パチュリー様と子悪魔さん、お嬢様と妹様がテーブルを囲んでいる。 美「○○さんは料理できるんですか?」 咲「美鈴、○○は私が教え込んだ執事よ。料理くらいわけないわ」 パ「まったくどういった吹き回しかしら」 子「まぁまぁ、期待しましょうよ」 レ「こらフラン、ナイフとフォークで遊ばないの」 フ「わーい! ○○の料理ー!」 いつもは咲夜さんが全員分の食事を作ってくれるのだが、今日は頑張って自分が作ると言ってみた。 美「で、○○さんは何を作るつもりなんですか?」 ○「昨日人里で買ってきたこれを使った料理を作る予定です」 咲「それは……カレー粉ね」 レ「咲夜、カレー粉って何?」 パ「外の世界の料理で"かれー"というのがあって、それを作るための香辛料の集合体よ」 ○「正解です。さすがはパチュリー様」 子「図書館には外の世界の料理本もありますからね」 フ「それって美味しいの?」 ○「様々な食材、香辛料を精密な分量で配合し煮込む事7日7ばn」 咲「要するにまいうーですわ、お嬢様」 ○「ゴシカァン」 最後の自分と咲夜さんのしめ方に違和感があったが、概ね全員に伝わったようだ。 ○「では調理に入ります」 レ「それは終わるまでにどれくらい時間がかかるわけ?」 ○「アバウト3日」 レ美子「「「ちょっ」」」 パ「むきゅー」 フ「出来るまで暇だね」 咲「○○、あなたは私達をどれだけ待たせる気?」 ○「冗談ですよ。予め煮込んでおいた物がありますから」 ~青年仕上げ中~ ○「はい、完成しました」 咲「改行6つで完成なんてお粗末ね」 ○「知識の欠如により大幅にはしょりました」 フ「ねーねー『はしょる』って何?」 レ「さぁ?」 子「うわー、いい匂いですね!」 美「まともな食事は3週間ぶりです!」 パ「……門番って辛いのね」 パチュリー様が微妙にうまいことを言った時、全員分の盛り付けが終わった。 ちなみに鶏肉カレーだ。本当は牛肉を使いたかったが、幻想郷では牛が貴重なので鶏になってしまった。 ○「はい、全員分盛り付けたんで食べてみてください」 レ「じゃあ私が代表して音頭を――」 フ「いただきまーす!」 レ「あ、こらフラン!」 フ「んぐんぐ……!」 ○「どうですか妹様?」 フ「おいしー!!○○すごいよ!!」 美「ではわたしも頂きますね」 パ「私達も食べましょうか」 子「そうですね」 レ「みんなで無視かい」 咲「お嬢様」 レ「あぁ咲夜だけよ、私を慕ってくれるのは…」 咲「これまいうー」 レ「お前もかっ!?」 結局お嬢様だけが取り残されてしまったようだ。 レ「まったく皆で私を苛めるんだか――!?」 フ「どうしたのお姉様?」 パ「もしかして辛いの苦手?」 ○「それは大変ですね。紅魔の主が辛いものが苦手とは……」 レ「そ、そんなことないわ!!」 咲「汗がすごいですけど」 レ「涙よっ! 美味しさのあまり泣いてるだけよ!!」 ……やりすぎたか? 美子フ「「「ごちそーさまでした!」」」 レ「……」 パ「まぁ中の上かしら」 咲「できればもう少しスパイスを効かせてもよかったわね」 ○「そうですか、精進します」 子「パチュリー様、食事も済んだことですし魔道書の執筆の続きを」 パ「そうだったわね。 それじゃあお先に失礼するわ」 美「私も仕事の方に戻りたいと思います」 咲「食後の睡眠は減俸よ」 美「わかってまーす」 レ「……咲夜、フランを部屋に送ってあげて。それと食後のデザートでも作って頂戴」 フ「じゃあ私がデザート作るっ!」 咲「それではご一緒に作りましょうか?」 フ「うん! ○○に負けたくないもん!」 部屋には俺とお嬢様だけが残された。なんだか空気が痛い。 「では私も食器の方を片付けに――」 「待ちなさい……」 「なんでしょう?」 「 何 を 入 れ た ? 」 「…と仰られますと?」 「さっきのカレーよ」 「他のみなさんと同じですよ。辛さ以外」 「……」 「お願いしますお願いしますそのスペルカード仕舞ってください」 「正直に真実を話しなさい」 「お嬢様のカレーのみ辛さを300倍にしてライスのほうをのガーリックライスにしました」 「やっぱりな!! 絶対ニンニク入ってると思ったわ!!」 「流石はお嬢様、良い舌をお持ちで」 「さっきので全部イかれたわよ! 私を殺す気!?」 「『紅魔のトリックスター』によるちょっとした悪戯ですよ」 「あれのどこが『ちょっとした』なのよ!! それにその二つ名なによ?」 「妹や友人、従者が平然と食べているのに自分だけ食べれないなんて威厳に関わる。そう思いながら必死に食べるご様子はとても可愛らしかったです」 「神槍『スピア・ザ・グングニル』×300」 「すごく…多いです…」 「さぁ、小便は済ませた? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」 「お嬢様、小便行って来てもいいですか?」 「却下」 「お嬢様」 「何?」 「300本まであと42本足りません」 「細かいこと気にするなっ! キリよくしたかっただけよ!」 「あ、妹様のデザートができたようですよ」 「!? ……何よ、誰も居ないじゃない、って逃げるの速っ!!」 長い長い漫才の中、一瞬の隙を衝いた○○は全力で逃亡した。 だが○○のいた場所には紙が落ちていた。 「何これ…『実はここ数ヶ月、料理に少しずつニンニク混ぜてました。慣れってすごいですね。 by 貴女の○○』。 よし、殺す」 この後紅魔館内でリアル鬼ごっこが行われた。 夜の王(本気モード)と紅魔のトリックスターによるその鬼ごっこは5時間23分にもおよび、紅魔館の3分の2が崩壊する事態となった。 今回の騒動を引き起こした執事は門の前に大量の神槍で磔にされていたと、館を修理中の門番が語っていた。 11スレ目 155 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日のレミリア様は何かおかしい。 そもそも急に夜の散歩に誘われたわけだし……更にこれだ。 「……○○」 「はいなんでしょうか?」 「な、何でもない」 「……分かりました」 何かを言おうとした止める。 これが紅魔館を離れてからもう7回繰り返されていた。 ちなみにさっきのは8回目だ。 何を言いたいのか分からないのでは対応のしようもないし、何も出来ない。 従者は主人が言いたくなるまでは待たなければならないのだ。 「○○……その……お前は私が好きなのよね?」 更に3回同じやり取りがあった後、小さな丘の上でレミリア様の言葉が変わった。 だがそんなこと聞かれるまでもない。 「勿論ですレミリア様。主人としても一人の女性としても愛しております」 「……○○。その……今だけは呼び捨てにして……良い」 「呼び捨て……ですか」 「めっ命令……だ。呼び捨てに……しろ」 妙に必死なレミリア様。 ……命令とまで言われたら断るわけにはいかないな。 「レミリア。これでよろしいですか?」 「…………」 レミリアは顔を少し赤くして無言で頷く。 というかレミリアが動かないからここで散歩は終わりということなのだろうか? 「えっと……」 「○○……私は女としての魅力には欠けるかも知れない」 え? 僕が話そうとするとレミリアは不思議なことを言ってきた。 あのプライドの高いレミリアが……。 「知識もないし……まだまだ子供だ……でも……」 「…………」 「お前を……好きだと思ってる気持ちはある」 レミリアは少し泣きそうな目で必死に話してる。 きっと恥ずかしくて仕方ないんだろうけど……僕はその必死のレミリアに何も言えなかった。 「だから!……お前が嫌じゃなければ……キッキキキ……」 「……分かりましたレミリア。もう伝わりましたよ」 ……つまりはそういうことか。 確かに普通お互いの気持ちが分かれば……一度くらいはしてても良いものだった。 でもどこか僕は嫌われるのが嫌で……控えてたのかもしれないな。 それが逆にレミリアを不安にさせてたのに……。 「○○……?」 近寄った僕を不安そうな瞳のレミリアが見上げる。 大丈夫……そんなに怖がらなくて良いですよ。 「……失礼します」 そして僕はそっとレミリアのことを抱き締め、上からその可憐な唇に自らの口を合わせた。 「ん!……ん……」 一瞬驚愕の表情になったレミリアだったが、すぐに驚きはなくなり目を閉じた。 そしてしばらく時が止まり……僕は口を離した。 「あ……」 「愛してますレミリア」 「……わた……しも……」 顔を真っ赤にして、トロンとした表情ながらもレミリアは僕の言葉に答えてくれる。 そんなレミリアを苛めてみたくて……僕はもう一度レミリアにキスをした。 「んぅ!?」 驚きに目を広げるレミリア。 そんなレミリアをもっと苛めたくなり……その唇を唇で挟む。 「ふぁ……や……」 一瞬抵抗しそうになるレミリアだが、力が入らないのか少し身動ぎしただけだった。 無論そんなことで逃げられるわけもなく、僕はレミリアの唇の味を楽しんでいた。 「はぁ……あぁ」 レミリアの吐息が色っぽくなり、僕はたまらなくなってその舌に舌を絡めた。 レミリアの唾液を舐めとるように舌を動かし、レミリアを思うがままにする。 「んん!!……ぁぁ……」 さて僕自身はまだ満足はしてないが、もう足に力が入ってなく、僕に支えられているレミリアを開放してあげようか。 もう息も絶え絶えだし……凄く可愛いしね。 「……バカ」 力が入らないのか、僕に寄りかかったままレミリアは呟く。 その頬も耳も真っ赤で……レミリアが恥ずかしがってるのが良くわかった。 「……すみません。レミリアが可愛すぎるんです」 「……バカ」 僕の言い方にもう一度レミリアは呟くとギュッと僕に抱きついた。 月の浮かぶ闇夜……僕とレミリアはただ抱き合い、幸せを感じていた……。 おまけ(後日談) 「レミリア様」 「ん?どうかしたの○○……ん!?」 僕は振り返ったレミリア様の口を奪っていた。 レミリア様は驚き離れようとするが、僕が抱きしめると逃げられなくなった。 無論僕の力ではそんなこと普通不可能なんだけど。 「んん!……んんぁ……」 僕がキスをして苛めてあげるとレミリア様は力が完全に抜けてしまうのだ。 そしてそこから僕にされるがまま……。 誰かが来たら別かもしれないけど、二人きりならば全く抵抗出来ないからな。 「バ……バカ!こんな所で……しかもいきなり」 「いきなりでも良いじゃないですか。可愛いですよレミリア」 「あ……っぅ……」 呼び捨てとキスの魔力でレミリア様は翻弄。 ちょっと変な愛の形かもしれないけど、僕もレミリア様も幸せそうだから……きっと良いんだろうな。 11スレ目 344 ─────────────────────────────────────────────────────────── それは、いきなりやってきた。 何ともなしに紅魔館の廊下を歩いていると。 「さくや~」 奥の方から、ふわんふわんな声が聞こえてきた。 いや、もうほんとふわんふわん。 「さくや~、さくや~」 声はどんどん大きくなる。どうやら俺の方へと来ているようだ。 誰が来ているのかは分かっている。 いつもはその溢れんばかりのカリスマを持ってしてこの紅く塗りたくった館の主を務める。永遠に幼き紅い月――レミリア・スカーレット。 この館のメイド長を務める十六夜咲夜さんとは互いに全幅の信頼を寄せている。 何より、彼女は吸血鬼である。紅い満月の時だと凄く調子が良いらしい。 その時に一度遭遇してしたことがあり、その時は生きている心地がしなかったのをよく覚えている。 それほど凄い。 しかし、今回のレミリアは一味違う。いや、だいぶ違う。っていうかほぼ別人。 いつものカリスマはどこへやら、その外見年齢相応の女の子へと変化してしまっている。 凶悪な程の幼さと可愛さを持つ吸血鬼――れみりゃ・すかーれっと。 同じ存在ではあるが、まるで別人のようなので、なぜかこう呼ばれているらしい。 ちなみに、レミリアがこのれみりゃになってしまう事を「れみりゃ化」と言うらしい。 何故かは、分からない。 メイドさんたちはれみりゃに会っただけで、可愛さのあまり鼻血を噴出して気絶。 咲夜さんに至っては鼻血を垂らしながら世話をしている事もあるらしい。 この紅魔館は、その鼻血によって紅くなっていった――そういう一説もあるらしく、相当な出血量である事が窺える。 「――あ、○○」 「ん?」 いつの間にか、れみりゃが俺の目の前にいた。 俺を見上げ、頭に?を出しながら首を傾げている。 彼女の後ろを見ると、メイドが全員が倒れていた。 「ねぇねぇ、さくや、しらない?」 「咲夜さん? 呼べばすぐに来るんじゃないかな?」 「よんでもきてくれないの。でもね、さくや、きっとどこかにいるの」 話してみると、普通の女の子だ。いつもの威厳が感じられない。 母を探している女の子みたいだ。向こうではよく見る光景だったけど、まさかここでも見れるとは。 咲夜さんは母親か。じゃあ父親は誰だって話になるが、今はそんな事どうだっていい。 と、服の裾を引っ張られた。れみりゃの方に倒れそうになるのを、慌てて堪える。 なんだよ、と言いかけてれみりゃの方を見ると、穢れの無い純真無垢な瞳が俺を捉えた。 「○○。いっしょにさくやさがして?」 「…………」 「○○?」 反応が無いのを怪訝に思ったのか、首を傾げられた。 れみりゃに限らず、いつもの出来事。 レミリアの時だって、咲夜さんがいない時に一緒に探して欲しい、と頼まれる時がある。半強制的にだけど。 だから、変わらないのだ。いつもとは。余裕があるときは冗談めかして断ったりするものだが。 だけど、これはやばい。断れない。 っていうか、何だ、メイドさんたちがこっち見てるのよ。鼻から血垂らしながら見てるのよ。 "断ったら殺す"ってオーラが滅茶苦茶出ている。冗談すら言える空気じゃない。 「……い、いいよ。一緒に、咲夜さんを探そうか」 「!! うんっ!」 俺が頷いた瞬間、その顔に満面の笑みが宿る。 そんなに嬉しかったのか。いつもの事なのに。 いこ、と言いながら手を握ってきた。 それだけで断らなくて良かったと思えた。 言っておくが、俺はロリコンじゃない。 「ねぇ、○○」 「ん、何?」 「さくやってね、すごいの」 「へぇ、どんな風に?」 あぁ、またこの話か。もう何度目だろう。このパターン。 ほんと、大好きだな。 で、話題の我らがメイド長、咲夜さんはどこにいるんだろう。探し回っても見当たらない。 真っ先に部屋のドア叩いたけど、返事無かったんだよな。 「○○、つかれた」 「……ん、じゃあどっかで休むか?」 「…………」 れみりゃは何も言わずに、俺の方をじーっと見つめてきた。 その瞳には、なんの感情も篭もっていない。ただ、見つめてくるだけだ。 それがかえって怖い。 なんか、失言してしまったんじゃないかと思ってしまう。 いや、今の言葉に間違いなんて、何一つ無いはずだ。 女の子が疲れたから、休むことを提案する。 実にベストアンサーではないか。もっと自信を持っていこう。 自分に自信を取り戻した所で、れみりゃの密着。 俺の足にくっついてきたかと思うと。 「……おんぶ」 「……へ?」 「おんぶして、○○」 上には上があった。俺の回答は間違ってはいない。しかし、正解でもなかった。 しかし、果たしてこのベストアンサーを自分から言ったらどうなるか。 どう考えても変態認定である。 「○○、おんぶ……」 だからと言って、言わないままでいたら、トップには立てない。 つまり、変態という不名誉な称号をもらう覚悟でこれを言うか、それとも言わずにトップの座を誰かに明け渡すか。 「○○……ぅー」 しかし、ここで逆転の発想。ここからは俺のやり方ではあるが、ベストアンサーの一つランクを下げた言葉を相手にかける。 相手はそれを良いな、と思いつつも、ここまで言ってくれる人ならきっと私がやって欲しい事言っても大丈夫! と思わせる。 完璧だ。ある意味紳士ではないか。 っていうか、何か主旨間違ってないか。まぁいいか。 「ぅー!」 れみりゃが目の前にいると思ったら突進してきた。 軽さの為か、後ろに倒れることも無く、だっこの形となってその状態は維持される。 目の前で、悪魔の羽がぱたぱたとせわしなく動いている。 これは怒っているのかもしれない。 「ごめんごめん、おんぶだっけ」 「もうこのままでいい」 どうやら俺が思考している間に、れみりゃはご機嫌ななめに。 何とか挽回しなきゃ、な。 とりあえず、頭でも撫でておく。 「ん……」 れみりゃがさらに擦り寄ってくる。 効果覿面なのかもしれない。 しばらく、そうしながら咲夜さんを探していると、れみりゃが突然口を開いた。 「○○……」 「ん?」 「だいすき」 「……ありがとう」 れみりゃの突然の告白に戸惑うことなく、不思議と穏やかな気持ちで言えた。 きっと、れみりゃの持つ別のカリスマなのだろう、と勝手に納得する事にする。 未だに見つからない咲夜さんを探していると、今度はその理由を話し始めた。 「○○、ちゃんとかまってくれるし、やさしいもん……」 「……ここの人たちの方が優しいよ」 「そんなことないもん、○○のほうがやさしいもん」 ムキになって俺を褒めてくれるれみりゃ。 かまってくれるの意味は、他の人たちは忙しくて相手をしてやれないだけなのだろう。 俺はここに居候気味で何もしていない。正直、迷惑以外の何者でも無いと思っている。 だからこそ、れみりゃの純粋なその言葉に涙が出そうになる。 「あはは、多分あれだよ。俺はみんなより弱いから、その分優しくできるのかもね」 「○○はよわいの?」 「よわいよ。れみりゃなんかよりもずっと」 この間、チルノと遭遇して数秒で意識吹っ飛んだしな。彼女は十分強いよ、俺の中では。 あれを軽々と打ち返せる人たちはおかしい。もう、なんていうかみんな最強だよ、俺の中では。 「じゃあ、れみりゃがまもってあげる」 「え?」 「れみりゃが○○のことまもってあげる」 「そっかそっか。……ありがとう」 お礼のつもりで、頭を撫でてあげる。 小さいことかもしれないけど、それが俺に出来る精一杯のお礼だった。 もうどのくらい歩いたか分からない。俺の足もそろそろ限界に近づいたとき、救世主の声が聞こえた。 『お嬢様~! どこですか、お嬢様~?』 「あ、さくやのこえ」 「やっとか……」 れみりゃが気付いたので、降ろしてあげる。 声から察するに、向こうも探し歩いていたのかもしれない。入れ違いの可能性が凄く高い。 れみりゃが咲夜さんの所へと行こうとしているのを止めて、ふと思いついた妙案をれみりゃに端的に教える。 あまり意味はないので、深く突っ込まれたらどうしようもないが、そこは流石れみりゃ。快く首を縦に振ってくれた。 「いいか、れみりゃ。俺が合図したら行くんだぞ」 「うんっ!」 咲夜さんの声が少しずつ大きくなる。目を閉じて、声の大きさから距離をある程度計算する。 よし、良いだろう。 「れみりゃ、いいよ。でも、次の合図で走るんだ」 「うんっ!」 第一段階が展開。 陰に隠れているれみりゃを咲夜さんの目に止まる様にする。 「さくや~」 「お嬢様っ!? あぁ、どこに行っていらっしゃ――」 れみりゃを見つけて、咲夜さんが走り寄る足音が聞こえる。 時間を止める事はしないらしい。これならいける! 「今だ! れみりゃGO!」 「さくや、だいすき~!」 ヒュン、という音と共にその位置かられみりゃが消えたのを確認して、陰からチラりと顔を出す。 咲夜さんの上半身にしがみ付いたれみりゃを確認。これで最後だ。 チュッ れみりゃが咲夜さんの頬に口付ける。 「――――」 一瞬の間の後、メイド長は本物の幸せを手にしたような顔で、鼻から豪雨となるほど血を噴出し、天へと召された。 だから、言ったじゃないか。特に意味はないって。 敢えて言うなら、この紅魔館をもっと紅に染めたかったこと、かな。 「○○」 数日後、レミリアが俺の部屋に来た。 横にはもちろん、咲夜さんがいる。 「――レミリアか。珍しいな、俺の部屋に来るなんて」 「えぇ、暇だから、貴方と一緒にお茶でも飲みたかったのよ」 「それは……光栄な事だな」 ベッドに寝転がっていた俺は、慌てて起き上がりながらも、口では冷静を装う。 やはり、その姿は滑稽だったのか、レミリアにはクスクスと笑われてしまった。 「やっぱり面白い。来て正解だったわ」 「それは……光栄な事だ……な?」 たまに、レミリアから褒められているのか貶されているのか分からない言葉が出てくる。 きっと褒められているのだろうと、前向きに考えるようにしてはいるが、どうしても首を傾げざるを得ない。 そんな中、お茶会の用意は既に完了されていた。 流石はメイド長。仕事の早さで言ったら、誰も勝てる者はいない。 そして、俺たちに一度頭を下げると、部屋から出て行った。 「……二人だけでお茶会か。寂しいな」 「静かな方が、良いじゃない。そっちの方がお茶の香りも楽しめるというものよ」 「確かに、そうかもしれない。でもさ、だったらいつものように一人で――」 「いつも一人じゃさすがに飽きるのよ。だから、今回は貴方の所へ来てあげたのよ」 「……そいつはどうも」 「それじゃ、始めましょう。まずは乾杯から」 「いや、それは違うだろ」 こうして小さな小さなお茶会は開かれた。 始まる寸前のあの時、俺の返しに笑ったレミリア。 その時の表情に、吸血鬼のような残酷さは無く。 年相応の少女の笑みだった。 11スレ目 351 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○は、ずっと此処にいてもいいと思っているの?」 唐突に、レミリアが声をかけてきた。 俺は外から迷い込んできた人間だ。 最初は見知らぬ世界へ来た事への戸惑いと驚き、そして不安に翻弄されっぱなしであった。 もちろん今もそうだ。異世界が存在したというだけでも驚きなのに、その上様々な妖怪を目にするのだから。 それは目の前に座る少女、レミリアも例外ではない。彼女は吸血鬼だというし、人の血も吸う。 それでも、当面は紅魔館にいる気なのだが。 俺はそのような事を何度もレミリアの前で口にしてきた。今も同じような事を伝える。 「……貴方って本当に危機感がないのね。そんな事を、正直に私の目の前で言うなんて」 「そうか?俺は素直に、思ったままの事を口にしてるだけだけど」 「ほとんどの人間は震えながら私を敬うわ。レミリア様、貴女は素晴らしいお方です、って」 「吸血鬼だしなあ……血を吸われるとでも思ってるんじゃないか?まあ、俺もやっぱり怖いが」 「だから……!そういうところが危機感がない、って言ってるのよ。そんな事を言って、普通の人間なら真っ先に血を吸われているというのに」 「へえ。じゃあ俺は、普通じゃないのか」 「……っ!!」 レミリアは立ち上がると、ドアの方へ向かう。出ていくようだった。 「―――覚えておきなさい。貴方はただの血袋。私の食料としてここに置いてあげているの。せいぜい、私へ捧げられる事への恐怖と栄誉を噛みしめながら待っている事ね」 そう言い残して、彼女は出ていってしまった。 ……去り際。レミリアの顔がほんの少しだけ赤くなっていたのは、何故だろうか。 「んー……女の子はよくわからんなぁ」 そんなだから外の世界でも朴念仁と言われていたのだが。 ……でもレミリア、悪い。さっきのような事をもう何回も言われているのに、俺はお前に血を吸われる日が来るということが、どうしても想像できない――― 廊下を小走りに進む。無性に腹が立っている。 それも、あの男のせいで―――ということが、また余計に腹立たしい。 なんで私が、あんな人間一人のために。 「………っ」 思えばなんであんな質問をしてしまったのだろうか。 『ずっと此処にいてもいいと思っているのか』 それは、あいつが決める事ではない。○○の命は私にかかっているのだから。 本当に、何故なのか。 ○○は私を敬うという事を知らない。 食料としてここに拾われてきた事も知っているのに、いつまでたっても恐怖心を見せない。 いや、吸血鬼に対しての恐怖はあるのだろうが、私個人となると少女扱いしてくるから手に負えない。 頭を撫でられた事もあった。苛立ったのでその日は館から追い出した。 いつも笑顔で笑いかけてくる。人間の分際で。あんな人間は見た事がない。 冷たくしても普通に接してくる。あの無神経さをどうにかできないのか。 私を怖がらない。私に優しくする。私を怖がらない。優しい。でも、それは嫌だ。だってそれ以上は、 「……あんなの……っ!」 あれは食料だ、それ以外に何がある! 早く血を吸ってしまえばいい、あの赤い血を全て、骨の髄まで貪りつくして、恐怖に怯える瞳を見て、私しか見えないようにして、全部、ぜんぶ、私のものに――― 「……なんで……」 ○○の事を考えると、いつもこうなってしまう。どこかおかしいのは自覚している。 体中が熱くなって、冷静な判断ができなくなって、彼の血を吸いたいと思ってしまって、でも吸えなくて、何故だか声が聞きたくなって………そして、そして、 彼の全てが欲しいと、……思って、しまうのだ。 10スレ目 377-378 ─────────────────────────────────────────────────────────── 用があって昼間にしか紅魔館に来ない人間○○ ○○を気に入ってるお嬢様はいつも「就寝時間」を過ぎても起きていようとする で、ある日テーブルで話をしている時に眠気が限界に来て、机にほっぺをつけて寝てしまう 普段の威厳を保とうとする雰囲気など無かったかのように幸せそうな寝顔をしている そんな姿に○○は思わず微笑んでしまう ・・・それからしばらくして○○は出来るだけ夕方に紅魔館に行くようになりましたとさ 11スレ目 100 ─────────────────────────────────────────────────────────── フ「えへへ、○○あったかーい・・・・・」 ○「まったく、フランは甘えん坊だなぁ・・・・」 フ「別にいいでしょ? こうしてると気持ちいいんだもん」 ○「いや、一応俺ってば君の姉の恋人なんだがねぇ・・・・・」 フ「未来のお兄ちゃんに甘えてるだけなんだから、気にしない気にしない♪」 レ「気にしなさい、というよりも今すぐ○○から離れなさいフラン!」 フ「あ、お姉様」 ○「ようレミリア、お邪魔してるぞ」 レ「○○はよく来てくれたわね、フランはどっか行きなさい」 フ「えー、やだ」 レ「・・・・・・」 ○「まあまあ、そんな妹を邪険にすることもないだろ」 レ「あなたもなに無抵抗にされるがままになってるのよ!!」 ○「だって脆弱な人間さまは強大な吸血鬼さまに勝てるわけないだろー?」 フ「そうだよねー♪」 レ「ああもう、○○は私のモノなの!フランはさっさと離れなさい!!」 フ「お姉様ってば、未来のお兄ちゃんに甘えるくらいいいでしょー?」 ○「未来の『お兄ちゃん』、なんて素晴らしい響きだ・・・・・」 レ「○○に甘えていいのは私だけなのよ! ○○も何に感動してるのよ!!」 フ「むう、いいもんお姉様のいぢわる、お姉様のいない時に甘えるからいいもん(ボソッ」 レ「ハァ、ハァ・・・・やっと行ったわね・・・・?」 ○「随分お疲れのようだなレミリア、ちゃんと寝てるのか?」 レ「・・・・・・誰のせいだと思ってるのよ?」 ○「(無視)ああ、レミリアは今日も可愛いなぁ・・・・」 レ「そ、そんなんじゃ誤魔化されないんだからね!!(////)」 ○「レミリア・・・・・・・」 レ「あ・・・・○○・・・・・」 11スレ目 310 ─────────────────────────────────────────────────────────── 負けたら何でも言う事聞く賭けに負けたレミリア様。 欲望丸出しで○○が「一日専属メイドになれ」と命令し しぶしぶ従いメイド服を着用するレミリア様てのを最近バイト中に妄想してばかりで困る 11スレ目 396 ────────────────────────────────────────────────────────── ○「今日はクリスマスイブか」 レ「明日はクリスマスね」 ○「年に一度とは言え、サンタの大仕事だな」 レ「フランにちゃんとプレゼント置いていってくれるかしらね」 ○「おや、レミリアはいらないのか?」 レ「な……っ! い、いるわけないでしょ!? 私だってもう子供じゃないのよ」 ○「フランが貰えるんだったら、レミリアが貰ってもいいんじゃないか?」 レ「いいわけないでしょう? 何度も言わせないで、私はもう子供じゃないの」 ○「はいはい、そう言う事にしておくよ」 レ「……そういう○○はどうなの? 何か、欲しい物はないの?」 ○「ん……俺は特に無いな。今でも充分だしな」 レ「今……?」 ○「レミリアといるだけで幸せなのに、これ以上何を望めと?」 レ「! ……ぅー、○○のバカ」 ○「で、もう一度聞くけど、何か欲しいものは?」 レ「……血が欲しい」 ○「血っておま……物騒だな」 レ「し、仕方ないでしょう!? 他に思いつかなかったんだから……」 ○「は、はは……貰えるといいな、B型の血」 レ「……ぅー」 咲「で、私のところに来たわけね?」 ○「お願いします。あの二人のサンタになってやってください」 咲「安心なさい、貴方に言われなくてもやるわ」 レミリアは「(○○の)血が欲しい」と言った訳だが、どうやら伝わらなかったようだ 11スレ目 426 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ね、ねぇ○○?聖夜って……吸血鬼には関係ないものよね?」 「え?……まぁ関係ないと言えば関係ないですが」 「……そうよね」 ……う~んそのまま答えただけなのに何故かレミリア様は気を落としてしまったぞ。 聖夜か……たしか幻想郷にもクリスマスあるんだよな。 ……ん?クリスマス?クリスマス……ってまさかな。 「あの……レミリア様?」 「ん?な、何かしら?」 「間違っていたら申し訳ないのですが……聖夜は恋人同士で過ごす日ですよね?もしかしてそれが関係し」 「してないしてないしてない!」 僕の言葉を遮って顔を赤くしながら首を振るレミリア様。 可愛いですけど、それじゃバレバレですよ? でも嬉しいな……そこまで考えてくれてたなんて。 「レミリア様……」 「ふぁ!?……○○?」 いきなり僕が後ろから抱き締めるとレミリア様が驚いたような声を出して縮こまった。 ふふ、怯えるレミリア様も可愛い。 「……吸血鬼が聖夜を祝ったって良いじゃないですか。そんなことに縛られるなんてレミリア様らしくないですよ?」 「…………」 僕の言葉をしっかり噛み締めるように聞いているレミリア様。 でも僕は間違ったことを言ってるつもりはない。 「僕も吸血鬼ですけど……祝いましょう?一緒に」 「……えぇ○○」 僕に体を預け、首を上げて見つめるレミリア様。 その顔はとても可愛くて……僕はそっとその額に口付けをした……。 結局紅魔館で聖夜を祝うのをどこで嗅ぎ付けたのか、魔理沙が現れ。 そのまま次々と皆さん現れると、紅魔館で宴会の流れになった。 始めにレミリア様が望んだものではなかったかもしれないけど……これはこれで良い聖夜だったと僕は思う。 ただレミリア様に一言だけ……。 レミリア様……メリークリスマス。 11スレ目 493 ─────────────────────────────────────────────────────────── 妖怪たちがうごめく闇夜の時間。 私はいつものように気ままな散歩に出かけた。 風が頬をなで、景色は次々と移ろってゆく。 その途中で、平原に何かが立っているのが見えた。 普段ならそんなものは気にも留めないだろう。 だが、そのときの私はなぜかそれに興味を抱いた。 後になって思えば、私はそいつから不思議な運命を感じ取っていたのだろうと思う。 「こんばんわ、今日もいい夜ね」 そんな言葉を投げかけ、そいつの前に降り立つ。 それは、見た感じ4~5歳であろう人間の子供だった。 彼の服は幻想郷のものとは大きく違い、彼が外から来た人間であるのは明白であった。 今までにも外から来た人間には何度か会ったことがあった。 ただ、そいつらは大抵、私の翼を見て恐れおののき、逃げるか襲いかかってくるかのどちらかだった。 しかし、その子供はそのどちらでもなかった。 私の向けた視線を真っ向から受け止めていた。 その目には何の光も宿っておらず、顔からはあらゆる表情が消えていた。 いや、まるでそんなものは元から持ち合わせていなかったかのようだ。 おもしろい人間だ。 よくよく見れば、彼の服はところどころほつれており、体には見える部分だけでもかなりのあざがあった。 この少年はどれほどの闇を味わったのだろうか。 私は口の端がつりあがるのを抑えることができなかった。 「坊や、私と一緒に来ない?」 自然とそんな言葉を口にしていた。 彼は無表情でうなずいた。 と、不意に意識が反転する。 「レミリア姉さん、こんなところで寝てたら体に毒だぞ」 目の前に無愛想な顔が現れる。 その顔は先ほどの少年と似ていて、けれど全く違う顔だった。 ああ、さっきのは夢か。 ようやく、思考が澄み渡ってきた。 「○○、咲夜はどこかしら?」 「咲夜姉さんは香霖堂へ出かけてる」 「そう」 彼の顔を見つめてみる。 顔立ちはそこそこ、最も無愛想な表情が全てを台無しにしている感はあるが。 さらに彼の瞳をのぞいてみる。 その目には、はっきりと光がやどっており、彼は今確かにここにいるのだと私の頭へ訴えかける。 「どうしたんだ、姉さん?」 「何でもないわ」 そっけなく言い、明後日の方へ向く。 時間はこうも人を変えるものなのか。 私は心の内でつい一人ごちる。 かつては何の色も見せなかった瞳が、今ではまるで虹のように色鮮やかだ。 これもここで色々な人々に囲まれて育ったせいか。 そういえば昔、誰が彼を最初に笑わせられるか、なんて賭けをしていた気がする。 誰が勝ったかは覚えていないが。 いや、変わったのは私もか。 かつての私は彼がどれほど歪に成長するかを楽しみにしていたのだから……。 しかし、私の予想は外れた。 彼は誰よりも真っ直ぐに、誰よりも馬鹿正直に育った。 そしていつしか、私の大切な弟になり、この紅魔館の一員となった。 本当に変わるものだ。 今では私はこの状況に幸せすら感じているのだから。 「○○、一つ聞いてもいいかしら?」 彼の方に向き直る。 「何だ?」 答える彼は相変わらずの無愛想。 しかし、私は知っている。 彼は私の自慢の弟で、誰よりも優しいことを。 「あなたは今、幸せかしら?」 彼の瞳をまっすぐ見つめる。 「ああ、幸せだ」 その顔はさっきと変わらなかったが、どこか朱がさしたように見える。 「俺はこの館もここに住む人たちもみんな大好きだからな」 続けて彼は語る。 「美鈴姉さんはよく昼寝して、咲夜姉さんに怒られてるけど誰よりも仕事に誇りを持ってる。 小悪魔姉さんはドジでおっちょこちょいだけど、いざってときはすっごく頼りになる。 パチュリー姉さんはいっつも引きこもってるけど、色んな話を聞かせてくれる。 咲夜姉さんは一見厳しい人に思えるけど、それは全部俺を思ってのこと。 フラン姉さんは怖く見られてるけど、実はとっても優しい。 他にもここに住んでる人たちには、皆それぞれいいところがあるって知ってる」 一旦、息を吸う。 「そして何よりレミリア姉さんは俺に居場所と家族をくれた」 彼もまた私の瞳をまっすぐ見つめる。 その顔はうっすらとだが、微笑んでいるように見えた。 「俺は色んな人たちのおかげでここにいる。だから俺は幸せだって言える」 そう言う彼の姿はどこか誇らしげだった。 「そう。それは良かったわ」 私もつい微笑みながら答える。 かつて彼と初めて会ったとき、私はこの運命を感じ取っていたのだろう。 彼が私の大切な家族となることを。 そして、私がこの満ち足りた感情を手に入れることを。 今なら言える。 私はこの世の誰よりも幸せだってことを。 12スレ目 504 うpろだ840 ─────────────────────────────────────────────────────────── 『レミリア、今日は俺の淹れた紅茶を飲まないか』 「貴方が淹れたの?珍しい」 『稀少品もちゃんと入ってるぞ。世界に2つとない代物だ』 「それは気になるわね。何を入れたのかしら?」 『お前へのありったけの愛、だよ』 「ぶーーっ!!?」 11スレ目 990 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜、居る?」 「お嬢様? どうなさいました、厨房などに来て」 「少し、ね」 どうも歯切れの悪い返答に、咲夜は首を傾げる。 「○○はいないでしょうね?」 「いませんよ。ああ、明日はバレンタインでしたね。チョコを作られるのですね?」 「声が大きいわよ」 「大丈夫です、○○さんなら図書館で読書か蔵書整理していますから」 主の微かな動揺を微笑ましく思いながら、咲夜はそう切り返した。 ○○。紅魔館の客分にして、レミリアの眷族。 元は外から落ちてきた只人の青年に過ぎなかった。 博麗神社にしばし世話になっていたこの青年を、あろうことかレミリアが気に入ってしまったのだ。 何に惹かれたのかは言語化し難いところのものだろう。 敢えて言うならば、レミリアが吸血鬼と知りながらも、どこか飄々としたというか暢気というか、そういった態度が崩れなかったから、かもしれない。 一方青年の方でもレミリアに惹かれたのか、少しずつ紅魔館に来る回数が多くなり――いつしか、公然の仲となっていた。 いつだったか、いろいろと事件があった後にレミリアの眷族になると宣言。 それからしばらくは騒動になったが、とりあえず丸く収まって、今に至る。 少し普通とは違う、中途半端――はっきり言って弱い吸血鬼ではあるが。 ちなみに○○自体は背が高いくらいで、外見については特に取り立てて言うこともなく。 (まあ、人は中身ってことかしら。妙にのんびりしてるけれど) と、咲夜はそんなことを思ってみる。いい加減失礼なのだが、本人が別に構わないという様子なのでついつい好き勝手に言ってしまう。 (それにしても、お嬢様にこんな表情させるなんてね) 罪作りな人、と胸中で微笑する。咲夜とて、○○を気に入ってないわけではないのだ。 そうでもなければ、大事なお嬢様の相手として認めるわけがない。 「咲夜?」 「いえ、少し考え事を。では作りましょうか」 簡単にトリュフでいいですね? と問うと、レミリアは意外なほど素直に頷いた。 「……○○が菓子作りが巧いのが腹立つのよね」 作りながら、レミリアはぽつりと呟いた。 「妖精メイド達にもたまに作ってやってるでしょう?」 「嫉妬ですか?」 「まさか、何でそんなことしなきゃいけないのよ」 声と反対に、表情が咲夜の言葉を肯定している。 「それでも、一番よく出来たものはお嬢様に持って行ってますよ」 「そうなの?」 「ええ。嬉しそうですね」 「そんなことないわ」 気配と表情の両方を隠せていないまま、レミリアは再び口調だけで否定した。 「あら、レミィ、珍しいわね」 「パチェこそ……って、魔理沙も一緒なのね」 「私はおまけか?」 「おまけでしょう」 あっさり会話を切って、パチュリーはレミリアの手元をのぞきこむ。 「ああ、バレンタインね」 「いいでしょ、別に」 「ほー、○○にやるのか」 「うるさい」 絡んでくる魔法使い二人をあしらう間にも、トリュフは順調に出来上がっていく。 「後は冷やしておいたらいいですわ。お疲れ様です」 「ん、ありがとう、咲夜。料理って大変なのね」 「でも、出来上がると達成感もあるでしょう?」 「……そうかもね」 「私はたまに失敗するが」 「会話を台無しにするな」 どこまでも傍若無人な魔理沙に突っ込むが、当の本人はどこ吹く風。 「ところでレミリア、知ってるか?」 「知らないわよ、魔理沙の与汰話なんて」 「そんなこと言ってていいのか? バレンタインチョコの渡し方なんだが……」 数分後、○○に一両日は厨房に近付かないよう厳命するよう咲夜に告げたレミリアは自室に戻って行った。 「……さっきの嘘でしょう?」 「ああもちろんだ」 「あっさり認めるわね貴女も」 もう伝えて来たらしい咲夜が呆れた声を上げる。 「まさか本当には……しそうか?」 「するわね」 「しますね」 「なら教えてやれよ」 自分のことを遠い棚の上に放り投げて魔理沙が呆れた。 バレンタイン当日。○○は自室で借りてきた本をパラパラめくっていた。 「厨房に入室禁止、か。僕何かやったかなあ」 料理が趣味の青年は何すると言うこともなく、だらだらと時間を過ごしていた。厨房は主に彼のテリトリーなのだ。 「無闇と掃除とかやってると、妖精メイド達が怖がるしなあ」 中途半端とは言え吸血鬼。まあ前から出入りしてたので大分慣れてはくれてるようだが。 そして立場が客分というのもまた微妙。本来彼は、館内の仕事をする必要性がないのである。 それは逆に、レミリアにとって彼の順位が高いことを意味してもいるのだが。 「○○、いる?」 「いますよー」 ベッドにだらしなく寝転がっていた○○は、ひょいと起き上がって扉を開けた。 そこには最愛の主の姿。思わず、頬が緩む。昨日あまり構ってもらえなかっただけになおさら。 「どうしました?」 「今日は何の日か知っているでしょう?」 少し考えて、ああ、と頷く。 「バレンタインでしたか。何も作ってなくてごめんなさい」 「……なんで○○が私に作るのよ」 「女性から男性というのはこの国独特の形ですよ。お菓子というのも。でもどうせだから作ってたんですよね」 「……誰か女性に?」 一瞬不機嫌になったレミリアに、○○は首を傾げる。 「うーん……みんなでチョコケーキパーティとかやってましたからねえ」 「……それってバレンタインなの?」 「それにかこつけて騒いでたって感じでしょうか」 のんびりと微笑う姿に、レミリアは一つ息をつく。とりあえず、誰か特定の女性に、ということでなくてほっとしているようだった。 「って、今はそうじゃなくて。貴方と話してるとどうも話がずれていくわね……」 「すみません」 謝ってきたが、この青年はどこまで理解しているのだろうかと、そういう表情をレミリアは浮かべていた。 ふと、○○はレミリアの持っている箱に興味を移す。それに、レミリアも気がついたようだった。 「ああ、これ? 貴方に、よ」 「僕に?」 「Happy Valentine、とでも言うのかしらね」 そして、彼の部屋にするりと入ってくる。ふと見ると、後ろに咲夜が控えていた。 「すみません、二人とも立たせっ放しで」 「いいのいいの。咲夜」 「はい」 ○○とレミリアが椅子に座る間に、紅茶を二人分淹れて、咲夜は部屋を出て行く。出て行った瞬間は見えなかった。 「開けていいですか」 「いいわよ」 頷いて開けて、中の綺麗なトリュフに少し感動を覚えてみる。美味しそうだ。しかも手作りみたいで。 「レミリアさんが?」 「ええ、そうよ。感謝なさい」 「はい、ありがとうございます」 嬉しくなって微笑むと、レミリアの白い頬が少し紅くなった。ふいと顔を逸らした後、あ、と呟く。 「待って」 「え?」 食べようとした○○の手からチョコを奪い取る。 「レミリアさん?」 「ええと、確か……」 レミリアは小さく呟くと、○○の側まで来て膝の上に乗り、トリュフを自分の口に咥える。 そして、目を閉じて彼の方を見上げてきた。 (え、と。これは) 何をしろ、と言われているのかはわかる。よくわかる。でも咄嗟に反応できない。というか出来るか。 す、とレミリアの眼が開く。早くしろ、と視線が言っている。言っている、が。 (それは、反則……) 恥ずかしいのか、顔を紅くしていて、かつ眼を潤ませている。自分の膝の上で。無意識にやっているとしたら、本当に恐ろしい。 「で、では、いただきます」 理性が持たなくなる前に、○○はレミリアのチョコを頂くことにした。その口唇と一緒に。 「ん……あ……」 「……御馳走様です。ん、美味しいですよ」 口唇まで存分に味わって、○○はそう評した。そして、ん、と気が付く。 「何か入れました?」 「ああ、私の血を少し」 「なるほど、それは余計に美味しいはずですね」 「……真正面から言われると恥ずかしいわね」 顔を紅くして眼を逸らすレミリアは可愛くて、思わず微笑んでしまう。 「まだ、もらっていいですか?」 「ええ、いくらでも」 再び咥えたレミリアを、抱き寄せるようにしてチョコを頂く。 今年のチョコは、かなり甘いものになりそうだ。 「ところで、どうしてこんなことを?」 「え? 魔理沙がこうして渡すものだって言ってたけど」 「…………信じたんですね。可愛かったし、美味しかったから僕としては大満足なんですけれど」 「……? …………!」 12スレ目 966 うpろだ921 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜、○○は部屋にいる?」 「いけませんよ」 紅魔館当主である私の問いに、 忠実なメイド長からはかみ合わない答が返ってきた。 「何を言っているのかしら」 「また○○の血をお吸いになるのでしょう? 近頃多すぎますよお嬢様」 外から流れてきたのを気まぐれで拾った○○は、 冴えない男だと言われながらもその実好意的に、 紅魔館の住民として受け入れられている。 が、そんなことはどうでもいい。 ふと気が向いて吸ってみた○○の血は 私にとって非常に美味だった。 「……偏った食生活はお身体に障りますわ。 ○○の血を吸うのでしたら、今日のおやつは抜きですからね」 そう言って、咲夜は部屋を出て行った。 ―やめろと言われてやめられる味ではない。 だが、時には臣下の顔を立ててやることも、 カリスマを保つためには必要だ。 ……決して、おやつ抜きが嫌なわけではない。 「そうだわ」 チョコレートを食べ過ぎると、鼻血が出ると聞いたことがある。 折りしも今日はバレンタインデーだ。 『○○、チョコレートをやろう』 『ありがとうございます、レミリア様。 ……すみません、鼻血が』 『情けないわね。 仕方ない。その血、私に捧げなさい』 ……完璧だ。 吸血するのではなく、「やむをえず」○○の血を口にする。 咲夜にも文句は言わせない。 「○○、入るわよ」 ドアを開け、中に入る。 簡素な部屋だ。 ちょうど○○は部屋にいて、ベッドに腰掛けて本を読んでいた。 「あ、レミリア様。どうなさいました?」 「日頃私と紅魔館のためによく働いているお前を 労ってやろうと思ってね。これをあげるわ」 パチェの実験室でこっそり作ってきた 巨大なハート型のチョコを取り出す。 「これは……バレンタインの?」 ○○は、予想以上に喜んでいるようだった。 「ありがとうございます……大事に少しずつ食べます」 私は慌てた。少しずつ食べられては意味がない。 「今食べなさい」 「え?……全部、ですか?」 「そうよ。私の言うことが聞けないというの?」 「いえ、そのようなことは」 ○○は端からチョコレートを食べ始めた。 ハート型の1/4ほどがなくなった。 ○○は、まだ一向に鼻血を出す気配がない。 「……まだか」 「……急いで食べた方がよろしいですか?」 「そういう意味ではない!」 ついに私は痺れを切らした。 「ええい、まだ鼻血を出さないのか!」 ○○はぽかんと口を開けていたが、 やがて食べかけのチョコをベッドの脇にあったテーブルの上に置いた。 居住まいを正し、口の端のチョコを拭うと 落ち着き払っていった。 「レミリア様。それは迷信です」 「……何?」 「ですから、チョコレートと鼻血に因果関係はありません。 全くの俗説です」 頬が赤く染まる。……これでは、私はただの⑨ではないか。 「……○○。お前今、私を見下げていただろう」 「いいえ!決してそんな」 「うるさい!!」 乱暴に、○○をベッドに押し倒す。 「○○。私は、私を恐れる人間の血しか飲まないわ。 自らを恐れる人間の儚い命を吸うことで、 私達吸血鬼は永遠に君臨する夜の王でいられるのよ」 ○○が私を愚か者として侮る。 私を恐れなくなる。 そうなれば、私は○○の血を飲むわけにはいかなくなる。 「だから、○○」 至上の美味を失うことになるという、それ以上に。 「例え私が、全てを失ったとしても」 もはや血を吸う相手たりえなくなった○○との 繋がりがなくなってしまうことを考えると、 何故だかひどく怖くなった。 だから、 「―お前は、お前だけは、ずっと私を恐れ続けろ」 私は、いつもより力を込めて○○の首筋に牙を立てた。 勢いよく○○の血を吸い取ったが、 例によって、あまりたくさんは飲めない。 だが、紅く、熱く、甘いそれは私の焦燥を確実に癒していった。 「……レミリア、様」 ○○の腕が、背中に回される。 急に血を失ったせいか、弱々しい力の腕を 私はなぜか振り払う気になれなかった。 「ご心配には、及びません。 初めてお会いしたときからずっと、 この命が尽きたとしても」 かすかに、○○は微笑んだ。 「私はレミリア様を畏れ、敬い ……心から、お慕い申し上げます」 私はベッドから降り、○○に背を向けた。 「……そうか」 せいぜい威厳を保ったつもりだったが、 安堵と喜びは隠せなかったと思う。 「さて。私は部屋に戻るわ」 当初の目的は一応達成できたし、 俗説でなかったとしてもこれ以上チョコを 無理に食べさせる理由はない。 「残りはせいぜい大事に食べなさい。 ああ、来月には三倍返しを忘れないようにね」 からかい半分で言ったのだが、 ○○は面白いくらい困惑した表情を見せた。 「三倍、ですか… …私には差し上げられるようなものもありませんし、 普段の三倍血を吸っていただくぐらいしか……」 その答えに、私は思わず笑ってしまった。 「○○……そんなに血を吸ったら、 私は貴方を眷属に加えなければならなくなるわよ?」 「!!……す、すみません。 出過ぎたことを」 顔を真っ赤にしてうろたえる○○。 だが私は、それも悪くないと思い始めていた。 「そうね。私への畏敬の念を抱いたまま、 一方で私の伴侶として恥ずかしくないところまで 力をつけねばならないのだもの。 たったの一ヶ月でなんて、思い上がりも甚だしいわ」 「……レミリア様、それは」 「あまり私を待たせないように、精進することね」 ドアを開け、部屋を出る。 「……はい!」 後ろで○○が、力いっぱい返事をするのが聞こえた。 「さてお嬢様。何かおっしゃることはございますか?」 「……咲夜」 ドアの外には咲夜が立っていた。 当初の予定では押し切れるはずだったが、 結局普段どおりに血を吸ってしまったので 何も言い返せない。 「お約束どおり、お嬢様の分のおやつは パチュリー様と妹様にお分けしますね」 「ちょ、咲夜待ちなさい!」 歩いていく咲夜を追いかける。 「……ご心配なさらずとも、 ○○だけと言わず、私も最後まで お嬢様の側にお仕えいたしますわ」 咲夜は立ち止まると、そんなことを言ってきた。 「……ずいぶんしっかりと部屋の中の話を 聞いていたものね、咲夜?」 嬉しいことを言ってくれるが、 全く油断のならないメイドだ。 「差し当たり、○○を鍛えなければなりませんね」 「ええ、よろしく頼むわ。 ……それにしても本当にしっかり聞いてるわね」 今なら何となくわかるが、 ○○の血が美味だったのは、 私への恐れだけでなく、思慕の気持ちが 流れていたからなのだと思う。 私が○○の血を吸いたくなったのも、 どこかで彼に惹かれていたからなのだろう。 同族同士の愛情表現として互いの血を吸い合う分には、 吸血鬼の威厳は問題にならない。 いつになるかわからないが、○○には 早く美味しい人間から 美味しい旦那様に昇格してもらいたいものだ。 12スレ目 968 うpろだ923 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「お嬢様、今日の御昼食です」 「そう」 最近、紅魔館における食事事情がかなり改善されたきた。 というのは、外から来たある人間が調理主任に就いたからである。 最初は、その男のことを他の人間と同じように単なる食糧程度にしか思っていなかった。 それが変わったのは、私が気まぐれに彼に外の料理を作らせたときだ。 元々、料理人だったという彼の料理には、非の打ちどころがなかった。 味や見た目は文句なかったし、何より私の高貴であるべしという矜持を満たしてくれた。 そう、文句はない。たまに運ばれるこういうものを除いては……。 「今日は何の料理かしら?」 「○○曰く、外の世界にあるものだと……」 私は、咲夜の運んだきた料理へ目をやった。 金細工の施されたランチプレート。館のように真っ赤で、山型に盛られたチキンライス。 ハンバーグ、ポテト、ナポリタン、デザートにはプリンまで付いていた。 そして何より、目を引くのがライスの頂上に立てられた小さな旗。 その料理を、私は外の世界の本で目にした気がした。 「……咲夜、この料理の名前は?」 「私には存じかねます」 この料理の名前は……確か……。 そう、あれだ! ……。 あの男、無自覚でやってるのか? 「咲夜、○○を今すぐここに連れて来なさい」 「かしこまりました」 「で、これはどういうことかしら?」 「どういうこと、と申されますと?」 白い調理服に身をつつんだ○○が私の前に立つ。 「だから、この料「あ、○○だー」」 私の言葉を遮る形で、フランが部屋に入ってきた。 「○○、さっきのごはんおいしかったよ。それに、この旗もかっこいいし!」 「お褒めに預かり、光栄です」 私そっちのけで、会話を進める二人。 「ああ、もう! とにかく、次からはもっとちゃんとしたのを作りなさい!」 私はカッとなり、立てられた小さな旗を○○に投げつけた。 次の日 私は、咲夜の運んだきた料理へ目をやった。 金細工の施されたランチプレート。山型に盛られたチャーハン。ハ(ry 「これはどういうことかしら?」 「日本国旗はお気に召さなかったようなので、アメリカ国旗に……」 「そういうこと言ってんじゃないわよ!」 私は○○を思い切り殴り付けた。 その日から、調理主任が長期休暇を取ることになったのは言うまでもない。 これが後に起こる、第一次紅魔館食糧危機の始まりとなる、お子様ランチ事件の全貌である。 13スレ目 276 うpろだ965 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、何してるの?」 珍しく○○の部屋に遊びに来ていたレミリアが、○○が耳に細い棒のようなものを入れているのを不思議そうに見ていた。 「ああ、これですか? 耳かきですよ。里で見付けたんです」 「耳かき?」 「耳掃除するとき使うんです。耳は垢がたまりやすいですから」 懐紙に耳垢をまとめて捨てながら、○○は首を傾げる。 「レミリアさんのもしましょうか?」 「え?」 「人にやってもらうと綺麗に掃除できるんですよ。それに、興味あるんでしょう?」 ベッドに座って、○○は膝をポンポンと叩いた。 「そ、そんなことはないけど……そこまで言うならさせてあげるわ」 羽だけを楽しそうにはためかせながら、レミリアが膝に頭を乗せる。落ち着く体勢になるのを待って、○○が手を伸ばした。 「では失礼して」 「……ひゃうっ!?」 声に驚いて、○○は耳に触れた手を離す。 「びっくりした……」 「それは僕のセリフですよ……続けて大丈夫ですか?」 どうもくすぐったいようだ。下手に動かれると危ない気がする。 「だ、大丈夫よ。続けなさい」 「わかりました……でも、危ないから動かないでくださいね。手元が狂うと怪我しますし」 「大丈夫よ、すぐに治るのはわかってるでしょう?」 「それは身をもって。でもそういう問題じゃないです。レミリアさんを傷付けるのが嫌なんですから」 「……わかったわ」 少しの空白の後、レミリアはそう頷いた。そういうことをさらりと言うなとか何とか聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかったのであえて訊かない。 とはいえ、耳に触れるとビクリと震えるため、危なくて仕方がない。 「耳かき、中に入れられないですよ」 「し、仕方がないじゃない」 「うーん、では失礼します」 ○○は片手でレミリアの肩を押さえ付けた。これなら安定する。 「さ、これなら大丈夫でしょう。続けますよー」 「……何だか楽しそうね」 さてどうしたものか。 ようやく耳掃除をしながら、○○は困惑した表情を浮かべていた。 無事に始められたまでは良かったのだが―― 「ん……ひゃ……」 くすぐったいのが我慢できないのか、レミリアが微かに震えながら、小さく声をあげているのだった。 身をよじるのは何とか身体を押さえて止めてはいるが、何だかこのままではいろいろな意味でまずい気がする。 「痛くないですか?」 「それは、大丈夫……ん」 他愛も無い会話でもしていないと、何だか自分がやましいことでもしているかのような錯覚に陥ってしまう。 いや、会話していてもどうかという話なのだが。 「あ」 少し陰になって見えないので、身体を押さえていた手を離して耳に触れる。 「ん……っ!」 「ちょっとじっとしていてくださいねー」 びく、と身体が震えるのが大きくなったが、大人しくじっとしている。丁度いいので、このまま掃除してしまおう。 誰かの耳掃除というのはそう経験はなかったが、なかなか面白いものなのだ。 「いっ……」 「すみません、ちょっと我慢しててください」 「う、ん……んん」 「はい、取れましたー」 懐紙に取って、ふむ、と○○は呟く。そろそろこちらはいいかもしれない。 「ん……終わり?」 「こちら側は終わりです。次は反対側をしましょうか」 「ま、まだやるの?」 少し息が荒いまま紅い顔を向けたレミリアに、○○は笑顔を向ける。 「片方だけだと気持ち悪いでしょう?」 「……まあ、そうだけど」 「だから、はい、反対側」 「…………楽しんでるわね?」 「いえいえそんなことは」 まったく誤魔化す気の無い返答に、レミリアは微かに涙目になった目で上目遣いに睨みながら、一言だけ言った。 「後で覚えてなさいよ……」 逆側の耳に触れるときにも身体をびくと震わせたが、諦めたのか慣れたのか、時折震えながらもレミリアは○○の成すがままになっている。 (……とか言うとものすごく変なことしてるみたいだけど) そう心に思いながら、掃除を始める。 「ん……ん」 「痛かったら痛いって言ってくださいね」 「……うん」 こちらに顔を向けているが表情は見えない。それでも何となく可愛らしくて、○○は顔を綻ばせた。 「……何、ん、笑ってるのよ」 「いや、可愛いなと思いまして」 「……そういうこと、さらりと言わない」 さらに紅くなったのだろう顔を○○に擦り寄るように伏せて、レミリアは○○の服を握った。 「こっちはくすぐったいんだから、早く終らせなさい」 「はいはい」 大人しいうちに、○○は手早く掃除を続けていく。時折漏れる声を少しばかり楽しみながら。 「んー、何だかすっきりした気がするわ」 「でしょう? 気持ちいいものですよ、耳掃除って」 「ちょっとくすぐったかったけどね」 くすくすと笑いながら、だが機嫌は悪くないようで、○○は安堵する。 「またしてあげましょうか?」 「そうね、また気が向いたら」 膝の上で横になったまま、レミリアは○○を見上げた。 「どうしてあんなに楽しそうだったの?」 「いやだって可愛かったですし。それに」 「ひゃ!?」 「耳が敏感だなんて知りませんでしたしね。新たな発見です」 レミリアの耳を、つっ、と指でなぞって、○○は楽しそうに笑う。 「……っ……」 びくっとなった後、レミリアは○○を睨み上げ、そして、えいとばかりに手を跳ね除けて起き上がった。 「貴方が横になりなさい」 「はい?」 「私が耳掃除するから、貴方が横になるの」 「でも、僕さっきまでやってましたが……」 「いいから! やられっぱなしは気に喰わないの。さっさと横になりなさい」 言われるままされるがままに、○○はレミリアの膝の上に頭を乗せる。さっきとは逆の体勢だ。 「……レミリアさん、やったことは?」 「ないわよ。でも今されたばかりだからわかるわ」 「……では、お願いします」 一抹の不安を抱えながら、○○はレミリアが気が済むまで大人しくしていることにした。 後日、図書館にて。修行の休憩中の会話。 「……それで、どうだったの?」 「は? 何がですか?」 「耳掃除。レミィにしてもらってたって聞いたけど。レミィが誰かに何かするなんて珍しいから」 「……あのときほど、自分が吸血鬼になってよかったと思ったことはありませんでしたね……まあ、悪くなかったというかむしろ良くはあったんですが」 「……そう。仲が良さそうで何よりね」 うpろだ1020 ───────────────────────────────────────────────────────────
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「○○、何してるの?」 珍しく○○の部屋に遊びに来ていたレミリアが、○○が耳に細い棒のようなものを入れているのを不思議そうに見ていた。 「ああ、これですか? 耳かきですよ。里で見付けたんです」 「耳かき?」 「耳掃除するとき使うんです。耳は垢がたまりやすいですから」 懐紙に耳垢をまとめて捨てながら、○○は首を傾げる。 「レミリアさんのもしましょうか?」 「え?」 「人にやってもらうと綺麗に掃除できるんですよ。それに、興味あるんでしょう?」 ベッドに座って、○○は膝をポンポンと叩いた。 「そ、そんなことはないけど……そこまで言うならさせてあげるわ」 羽だけを楽しそうにはためかせながら、レミリアが膝に頭を乗せる。落ち着く体勢になるのを待って、○○が手を伸ばした。 「では失礼して」 「……ひゃうっ!?」 声に驚いて、○○は耳に触れた手を離す。 「びっくりした……」 「それは僕のセリフですよ……続けて大丈夫ですか?」 どうもくすぐったいようだ。下手に動かれると危ない気がする。 「だ、大丈夫よ。続けなさい」 「わかりました……でも、危ないから動かないでくださいね。手元が狂うと怪我しますし」 「大丈夫よ、すぐに治るのはわかってるでしょう?」 「それは身をもって。でもそういう問題じゃないです。レミリアさんを傷付けるのが嫌なんですから」 「……わかったわ」 少しの空白の後、レミリアはそう頷いた。そういうことをさらりと言うなとか何とか聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかったのであえて訊かない。 とはいえ、耳に触れるとビクリと震えるため、危なくて仕方がない。 「耳かき、中に入れられないですよ」 「し、仕方がないじゃない」 「うーん、では失礼します」 ○○は片手でレミリアの肩を押さえ付けた。これなら安定する。 「さ、これなら大丈夫でしょう。続けますよー」 「……何だか楽しそうね」 さてどうしたものか。 ようやく耳掃除をしながら、○○は困惑した表情を浮かべていた。 無事に始められたまでは良かったのだが―― 「ん……ひゃ……」 くすぐったいのが我慢できないのか、レミリアが微かに震えながら、小さく声をあげているのだった。 身をよじるのは何とか身体を押さえて止めてはいるが、何だかこのままではいろいろな意味でまずい気がする。 「痛くないですか?」 「それは、大丈夫……ん」 他愛も無い会話でもしていないと、何だか自分がやましいことでもしているかのような錯覚に陥ってしまう。 いや、会話していてもどうかという話なのだが。 「あ」 少し陰になって見えないので、身体を押さえていた手を離して耳に触れる。 「ん……っ!」 「ちょっとじっとしていてくださいねー」 びく、と身体が震えるのが大きくなったが、大人しくじっとしている。丁度いいので、このまま掃除してしまおう。 誰かの耳掃除というのはそう経験はなかったが、なかなか面白いものなのだ。 「いっ……」 「すみません、ちょっと我慢しててください」 「う、ん……んん」 「はい、取れましたー」 懐紙に取って、ふむ、と○○は呟く。そろそろこちらはいいかもしれない。 「ん……終わり?」 「こちら側は終わりです。次は反対側をしましょうか」 「ま、まだやるの?」 少し息が荒いまま紅い顔を向けたレミリアに、○○は笑顔を向ける。 「片方だけだと気持ち悪いでしょう?」 「……まあ、そうだけど」 「だから、はい、反対側」 「…………楽しんでるわね?」 「いえいえそんなことは」 まったく誤魔化す気の無い返答に、レミリアは微かに涙目になった目で上目遣いに睨みながら、一言だけ言った。 「後で覚えてなさいよ……」 逆側の耳に触れるときにも身体をびくと震わせたが、諦めたのか慣れたのか、時折震えながらもレミリアは○○の成すがままになっている。 (……とか言うとものすごく変なことしてるみたいだけど) そう心に思いながら、掃除を始める。 「ん……ん」 「痛かったら痛いって言ってくださいね」 「……うん」 こちらに顔を向けているが表情は見えない。それでも何となく可愛らしくて、○○は顔を綻ばせた。 「……何、ん、笑ってるのよ」 「いや、可愛いなと思いまして」 「……そういうこと、さらりと言わない」 さらに紅くなったのだろう顔を○○に擦り寄るように伏せて、レミリアは○○の服を握った。 「こっちはくすぐったいんだから、早く終らせなさい」 「はいはい」 大人しいうちに、○○は手早く掃除を続けていく。時折漏れる声を少しばかり楽しみながら。 「んー、何だかすっきりした気がするわ」 「でしょう? 気持ちいいものですよ、耳掃除って」 「ちょっとくすぐったかったけどね」 くすくすと笑いながら、だが機嫌は悪くないようで、○○は安堵する。 「またしてあげましょうか?」 「そうね、また気が向いたら」 膝の上で横になったまま、レミリアは○○を見上げた。 「どうしてあんなに楽しそうだったの?」 「いやだって可愛かったですし。それに」 「ひゃ!?」 「耳が敏感だなんて知りませんでしたしね。新たな発見です」 レミリアの耳を、つっ、と指でなぞって、○○は楽しそうに笑う。 「……っ……」 びくっとなった後、レミリアは○○を睨み上げ、そして、えいとばかりに手を跳ね除けて起き上がった。 「貴方が横になりなさい」 「はい?」 「私が耳掃除するから、貴方が横になるの」 「でも、僕さっきまでやってましたが……」 「いいから! やられっぱなしは気に喰わないの。さっさと横になりなさい」 言われるままされるがままに、○○はレミリアの膝の上に頭を乗せる。さっきとは逆の体勢だ。 「……レミリアさん、やったことは?」 「ないわよ。でも今されたばかりだからわかるわ」 「……では、お願いします」 一抹の不安を抱えながら、○○はレミリアが気が済むまで大人しくしていることにした。 後日、図書館にて。修行の休憩中の会話。 「……それで、どうだったの?」 「は? 何がですか?」 「耳掃除。レミィにしてもらってたって聞いたけど。レミィが誰かに何かするなんて珍しいから」 「……あのときほど、自分が吸血鬼になってよかったと思ったことはありませんでしたね……まあ、悪くなかったというかむしろ良くはあったんですが」 「……そう。仲が良さそうで何よりね」 うpろだ1020 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、今日も後でするわよ」 「いいですけど、随分楽しそうですねえ」 「楽しいもの。慣れてきたしね」 「それは僥幸。もう血を見るのは勘弁ですからね?」 「し、仕方ないじゃない、初めてしたんだから」 「……会話だけだと、かなり妖しいこと言ってるわよ、二人とも」 呆れた声で、パチュリーが話に加わった。午後の紅茶の時間、紅魔館のティールームのいつもの光景である。 「ん? パチェにも耳掃除してあげようか?」 「遠慮しておくわ。危険には近付かない主義だもの」 「むー、そんなことないわよ。ねえ、○○?」 「向上の後は見られる、とだけは」 「それはどういうことよ?」 問いには答えず、○○は紅茶をすすった。 「○○さんの部屋からたまに悲鳴が聞こえてたとか聞いたけど」 「最近はわりと大丈夫ですよ。鼓膜の被害もなくなりましたし」 「そこまで酷くはないわよ」 「最初は今までに体験したことのない恐怖を味わいましたけどね?」 楽しそうにからかう○○を、レミリアが軽く睨んだ。 「随分と意地悪を言うのね」 「いえいえそんなことは」 「じゃれあうのもいいけど、私達がいるのも忘れないようにね?」 レミリアがいつの間にやら○○の膝の上に座を移しているのを見て、パチュリーがさらに呆れながら咲夜と頷きを交わした。 「妖精メイド達の噂になっていましたよ。何やら声が聞こえてきていたと。そのメイド達は当然嗜めましたが」 「あら、別に後ろ暗いことをしてるわけじゃないわよ?」 くすくすとレミリアは笑う。 「妖精メイド達にも勧めたらどうかしら」 「今以上に仕事をしなくなりますよ?」 「んー、確かに楽しいものねえ」 「そんなに頻繁にやるものでもないはずなんですけどね」 どこか呆れたような微苦笑で○○が相槌を入れた。 「レミィが楽しんでいるんだからいいんじゃないかしら。 それに、レミィがそんなに楽しそうにしてることにも興味はあるわ」 「あ、やっぱりパチェもやる?」 「レミィにされるのは怖いから、するなら○○さんにしてもらおうかしら」 「それは駄目。○○がしていいのは私だけだもの」 「はいはい」 呆れたような微笑みでパチュリーは親友の言葉に頷いた。 「……レミリアさんは、この前咲夜さんにもしてもらってませんでした?」 「私はいいの」 「じゃあ咲夜に」 「かしこまりました」 「むー、私は駄目なわけ?」 「○○さんに太鼓判押されるようになってからにして頂戴」 そんなこんなで、紅魔館はひそやかな耳掃除ブームになっていたのだった。 そして事の発端達は―― 「○○ー」 「はいはい」 呼ばれて、○○はベッドに腰掛けているレミリアの膝に頭を乗せた。 本来なら喜ぶべき状況であるはずなのだが、どうも反射的に身構えてしまう。身構えたところでガード不可だが。 「そんなに警戒しなくてもいいじゃない」 「いや、反射で」 「大丈夫よ、今日は怪我させないから」 羽がパタパタと動いていて、機嫌がいいのがよくわかる。 「それでは、お願いします」 ○○は観念することにした。というか、それ以外そもそも選択肢は残されていなかったが。 ――が、意外に上達していたらしい。 「あー、上手になりましたね」 「気持ちいい?」 「そうですねー。気持ちいいです」 痒いところに手が届く、というのか、それとも以前に慣れてしまっていたからそう思うのか。 ともかく、怪我もなく順調である。それが当然の姿であるとも思うが。 「私も、こういうのが気持ちいいってわかったから」 「はい」 「○○も気持ちいいといいな、くらいは思ってるんだから」 「ありがとうございます」 素直に礼を言って、とりあえず身を任せることにする。うん、思わずうとうとしてしまいそうなほど気持ちが良い。 「……寝ると危ないわよ?」 「ん、ああ、すみません」 「それで怪我しても私の所為じゃないからね」 「はい、ごめんなさい」 そう会話しながら両耳の掃除を終え、○○は起き上がって照れくさそうに笑った。 「いや、すみません、気持ちよくてつい」 「それは嬉しいけど」 言いながら、レミリアは勝手に○○の膝の上に横になった。 「ふふ、でもようやく一矢報いた気分だわ」 「報いる、って、耳掃除は勝負じゃないですよ」 「でも……ん、だって、私ばかりだったもの」 耳に触れられるとくすぐったさそうにしながら、レミリアはくすくす微笑う。 「いつも○○には痛い思いさせてたみたいだし……ん」 「そんなに気にしなくても良いのに」 「それは嫌なの」 甘えたような拗ねた言葉が可愛らしい。口に出すと怒られるので声にはしないが。 「んー……でも、○○にやってもらうのが気持ち良いわね」 「そうですか?」 「ええ、咲夜にもしてもらったのも気持ち良かったけれど、やっぱり○○が良いわ」 「光栄です。はい、反対側」 何と応じたものかと悩みながら、とりあえずそう返す。 「ん……でも、慣れない、わね」 「どうしました?」 「くすぐったいのよ、まだ。そろそろ慣れるかなって思ってる、のに。○○に触られるのが、くすぐったくて」 確かに耳に触れると、まだびくりとしたり、目をぎゅっと閉じたりしている。 「むしろ、何だか、ん、どんどんくすぐったくなってきてる、気も、するのよね」 「……あまり喋ってると危ないですよ」 その発言はいろいろヤバいと思いながら、常識的なことだけを口にする。 「あら、どうして?」 「わかってて言ってませんか?」 悪戯っぽい声を出してきたので、一時中断して耳をなぞって仕返しをすることにした。 「……んっ、だから、くすぐったいってば」 「変なこと言うからです」 「……随分意地悪になったわね」 「レミリアさんの扱いは慣れてきたつもりですが」 「…………貴方こそ、わかってて言ってるでしょう?」 「いえいえそんなことは」 しれっと白々しい声を出してみたが、一瞬だけかなり強く頬を引っ張られ、相当痛い思いをすることになった。 「ところで、どうして僕は誰かにしちゃ駄目なんですか?」 「当たり前じゃないの、○○がしていいのは私だけ、○○にしていいのも、ね」 ○○の膝の上に座って、半ば振り返りながらレミリアは言う。 「○○は私のものだから。例えパチェや咲夜でも駄目」 「……それは、もしかして、妬いてくれてたりします?」 「煩い」 ぷい、と顔を背けてしまうが、少し耳が紅くなっている様子が見えた。思わず、頬が緩む。 「何、にやにやしてるのよ」 「いや、可愛いなあって」 「だから煩い」 レミリアは怒ったように言って、○○の方に向き直った。 「あまり減らず口を叩くなら……」 「……っ」 急に口唇を塞がれて、○○は驚く。口唇が離れる頃には、レミリアは○○の上で楽しげな笑みを浮かべていた。 「塞ぐわよ、こうやって」 「……もう、やってるじゃないですか」 「私が主だ、っていうこと忘れてるみたいだから。しっかり教えないと、ね」 何だか理不尽な気がするが、それでも○○は両手を挙げた。そもそも最愛の人に勝てるわけが無い。 「好きにしてください」 「よろしい」 「ですが、後ろ暗いことはしないんじゃなかったんですか?」 「あら、何も後ろ暗いことなんかないわよ」 恋人同士なんだから、と言って、レミリアはもう一度○○に口付けた。 うpろだ1061 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ふぃ~、生き返るぜ~」 守矢神社の方々が運営している温泉に入りながら俺はそう独り言をいう。 文々。新聞にも載っていたがここの一番の目玉である日替わり露天風呂。 天然温泉であるにもかかわらず日毎に産出地を変えている。しかもその管理は諏訪子様がしているらしい。 諏訪子様が神であることを改めて感じさせられる。ちなみに今日は群馬の老神温泉らしい。 ちゃぽん ふむ、誰か入ってきたらしい。かなりの湯気でぼんやりとした人影しか見えないが邪魔になるといけない。 俺は真ん中でぷかぷかと浮かぶのをやめると端の方に移動した。 ゆっくりと進んでくるぼーっと見ているとそこに一陣の風が吹き―― 一糸纏わぬレミリアがそこにいた。 「れれれれっ、れみりゃっ!?」 「なによ、その言い方。私はそんな変な名前じゃないわよ」 ざぶざぶと水面を掻き分けてこっちに近づいてくる。 「ちょっ!? なんでこっち近づいてくるのっ!? こんなに広いんだから他の場所に行った方がいいかと!」 「こんだけ広いのに○○しかいないから側にいくのよ」 「さいですか。でも吸血鬼が温泉入って大丈夫なの?」 「流水じゃないから別になんのは問題ないわ」 「あとちゃんとタオルで隠してください。胸とかあそことか」 「あら、私は○○に見られても別にかまわないわ」 そのまま俺の横にちょこんとレミリアは腰掛けてしまった。 うう、目のやり場に困る。澄ました横顔、なだらかな胸丘や、まだ産毛も「そこまでよ!」おおぅパッチェさんが。自重せねば。 「ふふっ、カチカチね」 「どこみてるんですかぁっ!? それに絶対キャラ間違ってると思います!!」 「私は○○の態度を見ていったのだけれど? ○○はいったいどこだと思っていたのかしら?」 「うう、いいように弄ばれている気が……」 と、俺はある物を持ってきていたことを思い出した。 「レミリア、ちょっと待っててくれ」 そう言い残して俺は風呂の縁に置いてあった桶を持ちレミリアの所に戻った。 「早苗に少しだけならってことで許可してもらったんだ。一緒にどうだい?」 「へぇ、桃のリキュールね。それじゃお言葉に甘えようかしら」 「あ、でもグラスが一つしかないや」 「それでもかまわないわ」 「それじゃお先にどうぞ」 「ええ、いただくわ」 氷でキンキンに冷やしたリキュールをグラスにトクトクと注ぎ、レミリアはそれをとても上品に飲み干した。 「ふぅ、すごく濃厚な桃の味なのに後味はスッキリ。あなたにしては中々の物を見つけたわね」 「お褒めいただき、光栄でございます。お嬢様」 「ふふっ、やめて。○○にそんな口調で喋られるとなんだかこそばゆいわ」 「うわっ、ひどいな」 「じゃ、今度は私が注いであげる」 「ああ、ありがとう。――っとと。それじゃいただきます」 「――うん。たしかにおいしい」 交互に酒を注ぎながら二人きりの酒宴を楽しみながらふと空を見上げると綺麗な紅い月が真上に見えた。 「どうしたのよ? 急に上を見上げて」 「いや、今日は月が綺麗だなってさ。そしてうまい酒にとっておきの美少女がいる。これ以上の贅沢はないかなって思っていただけ」 「○○どうしたのよ。今日は変なことばっかり言って。もしかして酔っ払ってる?」 「かもね」 横に視線を向けるとくすくすと笑うレミリアがいた。 普段のどこか嘲笑が混じった笑みとは違い、外見に相応しい少女のように笑うレミリアはとても魅力的に映った。 「なに? じっと私の顔を見つめて? なにかついてる?」 「いや。レミリアってそうやって笑うとすごくかわいいなって見とれてた」 「なっ!? ばっ、は、恥ずかしいセリフ禁止っ!!」 「あいたっ」 ゆでだこみたいに顔を真っ赤にしたレミリアに頭をはたかれた。 そしてそっぽを向いて何かぶつぶつ言い出した。 「まったくこいつは……(ぶつぶつ)わたしの気持ちも知らないで……(ぶつぶつ)」 断片的に何か聞こえてくるが、聞かないのが紳士であろう。 他に視線を移しているとまた誰かがやってきたらしい。カラカラと戸を開ける音がした。 「お嬢様、そろそろお上がりになられた方が……なぜ○○がここにいるのかしら?」 うひゃあ……今この状況で一番会いたくないお方がいらっしゃいました。 めちゃくちゃドス黒いオーラが漂ってきます。 「いいのよ咲夜。○○が先に入っていたんだから。それじゃ私は先に上がるわね」 「ちょっと、お嬢様。お体くらい隠してください」 どこも隠そうとしないレミリアにバスタオルを巻く咲夜さん。この手際のよさはさすがメイド長。 などと下らないことを考えているとレミリアがこっちを見ていた。 「今日は楽しかったわ。今度はフランも連れてくるからそのときは3人一緒に入りましょ。約束ね」 「あ、ああ……」 そう言ってレミリアは微笑んだ。その姿はまるで月光に照らされた花のように美しかった。 レミリアが出て行った後も暫く惚けたまま動けなくなっていた。 「まずい……当てられた……」 うーん、これものぼせた部類に入るんだろうか? あの笑顔が焼きついて今夜は眠れそうにないや…… うpろだ1030 ─────────────────────────────────────────────────────────── 7年ほど勤めいていたホテルを退職した。 退職した理由だが、俺が研修した新人があろうことかパーティーの配膳中、主賓に料理をこぼしてしまった。 あわてて謝罪と処理をし、なんとかその場は納め事なきを得た。 そして後日、もう一度フロア長であった俺と上司とで謝罪にいった。 先方はその時の新人に責任を取らせろ。と行ったが、研修したのは俺であり、配置を考えたのも俺だった。 結果として俺は責任を取って退職する事にした。 長年勤めた職場で未練もある、だが筋は通しておきたかったし、事を円満に収める為には誰かが退職しなければならないような剣幕だったので俺が退職する事にした。 高校を出た後、実家の旅館に嫌気が差し、次男に後を任せて勘当同然で飛び出しサービスの道に進み、今の職場に就職し、とにかくがむしゃらに勤めてきた。 そのかいあって功績は認められ、フロア長にもなった。日々忙しい中でも仕事の時間は実に充実し、これからも更に頑張ろうとしていた所での退職だった。 職場の上司や部下に挨拶を済ませ、荷物をまとめて外に出た。 いつもは従業員用の出入り口から入るのでホテルの外観をあまり見なかったが、改めて眺めてみるとずいぶんと大きく感じた。 見ていると涙腺が緩むのを感じたので、俺は足早に慣れ親しんだ職場を去った。 帰路、長い間張り詰めてきた糸がきれたかのように何もやる気が起きず、かといって家に向う気も起きず、とにかくどこか遠い所へ行きたかった。 何も考えずに電車に乗り、降り、また乗る。 そうこうしているうちに夕方になり、駅の看板を見るとどうやら岩手まで辿りついていた。 岩手といえば幼少の頃、岩手にある叔父の家によく兄弟で遊びに行っていた事を思い出した。 今ではすっかり疎遠になってしまったが、ここまで来たのなら久々に叔父の家に行ってみようと思った。 叔父に話してみれば今のこの気分も少しは晴れるかもしれない。そう考えると足取りも少し軽くなった。 なんとかバス停の名前だけは憶えていたので、そこまでバスに乗って行く事にした。 町外れのバスを降りると、辺りはすっかり暗くなり、空は雲のおかげで月も出ていないが、初秋の心地よい風と虫の声に包まれた。 深呼吸すると都会とは違う清々しい空気が体内に送り込まれ、退職してから初めてすがすがしい気分になった。 そして、幼少の記憶を手繰り寄せるように道を歩んでいった。 ・・・が、見事に道に迷った。 途中で分かれ道を間違えたのだろうか?一時間ほど歩いて何も無いというのは、やはり道を間違えたのかもしれない。 だが、いざとなったら一晩ぐらい野宿しても死にはしないだろう、という確証もあった。 どうせ昼になれば見晴らしは良くなる。 そのまましばらく歩いて行くと、急に足に感触があり、その場で後ろ向きに転んだ。 一瞬何が起こったのか理解できなかったが、少なくとも頭はうたずに済んだ事はわかった。 何か変なものでも踏んだのだろうか・・・。倒れた時に背中を打ったらしく、少々痛みを感じたが、起き上がって足元を見回した。 見回したが、何もそれらしいものは発見できなかった。 辺りは溢れんばかりの月光に照られているので、それらしいものがあればすぐにわかるはずだが・・・。 ・・・そういえば月なんて出ていただろうか。 少なくとも、俺がバスを降りた時には出ていなかった筈だ。だが、今は真っ青な月により、辺りは照らされていた。 気がつけば辺りの様子も先ほどまでとは何かが違う事にも気づいた。 さっきまでは周囲で虫の鳴き声しかしなかったが、今は時折犬だか何か良くわからない動物の鳴き声が聞こえてきて気味が悪い。 明らかにおかしい。 道路はいつのまにかアスファルトですらなくなっていた。 いくら幼少の頃の記憶を辿っても、こんな所は思い出せない。 俺は迷うことなく元来た道を戻ろうとした。 だが、振り返ってみると後ろには森が広がっていた。 いくら暗かったとはいえ、森を歩いていたら流石に気づく。 いつのまにこんな所に迷い込んだんだ。一体ここは何処なんだ? 携帯を開いてみると圏外、俺の頭は完全に混乱状態に陥った。 時刻を見てみると20時を回ったところだった。まだこの時間ならば誰かいるかもしれない。混乱した頭でとにかく助けを求めて叫んだ。 叫びながらも歩き続け5分が立ったところだろうか、後ろから何かの気配を感じて振り返った。 そこには熊・・・だろうか大きさ2メートルほどの4足の獣が目を光らせていた。本能がヤバイ、と告げていた。 間髪置かずに俺は荷物を放り出し、反転して駆け出した。 後ろから獣が追ってくるのが気配でわかった。 いくら走れども背後の気配は一向に消えない。それどころか距離が縮まってくるのを感じる。俺は全速力で走り続けた。 ろくな呼吸もなしに駆け出したので、心臓が悲鳴をあげている。 そもそも俺は何故こんな所にいるんだろうか、あの時新人に責任を取らせれば今もいつもと変わらない日常ではなかっただろうか? そんな考えが頭をよぎりつつも、とにかく俺は逃げ続けた。 駆け出して数分、すでに肺も心臓も限界を迎え、走るスピードも見る見る遅くなっていく。 同時に足がもつれ、前のめりに倒れた。 起き上がろうとするも、目の前には獣が回りこんでいた。 それでも逃げよう、と思い、膝をついたが足が震えてどうも立ち上がれない。 見上げると月夜に照らされた長い爪が振り下ろされようとしているところだった。 おそらく数秒後に来るだろう痛みに向け、俺は反射的に顔を背けた。 バシュッ!という空気を切る音がした後、顔に温かく、生臭い液体がかかったのを感じた。 十秒ほど経っただろうか、まだ痛みは感じない。 何が起こったのか、未だに体を襲わない痛みを不審に思い、俺は恐る恐る目を開けた。 そこには、俺の目の前に立っていた獣が串刺しになり、血を噴出しながら倒れている光景だった。 真紅の槍が突き刺さり、俺を襲おうとした格好のままで絶命していた。 いつのまにか真赤になっていた月が、さっきまで獣だったものを照らしている。 助かったのか、もしそうならば助けてくれた人がいるはずだ。 そう思って槍の柄の方を目で追っていくと必然的に月を見上げる事になった。 そこには月を背負って人影があった。 背丈は少女のものだが、背中には不釣合いな羽。間違いなく異型の存在だった。 だが、月を背負うその姿はとても美しく、貴く、恐ろしかった。 何かこちらに向けて話しかけたのが聞こえたが、その姿を見ての感動と恐怖、先ほどの逃走劇の疲れで俺の意識は途切れた。 目が覚めると、知らない天井だった。 俺は何故こんな所にいるのだろう、と考えていると昨夜の出来事を思い出した。 得体の知れない獣に追われ、その後に何者かに助けられた所で俺の記憶は終わっている。 悪い夢であればいいのだが・・・。とりあえず、今の時間を確認する為に腕時計を見ようとすると、手と腕に昨夜の獣のものであろう赤黒い血の跡がこびりついている。 やはり昨日の出来事は夢ではなかったのだろうか。 それでも信じられなかった俺は、試しに頬をつねってみる。鈍い痛みを感じ、現実であるという事実に引き戻される。 とりあえず現状を把握しようと周囲を確認すると、どうやら建物の一室のようだ。 ぱっと見ただけで調度品は高価な物であるという事がわかり、掃除も行き届いている。 だが、全体的に窓が少なく、配色が赤く、一般的な建築ではない。この館の主の趣向なのだろうか。 念のために携帯を取り出すが、やはり圏外。電池の問題もあるので、俺は電源を切っておく事にした。 それにしてもここは一体どこなのだろうか・・・。 これだけ立派な部屋には電話なりで使用人を呼ぶ手段があるはずだ。 それらしきものがないか確認すると、扉の隣にチャイムが置いてあった。 鳴らすと、独特の高い金属音が扉の外から響いた。 使用人が来るまでの間、窓から外を眺める事にした。 窓からは屋敷の庭と門、その奥には湖が広がっている。屋敷全体が湖に囲まれているのだろうか。 それにしては船着場も橋も無いのにどうやってこの館に入るのか、不思議だった。 考えているうちに、コンコン、とノックする音が聞こえた。 「はい、どうぞ」 答えると「失礼いたします」と、女の声がして、ゆっくりと扉が開いた。 礼儀正しく入ってきたのは、銀色の髪、整った顔立ち、そして奇妙なメイド服を身にまとったメイドとおぼしき女性だった。 10代後半に見えるが、全体から醸し出す雰囲気はもっと大人びている。 「何の御用でしょうか?」 メイドの声で思考をやめ、一番聞きたかった事を口にした。 「一体ここは何処なんですか?」 俺は最初に疑問に思っていることを口にした。 「ここは紅魔館。主のレミリア・スカーレットの館ですわ」 随分と日本語離れしてきた名前が出てきたが、気にせず質問を続ける事にした。 「紅魔館とは?携帯も繋がらないのですが、ここは日本の何処にあたるのでしょうか?」 メイドは少し考え、こう答えた。 「ここは幻想郷、あなたの住んでいた世界とは少し違う世界ですわ」 違う世界とは一体何なのだろうか・・・、どうも話が噛み合っていない気がする。 一先ずこの件はおいて、質問を換えることにした。 「昨夜、獣に襲われていた私を助けてくれたのはあなたですか?」 「いえ、私ではなく主のレミリア様ですわ。ちなみに血まみれだったあなたを運んだのは私」 こんな少女に運ばれるとは・・・、少々恥ずかしかったが、感謝の意を伝えておいた。 「それは有難うございました。あなたの主にも礼を言いたいのですが、あわせて頂けませんか?」 「お嬢様はただ今お休みになっていますので、また起きた時に連絡いたしますわ」 「感謝します。それと、できればお風呂を貸して欲しいのですが」 いい加減この獣の血を洗い流しておきたかった。衛生的にも良くないし、血まみれと言うのは不快だ。 「それでしたら部屋の奥に添えつけのバスルームがありますので、そちらをお使いください」 メイドが指した方向にはバスルームに繋がっていると思われる扉があった。 「それでは、御用がありましたらまたおよび下さい」そう言ってお辞儀をし、メイドは出て行った。 いろいろ腑に落ちない事はあったが、まず風呂に入って落ち着くことにした。 全身についた血を洗い流し、風呂から出た後は添えつけのバスローブを纏ってベッドに寝転んだ。 寝転んでから気づいたが、いつのまにかベッドのシーツも布団も換えられている。 メイドの手際の良さに驚きながらも、思考を巡らせていた。 どうしてこんな所にいるのか、昨夜は一体何があったのか・・・。 だが、いくら考えても結論は出ない。唯一確かなのは、ここは日本ではなく、幻想郷の紅魔館という事だけだった。 物思いに耽っていると、いつのまにか時刻は16時を回っていた。 こんな時間まで休んでいるとは、この家の主はどんな不摂生な生活を送っているのか不思議に思った。 そういえば、着替えはどうしたのものかと気づいた。命の恩人に血まみれの服やバスローブで挨拶など失礼極まりない。 ふと添えつけのタンスの方を見ると、退職する時に持ってきた大き目のカバンが目に入った。 獣にから逃げる時に慌てて放り投げて来たのだが、先ほどのメイドが拾ってくれたのだろうか。 あの中には仕事で使っていた道具と燕尾服が入っているはずだ。奇妙な格好かも知れないが、少なくとも汚れた服よりはマシだろう。 俺はカバンを開け、いつも仕事で着ている服に着替えた。 着替えを済ませ、身嗜みを整えた。鏡にはいつもの仕事着の自分が映っている。 まあ、これなら失礼ではないか・・・。そう思っていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。 「お嬢様がお目覚めになりましたので、お客様の準備が整いましたらご案内いたしますわ」とメイドの声が聞こえた。 「はい、すぐ行きます」 俺は答え、扉を開け、初めてこの部屋の外に出た。 出てすぐに気づいたが、廊下も赤かった。そして窓が少ない。やはりこのデザインは館の主の趣向で一貫しているのだろう。 ふとメイドを見ると、少々驚いた表情をして俺を眺めている。流石に血まみれだった男がいきなりこの格好になるのは驚いたのだろう。 数秒後「それでは、ご案内いたしますわ」と、メイドは何事も無かったかのように俺の先導をした。 主の部屋までは長い廊下が続いていた。 途中、格好はメイド風だが羽の生えた人と度々すれ違ったので、あれは何なのかとメイドに聞いてみた。 「うちで働く妖精メイドですわ」と、またしても変な答えが返ってきた。 妖精といえばおとぎ話に出てくるあの妖精だろうか・・・。 それにしても動きが雑なメイド達だった。彼女らが俺の招かれた部屋の掃除等をしていると思うと腑に落ちない。 ここはどうもに理解できないことが多すぎる。 そうこうしているうちに、先ほどから歩くごとに威圧感が増してきているのがわかる。歩くたびに空気がピリピリしている。 どうやら、この威圧感は主の部屋に近づく毎に増してきているようだ。 そして立派な扉の前まで来た。 「ここがレミリア様の部屋ですわ」メイドは威圧感などまるで感じない様子で、扉をノックした。 中から「入りなさい」と少女らしき声が聞こえた。 メイドが扉を開けると、中からは先ほどまで感じていたものとは比べ物にならない程の威圧感が溢れ出して来た。 思わず足が硬直しそうになったが、足元を見て、一歩一歩としっかり踏みしめ、部屋に入った。 ようやく部屋の中ほどまで進むと、後ろで扉の閉まる音が聞こえる。メイドが扉を閉めたのだろう。 足元を見て進んでいくと、高価そうな椅子が行く手を阻んだ。 目線を少しあげると、椅子の先には机があり、机の後ろに威圧感の元凶が鎮座しているのがわかった。 俺は意を決し、それに目を向けた。 そこには、昨夜見た、少女が、真赤な月明かりに、照らされていた。 透き通るような白い肌、ウェーブのかかった青い髪、見られるだけで震え上がるような真紅の瞳、そして背中の不釣合いな羽。 忘れるはずも無い畏怖の存在。俺を襲った獣とは比べ物にならない威圧感があった。 そして月夜を浴びる少女の姿は昨夜にも増し、美しかった。 「こんばんわ、今日も良い月夜ね」 呆然としていると、少女が先に口を開いた。 「は、はい」つい間抜けな返事をしてしまう。 それを聞くと、少女は無邪気に笑って言った。 「ふふっ、別にお前を獲って食おうって訳じゃない。恐れるのはいいけど、それじゃあ会話にならないよ」 俺は昨夜の礼を言うべく、深呼吸をして心臓を落ち着けた。 「さ、昨夜は命を救っていただいただけでなく、安全に寝る場所まで提供して頂きありがとうございました」 と言い、俺は頭を下げた。 「構わないわ、夜の散歩でたまたま私が通りがかっただけだもの。自分の運の良さに感謝しなさい」 こんな所に来た時点で運が良いのかどうかはわからないが、死なずに済んだ自分の悪運に感謝した。 「それよりお前の格好は何?随分と着慣れているみたいだけど。そんな服はあった?咲夜」 少女は俺の着る燕尾服を見て、不思議そうにメイドに尋ねた。 「いえ、私が呼びに言った時にはその格好でした。恐らく、彼のカバンに入っていたものでしょう」 メイドが答えると、少女は面白そうにこちらを眺めた。 「ふーん。そう言えば、まだ名前を聞いていなかったわね。あなたの名前は?」 しまった・・・、感謝のする事に必死でに自己紹介を忘れていた、威圧感にも少し慣れ、ようやく頭が正常に回転してきたのがわかる。 「私は○○と申します。この服装は先日まで働いていた職場のものです」 「私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主をしているわ」 目の前にいる少女がメイドの言っていたレミリア・スカーレットで、この館の支配者だと言う事がわかった。 「そういえば、先日まで働いていたと言ったけど、今は?」 「それは私も興味がありますわ」後ろで聞いていたメイドも口を挟んだ。 俺は仕事を辞めた経緯、そしてこの奇妙な地に迷い込んだ事を簡単に話した。 「またスキマ妖怪の仕業か。それにしても数奇な運命ね」 スキマ妖怪が何のことかはよくわからなかったが、運命、と言う言葉には脳が反応した。 退職し、この辺鄙な所に迷い込み、命を救われ、この館に招かれたのも、運命なのだろうか。 そしてこの少女に出会ったのも運命なのだろうか。 初めて出会って一日やそこらだが、俺はこの少女、いや、レミリア・スカーレットの虜になってしまった。 美しさ、貴さ、そして、恐ろしさの虜に。 「それより、これからはどうするつもり?帰りたいなら、明日にでも咲夜に神社まで送らせるよ」 そう聞かれたが、俺の答えは一つだった。俺はこの方の為に働きたい。 その思いが現実への未練をはるかに凌駕していた。 「もし叶う事なら・・・」 「もし叶う事なら、私をこの館で働かせてください」 うpろだ1121 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「本当に行くのね、○○」 「ああ、長いようで短かったけど、おかげで旅資金が出来たよ、ありがとなレミリア」 「・・見つかると、良いわね。」 「ああ、アテは無いけど、動かないと始まらないしな」 「じゃあ、みんな世話になったな」 「あ、○○・・」 「?どうしたパチュリー」 「これ、持って行って」 「また分厚い本だな」 「長い旅になるかもしれないから、暇つぶし用に貸してあげるわ」 「そうか、あんがとな。じゃあまた返し行かなきゃだな」 「・・ええ、待ってるわ。」 ~月夜の訪問者~ ―5ヶ月後。 「ふぁぁ~あ、眠くなってきたし、そろそろ寝るか・・」 俺はパチュリーに借りた本に栞を挟み、 電気を消そうとしたその時・・ バサッ バサッ バサッ! 「・・・ん、何だ・・?窓からなんかこっち向かって来る・・?」 小さな影がだんだん大きくなったかと思うと、 そのまま窓を突き破ってきた ガシャァァァァーーーン!!! 「んのわああああああああああ!!!」 俺は腰を抜かして間一髪で避けた。(結果的に) 「よっと。つい勢い余っちゃったわ。久しぶりね○○」 窓の事など全く気にもせず、最初に出た台詞はコレである。 紅魔館の主、レミリア・スカーレットだった。 全くこんな時間に一体なんだってんだ、血ならやらんぞ 「お前・・こんな夜中に何しに・・」 「あら、お客様に失礼じゃない、せっかく遊びに来て上げたのに」 窓壊しといて失礼も何もないだろう。 「それはともかくだ、少しは人間の寝る時間というのをだな・・」 「だって昼間だと動きにくいし、まあ実際起きてたから良かったじゃない♪」 「・・いや俺は寝る直前だったわけであって・・ 「あら、結構いい~家じゃない。私には狭いけど。」 ・・わざとらしいスルーである。 「ま、相変わらずでよかったよ、色んな意味で。」 「どういう意味よ?それ。 それより、お客に出すお茶はまだかしら?」 「・・・・」 もうちょっとお客さんらしく出来ないものかね。 コポポポポ 「紅茶でいいか?」 「任せるわ」 「俺は眠みぃから珈琲にしようっと・・」 「まったく夜が愉しい時なのに・・人間というのは人生損しているわねえ。」 酷い言われようだ。 「あら、なかなか美味しいじゃない、この紅茶」 「ああ、これはアリスに貰ったんだ。なかなか良いだろ?」 「いつだったかご馳走になった時、つい『美味い』と言っちまったんだよ。」 「・・・それであんなに棚が紅茶でギッシリ埋まってるのね。・・何となく読めたわ。」 「ああ、嬉しそう~にドッサリ渡されたよ、帰りに。」 というような全くどうでもいい会話をしているが、 本当にわざわざ遊びに来ただけなのか?このお嬢様は。 何か企んでそうな気がしてならないんだが・・ 「そういえばあなたが紅魔館を離れてどれくらいになるんだっけ」 「そうだな、もう5ヶ月位になるんじゃないかな。 てことは俺が此処(幻想郷)に飛ばされてもう半年以上になるのか・・」 「早いものね。みんな会いたがってたわよ、たまには帰ってきなさいよね~」 「はは、そうだな。紅魔館のみんなは元気か?」 「ええ、変わらず騒がしいわ」 「・・でも、紅魔館に活気が出たのも、あなたがうちで働いてからなのよね。」 「そう、なのか」 「そうよ。まったく、あなたにはホント驚かされるわ。パチェもフランも あなたが来る前までは食事の時間に顔すら出さなかったのに。昔と比べて食卓が賑やかよ。」 「そうか、そりゃよかった」 「あなたが去って二人ともまた元に戻らないか心配だったけど、 ・・・ちゃんとあなたの言いつけ守ってるみたいね。全く、どんな催眠術を使ったのよ」 「まあ・・ちょっと説教(?)したら思ったより二人とも素直だったってだけさ。」 妹様の方は命掛けだったが。マジで。 「そういえば、こんな時間にこんな所に居て咲夜が心配してないのか?」 「そりゃ心配してるでしょうね。」 「・・いやいや普通に落ち着いて飲みながら言うなよ。まさか黙って来たのか?」 「勿論。あなたの所って知ったらみんな騒ぎそうだし」 「なんだそりゃ。」 「さっきも言ったけど皆もあなたに会いたがってるからよ」 「パチェは、あなたに貸した本の感想が聞きたいとか何度かボヤいてたし 美鈴なんて『愚痴を親身になって聞いてくれる唯一の仲間が・・』とか酒を呑む度に口にしてるわね。」 アレを親身になってるように見えてたなら周りの普段の扱いが容易に想像できてしまう。 本の方は・・まだ読み終わってないんだよな。なんせ分厚い上に俺は読むのが遅い。 「咲夜は、時折あなたの心配をしてたわよ。弟のように想ってるかもね」 「まあ、咲夜には一番世話してもらったからな。。俺に仕事のイロハを教えてもらったのも咲夜だし」 「ま、とうてい真似は出来なかったケドネ」 「ふふ、気をつけた方がいいよ~?1度咲夜に心配されるようになると 私みたいに自由に動けなったりするかもよ。気も遣わせちゃうしね」 「はは、それは困るな」 「ま、そんな空気で私だけ出し抜いたなんて知られると、後で何言われるやら分かったもんじゃないわ」 「そっか。みんな元気ならよかった。」 少しの沈黙の後、レミリアは聞く 「で、外の世界に戻る目処はついたの?」 ・・正直、これを答えるのが辛かったから自分から言わなかった、 でも聞かれてしまったなら本当の事を言うしかない。 「ああ、ついたよ。」 「・・そ、そうなの」 「境界を操る妖怪に会って、そいつに頼めばいつでも、だそうだ。」 「・・そう、あいつ(紫)に接触したのね」 「やっぱり、知ってたか。」 「・・・。」 「全くみんな人が悪いよ、どういう訳かみんな知らない振りしてるような感じだったんだよな。 ま、自分で探すと決意して、旅をしながら幻想郷を知るいいキッカケになったからいいが、 紫に辿り着くまで冥界に行ったり鬼にも会ったり、なんか振り回された感じで色々大変だった」 「あいつは神出鬼没だからね。会おうと思って会えるような奴じゃないのよ」 「・・それで、いつ?」 「ん?」 「いつ、帰るの?」 さっきからレミリアお嬢様のお顔が怖いです。 「まだだよ、パチュリーにもまだ本返してないし」 「でも、返したらその後帰るんでしょ?」 「・・まあ、そりゃ・・。俺は此処の住人じゃないし、いつかは帰らないといけないだろう」 カチャン という、俺の言葉をさえぎる様にカップを少し力強く机に置いてレミリアが言った。 「・・焦らなくてもいいんじゃない?」 眼が怖い。これ怒ってる・・よな。 俺は怒られてるのか。 「・・俺は妖怪たちと違って寿命が短いんだ、俺には時間に余裕がないんだよ。」 「はぁ、全く・・あなたも相変わらずね・・。」 レミリアが急に立ち上がり、俺の隣に来て座った。 「・・私があなたにまだ帰って欲しくないって言ってるの察しなよ・・」 「・・・悪い。レミリアはそう思ってくれて嬉しいが、他の人は・・」 「不器用ね・・ほんと。」 またしばらく沈黙の後、紅茶を飲み干すレミリア。 「ごちそうさま。」 「・・パチェが貸したその本、本当に旅のお供にっていう意味だけと思ってる?」 「どういう事だ?」 「あなたが紫に会ったとき、何故すぐに帰らなかったかを考えれば分かるはずよ。」 「この本をまだ返してないからだが、、それが一体・・ってまさか」 「・・そうよ、あなたにまだ帰って欲しくないからそんな分厚い本をあなたに貸したのよ。」 「ほんと、こんな回りくどい事するのパチェらしいわね・・」 「・・・」 「あと、周りが紫の事知らない振りしてそうみたいな事さっきあなたが言ってたけど、多分それ本当よ」 「何故そう思うんだ?」 「あなた気に入られやすい性格なのよきっと。」 「いやいや答えになっとらんぞ?」 「・・一生悩んでなさい」 「・・まあ、あなたがそう言うなら止めない。あなたの問題だもの。私がどうこう言う事じゃない」 そう、普通の人はこう言う・・でも私は・・」 「・・?」 「ごめん、私は我儘な吸血鬼なの」 突然ぎゅっとしがみ付いて来た。 ・・なんだこの展開は。 ボソっと何か言ってるみたいだが、よく聞き取れない。 「お願い・・ないで・・」 「・・何?」 「お願い、まだ帰らないで・・」 ・・・つまり我儘なのを開き直ったって事でよろしいのでしょうか。 まったく、カリスマの欠片もないな。 でもこれがレミリア・スカーレットなのだろう。 こういう時のおぜうさまは妹様より子供っぽい。 「いやだからすぐには帰らないってば、『いつか』だよ」 「・・人間の『いつか』は私たちにとっては『明日』と同義なの。 100年なんてあっという間なのよ?私たちにとって」 やれやれ・・ レミリアはさっきから俺にしがみ付いたまま離れない。 「レミリア・・お前そろそろ帰らないと夜が明けちまうぞ?」 「やだ。帰らない。」 ぷくーっと膨れっ面をしながら言った。 まったく、さっきまでの高慢なお嬢様は何処に行ったんやら。 これじゃただの駄々っ子と変わらんぞ。 「・・まいったな」 「分かった分かった、しばらく此処に残るから」 「・・しばらく・・?」 「まだ先だから・・」 「まだ先・・?」 「ああもう、分かった、ずっと居てやるから機嫌直してくれ、な?」 「本当・・?」 「・・ああ、約束する」 もうほんとガキの頃の俺にソックリ。 つか、こんな約束しちまってよかったんだろうか。 現金に笑顔を見せたかと思ったらそのまま寝やがった。 「・・やれやれ。」 レミリアをベッドに移し、布団を掛けてやった。 「ふぁ・・ぁぁ、・・俺が早く眠りにつきたかったのに、 先に寝るたぁ、全くどういうお客さんだよホントに」 ・・って、ベッド1つしか無いんだった。 ・・・・。 ま、いいか。いいよね?いいよな。俺のベッドだし。 じゃ、ちょっと失礼しますよっと。 ・・ちょっと狭いかな。仕方ないか、一人用のベッドだし。 しかし、我儘に屈服したとはいえ、こんな約束してしまって良かったのか・・。 それにしても 「すぅ・・すぅ・・」 こいつの寝顔初めて見たな・・。 こいつがこの時間に寝るって滅多に無いんだろうな。 ・・・。 ああいかんいかん。変な気起こす前に俺も寝よう。 窓の外を見ると、大きな月が眩しいくらいに幻想郷を照らしている。 「月、綺麗だな。永遠亭のあいつらも元気してるかな・・」 永遠亭を出る時も、冥界を出る時も、 みんなにまた帰ってくるって約束したんだったっけか・・。 破っちゃ、駄目だよなぁやっぱ・・。 急に光に包まれた。それと同時に聞いたことがある声が聴こえる・・ 『あなたにはまだ色々やるべき事がいっぱい残ってるわ。』 「やるべき事・・?」 『それは自分で考えなさい。』 「・・・・。」 『でも、ヒントをあげるわ。』 「・・なんだ?」 『幻想郷を・・もっと深く知る事・・よ。』 「今のがヒントか?っておい、待てって!」 『ふふ、それじゃあね。』 ・・・・ 「くかー、くかー」 「すぅ・・すぅ・・」 そう、これは夢の中の声。 夢って分かる夢ってのも変な気分だな・・。 答えは自分で探す・・か。分かったよ。 様々な場所で妖怪、人間、宇宙人、幽霊、鬼等に出会い、別れ、 そして様々な地に足を入れた俺ではあるが それでもまだ、俺はこの幻想郷のほんの一部しか知らないんだろう。 もっと知るためにも、やるべき事を見つける為にも、 またみんなに会わなきゃ・・な・・。 ―窓の外、 そこから少し離れた木の上。そこには一人の妖怪が居た。 「(・・ふふ、あなたはまだ此処(幻想郷)に必要なの。 私にとっても、そして幻想郷にとっても、ね。)」 「(それにしても夢に出るのはちょっと卑怯だったかしら・・ま、念は押しとかないとね。)」 ズズズズズ・・・ 安堵の笑みを浮かべながら、その妖怪は空間の裂け目からゆっくりと姿を消した。 ~月夜の訪問者~ 完。 うpろだ1239 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「カリスマ溢れるお嬢様を世に知らしめる!」 「紅魔館の威厳を世に知らしめる!」 昼に生きるもの達は寝静まった丑三つ時。 夜に生きる者の王、レミリア・スカーレットと、自称その下僕である○○の叫びが唐突に、その静寂を破った。 「流石は分かっているじゃない、○○!」 「もちろんです、お嬢様!」 同じような答えに行き着いた二人は親しげに握手を交わす。 レミリアと○○、この二人は非常に気の合う者同士なのである。 そのために○○は、時折彼女のティータイムにお呼ばれをして、紅魔館に足を運んでいるのだ。 ただの人間に、レミリアがここまで気を許すとは、いやはや世の中分からないものである。 「……さて、そうは言っても、どのようにすればいいかしらね」 「任せてください! 俺に考えがあるんです。名付けて、『スカーレットプロジェクト』!」 「……へぇ、私達の輝かしい第一歩に相応しい名前じゃない」 ……ついでにこの二人、破滅的なセンスの持ち主でもある。 主にネーミング的な意味で。 「それで、どのような物なのかしら、その『スカーレットプロジェクト』とやらは」 期待を込めた眼で○○を見つめるレミリア。 「はい、簡単に言ってしまえば、紅魔館改造計画です。この館の全ての格を上げれば、自ずとそこの主であるお嬢様のカリスマは跳ね上がる。そして同時に紅魔館の名前も威厳も上げられるという一挙両得の計画です!」 「素晴らしいわ、○○! 流石は私の見込んだ男」 「光栄に存じます」 「それで、具体的にどのようにするのかしら?」 「はい、まずはお嬢様本人ですが、こちらに関してはなにも問題はありません。 その麗しいお姿と、漂う気品は見るもの全てを虜にしますし、強さに関しては他の追随を許しません」 「ふふん、当然ね」 誇らしげに胸を張るレミリア。 「それからこの館、紅魔館ですが、確かに幻想郷一美しい屋敷と言えますが、お嬢様が住まうには少し役不足です」 「……ふむ」 「夜の王たる貴女が住むからには、そこに在るというだけで、見るものを震え上がらせる恐ろしさと、存在感がなければいけません」 「……成程」 「そこで俺が外の世界の知識を参考に、イメージ図を描いてみたのですが、如何でしょうか?」 ○○が取り出した紙に描かれていた屋敷に目を見開くレミリア。 「これは、……素晴らしいわ○○! まさか貴方にこんな才能もあるなんて」 「お気に召していただけましたか」 「文句なしよ! そうよね、私ともあろうものが、この程度の屋敷で満足していては駄目よね」 「もちろんです! あなたはもっと上に行く御方だ!」 お互いの認識を深め、二人で盛り上がる○○とレミリア。こんな夜中にやかましいことこの上ない。 「……そして、他の住人のことですが、やはりお嬢様の下につくには、少々力不足です。 並み居る強者を従えてこそ、王者の中の王者。 お言葉ですが、皆お嬢様の供としての自覚が足りません」 「それは私もうすうす感じていたわ」 「そこで、単純な手段ではありますが、スペルカードを考えてみました。これらを各々が使いこなせるようになれば、かなりの戦力になること間違いありません!」 「……これはまた、凄まじい物を考えたわね。 これが使えれば、霊夢もスキマも敵ではない。残念ながら、私には勝てそうにないけど」 「この世界でお嬢様に勝てる者など、いるわけがありません」 「しかし、私以外を相手にするのならば十分ね」 「有り難きお言葉」 「早速全員にこのスペルカードを作らせるようにしましょう」 「では、明日からとりかかりましょうか?」 「そうね。さあ、これから忙しくなるわよ。レミリア・スカーレットこそ、幻想郷最強ということを、知らしめてやるわ!」 レミリアと○○は拳を高々と突き上げて、不敵に笑いあった。 美鈴は後ろで聞こえた破砕音に振り向くと、あんぐりと口を開いた。 見えたのは紅魔館の変わり果てた姿。 外観の一部が砕かれたのだろうか、瓦礫が庭にうず高く積まれている。 紅の塗装もあちこちがぼろぼろに剥げ落ち、地の色とまだらになりみすぼらしい。 玄関の扉は、その機能を果たせずに、だらしなく蝶番ひとつでぶら下がっていた。 そしてその扉の目の前には、最近紅魔館に入り浸る人間○○が、満足げに扉を見つめている。 「……ちょ、ちょ、ちょ!? ○○さん!? なにしてるんですか!?」 「紅魔館を、そしてお嬢様の名を幻想郷中に轟かせる記念すべき第一歩だよ」 「はあ!?」 意味を理解できず茫然とする美鈴に、○○は紙切れを渡す。 「丁度良かったよ美鈴。その紙に描かれたスペルカードを今すぐ作ってね。これはお嬢様の命令だから」 「いや、そうでなくて、咲夜さんやお嬢様に怒られますよ!」 「平気平気。これはお嬢様の意思だから」 「訳分かりませんから。……ってちょっと待って、○○さ~ん」 上機嫌で館へと入っていく○○を美鈴は必死に追いかけた。 咲夜は館の惨状に頭を抱えていた。 まるで妹様が暴れまわったかのように、あちこちが破壊されている。 その景観はそう、外の世界にあった、幽霊屋敷その物だ。 何が起こったのか知らないが、このままではお嬢様に叱られてしまう。 何とかしなくてはと思った矢先、紅い砲弾が目の前をかすめ、廊下の角にあった調度品を砕いた。 何事かと振り反るとそこに現れたのは、主であるレミリア。 「……お嬢様!?」 「あら、咲夜。どうしたのそんなに慌てて」 「どうしたもこうしたも、この惨状。一大事です」 「ああ、いいのよいいのよ。これはスカーレットプロジェクトの一環なんだから」 「はあ?」 「だから、スカーレットプロジェクトよ。咲夜にはこのスペルカードを作ってもらうわ。こっちはパチェに渡しといて」 「え、ちょっと、お嬢様。お止めください!」 「○○さ~ん!待って……」 「レミィ、さっきから何の騒ぎ!? 本がめちゃくちゃなん……」 「お姉様! お気に入りのカップが割れちゃったじゃない! どうしてくれ……」 ○○を追いかけて来た美鈴と、この騒ぎの被害を受けたフランとパチュリーが、ロビーに来て絶句する。 「……何コレ?」 「……さあ、私にも分かりかねます」 「わ~い、わたしもまぜて~」 一番最初に立ち直ったフランは、嬉々として破壊活動に加わる 残された三人は目の前の風景に呆然とする他なかった。 「……なんでこんなことになってる訳?」 「……プロジェクトがどうとか。そういえば、パチュリー様にと、お嬢様が」 咲夜が先程レミリアからもらった紙切れをパチュリーにわたす。 「何コレ? ……ええと、『月月火水木金金符、年中むきゅ~。とにかく色んな弾をばらまく』?」 「スペルカードらしいです」 「「「……」」」 果たして、喘息持ちの彼女の体力は考慮されているのだろうか。 「ひょっとしてわたしのもですか? 「なになに『名刺、紅美鈴。紅、美、鈴の形にした米弾をばらまく』?」 「「「……」」」 そこまで彼女の名前は浸透してないのだろうか。 「咲夜も貰ったわけ?」 「はい。『瞬殺、メイドインアサシン』だそうです。時を止めてその間にナイフで相手を一刺し」 「「「……」」」 不可避弾幕禁止というルールがあったはずだが。 「……これらをスペルカードとして作るようにと」 「……で、これはまあ、いいとして、アレはどういうこと?」 無茶な要望に少し苛立ちながらパチュリーが尋ねる。 「……あの、ひょっとしたらこれじゃないですかね?」 美鈴が差し出したのは、館の絵が描かれた紙。 足元に落ちていたらしいそれには、上部にスカーレットプロジェクトと書かれ、描かれた館は妖怪屋敷と呼ばれるような外観。 「……つまり、ここをこんな風にするために、あんな真似をしているのかしら?」 魔導書の一部を駄目にされたパチュリーは、怒り心頭。 いい感じに額に青筋が立っている。 「……ご安心下さい、パチュリー様。いきすぎた主をたしなめるのも、従者の役目」 穏やかな、あまりにも穏やかな声で答える咲夜。 この後の作業を考えれば、あの二人には、言っておかなければならないことがある。 それはもう、たっぷりと、こってりと。 「……妹様、危ないですから降りてきてください」 スペルカードといい、妖怪屋敷(門前で啜り泣く悪霊役)といい、あんまりな扱いを受けた美鈴も、普段とは違う笑顔でフランに呼び掛ける。 暴れ足りなくて不満そうに振り向いたフランは、しかし、三人の殺気に、慌ててロビーに舞い降りる。 「……さて」 美鈴が腰を低く落として構える。 「……二人とも」 パチュリーが、いつも抱えている魔導書を開く。 「……いい加減に」 咲夜が自身の後ろに無数のナイフを展開する。 「「「しなさーーーい!!!」」」 怒りの弾幕一斉掃射。 ただの人間である○○はもちろん、全く気付いて無かったレミリアも、ルナテイック越えのこの弾幕をかわせるわけもなく。 ピピチューン! 「「う~~~~~~!!」」 紅魔館の一部とともに見事なまでに吹っ飛んだ。 紅魔館、原因不明の半壊 昨日未明、霧の湖付近にある屋敷、紅魔館が半壊するという事件が起こった。 住民からの取材協力を得られず、目撃者もいないことから、詳細は不明だが、最近紅魔館に頻繁に出入りしている、とある人間は「これは、お嬢様の輝かしい栄冠の第一歩に過ぎない。幻想郷を紅魔郷と改め、レミリアお嬢様が支配する日は、そう遠くないだろう」と、レミリア・スカーレットの関与を仄めかす発言をしている。 紅霧異変以来、大人しくなったかと思われた紅魔館だが、また何かしら騒ぎを起こすつもりなのだろうか? 少なくとも、博麗の巫女の世話になるようなことは、御免こうむりたいものである。 ーとある日の文々。新聞一面 「なかなか良い受け答えをするじゃない、○○」 新聞を片手にご満悦といった様子で、レミリアは言う。 「ありがとうございます。実はこれも計画の一つでして」 「計画?」 「結果を急いだために失敗した前回を教訓に、新しく計画を打ち出したのです。名付けて『スカーレットストライクバック』」 「ほう……」 果てしなく同レベルの、素晴らしいネーミングに、食い付くレミリア。 「こうして紅魔館の、そしてお嬢様の恐ろしさを世に広めるわけです。事実あのブン屋は、お嬢様を恐れてこんな記事を書いた。 これを他の者が読めば、お嬢様の恐ろしさを思い知ることになる。 そのうちに、すきまや巫女の方から、お嬢様に跪くことになるでしょう」 「……○○、貴方は本当に、なんて冴えているのかしら」 「恐れ入ります」 「人間にしておくのはもったいないわ。わたしの右腕になりなさい」 「……と、いいますと」 「貴方を眷族として、迎え入れてやろうというのよ」 「……お嬢様!」 最高の褒美に歓喜する○○。 「不肖この○○、どこまでも貴女の側でお仕えさせていただきます!」 後に⑨血鬼と呼ばれる夜王の眷族が、幻想郷縁起に掲載される、ほんの少し前の話である。 新ろだ150 ─────────────────────────────────────────────────────────── 暖炉の火がパチパチと音を立てる、紅魔館の大広間。 「クリスマスの予定?」 クリスマスの数日前、夕食に呼ばれて来ていた僕の質問に、レミリアさんは目を丸くした。 何も予定がないなら一緒にどこかへ、と思い、思い切って聞いてみたのだが。 「何を言ってるの、クリスマスは我が家で家族と過ごすものでしょう。 私の場合は、紅魔館で咲夜やパチェと」 がっくりと肩を落とした僕に、レミリアさんは楽しそうに笑いながら言葉を続ける。 「だから○○、貴方もイブからいらっしゃい。私の大切な想い人だもの、家族も同然よ」 「……レミィったら、またずいぶん見せつけてくれるわね」 二人きりでいたいという気持ちよりも、それだけ受け入れてもらえていることの嬉しさが勝った。 「まあ、どこぞの大工の誕生日を祝う義理もないけれどね。季節の祭りとして楽しむには悪くないわ」 不敵に微笑むその顔は、まさしく悪魔だ。 美しく、威厳に満ちた、幼い悪魔。僕は彼女に畏敬の念を感じるとともに、すっかり惹きつけられている。 「ところでお姉さま、今年もサンタさん来てくれるかな?」 フランちゃんがわくわくしてしかたないといった顔でレミリアさんに尋ねる。 「そうね、きっと来てくれるわ。フランはもう手紙は書いたの?」 「うん、お姉さまは?」 ああ、お姉さんしてるなあ。僕はいつごろまでサンタクロースを信じていただろうか。 「ええ、私も書いたわ。咲夜、メイド達には手紙を書かせたかしら?」 「はい、既に回収してありますわ」 「それは何よりね。当主の不手際でサンタさんに来てもらえないメイドがいては紅魔館の沽券に関わるもの。 ……ところで咲夜、私の手紙読んでないでしょうね?」 「読んでませんとも。ちゃんと届けておきますから、ご安心ください」 ……何だか違和感が。 サンタについて話しているレミリアさんの雰囲気は、 フランちゃんに気付かせないように、という感じではない。 それにしては目がきらきらしている。 「○○は人間だから……もうサンタさんが来てくれる歳ではないかしら?」 ふと我に返ったようにこちらを見たレミリアさんが問いかけてくる。 どう答えたものかと思案する僕に、咲夜さんがそっと目配せした。 お茶を濁すような答えしか思い浮かばなかったけれど、慌てて口を開く。 「……そうですね、さすがに僕はもう」 「残念ね。生きた年月だけなら私の方がずっと上なのだけれど」 心から気の毒そうに、レミリアさんが言った。 「サンタクロースって幻想入りしてたんですか」 「そんなわけないでしょう」 一蹴された。まあ、そうだよな。 「……咲夜がここへ来てしばらく経った頃だったかしらね、レミィがサンタについて知ったのは」 帰り際に寄った図書館で、僕は咲夜さんとパチュリーさんに話を聞いていた。 「『私のところには来たことがない』と仰ったお嬢様があんまり悲しそうだったから、 『きっと手紙を出してなかったからですよ、今からでも出してみては』って言ってしまって」 「私もつい『レミィは吸血鬼としてはまだ幼いんだから大丈夫じゃないの?』って」 「私やパチュリー様、美鈴はもうサンタが来ないぐらい大きくなったから、ということで納得していただいたのだけれど」 「メイドさん達の分は用意することになったわけですか」 さっきの会話を思い出し、合いの手を入れる。 「そう。妖精メイド達もなんだかんだで信じてはいるようだから、緘口令を敷く必要はないけど…… お嬢様と妹様と、住み込みのメイド山ほどのプレゼント、毎年眠ったところを見計らって、時間を止めて配っているわ」 「……お疲れ様です」 外の世界にいて、まだ小さかった頃、僕の両親もこんな苦労をしたのだろうか。 「それでね、○○。貴方にはクリスマス特別任務を与えるわ」 パチュリーさんが意を決したように口を開く。 どうも愉快犯的なところがある気もするけれど、 ちゃんとあれこれ動いているあたり、友達思いなのだなと思う。 「特別任務、ですか」 「咲夜の苦労を少しでも軽減するために、それと私からもレミィにプレゼント、かしらね」 「無理に付き添ってくれなくてもいいのよ○○」 「いえ、僕もサンタに会ったことがないので、ここで待ってれば会えるかな、と」 イブの夜。僕はレミリアさんの部屋にいた。 吸血鬼であるレミリアさんにとっては、普段ならこれからが活発に動く時間帯だ。 だがサンタというのは寝ている子のところに夜プレゼントを置いていくものだ、と聞いているらしく、 ふかふかした冬用のパジャマを着たレミリアさんは、既にベッドに入っている。 とはいえ、普段起きている時間になかなか寝付けるものではない。 去年までは眠れるまで咲夜さんが付き添っていたそうだが、それではなかなかプレゼントを配ることができない。 どのみち時間を止めるとはいえ、余裕を持ってプレゼントを配れるように、今年は僕がレミリアさんに付き添うことになったのだ。 「それに……」 「?」 「二人っきりで過ごせるのも、ちょっといいかなと思って」 「……そうね」 後者については本心からの気持ちだ。 寝室に二人でいるからといって、別に何をするわけでもない。 ベッドサイドに腰掛けて、布団の中のレミリアさんと他愛もない話をしながら、レミリアさんが眠れるのを待つだけだ。 ベッドの支柱を見ると、ずいぶん大きな靴下がぶら下げてある。いったい何をお願いしたんだろう。 「じゃあ、私が眠っている間にサンタさんが来たら、よくお礼を言っておいてちょうだい。 フランやメイドたちの分も含めて、毎年苦労をかけていると思うから」 「わかりました、無事会えたら伝えておきます」 咲夜さんに、になるが、後でちゃんと伝えておくことにしよう。 「ねえ○○……」 「なんですか」 そろそろ眠気が差してきたらしく、小さくあくびをしながらレミリアさんが言う。 「今すぐそうなってくれ、というわけではないけれど…… いつか私がサンタさんからプレゼントをもらえないくらいまで大きくなって…… その時も、貴方は私の側にいてくれるかしら?」 その言葉の意味するところをしっかりと理解した上で、肯く。 何しろ五百歳で今の姿なのだ。 ただの人間のままなら、レミリアさんが成長する頃には僕はもうこの世にいないだろう。 「許してもらえるのなら、ずっと、ずっと側にいたいです」 ただの人間をやめてでも。ただの人間として生き、死んでいくことがどんなに尊ばれていても。 「……そう」 レミリアさんは満足そうに笑うと、布団の中から優しく手を差し出した。 「私が眠るまで、手を握っていてくれるかしら」 差し出された手を、両手でそっと包み込む。 目を閉じたレミリアさんは、しばらくして寝息を立て始めた。 ふと我に返る。窓のない部屋なので朝日が差し込んでくるわけではないが、 おそらくは朝だ。どうやら僕も寝てしまったらしい。 レミリアさんはまだ眠っているらしく、静かな寝息が聞こえてくる。 傍らの靴下には結構な大きさのプレゼント箱が入っている。 咲夜さん、いい仕事してますね。 「んー……○○、サンタさんは?」 「……すみません、僕も寝てしまいました」 「そう……残念ね」 「はい、でもプレゼントはちゃんと届いてるみたいですよ」 その言葉を聞いて靴下に目をやったレミリアさんの表情は、ぱっと輝いた。 「開けてみたらどうですか?」 「そうね……ああ、ちゃんと頼んだとおりのものだわ」 「日傘、ですか?」 箱から出てきたのは、日傘だった。普段外出の時に使っているものよりも幾分大きい。 「ええ。昼間に貴方と外に出る時に、少し大きめの日傘があるといいかと思って。 ほら、その……相合傘、とか」 頬を染めてこちらを上目遣いに見るレミリアさんを見て、何だか胸が熱くなるのを感じる。 と、いけない、渡し忘れるところだった。 「あの……これ、僕からです」 小さな箱を取り出す。サンタクロースにはかなわないけれど、せっかくクリスマスなのだから。 「……開けてもいいかしら」 「どうぞ、ささやかなものですが」 笑みを浮かべながら、レミリアさんは箱の中身を取り出した。 「これは……ブローチね」 香霖堂で綺麗な紅い石を見つけたので、つてを頼って細工してもらったブローチ。 価値、とかはわからないけれど、それでも何かプレゼントを贈りたかった。 「ありがとう、大切にするわ。 ……ところで○○、ベッドの下に袋が置いてあるから取り出してくれる?」 「はい、これですね……よいしょ、と」 何か色々と入っているらしいその白い袋はずいぶんと大きく、まるでサンタクロースが背負っているような…… 「咲夜達にはもうサンタさんが来ないから。代わりに当主の私からプレゼントをあげるのよ。 今年は貴方にも手伝ってもらおうと思って」 ベッドから降りたレミリアさんは、ドアの方に向かった。 袋を担いで後に続く。 「咲夜に、パチェと小悪魔に、美鈴に……」 指折り数えていたレミリアさんは、不意に大輪の花のような笑顔で振り向いた。 「○○、ちゃんと貴方の分もあるからね」 「……ありがとうございます」 「さあ、出発しましょう」 幻想郷に来て初めてのクリスマスの朝。 愛しいサンタクロースに付き従い、プレゼントを配りに行くのはなかなか幸せな気持ちだった。 新ろだ232 ─────────────────────────────────────────────────────────── - れみりあといっしょ 或いは『夢見る少女じゃいられない』 ふと。 手に触れた冷たい感触に、少年は目を覚ます。 いつもと同じ暗いばかりの夢から目覚めても、そこはやはり闇。ただ違うのは、窓から差し込む半月の飛沫に包まれた、柔らかい闇だった。 自分の左手があるはずの方向へ、胡乱な意識のまま頭を巡らせる。 飛び込んできたのは、白磁の肌に、蒼白の髪、そして爛と輝く、紅玉の瞳。 「……お嬢様、どうかしたんですか」 視界に結ばれた見知った少女の像に、少年は声をかけた。 少女は──レミリア・スカーレットは何も言わず、彼の手の平を自分の頬に宛がっていた。 レミリアの体温は人のそれより遥かに低く、だが冬の夜気よりは幾許か優しい。 「──夢を」 うっすらと開けた目を夢見るように泳がせながら、レミリアは言う。 「夢を、見たの」 今ここにいるレミリアを、少年は知らない。 少年にとってレミリア・スカーレットという少女は──少女の姿をした吸血鬼は、傲岸不遜で高潔で、しかしどこか子供じみた仕草を見せる、そういう人物だった。 けれども。今の彼女は、孤高なる狼の王というよりも、今すぐにでも霧になって消えてしまいそうに弱々しく見える。 「お前が死ぬ夢だったわ。お前はまるで眠っているかのように死んでいたの。 腐ることも枯れることもなく、ただ真っ白な部屋の中で真っ白なシルクの上に横たわっていた。 そこには私とお前しかいなくて、私はお前に薔薇を捧げた。真っ赤な真っ赤な血の色をした薔薇を捧げた。 けれどもお前ときたら、まるで冬の月のように真っ白な肌をして、目を覚まそうとはしなかった。 とてもおかしな話。そこでは、私とお前は同じ温度をしていたのに、私だけが動いていて、お前は死んでしまっていたの」 歌うようなレミリアに、少年は返す言葉を持たなかった。 それは、夢語りをするレミリアの姿が、彼の知るレミリアからあまりにかけ離れていたからだった。 「お嬢様……」 そう言葉を搾り出しても、続く言葉が出てこない。 何より、どう言葉をかけて良いのかも、まだ幼い彼には分からなかった。 怖い夢を見ることくらい、誰にだってあることだろう。ただそれは、彼の中のレミリア・スカーレットと、どうしても結びつかない。 悪夢ゆえに、こうして夜中に人の部屋を訪れることも。 吸血鬼である彼女が、少年が死ぬことに恐怖するという、それ自体にも。 「どうして、ここに?」 それが少年が出せた問いだった。 少年は、レミリアの『私物』として紅魔館にいる。 記憶も何もかもを喪っていて、湖畔に浮かんでいたところを拾われ、とても珍しい血液型の持ち主として、レミリアの舌を満足させるためにいる。 拾われてから、つい昨日、一年が経った。 その時間の中で彼が知ったレミリア・スカーレットという人物は、少なくとも、人前で弱音を吐くような性格ではなかったと思う。 レミリアもまたそれを自覚しているのか、くすくすと笑った。 「そうね、どうかしているわ。お前程度死んだところで、私の何が変わるというわけでもないのに」 少年は、この幼い吸血鬼のモノだ。その事実は変わらない。 それは両者が正しく認識している。普通の人間なら到底受け入れられる関係ではないが、生憎と少年には何もない。 産んでくれた母親も、十と少しの歳月を過ごした環境もあるはずだが、それらは全て彼の中から喪われた。 だから少年にとって、自分と同じ背丈のこの真白い吸血鬼こそが、世界の中心だった。 一年間生きてきて、色んなことを学び、それでもなお。 ここがまともな人間の住む場所ではないと知って、それでもなお。 どうしてかと言えば、それはきっと──とても簡単な、一つの理由。 「でもね、夢を見て、目覚めて──どうしても、お前の顔を見たくなった。 お前がまだ生きていることを確かめたかった。 ついでに、この喉の渇きを癒そうと思って、ね?」 ツゥと伸ばされた手が、少年の寝巻きのボタンを弾き、首筋を露出させる。 そこには二つの小さな傷痕が残っている。レミリアが少年の血を飲むときに、いつも牙を突き立てる場所だった。 「ああ、でも、どうしたことかしら」 傷痕を、ゆっくりと、優しく──まるで愛でるように、レミリアは愛撫した。 「今はもう、お前の味が、全然美味しそうだとは思えないの」 そう口にする吸血鬼は、笑っていながら泣いていて、喜びながら悔やんでいて、その全てを押し殺すように、表情を歪めた。 何にかは分からないけれど、苦しんでいるのだと、少年は思った。 だからどうにかして、それを取り除いてやりたいと思った。 「うまく、言えないと思いますけど、いいですか?」 「良いわ、言いなさい」 許可を得て、はい、と頷いてから、 「あの、僕は──咲夜さんもですけど──人間だから、きっとそのうち死んじゃうと思うんです」 「……そうね」 「それは仕方のないことで……えーっと、その前に、僕って、死んでもどうでもいい存在ですか?」 「……だったら私はここに来ていないわ」 少し憮然とした表情で、レミリアは応えた。心外だ、と言わんばかりに。 しかしそこまで言ったところで、はたと何かに気づいたように表情を変え、 「ええ、でもそうだということは、そうなんでしょうね。どうでもよくは、ないのよ、もう」 「あ、それはありがとうございます」 「いえいえ」 少年に釣られるようにレミリアまでもが頭を下げてから、 「いやそういうことじゃなくってですね」 「ええ、そういう話ではなかったと思うわ」 仕切り直し。 「えっと。僕は多分、そのうち死にます。 絶対に、ってわけじゃないですけど。死ぬのを、ずっと先にすることだってできると思いますし」 「そうね」 レミリアは吸血鬼だ。人の血を吸い、自らの眷属とすることができる。 そうして生まれた吸血鬼は、既に五百年を生きたレミリアと同様、途方もない長寿を得ることができるだろう。 「……私の眷属になるつもりは、ないの?」 そう、レミリアは口にした。 それを言うことは、彼女が本音を吐き出したのと同義だった。 ヒトである少年を、自らと同じ存在にしてまで生かそうとしているのだから。 咲夜にも以前、同じようなことを言ったことがある。そのときは断られ、レミリアも受け入れた。 それが自分と咲夜の最も正しい関係であると、レミリアが思ったからだ。 でも、今はどうだろう。 「ええ、そうよ、きっと怖いんだわ、私」 レミリアは少年の手を離し、代わりに両手で包み込むように頬に触れた。 「お前がいなくなるのが怖いの。私の時間の五百分の一しかないお前がいなくなるのが、とても怖いのよ。 どうしてだかは分からない。でも今は、眠るのが怖い。またあの夢を見てしまうのが、怖い」 少年は、ただの少年だ。珍しい血液型という以外には、何の変哲もない。 この感情の名を、レミリアは知らない。ただ、とても大切にしたくて、だから、喪われてしまうのが怖い。 「お前は私と同じ時間を生きてくれる? 私の永遠に近い旅路についてきてくれるの?」 声は哀願するようであり、強制するようでもあった。 普段ならば、少年がレミリアの頼みを拒むことはない。彼は彼女の所有物だから。 でも、今は。 「……僕はまだ、人間でいたいです」 真っ直ぐにレミリアの瞳を見つめて、そう返した。レミリアは、まるで最初から分かっていたとばかりに「そう」とだけ答え目を細めた 「でも」 「でも?」 「お嬢様とは、ずっと一緒にいたいです。……今は、それじゃダメですか?」 『まだ』は、『いずれは』と言い換えることもできる。 この一年、少年は一言も館の外に出たいとは言わなかった。ただレミリアの所有物であることを望み続けた。 それは彼が記憶を失くしていたからという事情もあったのだろう。 だが、最も大きな衝動は、彼がここで目覚めてから初めて見た、少女の姿。 横たわった自分を見下ろすレミリア・スカーレットを、『綺麗だ』と思ったから。 単に、鳥の雛の刷り込みのようなものだったのかもしれない。正常な触れ合いで獲得した感情ではなかったかもしれない。 けれども、彼はその理由だけで全てが足りているのだ。 「……そう」 今度は、レミリアは微笑んだ。処女雪のように柔らかな笑顔だった。 「そうね。あなたは人間で、いつか死んでしまう人間で、でもまだ生きている人間だものね。 ええ、そうね──仕方がないから、今はそれで満足してあげるわ」 そう言いながら、レミリアは顔を近づけていく。 血を吸われるときと同じ動作だったので、少年はなすがままそれを受け入れた。 だがいつまで待っても、皮膚を食い破る鋭い痛みはなく──代わりに、そっと唇に何かが触れる。 「…………」 何が起きたか理解できていない彼に、レミリアは悪戯っぽく微笑みかけてから、ベッドから飛び降りた。 「おやすみなさい」 そして返事を待たずに部屋を出て行く。 月光の薄明かりに浮かぶ顔には、心なしか、朱が差しているように少年には見えた。 と、そんなことがあったのが十年前。 「あの頃はまだ、あんな可愛い子供だったのにねぇ」 そう言いながらレミリアは、もう少年ではなくなった彼の肩に頭を寄せた。 時間が経つのは、早い。吸血鬼であるレミリアはそうでもないが、少年はおとなになった。 「ああ、そんなこともありましたね。今と同じような季節でしたか」 月明かりの差す窓辺で、二人は並んで椅子に座っていた。 何をするでもないこの時間を、たまらなく幸福だと、レミリアは思う。 「それで、目処は立ちそうなの?」 「ええまぁ、二、三年内にはなんとかしたいところですね」 「本当かしらね? もう少しパチェをつっついておくべきかな」 彼は現在、パチュリーの教えを受け、少しずつ魔法を学んでいる。 今はまだ『職業:見習い魔法使い』だが、いずれは捨虫の魔法を使って『種族:魔法使い』になるつもりでいた。 「そんなことしなくても、言えばいつでも眷族にしてあげるのにねぇ」 「まぁ、半ば意地みたいなものですけど。やっぱり、お嬢様と一緒にいるなら、自分で努力して並び立ちたいなって」 「別にいいけれどね。でも、本当に早くしてよ? 不老不死になったよぼよぼのおじいちゃんなんて、嫌よ、私」 「……いや、流石にそこまではないと思いますけど」 苦笑し、レミリアを抱き寄せた。 「大丈夫ですよ。パチュリー様も、ちゃんと教えてくれてますし。だから僕が魔法使いになったら、そのときは」 「ええ、そのときは」 手を、重ね合わせる。レミリアの左手薬指には、銀の指輪が光っていた。 鍍金とか錫入りとかそんなことはなく、純銀製だ。 「こんな、つけてるだけで痛いものまで嵌めてあげてるんだから……約束破ったら殺すわよ?」 「破りませんよ。でも結婚したら、もっと大きいのプレゼントしますからね」 「……意外と攻め手なのね、貴方」 言いながら苦笑しつつ、でも、とレミリアは空いている右手で、自分の下腹部をゆっくりと撫でた。 「本当、急いでもらわないと、どっちが先になるか分からないわ」 「滅多にあることじゃないと思うんですけどね……今までだって大丈夫だったんですし」 「どうかしらね? 何となく、そろそろかなぁって思うのだけれど」 「運命の糸が見える人が言うと、洒落にならないですよ、それ」 そうしてまた、二人で笑い合った。 紅魔館が上へ下への大騒ぎになるのは、これよりもうちょっと後の話。 新ろだ239 ───────────────────────────────────────────────────────────
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分類 キャラスレ民 【レミリア厨】 キャラスレでもたまに見かけるが、VIPPERが東方project~スレで見かけることの方が多い。 「東方(キャラ愛)厨である」ということにある種選民的な線引きをしたがるのと、特徴がないのと、少なくとも2人以上いるがキャラスレ上ではあまり主張しないので区別がつかない。レミリアを呼び捨てにするのと、お嬢様を付けて呼ぶのと、おぜうさまと呼ぶのがいる。しかし、どれがだれかはわからない。 1984年8月21日生まれ。27歳。無職。高知県在住。SkypeID syakeneko666 赤堀と同じペドフィリアであり、見つけたら近づかないほうがいい。 vipperがthprojectで70億キロ先からの帰還 http //live28.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1276439536/745 745 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/06/14(月) 19 52 48.52 ID NjMxhcjB0 レミリアの子宮口と俺の亀頭でキスしたい このような書き込みをはじめ、次元を超えた気持ち悪い書き込みが後を絶たない。 なお、赤堀とレミリア厨はスレ内で慣れ合いが目立ち、お互いの嫁を虐め合うなど、陰湿な書き込みが目立つ。 因に赤堀とは夫婦の関係