約 439,896 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1629.html
「……ってわけだ」 一通り話したが、もちろん手紙と元使い魔、虚無の事は伏せてある。 「小さい小さいと思っていたけど…ルイズも大きくなったのね」 感慨深げに言うのは黙って聞いていたカトレアだ。 もちろん、当人からしたら、まだ十分小さい域に入っているのだが、知らない間に紆余曲折を経て成長している事は嬉しいようだ。 しかしまぁ、それを見ているプロシュートはこの目の前の人物がその口から聞くまでルイズの姉などとは思ってはいなかった。 ハッキリ言えばマジに貴族か?と思ったぐらいだ。偏見っちゃあ偏見なのだが、今まで出会った貴族があんなのばかりだから仕方ない。 穏やかそうな顔立ち、雰囲気、これでもかと言わんばかりに振りまく優しさオーラ。後、結構ある胸。 似てるのは髪の色と目の色ぐらいであろう。メローネが居たらベイビィ・フェイスで遺伝子情報を解析させてるとこだ。 「これから、どうなさるおつもりですか?」 そんな事考えていると、どこぞの聖人かと思いたくなるぐらいの微笑を向けられそう聞かれた。 元ギャング的にこんなナマモノ見た事無いから仕方ない。 普通の状況なら一発説教かましに行くついでに学院にINしてもよかったが、この場合少し違った。 アルビオンへの侵攻計画があるかもしれないと聞いた。つまり戦争だ。 あのルイズの事。まず自身も参戦すると言い張る事は確実だ。 グレイトフル・デッドの能力を知っている以上、自分も付き合わされる事も確実だろう。 使い魔ではなくなったからには、付き合う義理も無くなったのだが、下手に能力が上の方にでも知れたら洒落にもならない。 半径200メートルの無差別老化能力。間違いなく単独最前線行きだ。 いくら射程が長いといっても、軍を相手にできると思っている程能力を過信していない。 魔法の射程よりは遥かに長いが、罠や砲などがあってはどうしようもないし、スデにガンダールヴではない。支えれたとしても局所的なものだろう。 仮にグレイトフル・デッドがトリステインの勝因に繋がったとしても、その後に待っているものが問題だ。 あの姫様はそう思っていなくても、周りの貴族どもはナニをするか分かったもんではない。 魔法という自らの特権を上回る力を持つ平民の存在。普通に考えれば暗殺対象になる事間違いなしだ。 ここに来た直後なら、まだそれでも国一つ相手にする気にはなれただろうが、現在においてはその認識を改めさせられている。 その原因に直結しているのが、ワルドだ。 対生物なら、例外なく発動する老化能力。それが全く…直触りすら通用しなかった遍在。 ムカつく相手だが、ある意味感謝すらしている部分もある。 死にかけはしたものの、そういうモノがある事を早いうちに知れたからだ。 相性が悪い。それも最悪にだ。スタンド能力ならワルドにだけ注意すればいいが、魔法ならそうはいかない。 同じ魔法を使えるヤツは必ず居る。不特定多数のそういうヤツに狙われたのでは確実にこちらが不利だ。 ギアッチョを相手にするよなものである。 使われるだけ使われて、必要が無くなれば冷遇され始末されるというのは、パッショーネに属していた時の二の舞だ。それだけは避けねばならない。 何より死んでいった仲間にどの面下げて会えたもんか分かったもんではない。 暗殺チーム全体の誇りに関わる事なのだ。 そういう事から、即返答するという事には至っていない。逃げるという選択肢は浮かんでいないあたりはさすがというべきか。 「まあ、まあ、まあ、まあまあ」 そう言ってカトレアが近付いてくる。何だと思いつつ何時もの顔でそれを見ていると、じっと見つめられた。 元ギャングの仏頂面と、見る人が見たら女神かと言いたくなるような微笑。極めて対照的だが、変わらない表情でブッ飛ぶような事を言われた。 「あなた、ルイズの恋人ね?」 オーケーちょっと待て。スタンド攻撃か。トーキング・ヘッドか。と何故か遭遇した事の無いスタンドとその能力が頭に浮かんだ程だ。 「ケンカでもしたのね。だからルイズのとこに行きたくないんでしょ」 楽しそうにそう言っているが、言われた方はたまったもんではない。 「…どこでそう思ったのか知らねーが、違う」 今なら、アンリエッタがルイズの部屋を訪れた時、同じような事を言われて人を『生物』呼ばわりしてくれた気持ちが分かる。 「腐れ縁みてーなもんで、面倒見てただけだ」 プロシュートにとってルイズの扱いは、多少なりとも成長を見せたとは言え未だペッシと同程度なのである。 まぁそのペッシと同程度という事が結構スゴイ事なのだが。 「あらあら、ごめんなさいね。わたし、すぐ間違えるのよ。気にしないで」 そう言いながら笑っているが、マジにそう思ったかは不明である。 なんせ常に同じような微笑を振りまいているのだ。リゾットの無表情とは対照的だが、その心中を正確に読むのがディ・モールト難しい。 ハッキリ言えば苦手なタイプに属するのだが、嫌な感じはしない。ごく僅かな例外を除いて人間こういうタイプを嫌うヤツは少ない。それは元ギャングとて同じ事だ。 まぁだからと言ってアテがあるわけではないのだが。 最悪、『魅惑の妖精亭』という選択肢もあったが、それはマジに最後の手だ。 あれもあれなりに結構目立つ。現在チップレース、歴代最高記録保持者に君臨しているのだ。 何よりあの一件があってからスカロンの側にはあまり居たいものではない。悪いタイプではないとは思うが、生理的にダメだ。ちょっとしたトラウマも受けているし。 思案を巡らせ、オスマンあたりに言えば何とかなるかもしれんという結論に達しかけたが、次のカトレアの言葉にそれを捨てる事になった。 「そうだわ…行く場所が無いなら、いい事があるの。あなたさえよければだけど」 さて、こちら魔法学院だ。 あれから数日経った今、ザ・ニュー使い魔こと才人は、絶好調ッ!誰もぼくを止めることはできないッ!!という具合に結構巧くやっていた。 トライアングルクラスを倒したからには、先代ほどではないにしろ、それなりに一目置かれるようになっている。 もっとも、当の本人にとっては、その先代の事が気になっていたりするのだが。 「なあ、デルフ。お前が言ってた兄貴ってどんなやつだったんだ?」 「んー、そうだな。一言で言うなら…かっこいいな」 二重ショック!剣にまでそう言われるという事は、本気でそうなんだろうと思ったが、もう一つのショックの理由はルイズにある。 あの後、ルイズにもどういうやつなのか聞いたのだが 「かか、関係無いじゃない!今の使い魔は、あ、あんたなんだから!」 という具合に、少しばかり顔を赤くさせて返答させられたのだ。 つまるところ、二重ショックの原因は『剣であるデルフが言うんだから間違いなくかっこいい』『かっこいいからルイズがそいつの事が好きだった』 と、まぁそう判断した。前者は間違ってはいないが、後者は少しばかり違う。 プロシュートの溢れんばかりの兄貴オーラのおかげでルイズ自身、好きというよりマジに『怒ると怖いが少し年が上の頼れるお兄さン』的存在に落ち着いていた。 要はすぐ上の姉、カトレアに対してのものと同じような感情である。まぁそれで他人にもって行かれたくないというとこがあった。 だからと言って、本人の前ではそうならなかったり、人から聞かれても、性格的に認めたくないのでその辺り勘違いされる要因だ。 当然、そんな事知ったこっちゃあない二代目からすれば凹ませる原因になっていたりする。 特に何があったっつーわけでもないが、あの決闘の時に自分をかばうようにして見せた姿を見た時ゲージが振り切れたっぽい。 このルイズ、比率で言うなれば4 6の割合でデレが優勢だ。言うなれば惚れ才人か。惚れ薬要らずである。 もっとも、当人の性格からして結構流されやすかったりするから、例によってキュルケに誘惑された時なぞかなりグラついてた。 さっそく手ぇ出す辺りさすがというべきか、過去は振り返らないタイプというかアレなのだが。 なんせ、『おっぱい星人』に属する彼からして、あのボリュームは凄まじいものがあったからだッ! 容姿のタイプ的にはルイズ、属性的にはキュルケ。 もち、ルイズがキュルケの部屋に飛び込むという形でケリがついたのだが、当然、説教タイムである。 鞭片手にプロシュート仕込の説教が開始されたが、本職には遠く及ばないのでいかんせん迫力が足りない。 「いい!?わたしが怒ってるのはね!あ、あんたがツェルプストーの女に尻尾なんて振ったからよ!サイト! そりゃあ、たたた、確かに、キュルケは…あ、あるわよ、むむ、胸とか!わたしだってスゴイと思う!」 こんな具合に、キュルケのアレと自分のアレを比較し怒ってんだか、絶望してるんだか分からないような声なので、どっちかというと可愛いというべきか。 そんな感じなので、当人全く応えていない。むしろ生暖かい目でそれを見ていた。 「平和だねー。兄貴が居た時じゃ考えられないね」 と、暇そうにしているデルフが言ったとおり、先代が居た頃に比べてかなり緩い雰囲気だが、両名とも何だかんだでそれなりに上手くやっているようである。 ちなみに、ゼロ戦だが現在コルベールが管理しているが、外装は修復されているため、機銃弾は装填されていないもののほぼ新品同然である。 それを見た才人が、この前イタリアで見付かったゼロ戦が何故にここにあるのかと聞いたのだが、こっちにあったものだと説明され驚いた。 そして、その持ち主の子孫がここに居ると聞いてさらにブッ飛んだ。 ご存知シエスタだが、曽祖父と同じ国から来たという事で、結構話をしたりするようになった。 才人としても同じタイプのスタンド…もとい血統という事で、良好な感じで互いに接している。 「やっぱり、ひいおじいちゃんは『日本』ってとこから来たんですね…」 ある時そう言ったのだが、心なしか声の調子が重い。さすがにそれに気付いたのか、どうしたのかと聞いたが、やっぱりちょっと暗い。 首から下げていた飾りを手に持つと、静かに話し始めた。 「これ、プロシュートさんっていう人に頂いたんです」 見せて貰うと裏面に、文字が刻まれていた。読めないが文体そのものは見覚えがある。 「ゼロ戦がサイトさんの世界に戻ったって事は、プロシュートさんは戻れたんですね」 まぁ戻れたどころか、目の前の少年とスデに遭遇しているのだが、そんな事はシエスタは知らないし、才人もあの『マシーン』がそれだとは知らない。 「…あのさ、どういうヤツだったのか聞かせてくれないか?」 度々出てくる前任者のが出てきたのでめちゃ興味はある。ルイズに聞いてもアレだったし、小太りに聞いたらビビって話したがらないし何も聞けていないからだ。 「…自分の向かう道を貫ける人…ってところですかね。凄い人でしたよ、なんていうか周りの人が引っ張られるぐらいに」 どこか遠くを見て言うシエスタに、さすがにどこかヌケていると評判の才人も気付いた。 「何回も助けて貰ってたのに、わたしったら何も恩返しできなくて…」 「でも、もう帰ったんだろ?それじゃあ…」 その続きを言う前に、シエスタが言う。 「わたしが、戻ってきてくれると思って待ってるだけですから」 それだけ言うと、元の明るい顔になり、その場を離れ残ったのは才人一人になった。 心中かなり複雑である。シエスタの話を聞く限り、ただかっこいいヤツというわけではない。 ただ、ぶっちゃけ贔屓目に見ても可愛い範疇に入る少女二人に好意を向けられても(一人はまぁちょっと違うが)平然と戻れるというとこが癪に障った。 「……ムカつくな」 非常に正直な感想で、万が一会ったら一発ブン殴ってやろうかと思ったぐらいにだ。 まぁ、自分も帰る時が来るかもしれない、というのは完全スルーしているあたりは、らしいといえばらしい。 再び場所が移り、こちら実家だ。 デカイ屋敷という事だけあって、多数の使用人が働いているのだが、黒スーツに眼鏡をかけた元暗殺者がそこに混じっていた。 スーツ姿がこれ以上なく似合うだけあって非常に馴染んでいる。ちなみに眼鏡は伊達だ。 主な仕事はカトレアが飼う動物、特に熊、蛇、虎などの一般的に言う猛獣系の世話だ。 長年勤めてきた使用人ですら、ちと危ない範囲に入るのだが、平然とそれをやるので一発採用相成った。 何故にそれができるかというと、誰も見てない所でグレイトフル・デッドを叩き込んだからだ。 負けた方が舎弟になるギャング世界の掟。動物の世界でもまぁ似たようなモンである。 ペッシは進んでああなった方だが、年が近いギアッチョとやりあって負けているため、そっちにも頭が上がらない。 能力的に言えばビーチ・ボーイならホワイト・アルバムの装甲を突破できるのだが、性格的な差が出た結果といえよう。 カトレアの誘いを受けた理由としては、ここが公爵家というのが最大の理由だろう。 王室に近い立場だけあって、情報がかなり流れてくる。 アルビオンに侵攻が本当に行われるかどうかにしても、情報はどうしても欲しい。 もちろん、使用人に流れてくる話など大したものがあるとは思えないが、そこはカトレアから聞き出せるので問題ない。 というか、動物の世話なぞほとんどついでである。 初っ端からギャング的行動をモロに叩き込んだので、世話なぞすぐ終わり時間を持て余している。 字が読めないという事で、空いた時間カトレア直々に他に内密に勉強会が始まるのだが 動物に囲まれた中、かなりファンシーな雰囲気でやっているので、結構居心地は悪い。 教えている方は、結構楽しそうなので問題無いだろうが、教えられている方は 猫とか子犬とかが脚の上にのったりするので、ちとアレだが受けている立場なのであまり何も言えない。 「…オレも結構ヤキが回ったな」 メローネあたりが見たら何を言われるか分かったもんではない。 そう呟くと、膝の上の猫を少し触って本に目を向けた。 プロシュート兄貴―ザ・ニュー職場! 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/981.html
あれから貴族達は蜘蛛の子を散らすように才人から逃げていった。 あの、ゼロと呼ばれて切れかかっていたルイズや、心配をして見に来たシエスタすら、才人の5m以内に近寄ろうとしない。 至極当然だ。僕だって近寄りたくない。 才人が近づけば、近づいた分だけ後ずさり。 近づく。 後ろに下がる。 近づく。 後ろに下がる。 駆け寄ってくる。 全力で後ろに下がる。 「おい……、ちょっと待っ……」 「イヤァアアアアアアアアアアア! こっちに来ないでくださいィィィィイイイ!」 「許可しないィィィィィィイイイイイイイ! 使い魔が、私のそばに近づくことを許可しないィィィィィイイイイイ!」 「僕のそばに近寄るなァァァァァッ!」 「こいつはクセェー! ゲロの臭いがプンプンするぜぇーーーーッ! こんな平民には出会った事が無いほどなァ!」 才人は泣きそうになっていた。 僕はさんざんボロクソにいわれて、凹みきった才人を、何とか水場まで連れてくる。 はじめはシエスタが水場までの案内を勤めることになったのだが、上っ面は取り繕っていたものの、今にも泣き出しそうな様子だったので、僕が代わりに才人を水場まで連れて行くことになったのだった。 女性は大切に扱わなくてはならないからな。 「へっ……。どうせ俺はモグラさ……」 「良いから、早く身体を洗ってください」 しかし、今にもキノコが生えてきそうな、この才人はどうにかならないのか。 彼は調子に乗るのも、落ち込むのも早い。しかもどちらも天井知らずだ。 マッハで落ち込み、マッハで立ち直る。 きっと空気の速度を超えてるから、とことん空気が読めないのだろう。 僕はそう、自分の中で結論づけることにした。 身体は洗えるが、パーカーの方はどうしようもないので、洗濯して干すことになった。 勿論、洗濯は才人にやらせる。 替えの洋服なんて持っているわけが無く、上半身裸で、ひたすらに服を洗う姿は、何とも哀れみを誘った。 でも手伝わない。 ともかく、このままではルイズの元に戻ることも出来ないので、僕が学ランを貸してやる必要がある。 「もう、大丈夫だよな……?」 しきりに自分の臭いを嗅ぐ才人。 これを見ていると、どうも貸そうという気が起こらなくなる。 しかし、おいていくわけにも行かないだろう。 「気になるんだったら、コレを使ってください」 僕はズボンのポケットに入れていた、消臭スプレーを才人に手渡した。 秋葉原を歩くのに、常備していた奴だ。 正直、コレ無しで彼処は歩きたくない。 「ああ、サンキュー」 そういってスプレーを受け取り、才人は念入りに身体に吹き付け始める。 そういえば、この世界ではスプレーの換えはきかないんだな。 やむ得ないとはいえ、簡単に才人にスプレーを貸したことに、僕は少し後悔した。 彼がそこの所を、配慮してくれればいいのだが…… 「おし、もう大丈夫」 かけ終わったのか、才人は僕にスプレーを返してくる。 残量を確かめるため、軽く振ってみる。 チャポチャポと音がした。 結構使われてしまった様だ。 まだ新品だったのだが。 才人の方を向く。 フローラルな香りが鼻についた。 僕は思いっきりため息をつきながら、才人に来ていた学ランを渡した。 才人は受け取った学ランを見つめ、ぽつりとつぶやく。 「なあ、花京院」 「何です?」 「何で、秋葉原行くのに学ラン来てたんだ?」 「僕は学生ですから。ガクセーはガクセーらしくですよ」 「いや、理由になってないから」 やや身長に差があるためか、僕の学ランは才人には一回り大きかった。 僕にとっては膝下ぐらいまでだが、才人にとっては脛ぐらいまである。 学ランが汚れないか、少しそわそわしながら、僕等はルイズの部屋の方へと戻る。 途中、ルイズの部屋へと向かう螺旋階段を上りながら、才人が何かを思い出したように話しかけてきた。 「そういやさ、聞きそびれたことがあんだけど」 「何ですか?」 僕はどうせまた、空気の読めない事を言うつもりだろうと、聞き流すつもりでいた。 「あの決闘の時、お前から出てきた緑色のアレ、いったい何なんだ?」 「!」 「アレが前言ってた、スタンドって奴か?」 唐突だった。 今、彼はなんと言った? 僕のスタンドが見えた。といったのか? その一言を聞いて、今までの、スタンドが発現してからの思い出が、すっと僕の頭の中に浮かび上がっていく。 「お、おい。花京院? お、俺、今何か不味いこと言ったのか!?」 僕に気持ちが通い合う人が何人現れるだろうか。 小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号で一杯だ。 母には、父がいる。父には、母がいる。 TVに出ている人や、ロックスターにはきっと何万人も居るんだろう。 自分は違う。 自分にとって、真に心の通い合う友人は現れるのだろうか? 実を言うと、ここが異世界と解った時、ほんのちょっぴり期待をした。 記憶の僕のように、ここなら、ひょっとすれば、僕と真に心が通じ合う友人が出来るかも知れない。っと。 今、目の前の才人は、ずっと僕の目の前にあった、一つの柵を、何も無いかのように越えてきたのだ。 心に、ささやかな期待が生まれた。 何故見えたのか、そんな疑問は、その期待の前では些細なものだ。 「いえ…… 後で、詳しく教えます……」 「そ、そうか……」 ルイズの部屋の前に着く。 僕の心は、いささか弾んでいた。 あの時、ルイズが殺気を放っていたことすら忘れるほどに。 僕らは、部屋のドアを開けた。 鬼がいた。 「随分と、機嫌良さそうじゃない。ご主人様にあれだけふざけたまねをしておいて……」 鬼……この部屋の主、ルイズは右腕に乗馬用の鞭を持って、どっかりとベットの上に座っていた。 正直言って、僕らは目の前の少女にびびっていた。 足がすくんで、体中の毛が逆立ち、全身が凍り付いた。 胃が痙攣し、胃液が逆流してくる。 反吐をはく、一歩手前だ。 「勿論、覚悟は出来ているわよねぇ……」 底冷えがするような声だった。 「「HOLY SHIT! ヤッバアアアイイ!」」 「待ちなさぁ~い!」 結局、あれだけゼロゼロと連呼したことで、僕と才人は3日間の飯抜きを宣告されたのだった。 チャンチャン♪ To be contenued…… 戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2361.html
「船長! 左舷後方に船影です!」 「ありゃこっちと同じ、貨物船だな。こんな時間に出会うとは、珍しい」 「どういうこと?」とルイズが会話に割り込む。 「出航する時に言ったとおり、風石ってのはえらく高くつくもんでしてね。風石を多めに 使っても構わない程の、よほど貴重な荷を運んでるんでもないと、こんな時間にこの辺り を船が通る訳がねえんですよ」 「なるほどねえ」 「ま、あっしらがここにいるのは、あのおっかねえ姐さんに脅されて無理やりなんで、風 石の不足分は何とかしていただきますぜ。でないと全員仲よくお陀仏ですからな」 「そりゃ大変よねえ」 「ですから早いところ、あのメイジの方を起こしてもらって、風の魔力の方を一つ……」 その肝心のメイジが水のトライアングルだと知ったら、この男はどれだけ慌てるだろう 。思わずバラしてしまいたくなる衝動に耐え、ルイズが本題に入る。 「そっちの方はうまくやるわよ。そんなことより朝食はまだなのかしら?」 「朝食って、さっき喰ってた肉じゃ足りないんで?」 そもそも勝手に喰うんじゃねえッ、とツッコミたかったが、そこは抑える。あのガンマ ンも怖いが、この傭兵の傍若無人さも、侮ったら痛い目を見ると本能が告げている。 「成長期なのよ」 『そうだぞルイズ、まだまだこれからだ。諦めるんじゃあない』 さすが実体を持たないポルナレフ! 常人には決して口にできない事を平然と言っての けるッ、そこにシビれる! あこがれるゥ! 空気を読めないのはむしろ特技だ。 「!」 ルイズが放った突然の凄みを、こいつは喰うといったら喰うスゴ味がある! と勘違い した船長が諦めたように言った。 「ちっ。また適当に見繕って済まして下さいや」 「そうさせてもらうわ。じゃあね」 何を諦めるなだってェ? とかなんとか、ぶつぶつ呟きながら船倉へ降りて行く、若い 傭兵を眺め、船長はやれやれとため息をついた。 「後方の船は、当船との併走コースに入るものと思われます」見張りからの報告が入る。 「そうか、この辺もそろそろ物騒な領域に入るからな。二隻で組んで行けるなら、それに 越したことはないだろう。砲門の数も倍になるしな」ちらりと笑みがこぼれる。 「よし、向こうもそのつもりだろうから、確認しておけ」 「あいあいさー」 船長の推測は道理である。しかし残念ながら、この状況は既にその埒外にあり、強引な 四人の乗客が予想して期待した、そんな展開を迎えようとしている。 「なんと言ってきた?」 「いっしょにあるびおんにいこうね。だそうです」 訊いた男の引きつった顔面に、獣の笑みが浮かぶ。コートの内にある鉄棒を布地越しに さする。いいぞ、とてもいい。 「で、ど、どうしますんで?」怯えきった声の男が問う。ルイズたちの船に追いつこうと している貨物船――身を軽くして急げと、全ての荷は捨てられているが――の、船長であ る。たまたま、そこに船があったというだけの理由で、この凶相の傭兵に徴発された、運 の悪い船の、運の悪い男だ。 「よろしくです。とでも言ってアレの横に着けろ。追いついたんだ、ここからはゆっくり でいい」 「へ、へい」あたふたと、船員に指示を出す。 手旗を振っている船員を眺めつつ、手下どもの待つ船室へ向かう男。その二つ名は白炎 という。 船ごと燃やして落とせとの指令だが、それじゃあつまらん。最後の一人が燃える匂いま で嗅いでやるのが、礼儀ってもんだ。特にあの女、あれは存分に抗いながら、いい香りで こんがり燃え尽きてくれそうだ。ああ楽しみだ。 「おうお前ら、仕事だ」 酒場での戦闘に参加させなかった十数名の傭兵、全員がメイジである部下たちに告げる 。どいつもこいつも、ろくでなしの貴族崩れだが、人殺しの経験だけは買える。おまけに 、死んだらカネで補充できる。さして高くもないカネで。こんな任務にはおあつらえ向き だ。 「いいか、焼いていいのは俺だけだ。殺す方は好きなだけ楽しめ」 「了解」 さあ戦だ。敵も味方も、存分に死ね。 「来るわよ」 朝食の干し肉を噛み千切りながら、王女の傭兵が主人のいる船室に入って報告する。二 日酔いでえらく不機嫌な姫が、気だるげに手を振る。もう一人は反射的に戦闘から離脱し てしまって、少し気まずい思いのアニエス。船の確保は果たしたとはいえ、状況から見れ ば同僚を戦場に捨てて逃げたと、思われても仕方がない。 「それは、この頭痛を晴らしてくれるくらいには、楽しめるのかしらね」 「さあどうだか。で、どうします? またわたしがこう、がつんがつんと」 「で、殿下! この場は何卒わたしにお任せを!」いささか切実な口調で懇願する。 「その呼び名は禁句ですよ、アニエス」 昨晩の安酒場で王女を云々と叫んでいた事など、さっぱり記憶にないアンリエッタが叱 咤する。 「まあ、それはともかく。わたくしがひと暴れする前の露払い、努めてもらいましょうか 」 「はっ、決してご期待には背きませぬ」 『おいおい。いいのかね、あの姉ちゃん行かしちゃって』 『いやいや、あの子はあれで侮れない実力があると見るぞ、私は』 元剣士の見立てだろうか、やけに自信のありそうな分析をするポルナレフ。かたやデル フは未だアニエスに握られたことがないので、その実力がどれほどか、その肝心なところ を知れないのが不満らしく、否定的だ。 「どうだかねえ」 「何だとコラ。わたしの腕が当てにならないと吐かすか!」 「あんたに言ったんじゃないわよ! って。そうよならないわよ! あんた昨日の――」 「やめなさい。仲よくしないと、わたくしが許しませんよ」 「ちっ」 「なな、何だその態度は! 畏れ多くもッ」 騒ぐ二人をぎろり、と睥睨するあらくれ。その瞳はもはや、高貴な光を湛えていない。 「……月夜の晩ばかりじゃないぞ」 「……あんたこそ、またブチのめされたくなかったら――」 猛る狂犬どもを従える面倒臭さにため息をついて、拳骨を二つくれたのち、王女は甲板 に上がった。 二隻の船が並ぶ。眼下に雲、天上に太陽。傍からその風景を見る者があれば、ちょっと 絵にでも描いてみようかと、思うかも知れない。 「行け野郎ども!」 「行くわよ!」 しかしそこで始まるのは戦だ。どちらかが必ず惨めに敗北する戦だ。 まるで開戦の合図があったかのように、二隻の船の船室から同時に飛び出す傭兵ども。 かたやわらわらと傭兵の群れ、こなた銃と剣の使い手が一人、と、杖を振り回すメイジが また一人。 「空賊だったっていうのか! この空域で、あの貨物船が?」 「船長! 鉤ロープで捕獲されました! 離脱不可能です」 「くそうっ。何なんだまったく。昨日から散々だ!」 とにもかくにも死んだら終わりだ。船員に一切の抵抗を捨て、状況が納まるまでどこで もいいから亀のように引っ込んで、決して動くなと指示を出す。そしてとても嫌そうに、 乗り込んできた一団の、首領とおぼしき人物へと向かった。もちろん、降伏をするために 。 「邪魔だ!」 両手を上げて甲板を進む船長を蹴り飛ばした、アニエスが怒鳴る。両手に銃把を握り、 双眸をギラつかせている。目標は殿下の覇道に転がる石ころ、容赦も慈悲も必要ない。連 射性能の望めないこれが有効なのは、初弾の二発。これを速攻で敵の首領にブチ込む。残 る雑魚共は剣で殲滅する、これで任務完了だ。このわたしの前に立ったこと、後悔させる 暇さえ与えない―― 必中の手応えを確認し、では残党を狩り尽くしてやるかと、火傷顔からその取り巻き共 に視線を移して甲板を蹴ろうとした瞬間、予想外の衝撃がその身体をブッ飛ばす。半身を 襲う、ぶすぶすと肉の焦げる臭い、尋常でない激痛が骨の髄まで轟く。 「なん……だと……」燻る右半身を反射的に上にひねって倒れながら、既に倒したはずの 男に視線をやり、その身体に血飛沫の一つもないことに絶望した。ありえない、そんな規 格外の暴威、銃弾すら凌駕する魔力だと、何だこれは。で、殿下ッ、この男は危険です。 わたしがすぐに参りますから、この男に近づくのは…… 「わたくしの盾に瑕をつけてくれたようですね」 部下の無残を前に毛ほども揺るがない、平静そのままの声でアンリエッタが高らかに宣 告する。執行が決まった死囚へ告解を施すような表情だ。神の執行代理人として裁定者と して、これから行うことが救済であると、行われなければならない断罪であると、覚悟を 求める顔だ。 「焼き応えのない姉ちゃんだったな。匂いがもの足りねえ」 「なればわたくしが、その炎を消して差し上げなければ参りませんね」 「できるか? やってみろ。受けてやる」背後の部下に向けて怒鳴る。「この女とサシの 勝負だ、邪魔をして俺の機嫌を損ねるんじゃあねえぞ!」 何しろ火線上にいた、というだけの理由で味方ごと、黒焦げの死体にした事のある男の 命令だ。誰だってわが身は惜しい。まあどうせすぐに終わるさ、と詠唱を中断して傭兵た ちはしばしの見物を始めた。 対峙する二人の背後に現れた、アルビオン大陸。『白の国』の形容そのままに、流れ落 ちる川の流れが霧と変わり、雲となり大陸を白く煙らす。氷の憤怒を纏う水の王女が、そ の力の根源を呼びながら進む。 「消し炭にしてくれる!」叫ぶ声が小さく、遠く聞こえる。 水の鎧を絶え間なくその身に現し続け、火の傭兵へと歩を進める。業火が踊っている甲 板を弛まなく歩む。一歩、足が触れるごとに、その周辺の炎が力を失い、掻き消える。ル ーンを刻む口唇が嘲るように歪んでいく。万人を鎮め、万物を水平に至らせる我が水の力 、侮るでない。 「『火』も『水』も無駄ッ!」その声と杖が放たれた瞬間、辺りの炎、その全てが霧散し た。 「なるほどたいしたもんだ」絶対の自信の源であった炎を無効化されたというのに、不敵 な笑みを浮かべたままの男がほざく。「火と水、相性が悪いとはいえ、この俺の炎を消し てみせるとは。だがな、魔法が効かないなら、効かせてやることもできるんだぜ」 杖代わりの鉄棒をすっと引き、構える。 「その杖を叩き落しちまえばなあッ!」 アンリエッタの手にする杖を、その身体ごとなぎ払わんと鉄棒が振るわれる。当たれば 杖は折れるだろう、細身の身体も無事では済まないだろう、当たれば。 「ぐお」杖を手放したのは、果たして傭兵の方だった。絶妙の払い流しが鉄棒の軌道を変 え、空振り甲板を打たせる。そこをすかさず巻き落しにて逆に捻ったのだ。どれほど力が 強くとも、関節の稼動域を超える作用に逆らうことはできない。間、髪を容れずアンリエ ッタの腕がしなり、その先の杖が腕部の急所――手首・肘・肩口――を突く。 相手の杖が甲板に転がるのを見やり、詠唱を開始する。技と力を封じられた傭兵の顔色 が褪めていく。ありえないことが二度続いたのだ、無理もない。 「……燃やしてやる……こんな現実は燃やしてやるよ……」棒立ちの傭兵から呟きが漏れ ている。少し、目が虚ろだ。 「跪け!」詠唱の完成と同時に杖を振り下ろし、命令を下すアンリエッタ。既に決してい るように見える勝負、しかしこのアンリエッタ容赦せん! とばかりに水の魔法が振るわ れる。水球が傭兵の頭部を丸ごと捕らえ、息を奪う。哀れな男がごぼごぼと息を吐き出し つつ倒れ、悶える。その姿を感慨もなく見下ろし、振り返る。「船長?」 「へ、へい」甲板と大砲の間に押し込まれた格好で震えていた船長が、恐る恐る顔を覗か せる。 「この男を拘束してもらえるかしら?」 「いますぐやりますですハイ」いつのまにか、立っている空賊が一人もいなくなっている ことに驚き、慌てて部下たちを呼び集め、指示を出す。ようやく水球から開放された男は 、おとなしくぐるぐる巻きにされている。苦しげに水を吐き出しながら。 「さて」縛られて転がる男に再度、杖を向けて問う。「そなたの炎、なかなかのものと見 たので欲しくなりました。わたくしに従うのであればその命、買い上げましょう」 苦しげな動作で頭を垂れ、肯定の意を示す男。ここで殺せなどと強がったら、一体どん な殺され方を味わうはめになるのか、想像もしたくない……。 「よろしい。その炎、以後はわたくしの為にのみ、揮いなさい」 火と水の戦いの間。船尾から隣の船に乗り移ったルイズは、ただ一つの動作に没頭して いた。休めの姿勢で見物に興じる傭兵どもの背後にまわり、ポルナレフに教わった、人体 を即死に至らしめる一点、腎臓に刺突を繰り返す。 「腎臓を中心に捉えて……刺す、腎臓を中心に捉えて……刺す、腎臓を中心に捉えて…… 刺す」声には出さず、そして声もなく苦痛もなく絶命する傭兵。簡単すぎて少し呆れなが ら―― だるそうな足取りでアニエスを引きずって、船室へ向かうアンリエッタの許に、一仕事 終えたもう一人の盾が歩み寄る。 「ありゃ、もう片付いちまいましたかい?」小刀の血糊を拭いつつ、軽口を叩くルイズ。 「ふふ、すっかり傭兵の口調が板についてますのね。ああ、あの者を雇うことにしました から、殺してはいけませんよ」と、空いた手を後ろの甲板で倒れ伏している傭兵に振る。 「そりゃ、まあ。って姉御!」 精神の消耗が限界に到達したアンリエッタが、膝をついた格好でアニエスをルイズの腕 の中に押し込み、崩れ落ちる。 『いい根性だ。この姫様には『黄金の意志』があるぞ、ルイズ』 「知ってるわよ。だから――」 何かを回顧するように、遠い目であらぬ方を見つめている、左手のポルナレフを振り回 しながら船室へ向かう。全開で死力を尽くした姫を、寝かせてやらなくては。アニエスは 床でいいか。つうかこいつ、服が焦げたくらいで終わっちまったのかよ。そんで主君に連 れられてご帰還とか、超へタレなんじゃないの? 二人をそれぞれ安置して、甲板で困惑顔の船長に声をかける。「どう? 生きてる?」 それが他の船員も含めての問いだと気づいた船長が答える。 「へえ、慌てて転んで足をくじいたのやら、小便を漏らしたのやら、みっともない次第で すが全員生きてますハイ」 それはよかったと頷き、焼け落ちた何枚かの帆を張りなおして、操船を再開させるよう にと命じると、舷側を蹴って隣の船に移った。 傭兵の死体をおろおろしつつ見つめている船員の肩を叩き、船長の所在を訊ねる。戦闘 が始まった拍子に一目散、船室へ駆け込んでそれっきりだそうだ。 「やれやれ」これならあっちの船長の方が十倍マシだわ。 船室のドアにはご丁寧に錠まで下ろされている。もう馬鹿にした笑顔満点のルイズが『 アンロック』を行う。もちろんそれは魔法ではなく、どちらかというと蹴りだ。 外開きのドアを無理やり内に蹴破って、船長らしき男を捜す。あ、あれだ。隅の暗がり に頭を抱えてうずくまり、尻をこちらに向けている男、あれに違いない。 「おい、おっさん。あんたが船長だろ?」尻に蹴りを入れるルイズ。 「ひゃい、い、命ばかりはお助けをー」 「ごろつきどもは始末した、もう死なねえから起きな」尻に蹴りを入れるルイズ。 「へ? た、助かったんですか?」 「ああそうだよ。だから起きろって」尻に蹴りを入れるルイズ。 安心より、尻を蹴る脚から逃れようと、よろよろと立ち上がる船長。貧相を絵に描いた ような顔の五十男が、卑屈な笑みを浮かべる。股間には特大の染みをこさえている。げ、 まさか濡れたとこ蹴ってないよな。ルイズは自分の船の船長の評価を、この男の五十倍に 修正した。 「あたしらはあっちの船の傭兵だよ」そういうことにしておくのが楽だと決めたルイズが 、靴に異常がないか確かめつつ言った。 「傭兵の方でございましたか、このたびはまことにありがたく――」 「まあ、それはいいからさ。この船はどこに向かう予定だったんだい?」 「ロマリアでございますです。積荷は捨てられてしまいましたが」 「へえ、それはよかった」そう、よかったのだ。ロマリアはアルビオンより遠い。風石も たくさん積んでいる。二隻でアルビオンに辿りつくのも可能だろう。いざとなればこの船 の風石を頂いて、アルビオンに向かう予定だったのだ、沈まずに済んだのは運がいい。 何がよかったのか理解できないでいる船長に、「いいからとりあえず船を動かせるよう にしな」と、やることを与えてやり、ルイズは自分の船に戻った。 「喜べ船長、予定通りに風石が届いたわよ」 「なんですと?」 すっかりメイジの魔力で浮力を補うとばかり、思い込んでいた船長が仰天した。そもそ もついさっきまで、拿捕されたり、降伏しようとしたり、魔法戦が始まったりと訳の判ら ない展開ばかり。その上お次は襲ってきた船が風石を届けにきてたって? 「で、ではあのメイジの方は……」 「疲れて寝てる。ちなみにあの姐さんは水のトライアングルだから」 「じゃ、じゃあ、あの船が」と指さし、「あの空賊どもがくるのを判ってたんで?」とさ らに混乱した船長が尋ねる。 「空賊じゃなくて、ごろつきどもに乗っ取られたんだけど、そんなところね。いきなり船 に火を放たれなかったのは、運がよかった。というか、あの大男の趣味が悪かったのがよ かった、そんな感じ」 「もう、なにがなにやらですよ」 「ま、あんまり考えない。悩むとハゲるわよ。風石の方は任せたからね」 仲間の元へ戻っていく傭兵の背を眺めながら、船長がひとりごちる。 「しかしまあ、一難去ってまた一難、それも終わっちまえば、もう何にもないだろうさ」 ――しかしそうは問屋が卸さない。悪いことのあとに良いことが待っているというのは 、そうなるといいな、という願望に過ぎない。 船内に平和が戻って半刻ほど経った頃だろうか。 「せ、せ、船長! 空賊です! また空賊です! 右舷上方!」 船を見ればそれ空賊と、すっかり思い込んでしまった見張りが叫ぶ。まったくこのこし ぬけどもが。俺はもう何がきても負ける気がしねえよ、この船の武装に敵う奴らがいてた まるか。 そんなヤケクソの境地に至った船長が、見張りの示す方向を見上げてつぶやいた。こり ゃまた、今度は軍艦かよ。砲門がずらっと並んでやがる。でもなんだ、どうせ乗り込んで くるんだろ? ご愁傷様だね。 「あの船は旗を掲げておりません!」ほらな。 「ようし、さっきと同じだ。停船して隠れちまえ。あ、隣の船にも伝えておけよ」 きびすを返し、傭兵たちのいる船室へ向かう船長。その顔には隠し切れない諧謔が現れ ていた。 「また出ましたよ。今度は軍艦ですよ」と船長が声をかけ、返事を待たずに船室へ入る。 あーあ、もう。何て緊張感のない人たちなんだ、まったく。 「起きて下さいよう」ゆさゆさとルイズの肩を揺する。 「んが」 「船長が起きろってよー、軍艦だってよー」と床に刺さった剣が喋る。 「もう……食べられないよう……」 「姐さーん、敵ですよー」と船長。 「姐さーん、敵だってよー」と剣。 「どうしたら起きてくれるんですかい、このお人は?」と、今度は剣に向かって船長。 「そうだねえ、大砲でもぶっ放せば起きるかもね」と剣が答える。 と、そこで実にタイミングよく、外から轟いた砲弾の音。ぼごん! その音が傭兵たちの何かのスイッチを入れたのだろう、ぐわしと眼が見開かれ、がばと 起き上がる二人、そして文字通り飛び起きる一人。 「なっ!? 寝たままの姿勢! 掌だけであんな跳躍を!」船長がぶったまげる。 「敵は何? 何人?」着地と同時に剣をつかんだルイズが船長に訊く。 「ぐ、軍艦でさあ、人数はいっぱいです!」 「あ、あれ? わたしさっき焼かれて……」五体満足に床から立ち上がったアニエスが首 をかしげている。 「わたくしの盾ですからね、治しておきましたよ」とアンリエッタ。 「おお、殿――ぐあっ」言いかけたアニエスに、笑顔で肘を叩き込むアンリエッタ。 「それはともかく、軍艦とはまたご大層な。まあよいですわ、手土産をもう一つ増やして 差し上げましょう」 「と、とにかくお願いしますよ!」まだ外の方が安全で平和だ、と察した船長が甲板に走 って消える。 「んじゃまたわたしが、こう、ずばんずばんと」と意気込むルイズ。 そこに羞恥で顔を染めたアニエスが割り込む。 「こここ、今度こそ、私めにお任せを!」 「無理じゃね?」鼻をほじるような声でルイズ。 「ば、馬鹿を言うな! 先ほどは少しばかり油断しただけだ!」 「まあまあ姐さんたち、ここは一つ協力し――ぐあっ」仲裁空しく豪腕パンチを食らうデ ルフ。 「ルイズ、アニエスもこのままでは浮かばれません、先陣は任せましょう」 『そうだぞルイズ、アニエスが可哀相だ。たまには――』空を切る右腕、ポルナレフは痛 くも痒くもない。 「ちぇっ、姉御がそう言うならそれでいいですよ」 「さ、お行きなさい。期待してますよ」 「ありがとうございます! で……姉御! いざ!」先の不様を反省したのか、銃を放り 出し、剣を抜いて甲板に走るアニエス。 「空賊だ! 抵抗するな!」とメガホンから空賊が怒鳴っている。 「どおりゃああ」と掛け声も勇ましく飛び出したるは王女の盾、アニエス。しかしその瞬 間、アニエスの頭が青白い雲で覆われた。アニエスは甲板に倒れ、寝息を立て始めた。 「眠りの雲……、確実にメイジがいるようだな」半笑いで冷静に状況を見るルイズ。 「……っ」こらえている、こらえているアンリエッタ。 「ありゃ。あそこで寝られたらちょいと厄介じゃないの?」デルフも冷静だ。 『うーん、あの子はやればできる子だと思ってたんだがなあ』ポルナレフは同情している 。 「しかたねえ、少し様子を見ますか姉御?」 「そ、そうねっ……っ」まだ何かをこらえている。 「船長はどこでえ」 おとぎ話の挿絵から抜け出たような、呆れるほど典型的な装いの、空賊の頭らしき男が じろじろと辺りを睥睨する。眼帯を巻いているので片目で。 階段の影からその様子を眺めていたアンリエッタが、予想だにしなかった、新たな方向 からの衝撃により、絶頂に達してしまったようだ。 「プッ ウヒヒヒヒヒヒヒ!! ハハハハハハハハーッ!」 腹を抱え、もう完全に無防備で爆笑を続けながら、空賊の頭へ向かうアンリエッタ。 そんな妃殿下の姿を唖然とした表情で見送るルイズ。空賊たちも同様だ。 「もうだめだ………こいつ、完全にイカれちまってるぜ……」 一人は眠らされ、一人は爆笑しながら頭の肩を叩いている。どうしたらいいんだオイ。 「フハハッ クックックック ノォホホノォホ……ホ、ひょっ、ちょっとあなた、こちら へいらっしゃい。ウヒ」 「な、なんでいおめえは」この容姿にも背後の軍艦にも動じることなく、俺の肩をばんば んと叩いて爆笑しているこの女は何だ。何がどうなってる。もしかしてこの格好、変なの かな……。 そうこうしつつも、ぐいぐいと腕を引っ張られ、船室に連れ込まれる頭。いいからいい からクックッフヒヒヒとまだ笑うアンリエッタ。困惑の極みながら、ルイズもついていく 。 首領を椅子に座らせ、呼吸を落ち着けるアンリエッタ。 「ぶ……っ、くはあ」よほど腹筋を酷使したのだろう、腹を押さえる表情が苦しげだ。 「何なんだと訊いている!」 「か……」 どうにか半笑いまでに回復したアンリエッタが頭に告げる。 「風吹く夜に」 「なぜそれをっ!」 「水の誓いを、ってこちらがわたくしの台詞よね。お久しぶり、ウェールズ・テューダー 」 「なんですと」ルイズが思わず突っ込む。このコスプレ野郎が皇太子だと。ありえん。 懐から鮮やかに青く光る指輪を取り出して、指先でくるくる回してみせるアンリエッタ 。 「しかし、君がなぜここに。そもそもまるで面影がないではないか」 「三年も経れば女は変わりますわ。あとは少しの変装で目を欺くなど容易いこと」 髪を煤けた金に染め、眉を細く酷薄な形に整え、鈍い色の口紅を差す。彼女が顔に施し たのはそれだけである。むしろその本質はその下、その豊かな双子の霊峰を、あらゆる方 向から締めつけ持ち上げ覆い、その造形を輪郭を一片も損なうことなく、遍く強調する黒 革の服だ。その拘束から唯一逃れるは中心に輝く丸窓から覗く峡谷、白磁のような透明感 と流水の滑らかさにて彩る絶景、漆黒と乳白が対照の妙を示す。闇の中のまたたく光だ。 老若男女を問わず、その威容を目にすれば、彼女の印象のほぼ全てはそこに集約される 。曰く、とんでもない谷間だった、と。顔の方は精々、おっかなかった、かな? という 程度で完結する。ちなみに、その更に下には膝上二十サントの短い、非常に短い黒革のス カートを纏い、腰にはゴツく太いベルトを無造作に巻いている。これはまたこれで、好事 家には垂涎の的になること請け合いだ。 「しかしあなたのそれは傑作ですわね」と、また発作がくるのを抑えつつ、アンリエッタ が言う。 「そうかな? 自分ではわりとよくできてると思うんだが」 「どれだけ装おうとも、あなたのそれは隠しきれませんわ。片方を塞いでいればなおさら です」 「こ、この眼帯がいけなかったのか?」 「眼帯をしている男がいたら、開いた方の目をどうしても注視しまうものです。そして、 そこにあるのが『王子様の瞳』では。これはもう笑ってしまいますわ」 「ううむ、やはり君には敵わないな」 「さあ、それを外してわたくしの美男子を見せて下さいな」 眼帯をアンリエッタに取り上げられたウェールズが、かつらを外し、べりべりとひげを はがす。美……美形だ! 「ああウェールズ。そうよ、そうでなくては……」 甘ったるい展開が始まりそうな予感に、ルイズは船室から逃げ出した。 ぽかんとした空賊たち、手を挙げるかどうか決めかねて困ってる船長、すやすやと眠る アニエス。ぐるぐる巻きの大男。ああもうしょうがねえなあ。 「船長、船を出す準備をしな。そんでお前ら、『王子様』はうちのボスと乳繰り合ってる から、ま、そういうことだ、元の仕事に戻りな。んで、起きろねぼすけ、オラ」アニエス に蹴りを入れるルイズ。 その言葉に目を丸くした空賊が訊ねる。 「え? あっしらの正体が割れちまったんで?」 「その喋り方ももういいから、ほれ、とっとと国に帰るんだよ」不機嫌そうにルイズが応 える。酒だ、今日はもう飲むぞ。 「皇太子が空賊の真似事とはねえ、いやあ、おでれーた」 『返り討ちにあって捕らえられたり、死んだりしたら、どうするつもりだったんだろうな 。国を滅ぼしたヴァカと、歴史に名を残してしまいそうなものなのだが……』 「うるさいわねもう。明日は戦争なんだから、今日は飲むのよ!」 担ぎ下ろした樽の蓋をデルフリンガーでこじ開け、杯をごぼりと沈めてワインを汲む。 穏やかな陽光の下、舷側を背に酒盛りを始めたルイズ。結果的にとはいえ、命を救われた とあって咎める者はいない。むしろ賞賛の目をちら、と向ける船員もいる。年齢で比べれ ば、この船の一番若い船員とルイズがどっこいであり、しかも女。そんな彼女がばったば ったとメイジの傭兵どもを切り伏せて見せたのだ、さもありなんである。 「ぷはあ、いい汗かいたあとの酒は格別!」 『しかしまあよく飲むな、私の祖国の連中といい勝負だ』 「フランス、だったわね」 『ああ、世界一のワインを醸す国だ。もっとも、この世界のワインを試したことがないの で、どちらが上かは判らないが』 「わたしがフランスのワインを確かめるわよ、いつかきっと」 『そうだな。君となら行けそうだ』 「姐さん! その時にはもちろん俺も一緒だよな!」 「そりゃ、杖を持たないで行ったら格好がつかないしね」 「ひゃっほー」デルフはとても嬉しそうだ。 『しかしデルフ、あっちの世界で抜き身の刀を背負っていたら、即、逮捕だぞ』 「心配すんなって相棒、その頃には姐さんも、もでる並みの立派な身体になってらい!」 「何よそのもでるって?」 「いやこれが相棒から聞いたんだけどさ、あっちの世界にはこう、すらっとした長身の超 絶美人たちが最高級の服を纏って、舞台を練り歩いたり本の表紙を飾ったりする仕事があ るんだと。しかもそれがそこいらの貴族なんぞより、がっぽり稼いでるっていうじゃねえ か!」 「ふうん、仕事にも色々あるのね」満更でもなさそうだ。 「いま十六だろ、姐さん。あと二・三年もすりゃ、凄いぜ。俺には判るね」 『秀逸な身体能力、鋼の精神、類いまれな食欲。私も同意する、ルイズ、君は伸びるぞ。 まさにあらゆる意味で』 「ちょ、何だって今日はそんなに褒めるのよ、何も出ないんだからね!」 「そりゃまあ、ほら。見ちまったからな。姐さんの『覚悟』を」 『敵と認めた奴ばらを、完膚なきまでに殲滅するのと同時に、味方、いや『敵ではない』 者の全てを決して傷つけさせない、その『覚悟』、尋常には身につかない黄金の煌きを、 見てしまった。かつて私が全てを託した男、その精神をすら越えんとする可能性を』 「わ、わたしは本能のままに暴れただけよ! 他の連中が死ななかったのは、運がよかっ ただけよ!」 「でもよ、あの姫さまとガンマンの姉ちゃんだけでここに向かってたら、酒場で全滅、船 に乗る前に全滅、傭兵の来襲で全滅、どう見ても三回は死んでるぞ、この船の船員も含め て」 「し、失礼ね! 姫さま一人だったら誰にも負けないわよ!」 「でもなあ、ほら、あの人は盾とか言ってるわりに、自分より部下の命を優先してるよう に見えるんだけど」ああ、確かにそう言われたら、そんな光景は想像に難くない。 『我々の期待がどうこうではないんだ。英雄を求めるのでもない。君が君のまま、立ちは だかる壁をぶち壊して拓く道を、並んで歩いて見たい。それがいまの私の望みだ』 「それだ! 俺もだぜ姐さん!」 「わたしもよ!」いい感じに盛り上がった雰囲気に押されて、つい。 そしてこの時、この日、三人(?)の心は一つとなった! 「ぶえっくしょっお」ぶち壊しのくしゃみが樽の向こうから炸裂する。うるさい、黙れ、 団体行動を乱すな。そもそもそのぐるぐる巻きをどうにかしろ。 ん? ああ、忘れてた! 傭兵の首領だっけ。炎の男だ。 「おっさん、あんたも飲むかい?」樽に話しかける。口調が傭兵のそれに戻っている。 「どうやって飲めってんだよ!」転がる男、ぐるぐる巻きの男が凄む。 「ああ、その格好じゃあ、辛いよねえ」 「縄を切ってくれたら礼を言うぜ」ぐるぐる巻きなのに生意気だ。上下関係というものを 骨髄に刻んでやらないといけないようね。 「あんたさっき、姉御に忠誠を誓ってなかったっけ?」 「あ、ああ。あれは駄目だ、逆らえねえ死にたくねえ」 「でもさ、あれであの姉御、すげえ手加減してたんだ。王者の技、喰らわなかったろ?」 「王者の技?」 「ああ、肉体言語さ。極められた瞬間に関節が『ありえない方向』に曲がるんだぜ、絶対 に逃れられねえ」 「……なん……だと……」 「でな、その姉御ほどあたしは優しくねえんだ。使えない奴、逆らう奴、反抗的な奴、全 部ブチ殺してきた(嘘)。死体は逆らわねえからな。お前が寸刻でも姉御の背後を狙って みろ。その瞬間が三十二分割に刻まれる経験を味わう人類最初の一人になるぜ(嘘)」 「……くっ、畜生。認めてやる! 認めてやるよお前たちを! だから! 俺を置いて、 仕えると決めた俺を置いて、先に行くんじゃねえ!」 「純情だな。ああ、純情、純真な男だ。おっさん、気に入ったぜ。今日から、おっさんは わたしの部下だ。……そんでおっさん、あんたの名前、何ていうんだい?」 「メンヌヴィル、“白炎”のメンヌヴィルだ。俺の炎は全てを焼き尽くし、そして匂いを 嗅ぐ」 「変態ね」 「ああ変態だな」 『変態以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!』 ついうっかり己の性癖を開陳してしまった白炎が、慌てて取り繕う。 「任務と仕事、それと『身を守る』以外に炎を振るったことはねえよ」 その残忍極まる雰囲気からして、身を守るの範疇が相当に逸脱しているだろう事は、難 なく予想できる。やはりこの男、変態だ。諦めろ、そして受け容れろ。 「まあ、変態でもいいか。あの姉御が見込んで雇ったんだ、役に立つのだけは間違いなさ そうだし」 「おう、使える男だぜ俺は」 「よし、今日からおっさんは“肉焼き名人”のメンヌヴィルだ。こんがり肉Gをたくさん 焼いて貰うぞ!」 「な、何だよそりゃ。俺を勝手に料理人にするな!」 「まあまあ。街に帰ったら高級肉焼きセットを買ってやるから、な?」 「く、くそっ。まあいい、お望みならば焼いてやるよ。俺も肉は食う」 「ようし商談成立だ」そう言うと、傍らに刺さったデルフを抜き、肉焼き名人の戒めを解 除する。 「飲むぞ!」 「おお、そうだな。飲ませて貰うぜ!」 酒宴の続く中、二隻の貨物船と一隻の軍艦がアルビオンを目指す。追い詰められ滅びの 淵にある国へ。明日は戦争だ!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/170.html
本日の医務室⇔自室2度目の往復を達成したルイズが凄まじい勢いで部屋に飛び込んできた。 その心中は「酒ッ!飲まずにはいられないッ!あの使い魔のせいで荒れているクソッ!」というところか。 「……さっきから何やってんだオメーは」 「何やってんのはあんたの方よォーーーーッ!決闘でギーシュ殺したって本当!?いや嘘よね!頼むから嘘って言ってぇ~~」 だが、そんなルイズの懇願虚しく 「決闘なんだから始末するに決まってんだろーが」 と1秒足らずでそれを肯定される。 ――――――終わった そう思いながら椅子に力なく座り込む。その姿たるや真っ白に燃え尽きた某ボクサーの如し。 「向こうから決闘を仕掛けてきたんじゃあねーか、返り討ちにして何か問題でもあんのか?」 分かってない、こいつは事の重大さを全く分かってない。 その時ルイズは本気で思った『死にたくなった』と 少し時間をバイツァ・ダスト 学長室に流れる緊張した空気、その原因は当然対峙する仙人もどきと暗殺者だ。 「で、では…私は外に控えておりますので…」 完全にビビりながら半分逃げるようにして退出するコルベール 「さて…お主、ギーシュ・ド・グラモンと決闘をしそれを殺したというのは事実かの?」 「ヤツが売ってきた決闘だ、返り討ちにして問題があんのか?」 「むう」とオスマンが息を呑む (こやつ…メイジを殺害しておいて目に迷いや戸惑いといったものが無いのぉ) スタンドは使い手の精神の象徴とも言われる。 プロシュートのグレイトフル・デッドは体温の上昇差で多少の違いこそあるが老若男女の区別無く『平等』に老化させる。 それが例え貴族や平民であっても一切の例外は無い。 つまりプロシュートにとって身分の違いなどは一切関係なく誰であろうと対等に扱おうとする。 「ヤツはオレを殺そうという『覚悟』があって魔法を使ったんだ… つまりオレに殺される『覚悟』があったという事だぜ?」 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ (怖っわいのぉ~何なんじゃこのプレッシャーは) 「そういえば、お主ミスタ・グラモンを老化させたと聞いたが事実ならそれちょびっとだけ見せてくれんかの」 手を合わせ拝むように頼んでくるが、さすがに自分の能力を見せるという事に少しながら躊躇する。 ズキュン! が、スデに知れ渡っているようなので花瓶に入っていた花を掴み直で老化させた。 「こんな魔法は見たことないのぉ…見たところ杖も持ってないようじゃしお主メイジでもあるまい」 「側に立つもの、人間の精神エネルギーの具現化でオレがいた世界じゃ『スタンド』っつーモンだ」 「お主、今『場所』と言わず『世界』と言ったな…こことは別の『世界』という事かね?」 「そうなんだが、ルイズに言っても信じやしねぇ イタリアってとこから来たんだが聞いた事ねぇか。他にスイス、フランス、ドイツ、ハンガリーとかがある」 「ふ~む…どれだったか聞いたような気がするのぉ…どいつじゃったか…ドイツじゃった…なんちゃって♪」 ズキュン! 「二度と言わないから老化は止めて、お願い…」 養豚場の豚以下を見るような目で老化を解除するが、老化させたはずのオスマンがあまり変化していなかった事に改めて異世界だという事を再認識させられる。 「そうじゃ、今ので思い出したわい、ドイツじゃ…って本当だから、これ本当!」 「…マジなら詳しく聞かせてもらおうか」 「ちぃっとばかし長くなるが構わんかのぉ?」 構わねーと目で話をするように促すとオスマンがそれを話し始めた。 ―あれは三十年ぐらい前じゃったかの…わしは森に秘薬の材料を採集にしいっておった… 「S.H.I.Tッ!何でこんなところにワイバーンが居るんじゃ!」 とジョセフ・ジョースターばりの走り方で猛ダッシュするのは今より若干若いオスマン。 そして、その後ろからはワイバーンが追ってきていた。 何故こうなっているかというと 秘薬!その素敵な材料がオスマンを行動させていたッ! ―じゃが雪が降っている森から材料を持って帰る時ワイバーンに襲われてしまってな… 「OH MY GOD!何でこんなとこに木の根なんかあるんじゃ!」 全力疾走していただけあって派手に転ぶオスマン。だがワイバーンは遠慮しない。 ―あの時は死ぬと思ってわしも覚悟を決めてたんじゃ… 「どうせ死ぬならピッチピチの娘の胸の中で死にたかったのぉ…」 もう偉大な魔法使いとは思えないような邪心溢れる思考である ―じゃが、わしにワイバーンが襲い掛かる前に爆発が起きて助かったんじゃ 「な、なんじゃあ~!?」 ―周りを見渡すと一人の男が杖のような物を持って立っておった 「ブァッカ者がァァァァァァアアア我がナチスの科学力は世界一ィィィィィ 露助どもの作った生物兵器などどうということはないィィィィィイイイ」 ―奇妙な男じゃった…爆風にフッ飛ばされてるわしに近付いて起こしてくれたんじゃが、後ろからワイバーンの群れが追ってきての… 「寝とる場合かァーーーーーッ!」 男がオスマンを半ば無理矢理起こす。 「スマンのぉ、助かったわい」 「喜ぶのは後だ」 「どういう事じゃ――」 ―あの時は本当に怖かったわい…なにせワイバーンが十数匹も居たんじゃから… だがその男は少しも慌ててなどいなかった…わしを庇うように立ち隠れていろと言ってきたんじゃ… 「フン、うろたえないィィィィィイイイドイツ軍人はうろたえないィィィィィイイ」 男に目掛けワイバーンが殺到するッ! 「そこの木の影に隠れていろ老人ッ!」 ―その男の妙な自信をなぜだか信頼する事ができてわしは迷わず隠れた… 「くらえ!露助の鳥公!30㎜の鉄板を貫通でき一分間に600発発射可能の徹甲弾をッ!!」 ―雷のような凄まじい音じゃった…じゃがその時男に異変が起きた… バギィ! 「何だとォォォォオオオ!物資不足の前線ではロクに整備もままならんかッ!」 ―急に音が止まって男がワイバーンに囲まれたんじゃ… 「聞こえるか…老人!」 ―そうして男がわしにある物を投げ逃げろと言ってきたんじゃ… 「ここはおれがどうにかする…それを持って逃げろ!」 「じゃがお主一人では…」 「フフ…老人と二人でこの数を相手にしても結果は変わるまい おれは誇り高きドイツ軍人!死ぬ覚悟などとうに出来ておるッ!それにそれがあれば一匹ぐらいなら何とかなるッ!」 ―わしは男の言うとおり逃げた… 「人間の偉大さは-恐怖に耐える誇り高き姿にある…か これを言うのは二度目だな…おれもお前の所に征くぞジョジョ!」 ―やっと安全な場所まで逃げたと思ったらあの場所から爆発が聞こえてな… 「自爆システム作動ォォォオオオ!我が祖国よ永遠なれえェェェェエエィッ!!」 オスマンが一息付く 「これがわしが知ってる限りの話じゃ…その男がわしに渡した物は 男が最初にワイバーンに使った杖らしき物と同じでわしらはその爆発を起こした魔法の杖を『破壊の杖』と呼んどる」 「確かに男が何回か『ドイツ』と言ったような気はするんじゃがな」 「オレの世界には魔法の杖なんて存在しねーからな…ま、ドイツっつー単語だけじゃあ判断できねーな」 「さて…本題じゃがお主にはミス・ヴァリエールと一緒に居てもらうぞ なにしろ前例が無い事じゃから王室に相談してみんことにはどうなるか分かったもんじゃないわい」 「もうスデに似たような状況なんだが」 「まぁそう言うな…どうなるか分かったら使いを寄こすからもう決闘なぞせんようにな。もっとも、生徒達がお主に挑むとは思えんがの」 部屋から出る。だが、その時眼鏡の女性とすれ違った。 「失礼します。オールド・オスマン」 「ミス・ロングビルか何かあったかの?」 「…あれが『悪魔憑き』…ですか」 「『悪魔憑き』何の事じゃ?」 「生徒達の間で噂になってますよ。人間の年齢を奪う『悪魔』に憑かれていると」 「なるほど…『悪魔憑き』か…言い得て妙じゃの。して要件はそれだけか?」 「あ、いえ紅茶をお持ちしたんですが一つ余分になってしまいましたね、というわけで二杯飲んでください」 そこには笑顔ながら飲め!という命令を下しているような秘書の姿があり―『死にたくなった』 プロシュート兄貴―「執行猶予中」 二つ名「悪魔憑き」 ←To be continued 『魁!ドイツ軍』 歌:ルドル・フォン・シュトロハイム ドイツ軍人の生き様は 色無し 恋無し 情け有り 戦争の道をひたすらに 歩みて明日を魁る 嗚呼ナチス男意気 己の道を魁よ ドイツ軍人の魂は 強く激しく 温かく 総帥の夢をひたすらに 求めて明日を魁る 嗚呼ナチス 男意気 己の道を魁よ 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/300.html
「ちょっと! さっさと起きなさいよ!」 怒鳴ってはみたものの、男が目を覚ます気配はない。 (勘弁してよ…。私が運ぶの? こいつを? 歩いて?) げんなりする。平民が貴族の前でいつまでも寝ているなんて。 そういえば、コルベールはコイツのルーンを珍しいと評していたが…… (『平民』って時点で珍しいどころの騒ぎじゃないわよッ、ボゲがッ!) 「とに、かく」 ルイズは歩き始めた。『男』の足を引き摺りながら。 ふと、コイツの『名前』が気になった。使い魔には名前を付けなくては、と思っていたが、 平民とはいえ、人間相手に勝手に名前を付けるというのも気がすすまない。 「まったく、この『ドクロヒゲ』……初っ端から、ご主人様に…フゥ」 「迷惑かけるとは、イイ度胸してんじゃーねーの……! ハァ」 「疲れているならワザワザしゃべらなくてもいいだろう」 「そりゃ…そうだけど……」 「いったいお前は何者だ? なぜこんな事をしている?」 「私は…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール…よ。 なぜって…アンタが気絶してるからじゃあないの……」 「ならばもう足を離したらどうだ」 「……………………」 (なによコイツ、起きてたんじゃないのさ!) 「ア、アアンタ、いつから起きてたのよッ!」 「ついさっきからだ、そしていい加減足を離せ」 「言われなくても離すわよッ! そして使い魔が命令してんじゃあねーわよッ!」 「使…い魔? なんのことだそれは?」 (使い魔! そんな事もわからないのコイツはッ!) 『使い魔とは何なのか』を男に説明しながら、あらためて自分が召喚したのが 『平民』なのだということをルイズは痛感した。 その後も男はここはどこかだとか色々聞いてきたがルイズは律儀に答えてやった。 挙句の果てには『元の世界に戻る方法はあるのか』なんてわけのわからない事を聞いてきたが それは無視した。 一つわかった事は、コイツには常識が無い事。平民の上に、常識もない。頭が痛い。 「それで……アンタの名前はなんなのよ?」 男は立ち上がるとペコリと一礼をした。 (なによ急にかしこまっちゃって…) 「遅れましたが自己紹介させていただく……… 名は………『リンゴォ・ロードアゲイン』」 「それで…アンタはオレの『雇い主』……そうとって構わないんだな?」 ルイズ達が部屋に辿り着いてリンゴォの放った最初のセリフがこれだ。 「だから…雇うだとかそういったレベルの世界じゃないのよ『使い魔』ってのは!」 半ば呆れた様な口調でルイズは言う。 (結局あの後コイツが名乗ってから部屋につくまで、こっちがさんざ 話しかけてもシカトぶっこいといて、開口一番の発言がこれ!?) ルイズは苛立っていた。 呼び出した使い魔には『忠誠心』というものがまるで感じられない。 (なんで私だけ『平民』なのよッ) いっそ何も出てこないほうがなんぼかマシだったかも知れない。 せめて、忠誠心というものがあれば……。 だが、今更考えてもしょうがない、そう思い直した。 「まあ、とにかく…その辺の話は明日するとして……。 今日は、疲れたから寝るわ……」 そう言いながら服を脱ぎ始める。 「あ、そうだ。アンタも洗濯くらいはできるわよね。という訳で……」 リンゴォに脱いだものを投げつける。 「それ、洗濯しといて。明日ッから早速よ!」 「オレがか?」 「ほかに誰がいんのよ、アンタしかいないでしょ。 何も出来ない使い魔なんだから、せめてそのくらいはしなさいよね」 ルイズの裸を見ながらリンゴォは思った。まるでガキだな、と。 胸ではない、精神が、である。 そしてふと窓を見たリンゴォは、月が二つ有ることに気付く。 (どうやら、本当にここは異世界らしいな) しかしその事を別段問題だとは考えなかった。 前居た所に戻りたいとは思わなかったし、そもそも自分は敗北した死体なのだ。 危惧する事と言えばルイズから感じる甘ったれたにおい。 自分が決闘を挑む事の出来る男が果たしてこの世界にいるだろうか? リンゴォだって年がら年中決闘しているわけではないが、それにしたって 相手が一人もいないのは困る。 目の前で服を着替えるルイズを見てリンゴォはあらためて思う。 (曲がりなりにも)年頃の娘が、使い魔だかなんだか知らないが、今日出会ったばかりの 見ず知らずの男の前で肌を晒している。誘っているなどという気配は微塵もない。 完全に、安全を保証された上での行為だ。そう思った。 本当はそんな保証など無いかも知れないが、少なくともこの少女はそう『思い込んで』いる。 自分で保障したものではない。誰かから与えられた安全だ。それを、『当たり前』だと。 当たり前の世界など、前触れも無く崩れ去ると言うのに。 現にリンゴォの世界は前触れも無く変化した。わけのわからないファンタジーに。 そんなルイズを見るだけでも、ここがどれだけ『甘ったれた世界』なのか知れるというものだ。 リンゴォは貴族に縁が無かった。 リンゴォの生まれた世界にも貴族はいたが、リンゴォの生きた世界にそんな者はいなかった。 だから彼はルイズの放つ甘ったれた悪臭に強い不快を感じていた。 ネグリジェに着替えると、ルイズは布団にもぐりこんだ。 「ふぁ…」 間の抜けたあくびをすると、ルイズは毛布を投げてよこした。 「アンタはそこの床ね……じゃ、朝になったら起こすのよ…」 明かりを消すと、あっさりと寝息をたて始めた。 リンゴォもそれに倣ってさっさと寝ることにする。 視界には月明かりの差し込む窓。 (オレの墓標に名前は要らぬ。死すならば闘いの荒野で……) (そう思っていたのだが……) 望みは、叶わなかった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/115.html
「レスピンジェレ(断る)」 「……はぁ?」 「聞こえなかったか?レスピンジェレ(断る)と言ったんだ」 話は多少前に遡る 「――でアンタの名前グレイトフル・デッドでいいの?」 不意に己のスタンドの名を呼ばれ警戒態勢に入るプロシュートだが思い当たる節があったのでそれを解く。 「……プロシュートだ」 「?アンタさっき『名前は?』って聞いた時そう言ったじゃない」 「オメーには関係ねぇことだ」 ここが自分が居た世界とは別の場所だと頭では理解していたが心のどこかでまだ信じきれないでいたプロシュートであったが 夜空に浮かぶ2つの月を見てそれを認めざるをえなかった。 「ここが魔法の国でオメーがオレを召喚し、ここがメイジとかいう貴族に支配されてるって事も分かった」 魔法を使えるメイジが貴族としてこの国を治めているという話を聞いたプロシュートだったが 彼に言わせてみれば『学院とやらで学べる以上メイジが貴族なんじゃあなく貴族がメイジで魔法を使えるヤツを管理して平民とやらを支配してるっつー事か』である。 「それでオレが聞きたいのは元の場所に帰れるかって事だ」 「無理よ… サモン・サーヴァントであんたを呼び出したのは私。 だけど元の場所に帰す魔法なんて知らないし聞いたこともないわ…」 一瞬怒りの表情を露にするプロシュートだがブチャラティに列車から叩き落され地面に激突しそうになった事を思い出しそれを隠す。 (……認めたくはねぇがオレはこいつに命を救われた『借り』があるって事か) 「……それで使い魔ってのは何をすりゃあいいんだ?」 「平民を使い魔にしたなんて聞いた事無いもの…アンタでもできそうな掃除、洗濯ってところかしらね」 ここで時間が戻り冒頭の「レスピンジェレ(断る)」である。(ちなみにこの間僅か0.5秒) 「使い魔に拒否権なんてあると思ってるわけ?」 「そうなってくるとオレとしては脱走し資金・食料を得るためにどこかの貴族の館に押し入りそいつの家のベッドの上には見知らぬ老人の死体が転がってるって事になるな」 「……何が言いたいの?」 「使い魔の手柄は主人の手柄、使い魔の不祥事は主人の不祥事と言ったのはオメーのはずだぜ?」 「使い魔が貴族を脅迫する気!?」 昼間見せたこの男の不可解な能力を思い出しルイズが声を荒げる。 「交渉…と言ってもらいてぇな」 そう言い放ちプロシュートがルイズを見据える。 (こいつ…平民のくせして…でもこいつからはやるといったらやるという…スゴ味があるッ!) 「使い魔は主人を守ると言ったな、ならそれでいいじゃあねぇか。オレがオメーを『護衛』してやる」 「メイジやモンスター相手にそれがきるっていうの?」 「できねぇならできるなんて言いやしねぇ」 「……分かったわ、でも人が沢山居る場所であんな物騒な事しないでちょうだい」 何とか雑用という自分には全く向いてない仕事からは脱する事はできたが、護衛という任務に対し心の奥底で苦笑いをする。 (ボスの娘を奪おうとしていたオレがその娘と同じような歳の女を護衛する事になるたぁな) 「さて…いろいろあって疲れちゃったから寝るわ」 「それは構わねぇがオレは何処で寝りゃあいいんだ?」 ルイズが無言で床を指差し毛布を一枚投げつけてくる ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「な、何よぉー」 プロシュートから発せられる妙なプレッシャーにルイズが押される。 「フン」 それだけ言うとプロシュートが毛布を使い壁に背を預け目を閉じ眠りに入る。 プロシュートが眠りに入ったのを確認するとルイズも安心したのか眠っていった。 薄暗い闇が世界を覆う。 その闇の世界の中心にプロシュートが立つ。 (何処だ…?ここは) 辺りを探ろうとし体を動かそうとするが動けない。唯一動かせるのは首だけだ。 だが闇に目が慣れてくると自分の周りに何かある事に気付く。 (アレは…ソルベ、それにジェラードッ!?) ホルマリン漬けにされたソルベ、猿轡を喉に詰まらせ窒息して死んだジェラード、ボスに殺されたはずの二人の死体がそこにあった。 唯一動かせる首を動かし周囲を探るプロシュート、だがその行為も彼を驚愕させるに足る物を発見させるだけのことだった。 (ホルマジオ!イルーゾォか!?) つい先日ブチャラティ達に挑み敗北していった仲間達 そして彼の網膜に彼にとって信じたくないもの、認めたくないものが映る。 (バカなッ!?ペッシ…!メローネ…!ギアッチョ…!) バラバラに解体されたペッシ、舌を毒蛇に咬まれ絶命したメローネ、首に鉄棒を生やし倒れているギアッチョ。 そして彼の前にプロシュートが最も信頼していた人物が立つ。 (リゾットか!?これは一体どういう―――) だがリゾットも体中に銃弾を撃ち込まれ倒れていく。 (く…一体どういう事だッ!?) 周囲に散らばるチームの仲間達の死体、だがそのかつての仲間達の死体の目は全て等しくプロシュートに向けられている。 あまりともいえる光景に思わず後ろに下がろうと力を込める、だが体は動かない。 そうしている間に後ろから誰かに肩を掴まれる。 (何だとッ……!?) 首を向け後ろを見る、だがその目に映ったものは――――ボロ雑巾のように成り果てた己の姿だった。 この世界に入ってから唯一の音が聞こえる。それも自分の声でだ。 幽鬼のように立ち己の肩を掴むもう一人の自分から オメーハイッタイナニヲヤッテイル?――と もう一人の自分から滲み出るようにして現れる己の分身、無数の眼を持つ異形の悪魔―グレイトフル・デッドが自身の首を掴もうとその手を伸ばす。 己のスタンドが持つ最も威力がある攻撃『直触り』がプロシュートを襲おうとした。 「うおぁあああああああああッ!!」 飛び起き周りを確認する、異常は無い日が昇っている事以外は昨日と同じだ。 心臓の鼓動が早い、呼吸も荒い、立ち上がりスタンドを出す。 変わりない何時もと同じだ、何時もと同じように己の傍らに立つグレイトフル・デッド。 「夢……だと……?」 (あいつらがくたばる夢なんぞ見るなんて冗談じゃあねぇ!) あのしぶといヤツらがそう簡単にやれるとは思ってはいないが、あの夢はリアリティがありすぎた。 そのリアリティさがプロシュートの心に一抹の不安を残す。 「んふふふ……ざまぁみなさいキュルケぇ~」 不意に気の抜けた甘ったるい声がプロシュートの耳に届く。 その声の主に近付く。どんな幸せな夢を見ているのか知らないがモノスゲー笑顔で眠っているルイズがそこに居た。 「……起きろ」 一言声をかける、だが帰ってきた返事は 「そこに土下座すれば許してあげてもいいわ…zzz」 自分はこれ以上考えられないぐらいの悪夢、それに対しこいつはのん気に幸せそうな夢を見寝言までもたれている。 正直に言う「ムカついた」 近くにあった枕をルイズの顔に被せる、無論口と鼻が隠れるようにしてだ。 椅子に座り様子を見る。 5秒後―特に変わりなし 10秒後―少し動き始めた 15秒後―少し痙攣している 20秒後―「苦しいって…言ってるでしょうキュルケェーーーーーッ!!」 少しだけ笑いながらプロシュートが「起きたか」とルイズに言う。 「あれ……夢?」 (……キュルケを使い魔にしてたのに何で途中からアイツの胸に押し付けられて死にそうになんのよ!) 勿論、コンプレックス丸出しの夢を見た原因が枕で口と鼻を押さえられてたという事に気付く由も無い。 ボーっとした目でプロシュートを見ているが酸素が供給され脳も起きたのだろうが不意に 「服」 と言い出した。当然プロシュートには何の事かさっぱり分からない。 「何の事だ…?」 「着替えさせて」 「そのぐらいテメーでやりやがれ!」 「使い魔なんだから身の回りの世話もするのが当然でしょ?」 これ以上言っても無駄だと悟ったのか渋々着替えさせる。 ただ一つ、ほんの小さな声で 「マンモーニが」 という言葉を残して。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2636.html
瀬戸の花嫁 より瀬戸燦を召喚 ゼロの花嫁-01 ゼロの花嫁-02 ゼロの花嫁-03 A/B/C ゼロの花嫁-04 ゼロの花嫁-05 A/B ゼロの花嫁-06 ゼロの花嫁-07 A/B ゼロの花嫁-08 ゼロの花嫁-09 A/B ゼロの花嫁-10 A/B ゼロの花嫁-11 ゼロの花嫁-12 ゼロの花嫁-13 ゼロの花嫁-14 A/B ゼロの花嫁-15 ゼロの花嫁-16 A/B ゼロの花嫁-17 A/B ゼロの花嫁-18 A/B ゼロの花嫁-19 A/B ゼロの花嫁-20 A/B/C ゼロの花嫁-21 A/B ゼロの花嫁-22
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/908.html
「ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 生え際の後退著しい中年教師が意を決したように言う。 その教師――名はコルベールといった。 コルベールはここ、トリステイン魔法学校にて2年生が行う中では最重要とも言える行事である召喚の儀式の監督を務めていた。 そしてその結果は満足に値するものであった。 上位陣にはそれはもう美しい風竜を召喚したタバサ、火山竜脈のサラマンダーを召喚したキュルケがいたし、 それ以外の生徒達も十二分に成功といえる内容の召喚を行っていた。 これから儀式を行う、一人の女生徒を除いては。 彼女は別にヤサグレてる訳でもなかったし成績が悪かったわけでもない。 他の生徒とのコミュニケーションも十分に取れている。 しかしただ一つ。 本当にただ一つだが彼女には欠点があった。 そしてその欠点こそがコルベールを不安にさせていた。 が、そんなコルベールの心配をよそに―― 「はいッ!」 その生徒――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは威勢のいい返事をした。 といっても別に彼女自身がこの儀式に対して特別に自信を持ってたわけではない。 むしろその心中では、 (大丈夫よ大丈夫よ大丈夫よ! 使い魔の召喚の儀式なのよ? いくら私が『ゼロ』だなんてバカにされてても…これが成功しないハズはないわッ! だから自信を持つのよイズッ!!) 全力で自分に暗示をかけていた。 そしてそれに反映されるように既に召喚を終えた生徒たちは、 「なあ…成功すると思うか?」 「いやいくら『ゼロ』でも召喚の儀式ぐらいは…」 「でもあの『ゼロ』だぜ?」 「だよなあ…失敗するかもだよなぁ~~」 どうにもルイズの成功を期待していない。 そんな周囲のヒソヒソ声と、「ルイズが成功するわけが無いでしょう。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」みたいな態度の生徒たちをを横目に見て、 ルイズはいつものようにカチンときた。 同時にさっきまでの不安もそのムカツキで吹っ飛んだ。 (ふん! 見てなさいよあんたたちッ! 私があんた達の使い魔よりもずっとカッコよくてずっと強い使い魔を召喚してやるんだからッ!) そして詠唱する。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ! 神聖で美しくッ、そして強力な使い魔よッ! わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに答えなさいッ!!」 気合十分の詠唱ッ! 手ごたえは十分ッ! (やったッ! 成功す――) ルイズがそう確信した瞬間―― ドッグォォォォォオオオオオオオオン!!! 盛大な爆発が巻き起こったッ! その規模は場所が場所なら「今ノハ人間ジャネェ~~~」なんて声が聞こえてきそうなレベルッ! 同時に爆心に近かったルイズは体重の軽さも相まって勢いよく後ろに吹っ飛ばされるッ! そして2度3度後転を繰り返した後、ルイズはべちゃっと地面にキスするハメになった。 「オホッオホンッオホン!」 「ゲホッゴホッ! クソッまたやったな『ゼロ』!」 「使い魔の召喚にさえ…ゲボッ! 失敗するなんて君も筋金入りだなッ!」 周囲から聞こえてくる罵倒をうつぶせの姿勢のまま聞き――ルイズは泣きたくなった。 (なんで…どうして『成功』しないのよぉ~~~~~~~~~!) 目にはじんわりと涙が浮かび始めたが、必死でそれをこらえる。 たとえ「ゼロ」と呼ばれてしまうようなメイジだったとしてもルイズは由緒正しきヴァリエール家の3女である。 そのプライドが彼女をギリギリのところで支えたのだ。 だがルイズがそんな衝動と戦っている頃―― 「お…おい!煙の中に何かいるぞ!」 「ホントだ! でもあのシルエットは…」 「サルにしちゃあ背が高すぎるし…」 「人間にしたってあれはデカすぎる!2メイルくらいはあるんじゃないか?」 「じゃあ亜人? オーク鬼か何かってことか?」 「おい! 煙が晴れるぞ!」 周囲の会話にようやく気づき、そして周囲に気づかれないようにこっそり涙をぬぐったルイズの目に映ったのは―― 実に奇妙ないでたちの人間、いや亜人だった。 贅肉の一切見当たらない筋肉質の身体には文字のようなものがびっしり彫りこまれており、 頭には奇妙な形の頭巾、そしてその身に纏うのはいずれも紫がかった黒色の襟巻きと短パン、リストバンドにブーツのみで、 しかも襟巻きと短パンの二つが体の正中線で帯のようにつながっている。 民族衣装だとかその類だとしても、かなりきわどい、いや、むしろ変態的な格好だ。 しかもよく見てみれば、耳も鼻もこの亜人には無い。 削がれたような傷が無いあたり、生まれつきそれらを持っていないとでも言うのだろうか? (なに…何なのコイツ? こんな亜人、あたし図鑑でも見たことなんて…) そんなことを考えていると、突然件の亜人が文字通り「飛ぶようにして」ルイズの前に移動した。 その速度はドヒュウゥン! と空気を切るほどッ! 「きゃあ!」 思わず悲鳴を上げるルイズ。 周囲も唖然としている。 だが亜人はそんなことは気にもかけないという様子でルイズに話しかけたッ! 「オ嬢サンニ聞キタイ事ガアル」 何だかカタコトだが、そんなことを気にしている余裕はルイズにはない。 「な、なななな、何よッ! そもそもあんた、何者なのよッ!名前と種族を言いなさいッ!」 「質問ニ対シテ質問で答エルノハ無礼ニ相当スルノダガ…マアイイダロウ」 「私ハホワイトスネイク。種族ハ…ソウダナ。トリアエズ人間デハナイ事ハ確実ダ」 その答えにルイズの顔がぱあっと明るくなった。 そして周囲はどよめき始める。 「人間じゃないって事は…」 「『ゼロ』が召喚に成功したッ!?」 「信じらんねぇーーーーーーーーーーーッ!!」 「ウソだろ承太郎!」 「これは『現実』だッ!」 周囲がいろいろ言ってるが、今のルイズにはそんなたわごとは届きようも無い。 何故なら、何故なら今の彼女はッ! (やったわ! あたしが召喚したこいつが人間じゃあないってことは…あたしが使い魔の召喚に成功したということッ! やったわッ! あたしはやったのよッ!!) 「最高にハイ」ってヤツだったからだッ!! だがそんなルイズの心中をカケラも察することなく、亜人――ホワイトスネイクは再びルイズに話しかけた。 「サテ、私ガ君ノ質問ニ答エタノダカラ…今度ハコッチノ質問ヲ聞イテモライタイトコロダナ」 「あっ…そ、そうだったわね! さあ何? 何が聞きたいの? 何でも答えてあげるわッ!」 すっかりご機嫌&有頂天なルイズはお安い御用とばかりに言う。 「ココハドコダ?」 「ここはトリステイン魔法学校。あんたはあたしに召喚されてあたしの使い魔になったのよ」 「トリステイン魔法学校? ソレニ使イ魔ダト? 使イ魔トハ一体ナンダ?」 「メイジの目となり耳となって、メイジに忠誠を誓うもののことよ」 「メイジトハナンダ?」 「…は?」 いくらか問答を続けるうちに、とんでもない質問が飛び出した。 メイジとは何だ、だって? トリステイン魔法学校を知らないのは置いておくにしても、いくら未開の地の亜人だってメイジの存在ぐらいは知ってるはずだろう。 (あ…ひょっとしてこいつの一族ではメイジのことを別の呼び方でいうのかしら? うん、そうだわ。そうに違いないわッ!) ルイズは適当に脳内解釈を済ませるとホワイトスネイクとの質疑応答に戻る。 「メイジってのはね、簡単に言えば魔法を使える者のことを言うのよ」 「魔法…ダト?」 「………」 ここまでくると流石に脳内解釈はキツイ。 いやそもそも物を考えられる生物の中で、魔法を知らない者がこの世界にいるだろうか? コーラを飲んだらゲップが出るのと同じくらい確実に、いないだろう。 「そもそもあんた…一体どこから来たのよ?」 「アメリカノフロリダ、ト言ウ所ダ」 「ふろりだ? どこのド田舎よ?」 「………」 今度はホワイトスネイクが沈黙する番だった。 「水族館」でエンリコ・プッチ神父とともにエンポリオに敗北したホワイトスネイク――もっともその時はメイド・イン・ヘブンだったが、 彼は本体のプッチ神父の死とともに消滅する間際、光る鏡のようなものに吸い込まれたのだ。 そして意識が戻ってみればこれだ。 周りは10代後半あたりであろうあどけない面を並べた小僧と小娘がお揃いの黒マントでズラリと囲んでおり、 その輪の中にはこれまた黒マントを着たピンクの髪の小娘がちょっぴり泥に汚れた顔でこっちを見ている。 しかもどういうわけか周囲の生徒も目の前の少女も自分の姿が見えているらしい。 ということは・・・こいつら全員がスタンド使いなのだろうか? 何故自分はいきなりこんなところにいるのか、とか何故本体であるプッチ神父を失った自分が存在し続けていられるのか、とか、 疑問はオキシドールと過酸化マンガンの反応から生成される酸素のようにムクムクと沸きあがってきていたが、 ホワイトスネイクはそれらの疑問をとりあえず置いておくことにした。 そして自分から一番近い小娘に話を聞いてみる。 するとその幼女は、トリステインだのメイジだのとホワイトスネイクが知りもしないような、 いやホワイトスネイクでなくても知らないような単語を当たり前のようにずらずらと並べて話をするではないか。 これには流石のホワイトスネイクも、 (マサカ我ガ主人トDIOガ目指シテイタ『新世界』トハコレノコトダッタノカ? 二人トモ私ニ内緒デ、随分ト変ワッタ趣味ヲ共有シテイタノダナ) などとまったく見当違いな事を考えざるを得なかった。 こうしてルイズとホワイトスネイクの間に気まずい空気が流れたところで、ようやくコルベールは我にかえった。 コルベール自身ホワイトスネイクのような使い魔を見るのは初めてだったし――ホワイトスネイクのド変態な格好をしていたのもあるが、 少しの間呆気に取られていたのだ。 コルベールは「オホン、ン」と軽く咳払いをすると、 「ミス・ヴァリエール。まだ使い魔との契約が終わっておりませんよ」 と言うと、ルイズもさっきのコルベールと同じようにハッと我に返り、 「ホワイトスネイク…だったわよね? あんたの名前」 「ソウダ」 「ちょっと屈みなさい?」 「何故ダ?」 「いいから屈みなさいよ。あんたの背が高すぎて届かないんだから」 ホワイトスネイクには何の事だかサッパリ分からなかったが、とりあえず言う通りにする。 ルイズはホワイトスネイクの頭が自分の身長と同じくらいにまで下がったのを確認すると、儀式に入った。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え・・・」 「待ってください、ミス・ヴァリエール!」 「え?」 突然コルベールがルイズの詠唱を遮った。 「…あなたはまだ使い魔との契約を済ませていない そうですね?」 当たり前のことを聞くコルベール。 「いきなり何を言い出すんだこのハゲは」とルイズは思ったが口には出さず、 「…はい。そうですけど」 当たり障りのない返答をした。 「そうでしょうね。私もあなたがこの使い魔を召喚してから、契約するところを見ていません。しかし…」 そこでコルベールは言葉を切ると、つかつかとホワイトスネイクのほうへ歩み寄る。 そしてホワイトスネイクの左手を取ると―― 「既に使い魔のルーンが現れているのです。この左手の甲に」 バァ―――――z______ン 「ウソ…」 その左手の甲に文字が浮かび上がっていた。 つまりルイズとホワイトスネイクとの契約は既に完了していたのだ。 こんなケースは召喚した本人であるルイズはおろか、教師であるコルベールにとっても見たことも聞いたことも無い怪奇であった。 そして二人ともそのことに沈黙している。 だが―― 「何ダ? コレハ…」 ホワイトスネイクはやはり空気を読まずに、自分の左手の甲にいつの間にか浮かび上がった奇妙な文字に興味を向けていた。 「と…とりあえず、この件は私が調べておきます。ではみなさん、今日はここまでです! 解散ッ!!」 と言って逃げるように、召喚の儀式のひとまずの終了を宣言する。 周囲の生徒達はなにやら状況が理解できていないようだったが、儀式が終了したことは理解したらしい。 そして次の瞬間、彼らはが突然ふわりと空中に浮かび上がったッ! さらにそのまま中世ヨーロッパの城のような建物へと飛ぶようにして移動し始める。 思わず目をむくホワイトスネイク。 しかしスタンドのヴィジョンが見えない以上スタンドに運んでもらっているわけではないようだ。 (確カコイツラハ『メイジ』トカイッタナ。 メイジトヤラハスタンド使イデ無クテモスタンドガ見エルモンナノカ? ソレニ…スタンド使イデナイノナラ…アイツラハ本当ニ魔法ッテヤツデ浮カンデルノカ?) などとホワイトスネイクが考えているとルイズから声がかかった。 「ほら、なにボケッとしてんのよ。あたしたちも行くわよ」 「君ハアノ空中ニ浮カベル力ヲ使ワナイノカ?」 当然ホワイトスネイクにとっては何気なく言った言葉である。 だがルイズはその言葉に一瞬顔を曇らせると、 「せ、精神力がもったいないから、使わないだけよ! 大体歩いていけば済むことなんだから、そんなことに魔法を使うなんてナンセンスよ!」 言葉の節々に何か言い訳じみたものを漂わせながらそう答えた。 そして逃げるように早足で、先ほどの建物の方へ行ってしまった。 「ヤレヤレ、ダナ」 そう呟き、ルイズの後を追おうとしたところで、ホワイトスネイクはあることに気づいた。 「コレハ…私ノ本体ガアノ小娘ニナッテイルノカ? トナルト…ソウカ、『契約』トハソウイウ事ダッタノカ」 そんなことを一人で勝手に納得しながら、ホワイトスネイクはルイズの後を追った。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5273.html
「ロードス島戦記」より「氷竜ブラムド」を召喚 ゼロの氷竜-01 ゼロの氷竜-02 ゼロの氷竜-03 ゼロの氷竜-04 ゼロの氷竜-05 ゼロの氷竜-06 ゼロの氷竜-07 ゼロの氷竜-08 ゼロの氷竜-09 ゼロの氷竜-10 ゼロの氷竜-11 ゼロの氷竜-12 ゼロの氷竜-13 ゼロの氷竜-14 ゼロの氷竜-15 ゼロの氷竜-16 ゼロの氷竜-17 ゼロの氷竜-18 ゼロの氷竜-19 ゼロの氷竜-20
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/165.html
ゼロの剣士-01 ゼロの剣士-02 ゼロの剣士-03 ゼロの剣士-04 ゼロの剣士-05 ゼロの剣士-06 ゼロの剣士-07 ゼロの剣士-08 ゼロの剣士-09 ゼロの剣士-10 ゼロの剣士-11 ゼロの剣士-12 ゼロの剣士-13 ゼロの剣士-14 ゼロの剣士-15 ゼロの剣士-16