約 970,051 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/921.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (3)水のルビー 慌てたコルベールが教室に入ると、中では異常な光景が広がっていた。 焦げたミスタ・ギトーを、「治癒」の魔法が使える生徒達が囲んで治療しているのであった。 「ななな、何があったのですかな!?」 「えー、…気にしないで下さい、ミスタ・コルベール。 それよりも……その格好はどうなされたのですか?」 応えるルイズ、しかし、その顔は困惑気味。 無理も無い。 彼は頭に大きなカツラを被り、ローブの胸にはレースの飾り、その他全てが普段と同じ格好ではない。 そんな珍妙な格好のコルベールを見た生徒は、皆一様に同じ顔つきをしているのだった。 「そうでした!皆さん、本日の授業は全て中止でありますぞ!」 そのコルベールの一言に教室は歓声に包まれる。 「皆さん!お静かに、お静かに!お知らせです、お知らせですぞ!」 手を必死にばたつかせて、歓声に負けじと声を上げるコルベール。 「アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問のお帰りに、このトリステイン魔法学院に行幸なされます!」 トリステイン魔法学院正面門。 そこで、左右に整列した生徒達が高貴なる馬車の到着を待っていた。 やがて、馬車が到着すると一斉に杖を掲げる、例外の無い忠誠の証。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなぁぁぁぁぁぁりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」 まず最初にマザリーニ枢機卿、そして、枢機卿に手をとられて美しい―まだ少女と呼んでも構わない年頃の―娘が馬車の中から現れた。 一斉に、湧き上がる、生徒達の歓声。 アンリエッタは生徒達の歓声に応えるように微笑むと、優雅に手を振った。 王女に微笑みかけられて、更に涌く生徒達。 ルイズは正面を向き、真面目な顔をして王女を見ている。 アンリエッタ王女、幼少のみぎり、ルイズと親しかった少女。 時間と距離が二人を引き離したが、ルイズはアンリエッタを忘れたことは無かった。 (王女様……ご立派に、ご立派になられて…) 遠い昔の話、既に王女は忘れているかもしれない。 それでも構わないと、ルイズは思う。 遠くから、遠くから王女の姿を見ているだけで、満足だと。 そして、熱心に王女を見ていたルイズであったが、視線を外したふとしたときに見事なグリフォンに跨った貴族の姿が眼に止まった。 気付く、そう…その姿は、あまりにも、あの頃の面影を残していて…ルイズは胸が切なくなるのを感じて、瞳を閉じた。 そして、その日の夜。 ウルザはいつものように机に向かい、何かを作っている。 一方、部屋の主であるルイズは、ベットに腰掛け、ほぅと息を吐いた。 「………これで十三回目だ、ミス・ルイズ。何か心配事かね」 「え、あ、ううん、そんなことじゃなくて………」 振り返らないウルザ。 背を向けたままのウルザとの会話は、既に普段の日常と化している。 「なんでもないの、…なんでも…」 無言、カチャカチャと机からウルザが何かを組み立てている音。 そんな中、扉をコンコンとノックする音が部屋に響いた。 初めに長く二回、そして短く三回。 ルイズがはっとする、記憶の中の大切な思い出。 慌てて立ち上がると、ドアを開いた。 そこに立っていたのは、黒いずきんを被った小柄な人影。 ルイズはすぐさま部屋に招き入れると、後ろ手に扉を閉めた。 「あなたはっ!」 ルイズが驚きに大きな声をあげそうになると、人影は人差し指を唇に当てる。 そのまま、懐から杖を取り出すと、何事かを呟き魔法を使う。 「ディテクトマジック?」 探知の呪文。 「どこに、眼が光っているか分かりませんからね」 人影が、頭巾を取る。 現れる、忠誠を誓うべき王族、懐かしい思い出の人、アンリエッタ。 「姫殿下!?」 「ルイズ!ルイズ!ああ、懐かしいルイズ!」 感極まったように、膝をついたルイズを抱きしめるアンリエッタ。 「ああ!姫様、このような下賤の場所へ、いらっしゃるなんて…」 「ルイズ・フランソワーズ!そんな堅苦しい他人行儀はやめて頂戴! わたくしとあなたはおともだち、おともだちではないですか!」 「勿体ないお言葉…」 「やめて、やめて頂戴、ルイズ。ここには枢機卿も母上も、欲の皮のはった宮廷貴族もいないのです 私とあなたは、幼い頃に、一緒に宮廷の中庭で蝶を追いかけて遊んだ仲ではないですか」 「ええ……お召し物を泥で汚して、侍従様に叱られてしまいました」 「そう!そうよ!ルイズ。クリーム菓子を取り合って、つかみ合いの喧嘩になったこともあったわね!」 「ええ、あれは………」 少女達が抱き合い、思い出話に花を咲かせている間も、部屋の隅では黙々と作業をする男の背。 「ねぇ、ルイズ……ところで、そこの方を、紹介して頂けないかしら」 「はい?あ!ミスタ・ウルザ!」 「………何かね?ミス・ルイズ」 こほんと咳払い一つ、なけなしの威厳を振り絞る。 「挨拶を、挨拶をして頂戴、アンリエッタ姫殿下に」 そこで、始めてウルザが椅子を立ち上がり、ルイズ達に向かい合う。 そしてその場で深々と礼を取る。 「お初にお眼にかかります、アンリエッタ姫殿下。ウルザと申します」 「え?ウルザ、さん?え?え?」 きょろきょろと、ルイズとウルザ、二人の間を交互に移動させるアンリエッタ。 「…もう、言って下さればいいのに、ルイズ。 それにしてもこのようにお歳が離れた方となんて………ああ、そういえばわたくしも変わりませんね。お忘れください。」 「ひ、姫殿下?あの、何か勘違いを…」 「いえ、いいのですルイズ。このように遅い時間、貴族の部屋に二人の男女。わたくしも分かっております」 「姫さま!?違います!違います!ミスタ・ウルザは私の使い魔です!」 「使い魔…?メイジにしか見えませんが」 「…メイジです、姫さま」 その後、ウルザの口も借りて、何とか誤解を解くことが出来たルイズであった。 「本当に、昔からあなたは人とは違った子でしたが…相変わらずですね」 「今からお話しすることは、誰にも口外してはなりません」 アンリエッタがそう切り出すと、ウルザが席を立とうとする。 「あ、いえ、メイジに取って使い魔は一心同体。席を外す必要はありません」 そして、もの悲しい調子で、アンリエッタは語り始めた。 自身がゲルマニア皇帝と結婚すること、それが望まぬ結婚であること、しかしそれが不可欠である政治情勢。 ゲルマニアに一人娘を嫁がせることで、同盟を結び、来るアルビオンとの戦いに備えるトリステイン。 トリステインとゲルマニアとの同盟締結を防ごうとするアルビオン貴族達の暗躍。 そして、それを可能とさせる、一通の手紙の存在。 手紙はアルビオン、抵抗を続ける最後の王族、ウェールズの手に。 「分かりました…このルイズ、ルイズ・フランソワーズが必ずや手紙を取り戻してまいります!」 「ああ、ルイズ、私のルイズ!この様に危険なことに巻き込んでしまう私を許してください」 「いいえ、姫さま、気になさらないで下さい。 ………ミスタ・ウルザ…?」 勝手に危険、しかも内乱の最中であるアルビオン王国、その中に潜入しようという話を進めていることに気付き、ルイズはウルザの顔を窺う。 「私は使い魔、君が決めたことに従うだけだ。君が友達の窮地を救いたいというなら、力を貸そう」 拍子抜けするような了解、むしろ、多少の気遣いが感じられるような……… 「それよりも、彼をどうするか、考えた方がいいのではないかね?」 ウルザはそう言うと、部屋の扉を開け放つ。 すると、バランスを崩して雪崩れこむように部屋に転がり込んでくるギーシュ・ド・グラモン。 「………やあ」 結局、覗いていたギーシュが一緒についていくと言い出し、秘密を知られてしまった以上同行させる他ないというアンリエッタの配慮で、ギーシュも同行することとなった。 話が纏まると、アンリエッタは一通の手紙をしたためた。 そして、その封をする直前、思いつめたように一文を書き加える。 「始祖ブリミルよ……。国を憂いても、この一文を書かざるをえない、この自分勝手なわたくしをお許しください」 改めて、手紙に封をし、それをルイズに手渡すアンリエッタ。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに……件の手紙を返してくださるでしょう」 それから、とアンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜くと、それをルイズに差し出した。 「母上から頂いた『水のルビー』。きっとこれがあなた達をお守りくださるでしょう。 どうか、あなたたちに始祖ブリミルのご加護がありますように………」 誰が気付いたであろうか。 この時、『水のルビー』を見つめるウルザの瞳が、驚愕に見開かれていたことを。 出来ないじゃないの、やるのよ。 ―――虚無魔道師の見習い ルイズ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4916.html
前ページルイズの魔龍伝 8.品評会、その裏で 澄み切った朝の空気はゼロには涼しいぐらいであった。 広がる平原の中、抜き身のデルフリンガーを構え相手と相対するゼロ。 「相棒…次の一撃で決まるな」 「あぁ」 涼しい空気の心地良さも、顔を伝う汗の感触も今のゼロにはいらない。 その全神経を目の前に集中させ全ての意識を相手へと収束させる。 一秒が一時間にも感じられるような時の流れの中、先に動いたのはゼロであった。 「うぉぉ――――――――っ!!!!」 デルフリンガーを振りかざし相手へと飛び掛るゼロ、錆の残る刀身が朝日を受けて眩い光を放っていた。 ……… 景気のいい音と共に最後の薪が綺麗に真っ二つに割れた。 「うりゃぁ!」 すかさず二撃目を加え、綺麗に二等分された半円の薪がさらに半分になり四等分されたのであった。 ゼロの後ろには今朝から割った薪がうず高く積まれている。 「よし、これで今日の分の薪は用意できたな」 「相棒ォ~…」 割った薪を手早く縄で括っているゼロに悲しげな声でデルフが語りかける。 「俺っちは薪割り用の鉈とか、オンボロになったから薪割りで余生を送る斧じゃねぇのよ? 国を襲い民を苦しめる凶悪な魔物とかさ、その力で破壊を巻き起こす悪のメイジとかささ…… もっと斬るべき相手ってのがいるんじゃねぇのかって話よ!」 「ふむ……遠くの山にかさ雲がかかっているな。 そのうち雨が降るとなると、シエスタに言っておいたほうが良さそうだな」 その悲しい語りも何処吹く風、ゼロは空を仰ぎ見て天気の事を気にかけていた。 「聞いてよ俺っちの話!!」 「あぁスマンスマン、聞いてるよ」 「じゃあ分かって剣たる俺っちの叫び!!」 まとめた薪を背負い、デルフリンガーを鞘に収めてヴェストリの広場を後にしながら ゼロはデルフリンガーの訴えを聞いていた。 「今日はお前を使って薪割りをやってみたが、思った程切れ味は落ちて無いな。 これなら十分あの鉄剣とタメを張れるぞ、良かったなデルフ」 「じゃあ斬ろうぜ相棒!西へ東へ相手を求めどこまでもっ!」 「それじゃあお前が何者なのか、どうして外見を分からなくしていた俺を人じゃないと見破ったのか、 そしてお前の言う“使い手”とはなんなのか、正直に話してもらわないとな」 「え、え~っとだな…」 「やっぱり忘れてて思い出せねぇや!悪ぃな相棒!!」 「なら駄目だな、諦めろ」 「くぅっ…ひでーやもう…」 この小うるさい剣が来て二日、ゼロとデルフリンガーの間にこんなやりとりが度々あった。 何がしらあるとはゼロも感づいてはいるものの肝心のデルフリンガーがこんな調子なので ゼロの疑問は一向に解決していなかったのだ。 「あっ、あの風竜とかデケェしちょうどいいぜ相棒!! ちょっとぐれぇ使い魔が減っても問題ねぇや、やっちゃおうぜ!!」 「きゅ…きゅいきゅいきゅいーっ!!??」 朝のひと運動なのか、先ほど森から飛んで来たシルフィードにとってその発言は寝耳に水であった。 荒げたような鳴き声になってゼロへと近寄るシルフィード。 「俺に何するんだぁー!!た、助けてくれ相棒ーっ!!」 「今のはお前が悪い、平和な世界の空を暫く満喫して来れば考えが変わるんじゃないかな」 シルフィードは器用にゼロの右肩鎧に刺さっているデルフリンガーの柄を咥えると、それを引き抜き そのままデルフリンガーと共に再び空へと飛んでいった。 「おーいっ!それは俺の武器だから壊さない程度に遊べよーっ!!」 朝日が眩しい青空に、ゼロの声とデルフリンガーの悲鳴ががこだました。 一方のルイズはというと、まどろみの中夢を見ていた…… またルイズは黒い龍に乗って雷雲の中を突き進んでいる。 「まただ…私は何処へ行くの…?」 行き先も分からずそのまま飛び続けていると雷雲の向こう側が光を放った。 それは段々と輝きを増しながら、形を表しながらこちらへと近づいてゆく。 龍、それは三つ首の黄金の龍だった。 黒い龍に乗ったルイズの目の前へとやってくるとその三つ首龍は悠然と語り始めた。 「少女よ…目覚めるのだ…“聖なる心”に……」 「聖なる心?」 「正義の為に…怒れ…その心……雷……剣に……力…を…与………」 「良く聞こえないわ!あなた、何て言ってるの!一体誰なの!?」 「我…名……スペリオ…ル……」 しかし次第にその三つ首龍の輝きは失せ、その実体も透け始める。 「何者…干渉………少女よ……聖龍の……みちび…」 「ちょ、ちょっと!勝手に喋って勝手に消えるって何なのよ!」 「スペリオル!」 その言葉と共にルイズはベッドから跳ね起きた。 外から鳥のさえずる声が聞こえ、窓から差し込む朝日が部屋を柔らかい光で満たしている。 「夢?」 寝起きのぼんやりした頭脳が先ほど見ていた夢を反芻する。 しかし、意識が覚醒するにつれ段々と見ていた夢の内容を詳細に思い出せなくなった。 覚えているのはスペリオルという名の黄金の龍が自分に何かを語りかけて来たという事だけ。 「…変な夢」 そして、いつものように起きて身支度をするルイズであった。 「品評会?」 「そう、今日は二年生が新しく召喚した使い魔をお披露目する会があるのよ。 近郊の貴族や城から王族が来る由緒正しい行事なの。もちろんガンダムも出なきゃいけないわよ」 「俺の剣は見せ物じゃない、そういうのは俺抜きで勝手にやってくれ」 「何よ、アンタは私の使い魔なんだからケチケチしてないでおとなしく出なさい! あの凄い雷を出せば絶ッ対に優勝するわ!ご主人様の名誉を回復するいい機会なのよ!」 「断る!つまらん欲の為に振るう剣は無い」 ゼロと共に朝の食堂へ向かう最中の出来事であった。 一部生徒が集まった決闘よりは全校行事の品評会ならより多くの人間に認めてもらえると ルイズは熱心にかつ一方的にゼロを説得していたものの、とうのゼロはそういう理由で雷龍剣を見せるのを嫌い けんもほろろにルイズをあしらい「出ろ」「出ない」とルイズと言い争いになっていた。 「なーんじゃなんじゃ、朝からつんけんしとると朝食もまずくなるぞい」 「お、おはようございますオールド・オスマン!」 「あぁじいさんか」 言い争いをしているルイズとゼロの後ろからすっとオスマンがやってきた。 突然やって来たオスマンに慌てて挨拶するルイズと、その姿を認めても慌てる事無く挨拶を交わすゼロ。 「ちょっと!オールド・オスマンはここの学院長なんだからちゃんと挨拶しなさいよ! 申し訳ありませんオールド・オスマン!」 ゼロの後ろに回って無理やり礼をさせようとゼロの頭を押すルイズの姿を見て微笑ましくオスマンは語りかけた。 「よいよい、その品評会の話じゃが朝食の後にワシの所へ来てくれんか?」 「品評会は…出なくていいん……ですか……」 「うむ、ゼロガンダム殿は何せこの世界では例外的な外見と能力を持つからの。 王族や近郊の貴族が集まるあの場で能力や姿を晒せば、アカデミーが動く可能性もある。 ミス・ヴァリエールや、そこは承知してくれんか?お主とてゼロガンダム殿が連れて行かれるのは不本意じゃろう?」 朝食後の学院長室、ルイズとゼロの目の前には机に腰掛け頬杖を付いたオスマンがいた。 「これはまた物騒な話題だな」 「そうとも、王立の研究機関ではあるがその研究のためには手段を選ばない連中じゃ。 ゼロガンダム殿ほどの手錬の者なら彼奴等にやられはせんとも、手に入れるためなら何をするかは分からん」 残念な顔をするルイズではあったものの、アカデミーが絡む可能性があるとなると反論のしようが無い。 ルイズもアカデミーの怖さは噂で聞き及んでいるが、何より苦手な長姉がそこに勤めているのが一番恐ろしかった。 ゼロを捕らえようとするならまずこの長姉が飛んで来るに違いない。 「分かりました…私達はその間どうしたらいいでしょうか?」 「ゼロガンダム殿を品評会の間姿を見せないようにするだけでええ。 ミス・ヴァリエールは品評会に出席しても良いのじゃが、まぁ使い魔がいない以上 やる事もなかろうから欠席でもええわい。教師達にはミスタ・コルベールを通じてワシから上手く言っておく」 「しかし…私も一応公爵家の娘です、出ないとなると実家の方にも話が及んで何か迷惑が……」 「ほっほっほ、なーに心配はいらんて。今はアンリエッタ女王陛下がゲルマニアへ訪問しとる最中じゃ。 主要な王族はそっちに出払っとるし、話題もそっちの方にしか関心がいかんじゃろ」 その言葉を聞いたルイズの顔が少し暗くなった。 「アンリエッタ王女が…ゲルマニアへ……ですか?」 「うむ、じゃから今年の品評会に女王陛下は出席せん。今年は幾分静かに会が進行するじゃろなぁ」 魔法学院中央の本塔と、それを中心とした正五角形の頂点に位置する五つの支塔。 その支塔の区切る一角に置いて使い魔の品評会は開催されていた。 注目の集まる壇上にいるのはキュルケとフレイムである。 「フレイム!」 「きゅる!」 キリッとした声でフレイムを呼ぶとキュルケと同じ様に短く、力強く鳴いたフレイムが炎を吐いた。 口を閉じた状態で放たれた為わずかに隙間のある口の両端から勢い良く炎が噴出する。 しかしそれは前へ向かって絡み合い、まるで二重螺旋のような軌跡の炎を描いた。 「はいっ!」 キュルケが再びを掛け声を掛けると螺旋状の炎がぐねぐねと動きハートの形へと変化していった。 この炎には観客や招待された貴族からも拍手が起こっていた…が いちいちキュルケが動いたりポーズをとるたびに彼女の胸が揺れていたので フレイムというよりはキュルケに拍手しているような者もちらほらといた。 オスマンに至ってはスタンディングオベーションという始末である。 しかし、その隣にはいつもいるはずの秘書であるロングビルの姿は無かった。 続いて現われたのはギーシュである。 しかし壇上には彼一人だけであり使い魔の姿はどこにも見当たらない。 一人立った彼は生徒達観客へ素早く視線を滑らせ、一人の女生徒の姿を見つけ出す。 「見てるかいモンモランシーッ!!今日の舞台は君に捧げるよぉ~~ッ!!!」 そう声を張り上げモンモランシーのいる方へと自分の杖でもある薔薇の造花を向けるギーシュ。 あちこちから失笑がこぼれる中、そのモンモランシーはというとすっかり顔を赤くして強張った表情をしていた。 「あンの…馬鹿…っ!」 「フヒヒお熱いねぇモンモランシー」 「うるさいわね微笑みデブ!」 「はがっ!」 丁度モンモランシーの隣にいたマリコルヌがからかったが、モンモランシーが即座に その顔面に肘鉄を打ち込んだ。 「さて…では僕の使い魔をご紹介しましょうか………ヴェルダンデ!」 その言葉と共に壇上手前の地面がぼごっと盛り上がり、そこから何かが勢い良く跳ね出してきた。 まるで川魚が水面から跳ね上がるようである。 ギーシュがレビテーションを細かくかけながらそれを上手く壇上に落ちるように調整すると 重量のある衝撃音をさせながらそれは壇上へと落下した。 「も゙っ」 それは、1メートルほどの大きなモグラだった。鼻をヒクつかせながら静かにひと鳴きする。 「ジャイアントモールのヴェルダンデです!以後、お見知りおき願います事を!」 「あー…自己紹介はそれぐらいにして、使い魔の技巧を見せてくれんかね?」 「技巧?僕のヴェルダンテはその存在そのものがまさに始祖ブリミルの作りたもうた精緻な技巧なのです! いいでしょうかオールド・オスマン、この毛並みはまさに乙女の持つ艶やかでいてコシのある髪そのもの! 並みいる土を掻き分け突き進む事の出来るこの手は大地に根ざす力の象徴! そして見てくださいこのつぶらな瞳!純粋なジャイアントモールの心を写すようではありませんか!」 オスマンに、いや、この会場にいる者全員に伝えようと声を張り上げつつ手を振りつつ ヴェルダンテの魅力を語るギーシュ、よもやその勢いはそう止まりそうに無かった。 「馬鹿…あれは本当の馬鹿だわ…」 「ゲコ」 教師達によるレビテーションで使い魔共々壇上から強制的に下ろされるギーシュを見ながら モンモランシー、そして手の上にちょこんと乗っている彼女の使い魔であるカエルのロビンは共に 心底飽きれていた。 同時刻、品評会を行っている区画の隣の区画…の片隅 「ファイアボール!」 呪文を唱えるルイズの振るう杖が椅子の上に置かれた石ころに向いた瞬間、石ころが炸裂した。 幸い、シュヴルーズの授業でやった時よりは十二分に距離はとっており 風上に立って行ったため立ち上る黒煙もルイズとは逆の方向へと流れて消えていった。 横に山と積んである石の一つを手に取るとまた椅子に置きファイアボールとは違う呪文を唱える。 「レビテーション!」 やはりその石ころも炸裂した。 「錬金!」 三回目の呪文も失敗し、とうとう台の椅子の方が耐え切れずに崩れてしまった。 「うぅ…基礎中の基礎の呪文でもやっぱり駄目じゃないのよ……」 「大丈夫ですよ、ヴァリエール様ならきっと上手く出来ます! ワインだってすぐ樽から出すよりも長い間寝かせておいた方が美味しいじゃないですか!」 換えの椅子を持ったシエスタがルイズの元へやって来る。 「言うのは簡単だけどねぇ……あと、そのヴァリエール様ってのこそばゆいから、ルイズでいいわよ」 「えっと…ル、ルイズ様…で」 「それも実家のメイドみたいで堅苦しいわね…ルイズさん、でいいわ」 「分かりました…えー…ルイズさん」 「うんうん」 しっくり来たといわんばかりの顔でうなずくルイズ。 「でも、メイドの仕事もあるのに手伝わせちゃって悪い気がするわね」 「いえ…それなら私の仕事を引き受けてくれたゼロさんに…」 「いいさ、彼女がしたいって言ったなら俺も異を唱えんよ」 そう言っているゼロは、本来やるべきシエスタの代わりに洗濯物であるシーツを干していた。 朝と違い、右肩鎧のデルフリンガー以外にも腰にも買った鉄剣を差している。 ゼロとしては何か知っているような素振りをしているデルフリンガーが気になるのだが 『私がお金を出したんだから、そんなボロ剣じゃなくてこの私の選んだ鉄剣を使いなさいよ』 とルイズが頑として主張するので彼女と居る時は腰に渋々差しているのである。 ちなみにこのデルフリンガー、今朝の事もあって洗濯物を干すゼロのこの様子には閉口気味であった。 「俺の相棒が…早くも遠ざかってゆく……くぅっ!」 「しかしルイズは出なくて良かったのか?俺があの場に居ないだけでいいってオスマンの爺さんも言ってたのに」 「いいわよ、やる事ないし女王陛下も来ないんだったらわざわざ出る必要なんて無いわ。 だからこうやって魔法の練習をしてるんじゃないのよ。さ、もう一回やるわよ」 ルイズはまた石ころを椅子に置き、呪文を唱え始めた。 更にそのまた隣の区画 ここには本塔の前に佇んでいる何者かを除いては誰もいない。 その何者かは誰か分からないぐらいに目深にを被り、本塔の壁に手を当てていた。 「材質こそ普通の煉瓦だけど…宝物庫のある階だけは念入りに固定化が掛けられていた…。 スクウェアクラスの固定化を多重にかけてちゃあ錬金で破るのは無理…とすると」 懐から杖を取り出すと呪文を唱え、自分の立っている地面へ杖を向けた。 「物理的に破壊か…でもこの壁、馬鹿にぶ厚いのよねぇ」 地響きと共に、立っている地面が隆起していきそれは巨大な土の巨人――ゴーレムを形成した。 「ま、三獣の武具の為、とにかくやっちゃいましょうか!」 ゴーレムの握り拳が、唸りを上げて宝物庫の壁へと激突した。 前ページルイズの魔龍伝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/330.html
―――ずっと受け継がれてきた、おれの使命なんだよ。こうして大好きなものをかばって、いのちをかけることが。 黒の結晶(コア)――なんの比喩でもなく、文字通りに地上を滅ぼす爆弾。それを内蔵した人形を抱えて、少年は天空を翔ける。 もっと高く、もっと遠くへ。爆発から、世界を守るために。 それは勇者としての使命感でもなくて、みんなのための自己犠牲でもなくて。だから、隣でいっしょに飛んでくれていた親友を蹴り落とした。 なぜなんだと彼は叫んだ。きみといっしょにいくことはできない。きみを地上に置いていく。大切なものすべてを、この地上に置いていく。 醜い一面もひっくるめて、人間たちのことが大好きだから。自分を育ててくれた、地上の生物すべてが大好きだから。 だからおれは、他でもない自分自身のためにみんなをかばうんだ。 大魔王がいない世界で、もう、勇者を不要とする世界の中で、 自分が、ただの冒険好きな子供に戻って、再び、ときめく気持ちで大好きな世界を駆けめぐれるその日のために――― そして上空高く、爆発。閃光が、空を埋め尽くし――― 手応えはあったと言っていい。ルイズは、そう思う。 サモン・サーヴァントを行使した。「ゼロのルイズ」が、魔法を行使した。そして、爆発は起こらなかった。つまり、成功したということだ。 魔法を成功させた経験などないけれど、名門出の令嬢として、メイジとしてのプライドがあった。 詠唱を唱えてもなんらの現象も起きなかっただけ、などとは思わない。思ってはならない。 裡にある不安から目を背けるように杖を振り下ろした前方を睨みつければ、しかしそこには、想い描いていたどんな獣も存在せず。 「は……?」 疑問の声を漏らしたその先には、眠っているのか気絶しているのか、見知らぬ子供が仰向けに倒れていた。 平民を喚びだしてどうする。周りの人垣の嘲笑の声。 そう、まるっきり、平民のガキだ。クセっ毛の黒髪。上半身は裸、ズボンもボロボロ。服がボロボロになった結果、上半身部分が完全に破れ去ったよう。 顔を覗きこめば、あどけない寝顔の頬に小さな傷をみとめることができた。 どこをどうひいきして見ても、使い魔には見えない。どこからきた平民――いや、貧民かもしれない。 儀式が成功したことへの期待は一瞬で裏切られたことも加えて、ルイズは沸騰する。 「ちょっと間違っただけよ!」 人垣を怒鳴りつければ、返ってくるのは「ゼロのルイズ」への揶揄と、それを受けた爆笑。 生徒に弁解しても話にならない、教師のコルベールに召喚のやり直しを要求するも、却下された。 春の使い魔召喚は伝統ある儀式であり、学院の重要な教育課程である。ルイズひとりにだけやり直しを認めることなどできはしない。 ルイズが願った形でないだけで、魔法の発動は成功し、儀式の手順を踏んでしまっているのだ。 肩を落とすルイズに、コルベールが儀式の続きを促す。 「さあ、早く契約を続けなさい。次はコントラクト・サーヴァントだ」 口吻による契約である。わたしのファーストキスの相手はこんなのか――と倒れた子供の顔を睨みつけたそのとき、そいつと目があった。 タイミングが悪い。とルイズは少年へ心の中で毒づく。眠ったままならばまだ少しは楽にキスを済ませられたのに。 「起きたのね。で、あんた、誰?」 「おれは……ダイ。きみは……? あ、いや、ここは!?」 覚醒した途端に、ルイズの苛ついた声の問いを投げつけられ、目をぱちくりさせながらダイと名乗った少年は答え、問いを投げ返す。 自分のいる場所に戸惑った様子で周囲を見わたしている。 「どこの平民?」 「へ、平民!? どこのって……」 やっぱり子供ね、問いを重ねたルイズは思う。飲み込みが悪い、とさらに苛立った。平民という言葉すら聞き慣れていない様子だ。 早く儀式を済ませろという、コルベールや周囲の視線がただでさえうるさいのに、ここで時間をとられるのはごめんだった。 「ああ! もういいわ、後で説明するからいまは黙ってじっとしてなさい!」 「ぶっ!?」 突然唇をふさがれた驚きで、子供が間抜けな声をあげた。 状況についていけず、されるがままの少年からルイズは唇を離す。 「終わりました」 自分の頬が赤くなっているのがわかる。こんなガキに異性などこれっぽっちも意識していないが、それでも公衆の面前で男とのキスを披露してしまったことにはかわりはない。 しかし子供の方にはそんな意識はないらしい。あろうことか、ただ唇に物を押しつけられた感触が不快だとばかりに、手の甲で唇を拭ったあと、舌で自分の唇をぺろりと舐めやがった。 子供のやることだと思いつつも、ファーストキスをぞんざいに扱われ、さらにルイズの機嫌は悪くなる。 「うん、これで契約は完了だ、スムーズにできたね」 嬉しそうなコルベールの誉め言葉も、慰めにはならない。子供との契約など出来て当然だと、またルイズを馬鹿にする声が飛ぶ。 ルイズがそれに応戦しようとしたそのとき、 「つぅっ!?」 小さく、痛がる声。少年の身体中に熱が走る。 「使い魔のルーンが刻まれてるだけよ、すぐ終わるからわめかないでよ」 しかしルイズは首をかしげた。わめくなとは言ったものの、それ以上にこの子供が声をあげる様子はない。けっこう根性のある子なのかしら。 「な、なんだいまの熱は!?」 熱よりも、戸惑いと驚きのほうが少年を多く占めているらしい。身体のあちこちを不思議そうに確かめる。 コルベールは彼に近づいて、左手の甲をとった。「珍しいルーンだな」とつぶやいた。 「あ、あの! なんなんですかこれは!? あなたたちはいったい!?」 少し声を張り上げて子供が問うも、誰も相手にしない。コルベールに促され、生徒たちはみな学園に飛びたっていく。 「みんな、飛んでる……。全員が魔法使いなのか?」 そうして広場には、ずっと疑問を解消されないまま放っておかれたダイという子供と、ルイズのふたりだけになった。 なんの教育も受けてなさそうな平民の子供にしては目上に対する口の利き方を知ってるわね、とルイズは珍しがる。 どう見ても育ちがよいようには見えないが。どこかの家に奉公でもしていたのだろうかと思いながら、彼女は問うた。 「で、あんた、どこの子供よ?」 ―――ぜんっぜん要領を得ない。なんなのよコイツ。 学院までの道のり、歩きながら、互いのことを尋ねあいながら、ルイズの苛立ちはさらに増していく。 このダイという子供はしきりに状況確認にしつこく、その割には言っていることがわけがわからなかった。 デルムリン? 知らない、どこの島? トリステインの領土? なに? トリステインも知らないの? 魔法学院っていうのも聞いたことないですって? それにしては魔法のことそのものは知っているみたいだけど。 パプニカ? 聞いたこともない。勇者アバン? 勇者だなんておとぎ話のことなんてどうでもいいわよ はぁ!? 魔王? それこそなによそれ、よ、あのね、わたしは真面目に聞いてるのよ? そうしてルイズの自室、結局、ルイズはこのダイという子供はおとぎ話にのめり込んでいるのではなく、彼自身、真剣にルイズと会話をしていることを認めざるを得なかった。 別世界。別の大陸の住人ではなく、別世界の住人。勇者を先頭に、人類が一致団結して巨悪と戦い続けてきた世界。それこそ、おとぎ話のよう。 「魔法」という互いの世界で共通している言葉があることが、かえってややこしい。 「……アンタも、その、魔王軍とやらの戦争に参加してたの?」 「いや……、その、おれは、ずっと島で暮らしてたから」 逡巡し、うつむいて、ダイは答える 「あっそ」 ルイズは軽く落胆した。なんだ、少年兵とかだったら、ひょっとしたら見た目よりも強いのかと期待したのに。 「なんだよ?」 その態度にムッとする――というよりいぶかしんだ様子でダイは尋ねた。 別に。とルイズは答えた。 「アンタはわたしの使い魔だから。ひょっとしたら役に立つかも、って期待しただけよ―――」 ―――夜も更けて。 使い魔のルーンのこと、ダイを帰す方法はないこと。これからダイがどうするにせよ、この世界ではしばらくはルイズに頼るほかないこと。 そこまで話をまとめて、ルイズは会話を打ち切った。 「―――しゃべったら眠くなっちゃった。もう寝るわ。じゃあ、アンタ明日から掃除洗濯雑用ちゃんとやってね」 「おれ、どこで寝たらいいのかな?」 「床。……まあ、あんた服ないし、毛布くらいはやるわ」 下着を放り投げ、寝床に着こうとするルイズに、ダイは問いかけた。 「……最後に、ひとついいかな」 「なによ?」 「この、るーん、っていうやつ、できれば、左手以外の場所に移せないかな? 右手でも、額でも。……左手は、特別なんだ」 「―――無理よ、どんなこだわりがあるんだか知らないけど。紋章を同じ人間の別な場所に移すだなんて聞いたこともないわ」 「……そっか、わかった」 にべもないルイズの返事。ダイは静かに受け入れた。 そうしてルイズが指が鳴り、ランプの明かりが消える。ふたりの一日が、ようやく終わるのだった。
https://w.atwiki.jp/eramegaten/pages/59.html
俺の嫁とは 「あなた」の嫁である。なお、性別・種族は問わない。 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/195.html
「マスターよ、朝だ」 男がすやすやと眠る少女に語りかける、しかし少女は一寸も目に光がささらないようグッと閉じようとしといる とりあえず寝ている少女の毛布をはいだ 「な、なによ!なにごと!」 少女が驚きながら上体を起こす 「朝だから起こした」 「はぇ?そっそう・・・・ってあんた誰よ!」 寝ぼけた表情で男に怒鳴る少女、男が口を開く 「ロムだ」 第二話 少女の使い魔となった戦士 「ああ、昨日召喚した使い魔ね」 ロムを召喚した少女、ルイズはベットの上で上がり欠伸をひとつ、そして命令 「服」 ロムは椅子に掛かっている服を取りに行く、さらにルイズは命令する 「下着も取って」 「何処にある」 「そのクローゼットの下、引き出しに入っている」 言われるままに引き出しを明けて適当なのを取りだし制服と共に渡す するとルイズはネグリジェを脱ぎ始めたのでロムは少し慌てて後ろを向く (やれやれ、やはりこれだけは慣れないな。それにしても何故今女性の肌がこんなにも艶やかに見えるんだ・・・?以前はそれほどでもなかったのに・・・・) 兄さん、それは男性のサガです 「じゃあ服を着せて」 「・・・・・・・・」 ロムは目をそらしながらブラウスのボタンを留めていく 二人は着替えが終えて部屋から出ると目の前のドアから女の子が出てくる。長い赤毛で身長が高く、大きく突き出たバストが特徴的な少女、「微熱」のキュルケ・ツェルプストーだ 「おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズが嫌そうに返すと 「あらあら、やっぱり昨日の召喚は夢じゃなかったのね」 バカにした口調で言うと 「でも平民ではね~、ふふふ、あっはっはっは!」 含み笑いの後の大笑いのコンボにルイズはプルプル震えている (どうやらこの二人の仲は最悪のようだな・・・・、あまりお互い近づけない方が良いか) 二人の交流を見て学習するロム、するとキュルケの後ろから真っ赤で巨大なトカゲが現れた。尻尾が燃え盛る火で出来ているのが主人の胸の様に目立っている 「これって、サラマンダー?」 ルイズが悔しそうに尋ねた 「そうよー、見てよこの大きい尻尾についた大きな火、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ!惚れ惚れしちゃうわ~」 「あんた『火』属性だもんね」 「ええ。微熱のキュルケですもの、あなたと違って私はちゃんと自分に相応しい使い魔を召喚してるわ、それよりも・・・・あなたの使い魔は」 キュルケはルイズの後ろで手を腰に当てて一部始終を見ていたロムに視線を合わせる 「貴方お名前は?」 「ロム・ストール」 「ロム・ストール?ここらへんでは聞かない名前ね。じゃあお先に、ゼロのルイズ」 炎のような赤髪をかきあげ、サラマンダーと共にキュルケは去っていた (それにしても・・・・、いい男だったわ。) 「くやしー!何なのあの女!自分がサラマンダーを召喚したからって!」 「マスターは俺を召喚したからいいじゃないか」 「よくないわよ!メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言うのよ!平民とサラマンダーじゃ犬と狼を比べるのと同じよ!!」 (その例えなら俺が狼だな) 「ところで、彼女、ゼロのルイズと言っていたが、『ゼロ』とは何だ?」 「あだ名よ、嫌いだけど」 ルイズはさっきよりトーンを落として呟いた 「彼女は自分の事を微熱だというのはわかるがマスターは何故ゼロなんだ?」 「うるさいわね、さっさと食堂へ行くわよ」 プンプンしながら奥へ歩いていくルイズ (そういえば昨日も周りの生徒は宙を浮いて移動していたがルイズは歩いていたな。それが関係しているのか?) トリステイン魔法学院の食堂は非常に広く、やたら長いテーブルが3つ並んである 前の椅子に座った先生やメイジが楽しそうに雑談している。 その上豪華な飾り付けがなされていてこの学院の華やかさを物語っている ロムはその物珍しさに周りに目を配り、気が付くとルイズが得意気に言った 「トリステイン魔法学院が魔法だけじゃないのよ。メイジはほぼ全員貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』がモットーのもと、貴族たるべき教育を存分受けるのよ」 ロムはその言葉を聞くと深く頷く。 彼もまた、クロノス族の族長である父の教えより身体だけではなく精神の成長が大切である事を教えられていた 「世界が違えど心の教えは変わらぬのだな」 「何か言った?」 さてロムはここに来て重大な問題に気付く。それは食べ物、エネルギー原の有無である。 もともとマシン生命体はエネルギーカップ、もしくはロムトロンと呼ばれる物でエネルギーを補給するのだが残念ながらこの世界にはどちらも無い。 エネルギーが補給出来ないことは餓死に繋がる・・・・。 「何ずっとパンとにらめっこしているのよ、ひょっとして食べないの?」 「いや・・・・、そうではないが・・・・」 椅子に座って朝食を食べているルイズが床であぐらをかいて皿を睨むロム見下ろして言う 「言っておくけど、渋っても何も出ないから。平民がここに入れる事だけでも珍しいのよ」 仕方がなくパンにかじりつくロム (硬い・・・硬すぎる・・・・、これは食べ物なんかじゃ無い。 こんなものを作った奴の顔を見てみたいな・・・・) などといつもは考えもしない事を心の中で呟き、良く噛んで飲み込む。そして・・・・ (・・・・なんとかなるか) どうやら大丈夫のようである
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4674.html
前ページ次ページルイズの魔龍伝 3.使い魔ゼロの学園生活 目を覚ましたゼロが目にしたのは朝焼けが窓に差し込んでいる見知らぬ部屋だった。 ベッドで静かに寝息を立てている少女を目にし自分の今の状況を改めて認識する。 「(そうだったな、俺はこの娘に召喚されてここへ…)」 「んにゅ…クック…ベリーパイ…おいしいわぁ…もっと持ってきなさいよ…ガンダム…」 「…全く良い気なもんだな、このお嬢様は」 それに合わせるかのように寝る前に交わした会話が蘇って来た。 “下着の洗濯”、あまり乗り気しない頼みではあったがやらなかったらそれはそれで騒がれるに違いない。 どうせ子供の着るものだし早い内に済ませて朝の鍛錬でもしようと思い立ったゼロは 剣を片手に、もう片手に下着を掴んでルイズの部屋をそっと後にした。 「…洗濯する場所なんて聞いてないぞ」 が、学園内でルイズに教えてもらった場所を転々としながらゼロは早々に迷っていた。 トリスティン魔法学院で働くメイドの朝は早い。 日も昇らぬ内に起床し、掃除洗濯から貴族達の朝食の準備の支度までまるで戦争のように 総勢でバタバタとこなす。そんな朝の争いの少し前、水を汲みに空の桶を持って走る少女が一人。 ここに仕えるメイドの一人、シエスタである。 「お水を汲んで…洗い物をまとめて…」 「すまないがちょっといいか?」 「あ、はい…ぃいっ!?」 今日の仕事の口にしながら水汲み場まで駆けていたシエスタが振り向くと 標準サイズに比べてはやけに小さいゴーレム(の、ような何か)が立っていた。 人の形を模しているのは何となく分かるが2~2.5頭身と相当に縮められていて まるで子供が遊ぶ組み立て式の人形のような、そんなイメージがした。 「衣服の洗い場を探しているのだが……」 「洗い物ですね、もしよければ私にお任せくださいませんか? この後洗濯物をまとめて洗うので、使い魔さんのご主人のお名前さえ言ってくだされば後で 私がお部屋までお届けしますわ。」 知らない洗い場まで行って女性の下着を洗うという未知の領域の仕事を任されたゼロにとって これは渡りに船であった。 「すまないが…その…これを」 「はい!承りましたわ!」 ゼロが恥ずかしそうにしながらシエスタへ手にした下着を渡し、笑顔で受け取るシエスタ。 が、このメイドの話し振りから一つの疑問が浮き上がる。 「(洗濯・掃除・その他雑用というのは普通使い魔が行うものでは…ないよな、うん)」 昨晩一緒に食事をした使い魔達が思い出されるが、どう考えても火を吹くドラゴンだの 浮いてる目玉だの一般庶務に使うには手に余るどころか部屋が壊れそうな面子ばかりだ。 「ルイズ…俺は召使いか何かなのか…」 「あの…ひょっとしてミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」 「あぁ、そうだが?」 「昨日の事なのに“ヴァリエールの小さなゴーレム”ともう噂になって私達も聞き及んでますわ」 「…へ?」 「皆は笑ってますけど、とても奥ゆかしいのですね。私ちょっと驚きました」 「え、ちょっ」 「それでは私は仕事に戻りますので失礼しますねゴーレムさん」 笑顔のシエスタはそう言うと足早にまた走り去っていった。 「俺…ゴーレムじゃないのに…トホホ…」 朝から何かに負けたような気分に打ちひしがれたゼロであった。 「…フゥッ、ハッ!」 噴水の近くで黙々と剣を振るい朝の鍛錬に打ち込むゼロ。 手にしている剣はかつて彼が手にしていた剣ではない、旅の途中で手に入れた普通の剣である。 彼の相棒は全てを終わらせた後戦友に預けた。 傷つき、全ての力を失った相棒をこれ以上手にする事も、使う事もない。 何より亡き父が残した唯一の形見であったからだ。 ゼロがルイズの部屋に戻るとルイズがふくれっ面でベッドに腰掛けていた。 「あぁ、おはようルイズ。ちょっと剣の鍛錬に」 「使い魔なら起こしなさいよぶぁかーーーーーーーーーー!!」 朝の挨拶は怒号から始まった。 「まったくいつもの調子で起きちゃったじゃないのよ!そこのクローゼットの一番下から下着!」 「え?」 「私に一式着せるのも使い魔の仕事!早くしなさいよ!」 とりあえず下着を出してルイズに渡し、ネグリジェを脱ごうとしているルイズに気づいて 慌て後ろを向きつつ制服を取る。 「服!」 そのままルイズの方へ腕だけ伸ばし制服を渡そうとするが 「着せて」 の一言で遮られた。 朝起こさなかった事とルイズの機嫌の悪さがあり仕方なくルイズに制服を着せてゆくゼロ。 「普通、使い魔に服を着させるもんじゃないんじゃないのか?」 「いいもんアンタ喋れて手足が使える使い魔だし」 「……次からは自分でやれ」 着替えが終わった後は手早く自分の鎧を着けて、共に部屋を後にした。 「あらぁ~、おはようゼロのル・イ・ズ」 「…おはようキュルケ」 部屋を出た二人の目の前に一人の女性が立っていた、長身に燃えるような赤い色の長髪、褐色の肌。 ルイズと同じ制服を着ているが上のボタンはしめられずそこから豊満な胸の谷間が見える。 「で、それが話題の“ヴァリエールの小さなゴーレム”ってわけね~ふぅ~ん」 キュルケがゼロをじろじろと見る。 「何ていう名前なの?」 「俺はゼr」 「こいつはガンダムっていうのよ!うん!ガンダム!」 ぜロが名前を言いかけた所でルイズが割り込んで名前をガンダムだという事にしてくる。 異様なまでに「ゼロ」と呼ばれたくないその態度がゼロとしては少々気にかかっていた。 「ガンダムねぇ…変わった名前だしおもちゃみたい」 「なっ!」 「なんですってぇこのおっぱいオバケ!」 驚くゼロと憤慨するルイズをよそに自信満々な態度で 「私の使い魔見てみるぅ?フレイム~」 と呼ぶとのそっ、とキュルケの後ろから赤い大トカゲが出てきた。 それは昨夜ゼロに肉をあげようとしたあのトカゲ。 きゅるきゅると鳴きながら近寄ってきたフレイムの頭をゼロが撫でる。 「お前か、よしよし」 「…何でガンダムがキュルケの使い魔の事を知ってんのよ」 「昨日飯を食べていたらこいつが肉をくれようとした」 「あらぁ~ご主人様と違って使い魔同士仲良くやってるようじゃな~い?」 キュルケがさも勝ち誇ったような顔でルイズに満面の笑みを見せる。 「…食堂に行くわよ!」 「あ、あぁ」 声を荒げながら足早に去るルイズを追ってゼロも後を追いかけて行った。 「うちのフレイムがそこまで懐くなんてあのゴーレム、何なのかしら…」 しかも今飯って…ゴーレムってご飯食べないわよね?」 「きゅる…きゅるきゅる」 「全くヴァリエール家の使い魔がツェルプストー家の使い魔から 情けをかけられるなんて恥よ!罰として朝食は抜き!」 「理不尽すぎるぞ!」 「いい事?我がヴァリエール家と憎きツェルプストー家の因縁はそれは長きに渡るものよ!」 と、食堂まで歩きながらその因縁とやらを話すルイズ。 耳が痛くなる思いをしながら食堂まで歩いたが、入り口前でルイズがご機嫌斜めに 「さっきも言ったけど朝食抜きだからアンタはここまで」 と言い放った。 「…やはり召喚された時に学院から出た方が良かったな」 空腹が身に染みるのを我慢しつつ、食堂入り口に突っ立っているゼロであった。 授業の時間になり、ゼロは教室の後ろの壁にもたれかかって様子を見ていた。 何人かの生徒がこちらを見ているのが少しうっとおしかったが生徒の方を一睨みすると そそくさと席に向き直る。 「(…俺を何だと思ってるんだ)」 ゼロの横にはフレイムが寝ていた他に、教室に入れるぐらいの中型の使い魔が暇そうにしていた。 窓の外を見ると教室に入りきらない大きな竜(ルイズに聞く所によると風竜というらしい)が 佇んでおり、教室の様子を横目で伺っている。 「…確かにこの使い魔の中では俺は目立つ、か」 生徒がこちらを伺うのは“ゼロのルイズが召喚した変な使い魔”というのが もっぱらの理由であったのにはゼロは気づいていなかった。 「皆さん、おはようございます」 教室に入ってきた中年のふくよかな女性、シュヴルーズの声が響く。 「春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 後ろに陣取った使い魔を次々と眺めるシュヴルーズの目がゼロに留まった。 「おや、珍しい使い魔ですねミス・ヴァリエール」 ルイズ以外の生徒から一斉に笑い声が上がる。 「出来損ないのゴーレムじゃ仕方がねーよなー!」 「うるさいわね風邪っぴき!」 「俺は風邪っぴきじゃなくて“風上”だ!ろくに召喚できないゼロの癖に!」 「ミス・シュヴルーズ!このうるさい風邪っぴきに注意して下さい!」 「喧嘩両成敗です」 シュヴルーズが杖を振るうと、ルイズ、そしてルイズと口論していた微笑みデブな男の子、マリコルヌの 口に赤土が一瞬でふさがった。 「罰としてこの状態で授業を受けてもらいます」 赤土を剥がす二人をよそにシュヴルーズの授業が始まった。 授業内容は年度最初の授業、という事でごく初歩的なこの世界における 属性の概要から始まっていた。 「『土』系統の魔法は……この魔法がなければ重要な金属も……皆さんの生活に密接に関係……」 「(生産・加工・建設・農業…魔法が産業の根幹まで関わってるとはな… なるほど、魔法が使える貴族がここまで権力を持つのも無理は無い)」 「(そういえばルイズが魔法を使っているのを見た事が無いな…)」 シュヴルーズの講義を聴きながらゼロはルイズの事を思い返していた。 魔法が使えるのが貴族、あのプライドの高い性格からして誇示の為に多少は使ってもよさそうなのだが 彼女は最初の召喚以外魔法を使っていないのだ。 「(…ま、これぐらいなら聞いても怒られないかな)」 ゼロは近くにいたルイズにこっそりと近寄って疑問をぶつけてみる事にした。 「ルイズ」 「何よ授業中に」 「俺を召喚してから魔法を使ってないよな、何か魔法を使わない理由でもあるのか?」 「アンタには関係ないわよ!」 「ミス・ヴァリエール!使い魔との交流は結構ですがそういった事は後でお願いします」 「すっ、すみませんミス・シュヴルーズ!」 ゼロの質問に思わず語気を荒げたルイズにシュヴルーズの注意が入った。 「では、次に土系統の基礎的な魔法、“錬金”に話を移しましょう」 授業の内容が“錬金”に移る。石を金属に変えるといった魔法でシュヴルーズが実演として 石を真鍮に変えてみせた。 「では…さっきおしゃべりをしていたミス・ヴァリエール、貴女に実際に錬金をしてもらいます」 その言葉を発した途端、教室の空気が一瞬止まった。 「ミス・シュヴルーズ!ルイズに錬金を行わせるのは止めておいた方が良いかと思われます!」 一番最初に口を開いたのはキュルケだった。いつもの軽口ではない、真剣味を帯びた一言。 「そうですミス・シュヴルーズ!ルイズに魔法を扱わせてはなりません!」 「彼女では荷が重過ぎます!」 「ルイズが錬金だなんて絶対無理ですムリムリムリムリかたつむりです!」 等と、次から次へとルイズの錬金に対する警告が周りの生徒から飛び出す。 「ミス・ヴァリエールは大変努力をなされてると聞きました、誰にだって得手不得手がありますから 多少の不出来など気にしなくて結構です。さぁ、やってごらんなさい」 席を立ったルイズが教壇の前に立ち、目の前に置かれた石ころに対して杖を構える。 ここは見守っておきたいゼロだったがその過程までに全ての生徒が椅子の下に隠れたり 席を立って後ろの方の机に退避している様子がかなり気になっていた。 「(…何でここまで大げさな反応なんだ?)」 先ほどの生徒の反応ぶりから今までの馬鹿にしたそぶりは感じられない、確実に“何か”あると 読んだゼロは教室の一番後ろ、入り口近くまで移動してルイズを見据える。 「(杞憂であれば…)」 「ではミス・ヴァリエール、この石を錬金で金属に変えてごらんなさい」 ルイズが呪文を唱えて構えた杖を振り下ろしたその瞬間、まばゆい閃光と轟音と共に石が爆ぜた。 爆発は教室全体に及び入り口からは黒煙がもうもうと立ち上がっていた。 「敵か!?」 ゼロは咄嗟にその場に屈んだのと、ルイズから離れていたためさほど被害は無かった。 爆発の衝撃で暴れる他の使い魔達をよそに、ゼロが立ち上がりながら背中の剣に手をかける。 が、目の前の光景は爆発によって所々崩れた教室と、隠れてジッと動かない生徒達 そして黒板の前に倒れて伸びているシュヴルーズと 教壇の前で傲岸不遜といった感じで腕を組むルイズの姿だけだけであった。 「ちょ~っと、失敗したみたいね」 いつもの調子で言い放つルイズ。 「ふざけるな!どこがちょっとだゼロのルイズ!」 「貴女が魔法を使うといつもこうではありませんの!?」 「今まで成功した試しが無いじゃないか確率ゼロのルイズ!」 「俺の使い魔がアッー!」 隠れていた他の生徒達が猛然とルイズに抗議していた。 「(…“ゼロ”、か)」 ゼロはルイズがゼロと呼ばれている理由と、自分をゼロと呼ばない理由をようやっと理解していた。 「…」 「…」 ボロボロになった教室でゼロとルイズが黙々と片づけをしていた。 シュヴルーズが再起不能になったため授業は中止、魔法を使ったルイズがその責を負い 罰として魔法を使わないでゼロと片づけをしていたのである。もっとも、魔法を使えばこうなので 必然的に自力でどうにかするしかないのは自明の理なのだが。 ゼロは破片や使い物にならない椅子や机を外へ運び出しては新品のものと取替え ルイズは無事だった道具を雑巾で拭いていた。 「主人の問題は使い魔の問題」とゼロも巻き込まれた訳ではあるが ゼロはあまり抗議する気にはなれなかった。無言ではあるが彼女の顔からは悔しさが見て取れたからである。 「ルイズ、この机は何処に置けば…」 「なんで…」 「え?」 「なんで何も言わないのよ…」 ルイズが机を拭きながら唐突に聞いてきた。今まで無言だっただけに少しドキリとするゼロ。 「その…だな…」 「分かったでしょ?私がゼロって呼ぶのも呼ばれるのも嫌な理由」 ボロボロの衣服も相まってかルイズの放つ言葉が痛々しく聞こえる。 「…俺は気にしてはいない、俺をガンダムと呼びたいならそう呼べばいい」 「嘘よ…どうせ心の中では見下してるんでしょ?魔法も使えない、貴族の出来損ないだって」 「ならもっと研鑽を重ねればいい、笑う奴は放っておけ」 「そうやって来たけど…でも…魔法だけは駄目だった…一杯勉強しても、知識を目一杯覚えても… 魔法は応えてくれなかったわ!いつも爆発して、失敗して、ゼロって…」 机を拭く手は止まっておりルイズは体を震わせていた。話している内につい感情的になり 胸の内を、今までの自分を目の前の使い魔に吐露していた。 「ルイズ」 「放っておいてよ!使い魔をやめたいならさっさとここから出てけばいいじゃない! どうせゼロよ!私には何もないのよ!」 こういった癇癪には慣れておらず、どうにもルイズを扱い損ねているゼロであった。 「俺の剣の流派は雷龍剣(サンダーソード)っていう流派なんだ」 「いきなり何よ」 「雷龍剣ってのは一子相伝、つまり継承する人が一人だけだ。」 「…効率悪いのね」 「まぁ、な。そして継承者には技と共に専用の剣も受け継がれる。 それでその継承者を決める戦いってのがあって俺はもう一人の継承者候補と戦ったんだ。 だが俺はそいつに負けてた。なのに最終的に継承者になったのは負けてた俺だったんだよ」 「何でよ」 「相手が言うには“あの剣がお前を選んだ”からなんだそうな、それで相手が辞退した。」 「剣が人を選ぶって…インテリジェンスソードじゃあるまいし」 「さてね」 「で、今の話が何なのよ」 「えーっとだな、うん、今は魔法が使えないからといって決して劣っている訳じゃあない。 実は凄い力秘めているのかもしれないからな、うん」 「で?」 「でだな…その…剣が人を選ぶように使い魔だって人を選ぶと思うんだ。 別に嫌味じゃない、俺がお前に呼ばれたのも何か因果があっての事だろうと俺は考える。 だからだな…あー…せっかく召喚したんだ、俺を信じろ。話ぐらいなら聞いてやるから…」 「もしかして私の事を…慰めるつもりで?」 「あ、あぁ…」 「…ったく、全然慰めになってないじゃないのよ」 たどたどしく話すゼロの姿を見て完全に飽きれきったルイズ。 その姿を見てゼロはとりあえず一安心していた。 「今のはちょっとからかっただけよ、アンタの姿が馬鹿らしくてもう演技する気にもなれないわ」 「ま、そのくらい元気なら涙ぐらいは拭いておくんだな」 「おっ、女はねぇ!嘘泣きが得意なの!だからこれも嘘泣き!」 そう言ってブラウスの袖で顔をぐしぐしと拭いた後、ルイズはいつもの調子に戻っていた。 「あとはやっておくから、ルイズは部屋に戻って着替えたらどうだ? 流石にその格好は俺の目から見てもよろしくない」 「言われなくても着替えるわよ!もう!」 色んなところがボロボロになった服に気づいたルイズは机を拭いた後さっさと教室を出て行った。 「ただのじゃじゃ馬娘かと思えば……やれやれ、複雑だな」 そう呟きながら一人机を運ぶゼロ。とても似つかないものではあったが かつて雷龍剣と共にがむしゃらに父の仇を追っていた自分の姿をルイズに重ねていた。 前ページ次ページルイズの魔龍伝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2296.html
ルイズが呼び出したのは数十枚の裏の模様が共通の絵札と腕につけ絵札をセットするために作られたような盤だった。 召喚のやり直しを要求するルイズだが監督のコルベールはそれをそれを却下しルイズにそれと契約するようきたした。 しぶしぶといった感じでとりあえず絵札に口付けるルイズ…だが、その途端ルイズは苦しみだし気絶してしまった。 彼女は医務室へと運ばれていった。 なお、使い魔のルーンはコルベールが確認したところ一番上の絵札の表側に刻まれていた… それによりとりあえず進級の方は認められたようだ。 翌日姿を見せたルイズの雰囲気は激変していた… なんというか今まで品位等には気を使っていたのに衣類は雑に着こなし朝から飲酒。 食堂を出た後には完全にふらついていた。 手には昨日召喚した盤をつけていた… さらに最初のシュヴルーズの授業でも明らかにやる気がなくふざけた態度、激怒したシュヴルーズは 周りが止めるのも聞かず彼女に錬金をやらせたが彼女はめんどくさそうに行った錬金は失敗、 爆発によりシュヴルーズは気絶してしまった。 何人かの目にはいつもと違いまるで成功させるという気概さえもないようにさえ思えた… これらのルイズの激変は召喚したのが変なものだったせいで狂ってしまったようだ…と周囲には認識された。 別にもともと問題児だ。気にするほどでもないと大体の者は思ったが… ただ、元々は成績的問題児だったのが素行的問題児になったというのには参ったもんだと思ったようだが… その様子だ…いつ問題ごとを起こしてもおかしくない… 案の定、昼食時に早速厄介ごとが起こった。 食堂でギーシュが2股がばれたのを飲んだくれていたルイズが思いっきり笑ったのだ。 他の連中も笑っていたがルイズの笑いは他の笑ってる人間が笑いをとめてそちらを見るほど大きく 心底から笑っているようだった。まして今のルイズはチンピラの様… 明らかに自分より落ちぶれた人物に笑われ黙っているギーシュではない。 ギーシュは怒りに任せて彼女に決闘を申し込んだ。ルイズはそれをカモが来たのを喜ぶ様に笑い受けた。 ヴェストリの広場にて対峙する2人。まずはギーシュがワルキューレを呼び出した。 所詮はルイズと侮ってるのか彼女を挑発する。 「先に仕掛けたまえ、無駄だと思うがね」 それを聞いたルイズはそれを鼻で笑う。 「いいわよ…あんたこそ一体だけでいいの?それじゃあつまらないわ…」 やや、酔っ払い気味のルイズのその言葉に怒ったギーシュはワルキューレを7体に増やした。 それを確認したルイズは盤に束ねてセットしてあった絵札を一枚抜き盤の別の場所に置いた。 その瞬間、ルイズの前に竜に近い外見で金属製のゴーレムが現れた。 「なッ!?」 絶句するギャラリーとギーシュ。ルイズは相変わらずの調子で言う。 「ねぇ、ギーシュ。あなたギャンブルってやったことある?なんか、急に興味でてきてさぁ…ちょっとやってみない? こいつはね、頭と手のところに弾丸が3発ずつ装填されてるの…最大装填数は6だから確率は2分の1… このギャンブルでやると最大3回一気に攻撃できるの…じゃあ…始めましょうか!ロシアンルーレット!!」 ルイズがそう言うとゴーレムを構成するパーツの3箇所が回転を始める。そして停止。 「2発アタリね…リボルバードラゴンの攻撃!!ガンキャノンショット!!」 銃弾はワルキューレ2体を粉々に打ち砕いた…動揺したギーシュはワルキューレ1体をルイズへと向かわせるが リボルバードラゴンが前に立ちはだかる。 「話聞いてなかった?この方法でやると…つまり普通に攻撃もできるのよ? 一体だけ向かわすなんてお馬鹿さん…リボルバードラゴンの迎撃!!ガンキャノンショット!!」 その攻撃でワルキューレがまた一つ砕かれた。さらにうろたえるギーシュ。 「あらぁ!?何もしないのぉ!?じゃあ、また私の番ね…リボルバードラゴンの銃弾も装填されたし… ロシアンルーレット!」 再び一部が回転するリボルバードラゴン。そしてまた止まる 「3個当たり…ついてるわぁ…ガンキャノンショット!!」 ワルキューレの数は一気に1体になった。呆然とするしかないギーシュ。 「呆けた隙に銃弾装填♪ロシアンルーレット!!」 弾倉が回る…ギーシュに不吉を告げる弾倉が…と、ルイズが口を開いた… 「ああ!言い忘れてたわ!場に撃つ物がなかったらねぇ…撃たれるのはギーシュあなただから」 「え?」 語られた事実に一瞬呆けるもギーシュは慌てて静止をかける。 「ま、待ってくれ!僕が悪かった!僕の負けでいい!謝るから!許してくれ!」 「許してあげたいのはやまやま何だけどねぇ…一度稼動したら止まらないの… これぞロシアンルーレットってことかしらねぇ?」 ルイズは苦笑いを浮かべた。といってもわざとらしい苦笑いであったが… いや…そもそも攻撃が止まらないといっても目標まで変えられないわけではなかったりする。 つまり、ルイズはギーシュの命で完全に遊んでいた… 「そ、そんな…」 蒼白になるギーシュ。そして弾倉の回転が止まり銃声が響いた… 「…アタリは1発…ワルキューレのみ撃破…運が良かったわねぇ、ギーシュ~?アハハハ!」 気絶し下半身を湿らせたギーシュに向かいそう言うとルイズは去っていった… それから数日後… 盗賊土くれのフーケにより学院の宝物庫から黒き召喚の板なるマジックアイテムが盗まれたらしい… ルイズはフーケの討伐に暇つぶしとでもいうように参加した… フーケのアジトと思われる小屋の前でルイズ、キュルケ、タバサは様子を伺っていた。 3人をここまで案内した学院長秘書のロングビルは周囲を偵察してくるいってといってしまっていた 「で、どうするの?」 「誰か一人がいって様子を見てくる」 タバサが提案する。だが、ルイズが動いた。 「まどろっこしいわねぇ…フーケから攻めさせてフーケを倒した後に回収すればいいじゃないの」 「あんたね。いくらなんでもそりゃあ無謀ってもんよ。大体どうやってフーケの方から仕掛けさせるの? 挑発なんて罠があること丸わかりでしょ?」 「ならこうすればいいでしょ」 ルイズは絵札の束からカードを選び出し盤にセットする。 「罠・魔法カード 守備封じ発動!!」 としばらくして、近くの草むらからロングビルが現れた。だが、様子が変だ。 「ちょっと!?どうなってるんだい!?クッ…」 彼女は杖を振ろうとする。だが、表情や時たま起こる硬直からは自身の動きに抵抗しているような節が見られた。 だが、それを振り切るように彼女の手は杖を振る。その瞬間、地面から巨大なゴーレムが出現する。 「なっ!?」 「!?」 驚愕するキュルケとタバサ。だが、ルイズだけはその事実を淡々と享受し嘲笑を浮かべていた。 「なるほど…ずいぶんとせこい真似してくれるわね…ロングビル…いえ、土くれのフーケさん?」 図星をつかれた彼女は顔を歪ませるもどうやらもう自由になったらしい体でゴーレムの肩に飛び乗る 「チィ…まあいい…お前さんの持っているそれはどうやら宝物庫にあった秘法と同じ物らしい… どうやらその絵札がないと使えないみたいだけど…あんたからいただくことにするよ!!」 ゴーレムが向かってくる。だが、ルイズはあざけるかのような笑みを浮かべ新たな絵札を盤に置く 「出てきなさい…デモニックモーターΩ!!」 次の瞬間ルイズとロングビル…フーケのゴーレムの間にどこか禍々しい姿をした光沢を持つ ゴーレムが出現した。それがフーケのゴーレムを迎撃する。 「デモニックモーターの迎撃!!攻撃名は…そうねぇ…ヴァリエールクラッシャー!!」 デモニックモーターの攻撃…ヴァリエールクラッシャーがいとも簡単にフーケのゴーレムを切り裂いた。 フーケは一瞬呆然となるがすぐにゴーレムを再生しようとする。 しかし、タバサとキュルケが捕縛し決着はついた。 ルイズは遊び足りないと呟いたようだが… 「ところで、ルイズ…そのネーミングセンスはないでしょ?」 「別にいいじゃない」 「…いかす…」 「タバサ!?」 フーケを捕らえたあと小屋に入ると黒き召喚の板…ルイズが手につけてる盤と同じ形をしながらも漆黒に染まった それを発見した。ルイズは自分の手にはめているものを外し、絵札の束もそれから外すと 漆黒の盤にそれをさし込み自らの手につける… 「気に入ったわ…」 レコンキスタの間者であったワルドの魔法がアルビオンの皇子ウェールズの体を貫いた。 「これでウェールズの暗殺の任務は完了だ… さて、あとはルイズ…君さえ素直に言うことを聞いてくれればすんなりことは済む… いうことを聞いてくれないかな、ルイズ?」 ワルドがルイズに問いかける。だが、ルイズは体をただ振るのみ… 怯えていると思ったワルドは彼女に優しく言葉をかける。 「怯えなくていい…君が何もしなければ僕も」 と、震えがとまりルイズが顔上げ…そして叫んだ。 「あ~!?ふざけたこといってるんじゃないわよ!!このカスが!! 私はあんた如きの命令をきくなんざクソ食らえよ!!」 「ッ…ならば仕方ない…ウェールズの後を追って…!?」 ワルドは気づく…いつの間にかウェールズのいた場所の付近に霧が出現しているのに… その霧の中から何かが出てくるのに…それはおそらく入れ物…そう思えた… 「皇子様の後ぉ!?何言ってんのよ?ほら~!」 その入れ物が開く…中から現れたのはわけのわからないといった感じの表情のウェールズ。 「なっ!?」 「罠カード発動…タイム・マシーン!!あんたにやられる前の皇子様をおとりにしてそのちょっと前の皇子様を 呼び寄せたのよ…残念だったわね」 「クッ…ならばもう一度!!」 ワルドが杖を振り魔法を放つ。状況を理解してないウェールズは回避できない。と、 「アハハハ!!罠カード発動!!メタル化魔法反射装甲!! 殿下…失礼ですが少しの間、体をメタル化させてもらうわ!!」 ルイズのいうとおりウェールズの体は金属となる…それにワルドの魔法が直撃する。 それを見て愉快そうにしながらルイズはワルドへと口を開く… 「この罠はねぇ…対象の体をを私のモンスターと同じ…対魔法仕様フルメタルに変化させるの… そして…」 次の瞬間、ウェールズに命中した魔法はワルドの元へと反転し向かう。 「魔法攻撃を攻撃してきた馬鹿のほうに反射させるの!! ちなみに私が横に侍らせてるのも反射はしないけど魔法は効かないわよ?残念だったわね。 そしてあんたの魔法の攻撃力を殿下の攻撃力に変換!! 殿下の攻撃力も400ポイントアップした…微弱ながら攻撃力は逆転したわ!」 跳ね返った魔法がワルドに直撃しワルドが消える… 「チッ…遍在か」 「そういうことさ…」 ルイズの前に3人のワルドが姿を見せる。 「本体は別の場所さ…まさか、君がここまでやるとは思わなかった…今回は退かせて貰う」 「逃がすか…くたばれ!カスが!!」 ワルドの遍在…その一人の首に奇妙な輪が装着される。そしてそれが爆発しワルドの遍在一体を消し飛ばした。 「無駄だ…なっ…!?」 瞬間…残りのワルドの遍在が消えた… そして彼の本体は… 「馬鹿な…」 口から大量の血を吐き出し…そして崩れ落ちた… 「フフフ…罠カード 破壊輪…自身の分身で近しい能力を持つ遍在を破壊した… ダメージは甚大でしょうねぇ…生きていても味方に救出してもらえるか…それともそのまま力尽きるか…」 ルイズが対するは7万の軍勢…その軍勢を前にしてもルイズの表情は変わらない。 その表情は相変わらず相手を舐めきった傍若無人なものだった… 「アハハ!…嬲り殺しがいがありそうねぇ…それに上も私一人に殿を任せてくれるなんてわかってらっしゃる!」 ルイズはそういいながらいつものように…それでいて少し厳かに絵札の束から一枚の絵札を選び…抜いた… その札に語りかける… 「あ~…はいはい、わかってるわよ…そろそろ、私を遊ばせるだけじゃつまらなくなってきたんでしょ? …ったく…いいわよ…思う存分暴れ狂いなさい!!」 叫びながらルイズは絵札を漆黒の盤の上に置く…いつもより重たい雰囲気が漂い… そしてそれは出現した…邪悪なる波動を持つ凶つ神… ルイズのコントラクトサーヴァントにより絵札にルーンが刻まれしもの… それを利用し、自らの力を増幅し自らの元々の邪悪なる力と元々の持ち主の病んだ魂の残光によりルイスを蝕んだ… その存在の名は 「邪神イレイザー!!!」 降臨したそれにアルビオン軍は一瞬ひるむ…だが、それに向かっていく… それが圧倒的な存在感を放っていても… と、ルイズが呟く。後から呼び出したリボルバードラゴンの上に乗りながら… 「邪神イレイザーの攻撃力は敵の物量に依存する… あたしを蝕んだ癖にとんだヘボい能力だけど… 相手は7万…敵1つにつき1000ポイントらしいから…7000万…これなら充分やれるでしょう?」 向かってくるアルビオン軍を迎撃せんと邪神は口をあける。 「邪神イレイザーの攻撃!!ダイジェスティブ・ブレース!!」 その攻撃は一気に多数のアルビオン軍を消し去った… しばらくして…邪神は弱っていた…邪神の力は敵が多ければ多いほど高まり少なければまた弱まる… 弱まった邪神は確実にダメージを受けていた。 どうやら魔法に対し抵抗自体は持っているようだがルイズがそれまでに使用した存在たちと違い 完全に受け付けないというレベルではないらしい。 そしてついに邪神が倒れる。 その様子をルイズは笑みを浮かべ見ていた… 「あらら~…やっちゃった♪」 ルイズがそう呟いた瞬間だった…邪神の体からそのサイズを超える量の黒い…血液が流れ出した。 それは戦場一帯に染み込み血の池を作っていく…そして… 「…この馬鹿使い魔はね…やられるとその場にいた他の連中も巻き添えにするの… 味方がいると巻き添えにしちゃうしホントこんな時にしか役に立たないわね!! まったく使い勝手が悪いったらありゃしないわ!! …フフフ…アハハ!!!」 ルイズがそういった瞬間…血の池はその場に存在するすべてを飲み込んだ…主であるルイズさえも… だが、飲み込まれる最後までルイズの顔は快楽に歪んでいた… 数日後…血の池に飲み込まれたはずのルイズはトリステインへと帰還する… その時、彼女の無事を尋ねた者たちにルイズはこう語ったという… 「地獄ってのもなれりゃあ、結構快感なものなのねぇ…何であんなにみんな苦しがるのかしら?」 こともなさ気にそういったルイズに人々は恐怖した… もはや彼女は魔法のつかえない落ちこぼれで嘲笑の対象ではなかった…彼女の方が人々を嘲笑する… 魔法を受け付けぬ鋼鉄の襲撃者達… そして、それをも凌ぐすべてを無(ゼロ)に帰す凶つ神を従える… 敵から希望も命もすべてを快楽を以てして無に帰す彼女を侮蔑の意味を込めて改めてこう呼んだ… ゼロのルイズ…と…
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3924.html
春の使い魔召喚の儀式。メイジであるならば当然のごとく使い魔の召喚に成功する……はずだったのだが、ルイズと呼ばれる少女はそれが出来ないでいた。 ルイズは魔法が使えないと揶揄される。彼女が魔法を唱えれば生じるのは爆発のみ。しかし、ルイズは努力を積み重ねていた。 ただ、いくらその努力を積み重ねていようとも彼女は使い魔を呼び出すことが出来ず、本来ならば彼女はメイジ失格の烙印を押され、退学乃至留年という結果になったであろう。 だが彼女には幸運なことにもう一度チャンスが与えられた。それは教師であるコルベールが他の教師や学院長に嘆願した結果でもあった。 月が頭上に昇った今宵、ルイズは中庭に出ていた。コルベールの温情に答えるべく、魔法の練習をするために……。 繰り返される爆発音、眠りを妨げるこの騒音も、いつもは冷やかす生徒達は今夜だけはと、目を瞑るのであった。 沢山の書物を読んだ。 沢山の人に助言を仰いだ。 それでも結果がでない。明日こそは、明日こそは魔法を成功させて見せると誓い、練習に励むのであった。 そして日付が変わったであろうその時に、それは起こった。 ルイズが練習を切り上げようと思い、最後の一回と杖を振るう途中にそれは起きた。 いつもならば杖が振り切ってから生じる爆煙が杖を振る途中に起きたのだ。 そして月明かりによって明らかになる何かの影……この時ルイズは理解した。使い魔の召喚に成功したのだと……。 思わず小躍りして煙が晴れるのを待つルイズであったが、煙が晴れるにつれ、彼女の顔から喜びが消えていく。 そうどう見てもそこにいるのは妙齢の女性であったのだ。 ルイズは誰であるか問おうと一歩踏み出した。その時、女性が唐突に動き出した。 「ラジカール、レヴィちゃん、参上!」 なにやらピロリロリーンやらキュピーンとかいう擬音がついてきそうな挨拶をしでかしたのだ。 呆気にとられたルイズはレヴィちゃんなるこの人物をつぶさに観察する。スタイルは羨むぐらいに良い。黒髪を後ろでまとめている彼女の容姿は綺麗と言っても過言ではないだろう。 けどその格好はどうかと思う。彼女が美少女、少女と言われるような年齢ならば有りかも知れない。けど現実には彼女は美女であって美少女ではない。魔法少女チックな服装は痛々しい。 「誰……?」 辛うじてそう声を出すことが出来たルイズ。彼女はこの状況でよくまともな質問をしたと自画自賛していることであろう。 「魔法少女としての素質がいまいちな貴女を、スナック感覚で助けるために、ヘストンワールドからやってきた正義と平和の使者なのよ!」 くるくる踊りながらそんなことを言ってのける彼女をルイズは冷たい目で見ながら、スナックとかヘストンワールドって何?と心の中で思っていた。 決して突っ込んだら負けと彼女が思っていないということを弁明しておく。 ルイズの様子などお構いなく、ノリノリなレヴィちゃんは目をキラキラさせてルイズの両肩をがっしり掴んだ。 「悩み事とかあるでしょう! 言ってみて!」 鼻息が荒いレヴィちゃんはルイズをがくがく揺さぶる。 ルイズは絶対こいつは使い魔じゃない、そう思ったか定かではないが言い放つ。 「帰ってくれない?」 そんなルイズを素直じゃないツンデレかと思っているレヴィちゃんは尚をルイズに詰め寄る。 「ほらー、やっつけて欲しい人とか嫌いな奴とかいるでしょ! ほら!」 「いないことはないけど…」 折れた。ルイズは折れた。彼女のテンションについて行けなくなったルイズは用事が終わったら帰るのかしら、なんて思ったのか話に乗ってしまったのだ。 そして夜が明け、物語は魔法学院の教室へと移る。 「なんだよ”ゼロのルイズ”、使い魔は召喚できなかったんじゃないのか?」 教室に入るなり行き成りいちゃもんをつけ始めたこの少年、マリコルヌとその取り巻きはこの後降りかかる災いを知らない。 「え? こいつ? うざったいやつって…」 「こんな感じでうざいのよ…」 妙にうきうきしたレヴィちゃんとは対照的に覇気がないルイズ。 「なんだちょこざいな。あんなもんひとひねりですよー♪」 それはルイズに語ったのか、それとも彼らを挑発するために言ったのか、理由はともかく結果としてマリコルヌとその他数名の生徒は激昂した。 「なにー!ルイズの癖に生意気な!」 どこぞのガキ大将のごとく顔を真っ赤にさせて襲いいかかる彼らを尻目にレヴィちゃんは踊り始めた。 「トカレフ、マカロフ、ケレンコフ、ヘッケラーコックで―――」 キラリラリンという効果音つきで踊るそれは彼女の魔法を使うための舞、そして…… 「見敵必殺ゥ!」 何とも頼もしい掛け声と共に現れたのは二丁の銃、それは彼女の相棒ソードカトラスに他ならない! 驚くルイズを尻目に銃口はマリコルヌの額に合わさった! 教室に響く銃声、悲鳴、怒号…そして…… 「魔法じゃないの!」 「誰が?」 虚しく叫ばれるルイズの突っ込み。 「イェーイ! 物事なんでも速攻解決! 銃で!!」 一仕事終えて楽しそうに叫ぶ彼女にルイズはもはや突っ込みを入れる気もなくしてしまった。 「魔法なんて非現実的なものよりよっぽど確実な方法よ!」 高らかに笑い、そう宣言するレヴィちゃん。彼女はここが魔法学院とは知らない。 「ああ、風上のマリコルヌが風穴のマリコルヌになってしまった…」 誰ともなくそう叫ぶ声が教室に響く。 「頭痛いから教室に帰るわ……」 これは悪い夢、目を覚ませばいつもの日常が……。逃避を試みるルイズ、だがそうは問屋が許さない。 レヴィちゃんに首根っこを掴まれ引き止められる。 「何言ってんの?ここは教室だから帰るなんてできないぞぉ」 彼女の言うとおり。そもそも教室にいるのに教室に帰ることなど出来ないのだ。それよりもレヴィちゃんに突っ込まれるなんて……。 「そんなことより、今日はレヴィちゃんから素敵なプレゼントがありまーす」 「いらないいらない」 「何とこの銃をあげちゃいまーす!」 心の底から全力で拒否しようがレヴィちゃんには無駄無駄。無理やりルイズの手に二丁の銃を握らす。それはまだ発砲の余韻で銃口が暖かい。 「あ、それじゃあ時間だから帰るね! バイバ~イ!」 こうして自己満足を思うさま堪能したラジカルレヴィは、ヘストン・ワールドに帰っていきました。 テンション爆超のまま。 物語はここで終わらない。当然その後教室に踏み込んだ教師達によって、ルイズは事件の首謀者として拘束されてしまうのでした。 「ミス・ヴァリエール。君は、君はそんなことをする生徒ではないと信じていたのに……」 コルベールが目元を拭う。オスマンはそんな彼を気遣いながらルイズに優しく問いかける。 「何故こんなことをしでかしたのじゃ。君にはチャンスが与えられた…自棄になる必要はないじゃろう」 「ごめんなさいごめんなさい……」 ルイズは謝罪の言葉を口にしながら心の中で助けを求めていた……そしてそれに呼応するものが現れたのだ! 「マジカールメイド、ロベルタちゃん、参上!」(猫耳) 「お、同じくマジカルメイド、シエスタちゃん参上!」(猫耳) 続きません
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/714.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (2)分析+葛藤 「ふむ…この契約のルーン、悪くは無い」 ウルザはマジマジと自分の左手に浮き上がったルーンを見ていた。 魔法的構造までを解読するにはウルザを以てしても時間を要するが、効果だけは読み取ることが出来た。 1.武器に関する熟達 2.武器所持時の肉体の強化 3.術者に対する忠誠を対象の深層心理へ植えつける 要するに強化と忠誠。 シンプルだが実に強力なエンチャントである。 これを効果を拡大し軍勢に影響するように作り変えれば、新兵の軍団も一朝一夕で熟達の兵士となるだろう。 また、効果対象が個人のままであったとしても人間としての基本骨子にこれを刻みつけ、品種改良を続ければいずれ強力な力を持つ人間を作り上げることが出来るだろう。 ウルザはそれらがファイレクシア攻略の手助けになるとほくそ笑むのであった。 また、この世界についてウルザを喜ばせる原因は他にもあった。 今は夜、ここは学院の図書室である。 ウルザが手にしているのは、この世界、ハルケギニアの魔法体系についての本である。 この世界には火、水、風、土の魔法要素があるらしい。 一方ウルザが扱うマナは、赤、青、緑、白、黒である。 赤のマナで行う魔法は、四系統の中では火と土といったように、必ずしも一対一で相対するものではないようである。 一方で、この世界には根本的に白と黒のマナの魔法に相当する魔法は無いようである。 (黒の魔法にあたる死者の蘇生などは先住の魔法という形で存在するらしい) 何より、ウルザが注目したのは「虚無」である。 これは始祖ブリミルと呼ばれる何ものかが確立させた、今は失われた系統であるらしい。 どのようなものかまでは、この図書室では分からなかったが…ウルザの頭には一つの仮説が浮かび上がっていた。 「このような世界で、ファイレクシア攻略の手掛かりがみつかるとはな…失われた力を取り戻すまでの骨休みと思っていたが、そうもいかないらしい」 ルイズがもしこの場に居合わせたなら、ウルザの口元に浮かんだ笑みと、体中から滲み出るもので言葉を失ったに違いない。 朝 ルイズは自室のベットの上からぼーっと天井を見上げていた。 (ええと、染みが一つ、二つ…) 無為なことを考えながら、幽鬼のような表情で部屋の片隅を見る。 そこには、どこから持ってきたのか小さいながらもしっかりとした机が置かれている。 その机に向かい、何かの作業をしているウルザの背中。 どうやら何かを作っているようだが、何を作っているのかはわからない。 (私、どうしてあんなメイジと契約しちゃったのかしら……それに、私のファーストキスぅ…) 枕を抱いて涙目で転がるルイズ。 一応、昨日の晩に自分の中では決着をつけることが出来たのだが、一晩経つとまた挫けそうになるのである。 (そうよ、あれは執事みたいなもんよ!従者なの!本人も認めたんだから、執事みたいなもんなのよ!) ハルケギニアにおいて、メイジは貴族である。 当然、召喚されたメイジであるところのウルザも、何処かの貴族であると考えられた。 その点をコルベールやルイズが問い詰めたが、ウルザ本人は「記憶が混乱している」だの「記憶が欠落している」だのらりくらりと交わし、どこの貴族かは分かっていない。 そもそも杖を持ってローブを来ていたからメイジ、と言うことになっているが、本人が魔法を使っているところはまだ見ていない。 もしかしたら平民なのかもしれないが、「魔法見せて」というのも………正直怖い。 魔法をまともに使えないルイズでも分かる、あの貫禄と得体の知れない雰囲気。 きっとどこぞの名のあるメイジに違いない。 ヴァリエール家は公爵家であるから、身分で負けているとは思わない。 しかし他国の貴族、しかも記憶喪失の者を使い魔や従者として扱ってもいいものかと一晩悩んだのだ。 (もしも何処かの王家の縁の者だったら………) ―ぶるりと悪寒が走る。 (だから執事、執事なら文句ないでしょ!それに本人も使い魔になるのは同意してるんだし!) こうしてメイジを使い魔にする、という部分はルイズの中で一応の決着を見た。 問題はキス、乙女心な甘酸っぱい、青春のメモリーである。 (アレはノーカウント!ノーカウント!使い魔の契約なんだからノーカウント!じゃ無かったらお父様にキスしたのと一緒!そうなのよ!わかったルイズ!?) ごろんごろんと転がるルイズであった。 「お目覚めかな、ミス・ヴァリエール」 大丈夫、決着したと言い聞かせてルイズはベットから起き上がった。 「おはよう、ミスタ・ウルザ。それと昨日も言ったけどルイズでいいわ」 「そうだったね、ミス・ルイズ」 「じゃあ、起きて着替えるから…いいわ、外で待ってて」 「そうかね?てっきり貴族は従者がいる場合手伝わせるものだと思っていたがね」 「いいから、出ていって頂戴、ミスタ・ウルザ」 バタンと扉が閉まり、ウルザは外へ出て行った。 ルイズも最初は手伝わせようかと思ったのだが、あの色眼鏡に見つめられると思うとどうにも落ち着かなくなってしまったのだ。 何より、眼鏡の奥、彼の瞳に何か恐ろしいものが潜んでいる気がするのだ。 「?」 着替える最中、ウルザの机の上に作りかけの何かが置いてあった。 「何これ…鉄の、…動物?」 これは、…壊れてる ――炎蛇の魔道師 コルベール 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/fgthomas/pages/74.html
虚ムネのルイズ 日が沈み、ろうそくの明かりがほんのりと部屋の一角を照らしている。 俺はルイズの部屋で一人、義手の手入れをしている。頭のタンコブがひりひりする。 ルイズはいま、キュルケの誕生パーティーに招待されて部屋には居ない。 小一時間前、ピンクのドレスでおめかしして部屋を出て行った。 その時、ドキッとしたのを隠そうと「ハッ、馬子にも衣装だな!」と言ってしまったのがタンコブの原因。 まだしばらくは戻ってこないだろうから、退屈しのぎに手入れをしている・・・と、扉をバタン!と乱暴に開けてルイズが戻ってきた。 「あ~、ムカツクムカツクムカツク!!」 肘まである白い手袋を無造作に脱ぎ捨てながら1人荒れている。 「お・・・おい、どうしたんだよ?パーティーで何かあったのか?」 ピタッ、と体と一瞬止め・・・ゆっくりとこちらを振り向く。目が怖い。 そして、ゆっくりとこちらに歩いてくる。 目の前で止まり、うつむき小声でポソリ、と言う。 「あなた、ジンタイレンセイっての研究してるんでしょ?」 「あ・・・あぁ、そうだけど。」 「・・・・・・して。」 「 え?よ、よく聞こえなかったけど」 きっ、と俺の目を見て今度ははっきりと言う。 「私の胸を今すぐジンタイレンセイで大きくしなさい!」 「はぁ?な、なに言ってるんだよ?ちょ、冷静に」 「私は冷静よ!早くしなさい!」 なりふり構わずまくしたてる。 「(う~ん、困ったな。たぶんキュルケになにかからかわれたんだろうけど、そんな事で人体練成なんてやる訳にはいかねーし・・・あ、そうだ!)」 「わかった、ルイズ。じゃあ、今すぐ練成するから、そのまま立ってて」 「え・・・あ、うん・・・」 急にOKして拍子抜けしたのか、おとなしく指示に従ってる。 「よし、じゃあ今からやるから。そのまま目をつむって。」 「このまま?ドレスは・・・」 「ああ、大丈夫大丈夫。心配しないで。さ、始めるよ。」 そして、練成陣をイメージしながらパン!と両手を合わせる。 そして、そのまま両手を前に・・・ルイズの胸をタッチ! 「ふぇ?」 ルイズがパチッと目を開けて呆然と自分の両胸に当てられた手を見ている。 突然の事で思考が止まっているのか。 「エ、エ、エド・・・・あんた、何してるのよ?」 明らかに怒ってるなー。でも、もう練成が完成する。 バチバチバチッ ドレスの胸の部分がどんどん盛り上がっていく。A・・・B・・・C・・・D・・・・・ 「な、なこよこれ?」 「どうだ、完成だ。名付けてDカップドレス!」 そう、巨乳ドレスを練成したんだ。 「何言われたかシラネーけど、人体練成は禁忌。くだらない事には使わないよ」 その時、ドアをコンコン、とノックする音。そのままドアを開けて入ってくる人影。キュルケだ。 「ルイズ、開けるわよ。ごめんね。みんなの前でスリーサイズをバラしちゃって。私の完璧なスタイルを際立たせようと思って、つい口が滑ったのよ。」 あ~、そういう事か。でも、キュルケ、ちょっと顔が赤く高揚してるな。まさか、酔ってるのか? 「あ、謝ったって許さないんだから!それにそれだけじゃない。きょ・・・」 口篭る。 「ん?ああ、【ゼロムネのルイズ】って言ったこと?だってB・Wほとんど同じなんだもん。つい・・・ね。」 うへ~、それは酷いなぁ。 その時、キュルケがルイズの胸に気づく。 「え?ルイズ、その胸・・・何?」 「・・・エドに大きくしてもらったの。」 「ほんとに?ちょっと見せてよ。って、これパッドじゃない。」 胸の谷間から中身を覗き込みながらキュルケは言った。そして、ニヤ~と顔を弛ませて、 「あっははは!サイコーだわ!これが本当の【虚ムネのルイズ】ね!!みんなに教えないと!」 笑いながら部屋を飛び出していった。 しばしの静寂が戻った部屋。後からみんな見にくるんだろーな。ちょっと気の毒。 「エ・ド・ワ~・ド~~~」 ルイズが鞭を取り出す。 ぴしっ!ぴしっ! みんなが来るまで、ルイズの手が休まることは無かった。