約 454,639 件
https://w.atwiki.jp/animalrowa/pages/211.html
白兎は秘かに笑う ◆TPKO6O3QOM 東方は赤く燃えていた。顔を出した陽光にギロロは目を細める。 「少し長居しすぎたかもしれませんね」 肩の上のユーノが告げる。それには答えず、ギロロは草叢にさっと身を伏せた。うわっというユーノの悲鳴も聞こえたが無視する。 葉の上の朝露が散り、朝日の中できらめいた。 「……どうしたんですか?」 「前方を注視しろ。何かいるぞ」 ギロロたちの前方、数十メートル先に影が見える。朝靄に隠れてはいて正確には分からないが、大型の獣のようだ。 少しずつ慎重に、ガトリングガンを構えながら近づく。既に影は射程に入っている。 「動きませんね」 「こちらが岩か何かと見間違えることを期待しているのかもな。獣らしい浅はかさだ」 「でも、少し変に思いませんか? 息を殺しているにしても動きがなさすぎるような」 たしかに影は微動だにしない。筋肉の収縮や呼吸によって多少動いてもよさそうなものだが。 いや、そもそも意識して動かないということは、向こうはこちらに気付いているということだ。 じっとしている意味は何だ。自分の居場所を知らせないためだ。だが、影はそれと分かる見通しのよい場所に鎮座している。 (岩に偽装? 自分で言っておいて何だが、やるのはケロロぐらいのものだ) ギロロは鼻を鳴らした。 「……もう少し接近してみよう」 更に接近する。やはり動かない。朝靄だけが生き物のように少しずつ変化していく。 「よし、あと少しだけ接近してみよう」 「え? いや、でも……」 「心配するな。少しだけ、少しだけだ」 草をかき分ける掠れた音が微風にさらわれていく。 (もう少し……もう少し……もう少――) 草叢が途切れた。薄靄の帳は消え、目の鼻の先に影の正体が蹲っていた。大型の熊だが、ぴくりとも動かない。生命活動を停止している。 殺し合いに乗った者がいるという証だ。それもこんな大熊を斃すような者がだ。 「……ふ、少し近づきすぎたようだ」 「いや、いいんですけど別に。ただ、これは――」 「あのぉ……」 ユーノの言葉を第三者の声が遮った。声は熊の死体から聞こえてくる。熊は死体の――はずだ。 自身の身体がぴしりと音を立てて強張ったのが分かる。冷や汗が頬を伝い落ちて行った。 ギロロは震えそうになる歯の根を必死に押さえつけた。 (死体は死体であるからして動くことは元より言葉を発するようなことはないはずだ聞き間違い聞き間違いだ馬鹿になったものだな俺の聴覚はユーノには聞こえていないはずだそうだろうそうだろうさあユーノ話の続きを――) 「死体が……喋った?」 「のぉぉぉぉぉおおおおぁぁああー!」 絶叫した拍子に引き金を引いてしまったのだろう。ガトリングガンの銃声が轟き、東の岩壁に弾痕を刻む。銃弾は熊の死体にも容赦なく牙を剥いた。肉が弾け、その巨体が大きく揺れる。ユーノが何事か叫んでいるが、ギロロには聞こえない。 「ちょ、ちょっとー!」 轟音の中、その少女のような声を聞きとれたのは奇跡と言ってもいいだろう。銃撃を一旦中断し、ギロロは叫んだ。 「まだ言葉を発するか化け物!」 「誰が化け物なのよ!?」 「ふん、巨大な荒々しい熊の化け物のくせして可愛らしい女の声色を真似るとは小賢しい。まさしく魑魅魍魎の所業。すなわち貴様は人の闇に巣食う大魔王のような存在――」 「ごめんなさい。ギロロさんの言っていることの意味が何一つ分からないんですけど。とりあえず、あなた、姿を見せて貰っていいですか?」 「……撃ったりしないでしょうね?」 少女のような声音の魑魅魍魎が如き策を弄する大魔王的な熊の化け物(仮)が警戒した声色で問う。 「大丈夫ですよ。……撃たないでくださいね?」 耳元でユーノが念を押してくる。引き金から指を外すも、銃口は逸らすわけにはいかない。それについてユーノは何も言わなかった。 熊の死体の陰から出てきたのは桃色のドレスに身を包んだ普通の少女だった。頭に生えた兎のような耳を除けばだが。 「う、うさみみ……!?」 「え?」 胡乱げに聞き返した少女にギロロは慌てて両手を振った。 「いや何でもない。夏美にうさみみはさぞ似合うだろうなんてことはこれっぽっちも考えてはいないぞ」 上擦った声音で否定するも、冷たい二つの視線を注がれてギロロはひとつ咳払いをした。 「アンケートに答えてくれ。質問一。その熊を殺したのはおまえか?」 視線を鋭くして問う。少女は困ったような顔をした。 「違うわよ。大体、私が熊に勝てるような女の子に見える?」 「武器と戦術によっては十分に可能だ。木の棒一本でもな。おまえのデイバッグをこちらに渡してもらおうか」 銃口をポイントしたまま、恫喝する様な口調で要求する。 「ギロロさん、それはどう見ても悪党の……」 「用心するに越したことはない。妙な動きをしたらすぐに知らせろ」 ユーノを地面に下ろし、ギロロは左手で少女のデイバッグを弄った。眼に見えて武器となりそうなものは出てこない。 薬包紙に包まれたものを取り出し、少女に問う。 「これは何だ?」 「さあ。たぶん、薬か何かだと思うけど」 歯切れ悪く少女が答える。ユーノにも見せてみたが分からなかったようだ。 「説明書みたいなものはありませんか?」 「それ、この熊さんのものなのよ。私が持ち出したときにはそんなもの入っていなかったわ」 死者から支給品を奪うとは中々強かな女のようだ。 手の中の包みに目を落とす。 毒薬の可能性もあるが、それを確かめる術が今のところない。少女に飲ませてみる手もあるが、仮に毒薬だったとしても、少女の証言の真偽の確認にはならない。それにユーノが反対するだろう。 「もういいかしら?」 うんざりとした口調の少女に、ギロロは首を横に振った。 「いや、まだだ。悪いが着衣を脱いでもらおうか」 「はぁ!?」 「ぎ、ギロロさん!?」 「衣類の下に武器を隠している場合がある。必要な処置だ」 冷静に告げるが、ユーノは同意し兼ねるといった眼差しでギロロを見上げている。少女も従うつもりはないらしく、こちらを睨んでいる。 「……分かった。ならば、ユーノ。おまえが調べろ。俺が調べるよりは角も立たない」 「いや、それは……」 「そこのおまえ。このユーノがおまえを調べる。それでどうだ?」 「……それでいいわよ」 少女は渋々了承した。視線で渋るユーノを促す。同性の方が少女も安心するだろう。それを視線に込める。ユーノは困惑の色を瞳に浮かべたが、諦めたようだ。 ガトリングガンは少女の胸をポイントしている。少女がユーノを人質に取るなど動きに出てもすぐに対処できる。膝を撃ち抜いてもいい。 少女の肩に登ったユーノは躊躇していたが、意を決したように少女の身体を上から下に這い回った。少女はくすぐったそうに頬を赤らめる。 戻ってきたユーノは何もなかったとぶっきら棒に告げた。眼には非難がある。同性でも恥ずかしいものらしい。 「これで終わり? 私の支給品、返してほしいんだけど」 「ああ。用心に用心を重ねるのは軍人の性みたいなものでな。許せ」 銃口を下げ、詫びながらデイバッグを少女に返す。ギロロの肩に戻っていたユーノが小さく咳払いした。 「まず、自己紹介しましょう。僕はユーノ・スクライア、彼はギロロさん。あなたは?」 「てゐよ。因幡てゐ」 少女――てゐはどこか値踏みするような視線でこちらを見ている。あれだけのことをされては信用もしにくいだろう。女性にとっては恥辱といっていい扱いだったのは理解している。 「てゐさんが来た時には、あの“熊”は死亡していたんですか?」 「いいえ。少しの間だけど生きていたわ。銀っていう狼にやられたみたい」 話すてゐの横を通り過ぎ、ギロロは熊の死体を調べた。弾痕が邪魔だが、所々に咬み千切られたらしき傷跡が見て取れる。しかし、どれも深くはない。体格から考えれば、重傷とは考えにくい。 「失血死にしては妙だな。傷は多いが、致命傷とまでの大きなものはない」 なんともなしに呟く。それに、熊の苦悶の表情にも違和感がある。 「咥内に棲んでいるバクテリアによる感染症で死んだのかもしれません。普通は考えられませんが、次元世界によっては体質に合わずにショック死する場合も考えられます」 熊の死体に下りていたユーノが思案するように少し沈黙してから告げてきた。 「なるほどな」 死んでも魔法は解けないのかと口の中で呟いているユーノから視線を外し、てゐの方を振り向いた。少し表情が先ほどよりも固いように感じられたが、気にするほどのものではないだろう。 「……まだ私が犯人って思ってるわけ?」 「いや、そうじゃない。銀、か。そいつの特徴などは聞き出せたか?」 「虎毛で小ぶりな狼らしいけど……ねえ、あなたたち、町に行くの?」 「そのつもりだ。正確にはB-4駅だがな」 「途中まで私も一緒に行っていいかしら? はぐれた仲間が町にくるかもしれないの。ただ、あの熊さん、北の方で襲われたって言ってたし……」 言い淀み、てゐは小さく身体を震わせた。自分たちに頼ってくるとは、見た目に反して余程精神が参っているのか。ギロロ自身は、てゐに対しどこかふてぶてしさのようなものを感じているのだが。 「……いいだろう。ちなみに、その仲間の名前は?」 「ぼのぼの」 聞き覚えのない名前に小さく溜め息を吐く。運よくケロロの名前が出るとは期待していなかったが。 「……行きましょうか」 熊に向かって黙祷していたユーノが二人に告げた。 先行するギロロとユーノの背を見つめながら、てゐは思案していた。 ギロロにしろ、ユーノにしろ、中々用心深い者たちのようだが、どこか抜けている。そこにつけ込めば、ある程度思い通りに動かすことができるだろう。 実際、銀を要警戒対象として刻みつけることが出来た。銀の弁解が鍵だが、攻撃を仕掛けたという事実がある以上、自身も否定しにくいだろう。茫然自失とする可能性も高い。 戦闘まで漕ぎ着ければしめたものだ。どさくさに紛れ、キメラのつばさで小学校に移動してしまえばいい。あとは勝手に殺し合ってくださいというわけだ。 出来ればギロロには無惨に死んで欲しいところだが、彼の得物を見る限り銀の負けが濃厚か。それが少し残念だ。 ギロロたちの悪評を考えておく必要があるだろう。凌辱されたとでもしておくか。まるっきりの嘘というわけでもない。単に解釈の違いに過ぎないのだから。 ぼのぼのことはもう切り捨てる。いつまでも戻ってこない子供を構っている余裕はない。二匹にああは言ったものの、ぼのぼのが町まで来ることはまずないだろう。あれは万が一の保険だ。あのラッコを言いくるめるのは造作もない。 しかし、毒薬の説明書を処分しておいて良かったと、てゐは小さく安堵した。肝を冷やす場面も何度かあったが、やはり運は自分に味方しているらしい。 二匹に気付かれないよう、てゐは小さく嗤った。 【B-4/路上/一日目/早朝】 【ユーノ・スクライア@リリカルなのはシリーズ】 【状態】健康 【装備】:なし 【道具】:支給品一式、手榴弾(11/12)@ケロロ軍曹、消化器数本 【思考】 基本:打倒主催。 1:B-4の駅へ向かう。 2:対主催のメンバーを集める。 3:ケロロ、アルフ、ザフィーラとの合流。 【備考】 ※参加者を使い魔か変身魔法を用いた人間だと思っています。 ※会場はミッドチルダではないが、そこよりそう遠くない世界だと思っています。 ※首輪について 人間化は魔力を流し込むことによって、 結界魔法などは魔力を吸収することによって妨害されています。 ※銀を危険な獣と認識しました。 【ギロロ伍長@ケロロ軍曹】 【状態】健康 【装備】:ガトリングガン@サイボーグクロちゃん(残り90%)、ベルト@ケロロ軍曹 【道具】:支給品一式、バターナイフ、テーブル、キュービル博物館公式ガイドブック・世界編 【思考】 基本:死ぬ気はさらさらないが、襲ってくるものには容赦しない。 1:B-4の駅へ向かう。 2:ケロロ、アルフ、ザフィーラとの合流。 3:てゐに少し違和感 【備考】 ※銀を危険な動物と認識しました。 ※ユーノを女と思っています。 【因幡てゐ@東方project】 [状態]健康 [装備]:なし。 [道具]:支給品一式、きずぐすり×3@ポケットモンスター、ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ×3@DQ5、 エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)、不明支給品0〜2個(ギロロ、本人確認済)、ニンジン×20 [思考] 基本:参加者の情報を集めて、それを利用して同士討ちさせる。殺し合いに乗っている参加者に対しては協力してもらうか、協力してもらえず、自分より実力が上なら逃げる 1:B-4の町に向かい、銀とギロロたちを殺し合わせる。 2:銀に会えたら、羆が銀のせいで死んだと伝える 3:その後、キメラのつばさでC-4の小学校に戻る 4:町とは反対の方向に行って、情報を集める 5:ぼのぼのと遭遇したらヒョウヘンダケを渡す 【備考】 ※銀の情報を得ました。 時系列順で読む Back 神の不在証明 Next 黄昏の宿 暁の空 投下順で読む Back 神の不在証明 Next 黄昏の宿 暁の空 035 Gallery Fake ユーノ 069 罪穢れの澱みを着せて 035 Gallery Fake ギロロ伍長 069 罪穢れの澱みを着せて 030 狡兎三窟 因幡てゐ 069 罪穢れの澱みを着せて
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/379.html
あの人に出会ったのは、まだフェイトちゃんと友達じゃなかった頃の話。 ロストロギア『ジュエルシード』をめぐる、後にプレシア・テスタロッサ事件と呼ばれる事件での事。 あの人は傷だらけの体で突然現れ、そして全ての記憶を失っていた。 そう、自分が誰なのかさえも…。 魔法少女リリカルなのはA s -NOCTURNE-、はじまります。 第1話『かくて、少女は狩人と出会う。(前編)』 「東京の方で時空震…、ですか?」 その日なのはとユーノは、リンディに呼び出されていた。 「ええ、そうなの。ジュエルシードの反応は無いんだけど、念のため確認に行って欲しいの。 本来なら他の局員に行ってもらってるんだけど、今ほとんどが出払っちゃてるの。」 リンディはそう言って、申し訳なさそうにしている。 なのはとユーノはそれを見ると互いの顔を見てうなずきあい、 「わかりました。お引き受けします。」 そう、答えた。 それを聞くとリンディは微笑み、 「ありがとう助かるわ。で、肝心の場所なんだけど…。」 そう言ってコンソールを操作し、モニターにマーキングの入った地図を表示させる。 「どうやら公園みたいね。公園の名前は、『井の頭公園』ね。」 リンディが告げたのは、とある世界で滅びの運命が始まるきっかけとなる事件が場所であった。 男は、森と思われる場所をさまよっていた。 (ここは…、どこだ?この傷は、一体?) 男の体は常人であれば動く事も出来ないほどの傷があった。 (ちっ、とりあえずここから出て傷の手当てが先か…。) 男はそう考え、この森から出るためにその傷だらけの体を引きずりながら移動を始めた。 男が移動を始めた頃、なのはとユーノは井の頭公園の入口に到着していた。 「ここが井の頭公園かぁ~。でも、夜だから誰もいないみたいだね。」 なのはは苦笑しながらフェレットモードで自分の肩に乗っているユーノに告げる。 「うん、誰かに見られる可能性が少ないのはありがたいけど、どんなことが起きるかわからないから気をつけて。」 ユーノはそう言いながら周囲を警戒している。 「わかったよ、ユーノ君。」 そう言ってなのはは、レイジングハートを構えなおし公園内へ進もうとするが…。 「あれ、何か事件でもあったのかな?」 公園の入口には、『KEEP OUT 立ち入り禁止』とプリントされた黄色いテープが張られていた。 「えーと、どうしようユーノ君…。」 なのはは困った顔でユーのに問いかける。 「う~ん、時空震の反応は公園の中から出てる以上中に入って調べるしかないよ。」 ユーノも困った顔でなのはにそう告げる。 「そっ、そうだよね。それじゃ、お邪魔しま~す。」 誰に断っているのかわからないがなのははそう言いながらテープをくぐろうとする。 だが、その瞬間…。 「ふむ、こんな時間に立ち入り禁止と書かれているところに子供が入ろうとするのは感心せんな。」 「ひゃぁーーっ!」 突然、背後から響いた老人の声になのはもユーノも心底驚かされた。 だが、それでも声を出さなかったユーノは男の子としての意地か、それとも声が出ないほど驚いたのか。 「ふぉっふぉっふぉっ。もう、夜も遅いのじゃからあまり大きい声はいかんぞ?」 声の主は、自身がその原因にもかかわらずそんなことを言っていた。 そして、なのはは、少し涙目になりながら老人のほうへ向き問いかけた。 「あっ、あの、どこから見ていました?」 そう、声をかけられるまでまったく気配のしなかった老人。 彼がどこから見ていたのか、もしかして魔法を使っているところを見られたのではないか。 その不安がなのはにはあった。そしてその不安は的中する。 「うむ、おぬしがその靴から奇妙な羽を広げて降りてきた辺りからじゃな。」 老人は、その長いあごひげを撫でながらそう告げる。 つまり、最初から見られていたということだ。 (どどどどっ、どうしよう!ユーノ君!!) なのははとことんまで慌てていた。 それはそうだ、完全に言い訳できない状況を見られていたのだから。 (とととっ、とりあえず落ち着こうなのは!) ユーノもユーノで慌てている。 だが、そんな二人に意外なところから救いの手が差し伸べられる。 「まさかこんなところで魔法を使う者に会うとはのぅ。」 「「へっ?」」 二人は同時にその声がしたほうへ向く。 その先にいたのは例の老人である。 「あの、その、おじいさん魔法の事知っているんですか?」 なのははおずおずと老人に向かって尋ねる。 老人のほうは飄々とした態度でこう答えた。 「知っとるも何も、わしも魔法を使うからの。」 「そっ、そうなんですか!?」 ユーノは驚いて声を上げる。 突然の驚きと夜であることも手伝ってよく見ていなかったが、見ると老人はあぐらをかいた状態で浮かんでいる。 何かで吊り上げていると言うことも無く、これでは魔法使いではないというほうがおかしいだろう。 「いかにも、わしの名はアガレス。おぬしらは?」 アガレスは自らそう名乗るとなのは達の名を聞いてきた。 「あっ、高町なのはです。」 「ユーノ・スクライアです。」 なのは達は姿勢をただし自分たちの名前を名乗る。 「ふむ、なのはにユーノか…。おぬしらは何故ここに来たのじゃ?」 アガレスは、なのは達の目的を問いかける。 「ハッ、ハイ。この辺りで起こった時空震の調査に来ました。」 「ちょっ、なのは!」 あっさりしゃべったなのはにユーノは慌てる。 それはそうだ、アガレスと名乗る老人の目的がわからない以上こちらの事を喋るのは危険だからだ。 「なるほどのぅ。じゃが、つい最近この公園で傷害事件が起こった聞くぞ?それでも行くのか?」 まるでなのは達を脅すようにアガレスは問いかける。 「行きます!それが今、私がやるべき事ですから。」 なのはは、その脅しとも取れる問いかけにもひるまず答える。 まったくおびえず答えたなのはに老人は目を丸くし、そして…。 「ふぉっふぉっふぉっ。いい目をしておるの、なのはよ。」 一本とられたとばかりに笑い出す。 アガレスは、ひとしきり笑った後こう告げた。 「ならば行くがよい。おぬしなら何があっても乗り越えそうじゃしの。老人の出る幕はなさそうじゃ。」 そして、アガレスは去ろうとする。 「ちょっと待って下さい。」 そう言って引き止めたのはなのはの肩に乗っているユーノだ。 引き止められたアガレスは、ユーノのほうに目を向けそしてなのはのほうに向きを変える。 「なんじゃ?何か他に用があるのか?イタチの使い魔よ。」 そう言いながらアガレスはなのはの肩に乗ったユーノに顔を近づける。 「ボクはユーノで、この姿はフェレットですっ!!…って、違った。あなたは『何者』ですか?」 イタチに間違われたことに激昂するが、すぐに思考を切り替えアガレスに問いかける。 「え?え?どういうこと?ユーノ君。」 なのはは、訳がわかっておらず?マークで頭がいっぱいになる。 「なのは、このアガレスさんは確かに魔法使いだ。こうやって宙に浮かんで移動もして見せた以上疑う余地は無いと思う。 でも、こっちの目的は話したけどあっちの目的は聞いていない…。」 そう言って、ユーのは警戒心をあらわにする。 「ふむ、イタチ君はワシが敵ではないか?と、思っておるのか。」 アガレスは、なのはの肩のユーノに顔を近づけ、まるでからかうように問いかける。 「だからイタチじゃ…っと、話をはぐらかさないで下さい!」 「やれやれ、イタチにいちいち反応しとるのはおぬしじゃろうに…。」 怒りだしたユーノからアガレスは少し離れ話し始める。 「ワシの目的か…。まあ、おぬしらと同じじゃの。」 そう言って、まるでめんどうくさいと言わんばかりにあごひげを撫でる。 「つまり、時空震の調査ですか?」 アガレスの態度を意に介さずユーノは質問を続ける。 「ああ、そうじゃ。ひとつ付け加えると人探しもじゃな。」 「人探し?それは誰ですか?」 なのはが、アガレスのもうひとつの目的である人探しの部分に反応する。 「ん?ああ、ちょっとした知り合いの息子じゃよ。」 なのはの問いに、アガレスはやはりめんどくさそうに答える。 「?、なぜ人探しと時空震の調査が一緒になるんですか?」 ユーノは、アガレスの説明から感じた疑問を口にする。 「おぬしらにそこまで説明する義理はないのぅ。」 そう言って、アガレスは説明を拒否する。 「そんな…。もし人探しに時空震が関係しているなら、詳しく話してくれたら私も時空管理局の人もきょ……。」 協力してくれる。そう言おうとしたなのはをアガレスは手で制する。 「なのはお嬢ちゃんの優しさはありがたいが、その申し出は断らせてもらおうかの。」 アガレスは申し訳なさそうにそう言った。 「なぜです?その『知り合いの息子さん』が時空震によっていなくなったと言うのなら時空管理局はきっと協力してくれます。」 そう言いながらユーノは思った。 (この老人はまだ何かを隠してる。) その瞬間、アガレスは突然空へ上昇し、なのはたちの元を離れる。 しまった、ユーノがそう考えた時にはすでに遅く、かなりの距離まで離れられてしまう。 「アガレスさん!待って!」 なのははそう叫ぶが、もちろんアガレスは止まらない。 だが、最後にアガレスの念話が聞こえる。 〈それじゃぁの、なのはお嬢ちゃんにイタチのユーノ坊や。そのやさしい心を大事にな。〉 そしてアガレスの姿は完全に見えなくなった。 「どうしよう、ユーノ君…。」 なのはは困った顔でユーノに問いかける。 「…どうしようもないよ。完全に逃げられちゃったし、それにこれは聞きそびれた事だけど実はアガレスさんから魔力反応が無かったんだ。」 その言葉に、なのはは驚く。 「え?何で?アガレスさんは魔法使いだって……。」 なのはのその言葉にユーノは首を横に振る。 「多分、魔力を隠していたんだと思う。もしかしたらアースラの方でも反応はしていないかもしれない。」 ユーノのその言葉になのはは言葉を失う。 「なのは、思い出してみて彼は僕らが来た時から居たと言ったんだ。彼はあぐらをかいて宙に浮いていた。 僕らが来てからわざわざ宙に浮き始めたわけはないし、はじめから浮いていたなら少しでも魔力反応があるはずだ。」 そういわれてなのはは気づく。 「あ、そうか最初にきた時、私たち気づかなかったんだよね。」 そう言ってアガレスに驚かされた事を思い出す。 「…とりあえず、今は考えても仕方がないし公園の調査を始めよう。」 ユーノは、なのはに当初の目的を促す。 「うん、わかったよ。」 そう言ってなのはは公園内に入って行こうとするが……。 その瞬間、何者かが公園から出てくる。 いや、出てくるという表現は間違っていた。 公園から出ようとして立ち入り禁止のテープに引っかかって倒れたからだ。 「だっ、大丈夫ですか!?」 ユーノが止めるまもなくなのはは、その倒れた人影に慌てて駆け寄り、そして驚く。 「ユーノ君!どうしよう、この人ひどい怪我だよ!!」 なのはの言う通り男の怪我はひどかった。だが、救急車を呼ぶわけにも行かなかった。 それは男の持ち物のせいであった。 男はその背に大剣を背負っており、さらには着ている服に隠れているが腰の左右に拳銃のようなものまであったからだ。 「…アースラに連絡しよう。恐らくだけどこの人は時空遭難者だと思う。確認された時空震で飛ばされてきたんだよ。」 ユーノは、そう分析する。そしてそれは間違ってはいなかった。 こうして男は、アースラへと保護されることとなる。 そして、男がなのはに介抱される様子を遠くから見ているものが居る。アガレスである。 「ふむ、スパーダの息子め。やはりこの世界におったか。 やれやれ、怪我もひどいようじゃし、なのはお嬢ちゃんにまかせて出直すかの。」 そう言って、アガレスはこの世界から去っていった。 男が目を覚ましたのは、なのはに救助されてから三日後のことである。 アースラの廊下を歩いているリンディに、 「リンディ提督。」 そう言って、困った表情のクロノと真剣な表情のエイミィが近づいてくる。 「あら、二人ともどうしたの?」 リンディは微笑みながら二人を迎える。 「はい、三日前に保護された男に関することでちょっと。」 「私もです。彼の持ち物等についての調査報告があがってきたので。」 「わかったわ。なら艦長室へ来てちょうだい。そこで聞くわ。」 そう言って、三人は艦長室へ移動する。 「それじゃ、クロノ執務官の報告から聞かせてもらえるかしら?」 リンディは、デスクにつきながらそう言った。 「はい、実は彼が目を覚ましたと報告があったので事情を聞こうとしたのですが…。」 クロノはそこで言いよどんでしまう。 「?、何か問題でもあったの?」 リンディは、歯切れの悪いクロノに違和感を覚える。 「はい、どうも彼は記憶障害を起こしているみたいなんです。」 「記憶障害?それはまたややこしいことになっているわね。」 それを聞いてため息をつきながらリンディは率直な意見を口にする。 「ええ、自分自身の名前すら覚えてないみたいで取調べどころじゃなくって……。」 そう言って困った表情で両手を上げ、降参のポーズをする。 そこへ待ってましたと言わんばかりにエイミィが喋り始める。 「彼の名前くらいなら何とかなるかもしれませんよ。」 「あら、本当?」 その報告はクロノにとってありがたかった。 正直、名前すらわからないのでは今後のコミュニケーションにも関わるからだ。 「はい、彼の所持品の拳銃に名前と思われるものが刻印されていたんです。」 「そうか、これで少しは思い出せるといいが…。で、彼の名前はなんていうんだ?」 クロノは、エイミィにそう催促する。 「うん、銃に刻印されていたのは『-BY .45 ART WARKS FOR TONY REDGRAVE-』 つまり彼の名前は『トニー・レッドグレイブ』ってことになるわね。」 エイミィは右人差し指を立てながらそう言った。 だが、そのエイミィの説明にクロノは違和感を覚え、そしてすぐ答えにいたる。 「ちょっと待ってくれエイミィ。もしかして『WARKS』の部分は『WORKS』の間違いじゃないのか?」 「うん、多分ね。でも銃の刻印はこのスペルで間違ってないからたぶん刻印ミスだと思う。」 クロノの指摘にエイミィは冷静に返す。 「で?エイミィ他にわかった事は?」 そのやり取りを中断させ、リンディは報告の続きを促す。 「あっ、はい、あと銃についてわかったことは銃の名前が『Ebony(エボニー)』と『Ivory(アイボリー)』と言う事、 この銃が双子の銃であるという事、そして、刻印の通り『45口径の芸術品』であるという事です。」 その報告を聞きクロノが疑問を率直に言う。 「双子の銃?45口径の芸術品?どういう事だ、ただの銃だろ?」 その言葉に対して、エイミィは少し困った口調でこう返した。 「え~と、それがこの銃を調べた人間がかなりのガンマニアみたいで結構ディープな所まで調べたみたいなの。 で、その報告の内容なんだけど『詳しく』聞く?」 まるで、後悔するわよ。と言わんばかりに詳しくの部分を強調して告げる。 だが、その二人のやり取りを見ていたリンディが口を挟む。 「二人とも、今は私に報告しているんでしょう?仕事は最後まできっちりやりなさい。」 「「しっ、失礼しました!リンディ提督!」」 二人は、息ぴったりにリンディに敬礼をする。 「ふう、仲が良いのはいいけど公私の区別はしっかりね?で、エイミィ報告の続きなんだけど…。」 リンディの言葉にクロノは文句を言いたそうにしているがそれを無視してエイミィに報告を促す。 「はい、で、あの、どうします?」 どうしますとはもちろん『詳しく』説明するかどうかだろう。 「かいつまんでお願い。少し気になるのよ。彼が持っていた銃は明らかに大型拳銃…。 例え成人男性でも扱いは難しいわ。でも彼はそれを二挺持っていた。それにあなたが言っていた『45口径の芸術品』の意味もね。」 リンディは真剣な表情でそう言った。 「わかりました。まず、ベースになった銃はコルト・ガバメントと思われます。でも、大きさはまったく別物ですし、 パーツの全てが丁寧に改修され材質も吟味された物に変更されているそうです。もう、主だった外見以外は別物らしいです。 そして『双子の銃』の意味ですけど、あの拳銃はまったく同じデザインの様でも実はそれぞれが役割を持たされているんです。 右手で構えるように作られた物は速射性能が重視されていて、デッドウェイトを限りなくゼロに近づけてあり、 左手で構えるように作られた物は精密射撃用の調整が施されていて、右手用の銃を補佐する役割を持たされているようです。 この銃の調査をした人間が言うには、これを作ったガンスミスは、まさしく『45口径の芸術家』と呼ぶに相応しい人物だ、との事です。」 エイミィのその報告を聞いていたリンディとクロノの顔は驚きの表情を作っていた。 それはそうだ、エイミィの報告を聞く限り男が所持していた拳銃は二挺同時に構えるものだ、と言うのだから。 そしてクロノはその驚きをすぐに口にした。 「ちょっと待て、エイミィ!それじゃ、彼は45口径の大型拳銃を片手で使えるということか?」 「わからない、もしかしたら片方ずつかもしれないけどたぶんクロノ君の予想で当たってると思う。」 エイミィは少し困った表情でそう返した。 「大型拳銃を二挺、両手で扱う…か。だとしたらとんでもないわね。 ところでエイミィ、彼の持ち物はもう一つあったわよね。かなりの魔力を秘めた大剣が…。」 リンディは真剣な表情でエイミィに話しかける。 その言葉を受け、エイミィも真剣な表情になる。 「はい、むしろ銃よりそちらの方が本命なんです。 で、リンディ提督にお聞きしたいんですけど提督は知っていますか?魔剣士スパーダの伝説を…。」 リンディとクロノははその言葉に驚きを隠せなかった。 魔剣士スパーダ…、はるか昔、ミッドチルダを救った英雄として今もごく一部の人間に語られる存在である。 「スパーダ伝説…。時空管理局が出来る大昔のミッドチルダに突如現れ、 その当時、世界を荒らしていた邪悪を滅ぼし去って行った…。大体、そんな内容だったわね。」 リンディは、なぜ伝説でしか出てこない魔剣士スパーダの名前がここで出てくるのか考えながら答える。 「はい、実は彼の持つ大剣がスパーダ伝説に出てくるものと形状がほぼ一致しているんです。」 その言葉にクロノは声を荒げる。 「それじゃあ、彼は伝説に語られる魔剣士スパーダその人だとでも言うのか?」 「クロノ君、落ち着いて。それはまずありえないから。魔剣士スパーダの伝説はいつの時代のものわからないけど いくらなんでも生きてるはず無いと思う。それに彼の名前は、トニー・レッドグレイブよ。」 エイミィはそう言ってクロノをたしなめる。 リンディはその様子を眺めながらしばらく考えた後、デスクから立ち上がりこういった。 「記憶障害の彼に聞いてどこまでわかるかわからないけど、直接聞いてみるしかないみたいね。 名前を教えてあげれば彼も何か思い出すかもしれないし、とにかく彼に会ってみましょう。」 こうしてリンディ達は、男の名が『トニー・レッドグレイブ』だ、と思い込んだまま会う事になる。 確かに『彼』の名前に違い無かった。だがその名は、かつて捨てた名前。 そう、『彼』の少年時代の終わりに…、双子の銃『Ebony Ivory』を手に入れた時に捨てられた名であった。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3560.html
「高町なのは」 エース・オブ・エースの異名と共に、ミッドチルダにおいてその名を知らぬ者は多分いないであろう。 しかし、そんな彼女の存在がとんでもない脅威を招き寄せてしまうのである! その日、ミッドチルダの人々は特に何の変哲も無い日常を送っていたが、異変はそこから遠く離れた 時空管理局の本局内無限書庫の中から起こった。 「いきなり出て来るなり僕をこんなにして…お前は一体何者だ! 何が目的なんだ!」 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッ…………。』 無限書庫中の一角、無限書庫司書長ユーノ=スクライアは何者かにロープで縛られていた。 そしてユーノの目の前に立って不気味に笑っているのは、ただの人間では無かった。 頭部はまるでセミを思わせ、腕はまるでザリガニの様なハサミ状になっていたのである。 これはもはや誰がどう見てもあきらかに「人間」では無い。 『何も取って喰おうなんて野蛮な事はしない。私はバルタン星人。』 「バルタン星人!?」 ユーノの問いに対して、彼はそう答えた。「バルタン星人」 この世に存在する「人類」がホモ・サピエンス型のみでは無い事は知られている事だが その非ホモ・サピエンス型人類の中の一つに「星人」と呼ばれる分類が存在し、 さらにその数多の星人の中の一つの人種が彼、宇宙忍者の異名を持つバルタン星人なのである。 「うわ…星人なんて初めて見たよ…。管理局にも様々な世界から人が集まって来るわりには 大人の事情でホモ・サピエンス型人類な局員しかいないからな~。って感心してる場合じゃない! バルタン星人とやら! 僕を一体どうするつもりなんだ!?」 『だから先程言ったでは無いか。何も取って喰おうなんて野蛮な事はしないと。 だだ私はある目的の為に君の姿と声を借りたいのだ。』 「ある目的!? それは一体何なんだ!?」 『フォッフォッフォッフォッ! 心配する必要は無い。』 「答えになって無いよ!」 丁寧に説明してくれるわりには肝心な事は教えてくれなかったバルタン星人は次の瞬間自分の腕を軽く振るう。 するとどうであろうか。バルタン星人がユーノと同じ姿へと変身したのである。 「どうかな? 上手く化けられたかな?」 「うわ! 声まで一緒…気持ち悪い…。」 バルタン星人の変身したユーノは本物のユーノが見ても驚く程姿も声も寸分違ってはいなかった。 ミッド式魔法にも変身魔法は存在するが、それを踏まえてもバルタン星人の変身は異常な物があった。 ミッドチルダにおいて変身魔法で特定の誰かに成りすます事は犯罪とされる。無論それを防ぐ為の 魔法等も確立されているのだが、バルタンの変身はミッド式魔法による変身魔法とは全く異なる物であり、 ミッドチルダにおける対変身魔法では察知する事すら出来ない。バルタン星人が変身する様を眼前で見た ユーノただ一人を除いては……… 「ぼ…僕に化けて一体何をするつもりなんだ!?」 「大丈夫だよ。何も君に成りすまして悪さをして、全ての罪を君に着せるなんて事はしないから。」 「嘘付け! どう考えてもそれやるに決まってるじゃないか!」 ユーノは必死にもがくが、ロープで縛られている為に身動きが取れない。 そしてユーノに変身したバルタン星人は悠々と無限書庫から去って行った。 ユーノに変身したバルタン星人。彼の狙いは果たして一体何なのであろうか? それから一時した後、ヴィヴィオは無限書庫へ行く為に本局行きの定期船へ向かっていた。 そんな中、彼女はとある光景をふと目にした。 「あ!」 ヴィヴィオが見た物とは、なのはがユーノと並んで歩いていた光景であった。 とは言え、それはヴィヴィオがいる場所から距離が離れていての事であったし、 二人が一緒に歩くという光景は別に不自然な物では無く、何よりヴィヴィオは 無限書庫に行く為に本局行きの定期船に乗らねばならない。 だからヴィヴィオは特に構う事は無くその場を去るのであった。 そうしてヴィヴィオが無限書庫に辿り着いて間も無くの事だった。 「あれ~~~~~~~~~!?」 その様なヴィヴィオの間の抜けた声が無限書庫中に響き渡った。何故ならば………… 「ユーノくんそんな所でどうして縛りプレイしてるの!?」 「違う! 縛りプレイじゃなくて本当に縛られてるんだよ!」 そこにはロープで縛られ身動きが取れなくなったユーノの姿があったのだから、ヴィヴィオにとって驚きである。 つい先程ユーノがなのはと共に歩いていた所を目の当たりにしていただけに、ヴィヴィオはどういう事なのか さっぱり意味が分からなかった。 「ユーノくんどうしてこんな所にいるの? なのはママとお出かけしてたんじゃなかったの!?」 「違う! それは僕じゃない! 僕に化けた偽者の仕業なんだよ!」 「ええ~~~~~~~~~~!?」 「とにかく僕の偽物がなのはと一緒にいたって事はなのはが危ない! 一体アイツの狙いは何なんだ!?」 ユーノに真実を知らされ、ヴィヴィオは真剣に驚いた。これはもはや悠長な事はしていられない。 ユーノとヴィヴィオは共に無限書庫を飛び出し、なのはと偽ユーノを探す為にミッド地上へ向かうのであった。 一方、バルタンの変身した偽ユーノは何食わぬ顔でなのはと共に街を歩いていた。 無論、誰もそのユーノがバルタンの変身した偽物であるとは気付いていない。 前述の通り、ミッド式の変身魔法とは根本から異なるバルタン忍法による変身は ミッド及び管理世界内で使用される対変身魔法対策では察知する事すら出来ないのである。 「ねえユーノ君、私に大切な話があるって何かな?」 「うん。それはね…。」 姿のみならず声さえも完全にユーノに成りすますバルタンにはなのはも気付かず、 しかし突然大切な話があるからとこんな所に呼び出したその行動に違和感を感じながら 問い掛けていたのであったが、その時だった。 「そこまでだ!」 「え!? ユーノ君がもう一人…?」 そこへ現れたのは本物のユーノ。しかしそれを見たなのはは二人のユーノに双方を見渡し困惑する。 「ソイツから離れるんだ! ソイツは僕の偽物だ!」 「え!? え!? 偽物…!? でも変身魔法の反応は感じられないよ?」 流石のなのはも双方の判別が出来ず、双方をそれぞれに見渡し続けてはあたふたしていたが、 そこへ遅れてヴィヴィオも到着していた。 「こっちのユーノくんが本物だと思うよ。だってこっちのユーノくんは無限書庫でロープで縛られてたんだよ。 きっとなのはママと一緒に入る偽物のユーノくんに縛られたんだよ。その偽物のユーノくんはユーノくんに 成りすまして悪い事するに決まってるよ~。」 「ヴィヴィオまで…。と言う事は………。」 ヴィヴィオにもそう言われ、なのはは恐る恐る自分と一緒にいる方のユーノに目を向けてみるが、 その直後だった。なのはと一緒にいる方のユーノが笑い始めたのである。 『ハッハッハッハッハッハッハッ! こんなに早く脱出して来るとは思わなかった! もう少しきつく縛っておくべきだったかな!?』 「え!?」 その時の声はユーノのそれでは無かった。そしてなのはと一緒にいる方のユーノの姿が 三人の目の前で変わって行き、バルタン星人としての正体を現したのだ。 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッ!』 「キャァァァァ!! 何これぇぇ!!」 『おっと逃がさんよ。』 自分がユーノと思っていた人間が突然セミ顔でザリガニ腕な星人の姿になってしまい、なのはも 思わず悲鳴を上げていたが、バルタン星人はなのはを逃がさず両腕のハサミでガッチリと捕らえていた。 「なのはを離せ! 一体なのはをどうするつもりなんだ!」 『フォッフォッフォッフォッフォッ! 高町なのははこれよりバルタン星人の物になるのだ!』 「何だって!?」 『見よ!』 バルタン星人が片腕を上空へ向ける。するとどうであろうか。クラナガン上空に漂っていた巨大な雲の中から 葉巻型の巨大な戦艦が現れたのである。 『バルタンの星から来たUFOの母船だ。あの中に高町なのはを吸い込ませてバルタン星に連れて帰る。』 「それで一体どうするつもりなんだ!?」 『我々優秀なバルタン星人の動物園に入れるのだ。下等動物として動物園にな! フォッフォッフォッフォッ!』 何と言う恐ろしい計画であろうか。バルタン星人の目的はなのはを捕らえて自星の動物園に入れる事だったのである。 ユーノに変身したのも、ユーノに成りすませば一切警戒されずになのはに近付く事が出来ると見ての事なのだろう。 そしてなのはとバルタン星人に対し、バルタンの葉巻型戦艦からビームが放射される。 ビームと言ってもそれに殺傷力は無く、俗にトラクタービームと呼ばれる物なのか 二人はバルタンの葉巻型戦艦へ向けて吸い込まれて行く。 「なのはー!」 「ユーノくーん!」 このままではなのははバルタン星へ連れ去られて動物園に入れられてしまう。 なのはは必死でもがくが、バルタン星人の力は強く離さない。 『無駄な抵抗はよせ! 往生際が悪いぞ!』 バルタンはなのはを抑えようとするが、なのはは抵抗を止めない。なにしろバルタン星に 連れて行かれたらなのはは動物園に入れられてしまうのだから、なのはも必死である。 人として最大限の努力をしなければならない。そしてバルタンの腕が緩んだ一瞬の隙を突いて脱出。 レイジングハートで魔法少女に変身した。マッハ5のスピードで空を飛び、強力な魔力であらゆる敵を 粉砕する不死身の女となったのだ。それ行け! 我等がヒロイン! って第一作目ウルトラマン第一話を見てなきゃ 全然意味が理解出来ないフレーズだなこれは。 バルタン星人及びバルタン葉巻型戦艦のトラクタービームから脱出したなのはは空を切ってその場から離れて行く。 しかしバルタン星人も空を飛んでなのはの後を追い駆ける。 「近付かないで! 気持ち悪い!」 なのははバルタン星人目掛けてシューターを連発して行くが、バルタン星人もそれを掻い潜って行く。 一方、バルタン星人の襲来によって時空管理局ミッド地上本部は大騒ぎであった。 特にバルタンの葉巻型戦艦は依然クラナガン上空を我が物顔で浮遊(もち無許可で)しており、 管理局もこの対処に追われていたが、本局ならともかく貧乏な地上本部にまともな戦艦の類があるワケが無く もうこの状況どうすりゃええんだよ~って事になっていたが、なんとか彼方此方探し回った挙句 既に廃艦が決まっていたにも関わらず、廃艦解体作業もタダじゃねーんだぞと言わんばかりに予算の都合で 依然そのままの状態で残っていたアースラに急遽武装や燃料を積み込んで出撃すると言う事態になっていた。 なのはのシューターを巧みに掻い潜るバルタン星人になのはは徐々に追い詰められつつあった。 バルタン星人は空を飛べるのみならず、バルタンの同属の中にはかつてM78星人のスペシウム使いの一族とも 互角以上の空中戦を演じた者がいる程その速度も凄まじい。流石のなのはも苦戦は必至と言わざる得なかったが… 「なのはー! 助けに来たよー!」 「フェイトちゃん!」 そこへ何処からかなのはのピンチを小耳に挟んだのか、フェイトが飛んで来た。 そしてバルディッシュのザンバーモードでバルタン星人へ飛びかかったのである。 「なのはに手を出す奴は私が許さないぃぃぃ!!」 次の瞬間バルディッシュザンバーの一閃がバルタン星人の身体を真っ二つに両断した……が……… 何と言う事だろう。そのバルタンの真っ二つになったそれぞれが二人のバルタン星人に変化したのだ。 『フォッフォッフォッフォッフォッ!』 『フォッフォッフォッフォッフォッ!』 「ええ!?」 二人のバルタン星人の不気味な笑い声がハモり、フェイトも思わず困惑してしまうが、 二人のバルタン星人の両腕のハサミがフェイトに対して開かれ、そこから破壊光弾 通称バルタンファイヤーが撃ち込まれ、その直撃を受けたフェイトは何処へ吹っ飛ばされてしまった。 「あ~れ~!」 「フェイトちゃ~ん!」 恐ろしい。何と恐ろしいバルタン星人であろうか。宇宙忍者の異名は伊達では無いと言う事なのか。 一方その頃地上ではユーノとヴィヴィオの二人に加え、この騒ぎを聞き付けて殺到して来た大勢の モブ局員に対してバルタン葉巻型戦艦の猛爆撃が行われていたりする。なのは本人は動物園に 入れる事が目的である為に生け捕りにするのだろうが、他の者達はお構いなしと言う事であろうか。 無論管理世界における質量兵器禁止もバルタンには関係の無い事なので、バルタン葉巻型戦艦の 破壊光弾が次々にクラナガンの地表へ撃ち込まれもう阿鼻叫喚。 そこへやっと遅れて来たアースラが到着。バルタン葉巻型戦艦へ向けて魔力砲を果敢に発射し、 クラナガン上空を舞台に壮絶な空中戦が始まっていた。 その頃、なのははシューター攻撃を止め、二人から一人に戻ったバルタン星人に対して レイジングハートの先端を向けていた。 「全力全開! ディバイィィンバスタァァァァ!!」 なのはの代名詞と言われるディバインバスター。これならば例え直撃は無くとも射線にいるだけで それ相応のダメージを与える事が出来る…が…次の瞬間である。ディバインバスターがバルタン星人を 飲み込むと思われたその時、バルタン星人の胸部が開き、そこから現れた鏡上の物体が そのディバインバスターを180度反射させてしまったのである。 「え!? キャァァァァァァ!!」 自分のディバインバスターが180度跳ね返って来てなのはも思わず悲鳴を上げずにいられなかった。 そう。これもバルタン星人の持つ能力の一つであるスペルゲン反射鏡。胸部に仕込まれた強力なミラーで 全ての光学兵器を弾き返してしまうのである。人類にとって放射線や紫外線が有害である様に、 スペシウムなる物質を有害としているバルタン星人が、スペシウムの力を持つM78星雲の戦士に対抗する為に 自身を進化させたのが始まりであり、その威力はM78星雲の戦士の放つ光線のみならず、あらゆる光学兵器に 対して有効である。無論ディバインバスターも光を発している以上光学兵器には変わり無い為、 スペルゲン反射鏡の前には反射されてしまうのも仕方の無い事だった。 「え!? そ…そんな!」 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッ!』 ディバインバスターが180度そのまま反射される。なのはにとってそれは衝撃的な事だった。 しかしバルタン星人はそんな事等構うはずも無くなのはへ向けて迫って来るのである。 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッ!』 「悔しいけど空中戦では不利なのかもしれない…。」 なのはは確かに優れた空戦魔導師であるが、元々陸上生物たる人が魔力によって不自然に飛行している形に過ぎない。 だがそれに対しバルタン星人は種として当たり前に持っている力として飛行可能な星人である。 それを考えれば空中戦に関してなのはと言えどもバルタン星人に劣っていると言わざるを得ず、 なのはは陸に降りて地上戦に切り替えるのだった。 「あの両腕の大きなハサミで殴られたら一溜まりも無いけど…代わりに重くて格闘戦時の動きも鈍くなるはず…。」 陸に降りたなのはは後を追って陸に降りたバルタン星人に対しあえて格闘戦を挑んだ。 バルタン星人の両腕の大きなハサミは格闘戦時に強力なハンマーとして機能し得る反面 その分重量もあって素早くかつ器用に振り回す事は出来ないであろうと考えたのである。 故にバルタン星人のハサミ攻撃を回避しつつレイジングハートでバルタン星人を一突きにする作戦であった。 「やぁぁぁ!!」 レイジングハートを構え、なのはは正面からバルタン星人目掛け突っ込んだ。 そしてレイジングハートの鋭い先端部分がバルタン星人の胴体部へ突き立てられる……と思われたその時、 バルタン星人がフッとその場から掻き消えたでは無いか! 「え!? 消えた!?」 突如として姿を消したバルタン星人に戸惑うなのはであったが、さらにその直後 何と背後にバルタン星人が現れて右腕のハサミで突き飛ばされてしまった。 バリアジャケットの保護があれど、これは痛い。 「え!? 何時の間に後に!? ならば今度こそ!」 バルタンに殴られて痛いのを我慢して素早く体勢を立て直したなのはは再びバルタンへ突きかかる…が、 やはりバルタンはなのはの眼前からフッと掻き消え、今度は側面からハサミで突き飛ばされてしまった。 これも例によって痛い。 「えぇ!? そんな! 何でぇ!?」 なのははその後も何度も何度もバルタンへ突っ込むが、その都度バルタンは掻き消え、 さらにその直後になのはの意識しない方向から反撃を受けると言う事を繰り返す羽目になっていた。 そう。これこそバルタン星人が宇宙忍者と呼ばれる所以の一つ。物や人を遠くへ転送する魔法は ミッドチルダにも存在するが、それも詠唱等の準備が必要となる。しかし、バルタン星人は 特に意識する事無く呼吸をする様に楽々と瞬間移動を可能としているのだ。その威力は M78星雲のスペシウム使いの一族の戦士さえ翻弄してしまえる程。しかもこれもやはり バルタン星人が種族として当たり前に持っている力なのだから恐ろしい事この上無い。 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ!』 「あーもー! ズルイズルイ!」 人間の基準からは余りにもトリッキー過ぎるバルタン星人の行動になのはも悔しさを感じずを得なかった。 M78星雲のスペシウム使いの一族の戦士ならば透視能力でバルタン星人の動きも捉える事は可能であろうが、 残念ながらなのはにそんな力は無い。しかしなのはにはまだ最後の武器が残っていた。 「えぇい突撃!」 再びバルタン星人へ突撃するなのは。無論その手はバルタン星人に瞬間移動回避をされるのがオチである。 しかし……………… 「と見せかけてバインドォォ!!」 なのははバルタン星人へ突っ込むと見せかけてバインドをし掛けた。なのはが馬鹿の一つ覚えの様に バルタン星人へ突撃を繰り返していたのは全てこの為であった。なのはが突撃を繰り返せば、バルタン星人も 条件反射的に同じ行動を取る様になる。そこでなのはが全く違う行動を取ればバルタン星人も、 最低一瞬は隙が出来るはず。そこを狙いなのははバルタン星人へバインドをし掛けたのである。 両腕両脚のみならず、胸部スペルゲン反射鏡を仕込んだ部分をバインドで抑えられ動けなくなった バルタン星人に対し、なのはは距離を取った。 「これならば…これならばどう!? 今度の今度こそ正真正銘の私の全力全開! スターライト! ブレイカァァァァァァァァァァァ!!」 出た。なのはが周囲の魔力を集め放つスターライトブレイカー。ディバインバスターと並ぶ 彼女の代名詞とさえ言われる強力な魔力砲である。ディバインバスターをも凌ぐ太さと出力の 極太魔力砲がバルタンへ向け、射線上のあらゆる物を巻き込みながら突き進んで行く。 そしてバルタン星人はバインドから逃れる事もスペルゲン反射鏡で弾き返す事も出来ず、 ついにその魔力光に飲み込まれてしまった。 「ふぅ………幾ら相手が星人だからと言っても…やっぱり命を奪うのは忍びないかな…。」 スターライトブレイカーの魔力爆発が晴れ、そこに残された真っ黒焦げの焼死体となった バルタン星人に対しなのははそう呟いていたが…その時だった。何とその焼死体と思われた バルタン星人の中からまるで虫が脱皮をする様に無傷のバルタン星人が出て来たのである。 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッ!』 「えぇ!? そ…そんな……。」 バルタン星人はここまでの力を持つと言うのか? 自分の持つ全ての能力が通じないバルタン星人の 脅威的な力になのはも絶望せざる得なかった。バルタン星人がなのはを下等動物として動物園に 入れよう等考えるのも、これだけの差を見せ付けられればそれも仕方の無い事なのかもしれないと 彼女でも考えてしまう。そしてバルタン星人は絶望しその場に立ち尽くすなのはへ歩み寄って行く。 しかし、絶望的なのはそれだけでは無かった。クラナガン上空でバルタン葉巻型戦艦と撃ち合っていた アースラもまた背後に回りこまれた上で滅多打ちにされ、煙を噴き上げて失速ていたのだった。 「推進部、動力部ともにもうどうにもなりません!」 「総員退艦! あ~も~! あれもこれもまともな艦をよこしてくれない本局が悪いんだ!」 幾らアースラが廃艦が決まった旧式艦であるとは言えこの絶望感は異常。恐るべきはバルタンの科学力。 とは言え、アースラにはリンディ・クロノ・エイミィ等、アースラと言えばこいつ等的なお馴染みのメンバーはおらず、 クルーも艦長も急遽揃えられたモブの集まりであったのだから、むしろここまで戦えた事を褒めるべきか。 アースラも工場で廃艦解体されるよりかは戦いの中で轟沈した方が本望であろう。 「あ…アースラが…。」 『フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ!』 アースラが炎を吹き上げ沈んで行く中、バルタン星人の不気味な笑い声が響き渡る。 そして絶望の余りその場から動けぬなのはに対しバルタン星人は一歩一歩近寄って行くのである。 『バルタン星の動物園が待ってるぞ~。』 「あ…ああ……。」 なのははこのままバルタン星の動物園に下等動物として入れられてしまうのだろうか? が、その時だった。突然バルタン星人に背後から飛んで来たと思われるチェーンバインドが巻き付いたのだ。 「あのチェーンバインドの色はユー………あっ!」 チェーンバインドの色から考えるに、ユーノの物であるとなのはは悟っていたのだが、その後が違っていた。 確かにチェーンバインドそのものはユーノの物だ。しかし何と言う事であろうか。ユーノのそのチェーンバインドを ヴィヴィオやら先程バルタン星人に吹っ飛ばされたはずのフェイトやらその他モブ局員やらが大勢集まって 掴んで引張っていたのである。 「そ~れ! そ~れ!」 とか何か声を上げながら皆で一斉にバルタン星人を引張り、なのはから引き離して行く。 しかし、ただ闇雲に引張って行くだけでは無かった。 「それ! 今だぁ!」 「それぇぇぇぇぇ!!」 皆で息を合わせ、一斉にバルタン星人を引き飛ばした。バルタン星人が引き飛ばされた先にはバルタン葉巻型戦艦。 そしてバルタン星人は勢い良くバルタン葉巻型戦艦に衝突し、忽ち空中で大爆発を起こし四散してしまった。 「あ……………。」 あれだけのチート振りを誇ったはずのバルタン星人の余りにもあっけない最後になのはも 開いた口が塞がらなかったのだが、それをフォローするかの様にユーノが言った。 「だって考えても見てよ。バルタン星人を倒せるのはバルタン星人の作った兵器しか無いんじゃない?」 「な…なるほど~~~~~~~~!!」 確かに言われて見ればその通りである。様々なチート的超能力を種として持っているバルタン星人を 倒せるのは、そのバルタン星人がチート的科学力で作ったチート的兵器しか無い。 こうしてなのはをバルタン星の動物園に入れると言うバルタン星人の野望は潰えた。 しかし、バルタン星人は数多ある星人の中でも特に限りなきチャレンジ魂を持っている種族である。 もしかしたら何かの拍子に付けてヴィヴィオ・リオ・コロナ等の子供達を喧嘩させ、 その子供同士の喧嘩から家庭間の喧嘩に発展させ、そこからさらに喧嘩の規模を連鎖的に 発展させる事で全人類を巻き込む大戦争にまで発展させて行く~なんて気の長い 計画を進める様なバルタン星人も…現れるのかもしれない。 END
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/175.html
スバルのおまじない 作者:◆pxoVQARIYU 氏 本局の休憩スペースでのお話。 「せんせー!どうしたんですか、こんなところで」 「・・・やぁ、スバル。 いや、ちょっとね。 仕事で大ポカやらかしちゃって……ちょっとした気分転換かな」 「ほぇ~・・・せんせーでもそういう事があるんですか?」 「そりゃあ僕だって人間だ。神様みたいな人間を超越してる存在じゃないよ」 「でも、せんせーは充分普通の人間超えちゃってますよ? 私達が束になってもあそこから必要なのをすぐに見つけてくるなんて出来ません」 「あれは経験に依るものが大きいんだ。 本局から下りてくる資料請求って、似たり寄ったりの要求が結構多いし。 まぁクロノの場合は毎回毎回変則かつ大量に要求してくるから、 あんまり経験は役に立たないんだけどね」 そのまま仕事の愚痴や経験談を語り始めるが、やがて失敗したことを思い出して再び鬱になるユーノ。 「せんせー。ここであれこれ考えてても仕方ないですし元気出しましょうよ! あ、そうだ!せんせーに活が入るようにおまじないをしてあげますね」 「おまじない?」 「すみませんが、ちょっと目を瞑ってもらえませんか?」 「こう?」 「はい、ではいきますよ」 何が始まるのかと目を閉じながら考えてたユーノだったが、突然身体の浮遊感と頭部への衝撃を感じた。 直後に背中への痛みを感じたユーノは、自分が休憩スペースの壁際まで吹っ飛ばされた事を認識。 そして吹っ飛ばした張本人はいわゆるデコピンの姿勢のまま呆然としていたが、 やがて正気に戻ると慌ててユーノのもとに駆け寄った。 「だ、大丈夫ですかせんせー!?」 「・・・一体何が?」 「あ、あの・・・せんせーに活が入るように、ギン姉直伝のデコピンを・・・ かるーくしたつもりなんですけど」 「き、君たち姉妹の軽くは普通の人間の鉄拳だよ!」 本来吹っ飛ばされる役は恭ちゃんだけど気にしない 16スレ SS スバル スバル・ナカジマ ユーノ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/161.html
書庫の王はゲームも得意? 作者: ID GCo3Ilas 「チェック。これで気が済んだかい、クロノ?」 ミッドチルダで今、爆発的な人気を持つボードゲームを挟んで、ユーノは クロノに勝利を宣言する。 「くっ、フェレットもどきの分際で……」 「あのね。こっちは忙しい仕事の合間を縫ってわざわざ相手 してあげてるんだから、そんな事言わないでよ」 「だってオマエ、納得いかないんだから仕方ないだろう。俺が持ってきたゲーム なのに、まだ一度も勝ててないんだぞ」 「そんなの知らないよ。クロノが弱いだけじゃない?」 「……言ってくれるじゃないか。ならこっちは助っ人を呼ばせて貰おう」 そして呼ばれたるは夜天の王と烈火の将、参謀たる湖の騎士。 「さぁ、この三人と俺を相手にどこまで持つか楽しみだ!」 一人張り切る提督と、苦笑を交し合う他四人の間で始まったゲーム。 管理局が部隊運用のシミュレーターとして採用しようか検討中と噂されるほど リアルなソレの結果はと言えば。 「ぐっ、……見事だ、スクライア」開始十分、烈火の将堕つ。 「あかん。もうなんもできん……でもこれが機動六課なら」言い訳しつつ、 二十分で夜天の王は消えた。 「あぁぁ……駄目か。このお化けフェレットもどきが!」良く分からない悪態 を吐きつつ、青年提督三十分を超える事なく沈んだ。 「……降参ね。このまま続けても一時間二十三分後、私が負けるわ」三時間の 激闘の果て、湖の騎士は読めてしまった自らの敗北を認めた。 「そんな事より、あんた達仕事大丈夫なのかい?」 ……激戦に熱中していた四人に、アルフの声が届くと同時、予定していた仕事 を思い出し、一斉に騒ぎ出した。 「おい、ユーノ! オマエも速く仕事に戻れ!」 「いいんだよ、ユーノは最初から仕事も平行して進めてくれてたんだから」 アルフの言葉に、ユーノと戦った四人が恐ろしいモノを見る目でユーノを見つめた。 15スレ SS ユーノ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/634.html
◆LuuKRM2PEg 氏が手がけた作品 話数 タイトル 登場人物 179 こなたとリインと男の娘 ユーノ・スクライア、泉こなた 182 闇よりの使者 アンジール・ヒューレー、キング 184 罪罪(状態票) 天道総司、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS)、八神はやて(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ、泉こなた、柊かがみ 187 解ける謎!!(前編)解ける謎!!(後編) 天道総司、キング、金居、アンジール・ヒューレー 195 Revolution 天道総司、ユーノ・スクライア、高町なのは(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ 登場させたキャラ 3回 天道総司、ユーノ・スクライア 2回 泉こなた、アンジール・ヒューレー、キング、高町なのは(StS)、スバル・ナカジマ、ヴィヴィオ 1回 ヴァッシュ・ザ・スタンピード、八神はやて(StS)、柊かがみ、金居 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/665.html
S少年の事件簿/フリードの来訪にヴィヴィオの涙 ◆7pf62HiyTE Awaken 「みんな……」 『Mr.ユーノ、ヴィヴィオが目を覚ましました』 「良かった……」 ヴィヴィオが意識を取り戻した事にユーノとバルディッシュは安堵した 「あれ……こなたお姉さんやリインは……それに……」 「ああ、みんなは……」 「そっか……」 見たところヴィヴィオはこなた達の死を理解している様だった。何故理解していたのか気にならないではないがそれについてはひとまず触れなくても良いだろう。 その時、 『キュルゥゥゥゥ……』 車庫に出来た穴の前にフリードリヒが立っていた。 「あれは!?」 『Ms.キャロが使役しているフリードリヒです、しかし何故ここに……』 予期せぬ来客者に動揺するユーノ。しかし一方、 「あぁぁぁぁ……」 ヴィヴィオが何かに脅えた様な表情をしている。それに呼応するかの様にフリードはヴィヴィオの方へと向かっていく。 『何故彼女の方に……?』 「まさか、ヴィヴィオが浴びた血の匂いに惹かれたんじゃ……そうだ、バルディッシュ、周辺の様子を探って」 警戒を強めるユーノとバルディッシュに構わう事無くフリードはヴィヴィオの前に立つ。その眼は何処か鋭かった。 「ううっ……」 ヴィヴィオにはフリードが何故やって来たのかわかっていた。ヴィヴィオ自身に染み着いている血肉の匂いはキャロ・ル・ルシエのもの―― 慣れ親しんだ匂いに惹かれてやって来たという事だ。そこまで強い嗅覚があるのか? そんな事は大きな問題ではない、主人を想う強い意志がフリードをここへと導いたという事だ。 わかっている、彼女の死体を完膚無きまでに破壊しその尊厳まで壊したのは自分だ、フリード側から見れば恨んでも何ら不思議はない。 わかっている、自分が許されざる罪を起こした事は――だが、 自分を送り届けてくれたこなた達の為にも―― ヴィヴィオはフリードを抱き留め―― 『キュルゥゥ……』 その瞳に涙を溜めながら―― 「ごめんね……」 『キュル……』 零れ落ちた涙を受け、フリードはヴィヴィオへの警戒を解いた。ヴィヴィオを謝罪を受け入れたのだろうか―― 犯した罪は決して許されない――だが重要な事はそこから逃げる事ではない。その罪と向き合いこれからどうするかである。 死や思考停止は只の逃避だ。犯した罪の重さを深く受け止め、そこから何かを学び取り前へと進む事が重要なのだ。 それは、生きている者にしか出来ない事だ―― Dismantle 『マスター……』 ヴィヴィオから大まかな話を聞いたバルディッシュは亡き主人であるフェイトの事を考えていた。 ヴィヴィオの証言にあったフェイトはヴィヴィオの事を知らない9歳ぐらいではあったがそれでもヴィヴィオを助けようとした。バルディッシュは機械らしくはなかったものの不思議と嬉しく感じていた。 「昔のフェイトがヴィヴィオを助ける為にキャロを殺し、こなた達を殺しフェイトにも致命傷を負わせキャロの死体をヴィヴィオが破壊したか――」 どうやら、ヴィヴィオはアニメイト襲撃の際にこなたとリインが殺されたと思っている様だ。事実は違うわけだが状況が大きく変わる訳ではないため、特別修正することもなく話を進める。 ちなみになのはが今も生きている事を聞いてヴィヴィオは驚いていたもののまだママに会えると思い少し嬉しそうな表情を見せていた。少しというのは、暴走し皆殺しにしようとした事を悔やんでいるからだろう。 (頼むよなのは……これ以上ヴィヴィオを悲しませないでくれ……) そう願うユーノであった。 『ゆりかごを利用出来ればまだ……』 何とかなのは達と再合流した後はゆりかごへ向かうべきだと進言するバルディッシュであったが、ユーノは何かを考えている様だった。 『Mr.ユーノ?』 「バルディッシュ……周囲に人の反応は?」 『全く反応ありません』 「どうする……僕の仮説が正しければ……だけどもしこれ自体が罠だったら……失敗は許されない……」 ある瞬間から感じていた違和感等からユーノの脳裏にある仮説が浮かんでいた。それはこの状況を打開する可能性のある重要な仮説である。 しかしそれはあくまでも状況証拠でしかなく、一歩間違えれば全滅の可能性をも秘めた危険な仮説だ。 「だけど何れはやらなきゃいけない事なんだ……でも……」 「ユーノ……?」 『キュルル……?』 『お願いですからヴィヴィオ達を心配させる事しないでください』 「なのは達が戻るのを待つか……だけど、こんなリスクが高い事なのは達だってさせるわけないしなぁ……」 3者が気にするにも構わずユーノは思考を広げる。 『勝手に自己完結しないでください。Mr.ユーノはそうやって全部自分で背負い込む悪い所があるんですからね』 そう言い放つバルディッシュに対し、 「わかったよ、バルディッシュ……これからする事は成功するか解らない賭けだ……だから細かい質問は後で聞くから僕の指示に従ってくれる?」 『Yes.』 そしてユーノは駅の詰め所から幾つかの工具を持ち出し再び車庫に戻り、 「じゃあヴィヴィオ、フリードを貸してくれるかい?」 「うん……」 と、フリードを受け取ったユーノは―― バルディッシュと幾つかの工具でフリードの首輪を解体し始めた。バルディッシュは何か言いたそうだったが口を出さず、ユーノは黙々と慎重に素早く解体を行う。そして、 「出来た……だけど……そんな事って……」 フリードの首を拘束していた首輪が外れた。続いて、 「ヴィヴィオ、来て貰える?」 「え……うん」 その後間髪入れずにヴィヴィオの首輪の解体を始めた。今度は先程よりもハイペースで進みやはり首輪が外される。 「やっぱりそうか……でもこれって……もしかしたら……バルディッシュ、ヴィヴィオに僕の首輪を斬らせて」 「え?」 『正気ですか?』 「最悪僕が死ぬだけで済むよ。時間がない、すぐにでも始めて」 『ですが……』 と、構わずユーノはフェレット状態に変身する。ヴィヴィオの背では自分の首まで手が届かないと考えての配慮である。なお、急いでいたため、しゃがめば良いという発想には至らなかった。 「急いで!」 「う……うん、お願い、バルディッシュ……」 『Yes,ヴィヴィオ……』 そして、ヴィヴィオとバルディッシュの理解が追いつかないままユーノの首輪にバルディッシュの刃が入り、首を傷付けない様にして首輪の切断に成功した。そしてユーノは切断された首輪を引っ張りそれを外し元の人間状態に戻った。 かくしてユーノ、ヴィヴィオ、フリードは忌まわしき首輪の呪縛より解放されたのだった。 「はぁ……はぁ……よかった……僕の予想が当たった……」 と、ユーノは再びバルディッシュを受け取る 『予想とはどういう事ですか?』 「ああ、結論だけ先に言うよ。首輪が解除……正確には起爆装置が解除されていたんだ」 ユーノが気付いた事実。それは首輪の起爆装置がOFFになっていた事である。 『確かに前に調べた時と比べ何かが違うと思いましたが……ですが何故それに気づいたのですか?』 「フリードのお陰だよ」 ユニゾンデバイスやフリードの様に自律行動可能な支給品にも首輪が装着されている。同時にそれらには参加者とは違うある制限も課せられていた。 それは参加者の首輪から一定距離以上離れれば行動不能になるという制限だ。余談だがこの事を知ったのはアジトでリインと首輪解体を行った時である。実は首輪解体の際に首輪に関して色々話していたのだ。 ここまで書けば何故ユーノが首輪に異変が起こっている可能性に気付けたのかわかるだろう。 フリードは単身でいきなりユーノとヴィヴィオの前に現れたからだ。フリードにもリイン達同様の制限が掛けられていると考えるならばそれは起こりえない事だ。 所有権が移らない限りは50メートル以内に他の参加者がいる筈だ。だが、ユーノがバルディッシュにサーチさせた限り周囲に人の反応は全く無い。 つまり、制限の範囲を超えてフリードは普通に動いていたという事だ。勿論、制限がユニゾンデバイスと同様とは限らないが参加者ではない支給品を自由自在にさせる事など有り得ない。 故にユーノは首輪に異変が起こった可能性を考えた。同時に上手く行けば解除出来る可能性だ。ある違和感を踏まえれば可能性は低いものではない。 だが、それはあくまでも可能性レベル、それ自体がプレシアの仕掛た巧妙な罠であるかも知れない。 本当ならばもう少し慎重に行くべきだったかも知れない。だが、首輪の解除は何時かは行わなければならない事、決して避けては通れない。 更に違和感から導き出される推測が確かならば急がなければならない。クリアしなければならない問題は首輪だけでは無いのだから。 なによりこんなリスクの高い事をなのは達の前で話しても彼女達が躊躇するのは明白。ならばいっそここで勝負するべきだろう。 Lならばきっと同じように自分の命を懸けてでも勝負に出るだろう、 ブレンヒルトならば毒突きならばもユーノの賭けに乗るかもしれない、 この地で散った2人の為にもユーノはここで勝負に出たのだ。 かくしてユーノは勝負に勝った。 調べた所フリードの首輪の起爆装置はOFFになっていた。爆発しないとわかれば解体は容易、迅速に行う事ができた。 その後、なのはに託されている手前少し躊躇したものの敢えてユーノは予測が当たっている事を信じヴィヴィオの首輪の解体に乗り出した。 その結果、予想通りヴィヴィオの首輪の起爆装置もOFFになっていた。やはりそこからの解体は容易だ。 そして他に解体出来る人がいないため後回しになっていた自分の首輪に関しては単純に首輪を切断するという手法で済ませた。真面目な話起爆装置がOFFになっているならばそれでも問題ないはずだ。実際、その推測通り解体は成功した。 『……理由はよくわかりました。ですが、もう少し詳しい説明してください』 「僕自身絶対大丈夫っていう確証が無かったから……ともかくこれで問題の1つはクリアしたね」 だが、身体の調子を見る限り首輪を付けていた時と比べて目に見える程の変化は感じない。予め調べていた時からわかっていた事だが制限は首輪主導ではなくフィールド主導なのだろう。 勿論、ある程度制限が解除されている可能性は否定出来ないが過度な期待はしない方が良いだろう。 『Ms.なのはが聞いたら怒りますよ、ヴィヴィオを危険な目に遭わせて……死んだらどうするんですか?』 「いや、それはわかってはいるんだけど……でも首輪解除の時で絶対について回る問題でもあったし……」 『それにしても何故首輪の起爆装置がOFFに?』 「これは僕の想像だけど……プレシアはこのデスゲームの表舞台から去った可能性があるよ。 断定出来るわけじゃないし変に皆に希望を持たせたくなかったら言わなかったけど……放送が10分遅れていたんだよね」 何人かの参加者が気付いているのと同様にユーノもまた先の放送が定時より10分遅れていた事に気付いていた。 プレシアに何かあった可能性もあったがそれならそれで3回目の放送同様オットーに代理を頼むなり、放送の際に適当に遅れた理由を言えば済む話だ。だが、実際は10分遅れたにもかかわらず普通に放送をしていた。 何も起こっていないかの様に―― さもこれは不自然なまでにプレシアが健在である事をアピールするかのように感じたのだ。 『スカリエッティの戦闘機人の中に変身能力を持った者がいます。先の放送のプレシアは実は彼女だったという可能性は否定出来ません』 「あ、そういう事出来る人いるんだ。それなら仮説が正しい可能性が高まったよ」 『JS事件のやり口を考えてもスカリエッティ達がプレシアを出し抜く可能性が高いです』 JS事件の事は知らなかったが、バルディッシュからの証言でユーノは更に仮説を進めていく。 それは放送前にスカリエッティ達がプレシアを裏切り彼女を退場させ、このデスゲームを乗っ取ったという事だ。 完遂させる事を一番に望んでいたプレシアが退場したならばデスゲームの監視は緩くなるのは当然の事だ、首輪解除の隙も出来やすくなる。 『しかしそれだけでは首輪の起爆装置がOFFになる理由の説明にはなりません』 「そう、そこなんだ。激しい戦いが繰り広げられる以上、何かの拍子でOFFになる可能性は0ではないとはいえ限りなく低い……だとしたらやっぱりこれは主催側でOFFにしたとしか思えないんだ。 正直、そんな事するメリットがわからないんだけど……」 『いえ、相手がスカリエッティなら有り得ない話では無いですよ。あの人はJS事件もある種のゲームの様に楽しんでいましたからね』 「嫌な犯罪者だね……それはともかく、OFFにしたって事はOFFにしても問題ない事を意味するね。OFFにしても大丈夫という算段があるって事かな?」 首輪を解除した所で今いるフィールドから脱出して主催陣のいる場所に辿り着かなければ意味はない。故に脱出への障害は十分に残っている事になるのだ。 Limit 『何にせよ、首輪が解除出来るならば後はMs.なのは達と再合流して脱出に向けて動くだけですね。絶望的だった状況に光が――』 「むしろ逆、首輪解除しても問題ないって事は首輪解除だけでは何の進展もないって事だよ。大体、スカリエッティがそんな都合良く脱出させると本気で考えているの?」 『それはないですね。ゲームを仕掛けているとしてもスカリエッティ側がある程度有利な様に設定して――そういうことですか?』 「そう、首輪の問題がクリアされた時点で僕達の目的はフィールドからの脱出に変わる。だったらスカリエッティ側の目的は僕達の脱出を阻止しつつロワに使われた技術を確保したまま離脱するという事になるね」 『――タイムリミット』 「その通りだよ。プレシアを退場させた時点でスカリエッティの目的の前提条件はクリア。後は早々に離脱するだけ、長居をする必要なんて何処にもない。」 纏めるとこういう事だ。ユーノは放送の遅れからプレシアが退場しスカリエッティ達が主催になったと推測した。 だが、プレシアにとってはアリシア・テスタロッサ復活という目的があるデスゲームであってもスカリエッティ達にとって同じではない。 少なくてもスカリエッティ達が律儀にデスゲームを執り行う理由は少ない。 むしろ、早々に切り上げ離脱する可能性の方が高いだろう。当然離脱された時点でデスゲームは瓦解、残された参加者の生死は考えるまでもない。 故に、主催が変わった事により、タイムリミットの設定が変更されたという事になるのだ。 「それがどれくらいかはわからない。とはいえ脱出だけならばそんなに手間はかからないだろうからそう時間は残っていないと思うよ。 待って――もしスカリエッティが意図的に放送遅れや首輪の爆弾を解除したのなら……次の放送前後がタイムリミットになると思う」 首輪の爆弾解除や放送の遅れは異変のヒントとなる。確かにそれだけでは確定的なものではない。 だが、時間の経過と共にそれを切欠として異変に気付く者は多くなる。ユーノが気付いた事実を他の参加者が気付かない道理は無い。 情報交換等を考えるならば恐らく6時間もあれば大半の参加者に伝わるだろう。 が、スカリエッティ側からみればこちらが幾らその情報を得たとしても踏み込まれる前に脱出すれば問題はない。つまりこちら側がその情報を得るまでの時間も計算に入っているという事だ。 故に、タイムリミットは前述の通り、異常の起こった放送から6時間後、次の放送が行われる予定だった6時前後がタイムリミットと考えて良い。 「それに……プレシアが退場したとはいえ、このまま黙っているとも思えないんだ……」 プレシアが退場したとしても、前に推測した通り、その対策が施されている可能性は否定出来ない。それこそスカリエッティ達も自分達も全滅させる様な凶悪な罠を仕掛けている可能性がある。 どちらにしても自分達にはもう時間がないという事だけは確かだ。 『後数時間……あまりにも少なすぎます……』 タイムリミットを踏まえるならば最早ゆりかごに向かう時間もない。 「残念だけど現状ではこのまま駅で待つ事しかできないよ」 ユーノ達は車庫を出て仲間達の到着を待つ。状況は最悪と言って良い。それでも―― (大丈夫だよ、なのはなら――出会った頃と変わらず、強い不屈の心を持った彼女なら――僕の知る彼女よりもずっと成長した彼女なら――) この場にいるなのはは自分の知る彼女よりも4歳年上の大人の女性だった。少し大人になった彼女と彼女から見て少し幼い自分が顔を会わせるのに気恥ずかしさを感じないと言えば嘘になる。 それでも、別れ際に見た彼女の顔を思い出す度に心の奥から力が湧き上がってくるのを感じた。 (なのは――君が守りたがっていたヴィヴィオは何としてでも僕が守るよ――だから―― 負けないで――) 【2日目 黎明】 【現在地 E-7 駅・車庫の前】 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【状態】全身に擦り傷、疲労(中)、魔力消費(大)、強い決意、はやてに対する怒り 【装備】バルディッシュ・アサルト(スタンバイフォーム、4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式×2(内1つ食料無し)、ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現!、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ブレンヒルトの絵@なのは×終わクロ、浴衣(帯びなし)、セロハンテープ、分解済みの首輪(矢車、ユーノ、ヴィヴィオ、フリードリヒ)、首輪について考えた書類 【思考】 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。フィールドを覆う結界の破壊。 1.駅でなのは達の到着を待つ。 2.ヴィヴィオを守る。 3.ジュエルシード、レリックの探索。 4.仲間達の首輪を解除し、脱出方法を模索する。 5.ここから脱出したらブレンヒルトの手伝いをする。 【備考】 ※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。 ※プレシアが退場した可能性に気付きました。同時にこのデスゲームのタイムリミットが2日目6時前後だと考えています。 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】リンカーコア消失、疲労(中)、肉体内部にダメージ(中)、血塗れ 【装備】フェルの衣装、フリードリヒ(首輪無し)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】なし 【思考】 基本:みんなの為にももう少しがんばってみる。 1.なのはママ達の到着を待つ。 【備考】 ※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。 ※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。 ※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。 ※首輪を外したので、制限からある程度解放されました。 【全体備考】 ※2個のクレイモア地雷が爆発し車庫の扉が破壊されました。 Back S少年の事件簿/殺人犯、八神はやて 時系列順で読む Next 戻らないD/スバル・ナカジマ 投下順で読む Next 抱えしP/makemagic ユーノ・スクライア Next Revolution ヴィヴィオ Next Revolution
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/117.html
背中が冷たい 作者:ID gTSuEweG 初めて人間の姿を見た時は、すごく女の子みたいに線が細い子だと思った。 だけど、先日に書庫でのトラブルの際に抱きついた感触はまるでちがったの。 見た目では分からなかったゴツゴツとした男の人の筋肉の感触や、色気とは違う匂いにドキドキしてた。 まるで弱々しかった小鹿が立派な大地を翔る鹿のように。 ―――でも、翠色の瞳とか女の子みたいに綺麗なハニーブロンドはでも何処かフェレットのようにくりくりした愛嬌さが残っている。 男の子みたいな女の子から大人の匂いがする綺麗な男の子に変わるユーノ君の姿を思いかべるだけで、指が更に私の奥の奥にへと忍び込んでいく。 はしたない私は―――うん、人前でなければ多分、押し倒したままキスしていただろう。 すずかちゃんやスバルみたいに人前で抱きつくような勇気も無いから、こうやって彼を喜ばせる目的に買ったメイド服を着たまま自分を慰める事しかできないの。 「駄目だよ、もっと本当のユーノ君じゃなきゃ駄目なの、だめなの……」 慰めの言葉と指が複雑に快楽を導き出し……遂には突き止める所まで上り詰めてしまった。 「はぁ……ハァ…ユーノ君、ほしいの、背中が冷たいの……温かくしてほしいの……」 苦しげに胸の痛みを漏らしす。だけど…… 「えっ、な、なのは……」 返答のない独白に答える声。 慌てて部屋の入り口を振り返れば、呆然と私の姿を見つめているユーノ君がいたの…… 12スレ SS なのは ユノなの ユーノ
https://w.atwiki.jp/animalrowa/pages/243.html
異界の車窓から ◆1eZNmJGbgM 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。 これは古代ポコペン人の戦士が合戦場で名乗りをあげる際に用いる言葉だが、どうやら人探しにも使える様だ。 そんな事を考えながらギロロはB-4からB-5にかけての市街を捜索する。 同行者であるユーノは彼の数メートル先を歩き、その後ろにギロロが続く。 斥候が俊敏な事は重要であるし、的も小さいに越した事は無い。もっとも、ユーノが自分で言い出したのだが。 しかしユーノからしてみれば、他の参加者に遭遇した時に銃口を向けられるよりは、 対話をしようとする方が警戒感を抱かれにくいとの計算も働いたからこその結論でもある。 とはいえ、捜索対象のてゐの足取りは一向に掴めない。その原因は先程カエルが放ったウオータガ。 あの鉄砲水によっててゐの足跡や匂い(彼らの嗅覚がどの程度か不明だが)などの痕跡が綺麗さっぱり流されてしまったのだ。 あの魔法の後に出来た銀の血痕だけが残ってはいたが、それがてゐの捜索に影響を及ぼす事は無い。 そしてギロロは決断を下す。 「……ユーノ、残念ではあるがてゐの捜索をここで一旦打ち切ろうと思う」 「……理由を聞いてもいいですか?」 ユーノもその理由には薄々気付いているのだろうが、導き出した答えに対する葛藤ゆえ不満が声色に表れる。 「では率直に話そう。おそらくてゐはもうこの付近にはいない。これだけ物音を出し、時には呼びかけても 何の反応も無いという事は既にてゐが我々が出した音の聞こえる範囲にいないと言う事だ」 「じゃあもっと別の場所を探すという手は取れないんですか?」 「そう、問題なのはそこだユーノ。地図を見てくれ」 そういってギロロは地図を広げ、ユーノもそれを見る。 「いいか、現在地は近くに駅が見える事からもB-4に間違いは無い。B-5も捜索済みだ。となると他に考えられる逃走先は何処だ?」 「……北のA-5か、南のC-4ですね」 「その通りだ。そしててゐが選びそうなのは?」 「……多分C-4だと思います、彼女とは南で出会いましたから。今まで訪れた場所と訪れていない場所、どちらに逃げるかと考えたら前者を選ぶでしょうし」 「ああ、俺もそう思う。十中八九、てゐはC-4方面へ逃走しただろう」 「……そこまで解っているなら何故追いかけないんですか!」 ついにユーノが声を荒らげる。自分でも答えは出ているのだろう、これからギロロが言う内容も予想しているしその解答も間違ってはいない。 しかし、だからこそ。 「これが答えだ」 ギロロの右腕から出た返答はあまりにも雄弁だった。 「見ての通りだ。ただでさえ日が昇り視界が良くなっているのになんの遮蔽物も無い所を通る気に俺はなれん。 重火器がこれしか支給されていないと言うなら話は別だが」 右手のガトリングガンから出た硝煙を息で吹き消しながらギロロは答える。みせしめになった道路標識が本来の役目を果たす事は未来永劫無い。 「…………」 ユーノもそれは理解しているのか、俯いたまま無言でいる。 勿論、ユーノにも反論材料はある。彼は捕縛、治癒、結界といった補助魔法の優秀な使い手であり その中にはプロテクション等の防御魔法も含まれている。 銃弾に対してどの程度の防御力があるかは未確認だが少なくとも狙撃されて重傷に陥る事は無いだろう。 だが、それは本来の威力が発揮されればだが。 ユーノ自身が人間に戻れない制限を受けた現状、唱える魔法が十全の力を発揮する事が有るのだろうか? いやそもそも防御魔法を唱える事が出来るのか? そう考えたからこそ、ユーノはギロロに反論が出来ない。 不十分な認識で同行者を危険に晒せないという点では、ギロロの答えとユーノの答えはさして変わらないものなのだから。 「…………」 ギロロもユーノが素直に納得するとは思っていないので尋ねられるまではじっと待つ。 そして自分の心情に一区切りつけたのか、数分かけてやっとユーノは質問をした。 「……では僕達はこれからどうするんですか」 「うむ、そこでだ。目の前にあるB-4から電車を利用しようと思う」 「と、いうと?」 そう言われ、ギロロは地図上の線路を手で示しながら説明を続ける。 「現在地であるB-4駅から、C-5、F-5、F-3、D-2、C-2、そしてB-4と一周するのだ。 そして各地で駅構内の探索を行い、最後にメモを残して次の駅へと向かう。こうすれば我々の仲間に出会う 可能性は上昇し、てゐの捜索にも役立つ。運良く他の参加者に出会えればあのカエル達の本性も知る事が出来るかもしれない。どうだ?」 「ではA-6とF-2を除外した理由は何ですか?」 「それはだな、あくまで今回は駅の中の捜索だからだ。確かにA-6駅の近くには研究所、F-2に至っては わざわざ離島に空港と火山まである。どちらも怪しいのは俺も認めるが、いかんせん情報不足だ。 行動方針はシンプルなものに越したことは無い。ポコペンでは虻蜂取らずと言うらしいが」 ギロロの提案は確かに道理に適うものだろう。電車中なら外から奇襲を受けてもそれなりの遮蔽物が有り 電車内から攻撃されても体のサイズと所持品の関係で彼らが有利だ。反撃、撤退どちらも選べる。 ユーノもそれを理解した上で、自分もカードを切る。 「…分かりました。僕からも一つだけ提案が有ります。他の参加者の方に出会った時はまず僕に 話をさせて下さい、いきなり銃を突きつけるよりは相手の印象も良いでしょうから」 「ちょっと待て、それではこちらの身の安全が……」 ユーノの提案に対して、呆気にとられた表情を浮かべるギロロ。まさかそんな事を提案されるとは全く予想していなかったらしい。 「まさか、身体検査をやらせたのがそんなに不満だったのか? 同性だからお前にやらせ……まさか俺にやれと言うのか!? イカンイカンぞ俺には夏美がいるからそんなことはいやでもしかしバレなければ確かに予行練習も重要だそれに肝心な時にヘタを打つよりギロロロロロ」 「何を言っているんですか!」 先程までの優秀な軍人の顔は何処へやら、すっかり目尻を緩め妄想ボケガエルと化したギロロに喝を入れB-4駅へ向かうユーノ。正気を取り戻したギロロも後ろに続く。 そんな二人を待っていたかのように、西の方からC-5行きの列車が到着した。 ◇ ◇ ◇ 「…てゐさん見つけられませんでしたね」 「まぁ仕方ないだろう。スコープや双眼鏡があれば出来たかもしれんが」 所変わって場所はC-5駅構内。電車の中からではてゐを見つける事は出来ず、また襲撃を受ける事も無く 平穏無事に電車は駅へ到着した。そして構内の探索を開始し現在に至る。 駅の中はどうやら今まで誰も立ち寄った形跡が無い様子で、足の裏に付いた土や血痕は勿論、駅の外にも足跡は見当たらなかった。 その為ここの探索は早めに切り上げ、駅の位置口と改札口付近、それにプラットホームの三か所にメモを残しF-5行きの電車を待つ。 そんな時、ユーノがギロロに問う訳でもなく口を開いた。 「なぜ電車なんだろう」 「……? 何の事だ」 「いや、さっきの放送で禁止エリアが指定されましたよね。その中に入るとあの邪気が立ち込め、首輪が爆発するって」 「ああ、言っていたな。確かに体力が抜けて行く様な不快な感覚だった」 その様子を思い出し、眉を顰めるギロロ。あれを体験した上で好き好んで禁止エリアに侵入する者はいないだろう。 「では、電車に乗っていれば問題無いのは何故なんでしょう? いや、理由は察しが付きますよ。 そうしないと僕達の移動に不都合が出て、やつらの言う所の殺し合いが進まないからでしょうから。僕が気になるのは手段です」 「……まさかお前の言いたい事は」 「そうです。『一体どうやって電車内を安全にしているのか?』これについてはギロロさんはどう考えますか?」 「そうだな……例えば邪気を祓うお札なんかが貼られているんじゃないか?」 そんなギロロの一般的な解答をユーノはバッサリと斬って捨てる。 「いえ、それは考えづらいです。ではそのお札を貼ったのは一体誰になるのか、そこが問題になってしまいます。 あんな邪気を使う者がその邪気を祓うお札に触れて無事な筈がありませんから」 「なるほど。しかし、他に協力者がいるかもしれんだろう? 我々参加者が異なる世界から集められたのだ、あいつらにも他の世界の協力者がいるかもしれん。 ……すまんが一時中断だ、電車が来た。続きは車内で聞こうか」 『マモナク、F-5行キノ電車ガ来ルンダベ! オ乗リナル方ハ危険ナノデ、白線ノ内側ニ下ガッテ待ツンダベ!』 そうしてギロロ達はF-5行きの車両に乗り込む。 車内を捜索してはみたが、他の参加者が利用した形跡はこの列車には見受けられない様だ。 外からの攻撃に備え、発見されにくく脱出も容易な手動の非常扉付近の床に座り込み、話の続きをユーノに催促する。 「えーと、どこまで話しましたっけ……ああ、他の世界から協力者が来ているかもしれない可能性についてですね。 確かにそうかもしれません。ですが、僕はそちらの方がありがたいと思います」 そう言ってユーノは話の内容に似つかわしくない顔で笑う。きっと今人間であったならば数学の証明をしている時の様な顔をしているだろう。 「さっき、僕達にはあの犬―銀―の言葉は解りませんでしたよね? この様に、僕達が異なる世界の言葉が通じないのなら 主催者が異世界出身の者を利用しても、お互いの言葉が通じない可能性があると僕は推測しています」 「ちょっと待て、それはおかしいぞ。普通共同作業をするなら翻訳機ぐらい用意するだろう。 それ以前にあの銀やカエル……四足歩行の方に言葉が通じないのはそれとは別の話じゃないのか?」 ギロロ達ケロロ小隊が滞在している(実質的には居候であるが)日向一家の住居にも一匹の猫が住み着いているが 当然その猫の言葉はギロロに通じない。ならば同じ様に一見普通の動物に見える銀やグレッグルの言葉が ギロロに理解できないのは当然ではないか?そう考えたギロロに対して、ユーノが自説を語り出す。 「いや、正にそこなんです。まずはこれから話す内容の前提条件なんですが、この会場にいる参加者の共通点…… それは人間に準ずる者、あるいは人間に仕える者が集められたと思います」 「……続けろ」 「はい。僕自身の話ですが、僕はここに拉致されるまでとある女の子のサポートをしていました。 さっき話したザフィーラやアルフも似たようなものです。それに今までのキュウビの態度から考えても 人間と関わりの無い者が呼び出されるとは考えづらい。この辺はギロロさんはどう考えますか?」 ユーノの説を一語一句噛み締めるように聞いていたギロロも、やや間を空けて返答する。 「そうだな、大筋ではお前の考えと変わりない。ポコペン人と関わりがあると言う点は俺やケロロにも当てはまる。 てゐも勿論、あのカエル……二足歩行の方も身なりから判断して間違い無いだろう。ただ、銀や四足ガエルがポコペン人と 何らかの関係があるのかどうかまでは判断できん。それにあの熊にしてもそうだ。出会った人数から考えて4/7、約6割。 ギリギリ及第点といった所だなその説は。で、この話がお互いの言葉が通じない事とどう繋がるんだ?」 確かにギロロも気になる事ではある。言葉が解らないと通じないは別の話だ。 例えば先述の猫とは言葉が通じないのであり、そもそも言語を持たない宇宙人には言葉が理解されない。 彼らのいた世界では言葉が通じないどころか言語を持たない宇宙人の存在も確認されているのだ。 ちなみにこの様な場合は主に武力で『解決』するか、歌や踊りなどの文化で『対話』をするらしい。 ケロロとタママとギロロの三人でカラオケ行った際にはカラオケをポコペン人の軍事訓練の一環と勘違いしてたし。 「それはですね、この会場内に『人間に対して話しかけられる者、人間に対して話しかけられない者同士の会話は通じる』 こういった法則が存在するのではないでしょうか?」 「するとなにか、俺やユーノ、てゐがお互いに会話できるのはポコペン人と会話が出来るからで 銀や四足ガエルと会話できないのはあいつらがポコペン人と会話が出来ないからだと?」 「そうです。ちなみにてゐさんが両方の言葉を理解できるのは、恐らく彼女がいた世界では元々人と動物の間の意思疎通が 問題無く出来るのでしょう。彼女自身もちょうど人と動物の中間的な見た目ですし」 「……ふむ、強引な点もあるが一応の筋は通るな。そもそも最初にキュウビが話しかけて来た事からも 参加者全員が言語を理解できる事は間違いない。お互いに通じるかどうかは別問題としてだがな」 そこで一息ついたギロロの言葉を継いで、ユーノが本題を語り始める。 「はい。で、この内容を踏まえて最初の話に戻ると確かに主催者はお互いの言葉を翻訳しているでしょう。 でも、彼らの常識まで共通化できるとは思いません。あの博物館にしても、あれだけ多種多様な文明レベルなら その当事者同士の常識に思い違いがあるのは当然です。僕が考古学を学んでいると先ほど言いましたが、 同じ惑星でさえ未解明な事があるんです。それが他の世界ともなれば……」 「言葉の解釈の行き違い、つまりミスが生じると言う事か」 「その通りです! そこでさっきのお札の話に戻れば、仮にお札を見つけた場合それを持っていれば禁止エリアを無効化できます。さらに言えば…」 「首輪の解除に繋がると言う訳か。さすが学者だな、理論の構築が見事だ」 ギロロは感服したようにユーノを見つめる。あのキュウビの説明からここまで推察できるのは大したものだろう。 だが、ギロロは学者では無い、ケロン星の軍人だ。そして軍人とはその殆どが徹底したリアリストである。 そこに希望的観測や机上の空論が入る余地などない。 「しかしだ、この話はあくまで仮定に過ぎん。そんな推測で動く訳には」 だがしかし、ユーノも凡百の学者では無い。 フィールドワークが極めて重要な考古学者であり、それに武闘派?の友人達に囲まれ鉄火場もそこそこ場数を踏んでいる。 「確かに、今までの予測には何の証拠もありません。そこでギロロさん、次の放送で線路上の禁止エリアを電車で 往復したいと思います。このペースならちょうどB-4駅に戻り切る頃に放送が始まるはずですので 予定通りに行けばB-6、他の参加者に出会えればその付近の禁止エリアで実際に確認するのはどうですか?」 「なるほど、それなら俺も協力しよう。ではもう一つの可能性、次に出会った者がポコペン人と 関わりは無いが俺達と言葉が通じる場合はどうするのだ?」 「その答えは至って簡単ですよ。新しく出会った人と、改めて議論をすればいい。議論、討論は参加者が多い方が有意義ですから」 先程までとは違い、実にシンプルな結論を出すユーノ。それが当然と言わんばかりの即答。 ギロロも自分の様な軍人とは違う、学者としての返答に思わず笑みが零れる。 「ギロロロロロ、お前は確かに優秀な学者の様だな! ……っと、ちょうど電車も駅に到着するようだ。 ユーノ、先の事も結構だが今も重要だぞ、周囲への警戒を怠るな」 「ええ、勿論です。では駅の構内に行きましょう」 『マモナク、F-5ノ駅ニ着クンダベ! オ降リニナル方ハ危険ナノデ、足元ニ気ヲ付ケテ降リルンダベ』 こうして二人は推察を重ね、行動を再開する。 彼らの予想が正しいのか、外れているのかは定かでは無い。 今の彼らに重要なのは近い未来の予想では無く、現在を生き抜く事なのだ。 この電車の着いた先は、かの地獄の番犬が雌伏の時を終えその爪牙を研いでいる虎穴なのだから…… 【F-5/F-5行き電車内/一日目/午前】 【ユーノ・スクライア@リリカルなのはシリーズ】 【状態】健康 【装備】:なし 【道具】:支給品一式、手榴弾(11/12)@ケロロ軍曹、消化器数本 【思考】 基本:打倒主催。 1:F-5駅を捜索。 2:対主催のメンバーを集める。 3:てゐの捜索。 4:ケロロ、ザフィーラとの合流。 5:F-5、F-3、D-2、C-2、B-4の順に駅を回る。 【備考】 ※参加者を使い魔か変身魔法を用いた人間だと思っています。 ※会場はミッドチルダではないが、そこよりそう遠くない世界だと思っています。 ※首輪について 人間化は魔力を流し込むことによって、 結界魔法などは魔力を吸収することによって妨害されています。 ※銀、カエル、グレッグルを危険な獣と認識しました。 ※東方世界の幻想郷について知りました。しかし、てゐのせいで正確性には欠いています。 【ギロロ伍長@ケロロ軍曹】 【状態】健康 【装備】:ガトリングガン@サイボーグクロちゃん(残り85%)、ベルト@ケロロ軍曹 【道具】:支給品一式、バターナイフ、テーブル、キュービル博物館公式ガイドブック・世界編 【思考】 基本:死ぬ気はさらさらないが、襲ってくるものには容赦しない。 1:F-5駅を捜索。 2:対主催のメンバーを集める。 3:てゐの捜索。 4:てゐに少し違和感。 5:ケロロ、ザフィーラとの合流。 6:F-5、F-3、D-2、C-2、B-4の順に駅を回る。 【備考】 ※銀、カエル、グレッグルを危険な動物かどうか、判別しかねています。 ※ユーノを女と思っています。 ※A-6やF-2の駅付近の建物に疑問を感じています。 ※ユーノ達がC-5駅に残したメモには、 ①ユーノとギロロが同行している事②彼らの知り合いであるケロロとザフィーラの身元証明 ③てゐは危険人物では無いと言う事④銀、グレッグル、カエルが危険人物かも知れないと言う事 以上の事が書かれています。 時系列順で読む Back 熊嵐 Next 闇の梯子 投下順で読む Back 熊嵐 Next 闇の梯子 069 罪穢れの澱みを着せて ギロロ伍長 080 Crossfire 069 罪穢れの澱みを着せて ユーノ 080 Crossfire
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/438.html
ユーノがなのはと一緒に風呂に入ったことがあると聞いてアテムまじギレ アテム「覚悟しろよ、この淫獣野郎!」 ユーノ「な、何で怒ってるのさ!?」 アテム「ドロー!モンスターカード!」 デーモンの召還 ユーノ「うわあああ!」 アテム「ドロー!モンスターカード!」 カースオブドラゴン 淫獣 「ああああ!」 アテム「ドr(以下略 単発総合目次へ 遊戯王系目次へ TOPページへ