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死者スレの一角に立っている蝶豪華ホテル――『バーニング・ムーン』 その中のとある階、とある部屋。その一室がある2人の愛の巣となっていた――……。 ◆ ◆ ◆ 「るるるるるるるるるるるる――……」 この台詞だけでもう全部解った。続きを書く必要はないよ……という感じではあるが、しかし話は続く。 「あ、あの……そんなにひっつかなくとも……」 るるる……は勿論、るるるのるいずこと、美形元帥。名前の通りに美しく愛らしい少女だ。 でもって、その『犠牲者』は――激動のトウカリョウ。彼女と最後の夜を共にし、激しく尽きたあの男である。 「るるる……♪」 この美形元帥、生来よりるるるとしか発言できぬ――といった感じの美形元帥。トウカリョウにべた惚れ。 刷り込みだというのだろうか……、出会い、そして一緒にここに来てから後、彼女は彼にくっついたままである。 寝るときも、食事の時も、着替えも、お風呂もトイレ(!)も――、まさに『ルイズは俺の嫁』状態。 「あぁああ……、だめだから。ソコはだめ~……!」 しかし、それを羨むものはこの死者スレのどこにもいなかった。 やっぱりルイズじゃなくてるるる……だし、それに彼の逞しい全身に刻み込まれた小さな噛み傷。 でもって。テッカマンも月までぶっとぶバイタリティ。ハイテンション。常人ならば、死者スレでも死にかねない。 「る? ……――る! るるるるるるるる~☆」 やはり安心するのであろうか、死者スレ内でもそれぞれの書き手は見知った同ロワ同士で集まっていることが多い。 だけど、彼らに近づくものはいない。完全に危険物扱い。実はこのホテル内にはこの2人だけである。 「引っ張らないで! 取れるから! や、や、ややぁぁああぁあ~!」 美形元帥が暴れるたびに部屋が破壊されるので、今いる部屋もずっと住んでいた部屋ではない。 広い部屋中に、プリンのカップやクッキーの欠片。カラフルな金平糖。空の牛乳瓶。キャラメル味のポップコーン。 蜜柑のジャム。青いサイダーの瓶。踏み潰されたマシュマロ。透明なキャンディー。溶けたアイスクリーム。 ……と、一杯のお菓子が散らばっているが、それも昨日今日だけでのことである。 しかし、部屋はすぐにぶっ飛ぶし彼女をぶら下げたままじゃ無理だと、トウカリョウは掃除を諦めた。 ちなみに、一番最初に選んだ最上階のロイヤルスイートはその日の内に消滅している。 「るるるるるるるるるるるるるるるるるる――…………」 ◆ ◆ ◆ 甘い甘いピンクの毒入りストロベリージャム。 終わらないそれに考えるのをやめたくても、瞼にかける砂は品切れ。 次の入荷はいつかと聞いても、荷を運ぶ馬は鼠に化けて逃げたと言う……。 金の鎖。白い紐。青いリボン。真鍮の針金。雷を帯びた鯨の髭。なによりも強い、赤い糸。 神様からの贈り物が坂を転がり、鉄の門を抜け、茨の道を通り、紫の池を越え、地獄に落ちてゆくとしても、 ――わたしは絶対にコレをはなさない。 ◆ ◆ ◆ 昨日も、今日も、明日も、その先も――多分、彼女は幸せだろう。そして、彼も幸せになれるよう遠くから祈ろう。
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イーグル号が浮遊大陸アルビオンに到着したころ、ワルドが口を開いた。 「ルイズ、結婚式なんだがね、ここで挙げないか?」 その申し出をさも嬉しそうにルイズは答える。 「それは素晴らしいですわワルド様。今なら何年後でも予約できますわ」 「ああ、そうだね…」 (もうあきらめたらいいのに…) その様子をウェールズは本当に愉快そうに見ていた。 明日には死ぬ運命にある人間がここまですがすがしく笑えるものだろうか? もしかして本当は戦争なんて起きていないんじゃないか?とすら思える。 「ウェールズ王子さま」 「なにかな?ミス・みかん」 「どうして笑ってられるの?」 みかんにしてみればそれは気になって当たり前だった。 しかし、今聞くことではなかっただろう。 ルイズや船員、心なしかオルトロスさえ落ち込んでいるように見えた。 そんな中でも王子が笑みを絶やすことはなかった。 「ミス・みかん。明日死ぬからこそ、今は楽しく過ごしたいのだよ」 その発言に老メイジが追い打ちをかける 「おお、王家に仕えること60年、これほど勇ましいお言葉を聞いたのはいつぶりのことでしょう!!」 とたん、湧き上がる歓声、いいしれぬ恐怖を感じるルイズとみかんを気にするでもなく船は港に着いた。 ウェールズはルイズたちを少し待たせてから手紙を持ってきた。 「大事に保管していたからね、持ってくるのも少しばかり時間がかかってしまった。すまない」 何度も読み返さねばこうはならないことが誰の目にも明らかだった。 「ウェールズ王子…」 「アンリエッタの密書、確かに受け取ったよ、大使の皆。心から感謝する」 今この場で笑みを浮かべているのは王国軍のみだろう。旅支度を済ませたふうの女子供は一様にうつむいていて表情が分からない。 「あの、ウェールズ王子、手紙にはなんと書いてあったのですか?」 「密書の内容を知ろうとするのは大使失格ではないかな?」 当たり前のようにそう返すウェールズを見たルイズは言葉に詰まった。 「ですが、王子…」 なおも食いさがろうとするルイズの肩をワルドがつかんで制止する。 ルイズはためらったものの、みかんが後を継いでしまう。 「ウェールズ王子、にげちゃおうよ、たたかうひつようなんてないよ!!」 一瞬だけ、その場が静かになる。 しかしそれは本当に一瞬だけだった。 すぐに兵士たちは用意されていた酒や料理を囲んでまた騒ぎを始める。 「ミス・みかん、そういう問題ではないのだよ」 「じゃあどういうもんだいなの?!」 困ったように笑うウェールズの代わりにワルドが答えた。 「みかんちゃん。もしウェールズ王子が亡命したとなると、僕たちの国も戦争になってしまうんだ。政治というのはそういうものなのさ」 二人が絶句しているうちにウェールズはばか騒ぎの中に紛れてしまう。 ワルドもそれに続いた。 後には名誉の死なるものが理解できない二人の少女のみが残された。 星空の下、戦場を知った少女達は肩を寄せ合い泣いていた。 みかんとルイズは話し合いたかった。 しかし話し合えなかった。 もう自分たちではどうにもできないことが分かっているからだ。 どうしようもないのは分かる。 諦める諦めないではなく、次に進まなければならないとも。 それでも涙は止まらなかった。 相手の体温が温かく感じられた。 澄んだ空気はなんだか肌寒かった。 涙がかれるころにはきつく抱きしめあっていた。 そうでもしないとダメになりそうだからだ。 「ルイズお姉ちゃん」 「なに?」 「お部屋、戻ろう?」 「そうね、それがいいわ」 手をつないで部屋に帰る二人の後を、オルトロスがしっかりとついていきたまにその手を嘗める。 まうで慰めるかのように。 二人が夢に落ちるまでオルトロスは二人の側で起きていた。 ルイズは、本来慰めに来るべきワルドが来ないのは彼なりの配慮だと解釈いしていた。 それが、翌日の悲しみをいっそう強めることになるなど微塵も考えなかった。 よほど泣き疲れたのか、ルイズが目を覚ましたのは太陽が真上を過ぎたころであった。 窓の外を見たルイズは焦った。 確か戦争は今日始まってしまうはずだ。 皇子の説得も何もかもがこれでは遅すぎる。 いや、自分の命の安全さえ危うい。 なんにしても一秒でも早く誰かに会わなければ。 そう思い隣のみかんをたたき起そうとするが、なぜかみかんがいない。 みかんがいなければ当たり前といえば当たり前なのだが、オルトロスもいないではないか。 敵地で朝目覚めてみれば周りにいるはずの仲間がおらず独りぼっちになっていた。 さながらB級ホラーのような恐怖におぼつかない足を叱咤し、なんとかベッドの外に出る。 ようやく心臓が落ち着いてきたところで昨日のあの場所からかすかに音が聞こえることに気づく。 とりあえず誰かがいる。 その事実に安心したルイズは少しの迷いもなく音のする方へと向かった。 そこに待ち受ける惨劇も知らずに。 その光景を見た瞬間、ルイズは心底あきれた。 なんとあの兵士たち全員が眠りこけているではないか!! 豪勢な食事に囲まれて頭から酒をかぶり泥のように眠っている。 今日が命日だの何だのと散々騒いでいたのに昼過ぎまで眠っているとは一体どういうつもりなのだろうか? いろいろとつっこんでやりたくはあったが、まずはみかんと合流したい。 そしてできれば王子を説得して一緒にトリステインに帰るのだ。 姫様を悲しませたくはない。 そう思いルイズは近くの兵士の脇腹を、ある程度の、しかし決して弱くはない強さで小突き言い放った。 「ねぇ、ちょっと起きなさいよ。みかん見なかったかしら?」 しかしその兵士は微動だにしない。 まだ寝むっているのだろうか? 今度容赦のない平手打ちを叩き込む。 軽快な音が響き渡るが、そのものはおろかその場の誰一人として目を覚ましはしない。 悪夢にうなされだしたかのようにしだいに不安になってゆくルイズ。 じっとりと汗ばんだ手でその兵士をゆすり起こそうとして初めて、ようやく、その決定的かつ絶望的な異変に気づいたのだ。 「体温が、無い…!!」 へたり込み、ただ虚空を見つめる。 数秒、窓の外を見つめた後思い出したかのように全員を見回す。 やはり起きない。 どうあっても起きてはくれないだろう。 誰も息をしていないのだから。 これはきっと毒殺だ。 自分も王族の親戚であり、優秀すぎる母と父に囲まれて育ったのだ。 それぐらい分かる。 では誰が? 先ほどの物音の犯人が? みかんはどうした? 再度きづいたようにあたりを見回し、壁にもたれ目を見ひらくウウェールズと目が合う。 身近な死をようやく理解した頭は限界を超え、ただ嘔吐を繰り返した。 みかんはどこ?オルトロスは?死んじゃったの?何で私は生きているの? 説明のつかない現状に恐怖と焦りを感じながらルイズは震える足でなんとか前に進んでいた。 目的地などない。 もはやまともな思考回路なんてものはない。 そんな彼女がみかんを庇うように立つオルトロスと対峙するワルドが出会ってしまったことは少なくとも幸運ではないように思えた。 みかんが、驚きと苦しみの目でこちらを見る。 オルトロスはただワルドを、そしてワルドは銃をみかんに突き付けながら、ルイズを見やり苦笑した。 「やぁ、ルイズ。僕のルイズ。やっぱり魔法の混ざった薬は無効化されてしまったんだね」 茫然と立ち尽くすルイズにそう言い放つワルドの表情は、やはり苦笑であった。 「ワルド…、何をしているの?」 しかしワルドは答えなかった。 一瞬も油断しまいとオルトロスに注意を払っている。 しかし銃口を向けているのはみかんだ。 これだけの距離があればオルトロスに飛びかかられる前にみかんを撃ててしまうだろう。 見ればみかんは結界をはっているではないか。 なぜ二人が戦っているのか? 決闘? 昨日の続き? いや、仕切り直し? …一体何をしているの?この二人は!! 「あなたたち!!こんな時に何してるのよ!!敵が攻めてきたのよ?!王子様が死んじゃったのよ?!」 「そうだね、ルイズ。僕が殺したんだ」 え? 何を、言って… 「僕が食事に毒を混ぜたのさ」 ワルド? 「いや、一人の例外もなく騒いでいたからね。簡単だったよ」 なんで? 「ミス・みかんはともかく使い魔は始末しておきたかったのだがね。睡眠薬のにおいで飛び起きってしまたんだよ。殺そうにも足が速くってね。ミス・みかんは是非とも仲間に入れたかったので彼女を背に乗せて逃げる使い魔ごと殺すわけにもいかずおいかけっこになってしまったんだ」 だからなんで? 「そうこうしているうちにミス・みかんが起きてしまってね。困ったものだよ。ルイズ、君まで起きてしまうとは」 どうして? 「彼女の力は素晴らしいじゃないか!!なんとも不思議な力だ!!僕が世界を手に入れるためにはぜひとも欲しい力だ!!」 その言葉に、ようやく、いまさらに彼女は理解した。 「ワルド、あんた、レコン・キスタ…!!」 「その通りだよ、ルイズ。僕にはミス・みかんの、そしてそれ以上にルイズ!!君の力が、才能が必要なんだ!!」」 信じられなかったし、信じたくはなかった。 しかし、あの死体も、目の前のワルドも現実だ。 つい、その場にへたり込んでしまった。 涙が頬を伝うが、ワルドの演説は終わらない。 「君には絶対に才能があるんだよルイズ!!僕は、君にはあの虚無の才能があると思ってるんだよ。大丈夫、虚無の魔法を使う手段はもう調べてあるんだ。君をゼロだなんて二度と呼ばせない!!僕と一緒に来るんだ!!」 私に虚無の才能が? 「そうだとも!!君さえ協力してくれれば必ずや聖地を奪還してみせる!!」 そんなことのために? 「これはとても重要なことなんだよルイズ。僕たちは真理を知る術と義務がある」 「そんなの要らないわ!!」 ルイズの杖がワルドをとらえるが、ワルドは表情を崩さない。 「無駄だよ僕のルイズ。ここじゃ魔法は使えないし使えるようになったなら僕は誰よりも早く魔法を唱えられる」 言葉に詰まるルイズを楽しそうに眺めるワルドの言葉にみかんは震えながらも、しかしはっきりとした敵意をもって答えた。 「おじさん…」 「なんだい?ミス・みかん」 「わたし、きめた」 その言葉にワルドは嬉しそうな表情を浮かべる 「仲間になってくれるんだね?!」 「ちがうよ?」 矢継ぎ早な返答にワルドはつまる。 そして優しい声で話しかけた。 「どうして仲間になってくれないんだい?それと、決めたって何をだい?」 ルイズもまた、みかんの言葉を待つ。 「おじさんをゆるさないことをきめたの」 静寂、そして失笑。 笑い声の主が語りかける。 「いったい何を許さないんだい?」 耳に響く笑い声にルイズはうつむいてしまう。 今この場を支配しているのはワルドだ。 平時の彼女であればたとえどんな状況であっても抵抗したかもしれないがこんな状況では立ち向かう気にはなれなかった。 みかんは、その笑い声を打ち消すかのように先ほどよりも強い口調でしゃべる。 「わたしのけっかいは、まほうを『ぜんぶ』消すわけじゃないんだよ?」 言葉の意味がわからない、そんな風に構えるワルドの杖を灼熱が包み込んだ。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/407.html
朝だよ。と身体を揺すられる。ルイズは聞き慣れない声に目を覚ました。 目を開けば、そこには見知らぬ子供の身体。上半身が裸の様子にぎょっとする。 「こ、この子供、なに勝手に部屋に入って……!」 叫びだしかけるものの、すぐに我を取り戻す。昨日召喚したんだっけ、服がボロボロの少年を。 思いだしながら身を起こした。大きくあくびをする。いくらか頭が覚醒する。ため息をついた。 今日は嫌な朝だ。寝起きで一番に視界にはいったのが、平民の裸だなんて。 ルイズは使い魔に着替えを手伝わせる。 ダイは抵抗を示していたが、この世界ではこんなものだと言い聞かせると渋々ながら手伝うようになった。 「……ルイズって、自分で服を着れないの?」 「貴族は下僕がいる時は自分で服なんて着ないのよ」 「ふうん……、この世界はなんか、ヘンだよ」 「平民のあんたには理解できないでしょうね」 別にわからないままでいいと思う。だまって主人の言うことを聞いていれば。いちいち世界の違いを説明するのも疲れるし。 「その貴族とか平民とかっていうのがよくわからない。きみって人間が貴族じゃないと友達になれないの?」 「はぁ? なにいってんのよ?」 世間を知らない子供の質問が、煩わしかった。 着替えが済んだルイズは、服を取り出してダイに手渡す。自分が制服としてマントの下に着ているものと同じ、白いブラウスだ。 男ものの服など所持していないのだから、今日のところは無地のこれで妥協してもらうしかない。 義理で服をくれてやるのではなかった。ボロ切れを着けているだけの少年を連れまわすような、奴隷商人もどきの真似をするなど外聞が悪すぎる。ただ、それだけのことだった。 ダイも服を着て、部屋を出ようというところでルイズは尋ねる。 「そういえばあんた、なんでわたしのこと呼び捨てにしてるのよ、わたしはあんたのご主人よ?」 「だってルイズ、おれと同い年くらいだろ?」 誰と誰が、同い年だって? チビのくせに、ガキのくせに。 それともなにか、それはわたしのことが子供に見えると暗に言っているのか。 「……わたし、16よ?」 頬を引きつらせるルイズを恐れるでもなく、ダイはあっさりと答える。 「おれ12。なんだ、4つしか違わないじゃないか」 「4つも違うじゃないのよ!」 ダイとふたり、ルイズは部屋を出たところでキュルケと鉢合わせた。挨拶を交わあう。キュルケはにやりと、ルイズは嫌そうに。 キュルケは視線をダイへと移し、含むような笑みと共に彼をぶしつけに眺め回した。 「ふうん……」 「なによ、言いたいことがあるならはっきり言ったらどう?」 「ほんとに平民を呼んじゃったのね、ゼロのルイズ」 「うるさいわね」 「使い魔っていうのはこういうのを言うのよ? フレイム!」 のっそりとした仕草で、主人の呼びかけに応じて姿を現したのは巨大な火トカゲ、サラマンダー。 フン、と苦々しい表情でルイズはキュルケを睨みつける。火虫亀山脈がどうした。サラマンダーがなんだ。あんたの使い魔自慢なんか別にどうってことないんだから。 「あんた”火”属性だもんね。ぴったりだっていうのは認めてあげるわよ」 「ええ。微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」 そう言ってキュルケは胸を張った。ルイズも胸を張り返す。胸のボリュームの差が際立ってしまっていることは見ないようにした。 なにが男はイチコロだ。別に誰もがあんたを相手にするとは限らない――と、いるじゃないか、女の身体など相手にしない男の子が。 ルイズが自分の使い魔に目を移せば、そこではダイがフレイムに笑いかけていた。 異形とも言える火トカゲの巨体や、大きく燃える尻尾に物怖じする様子もなく。またフレイムも「きゅるきゅる」と明るい鳴き声でダイと接している。 キュルケは笑みを漏らした。平民の子供でもやはり使い魔は使い魔、通じ合えるものがあるのだろうかと感心する。 「こ、このガキ、使い魔同士でじゃれあってんじゃないわよ!」 「あいさつするくらい普通じゃないか。なに怒ってるの?」 「挨拶が遅れたわね。はじめまして、ルイズの使い魔さん。あたしはキュルケ、フレイムの主よ。あなたのお名前は?」 怒鳴るルイズと、異を唱えるダイにキュルケは割って入る。 「おれはダイ。よろしく、キュルケ」 「ええ、よろしく。面白そうだわ、あなた」 そう言ったキュルケは「じゃあ、お先に」とその場を去っていく。 キュルケがいなくなると、ルイズはダイに苛立ちをぶつけはじめた。 「いい! あんなバカ女ともその使い魔とも仲良くなんかしないで! ああ、みっともない! なんであっちサラマンダーでこっちはこんななのよ!?」 「みっともないってことはないだろ?」 「……ガキのあんたに言ってもわからないだろうけどね、使い魔が主人に、平民が貴族に口答えするなんて、そんなことしたら本当はただじゃ済まないんだからね」 「なんだよ、それ……」 不満を口にするダイをつれて、ルイズも食堂へ歩きだした。 食堂の豪華絢爛さに呆けている様子のダイに、ルイズの溜飲が少し下がる。テーブルではダイに床に座るように命じた。 「ルイズ……、そりゃないよ」 「室内で食べさせてもらえるだけありがたいと思いなさい。本当なら使い魔は外なのよ」 「……」 「俸大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」 貴族たちの、食前の祈りの声が唱和する。 ダイは溜め息をつき、床の皿に載っているささやかな二切れのパンをぽいぽいと口に放り込んだ。 当然、足りない。かえって空腹感が強調されてしまう。 「ルイズ、もう少し分けてよ。おれ、昨日からなにも食べてないんだ」 「まったく……」 ルイズはぶつくさ言いながら、鳥の皮をはぎ、ダイの皿に落とした。 ダイは溜め息をつき、皿に載っている鳥の皮をぽいと口に放り込んだ。 黙って空腹をやり過ごしていたダイは、床からルイズを見上げながらふと口を開いた。 「ルイズ」 「なによ、もう分けないわよ」 「この料理作ってるひととか、あそこで給仕をしてる女のひととかも貴族なの?」 「コックもメイドも平民よ、それがなに?」 「……いや、なんでもない」 それきり、ダイは黙って食堂の様子を見回すのだった。 四大系統。虚無。土。錬金。シュヴルーズの講義を聴きながら、ルイズは隣にいるダイの様子をちらりと見た。 いちいち質問を発するでもなく、いまはじっと興味深い様子で講義に集中している。 「わかるの? あんた」 「いや、全然。でも、なんとなくおもしろい」 「なんとなく、ね……」 これは退屈がるのも時間の問題かとルイズは思う。 「勉強は苦手だけど、こういう雰囲気はちょっと好きかな、おれ」 意外な一言だった。 「いろいろあって、こうやって他人の講義を聴くことはあまりできなかったし、ぜんぜん勉強してなかったことが足を引っ張っちゃって、ちょっともったいないときもあったから」 「ふうん……」 傍らの少年が、彼なりに学ぶことの重要さを認識しているらしいことが、ルイズには奇妙だった。それは、教育課程の内の課題のひとつとしてではなく、もっと重要な――― 「だから、こうしてきちんと勉強してるルイズのこと、かっこいいと思うよ」 「な!?」 唐突なダイの言葉に、ルイズは絶句する。 「怒りっぽいだけの子じゃなかったんだね、見直した」 「……い、言っとくけど、誉めたって食事を増やしたりなんかしないんだからね!」 授業中だと言うことを忘れて、大きな声を出してしまうのだった。 そんなふうなやりとりを、シュヴルーズが見とがめる。 「授業中の私語は慎みなさい」 「すいません……」 「おしゃべりをする暇があるのなら、あなたに”錬金”をやってもらいましょう。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 しかしルイズは立ち上がらない。困ったようにもじもじするだけだった。 「どうしたの? ルイズ」 「別に、なんでもないわ……」 シュヴルーズのもとへ、キュルケの困ったような声が届く。ルイズにやらせるのはやめたほうがいい。危険だ。 「危険? どうしてですか?」 「ルイズを教えるのは初めてですよね?」 「ええ。でも、彼女が努力家ということは聞いています」 シュヴルーズの言葉に、ダイはひとりうなずいた。 「さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、何もできませんよ?」 「そうだよ、ルイズ、がんばって」 ダイの耳打ちをうけて、ルイズは立ち上がった。ダイの激励に背を押されたのではない。 平民の子供ごときにそこまで言われるのは、ある意味プライドに関わる問題だったから。 キュルケの制止を無視し、教壇に立つ。ルイズは短くルーンを唱え、杖を振り下ろした。 「凄かったよ、ルイズ」 「なにがよ!」 爆発によって大惨事になった教室。それの後始末の最中のことだった。 「あれだけの爆発なら実戦で十分使えるじゃないか」 そんなことを言うダイが、ルイズには許せない。魔法の失敗に、いちいち触れてくる子供が苛立たしい。 「ふざけないで、からかってるの!?」 「本気なんだけどなあ」 「魔法のことなんてなにも知らない平民は黙ってなさい」 「……俺もさ、魔法の練習したことあるんだ、あっちの世界の話だけど。じいちゃんがさ、俺を魔法使いに育てたがって、たくさん魔法の練習させられたよ」 「あんたみたいなガキに、魔法が出来るわけないでしょ」 「……うん、出来なかった。才能がないって諦めてた」 それ見たことか、とルイズはダイを細目に睨みつける。 「そのときにさ、友達からこんなアドバイスをもらったんだよ、出来ないものは出来ないんだから今あるものを磨けって」 ルイズは、硬直した。 「ルイズ、才能あるよ。でなきゃこんな威力の爆発は起こせない。だから―――」 「―――だから、なによ」 それは怒りだ。ルイズはダイの言葉に憤っている。 「え……」 「出来ないものは出来ない、ですって!? 子供が舐めたクチ聞いてんじゃないわよ!」 ルイズは、叫んだ。 「……まいったな」 腹がへった。とぼとぼとダイは歩く。主人を怒らせてしまった。 結局、後始末が済んだ後、ルイズはダイの顔など見たくないというようにどこかへいってしまった。 たぶん、食堂にいるのだとは思うが、あれでは昼食を食べさせてもらうことなど出来そうにない。……もちろん、食事目当てに主人の機嫌をとろうしたわけではないのだけれど。 魔法使いになりたくなかった自分と、魔法使いになりたいルイズとでは、似ているようでまるっきり違っていた。 傷つけてしまったかな、と気まずい。こう気づいた後ではルイズにかけてやる言葉がなかった。自分の無思慮なアドバイスでは何にもならない。 改めて”先生”は凄いひとなのだと思う。戦士だろうが魔法使いだろうが勇者だろうが、あのひとは確かに、みなを正しく教え導いていた。 「困ったな……」 壁に背中を預けて、座り込む。 もとの世界のひとたちを思うと、やはりあちらの世界への思いが強くなる。昨晩、二つの月が浮かぶ夜空を見上げながら感じたさびしさがよみがえった。 帰りたい、心からそう思う。空腹と、生活を頼れるひとから嫌われてしまったことが望郷の念を加速する。 「どうしたの?」 少女の声に、ダイは顔をあげる。心配そうに自分を見つめる顔に見覚えがあった。朝食の時、食堂でみかけた、給仕をしていた女性だった。 揉め事が起こったのは、自分から離れたテーブルの席だった。香水がどうの、二股がどうの。 ルイズは騒ぎの方向に目を向けて、舌打ちした。金髪がひとり、黒髪がふたり。 当事者はメイジのギーシュと、平民のメイド、そして、自分の使い魔の少年だった。 「よかろう。子供に礼儀を教えてやるのも、貴族の仕事だ」 ギーシュとその友人たちが去ったそこに、ルイズが足を運ぶ。 残されたメイドは怯え、逃げ去った。それは正しい反応だ。ことの重大さをよくわかっている。しかし、ダイにはそんな様子は一切見えない。これだから子供は。 「あんた、なにやってんのよ、見てたわよ」 「あ、ルイズ……」 ダイは困り顔をルイズに向けた。なんだ、と思う。ギーシュを怒らせたことを、ちゃんと気まずく思っているようだ。 「ったく……、謝ってきなさい。今なら許してくれるかもしれないわ」 「……嫌だよ。ルイズには謝るけど、あのひとには謝る理由がない」 「は? わたし?」 「うん、さっきは、ごめん。わかったふうなことを言って、ルイズを傷つけた」 「な……」 ルイズは顔を引きつらせる。それはさっきの困り顔に、ギーシュは一切関係ないということだ。 「そんなことはいいのよ! あんた本当わかってないのね!」 言いたいことは全部言ったとばかりに、ダイはルイズから視線を外す。 逃げないようにダイを見張っていたギーシュの友人のひとりに、尋ねた。 「ヴェストリの広場って、どこ?」 「ついてこい、平民」 堂々と、恐れを知らない足取りで歩いていく子供の後ろ姿を、ルイズは歯ぎしりする思いで睨みつけた。 「ああもう! ほんとに! 使い魔のくせに勝手なことばっかりするんだから!」 ルイズは、ダイの後を追いかけた。
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ここは一体? の段 ルイズはうつむいた。よりによって人間を呼び出してしまうなんて。自分が呼び出した三人を眺めてまたうつむく。 三人組は揃って同じ服装をしていた。頭巾のようなものをかぶっている。 メイジではない、おそらく農作業でもしている平民だろう。 きり丸「どこだここ?」 乱太郎「さっきまで校庭で遊んでたんだけど」 しんべえ「ねぇ乱太郎、きり丸ここどこなの。変な服着た人がいっぱいいるよ」 (何が変な服よあんた達の方がよっぽど変じゃない) 「キャー、ルイズあなた幸せ者よ。だって三回もキスできるんだから」後ろから冷やかしが聞こえる。ルイズは振り向いてきっと睨みつけた。普段から仲が悪いようだ。 ちょっと待って、今なんて言った?えっ、三人と?一人じゃないの? 助けを求めるようにコルベールを見たがコルベールは黙って頷いた。仕方ない。 ルイズはつかつかと歩み寄る。それまでキョロキョロしていた三人の視線が一斉にルイズに向けられる。 ルイズ「あ、あんた達、これは名誉な事なんだからね、感謝しなさいよ」 ルイズはボケ~とつっ立っている三人に言うと儀式を始めた。 乱太郎「むがっ」 きり丸「むごっ」 しんべえ「ふごっ」 三人の左手にルーンが刻まれた。 儀式は一瞬で終わった。ルイズはさっさとその場を離れたが三人は直立不動だった。 そこから三人を自室まで連れていくのは中々骨だった。三人があまりにもバラバラな行動をとるのでルイズは縄で縛ってひとまとめにしてやろうかと思ったほどだ。 乱太郎「ここどこですか?忍術学園じゃないですよね?」 きり丸「あっ、やべ午後からバイトだった。早く帰らないと」 しんべえ「僕お腹すいちゃった。ステーキ食べたい」 おまけにうるさい。 ルイズ「あんた達いい加減口閉じなさい。いつまで喋ってんの」 一人一人は大して話していないが三人ともなると賑やかだ。 (貴族に対する口のききかたといい、態度といい何なのこの平民) 乱太郎「ここはどこなんですか?どうして私たちはここに?」 ルイズ「ここはトリステイン魔法学院よ」 きり丸「そろそろバイトだし帰してくれませんか」 ルイズ「無理」 しんべえ「バリッバリッ」 ルイズ「勝手にあたしのお菓子食べないでよっ」 そんなこんなでルイズと三人の使い魔の新しい生活が始まった。
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「てんくうちゅうしんけん?何それ?」 ロム・ストールの発した聞いたことの無い単語を不思議に思うルイズ 「悪を断ち、弱きものを守る正義の拳法、俺は亡き父の遺言によりそれを用いて旅を続けていた」 「ふ~ん・・・、ってそんな話をしている暇はないわ!今すぐ契約するわよ!!」 「契約?何の?」 「主と使い魔の契約よ!今から貴方は私の使い魔になるのよ!」 ルイズは力みながら説明した 第1話 新たなる大地!その名はハルケギニア! 「つまり使い魔とは君たち魔法使いのしもべになること、俺は君に召喚されたから君の使い魔として契約をしなければならない」 「そうよ、物分かりが早くて助かるわ、では早速・・・・」「断る」 「んな!何を言っているの!貴方は私に」 「君達魔法使いが伝統に従うように俺には亡き父の遺言に従って悪を討つ旅を続ける義務がある。それを途中で止めるわけにはいかない」 「そーいうことなら私も言うわよ!召喚のやり直しは出来ないのからもう私には貴方に使い魔になってもらうしか道がないのよ!」 ロムの言い分にルイズは真っ赤な顔をして反論する ルイズは思っていなかった まさか貴族である自分が平民(?)であるロムからここまで拒絶されるとは さらに周りの見回すと既に契約を済ませた級友達はそれぞれ使い魔の自慢話をしつつルイズをニヤニヤしながら見ている 当初の予定なら今頃自慢話の中心にいるのは自分のはず・・・・ しかし現実はそうではなかった ルイズの涙腺は爆発寸前だった (気の毒だが俺は一刻も早く仲間達の戻らなければならない。) ルイズに同情しつつ、ロムは手を空に掲げた (彼女の話からここはクロノスではない事は確かだ。だが彼女は俺をこの世界に呼ぶ事が出来た) (っという事は戻る事も可能なはずだ・・・・、よし、剣狼よ!我に導きを!!) しかし何も起こらない (ばっ・・・馬鹿な!剣狼が現れん!?) 父から受け継いだ狼の紋章を持つ剣、剣狼が今まで自分の下に現れないとはこれまでに無かったのだ さすが多くの修羅場を乗り越えたロムもこれには焦った 「聞きたい事がある」 「何よ!」 ロムは少し青い顔でルイズを見る、ルイズは再び目に涙を溜めていた 「帰る手段はあるのか」 「無いわよ!サモン・サーヴァントは呼び出す事しか出来ないのよ!」 「・・・・本当か?」 「本当よ!嘘付いてもしょうがないでしょ!」 少し思考した結果・・・・ 「わかった、君の使い魔となろう」 「ほっ本当!?本当に本当!!?」 「ああ、ただし帰る手段が見つかったら必ず帰る、それまで俺が使い魔としての働きをする」 ルイズは片手で涙を拭い、胸に手を当て息を吸った 一度は閉ざされたと思われた道に光が差したのだ・・・・・・ 「ではコントラクト・サーヴァントを始めるわよ。そこに座りなさい」 ロムは言われるままに膝を地に付ける、するとルイズは目の前に杖を掲げた 「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ド・ル・ブラン・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」 (成る程、これが契約か・・・・これで俺は、ってな!?) ルイズは呪文を唱えたあとロムに顔を近づけ、口付けを交わした 「ふう、これで契約は終わりよこれであんたは私の使い魔になったわ」 「・・・・・・・・」 唖然としたロムはルイズの顔をじって見ていた その透き通っている目に思わずルイズは頬を赤らめる 「なっ何よ、ひょっとして照れているの?しょ、しょーがないじゃない!私だって好きでやってるわけじゃないんだから・・・・」 「いや、女に迫られるのは慣れているがいきなり口付けをするのは初めてだと思ってな。意外と大胆なのだな」 ルイズの顔が全面真っ赤になる 「仕方がないでしょこれが儀式なんだから!それより今からあんたは私の使い魔よ!!」 「ああ、出来る限り努力しよう・・・む?体中が・・・・あ、熱い!!」 ロムの左手の甲から文字が浮かび上がる 「それは使い魔のルーンよ、使い魔になった証拠よ」「ふむ、珍しいルーンだな、どれもっと良く見せてくれないか」 コルベールがロムの左手に自分の手を添える、するとコルベールが段々悩ましい顔になっていった (こっこれはどういうことだ!?この平民何かおかしい・・・・!これでは・・・・) 「もういいか?」 「あ・・・・、すっすまん、では皆、教室へ戻るぞ」 ギャラリー達が宙に浮き始め、建物の中へと入っていく。 色々話している声があったがもちろんそれはルイズの事であった 「ルイズの使い魔にはあんな平民がお似合いだな」 そんな声が聞こえた気がする 「なんだ、マスターは飛ばないのか」 「うるさい!さっさと行くわよ!全く、何で私の使い魔が平民なのよ!」 ルイズはまだ怒っていた その夜・・・・ ルイズの部屋にてロムは窓から夜空を見上げる 「ふむ、この世界の月は2つあるのか」 「そんなの当たり前でしょ」 「俺の世界には太陽が2つあるが・・・・」 「太陽が2つ!?暑くないのそれ!!?」 「いや、それほどでもない、環境はこの世界とはあまり変わり無い。それに俺が仲間と共に旅をした場所には全てが氷でできた大地もある」 「あんた今までどんな生活してきたのよ・・・・」 ルイズは呆れながらも言う ロムはルイズに自分の世界の事を話していた。自分の事や、世界に住人の事、そして仲間達と共に旅をしていたこと 「要するに貴方の世界の住人は貴方の様に体を鋼で包み、それ所か別の物に姿を変えることができるのね。じゃあ貴方も姿を変えることができないの?」 「できん、俺はクロノス族に属している。クロノス族は人間の姿が基本だ」 (何よそれー!平民の使い魔を連れているなんて馬鹿にされないためにずっと姿を変えさせておこうと思っていたのにー!) ルイズがぶわぶわと長い髪をかきあげる ロムが再び口を開ける 「しかし君を悪人から守ることはできる。天空宙心拳は人を活かす拳だ」 確かにロムは見掛けかしてとても強そうだ 顔立ちも昔家に招待された高名な騎士と似ている しかしその騎士との決定的違いは魔法が使えないという事 もしも悪人が魔法を使ってきたらあっという間に吹き飛ばされてしまいそうだ 「まぁ期待しておくわ、それよりもあんたにやってもらうことは沢山あるわよ!覚悟しなさい!」 「ああ」 ロムがこくりと頷く 「じゃああんたの寝床はそこ」 ルイズが指を床にさしたあとロムに毛布を渡す 「ああ、野宿には慣れている」 それからブラウスのボタンを一つずつ外していき、下着姿となった 「なっ、なにをしているんだ!」 ロムがすっとんきょうな声をあげる 「寝るから着替えるのよ」 「何故人前でやる!」 「別に、使い魔に見られたって何ともないわ」 迫られるのは慣れていると答えたが元々女性自体に慣れてないロムは流石にルイズの行動にまたもや唖然とした 「それとこれ朝までに洗って置いてよね」 っと言って純白の下着類を渡す 「少し、夜風に当たって来る・・・・」 ロムがドアノブに手を掛ける 「あらそう、言っておくけど帰るなんて事は考えない方がいいわよ。明日から雑用三昧だから、それじゃおやすみ」 一度召喚された場所へと戻るロム 「あの時剣狼は確かにこの手にあった、っということは剣狼もこの世界にあるはずだ。」 自分の手のひらを握りしめる 「バイカンフーを呼べば次元を貫いて下の世界へ戻れるはず、きっとクロノスへ戻ることができる」 空に浮かぶ2つの月を見上げる 「ジェット、ドリル、ジム。俺がいなくなった世界で何を思っている?」 共に父が印した狼の印を探す旅を始めた仲間達、夜空を見ていると彼等の顔が浮かび上がる 「レイナは今頃、泣いているのか?」 自分に良くくっついていた可愛らしい妹が大きな月に浮かび上がる 「待っていろ皆、俺は必ず帰って見せる」 そっとドアを開けると薄暗いランプに肢体を照らしながらすやすやと眠るルイズがいた 「だが、俺はこの娘を守る事が・・・今後の日課だな」 ルイズをレイナに照らし合わせながらロムはランプの火を消した おまけ 金髪の少年がセミロングの髪の少女と共に学院のベランダに出ていた 「確かに君の言う通り今日の夜空は星が多くて美しい・・・・、素晴らしいよカレン」 「ありがとうございますギーシュ様・・・・」 カレンと呼ばれた少女は両頬にそれぞれ手を当ててうっとりしていた 「おお、今蒼い流星が流れたよ」 「私も見えました、まるで妖精が夜の運河を滑るように・・・・」 「カレン、夜が深くてもこの星の輝きの下なら遠く都を探すことができるよ。それに、今は君の顔をしっかり照らされていてとても美しい・・・・」 「ギーシュ様・・・・」 二人は互いの唇を合わせようとする、すると下の方から足音が聞こえる 「誰だ?二人の時間に割り込んで来た無粋な者は」 下を見ているとそこにいたのはあのゼロのルイズが召喚した平民であった (全く、貴族の楽しみに土足入ってくるとは。これだから平民は・・・・) 「あの方・・・・素敵」 (な、なんだってー!) 「あのしなやかな体付きを思わせるスマートな鎧、キリッとした目付き・・・・素敵ですわ・・・・。でもあの人はあのルイズの使い魔で平民・・・・ああ、何この気持ち!?これが恋心!?」 拳を握りしめて男を睨み付ける (あの男平民でありながらこの僕から(何人もいる)ガールフレンドを誘惑するなんて・・・・、・・・・この代償、高くつくよ・・・・) しかしその後酷い目にあうのは自分だったりする・・・・
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エタイ腕試し最高記録:420pt(第356回 ことわざ)
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「天空宙心拳!旋風蹴り!!」 ロムがゴーレムに向かって蹴りあげるしかし、腕のガードによって防がれそのまま吹き飛ばされてしまった 「ち、ならば!」 瞬時に体勢を整えると飛ばされた先にある木を蹴りあげさらに高く跳んだ 「はあ!稲妻蹴り!疾風突き!瞬殺拳!!」 そのまま懐に入り込み、止まらぬ連撃を与える するとゴーレムはたまらず倒れてしまった 「ロム!」 ルイズが叫ぶ 「凄い・・・・、流石ダーリン、ゴーレムなんかに遅れを取らないぐらい強いじゃない」 キュルケが感嘆する 「・・・・・・・・」 タバサはじっと闘いを観察していた (土埃が濃くて視界が悪い!奴はいつ立ち上が・・・・うお!!) ロムの正面に巨大な拳が向かってきた これを蹴りあげ、三角跳びで手の上に乗り、顔に向かって腕の上を走った 「天空宙心拳!旋風二段蹴り!!」 全身を回転させながら強烈な蹴りを頭に二発、顔を削られてさらにゴーレムはのけぞったがロムの勢いは止まらない 「岩石砕きだ!!」 さらに顔に強力な一撃を叩き込み、ゴーレムは再び大きな音を立てて倒れた 「やったやった!ダーリンあのゴーレムをやっつけちゃった!これでフーケも」「いいえ!まだ動くかもしれないわ!!でもあそこまで削っちゃえばひょっとしたら私達でも」 興奮するルイズとキュルケに対して 「駄目」 タバサが冷たい一言を放つ 「なんで駄目なのよタバサ!ダーリンがゴーレムを押しているじゃないの!」 キュルケは反論するがタバサは続けて言った 「硬い」 「へ?」 「あのゴーレムは硬い」 「っで、でもロムは素手でギーシュのゴーレムを壊したわよ!」 ルイズもたまらず言うが 「それよりも硬い、もしこのまま彼が戦えば彼は直ぐに弱ってしまう」 「そ、そんな!それじゃロムは」 「やられちゃう」 ルイズとキュルケの顔が青くなる 「ロムを助けて!」 ルイズが叫ぶがタバサは首を振った 「近寄れない」 近寄ろうとするとゴーレムが拳を振り回すので使い魔を近づけることが出来なかった 一方ロムは (さすがに・・・・このまま闘えば俺の拳が砕けてしまうな。だがここで退くわけにはいかん! こいつを倒してフーケを捕まえる!ルイズの誇りの為に!!) そしてゴーレムが立ち上がる そして立ち上がったのと同時に拳が鋼鉄に変わる 「なっ・・・・!」 ロムが声を上げて驚く ゴーレムの拳がうなる、がロムは高く跳んで避ける 「さっきよりも速い!ここにきてまた強くなった!」 ルイズは苦戦するロムをなんとか自分が手伝える方法はないのか そう考えていてすぐに目に入ったのはタバサが抱えていた『巨人の剣』という名の杖だった 「タバサ!それを!」 タバサは頷いてルイズに『巨人の剣』を手渡す 見た目はただの大きな杖だ しかし自分の魔法はあてにならない、今はこれしか頼れない ルイズは深呼吸して、目を見開いた 「タバサ!私に『レビテーション』をお願い!!」 タバサが慌ててルイズに呪文をかける するとルイズは杖と共にゆっくりと地に降りた 「そこのゴーレム待ちなさい!ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが相手よ!!」 地面に立ったルイズは遠くに居るゴーレムに向けて怒鳴った 「ルイズ!来ちゃ駄目だ!!」 ロムも怒鳴る、しかしゴーレムの注意はルイズに向いた ルイズは思いっきり杖を振るが何も起きない、その間にゴーレムはどしどしとルイズに向かって言った 「なんで何も起きないのよ!本当に魔法の杖なのこれ!!」 ルイズは前を見てゴーレムが自分に近づく事に気付くと真っ青になった 「いやあああああ!」 ルイズが叫ぶ 「ルイズ!!」 ロムも思いっきり叫んだ その時だった 左手の甲に刻まれたルーンが突然強い光を放った 「何!」 ロムが突然の事に驚く それと同時にルイズの持っていた『巨人の剣』も強く光った 「な、なんなのこれ!?あっ『巨人の剣』が崩れて!?」 空にいるキュルケとタバサもその強い光に驚いていた 「タバサ!これは!?」 「見当もつかない」 そしてルイズの方の光が止む 「こ、これが『巨人の剣』の!?きゃあ!」 ゴーレムは拳をルイズに向けるが しかしルイズは追い付いたロムに抱き抱えられてなんとか助けられた 「ル、ルイズ!それは!」 「こ、これが『巨人の剣』の正体みたい・・・・」 ルイズの手の中にあったのは、白銀の身が美しい剣、その柄には狼の印が付いていた 「『剣狼』・・・・」 ロムが呟く 「剣狼!?それがその剣の名前!?」 ルイズが大声を出す 「ルイズ!その剣を俺に!!」 「は、はい!」 ルイズは『剣狼』と呼ばれた剣を渡すとロムから降りる しかし容赦なくゴーレムは一撃をぶちかまそうとしていた 「ヴァリエール!!」「危ない!」 キュルケとタバサが叫ぶ 「きゃああああああああ!!」 「天よ地よ、火よ水よ、 我に力を与えたまえ・・・・!」 ロムがそう呟くと剣は再び光、宙を舞った 大きな鈍い音がした 「あれ・・・・?何ともない・・・・?どうして?」 ぎゅっとつむっていた目を見開くとそこには 「青い・・・・ゴーレム・・・・?」 フーケのゴーレムよりは一回り小さいが、蒼く輝く巨人がそこに立っていた 光のエネルギーが頂点に達した時 ロムは剣狼を通じて次元を越え 光の巨人を呼ぶことができる 巨人と合身した時、ロムは更なる力を引き出す事が出来るのだ!! 「闇ある所に光あり 悪ある所に正義あり・・・・ 天空よりの使者!! ケンリュウ見参!!!」 「・・・・凄い、あれが巨人の剣の力?」 「ダーリンが、ゴーレムになっちゃった・・・・!」 その様子を見ていたタバサとキュルケが目を見開て驚く 「ロ、ロム!?あなたなの!?ロム!!」 「マスター、俺だ、安心しろ!すぐに終わる!!」 ケンリュウの中にいるロムが言う するとケンリュウは自分よりも一回り大きなゴーレムを持ち上げ前に投げた ゴーレムは何も出来ずに森の中に落下していく 「出ろ!剣狼!!」 ロムが叫ぶとケンリュウの頭の上が輝くと、その中から巨大な剣狼が現れる 「さあ、これで終わりだ!!」 ケンリュウが剣狼を手に取り構える ゴーレムは木を薙ぎ倒しながら立ち上がり腕を広げてケンリュウに向かって突進する! 「とあー!!」 ケンリュウは高く跳んだ! 「天空真剣!稲妻二段斬り!!」 そしてゴーレムを上から切り裂き、更にもう一撃を与える! 「成敗!!」 ロムがそう叫ぶとゴーレムは四つに分かれ、倒れる そしてただの土の山になってしまった ケンリュウからロムが出てくる、すると闘いを見守っていた皆が近寄ってきた 「ロム!凄いわ!やっぱり私のダーリンね!」 キュルケが抱きついてきたそして未だに放心状態のルイズに対してロムが言った 「マスター、戻ってきたぞ。ゴーレムも倒した」 ハッとなったルイズはロムに顔を向けた 「当然でしょ!私の呼んだ使い魔なんだから!!」 そして顔を赤くしながら言った 「フーケはどこ?」 タバサの一言で全員が一斉にはっとした 「そうだ、奴を捕まえなければこの事件は終わらない!」 ロムがそう言うとケンリュウは消えて、そこには剣狼だけが残っていた 辺りを偵察に行っていたロングビルが戻ってきた 「ミス・ロングビル!フーケはどこからあのゴーレムを操って・・・・」 キュルケがそう言うとロングビルはわからないというように首を振った 四人は土の小山を探しロムは地に突き刺さった剣狼を見つめる 「何故あのような状態で剣狼が?俺と一緒にこの世界に来たのでは無いのか?」 そう思って剣狼に手をかけようとするが、突然横から走り抜けたロングビルに奪われた 「ご苦労様」 「ミス・ロングビル!どういうことですか!?」 ルイズが唖然としてロングビルを見つめる 「さっきのゴーレムを操っていたのは私、ごめんなさい」 「え、じゃ、じゃああなたが・・・・」 目の前の女性は眼鏡を外し、優しそうな目はつり上がり猛禽類のような目付きになる 「そう、私が『土くれ』のフーケ!さすがは『巨人の剣』ね。あのゴーレム、スクウェアクラスの作り出すそれよりも強力だったわ!」 剣狼を四人に向けて掲げる、タバサが杖を振ろうとするが 「おっと。動かないで?動いたら今すぐあのゴーレムを呼んで貴方たちを踏み潰すわ」 仕方なくルイズ達は杖を放り投げる 「どうして!?」とルイズが叫ぶ 「そうね・・・・ちゃんと説明しなきゃわからないわよね。 私ね、この『巨人の剣』を奪ったのはいいけど使い方がわからなかったのよ。 振っても振っても魔法をかけても何も起こらない・・・・。使えなければ宝の持ち腐れ、そうでしょ?」 フーケが妖艶な笑みを浮かべた 「それで俺達をおびき寄せて使い方を知ろうとしたのか」 ロムが睨みながら言う 「そうよ、魔法学院の者だったら知っててもおかしくないでしょ? まあ知らなかったら全員ゴーレムで踏み潰して次の連中を呼ぶつもりだったけど。 でもその手間は省けたわ」 フーケは笑う 「じゃあお礼を言うわ!さよなら!」 フーケは空に掲げてケンリュウを呼ぼうとした それと同時にキュルケは目をつむった タバサとルイズも目をつむった しかしロムが言った 「そいつは俺しか使えない」 「あなた何を言っているの?」 フーケが言い返す ロムが構えるとフーケは剣に向けて強く念じたが何も起きない 「な、どっどうして!?」 フーケが怒鳴る 「言ったはずだ、それは俺しか使えないと」 「あ、あなたいったい・・・・何者・・・・」 フーケは唖然としながら後ずさりするが、ロムはその瞬間に後ろついて言った 「お前に名乗る名前は無い!」 そしてフーケを気絶させて剣狼を拾いあげる 「ロム?」 ルイズ達は目を丸くしてロムを見つめた 「さあ、これで一件落着だ。早く帰ろう」
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あいつらがやって来たの段 ルイズは自分が召喚したものが何であるか分かった。しかし、いくら才能がない自分でもしかも・・・・・・。 悲しいことであるがルイズは自分があまり、いやほとんど魔法を使えない事をよく自覚していた。 自分が魔法を失敗するたびに周りから笑われていた。使い魔の召喚も成功するはずがないだろうと半ば諦めていた。 でも、もし、万が一成功することが出来たら。サモン・サーヴァントで周りがあっと驚くようなヤツを召喚出来たら。 ルイズはそんな淡い期待を込めて臨んだ。 呪文を紡ぎ、杖を振る。すると、目の前の空間に召喚のゲートが開かれた。 やった、これであたしにも使い魔が・・・・、何がくるのかしら・・・・そこまで考えたときそれは現れた ルイズは嬉しかった。ゲートが開いた瞬間に使い魔が来てくれたのだから。 その幸せは使い魔が何であるかを認識すると落胆に変わったのだが。 ルイズの前に現れたのは人間であった。おまけに、3人。人間を呼んでしまった事を悟ったルイズは激しく動揺していた。 さらに、呼び出された使い魔の方も慌てふためいていた。なんとなく、間抜けな風貌である。よく見ると年下のようだ。 ルイズ「あんた達何なの」 3人はしばらく間を置いてこう答えた。 「乱太郎」 「きり丸」 「しんべえ」 名前までも抜けててるなぁとルイズは思った。
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (7)破壊 「やっと見つけたわルイズ!!」 ルイズ達が部屋に戻り、暫く。 ルイズは勉強、ウルザはアーティファクト製作を再開していると、部屋にキュルケが飛び込んできた。 「おじさまを独り占めしてデートをしてると思ったら、今度はいつの間にか部屋に連れ込むって訳!?いつの間にそんな知識をつけたのよ!」 「ちょちょちょっ、待ちなさいキュルケ!あんた何言ってんの!?支離滅裂よ!」 「うるさいうるさーい!ネタは挙がってるのよ!おじさまにプレゼントをして気を引こうって魂胆なんでしょっ!」 「ち、違うわよ馬鹿!私はアブない奴に魔法を使わせるよりもまだ刃物持たせてた方が安全だと思っただけよ!その証拠に、ミスタ・ウルザとは私が許可しない限り魔法をむやみに使わないって約束したんだからっ!そうよね!?」 「その通りだ、ミス・ツェルプストー」 「そんな、おじさま………ツェルプストーなんて他人行儀ですわ。わたくしのことはキュ・ル・ケとお呼び下さいな」 「では今後はそうさせて貰おう、ミス・キュルケ」 「ほらっ!おじさまだってあんたみたいな幼女体型よりも、私みたいな我が儘ボディが好みだって仰ってるじゃない!」 「言ってないわよっ!」 「キュルケ………本題」 いつの間に入ってきたのか、青い髪の小柄な少女―タバサが座って本を読んでいた。 「そうだったわ!危うく忘れるところだったわ」 キュルケは背中にしょっていたものを両手に抱え、そのままウルザに差し出した。 「おじさま………わたくしからのプレゼント、受け取ってもらえますか?」 「ふむ、私にかね?どれ………」 ウルザががさごそと包装を解くと、そこには見覚えのある一振りの剣が。 「あ、あんたっ!この剣はっ!」 「ルイズはおじさまにみすぼらしい剣を贈ったそうじゃない?流石にそれよりはマシな剣だと思うのだけど、どうかしら?」 「だ、だ、だ、だだってっ!本人がそれが良いって言うんだもん!」 「おじさまのせいにするなんて、あなたって使い魔の主人失格ね」 「なななな、何言っちゃってんのよ!?ミスタ・ウルザ!このアホ女になんか言ってやんなさいよっ!」 「ありがとう、感謝するミス・キュルケ」 「そうじゃないでしょーーーーっ!!!」 結局、どちらの剣を貰うかをウルザが選ばなかった為、二人で勝負して、勝ったほうの剣をウルザが使うということになった。 宝物庫前。 そこには宝物庫に侵入しようとしている賊の姿が一つ。 「流石は学院本塔の壁じゃない、物理攻撃が弱点と分かっても、こんな分厚くっちゃちょっとやそっとの魔法じゃ、どうにも出来ないじゃないの」 賊が計画を練り直すべく立ち去ろうというときだった。 「いいっ!先に的を地面に落としたほうの勝ちよっ!」 「ゼロのルイズが大きな口を叩くじゃない」 「よりにもよって、宝物庫に吊るして、馬鹿なことを…」 二人の勝負の方法はいたって単純。 本塔の屋根からロープで吊るした的、これをロープを切って地面に落とした方が勝ちである。 しかし、二人が立っているのは的からは離れた場所。 この距離から決して太くは無いロープを撃ち抜くのは、そこそこの実力と集中力が要求される。 ちなみに、ウルザとタバサは二人の後ろで、ことの次第を見守っている。 「それじゃあ、私からいくわよっ!…ファイアーボールッ!」 火球が尾を引きながら本塔へ向かって飛んでいく。 シュボッ! しかし残念ながらこれは失敗。 火球はロープにかする事も出来なかった。 「あーぁ、失敗かぁ、はい、次はあんたの番よ。精々頑張んなさい」 「わ、分かってるわよ!」 ルイズが瞳を閉じて集中する、火の玉を飛ばすイメージ。 「ファイアーボールッ!」 キュィィン、 ズバーン! ルイズの魔法は失敗し、その爆発は本塔の壁に直撃した。 「流石ゼロのルイズね!」 「いいわ、次こそ当ててやるんだからね!早くやんなさいよ!」 「はいはい、……ファイアーボールッ!」 キュルケの二度目のファイアーボールはロープにかするかかすらないかのスレスレを飛び、未だ的は中空にあった。 「惜しいっ!でもコツは掴んだわ、次は絶対に当たるっ!さあ、あんたの番よ、ゼロのルイズ!」 キュルケはコツは掴んだと言った、そしてあの自信。 きっと次は当ててくるだろう。 となると、ルイズのチャンスはこれが最後である。 ルイズは集中する。 ―火の玉を飛ばすイメージ。 ―このままでは宿敵、ツェルプストーに敗れてしまう。 ―あのキュルケに負ける、私のことをゼロ、ゼロと呼ぶあいつに。 ―私はやっぱりゼロ?どこまで頑張ってもゼロ? (駄目だ、集中できない!) その時、構えた杖が震えていたルイズの手に、誰かの手が添えられる。 「ミスタ・ウルザ!手助けなんてフェアじゃありませんわっ!」 ウルザは視線を正面に向けたまま応える。 「しかしミス・キュルケ、君は先行だ。この位のハンデをあげても良いのではないかね? それに私は手を添えて、ミス・ルイズの集中を手助けするだけだ。魔法を使うのはあくまでミス・ルイズだ」 「そういうことでしたら………」 ルイズの腕を掴む、ウルザからの囁き。 「さて、ミス・ルイズ。力を抜きなさい」 「は、はい」 「雑念を捨てたまえ、集中するのだ」 「はい…」 「そうだ、集中…集中…集中するのだ…」 手から伝わるウルザの体温、冷たい…… 冷たいけれど、しっかりと自分を見ていてくれる、――実感。 「集中…集中…集中…」 ウルザの囁き、段々と意識がぼんやりとしてくる。 囁き声が、耳からではなく、内から響いてくる感覚。 まるで自分の中の自分に、直接語りかけられているような… 「そうだ、何もかもを忘れ…一つのことだけを考えるんだ…」 ――――でも、私、ファイアーボールなんて成功したことが―――― 「それは雑念だ、ファイアーボールなど、使わなくていい…ただ、君の中にあるものを表に出したまえ」 ――――私の…中…―――― 自分の中にある混沌が見えた。 絶えず形を変え、うねり続けるもの。 混ざり合い、一定しない、不定の力。 「そうだ、その中から…取り出すのだ、分離させるのだ、純粋なる力を」 混沌としたそれを凝固させる、そしてその中から、抽出・分離。 白と黒の 瞬間 ルイズの中で、何かが弾けた。 破壊/Destroy 「 !!」 ルイズが声ならぬ声をあげたかと思うと、閃光が放たれ、ロープ横の魔法学院本塔の壁に直撃した。 壁からは煙が上がり、パラパラと破片が落ちているようである。 「――――!っ!ハッ!ハアッ!わ、私、今…!」 今までの失敗魔法とは違う、確かな手応え。 「今!今っ!まほ、魔法をっ!」 背後の男が笑った気がした。 「やったーっ!私の勝ちねルイズっ!おじさまには私の剣を使ってもらうわよっ!」 もうゼロなんて呼ばせないわ! ―――虚無の魔道師 ルイズ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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前ページルイズの魔龍伝 8.品評会、その裏で 澄み切った朝の空気はゼロには涼しいぐらいであった。 広がる平原の中、抜き身のデルフリンガーを構え相手と相対するゼロ。 「相棒…次の一撃で決まるな」 「あぁ」 涼しい空気の心地良さも、顔を伝う汗の感触も今のゼロにはいらない。 その全神経を目の前に集中させ全ての意識を相手へと収束させる。 一秒が一時間にも感じられるような時の流れの中、先に動いたのはゼロであった。 「うぉぉ――――――――っ!!!!」 デルフリンガーを振りかざし相手へと飛び掛るゼロ、錆の残る刀身が朝日を受けて眩い光を放っていた。 ……… 景気のいい音と共に最後の薪が綺麗に真っ二つに割れた。 「うりゃぁ!」 すかさず二撃目を加え、綺麗に二等分された半円の薪がさらに半分になり四等分されたのであった。 ゼロの後ろには今朝から割った薪がうず高く積まれている。 「よし、これで今日の分の薪は用意できたな」 「相棒ォ~…」 割った薪を手早く縄で括っているゼロに悲しげな声でデルフが語りかける。 「俺っちは薪割り用の鉈とか、オンボロになったから薪割りで余生を送る斧じゃねぇのよ? 国を襲い民を苦しめる凶悪な魔物とかさ、その力で破壊を巻き起こす悪のメイジとかささ…… もっと斬るべき相手ってのがいるんじゃねぇのかって話よ!」 「ふむ……遠くの山にかさ雲がかかっているな。 そのうち雨が降るとなると、シエスタに言っておいたほうが良さそうだな」 その悲しい語りも何処吹く風、ゼロは空を仰ぎ見て天気の事を気にかけていた。 「聞いてよ俺っちの話!!」 「あぁスマンスマン、聞いてるよ」 「じゃあ分かって剣たる俺っちの叫び!!」 まとめた薪を背負い、デルフリンガーを鞘に収めてヴェストリの広場を後にしながら ゼロはデルフリンガーの訴えを聞いていた。 「今日はお前を使って薪割りをやってみたが、思った程切れ味は落ちて無いな。 これなら十分あの鉄剣とタメを張れるぞ、良かったなデルフ」 「じゃあ斬ろうぜ相棒!西へ東へ相手を求めどこまでもっ!」 「それじゃあお前が何者なのか、どうして外見を分からなくしていた俺を人じゃないと見破ったのか、 そしてお前の言う“使い手”とはなんなのか、正直に話してもらわないとな」 「え、え~っとだな…」 「やっぱり忘れてて思い出せねぇや!悪ぃな相棒!!」 「なら駄目だな、諦めろ」 「くぅっ…ひでーやもう…」 この小うるさい剣が来て二日、ゼロとデルフリンガーの間にこんなやりとりが度々あった。 何がしらあるとはゼロも感づいてはいるものの肝心のデルフリンガーがこんな調子なので ゼロの疑問は一向に解決していなかったのだ。 「あっ、あの風竜とかデケェしちょうどいいぜ相棒!! ちょっとぐれぇ使い魔が減っても問題ねぇや、やっちゃおうぜ!!」 「きゅ…きゅいきゅいきゅいーっ!!??」 朝のひと運動なのか、先ほど森から飛んで来たシルフィードにとってその発言は寝耳に水であった。 荒げたような鳴き声になってゼロへと近寄るシルフィード。 「俺に何するんだぁー!!た、助けてくれ相棒ーっ!!」 「今のはお前が悪い、平和な世界の空を暫く満喫して来れば考えが変わるんじゃないかな」 シルフィードは器用にゼロの右肩鎧に刺さっているデルフリンガーの柄を咥えると、それを引き抜き そのままデルフリンガーと共に再び空へと飛んでいった。 「おーいっ!それは俺の武器だから壊さない程度に遊べよーっ!!」 朝日が眩しい青空に、ゼロの声とデルフリンガーの悲鳴ががこだました。 一方のルイズはというと、まどろみの中夢を見ていた…… またルイズは黒い龍に乗って雷雲の中を突き進んでいる。 「まただ…私は何処へ行くの…?」 行き先も分からずそのまま飛び続けていると雷雲の向こう側が光を放った。 それは段々と輝きを増しながら、形を表しながらこちらへと近づいてゆく。 龍、それは三つ首の黄金の龍だった。 黒い龍に乗ったルイズの目の前へとやってくるとその三つ首龍は悠然と語り始めた。 「少女よ…目覚めるのだ…“聖なる心”に……」 「聖なる心?」 「正義の為に…怒れ…その心……雷……剣に……力…を…与………」 「良く聞こえないわ!あなた、何て言ってるの!一体誰なの!?」 「我…名……スペリオ…ル……」 しかし次第にその三つ首龍の輝きは失せ、その実体も透け始める。 「何者…干渉………少女よ……聖龍の……みちび…」 「ちょ、ちょっと!勝手に喋って勝手に消えるって何なのよ!」 「スペリオル!」 その言葉と共にルイズはベッドから跳ね起きた。 外から鳥のさえずる声が聞こえ、窓から差し込む朝日が部屋を柔らかい光で満たしている。 「夢?」 寝起きのぼんやりした頭脳が先ほど見ていた夢を反芻する。 しかし、意識が覚醒するにつれ段々と見ていた夢の内容を詳細に思い出せなくなった。 覚えているのはスペリオルという名の黄金の龍が自分に何かを語りかけて来たという事だけ。 「…変な夢」 そして、いつものように起きて身支度をするルイズであった。 「品評会?」 「そう、今日は二年生が新しく召喚した使い魔をお披露目する会があるのよ。 近郊の貴族や城から王族が来る由緒正しい行事なの。もちろんガンダムも出なきゃいけないわよ」 「俺の剣は見せ物じゃない、そういうのは俺抜きで勝手にやってくれ」 「何よ、アンタは私の使い魔なんだからケチケチしてないでおとなしく出なさい! あの凄い雷を出せば絶ッ対に優勝するわ!ご主人様の名誉を回復するいい機会なのよ!」 「断る!つまらん欲の為に振るう剣は無い」 ゼロと共に朝の食堂へ向かう最中の出来事であった。 一部生徒が集まった決闘よりは全校行事の品評会ならより多くの人間に認めてもらえると ルイズは熱心にかつ一方的にゼロを説得していたものの、とうのゼロはそういう理由で雷龍剣を見せるのを嫌い けんもほろろにルイズをあしらい「出ろ」「出ない」とルイズと言い争いになっていた。 「なーんじゃなんじゃ、朝からつんけんしとると朝食もまずくなるぞい」 「お、おはようございますオールド・オスマン!」 「あぁじいさんか」 言い争いをしているルイズとゼロの後ろからすっとオスマンがやってきた。 突然やって来たオスマンに慌てて挨拶するルイズと、その姿を認めても慌てる事無く挨拶を交わすゼロ。 「ちょっと!オールド・オスマンはここの学院長なんだからちゃんと挨拶しなさいよ! 申し訳ありませんオールド・オスマン!」 ゼロの後ろに回って無理やり礼をさせようとゼロの頭を押すルイズの姿を見て微笑ましくオスマンは語りかけた。 「よいよい、その品評会の話じゃが朝食の後にワシの所へ来てくれんか?」 「品評会は…出なくていいん……ですか……」 「うむ、ゼロガンダム殿は何せこの世界では例外的な外見と能力を持つからの。 王族や近郊の貴族が集まるあの場で能力や姿を晒せば、アカデミーが動く可能性もある。 ミス・ヴァリエールや、そこは承知してくれんか?お主とてゼロガンダム殿が連れて行かれるのは不本意じゃろう?」 朝食後の学院長室、ルイズとゼロの目の前には机に腰掛け頬杖を付いたオスマンがいた。 「これはまた物騒な話題だな」 「そうとも、王立の研究機関ではあるがその研究のためには手段を選ばない連中じゃ。 ゼロガンダム殿ほどの手錬の者なら彼奴等にやられはせんとも、手に入れるためなら何をするかは分からん」 残念な顔をするルイズではあったものの、アカデミーが絡む可能性があるとなると反論のしようが無い。 ルイズもアカデミーの怖さは噂で聞き及んでいるが、何より苦手な長姉がそこに勤めているのが一番恐ろしかった。 ゼロを捕らえようとするならまずこの長姉が飛んで来るに違いない。 「分かりました…私達はその間どうしたらいいでしょうか?」 「ゼロガンダム殿を品評会の間姿を見せないようにするだけでええ。 ミス・ヴァリエールは品評会に出席しても良いのじゃが、まぁ使い魔がいない以上 やる事もなかろうから欠席でもええわい。教師達にはミスタ・コルベールを通じてワシから上手く言っておく」 「しかし…私も一応公爵家の娘です、出ないとなると実家の方にも話が及んで何か迷惑が……」 「ほっほっほ、なーに心配はいらんて。今はアンリエッタ女王陛下がゲルマニアへ訪問しとる最中じゃ。 主要な王族はそっちに出払っとるし、話題もそっちの方にしか関心がいかんじゃろ」 その言葉を聞いたルイズの顔が少し暗くなった。 「アンリエッタ王女が…ゲルマニアへ……ですか?」 「うむ、じゃから今年の品評会に女王陛下は出席せん。今年は幾分静かに会が進行するじゃろなぁ」 魔法学院中央の本塔と、それを中心とした正五角形の頂点に位置する五つの支塔。 その支塔の区切る一角に置いて使い魔の品評会は開催されていた。 注目の集まる壇上にいるのはキュルケとフレイムである。 「フレイム!」 「きゅる!」 キリッとした声でフレイムを呼ぶとキュルケと同じ様に短く、力強く鳴いたフレイムが炎を吐いた。 口を閉じた状態で放たれた為わずかに隙間のある口の両端から勢い良く炎が噴出する。 しかしそれは前へ向かって絡み合い、まるで二重螺旋のような軌跡の炎を描いた。 「はいっ!」 キュルケが再びを掛け声を掛けると螺旋状の炎がぐねぐねと動きハートの形へと変化していった。 この炎には観客や招待された貴族からも拍手が起こっていた…が いちいちキュルケが動いたりポーズをとるたびに彼女の胸が揺れていたので フレイムというよりはキュルケに拍手しているような者もちらほらといた。 オスマンに至ってはスタンディングオベーションという始末である。 しかし、その隣にはいつもいるはずの秘書であるロングビルの姿は無かった。 続いて現われたのはギーシュである。 しかし壇上には彼一人だけであり使い魔の姿はどこにも見当たらない。 一人立った彼は生徒達観客へ素早く視線を滑らせ、一人の女生徒の姿を見つけ出す。 「見てるかいモンモランシーッ!!今日の舞台は君に捧げるよぉ~~ッ!!!」 そう声を張り上げモンモランシーのいる方へと自分の杖でもある薔薇の造花を向けるギーシュ。 あちこちから失笑がこぼれる中、そのモンモランシーはというとすっかり顔を赤くして強張った表情をしていた。 「あンの…馬鹿…っ!」 「フヒヒお熱いねぇモンモランシー」 「うるさいわね微笑みデブ!」 「はがっ!」 丁度モンモランシーの隣にいたマリコルヌがからかったが、モンモランシーが即座に その顔面に肘鉄を打ち込んだ。 「さて…では僕の使い魔をご紹介しましょうか………ヴェルダンデ!」 その言葉と共に壇上手前の地面がぼごっと盛り上がり、そこから何かが勢い良く跳ね出してきた。 まるで川魚が水面から跳ね上がるようである。 ギーシュがレビテーションを細かくかけながらそれを上手く壇上に落ちるように調整すると 重量のある衝撃音をさせながらそれは壇上へと落下した。 「も゙っ」 それは、1メートルほどの大きなモグラだった。鼻をヒクつかせながら静かにひと鳴きする。 「ジャイアントモールのヴェルダンデです!以後、お見知りおき願います事を!」 「あー…自己紹介はそれぐらいにして、使い魔の技巧を見せてくれんかね?」 「技巧?僕のヴェルダンテはその存在そのものがまさに始祖ブリミルの作りたもうた精緻な技巧なのです! いいでしょうかオールド・オスマン、この毛並みはまさに乙女の持つ艶やかでいてコシのある髪そのもの! 並みいる土を掻き分け突き進む事の出来るこの手は大地に根ざす力の象徴! そして見てくださいこのつぶらな瞳!純粋なジャイアントモールの心を写すようではありませんか!」 オスマンに、いや、この会場にいる者全員に伝えようと声を張り上げつつ手を振りつつ ヴェルダンテの魅力を語るギーシュ、よもやその勢いはそう止まりそうに無かった。 「馬鹿…あれは本当の馬鹿だわ…」 「ゲコ」 教師達によるレビテーションで使い魔共々壇上から強制的に下ろされるギーシュを見ながら モンモランシー、そして手の上にちょこんと乗っている彼女の使い魔であるカエルのロビンは共に 心底飽きれていた。 同時刻、品評会を行っている区画の隣の区画…の片隅 「ファイアボール!」 呪文を唱えるルイズの振るう杖が椅子の上に置かれた石ころに向いた瞬間、石ころが炸裂した。 幸い、シュヴルーズの授業でやった時よりは十二分に距離はとっており 風上に立って行ったため立ち上る黒煙もルイズとは逆の方向へと流れて消えていった。 横に山と積んである石の一つを手に取るとまた椅子に置きファイアボールとは違う呪文を唱える。 「レビテーション!」 やはりその石ころも炸裂した。 「錬金!」 三回目の呪文も失敗し、とうとう台の椅子の方が耐え切れずに崩れてしまった。 「うぅ…基礎中の基礎の呪文でもやっぱり駄目じゃないのよ……」 「大丈夫ですよ、ヴァリエール様ならきっと上手く出来ます! ワインだってすぐ樽から出すよりも長い間寝かせておいた方が美味しいじゃないですか!」 換えの椅子を持ったシエスタがルイズの元へやって来る。 「言うのは簡単だけどねぇ……あと、そのヴァリエール様ってのこそばゆいから、ルイズでいいわよ」 「えっと…ル、ルイズ様…で」 「それも実家のメイドみたいで堅苦しいわね…ルイズさん、でいいわ」 「分かりました…えー…ルイズさん」 「うんうん」 しっくり来たといわんばかりの顔でうなずくルイズ。 「でも、メイドの仕事もあるのに手伝わせちゃって悪い気がするわね」 「いえ…それなら私の仕事を引き受けてくれたゼロさんに…」 「いいさ、彼女がしたいって言ったなら俺も異を唱えんよ」 そう言っているゼロは、本来やるべきシエスタの代わりに洗濯物であるシーツを干していた。 朝と違い、右肩鎧のデルフリンガー以外にも腰にも買った鉄剣を差している。 ゼロとしては何か知っているような素振りをしているデルフリンガーが気になるのだが 『私がお金を出したんだから、そんなボロ剣じゃなくてこの私の選んだ鉄剣を使いなさいよ』 とルイズが頑として主張するので彼女と居る時は腰に渋々差しているのである。 ちなみにこのデルフリンガー、今朝の事もあって洗濯物を干すゼロのこの様子には閉口気味であった。 「俺の相棒が…早くも遠ざかってゆく……くぅっ!」 「しかしルイズは出なくて良かったのか?俺があの場に居ないだけでいいってオスマンの爺さんも言ってたのに」 「いいわよ、やる事ないし女王陛下も来ないんだったらわざわざ出る必要なんて無いわ。 だからこうやって魔法の練習をしてるんじゃないのよ。さ、もう一回やるわよ」 ルイズはまた石ころを椅子に置き、呪文を唱え始めた。 更にそのまた隣の区画 ここには本塔の前に佇んでいる何者かを除いては誰もいない。 その何者かは誰か分からないぐらいに目深にを被り、本塔の壁に手を当てていた。 「材質こそ普通の煉瓦だけど…宝物庫のある階だけは念入りに固定化が掛けられていた…。 スクウェアクラスの固定化を多重にかけてちゃあ錬金で破るのは無理…とすると」 懐から杖を取り出すと呪文を唱え、自分の立っている地面へ杖を向けた。 「物理的に破壊か…でもこの壁、馬鹿にぶ厚いのよねぇ」 地響きと共に、立っている地面が隆起していきそれは巨大な土の巨人――ゴーレムを形成した。 「ま、三獣の武具の為、とにかくやっちゃいましょうか!」 ゴーレムの握り拳が、唸りを上げて宝物庫の壁へと激突した。 前ページルイズの魔龍伝