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前ページ次ページるろうに使い魔 その日、トリステイン魔法学院は快晴だった。 シエスタは、貴族達の服の洗濯をする傍ら、この晴れやかな日差しを心地よく浴びていた。 「今日もいい天気ねぇ」 そんな事を言いながら、シエスタは小鳥たちと戯れつつ、どこかウキウキした様子で洗濯物を干していた。すると…。 「あれ、ケンシンさん?」 シエスタの遠くで、例の気になる男性、あの緋村剣心が、どこか森の中へと入っていくのをその目で見た。 何だろう? シエスタは持ち前の好奇心で、剣心の後を追った。 しばらくして、剣心はおもむろに草木が生い茂る林の中心に立つと、どこか神妙な顔つきで目を閉じていた。 ひっそりと隠れながらも、シエスタはこの気になる行動に疑問符を浮かべていた。 しばらくして…彼の周りから、ただならぬ雰囲気が立ち込めるのを感じた。 そして次の瞬間――――。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 剣心は、それを一気に開放するかのように、急に唸り声を上げた。 それに伴い、パン!! パン!! と周囲に舞う木の葉が弾け飛び、木々は悲鳴を上げる。 シエスタは、この出来事に大層驚き、腰を抜かしてしまった。 「きゃああ!!」 シエスタの悲鳴が聞こえると同時に、剣心はハッとしてそちらの方をむいた。 「シエスタ殿?」 「あ、御免なさい…えと、あの」 シエスタは、しどろもどろになりながらも、これまでの経緯を剣心に話した。 「そうか、それは済まない事をしたでござるな」 「あ、別に大丈夫です。でも…」 聞こうか聞くまいか、悩む仕草をしたシエスタだったが、やっぱり知りたい好奇心が勝ったのか、剣心に質問した。 「さっきのは、一体何だったんです?」 「まあ、気を引き締めてただけでござる」 シエスタは、さらに疑問が増えた。気を締めてた? あれはそんなレベルじゃないような気が…。 シエスタは、吐き出すように気迫を飛ばしていた剣心を思い出し、首をかしげた。 「拙者は、ああして時々気を締めないと、心の具合が黒くなる。だからさっきのようにやって、それを発散させているのでござるよ」 思うところがあるのだろうか、時々左手を見つめながら剣心はそう言った。 「へえ、そうなんですか」 正直、言っている意味はさっぱり分からないが、剣心が言うことなら、余程重要なことなのだろう。シエスタはそう思った。 (ってあれ? これって今、ケンシンさんと二人きり…?) そして、丁度二人っきりだということにシエスタは気付き、顔を赤らめた。 対する剣心は、ルイズの事を思っているのか、どこか考え込むような表情をしていた。 今のルイズに必要なのは、リラックス出来る環境だろう。 何かないものか…そんな事を思案しているうちに、シエスタから声が掛かった。 「そ、そう言えば、ミス・ヴァリエール達と、どこかへ行っていたようですが、一体どこへ…」 単なる話題を作るために、シエスタは質問したが、剣心は困ったような表情をした。 「う~ん、まあ、お忍びでござるな」 頬を指でかきながら、剣心はそう返す。 「へぇ~…そうなんですか…」 少し何とも言えなさそうな顔をして、シエスタはそう相槌を打った。 その後、しばらくの間沈黙が流れたが……やがて意を決したのか、勇気を振り絞ってシエスタは顔を上げた。 「あ、あの、実はですね、今度お姫様の結婚式のときに、特別にお休みがいただけたんですけど…それで…ケンシンさんも、私の故郷をどうかなって…。 とっても綺麗な草原もありますし、気も休まると思いますよ」 シエスタはシエスタなりに、彼の顔を見て思うところがあったのだろう。気を遣うような風で聞いてみた。 剣心は、少しポカンとした感じで、それを聞いて、そして叫んだ。 「それだ!!」 「へっ?」 第二十五幕 『宝探しと冒険』 「う~~~~~ん…」 同時刻、ルイズは学院の中庭のベンチに座り、一人考え事をしていた。 膝の上には、ボロボロの本『始祖の祈祷書』が乗っけられている。 あれから、ルイズは悶々として詔を考えていたのだが、いかんせん良い詩が思いつかない。まだ時間はあるとはいえ、そろそろ何か思い浮かんでもいい頃なのであるが…。 「…どうしよう…」 どれだけ声を唸らせて考えてみても、やっぱり何も出てこない。 ちなみにこの事は、剣心には言ってなかった。何というか、これ以上、彼に頼りっぱなしも良くないと思うし、何よりこれは自分自身の問題だ。 剣心も、その空気を察してくれているのか、必要以上には介入してこない。勿論困ったことがあれば、何時でも駆けつけてきてくれるだろうが。 「はーい、ルイズ」 気付けば、いつの間にか隣にはキュルケがいた。 面倒なのに見つかった。そんな雰囲気を隠そうともせずにルイズは目を細めた。 「…何しに来たわけ?」 「やあね、折角面白いものを見つけてきてあげたのに」 剣呑な雰囲気を受け流しながら、キュルケは胸の、その大きい谷間から何やら取り出し始めた。 それは、幾つかに分けられた羊皮紙の束だった。 「…で、これ何?」 「宝の地図よ」 怪訝な顔つきで見るルイズに、キュルケはしれっと答えた。成程確かに、それらしいことがその紙には書かれている。 しかし、ルイズは怪訝な顔つきを崩そうともしなかった。 「それを私に見せてどうする気よ?」 「連れないわねえ、誘ってるんじゃないの。宝探しに行こうって」 キュルケの言葉に、ルイズはハァ? って顔をした。いきなり何を言い出すのだろうかこの変態巨乳は。 しかし、キュルケの表情は、至って真剣そのものだった。 「あんた、この頃張り詰めてるでしょ」 「えっ…?」 「隠したって無駄よ。昨日の事件を見れば、誰だってそう思うわよ」 ルイズは、昨日の出来事を思い出した。 確かに、あの時自分の感情も爆発して、泣いてしまったことは覚えている。でも…。 「分かるわよ、王子様の事よね。普段強がりばっか言ってるあんたが、人目を気にせずに泣くんだもの。相当辛かったんでしょ?」 「そんな…私…」 「こういう時はね、何か気を紛らわすものが、必要なものなのよ」 キュルケの押しに、ルイズはグイグイ押される。こうなると、彼女は本当に強かった。 「でも、今私は…」 「でももさっちもない! 私が行くと決めたんだから、あんたも行くの!!」 ほぼジャイアニズムのような言動だったが、ルイズは妙に心打たれた。そう言えば、ワルドの結婚を吹っ切らせてくれたのも、彼女の言葉のおかげだった。 家系が家系故に、憎らしさが前面に出てるため、表立って言うことはないが…こういうところは素直に感心するなぁ、とルイズは思った。 確かに、環境を変えれば、まだ何か思いつくかもしれないし、それに、行くのを断れば、またキュルケが剣心をたぶらかそうとするかもしれなかった。それはやだ。 という訳で、ルイズは覚悟を決めた。 「……分かった、付き合うわよ。それで、いつ行くの?」 「勿論今からよ。後タバサと、ついでにギーシュの奴も誘ってあるから」 「ちょっと待って、授業中よ!?」 「いいじゃん、サボれば」 そんな風なやり取りをしていたところへ、上手い具合に剣心とシエスタが通り掛かった。 「おお、ルイズ殿。ちょうど良かったでござる」 「あら、ダーリン。いいとこに来たわね」 ナイスタイミング、と言わんばかりに、二人は同時に口を開いた。 「一緒に宝探しに行かない?」 「少し休養をとってはどうでござるか?」 「…え?」 「おろ?」 しばしの間、同時に放られた言葉の意味を、片側が理解するのに数秒かかった。 そして、剣心はキュルケの持っている地図の方を見て聞いた。 「宝探し?」 「そ、たまにはパァーッとさ。いいでしょ?」 「ってか、休養って何よ?」 ルイズは、隣にいるシエスタを怪訝な表情で見つめながら、剣心に聞いた。 そう言えばこのメイド、最近やたら剣心と一緒にいる気がする。 自分のことで精一杯だったから、そこまで回す気は無かったけど……なんだろう。何か嫌な予感がしたのだ。 女の勘で、何となくシエスタの心情を察したルイズは、無意識に彼女を睨んでいた。 ここで普通なら、貴族に睨まれただけで、シエスタは怯えただろう。しかし、表立っては出さないが、そこだけは譲れないという強い意志を宿して、シエスタも睨み返していた。 二人の間にバチバチと花火を散らす中、剣心がおもむろに言った。 「ルイズ殿、最近思い詰めてたでござろう? あんなことがあったんだし、ここは少し休みでもとったほうが良いと思うでござるよ」 この言葉に、ルイズは内心勝った! と叫んでいた。 いいでしょ? 心配されてるのよ、ワタクシ。アンタなんかにワタクシの相手が務まると思って? しかし、シエスタの方も、あくまでも営業スマイルを崩さずに、ルイズに対抗した。 「いいのですか? 行き先は私の村ですよ? 私の村には何にもない、つまらない所ですよ? 貴族の皆様が満足していただけるかは、保証しかねるのですが」 「へえ、いいじゃない。どんなつまらないところなのか、逆に興味が湧いてきたわ」 笑顔で睨み合う二人を見て、ようやくらしくなってきたなあ、と思ったキュルケは、ルイズたちの間に入って折衷案を出した。 「それじゃ、まず最初の何日かは宝探しで、その後にそこのメイドの故郷に行くって事で、いいかしら?」 「ちょっと待ってください。宝探しなら私も行きます!!」 さも当然だと主張するかのように、シエスタは手を挙げてそう言った。 無論ルイズは即座に反対する。 「はぁ? 魔法もないアンタに何ができるっていうのよ?」 「料理ができます!!」 「それが何の役に立つのよ!?」 「美味しい食事を提供できますわ!!」 相手は貴族だというのに、シエスタはルイズに対し、一歩も引かなかった。 それにより、ルイズは何か内側から燃えるようなものを感じていった。 しかし、これには思うこともあったのか、今度はキュルケが口を挟んだ。 「まあでも、そういう意味合いじゃ、確かにうってつけかもね。マズイ料理なんて私やだし、いいじゃないルイズ。連れてってあげましょ」 「あ、あんたは横からしゃしゃり出て来ないでよ!!」 「ねえ、ダーリンはどう思う?」 ここぞとばかりに、キュルケは決定権を剣心に渡した。 ルイズはグッとした目で剣心を見る。シエスタも、ルイズと同じような目で剣心を見つめた。 そんな二人の雰囲気に若干気圧されながらも、剣心は確認するかのようにシエスタに聞いた。 「休暇の方は、大丈夫なのでござるか?」 「はい、早くに取るつもりですから!!」 「危険もあるかも、でござるよ」 「平気です!! だってケンシンさんが守ってくれますから!!」 即答するシエスタを、剣心は改めてまじまじと見た。意地でも従いていく。目がそう語っていた。 まあ、それなら…と、ついに剣心も折れた。 「シエスタ殿が良いなら、拙者は構わないでござるよ」 「やったあああ!! ありがとうございます!!!」 「ちょ…ケンシンまで何言ってんのよ!!」 一人わぁわぁ喚くルイズとは裏腹に、シエスタはここぞとばかりにガッツポーズをした。 「という訳で、宜しくお願いしますね。ミス・ヴァリエール」 深々と頭を下げながらも、若干皮肉がこもった言い分に、ルイズは思いっきり髪をかきむしって、空に向かって叫んだ。 「もう、何なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そんなルイズの様子を見て、剣心も、やっと少し調子を取り戻したか。と思った。 あの魔法の失敗以来、どこか俯いた感じで、人を寄せ付けないオーラを放っていたが、今のルイズを見ると大丈夫なようだ。 「そんじゃ、今日はもう遅いし、出発は明日から。皆ちゃんと準備してきなさいよ」 キュルケの言葉を最後に、剣心達は一度解散した。 前ページ次ページるろうに使い魔
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リビティーナ リビティナの別名。
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前ページ次ページアクマがこんにちわ 翌日。 ルイズが授業を受けている頃、人修羅はコルベールの研究室にいた。 人修羅が小型の黒板に図を書き、コルベールがそれを元に練金していく…… 昼頃になると、投げやすい形のナイフが十数個、親指の先端ほどのくず鉄が両手に収まらぬほど出来上がった。 「やはり、焼きを入れた鋼で弓矢を作るのは無理でしたなあ」 コルベールが呟く、見ると、足下やテーブルの上には失敗作と見られる鉄くずが幾つも転がっていた。 「すみません、無理を言ってしまって。でもこれだけ武器があればだいぶ楽になります」 「いや、君の意見は斬新でとても興味深い、見聞を広める意味でもこういった機会が得られたのは嬉しいのだよ。しかし、手加減のために武器が必要だとは、何ともまあ…」 人修羅は苦笑いすると、投げナイフを手に取り、バランスを確かめていく。 武器を持つと、左手の甲に浮かんだルーンが輝き始める…同時に、今までの戦いでは得られなかった『極めて精密な力加減』が人修羅の体へと浸透していった。 人修羅は、研究室の壁に立てかけられた木の板に向けて、ナイフを投げた。 絶妙な力加減で投げられたナイフは、的に見立てた節の部分に命中した。 「このルーンは凄いな。投げナイフなんて扱ったこともないのに、力加減が解る」 コルベールはその様子を見て、顎に手を当て頷いた。 「伝説とされていたルーンですからな。まったく素晴らしいものです。ですが武器だけというのは、些か残念でなりません」 「ああ、コルベール先生もそう思います?」 「戦争と武器だけでは、生活は豊かになりませんから」 コルベールはそう言って笑った、が、それはどこか寂しそうな笑みだった。 人修羅はそれを察したのか、そのことについて追求すべきでないと考え、何も言わなかった。 ◆◆◆◆◆◆ そしてその日の夜……。 人修羅は簡易ベッドの上に座り込み、革製のベルトや、道具を入れるポケットを確認していた。 慣れぬ手つきで、革製の袋に針と糸を通し、ベルトに下げられるよう加工していく。 今度シエスタに裁縫を習おうかなぁ、と思いつつ、ちらりとルイズの方を見つめる。 なんだか、ルイズは激しく落ち着きがなかった、立ち上がったと思ったら、再びベッドに腰かけ、枕を抱いてぼんやりとしている。 姫様が来るからだろうか、授業が終わって部屋にこもるなり、ルイズはずっと落ち着きがない。 「焦っても仕方ないぞ」 人修羅が言った、しかしルイズは枕を抱きしめて、じっと黙っている。 ずいぶんと緊張しているんだろうなあ…と考えていると、ドアがノックされた。 規則正しく扉が叩かれる、初めに長く二回、それから短く三回……。 ルイズの顔がはっとした顔になった。 急いで枕をベッドに置くと、身だしなみを整えて、立ち上がりドアに手をかける。 ゆっくりとドアを開くと…そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった、少女だった。 辺りの様子を伺うと、そそくさと部屋に入り、後ろ手に扉を閉めた。 「……あ」 ルイズは何かを呟こうかと、声を上げたが、頭巾をかぶった少女が口元に指を立て、しーっと沈黙のジェスチャーをした。 そしてすぐ、頭巾と同じ黒いマントの隙間から杖を見せると、ルーンを詠唱して振りかざした。 光の粉が、部屋に舞う。 「あっ、ディティクトマジックは!」 ルイズが慌てたが、頭巾の少女はなんのこともなく、ただ頷いた。 「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」 少女はディティクトマジックで、部屋の中に聞き耳を立てる魔法の耳や、どこかに通じる覗き穴がないことを確かめたらしい。 頭巾を取り顔を見せる…現れたのは、アンリエッタ王女だった。 ルイズは慌てて跪き、王女の顔色をうかがった。 「姫殿下!あの、おかげんは…気持ち悪いとかそういったことはございませんか」 アンリエッタは首をかしげつつも、心地よい声で言った。 「おかしなことを聞くのね、私は元気に…いいえいつもより元気よ、貴方に会えるのを楽しみにしていたのですから。ルイズ・フランソワーズ」 ルイズはほっと安堵のため息をついた。 ディティクト・マジックで人修羅を調べたミス・ロングビルは、とんでもないモノが見えて卒倒してしまったのだから、姫様も同じように気絶する恐れがあった。 ちらりと後ろを見て、人修羅の様子を確認する…、そこには開け放たれた窓のみがあった。 どうやら人修羅は、窓から逃げ出したらしい。 ◆◆◆◆◆◆ 「うわあっ!?」 どすん!と音を立てて中庭に着地すると、隣から誰かの声が聞こえた。 「あ、悪い。驚かせた」 人修羅は軽い調子で謝ったが、その誰かは驚いて腰を抜かしたのか、杖と花束を地面に落とし、しりもちをついたまま人修羅を見上げている。 「……き、君はなんだね!?ミス・ツェルプストーの部屋から飛び出てくるなんて!」 「へ?いや、俺はルイズさんの部屋から出てきたんだけど」 「なんだと…」 男は、魔法学院の生徒らしかった、杖を拾い上げると寮塔を見上げ、二つ並んだ窓を見つめる。 「では、向かって右側がツェルプストーで、向かって左側がゼロのルイズか。危なかった、勘違いして覚えていたようだ」 こんな時間に女性の部屋を訪ねるとは、夜ばいだろうか? しかし、よく見ると男は花束を持っている、夜のおつきあいか、紳士的な夜ばいという所だろう。 「ルイズさんの部屋は見ないでくれよ」 「ふん。ゼロのルイズには用はないさ、このベリッソンは灼熱の美女に用があるのだからね!」 そう言うと、ベリッソンと名乗る貴族は、レビテーションを唱えてゆっくりと上昇していく。 ツェルプストーの部屋から炎が飛び出すのは、その二十秒後であった。 ◆◆◆◆◆◆ そのころ、ルイズの部屋では… アンリエッタ王女が、感極まった表情を浮かべて、ルイズを抱きしめていた。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」 「姫殿下、いけませんわ。こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて……」 「ああ!ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたとわたくしはおともだち!おともだちじゃないの!」 <<中略>> まるで歌劇のように、抱きしめて、離れて、くるくると回って再会を喜んだ二人。 しばらくして落ち着いたのか、二人はベッドに並んで座っていた。 王女アンリエッタが愁いを帯びた表情で呟く。 「ごめんなさいね……、あなたに話せるようなことじゃないのに……、でも、貴方にだけは、私の秘密を共有できるおともだちにだけは、聞いて欲しかったの……」 ルイズはアンリエッタに向き直ると、静かな口調で…しかし力強く言い放つ。 「おっしゃってください。幼い頃から明るかった姫様が、そんなため息をつくのには、姫様だけの苦悩がおありなのでしょう?私をお友達と呼んでくださるなら、私は姫様の…いいえ、アンのおともだちとして話を聞くわ」 「…わたくしをおともだちと呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ」 アンリエッタは決心したように頷くと、語り始めた。 アルビオンの王室が、貴族派に追いつめられていること。 貴族派は、エルフからの生地奪還を掲げる『レコン・キスタ』という組織を形成していること……。 アルビオンが陥落したら、次は間違いなくトリステインが狙われるはず…迫り来るアルビオンに対抗するためゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと……。 そのため、アンリエッタはゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったこと……。 「ゲルマニア!あんな野蛮な国に……そうだったのですか……」 ルイズは沈んだ声で言った。アンリエッタの悲しげな口調からも、結婚を望んでいないのが明らかだったからだ。 「いいのよ。ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、夢の中でしか許されないのですわ」 「姫さま……」 そうして、アンリエッタは、ゲルマニアとトリステインの同盟を妨害する、ある手紙の存在を話し出した。 それは、アルビオンの皇太子、ウェールズ・テューダーに当てた手紙であった。 内容は話せぬとしておきながらも、アンリエッタがウェールズを思い、目に涙を溜める姿は、その手紙が恋文であると思わせるに十分だった。 しかもその手紙は、今にも倒れそうな王室の、皇太子が所有しているという。 「ああ!破滅です!ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ、反乱勢に囚われてしまうわ!そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまう!そうなったら破滅です!同盟ならずして、トリステインは一国でアルビオンと対峙せねばならなくなるのです!」 ルイズは息をのみ、アンリエッタの顔を見つめた。 「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは……」 「無理よ!無理よルイズ!ああ…わたくしったら、なんて事を言ってしまったのでしょう!貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」 「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫さまの御為とあらば何処にでも向かいます!姫さまと、トリステインの危機を、ラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、決して見過ごすわけにはまいりません!」 ルイズアンリエッタの前み立つと、ゆっくりと跪き、恭く頭を垂れた。 「このわたくしめに、その一件、是非ともお任せくださいますよう」 アンリエッタは目に涙を浮かべると、ルイズの手を取った。 「このわたくしの力になってくれるというの? ルイズ・フランソワーズ!」 「もちろんですわ! 姫さま!」 二人が見つめ合い、お互いに感激に目を輝かせていると、突然部屋の扉が開かれた。 ◆◆◆◆◆◆ 「何やってるんだお前ら」 「うわ!」「し、静かにっ」 そろそろ良い頃かと思い、ルイズの部屋へと戻った人修羅は、扉にべったりとくっついて聞き耳を立てている二人の生徒を発見した。 すかさず右腕で丸っこい生徒…マリコルヌの頭を抱える。 左腕では、バラの造花を持った生徒…ギーシュの首に腕を回し、ゆっくりと締め上げた。 「 そ れ が 貴 族 の や る こ と か? ああん?」 「~~~~っ!!!!!」「痛ったったったたたっ!」 ギーシュは声も出せず、苦悶の表情を浮かべ、マリコルヌは頭を締め付けられ悶絶した。 「マリコルヌ、お前、誰にも言うなって言ったよな」 「か、勝手に付いてきたんだ、ボクは悪くない!」 「悪いわ!」 人修羅はギーシュに顔を向ける。 「おい、中でなんの話をしているか、聞いたのか?」 「当然だ、こんな夜更けに姫様を見つけたら、気になるに決ま……ぐぇっ」 人修羅は、はぁーと盛大にため息をつく。 そして、行儀が悪いと思いつつも足で扉を開けた。 「立ち聞きしていた不審者をお連れしました」 「まあ!」 「人修羅?そっちはギーシュと…マリコルヌ?」 ルイズは慌てて立ち上がると、人修羅が連れてきた二人を見下ろした、マリコルヌは完全に気絶しているが、ギーシュは人修羅の腕を外そうともがいている。 「外に捨ててきて」ルイズが冷たく言い放つ。 「いや、そういう訳にもいかないだろう」 人修羅は気絶したマリコルヌを床に下ろすと、ギーシュを抱える腕から力を抜いた。 するとギーシュは、ルイズの様子など気にもせず、姫様に向かってまくしたてる。 「薔薇のように見目麗しい姫さまのあとをつけてきてみればこんな所へ……、どうか姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」 「え? あなたは……グラモン? あの、グラモン元帥の?」 アンリエッタが、きょとんとした顔でギーシュを見つめる。 「息子でございます。姫殿下」 ギーシュは立ち上がると、恭しく一礼した。微妙に声が苦しそうなのは気のせいではない。 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」 「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」 熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑む。 「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」 「姫殿下がぼくの名前を呼んでくださった! トリステインの薔薇の微笑みの君が!このぼくに微笑んでくださった!」 ギーシュは感動のあまり、後ろにのけぞって失神した。 「首を絞めるまでもなかったなあ…大丈夫かコイツ」 人修羅はギーシュの頭をつつくと、マリコルヌの隣に引きずって、並べた。 「ところで、貴方は…話からするとルイズの知り合いのようですが」 「姫さま、ええと……人修羅といって、東方よりはるか遠くからきた、私の使い魔…です」 ルイズは少し言いにくそうに、人修羅を紹介した。 「使い魔?」 アンリエッタはきょとんとした面持ちで人修羅を見つめた。 「人にしか見えませんが……あら、不思議な模様が見えますのね、それは貴方の国の装飾なのかしら」 「一応、人です。姫さま」 「装飾じゃないんですが…ルイズさんの紹介の通り、人修羅と言います」 人修羅は床に正座して、アンリエッタに一礼した。 「ふふ……ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね。人を使い魔にするなんて聞いたことがないわ」 「私も驚いてます…」 アンリエッタは人修羅に向き直ると、笑顔を見せる。 「使い魔さん」 「はい?」 「わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」 そう呟いて、すっと左手を差し出した。 手の甲を上に向けている…これはいったいなんのジェスチャーだろうか? ルイズが驚いた声で言った。 「ひひひ姫さま!使い魔にお手を許すなんて!」 「いいのですよ。使い魔とメイジは一心同体、この方もわたくしのために働いてくださるのです、忠誠には、報いるところがなければなりません」 人修羅は後頭部を掻いて、申し訳なさそうに視線を下げた。 「すまないが…お手を許すって、どういう意味なのか解らない。ルイズさんから教わっているが、まだハルケギニアに来て間もないので」 ルイズは人修羅の隣に移ると、小声で囁く。 「ええと、お手を許すってことは、キスしていいってことよ。砕けた言い方をするならね」 「キス!?……ああ、手にか、手だよな? びっくりした」 「あんた何想像してるのよ!」 人修羅はルイズに頭を叩かれ、いてっ、と声を漏らした。 その様子がおかしかったのか、アンリエッタはにっこりと笑っていた。それは民衆に見せるような…いわゆる営業スマイルとは違っていたかもしれない。 ◆◆◆◆◆◆ 人修羅が『風習の違い』という事で、手の甲へのキスを遠慮すると、ルイズは気を取り直してアンリエッタに向き直った。 「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします」 「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」 「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」 「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」 二人の会話を聞いていると、人修羅はテレビで見た皇室の様子を連想する。 よくもまあ、尊敬語とか謙譲語とかで、すらすら会話ができるもんだ… アンリエッタは机に座り、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためていく…。 人修羅はその間、気絶したマリコルヌとギーシュをどうしようか考えていたが、いつの間にかルイズとアンリエッタの会話は終わっており…アンリエッタを見送るついでに、二人を部屋に放り込んでおくことにした。 ◆◆◆◆◆◆ 朝もやの中で、人修羅は季節はずれなコートを身に纏って、ルイズとギーシュが馬に鞍をつけるのを見ていた。 人修羅のコートはオールド・オスマンが用立ててくれたモノで、中にはいくつものポケットや留め具があり、武器や道具を仕舞っておくことができる。 マリコルヌは、早朝にたたき起こし、誰にも喋らないようしっかりと注意しておいた。 まあ、下手をすると戦場を突っ切るかもしれないと理解していたので、マリコルヌはこの任務に付いてこない気だった。 今頃は部屋で二度寝しているだろう。 『それにしてもアルビオンか、相棒、やりすぎて地面を割るなよ』 背かからデルフリンガーが声をかけてきた。 「そこまでしないよ。…たぶん。…おそらく」 人修羅は自信なさげに答えた。 試したことはないが『地母の晩餐』を全力で放てば、大陸ぐらいは崩壊するのではないだろうか。 もし浮遊する大陸で大技を使ったら、どれだけの命が巻き添えになるか想像もできない。 ちなみに人修羅は、馬を借りず、自分で走る予定だ。 そんなとき、ギーシュが、困ったように人修羅へと言った。 「お願いがあるんだが……ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」 「ヴェルダンデか? 確か、ジャイアントモールだよな…地面を掘って付いてくる気かよ」 「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」 ルイズがそう呟くと、地面がもこもこと盛り上がり、巨大なモグラが姿を現した。 大きさは小さいクマほどである。 「そうさ!ああ、ヴェルダンデ、きみはいつ見ても可愛いね。困ってしまうね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」 嬉しそうにヴェルダンデが鼻をひくつかせる、するとギーシュは頬を寄せて頭を撫でた。 「そうか! そりゃよかった!」 そんな様子のギーシュに、ルイズは呆れたように呟く。 「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」 「そうだ。ヴェルダンデはなにせ、モグラだからな」 「いくら早く掘り進めても駄目よ、わたしたち、馬で行移動するし、目的地はアルビオンなのよ」 ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をつき、ヴェルダンデと見つめ合う。 「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……、ヴェルダンデ……」 そのとき、ヴェルダンデは鼻をひくつかせ、臭いを辿るようにしてルイズに擦り寄る。 「な、なによこのモグラ…ちょ、ちょっと!」 巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体をまさぐり始めた。 「や! ちょっとどこ触ってるのよ!」 ルイズは体をモグラの鼻でつつきまわされたが、すぐに人修羅がヴェルダンデを引きはがした。 「こらこら、何をするんだ、いきなり。 …なに?良いにおいがした?」 ギーシュはそれを聞いて、納得し頷いた。 「なるほど、ミス・ヴァリエールの指輪に惹かれたんだろう。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」 「解ったから、今度は押し倒す前に止めような! ルイズさん大丈夫か」 「だ、大丈夫よ。ちょっとビックリしたけど。ギーシュ!あんた使い魔のしつけはちゃんとしなさいよね」 「はははごめんごめん。ヴェルダンデは愛らしくて、つい叱るのを忘れてしまうんだ」 うー、と犬のように唸るルイズ。 嫌みのない笑みでヴェルダンデを撫でるギーシュ。 人修羅はそんな二人組みを見て、呟いた。 「大丈夫かこのメンバーで」 バサッ 「ん?」 離れたところから聞こえる羽音に気が付き、人修羅が辺りを見回す、すると、グリフォンに乗った貴族がこちらへ近づいてきていた。 「ルイズさん、ギーシュ、誰か来たぞ」 ギーシュは驚いて杖を抜き、グリフォンを見た。 ルイズも驚いていたが…その様子はギーシュとは違っていた。 グリフォンをルイズ達の手前に下ろすと、その貴族は帽子を取って声を発した。 「僕は敵じゃない。姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。きみたちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」 灰色の頭髪、蓄えられた髭、長身……非の打ち所のない貴族であった。 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 口を開きかけたギーシュは、相手が格上の存在だと知って、慌てて頭を下げた。 魔法衛士隊は王族の親衛隊でもあり、トリステイン全貴族の憧とも言える存在であった、それはギーシュにとっても例外でない。 「ワルドさま……」 ルイズが、震える声で言った。 「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」 人修羅はぽかーんと口を開けて、ワルドと名乗る男の台詞を聞いた。 僕のルイズ!という台詞はなんか犯罪的だ。 ワルドは人なつっこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、軽々と抱え上げた。 「お久しぶりでございます」 ルイズは、頬をピンク色に染め、ワルドに抱きかかえられている。 「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだね!」 「……お恥ずかしいですわ」 「彼らを、紹介してくれたまえ」 ワルドはルイズを地面に下ろすと、再び帽子を目深に被った。 ルイズは緊張しながら、ギーシュと人修羅の二人を紹介する。 「きみがルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな。ぼくの婚約者がお世話になっているよ」 ワルドは気さくな感じで人修羅にに近寄った。 「あ、どうも…って、婚約者でしたか。」 人修羅は苦笑いを浮かべた、ワルドはその様子を見るとにっこり笑い、ぽんぽんと肩を叩いた。 「どうした? もしかして、アルビオンに行くのが怖いのかい? なあに! 何も怖いことなんかあるもんか。この僕がついているさ」 そう言って、ワルドは笑う。 そんな様子を見て……人修羅は、心の中の叫びを口に出さぬよう、必死で我慢し続けていた。 僕のルイズ? 婚約者? つまり… ロ リ コ ン だ ー ! 前ページ次ページアクマがこんにちわ
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前ページ次ページ虚無の闇 「助けてー!」 夕暮れの村に響いたのは甲高いエルザの悲鳴だった。牙をむき出しにしたアレクサンドルが森から飛び出し、村を歩いていたエルザをさらったのだ。 それにやや遅れて桃色髪の少女が猛追をかける。杖を振りながら地上ギリギリをフライで駆け、隙を見ては氷の矢を飛ばした。だが地面に無数の穴が開くばかりだ。 エルザを盾にするグールに積極的な攻撃は仕掛けられず、逃げ回る彼を追いかける事しかできない。何人もの村人が悲鳴をあげ、慌てて彼らの進路上から逃げ出した。 「見つけた!」 そこに颯爽と現れたのは、村で待機していた雪風のタバサ。先回りしてグールの行く手を遮り、逃げ回る足元へ掃射する。一発が右足を抉り、逃げ場を失った大男はついに足を止めた。 この連携によって必然的に挟み打ちの形となり、アレクサンドルはエルザを突き付けながらも必死に周囲を見回す。二人はジリジリと歩み寄っていく。 「グオオォォォ!!! オ前ラゴトキニイイ! 撤退ダ!」 アレクサンドルは空へ向って大きくエルザを投げ、ルイズたちは慌てて受け止めに走った。気を失ったのか、ぐったりしている体を優しく地面へと横たえる。 その隙にグールはマゼンタ婆さんの家へと逃げ込んでいた。メイジ両名は矢のようなフライで空を駆け、入口から出ようとした彼の胸へと無数の矢を突き立てる。 獣の咆哮をあげながらアレクサンドルはよろけ、逃げ場は無いと見て篭城しようと決めたのか、扉を破壊しかねない勢いで閉ざした。しかし魔法によって扉は一瞬で破壊され、ルイズたちも部屋の中へと入り込む。 「や、やっぱり! あいつがグールだったんだ!」 村人の一人が恐怖に駆られて悲鳴を上げた。小さな家の中からは物凄い破壊音が幾度となく響き、薄い壁を突き破って巨大な氷塊が飛び出しさえした。 狭い家の中で繰り広げられているだろう死闘を想像するも、メイジではない彼らは固唾を飲んで成り行きを見守る事しかできず、ただ少女たちの無事と吸血鬼の討滅を祈る。 胸の前で腕を組んで祈っていた人々は、響き渡る野獣の咆哮に身を竦ませた。果たしてあれは勝鬨であったのか、それとも断末魔だったのか。 「で、出てくるぞ!」 やがて二人の人影が飛び出すと、吸血鬼の根城はメラメラと炎上を開始した。熱で窓が砕け、穴の開いた壁からは炎が噴出す。大量の煤と煙が高々と立ち昇った。 ごくりと生きを飲んだ村人の顔が、次々に笑顔に染まっていく。天から始祖ブリミルが光臨なさったように、人々は尊敬の眼差しを持って出迎えた。 壊れた扉から出てきたのはグールと吸血鬼ではなく、あの騎士たちだ。所々汚れてはいるが、膨らんでいく希望に答えるように笑顔を浮かべている。 蒼い髪の方、つまりタバサは不安そうに居並ぶ村人たちを見回し、杖を掲げながら宣言した。 「吸血鬼とグールは、討伐された」 ハッキリと響く声に、村人たちは大歓声をもって答えた。 その後は村を挙げてのお祭り騒ぎとなった。今まで眠気を誘わないようにと、飲みたくとも飲めなかった酒を浴びるほど飲みまくる乱痴気騒ぎ。 打ち付けていた窓をこれでもかというほど開け、長らく篭っていた淀んだ空気を換気する光景が村のあちこちで見られた。薪の節約のために最低限にされていた火焚きも、明日からは制限される事は無い。 長老も村が救われたと大喜びし、任務は終わったと出発しようとする一行に縋りつかんばかりの勢いで引きとめた。そこまでされては悪いと、一晩だけ泊めて貰う事になる。 「いやあ、助かりましたぞ! 騎士様! まさかあれが演技だったとは知らず、とんだご無礼を……!」 「気にする事は無いわよ。敵を騙すにはまず味方から、ってね」 豪華な食事を振舞われながら、ルイズは得意げに言った。タバサは黙々とニガヨモギのサラダを食べているし、シルフィードは苦い物以外を片っ端から口に詰め込んでいるため、必然的にルイズが話役になっている。 タバサは相変わらず無表情だが、キュルケが見れば悩み事があると看破しただろう。事実タバサは、マゼンタ婆さんを吸血鬼として生贄に捧げたことを後悔していた。 しかし彼女を救う方法などなかったのだ。もとより吸血鬼だと疑われていたし、息子のアレクサンドルは本当にグールだった。一人で生活する事が出来ないのだから、もう彼女の未来など決まっている。 息子の死を嘆きながら不便な生活を送り、その中で孤独な死を迎えるよりはいいとルイズは言った。タバサはそれを覆すだけの考えが浮かばなかった。 ルイズのベホマによって一時的には動けるほどに回復したグールだが、擬似的な生命活動しかしていないのが仇になり、完璧に治癒させる事は出来なかった。エルザを襲わせた時はかなり無理していたから、いつただの死体に戻ってもおかしくなかったのだ。 恐慌状態の村人ではなく、最愛の息子の手で逝けたのだから、感謝されても良い位だと笑う。本人はもうこの世に居ないのだから、どちらが幸せなのかは永遠に謎のままだ。 「それで、エルザなのですが……。引き取り手に、心当たりがあります。任せてもらえないでしょうか?」 「おお、それは素晴らしい! こちらからお願いしたいほどです! ……エルザを、よろしくお願いします」 グールに誘拐されたのがショック療法になったという事で、エルザはルイズたちに懐いていた。30年以上も生きている彼女の演技だけあって、付き合いのある長老もころっと騙されている。 ダメだといわれれば勝手に連れ帰る予定だっただけに、堂々と村を出れるのは後腐れがなくてよかった。いつの間にか椅子の隣に立っていたエルザの頭をルイズは優しく撫でる。 事情を知る者にとっては後味の悪い、知らない者にとってはせめてもの歓迎だった夕餉。上っ面だけは砂糖とクリームでデコレーションされた場だった。どす黒い内側を知っているタバサの表情は硬い。 頃合を見て切り上げ、食べすぎでダウンしてしまったシルフィードを運びながら部屋に戻る。 「任務は成功、それでいいじゃない」 ベッドの上で変な唸り声を上げるシルフィードに回復呪文をかけながら、ルイズは大げさに肩を竦めた。どうやら食べ過ぎまで治せるほど便利ではないようだ。 シルフィードの自棄食いはルイズが原因だった。吸血鬼を連れ帰るのはまだしも、マゼンタ婆さんを犠牲にしたのが許せなかった。タバサの説得によってどうにか理解はしたものの、納得はしていなかった。 それでもきゅいきゅいと騒ぎ立てないのは、タバサが珍しく感情を出してお願いしたのと、約束どおりお腹一杯食べれた事、そして普段のルイズにはなんとなく逆らえないから、らしい。 やがてドアがノックされ、エルザがしきりに周囲を見ながら入ってきたときには、シルフィードは鼻提灯をつくっていびきをかいていた。 「さっきは偉かったわよ、エルザ……」 「はっ! は、はい、ルイズ様っ!」 扉を閉めるなり、エルザはガタガタと震えださんばかりだった。人を騙し命を奪う吸血鬼からは考えられないほどの弱気だ。 完膚なきまでに心を砕かれ、魂にまで楔が打ち込まれている。もはやエルザは、眠っているルイズを前にしても毛筋ほどの反抗を見出せないだろう。 万が一にも起きて来ないようにシルフィードへ眠りの呪文をかけさせ、タバサがサイレントによって音を遮断した。これでルイズたちの会話を聞くものは居ない。 「さて……、エルザ。貴方の役目は、うちの学院長をグールに変える事よ」 ルイズの口から紡がれるのは恐ろしい計画だった。優秀なメイジとしても名を馳せたオールド・オスマンを操ろうというのだ。 最高責任者である彼を傀儡と化せば、学院では限りなく自由に動けるだろう。一生徒では知りえない情報も無数に得られるし、300年の時を生きたとも言われているオスマンの知識だけでも、両手に余るほどの黄金と同じ価値を持っている。 「それは……」 「あら? どうしたの、タバサ」 自分の複雑な事情を知ってもなお自分を生徒として受け入れてくれた恩人を、グールにするという最悪の形で裏切る事は良心の呵責を感じるようだ。無駄とは思いながらも説得するタバサの口調は重い。 「絶対に彼である必要は無いけれど……。タバサ、本当にいいの? フェニアのライブラリーには、貴重な書物も数多くあるというわ……。貴方のお母様を治す薬の情報だって、見つかるかもしれない。 それどころか、彼なら解毒剤そのものを持っている可能性だって有るわ。そうではなくても、手に入れるコネがあるかも。 私の魔法だって万能では無いから、解毒できない毒という物も存在している……。貴方の目的を達成できる手段は、一つだって多いほうがいいんじゃない?」 タバサの心は激しく揺れ動き、深く俯きながら杖を硬く握り締めている。タバサの持っている優しさと、目的を達成したいという欲望が戦っているのだ。 ルイズとて心を完全に操る事などできはしない。ただ甘い甘い毒を注ぎ続け、心のありようを少しずつ変えて行く事なら可能だった。 「タバサ、よく考えてみて……。オールド・オスマンは名前の通り老人よ? 明日にでも老衰してしまってもおかしくないわ。 あなたのお母様は、少なくとも彼よりは長く生きるのは間違いないでしょう? 必要な犠牲なのよ。 それどころかグールになれば、吸血鬼が生き続ける限り死ぬ事は無いわ。人助けといっても過言じゃないぐらいよ」 「……でも」 ようやく顔を上げたタバサだったが、その瞳には深い迷いが刻まれている。心中の動揺はよほど激しいのだろう。 人形であるという封印、そして作り上げた鎧にヒビが入っていた。その隙間から更なる魔が入り込む。 「それに、新たに摂取しないでも何年も効き続ける毒だなんて、よほど強力な物に違いない。 アルコールを飲み続けた人がどうなるか、タバサだって知っているでしょう? その先にあるのは死か、それに近いものだわ。 今ならまだきっと治せる。そう、今なら間に合う。まだあなたのお母様は手の届く所に居るのよ。間違いないわ。 でも、1週間、1ヶ月、1年。未来は誰にもわからない。永遠に手が届かない場所まで、毒に侵されてしまうかもしれない……」 人は誰しも悪魔になりたい訳ではない。ただ欲望と倫理観の秤が一方に傾いた時、そこに悪人と善人が生まれるだけだ。 タバサに染み込んで行く毒は少しだけ、そう、ほんの少しだけ、そのバランスを崩す役割をする。 「それに……」 「やって」 言葉を止めたルイズが再びタバサの瞳を見つめる。あの澄み切っていた瞳は間違いなく、ほの暗い濁りを持ち始めていた。 「オールド・オスマンをグールにして欲しい」 その声は吹雪のように響き、雪風の名に相応しい冷気を纏っていた。 イザベラ・ド・ガリアは恐怖を感じていた。今度こそ間違いなく死ぬだろうと思っていた人形娘が、衣服の乱れさえ無く帰ってきたからだ。 その報告を聞いた時、彼女はあまりに驚いたので嫌がらせを思い浮かべる暇さえなかった。侍女たちがシャルロットと呼んでいる事を咎めるのも忘れたほどだ。 淡々と報告をするシャルロットの目に感情の二文字は無く、布の塊であるヌイグルミのほうがよほど暖かいと断言できるほどの、冷たくて無機質な眼でイザベラを睨んでいる。 その瞳はこれまでになかった何かを孕んでいるようで、目を合わせてしまったイザベラは恐怖で叫びだしたくなった。必死のプライドで悲鳴を押しとどめ、精一杯の虚勢を張った。 「も、もう、用はないよ! 下がってな! ガーゴイル!」 去り際のタバサの顔は底知れないものを感じさせ、イザベラは全身を冷や汗で濡らした事を否定できず、もはや任務を言い渡すことさえ恐ろしいと思った。 怒った顔を見ればあいつだって人間だと安心できるはずだったのに、あんな顔をされたら、とても人間だとは思えないではないか。 侍女たちへ部屋で休むと怒鳴りつけながら、イザベラはただ背筋を襲う寒気に身を震わせた。 何も言われなかったことに少々の困惑を覚えつつも、プチ・トロワを後にしたタバサは、適当に書店を回った後で待ち合わせの場所へと向かった。 ルイズに言われたような珍しい本は無く、タバサが欲しい本も無かった。少なからず落胆したが、これから食事だとおもって気を取り直す。 タバサが数ある店の中から選んだだけあって、かなりレベルの高い店だった。大通りから一本内側へと入った所にあるお陰で落ち着いて食事ができるし、舌の肥えた貴族をして味も良いと評判のお店である。店主がハシバミ草の愛好家だというのもタバサの琴線に触れた。 苦味を抑えつつも独特の風味を生かしたハシバミ草のパイから、店主お勧めだが常人では苦すぎるニガヨモギとハシバミ草のサラダなど。オープンして間もないが、すっかり常連となっている。 「エルザ、パイを切るときは、こう、横にして……。あ、おかえり」 店に入るなりルイズがエルザの分のパイを切り分けているのを見てしまい、タバサは思わず硬直してしまった。生地の上に載せればミートパイだと言い張れるほど酷い事をやった割には、妹にやるような対応の仕方だ。 エルザの方はまだ思いきり腰が引けているが、日差しの降り注ぐ真昼間から貴族用の店でパイを食べた経験など吸血鬼には無いようで、慣れない手つきでパイをつついては美味しいと目を見開いている。 普通にみれば和む風景だけれども、あれを見てしまったタバサからすれば違和感があった。ここで目を覆うような事をやられても困るのは事実だけれども、オーク鬼がドレスを着てダンスを踊っているのを見たような気分になる。 「あら、私はとっても優しいわよ?」 タバサの顔をみて何を考えているのを察したようで、ルイズは自分のクックベリーパイにナイフを入れながらのたまった。 そのナイフをいつエルザに突き立てるのではないかと不安に思うタバサだったが、自分のお腹が小さく音を立てたのを聞いて、頬を赤らめながら席に座る。シルフィードも今頃は王宮で食事を貰っているはずだった。 メニューを真剣な眼差しで眺め、ハンターが獲物をねらうように品定めする。やってきたウェイターが常連客であるタバサに気づいたのか、よければ開発中の新商品の味見をすればいいと言い出し、タバサは当然のようにそれを加えたハシバミ草のフルコースを頼んだ。 他に客の少ないお陰か料理がやってくるスピードはかなり速く、あっという間にテーブルの上には所狭しと皿が並べられる。3人分と言われても頷ける量だったが、タバサは料理を取ってはひたすらに口に運ぶという作業を続け、見事に完食して見せた。 「相変わらず凄い食欲ね……」 「普通」 至極当然と言い切るタバサだったが、先ほどのウェイターがやってきて「流石はハシバミ草大食い大会の優勝者だ!」と褒め称えると頬を赤くする。 対照的にエルザは、ルイズが頼んだクックベリーパイを1切れ食べただけだった。人間用の食事は喉を通らない訳ではないが、ほとんど栄養には出来ならしい。長年に渡って人間の演技をしてきたから、味覚は似ているようだが。 幸いにも店を出て書店を巡っている途中、人気の無い裏道でいかにもチンピラといった男が居たため、それがエルザの昼食となった。 男の首がへし折られ、物陰へ引きずり込まれるのを見ていたが、タバサは何も言わなかった。 太陽が赤銅色の光を放つ頃、一行はラグドリアン湖のほとりにあるオルレアン公の屋敷へと降り立った。 歴史を感じさせる立派な門にはガリア王家の家紋が刻まれていたが、それは斜めに大きく切り裂かれ、王家でありながらその権利を剥奪された事を示している。 シルフィードの背中に乗って上空から見た限り、屋敷の周辺だけは庭の手入れもされていたが、それ以外の部分は雑草が伸び放題になっている場所も多々あった。 ほぼ完全に手入れが行き届き、美しい庭園をいくつも抱えているヴァリエール領からすれば、あまりに無残だ。それでも客人が通るような道だけは、失礼にあたらないように手入れがなされている。 玄関前の馬周りまでタバサたちが歩いて行くと、屋敷の中から一人の老僕が息を切らせて飛び出してきた。 「おお! お嬢様……! よくぞ、よくぞご無事で……!」 興奮で顔を赤くした彼の目じりには涙が浮かんでいる。吸血鬼を一人で討伐して来いと命じられたのだから、もうタバサは帰らないものと思っていたのだろう。 それでも良くできた執事の本能で、主人たるタバサに抱きつくようなまねはしなかった。ただ深々と腰を折り、3人を恭しく屋敷へと招き入れる。 豪華な外見に負けないほど内装はどれも美しく、掃除も完璧に行き届いていたが、邸内を居間まで歩いても誰ともすれ違わない。葬式でもやっているような静けさだった。 「このぐらいの人数なら、どこかに隠れるというのも容易そうね」 いずれここを逃げ出す事を考えれば、使用人が少ないのは好都合だ。このサイズの屋敷を管理できるほどの少数精鋭ならば、有能であることは疑いようもない。 ルイズは柔らかいエルザの体を膝に乗せる形で抱き抱え、無意識的に肌を撫でている。抱かれているエルザの表情は場違いなほど歪んでいるが、抱き心地が悪いと耳元でささやかれて以来、命令に反して体を硬直させるという自殺行為はしていない。 タバサはこの吸血鬼の少女に少しだけ同情した。あれがよほどのトラウマになったのか、ルイズが命じれば例え火の中だろうが刃の中だろうが構わず突撃していきそうだ。 だが完全に地獄というわけでもなく、ルイズは基本的にはエルザに優しい。二人ともリュティスで購入した貴族用の服を着ているから、見ようによっては姉妹のように見える。購入費用はルイズのポケットマネーだった。 ルイズが自分の血を飲ませているのを見た事があったし、彼女にとって今の生活とメイジに追われる生活のどちらが幸せなのか、タバサには判断できなかった。 「お母様を見てほしい」 先に連絡用のガーゴイルを使って手紙を送ったものの、基本的には使用されない浴槽を稼働させるにはかなりの時間が必要だった。ただでさえ人手不足であるから、尚更だ。 お風呂の用意が出来るまでの時間を使って、タバサは母の治療を頼むことにした。先住魔法を使えるエルザとルイズのコンビは、そこらの水メイジを十人単位で掻き集めるより有能だろう。 それでもつらい現実を突きつけられるのが怖いのか、タバサの表情は普段よりも輪をかけて無表情に見えた。杖を握る腕にも力がこもっている。 「タバサ、安心して。あなたのお母様は、絶対に取り戻すわ」 その胸のしこりを解きほぐすように、絶妙のタイミングでルイズが優しい言葉をかけた。愛を失って砂漠のように乾いていた心に、麻薬の溶けた水が染み込む。 タバサは溺れてはいけないと思いながらも抵抗できず、エルザにやるように頭をなでるルイズの腕を振り払えなかった。慈愛と優しさが手の平から流れ込んでくるように感じ、顔が少し赤くなる。 「……こっち」 やがて頬の熱を自覚したのか、気恥ずかしいとばかりに振り返ったタバサの後に一行は続く。ニヤニヤと生暖かい眼差しを送るルイズを直視しかねたのか、タバサはたまに視線を送ってはすぐに逸らした。 相変わらず人気のない屋敷の中を歩き、母が捉えられているという部屋の前まで来た。何度かノックしたタバサがドアを開くと、中から響いてきたのはヒステリックな女性の声だ。それを聞いたタバサは苦虫を噛み潰したような表情になる。 部屋はどんよりと薄暗く、この屋敷では考えられないほど物が散乱している。まともに掃除もできないのか、部屋の隅には蜘蛛が巣を作っていた。 「王家の回し者め! シャルロットを亡き者にする気ですか!」 投げつけられた香水の瓶を、タバサは避けもせず額で受けた。裂けた皮膚から一筋の赤い川が流れ、それを見たルイズが顔をしかめる。 手元にある小さな人形をシャルロットだと思い込んでいるようで、タバサの母は人形をわが子のように抱きしめていた。彼女にとってはあれこそがシャルロットなのだろう。 伸び放題の髪とやせ細ったその姿が合わさって、横にいるエルザなどよりもよほど吸血鬼じみて見える。人間をこうも狂わせる毒となれば、かなり恐ろしい物だといえた。 最愛の娘を前にして人形を抱き続け、娘を守るための言葉が刃となってタバサを切り裂く。彼女はエルザの先住魔法によって深い眠りに落ち、部屋にはようやく沈黙が戻った。 無害とはいえ魔法を使うのは心が痛むのか、タバサは涙を隠すように俯いて押し黙った。 「これほどまでとはね……。エルザ、どう思う?」 右手に霧を集めながら弛緩した肉体の上で手を滑らせていたルイズは、大きく溜息を吐いてエルザへと向き直る。 あわよくば霧に吸収させる事も出来るのではないかと踏んだのだが、そこまで軟な毒ではなかったようだ。下手に刺激しては人格が壊れる可能性がある。 不機嫌な主に指名されたことで体を震わせた少女は、殆ど何も分からなかった事におびえながら、それでも必死に思いついた事を並べた。 「は、はい……。その、水の先住魔法みたいな、感じが、しました……。グールとは、またちょっと、違くて……」 「やっぱり、毒というよりは呪いって感じね……。キアリーではなく、シャナク、か……。ありがと、エルザ」 タバサの額の傷をホイミで癒しながら、ルイズはよほど強力なものでない限り毒は消せるだろうとタバサの耳元で囁いた。少なくともエルフが作れる薬程度のものなら、まず間違いないと。 そしてそのためには、ルイズだけが使える魔法の情報を集めなければならないと言った。オスマンをグールにすれば、その情報も見つかるかもしれない。 すでにタバサの中でオスマンをグールにする事は決定事項であり、母が取り戻せる可能性が大きいと聞いて、抑えがたい期待に胸を膨らませた。 「今はまだ、これぐらいしか……。できないけれど」 憑き物が落ちたように眠り続けるタバサの母をベッドに運び、ルイズはできる限りのベホマを唱える。温かな光が全身を包み、ほんの気休めだが、それでも少しは血色がよくなった。 これ以上ここに居ても出来る事は無いと、ルイズとエルザは一足先に浴場へと向かった。扉が金属音を立てて閉まると、薄暗い部屋には微かな寝息だけが響いている。 独り残ったタバサは、安らかに眠る母の胸に縋りついた。暖かい体温を貪るように顔をうずめ、涙を零しながら宣言する。 その顔は幼子のように脆く、老人のように硬く、少女のように純粋で、暗殺者のように淀んでいた。噛み切られた唇からは一筋の血が流れ落ち、純白のシーツに無数の花を咲かせた。 「貴方の夫を殺し、貴方をこのようにした者どもの首を、いずれ必ず、ここに並べに戻って参ります。 かの簒奪者を骸を引き裂き、オーク鬼に食わせ、魂を永遠の煉獄へと送りこんで見せます。尽きることのない地獄を見せてやります。 その日まで、貴方が娘に与えた人形が仇どもを欺けるようお祈りください」 心を満たし、ついには溢れ出た憎悪は、人形の顔を恐ろしい悪鬼へと変貌させていた。 前ページ次ページ虚無の闇
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前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ 「うえ~ん!!! びえ~ん!!! うわあああああん!!!」 翌朝、ルイズはベッドの上でおいおいと泣いていた。 「なんで!? なんで私がこんな目に遭わなきゃいけなかったのよ!」 ルイズは泣き喚きながらももえの胸をぽかぽかと叩く。 原因はあの時のネギである。はじめ、ルイズは頭が呆けていてよくわかっていなかったのだが翌日、下腹部から血が出ているのを見た途端にルイズは青ざめた。 「まあまあ、処女膜なんて新体操をやってる人は練習中に突き破っちゃうぐらい軟い物らしいし」 「新体操って何よ! それに全然フォローになってないわよぉ!」 殴り疲れたルイズはまたえんえんと泣き始めた。これにはキュルケもタバサもももえもなす術がない。 「だいたいあんたがネギをあんなところに突き刺すからこんなことになったんじゃないのよぉ! 無機物にバージンを奪われるなんて……うっ、うわああああああんんんん!!!!」 ルイズはベッドをドコドコと叩きながら泣き喚き続ける。 「………じゃあ、後ろ…は…これで…」 メイドのメイが取り出したのはルイズが持っていた杖だった。 「いいいいい、そっ、そんな太くて硬いので逞しいので貫かれたら大変なことになるじゃない!」 それを聞いたメイは残念そうにその杖を自らの懐にしまった。 「………ってそれ、私の杖じゃないのよ! あんた何勝手に自分のものに……ってあれ?」 「…ようやく…泣き…止んで…くれ…まし…た…。」 そう言って、メイはルイズにあっさりと杖を返したのであった。 「あっ、ありがと……。」 ルイズがこの館に来て初めて口にした感謝の言葉であった。 有馬記念で四位と武に殺意を抱いたあなたに贈る「ゼロの使い魔死神ガーゴイル友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィードネギ香水下級生ももえサイズ」 落ち着きを取り戻したルイズは朝食を取ると杖を持って誰もいない裏庭へと向かった。 空は昨日とはうってかわって快晴である。太陽の光が眩しいくらいだ。 だからこそルイズは誰もいない日陰を求めて裏庭へとやってきたのだ。 杖を掲げたルイズは目の前にある大木に向かって呪文を唱える。 「メラゾーマ!」 そう言うと、杖は急激に光を帯びて周りを包み込む。そして……… ちゅどーん 見事杖は暴発を起こし、爆発した。 「もう、全然駄目じゃないのよ! この前は大きな炎を上げることができたのにぃ!」 確かに周りは爆風でめちゃくちゃになっていたのだが、自分自身はなぜか無傷という事実の重要性にルイズはまだ気づいていない。 その後ルイズは、イオ・ヒャダルコ・ザラキーマ等々の呪文を唱えてみるものの結果は同じだった。 「なんでっ…! どうして……っ!!」 ルイズは悔しさのあまり地面をドンドンと叩いた。 繰り返すがルイズの半径数メートルは爆風でぼろぼろになっているのに、ルイズは全くの無傷である。 「そうだ…。これは、杖……うん、この杖が悪いのよ! ダンジョンの中では、他の杖使ってたし。うん!」 ルイズはそう結論付けた。 「あっ、でも………。」 しかし、ルイズは思い直す。さっき使った魔法はダンジョン内でよく使ってた魔法だけだ。ひょっとしたら他の魔法は使えるかもしれない。 「だめもとでしてみようかしら………」 そうつぶやきながら、ルイズは目の前の大木に向かって杖を構える。 「はああああああああああっ!!!」 ルイズは精神を集中させ、そのすべてを指先に注ぎ込む。そして杖が光りだす。 「ファイアーボール!」 そう唱えた瞬間、光が丸くて大きな炎へと変わってルイズの杖先から発射される。そして、目の前の大木がそれをもろに受けて爆発した。 「………できた。 私、できたっ! できたぁーーーーっ!!!」 しばし呆然としていたルイズだったが実感がわくと、飛び上がらんばかりに喜びを表現した。 「いやっほう! 私はもう"ゼロのルイズ"なんかじゃない! 魔法が使える! 使えるんだー!だー!だー!」 ルイズは拳を何度も振り上げて喜びまわる。さっきまで物のせいにして落ち込んでいた人物とは思えないぐらいのはしゃぎっぷりだ。 「おーすごい、そのファイアーボールってなんかかっこいいね。」 すると、影から見ていたももえが手を叩いてルイズのことをこう褒め称えた。 「さすが私の見込んだ使い魔だねっ!」 「………えっ?」 ルイズは突然の言動に頭が真っ白になりつつも状況を冷静に整理しようとした。 「っていうか私がご主人様であんたが使い魔よね? 間違ってないわよね?」 「じゃあ証拠見せてよ。」 対するももえは気だるそうにそう言った。まるで自分が主人で使い魔の反抗をあしらっているかのようだ。 「しょ、証拠ってあんた……だいたいあんたには体に紋章が 「だって私あんたより強いし。」 「いや、強い弱いとか関係ないから。だいたい、私は貴族なのよ、わかる?」 ルイズは無い胸を張って自分が貴族であることを強調する。 「そう、私は誇り高きヴァリエール家の三女。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなのよ! あなたは使い魔なんだから私に平伏しなさい!」 ルイズは自分でしゃべりながらテンションが上昇していた。そしてそれにももえが追い討ちを掛けるかのように 「ルイ…ルイ…ルイボスゴールド?」 「ルイしかあってないじゃのよ! あんたいい加減に私の名前を覚えなさいよ!」 ルイズはももえのせいで完全に頭に血が上っていた。さっきまで長年の目標を達成して喜びの境地に達した人物とは思えないぐらいの苛立ちっぷりだ。まあ原因はももえにあるのだが 怒りのあまり、ルイズはがしっと目の前の肩に掴み掛かる。ももえの肩は肩代わりされている死神の手がついているのだがそんな事はお構い無しに、がくがくと上下に揺らす。 「だいたいあんたここに来てから使い魔らしい事何一つしてないじゃないのよぉっ!」 「え~~~~~だってぇ~~~~~わたしも下僕とかぁ~~~~はべらせたいしぃ~~~~~だいたいあんたのいう使い魔ってぇ~~~~ どうせ下着とか洗わせてぇ~~~食事とかでわざと屈辱的なことをさせてぇ~~~~キレたら鞭とかで叩いたりするんでしょぉ~~~~~~」 ももえが突然こんなしゃべりになっているのはルイズががくがくと揺らしているので首も上下にがくがく揺れているからである。 「わっ、私をなんだと思ってるのよ!」 と聞かれたももえは即答で、 「ロリツンデレピンク髪。あとぺたんこ」 ぶちっとルイズのどこかが切れた音がした。ルイズは顔を真っ赤にさせてあらん限りの力を込めてももえを突き飛ばす。 「うるさいうるさいうるさい! 属性で私を表現するなぁーーー!!!!」 怒り狂ったルイズがももえに杖を構えたその瞬間――― 「頭に乗るな小娘。」 凍てつくような声によりはっと我に返ったルイズは、恐る恐る声のした方を振り返ってみるとそこには水兵服を着た女性がいた。 「あっ、あなたは確かももえのお母さんの……もごもご 「おっと、ももえの母親についての話はそこまでだ。」 水兵服姿の女性はすかさずルイズの口に封をする。しばしルイズは腕やら身体をもがきながら暴れていたがそれも収まってルイズはその場に崩れ落ちた。 彼女はようやくルイズの口から手を離した。 「じゃ、じゃああなたの名は…」 「ふっ、よくぞ聞いてくれた。」 ルイズが崩れ落ちたままなのを気にすることなく彼女はこう宣言した。 「ある時はドクター、ある時は鍋奉行、またある時は時の神。話が変われば職も変わる。 その名は"流しの悪魔"!」 流しの悪魔と名乗った彼女はそう言って颯爽とポーズを決める。 すると今まで様子を見ていたももえが彼女に話しかけてきた。 「流しの悪魔さん、私たちに何か用ですか?」 「ああ、お前達が勝負事をはじめようとしているのを見てたらいてもたってもいられなくなってな。」 「えっ? 反応それだけ!? っていうかもうちょっと驚くなり何なりしたらどうなのよ! 私はこいつに口を押さえられてきいずみ行きの馬車に乗せられてどっかへ行こうとしていたのよ! だいたいこの人はあんたの 「よくぞ聞いてくれたっ!」 いつの間にか復活したルイズの話を完璧に無視した流しの悪魔は、今回の目的について説明し始めた。 「今回は流しの悪魔立会人! お前達の勝負私がしかと立会いして見せようではないか!」 おー。とももえは手をぱちぱちさせている。ルイズはももえに貶され、流しの悪魔に殺されかけてますます機嫌が悪くなっていく。 「ところでお前達。さっきまでどちらが強いかについて争っていたのだな?」 ルイズとももえは頷いた。すると、流しの悪魔は 「どちらが強いかなどと争うことは不毛極まりない!」 そう怒鳴ると流しの悪魔がその場で大きく足踏みをする。 すると地面がわずかながらに隆起し、ルイズのいた場所はわずかに地割れしているではないか。ルイズは戦慄した。 「いいか、逆に考えるのだよ。"どちらが主人にふさわしいのか"ではなく"どちらが使い魔にふさわしいのか"と」 「という訳で」 流しの悪魔のその宣言によって急遽はじまった、ももえとルイズのタイマン勝負。 「第1回チキチキ使い魔三本勝負~~~~~!!!!」 ギャラリーは多ければ多いほど良いという理由で呼び出された、死神家一同とキュルケとタバサもいた。 彼女らは焼け野原の上に線を引いただけの特設ステージの外から二人の様子を見守る事にした。 「やるからには勝って上下関係をはっきりとつけさせてもらうわよ。モモエ」 「それはこっちの台詞だね、ルイズちゃん。」 顔を見合わせて火花を散らせる両者。キュルケとタバサはいまいち状況が飲み込めない様子で二人とも顔を見合わせるしかなかった。 「端的に言いますとももえお嬢様の挑発にルイズさんがまんまと乗ってしまわれたのであります。」 「はあ………」 キュルケは唖然としながらも博士の話を聞いていた。すると、メイやヒルから横槍が入れられる。 「……でも、…ルイズ…さん…は……、…とても…いい…人だ…と…思いま…す」 「ああ、俺もそう思うな。あそこまでお嬢さんの行動に対してノリノリの奴なんてそうはいないからな。」 「そうなんだ………。」 オクタイ君やケモンもうんうんと頷いているのを見るとどうやらルイズは、死神家の使い魔たちからは良い印象をもたれているようだった。 「ただ、肝心のお母様がねえ………」 キュルケは流しの悪魔のほうを向いて小さくため息をついた。 「私にもわからない………。」 タバサもそう呟いた。流しの悪魔が時折向けるルイズに対する鋭い視線がタバサにとって気がかりであった。 そして流しの悪魔からまだ明かされていなかったルールについて言い渡される。 「使い魔というのは、感覚の共有、秘薬の捜索、主人の護衛。大きく分けて3つあるのだが………」 ルイズとももえがごくりと息を呑む。 「今回はそんな非現実的なことはしない。なのでかわりに家来、下僕、パシリ。この3つの称号をかけて争い、より多くのポイントをゲットしたものを勝者とする。」 「………はぁ?」 「では、そう決まったところで"家来"の称号を得るための第一勝負についてだが………」 「ちょ、ちょっと! あんたいい加減にしなさいよ! なんど私を無視すれば気が済むの………って、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!! みっ、耳は引っ張らないでぇ!!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」 「すでに勝負は始まっている。油断するな、小娘」 流しの悪魔は無表情のままルイズの右耳を引っ張っていた。ルイズの耳がだんだん赤く腫れ上がっていくのがわかる。 「おー、二人とも楽しそうにじゃれあってるねえ」 「これのどこがじゃれあってるように見えるのよぉ!」 ルイズは涙目になりながらそう叫んだ。 「仕方ないなぁ………何とかしてほしい?」 ルイズは首を激しく縦に動かす。そして、それを見たももえはカマを取り出してルイズの耳元に構える。 「じゃあ…それごとルイズの耳を切断……」 「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!」 「大丈夫、大丈夫 盲目の人でも皇帝暗殺をしようとした元気な人もいるから。だから耳ぐらいどうってことないって」 ???ものしり館??? 高漸離【こうぜんり】 中国戦国時代の人物。秦王(始皇帝)の刺客として有名な荊軻の親友である。 荊軻の復讐を目論んだ高漸離は筑の才能を生かして名前を隠して秦王に使えていた。 後に高漸離の目論みは秦王に露見したのだが、才能を惜しんだ秦王は高漸離の目を潰してそのまま仕えさせた。 高漸離は筑を投げつけて秦王を殺そうとしたが、盲目だったため外れて謀殺された。 「いやいやいやいや 目と耳じゃ全然違うから。だいたい皇帝暗殺しようとした人って元気って呼べる人なの? っていうかどうでもいいからこの手を離し…痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!! ちぎれるっ、ちぎれるっ、ちぎれるううううううううう!!!!」 すると、流しの悪魔はようやくルイズの耳から手を離した。ようやく解放されたルイズは肩で息をし、耳は真っ赤に腫れ上がっていた。 「はぁ………はぁ………はぁ………死ぬかと思ったわ。」 「死ぬかと思ったなどと言ってる内は決して死にはしないから安心しろ」 そんな二人を回避して傍から見ているももえ。 「…………」 「…………」 流しの悪魔とルイズが戯れているのをよそにタバサは思っていた疑問をももえにぶつけた。 「これって勝負に勝った方が使い魔になるんじゃ………」 「ううん。そんな事無いよ。だからわざと負けるとかそんな卑怯な真似はしないからね。」 ももえは笑顔でそう答えた。そして、その直後にさらっとこんな言葉を吐き捨てた。 「負けたらそれ以下だからね。」 「……以下なの?」 「うん、以下。」 そうこうしているうちに流しの悪魔からこんな一言が飛び込んだ。 「下僕部門 勝者 ももえ」 「……えっ、でもモモエは何も………。」 「耳をつねられて"気持ち良い"の一言も言えないようじゃ下僕失格だ。」 流しの悪魔はそのように説明する。 「あんたは大丈夫なの?」 「うん、私悪魔の体だから!」 「…………もう私の負けでいいわ…。」 能天気に答えるももえにルイズはがっくりと肩を落としたのであった。 「続いて家来勝負を行う」 そう言われて二人はももえの屋敷の中に案内される。 流しの悪魔は手馴れた様子で二人を先導した。ギャラリーもそれに付いて移動する。 「普通に迷わず通れば何事も無い家だ。しかし………」 流しの悪魔は傍らにある扉を開けた。すると――― 「なっ、何よこれ!」 ルイズが驚くのも無理は無い。そこには今までいた家とは違う空間を形成した吹雪いている一室があったのだから。 「なんだ、お前は雪は見たことが無いのか?」 「それぐらい見たことあるわよぉ! だけどこんな脈略もなく雪を見たのは初めてだから………」 耳の件があったのでどうしても強く責め立てる事が出来ないルイズ。流しの悪魔は二人にあるものを渡した。 「これは………?」 「草鞋だ」 流しの悪魔が渡したのは草鞋だった。ルイズははじめてみるそれをまじまじと見ている。 「これを見るのははじめてか?」 「うん。教科書の写真で見たことはあるけど実物を見るのははじめてかな。」 流しの悪魔はにやりと笑う。早速二人に指令を言い渡す。 「それを二人に人肌で暖めてもらう」 「「えっ………?」」 「その草鞋をどれだけ暖かくすることが出来るか。より暖かくしたほうが勝者だ。 制限時間は1時間。なお、ホッ○イロとかそういう物を使うのは禁止とする。」 そう言って流しの悪魔はももえが隠し持っていたホッ○イロを取り上げる。 不服そうなももえをよそにルイズは手に持った草鞋を注意深く観察していた。 「では、はじめっ!」 流しの悪魔が笛を吹いた瞬間、二人はオクタイ君によって部屋の中に放り出された。そして外から鍵がかけられる。 「ちなみに二人の様子は別室でモニタリングしております。」 部屋のどこかにあるスピーカーから流しの悪魔の声が聞こえてきた。 「じゃあ、私たちは休憩しながら見るから適当にがんばってくれ。 うどん食べる人ー!」 はーい!という威勢のいい声がスピーカーから聞こえてくる。頭にきたルイズは、手にした草鞋を声のする方向へ力いっぱい投げつけた。 ブチ!………ジジジジジ……… 「ナイスコントロール!」 ももえは右親指を立ててそう言った。ルイズもそれを真似してみる。そして、ルイズは壊れかけのカメラとスピーカーを完全に壊す作業に取り掛かった。 「寒い………」 不自然なまでに強くて冷たい風がルイズの身体をたたきつける。 「あんたは平気なの?」 ルイズは、こんなに寒いのに肩出し、へそ出しと露出しているのにもかかわらず平気そうにしているももえを見てそう言った。 「うん、私悪魔の身体だし。寒さとか熱さとかそういうのは平気だから」 「へぇ…………」 しかし、問題はこの草鞋だ。この草鞋をどの様にして温めるのか。ルイズは懐に入れていた草鞋を取り出してみる。 「全然暖かくない………」 元々冷え切っている草鞋をこの寒さで冷え切った身体で暖めるのは無理な話だ。ルイズが草鞋を外気に晒しているうちにどんどん草鞋に雪が積もってくる。 「うーん………」 ルイズは積もってくる雪を払いながら必死に考えていた。髪にも雪が降っているのだがそんなことを気にする余裕が無かった。 「うーん………」 困っているのはももえも同じだった。ももえ自身の体温調節は問題ないのだが、ももえの着ている服では草鞋を入れて暖められるようなスペースは無い。 「「あっ」」 二人同時に何かをひらめいたようだ。二人は草鞋をある場所に仕舞う。 吹雪が激しさを増し、腰の辺りまで雪が積もってきてはいたが、二人はゆっくりと活動を停止していった。 「………イズ、ルイズ!」 「あ………キュル…ケ?」 ルイズが目を覚ますとそこには雪が一面に広がっていた。キュルケ達は防寒着に身を包み、同じく雪に埋もれていたももえはタバサに救出されていた。 「よかった………!」 キュルケは思わずルイズを強く抱きしめる。 「大丈夫? 苦しくない?」 「くっ、苦しい………。」 キュルケの胸に挟まれたルイズは息苦しそうに足をジタバタとさせる。 「大丈夫………?」 「あー、うん。私は平気」 タバサに抱きかかえられたももえもそう答えた。こっちは比較的元気そうだ。 「ところで、草鞋はどうしたのだ?」 流しの悪魔がそう言うと、ももえは胸の谷間から草鞋を取り出した。 「はいっ」 雪のせいで部屋の室温が冷え切ってる中でももえの草鞋はほかほかと湯気を漂わせている。 「なるほど………服の表面積の圧倒的な少なさから言ってももえが不利になると思っていたのだが………よくやったな。」 流しの悪魔はももえのアイデアにいたく感心していた。 「では、ルイズの方だな。」 そう言うと、皆がルイズのほうに注目する。 「ルイズ、お前は草鞋をどこで暖めたのだ?」 「えっ」 それを問われたルイズはまたたくまに顔が紅潮し、目が泳ぎ始めた。 「えっ、えっと……草鞋は………その…」 「わしならここにおる!」 「我もここにいるぞ!」 どこからともなく甲高い男の声が聞こえてきた。ももえ達も辺りを見渡す。しかし、ルイズの顔は見る見るうちに青ざめていた。 「ま、まさか……ひょっとして…いやああああああああっ!!!」 ルイズの叫び声とともに草鞋がルイズの背中から飛び出てきた。 その草鞋もほかほかと湯気を漂わせており、暖まっているのがわかる。しかしその湯気は暖まったというより草鞋の怒りによるものだと思えて仕方が無かった。 「誇り高き、我が草鞋を尻に敷くなどの粗末な扱いをしたのはどこのどいつだ!」 「その通りじゃ! 物の正しい使い方を知らぬ小娘め! わしらを馬鹿にすると痛い目にあうぞ!」 「えっ、えっ、ええええっ!?」 「あー………ルイズちゃん、草鞋をお尻に敷いちゃったんだ。」 二足の草鞋がしゃべっているこの状況に戸惑いまくるルイズに対し、ももえは両手を開いてやれやれといった表情を作る。 「草鞋を尻に敷くなんて御法度なんだよ。この草鞋は人の足に履かれるのを喜ぶんだけど尻にしかれるとむちゃくちゃ怒るんだよ。」 「ええーーっ!!!」 「その通りじゃ! 草鞋は尻に敷くものではないのじゃ!尻に敷かれるのは女房だけで十分なのじゃ! こりごりなのじゃ! こりごりなのじゃ!」 「我も同じ意見である! 胸に挟むならまだしも尻に敷くとは言語道断! 全く、貧乳娘の発想の貧困さには困ったものである!」 草鞋はそう言いながらルイズの頭を執拗に叩き付ける。すっかり雪がやんだ部屋はパーンパーンと無駄に軽快な音とルイズが徐々に鬱陶しそうになる声で支配されていた。 「あっ、あの………草鞋さんもそれぐらいで………」 珍しくももえが仲裁に入ろうとする。しかし、興奮状態の草鞋の片割れは勢いあまってももえの頭にも軽快に叩きを食らわせる。 スパーン……ズバッ 一瞬の出来事であった。草鞋の片割れがももえの頭に叩きつけた瞬間、ももえは手にしていたカマを軽く振りかぶる。 草鞋の片割れは見事に真っ二つに割れて、ぽとりと地面に落ちてそのまま動かなくなった。 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 「ひいっ!」 恐れをなした草鞋は一目散に逃げてしまおうと試みた。しかし、逃げようとした草鞋をルイズは左手でがっちりと掴んでいる。中指の爪は草鞋に食い込みかけていた。 「あっ、あのっ、そのっ………」 さっきとは一転して弱気になっている草鞋。ルイズは右手に持っている杖を草鞋にこすり付けた。 「あんたね………誇り高きヴァリエール家の三女である私の尻に敷かれる事がどれだけ価値があって、どれだけ需要があるのかわかってないわね。」 ルイズは冷静な口調で草鞋に語りかける。何百年も女の尻に敷かれ続けた草鞋にはそれが並々ならぬ怒りを表現していることは十分にわかっていた。 「だから………私が焼いてあげるわ」 「ひいいいいいいっ!!!!!」 草鞋は思わず悲鳴を上げた。それに構わずルイズの杖は光りだす。そして呪文は詠唱された。 「ファイアーボーォォォォォォォォル!!!!!」 刹那、大きな光に包まれた玉が至近距離で発射され、草鞋を直撃する。草鞋は断末魔の声を上げることなく爆発した。 しかし、このルイズの渾身の呪文は部屋にいるルイズ以外の人物・物を黒焦げにしてしまったのであった。 「で、使い魔勝負はどうなったの?」 とりあえず風呂に入ってさっぱりした一同は、死神家の大広間に集っていた。メイからフルーツ牛乳が振舞われそれを飲みながらももえは流しの悪魔に質問した。 「ああ、その件についてだが…………。」 皆の視線が流しの悪魔に集まる。 「とりあえず家来勝負はももえの勝ちだ。」 「えっ………でも、私ちゃんと暖めて 「いくら説明不足とはいえ、尻に草鞋を敷くのはマナー違反だぞ、ルの字 尻に敷かれたホカホカの草鞋を欲しがるのは特殊な趣向をもった大きなお友達しかおらん」 「はい………」 色々と突っ込みたいところはあったがそれに突っ込むのは危険だと察したルイズは何も言うことができなかった。 「ちなみにパシリ勝負は大きなしゃもじをもってガリア王国の王宮に進入して、イザベラ皇女と激戦の末に晩御飯をご馳走になる……なんて事を作者は考えてたらしいぞ」 「馬鹿じゃないの!?」 思わず、キュルケからの突っ込みが入った。 「じゃあ結局私がモモエの使い魔になるのね………全然釈然としないけど。」 どこか諦めの混じった声でルイズはため息をつく。しかし、 「あっ、じゃあ私が代わり使い魔になってあげようか?」 「えっ、いいの?」 ももえの突然の提案にルイズはすぐさま食いついた。 「その代わり私にも条件があるんだけど………ルイズちゃんのこと『スレイヴ』って呼んでもいい?」 「スレイヴ?」 「うん、スレイヴ。ご主人様に変わる新しい呼び名だよ。」 ももえはさわやかな笑顔でそう言った。ルイズもその呼び名が気に入ったらしく『スレイヴ』と何度も口の中で呟き続ける。 「いいわよ。いいわよ。あんたが使い魔で私がスレイヴ あー、なんか私のほうがなんかカッコイイ感じじゃない? あっはっはっはっはっはっ」 「あっはっはっはっはっはっ」 よほど嬉しかったのかルイズの高笑いは止まるところを知らなかった。 しかし、ももえの本当の意図に気づいたタバサは思わず口を開く。 「でも、スレイヴって確かど………もごもごもごもごもごもご」 「……知らぬが……仏……です…。」 メイはタバサの口を押さえつけながらそう呟いたのであった。 ※おわり これまでのご愛読 ご支援ありがとうございました ※次回からはじまる「ゼロの使い魔死神ガーゴイル友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィードネギ香水草鞋下級生ももえサイズ」に乞うご期待! 前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ
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確定設定 オート・コンヴァージョン 毎朝、女性 ルイ になるか男性 レイ になるかランダムで決定される。 ただし、シナリオによっては性別が固定される。 また、再びコンヴァージョンを使うことで任意に変更もできる。 ルイとレイ コンヴァージョンする事で"身体及び性格が"切り替わる。 二重人格的設定で、記憶の共有はしている。 また、お互いに勝手にコンヴァージョンを唱えて中から出てくることも。 戦闘では現レベルでやっとお互いのやりたいことが出来るように。 ルイ→魔法ぶっぱ レイ→デーモンルーラーで投影して魔力撃ぶっぱ ただ、メインでやることであって、お互いに出来ないことはない。 イザベラとのLGBT ルイレイ共々イザベラと愛し合っている(直喩)。 ルイはイザベラに『幸せ』を貰った。 レイは不明。 星の巫女 巫女枠の一人。GMから設定されている。 その設定が投げられる直前の成長でミスティックを取っている() →とりあえず星の巫女の副作用だかなんだかの所為にしておく。 スケッチ ルイの趣味の一つに、人物画・風景画がある。 最初は単に暇つぶしの一環で描いていたのだが、 いつのまにか日常と化してしまった。 ちなみに、レイは描いているのではなく描かされている。 構想設定 ルイとレイ もともと別人同士、という設定。 「サモンナイトエクステーゼ夜明けの翼」の主人公たちの持っていた設定をパロパクったもの。 一つの体に二つの魂が共存し、表に出るほうで身体も変わる。 そのため、ルイの肉体が何処かにあるとかないとか。 が、別にレイは肉体を取り戻したいとも思ってなく、ルイも貸せばいいや程度の認識。 ヴァリアン城にいた理由 最初のきっかけはおそらくイザベラの一言。 ヴァリアンがーヴァリアンがーと五月蝿かったのではなかろうか。 なんやかんやあって単身乗り込んだはいいものの、半幽閉されてしまったオチ。 プレイヤーキャラクター一覧へ Dominateメインメニューへ
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2000の技を持つ使い魔 EPISODE02 疾走 膝をつきつつ、自分の左手の甲に刻まれたクウガの印をしげしげと見ていた雄介のそばにコルベールと呼ばれた男が近づくと、雄介と一緒になってしげしげとクウガの印を詳しく見始めた。 「ふむ…… これはルーンなのか? 見たこともない」 そう呟くと、今度は帳面を取り出してクウガの印を詳細にスケッチし始めるコルベール。 「……とにかくおめでとう、ミス・ヴァリエール。 コントラクト・サーヴァントはきちんとできたね」 雄介の印をスケッチし終わると、コルベールはルイズに向かってにこやかに言う。 「あ、はい!」 サモン・サーヴァントは何十回となく失敗したが、コントラクト・サーヴァントはなんと一発で成功した。 これが偶然なのか、それとも必然性があったのかはともかく、今のルイズにはコントラクト・サーヴァントが一発で決まったことに満足感を感じていた。 「でもさー、あれ平民だからできたんじゃねーの?」 「あり得るねー、ルイズなら」 「そいつが高位の幻獣とかなら、契約すらできなかっただろーぜ」 そんな小さな満足感をぶちこわすように生徒の内の何人かがはやし立てるのを、ルイズは聞き逃さなかった。 「馬鹿にしないで! 私だってたまには上手くいくわよ!」 ルイズが彼らにかみついたところで、コルベールが待ったを掛けるように割って入ってきた。 「皆そこまで! 兎に角今日はこれにて解散。教室に戻ろう」 コルベールが手をパンパンと叩きながら、生徒たちを教室へと戻るよう促す。 さすがに教師に促されては従わざるを得ないのか、生徒達はそれぞれに呪文を詠唱すると、次々と空へ舞い上がっていく。 中には飛べないルイズに嘲笑と罵声を浴びせる生徒生徒もいたが、ルイズはそれをガン無視。雄介は「人が空を飛ぶ」というあり得ない事を見せつけられて、口をぱくぱくさせながら、あたりをきょろきょろと見渡していた。 もちろん、雄介の視界の中に、トランポリンもワイヤーもクレーン車もない。 「うっそ…… 飛んでっちゃったよ」 コルベールをはじめとした生徒達は、空を浮遊しつつ遠くにある城のような石造りの建物へと飛んでいった。 「……行くわよ、付いて来なさい」 空を飛ぶ生徒たちを見つめ、悔しそうに唇をかみ締めていたルイズが雄介に言うと、一人だけカツカツと道なき草原の中を歩きはじめるの見て、雄介が待ったをかける。 「ちょ、ちょっと、えーと…… ルイズちゃんでいいのかな? 行くってどこに?」 そんな雄介の言葉に、ルイズは心底がっくり来たのか、ジト目で雄介のことを見ながら肩を落としつつ雄介に向かって大声で怒鳴り始めた。 「ご主人様をちゃん付けするなあああああ!! あーもお、何だってっこんなのがあたしの使い魔になるんだろ.もう気分へにゃへにゃよ!」 ルイズにしてみれば、ペガサスだのユニコーンだのワイヴァーンのような美しくて強力な使い魔が召喚されることを望んでいたにもかかわらず、呼び出されて出てきたものといえば、どこか呆けたような感じのする若い平民男子と来た日には、夢も希望も無残に打ち砕かれてへこみたくもなるものだ。 さらに、何でこの目の前の使い魔は、未だにのほほんとご主人様の事を主人とも認識していないのだろうか。 「あー、あのさ。俺、冒険の最中なんだけど…… イヤもうスッゴイ物見せてもらいましたホント。魔法なんてモノがホントにあるなんて知らなかったなもう」 あまつさえ、「冒険の途中にいいもの見せてもらいました」等と抜かしやがりますかこの平民? と今度は怒りがふつふつとルイズの腹の底から湧き起こる。 だが、そんなことを思うご主人様をさておき、使い魔となった雄介は未だに無口なルイズを見やり、致命的な一言を言ってしまった。 「……もう行ってもいいかな?」 ぶちっ、とルイズの頭のどこかで、スイッチがオンになったような、もしくは何かのキレるような音がした。 「だからっ、あんたは、わたしがっ、召喚した使い魔なのっ! あたしの使い魔だから、あたしと一緒に学校に戻るの! 判った!?」 全身でぜいぜいと息を切らして声を張り上げるルイズの言葉が、雄介の脳内に十分浸透して驚愕の声を上げるまでに、たっぷり2呼吸は必要だった。 「……えええええええええ!?」 使い魔になったいきさつを知らない雄介に、ルイズがかいつまんで状況を説明してやると、しばらく困った顔をしていた雄介だったが、すぐ吹っ切れたのか「まいっか」の一言で開き直ってしまった。 その暢気さに呆れたルイズが、踵を返してそのまま徒歩で帰ろうとするのを引き止めたのは雄介だった。 「ちょっとまって。あの城みたいなところに行くって言うなら。歩くよりもこれに乗っていくほうがいい」 「何よ? ホントにそんな物が速いって言うの? その、車輪が二つついた銀色の馬みたいなものが?」 呼び止められたルイズが胡散臭げに雄介のバイク「ビートチェイサー2000」を見ながら言うのを、雄介は気にも止めずにビートチェイサーのハンドルにあるスターターを押して、その心臓である無公害イオンエンジン「プレスト」を始動させる。 すると、パルンッ! と軽く甲高い爆発音と共に、プレストに息吹が吹き返る。 「わあっ!? 何? 何なの今の爆発音?」 雄介にとっては心強く感じるプレストのエンジン音も、バイクを見るのも乗るのもまったく初めてのルイズにとっては、銀色の恐怖の塊でしかない。 そんなルイズを笑顔で手招きする雄介。右手のアクセルを軽く煽って、エンジンを操っているのは雄介である事を証明しながら、ビートチェイサーにくくりつけていたザックの口をあけて、中からもう一つ小ぶりなハーフヘルメットを取り出してルイズに言う。 「大丈夫。噛み付いたりなんかしないから」 雄介に大丈夫と言われて半信半疑だったルイズだったが、雄介がアクセルを煽る事でエンジン音が変わることに気がつくと、雄介が操っているんだという事に気がつく。 バルン、バルルンと雄介がアクセルを吹き鳴らすたびに、初めて聞くエンジンの音と離れていても感じてくる力強さを体で感じ取っていた。 「ホント? これ、何で動いているの? 魔法?」 わずかながらにルイズの中で好奇心が沸き起こる。どう考えても、魔法で動かしてるとしか思えなかったが。 「魔法じゃないよ。ウーン、なんて説明すればいいのかな」 しばらく考えていた雄介が、ぽんと手を打って言う。 「まいっか。それもそのうち、おいおいね。これなら獣よりも速く、空を飛ぶくらいに早く何処にでも行けるよ」 軽く言う雄介の言葉に、ルイズは疑いのまなざしを向けるが、気にせずビートチェイサーに跨った雄介がルイズに言う。 「じゃあ、行こうか。あ、そのヘルメットかぶって、紐は顎の下でしめてね」 言われたルイズがヘルメットをかぶったはいいが、顎紐をしめる事が判らないルイズがおたおたするのを見て、見かねた雄介がビートチェイサーを降りると、自らの手で、ルイズの顎紐をしめてやる。 「こんなもの、かぶった事なんかないからしょうがないか」 顎紐を金具に通して、遊びがないようにしっかりとしめる雄介。紐を締めながら遊びがないかを確認し、ルイズも嫌がったり痛がったりしている様子でもないのを認めると、雄介はサムズアップしながら、またビートチェイサー跨りなおす。 「ん、これでいいの?」 顎紐を締めたルイズが、雄介に訊く。 「うん、それじゃシートの後ろのほうに跨って……… 手をしっかり俺の腰に回して」 ルイズは雄介の言うがままに、ビートチェイサーのシートに横座りして、前に座る雄介の腰のあたりに両手を回す。 「じゃ、いくよ? 手は離さないでね」 雄介はルイズが腰に手を回していることを確認すると、ゆっくりとビートチェイサーを走らせ始めた。 それまで馬しか走った事のない草原を、二つの輪を持った銀色の鉄の馬のような乗り物「ビートチェイサー2000」に跨って、ルイズと雄介は疾走する。 「こ、これ、すごい。馬よりも早い! 何でこんなに速く走れるの!?」 雄介とは違う形の小さな兜を頭にかぶったルイズが、風切り音に負けないように大声出して雄介に聞く。 「うーん、詳しく説明すると長くなるから。それよりまっすぐで良いんだよね?」 雄介はあえてルイズの質問には答えず、ビートチェイサーの行き先が間違えていないか聞き返すと、ルイズはこくこくと頷いた。 雄介にとっては軽く流している程度の速度でも、ルイズにとってはそれまでとはまったく違う視点と感じる風は、驚き以上のものを感じていた。 こんな異形なものが、獣が大地を疾走するよりも速く、空を飛ぶ鳥のように早くこの大地をも疾走できるという雄介の話も、嘘ではなく本当の事なんだと直感的に理解していた。 「すごぉ~い! すごいすごい! フライの呪文よりも速いっ!!」 ルイズの視線の先には、先に飛んでいった生徒達の殿を目で見る事が出来たのだから。 「もっと早く進めないの!?」 ルイズの言葉に、雄介は一瞬躊躇して聞き返す。 「進めるけど、二人乗りじゃそんなに速度は出せないよ!?」 雄介の大声に負けないくらいの勢いで、ルイズは言ってのけた。 「かまわないからぶっ飛ばして!」 そして、この使い魔がすごい事をみんなに見せ付けてやるんだ。ルイズはそう思っていた。 「じゃあ、手をしっかり俺の腰に回して。しがみつくように!」 雄介が叫ぶと、ルイズが雄介の腰に両腕を回してしっかりと掴んだのを確認して、アクセルを吹かしてギアをもう1段上げる。 「うひゃあああああ!??」 たちまちのうちに、スピードを上げて草原の上を疾駆する弾丸と化すビートチェイサー。 ルイズは、しっかりと両腕を掴んでいなければ放されてしまいそうなスピードで、まだゆっくりと空を飛んでいく生徒たちを追い越し、学園へと向かうのであった。
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108 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 05 08 ID +iyFMsMQ イスペイル様は変態だけど、ルイス様は苦労人に入ると思うの。 109 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 56 48 ID JIijJ6J+ ルイス様「うわぁ~ん!私、変態じゃないよぉ~みんなにドジっ子って、言われるだけだよぉ~!」 110 :それも名無しだ:2010/10/19(火) 23 59 03 ID 3fG2ypIY 苦労人ですら気づけば変態化していく…ザイリン酸の侵食力は異常だなw 115 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 19 58 32 ID dboVT0ly ルイス様「私もついに変態さんの仲間入りしちゃったよぅ…orz」 レイ(種)「気にするな。スーツを着ていない状態ならまだ変態ではない。 が、油断していたらスーツ着用時同様変態になる可能性も無きにしも非ずだな」 ルイス様「ふえぇ!?ど、どどどどうしたらいいのかな…」 レイ(種)「率直に言うと、スーツ着用時は変態というのはすでに免れない事実だ。 だが、スーツを脱いでいる状態だけでも変態ではない趣味を見つければ、 少なくともルイスでいるときはマトモな状態でいられるだろう」 ルイス様「あぁ、やっぱりあの姿の私はもう変態なんだね…なんか悲しいなぁ… でも、私研究以外の趣味とか全然知らないよ?」 レイ(種)「まぁ、そこは俺も極力協力してやる。マトモな女性に聞いてみるのもいいかもしれん。 ルナマリア辺りならいい意見が得られるだろう」 ルイス様「う、うん。分かった。 …ありがとうね、何度も面倒見てもらっちゃって。」 レイ(種)「気にするな。俺は気にしない」 116 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 20 16 53 ID jjKW80gx ルナマリアの意見を聞いて、ジョシュアを逆レイ〇するルイス様の姿が(ry 117 :それも名無しだ:2010/10/20(水) 22 35 10 ID lIooL/Qa 【ペットショップ・ry】 ルナマリア「趣味ねぇ」 レイ「気にするな、俺は(ry)とも言えんのでな。何かアドバイスを」 ルイス様「お、お願いしますっ!」 クーコ「あのう、ルイスさんてよく今みたいなフリフリの服を着てますよね。服とかのショッピングはどうなんです?」 ルイス様「えっ!?こ、これは…L君とかBちゃんに買ってきてもらったものなんだけど」 ルナマリア「はぁ…自分の服は自分で買わないとダメよ。イスペ兵さんはお父さんの部下なんだから公私混同は(ry)」 ルイス様「す、すみません…(まあ父じゃなくて自分なんだが)」ペコペコ レイ「ふむ。買い物か」 【ギル・バーガー★】 ソル「天体観察なんてどうかな?夜空をじっくり見れば、地球が小さな星だって分かるよ」 ルイス様『…天体ならぬ変態観察なら、毎日嫌という程してるが(汗)』 スウェン「バストアップ体操とかはどうだ」 ヒミカ「幼子に妙な知恵を吹き込むな。やはり銅鐸研究がお勧めじゃ」 セレーネ「趣味なんか昼寝か朝風呂で十分よ」 剣児「間違ってもあんな大人になるなよ」ヒソヒソ ルイス様「は、はぁ」 レイ「まあ、一応メモをとっておくか」 総士『剣児さんがマトモなアドバイスをするなんて…… いやよそう、僕の勝手な思い込みでみんなを混乱させたくない』 乙姫『総士、ミストの真似全然似てないよ』 【いんでぃくす☆】 レイ「どうする?ウチのメイドにも意見を聞いてみるか?」 ルイス様「う、うーん…何となく展開が読めちゃうんだけど…」 118 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 01 44 22 ID xe+5rQW2 ルイス様「その前に、お客さんにも聞いてみようかなぁ」 シンシア「趣味?ゲームっしょ!せっかくのアキバなんだし色々漁ろうよ!」 メイリン「と○のあなに○イト、ゲー○ーズ、そっち方面が好きになれば天国ですよね」 アビー「いんでぃくす☆は男性多いから観察してるだけで美味しいじゃないですか。 剣司君ヘタレ攻めジョシュアさん流され受け、ザイリンさんうっかり攻めに肉○器ノーザさんで」ムフフ ルイス様「…ア、アハハハ…ちょっと理解しがたい世界かな…」 早乙女「うげーっ、オタク女の趣味と来たら軟弱だよな!もっと筋肉使えってンだ!」 パイ「そーさね、少しは身体動かさないと育ちが悪くなるよぉ。おっぱいとかのさ」プルン シンシアメイリンアビー「余計なお世話だよ(です)っ!!!」 レイ「オタ女VS筋肉女の平行線バトルが始まりそうだが、俺は気にしない」 ルイス様「ま、まぁ私もどっちかといえばオタク側なんだけど」 レイ「(どっちかどころかかなりの…)気にするな、俺は気にしない」 ニュッ プロ子「あらあら、ルイスちゃんが新たな趣味をお探しですって!(・∀・)」 ルイス様「(げげぇ!厄介な奴が来おった!)は、はい…そのぉ…」 プロ子「そうですわね、コスプレ少女を目指してはいかが?わたくしが似合うコスを見繕って差し上げますわ(・∀・)」 つスパロボMXア○アコス つエロ水着 つエロランジェリー ルイス様「こ、こんな布の少ない衣装なんて…趣味で着られやしません!」 レイ「コスプレというよりただの板倫への挑戦だな。だが俺は気ry」 ステラ「うぇーい?そのパンツはステラのだよぉ~」 ノザ子「らめぇぇえ!それノザ子のブラだよぅ!(///」 ルイス様「二人ともこんな凄いの着けてたの!?」ガーン プロ子「オホホ、二人ともわたくしの英才教育の賜物ですわよーん(・∀・)」 119 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 03 29 28 ID um4mSoC6 ルイス様「はぁ・・・なんか疲れてきちゃった・・・」 レイ「あと、この店で聞いていない人物となると・・・」 咲良「買い出しから戻りました。」 祐未「あれ、ルイスちゃん。何か用事かしら?」 ルイス様「(ようやくまともな相談が出来そうだな)え、え~と、実は・・・」 咲良「ふ~ん、新たな趣味探しねぇ・・・」チクチク レイ「ああ、それで様々な女性陣に色々聞いているのだが・・・」 祐未「まだ美容体操とかやる様な歳ではないしねぇ・・・」チクチク ルイス様「?祐未さん逹。さっきから何をやっているんですか?」 祐未「冬に向けて新しいセーターを編んでいるんだけど・・・。そうだ!?ルイスちゃん。一緒にやってみない?」 ルイス「えっ!?き、急に言われても・・・」 咲良「大丈夫だって!!私達がちゃんと教えてあげるから」 ルイス様「う~ん・・・」 レイ「この際やってみてはどうだ?見ているだけよりも少し体験した方がいいぞ」 ルイス様「は、はぁ・・・じゃあ少しだけ・・・」 120 :ルイス様にこんな事をさせる俺のネタに価値ry:2010/10/21(木) 07 11 59 ID JO9WsIWN 【イディクスの部屋】 ヴェリニー「で編み物をやっていたらこのザマ。ほんとにドジっ娘だね」 ルイス様(両手がドラ○もん状態)「うー、わたしだって好きでドジっ娘やってるんじゃ…」 ヴェリ兵B『好きでやるものじゃないよね』 ヴェリニー「はいはい、取れたよ。この毛糸は貰ってもいいかい?」 ルイス様「うん、咲良ちゃんからの貰い物で良ければ。ヴェリニーも編み物するの?」 ヴェリニー「違うさね。これはこうやって使うんだよ」ツンツン ルイス様「は?」 ヴェリニー「ああ…毛糸を転がすと癒されるぅ」コロコロ ルイス様「ずいぶん変わった趣味だね……」 ヴェリ兵B「趣味というよりは本能ですね」 ガズム「趣味か?俺も特にない…うっ!また頭痛がぶり返した」イチチ ゼナ(ガズム専用の介護アンドロイド・少女型)「だ、大丈夫ですか、ガズム様?」 ガズム「ま、またいつもの頭痛だ。それよりこの前買った頭痛薬を…」 ゼナ「また新しい頭痛薬ですか。そろそろ新しいのを買うのを止めては」 ガズム「そ、そうは言ってもな…う、痛ぇ」 ルイス様『頭痛薬を買いあさるのも趣味かな?』 ヴェリ兵C「アタシはお菓子の買い食いニャ♪」ペロペロ イスペ兵S「僕はギャルゲにエロゲです!」キリッ ヴェリ兵M「……メカいじり(///」 ルイス様「みんな結構趣味持ってるんだ…」 ル・コボル「プロ子ちゃんに勧められたコスプレはどうするの?」 ルイス様「あ、あんな…えっちなのは着られないよぉ~」 ヴェリ兵A「まあエッチなコスプレが出来るにはあと五年は必要かな」 ヴェリ兵N「ルイス殿にはまだ早いでござる」 ルイス様「………#」カチン←ルイス様の闘志に何かが付いた音 【いんでぃくす☆】 ルイス様「つ、つい……反発して付けたけど……何か恥ずかしいな(///」モジモジ ザイリン「ルイス君がモジモジしてるが…」 翔子「体調でも悪いんですかねぇ」 プロ子「オホ(・∀・)」 121 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 13 27 25 ID oYS7Xt33 ヴィル「母よ、今日はやけにソワソワしてるな」モグモク ルイス様「べ、別に何でもないから!き、気にしないで!」 ヴィル「なら私は何にも気にしないし構わん」ムシャムシャ ルイス様「ヴィルはどうせならカロリー気にした方がいいね…」 ミスト(まだバイト中)「ほらヴィル!ご奉仕おいもプディングお待たせだ!」 ヴィル「ふんっ!」 ベキッ ミスト「へぶぅ!?い、いきなり殴るなよぉ!?」 ヴィル「メイドならばしおらしく『ご主人様、お待たせしましたぁ☆』と言え」 ミスト「些細なことじゃないか…一緒に住んでるのにそんな演技恥ずかしい…」 ヴィル「馬鹿、親しき仲にも礼儀ありだ、メイドの立場をわきまえろ」パクパク ルイス様「(そう言えばコイツ等、同居してるのか…今更だが不安だな…よもや)」 モワモワーン ミスト『アトリームにもデキ婚はありましたよ、地球より迅速なものがね』 ヴィル『腹の子の栄養も取らねばならん、もっとスイーツを寄越せ』ムシャムシャ シェルディア『ずるーい!ボクだって4ヶ月目なんだからね!』モグモク アンジェリカ『うぷ…や、やめて、つわりでお菓子の匂い嗅ぐと…オェーッ』 ミスト『全員まとめて母親にするだなんて、こんな俺に価値はry』 ルイス様「価値はないよぉぉー!!!」ミルナリオンハンマー!! ミスト「クリスタルッ!!」ベタン ヴィル「いいぞ母よ、この無礼なやつに礼儀を叩き込んでやれ」ムシャムシャ 123 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 21 36 18 ID JO9WsIWN 122 ザイリン酸のせいです ええ全てザイリン酸のなせる業です… 【ボロめなアパート】 ロン「ルイスちゃんの趣味って何かなぁ」 ヴァン「最近寝てもさめてもルイスルイスだな」 セイジュウロウ「ロン、悪いことは言わん。そろそろ夢からさめろ」 ロン「失礼だなぁ。これは仕事でルイスちゃんを調べてるんだ、けっして興味本位じゃないよ」 ヴァン「嘘臭え」 セイジュウロウ「…まあそれで稼げるなら問題はない」 ロン「うーん、ルイスちゃんの趣味…女の子らしく刺繍とかお花を育てることかな。 いやいや意外にも下着集めとか…ルイスちゃんのパンツ…きっと清純な白とか可憐なピンクなんだよねぇ」クネクネ ヴァン「馬鹿だな」 セイジュウロウ「…馬鹿に着ける薬はない」 【いんでぃくす☆】 ルゥ「下着占い?」 プロ子「ええ、ネットで見つけましたの。ちなみにこれが今日の運勢ですわよん」つ【リスト】 翔子「フヒヒッwwちょっと試しにww」 白:いつも清楚可憐な貴女にラッキー。片思いの彼が誘いにくるかも? 黒:大人っぽい貴女に刺激的な出会い。血湧き肉踊る出来事が… ピンク:恋に生きる貴女に恋敵の襲来!ラッキーアイテムはハリセン 青系:クールに決めた貴女だけどピンチが!?水回りには気をつけて! 黄色系:ほんわかタイプの貴女は金銭的にちょっとひと息つけそう 縞系:一癖ある貴女にはきつーいお仕置きが。オカンには要注意! アダルト系:背伸びしたい貴女に【板倫】超えの大々ピンチ!?何をやってもダメかも… ルイス様「ええーっ!」ガビーン プロ子「あらあらルイスちゃんたら。占いを信じ過ぎてもいけませんのよ(・∀・)」ニヤニヤ ルイス様『プ、プロイストめぇぇえ!!私で遊ぶ気満々だな!!』 124 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 21 49 02 ID aLbGUmf4 一応ラスボスであるル・コボル様がスレ随一の常識人ってのもすげえ話だな… レイ(種)「手段と目的が入れ替わって余計に変態化が進んだようだが気にするな、俺は気にしn」 ルイス様「気にして!?」 レイ「趣味は見つかったんだろう?ならば大丈夫だ、問題無い」 ルイス様「ある!問題あるよ!あれはつい勢いで…って何言わせるの!///」 レイ「落ち着け、お前は既に相当錯乱している」 ギャーギャー ヴェリニー「漫才見てる気分ね、どっちがボケでツッコミやらわかりゃしない」 ル・コボル「でも素で話せる相手が居るっていうのは良いことだよ?もう色々混ざりすぎて 素のキャラが何なのかわからなくなった私みたいなのはともかく」 ガズム「俺はガズムだがアンジェリカの父親はエルリックでアンジェリカは俺の娘で…ああ頭が」 125 :それも名無しだ:2010/10/21(木) 23 28 21 ID e4Coa5go ルイス様「と、に、か、く!あれは一時の気の迷いで趣味にするつもりは無いから!」 レイ(種)「そうか。結局振り出しに戻ってしまったが気にするな。俺は(ry まぁ、趣味を見つけるのにそう焦る事は無いだろう。やってみて偶然趣味になる事もあるしな とりあえずルナマリアが言っていたように、今度女性陣と一緒にショッピングに行ってみたらどうだ?」 ルイス様「そうだね…ルナマリアさんだったらまだマトモだしね。 しかし趣味を見つけるのがここまで大変だとは思わなかったよ」 レイ(種)「こんなことで悩むようになったのも、それだけ人間らしくなったからなんだろうな」 ルイス様「…そうかもしれないね。あ、そう言えばレイお腹空いてない?」 レイ(種)「む…もうこんな時間か」 ルイス様「今日は色々付き合ってもらったから、私が何か作ってあげるね。何がいい?」 レイ(種)「ふむ、ではカレーを頼むか…ってルイスは料理は出来るのか?」 ルイス様「あー、バカにしてるな。それくらい出来るよぅ。 まだまだ未熟な腕だけど、実は何度か作ってるし。…じゃ、作ってくるね」タタッ レイ(種)「…料理、か。全く、ちゃんと普通の趣味もあったじゃないか」 ル・コボル「本当にね。まぁ、それに気づくのも当分先になりそうだけどね~。 それより今日はありがとね。また相談される事もあるかもしれないけど、ルイスの事、よろしく頼むね」 レイ(種)「…気にするな、俺は気にしない」 126 :それも名無しだ:2010/10/22(金) 01 30 43 ID hbcvVw9P クルーゼ「レイも悩める女性へ助言できるほど成長したか」 ローザ「良かったですね、弟さんのこと、表に出さずとも心配しておりましたし」 クルーゼ「ああ、一時はデュランダルの阿呆に憧れたりしてどうなることかと」 ローザ「成長出来る、それこそ生きている証です。私たち死人には決して叶わない…」 クルーゼ「我らにも出来ることはあるさ、想いや経験を生きている人間へ伝えることが」 ローザ「ですわね。私、久しぶりに剣にお仕置きしてまいります♪」ススーッ クルーゼ「…レイが立派に育ってくれた今、私のやるべきことは」 ヒガント「プロイスト様ハァハァプロイスト様ハァハァぷろいすとさまハァハァハァハァ」ドクドクドク バルトフェルド「しばらく会わんうちに、ダコスタ君も妙なお友達が出来たんだねぇ」 ダコスタ「まー悪い子じゃないんですけど彼、お母さん見ると変態スイッチ入っちゃって」 プロ子「どうして我が子は変態ばかりですの?みんな私のクローンだというのに!」 剣司「そりゃ、プロイストさん自身ならみんな変態で然りっすよ!」 サスページ「すぐ板倫越えようとさせるプロイスト様こそ立派な変態ですし」 プロ子「んだと!俺の生き様捕まえて変態たぁなんだぁーっ!!」クワッ 剣サス「ヒギャー!!?」 クルーゼ「ウーム、我が子か」 ムゥ「零時過ぎ…エンデュミオンの夜鷹のお目覚めだぜ!」 ゲイン「俺の黒いサザンクロスも光って唸る、ってね!行くかい?」 ムゥ「おうさ、今日もまだ見ぬ女性と異文化交流(ビビッ)…うぐっ!?」 ゲイン「どーしたよ、ムゥ。腹でも痛いのか」 ムゥ「…か、下半身が…石みてぇに固まっちまってよ…」グググ ゲイン「なにぃ!?」 クルーゼ「奴も私にとって子みたいなものだからな、上手く矯正してやらねば」(金縛りビーム発生中) マリュー「はぁ…よく分からないけど頼むわね、クルーゼ」 クルーゼ「お義父様と呼んでくれて構わんよ」キラッ
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前ページ / 豆粒ほどの小さな使い魔 / 次ページ 扉の隙間から、細く明かりが漏れている。 夜も遅いのに、耳を澄ませば、かさりと紙を捲る音がする。 覗き込むと、部屋の奥のベッドで、上体を起こしたカトレアさんが、静かに本を読んでいた。 そういえば、笑顔以外を見たのは初めてかもしれない。引き締まった口元は、ルイズと似ていながら少し冷たさを感じる。 もしかしたら、カトレアさんも、自分でそのことを知っているから、いつも微笑んでいるのかもしれない。 くるる、と、奥の薄闇から獣の寝息が聞こえる。 さて、どうやって声を掛けよう。いきなり目の前に飛び出すのは礼儀知らずだし、驚かせたくない。 思い立って、帯から草笛を抜いて、今日演奏した曲の一節を小さく吹いてみた。 聞き取ってくれたカトレアさんが、こちらを向いて、すぐにあの笑顔を浮かべてくれた。 「来てくれたの? ハヤテちゃん」 ひざ掛けの上、栞を挟まれた本の上に飛び乗る。音は立てない。 「コンバンハ、かとれあサン」 「いらっしゃい。こんなに遅くに呼び出して、ごめんなさいね」 ちらと見た本の表紙には、まだあまり文字を覚えていない私には読めない難しい綴り。 そこに、私の腰くらいまである天鵞絨張りの、多分宝石箱が、カトレアさんの手でことりと置かれた。 「お客様を立たせておくなんてできないもの、どうぞお掛けになって」 ますます敵わない気がする。私の方が余裕がない。 「本当はね、貴女に逢えたら、一番最初にありがとうって言おうと思ってたのよ」 「ル……ソンナコト」 「去年の夏辺りから、ルイズからの手紙が少しずつ減ってたの」 少し、遠くを見る目で、 「頑張ってる。元気です……いつも手紙にはそう書いてあって、でも、家族にもそう言い続けるのが辛くなってるんじゃないかって」 カトレアさんの、ルイズには言えないこと。 「私ハ、今ハマダイイ、ダケドイツカハ、国ニ帰リタイ」 そしてこれが、私の、ルイズには言えないでいること。 ルイズは好き。だけど、あの小山も忘れられない。靴に穴が開いちゃったとき、心にも穴が開いた気がした。 ほう、と、カトレアさんが、やさしく吐息をついた。 「それでも、ハヤテちゃんがルイズの使い魔になってくれて、本当によかった。ね? 私は、小さなルイズさえよければそれでいいの」 だから怒るならルイズじゃなくて私にしてね、と、小さな私に向かって本気で頭を下げてくれる人。 ルイズは、きっとカトレアさんへのお手紙に、私のこと色々と書いたんだと思う。 頭のいいカトレアさんだから、気がついたんだろう。 「ずっと昔、子供の頃だから、ルイズは覚えてないと思うけど、私もよく癇癪を起こしてたの。その度に発作を起こして、寝込んでは癇癪を起こして」 くすっ、と 「あの子ったら、私に八つ当たりされるのに、いつも私の側にいてくれた。泣きながら。それで、馬鹿な私が血を吐いて倒れたときに、『わたしがおねえちゃんの代わりに怒るから、だからおねえちゃんは笑ってて』って」 「本当は、ルイズの方が大人しくて優しい子だったの。もう死んでしまったけど、最初に私の部屋に動物を連れてきてくれたのもルイズなのよ。一生懸命『騒がしくして私の邪魔しちゃだめよ』って躾けて、連れてきてくれたの」 両手で、小さな空間を作る。このくらいの、白いネコだったわ、と。 今とは全然違う二人の姿が、カトレアさんの口から語られるのを、私は黙って聞いていた。 「ルイズはもう覚えていないのかもしれない。忘れようとして、本当に忘れちゃったのかも。あの子の中では、私は最初から優しいちい姉さまみたい」 「お母様にも、お父様にもどうしようもなかった私を変えてくれたのは、小さなルイズだった。だから私は、ルイズを、ルイズが魔法を使えるようになることを、世界の誰よりも幸せになってくれることを信じられるの」 ルイズを信じて支え続けてくれてたカトレアさん、その優しい強さは、カトレアさんの心の中にいるルイズ自身だったんだ。 「るいずハ、本当ニ覚エテナイミタイダヨ。イツモ、チイ姉サマハ優シクテ最高ノ私ノ憧レダッテ言ッテル」 「まぁ」 「デモ、ナンデ私ニ話シタノ?」 これは、カトレアさんのナイショの宝物だと思う。きっとご両親にだって話してないはず。 それなのに、逢ったばかりの私に。 「だって、ハヤテちゃん、私のこと警戒してたでしょ?」 あ、あれは、違うの、ルイズがちい姉さまのこと好きだって何度も言うから、ちょっと変な気持ちになってただけ、なのに。 「ううん、それだけじゃなくて、私が笑うのに、不自然さを感じてたみたいだし」 あんまり鋭いから、びっくりしちゃった、って。 この人は、身体が弱い。走ったり馬に乗ったり、魔法を使うのもきっと大変なんだと思う。 だけど、すごく深い人だ。世話役とか、相談役の長老たちと同じ匂いがする。 「今日は私、お昼寝したから、結構元気なの。だからハヤテちゃんとお話できるわ」 なんで、だろう。 そう言われたら、ほろりと、涙が零れた。 全然、哀しくなんてないのに。 カトレアさんがちっとも慌てないから、私も不思議と落ち着いた。 それから、沢山話した。小山のこと。隊長のこと。組んでいるマメイヌのこと、今頃はきっとつがいができてること。大好きな桃のお酒のこと。 ルイズとあれだけお話してたのに、まだ話し足りなかった自分がちょっと恥ずかしい。 空も薄く白み始めて、 「アリガトウ、かとれあサン」 沢山話して、沢山泣いて。頭も身体も、すごく軽くなった気がする。 妹の前では泣けないものね、そうカトレアさんが言ってくれた。 そういうことだったんだろうか? 私みたいな新米お姉ちゃんには、まだまだ覚えないといけないことがありそう。 手を振ってくれるカトレアさんに見送られて、ルイズの部屋に駆け戻る。 よかった、まだぐっすりと寝てた。 畳まれたハンカチの布団に潜り込んで、だけど目は閉じずにルイズの寝顔を眺める。 つい、頬が緩む。 妹の寝顔を眺めるのは、妹に懐かれてる姉の特権なんだからって、本当にカトレアさんの言うとおりだと思った。 * * くぅ、と伸びをして、あれ? と思ったけど、何が変なのか分からなかった。 ぐるりと見回して。ここは学院の寮じゃない、久しぶりのヴァリエール家だけど。 ああ、そうか。 枕元、ハンカチが盛り上がって、ゆっくりと上下してる。 ハヤテが私より遅くまで寝てるって、もの凄く珍しいから。 そうっと、振動を伝えないように、ハンカチの端を指で摘んで、そうしたら、解かれた豊かな黒髪に縁取られた整った寝顔。本当にお人形さんみたい。 起きてるときの凛とした様子からは信じられないくらいあどけない。 (だーれが、お姉ちゃんよ。まるっきり妹じゃない) いつもの立場にはとりあえず目を瞑って、メイドが朝食の支度が整ったことを伝えに来るまで、つかの間のお姉ちゃん気分を味わった。 前ページ / 豆粒ほどの小さな使い魔 / 次ページ
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名前 カルイの契約書 抽選で★4以上のキャラクター1体を仲間にできる 抽選内容 【★5キャラクター】 ティア、シルエラ、ライオ、ミリア、ジゼル、チェルシー、リーナ、 ヴィスコ、プラチナ、ユイ、クレイ、アリエット、カレン、ロア、アキラ、 メイコ、サーシャ、エーディン、トルナド、ブロンゾ、ラファル、ピピン、 ステラ、ハッカ、バステト、アリス 【★4キャラクター】 クラウディア、ミケ、ビーノ、イムベル、バーロ、イルミナ、バーバラ、 アイゼン、プルイーナ、ペルル、ルリア、シャル、イリュメ、アイラ