約 1,871,347 件
https://w.atwiki.jp/ogonmusou/pages/64.html
黄金夢想曲 原作 うみねこのなく頃に 企画原案・脚本 竜騎士07 ディレクション ビリー・コマツナ プログラム・ゲームデザイン はちみつ紅茶 企画アシスタント LEE イラストレーション 津田 晶 肖像画 江草 天仁 エフェクトグラフィックス Kone イラスト彩色 jelly キャラクターグラフィックス 1ひ2よ8こ3 Qni クサマ タカユキ エンドウ シロウ サクライ ケント クニヨシ タカハル さの たかあき マツハシ ケイゴ ヤマザキ トモユキ さとう ゆうじ 背景 イシヒサ お寿司 塩子 もぉりぃ 43 Y・B おおくぼてつや インフォメーショングラフィックス くま 楽曲・効果音 dai zts ラック眼力 pre-holder オープニングムービー よゆ オープニングテーマ 黄金夢想曲 ~金色の血に染まる前に~ Vocal Chorus 木野寧 ギター にいむ 録音スタジオ Studio JAKE ミキシング 松金昭治/StudioYellowmoon 声の出演 右代宮 戦人 小野 大輔 右代宮 縁寿 佐藤 利奈 紗音 釘宮 理恵 嘉音 小林 ゆう ベアトリーチェ 大原 さやか ワルギリア 井上 喜久子 エヴァ・ベアトリーチェ 伊藤 美紀 ロノウェ 杉田 智和 ベルンカステル 田村ゆかり ラムダデルタ 大浦 冬華 ルシファー 斉藤 佑圭 レヴィアタン 米澤 円 サタン 日笠 陽子 ベルフェゴール 吉田 聖子 マモン 新名 彩乃 ベルゼブブ 山岡 ゆり アスモデウス 豊崎愛生 シエスタ410 喜多村 英梨 シエスタ45 水野 マリコ シエスタ00 廣田 詩夢 さくたろう 茅原 実里 ゼパル 斎賀 みつき フルフル 仙台 エリ うみねこさん1 小山 力也 うみねこさん2 遊佐 浩二 山羊 秋元 羊介 熊沢 チヨ 羽鳥 靖子 右代宮 朱志香 井上 麻里奈 音響監督 村松 宏昭 音響プロデュース 小柳 路子 松原 勝彦 音響監修 猫桜 餡豆 キャスティングマネージメント 白川 大樹 録音 中島 次郎 音声編集 村井 徹哉 スペシャルサンクス 時火 八咫桜 なるせ椿 各務 竹玄 萩原 雪崩 月光樹 Alche_info FFC (株)アルケミスト メディア・ビジョン(株) (株)ウインズ (株)5pb. (株)デジタルハーツ サウンドテック プロデューサー 脇本 博道 エグゼグティブプロデューサー 竜騎士07 浦野 重信 制作 07th Expansion
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/440.html
「これ、嫌いなんだけどな」 少し残念そうな言葉を漏らす女性は、我らがヴァリエール嬢。 朝食にしては豪華な料理が並んでいるが、今日のメニューは少し物足りないようだ。 ここ、トリスティン魔法学院は食事のマナーにも厳しい、が、貴族の食事は社交も兼ねることが多いため、大声で雑談しなければ特に注意されることもない。 今までは誰とも会話せず食事を進めていたが、最近ではキュルケやタバサ、モンモランシーと会話することも多い。 キュルケを見ると、既に食べ終わっている。 朝から食欲旺盛なキュルケを見て、食べた肉が腹でなく胸に行くのは何故だろうと考え、世の不公平を感じた。 しかし、キュルケと行動を共にすることの多いタバサは、ルイズよりも小柄で、胸もぺったんこ。 胸ではかろうじて勝っているルイズだが、彼女はキュルケと同程度かそれ以上の魔法の使い手だ、どっちにしろ魔法では勝てない。 食事があらかた終われば、デザートが配られる。デザートを配りに来るのは厨房付きのメイドシエスタと他数名の役目。 シエスタは平民だが、ルイズにとっては気の許せる友達でもある。 しかし、胸の大きさは明らかにルイズよりも大きく、これに関しては憎い相手であった。「ヴァリエール、ちゃんと食べないと背どころか胸も小さいままよ?フフン」 キュルケにとっては軽い冗談だったが、その言葉を聞いたルイズとタバサは意を決して苦手な料理に手を出すのだった。 しばらくしてメイド達はデザートを配り始めた。 いつものようにシエスタがルイズの右隣に立ち、ケーキの乗った皿を慣れた手つきでテーブルの上に置く…はずだったが、今回は珍しく別のメイドがデザートを置いた。 いつもいつも同じ列ばかりを担当できないのだろう、と思ったが、あたりを見渡すとシエスタの姿だけが無い。 厨房内の仕事でもしているのだろう、と思いながら、ルイズはデザートに手をのばした。 まもなく食事の終わりを告げる鐘が鳴り、生徒たちは食堂から出て行ったが、ルイズは考え事をしているのか、席に座ったままだった。 「ヴァリエール、何してるのよ。まだ食べ足りないの?」 モンモランシーの言葉に促され、ルイズは腑に落ちないものを感じつつも、席を立ち食堂を出て行った。 そんなルイズを、料理長のマルトーが、何か思い詰めたような表情で見ていた。 午前中の授業が終わり昼食の時間。 朝に続き、昼にもシエスタが顔を見せないの この学院で過ごしている生徒達の大半は、貴族だけあって人の顔をよく覚えている。 しかし、平民のメイドが一人いなくなったからといって、気にすることはない。 『ゼロのルイズ』とあだ名されるほど魔法が苦手な彼女は、そのコンプレックスから負けん気が強く、貴族の権力を傘にして威張り散らすこともあった。 シエスタを助けてから…いや、正確には奇妙な夢を見るようになってからだが、ルイズは『素の自分を見せることが出来る友達』の大切さを自覚し、シエスタをはじめとする平民に目を向けるようになったのだ。 昼食も終わり、午後の授業が始まる。そして午後の授業を終え、夕食の時間が来た。 タバサの指摘を受けて、ようやくルイズは異変に気づく。 食前のお祈りを唱和した時、タバサはルイズの隣で一言「給仕口」と告げたのだ。 ルイズが給仕口を見ると、マルトーと目があった。 それに気づいたのか、マルトーはそそくさと厨房へと隠れてしまった。 その日の夜、明かり一つない食堂のテーブルクロスがもぞもぞと動き、ルイズが顔を出した。 ルイズは鍵を開ける魔法を使えない。爆発を起こさず厨房に忍び込むため、食堂にじっと隠れていたのだ。 給仕口から厨房に行くと、そこには小さなランプが灯されており、その下でマルトーがじっと誰かを待っているようだった。 シエスタなら今のマルトーに、まるで覇気がないと気づいただろう。 「…何か用?」 「 ! …あ、貴族様でしたか。こんな夜更けに、厨房に何か」 「何言ってるのよ。じーっと見られてたら何かあると思うじゃない。今日はシエスタも顔を見せないし。私に用があるんでしょ」 「………」 しばらくの沈黙の後、マルトーは話し始めた。 「昨日学院を視察に来られた、貴族のお方なんですがね…。その貴族様が、シエスタをたいそう気に入ったらしいんでさ。」 ルイズは思わず唾を飲み込んだ。いやな予感がするせいか、少し眠気の混じっていた頭が急速に覚醒していくのが分かった。 「今朝、シエスタは連れて行かれました。『昨日はこの平民が貴族に無礼を働いた』とか言われましてね。頭が真っ白になりましたよ。昨日はさんざん褒めて、今日になったら反逆者扱い。何だってんだ!」 マルトーの拳が、ドン!と、厨房のテーブルを響かせた。 「貴族様ってのは何なんですかい!?シエスタが何をしたって言うんですか!俺は、俺は女衒じゃない!」 マルトーはテーブルの上に置かれた小さな袋を壁に投げつけた。ガシャン、という音ともに散らばったのか、10枚ほどの金貨だった。 「貴族様、ヴァリエール様!何とか出来ねえんですか!シエスタは、連れて行かれた時、ルイズ様には言わないでくれと言ったんでさ。ですがね、泣きながらそんなことを言われたら、黙ってられるわけが無いじゃありませんか!」 ルイズは、怒りと悲しみの混ざったマルトーの声に、不思議な感覚を覚えた。 怒りが一巡して、恐ろしいほど体が冷めていく気がする。 昨日視察に来た貴族は、魔法学院その他の、国の重要機関を監査する立場の貴族だ。 本当の事かどうか分からないが、平民の少女だけを集め、ハーレムを作っているという噂を聞いたことがある。 しかし、思い返してみれば、自分の姉も母も、その貴族を毛嫌いしていた。 おそらく事実なのだろう。 考えてみれば、今日はオールド・オスマンが王宮に呼ばれ、学院にいない。 その隙をねらってシエスタが連れて行かれた。 「…オールド・オスマンがお帰りになられたら、すぐにその話を伝えて」 そう告げると、ルイズは使用人通路の鍵を開けさせて、一目散にシエスタを連れ去った貴族の別荘へと走っていった。 マルトーは、シエスタの言う『おともだち』のルイズを今ひとつ信用しきれていない。 だが、ルイズ以外にこんな話が出来る相手もいなかったのだ。 ルイズは地面を『蹴り』瞬く前に空高く、そして遠くへと跳躍していった。 その姿を見たマルトーは『ゼロ』と呼ばれるメイジでも、空を飛ぶことは出来るのかと、素直に感心していた。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1921.html
食材が並んでいる。卵、胡椒、塩、油などに混ざって、わざわざ遥か遠くから仕入れてきたという米まである。 料理人達が息を呑んでたたずんでいる中、雷電が声をかける。 「マルトー殿!準備ができましたぞ!」 「おう!」 一声吼えてからマルトーがゆっくりと動き出した。 さすがの雷電でさえ緊張を隠せない中、マルトーのみがいつも通りに調理場に立つ。 マルトーの前にあるのは、わずかばかりの食材と調味料のみ。 そして大きく気勢を上げる火炎と、これもまた大きな鍋。 たったこれだけの準備で一体何を作るつもりなのであろうか。 料理人たちの凄まじいばかりの気合が解せない。 雷電がサポートのため、マルトーの横に立った。 そう、いよいよハルケギニアにおいて料理大帝と詠われたマルトーの技が見られるのだ。 しかも今回は、雷電から聞いた料理をマルトーなりに解釈した新技だという。 一同固唾を呑んで見守る中、ついにマルトーが鍋を手に取った。 「油!」 「はっ!」 「卵!」 「はっ!」 「米!」 「はっ!」 矢継ぎ早にマルトーが注文を出す。雷電が見事にそれに応え、的確に注文の品を渡す。 片手で食材を受け取りながらも、マルトーはもう片手で鍋を振り続ける。焦げず、生焼けにならず、絶妙にミックスされる食材達。 見事としか良いようがないが、他の料理人達はまだ緊張を解かない。 これから一体何があるというのだろうか。 「下がれ!」 マルトーの掛け声で雷電が後ろに退く。 その瞬間、場の緊張が最高潮に達した。 「うおおおおおおおおお!」 マルトーの気合の声が上がる。 その時料理人たちは見た。黄金の柱が挙がるのを。 そう。鍋の具材が高く跳ね上がり、しかし米粒の一粒すら落とすことなく鍋に戻っているのだ。 さらに超高速で振られ続ける鍋は、無駄な油をそぎ落とし、熱気を完全に閉じ込め理想の火加減を作る。 皆が我を忘れて見つめる中、マルトーの目が光る。次の瞬間、マルトーの左手にはお玉に似た何かが握られていた。 まさしく流れるような手つきで鍋の中のものをすくい出すと、綺麗な半球形に皿に盛った。 黄金の塊!その場にいた者たちは全員そう思ったに違いない。 それほどまでに、その皿に盛られた物体は輝きを放っていたのだ。 「炒飯一丁お待ち!」 マルトーが試食人に目線を向ける。 その男は己の懐から箸を取り出すと、心底感服したような目でマルトーを見つめた。 「これぞまさしく熱気圏!見事なり。」 そういって、一号生達に事情を聞きに来た王大人はゆっくりと試食を開始した。 「料理って光るのね。」「……(驚いて声もでない)」 珍しく早起きをしたキュルケとタバサであった。 その日、ルイズは己が目を疑った。 他の生徒達がいつも通りのハルケギニア風朝食を取っている中、ルイズの目の前に置かれているものだけが違ったのだ。 正確には、ルイズにキュルケ、タバサやギーシュが囲んでいるテーブルだけが違っていた。 「シエスタがお世話になったお礼、とマルトー殿から承ってござる。 是非ともこれらを食していただきたいとのこと。 これらの料理の数々は、満漢全席といって……」 そうして雷電が目の前の料理の品々を解説しだすのを、ルイズは呆然としたまま聞いていた。 雷電の故郷の料理だというそれらを、恐る恐る口に運んでみる。 まずルイズが目をつけたのは、この金色に光る黄金炒飯なる品だ。 「~~~~~~~~~~~!」 口に入れた瞬間、ルイズの脳がスパークする。 幸福をつかさどるβエンドルフィンが大量に発生する! 他の生徒達が息を呑んで見つめる中、ルイズがとうとう一声あげる。 「お、おいしーーーーーーー!」 その台詞に、同じく固唾を呑んで見守っていたキュルケ達も、それぞれ好きな皿に手を伸ばし始める。 そうして次々と歓声を上げ始めた。 「か、辛!でもなにこのおいしい緑色のは!え?ラー油?」 「……(無言でフォークとナイフを動かす音だけが響き渡る)」 「な、なんだこれは!まったりとしてこくがあり、それでいてしつこくない!」 彼女らはまさしく幸福であった。彼らの質問には雷電が一つ一つ答えていた。 押し寄せる他の生徒達から食卓をガードしながら。大往生流の神技を駆使したその技は見事の一言である。 しかし、いかな雷電とて、一人では物理的な限界が存在したようだ。 ついに防波堤が決壊する。しかし、ルイズ達は食事に夢中で気づかない。 このままでは、己の主達に迷惑がかかる! そう判断した雷電は素早かった。 「大往生流槃旒双體(ダイオウジョウリュウハンリュウソウタイ)!」 そう叫んだ瞬間雷電がもう一人誕生した! あとは語るまでもないだろう。 そうして雷電は、見事に己が主人の安息を守りきったのだ。 まさしく使い魔の鏡である。 そのころシエスタは、料理の残りを一号生達に振舞っていた。 もちろんマルトーの指示ではあるが、シエスタ自身も喜んでいた。 どこか祖父と似た匂いのする彼らのことが気に入っていたのだ。 そうして、相撲取り一人分位はありそうな料理を軽々と持ったシエスタは、ついに新男根寮までやってきた。 ルイズ達を除いて、相変わらず学院の生徒達は寄り付かないようだ。 (仕方ないとは思いますけど。) そう思ってシエスタは少し複雑な表情を浮かべる。 ルイズ様の使い魔達はすごく良い人たちだ。 そのことにはシエスタは確信を持っている。 ただ、 (皆さん個性的ですから……) そう、一部を除いて、彼らは第一印象が良くないのだ。 しかし、彼らと接触した者たちの評判は悪くないのは、ルイズやギーシュ達以外にも、キュルケやタバサが時々顔を出すことからも明らかだ。 その彼女らとて、最初は理由があって接触したのだ。 ルイズは、己が使い魔だからという理由で。 キュルケは、飛燕の見た目が良かったからちょっかいをかけようとして。 タバサは、フーケと戦った時に見た伊達の槍術に惹かれて。 ギーシュは決闘で敗れたシエスタに謝罪に来て、マリコルヌはそんなギーシュの姿を見て。 コルベールはゼロ戦に興味を持って。 みんなそれぞれ理由があるのだ。 純粋に最初からルイズの使い魔達と仲良くなろうと思って接触したのは、シエスタにマルトー位であろう。 そこまで考えたシエスタは、一つ溜息を吐くと気持ちを切り替えることにした。 今日は、祖父のことを話し合う日なのだ。こんな気持ちは似合わない。 気を取り直したシエスタは、大きな声で呼びかけた。 「みなさーん。マルトーさんから差し入れを持ってきましたよー。」 その声が響いた瞬間、窓という窓から一号生達が飛び出してくる。 彼らにとって、たまにあるマルトーからの差し入れは、数少ない娯楽の一つなのだ。 争いになるのも無理はない。 (余談ではあるが、彼らの最大の楽しみは、見目麗しいシエスタとの会話だ。 元の地球でも、女っ気の全くなかった彼らだ。その気持ちは押して知るべし。 もっとも、全員紳士的な態度を崩そうとはしない。それ位は男塾で厳しく仕込まれているのだ。 なおルイズとは、その機嫌を損ねることなく話せる人材は少数派であるし、キュルケでは、彼らが気後れしてしまう。 タバサとは会話を長続きさせるのが極めて困難である、ということも付け加えておく。) 今日も一号生達の一日が始まった。 そのころルイズは、自室でオスマンからもらった始祖の祈祷書をもてあましていた。 オスマンからの重大な依頼に、朝食で得た多幸感はすっかりと薄らいでしまった。 そうは言っても、親友のアンリエッタのために素晴らしい詔をあげたい、とは思うがなかなかうまくはいかない。 「ねえ、雷電にデルフ。あんた達人生経験豊富でしょ。なんかアドバイスない?」 その台詞に、何か話し込んでいた雷電とデルフリンガーがルイズの方を向きなおす。 「アドバイスねー。それより俺としては、なんかその本に見覚えがあるんだけどなー。どうも思い出せねー。」 デルフリンガーが何か言っているが、結局いつものオチにたどり着いてしまう。 少し残念な気持ちを抑えながらルイズは雷電の方をチラリと見る。 「うむ。それでは、」 そう言って雷電が朗々と漢詩を朗読し始める。なんでも抜山蓋世の歌という恋歌を聴いていてルイズは思う。 会話の相手としては多少の難があるが、この男は本当に多才だ、と。 そうやって、自分なりに気に入った話を基にして詔を考えようと、ルイズがメモを取り始める。 その時、デルフリンガーの声が響いた。 「そうだ!思い出した!」 空気を読まないヤツ。 そんな目線をルイズが向けるが、デルフリンガーは気にしない。 「水のルビーだよ水のルビー!あー、ちくしょう!なんで思い出せなかったかなぁ。 嬢ちゃん!水のルビーをして祈祷書を読んでみな!」 そう、デルフリンガーは久しぶりに六千年前のことを思い出していたのだ。 思わぬデルフリンガーの様子に、驚いたルイズは、水のルビーをはめて祈祷書を開いてみた。 すると、 「虚無の系統……。伝説の系統じゃないの。」 思わずルイズは叫び声をあげた。 手の中の始祖の祈祷書は、静かに光をあげていた。 シエスタは祖父の話を聞いていた。 アルビオンで別れた王大人という人物は、ルイズの使い魔達が知らない祖父のことまで、よく知っていたのだ。 もっとも王大人も驚いていたが。あの大豪院邪鬼の孫娘というシエスタに。 (まこと遺伝子とは不思議なものよ。) 王大人がそう思ったかどうかは定かではない。 あの祖父ですら手も足もでず敗れたという江田島なる人物に、シエスタは心底驚いた。 そして、その大人物を超えようと修練を重ねる祖父に、最後に桃に男塾総代を渡して天に帰ったという祖父に、シエスタは涙した。 今度はシエスタの番だ。 そうしてシエスタは語りだす。在りし日の祖父の姿を。 その話は、邪鬼が男塾にいた時よりも破天荒であった。しかしどこかもの悲しくもあった。 まさしく奇跡的に命を取り留めてハルケギニアにやってきた大豪院邪鬼は、己を磨くべく、強敵を求めて各地を放浪した。 その道中はまさしく破天荒であった。 ある時などは、正面から堂々と貴族の城に乗り込み、ついには悪政をひいていたトライアングルクラスのメイジを討ち取ったという。 まさしく痛快である。しかし、大豪院邪鬼が満たされることはなかった。 そんな彼が、どこか故郷に残した妻に似た女性と出会い、子を成したのは必然であろう。 「どうやって出会ったのかは話してくれませんでしたが、本当に仲の良い二人でした。 特に何か会話をするわけではないのですが、二人でいるのが自然と感じました。 子供心にも、将来はあんな二人になりたい、と強く憧れを感じたのを覚えています。」 シエスタは優しい顔で語り続ける。その内容に、みな一様に引き込まれていった。 「おばあちゃんが流行り病で亡くなったとき、おじいちゃんは何も言いませんでした。 不思議に思った私が、思わずおじいちゃんの顔を見上げようとしましたが、何か音がするので下を見ると、」 そこには、手を強く握り締めた邪鬼の血が滴っていたという。 そうして祖父と祖母の話を終えたシエスタは、祖父の最後を語りだした。 「あれは、おばあちゃんが亡くなって一年後のことでした。今からですと4年前ですね。」 「オークの群れが現れたぞー!!」 そう言って、シエスタの家族の隣に住んでいる人が、叫びながら走っていた。 たかがオークの群れの一つや二つ、おじいちゃんの敵じゃないのはおじさんも知っているのに。 そう思ったのはシエスタだけではなかった。ある村人がその事を問いただす。 「あれはそんな数じゃなねぇ!軽く二百匹は超えているぞ!みんな荷物を持って逃げるんだー!」 事態を知った村人達は慌てて駆け出す。 そう、オークの二百匹ともなれば、軍隊でもなければ太刀打ち不可能な強敵なのだ。 みな悲しそうな顔をして村を見つめている。誰も逃げ出したくなどないのだ。 この地には多くの思い出が詰まっている上、もうすぐ葡萄の収穫の時期だ。 これを逃すということは、一年間は収入がなくなるのだ。間違いなくつらい一年になるだろう。 だが、命にはかえられない。そんな思いを代弁するかのように、村長が重い声で出発を告げる。 その時 「待てい!あのオークどもは俺が倒す。我が妻の眠るこの地を荒らしはさせん!」 そういって大豪院邪鬼が姿を現した。 しかし、村人達は知っていた。この一年間で大豪院邪鬼がずいぶんと弱っていることを。 そう、妻の看病を続けていた彼は、妻の病がうつっていたのだ。 いかな邪鬼とてもう七十も後半である。病にもなろう。 そのことを知っていた村人達は、邪鬼も一緒に逃げるように懸命に説得をする。 彼らは、この武骨な、村の安全を一人で守り抜いてきたこの男が大好きなのだ。 だが邪鬼の決意は揺るがない。 きびすを返すと、オークを迎え撃つべく、葡萄畑の郊外の草原に足を進めていった。 村人達の懇願を背に歩き出した邪鬼の顔には笑みが浮かんでいた。 「おじいちゃんは知っていたのかもしれません。自分の命がもう少ないことを。」 そうしてシエスタは話を続ける。 しばらく呆然とした村人達だが、各々武器を手に取ると勝ち目のない戦いに臨むべく、慌てて邪鬼のあと追いかけたという。 当然シエスタも追いかけた。そこで見たのは、 そこで一つ大きく息を吸い込んだシエスタは話を続けた。その目には涙が浮かんでいた。 「大豪院流撞球反射馘(だいごういんりゅうどうきゅうはんしゃかく)!」 そう叫んで邪鬼は、片手で持ち上げたオークを投げつける。 「はあ!」 邪鬼の気合と共に、オークに真空殲風衝がぶち当たり、まるでビリヤードのごとく他のオークを粉砕していく。 その風景に、シエスタは驚いていた。自分が一番良く知っているはずの祖父の技の切れに! (本気のおじいちゃんってこんなに強かったんだ!) しかし、運命は無事に終わることを許さなかった。 順調に敵を片付けていた邪鬼だが、突然膝をつくと大量に喀血をはじめた。 「くっ!不覚!」 押されていたオーク達だったが、その瞬間は見逃さなかった。全員が邪鬼に殺到する。 本能で分かっていたのだ。この瞬間を逃せば全滅するのが自分達であることを。 なんとか立ち上がった邪鬼ではあったが、その体には先ほどまでの切れはなかった。 それでも、正面から襲い掛かってきた二匹のオークを、即座に血祭りにあげたのはさすがと言えよう。 だが、一本の槍がついに邪鬼の心臓を貫いた。 「おじいちゃん!」 シエスタの絶叫が響いた。 とうとう怨敵を打ち倒したオーク達は、この小さい生き物をなぶり殺すことにした。 仲間を大量に殺され殺気立っていた彼らに、手加減などはない。 そんなオーク達の様子をシエスタは呆然と見ていた。 次は自分の番である。祖父の足元にも及ばない自分では、すぐに殺されてしまうだろう。 しかし、 (私は大豪院シエスタ!こんなやつらに屈してなんてやるもんか!) 誇り高い祖父の血を引く自分が、心を折るわけにはいかない。 そうして顔をあげたシエスタの目に、信じられない光景が飛び込んで来た。 「貴様ら!俺を置いてどこに行く!」 大豪院邪鬼が立ち上がっていた。 オーク達はどよめいている。 骨が折れている。 筋が切れている所もある。 心臓さえもが貫かれている。 しかし、その程度のことは、大豪院邪鬼を止める理由にはなりえない。 「シエスタよ!これが大豪院流極超奥義冥王炸裂波だ!」 そう叫んだ邪鬼の体を極大の気が包み込むと邪鬼は天高く浮かび上がった。 オーク達の混乱は続いている。それを見逃す邪鬼ではない。 「はっ!」 極限の気合と共に、彗星のごとく邪鬼が突撃すると同時に爆発が沸き起こる。 凄まじいまでの砂埃が生じるが、シエスタは決して目を閉じない。 祖父の最後の姿を見逃すわけにはいかないのだ。その目には涙が浮かんでいた。 そうして砂埃が晴れたとき、オーク達は消滅していた。 爆発の中心には悠然と邪鬼が立っていた。 ようやく村人達が到着したが、あまりの惨状に声も出ない。 そんな中、邪鬼がゆっくりとシエスタに近寄る。 「大豪院流、しかと伝えたぞ!」 「はいっ!」 シエスタの涙は止まらないが、それでも邪鬼を見つめる。 そんなシエスタを邪鬼は優しく見つめていた。 そうして、最後にシエスタの頭を一撫ですると、天を見上げる。 そう、大豪院邪鬼が天に帰る時がやってきたのだ。 走り寄ってきた娘夫婦にシエスタを渡すと、最後に大きく邪鬼は叫んだ。 「見ろ!これがこの世で最後の真空殲風衝だ!」 その光景をシエスタは一生忘れないだろう。 邪鬼が天高く放った真空殲風衝は、空中で折り返すと、地上の邪鬼へと舞い降りた。 それを邪鬼は悠然と見つめていた。 ついに真空殲風衝が邪鬼を捕らえると、一辺の塵すらも残すことなく、その痕跡を消し去った。 「……以上でおじいちゃんの話は終わりです。」 そう言ってシエスタは周りを見渡す。みな懸命に涙をこらえていた。 異世界に行っても、邪鬼は邪鬼として生き、そして死んだのだ。 男泣きをしないわけがない。 「あやつらしい死に方だな。」 そう言って王大人は立ち上がった。 長話で疲れた皆に茶でもふるまおうと思ったのだ。 茶を飲んで落ち着いた皆、ゆっくりと雑談に興じ始めた。 その空気はとても暖かい。 そこへ扉をたたく音が響いた。 「あ、はい。どちら様ですか。」 シエスタが入り口のドアを開けると、そこにはタバサが立っていた。 タバサは、じっと王大人を見つめると、突然告げた。 「貴方が王大人?漢方という医術を使うと聞いた。」 そう言って、ドアの横に立っているシルフィードを見る。 どうやら、シルフィードから聞いた、と言いたいらしい。 「貴方に見て欲しい人がいる。」 言葉を続けたタバサの顔には、かつてないほどの緊張感が漂っていた。 男達の使い魔 第十二話 完 NGシーン 雷電「むう、あれは!」 虎丸「知っているのか雷電!?」 雷電「あれぞまさしく古代中国に伝わる貴筒書(きとうしょ)!」 古代中国に貴筒という仙人がいた。 あらゆる天候を操り、仙術を極めたと言う彼は、太上老君に頼まれて一冊の書を残した。 この本を巡って幾つもの争いが起きたため、太上老君は有効利用を諦めて、ついには異次元に飛ばしたという。 この故事がハルケギニアに伝わり、まじないなどに使用する書を貴筒の書、すなわち祈祷書と音を変えて呼ぶように なったのは有名な話である。 なお、この書を諸葛孔明が授かり、赤壁の戦いにおいて大活躍をしたことは有名な事実であり、 一説では雌威璽(めいじ)の始祖武利彌瑠(ぶりみる)がこの本で魔法を覚えたと言う話もある。 民明書房刊 「古代中国とハルケギニアに見る風習の違い」(平賀才人著)
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4245.html
638 名前:1/5[sage] 投稿日:2006/09/20(水) 00 33 56 ID ne1MxQWp ミス・ヴァリエールがこちらを見ている、既に言い付け通り私は何も着ていない。 「雌犬が服を着ているの変ですものね。」 それだけ言うと、真っ黒い皮で出来た首輪を差し出す。 ……アレを付けたらどうなるか、私は知っているけど…… 無言で受け取り、自分の手で首につける。 一つ目の約束『逆らわない』 「ヴァスラ」 静かに一声呟く。 っっっっっく 魔法の力が私を襲う。 身体に力が入らなくなって、その場に崩れ落ちる。 ベットの上だったので、怪我はしなかった。 静かに歩み寄ってくる、ミス・ヴァリエールが、つま先で、あたしのお腹を蹴り上げる。 身体に力が入らなくて、悲鳴すら上げられない。 仰向けに寝かされた私を、見つめる……強い瞳。 「この胸………」 ミス・ヴァリエールの手には、いつもの鞭。 「これでサイトを誘惑したのかしら?」 私がサイトさんと結ばれたのは、アルビオンからの帰り。 サイトさんとミス・ヴァリエールが、なんだか気まずくなっていたので、付け込む様な形になってしまった…… ミス・ヴァリエールが無言で鞭を振るう。 私の胸を目掛けて。 「いやぁぁぁっぁぁぁ。」 あまりの激痛に魔法で抜けていた力が戻る。 「い、いたいぃぃぃぃぃ。」 「あらぁ……駄目じゃない、シエスタ。」 優しく……優しく微笑むミス・ヴァリエールが怖い。 「犬は……なんだったかしらね?」 ……わずかなプライドが、ソレを私に言わせない。 「……言うまでやめないわよ。」 そのまま、ミス・ヴァリエールが鞭を振るい続ける。 「きゃ……いやぁぁぁぁぁぁ、いたいっ、。」 目を細めたミス・ヴァリエールの鞭が強くなる。 分ってる、きっと言うまでこれは止まらない。 でも………… 「いやぁぁぁぁぁ、んぁぁぁぁぁ。」 言えない……… クスクスと笑いながら、楽しそうに鞭と踊るミス・ヴァリエールが見える…… 痛みで、段々頭の中が空っぽになっていく。 唐突に痛みがやむ……た……す…かっ………た? 目の前で鞭がピシィッって鳴った、身体がすくむ。 「さて、もう一度聞くわよ?」 無言で真っ直ぐ鞭を振り上げる。 「………わ……ん。」 心が折れる……そんな音が聞こえそうだった…… 「もういちど……ききたいわ、シエスタ。」 楽しそうなミス・ヴァリエール。 「わん」 「もっとよ、シエスタ、たくさん鳴いて。」 「……わ……ん、わんわん。」 一声ごとに、心がミス・ヴァリエールに屈していく。 「で、どうする?シエスタ。」 二つ目の約束『諦めるときは、自分で言う』 ……私は……首を横に振る……サイトさんは諦めない。 「そう」 ミス・ヴァリエールは楽しそうに微笑んだ。 639 名前:2/5[sage] 投稿日:2006/09/20(水) 00 34 30 ID ne1MxQWp 初めてサイトさんに抱かれた、痛かったけど幸せだった。 ……自室に帰ると、ミス・ヴァリエールが居た。 「……おめでとう……シエスタ。」 え? 「見てたのよ……さっき。」 えぇぇぇぇぇ 「…良かったわね……シエスタ。」 あ……、ミス・ヴァリエールの目が赤かった。 そっと近寄ってきたミス・ヴァリエールが、私を抱きしめる。 「相手が貴方でよかった……。」 「ミ、ミス・ヴァリエール……」 ミス・ヴァリエールの小さな身体が震えていた。 「サイトも見る目があるんだかないんだか…ね。」 なんていっていいのか分らない。 「あの……ミ、ミス 「シエスタ……賭けをしない?」 え? 「か、賭けですか?ミス・ヴァリエール。」 「えぇ、そうよシエスタ。」 ……どんな賭けだろう…… 「貴方が勝ったら、サイトを使い魔から開放するわ……約束する。」 「え?サイトさんを。」 驚いた、サイトさんはずっと使い魔のような気がしてた。 「使い魔だと、今回の戦争みたいなときに危険だもの……シエスタこれは貴方へのお祝いでもあるの……。」 はっとした……ミス・ヴァリエールのいうとおりだった。 「……サイトのためにも成るし……簡単な賭けよ。乗る?」 選ぶまでもなかった。 「はっ、はいっ、ミス・ヴァリエールなんでもします。」 「そう……まずはね、3つ目『サイトに気付かれたら、貴方の負け』」 え? 「ま、負けって?」 「賭けだもの、勝ちだって、負けだって有るわ。」 「えっと……私がまけたら?」 「負けないと思うわよ、貴方が負けだと認めたらサイトを諦める。」 「えぇぇぇぇぇ、そんなの嫌ですっ。」 「えぇ、だから自分で決めさせてあげる『諦めるときは自分で言う』いい?」 「えぇ……まぁ、それなら」 「で、私はちょっと意地悪するから、貴方が諦めなければいいだけ。」 大丈夫そうだ。 「……それなら………」 「じゃあ、約束『逆らわない』あなたが逃げてたら、賭けにならないもの。」 ……そんなに無理な賭けじゃないと思う。 「いっいいですよ。」 「そ、じゃあ学園に帰ったら賭けを始めるわよ、それまでサイトといちゃついてなさい。」 「……素直なミス・ヴァリエールって……」 「な、なによ。」 「可愛っ」 ミス・ヴァリエールに抱きつくと、真っ赤になって暴れてましたね…… …………それが始まり。 640 名前:3/5[sage] 投稿日:2006/09/20(水) 00 35 01 ID ne1MxQWp 私が屈しないのを楽しそうに見つめる、ミス・ヴァリエール。 私の髪を優しく撫でる。 「いい子ね、シエスタ。サイトのことが大好きなのね。」 痛みで力の入らない身体を、そっとミス・ヴァリエールが労わる様にそっと触れる。 腫れ上がった胸を、お腹を……触れるか触れないかで……そっと。 痛みでも、快感でもない何かが這い回る。 「痛かった?シエスタ。」 優しく抱き寄せて、背中をさすってくれる。 嘘だ……そう思う…でも……声も手も、まるでサイトさんのように優しい。 「大好きよ、シエスタ……多分始めてのお友達。……同じ人を好きになった…」 歌うように、私の耳元で囁く。 朦朧とした頭が混乱する。 優しいキス、舌が唇をなぞる。 「く、はぁっぁ。」 まともに考えられない頭が、快感だけを受け取る。 痛みで敏感になってる胸を、痛くない様にそっと愛撫される。 「ん、いやあぁぁぁぁぁ。」 何が嫌なのか……考えられない………ただ……怖かった。 子供のように泣きじゃくる私を、ミス・ヴァリエールが宥める。 「いい子ね、シエスタ、大丈夫何も悪い事は起きないわ、貴方は……貴方だけは幸せに成るの。」 ミス・ヴァリエールが何か言ってる。 でも、意味が分らない。 背中を撫でていた手が、そっと下りていく……お尻に……そして 「あぁぁっぁぁ、にゃぁぁぁぁ。」 意味のあることが喋れない、優しく、ただ優しくほぐされていく。 過敏になった全身に影響され、充血しきったそこを、しつこく擦られた。 「んきゅぅぅぅ、んにゃぁぁぁぁ。」 声が止まらない……でも、そっと口付けられる。 くちゅくちゅと、舌の絡まる音だけが頭の中に満ちる。 空いていた手で、そっと抱き寄せられる。 ミス・ヴァリエールの胸に、私の胸がそっと当たる。 ゆっくり優しく擦られる胸、愛しむ様に吸い上げられる唇…… そして、執拗に捏ね上げられる陰核。 一生懸命全身でもがこうとするけど、最初に受けた魔法が私の力を削いでいる。 抵抗も出来ないまま、快感だけが高まる……… あぁあぁああああぁぁぁぁぁっ もうすぐっ………何もかもがどうでも良くなりかけた。 ……ミス・ヴァリエールの手がいきなり、私を抓り上げる…… 「きゃぁぁぁぁぁ。」 一瞬で正気に戻る。 「諦める?シエスタ。」 ミス・ヴァリエールの声が遠くで聞こえる 641 名前:4/5[sage] 投稿日:2006/09/20(水) 00 35 33 ID ne1MxQWp 全身から感じられていた快感が、一斉に遠のく。 まるで寒気がするように、何かが引いてく。 さっきまで、与えられる快感が怖かった。 今は……去っていく快感が……戻ってくる正気が……怖かった。 「だめぇぇぇ、だめだめだめだめぇぇぇ……もっとぉぉぉぉ。」 くすっ、と笑ったミス・ヴァリエールがまた体中で愛してくれる。 今度は貪るように全身で感じる。 「あはぁ……あははははははは。」 体中が多幸感に満たされる。 「シエスタ……諦める?」 ミス・ヴァリエールが何か聞いている。 反射的に頷こうと思った、キモチイコトしてくれるから。 何かを察したようにミス・ヴァリエールが慌ててキス。 今までは焦らす様な動きだったのに、急に私を追い詰めるように動き出す。 「あっあぁぁぁっぁぁぁぁぁ」 限界まで焦らされていた私はひとたまりもなかった。 あっという間に果てる……。 そして……敏感になった身体はまだミス・ヴァリエールから開放されない。 「うふふふふふふ、あぁぁぁっぁああああ。」 脱力し切って抵抗できない身体は、次から次へと逝かされる。 「んんんんあぁぁっぁぁぁ。」 どこか壊れたように、逝き続ける。 ミス・ヴァリエールが、優しく優しく触り続ける。 痛めつけられている時も、どこかこの人を憎めなかった。 初めての貴族のお友達。 「みしゅ、ヴぁりぇぇる……。」 「なぁに?シエスタ?」 「だいしゅきぃぃぃ。」 自分が何を言っているのか、私は分っていなかった。 「そう、シエスタ私も好きよ、貴方もサイトもとっても大事。」 「だから……さよなら……ね。」 どこかで限界を超えた……ゆっくりと意識が闇に閉ざされていく…… 最後に見たのは、デルフリンガーさんに近寄っていくミス・ヴァリエール 642 名前:5/5[sage] 投稿日:2006/09/20(水) 00 36 09 ID ne1MxQWp 私はデルフリンガーを抜いた、そのまま机に隠してあった薬瓶を取りにいく。 「ボロ剣……計画を早めるわ……今日実行よ。」 「……貴族の娘っ子………やめるんなら、今のうちだと思うがね?」 「もう手遅れよ……シエスタにここまでしたのよ。」 自分が水魔法を使えないのが不甲斐ない……傷が残らないように、そっと秘薬をシエスタの傷に塗りこむ…… 「ごめんね……」 初めての友達……多分……もう二度と居ない………命の恩人。 鎮痛効果も有る秘薬のおかげで、シエスタの息が穏やかになる。 「……サイトはもう、私にかかわっちゃいけないものね。」 サイトはシエスタを選んだ…… 「私の側に居たら、また……戦争や、ミョズニトニルンとの戦いにおわれるもの」 私は虚無の担い手、平穏な人生は……多分送れないから……好きな人たちは巻き込まない。 「生半可なやり方じゃ、相棒は娘っ子を見捨てないとはいえ……」 「……私だって嫌だったわよ……シエスタにこんなことするの……」 十分傷つけた後は、出来るだけ優しくした……罪滅ぼしにはならないけれど。 「ボロ剣、分ってるわね……貴方の役目。」 「……へいへい、相棒があんたの所を立ち去るように説得、戻らないように監視だろ?」「そうよ……あともう一つ。」 「まだあんのかよ、大忙しだね、俺様。」 「サイトが貴族の力が必要なときに、私に繋ぎを取りなさい、ガンダールヴの力だけじゃサイトが動けなくなったときのために……」 「……そこまでしてやんのかい?」 「頑張って出世するわよ、なんてったって伝説ですもの。」 「……相棒抜きでか?」 「……いらないわ。」 ……うそ 「心配しなくても、私は死なない……ううん、死ねない。」 「?」 「私が死んだら、サイトを守るガンダールヴの力が消えるから……死なない。」 「……娘っ子……おめぇ……」 「大丈夫よ、サイトとシエスタは私とのコントラクトが守り抜くわ。」 サイトがどこかで幸せに暮らしているのなら……何も怖くない……多分。 「……サイトがもう直ぐ帰ってくる、デルフリンガー……最後の一幕……お願いね。」 「……いやだっつったら?」 「溶かすわよ?」 「……いいぜ?」 「サイトの幸せのため……よ、お願い。」 「……アンタの幸せはどうするっ!」 「………サイトが楽しく暮らすのが、私の幸せよ。」 「…………変わったな、娘っ子。」 「サイトと一回死に別れたもの……2度は嫌。」 「もう立派な女だな……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 「……覚えてたんだ」 「伝説だからな……そして、わすれねぇ。」 「ありがと……さて、来るわよ。」 私がデルフリンガーを振りかぶる。 「……あぁ…… あぁぁぁ、相棒、来てくれ、貴族の娘っ子が……メイドを………」 ありがとう、デルフリンガー さようならサイト、さようならシエスタ…… 二人とも、大好きだよ…… 286 名前:1/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 03 56 ID hg0lRZ+9 サイトは何も言わずに出て行った…… 私の持っていたデルフリンガーを、大慌てで取り上げた後、 ベットのシエスタを見て、泣きそうな顔を伏せたサイト。 顔を上げたあとは、私の事を見ようともしなかった。 ただ、淡々と部屋を出て行った。 ……今は一人………もうサイトも帰ってこない。 シエスタも来ない、デルフリンガーにも相談できない。 ずっと………これから続くのね。 広くなったベットの上で、私は今日だけ一人で泣いた。 ひとしきり泣いた後、天井を見上げる…… 明日からは忙しい予定だ……頑張って……サイトを学園から……追い出し……て… それに……私も。 多分サイトはモンモランシーの所に行くだろう……彼女は友達が多い。 私がシエスタを殺しかけたことは、多分直ぐ広がる。 ……そうなれば、私はひとりで学園で生活していける。 誰も側に来なくなるから。 当然の……報いよね…… サイトとシエスタと……一緒に眠った布団を抱きしめる…… ……身体に何かが当たった、鞭だった。 シエスタの傷だらけの身体を思い出す…… モンモランシーのことは信用しているけど……居ても立っても居られなくなる。 でも……見にいけない、後で聞くことも出来ない。 それが私の選んだ立ち位置。 そっと鞭を取り上げる。 ……そのまま振り上げて、自分の左手に打ち下ろす。 ビシッ と言う鋭い音共に、私の左手に激痛が走る…… 私はこんな物をシエスタに打ち続けたんだ………… シエスタにとって、もう私はきっと悪い思い出…… でも……でもいいの、私は友達だと思っているから。 耳の奥にシエスタの悲鳴が残っている……打ち消すように自分を鞭打つ。 腕が裂けて血が出てきた……… 獣の様にそれを舐め取る。 ……そうね………私はもうきっとケダモノ。 愛する人のために、愛する友達を打ちのめした。 左手の痛みと血が私を落ち着かせる。 きっと怖い物なんてもう何もない。 自分の心が死んでいくのを感じながら、ケダモノが眠りに付いた。 287 名前:2/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 04 27 ID hg0lRZ+9 日が昇る前に目が覚めた。 笑いがこみ上げる、流石にケダモノよね。 顔を洗う、サイトはもう居ない。 食堂に行く支度をする。 着替えるときに傷口が、袖に擦れて痛い。 そろそろ食堂に行く時間だ。 深呼吸する。 さあ、戦いの始まりだ。 食堂に行っても誰も昨日の話しをしていない。 サイトが立ち去った時間が早かったから、昨日のうちに噂になっていると思ったけど…… まだみたいね。 そんなことを考えていると、モンモランシーが食堂に入ってきて、真っ直ぐ私に向かってくる。 「おはよう、ルイズ。」 「おはよう、モンモランシーいい朝ね。」 にっこり笑って私は切り返す。 後悔なんて感じさせない。 …………モンモランシーが黙りこむ…… 出来ればシエスタの事を喋って欲しい……お願い。 「……私はあまり眠れなかったわよ、ルイズ。」 私の所為ね…… 「怪我の治療に大忙しでね。」 え?うそ……うそ、だって外傷くらいモンモランシーなら直ぐに…… 「貴方の使い魔が大怪我でね。」 私は立ち上がっていた。 「……な………な……んで?」 声が震える。 「『俺の所為だ』だそうよ、そんな事言いながら暴れてたわ。」 ちがう……ちがうよ、サイト私の所為だ…… 「壁を素手で殴って骨折したり、ガラス握り締めたり……」 だめ………サイト……違うの、私を憎めば楽に成るの。 泣きそうになりながら、私はモンモランシーの言葉を聞いた。 「今はギーシュの所に居るわ、ゴーレムで取り押さえてもらったの。」 ……ありがとうギーシュ。 「……で、使い魔とメイドの手当ては私がしたわ。 ………モンモランシーの糾弾を待つ。 「使い魔と剣が何か言ってたけど……」 ……うん、それで良いの。 「私もギーシュも信じてないわ。」 「なっ、何でっ!?」 つい大声を上げて、食堂中の注目を浴びる…… 288 名前:3/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 04 58 ID hg0lRZ+9 「……単純な話よ。」 モンモランシーが周りの視線をものともせずに続けた。 「私もギーシュも貴方とメイドが手を取り合って笑うのを見た……それだけよ。」 確かにあの時二人とも居た……でも…… 「……なんで?」 声が震える。 「ちなみに、ギーシュは使い魔と話してるから朝食は抜きね。」 「…なんで?」 答えてくれないモンモランシーにもう一度問いをぶつける。 「貴方がそんな事する子じゃないからよ、ルイズ。」 ………嬉しかった…そして…もう怖いもなんてないと思ってたのに……怖かった。 「でも……現にシエスタは傷だらけだったでしょう?ならっ」 「……私なら、メイドって言うわよ。」 「?」 「あの娘をちゃんと名前で呼ぶ貴方が、理由も無く苛めたりしない……そう思ってるだけよ。」 嬉しかった……嬉しかった……でも…… 「わ、私がっシエスタを……」 「黙りなさい、ルイズ。」 モンモランシーが一睨みで私を黙らせる。 「貴方が何に傷ついてるのか……悲しんでいるのか知らない。でも……私の周りに悲しみがあるのは許せないの……ルイズ。」 私の手を取って、椅子に座らせてくれるモンモランシー。 「貴方が私を頼ってくれるなら、私は貴方を癒すわ、ルイズ。」 それだけ言うと、モンモランシーは自分の席に行った……涙が出そうだった。 左腕を握り締める……痛みだけが涙を止めてくれた。 今日の授業が始まる。 ギーシュは休みだ……モンモランシーは……隣の子を説得して私の隣に座ってる。 たまに私を見つめながら、普通に授業を受けている…… 私が……相談するのを待っているんだ…… 「モンモランシー。」 授業を聞いたまま、そっと話しかける。 「ん?」 「……シエスタの容態は?」 「2,3日安静ってとこね。」 「……そう、ありがと。」 お互い黙り込む 「ルイズ。」 「なに?」 「相談は……要らないのね?」 「……ありがとう、でも頑張るわ。」 「そ」 次の授業の開始前に、モンモランシーは席に帰った。 289 名前:4/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 05 29 ID hg0lRZ+9 授業が終わった。 ……サイトが自分から出て行くように、何か手を考えよう……。 急いで部屋に戻って……いきなり押し倒された。 口を封じられ、呪文が唱えられない。 あっという間に腕を捻り上げられ杖を取り上げられる。 腕の痛みに耐えながら、もがいていた。 「……なぁ……なんでだ?ルイズ。」 ……サイトだった。 「な………なにがよ?」 「何で、シエスタに………あんなことを?」 「……泥棒猫に罰をくれてやったのよ。」 サイトが辛そうに黙り込む。 ごめんね……サイトの所為じゃないよ。 「おかえりなさい、サイト私のところに帰ってきてくれたのね。」 そんなはず無いの分ってる。 「……デルフが………町に出ろって言ったんだ………」 そうなると思ってた。 「でも………止められた。」 ……誰が……余計なことをっ 「シエスタが……ミス・ヴァリエールは訳も無くこんな事しないって。」 ……え………… 「私は、ミス・ヴァリエールを信じますって………なのに……」 ……シエスタ……バカ……サイトを独り占めできるのに…… 「なのに……なんでおまえはぁぁぁぁ。」 サイトの手に掛かる力が強くなる……悲鳴を必死で押し殺す。 「サ……イト……なんで怒るの?」 「な、なんでって……おまえっ……」 「たかが平民の一人や二人……いいじゃない。」 サイトが黙り込んだ………これで……… ビシィッッッ 鋭い音共に私の制服が裂けた……一瞬遅れて痛みが来た。 「きゃぁぁっ」 腕を極められたままなので、逃げられない…… 部屋に置いてあった、乗馬用の鞭がサイトの手の中にあった…… 打ち付ける先は……私のお尻。 「本当に……そう思ってるんだな……ルイズ。」 また来た………男の子の力で打たれる鞭は、私が打ったときより何倍も痛かった…… 「見損なった……ルイズ」 サイトの声がひたすら平坦だった。 「きっと理由があるって……信じてたのに……」 狂ったように私のお尻を打ち据える。 「ぎゃぁぁぁっぁぁぁぁ」 私は悲鳴をあげることしか出来ない…… 私の頭の中にシエスタの悲鳴が蘇る。 ごめんね……シエスタ……痛かったね…… その間にもサイトの手は止まらなかった 290 名前:5/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 06 01 ID hg0lRZ+9 私の喉が悲鳴で嗄れた。 制服がズタズタに成った。 お尻が血まみれだ……… サイトがやっと止まった…… ヒューヒューと喉が鳴る…… ……終わった? 「何で……?」 なに……サイト……声は出なかった。 「何で抵抗しない……振りほどこうともしない……」 ……しまった……抵抗するべきだったかしら…… 「本当に……何か理由があったの……か?」 サイトの顔が後悔で歪んでいる…… 違うよ……サイト私は嫌な娘なの……嫌って……部屋から出て行って。 サイトの体温を感じる……こんな状態なのに幸せ………だって多分これが最後だし。 サイトは優しい……理由があっても、もう私の前に顔が出せない…… サイトが部屋を出たら……それがもう最後だから…… 今だけ……少しだけ幸せを感じる。 「…………なんで……だよぉ……」 サイトが泣いてる………泣かないで……サイト…… 何かを振り捨てるように、よろよろと部屋を出ようとするサイト…… さようなら……サイト……幸せにね 扉を開けたサイトが止まる……… きっと後一歩でお別れ…… パン 乾いた音が響いた……あれ? 部屋に誰かが駆け込んでくる…… ……シエスタ? 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……ミス・ヴァリエール……」 シエスタ……だ……顔がほころぶのが分る……また会えた……嬉しい 「私、ミス・ヴァリエールが喋ったことちょっとだけ覚えてます……」 ……だめね……私……もっと徹底しないと駄目だったのね…… 「ミス・モンモランシが、秘薬で手当てしてあるって……お薬どこですか?」 ……モンモランシーのバカ……黙っててくれてもいいじゃない…… 「………私はミス・ヴァリエールを信じるって決めましたから……どこにも行きませんよ」 涙が……出てきた……… 291 名前:6/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 06 34 ID hg0lRZ+9 ミス・ヴァリエールが机の方を指差す…… そちらに向かおうとすると、サイトさんに止められた。 「ちょっと、シエスタ……いったいどうゆうことだよ。」 無言でサイトさんの頬を張る。 乾いた音がまた響いた。 「ミス・ヴァリエールを信じてあげなかった、サイトさんは後回しです。」 なんだかサイトさんがこの世の終わりみたいな顔でへたり込んでる。 ミス・ヴァリエールが示した辺りの引き出しを……薬瓶が一つだけあった。 慌てて取り出して、ミス・ヴァリエールに見せる。 ゆっくりと頷く。 ミス・ヴァリエールのお尻のほうに向かう……皮膚が裂けて……酷い…… そっと薬を塗りこむ。 ミス・ヴァリエールの身体がビクビク跳ねる……そっと触るだけでも痛いんだ… 出来るだけ優しく塗りこんだ後、ミス・ヴァリエールの顔の前に戻った。 「……痛みますか?」 「………ごめ……ん……な……さい……シエ……ス……タ……」 ミス・ヴァリエールがかすれた声で詫びる…… 自分の方がボロボロなのに……この人は…… そっと抱き締めると、腕の中でひっそり泣いていた…… 「……シエスタ……いったい?」 サイトさんがこっちを見てる…… 「ミス・ヴァリエールが訳も無く酷いことなんて、するはず無いじゃないですか……」 「で、でも…」 「でもじゃありませんっ!!」 「ひゃい」 サイトさんの返事が変だ。 私の声に驚いたミス・ヴァリエールの髪をそっと撫でる……落ち着いた? 「私の説明も聞かずに……こんなことするなんて……」 「あの……シエスタさん?」 「見損ないました、サイトさん」 サイトさんが白い灰になる、 「こんなサイトさん、嫌いです。」 あ、崩れ去った。 「……ダメ……」 腕の中から小さな声が聞こえる…… 「喧嘩しちゃ…だめ」 ミス・ヴァリエールだ…… 「なかよく……して」 か、可愛いぃぃぃぃ 弱ってるミス・ヴァリエールはひたすら可愛い。 「どうしてあんな事したんですか?」 「………」 黙り込む…… 「答えてくれないんなら……答える気に成ってもらいます。」 私はミス・ヴァリエールの服を脱がし始めた。 292 名前:7/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 07 05 ID hg0lRZ+9 ミス・ヴァリエールの肌は滑らかで、とても白かった。 ……隣でサイトさんが息を呑んでた……この、天然浮気者め。 私も服を脱ぐ、手当てのために簡単に羽織ってただけなので、直ぐ脱ぎ終わる。 サイトさんが血走った目で見てる…… 「ミス・ヴァリエール……」 そっとキス 「ん………」 「お返しですよ、ミス・ヴァリエール」 ぐったりしたままのミス・ヴァリエールの身体を触る…… お尻を庇ってひっくり返せないし…… 私が下になって、下からミス・ヴァリエールを触る。 抵抗できないミス・ヴァリエールが少しづつ良い反応を示す。 胸をそっと触るのが良く効くみたい。 痛みからの逃避もあるのか、どんどんミス・ヴァリエールは快感にのめりこんでいく。 ………私も……ミス・ヴァリエールに酔っていた。 私より一回りも小さい身体が、私の手で官能に酔いしれる…… ゾクゾクした……手が止まらない。 つぶれた喉の奥で、ミス・ヴァリエールの声が跳ねているのを当たっている肌から感じる。 わざと手を掠らせながら、ゆっくり下に降ろして行く…… 熱くなった柔らかい……そして濡れた感触 「ミス・ヴァリエール」 ビクリと震える。 「濡れてますね」 ベットサイドのサイトさんが鼻血吹いて倒れた。 ミス・ヴァリエールは目を逸らした。 私は昨日のお返しを始める。 まずはキス。 「ん〜〜」 そして……ゆっくりソコえお捏ね上げる。 ミス・ヴァリエールが上だから逃げようとするけど…… もう片方の手を、お尻に回す。 痛みで腰が戻ってくる。 「あら、ミス・ヴァリエール押し付けてくるなんて……そんなに良かったですか?」 楽しい……何かスイッチが入ったみたいに意地悪になれる。 人差し指を中に差し込む、そしてそのまま親指で捏ね上げた。 「…………ヵ……ハ……」 音を出せなくなった喉が、掠れた声を上げさせる。 どんどんミス・ヴァリエールを高めていく……そして、手を止める。 「……ミス・ヴァリエール。」 泣きそうな目でこっちを見てる…… 「あとでちゃんと説明してくれないなら、ここで止めますよ。」 泣きそうな目で、イヤイヤをする……か、可愛い……サイトさんより良いかも。 舌を絡める……昨日と違ってオズオズとした反応。 「……絶対聞きますからね?」 私が止まらなかった。 293 名前:8/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 07 37 ID hg0lRZ+9 目の前でルイズとシエスタが絡んでる…… 荒い息のまま、本能に従って一番良い位置を探す…… あった……脚の側から見ると、二つの穴がイレテイレテって言ってる…… ゴクリ 生唾を飲み込む。 ルイズの小さい身体を鞭で叩いてたときから、股間はパンパンだった…… シエスタが準備を済ませてくれてる…… しっかり濡れている、ソコに俺を突き込んだ。 「………っ……ガ……」 ルイズの身体が震える…… 「な、サイトさんなにしてるんですかぁぁぁぁ。」 「……ナニ……」 気持ちよくて止まらなかった……… 「や、止めなさい、ミス・ヴァリエール今っんっ………」 ルイズがキスで、シエスタを黙らせている。 快感にまかせて動くと、ルイズの中が締まった。 「うおっ」 思わず目の前の腫れ上がった尻を掴む。 ルイズが頭を振って暴れだす……が、 「うあぁぁぁぁ、締まるっ。」 あまりの快感に、腫れた尻を揉みながら腰を動かす。 ずっと見ているだけで、限界近かった…… 「サイトさん、サイトさん、止めて下さい、ミス・ヴァリエールが……」 シエスタで一度覚えてしまった女の味……多分これからも簡単には止まらない。 ルイズがもがいているのすら、良い刺激だった シエスタがルイズの下から這い出そうとしている………足を押さえる。 「ちょっ、サイトさん」 ルイズからいったん出して、ルイズので十分に濡れたソレをシエスタに入れなおす。 「きゃぁぁぁ、いきなりっっっっ………」 落ち着いたルイズがまたシエスタにキスしている。 GJ、ルイズ。 アルビオンからの帰りのときよりも、シエスタの中が締まった。 シエスタの中で限界が近づくと、ルイズに。 ルイズの中で限界が近づくと、シエスタに。 二人の身体をゆっくり堪能する。 先にルイズが脱力する……痛みで気絶したのか、快感で逝ったのか…… シエスタに集中する。 「サ、サイトさん……だめ……こんな……」 赤くなりながらも、シエスタはこの間よりずっと感じてる。 熱くなったシエスタの中で、ラストスパートを開始した。 294 名前:9/9[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 08 08 ID hg0lRZ+9 「すごいぞ……副隊長!!」 ……俺は一人では動けないから、ギーシュとかって小僧に運んでもらったんだが…… 「おぃ……」 「………なんだ?今僕は忙しいのだ。」 「……覗きにか?」 「男の浪漫にだ。」 ………人選をミスった……… まぁ………まとまりそうだから良いけどよ…… 「蚊帳の外だなんて……デルフ、泣いちゃうからぁ」 ちょっと、寂しい。 「…あ」 「なんだね?剣、おぉぉぉサイト、そんな事までっっっ」 「いいのか?」 「いいのだ、と言うより、剣、邪魔しないでくれたまえ、今僕は忙しい。」 こっちはこっちで、てーへんそうだなぁ…… 俺は水の魔法使いの娘っ子を見ながら…… 「まぁ、皆が皆幸せに成れば、それが一番良いやぁねー」 呟いた。 295 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 23 10 32 ID hg0lRZ+9 待たせたわりに……ですがっ、特に後半唐突すぎですが。 こうゆうの書くための自分のスキル不足を実感したので、纏める方向で動きました。 デルフは出さなきゃだなーと、最後だけ…… 難しいです、こうゆう展開。 451 名前:261のひと[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 02 19 13 ID 3rMZFeNi 285-294 のつづき 非エロ? 442さん こんなんなりました…… でも、多分ここまでで話展開させた所為で、各キャラがそれぞれ変化してるので、 ゼロのエロパロとしてどうかなーって思うのです。 他のことしてから書いたらこんな時間に……手が遅い。 452 名前:1/3[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 02 19 51 ID 3rMZFeNi 「シエスタぁ〜」 授業が終わると真っ直ぐ部屋まで戻る。 最近の日課だ。 「お帰りなさいませ、ミス・ヴァリエール」 ……ちょっと不満 「……ルイズ…って呼んでって何度も…」 「ミス・ヴァリエール……仕事中ですので……」 シエスタは時々意地悪だ。 「……シエスタはわたしより仕事が大事なのね……」 「……ルーイズ……夜まで待ってくださいね……」 小さく囁いて耳にキス。それだけで幸せ、随分安上がりに成ったものね。 「サイトは?」 「先ほどまで訓練の準備をなさっていましたけど……授業が終わられたのなら、騎士隊の皆様の所じゃないでしょうか」 ……ま、いいか 「シエスタ………怪我は?」 「もう大丈夫ですって……毎日それですね、ミス・ヴァリエール……それに……昨日だって見たじゃないですか」 ……わたしのつけた傷跡が、シエスタの綺麗な肌に残ったら…… 「見せて……」 シエスタはちょっと笑って、わたしの前で上着を脱ぐ。 わたしと違って大きい……白い胸が明かりに晒される。 ………じっと観察……大丈夫。 満足したわたしは、ふかふかの胸に甘える。 「もぅ……ルイズったら毎日それなんですから……」 そのまま髪を撫でてくれる……幸せ。 「ルイズ?」 「……こんな格好で、仕事できませんもの」 「いいなぁ……シエスタ……」 「……これ、ですか?」 無言で頷く 「ルイズの胸も好きですよ、サイトさん」 「……でもシエスタの触ってるときの方が、嬉しそう」 「ルイズさんを見てるときの方が目が優しいですよ?」 ………そうかな……だといいな。 「サイト……今日も遅いのかなぁ?」 「どうでしょうね、……あんまり寂しがらせないで欲しいですよね?」 「ねー」 シエスタもサイトも両方大事。 ………その両方を傷つけたわたしを、二人とも許してくれた…… シエスタなんて、あんなにボロボロに成ったのに…… そっと頭が動かされる、む、もっと甘えたいのに。 「シーエースーター」 「ダメです、昨日の続きはどうするんです?」 そうだった……こっそに机の中に隠してある編み棒と毛糸を取り出す。 「これからどうするんだったかしら?」 「そこはですねー」 前と違って、ちゃんと人が着れる様な形になってる、シエスタのお陰ね。 「ミス・ヴァリエール?」 「あ、ごめんなさいシエスタ、それで……」 サイトのことを思いながら、ちょっとづつ編み進める…… 「よろこんで……くれるかな?」 「もちろんですよ、ミス・ヴァリエール」 だといいな…… 「寒い間に渡せると良いですね」 うん……… 「そうね……」 もう一つ……授業中に編んでるのも有るんだよ、シエスタ…… 二人に渡す大切な贈り物を作りながら、切り捨てるつもりだった幸せに浸っていた。 453 名前:1/3[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 02 21 07 ID 3rMZFeNi ルイズが眠っている……サイトさんも居る…… そろそろお二人の朝の支度をしなくちゃ……そ〜っと起き出す。 起こさない様に動くのにも慣れてきた…… 最初のうちは居なくなったことに気が付いたルイズが、真っ青になって飛び出してきたりしたけど…… 今は先に起きても大丈夫に成った。 大好きなサイトさんと、わたしとサイトさんの幸せのために自分を切り捨てたルイズ…… わたしはどちらが大事なんだろう…… きっとどっちも大事ね…… 昨日二人に脱がされた服を、静かに身に着ける。 ……さて、着替えも、朝の用意も出来た、起こしますか。 「サイトさん、ミス・ヴァリエール、朝ですよ〜」 サイトさんがもそもそと起き出す 「おはよーシエスタ」 ……ルイズは……あら? 「……ルイズって呼んでくれないと起きない」 起きてるじゃない……しょうがない…… 「あ、じゃ俺も、キスしてくんないとおきないー」 ……サイトさんまで…… 「あ、じゃあ胸を……」 「二人ともおきなさぁぁぁぁい」 ……もぅ……ほっとくと直ぐに調子に乗る。 サイトさんは飛び起きたけど…… ルイズはじーっとわたしを見てる…… 「………」 「……ルイズ……朝ですよ…」 「うん、おはようシエスタ」 ……天使の笑顔……サイトさんよりルイズの方が良いかも。 ついそのまま口付ける。 「あ、ずっりーシエスタ、俺も俺もー」 「あーもう、サイトさん子供ですか……」 ……違うのは毎晩ルイズと一緒に良く知ってますけどね。 側まで寄って、頬に口を寄せる。 「えー俺も唇、唇」 ………二人とも、なんだかわたしと居るときは幼児退行してる気がします。 ルイズの魔法の成績は最近段々良くなってきたらしいし、 サイトさんも副隊長として、しっかり訓練しているのに…… 「何でお二人とも、ここではこうなのかしら……」 ふにょ、ふにょにょ 「きゃっ」 ルイズが後ろから胸を揉み上げる。 「なっ、ルイズっ……」 「だってぇ…シエスタに甘えるの……大好きなんだもん」 「だもんー」 ……ルイズはともかく……サイトさん……それはちょっと…… サイトさんも前から胸を揉む…… 「あの……二人とも……あっ……」 「まだちょっと時間あるわよね?サイト」 「まぁ無くても俺授業無いしな、ルイズ」 「……ふたりともー、何でこんなときばっかり息ピッタリー」 昨日の夜のまま……下着しかつけていない わたしも着々と同じ格好に……… 「ま、まってくださいっ、二人とも……朝、今っ朝ですよっ」 「……3日ぶりか?ルイズ?」 「4日よ……ね?」 あぁぁぁ…何時もながら…そんな頻繁に朝からこんな真似…… 「ま、ゆーっくり可愛がろうな、ルイズ」 「そうよねー、夜はわたしが苛められたしねー」 ね、根に持ってるー……抵抗は無駄だと悟りながら、 早めに起こした自分の判断の正しさを…… それとも……期待してたのかしら? 454 名前:3/3[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 02 21 50 ID 3rMZFeNi 授業が終わって、隊員がパラパラと集まり始める…… 「ギーシュ、遅いぞ」 「隊長と呼びたまえ、サイト」 「……隊長が最後のに来るなよ………」 「ふっ、甘いなサイトっ」 「?」 「真打は最後に……」 「良いから、並べっ!」 こいつは……まぁ、ルイズ経由でモンモンにビシッと言ってもらってから、訓練自体は堅く進むようになった…… 救護要員として隅に居るモンモンの視線も、ギーシュの真面目さに繋がっている。 アニエスさんに教わった剣を、今度は俺が皆に教える。 不満そうな奴も多かったけど、俺が教えた奴が、それなりの成果を上げると皆付いてくるようになった。 俺は魔法が使えないし、剣は……握るとレベルが違いすぎて練習にならない…… 暫く眺めると、いつも通り馬の訓練や一般常識を習う。 今日は馬だ……ギーシュに任せて元ルイズを走らせる…… 俺達の部屋の窓から、ルイズとシエスタが見える…… お、手を振ってる。 二人が並んで笑っているのは胸が温かくなる…… 本当は……俺にそんな資格無いのかもしれないけれど。 ルイズを最後まで信じきれなかった俺。シエスタの話を聞かなかった俺。 「相棒、なやんでんのか?」 「……いや……しあわせだなーって思ってたのさ」 デルフが後から話してくれたことは、俺を激しく打ちのめした。 「女ってこえーよなぁ……」 「……こないだのアレか?大変そうだったな、相棒」 ……姫さまにキスされて……ルイズが泣いたって……シエスタに折檻された… 一週間ルイズとシエスタに触るの禁止……あれはつらかった……一週間位大丈夫だろうと思ってたら、寝るときから朝まで拘束されて…… ルイズとシエスタは朝まで………3日くらいで泣いて頼んだけど…… きっちり一週間経つまで参加させてくれなかった…… 「いや……そーじゃなくてな、……それも怖いけどな」 「相棒が、これから気をつければ良いじゃねーか……」 「……そーか?」 「……正直あんなのは二度とゴメンだ……次は相棒に相談するよ」 「…最初からそうしてくれ……」 「……まったくだった、わりーな」 デルフはデルフで気を使っているようだ…… 「んで、結局どっちがいーんだ?」 ……前言撤回 「……なにが?」 「娘っ子とメイド」 「………」 「んー?きこえねーよ?相棒」 「………両方だってんだろーがっ!」 「はっはー、相棒あいっかわらず、てーしたもんだ」 「ふたりとも、かわいいんだからしょーがねーだろーがぁぁぁ」 周りに誰も居ない所まで馬を走らせたおかげで、思う存分俺は叫んだ。 「ルイズもシエスタもだいすきだぁぁぁぁぁぁぁ」 「おー相棒、もう一声」 「ふたりとも、きもちいーぞー」 「具体的にっ!」 「XXX?XX??XX???XXXX???」 「ちなみに、あそこで、誰か聞いてんぞー」 「かまうかぁぁぁ、って、えぇぇぇぇぇ」 同じく遠乗りに来たらしい学園の生徒の一団が居た。耳まで真っ赤になったまま、無言で立ち去っていった…… 「なぁ………」 「なんだー相棒」 「オレ、ルイズトシエスタニ、コロサレナイカ?」 「………ま、なるよーにならぁな」 このまま旅立ちたかったが……俺は……帰るべきところに向かうとした。 455 名前:261のひと[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 02 24 28 ID 3rMZFeNi 三者三様のラストです、痛いの書くの苦手なので、練習に〜と前スレの埋めに書いたのですが…… 結局こうなる……自分にはここの上手い人みたいに、えちぃのが上手にかけません…… もっと練習する……それはそれとして、読んでやってください。ではっ。
https://w.atwiki.jp/moejinro/pages/1825.html
3日目 あらぐむ 夜が明け、朝となりました。痛ましくも すもでんぱさん の無残な死体が見つかったようです すもでんぱ ニンジャー あらぐむ chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください あらぐむ 3日目の朝です 1 (もぐら村) あらぐむ -----------スタート-------------- 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ------会話STOP------- 1 (もぐら村) あかみさと ★占いCO★BBL● 1 (もぐら村) あかみさと ★占い理由★指定を促していたりCOもしっかり聞いており多弁目 人外なら厄介 初日なので占い理由もこの程度ですが・・・狼を引けました 1 (もぐら村) セイリオス あー・・・・ 1 (もぐら村) サイア あら 1 (もぐら村) BBL ●出す気はしたなあ 1 (もぐら村) ウツボン あー・・・ 1 (もぐら村) あかみさと 普通に狩が・・・指定まじですまんかった 1 (もぐら村) Jareky 狩だったのかな 1 (もぐら村) こんぶて サイア○ね 1 (もぐら村) xバーバラx あらら 1 (もぐら村) BBL 私にね 1 (もぐら村) すねすき おはいお 1 (もぐら村) こんぶて マクロに/ch1がついてなかったからちょいまちw 3 (天界部屋) すもでんぱ ちっすちっす 3 (天界部屋) あらぐむ すもさああああああああああああん 1 (もぐら村) BBL まあこんぶてさん真に見える要素あげておきますか 1 (もぐら村) サイア ●出てしまったらそのままつるしかないかなぁ (T) ワルノス > 早めに出る黒って 狂人からの狼へのアピールに見えますが 1 (もぐら村) こんぶて 占いの1COに対して他にCOがないか気にしているのはバーバラさんとサイアさんの2人 1 (もぐら村) BBL COはなしです 3 (天界部屋) シエスタBC おつおつ (T) ワルノス > 間違えました 1 (もぐら村) ウツボン すもさんが潜伏狂人だった可能性もまだありえる・・・・かな 3 (天界部屋) シエスタBC やだ 1 (もぐら村) すねすき サイアさんって役職か何かだったりするのかのん・・・? 3 (天界部屋) シエスタBC パンオに挟まれ 1 (もぐら村) サイア 今日の吊り決定でいい? 3 (天界部屋) シエスタBC こわい 1 (もぐら村) BBL こんぶてさんはあかみさとさんがCOした時にまっ先に攻撃してたんですよ 1 (もぐら村) こんぶて 狩人COがあったが多弁過ぎて狩人もないところで、俺のヘイトとってるところから逆に繋がりありそうに見えて村視点でも俺がここ占わないとめんどくさそう 3 (天界部屋) あらぐむ 安心するだろう? 1 (もぐら村) あかみさと 正直対抗は発言からも信用を投げ捨てているので吊られてもいい狂人目かなやっぱり 1 (もぐら村) ワルノス 早めにでた黒は狂人から狼へのメッセージに見えてしまうのですけど 3 (天界部屋) あらぐむ 屈強な肉体に挟まれて 1 (もぐら村) ウツボン BBLさんはそのままつりでいいんじゃないかな、明日まで霊媒生き残っていてくれ・・・! 1 (もぐら村) BBL 狂人っぽいCOだなと 1 (もぐら村) ワルノス 霊媒いると信じて吊る方針で? 1 (もぐら村) xバーバラx つってみますか 1 (もぐら村) サイア うん、ウチもこんぶてさんは狂人に映ってた 1 (もぐら村) すねすき 早めに吊った方がいいんでないかな 3 (天界部屋) シエスタBC トナカイと狼じゃないですか!やだー 1 (もぐら村) サイア しえたんが霊媒でないなら 1 (もぐら村) サイア まだ生きてるよ 1 (もぐら村) サイア 霊媒は 1 (もぐら村) リュファ すもさんの狩人COは偽者っぽかったですけど、まだ霊媒枠が空いているのに疑われやすい狩人名乗ったあたり、本物だったのかも・・・? 1 (もぐら村) サイア しえたんCO無し 1 (もぐら村) あかみさと んー、狼へのメッセージって言われても出たものは仕方ないんだよね 1 (もぐら村) サイア 霊媒ならCOしてもいい感じだったしね昨日 3 (天界部屋) あらぐむ でーんでーんでーん 1 (もぐら村) xバーバラx 霊媒ならCOしたでしょうね 1 (もぐら村) ワルノス そうですね 1 (もぐら村) BBL あの発言は自分は真占い師だったから偽占いの言動をぶらそうとしてたのでしょうね 1 (もぐら村) こんぶて 狩人は普通に真だろw 1 (もぐら村) ワルノス 失礼 1 (もぐら村) サイア 少なくとも明日まで霊媒が生きていてくれれば、あかみさとさんの正体は見えるかもしれん 1 (もぐら村) BBL 私してんの考察は異常です 1 (もぐら村) BBL 以上です 1 (もぐら村) Jareky 今日はBBLさん吊りに賛成です 1 (もぐら村) リュファ とりあえず、BBLさん吊ってみましょう。 1 (もぐら村) サイア ウチは村騙りの可能性もすこしかなっと 1 (もぐら村) BBL 先程も言いましたがCOは無いので問題無いです 1 (もぐら村) あかみさと まぁ即効叩いてきたのも狂人だからってので十分わかるけどね 1 (もぐら村) BBL 狂人なら素直に対抗で出るでしょう 1 (もぐら村) こんぶて w 1 (もぐら村) ウツボン すもさん素村で狩人霊媒保護の可能性もあるのか・・・ 1 (もぐら村) サイア こんぶてさんの話??BBLさん 1 (もぐら村) BBL それをしなかったのは本人の言うように狼がCOするのを待っていたのですよ 1 (もぐら村) あかみさと 途中まで様子見してたことから狼出るか待ってたんじゃないの? 1 (もぐら村) BBL です 1 (もぐら村) こんぶて まぁ狩人がいないからどうにもならんねーw 1 (もぐら村) ワルノス これで占い抜かれるのかなぁ潜伏狂人だったらいいなぁ 1 (もぐら村) サイア 最初の吊りでまとまらないと、占いが吊られる可能性あったよ。狐居ないんだし 1 (もぐら村) Jareky こんぶてさんが信頼ゲット放棄気味な態度に見えます 1 (もぐら村) サイア んま、でも確定でないので 1 (もぐら村) xバーバラx こんぶてさんのほうが信用低いかな 1 (もぐら村) BBL 私の序盤の発言全部こんぶてさんが真と見れる要素の話ね 1 (もぐら村) xバーバラx 霊媒の結果次第ですが 1 (もぐら村) こんぶて 明日噛まれるしどうにもならない 信頼とかすでにそういう問題じゃないw 1 (もぐら村) BBL あとでゆっくり読んでください 1 (もぐら村) サイア そういう目でウチは見てるだけで、とりあえず明日なんか見えるかもね。霊媒が生きていれば 1 (もぐら村) BBL だね 1 (もぐら村) サイア 今日霊媒を吊らない、喰われないでOK 1 (もぐら村) ワルノス 今日食べられるとアウトなんですよね 1 (もぐら村) あかみさと 霊は生きててくれるの願うしかない 1 (もぐら村) BBL こんぶてさん噛まれる 1 (もぐら村) サイア 生き残ってくれればいいなー 1 (もぐら村) すねすき んーむ 3 (天界部屋) シエスタBC こんぶてさんのあつかいなー 1 (もぐら村) サイア 狩りはいないと考えて今日霊媒COも危険だしなあ あらぐむ 残り時間2分です 1 (もぐら村) サイア もうちょい今後を考えてみようか 1 (もぐら村) ワルノス BBLさん白だったばあいも出るんですかね?霊媒 1 (もぐら村) xバーバラx 霊媒は明日でいいですね 3 (天界部屋) あらぐむ 右往左往右往左往 1 (もぐら村) ワルノス おまかせ? 1 (もぐら村) BBL だから村はサイアさん○という情報だけを頼りに推理してください 1 (もぐら村) Jareky 狩人フェイクなら占い護れる。だといいなあ 1 (もぐら村) すねすき 白でも黒でも、かなぁ 1 (もぐら村) サイア もし霊●だったらどしよかね 1 (もぐら村) Jareky それはあとで考える 3 (天界部屋) シエスタBC 少人数は結構役職残ること多いから 1 (もぐら村) サイア あと4吊りよ 1 (もぐら村) ワルノス 次に占い抜かれて情報がない絶望村へ 1 (もぐら村) こんぶて 霊●だったら楽でいいなぁ 1 (もぐら村) Jareky 夕方夜考えると言う意味です 3 (天界部屋) シエスタBC 逆にここ語られると怖いんよなぁ 1 (もぐら村) BBL 狼が霊媒を乗っとた場合はかなり大変ですが 1 (もぐら村) サイア もう占い決め打つのも必要なんで、狂人を同見るかで残すかどうかも決まるかな 1 (もぐら村) ウツボン 俺も白でも黒でも出てほしいかなあ・・・偽者を釣りだせる可能性もあるわけだし 1 (もぐら村) BBL 頑張ってください あらぐむ 残り時間あと1分です 3 (天界部屋) すもでんぱ 逆に占い抜かれた方が 1 (もぐら村) BBL 私からはこんなところです 1 (もぐら村) BBL こんぶてさん真なので信じてください 3 (天界部屋) すもでんぱ 開き直って潰せるからいいんじゃない? 1 (もぐら村) こんぶて 霊●だったら対抗噛まれて大団円 1 (もぐら村) こんぶて 期待しようぜw 1 (もぐら村) サイア はいな 3 (天界部屋) シエスタBC ほほー あらぐむ 残り時間あと30秒です 1 (もぐら村) サイア 考慮しときます 1 (もぐら村) ウツボン 一応狼のCO待ちも理由としては分からんでもない・・・けど・・・まぁ明日の結果待ちか 1 (もぐら村) サイア うん 1 (もぐら村) サイア まだ決めきれない 1 (もぐら村) xバーバラx 結果次第ですね 本当に 3 (天界部屋) シエスタBC 結局五分五分?かも? あらぐむ 日は落ちて、村人たちは今日の処刑者を決めなくてはいけません。 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ----会話可能時間です---- あらぐむ 各人は処刑する人の名をTELLでお願いします 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 1 (もぐら村) サイア 狂人に見せかけたしンとかもね 3 (天界部屋) すもでんぱ 霊2COなら (T) リュファ > BBLさん。 2 (狼がぶがぶ) セイリオス [゚Д゚] (T) ワルノス > BBLさんでお願いします 2 (狼がぶがぶ) すねすき |ω・)起きてるかー (T) ウツボン > BBLさんでお願いします 3 (天界部屋) すもでんぱ 占い狂人確定 (T) こんぶて > 投票 BBLさん (T) サイア > BBL さんに投票しまっす (T) Jareky > BBLさんに投票 2 (狼がぶがぶ) セイリオス 投票はBBLさんでいいとして 2 (狼がぶがぶ) セイリオス こんぶてさん素直にたべちゃう? (T) xバーバラx > BBLさんで 3 (天界部屋) シエスタBC なんでだろう・・ (T) あかみさと > BBLさんでー 3 (天界部屋) あらぐむ 黒だからぬ (T) セイリオス > BBLさんに投票します 2 (狼がぶがぶ) すねすき 2分の1だけども占い行っちゃうかなー 3 (天界部屋) シエスタBC あそっか 3 (天界部屋) シエスタBC そうだな (T) BBL > なんとなくJarekyさんに投票します 2 (狼がぶがぶ) セイリオス いやだってかみさとさん狂人ってわかっちゃったし 2 (狼がぶがぶ) すねすき うむ あらぐむ 残り時間あと1分です 2 (狼がぶがぶ) セイリオス 釈然としない・・・ (T) すねすき > あかみさとさんに投票 ちょっとした遊び心 BBL9 Jareky1 あかみさと1 あらぐむ 残り時間あと30秒です 2 (狼がぶがぶ) すねすき 狩人がどう動いているかのぅ 3 (天界部屋) すもでんぱ 占い抜いてくれればあとはローラーでも最終日まではもっていける 2 (狼がぶがぶ) セイリオス すもさんが本物だったかどうかだねえ 3 (天界部屋) シエスタBC その場合って あらぐむ 村人たちの話し合いにより BBLさん は処刑されてしまいました 3 (天界部屋) シエスタBC 高確率で殴りあいだよね? あらぐむ まもなく夜となり狼たちの時間です。各々狼に怯えつつも推理し、明日の昼へと備えましょう あらぐむ 役職の方はTELLをお願いします あらぐむ /chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください BBL ニャル子さんって名前的に猫娘的な何かだと思っていました 3 (天界部屋) すもでんぱ だね 3 (天界部屋) シエスタBC ふむー (T) リュファ > さてここが大事なところ・・・BBLさんの検死結果は? 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) すもでんぱ あれ 3 (天界部屋) すもでんぱ いらさい 3 (天界部屋) シエスタBC おつつ 2 (狼がぶがぶ) セイリオス こんぶてさんでいっかなあ 3 (天界部屋) BBL 早速トイレに (T) > リュファ 能力の結果、BBLさんは村人だったようです 2 (狼がぶがぶ) すねすき 占いチャレンジはしても良いかもと思ってる 3 (天界部屋) シエスタBC いってれ 3 (天界部屋) すもでんぱ なんでこんぶてさんまでこっち来てる? 3 (天界部屋) シエスタBC つーかさっきもいったじゃんw (T) リュファ > これは大変だ・・・ 2 (狼がぶがぶ) セイリオス いてみよう 2 (狼がぶがぶ) すねすき いってまえー 3 (天界部屋) シエスタBC チャットで動いちゃった? (T) セイリオス > こんぶてさんをはむはむしますー (T) サイア > ここで狼が全潜伏なら、明日霊媒x2が出る可能性があるのかー (T) こんぶて > バーバラさん占いますん 3 (天界部屋) シエスタBC でもそういうときって 3 (天界部屋) すもでんぱ かなあ 3 (天界部屋) シエスタBC 小刻みに動くよな 3 (天界部屋) すもでんぱ だねえ (T) > セイリオス たこやきなびこ! (T) サイア > 残り吊り4で2-2状態ってローラーもできんし、こりゃ出てくるよねやっぱ 3 (天界部屋) シエスタBC なぞいなw 3 (天界部屋) すもでんぱ もしくは誤クリック? 2 (狼がぶがぶ) セイリオス たこやきですって! 2 (狼がぶがぶ) すねすき まさかのサイアさんが霊媒だったりすると「むぐぅ」ってなる (T) > こんぶて 能力の結果、xバーバラxさんは村人だったようです 3 (天界部屋) シエスタBC あーそうかもなぁ 2 (狼がぶがぶ) すねすき たこやき たこ抜きでお願いしまする 2 (狼がぶがぶ) セイリオス ありえそうでgkbr 2 (狼がぶがぶ) セイリオス 明石焼き・・・? 3 (天界部屋) すもでんぱ サイアさん狼は無いような。 (T) サイア > ここで占いが抜かれる場合はまら楽なんかな あらぐむ 残り時間2分です 3 (天界部屋) シエスタBC まだなんともだなぁ 2 (狼がぶがぶ) すねすき ここだけの秘密 すねすきの離乳食はたこやきのたこ抜きだったそうな 3 (天界部屋) シエスタBC 明日の結果欲しい (T) サイア > 2-2で判定割れた場合は、やっぱ態度からこんぶてさんが最有力吊り候補になるだろうけど、狂人の可能性の方が大きいかなあ 2 (狼がぶがぶ) セイリオス [゚Д゚]!? 2 (狼がぶがぶ) すねすき みんなにはないしょだよ 3 (天界部屋) シエスタBC そしたらまだ会話の流れが紐付けできそうだけど 2 (狼がぶがぶ) セイリオス ウン 1 (もぐら村) サイア で、ごめんなさい。一回TELLくだされ 1 (もぐら村) サイア ごばく あらぐむ 残り時間あと1分です 2 (狼がぶがぶ) セイリオス ああ・・・・役職だ・・・・ (T) サイア > で、ごめんなさい。一回TELLくだされ 3 (天界部屋) シエスタBC 狼とか関係なく (T) > サイア てす (T) > サイア 役と勘違いされそうだ 3 (天界部屋) シエスタBC すねちゃまがステ気味なのが気になるかな 2 (狼がぶがぶ) すねすき むぐぅ あらぐむ 残り時間あと30秒です (T) サイア > やばー。喰われるかなあ 3 (天界部屋) BBL 戻りました 3 (天界部屋) すもでんぱ いつものことですw 3 (天界部屋) すもでんぱ おか 3 (天界部屋) シエスタBC あんま同じ村なったこと無いけど 3 (天界部屋) BBL なんとなくJareさん気になったけどどうだろう 3 (天界部屋) シエスタBC こういうかんじ? (T) サイア > 返信がさ、こんぶてさんになってて、何回かこんぶてさんにTELLしそうになってたんよ 3 (天界部屋) シエスタBC あ 3 (天界部屋) すもでんぱ こういう感じ 3 (天界部屋) シエスタBC いつものことらしいw 3 (天界部屋) BBL すねすきさんはいつも通りかと 2日目へ 4日目へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9176.html
前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia ルイズが多くの友の立会いの下で、失敗呪文改め爆発を起こす未知の超常能力の実験を済ませた、その次の日のこと。 「えい! やっ!」 早朝のトリステイン魔法学院の中庭に、シエスタの澄んだ、気合いのこもった掛け声が響いていた。 彼女は待ち合わせたディーキンと軽く雑談を楽しみ、パラディンとしての心構えを助言してもらった後、まずは素振りなどの基礎訓練を一通り済ませた。 そうして今はデルフを握り、彼に武器戦闘の手合せをしてもらっているのだ。 この時間にはルイズはまだ、寝床で夢の中である。 シエスタは両手で携えたデルフを様々な角度から振るい、自分の知る限りの技で懸命に攻撃を仕掛けた。 若い少女がこの大きさの剣を振るい続けられるだけでも大したものだが、剣技の方もそこそこ形になってはいる。 おそらく、そこらの平凡な傭兵に後れを取ることはないだろう。 だが、ディーキンは自分の体より大きい剣が唸りを上げて襲ってくるこの状況に、まるで脅威を感じていないようだ。 いつも通りの涼しい顔で、時折助言などを交えながら余裕を持って対処していた。 「ウーン、シエスタ。 ディーキンみたいに小さいのを相手にするときは、もう少し剣を低く構えて、小さく振った方がいいと思うの。 そんなに力んで剣を大きく振りかぶったら、振り下ろすより前に懐に入られて組み付かれるよ?」 足さばきだけでシエスタの攻撃を右へ左へとかいくぐり、立て続けに空を切らせる。 時には自分の武器を使って勢いのついた斬撃を軽く受け流し、またある時には小枝のように容易く打ち払う。 「……はあ、はあ……、は、はいっ!」 シエスタは息を切らせながらそう返事をすると、助言を考慮して剣を構え直し、また必死に打ち掛かっていく。 自分の半分ほどの背丈しかない相手に渾身の打撃をこうも軽々といなされていることに、彼女は内心舌を巻いていた。 もちろん、彼女には自分が『先生』と仰ぐディーキンが強いのであろうことは先刻承知していたが、実際にこうして相手をしてもらうと想像以上だった。 あの決闘の時、自分は歌の力で強くなった己に自惚れて、今の自分以上に強い剣の使い手などいないかもしれない、と考えた。 しかるに今、戦っているディーキンの力は、それを明らかに上回っている。 そのくらいは、シエスタにもわかった。 これまで自分の知っていた世界の、なんとちっぽけだったことか! 「ンー……、」 そうこうしてある程度つきあった後、ディーキンはシエスタが大分疲れてきたようだとみて、終わらせることにした。 彼女が幾度目かに仕掛けてきた渾身の唐竹割りを受け流さずにがっちりと受け止めると、そのまま力任せに勢いよく押し返す。 両手で握っていた武器を突然上に跳ね上げられたシエスタは、驚愕していた上に体勢を崩されて隙だらけになった。 ディーキンはその隙に素早く懐へ潜り込み、そのまま勢いよく彼女に体ごとぶつかっていく。 幼児のごとく小柄な体格からは信じられないほどの衝撃に、シエスタはひとたまりもなく吹き飛ばされてデルフを取り落とし、地面に転がった。 そのまま起き上がる暇もなくディーキンに体の上に押さえ込むように飛び乗られて、首元に小さいが鋭そうな爪をぴたりと突きつけられる。 「あっ……、ま、参りました……」 シエスタは一瞬呆然とした後、素直に負けを認めた。 それから、嬉しそうに微笑んで、自分の上から降りようとしていたディーキンを腕を伸ばしてぎゅっと抱き締めた。 「すごい! 先生、すごいです!」 もちろん、あっけなく負けたのは悔しいし、自分の未熟さを恥じる気持ちもあった。 だが今はそれよりも、敬愛する『先生』が自分が想像していたのにもまして強かったことを喜ぶ気持ちの方がずっと強かった。 「オオオ……? えへへ、そんなに抱き締められると、ディーキンは照れちゃうの。 でもシエスタは、こんなことして、痛くないの?」 「平気です。……あ、あの、先生。私、誰にでもこんなことする女ってわけじゃ、ないですから。 こ、これは、その、先生が、相手だから……」 シエスタはほんのり頬を染めて上体を起こすと、そのままディーキンに頬ずりをする。 確かにウロコに擦れて少し痛いが、そんなことは気にもならなかった。 胸の奥から湧き上がってくる暖かい感情に比べれば、僅かな肉体的な痛みなど些細な問題に過ぎない。 ……なにやら脇の方からぼそぼそと呟くような小さな声が虚しく響いたが、2人とも全然気にしていない。 それは先程吹っ飛ばされたデルフが少し離れた茂みの中から愚痴る声と、ディーキンが腰に下げたエンセリックの低く呟く声だった。 「……おい娘っ子、俺はどうなるんでえ。 おめーら爆発しろ……じゃなくて、いちゃいちゃしてるとこ悪いがよ、さっさと拾って泥を払ってくれよ」 「……羨ましい御身分ですね、コボルド君。 そんな可愛い娘さんを乱暴に押し倒しておいて、嬉しそうに抱き締め返してもらえるとは。 しかし、どうせ爬虫類の君では、柔らかい肌に包まれても十分には楽しめないでしょうし……。 ここはひとつ、私を君と御嬢さんの胸の間に挟むとか、そのくらいの気を利かせてくれてもいいのではありませんかね……」 「……ねえ、シエスタ」 「はい? 何でしょうか、先生」 「王都の方に、ディーキンが演奏できそうな場所はないかな? ディーキンはもっといろんな人に、歌とかお話とかを聞いてもらいたいんだけど……」 稽古が終わって、一通り身なりを整え直して後片付けを済ませた後、ディーキンはそうシエスタに聞いてみた。 なお自分とシエスタの朝の仕事は、稽古の間に、影術の《従者の群れ(サーヴァント・ホード)》で呼び出した見えざる従者たちが済ませておいてくれた。 今でも雑用なんかに呪文を使うのは勿体ないと思ってはいるが、こうして使ってみるとなかなかに便利であることは否定できなかった。 お陰で自分が仕事をする手間が省けて、その時間を別な作業に当てられるのだから。 「え? 演奏……、ですか?」 「そうなの。ディーキンは頑張ってどこででも演奏させてもらえるようにしたいけど、ルイズたちに迷惑はかけたくないからね。 ちっちゃなコボルドが演奏していても、文句を言われないような場所が、あったりしないかな? もちろん、無かったら無理にとは言わないけど……」 フェイルーンの普通の街なら、そんな都合のいい場所があると期待する方が間違っているだろう。 だがこのハルケギニアでは、あるいは単に運が良かっただけなのかも知れないが、召喚されて以来随分と良い扱いを受けられている。 だからちょっと欲張ってみる気になって、駄目元で彼女に聞いてみたのである。 ルイズらに聞いてもいいだろうが、街のことなら平民である彼女の方が詳しそうだ。 それに、なまじ権力のある貴族の少女たちに聞けば、あるいは気を遣って多少無理にでも力になってくれようとするかも知れない。 その結果彼女らの立場を悪くしたり、迷惑をかけてしまったりするようなことになるのは避けたい。 「……うーん、そうですね。 私としては、先生のような方ならどこででもすぐに受け入れられるとは思いますけど……」 そうはいっても、確かにいきなり受け入れてもらうのは難しいかも……、とはシエスタも考えた。 自分だって、初めて彼の姿を見た時にはぎょっとして、外見で危険な亜人と判断して果物ナイフに手をかけてしまったのだ。 人々を落ち着かせて話を聞いてもらうことはきっとできるとは思うけれど、上手くいかずに騒ぎが大きくなってしまう危険性も否定はできない。 そうなった場合にルイズや学院の教師たちに迷惑がかかることを、彼は懸念しているのだろう。 王都の広場ではたまに芸人や詩人が来て商売をしているが、そんな不特定多数の人が通りがかる場所ではいつ騒ぎが起きるかも知れない。 ディーキンが安全だと広く知られるまでの間は、誰か彼の身元や安全性を保障してくれる人物が管理している場所が必要だろう。 とはいえ、亜人が役所や衛兵にかけあう……などというのは現実的ではなさそうだ。 ヴァリエール家の令嬢である彼の主人が仲介すれば別かも知れないが、それはシエスタが判断や保証をできる話ではない。 そうなると、どこかにいい場所はあっただろうか? 「………あ」 しばし思案していたシエスタは、ふとある場所と、そこに住む自分に近しい人々のことを思い出した。 あそこなら、間違いなく彼を受け入れてくれるに違いない。 そうすることであの人たちが迷惑を被る事もないだろう、むしろ益になるはずだ。 「……ン? 本当に、どこかいい場所があるの?」 ディーキンが目を少し大きく見開いて、そう尋ねる。 シエスタの様子から、彼女が何かいい場所に思いあたったのを察したらしい。 彼女は微笑んで頷いた。 「ええ。私の叔父さんと従姉妹が、トリスタニアで居酒屋をやっているんです。 あの場所……、『魅惑の妖精』亭でしたら、先生を詩人として雇って、身分を保証してくれるはずですわ!」 それを聞いて、ディーキンはにこにこと顔を綻ばせ、手をこすり合わせた。 まさかシエスタの身内が王都で酒場を経営していたとは、何と素晴らしい偶然だろうか! 酒場は、バードが歌を披露するのにうってつけの場所のひとつだ。 そこでエンセリックが、横から口を挟む。 「ほう、酒場……? 『魅惑の妖精』亭ね。 名前からするときれいな女の子などがいそうな感じですが、そういう場所ですか?」 シエスタは少し頬を染めて、ちょっと困ったように視線を泳がせる。 「え……と、その、はい。 いえ、そんないかがわしいところではないのですけど、スカロン叔父様と従姉妹のジェシカは、その……、 私とは、ちょっと考えが違って。少し型破りで……、でも本当にみんな、とってもいい人たちですから!」 「ほほう、なるほど? いやいや、そのようなよい方々とは是非会ってみたいので、行くときは私も連れて行ってもらいたいですね」 そんなシエスタのちょっと不審な様子と、エンセリックのやや浮かれたような声とに首を傾げていたディーキンだったが、少し考えて頷いた。 「うん、ディーキンも、是非紹介して欲しいの。 ねえシエスタ、今夜一緒にトリスタニアまで行って、その人たちに紹介してもらえるかな?」 そうして二つ返事で了承してくれたシエスタとデルフにひとまず別れの挨拶をすると、ディーキンは満足したように笑みを浮かべて大きく伸びをした。 今日もまた、長く充実した、良い一日になりそうだ。 ディーキンはルイズを起こすべく、洗濯物を従者らに持たせると、水を汲んでから部屋へと戻っていった。 そしてその日の夜、シエスタと一緒に出かけたトリスタニアの『魅惑の妖精』亭で。 ディーキンはシエスタと同じ黒髪のアアシマールで、しかし彼女とは違って秩序の属性ではないらしいジェシカやスカロンに会って挨拶をした。 そして、毎日は無理でも、顔を出したときにはいつでも歓迎する、という言葉をもらうことができたのだった。 ちなみにエンセリックはというと、店で働く色とりどりのきわどい衣装を着た女の子たちを見て最初は喜んでいたようだったが……。 同じように露出が多く、型破りな姿と立ち居振る舞いをしたハーフオークのごとく逞しい中年男性のスカロン店長の姿を見てからは、口を噤んでいた。 生理的に、どうにも受け付けなかったらしい。 ディーキンとしてはユニークな恰好で面白いし、いい人だし、遥かにおぞましい外見の怪物なんて掃いて捨てるほどいるじゃないか、と思ったのだが。 まあ、怪物相手ならともかく、元人間のエンセリックだからこそ人間相手では受け付けない、ということもあるのかもしれない。 美しい少女たちが大勢いたにもかかわらず、次に来るときには私は連れてこなくていいですとまでいっていた。 さておき、この店でのディーキンの活躍ぶりは……。 それはまた、別の日のお話である。 前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2048.html
『――シエスタ。私の部屋にワインを持って来てくれ。ワインセラーの中にある、そう、少し奥にあるヴィンテージをだ。それを今日は飲みたい気分なんだ』 新しい雇い主は、彼女にそう命じると、書斎と思わしき部屋に入っていった。 シエスタは命じられた仕事に短く、はいと言って頭を下げた。地下室の鍵を受け取ると、そこにあるワインセラーから、主が望んだ一本を選び出し、それを氷を詰めた樽の中に入れようと薄い布地に包んだ。 主がこのワインを開けるのは、ずっと夜が深くなってからだろう。 ……そのとき、自分には、一体どんな運命が待っているのだろう。 彼女はぶるりと、体が震える。その震えを堪えるために、シエスタは、くっと唇を噛んだ。 痛さと苦さが、震えを紛らわせる唯一の術だったのだ。 暗く、寒いワインセラーから逃げるように出入り口に振り向いて、心臓が停まりそうになった。 忽然とドアの入り口に、誰かが立っていたからだ。 「シエスタ」 誰かは、愛おしそうに彼女の名前を呼ぶ。 「は……、伯爵様」 主が、暗がりにいる彼女に、微笑を浮かべていた。 「ここの生活は慣れたか?」 主は優しく問いかける。 「……はい。皆様に親切にしていただきましたので」 幾分か張り詰めた声で、シエスタは答えた。 なぜ主がこんな場所にいるのだろうと、彼女は考える。 「それは良い。私の屋敷にいる者に協調を軽んじる者は誰一人いないからね。……シエスタ、君も皆の助けになっておくれ」 優しい声で、主が言う。 「……かしこまりました」 それにシエスタは、深々と頭を下げ、応えた。 ……彼女の頬に掌が触れる。愛おしそうにシエスタの輪郭をなぞると、顎に触れた指が、シエスタの顔を持ち上げる。 主がいつの間にか、シエスタの正面に立っていた。 今ここにいるのは、シエスタと、主の二人だけなのだ。 主は目的があってここに来たのなら、それはとても分かりやすい状況だろう。 「シエスタ」 「……い、いけません。いけません伯爵様。お戯れは、お止めください……」 制止を願うシエスタの言葉など聞こえないように、指はシエスタの顔を上に向ける。その瞬間、シエスタの両目は、主人の視線と交わった。 指の動きが、止まる。時間が止まったように、彼女も、そして彼も、そのままの形で、止まった。 伯爵の顔が、徐々に近づいてくる。 目が逸らせずにいた。一瞬か。……或いは、それ以上か。 だが。 「誰だ?」 唇は重なる直前で停まり、凍りついた時間は、突然打ち破られた。 「……え?」 主が、シエスタの目を見つめたまま、問う。 「君の中に、誰がいる? シエスタ、君はいま、誰を想っている? 誰を願い、誰を望んでいる?」 「は、はく、しゃく、さま……」 主は、シエスタを見ていない。 否。 シエスタの瞳、いや、彼女の心、その奥底にいる、 誰か を見ている。 「誰だ。一体、シエスタ、その男は誰だ?」 「は、伯爵様。ご冗談はお止めください。私の、私の中には誰も――」 「嘘を吐くなあっ!」 彼女の心を見透かすような一喝に、体が竦む。 氷の入った樽を落した。頑丈なはずの樽はあっけなく留め具が外れバラバラになり、氷が撒き散らされた。 「シエスタ。君は私を望んでいない。私がいるべき場所に、す で に 誰か が 入 り 込 ん で いる」 ――、こ。 怖、い。 そう、彼女は思った。 彼女が使えるべき主は、先ほどは片鱗も見せなかった感情を、表に滲み出していた。 端的に言い表すなら。 「シエスタ! 君が欲しがっている人間は誰だ!? 一体誰が、私達の間を邪魔しようとしている!?」 それは、狂気だった。 彼女は恐れた。伯爵の眼光に、背筋を冷たい何かが通り抜けていった。 手に残ったワインを、シエスタは一層強く握り締めた。そうしなければ、全身を駆け巡る震えで、膝が折れてしまいそうだった。 「 ……認めない。 認めないぞ! シエスタ! 君は私のものだ! 私だけが蹂躙し! 私だけが搾取して良い対象だ!」 両手でシエスタの肩をがっしりと掴むと、主は声を荒げ。 「来い!」 いきなり彼女の腕を掴むと、主は乱暴に地下室のドアを押し開けた。 「……お、お待ちください! い、いったい!? ど、どちらに行かれるのです!?」 ぴたり、と、伯爵は動きを止めた。そこからゆっくりと目だけを動かすと。 「決まっているだろう。私の、私と、君の邪魔をする者の……、顔を、見に行くのだ」 酷く、冷たさを感じる声が、暗い地下室に響く。 掴まれた腕が、万力で挟まれたように痛んだ。 痛さと力で、引きずられるように、シエスタも部屋から出る。 そのときの主の横顔を、恐らくシエスタは忘れないだろう。 真横を向いたモット伯の顔……、その顔に、 右目が二つ あったなどと。 恐怖し、混乱した頭で、幻覚を見たのだと――、シエスタは、自分に言い聞かせた。 乱暴に腕を握られ、何度も足が縺れそうになったのを堪え、シエスタは主の書斎部屋まで駆け足で引っ張られていった。 ……一方、ブルドンネ街の路地から買い物を済ませて出てきたルイズ御一行は、城下町の入り口、馬を繋ぎ止めていた馬房へと戻って来ていた。 「なによ。まだ準備できないの?」 ルイズが、ジャイロにむすっとして言う。 ジャイロはそれを聞き流し、さっきまで過酷なレースにつきあってくれた老馬の足を、懸命に擦っていた。 「……駄目だな。筋肉が張ってる。もう少し休ませるか、歩いていかなきゃならねェ。無理させちまったらもうこいつはツブれかねねェな」 老馬はルイズとの競走で全力を使い果たし、帰路を駆けていく力は残っていなかった。 「……ったく、あんなことするからよ」 ルイズが不機嫌そうに言った。 彼女にとってみれば、さっきの競走は不毛の戦いだと思っているからだろう。 「しょーがねーだろ。おチ、……いやルイズ、才人と一緒に先に帰っててくれ。後から追いかけるからよ」 「しょーがねーな! そんじゃ相棒の相棒! 俺たちゃ先に帰ってるからよ! 道中気ーつけてな!」 ルイズの代わりに、さっき買ったインテリジェンスソードが勢いよく返事をした。 「サイト。その剣黙らせなさい」 さっきよりさらに不機嫌そうに、ルイズが命じる。 「えー。なんか面白いじゃん。こいつの話聞きながら帰ろーぜルイズ」 「そーだそーだ! 俺は話すぞ! なんたって俺の特技は斬ることと喋ることだからな!」 才人が柄と鞘を掴んでデルフリンガーの刀身を少しだけ抜き出している。そうすることで、デルフリンガーは調子よく喋れるようだった。 「柄と鞘を握った、その格好のままでいなさい。その状態なら馬の背から簡単に突き落とせるから」 ルイズが結構まぶたをピクピクさせながら、そんなことを言った。 「え? なにそれ? マジでやる気デスカ?」 棒読みで才人が反応する。 「ええ。馬が走り出してからおもむろにやるわ」 殺る気満々らしい。 「わかった。じゃあ柄から手を離す。それならこいつは喋れなくなるからいいだろ」 才人が折れた。 「相棒。哀しいね。ああそりゃもう哀しいね。いくら使い魔だからって、こんなことに屈服する相棒は見たかないね」 デルフリンガーが、そりゃもう哀愁漂う抑揚で言う。 「仕方が無いさデルフリンガー。しばしの別れだ。いざさらば」 才人が柄から手を離す。 デルフリンガーはストンと鞘の中に落っこちていった。 「まったく。これでうるさいのもいなくなったし、もう帰るわよ」 ルイズがやれやれといった感じで前を向きかけた。 「だが断る! ってんだよ娘っ子!」 鞘の中に落ちたはずのデルフリンガーの刀身が、収まっていなかった。 いや、才人の手に支えられているわけでもないのに、デルフリンガーは浮いている。 「すげえだろルイズ! この鞘、ワンタッチででっぱりが出るんだぜ! これを使えばいつでもデルフリンガーは会話可能だぜ!」 「俺と相棒のことを甘く見てたろ娘っ子! そうは問屋が卸さねえってんだ!」 はっはっは。と、どこかの一件落着したご隠居のように高笑いする一人と一振り。 ルイズは何も言わずに、そいつらを全力で突き落とす。 馬を走らせていないことを、わりと、本気で悔やんだ。 「……それじゃあジャイロ。わたし達は先に学院に帰っているからね。早く帰ってきなさいよ」 「わーってる」 「じゃーなジャイロ! 先帰ってるぜ!」 「相棒の相棒! あとでな!」 軽く嘶いた馬が勢い良く駆け出す。それをジャイロは少しの間見送ると、老馬の隣に腰を下ろした。 城下町の中心、高く聳える王宮を、ジャイロは見上げていた。 「……簡単には、帰れねーか」 諦めない気持ちは、確固たる信念として彼の心に、今もある。 だが……、時間は無常に過ぎていく。その現実に、彼は静かに息を吐いた。 「あー! こんなとこにいたのね。ハァイ、ジェントルメン。お一人ならエスコートしてくださらない?」 そう呼びかけられて、ジャイロは振り向く。 なにやら大きな荷物を抱えたキュルケと、その後ろで本を読みふけるタバサがいたのだった。 「なんだ。オメーらも買い物か?」 どうでもよさそうにジャイロは尋ねる。 「そんなこといっていいの? 誰のために買い物したと思ってるのよ」 少しふくれて、キュルケが言う。 「そんなことより、ねえ! これ見て! ゲルマニアの錬金術師シュペー卿の渾身の一作ですって! これだけの品は、なかなか手に入らないそうよ」 そう言いながら、キュルケは包みをするするとほどく。果たしてそこにあったのは、さっきまでジャイロ達がいた武器屋にあった、大剣だった。 「ほー。買ったのか。高い買い物だな」 そっけなく感想を言う。 「まーね。でもあたし、愛のためならお金を出し渋りしないの」 「値切った」 胸を張ったキュルケの後ろで、タバサがボソっと言った。 にわかに、城下町の雰囲気が慌しくなる。少し先の路地から、鐘の音が乱暴に鳴り響いた。 「なんだ? なんかあったのか?」 ジャイロが鐘の音に聞き耳を立てる。 「火事」 タバサが、そっけなくも的確に説明する。 「そーかい。火事は大変だな」 それだけ言うと、ジャイロは老馬に跨り、町の外へ鼻先を向けた。 「あれれー、帰っちゃうの?」 残念そうに、キュルケが言う。 「ああ。オレはもうここには用事はねーし、あとは帰るだけだ」 馬を気遣って休憩していただけで、馬の体力が戻ってきたら、帰り支度をするのは当然だった。 「……そう。それじゃあ、はいこれ。あたしからのプレゼント」 そう言って、キュルケはジャイロに剣を渡そうとするも、ジャイロは受け取らない。 「ニョホホホ、オレは剣は使わねーんだぜ。プレゼントなら、他にするんだな」 軽いノリでそう断ると、ジャイロはゆっくりと馬を進めた。 あとに残されたのは、剣を抱えたキュルケと、本を読みふけるタバサ。 「タバサ! 追いかけるわよ! すぐ準備お願いね!」 抱えた剣を餌に釣り上げるのは、才人のほうからだと、キュルケは判断する。 才人はルイズと帰路に着いているのだったが……。シルフィードの速度なら追いつける。 恋の炎は、益々燃え上がって留まる所を知らないキュルケであった。 城下町からゆっくりと帰るジャイロは、この城下町から続く平原の景色を黙って見ているだけだった。 恐らく、運命が違えば、一生見ることはなかったであろう風景。 それを、感動も、感嘆もなく、ただ視界に入るまま、見入るだけであった。 それよりも――、今、自分の世界は。 どうなっているのか。 どうなってしまったのか。 それが、どうしても知りたい。 知らなくてはいけない。 だが……、知ってしまったからと言って、……どうすればいいのか。 戻らなければならない。 帰らなければならない。 だが、その方法が、わからない。 もし、百歩譲って見つかったとしても。 ……間に合わなかったら、意味がない。 焦るのは当然。 憔悴するのは必然。 これが罰だというのなら、なんて辛苦を伴う償い方だろう。 ――焦るな。そして、諦めるな。 彼はそう信じる。 『正しい道』を進めば、必ず『光』が見えてくるはずだと。 オレの旅は、こんなところで終わるわけにはいかないんだと。 「オレはまだ……、何一つ、決着をつけちゃいねェんだ」 運命に絶望することなく、男は前を見つめる。 そうするしか、ないのだと決意して。 ……ふと、道の上に、何かが落ちていた。 大きな物体だ。一抱えありそうなほど、大きい。 岩だろうか、とジャイロは思った。 だが……、変だ。こんなものは、来る途中には無かったはずだ。 記憶を、思い返す。そこは、ジャイロがルイズと競走を始めた、スタート地点。 そこには、たしかに、そんなものはなかった。 いや……、あった。 あったのだ。確かに。 だが、それは地面に落ちていたものではなかった。 ルイズの愛馬につけられていた鞍――それは、絶対に、地面に落ちるものではないはずの、もの。 「逃げろ! 相棒の相棒!」 不意に、さっき聞いた声が、どこかから響いた。 「おい! 喋る剣か!? なんだ!? 何処にいる!?」 「いいから逃げろ! さっきのやつが来る!」 剣はジャイロに警告する。ルイズ達が、何者からか、攻撃されたことを。 そして、次は彼の番だと。 「なにがあった!? なんでおチビと才人がいねェ! こりゃ一体、どうなってやがる!」 「上だ!」 ジャイロが見上げた先に――、一羽の鳥が、ゆっくりと弧を描いていた。 しかし、それに彼が気付いたとき。 デルフリンガーの前から、彼も消え失せてしまっていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2024.html
「わあ…綺麗ですね、キラキラしてる」 シエスタがラグドリアン湖を見下ろして呟いた。 丘の上から見たラグドリアン湖は、陽光を反射し、ガラス粉をまいたようにきらりきらりと輝いている。 以前シルフィードの背から見た時よりも、ずっと綺麗な気がした。 シエスタ達は竜車を使ってラグドリアン湖にまでやってきた。 竜の力は凄まじい物で、今までシエスタが操った馬とは比べものにならないパワーとスピードを出して、籠を引いていた。 それなのに、道中は音も振動もあまり気にならない、よほど質の高い籠なのだろう。 モンモランシーとシエスタは、つくづくラ・ヴァリエール家の力を思い知らされた気分だった。 水辺に近づくと、竜車はゆっくりと動きを止めた。 少し間をおいて御者が扉をノックし、静かに車の扉を開かれた。 カリーヌが「行きましょう」と呟いて馬車を降り、モンモランシーが降り、シエスタが最後に降りた。 ちらりと御者の顔を覗くと、なるほどゴーレムというのも納得がいく、近くでみるとその顔は「肌色」ではなく「陶器に塗りつけたような肌色」をしているのだ。 ゴーレムはシエスタが降りたのを確認すると、扉を閉めて御者の席に戻る。 シエスタは「へー」と呟いて一人感心していた。 「間近で見ると、本当に綺麗な湖ですね……青く、深く澄んでいる湖なんて、見るのは初めてです」 シエスタが湖面に手を当てて、水を手ですくい取る。 手に絡みつく水の感触は、何か神秘的な力が籠もっているように思えた。 「この湖に来るのは何年ぶりかしら、園遊会以来だから…三年前…ですわね」 カリーヌは湖面を見つめ、懐かしそうに目を細める。 三年前、ラグドリアン湖で園遊会が開かれた、それは太后マリアンヌの誕生日を祝うためのもので、各国の重鎮、高名な貴族達が招かれた盛大なものだった。 噂では、女王アンリエッタとウェールズ皇太子が出会ったのも、その園遊会だったと囁かれている。 あの時、ルイズが何をしていたのか、カリーヌはよく覚えていた。 園遊会の夜アンリエッタに呼ばれ、遊び相手を務めていたルイズ。 実際にはアンリエッタが羽を伸ばすため、影武者として呼ばれていたのだと何となく気づいていた。 魔法が使えないと言われていたルイズが、唯一心を開いていた遊び相手、それが当時のアンリエッタだった。 以前、太后マリアンヌはカリーヌ・デジレに、個人的に礼を言われたことがある。 ルイズは、王女として生まれ、「お飾り」と「カリスマ」の板挟みにあっていたアンリエッタの心の支えになってくれたと。 あの園遊会の日、何年ぶりかで再開したルイズとアンリエッタの、子供の頃と変わらぬ微笑みが思い浮かぶ。 カリーヌは過去に思いを馳せ、静かに湖面を見つめていた。 無言で湖面を見つめているカリーヌの隣で、モンモランシーもまた、じっと湖面を見つめていた。 だが、なにか気になることがあるのか、首をひねって「うーん…」と小さく唸る。 「どうしたんですか?」 シエスタが訪ねると、モンモランシーは湖面を見つめたまま答える。 「ヘンね…。 ラグドリアン湖の水位があがってるわ。岸辺はもっと、ずっと向こうだったはずよ」 「ほんとですか?」 「ええ。ほら見て。あそこに屋根が出てる。村が飲まれてしまったみたいね」 モンモランシーが指差す先には、藁葺きの屋根が見えた。 シエスタが湖の中をまじまじと見つめる、すると澄んだ水面の下に家らしき建物が沈んでいることに気づいた。 モンモランシーは波打ち際に近づき、指先で水面に触れた。 目を閉じてしばらくしすると、不意に立ち上がり、困ったように首をかしげた。 「あの噂通りよ、水の精霊はずいぶん怒っているみたい」 「今のは?」 シエスタが問うと、モンモランシーは右手の人差し指をピンと立ててシエスタに見せつけた。 「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。前にも言ったとおり、古い盟約で結ばれているトリステイン王家と水の精霊……その交渉役をモンモランシ家が代々努めてたの。水に触れれば感情が流れ込んでくるわ」 「へえー…」 シエスタが身をかがめて、水面に手を触れる。 「あ、波紋は止めておいた方がいいわ、水の精霊にどんな影響があるかわからないもの」 「あっ。そうですね。すみません…」 シエスタが慌てて手を引っ込めて謝る、モンモランシーはシエスタの仕草にくすりと笑って、再度湖面を見つめた。 不意に、湖面を見つめていたカリーヌが後ろを振り向く。 木の陰から三人を見つめている者が、カリーヌの視線に射竦められびくりと体を震わせた。 だが、カリーヌも殺気を感じたわけではないので、興味なさそうに湖面へと視線を戻した。 それに安堵したのか、木の陰にいた初老の農夫は、意を決して三人に声をかけた。 「もし、貴族のご婦人様方でございますか」 シエスタとモンモランシーが振り向くと、初老の農夫は、困ったような顔で一行を見つめていた。 「そうだけど…何かしら?」 モンモランシーが尋ねると、農夫は地面に膝を突いて、手に持った帽子を足下に置いた。 「水の精霊との交渉に参られたかたがたで? でしたら、はやいとこ、この水をなんとかして欲しいもんで…」 一行が顔を見合わせる。 困ったような口ぶりからすると、この農夫は湖に沈んでしまった村の住人だと想像できる。 「わたしたちは、その……」 この大変な時期に、秘薬の元となる、水の精霊の涙を取りに来たとは言いづらい。 モンモランシーが口ごもりそうになったところで、カリーヌがすっと前に出た。 「残念ながら王宮からの命を受けた者ではありません。水の精霊を怒らせた者がいると聞きましたが、知っていることを離して頂けますか」 カリーヌの言葉は丁寧さの中にも、威圧感を感じる。 農夫はカクカクと首を縦に振り、ラグドリアン湖で起こったことを話した。 農夫の話では、ラグドリアン湖の増水が始まったのは二年前だという。 船着き場が沈んでから、湖面に近かった寺院、畑、住居が沈むのはすぐだったと言う。 「領主はこのことを知ってるの?」 モンモランシーが聞くと、涙ながらに農夫が答える。 「領主さまも女王さまも、今はアルビオンとの戦争にかかりっきりでごぜえます。こんな辺境の村など相手にもしてくれませんわい。畑を取られたわしらが、どんなに苦しいのか想像もつかんのでしょうな……」 よよよと農夫が泣き崩れたが、涙を流しているようには見えない。 どちらかというと愚痴をこぼすようなしゃべり方で、今度は水の精霊への恨み言を言い始めた。 「水の精霊が人間に悪さをしてるんですわ。湖の底に沈んでおればいいものを……。どうして今になって陸に興味を示すのか聞いてみたいもんでさ!水辺からこっちは人間さまの土地だって…の…に………」 農夫の声が切れ切れになる。 シエスタとモンモランシーは、頭に?を浮かべた。 農夫の顔から血の気が引いていき、手がプルプルと震え出す。 「言いたいことはそれだけですか」 カリーヌが静かに呟いた。 カリーヌの刺すような視線に射竦められた農夫は、「へへぇ」と平伏すると、まるで逃げるように立ち去っていった。 モンモランシーは、改めてカリーヌの恐ろしさを知った気がした。 懇願ならともかく、愚痴を聞かされて気分の良い物ではないが、愚痴を言っただけでカリーヌの鋭い視線に晒されると思うと、冷や汗が吹き出そうになる。 シエスタはカリーヌを怖いと思わなかったが、とっつきにくそうな人だなと、改めて感じた。 モンモランシーが気を取り直し、腰にさげた袋からなにかを取り出した。 「…カエル、ですか?」 手のひらをのぞき込んだシエスタが呟く。 シエスタの見たとおり、モンモランシーの左手に乗っているのは一匹の小さなカエル。 鮮やかな黄色に、黒い斑点がいくつも散っている。 「ロビンって言うの、私の大事な使い魔よ」 ロビンと呼ばれたカエルは、モンモランシーの手のひらの上で、まっすぐにモンモランシーを見つめていた。 モンモランシーは右手の人差し指を立てて、ロビンに命令する。 「いいこと? ロビン。あなたたちの古いおともだちと、連絡が取りたいの」 モンモランシーはポケットから針を取り出し、片手で器用に指の先を突く。 指先に赤い血の玉が膨れ上がると、その血を一滴ロビンに垂らした。 小声でルーンを唱え指先の傷を治すと、残った血をぺろっと舐めて、再びカエルに顔を近づけた。 「私の臭いを覚えていれば、これで解ると思うわ。ロビン、偉い精霊、旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだいね。わかった?」 ロビンはぴょこんと頷くような仕草をすると、ぴょんと大きく飛び跳ねて、水の中へと消えていった。 モンモランシーがシエスタとカリーヌの方に向き直り、口を開く。 「今、ロビンが水の精霊を呼びに行ったわ。見つかったら、連れてきてくれるでしょう」 シエスタがモンモランシーの隣に立ち、湖面を見つめる。 「この中に水の精霊がいるんですよね…どんな姿をしてるのか、ちょっとドキドキしますね」 「水の精霊は人間よりもずっと、ずーっと長く生きている存在よ。六千年前に始祖ブリミルがハルケギニアに光臨した際には、すでに存在していたというわ。その体は、まるで水のように自在にかたちを変えて、陽光を受けるとキラキラと七色に輝き…」 と、そこまで口にした瞬間、30メイルほど離れた水面がぼんやりと光り輝き始めた。 岸辺からそれを見つめていると、輝きはどんどんと増していき、まばゆい光が水面から放たれる。 水面はまるで意志を持ったかのように蠢き、巨大な水滴が空に向かって落ちるような、幻想的な光景となっていった。 シエスタはあっけにとられ、口を半開きにしたままその様子を見つめていた。 盛り上がった水は、うねうねと様々な形に変わっていく、巨大な粘菌とでも呼ぶべきだろうか、陽光を取り込み七色に光るその姿は確かに綺麗だが、形そのものは怖い気もした。 湖面から顔を出したロビンが、ぴょんぴょんと跳ねてモンモランシーの元に戻る。 しゃがんで手をかざしロビンを迎え、指で頭を撫でてやると、ロビンは嬉しそうにゲコッと鳴いた。 「ありがとう。きちんと連れてきてくれたのね」 モンモランシーは立ち上がり、水の精霊に向けて両手を広げ、声をかけた。 「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系。 カエルにつけた血に覚えはおありかしら。覚えていたら、わたしたちにわかるやりかたと言葉で返事をしてちょうだい」 水の固まりのような、水の精霊がぐねぐねと蠢き、人間のような形を取り始める。 その動きをじっと見ていたシエスタは、驚きのあまり目を丸くした。 水の塊は、モンモランシーにそっくりな姿を取ったのだ。 モンモランシーそっくりな水の固まりは、表情をころころと変えていく。 笑顔、怒り、泣き顔……それはまるで表情を試すような動きだった。 表情が一巡すると、水の固まりは無表情になって、体全体を奮わせて声を出した。 「覚えている。単なる者よ。覚えている。太陽よ。貴様の体を流れる液体を、貴様の体を流れる太陽の波を、我は覚えている……」 「太陽? と、とにかく、私のことは覚えていてくれたのよね?」 モンモランシーが内心の焦りを隠しきれず、ついつい強い調子で質問してしまう。 だが水の精霊は無表情のまま「覚えている。単なる者よ」と繰り返しただけだった。 「……コホン。…水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部をわけて欲しいの」 水の精霊は、表情を変えずに声を出した。 「断る、単なる者よ」 「そんな!」 モンモランシーが思わず声を上げた、心なしかカリーヌの眉がぴくりと動いた気もする。 シエスタはモンモランシーの隣に並んで、胸の前で両手を合わせて握りしめ、水の精霊に向かって叫んだ。 「お願いです… ある人を助けるために必要なんです!」 「ちょっ…!やめなさいよ! 怒らせたらまずいわよ!」 モンモランシーはシエスタを後ろに下がらせようとしたが、シエスタはひるまず真っ直ぐに水の精霊を見つめている。 「お願いします!何でも言うことを聞きます。だから『水の精霊の涙』をわけて頂けませんか? どうか、どうかお願いします……」 モンモランシーの姿をした水の精霊は、なにも返事をしなかった。 シエスタは膝をつくと、地面に頭をこすりつけるほど下げて、まるで土下座のような格好で水の精霊に言った。 「お願いです…! 私は恩人に報いたいんです! ルイズ様にとって大切な人は、私にとっても大事な人なんです…、『水の精霊の涙』がどうしても必要なんです! だから…」 シエスタの必死の懇願を見て、モンモランシーはシエスタを制止しようとしていた手を止めた。 シエスタにとって、ルイズはそんなに大事な人だったのか? モンモランシーにも、ルイズをバカにしている気持ちはあった、だがフーケを追って死んだ級友は、ある意味で誇り高いとも言える。 だが、ルイズを茶化す気持ちは、ゼロのルイズをバカにする気持ちは、心の何処かに残っていた。 シエスタは、ルイズを恩人だと言っていたが、これ程までにルイズに心酔しているとは思わなかった。 カトレアを治すために土下座までするとは思っても居なかった。 もしかしたら、ラ・ヴァリエールからの援助を受けるため、オールド・オスマンが指示した行動かも知れない。 シエスタの行動は芝居かも知れない…… けれども、今この場で、水の精霊を恐れず懇願するシエスタの姿に、少なからず衝撃を受けた。 モンモランシーは水の精霊に向き直り、自分からももう一度頼んでみようと意を決した。 だが水の精霊は、突然ふるふると震えだし、姿かたちを何度も変えた。 うねうねと形を変え、モンモランシーの姿から、見たこともない女性の姿に変わった。 それはとても美しく、凛々しい女性の姿であったが、シエスタにとっては何処か懐かしい女性のような気がしてならなかった。 「よかろう……しかし、条件がある。世の理を知らぬ単なる者よ。何でもすると申したな?」 「はい、いいました」 いつの間にか顔を上げていたシエスタが、水の精霊を見上げて返事をする。 「ならば条件を出そう。我に仇なす貴様らの同胞を退治してみせよ。」 シエスタとモンモランシーは顔を見合わせ、呟いた。 「「退治?」」 「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ…。そのもの共を退治すれば、望みどおり我の一部を渡そう」 要は、水の精霊を相手にするようなメイジと戦って、勝てと言っているのだ。 モンモランシーの額に冷や汗が浮かんだ。 「…………やるしかない、わよね」 「そうです、ね」 二人は顔を見合わせて、苦笑した。 水の精霊が住む場所は、はるか湖底の奥深くだと言われている。 襲撃者は夜になるとやって来て、魔法を使い水の中に侵入、水の精霊を襲撃する。 水の精霊によれば、襲撃者が来るのはガリア側の岸辺だという。 シエスタとモンモランシーの二人はガリア側の岸辺に隠れて、襲撃者を待つはずだった。 だが二人は、トリステイン側の岸辺に停められた竜車の中で、寂しく夕食を取っていた。 カリーヌは客人を危険な目に遭わせられないと言って、単独でガリア側の岸辺に向かったのだ。 どこからか調達したバスケット一杯のサンドイッチを渡されたが、食欲が湧かないのか中身はほとんど減っていない。 この竜車は、緊急時の外泊を考えられており、椅子を引き出すとシエスタとモンモランシーが寝るには十分な広さのベッドになる。 貴族の馬車という寄り、軍人の馬車と言うべき設備だった。 「…大丈夫なんでしょうか」 「あんなに強く『一人で行きます』なんて言われたら断れないわよ」 シエスタは、一人でガリア側の岸部に向かったカリーヌを案じて、車の窓から外を見渡した。 ルイズが魔法で爆発を起こし、土くれのフーケごと木っ端微塵に吹き飛んだと言われているあの日も、こんな夜だったかもしれない… シエスタの胸に、ルイズへの憧れと、石仮面への恐れが去来した。 カリーヌ・デジレは、持参した軍服に着替え、木の上に座り瞑想していた。 マンティコア隊の服ではなく、それよりもっと昔、まだ魔法衛士隊に入隊する前の服だった。 ルイズと同じぐらいの年代、16の頃だっただろうか、その頃から魔法衛士への憧れがあった。 カリーヌは静かに過去を思い出し、静かに微笑んだ。 それから一時間ほど経った頃だろうか、岸辺に近づく人の気配に気づき、薄目を空けてそれを視認した。 人数は二人、漆黒のローブを身にまとい深くフードをかぶっている。 男か女かもわからないが、その二人は水辺に立つと杖を抜きルーンを唱えていたので、襲撃者には間違いなさそうだった。 カリーヌは小声でレビテーションを唱え、ゆっくり着地する。 ローブを身に纏った二人組は、硬直したように動きを止めた。 「!」 襲撃者の一人が杖を掲げる、と同時に空中に作られた炎がカリーヌを襲う。 同時に、もう一人の襲撃者が距離を取りつつルーンを詠唱し、地面に『エア・ハンマー』が打ち込まれた。 土が跳ね上がり、カリーヌの視界が塞がれる。 無数の炎の玉が作り出され、雨のようにカリーヌの頭上を覆う。 氷の刃が竜巻のようにカリーヌを包み、その肉を引きちぎり骨を砕く。 ……はずだった。 ギュン!と音がして周囲の空気が圧縮され、土煙と氷と炎は一つの固まりとなった。 無数の魔法に晒されたはずのカリーヌはまったくの無傷であり、土埃の汚れ一つとして無い。 カリーヌは直立不動のまま、右手に持った杖に力を込め、ルーンを詠唱する。 ただ「風を起こせ」という意味のルーンであり、風系統ではもっとも初歩のもの。 それはまるで、鉄砲水のような粘りを持った風となり、遠く上空で待機していた風竜を巻き込んで、襲撃者二人の体を巻き上げた。 空中で竜巻に飲まれた二人の手から、杖が離れる。 150サントはありそうな大きな杖と、20サント程度の小さな杖が風に乗ってカリーヌの手元に届けられた。 カリーヌは、腰から下げたロープを空中に放り投げると、風に乗せて宙に舞わせた。 ロープは風に乗って襲撃者の両手両足に絡みつき、その動きを封じる。 そして襲撃者の二人はゆっくりと地面に降ろされ、風竜は目を回して地面に倒れ込んだ。 『烈風』の異名を持つ彼女は、感情の読めぬ冷たい瞳で、襲撃者を見下ろしていた… To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/3861.html
251 名前:黒い蜘蛛の糸 1/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 19 35 ID lmkgam+I サイトは喜んでくれるだろうか? おかしいと思い始めたのは数週間前。 モンモランシーに相談したら、 「……あんたもか…………少し前に沢山用意したのがあるから、コレ使いなさい」 そう言って、魔法役を一瓶くれた。 怖くて怖くて仕方が無かった。 でも知らないままに日常を過ごせるほど、わたしの心は強くない。 笑いながら薬を渡してくれたモンモランシーが教えてくれた、魔法薬の使い方。 指先を少しだけ切って、にじみ出る血をハンカチに垂らす。 その血に魔法薬を浸して、数分待つ。 それだけ。 自分の部屋に閉じこもって、部屋の隅で指先のじくじくした痛みに耐えながらじっと見つめる。 赤く滲んでいた血が、鮮やかな蒼に変わる。 「……あ……」 陽性……だ。 ウェストウッドのティファニアの家で、 帰りの船の中で、 この部屋で、 何度も重ねたサイトとの行為。 その結果。 「…………モンモランシーにお願いしないと……」 今度のお願いを聞いたモンモランシーは怒って……怒って…… 何度もお願いするまで、お薬をくれなかった。 モンモランシーは優しい。 ……それでも……引けないわたしは、一生懸命お願いして…… ――『保険』を手に入れた。 252 名前:黒い蜘蛛の糸 2/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 20 09 ID lmkgam+I ルイズのバカ。 一度目の薬は良い。 出征前の思い出に、 死ぬかもしれない恋人に捧げたくて、 今生かもしれない別れに、ただひたすらに肌を重ねて。 自分を安売りして、数ヵ月後に青くなった娘は沢山居た。 ……わたしだって、ギーシュがせまって来たら分からなかった。 側に居なくなってから、こんなことならと何度思ったか分からない。 だから欲しがる子には無料で分けてあげた。 わたしが出来なかったことをした、勇気を出した女の子がその後も怯え続けるのに納得が行かなかったから。 ほっとした子も居た、覚悟を決めた子も居た。 でも、一つだけ納得行かない道があった。 「どうしてこんな薬を欲しがるの?」 需要は有った、それでも渡すのに躊躇が無かったわけじゃない。 コレは毒薬だ。 飲めば人が一人死ぬ。 相手の戦死の報が届いて思い出すのも辛くなった、身体が弱くて母体がもたない。 ――もっと、ずっと、単純に、心が弱い。 この子はそのどれとも違うはずだった。 「……サイトは……いつか居なくなるから」 「この世界にサイトを繋ぎとめるわけにはいかないから」 何度も何度も繰り返されるルイズの言葉に、 「……使うのは最後の最後にしなさい」 わたしは折れた。 「……ん」 ルイズの微笑みは、きっとずっと忘れない。 ――こんな事を繰り返すわたしは、いつかきっと地獄に落ちると思う。 253 名前:黒い蜘蛛の糸 3/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 20 43 ID lmkgam+I もしも……喜んでくれるなら…… 本当はとても怖いけれど、モンモランシーと約束したから。 渡したくないお薬を、嫌々ながらもわたしを信じて渡してくれたモンモランシーに報いるために。 「サイトに……一言だけでも……」 拒絶されるのが怖かった。 邪魔だって、重い女だって、抱くんじゃ無かったって。 そんな風に思われるのが嫌だった。 「……き、嫌われたら……」 サイトはいつか帰るつもりだと思うし、サイトを助けるのはわたしじゃなくても良い。 姫さまは喜んで手を貸すだろうし、サイトとわたしを守ってくれたタバサも、最近はよく一緒に居る。 チクンと、胸の奥が痛む。 わたしはサイトじゃないと嫌だけど、サイトはわたしじゃなくても…… 分かってる、わたしはわがままだし、サイトに何度も暴力を振るった。 わたしの所為でサイトは何度も死にかけたし、心臓だって一度止まった。 ……胸だって、シエスタや姫さまより小さい。 サイトの事を思ったら、身を引いたほうがサイトは幸せかもしれない。 「……離れたくないよぅ……」 小さな小さな願い。 サイトが側に居ない世界が、どんなに辛いのか、今のわたしは知っている。 二度と耐えられそうに無いから、サイトがわたしを求めてくれた時は嬉しかった。 抱きしめられた時は二度と離れないと思った。 ……でも…… 「わ、わたしが……わたしが居ることが……サイトの邪魔になるかもしれない」 ――そして、この子が。 サイトに言わない方がいいのかも知れない。 最初はそのつもりだった。 でも……モンモランシーが…… ……ううん……嘘だ。 本当は……そんな事無いって、あるはず無いって分かっていても、 「サイトに……祝福して欲しい」 優しいモンモランシーは、わたしにきっかけをくれたんだ。 254 名前:黒い蜘蛛の糸 4/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 21 15 ID lmkgam+I 「サ、サイト……時間……いい?」 「ん? ……まだ日が高いのに……積極的だな、ルイズ」 「っっっ、ち、違うのっ、お願い……聞いて」 誰も居なくなった騎士隊の隊舎でサイトをつかまえた。 部屋に戻ってくるのは待てない。 部屋で言うと……泣く所が無くなるから。 「なんだ?」 穏やかなサイトの目がわたしを捉える。 サイトが話を聞こうとしてくれる、こんな時間がわたしは好きだ。 ……でも、今日はいつも違って辛かった。 この目が……次に浮かべるのはどんな色なんだろう? 「あの……ね、あのね……サイト」 悲鳴を上げている心が、干上がった喉を通して聞きたくない音をたてている。 わたしの本気を感じてくれたサイトが、真面目な顔で話を聞いてくれる。 ……やさしいのね、サイト。 「あ、…………あ……」 次の言葉がどうしても出ない。 もし、 『俺の子か?』 とか言われたら? ううん、冷めた目で一瞥されるだけで、わたしの心は砕けそう。 「ん?」 サイトが優しく続きを促す。 ……いつまで優しくしてくれるんだろう? 話をそらしたい、そんなことまで考える。 ……怖い。 でも……今は逃げちゃだめだ。 「……赤ちゃん……できたみたい……なの」 255 名前:黒い蜘蛛の糸 5/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 21 49 ID lmkgam+I 怖くて目が開けられない。 一息に言った後、硬く目を瞑ったまま、ひたすらサイトの反応を待つ。 静まり返る部屋に、サイトの足音だけが響く。 ……だめ……だ、きっとだめだったんだ。 目を開いたら、きっとサイトの冷たい目がわたしを見ているんだ。 「ご、ごめんなさいっ、だ、大丈夫だからっ、ほらっ、モンモランシーに堕胎薬貰ったから。 サイトの邪魔にならないからっ、す、すぐに飲むからっ」 目を閉じたまま、隠し持っていた薬を飲もうとした手が、 力強い腕に抱きすくめられる。 「おめでとう……いや……ありがとうか? ルイズ」 「ふぇ?」 「うれしいよ」 「……え?」 これはきっと夢。 「お父さんになる訳だな、俺」 「……い、いいの?」 「ん? 何が?」 「産んでも……邪魔になっても……いいの?」 ……ほんの少しの希望を込めて。 「なんで? 何が邪魔なの?」 「……だって……帰る時に……」 「いや、帰らねーよ、ルイズがここに居るのに」 聞き間違いだと思った、だってこんなに幸せなのは有り得ないから。 「ずっと側に居るよ、ルイズ」 この夢は覚めなかった。 256 名前:黒い蜘蛛の糸 6/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 22 31 ID lmkgam+I 「いやー、しかし俺、ルイズパパに殺されるなー」 サイトが笑う。 「だ、大丈夫! 父さまはわたしが説得するからっ、父さまだって初孫だし、 姉さまは二人とも難しいし、ほ、ほらっ、未来の公爵よ、わたし達の子供って」 まだ男の子か女の子か分からないのに。 先の見えない未来の話が、こんなに楽しいのは始めて。 「……ずっと、一緒だな、ルイズ」 「……そそそ、そうねっ、こ、子供が出来ちゃったんですもの、仕方ないわ」 本当は凄く嬉しいのに、バカなわたしはこんな時でも素直に成れない。 「仕方ないのか」 サイトが笑ってわたしを抱きしめる。 優しくギュってしてくれる腕が、『分かっているよ』と語り掛ける。 それが凄く恥ずかしくって。 「わ、わたしっ、モンモランシーに報告に行ってくるっ!」 お礼も言わなくちゃ。 駆け出そうとするわたしを、サイトが呼び止めた。 「ルイズ、その薬は置いていけ、お前走るとその辺の物飲み干すだろ?」 「そ、そんな事しないわよっ」 「一回したからっ、いいから置いていきなさい……お母さん」 「そっ……なっ……う…………はい」 わたし……これからサイトに勝てないかもしれない。 257 名前:黒い蜘蛛の糸 7/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 23 06 ID lmkgam+I 「未来の公爵……か」 手の中の小瓶にしっかりと蓋をする。 面白いおもちゃが手に入った。 「……お、おめでとうございます……サイト……さん」 カーテンの陰に隠れていたシエスタが、真っ青な顔で、それでも俺達を…… 俺とルイズを祝福する。 気丈な事だ。 「その子の、弟かな? 妹かな?」 降臨祭の夜に、七回にわたって流し込んだ精はシエスタの胎内でしっかりと息づいていた。 「……ど、どうしましょう……」 シエスタがルイズを大切に思っているのは知っていた。 妊娠が発覚しても、サイトに知らせると同時にミス・ヴァリエールには自分で知らせると…… せめてけじめを付けさせてくれと、涙ながらに頼んだ彼女を思い出す。 ……少し面白くなかった。 「シエスタ、まだ言っていないんだよな?」 「……ご、ごめんなさい」 そんな方法などあるはすも無いのに、ショックを与えずに知らせようと、シエスタは悩み…… 結局未だに伝えていない。 「コレ、飲んでみる?」 手の中の小瓶を示す。 シエスタもルイズの話を聞いていたはずだ。 何の薬かは分かっているだろう。 258 名前:黒い蜘蛛の糸 8/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 23 43 ID lmkgam+I 『オマエノコドモハジャマダ』 サイトさんがそう言っている。 ミス・ヴァリエールも言っていた。 未来の公爵だと。 サイトさんとミス・ヴァリエールは近い将来結ばれる。 なら……妾腹で年長の子供の存在など…… 「薬は俺が預かっとくから……考えといて」 「……は……い……」 どこか遠くでわたしが返事をしている。 サイトさんはミス・ヴァリエールが持ってきた薬を、 わたしが洗濯したハンカチに包み、大事そうに持ち去った。 隊舎のドアが無慈悲な音をたてる。 幸せだったのに、 ミス・ヴァリエールを騙していると、疼く胸の痛みすら甘美だったのに。 ……これはきっと罰。 「……ミス・ヴァリエールを……騙していたから…… 天罰が下っちゃいました……ね……あはは……」 誰も居ない部屋で、 誰も居なくなった部屋で、シエスタは立ち尽くした。 遠くで聞こえる雷の音が、全てを壊そうとしている様だった。 259 名前:黒い蜘蛛の糸 9/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 24 18 ID lmkgam+I 「シエスタ?」 雨の中ぼんやりと歩くシエスタを、ルイズは慌てて連れて行った。 「ちょっと、なんでこんな……もうっ、体冷たくなっちゃってるじゃない」 「…………えぇ……そうですね……ミス・ヴァリエール」 廊下を濡らしながら、ルイズはシエスタを部屋まで連れて行った。 伝えたい事が有った。 伝えるべきだと思った。 しかし尋常ではないシエスタの様子に、ルイズは彼女を傷付けかねない言葉を紡げなかった。 「ほら……シエスタ、自分で洗濯してるんだから、遠慮しないの!」 「……ありがとうございます、ミス・ヴァリエール」 「あぁ……もうっ、下着まで……貴族用のお風呂……使えないかしら?」 「だ、だめですよ……でも……ありがとうございます」 ありったけの布でシエスタの水気を拭き取ってから、暫し考え込んだルイズはシエスタを抱きしめる。 「ミス・ヴァリエール?」 「……お風呂ほどじゃないけど……暖かくない?」 自分の熱を少しでもシエスタに伝えようと、ルイズは一生懸命に冷え切ったシエスタに抱きついた。 冷え切った体と心に、少しつづ熱が戻り始める。 うれしいのに、幸せなのに涙がこぼれた。 ――ワタシのユメはスキナヒトのソバにイルコト それは叶うのだから。 サイトさんにお薬をもらおう。 優しいミス・ヴァリエールが泣かないように。 260 名前:黒い蜘蛛の糸 10/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 24 59 ID lmkgam+I 身体が重い。 一歩前に進むのも辛い。 「ミス・ヴァリエール……怒ってましたね」 部屋を出ようとするシエスタを、ルイズは必死で止めた。 「わたしなんかを心配してくれるなんて……ミス・ヴァリエールのバカ」 わたしはずっと貴方を騙していたんですよ。 そう告白できたら、どんなにか楽になるのだろう。 でも、伝えられない。 二度と言う機会も無い。 サイトの立ち寄りそうな所に顔を出す。 真っ青なシエスタを不審げな顔で見ながらも、何人かが居場所を教えてくれた。 「隊舎に戻っているなんて……行き違いですね」 まるでわたしとサイトさんの様、自嘲気味に笑うシエスタは、 ルイズが与えてくれた温もりをもう一度冷たい雨で洗いながら、とぼとぼとサイトの元に向かった。 「サイト……さん?」 床を濡らさないように、ドアの隙間から部屋の中を窺うが、部屋の中には誰も居なかった。 「あ……はは……わたしは何をやっても……駄目ですね」 そのまま立ち去るつもりだったのに、テーブルの上に気付いた。 ……気付いてしまった。 見覚えのある一つの瓶に。 261 名前:黒い蜘蛛の糸 11/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 25 35 ID lmkgam+I 引き寄せられるように部屋の中に上がりこむ。 本来なら決してこんな真似はしないのに。 薬を持ち上げる手が震えるのは、寒さだけが原因ではなかった。 小さく軽いはずの小瓶が、今まで持ち上げたことが無いもののように重かった。 「こ、これ…………で……」 ミス・ヴァリエールもサイトさんも、これから先、笑って幸せに暮らしていける。 わたしが、わたし一人が耐えればいい事なのだから。 真っ黒に染まった世界の中、薬と自分だけになった気がした。 笑うミス・ヴァリエールを、 幸せそうなサイトさんを思い浮かべる。 「さようなら」 会うことも出来なかったね、そう名のる資格も無いけれど…… 『おかあさん』を許してね。 飲もう。そう決めると、荒れ狂っていた心が凪いだ。 落ち着いた手で瓶の口を開く。 ミス・ヴァリエールもサイトさんの為にこれを飲もうとしたんですもの。 ミス・ヴァリエールとサイトさん、二人の為になら……わたしだって。 口元に当てた瓶を一息にあおる。 何の味も匂いもしなかった。 でも……自分の内側が中から汚されていく、そう感じた。 そんな筈は無いのに、真っ黒い何かが自分の内側に広がっていく錯覚を覚える。 これ……で…… 力の抜けた指先をすり抜けて、空になった瓶が床に落ちる。 それに引きずられる様に、わたしもその場に崩れ落ちた。 ――甘かった。 こんなに……こんなに、 深い深い喪失感がわたしを覆う。 「……ごめん、ごめん……ね」 悲しすぎて、辛すぎて、凍った心は涙すら流せなかった。 262 名前:黒い蜘蛛の糸 12/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 26 18 ID lmkgam+I 「見てたよ、シエスタ」 いつからそこに居たのか、サイトさんが、ゆっくりと歩み寄ってきた。 「飲んでくれたんだね」 「はい」 ……サイトさんが笑ってくれているから…… きっとこれで良かったんだ。 無理矢理自分を…… 「俺の子、死んじゃったんだね、シエスタ」 ……納得……え? サ、サイトさんの子……そ、そうだけどっ、そうだけどっ、 そんなのっ、そんなの今……今言われてもっ…… 「可愛かっただろうな、シエスタと俺の子」 「……だっ……え? ど……どして……そんなっ?」 「俺『考えて』って言っただけだよ? 無理強いするつもりなんか無かったのに」 「……う……そ……」 わ、わたし……わたしっ…… 「シエスタはルイズと俺の側に居る為になら、俺の子殺しちゃえるんだね」 「……ひっ……え……うっ……うぁぁぁぁ」 「ほら、そんなに泣かないでシエスタ……あぁ、服が濡れてるな、脱がないと風邪引くよ」 サイトさんがわたしの服を脱がせてくれる、 でもそんな事どうでも良かった。 わたしは……わたしは…… サイトサンノコドモヲコロシタ 悲しい認識で、心が埋め尽くされていく。 「ほら、おいで」 慣れた手つきでわたしを裸にしたサイトさんは、椅子の上に座ってわたしを呼ぶ。 サイトさんに申し訳なくて、悲しくて、わたしがその場を動けないで居ると、 サイトさんは自分のマントの中でわたしを抱きしめてくれた。 「ご、ごめんなさい……」 「どうしてシエスタが謝るんだ?」 「だ、だって……だってっ……」 このまま死んでしまいたい。 こんなに悲しいのに、サイトさんの側に居るだけで不安が解け去っていく自分の心の浅ましさが、 悲しさの何倍もわたしの心を傷付けた。 263 名前:黒い蜘蛛の糸 13/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 27 00 ID lmkgam+I 泣き続けるシエスタを見て、サイトは少し安心する。 「いいこだね、シエスタこんなに泣いて」 「ち……違います……良い子なんかじゃ……わ、わたしっ、わたしっ」 優しくシエスタの背中を叩きながら、サイトは冷静にシエスタを見つめていた。 『……壊すつもりは無いし……そろそろか?』 サイトには不満が有った。 子供を自覚してからのシエスタがお腹を気遣い、易々と身体を開かなくなったことや、 抜け駆けの負い目から来るのであろう、自分のことよりルイズを気遣う行動が。 『でも……シエスタは……間違えなかったな』 もし、あそこで薬を飲まなかったら…… 自分がどうするつもりだったのかを思い出して苦笑する。 『シエスタはこんなに可愛いのに、馬鹿だなぁ俺は』 シエスタに泣き止んでもらうため、強く抱きしめながら囁いた。 「あれ、水だよ、シエスタ」 「……ふぇ? ……えっ? ……ちょっ、サイトさんっ!!」 「びっくりした?」 「……ひ、ひどっ、酷いですっ、酷いですサイトさん……わたし本気でっ!!」 じたばたと暴れるシエスタを、サイトの鍛えられた腕はあっさりと取り押さえる。 裸にむいたシエスタの柔らかさを確かめながら、サイトはシエスタの死角でひっそりと笑っていた。 264 名前:黒い蜘蛛の糸 14/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 27 37 ID lmkgam+I う、嘘でよかった…… ガクガクと震える膝から崩れ落ちそうなシエスタを、サイトが力強く抱きとめる。 「シエスタが子供やルイズの話ばっかりするから……ごめんな」 サイトさんの言葉が胸の奥まで届いて、怒っていた筈なのに、嬉しくて顔が赤くなる。 「もう、サイトさん、妬いたんですか? 妬いてくれたんですか?」 「そうだね、シエスタ。ルイズや子供に嫉妬するなんて、俺どうしようもないよな」 うれしい……サイトさんがそんなにわたしの事を思っていてくれたなんて。 「シエスタが子供を殺すほど、俺の事が好きだって分かって嬉しいよ」 「…………ぁ……」 「子供なんて、死んでも良い位俺の側に居たかったんだよな」 ……や……いや……やだぁ…… 「そ、そんな……そんな事言わな……い……でぇ……」 「シエスタにとって俺が一番大事で、他なんてどうでもいいことが分かって嬉しいよ」 耳を塞ごうとするわたしの手を、サイトさんは決して離さずに、 優しく微笑みながら、耳元に毒を注ぎ続けた。 「……や……ごめ……ごめんな……さ……」 「何謝ってるの? 俺はそんなシエスタが大好きだよ。 俺になんの断りも無く、俺の子供殺すなんて、最高だよシエスタ」 ……あぁ……わたしが殺そうとしたのは、わたしだけの子供じゃなくて…… 「サイトさんの……こども……」 「そうだよ、大好きなシエスタと俺の子供だよ。 ……シエスタは邪魔なら、そんな子供でも殺せるんだよ。 大きくなったら、教えてあげような? 『お母さんは、昔邪魔なお前達を殺そうとしたことがあるんだよ』って」 ……ご め ん な さ い 頭が真っ白になっていく、恐怖で背中を汗が伝う。 「わ、わたし……サイトさんの子を……こ、ころ……ころす……」 大好きな人の子供を殺そうとしたわたしが許されることなんて有るのでしょうか。 サイトさんに捨てられる、そんな予感で押しつぶされそうだった。 265 名前:黒い蜘蛛の糸 15/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 28 12 ID lmkgam+I いい感じにシエスタが追い詰められていく。 「でも良いんだよ、シエスタ」 「え? で、でもっ、でも……わたしっ……」 「シエスタは、俺だけ見てればいいの」 優しく、これ以上無い位優しいキス。 「シエスタには最初っから、俺以外は要らないだろ?」 「サイトさん……以外は……要らない?」 子供の話をするシエスタを見てから、俺はずっと不安だった。 シエスタも、ルイズも、いつか俺の事なんてどうでも良くなるんじゃないだろうかと。 シエスタもルイズも、俺が居なくても生きていける。 ……だけど……俺は? この知り合いの少ない世界で、これ以上味方が居なくなるのは……恐怖だ。 側に居てくれると思っていた人が唐突に消える。 それがどれだけ恐ろしいことなのか、俺は無理矢理に気付かされた。 …………どこか遠くで、何かにヒビが入る音が聞こえた。 その日から……子供の話をするシエスタが、この世界に来て最大の恐怖だった。 誰一人知り合いの無い世界で一人にされる恐怖。 七万の大軍の、なんと可愛らしいことか。 シエスタは変わる、ルイズもいつか妊娠して……それに…… 「シエスタには、俺が居るよ」 「…………そう……そう……ですね……サイト……さん」 ――――シエスタには俺が居ないと生きていけない位、俺に依存してもらうことにした。 ルイズは…… そして…… 悩むことはいくらでも有る……でも、まず 「シエスタ……いい子だね」 266 名前:黒い蜘蛛の糸 16/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 28 45 ID lmkgam+I 理性の崩壊しかけたシエスタを、慰めるように愛撫した。 「サイト……さん」 「いいから、動かないでシエスタ」 濡れて冷え切っていた身体を温めるように、じっくりと時間をかけ、 手だけではなく、足や胸まで使ってシエスタの身体に『温もり』を注ぎ込む。 俺に触れることで、シエスタがもっと狂えば良い。 そんな利己的な都合を知らないシエスタの目が潤む。 「わ、わたし……わたし……こんなに優しくしてもらっ……そんな……資格……」 「馬鹿なシエスタ、俺は資格があるからシエスタを好きなんじゃないし、 資格があるから抱くんじゃない…… 好きだよシエスタ」 こぼれ始めた涙に、胸の奥で快哉を上げる。 もっとだ、もっと俺を見ろ、俺だけを見ろ。 も っ と 俺 を 好 き な っ て く れ 声にならない叫びを上げながら、温まり始めたシエスタにマントを掛けた。 「サ、サイトさん、いけません。これっ、シュヴァリエのっ」 「いいから、そんなマントより、シエスタの身体が冷えることの方が問題だから 一人の身体じゃないんだから、大事にしないとね」 「…………ごめんなさい、サイトさん」 これから暫く、何度も何度も機会が有るたびに思い出してもらう。 これはその一回目。 マントで包んだままのシエスタを椅子に座らせて、自分の服を脱ぐ。 ……昨日までなら…… 『お腹の子に障るといけないから』 そう言って断られた……さて、 シエスタはじっと俺を見つめていた。 少し緊張しながら、シエスタに声を掛ける。 「……おいで」 「はい」 ……成功、か。 「シエスタ……」 「あっ……」 喜びを隠し切れない俺は、獣のようにシエスタに襲い掛かった。 267 名前:黒い蜘蛛の糸 17/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 29 20 ID lmkgam+I 「だ、だめですっ、マントっ、マントが汚れます」 シュヴァリエのマントを下敷きに、シエスタを床に転がすと、シエスタが変な拘りを見せた。 「いいよ……こんなの、後で洗ってくれないの?」 「ち、違います、洗いますけどっ……」 「何?」 「……好きな人にはきちんとした格好してて欲しいんです、サイトさんの一張羅を汚すなんて……やです」 身体の奥から喜びが溢れてくる。 シエスタがこんな時でも、俺の事を気にかけているのが分かって、 今までの何倍もシエスタが愛しくなる。 「こんなモノよりシエスタが大事なんだ」 「……そ、そんな……っぁ」 まだ何か言おうとするシエスタの唇を塞ぎ、仰向けに寝てもあまり形の崩れない張りの有るシエスタの胸を両手で包んだ。 シエスタが焦れるくらい弱く、優しくほぐしていく。 シエスタの腕は俺の首に回されて、俺の動きの邪魔にならないように気をつけながらも、 指先に込められた力が、俺を放すつもりが無いことを主張していた。 ためらう様に絡められた舌を吸いながら、たっぷり時間を掛けて胸を苛める。 腰の下でもじもじとシエスタの太ももが擦りあわされ始めて、シエスタが我慢しているのを悟る。 「どうして欲しい? シエスタ」 「っ……いっ、いじわるっ」 質問をした途端に、うっとりと閉じられた瞳に羞恥の色を浮かべて、凄い勢いで目を逸らされた。 可愛いシエスタ。 268 名前:黒い蜘蛛の糸 18/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 30 00 ID lmkgam+I シエスタの一番熱い所に、そっと手を添える。 「はぅっ……そこっ……」 シエスタに浮かんだ歓喜の色が、数秒の後に曇る。 「あの……え……と……」 ピクリとも動かない俺を、泣きそうな目で見上げてくる。 「どうして欲しいのか分からないからね」 「っ……ひ、ひどっ……サ、サイトさぁん……」 シエスタの腰が浮かび、俺の指に透明な粘液が擦り付けられる。 勝手に動いた腰を自覚したシエスタは、可哀想な位赤くなって…… それでも腰は止まらなかった。 「いっ、いやぁぁぁ、ち、違う……そのっ……とにかく違うんですっ」 歯止めが効かなくなったシエスタの身体に、俺の方も我慢できなくなりそうだ。 限界近くまで大きくなったモノを、シエスタの手に握らせる。 「あ……こ、こんなに……」 やわやわと握りながら、自分の中心に導こうとするシエスタを制止し、自分はシエスタに握らせたまま、 入り口に触れたままだった指先で、シエスタの形をゆっくりとなぞり始める。 「……っっ、サイトさぁん……どしてっ……なんで今日こんなに意地悪なんですかっ」 『もう一つ目的があるからね』 胸の奥で答えてから、探り当てたシエスタの一番敏感な所を、押し潰す様に指を動かし始める。 高い悲鳴を上げながら、いやいやをする様に頭を振るシエスタに声を掛けた。 「ほら、シエスタ見てごらん」 カーテンの陰に潜んでいた人物が、俺の指示通りに姿を現した。 269 名前:黒い蜘蛛の糸 19/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 30 33 ID lmkgam+I わたしの目に映ったのは、小柄な人影。 ……学院の男子生徒の制服だった。 「ひっ……やあぁっ……やだっ、見ないでっ、見ないで下さいっっっ」 暗がりに潜んでいる相手の顔までは分からないけれど、サイトさんとの行為の一部始終を見られていた事が、 こんなにも恥ずかしいと思わなかった。 人に見せた事など無い所を、サイトさん以外に晒すのが苦痛だった。 「サ、サイトさんっ、サイトさん、あの人っ、あのひとぉぉぉ」 って、あれ? サイトさんが居ない? 「って、何してるんですかっ……やぁっっ」 わたしが人影に気を取られている間に、サイトさんは足の間まで頭をずらしていた。 「ひ、人がっ、人が見てます」 サイトさんがうっすらと笑いながら、顔を…… 「だ、だめっ、だめですっ、そんな所汚いっ……っっぁっ」 サイトさんの唇が充血していた所に当てられ、勢いよく吸い上げ始めた。 「っく…………だ……め……ひと……が、人が見てま……す」 サイトさんは何も聞こえないみたいに、容赦なくわたしを責め立てる。 湿った音の原因は、サイトさんの舌だけじゃなく、恥ずかしいのに焦らされていた身体が貪欲に刺激を求めて反応する。 ミス・ヴァリエールに気付かれないように、それだけに注意しながら、暇さえあればサイトさんに開発され続けたわたしの身体。 ほんの数ヶ月前には想像も出来なかった快感が途切れる事無く送り込まれ、ほんの暫くの間しか声を抑えることが出来なかった。 わたしの声が漏れるたび、男の子が息を呑むのが聞こえて、せめて両手で体を隠そうとすると、サイトさんがおもむろにわたしを羽交い絞めにした。 「み、見られてっ、っっやぁっ、いやっ、止めてください、サイトさん」 270 名前:黒い蜘蛛の糸 20/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 31 10 ID lmkgam+I シエスタの胸を持ち上げるようにして見せ付けると、 「ひ、ひどっ、わたしっ、サイトさん以外に……」 可愛いことを言いながら、抵抗を続けるシエスタを、膝の上に乗せた。 すっかり硬くなったオレをシエスタの入り口に当てると、小さく息を吐いて動きが止まった。 「期待してる?」 「…………知りません」 頬を染めたシエスタが虚勢を張っているが、シエスタの限界が近いのは、本人よりも俺のほうが知っている。 人目を気にして萎縮するかもしれないと思っていたが……杞憂だった。 シエスタはいつもより数段感じている、快感を素直に表現できないことで、 水面下ではとんでもないことになっていた。 本人にそんなつもりは無いのだろうけれど、甘えた瞳が主張している。 力づくで奪って欲しいと、 無理矢理なら仕方が無いから、 俺がしたいのなら受け入れると、 言い訳さえ残してくれれば、俺の望みどおりに乱れてみせる。 期待と快感に濡れた瞳は、俺にそう教えてくれている。 でも……それじゃ面白くない。 シエスタの期待にはこたえず、穴の上を素通りした瞬間の泣きそうな表情が俺をさらに狂わせる。 太ももに挟み込むようにして、シエスタの下の唇を味わう。 「……サ……サイト……さぁん……」 「ん? なに? シエスタ……俺は凄く気持ち良いよ」 「っ…………」 『シエスタが』どうして欲しいのか。 それを口に出させるため、挿入しない様に気を付けながら、シエスタの身体を上下に動かした。 「……っ……はぁ……っ……く……っ」 押し殺した嬌声が色っぽかった。 二人きりならもうとっくに堕ちている、 それが今日は最後の一線で必死に踏みとどまっていた。 (連れてきたのは正解だったな) 見られないように、出来る範囲で捻られていたシエスタの身体が、 快感を貪るためにその配慮を忘れ始めている。 もう一息だ。 271 名前:黒い蜘蛛の糸 21/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 31 46 ID lmkgam+I 身体の内でサイトさんを感じたい。 頭の中がその事だけに染まり始める。 サイトさんの先っぽの段差に成っているところが、わたしの硬くなった所を擦るたびに喉が鳴るのを止められなかった。 ……いつもなら……もうとっくに…… 今日のサイトさんは意地悪だ。 人にあんな声を聞かせたくないのに、サイトさんだけの物で居たいのに。 「シエスタのココは、気持ち良いね」 サイトさんの息が耳に掛かるだけで、意識が霞むのにサイトさんはまだ入れてくれない。 初めての時を、二回目を、三回目を……数え切れない夜を思い出すと、抑え切れない欲望が中からわたしを焦がし始める。 「…………て……」 自分が何を口走ったのか悟り、慌てて口を押さえる。 目の前に居る、見知らぬ少年に聞かれなかっただろうか? 視線をたどられない様に注意しているけれど、食い入るようにわたしを見つめているのがわかる。 「シエスタ、今、なんて?」 聞こえていたに違いないサイトさんが、強く胸を掴んだ。 快感に身体が震えるけれど、刺激を焦がれているのはソコとは違う。 サイトさんを感じたい、サイトさんを差し込まれて何もかも忘れてしまいたい。 目を閉じて、目の前の男の子の事を忘れてから、とうとう口を開こうとした時に、 サイトさんがもう一度口を開いた。 「子供を殺すシエスタは、さっきなんて言ったのかな?」 「ひっ…………ぅ……」 「ついさっき、俺のためなら子供も殺そうとしたシエスタは、そのことも忘れて何を言おうとしたのかな?」 「…………あ……ぁっ……ぁぁあああっっ」 身体は快感に蕩けたまま、頭が芯から冷たくなっていく。 こんなに身体は熱いのに、どうして寒気で震えが止まらないのだろう。 ほんの少し前に、自分が何をしようとたのかも忘れて……わたしは…… 「でも、いいんだよ、シエスタ」 272 名前:黒い蜘蛛の糸 22/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 32 22 ID lmkgam+I サイトさんの力強い腕が優しくわたしを包み込む。 「シエスタは、俺のことだけ考えてれば良いんだ」 「……サ……イト……さん」 「ほら……気持ち良いだろう? そのまま……」 「で、でもっ、でもっ……」 「良いんだよ、シエスタは俺のために……」 壊れかけていた心が、サイトさんの一言で救われる。 わたしは酷いことをしようとしたのに、サイトさんは許してくれる。 捕まった。 捕まってしまった。 サイトさんの優しさに絡め取られてしまった。 ……もう……いいや、わたしは狂おう。 この人の為になら、もう理性なんていらない。 プライドなんか邪魔だし、人の目なんて気にしない。 「ほら……シエスタ、さっきの……もう一度言ってごらん?」 「入れて……入れてくださいっ」 何もかもかなぐり捨てたわたしの懇願は、容易く叶えられた。 「あっ……あぁあああああっ」 男の子の視線が、埋もれていくサイトさんの様子に釘付けになる。 さっきまではサイトさん以外に見せることが、あんなに苦痛だったのに。 ……今は、なんて良い気持ち。 根元まで飲み込むと、サイトさんは今までの埋め合わせのように激しく動き出した。 一番深い所にぶつける様な激しい刺激。 一瞬だけ、子供の事が気に掛かる。 「……っと……もっと……もっと……シテ……シテクダサイ、サイトさんっ」 でも……ほんの……一瞬だけだった。 273 名前:黒い蜘蛛の糸 23/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 32 54 ID lmkgam+I 「ほら、シエスタ」 トン……と、サイトさんがわたしの背中を押す。 全身に力の入らなくなっているわたしを、目の前に居た蒼い髪の男の子が抱きとめてくれれた。 「ご、ごめ……さっ……」 サイトさんのなすがままに、男の子の首に手を回して崩れ落ちそうな身体を支える。 真っ赤に成った男の子が、目を逸らしながらも、ちらちらとこちらを伺っているのが分かっる。 うらやましそうな様子に恥ずかしさとよりも、大好きなサイトさんを中に迎えていることが誇らしく思える。 「ほら……シエスタ、どんな感じか教えてあげたら?」 「は……い……サイトさん」 どうしてさっきまで恥ずかしかったのかしら? サイトさんの事を喋ることができる幸せに、他の事が考えられ無いまま、素直に感じていることを口に出来た。 「サイトさんの……おっきいのがぁ、わたしの中でうご……ってぇ……」 「……や……やめ……て……言わないで」 「奥に届くたびに、おかしく……なって……わたし……わたしぃ……」 「やっ……そんな事……、そんな事……」 痺れたような頭では、男の子にしては、声が細いことも高いことも、分からなくて…… 近くで見ると整いすぎるほど整った繊細な顔立ちが、わたしの一言一言に怯えている事実に、 サイトさんに触れてもらっているときとは違う、昏い悦びが胸を満たす。 「サイトさんに、愛してもらうのは、とぉっても気持ち良いんですよ。 ほら……サイトさんも気持ちよくなって、こんなに硬くしてくれるんです」 「…………な……んでぇ……いや……こんなのいやぁっ」 認めたくないものを見せ付けられているかのような反応。 なんて潔癖な子…… 悪い事を教えている……そんなイケナイ悦びに身を震わせていると、 サイトさんの手が男の子の手を取って、わたしの胸に押し当てるた。 男の子は火傷でもしたかのような勢いで、手を引こうとしたけど…… サイトさんは許さなかった。 サイトさんとは違う、白く細い指先に身体が竦む。 わたしが戸惑っている間に、押し付けるサイトさんと、 逃れようとする男の子のせめぎ合いが、 今までに感じたことの無い刺激をくれて…… 「も……っと……もっと……触って……きもちいぃのぉ……」 男の子が泣きそうに見えたのはどうしてだろう? 274 名前:黒い蜘蛛の糸 24/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 34 19 ID lmkgam+I 「ほらシエスタ、口が止まってる」 「ご……ごめんなさ……っっだ……サイトさんっ……サイトさぁん……」 声も立てずに瞳で訴えかけてくる蒼い髪を横目に、シエスタの身体を味わう。 楽しい。 事態が全て自分の思い通りになる万能感は、何物にも換えがたい。 俺の身体から離れられない様に、じっくりゆっくりシエスタを染めていく。 恥じらいを捨て、見知らぬ相手に自らの手で胸を触らせ始めたシエスタに、 俺は深い満足を覚えた。 身体を支えるために俺以外に抱きついていても、視線と意識は常にこちらに向け、 途切れ途切れに俺の名前を呟いている。 なんて健気で可愛いんだろう。 「シエスタ、大丈夫?」 「はっ……はい……サイトさん……あのっ……あのねっ」 快感に曇ったまま、真っ直ぐに俺をとえら得た瞳が、少しだけ力を増す。 必死に言葉を紡ぐシエスタに、少し意地悪をしたくなり、俺は動きを加速させた。 「っっく……だめ……ちゃんと……いいたいの……にぃ……サイトさんの意地わ……る……」 どうやら俺は意地悪らしい、意外な事実を教えてくれたシエスタに感謝を。 「あっ……あああっ、きゅうにっ……いやぁっっ」 行動で示した俺の感謝に、シエスタの身体は素直に答える。 奥へ奥へと、熱い肉体が絡みつく。 「っ……ひぁっ……もぅす……ぐ……ちゃぅ……だ……め……」 「俺も気持ち良いよ、シエスタ」 「……あの……あのね……サイトさん……っく…… わたしっ……貴方に愛してもら……て……」 口付け、絡み合いながらの、シエスタのたどたどしい告白に、背筋をゾクゾクと快感が這い上がる。 蕩けるような快感に、抑えの効かなくなった俺は、背後から力いっぱいシエスタを抱きしめた。 それが最後の一押しとなって、堪えに堪えていた二人の限界が、同時に訪れた。 「いっっあぁあああああぁぁぁぁっ…………」 シエスタの嬌声が部屋中に響き渡り、その場にクタリと崩れた。 腕の中で重力に引かれるシエスタの身体を手放すことが出来なかった俺は、絡み合ったまま、ぐしゃぐしゃに成ったマントの上に倒れこんだ。 「……し……あわ……せ……です」 小さく耳に届いたシエスタの言葉に頬が緩む。 やっと、『タイセツナモノ』が手に入った実感に、喉の奥から漏れる哂いを抑え切れない。 おもわず……俺も何か叫んだのかもしれない、 俺たちを見つめる蒼い瞳に悲しみがあふれていたから。 275 名前:黒い蜘蛛の糸 25/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 35 08 ID lmkgam+I サイトは意地悪だと思う。 男の子の制服を着ろって言われた時は何事かと思った。 逆らうつもりはないけれど。 『この命は、あなたに捧げる』 そう言った瞬間から、この人が望むことを何でもしてあげたかった。 誓いの夜にわたしの部屋を訪ねてきたサイトが、身体を求めるのにも抵抗出来なかった。 最後だと……そう思っていたから。 すぐに母さまを助けに行くつもりだったから。 死ぬ覚悟は出来ていたけれど、女の子らしい幸せも……一度位は感じたかった。 『始めてだったら痛いから、今日は無理にしねぇよ』 そう言って、わたしだけを感じさせてくれたサイトの優しさが嬉しかった。 一晩中鳴いて、気が付いたらお昼だった。 ……気持ちよかった。 母さまが大変な目にあっているかもしれないのに、サイトの指先に逆らえなくなった。 そうしたいって、一言言ってくれたら、いつでも最後まであげるつもりだったけれど、 息吐く間もくれないサイトに、自分からは何も言えないまま数日が過ぎて、 (このままじゃ、駄目な子になっちゃう……) そう思ったわたしは、母さまの所を目指して旅立って…… ……母さまの幽閉されている城までの旅で、サイトに会えない切なさに耐え切れなくなった、 寂しくて悲しくて、泣きながら学院を目指した…… 死ぬつもりだったのに、母さまを助けて、アイツを殺しに行くつもりだったのに。 ……『死』が怖くなった。 ……いつ死んでもいいはずだったのに、復讐しか見ちゃだめだったのに。 あの人の側に居たかった、あの人がわたしを見てくれなくっても。 それだけだった筈なのに…… サイトは変わってしまった。 276 名前:黒い蜘蛛の糸 26/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 35 54 ID lmkgam+I 「お帰り、タバサ」 「……た、ただいま」 サイトの様子がおかしいのには直ぐに気付いた。 この人の目は、こんなに冷たくなかった。 この人の微笑みは、もっとずっと柔らかかった。 側にいるのも恐ろしい、黒い気配の持ち主は、それでも確かにサイトだった。 「どうしたの?」 ごめんなさい、最初の言葉は決めていたのに、あまりの変化に先に疑問をぶつけてしまう。 うつろに笑うサイトが、ゆっくりとわたしに近づいてきて、いきなりその場に引き倒された。 「っ…………」 「どうしたの? タバサが居なくなって、心配してたんだ。 タバサの命は俺に捧げたんじゃなかったのか? みんな……みんな変わるのか? 俺を好きだって言ってくれる言葉を信じちゃいけないのか?」 ――相談もせずに消えたわたしを迎えてくれたのは、 寂しさで『変わった』サイト。 目の前のわたしではなく、サイトはどこか遠くを見ていた。 「シエスタに俺より大事なものが出来た途端にタバサが消えた、 二人とも俺を好きだって言ったのに、 …………怖いんだ、怖いんだよ…… 抱き合っている時はあんなに暖かいのに、気持ち良いのに。 ほんの少し離れただけで、タバサは消えた! シエスタは触れられるのを拒むようになった!! ……なら……きっと、ルイズも……ルイズだって……いつか……」 力強いサイトの腕の中で、全身の骨が悲鳴を上げる。 痛みで視界がチカチカした。 …………それでも、久しぶりのサイトの体温にわたしは目を細める。 たとえこの身が砕けても、サイトの気持ちが落ち着くのなら。 そう思って、じっと耐えた。 ルイズの好きな香水の移り香が甘くて、胸に痛かったけど。 277 名前:黒い蜘蛛の糸 27/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 36 27 ID lmkgam+I 「もう逃がさない」 緩んだ腕と引き換えに与えられたのはそんな言葉。 「もうどこにも行かない」 「……うそだ」 他の人の事なんてどうでも良かったのに、この人に信じてもらえないのは、どうしてこんなに切ないの? 「信じて……」 「じゃあ復讐、諦めるか?」 「…………ぅ…………」 父さま……母さま…… ずっとわたしを形作ってきた、昏くても重要な欠片。 ……サイトは大切だけど、長年掛けて編み上げた感情はそう簡単にほどけない。 返事が出来ないわたしを、サイトは冷たい目で見つめていた。 「……ほぉら……やっぱり……」 「ちがっ、ちがうっ」 慌てて否定しても、わたしの声はもうサイトに届かない。 「みんな、居なくなるんだ…… いつか、この世界で一人に……なるん……だ……」 サイトの声が小さくなっていく、他の誰とも違うサイト。 ほかの誰も、彼の事を本当に理解できない。 特別な世界を持つただ一人の人。 生まれ育った優しい世界に、二度と戻れない。 その辛さは、わたしだって良く知っているはずなのに。 少し考えれば分かったはずなのに…… 少しづつ、少しづつ集めたに違いない、『大切な者』に折角加えてもらったのに、 わたしは彼を裏切ってしまった、 傷付けてしまった、 この人が変わったのは、わたしの所為。 ……この人に……『別れ』を教えてしまった。 「……ごめんなさい」 やっといえた言葉は、この人の届くのだろうか。 「……そんなの、聞きたい訳じゃ無いっ!」 叫んだサイトがわたしを置いて駆け去って、一人その場に残されて、 どれだけ時間が流れても、この悪夢は覚めなかった。 278 名前:黒い蜘蛛の糸 28/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 38 33 ID lmkgam+I それからサイトは毎日わたしを苛んだ。 誓いをを確かめるように、怯えるように、確認するように。 一度失った信頼は、犯してしまった過ちは、容易く取り戻せはしない。 その指先がわたしを狂わせても、わたしの方からサイトに触るのを決して許してくれなくなった。 サイトに触れたいのに、気持ち良くなって欲しいのに…… ……わたしのココを……使って欲しいのに。 以前のように優しさではなく、一度裏切ったわたしを最後までは許さないと、 そう宣告するように、サイトは頑なにわたしの処女を奪おうとしなかった。 「……少し、変わったことをしようか?」 何か思いついたんだ、そう……思った。 いつもサイトは変なことをする。 特に好きなのが、メイドやシエスタとの行為を見せ付けること。 サイトに触れる腕を、サイトに絡む脚を、サイトを迎え入れる……を。 何も言えないまま見つめるのは悲しかった。 一人最後までしてもらえないわたしが、取り残されたような絶望を感じるのを、 サイトはいつも嬉しそうに見ていた。 今日も……物陰で一人泣いていると、サイトと目が合った。 『こっちにおいで』 サイトの目がそう言っていた。 い、いいの? 許してくれるの? 理性の痺れたわたしが物陰から姿を現すと、サイトが楽しそうに哂う。 「ほら、シエスタ見てごらん」 え? 「ひっ……やあぁっ……やだっ、見ないでっ、見ないで下さいっっっ」 あ…… サイトがどうして男の子の格好をさせたのか、ようやく分かった。 メイドの子は、わたしが男の子だと思って慌てている。 タバサの事なんて考えてないよ。 サイトの態度が言っている。 わたしとの時は、優しく優しく丁寧に……なのに……どうして? あんなに激しくされているのに…… 「み、見られてっ、っっやぁっ、いやっ、止めてください、サイトさん」 どうして、あの子はあんなに乱れているの? 279 名前:黒い蜘蛛の糸 29/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 39 21 ID lmkgam+I わたしだったら痛みを感じそうな刺激を、成熟した身体は快感として受け入れていた。 ……わたしも……わたしも……サイトに……あんな風にされたいのに。 ぎゅって押し付けて、気持ち良さそうなサイトを見ていると、羨ましかった。 「……俺は凄く気持ち良いよ」 サイトの言葉が胸をえぐる。 酷いよ……サイト。わたしが聞いているの分かってるくせに。 わたしには触れさせもしてくれない所が、敏感な入り口を擦って、見る間にメイドの理性を溶かしていく。 ……そんなに気持ち良いんだ。 生えてくるみたいに、太ももの間から顔を出すサイトのモノを、食い入るように見つめてしまう。 後ろからサイトが、大きな胸をギュって掴む。 両手でも収まりきらない胸を見ていると、全然成長していない自分が惨めになった。 ……おっぱいが無いから、サイトいろいろしてくれないのかな? もっと大きくなったら…… でも、それまで待てないよ……サイト。 わたしが悩んでいる間も、サイトとメイドは溶け合っていて。 サイトが耳元で何か囁くたび、大きく暴れたメイドを胸で支えている。 うらやましい……気が付くと、わたしは二人に引き寄せられるように、 一歩、また一歩と近づいていった。 「入れて……入れてくださいっ」 メイドの叫びに、自分の喉が音を立てる。 ……あんなに大きいのに、メイドはやすやすとサイトを飲み込んでいく。 快感に歪むサイトの表情に、言いようの無い感情が胸の中で暴れた。 「……っと……もっと……もっと……シテ……シテクダサイ、サイトさんっ」 色に狂ったメイドが憎い。 サイトと愛を交わす相手が許せない。 そんなわたしの想いを知らないサイトが、メイドの身体をわたしに向かって小さく押した。 280 名前:黒い蜘蛛の糸 30/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 39 55 ID lmkgam+I 「ご、ごめ……さっ……」 わたしを抱きしめるように崩れるメイドを、反射的に抱きとめる。 触れたところが、熱くて柔らかい。 ……成熟した女の身体。 ……わたしとは……違う。 泣きそうなわたしの耳元に、熱い吐息が掛かる。 「サイトさんの……おっきいのがぁ、わたしの中でうご……ってぇ……」 ……っ、ひど……い……ひどいよぉ…… 「……や……やめ……て……言わないで」 必死に絞り出した声にも構わず、メイドはわたしを追い詰める。 「奥に届くたびに、おかしく……なって……わたし……わたしぃ……」 「やっ……そんな事……、そんな事……」 わたしだって……サイトが……サイトがしてくれるならっ! 「サイトさんに、愛してもらうのは、とぉっても気持ち良いんですよ。 ほら……サイトさんも気持ちよくなって、こんなに硬くしてくれるんです」 「…………な……んでぇ……いや……こんなのいやぁっ」 嫌がるわたしの手を、そっとサイトが握ってくれて、少しだけ落ち着く。 でも次の瞬間、わたしの手がメイドの胸にめり込む。 ……やわらかい…………こんなの……ずるいよ…… こんなの付いてたら、サイトだって触りたくなるに決まってる。 わたしなん……て……自分には無い感触に悲しくなった。 そのまま腕を引こうとすると、サイトが嫌がらせの様に胸の中にわたしの手を押し込んだ。 「も……っと……もっと……触って……きもちいぃのぉ……」 …………い……や……ぁ…… こんなの……こんなの、もう……やだよぉ……サイ……ト…… タバサが思考することを放棄しても、その目は目の前の行為を見つめ続けた。 281 名前:黒い蜘蛛の糸 31/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 40 31 ID lmkgam+I サイトは崩れ落ちたシエスタに、そっとマントを掛けた。 シエスタが凍えない様に、注意深く包むと思い出したように顔を上げて、 「……サ……イ……トぉ……」 堰が切れたように泣き出したタバサを、優しく抱き寄せた。 ……逃げなかったな…… ほっと……サイトの身体から力が抜ける。 シエスタはこれで俺から離れる事はもう無い。 理屈ぬきで、サイトはそう確信していた。 「ひどっ……ひどいよぉ……サイト……なんっ……でぇっ」 タバサには感謝していた。 少なくとも今はそのつもりだ。 『人の絆』の儚さを教えてくれたタバサのお陰で…… 「これでシエスタは、俺を捨てない」 シエスタが手に入った。 競う者が側に居れば、嫉妬心の強いルイズは決して離れないだろう。 ……いや、離れたとしても、彼女の心に残るであろう傷は、サイトの事を忘れさせないに違いなかった。 俺の一言を聞いただけで、タバサはどれほどの事を悟ったのだろうか。 驚きと……恐怖……か? で、目を見開いていた。 「頭の良い子だね、タバサ」 「…………ち、ちが……う、わたし……は」 のろのろと言葉を紡ごうとするタバサの唇を無言で塞ぎ、 大きく開かれた目が閉じるまで、時間を掛けてたっぷりと味わう。 気が付くと俺にもたれかかる様に体重を預けたタバサが、もじもじと膝を擦り合わせていた。 そういえば……ずっとオアズケだったっけ? キスをしたまま、制服のボタンを外す。 最後まで脱がすことはせずに、タバサの細い身体を抱き寄せる。 「俺が怖い?」 一度逃げたタバサは、いつ居なくなるかわからない。 ……それこそ、今この場から走り去り、二度と俺の前に現れないかもしれない。 いっそ居なくなれば、諦めも付くのに…… 「怖くない」 ならその身体の震えはなんなんだ? ……タバサを……人を信じたいのに、俺の心は疑うことばかり上手になっていく。 282 名前:黒い蜘蛛の糸 32/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 41 42 ID lmkgam+I 怖いはずなんて無かった。 この人は傷ついている。 どれほど深く傷ついているのか、やっと少しだけ理解できた気がした。 何もして上げられない自分が悔しくて、 母さまを助けに行ったことが悔やま……れ…… そこまで考えて、わたしは愕然とする。 ……わたしは……なに……を…… 母さまを助けに行くのは、娘として当然のことなのに。 今だって……放っておくわけには……いかない……はず……なのに…… 身体が小さく震えだす、わたしはこの一週間で、何回母さまを思い出したのだろう? 以前は毎日毎日そのことばかり考えていたのに…… ……今は……サイトの事ばかり考えている。 ……どうしよう……母さま、シャルロット悪い娘になっちゃった…… ごめん……ごめんなさい…… 何年もわたしを形作っていたモノを、知らず知らずのうちにおざなりにしていた事に、 足元が崩れ去るような恐怖を感じていた。 「おいで」 そんな時に優しいサイトの声がする。 幻かもしれないけれど……昔のサイトに見えた。 わたしの為に命を掛けてくれた人に。 支えを失ってしまったわたしの心が、音を立てて傾いていくのが分かる。 ……だ……め……こんなの……わたしの為にも、サイトの為にもならない。 今のサイトに依存するのは危険。 分かって……分かってるのにっ…… 「わ、わたし……悪い……娘に……なっ……」 何も言わずに抱きしめてくれる手が、優しさだけで出来ているのではないことを理性は悟っているのに。 わたしの身体は無意識に温もりを求める。 駄目なのに、今のサイトを頼っては。 彼に必要なのは、わたしにとってのサイトやキュルケみたいに、心を助けてくれる人。 真っ直ぐサイトを見るメイドすら疑うほどの不信を、彼に植え付けてしまったわたしなんか、 今の彼の側に…… 「タバサはいい子だよ」 サイトの声がわたしを繋ぎとめる。 ここから立ち去ろうと思っていたのに、たった一言で彼はわたしを支配する。 サイトの腕の中に絡め取られる事を渇望する身体に、弱い心は押し流されて…… 離れなきゃ……そんな想いと裏腹に、わたしの足はサイトに近づいていった。 283 名前:黒い蜘蛛の糸 33/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 42 16 ID lmkgam+I サイトが制服の下で湿った音を立てている。 「だ……め……やめ……て……」 サイズの問題かもしれないけれど、男の子の制服はエッチだ、サイトが服の下で何しているのか、さっぱり分からない。 舌先が乳首に当たるたび、幸せそうに寝息を立てているメイドと自分を比べてしまい、 サイトに触れられるのが、どうしようもなく切なくなる。 「やだ……見ないで……」 服の中からサイトは、わたしの視線を辿って苦笑すると、 背中に回された腕に力を入れて、ぎゅってしてくれた。 そんな行為に、また少し……少しづつ、 逃げようとか、抵抗しようという意識が溶かされていく。 わたしが嫌がった所為だろうか、サイトの唇が胸の上から動かなくなった。 「……ま……って……やだぁ……」 自分でも硬くなっているのが分かる先端を少し強めに吸ったり、 胸全体を舌で押すように舐めたり、胸ばかりを苛める。 わたしの胸なんか、あの娘に比べたら、触ってて楽しい筈も無いのに。 サイトは一生懸命にわたしを感じさせてくれる。 「っ……ふぁ…………む……ねばっ……りぃ……」 「へぇ……他の所も触って欲しいんだ」 そ、そんなつもりじゃないのに。 恥ずかしさで何も言えない内に、サイトの指が背中に回って、 触れるか触れないかの刺激が、下から上に這い上がってきた。 「ひゃぁぁんっっっ……っ…きゃあっっ」 背中の刺激に反り返った途端、突き出させる形になった胸に、サイトが優しく歯を立てる。 「そんなに触って欲しかったんだ」 「……ち、ちがぁっっ……やあぁぁぁっっ」 胸を気にしたら、背中から。 背中を庇ったら、胸を。 逃げ場の無いまま、サイトの好きなように操られる。 おもちゃに成った錯覚を覚えそうなほど、たっぷりと時間を掛けて苛められた。 284 名前:黒い蜘蛛の糸 34/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 43 03 ID lmkgam+I 「ふっ……ぅ…………ぁ……」 息……苦し……ぃ……よぅ…… ぐっとりとしたわたしを、サイトがそっとテーブルに寝かせてくれた。 途中から腰に力が入らなくて、サイトが支えてくれないと、その場で倒れそうだった。 力が入らなくなったのをいい事に、サイトはわたしを好きに扱ったけれど。 「大丈夫?」 優しい言葉を掛けてくれるのが嬉しくて、何とか頷いてみせる。 まるで前のサイトみたいだ。 快感の余韻に浸っていると、腰の辺りで何か音がしたけど、 頭を上げて確認するのも億劫なわたしは、何もせずに息を整えることに集中する。 サイトがわたしを持ち上げたり降ろしたりしているのも、凄く気持ちよくて、 頭の回らないわたしは、何も考えずにされるがままに成っていた。 少しだけ落ち着いた頃、サイトが笑いながらわたしの頭に『何か』乗せた。 「返すな」 ……返す……って事は、わたしの物? まだぼんやりした頭で、頭に乗せられた物を理解しようとする。 真っ白い布で、ちょっと……ううん、結構濡れ……て? 嫌な予感に、そーっと視線を下にずらしていく。 「っ! こ、これっ、わたしのっ」 上半身には、ボタンが止まっていないとはいえ、大きめの制服を着たままなのに、 下は………… 「な、何も穿いて無いっ!」 「いい眺めだな」 慌てて制服の前を合わせて、サイトからあちこち隠す。 こ、こんな格好のままぐったりしてたなんて…… 恥ずかしくてどうにか成りそう…… 「い、いじわ……る……」 声が泣きそうになってる。 比べられた。 絶対向こうで寝てる娘と、あちこち比べられた。 サイトに物足りないって思われたんだ……こんな子もう触るの止めるとか思われてたらどうしよう。 不安に震えていると、サイトが側まで来てくれた。 285 名前:黒い蜘蛛の糸 35/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 43 40 ID lmkgam+I 「タバサは可愛いね」 ……っ……どうせ可愛い胸だもん。 頬に血を上らせたまま、サイトから目を逸らせる。 暫くわたしが怒っているのを不思議そうに見ていたサイトは、 いつまで経っても自分を見ないわたしに、そっと近づいてきた。 「タバサ?」 意地でもサイトを見ない。 サイトがもう触ってくれなくなるのかもしれないけれど、今ちょっと泣いてるのが知られるのも嫌だった。 「誉めたのに、何で泣いてるんだ?」 ……胸とか見ながら可愛いは誉め言葉じゃないと思う。 「知らない」 焦れたサイトは軽々とわたしを持ち上げると、わたしごと手近な椅子に腰掛けた。 否が応でもサイトに密着してしまい、顔を逸らし続けるのが難しくなる。 何も言わないサイトに、今度は黙っていることが辛くなった。 「小さい……から……可愛いって……」 そこまで言って、サイトはやっと納得した顔をする。 サイトは鈍い。 ……ルイズは凄い子かもしれない。 「そんなつもりで言ったんじゃねーよ」 嘘だ。 さっきまで大きな胸を嬉しそうに揉んでたくせに。 意地になったわたしを膝に乗せたまま、サイトが愛撫を再開させた。 「タバサは可愛いよ」 「っ……またっ……胸触りながらぁっ」 今度はわざとだ…… 顔を隠すようにサイトにしがみ付くと、前をあわせていただけのシャツが解けて、 折角隠していた身体がサイトに直接密着する。 「あ…………」 何か硬いモノが、サイトの指の向こうにあるのが分かった。 「……ちゃんと反応してるし、可愛いは誉め言葉だぞ?」 ……うれしい。 わたしで硬くしてくれているのが分かって、凄く嬉しかった。 「……ごめんなさい」 サイトが本当のことを言ってくれていたのなら、さっきまでのわたしは凄く嫌な子だ。 申し訳ない気持ちで、サイトにしがみ付いていた腕に少し力を込める。 サイトは黙ったまま、わたしにキスをくれた。 286 名前:黒い蜘蛛の糸 36/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 44 18 ID lmkgam+I 「あ……あれ?」 自分では動いているつもりなんて無いのに。 サイトが感じてくれている事を知ったわたしの身体の、熱くなっている所がサイトに押し付けられる。 「ご、ごめ……」 背筋が凍る。 以前勝手にサイトの身体を触った時に、火が付いた状態のまま一晩放って置かれた。 一度裏切ったわたしは、サイトの大切な所に触る資格なんて無いと、何度も何度も思い知らされていて、 快感に追い詰められている状態でも即座に気付けるほど、しっかりと躾けられていた。 「タバサ?」 「っ……ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……」 サイトの声の質が変わる。 怖い……怖いよ…… 甘くて幸せだった空気を奪い取られる予感が、全身を震わせる。 死にたくなるような絶望がわたしを包む。 「ためじゃないか、タバサ」 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 熱の無い目、止まった指、凍った声。 サイトよりも、快感に酔って歯止めの効かなかった自分が憎い。 サイトは何も悪くない。 悪いのはわたし。 あんなに何度も繰り返したのに、わたしはまだサイトの望み通りに動けない。 「俺が気持ちよくなっちゃ、タバサが困るだろう?」 ……え? 287 名前:黒い蜘蛛の糸 37/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 45 00 ID lmkgam+I なん……で? どうして、サイトが気持ちよくなった困るの? 「ど……して? サイトが気持ちよくなってくれたら嬉しいのに」 サイトがわたしに触らせてくれない理由。 最後までしてくれない理由。 何度か聞いたけれど、教えてくれなかった。 「子供が出来たら……」 こ、子供が出来たら? 「タバサの、大事な大事な復讐の邪魔だろう?」 え? 「復讐の?」 「あぁ、俺を捨てていくほど大切な復讐の邪魔になるだろう?」 「……ち、ちがっ……復讐なんかっ……復讐なんかっ……」 あぁ……母さま、ごめんなさい。 シャルロットはもう戻れません。 「復讐なんかどうでもいいよぉ、サイト……サイトの方が大切っ、大事だからぁっ」 サイトはわたしの為に、最後までしないでいてくれたの? 嬉しい、サイトの意地悪だとばかり思ってた。 喜ぶわたしの視界の端に、ある物が写っていい事を思いついた。 「あ、あれ、あのお薬も有るっ、出来たらあれ飲むからぁっ……最後まで……最後までしてぇ」 メイドとやり取りは聞いていた。 あのお薬を使えば……サイトにそれを伝えると…… サイトは喜んでくれなかった。 「……へー、まだそんな事……復讐の事考える余裕あるんだ」 観察する様にわたしを見ていたサイトの目が、ますます熱を失う。 ……な、何か間違えたの? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい わたしから離れようとするサイトに、力の限りしがみ付いて、 声を限りに叫び続けた。 「ち、違うのっ、復讐なんかどうでも良いからっ、 サイトの側にいるからっ、離れないからっ……だからっ……」 ……最後までして下さい。 潤んだ瞳と熱い身体に乗せて、思いの丈をサイトにぶつけた。 288 名前:黒い蜘蛛の糸 38/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 45 40 ID lmkgam+I 黙りこんだサイトに怯えながら反応を待つ。 「本当に? 本当にどこにも行かない?」 「行かない、離れたくないっ」 一度口に出してしまうと、もう止まらない。 言葉は呪文の様にわたしを縛り、引き返せない所へとわたしを連れてゆく。 「子供できても構わないんだ?」 「うん、うんっ、出来てもいいの……だからっ……だからぁ……」 確かめるようなサイトの口調に、熱に浮かされたまま答え続ける。 答えていれば、思いが伝われば…… サイトが最後までしてくれると、そう……信じて。 「復讐より……俺が大事?」 「うんっ、サイトが大切なの」 喋れば喋るほど、わたしの中でサイトの存在が膨れ上がる。 まるで自分に暗示を掛ける様に、繰り返し繰り返し誓いの言葉を口にする。 「タバサの……シャルロットの……大切なモノを……貰って…… 貴方のモノにして、サイト」 精一杯の告白。 伝え終わった時、サイトの腕から力が抜けて一瞬凄く怖くなった。 「……った……に……った……タバ……おれの……」 サイトが何か呟いている。 よくは聞こえなかったけれど、サイトの表情に隠し切れない喜びが浮かんでいて、 わたしの思いが伝わった事を確信できた。 289 名前:黒い蜘蛛の糸 39/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 46 14 ID lmkgam+I わたしが上になったままで恥ずかしいけれど、今からベットを探すどころか、 テープルにもう一度横になるのさえ、時間が惜しかった。 「いくよ、タバサ」 ……シャルロットって呼んで貰おうか? 少しそんなことを考えもするけれど、父さま、母さまの復讐に生きたわたしはもう居ない。 なら、もうこれからは、サイトの為のタバサで居よう。 身も心も捧げることに決めたわたしは、過去を捨てる決意をする。 「はい」 全ての想いを込めて、一言だけ返事をすると、 サイトの手がお尻を掴んで、わたしを誘導した。 何度も望んだ瞬間がついに訪れる。 そう思って身体を硬くしていると、サイトの硬いモノが押し当てられる。 その大きさに少し不安に成る。本当に入るのだろうか? でも……もし、わたしが痛くても、サイトが気持ちよくなるのなら…… 「……サイト……わたしで、気持ち良くなって……」 サイトの耳元で囁くと、サイトは嬉しそうに笑う。 「そのまま腰を下ろして」 サイトを想って自分の中に指を挿れた事を思い出して、 どうすれば上手に入るのか考える。 考えているわたしが困っているように見えたのか、サイトがそっと腰を突き上げて、 どうすれば良いのか教えてくれる。 「……んっ……」 自分の中に異物が侵入してくる。 ゆっくりと身体の中でも屈指の繊細な所が広がり、痛みと共に切り開かれていく。 「……った……い……よぉ……」 溢れる涙をサイトが唇で拭ってくれた。 「諦める?」 「…………やだ」 折角、折角サイトが貰ってくれるのに、 やっと思いがかなうのに、 「最後まで……貰って……」 サイトの気が変わらないうちに…… わたしは一息に奥までサイトを迎え入れた。 290 名前:黒い蜘蛛の糸 40/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 46 47 ID lmkgam+I 痛い……痛い……身体が悲鳴を上げている。 痛みには強いつもりだったのに。 「タバサ、大丈夫?」 「平気」 嘘だけど。 痛みで動けないわたしが、サイトにしがみ付いていると、背中と頭に何か暖かいものが乗った。 「がんばったな」 サイトの手……暖かくて……うれしい。 「うん」 サイトは動きたいんだと思う。 メイドとの時は、あんなに激しく…… 「ごめんなさい」 「何が?」 悔しくて何もいわずにサイトに抱きついていると、サイトの指がわたしの身体の上を跳ね回った。 「っ……な……に?」 「じっとしてて」 痛みを忘れさせようとしてくれる、サイトの気遣いが嬉しい。 わたしが反応するたびに、おなかの中でサイトがビクビク動いているのが分かって、 とても幸せ。 「……動いて……いいよ」 少しだけ痛みになれたわたしは、サイトに身体を任せる。 自分で動く自信は無かったけれど、サイトに気持ちよくなって欲しいから。 「でも……」 「サイトの……赤ちゃん頂戴」 出来るだけサイトに密着して、身体を擦りつけながら精一杯のお願い。 唇を重ねて、サイトに最後の一押しをする。 「っ……いいんだな?」 「ん」 もうわたしは全部サイトのモノだから。 力を抜いてサイトに全てを任せた。 291 名前:黒い蜘蛛の糸 41/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 47 41 ID lmkgam+I タバサの中はきつい。 ルイズやシエスタの初めてのときと比べても、ずいぶん窮屈か感じだ。 小さな体格と相まって、幼い子に悪戯しているかのような背徳感が、 ゾクゾクと俺の快感を高める。 「動い……て……」 俺の耳元に囁くために、タバサが姿勢を少し変えるだけで、狂いそうな快感が俺を襲う。 「あ……あぁっ……動く……ぞ……」 両手でタバサの腰を持ち上げて、軽いタバサを腰の上で踊らせると、 みるみるうちに限界が近づいてくる。 「…………き、気持ちい?……わたしの身体で、気持ちよくなってくれてる?」 俺の事ばかり気にかけている事に、大切にされている実感に狂喜する。 時間を掛けたかいが有った。 「……サイト、サイトの子供……タバサに……頂戴」 タバサを持ち上げることがもどかしくなって、繋がったまま立ち上がった俺は、 少し離れた所にあるソファを目掛けて歩き始めた。 「っっっ! サ、サイトッ……っめぇっ……奥……奥がっ……ひっ……ぅ……あっぁぁ」 俺の身体しか支えの無くなったタバサが、必死で俺にしがみ付くが、 タバサ自信の体重で、深く深く繋がることは止めようも無かった。 「……かっ……はぁっ…………き……つぃ……よぅ……」 息も絶え絶えなタバサを寝かせて、動きやすい体勢をとった俺は、 タバサが一息つくまもなく責め始める。 「あっ……あぅ……え? な……に? う……そ……気持ち……いい?」 タバサの感触を確かめるように動き始めると、タバサの目に微かに快感が浮かぶ。 ……初めてなのに……よほど相性が良かったようだ…… お互いに。 「……タバサ……ごめん……いく……」 奥歯を噛み締めながら情けない報告をすると、幸せそうな笑顔が俺を迎えた。 「……ん、気持ちよくなって……サイト……わたしの中で……いって……ね?」 これは……反則だ……いつもの超然としたタバサとのギャップが、最後の一押しになって、 思いがけない大量の精を解き放つと、安心したようにタバサは俺の腕の中で力尽きた。 二つの寝息が部屋に響く。 二人とも……もう俺ものだ……。 ……これで……皆……俺の側に……ずっと…… 窓の外を見ながら、俺はひっそりと笑った。 292 名前:黒い蜘蛛の糸 42/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 48 18 ID lmkgam+I 「くぉぉぉの、駄犬!!!!」 「ぐはっ」 冴え渡るエクスプロージョン! 実は二人目、サイトがそう報告した途端詠唱が始まり、 観念したサイトが一歩も避けないまま、勢い良く壁に叩きつけられた。 「ご、ごめんなさいっ、ミス・ヴァリエールっ、わ、わたしがっ」 「そ、そうだぞ、ルイズ、シエスタがわるっ……」 サイトの言葉は最後まで告げられることも無く、口の中にルイズの爪先が直撃した。 「だまんなさい、だまんなさいっ、だまんなさいっっ!!」 じたばたと暴れながら、ルイズは全身で自己主張した。 「どゆこと? なんで? サイトっ、あんたどーゆーつもりなのよっ!!」 「いやーほら、ヤっちゃた事は仕方ないというか……」 反省の色の無いサイトを、視線で射殺そうとするルイズの耳に、ぽそりと小さな声が響いた。 「……やっぱり……わたし、これ……飲みますね」 シエスタの手には、見覚えの有る小瓶。 「……って、駄目――――――!!!」 ルイズの蹴りは、一撃でシエスタの手の中の小瓶を打ち砕いた。 「でも、シエスタ、一回それ飲もうとしてるし」 サイトの一言に、ルイズは怒りの矛先をシエスタに向ける。 「なななな、なんでっ?」 「……ミス・ヴァリエールが……お怒りになると……思って……」 「お、怒んないわよっ、二度とそんな事しちゃだめだからねっ!!」 ルイズの一言にサイトは飛びついた。 「ラッキー……がはっ」 サイトの鳩尾にルイズは飛び蹴りだ。 「は、反省の色がなぁぁぁぁい」 流れるような連続技を繰り出しながら、ルイズの叫びがどこまでも響いていた。 293 名前:黒い蜘蛛の糸 43/43[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 03 48 52 ID lmkgam+I なーんで、シエスタはサイトをあそこまでかばうのかしらっ! サイトをつるし上げようにも、もう片方の当事者のシエスタが、事有るごとにかばう為、 自分ばかりが怒る訳にもいかないルイズは不完全燃焼だった。 ……なんだか嫌な気分ね…… 複雑な感情を抱きながらも、ルイズは教室でタバサを探す。 シエスタと二人で、ちょっとした約束をした。 ……サイトは留守番よ! 探すまでも無く、相変わらず無表情で、いつも通り自分の席で本を読んでいるタバサを見つけると、ルイズは声を掛けた。 「あ、居た居た、タ〜バサ〜」 「なに?」 用事は他に有るのだけれど、 最近少しサイトと仲の良いこの少女を、少しだけ牽制する。 「あのね、わたし……サイトの赤ちゃん出来ちゃった」 「……おめでとう」 「ふえ?」 「? 聞こえなかった? おめでとう」 誰に話しても驚きが先に来ると思っていたのに、まず祝福してくれたタバサをルイズはかなり見直した。 「あ、ありがと……その……それでね」 そもそもタバサを探していた最初の理由。 「次の虚無の曜日に……街まで連れて行って欲しいの。 ……その、ベビー用品のお店とか……」 「出産祝い」 それだけ告げると、用は済んだとばかりに本に目を戻す。 「ま、まだ産んでないもん」 連れて行ってくれるつもり。そう理解したルイズはタバサにじゃれ付いて、 本の邪魔にならない限り、タバサもそんなルイズを邪魔にしなかった。 「あのねっ、わたしたち……シエスタもだけど…… 皆で幸せになるのっ! 本当よ」 今だって幸せそうなルイズの笑みを見ながら、タバサも微笑む。 「そうね……皆……幸せになれるね」 机の影でタバサの右手は、そっと自分のお腹に添えられていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/941.html
注意! この狩人編は風翔龍編を読んでないと意味不明だと思うぞ、諸君! まだ時間的には夜。だけど私は目を覚ました。朝の前、夜の最後。 日は微かに地平線を染めるが、天には月と星が見える時間。遅くまで起きていた者は眠りにつき、朝早い者もまだ目を覚まさない。 そんな時間に私 シエスタは目を覚ました。 「あれ……まだ暗い……あっ!」 そう言えば今日は週一で『アレ』をする日だった。寝巻きを脱ぎ捨て、身につけるのはメイド服。 ここまでは何時もと変わらない。だけど一つだけ違う事を実行する。 簡素なベッドの下から引っ張り出すのは、布に巻かれた細長い物体だ。握り締めれば硬い感触が返ってくる。 安堵と興奮を自己確認の頷きと笑顔で表現し終え、ルームメイトである同僚のメイドを起こさないように私はそっと部屋を出た。 私がお仕事をしているトリステイン魔法学院はハルケギニアでも一二を争う名門の魔法学院で、その面積も広い。 広いからこそ忘れられ、触れられない場所と言うのが存在するもの。貴族の皆さんも、同僚の使用人たちもここには余り来ない。 しかもいまは夜にしては遅すぎ、朝にしては早すぎる狭間の時間。もちろん私のとっておきの場所には人は居なかった。 それでも尚真剣に辺りを確認する。子供の頃から山や森で磨いた感覚を総動員して辺りを探った。 「誰も居ませんよね……」 この確認はいくらやりすぎてもマズイと言う事は無い。私がこれからやるのはメイドと言う存在から余りにも外れた行いだ。 見つかったら解雇どころか処刑されてしまうかもしれない。実際に大人しく処刑される稼動は別として、実家にも迷惑が掛かる。 そう解っているのに……私は週一でコッソリ行うコレは私の心と体を捉えて離さないのだ。 「女王陛下、どうかこの愚かなメイドをお許し下さい」 シエスタは手の内で祈りを組み、目を付して頭を垂れた。懺悔は終了……後はやるだけ。 何時もはベッドの下に隠しておいて決して外には出さない物。 布を剥ぎ取れば中から姿を見せるのは長剣……専門的には太刀と分類される。 鞘から抜き放たれた刀身には微妙なそり、血のように紅い刃が栄えた。刃と逆にある棟は肉食動物の刃のような鋭い突起が不規則に並ぶ。 赤と黒が縞模様で彩る柄はかなり長く、これが両手で使うものである事を物語っている。 名前を「天下無双刀」と言った。 「ふぅ……はっ!」 シエスタは柄をゆったりと掴むと息を浅く吐き出し……裂帛の声と共に太刀を振り下ろした。 再度確認するが天下無双刀は太刀。並の成人男性、兵士や傭兵すら振るだけならば未だしも、使いこなすのも難しいはず。 だが彼女はそれを持ち上げ、振り下ろすと言う動作に留まらず『使いこなしている』のだ。 「やっ! せい! はぁ!!」 重心を乗せた踏み込み斬りから、その刃を反転させて斬り上げ。 上がった太刀を振り下ろしながらのバックステップ、斬り下がり。そこから動きを途切れさせないで穿つような突きを放つ。 まさに熟練の戦士の動きであり、振るわれた刃が風を切る音が闇を揺らす。 一つ振るうたびにシエスタの顔がメイドのものから戦士のソレへと変わっていく。 彼女は伝説の使い魔でもなければ、学園に入り込んだ暗殺者でもない。彼女はどこにでもいる村生まれの奉公少女だ。 だがシエスタが見せる一連の剣さばき。平民では手が出せない値段がつきそうな太刀。 その二つはどこから手に入れたものなのか? 原因は彼女の祖父にある。 シエスタの祖父は流れ者だった。何処からかふらりとタルブの村にやってきたそうだ。 彼は剣士だった。本人曰くハンターだそうだが、狩人と言うよりも剣士。身長以上ある太刀を振り回していたから。 珍しい黒い髪と瞳は東方の血によるものらしいその青年は、ハルケギニアやトリステインタルブの説明に首を傾げ続けていたが、聞き終えると簡単に言った。 「スッカリ迷子になって帰れないからここに留めて欲しい」 だが物騒な見知らぬ人間の言う事。そう簡単に受け入れるわけには行かないと当時に村人は考えた。 そこで無茶な用件を出してお引取り願おうと言う事になったらしい。 内容を要約すると「森の奥で目撃されるオークの群れを倒してくれたら、村に居てくれて良い」と言うもの。 メイジですら複数のオーク鬼と退治するのは避けたいと考えるほどの強敵であり、平民の剣士なら即座に断って逃げ出すだろうと村人は思っていた。 だが剣士は容易くその依頼に頷くと森の奥へと姿を消した。 「死んでしまったのでは? 悪い事をしてしまった……」 そんな空気が村を支配する中、剣士 シエスタの祖父は帰ってきた。血塗れ泥まみれで手には五つのオークの頭をぶら下げて。 「すまない。十五匹ほど狩ったのだが、重くて持って来れなかった」 平然とそんな事を言うその剣士に村人はとても感心し、村に暮らす事を許したのだ。 もっとも彼の武勇伝はそれだけではなく、メイジを含めた盗賊団を壊滅させたり、ワイバーンを一昼夜に及ぶ激闘の果てに討ち果たしたり色々ある。 そんな彼も嫁を貰ってからはめっきり大人しくなった……なんて事は特に無く、年をとってもなお強靭な体は健在であった。 彼が後年、最も気にかけて己の技術を伝えた相手、それがシエスタ。 子供よりも自分と同郷たる力や意思を見せる孫に、異国の剣士は己の全てを可能な限り伝え、最後に己の愛刀を託して逝った。 「はぁ……お爺ちゃん……」 かすかに滴る汗とは別に瞳から零れた液体を慌てて擦り、シエスタは呟く。日課になった型の練習を終え、ダランと天下無双刀を握った手が力を失う。 祖父に一連の事を教わっていた時、シエスタはまだ小さかった。世界を知らず、頑張れば何でも出来ると思っていた。 だからこそ無邪気に力を欲することができる。天下無双刀を使いこなせるようになった時は喜びに震えたものだ。 だが今は違う、世界を知っている。平民は貴族には決して頭が上がらない。お仕事をしなければご飯が食べられない。 そう……知っているのだ。世界を普通に生きていくには平穏と隷従が必要なのだ。 「これを振るの止めようと思ってるのに……」 本当は受け取る気すらなかった。祖父が病に倒れたのはシエスタがトリステイン魔法学院に奉公を決めてからだった。 死に際の祖父の言葉が脳裏を過ぎる。 「これはお前にやろう。なに……要らない? メイドに武器は不要だって? まあ持って行けよ。いつか必要になるさ」 何を言われても受け取らないことは出来たはずだ。 なのにソレを受け取ったことが信じられず、同時に祖父の言葉を肯定しているようにシエスタは感じる。 ソレを振り回す行為もまた自分が今の状況に満足していないようで……そこで考えるのをやめた。 「戻ろう……そろそろ時間が」 シエスタは呟き、鞘を拾い上げた時……風が吹いた。不自然な風だった。いままでの風向きを無視した流れ。 野山で育ち、森で遊びながら祖父に色々教えてもらっていた彼女はその違和感に立ち止まり、視線を上げる。 その先にはドラゴンがいた。全身を光沢ある黒い甲殻に覆われ、肩口から大きな翼を広げた四本足のドラゴンだ。 興味深そうにこっちを見ているそのドラゴンに、シエスタは覚えがあった。見たことがある訳ではない。聞いた事があった。 またもや祖父に関連する事だった。シエスタは彼がはるか遠くから来た冒険家であり、剣士と言う風に教えられている。 そんな遠くから来た祖父が良く離して聞かせてくれた『昔話』。そこには想像を絶する不思議な生物たちとの死闘が多く存在する。 姿を消す下の長い古龍、水底を統べる翡翠色の魚竜、熱線を吐く岩竜、せせこましいマネをする毒怪鳥。 一角竜の頭蓋骨を被った巨大なカ二、暴力の化身たる飛べない竜、炎を操る地獄の炎帝、雪山を統べる雪獅子の王。 電気を発する盲目の異形、山よりも巨大な老山龍、地上と空を制する雌雄対となる火竜。 そんな子供を興奮させる怪物達の一つ……『風を支配し嵐を呼ぶ鋼龍』と言うものが有った。 シエスタは思わず祖父が語っていた名前が口から零れる。 「風翔龍……クシャルダオラ……」 「なぜその名を知っている?」 「えっ!? 喋った……」 思わず帰ってきた呟きにシエスタは一歩下がる。祖父の話でも知恵は有るようだが人語を介することは無かったと聞いていたのに。 「なぜその名前を知っている? こちらに来てからは誰もその名を知らぬ。お前が、メイジとやらでもない唯の小娘が知っているのだ?」 「そっそれは……」 『お爺ちゃんに聞いたんです』と答える前に、クシャルダオラの目がシエスタの手の内を睨みつけた。 そこには祖父より伝えられた太刀 天下無双刀。ソレを確認してクシャルダオラ 今はシルフィードと言う名を持つドラゴンは声を荒げた。 「貴様……その剣を何処で手に入れた? 前の持ち主はどうした? それに……「お爺ちゃんです」……なに?」 「貴方のお話もお爺ちゃんに聞きました。この剣もお爺ちゃんに貰った物です」 何故そんな事を聞くのだろうか?とシエスタが首を傾げて見守る中、シルフィードは笑い出した。 それは捜し求めていた物が意外なところで見つかったような歓声。それに反応するように風が唸りをあげる。 「そうか! あの男……メッキリ現れないものだから死んだとばかり思っていたが、こんな異界の地にいるとは!!」 「えっ!? お爺ちゃんを知ってるんですか!?」 「知っているとも……幾度と無く命のやり取りをした怨敵だ。この片目もあの男にやられた物だ……奴は今何処にいる!!」 歓喜の声が風に乗って鳴り響く中、シエスタがつめたい現実を送る。 「亡くなりました……病気で数年前に」 「そうか……死んでも居なければ奴が孫とは言え、他人に己の愛刀を渡すとも思えんな」 風が勢いを無くし、詰まらなそうにシルフィードは声のトーンを落とす。逆に風は悲しそうな音を立てているようにすら聴こえる。 「で? 奴の孫がメイジの学習施設でなにをしているのだ?」 「私はここでメイドとして働かせていただいているシエスタと申します」 「あの男の孫が……狩る者ではなく? 剣士でも傭兵でもなくメイド?」 心底驚いたような声色の後、ゴワリッと風が再び勢いを増した。そこには怒りが感じられる。全てを薙ぎ払う暴風に乗り怒気をはらんだ声が響く。 「ふざけるな! その程度の者に奴が己の剣を託したと言うのか!?」 「そんなこと言われても……」 「認めぬ! わが生涯の仇敵の剣がメイド如きに納まる者に振るわれるなど……断じて認めん!!」 それは恐風。シエスタは恐怖で思わずペタリと腰をついた。怖い! 怖い! メイジだろうと虐げる風の暴力に平民などが叶うはずが無いとシエスタは自分の肩を抱きしめるように震えていた。 「この片目の怨み、お前で晴らすのも一興か……奴の汚点を消す意味もある」 「ヒッ!」 ゆっくりと宙から降りてきた体がドスンと地面を揺らして着地する。四本の足が一歩ずつ近づくのをシエスタは震えながら見ていることしか出来ない。 『戦えば良い。そうする技術がお前にはある』 幻聴だろうか? シエスタは懐かしい祖父の声が聴こえる。 「無理です! あんなに強いドラゴンに勝てるわけがありません!」 イヤイヤと赤子がするように否定を示すシエスタに尚、祖父の言葉は続けた。その言葉が昔彼女がした質問の内容と重なる。 『どうしてそんなに怖い怪物に向かっていくの?』 老山龍に踏み潰されそうになる話を聞いた時、暴竜に追いかけられて絶壁から跳んだ話を聞いた時に質問した。 仲間が雄の火竜 空の絶対王者に飲み込まれた話に涙する度に、毒怪鳥の死んだフリに騙されて死に掛けた話のたびに聞いた。 『どうして絶対的な強さに向かっていくの?』 それは今の状況、強いて言うならば平民が貴族に立ち向かうような無謀に重なる。そんな時、祖父は何時も同じ答えをくれた。 『絶対なるモノへ向かっていく事、強大な存在への挑戦……それがハンターの本当の目的だからさ』 「良く解らない」 『そうか? なぁに、いつかきっと解るさ。そういう状況になればお前はきっと『向かっていくこと』を選ぶはずだ』 「え~! どうして?」 『それはホレ、シエスタはワシの孫だからな』 豪快に笑いながら私の頭をクシャクシャと撫でてくれた無骨な手。何度も『向かっていった手』の感触。 ドクンッ!と心臓が高鳴り、シエスタは理解した。この感覚だ……絶対的な力を前にして、挑戦を渇望する心情。 何かが出来るはずだと思考がめぐり、何か出来るはずだと体が動いた。 「はぁあぁ!!」 「むっ!?」 シエスタは跳ぶ。手にある祖父より伝えられた天下無双刀を振り上げて。 唯の小娘と侮っていたクシャルダオラは反応できない。振り下ろされる剣先が当たったのは奇しくも、シエスタの祖父が奪った左目。 確かに剣筋の通った一撃は鋼竜の肌を傷付ける。祖父のそれとは違い大きな結果とはならなかった。 だがハンターとしての最初の一撃がクシャルダオラに傷を負わせるものなら大金星だろう。 シエスタは反撃を警戒して一撃の後バックステップで距離を取るが、クシャルダオラは動かなかった。 「クックック!」 「フッフッフ……」 「「■■■■■■■■■!!」 どちらから漏れたのか解らない歓喜の笑い声は重なった。クシャルダオラが首を下げ、再び風を纏いながら言う。 「それで良い。それでこそ奴の孫、いや……奴の志を継ぐ者 ハンター・シエスタ!!」 シエスタも天下無双刀を正眼で構えなおし、僅かな微笑で答えた。そして納得する。「やっぱり自分はお爺ちゃんの孫なのだ」と。 先ほどの奇襲とは違い明確なクシャルダオラの闘志が伝わり、背中を寒くて甘い感覚が走る。 同時に体が奥底から火照ってくるような陶酔を覚え、どんな事でもできるという脳内麻薬が神経を冒す。 だが冷静な神経は明確に状況を把握し、適度に熱くなった筋肉がソレを受けて動く。 両雄が再び激突しようとした時だった。クシャルダオラのものとは違う風が吹く。 「キャッ!」 「邪魔をするな!」 予想外の方から吹いた風にシエスタは反応できず、小さな体が僅かに宙に浮いて尻から落ちる。 当然そのまま突撃するのはクシャルダオラとて本位ではなく、風の主に一喝を入れようとして振り向く。 すると背後、つまり先ほど自分が向いていた方から振り下ろされた何かが頭部に炸裂した。 「グハッ!?」 「「なにをしてるの?」」 クシャルダオラにとって頭部は急所である。無敵の龍風圧が解除され、頭の上でクルクル星が廻っている彼女を問いただすのは二つの同じ声。 風の遍在で作られた分身とその主。青紙にメガネ、小柄な身長に似合わない長さの杖を持っている。 「なんだ、タバサではないか」 「なにをしていたの?」 「実に楽しいこ…『ゴチンッ!』グワァアァ!!」 もう一度殴打してからタバサは聴く相手を変えてみる事にした。腰を抜かして放心しているメイドにだ。 「なにをしていたの?」 「何って……その……クシャルダオラが……」 「クシャルダオラ? 彼女はシルフィード、私の使い魔」 「使い魔……っ!?」 使い魔と言う言葉を引き金にしてシエスタは正気を取り戻した。いや先ほどまでも正気だったが、それはハンターとしてのもの。 自分の立場を学園のメイドに、平民に戻してみれば、今の状態は非常にマズイ。 平民のメイドが自衛では済まされない大きな武器を勝手に持ち、メイジの使い魔を傷付けてしまったのだ。 「申し訳ありません! ミス・タバサ! あの……私……」 土下座と言われる体勢をとり、必死に言葉を紡ごうとするが確かな答えが生まれない。 もっともチャンと説明できたとしても自分の運命は変わらない。きっと処刑……もしかしたら家族にまで迷惑が!! 「私の使い魔が何かした?」 「イエ! 私が悪いんです! どんな罰も受けますから! どうか家族だけは」 「どんな罰でも?」 杖を構えて近づいてきたタバサに懇願するシエスタ。だが次に彼女は聴いたことが無い罰の種類だった。 「じゃあその力を私に貸す」 「え?」 「シルフィードに一撃を入れた貴方の剣技を私の為に使うこと。それが罰」 シエスタは訳が解らないと言う風に呆然としていると、タバサは続けた。 「私は『余りにも大きな存在』に挑まなければならない。そのために力が必要」 「あの……大きな存在って?」 「国」 帰ってきた答えはハンターの血が欲する挑戦・無謀を満足させるに充分だった。 この密約から数年後、某国の王座についた青い髪の女性。その女性は身長以上ある太刀を振り回すメイドを雇っていた。 後にそのメイドは王女が約束した報酬を蹴って、辺境地域での冒険に一生を費やす事になるのだが、それはまだ先の話。