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「モノノ怪の形と真と理、お聞かせ願いたく候」 ただの薬売りを名乗った相手から放たれたその言葉に、無能と呼ばれた王は笑った。 モノノ怪 枕返し 一の幕 ――ペルスランはかくの如く語る。 全てのことの始まりはガリアに二人の王子が生まれたことでございます。 ジョゼフとシャルル。そう名付けられた兄弟は大層仲良く育ちました。 兄であるジョゼフが物心つくまでは…… 「そう、王族でありながら弟と違って兄は全く魔法の才能に恵まれなかった!」 ですが弟にはそんなこと関係なかったのです。周囲がなんと言おうと、シャルル様にとってジョゼフが最愛の兄であることになんら違いはなかったのですから、ですがジョゼフは別でした。 自分より優れた、己の理想とも言える弟に優しくされることに耐えられなかったのです。 ジョゼフは荒れていきました、日ごと部屋に籠もり酒と女と遊戯に溺れーーしかし一日中たりとも魔法の修練を欠かさなかったのは自らと弟君への凄まじい執念からでございましょう。 そんな折り、この国を揺るがす事件が起きたのです…… 「父は死の床で余を己が後継者に指名したのだ!世の民草、リュテュスの乞食どもにまで無能と知られた余がガリアの王だと!?」 それはこれまでなにも持たなかった彼にとって唯一弟に勝てる部分でありました。だからこそ零れものの玉座であると知りつつも言ってしまったのです。 「どうだシャルルよ、余こそがガリアの王だ!」 (おめでとう、兄さん) その一言を聞いた瞬間ジョゼフの心は砕け散ったのでしょう。最愛の弟を手に掛けしまった哀れな王はもはやもはやひきかえせない道へと足を踏み出してしまったのです。 「そうだ、余は弟殺しの狂王である。して薬売りよ、これを聞いても尚モノノ怪などと言う世迷い言をのたまうか?」 「まだモノノ怪の真をお聞かせ頂いておりませぬ故」 「真、だと?」 まさか、本当にお忘れになられたので御座いますか!? ならば仕方ありますまい、この老骨が墓の下まで持っていくつもりでございましたが全てお話したしましょう。シャルル様が残した真を…… あの日はやけに朝焼けが目に痛い朝でございました、いつも通りシャルル様を起こそうとシャルル様の部屋に向かった私めはそこで信じられないものを見たのでございます。 「さて、一体何をご覧になったので?」 涙ながらに抱き合うシャルル様とジョセフ殿下のお姿でございます。 「な、何を申すか!」 「これは異な事を。所詮戯言と笑ったのは貴方の筈、それよりもお気を強くお持ちください、さもないと……」 ーー返されますよ? モノノ怪 枕返し 二の幕 (ニハッ、ニハ、ニハハニニニニハハハッハ) 「な、なんだ今の笑い声は!?」 「どうなされました?話の途中に、急に立ち上がるとは」 「お前たち何を企んでいる!?」 「これは異なことを私たちは何も企んでなどおりませんし、それにーー企むのはあなたの十八番じゃありませんか」 失礼、どうやらほんとうに殿下はおぼえておられない様子、ならば続きを話させいただきましょう。あの日、あの時私めが見た光景のことを。 (悲しまないで兄さん、ガリアの為にはこれが一番いいんだから) ――ペルスランの語りと共にジョゼフの脳裏に記憶にない光景がいくつも閃いた。 「なんだ、なんだこれは」 そう、私めが見たのでは互いにに抱き合い、涙を流すシャルル様とジョゼフ殿下の姿なのです。 (これ以上オルレアン公派を押し留めることはできないんだ、僕が頭にならなければ間違いなく計画もなにもなく自分たちだけで蜂起する。そうならばこのガリアを真っ二つに割る内戦が起きる) そしてお二人が語る内容は、シャルル様暗殺の筋書きでございました。 「うっ、嘘を、嘘を申すな!」 誓って嘘では御座いません。 (頼んだよ兄さん、僕には政の才能はなかった。だからこの命兄さんに捧げよう、だからお願いだ僕が愛するこの美しいガリアが二つに分かれて争うハメにだけはならないようにして欲しい) シャルル様は自ら進んで死にに行ったのです。 刺客の正体が分からなかったのも当たり前の話で御座います、凶弾に倒れたシャルル様ご自身が魔弾の射手であろうとは誰も想像だにしますまい。 (ニハッ、ニハハ、ニハハ!) 「五月蝿い、やめろ!もうその笑い声をやめろ、やめろっ!」 (ニハッ、ニハン、ニイハ――ニイハン) 「やめろ、やめ、やめめめめ」 ――くるりとジョゼフの頭の裏返る、そこに張り付いていたのは人の顔の胴体を持つ小鬼であった。 (ニイサン、にいさん、兄さん、兄さん!兄さん!) ――最愛の弟の顔をした小鬼が、くるりと首をねじ回す。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 しかしそれは所詮幻覚。 自身が生み出した夢、幻。 だが今ので分かってしまった、そうだ――余は……いや俺は…… 「そしてあなたは弟君の願いに従い、王としてこの国を導いた」 そうだ、無能と言われても気にならなかった。どんな汚いことも進んでやった。すべては、全ては…… 「けれどやがて耐えられなくなった」 「なん、だと……」 「呷ったのでしょう?エルフの毒薬を」 そうだ、俺は耐えきれなくなって呷ったのだ。心を狂わせるエルフの猛毒を、だが…… 「だがそれでもあなたは狂えなかった」 カチン モノノ怪 枕返し 大詰め 「それでも、あなたは狂えなかった」 そうだ、それでも俺は狂えなかった。 シャルルへ向けた親愛の情をどうしても捨て去ることが出来なかったのだ。 「その結果貴方は」 最愛の弟を一方的に謀殺したと言う偽りの記憶をでっち上げ。 「心に満ちる愛情を、憎しみだと誤魔化して」 大切なものを失った傷を見ないようにして 「狂ったふりで」 非道なふりで 「孤独なまま、王として君臨し続けてきたのですね」 そうだ、それこそが俺の"虚無" 「それこそが枕返し」 心に蟠る、石の如く固まった妄念の結晶 「貴方はそれを裏返された」 愛おしい愛おしいシャルル、お前を殺したままおめおめと生き続けることなど出来ようか。 「だから貴方は」 だから俺は 「「毒の力を借りて、己が心を捻じ曲げた」」 カチン ――その言葉を呟いた瞬間、ジョゼフの首が真横に折れた。 ――べきべきと音を立てながら曲がる曲がる 「こ、これは一体な、何が!?」 ――ぐるんぐるんと首が回る、ジョゼフの頭が裏返る。 「毒の沼の底に沈めた弟への愛、腐り果て、虚無の石で封じて尚沸きあがろうとするその思い」 気づいてしまえば立ち行かぬその思いを裏返す欺瞞こそこのモノノ怪の正体。 ――やがてジョゼフの首の回転は止まった、そこの後頭部に四本の腕と四本の足でへばりついているのはシャルルの顔。 ――聖人の如く笑みを浮かべたシャルルの生首が、ジョゼフの頭と溶け合っていた。 「二人で決めていた弟の死に耐え切れず貴方はエルフより授かった毒を煽った」 ――それが真 「毒によって凍り付いた心をごまかす為に、あなたは弟への愛情を憎悪と偽った。その欺瞞に挟まれた貴方の心に妖が取り付いた」 ――それが理 シャルル! シャルル!シャルルゥゥ! ニハ、ニハニハニニニハハハ、ニィィハァァァーン! 「そして、その最愛の弟を裏切り毒へと逃げたことこそが」 シャルルよ、シャルルよ、愛しい我が弟よ。 ――モノノ怪の形 愚かな兄を、許せ カチン 「(うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!)」 「枕とはすなわち貴方の想い、それを返すとは己のすべてを裏返すことに他ならない」 「これは一体!? ジョゼフ殿下が捲れて……」 「肉体も、魂も、心さえも」 「ひぃぃぃぃぃぃ」 「すべてが裏返り、愛憎さえ一つになるその間隙に、枕返しは枕を返す」 (ニハァァァアアアアアアアアアアアアアアア!) 「もう一度返されますか?」 「否」 「本当に?」 「否否否否否、断じて否!」 「ほう……」 「この思い気づいてしまえば立ち行かぬ! 俺は間違っていた、間違っていたのだ。シャルルは――聖人でもなければ君子でもなかった。ただの俺の愛しい弟だった」 「俺の心だけならばいい、だがシャルルの本当の姿まで穢すのならばこんな毒などいらぬ! この俺の手で枕返しなど八つ裂きにしてくれるわ!」 「ならば解き――」 (――兄さん) 「……放つ!」 『解き放ぁぁぁぁぁぁぁつ』 モノノ怪 枕返し 終幕 すべてが終わった後、そこには膝の上に眠る姪を乗せたまま玉座に腰掛けるガリアの王の姿があった。 眠るとも死んでいるともつかないその顔は、これまでペルスランが見たことないほど穏やかで優しげだった。 「やれやれ、面倒臭い」 そう言うと薬売りが商売道具の入った行李を担ぎ上げた。 「さて帰りますか……」 その時行李の引き出しから天秤が地面に音を立てて落ち、そしてジョゼフの時とは比較にならないほど大きく傾いた。 その様子に薬売りは若干驚いたような表情を見せると、ゆっくりと口元を緩めた。 「成程、毒を垂らした杯は二つ。どうやらこのもう一匹、厄介なモノノ怪がいるようですね」 ――次回、女郎蜘蛛 続――かない! 「モノノ怪」より薬売り
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注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 「HELLSING」のアーカードを召喚 ゼロのロリカード-01 ゼロのロリカード-02 ゼロのロリカード-03 ゼロのロリカード-04 ゼロのロリカード-05 ゼロのロリカード-06 ゼロのロリカード-07 ゼロのロリカード-08 ゼロのロリカード-09 タバサとゼロの吸血鬼 ゼロのロリカード-10 ゼロのロリカード-11 ゼロのロリカード-12 ゼロのロリカード-13 ゼロのロリカード-14 ゼロのロリカード-15 ゼロのロリカード-16 ゼロのロリカード-17 ゼロのロリカード-18 ゼロのロリカード-19 ロリカードとギャンブラー-1 ロリカードとギャンブラー-2 ゼロのロリカード-20 ゼロのロリカード-21 ゼロのロリカード-22 ゼロのロリカード-23 ゼロのロリカード-24 ゼロのロリカード-25 ゼロのロリカード-26 ゼロのロリカード-27 ゼロのロリカード-28 ゼロのロリカード-29 ゼロのロリカード-30 ゼロのロリカード-31 ゼロのロリカード-32 ゼロのロリカード-33 ゼロのロリカード-34 ゼロのロリカード-35 ゼロのロリカード-36 ゼロのロリカード-37 ゼロのロリカード-38 ゼロのロリカード-39 ゼロのロリカード-40 ゼロのロリカード-41 ゼロのロリカード-42 ゼロのロリカード-43 ゼロのロリカード-44 ゼロのロリカード-45 ゼロのロリカード-46 ゼロのロリカード-47 ゼロのロリカード-48 ゼロのロリカード-49 ゼロのロリカード-50 ゼロのロリカード-51 ゼロのロリカード-52 ゼロのロリカード-53 ゼロのロリカード-54 ゼロのロリカード-55 ゼロのロリカード-56 ゼロのロリカード-57 ゼロのロリカード-58 ゼロのロリカード-59 ゼロのロリカード-60 ゼロのロリカード-61 ゼロのロリカード-62 ゼロのロリカード-63 ゼロのロリカード-64
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「・・・・」 失神しているルイズの前で、おとーさんは困っているように見えます。 すると、ドアが開いてある人物が顔をだしました。その人物はおとーさんにここに至った経緯を説明してくれました。 その人物は(こんなドアあったっけ?)と、家に新しく出来たドアに近づいてじろじろ見ていました。 すると、突然ドアが開いて、中を覗こうとした女の子と鉢合せをしてしまいました。その距離実に20センチ。女の子は固まっていましたが、その人物は吃驚することもなく気さくに話しかけました。 「やぁ、僕りすのターくん。カリフラワーじゃぁないんだよ」 その台詞をちゃんと聞いたかどうかは分かりませんが、女の子はターくんが話し終わると同時に失神して倒れてしまいました。 「旦那。と、言うわけなんですよ・・・」 おとーさんはその話を聞いた後、おもむろにベッドの方を見ました。 ター君はその様子をみてポンと手を叩き「なるほど」と呟きました。 二人はベッドへルイズを運びました。おとーさんはター君へこの部屋に入らないようにと告げるとそのまま自分の家にター君を帰しました。 「・・カリ・・フラワー・・・んんんん」 ルイズは少々うなされている様でした。 おとーさんはそんなルイズを見てしばらく待ってからルイズを起こしました。 ルイズは飛び起きると目の前にいるおとーさんを捕まえて 「あああ、あのドアの向こうは、どど、どうなってるのよ!!!」 おとーさんは不思議そうにルイズを見ています。ルイズはその様子を見て(あれは夢だったのかしら?)と考え 「な、なんでもないわよ」 と言い、おとーさんに着替えを手伝うようにいいました。おとーさんは服を取りに行く為にルイズに背を向けると「くすくす」 と笑っていました。 着替えが終わり支度を済ませたところで 「朝食にいくわよ。付いて来なさい」 ルイズはおとーさんにそういいました。 (なんかこの使い魔私をバカにしてるみたいなのよね。食事で上下関係をハッキリ認識させてやるんだから) ルイズはそんな事を考えながら部屋を出ました。 するとキュルケとばったり出会ってしまったのでした。 「あら、ルイズ。おはよう」 「・・・おはよう、キュルケ・・」 ルイズはあからさまに嫌そうな顔をしています 「この白いゴーレムがあなたの使い魔?よく召喚できたわね~」 「うるさいわねぇ。正真正銘、私が召喚したんだからケチつけないでよ!!」 「そんなに怒らなくてもいいじゃない。フフッ・・・これが私の使い魔、フレイム。サラマンダーよ。しかも火竜山脈の・・・。 好事家に見せたらきっとかなりの高値をつけてくれるでしょうね・・・。」 キュルケとルイズがサラマンダーを見ると、おとーさんとフレイムが見つめ合っていました。そのうちフレイムは滝のような 汗を流し始めついには地面に這い蹲りました。 「フレイムどうしたの?・・・まぁいいわ、行くわよ」 サラマンダーの行動に首を傾げるキュルケでしたがそのままどこかへ行ってしまいました。 「あんた、何やったの??」 ルイズがおとーさんに尋ねると、おとーさんは一言こういいました。 「おとーさん・・・にらめっこ強い」 それを聞いたルイズはその場で吹き出して笑い始めました。 おとーさんはそんなルイズをみてなんだか少し嬉しそうでした・・・
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使い魔召喚の儀式 神聖なものであるこの儀式は、本来厳粛な空気の中で行われるものである。 しかし今、その厳粛であるはずの空気はどこにもない。 タバサを除いた、その場に居る者全員―それは監督役の教師も例外ではない―が爆笑しているのだ。 尤も教師の方はすぐにまじめな顔に戻ったが。 生徒達が爆笑したのは何故か。 それはタバサという少女が呼び出した使い魔が原因である。 その使い魔は以下のような特徴を持っていた。 小脇に本を抱えている 鼻の上にはちょこんと乗った小さなメガネ 知的な瞳 地味目の服 即ち、召喚主であるタバサに似すぎていたのだ。 それが大きなネズミである事を除けば。 当のタバサは普段の無表情を少々憮然としたものに変えていたが、そのネズミと呼ぶにはあまりにも異質なものが持つ本を見た途端にその表情を一変させた。 それは驚き。 本を持っているということはそれ即ち高い知性を持っているということである。人間の言葉を解するかどうかは定かではないが、恐らく独自の文化形態を持っているであろう。 母が煽った毒は異質な物であった。人間の創造しうる物ではない。 ならば召喚されたこの異質な者が解毒方法を知っている可能性もあるかも知れない。また解毒は出来ないにしても何らかの手がかりは得られるかもしれない。 何せ博識である彼女が見たことも聞いたことも無いのだから。 あまり強そうでないのは少々残念ではある。ではあるが、母の治療が最優先事項である。 なればこそ、この使い魔と確実に契約しなければならない。 そう決心し、一つ頷いてタバサは契約に向かった。 しかしその歩みと同級生の爆笑は使い魔の放った一言によりピタリと止まることとなる。 「ええと、僕は召喚されてしまったのでしょうか?」 その問いに答える者はいない。たっぷり30秒は経った辺りで生徒達がざわめきだした。 「コルベール先生、タバサの呼び出した獣・・・あれは韻獣にござるか?」 「左様」 「左様って・・・」 コルベールとタバサだけの表情だけが変わっていない。そう、ミスターハゲもまた呼び出されたものの特異性に気づいていたのである。 尤も内心は驚いている様で、口調はおかしくなっていたが。 一方のタバサはというと、冷静にこれを分析していた。 一般に韻獣と呼ばれる存在は総じて知能が高い。また先住魔法を操る事も多い。つまり使い魔としては「当たり」である。 その上この韻獣は本を所持していることや、学者のような風体をしていることから特に高い知性を持っていそうなのだ。 思わず顔が綻ぶ。そして再びその歩みを進めた。 そして先程の問いに答える。 「そう」 「え?」 「さっきの質問。貴方には私の使い魔になってもらう」 「使い魔・・・ですか。つまり貴方に仕えろと、そういうわけですね?」 「そう。断ったら実力行使」 「ええええええ、ひどいです!ひとでなし!」 「貴方の力が必要。・・・・・・だめ?」 「・・・・・・・ハァ。わかりましたよ、わかりましたからそんな捨て犬のような目で見ないでください」 「ありがとう」 礼の言葉を呟き、呪文を唱え、キス。 こうして異世界より呼び出されたポケット族の賢者はタバサの使い魔となったのであった。 使い魔との契約を終えたタバサは、使い魔の能力を把握せんとしていたが、背後から聞きなれた爆発音が響くのを耳にするとその開きかけの口を閉じ、召喚を試みている生徒の方へと向き直った。 自らの使い魔と同じくらいその生徒に興味があったのだ。何せ如何なる魔法を使っても爆発という現象が起きるのだ。前代未聞である。 彼女が通う魔法学校に於いて一、二を争う識者である彼女ですらその様な現象は知らない。それがその生徒に興味を持った理由だった。 その生徒の失敗魔法による数回の爆発の後、白く輝く美しい蟲が現れた。これまたタバサの知らぬモノである。 「おや、あれは轟蟲ですねえ。中々珍しい物を…」 どうやらこの韻獣はアレを知っているようだ。 「知っているの?」 「ハイ。あれはですね、轟蟲というとても硬い外骨格を持つ蟲です。産卵直前になるとえらく凶暴になって特定の蟲―鏡蟲というんですが―を捕食するという習性を持ちます。 そしてその鏡蟲を捕食すると外骨格が更に硬質化します。さながら強化外骨かk…ゲフンゲフン。ともかく、とっても硬くなるんです。生息数は大変少ないので、こうして召喚でもされない限りはまずお目にかかれません。また……」 えらく詳しく説明された。やはりこのネズミ、只者ではないと確信するタバサであった。 延々と続く蟲に関する説明を聞いていると 「さて、最後の召喚も終わりましたな。皆さん帰りますぞ」 教師の帰還を促す声が聞こえた。話し込んでいる間に契約が終わったらしい。 さて帰るかと飛行の呪文を唱え、「ちょ、待ちなさい!」という言葉に後ろを振り返ったタバサは目の前の光景を目にし硬直。直後に意識を失った。 何が起こったのか。端的に言えば、桃色の髪を持つ生徒の使い魔が彼女に激突したのである。 ところで貴方は昆虫の腹を見たことがあるだろうか?見たことのある人はわかるであろう、昆虫の腹というのはよくよく見ると実に気味の悪いモノなのだ。 巨大な昆虫ともなればその気色悪さは数十倍(オリコ○調べ)にもなる。 そして衝突の寸前にタバサが最後に見たのは凄まじい速さで迫る昆虫の腹側。あとは言わなくてもわかるであろう。 !タバサの苦手なものに昆虫が追加されました。 目を覚ますと、見慣れた天上が見えた。どうやら自室のベッドにいるらしい。はて、何故だろう。 体を起こし、無表情のまま首をひねっていると 「やれやれ、やっと目を覚ましましたか。」 飲み物の載ったお盆を抱えた私の使い魔が部屋に入ってきた。 そうだ。私は使い魔を召喚したのだ。そして……どうなった? 使い魔を召喚し、部屋に戻ろうとした。そして………… ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ ムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイムシコワイ 「蟲はイヤ!」 「はい!?何ですか唐突に」 そうだ。落ち着かなくては。感情を表に出してはいけない。落ち着け、落ち着け。 「なんでもない」 「何でも無いようには見えませんでしたがねぇ。悪い夢でも見たんじゃないんですか?」 ヤレヤレといった様子で肩をすくめるネズミ。少々腹が立ったので、それ以上この話を引っ張るなという意思を込めて睨んだ。 あまりこたえた様子は無かったが黙ったので良しとしよう。 さて。 「状況説明」 「はい?」 「私が気絶した理由と、その後の経過を報告して」 そう、まず原因を究明しなければならない。 「ええとですね、まず貴方が飛行の魔法で空に浮かびました。ここまでは覚えてますよね?」 当然、覚えている。ので、コクリとひとつ頷く。 「その直後に貴方の後ろに居た男子生徒が飛び上がったんですが、その際轟蟲―これも覚えてますか?あの白い蟲です―を召喚した女子生徒を、あの表情から察するに、侮辱したんですね。」 ここまで聞いても未だ予想が付かない。先を促す。 「それを察知したのか、その女生徒の使い魔である蟲の片方が主を侮辱した男子生徒に突進したんです。使い魔同士である為か、その蟲、面倒なので”彼”と呼びますが、彼の怒りが感じ取れましたので、まぁ間違い無いでしょう。」 なるほど。予測がついた。一応確認を兼ねて更に説明を聞く。 「で、かなりの勢いで突進していった彼ですが、その渾身の一撃をかわされてしまったんですね。それで勢い余った彼は、射線の延長上に居た貴方に激突したと。そういうワケです。」 謎は全て解けた。犯人はヤス。 「……その男子生徒の特徴を教えて」 「特徴ですか?えー……そうですねぇ、軽くウェーブした金髪でしたね。それに金属製、恐らくは青銅製の、薔薇の造花を携えていましたよ?」 なるほど。なるほどなるほど。 あのキザ男が全ての元凶らしい。フ、フフ、フ…… 「ひっ!」 思わず浮かんだ笑み。それを見たネズミが何やら怯えている。どうしたの?ワタシコワイ? 「いいいいいイイエ、なななナンデモナイデス ヒメイナンテアゲテマセンヨ?エェ。」 そう。ならいい。 ……あ。 「何ですか?痛いのは嫌ですよ!?」 「名前。」 「はい?」 「貴方の名前。まだ聞いていない。」 そう、唐突に思い出したが、名前を聞いていなかった。 「ああ。そういえば名乗ってませんでしたね。僕の名はラクシュン。ポケット族の長より『見聞者』の称号を賜っています。」 「私はタバサ。よろしくラクシュン」 「はい、こちらこそよろしくお願いします。」 何故こんな大事な事を忘れていたのだろう? ……ああそうか。あのキザ男の所為だ。フフ、フフフ… 私に新たな精神的外傷(トラウマ)を与えてくれたあの男。どの様に復讐してやろうか。 「ご主人、怖いです……」 一日目 終了 次の日の朝 ボロ雑巾のようになったギーシュが学園の壁に磔にされておったそうな。
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前ページ次ページゼロのミーディアム コルベールが王室に通報してフーケを追ってもらうように提案したがオスマン氏が即座に却下する。 「馬鹿者!んな事しとる間にフーケは逃げてしまうわい! それに、身にかかる火の粉を己で払えぬようで何が貴族か!この問題は我ら学院の手で解決する!」 オスマン氏大激怒。 日頃のエロボケジジイ(失敬)ぶりから想像もつかぬ迫力だ。 そして教師達を見回し声高らかに有志を募った。 「これよりフーケ追撃及び破壊の杖奪還隊を編成する。我をと思う者、杖を掲げよ!」 しかし誰も杖を上げようとしない。困った顔で皆オスマン氏から目をそらす。 相手は国中を騒がす悪名高き盗賊、しかも巨大なゴーレムを作り出す強力な土のメイジと来たものだ。 いかに学院の教師でも躊躇うのは致し方ないか……。 「なんじゃ?おらぬのか!フーケを捕まえ名をあげようとは思わぬのか! 誇り高き魔法学院の教師達がなんたる様か!情けない!」 (同感…ホント、なっさけなぁい) その様子を水銀燈が後ろから黙って見ていた。再び宝箱の上に座り込み冷ややかに教師達を見回す。 (自称誇り高き貴族とか名乗っといて腰抜けばっかりじゃないのよ。 …つまんなぁい。いっそのこと、ここでメイメイの報告バラして……) ふと水銀燈の視界の隅で誰かが杖を掲げた。 (あら?ちゃんといるのね。貴族の中にも勇気と使命感に満ちたメイジが) そうして視線を移した先にいたのは……彼女もよく知る桃色の髪の少女。 「ルイズ…!」 「ほう、ミス・ヴァリエール」 水銀燈が小さくつぶやき、オスマン氏が興味深く言った。 「ルイズ、貴女本気なの?」 「もちろんよ、貴族に二言はないわ」 水銀燈がルイズの隣に並び固い表情を浮かべ聞いた。 教師達すら躊躇するこの任務、それをメイジとしては未熟極まりない彼女が名乗り出るとは……。 ルイズの気性を理解していたつもりだったがまだ認識が甘かったらしい。 水銀燈が眉間を押さえ顔をしかめる、まさかここまで向こう見ずなな性格だとは思いもしなかったのだ。 「ミス・ヴァリエール!やめるんだ!君は生徒じゃないか!」 コルベールの反対にルイズはきっと唇を強く結び言い放つ。 「誰も杖を掲げないじゃないですか!ならばこの私がフーケを捕まえてご覧にいれます!」 その凛々しく真剣な表情を見ていたキュルケ、 (この子もよくやるわ)と深く溜め息をついた。 「流石はヴァリエール…その根拠の無い自信はどこからくるんだか……」 (あんたらしいって言えばらしいけどね) フッと微笑みキュルケもまた杖を掲げた。 「ミス・ツェルプストー!君まで!」 「ヴァリエールに負けてはいられませんもの!」 コルベールがさらに驚いたが、キュルケは瞳を閉じ口元に笑みを残したまま得意げに答えた。 キュルケが杖を上げた直後にもう一本杖が上がる。キュルケの隣にいたタバサがその長い杖を掲げていた。 「タバサ、これは私のルイズに対する気まぐれよ。あなたがつき合うことないわ」 キュルケがそう言うもタバサが短く答える。 「乗りかかった船」 そして少しだけを彼女も小さく笑った。 「……それに心配」 キュルケが感動した面もちでタバサを見つめルイズも感極まりお礼を言う。 (あと、もふもふ) 水銀燈だけ突然その背中にゾクリと悪寒が走る。彼女はキョロキョロと周りを警戒するが悪寒の理由はわからずじまいだ。 「水銀燈、あんたも来るのよ」 「……」 すぐに答えず彼女は顔をしかめ少し考え事を始めたが、何かを決めたように頷いてルイズに言った。 「……いいでしょう。大元の原因も私みたいな物だし。それを清算する願ってもないチャンスだもの」 黒衣の天使は先程のキュルケやタバサとは正反対の触れれば切れるような凍りついた薄笑いを浮かべて言葉を続ける。 「……それにあのメイジ、散々私をコケにしてくれたしねぇ?」 そして何故か一瞬だけミス・ロングビルに赤みがかった紫紺の瞳を向けた。 「よかろう、君達の決意しかと受け取った。」 「オールド・オスマン!?」 「彼女達は敵を見ている。それにミス・タバサは若くしてシュバリエの称号を得た騎士と聞いているが?」 その『シュバリエ』と言う言葉にルイズ・キュルケはもちろん教師達も驚いて皆タバサに注目したが、 当のタバサは返事もせず水銀燈の翼をじーっと見つめつっ立っている。オスマン氏の話を聞いていたのかも怪しい。 「本当なの?タバサ?」 「……?」 キュルケの質問に対しタバサは無表情で首をかしげるばかり。 「ちゃんと学院長の話ぐらい聞きなさいよ……」 「と言うか私の翼から目を離して!落ち着かないから!」 ……どうやら本当に話を聞いてなかったらしい。 オスマン氏はゴホンと一つ咳払いをしキュルケを見つめる。 「さらにミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した名家の出身。彼女自身の炎の魔法もなかなかの物と聞く」 キュルケはオスマン氏の言葉に髪をかきあげた。 ルイズは次は自分の番だとばかりに胸をはるが、彼女を前にオスマン氏は「あー」だの「うー」だの唸って困っている様子。 つまり……ルイズの誉めるところをなかなか見つけられなかった。 「ルイズ……」 水銀燈以下キュルケ、タバサまで生暖かい眼差しをルイズに向けた。 「そんな目で私を見ないでぇぇぇぇ!」 これはまずいとオスマン氏は目を逸らしながらもルイズを無理矢理誉め始める。 「その…ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを排出した公爵家の息女で……。 それにあの、えーと、あー、将来有望なメイジと聞くような聞かないような……。」 そしてだらだらと汗をかき始め視線を右往左往させていると銀髪黒翼の人形が目に入り熱っぽい目で見つめた。 「おお!そうじゃ!その使い魔はあのグラモン元帥の(ドラ)息子であるギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという話ではないか!」 ルイズが大きくずっこけた。そして下から自分の代わりに誉められた使い魔を膨れっ面で非難がましく見上げている。 「何よ、別に私が悪い訳じゃないのに……」 「……おまけに宝物庫にかかったスクエアメイジの固定化をぶち抜き、分厚い壁を錬金も使わずに消滅させたのも彼女らしいしの」 「うっ!」 少々の嫌みを込めたオスマン氏の言葉に水銀燈が自分の胸を押さえた。 オスマン氏は思う。彼女が本当に伝説の『ガンダールヴ』なら、……そして自分も知らぬ彼女の得体の知れぬ力をもってすれば、 いかに相手が土くれのフーケと言えど遅れは取らないだろうと。 「そうですぞ!なにせ、彼女は伝説のガンダムッ!?」 コルベールの言葉をオスマン氏は慌て口を押さえて塞ぎ小さく彼に耳打ちした。 (ミスタ!ワシ意外に他言は無用と言ったはずじゃぞ!) (ははあ!申し訳ございません!) オスマン氏はさも何事もなかったように振る舞い四人の少女に向き直った。 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する!!」 オスマン氏の威厳ある声にルイズとタバサとキュルケは真顔になり直立する。 「杖にかけて!!」 そして三人同時に唱和してスカートの裾をつまんで恭しく礼をした。 (ほら!あんたも!) (はいはい……) 水銀燈もルイズにせかされて仕方無しに自分のドレスの裾をつまみ頭を下げた。 「オールド・オスマン。私がフーケの場所まで案内しましょう。同行することをお許し下さい」 ミス・ロングビルが前にででオスマン氏に言った。 「うむ!彼女達の力となってくれ!魔法温存の為に馬車を用意する。それで向かうのじゃ!」 「かしこまりましたわ」 「やっぱり来るのね…」 「それはそうよ。ミス・ロングビルがフーケの場所知ってるんだもの」 「……ああ、そうよね」 呆れたように答えた水銀燈に腹立たしさを感じるルイズだったが、 彼女が自分に背をむけ宝物庫を出ようとするのを見てその後ろ姿に声をかけた。 「どこに行くのよ?」 「デルフを取ってくるわ。またあんなゴーレムが出たら私の剣じゃ心細いもの」 「ゴーレムが出たら剣なんかじゃ無理よ」 「それでも無いよりましよ。それにせっかく買ったんだから使わなきゃ損でしょ?」 「ぶえっきし!」 ルイズの部屋の片隅でボロボロの剣がくしゃみをした。 「あー、ちくしょうめ~誰かが噂でもしてんのかね?それともただの風邪か?」 デルフリンガーがガチャガチャと鍔を鳴らして 何やらブツブツ言っている。 ……剣がくしゃみ?剣が風邪? ルイズの部屋に向かう途中の廊下で水銀燈は見知った顔に会った。 「水銀燈?こんなに朝早くから何かあったんですか?」 「それがね?ちょっと聞きなさいよシエスタ」 ばったり出会ったメイドに彼女は事件の経緯とこれからの任務についてベラベラと話しだした。 …いいのかコレ?学院長の特命なのに。 「まあ!あの土くれのフーケを捕まえに!」 「そうなのよ。まったくルイズと来たら…。まあ事件の原因は私でもあるんだけど……」 「ですけどこれから出発するんじゃ朝ご飯は食べれませんね」 「あ……」 水銀燈は口をポカンと開け固まった。空きっ腹での盗賊討伐など御免被る。 「ねえ…シエスタ、悪いのだけれど……」 「はいはい、すぐにご用意しますからちょっと待ってて下さいね!」 そう言ってニッコリと笑いシエスタは駆け出す。 「厨房で待ってますから~!!」 「頼んだわよ~」 遠くの曲がり角でもう一度こちらを向いて手を振るメイドに黒翼の人形も手を振り返してお願いした。人の夢と書いて『儚い』、月の夜と書いて『腋』。 そして女が三人で『姦しい』とはよく言ったもの、ではそれが五人となったらどうだろう? 答えは馬車を見ての通り。 姦しいのはルイズ・水銀燈・キュルケの三人。 タバサは無言で本を読んでるし、とミス・ロングビルは物静かに馬の手綱を握っている。 つまり…やっぱり普通に姦しかった。 「だ~か~ら~!この子から離れなさいよツェルプストー!」 「何よー!減るもんじゃないし良いじゃない!ね?水銀燈!」 「うざいわ。離れて」 「ああん!ツンツンしてて素敵!ねぇデレてデレて~」 年甲斐も無く痛々しい言動でキュルケは体をくねくねさせて水銀燈に迫る。 彼女はトントンと後ろから肩を叩かれそちらの方を振り向いた。 「ん?なに?タバサ?」 「イタい(主に言動が)」 無表情…いや、鉄面皮の顔のまま言い放たれた親友の痛烈な一言に、キュルケは馬車の隅にうなだれるように体育座りをしてがっくりと落ち込んでしまった。 タバサは口数こそ少ないが、その言葉に込められた意味は実に重いのだ。……爆弾発言とも言うが。 「まったく…やっと静かになったわね。……ん?」 手綱を握っているミス・ロングビルを見やるルイズ。そして少し疑問に感じた事を投げかけた。 「そう言えばミス・ロングビル、何故あなたが御者を?手綱なんて付き人にやらせればいいのに」 ミス・ロングビルはにっこりと笑った。 「いいのです。わたくしは貴族の名を無くした者ですから」 だが、どこか諦めの入った表情に見えるのは気のせいだろうか? 「だけど貴女は、オスマン氏の秘書なのでしょう?」 「ええ、でもオスマン氏は身分の差などあまりこだわらないお方ですから」 「ふぅん、ちゃんと貴族にもそんな人がいるのね」 貴族の中にも身分等にとらわれない者がいると言うことに水銀燈も感嘆する。 「ま、学院長やってるぐらいの人柄だもの」 「ちょっとセクハラが激しいですけどね」 「差し支えなかったら身分を追われた事情をお聞かせ願いたいわ!!」 こう言った話が大好きなのか馬車の隅っこにいたキュルケが復活し御者台に座ったミス・ロングビルににじり寄る。 何という変わり身、何という回復力。 だがミス・ロングビルは微笑みを浮かべたまま口を閉ざしている。あまり口に出したく無いのだろう。 「いいじゃないの。教えてくださいな~」 キュルケのあまりのデリカシーの無さにルイズが眉をひそませそれを注意しようとした矢先、 「やめなさい、キュルケ…!」 水銀燈がいつになく厳しい顔で、冷たくキュルケに言った。 「人には触れてはならない傷みと言うものがあるのよ。例え時間がその傷を癒やそうとも忘れる事は、消える事は決して無いの……!」 彼女はギリッと歯を食いしばり憎しみすら込めた眼差しでキュルケを睨みつける。 「そして古傷を抉ってまでそれを聞き出そうとする等恥ずべき事だわ。 ましてやそれが人生の転機となった話となるなら以ての外よ!!」 反論一つ許さぬ、強い意志を秘めた言葉だった。 弱々しい自分と、それに憐れみを寄せた紅い薔薇の少女との過去、水銀燈はそれを思だしていた。 人生の転機、思えばあの少女との別離が自分の戦いの宿命の始まりだった。 「す、水銀燈どうしたのよ突然?」 「そ…そうよ、ちょっと暇だからお喋りしようとしただけなのに……」 忌々しい過去を思い出し憎しみの炎を燃え上がらせた水銀燈だったが、 驚きに青ざめたルイズとキュルケを見てハッと我に返り落ち着きを取り戻す。 「い、言い過ぎたわね……ともかく他人の過去を詮索するのはあまり好ましい事ではないでしょ?」 二人から顔を背けてごまかすように早口で言い直した。 「確かに、無粋」 手元の本をパタンと閉じてタバサもまた水銀燈の言葉に同意した。 その表情が若干険しい。もしかすると彼女もまた、何かつらい過去があるのかもしれない。 (自分の事を棚に上げてよく言ったものね……) 水銀燈は嘆くようにそう小さく言い捨て自嘲気味に首を振った。馬車が重っくるしい雰囲気に包まれてしまった。 これからフーケを捕まえようと言うのに気が滅入るような陰鬱さが彼女達に渦巻いている。 「……とりあえず腹拵えといかない?」 この状況を打破すべく。水銀燈が膝の上にのせていた箱に手をかけた。 「あ、それ!」 ルイズはそれに見覚えがあった。以前朝食を食べ損ねて空腹に呻いた時、休み時間に水銀燈が持ってきてくれた箱だ。 「シエスタ特製サンドイッチぃ~」 箱の中身には一口サイズの色とりどりのサンドイッチが所狭しとならんでいる。 「まったく……ピクニックに来てるんじゃないのに」 「よだれ出てる」 キュルケが真面目ぶって言うも、タバサのツッコミどおり美味しそうなサンドイッチを前によだれを垂らしているのではいささか説得力に欠けた。 それだけシエスタのサンドイッチが魅力的なのかもしれないが。 「甘いわね、キュルケ。かつて古き戦場においてコウメイと言う名軍師がこんな言葉を残しているの……」 水銀燈のその言葉にルイズ、キュルケ、タバサが首を傾ける。 「……腹が減っては、戦はできぬ!!」 「「おお!!」」 「正論…!」 三人が驚くように声を上げた。 いや、かの諸葛亮孔明も流石にそんな事は言ってないから。 「うーん、やっぱりおいしいわ」 「ま、こう言うのもわるくないわよね」 「……(もぐもぐ)」 朝食を抜いて来たため三人とも一心不乱に食事をとりはじめた。 水銀燈も一つサンドイッチを手にとりミス・ロングビルに差し出す。 「ミス・ロングビルもお一ついかがぁ?」 そして切れ長の瞳をさらに細め、いやに挑戦的な韻を含ませて言った。 「ではお言葉に甘えてわたくしも……」 彼女は渡されたそれを手にとり片手で手綱を持ちながらそれを口に運ぶ。 彼女は水銀燈の攻撃的な物言いを受け流すように終始微笑んだままだった。 「シエスタだったわよね?二度もご馳走になったんだし、一度はお礼にいかなきゃね」 「この任務が終わったら行ってあげるのね、あの子も喜ぶわぁ」深い森の中、一行が開けた場所に出た。学院の中庭程の広さの空き地の真ん中に廃屋が一つ。 元は木こり小屋なのか朽ちた炭焼き窯と壁板が外れた物置が隣に並んでいる。 5人は小屋から見えないように茂みに隠れ小屋を監視していた。 「わたくしの情報ではあの中にいると言う話です」 ミス・ロングビルが小屋を指差す。 「作戦会議」 タバサがそう呟きがちょこんと正座して、地面に絵を書き始めた。 作戦の内容はこうだ。 まず偵察兼囮が小屋の中の様子を確認。 ↓ そしてフーケが入ればどうにかして外に出す。無論小屋の中には土がないためゴーレムの生成は不可能。 ↓ フーケが外に出たところをゴーレムを作り出す前に魔法の集中砲火で沈める。 単純な作戦ではあるが理にはかなっている。 「偵察兼囮はこの子にやってもらいましょう。……メイメイ」 水銀燈の言葉に呼ばれ彼女の翼から蛍を思わせる紫光が現れる。ルイズが不思議そうにそれを見つめ聞いた。 「これはなんなの?」 「私の人工精霊のメイメイよ。言ってみれば……私の使い魔ね」 「使い魔が使い魔を持つなんて……」 「色々言いたいことあると思うけど今はそれどころじゃないでしょ?」 水銀燈が自分の手のひらにのったメイメイに語りかけた。 「お休み中に悪いわね、もう一仕事頼むわ」 主人の言葉に微塵に不満を感じる事無くメイメイは瞬くと、地面スレスレを飛んで小屋に近づいていった。良くできた従者だ。 「本当に大丈夫なの?」 「あの子は優秀な私の従者よ?戦いのサポートだってこなしてくれるわ。追跡・偵察・囮、何でもござれ…なんてね?」 そして小屋の周りをぐるぐる飛んだメイメイが主人の元に戻り耳元でチカチカと瞬く。 「誰もいないそうよ?」 それを聞き恐る恐るもルイズ達が小屋に近づこうとしたその時、 「ちょっと待って」 水銀燈がそれに待ったをかけた。「何も5人全員で小屋に入ることはないわ。見張りや周りの警戒だって必要よ?」 水銀燈が他4人を見回して続けた。 「捜索に3人、周囲の警戒に1人、見張に1人で分けましょう」 彼女の提案に皆賛同し大きく頷く。 「ではわたくしが周囲の警戒を……」 「警戒はタバサ、貴女にやってもらうわ」 ミス・ロングビルが言うのを制して水銀燈が素早く言った。 「貴女は使い魔の風竜で空から警戒して」 「わかった…」 タバサはそう言って口笛を吹いてシルフィードを呼び出す。 「見張りはキュルケ、貴女に任せたいのだけれど……」 「えー、なんで私がそんな地味な役……」 水銀燈が嫌がるキュルケに目配せしてそれを諭す。 「お願いよキュルケ」 そして片目を閉じてウインクした。その様子に水銀燈が何かを察した彼女は、 「しょうがないわねー。愛しの水銀燈の頼みじゃ断れないわ~」 と言って森の茂みに戻り周囲に注意を向けた。 水銀燈はタバサとキュルケ二人の後ろ姿に警戒と見張りを託し、残りの2人に向き直る。 「さ、行きましょ。ルイズ、ミス・ロングビル」 「よーし!フーケの手がかり、探すわよ~!」 「え、ええ……」 やる気を出して張り切るルイズの横でミス・ロングビルが曇った笑顔で水銀燈に返事をした。小屋の中に入った水銀燈達がフーケの残した手がかりが無いかを探し始めた。 水銀燈が目を付けたのは狭い小屋の片隅にある露骨に怪しいチェスト、木でできた大きな箱の事だ。 「まさかこーんなところに盗まれた破壊の杖があったりしてぇ……」 クスクス笑いながらチェストの蓋を開ける。 「……何よこれ」 チェストの中を見て彼女は我が目を疑った。 それは明らかにこのハルケギニアに、魔法の世界に有るはずもなく、相応しくも無い代物だった。 この世界にも似たものがあるのかとそれを手にとった瞬間、左手の甲のルーンが輝き出しそれが何であるかを水銀燈に告げる。 「やっぱりこれは私の世界の……でも何故?」 「それが破壊の杖です!」 水銀燈の手に持っている物を見てミス・ロングビルが驚きの声を上げる。 「これが破壊の杖!?」 水銀燈もまたそれに驚いた。 「え?もう見つかっちゃったの?なんかあっけないわね…。あ、でもあとフーケを探さなきゃ」 水銀燈はとりあえずこの杖がここにある理由については置いておく事にしたらしい。 ルイズのフーケを探さなきゃと言う言葉に反応し彼女は言った。 「ねえ、どうしてフーケは破壊の杖を置いて姿を消しちゃったのかしらぁ?」 「うーん。……何でだろ?」 ルイズが腕組みをしつつ首を傾げる。 「ルイズ、私は貴女に聞いたのではないの。私はミス・ロングビルに言ったのよ?」 ミス・ロングビルの顔が凍りつきピタリと固まった。 「そんなに私の事邪険にしなくてもいいじゃないの」 「気を悪くしたなら謝るわ。でも別に貴女を除け者にした訳ではないの。……ただ、ね?」 ルイズの拗ねるような抗議をなだめるように水銀燈は彼女に笑いかけた。 不意に小屋の中にバサッと言う何かをはためかせる音が鳴り響く。 水銀燈の日頃は小さい漆黒の翼が大きく広がった。 さらに言葉を続ける。 「他人の推測より本人に直接聞いた方が早いでしょ?違うかしら?ミス・ロングビル。いいえ……」 そして、ミス・ロングビルを紫紺の瞳を細めて見やり、微笑みを狂気の笑みに変えて言い放った。 「『土くれ』の、フーケ……!」 オマケ・NGシーン 「そうですぞ!なにせ、彼女は伝説のガンダムッ!?」 「だぁれがガンダムですって!?くるァァァァァァァァ!!」 「水銀燈!突然何!?」 「ルイズ!可憐な乙女が屈強なガンダム扱いされたのよ!?黙ってられるもんですか! そこに直りなさい!ジャンクにしてあげるわぁ!!」 「ガンダムって何よ!?!」 「まあまあ、ミス・水銀燈。明鏡止水の心ですぞ?怒りでは真のスーパーモードは引き出せませんから。ねえ?オールド・オスマン」 「認めたくないのう。若さ故の過ちと言うものは……」 「貴方達知っててやってるでしょ!!」 「とにかく落ち着いてよ!!」 「放して下さいルイズ!わたくしは……彼の者達を、自由と正義の名の下に討たねばならないのです!!」 「水銀燈の髪がルイズと同じ色に……。タバサ、なんなのあれ?」 「電波受信……?」 前ページ次ページゼロのミーディアム
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前ページ次ページとりすていん大王 色々とありつつ始まります とりすていん大王 9回目 「特急、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き~、ラ・ロシーェル発、アルビオン行き~ご乗船ありがとうございます」 お父さん一行はラ・ロシーェルの桟橋でアルビオン行きの船に乗りました 「やはり飛空船は駅弁だね」 「そうね、ワルド様、あとお茶ですわ」 「駅弁サイコー」 「まぁ タバサったら(ぽっ)」 「ツェルプストー自重しなさい お父様お茶どうぞ」 「ははは(ずずず)」 なんだかんだと一行が呑気にご飯を食べている間に船はアルビオンに到着しました そして・・・ 色々すっとばして舞台はアルビオン城の礼拝堂、お父さん一行はいきなりピンチに見舞われたのです 「ふふふ、そうだ僕はレコン・キスタだ!!」 「ワルド様!!」 「ルイズ、僕と共に行こう」 「ワルド様、頬にご飯粒がついてますわ」 「え?ああ、急に場面が変わるからさ」 ウェールズ王子の胸に杖をつき立てルイズを無理やり小脇に抱えたワルドが勝利の高笑いを響かせます 「はははは、ウェールズ王子の命!!僕の花嫁ルイズ!!そしてアンリエッタの手紙、目的は全て達した!!」 今までの存在感の無さが嘘の様にその存在感をアピールするワルド お父さんもルイズが人質となっているので動けません 「ははは!!お前らもレコン・キスタに参加すれば命は助かるぞ!!」 その言葉に反応したのは意外にもモンモランシーでした 「ふ、ふざけないでよ!!誰がレコン・キスタなんかに参加するものですか!!」 その言葉を聞いた瞬間にワルドの顔が能面のように感情を無くしました そして厳かに告げます 「そうか、だったら選べ、今 僕に殺されるかレコン・キスタの兵士に陵辱の限りを尽くされ死ぬか」 ぎりりと歯を強くかみ締める音が二つ、ルイズとモンモランシーの二人です そして・・・ その声はぴたりと重なりました 「「誰があんたの思い通りになるんもんですか!!」」 「なら纏めて死ね!!ライトニング・クラウド!!」 強力な雷撃がモンモランシーを襲います モンモランシーが恐ろしさの余り、目を瞑ったその時、目の前に立つ影がありました 「お、お父様!!」 そうです、お父さんがみんなの前に出て魔法をその身で受けたのです お父さんの所々が黒く焦げ、煙が上がってます 「ふふふ、さすがモンモランシー伯 だが次はどうかな!!」 勝利の美酒に酔いながらワルドがさらにお父さんに向けて一撃を放ちました 「いやぁ!!」 「やめてぇ!!」 モンモランシーやルイズの絶叫が礼拝堂に響きました ですが当のお父さんは何かを確信したように呟いたのです 「・・・きたか」 瞬間、お父さんの眼前の地面が爆発しました そして出てきたのは 「おでれーたー!!俺様 相棒と大とうじょぉーーう!!」 デルフリンガーを持った黒髪の少年でした 「師匠、おくれてすんません!!」 いきなり現れた黒髪の少年なんとデルフリンガーで魔法を吸収してしまいます 「な、なんだと!?うぉおお!?」 いきなりの闖入者にワルドが驚いていると急にワルドの足場が崩れ落ちましたその拍子にルイズを離してしまいました 「し、しまった」 慌ててルイズを捕まえようとしたワルドの前に地面から7体の戦乙女を模した青銅のゴーレムが現れてワルドの邪魔をします 「乙女の心を踏みにじるヤツ・・・」 土煙の中からあの男の声がします 「乙女の夢を壊すヤツ・・・」 段々と薄れていく土煙にあの見覚えのあるシルエットが写ります 「そんな女性の敵は、このギーシュ・ド・グラモン・・・いや」 モンモランシーは高鳴る胸を押さえ、ワルドは薄れゆく土煙を鋭い目つきで睨み、ルイズは不安そうな瞳で見つめ、 キュルケは戸惑い、タバサは無表情ですが素早く次の行動を頭の中で計算し、お父さんは深く頷きました 「新しく生まれ変わったこの僕!!ギーシュ・ザ・グレートが許さない!!」 土煙が晴れたそこには、以前お父さんに(無理やり)修行の旅に連れて行かれて久しい級友、あのギーシュ・ド・グラモンが立っていました そして彼を見て一同は叫んだのです 「「「「「へ、へ、変態だぁーーー!!」」」」」 ギーシュの姿は筋肉ムキムキの体に青いブーメランパンツ一丁にマントを羽織り、杖と同時に何故かバカみたいにデカい斧をぶら下げてるのですから 「・・・・・・いい」 「へ?タバサ何か言った?」 「ううん」 心なしかワルキューレもアマゾネス化してるような気がします 「な、なんなんだ一体?ぶべらぁ!?」 突然の闖入者たちに放心状態になっていたワルドがいきなり吹っ飛ばされました ふたりに殴られたのです 「いくぞ、サイト!!」 「おう、ギーシュ!!」 さらに二人の闖入者は互いに顔を見ると頷き拳をおもいっきり振り上げました 「「往生せいやぁ!!」」 ガゥワコーンと言う音をたててワルドが吹っ飛んでいきます 「たわらばぁ!!」 奇妙な声を上げてワルドが空の彼方へと飛んで行きました まぁ吹っ飛びながらも 「僕はあきらめないぞー」 とか言ってるので大丈夫でしょう 礼拝堂ではお父さんとモンモランシーの魔法の治療で一命を取り留めたウェールズ王子と城で別れルイズにキュルケとモンモランシー、タバサが ギーシュが掘った穴を潜り抜けアルビオン城を脱出したのでしたが、何故かこの礼拝堂に残った影が三つ 「さて、ギーシュ、君は逃げなくてよかったのか?」 堂々と仁王立ちで押し寄せてくるレコン・キスタの大群を見つめサイトはにギーシュに問いかけます 「モンモランシーを虐めた奴らを許せはしないな、そういうサイト、君こそウエストウッド村に待ってる人がいるんだろ?」 「あいつらをほおっておくとテファになにするかわからないからな」 お互いの顔を見てにやりと笑うギーシュとサイト、そして 「やぁ、二人とも では殿を務めようか」 お父さんが二人の前に歩み出ると二人は恭しくお父さんに礼をしました それを見てお父さんは頷くとあらん限りの声でこれからレコン・キスタの大群相手に始まる大活劇の為に気を入れたのです 「ぶるうううああああああああああああああああああ!!」 続く 前ページ次ページとりすていん大王
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前ページ次ページゼロと波動 学院の入り口ではロングビルとシエスタが馬車の御者台に座って待機していた。 街を歩けば誰もが振り向くであろう理知的でグラマラスなメガネの美女と、 隣の美女に負けない豊かな胸の健康的な少女が並んで座っているのだから、ちょっとした絵画に見えないこともない。 そして幌付きの荷台にはルイズ、キュルケ、タバサが乗っており、ルイズとキュルケがぎゃあぎゃあと何かを言い合っている。 その中でタバサは我関せずといった風に革張りの装丁が施された分厚い本を読んでいた。 こちらも御者台の二人に負けない美少女ぞろい。 大人の女から年頃の娘、あと何年かで年頃になりそうな娘。 巨乳、平原。 美女に美少女。 正によりどりみどり。 金持ちの貴族でもこれだけ集めるのは至難の業だろう。 間違いなく極上のハーレムだった。 ここにいるのがギーシュならブリミルに感謝しただろうし、マリコルヌなら死んでしまっていたかもしれない。 幸せ死にというやつだ。 だが、そんな普通の男なら歓喜する極上ハーレムもリュウにとっては自分が保護者にでもなったような気分でしかない。 「あ!リュウさん!こっちですよー!」 リュウに気づいたシエスタが大きく手を振る。 「ダーリン!」 キュルケも気づき、荷台から身を乗り出して負けじと手を振る。 「ちょっと!人の使い魔に向かって何がダーリンよ!?」 ルイズが噛み付く。 「使い魔ったって、リュウは人間なんだから別に恋愛感情抱いてもいいじゃない。なんならあなたもフレイムをダーリンって呼んでもいいわよ?」 「冗談じゃないわ!そもそもトカゲじゃない!」 「んまっ!?トカゲとは失礼ね!サラマンダーよ!?火竜山脈産のサラマンダーなのよ!?ブランドものよ!!?」 自分の使い魔をトカゲ呼ばわりされてヒートアップするキュルケ。 「・・・うるさい」 タバサが本から目を離さないまま、隣に立てかけていた自分の背丈より長い杖を手に取ると短く「サイレント」の呪文を詠唱する。 途端に荷台からは一切の音が消え、静寂が訪れた。 キュルケとルイズは相変わらず何か言い合っているが、口をパクパクさせるだけで声が出ていない。 声が出ないから、二人は取っ組み合いを始めた。 「・・・ちょっと狭いかもしれんが、俺もこっちに座らせてくれ」 リュウは荷台の惨状を見て大きく息をつくと、荷台に乗るのを諦めて御者台に座ることにした。 「わあ!リュウさんだー!リュウさんだー!!」 シエスタが隣に座ったリュウの腕にしがみつく。 自分の腕に頬と胸を擦り付けてくるシエスタに戸惑うリュウ。 リュウは女性の扱いがとても下手だった。 走り出した馬車は至って平穏に山道を進んでいた。 次々と木々が後ろに流れていくのを見ているとちょっとした遠出のようで、とても今から盗賊を退治しにいくようには思えない。 そんな平穏極まりない山の中を小一時間ほどシエスタの他愛無い話など聞きながら進んでいたが、話が一区切りついた辺りでリュウが口を開いた。 「ところで・・・フーケは捕まるとどの程度の罪になるんだ?」 この世界での罪に対する罰とはどの程度のものか知らないリュウが尋ねる。 「もしフーケが平民なら良くて打ち首、悪ければ拷問の末に晒し首でしょうね。貴族ならどういう裁定が下されるかは私には判りかねます」 ロングビルが素っ気無く答える。 「フーケは魔法が使えるんだろう?貴族なんじゃないのか?」 解せないといった感じで聞くリュウ。 「貴族は必ずメイジですが、メイジが必ずしも貴族とは限りませんよ。貴族の名を剥奪されたメイジもいますから」 ロングビルの整った顔に陰が落ちる。彼女は溜息をつくと最後に一言付け加えた。 「私みたいに・・・」 いつの間にかキュルケが荷台から顔を出してリュウとロングビルの会話を聞いていた。 毎晩遅くまで勉強と魔法の練習をしているルイズはキュルケとの肉弾戦に飽きると、馬車の揺れの心地よさに勝てず眠りこけてしまっていた。 一方、夜更かしは美容の大敵と睡眠時間バッチリのキュルケは遊び相手を失ってしまい、暇を持て余していたのだった。 「あら?ミス・ロングビルって貴族じゃなかったの?なんで名を剥奪されたのか聞いてもいいかしら?」 興味津々な顔でロングビルが口を開くのを待つ。 「ごめんなさいね、あまり話したい過去じゃないの」 ロングビルが怒るでもなく、寂しげに答える。 「そりゃそっか、ごめんなさい」 キュルケはばつの悪そうな顔で素直に謝ると、荷台の中に戻っていった。 が、すぐにもう一度現れるとシエスタを引っ張っる。 「っていうか、あなた何でダーリンにくっついてるのよ!こっち来なさい!」 もちろんキュルケの力程度では微動だにしないシエスタではあったが、 貴族の命令とあれば逆らうわけにもいかず「ふぇ~~」などと情けない声をあげながらキュルケと共に荷台に消えていった。 荷台はロングビルとリュウだけになった。 しばらく沈黙が続いたが、やがてリュウは荷台の連中が誰もこちらに来ないのを確認してから口を開いた。 「盗んだ物を返してもらえないだろうか」 前をしっかりと見据えたまま告げるリュウ。 ロングビルがぎょっとした顔でリュウの方を向く。 ――バレているのか?―― もし自分の正体がバレているのなら、この男が相手では万に一つも勝ち目は無い。 何しろ形容し難いほどの殺気をバラ撒き、30メイルのゴーレムを瞬く間に消し去った男だ。 トライアングル・クラスのメイジである自分にはどう転んでも勝てまい。 いや、それどころか、スクウェア・クラスでも勝てるとは思えない。 それでも必死で戦う術を模索する。 負けるワケにはいかないのだ。 ――勝てないまでも、せめて逃げることさえできれば―― が、やはりいくら頭の中でシミュレーションしてみても自分が勝つことはおろか、逃げきれる予測にさえ辿り着かない。 襲い来る絶望感に鼻の奥がジンジンと痛み、体中の毛穴が開く。 口の中はカラカラに渇ききってしまっているが、最大限に平静を装ってなんとか言葉を搾り出す。 「どういう意味でしょう?」 「そのままの意味だ。俺にはあんたが殺されなければならないほどの悪人には見えない」 真っ直ぐ前を見るリュウの顔には表情がなく、何を考えているかを窺い知ることが出来ない。 「ミスタ・リュウ。貴方は私を誰かと勘違いしていませんか?」 脈拍が上がり、背中にはいやな汗がじっとりと浮かぶが表面上にはいっさい出さず、あくまで白を切り通そうとするロングビル。 リュウはロングビルの方に顔を向けると、真剣な顔で告げた。 「俺は”土くれのフーケ”に死んで欲しくないんだ」 ロングビルの目つきが急に鋭くなり、口調も変わる。 「・・・いつ判ったんだい?」 理知的だった美女の顔は消えてなくなり、野生の荒々しさが宿った猫科の動物のような美しさを醸しだす。 誤魔化しきれないと悟り、ロングビルでいることをやめたのだ。 それと同時に自分の命運はこの男の掌の上にあることを覚悟する。 今、リュウの隣にいるのはまさに”土くれのフーケ”だった。 「一番最初にあんたに出会ったとき、少なくともあんたは秘書ではないと思っていた」 「そんな最初から?まったく参ったね・・・”土くれのフーケ”様がなんてざまだい・・・」 ロングビル、いや、フーケがため息をつきながら天を仰ぐ。 「で、あたしがフーケだと判ったのは?」 「学院長室にあんたが入って来たとき、あんたはルイズを見て驚いていた。そして、すぐに安堵したような顔をした」 「・・・で?」 「あんたは大木が直撃してルイズは死んだと思い込んでいたんだ。ところがそのルイズが学院長室にいた。 死んだと思っていた人間が目の前にいるんだ、驚くだろうさ。そして安堵した。少なくとも、殺してしまったと悔いていたんだろう」 フーケはしばらく黙ってリュウの顔を見つめたあと、諦めたように口を開いた。 「あんた、いったい何者なんだい?デタラメに強いだけじゃなくて周りも良く見えてるし頭も回る。なんであたしはこんなのを敵に回しちゃったんだろうねぇ」 言って、大きな溜息をつく。 「盗んだものを返してくれないか?」 リュウがもう一度言う。 「いいよ。元々返すつもりになってたしね」 あっさり了承するフーケ。 「あんたの言うとおり、あたしはあの貴族の娘が死んだと思ってたからね。物を盗るのに誰かを死なせてたんじゃあ、あたしの中じゃ仕事は失敗なのさ。 仕事が失敗してるのに獲物は手元にあるなんて納得いかないだろ? ただ、返そうにも学院が本気になって警備に力を入れたんじゃあ、流石のあたしでもメンドウだからね。 適当な廃屋にでも置いといて、そこに案内しようと思ってたんだよ。 そしたらどうだい、あの娘が生きてるじゃないか。 それで返すか返さないかで迷ってるうちにあんたに正体を見抜かれちまった。ホント、あたしも焼きが回ったねぇ」 「悪いことは出来ないもんさ」 リュウが笑った。 フーケも笑った。 それは裏の世界に生きている人間とは思えないほど、明るく輝くような笑顔だった。 「あんた、いいヤツだね」 フーケは笑うのをやめると、真面目な顔になる。 「でもね、『破壊の珠』は返すけど、あたしは”土くれのフーケ”を辞めるワケにはいかない。何しろ金が要るからね。 平民がまともに稼いでも手に入る金なんてたかが知れてるしさ。それじゃ足りないんだ。 ・・・たとえ捕まって晒し首になるとしても、あたしには金が要るんだよ」 リュウを見つめ、寂しそうに呟く。 「あんたは悪人に見えないと言ってくれたけど、あたしは悪人なんだよ・・・」 フーケは自分がなぜこんな話をリュウにしているのか解らなかった。 『もう盗みはしない』と言ってその場をごまかし、後で隙を見て消え去るのが一番の手だと頭では理解しているはずなのに、自分はリュウに洗いざらい喋ってしまっている。 「なんでだろうね、あんたといると調子が狂うよ・・・で、どうする?あたしはフーケを辞めないと宣言しちまったよ?あたしを捕まえるかい?」 この男は正義感が強い。さっきはもしかしたら見逃してくれるかも知れないと思ったが、盗みを辞めないと断言した以上は自分を捕まえるだろう。 先ほどもシミュレーションした通り、この男から逃げ出せる可能性は殆どないと考えていい。 ”ごめんね、ティファ。もうお金を渡してやれそうにないよ・・・” フーケは覚悟を決めると、再び逃走するための作戦を幾重にも考え始めた。 「いや、好きにすればいいさ」 だが、リュウから返ってきた言葉は意外なものだった。だから、聞き返してしまった。 「え?」 「好きにすればいいさ。俺はフーケの正体が誰なのか知らない。どうやら少し居眠りしてしまったようだ」 「・・・なんで・・・見逃してくれるんだい?」 「言っただろう?俺にはあんたが悪人には見えない。それだけだ」 リュウは真っ直ぐに前を見つめ、力強く言った。 リュウは見た。 『金が要る』と言ったときのフーケの顔を。 それは自身の欲の為ではなく、必要に迫られた悲壮感漂うものだった。 おそらく誰かのために多額の金が必要なのだろう。 自分から大貴族であるルイズやキュルケに頼めばそれなりの額は工面してもらえるかもしれない。 だが、もしそうしてフーケの為に金を用意しても、きっとフーケはその金を受け取らない。 自分がフーケのためにしてやれることは、何も無かった。 目の前にいる人間すら助けることのできない自分。 多少は人より力が強いかも知れないが、それが一体なんだと言うのか。 己の無力さに歯噛みするリュウ。 それに街で聞いた話ではフーケは金持ちの貴族からしか盗まないらしいし、彼女の行動から人の命を奪うこともしないことを知った。 決して褒められたことではないが、誰かの為に何かを成そうとするフーケの行為を止めることなど、無力な自分にできるはずがなかった。 「そんな顔するんじゃないよ。あたしは盗賊なんだよ?」 リュウの思いつめた顔を見て、フーケはリュウが何を思っているのかを悟った。 「さっきも言ったけど、あんたってば本当にいいヤツだね。あんたに気にかけてもらえるなんて、あの貴族の娘が羨ましいよ」 フーケは更に言葉を続けようとしたが思い直して口を閉じ、しばらく無言でリュウの顔を見つめる。 「・・・このまま道なりに進みな。1時間もすれば小屋のある広場に出るからね。その小屋の中に、箱に入れて置いてあるよ」 フーケはメガネを外し、髪を束ねていた結紐を解く。長く美しい緑の髪が風に煽られ大きく広がる。 「ロングビルはこれで終わりだよ。『破壊の珠』が手に入らなかったから、もう学院にいる意味ないしね」 「そうか。何か伝えておきたいことはあるか?」 リュウが尋ねる。 「そうだね・・・オスマンのジジイに礼でも言っといてくれると嬉いね。 あんたの秘書をやってたことに文句はなかった、給料の額だって満足してるって。”土くれのフーケ”様が感謝してたってね。 実際、あのジジイは平民のあたしにも十分良くしてくれたよ。セクハラだけはどうにも我慢ならなかったけどね」 フーケが少しだけ寂しそうに、しかし笑顔で言う。 「物盗りが何言ってやがるって話だけどね」 そう付け加えてけらけらと笑うフーケ。 陽光に照らされるフーケの笑顔はとても眩しく、美しかった。 「元気でな」 リュウが短く言う。 「あんたもね」 フーケは馬車の手綱をリュウに手渡すと、ぐっと顔を近づけた。 「このフーケ様が敵わないって思った相手なんだ、よく顔を見せとくれ」 しばらくリュウの顔を見つめたあと、突然自分の唇をリュウの唇に合わせる。 「な!?何をする!!?」 滑稽なほど慌てふためくリュウ。とにかく、色恋沙汰とは縁遠い男だった。 「見逃してくれた礼だよ。悪くはないだろ?これでも自分の見てくれには自信があるんだ。 ホントは一晩ぐらい相手してやっても良かったんだけどね、それをしちまうと、あたしがあんたに惚れちまいそうだからさ。残念だけどやめとくよ」 フーケはじっとリュウを見つめると、とびきりの笑顔で片目をつぶる。 「じゃあね」 それだけ言うと御者台から飛び降り、フーケはそのまま森の中に消えていった。 ――惚れちまいそうだから・・・か。もう、どっぷり手遅れだよ。 ホント、”土くれのフーケ”がなんてざまだい・・・―― 馬車を見送りながらフーケが自嘲気味に呟いた。 「さて・・・なんて言い訳するかな・・・」 リュウは一人になってしまった御者台の上でルイズ達にどう説明しようかと悩むのだった。 前ページ次ページゼロと波動
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元スレURL 海未「すみません、遅れました」ストン ブゥー 概要 関連作 タグ ^高坂穂乃果 ^園田海未 ^南ことり ^西木野真姫 ^星空凛 ^小泉花陽 ^矢澤にこ ^東條希 ^絢瀬絵里 名前 コメント
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前ページ次ページゼロのエルクゥ 「……あの」 「なんだい?」 ちーちちち……と小鳥の囀りが響き渡る昼下がりの陽光の中を、二人は馬車でゆったりと進んでいた。 御者台で手綱を引いているのは、草色の髪を風に揺らすマチルダ。後ろに乗っているのは、物珍しい漆黒の髪を同じく風に流す楓だった。 「本当に、良かったのですか?」 「いいって言っただろ? 元々少しの骨休めのつもりだったんだし、どうせトリスタニアぐらいまでは行かなくちゃいけなかったんだしね。ついでさ、ついで」 かっぽかっぽ、という蹄の音が、なんともうららかな風景であった。 「ま、それに、あの子があんなに必死に頼み事をするなんて、初めてだったからね」 苦笑とからかいが半々に混じり合ったようなマチルダの言葉に、楓は少し頬が熱くなってしまう。 それは、昨夜、その『あの子』と友人の契りを交わした後の事だ。 『マチルダ姉さん、お願い! カエデさんを恋人さんのところまで案内してあげて!』 魔法学院には戻れない事を言うに言えず、承諾させられてしまった。 先ほどまで馬車に揺られながら、『学院長のセクハラに耐え切れず放り出してきたから戻るのはバツが悪い』というある意味真実な事情を楓に話したところだ。 「人の事情も知らないで無茶言うんだから、まったく……」 当の魔法学院でフーケ扱いされていないという事実はトリスタニアで情報を集めた時に知る事になるのだが、今はそうぼやくしかない。 しかしその言葉は、呆れと共に確かな慈愛が感じられるものだった。 「……すいません」 「別にあんたが謝る事じゃないさ。逆に感謝してるぐらいだよ」 「えっ?」 「良くも悪くも他人の事ばっか気にして生きてきたあの子が、少しでもワガママ言えるようになったって事だからね。大進歩さ」 「マチルダさん……」 「はは。私がこんな事言ってたなんて、テファには言わないどくれよ?」 「はい」 微笑み合う二人を乗せた馬車は街道を外れていく。 「道を外れていくみたいですけど、いいんですか?」 「ああ。急いで行きたいんだろ? 明日の夜はスヴェルの月夜って言ってね。二つの月が重なるんだ。そして、アルビオンが一番ハルケギニアに近付くのがその翌日なのさ。船乗り達は風石を節約するために、ここ数日辺りはあんまり船を出さないんだよ」 「ふうせき?」 マチルダは首を傾げた楓に、彼女はハルケギニアの外から呼ばれたらしいという妹の説明を思い出した。 「風の魔法の力が篭った石でね。ものを浮かしたりする力があるんだ。それを使って、船を空に飛ばすんだよ」 その説明に、燃料のようなものかな、と楓は納得した。なるほど輸送業にとって燃料代は大事な問題だろう。 「ありがとうございます。魔法の事はよく知らなくて」 「遠くから来たって話だけど、そこには魔法がないのかい?」 「はい。物語や、空想のお話の中だけの存在でした」 「ふぅん……」 馬車はどんどんと道から遠のき、荒れた地を進む。ごろごろ転がっている大きめの石に車輪が取られ、揺れが酷くなる。 マチルダが舌打ちしながら小さなタクトのようなものを振るうと、揺れが少なくなった。 「歩くならいいけど、馬車で通るのは億劫だねえ。まあ、モグリだからしょうがないか」 口振りからすると、魔法で道をならしたらしい。 それよりも楓には、マチルダの言葉の中の一つが気になった。 「モグリ?」 「ああ。今向かってるのは、モグリの竜籠屋さ。値段は張るけど、対応の速さは信頼できるとこだよ。……ああ、竜籠ってのは、風竜の手に人が乗る座席を持たせた乗り物の事。竜が目立つもんだから、街ん中には作れないんだ」 楓は、時代劇で見るような『籠』を思い浮かべて、納得した。 「驚かないんだね」 「……そういうのを否定する気はありません」 「そういうのを利用するマチルダ姉さんは、もしかしたら、このままあんたをさらって遊郭に売り飛ばしちまうかもしれないよ?」 「あなたの……ティファニアさんに対する思いを、信じていますから」 「……やれやれ。テファもとんだ奴をお友達にしちまったもんだ」 降参、とマチルダは両手をあげた。 § 夕方頃に到着したその竜籠屋というのは、地下に作られていた。 容易には発見できないようにカモフラージュされた入り口をマチルダは難なく開け、地下に下りていくと、大きな空間が広がった。 鍾乳洞のような洞窟だった。それも、かなり大きなもの。少なくとも数十メートルの高さはあるその中に、何頭もの大きな竜が羽を休めていた。 奥には、浮遊大陸の側面に開いていると思われる外に続く大穴があり、雲が垣間見える真っ青な光景が覗いている。 耕一が見ていたアニメの、ロボットが発着する為の格納庫というかカタパルトというか……そんなものを思い出させた。 マチルダが近くにいた男に二、三言話し掛けると、竜籠はすぐに用意された。 座席を広くした観覧車のような『籠』に乗り込むと、器用に竜の足がそれを掴み、大穴からその翼をはためかせた。 「…………すごい」 籠には、四方に窓がつけられていた。後ろを見ると、雲が高速で流れ、巨大な岩の塊のような陸地が、みるみる遠ざかっていくのが見える。 一度、耕一のところに行くとき、能登から飛行機で羽田まで行った事がある。その離陸時に見た地上が遠ざかっていく速度と比べても、遜色ないように感じられた。 そうして半日ほど飛んだだろうか。夕方から夜を通り越して早朝と呼べる時間に、竜籠は地上へと降り立った。 そこは、ダングルテールと呼ばれるトリステインの辺境一帯の山中だという。あまり人の住んでいない地域らしく、裏組織のアジトなんかが多いらしい。 そこからさらに乗用の風竜と御者を一騎チャーターし、首都トリスタニアまで一日。この世界の金銭感覚がわからない楓でも値段が張る事ぐらいは理解できたが、マチルダは自分の為でもあるから気にするなと言うだけだった。 『土くれ』のフーケ包囲の為の検問が怖い故に陸路を使わないというのがその理由だった。今こうして風竜で飛んでいる際にも、直線では向かわず、巡視をかいくぐるようなルートを通っている。 これまでと違って魔法学院では、束ねた髪と伊達メガネで誤魔化していたとはいえ、自分の顔を多くのメイジに晒している。少し腕の立つ土メイジなら、覚えた顔の人相書きを作る事ぐらいは十分可能だ。 さすがに何百枚も作るのは金も骨も折れる作業だろうが、あの魔法学院から宝物を盗み出したのだ。面子を何よりも気にする貴族連中の事、数日経てば国中に手配書が行き渡ると考えるのは妥当な判断と言えるだろう。 結論から言えばそれは杞憂だったのだが、そのおかげで通常三日はかかる道程を一日で踏破できたのだから、楓にとっては幸運だった。 そして、一つに重なった大小蒼紅の双子月が煌々と照らす夜を過ぎ、徐々に空が明るみ始めた早朝。それまで地上に垣間見えていた小さな集落ではなく、外れに大きな宮殿を構えた立派な街並が見えてくる。トリステイン王国首都、トリスタニアであった。 正面門ではなくその裏手に降り立った風竜は二人を降ろし、そそくさと飛び去っていく。 「正面門から出てすぐの交差を西にいけば魔法学院さ。私はこれ以上ついていけないけど、ま、うまくやりなよ」 「はい。本当にありがとうございます」 「落ち着いたら、コーイチ君を連れてテファのところに顔を出しておあげ。きっと喜ぶだろうからね」 そう笑い、楓に宿代と馬の賃料だと言って金貨の詰まった袋を渡すと、マチルダはばさっとフードを目深に被り、足音無く朝もやの中に消えていった。 楓はもう一度マチルダの消えた方向に向かって深く頭を下げ、街の外周を回って正面門へ辿り着くと―――そのまま自らの二本の足で走り出し、馬と見紛うようなスピードで街道沿いに西へと向かい始めた。 § そこに到着した頃には、気持ちの良い朝の空が広がっていた。 高い城壁。立ち並ぶ塔。まさに中世ファンタジーという趣のトリステイン魔法学院は、既に活動を始めているようだった。 「……耕一さん」 城壁の外から塔を見上げながら、その存在を感じてみる。 「…………?」 なんとなく、遠い感じがした。すぐそこの建物にいるというのに、以前と変わらないぐらいの、おぼろげな存在感。 異世界故の精神ネットワークの異常だろうか、と不安を抱えながらも、楓は正門に立っている衛兵に、マチルダに教えられた通りの言葉をかけた。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢に面会をしにきました。カシワギカエデ、と言えばわかると思います」 少し眠たげな顔をした衛兵が少々お待ちください、と詰め所に声をかけると、使いらしき別の衛兵が学院内に走っていくのが見えた。 「申し訳ありません。ヴァリエール嬢は外出中らしく、現在学院にはいらっしゃらないとの事です」 しばらくして戻ってきた衛兵は、戸惑った顔を隠さずにそう告げた。 楓は軽く途方に暮れかけるが、目的がここにある事は間違いない。このまま退散する道理はなかった。 「……どこに行ったとか、いつ頃戻るとかは わかりますか?」 「いえ、そこまでは……」 「……そうですか」 言葉を濁す衛兵に、楓は落胆を隠せなかった。 これからどうしようか、と正門から中央にそびえる巨大な塔を何ともなしに見上げる。マチルダの話によると、あの中に男子寮、職員寮、食堂、浴場、図書館、宝物庫等々主要な施設が詰まっているそうだ。大きいはずである。 そんな楓の視界に入る朝の光が、さっと何かに遮られた。 「あなたが、ミス・カシワギ?」 「……あなたは?」 それは、背の高い女性だった。燃え盛る炎のような、軽くウェーブがかった長い赤の髪が、よく陽に焼けた艶やかな肌にまとわりついている。 ボタンを意図的に外しているらしいブラウスからは、豊満な谷間が覗いている。自分か初音と同じぐらい線の細い体に不似合いな爆弾がくっついているティファニアと比べると、体のバランス自体は非常に健康的なものだった。というかむしろアレが異常すぎるのだ。 「私はキュルケ。キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。お見知りおきを」 長い。長い上に、なんだかそこらじゅうからそれらしい名前をちぐはぐにくっつけたような、不思議な名前だった。 「……柏木楓です。あの」 「ええ。存じておりますわ、ミス・カシワギ。あなたが用があるのは、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールではなく、その使い魔。コーイチ・カシワギなのでしょう?」 余裕綽々、という言葉を体現したかのような微笑みで言葉を続ける、キュルケと名乗った女性。 「…………」 楓は、事情を知っている人に会えたという僥倖に喜ぶよりも、警戒心を先に持った。 鋭く細められる楓の瞳に、キュルケはどこか懐かしいものを見るように目を細め、そのままさっと頭を下げる。 「ごめんなさいね、そう身構えないで。さっきそこの衛兵に話を聞いて、ちょっとお話したいと思っただけなのよ」 「……あなたは……?」 「うふふ。あなたの恋敵、ですわ」 「っ!?」 ばさぁっ、と髪をかきあげて、キュルケは余裕の笑みを妖艶なそれに変えて再び笑った。 § キュルケに連れてこられたのは、城壁にある小さな塔の一つだった。 そこは女子生徒の寮らしい。しかし案内された一室は、『寮』と呼ぶにはいささか豪華な部屋だった。部屋は広く、家具には豪奢な飾りがつき、なんと大きな浴槽がでんと一つ置かれている。どこからか、ふんわりと香水の香りが漂っていた。 「お掛けになって」 楓は警戒を緩めないまま、手近にあった椅子に腰を下ろす。 「さて、これからちょっとお話を聞きたいと思うのだけど……その前に」 キュルケはベッドに腰かけ、男を誘うような仕草で脚を組んだ。 「あなたは、どうやってここまで来られたの?」 「どうやって……?」 「彼は、とても遠くから来たと聞いているわ。とても歩いていけないようなところからと。さて、彼と同じ名前をもつあなたは、一体どこからいらしたのかしら?」 「…………」 話すべきだろうか、と迷った。キュルケは何かしら事情を知っているようだが、その意図が読めない。『話を聞きたい』などというのは理由になっていないし、何より……恋敵、という言葉だ。 耕一が浮気をしているなどとは思わないが、目の前の女性から漂う色気を間近に見ると、一抹の不安を覚えてしまうのも仕方のない事であっただろう。 ただスタイルがいいだけではなく、それを最大限に活かして男を誘う術を身につけている。そんな雰囲気を纏っていた。 「ああ、あまり深い意味は無いの。実はこの近くに住んでいたのか、本当に遠くから彼を探しにきたのか、その程度でいいのよ」 「……?」 まだ意図が掴めず、首を傾げて先を促す楓。 「残念ながら、ヴァリエールとコーイチは、本当にどこかに出かけていていないの。彼を探してここまで旅をしてこられた、というなら、帰ってくるまで泊まるところが必要でしょう?」 「……そう、ですね」 「お話を聞く代価として、私のお客様として学院の客室に部屋を用意してあげようと思っただけなのよ。タダで人を動かそうなんて、ゲルマニアの誇りに傷がつきますもの」 帝政ゲルマニア。トリステインの東に位置する、始祖を縁とする古い王権から独立した新興国家。 貴族ではなく商人の国、とも揶揄されているぐらいの、実力(拝金)主義の国だと、道行く雑談でマチルダが言っていた。魔法の使えない平民でも、お金で領地を買えば貴族として扱われるとか。 つまりは、これも取引、という事だろうか。しかし、恋敵、と称した自分の話にそこまでする価値があるとは思えなかった。自分という恋人から耕一自身の話を聞いて、簒奪の参考にするとか、そういう事だろうか? 「どうかしら?」 なんだかやりかねない雰囲気の女性ではあるが、確信は持てなかった。小さな頃から耕一一筋だった自分には、色恋の駆け引きなんて全く経験がないのだ。 それに……そういう方向に考えが向くように、わざわざ女の自分相手に色気を振りまいているようなフシが無いわけでもない。 おいしい話には裏がある。が、その『裏』を看破する事は、楓にはまだ出来なかった。 「……あなたは、なぜ私から話を聞きたいのですか?」 だから、聞いてみる事にした。どうせ交渉なんて出来ないのなら、真正面からぶつかるしかない。 ……なんだか、ティファニアの時にも同じような事を思ったような気がする。元の世界に戻ったら少しは人見知りを直そう、と密かに決意した。 「興味があるから、じゃダメかしら?」 「……何に、興味を?」 「色々、よ。彼の事も、あなたの事も、故郷の遠いところっていうのも。私の二つ名は『微熱』。好奇心という微熱から、身を焦がすような情熱は生まれますの」 「好奇心?」 「そう。本当に単純な興味よ。未知の場所から召喚された未知の異邦人。興味がないなんて言ったらゲルマニア貴族の名がすたるってものですわ」 腐った伝統を廃し、革新を取り入れ、ゲルマニアは力を付けてきたのだから、とキュルケは笑った。 それは、おそらく嘘ではない。しかし……全てを語っているとは到底思えなかった。 「……では、恋敵、というのは?」 「あら、鋭いのね」 キュルケは笑みを崩さない。楓は知らず、眉を寄せて睨みつけてしまう。 「そう怖い顔をしないで。そうね、素敵な殿方でしたから一度誘ってはみたのですけど、恋人がいるからってすげなく断られてしまいましたのよ。さて、奪い取るのも悪くはないかなって思ってたんですけれども……」 じっと、眉を寄せた楓を見つめて。 「身を引きますわ。勝てない戦はしない主義ですの」 そう、にっこりと笑った。 「…………」 その明け透け過ぎる笑顔に、楓は呆気に取られてしまった。 絶妙な距離で纏わりつくように思わせぶりな事を言っていると思ったら、あっという間に手の届かないところまで一直線に退却。なんとも自由奔放だった。 「ふふ。奪うのも奪われるのも世の常と思っていますけれど、誰かの『一番』には手を出さないようにしてますの。さ、お返事を聞かせてくださる?」 キュルケの邪気の無い笑顔に、楓は知らず張っていた肩をそっと下ろした。 なんというか……言葉で抵抗しても無駄、という気がした。どれほどの向かい風を与えても平気な……いや、向かい風を吹かせれば吹かせるほど、煽られて燃え上がる炎を相手にしているような。 「……わかりました。お言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます」 「いいのよ。ギブアンドテイクですもの」 キュルケは、まるで理想の男を口説き落としたかのような笑顔で、にっこりと笑った。 「さて、お返事がそうという事は、本当に遠くからいらっしゃったのかしら?」 「はい。おそらくこのハルケギニアとは別の世界から、ある人の唱えた召喚魔法に便乗してやってきました」 「……はい?」 それまで常に余裕を保っていたキュルケの眼が点になる。楓は少しだけ溜飲が下がり、小さく微笑みを浮かべた。 § 「……本当の未知っていうのは、未知である事すら未知、って事なのねぇ」 楓の話を全て聞き終えたキュルケは、肩を揉み解しながら一言だけぼやいた。 彼と彼女は、魔法の存在しない月が一つの別の世界から来たという事。 精神感応能力で召喚ゲートの波動を感じ取り、それに乗ってきた事。 この学院に耕一らしき人物が使い魔として召喚されたことを聞き、訪れた事……。 「自分で言うのもなんですが、信じるとは思いませんでした」 「それが全部嘘だとして、誰が得をするのよ?」 「……さっき散々あなたにやり込められた私が、あなたの驚く顔を見て」 真偽は利害で見抜ける。そう言い切らんばかりのキュルケの声に、楓は少し悪戯っぽい声を出した。 話すがら、この人は取引だと言いながら、実のところ善意で協力してくれているのだとわかったから。 「あっはっは! そりゃ一本取られたわね!」 笑い転げるキュルケに、騙されたという感じは見受けられない。 「ま、事情はわかったわ。というわけで、ルイズ達が帰ってくるまで、あなたは私のお客様。好きなだけここにいてくれていいから」 「ありがとうございます」 「いいのよ。それじゃ、適当な空き部屋貸してもらえるように言っておくわね」 楓はもう一度頭を下げた。思えばこの世界に来て以来、人の善意に甘えてばかりだ。 素性が不明な自分の面倒を見てくれたティファニア。 その頼みでここまで案内してくれたマチルダ。 事情を知って(本人は取引だと嘯いてはいるが)協力してくれるキュルケ。 もし自由に会う事が出来るのなら、友人として付き合いたいと思う人達ばかりだ。 でも、帰らなくてはならない。大切な姉妹達を放っておくわけにはいかないのだから。 ……相談もなく勝手にこっちに来てしまった自分が言える事じゃないのかもしれないけど。 「ふぅ……」 主が出ていった部屋は、どこか寂しげだった。 手持ちぶさたに窓の外を眺めながら、ため息を一つ。 「……耕一さん」 耕一とその主人が何処に出かけたか、誰も知らないらしい。 公休扱いになっている事から学院長の許可は得てあるようだけど、それ以上の事はわからない、とキュルケは話してくれた。 一昨日の朝、朝早く馬に乗って出かけていくところは見ていたという。こんな事なら後を追っかけておくんだったわ。あぁ、でもそうしたらカエデと会えなかったわね。などとわざとらしく肩を竦めていたキュルケを思い出し、楓は微笑みを浮かべた。 ―――そして、それは急激に訪れた。 「あ、ぐうっ!?」 がくん、と楓の体が波打ち、椅子から投げ出され、床にくずおれた。 「あ、あ、あ、あ……っ!」 例えるなら、ドアノブを握って静電気が火花を散らしたショックの万倍のそれが、体の中心を貫いたような、途方もない衝撃。 それは、以前にも感じたことのある物だった。 「こ、耕一さん、耕一さん、耕一さんっ!!」 そう、それは―――『エルクゥ』が覚醒した時の、悦びの咆哮。 一年前、千鶴の鬼氣を受けて目覚めさせられた耕一の鬼が顕現した時と同じ―――いや、その何倍、何十倍もの衝撃と、激情。 どんな距離も無意味に、世界中に響き渡る怨嗟。同じエルクゥであれば、否応無く叩きつけられる衝動。 それは、遥か記憶の彼方、次郎衛門がエディフェルを看取った際のそれに似ていて……。 「だ、ダメえっ! 耕一さあんっ!!!」 「カ、カエデっ!? どうしたのっ!?」 楓が叫んだ瞬間、ドアが開き、慌てた様子のキュルケともう一人、小柄な女の子が部屋に走り込んでくる。 「耕一さんが、耕一さんがっ!」 「ど、どうしたのよ? コーイチがどうしたの? あのテレパシーってやつなの?」 楓の性格を、だいぶマシとはいえタバサのそれと同類と見ていたキュルケは、その今にも泣きそうな必死の表情に面食らっていた。 届けられる慟哭。直接楓に向けられているわけではなく、ただ全てに振りまいているだけの波紋でありながら、その場所まで特定できそうなぐらいに強いそれは、楓を強く焦燥に駆り立てていた。 「あ、アルビオン……!?」 「アルビオン? アルビオンがどうしたの? もしかして、アルビオンにいるっていうの?」 感じ取ったその場所は、楓が最初に降り立った場所……アルビオンの方向だった。 「う、あ、ああっ……!」 「ほら、しっかりなさいっ!! 何か異変が起こってるなら、助けに行かなきゃいけないでしょっ!?」 「っ!? あ……?」 キュルケの一喝に、楓の瞳に理性の光が戻る。 「落ち着いた?」 「は、はい」 「そう。それで、ルイズ達はアルビオンにいるのね?」 楓は、ためらいがちに頷いた。 「あなたが行って、どうにかなりそうなの?」 「……わかりません。でも」 耕一が、『エルクゥ』の力を解放した。 自分は、その傍に行かなければならない。居なければならない。 「そ。タバサ?」 言葉を続けなかった楓の目からその決意を読み取ったキュルケが、一緒に部屋に飛び込んできた少女に声をかける。その少女は無言で頷き、さらりとその蒼い髪を揺らした。 タバサと呼ばれた少女は、指を口元に当て、ピィー、と甲高い口笛を鳴らす。 「行くわよ、カエデ!」 「え、ええっ!?」 タバサが窓を開け、そのまま空中に向かって何のためらいもなくジャンプを敢行した。 楓を抱きかかえたキュルケもそれに続く。 何かを考える間もなく、三人の体は、思ったより遥かに小さな衝撃と共に着陸した。 「え……?」 ばさあっ、と大きな翼が風を凪ぐ音。 そこは見覚えがあった。つい数時間前まで乗っていたようなところ……風竜の背中だ。 「さあシルフィード! 目標アルビオン! 全速前進っ!」 キュルケが空の向こうに向かってびしぃっと指を差し、タバサは無言で背びれに背を預け、本を広げて読み出した。 三人を乗せた風竜、タバサの使い魔シルフィードは、きゅーい! と一鳴きして、ぐんぐんと空を昇っていった。 前ページ次ページゼロのエルクゥ
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誰にもわからない。わかるはずが無いんだよ、地球の馬鹿供め!!フハハハハハハ・・・・・ -- ヤプール人 (2010-02-21 17 22 35) 最近じゃ巨大ヤプールばっか有名で、こっちは忘れられてる様な・・・ -- 名無しさん (2010-02-21 21 31 52) よく考えればこの姿が元祖なんだよな -- 名無しさん (2010-02-21 22 29 08) 番組見てて思ったがこの映像はどうやって撮影しているのだろうか -- 名無しさん (2010-02-22 20 32 30) そんなに知りたくば教えてやろう。我々、異次元人ヤプールの映像は複数の着ぐるみを着たスーツアクターがTAC共の作戦会議室で動き回りフイルムの特性を生かしたソラリゼーション効果で撮影したものなのだぁぁぁ!! -- ヤプール人 (2010-02-22 21 52 25) なるほどなあ しかし雰囲気のよく出てる絵だ -- 名無しさん (2010-02-22 22 11 13) ヤプール人乙!雰囲気が出ていていい絵だなぁ。因みに俺はメビウス以降の玄田さんヤプールが好きだったり。玄田さんボイスでのアッハッハッハッハ!!って笑い方が個人的に大好き。 -- 名無しさん (2010-02-23 08 47 06) なんの作品の絵? -- 名無しさん (2010-02-23 11 57 27) 「ウルトラ5番目の使い魔」の異次元の悪魔を知らぬとはな、全く・・・愚かな人間共よ!! -- ヤプール人 (2010-02-23 14 11 47) ↑五個上の解説どうも、しかし全然わかりませんでした。 -- 名無しさん (2010-02-23 18 58 43) つまり撮影のセット自体は同じということでしょう。MAT~MACまで、基地のセットは部分的に改修して使いまわしてたらしいし。オイルショックでセットの維持費がままならくなったのが、MAC全滅の裏事情。 -- 名無しさん (2010-02-23 19 57 30) 不景気とは怪獣よりも恐ろしいものか…>MAC全滅 -- 名無しさん (2010-02-24 22 32 18) 特撮はいつの世も予算との戦いだ。着ぐるみを改造して新しい怪獣を作り、シーンやセットを流用し、他作品からも機材やミニチュアを借りてこないと到底間に合わない。そんな厳しい環境の中で数々の傑作を生み出し、今の基礎を築いた人こそ特撮の神様、円谷英二監督だ。 -- 名無しさん (2010-02-26 17 34 04) ↑よくぞ言ってくれた!最近の玩具会社の犬になり下がった腐れ東○どもにのしつけて言ってやりたい。金なんかなくても情熱と愛さえあれば素晴らしい作品は作れるんだと。 -- 名無しさん (2010-03-10 13 54 34) かつてスーパーマンを演じたクリオストファー・リーヴが本当のスーパーマンであったように、おそらく円谷英二監督はウルトラマンだったのだろう。 -- 名無しさん (2010-03-19 23 23 48) ヤプールの着ぐるみは後にレボール星人に改造されました。 -- 名無しさん (2010-04-25 18 57 52) そして巨大ヤプールの着ぐるみはそのままでウルトラマンタロウに再登場したのは有名な話 -- 名無しさん (2010-04-27 15 24 34) 劣化しまくりで別物にしか見えなかったがな。。 -- 名無しさん (2010-04-29 17 45 10) 劣化のし過ぎで別の怪獣にされてしまったテレスドンよりはましなほう。 -- 名無しさん (2010-04-30 22 39 54) 劣化した着ぐるみでもウルトラファイトのような人気作を生み出すことはできる。予算よりも大事なのは、表現と構想力だ。 -- 名無しさん (2010-07-05 13 32 35) ウルトラ史上最凶の悪魔。 -- 名無しさん (2010-10-23 12 25 29) マイナスエネルギーの集合体だから絶対悪、しかも完全に滅ぼすことはできないから無限に蘇ることができるという、まさに悪魔そのものと呼んでいい存在 -- 名無しさん (2010-12-01 18 26 46) 超8兄弟の黒い影法師の正体はヤプールだったのではなかろうかと思ってる -- 名無しさん (2010-12-02 00 41 09) ゆけぇーっベロクロン! -- 名無しさん (2011-02-12 03 01 07) 名前の元ネタは家畜人ヤプーだそうで。 -- 名無しさん (2011-04-09 17 02 44) 最近はすっかり空気ですけど。まぁいつか最悪のシナリオひっさげて現れるんでしょうけど -- 名無しさん (2011-04-11 00 48 08) ↑案の定期待を裏切らない最悪の形で復活してくれました! -- 名無しさん (2011-06-21 16 34 25) 何てこった。最近大人しくしていたと思ってたら、よりによって、聖地をエルフから奪い取って復活を遂げるとは… -- 名無しさん (2011-06-21 22 03 55) しかし、エンペラ星人、レイブラッド星人、ジュダには、うだつが上がらない。 -- 名無しさん (2011-08-04 14 26 52) ↑デスレム、グローザム、メフィラスといった同列の奴らには軽く見られてたしね -- 名無しさん (2011-08-04 14 39 47) ヤプールの声優してた人は今ではわからないらしい。あの憎憎しげな声はエースというドラマに不可欠なものだった -- 名無しさん (2011-11-30 17 37 33) 誰の心の中にでもいる悪魔、だからヤプールとの戦いは終わることはない -- 名無しさん (2012-08-18 03 32 57) しつっこさでは最近ベリアルが並んできたな -- 名無しさん (2013-02-15 00 24 19) 悪魔は地に伏してもいつか必ず蘇る -- 名無しさん (2013-11-11 23 56 36) 名前 コメント