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なのはが仮面ライダー2号に、またユーノ・BLACKが仮面ライダーV3に助けられていた頃、 ディケイドは同じく救援に来ていた1号と共にユリトルーパー及びG3・G3-Xの軍団と戦っていたのだが、 余りにも数が多すぎて未だ埒が明かないでいた。 「ユリー! ユリー!」 「規制! 規制!」 「こいつ等同じ事しか言わないから鬱陶しいな…。」 だがここでディケイドがライドブッカーから一枚のカードを取り出していた。 「俺に考えがある。これから俺があるカードを使い、奴等を一箇所に密集させる。その隙に一網打尽にするんだ。」 「分かった。他に手らしい手が無い以上君の提案を呑もう。」 「だが…変な突っ込みは入れるなよ。」 「突っ込みを入れるな…? どういう事だ…。」 ディケイドの最後の一言の意味が1号には理解出来なかったが、ディケイドは構わずカードをディケイドライバーに差し込んでいた。 『プリキュアラーイド! ルージュー!』 「はぁぁぁぁ!?」 「だから突っ込むなっつっただろ!!」 ディケイドはプリキュアライドでキュアルージュの姿になっていたのだったが、そこを即効で1号に突っ込まれていた。 そりゃ1号とてディケイドが他のライダーに変身出来る事は知っていたが、流石にプリキュアにまで変身するのは初耳だった。 しかも例によってディケイドルージュの声はやはり門矢士のままなのだから相変わらず凄い違和感だ。 「有害情報発見! 規制します!」 「規制規制!」 ディケイドがルージュに変身した途端、G3・及びG3-X軍団が目の色を変えてディケイドルージュへ向けて駆け寄せて来た。 彼等が青少年を有害情報から守ると言う名目で美少女キャラクターを規制しようとしているのならば、真っ先にディケイドルージュに 反応すると考えていたのだった。それ故にG3・G3-Xの軍団はディケイドルージュへ攻め寄る余り、一箇所に密集する形となっていた。 「よし今だ!」 『アタックライド! ファイヤーストライク!』 ディケイドルージュは再度カードをディケイドライバーに差し込む。それはキュアルージュの必殺技・ファイヤーストライクのカード。 炎を操る力を持つキュアルージュの力によって炎の球を作り出し、それをサッカーボールの様に敵へ向け蹴り飛ばす技である。 ディケイドルージュはファイヤーストライクによって炎の球をG3・G3-X軍団へ向けて蹴り飛ばし、そこへさらに… 「電光ライダーキィィィック!!」 1号の電光ライダーキックが打ち込まれ、その勢いの分速度を数倍にまで上げた火球がG3・G3-X軍団へ向けて突き進み、 さらに数倍にも増した速度は着弾時の爆発力さえも数倍に高め、一気に吹き飛ばしていた。しかしまだ百合ショッカーのユリトルーパー隊が残っている。 ディケイドルージュと1号は迫り来るユリトルーパー隊の迎撃に移っていたのだった。 「ユリー! ユリー!」 「とぉ! とぉ!」 「何かさっきより辛くなって来た気がするぞ。」 ディケイドルージュと1号は次々迫り来るユリトルーパー隊を倒していたのだったが、ユリトルーパー隊にとっても敵であった G3・G3-X軍団がいなくなってしまった分、二人にユリトルーパー隊が集中して逆に先程より辛くなると言う皮肉な事になっていたのだが… 「ライダーキィィィック!!」 「ディバインバスター!!」 「ユリィィィィィ!!」 ここでBLACK・2号・V3のライダーキック、そしてなのはのディバインバスターがユリトルーパーを次々に蹴散らして行った。 「助けに来たよ!」 「おお、恩に着る。」 こうして1号・2号・V3の協力を得たなのは・ユーノ・ディケイド・BLACKは何とかユリトルーパー隊の撃破に 成功し、ここで双方が向かい合う形で立っていた。 「お前達が助けに来てくれなければ危なかった。恩に着る。」 「礼を言う事は無い。我々にとっても百合ショッカー及び都条例の世界の連中は世界の平和の為に倒すべき敵だ。」 「でも百合ショッカーに立ち向かっていたのは私達だけじゃなかったんですね? そう考えると心強く感じて来ました。」 なのはは例によってフェレットの姿のままであったユーノを優しく抱っこしながら微笑んでいた。 百合ショッカーの各世界侵攻に対し抗っていたのは自分達だけでは無かった。この三人の様に他にも立ち向かう人々が いる事を知り、精神的に楽になって来ていたのだった。 「うむ。その通りだ。我々だけでは無い。今も各世界のライダーやその他様々な勇士達が百合ショッカーに立ち向かっている。 我々は君達を助けるのは勿論だが、百合ショッカーと戦っているのは君達だけでは無い事を伝えに来たのだ。」 「そうか……皆も戦っているんだな…。」 1号達三人の言っている事が本当ならば、なのは達が想像している以上に百合ショッカーに立ち向かっている人々は いると言う事になる。これ程頼もしいと思える事は無かった。 「しかし百合ショッカーの勢力が圧倒的なのもまた事実だ。」 「奴等は世界各地の百合厨や801好きの腐女子を味方に付け、どんどん勢力を拡大している。」 「だからその予備軍になるヲタと、そいつ等が好みそうな物を規制せねばならないのだぁぁぁぁぁ!!」 「誰だ!!」 突然響いた謎の声。敵の新手が来たのかと思った皆がとっさにその声の方向を向くが、そこに立っていたのはスーツ姿の老人だった。 「誰……?」 「あれは鉄原都知事!」 「鉄原都知事!?」 突如現れた謎のスーツ姿の老人に対し1号は『鉄原都知事』と呼んだ。なのは達四人は思わず1号に注目していたが、 今度は2号が説明を始めるのだった。 「鉄原都知事…奴は都条例の世界の支配者で、腐敗した警察官僚と手を組み百合ショッカーの為に世界が混乱した隙に乗じて G3・G3-Xの軍団を各世界に送り込み、青少年の健全育成と有害情報の規制の名の下に罪無き人々を虐げる張本人だ。」 「あれが………。」 なのはとユーノは呆然とした面持ちで再度鉄原都知事の方に目を向けていたが、彼の表情は凄まじく険悪な物だった。 「規制して当然だ! こんな物を子供に見せられるか!」 鉄原都知事の手には如何にもなエロ漫画雑誌が握られており、それを見せ付ける事によって自身を正当化させようとしていた。 確かにそういうのから子供を守ると言う大義名分なら人々からの共感も得られやすいわな。だが、ここでなのはやライダーの皆さんを指差し… 「だがそれだけでは足りん! お前達の様な子供が変な影響を受けかねない物は何だって規制せねば子供は守れない!」 「何だと!?」 「それは幾らなんでも子供をなめ過ぎ…と言うかアレは良いの!?」 なのはは未だ彼方此方に転がっているG3・G3-Xを指差しながら反論する。確かになのはには相当数のヲタが付いてるから 規制したい人間が目を付けたがるのも分かるし、ライダー等のヒーローものが昔から乱暴だと非難されていたのも事実。 しかし、鉄原都知事もG3・G3-Xを使っていたのは良いのかと…そう言いたかったのだが… 「我々は良いのだ!」 「おい!」 即答する鉄原都知事の態度に皆はますます彼を信じられなくなっていた。 「これは青少年の健全育成なんてやるつもり無いな…。」 「所詮人々からの共感得る為の方便で、実際やりたいのは思想統制なんじゃないの?」 「百合ショッカーの方がまだマシだよね~。」 口々に言う彼等の態度に、鉄原都知事の方も苛立ちを露としていた。 「おのれ…有害情報どもが勝手な事を言いおって…。こうなったらこの私自らがお前達を規制してやる!」 「規制するって…爺さん一人で何が出来るってんだよ!」 今この場にいるのはディケイド等及び鉄原都知事のみである。無論鉄原都知事に味方するG3・G3-X軍団は もはや全滅に近い状態であり、戦力になるか分からない。しかしそれでも鉄原都知事は不敵な笑みを見せ付けていた。 「甘いな。私にはこれがあるのだよ。」 「あっ! あれはガイアメモリ!」 鉄原都知事が何処からか取り出したUSBメモリ状の物体。それは『Wの世界』に存在するガイアメモリだった。 しかし、一体何のメモリだと言うのか? そして鉄原都知事はそのガイアメモリを自身に突き刺す様に当てていた。 『規制ー!』 その様な電子音と共に鉄原都知事の姿が怪人然とした姿へと変わって行く。ガイアメモリを直接人体に差し込み 怪人化する存在の事を一般的に『ドーパント』と呼ぶのであるが、『規制』のガイアメモリを使用した鉄原都知事の 変化したドーパントは、言うなれば『規制・ドーパント』とでも呼ぶべき姿だった。 「規制だ規制! 私の気に入らない物は何だって規制してやるのだ!」 「それが本音か!」 「政治家の風上にも置けない野郎だな…。」 規制のガイアメモリで規制・ドーパントになる事によって溢れる力に奢り高ぶったか、鉄原都知事はつい本音を さらけ出してしまった。だが逆に言えばここでなのは達を規制の名の下に屠り葬る自信があると言う事にもなる。 「これはもはや奴をここで倒しておかなければ大変な事になるぞ。」 「ただでさえ百合ショッカーだけでも忙しいのに…。」 「あんなのまで加わったら何が起こるか想像も出来ん…。」 「と言うか、気に入らないから規制なんて…あの人のやってる事の方がよっぽど子供じゃない!」 皆は鉄原都知事の変身した規制・ドーパントを前に戦闘態勢を取っていた。大きな寄り道にもなり得る事だが ここで奴を倒しておかなければ大変な事になる…誰もがそう確信していたのだから。 「行くぞ!」 「おお!」 「来るなら来い! お前達全員規制してやる!」 皆は一斉に駆け出し、規制・ドーパントはそれを真正面から迎え撃った。 「まずは私達が! アクセルシューター!」 「チェーンバインド!」 ディケイド等、ライダー達が規制・ドーパントへ仕掛ける前になのはとユーノの魔法が発動した。 ユーノのチェーンバインドが規制・ドーパントを縛り上げ動きを止め、さらになのはのアクセルシューターを 側面や背後等、規制・ドーパントにとって死角となりそうな部分へ撃ち込むと言う作戦だったが… 「ふん!」 「うあああ!」 規制・ドーパントは元になっている人間が老人であるとはとても思えない物凄い怪力を発揮し、 逆にチェーンバインドを掴みユーノを引き飛ばしてしまうのみならず、そのチェーンバインドを振り回して なのはのアクセルシューターを全て打ち落としてしまうのだった。 「ユーノ君大丈夫!?」 「あ…ありがとう…。」 規制・ドーパントにチェーンバインドごと振り飛ばされたユーノをなのはが慌てて救出していたが 丁度その時には五人ライダーが規制・ドーパントの近接距離まで接近し、双方の格闘戦が始まっていた。 「とぉ! とぉ!」 「ふん!」 「うおぁ!」 しかし規制・ドーパントは強かった。五人ライダーの猛攻をたった一人でいなし、逆に跳ね除けていたのである。 「強いぞコイツ!」 「まだまだぁ!」 ここで1号と2号が同時に高々と跳び上がり、ライダーキックの体勢を取った。 「ライダー! ダブルキィィィック!」 「腰が入っとらん!」 何と言う事か、規制・ドーパントは1号・2号のライダーダブルキックさえ腕の力で弾き飛ばしてしまった。 だがダブルライダーもすぐさま体勢を立て直し、その規制・ドーパントの両腕へ組み付いていた。 「今の内に攻撃するんだ!」 「おお!」 ダブルライダーが規制・ドーパントの両腕を掴み押さえ、動きを止めている隙にV3とBLACKがそれぞれに 右腕の手刀を振り上げ接近する。 「V3チョォォォップ!」 「BLACKチョップ!」 V3&BLACKのチョップ攻撃が規制ドーパントへ向けて叩き込まれ様としたのだったが… 「させるかぁぁぁ!」 「うお!?」 規制・ドーパントは再び物凄い怪力を発揮し、両腕を掴み押さえていたダブルライダーを V3・BLACKへ向けて振り飛ばしていたのだった。 「うおあぁぁぁ!!」 規制・ドーパントによって振り飛ばされたダブルライダーはそのままV3・BLACKに直撃して その二人をも跳ね飛ばし、さらにはその後方にいたディケイドまでをも巻き込む形となっており、さらに… 「お前達全員規制じゃぁ!! 規制ビィィィィィム!!」 「うああああ!」 規制・ドーパントは『規制ビーム』なる光線を口から発射し、忽ちの内に物凄い爆発が巻き起こっていた。 「くっ…なんて強さなんだ……。」 皆は必死に起き上がろうとするが、ダメージが大きく上手く立ち上がれない。その間も規制・ドーパントは ゆっくりと歩み寄ろうとしていたのだったが、そこで彼は足元に何かが落ちている事に気付いていた。 「ん? 何だこの人形は…。」 規制・ドーパントが拾い上げたのは女の子の人形だった。そしてそこへ、一人の少女が恐る恐る近寄っていた。 「そ…それ…私の……返して………。」 その少女が人形の持ち主と思われるが、余程大切な物なのだろう、規制・ドーパントのグロテスクな姿に 恐れをなしながらも勇気を振り絞り一生懸命に哀願していた。そしてその光景を見たディケイドも言う。 「お前が守りたいと言った子供の頼みだ。それを返してやれ。」 例えなのはやライダー達を敵視していても、規制・ドーパント=鉄原都知事が力無き子供を守ると言う想いは 変わらないはず。本当に子供を守る気があるならば素直に返してやるべきだと考えていたのだったが… 「これも有害情報だ! 規制だ!」 「ああぁ!」 何と言う事だろう。規制・ドーパントは少女の目の前で人形を踏み付けグシャグシャにしてしまうのだった。 「ああああー! 私のキュアマリンのお人形がー! やめてよー!」 「ええい近寄るなクソガキが!」 「ああ!」 あろう事か人形を取り返そうと必死に駆け寄った少女をも蹴り飛ばし、なおも人形を踏み付ける。 「何がキュアマリンだ! あんな如何にもヲタクが喜びそうな卑猥な格好の上にあんな暴力的な内容… こんな物があったら子供が影響されて乱暴になるのは目に見えている! いずれはプリキュアの世界にも 攻め込んで規制しまくってやるわー!!」 「もうやめなさい!!」 「なのは!?」 その時だった。なのはの全身が桃色の光を放ち始め、次第にその輝きが強くなっていく。 「確かに世の中には行き過ぎて過激な描写をしてる漫画とかもあると思う……けど…… 例え手段は違っていても…子供を守りたいと言う想いは変わらないと思っていたのに…… 結局子供を泣かし乱暴を振るう様な事をして……許せない…絶対に許せない!!」 なのはの表情に怒りの炎が灯り、桃色の光を発しながらその姿が元の大人の姿へ変わって行く。 「おい! 何なんだ!? いきなり大人になったぞ!」 これにはなのはの事を余り知らない1号・2号・V3・BLACKは戸惑うばかりだったが、 ディケイドがそこを説明していた。 「慌てるな。あくまでもあれが奴の本当の姿だ。今までは疲弊して低下したパワーを回復させる為に 消耗の少ない子供の姿を取っていただけに過ぎん。」 「だが子供ならいざしらず、大人であんな魔女っ子(死語)的な格好は余りにも…。」 「俺達のこの格好だって余り言える立場じゃないだろ。それよりも…アイツのパワーはまだ完全に 回復しきってはいなかったはずだ。だと言うのに何故あれだけのパワーを?」 1号・2号・V3・BLACKそれぞれの世界ではまだ『魔法少女』と言う概念は広まっておらず 魔法を使う女の子と言えば『魔女っ子』と呼ぶ傾向にあったのだが、まあそういうのはどうでも良いよね。 問題はまだ回復が完全では無かったなのはが何故大人の姿に戻り、物凄い魔力を放出出来たかの事である。 それに関してあえて説明するならば、先程の少女が規制・ドーパントに虐げられる様を見たなのはが 怒り心頭になり、『高町なのは激情態』と呼べる形態となったと言うべきであろう。 「規制・ドーパント! いや…鉄原都知事!! 私は…私は絶対に許せ無い!!」 激情なのはは物凄い表情で規制・ドーパントを睨み付け、レイジングハートの先端を向けていた。 そしてディケイドもまた立ち上がり、こう続ける。 「鉄原ぁ! そう言えばお前、昔はエロ小説書いてたそうじゃないか。しかもかなりヤバめな内容の。 そのくせあえてその事を棚に上げて俺達だけを規制しようだなんて都合が良すぎるんじゃないのか?」 「小説は良いんだよ! それにそっちこそ何を偉そうに…貴様一体何様のつもりだ!」 「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」 得意の捨て台詞を言い放ち、ディケイドは一枚のカードをライドブッカーから取り出していた。 「俺もここで流れに乗らせてもらう。」 『プリキュアラーイド! マリンー!』 「あっ! キュアマリン……。」 ディケイドはプリキュアライドでキュアマリンの姿に変身していた。この姿で戦う事によって 先程規制・ドーパントによって大切なキュアマリン人形を壊されてしまった少女への せめてもの慰めになると考えていたからであった。 「海よりも広い俺の心もここらが我慢の限界と言う奴だ。」 「やっぱりキュアマリンじゃない~…。」 姿こそキュアマリンになっても声は門矢士のままなのだから、その凄まじい違和感により少女から思い切り引かれてしまっていた。 「おのれぇぇぇ! 私の前で堂々とコスプレとは…許せぬ! 規制だ! コスプレ規制条例作って提出するぞー!」 「その前にお前をここで叩き潰す!」 激情なのはとディケイドマリンが同時に跳んだ。 「はぁぁぁぁぁ!!」 まずは激情なのはがレイジングハート先端を規制・ドーパントへ向ける形で突撃して行く。 なのはに関して砲撃力ばかりに目が向けられがちであるが、小回りこそ利きにくいが 直線的なスピードは中々の物で、それを生かした突進力は目を見張る物があった。 しかも今のなのはは激情態。普段の様な相手を労わる甘さを排除したその攻撃は 従来のそれを遥かに上回る事は想像に難くなかった。 「そんなナマクラな槍がこの私の身体を通る物か! この筋肉で弾き返してやる!」 規制・ドーパントは自身の胸筋・腹筋に力を込め、なのはの突撃を弾き返さんとする…が…その時だった。 あと数センチでレイジングハートの先端が規制・ドーパントの腹部に突き刺さる…と思われた所で なのはが急停止していたのである。 「何!?」 レイジングハートを槍の様に突き刺して来ると考えていた規制・ドーパントはなのはの 意表を突いた行動に思わず驚いてしまうのだが、その直後だった。 「全力全開! ディバイィィィンバスタァァァァァァ!!」 「何ぃぃぃぃ!?」 これがなのはの作戦だった。あえて寸止めして意表を突いた所を至近距離からディバインバスターを撃ち込む。 その強力な魔力砲撃に押される形で規制・ドーパントは思い切り吹き飛ばされて行く。 一方、ディケイドマリンはライドブッカーからカードを取り出し、ディケイドライバーに差し込んでいた。 『アタックライド! 心の種! レッドの光の聖なるパフューム! シュシュッと気分でスピードアップ!』 『ハートキャッチの世界』におけるプリキュアは様々な効果を持つ心の種を使用する事によって、その能力を駆使する事が出来た。 そして今ディケイドマリンが使ったのはその内の一つ、使用者に超スピードを与える赤い心の種である。 「行くぞぉぉぉぉ!!」 『アタックライド! おでこパンチ!』 全身に真っ赤なオーラを纏ったディケイドマリンが猛烈な速度で駆け、ディバインバスターに押し飛ばされていた 規制・ドーパントを追い越し、さらに背後から猛烈な頭突きを加えていた。 「うぉぉぉぉ!!」 「まだまだ! ディバインバスター!!」 『アタックライド! マリンインパクト!』 ディケイドマリンに背中を頭突きされ前向きに吹っ飛び始めた規制・ドーパントに対し、再びなのはがディバインバスターを放つ。 正面からそれを受けた事によって今度は前向きに吹き飛び始めた所を再びディケイドマリンが追い越し、背中に拳を撃ち込む。 それを何度も繰り返していたのだった。 「えげつない事するな~。」 激情なのはとディケイドマリンのコンビネーション攻撃は客観的に見ると結構えげつない物であり、 1号・2号・V3・BLACK・ユーノは半ば呆れドン引きしていた。 しかし、この攻撃も何時までも続かなかった。 「おのれぇ! 調子に乗るなぁぁぁぁ!」 怒り心頭に来た規制・ドーパントは力を振り絞ってなのはとディケイドマリンの攻撃の嵐から脱出していた。 そして大地を踏み締め、反撃の体勢を取ろうとする。 「この有害情報どもがぁ~。これ以上好きにはさせ……うあああああ!!」 彼の言葉を遮るかの様になのはのディバインバスターが再び規制・ドーパントへ撃ち込まれる。 普段のなのはならば話を最後まで聞いていたであろうが、激情態である今のなのはにそんな優しさは無かった。 さらにディケイドもマリンへの変身を解き、再び一枚のカードをライドブッカーへ差し込んでいた。 『ファイナルアタックライド! ディディディディケイド!』 「とぁぁぁぁぁぁぁ!!」 激情なのはのディバインバスターで押し飛ばされていく規制・ドーパントへ向けてディケイドが高々と跳んだ。 そしてディケイドと規制・ドーパントそれぞれを直線で結ぶ空間に十枚の光のカードが現れ、ディケイドがそれを 次々と潜っていく形で規制・ドーパントへ向けて突き進み、ディヴァインオレ鉱石製の足先から来る猛烈な蹴りを打ち込んでいた。 それこそディケイド版ライダーキックである『ディメンションキック』 「うあぁぁぁぁ!」 ディケイドのディメンションキックをモロに受けた規制・ドーパントは手足をバタ付かせながら宙を舞うと共に 地面に思い切り叩き付けられていた。 「おのれぇぇぇ! 私はまだ死ねん! 世界を腐敗させる若者文化の全てを規制し終えるまでは死ねんと言うのに……うぉぉぉぉ!」 その様な断末魔を残し、規制・ドーパントは木っ端微塵になって爆散するのだった。 「終わったな…。大きな寄り道となってしまったが、これで都条例の世界の連中も少しは大人しくなるだろう。」 「それも時間の問題だろうがな。その内また新しい都知事が誕生し、青少年の健全育成と称し 奴等にとって気に入らない物の規制の為に他世界へ侵攻する事も考えられる。」 「だが、今まず倒すべきは百合ショッカーの方だ。」 規制・ドーパントこと鉄原都知事を倒したが、都条例の世界の連中がこれで完全に潰えたわけでは無い。 しかし、現状においてはまず百合ショッカーの方を倒さねばならないのもまた事実であった。 そして再度なのは・ユーノ・ディケイド・BLACKと、1号・2号・V3が向かい合い立っていた。 「さっきも言った通り、百合ショッカーと戦っているのは君達だけでは無い。今も様々な世界で様々な勇士達が 百合ショッカーと戦っている。」 「そして俺達もこれから俺達の戦いへと戻る。君達とは別ルートから百合ショッカーへ向かう。」 「いずれ百合ショッカーアジト近辺で合流し、再び力を合わせ戦おう。」 「ああ…。」 「ありがとうございます。」 1号・2号・V3の三人はこうして去って行ったが、なのは達には彼等の言葉がこの上無く頼もしく、 そして何よりの励ましとなっていた。 「よし、俺達も行くぞ。」 「うん。」 こうして、なのは・ユーノ・士・光太郎の四人も秋葉原の世界を後にし、再び次の世界へ向かうのだった。 ちなみに、なのはは激情態の時に思い切り力を使いまくった為に、再び子供の姿になって 省エネしなければならなかったのは言うまでも無い。
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冒険者のイベント 冒険者のイベントクエスト屋 ヴィンセント・ゴブリン・ゲオルグ・レゴラス・ナイトガンダム組 ストライク・ワイバーンズ(ロザリンド・イリーナ・ハセヲ・ハワード・ヒサメ) 第一次セイバー一行(セイバー、ナターリャ、シェゾ、ビリー、リヒター)解散 酒場に舞い込んだ依頼 青子&白レン クエスト屋 世界各地に存在する冒険を提供する場所。 入り口は各地の酒場にあるらしい。 その扉を叩けば冒険が待っている。 ○第10幕 リナが訪れ、クエストに3人必要だと言われる。 彼女は酒場などで人を集める。イリーナ、リヒター と共にクエストに望むも、数々の危険に会う。 その成果は、微々たるものであったが。 第13幕 杉並が、魔王の像を隠してくれと依頼する。 その金額として5000万Jが提示される。 もちろん承諾。 第14幕 魔王軍がどこからか像についての情報を得てクエスト屋に襲来。 ただで渡せと豪語し交渉はもちろん決裂! 魔王軍が襲ってくる。 あと杉並が払った金はフタバ王国大司教の個人口座の金だったらしく 司教が大激怒している。受難は続く? 一章第7幕 神聖帝国所属のケフカが、アインヴァルドの大森林中域探索のクエストを依頼。 倒したモンスターを素材にして魔石を作る「簡易式魔石精製機もばいる」という機器を用いて、大森林内に生息する強力なモンスターを魔石化し持ち帰る事が主な内容。 同章8幕で募集を募りスレイヤー、ランス、ガンナーの3名が参加することになった。 一章第8幕 クエスト屋に帝国内部を混乱させる白の少女(レン)と王国で連続殺人を続ける金髪の少年(ユーノ)を生け捕りにした者には多額の報酬を渡すと言う新しいイベントが登場する。ユーノに対して個人的な禍根があるロザリンドはこのイベントを利用して とんでもない事を言い出すのであった・・・・・ ヴィンセント・ゴブリン・ゲオルグ・レゴラス・ナイトガンダム組 詳しくはこちらのページで ヴィンセントPT編 ●【第一部・ゴルギアス編】● ゴルギアス山超えて旅を続けるヴィンセントPTは、吹雪のため氷の洞窟を抜けて山を 超えることになった。その洞窟での旅では、氷のゴレームとの出会いや氷の魔人アイス・ゴレームとの戦いが行なわれた。アイスゴレームに苦戦する一行だったが、最後は何とかこれを退ける。洞窟の内部での危機を脱したもののさらなる難敵雪女との戦いで傷つくもののゴルギアス山いるヒポクリフに助けられ、洞窟を脱出する 【第二部・リリア編】 現在展開中のためまとめはちょっとまってね ストライク・ワイバーンズ(ロザリンド・イリーナ・ハセヲ・ハワード・ヒサメ) ~【第一章・第8幕】~ 始まりは突然に 金髪の少年ことユーノが賞金首に認定された事を知ったロザリンド(以下ロザリーは) 酒場にいた者達に耳を疑う様な事を言い出す。 「現時点を持って金髪の少年捕獲部隊を結成する! 余に協力する者は無条件で宝石三個! 余の目の前で少年を捕獲した者には全ての宝石をくれてやろう!!」と。 一見妄言とも狂言とも取れる彼女の台詞は、袋から当たり前の様に取り出されたダイアモンドやらエメラルドの原石を彼らに見せ付ける事により一蹴される。 突如現れた魔界の令嬢に一攫千金のチャンスを見出した冒険者一向。 そして交渉の結果、イリーナ・ハセヲ・ハワードの三名がロザリーに協力する事に、しかもクエスト屋までも金(宝石)の力で情報提供者として雇い入れたのである。 こうして少年捕獲部隊「ストライク・ワイバーンズ」が誕生したのであった・・・。 (ここでロザリンドPT誕生) ~【第一章・第9幕】~ 怒れる乙女達 支度が整い、王都までの交通機関を探そうとした直後、クエスト屋の何気ない発言から「クエスト屋に繋がる扉から世界各地の酒場に移動出来る」事が判明。冒険心など 微塵も無いロザリーは一行をせかして、早々に扉へ移動。かくして殆ど苦労もせずに王都にたどり着くのであった。各自情報収集に赴き物事は順調に進むはずだっが・・・・・・酒場に偶然居合わせていた王国兵士達に、あろうも事かユーノの一味と勘違いされてしまったのである。 ロザリー、イリーナの説得にも応じない堅物役人にキレた ロザリーは兵士達に魔銃を突きつけると言う暴挙に出てしまう。 一触即発の事態を見かねて現れた王国楽団所属の少女、「麻衣」の計らいにより事態は収集するかと思えた・・・しかしハワードの余計な一撃により事態はもはや収集の付かない事になってしまった。 たまらずスケェスに変身したハセヲ、彼は一行を全員乗せて酒場から脱出する。この事態に王国軍はロザリーのPTを賞金首に認定、追う者から追われる者に変わりシャレにならない結果を招く事に。 何とか体勢を立て直そうとした矢先、ハセヲは変身の影響で一気に魔力を消費してしまいスケェスの変身は強制的に解除されてしまう。地面に向かって一直線のロザリー 一行、墜落した先は不運にも王国兵が多数駐在する場所であった・・・ 即座に取り囲まれるロザリー一行。彼女達の運命は如何に?! ~【第一章・第10幕】~ 運命の出会い 王国兵達に包囲され崖っぷち状態のロザリー一行。彼らはこの窮地から逃れる為に 様々な作り話で兵士達の誤解を解こうとする。だがロザリーのウソが命取りになった。 お粗末な彼女の作り話に士官の一人が、話の内容の矛盾点を突きロザリーを追い詰める。根っからの役人嫌いであるロザリーは執拗な士官の言葉攻めに、ついにブチ切れ 兵士達に銃を乱射する暴挙に出てしまう。幸いハセヲが銃弾を叩き落したので兵士達 に怪我は無かったが、彼らの疑惑の目は完全に敵意の目に変わっていた。一気に雪崩込む兵士達、堪らずロザリーはテレポートを使用して仲間と共に窮地から脱する。 これが原因でストライク・ワイバーンズは完全に王都のお尋ね者になってしまった。 ファルン街道に飛ばされたロザリー一行。金髪の少年への手懸りがますます遠ざかり 失意に暮れていた矢先、悪辣な賞金稼ぎに追われる二人の子供を目の当たりにする チームワークは凸凹だが正義感だけは一流のロザリー一行。たまたま遭遇したヒサメ と協力し賞金稼ぎどもの撃退に成功する。 助けられた子供達は自らを「竜の子」と 名乗り、元気で小生意気な「リューム」と泣き虫だが可憐な「ミルリーフ」と言う 名前であった。話の流れの中でロザリーは、リュームをいきなり「天空の守護竜」と 呼び出し彼に迫り始めた。ロザリーの突然の行為に戸惑う仲間達、だがロザリーは 周りを気にせず、まるで宝物を見つけた子供の様な眼差しでリュームを見つめていた。 果たして竜の子とは何者なのか・・・? 魔界の闇に包まれし人間界に 新たなる光の風が舞い始めていた・・・・。 ~【第一章・第11幕】~ 死に至る蜜 「魔王の封印像を破壊する為に」協力してほしい。そんな竜の子達の突拍子も無い願いをあっさりと受け入れてしまったロザリー。何でもロザリーが言うには竜の子は古き時代から人間界を護り続けていた存在らしく、ロザリー自身も竜の子達に出会う事を幼少の頃からの願いであったと告げて、メンバーに竜の子に纏わる蘊蓄を語り出す。自分の願いの一つが思わぬ形で叶い、当初の目的であった「金髪の少年」の捕獲の件を忘れて舞い上がるロザリー。そんな彼女を見てハワードは、ハンマーの振動で脳内お花畑状態のロザリーを戒めこう告げる「本来の目的を見失うな」と。自分の失態に気づいたロザリーはこの事を恥じて、本来のある程度はマシな性格に戻る。1度状況を整理して危険な立場に置かれている竜の子らをブリガンティの酒場に預ける為に一同は港町サザンへの移動を開始する。そしてファリン街道で遭遇したヒサメを(金の力)で雇い入れる 事に成功、タダでさえ(いろんな意味で)濃いメンツにニューフェイスが加わることになった。 平穏に港町サザンに辿り付いたロザリー一行は入り口付近で人だかりが出来ている事に気づく。なんでも行商人が体の疲れ癒す「魔法の黒い粉」なるものを売り捌いていた。しかしあまりの胡散臭さに怪しみ始めるロザリー一行・・・と、その時である。 黒い粉の臭いを嗅いだミルリーフが急に苦しみだしたのだ。竜の子の異変にますます 疑惑の目を行商人に向けるロザリー一行・・・・そしてついに行商人が危険な薬物である 「阿片」を売り捌いていた闇商人である事が判明した! どうやら虹裏大陸の住人が 「ヤク」に関する知識が皆無である事をいい事に住民を阿片漬けにして、暴利を貪る 予定であったようだ。ヘタをしたら子供さえクスリ漬けになっていたかもしれない・・・・ これに対してロザリーは大激怒。ミルリーフが阿片の臭いに耐え切れず気を失ってしまった事と重なって彼女の怒りはヒートアップしていた。卑劣な外道商人に対して住人の怒りも爆発、他のメンバーもロザリーに賛同して闇商人の粛清を始めようとしていた・・・・。 ほぼ同時刻 王都を目指すセイバー一行に突如、「闇の外交官」ことダークロードが 姿を現しセイバー一行にこう告げる「ロザリンドの居場所を知らないか」と・・・・ ストライク・ワイバーンズに新たなる影が忍び寄っていた・・・・ ~【第一章・第12幕】~ ストライク・ワイバーズ壊滅!? 闇商人達を追い詰めるロザリー。たまたま遭遇した「倉橋時深」と協力して捕まえようとした矢先であった・・・スキを見計らった闇商人達が煙幕を炊いて逃走してしまったののだ。獲物を逃して悔しがるロザリーをよそに、そそくさとブリガンティの酒場に移動してしまった仲間達、ロザリーも彼らを追う。その頃であった・・・何の運命の悪戯か・・・偶然酒場に居合わせていたユーノPTとハワードが遭遇したのだ!!。まさかの賞金首の発見によりいきり立つハワード。そしてロザリーも酒場に移動してユーノを発見、とうとう戦闘が勃発した!! 戦いの中でロザリーはユーノに問い詰める。「父親の宝物 聖剣エクスカリバーを盗んだのはお前では無いのか」と無論、ロザリーの意見に反論すユーノ。そして彼の台詞を聞いたロザリーは何かを思い出し一抹の不安に駆られる。「ユーノが所持しているのはエクスカリバー、自分が捜索しているアイテムは確か・・・エクスカリパー・・・?」 全身からイヤな汗が噴出するロザリー。で・・・・結局はユーノが所有していたのは「エクスカリバー」そしてロザリーが探していたのは「エクスカリパー」というシャレにならない事実に直面してしまう。「エクスカリパー」を盗んだヤツは結局分らずじまい、色んな過程の結果で全ての一件は「ロザリーの単なる思い違い」と言う最悪のオチで終了する。魂が抜けて全身が真っ白になるロザリー。無論そんなアホな間違いが許される訳も無い。ロザリーの愚行に付き合わされたハワードは怒り心頭。ロザリーを粛清しようとした・・・だがその時・・・ロザリーは耳を疑うような事を言い出す・・・ 「魔銃で余の心臓を貫け」と・・・・・。彼女の狂言を聞いたハワードは突如アックスを片手に襲い掛かる!。だが彼の一撃を悠々と受け止めるロザリー。彼女の右手からは何と紫色の血が流れていたのだ・・・・!!。そしてロザリーはまるで赤子の手を捻る様にハワードの腹部を貫く・・・!。そして・・・仲間であったはずのハワードは彼女の手によって命を絶たれたのであった・・・。まさかの凶行に涙ながらにロザリーを問い詰めるイリーナ。 ロザリー態度は今までのおバカでワガママな気性から一変して冷淡で邪悪な態度へと 豹変していた・・・まるで今までの行いが全て「演技」であったかの様に・・・・・ ストライク・ワイバーンズはどうなるのか・・・そしてハワードの命運は如何に!? ~【第一章・第13幕】~ 裏切りの対価 ロザリーは魔族と人間の間に生まれたハーフであった、まさかの事実にショックを隠せないイリーナ。と・・・・その時である、ハワードは致命傷を受けてもなお立ち上がり、ロザリーに掴みかかったのだ!。そう、彼は魔道生命体であった・・・自らの命と引き換えにロザリーに一泡吹かせようとするハワード、ロザリーも必死に抵抗するが命を掛けた彼の猛攻を食い止める事が出来ない。必死に二人を止めるイリーナ、だが時の流れはあまりにも非情だった・・・・。 「イリーナ、悪い、俺死ぬわ、だからせめて逃げな 散り際ぐらいはカッコつけさせてくれよ」 イリーナ、竜の子らの目の前でハワードは・・・・爆参し・・・・この世から消え去ってしまった・・・・・。ロザリーは爆発の直前でフルパワーで魔法障壁を形成した為、致命傷は免れたが一部の骨が骨折する重傷を負っていた。目の前に起きた惨事に悲しみの底に沈む竜の子とイリーナ・・・・。と、その時である・・・! ブリガンティの酒場に闇の外交官ことダークロードが姿を現し、彼女を魔界に連れ戻しに来たのだ!。自分の置かれている危機的な状況を即座に把握したロザリーは所持していた宝石全てを残した。そして・・・・竜の子らは人間とハーフの最後の希望だとイリーナに告げる。そして彼女は最後の言葉を残して魔界へと消え去った・・・イリーナと竜の子らの失意と悲しみ・・・憤怒の眼差しを受けながら・・・・。 「もしある人が自分の不幸な出来事について話したら、そこにはなにか楽しんでいるものがあると思って差し支えない。なぜならば、本当にみじめさだけしかないとしたら、その人はそんなことを口にしないだろうから」 と・・・・ ロザリーは魔界に移動するやいなやダークロードに一つの依頼を行う「第一階層の知将ことヘルガースと談話がしたい」と・・・・ロザリー、イリーナ、竜の子達は新たなる道を歩み始めるのであった・・・・。こうしてストライク・ワイバーンズの珍道中は早々に 幕を閉じた・・・・。 (ここでロザリンドPT解散) 第一次セイバー一行(セイバー、ナターリャ、シェゾ、ビリー、リヒター)解散 【第一章 1幕】 ブリガンティの酒場にて未曾有の大人数による大いなる盛り上がり。 その傍らでパーティ結成云々の話が持ち上がり始める。 【第一章 2幕】 ブラブラと探索に行こうかと話していた折に、食費代稼ぎの為酒場で働いていたセイバーからカームの町の調査の話を持ちかけられる。 何でもカームの町には現在進行形で邪教が蔓延しつつあるとの事らしい。 利害が一致し、その場に居合わせたリヒターも加えた5人でパーティを結成。 それぞれの予算から軍資金を出し合い、旅の支度を整える為に買出しを行った。 【第一章 3幕】 カームの町を目指し、いざ出発。ビリーの愛馬は凄く速そうだ。 ハチ、ナッツイーターと遭遇するがナターリャの火炎魔法(ファイア、というか威力は既にファイガ)等で比較的順当に撃退。 余談だがリヒターの被ダメージぶりは異常!(しかしキャラとしては最高よ!) テントを設営し夜を迎えた。 【第一章 4幕】 一夜が明け起床。朝食の準備など冒険の醍醐味を満喫。 因みに使用した食材はクラッカー、ベーコン、トマト、ハーブ。 ビリーの寝言が気になる所、恋人さん? そんなこんなのやり取りを続けながら、その日の移動目標を話し合い 設備的な面からオリフィスの門を目指すことになった。 が、突如上空より笑い声が――― 「(中略)マグレス様の封印像には一歩たりとも近づけさせんぞ!! フフフ・・・ハハハハハ・・・ナァーッハッハッハッハッハッハッハッハ・・・!!!」 得体の知れない強敵、魔騎将ガーランドの襲来に一行はオリフィスの門へ逃走した。 そんな一行を眼下に見下ろし、ガーランドは謎の魔獣を先行させる。 またその姿を追うように魔女パチュリーも登場。かなり拙い状況やね。 【第一章 5幕】 逃げ込んだ先、オリフィスの門は既にガーランドの僕の襲撃に遭っており、混乱の坩堝と化していた。アトミックレイなどの大技により、王国兵だけでなく門自体も相当の被害が及ぶ。 余談だがリヒターの投げ斧の威力は異常!(画像下二桁99!) 銅のバルダーなる魔獣に苦戦する一行、そんな折ついにガーランド自らが一行の前に対峙する。その強烈な雷撃により、役立たずの烙印を押された銅のバルダーは一瞬で消滅。魔騎将の実力を垣間見せた。 画像下二桁90台前後を連発するガーランド、マジ強えー。でも触手はエロいね! ブラボーや、水の神殿より転送されたアシュレー、ルフィーアと合流したもののパチュリー、パピヨンの登場により状況は更に悪展。 正面から相手にしていては勝ち目は薄いと判断し、シェゾが単身ガーランドをエレバス山脈へ誘導することに。 かろうじて挑発は成功したようで、どうにか誘き寄せる事が出来そうだ。 様々な損害はあったものの、5幕終了間際にてついにセイバーは、再びエクスカリバーをその手に掴む事となった! 魔王軍の介入によりセイバーPTは甚大な被害を受けた 事態を重く見たセイバーはカームへの旅を断念、第一次PTは解散となった 酒場に舞い込んだ依頼 冒険者が集まる酒場だけあり、時々その冒険者達を 頼りに来訪する人達もいるようだ。急な依頼であったり 決して報酬のいいモノではない依頼であったり色々だが 受けるも受けないも自由である。 〇13幕~15幕:犬探しの依頼 参加者:セイバー・エルウィン・リヒター・イリーナ 一人の少女が来訪。どうにも飼っているペットの犬が いなくなってしまったので探して欲しいとのこと。 簡単な依頼かと思いきや、動物を生贄に魔王像の 開放の力を集める邪教徒の神官の姿がそこにあった。 意気揚揚と変身する邪徒だったが、冒険者達の猛攻に 合い、3ターンキルされてしまうが、自らを生贄に どこかの魔王像に力を送り込む事に成功する。 探索からカームで信仰されている宗教の聖印が 見つかりそこが怪しいと睨むが…… ともかく、少女の元に犬が戻ってきて 笑顔を取り戻す事は出来た。みな、ありがとう! 屋敷調査の依頼 参加者:ハセヲ・カイム・ニト=ニーゴ・パスカル あらすじ エレバス山脈ふもとの村、カードル。そこにある立派な屋敷に目をつけたラシアン商会の アルバート・ラシアンはこの屋敷で言われている幽霊騒ぎの真偽と屋敷の物色の護衛の ために冒険者を雇う。調査を開始するハセヲ達だったが屋敷に入った途端にどこからか 聞こえてくる「引き返せ」の言葉。構わず調査を続けていくうちに、ゾンビのまま襲い掛 かるシェフやその被害者の数々。そして唯一の正常な精神状態のメイドの幽霊、リードと の出会いによりこの屋敷の主がかつて、魔王像を護る守護騎士の家系であった事がおぼろ げに見えてくる。そして、書斎の隠し通路を通った先にはなんらかの原因により封印に 綻びが出来た魔王像が存在していた。戸惑う一同だったが、侵入を察知したカーリーと 戦闘が発生し、その暇すら与えられない。既に死んでしまった身のため、体自体には ダメージを与える事はたやすかったが、怨霊とでもいうべき姿に身を窶してでも彼は 最後まで魔王像を守護する事を全うしようとした。その思いを受け取ったパスカルは 魔王像の封印の綻びを元に戻し、再封印を行う。それを見てカーリーは魔王像を ハセヲ達に託すのであった。 青子&白レン 『帝国編』 帝国に落下(ワープアウト?)した2人は行くあてもなくフラフラと帝都へ。 途中の遺跡付近にも寄らず、帝都でフラフラしているところ、スレイヤーと遭遇。 この出会いが後々の行動に大きな意味を持つ事となる。 なお、この後暫く2人はスレイヤーの城に滞在。現在も行き来可。 猫の本能か、退屈をもてあましたレンは帝都へ出かけロードブレイザー(グラーフ)と接触。 そのままカイザーオクスタンにまで場所を移しながら激闘を繰り広げ、重臣達を驚かせ、ネロの豹変を引き起こさせた。 ネロに興味を持った2人はレンの夢魔とタタリとしての能力を使い悪夢を広げる。 アンデルセンの襲撃を受け、一度は撤退するものの『悪夢の具現化』を実行。 帝都を一瞬にして夜に変え、巨大な黒い龍を出現させる。 レンが龍を操り周囲の陽動を請負い、青子が城内に侵入。 ほぼ同時刻にはレンとスレイヤーが夜になったガストラスで激闘を繰り広げ、黒い龍が デスサイズら帝都を死守せんとする帝国の者達と戦いを繰り広げていた。 結果としては、ネロの正体を知る事も出来ず、更に帝国の増援として加わった ダンテの存在もあり、形勢不利と見て逃走。
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ゼロット 封印の剣に登場する、イリアの傭兵騎士団長。 各地に散らばる傭兵騎士の規範ともいうべき地位についているだけあり、人格者。 リキア同盟軍を率いていたのが、少年としか言い様のないロイである事に驚くがその後も対等に接してくれる。 妻ユーノに領地エデッサを任せて出稼ぎ中の身の上であり、初めて産まれた子供の顔さえ拝めないうちに、領地がベルン軍に占領され、妻も囚われの身に。 そうでなくとも普段は、タイプが違えどマイペースな部下二人に振り回され気味。苦労人である。 運がかなり低い辺り、もしかすると胃痛持ちかもしれない。 初めから上級職のユニットとしてはお約束の成長率だが、何故か、守備のそれだけは周りに引けを取らない。 固いユニットの頭数が揃わない場合、繋ぎとして使ってみるのも一つの手ではある。
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「あはははっ、アルスは優しいな。そして正論だ。お前の言う通り、此処でペンダントを手に入れても管理局に捕まっちまう可能性は高いだろうな」 「だったら!」 続けて説得を試みるアルスだが、その言葉を遮るようにタスピが声を上げた。 「なぁ、アルス。お前さ、夢ってあるか?」 静かだが、力強い声。凛としたその声に、アルスは喉まで出かかっていた言葉を呑み込んでしまった。 「俺にも夢がある。そのためには、どうしてもその金が必要なんだ」 真っ直ぐ、一切の曇りの無い瞳でアルスを射抜く。 「例えその金が法を破ってまで手に入れた汚い金でも、俺には……俺達赤鷹には何が何でも譲れない物があるんだ!!」 アルスは何も言えなかった。言い返せなかった。 夢とは何か、それは法律を破ってまで叶える物なのか、強奪した金で叶えて貴方達は満足なのか。 次から次へと追及の言葉が頭に浮かぶが、それを口に出す事が出来ない。 タスピから発せられる威圧とでもいうべき力。 その力の前に、アルスは完全に呑まれていた。 「それに、やる前から諦めるのは男じゃないぜ。 管理局が追ってくる?ふん、上等だ! 来るなら来ればいい!どんだけ数の管理局が追ってがこようとも、俺は必ず逃げ切ってみせるさ!そして、絶対俺の夢を叶えて見せる!!」 普通だったら神経を疑う考え。 無理だ、無謀だと数多の人間が口を揃えて言うだろう。 だが、目の前の男は本気だ。 本気で捕まる事を考えていない、それどころか50億もの金品を全て回収するつもりでいる。 タスピの力強い笑みに、アルスは俯いてしまった。 覚悟を決めた人間の説得は難しい。 前にドラマで聞いた台詞だったが、今ならその意味が重いほど解る。 現に自分は説得するつもりが、逆に呑まれてしまった。 強奪してまで叶えたい夢とやらには同意できないが、タスピのこの想いだけは本物だ。 「邪魔だ」 「え?……うわッ!」 説得不可能とアルスが悟った瞬間、自分の体を浮遊感が包みこんだ。 驚きながら、青い空を見つめるアルス。 そのままズボっと、頭から雪の中に突っ込んだ。 「アルス兄さん、大丈夫!?」 「あ……あぁ。ありがとう」 引っ張り出してくれたユーノにお礼を言いながら、目の前の様子を窺う。 ピンと張りつめた空気。 静かだが、確かに感じる威圧感。肌が針に刺された様に痛い。 「お前達って、確か義理の兄弟なんだっけ?良い兄貴と弟じゃないか、大切にしろよな」 「大切?ふんッ!笑わせんじゃねぇ。何でこのバクラ様が、あんな甘ちゃんの面倒をみなきゃいけねぇんだ。 初めに言っておくぞ。俺にアルスと同じ甘さを求めているなら、さっさとその考えは捨てろ。 こっちも、あまりにも早く勝負がついてはつまらねぇからな」 「……お前みたいな奴を、世間一般ではツンデレって言うんだっけ?でも、あまりにも度が過ぎると嫌われるぞ。 まぁ、俺として後ろのアルスやユーノよりも、乱暴者のお前の方が相手にしやすいから助かるけど」 「口の減らねぇ野郎だ。だがぁ、安心しな。直ぐ、その口を黙らせてやるよ」 「それはこっちのセリフだってねぇの。お前に偽物を攫まされたり、突き落とされた恨みがあるからな」 「突き落としたんじゃねぇ、蹴落としたんだ」 「同じ事だ!!」 軽口を叩きあうのは此処まで。 足場の悪い雪の中だと言うのに、タスピは足を取られる事無く俊敏に動きデバイスを構えた。 「ワイト!」 ほぼ同じく、バクラもモンスターを召喚して迎え撃つ。 ワイトは自分の中では最弱に位置するモンスター。 攻撃も守備を大したことは無いが、レベルが低い分やられた時に伝わるダメージは微々たるもの。 様子見には適したモンスターだ。 (ッ!なんだ、骸骨のお化け!?そう言えば、あの洞窟で襲ってきたモンスターも同じ様にこいつが名前みたいな物を呼んでから急に現れたな。 召喚術を扱う魔導師?でも、聞いた話だと召喚術って結構強力な魔法だよな。こんな瞬間的にモンスターを召喚なんか出来るのか?) 頭はアレな方のタスピだが、流石に管理局を相手にしてきた違法魔導師。 戦闘に関しては、頭の回転が早い。 「召喚魔法なんてレアな魔法、本当に使える奴が居たんだな。けど、俺の敵じゃない!!」 レアスキル並の魔法に一瞬だけ驚きを見せたが、直ぐ表情を引き締め狙いを定める。 自慢の相棒を構え、引き金を引いた。 「……あぁ?」 「……え?」 「……何、あの弾?」 三兄弟、それぞれ思わず間抜けな声を漏らしてしまった。 タスピが使用するデバイスの型は銃。 当然、引き金を引くアクショントリガーを行う事によって銃口から魔力弾を放つ物だと、バクラ達は予想していた。 実際、その予想は当たっていた。 引き金を引いた瞬間、銃口から弾が出た事には出たのだが―― 「てめぇ……何だ、そのノロノロ弾は!?」 遅い、とにかく遅すぎる。 ゆっくりと、此方に向かってくる弾丸。 その速さは亀、いや寧ろ亀よりも遅い。この中では一番身体的に劣るユーノでも、余裕でかわせるスピードだ。 青筋を浮かべ、怒りを露わにするバクラ。 これでは警戒した自分がバカの様ではないか。 「……ふふっ」 苛立つバクラに対して、タスピはゆっくりと口元を釣り上げた。 何が可笑しい、と怪訝な表情で見つめていたバクラ。 次の瞬間。 彼だけでは無く、アルス達の顔にも驚愕のお面が張り付く事となる。 「フリーズ……」 魔力の波が渦巻く。 ゆっくりと進む銃弾を包みこむ。 爆発的に高められたその魔力は、辺りの空気までをも凍結させた。 「バースト!」 『Freeze burst』 タスピがそのトリガーを唱えた瞬間、デバイスの機械的な音声と共に今までノロノロと宙を進んでいた銃弾が一気に加速した。 「ッ!!」 その速さは正に疾風迅雷。 先程までの早さが亀と例えるなら、今は最新式のロケットだ。 「チッ!」 舌打ちを打ち、表情を歪める。何とか回避を試みるバクラだが、もう遅い。 撃ちだされた凶弾はワイトを貫き、目前まで迫っていた。 ゆったりとした時間が流れる。 目の前に迫った凶弾。 避けたいのに、体が反応しない。 何の抵抗も出来ず、氷の鎧を纏う凶弾はバクラの額に吸い込まれていった。 「……嘘」 「そんな……バクラ兄さんが、一撃で………」 アルスとユーノは信じられなった。信じたくなかった。 彼らにとってバクラとは、一族始まって以来の問題児だ。 そして同時に、一族の中で誰よりも才能に恵まれた天才児。 発掘の腕もそうだが、召喚魔法を駆使した戦闘技術は管理局のエース級にも通じる。 知識や魔法の腕はともかく、戦闘に関してはユーノは勿論、アルスや他の大人達でさへもその実力は認めていた。 恐らく、スクライア一族の中では最強と言っても過言ではない。 だが、目の前の状況はどうだ。 冷たい雪の中に倒れたと言うのに、体を起こそうともせずピクリとも動かない。 倒された。 一族でもトップ、管理局のエースとも互角に戦えた男が、たった一発の銃弾の前に倒れたのだ。 目の前の現実を受け入れるよりも、アルスとユーノは我が目を疑った方が遥かに容易だった。 「ッ!!ユーノ、バクラを!!」 時間にして十秒近く。 唖然としたまま固まっていたアルスだったが、自分の相棒であるナレッジを展開させ、バクラを守る様に前に躍り出た。 「は、はい!」 遅れてユーノも、バクラの容態を確かめるため近付いた。 凍結。 バクラの体には所々に氷が張りつき、特に銃弾を受けた顔面は半分以上が氷に埋め尽くされている。 ゲルニアの時と同じく、凍結系魔法をまともに受けた様だ。 幸いなのはそれほど外傷も無く、体温も正常な事か。 それでも目は瞑ったままで、完全に意識は飛んでしまっている。 命に別条が無い事に内心ではホッとしながらも、やはり普段から頼りがいがあった兄が負けたのが信じられなかった。 「……………」 「あのさ、出来るならその恨めしそな目を何とか……って無理か。お前らから見たら、俺って大切な兄弟を傷つけた張本人だもんな」 一方、アルスは二人を守ろうと、ナレッジの構えてタスピを警戒していた。 つい勢いで飛び出してしまったが、さてどうしたものか。 打開策を模索するアルスだが、頭の中が入り乱れ正常な判断が下せない。 あのバクラを倒した。それも一撃で。 その事実が、どうしても思考を乱してしまう。 落ち着け、此処で俺が動揺してどうする。 奥歯を噛みしめ、適度な痛みを与えながら何とか乱れた思考を元に戻して行く。 今の状況。 バクラは倒され、この場で皆を守れるのは自分しか居ない。 この状況を打破する策を考えるが、タスピの実力は間違いなく本物。 逃げるにしても、倒れたバクラとユーノを抱えて逃げ切れる可能性は低い。 どうする!? 「……なぁ、ちょっと提案があるんだけど」 遠慮がちに声をかけて来るタスピ。思考を中断し、注目する。 「俺の見た所、お前らの中で一番強いのはそいつだろ?」 確認するように、タスピは倒れたバクラを指差した。 「こっちとしてはペンダントさへ返して貰えれば、それで良いんだけど……俺も恩人にこれ以上手を出すのはアレだし。と言うか、人として……なぁ? ましてバクラみたいな奴はともかく、お前らみたいな奴はどうもな~~。あ、あはははははは……」 ポリポリと、気まずそうに頬を掻くタスピ。 本当にバクラを倒したのか疑うほどの情けない青年の姿がそこにはあった。 一気に毒気を抜かれるアルス。 警戒していたのがバカバカしくなるほど、今のタスピからは敵意を感じ無い。 それもそうだ。 元々タスピは此方と争う意思は無かった。 ただ単にペンダントの返還を求めているだけで、バクラを傷つけたのはそのペンダントを返そうとしなかったからだ。(バクラ自身が戦闘に乗り気だったのもあるが) バクラを倒された事で気を乱し、スッカリ忘れていた。 瞬時に今までの情報を纏め、アルスの脳内が最新式のコンピューターの様に答えを導き出す。 (今までのタスピさんを行動を見た限りでは、むやみやたらに俺達に危害を加える事も無いだろうけど……信じていいのか) チラリと、タスピの様子を窺う。 デバイス片手に、青白色の髪の毛を困った様にポリポリ。 見た所、嘘をついている様に見えない。と言うか、この人が嘘をつくイメージが如何しても出来ない。 演技だとかそんなレベルの問題では無く、素でこう言った交渉は苦手の様だ。 良く言えば表裏が無い素直な人間、悪く言えば単純バカ。 警戒するまでも無い、とアルスは肩の力を抜いた。 「……もし俺達がペンダントを渡せば、一切の危害を加え無いと約束してくれますか?」 最終確認の意味で、タスピへと問いかける。 「当たり前だ、って犯罪者の言葉なんて信じてくれる訳ないか。けど、こいつに関しては俺を信じてくれとしか言えない。頼む!そのペンダントを返してくれ!」 謙った物言いだが、態度は真摯その物。パンと両手を合わせてお願いをしてきた。 「……………解りました」 数秒間タスピの言葉を反芻した後、アルスはゆっくりと頷く。 口では了承の返事をしたが、正直言って心の内は納得しておらず、モヤモヤした嫌な感じが積もる。 違法魔導師。 タスピの人柄は好意的に見れるが、どんないい人でも犯罪者である事には変わりない。 どうしてもアルスの中に存在する正義感が、ペンダントを渡す事を拒否していた。 しかし、この状況ではどうしようもない。 チームの中で最強のバクラが倒された今、自分に出来る事は皆を安全に麓の町まで届ける事。 ザッ、ザッ、と雪を踏みしめながらバクラに近付き、ペンダントを取ろうとしたのだが―― ――バッ!! 「うわぁ!」 「ば、バクラ兄さん……」 何の前触れも無く、バクラの目が見開きそのまま勢いよく起き上がった。 近くに居たアルスとユーノは突然起き上がった事に驚くが、それ以上にタスピは驚いていた。 (俺のフリーズバーストをまともに受けて、こんな短時間で起き上がっただと。どんだけの回復力だよ!) 彼自身、自分の魔法には自信を持っていた。 自信を持っていたからこそ、この短時間で回復したバクラの驚異的な生命力には驚きを隠せなかった様だ。 「チッ……油断したぜ。まさか、あのバカが此処まで精密に魔力コントロールを出来るとは」 頭を振り、顔や体に張りついた氷を無理やり剥がす。 片手で銃弾が命中した額を抑え、悪態をついた。 何だ、元気そうじゃないか。 てっきり怪我をしたと思っていたが、この様子だと大丈夫だろう。 体も薄い氷が表面に張り付いただけで、特に怪我を負っていない。 アルスとユーノは、ホッと胸を撫で下ろしながら肩の力を抜いた。 「さぁて、キツイ一発ありがとうよ。おかげでスッカリ目が覚めたぜ」 ククク、と好戦的な笑みを浮かべながら、バクラはトントンと額を叩いた。 (あ、不味い。バクラの奴、スッカリ頭に血が上っている) 心配した自分達などに目もくれず、タスピの方へと歩いていくバクラ。 「ちょっと、ストップ!」 こいつは不味いと、急いでアルスが止めに入った。 「バクラ、もう止めよう!タスピさんも大人しくペンダントを渡せば退いてくれるって言うし、そもそもお前一回やられ……た……」 徐々に小さくなっていくアルスの語尾。 バクラから発せられる威圧感。 此方を射抜く瞳は怒りに染まっており、ユーノだけでなく幼馴染のアルスさへも言葉に詰まるほど怖かった。 ――見逃して貰おう?この盗賊王バクラが、あんなバカな魔導師に? ――冗談では無い! どうやら油断したとはいえ、一撃を貰った事が相当癪に障ったらしい。 アルスの説得を無視し、おもむろに懐から問題の割れたペンダントを取り出す。 「ファルコース!」 魔力を解放し、空中にファルコスを召喚する。 警戒し、身構えるタスピ。 再び戦闘開始かと思われたが、バクラは攻撃を命令を出さず、二つに割れたペンダントを空中に投げ―― 「「「……あ」」」 ファルコスに呑み込ませた。 「な、な、ななななななッ!」 予想外の行動にアルス達も言葉が出なかったが、一番驚いているのは持ち主であるタスピだ。 ワナワナと、人差し指を震わせながらファルコスを指差す。 そんな彼を嘲笑うかのように、ゴクン、と50億の金品の在りかを記したペンダントを胃の中に押し込んだ。 「なにやってんだよおおおぉぉぉぉおおぉぉぉーーーー!!!」 山彦を通じて、雪山全体に響き渡る絶叫。気持ちは痛いほど解る。 「安心しな。貴様のお目当てのペンダントは溶けて無くなったりはしねぇよ」 「え、そうなの?」 慌てふためくタスピだが、バクラの言葉を聞いてひとまず安心した。 バクラ自身、初めからペンダントを消化するつもりなど毛頭ない。 それは50億の金品を手掛かりである事もそうだが、もう一つ理由がある。 「あぁ。正し、俺様を倒さねぇ限りファルコスからペンダントを吐き出させる事は不可能だがな」 タスピの逃亡を防ぐ。 こうしてファルコスの体内に仕舞っておけば、嫌でも自分と戦わなくてはならない。 逃がしなどしない。徹底的に打ちのめし、先程の魔力弾のお礼をしてやる。 狂気を孕んだ瞳でタスピを睨みつけ、挑発気味に言葉を放った。 「えっと、要するにだ。お前をもう一回ぶっ倒せば、ペンダントは戻ってくるって事だよな。なんだ、簡単じゃないか」 二カッと挑発的な笑みを浮かべながらも、そのデバイスは絶えずバクラに照準を合わせていた。 「アルス兄さん、どうするの?止める?」 「止めるって言われても、もう俺の手には負えないぞ。せめてレオンさんかアンナさんが居れば、話は別だけど」 既に二人の説得は不可能。 力づくで止めるにしても、魔導師としての腕は二人の方が断然上。 完全戦闘態勢に入っている二人を、アルスとユーノの二人だけで止める事は難しい。 と言うか、完全に殺るき(やる気)モードになっているバクラを止められるのはアンナとレオン。次点で族長やおばば様ぐらいしか居ない。 下手に割って入ったりでもしたら、それこそ被害は拡大する。 だったらいっその事、バクラを後ろから撃って気絶させてペンダントを渡すか。 かなり物騒だが、この場で最も効率が良い解決方法を実行するか悩むアルス。 しかし、時既に遅し。 スクライアの超問題児は、タスピへと襲い掛かっていた。 「行け、死霊共!」 死霊を召喚するレアスキル――ネクロマンサー。雪原に不気味な唸り声が木霊した。 (……お化け?さっきの鳥人間を呼び出したのも、多分召喚魔法だよな。このお化けといい、変な魔法を使うんだな、バクラって) 二つのレアスキル級の能力は、違法魔導師であるタスピにとっても珍しいらしい。 物珍しそうに死霊達を眺めていたが、向こうが敵意を持っているのは明白。 デバイスを構えて、得意の凍結系魔法を発動させた。 「フリーズバースト!」 ダンダンダンッ! 撃鉄の音と共に放たれる、幾つもの銃弾。 それら全ては、バクラのみに照準が合わされていた。 死霊による攻撃には対応できると踏んだのか、それともバクラの方が危険と悟ったのか。 どちらにせよ、全てがバクラに迫っているのは確かだ。 一度見た技。 威力の方は立証済み、通させる訳にはいかない。 「させっかよぉ!死霊共!」 ノロノロと、動きが鈍い間に全ての銃弾を死霊で包みこむ。 収縮。 銃弾を包みこんだ死霊達は徐々にしぼんで行き、凍りつきながら銃弾と共にバラバラに砕け散った。 「いぃ!」 流石に死霊による自滅は予想外の事だったらしい。 思わず変な声を漏らしながら、目を見開くタスピだった。 その様子を見て少しばかり気が晴れたのか、バクラは口元を釣り上げた。 「俺様に同じ技が二度通じるとは思うなよ!」 両腕を組みながら、余裕のある表情でタスピを見据えるバクラ。 「てめぇのFreeze burstとかいう魔法。差し詰め凍結とブースト系魔法の二重魔法を重ねた弾丸を放つ魔法、といった所か。 放ってから暫く続くあのノロノロは、大方ブースト魔法を瞬間的に爆発させるための溜めの時間。 一見すると戦闘には不向きな魔法にも思えるが、上手く使えば時間差による奇襲攻撃が可能。 おまけに、てめぇ自身の間抜けさに敵も油断する。俺様もスッカリ油断しちまったが、考えてみりゃ対処法は簡単だ。 ブーストされる前に弾丸その物を破壊すりゃいい。 生憎だがこれから先、マグレ当たりは無いと思いな」 「おい、今さらっと俺の事を間抜けって言っただろ」 「事実だろ」 バッサリと切り捨てるバクラに、タスピは若干怒りの色を宿した瞳で睨みつけた。 向こうは何処吹く風。 真っ向から睨みつけられても、逆に心地が良いと言わんばかりに鼻を鳴らした。 「……まぁ、良いさ。此処は大人の貫禄って奴を見せて許してやる」 そんな風に言う時点で大人の貫禄なのかどうか疑問を覚える。 後ろで待機しているアルスとユーノは揃って首を傾げた。 「にしても、お前って乱暴者のわりには結構見てる所は見てるんだな。正直、一度見ただけでそこまで見切れるとは思わなかったぞ」 純粋にバクラの技量を褒め称えるタスピ。 あれだけ粗暴な態度で、此処まで繊細に自分の技を見切れるのには驚いた。 「けどな、お前の推測は大体は正解だけど、凍結とブースト系魔法の二重魔法って所が外れだ」 ゴソゴソと、懐を探り一個の弾丸を取り出した。 「正確にはこの弾……俺の仲間が作った特殊な簡易デバイスなんだけど、これ自身に初めっからブースト魔法とある程度の魔力が蓄積されているんだよ。 後はほとんどお前の予想通り。 デバイスと弾丸用の簡易デバイスを連動させて、凍結魔法を上乗せした弾丸を放つ。 撃ち出してから直ぐ加速しないのは、爆発的に速度と威力を高めるために少しチャージする時間が必要だからだ。 う~んと……そうだな、一応カートリッジシステムと似たような物かな? あ、でもあっちの方は圧縮した魔力のカートリッジを使用して、術者に爆発的な魔力を与えるんだったんだっけ。 俺のは術者の魔力は高まらないし、カートリッジその物を武器として使用してるみたいなもんだから、やっぱり違うのかな? まぁ、どっちもでいっか!」 戦いの最中には場違いな天真爛漫な笑みを浮かべ、自慢するように自分のデバイスを見せつけるタスピ。 「さっき見せたFreeze burst。その威力は体験したお前自身が良く解っているだろ? あの威力は、このデバイス……“アブソリュート”でしか出せない。 弾もカートリッジみたいにただ魔力を込めた奴では無く、俺の仲間が作ったこのアブソリュート専用の特製弾じゃないとダメだ。 単純な二重魔法では無い、アブソリュートと専用の弾丸。 この二つがあって、初めて真骨頂を発揮できるんだよ。でもな――」 真剣な表情で此方を見据えるタスピ。 ゴクリ。 妙な迫力があるその視線を受け、アルスとユーノは緊張して生唾を飲み込んだ。 「この弾って、ものすっごくお金がかかるの」 だああぁ、と先程の緊張感を返せと言わんばかりにこけるアルス&ユーノ。 「な、何も泣かなくても……」 ルールーと、涙を流し続ける情けない姿を曝け出すタスピに、アルスは思わず苦笑を浮かべてしまう。 考えて見ればそうだ。 説明を聞いた時はあまり見た事が無い、珍しい技法だと思ったが、それもそうだ。 威力は確かに凄いが、それはあくまでもタスピのデバイスと専用の弾丸があって初めて実現できる。 簡易デバイスとは言え、自分の手で一から作るとしたら、それ相応のお金はかかる。 おまけに、一度の戦闘での消耗品。 デバイスの整備も合わせれば、その金額は莫大な物になるだろう。 燃費が悪い。 道理で珍しい技法な訳だ。正直、管理世界の魔導師でもほとんど使う人は居ないだろう。 こんな技術にお金を回す余裕があるなら、デバイスの性能を向上するために投資した方がよっぽど利口だ。 タスピの様子を見る限り、資金のやり繰りに相当を苦労したのだろう。 (でも、どっちにしてもこの人の魔法技術、相当凄い) 使い捨て用の魔力を蓄積する装置ならさほど珍しくは無いが、それをあそこまで操れる技術には感心する。 複数のデバイスを連動させて、それぞれ別の魔法を重ね合わせた魔法の腕。 一寸の狂いも無く、バクラの額を捉えた射撃の腕。 魔力を安定させ、弾丸を破裂させる事無く操った魔力コントロール。 どれも並の魔導師では真似できない。 これが管理局を相手にしてきた違法魔導師。 アルスはその強さに僅かばかりの戦慄を覚えた。 「へッ、随分と余裕があるじゃねぇか。 貴様の攻撃がそのアブソリュートとか言うデバイスと特性の弾丸による物だとしたら、弾丸が尽きればもう貴様にあれほど威力を誇る技は出せねぇ。 そう言う事なんだろ」 「まぁね。 一応アブソリュートだけでもそれなりの魔法は使えるけど、やっぱり俺の真骨頂はこの弾丸が無くちゃな!」 お互いに軽口を叩き合う、それはつまりそれだけ余裕があると言う事。 バクラは勿論、弾数に限りがあるタスピも笑みを浮かべていた。 自分で自分が不利になる情報を曝け出し、この余裕ある態度。 気にいらねぇ。 凶悪な笑みを浮かべ、獲物を狙う獣の如くバクラは睨みつけた。 「クククッ、良いだろ。あの時、俺様の額を撃ち抜いた時に殺傷設定にしてなかった事を後悔させてやるぜ!」 「むッ、失礼な。俺達赤鷹だってな、盗みはするけど人を殺すほど外道の道を歩んでないっての!つーか、殺傷設定って……お前は争乱期の生き残りかっと!!」 雪の絨毯を踏み締め、アブソリュートの銃口をバクラへと向ける。 デバイスによる凍結魔法と弾丸によるブースト。 魔力を乱さず、同時に発動させトリガーを引いた。 「フリーズショット!」 放たれる氷の弾丸。 遅くも無く速くも無く、並の魔法弾のスピードでバクラの額へと向かっていく。 (ほぉ~、なるほど。 Freeze burstが溜めの時間を有する破壊力と速さに特化した魔法に対し。 Freeze shootは溜めの時間を必要としない速射性に優れた弾といった所か) 冷静に、相手の攻撃を見極めるバクラ。 もうあの時の様に油断はしない。 注意深く警戒し、銃弾の弾道を見切る。 スピードは確かに素早いが、それでもまだ並のレベル。 Freeze burstの様に爆発的にスピードを速める様子は無い。 この程度なら目を瞑っていても避けられる。 バクラをその場から動かず、首だけを動かして氷の弾丸を避けた。 さぁ、次はどうする。 挑発的な笑みを浮かべるが、タスピに焦った様子は無い。 寧ろ、ニヤリと意味深な笑みを浮かべていた。 (あの野郎、何が可笑しッ!!) 首筋がチリチリと熱くなる。毛穴が開く。ジュワっと嫌な汗が一気に噴き出してきた。 「チッ!」 その場で跳躍し、曲芸師の様に空中で鮮やかなバク転。 ヒュン。 反転した自分の視界の中を、先程確かにかわしたはずの氷の弾丸が駆け抜けて行った。 (どうなっていやがる?あの野郎、どんなタネを使いやがった?) 最初に浮かんだ可能性は誘導弾の類。 着地して直ぐ辺りを警戒したが、バクラが避けた弾丸は曲がる事も無く、そのまま真っ直ぐ雪山の中に溶けて行った。 妙だ。 もし仮に誘導弾の類だとするなら、自分だったら間違いなく着地の瞬間を狙う。 弾も有限である事も考えて、あのまま無駄弾に使うとは考え難い。 だとすると、Freeze shootは誘導弾では無く直射型の魔法なのか。 しかし、それだと一度かわしてもう一度自分を襲ったのはどう説明がつく。 バクラはタスピの動きに警戒しながら、タネを解き明かそうと後ろを振り向いた。 (……何だ、あれは?) 自分の後ろ、ちょうどタスピと挟み撃ちにする様にして空中に浮かぶそれ。 透き通り、太陽の光を受けて輝く雪山には不釣り合いな物。 鏡。 磨かれた表面に、怪訝そうに眉を曲げる自分の顔が映っていた。 「フリーズショット!」 「ッ!チッ!!」 後ろの鏡の正体が気になるが、今は迫ってくる氷の弾丸の対処が先決。 体を捻り、雪の中を転がりながら避けた。 弾丸は真っ直ぐ、宙に浮かぶ謎の鏡に向けて飛んで行く。 そして、タスピの弾丸と鏡が接触した瞬間―― 「なにッ!?」 弾丸が、まるで鏡に反射する様に跳ね返ってきた。 「ッ!!死霊の盾!」 一瞬、驚愕の表情を見せるが直ぐ意識を引き戻す。 死霊達を召喚し、一点に集中させて氷の弾丸を破壊した。 パラパラと、死霊と共に雪の中に消えて行く弾丸の欠片。 その先に浮かぶ鏡を見つめながら、バクラは思考の海に潜って行く。 今の魔力弾といい、前の魔力弾も同じ様に後ろから跳ね返ってきた。 間違いなく、あの鏡が関係している。 先程の映像を思い浮かべるバクラ。 直進する弾丸が鏡に触れた瞬間、此方側に返ってきた。 となれば、答えは一つ。 魔力スフィアによる新たな魔力弾の形成では無く、放った魔力弾その物を跳ね返す魔法。 「次から次へと妙な魔法を使いやがって……めんどくせぇ野郎だ」 正に、鏡映しな文句を垂れるバクラ。実際、二つのレアスキルを持つ彼が言う事では無い。 その傍らに、さらに一枚の鏡が形成される。 まるで空気その物が凍りつくようにして現れた二枚目の鏡。 気になりバクラが目を取られていると、今度は逆の方向に鏡が現れた。 さらに一枚、もう一枚、と次から次へと鏡が現れ、遂にはバクラを取り囲むほどの膨大な数が辺りを埋め尽くした。 「どうだ!これが俺の魔力弾だけを感知し、そのまま跳ね返す魔法……“Ice reflect”だ!!」 自信満々に胸を張って魔法の名前を告げるタスピ。 様子から察するに、相当に自信があのだろう。 実際、今のバクラは少し厄介な状況に居る。 魔力弾を跳ね返す鏡に、四方八方が取り囲まれた。 此処に一発だけでも弾丸を撃てばどうなるだろうか。 「どうする?降参するなら今の内だぞ?」 勝ち誇った様な笑みを浮かべるタスピだが、それは当然の判断だ。 既に包囲網は完成した。 ペンダントさえ返して貰えばそれだけでいい彼は、バクラに降参する事を勧めたが―― 「ケッ!寝言は寝てから言え!」 この男が素直に首を縦に振る訳はなかった。 そうかい。 今までのバクラの言動から、負けを認める事は無いと感じたタスピはアブソリュートの銃口を鏡の牢屋に向ける。 「ワイト!!」 勿論、バクラとて大人しくやられるつもりはない。 魔力の消費が少ないをワイトを二体同時召喚し、左右の鏡を破壊に向かわせた。 みすみすと完成した包囲網を崩すつもりはない。 アブソリュートの銃口をワイト達に向けるタスピ。 特殊弾丸を使用せず、自分の魔力だけで形成した魔力弾を二発放った。 (流石にワイト如きに無駄弾を使用するほど、奴もバカじゃねぇか) 出来れば厄介な特殊弾丸を使用させたかったが、そう都合よくはいかない。 まぁそれでも、本当の目的は達成出来たのだから良しとするか。 バクラは自分の言い聞かせた後、召喚した二体のワイトを元の魔力に戻した。 鏡が僅かに角度を変え、バクラの姿を映し出す。 対象を失ったタスピの魔力弾は虚空を通り、直線上の鏡に撃ち込まれる。 反射。 先程と同じく、真っ直ぐ向かった魔力弾は跳ね返され自分目掛けて向かってくる。 その場で軽く跳躍し、左右から向かってきた二つの魔力弾同士をぶつけて相殺した。 (鏡の向きや弾道から察するに、奴が操れるのは精々あの宙に浮かぶ氷の鏡だけに限定される。反射その物はただの鏡と変わらねぇ様だな) これが反射角その物までもが操れるなら厄介だったが、ただの鏡と同じなら此方としても対処しやすい。 まぁ流石に魔力弾が放たれてから鏡に到達するまで。 その一瞬の間に反射角を精密計算する芸当は出来ないが、あらかたの予測はつく。 何よりもバクラには、鍛え抜かれた洞察眼に感覚、ずば抜けた戦闘センスがあった。 正確な反射角など計算できずとも、十分にフォロー出来る。 四方八方を囲む反射魔法、これだけの数を維持するだけでも相当に魔力を喰われるはず。 疲弊した所を、一切の容赦なく叩きのめし屈辱的な敗北を味わせ、ペンダントの暗号の秘密を吐き出させてやる。 凶暴なお面を被り、バクラは身構えた。 「はぁはぁ……流石に、これだけのアイスリフレクトを一度に使うと疲れるな」 白い息を吐きながら、山の冷たい空気を肺へと満たすタスピ。 一枚や二枚ならまだしも、バクラの四方八方を囲むほどの反射板を形成するには少し辛い物がある。 しかし、彼には無駄な時間をかける暇が無かった。 今までの戦闘時間。 アルスが管理局に通報した時間を考えて、そろそろ自分を捕まえにやってくるはず。 速攻で勝負を決めて、ペンダントを取り返す必要がある。 それに―― (……残り一発) タスピの掌に輝く、一発の弾丸。 管理局に没収されたデバイスを取り戻したまでは良かったが、流石に特殊弾丸だけはどうしようも無かった。 初めの一発で終わらすつもりだったが、思わぬ強敵に出会ってしまった物だ。 (はぁ~あぁ~。俺……今月の運、全部使っちゃったのかな) 幸薄げな表情を浮かべながら、最後の一発をセットする。 舞台は整った。 これでバクラに勝てなければ、管理局から逃げ切る事など不可能。 即ち、夢の挫折。 それだけは絶対ダメだ。 一度深呼吸し、心を落ち着かせる。 この一発で決めると、強い意志を宿した瞳で見据える。 今までよりさらに強く、小さく、特殊銃弾に魔力を込め力を一点に集中させる。 狙いを定め、アブソリュートの引き金を引いた。 「フリーズ……シオオオォォョットーーーッ!!」 辺りの空気までも凍らせるほどの冷気を宿した弾丸。 太陽の光を受けて輝くそれは、タスピのアブソリュート同様に人を惹きつける輝きを放っていた。 より強く、より速く。 銀色の弾道を描きながら、バクラへと襲い掛かった。 (一発の弾丸に大量の魔力を固めたか。まぁ、妥当な判断だな) バカだと断言できるが、戦闘力は本物。 まともに銃弾を受けて立ち上がったバクラのタフさには、流石に警戒を抱く。 だが、どれだけ速かろうともフェイントも無しのバカ正直な直線攻撃。 軽く体を捻り、朝飯前だと言わんばかりに軽く避けた。 さて、此処からが正念場だ。 「チッ……解りきっていた事だが、実際にやれると小うるせぇな」 自分の魔力弾を跳ね返す反射板。 四方八方が囲まれ、一つの弾丸が常に跳ね返され続ける。 前後左右、左右斜めの前後。 まるで万華鏡に迷い込んだ光の如く、何時までも自分に襲ってくる氷の弾丸。 見切れない事も無いし、避けきれない事も無いが、正直鬱陶しい。 おまけに、さらにバクラを苛立たせる事があった。 (どうなってやがる、この滅茶苦茶な弾道は?) どの鏡に、どの角度で当たり、どんな風に此方に襲い掛かってくるか。 流石のバクラにも計算できないが、ある程度の予測はつけられる。 しかし、どうしてもこの奇妙な弾道が気になった。 此処までの大掛かりな魔法を仕掛けたのだから、自分を弾丸で撃ち抜こうとしているのは間違いない。 実際に最初の弾丸は自分を狙い、後ろから跳ね返った弾丸も自分を狙っていたが、そこから先はどうだ。 時には自分の横を通り過ぎ、時には真上に跳ね返ったり、時には何も無い所で跳ね返り続けたり。 全くの見当違いな方向に行ったり来たりしている。 ――ダンッダンッダンッ 今も三つの鏡に反射したが、勿論その弾道線上にはバクラは居ない。 角度を合わせるわけでも、距離を取る訳でもなく、本当に出鱈目な動きなのだ。 初めはフェイントを混ぜた、自分を攪乱させる作戦かと思ったが違う。 まるで意思と言う物が感じられない。 しかし、だからこそある意味厄介だ。 一体何処から飛んでくるのか、どのタイミングで来るのか、皆目見当もつかない。 それでも、時々襲ってくる弾丸を避けられるのだから、本人の戦闘センスがずば抜けているとしか言えない。 「はははははっ!どうだ!?俺のアイスリフレクトの凄さが良く解っただろ!その中に一度入ったら、もう逃げる事は出来ないぜ!!」 勝ち誇り、胸を張りながら高笑いを上げるタスピ。 魔力変換資質を持っているとは言え、此処までの技術を持つ魔導師もそうは居ない。 使用魔法も強力であり、本人の戦闘技術が高い事はバクラも認めるが、こう言いたい。 ――だったら何で弾丸が俺様の真上を通りすぎてるんだ。 本人しては珍しく、可哀想な物を見る様な哀れみの視線を送ったバクラであった。 ダン、ダン、と弾丸は跳ね返り続ける。 一枚のアイスリフレクトが跳ね返した弾丸が、自分目掛けて飛んできた。 相変わらずの直線的な攻撃にウンザリしながらも、バクラは軽くかわしたが― 「ッ!!」 驚愕の表情に変わり、自分の頬に張り付いた薄い氷の膜を軽く撫でた。 確かにタスピの弾丸は変則的な動きをしたが、避けられないほどではない。 当たる事など絶対にあり得ないはず。 だが、それでは何故自分の頬に薄いとはいえ氷が張り付いている。 疑問を覚えながら、バクラは鏡の中を跳ね返る弾丸を目で追い、ある事に気付いた。 (……僅かだが、スピードが上がっていやがる) 爆発的にではないが、極僅かに弾丸のスピードが速くなっていた。 先程の氷の膜と言い、この弾丸のスピードと言い、無関係とは思えない。 「ふふふっ、どうやら気付いた様だな?そう、それこそがアイスリフレクトの真の恐ろしさだ!」 注意深く弾丸を観察していたバクラに、タスピは得意げに声を張り上げた。 「自分の魔力弾を跳ね返すだけなら、わざわざ魔力を氷に変換せずにただの魔力反射板を使えばいい。じゃあ、何で俺は魔力を氷に変換していると思う?」 鼻高々にバクラを見据えるタスピ。その瞳は自信満々と言う言葉が似合うほど輝いていた。 「簡単さ。 俺は自分の魔力に氷の特性を無意識の内に持たせる……つまり、氷の魔力変換資質を持っている。 ただの魔力弾でも、純粋な魔力だけで形成するよりも氷に変換した魔力で形成した方が、より強力に威力を発揮できる。 バクラ、お前を取り囲んでいるアイスリフレクトにはその魔力弾をさらに強化できる仕掛けが施されているんだ。 ズバリ、氷の特性を持った魔力付加!放たれた魔力弾は、跳ね返されるたびに徐々に魔力を付加されてそのパワーとスピードを上げていくのさ!!」 説明の間も絶えず跳ね返り続けるタスピのフリーズショット。 直ぐ目の前の通りすぎていくのを眺めながら、バクラは静かにタスピを見据えた。 「アイスリフレクトに跳ね返されたフリーズショットは今まで……えっと、何回跳ね返ったっけ?」 流暢に話していたが、途端に言葉に詰まる。流石に、今まで何回跳ね返ったかまでは計算していなかった様だ。 「まぁいいや。とにかく、フリーズショットがアイスリフレクトに跳ね返され続け、徐々に蓄積していった魔力は既に膨大な数値となった。 元々攻撃力を強化するための魔力付加だから、スピードはおまけ程度にしか速くなってないけど。 威力の方は俺の魔力、特殊弾丸、そしてフリーズショットが元々持つ凍結魔法効果。 その他諸々、全部合わせて攻撃力は無限大だ!!」 無限大って、お前は何歳だ。 漠然としすぎた数値に、バクラはタスピの実年齢を疑った。 「さぁ、どうする?大人しく負けを認めてペンダントを返すか?」 遥か空中を飛行するファルコス。 タスピを引きつける餌として、戦闘が始まってからも参戦はさせずに空中に残していた。 ファルコスを眺めながら降伏を諭すが、バクラは返答は当然の様にNo。 無言のまま、反撃の機会を窺っていた。 (ククク、良いだろぉ。もう様子見は止めだ!本気で打ちのめし、俺様の前に跪かせてやる!!) ペンダントの秘密を聞き出すため、そして魔力切れと言う魔導師にして屈辱的な敗北を味わせてやるつもりだったが、もう止めだ。 徹底的に打ちのめし、反撃する気力すらも奪ってやる。 狂気の瞳で相手を射抜きながら、バクラは勝利までの策を模索し始めた。 恐らく、タスピが言っていたアイスリフレクトの効果は真実だろう。 それは避けたにも関わらず、自分の頬に張り付いた氷の膜が証明している。 蓄積され続けた冷気。 まともにくらってしまったら、今度は自分が氷の牢獄に閉じ込められる事になるだろう。 モンスターか死霊を盾に使っても、冷気その物が爆発してしまっては自分もただでは済まされない。 ならば話は簡単。 弾丸を跳ね返すアイスリフレクトを全て破壊すればいい。 死霊達を氷の鏡と同数だけ召喚し、自身の魔力を与え攻撃力を強化した。 (死霊共にこれだけの魔力を与えれば、あの鏡を破壊するには十分だ。後はこいつらを放ち、包囲を突破した後に俺様のモンスター共を召喚して一気に叩く!) 足場の悪い雪山だが、そんな事は関係ない。 バクラは身構え、モンスター達を召喚するのに十分な魔力を練り上げながらタイミングを計っていた。 そして、いざ死霊を放とうとしたその時、思わぬハプニングが起こった。 「……あ」 しまったといった感じで言葉を漏らすタスピ。 操作を誤ったのか、アイスリフレクトの檻の中で跳ね返り続けていた弾丸が、外に撃ち出されてしまったのだ。 「不味いッ!」 急いで軌道を修正するため、一枚の鏡を向かわせる。 何とか前に先回りさせる事に成功し、撃ち返す事が出来た。 ――タスピの後頭部目掛けて。 「ふぅ~、ちょっと調子に乗ったか。うん?どうした、お前ら?そんな、まるであり得ないバカを見たかのような顔をして」 あり得ない、確かにその通りだ。 「ははぁ~ん。さては、俺がコントロールミスをしたと思ったんだろ?残念でした!見ての通り魔力弾は健在だぜ!!」 健在。うん、誰が見ても健在だ。今も尚、現在進行形でタスピの後頭部に向かっているのだから。 そして―― 「さぁ、お遊びは此処までだ。次は当てる、早くペンダントを返した方が身のためだぜ!ふふふッあははははははははッッあっぶれしょっくーーん!!」 アイスリフレクトの魔力付加を受け続けた弾丸は、勝ち誇り高笑いを上げていたタスピの後頭部に綺麗に炸裂した。 「「「……………」」」 三兄弟揃って口をポカーンと開き、目を点としながら目の前の惨状を見つめている。 「あ…………ぁぁ………あ」 小さく呻き声を上げながら、ピクピク、と痙攣するタスピ。 弾丸を受けた後頭部だけでなく、背中や臀部、さらには脚まで全てが凍りついている。 本人が自慢するだけの事はあり、アイスリフレクトに魔力を付加され続けたフリーズショットの威力は絶大だ。 バクラも当たっていたら無事では済まなかっただろう。 “当たって”いれば!! 「……………」 言葉を失い、雪に倒れて氷漬けになっているタスピを見つめながら、バクラは今までの彼を行動を思い出していた。 吹雪の中では遭難し、アルスに言い包められ、ペンダントに関しては子供騙しにも引っ掛かる情けない人物。 しかし、その戦闘の腕だけは本物で、油断したとはいえ自分に一撃を入れた人物。 だが、目の前の魔導師からはとてもそんな姿は想像できない。 恐らく……と言うか、絶対この人魔力弾が向かう方向を計算していなかっただろ。 ――弾道が読めなかった? 当たり前だ。 何回も何回も跳ね返ったのは、本人が計算して撃っていたのでは無く、ただ単に弾丸を外に出さない様にアイスリフレクトを動かしていたのだから。 バクラの優れた洞察眼を持ってしても、本当の意味で滅茶苦茶に動く弾道を見切れるはずが無い。 「俺は、こんな魔導師のクセに空間把握能力も碌に備わってねぇバカに気絶させられたのか」 これが敵を油断させるための演義なら、バクラも見事だと舌を巻いただろう。 だが、タスピの現状を見る限りではその可能性は無いと断言できる。 即ち、素! 油断したとはいえ、こんなバカに一瞬とはいえ気絶させられた。 そう考えると、沸々とドス黒い感情が込み上げてくる。 バクラの怒りを表す様に、辺りの濃厚な不気味な黒い魔力が漂い始めた。 「ゲルニア!ゴブリンゾンビ!アンデット・ウォーリアー!」 遂には三体のモンスターを召喚し、未だに起き上がれないタスピを取り囲んだ。 殺れ。 主の命令に最初に動いたのはゲルニア。 雪に脚を取られる事無く、迅速に駆けより蹴り飛ばした。 「ぐふッ!」 バキン、と決して軽くない氷が砕ける音と共に宙を舞うタスピ。 その先に待っているのは、ゴブリンゾンビ。 体勢を低く、タイミングを合わせてアッパーカットの要領で剣を突き立て上空へと打ち上げる。 「いがッ!!」 ゲルニアからゴブリンゾンビのコンボ攻撃。 フリージングショットまともに受けた事もあって、その体に蓄積されたダメージは相当な物。 だが、そんなのはお構い無しと言わばかりに、今度は跳躍したアンデット・ウォーリアーがその剣を振り下ろした。後頭部目掛けて。 「ごがッ!!!」 ただでさへ先程弾丸が命中した場所への攻撃。中々に性格が悪い。正に外道。 予想以上の衝撃を受けながら、落下して行くタスピ。 その先に居るのは、最初に自分を蹴り飛ばしたゲルニア。 待ってましたと、タイミングを見計らってタスピの体を自らの巨大な爪で打ち落とす。さらに追撃、踏みつけた。 「ゴバァッ!!!!」 色々と外に出てはいけない物が出そうな所を、何とか耐えるタスピ。 さらに攻撃と言うには生易しい、一方的な蹂躙は続く。 バーサーカーソウル発動! ドガッ、バゴッ、ゴンッ、ガンッ、ダンッ、ザンッ!! 生々しい音が雪原を支配し、その音が響き渡るたびに無抵抗なタスピの体が宙を舞った。 「って、わあーー!!ストップ、ストーーーップ!!」 「バクラ兄さんもう止めて!これ以上をやったらタスピさんが死んじゃうよ!!」 あまりの衝撃の展開に付いていけなかったアルスとユーノだが、流石にこれ以上はタスピの生命に関わると肌で感じ、急いで止めに入る。 アルスはバインドでモンスター達の動きを止め、ユーノはバクラの腰に縋りつき。 お互いに止める様に説得した。 「はぁーはぁー……」 そうして説得を続けていくと、徐々にバクラの怒り(ほぼ八つ当たり)も沈下していった。 良かった、これで身内から殺人者を出さなくて済む。 ホッとしながら、アルスとユーノ続いてタスピの様子を窺う。 自分の魔法での自爆、バクラのモンスター軍団による蹂躙。 破壊力抜群のコンボ攻撃を受けたタスピの体は、正にボロボロと言うのに相応しい。 バリアジャケットを所々破れ、弾丸が命中して特にダメージが大きい後頭部からは血も流れている。 ダラダラと零れ落ちる鮮血が白い絨毯に歪んだアートを描く様は、それだけで心理的恐怖を煽った。 「あのーー……タスピさん。もしもーし、大丈夫ですか?」 勇気を振り絞り、アルスが近付いて声をかける。 反応は無し。 あれほど元気満々だったタスピが、今は嘘の様に静かに倒れている。 これって、かなり不味いよね。 最悪の可能性が頭を過り、サーッ、と顔から血の気が引いていく。 体を震わせながら、もう一度アルスは呼びかけようとしたが、その前に唐突にタスピが勢いよく飛び起きた。 「うぉ~~……いって~~。頭の芯まで響いた~。うん?うわッ!血だ!!」 あれだけの攻撃を無抵抗、しかもバリアジャケットが破れるほどの攻撃を受け続けたのに、何事も無い様に後頭部を摩るながら手に付いた血にビックリ。 まるで、昨日は飲み過ぎちゃったな~、と二日酔いに苦しむサラリーマンの様にアットホームな思考だ。 ((いや、それってそんな軽いノリで済まされる怪我じゃないでしょ!!)) 常識人であるアルスとユーノも、そんな軽いノリで済まされる思考に思わずツッコミを入れてしまった。 ハッキリ言って、行き成り飛び起きた事よりも驚く。 「うぅ……ヤバイ。ちょっとキツイかも」 起き上がった事には驚いたが、どうやらタスピも普通の人間の様だ。 後頭部を抑えながら、体をヨロヨロ。相当に参っている。 (こいつ……頭はバカだが、戦闘の腕と諦めの悪さだけは本物だな) タスピの人並み外れた頑丈さに驚いているのは、他でも無いバクラ自身だ。 あれだけの攻撃。 並外れた頑丈さを持つ自分も耐えられるだろうが、まさか目の前のタスピも耐えきれるとは。 普段あまり驚かない彼の瞳も、僅かだが驚愕の色を宿していた。 「ふぅーー、流石に効いたぞ。お前、顔に似合って結構酷い事するんだな。行く末が心配だぜ」 後頭部を血で濡らし、体はボロボロの重軽傷者。 されど瞳に宿した光は未だ衰えを見せず、表情には笑みが浮かんでいた。 「安心しろ。てめぇが俺様の心配をする事なんざ、これから先一生ねぇからよ」 全くのダメージを感じさせないバクラの堂々とした姿。 完全に立場が逆転し、タスピは聞こえない様に舌打ちを打った。 (くぅ………はぁはぁはぁ。あ~ダメだ。体が思った以上に重い) 表面はボロボロだが、内部のダメージはそれ以上にボロボロ。 どれだけ頑丈であろうとも、彼は人間。 本当の意味で規格外の頑丈さと戦闘センスを併せ持つバクラよりは、並の人間に近いのだ。 足元が覚束なく、蓄積され続けたダメージに負け、今にも倒れそうだ。 (ダメだ……まだ倒れちゃダメなんだ!!) 自分自身に言い聞かせ、無理やりにでも意識を活性化させる。 (弾丸は尽きたけど、アブソリュートには特に破損は無い。俺の魔力だって、まだ余力がある!!) 体をバネの様に使い、怪我人とは思えないほど大きく飛び退いてバクラ達から距離を取る。 大きく息を吸い、山の冷たい空気を肺へと満たし、バクラを真正面から見据えた。 「ふぅ~~……腕には自信があったけど、まさか此処まで追い詰められるとは。やるな!バクラ!」 不利な状況であるにも関わらず笑みを浮かべるタスピに、バクラは訝しげな視線を向けていた。 「でもな、こっちにも引けない事情って物があるんだ!何が何でも、その鳥人間からペンダントを取り返させて貰うぞ!!」 今までよりもさらに強力な魔力の波がタスピから立ち昇った。 「こいつはちょっと強力すぎるから、出来れば恩人に対して使いたく無かったけど……俺も本気でいかないとヤバイみたいだからな!全力で行かせてもらうぞ!!」 バクラの褐色肌を突き刺す、冷気を帯びた魔力。 来る、今までタスピが使用した魔法よりも強力な魔法が。 怪我人だろうと、自分に牙を向けるなら容赦はしない。 同じ様に魔力を解放し、タスピを完全に排除しようと構えた。 極大の魔力のぶつかり合いが始まろうとしたその時、無謀にも二人の間に割って入る影があった。 「だから、何であんた等は戦闘続行、みたいな空気を醸し出す訳!!?」 「兄さんもタスピさんも、もう止めてよ!!」 一人は身内、もう一人は犯罪者とはいえ怪我人。 これ以上の戦闘は本当に危険だと、アルスだけでなく小さいユーノも勇猛果敢に二人の間に割って止めに入った。 「バクラ、そしてタスピさんも!いい加減にして下さい!これ以上やっても、不毛な戦いになるだけですよ!!」 戦闘時間から考えても、もう直ぐ管理局は到着する。例え雪山からに逃走しても、逃げ切れる可能性は比較的0に近い。 アルスの言う通り、これ以上の戦闘続行は体力と魔力の無駄遣いになるのは火を見るより明らか。 「タスピさん、その怪我じゃどっちにしてもバクラ兄さんには勝てません!早く治療をしないと!」 血の流れは止まり、体も動けないほどの重傷では無い。 しかし、決して軽傷とは言えず、ユーノの目から見ても限界に近いと解る。 対してバクラは初めの一撃こそまともにくらったが、それ以降は全くのノーダメージ。 勝てるはずが無い、下手したらさらに大怪我を負う。 違法魔導師である事を忘れ、純粋にタスピの容態を心配しながらユーノは説得を続けた。 「チッ!またか……いい加減にしろ、てめぇら!!」 二人の説得を、バクラは無視。 寧ろ、いくら身内とは言え邪魔をする二人が鬱陶しいと悪口を浴びせた。 ならばタスピは、と期待したが此方もダメだった。 「生憎、一飯の恩人でもそれだけはダメだ。言っただろ?俺達赤鷹にも、叶えたい夢があるって。俺自身も、その夢のためにはこの場から引く訳はいかないんだよ!」 言葉こそ柔らかいが、その裏には確固たる信念が込められている。 アルスの時と同様、タスピはユーノの説得にも首を縦に振ろうとはしなかった。 これ以上の話し合いは不要だ! タスピの魔力によって舞い上げられた粉雪は、そう言いたそうにユーノの体を吹き抜けていった。 「何で……何でですか!?」 肩を震わせながら、幼い体で出せる目一杯の声を荒げるユーノ。 「もう直ぐ管理局が来るんですよ!?怪我してるんですよ!?そんな大怪我をしてまで叶えさせたい夢って……強盗してまで手に入れたお金で叶えたい夢ってなんなんですか!!?」 純粋な疑問をぶつける。 今日初めて出会ったが、タスピがそんなに悪いに人間ではない事は確かだ。 そんな彼が、法を破ってまで叶えたい夢が何なのか純粋に気になった。 「強盗してまで………か。はぁ~、今まで色々な人に説得されてきたけど、やっぱり子供にそう言われると辛いな。 つーか頼むからそんな純真な目を俺に向けないでくれ。何か色々と削られるから」 自虐的な笑みを浮かべながら、俯くタスピ。 だったらもう止めて自首して下さい! そう説得を続けようとしたユーノだったが、その前にタスピが表を上げて静かに語り始めた。 「綺麗だよな、この雪山。人の手がほとんど入って無いし、恐らく人と自然が上手く付き合っているんだろうな」 周りの雪景色を眺めながら呟く。 その時の彼の表情は、嬉しそうでありながら何処となく悲しく見えた。 「セルピニスの村もこんな雪に囲まれた山奥にあった。『雪と共に生き、雪と共に去りぬ』。代々セルピ二ス族に伝わってきた言葉だ。俺はその一族の村長なんだよ」 「え?」 村長、即ちその村の中での一番の責任者。スクライアで言うならバナックの立場だ、目の前のタスピが。 「……おい、今『こんな人が村長で大丈夫か?』って思っただろう」 半目になりながら、ユーノを責める様な視線をビシバシと注ぐ。 事実、ユーノは多少だけど心配していた。 だって今までのタスピの言動を見る限り、そんな重要な立場に居るようには思えないんだもん。 「う……ご、ごめんなさい!」 自分が悪いと思ったら、直ぐ謝れる。この辺がバクラとの決定的な違いだ。 「あはははっ、まぁ俺も自分が頭が良いとは思ってないし、村長ってのも代々家から受け継ぐもんだから頼りないのは仕方ないかもな~」 気さくな笑みを浮かべ、声を大にして笑うタスピ。 やはりユーノには、犯罪を犯す様な人には見えなかった。 「でもな、そんな俺でも村長だからな。一族の危機には体を張る責任ってもんがあるんだ」 先程までも気さくな笑みを潜め、真剣な表情で此方を射抜くタスピ。 その表情はまだ幼さが残る物だったが、自分達の族長バナックと同じ安心感と頼りがいを感じさせる物だった。 俺達セルピ二ス族が暮らしていたのは、代々こんな人里離れた雪山の奥だった。 雪の守り神を崇め、日々の糧を得る。 それがセルピ二ス族の代々の暮らしだった。 外界との接触もほとんど無いせいか、村には娯楽と言える物が無かったけど、俺にとっては大事な大事な村だった。 『雪と共に生き、雪と共に去りぬ』 村長である俺も他の皆もその言葉通り、質素だけど自分達にとっては大切なこの場所で骨を埋める物だと、子供の頃は信じて疑わなかった。 だが、世の中はそんなに甘くなかった。 年々衰退して行くセルピ二スの村。 気付いた時には村にはほとんど人が居なくなっていた。 昔と違い今は外の情報も入ってきて、外での生活に憧れる奴が大多数を占める。 当然、中には都会の暮らしの方が良いと村を捨てていく奴も居た。 そりゃ、誰だって色々と便利な生活が良いのは解るし、実際に俺も村を出てからの生活は楽だと思ったさ。 けど、何かが違うんだよな。 上手く言えないけど、都会での生活は村の生活とでは確かに都会の方が便利だけど、俺は村の方が好きだった。 理由なんて聞かれたも解らない、俺が好きなんだから好きなんだ。 そんなもんだから、村から出ていく奴とは喧嘩した事もあったけど、捨てた連中の言い分は解る。 今時、守り神を崇め称えている一族なんて極一部だ。 まして、電気もガスも水道も通っていない所で質素な暮らしをする奴の方が、今では珍しくなっちまっている。 そんな村だから、衰退していくのは仕方ないのかもしれない。 だけどさ、仕方ないの一言で自分が暮らしていた村を捨てられるか? 少なくても、俺は我慢できない。 衰退していくなら、皆で頑張って盛り上げればいい。 電気が無いなら電気を、ガスが無いならガスを、娯楽が無いなら娯楽を。 昔とは変わってしまうけど、また村に人が戻ってくるなら村の守り神だって許してくれるはず。 俺と俺以外に村に残った皆は、早速村復興のためのアイディアを考えた。 それで考えついたのが、資金集め。 今時、物々交換でどうにかなるのは本当に田舎だけだからな。 村を復興させるためには、どうしても金が必要だった。 先ず初めに行ったのは、俺達セルピ二ス族の民芸品を売り出す事だった。 俺の持っているデバイス――アブソリュート。 こいつの彩色も、セルピ二ス制だ。 見た目は綺麗だし、売れる自信もあった。 幸いな事に、近くの町には昔からの知り合いも居たから、これで大丈夫だと楽観的な考えだった。 確かに売れる事は売れたし、注目された事にはされたが、集まった資金は村を復興させるには足らない。 セルピ二スの民芸品は手作業で一から作るから、どうしても大量生産が出来ないし、値段もそれなりでなければ儲けが出ない。 かと言って、値段を下げては村の復興が何時になるか解らない。 年々衰退しく村の様を見つめて、俺達は自分達だけで復興させていくのを諦めた。 次に思いついたのが、俺達の村……つまり、雪山その物を売り出す事だった。 勿論、これには反対意見も出たし、俺自身も反対だったさ。 何処かの企業が自然を破壊した、なんてニュースはあの時の俺達の耳にもを聞こえていた。 そんな連中に、大切な村を任せられるはずが無い。 だけど、そいつらの力を借りれば大きな話題となる。そうなれば人が集まってくる。人が集まれば、資金も集まるし活気も戻ってくる。 自然破壊は許せない事だけど、それで村がまた昔の様に人で賑わうなら、それしかない。 俺達が下手に村の守り神を怒らせないよう監視すればいいと、皆は納得した。 でも、これもダメだった。 この雪山の近くにもスキーとかのレジャー施設があるけど、あいつらが求めているのは自分達の儲けだ。 そのために大事なのは、一にも二にも客。つまり人集めだ。 年間の平均気温が-30度の雪山に人が集まるはずもないし、道の碌に整備されていない、環境が悪い場所にわざわざ手を貸してくれる企業は無かった。 それから色々と考えたよ。 例えばフリーの魔導師……えっと、確かフリーランスって言うんだっけ? 俺自身の魔力はAAAランクと、魔導師としての才能には恵まれていたから、何でも屋みたいな仕事を一時期やった事があった。 でも、今時そんな高ランクの魔導師に高い金を支払ってまで依頼を持ってくる奴の方が少ないし、やっぱりと言うか信頼度も高い管理局に頼む人がほとんどだった。 それ以前に、滅多な事では大きな事件も起きないから、このまま続けていても資金は集まらないと諦めた。 ならその管理局に、とも考えたけど、あそこの給料は一定だからな。 昇進すればそれなりだけど、そこに辿り着いて、村を復興させる金が溜まるまでには何年かかるか。幾ら俺でもそんぐらいの計算ならできた。 その他にも色々な案を出したよ。村と一族の存亡がかかっているんだもん。 けれど、全部がダメ。 結局、衰退していく村は捨てて、俺達も何処か別の場所に住んで行くしかないと、一度は諦めかけた事もあった。 でも、諦めきれなかった。 あの村は俺にとっての大切な場所。そこが無くなるのは……セルピ二ス族が消て行くのは、とてつもなく悲しかった。 確かに世の中が便利になれば、消えていく物があるのは当然かもしれない。 俺達の様に、打ち捨てられた村は世界各地を探せば幾らでもある。 だから、セルピ二スの村が衰退していったのは当然の事だったのかもしれない。 でも!! 「だからって、はいそうですかって諦めきれるか!!」 激昂と共にタスピの足元に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。 「俺はセルピ二ス族の長、タスピ・セルピ二ス!! 村長である俺まで諦め、村を捨てたとあっちゃ死んでいった父ちゃんと母ちゃん!じっちゃんにばっちゃん! そしてその前のじっちゃんにばっちゃん!その前の前のじっちゃんばっちゃん!その前の前の……ずーーーーと前のじっちゃんやばっちゃん達に会わせる顔が無いだろうが!!」 ミッドチルダ式でもベルカ式でも無いその魔法陣は、雪の様に白銀色に輝きながら辺りを照らした。 「俺達が何で赤鷹なんて名乗っているか解るか?それはな、昔ばっちゃんに聞かされた昔話から思いついたんだ! 昔、村の外に狩りに出た若い男が吹雪にあい道に迷った。食べ物も無く、体力の限界が来た時、ふと吹雪の中に真っ赤に光り輝く赤い鷹が飛んで行くのが見えた。 こんな吹雪の中に、あんな真っ赤な鷹なんて居るはずが無い。と男は思ったが、何故かその鷹を見ていると途端に元気が沸き上がってきた。 さらに不思議な事に、その赤い鷹は男の側を離れず、こっちこっち、とまるで道案内をしてるかのように常に男の前を飛んでいた。 男は何気なくその後に付いてくと、どうだろうか。吹雪で道に迷ったはずなのに、何事も無く村に帰る事が出来た。 男は皆にその話をしたが、幻でも見たんだろうと相手にされず、男自身も夢でも見ていた様な不思議な感覚だったせいで特に気にしなかった。 それから暫く経ったある日、男の子供が病に襲われ倒れた。 医者にも見せたが原因は解らず、日に日に子供は衰弱していき、村の皆もすっかり子供を助ける事を諦めていた。 けれど、ある晩。 男が子供の看病していると、ふと窓の外に真っ赤な鷹が飛んで行くのが見えた。 男は藁にも縋る思いでその鷹を追いかけ、子供を助けて下さいと願った。 すると病に冒され苦しんでいた事が嘘の様に子供は元気を取り戻した。 それからも村に災いが訪れるたびに、赤い鷹は現れ、その度に村は救われていった。 男のお嫁さんに新しい命が宿ると、その窓の外には此方を見守る様にして赤い鷹が飛んでいた。 俺達セルピ二スはその赤い鷹が村の守り神の化身と信じ、雪の中でも真っ赤に輝く姿からこう呼んだ。 『幸せを運ぶ雪山の赤い鷹』ってな!!俺の腕に刻まれた赤い鷹と名前は、そこから取ったんだ!」 白銀色に輝く魔法陣の光を受け、タスピの腕に刻まれた鷹の刺青が燃える様に真っ赤に輝いていた。 「俺達が間違っているのは解っているし、世間から見ても罪人だってのは解っている! でもな、俺にだって守りたい物があるんだよ!! 赤鷹として活動を始めてから、セルピ二スの村と同じ様に村や住んでいた場所が無くなった奴が集まって来て、何時の間にか20人近くまで膨れ上がっていた。 そいつらが力を貸してくれたおかげで、思ったよりも早く資金が集まった……俺は、俺を信じて付いてきてくれた奴らにも恩返しがしたい! セルピ二スの村だけでなく、そいつらの村も救ってやりたい!!」 魔力の光がタスピの足元に集まっていく。 徐々に凍りつき、ちょうどスノーボードで使う様な薄い氷の板が生成された。 「バクラ、お前がその鳥人間に呑ませたペンダントに記された金は、俺達赤鷹の夢のためにはどうしても必要なんだ! その金を集め、村を復興させる事が出来た時、俺達赤鷹は本当の赤鷹に……幸せを運ぶ雪山の赤い鷹になれる!!」 放出される莫大な魔力。 余波で粉雪を舞い上げながら、魔法陣が雪に溶ける様に消えていくと、タスピの体から白銀色の一筋の光が立ち昇り天に昇っていった。 瞬間、ゴゴゴゴゴゴッ、地を揺らす地響きが起こった。 「行くぞ!ミッドチルダ式でもベルカ式でも無い、名付けてセルピ二ス式超雪魔法!!」 地響きは収まる事無く、寧ろさらに大きく強くなり、雪山全体を揺らす。 アルスもユーノも立っている事が出来ず、尻もちを付いてしまった。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ! 絶えず聞こえるこの音。徐々に大きくなっていき、その正体が遂に牙を剥いた。 白い壁。 そうとしか言いようが無い物が、意思でも持っているかの様に唸りを上げた。 「ビックスノオオオォォーーウェエエエェエエェーーーーブッ!!!」 『Big snow wave』 分厚い雪の塊で造られた自然の猛威――雪崩。いや、雪崩と呼ぶには生易しい雪の津波がバクラ達目掛けて襲い掛かった。 ユーノもアルスも、目の前の光景が信じられなかった。信じられるはずが無かった。 雪崩。 山の傾斜に積った雪が一気に駆け下りてくる自然現象。 昨日までの吹雪も凄く、自然の力と言う物は嫌というほど思い知らされた。 だが、目の前の“アレ”は何だ。 目側でも軽く十メートルは超え、人間が作った街など意図も簡単に圧し潰してしまう重量を誇る雪の塊。 人間など遠く及ばない、自然の力をそのまま体現したかのような光景だった。 「……ッ!!ユーノ、バクラ!」 あまりの常識外れの光景に、普段からバクラの事で慣れているアルスも茫然とさせられたが、気を取り戻し急いで避難を勧告する。 ユーノも心此処に在らずといった感じだったが、アルスに緊迫した声に今自分達の状況がどれだけ危機に陥っているか嫌でも理解した。 目の前の迫る、空さへも呑み込まんとする雪の壁。 こんな物に巻き込まれたらどうなるか、そんな簡単な未来を予測できないほどアルス達は無知では無かった。 急いで逃げようと、ユーノの手を引っ張るアルス。 バクラの事も気になったが、あいつの事だ。 これぐらいの状況なら自分で何とかするだろうと信頼し、アルスは飛行魔法で空に逃げようとしたのだが―― 「なッ!!?」 「嘘……この雪、生きているの?」 アルスは驚き、ユーノは素っ頓狂な事を言いだした。 雪が生きている、常識を疑う様な光景だがそうとしか言いようが無い。 自分達を囲むようにして壁を造り出す雪。 ただの雪であるはずなのに、それ自身が本当に生きているかの様に進行を妨げている。 まるで雪山全体が、タスピの村を救いたいという願いに答えている様だ。 「自然に介入する魔法?それとも自然の力を借りて発動させる広域魔法?でも、こんな!!」 「そう、こんな風に自然を自由に操れるなんて真似は普通は出来ない!」 アルスの疑問に答える声。 何時の間に移動したのだろうか。 見れば、足元に生成した氷のスノーボードで迫りくる雪の津波の上を悠々と滑るタスピの姿が目に映った。 「どんなに熟練した魔導師でも、自然に介入して行使できるのは局地的に雷なんかの自然現象を一時的に発生させたりする事だけだ! だけどな、俺は……俺達セルピ二スは違う! 『雪と共に生き、雪と共に去りぬ』 俺は小さい頃からずっと自然の雪と一緒に育ってきたんだ!その声を聞き、力を貸して貰う事なんて朝飯前なんだよ!」 タスピの声に答える様に、周りの雪が慌ただしく動きアルス達を完全に包囲した。 「魔力を使って一方的に自然に介入するのではなく、自然の声を聞いてその力を貸して貰い120%の力を発揮する!それがセルピ二ス式超雪魔法だ!!」 包囲は既に完了した。 一点だけを突破したとしても、直ぐ周りの雪が多い囲み動きを封じる。 広域に及ぶ雪の津波は、例え極大の魔法をぶつけられようとも破られはしない。 今度こそ自分の勝ちだ。 タスピは雪の津波の上から、バクラ達に狙いを定めて勝利を確信した。 「下らなねぇ」 ヒシヒシと犇めき合う超重量級の雪の津波。 ドドド、と山を揺らす地響きに周りの音が掻き消される中でも、確かに鼓膜を叩く声。 喜怒哀楽、全ての感情が宿っていない、本当に下らないと吐き捨てる様な無感情な声がタスピに耳に反響した。 「散々つまらねぇ御託をウダウダと並べやがって。結局、貴様のバカな先祖がそんなになるまで放っておいたのが原因だろうが」 雪の檻に囲まれる中でも、一切の怯えを見せない盗賊。 タスピの瞳がその姿を射抜く。 瞬間、形容し難い何かが体の中を駆け巡った。 「自然の力を120%発揮できるだと?ならぁ、その自然その物をぶっ壊した場合はどうなるんだ?クククッ」 膨れ上がる魔力の鼓動。 タスピとの自然を尊重する白銀色のとは違い、ただ純粋に周りの物を破壊するだけの黒い魔力。 バクラの体から漏れ出る魔力に、まるで雪が怯える様に小刻みに震えだした。 「何の魔法を使うか知らないけど、こいつで終わりだ!!」 氷の板を蹴り、タスピは空中に逃れた。 「行っっっっっけええええええええぇぇえぇええーーーーー!!!!」 一匹の巨大な魔物の様に、怒涛の勢いで雪はバクラ達を圧し潰した。 タイミングは完璧、避ける暇も無かったはず。 幾ら並外れたタフさを兼ね備えようとも、この雪の前には一溜まりも無い。 「はぁはぁはぁはぁ……やった」 青空を走行しながら、勝利を確信したタスピは肩の力を抜き笑みを浮かべた。 だが―― 「ッ!!」 分厚い雪の装甲を破り、巨大な白い腕が現れる。 徐々にバクラ達を圧し潰した雪は盛り上がり、その下から何かが現れた。 紅い眼光。 暖かさなど微塵も感じさせないその眼光を見た瞬間、タスピは自分の脳に死のイメージが流れ込んでくるのを感じた。 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」 大気を震わす咆哮。 自然その物を呑み込まんとするその咆哮と共に、雪の中から白い巨大なフェレットが飛び出してきた。 「いぁッ!!」 あまりの予想外の出来事に間抜けな声を漏らしてしまうタスピ。 獲物を狙う眼光は絶えず自分を狙い、遂にその魔物は狩りを始めた。 巨大な腕が振るわれる。 人間の体など簡単に引き裂くその腕の前に、タスピは為す術も無く押し潰された。 いやさ、確かに相手の質量が増したなら自分も増せばいいって考えは解るよ。 重い一撃なら同じ重い一撃で対抗する。 攻撃は最大の防御って言うし、俺も解る事は解るよ。 でも―― 「幾らなんでもアレは無いだろ。なんだよ、あのお化けネズミ」 多分だけどさ、これって全世界の皆の認識だよね? 先程までの戦闘が嘘の様に静まり返った雪原。 横たわるのは赤鷹のリーダー、タスピ・セルピ二ス。 相手を見下すのはスクライアの超天才にして超問題児、バクラ・スクライア。 「うぅ……げっほげっほ。はぁはぁ、ちくしょ~。何で俺のビックスノーウェーブが、あんなネズミに負けるんだよ。納得いかなーーい!」 体を大の字にして、悔しさと無念を外へと吐き出す。 Big snow wave。 これだけの大掛かりな広域型の魔法は、本人の魔力だけでなく体力をも大きく削る。 流石のタスピも、もう碌に動けない様だ。 「ネズミじゃねぇ、フェレットだ」 相手を見下しながら、タスピの発言を訂正するバクラ。 余裕あるその態度を見て、タスピはキッと目を鋭くして睨みながら吠えた。 「どっちでもいいわ!んな事よりも早くペンダントを返せよ!」 こんな状況になっても自分の身よりも村復興の資金を心配するあたり、タスピの想いの重さが伝わってきた。 「……………」 バクラは何も言わない。 慰めの言葉も、敗者を貶す言葉も。 ただ無言のまま、何かを思考してるかのようにタスピを見下していた。 やがて薄く笑みを浮かべ、上空に待機していたファルコスを呼び寄せてある命令を下す。 「ファルコス、吐き出せ」 「は?」 何を、とタスピが問いただす前にファルコスから目的のペンダントが吐き出された。 ビチャビチャになっているが、間違いなく自分達赤鷹が金品の場所を記したペンダント。 「……どう言うつもりだよ」 流石にこれには、返してくれてありがとう、などの安楽的な思考はしない。 悔しいが自分が負けたの事実。 その自分にペンダントを返す意味が、タスピには解らなかった。 ザッ、ザッ、と雪を踏みしめながらタスピへと近付くバクラ。 そして―― 「――――――――――――」 倒れている彼の耳元で、ある言葉を囁いた。 「はぁ?どう言う意味……っておい!」 言葉の意味を問いただそうとするも、バクラはもうお前に用は無いと遠ざかっていく。 ちょっと待て! 声を荒げて呼び止めると、願いが通じたのかバクラは立ち止まり此方を振り向いた。 あれ、と一瞬疑問を覚えるが、その表情は決して自分の願いを叶えた訳ではない事を物語っていた。。 薄い笑みながらも、確かに存在する黒い感情。 (あ、何か不味いかも) 身の危険を感じ、疲弊した体に鞭打って逃げようとするタスピだが、既にバクラは行動に移していた。 「死霊の封印剣ッ!!」 投擲された魔力の塊。 レイピアに似た形状をしているが大きさはナイフに近く、一寸の狂いも無くタスピの左手を刺した。 「って、こらああぁーーーー!行き成りなんて事してくれちゃってるの!!?」 当然の如く左手の甲を貫いた物だからタスピはビックリ仰天。 疲れを感じさせず、声を荒げながらバクラに文句を言った。 「阿呆、良く見な。血も痛みも感じねぇはずだ」 「阿呆はお前だ!見ろ、こんなにも血が……って、あれ?」 必死に左手のナイフを抜き取ろうとしていたタスピは、バクラに言われた通り違和感に気付いた。 痛くない。 ナイフは確かに自分の左手を貫いている。 しかし、痛み所か血の一滴すらも流れていなかった。視覚的には少し痛いが。 (嘘……まさかこれって、純粋な魔力を圧縮して造ったナイフ!いや剣なのか?まぁ、どっちでもいいか。 それよりもこんな超圧縮、しかも人間の動きを止める事が出来るなんて……) どれだけ動かしても、まるで糸に縫い付けられた様に動かない。 デバイスを媒介とせず、自分の魔力だけでタスピの動きを止めている。 今まで出鱈目な魔法ばかりだったが、これだけ超圧縮できる魔法技術を扱える人間はそうそう居ない。 タスピは、改めてバクラの技術の高さを思い知った。 「死霊の封印剣ッ!」 再び投擲された魔力のナイフ。 タスピは避ける事も出来ず、残った右手と両足を貫かれた、再び大の字に雪原に縫い付けられた。 「良く似合っているじゃねぇか。虫マニアに売れば、良い小遣いになるぜ」 「俺は夏休みに宿題に出される虫の標本か!!」 ギャーギャー叫ぶタスピは無視。バクラは帰ろうと、ファルコスの背に乗った。 「アルス、ユーノ帰るぞ」 「帰るってお前……タスピさんはどうすんの?」 「知るか。管理局には連絡したんだろ?だったら後はあいつらに任せておけ。おら、ユーノ!さっさとファルコスの背中に乗れ!」 「え……でも、僕空を飛ぶのはちょっと。地面に足が付いていれば、高い所でも大丈夫なんだけど……」 「ゴチャゴチャ言ってねぇで、さっさと帰るぞ!」 「ちょっ!バクラ兄さん、止めて!まだ心の準備が……ああぁあ…あああぁああぁあーーーー!」 ユーノの意向を無視し、バクラは無理やりファルコスに乗せて遥か空の彼方へと飛び立った。 「バクラ!?……あーもう、勝手な行動をするな!!」 管理局が到着するまでこの場に残ろうか迷ったアルスだったが、勝手な行動をするなとバクラ達を連れ戻すため同じ様に飛び立った。 誰も居なくなった雪原。ビュービューと冷たい風が吹き荒れる中、タスピは一人取り残されていた。 「ちょっとー!誰も居ないの!?居なくなっても良いけどさ、せめてこのナイフは外していけよ!」 ジタバタとダメージが残る体を必死に動かすが、バクラの死霊の封印剣はビクともしなかった。 「くぅー……見た感じ、バインドと同じ様に貫いた相手の動きを止める魔法みたいだな。くそー、体調が万全ならこんなの100本や200本どうって事無いのに」 悔しそうに口元を歪めながら、ダメもとで死霊の封印剣の破壊にかかるタスピ。 残った魔力を練り上げ、一気に解放したが無駄。 バクラとの戦闘で消耗した今の体では、死霊の封印剣を破壊できるほど魔力を放出する事は出来なかった。 「ふん!むん!てりゃー!おりゃーー!!チェストーーー!!!」 何度か破壊を試みてみたが、やはりバクラの死霊の封印剣はビクともしなかった。 そうやって何度か叫びながらジタバタさせていれば、当然の如く体力も気力も減っていく。 「ぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇ」 元々戦闘で疲弊した体。疲れ息が上がるのには、そこまで時間を有しなかった。 ふぅ~~~。 大きく息を吐き、大の字に寝転がりながら青空を見つめる。 背中にはヒンヤリとした雪の絨毯。 (懐かしいな。昔はこうやって皆で遊んで、良く寝転がったっけ) 昔、まだセルピ二スの村に暮らして頃を思い出して頬が綻ぶタスピ。 今日は負けてしまったが、まだ夢は諦めていない。 管理局に何度捕まろうとも、きっと何時か夢は成し遂げて見せる。 動けない体だが、その目には確かな光が宿っていた。 「そう言えば……結局どういう意味だったんだろう?あれ?」 タスピはあの時、バクラに言われた事を思い返していた。 『タスピ。もし村を復興させたければ、今は大人しくしてな。なーに、心配すんじゃねぇ。何れ起こるゲームには参加させてやるぜ。そうすりゃ、貴様の村なんか簡単に救えるからよぉ』 (何だよ、ゲームって?なんか造るのか?) 疑問に首を傾げるタスピの瞳には、自分を逮捕しに来た管理局員の姿が映った。 テンポが悪い。 恐らくこう思う方は居るでしょうけど、その辺はご勘弁下さい。 さっさと原作に行きたいんですけど、どうしてもこれからの展開には必要なんです。 更新速度は何とかしたいんですけど……それでは、また次回。 遊戯王解説 ――死霊の封印剣 アニメオリジナルのカード。 指定したモンスターを一時的にフィールド上から除外する効果を持つ魔法カードです。 この話ではバインドと同じく、貫いた相手の動きを壁や床に縫い付ける様にして封じる効果です。 アニメを見た限りだと大きさは普通の剣でしたが、此処では形式上バクラの意思によって大きさを自由に変更できる、と言う事で。
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ゲーム終了までの死者【11人】 時間 名前 殺害者 死亡作品 死因 凶器 黎明 ヴァッシュ・ザ・スタンピード 八神はやて(StS) 186 Pain to Pain(前編)186 Pain to Pain(後編) 斬首 鋼の軛 泉こなた 八神はやて(StS) 186 Pain to Pain(前編)186 Pain to Pain(後編) 射殺 愛の紅雷(憑神刀(マハ)) 早朝 八神はやて(StS) 柊かがみ 193 Zに繋がる物語/白銀の堕天使193 Zに繋がる物語/サティスファクション 灰化 ルシファーズハンマー 柊かがみ スバル・ナカジマ 193 Zに繋がる物語/白銀の堕天使193 Zに繋がる物語/サティスファクション 失血死 拳 アンジール・ヒューレー キング 194 Masquerade 斬殺 オールオーバー スバル・ナカジマ 金居 197 Round ZERO~AMBITION SECRET(前編)197 Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 斬首 ジェネシスの剣 天道総司 キング 197 Round ZERO~AMBITION SECRET(前編)197 Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 刺殺 オールオーバー 朝 キング 高町なのは(StS) 198 魔法少女リリカルなのはBR Stage01 ファイナルゲーム198 魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者198 魔法少女リリカルなのはBR Stage03 紡がれる絆198 魔法少女リリカルなのはBR Stage04 虹の星剣 封印 エクセリオンバスターA.C.S(レイジングハート・エクセリオン) 金居 ヴィヴィオ 198 魔法少女リリカルなのはBR Stage01 ファイナルゲーム198 魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者198 魔法少女リリカルなのはBR Stage03 紡がれる絆198 魔法少女リリカルなのはBR Stage04 虹の星剣 封印 ラウズカード(ジョーカー) ユーノ・スクライア 高町なのは(StS) 199 魔法少女、これからも。(前編)199 魔法少女、これからも。(中編)199 魔法少女、これからも。(後編) 消滅 ルシフェリオン(スターライトブレイカー) 高町なのは(StS) 高町なのは(StS) 199 魔法少女、これからも。(前編)199 魔法少女、これからも。(中編)199 魔法少女、これからも。(後編) 力尽きる ルシフェリオン(スターライトブレイカー) おまけ 名前 最期の言葉 ヴァッシュ・ザ・スタンピード 「はやて――」 泉こなた 「かがみん!」 八神はやて(StS) 「こんな結末……満足でけへんわぁ……」 柊かがみ 「ありがとう……これで……満足……できた……わ……」 アンジール・ヒューレー 「どんな時でも……夢と誇りを、手放すな」 スバル・ナカジマ 「なのはさ――」 天道総司 「変し――ガッ!?」 キング 「嘘だ。 こんな事、認めない! 最強は、この僕なんだ―――ッッッ!」 金居 「………………ふん。 今回は、ここまでか」 ユーノ・スクライア 「逃がす、ものかぁぁぁぁっ!」 高町なのは(StS) 「スターライトォォォ―――ブレイカアアァァァァァァァァ―――――――――ッッッ!!!」 殺害数 順位 人数 該当者 このキャラに殺された人 生存状況 スタンス 1位 6人 キング C.C.、シェルビー・M・ペンウッド、ゼスト・グランガイツ、クアットロ、アンジール・ヒューレー、天道総司 封印 楽しむ 2位 5人 八神はやて(StS) ギルモン、セフィロス、天上院明日香、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、泉こなた 死亡 危険派対主催 金居 インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、ギンガ・ナカジマ、アレックス、エネル、スバル・ナカジマ 封印 ステルスマーダー 4位 4人 ミリオンズ・ナイブズ 殺生丸、カレン・シュタットフェルト、高町なのは(A s)、ディエチ 死亡 無差別マーダー ルーテシア・アルピーノ アレクサンド・アンデルセン、早乙女レイ、ルルーシュ・ランペルージ、シャーリー・フェネット 死亡 優勝狙いマーダー キース・レッド 神崎優衣、ミリオンズ・ナイブズ、ブレンヒルト・シルト、L 死亡 特殊マーダー(アレックスに執着) 柊かがみ エリオ・モンディアル、シグナム、チンク、八神はやて(StS) 死亡 狂化暴走→優勝狙いマーダー→???→対主催→対主催(仇討ち) 8位 3人 アーカード アグモン、クロノ・ハラオウン、ヴィータ 死亡 マーダー→対主催 高町なのは(StS) キング、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS) 死亡 対主催 10位 2人 キャロ・ル・ルシエ ルーテシア・アルピーノ、フェイト・T・ハラオウン(A s) 死亡 対主催→狂化奉仕マーダー(奉仕対象:エリオ・モンディアル) 浅倉威 万丈目準、柊つかさ 死亡 無差別マーダー エネル 矢車想、新庄・運切 死亡 無差別マーダー アンジール・ヒューレー 八神はやて(A s)、ヒビノ・ミライ 死亡 奉仕マーダー(奉仕対象:ナンバーズ<クアットロ、チンク、ディエチ>) ヴィヴィオ 相川始、金居 生存 ???→対主催 15位 1人 シグナム ティアナ・ランスター 死亡 奉仕マーダー(奉仕対象:はやて) ヴァッシュ・ザ・スタンピード フェイト・T・ハラオウン(StS) 死亡 ???→対主催 ザフィーラ ザフィーラ 死亡 対主催 柊つかさ 遊城十代 死亡 ステルス(優勝狙い) ギンガ・ナカジマ 武蔵坊弁慶 死亡 対主催 セフィロス シャマル 死亡 対主催→無差別マーダー フェイト・T・ハラオウン(A s) キャロ・ル・ルシエ 死亡 対主催→奉仕マーダー(奉仕対象:高町なのは) アレックス キース・レッド 死亡 対主催 プレシア・テスタロッサ 浅倉威 死亡 主催者 ヴィータ アーカード 死亡 脱出派 スバル・ナカジマ 柊かがみ 死亡 対主催
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1 ルル「はぁ…」 シン「どうした?ため息ついて」 ルル「いや、昨日試験勉強で頑張るナナリーの為に夜食を差し入れに行ったんだけど な、その迂闊にもノックをせず入ってしまったせいで着替え中のナナリーの姿 をばっちり見てしまって今朝からナナリーが俺と目合わせてくれないんだよ」 シン「ああ、稀にあるよなぁ。そういうの、まぁマユはそういうの気にしないでるんだけど。 あいつももうちょっとしっかりしてくれないと、他の男共に見られてしまうかもしれない のに…」 ルル「(お前の妹のそれは誘惑だろ…)はぁ、それにしてもどうしよう…。 おかげで朝から親父と母からサディスティックにからかわれ咲世子さんやC.C・アーニャ からも冷たい目で見られ…」 注:三人ともルル宅に下宿中です。 シン「お前んとこの両親正直ドSだからな。それよりうじうじ悩むよりも普通に謝った方がいんじゃない? 俺ん時はあっさり許してくれたぜ」 ルル「そうか…ん?今聞き逃してはいけない一言があったがそれはどういう事だ!貴様!」 シン「こ、この前ナナリーちゃんとキョン(妹)とミヨキチでうちにお泊りした事あっただろ。 その時に…まぁ、お前の間違いIN風呂場っていう事があって…」 注2(四人とも同級生です、多少の年齢変更はご了承下さい) ルル「何!貴様ぁ…、ま、まぁいい。見たのは裸ではなく着替え途中だったんだな!」 シン「あ、あぁ…。そうだけど」 ルル「そうか…それにしても聞くが下着の色は何色だった?」 シン「…は?」 ルル「い、いや、兄として妹が道を踏み外さないようにだな。年相応といものがあるだろう!」 シン「う、まぁ、えーっと…薄いぴ…」 ルル「なんだ!これは地震か!」 シン「い、いや!?違う!何だ、これは飛ばされるような感覚は…うわぁぁぁぁ」 はやて「なんや!この小宇宙(コスモ)の爆発は!」 なのは「恐ろしい程の攻撃的な小宇宙(コスモ)なの!」 マユ「ナナリー、どうしたの?目をカッと見開いちゃって」 ナナリー「いえ、なにやら不穏な空気が来ましたので。ちょっと六道を…」 2 ヨウラン「はぁ…」 ヴィーノ「タマちゃん…」 レイ「何をたそがれているんだ?あいつらは」 イスラ「さぁ?何でも最近我が家のお稲荷様の新EDに出てくるタマちゃんに心を 奪われちゃったらしいよ」 ヴァイス「ミニスカ和服の威力の凄まじさを見たな、いやぁ。なんでレギュラーにならんのか 不思議だ。タマちゃん」 シン「おわ、どっから沸いて来たんだ!」 ヨウラン「兄貴!俺達、俺達…っ!!」 ヴィーノ「どうしたらいいんですか!兄貴ぃっ!」 ヴァイス「悩む必要はない、そういう時こそ脳内保管だ。 ミニスカ浴衣で踊る765プロアイドル勢、ちょっと肩はだけちゃってさらしを 見せ付けて屋台をやるシグナム、うっかりかがんでその奥の黒下着を見せ付ける フェイト、『いい年して…ちょっと恥ずかしいです』なんて恥じらいながらミニスカ 浴衣に身を包むアティ先生にシャマルさん等女子教員、無限に脳内で保管できるはずだ!」 ルル「要はあんたは浴衣派という事だろうな」 ヴィーノ「兄貴っ…ミニスカ巫女服に身を包む梨花ちゃまと羽入たんが脳に焼き付いて離れません…」 キラ「いいんだ、それでもいいんだ…、ラクスのミニスカ忍者服はあんま萌えなかったけれど彼女達なら…」 ヨウラン「兄貴っ!すずかさんに桂さん、ネリネに朝倉にミニスカ和服もいいんですか」 ヴァイス「もちろんだ!和服は黒髪の女性を引き立てる…それ以外もだけどっ!!」 キラ「僕たちは同士だ!仲間だ同胞だ!!」 4人「うぉぉぉぉぉっ!!」 イスラ「ねぇ、シン。さっきから携帯いじってなにしてるの?」 シン「夏コミの情報をな」 ルル「なんだ、お前行くのか」 レイ「勘違いしない方がいいぞ、こいつが見てるのは夏のコズミックマート(近所のスーパー) 感謝祭の情報だ」 シン「夏コミになるとモノが安くなってなぁ。飲み物とかカップラーメンとか保存きくものの 買いだめのチャンスなんだよ」 3 なのは「シン、これから私とショッピングにいかない?」 シン「なのはさん、頼むからレイハをこっちに向けて話すの止めてもらえませんか?」 レイ「ガンバレ、シン」 ルルーシュ「毎度の事ながら大変だな」 イスラ「まぁ、頑張って」 シン「お前らも心配するなら、遠くに避難するな!」 ???「ちょっと、なのは。やめなよ」 シン「あそ、その声は!?」 レイ「無印、A Sなの、でなのはさん達や美由希先生と風呂入ったり、着替えのぞいたり確信犯的 ラキ☆スケのせいでStrikerSで出番がまったくなかったユーノ・先輩じゃないですか!」 ルル「しかもそのラキ☆スケのせいで幾多のフェレット達が淫獣なんて名前をつけられてしまう きっかけをつくったユーノ先輩じゃないですか!」 イスラ「同じ男キャラのクロノ先輩は結婚して子供も生まれているのに本人はヒロインとフラグ どころかA S終了時に叩き折られて、無限図書館で激務に耐える事になったユーノ先輩 じゃないですか!」 ユーノ「うわぁぁぁぁぁぁん、所詮僕は淫獣だよぉぉぉぉぉぉ」 なのは「あ、そういえば出さなきゃいけないレポートあるんだった。シン、誘っておいてごめんね」 シン「・・・嵐のように来て嵐のように去っていってしまった」 レイ「なんだったんだ?」 ルル「さぁ?」 注:別にキャラ叩きしたいわけではありません 4 ルルーシュ「くそぉ…」 シン「なんで文化祭で女装喫茶やんなきゃいけないんだよ」 イスラ「まぁまぁ」 ルルーシュ「いいよな!お前は!裏方で!」 シン「なんで俺も裏方じゃなかったんだろう」 レイ(そりゃ化粧された状態がああではな)「ん、あれは…」 不良A「おいおい、嬢ちゃん」 不良B「おお、A君ロリ趣味?俺も~」 不良C「いいから、気持ち良い事しようぜ~」 マユ「なんなんだ!あんた達は!」 キャロ「ううう、怖い…」注:マユ達と同学年です。 ナナリー「………………」 イスラ「マユちゃん達が!ってシンにルルーシュ!?」 シン「………………」(種割れ、懐からナイフを出してる) ルルーシュ「いいか?俺がヤツラにギアスをかける『のた打ち回って死ね』と、そして…」 レイ「おい、あの程度の奴らにそんな事をしたら」 不良A「なぁじょ~ちゃ~(パシン)痛でぇっ」 ナナリー「触るな、下郎」 不良B「あんだとこの……なっ」 ナナリー「………」←Bのパンチを受止めてる 不良C「な、何が起って…」 不良B「ひ、ひぃぃっ、俺の!俺の腕がぁぁぁっ!!」 ナナリー「あなたの運動エネルギーを逆流させ、その威力はあなたの拳に直に伝わる… ふふふ、ほらその威力に拳の皮膚が裂けて来ましたよ?」 不良A「な、何者だぁっ、お前!」 ナナリー「いきますか?ポトリと」 不良C「おい、やべぇ。逃げんぞ」 不良B「お、覚えてやがれこのアマ!………ギャァァァァァ」 マユ「うわ、ナナリーすごい」 キャロ「ありがとうございます」 ナナリー「あのような下郎、相手ではないですから」 シン「なぁ、お前の妹。あんなに凄かったか?」←逃げてきた不良を捕まえてボコしてる ルル「父と母の娘だからな………どんだけだ」←同上 イスラ「もっとおしとやかじゃなかったっけ?」←同上 レイ「どうもそういうイメージしか沸いてこないみたいだぞ、作者が」←同上 -02へ戻る -04へ進む 一覧へ
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アースラに回収され、リンディからのお叱りを受けるなのはとユーノ。 クロノとエイミィの調査により、管理局側は事件の黒幕がプレシアであることに気づく。 かつてはミッドチルダで次元航行エネルギーの研究を行っていた大魔導師。 違法実験による事故で放逐され、 以後足どりがつかめなくなっていたはずの彼女が、いったい何を望んでいるのか。 編集長の一言 フェイトの心の心境の前に母親が現れた なのは達は、一度 家へ戻ることになる そして、家族からの一言で なのはの気持ちは、まとまる そして、2人の本気の最後の勝負が、今始まる 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 魔法少女リリカルなのはep 10 part 1 魔法少女リリカルなのはTVシリーズは、どれ位あるのへ戻る
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タイトル「天の川に二人」 作者:51-117 本文 ギリギリまにあったかな?!ユーノ×アリサで七夕ネタ行きます 夏にしては冷たい風が頬をなでる。ここは海鳴の上空約31km、ちょうど成層圏の真っ只中 ここまでくるともう雲ははるか下で、周りを見渡せば惑星の丸みと暗黒の宇宙が見渡せる。まさに空と宇宙の境目だ 当然そんな場所に生身で来る事が出来るわけがない。僕はバリアジャケットに身を包み 「……どう?」 「……綺麗」 アリサと共に周辺の大気環境と温度を維持する結界の中に入ってここまで上がってきた 事の始まりは数時間前、地球のアジア圏独特なイベントである七夕にかこつけてデートをすることを約束していた僕等は、それぞれ大学と仕事の帰りに海鳴で落ち合った 色鮮やかに装飾された商店街で催されるイベントを堪能し、翠屋にある笹に願掛けをして、アリサの屋敷にまで通りかかったところで、彼女が突然天の川を見てみたいと言い出した 今日の海鳴の天気は曇り時々雨、朝から晩までずっと空はどんよりとした雲によってさえぎられ、今も空に星の姿を見ることは出来ない そして天の川となるとなお更だ、ここは東京からある程度離れているとはいえ地方都市としてはなかなかの大きさを持つ土地で、街の灯りに空の星が負けてしまい、3等星くらいまでしか目視することも難しい 思えば、これもアリサの冗談のひとつだったんだろう。彼女と恋人同士になってわかったことだが…彼女は心を開いた人にはとたんに甘えん坊になる 猫なで声で我侭を言って、ちょっとしたことでぐずったりして、スキンシップの一貫で今みたいに出来ないようなお願いをしてきたりして…本当にかわいい そんな彼女に、何か一つしてあげたいと思わなきゃ男じゃあないじゃないか 周りに誰もいないことを確認した僕は、すかさずバリアジャケットを展開し彼女を抱き上げ結界で包むと、一気に空へと飛び出した 「時々、アンタって無駄に行動力発揮するわよね」 「そうかな?少なくとも今の君の顔を見れたんだし、無駄とは思わないな」 「ど、どんな顔してるのよ?」 「お姫様みたい」 「馬鹿」 目の前に広がるのは、薄くなった大気にさえぎられる事無く見渡せる満天の星空。天川銀河を内側から見ているが故に見えるこの星の帯を、太古の昔の人々は天に流れる巨大な川と表した 「ね、アリサ。織姫と彦星って…どれ?」 「待って待って。えっと…白鳥座があそこであれがデネブだから…あった!あれがベガ、織姫星で、天の川を挟んだあそこにあるのが、アルタイル。彦星よ」 織姫と彦星。互いに惹かれあい情熱的な愛を交わすものの、その愛におぼれ役目をおろそかにしたが故引き離された男と女。その二人は7月7日、一年に一回だけ逢瀬を許されるという 自分等も互いに忙しい身の上で、数週間に一回しか会えない時だってザラだが…もし一年に一回しかアリサと会ってはいけないと言われたら?僕は耐えることが出来るだろうか いや、無理だろう。例え自分の不出来が原因の因果応報とはいえ、最も愛する彼女と一年に一回、しかも日本においては梅雨真っ盛りなこの時期に雨が降ってない時しか会えないなんて 「……っ」 「痛っ。ちょっとユーノ!力入れすぎないでよ」 「え?あ、ご、ごめんアリサ!」 馬鹿、何やってんだ僕は。現実にありえない妄想に没頭して、彼女のこと疎かにして… 「心配しなくても、アタシはどこにも行かないわ」 「なっ?」 声に出してた?! 「ううん。でもアンタの考えなんてもう顔見るだけでわかるわよ。織姫と彦星に重ねてまたネガティヴになってたんでしょ」 「う…ご明察」 「はぁ…アンタって本当にヴぁか!よね。アタシ等別に仕事も学校も全部投げ出して爛れた生活してるわけでもないでしょ?そりゃ…ちょっとくらい、私が甘え気味だけど…でも!アタシ達は大丈夫よ!絶対!それに!」 「それに…?」 「例え引き裂かれたとしたって…アンタ、飛べるんだから…飛んできて攫ってあげるくらいいいなさいよ。馬鹿」 「…ふふっ、そうだね。男なんだもんね、僕は」 「そーよ。聞かなかったことにしてあげるから、やり直しね。なんか気の聞いた一言言ってみなさいよ」 「そうだね…それじゃあ」 ヘタレな脳をフルドライブさせて作り上げ、ありったけの思いを乗せてつぶやいた言葉。それを聞いたアリサの顔は今まで以上に赤くなって 目も潤んで来て…段々と近づいてきて…そして(省略されました。続きを読むにはオール・ハイル・スクライア!と(ry) 満点の星空の元、僕等二人は愛を交し合う。どんな川の流れにも、誰の手にも引き離されることの無いよう。強く、深く アリサ ユノアリ ユーノ
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深夜。 アスランはベッドに入って目を瞑っていた。 寝ているのではない、実際本人に意識はある。 ベッドに入るまでは眠気があったはずなのに、何故か今ではまったくといっていいほど眠くない。 目を瞑っていればその内寝るだろうと思っていたのだが、この状態ですでに二時間ほど経過している。 (……参ったな) 観念し、目を開けるアスラン。頭上に広がる天井。 つい一月ほど前からこの部屋に住んでいるアスランにとって、それはすでに見慣れない天井ではなくなっていた。 (……まさか、戦争の途中で異世界に迷い込んで、さながら魔法使いになってましたなんて、な) 一体誰が信じるだろうか。 イザークがこの話を聞いたら「はぁ?貴様何を寝言を言っている?」とか言いそうだ。 だが、今自分はこの世界で魔法を使っている。 自分を助けてくれた魔法使いの少女と使い魔と共にジュエルシードを集めている。 全ては、少女の母親の願いを叶える為に。 その為に、この世界でまた親友と刃を交える事となった。 キラ・ヤマト。 幼少時の自分の親友。父親の都合でプラントに渡る事になり離別したが、 再会は、二人が想像しなかった形で邂逅した。 ――倒すべき、敵として。 そして、彼とは幾度となく刃を交えた。 その中、自分の同僚がキラに殺された。 アスランは悔やんだ。キラを討てない自分の甘さが、彼を死なせてしまったと。 次に会った時は、お互い本気で殺す気で戦った。 その時の二人は、悔しさと悲しさ、そして、憎しみが支配していた。 その最中、爆発の影響でアスランはこの異世界に迷い込んだ。 そして魔法使いの少女に助けてもらい、そのお礼として手伝いをすることになった。 そうしてジュエルシードを集めている最中、キラと再会した。 ――また、敵として。 だが、今の俺はザフトのアスラン・ザラじゃない。 軍の命令も何もない。あるのは、ただ己の意思。 やると決めたのは自分の言葉。助けたいと思ったのは自分の気持ち。 そして……キラを殺したくはないのも、また事実。 ――俺は甘すぎるのかな、ニコル。 今は亡き友へと言葉を送るように外を見る。 ――だけど、俺は……負ける訳にはいかない。 この身に託された思いと、絆を結ぶ為に……。 思考を巡らしていたが、いつしかアスランの意識は深い闇の中へと消えていた。 同刻。 時空航行船・アースラ内。 現在は航行を停止しており、クルーの皆は現在ブリッジの中央テーブルに集まっている。 そして中央の一番奥に、艦長であるリンディが座っており口を開く。 「……という訳で、本日零時を持って本艦全クルーの任務はロストロギア、ジュエルシードの捜索と回収に変更になります。 また本件においては特例として、問題のロストロギアの発見者であり、結界魔導師でもあるこちら」 ガタ。と椅子から立ち上がるユーノ。 「はい、ユーノ・スクライアです」 「それから、彼の協力者でもある現地の魔導師の」 はっと自分が呼ばれた事に気付き立ち上がるなのは。 「た、高町なのはです」 「そして、異世界より迷い込んだ魔導師の」 カタ。と席を立つキラ。 「キラ・ヤマトです」 ペコと小さく頭を下げる。 「以上三名が臨時局員の扱いで事態に当たってくれます」 「「「よろしくお願いします」」」 三人が同時に頭を下げる。 「こちらこそ、よろしく」 「よろしく」 局員の皆が三人へと返事を送る。 その様子を見て微笑むリンディ。 アースラ・ブリッジ。 それぞれの持ち場へと戻った局員。そして三人はリンディの後ろへと控えていた。 「じゃあここからはジュエルシードの位置特定はこちらでするわ。場所が分かったら現地に向かってもらいます」 自分達の事だと理解した三人は少し姿勢を正し、 「「「はい」」」と返事をする。 「艦長、お茶です」 エイミィがお茶とその他を乗せたお盆を持ってくる。 「ありがとう」 そしてリンディはスプーンを持ち、砂糖をかなり多めにすくい、『湯』と書かれた陶器へと入れる。 それも二杯。しかもその後にミルクと思わしき液体を混入した。 "それ"をリンディは何事も無かったかのように陶器に口をつけ飲む。 「はぁ……」 おまけに飲んでいる本人はかなりご満悦のようだった。 その光景を見ていたなのはは、 (うわぁ……)と言葉には出さないが、言葉通りの表情を浮かべていた。 キラに関しては口を抑えて「うぷ……」と見ているだけで胸焼けを起こす勢いだ。 「そういえばなのはさん、学校の方は大丈夫なの?」 「あ、はい。家族と友達には説明してありますので……」 学校に関しては家庭の事情という事でしばらくお休みすることになっていた。 そして学校ではなのはの代わりのノート等はアリサが自分から進んで引き受けていた。 その様子をみて微笑むすずか。そして空を見上げ、思う。 (なのはちゃん……元気でやってるかな……) 某所・結界内 「クェェェェェェェッ!!!」 悲痛の叫びを上げる橙色の鳥。その身体に巻きつく緑色の鎖。 その鎖から逃げようとして暴れるが、外れる事はない。 「捕まえた、なのは!」 「うん!」 ユーノの言葉に反応するなのは。 『Sealing mode, setup.』 鳥へと突き刺さる桜色の閃光。そして浮かび上がるジュエルシードのシリアルナンバー。 『Stand by ready.』 「リリカル・マジカル……ジュエルシード、シリアルⅧ、封印!」 『Sealing』 そして幾つもの閃光が突き刺さり、鳥はその形状を保持できなくなり消滅する。 地上に着地し、レイジングハートを構えるなのは。 鳥の跡に残ったジュエルシードがゆっくりと降下し、レイジングハートのコアへと封印される。 『Receipt number Ⅷ.』 アースラ・ブリッジ。 「状況終了です。ナンバーⅧ無事確保。お疲れ様、なのはちゃん、ユーノ君」 局員の一人がディスプレイの向こうの二人へと話す。 「ゲートを作るね、そこで待ってて」 「さて、こっちはどうなってるかな……」 クロノがディスプレイを切り替える。 某所・結界内。 「はあああああああっ!!!!」 空中から、ソードジャケットを身に纏ったキラがシュベルトゲベールを振り下ろす。 振り下ろした先にはジュエルシードの影響で具現化した馬のようなモノがいた。 だが、振り下ろしたシュベルトゲベールは空を切り、地上スレスレで止まる。 「くっ!早いっ!!」 だったら、相手の動きを止めれば!! 左肩にマウントされたブーメランを引き抜く。 『マイダスメッサー』 そして目の前の目標に向かって投げる。 弧を描くように左後方から馬へと向かっていく。 「!!」 それに気付いた馬は急遽進路を変更する。だが、 「ストライク!!」 『パンツァーアイゼン』 左手の甲のシールドから発射されるロケットアンカー、その先端のクローが馬の足へと絡みつく。 最初のマイダスメッサーは囮、本当の狙いはパンツァーアイゼンで足止めをする事だったのだ。 案の定、マイダスメッサーに気付いた馬は進路を変更せざるをえない状況になり、その一瞬の止まる隙をキラは見逃さなかった。 そしてパンツァーアイゼンのコードが収縮し、そのまま馬へと迫る。 「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」 そして両手に構えたシュベルトゲベールを振りかぶり、縦一閃。 「ヒィィィィィィィィィィィン…………!!」 断末魔の悲鳴を上げ、馬の具現が消滅していく。 そして現れたジュエルシード、その中央には『Ⅸ』のシリアルナンバーに刻まれている。 シュベルトゲベールを構えるキラ。その大剣へと吸い込まれるように消えていくジュエルシード。 『Sealing. receipt number Ⅸ.』 「ふう……」 戦闘が終わり一息つくキラ。 直後眼前の空間に現れる画面。 『お疲れ様、キラ君』 そこにはアースラの局員が映っていた。 「あ、はい」 『それじゃそっちにもゲートを開くからちょっと待ってて』 数分後、足元に魔方陣が発生し、直後に転移する。 アースラ・転移ポート前。 目を開けると、隣にはなのはとユーノがいた。 どうやら同時に転移してきたみたいだ。 「お疲れ様、キラ君」「お疲れ様です」 「うん、二人ともお疲れ様」 互いの労いの言葉を掛け合う三人。 廊下を歩いてる最中、ふとなのはが言葉を漏らす。 「……フェイトちゃん、現れないね……」 「うん、こっちとは別にジュエルシードを集めていってるみたいだけど……」 「うん……」 「……だけど、いつかはぶつかることになる……それまでは、僕達も頑張ろう」 「うん」 返事をしたなのはの表情は、どこか曇り気味であった。 湖。 「……だめだ、空振りみたいだ」 「……そう」 アルフの残念そうな言葉にフェイトは表情一つ変えずに返事をする。 流れる風が彼女の長い髪をしならせ、靡く。 「やっぱ、向こうに見つからないように隠れて探すのはなかなか難しいよ……」 「うん……でも、もう少し頑張ろう」 そして空中より現れる紅い影。 「アスラン」 「どうだった?」 「すまない、俺が行った時にはすでに……」 気配を感じたアスランが単独で向かったのだが、すでに事は終了していたようだった。 「これで、向こうにまた一つ回収されてしまった……」 アスランの表情には悔しさがにじみ出ていた。 「アスランのせいじゃないよ……だからそんなに気負わないで」 「……すまない」 その言葉で少し気が軽くなったのか、表情が微笑むアスラン。 「これで……残りはあと6つ」 「次こそは、向こうよりも先に……!」 「うん」 シュルゥッ!!とフェイトの腕に巻かれた包帯が風に乗り、空へと舞い上がっていった。 翌日。 アースラ・食堂。 「はぁ……今日も空振りだったね」 皿の上のクッキーを手に取るなのは。 「うん。もしかしたら結構長くかかるかも……なのは、ごめんね」 「へ?」 突然のユーノの謝罪に手を止めるなのは。 「寂しくない?」 「別に、ちっとも寂しくないよ。ユーノ君やキラ君と一緒だし。一人ぼっちでも結構平気。 ちっちゃい頃はよく一人だったから」 「え? どうして……?」 キラはその言葉に疑問を覚えた。 あの優しい高町家の人達がなのはを一人にしておくことなどあるわけがないと思ったのだ。 そしてなのはの口から語られる過去。 なのはの幼少時に、仕事で大怪我をした士郎、翠屋の経営に追われる桃子と恭也、士郎の看病をする美由希。 だから、家には一人でいることがほとんどだったという。 「そう、だったんだ……ごめんね、なのはちゃん」 「ふぇ? キラ君が謝ることないよ~」 「でも……」 申し訳なさそうな表情のキラ。そこで話題を変えるべくなのはが口を開く。 「そういえば私、ユーノ君やキラ君の家族の事とかってほとんど知らないね」 「ああ、僕は元々一人だったから……」 「え? そうなの?」 「両親はいなかったんだけど、部族のみんなに育ててもらったから、だからスクライアの一族みんなが僕の家族なんだ」 「僕は……父さんと母さんの三人家族かな」 「え? キラ君って一人っ子だったんだ」 「うん。だから両親が仕事でいない時は僕も結構一人でいることが多かったかな」 「そっか……」 サクッとクッキーを食べるキラ。 「……色々片付いたら、もっとたくさん色んなお話したいね」 「うん、そうだね」 微笑みを交わす三人。その中、キラはある事を考えていた。 ――事件が終わって、C.E.の世界が見つかったら……僕は……僕達は―― ふとそんな考えが頭をよぎる。が、今は忘れることにしてクッキーを口へと運ぶキラ。 刹那。 鳴り響く警報。 「「「!!!」」」 柱のディスプレイには紅く『Emergency』と表示され点滅している。 『操作区域の海上にて大型の魔力反応を感知!!』 スピーカーから流れるそれを聞いた三人はすぐに駆け出していた。 海鳴市・海上。 海の上に浮かぶ巨大な魔方陣。 フェイトはその中心で詠唱を始める。 「……アルカス・クルタス・エイギアス……煌めきたる天神よ。今導きのもと、降りきたれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」 ピシャアンッ!! 魔方陣から海へと目掛けて放たれる幾つもの雷。 天候もそれに応じ、雲から雨が降りそそぐ。 (ジュエルシードは多分海の中、だから海に電気の魔力を叩き込んで強制発動させて位置を特定する。 そのプランは間違ってないけど……フェイト……!!) 「撃つは雷、響くは轟雷。アルカス・クルタス・エイギアス……!」 フェイトの頭上に浮かび上がる複数の光の玉。 それらが共鳴し合い、反応するように電流が迸る。 「はああああああああっ!!!!」 バルディッシュを掲げ、海へと振り下ろし魔方陣が作動する。 頭上の玉から海へと打ち込まれる複数の電撃。先程とは違い、かなり高出力の魔力が叩き込まれる。 そして、 「!!」 その魔力で発動するジュエルシード。光の柱が海から天へと駆け上るように突き上がる。 その数は……4つ。 「はぁ、はぁ、はぁ……見つけた……」 (こんだけの魔力を打ち込んで、さらに全てを封印して……こんなのフェイトの魔力でも絶対に限界越えだ!) アルフがそう考えているとフェイトが振り返りこちらを見る。 「アルフ、空間結界のサポートをお願い」 「ああ、任せといて!」 (だから、誰が来ようが何が起ころうが、あたしが絶対に護ってやる!!) そして、発動したジュエルシードが光の柱に海水を巻き込み、竜巻のように暴れ始める。 「行くよ、バルディッシュ……頑張ろう」 自分の相棒を構え、4つの竜巻へと向かっていくフェイト。 アースラ・ブリッジ。 ディスプレイに映る海の様子はまるで台風が来た時のように荒れていた。 「なんともあきれた無茶をする子だわ!」 不安そうな表情で見つめるリンディ。 「無謀ですね。間違いなく自滅します。あれは、個人の成せる魔力の限界を超えている!」 同じ様にディスプレイを見つめるクロノ。だが、こちらは冷静に判断している。 「フェイトちゃん!!」 ブリッジへ飛び込んでくるなのはとキラ。 「あの、私急いで現場に!」 「その必要はないよ、放っておけばあの子は自滅する」 「「!!」」 クロノの言葉に動きが止まる二人。 「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たした所を叩けばいい」 「でも……」「そんな……」 「今の内に捕獲の準備を」 「了解」 「しかし、残るジュエルシードは6つ、あの子が発動させたのが4つ、残り2つはどこに……?」 「……あれ?」 なのはと同じようにディスプレイを見つめていたキラが疑問を感じた。 「どうしたの?キラ君」 「……アスランがいない」 「そういえば……」 おかしい。状況的に不利な今の彼女を見捨てるような彼じゃない。 だとしたら……なぜ…………まさか……! キラは階段を駆け下り、クロノへと駆け寄る。 「クロノ!ここ以外の魔力反応は!?」 「な、なんだ突然!?」 「いいから早く!!」 「わ、わかった!」 キラの突然の行動と言動に押されたクロノは局員にコンソールを打ち込ませる。 「……!! 反応あり!湖にて魔力感知!今画面に出します!!」 パッと複数あるディスプレイの内の一つが切り替わる。 その画面に映るのは、一面に広がる湖。そしてその中央に浮かぶ一つの影。 「……アスラン!」 紅いバリアジャケットに身を包んだアスラン・ザラがはっきりと映っていた。 そしてそのかざした右手には魔力が集まっており、次の瞬間。 魔力は湖へと放たれた。
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シグナムとデュークによって突破された結界の中。 そこには、アースラの魔導師達と守護騎士が対峙していた。 いつの間にか結界は強化され、今使った手段では破れない位に頑丈になっている。 「ユーノ君、クロノ君! 手出さないでね! 私、あの子と一対一だから!」 なのはがヴィータを見て言う。 先日一方的にやられた事もあってか、何としても話を聞こうと考えているようだ。 『アルフ、私も……彼女と』 フェイトが念話でアルフに言う。 先日の一戦以来、シグナムとの再戦を望んでいたのだろうか。 「ああ……あたしも野郎に、ちょいと話がある」 アルフがザフィーラを見ながら念話に答える。 先日の戦闘以来の因縁が、再び芽吹いたものと思われる。 「って事は、俺の相手は……あいつか」 甲児はそう言ってデュークを見る。 恐らく相手は自分と同じ……そう考えれば、甲児が相手をするのが一番だろう。 四者四様の思惑と共に、守護騎士達との再戦が幕を開ける。 第六話『機械獣襲来!』 戦場から離れたビルの屋上。そこにユーノとクロノが立っていた。 相手は四人。この場で戦うのも四人。ならば必然的にこの二人が余る事になる。 ――――それならそれで好都合だ。 『ユーノ、それならちょうどいい。僕と君で手分けして、闇の書の主を探すんだ』 『闇の書の?』 この状況を好機と見たクロノがユーノに提案する。 対するユーノはこれを理解していないのか、クロノに問い返した。 『連中は持っていない。恐らくもう一人の仲間か、主がどこかにいる』 ユーノに詳しい事を説明する。 今対峙している四人の中に、闇の書を持っている人物はいない。ならばどこかにもう一人居るはず。 そいつを探し出して押さえれば……こちらの勝利だ。 『僕は結界の外を探す。君は中を』 『分かった』 『Master. Please, call me "cartridge load".』 「うん! レイジングハート、カートリッジロード!」 『Load cartridge.』 なのはがレイジングハートの要請に応え、カートリッジロードの指示を出す。 それに合わせ、レイジングハートがカートリッジをロードし、薬莢を排出。 一時的に魔力が増大するのを確認し、レイジングハートを構えた。 『Sir.』 「うん、私もだね。 バルディッシュ、カートリッジロード!」 『Load cartridge.』 フェイトも同じようにカートリッジロードの指示を出す。 それに合わせ、バルディッシュがカートリッジをロードし、薬莢を排出。 一時的に魔力が増大するのを確認し、バルディッシュを構えた。 それを見た甲児が自分だけセットアップしていない事に気付いたのか、ポケットから待機状態のマジンカイザーを取り出して掲げる。 「マジーン、ゴー!」 唱える言葉は、元いた世界でマジンガーを起動させるための言葉。 それを認識したマジンカイザーがバリアジャケットを展開し、甲児の全身にデバイスとして装着された。 先日暴走していた時とは違い、胸の文字が暴走中を表す『魔』から制御されている状態を表す『Z』へと書き換えられている。 「あいつら、デバイスを強化してきたのか」 「それに奴はこの間の黒い魔導師か……気をつけろ、ヴィータ」 「分かってるよ!」 目の前でカートリッジがロードされ、驚くヴィータ。 それを見たザフィーラがヴィータに注意を促し、ヴィータがそれに答える。 デバイスの差は埋まった。甲児は管理局側だった。もはやどちらに転ぶか分からない。 こちら側にも不確定要素はあるが……そう考えてザフィーラがシグナムの方に目をやった。 正確には、シグナムと共に現れた正体不明の人物……デュークの方に。 シグナムが無言でフェイトの方を向き、レヴァンティンを構える。 その目には再び相見えた宿敵への闘志があった。 「デューク、魔法での戦闘は初めてだろう。無理はするな」 デュークに注意を促すシグナム。一瞬前とは異なり、仲間への気遣いが見て取れる。 だが、デュークとてこちらに飛ばされる前からグレンダイザーを駆る戦士だ。そうそう遅れは取らない。 「いや、大丈夫だ。グレンダイザーは……誰にも負けない」 故に、デュークはシグナムにそう言って、心配は無用であると伝えた。 そして次の瞬間、それぞれが散開し自分の相手へと向かって行った。 なのはとヴィータ。 フェイトとシグナム。 アルフとザフィーラ。 そして、甲児とデューク。 ――――さあ、戦闘開始だ。 「ハンドビーム!」 デュークが甲児に向かって飛来し、両手の甲からハンドビームを放つ。 不意を突かれる形となった甲児に当たるが、元の防御力が高いからか大したダメージではない。 「うわっ!? やりやがったな、てめえ! スクランダークロォォォォス!」 怒った甲児が、背中にカイザースクランダーを展開。冗談みたいに巨大な翼で空を飛び、デュークへと向かって行く。 その巨翼に驚くデュークだが、すぐに気を取り直して戦闘を続けた。 「ショルダースライサー!」 「くっ、ダブルハーケン!」 両者同時に両肩から武器を取り出しての白兵戦。 甲児は双剣『ショルダースライサー』を取り出し、デュークは二振りの鎌『ダブルハーケン』を連結させ、打ち合う。 甲児がショルダースライサーを振るえばデュークはダブルハーケンで受け流す。 デュークがダブルハーケンを振るえば甲児はショルダースライサーで受け止める。 この二人の力量は全くの互角。今ならどちらが勝ってもおかしくない。 「おい、あんた! 何で守護騎士達に協力するんだ! あいつらが何やってんのか、知らない訳じゃねえだろ!」 そんな相手が守護騎士に協力している事に憤る甲児。 闇の書の事はクロノから聞いて知っている。完成した時にロクな事にならないのも知っている。 ならば目の前のこの男は何故、こうして守護騎士に協力しているのか。それが疑問だ。 「知っているさ……だが、それでもやらなくてはいけないんだ!」 対するデュークからは、それを知った上での事だと告げる。 仮面の男から聞いた事ではあるが、彼らにとっての大切な家族が苦しんでいるのだ。 だからこそ、闇の書を完成させて救わねばならない。 「そこまでしてやらなきゃならねえ事って、一体何なんだよ!」 「それを教える気は無い! スペースサンダー!」 甲児の問いを撥ね付け、シグナムとの同時攻撃で結界をぶち抜いた一撃を放つ。 今のグレンダイザーにとって最大の威力を持つ攻撃、スペースサンダー。その直撃を食らい、地面へと落下する甲児。 落下のダメージはともかく、スペースサンダーは相当効いたのだろう。少しふらつきながらも立ち上がる。 「くそぉっ! そっちがその気なら、ぶっ飛ばしてから聞き出してやらあ!」 そう言って両腕を上空に構える甲児。 見るとデュークも、両腕を真下に構えている。 おそらく狙いは同じ。ならばどちらが打ち勝つかの力勝負だ。 「ターボスマッシャー――――」 「スクリュークラッシャー――――」 両者の腕が回転する。そして―――― 「「パァァンチ!!」」 ――――同時に両腕が飛び、空中で激突した。 そして、次元の海に浮かぶ城の中。サーチャーを使ってその激戦を見ている人物がいた。 青い肌をし、顔の大部分が白髪と白い髭で覆われた老人―――― 「ほう、あ奴らが闇の書の守護騎士か」 ――――地獄島の決戦で死んだ筈のDr.ヘルだ。 さて、何故Dr.ヘルがここにいるのか。それを説明した方がいいだろう。 とある世界に飛ばされたこの男は、手元に残っていた最後の機械獣『ダブラスM2』で次元航行艦を襲撃し、艦内の管理局員を皆殺しにして強奪。 その艦を使って世界を巡り、長年の夢である世界征服の為の力を探していた。 この島もそう。かつての基地であり、最終決戦の場であった地獄島。それがかつての時の庭園のような移動要塞と化している。当然、機械獣も島の格納庫に多数存在している。 あしゅら男爵を地獄島の決戦で喪い、たった一人になっても世界征服を諦めるなど出来はしない。 まして、次元世界の存在を知った今となっては世界征服など小さな事。この老人の夢は世界制服から更にランクアップし、全次元世界征服となってしまった。 そして先日、「第97管理外世界の日本にロストロギア『闇の書』がある」という情報を得て、地獄島から地球の様子を見ているのである。 これ程名の知られた危険で強力なロストロギアだ。手に入れられれば大きな戦力になるだろう。 「……むぅ!? あれはマジンカイザー! 兜甲児もこの世界に来ておったと言うのか!」 闇の書をどうやって手に入れるか考えていたDr.ヘルは、結界内の宿敵の姿を見つけ叫んだ。 甲児はDr.ヘルの侵略を幾度となく阻止し、今やDr.ヘルにとっての最大の敵である。 その最大の敵の姿を見つけて驚いたが、次にいぶかしみ、そして呵呵大笑。 「フフフハハハハハハハハ!! 勝てる、今の兜甲児ならば倒せるぞ!!」 そう、かつてDr.ヘルを苦しめたマジンカイザーは巨大ロボ。機械獣と戦う鉄の城であった。 だが、今のマジンカイザーは甲児の身に纏われたデバイス……つまり、人間程度のサイズしかないのだ。 それに対し、機械獣は一切変わっていない。今なら甲児を打ち倒せるだろう。 「ゆけい、ダブラスM2よ! 兜甲児を打ち倒し、闇の書を手に入れるのだ!」 そう考え、機械獣ダブラスM2を海鳴市へと送り込んだ。 「捜索指定ロストロギアの所持・使用の疑いで、あなたを逮捕します。 抵抗しなければ、弁護の機会があなたにはある」 結界の外。クロノがシャマルにS2Uを突きつけている。 結界を破る為にページを使おうとしていた所だったのだが、そこをクロノに見つかってしまった。 仲間の守護騎士は結界の中。この状況を打破する手段は無い。まさに絶体絶命―――― 「同意するなら、武装の解除を「そうはいかんな!」ッ!?」 ――――のはずだった。 声の方を見ると、クロノに向かって青い腕が飛来して来る。 おそらく甲児のターボスマッシャーパンチと同様のもの。なら当たれば相当のダメージになるだろう。 それを防ぐため、腕の方にラウンドシールドを展開して受け止める。 「仲間か……!」 やはり、と言うか……シールドを展開していてもこの衝撃。直撃していれば相当のダメージになっていただろう。 この攻撃はシャマルにも予想外の出来事だったのか、驚いた顔をしている。 しかし、この腕をどこかで見たような…… 「グレートタイフーン!」 「うわぁぁぁぁっ!」 そう考えている間に、更なる攻撃がクロノを襲う。 竜巻がクロノを襲い、隣のビルまで吹き飛ばし、フェンスに叩き付けた。 吹き飛ばされたクロノが顔を上げる。その瞬間、その顔が驚愕に彩られた。 「剣……鉄也……!?」 今の攻撃を放ったのは、かつてフェイトと共闘して甲児を止めた、剣鉄也その人だったのだから。 もっとも今はデバイスを起動しているため、グレートマジンガーの姿ではあったが。 「あなたは?」 「あの結界を破る、下がっていろ……マジンパワー!」 突然現れた鉄也に驚き、シャマルが問いかける。が、鉄也は答えずにマジンパワーを発動させた。 マジンパワー……それは、マジンガーに搭載されている一種のオーバーブースト機能。 一時的に驚異的な力を発揮するこの機能はデバイスになっても健在で、この状態ならば今張られている結界も十分破れる。 マジンパワーを起動させた鉄也は、そのまま結界の真上まで飛び、マジンガーブレードを構える。 そして構えたマジンガーブレードにサンダーブレークの雷を込め―――― 「サンダーブレード!」 ――――思い切り結界目掛けて投げつけた。 サンダーブレークを纏わせた剣。更にマジンパワーによる強化。結界を破るには十分すぎる。 結界にヒビが入り、そのヒビがどんどん拡大。そして砕けた。 ……そして次の瞬間、戦場となっていた場所に巨大な転移魔法陣が出現。 そこから現れたのは……二つの首を持った機械の獣。機械獣ダブラスM2だった。 前へ 目次へ 次へ